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1974-04-12 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十二日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君    理事 村田敬次郎君 理事 山本弥之助君       愛野興一郎君    大野 市郎君       片岡 清一君    亀山 孝一君       住  栄作君    武藤 嘉文君       井岡 大治君    柴田 健治君       細谷 治嘉君    多田 光雄君       小川新一郎君    小濱 新次君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     町村 金五君  出席政府委員         警察庁長官   高橋 幹夫君         警察庁長官官房         長       国島 文彦君         消防庁長官  佐々木喜久治君         消防庁次長   山田  滋君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     山田 英雄君         文部省初等中等         教育局審議官  諸澤 正道君         厚生省医務局総         務課長     金田 一郎君         資源エネルギー         庁公益事業部技         術課長     下邨 昭三君         気象庁観測部地         震課長     末広 重二君         労働省労政局労         働法規課長   寺園 成章君         自治省財政局交         付税課長    森  審一君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     柴田 健治君 同日  辞任         補欠選任   柴田 健治君     山田 芳治君     ————————————— 四月十二日  地方自治法等の一部を改正する法律案井岡大  治君外六名提出衆法第二四号)  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  消防法の一部を改正する法律案内閣提出第七  七号)  警察に関する件      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  理事会の協議により、この際、警察に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本弥之助君。
  3. 山本弥之助

    山本(弥)委員 昨十一日の夕刻から、全国的に、日教組中心といたしまして一斉に地方公務員法違反行為容疑として強制捜査が行なわれたようでありますけれども、この関係府県あるいは捜査個所数等——捜査内容につきましてはけっこうでありますが、個所数その他につきまして概況をお知らせ願いたいと思います。
  4. 山田英雄

    山田説明員 お答えいたします。  昨日の捜査は、東京北海道岩手山形埼玉山梨愛知三重広島福岡長崎大分、以上の十二都道府県警察におきまして、日教組の行ないました全一日スト、三十三都道府県実施、この地方公務員法違反容疑で、それぞれ裁判官の捜索差押許可状発付を受けまして、関係組合事務所等、合計八百七十カ所を捜索し、証拠品を差し押えております。  その内訳は、警視庁関係につきまして日教組本部都教組本部等百二カ所、北海道につきまして百四十一カ所、岩手県につきまして九十七カ所、山形県につきまして九カ所、埼玉県につきまして百二十一カ所、山梨県につきまして八十三カ所、愛知県につきまして三十三カ所、三重県につきまして三十一カ所、広島県につきまして九十八カ所、福岡県につきまして五十三カ所、長崎県につきまして五十四カ所、大分県につきまして四十八カ所という内容でございます。
  5. 山本弥之助

    山本(弥)委員 私は、今回の捜査につきましては、全国的に実施をされました強制捜査の範囲といい、また捜査個所といい、従来にない非常に大規模なものであるように存ずるわけでありますが、こういった全国にまたがり、あるいは相当広範囲捜査個所にわたりまして捜査をされるということにつきましては、おそらく事前におきまして相当準備連絡がなければ行ない得ないものと存じておるわけでありますが、これはおそらく警察庁中心となってやらなければ私はできない問題だ、こう思うのであります。この点につきましていかがでございましょうか。
  6. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 今回の日教組ストに対する警察の考え方は、元来、もともと今回の春闘の問題につきましては、一般的に警察庁といたしましても各般の問題について関心を持っており、またその情報については、私どもとしていろいろと考えておるわけでございます。したがいまして、具体的に日教組あるいは具体的に何々ということを私ども思っているわけではございません。もともと、元来の警察のたてまえから申し上げれば、各県警においてそれぞれの捜査内容というものについて、あるいは事前情報については各県警が独自の立場においてやっておるものでございます。したがいまして、それらの問題について、警察庁といたしましては警察法にのっとりまして私ども調整をいたしておる次第でございまして、私どもが積極的に具体的な指示をするということは全くございません。
  7. 山本弥之助

    山本(弥)委員 現在の警察組織都道府県警察であるということは警察法規定するところであります。しかし現実は、従来の例に徴しまして、その組織におきましても、国家公安委員会委員長国務大臣をもって当てられているわけであります。しかも、国家公安委員会管理下にある警察庁長官総理大臣の任命ということになっております。しかも各都道府県警察の幹部は、警察本部長をはじめといたしまして、警視正以上は国家公務員という組織になっておるわけであります。このことはやはり従来の警察とそう変更はない。都道府県警察ということを長官は言われますけれども、従来の組織とあまり変わっていないし、また国家の重要な事案といいますか、公安に関する問題、これは制限規定もあるようでありますが、それを除きましては、ただいま長官の言われた連絡調整をやっているのだということは規定のとおりであります。しかし、従来の警察運営につきましては、大体におきまして警察庁指示を受け運営をされておる、連絡調整の域を脱しておるということ、いろんな重要な、ことに国家の治安に関係のあるような事案につきましては、これは独自に各府県警察本部が動く、捜査の着手から送検という段階においてそういう事態になったということは、もうくどく、時間の関係で一々例示をしないまでも、過去の運営が示しておると思うのであります。ことに今回のような、道府県意思にまかして強制捜査に踏み切るにいたしましても、事前にやはり連絡の域を脱した警察庁のいわば連絡運営、と言うよりも指示に近い動きがなければ、これは容易に、こういった広範囲にわたる、捜査令状をとるにいたしましても検察当局との打ち合わせその他もありましょうし、おそらく事前準備なしに、関係都道府県警察がその管内の警察務の執行に関連いたしまして動くということはないのではないかというふうに感ぜられるわけでありまして、何か一定基準というものの連絡調整あるいは指示ということでなければ、十二都道府県という先ほどからのお話がございましたけれども、おそらく、スト態様等もありましょうが、事前に、どういう場合はどうするのだというふうな警察庁意図というものが働かなければ、こういった大規模な一斉強制捜査に踏み切ることはこれはできないということは、私はかりじゃなくて推測がつくわけなんですが、おそらく長官としては、法のたてまえ上、それをはっきり警察庁において指示をしたんだということはお話しできないと思います。この点は水かけ論になりますので深く突っ込んで申し上げることを私は避けたいと思います。ただ、事前相当綿密な連絡調整といいますか、それにつきましては慎重に事を運ばれたということは間違いないわけですね。
  8. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 山本委員から言われました警察法のたてまえ、あるいは私どもの日常やっております警察庁あり方、あるいは県警やり方というものについては、いまさら私がこの機会に申し上げることはないと思います。いま申し上げたように、私ども警察法にのっとりまして、中央、地方を通じてやはり調整をする。しかし法律に従ったところにつきましては指揮をする場合もあるわけでありますが、今回の問題は一にかかって警察法調整による問題でございます。したがいまして、調整ということについてやみくもに出てくるということはもちろんございません。一般的な春闘全体の問題について、私ども関心を持ち、また各県警においても関心を持っているわけであります。したがいまして、そういうものについての法律に即したやり方というものは、これは当然事前において調整の問題でありますので、私どもといたしましては、特定のものをやるあるいは特定にやるということではございませんので、いまさら私がここで申し上げることもないのでありまして、私どものやっているものは、事前における問題についてもしかりにあるとすれば、それは調整という問題でやっておることでありまして、私どもはそういうものについて全国を画一してやっていることは一つもございません。現にいま申し上げたように、全県全部やったわけではございませんし、十二の都道府県について、私どもはその結果を聞いておるわけでございます。以上でございます。
  9. 山本弥之助

    山本(弥)委員 連絡調整にとどまっているのだという御答弁でありますが、先ほど申しましたように、この点は水かけ論になろうかと思うのであります。ただ、警察庁から判断いたしまして、なぜ十二都道府県にとどまったかということについては、どういう判断をなすっておるわけですか。
  10. 山田英雄

    山田説明員 それは各県警判断により具体的捜査実施されてきたわけでございますが、令状発付を受けるに足る証拠有無の問題に尽きると思います。
  11. 山本弥之助

    山本(弥)委員 ただいまはいわゆる証拠固めというような方面だけの御答弁でございましたが、自発的にやるにいたしましては、何か事案態様といいますか、何か基準が私はそこに流れておるのじゃないかと思うのです。大なり小なり、ストというものが、行なわれないところもあったかどうかまだ私ども調査不十分でありますけれども全国各県で実施された場合に、十二都道府県だけが捜査の対象になったということは、事後の報告を受けたにいたしましても、何らかのそこに、十二都道府県の中に共通したものが——他の県で実施をしないで十二都道府県実施をしたというには、そこに共通した何かが判断されるのではないかと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  12. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、今回日教組実施しました争議行為の問題については、かつてない大規模のものであるということ、しかも全国各地でいま申し上げたように公立小中学校の授業に対して多大の影響を与えたということは、これは事実であると思います。したがいまして、こういうような、日教組実施した争議行為の大規模な、かつてなかった大規模のものに対して関心を持つということ、さらに法律的に申し上げますれば、争議行為につきましては公務員は禁止されている、しかも日教組中心になって組合組織を利用して争議行為をあおるということになったわけでありますので、私どもといたしましては、いま申し上げたような二点の問題について警察庁関心を持っていた、こういうことでございます。
  13. 山本弥之助

    山本(弥)委員 警察庁関心を持つことは私は当然だと思いますけれども、私の質問申し上げておるのは、十二都道府県強制捜査に踏み切ったというからには、やはり、十二都道府県警察本部長判断するにいたしましても、何かそこに共通なものがなければならぬと思うのであります。十二都道府県令状を一斉にとるというのは、相当事前令状をとらなければいかぬと思うのです。そのためには、夕刻一斉捜査をやるとすれば、相当早い目に、数時間前に捜査令状をとらなければならぬだろう。相当多数の、個所からいいましても、先ほどのお話ですと八百七十カ所ということでありますので、令状も多いでしょう。そうなりますと、単に、東京におきましては日教組本部だとかあるいは都教組本部だとかの捜査にとどまっておるのか、あるいはおそらく、数字からいえば岩手県におきましては先ほどのお話ですと九十カ所でしたか、そうなりますと単に高教組の本部だとかあるいは岩手教組本部だとかいうことでなくて、あるいは支部にまたがり、あるいは場合によっては個人にまたがっているかもわからぬと思うのです。それは相当広範囲にわたっているわけですね。  そうなりますと、警察庁判断するところによりますと、何かそこに、捜査をやらない県との間に本質的な区別のできる何かがあるのかどうか。一定基準があるのかどうなのか。それをあなた方のほうで指示をされないまでも、警察庁としてはこれで均衡がとれているのかどうか。あるいは、連絡調整というからには、本来なら食い違っていいと思いますね。思いますけれども、何かそこに私は一定基準がなければ、捜査それ自体も非常に不均衡になるし、捜査をすればいいというものではないと思うのです。あるいは違反事件にしても、証拠固めをして、そして地方公務員法三十七条ですか、違反者の取り調べまで発展するんじゃないかなと思われますけれども、そのことはあとで御質問いたしますとして、何かそこに警察庁から見ても共通したものがあるのではないかというふうな分析、判断をされるべきじゃないかと思うのです。そのことを私は聞いているわけです。
  14. 山田英雄

    山田説明員 御質問にございました、捜索実施しました十二都道府県につきまして共通要素があるかどうかという点につきましては、十二都道府県だけにあるということはございません。むしろ、各都道府県警関心も、全日スト並びに半日スト実施いたしました三十四都道府県につきましては、その影響規模態様、それについて重大な関心を払っておる。その点においては、共通要素は三十四都道府県にあるわけでございまして、捜索実施しました十二都道府県共通してあるということではございません。十二都道府県につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、やはり証拠有無、この点につきまして証拠が固められたという点において共通要素があるというだけでございます。
  15. 山本弥之助

    山本(弥)委員 どうも答弁は不満な点が多いわけですけれどもね。  そこで、今回の日教組の一斉捜査に関連して、かりに警察庁の見解を是といたしまして、各都道府県警察自発的意思によってやっているのだというふうに了解するとしても、今後、地方公務員違反行為に対する捜査というものはどう発展するものか、多少のお見通しはつけておられると思いますが、その点をお聞きいたしたいと思います。
  16. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 捜査というものは予断をもってやるものではございませんし、今後の捜査経過というものは今後の捜査内容によって出るものでございます。したがいまして、私ども特定意図を持っているわけでもございませんし、容疑内容によって、また今後の捜査経過によって明らかになるわけでございますので、たいへん残念でございますけれどもこの機会に申し上げるわけにはいかない、こういうふうに思うわけでございます。
  17. 山本弥之助

    山本(弥)委員 端的にお尋ねいたしますが、日教組以外に拡大をするのか、あるいは今後十二都道府県以外の県にまで発展する可能性があるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  18. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 残念ながら、いま申し上げたように、特定のものをやっているわけではございませんし、犯罪の容疑があればやらざるを得ない。法律のたてまえにおいてやるというのが私ども警察あり方でございます。したがいまして、ほかの面についてやるかやらないかということは、非常に残念でございますけれども、私はいまの段階で申し上げられない、こういうことでございます。
  19. 山本弥之助

    山本(弥)委員 長官、普通の刑事事件だとかその他の問題とは違うんですね。今日、田中内閣の失政によって国民生活を脅かしており、しかも何らの対策を講じていない。田中総理はいまだにインフレではないと言うんですね。世界一のインフレ物価は上昇しておる。今後物価の収拾もどうなるかわからない。そういうさなかで国民生活をどうするか、ことに弱者の生活をどうするか、このことについては、田中総理の発言によりまして、国会の中で闘争をやれというので、国会の中でいろいろな手を打たれつつあるわけですね。政府ものまざるを得ないような状態が、年金問題とかその他でぽつぽつ出てきておるわけですね。生活保護世帯の本年度二〇%以上アップ等につきましても配慮せざるを得ないという事態に追い込まれているわけですね。そうしますと、それに対応しての春闘というものは例年の春闘ではない。それはいろいろデモ等もきびしくなりましょうし、いわゆるゼネストという大がかりなストを前にして、警察としては事前にいろいろな対応策があったと思います。また現実にいろいろな対応策を講じてこられたと思います。当然私は警察としてはそれだけのことをやらなければいかぬと思うのです。  ただ問題は、自分にも経験があるわけですから私は深く申し上げませんが、対応策を講じてきて、ある段階になって捜査の発動をやるというときに、刑事事件のように、いわゆる暴動が起きるとかなんとかいうことは別でありますけれども春闘というものあるいはゼネストというものに対応しての警察の措置、これは違反者を多く出すということが目的ではないわけですね。警察がこれに対応するということなわけですから、総合的に、計画的に事前準備を進めてやりますからには、見通しが立たないはずはないと思うのです。刑事事件のように、今後どうなるかわからぬ、どういうものが勃発するかわからぬということでやってはいけないと思うのです。ことにこの春闘につきましては、春闘に参加しておる者もあるいは政府当局も、精力的にこの問題を解決しようということで苦慮しているわけですね。私はその責任の大きな部分は政府にあると思います。ゼネストで対応しなければこういった国民生活を圧迫している問題の解決はつかないという判断に立って、今度のゼネストは行なわれたと思うのですね。ですから問題は、早期にこのゼネスト解決するということが当然なわけですね。でありますから、昨晩も、全面的に解決はつかないまでも、解決の方向に向かって精力的に、政府側もまた春闘に参加しておる者も努力をしているわけですね。これは国民にとりましては早く解決しなければいかぬ問題ですね。  そうしますと、その間にありまして、私は警察としてはどういう見通しを立てるということはきわめて重要なことだと思うのです。長官ともあろう者が、今後どうなるのか見通しも持っていない、捜査段階だから申し上げられない、場合によってはどんどん捜査を拡大するかもわからぬ、強制捜査あとはどんどん逮捕して、違反者を徹底的に根こそぎやるのだというようなことはまさかお考えになっていないと思うのですが、私は、長官としてはそんな答弁ではいけないと思いますね。一応の見通しを持って、これ以上府県警察がやるにしても、いろいろな政治情勢から判断し、また違反行為捜査するにいたしましても、そこにも問題がありますけれども、これはどう警察としては対処するのだ。法律違反した者を全部逮捕していないじゃありませんか。やらなければならぬ警察仕事はたくさんあるじゃありませんか。そういうさなかに、こういったストとの関連において見通しを持たずにやるということは、私は、長官としてのその重責を果たすということをどう考えているのか、疑問を持つわけです。もう一度御答弁願いたいと思います。
  20. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 山本委員の御意見、私ども警察といたしましても、社会秩序を維持するという私どもの大方針を持っているわけであります。したがいまして、社会不安であるとかあるいは政治不安であるとかあるいは経済不安というものを防止しなければならないというのは、当然の警察責務でございます。したがいまして、警察におきましても、社会、公共の安全を維持するためには、政治的にもあるいは経済的にも社会的にも、私どもは当然関心を持っているわけであります。また関心を持たざるを得ないわけであります。しかしながら、その問題について具体的な法律違反容疑があるという場合においては、私ども警察のたてまえから申し上げれば、法律に準拠して法秩序を維持するというのが私の責務であります。したがいまして、現在の経済の問題であるとかあるいは社会の問題については十分承知しておりまして、その中において警察において必要なことは、やはり社会秩序を維持する、しかも法秩序を維持するということが当然の私の責任であります。  したがいまして、いま申し上げたように、今回の日教組の問題について、地公法の違反容疑の問題については、私の警察立場において、法律によって正しくそれを処理するということが、ある意味におけるところの社会不安を防止するというふうになる、私はそう思っているわけでございます。したがいまして、今後のいろいろな問題についてはもちろん関心を持っているものでありますし、また当然警察法二条をもちまして、私ども情報一般について関心を持っているわけでありますが、具体的な問題として、かくある容疑がある、かくあるものがあるということについて事前に私が申し上げることはできないということを申し上げたわけでございます。
  21. 山本弥之助

    山本(弥)委員 ストが行なわれる以前に準備をしましてやらなければだめだと思いますね、捜査というものは。だからそれは当然おやりになっていると思いますね。それから、かりに学校で全日ストをやるということがきまっておりましても、全日ストをやるかどうかはやってみなければわからぬことですね。それはおそらく十二時前後には捜査令状をとったと思うのです。しかも、ストが終わると同時に捜査しなければ的確な証拠固めができないという配慮だと思うのです。それならば、私ども推定しますと、いまのような春闘をおさめるという時期におきまして、今後見通しがつかないんだ、他の府県にも拡大するかどうかわからない、事前捜査をやっておるが、情勢いかんによっては日教組以外にも拡大するんだ、他県の日教組その他の地方公務員国家公務員にも拡大するんだということであれば、そして昨晩あたり春闘を収束する山場を迎えておるということであれば、何もきのうやらなくてもいいということになりますね。  きのうやったということは、証拠固めをできるという見通し、急いで証拠固めをしなければならぬという見通し、今後時日をかけてさらに捜査を拡大する、日教組以外にも拡大し、あるいは他の地方公務員国家公務員の団体に拡大するということであれば、私は警察はそのくらいの政治的判断はしてもいいと思うのであります。何もきのうやらなくてもいいじゃないですか。ある意味におきまして春闘が固まって、春闘がおさまって、それから強制捜査に踏み切ってもいいじゃないか。それを急いでおやりになったというところに問題がありますけれども、かりにそうだとするならば、私は、いま国民に一応の安心感を与えるという意味におきましても、今後の捜査をある程度まで拡大しないということは言い得ることじゃないかと思うのです。いかがでございましょうか。
  22. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 法律に基づいて私ども仕事をやるという意味におきましては、重ねて申し上げるようでたいへん申しわけないと思いますけれども、私はそういうことでやっておりまして、いろいろな推定なり予断をもってやるということではございません。しかし、結論的に申し上げれば、何も私どもがどこもかしこもやって、そしてそういうことをやるということを言っているわけではございません。法律に準拠し、また各県の方針に準拠いたしましてそれをやっているわけでございますので、その点については私ども調整をもってやるということによって、山本委員の言われたことにむしろ私どもは協力をしているというふうに思うわけでございます。
  23. 山本弥之助

    山本(弥)委員 何を協力願っているかわかりませんが、かりに警察庁連絡調整をおやりになっておるということであれば、重ねて言うようでありますけれども、私は昨日の段階において強制捜査に踏み切るということ自体が時宜を得ていないということが一つでありますが、かりに一歩を譲りまして、証拠固めを急がなければならぬということであるならば、ある程度まで、証拠固めが至難であるので、あとの問題についてはもうこれ以上拡大しないのではなかろうかということが、今度の場合は言えるのではないか。刑事関係の事件が起きた場合、殺人が起きたとか傷害が起きたとか、それは突発的に予想しないときに起こるわけですね。それを捜査しないということになるとこれはおかしいですね。警察捜査するということは当然ですね。しかし、きのうの段階捜査したということで、今後の見通しはどうだろうかというようなことが、普通の刑法犯罪と同じように見通しが立たぬのだ、どうなるかわからぬのだということでなく、連絡調整はどうするのかということについて今後の見通しは——私は的確に言ってもらうことを期待しません。しかし、見通しがどうあるかということぐらいは長官の口からお漏らし願えるのじゃないでしょうか。
  24. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 現在の容疑によって、私のほうが強制捜査をやったのは現在でございます。したがいまして、現在の状況においては、いまの強制捜査をやったというものはそれだけでございます。それだけを申し上げることによって、山本委員はよくおわかりだ、こういうふうに思います。
  25. 山本弥之助

    山本(弥)委員 まず私は、春闘も早く収束しければなりませんので、長官意図も推測はできるわけでありますが、いたずらに違反行為を追及し、違反者を多く出すということにつきましては、この際、警察務運営としては適策ではないということを申し上げまして、この問題は早く一段落つけるべきである。意味なく警察の使命のために捜査を拡大し、逮捕者を多く出すというようなことがない適切な運営をしてもらいたい。春闘はもともと経済問題ばかりじゃありません。経済と政治とを分離するというようなことを田中総理もおっしゃっておりますが、これは当然政治と結びつきます。それに警察がどう対処するかということは、これはやはり政治的判断が必要だと思います。そのことを強く要請を申し上げておきます。  そこで、私、どうもふに落ちませんのは、文教行政に関する一連の動きですね。これは歴代文相の中にも、教員の団体である日教組との話し合い、これは両方とも子供の教育をどうするかということに熱情を持っておるわけであります。本来教育行政で処理すべき問題ではなく、私は、教員の熱情によって子供の教育は達成できると思っておるわけであります。日本の過去の教育が大きく終戦後変わってきたことは、私ども好ましいと思っております。その文教行政につきまして、いままでは日教組の弾圧ということに精力を注がれた文部大臣もありますが、最近の事例からいいましても、綱領の批判とか、あるいは人確法案の審議をめぐる強行採決の問題といい、最近急に首相の文教に関する発言というものがひんぱんに、野党を挑戦するがごとく多くなっているという事例、これら一連の関係が対日教組にしぼられているような印象を深くいたします。ことに参議院選挙が近づくにつれましてこのことが出てきておるわけですね。このことが、子弟の教育を前進させなければならぬ文教行政に、多くの前進を来たさない、むしろマイナス要因を多くつくっているような印象を受けるわけです。真剣にこの問題を考えているかどうかということに私は疑念を持っておるわけであります。今回のストに関連いたしまして、閣議決定で厳正な取り締まりをするというような項目も入っておるわけでございますが、公安委員長としてどうお考えになりますか。
  26. 町村金五

    ○町村国務大臣 このたびのゼネスト全国の義務教育諸学校の教師が非常に多数参加をした。しかも昨日は日教組等が警察強制捜査を受けなければならぬというような事態に発展をしたということは、まことに私どもとしては遺憾千万のことである、こう考えておるのであります。  ただいま山本委員は、最近における総理の文教に関する発言というものが、何かきわめて政治的な意図を持っての発言だというふうに御判断になっておるようでございます。いろいろ御批判というものはそれぞれあるわけでございますから、山本委員の御批判はそれなりに私どもも承っておくところでございますけれども、今日総理等が発言をされるというのは、参議院対策で発言をしておるというふうには必ずしも私ども考えておりません。  申し上げるまでもなく、戦後における日本の教育界というものが、いわゆる行政と教員との間に非常に大きな見解の相違と申しましょうか、教育上の所見を異にして、そのために教育の現場が非常に混乱をいたしておるということは、私は国民として非常に遺憾なことである、こう常々私なども考えておるのでありまして、これをどういうふうにして正しい情勢に戻すことができるかどうかということについては、これまたいろいろな意見の存するところでございますが、残念ながらいまだ国民の全体的の合意を得るに至っていないということが、今日の事態を引き起こしておることの原因にもなっておるわけでございます。事、教育に関する問題については、こういった激しい混乱というものが一日も早く終息されて、教育の正常化というものが実現する日の近からんことを、国民の一人として深く私どもも念願をいたしておるわけでございます。
  27. 山本弥之助

    山本(弥)委員 総理がほんとうに選挙対策ではなくあるいは教育問題を考えておるということであれば、私はもっとやり方はあろうかと思うのであります。今回の日教組中心としての強制捜査に踏み切ったという背景にも、私どもも法案を通じまして、総理のあめとむちの政策、このことを深く感ずるわけです。国家公安委員長は、閣議でそういった意味の総理からの話があって、警察庁を通じまして全国的に日教組中心に今回の強制捜査に踏み切ったのではございませんか。そういうことは全然ないということが言い切れるのでございましょうか。
  28. 町村金五

    ○町村国務大臣 閣議の内容をあまり申し上げることもいかがかと思っておりますけれども、事は特にそのことにお触れになってのお尋ねでございますから明確にお答えを申し上げておきますが、今日まで閣議におきまして、このたびのゼネスト日教組が参加いたしたということについて、特に捜査をしなければならないというような総理からの発言は全然なかったということは、明確に申し上げておきたいと存じます。
  29. 山本弥之助

    山本(弥)委員 今後、春闘の収拾におきましても、国家公安委員長は、いかにこれを国民のために早くよく終息をさせるか、政府のやれることは何であるか、またやらなければならぬことはどうであるかということにつきまして、十分関心を持たれまして善処を願いたいということを要望しておきます。  いずれ、この問題につきましては、資料が整い次第また御質問申し上げる機会があろうかと思いますので、時間の関係でこのくらいにしておきますが、私は、捜査にいたしましてもあるいは今後の取り調べにいたしましても、子供に与える教育上の影響のことにつきまして、捜査をする場所あるいは捜査やり方等につきましては、この点は十分細心の慎重な配慮をするということで、これは各都道府県に、警察運営あり方ということにつきまして、当然連絡調整以上の御指示をなすっても一向差しつかえないのじゃないかと思いますので、その点を強く要請申し上げておきます。
  30. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 今回の非常に残念な捜査の問題につきましては、私ども法律を正しく適用し、またいま申し上げたように、それに関連をした基本的な問題は教育の正常化という問題でありますし、また同時に児童、子供に対して悪影響のないように、いま申し上げたような点については、捜査やり方あるいは私ども調整やり方については厳密にやり、また同時に十分配慮してやっていきたい、こういうふうに思います。したがいまして、すみやかにこの捜査を終結することが一つのわれわれの基本方針でありますが、しかし捜査やり方というものにいろいろありますので、いま申し上げたようないろいろの点については、具体的にまた慎重に、そういういろいろな弊害のないようにやっていきたい、こういうふうに考えております。
  31. 山本弥之助

    山本(弥)委員 もう捜査は一段落ついたと思うのであります。詳しいことは私ども調べておりませんが、捜査自体が、教育的に見てやるべきでないような捜査、一般の事案捜査というようなことが行なわれていることは、私どものほうの耳にも入っているわけであります。この点はくれぐれも十分注意を願いたいということを重ねて要望申し上げておきます。
  32. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 多田光雄君。
  33. 多田光雄

    ○多田委員 この席に公安委員長警察庁長官が出てきているわけですが、質問の冒頭に、今度の日教組に対する警察当局の強制捜査、これは明らかに政治的な弾圧であった、こういうふうに私どもは考えざるを得ないのです。しかも、いま数百万の全国の労働者が、自民党政府による石油危機、高物価、低賃金、このもとで正当な要求で立ち上がり、労働者の、憲法で保障される基本的なストライキ権を行使して立ち上がった。しかも東京都内では千数百軒の商店までが同情ストライキを打つ、当然なことであります。そういう中で特に労働者、またその中で特に教育労働者に対して、今回のようにかつてない異例の弾圧を行なったということは、私は単に教育労働者に対する弾圧だけではないと思う。これは戦っている全国の労働者、そしてまた生活の安定を望んでいる全国民に対する弾圧である。この報いは必ず来る、こういうふうに私は考えております。それだけに、私は冒頭に、長官並びに公安委員長に対する抗議の意味を含めて、質問をしたいと思います。  警察庁長官に伺いますが、先ほどの答弁では、十二都道府県、合計八百七十カ所の捜査を行なったということですが、かつてない広範な捜査にあたって、一体全国的に警官を何名動員したのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  34. 山田英雄

    山田説明員 十二都道府県警から報告を受けておりますところでは、約六千八百人の警察官が捜索実施に従事したということでございます。
  35. 多田光雄

    ○多田委員 私も昨晩日教組あるいは都教組を訪問し、事情を聞きました。ともかくこれは異常です。たとえば、何で夜間八時から始めたのか。それからまた、いままでスト中の弾圧ということはほとんどなかった。さらにまた捜査規模、たとえば組合幹部の家宅捜査をやる場合に、奥さん一人に対して十名の警官が行っているのです。私が聞いたのでは、八王子では二十人の警官が行って、たった一人の立ち会い人しか認めなかったという。これはまるで戦前の特高並みの弾圧じゃありませんか。このことを弾圧とも思わない、民主主義の破壊とも思わないとするならば、よほど皆さんの頭が労働者を敵視するかあるいは民主主義から逸脱していると私はいわざるを得ないのです。  そこで私は公安委員長にお伺いしたいのでありますが、先ほど内閣の話がありましたが、一方では総理大臣その他が労働組合と話し合っておられる。ところがその中で今回のような弾圧が行なわれたのですが、内閣で全くこの問題が論議されなかったのでしょうか、それをひとつ伺いたいと思います。
  36. 町村金五

    ○町村国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、特に閣議等においてこれらの話は全く出ていなかった。はっきり申し上げておきます。
  37. 多田光雄

    ○多田委員 それでは、これだけの警官の動員が行なわれるにあたって、警察庁のほうから国家公安委員長に対して、そのことについての報告、連絡あるいはまた指示、こういうものはなかったのでしょうか。
  38. 町村金五

    ○町村国務大臣 昨日の夕刻に至りまして、私のところに警察庁から、日教組ストライキの実施状況とともに、十二都道府県警察から強制捜査に着手するという報告が寄せられ、警察庁においても所要の調整を行なったという報告がありました。いま申し上げたように、昨日の夕方、私は承知をいたしたのであります。
  39. 多田光雄

    ○多田委員 警察庁長官に聞きますが、いっこのことを公安委員長に報告し、そしてまた指示を求めましたか。それは何時ですか。
  40. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 警備課長からの私のほうへの報告によりまして、いま申し上げたように五時過ぎに私のほうが報告を申し上げているわけであります。
  41. 多田光雄

    ○多田委員 これほどいま大きな話題になり、そして深刻な問題を投げかけている日教組に対する強制捜査、これがきのうやられたのは、六時ごろから行動を始めているのです。早いところはもう少し早いでしょう。それを五時ごろ、寸前に国家公安委員長に報告している。公安委員長、こういう事態で一体よろしいのでしょうか。それほど簡単な問題なんでしょうか。しかもそれは内閣で論議にもならなかったという。これはどうなんでしょう。
  42. 町村金五

    ○町村国務大臣 日本の警察といたしましては、いやしくも重大な犯罪の容疑があるという場合には、その措置に対しまして厳正な態度をもって臨むということが警察本来の立場であることはあらためて申し上げるまでもございません。したがって、今回の場合におきましても、警察としては、今回の日教組によるところのストライキはかつてない大規模なものである。御承知のとおり、従来はせいぜい授業も一時間ぐらいしか休止されなかったのに、今回はまる一日行なわれる。これは児童に対する影響等がきわめて重大であり、深刻であるという判断に基づいて今回の強制捜査に踏み切ったもの、こう私は判断をいたしておるのであります。
  43. 多田光雄

    ○多田委員 いま公安委員長は、児童に対する影響が深刻だと言われたのですが、警察庁長官、児童に対する影響の深刻さというものを考えたんですか。学校まで入っているのですよ。単に個人宅じゃないのです。学校まで入って捜査しているのです。これがどういうふうに児童に大きな影響を与えるか、このことも計算しましたか。これは警察庁長官に聞きたいと思う。
  44. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 言うまでもなく、私どもは当然警察としてやるべきことであり、したがいまして、いま申し上げたように、私のほうでは慎重に、かつ具体的にやっておるわけでございまして、そういう点についてはいろいろな点で紛議を起こさないように十分考えております。
  45. 多田光雄

    ○多田委員 これは警察庁長官に伺いますが、さっきあなたは山本議員に対して、各県がやったのであって、これの連絡調整をした、協力をしたと言っているのです。こんなことを国民の前で言って、一体だれが信用しますか。しかも、きのう私は東京都教組で聞いたら、かなり前から、自動車のナンバーから、組合事務所まで張り込んで情報を集めておるじゃありませんか。つまり、ストに入るかなり前からやっておる。ひどいところでは、警察官が組合に来て、逆盗聴をしたいから電話に盗聴器をかけさしてくれとまで言ってきているところがあるというのです。  そこで、私は警察庁長官に伺いたいのですが、あなたは連絡調整と言われた。しかも国家公安委員長から何らの指示もなかった、地公法違反で自主的にやった、それは都道府県警察がやった、こう言われるのですが、これだけの大規模な弾圧——私どもは弾圧と見る以外にない。これが連絡調整だけで、あなたはそれでよかったと思っているのですか。どうですか。
  46. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 まさに警察法にのっとりまして捜査をやったということは一番正しいことであると思います。また、私ども犯罪捜査をやる上におきまして正しい捜査をやっておるわけでありますので、いま言われましたいろいろな盗聴とかなんとか、そういうことは断じてございません。
  47. 多田光雄

    ○多田委員 そういう事実があったらどうしますか。
  48. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 そういうことにつきまして私は聞いておりませんし、聞くときになりますれば、私のほうはあなたに対して対処できることは十分持っております。
  49. 多田光雄

    ○多田委員 今回の弾圧は、地公法違反といわれておるのですね。それで私は国家公安委員長に聞きますが、地公法の三十七条と憲法の関係は一体どうなるのでしょうか。たとえば、今日公務員ストライキが禁止されておるという国は一体どれだけありますか。禁止されているのは日本とアメリカだといわれている。しかもアメリカでも、四十九州の中でもう四州が公務員ストライキを許可しておるのですよ。しかも、私の調査によれば、イギリスでは警察官、消防署員にも団結権と団体交渉権が保障されているのです。それからフランスでは軍人や警察官にまで団結権が認められておるのです。そしてイギリス、フランス、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、これは官公労働者がストライキ権が認められておるのです。  しかも、日本でも戦後は一時このストライキ権があった。ところがマッカーサーの一片の書簡と、そしてこの政令でもってストライキ権が奪われて、その後これが定着してしまった。いろいろの法律学者の中にも、いろいろ問題がある、意見がある。しかも、都教組事件であるとかその判決を見ますと、こういう判決がなされておるのは御承知のとおりだと思う。中央郵便局事件、それから都教組の事件についての最高裁の判決ではこういう問題が出ておるのです。「この労働基本権の保障の狙いは、憲法二五条に定めるいわゆる生存権の保障を基本理念とし、勤労者に対して人間に値する生存を保障すべきものとする見地に立ち、」といって、これは最高裁の判決が出ておる。さらにまたこうもいっておりますよ。地公法の三十七条、六十一条の規定につきましても、「これらの規定が、文字どおりに、すべての地方公務員の一切の争議行為を禁止し、これらの争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為をすべて処罰する趣旨と解すべきものとすれば」、「これらの規定は、いずれも、違憲の疑を免れないであろう。」しかも四十八年二月六日、衆議院の社会労働委員会で皆川政府委員はこういうことを言っておる。「東京のいわゆる中郵事件に続きまして都教組に対する最高裁の判決が出たわけであります。これは一般の地方公務員法でございますが、この判決につきましての考え方は、全逓中郵事件の考え方と同じように、従来刑事事件についても責任があると考えられておりました点につきまして、この考え方を改めた、」  いいですか。このように学界においても問題があり、国際的に見ても、国内的な経過を見ても明らかに憲法に違反するというこの地方公務員法、しかもこのスト禁止をいまあなた方は金科玉条にして言っている。しかもILOの動きを見たって、国際的な動きは決して皆さんの味方ではないのです。そういう根本法を抜きにして、三十七条だけをたてにとって治安を守ると言っておる。そこまで一体皆さん真剣に考えましたか。私は、労働者の要求は正当に憲法に基づく要求だろうと思う。これは公安委員長に伺いたいと思います。
  50. 町村金五

    ○町村国務大臣 現在の地公法の規定が憲法違反であるかどうかということについてのお尋ねでございますが、私どもは、ただいま御指摘の三十七条というものは憲法には違反をしていない、こういう考え方を持っておるものでございます。なおひとつ政府委員からさらに詳細にお答えをさせます。
  51. 山田英雄

    山田説明員 最高裁の昨年の四・二五判決におきましては、国家公務員法の規定についての判示でございますが、地方公務員法についても全く同趣旨と考えられておるところでございます。そうした国家公務員法、地方公務員法における公務員争議行為の禁止につきまして、憲法二十八条に定める労働三権との関係におきましても、公務員の場合、公共の福祉のために制限を受けることはやむを得ない、そういう趣旨が判示されておると承知しております。さらにこのような違法な争議行為をあおる等の行為につきましても、何人が行なっても処罰される、そういう規定についても合憲的な刑罰規定であるという判示が明確にされておると承知しております。  また、国際的なストライキ権の取り扱いにつきましては、私ども承知している範囲では、スト権が公務員に与えられてない場合も多いと思いますし、与えられておる場合におきましても所要の規制があると承知しておりますが、先ほど申し上げました最高裁のいわゆる四・二五判決におきましては、ILOの六十号事件を引用しまして、「「大多数の国において法定の勤務条件を享有する公務員は、その雇用を規制する立法の通常の条件として、ストライキ権を禁止されており、この問題についてさらに審査する理由がない。」とし、わが国を含む多数の国の労働団体から提訴された案件について、この原則を確認しているのである。」したがって公務員争議行為に関する規制については、国際的視野に立っても肯定されているという判示がなされておると承知しておるところでございます。
  52. 多田光雄

    ○多田委員 一つの流れとして、労働者が憲法に保障された労働三権を守るためにいま戦っていることは、そのうらはらになるのが生活の防衛の問題なんです。これはまさに政府の失政の結果なんです。しかも、あなた方がたてにするものは憲法違反であることははっきりしている。間違った要求であればこれはとうに消えていますよ。憲法という大前提に立って要求しているから、労働者のこの要求を支持する人がだんだん多くなってきているのです。(「生活のためならどろぼうをやってもいいのか、そんなばかなことない」と呼ぶ者あり)だれがどろぼうと言ったか。自衛隊を憲法違反でないと考えているぐらいだから、それは当然だろう。  次に、文部省、来ておりますか。——文部省は、今回の日教組に対する不当な強制捜査について、事前に何らかのサゼスチョンなり指示というものあるいは連絡というものはありましたか。
  53. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 文部省には連絡ございません。
  54. 多田光雄

    ○多田委員 新聞にすでにこのことは予想記事として出ていたのです。このとき文部省としてはどういう態度をとりましたか。つまり、相当広範囲強制捜査がやられる、弾圧がやられるという事態で、国の、子供たちの教育を守っていく、あるいは教育基本法のたてまえに基づいて見ても、こういう異常な事態に対して文部省としてどういう態度をとられたのか、伺いたい。
  55. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 文部省としては教育行政を所管する官庁として、教育の立場から、違法なストライキが行なわれないようにということは再三現場の方々にも御要請申し上げておるところでございまして、その立場において全力をあげてストライキの中止を要請している、こういうことでございます。
  56. 多田光雄

    ○多田委員 それでは文部省としては、今度の強制捜査、これはやむを得ないものと考えているわけですか。
  57. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 警察御当局の判断で、この捜査は犯罪の疑いがあるということでなされた捜査だと思いますが、文部省としては、いま申しましたように教育行政を預かる立場でございますが、この捜査についてかれこれ申し上げる立場ではないと思います。お許しいただきたいと思います。
  58. 多田光雄

    ○多田委員 文部省はこの春闘の前に、たとえばこの十一日、授業をやれという指示を出しましたか。
  59. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 おっしゃるとおり、当日は違法なストをやるということによって実質上は授業ができないおそれがあるということでございますから、文部省としては、あくまでも先生は学校へ出てきて授業をやるというたてまえで指導していただきたい、かように申しているわけでございます。
  60. 多田光雄

    ○多田委員 高知県では、市の教育委員会指示をして臨時休校を出しているところがあるのですね。私はこれは一つの方法だろうと思うのです。これに対してどういう態度をとるのですか。
  61. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 現場の実態につきましてはまだ詳細な調査の報告が参っておりませんけれども、ただいま申しましたように、私どもはあくまでも授業をやるというたてまえで教育委員会に指導してまいったわけでございますから、実態がつまびらかになりました段階におきまして、それがどういう事情で休校になったのか、その責任その他どこにあるのかというようなことは、厳正に調査をして、その後に考えたい、かように思っております。
  62. 多田光雄

    ○多田委員 労働省に聞きたいけれども、このような日教組に対する弾圧が春闘解決に有益だったと思うかどうか、これをひとつ伺いたい。
  63. 寺園成章

    ○寺園説明員 今回の措置につきましては、警察当局の権限と責任においてなされたものだろうと思います。したがいまして、労働省といたしまして今回の措置についてとやかくのことを申し上げるということは、差し控えさしていただきたいというふうに思います。
  64. 多田光雄

    ○多田委員 いま、国家公安委員長、それから警察庁長官、それから、きょうは大臣は来れなかったけれども、文部省の意向、労働省の意向、この意向を聞いただけでも、この意向そのものを速記録で発表しただけでも、国民はすぐわかる。今度の日教組に対する弾圧が、特殊な、政治的な意図による弾圧であるということであります。  そこで私は国家公安委員長に伺いたいのですが、今度のこの春闘は、労働者が、賃金を上げる、あるいは生活の改善、年金の問題、こういう要求で立ち上がってきたわけです。そして国会においても、物価問題を中心にして、私どもはじめ野党は政府のエネルギー政策その他を追及した。その中から、大企業はかってに物価をつり上げてきたという事態も明らかになってきたし、政府がこれに対してどういう態度をとってきたかということも、不十分ではあったけれどもいろいろな角度から明らかになった。私は国民の怒りは当然なことだろうと思う。これは法律云々の問題ではないのです。  そういうやさきに、田中総理は突然君が代の問題とか何かを持ち出してきた。先ほどは参議院選挙とは関係ないと言われたけれども、新聞その他によりますと、物価問題で土俵はまずいだろう、新たに教育問題、ここに野党を引っぱり込んで、そこで相撲をとって参議院選挙に有利な道を開く、こういう新聞報道も流れておるのです。しかし、君が代の問題、その他の問題についてはあまり国民は踊りませんでした。  そういうさなかに、この日教組に対する、しかも集中的な弾圧を行なってきているのです。これがほんとうに教育を守ると言えるでしょうか。組合運動をやる赤い先生ほど一番子供に好かれて、教育に熱心だといわれているのです。しかも大臣は先ほど、戦後の教育は混乱していると言う。政府責任をたな上げして、まるで混乱の責任が教員や父兄や子供たちにでもあるかのような、そういう傍観的な発言なんです。私は、いまの政府の為政者のすべてと言いませんけれども、見ていて、あるいは自民党が財界から不浄な政治献金をもらっている中で、教育や道義を言って一体どれだけ子供たちにそれが徹底できると思いますか。憲法違反の自衛隊を合憲だと言っている。そして学校の先生方が教育で憲法をまっとうに子供たちに言えないという条件をつくっておりながら、どうして正義を主張できるのですか。そういう教員がいま正当な要求で、しかも憲法に基づいてストライキに立ち上がってきている、それに対する弾圧です。教育の問題でも、まさに自民党政府に最大の責任がある。罰せられるべきものは政府側だと私は思う。そういう意味で、大臣の御見解を伺いたいと思うのです。
  65. 町村金五

    ○町村国務大臣 今日のわが国におきまして、物価が非常に高騰をするに至った。高騰するに至った原因はいろいろあるでございましょうが、とにかく高騰をして、国民生活に重大な脅威を与えておる。これは私も全く同様に考えておるところであります。したがって、このためには政府としてはいま懸命な努力をいたしており、大蔵大臣の見通しによりますれば、やや鎮静の傾向に至ったということはまことに私ども慶すべき事柄だ、こう考えておるのでございます。  しかし、いま多田委員の御意見によりますると、今日物価が高騰しておるのであるから、このたびのストライキはことごとく当然であり、またこの間に違法なことが行なわれたとしても、それは物価高騰ということがあるのだから全部免責されてしかるべきだというような御議論のように伺ったのでございますけれども物価高騰ということと、今回違法なことが行なわれたとするならばそれをそのままに放置しておいていいということとは、必ずしもそうはならないのではないか。やはり警察当局といたしましては、違法な事実がございますれば、これを政治的な意図なんということでなく、純粋に警察立場法秩序を守らなければならぬという立場から法の厳正な施行に当たるということは、私は警察の当然の立場でないか、こういつも考えておるところでございます。
  66. 多田光雄

    ○多田委員 賃金を上げる、物価を引き下げる、これは当然の労働者や国民の要求なんです。その要求は通らない。労働者が賃上げをと言ったって要求は通らない。だから国際的にもストライキ権が認められているじゃありませんか。団結権、交渉権、争議権が認められているのです。まるで、物価値上げになったためにストライキをやったのはまずいみたいな言い方です。そうじゃないのです。まさに政府や企業側が一たとえば企業について言えば、膨大な利益をあげながらも労働者のささやかな要求さえ認めていかない。認めない。その瞬間でも企業は膨大な利益をあげているのです。しかも不当なやり方で。それに対して、労働者が正当な要求をして取りに行っても聞かないから、憲法で保障されている、しかも国際的にもう定着している争議権をもってやっておるのじゃありませんか。だから、そのこと自身がわからないぐらいあなた方の頭というものはずれている。ずれていると言うよりは、むしろそういう労働者の民主主義に対して敵対していると私は考える。しかも政府もそうでしょう。大企業に対してたいへん甘い態度をとりながら、公務員の正当な要求に対してはこれをきびしく取り締まっている。だから労働者として、憲法という大前提を守って戦っているのです。  私は繰り返し申し上げますが、地公法三十七条は憲法違反ですよ。しかもマッカーサーの占領軍当時のあの政令二百一号をそのまま引き継いだだけじゃありませんか。(「憲法違反は最高裁が最後にきめるのだ」と呼ぶ者あり)最高裁の判決だっていろいろあるじゃないか。そういう意味で、私は大臣に、この春闘を正しく解決するためにも、こういう不当な、しかもねらい撃ち的な特殊な、政治的な弾圧と思われるような、こういう不当な捜査、これをやめるということ、そしてこれを拡大しないということ、そういう処置を直ちに警察庁長官指示してもらいたいし、またすべきだと思う。どうでしょうか。
  67. 町村金五

    ○町村国務大臣 たびたびお答えを申し上げておりまするが、日本の警察というものは、政治によってその態度を二、三にする、政治に左右をされるということは断じてあってはならないということを、私どもは常に指示をいたしておるのでございます。  したがって、今回の事柄につきましても、何か今回のストライキに対する気勢をそぐために、政治的な意図をもって特にわれわれが指示をして弾圧を加えたといったような意味の御指摘でございましたけれども、これは前段申し上げたような趣旨で今回の強制捜査警察がいたしたのでございまして、私どもはその間に何ら政治的な意図を加えていないということだけを明確に申し上げておきたいのでございます。
  68. 多田光雄

    ○多田委員 皆さんが政治的な意図はないと、そういう弁明をすればするほど私どもはそれを信用できない、そういう気持ちになります。日教組だけが集中的に捜査されている。しかも長官は、各県の意見を聞いて連絡調整をやった、こう言っている。そして皆さんは責任を、あたかも各県が自主的にやったようなことを言っている。しかも各県が情報を集めたと、こう言っている。その情報というのは、随所に張り込み、尾行をやったことを私どもは聞いているのです。そういう情報に基づいて事前から仕組まれているということは、これは弾圧を受けている教員が一番よく知っているのです。しかも一人の奥さんの、立ち会いさえ認めない。こういうめちゃくちゃなことをやっているのです。私は、今度の弾圧に対して心から怒り、抗議すると同時に、憲法違反あるいは国際的に定着している民主主義の流れ、こういうものに逆流するような措置に対してほんとうに強く抗議して、私の質問を終わりたいと思います。
  69. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 小川新一郎君。
  70. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 私は、同僚、先輩議員が数多く専門的な技術分野から御質問しておりますので、まことにしろうとくさい質問で恐縮でございますが、どうかひとつお答えをいただきたいと思いますし、また重なる点は御了解いただきたい。  教員組合、俗にいう日教組とか高教組、この組合員の数及びその組合の実態について少しく聞きたいのでございますが、われわれは野党でございますので、この中には公明党色の人もいると思う。日教組の中の政党色別、こういったものはいまの実態では一体どのように把握されておりますか、ひとつお尋ねしたい。
  71. 山田英雄

    山田説明員 ただいま御質問にございました政党別の把握というたぐいの実態は、私ども把握しておりません。
  72. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうしますと、公明党もあるでしょうし、社会党さんもあるし、共産党さんもある。俗に、赤い旗を立てて労働運動をやっている。絶対にこれは野党である。何かこういった社会問題が起きたときには、これは賛否両論ありますね。先生がストライキをやるということがいいことであるか、悪いことであるかということについては、学者も、また父兄もPTAも、また教員自体の中にもそれぞれいろいろな意見はあると思います。その問題の中に立って、私どもは教育とは一体いかにあるべきか。そういう中にあって、政党のイデオロギーもしくは考え方、そういうもので教員が左右される、その教育に及ぼす影響というものをあなた方は重大視しているのではないか。こういう問題が頭の底にあってそういった捜査とか取り締まりということが行なわれるのであってはならないのではないかという考えを私は持っております。  しかし、その問題について過激的な、またドラスティックなすべての問題について許容できない点について、社会的な制裁を受ける、また法律に照らし合わせてどうかということは検討されて当然なことだと思いますが、私はまず前提としてそういう問題がいま私の頭の中に非常にありますので、これはそういったイデオロギーとか政党の力がそういった問題に介入しているということには全然関係がない、ただあらわれた法律の分野においてのみ捜査をなさっているのだということであるのかどうか。これは非常に大事なことでありますので、まずお尋ねしたいのであります。
  73. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 御指摘のとおり、警察についても、厳正、公平、政治的中立性でやっているのが警察官であります。同様に、やはり教職員につきましても、教育のあり方から見て厳正、公平であり、政治的中立性である、こういうふうに思っておるわけであります。したがって、私どもは、その出てきた容疑であるとかあるいは事件であるとかいうことを、私のほうは警察として厳正、公平に、法律に基づいて行なっているというこの方針についてはいま申し上げたとおりでございます。
  74. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 これは国家公安委員長、自治大臣にお尋ねしたいと思いますが、最近の教育界、また社会情勢の中で、先生方のストライキ、これが一体どういうふうな傾向にあるか、動向にあるかということでございますけれどもストはもはや刑事罰の対象にはならないという考え方、すなわちILOやユネスコの勧告など、教員の身分保障というものは国際的にも非常に強まっております。こういった動向の中で、いままで過去にこのような事例がなかったということに逆行するような考え方の中にいま私は立っておりますが、この問題については自治大臣、国家公安委員長立場に立って、そういった教員に対する身分保障の強化という世界的な動向の中でどう判断なされておられますか。
  75. 町村金五

    ○町村国務大臣 諸外国における教員の身分保障というものがどういうふうになっておるかということについては、私、たいへん不勉強でその間のことはほとんど承知いたしておりません。したがって、それについてのお答えは、まことに残念ですけれどもいたしかねるわけでございますが、少なくとも、今日の日本におきましては教員のストライキというものが地方公務員法によりまして明確に禁止をされておるということだけは、これは御承知のとおりでございます。したがいまして、こういった法律に違反をいたしまするようなことは、学校の教職員の方々は法を守らなければならぬという立場に立っての教育者なのでございますから、そういったことの万ないことを私どもは強く期待をいたしておるところでございます。しかし、遺憾ながら法を守ることができないということになりますれば、その行動が元来ことごとく刑事罰の対象になるものであることは言うまでもございませんけれども、今回のように、ことにきわめて従来に例を見ないような激しい法条の違反であるということが、警察が今回こういった強制捜査に踏み切るに至った理由だ、こう私は理解をいたしておるのでございまして、この警察の措置というものは、私は残念でありますけれどもやむを得なかったのではないか、こう考えるのであります。
  76. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 十一日夕方までに警察庁に入った報告ということが新聞に出ておりますが、日教組関係で二十三都道府県、高教組関係で三十都道府県、これだけが入ったのでございますが、日教組だけに強制捜査に踏み切った理由は何でございましょう。
  77. 山田英雄

    山田説明員 強制捜査に踏み切りましたのは、十二都道府県における日教組並びに県教組、高教組というものでございます。この組合だけを対象にしました理由は、捜索差押請求令状発付される証拠が当該都道府県で固まったということに基づくものでございます。
  78. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうしますと、争議行為に入った他の三十三都道府県では、まだそういったものが固まらなかったということでございましょうか。
  79. 山田英雄

    山田説明員 そのように承知しております。
  80. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そういたしますと、その容疑が固まれば三十三都道府県にも拡大するのでございますか。
  81. 山田英雄

    山田説明員 先ほど長官からも答弁申し上げましたように、私ども調整いたしましたのは昨日の十二都道府県に関する強制捜索に関してでございまして、現段階においてさらに調整を要すべき特段の報告は都道府県警察より受けておりません。
  82. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 その見通し等については先ほどもお答えをいただきましたので、私はあえて問いませんが、現時点においては十二都道府県でとどまる、こう理解してよろしいでしょうか。
  83. 山田英雄

    山田説明員 現段階においてはそういう段階でございます。
  84. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 今回の強制捜査に踏み切った根拠となるものは、例の全逓中郵のあおり行為、これが根拠となっているやに新聞には報道されております。そうなりますと、その容疑の実態が固まったときには、この日教組をはじめとする教員組合の幹部、指導者、この方々にも逮捕ということも考えられますが、そういう点をいまここで見通しを言えということは、先ほどの長官の御答弁でできないと思いますが、固まればそうなると理解していいのですか。
  85. 山田英雄

    山田説明員 地方公務員法の第六十一条の罰条に基づいて犯罪捜査を開始しておるわけでございますので、御質問にございましたように、固まれば、そこの罰条の被疑者に当たる者については捜査をする、そういうことになるわけであります。
  86. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 それは、警察当局が前々から、そういう容疑がありという根拠、ビラとかチラシとか、そういった指導内容、方法というものを事前にキャッチされておったのか。少なくとも、今回の国民春闘という問題が、教員組合問題ということで今回火を吹いたわけでございますけれども、こういう問題、組合の実質作戦行動と申しますか、争議行為の行動というものはいつごろつかんでおったか。要するに、日教組をはじめとするそれらの争議行為というものは、公開の場であるいろいろな公会堂とかそういうところで集会やその他のことが行なわれている、そのことに端を発してなったのか、それとも、現実的にはもう前から、先ほどお話があったように個々の先生を尾行してみたり、いろいろなことで行き過ぎた調査があってそういうことをつかみ得たのか、その辺のところはどう理解したらよろしいのでございましょうか。これも、捜査上ここで発表できない点ということで御答弁ができないことを想像して、私はできる範囲のことで御理解いただきたい。これは国会の場でございますので、新聞よりも詳しく知りたいのです。  私がいま質問していることは新聞を種にして聞いている。これでいきますと、何かというと新聞に出ていること以下にしか発表がないということは、新聞記者には相当詳しく発表しているのですね。ここにも、たとえばいまあなたがおっしゃったようなことが出ておりますが、「ビラなど証拠物件を押収し、このストの原動力となった日教組幹部がストをどのようにくわだて、共謀、そそのかし、あおり行為があったか、などをかため、最高幹部を含めた責任者の地方公務員法三七条違反容疑の刑事責任を追及する方針で、」ここで方針が出ちゃった。「容疑が固まり次第、幹部の逮捕に踏み切る方針だ。」方針がみんな新聞に出てしまう。だから、その方針は一体どう理解したらいいのか。  私たちがどういう方針なのかと聞くと、長官は、捜査上のことは申し上げられませんとか、予定は予定にして決定にあらず、どう展開していくかはそのときの調査の出た結果によって判定していくんだということで、国会議員であるわれわれには一向に方針が示されない。また、こういった大事な警察関係を調べる、私たちの審議をしますところの地方行政委員会の最先端の、一番ホットニュースの出るところでさえも、新聞記事以前には足が出てこない。これはまことに私は、愉快であるとか不愉快であるとか、遺憾であるとか遺憾でないとかの問題ではない。国会の場というのは、皆さんと私たちは事あるごとにこうして顔を会わせ、お互いの気心もよく知っておるんですよ。そんな、私たちがばかみたいに、よそへ行ってあなた方の不利になることや、捜査のマイナスになることや、まして私たちの立場というものがございますので、日教組側に不利になるようなことも言うわけはない。そういう立場に立って御方針を許される範囲聞きたいというのに、あまりにもかたくなな、小野田さんよりもかたいというようなことでは困るのであって、どうかひとつよろしくお願いしたいのでございます。
  87. 山田英雄

    山田説明員 お答えいたします。  これは犯罪捜査でございまして、罰条が御承知のように地方公務員法六十一条、「左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」その四号「何人たるを問わず、第三十七条第一項前段に規定する違法な行為」これは禁止された争議行為でございます。「違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」これが処罰されるわけでございます。  そこで、ただいま捜査進行中の過程でございますので、どういう形態を立証しようとしておるかについては御答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、要するにあおりでございます。これは通常は指令行為があおりであるというようなこともいわれておりますが、あおりといいますのは、争議行為を実行させる目的をもって、他人に対してその行為を実行する決意を生じさせるような、またはすでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることというふうに、判例上、解釈上定義されておりまして、私どもとしましては、そういうようなあおりがあったかどうか、これを立証する必要があるわけでございます。  それから、御案内のように、昨日敢行された一日ストは、すでに昨年の七月の日教組の前橋市における第三回定期大会からストライキをやろうという提言はなされておりまして、その後各種会合において、そういう提言なり主張なりは組織内部におきまして行なわれてきておるわけであります。そういうこともあわせて捜査の対象にもちろんしておりますし、それから先ほど申し上げましたような、法律的にややかた苦しい定義でございましたが、いついかなる段階でだれが個々の組合員にあおるような行為をしたか、これを具体的な証拠に基づいて立証していく、こういうことが犯罪捜査の中核になっておるわけでございます。そういうことで、ちょっと舌足らずかもしれませんが、御了解をいただきたいと思います。
  88. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 いま山田君から御報告がありましたけれども、犯罪捜査というものについては、やはり言えるものと言えないものがあるわけでありまして、私のところで言いたいものもありますけれども、それを言った場合においては、犯罪捜査意味において、人権の問題とかいろいろな問題もございますし、また今後の問題もありますので、言いたいということもずいぶんあるわけでありますけれども、それはなかなか言えないということでございます。  また、新聞記者がいろいろなことについて取材いたしますけれども、その取材が全部正しいというものではございませんし、そういう情報の収集というのは、新聞記者としては私にも会うこともありますし、またその他の各面から総合的にやはり判断されて出ておると思いますし、私が申し上げていることもありますし、申し上げないこともありますので、その点はひとつ御了承願いたい、こう思うのであります。
  89. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 新聞記者の質問のほうが私たちよりも専門的であり、長官からいろいろとニュース記事になるものを取り出すテクニックがうまいのだとは思いますよ。私は特にこういうことはへたですから、全く無能でございますので、何聞いていいかわからないでいまおどおどしておるのですけれども、少なくとも十二日の朝刊に出ている以上のことがここから出てこなければ審議しているあれにはならないのですね。  それは、どういうことを引き出すのかということなんです、問題は。私はただ単に興味本位なことを引き出そうとしているんじゃないのです。国民春闘というものが、ほんとうにいまの物価インフレ、狂乱時代の中で、先生も含めたすべての勤労者がいま悩んでいる問題についての春闘が行なわれております。そのさなかにあってこういう問題が起きてきたということが及ぼす影響というものは非常にでかいんじゃないか。たとえて言いますと、私が冒頭、教員に対する身分保障の強化という世界の動向に違反しているのではないか、逆行してきたのではないか。特に、容疑が固まって、自分たちの尊敬している先生が、たとえば警察のごやっかいになるようなことになったと仮定したならば、その子供たちに与える心理的影響や、将来これからどうなるかという、義務教育の幼い子供たちに与える影響というものは非常に大きいものがあるのですね。そういうことを踏まえて、いま教員の身分保障という問題については、私たちは非常に厳格な立場を貫くと同時に、そこに及ぼす影響とかいろいろな問題を考慮しつつこういった問題を論議していくのが政治の立場であり、おとなの立場でなければならないんです。私はそういう立場に立っていま質問しているのでございますけれども、そういう大事な子供に対する影響というものを考えたときに、これは、その一つの法律的な違反を犯したことによって警察が検挙したということの事実よりもっと大きな影響を与えます。これは大臣、田中内閣の閣僚の一員として、大所高所からどのように御判断なさいますか。
  90. 町村金五

    ○町村国務大臣 ただいま小川議員の御指摘になりましたことは、たいへん私も重大なことだと思います。自分らの尊敬しておる先生が万一司直の手によって逮捕されるということになりますれば、このことが児童に与える影響はきわめて大きいということはまさに御指摘のとおりでございます。したがって、事、教職員に対しまする法の執行あるいは強制捜査というものは最も慎重を期さなければならぬということについても、私ども全く同様に考えておるのでございます。  ただ、御承知のとおり、だからと申しまして、あらゆる犯罪が、教師の手によって違法行為が行なわれた場合において、そのことを重視するあまりその点が不問に付せられるということは、法秩序を維持をしてまいるという点において、これまたそう簡単にはまいりかねるのではないか。その間に立ちまして、警察当局といたしましてもそういった児童に与える影響を十分判断しながらも、なおかつこれはどうしても法秩序を守るためにはやらなければならぬというときに、いわば伝家の宝刀的にこの措置を講じなければならないという場合も残念ながらあり得るのではないか。私は今回の措置はそうだというふうに信じておるのでございます。
  91. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 私は、子供の教育というものは、甘やかしてもいけない、きびし過ぎてもいけない。法律を守るという大事なことを教えるのも教師の立場であります。これはよく理解しております。でありますから、先生といえども悪いことをしてもいいということではありません。その辺のことは十分理解した上でいま御質問しているわけでございます。  すなわち、この教師の争議問題という問題は、まだまだ普通の一般刑事犯を行なったような問題と性格が全然違うわけですね。少なくとも、百万人、二百万人の先生方がかわいい子供たちの授業を一日でも二日でも放棄してこれを戦うのには、戦うなりの理由、根拠があり、また世界の動向、私たち政治家の立場からもこれを支援しなければならない根拠、理由があるわけです。そういう中に立って、いま大臣からお答えいただきましたように、子供に与える影響等を考えたときには、もしもこれが中途はんぱなことであったならば、不発に終わったときであれば、まことにこれは大事な問題になるし、だからといってさらにどこまでも徹底的に追及していくことになれば、より傷口が大きくなるということ、こういう問題は春闘全体の問題にも影響してくる問題であります。  そこで、いま二階堂長官をはじめとし、田中総理まできょうは出馬して、この春闘という問題に対してのおさめ方をお互いに鋭意努力しつつあるときに、ぼくは二つの問題があると思う。一つは、この問題が逆に争議を長引かせていくのではないか。もう一つは、いま言ったような教育界全体の衝撃波が、わが国におけるところの教育の立場が世界にどのような影響を与えていくんだろうか。こういった問題を踏まえた上で、この捜査に対しては重大な決意が長官自身にもおありの上でなさったのでありますから、先ほどの見通しについて、いいかげんな見通しを立てておられないということの一端として私は質問をしたわけでございます。どうかその辺の決意を、またその辺のあなたの御所見なり見解なりというものを、長官立場を通してお聞きしたいと思います。
  92. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 今回の争議の問題につきましては、私ども、元来すき好んでやっているわけではございません。われわれはむしろこれを受けてやっているというのがいまの私の考え方でございます。したがいまして、今度の争議行為の全体を見た場合においては、やはり日教組の組合の組織を利用して、そうして公務員である学校教職員に対して争議行為を行なわせるというところに問題があるわけでありまして、この問題について、いままでほかの委員から言われたように、私どもが刑事弾圧をしているとか、あるいは私どもが積極的にやっているということでは全くございません。むしろ日教組自体において、今回の問題について良識をもってやるべきではないだろうかというふうに私は思っておるわけでありまして、そういう面を受けまして、私ども法律に照らして、いま申し上げたように、不幸にも違反の犯罪容疑が濃厚になった、しかもそういうものが出たということで、警察としてその責務に基づいて捜査をやったということでございますので、私どものほうもすみやかに、しかも迅速に、しかも法律を正しく適用する、そういうことであとにいろいろなものが残るということのないようにするということが一番大事だと思います。  元来、私はよく言うのですけれども、政警分離じゃないか、やはり政治と警察というものは分離していなければならぬという、そういう面で私は政警分離をしながら、しかも政治全体については私どもはもちろん関心を持っております。しかし、警察として法律を適用するという意味においては、いま申し上げたように、大臣からいろいろと答弁がございましたとおり、私もそれに対して私どもの今後の捜査をやっていきたい、こういうふうに考えております。一日も早くこの事件の内容が明らかになるということが一番大事だ、こういうふうに思っております。
  93. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 いま御答弁の中で私が感じたことを申し上げまして、間違いだったら間違いだと言ってください。  その一つは、あおり行為、先ほど山本さんから御説明があった、その一番の根拠、目的である、その方針なりの最終目的であるあおり行為という問題が根拠濃厚になってきた——なってきたのかなったのか、あったからやったのかという議論をいましているのではない。そうなった場合、槇枝委員長等の最高幹部にまでこれは当然及んでくる、またその各組合の最高責任者にまでいく、そこまでいかなければおさまらないものなんでしょうか。  また、これは先ほど言ったように、そこまでなったときの影響力、これまたたいへんな問題になってまいります。それをするために、先ほど同僚委員からもお話がありましたような行き過ぎた、私たちが聞いておっても、事前捜査が行き過ぎているじゃないかというような疑いを持つようなことまでしてそこへ持っていくのではないかという疑念が、私はいま長官の御答弁の中から感じられました。違うなら違うでけっこうです。また私の考えていることは、表現のしかたは、ちょっとぼくのほうが行き過ぎているのであるかもしれぬが、そこまでいくのであるということであれば、そのようなお考えをちょっともう一ぺんお述べいただきたい。
  94. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 私は、捜査を特別の意図をもってやっているわけではございません。捜査経過において、犯罪捜査経過においてそういうことについて十分よく把握しながら今後とも捜査をやるという意味において、いま申し上げたような意図をもってやっていることでは全くございません。
  95. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 最後に、国家公安委員長、この問題が今後の労働界や教育界に及ぼす影響、これはどう御判断なさっておりますか。これをちょっとお聞かせいただきたいのです。
  96. 町村金五

    ○町村国務大臣 私どもも、このたびの警察強制捜査が今後の日本の教育界にどういうような影響を与えるかというお尋ねに対しては、どうもちょっと的確にお答えを申し上げるだけの用意がないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、私どもは今日こういうような事態が起こるということはまことに不幸なことだというふうに考えておるのでございまして、国民が非常に期待をいたしておりまするようなわが国の教育の正、常化ということが次第に実現をいたしていくことになりますれば、こういった事態はもとより起こるはずのものではございませんので、私どもも日本の教育界が、ほんとうに教育行政と教育の現場の先生方との間の完全な合意のもとに、りっぱな教育が一日も早くできるというような事態を実は念願をいたしておるのでございまして、このたびのことがどういうような影響をもたらすかということについては私は確たることを申し上げるだけの用意はございませんけれども、そういうことになればたいへん私はしあわせだということをただ祈っておるという気持ちでございます。
  97. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 時間が参りましたからこれでやめますが、理想というものはいつも高く、公平に掲げなければならないことは言をまちませんが、その理想の目的に達する。彼岸に達するまでの道程において、民主主義を破壊する、また教育のモラルをこわすようなことがあった当局のあり方というものは、厳に戒めていかなければならないということを私たちは野党としていわざるを得ない。私どもはそういった良識というものを期待しておりますが、何となくこれが取り締まりが強化され、非常に逆行的な姿勢というものが打ち出されてくるような考え方を持たせるようなことがあってはならない、こういう点を非常に憂慮いたしております。そういう点を、私ども同じ日本人として、党利、党派、またイデオロギーを越えての子供を思う一念、子供の教育にかける情熱においてはお互いに変わってないと思いますから、その辺のところを踏まえた上で、最後に長官の御決意を聞いて終わらせていただきます。
  98. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 今回の残念な犯罪の容疑についての捜査の問題については、いま申し上げたようにやはり全体的なものをよく考えながら、しかも正しく法律実施をやっていくというふうに考えておりますので、私も十分あらゆる角度から慎重に考えながらやっていきたい、こういうふうに考えております。
  99. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 終わります。
  100. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 この際、午後一時二十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後一時二十五分開議
  101. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出にかかる消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。柴田健治君。
  102. 柴田健治

    柴田(健)委員 今回の消防法の一部を改正する法律案に関連をしてお尋ねを申し上げたいと思います。  今度の法の改正は、新たに、われわれが重要な部分として関心を持っておるのは十七条の項の改定であります。これは、いままである古い建物に対して防火施設を完備するように法的に規制をするということであります。百貨店、旅館、病院、地下街、複合用のビルというようになっておるわけですが、この防火施設の完備を義務づける場合に期限をつけておられるわけです。百貨店の場合は三カ年、旅館、ホテルは五カ年、病院は五カ年、地下街、複合用のビル、そういうところは三カ年ということになっております。私たちはこの点で、三カ年、五カ年という、これにある程度の弾力的な期限を持たせておることは了解はできるのですが、問題は病院なんです。病院の五カ年というのはどうも納得ができない。われわれ第一線で、いろいろな公共施設の防火体制を訓練その他で指導していく過程の中で、病院はイの一番に守らなければならぬという指導をしてきた、やはり長い歴史の中でそういう指導をしてきた。それがなぜ病院に五カ年の猶予期間を認めていかなければならぬのか、その理由をひとつ克明にお願いしたいと思います。
  103. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 今回の改正案におきまして、消防用設備の既存建物に対する遡及適用にあたりましては、特定防火対象物を二つのグループに分類をいたしております。ただいま御指摘のように、百貨店、地下街、複合用途防火対象物、この三つにつきましては三カ年以内に消防用設備を完備する、その他の旅館、ホテル、病院等につきましては五カ年という猶予期間を設けておるわけでありますが、この考え方は、不特定多数の人がその建物を利用する、そして火災の際の危険度が最も大きいという意味におきまして、百貨店、地下街、複合用途防火対象物につきましては三年以内に設置を義務づけたわけであります。旅館、ホテル、病院は、不特定多数の人が利用するということになりましても、百貨店とか地下街のように全く不特定の者かといいますと、その辺はやや不特定といいましても半ば特定しているような対象であります。そしてまた人数から見ましても、百貨店や地下街ほどの人数が利用対象にならない。それからまた、旅館、病院等は常時使用されておる。休んでおる時間というものが旅館、病院の性格からいってないわけであります。  そういう意味からいたしますと、特に病院などの場合におきましては、患者を収容しながら消防用設備の工事をしていく場合に、どうしても患者との関係におきまして、相当計画的な工事を予定していかなければならないという問題があるわけであります。ただ一面、病院の性格から見て、災害等がありました場合には動かせない患者が相当入っておるわけでありますから、確かに、火災を発生させないという意味におきましてはできるだけ早くスプリンクラー等の設備をつけるということは非常に望ましいわけでありまして、その辺の調整につきまして私どもも非常に頭を悩ましたような次第でございますけれども、厚生省等とも相談をいたしまして、指導としてはできるだけ早い時期に消防用設備を完備してもらう。特に国立、公立等の病院につきましてはできるだけ早い時期に完備をしてもらうという指導をすることを前提にしながら、一応現在の病院の患者が利用する状況等から見て、その期限は五年ということにしておくのが適当ではないだろうか、こういうことだったわけであります。
  104. 柴田健治

    柴田(健)委員 長官答弁は、どうも何か奥歯にものがはさまったような言い方をしている。  われわれ、いままでの防災訓練の一つの図上訓練、また現地訓練という形で、公共施設の中で一番守られなければならないし、人命尊重という立場から、また生命、財産を守るという立場からいって、健康体が収容されておる施設と身体障害者といわれるそういう病人が収容されておる施設との区分けは、消防活動の任務の中に、長い指導方針の中でちゃんと優先順位をきめてあるわけです。これは国がそういう指導をした。それを、今度の設備改善では、病院は五年でよろしい、百貨店や地下街やその他は三年でやりなさいというのは、どう考えてもいまの指導方針より逆な考えなんです。  なぜこんなことになったのか。病院こそ早急に防災施設を完備しなければならぬ。厚生省は何をするところか。ああせい、こうせいと講釈だけするところか、こう言いたい。厚生省の見解そのものをあなた方が認めるというのがまたおかしいのです。消防庁は何を指導方針としているのか。消防庁の任務は何か。どうも武見さんの政治圧力に屈服したのではないかという気がするのです。この点は直すべきだと思うのですよ。いままでの指導方針が全部逆になってもいいのですか。どうですか。
  105. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 過去の火災事例から見て、消防の仕事の中でも特に病院に対するいろいろな防災指導は、非常に重点的に行なわれておるということは御指摘のとおりでございます。私どものほうから出ております各市町村に対する指導通達の中でも、病院に関するものが非常に多いことはもう御指摘のとおりでございます。  ただ、現実問題として、短期間に相当な工事を病院について要求をしていくことになりますと、病院としましては一定期間患者収容ということをやめなければならないという事態も出てくるわけでありまして、一患者の収容を前提として計画的な工事を求めていくためには、相当の猶予期間を置く必要があると考えられるわけであります。そういう意味におきまして、病院につきましては五年という猶予期間を置いたわけでございます。しかし、私どもとしましても、できるところからこうした消防用設備をできるだけ早い機会に完備していくことは必要でございますので、指導としましては、できるだけ早い期間にその工事が完了するようにしていきたいと思っておるわけでございます。
  106. 柴田健治

    柴田(健)委員 長官はわけのわからぬことを言うて、あなたはそれで全国の消防団に号令をかけられると思われるかな、そんな変なことを言うて。しかしあなたにも良心があろうと思いますから、あまり言うてもいけないので遠慮は申し上げておきますが、これは厚生省と話をして、早くこの五カ年というものを取り消さないといろいろ物議をかもすことになるのではないか、こういう気がいたします。何としても三カ年、五カ年というのはおかしい。いろいろ病院でも、その他百貨店でもそうですが、いま長官の御発言の中に、患者をどう移動するとかなんとかいうのはへ理屈であって、防災施設のほうが優先権を持たなければならぬ。災害が起きて、患者の運びがどうだこうだというて、防災施設がおくれておりましたということは通りやしませんよ。そんなことが通るようなら法律も規則も要らぬわけです。そういう点は十分反省してもらって善処してもらいたい、こう思います。法律をきめる段階でいろいろな政治的な圧力があったと思います。なければこういうことはないと思います。災害に関しては政治的配慮というものは要らないわけです。そういう点は十分考えてもらいたい。  そこで、全国で防火施設の完備していない古い建物というのは大体どのくらいあるのですか。
  107. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 今回の改正によりまして、既存不適格の建物として遡及適用の対象になりますものは、百貨店から病院、複合用途対象物に至るまで、その面積からいいますと約五百万平方メートルでございます。そのうちの半分が病院関係、それに次いで大きいものがホテル、旅館関係であろうと思います。
  108. 柴田健治

    柴田(健)委員 件数にして相当数があるようであります。日本の防災施設がおくれてきたということはお互いに反省しなければならないわけですけれども、災害が起きるたびに、二度と災害を起こさない、きびしくやっていくんだとか、それに善処していくとか、そういう災害については万全の対策をするとか、いろいろ声明的な決意表明をされるわけですが、災害そのものはいついかなる場合に起きるかわからないという面を持っているわけですね。それだけに、施設の完備、そしてそれに対する防火体制の整備というものが常時必要なんです。  まず、人の問題をお尋ねしたいのですが、消防関係職員、常設消防と非常勤消防、この人員はいま幾らおるのですか。
  109. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 常設の消防職員が昭和四十八年月末現在で七万七千人でございます。それから非常勤の消防団員が百十六万人ということになっております。
  110. 柴田健治

    柴田(健)委員 その職員、団員の日夜の努力というものは、これはたいへんな努力をしておるわけです。そういう人的な構成はまだまだこの日本は衰えていないという判断です。常設消防のほうの職員数は少ない市町村もありますけれども。けれども、やはり敏速で、そして初期防火というのが第二段階であって、やはり原則というものは予防消防だ。予防消防というものが絶対的必要だ。この予防消防の見地に立って防火施設なりまたいろいろの装備の完備というものが行なわれておるわけであります。いまの現状で予防消防の見地から万全であるかどうか、この点、消防庁は自信を持っておられるかどうか、見解をお聞きしたいのです。
  111. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 現在の市町村における消防職員の配置の状況というものからものを考えてみますと、昭和三十六年に定められました「消防力の基準」というものに対しましておおむね六〇%ないし七〇%というのがいまの施設の現在の水準でございます。また、それに対応する予防職員というものも配置されておるわけでありますが、最近の防火対象物の状況等から見ますとなお予防職員につきましては万全の体制であるということは言い得ない状況にある。こういう意味におきまして、できる限り、こうした最近の社会情勢から見て、施設の充実はもちろんでありますけれども、やはり重点的なこの予防行政の面にもう少し人間を張りつけていくということを考える必要があるというふうに思っております。
  112. 柴田健治

    柴田(健)委員 日本列島、御承知のように火災ばかりでなしに水害もある。それから豪雪、あらゆる災害を含めてそれぞれの市町村が、任務とはいえ、消防団員を動員してあらゆる災害に取り組んでおるわけですね。  私は、消防庁の考え方はややもすればおざなりなところがあると思う。なぜそういうことを言うかというと、どうも机上で考えて、現実とマッチしない点がある。  それは、たとえば一つ申し上げると、消火器の問題を申し上げても、いろいろ一種から六種までこしらえて検定をしている。そうして数が多い。業者も多いのですが、その業者が届けをすれば直ちに検定協会で検定をして売り出している。だから、たとえば可燃性のものがたくさんあるところにはどういう消火器を、ただ居間なら居間だけというところならどの程度の消火器と、その部屋の大きさ、それから建築構造によってどういう消火器かというようなきめのこまかい指導というものはあまりやらない。それから、むやみやたらに消火器を、たくさんの種類を検定して、業者が競って販売合戦をやる。それで、たとえば民家一つ取り上げても、一戸に、一家庭に一個あればいいんだという。あなたのほうの消火器はどこの消火器を買ったのですか、どういう種類ですか、よくこう言って聞いても、まあ一つ備えつけておけばいいんだからどこでもいいんだというような、まことにお粗末な指導なんですね。そうして消火器をいまのように種類をたくさん検定をして、認定をしてどんどん販売させていくという、これを一つ見てもどうもおざなりだ。もっと権威あるものを消防庁はなぜ持たせないか。もっと強い指導性ができないものか。こういう気がするのですが、その点、どうですか。
  113. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 私どもの消防、防災関係についての指導面が、末端における、あるいは国民全体に対する消防についての知識の普及、あるいは、いま申しました例からいいましても、たとえば家庭をどう守ったらいいのかというような、きめこまかい指導というものが非常に欠けておるということは御指摘のとおりだろうと思います。私どももそういう点につきまして、もりと各家庭にまで火災、防災という面についての指導を徹底していきたいというような観点から、昭和四十九年度の予算におきましてはそういう面のPR経費も予算化ができましたので、さらにそうした家庭にまで入り込む防災体制の指導ということを私ども心がけてやっていきたいというふうに思っております。
  114. 柴田健治

    柴田(健)委員 今度の百貨店、旅館、ホテル、病院については、いままで既存の、たとえばこのまわりでいうとそこの赤坂の、あれは東急ホテルですか、この防火施設は、私も見に行きましたが、非常によくできていると思うのですね。いま順次できておる高層建築については大部分はできておりますが、まだまだ完全とは言えない。日本の場合は建築費が高くつくということで、これは土質の関係があって基礎工事に四割も五割も金をかける、そして地上何階建てを建てる。基礎工事に相当金をかけるものだから建築単価が高くつく。それだから防災施設のほうはどうも削ってしまう一そういう悪い癖が、日本の建築構造というか、建築会社においても業者においても発注者においてもあって、どうも防災施設のほうを逃げてしまう。こういう点の考え方を変えない限り、りっぱな防火施設というものはできないのではないか。  同時に、一階建てはどの程度、二階建てはどうする、三階はどうするというような、たとえば放送設備を一つ見ても、各一階ごとに放送設備を持つべきだ。それを一カ所的に集中するところに、故障を起こしたら全部だめだ。たとえば消火せんをつけるのでも、一階の場合、二階の場合、三階の場合では火力が違う。それから煙が違う。こういうふうにスプリンクラーをつけられてもいいのですが、このスプリンクラーの圧力を考えていかないと、火力によって、たとえば水圧をどの程度上げたら火が消えるのかという、この点を十分科学的に指導していかないと、ただていさいよく部屋につけたんだということで、各階ごとに同じようなことの構造で、また同じような考え方では、これは失敗する。  われわれがいつも火災の現場へ行って、どの程度ポンプの水圧を上げたらこの火災は消えるか、こういうことを常に幹部は考える。それは風速の関係がある。湿度の関係も考えなければならぬ。総合的な判断というものは幹部の能力によるわけです。それからやはり施設も、そういう点で消防の専門家が常に、その建物の建築なり改造する時分には立ち会って指導していくというようなことでないとりっぱなものにならぬと私は思う。ただ業者まかせ、設計書を見て業者にまかしたらいいんだというような安易な考えではりっぱなものができるとは思えない。その点、消防庁はどういう指導をしていくつもりか。
  115. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 確かに、ただいま御指摘のとおり、防火対象物の大きさ、あるいはその危険度というものはいろいろ違うわけでございます。そういう意味で、専門の消防機関による消防用設備の設置の指導ということは当然に必要であり、そしてまた業者まかせで、単に形式的に法令に定められたものが設置されておるというだけでは、やはり防災の面から見ますと非常に不安であります。  そういう意味で、今回の消防法の改正におきましては、必要な消防用設備についてその検査を消防機関に行なわせる、さらにまたそうした設備が非常の事態において十分に作動するかということについての定期的な点検、保守を行なわせるということにいたしまして、こういった消防用設備が常に十分な能力を出せるように、その設備ごとに最後までこれを維持、保守をしていくということに配慮しているつもりでございます。
  116. 柴田健治

    柴田(健)委員 消防庁の長官はくるくるかわるものだからどうもなかなか……。せめて長官は何年か腰を据えてやってもらえたらと思う。何か腰かけでは困るのですね。  建物に対する防火管理者の教育のあり方、講習のあり方、これまた消防庁は非常にあいまいなんです。ただ都道府県にある程度義務づけているが、義務づけるといっても完全義務づけじゃない、やれという程度です。それで、ところによっては消防協会にまかしてもいいじゃないか、県がやらないというような考えがある。こんな指導方針で、完全なほんとうにりっぱな防火管理者が強化されるのだろうか、育成されるのだろうか、こういう気がするわけですね。  それから、危険性の高い、たとえば特殊の構造物の場合の防火管理者は年に何回か講習を受けなければならない、そしてほんとうに防火管理者たるべき資格を与えていくというような、もっときびしさがあってほしい。いまのようなおざなりのやり方で、たとえば建物に行くと、何のたれべえと防火管理者の名前だけは書いてあるけれども、どこにいるやらかしこにいるやらわからない。こんな実態で、ただ講習を一日、二日受けたらいいのだという程度ではりっぱな防火管理者とは言えないのじゃないか。今後の防火管理者育成についてどういう考えを持っておられるか、それをお聞かせ願いたい。
  117. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 防火管理者につきましては、確かにその管理すべき防火対象物の内容に応じた防火管理者というものが必要であるということは御指摘のとおりだと思います。この防火管理者の資格につきましては、一つはその防火対象物の中における地位の問題、これが大きい建物になりますと、現実問題として防火管理者のほかに副管理者的なものも各階に設置をするとかいうような必要も生じてまいりますので、その企業内における防火管理者の地位という点も非常に関心を持って選任をしてもらわなければならないというふうに考えておるわけでございます。  もう一つはこの防火管理者の能力あるいはその知識というものでございますが、これは簡易な防火対象物と複雑な防火対象物によりまして、その防火管理者の守備範囲というものはだいぶ違ってまいるわけでありますから、この防火管理者につきましては、特に複雑な大規模な防火対象物につきまして、その知識を向上させるという方途が当然必要であろうというふうに考えておるわけであります。  これをどのようにするかということにつきましては、今回実は消防法の改正にあたりましていろいろ内部におきましても検討をいたしたわけでありますが、ついに結論をまとめることができずに将来の検討に残したのでありますけれども、少なくとも現在各県なりあるいは都市が行なっておりますところの上級管理者講習というような現任講習とともに、そうした大規模な防火対象物あるいは複雑な防火対象物における防火管理者の再教育という点は、ただいま御指摘のとおり、今後そういう講習制度を現実に行なっていくという体制はつくらなければならないというふうに考えております。
  118. 柴田健治

    柴田(健)委員 まあ、私は一つの方法として、これはもう少し都道府県に任務を持たして、消防学校をもっと充実して、職員もふやして、ここで、特に危険性の高い構造物の防火管理者になるべき人は徹底的に基礎教育、そして基本的な防火管理者としての責任を植えつけていく、そういうものを明確にしてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  119. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 防火管理者の教育という点につきましては、いずれの方式によるか、十分検討したいと思いますが、ただいま御指摘のような方向での防火管理者の教育ということについては、十分強化をしていくというつもりで、前向きで検討を進めていきたいというふうに思います。
  120. 柴田健治

    柴田(健)委員 われわれが立ち入り調査、立ち入り検査を査察ということでやるわけですが、その場合に、防火管理者は平素どういう消防計画、防災計画を立てて訓練をしておるか、建物の防災についてどういう考えを持っておるか、聞いても、あいまいで要領を得ない。きょうは防火管理者はおりませんと、こう言う。おらないことはない、おるだろう。それから、一人で、病気で休む。人間であるから休む場合もあるでしょう。ところが全然補助管理者というものがない。だから、補助管理者も何もないから要領を得ない。こんなことでほんとうにその工場なり建物が管理できるのだろうか。  もう一つは学校なんです。学校は宿直、日直がなくて、休日には職員の皆さんも全部休む。校長先生も。管理者手当はもらっておられるけれども。防火管理者というのは日曜も夜も全然おらない。これは市町村長が管理者といえば管理者だが、市町村の中でたくさん学校があるから、管理できるかというとそうでもないし、警備保障へ依頼して警備をしてもらっても、それは防火じゃないのですよ。ただ盗難防止の警備だ。防火という警備ではない。こういう点の矛盾が至るところに末端ではあるわけですね。それらのものを含めて、今後公共施設その他をどういう形で守っていくかということは、消防庁、どうでしょうか、何かいい知恵はありませんか。
  121. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 防火管理の内容からいいますと、その目的とするところは、防火対象物によってその重点の置き方が違っていると思います。たとえば百貨店等における防火管理者というものは、もちろん火災を予防するということはいずれの防火対象物の場合も同様でございますけれども、やはり一般利用者の人命の安全を確保していくということがこの防火管理者の重要な任務であるというふうに考えますし、また一般の公共物についての防火管理者というものは、公共用財産を保全をしていくということがその重要な任務であろうというふうに考えられるわけであります。そういう意味におきまして、防火管理の内容にはややその間において差がございますけれども、やはり火を出さない、火を出さないことが結局は人命の安全につながり、あるいはその公共用財産の保全につながるという点については、その趣旨は同じだというふうに考えるわけであります。  ただ、いま学校等における防火管理の面においてやや私ども問題がありますのは、たとえば学校の無人化というような問題もあるわけであります。こういう場合に、火災予防という観点からはたしていまのままでいいのかどうかという点は、私ども非常に疑問だと思っておるわけであります。そういう意味におきましては、この消防用施設というものに相当大きなウエートを置いた管理体制ということも同時にとってもらわなければならないというふうに考えるわけでございます。
  122. 柴田健治

    柴田(健)委員 具体的にはどうしたらいいですか。
  123. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 こうした防火管理の内容は、一つは建物の構造自体の問題があると思います。さらに、建物について消防用設備をその防火対象物の態様に応じていかに整備をしていくか。さらにまた、そこの職員、従業員という人たちがその防火対象物を守るというための、いわば消防訓練というものを厳重に訓練をしてもらう。こうした三つの方途によって、防火対象物の防火管理というものの万全を期していくべきであろうというふうに考えるわけであります。
  124. 柴田健治

    柴田(健)委員 建物を新築する場合、事前にいろいろそれについて点検しないと、たとえば電気工事のミスから漏電だとか、ガス工事その他のミスから火災が発生する。こういう場合一番最初の施設というのが大事なのですが、古い建物についてはお粗末なのが多い。この点に一つの悩みがあるわけですがね。それらの点検というものについて、市町村の財政措置において、またそういう経営者において、防火観念からいう金の使い方というものに出し渋るという気があるのですね。どうももったいないからまあ……というような、焼けたら焼けたでいいがなという、こういう考えもややもすればあるという気もするのですね。だが私は、やはりこの施設をつくる時分にもっと監督を強めていかないと、お粗末な工事をしたら困るという気がするのですね。  通産省、見えていますか。——通産省にお尋ねするのですが、電気事業法で、たとえば、いろいろ種類があるわけでありますが、試験制度を通産省持っておりますね。それで、電気工事士という免許、その免許を持っておる者が民間の場合は普通屋内の電気工事をする。ところが見習いやその他にやらして、竣工届けだけは免許をとっておる者の名前をかりて竣工届けをする、こういうことを平気で行なっている。それから、電気事業法には罰則規定がある。ああいう免許制度をつくって、そういうものは資格を持った人がしなければならぬという制度にしながら、それを監督し指導するというのは、出先はどこでやっているのですか、通産省。
  125. 下邨昭三

    ○下邨説明員 一般家庭の電気工事につきましては、工事の適正化のために、電気工事士法及び電気工事業の業務の適正化に関する法律、いわゆる電気工事業法というものがございます。電気工事を行ないます作業者の資格及び義務を定めております。また、電気工事業者につきましては登録を行なわせまして、さらにその業務の規制を行なっております。作業者になります電気工事士の資格は、電気工事士試験に合格した者などでございまして、都道府県知事から免状の交付を受けた者でございます。また、電気工事士は、電気工事の作業に従事する場合は、電気事業法に定めます技術基準に適合するようにその作業を行ないまして、さらに使用する配線材料及びその電気機械、器具は電気用品取締法に基づく型式認可を受けまして、安全性を確かめられているものを使用することが義務づけられております。  電気工事業者の業務規制は、営業所ごとに電気工事士免状の取得後実務経験三年以上の者を主任電気工事士として置かせて、一般の電気工事士の作業を管理させております。次に、電気工事士以外の者による電気工事を禁止しておりまして、電気工事業者でない者に電気工事を下請させることも禁止しております。その他、検査器具の備えつけとか登録業者であることをあらわします標識の掲示、あるいは帳簿の備えつけ等の義務を課しております。  電気工事士と電気工事業者の取り締まりにつきましては、四十八年度から取締通達を出しまして、地方通産局と都道府県が電気工事業者の営業所及び電気工事の施工場所に立ち入り検査を実施いたしまして、適正な電気工事の指導と取り締まりに当たっております。
  126. 柴田健治

    柴田(健)委員 その工事現場で——たとえば交通の取り締まりなら、途中で自動車をとめて免許証を持っておるかどうか調べるけれども、通産省は、あなたは工事をやれる免許を持っていますかということを調べるのは、現場でだれがやるのですか。
  127. 下邨昭三

    ○下邨説明員 通産局の職員または都道府県の職員でございます。
  128. 柴田健治

    柴田(健)委員 どういう方法でやっているのですか、通産省で。たとえば中国なら広島通産局にそういう人員が何人おるのですか。
  129. 下邨昭三

    ○下邨説明員 通産局の公益事業部の施設課において実施しております。
  130. 柴田健治

    柴田(健)委員 まあ、そういうふうにやっておると言わなければ責任は済まないでしょうが、実際は何にもしていない。いまはもう正直言うて野放しですよ。法律で罰則規定もあるし、試験制度もつくってある。制度はつくってあるけれども、それを指導監督する取り締まりというのは全然やっていない。野放しです。それから見習いぐらいの者がどんどんやって、あと壁を塗って隠してしまう。そこにお粗末な工事ができておるというところに問題がある。これらの点については、今度建設省も建築基準法を改正するとかして、総合的に、防災というものは通産省、建設省、消防庁一体となって考えてもらわなければならぬ。こうお願いをしておきます。  時間がございませんから前に進みますが、また消防の機材器具の補助なんですが、あまりにも安い。補助率が低い。これは地方公共団体を含めて、消防団の連中は毎年文句を言うておるわけです。それで地元負担金まで出してやっておる市町村もある。これは長い歴史でそういう慣例もあるだろう。大体そういう地元負担を取ってはならないのにやっておる市町村もあるわけですが、補助率が低いというのはなぜだろうかという気がするのです。その点はどうですか、長官
  131. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 消防施設補助金につきましては、補助率の問題と補助基準額の問題があるわけでございます。御承知のとおり、消防の仕事は市町村の仕事であるということで、現在この消防施設の補助金というものは、市町村の消防施設をできるだけ早く充足をさせるために奨励的に補助をしていくというたてまえになっておるわけでございます。この点が、通常の公共事業あるいは国と地方の共同事業というものと、ややその補助率についての考え方が違っておるわけでございまして、そういう趣旨から現在補助率は基本的に三分の一という低い補助率が適用されておるというのが現状でございます。  また同時に、補助基準額自体が現実の消防施設の実勢単価に合わないという問題は、御指摘のとおり問題がありますわけで、従来も実際価格に対しまして一〇%ないし二〇%、ものによりましては三〇%も低いというようなことがございまして、私どももできる限りこの補助基準額というものを実勢単価に合わしていくという努力をしてきておるところでございます。昭和四十九年度におきまして、この補助基準額につきましては、ポンプ車を中心にして平均三〇%の引き上げを行なったところでございまして、これによりますと、昭和四十八年度の実勢単価をこの補助基準額はややこえるというような状況になるかと思いますが、さらにまた四十九年度におけるポンプ車等の値上げの状況というものも必ずしも楽観を許さない情勢にございまして、四十八年度せっかく補助基準額を引き上げたわけでございますけれども、値上がりのほうがなお大きいのではないだろうかというようなことで、いまいろいろ業界との間の折衝を続けておるところでございます。
  132. 柴田健治

    柴田(健)委員 あなたが奨励的なと言われれば、消防庁もこれから奨励的にやらなければならぬ、こう思いますけれどもね。基準の立て方というものが、三〇%基礎額をふやしたのだと、こう言われるけれども、実際、物の値上がりから見ると、たとえばホース一本でも倍上がっている。この前までは一本が普通のホースで一万七千円ぐらい。それがもはや倍になって、三万四、五千円になっている。三〇%上げてもらったって何にもならぬ。そういう実態なんですよ。今後大いにこの現実を見詰めてもらって、末端の団員がある程度納得するようなものにしてもらわなければ、三分の一なら三分の一でもいいが、実際取引価格に合わせての三分の一にしないと理屈に合わぬじゃないか、こういうことになるのですね。  それからもう一つ、われわれがいつもふしぎに思いますことは、はしご車、三十メートル、三十八メートルというはしご車、それから化学消防車、こういう消防車は、一階建てや二階建てや民家に住んでおる者には縁がないのですよ。大体、一つの町に十階建てや十五階建てができると、どうしてもはしご車を買わなければならない。一つや二つや三つの建物のために六千万も七千万も出して買わなければならぬ。一般住民からいえば普通のポンプ自動車をふやしてくれたほうがいい。せいぜい三百五十万か四百万円程度のポンプ自動車をふやしてくれればいいのに、一台が六千万も七千万円もするものを、あんな建物を守るために買う必要ないじゃないか。しかし全体の防災対策からいえばそうはいかない。  そこで、受益者負担の原則論からいうとこれは不公平じゃないか。たとえば高層建築は、四階建て以上の、はしご車を使う建物は目的税を取ったらどうですか。それで完全充当はできませんけれども、そうすると、一階建てや二階建てに住んでおる住民の気持ちというものが少しやわらかくなるのじゃないか。高層建築というものを建てたために化学車やはしご車を買わなければならぬ。膨大な資金が要る。町村財政を苦しめる。それを買わないというわけにいかないということになる。たとえば近ごろ広域消防を一部事務組合で奨励さしておるのですが、この区域の中のほんのわずかな建物のためにはしご車を買わなければならぬ、そういう不合理があるというのが住民感情なんですね。この点、高層建築から目的税を取ったらいいじゃないですか。そういう考えは起きませんか。
  133. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいまのお説は、確かに消防に関する限りごもっともな御意見だと思います。ただ、消防は一般行政に属するものでございまして、その経費を一般財源でまかなっていくというのがたてまえになっておるわけでありますが、この間に特定の受益部分について特別な負担を求めるかどうか、こういう点はやはり全体の行政の中で判断をしていく必要があるだろうというふうに考えられるわけであります。いま特に都市等において、いわば都市の生活空間を確保するためにむしろ建物を高層にして空地をたくさんとっていく、こういうことのための都市改造が必要だということもいわれているわけであります。そういう面から見ますと、そういう建物に対するたとえば固定資産税の負担というのももう少し軽減をして、高層化をはかるべきじゃないかというような御意見も一面においてはあるわけでございます。そういうことで、こうした高層の建築物について消防に関しての特別な受益関係を見ながら目的税的な負担を求めていくという点は、一面においてまことに考えられる御意見でありますと同時に、他の行政面との比較をしながら私ども十分検討してまいりたいというふうに思います。
  134. 柴田健治

    柴田(健)委員 あなた、いい案なら検討して始めると言うかと思ったら、そうでない。変な理屈を言われるのですが、それなら温泉地の入湯税は何で取るのですか。あれは別に消防目的税を取っているじゃないですか。同じことじゃないですか、生命、財産を守るということで。
  135. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 温泉地におきまして、一つは観光施設整備のため、それからもう一つは消防施設整備のためということで、現在入湯税は目的税とされておるわけでございます。この入湯税を目的税にいたしました理由は、温泉観光地の場合におきましては、本来その市町村の住民でない方々がレクリエーション等のためにその温泉地を訪れる。したがって、その温泉市町村の場合には、本来の住民を対象とする行政以外に、外から来る人々のための行政経費が非常に多額に要るわけであります。その一部としまして、こうした本来の住民でない人々を対象とするいろいろな温泉旅館等があるわけでありまして、これらについては、本来の住民以外の、温泉を利用する人々の負担を求めていこう、こういうことで入湯税が目的税とされて、消防施設の経費にも充てることができることになっているというふうに考えております。
  136. 柴田健治

    柴田(健)委員 この問題はあなたと論争しても時間がかかりますが、もう少し地方公共団体の財政実態を見てもらいたい。防災というものについては一災害基本法にもあるように国がある程度重要な責任を持っているわけですからね、私はどこでも言うのですが。市町村の財政、たとえば岡山県の倉敷に水島がある。水島の税収を見ると、昭和三十五年から四十七年の十二カ年で、総税収四千百六十三億九千三百万円ですよ。そのうち国税が三千六百七十一億八千万円、県税は百六十七億三百万円、市税は三百二十五億一千万円です。この中で、交付税で還付された率を見ると七・五%。税の比率を見ると国税が八八・一%となっている。それで、工場建設、コンビナートの基地造成をするために地方公共団体がどれだけ財政投資をしたか。財政投資は国が三〇%余りですよ。七〇%近くは地方公共団体が財政投資している。収益があがって税金を取る場合にはがさっと国が取っちゃう。あとは、危険性の高い石油コンビナートですから、守れ守れでしょう。国というものはいよいよかってなものだということです。防災施設ぐらいは国が思い切って金を出すべきだ、こういう気がするのですよ。この点は自治大臣、どうですか。
  137. 町村金五

    ○町村国務大臣 消防に要しまする費用というものをもっと国も負担すべきであるし、また大きな企業などをいたしておりますものにはもっと負担をさすべきではないか、それぞれごもっともな御意見だと私思います。私、いまお話を伺いながら感じたことでありますが、たとえばはしご車なんというものは、わずか一軒か二軒しか高層ビルがないのにどうしても置かなければならぬということになりますと、確かにその地元の一般住民感情としては、ほとんど一般の市民には関係のないようなものを多額の経費を投じて施設するということにどうも割り切れない気持ちを持たれることはあり得ることであろう、こう私も思うのであります。そういった角度から考えてみますと、いま御指摘になりましたような目的税的なものをつくり上げるということも確かに有力な御提案の一つじゃないかというように伺ったのであります。  しかし、御承知のように、そういった企業は企業なりにそれぞれの納税等もいたしておるわけでございますから、そういった角度からまいりますと、そういうことを直ちに実行することについてはなお検討を必要とするのではないか、かように考えるのでございますが、いずれにいたしましても、いま必ずしも消防施設というものが十分でなく、また消防に対する費用というものが、現実に第一線の消防に関係をしていらっしゃる方からお考えになると、かなり不十分だというお感じを確かにお持ちなんでございましょう。したがって、自治省といたしましては、消防に対する経費というものは御承知のように年々かなり増額はいたしております。増額はいたしておりますが、考え方によってはきわめて不十分だという御指摘が一方においてあるということも私ども重々承知をいたしておりますので、今後これらの点については、もう少し消防に対する補助といったようなものが増額をされるようにさらに努力をいたしていきたい、かように考えておるところでございます。
  138. 柴田健治

    柴田(健)委員 次に、消防団員の待遇改善のことでちょっとお尋ねしたいのですが、交付税の基準財政需要額の算定基礎が、私たちから見るとどうも科学的根拠が那辺にあるのかという疑問を持つわけであります。常に人口十万という標準、これを基準にしてはじき出される。この十万というものは直らないのか、もう下げるわけにいかないのか、この点、長官どうですか。
  139. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 柴田君にちょっとお伺いしますが、通産省のほう、もうよろしゅうございますか。
  140. 柴田健治

    柴田(健)委員 ええ、よろしゅうございます。
  141. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいまの御質問は、地方交付税における基準財政需要額を算定いたします場合の技術的な御質問にもなりますので、あるいはいまここに来ております財政担当者のほうからお答えしたほうがいいかと思いますが、これは十万でなければならないという理由はないと思います。ただ、いかにして、いかなるところに基準を置いて計算をしたら最も合理的な財政需要の算定ができるか、こういう観点に立って、いま単位費用計算の場合の基準を一応十万の団体ということに置いておるということでございまして、さらにこの計算方法等につきましてよりよい方法があります場合には、こうした単位費用の基礎をもう少し変えていくということも可能であろうというふうに考えます。
  142. 森審一

    ○森説明員 交付税で基準財政需要額の算定をいたします場合には、これは消防費に限りませず、地方公共団体の実施しております各種の行政費目について、すべて市町村につきましては人口十万の都市を標準団体といたしまして、これを基準にいたしまして、人口その他の段階等によりまして割り増しあるいは割り減等を行ないまして、それぞれの団体の規模に応じて、それぞれの規模で必要となる行政経費の算定をやっておるところでございまして、いろいろ複雑な計算式を使いまして、現実の団体の各種の行政経費の必要な度合いに適合するように、毎年その改正を行なっておるところでございます。  具体的な消防費の内容につきましては、毎年消防庁のほうと十分に御相談いたしまして、各種の行政需要がまかなえるように算定の方法を改正しておるところでございます。
  143. 柴田健治

    柴田(健)委員 これは十万をどうしても五万ぐらいに下げてもらいたいという気持ちをわれわれは持っておるわけです。将来検討してもらいたい。  交付税課長にお尋ねしたいのですが、四十九年度の団員の出動手当、昨年千三百五十円がことし千五百円と、百五十円アップ。この千五百円というのはどういう基準から出てきたのか。これが第一点。  それから団服の購入、これは四千円が五千円になった。この五千円というのでどこから買えるのか。どういう基準で五千円というのを見たのか。自治省の財政局のほうで一括買うてもらえるんなら、全国の消防団に号令をかけて買うてもらいたい、こう思います。これが第二点。  団員の年間の報酬、六千円が千円上がって七千円です。これはどういう基準で千円アップというものを出したのか。下が何ぼで右へならえということで、全体のこの数字で合わしたのか。この三つの点、お答え願いたい。
  144. 森審一

    ○森説明員 ただいまの三つの点につきましては、それぞれ現実の消防団員の実態を把握しております消防庁のほうと御相談いたしましてきめさしていただきました。
  145. 柴田健治

    柴田(健)委員 それなら消防庁のほうにお尋ねします。いまの三つの点について、もっと具体的に説明してください。
  146. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 交付税は、財政需要額を見積もります場合には、できるだけ市町村における財政の実態というものと適合するような需要額の算定をするということを基本に置いて行なっておるわけでございます。  出動手当につきましては、現在の算定は半日当基準ということにいたしております。これは労働省調査による全産業平均の男子の一日当たりの賃金というものを前提にいたしまして、月額十万余円の労働省調査による全産業平均の男子の給与を基礎にいたしまして千五百円という半日当の計算をしておるわけでございます。現実にいま市町村で出しております出動手当の全国平均額は六百三十一円でございまして、そういう意味におきましては、この出動手当は、財政需要額の計算がなお市町村の実態から見ますと相当先導的な立場にあるということが言えると思います。  それから団員の被服費につきましては、これは五千円で一着買えるという計算ではございませんで、消防団員の出動というものが団員の団服を一年間で消耗してしまうというような性格ではございませんので、減価償却方式によりまして一年分の所要額というものを計算をしておるわけでございます。これは交付税の財政需要の計算方式から見てやむを得ないというふうに考えておるわけであります。これは、常勤の職員の場合の被服費、たとえば消防職員の被服費は二万円というような計算をしておるのと大体はずを合わしているつもりでございます。  それから団員の報酬額につきましては、これはいまの消防団員の報酬の性格からいたしましてこれをどの程度に見積もるか、いろいろ議論のあるところでございますけれども、昭和四十八年現在の消防団員の全国平均の報酬額というものが五千百六十八円ということになっております。したがいまして、この年度中における上昇を見込みましても、今年七千円という見込みをつけました分はおそらく市町村の平均よりもさらに高いところにあるであろうということでございまして、むしろこの基準財政需要額の数字まで市町村のほうで引き上げていただくということを、いわば期待をしながら引き上げておるという実態でございます。
  147. 柴田健治

    柴田(健)委員 長官、人口十万の基準でやられると、人口一万以内、人口一万四、五千の町村というものはみじめなものですよ。  それからもう一つは、この千五百円という、百五十円アップというのは、あなた、消防団員の年齢はどう換算しているのですか。いま現在平均年齢はどの程度になって、三十歳から四十歳、四十歳以上はどの程度という、年齢においてある程度算定基礎をしてもらわないと、いま四十歳代、三十歳代で農村におるのは、大体大工、左官、その他融通のきく人、消防活動に出られる人は案外所得がいい。それは正直に言うて年齢も高い。そういうものをどう換算をしているのか、その点はどうですか。
  148. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいま御指摘のとおり、現在一般の生業につかれている方々の収入というものをどうするかという点になりますと、おそらく金額的にはいろいろ計算ができますし、あるいはたとえば一日の日当一万円で働いている人もありましょうし、あるいは月の給与が二十万円、三十万円というふうなことになる方々もおられるだろうということは十分考えられるところでございます。ただ実際、現実に、市町村がそうしたことを前提にしながら出動手当の支給が行なわれているかということになりますと、ただいま申し上げましたように、現在の市町村の出動手当の実額というものが六百三十一円でございます。それに対しまして交付税の計算をいたしますと千五百円。したがいまして、財政需要としてあらわれてくるところの数字から見ますならば、この基準財政需要額の計算自体は、市町村の現実に支払っておる金額と比較いたしまして相当高い水準にあるということを申し上げたわけでございます。
  149. 柴田健治

    柴田(健)委員 算定基礎を、これまたいろいろ申し上げると時間がかかりますが、結局、消防庁は市町村にみなどろをかぶせる。出してないじゃないか、払ってないじゃないか、決算を見てもようわかるじゃないか、こういうことを言われるが、あなたの指導が悪い。消防庁は、予算を組んだら予算を組んだだけでなく、それ以上に消防費を組まなきゃいかぬ、こういう指導をすればいい。交付税だからもうみそもくそも一緒になったり、何でも交付税に入れております、何でも交付税の算定に入れております、こう言うてみな逃げちゃうから、市町村長はそのまま行政運営の妙味を発揮するためにいろいろ自分の仕事をやる。ですから、指導せずにおいて、そういう市町村が悪い悪い言うたんでは、これは意味がないと思う。  それから、次に公務災害補償なんですが、去年、私の岡山県で二名なくなったんです。殉職をした場合は千日分ということなんだが、団員の場合は、ことし少し上がるということで二千九百円ということになりますと、千日分で二百九十万円になりますね。いま殉職して二百九十万円という補償の額は、あなた高いと思うておられるか、安いと思うか、どっちですか。
  150. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 これは公務員の災害補償全体の問題に関係してくる問題でありますけれども、私は決して高い数字ではないと思っております。
  151. 柴田健治

    柴田(健)委員 今後これは大いに努力してもらいたいと思うんですが、この点についてはどうですか。
  152. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいま国会で御審議をお願いいたしております地方公務員災害補償法が成立いたしますと、またさらに改善が可能になるであろうというふうに考えております。今後とも常勤職員との均衡というものを考えながら、改善にはできるだけ努力を払っていきたいというふうに思っております。
  153. 柴田健治

    柴田(健)委員 殉職する人の統計を見ると、二十代というのはわりあい少ないんです。三十代、四十代が多いのですね。この間岡山で殉職したのは三十五歳です、子供さんを、小さいのを二人残して。こういうことで、自動車事故なら一千万、消防で殉職したらこの前までは二百五十万です。今度上がるから二百九十万になるが、前は二百五十万です。二百五十万で、実際ほかの団員に心理的に与える影響というものを考えなければならぬ。この点はやはり自治大臣、十分考えてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  154. 町村金五

    ○町村国務大臣 義勇消防団員の公務災害による死亡に対するただいまの殉職補償金、今度二百九十万円に上がったそうでございますが、いま消防庁長官もお答えを申し上げておりまするように、私どもも今日の場合、他と対比した場合に、決して、高いものだ、こうは思いません。  御承知のように、今日、警察などを援助いたしましてそれで死亡をしたというような場合に対する補償金がどの程度出ておりましたか、私ちょっといま記憶に明らかでございませんけれども、いわば義勇的に出ておる者で、しかも不慮のそういった殉職をいたしたというような者に対しましては、当然適当な補償金を差し上げなければならぬということは申し上げるまでもございませんので、今後これらの問題をさらに十分検討をさせていただくべきものだ、かように思います。
  155. 柴田健治

    柴田(健)委員 次に、長官、報償金や賞じゅつ金の問題なんですが、これはいま検討しておられると思いますが、これも大幅にやっていただかなければならぬ。これは長年の消防団員の懸案事項なんですね。この点の見通し、考え方というものがあればひとつお聞かせ願いたいと思います。
  156. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 賞じゅつ金あるいは報償金というものにつきましては、これまで殉職者の賞じゅつ金が百万円ないし三百万円、障害者の賞じゅつ金が四十万円ないし二百六十万円でございましたものを、本年度から、殉職者につきましては二百五十万円ないし一千万円、障害者の賞じゅつ金につきましては百万円ないし七百五十万円まで引き上げることができますように、ただいまおおむねこの点につきましては話し合いもつきまして、そういう措置を講ずるつもりでございます。
  157. 柴田健治

    柴田(健)委員 次に、広域圏についての政令の中で、一部事務組合という、広域消防を奨励しているわけですが、この広域消防、まあ組合消防なんですが、組合常備消防をつくって、いま救急業務その他体制づくりをやっている。ところが御承知のように、組合消防は、組合管理者がある、組合議会がある、そして消防長、この三つの親分がおるわけですね。三つの親分で、辞令は消防長が出す。ところが予算その他の権限は組合議会が握る。全体の管理は管理者というものがある。その辺、消防職員の側からいうと、親方が三人おるというように目に映るわけですね。私は、消防職員の人事交流、それから身分、給与、そういうものを考えたときには、組合をつくらせたらどうか。ILOの勧告もあることだから、この一部事務組合の消防職員には団結権と交渉権ぐらい与えたらどうかと言うのです。この点、長官、どうですか。
  158. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 職員の側から見ますと、組合消防でありましても市町村消防でありましても、ただいま仰せられましたようないわゆる親方が三人あるというような体制は、通常の単独の市町村でも同じことでございまして、市町村長あり、市町村議会があり、そうして消防長ありでございますから同じでございますけれども、ただ、その組合消防を構成しております市町村側から見ますというと、場合によってはその管理者というものが隣の市町村長であったりするというような関係から申しまして、同じような市町村長でありましても、ややその辺が感情的には違う面があるかと思います。  それからもう一つの問題は、組合消防を構成いたします場合に、どうしてもそれを構成する市町村ごとの給与水準に職員の給与が引きずられるということが多いわけでございます。たとえば地方広域圏においてその中核の市を中心にして組合消防をつくりますというと、給与水準が、その市が高くて周辺の町村のほうが低いというような事例も現実問題としてはございます。そのため、組合消防を構成する職員が実はそれぞれの市町村からの出向方式をとったりして組合消防が成り立っておるというような事例もございます。この辺の問題は、組合消防の職員が、それが全体としての問題と、それから個々の市町村の職員であったという立場での問題と、この辺が非常に問題が複雑な点がございます。  私どもは、この常備消防の相当大きい部分が組合消防によって維持されてきておるという点を十分考えまして、この組合消防の実態につきまして本年度において内容調査し、給与水準というものがどういう水準に合わされておるのか、あるいはまたそれぞれの市町村ごとに職員の給与が合わされておるか、その辺も十分実態を調査しながら、この組合消防における職員の給与のあり方等につきましても十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  159. 柴田健治

    柴田(健)委員 それだから、私はもういまの実態ではばらばらでどうもこうもならぬという気がするんですよ。だから、ILOの勧告もあることだし、この辺で団結権と交渉権を与えたらどうかと、こう言うのです。それを与える意思があるのかないのかを聞いているのですよ。
  160. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 政府としましては、昨年の公務員制度審議会の答申の次第もございますし、また、消防がいまかかえております仕事内容あるいは消防の目的というものを考えます場合には、なお当分は現行のままといたしまして、さらに検討を続けていく。この公務員制度審議会の方針に従って措置してまいりたいというふうに考えております。
  161. 柴田健治

    柴田(健)委員 まあ、いずれこの問題についてはあなたと論争しなければならぬときが来ると思いますから……。  それで私は、時間が来たから、次に、いままで末端の幹部会その他でいろいろ問題になるのは自動車の重量税ですよ。これはどうしてもやめてもらいたいという気がする。聞くところによれば、消防車についてやめると、病院の救急車まで免除しなければならぬ、企業が持っておる消防車まで免除しなければならぬということだが、企業のほうは、これは企業防衛でポンプを持っておる。これは営業用なんです。病院の救急車は無料で運んでいない。あれは料金を取っている。消防車だけは、救急車だろうと何だろうと無料です。一切料金を取っていない。それにもかかわらず、全国で二万二千台ほどしかない、二万二千台ないかもしれない。二千二百万台近くある日本の自動車の中で百分の一、二万二千台というのはたいしたことはない。なぜこれから自動車重量税を取らなければならぬのか、これはどうしても納得できない。この点はやめてもらいたいという気がするのですが、大臣、どうですか。
  162. 町村金五

    ○町村国務大臣 たいへん不勉強で、いま初めて伺ったところでありますが、いま消防庁長官に聞いてみますと、日本ではいま官公庁の車には全部自動車重量税の賦課をいたしておるそうでございまして、そういったものとの権衡もあるようでございますし、さらにまたその点については交付税等で特別な配慮も行なわれておるんだということもいま承ったところでございますけれども、これはひとつ将来の検討課題であるというふうに私は感じたわけであります。
  163. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうも、何でも交付税、何か言うたら交付税が入っている。これはごまかしなんですね。ガソリン税でさえ、あのむずかしいのをはずした。あれは消防自動車が使ったガソリンを、届けをしてちゃんとすればなる。この自動車重量税は、なぜこんなものをかけるんだ、消防団に与える心理というものは非常に大きいのですよ。全然理解してくれない。そういう意味では、役人が乗って回る車とは違うんだ。あんたらの乗って回る車とは違うんだ。あんたらのはもっと取ればいいのです。消防車に自動車重量税をかけるなんというのは、ほんとうにどう考えても常識はずれだと思う。交付税で返しておりますなんて言っているが、処理ができるはずだ、これだけは。なぜ処理ができないのか。あんたらは消防団を使うのに、もう少し歴史的経過を踏まえて、消防団を運営するのに一番大事なものは何か、一つの団を運営するために、何百人というものを動かすために一番大事なものは何かということを、長官、あなた知っていれば答えてもらいたい。
  164. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 やはり、地域社会に対する奉仕の観念であろうと思います。
  165. 柴田健治

    柴田(健)委員 社会的、地域的という、そういう一つの形成者の一員として、共同社会という基本観念は当然のことです。共同社会の基本観念がないのはだれですか。そういう社会をつくっておいて、共同社会というそういうものをこわして利益社会をつくり出して、そして無差別に、そういう発想のもとにものごとを進めようとするところに問題がある。  消防団の運営というものは、私は和だと思うのです。先ほど言うたように、出動手当から何から考えてもまことにお粗末なものです。ことしから幹部の手当その他に非課税措置をとった。これらでも、三千円ほどの手当に税金をかけるのはおかしいじゃないか、幹部は一銭もふところに入れるものじゃない、領収書に判を押すだけだ、それに税金かけるなどとは何ごとかというのが長い間の幹部の悲願であった。それが四十九年度から非課税になる。それも三万六千円ですよ。三万六千円以上とっておる団長はおりはしないから。私は大体年に六十日出て二万円だから。それで金は持ち出しのほうが多いのです。  消防自動車に税金をかけるという発想そのものが、理屈はどうあろうとも、理論がどうあろうとも、そういうものを設けたということが団の幹部に与えた心理的影響というものを考えてもらいたい。消防自動車に税をかけておりますと、大手を振って言ってごらんなさい、消防団の連中がどう言うか。この点は絶対に解決してもらいたいのですが、大臣、どうですか。
  166. 町村金五

    ○町村国務大臣 私もいま初めて伺って、たいへんごもっともな御意見だと思いますから、十分ひとつあなたのお考えのような線に沿って努力してみたいと思います。
  167. 柴田健治

    柴田(健)委員 いろいろたくさんありますけれども委員長、やめます。
  168. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 小濱新次君。
  169. 小濱新次

    ○小濱委員 消防法の一部改正案について御質問をしていきたいと思います。  まず、地震対策についてお尋ねをしていきたいと思います。  気象庁の木村耕三前観測部長が去る四月一日付勇退をされたということで、きょうは御出席を願う予定でございましたが、残念に思っております。その部長の御意見が朝日新聞の、ちょっと古いのですが、四十七年四月二十七日付「天変地異」で掲載されております。その内容お話ししてみますと、「いま東京に関東大震災と同じ被害を与えるには、震度6の地震は必要なく、震度5(強震)で十分です」こう言い切っているわけでございます。さらに、前部長はその内容を具体的に申しておりましたが、「都市化が進んだために地震に続いて二次、三次の災害が続発する」なるほどこれも考えられます。また、「社会が進化する裏側で、災害もひそかに進化を続けている」こういうふうにもおっしゃっておりました。東京都では関東大震災当時より「家の数も五倍にふえている」ということでございます。「縦横に張りめぐらされたガス管、水道管、電線は震度5で完全にこわれる」こういう説も載っておりました。さらに、「石油ストーブも出火の原因」となっている。「一番始末の悪いのは自動車で、火事から逃げ場を求めて暴走することは間違いない」こういうふうに強く確信を持って申しておりました。「ガソリンをかかえているので、さらに火つけの役目をし、動かなくなれば障害物と化して、消防車や避難民を通せんぼしてしまう」こういうことですが、「これが、家もつぶれ、地割れも生じるような震度6になると、もう救いがない」と、地震のおそろしさについていろいろとこう述べておられたわけであります。  これは非常に大事な内容でございますので、きょうは気象庁から末広地震課長においでを願いましたので、このことについての御見解を承ってこれからの質問に入っていきたいと思いますが、お願いいたします。
  170. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  東京に被害を及ぼすような地震は二種類あると存じます。  まず一つは、もうわれわれの記憶に新しいところでございますが、いまから五十年前に起きました、大正十二年、一九二三年の関東大地震でございます。これは非常に規模が大きく、東京からはわりあい離れておりましたけれども、神奈川県、東京、千葉県等に対して甚大な被害を及ぼしたわけでございます。  もう一つ、必ずしも関東大震災のような大地震でなくても、近いところで起こりますと、その地震そのものの大きさは小そうございましても、局部的には大きな被害を及ぼす可能性がございます。これは、たとえば明治二十七年に東京湾北部に起きた地震でございます。この地震は関東地震と比べますと、いわゆるエネルギーと申しますか、柄の大きさから比べれば数十分の一でございましたが、神田、本所、深川に非常な倒壊家屋を出しまして、多くの死人、犠牲者を出したわけでございます。  私どもはこういった大地震を予知すべく努力中でございますが、関東地震のような大地震はある程度の前ぶれと申しますか、前駆活動がございまして、気象庁、国土地理院、各大学、協力して関東近辺を監視しているわけでございます。これから考えますと、関東震災のような大地震のようなものは、非常に近い将来に再び起こるということはどうもなさそうであるというのがわれわれの見解でございますが、多少小さくても近いところに起きるという地震については、非常に資料が少のうございまして、つい最近そういう地震に対します観測を始めたばかりでございまして、過去の例から見まして、東京に被害を及ぼすような地震はいつ起こるかわからないと申し上げざるを得ない次第でございます。
  171. 小濱新次

    ○小濱委員 同じ新聞に、河角東大教授の説が載っておりました。「南関東では、ほぼ六十九年おきに大地震が起る。次は一九九一年前後だが、一九七八年から危険期にはいる」こう断言をしておられました。あともう何年もないわけです。この六十九年周期説に基づいて、東京、神奈川などではもうすでにその対策を練り始めている、こういう話も聞いておるわけです。一方においては周期説というのに反論をしている、そういう向きもあるようであります。どちらにしても非常に重要な発言でございますので、この周期説についての御意見をひとつ、気象庁のいろいろな観測の立場からの資料をもとにして御意見をお持ちになっているということを伺っておりますので、この際伺っておきたい、こう思います。
  172. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  いわゆる周期説といいますのは一つの学説でございまして、はたしてその六十九という数字が正しいか、あるいは八十であるか五十であるかということについては、いろいろ異論があるところは事実でございます。ただ、あらゆる地震学者が、大地震は繰り返して起こるということはだれしも一致して認めているところでございます。過去八百年の間に東京付近で震度五以上でゆれた地震が非常に数多くございますが、長い場合には前の地震とその次の地震が八十年間も間があったこともございますが、この八百年の間を比べまして、相隣れる続いて起こりました二つの地震の間隔が四十年以上の場合は三回しかございません。  先ほども申し上げましたとおり、われわれは受け身の立場でございまして、遠くで大きな地震が起きようともあるいは近くで小さな地震が起きようとも、東京自身がどのくらいゆれるかということが問題でございまして、そういうことから考えますと、東京は一九三一年以来震度五以上でゆれたことがございません。すでに四十三年たっております。でございますから、気象庁といたしましては必ずしもそういう周期ということには重きを置いておりませんが、とにかく地震は繰り返して起こる。しかもその起こる間隔というのは一定はしておらないが、決して千年に一ぺんとか二千年に一ぺんとかいうものではなくて、十年、二十年、三十年といったような時間の単位で繰り返して起こるものである、こう解釈しております。
  173. 小濱新次

    ○小濱委員 関東震災からもすでに五十年、そうしますと、いまのお説から考えあわせますと、繰り返して行なわれるということになれば、もうすでにその危険期に入っている、こういうことにもなるわけです。その地震の震度の度合いということもあるのだろうと思いますが、私どもが理解できるような、どういう形でそういう観測がなされているのであろうかなという疑問点を、われわれいろいろ持つわけでございます。   〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  そこでお尋ねしておきたいことは、この周期説よりも、観測事実から推して大地震を予知する方式のほうがなお確実であるというふうにもわれわれは聞いているわけです。観測事実という面からひとつお答えをいただきたいと思います。
  174. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたとおり、地震は大きいほどいわゆる前駆活動と申しますか、前ぶれが大きいわけでございまして、これは最近の学問の発達により、ややつかまえられるという傾向が進んでおります。したがいまして、関東震災級、これは巨大地震でございますが、あのようなものに対しましては、関東地方一帯におきまして気象庁、国土地理院、各大学が協力しまして観測を強化いたしまして、地震活動の監視、それから地面の伸び縮み、上がり下がりということを、毎年厳密に観測を繰り返しておりまして、相当な資料を把握しております。  ところが、先ほど申し上げましたように、受け身の立場に立ちますと、必ずしも地震は大きくなくても、近くで起こりますと局部的には大きな被害を起こす可能性があるわけでございまして、こういった一段低い地震に対する前ぶれをつかむということは非常にむずかしゅうございます。しかし、私どもは数年前から東京付近に非常に深い井戸を掘りまして——東京というところは、御承知のとおり非常に交通機関その他で地面の振動が多うございまして、精密な観測ができません。また地面の伸び縮み、上がり下がりをはかるにも、高層ビルが建ち並んでおりまして、測量が非常にむずかしゅうございます。しかしこれを克服いたしますために、東京付近に非常に深い、二千メートル以上に及びます井戸を掘りまして、その一番底に地震計を置いて小さな地震の観測をする。この小さな地震の活動が次に来たるべき大きな地震の一種の前ぶれになると私ども判断しておりますので、こういった小さい地震の観測をしております。それから、高層建築がございますけれども、この高層建築の頭越しに土地の伸縮あるいは昇降を観測するということも、つい最近始めております。  しかし、何ぶんこういった直下地震と申しますか、東京に近い地震の正体がまだ十分に把握されておりませんので、目下これは予知技術開発途上にあるわけでございまして、こういった観測事実からはっきりしたことが申し上げられないのは残念でございますが、先ほど申し上げましたように、過去の起きた頻度から考えましていつ起こるかわからないと申し上げざるを得ないというのは、こういう事実に基づいているわけでございます。   〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  175. 小濱新次

    ○小濱委員 先ほどお答えの中で、八百年以前からと、こういうお話もございました。そこで、安政の江戸地震といわれるあの大地震から、大きいところはわれわれも耳にしておりますが、記録から、関東大震までの被害地震の記録の概要、こういうものを、これは少し歴史をたどるようですけれども、参考までに聞かしていただきたい、こう思いますが、よろしゅうございましょうか。
  176. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  先ほどお答えいたしましたように、もちろん科学的な観測が始まりましたのはここ百年間でございますが、日本は昔から記録が非常によく残っておりまして、千年以上昔までさかのぼって地震の記録がたどれるわけでございます。  これを東京付近に限って申し上げますと、約千年の間に二、三百回の被害地震が起きております。一番最近に起こりました、東京を震度五でゆすりました地震は一九三一年の西埼玉強震でございまして、その後四十三年間たちますが、震度五で東京はまだゆれておりませんので、そういったことからも先ほど申し上げたような結論が出ざるを得ないわけでございます。
  177. 小濱新次

    ○小濱委員 一般住民の声の中には、地震に対する不安感というのが非常にございます。うちの娘なんかも学校でその地震の話をよく聞かされて帰ってくるようでして、起こり得る想定に対する心がまえ、急に応じてどう対処するのかというような教育を受けて帰ってくることがありますが、私どもそれを聞かされるわけです。そういう点で非常に不安感を持っているということの感触を受けるわけです。  そういう点で、先ほどいろいろと、まあ当分の間は起きないであろうと、そういうお話も聞きましたけれども、木村前部長の説によりますと、震度六ということになると救済策がない、処置なし、お手上げということですから、東京直下の地震に対する注意を払う必要というものもこれは当然あるだろうと思いますが、端的にいって東京は安全なのか。それだけの準備ができているのかどうか、それだけの体制ができているのかどうかということで、これから消防庁のいろいろな御意見を伺っていきたいと思いますが、東京は安全なのかということで、末広地震課長の御答弁は非常に大事な内容になろうかと思いますので、ひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  178. 末広重二

    ○末広説明員 気象庁の負っております義務は、防災上役立ちます科学的な正しい情報国民の皆さまに提供いたしまして、それを活用していただいて、それぞれの消防庁なりあるいは地方自治体、警察等においてこれを活用していただくというところにございますので、安全対策ということに対しましては、私どもとしてはお答えいたしますのは多少出過ぎると思いますので、これはそれぞれ防災の実施面に当たっていらっしゃる方にお譲りしたいと思います。
  179. 小濱新次

    ○小濱委員 末広課長、あなたの上司であられた木村前観測部長がいろいろと説を述べておられるわけですね。それから河角教授が周期説も述べておられるわけでしょう。ですから、その御意見と末広地震課長のいまの御答弁とはかけ離れているように私には受け取れてならないわけです。ぱっと一致しているのなら私も納得するわけですけれども、そうでない。国民、都民としての立場から、お説を伺いまして非常に安心はいたしました。安心はいたしましたが、先輩教授の説と食い違っているところに問題が残っているわけですから、もう一度その点の御説明をお願いしたいと思います。
  180. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  多少舌足らずのために、御理解いただけるような率直なことが申し上げられなくて申しわけないと思っております。  私どもは、関東大震災はそう近いうちに起こらないだろうとは申し上げましたけれども東京が震度五以上でゆれる地震はいつ起こるかわからないと覚悟しているわけでございまして、そういう点では、前上司の木村あるいは他の地震学者の平素発言している内容とは食い違っていないと存じております。
  181. 小濱新次

    ○小濱委員 地震に対する関心の非常に深い現今でございますので、末広地震課長があちこちでいろいろお話をなさっておられることも私ども伺っているわけです。そういう点から、立場立場でありますので、確信もけっこうでありますが、どうかひとつそういう点での理解を深めて、そしていろいろお説を述べていただいて、そしてそれに対する、今度は対策の必要があるならば対策をしていかなければなりません。また安心感も与えていかなければなりません。そういう点での非常に大事な、私のほうでは時代の英雄ということを言っておりましたが、引っぱりだこだそうですが、そういう点での立場をよく理解していただいて、これから対策に入っていくわけですから、あなたのお説が基本になってこれからの対策を進めていくわけですから、率直に、ここはこういう場所ですから安心して、御意見を聞かしていただけたらな、こうわれわれは考えているわけでして、そういう点であと補足することがございましたならば御意見を伺いたいと思いますが、いかがでございましょう。
  182. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  繰り返すことになるかと存じますが、たとえ地震の柄は小そうございましても、東京の直下で起こりますと地域的には甚大な被害を及ぼす可能性が十分にあるわけでございまして、こういった地震は、先ほども申し上げましたとおり、われわれすぐ起こるという徴候はつかんではおりませんが、過去の歴史から見ましていつ起こるかわからないと申し上げざるを得ないわけでありまして、これに対する対策は十分に整えるべきであると考えております。
  183. 小濱新次

    ○小濱委員 たいへんお忙しいところありがとうございました。お引き取りをいただいてけっこうであります。  そこで、消防庁にお尋ねをしていきたい、こう思います。  いまの末広課長の御意見にもございました。末広課長が、最小限度、その立場に立っていま御説明をいただいた、私どもはこう理解をしておりますが、それ以上の六・五とか七の震度のそういう地震想定というものを、当然これは行なっていかなければならないわけです。そういう点で、消防庁といたしましては、東京直下型の震度五とか六の被害想定について、どう対処されようとお考えになっておられるのか。いろいろと資料もあろうかと思います。あまり詳しくは要りませんが、震度五あるいは六に対する対策をすでに講じておられるのかどうか、そういう点での経過についてひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  184. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 東京におきまして震度五なりあるいは震度六程度の地震が発生した場合に、その被害の状況がどういう状況になるかということにつきましては、実はまだ公式に発表されたものがほとんどないわけでございまして、いろいろな学者の方々の御意見があるようでございますけれども、公式なものに準ずるものとしまして、昭和四十五年の三月に消防審議会が「東京地方(関東地方南部)における大震火災対策に関する答申」で一応被害想定をいたしております。  この答申によります想定は、冬の季節に、夕食時、風速三・五メートル、これが東京における年間平均風速でありますけれども、風速三・五メートルの条件のもとに、震度六程度の地震が東京に発生した場合の被害は、二十三区内において七百三十二件の火災が発生をし、そのうち自然鎮火するものあるいはぼやのうちに消火できるものを除くと二百九十九件が延焼火災になる。さらに消防隊の活動によって防御できるものを除くと百四十七件が拡大火災となって、十時間後には焼失面積が五十平方キロメートル、東京の二十三区の約九%が十時間後には燃えてしまう。そして最終的には相当大きな焼失面積が予想されるというようなことがいわれておるわけであります。  これに対しまして、この被害状況の想定はまだ相当低いのじゃないかというような御意見もございますし、さらには、この答申後に出ました十勝沖地震の結果から見まして、特に冬季間におきましては石油ストーブの使用、それから青森県の十和田市における石油ストーブからの火災発生の状況というものから見ますというと、火災発生件数については相当修正する必要があるというようなことで、現在東京都の防災会議中心にいたしまして、この被害想定につきましてはいま再点検を行なっているところでございます。おそらく火災の想定が、件数にいたしましてももっと大きいものになるのではないだろうかというような感じがいたしているわけであります。  これに対しまして、大震火災対策としてどういう対策をとっているかということになりますと、実はこうした大震火災対策というものは、消防庁だけでやれます分野というものは非常に限局されておるというふうに考えられるわけでございまして、実は政府としまして、中央防災会議におきまして昭和四十六年に決定をいたしました「大都市震災対策推進要綱」に基づきましていま大地震の対策を進めておるわけでございます。基本的には都市計画、いわば防災都市づくりというものがなければ大地震に対しまして万全な備えはできないのではないかということでございまして、消防といたしましては、現在の都市の状況を見て、現在時点において大地震が発生いたしました場合のいわば応急的な対策をとらざるを得ない、こういうことを考えておるわけであります。したがいまして、まず、できる限り火災発生を押えていく、そして火災の発生に対してはできるだけの消防対策をとってまいりますけれども、どうしても消防力で防ぎ切れない面がある。これは同時多発の火災になるわけでありますから、どうしても火災をすべて押え切れるわけじゃございません。  そこで、やはり住民を安全に避難させるということを考えなければならないわけでございます。そういう避難対策といたしまして、安全な避難路を確保する。そのために、密集市街地の主要な避難路を中心にいたしまして、耐震性の貯水槽、さらにこの貯水槽に小型動力ポンプを設置いたしまして避難路を確保していく。そしてまた避難空地に対しましても同じような施設を設けまして、避難空地が関東大地震のときの被服廠あとのような場所にならないようにするための安全な避難空地を確保する、こういう対策をとっていくということを、まず消防としての震災対策の重点に置いておるわけであります。  これまで、昭和四十七年、四十八年の二年度にわたりまして、東京の江東地区、荒川地区あるいは大田地区、それから大阪市の西部地区にこれらの貯水槽並びに動力ポンプの整備を進めておりますが、さらに昭和四十九年度におきましては、この貯水槽の設置、小型動力ポンプの設置を相当台数進めると同時に、都市につきましても名古屋市あるいは横浜市、川崎市というふうに整備を進めていくということを考えますと同時に、さらに、最近地震が予知されておるというか、だいぶ危険度が高まってきているというような、たとえば遠州灘の地域における中都市におきましても防災対策というものについてこれを進めていくことについて検討を進めておるわけでございます。  そのほか、地震の際における一般住民の指導の手引きというようなことで、そうした手引き書の作成と同時に、昭和四十九年度におきましては、テレビ、ラジオを通じて、そうした地震対策あるいは地震の際における火災予防というようなものを国民に直接に知らしていくという方策を考えておるわけでございます。
  185. 小濱新次

    ○小濱委員 消防署の活動範囲は非常に広範にわたっているわけです。交通災害にしても、あるいは火災は当然ですけれども、津波から、危険物の除去、何でも事あれば消防署と言われるくらいたいへん御苦労願っているわけですが、それだけに住民からの期待は大きいというふうにもとれるわけです。いまも予算面ではいろいろな各省庁が関係しておりますが、ここに依存をしているわけにはいかないわけですね。そういう依存主義であってはならない、こう思います。そういう点で、これからもいろいろと対策に努力をしていただかなければなりませんが、いま長官からお話のございました「四十九年度大震火災対策事業」の事業項目別の概要について少し説明していただきたいと思います。
  186. 山田滋

    山田(滋)政府委員 私からちょっと御説明申し上げます。  四十九年度の大震火災対策、第一は、かねて行なっておりました耐震性貯水槽、百トンの貯水槽でありますが、それと小型動力ポンプの整備に要する補助金でございまして、これが従来に比べまして相当数の増加をいたしまして、四十九年度は貯水槽が二百二十基、それから動力ポンプが三百台。  それから第二は、避難誘導をいたしますために、ヘリコプターにテレビ電送システムを取りつけまして、基地局との間で交信をいたしまして誘導をする、そのためのシステムをつくることにいたしました。これは東京中心にいたしまして整備をいたすわけでございます。  第三は、大震対策用の特殊車両としまして、夜間の電源車、あるいは被害が出ました場合の現地における医療等にも活用いたします電源車、これを三台。  これらにつきましては三分の一の補助をもって大都市等に補助金を出すということにいたしたわけでございます。  それからもう一つは、一般住民に対する防災知識の普及をはかりますために、地域防災センターを、これはモデル的でございますが、今回一地区にこれを設けるということにいたしました。これも六千万円に対する三分の一の補助をいたすことになっております。  それから、今回非常に経費の上で重点を置きましたのは、やはり防災知識の啓発宣伝のための経費でございまして、記録映画の作成費であるとかあるいはプリント代であるとか、特にテレビとかラジオのスポットなり放映に要します経費、直接経費でございますが、これらを約二億八千万円程度計上いたしました。  それから、大震火災の空中消火の試験を行なうことにいたしまして、これはかねてカナダにおきまして一応試験済みの飛行艇を借り上げまして、実際に関東地方なりあるいは東海地方の適地を選びまして実験をしてみよう。同時にまた、その飛行艇はカナダ等におきましては林野火災等に活用されておるものでございますので、林野火災等につきましても実験をしてみたい、かように思っておりますが、この実験費として五千万円を計上いたしております。  合計十億二千万円の予算を四十九年度に大震火災対策事業として計上いたしたわけでございます。ちなみに、四十八年度は約一億六千万円の経費でございましたので、今回この大震火災につきましては、消防庁としては相当な増額、六倍以上の額を計上した次第でございます。
  187. 小濱新次

    ○小濱委員 自治大臣、お聞き願いたいのですが、今度の「大震火災対策事業の概要」いま御説明いただきましたこの中で、どれをとってみてもこの区分欄の内容が非常に大事になっているわけです。  「耐震性貯水槽及び可搬式(小型)動力ポンプ整備」これについても三分の一補助。あるいは第二の「避難誘導のためのテレビ電送システムの整備」これはヘリコプター活動に使う内容のものでありますが、これも三分の一。あるいは「大震対策用特殊車両(電源車)整備」も三分の一補助。1は四十七年度から始まって今回が三年目、四十九年度は前年比三・五倍ぐらいになっているようですが、非常に伸びております。あと2と3は新規事業のようでありまして、新規事業をここまで取りつけたということの御努力は認めますけれども、これが三分の一補助ということで、自治体の持ち出し分が非常に多いということでございます。  なお、お聞き願いたいのですが、「大地震に関する知識の普及(地域防災センター)」これが一地区ということになっております。これも新規事業のようでありますが、長官、この一地区というのはどこを定めておられるのか、あるいはまたこれからどういう計画で進めようとしておられるのか。来年の計画でもけっこうであります。お聞かせ願いたいと思います。
  188. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 これは都道府県に対する補助を予定いたしておりまして、三大都市圏の三都府県ということをまず予定をいたしておりますが、ことしとりあえずそのうちの一地区ということを予定いたしております。これは府県の計画とにらみ合わせなければなりませんので、いまのところその中で最も計画が進んでおりますのは愛知県じゃないだろうかという感じがいたしております。そのほか、東京、大阪あるいは神奈川県もそのようでございますが、いま計画の検討中というところがあるようでございます。
  189. 小濱新次

    ○小濱委員 もう一点伺いたいのですが、2の中の「基地局 一式」これも新規事業のようでありますが、この設置地域はどこなのか、あるいは五十年度に対する考え方はどうなるのか、これも伺っておきたい、こう思います。
  190. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ここに書いてあります移動局というのはヘリコプターであります。したがいまして「移動局 二式」とありますのは二機に取りつけるということでございまして、その二機からの連絡を基地局のほうで受けとめるということでございますので、これは移動局、基地局、合わせまして一カ所ということになるわけでございます。これにつきましての計画は、実は移動局で二機以上持っておりますのは現在東京都でございまして、東京がこのための消防庁の庁舎の整備というものをいま具体的に取りかかっております。それに合わせてまず東京から整備したらどうかということを考えております。
  191. 小濱新次

    ○小濱委員 東京も大事であります。今度は一式ですから、基地局の問題については当然そういう形になろうかと思いますが、先ほどのお説のように三大都市圏にも、その中心に当然置かれていかなくちゃならないであろう、こう思いますが、お考え、いかがでございますか。
  192. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 まず、こうした大地震に対する対策は人口が最も集中いたしております三大都市圏というものを優先させたい、こういう考え方でおります。ただ、こうした大地震の対策に対する準備仕事もそれぞれの県あるいは市で進めてもらわなければならないわけでありまして、その準備の進行度合いあるいは計画の進行度合いというものは市町村、府県によって若干差がございます。それらの地元の計画とにらみ合わせながら進行さしていきたいというふうに考えております。当然、こうした避難誘導のためのシステムにつきましても、できる限り三大都市圏の中心的な都市にはつけていきたい、かように考えております。  さらにまた、先ほどちょっと触れましたけれども、たとえば、いろいろな学者の方々から遠州灘の地域が次の時点においてはあぶないなどというような話もございますので、中都市における対策というものも、それぞれの都市の計画ともにらみ合わせながら補助していく方式を考えていったらどうかというふうに思っております。
  193. 小濱新次

    ○小濱委員 さらに「防災知識啓発委託等」これも新規事業のようでありますが、「1 震災記録映画啓発宣伝費」「2 震災対策映画作成委託費」これは(1)(2)と分かれております。「3 テレビ、ラジオ放送委託費」この三番には約二億八千万計上してあります。現在でもテレビにちょいちょい防災のことが出てまいりまして、非常にいい感じを受けるわけですね。中にはちょっと強過ぎるかなという感じのものがあったり、これは女、子供にはちょっとどうかなという感じのものがあったりしますが、とても感じのいいものもございます。そういう点で、認識を深めるための必要な措置ということで、この催しは非常によかった、こういうふうに私は見ております。これも近々放映されるようでありますが、どうか力を入れていただきたいと思います。  この「概要」の中の最後に「大震火災空中消火試験」という事業項目がございます。この中に「空中消火用飛行艇借上、実験費」というのがあるのですね。これはどこからどういう内容で借り上げるのか、あるいは実験の見通し、こういうものを聞かしていただきたいと思います。
  194. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 先ほど次長から申し上げましたように、この飛行艇はカナダにおきまして林野火災用に開発されました飛行艇でございまして、現在カナダ、アメリカ、フランス、スペイン等におきまして実際に使われております。この飛行艇を大震火災に使いたいと申しますのは、避難路を確保するために、避難路の消火がこの飛行艇でできないものであろうか、こういうことを実験してみたいということで借り上げをしようということでございまして、これは現実にカナダの州等で使われております飛行艇を借り上げたい、こういうことでございます。したがいまして、この借上費は向こうから持ってきます費用も含めての借上費でございます。さらに、これは林野火災に使われております飛行艇でありますから、同時に林野火災の消火実験もいたしたいということでございますが、この実験の計画はいま実は作業中でございます。おおむねことしの九月から十一月の間ぐらいに実験ができますように、いま林野庁なりあるいはまた自衛隊のほうともそれぞれ打ち合わせをしながら実験計画の作成作業中でございます。
  195. 小濱新次

    ○小濱委員 カナダから協力をいただいて、そして四十九年度限りということで実験のために借り上げをするんだ、こういうことのようでございますが、飛行艇は、日本にはないのですか。こういう飛行艇はあるいはまた飛行艇の中でも特殊なものになっているか知りませんけれども、日本にはなくてカナダに協力を求めた、こういうことになるのでしょうか。
  196. 山田滋

    山田(滋)政府委員 特にカナダの飛行艇を選びました理由は、長官がさっき申しましたように、カナダのみならず諸外国ですでに活用されておりまして、この性能が、約十五秒から二十五秒の間水面を滑走しながら約六トンの水をタンクに吸い込みまして、それを上空から目標物に向かって散布をするわけでございます。約三十メートルと六十メートルの縦横の面積をカバーする散布ができるわけでございまして、他に比べまして性能が非常によろしいということを聞いておりますので、これをぜひ使ってみたい、こういうことでございました。特にそういったような目的で使われる飛行艇は現在日本にはないと思っております。
  197. 小濱新次

    ○小濱委員 飛行艇一隻の作製費は大体幾らぐらいの予算になりましょうか。おわかりでしょうか。
  198. 山田滋

    山田(滋)政府委員 これは実は現在カナダエアー社という会社が扱っておりますので、それにいろいろ検討させておる最中でございますが、内々の情報によりますと、一機につきまして六億から八億ぐらいの間じゃないかと聞いております。
  199. 小濱新次

    ○小濱委員 自治大臣、お聞きのとおりであります。この見通しは私はもう明るいと思います。実験の結果の見通しは間違いないと私どもは見ております。そういう点から、その程度の予算で購入ができるということになれば、これは大臣、骨折っていただいてこの実現方をはかっていただきたい、こういうように思います。これはこれからもまた話に出てまいりますが、山火事のデータを見ましても非常にたいへんな数になるのです。そういう方向に大いに活用のできる飛行艇でありますので、この点について今後一そうの御努力をお願いしたいと思いますが、ひとつ大臣からお答えいただきたいと思います。
  200. 町村金五

    ○町村国務大臣 本年は特に大震火災の対策のための予算を従来と比べてかなり、格段の予算措置をいたしたということはすでに御承知をいただいたとおりでございます。  ただいま空中消火用の飛行艇をカナダから借り入れるということについての御説明を申し上げましたが、御承知のように、カナダは主としてこれは林野火災のために常時使用しておるものと私どもも聞いておるわけでございまして、いま小濱議員によりますれば、値段などもそう高いわけのものでもないし、これをひとつ将来日本にも常置するようにしたらどうか、活用の方法も十分あるしと、たいへんごもっともなことだと思うのでありまして、いずれにいたしましても本年まず借り上げてみまして、実験をいたしてみまして、その成果を見て、このことはひとつできるだけいま小濱議員の御指摘になりましたような方向に持っていくように努力をいたしてみたい、こう存じます。
  201. 小濱新次

    ○小濱委員 次に、山火事について少しお尋ねしていきたいのですが、最近三年間くらいの件数、死者、負傷者、こういう点での御報告をひとつお願いいたしたいと思います。
  202. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 最近の林野火災の状況は、昭和四十六年が七千百件、四十七年が四千五百件、四十八年が八千二百件でございまして、四十七年がやや特異な年でございましたけれども、昭和三十年ごろに比べまして、昭和三十年が千八百件でございますので、その発生件数が約四倍強になっておるわけでございます。したがいまして、火災全体に占めます発生件数の比率も、昭和三十年ごろは約六%であったわけでありますが、現在は一一%ぐらいに比率が上がってまいっております。したがいまして、他の発生件数に比べますと、平均的には二倍ぐらいの割合で伸びたということがいえるだろうと思います。  それから、この林野火災に伴います死者の数が、昭和四十六年で六十八名、四十七年が三十二名、四十八年が五十六名でございまして、これもその伸びが比較的大きいということがいえると思います。特に林野火災におきましては、たとえば昭和四十六年の林野火災六十八名のうちの十八名が実は消防職員の殉職者でございます。そういうことで、この林野火災におきましても、案外に人命に対する被害も同時に大きくなってくるということがいえると思います。
  203. 小濱新次

    ○小濱委員 いま御説明がありましたように、件数にして三カ年間で一万六千八百四十二件、死者が百五十六人、負傷者ももう千人近くなっているはずであります。いまお話がありましたように、前の呉の山火事での多くの消防隊員を失ったことの記憶をわれわれは持っておりますが、こういうことからも、山火事に対する対策をこれは早急に取り組んでいかなくちゃならない。いままでも取り組んでいただきましたけれども、こう各地でひんぱんに事故が起きているんでは、これが対応策をもう急がなければならない、こういうふうに考えておるわけですが、この山火事に対する対応策については、何か具体的にこうだというものがおありになれば御説明いただきたい、こう思います。
  204. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 最近はやはりレジャー人口の増加といいましょうか、入山者が非常にふえてきておるということも一つの理由になっているのではないかと思いますが、林野火災の出火原因は、たばこの投げ捨てあるいはたき火の不始末といったような人為的なものが大部分でございますので、こうした出火防止について相当重点を置いた対策を講じなければならないだろうというふうに考えるわけでありますが、何ぶんにも林野の場合には面積的にも非常に広うございます。それに対しまして人が少ない。そしてまた山を見回る人間、いわば監視のための人間ということもなかなか現実問題としては確保できないというのが現状でございます。そういう意味におきましては、やはり一般の人々の自覚にまたなければならないということになるわけでございますが、そうした火災予防についての注意というものをいろいろな機会に、あるいは山林を比較的持っておって、そしてまたそうした山に入るレジャー人口の非常に多い市町村におきましては特に注意をしてもらうように、私どもも指導してまいりたいというふうに考えております。  さらにまた、山火事を出しました場合には、それの警防対策というものは相当人手も必要といたしますし、資機材につきましても非常な量のものが要るわけでございまして、現在、数年前から林野火災に対する特別な対策といたしまして、そうした林野面積の大きい、そしてまた林野火災の多い市町村における資材の備蓄に対する補助等もしてきたわけでありますけれども、本年度からはさらに府県におきまして資材備蓄のための経費等も見ておるわけでございます。  さらにまた、林野火災のための特別な消火資機材というものの開発が消防研究所におきまして大体めどがついてまいりましたので、本年度はその消火資機材をでき得る限り全国的に配付をしていく、こういうことで府県に対する消火資機材の補助制度をとったわけでございますが、これには自衛隊によるヘリコプターの援助をいまお願いをしておるわけでございまして、これは自衛隊におきましてそうした特殊なヘリコプターの乗員の訓練ということも本年各地において実施をしていただくという話し合いもついておりますので、そうした面からの警防対策というものをまた全国的に考えていきたいと思っております。
  205. 小濱新次

    ○小濱委員 この山火事のデータからして、これはもうたいへんな事故の内容でありますので、何とかこの事故を少なくしていくための対策をいろいろと講じている、その御意見をいま拝聴したわけでありますが、一つこれは提案をしておきたい、こう思うわけですが、これは自治大臣も聞いていただきたいと思います。  道路交通法の第七十一条「運転者の遵守事項」というのがございまして、この内容は「ぬかるみ又は水たまりを通行するときは、泥よけ器をつけ、または徐行する等して、」「他人に迷惑を及ぼすことがないようにすること。」と、どろはねの禁止規定がついているわけです。どろですから、かけられたほうは迷惑ですけれども、これはクリーニング屋に出すとかいろいろ対策はありますが、人命にはこれは影響はないわけですよ。しかしながらそれだけの規定が設けられてあるわけです。ところが、山火事が三カ年間で一万六千八百四十二件も起こっている。これはたばこの吸いがらが原因であることがたいへん多いということですので、何か罰則を設けなければならない、こういうふうに考えるわけでございますが、たばこの吸いがらを山に投げ捨てることで年々たいへんな損害を招いているわけですから、その例からもこれの罰則規定というものをつけるべきである。私どもはあまり罰則ということは好まないのですけれども、多くの人が傷つけられ人命を失っている、あるいはたいへんな資材を失っている、こういうことで、何としてもこの問題を鎮圧していくための一つの方策としてこの罰則規定というものをつくるべきではないのかというふうに思うのです。御見解を承りたいと思います。
  206. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 たばこが捨てられてそれで火事が起きたということになりますと、刑法の上では失火罪ということになるわけでありますけれども、それ以前において、林野においてたばこをそのまま投げ捨てるということはやはり反社会的な行為であるという観点から、罰則を設けていくということも一つの考え方であろうかと思います。ただ、現実問題として、そうした罰則を設けた場合に、その罰則を確実に強制をしていくということのためには、現在の林野においてそれだけの罰則を強制するだけの人手というものはなかなか得られないわけでありまして、やはりこうした、山にレクリエーションに行くというような人、あるいはまた場合によっては山に仕事を求めて行くという人もあるかと思いますが、こういう人たちの火災予防に対する意識というものを高揚さしていくということが必要であろうかと思います。やはり私どももそうした意識の高揚について、その火災予防の意識を求めるためのいろいろな方法、手段というものを相当強力にして、指導していくということが必要ではないだろうかというふうに考えているわけでございます。
  207. 小濱新次

    ○小濱委員 国家公安委員長がおられるわけですから、どろはね禁止の規定があって、消防のほうに山火事を起こす原因の罰則規定がないということで、いろいろ自治大臣もお耳ざわりではないかと思うのですけれども、やはりこれは自治大臣、どうしてもこう件数が多いのであっては、対策だけでは件数を減らすことができないのですから、これは何らかの対応策を考えなくちゃならないということで、私は罰則をつくれというのを奨励しているわけではないのですが、こういう点でのこれからの考え方の中にひとつ提案をして、お考えいただきたいということを申し上げておるわけでして、どうかひとつ、決して奨励しているのではないということを含んだ上で今後の対策についてお考えいただきたい、こういうふうに思います。
  208. 町村金五

    ○町村国務大臣 いま御指摘がございましたが、自動車のどろはねにさえ罰則がついておるのに、大きな林野火災を起こすたばこの吸いがらを捨てるということについて何ら罰則がないというようなことはまことにおかしいではないか、確かに私もその点はごもっともだと思うのでありますが、御承知のように、自動車の場合と違いまして、人の見ていない山の中で吸いがらを捨てるということでございますので、かりに罰則をつけましても現実にはなかなかこれを取り締まるということがむずかしいのではないか。  一結局、私は、日本人はどうもまだ公徳心が残念ながら先進国の方々に比べてみて非常に低いのではないか。外国では、先進国の中には、私もよく存じませんけれども、たばこの吸いがらを往来に捨てたり山へ行って捨てるなどということはまことに許されざることだという国民の考え方が徹底しておる国がずいぶん多いようでございます。残念ながら日本では、レクリエーションに行く人が、吸いがらばかりじゃございません——かつてアメリカの内務長官が日本へ参られまして富士山に登られたのであります。帰られましてから、どうだと私、聞いてみましたところが、富士山はすばらしい、高い山だ、人の食べたあきかんがたくさん積んであってなお高くなっておったという話を聞いて、まことに赤面をしたことがあるのでございます。私は、ほんとうにやっぱりこういった問題は、これだけの大きな被害を出しており、さっきの罰則の権衡論ということから考えますと御説まことにごもっともだという感じもいたしますけれども、要はやはり日本人の公徳心の向上ということにまたなければならないのではないかという感じがいたすのでございまして、いま直ちに罰則を新たにつける、強化するということについてはなお検討の余地があるのではないかな、そういう感じがいたすわけでございます。
  209. 小濱新次

    ○小濱委員 次に、今回、四十九年度から五十三年度の五年間、人口急増地域の消防施設の補助率を二分の一に引き上げたわけでございます。これは、国は交付税約千六百八十億円を借り入れたかわりに人口急増対策、超過負担対策を行なうものである、そういういろんな声がございます。その対象としてポンプ車、防火水槽、消防無線、化学車、はしご車のみで、消火に重要な小型動力ポンプ、発泡車あるいはまたヘリコプター、消防艇、屈折放水車、救助工作車などが対象となっていないのですね。高層化してまいりましたこういう時代に、救助工作車というのは大きな役割りをしているわけです。これをつくろうとすると、三千万、三千五百万円かかるわけです。もうすでに計画を持っているところもございますが、こういう大事なもの、肝心なものがこの対象に入らなかったことは、人口急増地域の消防力強化という点から考えてみましても当然対象にすべきではなかったのか、今後の対策についてお伺いいたしたいと思います。
  210. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 現在の都市の建築の状況なりあるいはその中にありますいろいろな工場施設その他の状況から見まして、いずれの都市におきましても科学消防力を強化していくということはまことに今後の消防施設強化の重点になるべきことであろうと考えるわけでございます。ただ、人口急増地域におきまして私どもが考えましたのは、人口急増地域における補助率を引き上げるということは、人口が短い期間に急増をするという状況に対処いたしまして、住民の生活関連公共施設を急速に充実していかなければならぬ、そうした短い期間の財政力に対しましてその不足分を補っていくという考え方をとったわけでございまして、そういう意味におきして、消防としましてはその基本的な施設をまず充足をしていきたい、こういう考え方で、その対象を普通ポンプ車、はしご車、化学車といった、いわば基本施設について考えたということでございます。ただ、それだからといって科学消防力というものについて軽視したわけではございません。これは都市の全体の問題として科学消防力を強化していきたいという考え方には変わりはないわけでございます。
  211. 小濱新次

    ○小濱委員 消防力の強化という問題については前々強調されてきたところでありますが、充足率を見てもまだそこまでいってないわけでして、まあ基本施設についてのお考えはいま長官から伺いましてよくわかりますが、何としても大ぜいの死者、負傷者それから損失ということを考えたときには、より以上に対象範囲を広げるべきであるというのが私どもの考え方であるわけです。そういう点から申し上げておるわけでございますが、今回あらゆる面で消防に非常に力を入れていただいた、その内容は明らかになっておりますが、まだこんなもので事足れりというような内容じゃございませんので、大いにひとつこの対象を広げることについての御努力をお願いしたい、こういうふうに思って御質問しているわけでございますので、もう一度お答えいただきたいと思います。
  212. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいま御指摘のとおり、現在の「消防力の基準」に対しまして、普通ポンプ車にいたしましてもはしご車にいたしましてもまだまだ不足でございます。特に人口急増地域を平均的にながめてみますならば、普通ポンプ車の水準はむしろ一般の都市よりもまだ低いというような状況にございまして、どうしても基本施設のほうに不足が見られるわけでございます。そういうことで、ともかくいまの「消防力の基準」からいたしますならばどれもこれも不足な状況にございますけれども、まず基本施設からということで補助率を引き上げた。その対象施設を限定して、ともかくこの施設だけは少なくとも早く整備してほしい、こういう考え方を私どもとったわけでございます。
  213. 小濱新次

    ○小濱委員 さらに、過疎、離島、同和、沖繩開発あるいは成田空港周辺整備、この五点については法律で三分の二補助となっているわけです。人口急増地域が特に財源難で苦しんでいる現状から見て、この特殊事情を考慮して、当然、これらのかさ上げと同様に三分の二補助をやるべきであるという、まあその事情がわかるだけに私どもはこの点を強調したいわけでございますが、この補助率を何としても上げていかなくちゃならないという考え方に立ってひとつ長官からお答えいただきたい、こう思います。
  214. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 補助率を引き上げるということは、やはりその対象の市町村の財政力との勘案において考えられるべきであろう。特に消防の場合には、補助の性格が奨励的補助であるという観点から見ますならば、そうした財政力に特に重点を置いた考え方であろうと思います。御承知のとおり、現在過疎市町村といいますのは、一定年間における人口の減少率と、もう一つは財政力指数が〇・四以下という規定になっております。財政力がきわめて貧弱である、これはいわば生産人口が流出をしておる、そのことのために税源自体も流出をしているという市町村であるわけでございます。これに対しまして人口急増市町村は、どちらかといいますと一応の都市施設があり、都市的な形態は十分維持されておるところでございます。また財政力の指数からいいますと、平均してみますと〇・八一というぐらいになっておるわけであります。これは過疎地域の財政事情とは、その態様としまして非常に大きな差がございます。  ただ、人口急増地域におきましてこうした財政援助措置をとっていくというのは、やはり単年度間に相当数の人口が急増した、そのためにそれに対応するいわば基本的な公共施設についてとりあえず整備しなければならない、その財政負担分について援助をしていこう、こういう考え方でございますので、それは補助率が高ければ高いほど財政援助としては有効であろうというふうに考えますけれども、過疎地域と同じ扱いにしていいかどうかという点になりますと、ややその辺は問題があろうかと思います。そういうような趣旨で、たとえば義務教育施設でありますとか、ことしから設けられました幼稚園等に対する補助率の引き上げにつきましても、現行通常の補助率に対しまして一段上の補助率を適用していく、こういう方式がとられておることは御承知のとおりでございます。消防もそれと大体同じような扱い方にいたした、こういうことでございます。
  215. 小濱新次

    ○小濱委員 人口急増地域の財源難について、これは御認識をいただかなくちゃならないと思いますが、きょうは時間もありませんので、この点についてはまた次に譲らしてもらいます。  人事院勧告は、昭和五十年を目途にして公務員の週休二日制実施の具体化を検討するということになっておりますが、消防職員の週休二日制について基本的にどう考えておられるのかということであります。この自治体消防は、地域的な状況から、国の基本方針が明らかにされなければ作業は進まない、こう思うわけです。五十年ということになればもう来年でありますから、この点の見解も承っておきたい、こう思います。
  216. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 一般職員の待遇と違った待遇がとられるということは考えられないわけでございまして、やはり一般職員と同じような勤務条件ということが必要であろうと思います。また、一般職員と、職務の性質上どうしても差があるという部分につきましては、給与の条件においてそれだけの待遇をしていくということが必要であろうというふうに考えるわけであります。したがいまして、週休二日制につきましては、そうした制度が採用されるという方向が大体きめられてきつつあるというふうに考えておりますので、私どももそういう方向で今後の人員の充足等については考えていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  217. 小濱新次

    ○小濱委員 週休二日制を進める場合に、これは職員の増員が必要になってくるわけですね。当然そうなります。四十九年度の交付税では人員の補充というものは、いろいろ聞いておりますが、見込まれているのかどうか、少し御説明をいただきたいと思います。
  218. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 実は消防職員の勤務体制の問題につきましては、いろいろその前提になります問題がございます。たとえば消防力の基準の問題にいたしましても、現在の「消防力の基準」が最近の社会情勢、特に都市の状況から見て適当かどうか、こういう点もございますし、また救急体制というものが、最近の救急需要から見ていまのままの救急体制でいいのかどうかといったような問題があるわけでございまして、そういうようないろいろな条件というものをもう少し整備をして、そして消防に、通常の勤務状態において週休二日制を導入したならば一体どうなるかということを十分に検討して増員対策を考えなければならないということになるだろうと思っております。そういうことで実は「消防力の基準」というものの見直しの作業を本年度すでに開始をいたしております。  それから、本年の交付税におきまして、実は標準団体におきまして六名の消防職員の増員措置を行なっております。これは、救急体制というものは「消防力の基準」の改定をいたす際には当然に相当の増強をしなければならないということも考えられますし、また現実に救急職員の増員が必要になってまいりますので、この六名のうち二名は救急のほうに回していく、それから最近の予防のための職員の要請というものもございますので、予防、警防のための職員四名ということで、現在六名の増員を本年度の交付税で計画をいたしまして、これは将来の消防職員の増強という点も含みにしながら、一挙に増員するということは現実問題としてなかなか困難でございますので、実は本年度からそういう方向を考えながら増員をはかったということでございます。
  219. 小濱新次

    ○小濱委員 先ほども話が出ましたけれども、現在の消防力の設置基準は、その充足率がきわめて低いことが従来から問題になっているわけです。最近の高層化、地下街の増大、都市の交通渋滞などから考えてみましても、この基準のとり方自体も低いように考えられるわけですね。そういう点から現実に合ってないというふうにも考えられるわけでございますが、消防力の増強について、こういう点からどういうお考えをお持ちになっておられるのか、お伺いをしたいと思います。  先ほどいただきました「消防力の基準と現有との対比」この資料によりましても、消防力基準と現有との対比は、昭和四十七年三月三十一日現在、物的施設、これが、種別に見ると、消防ポンプ車が六五・八%、はしご車が五〇・六%、化学車の面が五二・四%、こういう充足率になっているわけです。また人的施設は七六・三%。こういう欄を見ましても、消防力の増強ということについて特にいま一考願わなくてはならない、こういうように考えておるわけでありますが、ひとつこれも長官から御意見を承りたい、こう思います。
  220. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 この数字は、ここに書いてございますように昭和四十七年の三月末の数字でございます。したがいまして、おそらく昭和四十八年度末になりますと、普通ポンプ車は大体七〇%水準、はしご車、化学車は六〇%水準というところまで前進をしているであろうということは考えております。そういたしましても、現在の「消防力の基準」に比べましても相当低い水準にあるということはもう御指摘のとおりでございます。それからまた、各市町村が現在消防力の整備計画として予定をしております水準というものを検討してみますと、現行の「消防力の基準」に対しましては大体八〇%水準程度を目標にした整備計画というものをつくっているのが現状でございます。そういう点から見直しまして、現在の「消防力の基準」というものが市町村の考えておる実態から見てはたしていいのかどうか、こういう点は十分考え直す必要もあるんじゃなかろうか。それから火災の損害の状況から見まして、大体消防力基準の基礎になりましたところの、発生時点の完全消火、延焼防止という点はおおむね現在達成されつつあるような感じがいたしております。それからまた、それに対しまして、はしご車、化学車を必要とする災害というものが非常にふえてきておる。それは建物の状況がそういうことになっておるからでありますけれども、そういう状況にもあるわけでございます。それからまた、こういう施設を充実いたしました場合には、それに伴って必ず人が要るという問題がございます。そういうことで、この消防力の基準に対しましては、現在各市町村におきまして現に消防の仕事を担当しております消防長の方々の御意見も十分に聞きながら、それからまた一方におきましては消防審議会等におきまして学識経験者のいわば科学的な立場からの判断を仰ぎながら、この消防力の基準につきましては現在に合うような基準に改定をしていきたいということで、大体今年中くらいに「消防力の基準」の改定作業が終わりますようにいま作業を進めているところでございます。
  221. 小濱新次

    ○小濱委員 このデータを見まして北九州のはしご車は一一四・三%、化学車が一二〇%、非常にすばらしいですね。ですが、全国平均には、北九州のような地域が入っておってもなお五〇%前後になっておりますので、相当低い地域があるように思えるわけです。どうかこういう点の一そうの御努力をよろしくお願いしたいと思います。  そこで、今回の法改正でありますが、この法律の実際の運用は政令、省令で行なわれる、こういうふうになるかと思いますが、この実施機関は市町村長ということになるわけですね。したがって、政令、省令の制定にあたってはこれらの市町村長の意見を取り入れていくべきである。地域性から見て当然そういう形が望ましいというふうに考えておるわけですが、この点についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  222. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 この法律の立案にあたりましては、当然政令においてどういう事項を規定をしていくかということも前提にしながら立法をしたわけでございます。そういう意味で、この遡及適用の対象になります防火対象物につきましては二つのグループに分けて、その取り扱いにある程度の差をつけた方式をとっておるわけでございます。その場合におきまして、それぞれの考え方をまとめます段階におきましては、消防審議会の御意見も十分取り入れておりますし、また消防審議会には全国の消防長会の代表者も参加をしております。それからまた大都市だけではなしに、一般市町村の消防長さん方の集まりの会もございまして、それぞれ意見が提出をされております。それから、この法律の改正の中には、たとえば特別の防火対象物について、市町村の条令をもってその地域の特殊性が反映できるような規定も設けてございまして、第一線の消防長さん方の意見、実際に当たっております消防長さん方の意見もできるだけ反映をしていくという考え方でやっておる次第であります。
  223. 小濱新次

    ○小濱委員 次に、去る四月八日付朝日新聞の「天声人語」欄によれば、京大工学部の堀内研究室でまとめられた大洋デパート火災時の店内での人の動きについての調査結果が発表されております。これによると、「非常用標識のように視覚によるものより聴覚に訴える誘導の方が効果的だ」との発表があったわけでございますが、これをどのように評価をしておられるか。まず、この新聞お読みになったでしょうか。——それじゃお答えいただきたいと思います。
  224. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 確かに、大洋デパートのような火災になりますと、煙の問題あるいは電源の問題等からしまして、その避難誘導を別な音あるいは光によってやるということについてはまことに有益な御意見だったと思うわけでございます。そういうことで、まず光による方法としましては、誘導灯の基準改正を行ないまして、非常時点におきましては光源を点滅させるというようなことで、閃光を連続して発生する装置を設ける、それによって注意を引きつけることができるようにしていきたい、こういうことも考えておるわけでございます。  さらにまた、これは全般的な問題でありますけれども、非常電源というものについてはすでに義務づけておるところでございまして、誘導灯なり通路の標識なりというものについての義務づけは行なっておるわけであり、音声による避難誘導を行なうための放送設備の設置はすでに義務づけられておるところでありますけれども、デパートのような大きい防火対象物の場合には、全館一斉に放送を行なうということになりますと、各階ごとにその情勢が違うわけでありますので、やはりこうした避難誘導の場合の音につきましても、その実態に応じたような避難誘導ができるようなシステムというものがとられてしかるべきであろう。こういう意味におきましては、各階に防火管理者の副管理者的な人の設置を要請をし、それらによって各階ごとの音による避難誘導体制ということがとれるようなことを消防計画に織り込んでいく必要があるというふうに考えております。  さらに、現在総合的な防災設備のシステム化ということの開発を検討いたしておりまして、人と設備とができるだけ一体的、有機的に動けるような総合的な防災設備のシステムというものが開発されるということを、私どもできるだけ早い機会に期待いたしておるわけでございます。
  225. 小濱新次

    ○小濱委員 人は音によって方向を知る。濃霧のとき、船は音によってお互いの安全を知る、こういわれております。濃霧の中で航行するときには汽笛、号笛を鳴らしながら、お互いの安全を知りながら航行していくわけです。あの場合には羅針盤もあるし、方向はわかりますが、どこにどういう船がいるかわからないから、水中聴音機はやっているけれども、どうしても音にたよらざるを得ません。こういうことで、お互いに安全を音で確認をし合っているという形がありますが、この研究室の発表によりますと、霧中航行の船舶は灯台から流れる「霧笛によって自分の所在地を確かめ、陸からの距離もおおよそ知ることができる。」こういうふうにいわれておりまして、私の経験からも、このようなとき人は音によって心理的な孤絶感からものがれることができるわけです。いまお話がありましたが、館内放送も大事でありますが、それも絶えたときは確かに音なんです。全館一斉ということになるといろんな反響があろうかと思いますが、音を取り入れた誘導システム、こういうものを考えるべきではないか、こう思うわけです。私はこの間ある業者の方の説明を求めたわけですが、光と音を並行した装置がすでに研究されておって、何か消防庁の研究所のほうで内容の説明を求めたというふうにも聞いておりましたが、大洋デパートの例からも音の必要性を特に感じておるわけですが、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  226. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 音の活用につきましては、火災の発生を知らせる、これは一刻も早いほうがいいわけでありますから、全館一斉の警報装置あるいはまた全館一斉の放送設備というものが必要であろうと考えるわけでありますが、今度は避難誘導という体制になりますと、それぞれの建物の部分によりましてその状態が違うわけでありますので、避難の体制に入りました場合には、それぞれの階において一定の指揮者のもとに避難ができるような、あるいは一定の指令のもとに避難ができるような装置が必要であろうと考えておるわけであります。いま、そうした設備についての開発が進められているところでございまして、ただいま御指摘ございましたようなことで、そういう方向でのシステムの開発をできるだけ早い時期に検討していきたいと思っております。それまでの間は、前回の委員会にも出ましたように、たとえば笛による方式でもけっこうでありましょうし、あるいは携帯のマイクロホンによる誘導でもけっこうでありましょうし、できる限りのものを消防計画の中に織り込んで、それぞれの防火対象物において避難誘導体制を確立していきたいと考えておるわけでございます。
  227. 小濱新次

    ○小濱委員 いろいろ長官からお答えをいただきましたが、現在の誘導装置、初期消火あるいは火災発見時の光あるいは音による誘導装置、こういうものも大事ですけれども、もう少し時点が過ぎて、館内がまつ暗やみ、停電、そしてまた煙が充満をして、その中で救出作業あるいはまた応急処置を講ずる場合に、何をたよりに自分は作業をしていくのか。飛び込んだはいいけれども出口がわからなくなってしまった、こういうことではいけないわけでありまして、サル回しのように細ひもをつけて入っていく場合もあるのですよ。そして必ずそれを持っている人がいる、そして誘導する、こういう形もあります。あるいは、その中に何か誘導装置というものがなければなりませんが、事故が起こっているときには必ず音響が高いわけです。大きな声も消されていく。何が大事かということになると、鋭くこういう壁を突き通していくものということになれば、音あるいは笛、号笛とか汽笛とか、そういうものが大事になっていくわけです。そういうものが鳴ることによって、ああ、おれの近所にはだれか応援隊がいるんだな、同じ作業をしてくれている人がいてくれるんだという、そういう孤絶感からのがれることができる、安心感がわいてくる。  ですから、何かその装置が必要であると考えるわけですが、現在の誘導装置というものは視覚中心になっているように思えるわけです。目です。もっと聴覚による誘導体制を考えていかなくちゃならないと思うわけですが、何か研究しているそういう内容のものはございませんか。簡単なもので、だれしもが携帯ができて、そして応用のできるような音、たとえばパトカーなどの救急車は一定の音がきめられております。これと同じように、救急時の誘導のための特別の音をきめるべきであるということが一つと、もう一つ、笛があるわけです。  ああいう事件現場に行く場合には、あるいは救急員としてその任に当たる場合には必ず携帯しておかなければならないというもので、私どもの過去の経験からも、笛の役割りというものは非常に大事であったわけです。この笛は備品なんです。失ってはたいへんなんです。携帯品の一つなんですから、これはいつも身につけておかなければならぬ。めしを食ってたってつけておかなければならぬ。こういう立場で笛というものがあった。船の中の生活者はたいがいこういうものを持っているわけです。そして事故に対する応急作業をするときにはこれが大きな役割りをしておったという事例があるわけであります。  笛にもいろいろな鳴らし方がありまして、その笛を鳴らすことによって誘導ができるのです。とまれ、あるいは引け、いろんな笛の鳴り方によって、ぴっと自分の行動を判断することができる、そういうものがあったわけですね。ですから、ぼくは今度のこの教授の発表を伺いまして、なるほど音ということ、笛ということ、これは軽いものだし、安価でもありますし、携帯は自由だし、これが人命救助の一役をになうことができれば、これはいい考え方だなというふうに教授の発表からぼくも感じたわけでして、どういう笛でもけっこうでありますが、こういうものに対する研究あるいは今後の考え方について御所見を承っておきたい、こう思います。
  228. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 私ども、いま、事業所あるいは作業所等、人のたくさん入っております場所における非常災害時における行動基準といったようなものの作成作業をやっておるわけであります。ただいま非常に有力な御示唆も得られましたし、そういう施設における消防計画の中において、そうした音による避難誘導方式というものについて、十分これをこうした行動基準の中に組み入れるということを考えていきたいというふうに思っております。現在も、この消防法の消防設備の中におきましては、いろいろな携帯用の拡声器でありますとかあるいは手動式のサイレンでありますとかの設置の例示がございますけれども、さらにいま申されましたようなものにつきましても、そういうものの中に取り込んでいくということについて考えていきたいと思います。
  229. 小濱新次

    ○小濱委員 煙対策について、室内では、まあ火災ということになれば当然有毒ガスと煙ということが第一の条件でありますから、そういう点でのその急場に臨んだ場合の救済策ということで、非常に今回は学説が述べられておりますし、教授のこうした「天声人語」の内容からも、このことについてはこれは一考する必要があるであろう。もしもこれが役に立てば、簡単なものが大きな役割りを果たしていくということになりますので、長官の御意見を承りましたけれども、このことについては最後にひとつ自治大臣からも、こういうことが人命救助に大きな役割りができるという学説もございますし、私どもの体験の上からも、ぜひ今後これを研究し、活用に踏み切っていただきたい、こういうふうに心から念願するわけでございますが、最後に御意見を承りたい、こう思います。
  230. 町村金五

    ○町村国務大臣 先ほど来、たいへん、火災非常時における人命救助のための避難誘導に一体どういう方法をとることが一番適切かということについての御示唆をいただいたわけでございます。消防庁長官も、たいへん適切な御意見であり、ぜひ避難の誘導のシステムの中にそういうものをひとつ取り入れることを積極的に検討しようということを申しておりますが、私も全く同様に考えておりまするので、そういった御意見をひとつ十分貴重な参考資料として、そういった問題を具体的に進めるようにつとめてまいりたいと存じます。
  231. 小濱新次

    ○小濱委員 以上で終わります。
  232. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 折小野良一君。
  233. 折小野良一

    ○折小野委員 時間もだいぶ経過いたしましたので、簡単に御質問いたします。  まず、大臣にちょっとお伺いいたしたいと思いますが、最近火災の態様というものが非常に変わってまいりました。したがって、消防のあり方、その基本的な考え方、こういうものもおのずから変わらなければなるまい、こういうふうに考えるわけでございます。  消防というのは人命、財産の保護ということでございますが、かつては、火事があったといいますと、何軒焼けたか、すなわち財産の保護に重点があった。一般の認識もそうでございますが、消防の対策といたしましても、やはりそこに認識の重点があったというふうに見ていいのじゃないかと思います。私どもが最近特に感ずるのは、火事だということになりますと死傷者がどれだけ出たか。ほとんど最近の火災では人身事故というのが伴って発生をいたしております。こういう面からいたしますと、やはり消防というものもこの際ひとつ基本的な考え方を確立し直して、そして対処していかなければいけないのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。そういう点からいたしますと、経済性を優先した考え方から、人命尊重あるいは人間優先、こういうような立場の消防行政というものが確立をされなければならない、そのように私考えるわけでございますが、大臣の今後の消防行政に対する基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  234. 町村金五

    ○町村国務大臣 ただいま御指摘もございましたが、確かに、最近のわが国の火災というもの、ことに工業都市等における火災の態様というものは、かつては想像のできなかったようなまことに多種多様の火災の状況になってきておるのであります。しかも、過去においては確かに、まあ家が焼けたために財産が焼かれたということでございましたが、よほどのことがなければ人命を失われるということは、過去においては少なくとも今日に比べてみるとはるかに少なかったということだけは間違いがございません。いまは、そういった特殊の建築資材等からくる不良なガスによりますところの死亡なり、あるいはまた高層建築物、今度問題になっておりますようなきわめて危険な建築物が次第にふえてきておるというようなことから、とかく人命が失われがちだということは、確かに、過去のものに比べると私は最近の火災の著しい変化である、かように考える次第でございます。  したがって、消防のあり方というものも、まあ長い間伝統的な消防でやっておりますために、やはり多少マンネリ化したところがあって、必ずしも、現在あるいは今後あるべき火災の態様に対して、いまの消防のやり方がこのままでよろしいかどうかということについては、深く反省を加える必要があるのではないかという感じが私もいたすのでございまして、ただいまの御指摘もひとつ十分念頭に置きまして、今後、人命を失うことのないようにあるための消防は一体どうあるべきか、消防行政のあり方について、またあり方に伴う諸般の施設というようなものも、それに伴ってふさわしいものでなければならぬことは言うまでもございません。こういった点はひとつ十分検討を加えていかなければならない時期に参った、かように存じます。
  235. 折小野良一

    ○折小野委員 基本的な心がまえにつきましてただいま大臣の御意見をお伺いをいたしましたが、これを今後の政策の中に具体的に生かしていくというのが大切なことだというふうに考えます。  いただきました資料によりますと、日本とアメリカとの比較でございますが、アメリカが人口一万人当たりの出火率が一三、これに対して日本は六、日本のほうが出火率からいきますと半分以下、非常に少ないのであります。ところが死者を比較いたしますと、火災千件当たり、アメリカが四・三人に対して日本は二十三・一人、これは五倍以上、やがて六倍の数になっております。  こういう具体的な数字から見ましても、もちろん両国の間のいろいろな事情というものも違いましょう。わが国におきましては、何といっても木造建築が多いということがございますし、国土の面積、したがって家屋連檐地域の稠密度、こういうものの違いというものもあろうと思うのでございます。しかしながら、こういうふうに非常に火災による死者が多いということ、これはやはりわれわれいろいろな面から十分に検討をして、その死者を少しでも少なくするように努力しなければなるまいと思っております。これだけ大きな数字の開きが出てきております一番の原因、そしてまたそれをなくするためにわれわれ努力していかなきゃならない方向、こういう面について、現場の最高の責任者であります消防庁長官の御判断あるいは御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  236. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいまのアメリカとの比較でございますが、実は出火率はアメリカの一三一に対しまして日本は六ということで二十倍の開きがございます。そういう状況でありますから、一件当たりの死者の数は、日本の場合、アメリカに比べますとはるかに大きいというような状況になっておるわけでございまして、そうした出火率に対する死者の数ということだけではなしに、毎年の火災の統計を見ますたびに、百五十人ないし二百人の死者が毎年恒常的にふえているということは、私どもとしまして非常に残念なことでございまして、消防の体制も死者をなくしていくということに非常に重点を置いておりまして、消火にあたりましても、まず人命救助ということを最重点に掲げて警防活動を実施をしておるというのが現状でございます。  また消防の組織におきましても、最近の火災その他の災害の状況から見まして、まず火事を出さないという意味におきましての予防行政というものに第一の重点を置いて、予防事務を担当する職員の充足ということを心がけておるわけでございます。さらに、大都市の地域、あるいは中小都市もそれに次いでおりますけれども、都市部におきましては救助隊の編成ということで、消防における専門の救助職員というものの養成を実施をいたしておりまして、現在そうした救助隊というものが次第に中都市から小都市まで編成されつつあるというような状況でございます。  それから救急隊の編成にいたしましても、最近の救急需要から見まして相当な整備が必要でありますし、そういう点での救急能力の高揚ということにつとめておるわけでありますが、これは消防機関の側の体制でありますけれども、一般の住家も含めての防火対象物における火災に対する準備というものについては、これはやはり死者が相当初期の段階において出ているというような状況から見まして、一般家庭の火災時における心がまえということにつきましても、相当ないわば指導を行なう必要があるというふうに考えておりますし、最近の死者が特に老人、幼児に非常に多くなっているというようなことから、年寄りと幼児を守っていくということのための一般住宅に対する予防行政というものにつきましても、相当重点を置いた指導を行なっておりますが、これはまた現実問題として人員等の関係からなかなか回り切れないでおる点もございますが、将来こうした一般家庭における指導体制も整えていきたいというふうに考えておるわけでございます。  さらに、特定防火対象物ということになりますと、今回の改正というものが人命に対する最も重点の改正であるわけでありまして、防火対象物につきましては、それぞれの経営者自身におきまして十分な体制をとらせるということが必要であろうというふうに思っておるわけでございます。
  237. 折小野良一

    ○折小野委員 先ほど私が申し上げました数字、ちょっと間違いがありまして、これは長官がおっしゃったように、出火率がアメリカ一三一に対して日本は六ですね。それは訂正をいたしておきます。  これと直接の関係はありませんが、しかし、最近の消防業務の中で広く救急体制の整備というのは非常に大きな問題でございます。また現実に消防業務の中における救急業務の比重というものが非常に大きくなってきております。ただいまも長官からいろいろなお話がございまして、救急体制の整備についていろいろ考慮されておりますが、現在のところは、少なくも基本的には、消防といたしましてはいわゆる搬送が主体なんですね。あとは医療関係のほうにいろいろお願いをする、こういうことになってまいっております。しかし、ただ運べばいいというわけのものじゃございません。そのあとの救急医療というものが、場合によっては生きるべき命を捨てなければならぬというようなこと等もございまして、基本的にはそのことが非常に大切なことだと考えられます。  昔、お医者さんがそこにおるならば、いわゆる医は仁術ということで何とか処理できたという問題も、今日ではなかなかそうはまいらない。夜であるとか休みであるとかいうことになってまいりますと、やはりお医者さんといえども休まなければならぬ、こういうような時代にもなってきておるわけでございまして、そういうような情勢になってくればくるほど、行政としての対応というものが非常に大切になってまいっております。消防の立場から救急業務をやる、そういう点で、消防庁長官の、救急業務をより完全にやっていくためにはどうあったらいいのか、こういう点についての消防の立場からの御意見をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  238. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 消防に対する救急の需要というものが毎年一五%ないし二〇%の増加を示しておりまして、すでに、四十七年の、実績を見ましても、救急隊による搬送人員というものは百十万人をこえるというような状態になってきております。こういうような情勢に対処いたしまして、現在私ども基準として考えておりますような、十万人に一隊の救急隊ではとうていこの救急需要をまかなうことができないというような情勢になってまいりまして、現在、人口五万人に対して一隊の救急隊を整備していく、こういう方向で救急隊の整備を考えておるわけでございまして、本年の交付税におきまして消防職員の増加を見込んでおりますのも、その一部はこの救急隊の増加を予定いたしまして見込んでおるわけであります。大体三年ぐらいの間に五万人に一隊、いままでの倍増の救急能力を持つ、こういうことを考えたわけでございます。  いま私どもがそうした救急隊の整備にあたりまして、救急職員の教育という面がややおくれているという点につきまして、私どもこれを急速に充足していかなければならないというふうに考えておりますが、こうした救急職員の整備とはずを合わせながら、各消防学校並びに消防大学校における教育体制を整えていくというつもりでおるわけでございます。  ただ、現在私どもは単に救急患者を搬送するというのが消防の任務になっておりますけれども、一番困ります点は医療設備の不備の問題であります。この救急需要も、昔のようにけがとか交通事故といったような救急患者だけではなしに、次第にその範囲が広がっておりまして、いわば外科に期待される救急患者というものは約四割ぐらいで、あと六割はその他の患者になっておりまして、非常に救急患者の対象も広がってきておりますが、それに対応する医療体制というものがなかなかできない。そのために、救急のために出動すると、二時間も三時間も救急隊が出たままになってしまうというような事情があるわけであります。そういう点が私どもにとりましては一番の悩みの種ということでございます。
  239. 折小野良一

    ○折小野委員 私どもそういう面をいろいろ聞きあるいは報道で見、いたすわけでございますが、少なくとも現段階におきましてはそういう医療体制を整備するということ、これが当面最も望ましい方向である、こういうふうに考えられるわけでございます。もちろんこの医療体制の整備の中にはいろいろございますし、また救急医療の態様からいたしまして、専門医を確保するというような問題等につきましては、相当の期間も、またいろいろな制度の整備も必要である、こういうような問題等もあるわけでございますが、政府においては、当然これは厚生省が担当してやっておられるわけでございますが、おいでいただいてますね。——厚生省におきまして、救急医療体制の整備、これに関連する行政諸施策、こういう面から、現在の実態、問題点あるいは現在とろうといたしております対策、そういう面の概要をひとつお知らせいただきたいと思います。
  240. 金田一郎

    ○金田説明員 救急医療対策につきましては、まず第一に救急医療施設の体系的整備、第二に専門医師の養成確保を二つの重点項目といたしまして、対策を講じておるわけでございます。  まず、施設の整備につきましては、主として初期治療を担当いたします救急告示医療機関、全国で約四千七百の公私医療機関に委託しておるわけでございますが、この救急告示医療機関の普及につとめますとともに、救急告示医療機関の後方医療機関としまして、高度の診療機態を持つ救急医療センターの整備をはかるなどの諸施策を行なっております。  また、専門医師の確保につきましては、まずただいま申し上げました救急告示病院、診療所の医師の研修は毎年実施いたしておりますが、四十七年度におきましては、都道府県に委託いたしまして約一万五千七百人の研修を実施いたしております。また後方機関である救急医療センターの医師につきましては、専門医である脳神経外科あるいは麻酔科の医師を確保するため、四十七年度におきましては百九十三名の専門医を養成いたしております。これは約三カ月間の講習を実施いたしておるわけでございます。  なお、先生ただいまおっしゃいましたように、いろいろ救急医療対策につきましても、外科部門のみならず内科的な部門につきましても問題がございまして、特に最近都市部におきましては内科的患者が過半数を占めておるわけでございます。そこで、四十九年度から新たに休日、夜間診療所というものを設けることにいたしました。これは国の補助制度としてでございますが、従来からすでに三十カ所ばかり各地にあるわけでございますが、ただいま私どもが予定しておりますのは、人口十万程度以上の都市部におきまして、地元の開業医師の協力も得まして、休日、夜間診療所というものを設けまして、これに対して建物、設備、器材それから運営費の一部につきまして補助をしようということを計画いたしております。個所数は約七十カ所の予定でございます。こういったことによりまして、内科的な患者はこの休日、夜間診療所に参ることによりまして、救急医療センターに直ちに送り込まれるということがないようにしたいというように考えておるわけでございます。
  241. 折小野良一

    ○折小野委員 今日の実情からいたしますと、いろいろな施策をできるだけ早く十分に講じていただくことが必要なんでございます。いまのお話でもいろいろな施策を講ずるようにしておられますし、またこれからもそれを整備しておいでになると思うのでございますが、現在の救急医療体制が整備できるというのは、いまの進行度合いからして大体いつの時期というふうに考えてよろしいですか。
  242. 金田一郎

    ○金田説明員 私ども、救急医療センター、外科的な部門につきましては、整備計画全体の数は二百四十五カ所の救急医療センター整備を現在考えておるわけでございますが、これは四十八年度からさらに五カ年計画等をもってというように考えております。これは私ども厚生省としての腹づもりでございます。それから、ただいま申し上げました休日、夜間診療所につきましては、四十九年度から三年計画で都市部に整備することを計画いたしております。
  243. 折小野良一

    ○折小野委員 こう言っている間にもあちこちで交通事故があったり、あるいはその他の救急患者というものが出ておるわけでございまして、一刻も早く整備していただきたい、そして救急医療の万全を期すべきであろう、こういうふうに考えます。ひとつ厚生省におきましても、この面につきましては積極的に施策を講じていただいて、五年というところは三年内にやっていく、こういうような努力も払っていただきたいと思いますし、また特に消防の救急体制との連絡協調、こういう面をひとつうまくやっていただきたい。これは中央だけじゃないのです。現地においていろいろ問題があるのです。せっかく消防の救急車が運んで行ってもお医者さんが起きてくれないとか、あるいは休んでおるとか、そういうようなことで患者をかかえてはらはらしながら回って歩かなければならない、こういうようなことがしょっちゅう問題になってまいっております。そういうような面からして、ひとつ厚生省は厚生省の立場で今後一そうの努力をお願いいたしておきます。  ところで、消防庁でございますが、現在救急隊の編成が進んでおるようでございます。しかしこれも現状から見ますと、全国に整備されるというのには相当時間がかかるのじゃなかろうかというふうに考えますが、こういうような面につきましてもっと消防自体で一つの画期的な制度をつくっていく、こういう面についての何かお考えはございませんか。たとえば、地方自治の関係におきまして僻地医療という問題が出まして、結局自治医大というものをつくるということになってまいりました。かつて自衛隊のお医者が確保できないというような問題が非常に大きな問題であったわけでございますが、自衛隊の中に自衛隊の関係の医科大学というものを設置するというようなことになってまいりました。消防の担当いたしております救急医療関係につきまして、いまの救急隊その他を整備していく上において技術的な教育訓練の場、そういうものをつくっていく、こういうようなお考えはございませんか。
  244. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 現在救急隊を持っている町村も、人口的に見ますならば大体九〇%をカバーするような状況になってきております。そういう意味では、消防自体の救急体制というものは大体整備されてきているというふうに考えられるわけでありますが、あとの問題としましては、先ほど申しましたように、救急需要の増加に対応して救急隊の編成の増加をはかっていくということになりますけれども、先ほどいろいろ御指摘ございましたように、地域医療の体制というものが整わないためにこの救急の業務が円滑に進められない。この点につきましては、できる限り、地域の病院あるいは開業医等の間の連絡はそれぞれの市町村が常時連絡をとりながら実施をしているわけでありますけれども、こうした地域医療の整備の問題ということは、やはり地方団体にとりまして、単に救急だけの問題ではなしに、地方団体全体の問題として、私ども地方の意見を入れながら検討をしてきたところでございますし、またできるものをそれぞれやったわけでございますけれども、やはりこうした地域医療体制の整備というものには相当な時間がかかってまいります。そういう意味におきましては、なかなか私どもも思うように仕事が進まないという点につきましてたいへん歯がゆく思っておるわけでありますけれども、いま私どもと厚生省のほうにおきまして救急医療システム研究会といったようなものをつくりながら、それぞれの今後の救急医療システムについての検討も厚生省を中心にして進められているところでございますし、私どももできる限りこうした救急体制がすみやかにとられるということを期待しておるわけでございます。
  245. 折小野良一

    ○折小野委員 基本的には救急医療体制という形におきまして早急に整備することが望ましいわけでございますが、その間のつなぎという面もございますし、またその救急患者の対応その他からいたしまして、やはりある程度の応急措置というものが搬送業務とあわせてできるということが望ましいんじゃないかと思います。しかしそれもまた、人命に関係することでございますので、技術的にあるいは知識の面からもやはり一定の対策というものがなければ、直ちにしろうとがそれをやるというわけにもまいりませんでしょう。こういうような面につきまして整備をしていただいて、少しでも救急医療というものの実があがりますように、こういうような対策を早急にやっていただくことが大切なことじゃなかろうかというふうに考えます。こういう点につきましては、ただいまお話しのように進められておるそうでございますが、さらに一そうひとつ十分な検討をしていただき、またそれを具体的な施策の面に早急に生かしていただきますようにお願いをいたしておきたいと思います。厚生省の方はけっこうです。  次は、これもいただきました資料で、「四十八年度中の火災の概況」を見てみますと、林野火災の件数が非常に多くなっております。これは先ほど小濱先生の質問がございましたので、その面につきましては省略をいたしまして、関連をいたしまして、大体林野火災が発生をいたしますのは、現在わが国でいいますならばいわゆる過疎地域でございます。過疎地域における消防力の確保というのが今日一つの重要な問題になってまいっておるわけでございまして、消防庁でもこれに対処するために、一部事務組合による消防の常備化、こういう面を進めていただいておるわけでございますが、はたして常備化だけがこれらの地域、特に林野火災等を考えました場合に十分な対策であろうかということを、私どもかねて疑問に感ずるわけでございます。  と申しますのが、まあ飛行艇のお話とかあるいはことしから特別な消火資機材の配付とか、こういうような対策をお示しいただいたわけでございますが、現実の林野火災あるいは水防、そういう面を考えてみますと、やはり消防団員の数というものが、非常にこういう地域の消防にとっては大切なことであるというふうに考えております。したがって、常備化を進めるということはけっこうでございますが、それによって消防団をなくしていく、あるいは現実に消防団員の確保というのは非常に困難にはなってきておりますが、それを一そう軽視をしていくというようなことでは、過疎地域の消防というのはやはり今後多く問題を残していくんじゃなかろうかというふうに考えます。したがって、特に過疎地域においてでございますが、消防の常備化とそれから今後それらの地域における消防団のあり方、こういう面についてのひとつ基本的なお考えをお聞きしておきたいと思います。
  246. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 消防団員が人口の流出等によって非常に減少してきているという点は、私どもたいへん心配にたえないところでございまして、現在常備化によりましてこの消防力というものを確保するという体制をとっておるわけでありますけれども、消防に期待されますものは、火災だけではなしに、ただいま御指摘のような水防その他、あらゆる災害に際しまして消防に期待されるところが大きいわけでございます。そういう意味におきまして、過疎地域に限られた人員の常備の消防職員だけを配置しておいて防災体制が完全かということになりますと、やはり従来のような消防団というものに大きく期待をせざるを得ない。私どもは、常備化の進捗にかかわらず、やはりその地域社会を自分たちの手で守っていくというための消防団の組織というものは当然に必要であるというふうに考えるわけでございまして、そういう意味で消防団員の数を確保していくという点につきましては、あらゆる方策をとりまして考えていきたいというふうに思っておるわけであります。そうした意味で、いろいろな団員の処遇の改善その他につきまして努力を傾けていきたいというふうに思っておるわけであります。  こうした消防団の確保の問題は、実は過疎地域おけではなしに、むしろ現在大都市では次第に消防団というものは姿を消していっているのが事実でございますけれども、こうした大都市地域におきましても、たとえば先ほど話題になりましたような大地震対策というような場合には、現在の大都市の消防力といえども大都市に大地震が起きました場合の火災対策には不十分であります。やはりその地域を自分たちの手で守っていくという組織は、常備的な消防がいかに充実されましても必要である、こういう基本的な考え方に立ちまして消防団というものは考えていく必要があるというふうに思っております。
  247. 折小野良一

    ○折小野委員 その点をひとつ基本的にはっきりとさしていただいて、そしてそれは末端にまで十分方針を明確に示しておく必要があるんじゃなかろうかと思います。と申しますのは、常備消防は消防団にかわるものだ、こういう考え方が一般にございます。したがって、常備消防を強化していく、その反面に消防団を削っていく、また団員自身も、常備消防ができてくればわれわれの出番はもうないんだというような気持ちにだんだんなってくる、こういうような傾向が多々ございます。いろいろな情勢からいたしまして、ただいま長官お話しのような面が多分にあるわけでございますし、常備消防ももちろん拡充することが必要であると同時に、非常の場合に消防団に期待するところもまた大きい、こういう実情からいたしますと、どちらも必要なんだということを十分認識をさせるということ、特に現地におきましてそれぞれの関係者がそういう十分な認識の上に立って行動をするということ、これは非常に大切なことだというふうに考えます。そういう点につきましては、ただいまおっしゃった長官の御趣旨、必ずしも末端に浸透はしていない、こういうふうに考えますので、そういう面の対策をお伺いいたします。
  248. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 私どもがただいま「消防力の基準」といったようなものの改定の作業を行なっているわけでありますけれども、こうした作業の中におきましても、当然に消防団というものの今後の存在ということも前提にし、消防団にこれからどういう仕事を期待していくかということも明確にさせながら、常備消防、消防職員と消防団員というもののそれぞれの役割りというものを明確にし、そして消防団員について、常設消防ができましても、消防団員としての使命というものをはっきり認識をさせながら、消防団の育成に今後とも力を入れてやっていきたいというふうに考えております。
  249. 折小野良一

    ○折小野委員 消防力と申しました場合に、ただいま申し上げました消防の人的な面がございますとともに、また機材その他の物的な面もあるわけでございます。両方合わせていわゆる「消防力の基準」ということで三十六年に告示がなされておるわけでございますが、この消防力の基準の達成率は、この基準ができましてからもう十年以上を経過いたしておりますが、今日なお十分な達成は見られておりません。いろいろと資料をいただいておりますが、個々によって違いますけれども、大体平均をいたしますと六〇%そこそこの達成率だというふうに考えられるわけでございます。人情の自然といたしまして、やはり大きな火災があったそのあとには、何とか消防力を強化しなければならない、当局のほうもそういう意向になりますし、また地域の住民といたしましてもそれを期待するということになるわけでございますが、だんだん日がたつにつれてそういう気持ちは薄れてくる、こういうようなことでなかなか消防力の強化というのが思うにまかせないというのが特に市町村の実態であろうと思っております。  そういう面からいたしますと、やはり一定の目標を定めて、強力に、いろいろな条件を整えてそれを推進するということでなければなかなか目標の完遂ということはできないのじゃなかろうか。現在持っておりますのを更新していくということはわりあいできやすいのです。しかしこれを強化するということになってまいりますと、特に財政的に苦しい市町村におきましては、やはり当面市民が期待をするいろいろな施設、そういう面に目が奪われまして、基本的なものになかなか力を入れにくい、こういうような実態がございます。したがって、こういうものを十分に充実をする、あるいは一定の目標を達成するということのためには、はっきりした達成の目途を示すということ、これが一番大切なことじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。ただいまこの基準を改定をしたいというようなお話もございました。何らかの機会にひとつ一定基準をぜひ達成をして、そうして人命、財産の保護の万全を期すべきであろうというふうに考えますが、いかがでございますか。
  250. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 現行の「消防力の基準」に対して、現在の市町村における消防力の充足状況が非常に低いということはもう御指摘のとおりでございます。  これはやはり一つの原因は、「消防力の基準」を作成いたしましたと同時にその整備計画というものが並行しなかった、むしろ整備計画があとから出てきたというようなことで、その辺の目標設定の時期がややズレがあったという点に問題があったのではないだろうかというような感じがいたします。その間にいろいろ市町村における条件が変わってきているということもございまして、やはりこの際消防力の基準というものを最近の都市の実態に合わせたものに直していく。それと同時に整備計画を発足させるというような体制を組んでいく必要があるであろう。  それからまた同時に、この消防力は、たとえば普通ポンプ車一台整備いたしますというと、今後の週休二日制といったようなことを考えますと、それだけで十数名の人員の充足が要るということになってまいりますので、そうした人員の充足計画も同時にこれはあわせて考えなければならないわけでございます。この点は、地方財政計画等の策定にあたりましても、十分先導的な財政計画上の役割りも果たせるような措置もあわせて講じながら、こうした消防力の基準につきましては、各市町村における充足計画も同時につくらせて、充足をはかっていくということを考えていきたいと思っております。
  251. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまこの基準を改定する御意見がございましたが、資料を見せていただきますと、都市消防問題研究会の中間報告でも、基準現実に即さなくなってきておる、都市の実態に即した消防力の基準に改定をする必要がある、こういうような報告が出ておるようでございます。もちろん、この基準ができてからもう十年以上経過いたしておりますので、その間にいろいろと変化があったろうかと思いますし、それに応じて基準の改定を行なうことは、これはもう当然なことだというふうに考えますが、この改定の内容といたしまして、機材その他そういう面の改定ということも考えておいでになるわけでございますか。すなわち、その機材の内容あるいはその数量ですね。
  252. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 当然に機材の内容につきましても改定をしていく必要があるだろうというふうに考えております。  それからまたそれに要する人員の問題にいたしましても、たとえば普通ポンプ車七名という基準にいたしましても、最近は携帯無線というような装備ができてまいりますというと、それだけの連絡人員が要らなくなってまいります。そういう意味では現実に即した五人の人員で十分操作ができるわけでありますから、そういう面での、最近の技術なり装備なりの進歩に伴う余剰人員というものは必要に応じて削っていく。そうしてまた必要な人員の増加ということは当然にこれは考えていく。こういうことで全部全般的に見直しを行なって、現実に即した消防力の基準に改定したい、こういうつもりでございます。
  253. 折小野良一

    ○折小野委員 そういう改定に際しまして、ひとつお願いをいたしておきたいと思うのであります。と申しますのは、専門的に、あるいは学問的にいろいろと研究していただいて、そうしてそれを基礎にして基準をつくっていただく、これも非常にけっこうなことだと思います。またそうしていただかなければなりませんが、と同時に、地方の実態というものを十分ひとつ御調査いただきたいと思います。たとえばポンプ自動車に基準では七名ということになっておりますが、それこそすでにもう何年も前からほとんどの市町村では五名ないし五名以下で運営しているというのが実態なんです。それは、ただ人員が少ないからというだけでなしに、それで十分なんだという実戦上の体験というのも基礎になっております。そういうような点はひとつ十分実態を調査していただき、またそういう面を広く聞いていただきまして、そうして現実に即した改定基準をつくっていただくようにお願いをいたしておきたいと思います。  それから次には、これもいただきました資料でございますが、おもな防火対象物の「消防用設備等設置状況」の資料を見ますと、相当数の未設置防火対象物の数字があがっております。この未設置の中には、今回法律改正をいたしまして、さかのぼって設置させようというふうにいたしておりますいわゆる既存不適格も含んでおるわけでございますが、しかしそれが全部ではないわけでございます。ここの数字で拝見いたしますと、半分ぐらいはそういうことですが、あとの半分ぐらいは当然いままでの法律でもやっていかなければならない、しかしそれが未設置のまま今日に及んでおる、こういうような数字であるというふうに考えるわけでございますが、この既存不適格というものを除きました未設置分、これはどうして今日これだけの数字がなお未設置のまま残されてきたのか、その理由をひとつ御答弁願いたいと思います。
  254. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 この未設置の中には、調査時点におきまして違反の事実が指摘をされ、措置命令が出されておって、目下工事中であるというようなものも含まれておるわけでございます。ただ、こうした違反の建物が相当数あるという点は、消防機関が査察をいたしまして、その違反事実を警告しながら、警告された事項が確実に是正されているかどうかという、あとからの改善措置の点検が十分行なわれておらなかったために、警告のしっぱなしになっておったというような、消防当局自身の手の及ばなかったことも相当数あるというふうに考えられるわけであります。この点を大洋デパートの火災に際しましても私ども痛感をいたしたわけでございまして、昨年の暮れから本年の二月ごろにかけまして、特に百貨店、大型店舗、雑居ビルを中心にいたしまして、全面的な洗い直しといいますか、査察を行なわせたわけでございます。その結果、違反の状態を分類いたしまして、それぞれ、即時是正できますものは是正させると同時に、ある程度工事期間を必要とするものにつきましては、期間を限ってその是正措置をとらせるという体制を強く指導いたしたわけであります。おそらく五月一ぱいくらいでその是正された結果の数字が出てくるかと思いますけれども、今回の調査にあたりましてはその点の是正措置まで含めての調査をいたしておりますので、相当数是正が進むものである、ほとんど是正されるであろうということを現在期待しておるところでございます。
  255. 折小野良一

    ○折小野委員 これは申し上げるまでもなく、法治国家におきまして法律は守られなければなりません。そしてまた行政当局は、それが守られていない、義務が履行されていないということでありますならば、これを守らせなければならないということだろうと思います。ここの数字は去年の六月一日現在の数字でございますから、おそらく今日まで、ただいま長官がおっしゃったような経過の中にあるものもあろうかと思っておりますが、しかし、このたび法律を改正して過去にさかのぼって実施をさせようというふうにいたしております以上は、少なくもいままでの法律が適用されて、それによってやらなければならなかった、これはもう完全にやらせるべきだというふうに考えております。法律の施行にあたりましていろいろなむずかしい問題もあろうかと思っておりますが、しかし、少なくも消防上の設置の義務というものは、人命その他に非常に大きな関係があるからこそそれをやらせなければならないということでございますので、この点はぜひひとつお願いをいたしたい。特に今回の改正以前の法において当然やらなければならなかった、すなわち既存不適格というものを除いた未設置、こういうところにつきましては、新しい法が施行されるまでに確実に実施をさせる、あるいは実施を確認するということができますか、どうですか。
  256. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 そういう方向で措置をいたしたい、この法律が施行されるまでにいままでの違反の状態というものはなくしていきたい、こういうことで昨年の暮れから特に各市町村を督励いたしまして是正措置の命令等も出させておるわけでございます。できる限り、この法律が施行になるまでの間にそういう措置の是正をさせ、是正したあともう一ぺん見直させて調査をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  257. 折小野良一

    ○折小野委員 今度の法律の改正は、法律の原則からいいますとむしろ例外的な措置だというふうに考えます。当然、法律はその施行のときから適用されるのが原則でございますが、人命に関係する重大な問題であるからということでさかのぼろうというふうにいたしておるわけでございまして、これはあくまでも実施をさせなければ何にもならないわけでございます。  この点につきましては、先ほどの質問にもいろいろございました。確かに、そういうものをいまから設置するということは、それぞれの施設の所有者にとりましては経済的に非常に困難な問題もあろうと思っております。しかしそれでもなおかつやらせなければならないということで、消防庁といたしましても融資あるいは税における対策というような面も考慮しておられるようでございますが、こういう面が今日まではたして十分行なわれたかどうか。いただいております資料によりますと、そういうものに対する融資の方法その他たくさん出ております。それぞれの県で融資の方法を講じておるというようなところ等もございますし、今後もそういうような方法を推進されるであろうと思いますが、これまでもなかなかそれができなかった。あるいは最近は特に資金の規制というような面もございまして、金の面でそれができないというようなことになってまいりますとなかなか実現がむずかしい。したがってまた再び大洋デパートのようなああいう例が起こらないとも限らないということになってまいります。やる以上はこれは確実にやってまいらなければなりませんが、それを保証するための対策、こういう面について十分な自信をお持ちでございましょうか、どうですか。
  258. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 これまでも資金的には、消防用設備について、国の機関でありますところの中小企業金融公庫なり環衛公庫なりあるいは医療公庫なりにおきまして特別な融資の用意をしておったわけであります。ただ、いままでは残念ながら、こうした安全に対する投資というものについては資金需要が非常に少なかった。これまでそれぞれの金庫にお願いをいたしまして、私どもが用意をしておいてもらった融資ワクというものは十分消化できなかった、こういうような実態がございます。そういう意味では、今後の資金需要というものを私どもなりに想定はいたしておりますけれども、それぞれの政府関係機関の資金ワク等から見まして、この三年、五年の期間内においては資金的に不足をするということは私ども絶対にないであろうということを考えております。
  259. 折小野良一

    ○折小野委員 ぜひ、あらゆる方法を講じまして、確実にこれが実現をできますように、この法律が通りましたあとからもひとつ十分な御配慮をお願いをいたしたいと思います。  それから、火災ということになってまいりますと、いろいろな原因が複合してあるわけでございますが、特にデパート等の不特定多数の人の集まる場所、そういうところにおきましては、そういう施設の所有者なりあるいは経営者と申しますかあるいは責任者、こういうような立場の人の責任というものをもっとはっきり出して、そしてこれに対する強力な指導をすることが必要じゃなかろうかというふうに考えます。  たとえばデパート等で、通常あのデパートの店内では喫煙をお断わりしますということになっておるようでございますし、別に喫煙室をつくって、そうしてそこで喫煙をしていただくようにということでございますが、やはりああいうお店の経営者といたしましてはお客さんが一番大切なわけなんでして、お客さんの意向にさからうような行動は現実にはなかなかとりにくい、こういうようなことがございます。したがって、こういう面につきましてはやはり制度的にそういう人たちに義務づける、そしてまた一般の人も十分にその立場を認める、こういうようなことにならなければ、ああいうようなところにおける不測の損害というものを防ぐことはなかなか困難じゃなかろうかと思います。  それから、現在の制度で防火管理者という制度があるわけでございますが、たとえばデパートなんかの例をとってみますと、やはり各階の職場にそれぞれそういう責任者がおって、そして非常の場合の適切な措置、特に誘導等をやっていくということでなければ、その企業にだれか防火責任者がおるのだ、その人はたとえ十分知識を持ちあるいは意欲を持っておったにしましても、その配置が適当でなければ十分その効果をあげることはできない。それからまた防火訓練、こういうようなものにいたしましても、やはりある程度これを義務づける。特に、それはただ単に防火管理者に義務づけるということでなしに、いわばお店の責任者がその気持ちになって、そしてそれらの人たちが積極的にそういうものをやらすということでなければ現実にはなかなかできない、こういうようなことがあるわけでございます。  今回の改正法の中に、いわゆる権原者に対する責任というものがある程度打ち出されてまいっておりますが、こういう面につきましては、特に不特定多数の人の密集する場所におきましてはより一そうその責任の強化と指導というものをやっていく必要があるのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、今後の対策も含めてひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
  260. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 特定防火対象物、特に百貨店等の不特定多数の人が多く利用いたしますものにおける防火体制というものは、火気の使用等に関しましての規定は、それぞれの市町村における火災予防条例の規定によりまして必要な規定が設けられ、あるいは通路等の幅員等につきましてもそれぞれの市町村における火災予防条例が規定をするということになっておるわけでございまして、現在も、火気の使用場所あるいはまた火気を使用して物を売るという場所におきましては一定の防火区画を必要とするというようなことで、相当こまかい火災予防条例の規定が設けられているのが実態でございます。そうした規定を、百貨店等を利用する人たちが十分に守っていただく、百貨店のきめたところを十分守っていただくということも、それはそれぞれの経営者自身におきましても、やはりお客全体の安全を考えてこれをお客に守っていただくということにつとめなければならないというふうに私どもは考えております。  それからまた、防火管理体制につきましては、今回の規定におきまして、経営管理者、経営責任者あるいは所有者等につきまして防火管理の責任も明確にしたわけでありますけれども、防火管理者単独にすべての仕事をさせるということも、対象物の大きさ等によりましては非常に無理な場合もございますし、特にデパート等におきましては各階に副管理者的なものを設置をさせて、それぞれの階の責任をとらせるというような方式も当然に必要であろうというふうに考えております。これはいま、そういう防火対象物における消防計画というものを各防火対象物ごとにつくらせることになっておりますけれども、そうした消防計画の中に管理体制というものを明確に規定をさせる、そして各人の役割りというものをその消防計画の中に明確にさせておくということをしておるわけでありまして、十分に計画をつくらせ、そしてその計画に基づいた訓練も何回か実施をさせて、それぞれの従業員の役割りというものを認識をさせるという必要があるだろうと思います。そういう意味での防火管理体制について、十分これからも指導を強化していきたいというふうに考えております。
  261. 折小野良一

    ○折小野委員 最後に念のために一つお聞きいたしておきたいと思います。  先ほど柴田先生の質問の中にも、組合消防の職員のスト権その他の問題について御質問がありましたが、一般的に消防職員につきまして、先ほど公務員制度審議会の答申もございました。また、近く、今後二カ年をめどにこういう問題についてのケリをつけたいという閣議決定もあったように聞いておるわけでございますが、この消防職員の労働基本権の問題について、特にスト権の問題でございますが、それにつきまして現場の実態をつかんでおられるか。また、今後消防という業務を推進する、その立場におられる消防庁長官として、これに対してどういうふうなお考えをお持ちになるか。もちろんこれは政府におきましては総理府が中心になってやられることではございますが、しかし、消防の業務というのは一般の公務員の業務とはまた違った特殊性を持っております。そういう面から、長官のその立場における御意見をひとつ参考までにお聞かせをいただきたいと思います。
  262. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 公務員制度審議会の答申につきましては十分御承知でございますし、またそれに対する政府の態度もすでに出されているところでございますけれども、私どもが消防の仕事を担当いたしまして、この仕事は消防という、要するに災害が発生いたしました場合には一刻の猶予も許されないという業務の特殊性がございます。さらにはまた、消防行政の業務の性格というものが、いわゆる警察作用の一部であり、いわば保安警察の一部を担当しておるという業務の特殊性もございます。それからまた、最近の労働組合等の実態というようなものから考えます場合に、現在の、消防職員に対する団結権あるいは争議権というものにつきましては禁止をされております現行制度は、やはり維持されるべきものであるというふうに考えております。
  263. 折小野良一

    ○折小野委員 終わります。ありがとうございました。
  264. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、来たる十六日火曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時一分散会