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1974-04-11 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君    理事 村田敬次郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 山本弥之助君       愛野興一郎君    大野 市郎君       片岡 清一君    亀山 孝一君       島田 安夫君    住  栄作君       武藤 嘉文君    井岡 大治君       細谷 治嘉君    多田 光雄君       林  百郎君    小濱 新次君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 町村 金五君  出席政府委員         自治政務次官  古屋  亨君         消防庁長官  佐々木喜久治君         消防庁次長   山田  滋君  委員外出席者         通商産業省立地         公害局保安課長 鎌田 吉郎君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     野原 石松君         建設省住宅局建         築指導課長   佐藤  温君         消防庁安全救急         課長      矢筈野義郎君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     河本 敏夫君   島田 安夫君     江崎 真澄君 同日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     島田 安夫君   河本 敏夫君     愛野興一郎君     ————————————— 四月十日  地方自治法の一部を改正する法律案三谷秀治  君外十名提出衆法第二三号) 同日  地方公務員定年制法制化反対等に関する請願  (荒木宏君紹介)(第四二四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  消防法の一部を改正する法律案内閣提出第七  七号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今度の消防法改正で非常にたくさんの資金が要るわけです。そのために、大都市の大きなところはいいけれども地方都市へいきますと、かなり大きな負担がかかりまして、それをはたして十分に販買の利益をもってカバーできるかどうか、こういうことに対して、地方スーパーであるとかいろんなそういうところはかなりな恐慌を感じているところが非常に多いわけです。これはこの間の自民党の方の質問でかなり明細に討議されておりますけれども、いまの状態で、この間の討議を聞いておりますと、消防庁方々考えているものと、それから現実に業者があれを改装する場合の考え方といいますか、実際の経費といいますか、そういうものの間にかなり大きな差がある、こういうふうな感じを受けるのです。  それで、私はこのままもしこの消防法改正がどんどんどんどん地方に実行されていきますと、おそらく地方スーパーであるとかいろんなああいう店というものはほとんども資金的に行き詰まってしまうのではないか、こういう懸念を持っております。これは消防庁なり当局のほうでもこういう考えを持っておるわけで、スプリンクラーを早くつけなければいけないという予防のほうからの要請が非常にあったけれども、一方では非常に経費がかかるのでなかなかこれに踏み切れなかった。しかし、大洋デパートであるとか、ああいう問題が次から次へと起こってきたので今度ようやく踏み切った、こういうことであろうと思いますけれども、もしこのままで進んでいきますと、地方デパートスーパー、こういうものは、大手が進出していままででも非常に大きな影響を受けているのに、今度はこれの影響でもつて立っていけなくなる。そうしますと、勢いさらに大手デパートであるとかスーパーであるとか、そういうものの傘下にどんどん、どんどん取り入れられて、いわば流通業界というものに非常に大きな影響がある、こういうふうに思うのです。そういう意味からいけば、いまの系列化がどんどん進んで、いわば寡占化が進んでいく、こういうような危険性が非常にあると思うのです。  こういう点に対してかなり配慮していかなければ、いま話しましたように寡占化であるとか、ああいう問題でかなり大きな問題が起きてくると思われますけれども、こういう点について、いわば税制であるとかあるいは融資の面であるとか、いろいろな考え方があるようでありますけれども、この改正法を見てみますと、税制に対する優遇措置というか、こういうのがないようでありますが、税制に対しては何かありませんか。
  4. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 税制の問題につきましては、別途租税特別措置法並びに地方税法規定によりまして特別な措置がとられることになっております。これは、国税におきましては、この消防用設備につきまして三年、五年の期間内に設置したものにつきましては特別償却の制度がとられるということになっておるわけでございます。それから地方税規定におきましては、不動産取得税におきまして消防設備につきましては課税標準から除外をする、こういう方式がとられておるわけでございます。
  5. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 わかりました。  それから、これは三年間で実際にやるようなかっこうになりますけれども、いまのこれを見ておりますと、大体半分ぐらいしか低利の融資対象にしてない、こういうことですけれどもかなりの大きな金額がかかるので、三年でこれをやるということは、非常に資力のあるところならいいけれども地方のほうへ行くとこれはたいへんな負担だと思うのです。この点をもう少し緩和できる方法がないかどうかですね。
  6. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 今回の消防用設備につきましての遡及にあたりましては、第一のグループと第二のグループ、二つに分けまして、三年、五年というふうにしておるわけであります。第一のグループ百貨店地下街複合用途ビル、この三つのグループでございまして、これが最も不特定多数人が出入りし、火災の危険あるいは火災による人命の危険がある、こういうことで、三年間の期間を置きまして設備遡及適用させる、こういうことにいたしております。それから旅館病院等建物につきましては、不特定多数といいましても、これはまたデパートなどとはだいぶ違った様相にございますので、これにつきましては五年間という期間を設けておるわけであります。そしてまた、特に旅館病院というものは常時使用しているという状態にありますので、これは相当計画的に設置をしなければ工事がむずかしいというような事情もございますので、そういう意味で三年のグループと五年のグループに分けたということになるわけでございます。  それから、スプリンクラー遡及適用にあたりましてどれだけの金がかかるかということになりますと、この適用対象になります建物面積は、百貨店からホテル旅館病院等まで含めまして約五百万平米の建物でございます。五百万平米でございますので、これが一平米当たり一万円という計算をいたしますと約五百億の金が要るというふうなことになるわけでございます。一万二千円という計算をいたしますと約六百億の金が要るというようなことになります。そして、その中で面積的に非常に大きいものは病院でございます。それからそれに次ぐものがホテル旅館等でございまして、百貨店複合ビルというものは面積的にはそれほど大きくはない、こういうことでございまして、この面積も六千平米以上の建物、それから複合ビルの場合には三千平米以上の建物ということになりますので、対象は比較的限定されてくるであろうというふうに考えるわけでございます。  そして、これにつきましては、いま中小企業関係の各種の資金、それから本年から新しく開発銀行資金がこうした防災設備につきましての融資を行なう、そして金利につきましても特別な金利を設けるということにいたしておりますので、計画的に設置をされます場合には資金的には大体まかなえるというふうに私ども考えております。  それからまた、開銀等融資にあたりましては、確かに御指摘のように開銀自体からの融資は二分の一融資でございますけれども、これには市中銀行からの協調融資が伴うということになっておりますので、まず資金は、それほど自己資金を必要としないで設置ができるものだというふうに考えておりますし、また各県におきましても、これらの国の政府機関融資のほかに各県の単独融資というものがすでに相当数の県において準備をされておりますので、資金の面につきましては、企業方々にもそれほど負担にならないような形で設置可能ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  7. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 非常にいいようですが、各県の補助の率を見ましてもほとんどたいしたことはないのですね。それからやはり、この間の大野先生の話のようにかなり大きな負担になりますので、なおかつこれを一そう緩和できるような方法があれば、楽にできるような方法があれば、それをひとつ考えるように努力していただきたい。  それはそれでいいのですけれども、中に、劇場だとかああいう平屋建て建物で六千平米以下は除かれる、こういうように書いてありますね。六千平米以下は除かれるのですが、六千平米というと坪にして二千坪ちょっと足らずですね。これはかなり大きなものですけれども、普通の劇場で六千平米以上の平屋建てのあれでひっかかる劇場はありますか。どの程度になっていますか、状態は。
  8. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 私どもの調べでは、いわゆる既存不適格になっております建物劇場というものが全国で二十三ございます。その総延べ面積が十四万三千平方メートルということになっております。
  9. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 具体的に、たとえば東京だとどこの劇場がかかりますか。
  10. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 この調査個票がございますとわかると思いますけれども、現在手持ちがございませんので、また具体的にはその調査基礎資料によりましてお知らせしたいと思います。
  11. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これは二千坪、六千平米というとかなり大きな劇場なんですね、たとえば劇場としましても。この大きなところにスプリンクラーを二万円でつけますと、六千平米ですと一億二千万円ぐらいかかるのですね。ところが、普通のショーなんかやる、芝居をやるああいう劇場と違いまして、ほんとうに映画なんかだけしかやらないような劇場になりますと、いままで非常にあぶないと目されておった映写室は、完全に不燃のフィルムを使いますし、何にも燃えるところがないのですね。しかも入っている人たちというのはもう眠っているわけでもないし、ぴしっとして入っている。こういう状態を見ますと、たとえばぎりぎりの六千平米だとしますと、一億数千万円をかけてスプリンクラーをつけるということは非常に経済価値から見てどうかと思われますね、平家建てあるいは二階建てぐらいのものにそういう膨大な設備をするということは。むしろほかの設備でもってそれを強化して補うようにしたほうが経済的な結果から見ていいのではないか。  それでちょっと聞いたのですけれども、私らが映画を見に行きまして非常に不便に感ずるし、災害的な意味でこれは困るじゃないかなと思われるのは、はねて出てくるときですね。なかなか出てこられない、いすいすの間の通路が狭くて。むしろああいうところをもっと通路を広げてそしてどんどん出てくるようにする。平屋建てだとか、せいぜい中二階か二階程度単独建物であれば、開放口をもっとよけいにしたり通路をもっと広くしたり、あるいはまた火の出たところに直接ホースで水をかけるようにしたり、そういうふうにしたほうがかえって有効じゃないかという気がします。こういう点に関して消防庁と、なお建設省の人がいたらちょっとお聞きしたい。
  12. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 劇場映画館等におけるスプリンクラー設置の問題でございますけれども映画館の場合には、ただいま御指摘のとおり映写室というのはもう完全な防火構造になっております。いま劇場で最も危険な部分は何かといいますと舞台でございます。劇場火災というのは大体舞台から出ているという事例が多うございます。スプリンクラー設備はこの舞台部分設置をしてもらうということを考えておるわけであります。それから、大部分面積を占めております客席の部分は大体吹き抜けで、天井高相当ありますので、これはスプリンクラーをつけましても実際的な効果は期待できないことが多いわけでございます。劇場の場合には、ただいま申し上げましたように最も火災危険の多い舞台部分に限定をしてつけてもらう、こういう考え方でございます。
  13. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 芝居をやるような舞台ですと、大体観客席面積舞台面積とが、狭いところだと同じぐらいあるのですね。小道具を置いたり、火事危険性が非常に多い。ところが映画館なんかですと何もないのですね。そのうしろがすぐ道路なんですよ。こういうようなところですと舞台というものはほとんどないから、事実上はつけなくてもいいような状態になるけれども、そういう場合はどういうふうに考えていますか。
  14. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 通常映画館の場合には平屋建てが多いだろうと思います。平屋建ての場合にはスプリンクラー設置は義務づけておらないわけであります。といいますのは、避難というのが平屋建ての場合には非常に困難性がない。そういう意味で、平屋建て映画館のような場合には遡及適用対象から除外をしておるということになっておるわけでございます。
  15. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 平屋建てと同じような考えで、せいぜい二階ぐらいしかないところがたくさんあるのですよ、中二階がついたり二階がついたりした程度のやつが。たとえば東京でいいますと日比谷映画劇場みたいなやつ、地下もなければ三階もない、一階と二階だけで、二階もずっと廊下みたいになって吹き抜けになっている。ああいうようなところになってきますと、二階だというので適用されるとやはりたいへんな金がかかると思うのですよ。二階建て程度のもので、ショーをやらない全くの映画館、こういうようなのはどうですか。
  16. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 二階の場合には、その二階部分面積が千五百平米以上という場合にスプリンクラー設備をつけてもらうということになるわけでございますから、二階部分で千五百平米といいますとこれまた相当大きい建物になりますので、通常映画館等の場合にはまず、舞台もそれほどないわけでございますし、現実問題としては対象になるものはあまりないんじゃないだろうか。とにかく全国劇場をさがしまして、二十三がいま不適格でございますので、これを具体的に名前をあげればもう少しわかりやすいかと思いますけれども対象数はそういうことで非常に限られたものであるというふうに考えております。
  17. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 その問題は終わります。  次に煙の問題を聞きたいのですけれども、いま火事死者が非常に多い。負傷者は減っているけれども死者のほうは逆にふえているのですね。こういうのを見ますと、結局煙に巻かれて死ぬのが一番多いわけです。ほとんどが窒息死だ。こういう場合に、煙の問題が今度の改正でも非常に重要視されなければいけないと思うのです。  煙が上に上がるのは秒速五メートルだし、横に流れるのでも秒速一メートルだ。結局歩く速度より煙のほうがいずれにしても速い。最初の三分が勝負だ、こういうふうにいわれておるのですが、事実上三分や二分でのがれるということはできないと思うのですよ。現在つけられている排煙装置というものは、いろいろやっておるようだけれども、しかし実際の問題として、火事が起こった場合には煙で死ぬ人が非常に多い。私はこの場合、煙の感知器というものはまだまだ有効に働いてないし、また排煙装置というものも決して有効に働いてないと思うのです。現にこの間はこの委員会で新宿を見ました。しかし、あの三十センチ四方ぐらいの穴がぽつんぽつんとあいて、どれだけ強力なポンプであれを排気するのかわかりませんけれども、あれで実際に排気できるものかどうか非常に疑問に思うのです。その点についてひとつ解明していただきたいと思います。
  18. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいま御指摘のとおり、火災による死者の約半数というものが煙なりあるいは一酸化炭素中毒による死者ということになっておるわけでございまして、この煙の問題は実は私どもにとりまして非常に大きい問題でございます。  いま御指摘のとおり、防火対象物につきまして排煙装置をつけるということになっておりまして、それによってそれぞれ必要な排煙設備がつけられておるわけでありますけれども、これがいかなる場合においても完全に有効に働くかという点になりますと、まだ解明されておらない部分相当あるということは、もう私ども率直に認めざるを得ないのでございます。いま消防のいろいろな技術面の解明の中で一番おくれておるのが煙の問題でございまして、消防研究所等におきましても重点的にこの煙の研究をしておるわけでありますが、できる限り早くそうした結論を得まして、この排煙につきましての設備基準といったようなものをできるだけ早い機会に確立していきたいというふうに考えております。
  19. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この排煙の問題はやはり、いまお話がありましたようにビル火災では一番問題だと思うのです。私はこの間も見てきましたけれども、とてもあんな小さいもので、一度に燃え上がった煙を排除するなどということは私は不可能だと思うのです、地下街でも。一尺四方ぐらいの穴からどんな強力なあれをしても、人を助けるような排煙というのは私は不可能だと思う。  それからもう一つお聞きしたいのは、階段のところにダンパーがあって、遮断するようになっていますね。縦穴を遮断する。あれに私は非常に疑問を持ったんですがね。あれを早く締めれば逃げられないし、おそく締めれば火や煙が回っていく。そういうものを一体だれがああいう操作をして締めるのか、この点をひとつお聞きしたいんです。
  20. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 いま空調等についておりますタンパーは、煙感知器に連動してこれが締められるということになるわけでございます。
  21. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 その煙の感知器ダンパーが連動して締まるということになると、煙感知器に感知すればすぐすっと締まることでしょう。そうなりますと、さっき言いましたように煙の速さというものは、上にのぼるのは一秒間に五メートルだというのですね。人の逃げるのはとってもそんな速さで逃げられない。そうすると、煙に感知するとすぐダンパーが締まってしまうと、中にいる人は逃げられないのですよ。
  22. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいまのダンパーといいますのは、空調設備の中の仕切りでございます。先生いまおっしゃっておりますのはおそらく防火びらのことじゃないかと思いますが、この防火びらは、これも煙感知器等に連動して、途中まで締まる。そして人間が避難は十分できるように、途中で上の部分を間仕切りするというふうな装置になっているわけでございます。
  23. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 二方だか三方から一時に締まってきて階段を遮断するようになっているでしょう。あれは何に連動していますか。あれは、私の記憶ではたしか煙感知器に連動して下がるというふうに聞いていましたが……。
  24. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 これも、いまの新しいものはすべて煙感知器に連動いたしております。それによって締まることになっていますが、あれには全部非常とびらがついております。そこで人は避難ができるということになっております。
  25. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 非常とびらというと、あのシャッターの中にまたとびらがついているんですか。
  26. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 はい。
  27. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 ああそうですか。  それから、いつかの新聞今津方式というのが出ておったですね。今津戦法というのが出ていました。煙を排除するのに、いままでのように締めないで、逆に空気を吹き込んでやる。それによって煙を流して、それから同時に、空気を吹き込んでやることによって、窒息しないように、こういう今津戦法というのが新聞に出ておる。私はこれを見て、非常にうまい方法だなと考えました。開口部さえ、窓さえ全部こわしておけば、空気を吹き込んでおったほうがかえっていいじゃないか、こういう感じがしますけれども、これはいままではどういうふうに評価されて、どういうふうなところまで進展していますか。
  28. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 この問題は私どももただいまいろいろ検討いたしておりますけれども、煙という観点から見ますと、確かにその方式一つ考え方であろうと思いますが、今度は火のほうから見ますと、空気が入ることによって火は非常によく燃える、その点の調整をどうしていくか、これが研究の課題でございまして、必ずしもその方式が常に有効だということにはならないのじゃないかと考えております。
  29. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 わかりました。当然でしょう。火に油を注ぐようなものですから、空気を注げば燃えるにきまっています。だけれども考え方としては非常におもしろいと私は思うのです。それじゃ、密閉して煙をどんどん出せば助かるかというと決して助からぬ。かえって死ぬのですよ。むしろ煙が充満しないように、早く煙を出してしまったほうが助かる率は多いかもしれません。煙の問題はこれでやめますけれども、ますますよい方法が出るように早急に十分検討してもらいたい。この問題が最大の問題だと私は考えております。  それから、地下街の問題でちょっとお聞きしたい。去年の夏に消防庁地下街を特別査察したことがありますね。査察に合格したのは八重洲と池袋だけで、十一カ所査察したけれども二カ所しか合格しない、こういう報告が出ておりますけれども、その後これは合格するように改善されておりますか。
  30. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 地下街につきましては、査察の結果非常に問題があったわけでございまして、早急にその是正方を警告いたしまして、現在におきましては、現行法律のもとにおける消火設備あるいは防火管理体制という措置はとられていると聞いております。
  31. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私はあとからこれをお聞きしようと思っておりますけれども長官でなくてもいいけれども、実際にやっているということをだれか確認していますか。
  32. 矢筈野義郎

    矢筈野説明員 すでに建築されております地下街については、これを防災的にどう改修すべきかという点につきまして、建設省消防庁その他の諸官庁の技術者、そのほか学者を交えまして基準を作成しております。その基準に基づきまして改修計画を逐次早急に進めるよう地方のほうへ通達を出す段階に来ておりますが、第一線のほうではすでに地下街改修計画というものを持っておりまして、一番あぶない対象物地下街であるという認識に立ちまして、積極的に進めておる段階でございます。
  33. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 地下街に関しては、もう皆さん持っておると思いますが、私は新聞で読んだだけですが、大阪の防災会議地下街等災害対策部会で、村上庭直さんという防災都市研究所の所長が出していますこれを見ましても、全くこのとおりだと思うのです。いまの地下街ぐらいたいへんあぶないものはない、こういうふうに思われます。この人が言っているには、現在の地下街はどういう災害が起こるか予測もできない。予測できて、計画できて、その計画に従って行動するような状態になっていない。何が起こるかわからないからもうお手あげだ、こういうような発言をしておるのです。災害が起こるのにこんなに都合よくできている空間はない、そういうことまで言っておるのです。しかもなおかつ地下街がこれからどんどんできる傾向にあるわけです。  そこで、私は地下街などというものは将来的にもつくるべきじゃないと思う。災害の巣をわざわざつくっておるようなものだと思うのです。特にビルからビルにわたっていろいろな地下街をつくったりして、地下街一つの町になってしまう。この間新宿サブナードを見ました。これは最新の理想的なものです。しかし、あれを災害的な見地で見て歩くと身ぶるいがする。決して安全なものではないのです。ああいうものを都市の地下にクモの巣のように四通八達、つくるのでは、ほんとうに災害をつくるためにわざわざつくっているようなことになる、こういうふうに考えるのです。ああいう地下街は一切禁止する、やむを得ない地下鉄みたいなところは別だけれども。そういう意思はありませんか。
  34. 町村金五

    ○町村国務大臣 いまの佐藤委員のおっしゃること、私どもたいへんごもっともに思うのでありまして、実は今度の消防法改正、あるいは建設省が所管いたします建築基準法の改正にあたりましても、何が一体一番そういう場合に危険かということを考えたときに、やはり地下街並びに大きなデパートが一番危険なんじゃないだろうか。したがって、これには相当きびしい対策をとるべきだ、こういうふうに私ども基本的には考えておるのでありますが、いまのお話のございました地下街は、確かにどうも完全な防火対策というものがなかなか容易にできない。しかも、一たび火事が出ましたならば、先ほどお話しの排煙ということが全くできないしかけになっておるわけです。  幸いなことにいままで地下街でそれほど大きな事件が起きておりませんけれども、ことしの春でありますか、韓国のソウルで小さな地下街でちょっと火事が出まして、実はある方の御指摘もございまして、消防庁の者を特にソウルに派遣してその実情を見させたのであります。たまたまそのときは地下街が開かれていない時間であったというために、死者の数はわりあいに少なかったのでありますけれども、もし人が一ぱい入っておるときに出たならば、ほんとうにこれはりつ然たるものがあるのではないか。  私どもも実は部内的には、そういった安全の見通しがつかない限りは、少なくとも将来は地下街というものの建築についてはむしろこれを取りやめるぐらいの方針をもって臨むべきではないかということで、目下消防庁にはその点の検討をさせており、消防上ほんとうに将来自信が持てないのならばいま言われたような態度をとるべきではないかということで、目下部内に検討させておる次第でございます。
  35. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、ぜひ地下街の問題に対しては徹底的に研究して、ほんとうに自信が持てなかったらやめさせるべきだ、こういうふうに考えます。  それから、もう一つお聞きしたいのですけれども、この前の大洋デパートでも、何べんも警告しておるが、しかしそれが何も聞き入れられないでああいう災害が起きておるわけですね。新聞を見ますと、これは私の地元の秋田市の消防本部が調べたのがあるのですけれども、こういうような状態があるのです。防火管理者を設置していないビルが六百四十三棟中二百三十三棟、消防計画を立案していない建物は五百十五棟中半数以上の三百六十一棟、さらに消火器すら設備していないビルが九十二棟、非常警報装置設備していないのが二百五十九棟もあった。こういうふうに市の消防本部が非常に危険な状態指摘する建物は、雑居ビル病院、キャバレー、デパート、マーケット、旅館ホテルなど約八十カ所に及んでいる。こういうふうな報告を出しておるのです。  ところがこういうものが、幾ら警告して、やれと言ってもやらないで、いつまでも同じような状態にあるわけです。私はこの前の質問のときも言いましたけれども、幾らやれやれと言ってもやらなくても、結局これを罰することができない。今度は罰則があるようですが、罰することができないし、やろうともしない。いままで、防火設備を完備しない、こういう違反者を告発した例というものがありますか。
  36. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 現行消防法の第五条の規定におきまして、防火対象物につきましては、必要なその防火管理体制がとられておらない、あるいは必要な消火設備がつけられておらないというような場合に、その防火対象物についての改修の命令あるいは使用禁止、使用停止、使用制限というような措置がとれることになっておるわけでございます。この第五条の規定によりましていろいろな措置命令を出しておるわけでありますが、これが昭和四十七年の実績では八百三十七件ございます。そのうちで使用について禁止、使用停止等の措置を講じたものが三十七件、あるいは工事の中止を命じたものが百十一件というようなことになっておるわけでございます。  告発の件数はちょっといま正確な数字を持ち合わせてございませんけれども、二十件ないし三十件程度の告発が行なわれておるというふうに考えております。
  37. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 昨年、東京消防庁が都内のビルデパートなどについて査察を行なった結果によると、現行法に照らして違反でないものはわずか一八%、他の八二%は違反だ、こういうふうにも書いてありますね。ところが、いまあなたは二十件ないし三十件告発をしたのがあると言うけれども、これは去年の十二月一日の東京新聞ですよ、これにこういうふうに書いてあるのです。「これまで全国消防当局はせいぜい警告書や勧告書を渡すのが関の山。この程度では業者には痛くもかゆくもない。熊本市消防局に限らず、全国消防当局で消防法の制裁規定を生かし、防火設備を完備しない違反者を告発した前例が一度もない(東京消防庁査察課)」こういうふうにちゃんと書いてあるのですよ。あなたは二十件も三十件もあると言うけれども、こっちを見ると一件もないというのですよ。どうです、この差は。私はないほうが正しいのじゃないかと思いますがね。
  38. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 告発につきましては、東京消防庁におきましても告発件数は数件あるはずでございます。一件もないということはあり得ないと思います。
  39. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私はこの前も指摘しましたように、たとえば熊本のあれのように百何人もの人が死んだ、だれも責任をとる人がいないのですよ。江崎さんのときの話だから大臣はわからないかもしれませんが、あれだけの人が死んで、直接の消防である市町村の自治体消防、これはまことに力が微々たるもので、とてもあれをどんどん押えつけるだけの力がない。県もない。おれたちには責任はないと逆陳情をしているような状態。国も何にもない。人が死んでいるのにだれも責任をとる人は一人もいないのです。こういうような無責任な体制というものが、千日ビルのああいう火災があって、今度は気をつける、今度は気をつけると幾ら言っても再び大洋デパートのようなああいう災害を起こしている原因だと私は思うのです。その原因の一つはやはりここだと思うのですよ。悪かったら処罰するぐらいのきちんとした態度をとらないから、どうでもいいと思っているから結局何にも生かされないし、そしてまた、どうでもいいと思っているから何か問題があってもだれも責任をとらないのですよ。こういう無責任な体制というものが消防にあるから、いろいろな災害が起きるけれどもいつまでも同じことを繰り返して、教訓になって次に生かされていっていないのですよね。この体制をひとつ、何か一つ事故があったらそれが次の教訓に、二度と繰り返さないような重大な教訓となって生かされていくような、こういう責任のある体制をひとつとるように、大臣、心がけて進めていただきたいと思いますけれども
  40. 町村金五

    ○町村国務大臣 いかに消防法を精密に、しかもやかましく規定改正いたしましても、実際にこれが励行されないということになれば、絵にかいたぼたもちのようなかっこうになってしまいますことは間違いございません。  どうも、いま、重大な失態を演じて人命をそこなうというようなところまで至ったものに対しても、告発をしてその責任を追及するということがほとんどいままで行なわれていないのじゃないかという御指摘でございます。まあ、事務当局のお答えではいままでに二、三十件あった、こういうふうなことでございますけれども、どうも私ども、その点は必ずしもそういった点が励行されていないような感じがいたします。  なぜ一体現在の自治消防組織ではそういうことがやれないのかというところに、実は基本的に検討を加えなければならぬ問題があるんじゃないか。したがって、その問題に対しては、今度の改正では必ずしも明確に前進をさせるようなことがあるいはできていないのではないか、私はこう思うのでありますけれども、少なくともやはりそういった点も今後はさらに検討をしなければいけないのではないか。今度の改正では、私ちょっと聞いたところによりますと、少なくとも建物の所有者と申しましょうか、経営者に防火管理の責任をしょわせる。いままではほとんど責任をしょえないような者をただ形だけ防火管理者に任命をしておる。それにかりに消防署がやかましくきびしく申し入れをいたしましても、それは、会社の経営者のところへそれを伝えても相手にされていなかったというふうなことがしばしばあったということも聞いておるわけでございまして、そういった点は、私はやはり一面において、規定を厳格にするだけでなく、そういった筋の通る体制を今後ともさらにひとつ検討をし、実現をするということが必要ではないかという感じがいたすのでありまして、その点は今後のひとつ重大な課題として、消防庁当局にさらにひとつ十分な検討をさせるということにいたしたいと思います。
  41. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 ぜひひとつその点は責任体制をはっきりするように考えていただきたいと思うのです。  それで、次に移りますけれども大洋デパートのときの「客と従業員の行動調査」をしたのが京都大学の堀内研究室から出されていますね。これの場合に、私はこれを見まして非常にびっくりしましたのですけれども、この従業員がほとんど何をしたらいいかわからないという、そして何にもしないでみな逃げ回っている、こういうような結果がこの調査にあらわれておりますね。火事になったとき一体あなた方は何をしたか、こういうような調査なんですけれども、「一一九番への急報者ゼロ、非常ベルを押した者もゼロ、従業員は従業員階段へ、客は中央階段へ殺到、三分の一の人は何をしていいかわからなかった」こういうような結果を出して、従業員の四〇%近くがすぐ逃げ出した。「火事と知った時、「何をしていいかわからなかった」客一九%、従業員四一%」こういうふうに、従業員から何からほとんど全く客をほったらかして、ただ逃げている、こういうあれがあるのですね。消防署へ連絡しようとした、非常ベルを押そうとした、こういう従業員は、あの調査を見ますと一人もいないのですね。  こういうようなことを見ますと、これは従業員教育というものが非常に大切だと思うのです。ただ設備をつくっただけでは何にもならぬ。これを活用する従業員の教育が非常に大切だと思うのです。ベルも鳴らさなければ、一一九番に教えようとした従業員が一人もいない。みんな逃げちまった。これではどうにもならぬのです。  私は、この間も地行で新宿に調べに行きましたときに、非常にうまいしるしをつけて、腕章を巻いてあちこちのかどに立っておった。私はあれはあれで、おかしいなと思ってきたんですが、はしなくも私はテレビを見て、あれが非常にうそだということがわかったのです。というのは、テレビのフィルムをとった記者の連中はわれわれよりももっと先に行っているのですね。そしてあの中を全部写真をとっておるものだから、初めてここへ腕章をつけたり、ぼくらが行く十分か二十分ぐらい前に標識をつけたりしているわけです。あれはいつもああしてつけているのじゃないのです。国会から調査に行くというので、その三十分ぐらい前にみんなつけたりこうやっているのです。私はあとからテレビを見て、それで知りました。あれは常時の体制じゃないのです。ただあれを見てきてわれわれは感心したような顔をしているけれども、おそらくふだんは何の準備もないと私は思います。これはどういうふうに思いますか。
  42. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 大洋デパートの場合は、御指摘のとおり消防設備の面におきましても全く欠陥のあったデパートであり、そしてまた従業員の訓練といいますか、消防計画の実施ということも行なわれておらないデパートだったわけでございます。したがいまして、火災に際して客の避難誘導というようなものが非常に欠けておったという点は御指摘のとおりでございます。  そういう意味におきまして、今回消防法改正が行なわれるわけでございますけれども、これを実際に十分に活用していくということは、やはり消防計画を的確に設定をし、それに基づく訓練を実施するということがきわめて肝要なことであるというふうに考えております。この点は私ども今後重点的に、そういう方向での指導を行なってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  ちょうど大洋デパートから一週間ばかりあとに火災が発生いたしました館山のいとう屋デパートというのは、そういう意味での訓練は相当行き届いておった、そのために客の避難誘導がほぼ完全に行なわれた、こういう事例も、非常に対照的でありますけれども、出たわけでございまして、私どもとしましては、今後消防法にいわば魂を入れるというつもりで、消防計画の実施、人の面の訓練ということについて重点的な指導を行なってまいりたいというふうに考えております。
  43. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 新宿の伊勢丹でしたかな、黄色いプラスチックのやつで、矢じるしで、「非常口」と書いたのを天井のところへつるしておったのですが、あんなのなんか全然問題にならぬと思うのです。あちこちに赤いやつや黄色いやつがたくさんぶら下がっておるのに、あれ一つ、赤いやつだって、火事だというときにだれも見る人はいない。全く形式的なんですね。ああいう点の根本をきちっとたたき直してやらないと、ただ形式的にああいうのをぶら下げたり、いろいろなものをつくったって、私は何にもならぬと思うのですよ。根本はやはりこういう従業員の訓練なり、あるいはお客に来る人の心がまえなりをきちっと教育しておかないと災害は絶えないと思いますよ。  それで、同じ京大の堀内研究室で発表しているのでは、見るよりも耳に入ってくるほうがずっと誘導価値がある、こういうような研究発表を出しておるのですね。これはたまたま暮れの三十一日に京都の丸物ですか、ここの火事のときもこういうあれが報告されている。従業員が笛を吹いてお客を誘導した、それが非常に効果があったということをいわれておるのです。私もそう思うのですよ。火事だといって目がくらんでしまって、どこへ走っていけばいいかわからない人が、あんなに小さい色のついたのを見て、非常口だといってそっちのほうへ走っていくことはおそらく不可能だと私は思う。元来的に言うと、明るいところへ走っていくと言っていますね。窓のほうへみんな走っていく、こう言っていますよ。それから直接耳に入ってくるような誘導装置、笛でもよければスピーカーでもいいし、たとえばサイレンをそっちのほうから鳴らすとか、何かしらそういう誘導装置考えることが非常に有効ではないかと思って、私はあれを見て考えましたけれども、そういう点もひとつ考えてもいいんじゃないかと思います。  それに関連しまして、私は、従業員の教育というようなものの考え方をもっと拡充して、何万人という人が入っているような建物ビルだとか百貨店だとか、ああいう特別大きなものには、町のあれではなくて、専門の消防隊をつくるべきだと思います。これは勧告にも出ていますね、消防隊をつくりなさいと。私は当然これはつくらなければいかぬと思いますよ。  というのは、人口の点から見ますとたいへんな人口なんですね。デパートなんか、従業員はどのぐらいいるかわかりませんけれどもデパートには何千人といると思うのです、三越なり高島屋なりああいうところへ行きますと。そして、この前もちょっとここで検討しましたが、二万人ぐらい入っているのじゃないか。そうしますと、五千人の従業員がいると二万五千の町と同じなんですね。  この間新宿の副都心センターができましたね。あれなんか見ますとたいへんなものですね。京王プラザだとか住友ビル、今度三井ビルができてくる、こういうふうになってきますと、常時従業員だけで四万人いる。お客の出入りで三十万人、これはちょっとした中都市なんですよ。それから池袋の東京拘置所あとに新都市センターがつくろうとしているやつ、あれなんかもたいへんなんです。あれはたった一つビルで一日に三十万人ぐらい、浦和市ぐらいの人間が動くだろう。九千台の駐車場があって、三十万人ぐらいの人間が動いて、水は九千トン使う、ごみは四千トン出る。たいへんなものです。あれだけでちょっとした地方の中都市ぐらいなんです。  そうなってきますと、東京都だけでの消防力にたよっているというのは怠慢だと私は思う。これは当然、私は専門の独立の消防隊というものを組織しなければいかぬと思いますよ。一体人口三万ぐらいの都市ですとどのくらいの消防力が必要ですか。——わからなければいいです。これはちゃんと規格があるでしょうから、あとでひとつ教えてください。  私は、一つでもってそれだけ大きな、あるいは限られた地域でもってそれだけの人口が集中するとなれば、当然消防力を持たなければいかぬ。そして、町の場合は広さがありますよ。だから逃げる場所がある。しかしああいう高層のビルになってまいりますと逃げる場所がない。死ぬしか手がない。だから専門の消防をつくってそして、高さに従って、十階に一つぐらいずつ分遣所を置くべきだと思う。そしてそこで専門に指導すべきだと思いますよ。従業員に幾ら教育しても、ああいう若い人に腕章巻かしてあそこに立たせておいたぐらいでは何の効果もないと私は思う。やはり専門の消防隊をつくって、そして、デパートなんかだったら各階ごとでもいいし二階に一つでもいいし、置いて、そしてその隊員というものの行動は、消防署に属さして常時指導して行動させるとか、何かそういうふうな方法をしないといけないと私は思う。単に防火管理者を置いて、形式的に腕章を巻かしてあそこに立っておかせたって、私は何の効果もないと思いますが、この点はどうです。
  44. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 現在、デパートにおける消防組織として自衛消防組織を行政指導で行なわせているわけでございまして、大体専任の職員も幾らかは置いておるというのが現状でございますが、この点につきましてはさらに私どもも今後検討してまいりたいというふうに考えております。  現在の消防設備考え方は、デパートにおける火災発生の際には、まずお客の避難誘導を第一にする、従業員は避難誘導にまず専心をする。そして初期消火の点につきましては、スプリンクラー等の設備によって初期消火を行なうというのを現在基本にしていまの消防法規定をつくっているわけでありますけれども、さらに、御指摘のような自衛消防組織というものを石油工場等と同じような方式で置くのがいいかどうかという点につきまして、さらに検討をしていきたいというふうに思っております。
  45. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 当然そういうものはつくるべきだし、さらにああいう超高層のものになってきますと、普通の消防でない、特殊な消防の道具が要りますよね。そういうものに対しても受益者として負担させるべきだと私は思う。たいへんな経費と労力がああいうものに対して必要だと私は思います。だから、その点はひとつ十分検討してもらいたいと思います。  その超高層のビルの問題についてお聞きしたいのですけれども、この前の例のサンパウロのビル火災がありますね。もう逃げるところがなくて飛びおりて死んでしまった、こういうような、何というか、聞くだけでもぞっとする悲惨な例が述べられております。これはもうほんとうに悲惨という一語に尽きるような、たいへんな、地嶽みたいな状況を呈しております。  この間、港区にもはしごが届かない火事がありましたですね。あれは森永ブラザビル火事があって、はしごが届かなくてだいぶ騒いだ、届かない届かないと言って。そのときの新聞の、これは四月五日の日経ですが、「救出不能一万を超す 都内のビル」と、こういう見出しで書いてあるのですが、はしご車が届かないビルは超高層を含め実に一万三千三百もある、こういうふうに書いてあるのです。はしごが届かない上のビルの問題をどうしますかと言ってこの間私が聞きましたら、あの中で特に消防力を強化して、自前で始末してしまうしかしかたがありません、こういうような考え方だったのですね。  ところが、いまの状態で、幾ら防備を厳重にしても火事が出ないという保証は私はないと思う、大火にならないという保証は。そのとき助ける方法というものが全然ないのですね。これは私はやはり人道問題だと思うのですよ。あの上に上がりたくて上がっているのじゃないのです。働き場所だものだからもうしようがなくて上がっているのです。もしあれが火事になって下からやられたら、助ける方法一つもないのですよ。それをただ中で助かってくださいと言ってほっぽらかしておけるかどうか。  私は、ああいう高い建物建てること自体が非常に非人道主義的な、ヒューマニスティックでない考えだと思うのですよ。ニューヨークに双子ビルがありますね。あれの報告を見ますと、だんだん高くなっていくので、机を窓ぎわからだんだん離していくというのです。自然的な恐怖を感じているのですね。そうして窓を、なるべく開口部を小さくして、外が見えなくなるようにしている。高いということがそれ自体でヒューマニズムに反して、恐怖があるのですよ。それを上がったまま、下が火事になっておりられないでそのまま死んでしまわなければいけないということは、私は人道に反すると思うのです。救出する方法がなかったら建てるべきじゃないと思う。この点、どう思いますか。建設省の人にちょっと聞きたいのです。
  46. 佐藤温

    佐藤説明員 超高層ビルにつきましては、防災的な面から私どもも建築的には一番重要視をいたしまして、事故の場合に安全に避難できるということを最重点に考えております。超高層の場合、特に防災計画書を提出させまして、それによりまして、避難の時間計算、それから避難施設等をきびしくチェックをいたしてまいっております。  おっしゃるように、超高層のビル建てるのがいいか悪いかという問題でございますけれども、これは土地利用等、いろいろな問題がありまして、にわかに即断ができない問題でなかろうか、かように考えております。
  47. 町村金五

    ○町村国務大臣 建築の基準の問題は、これを建設省所管の仕事であるということは言うまでもございません。しかし、いま御指摘のございましたように、いまのあの超高層ビルで万一火事が起きた場合に万全な避難のできるようなしかけ、あるいは火事を自然にあの中でとめてしまって、局限して、大火にならないようにまで防火の問題あるいは消火の問題もでき上がっているかどうかということについては、私も実は非常な疑問を持っておるのでありますが、建築を認めております現在の建築基準法では、一応安全だ、だいじょうぶだという判断のもとにおそらくああいうものが許可されているわけだと思います。  しかし災害は、われわれが予期しないような災害が起こり得るということを考えてみますと、最近特に消防機械が全く届かないような超高層のビルが盛んにできておるという問題について、われわれ消防の責任を持つものの立場が、従来はたしてああいう建築に対しどの程度一体発言をし、その安全を期するということに努力をしていたかどうかということについては、なお私ども十分反省する必要があるのじゃないかという感じを深くいたしておりますので、先ほど私がちょっと申し上げました地下街の問題、それからこの超高層ビルの問題については、人命の安全を確保するという立場から、私どもひとつ根本的な検討を加えまして、こういった問題に対して遺憾のないような対策を講ずるという考え方をさらに深く真剣に講じていくべきではないか、講じてまいりたい、私はこう考えております。
  48. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この問題は、上のほうが安全に消せるような状態消防の施設ができるならば下のほうだって消せるのですよ。下のほうが消せないということは上のほうも消せないということなんだ。だから、はしご車が届かない上のほうだけが完全に消えて、はしご車の届くほうが消えませんという、そういう論理は成り立たないのですよ。上のほうをちゃんと消すような設備ができるならば、下のほうもそれと同じようにやれば火事は起こらないのです。そんな、上のほうだけ起こらないということはない。必ず上だって火事が起きる可能性が十分あると思うのです。そうすると火事が起きた場合には、はしご車の届かない上の超高層のほうは助ける方法がないということ、こういう状態というものは考えなければだめだ。  いま建設省課長さんからちょっとお話がありましたけれども、土地代の関係でどっちがいいかわからないと言う。これははしなくもそのとおりだと思う。あれを建てるということは経済性の問題だけで考えているのです。高く建てれば土地が狭くても済むのだ、これだけしか考えないからああいう非人間的な建物ができてくると私は思いますよ。人間を上げておいて、助けることができない状態にしておく、ああいう建物建てるべきじゃないのですよ。これはほんとうに人道に反しますよ。上がる人は、そこへ行かなければ給料がもらえないから上がっていくのです。二階へ上げてはしごをおろすというが、まさにそのとおりなんですよ。助ける方法がなくて人間を上げておく、そういうばかな方法が一体ありますか。これは厳重に、人道上からも文句を言わなければだめだと思いますよ。だけれども現実にはどんどん建っています。  これを助ける方法が一体ないかあるか。現実の問題から考えてみますと、これを助ける方法というのはヘリコプターしかないのですよ。ところが、このいろいろな事例を見ますと、大洋デパートの場合ではそうだし、サンパウロのビル火災でもそうだし、下から火がどんどん燃えていく。あの火の勢いが十分か何ぼかたてば千度をこすというたいへんなエネルギーなんです。だから、上にヘリコプターが着陸もできない、近づけない。唯一の頼みのヘリコプターが近づけなければ、ほんとうにあとはあのサンパウロみたいに飛びおりるしかしかたがない。あの霞ケ関ビルの屋上からだれかが飛びおりる状態を想像してごらんなさいよ。これは地獄ですよ。こんな状態が単なる地代の問題、経済的な問題で許されていいはずはないですよ。  だから、何かそういう方法がないかと思って考えてみましたが、ヘリコプターを使うしか当面方法がない。あのヘリコプターを火に近づけるような、耐火ヘリコプターというものをつくるような考えはありませんか。火の中でも行って助けてくれる、こういうようなヘリコプターを早急に開発してつくるべきだ。こういうふうにどんどんできている、助けられないビルが一万三千もあるのですよ。こういう方法はどうですか。
  49. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 まず、東京都においてのはしご車の使えないビルというのは、確かに御指摘のとおり超高層のビルというものもございますけれども東京都においての一番大きい問題は、道路幅の関係ではしご車が使えない。それからまた路上にあります電線、高圧線、この関係ではしご車が使えないというものが相当たくさんあるわけでございます。この点はもう少し東京都の都市計画の面においてその辺の配慮を十分やっていただかなければ、このはしご車の問題はなかなか解決しないということになるわけでございます。  それから超高層ビルの場合における火災の問題でございますけれども、ともかく現在の建築基準法によって、超高層ビルにおきましては相当厳重な防火区画が設定をされておるわけでありまして、これによって百平米ないし五百平米の防火区画というものをつくって、火災をこの区画の中に局限していくという方式がとられておるわけであります。それからまた避難にあたりましては、屋内非常階段というものを相当数設置が義務づけられておるわけでありまして、確かに、火災になりました場合にどうやって避難をするかという点につきましては、そうした非常階段を利用するという以外に方法はないわけでありますが、そうした保安体制というものは相当厳重に考えられておる。この点は、現在の超高層ビルは、サンパウロにおいて起きたような状況にはならないであろうというふうに私ども考えておるわけであります。  それからヘリコプターの問題は、耐火性という問題よりは、大洋デパートの場合には一番問題になったわけでありますけれども、気流の問題でどうしても近づけなかった、こういう問題がございます。まだこのヘリコプターの技術的な関係を私どもよくわかりませんけれども火災の際にはどうしても熱によって上昇気流が非常に出てまいります、それで近づけない、こういう問題がありますので、いろいろな技術関係のほうとも相談をいたします。ヘリコプターの救助体制についていろいろ東京消防庁等でも検討しておりますが、そうした気流の問題、さらにまた屋上にいろいろなものがある。たとえばテレビ受信のためのテレビ塔、この辺がヘリコプターの操縦上も非常に問題があるということもございますので、いまヘリコプターについての技術的な関係はいろいろ検討しておるところでございます。
  50. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そういう、テレビを見るよりは命のほうが大事なんですよ。テレビの受信装置があってヘリコプターが近づけないなんという、そんな子供の論理みたいなことが国会で論議されているなんというのはナンセンスですよ。テレビを見るのが大事なのか命が大事なのか、こんなことを考えたって問題にならぬのですよ。そんなもの、ヘリコプターが近づくのにじやまだったら全部取り払ったほうがいいんですよ。テレビなんかどこでも見れるのです。大体そんなことが私は非常に怠慢だと思いますよ。  気流、気流と言うけれども、最初から、超高層ビルでは屋上に逃げなさい、屋上に逃げればヘリコプターが行って助けますよ、そういう体制がきちっと整っておるならば、もっと助ける方法があると思うんですよ。あんなものすごい火事にならないうちに、すぐヘリコプターが出動して、屋上に逃げた者は全部助けるとか、何か方法があると思う。絶対に行けないものじゃないと思うのですよ。だからヘリコプターの救助体制にも、そういう何かレンジャー部隊みたいなものを常時設備しておいて、それによる救助の方法考える、こういうことをすれば、もっと助かると思うんですよ。あんな高い、地上二百メートル、三百メートルのところに行きますと、飛行機に乗っていると同じですよ。もしあれでしたら、戦闘機からの脱出装置がありますね、パラシュートをしょった、ああいうのでも火事になったらすぐそこに持っていかして、脱出装置でもつけておいて逃げるとか、金がかかってもいいから何か特別な装置をやらないと、ほんとうに私は人道問題だと思いますよ。こういうような脱出の方法というものは、悪い面はもちろん考えなければいかぬけれども、もっと積極的に助ける方法考えるべきだと思う。  それからもう一つは、そういうものが開発されない以上は、ああいうでたらめに高いものは私はつくるべきじゃないと思いますよ。これは地価の問題じゃないのです。もう一ぺんそれを、大臣でもいいし、どなたでもいいですが、御答弁を……。
  51. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいまのヘリコプターによる救出の問題、これはいろいろ技術的な面、それから建物の大きさ、ヘリポートの設置の問題ということで、いまいろいろ大都市消防当局においても検討しているところでございまして、できる限りこうしたヘリコプターの利用による救助体制というものも確立していきたいというふうに考えております。確かに御指摘のとおり、大きい建物が非常に短い時間の間に大火災にまで成長していくということは、いまの建築材料等から見まして考えられないわけでありまして、相当の時間的な余裕もあるわけであります。そういう消防体制というものを考えてみますというと、まず現在の建物で、サンパウロにおいての非常に悲惨な事件のような事態にまでは至らないというふうに考えておりますけれども、さらにこの点につきましては建設当局のほうとも十分私ども技術的な打ち合わせをいたしまして、体制の整備に万全を期していきたいというふうに思っております。
  52. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 サンパウロの大事件まで至らないなんというのはのんきな話で、サンパウロの三分の一が死んでもたいへんな問題なんですよ。サンパウロまでいかないからだいじょうぶだなんてのんきなことを言わないでくださいよ。ほんとうにその問題は、大臣、ひとつ真剣に考えてもらいたいと私は思うのですよ。ほんとうにこれは大切な問題だと思うのです。ただ高ければいい、大きければいい、経済的に土地を利用できればいい、そういう問題だけでああいうふうな高いものにして、何千人という人間をあの中に収容しておいて、そうして助ける方法が何もないなんて、そんなばかな話はないですよ、考えてみても。  それから、最後に一つお聞きしたいのですけれども、このいまの消防法改正によってスプリンクラーがいろいろついたりしますね。これに対して損害保険の料率、これに対する何か措置はしていますか、安くするとか。
  53. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 消防設備設置に伴いまして、それに対応する保険料の割引基準というものはきめられておるわけでございます。ただ、わが国の場合に、消防用設備に対する検定制度というものがまだ十分な体制にまでいっておりません。そういう関係で、外国の保険会社の取り扱いというものと比べますというと、まだ割引率がやや低いということが言えるだろうと思いますが、スプリンクラー設備をした場合におきましては、最高三〇%ぐらいまでの割引料率は適用されるということになっております。
  54. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 片一方においては非常に大きな犠牲をしいるのですから、犠牲と言っては問題がありますけれども経費がかかることをやらせるのですから、片一方においてはそういうようなことでできるだけ援助してやるべきだ。損保料に対しても私はもう少し検討する必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますので、ひとつ検討していただきたい。  それから、建設省の方にひとつお願いしたいのですが、この前の熊本のデパート調査団等の報告によっても、その前にもありますが、ああいうビルにベランダとかバルコニーをつけたほうがいいじゃないか、こういうような勧告がありますけれども、今度の改正案を見ますとこういうのがないようですけれども、こういうものについてはどういうふうに考えていますか。
  55. 佐藤温

    佐藤説明員 ただいま大洋デパートの事故調査委員会等におきましても、今後の特殊建築物のあり方につきまして、おっしゃるような構造の問題等もいろいろと御意見を承っております。現在考えておりますのは、建築物の火災等の場合には、避難にとって最も重要であるものは避難用の階段でございまして、屋内に設けるものにつきましては当然耐火構造の壁で囲み、また内部を不燃のもので仕上げ、非常用の照明とか、先ほどお話にもございました、出入り口には煙感知着付きの自動閉鎖の防火戸をつけるような構造のものにいたしております。それから屋外に設けるものにつきましても、これと同等の効力があるものというように考えておりますので、このいずれの階段をつけても、現在の法律よりいいようになっているわけでございます。  おっしゃいますように、バルコニーの点も避難上非常に有効な施設と私ども考えております。しかし施設の状況とか隣地との関係、それから建物の用途の問題、構造上の問題等ございまして、一律に設置する点で非常にむずかしい点もありますので、義務づけるということにつきましては必ずしも実情に沿わないのではなかろうか、こういうように考えておりまして、今後とも、バルコニー、ベランダ等につきましても、有効に設置をされるように指導を続けてまいりたい、かように考えております。
  56. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 現在の状態におきますと、もう煙に巻かれて死ぬのが一番多いのですね。最初に申し上げましたとおり、ほとんどがこの煙による窒息死。しかも煙の足が非常に早い。人の逃げるより先に煙がどんどん来て巻かれてしまうというのが現状なんですよ。階段に逃げて上に上がるとか下におりるとかいかないうちに巻かれるのが非常に多いのですよ。  だから、できるだけどこへでも逃げられるような方法にしなければだめだと思う。そういう意味では、やはり考えられることはバルコニーしかないと思うのですよ。地上に建てられた一階の建物の場合を考えるとよくわかるのですよ。火事になった、一階の場合は窓を破れば道路でもどこへでも四方八方にみな逃げられる。だから安全なんですね。高いのはどこへも逃げられないのです。そこ一点しか逃げられない。集中しているのですね。だからわあっと行けばもうみんなやられてしまう。そういう意味で、私は逆に、現在のビルの現在の状態で救う方法はバルコニーしかないと思う。ああいう外務省の建物みたいにちょっと手すりをつければ、窓を破ってバルコニーのところに立っていればヘリコプターが来るとかはしごを上げるとか、何とかかんとかしてまた助ける方法があると思うのですよ。煙の中に閉じ込めておくからすぐ死んでしまう。これは技術的な難点があると言うのですけれども、ああいう外務省の建物を見ていると、ああいう小さいのをもうちょっと大きくして手すりをつけたほうがいいと思うのですが、どういう技術的な難点があるのですか。
  57. 佐藤温

    佐藤説明員 バルコニーは、おっしゃいますように避難の点につきましては非常に有効な手段でございますが、建築物それ自体では、私ども必ずしもバルコニーにたよらなくても安全に避難がすみやかにできるようにということを基本的に考えております。バルコニーを設置することにつきましては、そのところに開口部がございますと、煙の問題では、煙によってバルコニーがまた汚染される問題もございますし、また風向によりましては、必ずしもその場所が避難にとって有効な場所となるとも限らない点もございます。また、面積的にも非常に大きな負担になろうかと思います。そういった観点から、これを義務づけていくことについてはやはり実情に沿わない点があるのではなかろうか、かように考えておるようなわけであります。
  58. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 時間がありませんからあれですが、あなたのお話を聞いているとよくわかりませんが、いろいろな例を見ましても、この間の大洋デパートでしたか、隣のところに橋がかかっているからそれで助かったとか、いろいろな例があるのですよ。私は外へ逃げるしか手がないと思う。こっちへ来たらそっちのほうへ逃げられるように、ぐるりに全部バルコニーをつけておけば必ず助かると思いますよ。あぶないということを考えましたらみんなあぶないんです。しかも一応火が入っている区画から外へ出るということがまず最も有効な手段だと思いますよ。これは長くはいられないかもしれない、あるいは子供が来て落ちるのもいるかもしれませんが、だけれどもそれ以上に有効な手段だと思います。だから悪い面だけ考えないで、いい面があってそれが非常に大きな効果を及ぼすなら、多少金がかかっても、あれだけの大きなビル建てる資力のある人ですから、経費がかかってもっけさせるべきだ、こういうふうに思いますので、なおひとつ一そう検討していただきたいと思います。  それから、こういう問題は結局、最終的には大都市の場合は過密の問題だと思うのですよ。しようがないから高くしてやれ、こういうような問題で、人口が密集して住宅がないから高いものを建てろ、すぐ高いもの高いものに集中されていくし、そしてまた地下へもぐれ地下へもぐれで、いろいろなあれがあって最終的にはやはり過密だとか過疎だとか、国全体の問題と非常に関係があると思います。  いま盛んにそういう問題が検討されておりますけれども、やはりこういう災害の問題からも、東京だとか大阪で一朝災害があったらたいへんなことですよ。地震なんかあったりしたら空襲と同じような被害があります。これに対して六億円だか七億円しかことしは災害の予算がついてないというのは非常に哀れな状態ですね。だから、こんなことを言ってもいますぐ通用する問題にならないかもしれないけれども、やはり根本的に国全体の問題としてひとつ考えていただくように大臣に要請したいと思います。最後に大臣の御感想を聞いて終わります。
  59. 町村金五

    ○町村国務大臣 きょうはたいへん適切な御指摘を伺ったわけであります。このたびの消防法改正あるいは建築基準法の改正ということは、確かに一歩前進をさせたものであるということは御評価願える、こう思うのでありますけれども、しかし、さらにだんだん御指摘もございましたように、必ずしもこれで、将来デパート火災あるいは地下街火災、超高層ビル火災について万全な建築基準なりあるいは消防の体制が整ったということには、なかなかなりかねているのではないかというように私は思うのであります。  ただ、御承知のように、このたびの措置は、いわゆる遡及措置と申しましょうか、遡及するというところに、新たに建築をする場合に当初考えるのとは違いまして、実は非常にばく大な経費がかかる。これも私企業に対しまして、人命尊重から当然のことだとは申しながら、企業である以上は、この負担のために経営ができなくなってしまうということになるおそれ等もございます。そういった点を勘案をいたしまして、一方におきましてはそういったいわば法律の改正に基づく新たな出費、彼らにしてみれば、人命尊重のために当然のこととは申しながら、しかし一面それだけの出費にはとうてい耐えかねるというようなことも当然起こり得るわけでありますので、そういった点も金融的にあるいは税制的にできるだけ配慮してあげるということも当然のことでありまして、はたして今回の措置が十分かどうかということになりますれば、相当まだ問題があると私は思います。  それからまた、こういう法律を出しますと、それほどまでやらなくともいいような、先ほどちょっと佐藤議員からも御指摘がございました、地方の小さなものまでに大きな負担をかけさせて、そのためにほんとうに大きな危険のあるものが今度はやや放置されてしまうということにならないようにしなければいかぬのじゃないか。ですから、今度政令をどういうふうな内容にいたすかわかりませんけれども、できるならば、政令の内容において、最も危険な建物である大きなデパートであるとか、あるいは大きな地下街であるとかといったようなものには相当きびしく出るが、地方のそれほど大きなものでもない、そういった種類の建物まで同様の厳重さをもって臨む必要はないのではないか。そこらを、今度の政令をつくってまいります場合には十分配慮させながら政令の制定に当たらせたい、こう考えておるところでございます。
  60. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 終わります。
  61. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 本会議終了後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  62. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多田光雄君。
  63. 多田光雄

    ○多田委員 今回の法改正にあたりまして、改正案には一定の改善点が認められる、こう思います。防火管理の上で、企業主である管理権原者の責任が一そう明確にされた、これはおそまきではありますけれども、私ども大いにけっこうなことだと思っております。しかし、防災、消防によって人命と財産を守るという立場から見ても、さらにまた最近の都市デパートあるいはコンビナートの大災害が激発しているという点から見て、さらに万全を期す、そしてまた当面急いで処置しなければならない問題も多々あるという立場からひとつ御質問をしたいと思います。  第一点ですが、これは消防庁に伺います。  昨年六月十一日から七月七日まで東京消防庁で行なったデパート地下街など二百十一の調査対象物の特別査察の結果についての報告を受けていると思いますが、その報告に基づく特徴をどうごらんになっているか、ひとつ伺いたいと思います。
  64. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 昨年、東京消防庁においても行なったわけでありますけれども、私どものほうも全国の市町村に指導いたしまして、昨年の暮れから本年の一月、二月ごろまでに、特に不特定多数の人の出入りする百貨店あるいは大型店舗を中心にいたしまして一斉点検を行なったわけでございます。   〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着席〕 この一斉点検の結果は最近まとまってまいったわけでありますが、やはり東京消防庁の場合にも例があったわけでございますけれども防火管理者の選任されておらないもの、消防計画が届け出されていないもの、避難誘導体制が不十分なもの、あるいは消防設備等の維持管理が不十分なものというような、いわば防火管理面での対策が十分でないものが相当多数見受けられたわけでございます。こうした不備あるいは欠陥事項につきましては、それぞれの消防庁におきまして必要な勧告、措置命令等によって改善の実施をはかっておるわけでございます。特に悪質なものにつきましては、それぞれの市町村におきまして公表、あるいは告発するというような措置をとってまいったわけでありますけれども全国的な集計のまとまりました段階で、各地方団体の担当者にさらに指示をいたしまして、その結果の改善措置を十分にあとづけをするというようなことをいま指導いたしております。できるだけ早い機会に、その改善結果がどういうふうになっているかということの内容を全国的に取りまとめまして、私どももさらに改善対策を進めていきたいというふうに考えております。
  65. 多田光雄

    ○多田委員 大臣、これはごらんになったかどうかわかりませんけれども、この際の調査対象物が二百十一件なんです。その中で、四十六項目の大別された欠陥事項で、欠陥の指摘、違反件数が二千四百五十八件に達しているのですね。一、二の例をあげますと、たとえば、構造上では三項目に分けられて百五十三件、その中で一番多いのが、防火対象物防火処理なしというのが九十件、こういったことで、対象物の件数に比べて非常に不備な点が多い。しかもこれが東京の、いわば都市の中で最も注意され、また注意しなければならないところでこの状況です。特にこれがデパート地下街ということで、午前中も御質問があり、御答弁がありましたけれども、私どもの不安を一そう高める内容になっているわけなんです。  そこで、この東京消防庁査察は昨年七月段階の結果ですが、その後、十一月の熊本の大洋デパートの不幸な火災を経て、企業としてもそれなりの自主改善をしている。これは私どもも認めたいと思いますが、ただ日常的に目につくところはやっているのですね。しかしながら実態は、必ずしもそれにふさわしい改善が重要度に応じたテンポで進んでない、ここが一つ問題だろうと思うのです。  たとえば、指摘件数の最も多い避難施設関係は五百五十五件なんです。これは一体何を物語っているかということですが、たとえば避難施設を営業目的に使っている、荷物を置くとかその他ですね。これは営利がやはり先行して、大事な人命を守るあるいは防災体制というものが第二次、第三次の立場に置かれている、こういうことのあらわれだろうと思うのです。ほんとうに資金難で苦しむ中小零細企業ならまだ同情もできますけれども、そうでない大企業の場合、これがやはり依然としてあとを断ってないということ、これはやはりわれわれとして十分考えてみなくちゃならないことだろうと思うのです。  そこで、こういう実態を、消防庁長官はもとよりですが、大臣が御存じになっておるのかどうなのか。たいへん失礼な聞き方かもわかりませんけれども、これをもう一度お伺いしたいと思います。
  66. 町村金五

    ○町村国務大臣 不特定多数のお客さんを常に迎えなければならぬというような立場にあります業態の営業をいたしておりまする者は、これは大切な人命を常にお預かりをしているんだという考えの上に立って万全の施設もする、またその施設が有事のときに十分生かされるように平素からの用意をしておくということは、これはこういった多数の人を常に収容しておる業態を持っておりまする者の当然の責任であって、何も消防法でそうなっているからそうしなければならぬというはずのものではないと私は思うのです。ただ実際問題としては、営業を一生懸命にやっておりまする者は、えてして大事なそういった点の防火に対する責任のことがおろそかになるということが、いまも御指摘がございましたように、消防庁あたりが特別査察をいたしてみますると、そういったまことに遺憾なことが指摘されるような状況にあるというのが、どうも現実の実態のようでございます。私どもは、やはりこういったことは法の改正以前の、そういった多数の人命を常に預かっておる者のこれはもう第一義的な実は責任でなければならぬはずだ、こう思うのでありますけれども、現実は必ずしもそういうふうになっていない場合も相当にあるということが、いま、たとえば特別査察の結果によってあらわれたようなこともそのことのあらわれではないかと思うのであります。  したがいまして、私どもは、今後やはりそういった方々の責任感をまずひとつ十分に自覚をしていただくような指導というものも必要でございましょうし、同時に、今回の消防法改正によりまする防火に関する諸般の施設というもの、これで必ずしも私は万全だとは思いませんけれども、しかしこのためにはばく大な資金も必要とするわけでありますし、いままでそれほどの施設でないにほかかわらずそれが十分行なわれず、しかもそれが役に立っていないよう場合が非常に多いということを考えてみますると、やはり今回の改正によって一歩前進をさせていくということは私どもの当然なすべき事柄だ、実はこういう判断に立って今回の改正案について御審議を願うということにいたしたわけでございます。  いずれにいたしましても、私、いま御指摘になりましたような問題については、先ほども防火管理権原者とかいうお話がございました、その権原者が、ほんとうに自分らはこういった大事な責任をしょっているんだという自覚を深めていただくということが何よりもまず第一に必要なことだというふうに私は考え消防庁としての指導がはたしてどこまで徹底いたしますかは問題でございますけれども、そういった点を特に重視してひとつ指導に当たるということを基本の方針として進んでまいりたいと思います。
  67. 多田光雄

    ○多田委員 実は企業の自覚ということですけれども、もちろん営業している上は、これは営業が大事だということは私ども否定はいたしません。しかしながら、毎回言われている、一日数万という人が入るデパート地下街というのは、単なる営業だけでは片づかない重要な内容を持っているわけです。  そこで、これは消防庁に伺いますが、昨年九月二十五日の、大阪の高槻市でのあの西武タカツキショッピング・センターの火災からどういうふうな教訓を学んでおられるか、それをひとつ伺いたいと思います。
  68. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 西武デパート火災は新築中に発生をしておるわけでございます。そのほか、デパート火災のいままでの非常に多くのものが工事期間中に火災にあっておる、この火災例が非常に多いわけであります。そういう意味におきましては、やはり工事中というのは防火管理体制がどうも二元化される。工事担当者と建物の所有者との間に二元化されて、そこに責任がわからなくなるということで、どちらかというと工事期間中において防火管理体制に不備が生じてくる。そういう意味におきましては、デパート等における工事期間、これを特に注意して防火体制をとってもらわなければならないという問題が一つあるわけです。  それからもう一つの問題は、西武デパート火災は、間もなく竣工する、間もなく開店する、こういうことで、工事期間中にかかわらず大量の商品あるいは装飾物というものが搬入されておった。そのために火災が非常に大きくなったということでございます。しかも、まだ工事期間中でありますために、それに対応する消防用設備というものが作動する状態になかった。そのために火事も大きくなったわけでございまして、やはり工事期間中と営業の準備段階に入る期間というものでははっきり区別をして、商品を運び込む、あるいはデパートとして使用するためのいろいろな装飾物を搬入するという段階においては、消防用設備が作動する状態に置かなければならぬじゃないか。そういう意味におきまして、建築が完了する以前におきましても、営業の準備体制に入るというような場合には、まず消防設備を作動し得る状態にしておいて開店準備に入るという体制が必要ではないだろうか。そういう意味におきまして、私どもも、この西武デパート火災後における指導といたしましては、消防設備をまず完備させて営業準備に入るというような指導をいたしておるわけでございます。
  69. 多田光雄

    ○多田委員 私もおっしゃるとおりの現象だったろうと思うのです。工事中で、しかも九月二十九日のオープンを前にして、完成検査を待たないで大量の商品を搬入してしまったということですね。  そこで、現行の消防法の場合、建築中に対してはなかなか規制がむずかしくなっている、その用途が確立した時点から消防法が適用される、こうなっているわけですが、今度のこういう苦い経験から、なぜ今度のこの法改正にあたってそういう問題を盛り込まなかったのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  70. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 いつの時点から消防用設備を作動させるかという点は、非常に技術的にむずかしい問題があるだろうと思います。どういたしましても消防用設備は、建築工事の中におきましては最終の仕上げ段階で完成をするという形になるわけでありますから、工事中に消防用設備を動かす、作動させる状態に置くということは、工事の最終段階でなければ現実問題としてはこれを作動させることができない、こういうことになるわけでありますから、そういう意味におきましては、営業準備に入る、建物が建築業者の手を離れて施行主のほうに引き渡しをされる、そして施行主のほうが営業用の建物としての営業準備体制に入るという段階においては、消防用設備をまず検査し、そして常時作動体制にある状態になって営業準備に入らせるという指導が望ましいのではないだろうか、こういうことで、現在の法体系からいいまして、工事期間中のものについて特に規定を設けるということはなかなか技術的にもむずかしい点がございますので、現実の行政指導の上におきましてそういう措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  71. 多田光雄

    ○多田委員 大洋デパートの場合も、これは工事をやっていたということなんですね。しかも、まさにその工事をやっている最中が盲点であり、また法の上でもこれが盲点になっている。そこがやはり火事が起きてくる非常に大きな条件となっているわけです。ですから私は、法改正の上でいろいろな困難はあろうかと思いますけれども、いままでの苦い経験を振り返ってみて、やはりそこを法制化していくということが非常に大事だろうと思う。とりわけ、先ほど来言っていますように、営業をやっていますとどうしてもそれが先行してきて、そして消防の観点というのがあと回しになってくるわけですよ。これを、大臣も自覚というようにおっしゃっておりましたけれども、私はもちろん企業主の自覚というものが大前提だと思いますが、それだけでは解決できない事例が無数にあるわけですね。そういう意味では、ぜひひとつこの問題はさらに検討を続けていただきたいというように思うのです。  あわせて、これは建設省に伺いますが、建設省は建築基準法の改正案を出していますが、消防審議会の一月三十日の「百貨店等の防災対策に関する意見」を十分検討されてこの改正案を出されたのかどうなのか、あるいはまた、東京消防庁査察結果、こういうものも検討をしてやられたのかどうなのか、これをひとつ伺いたいと思います。——建設省、来ていますね。
  72. 佐藤温

    佐藤説明員 消防審議会におきます一月三十日の意見書につきましては、私どももお受け取りをいたしまして、今回の建築基準法の改正の時点におきまして取り入れるものは取り入れていくという態度で検討を進めてまいったわけでございます。
  73. 多田光雄

    ○多田委員 東京の先ほどあげた例からもそうだし、それからまた消防の第一線に立っている人の意見を聞きますと、屋外階段、これの有効性が非常に強調されているのですよ。それからまた売り場に面して、あるいはまた各階ごとにバルコニーをつくっていく、そういうことが非常に有効だ、これが実際に第一線で苦労している消防署の中にもあるのです。そういう意味で、私はこの屋外階段、これを最悪の事態に備えて大きなデパートその他でつくるということが非常に大事だと思うのですが、こういう問題が今回の案の場合で御検討されなかったのかどうなのか。そしてまた、それがされたとすれば、どうしてそういうものをつけるのにこれが問題点があるのか、ここをもう一度伺いたいと思うのです。
  74. 佐藤温

    佐藤説明員 屋外階段並びにバルコニーの問題は、避難上有効な施設であることは私どももよく承知をしておるわけであります。建築基準法の改正は、技術的な基準はすべて政令に譲ってございます。したがいまして、今回御審議をお願いいたしております建築基準法では、法律が成立をいたしましたら私ども政令の基準を検討いたしまして、この中に必要な措置をすべて盛り込んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。それで、御承知のように、大洋デパート火災事故にかんがみまして、調査委員会で事故の実情並びに今後の対策等につきましても御検討をいただいております。その中でも、屋外避難階段の問題それからバルコニー等の問題についても御検討をいただいておりますので、その御検討の結論をいただきまして、政令の改正段階で検討をしてまいりたい、かように考えております。
  75. 多田光雄

    ○多田委員 この現場の自治体消防関係者は、私も会って聞きましたけれども、体制も財力も限界の中で、消防法ではどうにもならない問題としてこのことを言っているのですよ。  それで、これは建設省がいいのか消防庁がいいのですか、都内のデパートでこの屋外避難階段をつけているところ、どれだけありますか。
  76. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 具体的に現在都内でどれだけ屋外避難階段があるかという点は、私どものほうでよくわかりません。ただ、私どもとしましては、隣の建物に対する避難橋の設置あるいは屋外の非常階段はできるだけ設置してもらいたいということについて、それぞれの企業者のほうにお願いをしておるというのが現状でございます。
  77. 多田光雄

    ○多田委員 いや、私もデパートはわからないのです、幾らついているか。ただはっきりしていることは、ほとんどないということです。ホテルは、これは京王プラザですか、それからヒルトンホテル、ニューオータニくらいなんです、あるのが。あとはこれが自主性にまかされておる。しかも最も有効だというのですね。たとえば煙の問題がある。階段が煙突状になってくる、そういう場合、外から脱出をしていくとか、あるいはまた各階に連係した屋外階段を設けていくということが非常に有効だということは、第一線の消防隊の人がそのことを言っているのですよ。  そこで私、いろいろ行政指導でやられる、こういうことなんですが、これは大臣にお伺いしたいのです。昨年五月二十九日の閣議で、当時の江崎自治大臣はこ言っているのですね。「ビル火災の安全確保のため、屋外避難階段設置の必要性を強調している」と、こういうふうに私ども聞いております。この点、まあ前任者ではありますけれども、私はこれがどれほど重要なものかということはこの一事でおわかりになると思います。大臣にぜひひとつこの問題を、単に行政指導というだけではなくして、法を改正してもこれをつけさせる、特に数万集まる大きなビルであるとかその他にはつけさせる、こういうことを御検討願えないかどうか。  それから、先ほど私が申し上げました、つまり建築中のビル対象物件に対しては消防法が適用されない。しかもそこが盲点になって相次ぐ火災の原因になっている。そうすれば、やはり法の上でそれを規制するということが非常に大事だろうと思うのです。行政指導だ、こう言いますが、最も困難なところをややはり避けている。ここに実は、一般のデパートその他の企業主の自覚が前提ではありますけれども、指導の上で重大な事故を誘発する条件をつくる結果になっているじゃないか、こう思いますので、ひとつ大臣の御答弁をお願いしたいと思います。   〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 町村金五

    ○町村国務大臣 私も、デパート等の建物で、何といってもああいうふうな不特定多数の人が非常にたくさん出入りをし、しかも燃えやすいものを山と積んでおるところでありますから、一たび火災が出れば非常に煙が一どきに吹き出すというような状態でございましょう。したがって、この避難階段とバルコニーというものが、いま御指摘もございましたが、私も消防上きわめて有効だというふうに考えるのでありまして、いま建設省のお答えでは、これは政令段階においてやれることだ、こういう御答弁もござましたので、私としてはぜひひとつ政令の中で、少なくともいまのデパートだけについてでもまずこれを取り上げさせるということについては、ひとつ建設省当局と政令段階においてよく相談をするということにいたしたいと思います。  それからなお、建築途上の建物については消防法が適用されるに至っていない。これはいま消防庁長官からお答えを申し上げましたように、建築過程にあります建物については、いま直ちに消防法を適用するということにはいろいろ難点があるのではないか。問題はむしろ、大洋デパートのように、すでに営業を開始しておって、しかも相当大規模な改築工事等が行なわれておるというときが問題ではないか、すでにお客さんも入っておるわけでありますから。まあ新築中の建物は、まだ一般の方を入れているという段階じゃございませんからいまのような消防庁長官のお答えでよろしいんじゃないか。ただ、いますでに営業を開始しておって、しかも相当な工事をやる、その間に防火の責任というものが必ずしも明確にならないままに問題が起きるということは、私はたいへん遺憾なことだと考えますので、その工事の内容、大きさ、いろいろあるのでございましょうから、いまここで一がいにどうこうということはちょっと申し上げにくい。簡単な工事であっても、その際すぐ営業はやめてもらうんだということまで言い切ることは私は多少無理があろうかと思いますけれども、工事の内容、規模その他をひとつ十分勘案をしながら、まあ小規模なものについてまで強行して営業をやめさせるということはちょっと無理であろうと思いますが、それはやはり当該百貨店等の経営者の防火に対する責任感の問題、あるいは消防機関といったようなものがその間にありましてどう処置するかということは、それぞれの工事等に関連をして具体的に相談をされながらきめていく。いずれにいたしましても、私はそういう場合には、特に経営者としては防火上平素以上の細心の注意を払わせることは当然のことであろうと思うのでありまして、その点は大体そういった考え方で指導していったらいかがなものか、かように考えておるところであります。
  79. 多田光雄

    ○多田委員 いま大臣の御答弁がございましたけれども、いずれにしてもいまあげた二点についてはさらにひとつ御検討を願うと同時に、かりに法ができない以前でも、いま政令の上でもきちんとやっていきたい、こういうお話でございますから、ぜひひとつ指導監督を強めていただきたいと思います。  次に私、コンビナートの問題に移っていきたいと思うのですが、通産省来ておりますね。  最近十年間の石油化学コンビナートの火災の発生件数、これをひとつ述べてください。それからいま一つは、なぜこう事故が絶えないのか、その原因について通産省としてどう考えているのか、それを述べてください。
  80. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 お答え申し上げます。  過去、昭和三十九年から昭和四十八年までの事故件数の累計でございますが、七十二件ということになっております、平均毎年大体七、八件ということでございますが、四十八年はまことに不幸なことでございますが十四件ということで、非常に多数の事故が発生したわけでございます。  昨年の秋、一連の事故がコンビナートで起きたわけでございますが、その事故原因を見てみますと、直接には従業員の誤操作あるいは設備機器の点検の不十分、あるいは異常な事態が発生しましたあとの措置が非常に不適切であったということ、ここら辺に主たる原因があるわけでございます。しかしながら、そのバックグラウンドを見てみますと、工場自体あるいは企業自体におきます保安管理体制の不備、各種作業マニュアルの不備、保安教育訓練の不徹底、こういう事情もバックグラウンドにございましていま事故を惹起しておるということでございます。こういった事情にかんがみまして、私どもといたしましては全国約二千の化学石油工場総点検の実施をはかりますとともに、各種の通達を発しまして指導監督を強めておる状況でございます。
  81. 多田光雄

    ○多田委員 ともかく国会での審議を見ましても、昭和三十九年の新潟地震による昭和石油の火災事故以来、国会でもずいぶん論議され、あるいはまたいろいろな決議も行なわれているわけなんです。  そこで、これも通産省にちょっと立ち入って聞きますが、千葉県の市原コンビナート、ここで一月から最近まで火災が何回起きているか。その企業名と日時を言ってください。
  82. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 市原地区のコンビナートにおける最近の火災事故は、ことしに入りましてから三件ではないかと思います。
  83. 多田光雄

    ○多田委員 その企業名と日時を言ってください。
  84. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 出光興産の千葉製油所、二月の七日でございます。それから宇部合成ゴム、それが二月十五日、それから丸善石油千葉製油所、これが二月十八日ということでございます。
  85. 多田光雄

    ○多田委員 私が県からもらっているのは四件なんです。しかも死傷者が出ておるのがあなたから、報告になってない。一つはいま言ったように出光ですね。それから次に二月十四日にチッソですよ。昨年あの大事故を起こしたチッソ、これが死傷者が出ておるのです。それからいま言った宇部合成ゴム、それから丸善石油こういう四つの事故が表向き報告されている問題ですが、そこで消防庁に伺いますが、この場合−この場合というのは市原の場合ですが、この事故が消防署にどのように通報されたのか。これは報告になっておりましょうか。これは私ども事前に聞いておりませんからあるいはおわかりにならないかもわからないが、事、非常に大事な問題ですからちょっと伺っておきます。
  86. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 私ども、はっきりした記憶はございませんけれども、市原地区での通報が一時間がそこら、相当おくれた時期において通報されたように記憶いたしております。これは正確じゃございません。
  87. 多田光雄

    ○多田委員 これは現地でもいろいろ聞いてはっきりしたことなんですが、たとえばチッソの場合ですね、これは火災の報告もしないで、けが人が出たので救急車を消防署に依頼しておるのです。それで市の消防本部の救急車が行って初めて火災がわかった。それから宇部合成ゴムの場合、二月十五日、これは関連研究所の従業員から宇部がどうも火災らしいという連絡で市の消防本部がかけつけておるのです。それから丸善石油、これは二月十八日ですが、自衛消防隊が消火活動に入ってから市の消防本部に連絡しているのです。  つまり、昨年御承知のとおりチッソでは十月八日に大爆発、火災を起こして、死亡者四名、それから企業の中から負傷者九名です。さらにまた千五百メートル離れたところに軽傷者が出ておるのです。これは軽傷者です。それから住民の負傷者が二名、それから住民の被害が二十一件、ガラスは相当広範にわたってこわれた、これは御承知のとおりです。これが昨年の秋に起きておりながらしかも四件も表立って報告されている事故が起き、その事故がいま申し上げましたように消防本部に対する連絡が非常におそい、こういうのがいまの実態じゃないかと思うのですよ。すべての企業を私はそうだというふうには思っておりませんけれども、こういう問題について、消防庁長官に伺いますが、どういうふうにお考えになるでしょうか。
  88. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 石油コンビナート地域における爆発事故等を見てまいりますと、私どもとの関係におきましては、非常に消防署に対する通報がおくれがちだということは御指摘のとおりでございます。その点で、消防としましてはその地域住民との関係において、防災体制をとる時間的なロスが非常に多くなってくる、この点が非常に消防側としましては問題でございます。もしもそれが大きいタンク等の火災等になりました場合には、どうしてもその地域の住民との関係におきまして相当な対策を講じなければならないわけでありまして、そういう時間的な余裕がなくなるという点において、非常に私どもは問題にしているわけでございます。
  89. 多田光雄

    ○多田委員 もうちょっと立ち入ってチッソのことを聞きたいと思うのです。これは消防の皆さんのために私言っているんですからね。消防庁の皆さんのためというだけじゃなくて、第一線に戦っている地域住民のために、いかに火災を防止するかという問題で述べているのですから。  チッソの生産能力と、昨年の一月から九月ごろまでの実際の生産能力はどれだけあったか、これはわかりますか。これは私ども聞いていませんでしたか。
  90. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 ちょっと資料を持ってきておりません。
  91. 多田光雄

    ○多田委員 私、この間市原に入って聞いたんですが、あそこの五井工場の堀川さんという事業部長の話によると、月産一万トンです。ポリプロピレンですが、会社が県に報告した数量は幾らかというと、昨年の一月から五月、これは毎月八千トンです。つまり生産能力の八〇%ですね。ところが六月から七月にかけては一万トンです。一〇〇%やっています。フル稼働です。八月から九月は一万一千トンです。一一〇%です。普通、内外を通じてこの種の装置の場合、稼働は大体平均七五%から八〇%といわれているのです。ところが一〇〇%をこえている稼働です。これは県に会社から報告になっているのですから。こういう無謀な生産が強行されている。  私、これと関連してちょっと申し上げますけれども、出光の徳山工場の爆発のとき、これは新聞報道で見たんだが、労働者の証言で、ちょっとした事故でも、装置をとめることは他の関連会社に影響が大きくなるので、すぐ始末書をとられる。つまり、生産を急ぐので、ちょっとしたミスでも労働者は言えないのです。自分の責任になってくるからです。これは現場を少しでも知っている者ならばだれも否定できないのです。それから徳山の場合、この爆発事故の原因に直接関係があると見られていた労働者が失踪したでしょう。そして本人がその後あらわれるまで会社はこの失踪を隠していた。私は、どこに原因が起こるかという、その根本の本のところをはっきりさせないと、いつまでたっても行政指導だ云々と言っていてもこれがおさまらないじやないですか。  そこで私は消防庁に伺いたいのですが、チッソの五井工場の防火体制がどうなっているか、ちょっとこれを伺いたいのです。つまり、自衛消防隊、あるいはまた最近いろいろ組織がえをしてきていますが、これを知りませんか。あるいは、チッソでなければ千葉のコンビナートの例でもよろしいです。
  92. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 チッソの五井工場のあります市原市の消防力は、化学車が六台、それからあわ原液の備蓄分が十九・二キロリットル、それから油処理剤が二・七キロリットル、消防職員が二百七十人という状況でございます。  それから企業の自衛消防力でございますが、これは……。
  93. 多田光雄

    ○多田委員 企業の体制を述べてください。
  94. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 五井工場自体の消防力はちょっとはっきりいたしておりませんが、五井地区における企業の全体の自衛消防力は、化学車が三十五台、オイルフェンスが九千二百四十九メートル、あわ原液の備蓄分が三百四キロリットル、油処理剤が七・一キロリットル、専任消防隊員が三百六十三人ということになっております。これは五井地区の自衛消防力です。
  95. 多田光雄

    ○多田委員 私、じかに五井工場に行ってあそこの幹部の方に伺ったのですが、確かに旧式の消防車を含めて二台ございまして、そこで私は、そこの防火体制、安全体制はどうなっているのかということを伺ったのです。そうしますとこういうことになっているのです。これはよく覚えておいてください。というのは、このコンビナートの中の企業の体制こそが問題なんですよ。それを私は消防庁長官、ほんとうに知っておってもらいたいと思いますよ。きれいごとではなくして、その中身がどうなっているかということです。  たとえばチッソの五井工場の場合、安全管理室というのがあるのですね。これはスタッフ的な組織です。ところが、この安全管理室は消防だけかと思ったら、そうじゃないのです。ここは十五、六名おりまして、安全のほかに衛生もやっている。そうして安全関係は、やる人はおそらくこの半分以下だろうかと思う。しかも私が驚きましたのは、昨年の事故の前は、そこを管理監督する部門は環境安全部というのですよ。七、八名だったと思う。そして、県も言っているんだけれども、ここは中の消防の問題よりも対役所の窓口でございまして……こう言っている。事故が起きるわけですよ。このチッソの事故が起きたあとに、県の「保安対策の確保について」という二十九項目の指示が企業に出されているのです。それから市の消防本部からも二十数項目の指示が出ているのです。それで初めてここでは、かろうじていま言った十五名ぐらいのスタッフ的な組織である安全管理室という一つの部門をつくった。私はそこの室長にも会ってまいりました。そのほかに自衛消防隊がある。私は消防隊の運転手にも会いたかったけれども、会えなかった。事故の前まで消防車の運転手はほんとうに専任でやっていたのかと聞きましたら、消防の担当の人がにやにや笑っているのです。兼任なんです。火事はいつでもあるわけじゃないから、ないときは別な仕事をさせられているのです。  こういうところまでほんとうのメスを入れなければ、なぜ化学工場で事故が絶えないのか、あるいはその事故を未然に防止できないのかというほんとうのメスは入れられないのじゃないか、私はこういうように思うのです。ですから、あの大事故を起こす化学工場、コンビナートの各工場の防火体制というものを、ただ会社の幹部からの報告だけで判断しないように。私が行ったら図面を書いてくれました。非常にきれいな図面です。文句の言えないような図面でありますけれども、一体それに魂が入っているかどうかの問題なのです。  そこで次に伺いたいのですが、確かにそういう体制を企業はつくってきているのですけれども、さきに、全国消防長会コンビナート特別委員会の井上委員長ですか、こう言ってますね、「装置に何らかの異常が認められた場合は、操業をストップして点検に当たることが大事」と言っているのです。私はそのとおりだと思う。ところがあの徳山工場の場合にも、事前にこれは問題があった。企業の中でそういうスタッフ部門や自衛消防組織をつくっているけれども、あぶない、事故が起きそうだというときにそれをストップできる権限が一体与えられているのだろうか。私はその点でこまかな事情を聞こうと思って、書類を出しなさいと言ったのです。出したのはこれ一枚きりなのです。何のことはない、組織図ですよ。「五井工場分掌事項」と書いて、各室と部を書いて、そして「安全管理室に次の事項を分掌させる。(一)安全に関する事項 (二)衛生に関する事項」私は衛生に関する事項を聞きにいったのじゃないのです。この程度のものしか私に出さないのです。これは国会議員が行ってそうなんですから、消防署が行ってほんとうに実態がつかめるのだろうか、こういう疑問が私、わいてきたわけです。  そこで次に、これはもう時間も来ましたから、伺いますが、非常に複雑化した石油コンビナートに対する安全管理をチェックする機能、いまどうなっているでしょうか。これは特に通産、労働、消防に関係することですが、通産省の場合は、これは県に委任して高圧ガス取締法がありますね。それから労働省の場合は労働基準監督局、これが労働安全衛生法に基づいてやっている。それから消防庁の場合は、これは自治体消防消防法に基づいてやっているわけなんですね。ところが、これはもう数年前の国会でも論議になったのだけれども消防法でチェックできる危険物は、これは常温による液状であるものに限られる。そして沸点がマイナス一〇三・八度Cのエチレンは高圧ガス取締法による通産省の管轄で、消防対象外なんです。さらにまた、ボイラー災害などのチェックは、これは労働安全衛生法に基づいて労働省の所轄事項、こういったぐあいに、一つの工場の狭い職場の中でも防災体制はばらばらなんです。  これは三十九年六月十六日の衆議院のこの地方行政委員会消防の問題特にコンビナートの問題をやったときも、これは門司委員がそのことを指摘しているのです。つまりある工程までは高圧ガス、だからこれは通産省の管轄なのです。その先が低圧だ、第二の工程は。そして「危険防止に対する一貫性というものはほとんどない」こう言っているし、それから同じ三十九年六月二十六日のこの地方行政委員会では、ここでは「科学消防対策強化に関する件」というのが決議になっているのですよ。この決議の中の趣旨説明でこう述べていますね。「また危険物関係法規は、消防法、高圧ガス取締法、火薬類取締法等に分かれており、災害防止の体制の一貫性に欠けている面があるのであります。したがいまして災害予防の適正をはかるため、これらの点を科学的に究明して、法令に所要の改正を行なう必要があると認められます。」これは提案者の田川委員がやっているのです。  こういう問題で、消防庁としてこの一貫性の問題に対してどういう措置や対策をとられているのか。またこういう特別決議が行なわれていることに対して、法的にどういう措置をとられてきているのか、伺いたいと思います。
  96. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいま御指摘のとおり、保安関係につきまして法律が三つに分かれておりまして、それが各省の所管になっておるということで、こうした保安関係について一元化すべきではないかというような御意見のありますことも十分承知をいたしております。  ただ、この場合に、こうした保安の監督関係を一本化するか、あるいは現在のままで、それぞれの法律に基づいて所管省がそれぞれの立場でチェックをしていくかという点につきましては、確かに一長一短あるということは考えられるわけでありまして、安全体制について三種にチェックをしていくということは、安全管理な別な角度から三者の目で見ていくという意味でむしろ適切ではないだろうかというような考え方もございますし、そうした三者が見ていくということにおいて、谷間ができやせぬか、落ちこぼれが出てきやせぬかというような問題もあるわけでございます。この点につきましては、従来関係省間におきまして、必要のつど連絡会議等を設けましてその間の調整をはかってきたわけでございまして、主として課長レベルにおきましての事務の連絡調整を行なってきたわけでありますが、さらに保安行政の徹底をはかるという趣旨から、各省間で相談をいたしまして、本年度から三省庁の局長レベルによる常設の連絡会議を設けて、この保安行政の徹底をはかっていきたいということを考えておるわけでございます。  さらにまた地方団体におりた場合に、これがそれぞれの地元でどういうふうになるかといいますと、労働関係につきましては労働基準関係のほうの機関が処理し、それから高圧ガスあるいは消防法は府県の行政を通じまして、一応この二法の関係は地方が担当し、そして消防法は市町村が担当するという形になりますので、これはそれぞれの地域の防災会議等を通じましてこの調整を行なっていくというふうにして、必要な行政の調整をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  97. 多田光雄

    ○多田委員 私、千葉へ行きましたら、県の担当者も言うのですよ。いま長官のおっしゃったように、三者三様にいくという場合のメリットもある、そのとおりだと思うのです。同時に、この厚い企業企業秘密、先ほど言っている、企業の中になかなか、聖域のように立ち入らせない。ここを破る、ということばは語弊があるけれども、立ち入って、地域住民やその他のためにほんとうに防火体制をとるとなれば、相当な協力体制が必要だ。現に、おっしゃったように地元でもこの三者でやっていました。これを義務づけるぐらいにしてほしい、さしあたり法律的に一本化できないならば、こう言っているのだけれども長官、どうでしょうか。私は非常に道理のある要望だと思うのですがね。
  98. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 現在、防災関係の協議会というものは、防災対策基本法の規定によりまして、それぞれ地元で設けて、いま連絡調整をやりながらお互いの保安行政の分野を担当してやっているわけでありますが、私ども考えますには、消防自体についても消防職員の力をつけていかなければならない、実力をつけていかなければならない。それによっていろいろ問題のある点を、企業と十分太刀打ちできるような実力でこれを見ていかなければならないわけでありまして、この点は私どももできる限り消防職員の、特にこうした理科系の大学卒業生というものをできる限り消防職員に採用して、そうした消防職員の力をつけていく、こういうことをいま指導をしておるわけであります。市原の地域におきましては、市原市の消防職員というものの中で、理科系大学の卒業生が現在消防職員となっておりますのは六名、これも経験年数が大体四、五年たってまいりまして、だんだん力がついてきたというふうに考えておるわけでございます。そういうようなことで、消防自体につきましても、十分外から企業の内部について、その内容が判断できるような体制をとっていく必要があるだろうというふうに考えておるわけでございます。
  99. 多田光雄

    ○多田委員 通産省に聞きますけれども、千葉県下の高圧ガス取締法の対象工場、これは幾つあるか御存知ですか。それから監督している県の職員は何名いますか。たぶん県は商工労働部の工業課だったと思いますが。
  100. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 工場、事業所の数は、いまちょっと手元に資料がございませんけれども、監督官の数は、千葉県の場合、工業保安関係、課長以下二十一名でございまして、うち八名はごく最近におきまして増強されたものでございます。
  101. 多田光雄

    ○多田委員 通産省から委任を受けて高圧ガス取り締まりをやっている県の人ですけれども、私は数日前行ったのですからね。県の商工労働部の工業課十七人なんです。そして十七人全部これをやっておるのじゃないですよ。火薬取り締まりだとかその他やっていて、このコンビナートを担当しているのは五人なんです。つまり五人でどういうふうになっているかというと、コンビナート関係二十社で二人なんです。それから中小企業関係の約八百の事業所を三人で担当している。これは長官、覚えておいてください。しかも年間三百件の許可申請書で、これで手一ぱいだというのです。コンビナートに対しても、定期検査のとき保安記録を見せてもらうのが実情だ。そして必要に応じての立ち入り検査までなかなか手が伸びない。チッソ石油の場合、昨年九月三十日の地震のため変圧機に異常を起こしたという報告が県に届けられたんだけれども、事後処理は結局会社にまかせて、指導や検査に入れなかったと言うんだ。私はこれが実態だと思うのですよ。長官、先ほど三者三様だと言われたけれども、三者のうちの一つがこの実態なんですよ。  それから労働省に伺いますけれども、現在千葉の労働基準監督署、ここに職員が何名いて、対象事業数はいくらか、これを押えておりますか。
  102. 野原石松

    ○野原説明員 対象事業所数は正確に把握しておりませんが、現在千葉署には安全を専門に担当している職員が、安全専門官一名、近くもう一名、これは衛生専門官ですが、やはり技術系でありますので安全のほうも十分こなせると思います。これを増員をする。そのほかに監督官が、正確に把握しておりませんが、数名配属されております。
  103. 多田光雄

    ○多田委員 事業所数は、私の聞いたのでは一万一千カ所なんです。これは四十五年度です。それで労働基準監督官、これは千葉労働基準監督署、署ですよ、ここは労働基準監督官が十一名なんですよ。私のほうが知っていますよ。それから事務官が十三名、それから技官——技官といっても電気です、これは二名、計二十七名というように聞いております。  ところで、もっと内容を立ち入って調べてみなければならぬ。監督官十二名のうち技術系統は五名なんです。専門は機械と技術関係で、化学系統はいないのです。それから十二名のうち、外に検査に出られるのは六名程度だと言うのです。他は署長その他で出られない。それが一万一千カ所ですよ。ですから監督官が外に出るのは大体月に半分程度だ、十四、五日と言っていました。この分で全事業所を回るとなると十一、二年かかるのです。  それからもう一つ、千葉の監督局、これは京葉コンビナートを見ているでしょう。ここで監督に当たるのが、実際に動ける監督官が十八名で、うち六名が技術屋なんです。ところが、化学コンビナートでありながら化学のほうの専門家は二名にすぎないのです。他は機械三名、金属一名、こういう状況なんです、長官。  だから、頭数も足りないし、その頭数の中身を見たら、石油化学コンビナートにふさわしい中身になっていないのです。生産第一主義でやっていて、しかも企業秘密でもってなかなか内部を見せないというこの企業の中に、これで一体どうやって立ち入って、ほんとうに消防体制、防災体制を点検できるのか。しかも法律が三つにも分かれていて、これがばらばらなんです。私はこのことを極端に針小棒大に言っているのじゃないのです。石油化学コンビナートにおける火災というものが万一起きると、それが重大な災害をもたらしてくる。これは事と次第によって一つの町がつぶれるぐらいの損害を与えるのですよ。ところが通産省もあまりよく御存じない。それから労働基準監督署も、各課うまくいっていますという程度のことである。問題はその中身なんです。これがこういう実態なんです。私は通産省にほんとうに責任があると思いますよ。  そこで、今度長官に私ひとつ申し上げたいのですが、何といってもコンビナートの火災、これはビルもそうですが、企業責任ですよ。このことは全国消防会議の昨年の、四十八年十一月二十六日の要望書、ここの中にも企業責任を明確にせよというのが一項目あげられている。つまり、この企業責任という聖域に、ほんとうに消防署や通産省やそれから労働省がもう一歩突っ込んでいけるかどうか、これが私はコンビナートにおける事故を未然に防いでいく非常に大事な勘どころだろうと思っているのです。この点どうでしょうか、長官
  104. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 石油コンビナートにおける防災責任というものは、本来、企業みずからが負うべきものであるということは御指摘のとおりであります。したがいまして、そうした防災責任を果たしますために、それぞれの事業所が自主的に設備の保安点検、整備の徹底をはかっていくということは当然のことでございまして、それに対応して消防機関による立ち入り検査というものもあるわけでありますけれども、これはいわば消防法の立場に立って、消防がそうした企業の保安点検に対する推進と補完という立場で行なわれているというふうに考えるわけであります。  さらにまた、化学工場等における防災体制といたしましては、一たん火災が発生してしまうということになりますと、現実問題として、消防の現在の技術から見ましても、それを一挙に消してしまうということはなかなかむずかしいわけであります。やはり火災を発生させない、それからまた火災が出た場合には、みずから備えられておる固定設備であります消防設備によって火を消すということに相当重点を置いてもらわなければならぬ。したがって、単に企業が自営消防力を持つというだけではなくて、むしろ消防設備企業設備に固定してつけていく、これに相当な金を入れてもらわなければならないというふうに考えておるわけでございます。こういうものも含めての点検ということになるわけでありますが、消防といたしましても、こうした化学工場等に対する立ち入り検査を行なうというには相当程度の専門的な知識が必要である。そのためにも、職員を充足あるいはその教育というものに、私ども相当力を入れていかなければならぬというふうに考えるわけでございます。
  105. 多田光雄

    ○多田委員 そこで、私、この中でいま消防庁のことは触れませんで、労働省、通産省ですけれども、一番苦労しているのはだれかといいますと、これは市町村の消防署ですよ。通産省関係で事故が起きても、労働省関係の不行き届きで事故が起きても、火事が起きますとみんな消防署長のところに文句を言ってくるのです。法律で別々なんだけれども火事といえば消防署と、こうなっちやうのです。だから、現場の消防署長さんなんかに会いますと、サイレンの音を聞いただけでどきっとすると言うのです。そうだろうと思うのです、特に石油コンビナートの場合は。しかもこの地方自治体が、地方自治体といってもこの場合は市町村ですよ、これがいま乏しい財源の中で、コンビナートではたいへんな装備をしているのです。たとえば、私この間市原に行ってみましたら、日本に四台しかないという装甲化学車、これは長官ごらんになったでしょうか。なかなかもう戦車みたいなものです。四・五ミリの鉄板で囲まれて、これは昨年ですか、二千五百万したそうですね。こういうものを一つの市が買わざるを得ないのです。それは住宅の火事のためじゃないのです。石油コンビナートの火事のために、市が膨大な金を出してこれを買うのです、国からの補助もあったようですが。  そこで私申し上げたいのですけれども長官どうでしょうかね、私は、石油化学工場にはせめてこれくらいの消防車を強制的に一台ずつ持たせる必要がある。だから市原の署長は言っていました。各工場がそれを持ってくれれば、こういう消防車を住民のために使えるんだ、こう言っているのです。そしてまた、みんな資本金何百億という工場ですから、そういう消防車を持つならば、協力するならば、火事も未然に防げるのです。  そこで私の一つの要望は、法改正は別にして、ああいう巨大な工場が最新の消防車を一台くらい持つ。市よりも古ぼけた消防車を持っていて、それで自衛消防隊でございますなんていばっていたって、どうして一体これで住民が納得できるでしょうか。そして負担地方自治体にかけているわけですよ。そのための人員も要る。こういう点で、少なくともこの程度消防車をコンビナートの工場に一台ずつ持たせるというような指導や、あるいは行政措置がとれないかどうか、これが一つです。  それからいま一つは、地元の消防署やあるいは地元の労働省関係、通産省関係の人が行って、企業の中の体制を調べるというのは私は容易じゃないと思うのです。顔なじみができればできるほどなかなかむずかしいのです。また、さっき長官がおっしゃったように、消防署にはそれだけの化学的な知識を持った人がいまのところまだ十分じゃない。そうだとすれば、石油コンビナート地域がかりに町の三分の一を占めていても、ここは巨大な地域なんです。その経済性からいっても。まさに国の視野で考えなければならないところなんですよ。そうだとすれば、企業の責任を明確にすると同時に、こういうコンビナート地帯に対しては、消防庁からしかるべき化学的な基礎知識を持った人、一定の権限を持った人が定期的に入っていってこれを調べるというふうな、思い切った措置をしなければ、泣くのは第一線の消防署であり、そしてまた第一線の数少なくて専門家のいない役所の出先なんです。そういう措置をとる必要があるし、またしなければならないほどの値打ちのある問題だ、私はこう思うのですが、どうでしょうか。
  106. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 まず第一点の企業の自衛消防力の問題でございます。確かに御指摘のとおり、現在企業が持っております自衛消防力というものは、最近の工場の施設等から見て現有の消防力自体が現実に即応しているかどうかという点になりますと、やはり検討すべき問題があるというふうに私ども感じております。さらにまた、それに対応いたしまして市町村自体の消防力につきましても、現在の社会情勢から見て現在の「消防力の基準」というものがこれで適当であるかどうかという点につきましても、これは十分検討する必要があるというふうに考えております。  そういう趣旨で、私どもの今年度の一つの大きい作業目標として、現行の「消防力の基準」というものを見直す作業を行ないたい。これによって、市町村の消防力のみならず、企業にいま課しておりますところの自衛消防力の基準というものにつきましても再検討する必要がある、再検討すべきであるというように考えております。これはすでに作業に入っておるところでございます。  それから第二点の、石油コンビナート地域等における消防職員の技術の向上、あるいは国からのそれに対する強力な指導の点でございますけれども、本年度の予算におきましてコンビナート地域の防災診断の仕事に要する経費の予算が取れましたので、計画的にこれから石油コンビナート地域における防災診断を実施していきたい。その際には、当然に地元の消防職員というものの協力を仰ぎつつ、また消防職員の指導も行ないながら、そのコンビナート自体並びにコンビナートを含むその地域の防災診断というものを計画的に行なっていきたいというふうに考えております。  なおまた、消防職員の資質の向上につきましては、消防大学校におけるこの方面の教育課程というものもふやすようにいたしてありますし、さらにまた、消防研究所等を通じましての技術的な指導ということもさらに重ねていきたいというふうに考えております。
  107. 多田光雄

    ○多田委員 この間、私、地元の札幌へ帰りまして、札幌市の財政を見て、たまたま消防の問題ということで予算を見せてもらったのです。基準財政需要額に満たないのですね。国が乏しい中で基準財政需要額を算定した。たぶん需要額が三十億だったと思うのです。ところが市が使っているのは二十七億ぐらいでしたか、三億はよそに回っているのですよ。そして消防署長さんに会いますと、札幌も百万都市になったからヘリコプターがほしい。一機幾らぐらいしますかと言ったら、いいので四億ぐらいだと言うのですね。何のことはない、それを使えば買えるのだけれども、その金がよそへ使われているのですね。つまり、私はいつかも消防委員会で述べたように、消防署の職員が、自分が消防署につとめていることで胸を張る、そしてほんとうにりっぱな仕事をしているということの自覚を持たなければならない。それにはまず待遇の問題もありましょう。ところが地方自治財政が乏しいから、結局大事な消防の金を横へ使ってしまう。こういう自治体は私は少なくないと思うのです。そういう無理算段しながら消防の問題をやっているのですよ。  だから、いまおっしゃった企業責任をほんとうに明確にして、そして持たせるものは持たせる、この指導がもしほんとうに貫かれていくならば、都市デパートの問題にしてもあるいは地下街の問題にしても、これは解決する糸口がつかめるだろう、私はこう思うのです。先ほども言ったように、一番大事なところに、どうもかゆいところに手が届かないような行政指導であっては、また第二、第三の徳山工場やチッソが生まれないという保証は一つもないのです。不可抗力もありますしね。ですからそういう意味で、せめてこの程度の自動車は企業に持たせるというぐらいの指導をぜひひとつ貫いていただきたいというふうに思うのです。これについてまだ明確な御回答がない、善処しますということですけれども。まあ、この自動車だけに限りません。どうでしょうか、ほんとうにそれを貫いていただくかどうか、もう一度お伺いしたいと思います。
  108. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに、いまいわゆる高性能化学車というものを企業で持っております台数は全国で六台ぐらいしかない、こういう状況で、施設の水準からいいますと、化学車にしましてもだいぶ性能の低いものが多いということは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、私どもも現在の消防力の基準というものが、現在の時点において、いまのいろいろな工場の施設の水準から見て適当かどうかという点は非常に問題があるだろうというふうに考えております。これは市町村の消防力自体につきましても私どもいま検討していきたいということで作業を進めておりますけれども企業の自衛消防力につきましても当然に検討していくべき問題だろうというふうに考えております。当然に企業の場合には化学車が中心になるわけでありますけれども、現在の施設水準に対応するだけの自衛消防力は備えてもらいたい、こういうつもりで私どもの作業を進めていくつもりであります。
  109. 多田光雄

    ○多田委員 ぜひひとつそれを力強く進めていただきたいと思います。  最後に大臣にお伺いしますが、本年三月六日、私どもの庄司議員がやはり消防の問題、 コンビナートの問題で企業責任ということを明確にしなくちゃいかぬというふうな質問をし、それに対して大臣のほうから、ひとつ積極的に検討してみたいと思うというふうな御意見が出されたわけでございます。そして、いま長官も、いろいろ検討、作業中であるということですが、いずれにしても、全国に、消防署関係で調べたところ五十何地帯かのコンビナート地帯がある。そして昨年でしたか、消防庁が定めた整備目標に照らしてみても、まだ目標に達してないコンビナート地帯が相当にある。むしろ達しているものが少ないという現状、こういう中で、企業責任を明確にして、そして持っている装備も、いまのような消防法規定だけではなくして、もっと高度のものを、ほんとうに責任を果たせるような装備を持たせていく、そういうものを義務づけていくというふうな点で、法改正を含めて御検討を願いたい。またそれは地域住民が望んでいるし、地方自治体がそれを望んでいることなんです。そういう点、ぜひひとつ善処をしていただきたいというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  110. 町村金五

    ○町村国務大臣 日本の産業構造というものは、近年重化学工業が非常に盛んになってまいり、そのために、過去においては起こらなかったような火災が頻発をしておる、こういう現状でございます。  そこで私は、まず第一に、こういった企業を経営しておって一たび起こりました火災というものは、当該企業はもちろんのこと、地域に対しても重大な被害を引き起こす火災となるわけでありますから、まず企業に、そういった災害火災を起こさないという責任感を持ってその企業の経営に当たってもらわなければなりません。  しかし、いかに注意をいたしておりましても、全く思いがけない災害というものはあるいは避けられないかもしれません。したがって、それに対処するためには、まず企業の責任者が、みずからの企業を防衛いたしまするためにも、できるだけそういったものを防衛するにふさわしいだけの、先ほど高性能の消防車というお話がございましたが、あるいは高性能の消防車ばかりではないと思います。もっと広い範囲に災害をできるだけ防遏するための施設を整えるということは、私は企業の当然の責任だと思うのでありまして、そういったいろいろな種類の化学工場に対しまして、一々いまの自治体消防に全責任を背負わせるということはとうてい不可能だろう。むしろ、これはやはり企業がみずからの責任において、その責任を果たすような広い意味における消防体制をみずから確立する必要がある。そういった点について、企業のこれに対する努力というものが、伺っておってどうも必ずしも十分でないように思いまするし、また消防としても、これに対する指導が必ずしも十分でなかったんじゃないかという感じを私は持つわけであります。  いま長官からは、そういった点についていろいろいま検討しておるということでございます。あるいは法的な改正等も将来検討しなければならぬということも起こり得るかもしれません。あるいは指導である程度まかない得るというところもおそらくあるのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、日本の産業構造が次第にこういった方面に高度化してまいるということになりますれば、それに対応するだけの防災体制というものがより整備されていかなければならぬということは申し上げるまでもございませんので、これはいろいろな関係省庁との十分な話し合い等も進めていかなければならぬことは言うまでもございませんが、まず消防庁自体として、そういったことについてひとつ積極的な態度をもって臨むべきだ、こう考えておる次第であります。
  111. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  112. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、明十二日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十六分散会