○三谷
委員 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、
地方税法の一部を
改正する
法律案に反対の
意見を述べます。
第一に、この
法律案は、
物価上昇、
生活破綻に直面する
国民に対して、税の重課と大衆課税の
強化をはかり、ますます収奪を強めようとするものであります。
住民税の
人的控除等の
引き上げによって、
課税最低限を百一万六千円に(一七・四%)
引き上げたといいますが、しかし、これによりまして、一七・四%の
減税と言えないことは言うまでもありません。これが
減税と言えるのは、
所得に変動のない場合に限られております。四十八
年度におきましては、名目上の
所得は大幅に増加しており、対前年比名目賃金は二一・七九%に達しております。これが課税標準とされますならば、税も当然二二%の増徴になるのは当然であります。その中で、一七・四%の
人的控除の
引き上げを実施するというものでありますから、実際には増税を
意味することは言うまでもありません。
現に、
個人住民税所得割において見ますと、前年比一三四%ないし一三九%の
増収見込みとなっており、また前年百五十万円の
所得者は、本年は百八十万円の名目
所得となり、標準世帯の
住民税額は、二万三千百八十円から二万九千六百円にふえまして、六千四百二十円の重課となります。
今回の
減税措置による
個人住民税の
減収見込み額は千七百七十三億円でありますが、名目
所得の増加に伴います
自然増収見込み額は六千二百二十六億円に達しております。実質的には、四千四百五十四億の増税になることは明白であります。
これに加えまして、
所得税の
課税最低限百五十万七千円をはるかに下回る百一万六千円という
課税最低限を設定しておりますため、
生活費課税が
強化され、個人
住民所得割の
納税義務者数は、前年比で五十二方三千人も増加し、三千三百四十二万九千人に達するものと見られております。これは四十五
年度において均等割のみ課税されました
納税義務者数と同数であり、税の重課と大衆課税
強化を明確に示しております。
電気税について見ましても、免税点を二〇%から二九%
引き上げ、ガス税の
税率百分の一引き下げの
措置を示しておりますが、電気料金の値上げが六〇%も見込まれ、石油価格に
関連するガス料金の
引き上げが不可避とされておりますときに、この程度の改善
措置では、さらに大幅な税
負担を
国民に重課するものであることは明白であります。
第二に、この
法律案は大資本に対する税の特別
措置や優遇課税を持続し、税の
負担の公正をそこなう内容となっております。
事業税は、事業という収益活動を行なっております事実に着目して、そこに
担税力を見出して課税する、いわゆる物税とされております。この税理念においては、事業活動は、道路、港湾、上下水道など、もろもろの
自治体の施策を利用して収益活動を行なっているものであり、これに必要な経費を分担せしめるものとして事業税課税を行なうものとされております。利益の有無にかかわらず、事業活動に対する義務的
負担として規定されており、そのためにこそ、
所得計算におきましては、事業税は損金算入を行なうこととされているほどであります。
しかるに、実際には、大部分が
所得税付加税方式の課税を行ない、
法人税における租税特別
措置を適用した後の純利益を課税対象としております。そのため、大都市における集積の利益の最大の享受者であり、集積の不利益の典型的発生源であります大企業が、軒並み事業税を免税されております。四十七年決算で見ますと、資本金一億以上の大
法人で三〇%、十億以上の大
法人で二二%が非課税とされております。
法人税が非課税であるばかりでなしに、物税である事業税まで非課税とされるということは、事業税そのものの課税目的からしましても、明らかに不法といわざるを得ません。
そればかりでなく、この
法律案は、事業税の課税にあたりまして、
所得額七百万以上、標準
税率がすべて均一とされております。事業の規模と、それに伴う
所得格差などは全く無視して、
所得額が七百万円でも一億円でも十億円でも、同一の
税率課税を行なおうとするものです。事業の規模、形態等を重視する物税的要素は、全く抹殺されておるのであります。これは、税の公正、
負担の公平に反するものであることは明らかであります。
なお付言しますならば、
住民税におきましても、全く同じ手法が用いられております。府県における
法人住民税の均等割は、資本金一千万円以上の
法人におきましては、それが十億でも百億でも千円均一であり、市
町村民税におきましても四千円均一であります。この
法人均等割と個人のそれと比較した場合、あまりにも権衡を失するものであることは、あまりにも明白であります。
このような大企業に対する優遇
措置に加えまして、
地方税における租税特別
措置が引き続き実施されております。倉庫業、私鉄車両、電子計算機、産業用電気などに対する
軽減課税に加えまして、新しく石油備蓄タンク、合成ゴム、合成グリセリン、合成繊維の撚糸製造に対する特別
措置を
強化しており、
地方税における税の特別
措置額は二千百億円に及んでおります。景気調整などを行政目的としない
地方自治体の税におきまして、このような大資本に対する優遇課税、軽課
措置が実施されておりますことは、
負担の公平を阻害し、租税の中立性をそこなうことは明白であります。
第三に重要なのは、この法案は、
政府の
自治体支配の
強化と
地方財政の圧迫を内容としておる点であります。
その
一つは、
所得税の
課税最低限を百五十万七千円に
引き上げながら、
地方税の
課税最低限を百一万六千円に押えて、その格差を前
年度の二十五万五千円から四十九万一千円と拡大したことであります。
課税最低限を最低
生活費としますならば、
所得税と
地方税に大幅な格差が存在することは、論理的に許されることではありません。
地方税におきまして、
生活費課税を一そう
強化しようとしておることは明白であります。これは、言うまでもなく、
地方税の重課によりまして、基準
財政収入額の減額を押え、
地方交付税にかかる
負担を回避するものであることは明白であります。
その二は、市
町村財源の
充実と称して、道府県民税
法人税割の標準
税率を引き下げ、市
町村民税
法人税割の標準
税率を
引き上げて、府県と市
町村間における
税源配分の対立を激化させようとしておることであります。
府県と市
町村の
税源配分の対立は、長年にわたって継続しており、特に、指定都市と府県との
財源をめぐる争いはきわめて熾烈であります。この法案は、国と
地方の
財源配分につきましては何らの改善を行なうことなく、
地方自治体間のコップの中の争いを激発するものでありまして、
政府の
地方自治体に対する支配を、一そう
強化しようとする以外の何ものでもありません。
事務所事業所税など都市
税制の確立、
所得税の市
町村移譲などの抜本的
措置によりまして、不交付団体を縮小し、
政府の
財政措置をてことする
地方自治体に対する干渉を排除することが、今日の緊急の課題であることは言うまでもありませんが、この法案はおよそ逆な方向を目ざしており、
地方行財政の自主的、民主的
強化に全く反するものといわざるを得ません。
以上のごとく、本
改正案は、
国民に引き続き重い税
負担をしい、大企業、大資本に対して手厚い優遇
措置を、これまた従来に引き続いて認めていこうとするものであります。
この
改正案によりまして、
国民のための
減税は達成できず、また
地方財政を幾分なりとも健全な方向に向かって打開できるものでもありません。それはすでに明白になったように、大企業に対するさまざまな特権的優遇
措置をやめて、税
負担の公平をはかることによって初めて達成できるものであり、また、大企業や大土地所有者に対する課税の累進的重課によりまして達成できるものであります。
わが党は、
政府が
国民と
地方自治体の切実な要求にこたえるために、本
改正案を撤回し、真の
減税と
地方税源の
充実を内容とする
改正案を提出することを要求するものであります。
その
改正案には、次の内容を盛り込むことを私たちは希望します。
一、
個人住民税について均等割を廃止するとともに、
課税最低限をさらに
引き上げ、四十九
年度の
所得税の
課税最低限と一致させ、
高額所得者には高度累進
税率をかけること。
一、
法人住民税については、府県
法人税割の
税率引き下げをやめて、府県、市
町村とも
税率を
引き上げること。
一、個人事業税は廃止することを検討し、それまでの間、専従者の経費を全額認めること。
法人事業税におきましては、物税としての
性格に従って収入金に課税するように改めること。それまでの間、年
所得一億円以上の
法人に対する
税率を百分の十六に
引き上げること。
一、二百平米までの宅地を基礎控除とし、面積に応じた累進
税率を取り入れること。
一、勤労者にかかる電気ガス税を廃止すること。
一、大企業にかかる電気ガスの非課税
措置並びに固定資産税特例
措置を廃止すること。
なお、社会党提案の修正案についてでありますが、この提案は、
個人住民税におきまして、勤労世帯について大幅な
減税をはかる内容を
中心としており、
政府改正案と比べまして、
一定の改善策として認められるものでありますから、賛成の意を表するものであります。
以上をもちまして、本案に対する反対
意見と、日本社会党の修正案に対する賛成
意見を終わります。(拍手)