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吉田委員 皇室経済の問題に
関連をして
お尋ねをいたしますが、
総務長官は、あるいは御存じないかもしれませんけれども、私は、
福岡県選出の
衆議院議員ですが、前に、
参議院議員を十三年、副議長もいたしました
松本治一郎という
先輩がございます。たいへん、その近くでいろいろ指導もいただきましたし、また影響も受けています。この
松本治一郎という人は、全国で三千
部落、三百万の未
解放部落の
部落民の
解放のために、その生涯をささげました。
で、戦前から、あの
福沢諭吉さんが言われました、人の上に人をつくらず人の下に人をつくらずということを彼も信条といたしました。そして、この未
解放部落の
部落民、その生涯をかけて
解放のために
努力をした未
解放部落の
部落民は、いわば
身分差別を受けてまいりました。
憲法の上でいいますと、なくなっておるはずなんです。なくなっておるはずの
身分差別というものが残っておって、それは、
総務長官の別の任務でございますいわば
同和行政、
特別措置法もできております
同和行政という問題で
総務長官にお取り組みをいただいておる。ところが、それは、
憲法上はなくなっておるはずでありますが、実
社会の上では、特に就職の自由、あるいは
教育の自由あるいは結婚の
自由等に至りましては、今日もなお悲劇を見、あるいは自殺をする等の現象が、これは一、二にとどまりません。そういう
傾向が最近ふえつつある。
原因は、二つあると思うのですが、
一つは、これから
お尋ねをいたします
明治憲法に戻そうとする
動きと
関係があると思うのが
一つ。それからもう
一つは、経済的に、本
会議でも
資本主義の弊害というものが指摘をされたと思いますけれども、その
生産性あるいはコストを安からしめる、国際的な競争のために
労働の二重の組織があります。これは、
予算委員会で多賀谷君も取り上げたところでありますけれども、本雇いと下請、
孫請という、これは、いわば
労働の中における
差別だと思います。私は、そういうものが根拠になっておると信じております。
ここで、
関連をして聞こうとしますのは、人の上に人をつくらず人の下に人をつくらずという
民主主義が人の上に人をつくろう、したがって、人の下に人をつくろうとする
差別の再
生産、
復活につながるのではないか、こう私は
考えますだけに、
お尋ねをするわけでありますが、その前提として、
同僚議員からも、先日
お尋ねがございましたけれども、新
憲法のもとで
人間天皇を宣言されて、そして神さまでなしに、
人間として、国の
象徴としての
天皇の
地位というものがきめられたと思っておる。ところが、それをもとに戻そうとする
動きがある。
その
一つに、この間お話がございましたけれども、
宮内庁の
側近といいますか、役人の問題があるのではないか、私は、こう
考えます。ここに「
日本史上の
秘録」として閑院氏の本がございますが、その中にこういう
ことばがございます。「
宮内官僚や
側近の人々となると、
皇室の
尊厳と、安泰とを祈念する
忠誠心が、良い
意味にも、悪い
意味にも作用して、
民主化を一層困難なものにする。事実私の知る限りにおいては、
宮中の慣例やご
事情が、
社会性という観点からみて、ずいぶん特殊な
考え方や、
形式や、
雰囲気などをとっているものが、少なくない。いわば封建的というか、旧式というか、堅苦しいというか、または過度に保守的というか、あるいは事大的というか、旧態依然
たる感がある。民主的という線からは、ほど遠いと思う。そういう点は、将来
一般社会と変らないものに改革ありたいと、念願するが、急には困難であろう。
宮中あるいは
皇室の
社会的民主化ということは、私は実に前途遼遠だと思う。」と、これは新
憲法になり、
人間宣言をされて間もなく書かれたものだと思いますが、この
閑院純仁殿下ですか
——もう
殿下ではありませんが、この方の書いた「
日本史上の
秘録」の中にも、そういうことが書いてございます。
私も、かつて
宮中を参観さしてもらったことがございますが、そこでこういうことを見ました。平生は
たんぼではございませんが、堀の水をくみ上げて、わずか何坪かの
たんぼらしいものがつくってあって、そこで、つくられたお米を
賢所に供えられるということがあると聞いて、もし、
ほんとうに
農民の
苦労をお察しになろうというならば、地方で
農民の
苦労を見られたらいいと思うし、また、さらに
自分でお手植えになりたいというのならば、もっと
国民の
生活に接した
形式になさったらどうですかと
お尋ねしましたら、前から
賢所の大儀というものがあって、それは前々からやっておるからという、そのときも、
瓜生次長であったかと思いますが、
お答えがございました。
民主主義のもとで、
人間天皇を宣言されて、そして
象徴としての
天皇になられて、その
皇室の
民主化のためには、大英断がなければなるまい、あるいは
明治の初年に、
山岡鉄舟氏が
明治天皇の御
養育係をしたという話も伝わっておりますが、どうも質問をしたり、聞いたりしておりますと、
宮内庁の、これは端的に言って
官僚ということになると思いますが、お偉い方々の頭の中には、やはり昔からこうやっているからということが、
閑院純仁殿下ですかの書いているようなことが、やはり私にもひしひしと感ぜられる。実は、この
民主化のためには、その
側近からというか、あるいは
宮内庁の
長官、
次長その他、これは
ほんとうに頭の切りかえが必要なのではなかろうかと
感じてまいりましたが、いかがでしょうか。