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1974-04-09 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月九日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 高鳥  修君    理事 中村 弘海君 理事 中山 利生君    理事 村田敬次郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 山本弥之助君       愛野興一郎君    大野 市郎君       片岡 清一君    亀山 孝一君       木村武千代君    島田 安夫君       住  栄作君    武藤 嘉文君       保岡 興治君    井岡 大治君       岩垂寿喜男君    細谷 治嘉君       多田 光雄君    林  百郎君       小川新一郎君    小濱 新次君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 町村 金五君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         自治政務次官  古屋  亨君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 松浦  功君         消防庁長官  佐々木喜久治君         消防庁次長   山田  滋君  委員外出席者         厚生省医務局指         導助成課長   木戸  脩君         厚生局保険局医         療課長     田中 明夫君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      田口健次郎君         通商産業省生活         産業局窯業建材         課長      木原 滋之君         建設大臣官房官         庁営繕部長   上山  勝君         建設省都市局下         水道部長    久保  赳君         消防庁安全救急         課長      矢筈野義郎君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     山口 鶴男君 同日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     山田 芳治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出第四一号)  消防法の一部を改正する法律案内閣提出第七  七号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小濱新次君。
  3. 小濱新次

    ○小濱委員 時間の制約を受けておりますので、かいつまんで問題点お尋ねをしていきたいと思います。  まず、再建特例債について、これは自治省お尋ねをしていきたい、こう思います。  今回の再建措置は、四十八年度末の不良債務のうち五百四十五億円だけを特例債として認めたためにすぎないわけでございます。そのため、許可の基準を、都道府県指定都市においては標準財政規模の二%、市町村では一%をそれぞれこえるものだけを認める結果となったわけでございます。したがって、都道府県では二%、市町村では一%以下は切り捨てということになっておりますが、この結果、県で対象になるのは岩手県と新潟県くらいのものであると聞いております。病院事業の性格から見て、このように財政規模でふるいにかけるのではなく、不良債務をかかえた自治体病院は全部対象にすべきではないのか、こういうふうに考えるわけでございまして、これはひとつ政務次官からお答えをいただきたい、こう思います。
  4. 古屋亨

    古屋政府委員 ただいまのお話でございますが、五百四十五億の再建債を計上しておるのに対しまして、もう少し全部の、現実には七百億以上の債務があるから、それに対して伸ばすべきではないかという御質問と思うのでございますが、公立病院特例債償還につきましては、利子部分を除きまして、当該地方団体一般会計に依存せざるを得ないと考えられておるのでございまして、財政規模に比較して不良債務が比較的小さい公共団体についてまで認めるには今度至らなかったというのが、現実状況でございます。  今後におきましては、公立病院の問題をほっておくことはできないということで、先生承知のように、地方公営企業経営研究会に対しまして、どうしたらいいかという諮問をいたしまして、諮問中間報告として出ました特例債の問題を、今度制度化をしておるのでございます。  ただ、御案内のように、公立病院の問題につきまして、いろいろの基本的問題がまだまだ残っておるのでございまして、その中間的な報告のありました一部についてこれを行なうということにしておるのでございます。いろいろの基本的問題につきましては、今後適切な措置が講ぜられ、健全な経営が確保されるよう期待しておるのでございまして、申し上げました地方公営企業経営研究会に対しても、これらの問題について検討お願いしておるところでございます。
  5. 小濱新次

    ○小濱委員 これは大きな問題でございますので、より以上の御努力を期待するところでございますが、厚生省おいでになっておりますか。——厚生省お尋ねをしていきたいと思います。  いまの問題と関連して、沖繩医療状況は、データがあるのですけれども、この類似県と比べてみましても、それから国の平均と見比べてみましても、大きな違いがあるように思うわけでございまして、この特例債あるいは不採算地区病院運営費補助対象となるかどうかという問題でございますが、この点についてお答えいただきましょうか。沖繩の問題でございます。
  6. 木戸脩

    木戸説明員 お答えをいたします。  私どもの所管と申しますと、不採算地区病院運営費ということになるわけでございまするが、沖繩県立病院といたしましては、五つの県立病院があるわけでございます。現在検討しておりますが、八重山病院対象になるのではないかといまのところ考えております。
  7. 小濱新次

    ○小濱委員 沖繩における医療現状は、類似県に比べて、医療施設は五三%、病床率は五四%、医師数は五〇%、看護婦准看護婦数は三九%であり、僻地、離島医療はさらに深刻になっているわけでございます。これを全国的に見まするというと、医療施設は、病院で三七%、診療所で五一%、病床数は五〇%、医師数は四六%、看護婦准看護婦数は五〇%、こういう状態になっているわけでございます。  この間も大学病院に行きましたところが、年間の病院でなくなった方々の数が八十二体、その中で解剖された数が九と、こう出ておりました。私は、非常に大学病院としては数が少ないので、病院長お尋ねをしてみたわけでございますが、病院長は、医師が少ないのです、看護婦もそのとおりでございますというようなことで、その病院機能を発揮することができない責任というものをいろいろと説明しておられました。そういうことがございまして、このいろいろな面での問題点解決のためにも、いま申し上げたような問題点の手厚い配慮というものが必要になってくるわけでございまして、どうかひとつこの点もよろしくお願いをしたい、こう思います。  さらに、これも自治省お尋ねしたいと思いますが、今回、国は特例債利子の一部を補給するにとどまっているわけでございますが、地方財政実態と国の医療供給体制に対する責任という面から考えてみましても、この特例債発行を認めるだけではなくして、当然地域医療を確保するための特例債元利償還、この償還の、いろいろ新聞でも報道されておりますが、半分ぐらいは国が持つべきではないのかという、こういう説も流れておりますし、私どももそのように考えております。この問題についてのお答え自治省からお願いしたいと思います。
  8. 松浦功

    松浦政府委員 先生承知のように、去年公営交通再建対策を御審議いただいたわけでございます。その際にも、民間企業との権衡等をも考慮しながら利子補給という制度をとったわけでございます。そういった例がございますし、公立病院の場合には、診療報酬が全国一律であるということから考えて、民間企業との関係も考慮いたしますと、いまのところの体制ではこの辺が限度であろうかということで、利子補給のみということで踏み切ったわけでございます。  元金償還につきましては、当委員会でも、交通の際にいろいろ御指摘をいただきました事項でございますので、それらを十分勘案いたしました上で、元金一般会計償還していただきますけれども、その一定部分につきまして、普通交付税でその償還額を算入していくという措置をとることになりました。一般会計といたしましては、おおむね半分に近い、四割五分程度になりますが、四割五分程度交付税及び国の利子補給で補完できるという体制でこれから進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  9. 小濱新次

    ○小濱委員 特例債発行は五百四十五億円でありますが、そのうち、公営企業金融公庫債はわずか三十億円、特例債の五・五%ぐらいにしかならないわけでございます。その他は縁故債になっているわけでございます。政府が真剣にこの対策を講ずる意思がおありになるならば、政保債を大幅につけるべきであるというのが私ども考え方でございますが、現状を見まして、これではまことに少ないというか、スズメの涙程度ではないか、こういうふうに見ておるわけでございます。しかも利子補給に対しても、財政力に応じて補助率をきめているわけでございますが、この補助が全く形ばかりにすぎないように私どもとしては考えざるを得ないわけでございまして、助成の幅を拡大すべきではないのかという考え方を持っておるわけでございます。特に、利子補給は八・五%で頭打ちになっているわけでございますが、大部分利子の高い縁故債を借りているというのが実情であるように考えております。  こうした点から考えてみましても、八・五%をこえる部分に対しても助成措置を講ずべきではないのか、こういうふうに考えるわけでございますが、自治省からのお答えをいただきたいと思います。
  10. 松浦功

    松浦政府委員 金融公庫資金のワクの拡大については、今後とも努力をしてまいる方針であります。  八・五%は公営企業金融公庫基準金利をつかまえたものでございまして、御承知のように、公営交通の際にも基準金利をつかまえておるわけでございますので、はずを合わせたわけでございます。弱小団体においては八分五厘で縁故債が処理できないという問題があろうかと思います。それはできるだけ公営企業金融公庫資金を小さな団体には回す、大きな団体は八・五%前後で何とか処理ができるだろうというように考えております。一つ考え方といたしまして、公営企業金融公庫基準金利をとっていくというやり方が、今後とも適当ではなかろうかと私どもとしては考えておるわけでございます。
  11. 小濱新次

    ○小濱委員 大部分利子の高い縁故債を借りているという、こういう実情からして、もう一考できないものだろうかなというふうに考えるわけでございますが、ひとつこの問題についても、これは自治体病院赤字財政危機と、よく見出しに出ておりますが、こういう立場からもなお一そうの御努力お願いしたい、こう思います。  さらに、これも自治省お尋ねしていきたいと思いますが、診療報酬の不適正といいますか、そういうことから、今日の病院経営はきわめて困難になっているわけですね。この問題点は非常に多いわけです。たとえば三月の人事院勧告による看護婦給与引き上げを行なった場合、これはある病院の例が出ておりました。四十九年度に一億八千万円の赤字が出るし、さらに例年の人事院勧告で二〇%以上の給与引き上げが行なわれた場合、五億円の赤字が予想されるという。こういう状態に対して、自治省は今後のこの赤字対策にどのように対処されるお考えなのか、その点をお尋ねしていきたいと思いますが、これは例を少しあげてみたいと思います。  「赤字に悩む公立病院」という見出しで、これは朝日新聞でございました。「地方自治体経営する公立病院は、地域医療中核といわれながら、ほとんどが赤字に悩み、年々十ぐらいずつ姿を消していく」という自治体病院経営危機実情というものが訴えられております。年に十ぐらいずつ姿を消していくのだという。あるいは、またの新聞に、赤字経営で存続が危ぶまれているある市民病院では、「辞職させてもらいたい」と「唇を震わせて怒る院長」と報道されている記事がございました。住民の生命と健康を守るため、自治体病院財政再建はもはや焦眉の急務である、こういうふうにいわれているわけでございまして、その衝に当たられる自治省として、非常な重責をになっておられるわけでございますが、今後の赤字対策についての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 松浦功

    松浦政府委員 今回、地方財政計画の中に利子補給を組み込み、地方債として五百四十五億の特例債を認める、こういう措置をとることにいたしまして、御審議をいただいておるわけでございます。本来でございましたならば、先般も御質問がございましたように、交通のように法律をつくって行なうべきだと思うのでございますが、交通と違いまして、病院につきましては診療報酬が全部他動的になっておりまして、自分自体でどうこうできない状況にございます。この問題がどうにもなりません限りは、再建計画を長期にわたってつくるという見通しは全然立たないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、法律をつくらずに、予算的な措置で今回は病院赤字対策に乗り出そうといたしているわけでございます。  しからば、今後生じてくるであろう赤字をどうするかということでございますが、できるだけ診療報酬引き上げ等によって赤字が生じないことをこいねがっておりますが、ある程度赤字が出てくる可能性はあるわけでございます。それにつきましては、ただいま先生から御指摘をいただきましたように、社会保険診療報酬のあり方というものをもっと徹底的にきわめていただいて、何とか運営ができるように御努力を願うということと、やはり収入を上げ、歳出を抑制するという形で御努力をいただく、この二つの方法しか方法はないのではなかろうかというふうに考えております。  ただ、われわれとしては、自治体病院全般が非常に財政的な危機に見舞われておるということは承知いたしておりますので、これまでもやっておるところでございますが、一ベッド当たり幾らというような一般会計からの繰り入れ、これに対する財政措置交付税を通じて措置をいたしております。これらもからめまして、個々の団体病院についてそれぞれの実態を承りながら、十分な措置をするように進めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  13. 小濱新次

    ○小濱委員 政務次官、これは要望であります。年に十ぐらいずつ姿を消していくという自治体病院経営危機実情、あるいは辞職させてもらいたいとくちびるをふるわせておこる病院長、こういうことからも——ども地方へ参りますというと、あの病院に半分以上のあき室があるのですよと言う。それは医師問題看護婦の問題で総合病院が用をなしていない、そういう姿が見受けられて、住民からいろいろと苦情が出てくるわけでございます。これは御存じのとおりでございますが、ほんとうに真剣に考えませんと、将来どういう危機状態が発生するかというふうにも想定をされるわけですね。ぜひひとつ一そうの御検討お願いをし、要望したいと思います。  厚生省お尋ねいたします。  厚生省予算において、不採算地区病院経営費補助金が四十九年度から新設、こういう形になりました。補助対象として百床未満入院患者百人未満、一日の外来患者百五十人未満、ほかに一般病院がない場合、こうなっているわけですね。そこで、地域医療を確保するためにはこの対象範囲を広げるべきであるという、これは私ども考え方なんですが、たとえば、入院患者数などで規定するのではなくして、人口十万未満地域中核病院役割りを果たしているところは運営費補助対象とすべきではないか、こう考えるわけです。この点についての御意見を聞かしていただきたい、こう思います。
  14. 木戸脩

    木戸説明員 お答えをいたします。  本年度初めて予算案に計上しております自治体採算地区病院運営費補助、これは実は昨年十二月に自治大臣私的諮問機関であられます地方公営企業経営研究会中間報告に基づきまして予算措置をしたものでございます。この中間報告によりますと、「公立病院のうち、その立地条件により採算をとることが困難であると認められる山間地離島その他のへんぴな地域に設置され、当該地域医療を確保するために不可欠な役割りを果たしているものについては、国民医療確保の見地から、国庫による所要の助成措置を講ずべきである。」こういう中間報告をいただいておるわけでございます。これに基づきまして三つ条件、すなわち山間地離島その他のへんぴな地域、それから住民医療を確保するためにどうしても不可欠であると認められるもの、それから規模が百床未満と小規模である、この三つを要件としているわけでございます。地域をへんぴな地域に限定しているという以外の点では、従来から特別地方交付税算出にあたって用いられております不採算地区病院条件とほぼ同様でございます。  不採算地区におきます病院運営は、公的病院の中でも特に自治体病院が担当すべき重要な機能一つでございます。問題は、どのような立地条件を不採算地区と定義するかは非常にむずかしい問題でございます。御指摘のような立地条件に置かれましたものも含めまして、今後自治体病院実情を多角的に調査し、検討いたしまして、範囲拡大について検討を重ねてまいりたいというように考えます。
  15. 小濱新次

    ○小濱委員 ただいま御答弁の中で、今回の不採算地区運営費補助は、自治省のいわば努力によって獲得された、こういうふうにいまの説明の中から私は感じ取ったわけでございますが、厚生省は、今後この予算拡大にどう取り組んでいくつもりなのか。自治省が一生懸命に努力をして、諮問機関からの答えに応じて厚生省が今回の予算化をしたということでございますが、どうか今後の問題についても決意を伺っておきたいと思いますので、お答えいただきたいと思います。
  16. 木戸脩

    木戸説明員 従来から、自治体病院を含めまして公的病院につきましては、施設設備費については補助をいたしてまいったわけでございますが、運営費補助につきましては、実は自治体病院につきましては出されておらないわけでございます。日赤済生会等公的病院につきましては、四十八年度からガン研究等、不採算地区医療高度特殊医療について予算化したわけでございますが、その発想は、国公立病院につきましては一般財源からの繰り入れが期待できるのに、このような日赤済生会等については繰り入れが期待できない、したがって、このようなものについて最も早く手当てをすべきであるということで、四十八年度において予算措置をしたわけでございます。  四十九年度におきましては、私どものほうも、救急医療センターあるいは看護婦養成所等公的病院が果たします公的機能役割りについて種々検討を重ねてまいったわけでございます。結果的には、遺憾なことでございますが、不採算地区病院運営費しか運営費については予算措置ができなかったわけでございまして、この点は反省をしているわけでございます。幸い、今回の不採算地区病院運営費につきましては、従来いろいろ問題になって、特に課題になっておりました交付税対象となっているものについても運営費補助を出すという考え方ができましたので、今後は、これらの公的機能に対しまして一般会計繰り入れ条件がどうなっているか、あるいは当該経営主体財政力がどうであるか、こういう具体的な問題点検討いたしまして、自治体病院につきましても、国としてもこれらの自治体病院について、医療の相当の部分を担当していただいているわけでございますので、このようなものについても前向きに検討をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  17. 小濱新次

    ○小濱委員 今後、この予算拡大にどう取り組んでいくつもりなのか、決意をお伺いしたわけでございまして、ちょっと無理な注文かと思いましたが、どうかひとついまの御答弁のように、大きな問題でございますので、真剣に前向きで取り組んでいくということでございますから、よろしくひとつお願いをしたいと思います。  次に、看護婦養成に対する運営費に関する補助金でございますが、これは伺うところによりますと、日赤とか民間には出ているそうでございますね。自治体の行なう看護婦養成機関には出ていないといわれております。これも厚生省に伺いたいと思いますが、看護婦不足問題点、これを考えるならば、当然大幅な助成措置を講ずるべきであるということなんですね。こうなった理由と、今後の考え方についてお尋ねをしていきたいと思います。  さらに、これは自治省お尋ねしておきたいのですが、この不公平という問題になろうかと思いますが、この問題をどのように考えておられるのか、ひとつあとでお答えをいただきたい、こう思います。
  18. 木戸脩

    木戸説明員 御指摘の、自治体病院看護婦養成所に対します運営費補助の問題でございますが、先ほどお答えしたところでございますが、日赤済生会等を含めました民間看護婦養成所につきましては、四十五年度から運営費補助をいたしております。これは先ほどお答えをいたしましたように、最も緊急を要するのは、国公立のように一般財源繰り入れが期待できない、つまり病院診療報酬看護婦養成しなければならない、こういうところにつきましてまず緊急にということで始めたわけでございます。御指摘のように、自治体病院におきます看護婦養成所役割りというものは非常に大きいわけでございまして、現在、生徒数の約二六%、学校数の約二七%は自治体立看護婦養成所でございまして、非常に重要な役割りを果たしていただいているわけでございます。  自治体病院看護婦養成所運営費につきましても、四十九年度の予算の過程におきましても種々検討いたしましたが、遺憾ながら、いろいろな問題点がございまして実現いたさなかったわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、不採算地区病院運営費補助も、交付税以外にも国として相応の責任を果たすために運営費を出すということが一応考え方として固まったわけでございますので、今後は、先ほども申しましたが、看護婦養成所一般会計からの繰り入れ状況、あるいは設置する地方公共団体財政力等を勘案いたしまして、大蔵省、自治省ともよく相談をいたしまして、前向きに検討させていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  19. 小濱新次

    ○小濱委員 いまの問題について、かつて参議院予算委員会で四十九年度から実施する、そういう回答が出たということを聞いたことがあるわけですが、四十九年度からとはっきり聞いた覚えがあるわけですが、あれは厚生大臣でしたかね、そのことについてどういういきさつになったか、御存じならひとつお答えいただきたい、こう思います。
  20. 木戸脩

    木戸説明員 実は、四十八年度の四月の参議院予算委員会におきます御審議で、齋藤厚生大臣から、この問題につきましては前向きに検討をいたしますというお約束をしたわけでございまして、それが四十九年度において実現をいたさなかったことにつきましては、今国会で大臣あるいは医務局長からも御答弁申し上げているわけでございますが、はなはだ遺憾なことでございますが、実現をいたさなかった、こういうことでございまして、先ほども申し上げたようないろいろな問題点がございました。  このような問題点につきましては、今回は、不採算地区病院運営費が、交付税がその算出基礎になっているという以外の点でも運営費補助をするというふうに割り切ったわけでございますので、五十年度以降におきまして、ぜひとも自治体病院看護婦養成所運営費につきましても、そういうような不採算地区病院運営費と同じように、国の相応の責任を果たすために運営費補助をいたすということをするべく検討してみたいというのが、厚生省考え方でございます。
  21. 松浦功

    松浦政府委員 先生承知のように、公立病院の問題とは違いまして、看護婦養成機関は、養成された看護婦民間にも回っていくわけでございます。そういうことを考えました場合に、全くこの対策には、国の財政措置を含めた総合的な観点からものごとをながめていく必要があり、国においても当然、一部この問題について責任を負うべきものであるというのが自治省考え方でございます。したがって、ほかの民間等に出されておる補助金と同じように、自治体看護婦養成所に対しても運営費助成があってしかるべきであると考えております。その観点から、関係各省にも十分協議をいたしまして、先生指摘の方向に向かって最大限の努力をしてまいりたいと考えております。  また、自治省といたしましては、事の重要性にかんがみまして、どっちみち採算のとれる事業ではございませんので、一般財源繰り入れなければできないわけでございます。その一般財源必要額については、今後とも交付税の算定を通じてできるだけ手厚く考えてまいりたい、こういう方針でおります。
  22. 小濱新次

    ○小濱委員 お聞きになったかと思いますけれども、昨日の朝、ラジオの「時の話題」というニュースが流れておりましたが、この看護婦対策が取り上げられておりました。アンケートの記録などをあげて、最大の問題点は低賃金ということと、重労働ということと、あと責任が非常に重いということ、この三点がおもなる問題点としてあげられておりました。古い明治十何年ごろ、看護婦養成ができたという当時の賃金のあり方、それからその看護婦に対する一般の認識度が非常に高かったということで優遇された、そういう模様等々が述べられておりました。最近とは大きな開きがあるということで、学校を卒業された学生さんに看護婦への希望をアンケートをとってみたところが、十分の一もいなかった、そういう内容であった。その問題はどこにあったかということになると、いまのような問題が指摘されておりました。一般のベースと比較をしてみれば高いわけですけれども、そこに重労働、責任が非常に重いという問題が重なって、女性としては困難な仕事であるということが、きらわれている大きな原因であるというふうに述べられておりました。この看護婦の問題が、医者の問題とあわせて非常に大きな問題になっておりますので、ぜひひとつこの問題に対する御高配をお願いをしたい、こう思うわけです。  政務次官お尋ねしたいのですが、自治医科大は一学年百名でしょう。いまたしか三年生ですね。そうなりますと、小山の医科大だけということになりますと、そこで養成されるお医者さんの数はきめられているわけですね。全国的に見ればきわめて少ない数になってしまうわけです。こういうことも一歩前進の姿であったわけですが、なお今後の方向づけとしては、この医科大の問題、看護婦の問題等は、これはもう真剣に考えていただかなくちゃなりませんが、厚生省に、諮問機関が大いに努力をして、今回新しく一つの道が開かれましたけれども、大いにこういう道を開いて、この問題解決のために努力をしていっていただきたいと思うわけですが、政務次官からひとつお答えいただきたいと思います。
  23. 古屋亨

    古屋政府委員 ただいま看護婦の問題あるいは自治医科大学の問題を含めましての医師の問題につきまして、小濱先生から非常に実態をよく把握されました御意見を承りまして、私どもも、看護婦の問題は、いまお話しになりましたように非常に重労働であり、低賃金であり、そしてその仕事が非常に複雑化し、また国民の健康を確保するという見地から、何と申しましても看護婦の確保、特に養成ということはきわめて重要な問題であると考えておるわけであります。したがいまして、先ほど局長から申し上げましたように、国の財政措置を含めました総合的な対策を講ずることが喫緊の要務でございまして、自治体に対しましても運営費助成を行なうことにつきまして、ただいま厚生省当局からも話がありましたし、また財政局長からもお話をいたしましたように、来年度予算におきましては御期待に沿うようにがんばってまいりたいと思っております。  自治医科大学の病院につきましては、御承知のような経緯でございまして、近く、本月の十三日でございますか、自治医科大学病院の開所式が行なわれる段取りになっておりますが、しかし、これもお話しのように、各県から二人というようなことでございまして、いま三年目でございますが、どうしても、こういう問題につきましてはいろいろの財政上の問題もありますが、自治省といたしましては、僻地の医師の確保という見地からも、あるいはまた医学の向上という見地からも、一そうこれを整備いたしまして、僻地医療対策の確保ということにつきまして、今後一そうの努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  24. 小濱新次

    ○小濱委員 厚生省に最後にお尋ねをしていきたいと思います。  高度特殊医療という問題でございますが、御存じのガン診療であるとか、あるいはリハビリテーション、救急医療、さらに老人医療などは国家的要請に基づくものである、こういうふうに私どもは見ておるわけですね。現在、国家的要請に基づく医療補助は設備が若干あるだけですね。運営費補助はないというふうに聞いています。これらについては当然国が強力な助成措置をとるべきである、この問題についても私どもはそのような見解を持っておるわけですが、この点についてお答えをいただきましょうか。
  25. 木戸脩

    木戸説明員 御指摘のガンの診療でございますとか、リハビリ、救急、これはまさに民間病院に期待できない、公的病院として果たすべき機能の重要な機能でございます。自治体病院におきましても、不採算地区病院経営あるいは僻地医療の確保とともに、これらの高度特殊機能というものを、地域自治体病院として重要な役割りを果たしていただいておるわけでございます。したがいまして、この問題につきましても、実際、こういう高度特殊医療につきましては、診療報酬だけではなかなかまかなうことは困難でございます。これらのうちには、一般会計から繰り入れのたてまえになっているようなものもございますし、交付税の算定基礎に入っておるものもございますが、先生指摘のように、国としてこういう高度特殊医療について相互責任があるわけでございます。  したがいまして、これも、看護婦養成所の問題あるいは今後のその他の公的病院として果たします機能の問題とも関連をいたすわけでございますので、来年度以降におきまして、これらの高度特殊医療についても何らかの運営費補助をいたすように検討してまいりたいと思います。実は、日赤等につきましては、四十八年度からガン、救急というものについて運営費補助をいたしておるわけでございますけれども、その点につきましては、来年度以降検討をいたしてまいるつもりでございます。
  26. 小濱新次

    ○小濱委員 厚生省お尋ねいたしますが、政府は、高度特殊医療などの国家的要請の強いものについては国立病院で扱うことが理想的であろう、こういうふうに考えられるわけです。それができないゆえに自治体病院一般病院に、言うならばしわ寄せをされている、こういう形になるわけでしょう。ですから、これは政府から当然手厚い助成措置というものをするべきではないかというふうに私どもは考えておるわけですね。運営費の問題もそうですが、この手厚い助成措置をとるべきであるということの真意をひとつよくくみ取って、これから御努力お願いしたいと思いますが、この点についていかがでございましょう。お答えいただきましょうか。
  27. 木戸脩

    木戸説明員 先ほどお答えをいたしておりますとおり、先生がおっしゃる高度特殊医療につきましては、国立病院と並んで、公立、自治体病院にも国民医療の確保に重要な役割りを占めていただいているわけでございますので、前向きに検討してまいりたいと思います。
  28. 小濱新次

    ○小濱委員 約束の時間が参りましたので、医療の問題についてはこれで終わります。お引き取りをいただきたいと思います。  地方交付税について、松浦財政局長に一点だけお尋ねしておきたい。  沖繩県に対する地方交付税の算定につきましては、各種の特殊措置がなされております。そのおもなものとして、基準財政需要額の算定においては、琉球政府発行した歳入欠陥債のうち沖繩県が承継したものにかかわる元利償還金、さらに建設事業費のうち沖繩県が承継した元利償還金、次に警察の事務職員分の特例措置などを算入する特例措置がされておりますが、この基準財政収入額の算定においては、沖繩の復帰に伴う地方税法の特例による自動車税、軽油引取税の特例措置がとられております。これらの特例措置について、これは結論になりますが、今後も続けるべきであると、私どもは現地の様子を見てまいりまして特に感じましたが、この御方針について伺いたいと思います。
  29. 松浦功

    松浦政府委員 ただいまいろいろ御指摘をいただきました点は、昭和四十八年度の交付税の算定においてとっておる措置でございます。当省といたしましては、当然四十九年度も四十八年度に準じて措置をしてまいりたい、同じやり方をしてまいりたいという方向でおります。  なお、沖繩にはそれぞれ特殊な事情もございますので、四十八年度におきましても特別交付税で基地対策、渉外対策、公務連絡、そういったものにウエートを置きまして、県分で十六億、市町村分で十六億という措置をいたしております。こういうことも、明年度において同じような考え方で、沖繩地方財政が困らないように措置をしてまいりたい、こう考えます。
  30. 小濱新次

    ○小濱委員 建設省、申しわけありませんでした。それから消防庁長官もお呼びしておったわけですが、理事会の約束の時間でございますのでこれをもって終わりますが、いずれ次の機会にこの問題をお答えいただきたい、こう思いますので、よろしくお願いいたしまして、私の質問は終わります。
  31. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 山本弥之助君。
  32. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 大臣がお見えになりませんので、政務次官にいろいろお聞きしたいと存じておりますが、すでに、地方財政計画やあるいは交付税法の改正案につきましては同僚委員から質問が尽きておろうかと思いますが、私からも、一応確認の意味でお尋ねいたしたいと思っております。  従来、地方財政計画の策定におきましても、また交付税の改正におきましても、国の予算編成方針と同一基調のもとに編成がなされておるわけでありまして、国の政策に基づいて財政計画も編成される、地方交付税の改正も行なわれておるわけであります。その意味で、ある程度まで地方公共団体の府県や市町村の意見が反映しているとは思いますけれども、そのときそのときの情勢によりまして、ほんとうに地方公共団体の意見が反映しておるかどうか、私ども疑問を持っており、地方公共団体の自主性ということを強調してまいったわけでありますが、ことしは、総需要の抑制という、物価抑制という異常事態におきまして、従来自治省と大蔵省で論議をしておりました、地方公共団体が景気調整機能に協力するかどうかという論議とはだいぶ違う情勢でありますので、地方公共団体が、国民生活に密接な関係のある異常な物価の値上がり抑制、いわゆる総需要抑制に協力するということは、私はやむを得ないのではないかと思っておるわけであります。  また、その意味におきまして、国の予算の編成が、従来の公共事業を抑制して、社会福祉の充実あるいは教育施設の充実に重点を置くというふうに、短期決戦とはいっておりますけれども、方向が多少変わっておる。この方向を持続すること自体が、従来地方公共団体の使命であったところの、生活環境の整備だとか社会福祉の充実ということにおいて、国の方針が変わることによって、地方公共団体の本来の使命が達成される方向に多少方向転換したのではないかということで、むしろ異常事態によって国のほうから、地方の要請というか、地方公共団体のあり方、主張というものに歩み寄ったということもいえるのではないか、かように考えるわけであります。  それにいたしましても、大臣の所信表明にもございましたし、またいただいております「地方財政計画の概要説明」にもありますが、「総需要抑制の要請を踏まえつつ、住民生活の安定と住民福祉の充実のための施策を重点的に推進する」ということであるわけであります。はたして今回の交付税の改正あるいは財政計画等によりまして、この社会福祉の充実なりあるいは生活環境の整備、それから教育施設の整備というものが現実に推進されるという方向に向かっておるかどうか、時間がございましたら、各省に来ていただきましてその辺をお聞きしたいと思っておったのでありますが、時間もございませんので、政務次官として、いわゆる正面切って重点的に施策を推進するのだというようなお考えがどの程度まで推進されておるものかどうか、どう評価しておられるのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  33. 古屋亨

    古屋政府委員 ただいまの御質問で、国の総需要抑制という方針に地方団体も今年度は歩調を合わせまして財政計画も作成をしておるのでございまして、率直に申し上げれば、異常事態下の異常措置というようなことで交付税措置等も考えておるのでございますが、ただいまお話しのように、予算の中におきまして、国の道路その他の公共事業は圧縮をされておりますが、生活関連施設、福祉施設、学校施設等につきましては、年度間におきましても単価の是正を行ないますと同時に、また四十九年度予算におきましても、その単価を昨年に比較いたしまして相当上げておる次第でございます。  ただ、それで完全にうまくいくかという御指摘だと考えておりますけれども、私どもはできるだけこれでいかなければならぬが、しかし、現実にできない場合、という場合には、あらためまして関係各省に対して、補助基準とかそういう単価というものにつきましては再考慮をしていただかなければならない時期も来ないとは絶対に申し上げられないと思うのでありまして、そういう意味におきましては、生活関連施設、福祉施設等につきましては、あるいは学校施設等につきましては、できるだけ、地域の複雑ないろいろの、また重要な要請には応じてまいりたいということを基本といたしまして予算執行に当たりまして、もし万々一そういうような事態でもって、これでは学校もできないというようなことになりますと、場合によりましては、やはり関係省に対してそういうような基準、そういうものがぜひ経済状況に合うように、そして地域の福祉に、需要にこたえることができるように措置をしなければならないと思っておる次第でございます。予算編成がああいう、提案になりましたような異常事態下の総需要抑制という見地において編成されましたために、私どもは、この予算が成立しました過程におきまして、ぜひ何としてもただいまお話しになりました生活関連施設、福祉施設、学校施設等の住民に密着する事業に対しては、十分おこたえするように措置を講じてまいりたいと考えております。
  34. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 私は、時間の関係でお呼びしておりませんでしたが、下水道部長さんがおいでになりますので、先に下水道部長さんに御質問をしてお引き取りを願いたいと思うのであります。  従来、公共事業の中で、一般が圧縮されている中で下水道には力を入れておるということは当然なことだと思うのです。そのために国庫補助金等も大幅に増額になっておりまして、また起債の充当率等も配慮をしておるわけでありまして、下水道は推進するものと思うのでありまして、予算も相当増額になっておると思うのですが、私のお聞きしたいのは、はたして前年度に比較いたしまして下水道は事業量として前進したのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  35. 久保赳

    ○久保説明員 下水道事業量の四十九年度が四十八年度に対して増加しているか、こういうことでございますが、きわめて残念ながら、国の補助率を上げて公共団体の負担を軽くした結果にはなりましたけれども、事業量としては四十八年度をかなり下回ることになろうかと思います。以上でございます。
  36. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 下水道につきましては、やはり建設省も自治省も重視をしていただいて、四十七年度の補正予算のときにも、おそらく下水道の工事の追加を関係市におきましては実施をしている。実は工事施行の監督要員もことを欠くような、不完全といいますか、十分な監督のできないような量を推進し、四十八年度に引き継がれたわけなんですね。その意味で、私はある程度まで監督要員その他の関係も整備を急いだのじゃないかと想像しておるわけですが、現実にそうじゃないかと思います。無理して他の課から配置をして推進する。しかし、本来下水道の推進をしなければならぬ。これは長期計画もあるのですが、本年度は長期計画というものが表面に出ていないわけなんです。そして、こういうところに力を入れると言いながら、軌道に乗りかけたときに、国庫補助金をふやしていただいたことはけっこうです。それは負担をふやしていただかなければこういう事業は推進できないのですね。私どもが古くから下水道に着手したときに、いろいろ検討の結果、ある程度まで受益者負担というものを配慮しながら、国の補助金は三分の一で何かやれそうだというふうなことであったわけであります。これを推進いたしますと、上水道の整備もはからなければならぬし、いろいろ問題があるということで、当然負担金はふやさなければならない、私はこう思っておるわけでありますが、それにしても、国庫負担金がふえたとたんに、地方交付税の関係ではある程度までこれを見ない、起債の充当率で増額はあまり配慮しない、量も減るということであれば、せっかくこういった公共事業の中でも生活関連事業は推進するというときに、推進をしておらぬわけですね。  これは基本的には、公共事業の伸びが少ない。国の方針としても地方公共団体としても、公共事業全般は伸びは少ないというか、あるいは全般とすればむしろ昭和四十七年度の水準に戻っているのかもわかりませんが、それにしても、重視をしなければならぬ下水道の事業量が減っている。これは、お呼びしておりませんが、住宅でも同じですね。住宅でも建設戸数は相当減っている。それは質の向上も考えておられるようでありますが、そういうことを口実に、あるいは用地の確保は至難であるということで、公共事業の中で重点を置いておる関係が、住宅にしろ下水道にしろ前進はしていない。何らいままでと変わっていないじゃないか。国もあるいは自治省も、総需要を抑制しながら、いわゆる産業基盤の仕事を圧縮し、社会福祉だとかあるいは生活環境の整備に重点を置くといいながら、建設省所管の公園なんかも力を入れるうちの一つでしょうが、おそらくあれは住民一人当たり九平米だったと思い ますが、そこまで拡大するという計画に到達するような前進ではことしはないんじゃないか。むしろ現状というか、ある程度まで仕事をするにきゅうきゅうたる実情じゃないか、こう思うのです。  これは下水道部長さんの所管ではないのですが、これはもう少し建設省内部におきましても、自治省等も協力せられまして、下水道の推進は事業量においても前進できるように。もし資材その他の関係で停滞いたしますと、それでなくても減っておる量がさらに減るという結果になる。決して生活環境整備に重点を置いたということではなくて、従来の継続事業を守るのに精一ぱいだという実態なんですね。国も自治省も財源の関係でそうなると私は思うのであります。生活環境に重点を置いてどんどん進めるのだということとはほど遠い。いわゆる総需要抑制という犠牲になって、生活関連施設の整備も、下水道をはじめとして住宅あるいは公園の整備等も後退をし、一時圧縮するような事態にあるんじゃないか。いわゆる英断的に生活環境、社会福祉に、自治大臣の所信表明に言われたような思い切った切りかえ、重点的な切りかえというものは行なわれていないのだ。従来やっておる仕事を後退しないように、守りの姿勢でやるだけが精一ぱいだという感じがするのですが、部長さん、もう少し積極的になぜ主張なさいませんでしたか。  それにもう一つ、軌道に乗ったいろいろなそういった職員の関係もあるんじゃないかと思うのです。ある程度まで仕事を継続的に充実していくために人を入れたとすれば、そういった人が十分下水道事業推進のために、これは貴重な技術者その他でしょうから、そう簡単にほかに転用しないで活用しなければいかぬと思うのですが、そういうのが一般に、人件費がかさむ、かさむというようなことで他に転用されたりするということは、今後の下水道の推進からいってもマイナスになるのではないか、私はかように考えます。その辺のこともあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  37. 久保赳

    ○久保説明員 下水道事業以外のことにつきましては所管外でございますから私はよくわかりませんが、下水道事業について申し上げますと、四十九年度の予算を要求したおりには、地方団体の要請をもその中に十分織り込みまして五カ年計画の改定をしたい、改定にあたっては、先生指摘のように事業量も伸ばす、しかし、事業量が伸びますとかなり財政的にも苦しくなりますから補助率をも伸ばすということで、予算の要求の二つの大きな柱として要求したのでございますが、だいぶ世の中の状況が変わったこと等もございまして、計画の改定は認めないということになってまいったわけでございます。  その場合に、下水道事業は四十九年度だけで終わるものではなくて非常に長期な事業計画でございます。したがいまして、長期の事業計画はいずれ五十年度以降に明らかに改定をはかることを目途に、ただ財政的な制度上の補助率の問題だけはずっと続く問題でございますので、これは四十九年度にぜひ解決をしたいということで強く主張をして、ほぼ主張の線に沿って解決を見たわけでございまして、四十九年度だけをごらんいただきますと、先ほどから先生指摘のように、事業量も下がりますし、きわめて停滞といいますか、さっぱり進歩がないという御批判があろうかと思いますけれども補助率を上げたという制度は、これから長く続く下水道事業に、各地方自治体が少なくとも財政的には安心をして仕事を進められる、こういう体系になったわけでございますし、そういう体系をとることが四十九年度にはぜひ必要ではなかろうか、こういう判断で予算の原案の中に織り込んでもらった、こういう状況でございます。  それからなお、技術者その他の人の問題等もございましたが、確かに、各地方自治体は下水道事業を実施するために、かなりほかの部局から転用をして、研修その他をしながらやっておるのが実情でございます。したがいまして、四十九年度については事業量が若干下がったように見えますけれども、これから実施をされる下水道事業の計画とか、あるいは設計あるいは準備その他のためには、必ずそれらの方々の活動の場があるわけでございますから、十分それらの方々が腕を発揮し得るような事業計画にしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  38. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 この問題にこだわるわけにいきませんけれども、下水道の整備という考え方は、もういまに始まった問題ではないのです。それで建設省あるいは自治省のお骨折りで補助金の問題が、従来は不当である、これはどうしても上げなければ問題は解決がつかないということで、解決を見たと思うのですけれども、今後こういった生活関連施設に重点を置くということからいえば、今年度からそういう体制が出てこなければいかぬと私は思うのです。国の補助金を上げたから事業量が減ってもいいというのは、全体のバランスをとっているわけで、それならばこの機会に、もっと他の産業基盤整備の問題を圧縮して、下水道の前進をはかるような措置をとるべきだと私は思うのです。  ことに新しく始めるところは、かつて私どもは英断と思いましたけれども、福井市のように、下水道の整備が先決だということで、道路の舗装だとかあるいは改良というものをあと回しにして、しょっちゅう掘り返したり、舗装してせっかくでき上がったものをまた掘り返すということのないように、下水道の施設を急いで、そしてそれが完成のあとに道路の舗装、改良等をやっていくということが、当該市長としては大事だと私は思うのです。少なくともそういった道路の予算を返上しても下水道の予算をふやしてもらって、むだのない市政をやるということが先決だと思うのです。  だから、長期的にはいいにしても、長年主張をされてきた下水道の整備の問題は、こういったふうにある程度まで総需要の抑制という時期でなくて、ずっと今後も、地方公共団体にとっては今後市の領域から府県の事業に移される部分もあろうかと思いますけれども、そういった事業が推進されるような国の予算配分が好ましいと思うのです。ことしの予算委員会でも話があったと思うのですが、産業基盤のほうは圧縮されたけれども依然として比率は高いのです。こういった転換期にこそ、地方公共団体側の立場に立って下水道の推進をもう少しはかるべきではないか、こう思います。来年度以降景気がどうなるか、あるいは不況になって景気を回復しなければならぬというときに下水道の置かれた地位がどうなるかわかりませんが、早急に長期計画が策定せられまして下水道が推進できるように、そして同じ事業をやるにしてもむだのない下水道の整備を急げということを、特に下水道部長さんに要望をいたしておきます。  私は、生活関連ばかりではないと思うのです。教育施設の整備にいたしましても、ことしは給与の改定とかあるいは学級の編制等に関連して、いわゆる義務教育施設の校舎の整備等は、これは超過負担の解消その他と関連して、実質的にはあまり期待したような前進を見ていないのですが、これは自治省としても大体このくらいの予算があれば教育施設の整備は行なわれるというお考えですか。ことに危険校舎の整備のごときは、三%くらいの伸びだったと思うのです。文部省を呼んでおりませんが、人口急増地帯はいいとしても、ほとんど僻地の危険校舎なんかは依然として残されるという実態に置かれておるのではないかと思うのです。  時間の関係で一ぺんにお聞きしますが、派遣社会教育主事の人員増が七百五十名あるわけですが、社会教育の関係者をふやすことはけっこうですが、どうもこれをよく見ますと、当該市の社会教育主事と県の派遣教育主事とが併存する関係になるようであります。これもどうかと思いますけれども、市は除外して、貧弱町村には暫定的に県から社会教育主事を派遣するというのではなくて、ある程度まで国の負担金のつく社会教育主事を派遣されるというような増員になっておるわけです。これは政務次官どうお考えになりますか。地方市町村の行政を重視するとなれば、社会教育主事というものは当然市の職員で、市の教育委員会の監督のもとに社会教育の推進をはかるべきだと思うのです。そういうふうに教育施設も、交付税の配分においてもそうですし、相当配慮したといわれても、いわゆる待遇改善その他に食われ、人員の増に食われ、教育施設そのものは、末端の負担する施設は、校舎の改築も危険校舎の改築も全然前進を見ないという状況です。それから人員の関係からいくと、補助金を出す段になると、従来市にある教育主事はそのままにして、県の派遣社会教育主事を国が負担をして派遣するというような、地方公共団体相互の関係が円滑にいかないような操作が行なわれているような感じがしますが、これにつきましてお考えがありましたらお聞かせ願います。
  39. 古屋亨

    古屋政府委員 お話しのように、今回市町村における社会教育の充実をはかりますために、お話しのように県から市町村に七百五十名の社会教育主事を派遣いたしまして、その給与費の二分の一を国が補助する制度が創設されたのであります。また地方財政計画上、市町村の社会教育主事を七百五十人増員しているわけでございます。ですから、いまお話しのように、一方は国が補助する主事であり、一方は市町村の教育主事を増員している。これは主管省の文部省がこういうことを計画されておるわけでございまして、地方負担につきましては、御承知のように、それぞれ府県、市町村に対して交付税によって財源措置を講ずることにしておりますが、この制度の問題のあり方につきましては、いまお話しのような御意見もございますし、また、教育主事にいい人を確保しなければならぬというような見地もありますので、社会教育の担当部局と十分相談をして、りっぱな人で、しかも、いまのように一方は国が半分補助をする、一方は市町村というような点につきましては、御意見のあるところを十分文部省にも連絡いたしまして、ひとつ前向きに検討さしていただきたいと思っております。
  40. 松浦功

    松浦政府委員 文教施設につきましては、予算額といたしましては、三九・数%ということで約四〇%伸びております。普通の経済状況でございましたならこれで相当前進を見ると思いますが、まだ先行き物価の問題に非常に心配が残っております。しかし、新しく建てなければならないものについての手当てはこれでつくかと思いますけれども、単価が上がってまいりますと、これはやはり老朽校舎の改築等の問題にある程度影響が及んでくることが考えられます。そういう点は当省としても非常に関心を持っております。極端な経済情勢の変動でもございますれば、なお単価アップ等に関連いたします必要な財源を国のほうに支出をしていただくというようなことも一つの方策として考えながら、現実に合うように処理をしていくように関係各省にお願いをしてまいりたい、このように考えております。
  41. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 私の申し上げたいことは、いわゆる生活環境とか教育施設、それから保育所の問題も、おそらくこれは関係省においでを願わなければわからぬ問題でありますので、質問はいたしませんけれども、そういう施設に切りかえて重点を置くというにはあまりに予算面と実態とがかけ離れておるのではないか。決して自治省でお考えになっているほど前進はしていない。教育費の予算の伸びも確かに相当の伸びを示しております。しかし、それは待遇改善あるいは増員というものに、いわゆる人件費に食われている。そしてほんとうに地方で要望しておることは、人口急増地帯の学校建設が円滑にいく、それと同時に、従来取り残されておる財政の貧弱な団体の危険校舎等が、これが解消されるということなんです。そういう面になりますと必ずしも前進しておるとはいえない。当面の対策に追われておるという実態なんですね。このことは、地方公共団体の置かれた実態を十分考えておいていただきたい。社会教育主事の問題も県の派遣の社会教育主事と、市の単独の社会教育主事が併存いたしまして、同じ教育委員会の監督のもとに仕事を進めるということが社会教育の前進になるかどうかということも、地方自治体実態から判断していかなければならない、国の立場でのみ考えるべき問題ではないというふうな感じがするわけであります。その点、政務次官から前向きの御答弁がありましたので、これ以上申し上げません。  次に、すでに論議は尽くされておりますけれども補助金と超過負担の問題ですが、最近また四十八年度の単価是正が行なわれたということを聞いておりますが、事実でありましょうか。
  42. 松浦功

    松浦政府委員 事実でございます。本年の一月一日以降の部分につきまして、平均いたしまして九ないし一〇%、これだけ単価是正を行なっております。
  43. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 そうすると、当初予算に比較いたしましてどのくらい単価是正が行なわれたことになりましょうか。
  44. 松浦功

    松浦政府委員 御承知のように、今回の単価是正を含めまして両三度行なわれておるわけでございまして、当初予算に対比いたしまして、平均的にお考えいただいて、約三四%アップをいたしております。
  45. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 この前、参考人の守口市長の木崎さんがお話しになったのですが、おそらく三回の是正でも、昨年の実際に実施をした市、あるいは契約をした契約高と大きく食い違っておるという印象を受けたのです。そこで、本年度は幸いに千二百五十億ぐらい是正になったと思っておるのですが、四十七年の調査に基づく四十八年、四十九年の是正分を、新しく物価の値上がりによる是正と合わして、それで四五%ぐらい、学校だとか住宅が是正されたことになっておるというお話ですけれども、昨年でも足らぬし、昨年の三十数%の是正でも実際の契約高とは食い違っておる。そういうときに、一〇%なり一五%ぐらいのそれ以上に是正をするということで、はたして順調に超過負担を出さないような配慮ができるかどうか。どういうふうにお考えになっておりますか。
  46. 松浦功

    松浦政府委員 当委員会でもお答えを申し上げておりますように、予算編成の過程においては大体いけるのではないかということを考えておったのでございますが、その後の経済状況の推移に伴いまして、現在の段階において四十九年度一ぱいこの単価で問題ないのだということを申し上げる自信はございません。今後の推移を見まして、それぞれお願いすべきところにはお願いをし、現実と離れない措置をしていただいて、そして地方公共団体運営が困らないような方向で努力をしてまいりたい覚悟でございます。
  47. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 そういたしますと、四十九年度内におきましても、超過負担と補助金との関連におきましては、よく経済情勢の推移を考えながら、年度途中においても、単価の是正についてはちゅうちょなくこれを行なうことに努力するという意味でございましょうか。
  48. 松浦功

    松浦政府委員 先生承知のように、当委員会に御出席になられた大蔵大臣も、経済情勢の極端な変動があれば見直しをすることにやぶさかでないとお答えを申し上げておったのを私も拝聴しておりました。そういうことばのあるなしにかかわらず、当省としては当然そういうふうな方向でつとめるべき義務があると考えております。大蔵大臣もそういうお考えのようでございますから、われわれとしては強力に事に当たってまいりたいと思っております。
  49. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 今回は起債も抑制されておるという中で、従来からいわれておった、いわゆるいろいろな必要な施設が超過負担になる心配がきわめて多いわけであります。このために、一応府県、市町村の各団体は財政の運営に非常に苦慮しておるのではなかろうか、こう思うのです。  この際お聞きしたいのは、補助金の是正もやっていただかなければなりませんが、従来は、補助事業の補助金の残額に対して起債の充当率を九〇%か、あるいは八〇%か七五%というふうにして、残りを自己負担という考え方になっておったと思うのでありますが、こういう異常事態における予算編成は、起債のワクを押えるにいたしましても、超過負担を一般財源の持ち出しで措置することはなかなか容易ではないと思いますので、起債の運営におきましては、必要な経費の補助金を除いた部分に対して、起債によってまかなうことが可能なような弾力的の運用をしていただかなければならぬのじゃないか、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  50. 松浦功

    松浦政府委員 先生の御指摘でございますが、そういうやり方については若干問題があると考えます。  と申しますのは、補助単価が低いために裏負担が、負担率が、二分の一であってもよけい出る。それをそのまま起債の対象額として考えていくということになりますと、それで一切財政措置が済んだということになってしまって、各省なり大蔵省なりが補助単価の引き上げということに前向きに、いままでの経験からはならないようであります。したがいまして、原則論としては、私どもとしては補助金に見合うものを起債の対象額としていく、その結果超過負担が出てこないようにするというのが先決だと思います。かりにできたといたしますれば、これは個々の団体の財政運営の問題としてその部面で救済をするということでなくて、別の角度から適債事業を取り上げるという方向で処理をしてまいるべきものではなかろうかというふうに考えております。
  51. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 財政局長、私は去年、超過負担の問題で埼玉県の草加市に行ったのですけれども、保育所ができているわけなんです。そして保育所の上が保母さんの宿舎になっておるのですね。今日保母さんの関係は、非常に重労働になっていろいろな職業病が出ておる。あるいはいい保母さんを確保するためには住宅ということも考えなければいかぬという場合に、そういったふうに保育所の上に保母さんの宿舎を置くということは、いいか悪いかは別問題として一つのアイデアなんですね。そういうときに、そういうものを一緒に起債の対象にしてやるというような配慮がなければならぬ。今日、住宅は住宅、保育所は保育所ということでは、土地を確保するのに非常に苦慮しており、そして保母さんが優先的に公営住宅に入居すると、それは問題になるというようなことを配慮しますと、いろいろくふうをしなければいかぬということで、そういう場合の起債の配慮は考慮すべきではないか。  それから、いまの財政局長の御答弁、もっともです。それならば一現実に合わなくなっているというような補助金の超過負担をなぜ早く解消しないのか。そっちのほうはさっぱりなさらぬで、起債でも押えるというようなことは、あなた、財政局長の責任を果たせませんよ。それはあとで申し上げますが、異常事態といわれているので、いろいろ目をつぶっている面もあるのです。異常事態に対処するには、より以上に地方公共団体に創意くふうをこらしてうまくやるような配慮、しゃくし定木な配慮ではいかぬですね。その辺は十分配慮願いたいと思います。  今日、厚生大臣も、生活保護については年度内に是正するようなことが新聞記事に出ていたのですが、これはそのまま地方公共団体にはね返ってくるのですね。市では二割を持たなければいけませんから、これはいやおうなしに持たなければならぬという事態に追い込まれるのですね。  それから一方、この機会に確かめておきたいのですが、新聞が正しいかどうかわかりませんが、電気料金が上がると電気税が相当ふえるのだ。だから五百億ぐらいは、免税点の引き上げとか税率の引き下げによってやらなければいかぬのじゃないかというようなことを大蔵省は自治省と相談するのだ。これは来年度のことだと思いますが、年度内にというような意味の折衝がなされておりますか、どうでしょう。
  52. 松浦功

    松浦政府委員 起債の問題につきましては、私は理屈を申し上げたわけでございまして、現実に超過負担が生じないように単価是正をすべきだ、おっしゃるとおりでございます。当然その努力をいたします。かりに国の財政的な都合によって穴があいた場合においても、個々の団体がそれによって財政運営が苦しくなる場合には、何らかの方法で考慮をいたしたいということを申し上げておるので、決して財政局長としてのつとめを忘れるつもりはございません。  それから、ただいま御指摘いただきました二階の宿舎の問題、しかしこれは保育所の起債としてお認めすべきではなくて、職員宿舎という形での起債ということで分離して考えていくべきものだと思います。  それから電気ガス税の問題につきましては、これはまだ必ずしも明確になっておりませんが、こういう動きが若干あるようでございます。結局、電気ガス税をそのままにしておきますと、個人負担がふえるわけです。物価対策という問題とそれから地方財政の増収という問題とを、どこで接点を結ぶかという問題であろうかと思います。いずれにしても、法律はすでに当委員会において御可決をいただき、成立をしている法律でございます。十分部内で検討をいたしました上で成案を得まして、いずれかの時期に、法律改正の必要があれば法律改正を御提案申し上げるという筋合いになると思います。現在の段階では、まだ明確なことを申し上げる段階に至っておらないわけであります。
  53. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 いまの問題は、免税点の引き上げということは、私ども要求しておりますように、これは当然やらなければならぬかもしれません、電気料金等の値上げに伴いまして。しかし、地方税の改正の際に私ども論議いたしましたように、もっと地方税の個人住民税を引き下げるべきである、あるいは電気税については非課税措置が多過ぎるということを各委員から申し上げた。大蔵省との折衝の段階におきましても、私は免税点の引き上げということは賛成です。しかし、その税率を下げて全部に均てんさせることは——これは消費税ですけれども、私はやはり、所得というかあるいは個人住民税の補完的な、担税力のあるところに消費税のかっこうで負担を願うという性格もあわせ持っておるのじゃないか。したがって、一律に税率を引き下げるか段階制をとるか、あるいは免税点を高めるかということですが、一律に引き下げて、それでなくても不合理になっておる電気税がますます不合理にならないように配慮を願うことと、もう一つは、かわり財源も強く御要求願いたいと思うのです。それだけ収入が減るわけですから、それを強くお願いしたいと思います。
  54. 松浦功

    松浦政府委員 収入はふえるので、取り過ぎになるという議論で、五百億がいま問題になっておるわけであります。
  55. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 それは当然なことなんですよ。そういううまみがなければならぬわけなんです。所得税だって自然増収は相当まだ伸びるだろうといわれておるわけなんです。ですからそういうものを、税金が現在の予定額より増収になると、ある程度まで課税最低限の引き上げとか免税点の引き上げということで措置することはけっこうです。しかし、ある程度の余裕は持たしておくべきであって、地方税にばかり目をつけるということはおかしいのじゃないか。それは国と地方との調整の関係でいろいろ折衝される余地はあると思います。  そのことは、たとえば、私は時間がありませんので、過疎過密を簡単に申し上げますが、過疎地帯は個人住民税の減収と、それから法人課税の増収はないということで、操作がきかぬ状態にあるのじゃないかというふうに考えるのです。そうすると、交付税の配分というものをふやさなければいかぬということだと思いますね。そうすると、いまどうしても増額ができないということになると、過疎債もふやしていただいておりますけれども、ある程度過疎債を増額することによって、その元利償還はある程度まで見てやる。これは法律ができる際に、辺地債と同じように八〇にしたらどうかということを主張したのですが、そのうちに八〇に配慮するといいながら配慮されていないのですが、私は、辺地債を九〇交付税で見る、あるいは過疎債を八〇まで引き上げるとか、いまの法人税の増収は期待できない、個人住民税のほうはどんどん、むしろ増収じゃなくて減収するような態勢にある過疎地域についての配慮はそういうこと以外にないのじゃないかと思うのです。  ことに問題は、過疎地帯はある程度までシビルミニマムを整備するということで、開発ということでそう期待できないのじゃないか。現に環境の整備、公害その他の関係、あるいは全国的にそういう自然景観を保存しなければならぬということの機運に向かっておるとすれば、自然景観を保存するということについては経費も必要でしょうし、あるいは山林を守る消防の強化もやらなければいかぬでしょうし、そういったことで整備をはかっていくという場合に、一般財源がだんだん減っていくという状態の中で、どうしても交付税の配分を強化していかなければならぬというためには、とりあえず借金したものの償還財源は見てやるということでなければならぬと思うのですね。四十六年の決算、これは自治省でお出しになったと思うのですが、過疎債は起債のうちの三分の一ぐらいですね。そういうことを考えると、過疎債をふやして、そして償還を見てやるということによって、第二次五カ年計画である程度まで、最小限度の施設を整備するという体制をとらなければならぬ、こう思いますが、いかがでございましょう。
  56. 松浦功

    松浦政府委員 過疎債をできるだけふやしていくという方向は、自治省もそのとおりに考えております。  ただ、過疎と接しておりますところとの落差、この問題をある程度慎重に検討する必要があろうかと思っております。そういう落差がゆるい形でいくような方法を何か検討いたしませんと、過疎に接しておりますところからの不満が現在は非常に強うございます。それらの問題を含めて前向きに検討させていただきます。  なお、先ほど増収の問題がございましたが、これはうまみになればけっこうなんでございますが、こういうはっきりしたものはうまみになりませんで、五百億かりに増収がありますと、これはストレートにベースアップの財源だというぐあいに、大蔵省との折衝の間では必ずやられてしまう可能性が非常に強いのではなかろうか。そうなりますと、免税点のできるだけの引き上げ等で、わりあい低所得のところの物価対策というような働きをここでさせておいて、そしてベースアップの財源については、別個堂々といただくものはいただくという方向も一つ考え方であろうかと、いま思案をいたしておるところでございます。
  57. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 あまり大蔵省を気にしないでください。大蔵大臣に来てもらって質問した際にも、ごまかされたのかもわかりませんが、地方交付税の本質はよくわかっておる、ことしは異常事態だからやむを得ないのでと、頭を下げられたわけです。しかし、それだけでは済まされないと私は思うのですね。私がいままで述べたことは、地方公共団体は非常に困っておる。あなたのほうでやった、やったと言っても、足踏みしているにすぎないのじゃないか。しかも地方では、九州だとか東北だとかいうところでは、ある程度まで道路の整備なんかもやらなければいかぬのですね。市町村道の整備といったって、一五、六%の改良舗装がことしはどのくらい伸びるのか、最終の四十九年度が終わってみなければわからぬのですけれどもね。現実予算面ではいかにも地方公共団体が豊かなような、仕事がどんどんできているようなことになっておるわけですけれども、実際は前進してなくて、足踏みして、後退している場合もある。それで、あまり大蔵省のことを気にしないで、もし余裕財源があれば、むしろ、私どもが提案したように、住民税をもう少し引き下げるべきですね、そういう感じがします。個人住民税を引き下げてやるべきだ、こう思います。それらを考え合わせますと、もうすでに指摘いたしましたので申し上げませんけれども交付税の減額する余地はない。これは将来どうされる権もうことし限りで打ち切りになるという強い折衝をなさるかどうか、これは政務次官にお聞きしたい。  それから、こういう苦しいときには、土地開発基金にしても財政調整資金にしても、土地開発基金のほうはどうも地方財政にゆとりがあるというときに頭を出してくるんですね。財政調整資金も、考えようによっては地方を締めつけようというふうな意味も含まれていると思うのです。土地開発基金は府県、全市町村に配分になりますし、財政調整資金のほうも人口を基準にして全市町村、府県に配分になるわけです。私は、これは使途を指定しない、包括的な、自由にお使いください、市町村あるいは府県で十分これを活用願いたいという意味に解釈したいと思うのです。留保財源でこういうものというような、財政局長との間にいろいろなやりとりがありましたけれども、私はこういう時代は、これは地方自治体にまかせるんだ、使途を指定しないで組んだんだということによって意味があるというふうな感じがします。  時間が参りましたので、減額措置を絶対しない、年度途中にでも是正するという御意思があるのかどうか。それからあとの二千七百億円の措置については、地方公共団体に一切おまかせをするというふうな英断的なお考えはないか。この二点をお聞きいたしまして質問を終わります。
  58. 古屋亨

    古屋政府委員 減額措置の問題でございますが、あくまで、先ほど申し上げましたように、異常事態下の異常措置と考えておりますので、やはり地方交付税の本質というものからいたしまして、私どもといたしましては、つとめてと申しますか、一生懸命に交付税の減額措置は行なわないように、もちろんそういうように努力をしてまいるつもりでございます。  土地開発基金と財政調整資金の問題につきましては、いろいろ先生から御意見ございました。私ども、ひもつきにするという意思は持っておりません。先般お話ししましたように、調整資金は予備費的な——予備費というのは、それで足らなくなるかというような点もございますけれども、ひもつきにするという意思は持っていない。この前局長もそういうふうに答弁したようでございますから、さように御了承願いたいと思います。
  59. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  60. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより討論を行ないます。  討論の申し出がありますので、これを許します。中村弘海君。
  61. 中村弘海

    ○中村(弘)委員 私は、自由民主党を代表し、地方交付税法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意を表明するものであります。  昭和四十九年度の地方財政対策においては、最近の経済情勢にかんがみ、国と同一の基調により、物価の鎮静化をはかるため総需要抑制につとめることを基本としつつ、地方団体が当面する多くの課題に対処するために必要な各般の措置を講ずることとしております。  すなわち、福祉優先の基調に立脚して児童福祉、老人福祉等社会福祉施策の一そうの充実をはかるとともに、上下水道、廃棄物処理施設、教育施設、社会福祉施設、住宅等住民福祉の充実をはかる見地から、緊急度の高い事業の円滑な実施をはかるため、地方交付税地方債、国庫補助負担金等について所要の措置を講じ、さらに、人口急増対策としての教育施設、消防施設等の整備に対する財政措置の拡充、過疎地域対策を推進するための過疎及び辺地対策事業債の増額、病院事業に対する新たな助成措置をはじめとして地方公営企業の健全化の促進をはかる等の措置を講ずることとしており、これらの措置は、いずれもきわめて時宜に即した措置であると存じます。  次に、今回の法律案について検討いたしましたところ、昭和四十九年度の地方交付税の算定方法については、児童福祉、老人福祉対策等社会福祉水準の向上に要する経費の財源を措置するとともに、教職員定数の増加、教員給与の改善等教育水準の向上に要する経費を増額し、また、市町村道、清掃施設等住民の生活に直結する公共施設の計画的な整備を進めることとするほか、過密対策、過疎対策交通安全対策、消防救急対策、消費者行政、現下の急務である施策にかかる財政需要に対する財源措置を積極的に講じようとしております。  さらに、公有地の拡大等に資するため、土地開発基金費を基準財政需要額に算入するとともに、社会経済情勢の変動に対処して弾力的な財政運営を行なうことができるよう、新たに財政調整資金費を算入しようとしているものであり、地方財政の立場から見て適切な措置であると考えています。  なお、昭和四十九年度分の地方交付税の総額については、地方財政状況等を考慮して法定額から千六百八十億円を減額調整することとしておりますが、これは、現下の特殊な財政経済情勢のもとにおける臨時緊急の措置であり、かつ、実質的には、従来の地方交付税の借り入れ分の繰り上げ償還として行なわれるものであるので、やむを得ない措置であると考えます。  しかしながら、今後、社会福祉施策の充実、生活環境施設の整備の促進をはじめ、高福祉社会を達成するために必要な地方団体の財政需要はますます増加することが予想されますので、政府においては、地方団体に対する財源措置の一そうの充実につとめるよう強く希望するものであります。  さらに、国庫補助負担事業にかかる超過負担については、引き続きその完全な解消につとめるとともに、特に最近の物価の高騰の現状にかんがみ、国庫補助単価の適正化等につとめるよう強く希望します。  以上をもって、本法案に対する賛成の意見の表明を終わります。(拍手)
  62. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 佐藤敬治君。
  63. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私は、日本社会党を代表して、地方交付税法の一部を改正する法律案に対して、次の各観点より反対の討論を申し述べます。  第一は、田中内閣は、みずからのつくり出した狂乱物価の対策として、総需要抑制を打ち出し、昭和四十九年度予算の前年比伸びを二〇%以下に押えると称し、最終的に地方交付税の中より約千六百八十億円を早期返済の形で減額することによって一九%台に押えたのであります。  われわれは、国の総需要抑制策に対して、公共事業の抑制等、地方自治体がある程度協力させられることはやむを得ないとしても、今日の地方財政は、累積した超過負担に加えて、狂暴なるインフレの追い打ちをこうむって、いまや困窮の極にあることは御承知のとおりであります。  このようなときに、千六百八十億円を地方財政から切り取ることは、地方財政をさらに逼迫させることになることは言うまでもありません。地方税が三〇%も伸びるから財源に余裕があると言うけれども、これはインフレによるまぼろしの収入であり、その裏には、逆に異常なインフレによって発生したところの新しい課題が待ちかまえているのであります。ましてや、公共事業が大幅に減ったから財源に余裕があるなどとは、まさしく地方財政の犠牲において総需要抑制を行なっていることの証左であります。  先日の四月三日の参考人の供述にもあるように、今日の地方自治体は、教育、生活関連、福祉等の膨大な待ったなしの行政ニードの解決を迫られております。仕事が減ったから余裕があるなどとは、地方財政実態を全く理解していないといわざるを得ません。まして、地方交付税は、法律によって保証された地方自治体固有の財源であります。国の便宜のために恣意的に操作されることは、国と地方の財政秩序を乱すばかりでなく、国の地方に対する干渉であり、絶対に看過することはできません。  特に、このたびの措置は、総需要抑制のためとはいうが、千六百八十億円は単に地方から国へ移っただけであります。真に抑制の効果をあげようとするならば、地方交付税等特別会計へはっきりとたな上げすべきが至当であります。  第二は、今年度初めて計上された千三百億円の財政調整資金についてであります。  これは本委員会の質疑を通しても明らかにされたごとく、地方自治体としては、一体使ってよいのか悪いのか判断に苦しむ、まことにあいまいきわまる性格を持っております。したがって、これの使用をめぐって、国の地方に対する介入がまたまた拡大する危険性をはらんでおります。この千三百億円は明らかに地方交付税の総額の中に含まれたものであり、これを予備費的に除外することは、それだけ交付税の減額となり、さきの千六百八十億円と合わせて、合計二千九百八十億円が地方財政へのしわ寄せとなっているのであります。  このようなあいまいな性格の予算は、今後トラブルの原因となりかねません。したがって、現下焦眉の課題である教育、生活、福祉関連事業等に使用できるよう、その性格をはっきりさせることが必要であると思います。  第三は、単位費用と補正係数の問題であります。  今回、教育、清掃事業その他単位費用が引き上げられたことは当然であります。しかしこれとても、現実に行なわれている実勢単価に比べると問題にならない不十分きわまるものであり、目下地方自治体最大の問題となっている超過負担の重要な要因となっていることは、すでに周知のとおりであります。政府は、四十八年度の実態を早急に調査し、実情に合致した新しい単位費用を作成すべきであります。  しかし、問題はひとり単位費用だけではありません。単位費用はさらに複雑きわまる補正係数によって縦横にかき回され、ついには全く現実とかけ離れた姿に変えられてしまうのであります。これでは単位費用を定めることは無意味になってしまうばかりでなく、このような交付税制度の難解さが、国民の地方財政に対する無関心の重大な原因ともなっているのであります。何ぴとにも理解の届くよう、早急に整理することが必要であります。単位費用は法律によって定められております。しかし、補正係数は政令で定められております。この係数による補正によって単位費用が大きく歪曲されることは、とりも直さず法律無視の政令のひとり歩きであるといわなければなりません。われわれの考えでは、標準都市を人口十万で一括してくることにこの原因があります。少なくとも三段階ぐらいの人口区分によるべきが至当であると思われます。  第四は、高度経済成長政策によって、わが国の地方自治体は極端な過密と過疎に分離してしまいました。  財政上よりこれを見ると、豊富な税源を持つ大都市と、課税しようにも客体の乏しい小都市に分極されたのであります。ところが、現行の地方財政制度は、これらの両極の乖離から目をそむけ、地方財政をほとんど一律に取り扱っております。たとえば、指定都市が軒並みに交付団体となっていることなどは、その根本的な矛盾のあらわれであります。大都市の豊富な税源、特に法人課税の適正化等により大都市には十分な財源を付与し、他方過疎の小都市には、ナショナルミニマムを達成するための十分なる交付税を配分できるように制度を整備し、その財政調整機能を確立させるべきであります。  第五に、自治省は、給与費のプラスアルファに対しては交付税の大幅減額という措置をとっておりますけれども、インフレに悩む各地方自治体実情を考慮に入れるならば、交付税減額等の報復的措置はとるべきではありません。  最後に、特別交付税についてであります。  特別交付税は、いまや二千億円の巨額にのぼっております。元来、特別交付税はつかみ金的性格が強く、不明朗な印象を与えやすいものであり、政府地方介入の手段に使われているとも見られがちであります。これを防ぐために、できるだけこれを普通交付税に移して、特別交付税の配分率を引き下げて、一般住民にも十分理解できるガラス張りのものとすべきであります。  以上六項目にわたり、おもなる反対理由を述べましたが、現行地方交付税制度の矛盾はもちろんこれに尽きるものではありません。今後早急に地方財政制度全般についての根本的な改革を要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  64. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 多田光雄君。
  65. 多田光雄

    ○多田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、地方交付税法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行なうものであります。  地方財政危機は年を追って深刻となり、さらに、わが国を襲った石油危機は、昨年来のインフレ、物不足と相まって、地方行財政に対しても大きな混乱をもたらしました。異常な物価高騰、資材不足は各地で公共事業の執行を困難におとしいれ、あるいは不能にするなど、地方財政危機状態に拍車をかけております。  こうした中で、地方自治体地方財政危機打開の声が高まり、地方財政の抜本改善要求は全地方自治体の要望であり、超過負担の解消を求める地方財政法に基づく意見書が例年になく多く提出されていることにも見られるように、地方財源の充実強化が強く求められているのであります。  このように、地方財源の充実強化が強く求められている中で、政府は、国と同一の基調により総需要抑制に資する方針のもとに地方財政計画を策定しており、本改正案においては、この地方財政計画に基づき、昭和五十二年度から昭和五十五年度において計画的に交付税特別会計から資金運用部資金に返還することとなっていた額に当たる千六百七十九億六千万円を、いわば繰り上げ償還する形で、国の一般会計に貸すとして減額措置を行なうこととなっております。この年度間調整が第一の問題であります。  言うまでもなく、国の総需要抑制政策は、政府・自民党の高度経済成長政策によってもたらされた悪性インフレ、物価高、物不足に対処するためと称して、高度成長政策の手直しをするかのごとくポーズをとりながら、国民に犠牲を押しつけ、今日のこの事態を取りつくろおうとするものにほかなりません。  交付税千六百七十九億六千万円の国による一方的削減は、この総需要抑制政策を自治体住民に押しつけるものであり、とうてい認めがたい不当な措置であります。すなわち、この措置は、国の経済事情や政策意図をもって、地方交付税法第六条に規定するとおり国税三税の三二%を地方に交付すべきものであるにもかかわらず、一方的に年度間調整措置を行なおうとするものであります。  交付税法第六条の三において、著しい財源不足に際しては交付税率を引き上げることを規定しているにもかかわらず、昭和四十六年から昭和四十八年当初においては交付税率の引き上げを行なわず、後年度分交付税の先取りともいえる借入金により処理し、昭和四十九年度は地方財政にゆとりがあるとして国に吸い上げるという年度間調整は、財政自主権を踏みにじるものであります。  今日の地方財政危機の中で、現に地方団体の要望、あるいは地方制度調査会の中間答申において、地方交付税の所要額の確保をうたっていることは周知のとおりであります。政府のこの地方財政状況を無視した一方的削減を許すことはできません。  地方債をきびしく押えていることとあわせ、昭和四十九年度の地方財政はますます困難となることは必至であり、わが党はこうした措置に反対するものであります。  第二に、単位費用の改正がきわめて実情からかけ離れている点であります。  本改正案による改正点の第一として、福祉教育関係の経費の充実をあげております。しかし、本改正案によれば、市町村の経常経費では社会福祉費が二一・六%の引き上げで、増加額は百九十七億円、投資的経費では、社会福祉費が四六・四%の引き上げにかかわらず、増加額は百十五億円にすぎず、また、道府県の経常経費では、中学校費が二七・五%の引き上げで七百十一億円の増加にとどまっております。  その他の項目の改正もきわめて不十分なものであります。  本改正案によっても、三二%の交付税総額のワクが拡大されたわけではなく、地方の財政需要にこたえるものに至らない改正であるばかりか、諸経費、諸物価の値上がりに伴って増額された、いわば当然増ともいうべきものにすぎず、交付税が一般行政経費として、国庫支出金の不足額補てんのための超過負担等に転用されることとあわせ、行政経費の引き上げにはほど遠いものであります。  また、本改正案において、市町村の投資的経費のうち下水道費の項目が廃止されております。このことは、補助率、起債充当率の引き上げを理由として、下水道費のうち投資的経費を基準財政需要額に見込まないということであり、いままで起債充当率の引き上げを理由にして交付税の単位費用改定を見送ってきた傾向にも増して、問題点を含んでいるといわざるを得ません。  この措置は、基準財政需要額を低く見積もることであり、地方財政運営を困難にし、今後こうした措置が繰り返されるならば、財政需要の増加を無視し、交付税率の引き上げの必要性を無視することとなり、所要財源を受益者負担とする考え方とあわせて問題があります。また、補助率引き上げ効果を打ち消すこととなり、地方債による肩がわりでもあります。  第三に、財政調整資金、土地開発基金の問題であります。  この両者は、三二%の交付税のワク内での措置であり、配分される交付税の総ワクは増加されていないことは言うまでもありません。  さらに、本来地方自治体一般財源である交付税の運用に、行政指導等を通じ一定のワクをはめる特定財源化であり、交付税の使途を制限してはならないという交付税法や、国は自治体の自主性をそこなってはならないという地方財政法の趣旨に反するものであります。  また、財政調整資金は、年度途中の不測の財政需要をまかなうべきものとされていることに見られるごとく、自治省地方団体の財源調整に利用されるおそれがあり、また自治体の不測の事態に対処する方策とはならない措置であります。すなわち、この措置は、三二%の交付税総額のワク内の措置であり、別途財源を増加するものではありません。さらに、地方自治体の財政拡充の要望を押えることに利用されないという保証はないのであります。  第四に、単位費用の算定の基礎に、依然として、実情とかけ離れた補助基準の数値を用いていることにより、基準単価、標準行政規模実情と全くかけ離れ、これが地方財政運営に重大な支障をもたらしていることであります。  すなわち、国庫補助金に対する超過負担と同様に、交付税においても単位費用の算定基礎が実勢に見合わないため、地方自治体に余分の財政負担を生み、地方財政へのしわ寄せとなっております。  第五に、今日交付税制度の仕組みがきわめて複雑となり、補正によって基準財政需要額が大きく変化し、場合によっては基準財政需要額が低くなることもあり、この制度の算定方法の簡素化が強く求められております。  第六に、地方財政計画の問題であります。  昭和四十九年度地方財政計画は、総額十七兆七百五十三億円、一九・四%増と、昭和四十八年度の伸び率を下回っております。これは国の総需要抑制政策を地方財政計画に押しつけたものであります。全体を通じ、卸売り物価が三〇%、消費者物価が二〇%台をこえる伸びを示し、諸経費の上昇が著しい中では、地方財政計画が二〇%台、あるいはそれ以下の伸びでは行政水準の低下は明らかであり、超過負担の解消もおぼつかないものであります。  四十九年度地方財政計画は、政府・自民党の失政の責任をたな上げにして、地方自治体と国民の犠牲で取りつくろい、政府地方自治体支配を強めようとするものであります。  日本共産党・革新共同は、当面、国と地方の事務、税財源の再配分、地方交付税率の引き上げ地方交付税制度の改善、超過負担の解消、大企業への課税の徹底、地方債の原資における政府資金の大幅増額などを要求し、本改正案に反対するものであります。(拍手)
  66. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 小川新一郎君。
  67. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております地方交付税法の一部を改正する法律案に反対する立場の討論を行ないます。  以下、そのおもな理由を申し述べます。  まず第一に、地方財政計画についてであります。  四十九年度の地方財政計画は、インフレ物価対策としての総需要抑制策が主眼とされ、その規模は国の一般会計の伸び率よりも低く押えられた緊縮型地方財政計画となっております。  また、国の一般会計の公共事業費の構成比を見ますと、産業基盤用五三・五%、国土保全用二一・七%であるのに対し、生活基盤用はわずかに一八・三%となっております。  これを受けての地方財政計画の普通建設事業費については、その大部分である四分の三が国の補助事業費や直轄事業負担金となっていることからも明らかなように、今回の地方財政計画は、その中身についても産業優先的な姿勢が依然改まっておりません。  そのため、地方団体が独自の立場で行なう福祉のための単独事業の構成比がきわめて低く、福祉が犠牲にされております。  言うなれば、政府の総需要抑制策は、すべてのものに一律的に予算の削減を行なったものであり、自治体に建てず、つくらず、買わずの三原則を強要するものであり、その影響は福祉にしわ寄せされると同時に、住民の生活に大きな支障を来たすことは明白であります。  本来の地方財政の使命は、住民の生活を守ることにその基本が置かれなければなりません。悪性インフレ、物価高という昨今の経済情勢から住民を守るためには、むしろ、このような異常事態のときこそ、福祉増進の役割りをになう地方財政を強化することが当然であると考えるものであります。  すなわち、総需要抑制といっても、そこにはおのずから限界と選択がなければなりません。今回のような社会的、経済的に弱い立場にある人を、いたずらに苦しめるような地方財政計画は、断じて認めるわけにはまいりません。  なお、ここ数年の地方財政計画を見ますと、地方行政、住民サービスはすなわち人であるといわれながらも、地方財政計画の人員は、実際の人員よりも数十万人以上過小に見積もっているなど、あまりにも実態を無視しているものであり、計画と決算とが大幅に食い違うなど、地方自治体の財政運営の指針となるべき資格をみずから放棄したものであるといわざるを得ません。  これが反対理由の第一であります。  第二には、交付税の貸借についてであります。  従来から、国と地方を通ずる税財源の再配分が叫ばれながらも放置され、何の財源補てんも行なわれないまま、今回国の総需要抑制策の一環として、交付税会計から国に約一千六百八十億円を貸し付ける措置がとられております。  交付税地方固有の財源であるにもかかわらず、国の一方的な都合によってこのような強制的な貸借を行なうことは、本来の交付税制度の趣旨に反するとともに、実質的な交付税率の引き下げであります。  このような貸借を行なった理由として政府交付税に余裕が生じたと言っておりますが、その実態は、交付税の算定の基礎となる単位費用を実際より著しく低く押え、あたかも余裕金が生じたかのように見せかけているにほかなりません。  財源保障という交付税本来の使命を果たすためには、現実に即した単位費用の算定を行ない、それを積み上げた結果、必要があれば交付税率の引き上げを行なうべきでありますが、このような措置が全くとられておりません。  これが反対理由の第二であります。  第三に、超過負担についてであります。  超過負担の解消については、国と地方との財政秩序を乱すとともに、地方の福祉事業の推進を阻害するガンとして、その抜本的解消が叫ばれてきましたが、昨年夏には、ついに自治体が国を相手どって訴訟に踏み切るという事態を招くほど、深刻な問題となっております。  特に、昨年以降の悪性インフレ、物価高が高進している今日、わずかばかりの単位費用の改定では、超過負担は一向に解消できないばかりか、ますます増大する一方であります。  政府は、超過負担解消に対する姿勢を根本的に改めなければなりません。すなわち、現在小中学校建設、保育所建設等の生活基盤関連のものについては、標準経済額制度がとられておりますが、道路、港湾、河川等の産業基盤関連事業のように実額精算の制度に改め、その対象範囲拡大をはかるとともに、地方自治体の公共事業請負契約に伴うインフレ条項の適用に対しては、国は十分な財源対策を講じるなど、抜本的な措置を講ずるべきであります。  また、地方自治体には補助事業の超過負担とともに、国の直轄事業にかかわる地元負担金が課せられておりますが、これは本来の直轄事業という趣旨から大きくはずれており、即時廃止することを望むものであります。  さらに、国鉄利用債、国の委託費等、本来国が全面的に責任をもって措置しなければならないものも、地方自治体にその負担を強要することが続出しておりますが、これは国と地方との財政秩序を乱し、地方財政を圧迫するものであって、早急に善処することを要求するものであります。  これが反対理由の第三であります。  第四に、地方債並びに選別融資についてであります。  四十九年度の地方財政計画では、一般会計分の地方債は前年度に比べて四・二%削減されております。また、従来、起債能力のある大都市などに重点的に配分されてきた一般単独事業に対するワク外債にも、きびしく引き締められようとしております。  さらには、中小学校、保育所などのための用地取得に対する起債にも、大蔵省の選別融資によって大きく制約され、自治体は本年度の事業計画のめどすら全く立たないというのが実情であります。  自治体の行なう事業は、住民生活に密着したものであり、住民生活に最小限必要なものに対しては優先的に資金を確保することが先決であり、その上での総需要抑制策の一環としての金融引き締めでなければなりません。  ところが他方では、銀行保証を受けた農協資金等が、大企業にも大量に流れ出しているなど、政府の総需要抑制策は全くしり抜けとなっております。  このようなずさんな金融政策では、当初期待した総需要抑制策とは大きくかけ離れたものであるといわざるを得ません。これを早急に改善することともに、都道府県、大都市などの起債能力のある自治体に対しては、起債の許可制度を廃止すべきであります。  これが反対理由の第四であります。  最後に、自治体病院対策についてであります。  従前から経営危機が叫ばれ、その財政援助が要望されていた自治体病院に対して、今回、不良債務の一部のたな上げと、利子補給の一部及び不採算地区病院運営費補助が行なわれることになったのであります。  これは、自治体病院の財政難に目をつぶってきた従来の政府の姿勢に比べれば、一応は前進であるといえますが、その対策はきわめて貧弱なものであり、とても抜本的な対策といえるものではありません。  地域医療を確保するための自治体病院役割りから考えるならば、独立採算制のワクを取り払い、不良債務に対しても全額特例債発行を認めるべきであります。また、その返済にあたっては、国は一部の利子補給を行なうのみで事足れりとして、元本の返済を自治体に一方的に押しつけておりますが、このような姿勢を改め、少なくとも元利償還の半分は国が負担し、今後新たに発生する不良債務元利償還に対しても、引き続き同様の措置をとるべきであります。  さらに、不採算地区病院基準のとり方については、今回のようにベッド数、入院患者数などによるのでなく、地域医療中核としての役割りを果たしている自治体病院で、人口十万人未満市町村に存在する病院はすべて対象とすべきであります。  なお、緊急を要する医師不足、看護婦問題に対しても真剣に取り組むことを望むものであります。  これが反対理由の第五であります。  以上、おもな理由を申し述べて反対討論といたします。(拍手)
  68. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 折小野良一君。
  69. 折小野良一

    ○折小野委員 私は、民社党を代表し、ただいま議題となっております地方交付税法の一部を改正する法律案に対して反対の立場から、以下簡単な理由を申し上げて討論といたします。  反対の理由の第一は、今回の交付税法の改正案におきまして、千六百七十九億六千万円を減額する特別措置をとったということであります。  石油危機を契機とする経済の混乱の中で、そのしわ寄せを受けて最も苦慮してきておりますのは地方自治体であります。最低の住民福祉を維持するために、地域住民自治体に寄せる期待を考えるとき、本来、地方自治体の固有の財源である地方交付税を、国の一方的な措置によって減額することは、いわゆる地方自治体の本旨に反し、地方自治を圧迫するものであります。今後、国と地方との財源調整については、地方実態並びにその意思が反映できるような制度を確立すべきであります。  次に、地方交付税制度基準財政需要額の算定において、地方自治の静的な面に比較し、動的な面の把握が十分でないということであります。  現実地方自治は、今日、社会経済の変動とともに大きく動きつつあります。このような動きに対応する制度運営、必ずしも十分でありません。過密過疎の進行、関係地域における行財政の混乱は、政策があと追いに終始してきた政府にもその責任の一端があるといえます。中でも、普通地方交付税の算定において基準財政需要額の算定が、地方自治の動的な面を十分に把握いたしていない点にその欠陥の一半があります。精妙巧緻であることはけっこうでありますが、時代の流れを把握してこれに対応する適切な手を打つこと、すなわち、動態的な制度運営について一そうの考慮を払うべきであります。  最後に、四十九年度の地方行財政はきわめて困難かつ流動的であります。しかもなお、住民福祉の向上についての地方自治に対する期待はきわめて大きく、したがってまた自治体の責務も重大であるといわざるを得ません。  このような情勢のもとにおける、政府の今後一そうの適切な配慮を特に要望いたしまして、私の討論といたします。(拍手)
  70. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  71. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  72. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 ただいま議決いたしました法律案に対して、島田安夫君、山本弥之助君、林百郎君、小濱新次君及び折小野良一君から、五派共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、本動議の提出者から趣旨の説明を求めます。島田安夫君。
  73. 島田安夫

    ○島田(安)委員 私は、この際、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五派を代表いたしまして、地方交付税法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付したいと思います。  案文の朗読により、趣旨説明にかえさせていただきます。    地方交付税法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(案)   政府は、今日の地方財政危機を打開し、地方財政の充実強化に努めるとともに、今後における社会経済情勢の変化に即応した適切な財政運営ができるよう、とくに次の諸点について善処すべきである。  一 社会経済情勢の急激な変動に伴う地方団体の財政需要の増高に対処するため、地方交付税率の引上げ等をふくめ、その所要額の確保その他一般財源の強化充実をはかること。  二 地方団体の固有財源である地方交付税の法定額を国の都合により減額することは、地方交付税の本旨に反するので今後はこれを避けること。  三 地方団体の財政需要に適合するよう基準財政需要額の算定方法の改善充実に努めるとともに、とくに市町村に重点をおいて算入措置の強化をはかること。  四 地方交付税基準財政需要額の算定方法を簡素化すること。  五 住民生活の安定と住民福祉の充実のための施策を重点的に推進することとし、とくに、過密・過疎対策、公害対策、消費者行政等のための財政措置の充実をはかるほか、地方道路目的財源の拡充に努めること。  六 上・下水道、廃棄物処理施設、教育施設、社会福祉施設、住宅等住民の生活関連公共施設の計画的な整備をはかるため、国庫補助負担金制度の拡充強化をはかること。  七 国庫補助負担事業にかかる超過負担については、引き続きその解消措置を講ずること。とくに、最近の急激な物価上昇の状況にかんがみ、昭和四十九年度の国庫補助単価等については、さらにその適正化をはかること。  八 地方債については、引き続き政府資金の構成比率を高め、償還期限を延長する等の質的改善をはかること。  九 国鉄利用債、国の委託費等、ほんらい地方団体が負担すべきでない経費の負担を地方団体に求める事態が未だにあとを断たないことにかんがみ、国と地方団体の財政負担秩序を乱すことのないよう措置すること。  一〇 基地所在市町村の財政需要の増高に対処するため、適切な財政措置を講ずるよう努めること。   右決議する。 以上でありますが、何とぞ皆さんの御賛同をお願いいたします。(拍手)
  74. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  75. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 起立総員。よって、島田安夫君外四名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際、自治大臣から発言を求められております。これを許します。町村自治大臣
  76. 町村金五

    ○町村国務大臣 ただいま満場一致で御決議のありました附帯決議につきましては、御趣旨を尊重いたしまして善処してまいりたいと思います。     —————————————
  77. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  79. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 この際、午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十六分休憩     —————————————    午後二時九分開議
  80. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出にかかる消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大野市郎君。
  81. 大野市郎

    ○大野(市)委員 消防法の一部を改正する法律案に関しての質疑でございますので、冒頭、委員長にお許しをいただきたいのでありますが、たまたま三月五日の予算委員会の分科会で、自治大臣に同様の問題で一部御質問をいたしましたが、その席で、問題は違うけれども、いわゆる法律に一たん決定されるというと、その実施の姿がどのように国民の生活と遊離するような形に変わろうとも、行政を担当するお役人の方々はこれを墨守して、改めるということが非常にむずかしいのだという一例が出てまいりました。それは、委員の同僚諸君もお聞きになると、そんなことかとびっくりされるような内容なんです。  それは、小額の還付金をどうやって納税者の手もとに戻そうかという問題を提起したのであります。しかも金額はわずか三十円。三十円の府県税の納め過ぎがあったので地方事務所が返す方法であります。これが麗々しく封筒に入ってきて、あなたが三十円納め過ぎであるから、これを東京何々銀行に送りましたからどうぞ取りに行ってくださいという通知が来るのですね。これに対して納税者は、納め過ぎであったか、さて三十円をどうやって取りに行こうかという問題になったわけです。いま大東京で、三十円の金を銀行に振り込んだから取りに行けといって、どういう方法で、貨幣価値、名目価値でもいいですよ、三十円の銅貨三つをどうやったらそれ以下の費用で行けるかというような趣旨で、禅問答を自治大臣とやったわけでありますが、これは何としても今日の貨幣価値の状況の変化から見ても合わない話だから、もうすでに郵税で、手紙一本、地方自治体は郵政省にお払いになっているような姿なんだから、これを何とか簡単にして、よく生命保険の会社などでは、過納がありますというと、次回の納付に対してこれは差し引いてお納めください、お預りしておきますというような通知をよこしてくれるので、納める者は次回の通知書を見るというと、差し引き幾らを払えという親切な、いわば生命保険の告知書がいただけるので、それを払えばいいという配慮がしてあるわけなんです。お国の納税を、計算間違いをしてちょっと小額納め過ぎても、まこと、しゃくし定木にそういう手続をとっていただくのはありがた過ぎるが、取りに行く者はないわけです。これをどうしてくださるか。生命保険のような形で、来年度の納めるときに差し引いてくださいよという方法がとれないか。あるいは郵便切手で、一番最初通知するとき、あなた多過ぎたから三十円、切手で返すよというようなことができないか、こういうことを申し上げたわけです。これが三月五日です。きょうは大臣参議院予算の総括でおいでにならないことは承知しておりますので御無理はいたしませんが、政務次官、代表としておいででございますので、この一件はきょう初めて申し上げたわけですが、まこと、ざっくばらんに言うとそういう形なんです。  それで、私がここで申し上げるのは、そのときに前後してあなたのほうの部下が——私が質問してから来た書類でないのですよ、質問する以前に、私が部内で相談をしたときに私にくれた書類がこれなんです。この書類は二月の末に来た書類なんですが、私は三月五日の発言なんです。その前の書類を見て、私はまた納税者として、これはわずか三十円と言うておれない、官吏のものの考え方がこんなことであったら、われわれが立法府において法律の形で、よもやと思って通してしまうと、あとはもう国民が困ろうが泣こうが迷惑であろうが、それはわがほうの知ったこっちゃないというのがここに書いてあるのですよ。それをきょう申し上げて善処を求めたいわけであります。  これは消防法の改正にあたっても、消防法の改正の文言はまこと簡単で、スプリンクラーをつけなさいというのです。あれは安全です、だからつけなさいというだけで、立法府のわれわれ同僚がうのみにしてそれをのみ込んだ結果、あとは政令あるいは規則、通達で何をされようとも、立法府は文句は言えないシステムになっているのです。その証拠の一つにもなるものだから、まこと、ノミみたいに小さいお話を堂々出すのですが、関係はそこにあるわけです。  これはこういうことを言ってこられたのです。私がその三十円の切手を入れたらどうだという提案に対して、それは法律上許されておりません。地方自治法何百何十条の何によって、こういう方法とこういう方法は許されていますといって、まこと、それはごもっともなんです。だから、法律にないから切手は送れませんと、こういうわけです。もし事実行為として——政府は通達でよく事実行為をやりますね。事実行為として郵便切手を送った場合に、債権者の中で、おれの意に反すると抗弁をしてきた場合にはトラブルの原因になりますからできませんというのです。三十円送ってきたのを、けしからぬというて抗弁する者を予想しての発言なんです。こういう、立法者のわれわれと行政担当者の間に政治配慮がないと、政治不信行為につながると思うのです。それでこの問題を私が力み返ってまた取り上げたわけです。ですから私は、通達で、切手で送りましたからよろしくというて砕けていただくことができなかろうか。これが一点。  それから、それもまた問題があるというなら、生命保険がやっているみたいに、あなたは三十円納め過ぎたから、来年お納めになるときは三十円差し引いて納めなさいよというてくださるか。どうせ一通手紙が来るのですから、そういう手紙の内容にしてくださるか。来年納税者が忘れて全額を納めたら、帳簿上は三十円過納で残るでしょうけれども、これは納税者が自己のあれを怠っているわけなんだから、これは次元が違うと思います。  そういうようなことで、立法府で気持ちよくきめたことが、今度は実情が違って、貨幣価値が変わった場合にも行政担当官は知らぬ顔で、その抗議を事前に何とかならぬか、国会の発言などをわずらわさないでもできないかと相談すると、返ってくるのが、いま申し上げたような答弁書が返ってくることになりますと、これはわれわれ政治家、要らぬことになるのですよ。したがって、政務次官大臣も要らないほうになってしまうことでありますから、そんなことばお許しにならぬわけなんです。これはいかがですか。ひとつ単刀直入に、通達でお返しになるとか、あるいは生命保険並みに、そんなような御処理をなさるかということを御決断いただけませんか。政務次官、お伺いいたします。
  82. 古屋亨

    古屋政府委員 納税者の過誤納によりまして、たとえばいまお話しのような三十円の還付金が生じた場合に、これを隔地払いの方法等によったために、納税者に、還付金のために還付金を上回るような負担をさせるというようなことは、御指摘のとおり、私はきわめて不適当であると考えております。  したがいまして、いま大野先生が二つの解決方法につきまして御指摘になりましたが、ひとつ至急に私のほうにおきまして、現在の法律関係の解釈につきまして、関係方面ともできるだけ早い機会に実態に即するような方法検討してまいりたい。若干の時間をおかし願いたいと思いますが、責任をもちましてこういう問題の解決をしてまいります。
  83. 大野市郎

    ○大野(市)委員 わかりました。そういうささいな一例ですけれども問題点がたまたま出ておりましただけに、消防法の一部改正の大臣の御提案に対しましても、御提案は、まさに火災のこのごろの状況から見ると、どうやって国民の生命、財産を守ろうかということで、担当省庁が御苦心をなさるということもよくわかるのです。ですから、われわれ立法府におりまして御相談がありましたとぎには、そうか、そんなに安全なものならそうやったらよかろうな、すなおにその入り口に近寄れる理屈でございます。  しかし、さて具体的にどうするのだろう、具体的にどうなるのだろうかということでこの問題に入ってまいりましたら、幾つかの疑問が出てまいりました。これからその幾つかの疑問点の解消のため、質疑を通じて御意見を承り、解決策に前進を望むわけであります。  まず第一に、簡単にスプリンクラーの問題だけに限定をいたしたいと思います。スプリンクラーを、既存不適格の防火対象物に法を遡及して強制するという法改正の内容でございます。しからばこれに対して、法治国でありますから、それの妥当性の根拠は一。ちっと大げさのようでありますけれども、憲法十二条には、御承知のように自由及び権利はこれを保障する。乱用してはならない、あるいは公共の福祉のために利用する責任は負っておる、こういう限定はついておりますけれども、明らかに諸権利の自由を保障されておるわけですね。これを受ける意味でもありましょうが、憲法二十九条には、「財産権は、これを侵してはならない。」その第三項には、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とあります。正当な補償なしに既得権益というものはみだりにないがしろにしてはならぬ、侵してはならぬという憲法の根本規定がございます。ですから、既存不適格の防火対象物というものは、それぞれその対象物が世に生まれますその瞬間においては、国法が適法と認めて存在を許したものでありますから、それに法の遡及をするというのは例外になるのであります。したがって、これに対して、場合によっては正当な補償の必要性が出る、そういう仕組みになっておるわけであります。  そんなようなことが前提になりまして、この既存不適格防火対象物の法の遡及という事柄は、消防庁御当局は非常に神経質過ぎるぐらいに勘案をされながら、ちゅうちょにちゅうちょを重ねて今日までおいでになったのは私はよく知っております。だからそれは御存じなんですが、その前提の中から、これから申し上げる幾つかの問題が生まれてくると思うのです。  要するに、いま公害が出まして、公共の福祉といわゆる諸権利の問題に対してトラブルが出ました場合に、かつて御承知のようにメッキ工場が、メッキの工程の中で青酸化合物をほとんどなまで下水に流すというような事実が出てきました。これに対しては待ったなしに、公害が付近住民に直接の害を及ぼすことが明らかになりましたので、非常にシビアーなメッキ工場の排水処理がきまったわけであります。これらは全くその危険度は緊迫をいたしております。公共の福祉に対する危険の逼迫度は待ったなしだろうと思います。これはわれわれはよくわかるわけです。これに対してさえも、国は既存の生活者に対してあらゆる手段を講じてくれて、円満な秩序の維持ができるようなバランスをはかってくれておるのを、あの公害の諸法の成立の過程で私どもはこれを知っております。  これと比較した場合に、建物、人命、財産を保護するためにスプリンクラーというものがそんなに緊急不可欠の逼迫度を持つものかどうかということになると、私は同一には論じ得ないと思うのです。しかし、ないよりは確かにあるほうがいいんだという説が多いのでそれをやりたいんだ。そこまで、じゃあわかろう。そこまでわかったとしたら、ほかに同じような方法で、スプリンクラーだけが唯一のものであるのだろうか、スプリンクラー以外ではだめなんだろうか、こういうような疑問というのは出てきてもいいと思うのです。そういう疑問を私は持ちました。  そして、それから次の問題が出てくるわけであります。煙感知器というのがすでにつけさせられておるのであるが、スプリンクラーでぼやがとまった実例というのが、私どもがいただいた「消防法改正案説明資料」の三−一に五十八例載っております。三十九年三件、四十年二件、四十一年四件、四十二年三件、四十三年二件、四十四年四件、四十五年七件、四十六年七件、四十七年八件、四十八年十七件、四十九年一件の五十八例が、この資料の中で、スプリンクラーによって早期防火に成功した例として報告をされています。  しからば、これらはどんな程度の早期消火であったろうかとその摘要欄を見ますと、紙くずかごの中へたばこの吸いがらを入れたのでぼやが出た、そうしたらその上にあったスプリンクラーが作動して消えちゃったというようなのが、ぞろぞろと五十八並んでいますよ。この程度のぼやであるとするならば、一体煙感知器というのは働かなかったのだろうかという疑問が出たのです。煙感知器は法で規定をされて、今度の改正に入れられるような防火対象物にはことごとく煙感知器をつけさせられた。煙感知器をつけさせられるわずか二年前には、熱感知器の採用を命ぜられたのです。これは経済的負担が比較的吸収が可能であろうという考え方であったのでしょう、法の改正をしないで施行規則で指定をされて、それらの施設業者は喜んで、そんな火災を早期に発見して、自己の扱うところの財産、そこに参集してくださるところの多数の方々の人命が楽に助かるというのならそれはつけたいと言うて、何びとも不満を訴えないで熱感知器をつけた。熱感知器をつけてわずか二年もたたないうちに、今度は煙感知器という便利なものができた、炎なんというものより煙というのが早いのだ、炎になってからではおそいから煙感知器に変えなさいというので、これまた膨大な費用を、それぞれの防火対象物を所有する所有者は喜んで、ですよ、喜んで、そんな便利なものができたなら煙感知器をわれわれはつけさしていただきますと言うて、何びとも疑問もなしに煙感知器が行き渡っておるのですよ。煙感知器の効能はどうなったのでしょうか。スプリンクラーの効能がそんなふうにあらわれるのだとしたならば、そういう統計がこの中にあるとするならば、煙感知器によってもぼやのうちに、あの簡単なバケツの水あるいは簡単な手に持つところの自動消火器、あのようなものでもぼやで消しとめただろう。くずかごの中にたばこの吸いがらが入って燃えたという程度のものが出ておるのだから、その程度のものならば必ず煙が出たに違いない。煙感知器が働いて、その結果——同僚の諸君は煙感知器がどんなになっているかおわかりにならぬ。熱にしろ煙感知器にしろ、全部自動ベルに接続しておりまして、電流に変わって、その施設の司令部に、たとえば守衛のおる部屋に全館の配置場所が名前入りであるボードがある。そのボードに、どこどこが発火場所であるというのが赤ランプで配置がつきますから、そこを見ると、三階のどこどこだ、八階のどこどこだというふうなぐあいで、煙感知器なり熱感知器なりによって、異変を起こした場所が自動報知器によって全館に響き渡るようになっておるのが煙感知器、それに連動する器械なんです。それがいま行き渡っているのです。それなら、煙感知器によって感知した結果ぼやで済んだという例が出てこにやならぬわけです。それをスプリンクラーだけ、こんな簡単なぼやの実例が、一年間に三つ四つずつの報告書がこんなにまとめられておって、煙感知器の効果はあったに違いないのにどうしてその報告はないのでしょうか。あるに違いない。あるならば資料がいただきたい。いかがでしょうか。
  84. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 煙感知器が作動しまして、それによって火災を早期に発見をし、消火器等でこれを消しとめたという事例はございます。この件数がどれだけになるかという点につきましては、ぼやの段階で火災がおさまったという事例の報告がきわめて少ないために、私どものほうで相当時間をかけて見ましても、なかなか実態の資料として集まるほどまだ出ておりませんけれども、具体的な事例でどういうのがあったかという一、二の例はございます。それからまた、煙感知器が作動し、火災報知が自動的になされても、結果的には初期消火に失敗をして火災になったというような事例もございますわけで、煙感知器は確かに自動的に火災の発生を知らせるという効果はありますけれども、スプリンクラーと違います点は、消火というものは人手でやらなければならない。この点においての効果の差があるわけでございます。  そういう意味におきまして、一応資料として差し上げました分は、今回の改正に関連をするということで、いままでスプリンクラーによる初期消火の事例を資料として作成をして差し上げたということになっておるわけでございます。
  85. 大野市郎

    ○大野(市)委員 煙感知器が作動して、それが初期消防に間に合わないで火災になった実例がありましたら、いますぐあるなら私はいま見たいし、いますぐないのならばこの委員会継続中に提出していただきたい。  私は、そういう御答弁をされるだろうと思うのだ。佐々木さん、あなたまだこっちの道、私より詳しくないんだから、その点は私はわかるから、そういうことのことばじりをとらえようなんて思わないけれども実態を言いたいのだ。  先日もロイヤルホテルの例があったでしょう。ロイヤルホテルの例があって、あの屋上で煙が出て大騒ぎになった。この場合に煙感知器はきっと働かなかったのでしょう、屋上だから。だから、すべての設備がありながら非常ベルを鳴らそうとしなかったのですよ。それで消防隊がかけつけて、そして消防隊の騒ぎで宿泊客はびっくりして、フロントに一せいに、火災はどこだという騒ぎになった。そうするとフロントのほうでは、いや、心配はありませんとしか言わないので、ますます騒ぎは大きくなったというのが、つい数日前の新聞に出ていたでしょう。  ですから、万全の設備をさせておったって、ベルを鳴らさないという、つまり管理の問題がもう一枚あるのです。ですから私は、煙感知器が作動して初期消防に失敗した実例があるならばほんとうに聞きたい。私が言うのは、だから要らないというのじゃないのですよ。そういう設備があるのだから、あるなら、ある設備というものをやはり考えの中に入れて、その上になおかつ、自然に消える手があるから、つけられる人はこれをつけなさい。特に百貨店のような、ほんとうに不特定多数で、事故でも起きたら、だれがけがしたやら行くえ不明になったやらわからないような、不特定多数の方々が出入りなさって、あの混雑の状況であるならば、まさにスプリンクラーというのは確かに手っとり早くていいかもしらぬが、そのほかの設備に全部右へならえをさせるだけの経済性との関係、施工の困難さとの関係で、やはりもう一ぺん御一考なさる余地がなかろうかという着想でこれからの発言も続けますので、そういう意味で全面否定しようというのじゃないのですよ。いいものだからこそ高くてもやるんだから、いいに違いないが、万能であろうとは思えないので、煙感知器の効能ももう少しお考えになる必要があろうということをいま指摘したのです。これが一点。ですから、その資料あったらあとでいただきますよ。  それから、スプリンクラーがいいというものだからまたあなたのほうのこの資料の中には出されちゃったのだ。米国の、スプリンクラーがいいということの実例があるというので、三年間のスプリンクラーをニューヨークでつけた実例かなんかが採用になってあるのですね。これは九八%とかうまくいったというのですね。残り何%は残るのです。これは機械の故障その他で作動しなかったというのですから、火災が起きたうちの何%かというのは、それだけのことをしたけれども、やはり器械なものだから万能ではないわけです。  これも言いがかりの一つかもしらぬが、私が言いたいのは、そんなことをしたために、物量戦でものを何でも片づけようとするために、アメリカは、一九七一年の実例をあなたのほうでは御採用になっておるが、七一年の人口百万人当たりの火災の件数は、同じ年の日本の人口百万人当たりの火災件数に比較して、日本を一〇〇としてアメリカは二一八三ですから二十二倍ですよ。百万人当たり二十二倍の火災が発生しているというのは、鉄骨コンクリートの密閉した部屋で、入り口をがしゃっと締めたら密室になって、火が起きようと何が鳴ろうと、水が降ってくるから火が消えるというので、これは火の用心をしないのですよ。ですから、物量にたよって心の配慮というものをアメリカ人が怠っている証拠が、日本の二十二倍の発火の原因になっているんです。だから、私はそういう意味で、どんないいものが出ても万能であるという考え方は間違っておる、こういうことで、あなたのほうの資料を逆に引用するとそういうものがある。  それから三番目に経済性の問題なんです。熱感知器、煙感知器は、御計算なさって、また設備者は費用の負担に耐えられるというので快く喜んでやった。今度のスプリンクラーは、デパートのような大々企業で大収益をあげておる機関、しかもほんとうの不特定多数の人たちのひしめき合うような場所あるいは地下街に対しては、私はそういうものは確かに必要性を認められておるからだろうと思いますが、最近、これは新聞の切り抜きを持ってきましたが、四月二日の朝日に載っておった記事でありますが、上野の松坂屋では東京消防庁の指導に応じて、このほど地下一階と一階の計六千五百八十平方メートルの売り場にスプリンクラーを取りつけた。スプリンクラーの費用、総額二億円かかったというのが載っておるのです。これは六千五百八十平米で割りますと一平米当たり三万円になります。  これは長官、今度の立法化によってスプリンクラーをおつけなさろうという場合には、既存不適格建物に対して遡及させてスプリンクラーをおつけになる場合には、一平米幾らでできると試算をなさいましたか。
  86. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 まず、第一点の、煙感知器がありながら初期消化に失敗をして火災になったという事例のごく最近のものとしましては、大洋デパートの火災の直後に館山市におきましていとう屋というデパートが火災になりました。これはスプリンクラーを設置するほど大きい面積のデパートではございませんけれども、自動火災報知機等は設置されておったもので、それで煙感知器によりまして全館に火災報知がなされた。これは成功しております。そしてまたそれによりましてお客が全員避難をいたしまして、人命その他に対する被害はなかったのでありますけれども、従業員が消火器並びに屋内消化せんを利用しての消化活動には失敗をいたしまして、これが全館焼失をするという事例があるわけでございます  それからまた、もちろんスプリンクラーというものが絶対的に効能があるかどうかという点は、アメリカ等におきます事例におきましても一〇〇%というものは出ておらないわけでありまして、九七、八%くらいの成功で、その失敗例というものの中にもいろいろ原因はありますけれども、保守が怠られておったというのも失敗の例にあるかと思います。  そういう意味で、私どもが講じた防火対策上必要な施設というものは、やはり安全装置としては二重に必要ではないだろうか。そういう意味におきまして、煙感知器あるいは熱感知器等による自動火災報知装置と、同時にスプリンクラーによる初期消火という二つの安全装置を備えることが望ましいということを考えたわけでありまして、特に不特定多数の人が出入りするデパート等の建物のような場合には、できるだけ人命の安全というものをまず優先的に考える。そういう意味におきまして、火災報知によってまずお客の避難を優先させていく、そして消火の点はスプリンクラーといったような器械にまずまかしておく、こういうことを考えたわけでありまして、そういう意味におきまして安全装置は二重であることが望ましいというふうに考えたわけでございます。  それから第三の経済性の問題でございます。確かに新聞紙上に松坂屋の事例がございましたので、私どもも、非常に金がかかっておるということで関係者のほうから調べてみたわけでありますが、御承知のとおり、上野の松坂屋は、前回の委員会でも申し上げましたとおり違反建築物でございます。消防法の規定による違反建築物でありましたために、東京消防庁がすみやかにこの違反状態を是正するというように指導した建物でございまして、この際の工事費は約二億円かかっておるということは新聞の報道のとおりでございますが、ただ、この二億円の工事費の中には、スプリンクラー設備と空調工事が両方一緒に行なわれております。そしてその中を分解してみますと、スプリンクラーの工事費が平米当たり約五千円でございます。それから空調工事の経費が平米当たり約九千円でございます。そのほかに両方の共通工事費と見られるものが平米当たり一万一千円程度ございます。これは違反建築でありましたために、工事をすみやかに実施をしてもらうということのために共通工事費がやや割高になってきておる。それで、当初は本年の六月一ぱいくらいまでに完成をさせたいということだったのでございますけれども、これを少なくとも四十八年度内に完成をさせるというような突貫工事が行なわれておりますので、そういう意味で共通経費といいますか、この架設工事その他の共通経費がやや割高になっている、こういう事例でございます。  私どもが、スプリンクラーの工事を既設の建物に実施をした場合にどれだけかかるかという試算をいたしてみますと、大体、通常の工事の場合に平米当たり一万二千円前後というふうに積算をいたしております。ただ、この場合におきましても、特に天井の工事について相当経費をかけなければならない。たとえば内装に相当金をかけてつくっておるような部屋などの場合には、スプリンクラー工事自体はそれほど変わりませんけれども、そうした内装関係の経費に相当割高になるという事例がありますと、この金額はもっとふえてくるだろうというふうに考えております。
  87. 大野市郎

    ○大野(市)委員 それでは、その問題に対して疑問がまだありますので、きょうは建設省の営繕部長さんに来ていただいておるはずですが、営繕部長さんから、ひとつスプリンクラーの新設、全然新しくやる場合幾らぐらいか、それから既存不適格の建物にやらせる場合にはどの程度かかるだろうか、もしおわかりでありましたら教えていただきたい。
  88. 上山勝

    ○上山説明員 スプリンクラーを既存の建物に新しく設置いたします場合に、その単価という御質問でございますが、これは建物の種類とかあるいは建物の形あるいはその仕上げ材料等によりまして、その場その場でたいへん差が大きいということで、一がいに数字を申し上げるのも何かとたいへん困難でありますが、あえて、かなりの誤差があるということをお含みの上でお聞き取りいただきたいと思うのでございます。  私ども、日ごろ手がけております事務庁舎につきまして一例を申し上げます。六千平米程度の鉄筋の耐火構造の建物につきまして初めから、新営のときからスプリンクラーを手ぎわよく設置するという場合の単価は、大体平均いたしまして六千円程度、平米当たりかかるかと考えております。これは新築と同時に行なったことでございますが、すでにある建物にスプリンクラーを取りつけるという場合は、さらに壁をはつりましたり、あるいは足場をかけたりいたしましていろいろ経費がかかります。したがって、スプリンクラーだけについても六千円ではできない。おそらくこれは二割から三割くらい足さなければならない。かりに二割五分足しますと七千五百円という数字が出てきます。さらに、すでにでき上がっている建物は天井があると想定いたしまして、天井裏に配線をするためには、一たん天井を落として、新しい天井に戻すということを想定いたしますと、その天井のかけ払い、かけたり払ったりする手間が、これも仕上げ材料によってたいへん違いますが、大ざっぱに申しまして八千円程度、おそらく仕上げ材料を非常に簡単なものにいたしますと、それからさらに二千円ぐらいは引けるかとも思います。したがって、たいへん幅がございますが、一万三千円から一万六千円ぐらいの間におさまろうかと考えております。  なお、これは事務庁舎の場合の例でございまして、たとえばホテルとか旅館とかあるいは病院とか、間仕切りがたいへん多い建物につきましてはさらにその二割ぐらいは経費を乗せてやらなければできない、これはごく大ざっぱに見積もっての話でございます。
  89. 大野市郎

    ○大野(市)委員 これは、既存の不適格のものに遡及してやる場合で、いまのお話は事務庁舎のお取り扱い例をお話しなさったので、先ほどの松坂屋の場合はデパートですから、露出ででもおやりになったのじゃないかと推測しておりますが、いまのホテル、旅館というものは、客室そのものが商品、デパートは反物なりおもちゃなりというふうなものが商品ですけれども、同じ遡及される建物でも、部屋そのものが商品でありますために、非常に困難でもあり高価な費用がかかる。いまのリゾートホテルの実例は、これは見積もりの段階で出たものが報告をされておりますが、それによれば、これは予算分科会でも一ぺん申し上げましたので、結論だけ当委員会でもお聞き取りいただきたいのですが、百六十四室ある建物で一万五千平方メートル、そういうのが四億二千万かかる、平米約三万円弱、こういう計算が見積もりから出た。この中には、おっしゃるとおりにスプリンクラーだけの設備でいきますと、その半額の二億七千万ぐらいですから、似た数字に近づいてきたように思いますけれども、御承知のように、建設費は、天井その他の工事諸経費その他がありますし、それだけで四億二千万になって、しかも、当然でありますけれども、これらの施設をする間は休業しなければならないものがそのほかにもまたありまして、これは幾らに見るかは別ですけれども、工事自体で四億二千万かかるというのが出て、これは平米三万、坪九万九千、約十万ですな。  そういうような結果が出ておりますだけに、実は私が質問にあたっても、よほど万能だとお考えになるのと、やはりほかにかわる方法があるなら何か、要するに人命の安全と財産の保全が可能であればいいのだから、考慮の余地がなかろうかというお話の出発点にはなれるだろうと思うのです。まあ、この意見を幾ら言ってもやってみないとわからないのですから……。とにかくそういう実例が出ておる。  デパートでさえも、いまのような、空調と一緒にやったから諸掛かりが一万一千円で済んだと言うけれども、これが一緒でないとしても一万一千円かかるわけでしょう。空調を一緒にやったから一万一千円というので、やらなかったら八千円で済むとは言えないだろうと思うのです。そういうようなことで、これをいろいろ問答をしていくと時間がかかりますから、その点はとにかく膨大なお金がかかって、今度は煙感知器や何かとちょっと性格が違って真剣勝負です。  このいまの企業体の実例を言いますと、実は五億円の借り入れ金をして経営している実態なんですね。五億円の借り入れ金をしておるものが、とにかく六千何百万の金利を払って、なお二千万ほど利潤が出たというので、業界ではびっくりしたような優秀な企業なんです。この優秀な企業の二千万そこそこの残った利益で、四億借りるのにどうやる。開発銀行が半分貸してくれるのだというお話ですが、これは受け入れ側では、開発銀行はほんとうに貸すだろうか。二億借りられるとしたら、八分でいって、二、八、千六百万円、そうするとあと四百万しか残らぬ。そうすると残りの二億をだれが出すのだろう。自己資金で出すのだと言うけれども、五億借りておるところへ、あと四百万しか利益が残らぬというところへ二億をだれが貸すだろう。みすみす赤字になるところへ貸すものがあるだろうか。貸したとしよう。二億を借りてやったら、金利はまず一割以上でしょう。二千万の借り入れ金利子を払うとしたら、それでその企業体としては——ただ何でもスプリンクラーというものを、同僚諸君の御同意を得てこの法律が通ってしまった瞬間から、官吏諸君は、国会議員がやれと言ったのだから私どもはやらせるのですというので、その優秀な企業が突如ある日赤字に転落をさせられることになる。そこまで必要なんだろうか。そこは必死になって何かほかの方法はないかと求めているが、それに対してこまかい配慮をしてあげるべきです。先ほどの例のように、行政府でやってほしいけれども、しやせぬから、立法府が法律をきめるに先立って、きめこまかく、やはりこの場所で是非を判断をしていただきたいというのが、これからさらに申し上げるこまかい詰めになるわけなんであります。私は繰り返して申しますが、スプリンクラーの性能を否定するものでは毛頭ありません。それの経済性の問題、施設の困難性の問題から、バラエティーがほしいという意味で論議を続けたいと思います。  そこで、今度は具体的な問題になるのでありますが、さすがに消防庁とされてもやはりその点を非常に深刻に考慮をされたと見えまして、実はこういう腹案でそれらのものが救えないかというので、いろいろ事前に代替案をお示しをいただいたので、受け入れると予想される団体は接触をしてそれの是非を検討を続けておったのでありますが、きょうは、それを受け入れて、私ももっともだと思うものが多いものですから、それらの点に対してのだめ押しをして、できることであればそういうことで、ひとつ立法にあたっても、このスプリンクラーを適用するという基本がきまるだけで、それにかわるこういう方法があるならば認めようというような事柄は、政令、施行規則、通達その他によって、既存不適格の限られた建物に対する一時的な措置でありますから、たとえて言うなら通達でやっても、全部のものに及ぼすようなものではありませんから、私は行政の手続で、理解さえあるならば可能だろう、このように思いまして、願わくば、通達でもけっこうだから、そういう方法で緩和策が望めないかということをこれから詰めてみたいと思います。委員長、これから、たいへん恐縮でありますが、少し政令その他の行政の中身に入ったこまかい話になりますのをお許しをいただきたいと思います。  まず第一は、こんなことでどうだろうというて行政当局が内々お示しになったのでありますが、一つは、現在施行規則十三条できめてある防火区画をゆるめる方法などはどうだろうという提案であります。施行規則十三条は、いわゆる、ちょっとこまかくなって恐縮でありますが、こういうものを持っておれば、スプリンクラーはその部分だけはっけないでいいですよということをきめてくれたわけで、その中を援用されたようでありますが、その中には、一つの区画を二百平米以下と書いてある部分があるが、それを四百平米というふうに防火区画を広げてあげたら、よほど六千平米という一つ基準から救うことができるのではなかろうかという着想をいただいたわけです。これはたいへん合理的であって、ホテルなどは相当幅の広い廊下を持っておりますので、その方法でやっていただくと、廊下と廊下の入り口、出口を完全な防火方法をやることによって合理的な、用途に似つかわしいあれができるからありがたいなというような意向を持っておるようであります。  ところが、三月五日の予算分科会における消防庁長官の御言明をいただいておりますが、大広間は四百平米で済まない、もうちょっと大きい大広間があるので、それが四百平米でやられると、大広間の途中で防火区画をせんならぬということになって、大広間の使用用途を殺すことになるが、これは何とかならぬかということに対して、それは、大広間が一つの防火区画として完全性が考えられるならば、それはそれにこだわらないで、その部分を広げることは可能でありますという答弁をいただいておりますから、この点は一応確認するまでもなくすでに言明のことであるから、私どもは、この防火区画の考え方自体に御理解がいただいたものとして、これはまあ歓迎をしておるようであります。  ただ、その中へ、ワンパッケージの中に、このいわゆる規則十三条の中には、壁や天井なんかには不燃材、準不燃材または難燃材料を使えという規定があるが、これは、病院、デパートなどはそういう事柄が可能かもしらぬけれども、客室自身が商品であるというホテル、旅館には、それは一体可能なことなのだろうかというような疑問が出てまいりまして、それだけの不燃材料というものが現実にあるのだろうかという疑問が出てまいりました。これに対して、きょうは通産省の建材課長さんに来ていただいているので、ひとつ委員長、建材課長から、日本式の旅館の木目のいい天井だなどという、そういうものに匹敵するような内装材がたくさんあるものかどうか、御教示をいただきたい。御発言を願います。
  90. 木原滋之

    ○木原説明員 最近は、内装材も防火、安全について非常にすぐれた建材製品というのが出てまいっております。ただ、日本旅館の場合、これは雰囲気との関係といろのが非常にあるわけでございますので、その旅館、旅館によりまして、その感じで、そのものが使えるか使えないか、いろいろ出てこようと思います。しかし、現実には木目の上に張りました耐火ボードみたいなものが出ておりますので、現実に内装材あるいは壁材、天井材として使われているものはございます。
  91. 大野市郎

    ○大野(市)委員 いまの答弁では、大体似た御感触をお持ちだろうけれども、いまの安全性と取りかえっこをするように、商品の性格を変更せよという命令にこれは変わるものだから、心配して、そういうものの用意があって、いや、そんなことをしたってもう似たものは幾らもできているから、私のほうではメーカーには十分つくらせてあるから、この法律ができたって用途の変更はありませんよ、というようなことが断言できるかどうかということをお聞きしたかったのだが、一言、それはできますか。
  92. 木原滋之

    ○木原説明員 最近の旅館の場合、純日本式というよりも、かなり洋風の感じを取り入れた日本旅館というのが多いわけでございまして、そういう場合には、現在出回っております化粧石こうボード等が使えるかと思います。ですが、全部の場合にこれが使えるというわけではございません。
  93. 大野市郎

    ○大野(市)委員 これはとにかく日本調を前に置いての話でなければいけないが、これは使用するのに、選択にあたって、今度の指定を受ける対象の方々は専門でそのものをさがすけれどもないのだ。それはどんなのをお考えになっているか知らぬが、そういう需要は少ないものだから、ないのですよ。ただ、いわゆる壁あたりはだいぶ似たようなものがつくられつつあるが、将来はどうかわからぬが、今日ではまだないのです。これは押し問答になりますから、それは別段にします。   〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕  と申しますのは、実は三月五日の予算分科会において、大臣並びに消防庁長官から、既存不適格の建物の中で、昔は木造の建築物は、低い建物は許されていたのですよ。それがまあ法律が変わって、このごろは鉄骨、鉄筋でなければ大きい建物は許しませんからもうないのですが、既存不適格の木造建物は、スプリンクラーなんかつけたってどうしようもないじゃないか、天井張りを火がはったらイチコロだというわけで問答がありました結果、既存不適格の建物でも、木造の部分というのは別途に防火対策をいろいろに施工させておるので、今回は木造部分には、それは建物も低いものだから、スプリンクラーは適用除外にいたします、こういう判定を受けておる。いま建材課長が言われたような、木造のを無理に中身だけちょっと直して防火にしようという考えじゃないので、鉄骨、鉄筋コンクリートの中へ二重建築で天井張りに木造をやっているのですよ。それをどうしようかという問題をいまやっているのです。純粋の木造にそんなものをしたって、天井張りはあいているからだめなんです。だけれども、それがやはり需要の少なかったせいでしょうね。だから将来のことは私は言わぬが、現段階では望むものはないのですよ。  そういう意味合いで、これをいまだに規則十三条をてきめんに適用されようとすると、なかなか代替案件としては、規則十三条の規定と同じに厳格過ぎて、一部を救ってやる手段としてはむずかしいのです。だからこの点に対して、内装制限に対して、品物がないのですから、ないものをやれというような無理を言わないで、そういうものがそろってきた暁にまた話が出るなら別だけれども、そういうものがないのだから、そんな内装をやったって、二重ですからね。たとえば火が出て天井張りが燃えたといったって、燃えたつきりで延焼しないのですよ。その部屋だけなんですよ。だからそういう意味合いで、いわゆる代案として出された内装制限に対して、お考えを緩和するなり内装制限を撤回されるお気持ちはございませんか。
  94. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ホテル、旅館あるいは病院といったような建物につきましては、御指摘のように、部屋の区画が非常に小さいわけでありますから、一般のデパートなどのような区画の非常に大きい建物とは違った方式で防火方法というものは考えられてしかるべきだろうというふうに考えております。したがいまして、ただいま御指摘のように、内装制限を行なうことによって防火区画を設定をしてスプリンクラーの設備にかえるということは、十分考えられる措置でありますけれども、最近の鉄筋コンクリートの建物で、しかも内部が純和風の建築にしてあるというようなものにつきましては、確かに、内装制限をいたします場合には、材料の選択の範囲が非常に狭いということのために非常に問題が出てくるということも、私どもも十分了解されるところでございます。いま私ども、その点につきまして具体的な検討をいたしておりますけれども、やはり区画が大きい場合におきまして内装制限を緩和するということになりますと、どうしても建物全体が火災の場合には非常な危険状態になるわけでありますから、その場合には、内装制限と防火区画の大きさというものとの関連におきまして考えていく必要があるだろうというふうに思っているわけでございます。  それで、現在、現行の二百平方メートルの区画というものを四百平方メートルの区画に広げていくという場合におきましては、やはり内装材としましては、少なくとも準不燃材料以上のものの内装制限ということは考えていかざるを得ないというふうに思っているわけでありますけれども、そうした建築材料の関係で、準不燃材料あるいは不燃材料がないというような場合には、やはりその区画をさらに狭くして、そして難燃材あるいは可燃材を使うことも可能な方法検討していく、こういうことになるだろうと思います。  そういう意味におきまして、原則的には四百平米というものを区画の基準に置きながら、その材料が難燃材であるとかあるいは可燃材であるとかという場合におきましては、この区画をさらに小さくして防火区画を考えていく、こういう方法によって、内装制限というものを、現在の建築材料の実態に即した方式で防火区画が設定され得るように、これは十分に関係省のほうとも打ち合わせをしながら検討してまいりたいというふうに思っております。
  95. 大野市郎

    ○大野(市)委員 いまの最後のおことばの、商品の出そろうまではとにかくそういう方向でやらせるのだけれども、商品がないんじゃしょうがないじゃないかということが合意に達すれば、行政指導で、努力したけれどもないじゃないか、だからひとつこれで認めてというふうな、これはいわゆる既存不適格の限定された幾つかの建物に対することだけなんですから、将来どうしようという一般論じゃないのだから、そういうようなぐあいで通達を活用されてひとつ御研究を願いたい。商品の供給度の実態で考慮するという御答弁にいま最終的には承りましたが、この問題はいまここでどう決着ということもあなたがおできにならぬなら、そういうことでさらに考慮するということはそのように解釈してよろしゅうございますね。
  96. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 この点につきましては、関係省ともさらに、省令、規則制定の段階までに、十分話を詰めて措置してまいりたいと思います。
  97. 大野市郎

    ○大野(市)委員 それから同じ問題で、いわゆる規則十三条の中に、「区画する壁及び床の開口部の面積の合計が八平方メートル以下であり、かつ、一つの開口部の面積が四平方メートル以下」となっておるのですが、これを四百平米にお直しになるとすれば、それらはやはり、合計が八平米というのはその倍の十六平米ぐらいに合計はとっていただかないとこれはできない相談になるのですね。   〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、現在のホテルの廊下幅というのが四・四平米ぐらいあるというのですね。だから四平米以下となさらないで、この際やはり五平米以下に一つの開口部を直すというふうなのが実態に即したものであるという説があるのですが、これはひとつ御研究いただけませんか。
  98. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 これは、内装制限とやや問題の質が違うかと思いますけれども、現在の既存建物の実態に即した解決がはかられますように検討したいと思います。
  99. 大野市郎

    ○大野(市)委員 それから、続いて同じような意味で、ちょうど通産省の繊維製品課長が見えられておると思いますから、ちょっとお聞きしたいのでありますが、カーテン防災を、法八条の三を受けて、令四条の三、規則四条の三でいろいろおきめがありますが、この点に対して、消防庁のほうでは「防炎」、炎を防ぐ。カーテンの形で名称が違っておるように思いますが、繊維製品課、通産省側ではこれをどういうふうによんでおりますか。
  100. 田口健次郎

    ○田口説明員 これは家庭用品品質表示法に基づきまして、「難燃」と呼んでおります。
  101. 大野市郎

    ○大野(市)委員 消防庁のほうでは、これを防炎済みというような記号で御指示をして統一しておられるようですが、その辺は消防庁長官として、他官庁との連絡はどのような形で調整いただいておるのか、一応承りたい。
  102. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 消防法の規定に基づきまして、消防法のほうでは、防炎加工品のうちの一つとして防炎カーテンを指定しておりますが、その基準については通産省とよく相談しておるところでございます。
  103. 大野市郎

    ○大野(市)委員 じゃ基準は同じですね。
  104. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 ランクはございますけれども、ほとんど試験方法については同じでございます。
  105. 大野市郎

    ○大野(市)委員 繊維製品課長にお聞きしたいのですが、商品として購入する場合に消費者、購買者は非常に選択に困るのですが、これはひとつ一緒に「防炎」とでも名前を変えられる意思はありませんか。
  106. 田口健次郎

    ○田口説明員 私どものほうでは「難燃」と呼んでおりますけれども、実質的には消防法に基づきます防炎と同じ内容のことであるというふうに考えております。経緯から申しますと、家庭用品品質表示審議会におきまして、「難燃」ということばを使ったほうがよろしいのじゃないかといったような御意見も承ったものでございますから、現在「難燃」というようなことばを使っておるわけでございます。
  107. 大野市郎

    ○大野(市)委員 私はそれがふしぎで、一つ政府の中のものなんだからね。最終的には、国民がこれを家庭でも買うし、いろいろな意味合いで買うものですから、それらが、片方は「難燃」といい、片方は「防炎」という。まことにどうも私は、きょうは時間がもったいのうございますから聞きませんが、試験方法だって、試験方法を規則でずいぶん詳しく書いてあるのだが、消防庁の試験方法と完全に一つだということは言えないと私は思うのです。これはひとつ政務次官、やはり政府としてそれらの名前の統一ぐらいしてもらいたい。防炎のほうがわかるんですよ、難燃なんて舌かみそうになっちゃって。それはやはりそういう努力が私は必要だと思うのですよ。目的は何だといったら、使って燃えないためなんでしょう。そうしたら、やはり消防庁のこの名前にしようやと言ったら、つくる繊維業者のほうもそうしましょうやというのであるのがほんとうで、わがほうは「難燃」ときめましたなんというのはおかしいと思うのです。これはここで問答していてもしようがないが、そういう事柄を国民の立場で、名称の統一も試験方法の統一も必要であろうと思いますので、ひとつしかるべく大臣を通じて、通産大臣にも御協議を願いたいと思います。
  108. 古屋亨

    古屋政府委員 いまのお話、やはり同じものが省によって違いまして、いろいろの誤解を国民に招くということは適当でないと思いますので、さっそく通産その他の関係省庁とも十分連絡をとりまして、前向きに措置してまいります。
  109. 大野市郎

    ○大野(市)委員 それで、同じく政府部内の問題として、確認はしておりませんが、なるほどいろいろな問題があるなと思いますのは、厚生省がまた一枚かんでまいりまして、防炎カーテンの防炎加工には燐を使うので、あの燐を子供がつかまってなめると有毒である、あの防炎をやめたほうがいいというような説が出ておって混乱したというお話も聞きましたが、これはどちらをとるかという問題でございまして、それにしても、なるほど子供がつかまってなめるような場所にカーテンというのはぶら下がっていますから、だからこれも子供にあぶなくない防炎のできるようなものを開発される努力が必要だと思います。これもどうも消防庁がさか立ちしてもできないので、厚生省がさか立ちしてもできないので、やはり通産省がそういう行政指導をなさらないとできないものですから、消防庁の中にはそういう問題が、政務次官、製品の中にも飛び火してますので、ちょっと蛇足でありましたが、一言触れておきます。  それから今度は、もう急いでしまいますが、やはり工事施行上の問題であります。先ほどの代替措置の必要性の中に、ワンパッケージとして縦穴区画を十分にしろという要求が消防庁から代案として出ているのですけれども、これに対して建設省営繕部長さん、いかがでございましょう。それらは一体簡単にできるんでございますか。
  110. 上山勝

    ○上山説明員 縦穴の区画は、これは上層階に火が及ばないというための措置でありましょうと考えますが、鉄筋コンクリート造、耐火構造の場合には、これは段階回りを耐火材料で囲み、さらに防火戸をつけるというようなことで十分措置できる問題だと考えます。  なお、最近のエアコンがついております建物につきましては、エアコンのダクト自身がいわゆる上層階ともつながり、あるいは隣の部屋ともつながっておるというようなこともございますので、これは煙感知器と連動するダンパー等をつけないとその効果は発揮できないと思いますが、これも技術的にそれほどむずかしいことではないと考えます。
  111. 大野市郎

    ○大野(市)委員 いまの場合でお聞きすると二つあって、縦穴というけれども、空調関係のダンパーをつけることは、比較的古い建物につける場合でもできるだろう。で、それ以外の縦穴のことは相当むずかしいというふうにお聞きしましたが、そうですが。
  112. 上山勝

    ○上山説明員 私、ちょっと意味を取り違えておりまして、この縦穴の区画ということであれば、これは階段回りの措置は大体従来の建物もそのようになってございますし、あらためてたいした措置にはならないと考えます。  それからダンパーにつきましても、あるいは小さな配管用のシャフトが上につながってございますが、こういうものがもし開口部がございますれば、それに鉄扉を取りつけるというようなことで、経済的にそれほど大きな負担ではないと考えております。
  113. 大野市郎

    ○大野(市)委員 わかりました。この点がわからなかったものでお聞きしたわけです。まあこれは一つの代案としてお出しになっておるが、先ほどの原理で施工が困難かどうか。まあ、費用はそうかからないというお話でありましたが、施工が困難かどうかという問題で、現場で施工にあたって、一ぺん命令が出ちゃうというと、それはもう困難であろうと何だってひっくり返して、壁をほじりあけてそこをやれというようなことを言いかねないのが法律で出た場合の姿なんですよ。国民はそういう目にあっているもんだから、それはほんとうに冗談じゃない。誘導灯をつけよという場合、平屋建てで庭があれば、どの窓からも飛び出せたほうが安全なんですよ。どの窓からも飛び出せて安全なんだから、誘導灯だって何だって要らないじゃないかと言ったら、規則ができました、誘導灯をつけろ。そんなものについて行ったら、煙にまかれてしまうかもしれないようなものをつけざるを得ないのです。私はわかりますよ、一ぺん令で出ればするのがほんとうでしょうから。しかし、それがやはり政治不信につながるのですよ。だから私どもは、立法府の域を脱して、中身までどうするんだということでないと、みだりに何でもようございますと言えないという気持ちで質問をしておるのであります。  いまの縦穴の問題も、どんな程度にむずかしいか。むずかしかったら、そのときは、やはり施工上の問題ですから、無理じいはなさらぬということをお約束できますな。
  114. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいまの縦穴区画の問題それからダクトのダンパーの問題は、これは建築基準法の改正によりまして同様に遡及適用するということになっておるわけであります。  それで、特に消防の観点から見ますというと、この階段区画が最も私どもは重要な区画であるというふうに考えておりまして、これは縦穴部分の中でも最も面積が大きい部分であり、しかもまた避難の場合には、避難者の有効な避難通路になるという意味におきまして、この階段区画の縦穴区画というものはできるだけ厳重にやっていただきたいというふうに考えておるわけであります。この点は、先ほどから出ております代替措置との関連におきまして、その建物の実態に応じて、建築の当局とも十分打ち合わせをしながら、消防の観点からも、今後の対策として最も有効な方法として考えていきたいというふうに思っております。
  115. 大野市郎

    ○大野(市)委員 これで、防火区画をするというワンセットの代替設備に対しての問答、質疑応答をさせていただきましたが、同時に、第二の代替案として消防当局がお示しになった一つに、側壁に閉鎖型スプリンクラーを設備したらどうかという御提案がありましたが、これは関係対象物の機関の代表者が検討した結果、経済性においては同じような費用がかかるので、これはスプリンクラーを代替する要件としてはいただけないというような意向でございましたので、この点は問答に触れません。  そして第三の代替案として避難区画の問題を御提案いただきましたので、その問題に対して質疑をいたしますが、これは要するに、各フロアごとに設けられた連続バルコニーなどに直接面している部屋、そしてそのバルコニーなどには避難階段か避難用の器具が設けられておること、これは当然だろうと思いまして、そういうものがあるかどうか。  その次にまた部屋の内装材の問題が同じように載って、難燃材か準難燃か不燃材を天井も壁も使わにゃならぬというのがありますが、これは先ほど述べましたような理由で、ひとつ御撤去をいただきたい。  それから第四は、縦穴の区画を十分にというのはいまの御説明でわかりましたので、これはひとつケース・バイ・ケースで見ていただく。  それから、区画は四百平米以下ということで、避難区画の問題は人命尊重の意味からも絶対必要でありますので、これはそれらの受け入れの団体機関は、これは室内の内装材の問題をゆるめていただけるならばたいへん受け入れやすい代替案であるというような意向を持っておるようでございます。これは先ほど、難燃材の問題に対してはさらに検討するというお話でありますから、これ以上問答いたしません。  最後に問題は、こういう問題が残ったわけなんです。いままでは別むねであるかどうかということで坪数合算をする規定があって、三十八年の九月二十一日に通達が出ておって、廊下が何メートル離れていて、吹き抜けであればどうかというような通達で別むねをきめておりましたが、これはむしろそうでなくて、防火壁ではっきり区別をして、そして別むねだという判断ができるようにしていただけるならば、いわゆるスプリンクラーの適用に対する既存建物の義務というものはずっと楽になるだろう、こういうような問題がありますので、この点、防火壁などでひとつこの通達を変えていただくべきである、このように考えますが、どんなお考えですか。
  116. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 これは一種の防火区画との関連もあるわけでありますけれども、そうした区画について、面積の制限とどういう関連を持たせるかということにつきましては、さらに具体的に検討したいと思います。
  117. 大野市郎

    ○大野(市)委員 さらに具体的に検討と言われても、廊下でなくて、いわゆる防火壁で別むねを算定するという事柄は通達でやれることですから、行政当局はここでその言明が可能であればまた一歩前進になるものだから、この法案を受け入れるについても非常に鮮明になるものだから申し上げているわけですから、願わくば、さらに検討でなくて、防火壁などでひとつ検討してみようという御答弁がいただけないでしょうか。
  118. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 その点に関しましては、前向きで検討するつもりでございます。
  119. 大野市郎

    ○大野(市)委員 そこで今度は、遡及適用の、いわゆる別むねと同じ原理でありますが、あなたのほうの御査定では、六千平米でいわゆるスプリンクラーの適用を制限するんだ、六千平米以下であれば堂々と従来の建物でやれるものが、六千平米をこえたためにいろいろな経済的な負担があって、営業上の利益にならぬものだからこの経済性が出てくるわけで、それを差別しようということになるんだから、あなたのほうでは、総面積から、規則十三条のものを四百平米に直してそれを引いたものが六千平米以下であればこれは適用しない、スプリンクラーはつけないでそのほかの防火対策で万全を期するということで、あらかじめ聞くというと部内では答えが返ってきたのですが、それが認められるとすれば、同じように代替物件で、その部分はそれでやってみようという代替物がありますね。そうしたら、総坪数から代替物を引いたものの坪数が六千平米以下なら、これも先ほどの規則十三条の規定と同じ意味で、通達ですから、わずか限られた既存の建物だけの特例ですから、そういうふうにしていただけるのが理屈だと思いますが、いかがでしょうか。
  120. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 代替措置につきましては、従来と同じように、総面積の計算から除外をするという方向で検討いたしております。
  121. 大野市郎

    ○大野(市)委員 したがいまして、三月五日の予算分科会でも御言明になった、木造部分がありました場合には、木造部分は別途の方法で防火の万全を期する対策をすでにお考えになっているんだから、それらのものも、規則十三条と同じような意味で、総坪数から引いて六千平米を計算していただく理屈になると思いますが、これもよろしゅうございますね。
  122. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 その場合の渡り廊下等につきまして、完全に防火壁等によって遮断をされております場合には、いまと同じような扱いになると思います。
  123. 大野市郎

    ○大野(市)委員 最後に、複合用途の防火対象物の問題でありますが、これがたいへんやはり問題になりまして、千日ビルの火災であった例のようなのはほんとうに問題になりましたが、これの定義をつける場合には、いわゆる消防の管理上の統一が問題だったのだろうと思うのです。所有権の問題とか営業形態の問題もあったかもしらないけれども、要するに消防管理上の統一が欠けておったので、大騒ぎで人死にが出たのだろうと思いますので、この点、いまの場合だと、用途が二つ以上あるというと複合建物だという法の内容になっているのですね。これが問題点がありまして、じゃどの程度で複合といわれてしまうか、また問題が出ているのですね。その辺の解釈がちょっと未熟のような気が、この法案を読んでいたしたのでありましたが、複合防火対象物というのを消防管理上統一性が保てておるならばなぜいいかというと、御承知の協議機関がありますね。所有者が別であっても、一緒に協議して消防の計画を立てるとかなんとかいう規定がいろいろありますね。ああいう規定があるくらいですから、消防の統制上一本化がしてあるならば防火上の第一の心配点が抜けると思うのですが、その点はどんな御配慮だったのでしょうか。
  124. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 複合用途ビルの定義等につきましては、もう少しその内容を明確にしていく必要があるというふうに考えておりますけれども、通常、複合用途ビルの場合におきましては、その階層ごと、あるいは営業形態によりましては営業時間に非常に差がある。昼やっているところと夜営業しているところというふうなものがございますので、いまのように、防火管理体制におきまして協議会を設置するというようなことになりましても、現実の火災予防あるいは火災の際の危険度といったようなことを考えますというと、一般の単一目的の建物に比べると非常に危険性が高い、そうしてまた火災発生した場合の被害というものも非常に大きくなる例があるわけでございますので、そういう意味におきまして、この複合用途ビルにつきましては一般デパートと同じような、そうしてまた面積制限につきましてもデパートの半分といったようなことで、非常に厳重な規制をしていきたいというふうに考えておるわけであります。この点は、今回の消防法の改正におきましても、考え方としては、複合用途ビルは第一のグループに含めまして規制を厳重にしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  125. 大野市郎

    ○大野(市)委員 そういう意味で、いまお話を聞きますと、その意味はよくわかるのです。その意味を生かす方法で、定義の分類ですね。それがただ二つ以上の用途といいますと、ほとんど入っちゃうのですね。だからその辺、法律の案文に書いてあるのは二つの用途以上というのですが、多少いわゆる千日ビルのような形態と違うのが、たとえば売店がある、喫茶店がある、食堂があるとかというようなものが、たとえばホテルなんかにはたくさんごらんになるとおりあるのですよ。あれがみな複合だというのか、それとも千日ビルみたいなあんな間違いを起こすようなものであるのかどうか、ちょっとこれは疑点があるので、きょうは私はもう時間を一ぱいいただいて使い過ぎているから、これはほかの方々も御質問もあることと思いますので、これはひとつ御研究をいただいて、なお答えが出ない場合には再度ひとつこの問題は詰めさせていただくかもしれないので、留保さしていただきたいと思います。  最後に、罰則の問題で一つだけ聞いておきたい。これは法十八条に基づき、法四十四条九号で、みだりに自動火災報知機なんかをいたずらしてがしゃんとやったために、全館びりびりしてしまって、どこで火災が起きたといって大騒ぎになる。そこで、警察官を呼んできてとっつかまえてもらおうと思うけれども、警察官は、迷惑条例ぐらいしか使えないというような話で、なかなか摘発に乗り出してくれない。しかも、実際上はたびたびそういう事例が起きるために、オオカミ少年のような話になって、そこにつとめる従業者は、まただれかいたずらだろうというので、それらのものに敏感性が欠ける。しかもそれらのやからはのうのうと罪をのがれて知らない顔である。しかもそのときの被害というものは、全員が驚いて右往左往するという状況がある。だからして、これは何か法がないだろうかと見たら、法四十四条の九号に、みだりにそれらのものを使用した場合には一万円以下の罰金、今度の法律では、「三万円以下の罰金又は拘留に処する。」という規定が見つかったので、これは、そこらの町中にある公の施設の火災報知機をぶち割っていたずらした場合だけ罰するなどということでなくて、法に基づいて施設を命令された、そういう特殊な防火建築物の中の施設をそういう目にあわせた場合には、やはりその法が適用されるべきであると思いますが、その点に対しての自治省の見解を伺います。
  126. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 現在の消防法第十八条の規定におきまして、「何人も、みだりに火災報知機、消火栓、」云々という規定があるわけでありまして、要するに消防用施設の乱用禁止の規定でございます。この規定は、本来この法律が制定されました段階におきましては、消防機関がその正当な活動をいたすにあたって、その妨げになることを禁止するということで立法されたわけであります。したがいまして、その場合の消防用設備というものは、消防機関の活動の用に供されるものである限り、公設のみならず私設のものも含めてその対象になるわけでありますけれども、ただ、それが直接に消防機関の活動の用に供されていないものについてはこの規定は適用がない。この立法当時における情勢から見ましてそういうふうに解釈され、現在までに至っておるわけでありますけれども消防法の規定が次第に、私の建物におきましても消防用設備の設置が義務づけられる、規制をされるというようなことになりまして、火災報知機等がそういう建物に設置をされるということは、やはり公共の目的のために、公共の安全を守っていくという立場において、いわば公の使命が付されてきておる。こういう観点から見ますならば、この十八条の規定の解釈というものは、消防法の規定に基づいて設置を義務づけられているそうした火災報知機等についても同じように適用すべきではないだろうか、こういうことで、この点につきましていろいろ法制局等とも打ち合わせをいたしました結果、この十八条の規定というものは、通常のデパートなりホテル、旅館等における消防設備についても同様に適用すべきであるというふうな結論になってまいりました。  ただ、この条文というものは昭和二十三年ごろの条文でございますので、その後消防用設備等についていろいろな新しい装置等が開発をされてきております。それらの規定がそこまで解釈を広げてまいりますと、いろいろ現実に即応しない面が出てまいります。これらについては、さらに将来の立法措置等を検討しなければならないだろうというふうに考えております。
  127. 大野市郎

    ○大野(市)委員 ちょっと最後が気に入らないのですが、これはこまかくちゃんと限定してあるのです。いわゆる火災報知機と消防の貯水設備、今度はスプリンクラーをやりますと貯水槽が要るのですよ。その貯水槽あたりをこわされたりする場合がないとは限らないのであります。そういうような問題もあるし、設備は三つ限定しているのですよ。ですから、あなたが言うように、昭和二十三年以来、品物の中身は変わったけれども、外側の名前は変わってないのですよ。そうして、ただそれが、公の消防隊が方々へ配置したものが、今度企業体の中に公の命令で配置されるように延長されてきただけなんです。ですからその点は、そんな法の改正なんてめんどうなことじゃなくて、これでやらなければオオカミ少年になっちゃうのだから、これはひとつ、法制局からも来ていただいているので、法制局の法に対する見解を一度承っておきたいと思います。
  128. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま消防庁長官のほうから、立法論を含めましてお答えをされたわけでございますが、私どもの立場で申しますと、あくまでも十八条一項のいわば冷たい解釈と申しますか、解釈論の立場でお答えを申し上げます。  もともと、この消防法十八条一項の趣旨でございますが、これは火災が発生いたしました場合に、消防機関がすみやかに出動して消火に当たることができるように配慮いたしますことのほかに、先生もちょっと御指摘になりましたように、いたずらに人心に不安を与えることを防止し、あるいはまた消防機関が誤認して出動することによる人的なあるいは物的な損失を防止するという見地に立ちまして、火災報知機等の消防用施設をみだりに使用したりあるいはまた損壊するというような行為を禁止しておるものと解されます。またこれにつきまして、この違反に対しましては、消防法の三十八条とか三十九条とかあるいは四十四条で罰則が設けられているわけでございます。そうして一般論としましては、先ほど消防庁長官も触れられましたように、第十七条の規定に基づきまして義務的に旅館あるいはデパートが設置しておりますところの火災報知機とか消火せんとかあるいは消防の用に供する貯水施設といったようなものはその対象になるというふうに考えておりますが、ただ、ちょっと御指摘のございましたスプリンクラー設備の場合でございますと、これは現在掲げられておりますこの四つないしは五つの事項にはちょっと入りにくいのではないかなという感じを持っております。
  129. 大野市郎

    ○大野(市)委員 まあ、私はけっこうです。一番の被害があるのは自動火災報知機なんです。あれはプラスチックでてきていて、げんこつで割ることができる。そうしてげんこつで割ったその上に指でボタンを押さなければならぬ設備になっているものをやるのですから、これを野放しにしておくなんというのは、国民生活に最もいけないことだろうと思います。では、いまの見解で統一ができるならば非常に安寧秩序に益すると思いますので、けっこうだと思います。
  130. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 ただいま私が最後に申しましたのは、いま法制局のほうから申し上げましたように、散水設備等がこれから付加されてまいりますので、そういうものがまだないという意味におきまして、現行法の解釈としては先生指摘のとおりだろうと思いますが、今回の消防法の改正によりましてこうした散水設備等も義務設置になるわけでありますから、それらの追加が必要であろうということを申し上げたわけであります。  それからなお、複合用途ビルにつきまして御疑問があったわけでありますけれども、要するにホテル、旅館等の利用客が当然利用することを予想して設けられておりますところの食堂、売店というものは、病院の場合も同じでございますけれども、そうした付属施設になるわけでありまして、その場合には、用途が二つあるというふうな判断はいたさないわけであります。これがホテルや何かと全く経営が別であって、そしてホテルの利用者とそのほかの用途に使われる部分の利用者とが全く別個の場合、これが複合用途ビルというふうに私どもは解釈しておるわけであります。
  131. 大野市郎

    ○大野(市)委員 わかりました。ありがとうございました。
  132. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、来たる十一日木曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十分散会