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1974-05-10 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君    理事 中山 利生君 理事 村田敬次郎君    理事 佐藤 敬治君 理事 山本弥之助君       愛野興一郎君    片岡 清一君       住  栄作君    武藤 嘉文君       保岡 興治君    渡辺 紘三君       井岡 大治君    岩垂寿喜男君       細谷 治嘉君    青柳 盛雄君       多田 光雄君    小川新一郎君       小濱 新次君    折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 町村 金五君  出席政府委員         自治政務次官  古屋  亨君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君         消防庁長官  佐々木喜久治君  委員外出席者         人事院事務総局         職員局審議官  飯野 達郎君         人事院事務総局         職員局補償課長 岡田  仁君         警察庁警務局給         与厚生課長   松井 三郎君         警察庁警備局参         事官      赤木 泰二君         気象庁観測部長 有住 直介君         労働省労働基準         局労災管理課長 石井 甲二君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         自治省行政局公         務員部給与課長 山田 守一君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   林  百郎君     青柳 盛雄君 同日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     林  百郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七六号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小川新一郎君。
  3. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきましてはわが党は賛成の意を持っておりますので、まず御報告しておきます。  そういう立場に立って、御協力質問でございますので、ひとつ親切丁寧にお願いしたいと思いますし、他党の委員諸君からも専門的なお話がたくさん出ております。私は不勉強であまりよくわかりませんので、重なる場合、幼稚な場合もありますが、ひとつ御理解いただきながら御答弁をお願いしたいと思います。  まず最初に、地方公務員災害補償法に関連いたしまして、当然こういった災害の問題については地震または火災、また思わぬ国土の荒廃等によるところの災害等がございます。そこで、昨日起きましたところの伊豆半島を中心にしたところのマグニチュード六・九といわれております今回の東海地震につきまして、公務員災害補償法法律がかかっております関連に関係いたしますので御質問させていただきますので、よろしく御配慮のほどをお願いしたいと思います。  まず第一に、これは自治省にお尋ねいたしますが、こういう局地的な激甚災、これに対して災害救助法並びに局地激甚災害法等指定は当然行なわれると思いますが、当該静岡県に対してどのような措置指導を行なわれましたのか。またこの実態についてどうなっているのか。そして今後の問題についてどのように対処なされるのか。これについて自治省にまずお尋ねしたいと思います。
  4. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 昨日発生いたしました伊豆半島沖地震被害状況は、地震性格がいわゆる直下型地震ということで、伊豆半島南部、南端の南伊豆町に被害が集中をしているというような現状でございます。その被害状況等はまだ完全な捕捉の状態に至っておりませんけれども、現在時点までに判明いたしておりますものは、死者三名、行くえ不明二十六名、重軽傷者四十八名、それから家屋の被害状況としまして、全壊が四十六戸、半壊百三十三戸、一部損壊が六百五十六戸それから火災が一件発生いたしまして、これが五むね全焼いたしております。そのほか山くずれあるいは道路決壊等が、南伊豆町だけではなしに下田市も含めまして相当個所出ている模様でございます。  これに対しまして、静岡県としましては、昨日の十二時四十五分に災害救助法を発動いたしまして、必要な対策をとりつつあるわけでございます。これに対応いたしまして、地元市町村等に対します財政措置等は、その公共被害その他財政需要状況を見まして、必要に応じては普通交付税の繰り上げ交付ということを検討する必要があるだろうというふうに考えますが、これはさらに現地状況調査いたしましてその必要性を判断するということになるだろうと思います。そのほか、今回の地震に伴います各種の財政負担の対応といたしましては、御承知のとおり特別交付税制度があるわけでございますので、今後の状況をさらに調査いたしまして、その結論を得まして必要な財政措置をとってまいる、こういうことになるだろうと思います。
  5. 小川新一郎

    小川(新)委員 局地激甚災害法指定する考えはございませんか。
  6. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 昨日午後に防災担当各省連絡会議を持ちまして、本日朝、総理府をはじめといたします防災関係各省から十七名の政府調査団派遣をいたしております。この調査団調査の結果を待ちまして必要な措置をとってまいりたいというつもりでございます。
  7. 小川新一郎

    小川(新)委員 現在三名の死者、二十六名の行くえ不明者ということでございますが、この二十六名の行くえ不明については生存の可能性があるのですか、それとも見込みがないのですか。
  8. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 その行くえ不明者二十六名といいますのは、地震に伴う山くずれによる生き埋めによる行くえ不明でございます。現地状況を見ましても、その山くずれの、くずれてまいりました土砂が、大きい岩石を含む相当量土砂の崩壊になっておりますので、非常にむずかしい状況にあるのではないかということを考えております。
  9. 小川新一郎

    小川(新)委員 現在の状態では非常に悲観的な報告でございますが、万が一、二十六名の方々全員死亡ということになりますと、局地激甚災害指定範囲に私は入るやに思うのでございますが、この規模直下型地震においては、詳しいことは今後の調査にまつといたしましても、今日までの判明いたしました災害規模の中では指定するお考えはないのですか。
  10. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 この指定につきましては各省との十分な調整が必要でございますので、調査団の帰りました時点におきまして早急にその態度を決定いたしたいというつもりでございます。
  11. 小川新一郎

    小川(新)委員 次にお尋ねいたしますけれども、気象庁、来ておりますね。——いま私たちが一番おそれておりますことは、昨日の地震が、河角博士の六十九年周期説、いまちまたにささやかれております、大地震が来るのではないか、また大地震の前提になるものではないかということが非常にいま懸念されておりますし、災害は忘れたころにやってくるといいますが、それが私たちの脳裏にある中でこういった直下型の局地地震が起きたわけでございますけれども、この地震の見通しなり、地震の起きている現況なり、いま現在判明しておりますところの諸問題について、御説明のできる範囲でお願いしたいと思います。
  12. 有住直介

    有住説明員 お答えいたします。  新聞などで、それから中央防災会議の御報告でも出ておりますが、マグニチュード六・八ということで、伊豆半島の南約二十キロぐらいのところで、深度が二十キロでございますが、そういう地震が起きたということでございます。現在の学問とか技術のあれからいたしますと、こういうような前ぶれなしに起こります地震なものですから、あらかじめお知らせするというようなところまでできませんで、皆さんにたいへん御迷惑をかけておるわけでございます。しかしながら、これからの予知をどういうふうに進めますかということで、地震予知連絡会その他で検討しているわけでございます。  ちょっと前置きが長くなりましたが、いまの御質問関東大震災、河角先生が六十九年周期というのを出しておりますが、それとは、一応いままでの学問的な見解では別というふうに考えております。その根拠と申しますのは、今度の地震と申しますのは、南海トラフというのがございますが、それの東側にございます、いわゆる海嶺といっておりますが、山になったところでございます、そこで起きているわけなんでございます。そういうことで、そのことがつまり、地震も浅くて二十キロだというようなことと符合しているわけでございます。地震の大きさからいいましても六・八ということて、いわゆる非常に大規模——これは大きい規模でございますけれども、地震学上いっておる非常に大規模地震というのから比べますとやや小さい。小さいと言いますと語弊がございますが、七以上を大地震と申しておりますので、それからいきますと大地震よりはやや小さい。ただ直下型でございましたからたいへん被害も出ておりますし、たいへん御迷惑が起きておるわけでございますけれども、そういうことでございますので、いわゆる関東の大地震というものとは系列は違うというふうにわれわれ考えております。  それから、その後余震もだいぶ出ておりますが、気象庁地震計記録等によって調べてみますと、有感地震としてはいままでに六十回ほど起きております。それから人体に感じないものとしては二百回ほどありますが、これは漸次少なくなっていくものとわれわれ推定しておるのでございます。  また、重ねてこういう地震が起こるかどうかという心配でございますが、いまお話ししましたような海嶺地震ということでございますので、過去の地震記録を調べた限りでは、あれと同じくらいあるいはそれ以上というような規模地震がああいう地域で二回続けて起こったという記録はございませんので、いまの技術的な水準から申しますと、続けて起こることはなかろうというふうにわれわれ考えておりますが、しかし今度の地震でも予知できなかったというような、学問技術としてはまだ不備な点がございますので、非常にはっきり確定的なことを申し上げるわけにはいかないのですけれども、われわれとしてそういうふうに推定いたしております。
  13. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは政務次官にお尋ねしたいのですが、個人災害補償適用というもの、今回のおなくなりになった方や行くえ不明者、また倒壊された方、けがをなされた方、こういうものに何らかの国としての援助の方法はあるのですか、個人に対しては。
  14. 古屋亨

    古屋政府委員 ただいまの御質問に直接お答えするには、ちょっと私いま事務当局と打ち合わせする必要がございますが、何といいましてもこれは不可抗力でございまして、なくなられた方、行くえ不明になられた方については全くお気の毒な状況であります。したがいまして、ここでいま私、確実にその法律適用があるかどうかということを断定的には申し上げませんが、気持ちとしてはそういうふうにもちろん考えていくべきであると思っておりますし、先ほど先生から御指摘のありましたような、こういうような地震災害につきましては、やはり平素における対策というものと、それからできたときの応急対策というもの、それから応急対策後の財政その他の三つの問題があると思いますが、いまお話しのことは応急対策の面に属しておると思います。ただ、なくなられた方につきましては、後ほど連絡をいたしまして申し上げたいと思いますが、そういうような積極的な方向で進められるように、私も関係省ともひとつ打ち合わせてまいります。
  15. 小川新一郎

    小川(新)委員 私がいま何でこの問題を議論しているかと申しますと、いまここにかかっている法案が地方公務員災害補償法律でございますので、当然、公務に出動した公務員警察官消防官、また警防団——警防団一般公務員ではございませんが、その仕事性格公務に準ずる、また当然この被害者の中に公務員の方の御家族、または遺族の方が出るであろうということから判断いたしまして、まずそういう公務員に対する補償制度というものは、公務の場合にはございますが、こういうように急速に来た災害の場合にはどうなのか。またそういった公務員でない方々に対しての国としての補償という問題が法律的にないのかあるのか。個人災害補償という問題に対してです。先ほども申しました市町村当該公共団体に対する暫定的な応援のしかたとしては、財政措置として交付税の繰り上げ、これは行なうというようなことをいま検討されるということでございました。また特別交付税制度もございます。それから災害救助法によるところの一、二の救済措置も講ぜられます。それから激甚災害指定されれば当該市町村に対する大幅な援助が行なわれます。しかし、公務員公務におけるところの災害補償というものがあっても、一般個人個人災害に対しては何らないのであっては、これは福祉国家としてあまりにもおかしいのではないか。  そこで私はまず第一に、そういった制度があるのかないのか。この場合、あるならばそれが適用されるのかされないのか。これは自治省としても当然考えなければならぬ。これは総理府のほうの仕事だと思いますが、当該地方公共団体におけるところの住民の生命、財産を守る立場に立って当然必要なことである。そこに消防が出動する、警察官が出動する、自衛隊が出てくる、救助が行なわれる。その救助が不幸にして間に合わなかった場合における措置はどうなっておるのか。これを聞くのは私は当然だと思うのですが、御答弁を、どなたでもけっこうでございます、お願いします。
  16. 松井三郎

    松井説明員 お答えいたします。  このたびの地震に際しまして、警察官災害警備に当たっておりますが、現在のところ警察官の中からは負傷者は出ておりません。  また一般の人がこのような人命救助等をなさった場合にどういうことかということでございますが、警察官職務協力援助した者の災害給付に関する法律というのが私のところにございまして、警察官職務協力援助した者につきましては警察官に準じてこの補償措置がなされることになっておりますが、この法律の中には、「水難、山岳における遭難、交通事故その他の変事により」「自らの危難をかえりみず、職務によらないで人命救助に当たった」場合はこの法律適用がございますので、もし一般民間の人がそのような状況におきまして人命救助等に当たって負傷し、あるいはおなくなりになった場合は警察官に準じましてこの措置を行なっておるわけでございます。
  17. 小川新一郎

    小川(新)委員 まことに私の質問とちょっとかけ離れているのですがね。それは確かにそういった事故はわかります。そのために、公務に準じた労働災害——労働という、これは警察官労働であります。そういった仕事であれば、これは一般公務員よりも五〇%ぐらい上のせされた補償がされるわけですね。警察官消防官麻薬取締官、この三つ、わかっております。  私が言っているのは、そういった公務に準じない、ばかんといま二十六名の人がまだ死ぬか生きるかわからない、現実には三人なくなった、こういった方々個人救済措置というものは国で法律化されているのかされてないのか。死んだ場合幾らなのか。そんなことは当然わかるはずでしょう、自治省だって。個人災害救助法律が出ているのでしょう。これに対して何にも答えられないというのはどういうわけなんですか。
  18. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 いま正確な知識になっておりませんので、取り調べまして直ちにまた御報告申し上げます。
  19. 小川新一郎

    小川(新)委員 これはもう地震が起きてきょうで二日目になりますから、当然そういった問題が国会でも出ることは当然なんでございますので、ひとつ御研究をしておいてもらわないと——これは災害対策特別委員会では個人災害法の問題についてはもう議論が重ねられておりますよね。当然死亡者に対しては五十万とか百万とか見舞い金が出るわけですね。私はそれに関連して、労働災害死者の問題ですか、災害補償法補償という問題を議論しようと思いましたが、いまお尋ねいたしますとまだよく詳しいところがおわかりになっておりませんが、こういった法律があることは間違いありませんね。あるのかないのか。まずそれだけ聞きましょう。
  20. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 自然災害に際しましての個人に対する給付法律は、たしか数年前に制定されたと考えております。
  21. 小川新一郎

    小川(新)委員 それは適用になると思いますけれども、ひとつ政務次官、これは大事な問題なんですよ、私がいま言っていることは。公務員災害補償法の一部を改正する法律案を審議している途中において、幸か不幸か、といって不幸にきまっているのですが、震災が起きた。それに対して、現実には公務員災害補償と並立してこういった問題が浮き彫りにされてこなければならないから、私はいまあえてこの問題を唐突的ではありますが出したわけであります。どうかひとつその辺のところは深い御配慮をしていただかないと困ります。御注意申し上げておきます。まことに私は遺憾だと思う。  そこで、現在までに出動いたしました警察官消防官自衛隊の数はどれくらいになっておりますか。
  22. 赤木泰二

    赤木説明員 警察関係についてお答えを申し上げます。  昨日地震発生直後、通信途絶等状況から、被害状況の把握あるいは救出活動などを統括いたしますために、静岡警察では発震七分後の午前八時四十分に、県警察本部警察本部長を長とする伊豆沖災害警備本部を設置いたしますと同時に、現地下田警察署にも警察本部警備部長等派遣いたしまして現地警備本部をそれぞれ設置いたしますとともに、現在までに警察官延べ千十八名を出動させております。  その活動状況でございますけれども、まず当初、機動隊約百名が、途中がけくずれ等で不通の道路土砂岩石等を取り除きながら、約二時間後被災地に到着いたしておりますが、とりあえずこの機動隊百名をまず被災地派遣いたしまして、また漁船あるいは海上保安庁等の御協力を得て、海上から現地に同時刻ころ到着いたしました下田警察署員らと合流いたしまして、直ちに被災者救出被害状況調査活動などを行なっております。こういった部隊が到着いたしまして、通信が途絶しておりましたのでございますが、その通信機能を確保いたしますと同時に、その後逐次、ただいま申しました千十八名までの部隊現地に投入いたしました。  到着いたしました部隊は直ちに、昨夜は徹宵で被災地における救助あるいは行くえ不明者捜索活動などを行なっておりまして、けさ早朝、午前二時過ぎでございますが、機動隊員が一名、まず第一の行くえ不明者を遺体として発見する等のことを行なっております。  なお、これにつきましては、県の機動隊が持っております投光車多重無線車あるいは発動発電機、チェーンソー、無線機など所要の資機材を持ってまいりましたが、ただこれだけではやや不足でございますので、警視庁、神奈川県警等から投光車給水車、それからキッチンカートイレカーなど、所要の要員をつけて応援派遣をいたしておりますし、管区警察局からも関東管区公安部長現地派遣して指揮に当たらせておるような状況でございます。警察庁管区警察局におきましても、発震後直ちに地震警備連絡室を設けて現地との連絡指導に当たっております。  以上でございます。
  23. 小川新一郎

    小川(新)委員 重ねてお尋ねしますけれども、二十六名の行くえ不明者はほとんど生き埋め状態なんですか。——そうしますとこれはほとんど絶望ですか。
  24. 赤木泰二

    赤木説明員 ただいままでに現地から入っております報告によりますと、すでにきょうになりまして二体発見をしておりますが、いずれも死亡されておりまして、あとの二十六名の行くえ不明者についてもきわめて悲観的ではなかろうかというふうに考えております。
  25. 小川新一郎

    小川(新)委員 まことにお気の毒な事故でございますが、気象庁東京でこの直下型の六・九くらいの地震人口密集地帯江東地区に起きた場合にはこのような被害では済まないと思いますが、予想としてはどのくらいの被害が出ますか。
  26. 有住直介

    有住説明員 お答え申し上げます。  この程度規模東京直下ということでございましたら、それはもう、人数としてはっきりした数字というのは申し上げられませんけれども、火災その他そういうものが起きるというようなことを考えましたら、おそらく数万人というようなオーダーのものは起きるのじゃないかと思います。過去の例を申し上げますと、一八五五年、安政二年の地震でございますが、そのときに約一万人の死亡者が出ているということが過去の記録でございます。ところがいまの非常に人口密度も大きくなっておりますようなことも考えますと、おそらくこれを上回るような数字が出るかもしれないということをわれわれとしてはおそれているわけでございます。そのために、地震予知連絡会その他で、各省庁とも協力体制をとりましてその方面の研究を急いでおるというような現状でございます。
  27. 小川新一郎

    小川(新)委員 いまの例は一九五五年ですか。
  28. 有住直介

    有住説明員 一八五五年です。安政二年でございます。
  29. 小川新一郎

    小川(新)委員 安政二年の話なんか参考にならないですよ。昭和四十九年現在、人口一千万をこえた一番密集地、ゼロメートル地帯江東地帯マグニチュード六・八ないし六・九、あなた方で言うところの中規模直下型地震が起きたときには東京にどれくらいの被害が起きるかということを聞いているのであって、安政の話なんか聞いているのではないのです。お願いします。
  30. 有住直介

    有住説明員 お答え申し上げます。  安政の話は参考までに申し上げたのでございますが、現在これと同程度地震直下型でもし起こるとしますと、何人というような推定はちょっとできないのでございますけれども、おそらく火災その他というものが併発いたしますことを考えると、もうこれをはるかに上回る犠牲者が出るのじゃないかということでわれわれおそれております。
  31. 小川新一郎

    小川(新)委員 ちょっと予想がつかないわけですね。  そこで私は実務の問題に入ってまいりますが、特殊公務災害の拡大についてこの際考えなければならぬ段階に来たわけです。現行法では、特殊公務災害対象としては警察官消防官麻薬取締官に限って通常の公務災害の五〇%までの上積みが認められておりますが、これをさらに拡大して、一般職であっても、職種によって限定してしまうのではなく、そのときの業務の内容、災害の中身によって特殊公務災害の中に加えてもよいのではないかという考えを持っておりますが、この点について一つ。  第二点目は、民間の組織しておりますところの、消防法に入らない消防団、この方々がこういった公務に携わった場合のけがもしくはなくなった場合は、その身分、損害の補償についてはどのようにお考えになっておられますか。この二点をお尋ねします。
  32. 植弘親民

    植弘政府委員 特殊公務災害範囲の問題でございますが、昨日もお答えいたしましたように、この特殊公務災害制度発足の際にもいま小川先生指摘のような御論議をいただいたようでございまして、業種で区切るかあるいは具体の事実に着目して対象とするかといったような御論議があったようでございますが、やはりいろいろなケース考えられますために、業種によってしぼろうということで現行制度をつくっていただいたというふうに記憶いたしております。しかしながら、いま御指摘のように、たまたま特殊公務災害対象になっていない業種といえども、場合によりましてはそういった特殊公務災害と同じような事態が個々具体ケースとして発生する場合も考えられるわけであります。しかし、それを一々特殊公務災害とするかどうかということになりますと、これは公務災害補償水準といいますか、それをどういうふうに考えるかということとあわせて検討すべき問題かと思いますが、非常に重要な問題でございますので、十分関係省とも相談しながら検討させていただきたいと思います。
  33. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 消防団員並びに消防作業従事者、これは民間消防団員でない方で消防作業に従事した方に対する補償でございますが、これは公務災害に準じましてその算定の方式が定められておるわけでございます。  ただ、消防団員の場合には、御承知のとおり非常勤の職員でございますので、その基礎になります補償基礎額というものは一応政令で規定することになっておりますが、その額は、昭和四十九年度の場合、最低が勤務年数十年未満の団員の場合に日額を二千九百円、最高が勤務年数二十年以上の団長が三千八百円。この基礎は大体警察職員の、いわば最低額は巡査から、最高額は警部というものを一応基準にいたしまして、この公安職員俸給表の金額を持ってきておるわけでございますが、二千九百円から三千八百円というものを補償基磯額にいたしまして、これをもとにいたしまして公務災害補償の場合とほぼ同じような計算で補償計算をいたしております。  ただ、補償額を出します場合にはできる限り遺族年金というものを中心にした運営をいたしたい。それで、遺族補償の一時金というものは、年金の受給資格を持っておる家族を持たない団員等につきましては一時金の支給を行なうということでございますが、大体は遺族を持っております方々の場合にはできるだけ年金を支給する、こういうことでやっております。これによりまして計算いたしますと、夫婦子供二人の場合でその団員が死亡した場合という一応モデルで計算をいたしますと、最高の場合の年金額が七十二万六千円、最低の場合の年金額が五十六万二千円ということになっております。また、独身者の団員で年金受給資格のない団員の場合には、一時金としまして二百九十万円ということになっております。そのほか療養の補償でありますとかあるいは葬祭補償でありますとか、その災害の態様に応じまして、公務員の場合に準じた補償措置がとられているのが現状でございます。
  34. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、一時金二百九十万円というのは、この補償法の三級や死亡した場合よりも多いのですか。これはどういう計算になっておりますか。
  35. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいまの一時金は、独身団員で勤続十年未満という一番低い団員の場合の計算でございまして、二千九百円を基礎にして計算した場合のいわば千日分というのがこの計算の内容でございます。
  36. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、この若年者の公務災害については、消防団員の場合は一時金だけで年金は出ないですね。年金は出ないで一時金で終わっちゃうわけですね。
  37. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 独身団員でありましても、五十五歳以上の父母がおります場合、いわば年金受給資格者でありますいわゆる扶養親族がおります場合には、遺族補償年金という形で年金が支給されるという形になっております。ただいま一時金を支給する場合を申し上げましたのは、その団員には妻がない、あるいはもう父母がおらない、それから子供もいないという場合の災害補償の場合におきまして、一時金という形で一時金を支給する、こういうことになっております。
  38. 小川新一郎

    小川(新)委員 わかりました。  それではちょっとお尋ねいたしますが、この法律ができたのは昭和四十二年でございますか、その以前とこの法律ができてからの問題でお尋ねしたいのでございます。本法制定前と制定後で、一級から三級まで、また四級から七級までありまして、これが障害補償年金のほうですね、それから八級から十四級までは障害補償の一時金が出ておりますが、この場合、この一級から三級までの方々の実態は一体掌握しておるのかどうか、また四級から七級までの方々の生活水準は一体どうなっておるのか、この実態調査をなさったことがあるのでございましょうか。地方公務員災害補償法に準じての実態を私はいまお尋ねしたいのでございますが、いかがでございますか。これに対して追跡調査をしたことがありますか。
  39. 山田守一

    ○山田説明員 過去において年金を受給した方の生活の実態等につきましては、ただいま手元に詳細の記録がございません。
  40. 小川新一郎

    小川(新)委員 いま何て言ったのですか。
  41. 山田守一

    ○山田説明員 過去において年金受給者になられた方の生活実態につきましては、いまのところ詳細に把握しておりません。
  42. 小川新一郎

    小川(新)委員 政務次官、私は共済年金の場合にもその実態調査を要求したわけなんですが、これらの法律が制定されてから、第一級というのはなくなった方々よりも、たいへんな障害を受けられて生涯めんどうがかかる。三級の方を標準としても一、二級というのはさらに重いんだ。一体どれくらいの方々が地方公務員災害補償の一、二級を受けておられるのか。またその生活の実態はどうなっていらっしゃるのか。こういう調査なり、そういったものを調べたものが一体あるのかどうか。次は四級から七級までというのは、おそらく目がつぶれたり、片腕がなくなっちゃったり、いままで自分がやっていらした仕事のできなくなった方々だと思います。そういう方々がこの法律の中に出ておりますね。たとえば四級の場合は「両眼の視力が〇・〇六以下になったもの」「咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの」「鼓膜の全部の欠損その他により両耳の聴力を全く失ったもの」は四級だ。五級の場合は「一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの」また「一上肢を腕関節以上で失ったもの」こういうふうに四級、五級、六級、ずっとある。一級というのはどういうものかといえば、ここにも出ておりますが、そういった状態で生き長らえても人間としてはもう廃疾してしまった、使いものにならなくなってしまったという方々の基準でございますが、そういう方々昭和四十二年本法施行になって以来四十九年までにどれくらいいらっしゃるのか。またその人たちの生活というのはどうなっていらっしゃるのかということをお聞きしたくなるのは、私はめちゃくちゃなことじゃないと思うのですね。これは一体どの程度までつかんでいらっしゃるのかと聞くのは無理じゃないと思いますが、私の話は無理だと思いますか。無理じゃないでしょう。
  43. 山田守一

    ○山田説明員 この制度発足以来、障害補償の年金を受けている方が百二十五件、一時金の対象となって受給された方が七百八十七件ございますけれども、ただいまのところ、その年金の等級別の数字等は持ち合わせておりませんので、後日資料として提出いたしたいと思います。
  44. 小川新一郎

    小川(新)委員 これらの方々の生活の実態調査というものを、この間も共済年金のときに私はお聞きしたのでございますが、あわせてひとつ御調査をしていただいて、また来年も同じような問題が出てまいりますので、ひとつ資料要求をしておきたいと思います。  それでは、先ほどの地震関係の急にお呼びいたしました消防庁と気象庁ですか、けっこうでございます。——ちょっとその前に、気象庁せっかくおいでくださって、お帰りになるのは残念なので、ここでもう一つお尋ねしておきたいのですが、大地震予知というものは今後たいへんな問題でございますが、こういう直下型の地震予知というものは全くできない。全くできないが、六・九などというのはたいへんな問題になります。そこで気象庁として今後どうあるべきなのか、またどう対処をするか。この際、要求なり要望なり、国会のこちらの委員会のほうにこういうことは言っておいたほうがいいと気象庁としてお気づきの点がございましたらば、また御研究なりその他の点で私どもに聞かしておいていただいたほうが参考になるというものがございましたら、ひとつこの際お願いしたいと思います。
  45. 有住直介

    有住説明員 お答え申し上げます。  今度の場合、予知ができなかったのは非常に残念でありますが、いまの学術、技術では非常に不完全で、まだ御期待に沿えるまでにいっていないわけでございますが、それに沿うべく各省庁、運輸省に建設省や文部省、農林省その他の御協力をいただいて地震予知連絡会議というものが持たれておりまして、これは文部省の測地審議会というところの学識経験者などの御意見を入れながら進められているわけでございます。  その線に沿いまして、気象庁におきましても過去第一次、第二次と、地震予知対策ということで、財政当局からも第二次におきましては約四億の財政的な支援をいただきまして進めておりますが、昭和四十九年度からは第三次の五カ年計画というものを立てて、それに沿って進めさせていただいております。  四十九年度におきましては約三億円ぐらいの予算をいただいて進めておりますが、その一つは、海底で地震が起きます確率が多い。いまの学術的な研究からいたしますと、例のプレートテクトニクスという学説がいまは非常に信用されておりますのでそれに沿って進めているわけでございますが、それでいきますと、日本の東側の日本海溝のものと、それからその西にございます南海トラフというようなものに関連して地震が起こっているということがわかっておりますので、海底に地震計を置きまして、その海底で地震計ではかりましたデータを、テレメーター方式で迅速にデータをとって調査研究を進めていくというような研究に四十九年度から着手をさせていただいております。それから御前崎には約二百メートルの深さの穴を掘りまして、その中に地震計とそれから傾斜計を入れまして研究観測を続けようということで進めておりまして、これは現在進行中でございまして、近いうちにこれも動くようになると思っております。  そういうことで、地震予知につきましては四十九年度から入ります五カ年計画ということで進めておりますので、そういう意味で、いま財政的にはいろいろと問題もあるときでございますから、財政当局ともよく相談しながら進むわけでございますけれども、そういう研究その他につきまして、将来とも御援助いただければありがたいというふうに祈っております。
  46. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 先ほど、災害の弔慰金につきましての御答弁を保留しておきました二、三につきましてお答えさせていただきます。  昭和四十八年九月に災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律が制定をされまして、四十八年の七月十六日から適用になっておるわけでございます。この内容は、死亡者に対しまして弔慰金五十万円を支給をする、負傷者に対しましては必要な資金の貸し付けを行なうという内容でございますが、この死亡者に対する弔慰金は国が二分の一、県が四分の一、市町村が四分の一という負担の区分になっております。府県及び市町村の負担分につきましては、災害関係の一連の経費の中に入れまして特交で財政措置をするということにいたしております。この災害の中には地震という自然災害も当然含まれるということでございますので、今回の地震による死亡者につきましてはこの法律の弔慰金支給の対象になるということでございます。
  47. 小川新一郎

    小川(新)委員 昭和四十八年にそういった新しい法律ができたことで私どもは満足しているわけではございませんが、個人災害のなくなられた方に五十万円の弔慰金が出る。私どもはこの問題については共済年金制度というものを提案しておったのでございます。例の交通災害共済制度のように、わずかな掛け金による全国の災害共済制度というもので、死者の場合三百万円以上のお金が出るように提案しておったのでございますが、これは五十万円でなったわけでございます。ひとつ、こういったものはすみやかに活動できるように、政務次官、ひとつ御配慮のほどをお願いしたいと思うものであります。消防庁、けっこうでございます、お忙しいようですから。  そこで、私は基本的な労災の保険問題懇談会の答申の中の問題で取り上げたいのでございますが、このILO百二十一号条約の水準に達しなければならない、こういった国際労働機関から勧告を受けなければやらないというんじゃなくて、わが国の場合は、国民総生産においては自由主義諸国家群においてはもう第二位である、そして田中さんもしばしば言っているように、福祉国家を目ざしているんだということになりますと、私どもはここに経済先進国から福祉先進国に切りかえていかなければならない。そういう立場に立って、年金の問題だ、また保険の問題だ、こういった補償制度の問題だという問題が、当然この七〇年代の政治の主流を占めるような議論になってまいりますが、一体いつになったらILOの勧告を上回るようなものが、たとえば共済年金にしても災害補償制度にしても出るのか。この辺のところは大臣にお尋ねしたいのでございますが、副大臣の資格を持たれる政務次官にひとつお尋ねするのでございますが、一体、ILOの勧告を受けてものごとを出発するのではなくて、国際労働条約に加盟している国々以上のリーダーシップをとって、日本を見習え、日本の姿こそ先進国の福祉社会の一つのスタイルであるというような労災補償制度というものは、まずいつになったらできるのですか、またいつやる御決心なんですか、この辺のところをまずお尋ねしたいと思う。
  48. 古屋亨

    古屋政府委員 今回の改正は、結局労災保険審議会の答申を受けました労災保険法、あるいは人事院の意見の申し出を受けました国家公務員災害補償法の改正というものとの均衡をはかったのが今回の改正であることは御承知のとおりでありまして、今回の改正によりまして、補償基準はただいまお話しになりましたILO百二十一号勧告の水準まではおおむね引き上げられるものと考えておるのでありますが、ただいまのお話しのように、福祉を中心としていくこれからの施策を総合的に推進していく上におきましては、やはりILOの勧告というようなことをまつまでもなく、先進諸国の補償水準というものを考慮いたしまして、あるいはまたこの改正のもとであります労災、国家公務員災害補償法との均衡をはかりながら、この改善には積極的に検討を進めてまいりたいと思っております。
  49. 小川新一郎

    小川(新)委員 そのお答えで私はおおむね了解したいのでございますけれども、まだまだこまかい点に至っては水準まで達してないものがたくさんあります。一体水準まで達してないものは、いまこういうような関係ではどういうものがあるのですか。
  50. 石井甲二

    ○石井説明員 ILO百二十一号条約との関係をまず申し上げますが、ILO百二十一号条約と今回の改正の水準の問題を比較いたしてみますと、まず休業補償給付につきましては、条約が標準受給者の六〇%でございます。つまり、賃金の六〇%であります。今回の改正は、休業補償給付は六〇%で同水準でございますが、同時に、特別給付金という形で休業八日以上につきまして二〇%上積みをいたしまして八〇%の水準になる見込みでございます。  それから障害補償給付、すなわち完全労働不能、いわゆる三級に相当するわけでございますが、これが条約では六〇%でありますが、今回の改正によりまして六七%に引き上げをいたすことに相なります。  それから遺族につきましては、人数によって違いますが、条約におきましては遺族一二人、すなわち標準の受給者でありますが、これが年間の平均賃金の総額の五〇%でございますが、今回の改正によりまして五六%の水準を確保いたしておる、こういうことであります。
  51. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、ILOの勧告の基準を上回ったもの、まだそこまで達していないものということになりますが、これは平均して、点数にして何点くらいまでいっているのですか。
  52. 石井甲二

    ○石井説明員 ILOの条約につきましていま申し上げたとおりでございまして、今回の国会におきまして百二十一号条約の批准、御承認のための手続をとっております。  それから勧告につきましては、ただいま申し上げましたように、それぞれ勧告の線を全部水準としては達しております。まあ、水準の問題につきましては一〇〇%達しておる、こういうことになります。
  53. 小川新一郎

    小川(新)委員 ILOの勧告の水準では一〇〇%達しておりますが、わが国の特殊事情であるところの物価問題とか、またアメリカの給与水準から比較した国民総生産の問題だとか、いろいろな点を勘案いたしまして、ILOの勧告に一〇〇%達したからこれでいいのだ、だから遺族の人に対してもまた本人に対しても生活の保障がされているという前提ではないのですね。ここのところが、いろいろと数字のトリックや、そういったしゃくし定木的にものをはかったときには事足れりという思想になりますが、私は、わが国の特殊な経済事情なり、そういった国際的地位、指導立場に立った地位の問題等を考えたときには、先ほどから言っておりますように、ILOの勧告に従ってやっていくという姿勢でなくして、もっともっと上回って、この物価狂乱といわれる時代を乗り切るための災害補償制度というものを打ち立てなければならないという考えに立ってお話をしているわけでございますから、その点については満足されたり、満点だなんていう気持ちにはいやしくもなってもらいたくないですね。その点、政務次官、どうでしょうか。
  54. 古屋亨

    古屋政府委員 お話しのように、先進諸国の補償水準というものも考えますし、また日本の特殊事情も考え、そうして一方におきまして労災あるいは国家公務員災害補償との均衡をはかると申しますか、均衡をはかると言うと、そっちが上がらぬとこっちも上がらぬような表現になりますけれども、両方ともレベルを上げるというような意味におきまして、今後も引き続き改善に努力してまいりたいと思っております。
  55. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは、いつもどなたもおっしゃることだと思いますが、人によらず、党によらず、政策、政党のイデオロギーによらず、人間的立場、人道的立場、生命尊厳の立場に立った自由民主党のおおらかな政策の中からも取り入れざるを得ないのじゃないか。それが自由民主党の最もいいところじゃないかと私は思っておりますので、どうか自民党が今後とも発展していくためにも、私はあえてここで、国民のためになってもらいたいことを公明党の立場からお願いいたします。  そこで、平均給与額の算定についてですが、この問題ももう出ておると思いますが、私にもお答えいただきたいのでございます。  期末手当や勤勉手当が含まれておりませんが、これらを加えて計算すべきであると思います。この点についてまずお尋ねするのでございますが、つまり、従来の平均給与額に、期末手当や勤勉手当を一年間にならした金額を上積みすべきではないか。ILO百二十一号条約において、現金給付の額は災害を受けた者の所得の三分の二を下回らない額とされておりますが、ここでいう所得というものは一体何を意味するのかという問題について、私はいまのような問題を要求しているわけでございますが、その辺のところの御答弁をお願いしたいと思います。
  56. 石井甲二

    ○石井説明員 給付の基礎となります金額、すなわち給与の額の算定のしかたでありますが、いま先生指摘のように、現行におきましては労働基準法の平均賃金を基礎にいたしております。すなわち、それは過去三カ月の平均の賃金でありますが、したがいまして、いわゆる六カ月をこえるような普通一般のボーナスあるいは期末手当といったようなものはその中に入らない仕組みになっております。これにつきましては労災保険審議会におきましても長い間問題になっているところでございまして、実は今度の法律改正を審議する中におきましても重要な問題として提起された問題でございます。ただ、何ぶんにも労働基準法の平均賃金とのかかわり合いを持っておるというような問題もございまして、審議会の答申におきましてはどうしても間に合わなかったというのが偽らざる状況でございます。  したがいまして、現在この問題につきましては、ことしの一月から労災保険審議会に基本問題懇談会というものを設置をいたしまして、こればかりじゃございませんけれども、給付基礎日額のあり方について検討をしております。したがいまして、私どもとしましてはこれが検討の結果を待ちまして、措置すべきものは措置いたしたいというふうに考えております。
  57. 小川新一郎

    小川(新)委員 たいへん前向きな御答弁をいただいております。私もありがたく思いますが、なぜこういうことを申し上げるかと申す原因については、もう皆さま方のほうがよく御存じであるし、基本問題懇談会においてもこの問題について、やはりそこに問題点があるからこそそのネックになっている問題について検討されていると思います。遺族補償年金で、遺族が五人以上ある場合、平均給与額の年額の六〇から六七%に引き上げられましたことは、ILOの勧告水準三分の二に到達することは了解いたしますが、その算定の基礎となる平均給与額自体が低く計算されておれば、たとえそれが上がったとしても実質的な支給率は五〇%もしくは以下になるのではないかというところが問題になっているのだろうと思うのです。そこで、いま言ったような期末手当なり、そういった臨時に支給された金額を加えた基礎、それを上のせした比率を加えていくのが当然だと思います。その点、いかがでございましょうか。
  58. 石井甲二

    ○石井説明員 この給付基礎日額、この平均賃金といいますか、基礎となる賃金のあり方については、これは先ほど申し上げましたように相当長い間の議論になっているところでございます。諸外国におけるいわゆる期末手当、ボーナスというものと日本におけるボーナスというものとの性格の違い、これは、たとえばいわゆる生活賃金としての役割りの評価といったようなものもございますし、必ずしも諸外国と同じようなものではないということは大体明らかな事実であります。問題は、先ほど言いましたように、労働基準法の全体の平均賃金の考え方との関連もございまして、なかなか一挙に結論が出ないというのが偽らざるところでございまして、現在議論の最中にございますので、今後ともさらに検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  59. 小川新一郎

    小川(新)委員 長い間の懸案問題を一挙に解決するというところについてはたいへんな御努力が要ると思いますが、長年の懸案が長年の懸案で終わったのでは政治ではありませんし、法律を作成させる側においての私たちも責任を感じますので、どうぞひとつよろしくその点は進めてもらいたいと思います。  そこで二番目の問題といたしまして、この問題ももう長いこと議題になっておるし、またいろいろときのう同僚の皆さんからもお話があったと思いますけれども、スライド制の法文化についてお尋ねしたいのでございますが、地方公務員災害補償法の第五十七条には、「基金の行なう年金たる補償の額については、国民の生活水準、地方公務員の給与、物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案して、すみやかに改定の措置を講ずるものとする。」とあります。今日のような急激な物価の上昇によって、年金額は年々目減りしております。これは貯金も同じでございますが、現行法のもとではスライドはどのように行なわれておりますか。これは本法五十七条、本法第二条第五項に基づいて、施行規則の第三条第四項によって、平均給与額が著しく公正を欠く場合、自治大臣の承認を得て定めるということも存じております。そして、給与改定の切りかえ日の四月一日の前日の平均給与額の一・二倍、すなわち二〇%が、給与改定による平均給与額以下のときは新しい平均給与額にスライドさせるという予算措置が講ぜられておることも存じておりますが、これを新しく法文化するというようなことはお考えにならないかどうか、この点についてお尋ねしたいと思います。これも昨日から問題になっておると思いますけれども、重ねて、くどいようですがお聞きする次第であります。
  60. 植弘親民

    植弘政府委員 実際上スライドを行ないまして平均給与額のアップしている点につきましては、小川先生説明いただいたとおりで、よく御承知であるところであります。このスライド制そのものを明文をもって制度化するかどうかという点でございますが、これは私どもも基本的には制度化すべきものであるという考え方を持っております。現在、これは労働省のほうからお答えするのが適当かと存じますけれども、先ほど来お話の出ております労災保険審議会の基本問題懇談会でもこの件が取り上げられておるようでございますので、そこらの結論を待って、労災なり国公災害と同じような立場制度化を考えさせていただきたい、このように思っております。
  61. 小川新一郎

    小川(新)委員 労働省、あらためて私聞くまでもないのですけれども、ただいま御答弁いただいてよくわかりますが、その見通しなり御決意なりを承っておきたいと思います。
  62. 石井甲二

    ○石井説明員 ただいま自治省からお答えいたしましたように、現在基本問題懇談会におきまして、先ほどの給付基礎日額のあり方の問題とあわせましてスライドのあり方について検討している最中でございます。労災保険法は実は一番最初に賃金スライド、すなわち二〇%の賃金が上昇した場合に改定をするといういわゆる賃金の自動スライド制を採用した最初の法律でございますが、問題になっておりますのはその二〇%が妥当かどうかというところが中心でございます。したがいまして、法律的には賃金の自動スライド制は確立されておるわけでございまして、その程度の問題を現状においてどう評価するか、こういう問題で議論の最中でございます。その問題につきましても、その議論の経過あるいは審議会の結論によりまして対処をいたしていきたいというように考えております。
  63. 小川新一郎

    小川(新)委員 いまお話が出ましたが、二〇%が妥当かどうか、大き過ぎるか少な過ぎるかという問題だと思います。これは私どもは大き過ぎるのではないかということでございます。そうなりますと年金額の改定は、それに達しなければ一年おいて達したときになりますが、二年間固定してしまうというようになりますので、その辺のところの考え方がなったとしても二年の固定、ストップということになりますから、ひとつ十分考えていただきたいのです。これは自治省としてはどうでございましょうか。
  64. 植弘親民

    植弘政府委員 先ほどお答えいたしましたように、いま労働省のほうで審議会を通じまして前向きに検討されておるようでございますので、それらの線に沿って私ども措置させていただきたいと思っております。
  65. 小川新一郎

    小川(新)委員 民間給与と公務員給与の較差是正については、五%の較差が生じたとき人事院の勧告に基づいて是正されることになっておりますね。それは間違いないんでございますね。——そうなりますと、災害補償のスライドについても二〇%にこだわらず、五%とまでいかなくても、一〇%、またはいま言ったような五%として、年金生活者をインフレから守るほうがいいのではないかというふうに考えております。この五%とのかね合いの点でどうでございましょうか、ちょっとお考えを聞きたいのでございます。
  66. 植弘親民

    植弘政府委員 御承知のように、現在の公務員の給与の決定につきましては、人事院が民間の実態調査を行ないまして官民較差を埋めるという現実立場措置されておりますが、その場合にも五%の増減によって所要な勧告をするという規定になっているのは御指摘のとおりであります。そこで一応考えられますことは、同じく公務員のこういった災害補償制度でございますから、スライドをする場合においては、その基礎としては給与を基準にするというのは当然考えられるところであります。そうなりますと、いま国家公務員法できまっておりますような五%というのは一つのめどになろうかと思います。ただ問題は、民間における労災との関係もございますので、そこらのかね合いを審議会でも十分御検討いただくものと思っておりますので、先生のお説はお説として意味のあるものだと考えております。
  67. 小川新一郎

    小川(新)委員 私がいまこうして申し述べておりますのも、異常な物価高、狂乱といわれるような経済変動の中で国民は一様に苦しんでおりますが、インフレというのは御存じのとおりすべてが苦しむのではないのですね。資産のある者や土地を持っている者、それから金のある人、力のある人は、インフレによってさらに自分の資産も恩恵を受けている。ところが年金生活者やこういった障害を受けられた方々、要するに社会の谷間に置かれていらっしゃる方々に対してはインフレというものは非常な大問題としてのしかかっていることは御存じのとおりですから、そこで厚生年金や国民年金の改善が、実施時期を早めることがすでに委員会できまっております。そこで災害補償法による年金生活者についても、この法律の施行日の四十九年十一月一日を待つまでもなく、スライドの実施時期を何カ月分かでもさかのぼって適用するくらいのきめこまかいインフレ対策を検討すべきである。これももうお話が出たと思います。当然出るべき問題でございますが、私としても重ねてお聞きしたいので御答弁をお願いしたいと思います。
  68. 石井甲二

    ○石井説明員 施行日の十一月一日を早めることができないかという御質問だと思いますけれど一も、実はこの問題につきましては、お説のようにできるだけ早く施行するということは立法者としても当然考え立場だと思います。ただ、現在いわゆる給付にかかわる事務につきましては、すべて電子計算機、コンピューターシステムでこれを行なっておりますけれども、現在のところ、今回の改正によりまして電子計算機のプログラム数が約百五十本の改定を必要といたします。これに要する期間は百六十五日間でございますが、そういうことを勘案しながら、かつできるだけこれを早めるという方向でやりますけれども、もう一つは、年金の支払い期日が二月、五月、八月、十一月という区切りで年金を支給いたしておりますので、そういう点を勘案しながら十一月施行ということにしたわけでございまして、できるだけ早くこれを施行するというたてまえの上に立ちまして十一月一日というふうにきめたわけでございます。
  69. 小川新一郎

    小川(新)委員 委員長も御存じのとおり、年金の支払いについては昨日の理事懇談会においても議論が集中したところでございます。そういった事務的な問題、コンピューター計算集中、集約方式、こういう問題を考えたときにはよくわかりますけれども、私が先ほどから述べておりますように、ILOの勧告を待つまでもなく、リーダーシップをとっていかねばならないわが国の社会保障制度全般に言えることであります。この問題については関連が非常に多うございまして、あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たないというような相互関連のことについて、委員会でいろいろと叱責を沿びている皆さん方の立場もわからぬではありませんけれども、そういう点ももう一歩前進した姿勢を示していただきたいと思います。  大臣がおいでになりましたから、このILOの問題、大事な問題でございますのでちょっとお尋ねいたしますが、百二十一号でございましたか、勧告がございました。勧告があってから動くのではなくして、わが国のような高度経済成長国家の、経済のリーダーシップを握っている国家として、金で解決する問題が、なぜこういった問題が国際労働機関からこうして指摘されねばならないのか。また指摘される以前の問題として指摘されている。でありますから、私はこの問題についてはILOの勧告のなる前に、先進工業国家としての経済の力、そういった世界の国々に与える影響というものを考えたときの日本の姿として、上回った姿勢をもう示すべき段階にある。先ほど政務次官にこのお答えをいただいたのでございますが、当該責任を持たれる自治大臣といたしまして、私の考え方に御共鳴をいただけるのかどうか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  70. 町村金五

    ○町村国務大臣 ILOの勧告があったことは私どもも重々承知をいたしておるわけでございますが、いま小川委員によれば、そういった勧告などを待つまでもなく、日本はすでに先進工業国の域に達したのであるから、そういった勧告を上回るような措置を講ずべきではないか。確かに私ども、最近におきまする日本の経済力というものがこれだけ高まってまいり、先進工業国の中に仲間入りをいたしたわけでございますけれども、御承知のように、こういった制度というものも今日までの経緯というものがございまして、年とともに改善が加えられて今日に至っておる。御質疑の間にいろいろお話し合いがあったこととは思いますけれども、御承知のように、このたびのこの改正によりましてILOの勧告の水準をやや上回るというところまでまいったということは非常な前進である、かように考えておるのでございます。しかしなおこれをもって十分かどうかということになりますれば、これはまたおのずからなお将来に改善を要するものがあるということについては、私どももさように考えておるところでございます。今日改正を御提案申し上げて御審議を願うということによって、とにかくILOの勧告の水準を多少なりとも上回るというところにまいりましたことは、私は非常な前進であると思いますが、今後この問題につきましては関係省におきましてなおさらに前進、改善方について努力をするもの、かように存じておるところでございます。
  71. 小川新一郎

    小川(新)委員 では次に前払い一時金制度の延長についてお尋ねいたします。  現在、前払い一時金制度として平均給与額の四百日分の額を支給することになっておりますが、これを平均給与額の一千日分をこえない範囲内で二百日分、四百日分、六百日分、八百日分、千日分の五段階に分けて給付することとし、昭和五十二年十一月三十日までの暫定措置とされていたものをさらに十年間延長するという改正案になっておりますが、前々回は五年延長し、前回も五年延長し、今回はさらに十年間延長することになっております。これは前払い一時金制度を固定化するということなんですか。これを十年間延長する理由は一体何なのでございましょうか。
  72. 石井甲二

    ○石井説明員 前払い一時金制度につきましては、先生指摘のような経過をたどっておるわけでございます。ただ、前払い一時金をなぜ労災法の中に制度化したかという理由につきましては、そもそもが労働基準法の一時金システムを最初採用いたしまして、これが年金システムに変化をしたわけでございますけれども、その場合に、日本の生活の態様といいますかあるいは慣習といますか、そういうことから、どうしても死亡したりあるいは障害にかかった場合の家庭的な変動がございまして、その中で一時金を前払いをするということが妥当であろう、しかしその基本には、あくまでも年金の体系というものを定着させる暫定的な措置であるというふうに考えたのがそもそもの最初でございます。  ただ、現在の前払い一時金の制度の利用状況を見ますと、現状におきましても約二六%をこえるような前払い一時金の利用者がございます。しかも、調査によりますと、前払い一時金を利用いたしたいという方々の中にも、非常に家庭的な変動が激しい場合には四百日分では非常に足りないという方々もおります。それから四百日分という固定的なものであっては実際のニードに応じた前払い一時金の活用ができないという声もございます。したがいまして、この前払い一時金はあくまでも選択制の問題でございまして、いま先生指摘のように二百日から千日までのバラエティーを持たせました。言ってみれば、需要の状況に応じた選択が可能なような状態をつくり上げることが現状においてはしばらくの間必要であろう、こういうことから、この考え方を現状に即したものであるというふうに考えて提案をした次第でございます。
  73. 植弘親民

    植弘政府委員 ちょっと補足いたします。  考え方なり趣旨は労災と同じでございますが、地方公務員の場合、四十二年に発足いたしまして四十三年で四八%も利用されておりますが、その後大体四〇%前後でいきまして、四十八年度見込みでも三六%ぐらいということで、利用率は非常に高うございますので、実態に応じたというふうに考えております。
  74. 小川新一郎

    小川(新)委員 私はいまのお答えでもわかります。わかりますが、ぼくはちょっと考えがひねくれているのかどうか、ちょっと違うのでございます。  改正にあたって姿勢の問題になると思うのですが、五十二年十一月三十日までにまだ期限がある。にもかかわらず十年間も延長する。これは固定化をしたい前提であるということなんでございましょうけれども、今日、国民皆年金とまでいわれ、年金制度が定着しているときに、安易に前払い一時金制度を固定化することは、考え方として、これは私の考えでございますからあれですが、年金制度に逆行するものであるというものなんですね。その一時金の希望者が多いということは、現行の前払い一時金の支給を望んでいるというよりも、年金の支給を受けると同時に、災害直後に一時金がほしいということだと思うのです。でありますから、当然その辺のところを加味されて、一時金にかわるものとして検討することになっておりました年金担保融資制度について、この暫定期間の五年間に、昭和五十二年の十一月三十日まである間に、いま言った年金担保融資制度などという、そのものは一体どうなったのか。こういうものをそのままにしておいて長期固定化、それこそ安保条約ではないが、長期固定化路線のようになってしまうことはいかがなものであろうか。考え方として、前払い一時金制度に重点を置く改正ではなくして、年金を支給すると同時に、特別支給金制度を創設して災害直後の生活費に充てる、こういう考え方を並用してはどうか。一ぺんにもらって、お金がなくなっちゃって、あとでもう分解してもらえないというよりもいいのではないか。そんなことはないと思いますが、中にはやけになってギャンブルに使って逆に家庭を破壊したという例も聞いておりますので、そういう点を考えたときに、私はそういう考えは逆行するのではないかというひねくれた考え方を持っておる一人なんでございますので、どうか説得するお答えをひとついただきたいと思います。
  75. 石井甲二

    ○石井説明員 御指摘がありましたような年金担保の考え方というのも、実は私ども検討いたしたわけでございますが、担保の融資制度ということになりますと、結局はまた返済しなければならないという問題があります。  そこで私どもは二つの問題を考えまして、一つは特別支給金という形で、新しく年金と一時金を併給する考え方を一つとったわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、どうしてもやはり日本の現状におきましてはいろいろな災害のあった場合に非常に現金を必要とする場合がございます。しかもそれが非常に要請されておる現実がございます。そういうことから前払い一時金は存続するけれども、単に四百日分という固定的なものじゃなくて、二百日分から千日分まで、非常にバラエティーを持った、しかも要請に応じた体制をとるということがより現実に合うんじゃないかという考え方に立ったわけでありまして、いま御指摘のような、一時金をもらってそれを浪費するということのないように行政指導をしながら、これを運用してまいりたいというように考えております。
  76. 小川新一郎

    小川(新)委員 最後に、公務災害の認定についてちょっとお尋ねしておきたいと思います。  一般に業務災害であると立証できない限り認定されませんが、業務災害であるのか私傷病であるか、中間的なものはほとんど認定されてないわけです。オール・オア・ナッシングです。ゼロか百かです。そういうことで、この因果関係の認定基準が非常にきびし過ぎるために認定されないことが非常に多いと思います。一つの例として、こういう問題で不服審査請求が出されております例はどの程度あるのですか。
  77. 山田守一

    ○山田説明員 審査会における最終再審査請求事案の処理状況でございますけれども、四十九年三月三十一日現在で大体八六・二%程度解決されております。
  78. 小川新一郎

    小川(新)委員 八六・二%というのは、不服審査に出された数の八六・二%が解決されたという意味なんですか。
  79. 山田守一

    ○山田説明員 まず不服審査会における審査請求を申し上げますと、六六・一%が処理されております。それに対して再審査請求にさらに出されたのが四四・九%になります。
  80. 小川新一郎

    小川(新)委員 それで、その不服審査に不満を生じて裁判に持ち込んだ例は幾つあるか。そしてその裁判の結果はどうなったのですか。
  81. 山田守一

    ○山田説明員 手元の資料では確認できませんけれども、裁判に至っている件数はきわめて少ないと承知しております。
  82. 小川新一郎

    小川(新)委員 きわめて少ないことはけっこうですけれども、結局、不服審査で、さらに裁判に持ち込んだ結果、公傷なのか私傷病なのかわからない。またその結果、争っても無意味なのか。あくまでもそれが厳格過ぎて、公平な司法の手にゆだねてもなおかつとれなかったのかどうか。ここのところが大事なんですよ。その問題がはっきりしませんと、これはあとあといろいろな問題が出てきたときに、裁判で争っても何にもならないじゃないかということになって、不服審査の段階で処理されてくる、泣き寝入りしてしまうということなんです。その例を知りたい。
  83. 山田守一

    ○山田説明員 ただいまの件につきましては、支部における審査状況、それからそれに対する再審査状況、またその再審査請求の決定を承知しないままに裁判に持ち込まれた状況につきましては、直ちに調査いたしましてお届けいたしたいと思います。
  84. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは大事な問題だと思いますので、先ほど私からお願いいたしました等級別の実態調査とあわせてお願いしたいと思います。それと、不服審査中解決した、解決しないというパーセントは出ましたが、その解決したほうは何なのか、しないほうは何なのか。その認定されないわけはどうなのか。これもいまおわかりにならなければあとでけっこうでございます、資料をひとつお願いしたいと思います。  次のお尋ねでございますが、たとえば東京都の石神井南中学校の先生が、授業中に光化学スモッグで倒れました、こういう事実がありますが、これは公務災害になるのですか。
  85. 山田守一

    ○山田説明員 東京都において光化学スモッグによる事案が発生しておりますけれども、この事案につきましては、現在東京都の支部審査会で準司法手続によりまして審査中でございますので、その結果を待ちたいと思いますけれども、そのところで問題になっておりますのは、光化学スモッグによる災害の発生が地域的にかなり広範囲にわたっておるということ、その発生の経過が必ずしも明らかでない、あるいは偶発的な災害であるというような見解も示されております。かつ、当該職員のみならず、付近の一般住民も被害をこうむっているというようなことから、公務起因性がないという判断が出された結果の審査である、そういうことに聞いておりますので、こうした事案につきましては、なお専門家等の意見等を十分聞き、また関係の省庁とも相談いたしまして、適切なる処理をするよう助言等を行なっていきたいと存じます。
  86. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは新しい事例として、光化学スモッグなどというものは最近二、三年の間に起きてきた問題ですね。しかも、先生は確かに授業中、公務をやっているときです。そして光化学スモッグによって倒れた。これが公傷としてこの対象にならないなんということであったら、東京ではおちおち授業もできませんね。因果関係ははっきりしているわけでありまして、何もその先生の健康状態が悪いから私傷病で出たわけじゃない。特殊的な地域に光化学スモッグが発生した。これは確かに非常に大きな問題になると思うのですが、この問題の認定というのがはっきりしないのではちょっと不安ですな。こういう点はどうなんですか。
  87. 植弘親民

    植弘政府委員 一般的にいわゆる公害病というものになるのかどうか。公害病になりますと、昨日も御説明がございましたように、公害病の補償の問題がございますが、いまの事案は、先ほど給与課長からもお答えいたしましたように、直接的な公務起因性というものを認めるには非常に薄いということで、東京都支部ではこれを認定しなかったわけであります。しかし、従来にないような非常に特異な事例といたしまして現在審査会で検討中でございますので、その審査会の結論を待ちたいと思いますが、そういった、ほかにもございますが、公務災害の場合には、そういったケース・バイ・ケースの判定といいますか、積み重ねによっておおむね公務起因性というものが確定されてきた経緯もございます。したがって、今後こういった公害病的なものが公務との関係においてどうなっていくかというのは、非常に新しい考え方が示されるものと思います。そういうのを待って、逐次そういったものを実例か判例を積み上げた上で対処していきたいと思います。
  88. 小川新一郎

    小川(新)委員 その問題を解決する前に、もっとおかしな問題が出てきている。だからその問題を解決するのはもっと困難だと思います。ここに二つの例があります。  脳溢血の場合ですね。ある会社の従業員Aさんが集金業務のために外出中、路上で脳溢血のため死亡しました。Aさんは老齢で、通常からやや高血圧ぎみであったが、最近集金業務が滞りがちなので、当日は蒸し暑い日であったが集金業務に出た。このAさんの死亡は業務上といえるかどうか。これは聞いただけでは詳しいことはわからないでしょうが、いま私が言った範囲ではどうですか、これは業務上といえますか。
  89. 植弘親民

    植弘政府委員 昨日も同じような問題があったわけでありますが、労災に対しましても公務災害に対しましても、認定いたします場合に一番問題になりますのは、心臓だとか、そういった循環器系といいますか、そういったものがほんとうに公務と直接因果関係を持っているのかどうか、非常に認定がむずかしいようでございます。したがって、いまの場合ですと、その倒れたことが集金に出かけたことに直接起因するかどうかという判定がむずかしい問題でございますので、私、いまお伺いした範囲では、業務上という判断もあり得るだろうし、一般的には心臓病は非常に判断がむずかしゅうございまして、起因性がないというのがいままでだいぶ多うございますから、そのような経験から言うと業務外になる懸念のほうが多いのではないかと思いますが、これは非常にむずかしい問題でございますので、私もちょっといいかげんな答弁はできないと思います。
  90. 小川新一郎

    小川(新)委員 これで終わりますけれども、この脳溢血の場合、参考のためもう一つ聞いておいてもらいたい。  これも、ある会社の経理課長さんが、会社の法人税の確定申告に対する税務署員の調査に立ち会ったところ、税務署員からあなたの責任であると言われて、精神的ショックで脳溢血でひっくり返って死んだ。これは現行法では認定されました。先ほどの集金人の方は認定されないのですよ。だからおかしいからこうやって例を引いているのです。あなたが聞いていてもおかしいと思うのだから、私はもっとおかしいと感じているのです。  こういう状態で、オール・オア・ナッシングのいまの制度というものはおかしいということで、おかしいというよりもたいへんなんですね、現実になくなられちゃったのですから。そこで不服審査に出したり裁判になったりしても、その結果はいまだにわからないということじゃ困るのです。そういう問題で、この制度に対して段階的に、半分疑わしいけれども、半分は、あなたがいまおっしゃったように、なるかもしれないというような問題について、ゼロか一〇〇%出すかということではなくて、そこにもう一つランクを設けて支給ができるようにしてあげたらいかがだろうか。このお答えをいただいて、不満足ですけれども、時間がなくなったようでございますので終わらしていただきますが、どうかひとつ十分な御配慮をいただきたいと思います。お答えをいただきたいと思います。
  91. 植弘親民

    植弘政府委員 気持ちといたしましては、公務起因という相当性が認められる場合には前向きに対処すべきものと思います。しかしながら、災害補償というものが公金をもって補償しておる限りにおきましては、そういうボーダーラインをすべてするということになりますと逆に不均衡という問題も発生するかもしれないと思います。したがってその意味では、いわゆる役所流儀ということで若干かたく考える向きがあるかもしれませんが、運用にあたってはできるだけそういったかたくなという弊をなくして、弾力的に運用する立場考えるべきものだろう、このように思っております。
  92. 小川新一郎

    小川(新)委員 たいへんありがたい御答弁でございますので、ひとつその法の精神を生かし、弾力的に運用されることを望んで終わらしていただきます。ありがとうございました。
  93. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 折小野良一君。
  94. 折小野良一

    ○折小野委員 あとの時間の関係もございますようで、簡単に二、三の御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、先ほどの小川委員の御質問にちょっと関連をしてでございますが、平均給与額の算定にあたりまして、期末手当、勤勉手当がその算定の基礎の中に含まれていないということでございますし、これにつきましては小川委員からの発言のように、私どももやはり、これも現実のわが国の給与制度のもとにおいてはいわゆる生活費である、こういうふうに判断をいたします。そういう立場から今後十分御検討を願いたいと思うのでございます。その反面に、この法律の四十九条ですか、「費用の負担」というのがございます。この費用の負担の面におきましては、「給料、報酬、賃金、手当その他名称のいかんを問わず、」もちろんこれはカッコ書きで「(退職手当を除く。)」ということでございますが、すべての支払われる給与を基礎として費用は負担をされるということになっております。もちろんこれは同じ人が普通の保険のように掛け金を払って、そうしてまた反面給付をもらうということではございませんので直接の関連はございませんが、しかしその場合には期末手当、勤勉手当、これはもう当然含むわけでございますね。といたしますと、法的に少し組み立て方の上からいって斉合性が欠けておるのじゃなかろうか、こういうような気がいたすのですが、いかがでございますか。
  95. 植弘親民

    植弘政府委員 平均給与の算定につきまして、期末、勤勉手当を入れるべきではないかという議論につきましては、先ほど来労災基本問題懇談会のほうで積極的に御検討ということを聞いておりますので、その線を待って措置したいと思いますが、四十九条との関係は、考えてみまするに、いま折小野先生も御理解の上で御質問いただいたというように理解いたしましたが、各地方団体から基金に対して負担金をどう払い込むかという場合には、退職手当といった、いわばほんとうの一時金でございますとこれは個人個人違いますから、めんどうくさいといいますか、計算はむずかしゅうございますけれども、給与総額になりますともうすでに、かりにコンピューターできまっておりますから、そういうところで基礎にしたという便宜論があるのじゃないだろうかと思います。その意味で、給付を受けるべき人と負担をする者とは基本的に違っておりますから、いわば掛け金徴収の便宜といいますか一もちろん突き詰めてまいりますとおっしゃったように斉合性の問題はどうかということになりますが、そこまでは強く斉合性を考えたものじゃないだろうというふうに理解いたしております。もちろん、これがあるからそれでは当然に期末、勤勉手当を入れなければならないかという議論とまた違うのじゃないだろうかという感じもするものでございます。
  96. 折小野良一

    ○折小野委員 まあ、解釈はいろいろ成り立つだろうと思います。しかし、制度をできるだけ斉合性のあるものにしていくという面からいたしますならば、やはり、いまおっしゃったような事情の中にあることはわかるわけでございますが、これも斉合性を保って制度化するということのほうがよりいいように考えられるわけでございます。そういう点からいたしましても、私の申し上げたいことは、やはり平均給与の中に現実においては生活費である期末、勤勉手当も含めるべきである、またそういう方向への御検討がなされておるようでございますが、そういう面をできるだけ促進をしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  ところで、四十七年度の災害補償の実績でございますが、この資料を拝見いたしますと、都道府県、市、町村、一部事務組合、この四つの団体に区分をいたしまして、件数、割合、金額、こういうものが出ておるわけでございますが、この数字をぱっと見ただけ、それからいたしますと、はたしてこれでうまく均衡がとれておるのだろうか。均衡といってもちょっとおかしいかと思いますが、この数字等からいたしますと、都道府県に非常に片寄っておるのじゃなかろうか。ということは、あるいはそれぞれの職務の性質、そういうような面からいたしまして、都道府県にその対象者が当然多くなるようなそういう職務が非常に多.い、こういうことにもなろうかと思いますが、いずれにいたしましても、こういうふうな数字が出てきておるその基礎と申しますか、そこにはどういうような事情があるのか、わかっておりましたらひとつお知らせをいただきたいと思います。
  97. 山田守一

    ○山田説明員 ただいまの点でございますけれども、御指摘のように、たとえば四十七年度の場合を見ましても、災害認定の件数におきまして都道府県が一万七千四百七十五、市町村が一万六千八百二十、さらに過去の計数を見ましてもほぼ同様の傾向をたどっております。またお話にもありましたように、その中身につきましては職種別にかなりの差がございまして、たとえば都道府県の場合でございますとほぼ六割相当が警察で占めております。次に東京都の清掃関係。一方、市町村におきましても最高は清掃関係でございます。そのほか消防、電気、ガス、水道部門と続いておりますので、そうした職種別の差にもよるものと思いますけれども、全体として見た場合におきましては、大体職員数との比率をとりますとほぼバランスがとれておる、そういう経過になっております。
  98. 折小野良一

    ○折小野委員 この法律の施行に関連をいたしまして、これは先ほど申し上げました負担金の関係でございますが、職員の区分に応じまして給与の総額に乗ずる割合というものが政令できめられております。これはもちろん負担するほうと給付を受けるほうとは別だという先ほどの話と多少の関連があるわけでございますが、しかしこの面からいたしますと、やはり負担をするのは、その職種の実態等から考えまして、やはりそれとの関連というものを全然無視するということはできないわけのものだというふうに考えます。先ほどは都道府県あるいは市、町村、一部事務組合、この区分で私が感じたことでございますが、この職員の区分という面から考えますと、大体この割合の比率と申しますか、実績は大体これと符合しておるということでしょうか。あるいはその辺に多少アンバランスな面が最近出てきておりますでしょうか、いかがでありますか。
  99. 山田守一

    ○山田説明員 ただいま御指摘ありましたように、職員の職種別によりまして災害の発生率も異なるということを考慮いたしまして、負担金につきましても職種別にその給与等に対する率を変えておるわけでございますけれども、その負担金の収入に対しまして実際行なわれている補償についてどのようになっているかということでございますが、職種全体を合計いたしました場合、昨日も問題がありましたように、一部支払い備金として後年度に繰り越されている関係もございまして、補償費は負担金収入の大体六割程度となっております。たとえば負担金の率の一番高いもの等についてみましても、たとえば警察でも負担金収入に対する補償費の割合が六一・八、それから一般職員の場合につきましては五六・九、若干の差はありますけれども、全体としてみますとほぼ均衡がとれております。ただ一部消防等につきましてはその割合が四〇%、清掃につきましてはほぼ六五%と若干の差がございますが、これは五年ごとに実績を見まして負担金率等につきまして見直しをする、そういう機会に是正をしていって、長期的にはその均衡をはかる、そういう制度になっております。
  100. 折小野良一

    ○折小野委員 いろいろ実情がございますので、その変化に応じていろいろと再検討する、あるいは見直しをするということは必要かと思いますが、次の見直しの時期がいつなのか。そして最近の実情の変化等から、どういう部分について見直しの必要があるというふうに現在の時点においてお考えになっておるのか。もう一つ、最近事務の内容が非常に複雑化してきておる、あるいは専門化してきておる、そういうような実態からいたしまして、新しく現在の区分以外に区分を設ける必要があるのじゃないか、こういうふうにお考えの面がありましたらその点。以上三つについてひとつ御答弁をお願いいたしたいと思います。
  101. 山田守一

    ○山田説明員 ただいま御指摘のありました負担金の再計算等につきましては、一応昭和五十年度を予定しておりまして、そこで出てきた結果によりまして五十一年から新たな負担金を定める、適用していく、そういうことになっております。  なお職種等につきましては、その職種に含まれている職員の勤務の実態等によりまして、その範囲等について一部議論もあるようでございます。それから労災におけるようにメリット制、すなわち実績によって団体ごとの率を変えたらどうかというような意見も一方にはございますけれども、一方においては、地方公共団体の勤務条件というものは画一的である、あるいは保険制度の趣旨からいえば必ずしもそういう必要もないのではないかというような各般の議論がございますので、それらにつきましてもあわせて検討いたしまして、適正な負担率を定めていく、そういうように指導してまいりたいと考えております。
  102. 折小野良一

    ○折小野委員 最近の地方公務員の業態あるいは勤務の実態、こういうような面から見まして、いわゆる職業病こういうふうに考えられるような事例は出てまいっておりませんか。一般民間におきましては、それぞれの職業によりまして、特殊な薬品を使うとかあるいは特殊な作業態様とか、こういう面からいたしましていわゆる職業病といわれるものがございますし、さらに最近は電子計算機を使うというようなことから、いわゆるキーパンチャーあたりの特殊な勤務によります職業病といわれるようなものがいろいろ出てきておるようにいわれておりますし、検討もされつつあるようでありますが、地方公務員の実態からいたしますと、そういう特殊なものは出てまいっておりませんかどうか、お伺いいたします。
  103. 植弘親民

    植弘政府委員 たとえば社会福祉施設といいますか、乳幼児と身障者を扱うところにおける腰痛の問題だとか、清掃職員の腰痛とか、そういったような問題がいろいろと出ているようには承っておりますが、まことに申しわけありませんが、昨日も申しあげましたように、各地方団体についての具体状況調査の実態をまだ把握しておりませんので、これは基金とも相談いたしまして、早急にそういったものの実態もきわめてみたい、このように思います。  ただ問題は、そういった反面、健康管理といった形からする従来の配慮において欠くるところがあったのではないだろうか。この点は、昨年労働安全衛生法が特に基準法から独立してできたような経緯もございまして、あれを機会に、私どもといたしましても地方団体にその趣旨を徹底するというような指導をいまいたしておりますので、そういう面とあわせて今後十分実態を把握いたしたい、このように考えております。
  104. 折小野良一

    ○折小野委員 そういう面につきましては、いろいろと職務の実態もございますので、十分実態を把握して御配慮願いたいと思いますが、特に、いまお触れになった問題と関連をいたしまして、肢体不自由児を扱う職員、これは非常にそういうようなおそれが多いわけなんです。普通の子供を抱くとかささえるとかいう場合には、からだは動かなくとも、その子供自体がある程度のそういう動作に対するからだの反応を示すわけです。ところが肢体不自由児の場合はそれができません。そういうような関係で思わない危害あるいは思わない疾病といいますか、それの原因をつくる、こういうようなことがよくございます。したがいまして、そういうような面につきましてはひとつ十分な実態把握の上に、その関係の人たちは場合によって数は少なくとも、そういうものに対する適切な、しかも妥当な配慮というものをぜひひとつやっておいていただくようにお願いをいたしたいと考えております。  それから、一般的な問題でございますが、現在一般労働災害補償法、それから国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法とあるわけでございますが、それぞれ業務の実態がいろいろ異なるというようなこと等もございましてそれぞれの災害補償制度が出てきておる。しかしその間にはいろいろと均衡をとりながらやっていこうというのが現在のあり方だと思います。  そういう点においては、基本的には共済年金あたりの場合ともほとんど同じであろうかと思いますが、しかし、共済年金とこの災害補償とを比べますと、災害補償関係におきましてはそのような特殊性というのは共済年金ほどないんじゃなかろうか。それは経過的なものもそれほどございませんし、また基本になる給与関係の特殊性というものもそれほど大きく影響をしないんじゃないか。こういう点からいきますと、やはりこういうような制度はできるだけ早い機会に一本化して、より充実したものにしていくことが必要なんじゃなかろうかというふうに考えます。  こういう点につきまして、これは自治省だけの問題じゃもちろんないかと思いますが、将来の問題としてそういう方向で検討される御意思はあるのかどうか。あるいは現在予想される将来の方向といたしましてそういう面が考えられるかどうか、担当の責任者としてひとつ御所見をお伺いいたしたいと思います。
  105. 植弘親民

    植弘政府委員 地方公務員災害補償制度を経過的に振り返ってみますと、四十二年に本法を制定さしていただきますまでは、本来ならば労働基準法の体系のもとにおいて労災の対象となるべきものでございましたが、地方公共団体自体が基本的には税金をもって担保するという形でございますので、そういう公務災害に準ずるような事態が発生した場合にはみずから措置するということで制度があったわけでありまして、国家公務員の場合に労災補償法に準じた国家公務員災害補償法をつくっておりましたので、地方公務員につきましてもそういった制度を採用させていただいたわけであります。そこらのところを考えてまいりますとやはり、民間企業においては使用者負担というものとの関係で労災補償制度がございますが、公務員の場合には発生について直接国なり地方団体が補償するというたてまえをとっておりましたので、若干そこに制度の食い違いがあるように思われます。  しかしながら、その措置すべき内容については、これはそこに不均衡があってはならないものということで、今回も労災なり国家公務員災害に準じて同じような改正をさせていただいておるわけでありますが、将来の方向としては、この災害補償自体が社会保障なのかどうかという点で非常に議論があるところのようであります。最も広い意味において社会保障的なものだという考え方が通るならば、やはり折小野先生指摘のように、一つの制度のもとにおいて措置されるということもあるべき方向かとは存じます。しかしながら、現実にも相当制度的な差もございますために、直ちにこれを一本化するというのはなかなか容易ではないと思いますが、方向としてはそういう方向で今後検討すべきものではなかろうか、このように考えております。
  106. 折小野良一

    ○折小野委員 この災害補償法に関しましてのいろいろと今日まで質疑応答がありまして、それを私聞いておりまして感じますことは、この制度のあり方あるいは運用につきまして、政府側の御答弁といたしましては、ILOの百二十一号条約にのっとって、あるいは外国の例あるいは国際水準を基礎として、あるいはまた民間あるいは国家公務員との均衡を考慮してとか、常にそういうふうな御答弁があっておるわけでございます。もちろんそういう中におきましても、将来については何とか積極的な姿勢でということもおっしゃっておりますが、現在のところは、少なくともそういう外的なもののワク内において何とか地方公務員災害補償制度を充実していこう、こういうようなお気持ちのように私は聞いてまいりました。もちろん、わが国の災害補償制度というものは非常におくれておる、そういうような立場からいたしますと、上に目標を置いて、そうしてそれに追っつこうということでそれぞれ努力をしていく、これもまた一つの考え方あるいは一つの方法であろうというふうに考えます。  しかし、基本的には、やはりわが国の労働者、わが国の公務員、わが国の地方公務員の実態に即した最も正しい、また当然あるべき災害補償制度というものを確立するということが一番基本的な立場ではなかろうか、こういうふうに私ども考えます。もちろん、おくれておるわが国の現状におきまして、外部的な目標を設定して努力する、そのことの中におきましてわが国の災害補償制度を逐次確立をしていくという姿勢は、これはもちろん大切なことではあろうかと思いますが、基本的にはやはりわが国独自のものを自主的に考えていくということ、これが一番必要だろうと私どもは考えます。  それに関連をいたしましては、前の共済年金との関連もございまして、特に対象者というような方々が社会的に非常にお気の毒な状態にある人である、しかも今日インフレの中におきまして最もその影響を受ける立場にある人たちである。こういう点からいたしますと、やはり改善の方向も実態に即した考え方というものが一番基本になければいけないのじゃなかろうか、そういうことを痛感をいたすわけでございます。もちろん、制度運営の衝に当たられる政府といたしましてはなかなかそこまで踏み切るということはむずかしいことかもしれませんが、しかしそういうような基本的な考え方がなければ、制度を改善していくのも、あるいは制度の運営にあたりましても、なかなかその実態に沿うようなものになっていかない、あるいはそういう十分な効果をおさめ得ない、こういうことになってまいるのじゃなかろうかと思っております。  そういう点から、今後の運営も含め、また将来の制度の改善も含めまして、ひとつ自治大臣のこういう面に対する基本的な御所信をお伺いをいたしまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  107. 町村金五

    ○町村国務大臣 今日の地方公務員災害補償制度というものが、その成立の過程におきましては、一般の労務災害補償制度あるいは国家公務員災害補償制度というものを十分念頭に置きながら、しかもやはりそれとの均衡をはかるということでこの制度が今日に至っておるということはまさに御指摘のとおりであろうと考えます。  しかし、折小野議員によりますれば、わが国のこの制度自体がもっとわが国独自のものでなければならないはずである。またさらに、地方公務員には地方公務員として、一般民間労働者あるいは国家公務員ともかなり違うような一面もあるわけである。したがって、そういった独自の制度があってしかるべきだ、こういう御指摘、御意見、私まことにごもっともなことであると考えるのでございます。しかしまた一面、それでは国家公務員と地方公務員がどういう点において違うのかということになってまいりますれば、共通しておる面が非常に多いということもこれは疑いをいれないところでございますが、しかし、地方公務員の中には確かに国家公務員とは勤務の態様等、かなり違うものもあるということもこれまた事実でございます。そういった点から、はたしてきめこまかく現在の制度ができ上がっておるかどうかということになりますれば、これは確かに御意見のような一面が存在をしておるのではないかと私思います。  したがって、先ほど来お話がだんだん出ておりましたが、一応この制度というものは、国際的に見ましても大体先進国のそれと肩を並べる程度にまで今日整備が進んでまいった。これから先は、この制度について、いま折小野議員が御指摘になりましたようなことがさらに検討されてしかるべきものであろうということは、私どもも全く同様に考えておるところでございまして、今後さらにその内容を整備いたし、真にわが国の地方公務員災害に対しまする補償制度として、より進んだと申しましょうか、整ったものに仕上げていくということに今後政府としても真剣に取り組んでまいらなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  108. 折小野良一

    ○折小野委員 終わります。ありがとうございました。
  109. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  110. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もございません。  これより採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  111. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  112. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 ただいま議決いたしました法律案に対して、村田敬次郎君、山本弥之助君、青柳盛雄君、小濱新次君及び折小野良一君から、五派共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、本動議の提出者から趣旨の説明を求めます。村田敬次郎君。
  113. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は、この際、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五派を代表いたしまして、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付したいと思います。  案文の朗読により、趣旨説明にかえさせていただきます。    地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、現下の社会経済情勢にかんがみ、地方公務員災害補償制度について、今後とも引きつづき鋭意検討し、その改善に努めるとともに、特に左の諸点について善処すべきである。  一、地方公務員災害補償基金審査会等における審査にあたっては、公務が複雑化し、かつ専門化している現状を十分に認識し、これに適応した裁定を行いうるよう努めること。  二、障害補償年金および障害補償一時金等の額の基礎となる平均給与額の算定にあたっては、期末・勤勉手当をふくめるよう検討すること。  三、年金受給者の生活の安定をはかるため、社会経済情勢の変化に即応し、年金額の改定がすみやかに行いうるよう措置すること。  四、民間企業における業務上の災害等に対する法定外給付の実施状況に対応し、その均衡を考慮して適切な改善措置を講ずること。  五、平均給与額の最低保障額を引き上げるとともに、特殊公務災害範囲の拡大について検討すること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ、皆さま方の御賛同をお願いいたしますす。(拍手)
  114. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  115. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 起立総員。よって、村田敬次郎君外四名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際、自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。町村自治大臣。
  116. 町村金五

    ○町村国務大臣 ただいまいただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重し、その実現に努力いたしたいと存じます。     —————————————
  117. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に対する委員報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  119. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、来たる十四日火曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十八分散会