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1974-05-08 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月八日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 山本 幸雄君    理事 阿部 助哉君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    奥田 敬和君       鴨田 宗一君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    小林 政子君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵省理財局次         長       後藤 達太君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         国民金融公庫総         裁       澤田  悌君         中小企業金融公         庫総裁     吉岡 英一君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  佐々木邦彦君         参  考  人         (商工組合中央         金庫副理事長) 広瀬 駿二君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件(最近の金融情勢)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、最近の金融情勢について参考人から意見を聴取することといたしております。  本日午前に御出席いただきました参考人は、全国銀行協会連合会会長佐々木邦彦君であります。  佐々木参考人には、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。最近の金融情勢について、何とぞ忌揮のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度にお取りまとめいただき、そのあと委員からの質疑お答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、佐々木参考人にお願いをいたします。
  3. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 ただいま御紹介をいただきました佐々木でございます。富士銀行頭取をいたしておりますが、去る四月二十三日、全国銀行協会連合会会長に就任をいたしました。今後一年間、いろいろな面で御指導いただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。  さて、本日は、最近の経済金融情勢と今後の展望について御報告申し上げたいと存じます。  まず、最近の経済情勢について御説明いたします。  最近の景気は、きびしい総需要抑制策により全般的に鎮静化しつつあるといえます。すなわち、日銀券平均発行高増発率鉱工業生産出荷及び製品在庫率機械受注民間建設受注住宅建設新規着工全国百貨店販売額企業倒産などを好例として、主要経済指標は弱含みに転ずるものが多くなっております。また、経済企画庁の景気動向指数は、二月に総合系列で五〇%まで低下いたしました。これらの点から推しますと、おそらく一−三月期が景気の山であったかと思われます。需要動向としては、個人消費の落ち込み、民間設備投資の停滞、民間住宅投資の鈍化などが特に注目されており、一部に景気の冷え過ぎ懸念が生じているようでございます。  しかし、今後の景気については、政策のかじとりのいかんにより非常に違った局面となることが予測されます。現在、非常にきびしい金融引き締めもと設備投資ビル建築抑制に関する行政指導が行なわれており、いわゆる新価格体系先行き見通し難なところから、目下企業経営はいわゆる気迷い状態にあり、企業設備投資は落ちついております。しかし、潜在的な投資意欲は依然根強い状態にあるということがいえましょう。また、個人消費物価高騰により鈍化してはいるものの、大幅賃上げ消費にどのような影響を与えるかということも重大な点でございます。したがいまして、いわゆるオーバーキルを懸念するあまり、早々に引き締め緩和解除ということになりますと、景気は再び急上昇に転ずるおそれがございます。  一方、物価は、少なくとも卸売り物価につきましては安定化方向をたどっており、四月中旬にはきわめて小幅ながら一年ぶりの下落を示すなど、一応危機的な状態を脱しつつあると申せましょう。しかしながら、三月の卸売り物価は年率に直せば九%近い大幅上昇示しており、需要要因による上昇圧力は一応弱くなってきたとはいうものの、いまだ予断を許さないと申せましょう。今後は新価格体系への移行をはじめ、大幅春闘ベアのはね返りや公害防除コスト増高などの値上がり要因が次第に顕在化しつつありますので、卸売り物価の今後についてあまり楽観することはできません。また、四月の東京都区部消費者物価前月比三・五%の急騰を示し卸売り物価以上にその先行きは要注意と申さねばならないのでございます。  次に、金融情勢並びに企業金融について申し述べます。  経済全体の流動性指標でありますマネーサプライの伸びは、このところ急速に鈍化しております。また、全国銀行ベースでの預金貸し出し伸びは、それ以上に鈍化いたしております。金融市場逼迫はかなり著しくなっておりまして、無条件物コール出し手レートは一二%、手形の買い手レートは一二・七五%の異常な高利率を現出しているのでございます。また、公定歩合引き上げとともに銀行貸し出し金利上昇しておりまして、本年三月末の全国銀行貸し出し約定平均金利は九%となり、最も低かった昨年二月の六・七%から二・三%の上昇示しました。  一方、企業金融引き締め当初、金融機関資金繰りの逼迫とは対照的に余裕があるという状態が続きましたが、このところかなりの程度逼迫してまいりました。すなわち、日銀調査では、主要企業流動性は手持ち現預金売り上げ高対比で見ますと、すでに昨年十二月に前回引き締め時のボトムまで落ちておりますし、それにここ数年急増いたしました有価証券を加えましても、本年三月には前回四十五年六月のボトムの水準まで落ちるものと予測されております。また、流動性業種別行性、いわゆる資金偏在現象も漸次解消しつつあるといえます。今後、石油価格高騰大幅ベア影響などから、企業金融はますます窮迫するものと思われます。  なお、資本市場を通ずる資金調達も相当に抑制されております。当局の御指導で増資、転換社債あるいは事業債などによる資金調達は、一ころに比べますとだいぶ不自由になっております。  ところで、今後の金融引き締めあり方でございますが、政策運営に当たり一番重視しなければならないことは、やはり物価動向でございます。すでに述べましたように、物価鎮静化方向に向かいつつありますが、これは強力な引き締め下政府の直接的な価格抑制策によって初めてここまで押えることができたものでありますし、また、石油価格高騰に基づく世界的な価格の再編のもとで、コストプッシュ要因が強くなることが懸念されております。このような状況下において新価格体系へ円滑に移行するためには、インフレマインドを抑圧していくことが必要でありますが、これは総需要抑制策のバックアップがあって初めて達成するものと思われます。また、このおもしを取り除けば、再び物価上昇が再燃する危険性が現段階ではまだ強いように思われるのでございます。  このような観点からすれば、当面は総需要抑制策を堅持する必要があろうかと存じます。この意味で四−六月期は引き締めの総仕上げ期ともいえる重要な時期であり、物価が再び急騰し年来の引き締め努力が水泡に帰することがないよう、引き締めを堅持していく必要がありましょう。この点は、政策当局のお考えとして伝えられておりますところとほぼ同様な感じを持っております。  次に、銀行経営について二、三申し述べさせていただきます。  まず、当面の貸し出し方針でございますが、現下の経済情勢下におきまして、われわれは、金融引き締め定着化と派生的に生ずる混乱回避に全力をあげたいと存じます。現在、金融機関当局によるきびしい窓口規制選別融資指導を受けておりますが、この政策の意のあるところをくみ、余裕のある手元流動性の高い企業については極力融資を押えるなどにより、金融引き締め定着化のため協力していく所存でございます。  一方、引き締め浸透過程不渡り倒産増加といった事態の発生も懸念されますので、私どもといたしましては、健全な中小企業がそのような不測の事態におちいらないよう融資格段配慮をしていくなど、きめこまかな運営をしていく所存でございます。  中小企業に対する融資につきましては、今回の引き締め下におきましても、特に重点的に資金配分をいたしております。また、経営危機におちいっている業界に対しましては、中小企業救済特別融資制度を設けるなどの格段配慮も行なっております。中小企業資金調達方法が限られており、体質も相対的に弱いわけでございますので、今後とも中小企業金融については十分配慮していく所存でございます。  次に、国民福祉の重視という観点に立った施策でございますが、住宅ローンにつきましては、きびしいワクの中で優先的に資金確保につとめており、また住宅ローン金利については、五回にわたる公定歩合引き上げ下においても据え置くなど、格段配慮をしている次第でございます。  次に、預金者優遇措置につきましては、物価上昇下における預金の減価を少しでも緩和するためにも、また過度な消費を排し物価安定に資するためにも、重要なことであります。  預金金利につきましては、公定歩合引き上げなどとともに昨年四月以来四回にわたり引き上げられ、一年定期預金金利は五・二五%から七・二五%へと引き上げられました。また、二年もの定期預金の創設、ボーナス特別預金の取り扱い、さらには少額貯蓄非課税限度引き上げなど、当局指導もあり、預金者優遇にはできるだけの配慮をしている次第でございます。しかしながら預金金利存ですべてに対応することはむずかしいことであり、何にもまして一刻も早く物価の安定を実現し、問題の根本原因を取り除くことが必要であり、そのための政策に、金融機関といたしましても、引き続き積極的に協力してまいる所存でございます。  以上、最近の経済金融情勢について申し述べましたが、要は金融引き締めの総仕上げ期にあたり、その定着化とそれから派生してくる混乱回避につとめていくことが大切だと考えます。  最後に、やや長期的観点に立っての経済運営について一言申し上げます。  資源、環境汚染物価、そして再び生じてきた国際収支という経済の諸条件のもとで今後の経済運営を考えていくためには、これまでの高度成長型の経済安定成長型のものに転換していかなければならないということであります。このためには、機動的かつ適切な需要管理を行なっていくことが必要となりますので、急激な金融緩和は避けるべきでありましょう。そして金融は、どちらかといえば、引き締めぎみのほうが望ましいように思われるのであります。  以上で私の御報告を終わらせていただきたいと存じますが、先生方におかれましても、何ぶんの御教示、御高配を賜わりますようお願い申し上げます。御清聴ありがとうございました。     —————————————
  4. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。武藤山治君。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 富士銀行頭取でいらっしゃる佐々木さんが全銀協会長になられて、たいへん戦闘的で発想もユニークでこれからの都市銀行あり方にいろいろ大きな影響を与えるだろうという、実は新聞報道などでもたいへん期待がかかっているように思うのであります。そこで、きょうは、社会党を代表して一時間ばかり佐々木さんに、いろいろ小さな問題から大きな将来の見通しから、あれやこれやと御意見見解を伺って、今後の委員会における金融問題の討議の参考になればたいへんしあわせだと思っております。そんな気持ちでひとつ率直な見解をいろいろお聞かせを願いたいと思います。  第一にお尋ねをいたしたいのは、つい最近までは銀行効率化ということばがたいへんはやりまして、合併転換法ができたり、大きくなることはいいことだというようなことで、とにかくその効率化を旗じるしにいろいろな施策が講じられてきたわけであります。しかし、結局、効率化というのを進めてまいりますと、強いものがますます強くなり、大きなものがますます大きくなって、集中支配あるいは寡占体制というようなものに発展をしていくおそれがあるわけであります。特にまた、資金力にものをいわせて金融機関は株の保有、多くの証券を保持する。したがって、企業支配というものも、金融資本を通じて企業というものが支配をされている体制ができている。そういう分配の公平、企業機能の自由、あるいは産業民主化というような観点から見ると、どうもこの効率化というものにあまりにも精力を注ぎ、こだわりますと、あまり好ましくない方向に進んでいくような感じがいたすのであります。  佐々木さんは「金融財政事情」の中で対談をされておるわけでありますが、その中で「福祉社会ニーズに応える銀行経営を」、そういう方向にパターンを転換していくべきだという意味を述べられていらっしゃるわけであります。そこで、従来のそういう効率化方針から、全銀協としてはこれからの銀行経営というものはこういうものをひとつ目標にして国民期待にこたえたいのだ、社会の要請に応じたいのだ、そういう青写真というのは、あなた自身どんなものをお持ちなのか、冒頭にひとつ見解をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  6. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  非常に大きな問題でございまして、実は私にも青写真はまだでき上がっておりません、率直に申せば。ただ私は、ただいまの効率化の問題でございますが、何と申しましても自由経済もとでは競争原理を活用いたしまして、そうして各企業がその競争原理にのっとりながら企業努力をしていくということが一番大切であろうか、このように考えております。そうして、その結果好ましくないようなひずみが出ますれば、それはそのつど是正をしていくということで、やはり私は、原則は効率化というその競争原理自由主義経済もとでは堅持をしていくべきだ、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただいまの武藤先生お話には、実は私が全銀協会長に就任いたしましたときに記者会見をいたしまして、その中で、長期金融分野にも銀行が進出をしていくとか、あるいは証券分野にも銀行が進出していくというふうな記事もございまして、それを頭に置かれましての御質問もあったかと思うのでございますが、私は、銀行は、いま先生もお示しになりました「金融財政事情」の中でも申しておりますように、やはり社会の、国民ニーズに沿って行動するということがこれからは一番大事であろうかと思います。そういった意味で、なかなか急にというわけにはまいりませんけれども長短金融かきねの問題も、あるいは証券銀行との問題も、理想とすれば、そういったかきねがなくなることを望むわけでございます。  ただ、ああいった記事になりましたのは、私のことばの足りません面もございましたし、また記事でございますから、非常にある部分を縮めて書いてございますが、私はそういった議論も、白紙の上にこれからどういう絵をかくかということでございますれば比較的簡単かと思いますが、すでに現実のある姿ができ上がっておりますので、それにはいろいろな利害関係もございますし、急激な変化を与えるということはいろいろな方面に摩擦も起きると思いますので、それは私のとるところではございません。長い目で見ました場合に、いま申し上げましたいろいろな面のかきねが取っ払われまして、そうして相互にいろいろな業務をやっていく、それがお客さまの皆さま方ニーズにこたえるゆえんだ、そういうふうに私は考えておるわけでございます。  いまの力の強い者がますます大きくなるというお話は、まさに率直に申しまして、そういった面も過程では出てくるかと思います。それによりまして弊害が起きました場合は、最初に申し上げましたように、その弊害を何らかの方法で是正する、こういうことで考えていくよりしかたがないのではないか、こういうふうに私は存じております。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 私はもちろん、現在の社会資本主義社会であり、競争社会であることは、毛頭否定をいたしません。やはり競争原理が働いて、よりよい競争が行なわれ、より進歩するのであって、そういう意味においては、競争原理を是認する一員であります。だがしかし、その競争原理というものは常に適正な競争でなければいけないのであって、過当な競争や、極端に資力のある者が自由濶歩できて弱き者が落ちぶれていくという競争は、真の意味の正しい競争ではないのであります。でありますから、あくまで競争原理の根底には適正ということが常に保持され、配慮されなければいけないのではないだろうか、こう私は考える。  そこで、福祉社会ニーズにこたえるという場合に、従来の自由経済体質なり考え方からいくならば、より利益率の高いものに融資をしたがる、より確実に償還される見込みのある、しかも将来利潤率が高いという見込みのある企業に金を貸したがる、それが当然の自由経済の中における経営者としての観念だと思うのですよ。ところが、福祉社会ニーズにこたえるということは、利益率の低い保育所や幼稚園や下水道や、利潤率は低いが多くの国民の非常に期待の高い生活環境のもろもろの問題、こういうものがたくさんあるわけですね。しかし、そういうところにはなかなか銀行としては貸しにくい需要者としても借りにくい。  そこで、その福祉社会ニーズにこたえるという会長さんの御意見を非常に大きく私が取り上げ感じたのは、従来のそういう自由経済発想から変えていくんだ、一挙にはぱっといかないけれども、これからは徐々に変えていくんだ、そういう発想があるんだなということを私は期待をいたしておるわけであります。ところが、この「金融財政事情」を読んでみると、結局、見出しは大きいが、ニーズにこたえる中身、具体的にどういうことになるのかということが書かれていないのですね。結局は、銀行がうんともうけて税金をうんと国家に払うことも国民への福祉になるので、これも一つのそういう期待にこたえることではないかと思うとか、あるいは預金金利インフレで目減りをするので、預金金利の問題を考えなければならないといった程度の、ニーズにこたえるという中身もあまり明瞭でないのであります。  そこで私は、結局、いま政府が総需要抑制建設業界への融資をかなりコントロールする、あるいは卸、小売りの大商社に対する融資額を極度に押えた。日銀統計表を見ても、それはかなり端的に数字の上にあらわれているわけであります。たとえば、卸売り業貸し出し状況をちょっと見ましても、本年の二月が一カ月間で三百十三億七千三百万円、昨年の同月は五百四十七億四千万円ですから、昨年の六〇%くらいの融資状況ですね、都市銀行だけ見ておりますと。また不動産業者を見ても、昨年は二月が二百二十五億、ことしは百二十一億というように半減をいたしております。こういうように、総需要抑制で個々の産業別あるいは種類別融資というものがぐっと半減をしてきている。そういう中で、これからこれを教訓として金融配分をどういう形にするかということは、私は非常に重要な問題だと思うのですね。  これをまたもとのもくあみで、引き締め解除になったらもとと同じような状態に戻るのでは意味がないので、この引き締めた、定着をした土台からどう出発をした金融あり方というものを探るか、私はいまが銀行経営者、特に都市銀行が、今後検討し、とるべき方針をきめる絶好のチャンスではないかと思うのです。そのときには、やはり資金配分というものはある程度コントロールして、たとえば福祉関係にどのくらい出そうじゃないか、中小企業の中でも特にどの程度のところにどの程度資金を出そうかというような大ワクや、資金量全体の中の業種別なり今後社会が必要とする企業別のある程度方向というものを見定めていく。それにはいまが非常にいい機会ではなかろうか、こんな感じがいたすわけであります。そういうものについての協会長としての御構想なりありましたら、ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  8. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  ただいまの武藤先生お話は、一々ごもっともだと思います。ことに私ども非常に残念に思いますのは、従来は金融引き締めになり梗塞をいたしますと、御承知のように、中小企業に非常に多くのしわを寄せておりました。そして金融が緩慢になりますと、中小企業にどっと貸し出しをいたす、それはまぎれもない事実でございます。しかし、私どもはこの数年来は、これではいけないのだということで、大いにいままでのやり方を反省いたしました。たとえば、全国銀行の全体の貸し出しの中に占めます中小企業向け貸し出しシェア、これをとってみますと、四十一年の九月には三一%でございました。それが昨年四十八年の九月には三五%まで上がっております。そして昨年の暮れには、これは中小企業についての区分変更、従来の資本金五千万円以下を一億以下というふうに区分変更したせいもございますけれども、昨年の十二月末では全国銀行貸し出しの中に占めます中小企業シェアは、四一%というふうに上がっておるわけでございます。その点はひとつ御了解をいただきたいと思います。  それから、卸売り業に対します昨年とことしの貸し出し増加額数字のお示しがございました。おそらくそのとおりの日本銀行統計ということになっておると思います。ただ、これは私は武藤先生にも御了解をいただきたいと思いますのは、日銀窓口規制が非常にきびしくなってきております。おそらくはかの銀行についても傾向は大体似たようなものだと思いますけれども、昨年の七月以来ずっと、お取引先からの御希望に対しまして私どもが持っております貸し出しワクは、四分の一か五分の一というふうに非常に低いわけでございます。ですから、全体の充足率から申しますと、御希望の二〇%とか、あるいは二五%程度しか応ぜられないというのが実際の姿でございます。それがこの四−六につきましては一そうはなはだしくなっております。  しかし、その中にも私どもはそのワク配分につきまして、ワク全体が窮屈でございますから、中小企業に一〇〇%というわけにはまいりませんけれども充足率につきましては、中小企業に対しまして非常な配慮をいたしております。おそらく各銀行にとりましても、大企業向け充足率はおそらく十数%だと思いますけれども中小企業に対しましては、何とか苦しい中にも三〇%ぐらいは少なくとも充足したい、こういう方針でやっておりますことも、ひとつ御了承をいただきたいと思うわけでございます。  それから、社会ニーズにこたえて一体何をやっているのか、こういうお話でございまして、これだけやれば社会ニーズ銀行が応じたとか、あるいは社会的責任を果たしたというふうなものは、率直に申しましてございません。小さなものでも取り上げるべきものはどんどん取り上げていって、そしてそれの積み重ねで社会的使命を果たし、社会的ニーズにこたえるということ以外には、実際問題としてはやり方はないかと思います。  そういった面で、いま申し上げました中小企業貸し出しの比率が上がっておりますこととか、あるいは御承知のように、個人向けの住宅ローン金利は一応据え置いておるとか、あるいは石油危機に伴います中小企業向けの救済融資制度、これは都銀だけで二千億一応ワクを設定いたしましたが、あるいはまた、さっきお話のありました下水道その他そういったことも考えまして地方公共団体の公債の引き受けなど、こういった面を通じまして地域社会の開発にいままでも努力をいたしておりますが、今後ともその努力を続けたい、このように考えておりますわけでございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局、今日の現代社会における最高の支配力を持っておるのは何といっても金融ですね。金融を抜きにして産業は成り立たぬし、今日の企業は成立をしない。したがって、非常な公共性というか社会的責任というか、そういうものが金融担当者には負わされておると思うのです。あまりにも企業支配力が旺盛になり、分配が不公平だという印象を国民に与えるようになりますと、それは当然イタリアにおける国有化の問題、イギリスにおける銀行経営の根本的変革の問題、そういうものが比較的早く提起をされるようになるのではないか、私はそういう意味で、資本主義の現在の社会の中にあっても、より国民社会的に還元し得るものを還元していくという姿勢を、現在も努力されておるのでありましょうが、さらに一そうの努力をしないと、みずから墓穴を掘る結果に相なるのではないか一そういう点をまず指摘しておきたいと思うのであります。  次の問題は、先ほど私が質問しないうちに会長はちょっとお答えに入ったのでありますが、日本経済新聞の「ズームアイ」という欄で就任早々の抱負を述べた中で、記者がまとめたものだろうとは思いますが、あなたは五年ものの定期、長期のそういうものを方向として目ざす、こういうことを語っているわけであります。  そこで、これはもう前々から、私、昭和三十五年から大蔵委員会に席を持たしていただいているものでありますが、よくこの問題については議論されたわけであります。かきね取っ払い論あるいは自由乗り入れ論、三菱の田実さんなんかもたいへん熱心に当所新聞などで語っていたのでありますが、なかなかそれはむずかしい問題がある。あなたも御承知のように、大蔵省は長短金融分離の方針というのを行政指導としてやってきたのですね。  岩瀬さん、いまでも大蔵省の銀行に対する指導方針の根本的な長短金融分離の方針というのは変更になっていないのですか、変更したのですか。
  10. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、長短金利というのは一応沿革的な問題に端を発している問題でございますけれども、なかなか社会ニーズといいますか、社会の変革あるいは経済発展と申しますか、そういうものに応じまして長短金利の限界がなかなかはっきりしにくい面が出てきておる。たとえば住宅ローンとか、そういうような問題がございますので、確かに時代の変革とともに、長短金利の理論というのはかなり多様化してきているのじゃなかろうかと思います。また、それが実際に活発に論議されればされるその背景というものも当然あるのじゃなかろうかと思いますけれども、たてまえ上は、御承知のように、長期金融は長信銀並びに信託、それから短期金融は普通銀行というたてまえは沿革的にとっております。このたてまえを、いま方向としてくずそうという考えは持っておりません。  しかしながら、時代の要請というものに対してそのニーズにこたえていくために、外国でも必ずしもはっきりしていない面がございますけれども、日本でもやはり今後、進展とともに勉強していかなければならない分野はたくさんあるのじゃないかと考えております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 佐々木さん、あなたは五年ものの定期を都銀がかりに提唱し、実行しようとした場合、長期銀行、信託銀行の五年ものは八分四厘何毛ですかな、そういたしますと、皆さんがかりに五年ものの定期預金をつくった場合に、おそらく八分四厘何毛と大体同じにしなければやはり競争が同じベースにならぬですから、つくっても意味がないということになるでしょうね、議論は。そうなりますと、信用金庫も信用組合も農協も、みな五年ものの定期をつくらざるを得なくなってくる。それで競争ということになれば一それはやはり大きいところにかなわぬですよ、どうしてもそれは都銀優位になるのです。  それともう一つ困ったことは、都銀が優位になって集中力が強くなり、支配権が強くなることは別に悪ではないと言えばそれまででありますから、それは議論外としても、たとえば、平時の場合で八分くらいの預金金利ということになれば、当然貸し出し金利ももう九分五厘、一割という形に持っていかないと、小さな金融機関はとても採算がとれない、ペイしない。そうなると、中小企業専門機関の信用金庫や相互銀行というのは、たいへん中小企業を圧迫することになる。さらに、そういうコストの高い預金を創設されることによって、この長期銀行都市銀行、地方銀行中小企業専門雑金融機関との関係が完全に乱れてくる。したがって、そう軽々に、協会長に就任されたからといって、五年ものの定期は創設の方向を目ざすのだというようなことは言うべきではないのではなかろうか、私はそんな感じがするのですよ。  それとも信託七行や長銀関係の三行と十分話し合って、今度は会長になったから、こういうことをひとつ前向きに方向として進めていきたい、了解してくれ、さらに信用金庫連合会長や相互銀行協会長ともある程度腹合わせをした後にばんと言い出したのならば、さほど私はショッキングには感じないのですが、その辺の根回しをしないでこう発表するというのは、ちょっと勇み足のような気がするのですが、いかがでしょうか。
  12. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  最初の、今後銀行員としてわれわれが持つべき心がまえ、武藤先生お話、よくわかりました。私どもそういった方向で考えたいと思います。  ただいまの長短金融の問題でございますが、実は私もあの記事を見てちょっとびっくりいたしました。ああいった話が出ました背景は、預金の目減りという問題についてお話をしておったときでございます。預金の目減りにつきましては、これは私どもも非常に頭の痛い問題でございます。こういったインフレがどんどん進行してまいりますと、いわゆる銀行に対します預金者——債権者でございますが、預金者は債権者損失をこうむる、この損失を何らかある程度補てんできたならばというのが、私どもの願いでもあるわけでございます。  それで、世間では銀行のもうけ過ぎということをいわれる。これはまあいろいろあろうかと思いますが、そういったことばが使われますのは、もうけておるんだからそういった預金者の損失を補てんしていいではないか、こういうところからも出ておろうかと思います。それで、それに対しましては、いまの銀行の体力で預金者が希望されるような目減りの補てんをするということは、実際問題として不可能でございます。それから財政の補てんというふうな記事も何かに出ておりましたが、そこで、どうしてもこの補てんということになれば、西独のような財形貯蓄に対します割り増し金とか、そういった財政面の負担ということでも考えていただかなければ、実際問題として目減りの補てんは困難でしょうということを申しました。ただ、誤解のないように申し上げたいと思いますけれども、財政面の補てんができるのかできないのか、したほうがいいのか悪いのか、これはむしろ私ども銀行屋の口をはさむべき問題ではないと思います。  そこで、いまの長短金融の問題にも入りますが、現状のままでは、実際問題として、目減りの補てんの方法銀行自身の力にはございません。そこで、そういった点を考えるといたしますと、何か新しい商品、そういったお客さまに目減りのないような新しい商品の開発ということに銀行としては目を向けざるを得ないと思います。それには長短金利の問題はございますけれども、こういう機会に三年ものとか五年ものについても検討をしてみる必要があるんじゃないでしょうか。現在の金利体系もございます、それから従来長短金利についていろいろ議論されていることもございます。そういうことは承知をしておりますが、もう一ぺん検討してみる必要があるんではありますまいか、こういう話をいたしたわけでございます。  いまお話しのように、もちろん全国銀行協会の中には、これは都市銀行協会はございませんから都市銀行はばらばらに入っております、地方銀行協会はできた、その地方銀行協会も信託銀行協会も入っております、長信三行も入っております、それが全銀協でございます。ですから、そういった意味では、正式に全銀協として三年もの、五年ものの問題を取り上げるというときには、当然そういった皆さま方と十分お話をしなければならぬ、これは私も承知をいたしております。  ただ、いま申し上げましたような話のついでに出ましたもので、新商品の開発をしなければ銀行自身に目減りを補てんする方法がないということで、その新商品の一つの例といたしまして、いま申し上げたいろんな前提を、むずかしいことは承知しておりますけれども、こういった機会に検討してみる価値があるのではないだろうか、こういう話をいたした次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 まあ新聞記事の中でも、対談で一問一答式でないですから、書き方によってはいろいろそういう誤解を受けるかもしれません。ただ二回にわたってそういう記事が出ておるものですから、この点はやはりしかと一回確認をしておかぬといかぬ、かように感じた次第であります。いまのは大体わかりました。  もう一つ、これは大蔵省と銀行協会長感じをお尋ねしたいのですが、長短金融を分離して、信託部門と預金を預かる銀行部門と分離をしたわけですね。そこで今日の信託銀行と普通銀行に分かれておるわけですが、大和銀行だけは銀行と信託部門、今日でも分離していないのですか、岩瀬さん。
  14. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 大和銀行だけは併営いたしております。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 銀行協会長、大和銀行さんは今度あなたのところの副会長ですね。この大和銀行一行だけ、信託部門と銀行部門が兼営を認められている。どうも理解できないのですよ、なぜだろうかと。そして銀行協会の中でもそういう議論は全然出ないのだろうか。大和さんは信託と銀行両方をやっている、だからいいじゃないか、五年もの定期もわれわれにもやらせろという議論が出てくる余地も、こういうものを一つ認めておくことによって、両方の議論ができる土台ができちゃっているのですね。これはどうなんでしょうか。銀行協会としてはやむを得ざるものということで黙認しているのでしょうか。何でこういうことが一行だけ許されたのでしょうかね。大蔵省でもいいし会長さんでもいいですから、おわかりでしたらちょっと説明してくれませんか。私はふしぎでしょうがないのです。
  16. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 率直に申しまして、私にもよくわかりません。なぜ大和銀行一行だけ信託併営になっておりますのか、その辺のいきさつもよく存じません。ただ私といたしましては、ここまで併営でまいりましたものをやめさせるということは、実際問題としてはなかなかむずかしいのじゃないか、そういった意味で、やむを得ないかなと思っております程度でございまして、これ以上のお答えは、ちょっといまの私にはいたしかねます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、これも軽い気持ちでしゃべったのだと言えばそれきりでありますが、証取法六十五条の廃止論ですね。これはやはり新聞で報道されているのですが、「基本的には証券銀行の垣根をとっ払っていい」、こう言い切ったと書いてある。  証取法六十五条では金融機関証券営業を禁止いたしておるわけですね。これも長いことそういう慣行がちゃんとできているわけであります。もし銀行証券業務まで扱えるようになりますと、これまた金融資本、資本力の大きい銀行がやはり有利になりますね、信用度、資金力の面から。この六十五条の廃止論というのは、私は非常に慎重に取り扱わなければいかぬ、こう思う項目なんです。別に私は証券会社に味方するわけじゃないのですよ。公平な立場で見て、いままでの一つの秩序というか慣行というものに挑戦をする場合には、かなり慎重さを必要とすると思うのであります。  こういう意味で、ますます独占化、寡占化体制の道を歩む方向に路線をしこうとしている、これが佐々木会長であるという評価が出てきそうなんですね。この六十五条問題はどうなんですか、真意は。
  18. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  先ほど長短金利の問題につきましてもお話を申し上げましたように、証取法六十五条の問題が非常にむずかしい問題でございまして、そう簡単に片づくとは私自身も考えておりません。ただ、日本経済の国際化の進展に伴いまして、私ども取引先企業の国際経済の場での活動も盛んになってまいっております。ということは、お取引先に対します金融サービスでも、単に国内だけでなく、海外においても多様な御支援を申し上げることが私どものつとめになってまいっておりますわけでございます。また、日本の企業の海外活動が盛んになりますと、外国の銀行からの資金調達も多くなってまいることと思われます。その面からも、銀行の自由化、国際化は一そう進展していくことだろうと思うのでございます。その場合、日本の特殊性だけを主張し続けるということは、次第に困難になってまいると思います。現実にはいろいろむずかしい問題が山積をいたしておりますけれども、長期的な観点に立ちまして、真に国際社会の中でイコールパートナーとしてやっていけるような準備といいますか、心がまえが必要だと思うのでございます。  そうした観点から、外債発行問題や証取法六十五条の問題を考えてみなければならないということを私は申し上げたのでございまして、それが先ほども申し上げましたように、これから白紙に絵をかくならばわりに簡単、そうではございませんから、そう簡単にこの問題は片づくとも思いませんし、それから、これによって都市銀行のウエートをふやす、それだけを考えておるわけでもございません。やはり外国の場合、ことに欧米では、銀行証券の兼営が大部分でございます。やはりそういった海外の波が日本へもだんだん押し寄せてくるんじゃないか、そういった心がまえをいまから持っておく必要があろう、こう私は考えるわけでございます。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 野村証券が海外で銀行業務をできるように許可をした、そういうような問題も一つの導火線に私はなっておると思うのでありますが、しかし、もし証券業界体質を強めて、国際化の波の中で競争にたえられる、そういうやはり直接金融市場というものを整備するという方向に進むのが本筋であって、そして銀行は、もし証券業を傍系会社で大いにりっぱなものを、内容の充実したものをつくろうというならば、そういうほうに手は出せるのでありますから、間接的にはそれと連携はとれるわけですから、現にすでにとっているんでありましょうから、そういう意味で、私はやはりこの直接金融市場というものの整備、流通のあり方、そういうようなものから根本的に検討させるほうが先であって、六十五条の問題を先に持ち出すということはやはり混乱を招くもとである、かように感じるわけであります。  時間の制約がありますから次に進んでまいりたいと思いますが、先ほど会長預金金利の問題に触れられましたが、私たちも今国会で、インフレがとにかくひどくて、消費物価が前年比三月末で三四%も上がる、こういう事態では預金の目減りというものはたいへんなものであって、ここで何らかの対策を講じてやらなければ、国民はばかを見たという感じを持つに違いない、したがって福田さん、ひとつこの際、特別預金金利の別立て預金を考えないか、こういう提案を何回かやってきたわけであります。具体的な内容は、一世帯一回に限り百万円限度、それも六カ月定期、金利は二けた一〇%、この程度のことはいまのインフレで泣いている庶民に対して考えたらどうだろうか、こういう実は提起をいたしてきたところであります。  昨今の新聞を見ると、福田蔵相も何らかのことを考えなきゃならぬ。四月二十六日の新聞の報ずるところによると、大蔵大臣は、ボーナス特別定期預金が六月に切れる、この七・二五という昨年十二月発売をした新預金を、今度は割増金付定期預金、はずれたものは三%の普通預金金利程度、これを四%預金者に利息としてお返しする。そういうことにしてあの宝くじつきの割増金付預金をちょっと拡大しよう、こういう案を福田蔵相は新聞で出しておるのでありますが、預金金利預金の目減り問題について、銀行協会長として苦悩しておるのはよくわかるのでありますが、いまのような一世帯百万円、六カ月、一世帯一回限り、この程度までだったら金融業界をまとめられる可能性というのはないものなのか、どうなんでしょうか。
  20. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 私からお答えするのは適当かどうかわかりませんが、預金金利の問題はこの委員会でもたびたびいろいろな角度から議論されておりますので、詳しくは申し上げませんけれども、その目減り論について大臣としては、一番こたえる方向として、やはりインフレそのものの根幹を退治する以外にないという基本的な姿勢を持っておられまして、したがって、総需要抑制その他相当思い切った金融引き締めをやっているわけでございます。したがって、御高承のように、物価等についてもやや安定の方向にきざしが見えておるわけでございますが、預金金利そのものについて、いま御提案のようなことも、当然私どもとして議論の中で何べんも議論したことはございますけれども、一世帯百万円ということに限定をいたしましても、一体それをだれが一世帯百万円ということに限定できるか。そういうことになりますと証明といいますか証拠といいますか一そういうものが非常にはっきりいたしませんので、同一人が何回も同じような形で預金を持ってきた場合に、なかなか証拠をつかみにくい。  そこで、この前この委員会でも、手帳とかあるいは何かそういう住民票とかいうものにかえてやる方法はないかということでございまして、その点もまた、地方自治体あるいは自治省等を通じましていろいろ検討を重ねてみたのでございますけれども、やはりそれは結局、何か人間に番号をつけるような方向に行かざるを得ないということで、非常にむずかしいというようなことでございまして、結局、いまの段階で考えるとすれば、預金金利の自由化をやっておればともかくでございますが、そういうふうにいたしますと、経営の大きな銀行のほうが金利をよけいつけられるのじゃないかというような難点もございますので、短期のものでこの前考えましたボーナス定期のようなもの、あるいはそれに対して何か少しくふうを加えたものということで検討をせざるを得ないのじゃなかろうかというので、まだ成案を得ておりませんけれども、勉強をいたしておる最中であります。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 金利は大体どの程度考えるのですか。この前のボーナス定期預金の七・二五くらいでお茶を濁そうというのですか、いま考えている勉強中の案は。福田大蔵大臣が新聞発表をしている案でいくと、宝くじつきにして、はずれたものに、三%を四%利子がつくほうがいいじゃないかという程度なんですね。こんな程度なんですか、いま考えているのは。
  22. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 当然に預金金利は郵便貯金の金利ともあわせて考えなければなりません。郵便貯金のほうの金利には、結局これは財政負担が伴う問題でございます。したがいまして、一つには、あまりに高い金利をつけるということに問題が出てくるであろうということと、それから、やはり金利体系というものがございますので、六カ月ものにたとえば一年ものの金利をはるかに飛び抜けた金利をつけるというようなことになりますと、これは全体的に金利体系の問題にも影響してくることでございますので、なかなか慎重にならざるを得ないというのが現状でございます。  それから、中小企業金融機関については、いま非常にコストすれすれのところに来ておる金融機関もかなりございますので、そういう点も配慮しなければいかぬというようなことで、なかなか思い切った金利を考えるのがむずかしいのではなかろうかというふうなことでございます。ただ、勉強はいたしておりますが、やはり早く目減りをなくするための方策のほうに手を出すべきであるというふうに考えております。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 会長見解はどうですか。
  24. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 ただいま岩瀬審議官からお話がございまして、私も全くそのとおりだと思います。  ただ一言つけ加えますならば、これは個人的にでございますが、私は、いま武藤先生のおっしゃったような個人の預金を何とか優遇する道はないものだろうかということは頭から離れないのでございます。ただ、いま審議官からもお話がございましたように、一割というふうな金利をつけますと、金利体系全体を乱しましょうし、その他のものがそれにシフトしていくというふうな現象も起きると思いますから、なかなかそういった独歩高の金利を考えるということは実際問題として困難ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 次の問題ですが、最近、銀行が株を買ったりあるいは自分のところで債券を売り買いする、顧客から買ったり、またそれを売ったり、そういうことは金融引き締めの対象外になっておるのですか、証券の買い入れは。これはどうなんですか、佐々木さん。
  26. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えいたします。  有価証券の買い入れにつきましては、毎月手持ち有価証券の残高はたとえば十億以上ふやしてはいかぬ、そういったふうな日本銀行からの規制を受けております。したがいまして、それは残高の増加額を規制いたしておりますから、どうしても必要上買わなければならぬものがある、しかし十億をこえるというときには、やむを得ず一部の有価証券を売却いたしまして、残高の増加としては日銀指導ワクの中におさめる、こういうふうにいたしております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 最近ちまたでこういう話が飛んでいるのですね。アラブあたりのオイルダラーが日本に投資されて、株式を保有する、あるいは金融債でも何でもいい、とにかく証券を買う金に流れていってその証券が日本の知り合いに貸されて、その証券銀行の窓口へ持っていって買い戻しつきで一時買ってもらう。半年なら半年、一年なら一年、その証券を買ってもらって資金を出していただく、もちろんそれは買い戻し約款つきでやる。こういうことが行なわれている。特に中堅企業以上の金繰りがたいへん苦しくなってきている企業は、そういう証券銀行で一時買ってもらって、そして金繰りを合わせておる、こういう話が耳に入るのでありますが、そういうことはかなり行なわれているのかどうか、銀行協会会長、どうですか。
  28. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 私もいまお話しのような実情はよく存じません。ただ、私のほうの銀行に例をとって考えてみますと、いまお話をいたしましたように、その会社の株主の安定工作とかいった面で、やむを得ずわれわれが株を買い増しするとか新規に持たなければならぬものがある。それだけをまかないますにつきましても、現在私どもが日本銀行からもらったワクは非常に窮屈なものでございます。したがって、いまお話ししましたように、必要な有価証券を持つためにやむを得ず手持ちの有価証券を売却しておる、こういうふうな実情でございますから、少なくとも私のほうの銀行につきましては、いま先生のおっしゃったような事実はございません。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵省、いま資本流入で国際収支は好転をしてきている。その中にはかなりオイルダラーが流入をしてきているだろう。ほんとうかうそかよくわかりませんが、五月三日の日本経済新聞にも「オイルダラー動きだす」という見出しの中で、「わが国での株式投資——などの形でオイルダラーの動きはいよいよ本格化し始めた」と書いている。特定の人を通じて買った証券が貸されて、それをもとにして銀行に買ってもらって資金を得ている、これでは金融引き締めはしり抜けになりますね。こういうことが現実に行なわれているというのでありますが、大蔵省としては、そういう状況についてはまだ全然把握していないのですか。
  30. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 従来から現先取引といったようなかっこうで、有価証券を一定の期間後買い戻し条件つきでもって売却し、それに対してかなり高い金利をつける、銀行間のコールと同じような企業間のコールのようなものが発生しておる。これは大体証券会社を仲介とするものでございます。そういうものの中に、オイルダラー資金みたいなものが介在する可能性は十分あると私は思っております。結局、資金的な余裕のあるところが資金を出しまして、非常な高利でもって融通をするわけでございますが、そのときにその金を貸すかわりに買うわけでございますが、その場合に、有価証券をある一定の時期に必ず買い戻すという条件でもって売る。これは証券会社が大体仲介をしている分野でございます。銀行としては、たまたま信託銀行あたりの有価証券がそういうものに使われる場合もございますけれども、そういう形ではオイルダラーが登場してくる可能性はあると思います。  これは、金融が詰まってまいりましてから現先の取引というのはかなり大きな取引にはなっておりますが、これも証券局を通じまして、証券会社に対して行き過ぎのないよう行政指導を行なっているはずでございます。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま岩瀬さんのおっしゃるように、大きい企業はそういうことができるのですね。中堅以上の大企業になると、金融が幾ら締まっていても、何か手持ちの債券なり借りた債券をうまく利用して資金を見出すことができる。中小企業はそういうことはできないのですな。まことにそういう点格差があり過ぎる、アンバランスなんですね。そこで、中小企業に対してもっと金融方向を変えて考えてやらなければいけない。  次は、そういう問題について少し質問をしてみたいのでありますが、その前に、大口の商社や大企業に一金融機関がばく大な金を融資しておりますね。これは佐々木さんも御存じだと思いますが、私の調べた去年の九月三十日現在でも、三井銀行は三井物産だけで一千四百四億円、三井物産一社だけに一千四百億円です。それから三菱銀行は三菱商事だけに一千三百十二億円融資をしている。あなたのほうの富士銀行の最高は、三井物産に長短両方合わせて一千二百五十八億三千九百万円融資しておりますね。一社ですよ。一社に千二百億。零細な国民が自分のためと思って預金はするのでありますが、そういう預金をした人がこれを新聞で見ると、銀行というのはわれわれの零細な預金を一生懸命集めてみな世の中のためになるようにやっておるのかと思ったら、金もうけの一社にこんなにも出しちゃうのか。しかもその商社が、買い占めだ、売り惜しみだとやって、値段をつり上げてぼろもうけをする、庶民を泣かせる。そうすると、てめえがてめえの首を締めるような預金をしておるのかという感情になるんですね。貸してはいかぬと言うのではないですよ。銀行ですから、金の借り手がなければ銀行は成り立たないのだから、貸すのは悪いと私は言っていないのでありますが、いずれにしても、一社に一千二百億も一千四百億もまとめてばんと貸してやるというのは、どうも金融が片寄っている、集中し過ぎている。強いものが非常に有利だという感じを与えますね。これは大きいものがますます大きくなり、強いものがますます強くなることを端的に示していると思うのであります。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕  そういうようなことを国会でも私は去年の四月の段階で物価委員会で指摘をして、特に土地投資に対する銀行あり方、姿勢を正せということを大蔵省に注文をつけて、土地問題については重役を引き揚げたり、株の保有は五%にする、傍系不動産会社を整理してきた点はたいへん評価をするのでありますが、そこで、こういう大口の融資に対する何らかの規制が必要であるという議論が強くなりました。非常にむずかしい。私は私なりにいろいろ規制の方法や規制をした場合の効果や、その後の波及して他のものに与える影響などを考えると、非常にむずかしい点は認めます。認めるけれども、いまのような状態は是正をしなければならないという問題がある。大蔵省は今月一ぱいぐらいに検査の結果をまとめて、七月ごろから何とか大口融資規制をやろうと踏み切ったようでありますが、これについて銀行協会としてはどんな感じでいらっしゃるのですか。
  32. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 まだこの問題につきまして協会として討議をいたしておりませんので、個人的な見解としてお聞き取りをいただきたいと思います。  大口融資規制の問題は古くて新しい問題で、これにつきましては私もいま武藤先生がおっしゃったと同じような感じを持っております。金融機関国民の公器でございます。国民の皆さんから預金をちょうだいしまして、それを資金の必要な方面に貸し出しをいたしております。したがって、できるだけ一カ所あるいは数カ所に片寄らないで広く資金需要者に散布すべきものだ、これは私ども考えております。それから、そういった問題は別にいたしましても、銀行はやはり預金者保護ということを最重点に考えなければなりません。したがって、どこか一社に大口の貸し金をしますことは、銀行の健全経営という意味から申しまして、決して好ましいことではないと思います。したがって、大口貸し出しの規制につきましては、これは特にそんな考えはおかしいというあれはございません。皆さん賛成だろうかと思います。  ただ、私が一言申し上げたいと思いますのは、確かにいま武藤先生がおっしゃいましたように、私のほうも丸紅一社に千二百何億出しておると思います。その他三井物産にも出ております。あるいはいま伝えられておりますような自己資本の二〇%というところに線を引きますと、なおまだ一、三社引っかかろうかと思います。ただそれで申し上げたいことは、いい悪いは別にいたしまして、現在、必要から銀行も借り入れ金を持っておりますが、日本の企業はゼロからスタートいたしました関係もありまして自己資本が非常に少なくて、みんな借り入れ金でやっておるわけでございます。そうしていまのような姿ができ上がっておりますわけで、これはいい悪いにかかわらず、いまこういう姿だということは、私どもも大口規制の問題を考えますときに頭に入れておく必要があろうかと思います。  そこで、いま先生もおっしゃいましたように、大口貸し出しを規制するといいましても、それでは一体、企業の借り入れ金はどうするのか、企業の側の借り入れ金をそのままにしておきますならば、線を引かれたそれから上にはみ出しておる分はほかの銀行が引き受けてくれるかどうか知りませんが、分散をするだけのことでございます。それで一体どれだけの意味があるのかということも考えてみなければならないと思います。  それからもう一つ、特に私が先生方に頭に入れておいていただきたいと思いますことは、たとえばいまの、三井物産に対して三井銀行は大きな貸し出しをしてはおりますけれども、ただそれだけを見ますと、いかにも三井物産の借り入れ金の中で三井銀行の占めておりますシェアが三〇%とか四〇%といった大きなシェアを持っているではないかというふうにとられがちだと思いますが、実際は、これは武藤先生もお調べになると、そんな大きなシェアを三井銀行は三井物産に対して持っておりません。私のほうも丸紅のメーンバンクのようにいわれますけれども、丸紅全体の借り入れ金の中に占めます私どものウェートは一二、三%だろう。そういったことは、おそらくどの大企業銀行の関係につきましても、いまの大口集中規制の網にひっかかる企業につきましては申せることだと思います。この点はやはりこの問題を検討いたしますときに十分頭にお入れをいただく必要があろうかと思います。  いずれにしましても、この大口規制の問題が当局によりまして十分検討されるということは、私どもとしても喜ばしいことだと思っております。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 その場合に、やはり新聞談話によると、結局佐々木会長の腕の見せどころは、急激にやられるとショックが大きいから、三年なり五年なり解消までかなり長期に大蔵省との折衝で期間をとることだ、こういうようなことも書かれておるのでありますが、大蔵省の意図するような資本金の二〇%の範囲内に、あまり急激なショックを受けないでなだらかにやる方法としては、どのくらいの年数が必要だと思いますか。
  34. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 その記事は、私が何を申しましたやら、記者諸君がそういうふうな観測をされたのだと思いますけれども、いまの経過期間をどの程度置くべきかということは、現在の大口貸し出しの実態をよく調査をしていただきまして、それに一体どういった方策をお立てになるのか。たとえば、伝えられておりますように自己資本の二〇%というふうなところに線を引かれるのか、あるいはもっとゆるいところになるのか、きついところになるのか、そうしてまた、その大企業の借り入れ金、それに対してどういうふうな結論をお出しになるのか、その辺の問題とのからみ合いになろうかと思います。したがって、私どもといたしましては、十分知識のある方々がこの問題を御検討くださいますので銀行の事情も御承知だと思いますから、その辺はいろいろな条件をごらんになって、無理のない経過期間をおきめいただけるのではないか、こういうふうに考えております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当て時間があと十分でありますから、はしょって最後の質問に入りますが、先ほど会長は、中小企業に対してとは言わなかったのですが、石油危機をめぐって何か特別融資銀行としてやったと言われた。中小企業はいま倒産件数が激増して一千件を上回ってきた。さらに手形のサイトは延びた。私どもの住んでいる足利というところは繊維の町でありまして、繊維業者はいま軒並み操短であります。大体四五%の操短をやっているという状況です。在庫はどんどんかさむばかり、この半年ばかりの原料高、高い原料を仕入れてようやく製品になった段階でこういう不況状況を迎えて、いよいよ品物は売れない、こういう状況でたいへんいま苦しんでいるわけであります。おそらく全国のそういう繊維産地においては、私どもの足利と同様な状況にあるのではないかと思うのであります。  政府は、いま政府系三機関に二千三百億円ぐらいの特別融資を出してくれという要望を通産省から大蔵省にいたしているようでありますが、新聞報道などによると、全銀協でも一−六月の間に約三千二百億円ぐらいの特融をするやに承っているのでありますが、全銀協としては中小企業に対するきめこまかい配慮として何か特別に、四、五、六の状況の中で配慮しているのかどうか、その辺はいかがなんでしょうか。
  36. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  繊維業界が、ただいま先生お話しになりましたように、非常に苦しい立場にございますことは、私どもも十分承知をいたしております。ただいま先生お話しの三千二百億の特別融資でございますが、先般石油危機が発生をいたしましたときに、われわれとしても、この問題からまじめな中小企業者が倒産とか、そういったうき目にあっては困るということでいろいろ相談をいたしまして、都銀で二千億、地方銀行で千億、信託銀行で二百億、合計三千二百億の特別救済融資ワクを設定いたしました。これは石油危機に関連をしてでございます。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  いままでのこのワクの使用状況を御参考までに申し上げますと、ごくわずかでございます。ネオン業者に対しまして十二億、これは三月に融資を実行いたしました。そうして六月には、通産省のほうからお話がございまして、中小ガス業者に三十億の融資を予定いたしております。ただいま申し上げましたように、ワクに対しましていままでの実行額、現在予定されておりますものは、微々たるものでございます。しかし、実際の申し込みがございまして、それに対してノーと言った例はまだございません。これだけしか現実の申し込みがなかったということでございます。  そこで、日々現実の仕事をしております私の感じを御参考までに申し上げたいと思うのでございますけれども、今度いろんな買いだめ、売り惜しみが行なわれました。どうも私どもにわかりませんのは、それにつきましては裏づけとなる資金が必要なはずでございます。その資金につきましては、非常に窮屈な引き締めが、窓口指導が行なわれております。にもかかわらず、買いだめ、売り惜しみという事実が、正確な数字はわかりませんが、相当あったことは間違いないと思う。そういう金融が一体どこからつけられておったのか、どうも金融政策の手の及ばないところに金があるのではないか。あるいはまた、相当利潤をあげて、企業手元流動性は豊富になっておる。あげた利潤によって豊富になりました手元流動性には、金融引き締めの手はそう簡単には及ばないのではないか。率直に申しますと、全体としてはこういう感じを私は持っております。  御承知のように、金融引き締めは非常に長い間、しかもその程度はいままでに例を見ないようなきびしいものでございますけれども、いままでのところ、私どもが想像いたしましたほどはいろんな摩擦が起きておりません。なるほど中小企業の倒産は、ことしの三月は千件をこした。これは数年来のことだ、そのとおりだと思います。ただ、中小企業金融をおもにお取り扱いになっております信用金庫あたりの方に伺いましても、いままでの倒産ではほんとうの意味の黒字倒産はあまりなかった。いわば経営よろしきを得なかった結果がわりに多いように思うということをおっしゃった。それが当たりますかどうかわかりませんが、それともう一つは、あの倒産件数にあげられますのは、負債総額が一千万以上のものをあげておるわけです。一千万以上でございますから、経済の規模が拡大しておりますが、物価も上がっております。昨年の三月でございましたならば、あるいは負債総額一千万にならなかったものも、そういった線にひっかかってきたものもあろうかと思います。  何はともあれ、全体に対しましては、率直に申しますと、私はそういった感じを持っておりますけれども、しかし、繊維とか自動車関係の部品とか鉄鋼の関係とか、いろいろ業種によりましては非常につらいところがあることも事実だろう。そういったまじめな経営者が困ることのないように、私どもとしては万全の配慮をいたしたいと思います。  そこで、いま先生のおっしゃいました都銀、地方銀行、信託を含めまして三千二百億、このワクを設定いたしましたのは、まさに石油危機に関連したものということではございますけれども、もう少し広義に解釈をしてもよろしいのではないか、私としてはこういうふうに思っておりますので、これは全銀協の問題ではございませんけれども、そういった方向でほかの銀行にも話しかけてまいりたい、こういうふうに考えております。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間でありますからやめますけれども、その三千二百億の残り部分がまだかなりあるわけですから、これはひとつ早急に、地場産業でそういう危機的な状況にある業種について特別ワクを、それぞれ銀行協会でもぜひ相談してもらって、各行に要請してとっていただいて、ぜひ倒産を最小限に食いとめていただきたいと、強く要請申し上げたいと思います。  銀行家のところに中小企業家は、困った困った、こういう状況だということは言わないのですよ。銀行の窓口に言うと、あいつはあぶないからと警戒されて、逆に早く倒産してしまうんだ。先に債権を全部確保されちゃって、にっちもさっちもいかなくなる。だから、政治家のところにはほんとうのことを言うのです。いま銀行の窓口は歩積み両建てでこうだ、金を借りるにはこうきつい、富士銀行もこうだぞ、いろいろと来るのです、政治家のところには。しかし、銀行の窓口に行っては、業者は小さくなって、ぺこぺこ頭だけ下げて金を借りることしか頭にないのです。だから、どうも銀行家の見る経済の実態、業者の実態と、われわれ政治家が見る実態では、かなり食い違いがあることを私は感じています。  特に国民金融公庫の数字を見ても、いま申し込み額に対する貸し付けば四割も落ちているのですよ。そのくらい殺到しているわけです。一カ月に断わられる申し込み金額は五百億です。国民金融公庫だけでもですよ。それだけの零細業者が殺到していっても借りられないのです。たいへんな事態なんです。  ですから、銀行のサイドで、まあたいしたことはない、倒れているのはまだ一千九十一件だ、こう簡単に考えずに、つぶれる業者にとったら命がけで、この間の、まくら元にテープレコーダーを置いて娘と母親が死にますという、あのテープレコーダーに残された遺言という新聞記事を見ただけで涙がじんとにじみ出るほど、いま業者は苦しんでいるのです。ぜひ全銀協会長として、総需要抑制という方針はくずすわけにいかぬけれども中小企業に対するきめこまかい配慮というものをひとつ前向きで措置していただきたい。強く要請しておきたいと思います。
  38. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 ただいまのお話よくわかりますので、そういった点も十分考えまして、お話のございましたような線に沿って至急に検討いたしたい、こういうふうに考えます。
  39. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 荒木宏君。
  40. 荒木宏

    ○荒木委員 先ほど参考人の御意見を伺いまして、物価問題、また福祉を考えた金融、さらには中小企業金融を重視して、社会的ニーズにこたえていく、こういう御意見でございます。  御承知のように、石油危機以来、企業社会的責任ということが強調されました。ことに銀行社会の公器といわれますから、そういった意味銀行社会的責任というものは、いまの時期にはたいへん重要だろうというふうに思います。  そこで、参考人に、業界として銀行社会的責任というものをどういうふうにお考えになっているか、ことに銀行の中で社会的な非難を受けるような、そういったふるまいが出たような場合にはどういうふうな御処置をなさるのか、時間がたいへん限られておりますので恐縮ですが、簡単に御意見を伺いたいと思います。
  41. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  社会的責任ということはなかなか具体的にはわかりにくい面もあろうかと思いますけれども、私ども銀行員は銀行員らしく仕事をいたしますが、その中でもわれわれとしてどうも一般社会の観念から見ておかしいのではないかというふうな点につきましては、改めるべき点はどんどん改めていく。そういった面では、私ども何と申しましても銀行屋がある意味では身についておりまして、なかなか発想の飛躍ということが困難でございますから、外部の皆さん方からのいろいろな御指摘なり御助言、御忠言というふうなものもちょうだいをいたしたいと思います。  そこで、いま銀行社会的責任というものについて、一体どういうことをやっておるかというお話でございます。全国銀行協会のほうでも、社会的責任に関する委員会というふうなものを設けまして、いろいろな問題に取り組んでおります。ただ、この委員会ができまして日も浅うございますので、十分な成果はあげておりませんが、ただ、先生方も御承知のように、昨年の十月におどり利息の廃止とか、あるいはいろいろなお客さまからちょうだいいたします約定書について、取引先の立場に立ちまして内容がわかりやすいように一部は改善をいたしました。そういったこともやっております。そういったこまかいことを一つ一つ私どもとしては今後も積み重ねてやっていきたい、こういうふうに思っております。  それから、いつかこの国会の委員会でも、いまの先生お話にも関連をいたすと思いますけれども銀行ではよろず相談所というふうなものをつくっているけれども、それに対する人員の配置もごくわずか、そんなものではたいした仕事もできないだろうという御指摘がございまして、全銀協でもさっそくよろず相談所のスタッフを拡充いたしまして、現在まじめに一生懸命これと取り組んでおります。  ここでちょっと御披露申し上げたいと思いますのは、全銀協でマル優制度につきましての新聞広告をいたしておりますが、その一隅に、よろず相談所をつくって皆さん方のいろいろな御相談に応じたいということを広告いたしました。そういたしますと、四月一カ月で大体百二十件余りの御相談がございまして、これは電話によりますものが大部分でございますけれども、鹿児島とか北海道あたりから書面での御相談もございました。その件数は、四十八年度一年間によろず相談所が扱いました件数の三分の一、これだけのものに四月一カ月で御相談に応じた、こういう実績もございます。  私どもは、先ほどもちょっと申し上げましたように、これだけやれば社会的責任を果たしたんだというふうなものはございませんと思いますので、どんな小さなことでも一つずつ積み上げて実行してまいりたい、このように考えております。
  42. 荒木宏

    ○荒木委員 土地問題は、今日でもきわめて重要な問題であります。土地融資につきましては、それが投機資金につながり、さらに地価高騰をもたらす、こういうことでたびたび行政指導もなされたことは、参考人もよく御承知のとおりでございます。私はこの機会に、特に銀行の中でも信託銀行、不動産部を持っておりそれを業務として認められている信託銀行の土地融資について特に問題がないかどうか、どうごらんになっているかということを簡単に参考人に伺いたいと思います。
  43. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 まことに申しわけございませんけれども、信託銀行の土地の関係のことにつきましては、お答えするほどの知識を現在持っておりません。
  44. 荒木宏

    ○荒木委員 申すまでもなく、信託銀行は皆さんの協会のメンバーでございます。私どもが見ておりますと、土地融資についてはいろいろと行政指導もあって、増加率が抑制されてきた経過があります。しかし、信託銀行の土地問題についての取り扱いについては、これはなお非常に大きな問題があるのではないか。  ここに日本信託銀行の媒介をした土地の分譲案内書があります。これは千葉県の誉田グリーンヒルというところの約四万坪の一部の分譲案内でございます。これは昭和四十六年に、日本信託銀行の関係会社であります日本信和株式会社が、当時の価格にしまして一坪当たり三万七千円から四万円程度で取得をいたしました。現在坪当たり十八万五千円であります。その間にこれが三回から四回、転々と所有者を変えました。当初から造成済みの土地を手に入れたわけでありますから、その転売の間にほとんど造作がなされておりません。つまり、ありのままの姿で三回から四回、転々と転売をされるつど値が上がりまして、総計で計算をいたしますと、当時の十六億円余りが現在七十四億円と、四倍以上になっています。  私が申し上げたいのは、そこに信託銀行が売買のつど介入をしている、媒介をしているわけですね。現地の姿が変わらないということを知りながら、ただ持ち主をかえるだけという仕事に信託銀行が媒介、仲介をしている。しかもその媒介、仲介にあたって、金がなければ土地がなかなか買えませんから、そこに融資をしている。あろうことか、その三回も四回も重ねられた媒介のそのつど、売り主と買い主の両方から三%ずつの手数料を徴収している。手数料だけで、このわずか土年余りの間に、当該の銀行が徴収した総額は五億円を上回ります。これによって被害を受けるのは一般の国民であり、住宅や土地がそれこそのどから手が出るほどほしいと思っている一般の庶民だと私は思います。こういうふうなことについて、業界の代表として参考人はどういうふうにお考えになるか、御意見を伺いたいと思います。
  45. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 信託銀行の土地につきましては、これは普通銀行に比べますと、大体土地担保、不動産を扱うという点においては、業務の態様としてはかなり手広くやっているのではなかろうかと思いますが、いまの御指摘の点につきましては、大蔵省といたしましてもその事実についてよく調べてみたいと思います。
  46. 荒木宏

    ○荒木委員 大蔵省は、すでに昨年の暮れに調査に入っておるはずであります。
  47. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 私、ただいま資料を持っておりませんので、そういうふうにお答えいたしたわけでございますが、帰りましてよく調べた上で御説明をいたします。
  48. 荒木宏

    ○荒木委員 私は大蔵省に伺っておるのではございません。書類も全部あります。業界の代表としてお見えいただきまして、そのお立場から御意見を伺いたいと思います。
  49. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 私も事実は知りませんし、ただいま先生からお話を伺いまして、そういったことがあったのかなと思うだけでございますが、お話を伺いました限りでは、その他の事情も何もわかりませんけれども、ずいぶんひどいことがあるものだな、こういった感じを率直に申しまして抱きました。
  50. 荒木宏

    ○荒木委員 これは日本信託銀行だけではありません。三菱信託銀行の例を申し上げますと、北海道の道南地方に大沼という地域があります。これはあるいは御承知かと思いますが、観光地区として発展をすると予想された地域であり、またコンビナートとしていろいろ世上取りざたされた地域であります。ここに三菱商事が国土緑化株式会社という、これは従業員二十人そこそこの会社でありますが、そこに対して二十億円の金を無利子で貸し付けた。ところが、三菱信託銀行はそれと同額の金を国土緑化株式会社に渡しました。貸し付けたのです。国土緑化のほうは、その二十億円を三菱商事にすぐ返済いたしました。ですから、実質的にはあれほど世間の糾弾を浴びておった大商社が、規模の小さい子会社を隠れみのに使って、その地域の百二十二万坪という土地を買い占めるという、その金の提供を三菱信託銀行がしたことになります。これも契約書があります。  こういったことが続いておるのでありますが、先ほどお話しのように、参考人のおっしゃった社会的責任に関する委員会、これがいろいろ作業されておるように私も報告書で伺いました。また、いま社会的に企業社会的責任の問題が非常に大きく取りざたされておりますときに、こういった具体的な例を一つならず御指摘申し上げたわけですが、業界の代表として、参考人はこれに対してどのような対策をおとりになるおつもりか、その方向、基本的なお考えを伺いたいと思います。
  51. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 私にも、率直に申しまして、いまのお話を初めて伺いまして、どういった対策を全銀協としてとったらよろしいか、ちょっと考え方が浮かびません。こういった個々の企業の経営につきましての問題にまで、全銀協社会的責任に関する委員会というふうな名において、あるいは全銀協自身の名において、個々の企業のそういった行為にまでタッチすべきものかどうか、そういった点につきましてもいろいろ検討すべき点があろうかと思いますので、私といたしましては、いまこういったふうなことを考えますというお答えをいたしかねますわけでございます。ゆっくり考えてみたい、こういうふうに思います。
  52. 荒木宏

    ○荒木委員 ぜひお考えをいただきたいと思います。  皆さんのほうから出されました業務報告書によりますと、社会的責任に関する委員会は、銀行社会的責任を積極的に果たすために、真に顧客の立場に立つ業務の遂行、福祉社会の実現、これらを検討、協議し、必要な施策を講ずることである。私が申し上げましたのは、このことが一般国民の利益を大きくそこない、皆さん方の取引先である大切な庶民の顧客層の利益をそこなっている。皆さん自身も、当該委員会でもってそれを検討して施策を立てるのだ、こうおっしゃっている。いままでいろいろな問題で調査検討なさって、建議答申までなさってきたことはもう御案内のとおりでございます。政府に対して、たびたび御要望もありました。  しかも、これは少し性質が違うかもしれませんが、個人信用情報センターの利用規則によりますと、違反した会員に対しては罰則までおきめになっておる。違約金の定めがありますね。戒告の定めもありますね。ですから、同じ皆さん方の組織の中にいる銀行が、連合会なり協会でおきめになった行動ルールに違反した場合には制裁を課しますよ、こういったことでおやりになっておる事例があるわけです。  ですから、銀行の私的企業としての営利追求の問題と、いまの時点を踏まえた社会的責任の義務履行の問題とは、非常にむずかしい問題があると思います。しかし、参考人も初めに社会的責任を果たす、こうおっしゃっており、皆さん方のほうでもその委員会をせっかくおつくりになっておるわけですから、ぜひこの際、こういった行動基準についてよく御討議をいただいて、そしてそういうふうなことに違反したところには、やはり業界として自主的な措置を講じていただく。まあ、よろず相談所もありましょう、いろいろな施設もありましょうけれども、そういった内部の処置をき然としておきめになることによって初めてそういった処置が生きてくるわけでありますから、そのことを御提案申し上げておるわけですが、そういった方向でせっかく御相談いただけるかどうか、ひとつ御決意も含めて参考人の御意見を伺いたいと思います。
  53. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お話意味をよく考えまして、みなで十分討議をいたしてみたい、こういうふうに考えます。
  54. 荒木宏

    ○荒木委員 私どもも国会の立場で、いまお話しの御相談、御意見の成り行きを留意して、十分注視をさしていただきたい、こういうふうに思いますので、ひとつ御奮発をお願いいたします。  なお、時間があまりございませんので、先ほど伺いました御意見の中の総需要抑制の問題、これにからんで三点ばかりお尋ねしたいと思います。  まず第一は、御承知のように、四十九年度の企業設備投資につきましては、いろいろな見通しが出されております。通産省の審議会の見通しでは三四%を若干上回る、また経済企画庁の見通しでは、けさの新聞に出ておりましたが、一〇%そこそこ、これは計算の見通しはいろいろありましょうけれども業界としては、もちろん政府やその他関係機関の指導あるいはいろいろな御相談でこれに対する融資の態度、方針をおきめになると思うのですが、業界としては先ほどおっしゃった物価安定といったような点から、設備投資に対する資金供給の伸び率を四十九年度はどの程度にごらんになっておるか。片や三四%という数字がある、片や一〇%近い数字がある、こういう中で業界自身の目標をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  55. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 その数字業界としては持っておりませんと思います。したがって、私どもは、どういったふうに設備を今後各企業がやっていくかという点については、審議会でいろいろ討議をされておると思いますが、しかもその設備の中で、私も詳しいことを存じませんけれども、一体、資金の調達をどうするのかというふうなことについて、私どもまだ承知をいたしておりません。それと、今後の金融引き締めの点が、いわゆる物価の趨勢その他を見ながら一体どういうふうに進められていくかという辺もはっきりいたしておりませんので、私どもといたしましては、与えられた資金ワクの中でどの程度設備投資に向ける、そういうふうな計算はまだできておらない、こういうふうに私は承知をいたしております。
  56. 荒木宏

    ○荒木委員 協会のほうからお出しになりました案内書によりますと、資金調整委員会というのがございます。そこではいろいろ下部機構もあって、そして設備投資を一体どういうふうにしていくか、業界需要に対してどういうふうに応じていくかといったようなこともいろいろ御相談になっておるようであります。ですから、四十九年もすでに五月になりましたけれども、まだいま、あるいは作業を続けておられる過程かもわかりませんが、この問題は、設備投資の勢いをどの程度にするか、また経済成長の問題ですね、もちろんそれは物価動向にかかわりますが、行政当局その他いろいろな関係機関の意向はありましょうけれども業界自身として、参考人が当初におっしゃった、物価を安定さしていく、そして中小業者、中小企業金融を重視するという方向を十分踏まえてこの作業をお進めいただきたいと思います。  関連して、先ほど同僚議員から、中小企業金融の問題の御質問がありました。私はここしばらく前から、先ほどお話のありました繊維の問題について通産省にも——いまたいへんな不況で、あるいは参考人御存じかと思いますが、大阪の南部の地方では、業者が集まりまして反物を焼却して窮状を訴える、こういったようなことまでありましたし、また静岡県の天竜のほうでは、不況のために自殺をされる業者の方まで出た、こういうことであります。政府統計でも、大体受注はもう半分以下、四−六で在庫は六〇%をこえるというふうになってきておりますし、しかも工賃は昨年に比べて三分の一以下というふうな状態で、産地ぐるみで倒産の連鎖反応を起こすのではないかということを監督官庁もかなり真剣に憂慮している、こういう状態であります。  中小企業資金繰りの実態についての参考人の御意見は先ほど伺いました。しかし私は、こういう事態には、官民合わせてそういう緊急事態、非常事態を救済するために御奮発をいただくべきではないか。その一つの方法としまして、政府金融機関では、いままでの借金の返済猶予ということを極力考えてほしい。これは中小企業庁長官からもすでに通達が発せられました。私どももたびたび御相談もしまして通牒が出されておるのでありますが、政府系の金融機関と趣の違った点は十分承知をしております。しかし、いまの事態にあたって、もうそういった輸入の増加だとかあるいはいまのような売れ行き不振だとかでどうにもならなくなっている、幾らがんばっても個人の努力ではもう限度があるといったような小規模零細業者に対しては、社会の公器としての立場から、いま申し上げたような返済猶予の相談も含めて、資金量の拡大、そして良質資金の提供ということをお考えいただきたいと思うのでありますが、参考人のこの点の御意見をひとつ伺いたいと思います。
  57. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お話しのとおりでございます。先ほど来申し上げておりますように、まじめな中小企業経営者が、ただ金融のために非常に苦しむということは避けたいと思いますので、私どもはそういったケース・バイ・ケースでよく具体的なお話を伺いまして、必要なものには場合によったら返済の猶予をする、あるいは新しい貸し増しをするというふうな点につきましては十分配慮をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。そういうふうにやってまいります。
  58. 荒木宏

    ○荒木委員 返済猶予は……。
  59. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 個々の具体的なケースについてよくお話を伺いまして、返済猶予をする必要があるものについては返済の猶予もいたしましょうし、また、そういった返済猶予をするだけでなくて貸し増しを必要とする先につきましては、それも当然考えるべきだ、こういうふうに思っております。
  60. 荒木宏

    ○荒木委員 ぜひ会長さんとして関係の銀行のほうへ念達をお願いしたいと思います。  それから、関連しまして自治体金融の問題でありますが、これは昨年の十二月二十五日に、選別融資に関する銀行局長の通達が出されました。御案内のとおりと思います。ところが、あの中の文言を見てみますと、まず、教育については優先的に配慮しなさい。ところが土地のほうは、こいつは押えなさい。だから、学校用地の場合などは、これは教育にも関係をする、土地にも関係をする。それでは地方公共団体に対する融資はどう考えるべきか。一番末尾には、適正な扱いをするものとする。これじゃ一体、うんとそこへ重点的にやれというのか、あるいは押えようというのか、ケース・バイ・ケースで適当にやれというのか、私どもは率直に申し上げてよくわからぬわけであります。そのために、たとえば大阪では、いま学校用地の取得に関して非常に困難な状態が起こっておりまして、皆さんの会員である銀行に対して自治体から申し入れをいたしましても、なかなか話が進まなかった事例もつい昨今にもありました。  個々のケースを申し上げるのは時間の関係で控えますけれども、こういうふうな地方自治体の金融、教育でありますとか福祉施設でありますとか、土地も含めたこの点についての選別融資の通達の運用状況について、やはり先ほどおっしゃった社会的な責任ということを果たす上で、ひとつ重点的に配慮をしていただきたい。そうされるべきではないかと思いますが、参考人の御意見をお伺いいたします。
  61. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 ただいまのお話のケース、実は私どもも非常に苦慮いたしております。と申しますのは、そういった地方公共団体あるいはその開発公社の融資も、一般の貸し出しワクの外ではないわけであります。したがって、私どもも非常に苦慮はいたしますけれども資金の性質上、できるだけこれに応じたいというつもりで、いままでも実行してまいっております。こういったときでございますから、なるほど金融緩和のときほど、たとえばシンジケートを結成いたしますにつきましても簡単ではないかと思いますけれども、私の見ますところでは、できる限りの努力は各金融機関ともいたしておると思います。  そういった結果、私どもは実際問題といたしまして、これは富士銀行の場合でございますけれども、ある月には貸し出しワクを超過をいたしました。その際に、超過をした理由はこうこうです、しかしこれはこうこういうふうに二、三カ月のうちに解消いたします、そういうふうな了解を日本銀行に得まして実行いたしたケースもございます。この点は私ども資金の性質というものを十分考えまして、苦しい中でもできるだけ御要望に沿いたい、こういうふうに従来もやってまいっておりますし、今後も努力をいたしたいと思います。
  62. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの点は、これは御案内のように、自治体金融はいま全国銀行の一%以下になっておりますし、伸び率も四五%から一五%ぐらいにこの三期ほどの間にぐうっと下がってきておりますから、ぜひひとついまの方針を十分に実行していただきたいということを申し上げまして、最後に、預金の目減り問題であります。  私は、物価スライドということをひとつ業界として御検討される余地はないか。御案内のように、これはフィンランドでもデンマークでも実施をされました。あるいはスウェーデンでもフランスでも、これは債券だとか部分的でありますけれどもやられましたし、アメリカでは昨年、これは一部のところでやったことも御案内のとおりであります。イギリスでは、国民貯蓄委員会でこれは検討せいということで答申も出ておりますし、そういうふうな点から、確かに先ほどおっしゃったように二%ほど上がった、あるいはまたマル優のワクも少しふやした、またボーナスの点の特別な配慮もあった、いろいろありますけれども、いまのように年間もう二〇%をこえようかというこの物価高の時期には、やはりひとつこのスライド制という問題も全面的に検討して掘り下げる必要がある、私はこう思います。その点をひとつお伺いしたい。  それから、大蔵省のほうには、先ほど指摘をいたしました日本信託銀行と三菱信託銀行の例、これはもうすでに私のほうから銀行課長に申し上げてあります。調査をして、そうして結果を国会に報告されるかどうか、その点を伺って質問を終わりたいと思います。
  63. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 スライド制の点につきましてお答えを申し上げます。  ただいまの先生お話は、私ども非常に参考になりますし、実はそういった点もいろいろ私なりに検討はいたしてまいっておりました。それで、ただいまもアメリカの銀行もというお話がございましたけれども、これは昨年の秋ごろでございましたか、アメリカのファースト・ペンシルバニア・トラストが、消費物価が上がりますと、その上昇率の四分の一を一年とか二年の長期預金金利に上のせする、こういう記事が大きく出ておったのを私も見ました。ただそのときに私は、そのファースト・ペンシルバニア・トラストは、消費物価上昇にスライドして預金金利を上げるという記事だけは出ておりますが、それでは一体貸し出し金利はどうするのだろうかという点を疑問に思いました。それからしばらくたちますと、ファースト・ペンシルバニア・トラストは、まっ先に貸し出しのプライムレートを上げました。これでほんと私は納得がいったわけでございます。  ですから、このスライド制の問題は、つまり、消費物価が上がると預金の目減りがあるのだから、それを補てんするということは、銀行だけの力でやろうと思いますと、銀行インフレによって直接は損失もございませんけれども、利益もございません。銀行にとってみれば預金者である債権者、その債権者は目減りの損失をこうむります。しかし、債務者は一般論としてはインフレによる債務者利潤を得ております。その中間に銀行は立っておりますわけですから、インフレによる債権者損失を預金者に補てんしようといたしますならば、それだけのものは借り主であるインフレ利潤を得ておる人から取り上げて預金者へということになろうかと思います。ということは、預金金利物価上昇にスライドして上げるのであれば、貸し出し金利物価上昇にスライドして上げるということでないと、銀行だけではこの問題は片づかないと思います。そういった問題がございます。  それから、各国の例をおあげになりましたけれども、何かやはり当分インフレが続きそうだ、そうしますと、ブラジルがやりましたように、私も行ってみましたけれども、御承知のように、物価は上がっております。しかし、GNPも一〇%以上の伸びをしておる。そして通貨の小幅の切り下げがございます。一向経済混乱がない。それはときどきに債権債務を再評価しておるわけでございます。何かこういったことをわれわれとしても十分研究する必要があるのではないか、こういうふうに思って、ただいま先生からも御指摘がございましたので、一そうこういった辺の勉強を進めてみたいと思います。
  64. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 いま御指摘の二点につきましては、調査ができましたら御連絡申し上げます。
  65. 荒木宏

    ○荒木委員 会長からいろいろ伺いましたが、社会的責任中小企業金融国民金融、その点を十分踏まえて御勉励いただきたいと思います。  最後におっしゃった貸し出し金利の点は、大口に乗せるとか、それからまた乗せ方をどの程度にするか、いろいろ方法がございまして、各国の例もありますから、ひとつ御研究いただいて、ぜひ検討を深めていただきたいと思います。  質問を終わります。
  66. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 広沢直樹君。
  67. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間の関係がありますので、当面する問題につきまして二、三点お伺いしておきたいと思います。  最近、金融関係で問題になっておりますのは、大口融資の問題だとか、それからいまも問題になっておりました社会的責任の問題、いわゆる反社会企業に対する融資の規制の問題だとか、あるいはより根本的な問題としては、金利体系の問題、こういった問題が最近とみに重要な問題としてあげられております。現行の金融関係法は、言うまでもなく高度経済成長を推進する形で、その体系のもとにつくられてまいっているわけです。したがって、金利体系においても、低金利政策というような体系で推し進められてきているわけですね。  そこで、これから時代の要請として福祉中心の経済ということ、したがって、金融政策福祉中心の体系に切りかえていかなければならないということで、大蔵当局としてもそういった方向で、特に臨時金利調整法を改正して、金利の自由化をどうすべきであるかという問題とか、あるいは銀行法を改正して、大口融資の規制あるいは不動産融資の規制、銀行の貸し過ぎを抑制するというような方向で検討を加えなければならぬということで、現在すでに検討されておることが報道されているわけでございますが、全銀協としても銀行を代表して、こういう時代の要請に対して、まずどういう感覚をお持ちになっていらっしゃるのか、その所信をちょっと承っておきたいと思うわけでございます。
  68. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 御質問の意味が私にはよくわかりかねる点もあったのでございますが、いまの銀行金利体系その他が高度成長向きにでき上がっているんじゃないかというふうなお話もございました。そしてまた、あるいは先生のおっしゃる意味の中には、もっと金利体系も自由化したらいいのではないか、こういうふうなお考えもあるのではないかというふうに考えます。  そこで、金利体系と申しますか、金利の問題でございますが、私は、現状から見ましてそういったことが簡単に実現するとは思いませんけれども、理想から申しますならば、やはり金利体系はフリーにする。申し上げますように、そう簡単に五年や十年で、いまの金利体系、それから金融機関あり方から見まして、実現するとは思いませんけれども、理想論を申しますならば、金利は自由化する。そして一番いい銀行はどういう銀行かと申しますと、預金金利は一番高い銀行貸し出し金利は一番低い銀行、にもかかわらず、その他の企業努力によりまして収益をあげられる銀行、これがほんとうの理想的な銀行であろう、こういうふうに私は考えております。  ただ、先ほどからいろいろお話が出ておりますように、白紙にこれから絵をかくのじゃございません。現実に各金融機関が、いろいろな力の差がある金融機関が、存在をいたしております。そして、それらの間に非常に大きな混乱を起こさないようにいたしますためには、いまの金利統制もやむを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  69. 広沢直樹

    ○広沢委員 ちょっと話が大き過ぎて、質問の要旨がわからなかったかもしれませんが、私がきょう本題としてお伺いしようと思うのは、やはりインフレ下における預金金利の問題を中心にお伺いしようと思うのですが、しかし、その前に、これまでの経済をささえてきたのはやはり低金利政策で、高度経済成長をなし遂げようと思えば、企業体質からしましても、自己資本比率が非常に諸外国に比べて低いわけでありますから、どうしても他人資本を中心として経済の基盤を拡充しなければならぬということになりますので、そういう政策をとらざるを得ませんでしょう。  しかし、そういうことによって、今日当面する問題としては、先ほど申し上げましたように、片寄った融資あり方ということも一つ問題になりました。いわゆる大口融資の問題ですね。それからまた、そういうような一部企業によって反社会的な行動を起こされる、それに対する金融体制の問題も一つの問題としてあげられましたということを申し上げたのですが、それといまのこういうインフレ下において相当預金が目減りしているということ、これに対する対応策ということは、いま国民的コンセンサスになってきておりますし、これからは基本的に福祉中心の金融体制に切りかえなければならぬということで、いま言う預金の自由化の問題にせよ、あるいは大口の規制の問題にせよ、あるいは反社会的な企業に対する融資の規制の問題にせよ、銀行法なりあるいは臨時金利調整法なりを改正しなければならぬ、こういう行き方に対して、全銀協としては、銀行側としては、当然のことであるとして、そのことを推進されるお考えなのかどうかということをまずお伺いしてみたかったわけです。  基本的には、いま金利の自由化の問題についても、一応そういう考え方が望ましいというお考えのようですから、やはり時代に合わせて変えていかなければならぬということはお認めになっていらっしゃると思いますから、時間の関係で次に進んでまいりたいと思うのです。  インフレによって預貯金の目減りということが非常に問題になっているのですが、これは都市銀行のある銀行の調べによりますと、物価上昇による個人預金の損失が四十七年度下期で四兆二千億、四十八年度上期で四兆七千億にも達する、こういうふうな調査結果を発表されているところもあります。それはところによって多少の食い違いがありますが、大筋においてあまり変わりないと思うのですが、全銀協としては、こういうような問題に対して実態をどういうふうに掌握されているのか、まずその点をちょっとお伺いしてみたいと思います。
  70. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 ただいまの預金目減りにつきまして、どの程度の損失をこうむっておるかは、これは大体そういった数字だと思います。それは認めてよろしいのじゃないかというふうに思いますが、さて、それに対して、先ほどからお話が出ておりますような目減り対策に対してどういった考え方を持っているかというお話に、先生の御質問はなろうかと思います。それにつきましては、先ほどから申し上げましたように、どうも銀行だけの力ではこの問題の解決は非常にむずかしいのでございますね。これを少し角度を変えまして、具体的にお話をいたしてみましょう。  全銀協の立場でございますから、銀行全体の数字をあげればよろしいかと思いますけれども、私ちょっとその数字を手元に持ちませんので、たいへん失礼かと思いますが、富士銀行自身の数字について申し上げてみたいと思います。たとえば富士銀行の場合、表面の総預金は五兆円に達しますけれども、実質の預金といたしましては平均四兆二、三千億だと思います。  いま預金の目減りの問題がございますが、先ほども一〇%ぐらいの預金利率、これは個人一世帯百万円、六カ月定期というふうなお話がございましたが、預金に一〇%とは申しませんけれども、現在のすべての預金の利率をかりに一%上げた、こういたしますと、それだけで年間の預金利息の支払いは、銀行屋のことを申し上げてまことに相すみませんが、四兆二千億あるといたしますと、預金利息の負担が年間で四百二十億ふえます。これはおわかりいただけると思います。それで、年間四百二十億ということは半期二百十億ということになりますが、それだけ預金利息の負担がふえて、その他に手をつけないで銀行経営ができるかというと、これはとうていできません。困難なことは、これもおわかりいただけると思います。  それでは、預金全部についてそういった利上げが困難であるとするならば、もっとこれをしぼって個人預金だけにしたらどうか。先ほどの武藤先生お話にも関連をすると思いますが、かりに個人預金ということになりますと、全体の総預金の中で個人預金が占めております比率は大ざっぱに三五%。そうしますと、一%上げるとしますれば、先ほど申し上げました半期に二百十億の負担の三五%で済むわけでございますが、一%の利上げでいいのかどうかという問題がございます。そういった点を考えますと、銀行自身の力ではどうもこれは問題が解きにくい。  また、いま申し上げましたほかに、金利体系全般の問題がございます。たとえば先ほど岩瀬審議官からもお話がございましたように、普通預金なら普通預金を上げるにいたしましても、すぐ郵貯の問題にはね返ります。それは財政の問題、いろいろの問題、そういう点は一切抜きにいたしまして数字をいま申し上げましても、実際問題として、銀行の力で預金の目減りを国民の納得するような方向で解くということは不可能であろうかと思います。それでは一体、財政で補てんするのがいいのかどうか、それは私の申し上げることではないと思います。  そこで、私どもが考えますことは、何と申しましても、先ほど岩瀬審議官からもお話がございました根本の物価問題、これを解決することがまず基本だ、この物価問題解決のためにはわれわれ金融機関もできるだけの御協力をしよう、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
  71. 広沢直樹

    ○広沢委員 この問題につきましては、言うまでもなく学者の皆さんも、そしてまた全銀協の前会長であられた横田さんも、それから相互銀行協会長をされている方も、また信用金庫の連合会の会長をされておる方もそういった方々はみんな、確かにこれはインフレによる目減りというものは何とかしなければならぬということをおっしゃる。また大蔵当局も、その点については、先ほどお話がありましたように、福田蔵相もそう言っておりますし、また金融当局日銀総裁もそういうことを言っているわけです。みんなおっしゃるのですが、さて具体的な問題ということになりますと、どうしても話がいま言うように抽象的な方向になってしまう、いつのことかわからぬような状況ですね。これは私は問題じゃないかと思うのです。  先ほど私が数字で申し上げましたように、四十七年、四十八年、それよりもっとさかのぼって言うならば、三十六年から高度経済成長政策をとっているわけですが、それからずっと恒常的に物価というのは上がりっぱなしです。平均しますと六%ぐらいですか。ですから、その当時の預金金利から比べましても、決して目減りしていないとはいえない。普通で考えていっても、その経済政策をとっている間でも相当目減りをしているわけですね。ところが、昨今の狂乱物価の中でこういうような二〇%、年に直すと一〇%、政府見通しをもう大きくこえて、一〇%は消費物価は必ずこえるだろうというような状況でありますから、この目減りはもっとひどくなるということが、ひとつ大きく問題として取り上げられているわけですね。したがって、それに対する対策を立てなければいかぬということはもう当面の問題なんです。  ですから、基本的な金利の自由化ということよりも、まず弾力化をはかっていかなければならぬのではないか。臨時的にでも、そういうような預金に対する目減りに対しては救済措置というものを講じなければならないのではないか。  わが国の預金の内容というものは、よく発表されておりますけれども、これは将来に対する目安を立てての預金ですね。余っているから預金しておこうというのではなくて、やはり将来の老齢だとか病気だとか災害だとか、あるいは結婚資金というのもあるでしょうが、とにかく将来のために一生懸命預金しておこうという態勢での貯蓄が諸外国に比べても非常に高くなっている理由は、そこにあるわけですね。したがって、それがいまのような経済政策をとって次第に目減りをしていく、さらには、今日のような物価狂乱の中でもう極端な目減りをしてしまうというような状況になった場合は、これは政策当局にも責任がありますし、あるいはまた銀行当局もやはりそれだけの対応策というものを考えるべきじゃないだろうか、こう思うわけです。  そして、おっしゃるように、確かに佐々木会長もそのことは前向きにお考えの中にあるようですし、先ほど申し上げたように、関係者一同、みんな何とかしなければならぬ、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるのですが、いま言うように、最終的にはどういう方策がいいかということの結論をお出しにならないで、オーソドックスないわゆる物価抑制する、こういう方向になっていくわけですが、私はこれも間違いではないと思います。しかし、物価抑制するといっても、これはいま下がるのじゃないのですね。物価の安定といったって、高いまま張りついてしまう。ですから、三十六年以降ずっと高度経済成長政策をとってきた段階においては、だんだんに上がってきただけなのです。下がるのだったならば、おっしゃるように、金利は一応据え置いておいても、それだけの期間が過ぎればまたもとへ戻ってくるでしょうが、上がりっぱなしですから、いわゆる預金者にとっては目減りしっぱなしということになりますね。ですから、それに対する対策というものは、やはり物価対策も基本でありますけれども、当面の対策としてこれに対する何らかの具体的な措置を講じなければならない。  ですから、一応一〇%以上、二ケタに乗せなければならないだろう。諸外国の——これは経済構造も金融構造も違うから一がいに諸外国の措置をそのままこっちに持ってこいとは言いませんけれども、諸外国もやはりそれに対応して二ケタの相当高金利の考え方を導入してやっていますね。ですから、そういう意味から考えると、私は政策当局も、また皆さんのほうも、基本的に口では福祉経済へというようなことをおっしゃるけれども、なかなか思い切ってそのことをおやりにならないんじゃないかという疑問がどうしても抜けないわけです。  これに対しては、先ほども提案がありました。預金全部というとこれはいろいろ種類がありますので、特に私はその中で低所得層の方々の預金ですね、ごく一部になると思うのですが、それに対して特に何とか措置しなければならぬという緊急対策でもお立てになるような積極姿勢がほしいと思うのであります。たとえば少額貯蓄の非課税の問題で限度をきめてやっているものがあるから、先ほどの武藤委員お話にもありました一世帯百万ではどうなんだ。百万円がいいのか、二百万円がいいのか、それは具体的に俎上にのぼったときの議論になるでしょうけれども、やはりそういう具体的な対策というものを立てるべきではないか。  ですから、自由にしようというよりも、まず弾力的にやるべきではないか。特に金利の問題では、預金金利、一年ものは最近は先ほどもお話がありましたように七・二五%でございますね。ちょうど一年前の四十八年三月が五・二五%ですから、御指摘のとおり二%上がっています。しかし、貸し出し金利のほうは、一年以上、ですから一年ものも入るわけですが、これは結局最高限度といってもそれがきちっときめられておりません。それ以下のものについてはちゃんと調整法によってきまっておりますけれども、そういう関係からしましても現実にはもう一一%、一二%という高さですね。だから、都銀の関係はいろいろな関係があって非常に高いわけです。地方銀行もあるいは中小金融機関もそれにならって上がっていく傾向にありますから、結局は中小企業とかそういうものは圧迫されるという現実が出てきているわけですね。  ですから、預金金利貸し出し金利の差を見ても、五、六%の差がもうすでに出ているのですから、何らかの努力によって、いま言うようなごく一部の、汗水流して未来の不安のためにつめに火をともすような思いで貯金をしている方々に対して、その目減り対策は何とか考える。資産があって、土地でも売ればとか、そういう換金ができるような資産のある方はまた別としまして、緊急対策としては、それだけの思いやりある政策をやることがまず福祉経済金融政策の第一歩だと思うのでありますけれども、その点もう一度お伺いしておきたいと思います。  時間が参っておりますので、続いてもう一つだけ重ねてお伺いしておきたいのですが、いま特に中小企業金融問題で、確かに金融引き締め逼迫してきてそれぞれ対策には頭を痛めているわけでございますけれども、その中で特に、金融引き締めのおりだけに拘束性預金の問題が問題になっております。したがって、先月の二十四日に大蔵省としてもそういう実態にかんがみて通達を出して、いわゆる不当な拘束性預金については直ちに中止せよというような強い方針を打ち出しておるわけでありますけれども、拘束性預金の問題というものは、いつでも言うべくしてなかなか現実の効果をあらわしていないわけでありますが、その問題に対してはどういうふうに対応されておるのか、その点をお伺いして、なお疑問があれば最後に一点だけ質問を申し上げまして、終わりにしたいと思います。
  72. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 預金の目減りの問題は私どもとしては全く頭の痛い問題でございまして、何とかしなければならぬと思いながら、なかなか適切な対策が立たないというのが実情でございますけれども、なお、われわれといたしまして十分研究をいたしてみたい、こういうふうに思っております。  それから、先ほどのお話の中で、昨年の四月から貸し出し金利は四・七五%上がっておる、一年ものの定期については二・五%というふうなお話がございました。それはそのとおりでございます。おっしゃる意味は、貸し出し金利の上げ幅のほうが預金の上げ幅より大きいのだから何とか預金金利について考える余地があるのではないか、こういう御意見かというふうに拝聴いたしました。表面をごらんになりますと、まさにそのとおりでございます。ただ実際は、新聞でもごらんになっておりますように、昨年の四月以降、五月、七月、八月、十二月と四回、累計四・七五%の公定歩合引き上げをいたしましたけれども銀行の約定金利はそれの約半分、二・二%しか平均金利は上がっておりません。これは今回だけの特殊な現象ではございませんで、従来から、公定歩合が上がりますと、半年たちましてその公定歩合の上げ幅の半分だけ全体の貸し出しの平均金利が上がる、そこで大体ストップするというのが従来のケースでございます。今度も大体従来と同じような足取りをとっておるのではないか、こういうふうに考えます。  それからまた、企業の面の借り入れが非常に多うございますけれども、先ほど申し上げましたように、銀行もどんどん外部負債がふえております。それぞれ数千億の外部負債を持っておりますけれども、いわゆる日銀公定歩合の九%、そういったレートで借りております外部負債は、全体の外部負債のごく一部の四分の一とか五分の一、残りは、先ほども申し上げましたように、一二%以上のレートになりますコールをとるとか手形を売って、銀行は苦しい資金繰りをやりくりいたす。そういった面で、公定歩合がこれだけ上がった、預金の上げ幅はこれだけ上がった、銀行は何とかできるだろうということにはなりませんこともひとつ御了承をいただきたい、こういうふうに思います。  それから、歩積み両建ての問題でございます。これはしょっちゅう問題になりまして、銀行の姿勢を外部からいろいろ指摘されるわけでございます。私どももこういうことがあってはまかりならぬというつもりでおりますけれども、なかなか徹底いたさない面もございまして、この点は申しわけなく思っておりますけれども、最近もこの点につきましては、行政当局からきびしいお話がございまして、私どもとしてもえりを正しましてこの問題に取り組んでおるわけでございます。  自粛措置のおもなポイントは、即時両建てとか過当な歩積み預金を発生させないこと、それから金利措置を完全にする、預金を拘束しました場合は貸し出し金利をそれに応じて下げる、それから預金を拘束したり解除した場合、そういった通知を励行することというふうなことが中心になっておりますが、特に即時両建てとか過当な歩積み預金をなくそう、拘束の比率を下げよう、こういうふうなことを従来から指導はしてまいっておるのですが、先ほど申し上げましたように、必ずしも完全に行なわれていないという点は、私どもとしてもたいへん遺憾に、また申しわけなく思う次第でございます。ことしの四月、大蔵当局からも強い御指示を受けまして、全国銀行協会連合会といたしましても、歩積み両建て預金の自粛の徹底並びに報告の適正化を各銀行に通達をいたしてございます。  そして、その通達の中で特に経営者に注意を喚起いたしましたことは、過当な歩積み両建て預金の総点検を行なって、そして報告の正確を期すること、各営業店からの報告は絶対に実情そのままの報告をしなさい、それから本部は業容拡大をはかるあまり、各支店に過当な歩積み両建て預金の発生などを余儀なくさせることのないよう十分注意をしよう、それからまた、かりに不行き届きなあるいは不都合な面がございました場合は、関係者に責任をとらせよう、こういったことを含めまして、この問題について姿勢を正すように、全銀協といたしましても各銀行に要望の通達を出しております。それで処理をいたしております。
  73. 広沢直樹

    ○広沢委員 これで終わりますけれども、一応預金の目減りの問題については、先ほど言ったように、それこそ何兆円にも及ぶ大幅な目減りをしているという事実はお認めになったわけでありますし、どうかそういう意味でこれから前向きに、銀行といっても大小いろいろありますから、一がいに全部を改めるわけにはいきません。政策当局もすべて合体して考えなければならぬことは私も十分わかります。しかし、企業努力もなお一そう続けられるように要望いたしまして、終わりにいたします。
  74. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 竹本孫一君。
  75. 竹本孫一

    ○竹本委員 佐々木さんには今回は全銀協会長に御就任になりまして、たいへん御苦労さまでございますが、ひとつ新鮮な感覚で大いに活動していただくように御期待を申し上げておきます。  時間もだいぶたっておりますので簡単にお伺いしたいのだが、いまの目減りの問題は、御承知のように、私も関係がありますが、全繊維同盟では大阪の地方裁判所に訴えております。裁判でどういう判決が出るかということと別に、やはり姿勢の問題として、この問題には積極的に取り組まなければならぬ。取り組み方の困難なことはいま佐々木会長の御説明のありましたとおりで、そのことはよく私どももわかります。しかしながら、根本は総需要抑制であり、物価の安定であるということが話の中心になるわけですけれども、しかし、これは政府も努力をされておるけれども、なかなか物価は安定いたしませんので、それまでの間のインフレの被害をどうするかという救済の問題ですから、そういう形であるいは一定の貸し出し金利も上げなければならぬ場合もあるでしょう。もちろんそれはいろいろ内容によって選別をしなければなりませんが、そういうことで、本格的な取り組みをひとつ要望いたしておきます。  きょうは、いまお話がありましたが、拘束性預金と独禁法の問題についてちょっとお伺いをしてみたい。  初めに、もう時間がありませんから、端的に私は最近手に入れた具体的な例を一つ申し上げます。  ある一つの中小企業銀行さんに、これはAという名前にしておきます、富士銀行ではありませんが、Aという銀行にお金を借りに行った。七千万円貸してもらったのであります。その七千万円貸してもらってありがたかったけれども、いわゆる拘束性預金というようなことで、一千万円銀行の手元にとどめられた。ところが、さらに次の問題があるわけですけれども、おれの銀行ではいま手元資金が十分でないから、別の会社を紹介するからそのほうに行ってこれを借りなさいということで、肩がわり先をあっせんしたわけであります。その肩がわり先は、これは名前を申し上げてもいいかもしれませんが、日本貿易信用株式会社という、貸し金業者か何か知りませんが、そういう会社である。しかし銀行が紹介したんです。そこに参りますと、今度は保証金ということで二割、千四百万円押えられた。金利は一五・二五%であります。  そこで、まとめて申し上げますと、まず一千万円の両建てで押えられる。二割千四百万円保証金でとられる。金利は一五・二五%である。担保は別に七千万円分の担保を銀行が押えておる。こういうことなんですね。そうしますと、担保をとられた上に、実質の金利は、その業者にとっては二〇%ぐらいになる。いま正常な事業経営をやると、これは会長も御理解いただいておると思いますけれども、二〇%の金利ということになれば、全く事業経営を安定的に行なうことはほとんど不可能に近いと思うのです。  そこで、いろいろこれに関連してお伺いをしたいと思うのですが、まず第一は、中小企業に対する貸し出し金のシェアというものは、都市銀行の場合でも、私がざっと計算してみると、いま三七%ぐらいになっていると思うのですね。ずっと前には二五%でございましたから、いろいろ御努力をいただいて改善されたあとがあることも事実です。しかし、中小企業が大体において生産についてもあるいは輸出貿易等についても、約五〇%のシェアをになっておるわけです。五〇%のシェアを受け持っていくということになれば、五〇%の生産資材も必要であろうし、したがってまた、五〇%の金融もなければならぬはずなんですね。もちろん政府三機関もありますのでその分を省くとしても、三七%ではまだ低過ぎはしないか。それから、それがだんだん金融引き締めの段階においては狭められていはしないか。  次に、中身を見ますと、四三%ぐらいまで中小企業貸し出しシェアがある銀行もありますし、これは名前を言ってもいいが、三井銀行のごときは二七%に低迷しておる。  そういう点について、まず一つはこの金融引き締めの段階において、中小企業金融というものは非常に困っておると思うのだけれどもシェアは平均で三七%程度、少ないところは二七%前後、そういう銀行あり方は全銀協会長としてどういうふうに受けとめられるか、これをまず第一点に伺いたい。
  76. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 中小企業シェアは、大体ただいま竹本先生のおっしゃったとおりだと思います。ただ先生もおっしゃいましたように、私どももこれではいかぬということで、中小企業シェアをふやすように努力をいたしまして、その結果、これも先生からお話のございましたように、ウエートは上がってきております。  そこで、こういう金融引き締めになりまして、シェアが落ちるのではないかという点でございますが、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、大企業に対する貸し出し充足率を非常に低くいたしております。中小企業に対する充足率を非常に高くいたしておりますので、私はこれも先ほど申し上げました、以前は金融引き締めになりますと中小企業に全部しわを寄せておりました。それをいたしておりませんで、むしろ比率的には大企業にしわを寄せておりますので、中小企業の比率はこの金融窮屈なときにおきましても落ちないのではないか。私のほうの銀行についていいますと、むしろふえております。各行も今後はそういった方面の努力をしていくであろう、こういうふうに私は考えております。  三井銀行のいまお述べになりました数字、私も具体的に存じませんけれども、おそらく三井銀行さんとされましてもこれではいかぬということで、もちろん銀行によりまして取引構造の違いもございますけれども、いろいろ努力はされるのではないか、こういうふうに考えております。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 商社が一時えらい問題を起こしましたが、商社に対する銀行貸し出しはまだ調査が大蔵省でもまとまっていないように思うのですけれども、無担保があるいは四割、あるいは五割、あるいはもっと多いかもしれぬ。そういうように無担保で商社には金を幾らでも貸し出すような銀行に限って、中小企業に対する貸し出しシェアが少ないというふうに私は思うのです。そういう意味で、いま申しましたように、二七%なんというようなシェアはすみやかに改めるべきであるというふうに思いますので、これは全銀協会長がどれだけの権限を持っておられるか、非常にむずかしい問題ですけれども、要望というか希望を申し上げておきたい。  次に、いまの拘束性預金の問題ですが、先ほど来いろいろ会長からも御答弁がございましたし、大蔵省並びに全銀協からの通達等については、まことに封筒の大きさから活字の大きさまで懇切丁寧に指導をされておることも理解できます。しかし、まず一つ私がお伺いしたいことは、債務者預金というものと拘束性預金というものがありますが、その拘束性預金というのと債務者預金との選別ですね。たとえば、都市銀行が三十六兆円貸し出しておる、債務者預金は十七兆円近くある、拘束性預金は七千九百七十八億だというのが去年の十一月末現在の数字ですが、その場合に、拘束性預金というのは目じるしがあるのかあるいは銀行の一方的な解釈であるのか、どういうことかというその線の引き方ですね、それはどういうことになっていますか。
  78. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お答えをいたします。  拘束性預金とは、やはり借り主と話し合いをいたしまして、これだけのものは拘束をいたします、銀行了解いたしません場合は預金の引き出しはできませんというのが拘束性預金だ、こういうふうに考えます。債務者預金につきましては、これは拘束をいたしておりませんので、いつでも債務者の希望に応じて引き出せる預金だ、一応こういうふうに私は考えております。
  79. 竹本孫一

    ○竹本委員 ところが、この銀行は、先ほど申しましたAという銀行にしておきますよ。その銀行は、定期預金証書一千万円というのをちゃんと受け取りを出しておるのだけれども、先ほど来のお話の出ました拘束預金に関する御通知として、そのA銀行が、当行の貸し出し金に関連してお預けになっておる御預金は何々現在このとおりと書いて、拘束性預金の問題については該当なしと書いてある。該当なし。そうすると、ちょっと納得できないのですね。そういう点はどうでしょうね。
  80. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 私にもちょっと納得いたしかねます。
  81. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、これは大蔵省にも要望しなければならぬし、全銀協にも要望しなければならぬが、AならA、BならBという銀行が拘束性預金は二・二%になったとか六%になったとか言うて、数字の上の報告を見ればだんだん改善されていることは事実ですけれども、一番大事な最初のデータが、一千万円絶対にこれをくずしてもらっては困るということをはっきり本人に言っているのです。これはくずしてはいかぬ、こう言っているのだから拘束でしょう。ところが、通知は該当なし、こう書いてあるわけです。そういうようなインチキといいますか何といいますかをやられたのでは、統計数字上いかに改善されても、何にもならぬ。これは大蔵省もしゃんとしてもらって、そういうことがないように、ほしければ事実を差し上げますから、もっとよく指導してもらわぬといかぬと思うのですね。  それからもう一つ、貸し金業の問題も本委員会においていろいろ問題がありましたけれども、えりを正させるという意味においては、ないよりもこれを認めて、一つの秩序化をしたほうがいいだろうということで、あれは議員立法でできました。そこで、いま申しました日本貿易信用株式会社というものの役員や資本を見ると、こういうことになるわけです。  役員等を見れば、これは大蔵省に調査してもらったのだが、専務取締役は、日本銀行の人事部長を経て入っていった人である、人事部長を経てまた商工中金にも入りましたが、こういうことになっている。もう一人日本銀行から入っておる。それから都市銀行からも入っておるし、大蔵省からも入っておる。いろいろ大事な人が入っておる。この日貿信というのは、御承知のように、台湾銀行のいろいろあと始末みたいなものでしょうから、特殊な関係があることもわかりますが、そういう人たちが入っておる。また、そういう都市銀行等も関係しておる。まだ私の調査が不十分で、これからでございますが、都市銀行からもだいぶ金を回していると思うのですが、そういうふうにしておるところが、いま申しましたように、実質において二〇%の金利というようなことは、これは法律からいえば、貸し金業なら二〇%でも別に問題はないかもしれません。しかしながら、ただ銀行の姿勢という問題からいえば、日銀の卒業生も入っておる、都市銀行からも入っておる、あるいは大蔵省からも入っておる、そういうような人的構成の中で、そういう貸し金業者という形で二〇%ももっとのものをやっておるということは、やり方としてあまり健全なやり方ではないと私は思いますが、いかがですか。
  82. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 最初の拘束預金についての問題でございますが、確かに先生お話しになったような、統計上の数字には拘束預金なし、しかし、お客さまの関係では拘束しておる、そういった事実が幾つかあったのだと思います。そこで、大蔵省からの私どもへの通牒もそういったことの絶対にないようにということで、それを受けまして、全銀協といたしましても各銀行に連絡をいたしております。そして、今後はそういった実態と違う虚偽の報告をいたしました場合は、その銀行のしかるべき人に責任をとらせるということで処理をいたすようになりましたので、そういった虚偽の報告は今後はなくなる、こういうふうに私は思っておるわけであります。  それから、ただいまの貿易信用の話でございますが、実は私も実態なり現実にどういう貸し出しをいたしておりますか存じませんので、はっきりした御意見も申し上げかねますけれども、竹本先生のおっしゃったようなことが事実だと思います。そうといたしますれば、やはりいろいろな面で、日本貿易信用といたしまして、また、あるいは株主であるあるいは役員を出しております銀行といたしまして、あるいは日本貿易信用に貸し出しをいたしております銀行といたしましても、十分いろいろな面を検討、反省する必要があろうかと思います。
  83. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、その拘束性預金数字の問題はいま申しましたところとして、これと独禁法違反の問題との関連についてお伺いしたいのですが、時間がありませんので簡単に申し上げますが、独禁法の第一条を見れば、不公平な取引方法をやってはいかぬ、事業活動の不当な拘束をやってはいかぬ、国民経済の民主的で健全な発達を促進するのだということが書いてある。第二条の第七項の第二号には、不当な対価をもって取引することはいけないのだ、第四号には、相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引することもいけないのだ、第五号には、自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引することも独禁法違反であると書いてある。さらに、独禁法第十九条を見れば「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」こういうふうに書いてあります。そういう意味で、公正取引委員会においても、この独禁法第二条並びに第十九条に基づいて、拘束性預金というものは独禁法違反の疑い十分だという意味だろうと思うのですが、予備調査を何回かやっておられる。  その意味で、いまお伺いしたいことは、拘束性預金調査というものを昭和三十八年以来公取でやっておる、その根拠法はいま申しました第二条、第十九条が中心だと思う。そしてこれは私は明らかに第二条、第十九条違反である、かように思いますが、きびしくこれから対処されるという会長のお気持ちはよくわかりまして了解いたします。しかしながら、現実にそういうようなものがまだある、これも事実でありますから、あるものについては、これは私は独禁法違反で処罰すべきだというふうに思いますけれども、いま申しました、銀行から七千万円借りても実際は二千四百万円は使えないのだ、こういうようなことになって、実質金利が二〇%をこえるようなことではまじめな商売はできません。だから、そういう意味でも、自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引をしておるという独禁法の第二条第七項第五号には全くぴったり当たっておる、こういうふうに思うのですけれども、これに対する御見解並びに御決意のほどを伺って終わりにしたいと思います。
  84. 佐々木邦彦

    佐々木参考人 お話はよくわかります。公正な取引という点から竹本先生は問題にされていると思いますが、私どもといたしましては、そういった不公正な取引のないように、そういったことのないように、今後自粛、徹底してやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  85. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあここではそれだけでいいのですが、私が伺いたいのは、不公正な取引がないようにという御努力も願うとともに、これは不公正な取引であって独禁法違反ではないかということを申し上げたのですけれども会長も大体おわかりのようですから、もうこのくらいにして、これからの問題としてきびしく対処されることを要望して終わります。
  86. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  佐々木参考人には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時十八分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  87. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後の議事は、政府関係中小企業金融三機関から、それぞれ最近の金融情勢について御意見を承ることといたしております。  参考人として、商工組合中央金庫副理事長広瀬駿二君、説明員として、中小企業金融公庫総裁吉岡英一君及び国民金融庫総裁澤田悌君の各位に御出席をいただいております。  各位には、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。最近の金融情勢について、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度にお取りまとめいただき、そのあと委員からの質疑お答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に、参考人商工組合中央金庫副理事長広瀬駿二君にお願いをいたします。
  88. 広瀬駿二

    広瀬参考人 私は商工組合中央金庫副理事長広瀬駿二でございます。日ごろ何かと御支援、御高配をいただきましてありがとうございます。本日は、本来ならば理事長の高城元が出席の上御説明を申し上げるべきところでございますが、あいにくかねてから予定をしておりました出張先に出向いておりますので、私がかわりまして御説明を申し上げます。  それでは、当商工組合中央金庫の窓口から見ました最近の中小企業の業況並びに中小企業金融情勢などにつきまして、簡単に御報告をさせていただきたいと存じます。  まず、最近の中小企業の業況でございますが、当金庫が取引先でございます中小企業等協同組合などを対象といたしまして二カ月ごとに行なっておりますアンケート調査によりますと、本年二、三月期の売り上げ高が、昨年の十二月から本年の一月期に比べまして増加したという組合は、調査対象である百組合のうちの二八%に過ぎません。前期に比べまして不変であると答えたものが一九%、これを除きます五三%の組合が売り上げ高の減少を訴えております。前年同期、四十八年の二、三月の調査では、売り上げが増加したという組合は一七一%ございまして、減少したものは一三%でございました。また前期、つまり四十八年十二月ないしことしの一月の調査でも、売り上げ高が増加した組合は三八%、減少したものは三四%であったことから勘案いたしますと、この二、三月は、中小企業の売り上げ高が一段と減少いたしましたことがうかがわれるわけでございます。  この原因といたしましては、申し上げるまでもなく、昨年来の総需要抑制政策の浸透によります需要の減退が考えられるわけでございますが、中でも繊維などの市況商品を中心といたしました販売価格は著しく低下しておりまして、不況色を濃くしております。  また、製品在庫につきましても、売り上げ高の減少などに伴いまして、在庫が増加したという組合が、前期の調査、つまり昨年の十二月ないし今年の一月の調査では二〇%でありましたものが、今期、つまりこの二、三月には三九%とほぼ倍増いたしております。  一方、採算面につきましても、全般的に一段と悪化しておりまして、中でも繊維、建設などの業種におきましては、こういう傾向が顕著にあらわれております。この原因といたしましては、原材料高の製品安という傾向が本格的になってまいりましたことのほかに、売り上げ高の減少、諸経費の増高などの要因があげられるわけでございまして、今後さらに一段と深刻になってくるのではないかと心配いたしておるわけでございます。  以上、申し述べましたように、中小企業の業況は悪化の一途をたどっておりますが、それと同時に、企業金融の環境も一段ときびしさの度合いを強くしております。  当金庫のアンケート調査によりますと、この二、三月期には、前期に比べまして市中金融機関からの借り入れが一そう困難になったと回答した組合が全体の六七%を占めておりまして、借り入れが容易であると答えたものは皆無という状況でございます。  最近の中小企業資金繰りは、原材料費などの支払い条件の短縮化、受け取り条件の長期化、採算の悪化、在庫の増加、原材料の高騰、諸経費の増加、あるいは売り上げ高の減少などの要因が重なっております上に、金融機関からの借り入れが困難になっておりますために、きわめて繁忙化いたしております。  このような傾向は、日本銀行の短期経済観測における中小企業手元流動性比率にもかなりはっきりとあらわれておりまして、昨年十二月末には、前回金融引き締め時のボトムであります四十五年三月と同じ水準の一・四四カ月までに落ち込んでおりまして、さらに六月末の予測では一・三五カ月に一段と低下することが見込まれております。このような情勢から、企業の倒産件数は月を追うごとに増加の一途をたどっておりまして、この三月にはついに一千件の大台を突破いたしましたことは、すでに御高承のとおりでございます。  このような情勢の中で、当金庫に対する資金需要も当然増加をいたしておりまして、本年一−三月の申し込み額は累計額で昨年同期比の約三七%増しの一兆四百二十二億円となっております。  この借り入れ申し込みの内容を資金の使途別に申し述べますと、設備資金は前年同期に比べまして約五三%減少いたしております反面、運転資金のほうは、長期運転資金で前年同期化の一八三%の増加、短期運転資金では同じく四九%の増加となっております。   〔委員長退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕  このように、中小企業資金需要が運転資金、中でも長期運転資金に集中いたしておりますことは、最近の中小企業資金繰りの逼迫状況を如実に物語るものでございます。長期運転資金の申し込みの中には、売り上げの減少、赤字補てん、支払い条件の短縮などの要因によるうしろ向き資金が圧倒的に大きな比重を占めております。また、短期運転資金の大半を占めております商業手形の割引につきましても、市中金融機関のしわ寄せや手形決済期間の長期化などによる割引ワクの増額要請が多くなっております。  今後五月、六月にかけまして、オイルショック以降決済期間を短縮された支払い手形と従来の決済期間によります支払い手形の決済時期が重複して到来いたしますことと、賃上げ、夏期賞与の増大による諸経費の増高、あるいは先ほども申し上げましたうしろ向き資金需要などが集中いたしますために、中小企業、中でも繊維、建設あるいは一部機械関係の下請企業などにおきまして、資金繰り逼迫の度合いが一そう強まるものと考えられます。  当金庫といたしましては、四十九年度の財政投融資計画におきまして決定いたしております年間の貸し出し増加額二千八百六十六億円のほぼ三五%に当たります一千億円をこの第一・四半期に手当ていたしますとともに、緊急度合いの高い運転資金を優先的に取り上げることによりまして、倒産などの社会的、経済的摩擦をできる限り未然に防止してまいる所存でございます。しかし、今後引き続き借り入れ申し込み額が高い水準に推移することが予想されますので、主務省と御相談の上、適切に資金需要にこたえてまいりたいと存じております。  以上、簡単でございますけれども、最近の中小企業金融情勢などにつきまして御報告をさせていただきました。どうもありがとうございました。
  89. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 次に、中小企業金融公庫総裁吉岡英一君にお願いいたします。
  90. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 中小企業金融公庫の窓口から見ました中小企業動向あるいは資金需要動向について、御報告を申し上げます。  中小企業動向につきましては、ただいま商工中金のほうから御報告がありましたと大体同じように見ております。ごく概略を申し上げたいと存じますが、昨年の石油問題が発生しまして以来、中小企業におきましては、原材料価格高騰、あるいは原材料の入手難、原材料の入手条件の悪化というようなことで、非常に運転資金需要が強まってまいりました。ことしの二月にちょうど私ども全国の支店長会議を開いたのでありますが、当時の全国の状況を振り返ってみますと、そういう状況でありましたけれども、やはり繊維あるいは建設業等にかなり問題が出つつあるという状況でありまして、その他一般には、まだ中小企業にそれほど深刻な問題はなかったように存じます。  その後、三月、四月と状況が変わってまいりまして、最近では売れ行きの不振、受注の減少に伴って滞貨の増というようなことで、一方、金融引き締めもだんだん効果をあらわしてくるというようなことから、いわばうしろ向きの運転資金需要が非常に強くなってまいっております。全体をながめまして、設備資金のほうはやはり中小企業自体にやや手据えの傾向が見られますので、それほど大きな資金需要にはなっておりませんが、ただいま申し上げましたような運転資金需要が、非常に大きくなっておるというのが現在の状況であります。  数字的に申し上げますと、私どものほうへの運転資金の借り入れ申し込みは、四十八年の十月から十二月、四十八年度の第三・四半期でありますが、八百六十億円、前年同期比一一%増。第四・四半期の四十九年の一月から三月までが千九十四億円、前年同期比六八%強の増になっております。  私ども公庫といたしましては、昨年の暮れにいわゆる年末財投の追加がございまして、例年にない一千億をこえる追加がございましたので、これをもって対処してまいったわけでございますが、本年度の四月に入りまして、第一・四半期には千九百億余り、約二千億の資金を用意いたしまして、こういう情勢に対処しようといたしておるわけであります。  運転資金増加状況をもう少し数字的に申し上げますと、御高承のように、中小企業金融公庫は、直接貸しと代理貸しと両方をやっております。資金的に見まして、大ざっぱに申しまして直接貸し、代理貸しが半々の金額でございますが、その直接貸しの中で大体従来は運転資金の割合というのは一〇%以下でありました。昨年の十二月までも一〇%以下の数字であったのでありますが、一月に入りまして一〇%、二月に入りまして二三%、三月に三二%、だんだん運転資金の比率が上がってまいっております。それから代理貸しのほうにつきましては、昨年の十二月末は五五%程度のものであったのでありますが、これも一月に入りまして、六〇%、六六%、六九%と、七割近いような運転資金の割合になっております。先ほど申し上げましたように、約二千億の資金をもって、その中でも最も緊要であります長期運転資金を優先的に取り上げてまいりたいと思っておるのでありますが、これからだんだん事態が一般化し、かなり深刻になっていくように思われますので、商工中金からも申されたのでありますが、関係御当局とよく相談をいたしまして、その資金需要に対応できるように十分の措置をこれから講じてまいりたいと考えております。  なお、こういう状況でありますので、従来貸し付けをいたしましたものの返還がかなり困難になってきております。そういう意味で、返済の条件の改定についても、できる限り実情に応じておこたえをするつもりでやっております。ただ、一般的に推測いたしますほど返済条件の改定の申し出はございません。きょうもたまたま全国の支店長会議を開いておりまして、各地の模様をただしたのでありますが、著しい例は、福井の支店で四月に入りまして、代理貸しでありますが、百件をこす返済条件の改定をいたしております。それが目ぼしいものでありまして、まだ現実には返済条件の改定についての特段の御要望はそれほど多くはございません。  現在のところそういう情勢でありますが、今後いろいろ事態が深刻化いたすであろうと思いますので、十分な措置をとってまいりたいと思っております。  以上、御報告申し上げます。
  91. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 次に、国民金融庫総裁澤田悌君にお願いいたします。
  92. 澤田悌

    ○澤田説明員 澤田でございます。  国民金融公庫の業務を通じて見ました状況を御報告申し上げますが、さきのお二人のお話にございましたような傾向とそう違った面はございませんので、若干重複する点は御了承願いたいと存じます。  御承知のように、国民金融公庫の融資先は非常に小規模零細企業でございますので、特に経済情勢影響を受けやすいのであります。総需要抑制策の効果が実体経済面に浸透するにつれまして、去る二、三月ごろから停滞色を濃くしてまいっておる次第でございます。  国民公庫の融資先の最近の景況調査によりますと、いずれの業種も、売り上げの伸び率が前期に比べて低下いたしております。また採算状況も、全業種とも悪化の傾向を強めておりまして、資金繰りの苦しさを訴える企業増加しておるのでございます。各企業が現在の問題点としてあげておりますものを整理してみますと、これまでの人手不足というのが一番深刻であったのにかわりまして、売り上げの不振、支払い期間の短縮というようなものが増加しておるのもこういう傾向のあらわれでありまして、この先の見通しについても、警戒的な見方が強くなっておるようであります。  こうした状況を反映いたしまして、融資の返済条件の変更を求めるケースも増加いたしておりまして、融資先の倒産もふえております。国民金融公庫の融資先は百数十万件ございますので、毎月かなりの倒産の数字が出るのは避け得ないのでありますが、一ころ月二百件台くらいに減ったのでありますが、ごく最近は、毎月五百件台の倒産が見られております。こうした傾向は、市中の信用調査機関の発表いたしております傾向と大体一致いたしております。  さらに、業種別動向を見ますと、たとえば、機械製造業の中でも造船とか精密機械、農機具あるいは省力化とか公害防止機械、こういったものに関連するものは比較的まだ堅調でございます。自動車あるいは家庭電器、建設機械、繊維機械などに関連するものはかなり苦しくなっておりまして、一方また、絹織物、綿織物等の繊維関連の製造業及び建設業等は、停滞色を一そう強く出しております。このように業種によってかなり差異があります点も、現在の中小企業の景況での一つの特徴といえるようでございます。  次に、このような情勢を反映いたしまして、国民金融公庫への借り入れ申し込みはきわめて高い水準に推移いたしております。四十八年度を通じての普通貸し付けの申し込みは、金額で申しますと、前年度に比べて四六%増となっておるのでありますが、特に今年の一−三月期は六五%増に高まってきております。四十九年度、この四月以降も、まだ数字はまとまっておりませんが、窓口の状況から見ますと、依然として高い水準を示しているように見受けられるのであります。  最近の申し込みの特徴は、採算、資金繰りの悪化等を反映いたしまして、運転資金の割合が急増いたしております。昨年の一−三月は六五%でありましたが、今年の一−三月はこれが七三%と運転資金の割合が非常に高くなり、設備資金のほうは伸びが純化いたしておるのでございます。また、業種的に見ますと、先ほども触れましたが、建設業、卸売り業、製造業といったところが多くなっております。地域的には、関東、近畿といった大都市地域で強い資金需要が見受けられるのでございます。  それで、このような申し込みの増加に対しまして貸し出しのほうも、四十八年度は対前年度比三五%増に当たる九千九百四十四億円の普通貸しを実行いたしたのでありますが、四十九年度につきましては、年間計画九千九百二十八億円になっておりますが、第一・四半期の四−六月に二千五百八十億円の貸し出しを予定いたしております。これは、昨年の同期に比べますと、実質三九%の増加に当たる貸し出し計画でありまして、相当大幅な増加とはいえるのでありますが、何ぶんにも申し込みが、いま申しましたような傾向で今後も高水準が見込まれますので、貸し付けの実行にあたりましては、緊急度の高い資金を優先するなど極力弾力的に運用をはかってまいりたい、また、その資金対策につきましては、関係当局とよく連絡いたしまして適切な措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、つけ加えて申し上げますが、昨年後半からの経済情勢の変化によりまして、特に激しい影響の出ております繊維工業、建設業、それから特定の地域の地場産業等に対しましては、融資面はもちろんのことでありますが、既往の貸し付けの返済に関しましても、返済条件の変更、猶予等の措置をとるなど、特に配慮をいたしておる次第でございます。  なお、昨年の十月に発足いたしました小企業経営改善資金貸し付けにつきましては、順調に推移いたしまして、計画どおり三百億円の貸し出しを実行いたしました。この貸し付けは、御承知のように、無担保、無保証ということで小企業に非常に喜ばれております。本年度の貸し出し計画は昨年度の四倍の千二百億円に増加いたしておりますが、その運営につきましては、小企業期待に沿うよう努力してまいりたいと考えておる次第でございます。  以上、国民金融公庫の現況の説明を終わらせていただきたいと思います。     —————————————
  93. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 これより質疑に入ります。武藤山治君。
  94. 武藤山治

    武藤(山)委員 午前中も、特に金融情勢の緊迫をしてまいりました状況の中で中小企業がたいへん苦しんでいるという陳情などを受けておりますので、そういう視点から、都市銀行のほうの態度についていろいろだだしたのでありますが、午後も同じような視点からお尋ねしたいと思うわけであります。  最近の総需要抑制がかなりさいてきて、中小企業はたいへん苦しい状況に追い込まれたのではないか、新聞などもこの四月の段階からはたいへん論調も変わってまいっております。ただいま三機関のそれぞれ責任者から御報告を聞いて、なるほど末端の実情もかなりきつくなってきておるということを感じるわけであります。  まず最初に、国民金融公庫から簡単にお尋ねをいたしたいと思いますが、毎月五百件ぐらいの倒産がある、これは個人が大部分だと思いますが、この倒産の件数というのは、ノーマルな倒産の少ない状態のときと比較すると、どの程度倒産がふえておるのでしょうか。倒産の少ない通常のペースではどのくらいでしょうか。
  95. 澤田悌

    ○澤田説明員 お答えを申し上げます。  四十六年の第三・四半期ごろから一貫して倒産の数は減ってきております。先ほど申しましたように、大体二百件台ぐらいに落ちてまいったのでありますが、まず零細なものでございますので、それ以上減るというようなことは、あれだけの好況のときでもなかなかむずかしいという感じを私ども持っております。それですから、ノーマルと申し上げでいいかどうか知りませんが、まあ二、三百件ぐらいのものであれば、百数十万件の中のものでございますから、その程度でとどまっておればいいのではないか。これが昨今のように五百件もこえては少し心配だ、こんな感じでおる次第でございます。
  96. 武藤山治

    武藤(山)委員 五百件というのは通常の約倍近い倒産件数でありまして、これは業者にとってはたいへんな事態だと思うのであります。こういう五百件の倒産件数の中に含まれておる人たちというのは、国民金融公庫から融資を受けておる人ですか、受けていない人も含めての話ですか。これは一応多かれ少なかれ国民金融公庫の融資の対象になって、現実に融資を受けておるという人ですか。
  97. 澤田悌

    ○澤田説明員 公庫の貸し出し先でございます。
  98. 武藤山治

    武藤(山)委員 おたくのほうから出している「国民金融公庫の現状」という中からちょっと数字を調べてみますと、最近一月の申し込み件数と実際に融資した件数との差は、一万二千六百六十件もございますね。そうすると、国民金融公庫へかけ込んで何とか助けてもらおうと思った人でも、一万二千六百六十人も結局借りられないのですね。金額にして一月が三百八十三億円。この傾向が今日どうなっておるのだろうかという関心を持ったわけでありますが、二月をちょっと調べてみると、二月も申し込み件数が五万九千三百七件に対して貸し付けは四万三千七百五十五件だ。これまた一万五千五百五十二人借りられない人が出ているわけですね。金額にして四百八十四億四千九百万円、希望した人たちがはねられている。たいへんな金額ですね。  国民金融公庫へかけ込むような業者は、もう他の金融機関へ行けない、大体もう国民金融公庫しか借りられそうもないという人たちがかなりの部分だろうと思うのですね。信用金庫でも担保がなくておまえだめだとか、また市中銀行はなおさら、君のところはちょっとめんどう見られぬというのが、大体寄せ寄せで国民金融公庫へ寄っていくわけですね。それが一カ月に一万五千人も断わられてしまうということはたいへん残念なことであるし、一体、断わられちゃった人たちがどういう状況になっているだろうかということを想像すると、何かぞっとするような気がするんであります。おそらく借り入れができなかったこの二月の一万五千五百五十二人は、相当苦しいやみ金融かなんかをやっているんじゃないかと思うのですね。まあやみ金融金利の問題や状況はあとでお尋ねすることにして、三月はわかっていますね、三月の状態、四月の状態というのは、こういう申し込みに対する貸与件数というのはどんなぐあいになっていますか。
  99. 澤田悌

    ○澤田説明員 一月、二月はおっしゃるとおりでございますが、三月に財投の追加もございまして、未処理日数にして相当残っておりましたものが、大体平常のペースに返ったと存じております。三月で申しますと、申し込み件数が六万六千三百件余でございまして、金額が千四百十億円。いま申しましたように、時間的にずれてまいりましたものが財投の追加等で処理が年度末に進みまして、未処理日数も三十日見当になっておる次第でございます。
  100. 武藤山治

    武藤(山)委員 総裁、いま申し込み件数が六万六千三百件、金額が千四百十億と言われましたが、貸したのはどうなりますか、貸した件数と金額は。
  101. 澤田悌

    ○澤田説明員 失礼しました。貸し出しが三月に五万九千九百件余、金額で九百六億円になっておる次第でございます。
  102. 武藤山治

    武藤(山)委員 やはり二月の傾向がさらに高まっている。いわゆる資金需要というのが非常に旺盛である。雰細業者が非常に苦しいという状態が、この数字でさらに明らかに出てきたような気がいたします。千四百十億の希望に対して九百六億ということは、やはり五百億ばかりが資金不足。二月が四百八十四億。これは全く貸しては相ならぬという申し込み者なんでしょうかね。全く貸せる条件のない、全然国民金融公庫で問題にできないような人たちがこんなにもいるんだろうか。それとも、資金量がきめられておりますから、一応四半期別の貸し出し金額のワクがはまっているために、希望があっても貸せないという残念な結果なのか、どちらに原因があるのでしょうか。
  103. 澤田悌

    ○澤田説明員 先ほど未処理日数と申しましたのは、結局、貸し出し条件を満たし得ないというものではございません。貸し出しても差しつかえはないが、手続上あるいは資金の都合上まだ実行できないもの、そういうものでございます。それが大体多いときには三十数日残る、少ないときは二十一、二日まで減る、こういうような形になっておる次第でございます。
  104. 武藤山治

    武藤(山)委員 よくわからないのですが、こういうことですか。  貸借対照表か何かでいうならば、売り掛け金みたいなやつですね。たとえば三月の二十五日から三十日までに申し込んだ五日間の分が、ちょうど三十日の締め切ったときに残っている、こういう意味じゃないのでしょう、このはみ出たのは。結局、あなたには貸せませんといって却下になった数が先ほど出てきた数字なんでしょう。たとえば、二月が一万五千五百五十二件、三月が六万六千の五万九千ですから約七千何百人というのは、これは繰り越している数字じゃなくて、この人たちは完全に借りられないのでしょう。翌月に借りられることになるのですか。
  105. 澤田悌

    ○澤田説明員 ちょっとお答えが不適当でございましたが、普通貸し出しの処理状況を見ますと、貸し付けは件数で大体九〇%ぐらいは合格する、一〇%はもうその条件を満たせないのでやむを得ずお断わりする。金額で七〇%ぐらいというようなことになっております。ですから、先ほども申し上げました裸の申し込み件数から申しますと、その中にはこの一〇%も入っておるわけでございます。それで、合格したものでたまっておるものが二十日分とか三十日分とか、こういう形になるのでございます。  訂正して、お答えを申し上げます。
  106. 武藤山治

    武藤(山)委員 この間、緊急融資で五百五億円がこの三機関に配分をされたと新聞に出ていましたね。その五百五億円というのは、どういうぐあいにこの三機関に分けたのですか。国民金融公庫分はどのくらいだったのですか。
  107. 澤田悌

    ○澤田説明員 二百五十億円と存じております。
  108. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまこの数字をずっと概観しただけでも、資金需要がたいへん旺盛であり、充足率が落ちている、私はこういう判断をしていいような気がいたすのであります。でありますから、国民金融公庫にもっと資金が豊富にあるなら、もっともっと貸し出しはふえるんじゃないか。資金量のめどが一応きめられているために完全に貸せない、こういうのもかなりまだある、こう見ていいのですか。
  109. 澤田悌

    ○澤田説明員 ある程度おっしゃるとおりでございまして、金融が非常に緩和いたしまして公庫に対する申し込みの減りました金融緩和の時期には、公庫のいわゆる未処理日数というのが二十日を切って非常に処理が進んだということから考えましても、資金の点が潤沢でありますれば、ある程度そういう処理を進めることができると申し上げられるかと思います。
  110. 武藤山治

    武藤(山)委員 銀行局長、幸いきょうはオブザーバーでいらっしゃいますから、いまの中小企業状況、三機関からいろいろ御説明いただいたのを聞いて、日本の金融の総元締めである銀行局長として中小企業金融に対する感じですね、何かちょっと所感を述べていただきたいのですが。
  111. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 はなはだ僣越でございますが、それではお答えさしていただきます。  いま御説明がございましたように、あるいは武藤先生の御質問の背後になっておるその御印象からもうかがえるわけでございますが、四月に入ってからの金融引き締めが浸透していくということについては、これは一−三月に比べますとかなり急速にあらわれつつあると思います。特に商社金融の手詰まりからする、その系列下にある中小企業、あるいは先ほども御説明がございました繊維、建設あるいは自動車関係の不振による、そのすそ野にございます中小企業の方々の資金需要、あるいは統計にも出てまいりますように、倒産事情が、従来でございますと、どちらかというとやはり本業以外、あるいは非常に放漫な経営をした方々の倒産というのが目立っておったのが、最近は売り上げ不振であるとかあるいは回収困難といったような、一般的な引き締めからくる事情が出てきたということは、四月に入りその様相が濃くなってきたと考えております。  ただ中小企業全体といたしますと、わが国の経済の付加価値生産の約半分を占めておる大きな部門でございますので、総需要抑制の対象といたしましては、多かれ少なかれこれの対象とならざるを得ないという面がございます。ただ私どもといたしましては、その場合に健全な中小企業というものに対してはできるだけの手を打っていくべきである、かように考えて、現在その対策等について研究をいたしております。  かねてから四十九年度の第一・四半期については、先ほどもちょっとお触れになりましたように、非常に従来と違って、四割に達する、あるいはその他の金融機関についても、それに近いような貸し付け規模を拡大してこれに備えておったわけですが、何ぶんいまのような事情でございますので、これに対して何らか機動的にそのワクについても考えていかなければいけないということで、現在関係当局と検討中でございます。同時に、けさほどおそらく全銀協会長からも御説明申し上げたと思いますが、通常の民間ベースによる金融に加えて、民間部門として三千二百億を用意いたしまして、比較的金利の安いもので健全な中小企業がしわ寄せで倒れる場合には手当てしていこうという、かつてない措置も加えておるわけでございます。  現在の総需要抑制の対策の中でございますので、十分とはいきかねるとは思いますが、必要最小限度の手当てをしていく必要があると思います。また、そういうことをやっていくことによって、総需要抑制策を長期に続け得る条件が整っていく。現在の状況でございますと、まだまだ総需要抑制策は堅持していかなければならない、かように考えておりますので、それをやっていくためにも、中小企業の方々に不当なしわ寄せをやらないということが必要最小限の条件ではなかろうか、かように考えております。
  112. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうは銀行局長と質疑応答をやる時間じゃないから、あまりあなたにばかり質問すると参考人に失礼でありますからやめますが、先ほどの三千二百億円の都市銀行の話も、あれは石油ショックに関連をする企業という限定がついていて、このままでは貸せないのだ、だから早急に全銀協としては、貸し出し対象のワクを、今回の引き締めによる影響中小企業が苦況に立ち至った場合に使えるようにしたい、これからそういうことを全銀協も検討し直すということなんですね。あれはあくまでも石油危機の場合の手当てとして用意した、ネオンサインとガス会社関係、二者だけ出しました、こういう話でありますから、今度はこれを不況対策に、中小企業危機対策にそっくり残りを使えるように、銀行局としてもせっかく銀行協会とも十分ひとつ早急に詰めて、ワクを、業種をきめてもらいたい、それは希望しておきます。  私はふしぎに思うのは、金をかなり出した出したといっても、卸売り物価上昇率というものを勘案してみると、いまの国民金融庫総裁の話を伺っても、資金量は三九%しかふえていないのですね。四十八年度に対する四十九年度の資金貸し付け額の伸びというのは三九%だ、前年同期比で。そうなってみると、物価はどのくらい上がったかというと、卸売り物価は三月末で三六・四ぐらい上がっているわけでしょう。そういたしますと、仕入れをする資金、さらに手形を割る資金の量というのは、同じ量を動かしていても、物価が上がった分だけ資金量がふえるのですね。だから、そのまま推移したと仮定をしても、三六・四%というのは当然その資金需要がふえてしまうのです。  さらに今日は、在庫がどんどんふえてしまう、売れ行きが不振である、商社から資金手当てをしてくれていたのが、商社が手当てをしてくれない、いままでは品物を商社が在庫として引き取ったのを引き取ってくれない、そういういろいろな問題が出てきているわけです。  でありますから、その卸売り物価の上がった点だけを見たって三六%以上になるのに加えて、いまのような条件が加味されると、かなりの部分増額してもらわぬことには、とても資金需要に追いつけない。あまり資金需要をそのまま満たすと銀行局長からおしかりを受けるのじゃないかなんという心配は、私は国民金融公庫の場合にはない、こう断定していいと思う。国民金融公庫に行っているのは、それはまことに零細な業者なんですよ。だから、下請のまたその下請、大体第三次下請ぐらいな連中なんです。そういうところの要望に対して、月に一万人以上も断わられているというのは、これはちょっと放置できませんね。だから私は、国民金融公庫に対して、やはりこういう事態になったら思い切って需要動向というものを勘案してひとつ手当てをしてしかるべきである、こう考えるのです。  あとで理財局長には金のほうの出しっぷりについて質問いたします。私はばかでかい金額を出しなさいとあなたに要求したいと思うのでありますが、いずれにしても、そういうような状況でありますから、中小企業金融というのは特別にやはり早急に手当てをし、実行に移さなければいけないと強く感ずるわけであります。  次に、中小企業金融公庫のほうでございますが、中小企業金融公庫の状況についても、先ほど指摘がありましたように、運転資金需要がかなり旺盛になってきている。一〇%、二三%、三二%、三月が三二というぐあいにパーセントもふえてきている。業者が一番喜ぶのはやはり中小企業金融公庫と国民金融公庫ですね。これは両建てがない、貯金しろと言われないのですね。このごろは商工中金も貯金をしてくれなければということをあまり強く迫るものですから、ちゅうちょする向きもあるのでありますが、この中小企業金融公庫の場合は、そういう意味でたいへん業者は希望するわけでありますが、なかなか希望どおりにいかない。特に直接貸しを希望するのだけれども、直接貸しのワクがもう一ぱいだ、代理貸しでひとつ銀行を通じて出してくれ、こう言われる。そうすると銀行のほうは、いやうちのほうはワクがなくてなかなかできない、いや公庫に行って特別にワクがあると聞いてきたから何とかしてくれ。こういうことで手間がかかってやっかいだ。また、いろいろなうちに、一割ぐらいはうちの銀行に貯金をというようなことで、両建てにされちゃうんですね。だから、銀行経由で申し込むのをついつい業者はいやがる。直接支店に行って借りるほうがすかっとしていていい、こういう声も中小企業金融公庫の場合聞くのであります。  いずれにいたしましても、中小企業金融公庫の資金も私はかなりふやさなければいけないと思うのでありますが、公庫の場合、特別に今回の場合はどういう業種が苦境にある、たとえば、繊維あるいは自動車の下請、金属メーカーの多いところ、特別なそういう地場産業の特殊業種の多いところにまとめて、そこの当該支店には資金を余分に出そう、そういうようなことも公庫としては配慮するのですか。それとも、例年の各支店への割合がこうある、したがってそれの何%全国平均上積み、そういう形で実績に基づいて各支店に資金配分する、そういう機械的な配分なのか。今度のように、この四−六月ごろまでにかなり起こり得るであろう、現在もうそういう状況が出てきた、そういうところには特別に余分に配分をする、そういうような配慮というのはやるのですか、できないのですか、そこはどうなっていましょうか。
  113. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お話しのように、直接貸しのほうが一般の御利用なさる方にとって喜ばれるということは事実であろうかと思います。そういう意味で、私どもとしては、全体の資金ワクの中で、なるべく直接貸しをふやす努力をいたしてきております。   〔山本(幸雄)委員長代理退席、委員長着席〕  四十八年度の数字で申しますと、直接貸しのほうは一五三%、約五割伸びておりますが、代理貸しのほうは一二二%、全体が一三五%の伸びの中で、なるべく直接貸しのほうで処理をするものをふやしたいという努力をいたしております。  その資金ワク配分の点をお尋ねでございますが、各支店の資金需要資金実績と、両方を主とした柱として配分をいたしております。したがって、特殊な事情によりまして地場産業で非常に資金需要が多いというようなときには、その資金需要を加味いたしますので、そういう御要望にもある程度応じるような配分をいたしておるつもりであります。  ただ、先ほど申し上げましたように、二月の時点でございますと、繊維と建設業というような限られた業種でございましたが、きょうの支店長会議などで聞いておりますと、その業種がかなり広がってきております。繊維、建設から、先ほどお話がありました自動車関連あるいは家庭電器の関連の下請業、印刷、木製品その他までだんだん広がってきておりまして、至るところで非常に資金需要が強いという状況になりますので、資金需要だけによって配分することはいたしかねます。やはりおっしゃったように、従来の実績、それといまの資金需要と両方を勘案して配分をいたしております。
  114. 武藤山治

    武藤(山)委員 両方を勘案して配分していただくのでありますが、持に福井あるいは足利、秩父、桐生というような繊維がかなりの部分を占めているそういう地場産業の多いところ、こういうものに対しては、ぜひひとつ総裁、御配慮をお願いいたしたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  115. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 おそらく実態がそういうことで各支店長からの資金需要が出てくると思いますので、十分にその辺を配慮して配分をいたしたいと思います。
  116. 武藤山治

    武藤(山)委員 それから、この日銀統計中小企業金融公庫の貸し付けの増を簡単にちょっと見てみましたら、十二月は前月比四百四十一億円、これは年末融資がありますからふえたわけであります。一月は百二十一億円、二月が八十八億九千万円。三月、四月は前月比どのくらい貸し出し増になっていましょうか。
  117. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 とりあえず三月の数字を申し上げますと、三月の貸し付けの実績で見まして、前年比二一%の金額になっております。代理貸し、直接貸しを合計いたしまして七百四十一億円でございます。四月の数字はまだちょっと締まっておらないと思います。
  118. 武藤山治

    武藤(山)委員 やはりここにきてかなり貸し出しが急カーブにふえざるを得ない、そういう状況にあるのではないかと思います。  そこで、中小企業公庫のほうはどうですか、その資金量は現在、申し込みに対して応ずるだけの十分の資金というのは間に合う、それともかなり新規に大蔵省から手当てをしてもらわぬと資金は足りぬ、どういう状況にございますか。
  119. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 先ほど申し上げましたように、いろいろな情勢が四月に入ってから急に変化をしてきたという感じがいたしております。したがって、以前は、先ほど申し上げました第一・四半期約二千億の資金手当てで何とかという感じでおりましたけれども、四月に変わってまいりました情勢が今後も続くといたしますと、この資金量ではいささか足りないかという感じがいたしております。  したがって、関係御当局ともよく御相談をしてという感じでおりますが、代理貸しのほうにつきましては、これは一般の市中銀行資金需要がそのままにしわ寄せを受けるという感じが非常に強いわけでございます。これの資金需要を本気で相手にしておりますと、非常出大きな金額になりますので、その辺はまた別途の考慮が要るかと思いますが、ともかく全体といたしまして、この情勢がなお深化するようであれば、何らかの手当てが必要だというふうに考えております。
  120. 武藤山治

    武藤(山)委員 現在、新聞報道によると、通産省と大蔵省と三機関の間でいろいろ詰めた数字などを報道されておるわけでありますが、四−六月で二千三百億円特別融資を三機関にしてほしい、こういう要望が通産省から大蔵省に出ておるという新聞報道であります。その場合、それぞれ商工中金、中小企業公庫、国民金融公庫別々に、わしのほうはこのくらいほしいというふうに、三機関ともみな金額を別に出しておるのですか、それはいかがでございましょうか、三機関の希望は。
  121. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 各機関とも自分のところでの一応の推定を立てて所要量を、通産省と申しますか、監督官庁のほうに申し出ていると思いますが、先ほど申し上げましたように、何ぶん四月からいろいろな情勢が非常に変わっておりますので、その辺三機関を並べながら、通産省のほうで目下御検討中だと聞いております。
  122. 武藤山治

    武藤(山)委員 理財局、どうですか、二千三百億円という新聞報道は、大蔵省のほうへまだ具体的には行っていないのですか。
  123. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私のほうは、実はごく最近通産省のほうからお話を伺い始めたところでございます。したがいまして、数字等の内容を詳しくまだ承知いたしておりませんが、大体御要望と申しますか、お話の出だしとして承っている数字は、先生御指摘のような数字でございます。
  124. 武藤山治

    武藤(山)委員 もし大臣から、二千三百億円の追加資金を財投から——預金資金からか簡保資金からか、いずれかわかりませんが、大蔵省のほうはこの程度資金を出してほしいという要求に対しては、その原資はあるのですね。あるとすれば、いま大蔵省として余裕原資はどんなものがありますか。
  125. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 先生よく仕組みを御存じのところへこういうことを申し上げるのはたいへん恐縮かと存じますが、四十九年度がただいま発足をいたしましたところでございまして、財投の計画といたしましては、この三機関を通じまして貸し出しの規模で二兆五百億、それから投融資の金額としまして一兆五百億ほどの金を用意いたしております。  ただ、当面は、年度始まりでございますから、四−六の期間の貸し付けの規模がどうなるか、こういうお話でございまして、私ども伺い始めたお話は、実は七月以降の貸し付けのワクにつきまして繰り上げて使用することはどうだろうかとか、こういう角度からの御相談をいただいてき始めたところでございます。したがいまして、直ちに運用部資金を追加するというようなお話にはならないと存じております。
  126. 武藤山治

    武藤(山)委員 七月−九月期の使う分を四−六に使う、しかし確実に最終的に何千億は大蔵省のほうで原資として出します、そういうものがなければ安心でない、三機関のほうは。そこで、私がいましつこいようだけれども伺っているのは、大蔵省としてはそういう原資をこういう事態になればこれは出さざるを得ない、そういう認識に立って話し合い、折衝を中小企業庁や通産省とやっているのだろうか、これはどうですか。
  127. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 当面のところはいま申し上げたようなことでございますが、御案内のように、中小三機関につきましては、毎年年末におきましてそのときの金融情勢等を見ながら追加を行なってまいってきております。昨年も何回か追加を行ないましたが、引き続きまして六千億程度の追加をいたしましたことは御案内のとおりでございます。したがいまして、その年末のような追加のときに、今回どういう数字に相なりますか、その金額とそのときの金融情勢を見ながらそのときの追加額をきめる、こういうことに相なろうかと考えております。   〔委員長退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕
  128. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうなってきますと、三機関の責任者にちょっとお尋ねをいたしますが、第一・四半期別に一応貸し出しワクはきめているのですね。おそらくきめているのだろうと思うのです、私、しろうとで部外者だからわかりませんけれども。そうすると、四−六月はこれだけ出せる、しかし七−九月期のものを全部食っちゃったらあとの分が足りなくなる、そこでどの程度までを四—六月期に回そう、食い込もう、七−九月の分をどのぐらいまで食い込んでもやむを得ない、そこらの判断は三者ともどんな判断をいまされておるのですか。  四−六に新たに政府としてはこれだけを追加で出すからということは、最後の詰めのときだから、十一月ごろにならないとおそらく出さないのかな。そうなると、七月−九月分をどの程度まで四−六に食い込んで貸し付けしてもいいのか、そこらをひとつ明らかにしてくれませんか。業者の聞きたいのはそこですね。どのぐらい七月−九月分を四−六月分のほうに持ってこれるのだろうか、その裁量の範囲というのはどの程度まであるのだろう。
  129. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お話しのとおりに、私ども四半期別に一応の資金ワクを監督官庁の御了解を得て実行をいたしております。したがって、そのワクを第一・四半期のワクが足りないということで第二・四半期から繰り上げ使用をするといたしますと、それについても監督官庁の御了解を得るわけでございますが、私どもといたしましては、従来、先ほど御説明のありました年末財投追加等の事例から申し上げましても、これだけの金額は繰り上げて使用していいというお話があれば、これは当然あとで埋めていただくものと非常に安心をして使うわけでございます。
  130. 武藤山治

    武藤(山)委員 後藤さん、いまのように、どの程度までに繰り上げて使っていいかということは理財局には全く関係なしに、銀行局と大蔵大臣で大体きめて指示するのですか、それはどうなんですか。
  131. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 御指摘のように、直接の各公庫の資金計画をごらんになっておりますのは銀行局でございます。私どももそれと並行いたしまして御相談にあずかっております。
  132. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、権限は銀行局長だな。銀行局長どうでしょうか。いま中小企業者の、特に零細な業者の状況というものがやや数字の上で三責任者から明らかにされました。私はかなりの部分これは四−六月に繰り上げて出さないと資金がショートすると思うのですね。そういう状況から見て、あなたの感触ではどんな手を打ったらいいと思いますか、三機関に限っての四−六月期の金融に対する対処のしかたは。
  133. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 いまのお話が何と申しましても幾ら資金を追加するかということにかかわっておるわけでございますので、その面についての対策ということでお答えをいたしたいと思います。  くどいようですが、五千五百億の第一・四半期のワクがございます。これが昨年に比べますとかなりの増額になっておる前提で、なおかつ資金需要がある、こういうことでございますので、要するに四月から六月の間における全体の貸し付けの規模がどのくらいであることがいいかということについて、現在中小企業庁と私どもと協議中でございます。私どもと申しますのは、もちろん理財局も含めてでございます。その協議の結果、二千三百億というような数字も新聞には報道されております。私どもは必ずしもその数字がそのままきまるべきものとは考えておりません。むしろ実際的にできるだけ支障のないようにというところで最大限の配慮をしていきたいということで、現在のところお答えできるのはまだその段階でございます。
  134. 武藤山治

    武藤(山)委員 どうも大臣が選挙応援に行って、そういうことをかってにばたばたしゃべられるので困るのですね。選挙区では本気にしますからね。「繊維に重点融資」と、こんなにでかく書いてあるのです。「“六月危機”にワク拡大」、中曽根通産大臣が栃木県にやってきてばあんとぶち上げているのです。これを業者が読むと、そうきまっていると思うのですよ。だからこれは安心だと思う。安心だと思ってかけ込んで窓口に行くと、公庫では、まだ従来どおりのワクの範囲内でやるので、どうもそんなに貸すわけにはいかぬのです、こうやられるのですね。一体ほんとうなのかうそなのか、ひとつ国会で確認してくれと言って、私のところに業者が新聞を持ってかけ込んできたわけであります。  だからそういう点は、大臣は政府を代表しているのであり、大臣は政府だと思われているのだから、銀行局長はいまのような歯切れの悪い答弁じゃなくて、やはりばあんと出されたら早急にひとつ協議して、この発表はうそでないんだという形の裏づけができるような答弁をきょうばいただきたかったのですが、二千三百億円はもう確実に追加として五千五百億円に上積みをする、そういうつもりで福田大蔵大臣も新聞発表をしているんだと思うんですね。だからひとつそこらを銀行局長、もう一回はっきりどうですか、そういう答弁はできないですか。
  135. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 私その新聞をまだよく存じておりませんので、あるいはお答えが間違っておるかもしれませんが、大蔵省としてそういうものをきめた事実もございませんし、また私のほうの大蔵大臣がそういうことを新聞に発表したということは聞いておりません。おそらくそうでない形で、でき得ればそのぐらいの金額を大蔵省に対して要求しておるという趣旨の発言があったのではなかろうかと推測いたしております。中小企業庁といたしましては、常に多ければ多いほどいいという立場で要求してくるのは、これまた当然のことだろうと思います。私どもはまた三機関をお世話させていただいておる立場上、現実的に三機関にできるだけの資金手当てをしてあげるべきであると考えております。その辺のところはいましばらく検討の時間をかしていただきたい、かように考えます。
  136. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産大臣は来たる十四日の閣議で決定を見たい、こう新聞に出しているわけです。そうすると、きょうはもう八日ですから、早急に詰めないと十四日の閣議に間に合わない。ぜひ十四日の閣議までに間に合うように、しかも中小企業庁、三機関の要望をへずるようなことのないように、とにかく一カ月に一万五千件も借りたい人が借りられない状況にあるわけですから、そういう点を十分踏まえて、ほんとうに雰細な中小企業の諸君が安心して経営に精進できるように、銀行局長としてせっかくの努力をピッチを上げてしていただきたい、かように強く要請をしておきたいと思います。  それから最後に、商工中金の広瀬さんにちょっとお尋ねしておきたいのでありますが、金融がこう詰まってくると、商工中金の場合は預金業務もあるものですから、預金をなかなか取りくずせない、あるいは両建てを要求される、こういう不満が業界にはやはりあるようであります。しかし、なかなか言わない。それを窓口に行って言うと、じゃあなんて言ってはじかれちゃうし、どうも人気が悪くなるので、銀行の窓口では言えない。ぼくらのところでは、商工中金に行くと、どうも貯金しろ貯金しろと言われて、せっかく借りた金が全部使えない、困るんだ、こういうような話を耳にするわけであります。  現在、預金の額というのは貸し出し額に対してどのくらいの比率を占めるのですか。
  137. 広瀬駿二

    広瀬参考人 貸し出しに対する預金の比率は二三%ぐらいでございます。
  138. 武藤山治

    武藤(山)委員 銀行局長、歩積み両建てを征伐するという方針で年に二回ぐらい調査をやっているんですが、二三%というとどのランクですか。相互銀行ランクですか、それとも地方銀行ランクですか。
  139. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 いまのお答えはおそらく預金の総量に対する貸し出し額の割合ではなかろうか、かように考えておりますが、私どものいわゆる指導基準でございます拘束性預金というものの比率はもう少し少ないように、おそらく私どもにいただいております報告でございますと、商工中金の場合は、昨年の十一月でございますが、〇・六%というようになっております。たまたま借り入れておられる方が商工中金に預金を持っておられる方という割合が二十何%という数字ではなかろうか、かように考えております。
  140. 武藤山治

    武藤(山)委員 商工中金に借りる業者は、半官半民の機関だという感じから、中小企業金融公庫や国民金融公庫とつい比較しがちなんですね。それが市中銀行並みのようなことになっていきますと、商工中金の機能というものを阻害すると私は思うのであります。でありますから、せっかくの努力をさらに重ねていただいて、業者が預金をどうしても取りくずさなければ間に合わぬ、そういうときにはすなおに認めてやるような姿勢、両建てを無理にお願いするようなことは慎む、そういう指導方針を、こういう金融情勢の中では末端に浸透するように総裁のほうから御指示をしてもらうことを強く期待いたしているところであります。せっかくの努力をぜひお願いしたいと思いますが、あなたの所見を伺って、時間が少々早うございますが、私の質問は打ち切りたいと思います。
  141. 広瀬駿二

    広瀬参考人 私どものほうの商工中金は、御承知のように、相互組織の金融機関でございまして、系統内の中小企業者の方々に貸し付けだけでなくて預金取引も大いに利用していただくように、私どももつとめているわけでございます。それで、系統内の事業者である中小企業者の方々といたしましても、安定的な経営をやっていくためには資金の備蓄が必要でございますし、また日常の営業活動の中からも、一時的な余裕金が出てくるわけでございます。そこで、中小企業者が経営上欠かせないこういうような備蓄資金であるとか一時余裕金、こういうものはできるだけ私どものほうの商工中金にお預けいただく、そしてお互いの間に有無相通ずる相互金融によって中小企業の円滑化をはかるというふうな努力をしているわけでございまして、貸し出しに関連しまして強制的に預金を求めるというような態度を私どもとっているわけではございません。  それでもいろいろなことがお耳に入っているようでございますが、趣旨がそういうところにあるわけでございませんので、御注意につきましては、なお支店のほうにも十分徹底するようにいたしたいと考えております。
  142. 武藤山治

    武藤(山)委員 終わります。
  143. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 小林政子君。
  144. 小林政子

    ○小林(政)委員 最近の異常な物価高騰、そしてインフレによる経済の破綻、こういう中で国民生活がまさに危機に直面をいたしておりますけれども、その国民生活とともに、中小零細業者あるいはまた自営の商工業者の生活と経営というものがますます脅かされてきている。こういう現状の中で、国民金融公庫並びに中小企業金融公庫、また商工中金が現在の企業のこの実態について具体的に調査を行なっておりますけれども、私はこの調査の内容についてもつぶさにその報告を提出していただきまして中身を検討いたしたわけでございますけれども、この調査報告書の中にも、いかに現在企業金融が窮迫をしているかというその内容が盛られております。  こういう中で、私は特に中小零細業者の資金需要というものについて、先ほどからお話がございましたけれども、実態に即してやはり政策的にも特に政府系の金融三機関がこの問題について対処をしていくということはきわめて重要ではないか、このように考えております。貸し付けの規模をふやす問題、あるいはまた、貸し出し増加という状況の中での資金の増額の問題等は、当面直ちに実態に即してこれを増加するということは当然のことだというふうに考えておりますし、新聞などの報道によりましても、先ほどからも論議をされておりましたけれども、四−六月に二千三百億円の政府系三機関を通じての増額融資というようなことも言われております。  事実、この調査の中でも、いろいろ繊維関係あるいはまた自動車関係、業界別の実態の報告と同時に、特に下請企業の実態というものが非常に深刻な状態になってきていることが出ています。  私の調査をいたしました一つの例を申し上げますと、これは金属加工の製造業でございますけれども、三次、四次といわれるような下請の企業でございます。従来は三カ月の手形、長期であっても三カ月であった。しかし、ことしに入ってからは四カ月の手形で、しかもその中には、発行の日付がないというようなものまで含まれている。しかも、この手形についてはこれを持ちこたえるというようなことができないで、具体的にはその月のうちに割らなければならない。しかもその場合には、銀行は担保をとらなければこれを割ってくれない。結局、高い利息を払ってやりくりをしている、こういう実態でございました。  特に、自動車産業の下請の場合、仕事の量が減ってきておりますし、しかも計画的に払うべき決済を迫られている。こういう問題は目前に迫ってきているし、当面切り抜けるための運転資金が必要であるにもかかわらず、なかなかこれの確保が困難でできない。しかも、申し込みの金額に対しても満額どころか半分ぐらいに削られてしまう、こういうような実態の中で、実際に先行き見通しについても、本来なら六月以降の生産計画については親企業のほうからすでにもういまごろ計画が出されるんだけれども、ことしの場合には、六月以降の見通しも立たない。新しい仕事については、逆に単価が下げられている。こういう状態で、かつてのドル・ショックのときよりも深刻な事態になっている。原材料費や必要経費が高騰しているという中で、私のこの調査によっても、また三機関のほうで実態調査をされた内容によっても、いかにいま深刻な事態に立ち至っているかということは、私が申し上げるまでもないと思います。  そこで、私は、国民金融公庫についてまずお伺いをいたしたいと思うわけですけれども国民金融公庫の場合には零細な業者が対象になっております。したがって、もうどうにもならないという中で国民金融公庫にかけつけてきている人たちに対する普通貸し付けの運転資金、この平均貸し付け期間はいまどのぐらいになっていますか。
  145. 澤田悌

    ○澤田説明員 長短いろいろございますが、平均いたしますと二十三カ月ないし二十四カ月程度だと思います。
  146. 小林政子

    ○小林(政)委員 ということは、二年間ということですね。普通貸し付けの場合、おたくでいただきました「あなたは国民公庫の融資制度をご存じですか」という、これによりますと、運転資金の場合は五年以内、設備資金の場合には七年以内、こういうふうに書かれているわけですね。長期で低利の運転資金がほしいという中小零細業者の人たちに対して二年でやっているということは、これは何か根拠があるのですか。
  147. 澤田悌

    ○澤田説明員 設備の場合も運転の場合も最高限度がきまっておるわけでございますが、その中で実情に即して最も妥当と思われる期間の貸し出しを実行いたしておるわけでございまして、長ければ長いほどその企業にとっていいというものでもない場合がかなりございます。私どもが相談相手としてほんとうの実情を聞きまして、大体平均そのぐらいに落ちついておる結果になっておるわけでございますが、特別に事情がありますれば、最高のところまで決して貸さないわけではございません。事情によっていろいろと実行をいたしておる次第でございます。
  148. 小林政子

    ○小林(政)委員 業者の方々の御意見などを聞きますと、実際には申し込み金額が削られていく。満額貸してほしいということで申し込んだんだけれども、実際には七割ぐらいしか貸してもらえない、こういう問題が出てきておりますけれども、これはいまの返済期間の問題との関係があるんじゃないか。  たとえば具体的に、二百万円のお金を借りたいということで申し込んだ場合、五年間であれば利子を抜かして機械的に計算すれば、年四十万円を支払えば五年間で二百万になる。ところが、期間が二年間という短い期間を前提にしているために、これを機械的に割りますと、年間百万支払わなければならない。こうなってまいりますと、とても支払い能力はない。こういう実態の中で、実情に即したという形で実際には申し込み金額を減らされている、こういう事実が出てきているのではないかと思います。私は、これは期間は長期でしかも低利でという国民金融公庫のあり方から見ても、当然その点を保障すべきではないか、このように考えますけれども、いかがでしょうか。
  149. 澤田悌

    ○澤田説明員 公庫の融資の性質から申しますと、先生のおっしゃる御趣旨はそのとおりだと私も存じます。しかし、実際上は、先ほども申しましたように、どの程度がその借り入れ人にとって妥当であるかという判断、それから、これはまた非常にむずかしい点でございますが、金融緩和しておるときは、貸し付け率も実は高くできるわけでございます。金融逼迫して資金量に限りがあります場合には、できるだけ多くの人に均てんして利用していただくという観点から、ぎりぎりのところでがまんしていただくということもまたやむを得ない面がございます。そういったいろいろなからみ合いでかような結果になっておるのでございますが、長期でしかも低利な資金を潤沢に供給したいという趣旨は、そのとおりであるというふうに考えておる次第でございます。   〔山本(幸雄)委員長代理退席、松本(十)委員代理着席〕
  150. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうすると、運転資金五年以内と書いてあるのは看板に偽りありということにもなる。平均してほとんど二年間だというふうにいまお話がございましたけれども、いまのような金融逼迫している、特に運転資金に対する強い要望が出ているときに、従来のがこうであったからということでこういう方向で進まれるということについては、当然検討の必要があるのではないか、このことを強く申し上げておきたいと思います。  次に、国民金融公庫の申し込みの件数ですが、これは先ほど来からお話がございましたとおり、四十九年、ことしに入ってから一月から三月までで申し込み件数は十六万六千三百五十一件ですね。これは四十八年の一月から三月の十二万二千七百五十六件に比べまして、対前年比で三五・五%増でありますけれども、申し込み件数が増加しているということは事務量も当然それに伴ってふえてきている一こういうことがいえると思います。特にまた、先ほど来問題になっておりましたけれども、五月危機に対処するということで、政府系三機関の四−六月の当初融資計画を増加する、こういう方針が現在実施されようとしているわけでございますけれども、このこと自体についてはもっと早く実施すべきだと私も考えますけれども、しかし、この問題を完全に実施していくためには、事務量の増加に見合った人員増加というものが当然必要になってくるのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
  151. 澤田悌

    ○澤田説明興 国民金融公庫の悩みと申しますか、資金量の問題もございますが、ただいま御指摘の人手の問題、これがやはりむずかしい問題の一つであることは、率直に申し上げてそのとおりだと存じます。年々申し込み件数がふえるだけじゃなしに、それを処理した貸し付け残高が、環衛公庫の代理貸しを含めますと、年に約十万件ずつ増加しているわけです。ですから、フローの面とストックの管理の面と合わせますと、人手というものはわれわれの最大の悩みに実はなっておるのでございます。しかし、そうむやみに人をふやすということはなかなかお認め願えないのでありまして、全体の公務員の人員抑制政策の中にわれわれのほうも組み込まれておる次第でございます。それで、その中でできるだけ合理化し、機械化し、これに対処いたしてまいっておるわけでございます。  幸いにして四十八年度、四十九年度、五十五人、百二人と久しぶりで人員の増加を認めていただき、これはもちろん小企業経営改善貸し付けあるいは店舗の増設ということとも関連でございますが、それだけの人数の増加がはかられましたので、機械化の推進と相まちまして、極力事務処理に支障のないように努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  152. 小林政子

    ○小林(政)委員 直接責任者であられるあなたのこの職場の中で、現在各支店で仕事の持ち帰り時間というのは、一人一日平均一体どのくらいになっているのですか。
  153. 澤田悌

    ○澤田説明員 いわゆる持ち帰り時間と申しましても、これは非常に不明確なものでございまして、忙しい店あるいは忙しい時期に審査員がある程度自宅に持ち帰って整理をするというようなこともあるだろうと存じておりますが、しかし、それも世間普通の常識を越えない程度のものであれば問題はないのでありますが、そういう常識を越えるようなことにならないように努力いたしておりまして、どのくらい時間があるかという点は、正確につかむことはなかなかむずかしいと考えておる次第でございます。
  154. 小林政子

    ○小林(政)委員 これは公庫側からお聞きした数字なのですよ、私が持っているのは。いわゆる四十八年の四半期、この場合十月から十二月、平常一人平均一日一時間から二時間だ、これは二十四支店の調査結果だ。あるいはまた公庫側の調査によって、ある支店が四十八年の六月あるいは十二月、これを調査した数字を見ても、平均一人当たり一日二・四時間、あるいは十二月の場合は年末ですから特に忙しいということもあって、二・八時間。これはあなた、一カ月六十二時間から七十時間超勤手当なしでもってこういう事実が行なわれているわけですよ。これは公庫側が出した数字です。こういう実態が職場の中で起こっている、この問題の解決を総裁がやはりどう誠意をもってはかっていくかということをやらなければ、私は、中小企業金融のサービスをもっと企業に対して強化しようとか云々という問題は、この問題抜きにしては解決することはできないと思うのです。  私自身が調査したのでも、大体、金融公庫で一日平均三件からの仕事をこの審査で処理をしていますけれども、その必要時間というのは、業者が申請に来る、したがって、その面接調査というものに一時間はかかる。あるいはまた、その現場調査ですね、これもやはり、遠い近いの差はあるにしても、平均すれば一時間はかかる。あるいはまた、審査結果に自分の意見をつけて、そしてその書類を最終的に提出する、それにやはり一時間かかる。そうしますと、これは三件を処理するということになれば、一件三時間ですから、機械的にこれを足し算すれば一日九時間。実働時間七時間でしょう。そうすれば、これはどうしたって二時間近く仕事をやはり持ち帰っていくというような、こういう結果が出てくるのは当然じゃないでしょうか。私は、このような現状を公庫の責任者として、一体、職場の中の現状を総裁がどう認識をされているのか、この点について御意見を伺いたいと思います。
  155. 澤田悌

    ○澤田説明員 ただいまの御指摘の数字は、おそらく、そういう問題があることを私が認識いたしまして、それを抜本的に解決するために調査を命じておりますその調査過程において出てきました数字先生のお目にとまったのではないかと存じますが、そういう資料をこれから検討いたしまして、そういう事実があるとすれば、それがなぜ起こったのか、どうすれば解決できるのかということを現在鋭意検討中でございます。いずれ明確に解決いたしたいと存じておる次第でございます。
  156. 小林政子

    ○小林(政)委員 その結果については、私どもさらに委員会にも報告をしていただきたいというふうにも思いますし、私は、そういう実態というものは、さらに何かやり方を変えて、合理化すればできるのだみたいな形で行なわれるようなことになれば、これは一大重大事だと思います。  現在ですら、これは国民金融公庫の労働組合が実施した全国統一健康調査ですが、私もいろいろと資料を見せていただきましたけれども産業医労会の頚腕委員会が定めた統一の基準に基づいて調査をいたしましたいわゆる健康調査ですけれども、実際には四十八年十月から十一月に実施をしているのですが、これによりますと、頚肩腕障害者が女子職員の場合には、アンケート回答者九百六十八名中、休養を要する及び治療を必要とするという診断結果が出てまいりました者が一九・七%、一般企業に比べて非常に高いのですね。また、内臓障害だとか健康破壊というような実態も、調査の結果明らかにされております。たとえば、からだの不調を訴える人は四八%いたとか、あるいは特に女子の場合には六七%に達する。  こういったような結果は、結局は仕事が処理し切れない、そうして持ち帰りでもってなおかつ自分の責任でやらなければならないというような状態だとか、あるいは職場の中で非常に神経を緊張させて業者の人たちの金融問題を取り扱っているわけですから、こういう点から当然出てきたのだろう。こういうことを思いますと、私は、この事態というのはやはりほんとうに一刻も早く改善をはからなければならない問題だというふうに思います。  まして、零細業者の融資条件を調査する係員がこのような状態に置かれているということは、審査の日数をもっと縮めてほしい、もっと審査日数を早めてほしいということをこの資金の申し込み企業の人たちは切実に求めているわけですが、こういった現状かちは私はこの要求すら実現をすることができないと思います。いま人員確保の問題というものは絶対な必要条件ではないか、私はこのように思いますけれども、総裁、人員の確保の問題についてはもうこれで事足りるというふうにお考えになっているのですか。それとも積極的に増員をはかっていく、こういうお立場なんですか。やはり明確な、ひとつ責任ある御答弁をお願いいたしたいと思います。
  157. 澤田悌

    ○澤田説明員 必要な人員はあらゆる資料をもちまして関係当局にお願いをし、確保したいと考えておる次第でございます。
  158. 小林政子

    ○小林(政)委員 必要な人員は確保をはかりたいということですけれども、非常にあいまいで、抽象的で、私どもによく理解できません。どのくらい必要だというふうにお考えになっているのか。
  159. 澤田悌

    ○澤田説明員 その人数のはかり方というのは非常にむずかしゅうございます。昭和四十七年に至る五年間をとってみますと、公庫の定員は全く横ばいでございます。その間に日本経済がどれだけ発展し、その日本経済の基盤にある中小零細業者がどういう拡大を遂げたかというようなことを考えますと、その間公庫の人員が全くふえなかったということは、私ははなはだ遺憾だと思います。  それで、先ほど申し上げましたように、四十八年、四十九年は少しずつ増加を認められたのでありますが、今後も何人と、人数と事務量ときちっとマッチさせて何人ということは非常にむずかしいのでありますが、毎年相当数を要求しておるわけであります。数百人の要求を出しておりますが、なかなか全般の模様からいいましてそれだけはお認め願えないということを繰り返しているわけでございます。そういう意味では、極力と先ほど申しましたそういう努力を続けてまいりたいという趣旨でございます。  同時に、現在オンラインシステムを実行に移そうとしております。これで定型的な仕事はかなり機械に乗る。そうすれば、そこから節約される労働力をほかに回せるということで、しかし現在は実はその機械化のためにむしろ人が要るという、ピークの一番苦しい時期に入っておるというときでもありますので、なかなかむずかしいところでございますが、極力御配慮を願うような努力をいたしてまいりたい、かように考えております。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕
  160. 小林政子

    ○小林(政)委員 人数については数百人要求をしているということですけれども銀行局長、このような実態に対して一体どのように行政指導をいままでされていたのか。また、この問題について直ちに私は行政指導を行なうべきであるというふうに考えますけれども、この点について見解をお伺いしたいと思います。
  161. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 定員の問題は、御承知のように、内閣全体の公務員の定員の適正化というやり方で、現在膨張を押えておるというその一環として考えている問題でございます。この三機関と申しますか、国民公庫、中小公庫についてもその例外ではあり得ないわけでありまして、むしろ予算編成の場合の一つの大きなそれが柱になるわけでございます。ただ、国民公庫につきましては、従来一けたの数字しか四十七年までは認められてこなかったのが、四十八年、四十九年という場合には五十五人、百二人というような、私ども大蔵省のふえ方からすると異常なふえ方にしておるというのも、この国民公庫の特殊性というものを十分認識しておる結果だろうと思います。もちろん、これをもって足りるとは思いません。来年度以降もその定員については十分特別の配慮をしていく必要があろうかと思いますが、これは来年の、本年末における予算編成の場合の一つの予算編成の一項目として処理していくべき性質のものだと思っております。
  162. 小林政子

    ○小林(政)委員 職業病の実態について具体的な行政指導をやるべきだ。また、総裁だけではなくて、銀行局としても職場の具体的な実態、健康破壊というような問題が進行しているというこの事実についてどのような指導をされてきたか、また今後しようとされているのか、この際見解を伺っておきたいと思います。
  163. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 国民公庫は独立した政府金融機関でございます。その辺の職場の問題については、総裁以下の国民公庫自身において御判断を願いたいと考えております。
  164. 小林政子

    ○小林(政)委員 人員の問題は定数を一応押えている、予算定員みたいなことを実際には実施していて、しかも職場の労働強化あるいは職業病、健康破壊の問題、こういう問題についてはそれは公庫が自主的に処置すべき問題だ、これは私は筋が通らないと思うのです。やはりこういう問題については、銀行局としては実態がどうなっているのか、総裁に協力して行政指導を行なうということは当然のことじゃないか、このように私は思いますけれども、いかがですか。
  165. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 定員の問題については、先ほど来お答えしておるように、予算編成の際にできるだけの配慮をしていくということでございます。それ以外の行政指導ということにつきましては、私どもどういう趣旨の御質問か必ずしも正確に把握いたしかねておるのかもしれませんが、むしろ職場の問題でございますので、総裁の御判断にまつべきものと考えております。
  166. 澤田悌

    ○澤田説明員 ただいまの健康管理の問題につきましては、これは公庫自体の問題であります。組合もいろいろと調査をして、われわれのほうにも数字示したりいたしておりますが、われわれのほうもまた公庫独自に調査をいたしまして、これは一人でも病人が出るというようなことは全く不本意なことでございます。御指摘のような病人が、われわれの調査と組合の調査では若干の違いがございますけれども、いずれにしても、一人も病人が出ないように努力をいたしておるようなわけでございます。
  167. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間がないので、仕事の持ち帰りその他の問題等も含めて、私は委員会にその検討の結果を御報告いただきたいと思いますが、お約束できますか。
  168. 澤田悌

    ○澤田説明員 持ち帰り労働の問題につきましては、方針を立て実行をいたして御報告いたしたいと思います。
  169. 小林政子

    ○小林(政)委員 あと二点ほどお伺いをいたしたいと思います。  中小企業の改善資金の問題について一言お伺いしたいと思うのですけれども、この貸し付けワクが三百億円で昨年十月に発足いたしましたけれども、四十九年度は貸し付けの増額とか、あるいは利率の据え置きとか、貸し付け限度額の引き上げとかが行なわれるわけで、資金繰りに四苦八苦している零細企業にとっては、無担保、無保証でもあるというこの制度の拡大強化については非常に望ましいことであるというふうに考えておりますけれども、この貸し付け条件の中に、商工会議所の会頭だとかあるいはまた官製の商工会の推薦が必要だというような条件を付しているということは、広く一般の零細業者を対象として国民金融公庫の窓口から直接融資を行なうというたてまえからするとこれは問題ではないか、このように考えます。推薦があるということで、国民金融公庫の審査のあり方というようなものが一体どのように行なわれているのか。  そしてまた、時間がありませんので何点か続けて質問いたしますけれども、面接調査や現地調査というようなものが審査の段階で行なわれているものなのかどうなのか。あるいはまた、金融制度のあり方として、貸し付け金融機関の責任でもって審査を行ない決定するということが正しいあり方だというふうに私は考えますけれども、第三者の推薦で貸し付けを行なうというようなことは筋違いではないか。債権保全の最終責任というのは一体どこが負うんだ。推薦をした商工会議所やあるいは商工会が負うのかどうなのか。  以上の点について質問をいたしたいと思います。
  170. 澤田悌

    ○澤田説明員 この制度が実施されましたいきさつから考えますと、いまの御質問に国民金融公庫だけからお答えするのが適当かどうかという点もございますが、あえてお答えを申し上げますが、この制度のあり方から申しますと、国家資金政府金融機関を通じて貸すのでありますから、貸す公庫が審査をし、その責任を持つのは当然の筋合いであろうと思います。ただこれは、いかにも小零細企業に対して非常に迅速に、簡便に需要にこたえるという趣旨から申しますと、実際問題といたしましては、常時その業者に接触いたします商工会なり商工会議所が指導し相談に乗って、その指導と相談ということとの関連におきまして無担保、無保証人で貸し付ける、こういう実際の運用がそういう小零細企業者にとってはたいへん喜ばれる。そこにこの制度の特色があろうかと存じます。  それで、公庫といたしましては審査をするのかどうかという御質問でございますが、できれば、そういう趣旨から申しますと二重審査はないほうが私はよろしいと考えます。したがいまして、ほんとうに商工会なり商工会議所の指導員がなれてまいりまして、適正な……(小林(政)委員国民金融公庫の代理をやっているわけですね」と呼ぶ)代理と申しますとちょっと語弊があるのでございますが、指導、推薦がほんとうに適正に行なわれるようになりますと、公庫は二重に審査する必要がなく、適正な貸し出しが行なわれ、しかもそれに関する事故が少ない、そして小零細企業者に喜ばれる、こういう結果になろうか。ですから、制度の趣旨から申しますとおっしゃるとおりだと思いますが、実際問題との結びつきからは私どもはかように解釈いたしまして、その円滑な運営に努力いたしておる次第でございます。
  171. 小林政子

    ○小林(政)委員 もう一点聞いていますよ。債権保全の最終責任は一体どこが負うんだということです。
  172. 澤田悌

    ○澤田説明員 これは国民金融公庫が負うのであります。
  173. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は非常に矛盾していると思うのです。推薦でもって実際にはもうそれだけで審査はパスする、こういうような状況で、最終段階の事務的な問題は公庫が全部負う、こういう金融制度のあり方というものは、私はこれはちょっと常識的に考えられないです。やはりこういう制度は改めて、広くいま四苦八苦をしている多くの中小零細業者に対して対象を広げるべきだ。これは当然のことだと思うのですよ。矛盾をお感じになりませんか。
  174. 澤田悌

    ○澤田説明員 国民金融公庫が、先ほど申しましたように、制度として審査を放棄したとか、審査をしないということではございません。常時小企業者に接触しておる商工会なり商工会議所の指導と相談によって推薦されてきたものを見て、これは二重に審査をする必要がないと思えばそのまま通しますし、なお念を入れる必要があると思えば審査をいたしますし、その審査をする必要がないと思う責任も当然公庫の責任でございます。そういう意味合いにおきまして、公庫は審査の責任を負うと申し上げて少しも差しつかえないと思います。
  175. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題については、時間もありませんので、具体的に実質審査を公庫はやっていない、金融あり方からいって、最終決定はどこの責任で実際やるかといえば、金融公庫が貸し出しをやる。こういうやり方というのは、金融の本来のあり方からいって問題である。総裁がそういう点について少しの矛盾もお感じになっていらっしゃらないということだけを、はっきりここで確認をしておきたいと思います。  最後に、中小企業金融公庫の貸し付けあるいはまた商工中金の場合に、現在の資金の増額に対してそれぞれ実態を踏まえた上での純増ベース、こういったようなものについて具体的にどのような見解を持っていらっしゃるのか、この点をそれぞれお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  176. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 私どものほうといたしましては、この四月以降いろいろな情勢が急に変わってきた感じを持っております。従来と違いまして第一・四半期の資金量ではやや不足するかという感じがいたしておりまして、先ほど申し上げましたように、主務官庁とその増額についての御相談を始めておるところでございます。
  177. 広瀬駿二

    広瀬参考人 商工中金といたしましても、この第一・四半期は一千億という純増額で、例年になく大きなワクを組んでおりますけれども、なお中小公庫総裁から言われましたように、最近における資金需要が非常に強くて、私どももこれではどうしても不足するのじゃないかということで、常時監督官庁のほうと御連絡をいたしまして、適切な運営になるようにいたしたいというふうに考えております。
  178. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 竹本孫一君。
  179. 竹本孫一

    ○竹本委員 銀行局長がおいでになるので、銀行局長に先に一口だけ。  三機関の中小企業に対する貸し付けのうちのシェア、三つ合わせて大体九%前後じゃないかと思うのですが、そうであるか。それから、それが最近あまりふえていない、横ばいのパーセンテージじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  180. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 御説のように、大体一〇%が全体の政府機関及び民間金融機関を入れての中での割合であったように思います。またこの構成比も、ここしばらくの間は変わっていないように記憶いたしております。正確に申しますと、政府機関三機関で五兆二千億でございまして、信用組合の約倍といったところでございます。
  181. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はこの三機関の位置づけというものについて、きょうは一三名の方にお伺いしたいのです。  一つは、金融の二重構造というものが日本の経済の二重構造の根本原因である。したがって、日本の経済をより高度な経済体質に切りかえて、二重構造を直していくということがこれからの大きな問題になると思うのだけれども、そのためには金融の二重構造というものにメスを入れなければだめであるという点が一つ。  それから、最近はいわゆる高度成長経済から安定成長とか福祉国家の建設とかいうことがいわれますし、一々もっともでありますけれども、その高度成長経済をささえたものは、言うまでもなく民間の低金利と間接金融である。金融機関あり方というものがそういうふうになってしまっておるのだけれども、これからの福祉国家の建設ということになれば、従来の金融機関競争原理の上に立っての考え方の延長線上においては、問題の解決はできない。したがって、二重構造を解消するためにも、あるいは高度成長を押えて安定成長にし、さらにその質的な転換をはかって福祉国家の建設をやろうということになれば、当然に従来の金融機関の考え方、金融機関あり方の延長線上では問題は考えられないと思うのですね。  そこに第三に最近の金融引き締め、先ほど来御議論のありました中小企業金融の困難という問題が加わってきた。  この三つの理由のどれを考えてみても、この辺で従来の考え方を変えなければならぬ。変えるということは、端的にいえば、三機関の持つ使命がより大きく、より重くなったということである。そのことを具体的に言うならば、三機関の資金量をふやして、そしてシェアを九%とか一〇%とかいうことでなくて、もっともっと大きくしなければならぬのではないか。もちろん今日は資本主義経済でありますから、普通の都市銀行なり全国銀行のウエートが大きい。それはまあ今日の経済の必然的なあり方でどうにもならぬと思いますけれども、しかし、それではならぬということですでに三機関ができておる。そしていま申しましたように、二重構造の解消とかあるいは福祉経済の建設とかいう問題が具体的なわれわれの政治課題になっておるときには、従来の考え方、従来の位置づけではならぬ、こう思うのですね。  しかるに、いま局長も言われるように、三機関のシェアは依然として、量はふえたかもしれぬけれどもシェアは同じ程度に横ばいをしておる。そういうことのあり方について、三機関のそれぞれの最高の責任者の皆さんはどういうお考えを持っておられるか、どういう取り組みを考えておられるか、あるいはそれをさらに強化する意味において政府にどういう行動を起こしておられるか、その辺について、それぞれお伺いいたしたいわけであります。
  182. 広瀬駿二

    広瀬参考人 商工中金のシェアはいま先生御指摘の九%内外のうちの三・七%という数字を占めております。この数字は大体従来もそんなに変わっていないのでございますが、特に最近のような金融の梗塞した状況になりますと、資金需要が非常に強くなってまいります。ことに昨年度は当初計画いたしました二千三百八十八億という当初ワクではとうてい足りずに、四千八百億ぐらいまでに膨張いたしました。これはその後、政府資金の緊急融資等の名目でもって年末にもいただきましたし、年度末にもいただいたということでふえてきたわけでございまして、そのような経済の現在のような情勢に応じまして、かなりシェアがふえていく方向にあらねばならないというふうに私も考えておりまして、現在の事態に対しましても、できるだけ関係当局の御理解を得られるように努力をいたしたいと存じます。
  183. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お答え申し上げます。  中小公庫の全体の中小企業向け融資の中における比率は先生お話しのとおりでございまして、全体として二・七%を占めております。そのうちで運転資金が一・四%、設備資金が五・九%という数字でございます。  先生御高承のとおりに、全体の金融は、民間の金融を主体として、政府金融機関、私どものような中小企業金融公庫は、その補完的な金融をたてまえとするということで出発をいたしております。特にその中でも、民間の金融機関では扱いにくいような設備資金を主として取り扱うのが私どものほうの公庫の使命でございます。したがって、全体のシェアが二・七%であるにかかわらず、設備資金についてはその倍程度シェアを持っているわけでありますが、そういう意味で、民間金融機関ではなかなか出しにくい中小企業向けの設備資金を主体に、補完金融をやってきたわけであります。  私、たいへん個人的な感想を申し上げますと、住宅公団から公庫に参りまして、住宅公団では御承知のように、民間の住宅よりも条件のいい住宅を供給いたしております。その結果として、それに対する希望は非常に殺到いたしておりまして、収拾がつかないので抽せんというようなことをやって、何十倍という希望がきておるわけであります。中小企業金融公庫の資金も民間の金融資金に比べれば、先ほどの武藤先生お話ではありませんが、歩積み両建てのない純粋な資金であります。条件のいい資金でありますから、おそらくはこれに非常に資金需要が殺到しておって、この程度資金量ではとても足りないのではないかという感じを実は初め持っておったのでありますが、状況を聞いてみますと、どうもそうではないようであります。従来、この程度資金量でまずまず資金需要をまかなってきたというのが実情のようであります。  その辺、どうしてそういうことになるのか、十分に突き詰めたわけではありませんが、やはり企業といたしまして常時活動をしている、その常時活動を見てもらうのには、第一にどうしても民間の金融機関、運転資金を主とした、常時の活動を見てくれる金融機関がまずどうしても第一になる。出しにくい長期の設備資金はうちへまいるわけでありますが、その量は必ずしもそんなに大きくなくてもいいというのが一つかと思います。  それからもう一つは、たとえは悪いかと思いますが、たとえば補助金などを出します場合に、補助金自体は少ないのでありますが、補助金が出るということによっていろいろな資金がついて一つの事業が成り立つという場合があると思いますが、ちょうどそういう意味での、中小企業金融公庫から設備資金が出るということで協調融資と申しますか、それに伴ってもっとよけいな資金が出て一つの中小企業設備投資が行なわれる。つまり、ある意味での誘導的な性質を持って機能を果たしてきたように思います。そういう意味で、私が当初疑問に思いましたようなそれほどの資金量がなくても、いままでのところはまずまず資金需要をまかなってこれたというような状況であったのではないかという感じがいたします。  ただ、現在まではそういう状況であったのでありますが、お説のように、これから日本経済がだんだん福祉経済と申しますか、公的なセクターの大きくなっていく傾向に進むといたしますと、われわれとしてもこういう役割りがこれでいいのかどうか、これで十分かどうかを、あらためて検討しなければならないと考えております。
  184. 澤田悌

    ○澤田説明員 国民金融公庫の融資というものは、その性質上、御存じのように、市中の金融機関から借りることの困難な資金を供給するということになっておりますが、非常に零細な企業者に貸しておるわけでございまして、公庫の貸し付けの大部分を占めます普通貸し付けをとってみますと、百三十四万件ほどになっておりますが、その中で従業員が九人以下というようなものが八二%を占めておるような次第でございます。それで、全国の事業所数と公庫の貸し出しの件数との比較をしてみますと、大体二六%ぐらい、ですから、四企業に一件ぐらいの貸し出しをしておるというような非常に零細なものでございます。したがいまして、補完金融とは申しながら、そのときどきの金融情勢経済情勢によっては、その補完という意味に積極性が相当加味されないと、その使命が達成されないというようなことも痛感いたしておるような次第でございます。  最近のような事態におきましては、やはり資金量の十分でないことをわれわれも感ぜざるを得ないのであります。またいろいろな経済情勢の変化に応じましては、特別融資、災害貸し付けと、単純な補完でない資金もこれにつけ加わってまいります。そういう意味におきましては、その情勢の動きに応じまして補完金融意味をいろいろと充実させて考えていく必要がある、かように考えておる次第でございます。
  185. 竹本孫一

    ○竹本委員 御三人の御答弁を承っておりますと、それぞれお考え、お立場もあるわけだけれども、全体として考えると、いま私が申しました日本の経済の二重構造を改めて本格的にいかなければいかぬのだ、特に中小企業のために大いにがんばらなければいかぬのだという使命感というか何かが、ちょっと薄いような感じを受けるのですね。私が言っているのは、これは先ほどもお話が出ておりましたけれども、二月の国民金融公庫は二五%ぐらい、六万人で一万五千人でしたか、希望に応ずることができない。そういうようなことでいくと、二五%ぐらいになるのですね。そうすると、いまのお話じゃないが、四人に一人行き渡っていると同時に、四人に一人は断わらなければならぬということになるわけだ。そういう意味からいっても、これは資金量の問題。しかし私が言いたいのは、量の問題も大事だけれども、もっと性格なり位置づけということが中心で、問題は、端的にいえば、先ほどお話が出ましたが、補完的機能という考え方がぼくは間違っていると言うのですよ。  補完的機能というのは、市中銀行が出て大部分の問題は片づけますが、そこでは設備資金に応じられないものがありますから、中小企業金融公庫でそれは応じます、こういうことなんだけれども、実際はそういう分野が非常に多くなって、単なる量的な問題ではなくて、質的に三機関の機能というものが変わらなければならぬではないか。それは要するに、量を少しふやせとかいう問題ではなくて、補完という役割りにとどまるべきではない、満足すべきではない。主導的にまでなれとは私は言いませんよ、いまは資本主義経済だから。しかしながら、補完的な謙遜した立場でなくて、もっともっと前に乗り出して、中小企業金融というものについて大きな役割りを果たさなければならぬのではないか。  そういう片りんを伺いたかったわけだけれども、どうも残念ながら、そういう情熱か、理想か、あまり燃えていないように思うのですね。非常に残念だけれども、そういうことを知ったことがせめてもの幸いとしてあきらめましょう。これはあらためて本格的に議論をいたします。  それから、吉岡さんの御答弁の中に、大いに期待しておったけれども、それほどでもなかった。これは誘導的役割りがあるので、こちらがちょっとつければ、あとは市中銀行が協力して協調融資をするからいいんじゃないかという弁解なり説明なりがありました。  私はその点について一つ疑問に思いますのは、やはり御答弁にもありましたけれども、常時接触をするという機会が少ないと思う。もう一つ言うならば、三公庫は、国民金融公庫はだいぶ違うけれども、原則的にいえば手足が少ない。地域社会に対して手足が少ない。それが一番根本だと思うのですね。たとえば中小企業金融公庫の支店が全国に幾つありますか。県に幾つあるか。そういうことを考えてみると、行こうと思ったって、県都なら県都まで行かなければならぬということで、めんどうだし、ややこしいし、時間もないしということで、足が遠くなる。そういうことに大きな問題があるんだから、その点は一体どう思っておられるのかという点が一つ。  それから、それに関連しますが、代理貸しの問題ですね。手足がないから代理貸し、その辺の金融機関をうまく使う。こういうことで、一応気持ちもわかりますけれども、この代理貸しというのが非常に問題があると思うのですね。それはみずからの手足を持たないので代理してやってもらうんだけれども、その代理するものが、ほんとうの意味の忠実なる代理業務だけやればいいんだけれども、そこに自分たちの銀行も自分の主体的な要求を持っておりますから、その銀行それぞれの立場をもって代理貸しのチャンスを利用するというか悪用するというか、そういう問題があると思うのです。その問題があるということを認識しておられるかどうか。  それから、あると認識しておられるとすれば、将来はどういうふうにやったらいいのか。いま言っているように、一部には、もう民間にはやらせるべきではないという意見まで出ておる。そういう問題についてどういう認識を持たれ、どういう対応策を考えておられるか、これを伺いたい。
  186. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 第一段の御指摘のように、公庫の手足が少ない、店の数が少ないために、十分なお客さんとの接触ができないということはお説のとおりだと思います。公庫が発足いたしましたときには、むしろ代理貸し専門で発足をしたわけでありますが、やってみまして、どうしてもこれではいけないということで、直接貸しが後ほどになって始まりました。直接貸しをするについては手足がなくてはということで、だんだん支店網を整備してきたわけでございます。発足以来二十年にして、今年度やっと各県に一つの店を持つところに来た程度でございます。したがって、お話しのような点は、おっしゃるとおりだと思います。  それから、代理貸しというのが、やはり代理店の都合、利益によって左右されて、必ずしも政策金融である公庫の資金の使わるべき使途でないところに使われるおそれはないかという御質問だったと思いますが、まさにそういう点があろうかと思います。特に、金融の緩慢なとき、金融の非常に締まったとき、金融機関自身のいろいろな事情が変わりますから、それによって公庫資金の使い方が変わってくるという点がないとはいえないと思います。先ほどたいへん、将来のことについての使命感がないというおしかりでございましたが、私どももそういう点を考えまして、公庫としては、将来の姿としては代理貸しをだんだん狭めていく。急にと申しましても、申し上げましたように手足の少ないことでありますから、お客さまの便利を考えると、急に代理店を縮小するというわけにはまいらないと思いますけれども、だんだん代理店の代理貸しのシェアを狭めまして、直接公庫が判断をする直接貸しの範囲を広めたいと思っております。先ほども数字を申し上げましたが、この数年間、直接貸しの比率は、そういう意味で徐々にかなり上げてまいっております。  なお、直接貸しの中でも、私は将来の公庫の姿としては、直接貸しの中に一般貸し付けと特別貸し付けと二種類をやっております。一般貸し付けば一般的な八・九%の利率でやっておる普通の貸し付けでありますが、特別貸し付けは、御承知のように、中小企業の近代化だとか流通改善だとか、特殊な政策目的に従って特別な安い金利で貸している資金であります。将来の公庫の姿としては、やはりこの特別貸し付けをだんだん拡大していって、具体的な政策目的にぴたり合った融資が主力を占めるべきだというような感じがいたしております。感想だけ申し上げました。
  187. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの答弁はだいぶ理解できますが、大いにやってもらいたいと思います。  次に、ドル・ショック以来公庫あたりでいろいろお貸しになった、それの返済期限が来た、たまたま短期決戦で企業は倒産寸前にあるというようなことで、この返済の猶予の問題ですけれども、これはおそらく三公庫それぞれが適当に指令、通達を出しておられるのだろうと思うけれども、どういうふうな形で出しておられるかということが一つと、それから同時に、それを地方においては、たとえば協同組合なら協同組合の親方だけが知っている、組合員は知らない。それで非常に青くなって心配しているが、それは何とか猶予ができるはずだとわれわれがむしろアドバイスをしてみて、そうでしょうかというようなところなんですね。せっかく政策金融をやり、そしてまた政策的な立場と考慮で返済猶予も考えてやるという通達を出された場合に、まあ新聞広告で当分払わぬでいいという広告をするわけにもいかぬでしょうが、しかしながら、少なくともその趣旨がある程度業界の人たちに無用な心配をさせないでいいだけの親切をもって行き渡らなければ、意味ないと思うのですね。そのための努力がどの程度どういう形で行なわれておるかを承りたい。
  188. 広瀬駿二

    広瀬参考人 商工中金といたしましては、いまの御指摘の点につきましては、主務省のほうからも要請がございまして、最近の情勢下で資金繰りや経営状況が著しく悪化している中小企業者に対しましては、実情に応じて適宜既往の貸し付け金の返済猶予をするようにという連絡がございました。私どもといたしましても、支店及び代理店に対しまして、この四月五日に通牒を出して、周知をはかっております。  ただ、いまおっしゃいました、組合の理事者が知っておって組合員まで行き渡っていないじゃないかというお話につきましては、十分実情をまだ存じておりませんが、組合内部の問題かもしれませんが、私どもとしてはできるだけそういう点ははっきりさせたい。ただ、四十八年度の経験で申しますと、四十八年度にもそういうたな上げという問題がございまして、そういうことを利用するようにということがあったのですけれども、返済をするものはして、さらに借り受けてころがしていくというふうな形態のほうがむしろ選ばれたという実績がございます。
  189. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 中小公庫のほうでも、商工中金と同じように、実情に応じて償還条件の変更はやるようにということは、しばしば申しておりますし、少なくとも貸し付け先に対しては徹底しておるつもりでおりましたけれども、もしそういうことを御存じない方があればたいへん申しわけないことなので、なお一そう徹底いたしたいと思いますが、先生十分御承知だと思うのでありますが、御要望の中に、ある業種全体を一括して延ばしてくれという御要望が非常に強いわけです。私どもといたしましては、やはり個々の企業の実情が非常に違いますので、一括全部というわけにはまいらないので、実情に応じて御相談に応じて延ばしますということを言ってもおりますし、またそういうことでやってきておるわけでありますが、どうも見ておりますと、返済の猶予を申し出るということは自分のところだけが非常に悪く思われるということで、わりに実際にはなかなかお申し出にならないということがあるようであります。  きょうもたまたま全国の支店長会議をやっておりますので、そういう実情を聞いてみたのでありますが、全体として思ったほど返済の条件の変更の申し出は少ないようであります。福井の支店で、四月に入りましてから百件をこす改定をいたしておりますが、それが著しい例でありまして、いまのところまだそれほど具体的な御要望は来ておりません。
  190. 澤田悌

    ○澤田説明員 国民金融公庫の融資先は、御承知のように、非常に零細で多数でございますので、日ごろから条件変更、返済猶予というような要望はかなりございます。それに最近のような状況でございますから、積極的にそういう要望にこたえて実情に合うように対処しろということを、各出先に詳細に指令をいたしております。また、手続につきましても簡易迅速にやる、こういうことでございますが、ちょっとわずらわしいかもしれませんが、数字を申し上げておきます。  返済条件を変更したもの、これは業況不振あるいは災害その他いろいろな条件が入っておりますが、四十八年度下半期、これは四十八年十月からことしの三月末まででありますが、五千三百二十八件の条件変更をいたしてきております。融資残高にいたしますと七十四億六千万円でございまして、上半期に比較しまして件数で二五・四%増、金額で五三・八%増、最近のむずかしい状況を反映いたしまして著しく増加をいたしております。特に金融引き締めの浸透を反映いたしまして、二月ころからこの取り扱い件数が激増いたしておるのであります。石油危機、物不足というような原因によるもの、これは昨年の十二月から本年の三月まで、そういう理由で条件の変更をいたしたものは六百十件ございます。金額で十億二千万円。こんなような状況でございまして、今後も状況に応じて弾力的に対処いたしてまいりたいと考えております。
  191. 竹本孫一

    ○竹本委員 もちろん、一括たな上げということは、できることでもないことは私もよくわかります。しかし、それにしても、それぞれの場合に相談に応ずるんだぞということが下部末端に徹底するようにしたいということで、要望をしておくわけです。あるいはまた、銀行局長のほうで別途手を打たれる必要があるのかもしれません。  実際問題として、私は商工中金の関係でもその相談を受けて、聞いてみて、ああそうか、本人もああそうでしたかとびっくりしておる。それから、国民金融公庫の関係も聞いてみて、本人たちを支店長のところに連れていって、いやそうですかということでやっと納得して帰るというような例に、幾つもぼくは出会っているのですよ。だから、徹底していないことは事実なんだ。そういうことで、徹底させなければ、徹底したはずですだけでは、委員会の答弁にはなるけれども、問題の解決にはならぬと思いますから、これは善処してもらいたい。  時間がないので、最後にもう一つだけで終わりますが、これは支払い猶予の問題ですが、いま実際は、支払い猶予の問題ともう一つ大事な問題は、今度は少し前向きといか、うしろ向きの前向きで、つなぎ資金の問題ですね。とにかくいまもう工場は休んでいる。繊維なんかではとにかく機械をとめている。さて、労働者も持っている、原料の支払いも来ているが、その金は一体どうしたらいいかということについて、業界は非常に悩んでおる。  ところが、これに対しても、うすうす聞くところによれば、若干のめんどうは見るというふうになっているようだけれども、どの程度のめんどうを見ることになっておるか。特に私は、これは銀行としても困られる問題、関係機関としてもむずかしい問題だと思うのだけれども、休業してつないでいく、その何割必要なものを見るかということも問題ですけれども、一番大事な問題は、何カ月後にそれが事業としてまた動き始めることができるかという見通しの問題が、それぞれの公庫の立場でも非常にむずかしいと思うのです。最近は少し卸売り物価伸びがとまったとか落ちてきたとかいうことで、やや一つの見通しができる条件ができてきたと思うのですけれども、一体そういう場合に、つなぎ資金融資するのかしないのか。それから、融資するとすれば、どの程度融資するということを徹底さしておるのか。次に、融資の内容の大きな条件である経済活動がもう一ぺんできるような時期を何カ月後に一応想定するということでそれに応じていこうとするのか。  これは非常にむずかしい問題ですけれども、しかし大事なポイントだと思うのですね。それらについてお考えのほどを、きわめて簡単でけっこうですが、承って終わりにします。
  192. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 簡潔に願います。
  193. 広瀬駿二

    広瀬参考人 御指摘のつなぎ資金と申しますか、これは最近特にこういう事態になりまして、運転資金需要、ことに長期運転資金需要という形で出ておりまして、その内容は、減産、減販あるいは生産調整、滞貨、支払い条件の悪化に対する対策というようなことで、そういう比重で申し入れがございまして、長期運転資金につきましては、特に前向きに対処するようにやっておりますが、具体的にどういう判断かということは、これはいまおっしゃったように非常にむずかしくて、個々の業種業態に応じまして、各出先でもって十分相談しながら具体的に取り組んでいるということで、私どものほうで一括的な指示をしているわけではございません。
  194. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 大体同じことになると思いますが、私どものほうは長期資金を扱うたてまえでありますから、つなぎと申しますか、数カ月の短期の運転資金融資をいたしません。したがって、長期運転資金、少なくとも一年以上の運転資金ということになりますが、こういう不況の場合でございますから、運転資金はとても数カ月のつなぎでは済まないものが多い、やはり長期の運転資金需要が非常に強いわけでございます。  いま非常に悪いといわれております繊維について、きょうも支店長会議で具体的にいろいろな話が出たのでありますが、具体的にこういう条件でこういう金額をというところまでまとまった話が来ておるところは、栃木県、新潟県等でありまして、非常に大きな話になりそうな福井、石川あたりも、まだそこまで詰まった話になっておりません。したがって、そういう御要望側のいろいろな事情をよく検討いたしまして、現地で、これは三機関共同しておそらくやることになると思いますが、よく判断をして実施したいと思います。
  195. 澤田悌

    ○澤田説明員 大体いまのお話と同じでございますが、例のドル・ショックのときに、国民金融公庫といたしましては、かなり大胆に転換資金、つなぎ資金というようなものを融資いたしました。こういう時期になりましても、その趣旨、そういう体験を生かしまして、単にある企業が危殆に瀕したからちゅうちょするというのではなくて、転換なり再起なりあるいは先行きの問題なりを十分にケース・バイ・ケースで考えて、相当大胆にやっていきたい、かように考えております。
  196. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  197. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これにて質疑は終了いたしました。  各位には、御多用のところ長時間にわたり御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来たる十四日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十九分散会