○竹本
委員 次は、ちょっと問題を離れまして恐縮ですけれども、一般
質問をきょうはやめますのであわせて伺いますけれども、この間からいろいろ
議論が出まして、
外務省の役人さんが前の半分しかいない、三千人ぐらいしかいないとか、あるいはドイツやその他の国に比べても少ない。イギリスは一万一千人からおるというので、非常に少ない。確かに
予算の面でもあるいは職員の人数の面でも、
日本の
外務省の
あり方が少し弱い。それで、
経済外交だけではなくて、いろいろな面で差しつかえが出てくるだろうということもよくわかるのですね。しかし、
外務省の悪口を言うわけではありませんけれども、私は率直にいって、
日本の
外務省というよりも
外交官の
あり方というものについて一度検討しなければ、人数を五千人にする、一万人にするという問題の以前に、重大な問題がありはしないかということを感じておるのです。
言いにくいことですけれども率直に申し上げますと、たとえばアメリカの問題について言うならば、NHKのアメリカ特派員をしておった日高という人が「アメリカを知らない
日本人」という本を書いておる。
日本はアメリにはめくらのパイロットを置いておるというのですね。めくら、目が見えない、めくらのパイロットを置いておるといったようなことを述べておるようであります。めくらかどうかは一応別としまして、たとえば沖繩の返還交渉にしても、あるいは繊維交渉の問題にしても、われわれが聞いているところの
外務省の情報あるいは駐米大使の意見というものは、当たった場合よりも極端に言えば当たらない場合のほうが多いかもしれぬ。非常に情報の把握が不適確である。私は、これは愛知外務
大臣のころでありましたが、
予算委員会においてもその点を指摘したのですけれども、結局、情報というものは必ず二つ入ってくるというのです。AとB、まるきり逆な情報が入ってくる。それをどう理解するかということは、受け取る人の頭の
程度、あるいは見識の
程度によって違うと思うのですね。だから、問題は、その見識の問題、ステーツマンシップの問題になると思うのですけれども、どうも
外務省のあれは逆の情報のほうが多いような気がする。いま言った繊維の場合でも、沖繩返還の場合でも、全くできないようなことを言ったが、結果においてできた一たとえば核抜き早期返還というものは絶対だめだという情報のほうが新聞でもたくさん流れました。われわれはそういうことを言っているものだから、特にそれを敏感に受け取って勉強しておりましたけれども、結果はそうなった。そうすると、初めの情報というものは、初めからでたらめであったとは申しませんけれども、間違っておったことは事実だ。結局、その
段階その
段階に応じて適確に情報を判断するという頭といいますか、センスといいますかが欠けておるのじゃないかということをぼくは非常に痛感をするんですね。でありますから、二千九百人を五千人にすることも必要でしょうけれども、その前にもっと大事な問題があるということを、これは特に
大蔵省の
立場からは
考えてもらって、その上で人をふやしてもらうということにしたいと思うのです。
さらに、アメリカの問題だけでなくて、私が歩いた例も
一つ申し上げますが、
経済問題でいいますと、たとえばロッテルダムに参りました。この場合にはヨーロッパの港だとかなんとかいうことで、あそこは各国がみな出ております。
大臣も御承知のように、
日本の企業だけは全然出ていないのです。全然出ていない。そこで、私は、
日本がECと
経済的に大いに
協力をしていこうとか、あるいはヨーロッパに向けてアメリで押えられた
輸出を今度は振り向けていこうとか、エコノミックアニマルの問題は別としまして、欧州市場が大事であることは間違いない。その欧州市場に対してオイロポルトといわれる、ヨーロッパの港といわれるその港がどの
程度の
重要性を持つかということは、少し
経済の
重要性のわかる人ならすぐわかる話です。そこで、ここに
日本の
関係会社が
一つもないということはどういう意味かと言って、私はいろいろ聞いてみましたけれども、初めは
一つぐらい会社が出てこようというようなことであったけれども、そのうちさたやみになりましたというのが
報告ですよ。しかし、私は、この大事な港に全然一石も打ち込んでいないということはおかしい。現に
外国はみんな手を打っておる。
日本だけがぼんやりしておったということじゃないかということを言った記憶があるのです。
そういう意味で、やはりほんとうに生きた
経済戦略、そういうものがわかる人が大使館にも一人ぐらいはいないと、結局、こんなところへ港ができます、その港がどの
程度のウエートを持つものか、あるいはヨーロッパの
経済に対してどれだけの影響力を持つものかということについての十分な解説がなければ、商社は商社でいろいろやるのでしょうけれども、
日本の会社もチャンスを見のがすような場合も多いだろう。悪口じゃありませんが、
田中さんもシンガポールへ行かれたときは、そのオイロポルトが
世界一の大きな港になっているということは何か記憶になかったらしくて、
外務省の事務官から注意されたというのがゴシップ欄に出ておりました。
要するに、
日本の会社、あるいはわれわれ政治家も、とにかく
世界経済の生きた動きを常に適確につかんでいなければならぬのに、政治家をはじめ、いろいろわれわれがミステークが多いじゃないか。特に現地におる人はそのためにおるのですから、
外交官が適確につかまなければいかぬじゃないか。これは
経済問題ですね。
それからもう
一つ、これはいまのアメリカの問題でもそうですけれども、これからの問題は
経済のための
経済問題というものはありませんので、
一つは思想の問題について理解のある人がいなければ困ると思うのですよ。その例としては、私はタンザニアにアフリカに参りまして行ったこと一がありますけれども、あそこは、御承知のように、中国が非常な積極的な
努力をしておる。事の起こりは何かといえば、タンザニア鉄道なんです。四億ドルの
経済援助の問題なんです。そのときに資本主義国にいろいろ働きかけたのだそうですけれども、あんな山の中に二千キロかの鉄道をつくってみたところでペイしないということで、みんな断わった。ソビエトまで断わった。そのときに中国がよろしいということで引き受けて、タンザニアに鉄道をつくった。そのタンザニア鉄道が取り持つ縁で、あそこは紡績工場も農事試験場も分校をつくることまで全部中国がやっている。さらに教育も全部、私は学校にも行ってみましたけれども、共産主義教育になっている。
さらに言うならば、台湾を国連から追放して中国を
加盟させるかさせないかという問題のときに、
政府のお
見通しではあまり当たらなかったと思うのですけれども、私はアフリカから帰ってきたちょうどその直後にテレビを見ておりましたら、中国代表の隣だったと思うのですが、タンザニアの人がおるということを聞いて、アフリカの五十五票か五十票かは別として、大きなまとまったものがタンザニアが中国の隣にすわっているようでは相当大きく動いているなということを直観しましたよ。だから、百三、四十票のところで五十票もまとまって動けば、中国のほうが
加盟の問題について非常に有利な票数を持つではないかということを直観いたしました。
そういう経過のこまかいことは別といたしまして、とにかくアフリカについてわれわれ自身も不勉強で、あまり理解や知識がないのですけれども、しかし、将来の
世界政治の中でアフリカの五十票の票というものがどんなに大きな役割りを持つかということについては、政治家として常に
計算の中に入れておかなければいかぬ。いまはドルの情勢も少し変わりましたけれども、一時はドルをもてあまして困ったこともあるのですから、四億ドルなんというのは問題じゃないです。しかも、大部分は現物出資だ。そういう際に、どれだけのことの情報が
外務省に入っておるか。
外務省はそれをどこまでとらえておるかということはあらためてまた論議もしたいと思うのですけれども、私が言いたいことは、タンザニアの問題
一つ考えてみても、新しい思想の動きというものについて適応性がない。ロッテルダムの問題を
一つ考えてみても、ヨーロッパの生きた
経済戦略についての理解がない。アメリカの情報の送ってこられたものを見ても、アメリカの動きというものの根底を掘り下げた見識のある見方というものがない。そういうふうに、
外務省攻撃をやる意思はありませんけれども、
日本の
外交には一番大事なセンスが、思想的にも
経済的にもないのじゃないか、あるいは足らないのじゃないか、そういう問題も考慮した上で、
外交機能の充実とか職員の増加とかいうことを
考えてもらいたい。
大臣のお
考えを承って
質問を終わります。