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武藤(山)議員 ただいま
議題となりました
国家公務員共済組合法等の一部を
改正する
法律案及び
公共企業体職員等共済組合法等の一部を
改正する
法律案につきまして、
提出者を代表して、
提案の
理由とその内容の
概要を御説明いたします。
最近の異常な物価上昇は、狂乱物価、投機物価といわれ、卸売物価、消費者物価ともに二〇%をこえる状態となっており、勤労国民の生活はますます圧迫されております。勤労者の賃金は実質的に切り下げられ、賃金の
引き上げも物価のあと追いにすらならないのが現状であります。このようなインフレ物価高のもとで、とりわけ被害の大きい、いわゆるインフレ弱者といわれるのが各種
年金生活者であり、福祉関係者であるのはいうまでもありません。今日の事態を招いた根本原因である高度成長政策は、わが国の社会保障整備を放置し、経済発展の名による社会的弱者切り捨ての政策にほかならなかったのであります。成長より福祉へ、産業より生活への転換が国民の緊急に要求しているものであり、いまこそ、経済政策、社会福祉政策をはじめとした政策の根本的転換が必要なのであります。
インフレは国民生活を破壊し、所得格差の拡大、富の偏在など弱い者にそのしわ寄せをもたらし、社会的不平等をさらに拡大するものであります。したがって、今年の国民春闘がインフレ政策に反対し、インフレ弱者救済を要求しているのは当然の国民的課題なのであります。また、その国の文化水準、福祉水準は、
老齢者、母子世帯、社会福祉施設生活者の生活水準を見れば明らかになるといわれております。
このような観点から、現在の国家
公務員及び
公共企業体職員の
共済組合の現状を見ますと、その実態はきわめて憂慮すべき状態に置かれているのであります。国家
公務員、
公共企業体職員及びその遺家族が、
退職後、人間らしい生活を保障し得る
年金を受け、病気になっても経済的不安のないようにすることは、
共済組合の趣旨に照らしても当然の任務であります。
さらに、最近の医療費の急激な増高は、各種
共済組合の
短期給付財源の収支を悪化させ、
組合員に過重な負担をしいる
掛け金の
引き上げを余儀なくし、また
長期給付におきましても、数年来の消費者物価の上昇とここ一年間の物価の暴騰のもとで、
年金受給者の生活は極度に逼迫しているのが実情であります。
このような事態に直面し、
共済組合制度を充実強化するため、
給付内容を大幅に
改善し、財源については賦課方式を採用し、かつ、国の負担割合を
引き上げ、あわせて
共済組合制度が
組合員の福祉の増進のために運用されるよう規定を整備するほか、
退職者についての
短期給付の特例等の
措置を講ずることは、緊急かつ重要な課題となっているのであります。
以上の立場から、
共済組合の
短期給付及び
長期給付の
改善充実等をはかるため、両法案を
提出いたした次第であります。
次に、法案の内容につきまして、その
概要を御説明いたします。
まず第一は、
共済組合の
給付に要する費用につき、国の負担割合を
引き上げ、
組合員の負担の軽減をはかったことであります。すなわち、
短期給付に要する費用につきましては、現在、国と
組合員の負担が百分の五十ずつとなっておりますのを、国の負担割合百分の七十、
組合員の負担割合百分の三十とし、
長期給付に要する費用につきましては、現在国の負担割合百分の五十七・五、
組合員の負担割合百分の四十二・五となっておりますのを、国の負担割合百分の八十、
組合員の負担割合百分の二十といたしたのであります。
第二に、将来の積み立て方式による
長期給付の財政方式を改め、これを賦課方式に切りかえたことであります。後に申しますように、本法案は
長期給付の
給付内容を大幅に充実させ、また
年金のスライド制を実施することといたしておりますが、このような
給付内容の充実のためには、従来からの積み立て方式では限界があるため、新たに賦課方式を採用したものでありまして、三年を一期とする
期間を単位としまして、
掛け金、国の負担金は、その
期間内における
給付に要する費用と均衡を保つよう定めることといたしたのであります。
第三に、共済
給付の内容を大幅に
改善することといたしました。まず
短期給付につきましては、家族療養費の
給付率を
現行百分の五十を百分の八十といたしました。次に
長期給付におきましては、
退職年金は、現在その支給率が
組合員期間二十年の場合、
俸給年額の百分の四十となっておりますのを百分の六十に
引き上げ、最高支給率も百分の七十を百分の八十一とし、さらに
最低保障額三十二万千六百円を七十二万円に
引き上げることといたしました。これに準じまして、
退職一時金の額の
引き上げ、
廃疾年金の支給率及び
最低保障額の
引き上げをいたし、また
遺族年金の額につきましては、その
最低保障額の
引き上げとともに、現在
退職年金額の半額とされておりますのを八割相当額といたしました。さらに、
長期給付の
算定の
基礎は、従来
退職前三カ年の
俸給の
平均額とされておりましたが、消費者物価の上昇の中で年々ベースアップが行なわれている現状等を考慮して、これを
退職時の
俸給といたしたのであります。
第四は、
遺族に対する
給付を受けるための要件の緩和と
年金者
遺族一時金の
創設であります。まず
遺族に対する
給付を受けるべき
遺族の範囲でありますが、
年金を受ける
遺族についてはその範囲を拡大しまして、
組合員の配偶者は、
組合員の死亡の当時
組合員によって生計を維持していなくてもよく、その他の
遺族については、一部でも
組合員によって生計を維持しておればよいこととし、
年金以外の
給付を受ける
遺族の範囲はこれを一そう拡大しまして、
組合員によって生計を維持していない者等を含めることといたしました。そして、
遺族年金の支給要件を満たしていてもそれを受けるべき
遺族がないときには、
組合員の収入によって生計を維持していなかった者に対して
遺族年金の七・五年分の
年金者
遺族一時金を支給することといたしました。次に、
遺族年金の受給要件につきましては、現在、
組合員期間が一年以上二十年末満である者に支給される
遺族年金は、六カ月以上の
組合員期間があれば支給されることといたしました。
第五は、
退職者についての
短期給付の特例の新設についてであります。
現行法では、
退職の際に療養の
給付等を受けている場合には療養の
給付等の支給開始後五年間は継続して療養の
給付等を受けることができることになっておりますが、
退職後の新たな疾病や事故に対しましては、
共済組合員の資格がないため、
給付水準の低い国民健康保険によらざるを得ないのであります。しかしながら、永年勤続して
退職した者は、
退職後二、三年の間に疾病する場合が多いという事情等を考慮いたしますと、
退職後も一定
期間は
医療給付等が行なえるよう
改善をはかることが必要であると考えられますので、
組合員期間が二十年以上である者が
退職した場合または
組合員期間が十年以上である者が五十五才以上で
退職した場合には、
退職後十年間はなお
短期給付を受けることができることといたしたのであります。
第六は、
国家公務員共済組合審議会
委員と
国家公務員共済組合の運営審議会
委員についてでありますが、
共済組合運営の実態及びその特殊性から、現在は非
組合員であっても、たとえば労働組合の役員として専従業務に携わっている者等、かつて
組合員であった者については、労働組合の推薦により、
委員に任命できるようにしたのであります。
第七は、
長期給付の支給のための積み立て金の運用についても
組合員の意思を反映させるようにはかったことであります。すなわち、現在この積み立て金は
法律上の一定の制約のもとに
組合員の意思が直接には反映しない形で組合または連合会が運用いたしておりますが、これがなるべく
組合員の福祉のために活用されるよう、その管理、運用については、組合の運営審議会または連合会の評議員会の決定事項としたのであります。
第八は、
年金受給者の福祉増進のため、
共済組合は、福祉事業として新たに老人福祉施設その他必要な施設の設置、運営の事業を行なうことができることといたしました。これは、現在の
共済組合の福祉事業が
組合員の福祉増進のためのものに限られておりますのを広げまして、かつて
組合員であった者で現在は
年金を受けております者のための必要な福祉施設の設置、運営の事業を行なうことができるようにしたものであります。
第九は、労働組合専従者の
共済組合員としての継続についてであります。
昭和四十三年十二月十三日において、
国家公務員共済組合法に規定する職員であった者で、在職中に国家
公務員法の規定により職員団体または労働組合の役員としてその業務にもっぱら従事した者がその後職員を
退職した場合において、その
退職の日の翌日において、職員団体または労働組合の役員であるときは、その者は、その後における職員団体または労働組合の役員である間、職員である
組合員と同様に取り扱うものといたしております。
第十は、
退職一時金からの
通算退職年金の原資の控除を受けないことを選択することができる期限の延長についてであります。すなわち、この選択期限は、男子については
昭和四十四年十月三十一日に満了しておりますが、その期限を、とりあえず、
昭和五十三年五月三十一日まで延長することといたしたのであります。
なお、
年金額の自動スライド制の採用につきましては、野党四党共同で、社会労働
委員会に
提出されております賃金及び物価の変動に対応する公的
年金給付等の額の
改定等に関する
特別措置法案に一括されておりますので、同法案の成立によって自動的にスライド制が採用されることになります。
以上は、
国家公務員共済組合法について御説明申し上げましたが、
公共企業体職員等共済組合法については、右の
国家公務員共済組合法とほぼ同様の
改正をいたすこととするほか、新たに
公共企業体職員等共済組合審議会を設け、
制度の
改善に資することといたしました。
以上、この
法律案の
提案の
理由及び内容の概略を申し述べました。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。(拍手)