運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-12-13 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十三日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 高鳥  修君    理事 中村 弘海君 理事 中山 利生君    理事 村田敬次郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 山本弥之助君 理事 林  百郎君       愛野興一郎君    上村千一郎君       片岡 清一君    亀山 孝一君       島田 安夫君    住  栄作君       武藤 嘉文君    渡辺 紘三君       山田 芳治君    多田 光雄君       三谷 秀治君    小川新一郎君       小濱 新次君    折小野良一君  出席政府委員         自治政務次官  古屋  亨君         消防庁長官  佐々木喜久治君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      名本 公洲君         通商産業省産業         政策局商政課長 青木 利雄君         運輸省自動車局         整備部車両課長 宇野 則義君         建設省住宅局建         築指導課長   佐藤  温君         消防庁消防課長 辻  誠二君         消防庁安全救急         課長      矢筈野義郎君         消防研究所長  熊野 陽平君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 十二月十日  辞任         補欠選任   土井たか子君     井岡 大治君   吉田 法晴君     細谷 治嘉君 同月十一日  辞任         補欠選任   津金 佑近君     三谷 秀治君 同月十三日  辞任         補欠選任   保岡 興治君     上村千一郎君 同日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     保岡 興治君 同日  理事吉田法晴君同月十日委員辞任につき、その  補欠として佐藤敬治君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  連合審査会開会申入れに関する件  消防に関する件(大洋デパート火災事故)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  この際、前委員長でありました上村千一郎君から発言を求められておりますので、これを許します。上村千一郎君。
  3. 上村千一郎

    上村委員 私のために、貴重な審議の時間をさいていただき、ありがとうございます。  私が委員長に就任して約一年間でありましたが、その間、本委員会として数多くの法律案を議了するにあたり、しばしば重要な時期を迎えたこともありました。特に農地の宅地並み課税の問題では、与野党を問わず、理事各位をはじめとし、連日連夜労苦をいとわず協議を重ねたごとが思い出され、いささか国政に寄与し得たと考えております。ともかく、在任中その職務を全うし得ましたことは、ひとえに、理事各位はもとより委員各位の絶大なる御支援と御協力のたまものと、深く感謝いたすものであります。  なお、委員長として委員各位にとり至らぬことも多々あったことと存じまするが、この際おわび申し上げる次第でございます。  最後に、新委員長をはじめ委員各位の御活躍を祈り、簡単でございまするがごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 理事補欠選任についておはかりいたします。  去る十日吉田法晴君の委員辞任に伴い、理事が一名欠員となりましたので、その補欠選任を行なうのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。それでは、委員長は、佐藤敬治君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  6. 伊能繁次郎

    伊能委員長 消防に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中山利生君。
  7. 中山利生

    中山(利)委員 先日行なわれました委員会で、「大洋デパート火災に関連する検討事項」についての消防庁からの御報告がありました。これに関連をいたしましてごく二、三点質問を申し上げたいと思います。ただ、各委員方々からいろいろ質問が予想されておりますが、ほかの委員方々と抵触しないような質問に限って簡単に質問を申し上げたいと思います。  熊本大洋デパート火災がありまして、そのあとまた館山にも、これは幸いにして人身事故がありませんでしたけれども、引き続いて火災が出た。こういう大ぜいの大衆が出入りをする、特に歳末大売り出しのような、混乱をし、また非常に燃えやすい商品などが山積みをされているというような状況の中で、ふだんでもパニック状態にあるような雰囲気の中でこういう火災が起きて、あのような大量な、百四名というような死者が出たということは、われわれが見ておりましても当然といえば当然な状況の中でありまして、いかにして今後ああいう災禍から人命を保護していくかということは、われわれに課せられた大きな使命だと思うわけであります。  今度の大洋デパート火災では、新しい消防法規定が適用されない、そういうことで設備不備というようなこともいろいろあったと思いますし、また消火活動あるいは人命救助等についてもいろいろな不備があったかと思いますが、それは同僚議員のほうからいろいろと追及があると思いますので、私のほうは逆に、たとえば、この報告にもありますように、ほかの階では各階ともたいへんな死傷者が出たんだけれども、五階では死傷者がほとんどなかったということ、それから死者の約半数以上がデパート従業員であった、これはおそらくお客さんの誘導というのに気をとられて死傷者が多かったのではないかというようなことが報告にありました。私ども消防関係をしておりますけれども、そういうマイナス面ももとよりでありますけれどもプラス面、この大洋デパート火災において、そういう誘導関係だとか、それから設備の面であるとか、あるいは消火活動の面であるとか、そういう面で、たいへんな災害の中でも、しかしこの点だけはたいへん効果的に非常によくやったと思うというような点がありましたらお知らせをいただきたい。
  8. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 先般の大洋デパート火災の御報告を申し上げました事項中、死傷者の数につきまして、その後若干の変更がございましたので、まず最初に御報告申し上げておきます。  死者が、先般は百一人と申し上げましたのが、その後の調査によりまして百人というふうになっております。男二十九人、うち従業員が十人、女七十一人、うち従業員が三十九人ということで、お客死者が五十一人、それから従業員死者が四十九人。それから負傷者が百十九人でございました。そのうち三名が死亡いたしております。そういうことで、死傷者の数につきまして若干の変更がございましたので、御報告申し上げておきます。  ただいまお尋ねがございましたように、大洋デパート火災が私どもに非常に教訓になりましたのは、要するに、累次の火災によりまして、建築基準法あるいは消防法規定改正になっておりまして、その規定改正によりまして防火体制等強化がはかられたわけでありますけれども、そうした改正前の建築物のいろいろな欠陥というものが、この大洋デパート火災においてすべてがはっきりしてきたということがいえるだろうと思います。  それは、その内容からいいますと、消防設備の面におきましても、あるいは建築基準法設備関係から見ましても、あるいは防火管理体制の面からいいましても、やはり現在改正された建築基準法なり消防法規定というものをどうしても昔の建物についても適用しなければ、同じような災害が起きるであろうということが予想されることが非常にはっきりしてきたわけであります。その点におきまして、私どもとしましては、そうした人命の安全をはかるというたてまえから、どうしてもこうした設備基準等につきましては、既存建物についても適用するという方向法令整備を行なわなければならないということを感じたわけであります。  それから、消火活動の面から申しますと、通常のポンプ車等設備は、あの火災の場合に、消防力基準からいいますとまだ相当低い水準にあったわけでありますけれども何とか間に合わせることができたというふうに感じますが、やはり近代的な装備というものが非常に不足しておったということが痛感をされるわけでございます。そういう意味におきましては、あの建物は幸いに工事中であったために、避難路がある程度工事足場等によって確保されたわけでありますけれども、ああいうものがなかったならば、とうていあの程度の死傷者でおさまらなかったのではないであろうか。やはりはしご車等装備が非常に不十分であったということが痛感をされたわけでございます。  それから、先ほど御指摘がございましたように、従業員死者が人数の割合で比較的多かったという点は、確かに従業員はそれぞれの持ち場においてお客避難誘導に非常に努力をしたというような感じがするわけでございますけれども、結果的には相当数お客も死んでおったし、そしてまた従業員みずからも死んだということは、やはりデパート管理者の面において、いわば防火管理体制というものがほとんどできておらなかった。したがって従業員がそれぞればらばらに活動したそういうことで従業員被害も多かったし、お客被害も多かったということが痛感されるわけであります。防火管理体制というものにつきましては、やはり日ごろから確実にこうした体制をとっておく必要があるということが感ぜられたわけであります。  それから、五階におきまして死傷者がほとんどなかったという点は、もちろんこれは従業員避難誘導という点におきまして非常な努力がなされたようでありますけれども、五階には避難路があったという点が非常に有効に作用したということがいえるだろうと思います。一つは、隣の建物との間の連絡通路がございました。それからもう一つは、増築部分の屋根の部分がちょうど五階までコンクリート打ちができておった、そのためにその面からも避難誘導ができた。したがいまして、ほかの階があのデパートの場合には無窓建物に近い状態にあったわけでありますけれども、五階はそういう意味におきまして避難路が他の階に比べると二方面にあったという点から、やはりデパートのような不特定多数の人々が出入りをするというものにつきましては、有効な開口部というものがどうしても確保される必要がある。そういう意味におきましては、無窓建物というものにつきましても、やはり避難のための開口部、それからまた消火活動のための開口部というものがどうしても必要であるというふうに私ども痛感をしたわけでございます。  そういう意味におきましては、非常に犠牲になった方々に対しまして申しわけないわけでありますけれども、いわば既存建物の非常な危険性を如実に表現をしたのがあのデパート火災ではなかったかというふうに私ども感じておるわけであります。こうした教訓を無にしないように、今後の法令整備あるいは消防体制強化という点につきまして、十分生かしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  9. 中山利生

    中山(利)委員 あの大洋デパートの大きな災害の中で、私は何かそういう従業員方々の非常な武勇伝みたいなものを期待したわけでありますけれども、たいへんな防火管理体制不備の中で個個の人たちがだいぶ御苦労をされて、そのために従業員負傷者が多かったということでございまして、たいへん残念に思っております。  また、いま長官が御指摘されたように、このデパート火災というものは、私もときどきデパートに参りますけれども、実際にここで火災が起こったときにどうしたらいいかというようなことで、ほんとうにとほうに暮れるようなたいへんなところでございまして、これは三十六年以降、消防法改正されましてから以降のデパート建築についても私は大同小異だと思うわけであります。それで、いま長官が、その三十六年以前の建築物についても法的な規制を強化したいというお話は、私ももう前から考えていたところでございますが、これはいろいろ費用もたいへんかかるだろうと思いますし、またそれを強制していくという面についてはいろいろ問題があろうかと思いますが、具体的にどのような形でこの法の改正をやっていこうとされるのか、ちょっとお伺いいたします。
  10. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 こうした大きい建物火災に際しまして、初期消火を何とかうまくやるということのためにはやはりスプリンクラー設備というものが、こうしたデパートの場合には有効な消防設備となるであろうというふうに考えられるわけです。御承知のとおり、このスプリンクラー設備の設置につきましては昭和三十六年の改正によりまして設けられまして、その後、昨年の改正におきまして面積基準というものが強化されたわけでありますけれども、いずれにしましても、現在の法律規定は、昭和三十六年以前にすでに建っておりました建物については適用されておらないわけであります。その後の建物につきましては、新設はもとより、増築の場合にも、それに伴って全体にスプリンクラー設備をつけるということになっておりますけれども増築を行なわない場合にはそのままということになっておりますので、やはりそうした三十六年以前の建築物につきましても、スプリンクラー設備につきましてはこれを法律上強制をしていくというたてまえをとっていきたい。ただ、その場合におきまして、スプリンクラー設備は、おそらく現在価格では平米当たり一万円ぐらいの設備費になるだろうということでございますので、やはり企業者の負担というものは相当な金額になってくるであろうということが予想されます。そういうことで、そうした面のいわば資本費につきまして、一方におきましては、これは通産当局のほうとのいま打ち合わせをしておりますけれども融資面、あるいはまた、いま予算要求をいたしておりますが、利子補給といったような措置も考え合わせながら、こうしたスプリンクラー設備の遡及の問題ということにつきましては、何とかこの国会消防法改正という形で、遡及適用するようなことを考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  11. 中山利生

    中山(利)委員 これはもうぜひやっていただかなければならない問題だと思いますので、強力な推進をお願いしたいと思います。  また、消防庁でも、けさの新聞にも出ておりましたが、いろいろな大規模火災の実験等されておりまして、たいへん効果的だと思いますけれども、私は、一般市民方々煙——今度の大洋デパートでも起こったと思いますけれども、煙の問題、煙をどうするか。これが意外に、一般人たちは火とか熱とかについては非常に関心があるわけですけれども、煙、特に最近の火災における煙の中に含まれている有毒ガス、これに対処するのにはどうしたらいいか、その有毒ガスが人体にどのように、どのようなスピードで影響を与えるのかというようなことについて、何といいますか、あまり危機感というものを持っていないのではないかというような感じがするわけでありますが、こういうことについての一般方々に対するPRというものもひとつ大いにやっていただきたい。それから先ほどのスプリンクラー避難路等の拡張、これもぜひひとつお願いしたいと思います。  時間がありませんので、ただいま、消防力基準にはやや近いけれども、近代的な装備に欠けているというお話がありました。これは大都市を除いて、地方相当都市におきましてもおそらく同じような悩みを持っていると思うわけでありますが、これについての補助率のアップ、あるいは政府のほうの補助というようなものをもっともっと強化してほしい。これは先般の三谷委員質問にもあったと思いますが、地方消防関係者の痛切な願いであります。ところが、私、十月にちょっと調べてみたのですが、小型というか、普通の自動車ポンプで、いままで二百八十万円ぐらいで購入できたものが約四百万円に値上がりをしている。それから可搬式といいますか、小型動力ポンプ、これがいままで五十五万円で買えたものが七十二万円になっている。これは十月の調べでありますので、最近ではもっともっと値上がりしているのではなかろうかというふうな感じがするわけであります。こういう資材の値上がり近代的装備の充実と、いろいろ相反する問題が出てきているわけでありますが、それと同時に補助率の問題、あわせてこれからどのように消防庁としては対処していかれるおつもりか、お伺いしたい。
  12. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 現在、消防力基準に対します市町村の消防施設充足率というものは、大ざっぱに申しまして大体六〇%水準であるということでございまして、その中でも化学車はしご車等一般ポンプ自動車よりもやや低い充足率になっておるわけでございます。そうしてまた、各都市火災状況というものを見ますと、やはり高層建築物が非常に増加してきているということと、火災内容が非常に多様化してきているということからいたしますならば、化学車はしご車中心にした近代化をはかっていく必要があるということは御指摘のとおりでございます。  私どもも、これまでの消防施設補助金につきましての運営というものにつきまして、さらに消防力充足率が上がっていくというような方向での運用を考えていきたい。といいますのは、新規に充足をするというものにつきまして、充足率を引き上げる方向補助金を交付していく方式をはっきりさせていきたいというふうに考えておるわけであります。その中におきましても、特に化学車はしご車等中心にした近代化のための施設の増強というものを重点にした補助金の配分を心がけていきたいというふうに考えております。そしてまた同時に、いま御指摘ございましたように、最近の状況が特に影響いたしているわけでありますけれども補助基準額と実際の購入価格との間において、最近非常に開きが目立ってきておりますので、来年度はまずこうした単価の引き上げということを予算獲得の際における最重点にしてまいりまして、いわば実際に買える値段というものによって補助基準額を構成していくという方向で対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  13. 中山利生

    中山(利)委員 ただいま申し上げましたことは、ここにきょう配付になりました熊本県からの要望書にもずっと出ております。これは熊本に限らず、全国至るところで同じような要望がなされておると思いますし、また緊急にやらなければならないことばかりだと思います。これをやるについては、時節柄ではありますけれども、たいへんな予算あるいは財政というものが要ってくるだろうと思いますし、また、やらなければ地方財政に対する圧迫というものはたいへんなものになるだろうと思うわけであります。せっかく古屋次官がお見えになっておりますので、この面につきましてひとつ御決意のほどをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  14. 古屋亨

    古屋政府委員 いま中山先生からお話がありましたように、特に現在各地方消防力強化するにつきまして、ポンプ車はしご車でも現実値段基準単価というものがあまりにも開いておるのでございまして、そういう点について、今度の来年度予算におきましては基準単価を引き上げるということを第一の目標にし、同時に、化学的な施設につきましては、従来の三分の一を二分の一にするというような要望も出しておるわけであります。消防につきまして、私ども率直に申し上げまして、地方、地域では非常に熱心であり、ポンプ車もほしい、これもほしいといわれておりますが、その財政の実情、あるいはいま申し上げましたような基準単価現実値段との問題非常に激しい値上がりをしておる、あるいは補助率が一律的に低いという点から、地方消防力というものをば強化する上において阻害原因をなしておりますので、私も政務次官を拝命いたしまして、皆さんの御支援のもとに、そういう点を今度の予算編成におきましては十分がんばりまして、御期待に沿うように努力してまいりたいと思っております。
  15. 中山利生

    中山(利)委員 たいへんりっぱな御決意を聞かせていただきまして、ありがとうございました。消防庁長官古屋次官に大いに期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。では終わります。
  16. 伊能繁次郎

  17. 山本弥之助

    山本(弥)委員 熊本市の大洋デパート火災につきましては、先週の委員会でその概要につきましての報告をいただいたわけでありますが、また私ども国会から現地調査をしたわけでありますが、私、結論めいたことを申し上げますと、昨年五月の大阪市における千日デパートビル火災の際にも調査をし、またいろいろ消防庁でも検討なすったと思うのでありますが、そのときの教訓といいますか、そういったものが、端的に申し上げれば完全に生かされていないというふうに強い印象を受けたわけであります。この点はまことに残念だと思っております。  現地熊本市の消防当局あるいはその他の関係部局、また県庁も知事さんをはじめといたしまして、事後対策につきましてはまずある程度まで、非常に御苦労をし、手落ちのない対策を講ぜられたということはまことに御苦労であったというふうな印象を私は受けております。しかし、事前になぜ過去の経験を生かすことができなかったのかということが、まことに残念でならないのであります。ことに消防用施設については、これは古い建物でありましたので、現在あるものもほとんど作動していない。それから、当然効果的だと思われる有力な設備スプリンクラーだとか火災報知設備だとか、あるいは避難はしご避難器具といったようなものの不備は、法の適用からいきますと、古い建物であるので違反事項ではない。それならこういった消防用設備を補うものとして管理体制はどうかといいますと、管理体制も、管理者はいるけれども、それに対する防火計画等も提出されていない。こういった消防用設備不備といいますか、欠陥防火体制で極力カバーするだけの体制ができておるならば、もっと大事に至らなくて済んだんじゃないか、私こういう感じがするわけです。現地新聞記者等もそういうことを指摘しておったわけです。これは過去の幾多のとうとい体験といいますか、そういうのに徴して、事後体制そのもの消防当局に私は敬意を表するわけですが、こういった防火計画もつくっていない、あるいは防火訓練もしていないという、設備不備を補う体制すら指導が徹底していなかった、これはどういうことでしょうか。消防庁長官も行かれて、その間の事情を調査されてきたと思うのでありますが、事後対策が完ぺきであるだけに、事前は何もしなかったというふうな印象を受けるのですね。この辺、どういうふうにお考えになりますか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  18. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 全く御指摘のとおりであるというふうに私考えております。確かに、いろいろな現行の法令規定されております事項がこの建物には適用されていなかったということは事実でございますが、すでに昭和四十六年の暮れごろからこのデパートに対しましては、いろいろな意味におきましての防火体制というものが整っておらない、そしてまたその時点における法令規定にもいろいろな点において違背しているというようなことが消防当局の査察によって指摘もされ、そういう意味での警告デパート側に出されております。そしてまたさらにその後数回にわたって、同じような指摘が繰り返されておるというようなことでございました。私どものほうの消防の立場からいいますと、そうした指摘に対する事後指導というものがほとんど行なわれておらないという点、そしてまた、そうした警告を受けたデパート側が、ともかく法令の範囲内における防火管理体制というものについても、そうした警告に対応する措置をとっておらなかったという点が、やはりこのデパートにおける被害を非常に大きくしてしまった。したがって、従業員が幾らがんばってみても、個々ばらばらの活動になってしまって、結局、いわば組織立った活動ができ得なかった、こういう点でお互いの犠牲を非常に大きくしてしまった。こういう点は、このデパート火災につきましては過去の経験が全く生かされておらなかった、この点は御指摘のとおりだと思っております。
  19. 山本弥之助

    山本(弥)委員 たまたま私どもお聞きしたところによりますと、そういう有力なスプリンクラーだとかいったものは増築と関連いたしまして全館整備をするというようなことで、来年の一月でしたか二月でしたか完備する、こういうところに何となく気のゆるみがある。ことに歳末の大売り出し等もやるという時期、いわばお客がたくさん入ってくるというような時期は、東京、大阪みたいな大都市と違って、ことに増築工事中という場合には、消防体制としては、熊本も大都市でありますけれども、こういう建物に集中して指導整備をしておくべきだと私は思う。行政指導強化しておくべきだということを痛感するわけであります。間もなく設備が完備すれば今後もう不安はないという、その間隙がこわいわけでありますので、地方都市に対しましては大都市よりもその問題をよく私は徹底しておいていただきたい。  ことに、これは消防庁でつくっておられる消防白書によってもわかりますように、私の見ましたのは、あれは昭和二十三年と昭和四十七年との比較だったと思うのでありますが、その発生件数からいいますと二倍半ぐらいになる。それから建物の焼失面積からいいますとむしろ減っておる。これは建物が耐火建造物もふえていくので減っておるのではないかと思います。ただ死傷者に至りましては、死者の場合は四倍になっておる。いわば耐火建造物は安全だという観念から、一朝事が起こりますれば非常に死者を出して危険だという観念よりも、安全だという考え方が、建物所有者にもまた一般の地域住民にもあるのではないか。そのことを今後生かしていかなければならぬと思うのです。  それで、何としてもこれから死者を減らしていく、負傷者を減らしていく、そういうことに重点を置いていかなければならぬと思いますが、設備が急にでき上がるものではないと思います。また万全を期しましても、完全な防火体制があっても、初期消火を誤りますれば大事に至ることは当然なことでありまして、これは日本ばかりでもないわけであります。しかし日本の場合は、どうも諸外国に比較いたしまして死者が多いとか負傷者が多いということで、これはどうしてもそういう犠牲者を出さないということに全力を尽くさなければならぬと思うのであります。今後の指導にいたしましても、設備の点ももとよりでありますが、そういった防火管理体制といいますか一設備不備は防火の管理計画なり管理体制で補っていくというように、歳末、火災の頻発するおそれのある時期に極力各府県を御指導願いたいと思っております。  そこでもう一点、今回見ましたことでこの機会に詳しくお聞きいたしたいと思いますのは、千日ビルデパートの場合もそうでありましたが、死者が、毒ガスといいますか、一酸化炭素の中毒で昏睡状態になる、あるいは死亡する、そしてあとで火災が蔓延いたしまして焼死体になるということなんですが、今回もそうじゃないかと思うのであります。ことに六階、七階の死者が多いわけであります。建物の中の死者が七十三名、このうち六階が二十六名、七階が三十名と、こうなっておるのですが、これは明らかに中毒した、あるいは昏睡状態で死亡したあとに焼かれたのか。それから病院にかつがれていったというのもおそらく、二十八名死んでおりますが、これも中毒後死亡、からだが全焼だとか半焼だとかいうことで死亡したのではなくて、そういった中毒のために死亡したという例だと思いますが、それがどうかということをお聞きしたいと思います。それからもう一つ、発火が十三時十五分、それから消防関係が覚知いたしましたのが十五分から八分経過した二十三分ということになっておりますが、鎮火が二十一時ですから、ほとんど全館、長時間にわたりまして燃え尽くしたところから、焼死でなくて、ほとんどが中毒後の焼死ということだと思うのですが、そうであるかどうか、詳しく御調査になっておられると思いますが、その点お聞かせ願いたいと思います。
  20. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 死者状況は御指摘のとおりだと思います。
  21. 山本弥之助

    山本(弥)委員 そこで私は、いままでの木造家屋の場合は、建物は焼かれるが人は助かるという場合が多いし、また老人等が死亡した場合も、建物と一緒に煙に巻かれるということもあったかもわかりませんが、中毒と焼死と同時ぐらいの関係で犠牲になったと思うのであります。最近の火災は、こういうふうに、いわゆる焼死体になるのではなくて、中毒になるということで、煙対策といいますか排煙対策といいますか、それに最も重点を置かれなければならぬのじゃないかというふうに考えるのですが、この点につきまして、東京消防科学研究所でもその点に思いをいたされましていろいろ検討を進めておられる。新聞等にもその対策の記事が、熊本火災に関連して出ましたのかあるいはその前に出ましたのか、報道されておるようでありますが、その辺のことを少しお聞かせ願いたいと思います。
  22. 熊野陽平

    ○熊野説明員 消防研究所の所長の熊野でございます。ただいま御質問ございました点について、研究所の立場から若干申し上げます。  私ども、国の研究所として、昭和三十年代の初めごろからわが国の耐火造建物の総床面積が急激に、ウナギ登りといえるくらいの勢いでふえてまいりましたその傾向の当初からこの問題に着目いたしまして、いま先生がおっしゃったように、確かに、建物の不燃化によりまして、はでな火事は減りますけれども、逆に、不燃化であるがゆえに、一たん建物の中で火災が起こりますと、煙、ガスが外に簡単に抜けないで、充満したそれらのガスの影響で人が死ぬ、あるいは損傷を受けるというような傾向がふえてきております。それに関しまして、私どもでは三十年代の初期のころに、排煙の問題につきまして排煙機という——御承知のように消防では排煙車というものを持っておりますが、これは大型のブロアを搭載した消防車でございますが、これを若干強力に改良した形のものを開発したこともございます。しかし、この排煙車という機動的なブロアの設備というものは、結局火災が終わった後に、中にたまっている煙、ガスをすみやかに排除する目的には有効でございますけれども、燃え盛っている段階で、あとからあとから出る煙、ガスを排除する目的には非常に不十分である。これは簡単な計算をいたしましても、たとえば昨年の千日ビルの火災のような、ああいうデパート形式のビルの中での火災を考えますと、その燃焼による発熱の力といいますのは、ちょうど石油ストーブを四千台一ぺんにそこに並べたくらいのもの、あるいは馬力でいいますと一万五、六千馬力に相当するパワーになります。これは、いわばそういうような強力な、しかもたちの悪い空調設備が急激に出現したようなものでありまして、これに立ち向かって、まともに建物のすみずみまで煙をクリアにするということはほとんど不可能に近いということで、私どもでは千日ビル火災を契機といたしまして、建設省の建築研究所、それから工業技術院の製品科学研究所、この二つの機関と共同でもって、御承知のようにことしの五月九日に厚生省の取りこわし予定ビルを使いまして実験を行ないました。この実験で私どもが分担いたしましたことは、階段室だけでもせめてきれいな空気を送り込んで煙の侵入を防いで、そこを避難路として使う、あるいは消防隊が進入して作業をやりやすいように、進入する経路として使うという目的のためにこれを試みたわけでございまして、これですと、現在消防が持っております程度の排煙車を有効に使って階段室だけはクリアにすることができます。これが一つの実用的な対策になると思います。  そのほか呼吸器具の開発。これはオフィスビルとかホテルとかいうような建物の中の内在者が、火災が起こってとにかく避難する間あるいは救助を待つ間、短時間、十分間ぐらいでも呼吸を確保できるようにという目的のものと、それから現在消防隊員が使っておりますボンベ式の呼吸器具がございますが、これがせいぜい二十分ぐらいしかもちません。しかも重さが十二、三キロあるというので、これにかわるプロの消防隊員用の呼吸器具もあわせて開発を進めております。  そのほか、これらのいろいろな技術的、機材的な開発の基礎資料となるものといたしまして、火災の条件のもとでどんなガスが出るか、一酸化炭素をはじめ、最近のプラスチック類では青酸ガスとかそのほかいろいろな悪いガスが出てまいりますが、これの正体も、どんなふうに出るか、そういうものを、性状も含めて研究を進めております。  以上でよろしゅうございましょうか。
  23. 山本弥之助

    山本(弥)委員 さっき消防庁長官の御答弁によりまして、死者がほとんど中毒後の焼死体というお話がありました。先ほどの実験では発火しまして十三分でしたか、煙に巻かれて六階とか七階でそういった仮死状態になる、あるいは死亡してしまう、あるいは病院にかつがれていって間もなく死ぬ、そういう時間的余裕というのは何分ぐらいでしょうか。これは消防研究所のほうでも検討されておりますか。それと、現実にどのぐらいでそういう状態になったか。私の想像では、これは九時間燃えていたのですね。だから、おそらくかけつけたときに入ろうとしても煙で入れなかった。あとポンプで放水しただろうと思いますけれども、まず九時間、全部燃えるものは燃えるまで待ってやっと消えたんだというような感じを受けるのです。その以前にもう、逃げていない人は毒ガスでやられて死んでいる。それが何分間の余裕があるものかどうかですね。実験の結果と、大洋デパートのあとからの調査による推定ですね、それはおわかりになりませんか。
  24. 熊野陽平

    ○熊野説明員 いまの御質問には、やはり建物の構造、大きさとかによっていろいろで一がいに申せないと思いますが、いままでの実験では、やはり火災が発生してから数分で、すでにそういう上階の人々が危険におちいるということもあり得るということはわかっております。しかし途中の階段のシャッターがおりているとか防火ドアーを締めているとかいうようなことで、上階への煙の流動に対する抵抗が大きければもう少し時間が延びるということはございますけれども、要するに、致死濃度が〇・二%でございますか、その濃度にどれだけ早く到達するかどうかという問題にかかっているわけでございます。
  25. 山本弥之助

    山本(弥)委員 長官調査した結果はどうです。
  26. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいまの問題につきましては、現在建設省と私どものほうで調査委員会を設置いたしまして、そうした具体的な問題についての検討を進めております。これらの結果をまちまして、また適当な機会にお答えしたいと思います。
  27. 山本弥之助

    山本(弥)委員 ただ、あの場合そう時間的余裕がなかったということはいえるのじゃないでしょうか、大洋デパートの事例の場合はですね。一階、二階の人は大部分逃げたと思いますが、ところが上の六階、七階に犠牲者が多かった。五階はたまたまブリッジみたいな通路があったから逃げられた。何人ぐらいの人が何時間で、どのくらいの正常な状態あるいは異常な状態で逃げられるのか。煙が何分くらいでどうなるのか。初期消火を放棄しあるいは誤った場合にその逃げる余裕ということは、大体こういう事例を基礎に徹底的に調べておきませんと、何万と入っていたようなデパート、そういうのはとにかく初期消火を誤ればもうだめだ、犠牲者が出るのだということは必然的なことになりますね。偶然そういうことが起こり得るか、死傷者がどのくらい出るかという問題ではなくて、もしスプリンクラーが作動しなくて、火がその現場で、発火点で消えない限りは、もうとにかく入っている人は、時間的距離、煙のびまんする時間、それによって何人の人が完備した屋外のはしご、階段を通って逃げられるか。その点がもう致命的である、どうにもならぬというものなのか。もっとその辺検討する必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。いまの研究もまだ初歩的な段階ですね。  あれはサンパウロでしたかね、相当の風が吹いたために、それが空気を清浄にする役割りをして、相当の人が非常階段で逃げて、犠牲者が少なかったということも報道されているのですが、そうなると、たとえば空気の場合に、いま手っとり早くやるのは、窓を多くせいとか、窓をふさぐような品物は絶対にいかぬという指導をやるとか、これはスプリンクラーなんかを法規を改正してやるよりも先の問題になるとか、あるいはふさがっている窓をむしろこわしたらどうかとか、研究所で大がかりな排煙車を整備させるというような将来経費を投じてやる施設よりも、手っとり早く煙との戦い、それをどう効果的にいま対処できるかということを早く対策を打ち出さないといかぬのじゃないか。もしそうでなければ、中に入っておる一般大衆も従業員も、徹底的に火災を出さないということに全力を投ずるというような体制に行政指導をするか。何か煙の対策を手っとり早く、とりあえず最小限度に確率を下げるような手を打つべきではないか。それがいま最も先決問題ではないか。これは大阪と熊本を見ました感想ですね。しろうと的な考え方かもわかりませんが、そういう印象を受けるのです。それのきめ手にならなくても、何かある程度まで逃げ得る、ガス中毒にならない、逃げ得る人を多くするような指導をすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  28. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに御指摘のとおりでございまして、やはりこうした不特定多数の人々を収容する建物の場合には、まず第一点が初期消火努力をするという点、二番目には火災発生を周知させるという問題、それから三番目が避難体制整備、まずこの三点が整っていなければならないというふうに考えるわけです。  そこで、この建物火災の場合に、初期消火はどうであったかということを考えますと、消火せん等の設備は全く使用されておらない。したがって、初期消火の場合には、確かに二階、三階付近の従業員は消火に当たった形跡は認められる。けれども、その段階においては消火器なり水なりというものは使われておらない。したがって、たたいたり何かして何とか消しとめようとしたというような感じじゃなかっただろうかということでございます。そういう意味で、初期消火は完全に失敗をしているわけでございます。  それから二番目に、周知体制はどうであったかということになりますと、これはこの建物防火管理体制ができておらなかったというために周知が全くされておらない。したがって、あとから見ますと、五階付近においてシャッター等が一部締まっておりますために、上に火が抜けるのは一個所の階段だけであった。したがって、六階、七階に火が回るのには通常の火事よりは若干の時間的余裕があったのじゃなかろうか。その段階で六階、七階の人たちはほとんど火事の発生を知らされておらなかったために、煙が回ってくるまでおそらく気がつかなかったのではないだろうか。そういう意味におきまして、もっと周知体制が整っておるならば、六階、七階の人たちは逃げる余裕はあったのであろうということが想定されるわけでございます。  それから避難体制ということになりますと、先ほどから申し上げておりますように、組織立った避難体制が全く整備されておらない。そのために、従業員がいたずらに個々に避難誘導をしたために両方とも犠牲が大きくなった、こういうような感じでございまして、こうした建物のいわばイロハの体制が十分でなかった、こういうことが、この火災の場合に、私ども非常に残念な点でありますけれども教訓として残された、こういうふうに感じておるわけでございます。
  29. 山本弥之助

    山本(弥)委員 さらに研究所長さんにお聞きしますが、貴重な研究を続けていただいて、だんだん市町村の消防の充実に伴いまして、はしご車だとかスノーケル車の充実とともに、排煙車というものが中都市まで行き渡る時期が来ると思います。しかし、そういった消防体制消防施設整備も急がなければなりませんが、いままでの長い歴史からいいまして、そう急に——たとえば態本市でもはしご車は一台で、あとの一台を購入するのが間に合わなかったというような事態でありますと、そういう科学的な消防施設が急速に整備されるとは思えないので、万一の場合に煙から守るという対策ですね。多少ほかのほうの心配もありますが、当面、百貨店などは窓をつけなければいかぬ、あるいは万一の場合は、多少外から風が入っても一番先にガラス窓をぶちこわすんだ、通風が可能なようにするんだというような、何か応急的に最小限度の煙対策ができるような措置というものはないものでしょうか、どうでしょうか。
  30. 熊野陽平

    ○熊野説明員 いまの仰せのことに関しまして、今回の大洋デパートの場合、それから昨年の千日デパートの場合、それに先立つ一連のホテル火災など見渡してみますと、やはり所有者、管理者の防災意識の軽さといいますか、欠如と申しますか、これは何としても是正しなければならない根本的な共通な問題だと思われます。かりに、大洋デパートのように非常に意識の低い場所で事が起こった場合に、なおこれを救済する技術的な方法はないかというようなことを考えますと、これまた不可能ではないと思いますが、かなりの経費を要する問題になるということで、それじゃこれを実施せよといってもなかなか取り上げてくれない。そういう点で、先生がおっしゃったようなごく手軽な方法として、窓を破るとかいうような方法、これは現在、私どもと同じ構内に消防大学校もございまして、私なども講義に出ますが、そういう面を通じて、教育的な形でいろいろ知識は吹き込んでおります。  それから、御承知かと存じますが、昨年私どもがあるシャッターメーカーと共同で開発いたしました収納型屋外避難階段というのがございます。これは既存の、つまり建築基準法などの新しい法令の遡及される以前の古い建物で、避難施設あるいは避難設備、こういうものが欠陥だらけの建物を少しでも救済しようということでやったものでありますが、固定式の屋外階段ですと、常時土地占有の問題などからんできて、なかなか実施しがたい。それに対しまして、私どもの新しく開発した装置では、常時屋上に納めておいて、事が起こると前へ繰り出して、ずるずると下がって屋外階段を形成する。これでありますとかなり避難路として活用できる。ただし、これは従来の救助袋あるいは緩降機というような消防で扱っております避難器具に比べますと値段相当張ります。最近の値段で大体一千万円前後というようなメーカーの見積もりになっております。しかしこれは、昨年十一月にこれを公開いたしましたとき私申し上げましたが、このような値段の張るものでもなお、人命安全という観点からすれば、それに相応するコストは惜しんではならないということを申し上げたのでございます。先日の大洋デパートの場合にも、たまたまあそこは増築工事で作業の足場を組んでおりましたが、あれを伝わってかなりの人が逃げておるようでございます。このように、建物の外へ出ますとかなり有利になりますので、今後ともこういう避難とか救助の面ではこの原則をできるだけ活用していきたい、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  31. 山本弥之助

    山本(弥)委員 この問題ばかりに時間を空費できませんので……。  当然、消防庁とされましても、熊本の二の舞いをしないように、大都市に対しまして当面緊急にとるべき措置を通達したと思いますが、とられた措置と、あるいは調査されたようなものも新聞に出ておりましたが、その調査の結果がどうだったかをお聞かせ願います。
  32. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 大洋デパート教訓にかんがみまして、特に歳末大売り出しを控えておりますデパートの場合には、通常の場合に比べまして商品が非常に多くなるということと、人の出入りが非常に多くなるわけでございます。そういう意味におきまして、可燃物が非常にふえるということと、そうした商品がたくさんありますために避難通路等が商品によってふさがれる。したがって、有事の際にはやはり同じような危険というものが当然予想されるわけでありますので、特にこうしたものについての査察体制強化してもらいたいということを通達いたしております。これらの内容につきましては、現在各市町村における消防機関がそれぞれの査察をやっておりますので、この結果につきましてはいましばらく報告を待ちまして、できる限りそういう面での査察強化ということをねらいにして指導していきたいというふうに思っておるわけでございます。  さらにまた、危険なデパートといいますか、現行の消防法令なり建築基準法が適用されない建物でありましても、やはり非常に人がたくさん出入りするわけでありますから、そういうものにつきましては、できる限り現行制度のもとにおける消防設備を備えるように、そうした計画の提出等も急がせ、また工事も急がせるということでいまやっております。いまのところ、十大都市について調査したわけでありますが、現在の段階で明らかに消防法違反の状態にあるというデパートが五店ございます。それから、現行制度上は違法という形ではないけれども設備がまだ整っておらないというデパートが七店ばかりございます。そういうものにつきましてはさらに消防当局から強く、そうした工事計画を繰り上げてでも早急に実施をするようにということを指導しておるわけでございます。
  33. 山本弥之助

    山本(弥)委員 ただいまのとりあえずの大都市における調査等につきましても、一流のデパートでも不備な点があるというようなお話がありましたが、新聞にもそういう不備デパートについての公表をしたというような記事が出ておりました。これは少し酷なようですけれども、大々的に周知をはかる、そうして何としてもやるべきことはやらすんだという態勢を消防は少し強くとってもいいのじゃないか。ますます犠牲者が多くなる可能性があるわけですから、この点は消防のほうで、多少非難は出てくると思いますけれども、とうとい人命にはかえられませんので、当然法的に義務づけられたものが形式的に整備しておるというだけではなくて、これで役に立つのか、あるいは不備はないのか、もっと面積割りで濃密な配置をしなければいかぬのかというような点につきまして、私は強力な行政指導が望ましいのじゃないか、かように考えております。  そこで、当面、検討なすっておられると思いますが、また建設大臣も現場をごらんになり、また自治大臣も将来、現行の不備であるといいますか——負担過重な点あるいは実施困難だというような点からいろいろ問題がありますけれども、有力な防火設備の設置に関連いたしまして、遡及適用の法の改正をすべきであるというような御意向のように承っておりますが、早急に法の改正をして今国会あたりに提案になるのかどうか。この点は政務次官にお伺いしたいと思います。
  34. 古屋亨

    古屋政府委員 山本先生の御意見、建築基準法改正等につきましては、消防庁と建設省の事務当局といまいろいろ検討をしております。何といいましても、ただいまお話しのように、死者並びにそれによって回復できないような負傷を受けられる、この人命尊重の見地から、遡及適用の問題、法改正の問題等につきましては、積極的に前向きに検討いたしまして、いまお話しのように、できるだけ早い機会に案をまとめて国会へ提出する、こういうふうに考えております。
  35. 山本弥之助

    山本(弥)委員 ただいま政務次官から、今国会に早急に提出するという力強い発言がありましたので安心をいたしましたが、建設省のほうも、建築基準法につきましてはいまの政務次官の方針に従いまして、早急に建築基準法関係改正に踏み切るわけでございますか。どうでございましょうか。
  36. 佐藤温

    佐藤説明員 基準法の改正につきましては、消防庁のほうとよく協議いたしまして、同様な考え方で進むようにいたしております。
  37. 山本弥之助

    山本(弥)委員 私どもも、できるだけ早くこの点は検討、話し合いを済まされまして、ただいま政務次官から御答弁のありましたように、違法でないというようなことからあやまちを繰り返すことのないように、多少無理な点もあろうかと思いますが、その点は思い切って英断的に踏み切っていただくことを強く要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  38. 伊能繁次郎

    伊能委員長 この際、暫時休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      ————◇—————    午後一時五分開議
  39. 伊能繁次郎

    伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  現在、商工委員会において審査中の石油需給適正化法案について、また、物価問題等に関する特別委員会において審査中の国民生活安定緊急措置法案について、両委員会にそれぞれ連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、開会日時等につきましては、両委員長協議の上決定し、公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  41. 伊能繁次郎

    伊能委員長 消防に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。三谷秀治君。
  42. 三谷秀治

    三谷委員 大洋デパート火災につきまして、消防庁の「検討事項」という文書が出ております。この文書を見ますと行政における反省が足りないということですね。たとえば消火設備、警報設備避難設備が不十分であったというふうなこと、こういう問題が検討されております。しかし、なぜこんな不十分な状態にあったのかということ、これが防火対象物の所有者だけの責任であったのかどうかという問題、ここら辺がきわめて通り一ぺんになってしまっている。どうしてそのような状態に放置されておったのかという問題、それに対する行政の反省というものが全然これは見受けられない。ここで改善の必要をあげております幾つかの項目がありますけれども、これもなぜいままで問題になりながら改善されなかったのか。事新しいことじゃない。この三年間を見ましても、百貨店だけで八カ所が火災を起こしております。大阪の千日デパートは特徴的でありますけれども、そういう事態がありながら、なお今次のような膨大な人的なあるいは物的な損耗をするというふうな状態が起きてきたのかということですね。これについてもう少し、結果だけを羅列するのでなしに、結果をもたらした原因について、外因的な要素だけでなしに、その内因的な要素について深刻な反省、批判をする必要がある。ところが、この検討事項を見ますと全然これは欠けてしまっている。こんなことでいいのだろうか。事が起きれば、善処します、改善しますと言う。大阪の火災の場合もそうなんです。ところが実際の改善というものは間尺に合っていない、そうしてまた事件が起きてくる、またこれは改善措置を講ずるのだ、こういうことを反復しながら、この原因の真因につきまして深い検討がなされていない。こういう態度でいいのかどうか、これをまずお聞きしたいと思う。
  43. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 前回の委員会の際にお配りいたしました検討事項は、いわば法令等の検討事項を並べております点でただいまのような御指摘があったと思うのであります。確かに、行政面において、この火災が非常に悲惨な結果になりました点について手落ちがなかったかということになりますと、私どももこの点につきましては深く反省をしておるわけでございます。地元の消防本部におきましては、この大洋デパートの予防査察というものを毎年やっておるわけでありますが、特に最も広範な点につきましてこのデパートの査察を行ないましたのが昭和四十六年の暮れでございます。この際の査察におきまして、相当多数の項目につきまして、防火上の問題点あるいは法令違反の点を指摘いたしておるわけでございます。それによってデパート側に対して改善を求め、その警告を出しているわけであります。そしてまたさらにその後数回にわたりまして査察を行ないまして、その内容についての警告を発しておるということでございますけれども、その警告内容は、四十六年以来ほとんど同様な警告になっておるということでございます。それは結局、デパート側におきましてこうした警告に対する改善措置がとられなかったということの証明になるかと思いますけれども消防側といたしましても、そうした査察の結果、不備な点あるいは違法な点等を指摘しながら、それを最後まで追及しなかった、査察をし、警告のしっぱなしにしておったという点に、やはり消防側としては非常に問題があるだろうと思います。そうした査察結果をそのまま放置した点が、デパート側にとりましても防火体制について安易な気持ちをそのまま残させたということにつながるのではないかという点において、私どもも、予防査察を行ないましたその結果について、改善措置がとられているかどうかということの事後措置というものについて、今後十分体制をとっていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。今回の火災の経験にかんがみまして、最近特に歳末でにぎわうであろうデパート中心にした査察の強化を各地に指導しておるわけでありますけれども、その際にも、そうした査察の結果どういうふうな改善がなされたのかという、その事後の措置の報告を求めたいというふうにして、消防側としましても単に査察のしつばなしでなしに、改善の指導まで含めて、そのあと始末をきちんとやっていくということを考えていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。  さらに法令不備の問題でございますけれども、千日デパート火災の経験にかんがみまして、法令の規制の強化という措置を行なったわけでありますけれども、これを過去の建物にさかのぼるという点につきまして、いろいろ議論がありましたために、結局そうしたいろいろな規制の強化という点を過去の既存建物に遡及できないままにしておったという点は、確かに問題だったと思います。そういうような反省から、でき得る限り、消防法等の改正について準備を進めまして、既存建物につきましてもそうした消防設備等の設置を強制する体制をとってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  44. 三谷秀治

    三谷委員 いまおっしゃいましたことにつきましては、この火災が起きましてからどろなわ式に改正をする行政姿勢といいますか、ここに非常に問題がある。いままでからこの点につきましては指摘もされておりますし、問題にもなってきたわけであります。ところが犠牲者が出なければそれが改善されない。そういう行政の体質はどこに原因があるのかということです。  この検討事項を見ますと、防火対象物の消火設備についての法的な規制の強化ということがうたわれております。それから二番目には防火管理に対する指導強化がうたわれておる。三番目には現行規定の活用、こういう内容もある。四番目には消防力強化という課題も示されておる。五番目には建築基準法改正という法改正の問題が出ておる。  これを見てみますと、防火対象物の消火設備についての法的規制が不十分であったということは明らかなんです。今日までの火災を通じまして、なぜこれが迅速に改定されなかったのかという問題が私が持っておる疑問なんです。  それから防火管理に対する指導強化でありますけれども大洋デパートの場合などは、この防火管理者というのは施行令三条に定めました有資格者かどうか。この有資格者は四項目にわたってあげてありますが、どの項目に該当しておったのか、こういうことをお尋ねしたいと思うのです。そして、防火管理者というものが防火管理者としての責任を全く果たしていない。これが放置されておる。これは施行令の規定と対比しましてどういうことになるのか、お尋ねしたいと思います。  それから現行規定の活用という項目がありますが、これは現在あります法律をもってしましてもでき得る指導処置があった、それがやられていなかったということをあげておるわけでありますけれども、なぜそんなことになっておったのか。百貨店におきまして大きな事故が起きましたのはつい一年数カ月前の話であって、まだほとぼりがさめない。にもかかわらず、現行規定による指導も十分に行なわれていなかったということですね。  それからもう一つ消防力強化でありますけれども、この強化の問題というのは、一般的に消防力強化をうたうだけでは意味がない。消防力の現状が地方財政との関連でどうなっておるのか、強化をするためにはどうすべきかということが当然検討事項の中に出てこなくちゃいかぬ。これは一般的な命題を強調するだけに終わっておる。  建築基準法改正の問題、これはかねがねいわれておった問題であります。  こういう検討事項を見てみますと、検討に深みが足りません。おもてを一通りなでたというだけになってしまっておる。ですからここにおきましては、国の予算措置の問題が欠けてしまっておる。それから、いま申しました消防内部における行政的な責任の問題が明らかにされていない。これを明らかにしませんとほんとうの検討がなされたとは考えられない。そこら辺はどうでしょう。
  45. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 この大洋デパート防火管理者は施行令三条の資格の中でどこに該当するかという点は、現在つまびらかにいたしておりませんけれども、おそらく第一号の講習を終了した者という規定による管理者ではないだろうかというような感じがいたしております。まだこの点につきましては私どもも詳しく調べておりませんので、またあとで御報告することにいたしたいと思います。それから防火管理者につきましては、確かに消防本部のほうにおきましても指摘をしておったわけでありますけれども防火管理者の任命は行なわれておったということになりましても、どういう人が防火管理者に任命されたのかというような選任届あるいは解任届といったようなものがとかく怠りがちになっているというような指摘もあったわけでありますが、いずれにしましても、このデパートにおきましては消防計画といったようなものが全然まだ作成されていなかったという点は非常に問題であると思います。  また、この問題も含めまして、現行規定に基づいていろいろな措置を警告しながら、そのあと追いの行政が行なわれておらなかったために、結局防火管理体制というものがきわめて不十分なまま、ほとんど改善が行なわれないまま放置されておったという点につきましては、やはり行政としては非常に大きい手抜かりがあったわけで、この点は私ども深く反省をしておるところでございます。  それから消防体制強化の面につきましては、確かにその裏づけとなります財政との関連というものを十分検討しなければならないわけでありますけれども、これまでの消防施設補助金というものが施設水準の向上につながっておったかどうかという点につきましても、従来のものについて十分反省を加える必要があるような気がいたしておるわけでありまして、今後、これらの補助金の使途というものにつきましては、十分私どもも、消防力基準に対する充足率の向上につながるような運営のしかたが必要であるというふうに考えておるわけであります。それと同時に、現在、消防の経費というものを見ておりますのはやはり市町村でございますので、主力としましては地方交付税における財政措置というものがその最も大きい比率を占めるわけでありますけれども、その交付税の基準財政需要額の算定を通じまして、具体的な財政措置といものを強化していくことにする必要があるというふうに考えておるわけでございます。  それから建築基準法改正につきましては、現在、建設省におきまして必要な調査委員会も設置いたしまして、具体的な検討に入っておりますので、私ども消防の立場からの意見を十分反映をして適切な改正が行なわれますように、私どもも建設省とともに意見を調整しながら、改正方向に持っていくように努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  46. 三谷秀治

    三谷委員 防火管理者、これが今度の火災における重大な責任者であることは明らかでありますが、この防火管理者がどういう資格を持っておるかわからない、調査もしていない、そういうことで火災責任を明らかにする態度と言えるでしょうか。この人は山内という取締役です。これが防火管理者になっておった。先ほどの施行令三条からいいますと、第四号の該当者というふうに私は聞いている。そういう無責任な状態管理者が放任されておる。それに対して消防としても適切な指導処置をとらないというような状況があったわけです。今度の検討の中でも、防火管理者に対する指導強化とおっしゃっておりますけれども、この指導強化という課題を打ち出すためには、大洋デパートにおいてはこの防火管理者というものがどういう資格か、どういう責任をないがしろにしてきたのか、ここら辺をやはり明らかにしてもらいませんと、問題を十分に追跡して明快にしないままで改善だ、改善だと言っても、これはなかなか私ども首肯ができるものではありません。  それから、この大洋デパートにおきましていろいろな設備不備がいわれている。私どもも見てきたのです。これは、消火設備におきましても警報設備におきましても避難設備におきましても皆目話にならない。法的な義務規制に反して整備されていなかったものは何かということ、それから指導上の観点で勧告してきたものは何かという二つの点に分けて、消防庁調査の結果をお尋ねしたいと思うのです。
  47. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 火災概要のところにも記載しておりますように、消火器、屋内消火せん設備、それから連結送水管、場内に警報させる放送設備、これは設置されておりましたが、自動火災報知設備は不完全なもので、現在設置工事中であります。なお、増築に伴いましてスプリンクラー設備の設置が必要となったので現在工事中である。さらに避難器具については、再三の注意もありましたけれども、設置されていないという状況であります。
  48. 三谷秀治

    三谷委員 もう少し具体的に言ってみてくださいな。たとえば簡易消火用具はあったというのですね。屋内消火せんも設備はあったというのですね。スプリンクラーはなかった。排煙施設もなかった。これは消火設備ですが、それから警報設備としては、自動火災報知機があったけれどもストップしていた。火災警報器、これはない。それから消火機関に通報する火災報知設備、これはない。煙感知器がない。それから非常ベル、自動式サイレン、これもない。放送施設、これはあったのですか——あったけど放送しなかった。それから避難設備ですけれども避難はしごがなかった。救助袋がない。避難橋が五階にだけあって、五階だけは人が助かった。誘導標識、これはあるけれども、暗くて識別しにくい。避難通路がない。補助避難通路もない。こういう状態になっておる。しかも、あった設備も事実上活用できない状態になっている。消火せんの前は物品が積まれておる。あわ消火器の内液の期限が切れてしまっておる力店舗用階段、従業員階段は品物が積まれている。避難口の誘導灯は常時点灯していない。こういう状態が明らかになってきた。  これに対して消防管理者の責任はどうなるのか。これに対する法的な責任の処置というものはどのようになっていくのか。こういう状態を見ますと、これは明らかな殺人だ。一人の人を殺しても重大犯罪といわれる。いわんや、こういう多集合施設におきまして、規定されました施設がほとんどやられていない。それを消防がまた見のがしてしまっている、放任している。勧告は確かにやりました。四十六年、四十七年度におきまして、二回にわたって勧告はしております。しかし、勧告はしたけれども、根本的な改善がなされなかった。こういう事態に対して、監督官庁である消防署の行政上の責任。それからさらにいえば刑事責任は発生をしないのか。それから防火責任者の同様の責任は一体どうなるのか。この点についてお尋ねしたいと思います。
  49. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 消防設備の未設置のものについては、四十六年、四十七年の二回にわたりまして、基準に適合するように設置勧告をしておりますが、具体的に改善されているものはそのつど改善され、なおさらに改善されていないものについては、現地消防署の意見を聞きますと、そのつど勧告を続けてきたということでございますが、現実はいま先生の御指摘のとおり、設置されていない条件が多かったわけでございます。したがいまして、私どもの立場としましては、法律の十七条の四に基づく措置命令を明らかに下すべきであり、その命令に従って設置するよう強い指導を行ない、さらに違反の事実があれば告発という点についても強く踏み切るべきであるという態度をとって現地指導してきたわけでございますが、熊本の今回の場合はそういう事態まで至っていないということは、はなはだ残念なことであるというふうに考えております。  それから防火管理者の法的な責任の問題でございますが、これはこの事件の刑事事件としての捜査が現在検察庁のほうで行なわれておりますので、並行して私どものほうもあわせて考えていく必要があろうと思っております。
  50. 三谷秀治

    三谷委員 消防署がこの勧告無視に対しては告発をすべきであった、そういう指導をしてきたとおっしゃっておりますけれども、告発はしていない。それから四十七年の十二月の年末特別査察、特にこれは避難施設に関するものでありますけれども、行なったわけでありますが、それも改善されないままで一年間が経過している。告発どころか、監視、監督も十分にできていない。これは一体どこに原因があるのか、その責任はどこにあるものか、お尋ねしたいと思う。  それからお尋ねしますけれども、この大洋デパート火災は多くの死傷者を出しましたけれども、ただ条件としまして、いささか救われたのは、当日は大洋デパートの定休日であった。定休日でありながら年末だというので——年末といいましても十一月でありますけれども、臨時営業をやった。そのためにお客が非常に少なかった。千人の客しか入っていなかった。これが今度の事故におきまして百数名の死者で済んだ一つの要素になっている。もしもこれが数千あるいは万というような客が入っておるなら、とてもじゃありませんが、今次の犠牲だけでは済まない。そういう僥幸があったということ。しかし、御承知のように、百貨店の問題を考えます場合に、東京にしましても大阪にしましても、あの巨大百貨店はピーク時には十万の客が入っている。そのことを考えてみますと、実にりつ然とするような内容になっている。そこでお尋ねしたいのは、地上八階程度、地下一階程度の百貨店で、一階ないし二階から火災が起きました場合、煙が全館を包むのは何分かかるのか。かりに十万あるいは八万の客が逃げ出すのに何分かかるのか。こういう計算に基づきまして現在の百貨店の防火体制というものについてどのようにお考えになっておるのか。具体的には階段一つとりましても、いまの状態でいいだろうかという疑問が起きてきますけれども、この点はどうでしょう。
  51. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 百貨店に例をとりますと、まず燃えぐさが多いということと、それから区画が非常に広いという、この二点で煙の充満する速度というのは非常に速いと考えております。いままでの火災実験からいきますと、大体横への広がりは秒速〇・五ないし七メートルぐらいが普通でございますが、さらにそれを上回るであろうということが予想されます。上のほうへ上昇するスピードは秒速三ないし五メートルでございますが、百貨店においてはそれも倍はおそらく速いであろうと予想できるわけでございます。
  52. 三谷秀治

    三谷委員 お尋ねしたのに答えたのが一部だけでは困るわけなんです、全部答えてもらわぬと。何分ぐらいかかるのか。学者の発表があるでしょう。建築学会などで発表しておる学者の資料が出ておるはずなんです。そして何分ぐらい避難に時間をとるのかということをお尋ねしたのです。その場合に、ここで検討されております事項以外、たとえば百貨店の中に安全空間をつくるというふうな問題だとか、あるいは下のほうの階段の幅員を広げるというような問題だとか、あるいは入店者について一定の規制をするというふうな問題、あるいは商品の持ち込みの規制をするというふうな問題、それから有毒ガス発生商品の規制を行なうというふうな問題、そういう課題が当然生まれてくるわけです。どういう計算をされておるのか。そうして、ここで検討事項として出されましたものの中には、そういう具体的な、しかも新しく検討を要する事項につきまして提案がなされていない。それでいいのでしょうかということをお尋ねしている。
  53. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 火災学会及び建築学会で、先生御指摘のとおりのビルにおける煙の問題については研究を重ねてまいっておりますが、具体的に人の避難という問題と結びつけた設計にまでいま至っておりません。今後こういう点について、今回の事故調査委員会を契機としてさらに具体的に詰めていき、階段の幅員あるいは数、横へのスぺースのとり方等について検討を重ねるべく努力をしていきたい、こういう段階でございます。
  54. 三谷秀治

    三谷委員 これほどの大事故を起こしながら、少し研究姿勢が不十分ですわ。たとえば阪大の岡田教授の説もありますし、それから大阪市立大の住田教授の説もあるようです。こういう説を見ますと、この百貨店災害につきましては、一定の数字的な指数を示しながら、東京、大阪などの百貨店におきまして、ピーク時に下から火が出れば七割から四割程度の死傷者が出るのだ、そういう発表もされております。そういう発表に基づきまして、改善事項につきましてもっと広範な検討を加えていくという態度が必要じゃないでしょうか。その点がきわめてこれは大ざっぱ過ぎますね、この検討事項というのは。もう少し真剣に考えてもらいませんと困る。百人をこす人を殺すというようなことは容易なことじゃないですよ。
  55. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに、御指摘のとおり、こうした多数の人の集合する条件のもとにおいて、そしてまた可燃物の大量に置かれている建物火災についての研究がまだ非常に不十分であるという点は、御指摘のとおりでございます。そういう意味で、先般の「火災の概要」の「今後の対策」のところで、可燃物制限というものについての方法はないだろうかということも一つの検討項目にいたしておりますけれども、さらにこれを深めて研究していくということを早急にやらなければならないというふうに私どもも意識をしております。そういうことで、できる限り早い時期において結論が出されますように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  56. 三谷秀治

    三谷委員 通産省から見えておるはずですけれども、百貨店の営業許可については通産省が権限をお持ちのようですけれども、許可につきまして、いま言いました安全空間の問題だとか、あるいは入店者の規制だとか、あるいは商品の持ち込み規制だとか、可燃物、特に有毒ガス発生可燃物の規制だとか、こういう問題についてはどのようにお考えになっておりますか。
  57. 青木利雄

    ○青木説明員 百貨店につきましては、通産省で百貨店法によります許可を行なっておりますが、この法律の体系は、大型の小売り商でございます百貨店と中小商業者との関係法律の目的といたしましては中小商業者の事業機会の確保を目的とするという見地でございます。私どもとしては、百貨店の防災上の問題につきましては、百貨店に対する設置法からくる一般的監督権というものの範囲内で、消防庁なりあるいは建設省なりの専門的な御意見に従って百貨店が防災上の措置をとるよう、一般的な意味指導していく、こういうことでございます。
  58. 三谷秀治

    三谷委員 そうしますと、いま申し上げましたような規制の措置というものは、あげて消防庁の責任に帰するものだ、こういうことですか。
  59. 青木利雄

    ○青木説明員 私ども、防災の問題につきまして専門的な知識を持ち合わせているわけではございませんので、先般も、火災発生当日直ちに大臣名をもちまして、百貨店協会及びチェーンストア協会に対して、防災に一段と注意するようにという勧告を出しておりますほか、消防庁及び建設省と御協力いたしまして、委員会に参加して、事故原因の究明と防災の問題について御協力申し上げていきたい。また百貨店協会及びチェーンストア協会にそれぞれ防災委員会をつくらせまして、ここに関係省庁の係官の方に御出席をいただいて直接御指導を願いたい、こういう形で進めております。
  60. 三谷秀治

    三谷委員 いずれにしても、そういう面における行政指導強化するということは一そう強化してもらわぬといかぬですね。  時間がありませんから次にいきますが、いまのところ問題になりましたのは、百貨店側の管理体制欠陥があったということと、これを指導する行政庁におきましても十分でなかった、これも明らかになりましたが、もう一つ消防体制の弱体という問題です。これはやはり無視できない問題なんです。たとえば熊本市の消防力基準というのを見ますと、消防車三十二台になっておる。二十台しかない。はしご車が四台になっておる。スノーケル車を加えまして二台しかない。化学車が二台になっておりますが、これは一台しかない。大体五〇%ないし六〇%の充足率になっておる。はしご車で屋内避難者を救出したのですが、私は、百二十二名救出したという説明を聞きました。しかし屋上に届くはしご車は一台しかなかった。ですから救助に一時間を要しております。火災が発生しましたのが十三時十五分で救出が完了しましたのが十四時二十七分になっておる。一時間以上かかっておる。なお余力があったというのですね。余力がありましたのは、比較的客が少なかったという問題と、それからはしごをかけましたところに火焔やあるいは煙が風向きの関係で巻いてこなかったということですね。そういう条件があった。一台しかないわけですから、据えつけました場所に火焔や煙が風向きの都合で流れ込んできますと、救出が非常に困難になる。しかも一台しかなかった。この事態を見ますと、消防力の弱体というものが非常に特徴的だと思います。各方面からかけ得るはしごというもの、台数が必要なんだということを私は現地感じて帰りましたが、この点はどうでしょうか。それで、この消防力基準に対して五、六〇%の充足率しかないという状態、この状態についてどう改善されますのか、お尋ねしたいと思う。久留米から一台はしご車が来ました。来ましたが午後四時なんです。これが来ましてから非常に消火に威力を発揮したということを私の調査の中ではいわれている。ですから、初めはこのはしご車が消火作業でなしに救出作業に当たりましたために、消火に十分手が回っていない。これが火災を広げる一つの要素になっている。屋上の人を全部救出されましたけれども、その間消火作業がおろそかになりまして鎮火時間がおくれたのだ。四時ごろ久留米から来ましてから非常に効果的な仕事をした、こういうことがいわれております。この面からしましても、消防力基準に届かない実態というものに対してどう処置されるのか、お尋ねしたいと思う。  ついでに一緒にお尋ねしますけれども、この消防力基準に実態が及んでいないということの一つの要因としまして、地方財政の問題があるのです。そこでお尋ねしたいのですけれども消防庁のほうでは「消防力基準」というものを出して、これで消防体制指導をおやりになっておる。ところが自治省のほうでは基準地方財政需要額で消防力基準を出している。それから交付税の消防力基準が出ている。同じ政府から二つの基準が出ている。一つは機械が主たるものになっているし、一つは人を主体にしておりますけれども、この基準が全然食い違ってしまっておる。これは一体どういうことなのか。たとえば熊本にしましてもそうなんでしょう。ここにおきましては、消防庁消防力基準によりますとさっき申しました機械が必要なんだ。これに要する人員というのは七百十一名になっている。これだけなければいまの消防力基準の機材は動かない。七百十一名必要でありますのに、消防力についての地方交付税の基準というのは、これははるかに少ない。これは三百二十六人とされている。人のほうの基準は三百二十六人しか政府は認めていない。機械のほうの基準では七百十一名だと、こういうんです。これは単に熊本だけの問題じゃない。先般も指摘しましたけれども、全国どこでもこういう事態になっている。たとえば私がおります東大阪市なども消防力基準からいいますと千百七十五人の消防人員が要るんだ。ところが交付税の基準というのは四百三人にすぎない。半分以下になってしまっている。先般火災のありました釧路市におきましても、消防力基準からいきますと六百人要るんだ。ところが交付税の基準は百五十八名にすぎない。同じ政府が出します基準がこれほど差があるのは一体どういうことなんだ。どれを基準にして地方団体は消防力整備していけばいいのか。これは消防庁だけではお答えができないと思いますが、幸いに次官がお越しになっておりますから、お尋ねしたいと思います。
  61. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 まず第一点の熊本市におけるはしご車状況でございます。ただいま御指摘のとおり、今回の火災で動きましたはしご車はスノーケル車を含めて二台でございます。そして、屋上からの救出は一台が当たったわけでございますが、これは御指摘のとおり、少なくとも二方面からの救出が可能なようにはしご車が備えられておるということが望ましいことでありまして、それがまた消防力基準の場合の計算になっておるわけでございます。いろいろな事情がありまして、救出は完了したわけでありますけれども、確かにこの点からいいまして、はしご車の設置は非常に不十分である。これがもしもあの建物足場等がなければ、おそらく屋上にはもっと多くの人間がおったでございましょう。そういう意味において、救出活動の面からいいましても、この際は非常にうまくいったわけでありますけれども、ほかの場合にはさらにおそろしい事態が起きたであろうということは予想されるわけでございます。  それから、そうした関係で、はしご車が当初消火活動に従事することができなかったという点は、下からのポンプだけでは上のほうの階には水が届かなかったわけでありますから、そういう意味におきまして、はしご車消火活動に利用できなかったという点においてもやはり問題があったということは御指摘のとおりであります。そういうことで、今回の火災の際には、やはりもっと消防力近代化ということに重点を置いた装備の増強が行なわれなければならないというふうに感じておるわけであります。  それで、熊本市の現在の消防力は、御指摘のとおり大体六〇%水準といったような、まず全国の現在の水準程度のものになっているわけであります。また人員の充足も、熊本市の場合、基準の五百九十六人に対して現有が三百七十二人、これも約六〇%の水準でございます。そういうことで、熊本市の消防力というものは、いわば端的に現在の日本の各市町村における消防力水準をそのままあらわしているような感じがいたすわけでございます。そういう意味で、これからさらにこうした機械面、それから人員の面、両面にわたって、基準に対する充足率の引き上げということに努力をしていかなければならないわけでありますが、これは実は先年、各市町村における消防力整備計画というものを五カ年計画としてとっております。その結果によりますと、昭和五十一年度末を目標にして大体各市町村の充足率というものを八〇%水準まで持っていくというような計画の集計がなされておるわけでありまして、当面この整備計画を極力実現できますように、財政的な措置を考えていく必要があるというふうに思っておるわけであります。  それから、地方交付税におきます基準財政需要額の算定の際におきます需要計算の基準というものは、確かにこの消防法に根拠を置いてつくっております消防力基準という数字とだいぶ差がございます。これは、基準財政需要額計算のその単位費用のもとになっております水準は、現在の市町村のいわば実績を基礎にいたしましたところの数値をもとにして、やや現有のものよりも先行的に財政需要を計算するという趣旨で計算をいたしておりますので、どちらかといいますと、いわば現在の実績の、消防力基準に対して六〇%程度の充足されているこの現状を基礎にして、それよりもやや上回るところを目標にした需要計算をしておる、こういうことでこの消防力基準基準財政需要額の計算の差があるわけでございます。これは、やはり基準財政需要額計算というものを地方財政の実態に即した計算をしていくということのために、各種の経費について実態を中心にした財政需要計算を行なっている、その結果から出てきているわけであります。そういう単位費用計算が、そうした消防力基準というものといまの実態がかけ離れているわけでありますからそういう計算にならざるを得ない面もあるわけでありますが、この単位費用の計算にあたりましては、少なくとも現在の現実財政需要というものをやや先導的に引き上げていくという方向で将来とも計算をしていただかなければならないというふうに考えておるわけでありまして、来年度の単位費用計算におきましても、人員の充足の面あるいはまた設備の面等につきましても、実態の単価等に合わせた、それからまた人員の充足も、いわば計画的な充足が可能なような方向での単位費用計算もやっていただくというようなことで、いま私ども財政担当当局と相談をしながら来年度計画の策定作業を行なっているというのが現状でございます。
  62. 三谷秀治

    三谷委員 いろいろ聞きましたけれども、私は十分な了解ができません。いまおっしゃいました人数ですけれども、たとえば熊本市の人数ですね。消防力基準の必要人員は七百十一名である。それで現在三百六十名とおっしゃいましたが、私の調査では、条例定員が四百八人で、少し欠員がありまして三百九十八人と聞いてきました。いずれにしましても三百九十数名ということであります。しかし、三百九十何名というのは、熊本市が他の財源をやりくりして整備した人員でありまして、交付税では三百二十六人しか認めていないわけなんです。ですから約七十人ほどを独自財源でまかなっておるという内容になっておるわけなんです。それから先ほど申しました釧路市にしましても、現在員は二百三十三名なんです。消防力基準は六百名。しかし交付税の基準は百五十八名。ですから、いま長官が、実態というものに合わして、やや上回る程度の交付税の算定をしているとおっしゃいましたけれども、そうじゃない。実態よりも交付税の算定基準が低いということ、だから独自の財源をもって手当てをしているということなんですね。こういう実態が圧倒的に多いということなんです。ですから、いまおっしゃいました、現状にやや上回る計算をしておるという説明は、この資料で見ます限りは首肯できません。  それから、元来でいいますと、交付税というものはあるべき行政の基準というものが目標とされている。いまある現実の行政のあと追いをするんではなしに、一定の行政水準、行政基準というものを明らかにして、そのあるべき姿を追求するというのが交付税の本来のたてまえになっている。そういう面からしますと、いまの説明でも私は納得いきません。いわんや、消防庁におきまして消防力基準というものが明らかにされて、各団体における消防力というものが、一応の機材の目標というものが示されております。それが示されております限りは、人員のほうの基準につきましてもそれを充足するものでなければ、消防力基準とは一体何か、これは単に絵にかいたもちにすぎなくなってしまう。これを実際に現実のものとする行政姿勢があるのかないのか、ここが問題なんです。いまの説明を聞いておりますと、一応基準は出している。しかし交付税の基準におきましても実態よりはるかに下回る算定をしている。そうしますと、消防力基準というものは一体どうなるのか。どこで、だれが、どうして実現をするのか。実現の可能性のない基準を出していらっしゃるのです。しかも、その基準が必要であるということは、今度の熊本市の結果がはっきり示している。こういう矛盾した態度というものを一てきしてもらいたい。特に交付税の問題につきましては他の省庁との関係じゃない。自治省と消防庁関係なんです。同じ中に、一緒に密接な関係を持っている省庁内における関係でありますから、もっとこれは解決し得る条件があると私は思っております。この点についてどうでしょうか。
  63. 古屋亨

    古屋政府委員 いまの三谷先生のお話、私も率直に、消防力基準と交付税関係の、たとえば人についてもずいぶん隔たりがあるということを認識をいたしまして、交付税の積算内容基準の充実を思い切ってはかると同時に、単価の引き上げをはかる必要があるということを痛感しておりますので、その線に沿いまして、交付税の積算内容基準の充実ということについてはいまのお話しのような非常なギャップのないように、私どももこの予算編成にあたりましては努力してまいりたいと思っております。いまの先生のお話、よく承りましたので、私もその線に沿ってひとつ自治省内部において協議をし、進めてまいりたいと思っております。
  64. 三谷秀治

    三谷委員 消防人員や消防機材の不足が今度の火災を非常に大きくしております。消防避難誘導活動が非常に弱かった、こういう訴えもありますし、私の調査の中でも出てきている。それから救出作業に時間を食ってしまって消火作業がおくれたということ、これもこれと関連している。それから立ち入り検査、行政指導が不十分であったということ、これもやはり人員不足の問題というものと関連を持っている。熊本市など地方都市に行きますと比較的まだ人員の充足率がいいわけですけれども、大都市に行くほど消防になり手がない。東京の場合は三部制をやっておりますから比較的人がそろいやすいですけれども、大阪だとかその他の大都市に行きますと、基準を上げてもらってもなかなか人が来ない、こういう実態もある。ですから、人が足りなくて立ち入り検査ができない、そういうのが大阪などではしばしば訴えられておる。こういう事態を見ますと、まず消防力強化という問題を真剣にやってもらう必要があると思います。  それからもう一つお尋ねしておきたいのですけれども熊本市では四階以上の建物が八百八十一だそうです。六階以上は九十九カ所だそうです。そのうちの約半分というものは道路が狭幅であって、はしご車が入らない、そういう事態が存在している。私どもの東大阪市におきましても約五〇%というものが、高層建築に対してはしご車が来ない、そういう事態がある。こういう事態に対して、また事故が起きてから、はしご車が行けなかったんだ、そこで犠牲者がたくさん出たんだ、そういうことを言わないように、事前に、これは抜本的な対策を必要とすると思いますけれども、この点についてはどのような処置をお考えになっておりますか。
  65. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに、御指摘のとおり、火災の場合におきましても、あるいは今後予想されますような大地震といったような場合に、どうしても都市におきまして防災都市としての都市計画というものが当然に必要となるだろうというふうに考えております。そういうことで、私ども消防施設の充実ということをはかる一方におきまして、都市の体質自体がそうした防災機能を備えるような体質になるということが非常に望まれるわけでありまして、こういう点につきましてはいま建設省のほうと、地震火災対策等を通じまして、そうした防災都市としての都市計画というものについていろいろ検討をお願いしている段階でございます。
  66. 三谷秀治

    三谷委員 微温的な処置ではこの問題はなかなか根本的に解決しないのです。しかし、これはいまにわかに消防庁のほうに具体処置を求めましても困難だと思いますが、これは引き続き追求してもらう必要がある課題だと思っております。  時間が来ましたから、そのことを特に要望しましてこれで終わります。
  67. 伊能繁次郎

    伊能委員長 小濱新次君。
  68. 小濱新次

    ○小濱委員 今回の大洋デパートにおける火災によって死亡された方々あるいはけが人の方々に対して、心からお悔やみとお見舞いを申し上げる次第でございます。  まず、消防庁長官がいち早く現地に急行されまして、そして現場をくまなく調査をされました。そのときに記者会見をされまして、その報道によりますと、この火災は人災の面がかなり強いという発言をしておられます。また、今後のきびしい法改正と行政指導が必要であるともおっしゃっておられます。私ども現地に派遣をされまして、いろいろと資料を集めてまいりましたけれども、実際に現場に行きまして、この防火施設欠陥というものが多くの犠牲者を出した原因であると私どもも認識せざるを得なかったわけでございます。そういう立場から、新たに消防庁長官になられました立場からひとつ今後の——非常に問題も多うございますし、それから死者も、四十六年度では千四百八十三人、負傷者が九千二百八人、それから四十七年度の死者は千六百七十二名、それから負傷者が九千六百九十二名、本年度ももうすでに上半期で九百六十六人の死亡者を出しておりますし、けが人も五千二百五十八人出しております。こういう死者、けが人の数から見ても、人命尊重という立場から、これはやはり責任の重大なことをわれわれは認識せざるを得ないわけでありますから、特にその衝に当たる消防庁長官として、ひとつお考えを、これからの対策について決意をお聞かせいただきたい、かように思います。
  69. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 非常に大きい問題の指摘でございまして、確かに、現在の火災の傾向は、物件の損害というものが、一件当たりの数字を見ますと比較的減少の傾向にあるということがいえるのでありますけれども、人の被害というものが急増をしてきておるという点は非常に問題として私ども残念なことでございますし、重大な問題だというふうに考えておるわけであります。昭和二十三年に比べまして現在の死者の数字を見ますと四倍をこえるような状況になっております。昨年、昭和四十七年の死者千六百七十二人という数字は間もなく突破しそうな勢いになっておりまして、本年はおそらくまた四十七年を上回る死者が出るのではないだろうかという心配があるわけであります。この点につきましては、原因等を見ましても、その死者の半分が一酸化炭素中毒並びに煙による窒息死というようなことでございまして、最近の火災の傾向を非常によく示しているということがいえるようであります。そういう意味におきまして、やはり消防重点は、物件の損害よりも人命の損害をいかに食いとめていくかという点に重点を置かなければならないというふうに考えられるわけであります。その意味におきまして、消防力というものも、単に水を出す消防力だけではなしに、科学消防の充実あるいは救助活動の充実ということに重点を置かなければならない、こういうことで消防設備近代化を同時にはからなければならないわけであります。  それからまた、特にこうした死者が非常に多くなってきておる、そしてまたその死因の半分が煙による死者であるというような状況から見まして、予防の面に重点をさらに振り向けていかなければならないというふうに考えられるわけでありまして、その点からいいますならば、施設近代化のほかに、人員の充足というものはどうしても必要になってくるだろうと考えるわけであります。そういう意味におきまして、先ほど三谷委員の御指摘にもございましたけれども、そうした施設近代化とともに、人員の充足ということについて相当努力を払っていかなければならないというふうに考えているわけであります。  さらにまた、こうした悲惨な火災というものが発生をしているということにつきましては、それぞれの防火対象物における防火管理体制というものが一段と強化される必要があるわけでありまして、そのための必要な法令整備並びにまた消防の行政面における予防措置というものも同時に強化をしていかなければならない、こういうふうに考えられるわけであります。  そういうことで、問題は非常に重要な数々の問題を含んでいるわけでありまして、私もそうした方向に向かって全力をあげて努力をしたいというつもりでおります。
  70. 小濱新次

    ○小濱委員 いろいろと御答弁を願いましたけれども、やはり施設の充実ということと人員の充足、こういう問題は当然強く取り上げなくちゃならないことであると思いますが、これから三、四点、ひとつそういう問題を含めて御質問をしていきたいと思います。  まず第一に、この消防力基準でありますが、内容についてはもう御存じであると思いますので申し上げませんが、いただきました資料が四十七年三月三十一日現在になっておりますので、その後大きな変化があるかと思いまするけれども、この資料によりまするというと、消防ポンプ自動車基準台数が、全国的に見て三万二千二百六十一台、同じくその現有が一万九千六百八十台、充足率が六一%、こうなっている。はしご車が、基準が八百六十三台で、現有が四百八十四台で、充足率が五六・一%。化学車が、基準台数が九百六十六台、現有が五百五十六台、充足率が五七・五%、こうなっております。熊本の例も見ましたけれども、やはり消防ポンプの充足率は五九・四%で、はしご車が六六・七%、化学車が五〇%、こういうふうになっております。この内容を少し具体的に調べてみたわけですけれども、これによりまするというと、これは古いのでちょっと御意見があろうかと思いまするけれども、特にひどいところを申し上げてみますると、消防ポンプ自動車の横浜市の充足率は三七・五%、はしご車が四二・九%、化学車が、これがすぐれておりまして一八七・五%、こういう状態になっております。横須賀の場合は、ポンプ自動車充足率六三%ですが、はしご車充足率がゼロになっております。基準台数は三台ですけれども一台もない、こういう状態。それから川崎でも、はしご車充足率が五〇%ですが、これはその後できているような報告を受けておりますが、確認してありません。藤沢の場合は、はしご車充足率が三三・三%、それからポンプの自動車の充足率が五八・八%、こういう状態になっております。平塚の場合は、化学車は五〇%ですが、茅ケ崎の場合には、はしご車はやはり一台の基準台数ですが、これは一台もないという、こういう報告になっております。名古屋の場合には化学車は三一・三%の充足率。まあ全国的に見ていろいろとデータを示しましたけれども消防力基準に対する充足状況というものが非常に悪いのですね。先ほど長官からは、消防力強化ということで四十七年から五カ年計画をすでに実施をしているということで、この点は非常に進んでいるのではないか、こう思いますが、まずこの消防ポンプ、はしご車化学車、こういう問題についてこういう現状でございますが、これに対する今後の対応策、御意見をまず聞かしていただきたい、こういうふうに思います。
  71. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいま御指摘のとおり、消防施設整備にあたりましては、現在法令規定によりましてその整備のための補助金を支出をし、そしてその増強の促進をはかっておるところでございます。先ほどお答えいたしましたように、市町村からとりました四十七年度を初年度とする五カ年計画というものを見ますと、昭和五十一年段階におきまして、大体消防力基準に対しまして八〇%強の施設水準になるという目標を定めて、いま整備中でございます。これに対応いたします事業費というものを見てまいりますと、たとえば昭和四十八年度予算に基づく事業費が、ポンプ自動車化学車はしご車、このグループで総額で五十二億でございます。四十九年から五十一年度までのあと残されました三カ年度の残事業費というものが百八十一億ということになっております。したがいまして、現在の補助金というものを大体予算の規模程度の上昇を見込むならば、大体達成が可能であろうというふうに考えておるところでございます。ただ問題は、最近の情勢からこうした施設関係価格の上昇が相当見られるわけでございまして、この辺がこれからの整備を進めていく上においての非常に大きい問題になってくるというふうに考えておりますが、私どもも来年度の予算の要求にあたりましては、補助基準額というものを実勢価格に合わせるということを目標にして補助金の増額をはかっていきたいというふうに考えているわけでありまして、まずこうした物的な面の施設整備というものは、大体市町村がいま予定をしております計画に従いまして私ども財政措置をしていくことが可能であろうというふうに考えておるところでございます。  ただ問題は、人的な面の整備がこれに伴ってできるのかどうか、こういう点は確かに先ほども三谷委員からも御指摘があったところでございますけれども、私どもも非常にその点を心配をしているところでございます。地方の市町村におきましてはそれほど人の充足の面につきまして大きい問題はないかと思いますけれども、特に都市部、大都市部におきまして、こうした施設の増強に見合って人間の充足をしていくについては相当努力が必要であろうというふうに考えているわけでございます。
  72. 小濱新次

    ○小濱委員 この実質補助率が、どこで調査してみましても大体四分の一弱ぐらいになっている。こういう内容ですと、これはもう持ち出しが多いので、自治体としてもやはり考えざるを得ないであろうというところに充足率を満たすことができない原因があるわけですね。そこでその二分の一補助、こういう要望を強くお持ちになっているようですけれども、これでも三分の一から見れば二分の一ですからすぐれているわけですけれども、さてそれが実現できるかどうかということですが、もっと高いものにしてあげないと、持ち出しの関係でなかなか充足率を満たすことはできない、こういうことになると思います。川崎では、御存じのような特殊な地域性ですから、レンジャー部隊用の救助工作車というのをつくっておるのだそうです。ところが、せっかく議会で議決をしていただきましたけれども値上がりで入札ができないという。この二台ができないのでいま困っておるが、また議会を開いてひとつ検討してもらうことになっている、そういう状態もあるのですね。値上がりでできない。  それから、三十二メートルのはしご車基準になっているようですけれども、いまもう四十メートル、それ以上のものがほしくなってきているわけです。これもいろいろと規制がありましてできないわけですね。車両保安基準ですか、二十トン未満というところに問題もあるようです。運輸省、来ておりましょうか。——この四十メートル以上のはしご車になりますると、どうしても二十トンをこえてしまう。こういうことで、せっかくつくりましたけれども陸運局の認可がおりない、こういうことで、何かタイヤをはずし、部分品を取りはずし、そして二十トン未満にして認可を受けたというような話もぼくは聞いているわけです。これはこういう席上ですから内容は言いませんけれども、その資料はありますからあとでお教えしてもけっこうであります。そういう状態です。こんな状態では、せっかく自治体で努力をしても、その希望のはしご車ができない、こういうことも問題になっているわけですね。これは長官としても、こういう特殊消防車のはしご車の建設ということについては、重量問題もあるでしょう、あるいは建設省の道路基準の問題もあるでしょうけれども、そういう問題等も考慮の上に入れて何とか努力をしなくちゃならないと思っておるわけですけれどもはしご車については、運輸省どうでしょうか、二十トンをこえてもいいのかどうか、その点ひとつ聞かしてください。
  73. 宇野則義

    ○宇野説明員 ただいま先生御指摘のように、道路運送車両の保安基準におきましては、道路との関係もございまして一応一定の基準を設けております。寸法、重量等につきまして、たとえば長さにつきましては十二メートルとか、あるいは自動車の総重量につきましては二十トンという基準を設けてございますけれども、この基準の中で、特殊な車について、あるいは特殊な目的を持った特殊な車については、これらの原則の数値を、基準を緩和することができるような規定になっております。そのための事務手続は陸運局長に必要になってまいりますけれども、総重量につきましても、あるいは長さ等につきましても、基準緩和という形で、この目的に必要な性能を持たせるということを認める方法をすでに法律、省令の中でとっております。ただ、特に重量等につきましては橋梁等の関係がございますので、運輸省といたしましては、自動車の性能、安全といった面から検討を進めておるわけでございます。あるいは道路の通行制限等の関係で支障が出てくるかもしれません。そういう場合には道路管理者等とも相談をいたしまして、基準緩和の手続によりまして処理するという体制をとっております。ただいま具体的な話がございましたようですけれども、もし具体的な点がございましたら、一度お伺いいたしまして処理したいと思います。
  74. 小濱新次

    ○小濱委員 よくわかりました。それならそういう苦心談が要らないわけですね。タイヤをはずしたり部分品をはずしたり、そんな苦労を大都市がやっているわけですよ。ですから、長官、これは自治体でそういうことを知らないのかどうかという問題になるだろうと思いますが、これはひとつ徹底していただいて、今後四十メートルあるいは四十五メートルのはしご車建設については、これはどうしても二十トン未満に減量はできないそうでありますから、そういう点での配慮が必要だろう、こう思います。この点、今後ひとつ徹底していただきたい、こう思います。  それから、先ほどの五カ年計画ということですが、これは四十七年三月三十一日現在の資料ですからちょっと古いのですが、五カ年間でこの充足率を八〇%ですか、これは自治大臣、政務次官にも何とか骨を折っていただいて、最初から八〇%なんて言ってないで、何としてでも一〇〇%充足をさしていくという、そういうかたい決意で臨んでいただかなければならないかと思うわけですけれども、五カ年間でほんとうに確信ある御答弁が八〇%なのかどうか、もう一度お答えいただきたいと思います。
  75. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 実は私どもも気持ちといたしましては一〇〇%ということを申し上げたいのでありますけれども、この基準に到達をいたしますためには人員等の充足相当な数が必要になってまいります。それからまた最近の特に都市部における建築物状況というものから見ますと、はしご車化学車等におきましては——これは四十七年時点における基準に対応する数値でございますけれども建物状況が変わってまいりますと、おそらく基準数値というものもその都市にとりましては引き上げられる傾向にあるかと思います。そういう意味におきましては、この消防力充足というものはこうした近代化装備重点が振り向けられる。そういたしますと、御承知のとおりはしご車化学車値段相当高いわけでありますから、財政負担も相当なものになってくるわけであります。こういうことで、いま市町村がいろいろ、それぞれの都市の実態に応じてつくっておりますその計画はぜひとも実現をさしてやりたい、そういう意味でいま八〇%強の水準のところで何とか目標達成に努力をしたいということを申し上げているわけでありますが、私どもも、そうした人員充足等というものが可能でありますならば、それはこの水準をもっと引き上げるについて努力をする必要があるというふうに思っております。さらにこの基準につきましてもこの施設整備の過程の中で、現在の基準というものが、これは昭和三十六年の基準でありますけれども、これがこのままでいいのかどうかということも同時に検討しながら整備を進めていかなければならないであろうというふうに考えておるわけでございます。
  76. 小濱新次

    ○小濱委員 これは私どもの責任でもあるわけですから、まず基準に沿うように、これは何としてでも努力をしていかなければならない、こういうふうに思いますので、その御努力をお願いしたいと思います。さらにもう一点、六大都市における消防艇の充足状況、これを調べてみました。これがまた悪いのですね。東京の特別区では基準隻数が二十四隻、現有が九隻、三七・五%。横浜では基準が九隻で、現有が二隻、二二・二%。それから大阪では基準隻数が十八隻で、現有が三隻で一六・七%。全国的に見て基準が百十隻、現有が四十二隻で充足率が三八・一%。これはひどいですね。これについてもいろいろまた御意見も伺わなければなりませんが、こういう状況下にある消防艇の充足状況についても、先ほどの消防力基準に対するお考えと同じにわれわれ受け取ってよろしいかどうか。長官から……。
  77. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 消防艇の充足状況は、御指摘のとおり非常に低い水準にございます。ただ、私どもはいま消防艇の基準につきましてやや検討を要するというふうに考えておるわけであります。これは海岸線の延長というものを基準にいたしまして消防艇の消防力基準を定めておるわけであります。そしてこの消防艇は、陸上から現場に接近することが困難な地域について、海のほうから、あるいは川のほうから接近をして消火活動に当たるということのための消防艇でございますので、海岸線まで道路等が完全に整備されている地域におきましては、ポンプ自動車等をもって消防艇の身がわりもできるというようなことになるわけであります。そういう意味におきまして、消防艇の基準が現在のように海岸線の延長だけでいいのかどうか、陸上の道路整備状況というものもかみ合わせて基準をつくる必要があるのではないかというような感じもいたしておるわけであります。これは、消防力基準の検討の中でその辺のところをさらに十分詰めていってみたいというふうに考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、現在消防艇の水準が非常に低いということは御指摘のとおりであります。これはまた一面、一般の陸上のポンプ自動車等に比べまして値段が高いという問題もございますし、さらに消防艇には船員法によるところの資格問題といったようなものもあります関係から、どうしても消防艇の充足がおくれがちになっているという点はただいま御指摘のとおりでございますので、さらに消防艇の充足につきましては、必要な市町村のそれぞれの意見も聴取しながら、できる限りの充足をはかってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  78. 小濱新次

    ○小濱委員 消防艇の基準額は幾らに置いているか、その補助率もひとつお示しを願いたい、こう思います。
  79. 辻誠二

    ○辻説明員 現在は三十トン以上のものについて補助しておりまして、その基準額は三千万円でございます。補助率が三分の一でございますので、三十トン以上の消防艇につきまして一律一千万円の補助金が交付されることになっております。
  80. 小濱新次

    ○小濱委員 この国で定めた基準額、これは三十トンに置いた、こういうことですね。ところが私のほうの調べですと、東京湾内でもちょっと北風が吹いたりしますと三十トン船ではもう沖に出られない、そういうことで、どうしても最低五十トン船はほしいということです。その五十トン船を川崎ではつくった。約五千万円かかっているわけです。ところが、いま御説明のありましたように、限度額が一千万円でございますから持ち出しが四千万円、こうなるわけですね。こういう消防艇の現状ですから、充足率を満たすこともできない。国の基準対象が三十トンというのも、これも何か検討しなければならない。これからなおつくりたいけれども、小さなものでは役に立たないから五十トン船をつくりたい、けれどもいま申し上げたように持ち出しが多いのでできない、充足率を満たすことができない、こういうことになってしまうわけですね。長官、どうでしょう、この問題もやはり検討の必要がある、こう思うわけですけれども、この点についてお答えをいただきたい、こう思います。
  81. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 最近の消防艇の建造の規格というものを見ますと、御指摘のとおり五十トンクラスが相当ふえてまいっております。そういう観点から、明年度の消防艇の基準につきましては、三十トン基準がいいかどうかという点については再検討を加えまして、でき得る限り五十トンクラスのものも、それに対応する基準額を定めて補助できるように、前向きで取り組みたいと考えております。
  82. 小濱新次

    ○小濱委員 長官は長く税の問題を担当してこられて——行政はやられなかったですかね——よく地方財政を御存じなはずなんですけれども、市町村の予算総額に占める消防費というものを調べてみますと、ひどいところでは二%にも満たない状態のところがあります。地方財政が苦しいということは私どもよく承知しておりますけれども、市町村自体も消防費について予算の出し惜しみを言っているのではないかという実情があるとわれわれは考えているわけであります。予算要求いたします。そうすると、その検討の段階でどこが削られていくのかということになると、消防局の財政が非常に切られていく率が多いのです。そういう点で、この点もう少し強調していただきませんと、何かこの点の改善策を講じていただきませんと消防力充足をすることもできなかろう、こういうふうに思うわけですが、この点についてひとつ御意見を聞かしていただきたい、こう思います。
  83. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに、御指摘のとおり消防財政というものが比較的、市町村の中ではどちらかというと軽い部分に属しているというような傾向が見られますことはまことに残念でございます。ただ、現在の市町村財政の現状から、市町村といたしましてはやはりすぐに必要な行政経費に金を振り向けていくという傾向がありますことは、これはいま財政状況からしてやむを得ないところであろうということも考えられるのでありますけれども、住民生活の安全を守るという立場から見ますと、やはり消防強化ということに十分留意をしていただく必要があるだろうというふうに考えるわけでありまして、そういう意味におきまして、たとえば現在の単位費用の計算等においてどういうふうな計算を行なっているのかという点が、まだ消防担当者自身においても十分理解されないままに予算要求をしているというような点も見受けられますので、そうした交付税で見込んでおりますところの基準財政需要額を計算いたしますその計算の内容なり、あるいはまた現在とっております消防施設整備補助制度のたてまえといったようなものをやはり消防担当者にも十分熟知をさせて、そして消防財政というものを十分立て直してもらうということにつとめなければならないというふうに考えております。この点は私も、現在の財政計画上あるいは交付税の計算上の内容というものについて、もっと担当者のほうには知らせる必要があるだろうというふうに考えております。そういう意味におきまして、施設整備にあたりましても、更新に要する費用というものはこれは経常費である。そしてまた増強に要する費用は臨時費であって、それをまた補助対象にしていくのだというような、こういう制度の立て方を十分理解をしながら、この消防力整備には市町村の理事者並びに消防担当者、ともどもに十分理解をしながら財政面には当たっていただきたいというふうに考えておるわけであります。
  84. 小濱新次

    ○小濱委員 政務次官にも、その点についてはこれから依存するところが非常に多い問題でございまするので——この消防力強化というのは特に基準を上回って強化しろというのじゃないわけですから、そういう点での財政措置について、これは思い切った措置をやはりとっていただかなければなりません。そういう立場から、政務次官からもお答えいただきたいと思います。
  85. 古屋亨

    古屋政府委員 小濱先生から非常に消防に対しましておしかりと御激励のお話を承って、私も非常に感銘しておりますが、何と申しましても現在の消防関係施設は、自治省の中にありましても、まあ率直に言ってまだまだ交付税の点においてもいろいろ充実をはかっていくべき余地が非常に多いと思いますし、それから先ほどはしご車お話をされたのでございますが、基準単価がたとえば二千数百万円、現実には三千万円かかっておる。だから基準単価の上の七百万円というものは地元負担にもちろん初めからなってしまう。それからその三分の一というようなことでございますので、実は私も、来年度の予算におきまして、基準単価を三割程度引き上げて現実にマッチするようにすることを強く大蔵省に要求いたしますと同時に、補助率につきましても、人口急増地域だとかそういうところはどうしても科学的な施設がたくさん要るわけでございますので、そういう問題につきましてもひとつ三分の一というものをできるだけ上げていくというように努力してまいりたいと思います。実は消防関係につきましては、当委員会にも消防委員会を設けていただきまして、私もかつて消防委員長をしたこともございますので、ぜひ、こういう立場に置かれました現在におきましては、消防の充実につきましてひとつ大いに努力をしてまいりますので、よろしく御指導、御鞭撻を賜わりますようお願いいたす次第でございます。
  86. 小濱新次

    ○小濱委員 せっかく政務次官に御答弁をいただいたわけですが、おしかりと御激励を受けたということですが、私どもとしては、何としてでも一人でもけが人を、死者を少なくしていこうという責任ある立場から申し上げておるわけでございまして、本心がなかなか伝わらないかもしれませんが、そういう意味ですから、ひとつ御努力をお願いしたい、こう思います。  そこで、大洋デパート火災の現場視察に参りまして、消防局長の話をいろいろ聞いておりまして、あそこで申し上げたい、そういう意見もあったわけですが、あえて私も言わないで帰ってまいりましたけれども、局長さんとしては一生懸命やっておられるのでしょうけれども、私どもの見た目では何か歯がゆい感じがいたしました。記者諸公のいる大ぜいの前で冒頭に局長の言われたことばなんかは、私はあれは問題だと思うくらいに感じました。その精神はわかりますが、そういうことがあって、その鎮圧までに五時間かかった。それから鎮火までになお三時間かかった。八時間の間、あの中で薫製のようになった死体、そしてまた骨までも溶けていったという、そういう死体、いろいろあったわけですね。こういう罹災者の救済がなぜできないのであろうかなと、私は非常に残念に思ったわけです。  そこで、この耐熱衣の問題だとか酸素ボンベの問題だとか、いろいろこれは研究所長の御意見も伺わなければなりませんが、この個人装備ですね、装備をして中へ入っていく。火熱、そういうものに耐える、そういう設備ができないのであろうか、ないのであろうか、どうすればできるのであろうかというふうな開発の研究も急がなくちゃならない、そういうことを痛感いたしました。そういうことで、高性能の呼吸器の問題であるとかあるいは耐熱衣の問題であるとか、この研究開発の現状あるいはその見通しについて、先ほど所長さんから伺いましたが、あの程度ではなくして、どうすればできるのか、予算なのか、人なのか、あるいはまた設備なのか、こういうことで真剣に取り組んでいく姿勢が必要かと思うわけですが、そういう立場から御意見を聞かしていただきたい。
  87. 熊野陽平

    ○熊野説明員 小濱先生のただいまの御質問にお答え申し上げます。  まず呼吸器の問題でございますが、これは消防の現場のほうからも、もう以前からもっと耐用時間——耐用時間といいますのは、実際使い始めて継続して使える時間でございますが、これを延長する方法はないものかという注文を受けておったわけでございます。私どもの研究所でも早くこの問題に着手したかったのでございますが、なかなか適当な職員もおりませんでおくれてはおりましたけれども昭和四十三年から四十四年の二カ年、これは経常研究という形で着手いたしまして、従来の呼吸器具と申しますと、大体空気あるいは酸素を圧縮したボンベを背負って、それで呼吸を確保するというものですが、これはどうしても重くなります。大体現在消防隊員が使っておりますプロの消防隊用の呼吸器と申しますのは全重量が十五キロくらいになります。これで大体三十分はもつというのでありますけれども、これが火災現場に入って激しい作業をいたしますと二十分くらいしか実際にはもたないということで、非常に重いわりに使い勝手がよろしくないということでございまして、私どもではこのボンベにかわるものとして、ある種の化学薬品を使って、それから発生する酸素で呼吸を確保するという方法のものに着手したわけです。この方式はすでに外国では製品が出ておりまして、現在最も慫慂されておりますのは、超酸化カリウムと申します、化学記号でKO2という薬剤がございますが、これを使う方法に踏み切ったわけでございまして、経常研究二カ年に続いて特別研究をいただくようにしまして、四十五、六、七、昨年まで三年間特別研究を続けてまいりました。  これで二種類のものを並行して毎年開発をしてまいったわけですが、一つは、ホテルとかあるいはオフィスビルのようなところで備えつけておいて、火災が起こったときに内在者が外へ避難するまで、あるいは消防隊が救助にかけつけてくれるまでの間、十分くらい確実にもってくれるようなもの、そういういわばしろうと用であります。いま一つは、消防隊用の、現在二十分くらいしか実際には継続して使えないものを一時間たっぷりもつようにというプロの消防隊用のもの、この二つを並行して進めてまいっております。最初に申し上げた短時間用の十分間確実にもつようなものは、すでに試作を終えまして、本年度で実用試験を行なっております。薬品を使いますために、まわりの環境、温度の影響を受けますので、高温あるいは低温で確実に作動してくれるかどうか、そのほかの環境条件に対する実用性能、これをチェックしつつ試験しております。それからプロ用の長時間用のものは若干おくれておりますが、これはいま設計、それからメーカーへの製作依頼というような段階に入っておりまして、これはまた来年度にかかると思いますけれども、大体実用化に入っているという段階でございます。  それからマスクについては、これができれば国産でかなり安い価格で普及できるというめどが立ちますが、これだけではビル火災の高温の状態でなかなか思うように行動できません。この面については私ども四十七年度から研究もしておりますが、実際に煙を込め、温度を高くした構内で呼吸器具を装着した人間がどういう生理的な影響を受けるか、歩行速度はもちろんのことですが、呼吸量の測定などをやってみますと、非常に消費量がふえます。五割くらいは確実にふえてしまいます。そういうこともありまして、とにかく高温とう問題が非常にネックになるということで、いま先生も御指摘くださいましたそういう場所でなお円滑に作業ができるような耐熱衣服というようなものも開発をしたい。これは私自身がこの四月にうちの研究員に指令を出しまして、何とかやろうじゃないかということで、私も一緒になっていまその構想を練り上げつつありますが、これは非常にむずかしい問題でありますので、今年度から三年間一応経常研究でやろう、しかしその途中でもしも実用化のめどの立つアイデアが出てまいりましたならば特別研究に切りかえて、十分な予算をいただいて、とにかく早くプロトタイプをつくってテストをしてみたい、こういう考えでおります。  以上でございます。
  88. 小濱新次

    ○小濱委員 大洋デパート火災がいろいろと教訓を残してくれました。何としてでもこの教訓を生かして、これから研究を続けてもらわなければなりませんが、まあ何とかできないわけはないと思うわけでありますが、人が足りないのか、予算の面なのか、設備の面なのか、あるいはまた現状でどういう見通しになっているのか。酸素の問題も十分間という、そういう時間タイムを聞いております。いま所長さんは二十分と、こう言われましたが、もう少し何とかならないか、三十分以上とか、そういうふうにわれわれしろうと考えも浮かんでくるわけでございます。どうでしょうか、その見通しについて少し具体的に、予算が足りないなら足りないと、これは政務次官おるのですから、たよりにしておりますから、そういう点で遠慮なく言っていただきたい。
  89. 熊野陽平

    ○熊野説明員 たいへん御理解ある御鞭撻と御激励を兼ねたおことばで、ありがたく存じております。  確かに、呼吸器の問題、耐熱衣、こういう人命の安全対策に限らず、消防という仕事は大体従来社会的評価がかなり低いのではなかったかと思います。この同じ国立の試験研究機関の中でも、私ども消防研究所は研究職の人数が三十六名、私を含めて三十七名であります。同じような、労働省の産業安全研究所というような、安全を名前に掲げた研究所もやはり研究員四十名ぐらいで、とかく消防とか防災とか安全とかいいますと、どうも二の次にされる傾向があるのではないか。これが原子力、壮大な原子力施設を開発したり、世界のトップクラスのマンモスタンカーを建造したり、それから飛行機よりも早い列車をつくろうというような計画ですと、これはわりあい見ばえがいいのでたっぷり人数もあてがわれ、予算もあてがわれますが、どうも、ひがみ根性かもしれませんが、冷やめしを食わされているという現状でございまして、しかし、決して私どもそれでひねくれて、ふてくされておるわけではありませんで、この限られた人数でも一生懸命やっておるつもりでございます。  客観的な尺度として申し上げますと、研究費で人当研究費というのがございまして、これは個々の研究所の研究職の一人当たり幾らという単価がきまっておりまして、その人数分だけくれるわけでありますが、これが現在三段階ありまして、人文関係の研究をやっておられるところは非実験というところで、これは額はちょっと忘れましたが、私どものようなものを含めまして実験を主とする研究機関、これが二ランクありまして、一ランク、二ランク、実験一と実験二とございますが、不幸にして私どもは実験二の段階でございます。これは科学技術庁の防災科学技術センターも同じで、産業安全研究所も同じでございますがここいらが私どもとしてはもう少し何とかならないかというところでございます。  それから人数についてももちろん、これは現状では、私どもの研究所で一人の同じ研究員が山火事をヘリコプターで消すという問題をやっておるかたわら、午前中にも申し上げた、ビル用の繰り出し階段の設計の問題にもタッチしてかなりの時間をさくというような、非常に過重なことをやっおります。よその研究所だったらおそらくへそを曲げて、文句を言って、やらないであろうというようなことを、私どもの三十六名は一生懸命やってくれております。これは人間の問題、それから先ほどの人当研究費単価のアップの問題、あれこれ私どもは何とか改善していただきたいという希望は多分に持っております。  以上でございます。
  90. 小濱新次

    ○小濱委員 古屋政務次官、お聞きのとおりであります。やはりそういう思いをさせている責任というものを感じていかなくちゃならない、こういうふうに思いますし、またこれはどうしてもやらなければならない研究ですから、大いにひとつ力を入れてもらわなくちゃなりませんが、そういう立場から政務次官の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  91. 古屋亨

    古屋政府委員 先ほど熊野所長からお話しになりました研究費あるいは人の問題等につきましては、私どももこの大きな、人命を救うあるいは負傷者の犠牲を少なくするという見地からいたしまして、新しい科学的な研究を進めていく、あるいは従来の研究にさらに一歩新しいくふうをこらしていくという意味におきまして、研究所の整備につきましては物心両面からいたしまして努力をしてまいりたいと思います。
  92. 小濱新次

    ○小濱委員 よろしく御努力をお願いしたいと思います。  所長さんにちょっとお尋ねしたいのですが、先ほどちょっと触れましたレンジャー部隊用の救急工作車、これには酸素も全部満載できて、あらゆる必要器具が搭載されて現地に飛ぶんだそうです。非常に内容がすばらしいもののように聞いているわけですが、御存じでしょうか。
  93. 熊野陽平

    ○熊野説明員 存じております。これはいまの呼吸器具について申し上げますと、現状のボンベ式の呼吸器具が現在実用されている唯一のものでありますので、それを手段にして考え出されたものでございます。これは先ほど申し上げましたように、ボンベ式ですとどうしても重量が十キロをこしてしまうということで、これがもっと軽量で、しかも時間が長時間もつものができれば、当然それに現場の職員たち、消防隊員たちも切りかえていくであろうと思います。現在私どもで開発しております六十分用というプロの消防隊員用のマスクは、重量で大体七キロ程度、従来の約半分、時間のほうは従来のが大体二十分ぐらいしかもたないものをたっぷり一時間、これは余裕を見て、煙、熱気の中での過酷な使用状況でたっぷり一時間もつということでございまして、時間で三倍のメリットがございます。合わせて、非常に単純な算定でありますけれども、重量と継続時間にしまして六倍のメリットを期待できるということになります。以上でございます。
  94. 小濱新次

    ○小濱委員 長官、いまお話しありましたように、地方でも相当研究をいたしまして、そして急に応じられるような器具の整備を急いでいるわけですが、やはり予算の問題でいま入札も断わられて、そうしてまた新しい議会開会まで延期されて、そこで予算の問題を取り上げていただいて、そして議決をしていただいてまた入札に入っていこうというような、そういうことをしている事態をよく御理解を願わなくちゃならない、こういうふうに患います。こういう点で、先ほどいろいろ御意見がございましたけれども、この消防力強化の問題については、これからは各自治体消防との連携をよくとっていただいて、充足率の向上ということと、それから新規開発についての何らかの財政援助措置という問題についての国の助成というものを積極的に考えてやっていっていただきたい、こういうように思いますが、この点についていかがでございましょうか。
  95. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに御指摘のとおりの問題がございます。これは結局消防車の需要が数が限られておるというような観点から、シャシーのメーカーは大メーカーでございますけれども、その上に載せる艤装部分のメーカーはいわば中小メーカーである。それからまた製作台数が非常に少ないために、あるいはまた地方団体からの要望がいろいろな各種の仕様を要請するということのために、いわば手づくり作業になる部分が非常に多い。そういうことで消防関係の車両の単価がどうしても高くなるというような面があるわけでございます。こういう意味で、何か標準仕様といったようなものをつくって、できるだけ規格化することによって値段の問題をもう少し下げるということも考える必要があるだろうというふうに思っておるわけでありますが、また一面、それだけでも解決できないところがあるだろうと思います。いずれにしましても、確かに、いまの消防施設補助金というものは奨励補助金になっているわけでありますが、実際価格に合わない補助制度を設けているということにつきましては、私どももその是正について、来年度予算におきましてはあらゆる努力を払って是正措置を講じていきたいというふうに思っているわけであります。値段が最近確かにまた上がってきておりますので、その辺を標準化あるいは規格化によって値段の高騰を押える方法がないかどうかという点の検討と同時に、予算面において実勢というものを基準価格に反映するという措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  96. 小濱新次

    ○小濱委員 火災対策というのは、一つには火災発生の防止ということ、これは御存じのとおりですが、二つには火災の拡大防止ということ、三つ目には人命の安全を期するということ、こういう問題ですが、大洋デパート火災現場を視察いたしまして感ずることは、初期消火が全く無力であったといわざるを得ないような内容でございました。そこで、保守点検について宮澤前長官に、保守協会の問題点を残して、その調査とこれからの問題等の御答弁をいただいた経緯がございます。この初期消火に必要なことは当然保守点検にあるわけですね。大洋デパートの防火施設欠陥状況を見ましても、スプリンクラーが動かなかった、火災報知機がなかった、救命具もなかった、避難誘導灯は自動発装置がなかった、火災発生と同時に送電がストップして、全館がまつ暗で避難方向が全くわからなかった、非常ベルも故障しておった、年二回の訓練も実施してなかった、こういう内容であったわけですね。こういうことで、どうしても初期消火の必要性というものはこれは強調されなければならないわけですが、それにはどうすればいいのかということになると、保守業務をもっと組織化して、全国的な組織にして、そうして点検強化をして、いつでも対応できるようなそういう体制をつくることが大事ではないのか、こういうふうに思います。どんなに施設整備されても、それをいわゆる作動していく、あるいはまたその衝に当たる者の心がまえ、そういう問題等々ができなければこれは何も効果ありませんけれども、はたして、高級品がたくさん陳列されているあの売り場の天井にスプリンクラーがついている、これを実施するにはやはりたいへんな苦労が要るわけですが、点検もどこまでしているのであろうか、そういう訓練はおそらくしたことはないのでなかろうか、あるいは、例としては、せっかくその現場に即してスプリンクラーを動かそうとしたならばその機械がさびておって動かなかったとか、いろいろ例が出ているわけです。この保守点検については前回も御答弁をいただいたわけですが、その後の改められた点あるいは進められているそういう内容等について、おわかりならば御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  97. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 初期消火の大切なことは言うまでもないところでございまして、これはやはり人的な組織の面とそれから設備の両面からこれに対処しなければならないわけでありまして、確かに防火設備が完全に設置をされたということになりましても、その後の保守が怠られている場合には適時適切な設備の作動がない、ということになりますと全く無意味になるわけであります。そういう意味におきまして、保守関係をいかに充実をしていくかということは、御指摘のとおり今後の防火設備が設置された後における一番大きい問題であろうと思います。そういうことで、いまこの保守をどうしていくかというこの体制づくりがややおくれておるということは御指摘のとおりでございますけれども、現在消防機器の関係者の間から保守の体制を全国的につくり上げていくという機運が盛り上がってまいりまして、任意団体としていま団体の結成が準備中でございます。これによりまして、この団体を通じまして技能者の養成等も行ないながら、そしてまた技能者の不足している地域についてはそうした技能者の派遣が可能になるような、そういう意味での全国的な体制整備したいというところで、最近でございますけれども、そうしたいわば準備的な段階が一応終わりまして、具体化にいま急いでおるところでございます。
  98. 小濱新次

    ○小濱委員 長官のいろいろ御意見がございましたけれども、ほんとうに保守点検の重要性というものがここへきて特に叫ばれなければならない問題である、こう思いまして、ひとつ御努力をお願いをしたい、こう思います。  最後に一点、これは政務次官にお尋ねいたしますが、横浜駅西口のあの乗降客が一日約百十八万とこの間新聞で発表されました。その盛りのときの瞬間人口は、あの付近のビルから地下から出てくる人たちは約二十万人、こう推定されている。大洋デパートの例からも、これは大地震とか火災が起こった場合にはたいへんな災害が起こってくるなという、被災者が出てくるなという、そういう感じを受けました。大惨事が予想されます。東京でも第一番に乗降客の多いのは池袋だそうでありますが、その他危険個所は一ぱいでございます。こういうことで、大地震がきた場合にはどういう大惨事が予想されていくのか、これは非常に大きな問題でございますが、横浜の例でなくてもけっこうですが、政務次官の、大震災、こういうものの発生時に対する心がまえ、あるいはこれからの抱負でもけっこうです、ひとつかたい決意の御披瀝をお願いしたい、こう思います。
  99. 古屋亨

    古屋政府委員 震災時の防災あるいは対策につきましては、いっそういうのになるかわからないということでございますが、現在、特に東京付近、大阪付近、名古屋付近を中心といたしまして、消防庁におきましても、たとえば飛行艇の借り上げの問題、あるいはまた、そういう時においては電気が全部消えてしまいますので、相当大きな範囲にわたる電源車、あるいはホース車、延長してホースをずいぶん遠くまで延ばすようなそういうものを考えたり、あるいは特に避難誘導につきまして、テレビ局と連絡をとってどういうふうにそれを指導するか、また空中からそういうような指導のビラをまくなり、その周知徹底の方法、そういう問題につきましていま私ども検討を進めておりまして、実は来年度予算におきましても、特に東京、大阪、名古屋中心にいたしまして、そういう震災時の対策につきましてある程度の予算を大蔵省のほうへ要求しておるまつ最中であります。実は、そういうときに対処するいろいろの施策が現在口ではいわれておりますが、ほとんど制度的に講ぜられておりませんので、いま申し上げたような点を中心にいたしまして、誘導路あるいはそういうものの周知徹底の方法、どこに避難するか、あるいはそういうときの家庭における水槽の問題とか、そういうことをあわせましていろいろの総合的な対策を一応予算として要求しております。私どもは、今後もいつ、そういう事態になるともはかり知れないものでございますが、そういう事態に対処して、国民の皆さんに対しても、何と申しますか、少なくとも避難誘導から消火から防災から、一応非常にこんでおります東京、大阪、名古屋中心にいたしましてそういう計画を進めておるところでありまして、いずれ具体化いたしましてまた御説明する機会があると思います。そういうことを考えて対処してまいりたいということをこの際申し上げておきます。
  100. 小濱新次

    ○小濱委員 強く、問題解決のために御努力を要請いたしまして、私の質問を終わります。
  101. 伊能繁次郎

  102. 折小野良一

    ○折小野委員 私は、去る十一月二十九日の大洋デパート火災に関連をいたしまして、消防の問題で二、三御質問を申し上げますが、先ほど来各委員からいろいろと御質問も出ておりますので、できるだけ重複を避けて申し上げてみたいと思っております。  最初に消防庁長官にお伺いをいたしますが、この前、大洋デパート火災について長官から御報告がございました。その際のお話の中に、その当時の数字でいいますと死亡者百名、そのうち従業員が四十九名なくなっておる。たいへんたくさんの方々が悲惨ななくなり方をいたしましてお気の毒でございますが、この四十九名の従業員がなくなっておるということは、従業員人たち避難誘導その他防火対策のためにたいへん働いた、その証拠じゃないか、大体そういうふうなお考えを述べておられました。もちろんそういう面もあろうと思っておりますが、私はむしろ、従業員が非常にたくさんなくなっておることは、そうではなくて、かねての訓練が足りなかった証拠じゃないかというふうに実は考えたわけです。大洋デパートにおきましても、あの五階におきましては、従業員避難誘導が非常に適切に行なわれた、また周囲の条件もよかったということもございましょう、そういうことでほとんど死亡者はございませんでした。それからこの間、その後ありました千葉県の館山のいとう屋デパート火災におきましても、たしかニュースによりますと、そのすぐ前に消防訓練をやったのだ、こういうようなことがございました。その結果であったか、なかったかは別といたしまして、あそこの場合一人の死傷者も出なかった、こういうことがございます。といたしますと、大洋デパートの場合に多くの従業員方々がなくなったということは、結局従業員方々といえども一般の買いもののお客さんと同じような状態にあったのじゃないか。すなわち、防火についての認識も非常に低かった、訓練も行なわれていなかった、こういうことがあのような悲惨な結果につながってまいったのじゃないか、私はそういうふうに考えるわけでございます。これは人それぞれの認識でございますが、しかし消防庁長官消防庁長官というお役目を持っておられるわけでございますので、長官の個人的な認識といえども、それはやはり今後の消防行政に大きな関係があろうかと思っております。そういう面からお尋ねいたすわけなんですが、やはりいまでもあのときの御報告のとおりに思っておいでになるのか、あるいは私がいま申し上げた私の認識というのが間違っておるのか、あるいはこの問題についてさらにどういうふうにお考えになるのか、その点をまずお聞きいたしておきたいと思います。
  103. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 私が現地に参りまして、火災の模様を、当日消火を担当いたしました消防関係者から、その避難誘導状況等につきましていろいろ具体的な説明を受けたわけでありますけれども、その間を通じまして考えられましたことは、従業員の中にはパートタイマーもございますし、それから問屋の派遣店員というような形の一時的な従業員もおったわけでございまして、そういう人たち被害がこの従業員の中でも比較的数が少なくて、むしろそれぞれの階の主任者の被害があったり、そしてまた比較的長くいる従業員被害が多かったというような点から見ますと、従業員としてはそれぞれの立場においていろいろな避難誘導の仕事をやったであろうということは十分想定をされることでございますし、それから、従業員は毎日の勤務でございますから、店内の事情等は十分承知をしているはずであります。そういうようなことからいたしまして、お客の数と従業員の数との比率から見ましても、従業員被害のほうが非常に多い。そうしてまた、いろいろな足場等を利用して避難をしている姿を見ますと、従業員がまず窓を破ってあらわれて、そのあとから数人ないし十人ぐらいのお客が続いておりてくるというような状況がだいぶ見受けられたというような状況から見ますと、従業員はそれぞれの立場において、こうした避難誘導のために相当努力を払ったということはいえるのではないだろうか、こういう観点を持つわけでございます。ただ、ここの防火管理体制というものが非常に不十分だったために、組織立った避難誘導体制というものが全くとれておらない。そうしてまた出火の周知方も全くやられておらないというようなことで、これは相当な混乱が起きたであろうということは想像されるわけでありますけれども、やはりその持ち場持ち場において懸命の努力をしたであろうということは、あの状況から見て想定をされるのではないだろうかということでございます。そういう意味で、確かに、その従業員全体から見ました場合に、どれだけの割合でそうした避難誘導の仕事に一生懸命になったかという点は問題はございますけれども、やはり従業員としては相当努力をしたであろうということを私は考えておるわけであります。ただ全体的な管理体制というものが整わなかったために非常にばらばらな行動になってしまって、そういうことでの被害相当たくさん出たというふうに感じております。
  104. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの御答弁の中で、後段のお話、私はそれが適切だと思うわけです。もちろんそれぞれの店の責任者とかあるいは売り場の責任者、そういう方々が決して無責任であったというふうに申し上げるわけではございません。やはりそれぞれの持ち場持ち場の人たちはそれなりに気を使い、それなりに努力をしたであろうと思うのです。しかしながら片一方、訓練もなされていない、適切な体制もできていない、そういうことのために、せっかくいろいろ努力をしようとしても、それが結果的には実らなかった、それがああいう大きな災害につながったのだ、こういうふうに考えてまいりますと、やはりこの問題に対する認識というものは、今後のいろいろな対策、あるいは特にその中でもふだんの訓練、こういうものがいかに大切であるか、そういうことをまざまざと教えてくれる問題だ、こういうふうに考えるわけでございます。そういう点については、十分ひとつ今後の体制づくりの教訓としてぜひ生かしていただきたい、こういうふうに考えます。  ところで、この間の大洋デパートのなくなった方々につきまして、私どもが参りましたときの現地熊本県の警察本部の報告によりますと、死因は全部火災に伴うCO中毒であった、こういうふうに書いてございました。それは火災が起こった直後でございますから、一つ一つこまかに検討した結果ではないと思いますが、一応、あれでなくなった方、あるいは負傷者、こういう者も含めまして、CO中毒であったというふうに言ってよろしいのでしょうか。あの報告をそのまま受け取っていいのでしょうか。消防庁としてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  105. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ほとんど大部分がCO中毒ないしは煙による窒息死であろうというふうに考えます。
  106. 折小野良一

    ○折小野委員 最近の火災の際におきまして、煙に巻かれてなくなるとか、あるいはその煙の中に含まれておる有毒ガスによって中毒を起こす、こういうような被害が事実非常に多くなってきておるということを私どもも聞かされるわけでございます。そうしてまた最近、先ほどの御報告もござ  いましたが、火災被害の中で人的な被害火災でなくなる方、こういう人が非常に多くなってまいっております。こういうのもやはり火災の態様、あるいは火災を取り巻くいろいろな環境というものが非常に大きく変わってきておる、この証拠だというふうに考えるわけでございますが、特に最近そういう火災の態様が変わってきた、あるいはこういうふうなCO中毒でなくなる方が非常に多くなってきた、あるいは特に火災の場合に死亡者が多くなってきた、こういうような傾向というのはどういうところに原因があるのか。すなわち、火災並びにそれを取り巻く情勢というのがどういうふうに変わってきたと消防庁ではお考えになっておられるのか。その点、こういう面まで御調査になっておりますかどうか。もしそういう面までいろいろ御検討になっておるのでございましたら、そちらのほうからひとつ御答弁を願いたいと思います。
  107. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 ただいま御指摘のありました最近の死者の最たる死因でございますけれども、これは御指摘のとおり、火災時における一酸化炭素の中毒ないしは煙による窒息死というのが大部分でございまして、昨年の死者の三七%くらいは一酸化炭素中毒が死因でございます。最近の建築構造から申し上げますと、先生御存じのように非常に不燃化が進んでおりますけれども、不燃化とともにいろいろな合成の繊維あるいは材料等が多量に入っておるということから、火災時における種種のガス発生という問題がわれわれの中で非常に問題となっております。同時に、建物の構造が非常にエアタイトと申しましょうか、空調の発達とともに昔の家屋構造と違った形で、火災時における煙が充満しやすいかっこうになっておるということも相まってこういう死因が多いということが一点でございます。なおさらには、家族構成の点から申し上げますと、老人あるいは小さな幼児といったようなものが多いということも注目すべき社会現象であり、これは平家の建物に主として多い実態でございます。二つの要因がございまして死者が多いというふうにわれわれは踏んでおりますが、これらについてそれぞれの対策を考えていきたいというふうに思っております。
  108. 折小野良一

    ○折小野委員 建設省の方、残っていただいておりますのでたいへん申しわけありませんが、今度の大洋デパート火災でいろいろ原因が考えられるわけですが、災害を大きくした一つの原因として電気の問題が考えられると思うわけです。電気がすぐ消えてしまった。したがって暗やみで避難ができなかった、あるいは防火対策ができなかったということもありますでしょう。あるいは避難のための誘導灯というようなものがあったにいたしましても、それが消えてしまった。スピーカーで呼びかけるにしても、すでに電源が切れてしまっておる。非常ベルも鳴らなかった、報知機も鳴らなかった。こういうようなことで、電気に関するものが災害を非常に大きくした、こういうふうに考えられるわけなんですが、こういうようなデパートの場合の電気設備、特に災害対策と関連した電気設備、こういう面については、建設省のほうといたしましては特別な御指導がされておるのでありますか。あるいは今度の火災を契機として何とかしなければならない、どういう方向でどういうふうに改善したらいいか、そういう点についてのお考えがございましたらひとつ御答弁を願います。
  109. 佐藤温

    佐藤説明員 建築物災害時におきます照明の問題につきましては、特に建築物の面積、それから階数等によりまして非常用の照明設備をつけることが義務づけられております。この改正も最近の改正でございまして、先般の大洋デパート建物は、現在、増築工事に伴いまして建築基準法改正時点に合致するように工事中でございます。したがってあの火災時には働かなかった、こういう結果で、おそらく避難のときに全体が暗かったのであろう、こういう問題であると思います。
  110. 折小野良一

    ○折小野委員 そういう非常時の場合の電源というのは自家発電装置ですか。
  111. 佐藤温

    佐藤説明員 自家発電装置または蓄電池に切りかえるようになっております。
  112. 折小野良一

    ○折小野委員 それから、建築をいたします場合にいわゆる建築認可という手続がなされるわけですが、その建築認可の手続の際に、たしか消防署に合い議するということになっております。消防署といたしましてはそういう面のいろいろな検討がなされるわけだというふうに考えるわけなんですが、それは施設としての消防の面から考えられた面についていろいろ検討されるのですか、あるいは消防という面をさらに広く考えまして、周囲の情勢その他、先ほどの質問にもございました、たとえばその建物の周辺が消防車が入れないような状態であるとかなんとか、そういうような広い消防的な立場で検討されるのか、どうなんですか。
  113. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 法律に基づく防火避難規定に違反していないかどうかということについて同意をすることで、建築のほうの建築主任者に意見を申し上げるわけでありまして、地理的な問題につきましては、たとえば建物の周辺に空地がほしいということについては行政指導ということで取り計らうというたてまえになっております。
  114. 折小野良一

    ○折小野委員 その行政指導をなされて、それが聞かれなかった場合はどうなりますか。
  115. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 法的権限がございませんので、それはそのままになるというケースが多いのですが、最近は消防も、先ほど長官も答弁いたしましたように、防災都市というものの建設に非常に積極的に関与していこうという強い姿勢を示しておりますので、強く同意を求める、そういう態度で臨んでおります。
  116. 折小野良一

    ○折小野委員 それからもう一つ熊本の場合ですと、大洋デパートの場合は現在のたしか三十二メートルかのはしご車で間に合ったわけですね。しかし、熊本市でもあのはしご車が届かない、あれよりかもっと高い建物がもうすでに二つ、三つできておるということを聞きます。ですから、その地域の消防力と考え合わせて建築の場合にいろいろチェックをする、そういうことはされないのですか。
  117. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 そういうことはございません。ただ、先生御心配の三十二メートルをこえる建築物部分につきましては、特別に建築基準法または消防法令上安全という面から基準強化になっておりまして、その点におけるチェックは建築確認のときに行ないます。
  118. 折小野良一

    ○折小野委員 長官にお伺いいたします。いまのような御答弁の実情なんです。建物の内部、建物そのものの防災対策、それを点検をし、あるいは法律にきめられておるような十分な施設をしていくということ、これはもちろん大切なことです。しかし、火災の場合に、周囲との関係というのもいろいろ問題になるわけでございます。たとえ内部で幾らりっぱにできておりましても、この間の大洋デパートの例のように、はしご車でどうしても救出しなければならないという状態の場合に、はしご車がいかないということではこの救出もできないわけなんです。それからまた、せっかく消防のほうでいろいろな意見を出したにいたしましても、それが採用されなければその面でまた災害を大きくするということになってまいります。そしてまたその地域に、三十二メートルのはしご車しかないのにもっと高い建物ができるということになりまして、それでそういう体制に応ずる何らかの施策が講じられないまま建築されたということになりますと、結局それでまた現実避難ができないとか、災害を大きくするとか、こういうようなことになってまいります。こういう点についてはもっと人命尊重という立場から検討する必要があるのではないでしょうか。全般的にいいまして、施設ができてあとから消防が追っかけておるというようなかっこうでございます。むしろ、人命尊重というのを大切に守っていこうとするならば、やはりできていく施設を、ほんとうに人命尊重の立場から十分いろいろな施設ができておるのかどうか、対策が講じられておるのかどうか、そういう面のチェックをあらかじめやって、そして施設をつくるということが大切なことではないかというふうに考えるのですが、いかがでございますか。
  119. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 確かに、現在のはしご車等のいわゆる消防設備から見ますと、現在開発されておりますはしご車の最高の高さが四十一・五メートルでございますから、四十メートル以上の建築物になりますと、それ以上の部分火災の場合に、人命救助という点につきましては消防の力では何ともすることができないというのが現状でございます。また今後開発いたしましても、たとえば五十メートル、六十メートルというものがはたして開発されるかどうかという点も非常に問題でございまして、そうしたはしご車自体の安全性がそれで維持できるのかどうかというような問題もあるわけでありまして、これらが今後の消防自体の検討問題でございます。  それで、現在は建築基準法から申しますと、たしか三十一メートルをこえる建築物の場合には、その建物自体の防火設備というものにつきましては相当きびしい基準が設けられておるわけでありまして、要するに火が出ても自分で消すというような体制がとられているというのが、こうした高層の建築物の現在の規制の基準であるわけでございます。ただ、そうしたものが、その建物の構造上それからまた防火設備の規格上からいいまして、まず現在考えるとすれば十分であろうというようなことでつくられているというふうに考えておりますけれども、なおもう少し建物自体にいわば空間がほしいというのが私どもの気持ちでございまして、そういう意味におきまして、建築基準法につきまして、外気に触れるところに避難できるようないわば各階の空間というものを、たとえばベランダあるいはバルコニーといったような形でとれないだろうかということを、いま建設省に検討をお願いしているところでございます。いずれにしましても、高層の建物ができますと、現在の消防力をもってしては外部からの消火あるいは救出ということが非常に困難であるということは事実でございますので、その点につきましては、消防としまして行政上、そういう建物がみずからの出した火はみずから消す、そしてまたそれが延焼しないような建物構造になっておる、そしてまた避難をするにしましても避難ができるような十分な設備建物自体にとられているということを目標にして、そういう建物につきましてはやはり予防査察という面において、十分そういう面からの対処のしかたをしていくよりいたしかたないんじゃないだろうか、こういう感じでございます。
  120. 折小野良一

    ○折小野委員 現在、東京にはたくさんの高層ビルがすでに建っておるわけなんです。それが、いまおっしゃるように、外部からはしご車とかなんとか持ってこなくても、十分な安心できるような対策が講じられておるということがほんとうに確認されるならば、それはいいと考えます。しかし、この間の熊本大洋デパートの例によりましても、あの屋上に避難した人を、ヘリコプターを要請して、ヘリコプターで運ぼうかという案が出されて実際やった。しかしそれは、火災に伴います気流の流れ、そういうものによるわけですか、なかなかできなかった。現実にヘリコプターによる救出というのは全然やられなかったわけです。できなかったわけなんです、実際に行ったんですけれども。といたしますと、現在あります高層ビル、これは当然はしご車は届きません。そうしますと、一つの逃げ道は一番上からヘリコプターでということも考えられないじゃございませんが、これも火災の情勢によってはちょっとそれに期待することはできないのではないか。ということになりますと、いま長官がおっしゃるように、自体で何とか方法を講ずる、これ以外にないわけなんですが、その自体で何とか方法を講ずる、そういう点につきましては、消防庁の立場からいたしまして、現在ありますあの高層ビル、あれは確信が持てる対策が十分講じられておる、こういうふうにお考えでございますか、あるいはまたあれについても何がしか新たに何とかしなければならないというふうにお考えになりますか、その点をお伺いします。
  121. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 霞が関の高層ビルにつきましては、最初の計画でございましたので、防災関係者全員がいろいろ集まりまして基準を検討いたしました結果、あの設計どおり、自主避難といいましょうか、やはり横への避難ができるように、ところどころ階段を設ける、タラップを設けるということも考えながら措置したいということで、一番大事な、火災をまず発生させない方法、不燃化、それから早期に発見する、これは煙でもすぐ発見する煙感知器をつけさせて、直ちにその区画を遮断する、排煙設備を回す。そのほか通報によって人を避難させる、自動的にスプリンクラーが作動するという、一連の建築及び消防の構造によりまして安全を確保しているという段階での対策をいまとっております。しかしながら問題は、大地震対策について、はたして耐震構造がほんとうにあの設計どおりであるのかどうかという問題につきましては、その後の研究によりまして不十分であるという点が若干考えられておるということでございますので、その点あわせて目下対策をしたいという計画があるやに聞いております。いずれにしましても、高層ビルにおける安全対策としては最初のものでありますけれども、一応十分であるという考えをとっております。
  122. 折小野良一

    ○折小野委員 問題は人命がからんでおるわけでして、こういうふうに考えるとか、一応はということでは、事が起こってしまってからとやかく言ってみたってしようのないことです。こういう問題は、やはり万全の対策をあらかじめ、もうはっきりやっておくということ以外に方法はないんじゃないかというふうに考えます。まあ、いろいろと検討しておいでのことだとは思いますが、ひとつ、ぜひそういう面については抜かりのない万全の対策を講じておかれるようにお願いをいたしておきます。  そのあらかじめの対策といたしまして一般的に考えられますことは、当然これは消防力の充実ということでございますが、これも各委員からいろいろお話がございました。現在、消防力基準という面からいたしますと、全国的に見て充足率も低い、決して十分な体制ではない、こういうふうに考えられるわけでございます。そしてまた、先ほども御答弁でお話がございましたように、火災の態様というものも変わってまいっておりますし、それを取り巻く環境もいろいろと変化があっておるわけです。消防力基準自体が、たしか昭和三十五年かにきめられたものじゃなかったかと思います。あれからすでに十何年経過いたしておるわけでして、最近の変化というのは非常にテンポが早いわけです。先ほども長官の御答弁の中に検討するということがございましたが、やはりこういうような面につきましては、できるだけ早く情勢に合わせて検討をしていくことが一番大切なことじゃなかろうかというふうに考えます。特に最近の傾向といたしまして人命事故が非常に多くなりつつある、こういうような情勢でございますので、やはりそういう情勢に適応するような消防力というものを確保するために、現在の基準につきましてもこの際検討して早急に改めなければならない、こういう面もいろいろ多いんだというふうに考えますが、そういう点については具体的にどういうふうにお考えになっておりますか。
  123. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 現在の消防力基準というものは、御指摘のとおり昭和三十六年に設定をされておるわけであります。きわめてこまかい改正でありますが四十六年に一部の手直しは行なわれておりますけれども、基本的にはもう十年以上前の基準でございます。最近の社会経済情勢の変化という点から考えますと、やはりもう十数年経過した基準でございますので、最近の火災状況、それから被害状況等から見まして、当然にこの基準については見直しをする必要があるというふうに私どもも認識をいたしております。特に消防力のいわば近代化といいますか、それからまた人命被害が非常に多くなっているという点から見まして、救助体制というものをこの中に織り込んで、この消防力基準というものは早急に見直しをする必要があるというふうに私も考えております。いま消防審議会がコンビナート火災等の問題について取り組んでいますけれども、それが終わりました段階で、できるだけ早くこの基準改正につきまして取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  124. 折小野良一

    ○折小野委員 できるだけ早くひとつお願いをいたしたいと思います。  それと同時に、今日まで十何年たっておるわけでございますが、その間にいろいろな方策を講じてきておられるとはいえ、消防機材等については大体五割ないし六割程度の充足しかできていないというのが現在の実態でございます。そういう面からいたしますと、消防力を充実する、これは具体的にはなかなかむずかしい問題、先ほどから御指摘になっておるように、財政上の問題とかいろいろな問題があるわけですが、しかしこれは何としてもやらなければならぬことです。ですから、はっきりした目標をきめて、そして年次的に確実にやっていくということ、これが一番必要なことじゃなかろうかと考えるわけです。そのためにはやはり実態に即した基準をはっきり立てる必要がございます。  その中で消防職員の数でございますが、現在の充足率から見ますと、私ははっきりした数字は記憶いたしておりませんが、たしか三〇%台、こういうふうに記憶をいたしております。こういうような実態から考えますと、はたして、人員という問題につきましても現在の基準が定めております人員というのが現実的に妥当な数字であるのかどうか、こういう面にもいろいろと問題があるような気がいたすわけなんです。そういう面からもやはり基準そのものを考えていただいて、そしてそれが真に妥当な基準であるならば、これは何としてでもそれを実行させる、こういう強い姿勢でやっていただくことが大切なことではないかと考えるわけです。そういう点についての長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  125. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 現在の消防職員の充足率というものは、現在消防力基準に対するいわば物的施設充足率が約六〇%水準でございますが、その六〇%を前提にいたしまして、その施設に見合う消防職員が充足されているかといいますと、その基準に対しまして約八〇%の水準であるというのが最近の情勢でございます。したがいまして、現有勢力に対しましてもやや人員が不足をしているというような状況にございますので、この人員の充足につきましては、やはり資材の整備と同様に、むしろそれ以上のウエートでその充足をはかっていかなければならないと考えるわけでございます。そういう意味におきまして、この財政措置等についても、いわば市町村の職員の充足を先導するような方式で単位費用の計算等もやっていく必要があると考えております。一挙に基準まで到達することはなかなか困難かと思いますけれども、ただ、近い将来におきまして、たとえば週休二日制の採用というような問題が出てまいりますと、それに伴ってさらに人員は充足しなければならないという問題がもう間近に控えておるわけでございますので、この人員の充足につきましては、私どももできるだけ財政措置ということについて抜かりないように措置してまいる。そしてまた、その人員につきましてはそれぞれの市町村におきまして十分理解を持って対処していただくように、市町村の理事者の方々にもお願いをしてまいりたいと考えております。
  126. 折小野良一

    ○折小野委員 その場合に、やはり地方団体でも納得できる基準でないとなかなかそれはむずかしいことだと思うのですよ。たとえば一台の消防車に七名の職員がつくという基準があった場合に、それは七名あることが万全である、それはいい。しかし現実には五名だってやれるではないかというような考え方も現場においては考えられるわけです。したがって、そういうような人員の基準をつくる場合に、現場の実態その他も考えまして——理想を追うこともこれは大切なことです、しかしながらやはり現実を見ていくということも放置しておいていい問題じゃございませんので、その辺は十分お考えの上に妥当な基準というものを立てて、しかも、それを立てた以上は実行するということにぜひひとつお願いいたしたいと思っております。  それから一、二、長官のお考えをお聞きをしたいと思うのですが、この間の大洋デパート火災に関連をいたしまして、これはたしか熊本県知事の意見だったと思いますが、消防組織法上、知事の権限は何もないんだ、市の消防が査察をしても、その報告も知事に対してはなされていないんだ、こういうような意見がございました。たしか、きょうの配られた要望書の中にもそういう面が入っておったかと思うのでございますが、この点については長官はどういうふうにお考えでございますか。
  127. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいま御指摘のとおり、現在の消防組織法の上からいいますと、確かに消防は市町村の仕事であって、府県知事がこれに直接関与するということはないわけでございまして、ただ市町村の一般的な行政指導の一部として、たとえば消防学校の設置といったようなことで、いわば行政能力の向上という観点から県が関与する、こういうことになっておるわけでございます。  最近の火災状況等は、御指摘のように非常に多様化してまいりますし、また、県内の一部において非常に異常な火災あるいは非常に大きい火災等がありました場合に、現在は相互応援というような形で対処はいたしておりますけれども現実問題として、たとえば熊本の例をとってみますならば、おそらく熊本市の装備というものが県の中では最もいい装備であるだろうと思います。そういたしますと、どうしても熊本市のほうがその応援の主力にならざるを得ない。そうしますと、やはりその市町村から見ますならば、市税を使った消防が他の町村まで行って働くという点についての問題というようなことも考えられる。そういう点からしますならば、もう少し広域消防という観点において、府県が相当市町村の消防に応援をするという体制はとり得るのではないだろうかというような感じもいたすわけでありまして、これらにつきましては、今後、財政上の問題等もございますし、またそういう考え方をはたしてとり得るかどうかという点につきましても、十分担当者等の意見も聞きながら調整をしてまいる必要があるだろうというふうに考えております。  さらにまた、こうした不特定多数の人々がたくさん集まるというような、こういう特殊な場所における防火体制の問題ということは、これは県にとっても無関心でおられないものでございますので、一定のものにつきましては、県知事等がそういう施設の改善等について別な面からそれを応援することができるような、たとえば県がいまいろいろやっております融資制度を通じてもそういうものの改善に力をかせるわけでありますから、そういう意味におきましては、県がそういう市町村の消防行政に応援ができるような体制ということも、あわせてこれは検討していく必要があるだろうというふうに思っておるわけでございます。
  128. 折小野良一

    ○折小野委員 もう一つ、この前の国会におきまして、個人災害に対する救済制度というものができました。しかしこれは、火災の場合が検討されなかったのではないんですが、一応自然災害を対象にするということになっておるわけなんであります。今度の大洋デパート火災、こういう場合におきましては、当然そういう面についての責任をとらなければならない当事者というのがあるわけですから、それはまあ差しつかえないといたしまして、ある種の、山火事等におきましてはやはり自然災害に準じて何らか行政上の措置をとらなければならない、こういうような事態も予想されるんじゃなかろうか、こういうふうに考えます。そうしますと、最近のように火災による死亡者が非常に多い、こういうような実態ともかね合わせまして、個人災害に対する救済というのは、一つの制度の中で自然災害も人為的な災害も一応含めておいて、そうして人為的な災害の中において、そのような補償責任が明らかなものはあとからその経費は取り上げるというような形にして、やはり何らかの対策を講じておく必要があるんじゃないか。特に消防関係からいきますと、山火事等の場合についてそういうような例が考えられないではない、こういうふうに思うわけなんですが、そういう点についての長官の御意見をひとつお聞かせいただいておきたいと思います。
  129. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 ただいま御指摘のように、個人災害の補償につきましては、いわば補償責任者がいない自然災害というものについての制度がつくられておるわけであります。そういたしますと、それに類した災害ということになりますと、ただいまのような山火事というものも、その原因がほとんどわからない状況で発生する火災でありますので、自然災害に類する火災ではないかというようなことも考えられるわけでありますが、一面におきましてはまた火災保険というようなことでてん補されるという面もあるわけであります。もちろん山林の場合には、そのてん補される被害というものは単に植林程度のてん補しかないわけでありますから、非常にその点については問題があるわけでありますけれども、確かに、補償能力のないようなものが原因となった災害というものについては、いろいろ検討する必要があるだろうというふうに考えます。私どものほうも、そういうような観点からの意見をそういう方面に提出をいたしまして、今後の検討課題ということにいたしてまいりたいと考えます。
  130. 折小野良一

    ○折小野委員 終わります。ありがとうございました。
  131. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、来たる十五日土曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時十七分散会