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1974-05-09 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君    理事 中山 利生君 理事 村田敬次郎君    理事 佐藤 敬治君 理事 山本弥之助君       愛野興一郎君    大野 市郎君       島田 安夫君    武藤 嘉文君       保岡 興治君    渡辺 紘三君       小川 省吾君    細谷 治嘉君       山田 芳治君    多田 光雄君       林  百郎君    小川新一郎君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     町村 金五君  出席政府委員         自治政務次官  古屋  亨君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君  委員外出席者         人事院事務総局         職員局審議官  飯野 達郎君         人事院事務総局         職員局補償課長 岡田  仁君         科学技術庁長官         官房科学調査官 吉澤 奎介君         労働省労働基準         局労災管理課長 石井 甲二君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         自治省行政局公         務員部給与課長 山田 守一君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   林  百郎君     田代 文久君 同日  辞任         補欠選任   田代 文久君     林  百郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七六号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、これを許します。愛野興一郎君。
  3. 愛野興一郎

    愛野委員 地方公務員災害補償法の一部改正案について質問をいたすわけでありますが、本案はもうすでに参議院十分審議を尽くされておるところでありますし、同時にまた、社会労働委員会に提出されております労災補償法の一部改正、また内閣委員会に提出されております国家公務員災害補償法の一部改正等々と均衡を保つための地方公務員災害補償法改正案でありますから、私はもうごくポイント的に、ごく大筋だけを若干質問いたしたいと思います。  そこで、まず政務次官にお伺いいたしますが、今回のこの地方公務員災害補償法改正案の、いわゆる大きな中心的趣旨というものはどういうものであるか、お伺いをいたしたいと思います。
  4. 古屋亨

    古屋政府委員 最近におきます社会経済情勢の推移にかんがみまして、公務上の災害あるいは通勤による災害を受けました職員、その遺族に対する保護の充実をはかりますために、ただいま御指摘ございましたように国家公務員災害補償法におきまして、労働者災害補償保険法改正に対応いたしまして国家公務員障害補償年金及び障害補償一時金並びに遺族補償年金の額の引き上げ等が行なわれたことに伴いまして、地方公務員災害補償法におきましても、これらの措置均衡をはかるために同様の改善措置を講じようとするものでございます。
  5. 愛野興一郎

    愛野委員 そこで、改正趣旨から申しまして、今回のこの改正によりまして、大体大まかにいって、先進諸国比較をした場合に、ほぼ均衡を保つようなものになるのかどうか、あるいはまたILO百二十一号条約水準に達したものになるのかどうか。そして、もし先進諸国に達していないとすれば、大体どの先進諸国、西ドイツかフランスか知りませんが、に達していないのかどうか。その辺、参考までにお聞きしたいと思います。
  6. 植弘親民

    植弘政府委員 いま愛野委員の御指摘のように、今回の改正は、労働者一般的な災害でございますと労災補償、これの改正に合わせたものでございますが、労災におきましては、ILO百二十一号条約というのがございまして、これはわが国も今度今国会批准させていただくことになっております。この条約のこういった障害年金等性格に応じて措置されているわけであります。したがいまして、条約上の精神からいいまして、規定からいいますと、今回の改正はこの条約最低基準を若干上回るぐらいまでの措置になっていると思います。  ただ問題は、先進諸国との比較ということになってまいりますと、それぞれの国におきましては給与水準のきめ方という問題がありますから、そこらのところでは若干単純な比較はできませんけれども条約規定等からいきますと、おおむね先進諸国に類似するところまでいっているのじゃないかというふうに考えております。
  7. 愛野興一郎

    愛野委員 今回の改正で大体水準に達したというわけでありますが、なお今回の改正によりましても公務員災害補償水準が自賠責等々と比較をすると低いじゃないかというような論も参議院等でなされておるわけでありますが、こういう点についてはどういうふうな御見解であるか、お伺いしておきます。
  8. 植弘親民

    植弘政府委員 御承知のように、自賠法によります給付額は一時金でございますから、公務災害の場合は原則的に年金をたてまえといたしておりますので単純な比較はなかなかむずかしいかと思いますが、かりに従来から保険数理で使われておりますホフマン方式とかこういったもので年金の額を計算いたしてみたといたしますとすれば、従来の経験則によりまして、平均的な遺族補償年金が大体六十九万円でございますが、やはりこれも経験則によります、平均受給期間が奥さんの大体平均寿命というふうに仮定いたしますと大体四十年、この四十年間における、かりに年利五分の率でホフマン方式で計算いたしてまいりますと二一・六四三という指数が出てまいります。したがって、かりにそういったホフマン方式による二一・六四三という指数を六十九万にかけてまいりますと千四百九十万、そういうことでは自賠法の一千万よりもいいということになりますが、これは一時金をもらいましてそれによってどういうふうに運営するか、あるいはそのときの状況がどうかといったようないろいろな要素を考えてまいりますとどちらが有利なのかわかりませんけれども、少なくとも、年金でもそういう計算をさせていただきますと、自賠法にそう劣っていないというふうに考えられると思います。
  9. 愛野興一郎

    愛野委員 そこで、今回の改正後の平均的な地方公務員における障害補償年金及び障害補償一時金は、改正前と比較してどの程度改正されたのか、お伺いをいたしたいと思います。
  10. 山田守一

    山田説明員 地方公務員の平均的な給与をとっている者について申し上げますと、まず一番重度の障害補償年金の一級の場合でございますと、改正前百五万八千円程度のものが改正によりまして百十八万三千円、約一二%の改善となっております。それから、それよりちょっと軽い程度障害でございまして、一時金になりますもののうち最も重いもの、すなわち八級につきまして見ますと、改正前百七十万の一時金が百九十万、これもやはり約一二%程度改善となっております。それから、平均的な家族構成で、残されました遺族が二名の場合の遺族補償年金について見ますと、改正前六十二万一千円程度のものが六十八万九千円、これは約一一%の改善でございます。それから遺族補償年金前払い一時金という制度拡充されておりますけれども、これは従来最高四百日分が千日分となりまして二・五倍になりますので、改正前百五十一万一千円程度のものが三百七十七万八千円、すなわち二五〇%増の水準となっております。
  11. 愛野興一郎

    愛野委員 遺族補償年金前払い一時金制度率等改正いただいたわけでありますけれども、今回の改正でさらに十年間延長して継続するというようになったわけでありますが、十年間延長して継続するというその理由はどういうことでありますか。
  12. 植弘親民

    植弘政府委員 先生もよく御承知いただいていると思いますが、先ほども申し上げましたが、公務災害補償といいますのは、稼働能力の減殺といいますか減少といいますか、これに伴っての補償でございますから毎年幾らずつというのが原則だと思います。一時金を渡しまして、それでかりに食いつぶしたということになりますと、ほんとうに働けないわけですから、あとあとの生活の保障という点からいきますとこれは問題があるところでございますから年金制度をたてまえとするようにされたわけでありますが、そういたしましたのが、あれはいまから十年前ですか、しかしまだこの補償制度というものが国民全体になじんでいないというようなことから、制度年金制度で定着するまでは、遺族の御希望によりまして一時金も前払いしようではないかという制度経過的に残されたわけであります。ところがこの残された制度が非常に評判がようございまして、年によって若干の差はございますけれども該当者の約三割前後がこの一時金制度を利用しております。やはり御主人がなくなられたというときで、たとえば何か商売でも始めるというときに一時の金が要るといったようなことがあるのだろうと思いますが、そういうようなことで労災のほうでもこれはもう少し延ばさしていただきたいものだということになってまいりまして、そして今回十年という、だいぶ長い延長でございますが、延ばさしていただく。ただ、この際単純に十年延ばすということでなしに、いまちょっと給与課長からも御説明がございましたように、最高額も従来の四百日から千日まで上げる。そのかわりまたその千日以内におきまして、五段階ぐらいの段階を設けまして、その家族の要望、状況に沿ったように選択的に一時払いをするといったようなふうにして、この運用の万全を期したい、こういう考え方でございます。
  13. 愛野興一郎

    愛野委員 次に、今回の法改正に伴って、各地方公共団体において条例により補償されておる非常勤職員についてはどのように措置されておるのか、お伺いしたいと思います。
  14. 植弘親民

    植弘政府委員 非常勤職員につきましての公務災害補償制度は、従来から条例によって一般職員と同じように措置するように指導してまいっておりまして、すべての地方団体でそのような条例をつくって現実に救済いたしております。今回の改正につきましても、従来と同様、条例措置によって非常勤職員についてもその補償の万全を期したい、このように考えております。
  15. 愛野興一郎

    愛野委員 今回、労災保険では特別支給金制度が創設される。これは昭和四十八年十二月二十日の労災補償審議会の答申によって制度改善がなされて、そういうふうになるというようなことも聞いておるわけでありますけれども地方公務員についてはどういうふうになるのか、お伺いしたいと思います。
  16. 植弘親民

    植弘政府委員 地方公務員災害補償制度は、最も母法考えられます労災保険制度と、それから最も身近な公務員職域でございますところの国家公務員災害補償、この均衡考えながら従来から措置さしていただいたわけでありますが、御指摘のように、労災保険では今度特別支給金制度で、死亡者の場合百万円といったものが上積みされるということになってまいります。従来この種の補償は、公務員職域では福祉施設ということでいろいろと措置してきております。したがいまして、今後も福祉施設拡充によりまして、労災保険によってとられる措置均衡を失しないように国家公務員のほうでもそのように考えているようでありますが、私どももそのように措置さしていただきたい。これは法律事項でございませんで、私どものほうでいきますと基金の定款を変えることによってできますので、そのように措置さしていただきたいと考えております。
  17. 愛野興一郎

    愛野委員 次に、若年者と申しますか、あるいはまた地方公務員の勤続の若い人たち災害補償額、あるいはまたなくなられた場合の補償額、これの引き上げなりあるいはまた優遇措置等に対するお考えはないものかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  18. 植弘親民

    植弘政府委員 現在、補償制度基本的に、労災公務災害を通じまして、平均給与額を基礎にして計算するというたてまえをとっておりますために、どういたしましても御指摘のように若年者高齢者に比して額が低くなる、この点は確かにこの制度全体の基本的問題だろうと思います。そういう観点からいたしまして、労災保険のほうでは労災保険基本問題懇談会というのが労働省に設けられておりまして、こういった基本問題をいま鋭意検討中でございます。したがって、労災保険につきまして何らかの前進措置が講ぜられるといたします場合には、私どももそれに準じて、国家公務員ともども、そういった優遇措置を講じさせていただきます。いまのところはこの懇談会結論を見守っているということでございます。
  19. 愛野興一郎

    愛野委員 この問題は、民間のたとえば企業というものを考えた場合、私も若干の民間企業経験があるわけでありますけれども、おもに不可抗力による加害者の立場に立って被害者のあれを見た場合に、おおむね二十歳代の方を死亡せしめた場合あるいはまた不具廃疾せしめた場合においては、その人がいわゆる一番働き盛りの年齢で、一家をかかえて養っていくだけの生涯の補償をわれわれ民間企業加害者はするたてまえになっておるわけです、法等のいかんを問わず。そういうことからいきますと、地方公務員若年者災害時の平均給与で算定をするということであれば著しく民間の場合と不均衡を生ずる、こういうふうに私ども考えるわけであります。そこで、これはいまのようなことでお考えをいただいておるということでありますから、ぜひひとつこういった面についてはもっともっと、地方公務員若年者がこういう災害にあわれた場合に生涯お困りにならぬような、こういう優遇措置を講じていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  次に、年金スライド制はどのように実施しておられるのか、あるいはまたスライド制改善についてどのように考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  20. 植弘親民

    植弘政府委員 地方公務員公務災害補償につきましても、物価なり経済情勢考えまして適宜適切に充実拡充をはかるべきであると思っております。したがって、その点からいきますと、地方公務員の場合でも昭和四十四年度以降は平均給与額改定を行ないまして、これによって実質的な年金改定をスライド的に行なうというようなことをいたしております。これを法律上明確に制度化するかどうかという点につきましては、どういう制度をとるべきか、これはいろいろ他の公的な年金との関係だとか、労災なり国家公務員災害なりといったものの取り扱い等、やはりはずを合わせる必要もございます。したがって、これは早急に結論を出さなければならない問題と考えておりますが、現在でもいま申し上げたように、平均給与額を大体賃金のアップに合わせながら改定するというたてまえで、実質的にはスライド的に扱わせていただいております。
  21. 愛野興一郎

    愛野委員 次に、特殊公務災害範囲についてでありますが、これを拡大されるおつもりはないのか、あるいは特殊公務災害自身補償内容改善される御意思はないのか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  22. 植弘親民

    植弘政府委員 特殊公務災害は、数年前当委員会でも御審議をいただきまして創設させていただいたわけでありますが、一体これをどういった業種に限るか、ないしは、業種のみならず場合によりましては個人個人公務員職務執行というものに着目して考えるか、いろいろ論議のあったところでございます。しかしながら、個別的な事案に着目してということになってまいりますといろいろなケースが出てまいりまして、なかなか制度化がむずかしゅうございましたために、大かたの御論議の結果、任務の遂行にあたって高度の危険が伴うことが多いという一つ一般的な情勢、そしてまた危険が予測されるにもかかわらず職責上あえてそういう危険にぶち当たって職務を遂行しなければならない、こういうのが本来の職務であるという、やはり職務性格に着目してこの制度がきめられたと聞いております。したがって、そういうような要件を考えてまいりますと、現実には現在きめていただいております警察、消防麻薬取締員、こういった常に生命の危険にさらされる、しかしそれをこわがって逃げるわけにはいかないといったものに限定されたわけでありますが、現実問題といたしましてはそれに似たような例がないわけでもございません。この委員会でも指摘されておりますが、たとえば学校の先生子供を遠足に連れていった、そして子供が川に落ち込んだときに飛び込まなければならない、こういったような場合もあるではないか。それからまた暴風雨だとか災害のときに土木職員がそういった危険にあうではないか。こういったことがございますので、その意味では、業種というものよりもむしろ個別的な事態でどう考えるかというのは私どもとしても非常に真剣に考えているところでありますが、そういった場合国家公務員としてどうするか、それから労災でも同じ問題があると思いますので、こういったものとの均衡考えながら、やはりいま基本問題でもそれを検討中でございます。
  23. 愛野興一郎

    愛野委員 いまの範囲拡大の問題でありますけれども警察官、それから消防職員、これは常時危険にさらされておるといってもいいわけで、ことに警察官あたり浅間山荘事件等々、全く身に覚えのない災害でなくなったり何かするわけであります。しかし、過疎地帯あるいはまた山間になればなるほど、一般職員も、土木といわず何といわず、豪雨が来れば災害救助に行って、そのときにがけくずれが起こって死亡するというような場合が多々あるわけであります。私の選挙区の周辺でももちろんそういうことがあるわけでありますけれども、同時にまた、地方の場合におきましては市町村議会議員でもそういう例は多々あるわけであります。したがって、いま言われた職務的な執行の場合における特殊公務災害、これをぜひひとつお考えいただかなければならぬ時期に来ておるのではなかろうか。要すれば、過密過疎を問わずそういう危険にさらされておるわけでありますから、そういった点については、いまお伺いをいたしたわけでありますけれども、将来そういったことを目標にして、それぞれ横の連絡機関か何かつくって具体的に進んでいかれるおつもりかどうか、ちょっとお伺いをいたしたい。
  24. 植弘親民

    植弘政府委員 御指摘のように、この問題は非常に基本的な問題でございます。それで、労災なり国家公務員との関係十分連絡をとりながらやるのでございますが、若干感想的に申し上げさせていただきますと、職務執行によって個別的な事件ということになりますと、本来これは公務災害補償の本質だと思いますから、公務災害補償年金なら年金の額の引き上げとか、こういったものとの関連も考慮しなければならないかと思います。それからもう一つ大事なことは、いまの大震火災といいますか暴風雨といいますか、そういうようなときになりますと、民間そのものの協力の問題もございますから、そこらのところもあわせて慎重に検討させていただきたい。十分御趣旨を体しまして関係省庁とも協議させていただいたいと思います。
  25. 愛野興一郎

    愛野委員 それでは終わります。
  26. 伊能繁次郎

    伊能委員長 この際、暫時休憩いたします。    午前十時五十七分休憩      ————◇—————    午後二時三十二分開議
  27. 中山利生

    中山(利)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のため、委員長の指名により私が委員長職務を行ないます。  質疑を続行いたします。山田芳治君。
  28. 山田芳治

    山田(芳)委員 まず、労働省労災管理課長さんに伺いたいのですが、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案は、国家公務員災害補償の一部改正案並び労働省の所管である労災保険の一部改正案と連動しているわけでありますから、単に自治省だけに伺ってもなかなかお答えがいただけないので、むしろその基本を預かっておる労働省並び人事院関係者に主としてお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、ILO百二十一号条約によって、人事院昭和四十九年二月二十日に、国家公務員災害補償法改正について意見申し出を行なっているわけであります。これに基づいて国家公務員災害補償法の一部改正あるいは地方公務員災害補償法の一部改正が出ております。しかしながら、その基本にあるところの考え方労災保険と同等であるわけでありますが、労働省お尋ねしたいのは、ILO百二十一号条約は現在批准をするということのもとに手続をやっておる、すなわち国会の承認を求めている段階であるわけであります。「ILO第百二十一号条約では、妻と子二人計三人の標準受給者に対する災害補償給付率所得の五〇パーセントに達するものとするよう要請しているが、わが国における雇用者世帯平均家族数は三二人であるところから、遺族数二人の場合を標準的な受給者として、」その給付率を五〇%とするということを意見申し出としているわけでありますが、政府としては、このILO条約批准をする、所得の五〇%でよいということは各国との間で合意に達しているわけですが、五〇%でよいという根拠伺いたいと思います。
  29. 石井甲二

    石井説明員 ILO百二十一号条約におきましては、いま御指摘のように、遺族補償年金につきまして標準世帯について五〇%ということになっておるわけでございます。この場合に五〇%の根拠は一体何かというお尋ねと思いますけれども、これはILOのいままでの経過を見ましても必ずしも十分に説明されておりません。ただ実態的に申し上げますと、ILO事務総局条約草案にあたりまして、その場合に、たとえば休業給付障害補償給付あるいは遺族給付という種類がございますが、それらを一律に五〇%として社会保障委員会に付託をいたしたわけでございます。その間に労働側あるいは使用者側意見をそれぞれ徴したわけでありますが、その結果現在のような五〇%にきまったということでございまして、それがどういう積算で五〇%になったかということはつまびらかでありません。
  30. 山田芳治

    山田(芳)委員 いまのお答えは、人事院は五〇%に勧告をされているんだけれども、その基本になるILO百二十一号条約の五〇%には何ら理論的な根拠もないし、よくわかりません、こういうことですね。そういうものに基づいて人事院国家公務員災害補償改正について意見申し出られたのですか。人事院飯野さん、ひとつお願いをいたしたいと思います。
  31. 飯野達郎

    飯野説明員 いま労働省からお答え申し上げましたとおりに、私どももどういう経緯でそういうようになったのかということははっきりしておりません。しかしながら、世界各国のそういう一つの大勢から見て、ああいう条約に盛られております一つ標準というものについては相当の根拠があるということからそれだけのものを勧告いたした、かような次第でございます。
  32. 石井甲二

    石井説明員 ILO事務局条約草案をつくる場合には、条約内容につきまして草案的なものを質問書という形で各国意見を求めるわけであります。その意見を集約いたしまして、おそらく非常に高い意見を申し上げる国もあるでしょうし、低い国もあるでしょうし、そういうものを勘案いたしまして、条約の適用をある程度可能ならしめるような、そういう実態に応じた率を草案の中に入れる、こういう経過をたどっておるように聞いております。
  33. 山田芳治

    山田(芳)委員 そうすると、五〇%というのは必ずしも最高であるという意味ではなくて、各国批准しやすいような、そういう限度であるということであるとするならば、わが国のようにある意味における先進工業国においては五〇%にとらわれることなく、もっと高い水準を確保するというふうに考えてしかるべきであると思うのですが、人事院、どうでございましょう。
  34. 飯野達郎

    飯野説明員 御承知のように、私ども国家公務員災害補償法補償の額につきましては労働省労働者災害補償法との均衡をとるということに相なっておりますので、そういうことで五〇%ということを申し上げたわけであります。
  35. 山田芳治

    山田(芳)委員 それではむしろ労働省伺います。五〇%というのを、人事院としては、他との関係がこれあり、自治省に聞いても同じことを言うだろうと思いますので、基本であるところの労働省が何で五〇%というような、言うならば最低のところでやっているのか。もっと高い水準労災をきめていくべきではないかというふうに思うのですが、どうですか。   〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 石井甲二

    石井説明員 先生指摘のとおりでございまして、何も五〇%に固執をする必要はないと思います。やはりそれぞれの国におきまして、その社会経済情勢に応じた妥当な水準をきめることは当然必要なことだと思います。そこで今度の法案におきましては、遺族が三人の場合、すなわち標準世帯の場合にILO条約では五〇%となっておりますのが、同じような遺族三人の場合につきまして、現行の五〇%を五六%に引き上げるという法律を今国会に提案をしているわけでございます。
  37. 山田芳治

    山田(芳)委員 五六%とおっしゃいますが、ILOの百二十一号条約においてはいま言った所得の五〇%、その所得の計算の方式というものが、国際的にいうと、日本という国はいろいろな手当がついております。特に期末、勤勉手当というものがあって、今回〇・三が恒久化されるか、あるいは〇・三をもっとふやして恒久化されるかは人事院がことしの七月に勧告されるところによるであろうと思うのですが、少なくとも現段階においては年間給与としては十七・一であるということは間違いない。ところが西欧先進諸国ではそういう手当というものはきわめて少なくて、手当を本法に繰り入れている給与体系をとっている。給与体系というものはその国の実情によって国内法においてきめられることは当然であるけれども、少なくとも所得の計算方法については西欧先進諸国並みに取り扱っていくとするならば、十七・一というところの、いわゆる期末、勤勉手当を所得計算の基礎に入れるべきであるにかかわらず、期末、勤勉手当をはずしておる。そのかわり通勤手当などというものを基礎に加えているというようなことだが、これは通勤手当などというものよりも期末、勤勉手当を入れるべきである。なぜならば、期末、勤勉手当の法的な意味というのは、御承知のように給与のあと払いであるということが定説になっているわけでありますから、当然所得の中に期末、勤勉手当を入れる。しかし過去三カ月の平均給与をとるということで、たまたまそのときに期末、勤勉手当が当たっていないと、それが入る人と入らない人があるというのはアンバランスであるというならば、十七・一を四分の一にして計算をして、それを所得として基礎に入れて考えるべきであって、むしろ通勤手当などというものこそ除外すべきであるにかかわらず、期末、勤勉手当を除外しているということはわからないのですが、これは人事院にひとつお伺いしたいと思うのです。
  38. 岡田仁

    ○岡田説明員 ただいまの点でございますが、期末、勤勉手当の問題につきましては、確かにおっしゃるとおり考慮すべき問題があろうかと思いますが、現時点では国内法で——これはむしろ労働省お答えすべき点かと思いますが、国際条約においても国内法で定めるということになっておりますし、労働基準法で、三カ月をこえて支払われる給与あるいは臨時に支払われる給与は算定の基礎としないというたてまえをとっておりますので、私どももそれに従っておるわけでございます。ただいまの通勤手当の問題につきましては、現在人事院で御存じの毎年夏に民間企業との比較において勧告をしております中には、通勤手当もいわゆる民間給与との比較の中に入っておりますので、本来の基準内の給与の一部というふうに現在考えております。したがいましてそれを入れておるということでございます。
  39. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは労働省のほうにお伺いしますが、それは通勤手当をはずせという趣旨ではないのであって、期末、勤勉手当をはずしているところに不合理さがあるということを言っているので、はずすならむしろまだ通勤手当のほうが理屈がつくではないか。国内法できめているということになっている以上、労働省としては、当然労働省の立場からいっても期末、勤勉手当は所得のあと払いという理論に立っておられることは明確なんですから、当然入れて四分の一にして過去の平均給与三カ月分とすべきである。どうしてそういう法改正なり立法政策をおとりにならないかという点をお伺いしたい。
  40. 石井甲二

    石井説明員 いわゆる給付基礎日額というふうに私どもは呼んでおりますが、端的にいいますと平均賃金ということであります。その平均賃金を基礎にいたしましてその何割という形をとるわけであります。つまり、平均賃金が現在の労働基準法における平均賃金を土台にしておりますために、すなわち労働基準法におきましては過去三カ月間の平均の賃金の額を平均賃金といっているわけであります。したがいましてボーナスが含まれないという問題これは相当前から議論になっておる点であります。したがいまして、今回の法改正にあたりまして労災保険審議会の中に基本問題懇談会をつくりまして、そこで今回の法案の作成に当たったわけでありますが、当然その給付基礎日額にボーナスを含めるべきであるという議論が議論として相当検討されたことは確かでございます。ただ問題は、先ほど言いましたように、平均賃金のとらえ方が労働基準法の平均賃金のとらえ方をそのまま労災法に適用しているがために、その平均賃金という問題を単に労災保険プロパーの問題として処理できない問題も一部にございます。そういうことから、率直にいいまして今回の改正の中にその問題は取り入れることが非常にむずかしいといいますか、あるいは間に合わなかったといいますか、そういうことでございまして、実は現在労災保険審議会の中の基本問題懇談会におきまして、引き続きこの問題について検討をしている過程にございます。したがいまして、その検討の結果を待ちまして私どもはこれに対処いたしたいというふうに考えております。
  41. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは前向きに検討して、次の機会には必ずこれについて解決をする意思があるというふうに確認してよろしいか。
  42. 石井甲二

    石井説明員 ただいま申し上げましたように、労災保険審議会の場でこの問題について検討をしている最中でございますので、その検討の結果を待ちましてこれに対処いたしたいというふうに考えております。
  43. 山田芳治

    山田(芳)委員 審議会も、各省が資料を出したり、いろいろ誘導されて審議会できまってきますから、やはり前向きでよく局長、大臣にお話をされて、当委員会においてそういう意見があったということを十分申し上げて、審議会でひとつそういう結論が出るように労働省当局としては努力をしていただきたいということをはっきり申し上げておきたいと思います。  その次に、これは自治省並びに人事院、特に自治省にお伺いをしたいのですが、いま公務災害補償のほかに、これは法律上の権利義務ではないわけでありますが、賞じゅつ金制度というものがございます。いわゆる警察、消防職員が生命の危険をおかしてその職務に従事して公務災害を受けた場合、賞じゅつ金が付与されるということで、各府県におきましては警察官、あるいは各市町村においては消防、それぞれ警察庁なり消防庁なりの定める基準に従って条例を出しながら賞じゅつ金制度というものを置いております。警察官の場合では、死亡された方には一千万程度の賞じゅつ金が出される。消防においてもおおむね同じであるというふうな賞じゅつ金制度があるのですが、公務災害補償と賞じゅつ金との関係、私は、一般公務員でも命の危険をおかして職務を遂行したときには賞じゅつ金制度というものがあってしかるべきではないか。もちろん警察、消防にはその危険の度合いが多いということについて否定するものでもなければ、また警察、消防職員の賞じゅつ金制度というものをもっと拡充するということもある意味においては私は賛成をいたしますけれども、しかし、これが単に、そういう権利義務であるということでなくて、恩恵的なものだという考え方をやめて、むしろ公務災害補償の中にこの賞じゅつ金というものを包含をし、かつ一般職員についてもそういう制度をつくっていくべきであるというふうに考えるわけなんですが、この補償と賞じゅつ金制度との関係についてひとつお伺いをしたいというふうに思います。
  44. 植弘親民

    植弘政府委員 山田委員指摘のように、基本的にこの賞じゅつ金なり功労金というものと災害補償とは違うわけでございまして、もう御説明するまでもなく、賞じゅつ金というのはいわば功労報償といいますか、そういったような考え方でございますし、公務災害は功労の有無とは関係なく、公務に起因して災害を受けた場合における補償ということでございますから、その点ではおのずからこの両制度は違うものと思います。  ただ、これを公務災害のサイドでどういうふうに考えていくかということになりますと、実は午前中の御質問にもございましたが、特別公務災害——いま山田委員指摘のように、常に危害、危難に当たる、生命の危険があり得る、それからまたそういう生命の危険が予測されるにもかかわらず敢然として職務執行しなければならない、こういう特殊な業務であるというものにつきまして特別公務災害制度を設けられたわけでございますが、まだそのほかに考えられますことは、いま御指摘のように、そういった特に生命の危険を顧みず、個別的な場合において、職種の特性ではなしに、その場合場合の状況によってそういった特別な公務災害というものが考えられるんじゃないだろうか。これについては特別公務災害補償制度審議された際にもだいぶん御議論があったように承っておりますが、やはり問題は、そういった特殊公務災害範囲とかいったものを拡充するというようなかっこうで十分検討する必要もございましょうし、それからもう一つ基本的には公務に起因するということについての公務災害補償でございますから、これをできるだけ充実をはかっていく、こういったことであって、やはり賞じゅつ金というものは基本的に違うものではないだろうか、このように考えるものでございます。
  45. 山田芳治

    山田(芳)委員 賞じゅつ金は私もそうだと思いますよ。しかし、警察庁なり消防庁が定める基準で全国がある程度一律にしているということになりますと、いま言ったような特殊なケースで云々じゃないと思うのです。浅間山荘で死んだ方に一千万でなくて二千万上げたってこれはいいと思うのですよ。だけれどもそれを制度化すると一千万に固定されるのですよ。そういう固定化して制度化していくのなら、公務災害の付加的な給付としてやるべきであるということを私は言っているのであって、その場合には一般職員にも及ぶべきであるというふうに私は考えるので、これはひとつ十分検討してもらいたいと思います。  これと同じような問題をちょっと一つ申し上げたいのは、科学技術庁にお伺いをしたいのですが、数年前に川崎で地震の検査をやられたときに、これは当局側に過失があったと思いますけれども、土砂がくずれて多くの公務員なり民間人が死亡されたわけであります。そのときに、これは当然公務災害であるということになるわけですね。だから、公務災害でやるならばいま言ったように最高五〇%。五六%までいくという話もありますが、これは家族数その他給与によって違ってきます。それで公務災害であれば五〇%、働き手を失ってわずか五〇%程度補償であるというようなことではとうてい納得ができないわけでありますが、ある意味においてこれは損害賠償——当局に責任があったわけであります、過失があったわけでありますから、当局側からいえば損害賠償をするという形で、ホフマン方式による損害賠償をされたというふうに伺っております。公務災害であるのにかかわらず、損害賠償として公務災害をこえる給付をされた。それはけっこうなことなんで、私はもっと出すべきだという議論をこれからするわけですが、その根拠ですね、制度根拠公務によって災害にあった場合は公務災害補償しかいま制度的にないのですけれども、民法の損害賠償の規定を適用されるということは当局の判断によってなされるものであるのか、その点、どういうふうになっているのか、ひとつお伺いしたい。
  46. 吉澤奎介

    ○吉澤説明員 ただいまの御質問の件でございますが、川崎の事故で相当数の人がなくなっております。民間の方もおり、国家公務員の方あるいは地方公務員の方もおりました。それで私どもとしましては、この事故の原因といいますか、過失等がどこにあるのかということで、これは総理府に設置されました事故調査委員会におきまして現在もまだ詳細な調査が行なわれております。近くその結論が出るように聞いておりますが、その結論を得る前におきまして、私どもこれが非常に人為的な事故であったということで、国の責任というものが免れないんじゃないかという判断に立ちまして、民法の七百十五条の損害賠償、使用者責任に基づく損害賠償をお支払いするべきであるという考えのもとに、民間をはじめといたしまして、国家公務員のなくなった方の一部につきましてもすでに補償を終わっております。
  47. 山田芳治

    山田(芳)委員 いま、植弘務員部長聞かれたように、公務でなくなっても、あれだけの事故であれば調査委員会を置いて、そうして事故の原因が当局にあったかどうかということを調べて、どうもそうらしいから損害賠償のホフマン方式をやります、こういうのですよ。どこか片すみのほうでほんとうにまじめに働いている職員が事故にあって死んだときに、公務災害補償わずか五〇%、働き手を失って、そして一家がどうなるかというときに五〇%程度補償であるというようなことは、これはどうも私としては納得ができない。特に当局に過失があるということがいまのように委員会なり何なり設けられて徹底的に追及してくれればいいけれども、当局に過失があれば、当局側に責任があればそれだけの行政処分を受けるわけですから、そういうような、当局側に責任あるなどということはなかなかこれは立証したり説明したりすることがむずかしい。そういう場合に相当の時間もかかる、たとえそれも好意的に扱ってもらうにしてもですね。いまの川崎の問題だってもう数年たっているわけですから、それでまだ結論が出てない。そういう事態ですよ、あんなはっきりしたものでもね。  だからわれわれとしては、当局側に過失がある——それが過失であるかないかということがまた議論になるわけですけれども、そういう場合にはやはり五〇%というのじゃなくて損害補償を認めるべきであると思うのです。というのは、いままで所得を得て家族を養っていたのが突然なくなったときに、それが当局側の責任であるかどうかははっきりしないということで公務災害補償だけで五〇%であるというような事態は私たちはどうしても納得ができない、そういうふうに思うのです。いまの制度では公務災害補償というのはそれしかできないということになっているのですけれども、少なくとも付加給付的なものを考えながら、そういった当局に原因がある、あるいは当局に原因がないということの反証がない限りは、いわゆるホフマン方式というものを取り入れた公務災害補償をすべきであるということを公務災害補償の一環として制度化すべきではないかと思うのですが、これは公務員部長に言うのもおかしいので、これはまた労働省ですかな、人事院ですか、これはもう非常にむずかしいので、どこに答えていただくかわからぬが、それじゃひとつ人事院お答えをいただきたい。
  48. 岡田仁

    ○岡田説明員 ただいまの問題は非常にむずかしい問題でございますが、基本的に考えまして、現在の災害補償法は、これは無過失責任に基づく、いわば所得能力、稼得能力と申しましょうか、これの補てんという意味合いがございます。それから一方、国賠法なり何なりによりますものは、過失責任ということによる賠償でございます。したがいまして、無過失責任というのは、特に過失があるかないかということを問わず、一律にやるという意味でございますので、意味合いが、次元がかなり違うものではないかと思うわけでございます。まあ、現実の問題としましては、先生いまおっしゃっていましたように、個々具体的なケースを洗ってみますと、いろいろ当局側に過失のある場合もございましょうし、それから被災者本人に過失のある場合もございましょうし、それらの過失がどれだけ相互にあるか、過失相殺の問題もいろいろ含めまして非常にむずかしい問題が生ずるかと思います。したがいまして、公務災害補償でこれを取り入れるということは、冒頭申し上げましたような次元の違う問題ではございますが、過失の問題を個々に論ずるということになりますとまさにケース・バイ・ケースで、いまおっしゃいましたような何年もかかってやるようなことになろうかと思いますので、やはりここのところは制度的にははっきり区別して行なうということのほうか、これはわが国だけではなくて世界的にもそういうあれではないかと思います。これはむしろ、一般的な基本的な制度につきましては労働省から詳しくお答えすべき点かと思いますが……。
  49. 山田芳治

    山田(芳)委員 聞いていてもおかしいと思うのですよ。とにかく、当局側に原因があるとかあるいは本人に過失があるかというようなことがきわめて明確にわかるのだったら、それは制度が別だとおっしゃってもわかるのですよ。現実にはそんなことわからぬですよ。当局側としては、たとえ当局側に過失があったとしてもなるべく隠さなければ、そんなことをやったらやった人自身が行政処分を受けますからね。これは人情としてわかることですね。だから、そういう非常にあいまいな形のものについてはやはり公務災害補償制度の付加的なものに取り入れていくというような制度にしていかなかったら、家族の人は、自分の父親や兄貴やきょうだいが何か過失をしたので五〇%しかもらえない、どうもおかしい、それじゃおまえ訴訟をやりなさい、もとつとめていたところの上司を相手に民事訴訟でも起こして、損害補償の裁判でもやれというような制度でございます。言うならばこういうことなのですよね。そういうことを奨励するというような、被害者の側にそういうことを要請するような制度体系というものについては私は非常な疑問を感ずる。むしろ、そういう原因が当局側に明らかになかったという反証があればいざ知らず、そうでない限りは、やはり公務災害の中にホフマン方式による補償というものを組み入れた公務災害補償制度というものをきめるべきだというのが私の考え方なのですが、労働省、いかがですか。
  50. 石井甲二

    石井説明員 ただいまの問題を、労災保険という立場あるいは労働災害補償という考え方に立って考えてみますと、労災保険といいますのは、先ほども人事院から申し上げましたように、無過失責任の法理を土台にしましたものでございます。したがいまして、過失の有無を問わず一つの定型的な給付をしている制度でございます。その上に立ちまして、かりに過失があった場合には民事の請求権を持つという一つの体系的な組み立てになっているわけでございます。したがいまして、労災保険におきまして一つの定型的な給付を受けたあとで、過失に対する賠償責任はその過失をした者が負うわけでありますけれども、たとえば民間におきましては企業内の付加給付というようなものによってある程度対応しながら、現実に民事の請求権に対応しているわけでございます。法制的には、やはり労災保険あるいは保険システムというものは、一つの定型性を持った無過失責任の範囲における一つの給付体系でありまして、これを、過失責任を同時に組み入れたような、あるいは個々の責任の度合いをそれぞれの給付ごとにこれを確定するというようなことになりますと、保険の体系自体に非常に大きな問題が起こってまいります。したがいまして、現在のところは、無過失責任による保険のシステムと民事上の過失の賠償の請求権、両方の関係におきまして全体が総合されている、こういうことであろうと思います。
  51. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは人事院伺いますが、公務員の場合、民間とは若干違うと思うので、私はいまのような場合はむしろ、やはり公務災害補償ですから、労災保険という立場と若干内容的には同様であるけれども補償なんでありますから、当局側に過失があったかなかったかということについて現実の問題としては非常にわかりにくいわけで、何年もかかるという場合に、やはり何らかのそういう救済的な手段を制度的に打ち立てておくべきである。それは民事の裁判でやれというような、制度的にはそれでやっていただくのですというような、きわめて冷たいそういうやり方で、はたして事が終わるのだろうか。国家公務員あるいは地方公務員すべてを含めてそういう制度だけで、全体のこういった補償的なものを確立させないでは、国家公務員地方公務員が安んじて働けると私は思えないのですが、もう少しそういう点を前向きに検討する意思がありやいなやという点だけひとつ伺っておきたいと思います。
  52. 飯野達郎

    飯野説明員 確かに、仰せられましたように、実際にそういうような制度を国公災の中に取り入れるにいたしましても、先ほど申しましたように、明らかに国の側に責任がない場合はというようなことに限定するのも一つ考え方かと思いますけれども、やはりその責任の度に応じて補償をいたすということになりますと、その補償の責任の度合いがどのくらいかということが、何といいますか、明らかにならない限りということはいかがかというような気もいたしますし、またそういうようにこまかくその責任の度合いというものを分断するようになりますと、これはやはり補償をいたします際の、これは非常に事務的な話になって恐縮でございますけれども、迅速に補償をするということからかけ離れていく、かえって遺族の方にも御迷惑をかけるようなことに相なるのじゃなかろうかというようなことも考えられます。もう一つは、国公災の中にそういうような体系をとるにつきましては、やはり民間のそういう制度との均衡ということがこれはどうしても大事だと思います。そういうことからいって、確かに問題はあります。私どもほんとうにこれからもそういう問題については検討いたしたいと思いますけれども、ただ非常にむずかしい問題があるということだけ申し上げさしていただきたいと思います。
  53. 山田芳治

    山田(芳)委員 いま人事院のほうから民間の実態があると言われたのですが、人事院昭和四十七年の十月一日現在で、従業員百人以上の企業二万四千五百のうち約二千を抽出して、いわゆる労務災害補償についての調査をされているはずであります。四十七年十月ですから、すでに一年半以上たっておりますから、もうその結果が出ていると思われますが、この結果について関係各省もほとんど知っておらないというような状況のようでありますし、われわれも知らされていない。民間との関係とおっしゃる以上、調べられた結果についてひとつお示しをいただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  54. 岡田仁

    ○岡田説明員 四十七年に調査いたしました民間の法定外給付の調査でございますが、これにつきましては、いま先生おっしゃいましたように二千五十社ほど調査いたしまして、その約半数余りから回答がございました。その結果を鋭意集計したわけでございますが、現在のところ最終的なはっきりした数字が必ずしも明確に出ておりません。と申しますのは、実際に比べてみますと、民間の法定外給付というのは、その種類と申しますか、名称、種類等もきわめて多岐にわたっております。死亡の場合あるいはけがの場合、たとえばその死亡の場合であっても弔慰金的なもの、あるいは補償というような性格のもの、あるいは葬祭料その他名称も多岐にわたっておりますし、それから具体的な金額の出し方でございますが、これがあるいは一律定額制、あるいは一律定率制、給与に定率をかける、あるいは本人の勤務期間、勤続期間に応じた定額を算出する、あるいは本人の扶養家族の数に応じて額を算出する、役職別で額を算出  しているというような、そういうようないろいろな組み合わせがございますので、結果的にこれこれだという数字がなかなかうまく出ませんが、きわめて大ざっぱなところを申し上げまして、たとえば一律定額制で出ておりますものにつきまして  は、大体死亡の場合に約三百万円程度というような数字が出ております。なお、これにつきましては、いま申し上げましたような点を考慮いたしまして、さらに鋭意最終的な数字をまとめたいということで現在努力しております。
  55. 山田芳治

    山田(芳)委員 大体労働省みずから調べるべきだと思うのですよ。人事院民間の二千幾社を調  べて、そしてそれはまだ出していただけないということも私は不本意だと思うけれども労働省がみずから調べてないなんて、これは怠慢だと思うのですよ。それで民間との関係もございまして、こうおっしゃるのだけれども民間は、いまちょっと例にあげられたように、死亡した場合は三百万平均とおっしゃいました。しかし一千万も出ているところがあるのですよ。だから、これはあとで質問もしますけれども、特別給付金として労災法には百万円を加算するということになっているのに、公務員のほうには、政令でどう定められるのか知りませんけれども、これは定めてもらわなければいかぬ、こう思っておりますけれども、要するに民間との関係においてもそういう資料がわれわれないから質問をしようにも質問の材料がないというような形に相なっている。個別的なことば私ども調べてますよ。調べてますけれども、全体的なものは労働省がそれくらいのものは調べてもらわなければ困る。私は一言苦言を呈して、人事院からひとつ私のほうに資料をいただきたい。大ざっぱでけっこうですから、お願いしておきたいと思います。
  56. 岡田仁

    ○岡田説明員 現在、先ほど申し上げましたように鋭意最終的な集計中でございますが、まとまり次第資料として提出したいと思います。
  57. 山田芳治

    山田(芳)委員 まとめてもらって出していただきたいと思います。それでは次に移ります。最低保障額の問題です。人事院規則並びに労働省労災保険施行規則によって、現在最低保障額が千三百八十円、行政職給料表(二)の五の三というわけですね。これ、非常に低いんですよ。千三百八十円、これで入りたての人が最低額にひっかかって、もし死亡でもしたとすれば、今回の改正によればそれの三百八十日分ですか、かけたって三十万ぐらいにしか年間にならないという形に相なるわけであります。せめて二千円ぐらいまで引き上げるべきであるというふうに思いますが、労働省並び人事院当局の御意見伺いたいと思います。
  58. 石井甲二

    石井説明員 労災保険の給付基礎日額に最低日額を定めております。それはいま御指摘のように千三百八十円に現行はなっておりますが、これは先ほど申し上げましたように、給付基礎日額につきましては従来の賃金の三カ月の平均の賃金が土台になるわけでございますが、ただアルバイトとか、非常にその日額が低いものがございます。そういうものに対応するために、いわば底ざさえといたしまして最低の給付基礎日額をきめておるわけでございますが、そのきめ方は、一つは最低賃金の決定状況その他を勘案をして決定をいたしておるわけでございまして、たとえば最近の最低賃金の決定状況を見ますと、地域別最賃の中位数におきましては千三百七円ということになっております。そういうことから勘案をいたしまして現行を千三百八十円にいたしたわけでありますけれども、これにつきましては今後の賃金の実態あるいは最低賃金の決定の状況を勘案いたしまして、今後ともその引き上げに努力をいたしたいというふうに考えております。
  59. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは具体的に伺いますが、自賠法の、自動車でぶつかって死んだという場合、これは一千万出ますね。ところがいま最低賃金のあれで公務災害でなくなった。自賠法だって無過失だし、これだって無過失だ。そうすると、千三百八十円で年金を出していただいた場合と、一千万円を年間預けておいて金利が半年で六・二五、いまはもっと高いが、それで計算してみてください。自賠法のほうが上回りますね。そういう関係はどういうふうにお考えになりますか。
  60. 石井甲二

    石井説明員 いわゆる自賠保険の一千万に対応いたしましてどの程度関係になるかということであろうと思いますが、そもそも、自賠保険は一時金の考え方でございます。それから労災保険あるいは公務員関係災害補償はいわゆる年金でございまして、言ってみれば必要な期間必要な給付をするという考え方でありまして、必ずしも一がいに比較はむずかしいと思います。ただ、その最低の給付基礎日額を基礎にして、労働者の今後の平均余命、あるいは労災の場合にはスライドがございますが、そういうものを勘案をし、かつたとえば複利による原価計算等を込みにいたしまして計算をした場合にどうなるかということが、単純な形の比較一つの方法論であろうかと思いますけれども、ただいまの千三百八十円についてどのくらいになるかということは、実は計算をしておりませんのでちょっとわかりかねるわけであります。
  61. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは一括資料をお願いでたいと思いますが、自賠保険による給付と、いま言った最低保障額千三百八十円を利子換算をしていって、一体どこらあたりでこのカーブが合うのかどうか、一ぺん資料として出していただきたい。これはきわめて単純なぼくらの考えでは、一千万あって六分五厘なら六分五厘の利子であれすれば、年間六十五万もらえるわけですよ。その人が死んだとすれば六十五万を利子でもらえる。労災のほうにはそれはスライド制があります——このスライド制はいま伺いますけれどもスライド制がありますと言うけれども、自賠法だって前は五百万だったのに千万に上がっているのですよ。やはり時代の推移とともに上がりますから、そういうことを言われても制度というものはそのときそのときに変わってくるわけですから、現時点は現時点で比較していただくということが法案審議その他に必要なわけですから、それは出していただく。それからもう一つは、そういうものとの調整の必要があると私は思うので、そういう点について計算をされたものを何例かひとつ出していただいた上で、別途いずれまた、今国会でなくても、来国会においてもどうせお出しになるだろうと思いますから、そのときにまた伺います。  私としては、幾ら何でも自賠保険よりも労災あるいは公務災害というものが下回っているというような、そういうことは社会正義に反するという感じがする。せめて二千円程度引き上げるべきだというのが私ども意見であるということを十分申し上げておきたい。どうせ大蔵省からなかなか認められないということが内容であろうということはわかっているのでこれ以上は言いませんけれども、そうだろうと思うけれども、あまりにもひど過ぎるということを、いまの計算をした数字をやはり大蔵省に突きつけてがんばってもらいたい、こう私は思います。私が皆さんの立場ならそうするだろうということを申し上げて、これ以上申し上げないで、次にスライド制に移ります。  スライド制の問題ですが、これは人事院並びに労働省において、法二条の五項、規則の三条の四項の「著しく公正を欠く場合」というのは大体人事院では二〇%だ、こうおっしゃるのですね。二〇%は非常にぼくは高過ぎると思うのですよ。一九%でやってどうしてスライド制ができないのか。二〇%でなければならない、そういう理由は私たちにはよくわからないのですけれども、二〇%の根拠をひとつ伺いたいと思います。
  62. 岡田仁

    ○岡田説明員 二〇%という根拠につきましては、なぜ二〇%でなければならないかという明確な根拠はございません。はっきりしたものはございません。ただし、これは現実の事務の運用というようないろいろな点を勘案いたしまして、二〇%の増減ということは現実に生活その他に与える影響が非常に多いというようなところからきめたのだと思います。実は私も二〇%の根拠、当時の根拠につきまして必ずしも明らかにしておりません。  ただし、これについて一言申し上げれば、二〇%と申しますのは、国家公務員の場合は、現実給与額の、本人がそのままその時点まだ在職していたとした場合の給与が二〇%増減した、現実には増加した場合でございますけれども、ということでございますので、最近の給与改定というような状況になりますと、これは大体一年ないし二年ごとに改定が行なわれるという現実でございます。
  63. 山田芳治

    山田(芳)委員 いまは二十何%に今度されるか知らぬけれども、これは狂乱物価の時代なので、狂乱なんだから、普通の状態でないということなんですから、それで二〇%こえるからやるんだと言うんだけれども、それじゃ一九%で生活が苦しくなくて、二〇%になったらとたんに苦しくなるという何の論理もないし、いま御答弁にあったように根拠もよくわからないが、まあそのぐらいだろうという答弁ですよね。こういうことでは私ははなはだしく科学性、論理性を欠いているように思うので、これは二〇%なんというものにとらわれずに——これもどうせ大蔵省との関係だろうと思いますけれども、これではわれわれは納得できない。だから、もっとスライド制については物価の値上がり等についても、あるいはこれは公務員給与に反映されるわけですけれどもスライド制をやっていくというふうな努力をしてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  次にまいりますが、この法律が十一月一日から施行されるということになっておるわけですね。何で十一月一日なんですか。これもおそらく理論的根拠はおありにならない。四月一日即日公布されて、ILO条約批准をされる時期からやられてもいい。十一月一日からおやりになるということ、これもどなたに聞いたらいいのか私わからぬか、労働省ですか——労働省に十一月一日の根拠を。
  64. 石井甲二

    石井説明員 施行期日につきまして十一月一日とした理由でございますが、一つは、今度の改正によりまして年金あるいは一時金あるいは特別支給金というものが変化をいたします。その限りにおきまして、現在年金の支払いにつきましては電子計算機で、いわゆるコンピューターシステムでこれをやっておるわけであります。そのデータテープの変更その他につきまして相当の時間が食うことは確かであります。現在私どもが試算をいたしましたときにおきましては、プログラムの改定を必要とするその数が約百五十本に達するわけであります。単純に計算をいたしますと百六十五日間の仕事の量があるわけでございます。それからもう一つは、現在年金の支払いにつきましては二月、五月、八月、十一月という時点におきまして年金の支払いをいたしておるわけであります。そのようなことを勘案しながら、十一月一日が妥当であろうという判断をしたわけでございます。
  65. 山田芳治

    山田(芳)委員 答えとしてはきわめて事務的であって、その該当者の立場ということを一つ考えておられないという答弁だと思います。これは厚生年金でもあるいはその他のいろいろの年金等について、すべて国会の中で繰り上がって修正されているようなそういう事態なんでありますから、十一月一日などというときでなくて、私は即日にでも行なうべきであるというふうに思うわけですが、その点どうですか。もう一ぺんひとつ。
  66. 石井甲二

    石井説明員 私どもも、できるだけ早くこれを施行するということについては法律をつくる者として当然考えることでございますが、ところが先ほど申し上げましたように、具体的にこれを事務的な爼上にのせるための絶対的な時間がどうしてもかかる面がございます。したがいまして、私どもできるだけこれに対処いたしますけれども、現在のところでは、現在の職員稼働能力その他もございますので、十一月一日の施行につきましては、これを繰り上げることが非常に困難であろうというふうに考える次第でございます。
  67. 山田芳治

    山田(芳)委員 それは事務的に困難であるということであって、実質的な内容としては繰り上げるべき要素を持っておる、こういうことですね。そういうふうに理解してよろしいな。
  68. 石井甲二

    石井説明員 一つは、先ほど申し上げましたように、年金の支払いの時点が十一月になっておるのでございまして、その両方を勘案いたしますとなかなかむずかしいのではなかろうかというふうに考えております。
  69. 山田芳治

    山田(芳)委員 だから非常に事務的なことであって、内容的な納得する答弁がいただけていない。これはわれわれとしてはもっとさかのぼってやるべきであるという意見を持っているので、あなたに問うてもあるいは答えが出ないかもしれませんが、これはまたひとつ委員会の中で、論議をしていただきたいというふうに思っております。  では、次に移ります。  労働省関係ですけれども、実はこの法案が出た段階で私は労働基準局のほうへ行っていろいろと実態を調べてまいりました。労働基準局あるいは基準署の諸君はいろいろのことを言っておりましたが、まず労務災害について、いわゆる腰の痛い、例の保育所ですね、ああいうような場合に腰の痛いということで保母さんなんかどんどんやめているという。島田療育園の例もあるように、これはどこでもそういう例が最近非常に見られている。また頸肩腕症候群といいますか、いわゆる肩が痛くなるやつですね。そういうものについて、いわゆる因果関係というものが非常に不明確であるということでなかなか認定がしてもらえないということについて非常に該当者からは文句があるし、また基準局、基準署からいっても、労災関係法令の規定の中、たとえば労働基準法の施行規則の第三十五条ですね、「その他業務に起因することの明かな疾病」というような形になっているわけでありますけれども、これが明らかであるというようなことでなしに、明らかにそうでないという反証があがらない限り職業病として認めていく、あるいは公務の上における災害と認めていくべきだということをみな言うておるわけでありますが、その点についてやはりもう少し認定基準というものをはっきりさしていくということの努力をしてもらいたいのが一つ。  あわせて、最近労働基準監督署にこういういろいろの労災の認定の問題が非常に多く出ているにもかかわらず、大蔵省の一律五%減というものをもろにかぶって、基準監督署における審査官が非常に不足をしておるということを非常に強く言っておったわけですが、われわれもそういう点について非常に御苦労だというふうに思うのですが、一体担当の課長としてそれはどう思われますか、ひとつお伺いしたい。
  70. 石井甲二

    石井説明員 まず最初の、頸肩腕症候群あるいは腰痛症に対する認定問題に関連することにつきましてお答えしたいと思います。  まず、頸肩腕症候群あるいは腰痛症という問題が最近非常に出てまいりまして、これに対して私どもも真剣に対応しているわけでございますけれども、まず第一は、頸肩腕にせよあるいは腰痛症にせよ、あくまでも基本は、業務と疾病との間の相当因果関係が認められる場合に現状として所要の補償を行なうという基本的立場でございます。特に職業性疾病につきましては、業務上、外の認定の困難なものが少なくないわけでありますけれども、その場合には専門家による十分な検討をお願いをいたしまして、その結果に基づきまして認定基準を作成しておるわけであります。またそれによっても非常に問題があるような個別の場合におきましても、専門家の御意見を聞いて業務上、外の判断をしているわけでありまして、この業務との相当因果関係ということは労災保険の、あるいは労災補償の根幹につながる思想でありますので、この点は今後とも貫かざるを得ないと思います。  ただ問題は、ただいま御指摘のように労働基準法の施行規則の三十五条にこれを明記せよというふうなお考えもあったようでありますけれども一つは、頸肩腕症候群の場合におきまして問題になりますのは、現在三十八号の「その他業務に起因することの明かな疾病」に該当する疾病として認定をしているわけでありますけれども、頸肩腕症候群については業務に起因して発生する場合と業務以外の原因によって発生する場合とがございますので、法令上、医学的に限定を加えて規定することができるかどうか、これを現在検討いたしたいというふうに考えております。ただ、腰痛症につきましては非常に問題がございますので、これを法令上に特定規定することは非常に困難ではなかろうかという考え方を現在持っておるわけでございます。
  71. 山田芳治

    山田(芳)委員 困難では困るので、そういう点をもっと前向きでやってほしいということ、保育所における問題については、その業務においてこういう症状が出ることは明らかなんでありますから、その点はひとつ強く要求をいたしておきたいというふうに思います。  次に自治省にお伺いをいたしたいのでございますが、審査会の問題であります。審査会に職員側の意見が反映されるようにしてほしいということでありますが、現在参与というものを置いて、労働者側からも二名、当局側からも二名ということでいろいろと意見を聞きながらやっているということであろうと思うのでありますが、その参与の位置づけが明確でない。すなわち、決定に参画ができるような参与制度にすべきであるということを私どもとしては考えるわけでありますし、また審査会の委員会についても、非常に技術的な人ばかりであって、いわゆる当人の、職員側あるいは被害者意見というものが必ずしも反映をされない。不服審査については書類審査を主としてやっている。こういう状態ではいわゆる職員側あるいは該当者意見が反映をされていないというふうに思うのですが、いま私の申し上げた参与の位置づけを明確にすべきだ。すなわち決定に参画できるようにすべきである。それから審査会の委員については、そういういろいろの不服申し立てがある場合には、書類審査だけでなくて、現地におもむいてでもその不服についての審査をすべきであるというふうに考えるのですが、これはいかがですか。
  72. 植弘親民

    植弘政府委員 審査会につきまして、いまの御指摘のとおりでございまして、参与というものが置かれておりまして、これは地方公務員災害の場合には基金の業務規程で明確に規定してあると思いますが、山田委員承知のように、審査会自体がいわば準司法的機関としての機能を持っておりますために、参与が決定に参画するというようなことは、やはり審査機関の審査会というものの性格からどうだろうかと思います。ただ問題は、審査会の運営が、十分に被害者といいますか、災害を受けた職員の立場に立ってという考え方につきましては私ども賛成でございますので、今後の運営について十分よく基金とも連絡をとりたいと思います。
  73. 山田芳治

    山田(芳)委員 それじゃそういう点、職員側の意見あるいは該当者意見が十分反映されるようにひとつ運営をしていくということを明確にしておいていただきたいと思います。  次に、この災害補償については地方団体がそれぞれの種類に基づいて一定の支払い準備金というものを支払い基金に納めているということであります。その額が、伺ったところでは約八十五億六千九百万程度に達しているということであるわけですが、その運用の状況を伺っていると、地方債なり金融債なり有価証券等の購入においてできるだけ利子のあがるような運用のしかたをしようとしているようでありますけれども、われわれの立場からいえばやはりもっと職員の立場に立った運営をしてほしい。そうでなければ、地方公務員災害基金というものを設けているメリットからいって、職員側からむしろ労災に入っていたほうがいいじゃないかというくらいの意見が出てくるので、もっと基金の運営というものを民主的にかつ職員のためになるような運営をすべきではないかと考えますが、これはいかがですか。
  74. 植弘親民

    植弘政府委員 いまの支払い基金の運用でございますが、やはり基金に対する地方団体からの払い込みといいますのは、全額地方団体の税金をもって払うことになるわけでございます。したがいまして、その支払い備金をいかに有利かつ安全、確実に運用するかというのは基金に課せられた重大使命だろうと思います。その意味では、いま山田委員指摘のように、いろいろと確実な有価証券等によって将来にも備えるということでやっておるわけであります。いわゆる民主的運営というおことばでございましたが、これをどういうふうにするかということは、いまのところ発足後まだ日も浅うございますから、いまのところでは備金の安全、確実性をまず第一にいたしておりますが、将来にわたりましては、相当これが多額になるという場合には、支部から基金への払い込みをどうするかといったようなこともあわせまして十分検討さしていただきたいと思います。
  75. 山田芳治

    山田(芳)委員 すでに八十五億六千九百万あるということは、はっきり言ってけっこうなことなんで、それほど公務災害がなくて、地方団体の掛け金が確実に納められておるということでありますから、まだ日が浅いということであるけれども、もしそういう状態であれば掛け金を下げていくということももちろん必要なことかもしれないけれども、むしろ基金をわざわざ置いているのですからね。労災の場合は別にどうということないわけですし、国家公務員の場合にどうということではない。地方団体の場合には支払い基金というものをわざわざ置いている。そのメリットはやはり生かしていくべきだというふうに思うわけで、まだ日が浅いからこそ、われわれはこの発足の時期に、固定化しないうちに要望をしているのであって、固定化してしまうとなかなか直すのはむずかしいのですから、だからいまのうちからその民主的な運営なりその基金の運用状況について、もちろん確実、有利であることは当然のことであるけれども職員のために使うことが確実、有利でないということは全然ないわけでありますから、その点はひとつ十分検討をしてもらいたいというふうに思います。  それから、先ほどちょっと触れましたように、労災では死亡した場合には特別給付金として百万円積み上げるということが出ているのに、こちら側にはないわけですね。いままだきまってないわけです、政令できめでいこうというわけですから。先ほど私が民間の資料の要求をしたのも、実はここに目的が一つはあるのでして——自治省に対してはですよ、ほかはもっと違う意味でありますが、自治省に対してはそういう意味があるので、政令で検討する場合に、そういった特別給付金についてもし考え方があるなら、いまここでちょっと示していただきたいと思います。
  76. 植弘親民

    植弘政府委員 いま補足しようと思いましたが、基本的には基金の支払い備金の運用はそういうことでございますが、現実にも、全般的な運営、将来にわたっての運営に支障のない限りでは福祉施設に活用いたしまして、たとえば奨学資金の貸し付けといったようなことまでだんだんと年々拡充さしていただいております。したがって、その意味では山田委員指摘のように、直接、職員といいますか、遺族、そういったものの福祉にもつながるようなことで運用を考えるべきだろうという方向においては、全く同意見でございます。  それから、いまの特別支給金の問題でありますが、先ほど申し上げました福祉施設の中で、国家公務員との均衡考えながら、労災措置に劣らないような措置を講じていくつもりでございます。
  77. 山田芳治

    山田(芳)委員 次は、たとえばおまわりさんが交通規制をやっておって、COですか、いわゆる一酸化炭素の中毒になる。あるいは学校の先生が体育を教えているときに光化学スモッグにかかる。これは一種の公害病ということになる。公害病である問題と、それから公務災害あるいは業務上の災害、そういったものの関係は一体どういうふうに考えて、どういう給付がどうなるのかという点について、これは労働省がいいのか、どこがいいのかわかりませんが、ひとつ当局からお答えをいただきたい。
  78. 石井甲二

    石井説明員 職業性疾病が同時に公害による健康被害であるような場合がございます。職業性疾病と公害による健康被害が競合するような場合どうするかということでありますが、現行におきましては各具体的な事案ごとにこれを調査鑑別をいたしまして判断をし、かりに職業性疾病が同時に公害による健康被害である場合におきましては、この前の国会において公害健康被害補償法が成立をいたしましたが、これが施行されますと、被災者は公害健康被害の補償給付あるいは労災保険の保険の給付、いずれでもこれを請求することができるわけであります。最終的にはいずれか高いほうの補償が受けられる、こういうことになるわけでございます。
  79. 山田芳治

    山田(芳)委員 その高いほうであるという根拠はどういうところにあるのですか。
  80. 石井甲二

    石井説明員 公害健康被害補償法の十二条におきまして、「補償給付を受けることができる者に対し、同一の事由について、損害の填補がされた場合においては、都道府県知事は、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。」つまり十三条がその根拠でございます。
  81. 山田芳治

    山田(芳)委員 次に自治省にお伺いしますが、いまのような場合、いずれか高いほうというわけですけれども公務災害にかかって当局側からたとえば短期給付、療養給付を受けるという場合と、それを一々認定をするためには時間がかかるわけですから、とりあえずは共済でいくわけですね、その間、その調整の方式は一体どうなるかという問題と、その手続その他は一体どうなっておるか、お伺いをいたします。
  82. 植弘親民

    植弘政府委員 共済の長期給付の問題とからんでくるわけでありますが、長期給付におきましては、公務による廃疾年金遺族年金につきましては、通常の支給割合による額のほかに公務によるということによる上積み額がございます。その公務による上積み額は、災害補償としての障害補償年金あるいは遺族補償年金と、やはり公務ということで重複するということになるわけでございますね。したがって、災害補償としてこれらの年金に相当する補償が行なわれますと、公務によって共済の長期で上積みした分だけは差し引く。これは同じ原因について、とりあえずいまおっしゃるように長期給付の中で通常の年金公務分だけ上積みしている。それを今度は他の公務災害補償のほうで支払いますから、その同額分、上積み分だけは調整で差し引く、こういうことをさしているわけであります。
  83. 山田芳治

    山田(芳)委員 そうすると、結局同じことになるわけですか。
  84. 植弘親民

    植弘政府委員 そういたしますと、公務災害補償による療養補償年金等が本人には支払われて、長期給付のほうは長期給付で一般の形で支払われるということになります。
  85. 山田芳治

    山田(芳)委員 ダブっていくのですか。
  86. 植弘親民

    植弘政府委員 それはダブりますけれども、その原因たる上積み分だけはダブらせない。
  87. 山田芳治

    山田(芳)委員 差し引く、そういう形ですね。  短期給付の場合、とりあえず共済にいくわけですわな、療養する場合。そうした場合の調整はどうですか。
  88. 山田守一

    山田説明員 共済組合の短期給付は原則として公務によらないものを対象としておりますけれども、認定が直ちに行なわれない等もございますので、とりあえずそれらも含めまして共済組合の短期給付の対象といたしまして、後に認定されました暁におきまして、共済組合から地方公務員災害補償基金のほうにその分を請求する、そういうことで調整するということになっております。
  89. 山田芳治

    山田(芳)委員 第三者から加害を受けた場合、これは労災の場合もそうですけれども地方公務員国家公務員、そうですが、とにかく本人は過失がないが他のほうから過失がある場合に、労務災害であり公務災害である、そうした場合に、第三者に対して求償権を留保できるはずでありますが、国家公務員の場合あるいは地方公務員の場合、そういう第三者から加害をされた場合の請求をされているのか。実際はどういう状態になっておるか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  90. 岡田仁

    ○岡田説明員 国家公務員の場合でございますが、現実にそういう事例はございます。ただし、これは具体的な実施としましては、債権管理の問題でございますので、直接補償法の運用ということではなくて、債権管理の問題として行なわれております。
  91. 山田守一

    山田説明員 地方公務員災害補償関係の場合で申しますと、たとえばこれは四十七年度中でございますけれども、自賠法保険に対しまして請求いたしまして収納いたしました件数が七百十七件、およそ九千万円ほどでございます。それから一般のいわゆる第三者に対しまして賠償を請求いたしまして収納をいたしておりますのが五百四十件、四千八百万円ほどあります。おおむね、そういたしました第三者による被害につきましては、一応基金のほうで補償を行なったあとで、当該災害に責任を有する者に対しまして適切な補償請求をし、収納されている、そういう状況にあると判断しております。
  92. 山田芳治

    山田(芳)委員 それは結局基金にまた戻ってくる、こういうことですね。わかりました。  関連質問が、委員長、ございますので、ちょっとお願いをいたします。
  93. 伊能繁次郎

  94. 小川省吾

    小川(省)委員 山田委員質問に関連をして、二点ばかりお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど職業病の認定の話が出ましたけれども地方公務員災害補償法を適用するにあたって、特に地方公務員の現場で職業病に類すると思われるような病気の多発の状況について、自治省としてはどのように把握をしておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  95. 山田守一

    山田説明員 地方公務員災害補償関係では、御承知のように基金が実際の補償業務に当たっておりますけれども補償災害統計の中にはそうした職業病としての分類がございませんので、詳細は把握しておりません。
  96. 小川省吾

    小川(省)委員 詳細は把握をしておられないようですが、最近における地方公務員の現場の中で、特に清掃職員ですね。清掃車を運転して、ごみを車に持ち上げるわけですね。非常に腰痛症が多発をいたしております。私の知っているある市では、二十数名の中の約半数が腰痛症で悩んでいる実態であるわけであります。さらにまた、学校給食現場は非常に高温多湿な状態でありますので、そのような患者が非常に激増をいたしているのが実態であります。そういう点について自治省はいまのところ把握をしていないし、調査をされてもいないようでありますが、そういう状況を精査をしていただいて——私は確かに職業病だというふうに思っておるのですが、それに類するような状況が多発をしておりますので、ぜひひとつ精査の上、これらに対する手を差し伸べてもらいたいという点が第一点です。これは要望しておきます。  それから第二点ですが、これは昨年のこの法案の審議の際に私は具体的な例でお伺いをいたしたわけでありますが、いわゆる成人病が最近たいへんに増加をしているわけですね。そういう点で、特に心臓疾患なりあるいはまた脳出血等と公務災害との関連でありますが、これはおそらく個別のケースによってという答弁になって返ってくるのだというふうに思いますけれども、多くの場合、心臓疾患とそれから脳出血は公務とは関係ないことだということで公務災害から退けられているケースが非常に多いわけであります。実際に公務起因性が明らかに立証できるという段階はまれでありまして、慢性疾患でありますから、一月のうちに一回ないし二回くらい医者に行って薬をもらってくるというふうな状態で、実際には公務に起因をしてその病気が加速をされているような事実があるけれども、具体的に、毎日なり一日おきなりに医者に行って、そういう状況が進んでいないということになりますと、審査会にかけても公務災害にとられないケースが非常に多いわけであります。こういう点について自治省としてはどのように考えるのか、あるいはまた、これは労災との関係で、労働省としては、公務災害と実際の脳出血なりあるいは心臓疾患との関連についてどのようにお考えになっておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  97. 植弘親民

    植弘政府委員 先ほどの御要望いただいた点もございますが、職員の健康管理問題の点につきましては、国家公務員は別といたしまして、地方公務員の場合でございますと非常にやはり不十分な点が多かったような気がいたします。労働省のほうでも安全衛生法を特につくられた経緯もございまして、私どもといたしましても地方団体に対しまして、そういった健康管理の問題でもっと重点を置くべきであるという指導を強めているところでございます。したがいまして、先ほど言われましたような職業病類似の問題について職業病認定かどうかということになりますと、これはなかなか技術的にむずかしい点もございましょうけれども、そういった実情の把握には十分注意をいたしたい、このように考えております。  それから、いまの心臓病疾患の問題でありますが、後ほど労働省のほうからお答えあるかと思いますが、やはり先生がおっしゃいましたように、私も実は私の非常に親しい友人でその問題がございまして、労災審査会にお願いしたことがあるのですが、ケース・バイ・ケースといいますか、何か非常にむずかしい問題のようであります。私どもがしろうとで考えますと、当然公務に起因したのじゃないかと思われる場合でも、因果関係がはっきりしないといったようなことでいろいろと問題の多い点であります。労災のほうで今後そういうものをどういうふうにお考えいただくのか、そこらの点とあわせまして私どももその点は十分に今後検討しなければならない問題であろうというふうに考えております。
  98. 石井甲二

    石井説明員 脳出血あるいは心臓病その他の問題につきましては、非常にむずかしい具体的な問題がございます。いま自治省からお答えいたしましたように、すぐれて非常に個々具体的な問題をどう判断するかという問題にかかるわけでございますが、特にその勤務の状況の実態をやはり正確に把握をいたしまして、業務上との相当因果関係を真剣に追及することでその被災者を保護する立場に徹していく必要があると思います。したがいまして、いま自治省から申し上げましたと同じように、やはり健康管理あるいは職場の環境改善という問題を含めまして、今後とも前向きに対処していきたいというふうに考えております。
  99. 小川省吾

    小川(省)委員 これは特に要望いたしておきますが、私も長いこと審査会の参与をやっておったわけでありますが、審査会の委員といっても非常勤であります。たいがいこの中にはお医者さんが一人入っているわけですが、医学的な立証といいますか、明らかに公務起因性を立証できるような資料というのはほとんどない場合が多いわけであります。そうなってまいりますと、いわゆる公務災害にとられないケースが非常に多い。しかし実際には、たとえば最近の土地取得に当たるところの職員でありますとか、あるいは運動会前あるいは受験期における学校の教師でありますとか、非常な繁忙期における公営交通の乗務員でありますとか、そういうことで公務に起因してその病状が加速をせられているケースが非常に多い。しかしまた慢性の病気でありますから、その間に医者にはかかっていないということになりますと、それだけによって公務災害からけられてしまう、こういう状態がたいへん多いわけであります。ですから、非常にむずかしい個々のケースということになるのは当然でありますけれども、ぜひそういう点についての十分な救済のできるような手段というものを何らかの方法によってできるような、あるいは家人の証言であるとか隣人の証言であるというふうな形で何らかの手だてを講じなければ、脳出血なりあるいは心臓疾患の場合には公務災害でほとんど適用を受けないというケースがたいへんに多いので、特に強く要請をいたしておきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  100. 伊能繁次郎

    伊能委員長 林百郎君。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 最初に、国家公安委員長としての町村さん、それから自治大臣としての町村さんに、実は本日相当の強い地震が起きまして、これによって相当広範囲に被災地域が及んでおると思いますが、大体その被災地域はどの範囲に及んでいるのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  102. 町村金五

    ○町村国務大臣 実はまだ正確な情報を私ども確認をいたしておるというところには至っておりませんけれども、大体午後三時までに集まりました情報をもとにいたしまして一応御報告を申し上げておきます。  けさの八時三十三分にマグニチュード六・八という震度の伊豆半島沖地震というものが発生をいたしたわけでございます。交通、通信の障害等のために現地の状況確認に非常に手間をとっておるわけでありますが、県の災害対策本部等を通じて当庁あてに報告のございました被害状況、救出状況は大体次のような状態でございます。  一番激しいところは伊豆半島の南端の南伊豆町というところでございます。場所は非常に急峻な地帯でございまして、がけくずれが至るところに発生をいたしたというような状態でございまして、現地へ救出部隊が参りますのにもたいへん難渋をいたしておる。しかもきょうは天候がたいへん悪うございまして、気流等の関係もございまして、ヘリコプターがまず飛んでいかなければならなかったのでありますが、これも行かれないというような状態でございます。現在まで、三時までに判明をいたしました被害状況は、死者一名、行くえ不明二十八名、負傷者十六名、全壊した家屋三十棟、半壊した家屋が十一棟ということに一応いまの段階では報告を受けておりますけれども、さらにこれがどの程度増加いたすものか、確たることは確認することが現在はできません。通信連絡の方法といたしましては、無線はすでに開通をしたそうでございますが、有線電話等はなお回復をいたしていない。現地には警察部隊が山越えで大体二百三十五名程度入ったというふうに報告をされておる状態でございます。  いずれにいたしましても、目下自衛隊の出動も仰ぎ、警察も大体五百名程度の者を出動をさせるということにいたしておるのでございまして、目下、何と申しましても被災者の救出、救援活動に全力を注がなければならぬ。さらに交通路の回復を急ぐということで、いま鋭意県の救助対策本部が中心となりまして応急措置をいたしておるというのが、いままで私どもの手元に入りました災害状況でございます。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 けさ起きたばかりで、まだ十分な情報も入らないでしょうし、万全の措置についてもまだ十分固まっていないと思いますが、とりあえずの救済措置はどのようになさるつもりか、やや長期にわたってはどんなような救済措置をとられるか、それがもしある程度固まっていたら御報告願いたいというように思うわけです。
  104. 町村金五

    ○町村国務大臣 本日午後四時から、中央防災会議というものがございますが、これが主宰のもとに各省庁の防災担当官の連絡会議を開きまして、まず災害状況把握につとめますとともに、今後の対策を進めることについての打ち合わせをいたしておるところでございます。  何と申しましても、先ほど申し上げましたようにまず罹災者の救出ということに全力をあげるということが当面の第一の仕事でございます。さらに、罹災者ではございませんでも、たくさんの地域住民の生活を守っていくという意味におきまして、何と申しましても道路を啓開していくということが重要なことでございますので、そういった点については地元としても懸命に努力をいたしておるところと存じますが、中央防災会議としてもそういった点にできるだけの協力をいたしていくということで当面対処いたしておるところでございます。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは町村さん、国家公安委員長ですし、また自治大臣の立場にもおられるわけですから、十分この被災者の救済についての万全の措置をとられると同時に、財政的にも自治体の負担等を十分見てやって、倒壊した家屋等の復旧、それから道路の復旧あるいは断絶された通信網の復旧等についてひとつ万全の措置を先頭に立ってとられるように要望して、またいずれあらためてこの点については、質問する必要がありましたら質問いたしたいと思います。きょうはこの程度にしておきます。  それでは次の質問を続けてまいります。  本案について質問をいたしたいと思いますが、まず最初に人事院お尋ねしておきますが、人事院は本年の二月二十日に「国家公務員災害補償法等の改正についての意見の申出」というのを行なっております。それに基づきますと、今回災害補償法の改正が行なわれることになっておるわけでありますが、この人事院申し出の中で、人事院は、妻と子二人、計三人の標準受給者に対する災害補償給付率所得の五〇%に達するよう、また労働能力を全部喪失した者に対する給付については所得の三分の二を下らないよう、ILO百二十一号条約、勧告が要請していることもあり、この要請の水準まで引き上げることとする、このような改善を行なう、こういうようにあるわけでありますが、このたびのただいま議題となっております地方公務員災害補償法の改正は、この人事院申し出あるいはILOの要請を満たしたものとお考えになるかどうか。その程度にもよるわけですが、まず、人事院がこういう申し出をしておりますので、それに比べてどういうようにお考えになるのか、ことにILOの基準に照らしてどうお考えになるのか、意見をお聞かせ願いたいと思います。
  106. 岡田仁

    ○岡田説明員 今回人事院から意見申し出ました内容でございますが、具体的に申し上げますと、先ほど先生、妻と子二人の場合五〇%とおっしゃいましたけれども、それは妻と子一人、遺族が二人の場合に五〇%という数字でございます。それから障害補償年金につきましては、先生おっしゃったとおりでございます。  この点につきましては、もちろん十分かどうかという点になりますと、公務のためになくなられた御遺族の方あるいは障害を受けられた方の立場を考え、これで十分だというようなことは別の問題として残ろうかとは思いますが、ILO条約との関係で申し上げますと、今回の改善によりましてILOの百二十一号条約水準を上回りまして、さらに望ましい線とされている百二十一号勧告の線におおむねそろった。具体的には、障害補償年金の三級の場合、これは全部の所得能力の喪失の場合でございますが、この場合に、ILOの勧告で三分の二程度ということをいっております。それに線がそろっております。それから遺族の場合につきましては、勧告では直接ただいまの遺族二人の場合の数字はいっておりませんで、最大が三分の二ということでございますが、これも遺族五人という場合を想定いたしまして、ILO百二十一号勧告のいわば望ましいと思われる三分の二の線にそろえたということでございます。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 これは標準受給者給与をどのように計算するか、給与の実態をどのようにとらえるかということによって、あなたのような意見も出るだろうし、まだ実質的にはILOの百二十一号条約水準には到達してないという見解も出ると思うのですが、私は、日本の国における、地方公務員も含めて、公務員遺族補償にしても災害補償にしても、その算定の基礎になる平均給与額をどういうように計算するかということによって非常な違いが出てくると思うのです。  その意味で、特殊の給与体系といってもいいような日本の国家公務員並びに地方公務員給与として、平均給与額の中に臨時給与、いわゆるボーナスといいますが、これを含むか含まないかということがたいへんな問題になると思うのですね。日本ではこの臨時給与の占める割合が諸外国に比べて非常に大きい、だからこれを入れるか入れないかでこのたびの改正案についての評価もたいへん違ってくると思うのです。  たとえば人事院給与局の研究課長が本年の一月十八日付で「退職年金制度改正について」という一文を発表しているわけですが、この中で、「退職年金の給付水準は、一見諸外国と均衡がとれているように見えるが、賞与等のいわゆる特別給が通常の月給の年額の四割を占める我が国の特殊事情を考えると、」「この点を考慮する必要があると思われる。」こう言っているわけですね。地方公務員給与の中で臨時給の占める割合をどの程度に見ておるのか。人事院給与局の研究課長の発表では、平均すれば月の給与額の四割というように、あるいは月給の年額の四割といってもいいと思います、こういうように言っているのですが、この点は人事院としてはどういうように考えられているか。また自治省としてもどう考えているのか。これは特殊な給与体系ですから、この点をどう見ているか、ひとつ考えを述べていただきたいと思います。
  108. 岡田仁

    ○岡田説明員 確かに先生いまおっしゃったような問題がございますが、補償の基礎となる給与をいかにするかという点につきましては、現在労働基準法あるいは労災保険法で、三カ月をこえる期間ごとに支払われる給与あるいは臨時に支払われる給与については算定の基礎としないというたてまえをとっております。したがいまして、国家公務員災害補償法の場合には労働基準法あるいは労災補償法との均衡をとるべく法律上義務づけられておりますので、私ども限りでにわかにこの臨時給をどうするかという結論はなかなか出しにくい問題でございますが、労働省としても、聞くところによればこの問題につきましては将来の問題としていろいろ検討しているというふうに仄聞しております。そういう点で、私どもも決して現在の状況が十分であるというふうには考えておりません。そういう労働省検討の結果も見守りながら、将来の研究課題ということで取り組んでいきたいと思います。
  109. 植弘親民

    植弘政府委員 先生よく御承知のように、地方公務員給与体系自体が国家公務員給与体系に準ずることになっておりますので、いま御指摘のような臨時給を入れた場合における率とかいうものはほとんど国家公務員の場合と変わりません。中断で若干の相違はあるといたしましても、全般的に言えばほとんど国家公務員並みでございます。したがいまして、この平均給の扱いそのものも、問題はあるといたしましても、いま人事院から御説明ございましたように労災、国公災害との関係もございますので、あわせて検討させていただきたい、このように考えます。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 将来の検討はけっこうですが、給与の年額の四割程度を臨時給与、いわゆるボーナスが占めているという、この四割程度というのは大体認められる割合としてよろしいのでしょうか。人事院自治省、どちらでもけっこうです。
  111. 岡田仁

    ○岡田説明員 大筋においては四割程度ということだと思います。と申しますのは、現在十二カ月のきまった定期的の給与に対しまして、昨年まで四・八カ月、ことしは〇・三ふやしておりますので五・一というようなものが臨時給として支払われることになりますので、おおむね四割ということでございます。ただ厳格に計算いたしますと、災害補償平均給与額の基礎になる給与の中には、期末、勤勉手当の算定の基礎に入らないようなものも含まれております。特に超過勤務手当というようなものも含まれるということになりますので、必ずしも厳格に四割ということにはなりません。個別的なケースで多少の差はあるかと思いますが、大筋においては先生指摘のとおりでございます。   〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 大体自治省も同じような考え方だと思います。国家公務員地方公務員も同じですけれども、この臨時給が災害補償遺族補償額の算定の基礎になっていないということになりますと、このたびの地方公務員災害補償改正につきましても、実質的にはILO百二十一号条約の勧告の要請を少なくとも満たしたとは言えないように思うわけです。これは将来どうしても改善していく必要があるように私は思います。  言うまでもなく、国家公務員にしても地方公務員にいたしましても、臨時給は決して余分な金、生活に必要な対価としての給与のほかの金だというのではなくて、日本の国ではこのボーナスが生活を維持する上で必要欠くべからざる部分になっているわけなんですね。この臨時給を除いて、そしてILO条約水準に達したといっても、これは国家公務員にしても地方公務員にしても納得できるものではないというように思うわけです。ですから、臨時給与を入れない、ボーナスを入れない給与を基準にしてILO条約水準に達したからというような先ほどの人事院の当初の答弁では、これはやはり実際、国家公務員にしても地方公務員にしても納得ができないのじゃないかというように思うわけですね。ですから、今後の改善をこの方向に努力すべきだと思いますけれども、この点について将来の問題としてはどういうように考えるでしょうか。それは多ければ多いほどいいわけなんですけれども、しかし、実際、ボーナスが生活を維持するために必要な給与の一部になっているわけなんですから、やはり災害補償の基準給与もこれを含めたものにするという方向で努力すべきだと思いますが、この点はどういうように人事院並びに自治省としては考えているでしょうか。
  113. 飯野達郎

    飯野説明員 ILO条約の中におきましては、その所定の賃金というような表現を使っておりまして、それは各国の国内法によってきめるというような考え方をとっているように思いますので、確かに先生おっしゃいますように、実質的にどうかということについては、それぞれの国の事情によって実質的なものであるかあるいは形式的なものになるかということはございましょうけれども、やはり先生おっしゃいましたように、実際にそういうような期末、勤勉、ああいうような手当というものは生活費の足しになっている現状におきまして、やはり先ほど労働省で言っておりましたように、将来の問題としてはやはりそういう賃金の中に含めるような方向で検討されるべきものではないかというように私も考えております。
  114. 植弘親民

    植弘政府委員 いま人事院からお答えしたと全く同じでございますが、給与をどのようにきめるかということにつきましては、いろいろ先進諸国でも差があるようでございます。もちろん、わが国のように臨時給にある程度ウエートを置いているところもないわけじゃないようでありますけれどもそこらのところにおいて、御指摘のように実質的な意味における所得というものは相当格差があるのじゃないかということは想像できるところであります。その意味では逐次改善させていただきまして、今回も、ILOの場合は遺族の場合ですと一応三人を標準にいたしておりますが、二人について五〇%ということにさせていただいておる点からいいますと、ILO考えている最低基準といいましょうか、標準といいましょうか、これはある程度充足したのじゃないだろうかという感じもいたしますが、やはりこういった災害補償というものを、公務に起因するものでございますだけに、重視しなければならないという点はまことに御指摘のとおりでございます。十分関係省庁の御意見も聞きながら、今後とも検討させていただきたいと思います。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 私の申し上げることが、ただ額を多くするための一方的な理屈だということではなくて、実は徴収される費用のほうを見ますと、これはいわゆる地方公共団体の負担分ですが、地方公務員災害補償法の第四十九条の三項で費用負担の算定基礎になっている給与とは、退職手当を除いた、「名称のいかんを問わず、地方公共団体により支払われる給与の総額」こういうようになっておりますので、この費用負担算定の基礎になる給与の総額には臨時給が含まれていると思うのですが、この点は自治省、どうでしょうか。
  116. 植弘親民

    植弘政府委員 御指摘のように、その点は入っております。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、費用徴収のほうではそれを入れて、それで支払われる補償のほうの基準の給与のほうにはそれを含まないということは、この点からも矛盾がありますので、将来やはり統一する方向で努力されるのが当然だというように思って質問しているわけです。この点は改善する方向で努力されると言われておりますので、ひとつぜひそれを進めていただきたいと思います。いろいろの事情もおありでしょうし、しますが、この点はひとつぜひそういう方向で努力してもらいたいと思います。  その次に、給付額についてでありますが、これは同僚議員からももう出ておりますのでごく簡単に聞いておきたいと思います。  昭和四十七年の平均給付額は、障害補償年金が約三十八万四千三百八十四円ですか、これが今度四十三万円になる。それから遺族補償年金が、四十四万七千百三円が約五十一万円になる。障害一時金が、三十九万三千二十一円が約四十四万円になるというようになっておりますが、この額が公務災害障害を受けた人や遺族の生活を保障すると考えられるかどうかという点なんです。特に非常にインフレが進んでおりますし、物価の上昇率が毎月毎月非常な大きな率で高まっていく。たとえば卸売り物価が三〇%も対前年度比上がっていくとか、消費者物価が二五%前後も上がっていくとか、こういう特殊な情勢に今日なっておるわけなんです。ですから、実質的な補償額というものは切り下げられる方向に行くわけなんです。したがって、ここで自動スライド制制度として、物価がこれだけの一定の率が上がった場合には補償の支給額もこのように上がる、こういう制度的なものにしておく必要があるのではないかというように考えるのですけれども、この点についてはどういうようにお考えになっているでしょうか。これは自治省でもあるいは人事院でもどっちでもけっこうですが、どうもそうしていかないと、最近のように物価が非常にかけ足の状態で上がっていくことになりますと、ちょっと無理ではないかと思います。一定の率まで物価が上がった場合はスライドしていくということにしないと、制度的にそうしていかないと無理じゃないかというように思うのです。
  118. 岡田仁

    ○岡田説明員 いまの自動スライドの問題でございますが、現在国家公務員について行なわれておりますのは、物価ではなくて給与スライド、それも本人の平均給与額の基礎になっております等級号俸というものを基準にいたしまして、その等級号俸がどれだけ上がったかということでやっております。その意味では、物価スライドよりも、最近の給与の上がり方というものを勘案いたしますと実質的に有利な面もございますが、先生おっしゃいましたような、自動的に上がるというようなところまでは必ずしもいっておりません。そういう点につきましては、現在の方法についてさらに今後いろいろな面から利害得失等を考えつつ検討を加えていきたいと思います。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 これは災害補償法の五十七条には、「基金の行なう年金たる補償の額については、国民の生活水準地方公務員給与、物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合」「すみやかに改定措置を講ずる」ということが言うまでもなくあるわけなんですが、これによって措置をとられたことがあるのかどうか、あるいは具体的にはどういうようにこの条文を実施なさっているのか、この点について見解をお聞きしたいと思います。
  120. 植弘親民

    植弘政府委員 直接にはその規定を動かしておりませんが、実際問題といたしましては平均給与額のアップ、こういったものを行ないまして、これは大体労災なり国家公務員災害とはずを合わせておるわけでありますが、いわばスライド的に改定さしていただいております。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、先ほどの人事院の答弁にも、給与を基準にして、給与のベースアップがあるからそれに従って補償額も上がってくるということになっていますが、この五十七条を見ますと、給与だけでなくて、補償の額については「物価その他の諸事情に著しい変動」ということがあるわけなんですね。だから当然、物価が変動した場合には、ことに今日のような、今日はやはり「著しい変動」と言っていいと思うのですけれども、そういう場合には「すみやかに改定措置を講ずる」とあるので、給与だけを要因として、それに一定の率をかけた補償だけでは五十七条の精神にも沿わないと思いますので、今後はスライド制を法制化、制度化していくという方向ですね、要するに地方公務員災害補償法の五十七条をもう少し具体的に制度化していくことが必要ではないか。特に今日のようなこういう激しいインフレあるいは物価の値上がりのときにはそのことを痛切にわれわれ考えるわけですが、この点については、もう一度お尋ねしますけれども、将来どういうように考えられますか。ただ給与だけを基準にして、機械的にそれに対する一定の率の補償というのでは、少なくとも五十七条を見ただけでもそれで足りるということにはならぬと思うのですがね。どうでしょうか。
  122. 植弘親民

    植弘政府委員 スライド制を採用する場合に、賃金スライドによるか、もしくはそういった物価スライドによるかといった、いろいろと方式があると存じます。これを広い意味におきます社会保障的な立場で考えますと、すでに御審議賜わっております共済年金なんかと同じように、どういうふうにこれを制度化するかという問題になります。いま御指摘のように、最近における物価というものが異常な高騰を示していることは事実でありますが、制度として定立させますだめに物価だけによるのがいいのか、給与は物価等も当然考えながら実際に人事院勧告等によりまして措置されておりますから、恒久的な制度樹立にあたってどちらをとるかということになりますと、これはやはり相当検討さしていただく必要があろうかと思います。趣旨といたしましては、できるだけ実態に即するような形で改定はさせていただく、こういう考え方でおります。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、給与か物価か、二者択一的にしろと言っているわけじゃないのです。この条文を見ますと、「給与、物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、」「すみやかに改定措置を講ずる」こうありますから、給与が諸要因を含めてベースアップされているんだからそれを基準にすればいいんだということだけでは、少なくとも五十七条の精神が生かされたものにならないじゃないか。将来は給与のほかに、物価その他の経済事情に著しい変動を生じた場合、それにスライドするような制度を、もう少し緻密な制度考えていく必要があるのではないか、こういうことを言っているわけなんです。それはおわかりでしょう。——わかっているそうですから、それなら次の質問に移ります。  次に、遺族補償を受ける遺族の要件についてでありますが、これが非常にきびしいように思うわけです。特に遺族が夫あるいは父母、祖父母の場合は、年齢が五十五歳以上でなければ年金が受けられないということになっているわけなんです。言うまでもなく、遺族補償の一時金としては千日分というものもあるわけですが、共済年金にも年齢要件が同じようにありまして、この年齢要件を満たすまで停止されて、五十五歳から支給されるという制度があるわけです。ところが災害補償のほうは死亡の時点だけが問題にされて、たとえば死亡時にその夫、父母が五十四歳以下であるならば遺族一時金として給与の千日分だけで終わってしまうということになっているが、この年齢要件をはずすなり、あるいは権利保留の制度を取り入れて、それじゃ五十五歳になってから私は年金を受け取るようにいたします、そういうような権利留保の制度災害補償の面でも考える必要があるのではないかと思いますが、この点についての改善は何か考えておいででしょうか。
  124. 岡田仁

    ○岡田説明員 ただいまの問題につきましては、人事院といたしましても問題意識を持っていろいろ内々の、と申しますか、検討はいたしておりますが、公務災害補償はいわゆる一般の社会保障制度とどういうような関係に位置づけられるべきものかというようなところに基本的な問題があろうかと思います。したがいまして、一般の社会保障制度の場合には先生いまおっしゃったような制度が通常ではないかと思いますが、災害補償につきましては、本人が災害を受けて死亡しあるいは障害を受けた場合、稼得能力に応じてそれを補てんするというたてまえをとっております。その限りで、やはり現在の考え方というものは一般の社会保障とは多少違った性格のものがあるのではないかということで、現在のような形になっておるということでございます。しかし、これにつきましてはなお、これはひとり私どもだけの問題でございません、労働省自治省、みな関係するところでございますが、今後の検討課題として私どもも引き続き検討を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 これは大臣、どうでしょうかね。災害をどういうように位置づけ、どういうように評価するかということにかかっているというのですが、遺族補償の場合、遺族の者にとっては働き手をなくしてしまう、五十四歳までいって、なくなってしまったというような場合には、一応権利を留保して、そして五十五歳から年金を支給するように、それまでの掛け金は受け取る一時金から一定のものを差し引くという形もあるいはあるでしょうし、要するに権利を留保して、じゃ私は五十五歳から年金という制度補償をしていただきます、それまでは一時金を受け取ることを留保しておきます、こういうような制度を設けてやったほうがいいと思うのですけれども、こういう点についてどうでしょうかね。
  126. 町村金五

    ○町村国務大臣 やはりこういった制度をつくっていく場合には何らかの一つのはっきりした基準が必要であろうということでいまのような制度になっておるのではないか、こう私思うわけであります。いま林委員指摘になりましたような、年がわずか一歳か二歳で扱いに非常な差が出てくることは確かにおかしいというお感じ、たいへんごもっともだというふうには思いますけれども、一面やはりこういう制度というものは一つの基準を設けて進めてまいりませんと、次第にその辺から、それではもう一つ、もう一つといったようなことも起こってまいりますれば、おのずから基準がないということにもなりかねないわけでございましょうからそういうことにいまなっておるのじゃないかと思いますが、これは関係省のほうでなおひとつ検討しようということでございますから、私どももそういったものの検討にまかせたらどうか、こう考えております。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 これはちょっと私の質問が正確でなかったので答弁も正確な答弁でなかったかと思います。公務員が死亡したときに、遺族補償を受ける夫、父母が五十四歳以下であった場合、一年待ってやって、そして年金を支給するようにしてやる。要するに権利保留の制度。要するに、年金を受ける側の者が五十五歳になっていない、五十四歳だというような場合に、それじゃ五十五歳になるまで権利を保留しておく、それで一時金の支給も保留しておく、こういうような制度考えられないものかどうか、こういうことなんですが、これは自治省、技術的にどうでしょうか。
  128. 植弘親民

    植弘政府委員 先ほど人事院補償課長からもお答え申し上げましたが、やはり公務災害補償制度というものと、いわばいま先生の御指摘の若年停止と申しますか、これは共済制度では採用されているわけであります。立て方の相違なんでございますが、おっしゃるように、具体のケースといたしましては、そういうふうにある程度若年停止して将来に備えるということも一つの方法であろうかと思います。そこらのところも踏まえまして、もちろん労災のほうは若干扱いが違うようでございますけれども労災の扱い方が現実にどのようにうまく機能しておるか、そういうことも研究さしていただきまして、人事院と一緒に勉強さしていただきたいと思います。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは将来の制度としてひとつぜひ研究していただきたいと思います。遺族の者にとっては、やはり長期にわたって継続的な補償を受けるということのほうが好ましいかとも思われる場合がありますので、そういう場合には権利を保留するというような制度をぜひ研究していただきたいと思います。  それから次は、やはり職業病の問題ですが、これももう同僚議員が質問をいたしましたので、私もまとめて質問をしておきたいと思うのですが、地方公共団体の職場でいま全国的に職業病、だれが見ても常識的にいって職業病と考えられるものが多発している。とりわけ保育所の保母さんだとかあるいは清掃労働者だとかあるいはキーパンチャー、学校給食調理員等の、先ほど山田委員も言われましたが、頸肩腕症候群あるいは腰痛等が多発しているわけですが、これは非常に重大な問題になっておると思うわけです。因果関係の問題、いろいろあると思いますが、この実態について自治省は調査したことはあるのですか。
  130. 山田守一

    山田説明員 先ほども申し上げましたように、地方公務員災害補償の実施機関であります基金におきまして統計を出しております。その統計の中に一応職業病として掲げられたものもありますけれども、それは非常に典型的なものでございまして、件数がきわめて少ないわけでございます。たとえば昭和四十七年度でございますと九件差上ておるわけでございます。それ以外、現在職業病として確立されておらない、したがって職業病としての取り扱いも受けておりませんけれども、先ほど来問題になっておりますように、非常に因果関係もあるのではないかという議論の行なわれております、たとえば先ほどありました清掃業者の腰痛症、それから頸肩腕症候群、そういうものの件数は一応それぞれ出ております。たとえば頸肩腕症候群ですと六十三件、腰痛症ですと千五百七件、そういうものが出ております。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 この基金が調査をしたということですが、それでは参考までにその資料を当委員会へ提出していただきたいと思います。委員長、これは非常に重要な問題になっておると思いますので……。  私たちとしては、頸肩腕症候群だとか腰痛というものはやはり職場と密接な関係がある、因果関係がある。因果関係がないというなら、むしろ支給する基金のほうが、因果関係がないという立証をそちらのほうがすべきだというように私は思うわけです。私は一応職業病と呼びますが、こうした職業病について、基金では公務による疾病としての認定をしておらないのが大体現実のようでありますが、これは公務員労働者は非常な大きな不満を持っているわけです。たとえば一日に何百回となく立ったりすわったり、あるいは子供を抱いたり、子供と姿勢を合わせるために中腰になる時間の多いような保母さんだとか、本来二人でやる仕事を一人でやらされるワンマンバスの運転手さんだとか、その他そういうような類似した仕事に携わっている人に腰痛だとかあるいは眼精疲労というのですか、目の疲労などが起こるのは、これはもう常識的に考えて当然だと思うのです。ところが、こうした、だれが考えても職場の状態と因果関係があると思われる職業病に対して、公務内容との関連性が立証できないということで公務災害と認定されておらないわけですが、これは国家公務員としても地方公務員としても非常に大きな不満を持っていることは間違いないわけです。  この公務災害の認定が、基金の通達を見ますと、そのワク内にあるものだけを公務災害として、それ以外は一切認めない、そういう通達が出されておるわけでありますが、やはり公務災害の認定の範囲についてはもっと実情に合ったものにする必要があるのじゃないか。職業病は当然のこと、その他すべての災害について、基金側が公務外に起因するということの立証が明確にできないような場合は公務災害として扱うというような方向で、将来この適用範囲をむしろ広げていく方向を考えていくべきじゃなかろうか。これはILO条約を見ましても、反証がなければ業務上とする、こういう原則もあります。この点については、どうしたら公務災害の適用を受けないかという、むしろはずすほうに努力をしていて、なるべく広範囲に職場の仕事と因果関係があるのだという方向で、適用範囲を広げていくという方向で進んでおらない、そういう方向で認定の努力をしておらない、こう一般公務員は見ているのが実情だと思うのですが、こういう点については、人事院並びに自治省としてはどういうように考えておりますか、ひとつ意見を聞かしていただきたいと思います。
  132. 岡田仁

    ○岡田説明員 ただいまの職業性疾患につきましては、いま先生指摘のとおり、反証のない限りは公務上とするという取り扱いを現在しております。これは現在人事院規則で職業性疾患を列挙いたしまして、それに基づいて通達を出しまして、その中で具体的に取り扱いを定めております。  ただ、キーパンチャーの書痙等と違いまして、腰痛の場合には、現在まだこれが職業性疾患ということになっておりませんので、腰痛につきましては公務上、外の判定が非常にむずかしいという問題がございます。災害性のものはともかくとしまして、徐々にきたような場合には、これが公務とどういうような関係があるかというのは非常にむずかしい問題がございますので、私どもとしましては、専門の医師なり何なりに見せて、個別的なケースで判断するように各省を指導しております。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと答弁が不明確なんですが、立証責任は、当該の、これは職業病であるということを申し立てた公務員が、職場の仕事と自分の病気とが因果関係があるという立証をしなければ公務災害として認定しないというのか、あるいは基金側が、それは職場とは関係がありませんという立証をされない限り因果関係があると認定するというのか。要するに、立証責任はどちら側に置いておるというのか、その点をはっきりさしてもらいたい。
  134. 岡田仁

    ○岡田説明員 国の場合には、補償を国が一方的にするたてまえでございますので、反証がない限り、ということは挙証責任は国のほうにございます。したがいまして、特にそういう反証がない限りは国が補償するというたてまえでございます。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 じゃ地方公務員のほうはどうなんですか。
  136. 植弘親民

    植弘政府委員 地方公務員の場合も同じでございます。職業病に認定されますと、特に反証がない限り公務上の災害となります。これは人事院規則で職業病を列挙いたしておりますが、それはそのまま地方公務員の場合も職業病ということでやっておるわけでございます。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、いま私の申しましたような、こういうのは職業病の範疇に入れてあるのですか。たとえばキーパンチャーの頸肩腕症候群だとか——腰痛については問題があるとして、こういうものは入れてありますか。
  138. 岡田仁

    ○岡田説明員 ただいまのキーパンチャーの頸肩腕症候群というものは職業性疾患に入っておりますが、腰痛はまだ現在職業性疾患というふうにしておりません。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこういうことですか、法令で規定されておるいわゆる職業病については、そういう病気だという認定があれば、そうでないということを国並びに地方自治体が立証しない限り災害補償の対象になる。しかし法令で規定されているもの以外の、たとえば腰痛というような場合は、これは職場との因果関係補償を適用される側が立証しなければ認定はされない、こういうことになるわけですか。何か、あなたの言う、国が一方的に認定するから立証責任は国にありますということがよくわからないのですが、法令できまっているものは、そうでないということを国のほうで言わない限り当然適用される。しかし法令で定められておらないものを職業病として特に認定するような場合は、それは立証責任が被適用者側にあるのだ、こう聞いていいのですか。
  140. 岡田仁

    ○岡田説明員 私の先ほどの説明が必ずしも十分でなかったので御迷惑をおかけしましたが、基本的な考え方としましては、職業性疾患として定めてあるものもそうでないものも、認定についての考え方というものは変わっておりません。ただし、職業性疾患として列挙してありますものは、その仕事と疾患との関係というものが、その仕事をしている場合にそういう疾患になるという蓋然率がきわめて高いというのを、たまたまこれは医学的にそう判断されたものを職業性疾患としているということでございまして、わかっていないものにつきましても、個別的な蓋然率はそれほど高くはございませんけれども、具体的な個々のケースに応じまして、相当因果関係ありということであればこれを公務上と認めるという考え方でございます。したがいまして、基本的に、法令で列挙したから違うということではございません。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に微妙な点でよくわからないのですが、たとえば法令で定められておらないような腰痛だとか、眼精疲労というか、目が疲れているとか、そういうような場合、自分はこういう職業に毎日携わっているので腰痛がいたします、眼精の疲労があります、災害補償の対象にしてもらいたい、こう言った場合は、その毎日やっておる職業とそういう病気との因果関係というのは、やはりそれは、法令できまってない範疇のものについては公務員側がそれを立証しなければならないということになるのですか、そうでなくてもいいのですか。
  142. 岡田仁

    ○岡田説明員 国家公務員災害補償法のたてまえは、国が補償するというたてまえでございます。本人が公務上の災害であるということで請求してそれを認めるというたてまえはとっておりません。したがいまして、本人に挙証責任があるというようなことではなくて、あくまでも実施機関がその災害につきましてあらゆる証拠その他を掘り出す——掘り出すということばが適当かどうかわかりませんが、事実をあくまでも確かめまして、そうして因果関係ありというふうに判断すれば公務上とするということでございます。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると実際は、あなたは掘り起こすとかなんとかということを言っていますが、掘り起こす場合に、いろいろな資料を労働災害の適用を受けたいという公務員のほうが提供する責任があるのじゃないですか。そして国または地方公共団体が認定した場合に職業病になるのであるから、したがって、法令できまったもの以外の疾病が職場と因果関係があるというのは、それは適用を受けたいという公務員側に実質的には立証の責任が転嫁されるということではないでしょうか。だから私の言うのは、これは職場のこういう仕事と因果関係があって私は腰が痛い、あるいは目が非常に見えなくなりましたというようなことを言った場合に、いやそれは職場の毎日の仕事とは関係がないのだという反証がない限りは、職業と因果関係があると見てやる、要するに労働災害の対象として見てやる、そういうような姿勢をとるべきじゃないか、こう私は言っているのです。どうも答弁がかみ合わないのですけれども、どうなんでしょうか。
  144. 岡田仁

    ○岡田説明員 確かに現実には、ただいまの頸肩腕症候群あるいは腰痛というようなものにつきましては、これは外見的にわかりませんので、そもそもは本人がそういう症状のあることを申し立てるということになりますが、それを受けて国のほうでは、今度は相当因果関係があるかどうかというようなことをあれするために事実をいろいろ調査するということになろうかと思います。
  145. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、これで論議を幾ら重ねていても尽きませんので、私のほうで希望を申し上げておきます。  公務員の皆さんが、実際に腰が痛くもないし、あるいは目が疲れてもいない、あるいは頸肩腕症候群——これは法令の中に入っているそうですが、でないものを無理に、自分はこういう疾病だからと言って、災害補償の対象になりたいために申し出をするということはちょっと常識的に考えられませんので、そういう申請があって労働災害補償をしてもらいたいという要請があった場合には、なるべく広範囲にそれを認めてやるようにして、そして基金のほうで反証ができない、国あるいは地方公共団体——まあ地方公共団体の場合は行政指導の立場にあると思いますが、それが反証ができないという場合以外はできるだけ労働災害の対象にしてやるという方向で努力するということをここで約束できますか。
  146. 植弘親民

    植弘政府委員 どうも先生の御質問、十分理解しなかったのか答えが悪かったのかあれでございますが、挙証という形で論議が発展してちょっと申しわけなかったのですが、少なくとも請求者がどういう状況でこうなったのだという事情は自分でやはり言わないことにはわかりませんから、その意味では挙証といったようなかっこうになるのかもしれませんが、それを今度は公務起因性ということでやる場合、職業病の場合には簡単ですけれども、そうでない場合はいろいろなケースが考えられますから、そこで認定する、こういうことになるわけですね。その認定につきましては、先般通勤災害のときにもお答え申し上げましたが、労災なり国公災なりの関係もございますので十分よく連絡をとりながら、できるだけそれはやはり請求者が救われるような形で考えなければならないものだ、このように考えております。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。ひとつぜひそういう方向で努力をしていっていただきたい、こういうように思うわけです。要するに、地方公務員の場合の基金の認定が、災害補償の対象からどうしたらはずすことができるかということで掘り起こすのではなくして、やはりこれはなるべく適用の方向、補償してやろうという方向、救ってやろうという方向でひとつ問題を処理するようにしていってもらいたい、こういうように思います。いまの問題はこれで打ち切ります。  最後に運営審議会の問題、これももう他の議員が質問をされておるのですが、労働者災害補償保険審議会は労使、公益、三者の代表で構成されているわけなんですが、地方公務員災害補償基金の審議会にもやはりいわゆる公務員の代表を入れるべきだと思うわけなんです。現行法でいいますと、地方公営企業の代表者と学識経験者の中から自治大臣が任命するとあるわけですが、補償の対象になる公務員の代表をこの審議会の中に入れるべきだ、そして三者構成にすべきだ、こういうように思うわけです。要するに、地方公営企業あるいは地方自治体の代表者、それから学識経験者、それから公務員、この三者構成にしたらどうかというように思うわけですが、またこうすべきだと思いますが、この点はどうしてそうならないのでしょうか。
  148. 植弘親民

    植弘政府委員 この制度発足のときの経緯をつぶさには承知いたしておりませんが、やはり労災の場合でございますと労災保険制度という立場もございます。公務災害の場合ですと、国なり地方団体が一方的に給付するという形になっておりますために現在のような制度がとられたものだと思います。ただ、そういたしましても、具体の補償を受けられるかどうかというのは職員にとっては大事な問題でございますから、審査請求の手続は審査会を設けて準司法的に判断をする。その場合にやはり職員意見を代表する者も参与として参加をしていただくというかっこうで補完しているものではないか、このように考えております。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 参与制度については先ほどの小川委員の発言の中にもありましたが、この審議会自身の中に入れるような方向へ将来はひとつぜひ検討していただきたい、そういうように思うわけです。これは自治大臣が任命権を持っていますので、ひとつ町村さんからもそういう方向でこの制度考えていってもらいたい、こういうように思うわけです。
  150. 植弘親民

    植弘政府委員 ちょっと補足いたします。やはり、何といいますか、両方で、掛け金と負担金でもってお互いが話し合って運営をしていくという共済なんかとちょっと違いまして、そういった力関係でどうするというようなことではないので、災害が起こった場合に正当に評価するというだけの問題ですから、そこに学識経験者を入れて審査会というもので十分機能させるという仕組みではないかと思うのです。しかし、お話もございましたので、国家公務員の場合もございましょうから、やはり十分今後とも検討さしていただきたいと思います。
  151. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、運営審議会が基金の運営について理事長の諮問に応じて審議するということになっておるわけなんですが、そうすると地方公務員災害補償について自分の意見を反映する機関、自分の意見を直接反映できる機関というのはないのではなかろうかというように思うわけですね、理事長の諮問に応じて審議するということなんですから。そういう意味からいっても、いま言ったようにこの中へ公務員の代表を入れるということも一つの方法、あるいはこの基金の運営を民主化するために労働者意見を反映させるような制度を何か考える必要はないでしょうか。いまの参与制度だけで足りるというようにお考えですか。
  152. 植弘親民

    植弘政府委員 ちょっと申しわけございません。私、審査会と運営審議会とごっちゃにいたしまして……。運営審議会は現在職員の代表が現に入っているわけでございます。私いま審査会とごっちゃになりまして、間違った答弁をいたしましたが、訂正させていただきます。
  153. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。そうすると審査会のほうは参与というような形で意見を反映させる道がある。それから審議会のほうには公務員を直接入れてその諮問に答えている、こういうわけですね。  この審議会のほうの運営ですけれども審議会の運営が、理事長の諮問に応ずるという側面が非常に強いわけなんですが、これは、公務員意見を持っていた場合、それが直接反映されて審議会の議題として提起される、こういう運営は事実上はされているのですか、どうなんでしょうか。   〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 植弘親民

    植弘政府委員 審議会にいろいろな議案をかけます場合には当然、職員の代表の方も委員として入っておられますから、そういう意見を十分反映させるように運営されるものと確信しております。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 それではぜひひとつこれも民主的に運営されて、部長さんのおっしゃるように、その中で十分公務員意見が反映される形で問題も提起できるような、そういう運営にしていただきたいというように思います。  それから、審査会についての答弁がございましたけれども、審査会が公開されないということに対しての一定の批判があるようですが、これはどういうことになっているのでしょうか。
  156. 山田守一

    山田説明員 地方公務員災害補償関係の不服申し立てにつきましては不服審査法が適用されております。不服審査法のたてまえは書面審理をたてまえとしておりますので、その関係では一応非公開になっておりますけれども、先ほど来話がありましたように、参与制度というものを設けまして、参与が書面で意見を述べ、あるいは審査会に出頭いたしまして直接口頭で意見を述べることができる、そういう制度をとることによりまして、そうした公開されないことをたてまえとしながらも、一応公開されたと同じような機能を補完している、そういう運営をしておるわけでございます。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一、二で質問を終わりますが、労働保険審査会法の四十三条を見ますと、民間労働者ですけれども、「審理は、公開しなければならない。ただし、当事者の申立があったときは、公開しないことができる。」こういうように公開が原則になっている。ただ当事者のプライバシーの問題、いろいろあるでしょうから、当事者の申し立てがあれば公開しないということになっておるわけですが、地方公務員災害補償基金審査会が原則として書面審理だ。もちろん公開はされない。しかし参与という形で意見は書面で出すことになっている。ここのところが運営の原則がだいぶ違うのですけれども、どうしてこういうように、民間労働者の場合の審査会とそれから地方公務員災害補償の審査会とのたてまえが違うんでしょうか。
  158. 山田守一

    山田説明員 地方公務員災害補償法の場合は、公務員とその使用者という中で問題を処理していくという形をとっておりますけれども労災法の場合は民間の事業主が負担金を出しまして、それと使用される労働者、それに対しまして国が両者をあわせまして補償の認定、実施に当たっている、そういうような事情がございますのでそうした三者構成による公開制、そういうものをとっていると私は了解しております。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 費用の負担がどういう形になっているにしても、やはり審査を公開にするということはこれは審査会の民主的な運営について非常に重要だと思いますので、労災の審査会を参考にして、将来やはり公開にして、そして公正に審査会が行なわれているんだということを十分納得させることが必要だと思いますが、将来そういう方向で一応研究なさる意思がありますか、どうですか。
  160. 植弘親民

    植弘政府委員 従来、制度そのものがもう行政不服審査法の系列に入っておりましたために、問題意識を持って検討したことがございませんので、今後少し労災との関係等も考えながら検討させていただきたいと思います。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 私はこれで質問を終わりますが、町村さんにだいぶ長い間すわらしておりましたので、最後に意見をお聞きしたいと思うのです。  最近、非常に地方公務員も職場が合理化されまして、それと国の委任事務も非常に多くなりまして非常に労働が激しくなりまして、職業病だとか、それから労働災害の対象になるようないろいろの事態が発生しておるわけなんで、やはり憲法で保障されている人間らしい文化的な最低の生活を保障してやらなければならないということが非常に切実になっていると思うわけなんですが、地方公務員が安心して地方自治体の日常の仕事に生涯を打ち込むことができるように、万一の場合には十分に災害補償の道が、家族の者にもまた本人にも保障されているんだということは非常に大事なささえになると思うのですね。これについて自治大臣としてはどういう見解を持ち、将来どんなような改善の方向をお考えになっているか。最後に大臣の責任ある答弁を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  162. 町村金五

    ○町村国務大臣 このたびの災害補償法の改正案を御審議を願っておりますのも、従来に比べまして、公務員災害に対しまして、遺族補償あるいは当事者の生活保障というものにはかなりの実は前進をした措置であり、先ほど来お話が出ておりますように、ILOの勧告等の一応基準にも到達をするようにという一つの目標を持って今回の改正が行なわれるようになったものだ、こう私どもは理解をいたしておりますが、しかし必ずしもこれをもって十分だというわけにはまいりますまい。今後、他の一般労働者災害補償といったようなもの等も十分検討といいましょうか、はずを合わせながら、こういった問題については今後さらにひとつ前進させるような努力をしてまいるべきものだ、かように私ども心得ておるところでございます。
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ私の質問を終わります。
  164. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、明十日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十五分散会