○多田
委員 私、じかに五井工場に行ってあそこの幹部の方に伺ったのですが、確かに旧式の
消防車を含めて二台ございまして、そこで私は、そこの
防火体制、安全体制はどうなっているのかということを伺ったのです。そうしますとこういうことになっているのです。これはよく覚えておいてください。というのは、このコンビナートの中の
企業の体制こそが問題なんですよ。それを私は
消防庁長官、ほんとうに知っておってもらいたいと思いますよ。きれいごとではなくして、その中身がどうなっているかということです。
たとえばチッソの五井工場の場合、安全管理室というのがあるのですね。これはスタッフ的な組織です。ところが、この安全管理室は
消防だけかと思ったら、そうじゃないのです。ここは十五、六名おりまして、安全のほかに衛生もやっている。そうして安全関係は、やる人はおそらくこの半分以下だろうかと思う。しかも私が驚きましたのは、昨年の事故の前は、そこを管理監督する部門は環境安全部というのですよ。七、八名だったと思う。そして、県も言っているんだけれ
ども、ここは中の
消防の問題よりも対役所の窓口でございまして……こう言っている。事故が起きるわけですよ。このチッソの事故が起きたあとに、県の「保安対策の確保について」という二十九項目の指示が
企業に出されているのです。それから市の
消防本部からも二十数項目の指示が出ているのです。それで初めてここでは、かろうじていま言った十五名ぐらいのスタッフ的な組織である安全管理室という
一つの部門をつくった。私はそこの室長にも会ってまいりました。そのほかに自衛
消防隊がある。私は
消防隊の運転手にも会いたかったけれ
ども、会えなかった。事故の前まで
消防車の運転手はほんとうに専任でやっていたのかと聞きましたら、
消防の担当の人がにやにや笑っているのです。兼任なんです。
火事はいつでもあるわけじゃないから、ないときは別な仕事をさせられているのです。
こういうところまでほんとうのメスを入れなければ、なぜ化学工場で事故が絶えないのか、あるいはその事故を未然に防止できないのかというほんとうのメスは入れられないのじゃないか、私はこういうように思うのです。ですから、あの大事故を起こす化学工場、コンビナートの各工場の
防火体制というものを、ただ会社の幹部からの報告だけで判断しないように。私が行ったら図面を書いてくれました。非常にきれいな図面です。文句の言えないような図面でありますけれ
ども、一体それに魂が入っているかどうかの問題なのです。
そこで次に伺いたいのですが、確かにそういう体制を
企業はつくってきているのですけれ
ども、さきに、
全国消防長会コンビナート特別
委員会の井上
委員長ですか、こう言ってますね、「
装置に何らかの異常が認められた場合は、操業をストップして点検に当たることが大事」と言っているのです。私はそのとおりだと思う。ところがあの徳山工場の場合にも、事前にこれは問題があった。
企業の中でそういうスタッフ部門や自衛
消防組織をつくっているけれ
ども、あぶない、事故が起きそうだというときにそれをストップできる権限が一体与えられているのだろうか。私はその点でこまかな事情を聞こうと思って、書類を出しなさいと言ったのです。出したのはこれ一枚きりなのです。何のことはない、組織図ですよ。「五井工場分掌事項」と書いて、各室と部を書いて、そして「安全管理室に次の事項を分掌させる。(一)安全に関する事項 (二)衛生に関する事項」私は衛生に関する事項を聞きにいったのじゃないのです。この
程度のものしか私に出さないのです。これは国
会議員が行ってそうなんですから、
消防署が行ってほんとうに実態がつかめるのだろうか、こういう疑問が私、わいてきたわけです。
そこで次に、これはもう時間も来ましたから、伺いますが、非常に複雑化した石油コンビナートに対する安全管理をチェックする機能、いまどうなっているでしょうか。これは特に通産、労働、
消防に関係することですが、通産省の場合は、これは県に委任して高圧ガス取締法がありますね。それから労働省の場合は労働
基準監督局、これが労働安全衛生法に基づいてやっている。それから
消防庁の場合は、これは自治体
消防が
消防法に基づいてやっているわけなんですね。ところが、これはもう数年前の国会でも論議になったのだけれ
ども、
消防法でチェックできる危険物は、これは常温による液状であるものに限られる。そして沸点がマイナス一〇三・八度Cのエチレンは高圧ガス取締法による通産省の管轄で、
消防の
対象外なんです。さらにまた、ボイラー
災害などのチェックは、これは労働安全衛生法に基づいて労働省の所轄事項、こういったぐあいに、
一つの工場の狭い職場の中でも防災体制はばらばらなんです。
これは三十九年六月十六日の衆議院のこの
地方行政委員会で
消防の問題特にコンビナートの問題をやったときも、これは門司
委員がそのことを
指摘しているのです。つまりある工程までは高圧ガス、だからこれは通産省の管轄なのです。その先が低圧だ、第二の工程は。そして「危険防止に対する一貫性というものはほとんどない」こう言っているし、それから同じ三十九年六月二十六日のこの
地方行政委員会では、ここでは「科学
消防対策強化に関する件」というのが決議になっているのですよ。この決議の中の趣旨説明でこう述べていますね。「また危険物関係法規は、
消防法、高圧ガス取締法、火薬類取締法等に分かれており、
災害防止の体制の一貫性に欠けている面があるのであります。したがいまして
災害予防の適正をはかるため、これらの点を科学的に究明して、法令に所要の
改正を行なう必要があると認められます。」これは提案者の田川
委員がやっているのです。
こういう問題で、
消防庁としてこの一貫性の問題に対してどういう
措置や対策をとられているのか。またこういう特別決議が行なわれていることに対して、法的にどういう
措置をとられてきているのか、伺いたいと思います。