○佐々木
政府委員 東京におきまして震度五なりあるいは震度六程度の地震が発生した場合に、その被害の状況がどういう状況になるかということにつきましては、実はまだ公式に発表されたものがほとんどないわけでございまして、いろいろな学者の方々の御意見があるようでございますけれ
ども、公式なものに準ずるものとしまして、昭和四十五年の三月に消防審議会が「
東京地方(関東
地方南部)における大震火災対策に関する答申」で一応被害想定をいたしております。
この答申によります想定は、冬の季節に、夕食時、風速三・五メートル、これが
東京における年間平均風速でありますけれ
ども、風速三・五メートルの条件のもとに、震度六程度の地震が
東京に発生した場合の被害は、二十三区内において七百三十二件の火災が発生をし、そのうち自然鎮火するものあるいはぼやのうちに消火できるものを除くと二百九十九件が延焼火災になる。さらに消防隊の活動によって防御できるものを除くと百四十七件が拡大火災となって、十時間後には焼失面積が五十平方キロメートル、
東京の二十三区の約九%が十時間後には燃えてしまう。そして最終的には
相当大きな焼失面積が予想されるというようなことがいわれておるわけであります。
これに対しまして、この被害状況の想定はまだ
相当低いのじゃないかというような御意見もございますし、さらには、この答申後に出ました十勝沖地震の結果から見まして、特に冬季間におきましては石油
ストーブの使用、それから青森県の十和田市における石油
ストーブからの火災発生の状況というものから見ますというと、火災発生件数については
相当修正する必要があるというようなことで、現在
東京都の防災
会議を
中心にいたしまして、この被害想定につきましてはいま再点検を行なっているところでございます。おそらく火災の想定が、件数にいたしましてももっと大きいものになるのではないだろうかというような感じがいたしているわけであります。
これに対しまして、大震火災対策としてどういう対策をとっているかということになりますと、実はこうした大震火災対策というものは、消防庁だけでやれます分野というものは非常に限局されておるというふうに考えられるわけでございまして、実は
政府としまして、中央防災
会議におきまして昭和四十六年に決定をいたしました「大都市震災対策推進要綱」に基づきましていま大地震の対策を進めておるわけでございます。基本的には都市計画、いわば防災都市づくりというものがなければ大地震に対しまして万全な備えはできないのではないかということでございまして、消防といたしましては、現在の都市の状況を見て、現在時点において大地震が発生いたしました場合のいわば応急的な対策をとらざるを得ない、こういうことを考えておるわけであります。したがいまして、まず、できる限り火災発生を押えていく、そして火災の発生に対してはできるだけの消防対策をとってまいりますけれ
ども、どうしても消防力で防ぎ切れない面がある。これは同時多発の火災になるわけでありますから、どうしても火災をすべて押え切れるわけじゃございません。
そこで、やはり住民を安全に避難させるということを考えなければならないわけでございます。そういう避難対策といたしまして、安全な避難路を確保する。そのために、密集市街地の主要な避難路を
中心にいたしまして、耐震性の貯水槽、さらにこの貯水槽に小型動力ポンプを設置いたしまして避難路を確保していく。そしてまた避難空地に対しましても同じような施設を設けまして、避難空地が関東大地震のときの被服廠
あとのような場所にならないようにするための安全な避難空地を確保する、こういう対策をとっていくということを、まず消防としての震災対策の重点に置いておるわけであります。
これまで、昭和四十七年、四十八年の二年度にわたりまして、
東京の江東地区、荒川地区あるいは大田地区、それから大阪市の西部地区にこれらの貯水槽並びに動力ポンプの整備を進めておりますが、さらに昭和四十九年度におきましては、この貯水槽の設置、小型動力ポンプの設置を
相当台数進めると同時に、都市につきましても名古屋市あるいは横浜市、川崎市というふうに整備を進めていくということを考えますと同時に、さらに、最近地震が予知されておるというか、だいぶ危険度が高まってきているというような、たとえば遠州灘の地域における中都市におきましても防災対策というものについてこれを進めていくことについて検討を進めておるわけでございます。
そのほか、地震の際における一般住民の指導の手引きというようなことで、そうした手引き書の作成と同時に、昭和四十九年度におきましては、テレビ、ラジオを通じて、そうした地震対策あるいは地震の際における火災予防というようなものを
国民に直接に知らしていくという方策を考えておるわけでございます。