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1974-04-03 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月三日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    奥田 敬和君       金子 一平君    鴨田 宗一君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君      小宮山重四郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       坊  秀男君    村岡 兼造君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       広沢 直樹君    内海  清君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君  委員外出席者         経済企画庁調整         局経済協力第一         課長      谷村 昭一君         外務省アジア局         外務参事官   大森 誠一君         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         大蔵省銀行局特         別金融課長   山田 幹人君         通商産業省産業         政策局国際企業         課長      伊藤 寛一君         通商産業省生活         産業局通商課長 佐藤 兼二君         日本輸出入銀行         理事      林  大造君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 四月二日  有線放送電話に対する税制特別措置に関する  請願外十件(正示啓次郎紹介)(第三二六五  号)中小業者に対する減税措置に関する請願  (木下元二紹介)(第三三二四号)  同(梅田勝紹介)(第三三六五号)  同(金子満広紹介)(第三三六六号)  同(栗田翠紹介)(第三三六七号)  同(小林政子紹介)(第三三六八号)  同(柴田睦夫紹介)(第三三六九号)  同(田代文久紹介)(第三三七〇号)  同(田中美智子紹介)(第三三七一号)  同(谷口善太郎紹介)(第三三七二号)  同(寺前巖紹介)(第三三七三号)  同(中川利三郎紹介)(第三三七四号)  同(中島武敏紹介)(第三三七五号)  同(正森成二君紹介)(第三三七六号)  同(米原昶紹介)(第三三七七号)  中小業者に対する税制改正等に関する請願外一  件(林孝矩紹介)(第三三七八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。佐藤観樹君。
  3. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 昨日に引き続き、国際開発協会について若干御質問をしたいわけでありますが、まず私が疑問に思うことは、経済協力というと必ずひもつきというか、そこに出資あるいは融資をしたために、それに伴ってその国の財が流れていくという、いわゆるひもつきの問題がたいへん問題になるわけでありますが、このIDAへの出資と、その出資をした国の原材料あるいは資材、技術、こういったものの流れというのは一体どうなっているのだろうか、この辺のところをまず私は非常に疑問に思うわけなんですけれども、いま大蔵省のつかんでいる範囲について若干お伺いをしたいと思うのです。
  4. 松川道哉

    松川政府委員 国際開発協会融資あたりましては、その資金がどこの国から拠出されたものであるかを問わず、国際競争入札によりまして借り入れ人が所要の物資、役務を調達することになっております。したがいまして、ただいま御指摘のようなひもつきという観点から見ますと、これは完全なアンタイドの経済協力案件でございます。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しょせんは先進国から原材料なり技術なりは買わなければいかぬわけで、ただし、それが融資の額と何らかの形で見合っているということになると、これはまた逆の意味で問題だと思うのですね。そのあたりで、一体大蔵省国際金融局のほうにはこの国際開発協会のやっている事業がどのくらいこまかく報告をされているのだろうか。われわれ国民の側からいいますと非常に貴重な、しかも非常にソフトな条件でありますので、これがきわめて有効に使われなければいかぬし、またそれがどういうふうに使われているかという具体的なものがわからないと、どうも経済協力をしていってもあまり国民の側にはっきりしないのじゃないかということで、たしか日本からも理事が出ているはずでありますけれども、その辺のところの業務内容というものは一体どのくらいこまかく報告されているのか、またどういうふうに報告する義務になっているのか、そのあたりはどうなっておりますか。
  6. 松川道哉

    松川政府委員 個々案件につきまして、その案件が終わりましたあとで事後的な報告ということになりますと、ただいま御指摘のような観点からのこまかい報告を完全にとっておるわけではございません。ただ、事前の審査ないしはもう一つ事前融資政策全体につきまして種々討議がなされますときは、私ども日本を代表する理事を通じまして日本考え方を述べ、また個々案件につきましても、それが理事会にかかりました段階において、わが国としてどのように考えるかということを述べております。  たとえば、ただいま融資政策一般と申し上げましたが、レンディングポリシーというのを国際開発協会では定めておりますが、この審議あたりましても理事会におけるこまかい討議を経て行なわれておりますし、その重要な部分については、理事会にかかる前にあらかじめ相談を受けるような場合もございます。このレンディングポリシーというのは、受け入れ国はパーキャピタの所得が三百七十五ドル以下の国を原則とするとか、貸し付け基準をどうするとか、そういったものをきめておる貸し付け政策でございます。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 理事という人は、日本政府を代表してそのIDA理事になっているのだと思うのですね。ですから、個々案件について、たとえばインドネシアに対してどういう融資をするということについては、これは政府と言っても直接は国際金融局になると思うのでありますけれども、そこと全体的な相談をする、これは当然だと思うのですね。その後融資決定をされ——決定をされと言っても、これは運転資金なんというのはほとんどないから、非常に長いものはおそらく十年ぐらいかかるのだと私は思うのですね。かんがい事業とかあるいはダムの工事とかいうものでありますから、実際に融資承諾をされても、実際の実行が完了するにはかなり長い時間がかかると思うのです。  いま局長お話ですと、融資の対象に対してはある程度相談があるけれども、その後の業務報告についてどうもあまりはっきりした報告がないように聞こえるわけでありますけれども、その辺のところは、いまのIDAの規約なりあるいはわが国法律からいって、いままでに二億八千五百二十三万ドルというかなりの巨額が出資をされているわけでありますから、毎年これは業務年次報告のようなものが日本政府に対してなければやはりおかしいんじゃないか。IDAがやっている業務の実態について、国際金融局としてかなり掌握をしていてもらわなければわれわれとしてはちょっと困ると思うのですけれども、そのあたりはどういうふうになっておりますか。
  8. 松川道哉

    松川政府委員 業務報告につきましては、年一回、世界銀行グループの全体を取りまとめました報告というものが公表されております。ただ、個々案件につきまして、ないしは私どもが特別な観点から希望いたします場合には、国際開発協会協定の第六条第十一項の規定によりまして、情報の提供を求めることができるようになっております。  そこで、私ども最近の例でございますと、農業関係プロジェクトにつきまして、これは一九六四年八月に融資されましたケニアにおける農業プロジェクトでございますが、このプロジェクト内容につきましてどのようになっておるかということについて報告を求めました結果、この追跡調査の結果によりますと、外貨収入が年間約四百万ドルずつこのプロジェクトの結果増加しておるという報告を徴しております。これは個々ケースすべてについて自動的に来る仕組みにはなっておりませんが、そのように情報を求めて追跡をすることはできる仕組みになっております。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、IDAのやっている融資に対して、日本国として一応この融資に対して承諾を与えるかどうかということについては国際金融局把握をするけれども、実際に融資を行なった後、その業務がどういうふうに進行しているか、そういったようなことについては、いまの答弁ですと、報告義務というのは日本から出ている理事なり何なりにはない。したがって、各年度に実際どのくらいの融資が行なわれ——そのくらいの総体的なことはわかりましょうが、その進行状況なり何なりいわゆる年次報告的な報告というのを、日本から出ている理事というものは日本政府に対して行なう義務国内法ではないのですか。
  10. 松川道哉

    松川政府委員 先ほど引用いたしました条文によりまして、協会自体は適当な期間を置いて報告加盟国に送付する義務がございます。ただいま先生の御指摘になりました義務というのは、それを受けて私どもが国内的にそれを発表するなり報告する義務であろうかと理解いたしますが、その点につきましては別に法律上の定まった手続はございません。ただ私どもといたしましては、これだけの拠出をわが国もいたしております関係上、できるだけそのPRにはっとめてまいりたいと存じまして、昨日も私が大蔵省の雑誌に投稿したものを御引用なさいましたが、あのような形で私ども報告をしてまいりたい、また、ほかに機会があればいろいろな機会を通じて報告してまいりたい、このように考えております。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きわめてソフトな条件で貸し出されるわけでありますから、その意味では、この貸し出されたものが一体どこの国でどういう形で使われ、しかもそれがどのくらい進行しているかというのをやはり逐一把握をする。これは国会に報告する義務があるかどうかはまた別の観点として、国際金融局としては、私はやはり報告するというか把握をする義務は当然あると思うのですね、国民の貴重な税金を使って、これだけのきわめてソフトな条件で貸し出すわけですから。償還期限が五十年というきわめて長い期間でありますので、そういった意味では、国際金融局IDAの行なっている業務について、またその進行状況について、十分把握をする必要があると思うのです。  それに関連をいたしますけれども、いま申しましたように、償還期限が五十年、うち十年間が据え置きで利子はなし、手数料だけ〇・七五%。次の十年間が一%、残りの三十年間は三%ずつ返済というきわめてソフトな、ゆるやかな条件になっておるわけであります。このことについて私は何も言うわけではありませんが、こういう条件でありますから、やはり融資する国がIDAの中で、いろいろな国際的な権力と申しますか、国際的な政治の中で、これがある一カ国に集中をしたりあるいはきわめて意図的に——こういったある意味では無償の供与に近いような融資を行なう多国間の経済協力でありますから、やはり世界のどこの国にもきわめて平均的に使われなければいけないだろうと私は考えるわけであります。  その意味において、総額からいけばインドがずば抜けて大きいわけでありますが、インド人口が大きいからある程度理解ができるわけでありますが、いわゆる国別融資平均化というのですか、これは国民一人当たり幾らぐらいというふうなきめ方もありましょうし、そうはいっても、まだまだそこまですらいかない国もあるわけでありますから、そう一律にはできませんけれども各国になるべく平均的にこの融資を使ってもらうという観点から、日本としては具体的にどういうような方針を持っているのだろうか、あるいはIDAとしてはそういうことについてどういうように考えているのだろうか、この辺はいかがでありますか。
  12. 松川道哉

    松川政府委員 まず、御指摘の第一点でございますが、私どもIDA稼働状況につきまして、情報は定期的に得ております。そして今回の法律案の御審議をいただくに際しまして、委員会調査室のほうでおつくりいただきました資料に、たとえば目的別地域別累積融資承諾額であるとか、各国別融資承諾額であるとか、その他いろいろな資料がございますが、これらの情報は、私ども把握しておりますものを提供して御参考に供しておるような状況でございます。したがいまして、マクロIDA自体がどのような活動をしてどういうふうに動いているかということは、私どもはしっかり把握いたしておるつもりでございます。  次の一カ国に集中する件でございますが、これも御案内のとおり、たとえば全体の六八%がアジア集中しておる、そういった点はIDA自体でも問題になったことがございます。そして先生が御指摘のように、なるべくいろいろな意味で平均的にこの金が開発程度の低い開発途上国に使われるようにということで、いろいろな検討がなされております。その意味で、たとえばある国、ある地域事業を行なうほどの政治的条件が欠けておる。裏返して申しますと、戦闘が行なわれておりましたり、和平がなかったりというような特殊な状況、あるいはこの融資を受ける国にそれを現実の事業に結びつける能力がまだ欠けておるために、このような形の融資に先立って技術協力から入っていかなければいけない、そういったような国もございます。こういう例外的な国を除きましては、その国の貧困の程度であるとか、その国の経済を進めていく上に最も重要な部門は何であるかといったことを勘案しながら、できるだけ各国が平等にこの恩恵を受けるような努力は続けられております。  そこで、ただいまインドケースを御指摘になりましたが、これは人口から申しましても金額が多少集中することは事実でございます。しかしながら、これは一九七二年の十一月でありますが、このIDAの一部国の間で会議が持たれましたときにこの点がやはり問題になりまして、さしあたり七一三年度、七四年度、これはIDAのほうの年度でございますが、その二カ年度IDA資金の配分にあたっては、インドインドネシア、パキスタン、バングラデシュ、この四カ国については若干集中の度が過ぎておると思われるので、シーリングを置こうではないかという話がございまして、インドにつきましては四〇%、インドネシアにつきましては一一%、以下数%というシーリングが設けられた経緯もございます。そのように、ただいま先生指摘の点は私どもも同感であり、また、IDAを運営しておる理事者の諸公も同じような見解を持っておりまして、徐々にそちらのほうへ持っていきたいという努力を続けておるところでございます。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、今度IDAに対して増資を行なうわけでありますが、この増資額というのは過去日本が行なったIDAに対する出資額の約倍に近いわけですね。四億九千五百万ドルを今度日本出資するわけでありますが、過去、当初の出資を含めると四回ですね。その合計が二億八千五百二十三万ドル、ですから約二倍弱になっているわけであります。私が思うのは、これが多い少ないというだけの問題じゃなくて、この数字が西ドイツとかあるいはアメリカとかイギリスとかと比較して、日本が第四位ということになっているわけでありますけれども、この辺の数字というのは一体はたして具体的にIDAの中でどういうふうにきめられてきたのだろうか。  なぜ私がそういうことを疑問に思うかと申しますと、これからの経済協力というのは、こういったような多国間による経済協力、あるいは日本政府自身が行なう二国間の経済協力、あるいは民間経済協力といったようにいろいろな種類がある中で、今後日本経済協力というものが一体どういう方向で進められていくのだろうかということについて、はたして日本政府にポリシーがあるのだろうかということを考えるとき、この第四位、シェアでいくと一一%というシェアを振り分けられたというのはどういった経緯で振り分けられたのだろうか、その辺のところはどういうふうになっているのですか。
  14. 松川道哉

    松川政府委員 今回の増資につきましては、その増資を行なうこと自体の決議は一昨年の秋になされまして、それからほぼ一年間にわたりましてその増資の総体の規模が幾らであるべきであるか、また各国シェアはどういう割合であるべきかについて、類似会議が行なわれたのでござます。  そこで、シェアにつきましては、基本的な考え方は、一部国のGNPもとにして配分しようではないかということで、この負担割合をきめる会議事務当局をつとめました世銀のほうからも、一九七〇年の一部国諸国GNPもとにいたしましてこのウエート幾らであるということが示されて、それがいわゆる議論のたたき台になったのでございます。しかしながら、もちろん各国シェアをきめますにはGNPそのものずばりではございませんで、たとえばIDA事業からの調達割合がどうであるとか、その他種々の要素も勘案されて決定されております。一一%というのはほとんどわが国GNPシェアと同じでございますので、これは無理がないところではなかろうかと思っております。  もう一点先生がお触れになりました、種々援助形態があるが、わが国政府考え方はどうかという御指摘でございますが、経済協力形態を大きく分けますと、多数国間で経済協力をやる、しかもこういう国際機関を通じるものとあるいは各国相談してやるいわゆる債権国会議を通じるもの、それからまた、純粋に二国間で行なわれるもの、またさらには、民間ベースによりましていわゆる輸出の延べ払いであるとかそういった形で行なわれるものと、いろいろございます。  このそれぞれの形態には長所短所がございまして、あるものは開発程度がある程度以上に進んだところではなじむけれども開発程度が著しく低い国にはなじまない。これはたとえば民間ベース援助などはそうでございます。それからまた多数国間の援助、こういうことになりますと、これも非常に長所がございます。たとえば、特定の国からの政治的影響を受けることがない。したがって、借り入れ国のほうでも受け入れやすい。それからまた別な意味では、こういった国際機関には非常によく訓練されました専門家がおります。そして世界的な広い視野からものごとを考えることができる、そういった意味国際機関を通ずる多数国間の協力にも長所がございます。また二国間の協定は、多数国間協定では見られない機動性と申しますか、その必要なところへすぐ経済協力が及ぶというメリットもございます。それぞれ長所短所がございますので、私どもとしてはそのバランスを考えながらやっていきたいと考えております。  ただ、マクロで申しますならば、世界のいわゆる先進工業国がやっております援助のこの三種類のものの割合を見ますと、私どもの場合にはどちらかといえば民間ベース援助ウエートかまだ大きいものでございますから、長い目で見ればこちらが多少減って、あるいはマルチ、あるいは二国間の経済協力がこれからふえていくのではなかろうかという感じを持っております。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 外務省にお伺いをしたいのでありますけれども、いま松川国金局長からお話があった点でありますけれども、いわゆる日本経済協力というのをずっと見てみますと、かなり国際的に南北問題が大きくなって、そして国際的にやらなければいかぬいかぬということが先に立って、それとおつき合いをするというと語弊があることばかもしれませんが、そういったような・形でずっと今日まで来たような気がするわけですね。その辺のところで、いま松川さんからもお話がありましたように、今度一一%のシェアIDAの中で占めるということ、これについては少ないとか多いとかいうようないろいろな判断の基準があろうかと思いますけれども日本経済協力というのは今後——確かに経済協力やり方としては、こういった形の国際機関出資をするという多国間でのやり方、あるいは日本政府相手政府との二国間だけでやるやり方、あるいは民間での信用供与その他による経済協力、大きくいってこの三つがあるわけでありますけれども、おのおのもちろん相手国発展のぐあいによって違うわけでありますけれども日本政府としては、一体多国間の経済協力をもっとふやしていこうという方向にあるのか、あるいはやはり二国間でやっていくのがいいのか、あるいは民間にまかしたほうがいいと考えているのか。たとえば、フランスのように大体この割合が三分の一ずつになっているという国もあれば、いろいろ形態があるわけでありますが、はたしてその辺のところについて、長期的な展望で、単に国際的なおつき合いというだけじゃなくて、日本政府としては南北問題について、あるいは発展途上国をテークオフさせるについてどういうような政策を持って長期的に臨んでいるのか。それと同時に、この多国間、二国間あるいは民間ベースによる経済協力をどういうようなバランスにしていこうと考えていらっしゃるのか、その辺のことを私はお伺いしたいわけです。
  16. 菊地清明

    菊地説明員 お答え申し上げます。  まず、援助全体に関しましてどういう理念でやっておるか、どういう基本的な方針でやっているか、それがただ国際的なおつき合いだけでやっているかどうかという御指摘でございますが、私たちの考えでは、経済協力といいますのは基本的には南北問題から出ておるわけでございまして、南北問題というのは結局南北の格差の是正ということでございまして、別のことばでいいますと、発展途上国経済社会開発を助けていくということでございますので、基本的にはその発展途上国のいわゆる開発のニーズと申しますか、それに応じた経済協力をやっていく。ですから、基本的には発展途上国の要望、その国民の願望、そういったものを踏まえまして、わが国としてできることをやっていきたいということでございます。  具体的な御質問で、多国間援助、二国間援助民間のいわゆる経済協力、そういったものに関してどういう方針であるかということでございますが、これは特にはっきりした方針で、多国間は何%、それから二国間は全体の何%、それから民間幾らということは特にきめておりません。ただ、一般的な指針となりますのは、御承知かと思いますが、ピアソン報告というのが出ておりまして、このピアソン報告では、多国間援助と二国間援助割合として望ましいのは、大体、多国間援助が全体の二〇%、それからあとの八〇%が二国間というようなことになっておりまして、わが国も、七二年の統計でございますけれども、二〇%を若干上回っておりまして、まあちょうどよろしいところではないかということでございます。結果的にそうなっているだけではないかという御指摘があるかと思いますが、大体このラインがいいところではないか。  それから、多国間と二国間の長所につきましては、先ほど松川国際金融局長から御指摘のとおりでございまして、外務省といたしましてもそのとおり考えております。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、七二年の実績で、政府間援助は大体いま二二・四%ですか、これはいわゆる二国間も含めてですね。政府としては、これからは大体このくらいの比率で全体的に伸ばしていこうというふうな考えですか。
  18. 松川道哉

    松川政府委員 計数のことなので、私からちょっと御説明さしていただきます。  ただいま先生が御指摘になりました二二・四%というのは、一九七二年における開発途上国に対する日本からの資金の流れのうち、政府開発援助の占める比率ではないかと思います。先ほど菊地参事官から御説明がございました二〇%をこえるというのは、国際機関に対する出資、拠出等が四・九%というのがございますが、これが二二・四%に対して大体二一・八%ということで二〇%をこえる、こういう説明があったのでございます。御参考までにDAC全体の数字で申し上げますと、二二・四%に当たりますものは四四%ちょうどでございまして、国際機関に対する出資、拠出等は九・七%でございますから、この比率は二一・九%ということで、この比率に関する限り、わが国とほかのDAC諸国との間に大きい違いはないということが言えようかと思います。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 フランスなんかの場合は、この二国間援助と、それからいわゆる国際機関出資する多国間援助と、民間ベース経済協力、この比率がたしか三分の一ぐらいずつになっていたと思うのですけれども、おたくでつくっている「日本経済協力」という小冊子にも、日本政府による経済協力というのはもう少しふやさなきゃいかぬという文章になっているわけでありますけれども、そうしますと、外務省経済協力方針については、いま松川さんから御説明があった七二年の構成比でこれからも総額を延長していけばいいんだというふうに考えてよろしいですか。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
  20. 菊地清明

    菊地説明員 フランスの場合、私の持っている数字と少し違うわけでございますが、フランスは国際機関を通ずる援助はわりと少ないほうの国に入ると思います。フランスというのは、御承知のようにアフリカに旧植民地がありまして、これに対していわゆるバイで、二国間でやっている援助、しかもその中で技術援助というものが非常に大きな部分を占めておりますので、これは後刻もう一度チェックさしていただきますが、私たちの了解はそうでございます。  それから、先ほどの二国間援助多国間援助割合、これは政府開発援助の中の話でございますが、二国間と多国間の割合というものは、大体、現在のところいいところではないかと申し上げました。それと、今度は、政府開発援助そのものが経済協力全体に占めておるパーセンテージが、先ほど御指摘のパーセンテージでございますが、これが現在これでよろしいということではないと思いまして、この政府開発援助はその割合において、それから量において、漸次ふやしていきたいということでございます。
  21. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 少し先に進めまして、わが国経済協力というのが先進国の間ではまだまだきわめて条件がきついのではないかということがいわれているわけですね。国連開発援助委員会、いわゆるDACの加盟国の平均金利が二…八%、償還期間が二十九年五カ月。日本の七三年の平均は金利が三・八%、償還期間が二十三年五カ月ということで、金利においても償還期間においても、まだまだDACに比べて条件が悪い。ただし、七二年に比べれば七三年は確かに、七二年が四%だったのが七三年には三・八%、償還期間が二十年七カ月だったのが二十三年五カ月と若干改善されてきてはいるわけでありますけれども、それについても、七三年の金利、償還期間では、まだDACに比べて条件が悪い。どのあたりが一番いいのだということになると、これは数字ですから非常にむずかしいと思うのですが、やはりアメリカに次ぐGNP第二位ということになれば、少なくもDACの平均並みにはしていかなければいかぬだろう。それ以上にする必要があるかどうかというと、これはなかなか数字としてむずかしいことになろうかと思いますが、やはりせめてDACの平均並みにはしていかなければいかぬのじゃないかと思うわけでありますが、これが平均並みになれない理由というのは一体どういうことにあるのか、そのあたりをお伺いしたい。
  22. 松川道哉

    松川政府委員 わが国援助条件がDAC加盟諸国の平均的な条件と比べまして悪いと申しますか、きびしいと申しますか、それは事実でございます。その基本的な背景がどこにあるかということになりますと、私ども現在では世界第二のGNPということを誇っておりますが、これは急速に成長してまいりました結果でございまして、いわゆる先進工業国の仲間入りをいたしましたのが昭和三十三、四年ごろでございます。それから急速に経済の規模が大きくなってきております。そういった関係で、一つには援助の量、これがしばしば問題になりまして、GNPの何%というようなことがいわれております。そういたしますと、どうしてもこの急速に伸びていきますGNPの速度にある程度合わせながら援助の量はふやしていかなければいけない。それが先進工業国の仲間入りをしてから歴史の浅い日本としては、相当の負担であったのでございます。御案内のとおり、これからは直接あるいは間接に財政負担を伴うものでございますから、私どもとしても、その条件のほうまで急速に緩和する余裕がなかったというのが実情でございます。  ただいま先生が御指摘になりました借款の平均的な条件、これは七三年はまだなんで七二年ではないかと存じますが、この七二年の条件をたとえば六七年の条件と比べてみますと、金利におきましては、わが国の借款の平均金利が一九六七年には四・八%でございましたが、七二年には四・〇%に下がってきております。それから償還期間は、六七年には一六・六年でございましたものが七二年には二一・二年になっております。据え置き期間も四・七年が六・六年に延びておる。こういうことでございまして、これはDAC全体で見ましても多少条件の緩和はございますが、それよりもわが国条件の緩和のスピードは早い、私ども努力いたしておる、しかしDACの平均にはまだ及んでいないというような実情でございます。将来に向かいましては、財政負担の許す限り、この借款の条件もソフト化の方向に向かって努力を続けていかなければならないと考えております。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私がいまあげた数字は七三年度じゃなくて七三年で、七三年の一月から十二月の分、これは一月五日の新聞に出ておるわけで、四日に発表されたという報道になっておるわけなんですよ。これは七二年かな。
  24. 松川道哉

    松川政府委員 正式に発表されたものはないと思います。あるいはそれは七三年中に結ばれました交換公文の上にあらわれてきておる借款条件、そういったものから計算した数字ではないかと思いますが、ちょっと私のほうも現物がございませんので、はっきりしたことは申し上げかねます。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 新聞によれば、これは交換公文の締結額ということになっておるので、だからこの新聞記事もちょっとあやふやだと思うのですが、経済協力実績というふうに書いてあるけれども、実績というのとちょっと違うのじゃないかと思うのですが、いずれにしましても、いま報告があったように、この条件をどういうふうに変えていくかというのは、これはまたあと経済企画庁あるいは輸出入銀行の関係でお伺いしたいと思うのです。  その前にもう一つだけお伺いしておきたいのは、信用供与をする相手国とその経済協力の中身によって、貸し付けの条件、金利なりあるいはその償還期間、これは貸し付け条件の一番大きな要件になると思うのですが、そのあたりがどういうふうになっておるかというのがどうも私には解せないわけです。たとえば七二年にインドネシアに対して、肥料などの商品援助ということで円借款をしているのですね。このときの条件が二・五%、償還期間が三十年。それから七二年の一番悪い条件のものはザンビア、ケニア、コスタリカ、これに対する援助は金利が四・七五%、それから償還期間が二十年、ただし七年据え置きというふうになっておるわけなんです。  そのほか、たとえば今度、田中首相や三木特使が行って中近東でいろいろ約束された経済協力、あるいはそのほかいろいろ見てみますと、一体この借款を供与する相手国、それからその経済協力の中身、この金利が一体どういう関係になっておるのか。きわめて恣意的に、政治的な配慮があって——インドネシアというのはいまきわめて大きな借款が行っておるわけでありますし、輸出入の関係でもたいへん緊密な関係にある。何か政治的な配慮があるのじゃないかと思うぐらい、この貸し付け条件というのがきわめててんでんばらばらのように思うわけですね。これは一体どういうような関係になっておるのか、その点教えてもらいたいのです。
  26. 松川道哉

    松川政府委員 一般的に申しまして、各国とも、借款を供与いたします際にどのような条件にきめるかを検討するにあたりましては、種々の要素を考慮に入れております。たとえば、対象となっておりますプロジェクトの採算性であるとか、その借款を受ける国の経済的な水準であるとか、その経済援助を受ける国と援助を与える国とのいろいろな歴史的、地理的な関係であるとか、あるいはその国に前に援助を行なったことがあった場合に、それとの継続性と申しますか、そういうものであるとか、そういったいろいろな要素が検討の際に考慮の中に含まれております。  御案内のとおり、わが国の場合を申し上げますと、地理的な関係、歴史的な関係、あるいは現実の国際経済の上でのつながりから申しましても、どうしてもやはり東南アジアが一番密接な関係であり、その次がもう少し広い意味でのアジアであり、したがって、こういった地域には量的にも非常に借款ないし経済援助集中いたしております。それで、他の地域と比べますと、同種のものあるいは同じ程度の貧困の度合いの国であっても、これらの地域の国に対するものについては、条件が少しゆるいということはいなめないところでございます。  私どもといたしまして、こういったものをあまり恣意的に流れないように、極端に貧乏な、国際的にいわゆるLLDCと呼ばれております国であるとか、その次のグループであるとか、そういうグルーピングをいたしましたり、地理的なグルーピングをいたしましたりして、非常に類似しておる二国ないし三カ国、そういったものの間に極端な不均衡が起こらないような配慮は常々いたしておりますが、ただいま例としておあげになりましたザンビアであるとかコスタリカであるとか、こういった国になりますと、東南アジアの諸国その他と比べますと、どうしても地理的な関係も歴史的な関係もその密度が薄いわけでございますので、それらの点も考慮に入ってこのような条件がきまっておる次第でございます。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもそのあたりが、同じような内容、同じような額であっても——もちろん採算性ということになりますと、これは背後にあるその国の経済力によるわけでありますから、いろいろ条件が変わってくるわけでありますけれども、どうもそのあたりが、きわめて政治的に流れ過ぎているのではないかという気がするわけです。たとえば、インドネシアの米なんかについても、韓国に対しても米の供与というのは何度もやっているわけですね、その辺のところと比較してみると、どうも納得がいかないわけです。  さらに、具体的にお伺いをしたいわけでありますが、たとえば田中首相が今度タイを訪問したときに、新たな借款はなかったわけでありますが、いままでの円借款の条件を緩和したですね。いまやっている借款の二分の一を緩和して、基金分、つまり海外経済協力基金から出ている分百七十億に対しては三・二五%から二・七五%へと、それから輸出入銀行から出ている六十億円分については五%から四%へと条件を緩和したわけですね。こういうようなことが、はたして日本の予算の仕組みからどういうことになっているのだろうかということについて、私はきわめて疑問に思うのです。  いま言ったことは、これは外務省からいただいた資料だから間違いないと思うのですが、そのことの確認と、いま言った条件を緩和しますと、経済協力基金のほうは八億五千万円、それから輸出入銀行のほうは六億円、合計十四億五千万円というものが、本来利子で入ってくるものが入ってこなくなるわけです。これは経済協力でありますから、別に利子を取るのが目的じゃありませんから、そのことはまた別の観点でありますけれども、それにしても、こういった借款の条件というものが、田中首相が行って会談をしてさっと変わってくるというような恣意的なものであってはたしていいものであろうかどうか、私はきわめて疑問に思うわけであります。  それで、私がお伺いしたいのは、いま私が申しましたこの田中首相が約束された金利の変更、緩和されたその金利というのは一体どういう算定から出てきたのか、まずその辺から、ちょっとお伺いをしたいのです。
  28. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま御指摘のタイに対する円借款は、その交換公文が結ばれましたのは四十七年の四月でございます。ほぼ二年前のことでございます。私先ほど、各国間の金利のバランスを申し上げましたが、その底には、時間的な流れとして条件緩和に私ども努力してまいっておりまして、年が過ぎるたびに若干ずつ条件が緩和されておりますが、この二年間にも、わが国種々の借款案件につきましては、相当の条件緩和が進んできております。  そこで、四十七年四月にこの借款が結ばれましたが、これは総額六百四十億円でございますが、ことしの二月末現在貸し出しが実行されておりますのは約九億円にしかすぎない。非常にその進み方が悪いと申しますか、おそくなっておる案件でございます。そこで、この実施がおくれております間に、一般的な借款の条件緩和の傾向から見ますと、これをそのまま置いておくのでは、ほかの借款とのバランスが悪くなるのではなかろうか。しかしながら、その中にはすでにいろいろとプロジェクトないしその他のものに検討が終わっておるものもございますので、全部を初めからやり直してどうするということは、考え方として無理があるのではなかろうか。そういう基本的な考え方から、この輸銀を通じて出しますもの並びに基金を通じて出してますもの、これはいずれもプロジェクト借款でございますが、この半額についてそれぞれ、ただいま御指摘のございましたような条件緩和をすることに合意した次第でございます。  そこで、しからば、これが具体的に予算の上にどうはね返ってくるかということになりますが、これらのものにつきましては、今後数年間にわたってプロジェクトが進行してまいるものと思われます。先生の御指摘になりました金利の額は、おそらくそれらが平年度化されたときの金額ではなかろうかと思います。しかし、さしあたりまして四十九年度の間にこれらを融資いたします輸銀ないし基金の利子収入の上にどれだけ影響があるかということになりますと、これはまた別の問題でございまして、私どもとしましては、今回、手をつけましたと申しますか、条件を緩和いたしました部分の貸し出し実行によって、それが利子収入の上に影響を及ぼすほどのテンポではなかなか進まないのではなかろうか、このような感じを持っております。また逆に申しますと、私ども心からこれらの借款の実施が進むことを望んでおるわけでございますが、現在までの経緯から見ましても、あまり多くは期待できないのではなかろうかと考えております。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、こまかに入る前に、こういうことを思うわけですね。一番最初に何をお伺いしたかというと、DACの条件と比べてみて、わが国条件が悪い。それは何かといえば、当然それは輸出入銀行の金なり海外経済協力基金を使うわけでありますから、これはあるものは一般会計から入ってくるし、あるものは財政投融資から入ってくるわけですね。財政投融資となれば、これは金利がついている金でありますから、国民にまた金利をつけて返さなければいかぬので、当然その条件があるわけですね。そうなってきますと、DAC並みに条件を緩和するといっても、これはある程度限度があるわけですね。  ところが、ものによっては、いま一つの例として、田中首相がタイで約束をされた条件緩和について例をあげたわけでありますが、そうしますと、こういうものをやるからには、それじゃ全体的に下げられないだろうかどうか、財政負担がどうなってくるだろうかということについて、きわめて疑問を持つわけですね。その辺のことの観点からお伺いするわけなんです。  それで、時間もありませんので少し先を急ぎますが、確かにタイに対してはまだ九億円ということでまだこのプロジェクトについては多くは出ていないわけでありますけれども、それにしても、たとえば輸出入銀行法でも第十九条に「貸付利率」、それから第二十条に「貸付金の償還期限等」という項目があって、当然これは貸し付けの条件については限度があるわけですね。その辺のところとの関係。それから、輸出入銀行ですと、財政投融資資金運用部資金あるいは産投特会の金がここに入ってくるわけでありますが、これに金利がついているということになってきますと、たとえばこの緩和された二・七五%などということになると、これはいわゆる資金運用部資金あるいは産業投資特別会計からの借り出しの金利と逆ざやにならないだろうか。ということになりますと、当時私が言いましたように、何も利子を取るだけが目的じゃないけれども、その辺の国内的な処理というのは一体どうなっているんだろうかということに疑問を持つわけですね。その辺のことについて、ちょっと特別金融課長のほうに御説明を願いたいわけなんです。
  30. 山田幹人

    山田説明員 先生おっしゃいます輸銀の採算の面につきましては、確かに資金運用部からの借り入れ金コストがこの二月一日から上がりまして、七・五%に引き上げられております。予算のときに、すでにそのことが内定しておりましたのでそれを織り込みまして、四十九年度におきましては出資金を六百億積み込みまして、金利のほうはいままでの平行線、あるいはコストの引き上げに見合う引き上げの努力目標などを織り込みまして、結局のところ四十九年度におきましては、予算上余った金は貸し倒れ準備金に繰り入れるということになっておりますが、その金額を十四億五千三百万円ということに予算が組んであるわけでございます。  それで、おっしゃいますように、一つ一つの具体的な条件がどのようにきまっていくか、あるいはそのディスバースがどのように行なわれていくかによって、この金額は若干変動してくるわけでございまして、いままでも予算上見込んだ繰り入れ金額と決算とではある程度の違いが出てまいりますが、今後四十九年度の決算がどうなるかということも、ただいまの具体的なディスバースがどのように行なわれていくか、あるいは金利の引き上げ努力がどこまでできるかによってまた変わってまいりますけれども、総体としては十分のみ込み得る数字ではないかと考えております。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、いま二月一日から資金運用部資金の金利が七・五%ということになりますと、たとえば具体的に例をあげましたタイの場合に、田中首相が輸銀分六十億円、まだこれはもちろん出資をしていない、貸し出しをしていないわけでありますが、五%から四%に金利を下げたといいますと、四%の分についてはその差が三・五%生じてくるわけですね。そうしますと、この四%の分というのは、いまのように六百億の出資を一般会計から、つまり金利のついていない金を出資分に入れたことで埋め合わせができる。もちろん、六百億ほども大きな額にはなりませんが、考え方としては、これ以外のものもいろいろとあると思うのでありますけれども、六百億あるいはそれ以前の出資金、つまり金利のついていない金でこのタイに対する輸銀使用分六十億円に対して一%の金利を引き下げる。この額は出資金からいえばきわめてわずかな額ですけれども考え方としては、こういった金利を下げるということについては、出資金をふやすことによってまかない得るというふうに考えてよろしいわけですね。
  32. 山田幹人

    山田説明員 出資金の底だまりもございますし、おっしゃるように、今後急速に直接借款の条件がソフト化してまいりますと、毎年度出資金の繰り入れ額をふやしていかねばならないということが出てまいります。その辺が、先ほど国際金融局長が申し上げました、財政面からくるおのずからなる制約ということと関連が出てまいると思います。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから経済企画庁の調整局にお伺いをいたしたいのであります。  同じような質問になるわけでありますけれども経済協力基金の場合には一般会計からの出資のほうがきわめて多い。ちょっときょうは数字を持ってきていないのですけれども、多いと思うのですが、いま輸銀についてお伺いしたような同じ質問になるわけでありますけれども、その辺のところはどのような国内的な処理になるわけですか。
  34. 谷村昭一

    ○谷村説明員 現在、経済協力基金につきましては一対一の原則というのがございまして、出資が一と財政投融資が一という形になっておるわけでございます。同時にまた、出資をできるだけ早く先に出すという原則もございまして、原則と申しますとおかしいのですが、実際上の運用がございまして、そういう見地から、事実上、出資の比率と出資の出す時期によりましてコストがきまってくるわけでございます。その他の点につきましては、いま特別金融課長がおっしゃったことと全く同じ考え方でございまして、基金のコストの中身がより低利のものが出せる体制になっておるという点の違いだけでございます。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私がなぜこういう疑問を持ったかというお話を先ほどしましたが、どうもその辺のところが、いろいろと調べてみると、同じようなものでもいろいろ条件が違う。しかも、相手国インドネシアとか韓国とか、いわゆる経済協力というと、いろいろな問題がいわれるところに限って非常に条件が緩和されている。こういったものでは、やはり国民の金を使うものについてはいかぬのではないか。田中首相がタイの首相と会って、わかった、わかったと言って条件を緩和するというようなものではいかぬのじゃないか。やはり経済協力の貸し付け条件、いわゆる金利と償還期間というのは基本的な問題だと私は思うのですね。発展途上国に対して政府が貸し付けを行なう場合に、そういった条件の基本的なあり方というものはどういうものであろうか。当然これは資金運用部資金なりいわゆる財政投融資を使う限りは、財政的に限度があるわけでありますし、そのあたり出資金をもう少しふやさなければいかぬということならば、これはまた一つの考え方であろうかと思うのですね。その辺のところで、国内的なそういった財政措置と、外に対して貸し付けを行なう場合の条件、これとの見合いというものをひとつ精査して考えてみなければいかぬのではないかということが一点。  それから、信用を供与する、借款を供用する相手国経済成長の度合いによって、段階によって、当然変わってくると思うのですね。その辺のところ。  それから、さらにこまかくいえば、プロジェクト内容、採算性、この辺のところとももちろんからんでくると思うのですが、やはりわが国政府としても、経済協力の基本的な条件について、貸し付け条件について、確固としたポリシーと申しますか、プリンシプルと申しますか、何か原則がなければいかぬのじゃないかと思うのですね。どうもその辺のところがきわめてあいまいで、政治的な動向によってさっと〇・五%変わったり、いろいろと変わってくる。もちろんいろいろな条件によって変わることはいいのですが、何かそこの中にも、相手国との関係とか、そればかりが中心になって、基本的な点がどうも消えているのじゃないか、それだけのプリンシプルというものはないのじゃないかという気がするのですね。その辺のことについてお伺いしたいわけであります。
  36. 松川道哉

    松川政府委員 経済援助をいたしますにつきまして、その援助条件各国の間で適正なバランスが保たれているということは、ただいま先生指摘のように、国内においてこの負担をしておる最終的な納税者を説得するゆえんでもあり、また、国外におきましても、同じような援助をもらっても、よその国より高い条件であれば、もらっておきながらなおかつありがたみが少ないと申しますか、かえって不満の種が残るというようなこともあり得るのでございます。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、私どもといたしましても、援助条件各国間でバランスのとれたものにするように、極力努力はいたしております。しかし、そのバランスのとれたものというのは、幾つかのきちっとした客観的な、数字でわかるようなものさしで表示できるものかどうかということになりますと、いろいろな要素が入ってまいりますので、なかなかそうはならない。したがって、私どもは具体的にプロジェクトをきめるにあたりまして、よそとのバランスを考えながら、一件一件きめていかざるを得ないというのが実情でございます。  ただいま先生の御指摘にございましたように、私が先ほど申し上げましたいろいろの基準に加えて、経済成長の度合いも考えなければいけない、ごもっともでございます。また、先ほど申しませんでしたが、援助を受ける国の国際収支の状況であるとか、外貨準備高の額であるとか、そういった対外支払い能力も検討に入らなければいけない。私、先ほど非常に大まかな分け方で四つばかりの基準をあげましたが、そのほかにも、これを分析していけば、いろいろな要素も考慮しなければいけないことは、御指摘のとおりでございます。
  37. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 つまり、一般会計からどのくらい入れるべきか、それからいわゆる財政投融資をどのくらい使うべきか、そのあたりのことを確かにケース・バイ・ケースで、相手の同じプロジェクトに対して他国が入った場合には、やはり同じような条件にしなければいかぬということもあるでしょうから、そうなると、それとの見合いということも当然入ってくると思うから、いま局長の言われたこともわからぬわけではないのですが、今度総ワクを考える場合に、一般会計による出資金というものをどのくらいまで入れるべきか、あるいは財政投融資をどのくらい使うべきか、その辺のことからいくと、どうもあまり恣意的に流れてしまっても、これもひとつ問題じゃないかと私は思うのです。その辺のことを今後も少し検討してもらいたいと思うのであります。  実はまだ、田中首相が東南アジアに行った際のデモやら反日運動について、今後の日本経済協力あるいはいわゆる直接投資の問題、いろいろと質問があるわけなんですが、時間が来ましたので、それはまた機会を見つけて質問させていただくことにしまして、私の質問は一応これで終わりたいと思います。
  38. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 阿部助哉君。
  39. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほど佐藤委員質問で、経済援助の基本的な理念について何か御答弁なすったけれども、どうもあまり明確じゃないようなんで、もう一ぺん、経済援助の基本的な理念を簡単明瞭にひとつ御説明願いたいのです。というのは、皆さんの提案理由の説明も読みましたけれども、毎年出てくることだから省略をなすったのかもわかりませんので、この際もう一ぺん確認する意味で明快な説明を願いたいと思います。
  40. 松川道哉

    松川政府委員 現在のように各国相互間の相互依存関係が非常に強くなってまいりますと、そしてまた、いわゆる富める国と貧しい国との格差がひどくなってまいりますと、これをこのまま放置しておきますことは、一方では人道的にも問題であると思われますし、またこれらの国々が——これらの国と申しますのは貧しい国々が、経済的に成長していきますことが世界全体の繁栄のためにはどうしても不可欠の要素になってきておりますし、さらにもう一つふえんして申しますれば、これらの国々がその貧しさのゆえに政治的に不安定な状態に置かれるということになりますると、これが世界のほかの国々にもいろいろ影響を及ぼすことがある。こういった観点から、非常に簡潔に申しますならば、人道的、経済的、そしてまた国際政治的に、どうしてもいわゆる富める国はいわゆる貧しい国に対しまして援助をやる義務が現在の社会の中ではあるのではないか。私どもといたしましては、この義務にこたえるという意味経済援助を進めておる次第でございます。
  41. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまのお話からいきますと、日本国民にはどうしてもわからぬ問題がある。援助だ、協力だ、人道的な立場でやらなければいかぬ、こういって国民の血税を投入して、それで日本の代表である総理が行って、デモをかけられたりきらわれたりする、一体これはどういうことなんだろう。いまの日本国民、ことにお年寄りなんかは、とるに足らないような年金で物価高の中で苦しんでおる。中小企業は金融引き締めで倒産件数がふえ、四苦八苦をしておる。それなのに、国民の血税を大量に持っていって、そして人道的だ、政治的だと皆さんおっしゃるけれども、持っていけばいくほど、きらわれてデモをかれられるというのは一体どういうことなんだろう。これは国民はわからぬですよ。国民は、自分たちはいま融資をしてもらいたい、とにかくこの物価高の中で生活をやっていきたいが苦しい。それに手当てもしないで、人道的だなどといって東南アジアやいろんなところへ、お持ちになるのはけっこうだ、持っていって好かれるならわかるけれども、持っていって、それできらわれるというのは一体どういうことなんだろう。これは一体どういうことなんですか。ひとつ国民にわかるように御説明を願いたい。
  42. 菊地清明

    菊地説明員 お答えいたします。  去る一月、総理が東南アジアを訪問されましたときに、特にタイとインドネシアにおきましてデモが起きたことはそのとおりでございまして、ただ、これがいわゆる日本経済協力、それから日本経済進出に対する批判であるということは一般論としては申せるかと思いますが、この経済協力ということば、わりと不正確でございまして、これの中には、いわゆる純然たる政府の借款とか贈与とか、これはまさに国民の税金でございまして、それといわゆる民間経済協力といいますか、民間が自分の資本、自分の技術を持って進出していく、特にタイの場合は圧倒的に民間投資が多いわけでございますが、こういった民間が主体となってやっておる経済協力と二種類がございまして、そのおのおの長所短所があるものですから、これを両方並行してやっておるわけでございます。  今回、特に日本のいわゆる経済的プレゼンスに対する批判がございましたのは、純政府政府政府との間の協力関係ということもさることながら、民間のいわゆるプレゼンス、民間の企業進出、民間投資というもののあり方にも非常に問題が向けられたわけでございまして、この問題に関しましては、御案内のとおり、今後、対外民間投資といっても野方図に進出するということではなくて、相手方の要望に沿い、かつ相手方といわゆるジョイントベンチャーといいますか、そういった形をふやしていき、かつ相手国民を合弁会社の幹部に登用していくというようなこと、それから、もちろんわがほうの進出企業自体のビヘービアの問題もございますけれども、そういったものを今後とも改善していくということでこの問題に対処できるのではないかというふうに考えております。
  43. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そんな小手先の小細工を私は聞いておるんじゃないんですよ。基本的な問題として、私は政府自体が反省すべきものがあるんじゃないだろうかということであって、いまの外務省の答弁は、民間企業のあり方が悪いからああいう問題が起きた。それはそうかもわからない。しかし、その根底は何かということを皆さんが反省しなければ、これは次から次へと起きていきますよ。ある意味でいえば、最近、よりよけい援助だ何だと問題になっておるところほど大体きらわれるんじゃないですか。  これは仮定の問題で、おそらく皆さんは答えられないだろうけれども、いま田中総理が韓国へ行ったと仮定したらどうです。韓国は騒ぎ出して、朴政権もついに吹っ飛んでしまう、暴動が起きることはこれは確実だといわれております。私もそう思う。  なぜ一体そういうことになるのか。その辺は、政府の姿勢そのものがきちんとしなければ、民間が出ていってそうなるのはあたりまえなんであって、問題は、政府の姿勢自体反省すべきところはもっと反省して、援助とは一体何なのか、ほんとうにこれがそこの人たちのしあわせのためになるのかどうかという点をもっと考えていかないと、援助だ、経済進出だ、そして民間借款だ、こう言っていろいろやるけれども、やればやるほどいまのような現象が起きるのではないか。別なことばでいえば、あるいは新植民地というか新帝国主義といわれるか、そういうようなところにはまってしまうのではないだろうかという点で、この経済援助そのものについてもう一ぺん政府に根底からの再検討を要請したいと思って、私は質問したわけであります。  そこで、抽象論ばかり申し上げてもあれでしょうから、韓国への援助の問題について私は質問をしたいと思うのであります。  これは毎日新聞に出た記事でありまして、皆さんお読みになっておると思う。最近の馬山における婦女暴行の問題です。進出した日本の企業が、月給六千ウオンから七千ウオンで、そして出来高払い制でもって従業員を酷使している、婦女暴行を加えたとかいうようなことで、これは向こうの国会ですら問題になっておるところであります。もしこういう問題を放置しておけば、やがてこれは反日感情爆発の導火線になりかねないと私は思うのであります。政府はこのことを承知しておられるのですか。あるいはまた調査しておられるのですか。
  44. 菊地清明

    菊地説明員 先生指摘の事件に関しましては、承知いたしております。それで、外務省としても釜山の総領事館に訓令いたしまして調査させましたけれども、ただいまちょっと資料を持ち合わせておりませんので、すぐ電話で連絡いたしましてお答えしたいと思います。
  45. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 馬山地区における日本企業の問題は、最近突然持ち上がった問題ではないのですね。私は昨年の国会で、低賃金あるいは権利じゅうりんの事実をあげて通産大臣に聞いたところが、大臣は、そういう事実はございません、こう反論をしておるのです。しかし、現実はどうかといえば、このように問題になっておるのでありまして、これを今後どのようにやっていくか。これは、ほんとうに日本と韓国との友好の基本的問題だと思うので、もう少し政府は真剣に対処していくべきだ、私はこう思うのであります。  そこで、第二の質問といたしまして、朴政権と日本政府の間にいろいろとうわさがあるのは周知の事実であります。そして、お互いにかばい合っている。何か真実は、さっぱり国民の目にはわからない。金大中事件自体がそうでありますし、馬山の問題もそうなんであります。私は、昨年韓国に、社会党調査団ということで、ここにおる佐藤委員ともども旅券を申請いたしましたけれども、入国を拒否されました。いま韓国では、新聞報道の自由もないようであります。そして、野党のわれわれが、こういう馬山の地区あるいは日本企業の進出のあり方、また援助の実態はどうなっておるのかということを知るのは、われわれの国民に対する義務であります。それに対して、入国を申請しても断わられるようなことで、韓国援助の問題を一体われわれはどういうふうな情報に基づいて審議したらいいのですか。皆さんのあてがいぶちだけで、われわれは審議しなければいけないのですか。外務省は、一体これにどのような抗議を申し込んだのですか。
  46. 菊地清明

    菊地説明員 ただいまの件につきましては、ちょっと私どもの主管でございませんので、アジア局がちょうどおりませんので、アジア局の者にいま連絡いたしまして御答弁いたします。
  47. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま申し上げたように、新聞の報道も制限をされておる。われわれも見ることができない。そういうところに国民の血税が投入せられる。そうして、投入すればするほど問題が起き、きらわれる。一体、こんなことで対韓援助をまだ続けるつもりですか、どうですか。
  48. 菊地清明

    菊地説明員 対韓援助のあり方につきましては、私たちといたしまして常時反省を加えておるわけでございますが、先生御案内のとおり、去年の第七回の日韓間の閣僚会議におきまして、従来の対韓援助やり方といいますか、手続といいますか、これを今後変更いたしまして、従来日韓閣僚会議というものがあたかも援助の折衝の場となっていたようなことでございましたので、今後これを改めまして、日韓閣僚会議の前に韓国側の真の要望を聞いた上で、まず事務的に折衝した上できめることにしております。  それから、これも御案内と思いますけれども、つい先週、三月の二十七、二十八の両日にわたりまして、世界銀行の主催で対韓協議グループというものがパリで開催されましたけれども、これなどの多国間の協議といいますか話し合いといいますか、情報の交換を踏まえまして、本年度以降の対韓援助を検討していきたいと考えております。
  49. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 絶えず反省しておるというのは、どんな反省をしたのですか。
  50. 菊地清明

    菊地説明員 私たちの経済協力に対する態度全体の問題といたしまして、わが国援助、ことに政府援助というものが、その国の経済開発、社会開発に真に合っているかどうか、その国のニーズに合っているかどうか。それから、その国の社会の発展といいますか、抽象的なことばでいいますと社会的な公平といいますか、そういうものに合っているかどうかということを絶えず反省しながら援助しておるという意味でございます。
  51. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それで、合っておったのですか。
  52. 菊地清明

    菊地説明員 絶えず反省しておるわけでございまして、その基礎の上に立ちまして、ただいま申し上げましたようなやり方とか、その他をやっているわけでございます。
  53. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 さっぱりわからないですね。絶えず反省したんでしょう。それで検討したんでしょう。それで、皆さんの善意の意図と現実が合っておったかどうか。合っていなければ、どういう点で合っていなかったか。合っていないところはどこを直した、こういう答弁がなければ、絶えず反省をしたのかしないのか、さっぱり国民にはわけがわからぬ。そこを私は聞いておるのです。
  54. 菊地清明

    菊地説明員 私のことばがあるいは足りなかったかもしれませんけれども、対韓援助をやっておりまして、いろいろな借款を出したり贈与をしたりしておりますが、それがもちろん目的どおりに使われること、それから韓国の経済発展に寄与していることということをチェックしているわけでございまして、これは若干事務的にわたるかもしれませんけれども、いわゆる援助の効果測定というようなこともやっております。その結果を踏まえて、その次の援助政策の参考にしていくということでございます。
  55. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その効果測定をやった。どういう測定をやって、どういう結果が出て、そこでどう直したんだということを、一例でも二例でもいいからあけてもらいたい。
  56. 菊地清明

    菊地説明員 効果測定と申し上げましたけれども援助の効果を何ではかるかということは国際的にも非常にむずかしいものでございますが、結局、それはその国の経済成長とか国民一人当たりの所得の増進とか、それから、これは韓国の場合特に問題でございますけれども、農村と都市との格差の是正とか、そういったあらゆる経済指標をつかまえまして、それから言い忘れましたけれども、国際収支というものの状況その他がどういう発展を示しているかということで、それをチェックするわけでございます。ただし、これは申し上げるまでもなく、対韓援助とこの経済成長とかその他のものが直ちに函数関係にあるわけではございませんので、計量的にどうだということはできませんが、私たちとしては最小限、もちろん援助目的のために使われているかどうか、具体的にどういう進捗状況を示したかということは、具体的にチェックいたしておるわけでございます。  具体例とおっしゃられましたが、たとえば一九七三年、去年の韓国経済というものを見てみますと、これはいろいろな事情がございましたけれども、たいへんな経済成長率でございまして、一六・九%、一七%、輸出は名目で九〇%、絶対額で申しまして韓国の輸出が三十二億ドル、それから輸入が四十二億ドルでございますが、そういった好調を示しております。  それからもう一つは、韓国に対する援助の一般的なワク組みとしては、韓国の第三次五カ年計画というのがございます。この第三次五カ年計画といったある意味で長期的な計画というものに照らして、わがほうの援助のあり方というものを絶えずチェックしておるというわけでございます。
  57. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 たいへん成長率は高くて、輸出の面では名目九〇%の成長率だというが、それならば標準生計費はどれくらいなんですか。
  58. 菊地清明

    菊地説明員 その具体的な数字につきましては、後刻御報告をいたしますが、一つの数字は、実はこれは世銀の協議グループで出てきた数字でございますけれども、去年の韓国の一人当たりの国民所得が三百七十三ドルでございます。
  59. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 エンゲル係数はどのくらいです。
  60. 菊地清明

    菊地説明員 御質問数字に関しましては、あとから取りまとめて提出いたしたいと思います。
  61. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 高度成長だとかいろいろなことを言ってみたって、また一人頭の国民の所得、こう言ってみても、中東の油の出る国は、たとえばクウェートにしたって、平均すれば国民所得はたいへん高いのですよ。しかし、一部の王さまのところや何かに所得が集中しておって、一般の国民の生活が楽であるかどうかということは、マクロ数字だけはわからぬのだ。韓国は一体どうなっておるのか、エンゲル係数がどうなっておるのかぐらいのことがわからぬで、ここに答弁にお立ちになって援助内容の説明をしようたって、それはしょせん無理なんじゃないですか。それぐらいのものは用意しておいていただかなければ、これはちょっと質問にならないじゃないですか。それで名目九〇%上がりました、援助の成果があがりましたなんというけれども、上がっておるはずで、それでなおかつ日本がきらわれるというようなことになっておる。一体、その中身をもう少し詰めなければわからぬでしょう。それぐらいの数字外務省勉強してきてくれなければ、これは答弁の役に立ちません。どうなんですか、もう少しちゃんとしてください。
  62. 菊地清明

    菊地説明員 具体的な計数につきましては後刻提出いたしますが、実は先生指摘の問題は、韓国政府自身が非常に意識しまして、いわゆる所得の公正な分配といいますか、ないしは別なことばで言いますと、経済成長の利益をどういうふうに国民の間に配分するか。つまり、経済成長高きをもってすべてではない。そのベネフィットというものがいかに配分されておるかということを韓国政府は非常に問題視しておるわけでございまして、私が出席いたしました対韓協議グループにおきましても、その点に政策の重点の一つが置かれているというふうに承知いたしております。  数字につきましては、後刻提出いたします。
  63. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はそんなに学者じゃないから、パーセンテージが〇・何%違っていようと、その辺はあまりとやかく言っていやしないのですよ。大体エンゲル係数はどれくらいだ。日本でいけば三五とか三六とかいうのでしょう。向こうでは大体五〇とか五五とかという程度の大まかな見当くらいはつけておられなければ、一体、韓国の経済がどんな方向に走っておるのかというくらいのことも見当がつかないじゃないですか。あなたは折衝にまで行っておるくらいなら、それくらいのことがおわかりにならなければ、ほんとうにこれは答弁の役に立ちません。
  64. 松川道哉

    松川政府委員 いままでの御質疑をわきから拝聴しておりまして、私どもただいま手元にあります資料で何らか御参考になればと思って、御披露させていただきたいと思うのです。  一つは所得の配分でございますが、ナショナルインカムのうちで五つの階層に分けまして、一番上の階層が得ておる所得が三六%、そして一番下の位置の階層が得ておる所得が八・〇%、こういう資料が世銀のほうから出ております。なお、このパーセントは、他の開発途上国に比較いたしますと比較的、所得の配分が公平とはいきませんまでも、なかなかにいっておるのではないかという感じがしております。  また、ただいまエンゲル係数のお話がございましたが、これは七三年の平均は出ておりませんけれども、一九七〇年を一〇〇といたしました指数で、七三年十月の数字が一三一・一でございますから、三年余りの間に三〇%強上がったというのが韓国の物価の模様でございます。
  65. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 対韓援助があたかも韓国国民の福祉と生活向上のために使用されておるように皆さんは説明するのだけれども、真実そのとおりなのかどうか、私はどうも疑問を感ずるわけであります。具体的な問題をあげますので御答弁願いたいのでありますが、七〇年に開かれた第四回の日韓閣僚会議は、御承知のように、それまでの戦後処理的な態勢のワクを取り払って飛躍的に援助額を増加させた、これは皆さんお認めになるところだと思うのです。その際、日本輸出入銀行の資金百八億円が使用されておるのですが、これは間違いございませんね。
  66. 菊地清明

    菊地説明員 間違いございません。
  67. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これはだれがどういう折衝をしてきめられたのですか。だれがというのは、個人でなくとも、どの機関が。
  68. 菊地清明

    菊地説明員 手続に関しましては、先ほど御説明申し上げましたように、閣僚会議で最終的にきまったわけでございます。
  69. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、政府がきめて、それを輸出入銀行はただ事務的な処理をする、金を出してやった、こういうことですか。
  70. 菊地清明

    菊地説明員 この借款は、御案内のとおり、目的が二つございまして、一つは韓国の輸出産業を育成するということでございました。もう一つは韓国の中小企業を振興するということで、この百八億円がちょうど半分ずつ、五十四億円ずつ割り振られております。日本政府援助やり方全般について申し上げられることでございますけれども、こういった政府政府の借款につきましては、政府同士が合意いたしまして、その後輸銀なり基金なりが実際の貸し付け契約というものを結びまして、その上で実行するような仕組みになっております。
  71. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、普通、銀行は、われわれが借りに行っても、どういう使用目的で、返済能力があるかないかとか、また多少追跡調査もする。これは当然の義務なんですね。ところが、輸銀というのは、政府がきめたのをただ実行する。勢いそうなれば——本来はこういう金ははっきりした目的、プロジェクトならプロジェクトがあって、これにどれだけ金が要るんだ、それでどれくらいの期間を必要とするとか、いろいろな貸し付け条件の検討をした上でこれを貸し付ける。そしてそれの成果があがっておるかどうか、目的どおりいっておるかどうかという追跡調査をするのは当然の義務だと思うのです。これは当然のことですよ。ところが、いまのような形で政府がつかみ金できめてしまった、輸銀はただそれの金の出し入れだけの手続をした、こうなるのですね。
  72. 菊地清明

    菊地説明員 先ほどは非常に簡単に申し上げましたけれども政府間で合意ができます際には、金額というのは、これは限度額でございます。そこまでの借款を供与するということでございまして、これは言うなればほんとうの大ワクでございまして、その後輸銀なり基金なりがこれを実施する段階におきましては、当然先生のおっしゃるような調査、いわゆる貸し付け審査に当たります調査、私たちのことばでフィージビリティースタディーと申しますけれども、こういったものを行ないまして、そのプロジェクトもとの採算性、その他一般的な問題点、技術的、経済的問題点を検討した上で貸し付け契約を結ぶということになっております。  ちなみに、この百八億円に関しては、これはいわゆるバンクローンという形をとっておりまして、外換銀行その他に対するバンクローンという形をとっておりますので、一般的なプロジェクトという概念とはこの場合若干違っております。
  73. 松川道哉

    松川政府委員 ただいまの説明を若干補足して申し上げますと、この百八億円の、私どもは輸出産業育成等のための援助と呼んでおりますが、この分につきましては、当時の韓国の国際収支が非常に悪うございまして、輸入を全部現金で払っておったのでは国際収支がもたないかもしれぬという心配がございました。ちなみに若干の数字を引用させていただきますと、貿易収支の赤字が七〇年におきましては九億二千二百万ドル、七一年には十億四千六百万ドル、こういうのが実績でございます。しかも、これに見合います外貨準備が、七〇年末では五億八千四百万ドル、七一年では五億三千五百万ドル、こういった国際収支上非常に問題が多い状態でございましたので、この借款を供与いたしました。したがいまして、これが正当な輸入に当てはまれば、これは援助をいたしました目的に合致するものである、その点、通常のプロジェクト援助とは若干趣を異にしておることを御理解いただきたいと思います。
  74. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そのときの背景は、いま局長が話したとおり、韓国の外貨事情はたいへん悪かった。だからといって、つかみ金をやるということはどうなんです。輸銀のほうは、政府に言われたからというて、一々こんなものをやる法律や規則はどこから持ってきたのです。どの法律によってこれをやっておるのですか。  もう少し申し上げれば、輸銀法の第一条、これは尊重しなければいかぬと思うのです。政府がちょっと都合が悪いから、あるいはこうやりたいからという、そのときそのときの安直さでこれを動かしていくならば、法律も規則も業務方法書も必要ないですよ。これをやっておるのは、国民のために輸出入銀行という政府機関の銀行はかくかくのことをやるという誓約を、国民の前にちゃんと示しておるものだと思う。この輸銀法は、政府や輸銀の人たちだけに必要なものじゃないのです。その輸銀法の第一条を読んでごらんなさい。「一般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」つかみ金をやるのが何で補完なんです。これは第一条の趣旨に反しておるじゃないですか。これは私はどうも合点がいかないのですが、どうなんです。
  75. 山田幹人

    山田説明員 私からお答えさせていただきます。  第一条には確かに「金融上の援助を与えることにより本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、一般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」と書いてございます。韓国に対します経済協力を行なうことは、この「本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進する」ことになると考えられます。  なお、先生お話なるものは、「補完し、又は奨励すること」ということであるならば輸銀だけがやるのはいかがであろうかという御趣旨ではないかと思いますが、第一条の目的を受けまして、原則として市中金融機関との協調融資というのが輸銀の業務運営のたてまえでございます。事実、条文の中にも、こまかいことでございますけれども、十八条の二のほうには、輸出金融なり輸入金融なりについては銀行との協調融資が原則であるぞよと書かれておるわけでございますが、直接借款などの場合には必ずしも規定がございませんで、必ずしもそれによらなくてもいいという現在の法体系になっているわけでございます。  この「補完し、又は奨励すること」という点でございますが、量的な補完のほかに質的な補完という見地もあると私どもは考えておりますので、諸般の情勢によって一般の金融機関がつき合いがたい場合には、輸銀が単独で出ていくということも許されるのではないかと考えている次第でございます。
  76. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、それはどの条項によってそういうことをやるか、それは皆さん考えたってだめなんですよ。皆さん考えて何でもやれるというなら、まあ男を女にすることはできないだろうけれどもあとは何でもやれるということになれば、もう国会も要らなければ、法律も要らぬのです。なぜ輸銀法というものをつくり、輸銀をつくったのか。輸銀の性格はこうであるという、それは目的、制約があるのです。日本銀行は日本銀行としての役割り、任務というものがある。それを逸脱しちゃいかぬのです。そのために、輸銀法なら輸銀法というものは、これは政府や輸銀の人たちだけのためにつくったんじゃなしに、法は国民のためにつくっておるのでしょう。それを皆さんがかってに拡大解釈をしていったら、国会なんというものは必要ない、こんなもの審議する必要はない。もう少し条文をきちんと守ってくれなければ、しかも輸銀法をつくったときの精神を生かしていかなければ、尊重していかなければ、これは田中総理が言う法治国じゃなくなっちゃうのです。  それは援助をするなら援助する。このワクに、輸銀からは無理だというならば別の手を講じて、そして国会にはかるなら国会にはかって、それでおやりになるならいいけれども、最近の援助というものがえてしてそういう形で、たいへんわがままな政府の独善的なやり方でやられる。それがまた問題を起こす。そうして、いろいろと先ほど申し上げたように、国民の血税を持っていけば持っていくほど、その相手国からきらわれるなんということになる。そういうおそれをどこが一体チェックするのか。それは法律であり、国会なんですよ。それを国会の権能も何もかにも無視して、皆さんがこう思ったからこうやりますなんというわがままを許しておるならば、私はもう国会なんというのはやめたほうがいいと思う。こんなめんどうくさいことをして、歯の痛いのまでがまんしてこんな質問することは何もない。もうやめたほうがいい、私はやめます。そんなことで皆さんおやりになっておるのですか。
  77. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま御指摘ケースについては、私手元に交換公文を持ってきておりませんが、その後の同種のもの、すなわち六十二億円を借款いたしましたときの交換公文がありまして、おそらく表現は同じだと思いますので、これに基づいて御説明させていただきますと、かっこ書きをはずして読みますと、六十二億円が銀行により日本国関係法令に従って韓国外換銀行に供与されることになる。これが政府政府との間の約束でございます。  しかしながら、この規定でこれを実施いたしますためには、なかなか民間の銀行の金融には乗りがたいものがある。しかし、この種のことは、ぜひ国際的な経済交流を促進するためには必要である。そういう考えから、先ほど特別金融課長が読みましたように、「日本輸出入銀行は、金融上の援助を与えることにより本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、」云々の「金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」こう書いてございますので、これを非常に狭く読みますと、あるいは先生の御指摘のような疑問が生ずるかもしれませんが、現在やっておりますことは、この目的の範囲内に入るものではないかと考えております。
  78. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それはこじつければ、理屈とこう薬はどこでもひっつくみたいなもので、皆さん拡大解釈をしていけば、それは何でもできるかもわからぬのです。しかし、法というものは、特にこの第一条の目的というものは、もっと厳密に解釈すべきものだと私は思うのです。  それで、その援助が必要であるならば、それはおやりになるのを私は反対するわけではない。それならばそれで、かくかくのあれだから、このあれに基づいてやるとか、新しく国会の議を経てやるとかいう手続を厳密にやらないといかぬということなんです。問題は手続ですよ。それを全部省いて独善的に皆さんが拡大解釈をしていけば、これは独裁政治につながっていく。民主政治というものは、民主主義というものは、私はなくなってしまうと思う。それは皆さんがことばのあれをとらえて、この拡大解釈を切りなくやれば、これは切りなくできるのです。それは結局、長い目で見たときに、日本の民主政治を破壊する。そこに私は一番不満を感ずるわけでして、援助をしたい、どうしてもこの援助が必要だというなら、必要な手段を講じて、手続を経ておやりになることに、私は反対をするわけではない。しかし、何もかにもこじつけておやりになる。本来は、プロジェクトというものがあって、その計画を検討して、それに融資をしてやるというのが私はたてまえだと思う。ところが、これはバンクローンという形で、つかみ金でしょう。韓国の経済、外貨事情が悪い、気の毒だ、だからつかみ金だなんということでやること自体に私は問題があると思うのです。つかみ金でしょう。つかみ金だから、中小企業銀行の借款分はまだ使い切っていないでしょう。そういうものを拡大解釈でやることに、私は民主政治のたてまえからいって、一番大きな不満を持つのです。  また、私は、輸銀の林さんおいでになっておりますけれども、輸銀のほうも、輸銀を正常に発展させ機能させるためには、政府が言ったから何でも言うことを聞くのじゃなしに、やはり皆さんが行なうのは法律であり、業務方法書というものを踏まえてやるべきことはやる。やっていかぬことは、政府に、これはできませんと言うぐらいのことがあってもいいのじゃないかと思う。いままで一ぺんでも輸出入銀行がそんなこと言ったためしはないのじゃないですか。あるのですか、一ぺんでも。
  79. 林大造

    ○林説明員 ただいままでのところ、政府日本輸出入銀行との間の連絡は非常に緊密にいっておりまして、融資政府の考えておられるところと違う意見になったということはないわけでございます。ちなみに、ただいまお話にのぼっております外換銀行及び中小企業銀行に対しまする各五十四億円の融資でございますが、これは第一条を受けまして第十八条に、「日本輸出入銀行は、第一条に掲げる目的を達成するため、次の業務を行う。」というのの第三号に規定がございます。それによりますと、日本からの設備などの輸入を促進するために、外国の政府機関、この場合には外換銀行と中小企業銀行がこれに当たるわけでございますが、これに対しまして、日本の輸出入銀行がその輸入に必要な資金を貸し付けることという条項に基づいて貸し付けを実施しているわけでございます。  外換銀行及び中小企業銀行の貸し出し先、お得意の韓国の企業、これに日本から設備などを輸出いたしますときに、その輸出代金をその輸出するごとに貸し付けていくというのがこの借款のたてまえでございます。したがいまして、プロジェクトローンとは若干異なりますけれども日本からの輸出に一つ一つ結びついて貸し出しが実行されていくわけでございます。その結果、貸し出しも、その金額がまるまる直ちに使われてしまうわけではございませんで、外換銀行に対します貸し出し五十四億円のうち昨年末現在で五十二億六千五百万円、それから中小企業銀行に対します分は、五十四億円のうち十七億七千五百万円の貸し付けが実行せられて、現在、残高になっているわけでございます。  このようなことでございますので、プロジェクトローンと若干違うという趣旨は、企業にもいろいろございまして、援助対象国の企業がことに中小企業に属する場合におきましては、なかなか日本側の審査が行き届かないわけでございます。したがいまして、この当該国の開発関係の銀行に対して一括してワクを与えまして、そのワクの範囲内で融資を審査しながら実行していってもらうということで、それなりの意義を認めておるわけでございます。ただいままでのところ、融資は順調に進行しておる状態でございます。
  80. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あんまり理事ががたがたするものだから初めのほうを聞き忘れたので、もう一ぺん言ってください。申しわけないが、初めのほうだけでいいです。
  81. 林大造

    ○林説明員 日本輸出入銀行が融資を実行いたしておりますのは、輸出入銀行法の第一条、ここに「目的」が書いてございまして、これを受けまして第十八条に「業務の範囲」という規定がございます。まずその柱に「日本輸出入銀行は、第一条に掲げる目的を達成するため、次の業務を行う。」ということが書いてございまして、三号に「本邦からの」、すなわち日本からの「設備等の輸入を促進するため、外国の政府政府機関」、この場合は韓国の外換銀行と中小企業銀行が政府機関に当たるわけでございますが、政府機関に対して「当該輸入に必要な資金を貸し付ける」というこの条項に基づいて貸し付けを実施しているわけでございます。
  82. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 わかりました。  これで中断しますけれども、この十八条は、「第一条に掲げる目的を達成するため、」と、こういう前提があるのですよ。あなたはこの前提をふっ飛ばしておいて、この条文のこっちのほうだけでやろうとする。問題は、法の精神は一体何なのかということをもう少し考えてくれなければ困ると言うのだ。皆さんかってに法を曲げて国民の血税をやるようなことをやるからいろいろな問題が起きるのです。もう少し法治国なら法治国らしく、そして銀行は銀行らしく、その上で無理な金を出そうとするならば、それは別な道で出すのはいいと私は言うのですよ。だけれども、それを何もかも引っかけていこうというのは無理ですよ。やはりこの第一条を受けて十八条が規定されておる。その一番大事なところをすっ飛ばしておいて、中身だけでやろうといったって、それは無理です。  質問あとで引き継ぎます。
  83. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 荒木宏君。
  84. 荒木宏

    ○荒木委員 先ほどもいろいろお話が出ておりましたけれども、ことし一月、田中総理が東南アジアへ見えられて、そして、マレーシアでは抗議を受け、タイではデモにあい、ついにインドネシアでは暴動という形の抗議を受ける、こういったことが起こったわけですが、政務次官にお伺いいたしますけれども、このことからどういう反省を政府としてしておられるか、どういう教訓を引き出していらっしゃるか、これをまず伺いたいと思います。
  85. 中川一郎

    中川政府委員 総理が東南アジアを回りまして、インドネシア、タイ、その他の国であまり好ましからざる歓迎を受けた。中には日の丸の旗が焼かれるというような不祥事件まで起きましたことは、深く反省をしなければならない大きな課題であると思っております。先ほど外務省から答弁しましたように、大きな原因は商社等、経済界といいますか、民間投資があまりにも金もうけ主義といいますか、地元の人のことを考えないということに直接的原因があるというところから、これから民間投資については節度を持ち、モラルを持ってやるべきであるという反省がまずなされております。  もう一つは、それだけではなくて、日本人全体が世界じゅうからエコノミックアニマルという指摘を受けておることも事実でございます。この点も基本的に反省をしなければならないところであって、教育の問題が総理の口から出たのもその辺にあるのではないか。日本人全体、政府を含めて、自己本位、自己主張だけ、あるいは金さえもうければという考え方、戦後二十数年間続いてきたこの基本的な考え方を直さなければいけないことである、このように考えておる次第でございます。
  86. 荒木宏

    ○荒木委員 いま政務次官のほうから、金さえもうければいいというふうな民間企業のあり方、大企業のあり方が反省されておる、こういうお話だったのですけれども、そのちょうど言われたことばそのままを公然と公言し、そういう方針もとに行動している大企業がある。これは今度の国会の予算委員会の場でも明らかにされまして、これは政務次官もよく御承知だと思います。わが党の議員が予算委員会の物価集中論議の中で、三菱商事の例をあげまして、そうして当該企業の責任者にはそのことを指摘をしたわけであります。  私は政府に、いま反省をしておるという話がありましたから、その反省を当該の企業あるいはそういった行動に出ていた大企業に具体的にどのように政策として実行しておられるか、このことを伺いたいと思うのですが、その前に、予算委員会で明らかになりました点をもう一度要点だけ申し上げたいと思うのです。  三菱商事の、これは海外プロジェクトのタイ国で行なわれた合弁事業に関与した幹部の話でありますが、すでに新聞紙上でも明らかにされておりますけれども、タイへ出かけて行ったこの幹部の人は、合弁事業のあり方として「「豚は太らせてから料理せよ」ということわざがあるが、鶏はひねったら終りで、たくさん卵を産ませたほうが良いに決まっている。」御承知のように社内報でこういった報告をし、また別の幹部の人は、「日タイ合弁製鉄所創業を振り返って」というくだりのところで、出発当時「非常な期待感、責任感、さらには優越感に満ち満ちて現地に出発したものです。」そうして、御承知のように一九七〇年鉄鋼市況が高騰を続けたそのときに、「この絶好のチャンスを逃すなかれと、懸命に金儲けに専念した。金儲け、配当の増額、すなわち投資効果の増大は、即われわれの早期帰国につながるものとわが身にいい聞かせて。毎月の試算表のできあがりが楽しみで、本店の諸兄にはネット百万ドル儲け二〇%配当実行できぬかぎり帰国せぬと豪語したものです。」これはその後の新聞取材によりますと、この旅先のできごとを多少かいぎゃくも交えて報告したものである、いわば気楽なものだというふうな話があったようであります。  しかし、私はほんとうに発展途上国の現地の人たちと日本の友好連帯を願い、そして共存の道、共栄の道を進もうと考えておるなら、かりにいわば気楽な帰朝談にしても、こういった考えが出ようはずがない。これが社内報で全社員の回覧になり、しかも、そのことがとがめられないというふうな大企業内の風潮ですね。いま政務次官は金もうけに専念するというふうなやり方は問題であると言われたわけですが、これは具体的に国会の予算委員会の場で明らかになり、新聞紙上でも報道され、そして世間の関心も、一体政府がいま言われた反省を目の前にあるこの大企業のやり方に対してどのように進めようとしておるのか、これを注目しておると思います。  そこで、あげましたのは一例ですけれども、このような事例に対して一体どういう処置をおとりになりますか。先ほどの反省の実行として、方策をひとつ政府に対してお伺いしたい。
  87. 中川一郎

    中川政府委員 通産省が担当ですから……。
  88. 伊藤寛一

    伊藤説明員 お答えいたします。  先生指摘の三菱商事の社内報のことにつきましては、その後三菱商事に対して聴取いたしました結果は、たとえ社内報ではございましても非常に品格を落とした表現であるということで、今後の社内報の編集方針について、もっと慎重なやり方をするようにという社長からの指示があったように聞いております。  それから先生あとのほうの御指摘の、こういった考え方に立った日本の企業の海外事業活動ということにつきまして、特に先日の衆議院での審議がございましたあと、三菱商事を含めまして総合商社六社に対しまして、通産省としましても昨年の六月に経済五団体でつくりました発展途上国への投資行動の指針、これに照らしましてどのような対策を現実に講じておるかということのヒヤリングをいたしまして、現在その結果をまとめておる段階でございます。
  89. 荒木宏

    ○荒木委員 いままでこういった海外での大企業のやり方については論議のあったところでありますけれども、いままでは全然調査はしていなかったのですか。この点はいかがですか。
  90. 伊藤寛一

    伊藤説明員 私ども通産省といたしましては、わが国企業の海外事業活動調査というものを、毎年承認統計によりましてアンケート調査をいたしております。
  91. 荒木宏

    ○荒木委員 にもかかわらず、実際にこういったことで公然とやられておる事例が何ら指摘されていないということは、一つは調査方法の問題もあり、また先ほどのヒヤリングの結果を聞きますと、社内報の書き方に気をつけろ、こういうことのようですけれども、これは内部でどういう表現をするかという問題ではなくて、やはり企業の活動の根本的な方針といいますか、その方針に従う現実の行動が問題でありますから、いま言われておる調査を厳重に実施をして、その実施結果は早急に国会に報告していただきたい。ひとつこのことを約束していただきたいと思います。いかがですか。
  92. 伊藤寛一

    伊藤説明員 総合商社六社に対してヒヤリングをしております結果につきましては、現在検討中でございまして、私の所掌範囲から申し上げますと、先ほど申し上げました行動ビヘービアに照らしてどのような措置をとっておるかということを調べておりまして、まだそのほかの問題もございますので、帰りまして、ほかの問題も含めまして後刻御報告したいと思っております。
  93. 荒木宏

    ○荒木委員 つまり国会に正確に報告する、こういうことですね。
  94. 伊藤寛一

    伊藤説明員 私のやっております範囲が部分でございますので、いまこの場で直接のお答えとしてはできないかと存じます。
  95. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、報告するかせぬかはっきりせぬというわけですか。
  96. 伊藤寛一

    伊藤説明員 帰りまして上司に相談いたしまして、後刻その結果を御報告いたしたいと思います。
  97. 荒木宏

    ○荒木委員 どうも政治責任を持っておられる方がどなたもいらっしゃらぬのでなんですが、政務次官いかがですか。これは所管は違いますけれども、大臣のかわりに出ておられる次官の立場として、事態を明らかにして国会に報告する、これをひとつはっきり言っていただきたいと思います。
  98. 中川一郎

    中川政府委員 大臣のかわりで出てきてはおりますけれども、所掌が通産省の問題でありますから、通産省と相談をしてできるだけのものは出すようにいたしたいということで御了解いただきたいと思います。
  99. 荒木宏

    ○荒木委員 いま海外での行動についてお話をしたのでありますが、昨日の参議院の予算委員会で、わが党の議員が海外投資のあり方について企業の代表に伺いました。これもけさの新聞に出ておりましたから皆さんもよく御存じと思いますけれども、三井物産が本年一月八日に業務部長と財務部長名で発表いたしました内外各部店長殿という文書がありますけれども、この中に、海外投資案件については当面のわが国国際収支の赤字傾向から外貨流出規制が一そう強化される。そこで、国内資金的な問題はあるけれども、目先の案件は早急に実行に移すよう留意されたい、こういうことで、先行き窮屈になろう、だからいまのうちに早くやれ、こういうことです。  私は、このことが違法であるかどうか、そういったことをお聞きしようとは思いません。ただ、いま、経済進出、海外投資が問題になっておりまして、いろいろ行政指導がやられようとしている。ところが、その行政指導に対応するという形ではなくて、むしろ行政指導があるからそれに対する対策としてこういうふうにやれという考え方ですね。いまこういったことで指導があるから、それをよく検討して、国民経済の立場から、生活安定の立場からやろうという社会的責任が、ここにはみじんも感じられぬと私は思うのです。そういう意味からいいますと、社会的な非難、道義的な批判は、全く軌を一にするものがあろうかと思います。これは大蔵省の所管でありますけれども、この点については、これももうすでに明らかにされておることですが、どのように指導監督をされるおつもりか、それを伺いたいと思います。
  100. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま御指摘のどのような指導監督ということになりますと、ちょっと私も問題の所在をどのように御説明していいのか困惑いたすのでございます。と申しますのは、私ども将来の長期資本対策として、延べ払い案件であるとか、資源開発関係の海外投資であるとか、あるいは開発途上国に対する援助であるとか、こういった三つのカテゴリーを除いて抑制的に運用したいということはかねて言っております。  もう一つ根本にさかのぼりますと、私どもがある方向で行政を動かしたいということは、できるだけその時点まであまり情報が漏れないほうが好ましいのでございます。たとえば、先刻実施いたしました海外渡航者の問題にしましても、あのようなことが漏れますといわゆるかけ込みというのが起こりますので、私どもなるべく漏れないように配慮いたしておるのでございます。ただいま御指摘の海外投資のあり方というものにつきましても、私ども考え方がいろいろな形で漏れ、あるいは報道され、その結果として、三井物産がそのような姿勢を示したのではないかと思います。  私どもといたしましては、直接これらの商事会社に常時接触しておるわけではございません。私どもが運用いたしております為替管理法の許認可を要する時点で、いろいろの接触はあるわけでございます。しかしながら、現在のような情勢になりますと、たとえば銀行局のほうでは、反社会的企業に対する金融をどうするかとか、いろいろなことも検討しておられます。そういう種々機会を通じて、一般論としまして、大企業である商事会社につきましては、特に社会的に与える影響をよく考えて行動してもらいたいということを常時申しておるわけでございます。ただ、御指摘のように、この案件について、または為替管理法の案件について、特にこのようなことをしてほしいという限定的な指導というのはいたしておりません。
  101. 荒木宏

    ○荒木委員 どうも皆さんは問題のあり方をずらして、あるいはゆがめておとりになっているのではないかという気がいたします。  一つは、大蔵省のほうから情報が漏れたことがぐあいが悪い、そういう点から申し上げているのじゃないのです。それはそれでいろいろありましょう。しかし、民間企業から出向してみえておる人たちも数多くあり、また大蔵省をおやめになった後にいろいろと民間企業の幹部に出向かれる方もあるわけですから、その辺の情報収集だとかあるいは情報の伝達というようなことはある程度行なわれておる、これは世間の常識じゃないでしょうか。そのこと自体は、一つの問題がありますよ。ありますけれども、私がいま言っておりますのは、国際収支の問題を石油危機に関連してたいへん国民も心配している。そのときに行政の対応として、国際収支対策として、一つは外貨流出の規制ということが出てくるのは、これは二面の筋道はありましょう。そのときに行政がやろうと思っても、大企業のほうは、そういうふうなやり方でくるからいまのうちにどっと出しておけというのは、これは違法であるかどうかは別にして、行政の方向と必ずしもぴったり沿うものでないことははっきりしておると思うのですね。そのことが具体的にわからない間は、一般的にひとつよろしくということでこれは済むかもしれません。  しかし、はっきり言いますならば、極秘の情報として、しかも、政府の対策に対する第四次の対策として社内で出しておる。そういうふうなやり方が一般化されておって、いまの局長の御答弁のように、それはその上、手をつけませんということですと、これはつまり、大企業があらかじめ得た情報に従って、国民的な立場で社会的責任を感じて行動するよりも、むしろ個々の企業利益というものを優先させる、こういったことでも当然なんだということをはっきりとおっしゃるなら、それはそれでひとつ皆さん方の政府の性格、あり方を明らかにする意味で、意味はあると思うのです。こういったような企業の営利目的の追求ということが、いまの体制のもとで認められながらも、同時に、社会的責任ということが強調されている。だからこそ、政府系金融機関の反社会的企業に対する融資規制ということも、またいろいろといま話題になっておるわけであります。ですから、はっきり予算委員会の場で、国会の場でそのことを指摘をして、世間もみんな知っているわけです。皆さん方の政府は、これに対して一体どういうふうになさるのですか。もう一回はっきりお答えいただきたい。私がお尋ねしておる観点はそこなんです。これはひとつ政務次官、おっしゃってください。
  102. 中川一郎

    中川政府委員 これは非常にむずかしい問題でございます。企業は何と言っても利益追求が目的になっておりますし、また、反社会的なことを行なってはならないということも義務づけはされておりますけれども、これは法律制度でもって取り締まれない範囲もあります。その間を縫って、業界がひんしゅくを買うようなことも間々ありがちであることは事実であり、われわれとしては、そういうことがないように、先ほど話がありましたように、通産省からも経済五団体に心がまえの指針を出してやっております。やっておりますが、いま御指摘のような大蔵省所管の問題についても、外貨流出規制があるからという情報を得て、事前にやっておくというようなこと、これが反社会的な行動として許されないという御指摘もあろうかと思います。  これらにつきましては、御指摘をいただいて、今後かかることのないよう最善を尽くしていくという以外に方法はないのではないか。御指摘の点はよくわかりますので、われわれも企業が利益を追求するという気持ちはあるけれども、そこに一定のルール、モラルというものを——これは時間がかかりますけれども、一歩一歩前進していくように、国民的な声として今後とも一生懸命まじめにやっていく以外に方法はない、そういうことの気持ちをしっかり持っておることだけは御理解をいただきたいと思います。
  103. 荒木宏

    ○荒木委員 いま指摘をしましたことについて、そういうことのないように、まじめに一生懸命最善を尽くす、こういうお話でありました。つまり、こういうことがどういう定義になりましょうか、要するに、好ましくないというふうな意味合いのことは、いまの御答弁でもお認めになったと思うのです。行政の方向と、はりきり方向が違うわけですからね。  私は、そのこととつけ加えて、もう一つ同じ文書の中で申し上げておきたいのですが、これも昨日の参議院の質問で明らかにされましたけれども、本年後半よりは円安傾向は再び修正されて、円高の方向に向かう、つまりドルが窮屈になるだろう。そうなりますと、いまのうちに、当面前受けしない場合でも、契約ではいつでも前受けできるようにオプションを取りつけておくようにしなさい、しかもそのことは、いまのアメリカ金利を利用して前受けすれば、一年間の運用で資金面でもメリットが大である、金融引き締めのおりからこのことは非常に意味を持つのだ。つまり、このことが反社会的というふうな概念で言えるかどうか、これはさておきましょう。概念規定は別において、要するに、総需要抑制であるとかなんだとか皆さんおっしゃっておるけれども、結局、それがこういうやり方によって、少しでもいわば規制からくぐれるような形でいこう。これはなにの場合も同じことであります。為替管理の外貨流入の規制緩和ということで前受け金がアップされた、その機会にひとつやろう、同じ考えであります。先ほどの海外投資の件といい、この輸出前受けの件といい、具体的に出ておる。この事例に対して、いま次官がおっしゃった一生懸命まじめに最善を尽くす、この姿勢をどう具体化されるか。私は、具体的な政治でありますから、やはり政策であり、行政のあり方であろうと思うのです。それをやられた結果によって、あるいはやられようとしておる内容によって、ほんとうになされる政治がまじめであるか、ほんとうに一生懸命であるのか、最善であるのか、こういう評価になろうかと思うのです。ですから、問題は特定されておるわけですが、私は、この企業に対してどういうふうになさるかということを、いまここで聞こうとは思わないのです。こういう事例に対して、一体政府は、最善とおっしゃり、まじめにとおっしゃるが、どういう政策をお持ちなのか。どういう行政規制をお考えになるか。それをひとつ聞かせていただきたい。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
  104. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま御指摘の輸出前受け金の問題でございますが、これは二つの面がございます。一つは、わが国の外貨収支の面からの問題、それからもう一つは、先生指摘のとおり、国内の金融政策との斉合性、この二つの問題があろうかと思います。御案内のとおり、輸出前受け金につきましては、昨年十一月二十四日までは一件五千ドル以下のものについてのみ為替銀行への売却を認めておりましたが、十一月の二十四日にこれを一万ドルに引き上げ、さらに本年一月七日にこの限度額を十万ドルまで引き上げました。これはあくまでも、為替ポジションの面から見ますと、そういうものが入ってくることが好ましいという観点でございます。その面から申しますと、前受け金がよけい入ってきて、その結果としてわが国の総合収支の赤字が小さくなるということは、好ましい面がございます。  ただ、先生の御指摘のように、その前受け金は、外貨が入ってきても当然すぐ円貨に直され、そしてそれがいわゆる金融引き締め政策のしり抜けになるのではないか、そういうもう一つ別の面がございます。この面につきましては、日本銀行が自分の取引の相手方である各銀行とのいろいろの交渉を通じまして、ただいま御指摘のような面もにらみ合わせながら、金融政策に遺漏のないようつとめておるものと私は了解いたしております。
  105. 荒木宏

    ○荒木委員 皆さんの御答弁は、遺漏のないようにつとめておるものと考えていらっしゃるとか、あるいは最善を尽くすというふうな御答弁であるとか、一般的なことをお尋ねしておる場合は、私はそういったことでも答弁になろうかと思いますよ。しかし、今度の国会で、わが党をはじめそれぞれの党によって、幾つか問題企業が指摘をされました。たとえば、政府系金融機関の融資の問題についても、そのことが一つ契機になって、そして基準をつくろうではないかということで進んでいっておるわけですね。伝えられる基準は非常に甘くて、あれでは、言うなればつくっただけのことで、実際の効果はなかなか十分には期待できないと私どもは思っておりますけれども、しかし、そういった方向で規制が検討されるということは、やはり政策にとってはそれなりの一つの変化であろうと思うのです。ですから、いま政務次官おっしゃった最善を尽くすと言われるその方向は、具体的な中身としてはどういうことをお考えなのか。これは次官がおっしゃったのですから、次官のほうからはっきりお答えいただきたい。
  106. 中川一郎

    中川政府委員 たとえば、先ほど言いましたように、反社会的企業に対する金融の制限をするというようなことも、これは相当思い切った措置であり、こたえることだろうと思っております。いまの前受け金の問題とか、あるいは外貨の流出を規制前にやっていこうというようなことも、確かに悪いことではありますけれども、それがあまりにも社会に悪影響を及ぼすというような段階になりますと、それは法律あるいは制度ということにしなければならないと思いますが、現段階においては、それほどまで社会に混乱を起こすというような段階にはきていないのではないか。今後そういうことが目につくようなことになれば、こういうものに対しては徹底した措置を講じていく、こういうことであります。
  107. 荒木宏

    ○荒木委員 ちょっと御答弁が飛んでおるようでありますね。いままでの他の同種事例を見ますと、まず問題を指摘された企業を呼んで事実を調査する。事実を確かめなければ、これは次の手は打てません。そしてその事実を調査した結果、それが好ましくない、よろしくない、間違っているとわかれば、それに対して注意をする。注意で済まないとなれば、今度は特別監査だとかいろいろな調査が行なわれ、さらに突っ込んだ監査が行なわれる。その上で、一般的な制度のあり方として、今後の一罰百戒的なことでありますとか、あるいはそういったことが再度行なわれないような、それこそいわゆる目張り対策といいますか、こういうことが行なわれておるわけです。  ですから、政務次官、いま問題になっておる反社会的企業の融資規制云々というところで一ぺんに制度のところまでいかれたのですけれども、その前に、まず政府としてなすべきことは手順があるではありませんか、もうすでに他の事例でもなされておるのですから。そのことについてはいかがでしょうか。
  108. 中川一郎

    中川政府委員 私、為替の変動による利益を取り過ぎるという声がありますものですから、たとえば円高とか円安で円を買ったとか売ったとか特別にやったのではないかというような話もありましたから、関係の役人に来てもらって聞いてみますと、言われているほどはない、報道のほうが先行しておる面があるということで、大蔵省の所掌においてはそう御指摘をいただくような問題はないのではないか、ただ、当初お話のありました進出企業があまりにも反社会的にやられておるという点について、先ほど通産省も反省をして、調査もしておりますし、これから措置もする、こういう意味でございまして、無責任なことを言っておるつもりはございません。
  109. 荒木宏

    ○荒木委員 まだいきなり無責任ときめつけておるわけじゃないのです。しかし、通産省は調査をしておる、こう言うでしょう。いままで問題になりました、たとえばゼネラル石油でありますとか、伊藤忠商事でありますとか、これは国会で問題提起をして、すぐに事実の確認の調査が行政措置として行なわれました。いま政務次官のおっしゃっているのは、お役人から事情を聞いた、こうおっしゃっておる。どういうことをお聞きになったかわかりませんが、昨日わが党の議員が、当該の企業にそのことを確かめた。文書の成立は認めたわけですよ、これはわが社のものでありますということはね。そうしてその中に書いてあることは、先ほど政務次官が、これはこういうことのないようにする——たとえば海外投資について締められる、規制があるからいまのうちに出しておこうという、行政にそぐわないような形の指示が会社幹部の名前で出されておる、極秘通達でね。そういうことをはっきり申し上げたわけです。ですから、それについて、まず大蔵省として、きょうは大臣お見えにならぬから、かわりの最高の責任を政治的にお持ちの次官として、自分で調査をする、それが手順じゃありませんか。いかがですか。
  110. 中川一郎

    中川政府委員 そのことはひとつよく調査をしてみます。正直なところ、いま初めて聞いたのですから調査をして、そういう事実がありましたならば、しかるべき措置をとるようにいたしたいと思っております。
  111. 荒木宏

    ○荒木委員 そこで、責任を持って調査を進められるとして、その調査の内容でありますけれども、一つは、いま申しておりますのは海外投資のこの三井物産のあり方について、これは昭和四十八年の一月八日付の通達であります。海外投資のあり方について調査をしていただくと同時に、先ほど政府委員のほうから関連して御答弁がありましたけれども、例のニクソンショックの際に、為替差益の問題が世上非常に取りざたをされたわけです。きのうの参議院の物価集中の論議ではこのことにも質疑が及び、この輸出前受けの操作によって差益が出たのではないか。当該企業の答弁は、これは新聞で伝えられるところでは、差益はその限りでは出た。それはそうでしょう、先に取っちゃうのですからね。しかし、別途に債権債務の計算で差損が出た、こういうふうなお話ですよ。ですから、私は、ここのところで、いま次官のほうも差益が出たとか差損が出たとかいろいろ話があるという答弁がありましたけれども、この二つの点についてひとつしっかりと調べていただきたい。海外投資の内容ですね。それから輸出前受けにからまる差益差損の存否、これについてひとつしっかり調べていただくように質問をして、次官のそれこそ一生懸命に最善を尽くされる答弁をお願いしたいと思うのです。
  112. 中川一郎

    中川政府委員 こちらから逆にお尋ねしますが、いまの為替差益の問題は三十八年一月と言いましたね。(荒木委員「四十六年八月です」と呼ぶ)そうしますと、三年前の話でございますね。  それから、先ほどの海外投資のあり方の話はいつの話ですか。
  113. 荒木宏

    ○荒木委員 これはこの通達の出されたおりですから、本年の一月です。
  114. 中川一郎

    中川政府委員 一回調べてみますが、為替差益のほうはちょっと古い話でございますから、調べられるかどうか。できるだけのことはしてみたいと思っております。
  115. 荒木宏

    ○荒木委員 これはすでに当委員会でも再三取り上げられた問題であります。  そこで、政務次官に続いてお尋ねしておきたいのですが、その調査を正確にかつ迅速にやっていただいて、当委員会に御報告をいただきたい、こう思います。いかがですか。
  116. 中川一郎

    中川政府委員 できるだけ早く、そしてできるだけのものを御報告いたします。
  117. 荒木宏

    ○荒木委員 相手は三井物産でありますから、世間では、先ほど言いましたようなことで、行政は大企業、トップ企業にはなかなかメスが入れられないのではないか、こういう疑惑を持っております。その疑惑を晴らす意味からも、ひとつ厳格な調査を早急にやっていただきたい。  いま三菱商事の事例と三井物産の事例をお尋ねして、それぞれ関係の向きから御報告いただくようにお約束いただいたのですが、先ほども同僚委員から御指摘のありました韓国への経済投資ですね。これによって、最近現地の公害問題がかなり大きく取りざたをされるようになってきている、懸念が生まれてきている。ある新聞の報道によりますと、昨年東洋エンジニアリングが行ないました韓国の主要工業基地実態調査報告書が明らかにされましたけれども、この内容によりますと、たとえば麗水地区では、石油精製が四十万バーレル、石油化学が年産で六千万トン、電力が四十万七千キロワット、今後の増設計画を含めますと、これがさらに大きくなって、大体三・九%の硫黄含有率としますと、二十八万トンの亜硫酸ガスを排出する、こういうふうな報告があるわけであります。この近郊の千葉地区ではいま大体十万トンの排出ということでありますから、ずいぶん騒いでおります日本の国内の公害の約三倍の大気汚染という状況になろうかという報告が出ております。  きょうは環境庁のほうはお願いしておりませんけれども、こういった報告が発表されておるときに、通産省としては、それぞれが営利目的でいくんだ、それによって外貨をかせぐ面もある、公害の点はそれはまたそれでやればいい、こういうような考え方でおられるのか。あるいは政務次官から当初に、日本の大企業が海外に進出した場合に、現地の人たちにひんしゅくを買わないようにやる、政府はそのことを反省して指導を強めるというようなお話があったのでありますが、そういうお立場から、この公害という問題も一つの考慮すべき事項としてお考えになっておるのか。また、それに対する輸銀の融資という問題も出てまいります、これは貿易の場合でありますけれどもね。ですから、そういったことでどっちの考えに立っておられるのかということを、通産省と大蔵省とから伺いたいと思います。
  118. 中川一郎

    中川政府委員 韓国の問題でございますから実態がどうなっておるのかよくわかりませんが、確かに公害はあっちゃならないことでございます。ただ、ああいう国においては、若干の公害があっても、それよりは企業に来てもらうことが優先するんだ、これが国民的合意であるというのかどうか、その辺の採択権はやはり韓国側にまかせるべきであって、日本から公害がある企業は一切出さないんだというところまで言い得るかどうか。それよりはむしろ、公害のないように技術指導でもしていく努力をすることのほうが実態に合うのではないか。これは非常にむずかしいところでございます。  日本は最近非常に公害問題が出てまいっております。これは国民的な声がそこにあるというところで、国内問題として処理しなければならない。これは政治家ですから冗談話でお許しをいただきたいのですが、東南アジアでありましたかアフリカの青年でしたかが来て、四日市をながめて、少々公害があってもいいから企業がほしいなあと絶叫したという話もあります。これが国民のほんとうの声じゃないか。公害を言えるだけに日本がきたということは喜ぶべきことであって(「人類のことを考えなければいかぬ」と呼ぶ者あり)人類としても考えなければいかぬことではありますけれども、まず生きるということ、生活の場を求めるということも人類として大事なことではないか。もちろん公害のないことは望ましいことでありますから、十分配慮はしますが、公害があるからといって、一切もうだめだという性質のものではないのではないか。非常にむずかしいところではありますが、この点も、実際公害がどうなっているかよくわかりませんので、ただ量だけで公害の大きさを測定するということもどうか、私の考え方としてはそういうことであります。  あとは、通産省が実務面は持っておりますので、通産省からお答えをしてもらいます。
  119. 伊藤寛一

    伊藤説明員 韓国におきますわが国の海外事業活動が活発になるに伴いまして、先生指摘の環境汚染対策についても十分気をつけなければいかぬ、このように考えておりますが、第一義的には韓国の環境保護法規によりまして対処すべきものである、このように考えます。ただ、わが国は環境保護に関する経験を積んでおるわけでございますし、これを生かして万全の措置を講じ、いやしくも公害を輸出しているというような批判を受けることのないようにすべきであると考えております。  また、この点につきましては、発展途上国に対する投資行動の指針におきましても、受け入れ国の環境保全に十分つとめることということがきめてございます。こういったことを基準にいたしまして、通産省としてもその実践徹底を指導してまいりたい、かように考えております。
  120. 荒木宏

    ○荒木委員 私も、SO2の排出量だけで汚染度を単純に結論づけることは問題があろうかと思います、環境容量の問題その他いろいろありますから。しかし、いま次官が言われた、相手が文句を言わなければいいのではないか、そこまで極端な言い方ではないかもしれませんけれども、向こうさんが判断をするんだから——なるほどそういう面はありましょう。しかし、当初言われた、田中総理が東南アジアに行かれて抗議を受け、デモにあい、暴動の中にまでさらされるようになったということの反省は、決してそんなものじゃないはずです。やはり互恵平等、共存共栄というほんとうに対等の立場で、相手のことも考えたあり方を今後海外関係の中で進めていかなければならぬということであります。ですから、まず日本政府としては、日本の大企業が進出をしていく上ではたして国際的に通用できるような資格、条件やり方をしているかどうか、これはやはり規制の対象として考えていかなければならぬ問題だと思うのです。  そこで、先ほどある青年の話を引いて少々の公害ならという話がありましたが、いまの日本の公害は少々の公害ですか。もし政務次官がそんなふうにお考えだとしたら、認識違いもはなはだしいと思うのですよ。現にそのことによって死亡者まで出、汚染率はどんどんふえ、地域によっては裁判までどんどん起こっておるのですよ。ですから、国会でも公害国会といって、大いにそのことの論議があったことは御承知のとおりであります。しかも、排出量から見ますとそれの三倍だというのでありますから、他の条件、要素はもちろんいろいろありましょうけれども、これは私は十分憂慮、懸念をすべき段階であり、そういうデータが出ておると思うのです。  そういう点から、まず先ほどお話がありましたけれども、韓国に限らず、そういった現地での環境汚染調査を、いまいわれております反省の基準から逸脱することなく進めておるかどうかです。これは環境庁ともよく御相談の上で、早急に具体的な調査をして——韓国に限らずですよ。発展途上国、そういったところ、いま中南米までずいぶんと広がっておりますけれども、調査をして、そして早期に国会に報告されるべきである、こう思いますが、通産省と政務次官のお考えを承りたいと思います。
  121. 中川一郎

    中川政府委員 私が言いました少々の公害というのは、人が死んだりあるいは生活に耐えられない、あるいは健康をそこなう、こういう公害は、これはあってはならないことでございます。しかし、企業が進出するということになれば、大なり小なりの公害はある。たとえば北海道などでも、北海道電力の進出をめぐって、非常に議論がありました。確かに火力工場ができれば、何がしかの公害はないとはいえない。しかし、それは人間の生活に耐えられないものではないということでありますが、地元の人は承知をしない。しかし電気は、生活をささえていく上においてどうしても必要だ。それならば、その辺のところは御理解をいただくという意味の少々の公害という意味であって、新潟県その他であるような公害企業を日本がどんどん輸出する、こういう姿勢は断じてあってはならないという意味でございます。ややもすると、北海道電力などの場合の地元の闘争というのは、必要以上の騒ぎがあったのではないかなと、私は政治家として見ております。  そこで、韓国に対しても、死を招くとか生活環境が破壊される、人間の生存に耐えられない、あるいは健康にかなりの障害がある、こういう企業については、当然、先ほどの企業の進出に伴って公害も進出するという非難をされてはいけませんから、十分配慮してやっていかなければいけない。ただ、公害で騒ぎ過ぎる場合もあるのではないか。韓国の場合がどうであるかは、これはよく調査をしてみないとわかりませんが、将来、日本が、企業も進出したがたいへんな公害も進出したというようなことで、われわれの子孫といいますかが韓国に行って焼き打ちされるようなことのないように、十分配慮していくのが当然のことであろうと存じます。
  122. 伊藤寛一

    伊藤説明員 海外の事業活動に伴います環境問題につきまして、先ほど申し上げましたように、まず海外に活動しております企業が自主的に行動基準を守る、かつ、これを指導するということを進めておりますけれども先生指摘の実態の把握という点、非常に大事でございます。その調査につきましては、環境庁、外務省とよく相談をしてみたいと思っております。
  123. 荒木宏

    ○荒木委員 私が言いましたのは、まず実態調査をきっちりやるべきだ、こういう趣旨で言ったのであります。これは政務次官、よろしいですね。
  124. 中川一郎

    中川政府委員 よろしいですよ。
  125. 荒木宏

    ○荒木委員 それじゃ、その調査結果を、これも当委員会関係官庁と御相談の上でひとつ御報告いただきたいと思います。
  126. 中川一郎

    中川政府委員 これは大蔵省の所掌でございませんので、通産省のほうで……。
  127. 荒木宏

    ○荒木委員 よく御相談の上で、政府として報告をしていただきたい。
  128. 中川一郎

    中川政府委員 相談してみます。
  129. 荒木宏

    ○荒木委員 時間がありますので、私は最後に、海外投資によって合弁企業なり現地でそういった生産活動をやる、その投資先から、逆輸入によって国内の中小業者に対する圧迫という問題が起こっている。これはいろいろな業種がありますが、本日は、いま通産のほうで論議になっております特定繊維の構造改善、この法案がいま審議されておりますから、繊維の問題を一つ取り上げてお尋ねをしたいと思うのです。  先ごろ出されました繊維工業審議会の答申によりますと、現在、発展途上国繊維産業の急成長、こういったところの追い上げでわが国繊維産業のあり方はきびしいものがある、これは確かにそのとおりだと思うんです。投資先でどんどんと競争企業が生産を拡大する、そしてそれが国内に逆輸入される、あるいはアメリカ市場で競合する、こういったことになりますと、たとえば繊維の関係の小規模零細業者は、非常に窮状に立つわけであります。  御承知のように、韓国では、韓国貿易協会の発表がありますけれども、輸出業設備の製造国別割合としては、七一年の調査で、繊維の関係では五〇・三%が日本製であります。同年度の法定耐用年数が来ておる、取りかえをしなきゃならぬ設備は四五%といいますから、昨今では韓国の繊維産業ではもう大体寿命が来た。それは日本から入れて繊維の生産をやっている。そこの生産がどんどん伸び、またこれは輸出が大体年率にいたしまして——正確な数字は通産のほうからあとで伺うとしまして、どんどん伸びておりますから、日本の国内にも入ってきて国内業者を圧迫している。こういった関係での海外投資ということについて、広い意味での海外経済関係の一環として、日本政府としてどのように考えているか。  こういうふうなことの結果、国内の小規模零細業者は経営困難になり、それだけではありませんけれども、それが一つの大きな要因となって、いま各産地では非常に苦しんでいる。産地へ参りますと、いまの政府の皆さんは一体何を考えているのか、どんどんお金を出して、民間の企業が発展途上国へ行って国内と競合する産業を育てる、それを国内に持って帰ってきてわが子の首を締めているではないか、いまの政府の皆さんのその点についての考えを聞きたいというのが、小規模零細業者の皆さんの集まりに出た場合に、二百人、三百人、五百人と従業員を使っておる中規模の経営者も含めて、ほとんど一致した声であります。これは通産省いかがですか。
  130. 佐藤兼二

    佐藤説明員 御案内のように、繊維の構造改善は現在もやっておるわけでございますし、さらに所要の法律改正をいたしまして、抜本的な対策を講じようというやさきなんでございまして、それとの見合い等もありまして、第三国、特に韓国、近隣諸国からの輸入がそれに支障を来たさないようにという配慮は、われわれの最も大切な点と考えております。その観点におきましても、海外投資につきましては、やはり今後その点を十分配慮してやっていこうという見地に立って実施しております。
  131. 荒木宏

    ○荒木委員 その配慮の具体的なあり方を伺いたいと思うのですが、答申でも指摘しておりますけれども、海外投資秩序の維持、このことをひとつ強調しておりますね。韓国の場合などは、先ほど数字をあげましたけれども、昨今ではブラジルがまたたいへんにラッシュになっておりますね。御承知と思いますが、昭和二十六年から四十七年にかけて出ました繊維の関係では三百十件で三億六千万ドルといいますから、これが業種では一番金額が高い。四十七年では、前年の二・五倍になっておりますからね。ですから、いま言われたその配慮をしているというのは、要するに、国内で流通系列も含めてやろうということであって、その問題になっておる発展途上国への進出、これは大企業、中企業もありますけれども、それ自体については、これは答申も指摘しておるのですが、一体政府としてはどう考えておりますか。
  132. 佐藤兼二

    佐藤説明員 御案内のように、海外投資そのものにつきましては、現在のたてまえといたしましては自動承認の許可制度のベースになっておるわけでございますが、その海外投資の問題につきましては、やはり一般的な国際化の状況に置かれましての判断でそういう制度があるんだろうと思いますし、それを踏まえまして、私たちのより基本的な考え方といたしましては、国際化の進展に対応してむしろ先取り的なかっこうで、それに相応するようなかっこうでの国内の産業それ自体の体質の強化ということを心がけておるというのが基本的な考え方でございます。もちろん、御指摘のように、それとのバランスにおいての海外投資のあり方、あるいは近隣諸国からの輸入の急増の状況、それに対応する水ぎわの作戦等々、これはそれなりの状況に応じて判断して対処していくべきだ。ただ基本的な線は、それにも増して国際化に対応する措置として、国内の産業体質の改善施策を進めるべきであるというのが考え方の基本でございます。
  133. 荒木宏

    ○荒木委員 これは小規模零細業者の人たちはおそらく納得せぬでしょうね、いまの御説明では。自動承認制ということでどんどん大企業は行きなさい、そうしてその見返りで返ってくる往復ビンタで、出ていくたびに零細業者はやられておるわけですよ。小手も貸しましょう、面も与えましょう、いわば防御手段を少しばかりいじくろうというわけでしょう。どうして大企業が出ていくそのことについて、零細業者保護のために政治がとれないのか。これは大臣お見えじゃないから、ひとつ政務次官に政策の問題として伺いたいと思います。  国内の零細業者、小規模業者がそのことをやってくれと言っている。中には自由民主党支持の皆さんだってたくさんいますよ。私ども行きますと、いま一体何をしているんだ、どんどん出ていって、そうしてその逆戻りで業者の首を締めている。それはなるほどディフェンスもいい、しかし、それだけじゃなくて、どうしてそういうことに対して政策が打てないのかと。政務次官いかがですか。
  134. 中川一郎

    中川政府委員 これは非常にむずかしい問題でございます。たとえば農産物の自由化の問題などでも、消費者保護を考えるならば外国から入れたほうがいいし、農村を保護するためには外国から入れちゃいけない、二律相反する面を持っておるわけでございます。この御指摘のありました点につきましても、国際的なOECDにおいて自由化をやろうということが申し合わされて、それに基づいて規制ができないという原則があります。これは外国のためばかりじゃなくて、そのことによってまた安いものが日本に入ってくるとするならば、これは消費者から言うなら、国内の高いものを買うよりは海外から安いものを買ったほうがいいという、先ほどの自由化の問題と一致するところもあります。  しかしながら、そのことによって中小企業に重大な影響を与えるということになるならば、これはまた特別そういったことに対して措置をして差し上げなければならない。いま繊維関係のことについて御指摘がありましたが、どれほど重大であるのか、相当問題であるから荒木議員も御指摘だと思います。しかし、そういう原則のもと世界経済が動いており、日本国民の中にも、そういう安いものは外国から買ったほうがいいという消費者の声もあるということも考えていかなければなりません。そこで、できるならば国内の零細企業が国際的に太刀打ちできるように、通産省あたりがしっかりがんばって体質の改善をはかり、これに負けないだけのものにしていくということのほうが原則ではなかろうか、このように考えます。
  135. 荒木宏

    ○荒木委員 時間が参りましたから、最後に一言だけお約束をお願いして、質問を終わりたいと思います。  たまたま事が繊維の話に及びましたので、通産省に伺っておきたいのですけれども、答申でも触れられております、発展途上国繊維産業の急成長による国内産業の打撃の問題、そして海外投資の秩序維持の問題、中小零細企業をめぐる取引条件の適正化を含めた保護の問題、法案の内容も概要承知しておりますけれども、さらに具体的な保護政策を進めるとともに、先ほど政務次官の言われた国際関係も含めた問題が取りざたされておることは承知しておりますけれども、しかし、それにもかかわらず業者の声をくんでその点の規制の検討も進める。そして当委員会関係委員会に、つまり国会に早急に御報告いただきたい、このことをひとつお約束いただいて、質問を終わりたいと思います。
  136. 佐藤兼二

    佐藤説明員 御指摘の点は、現在の各委員会、衆参とも常時御質問いただいておりますので、その機会等を通じて責任ある大臣の答弁もなされておるわけでございますが、御指摘の点につきましては、われわれとしても、周辺の国の生活の体制の進捗状況、それから国内の市況の落ちつきぐあい等との見合いをもちまして、所要の対策を検討してまいりたいという考えであります。
  137. 荒木宏

    ○荒木委員 検討結果の報告はしていただけますか。
  138. 佐藤兼二

    佐藤説明員 方法は別といたしまして、しかるべき報告は当然いたさせていただきます。
  139. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 この際申し上げておきます。要求のありました資料等については、最善の努力を払っていただくようにお願いをいたしておきます。
  140. 荒木宏

    ○荒木委員 終わります。
  141. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 阿部助哉君。
  142. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほどたしか輸出入銀行のあり方のところで中断をしたと思いますが、それでは、この輸出入銀行は、政府がきめた、だからこれは融資をする、こういうことなんですね。そうすると、追跡調査といいますか、あとのお調べはやっておるのですか、おらないのですか。
  143. 菊地清明

    菊地説明員 やっております。  それから御参考までに、借款を供与する場合には交換公文というものを締結いたしますが、その交換公文の中にもいわゆる協議事項というものがございまして、双方からいつでも協議できるようになっております。
  144. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  145. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 速記を始めて。
  146. 菊地清明

    菊地説明員 先ほどの第一の問題でございますが、毎日新聞の三十一日に、これは三月二十九日付の韓国の東亜日報の記事を引用しまして、馬山進出日系企業が女子求職者に対し不祥事件を働いた、韓国国会商工委員会で野党から非難された旨報じましたので、これに基づきまして、外務省から二十九日に在ソウル大使館——先ほど釜山総領事館と申し上げましたけれども、まず在ソウルの大使館に対して調査を訓令しましたところ、ソウルの大使館が、韓国の工業団地管理庁というところが馬山の工業団地を管理しておるわけでございますが、これに照会しましたところ、回答は、そういううわさは聞いているが、事実関係は目下調査中であるというふうな答えでございました。先方は、結果が判明次第連絡するということになっておりまして、まだ現在回答がございませんので、この回答待ちでございます。  なお、第二のエンゲル係数につきましては、アジア局のほうからお答えいたします。
  147. 大森誠一

    ○大森説明員 韓国における一般の方々のエンゲル係数につきましては、資料によりますれば、七二年、七三年とも約四〇%ということになっております。
  148. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それからもう一つ。
  149. 大森誠一

    ○大森説明員 お答え申し上げます。  これは平均でございますが、一九七二年の数字では約三万八千ウォン、こうなっております。
  150. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、私がもう一つと言ったのは、われわれ社会党使節団が韓国へ日本の進出企業の実態を調査をしようということで入国を申し出たところが、断わってきた。外務省はそれに対してどういう措置をしたのか、しなかったのか、どうなのか。
  151. 大森誠一

    ○大森説明員 昨年十二月、社会党のほうから私どもに御連絡がございまして、主としてわが国の韓国に対する経済協力状況について調査するための調査団を派遣したい、それについて、韓国訪問についての韓国政府側の了承取りつけ、ないしは訪問先の手配についての便宜供与の要請をお受けした次第であります。  それに基づきまして、私どもは韓国にあるわがほうの大使館を通じまして、韓国政府に右要請を伝達するとともに、韓国側のこれに対する配慮を求めた次第でございます。これに対しまして、本年一月に入りまして韓国のほうからわがはう大使館を通じて返事がございまして、社会党調査団のほうでお申し越しの中に、必ずしも直接いわゆる経済協力の様子の調査ということに関連しない向きに対する訪問がかなり数多く含まれているということで、この際は、このような調査団のお見えになることは適当でないと考える旨の消極的な意向の表明があった次第でございます。
  152. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もう一ぺん言ってください。その経済調査何とかだけじゃない何とかというのは、だれがそういうことを言ったのです、もう少し明確に……。
  153. 大森誠一

    ○大森説明員 これは韓国外務省アジア局よりわがほう大使館担当官に対する回答の中で、そういう趣旨のことが先方から表明されておりました。
  154. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それに対してあなたのほうではどういう処置をしたのです。
  155. 大森誠一

    ○大森説明員 外務省といたしましては、韓国に対するわがほうの経済協力というものについて社会党の先生方にごらんいただくのは非常に意義があるということで、さらに私どもとしてできる範囲のあっせんを続けておりましたけれども、韓国側はそういう消極的な反応でございました。
  156. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 さらにあっせんをしたというのは、何月幾日にやりましたか。
  157. 大森誠一

    ○大森説明員 当時私は本件に直接携わっていなかったのでございますが、私が了解しておりますところでは、このように韓国側の反応が消極的に推移している間に、わが国における国会の会期というものも間近に迫ってまいりまして、そういう状況にかんがみて、社会党の調査団の方々から私どもに対して、今回はこういうことで訪韓できないのは遺憾であるけれども、国会等にかんがみてとりあえず訪韓は取りやめざるを得ないという御趣旨の御連絡をいただいたわけでございます。
  158. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いやいや、ぼくが聞いておるのは、あなたはさらに外務省としては韓国政府に向けて何かさらに努力したというから、いつ幾日にどういう努力をしたのかと聞いているのです。
  159. 大森誠一

    ○大森説明員 詳しい日時の資料を手元に持ち合わせてございませんが、韓国側から先ほど申し上げたような消極的な態度表明がありましたのが一月十五日のことでございまして、それから数日間にわたってそういうような申し入れをした経緯はございますけれども、間もなくわがほうの国会も始まったわけでございまして、先ほどのような社会党側からの御意向伝達もありまして、それにてわがほうからの韓国に対する申し入れば、以後は特にはやっていない次第でございます。
  160. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 経済調査だけではなしに、あの当時ですから、金大中氏に関するいろいろな接触とか、そういうものを向こうは心配されたというなら、だからわれわれのほうは、そういうことではなしに、日本の進出企業、経済援助の実態の調査、こう銘打っておるわけだ。しかし、向こうはそうとっていないでこうとっておりますよというのを、われわれのほうにあなたのほうは連絡しましたか。
  161. 大森誠一

    ○大森説明員 その点は、外務省のほうにお見えになりました該当の方に、アジア局のほうから申し上げてあるはずでございます。
  162. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、私が行っておるのですよ。次官にも会っておるのですよ。われわれは、抗議を申し込め、抗議をすべきじゃないか、そう言ったら、政務次官は何かわけのわからぬことを言うから、私はぴしゃりとやったのだ。これは長くなるからここではやめますけれども、皆さんは向こうから一方的にそう言われれば、何ら反駁もできないのじゃないですか。何も言わないのじゃないですか。皆さん自体日本の進出企業の実態をわれわれに見られてはいかぬのじゃないですか。どうなんです。もしそれでなければ、日本国民の血税を使って援助をしておる、それを国会で審議をするとすれば、新聞でも真実は報道できないときに、われわれの目で見なければ、一体どういう審議をするのです。そういうときに、皆さん自体外務省自体が、もう少しきちんとした姿勢で交渉しないのでは話にならぬじゃないですか。一体どっちのための外務省なんですか。一体それをどういうふうな——具体的に幾日にどういう抗議を申し込んだかというのを私は聞いておるのです。ないならないでいいのです。やりもしないでやったみたいな話をされては困るのだ。そこはきちんとしてください。
  163. 大森誠一

    ○大森説明員 先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、この訪問御希望については積極的な姿勢で韓国側に申し入れて、私どもとしては私どもなりに尽力したつもりでございます。
  164. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それは主観の問題でして、皆さんは努力したつもりだかもわからぬけれども、こういうお断わりが来た。それには尾ひれがついておる。われわれは経済調査と言っておるが、向こうは政治的な問題がからんでおるから断わる、困る、こう言ってきたのでしょう、あなたのさっきの答弁からいえば。そうしたら、それは社会党の使節団に、向こうはこう言ってきておるから、この点はこういうふうに経済問題だけにしてくれないかとか、また、それでもなお向こうが断わってきたなら、向こうになぜそれを入れないのだというくらいの抗議を申し込むくらいの姿勢があってしかるべきなんじゃないですか。これは常識じゃないですか。外務省というのは、こういう常識が通らぬところですか。それを、幾日にどういうふうな抗議を申し込んだかというのを私は聞いておるのであって、何もしていないならしていない、こう言えばいい。してもいないで、何か交渉して一生懸命やりましたみたいな話をされたって、これは困る。もっと真実をここで、国会でちゃんと述べてもらわなければ困る。どうなんですか。
  165. 大森誠一

    ○大森説明員 当時、社会党の方々と連絡に当たっておりましたのは私ではございませんでしたけれども、その同僚から聞いておりますところでは、韓国側のそういう意向というものを調査団の方々にもお伝えいたしまして、それで善後処置をどうするかということでおはかりしていたと私は伺っておる次第でございます。  その間に、先ほど申し上げましたように、韓国側から反応がありましたのが一月十五日という時点でございまして、その後間もなく国会が再開されるというようなこともございまして、その後の話の詰めば行なわれないままに、訪問がとりあえず打ち切られた、このように私としては了解している次第でございます。
  166. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 国会が始まったとか始まらないなんというのは、あなたの配慮の中に入る必要があるのですか。それは国会できめることですよ。それはわれわれ国会議員がきめることですよ。また、国会の議長がきめることですよ。国会が始まっておる間は一歩も国会を出ちゃいかぬのですか。必要があれば休むこともあり得るのです。国会が始まったとか始まらぬとかいうのは、あなたが配慮せねばいかぬことなんですか。だから、そういうつまらない尾ひれをつけて要らないことばかりをおっしゃるけれども、肝心なことを一つもやっていないじゃないですか。もうあなたに質問せぬでもいいです。  次に移りますが、林さんお見えになったので、林さん、輸銀は融資をする、その追跡調査はやっておられるのですか。
  167. 林大造

    ○林説明員 輸銀の融資にはいろいろな種類のものがございまして、たとえば、輸出の延べ払い信用、それから対外投資の所要資金を国内の企業に対して貸し付けるもの、それから三番目が、輸入関係のたとえば航空機関係の金融、それから四番目が、相手の国の政府ないし金融機関等に対するいわゆる直接借款でございます。  輸銀は随時、輸銀融資にかかわる個別案件の実態調査をいたしておりますけれども、輸銀が現在比較的力を入れておりますのは、その個別の民間の企業に対する融資関係でございまして、たとえば韓国に対する問題につきましても、韓国関係民間の投資がかなり盛んになっております。その関係の調査などはいたしておりまして、これはもっぱら部内の融資の事務の参考に供するということでいたしている次第でございます。政府関係追跡調査につきましては、政府のほうとよく御連絡をとりながらやることになるわけでございますが、これは今日までのところ、直接借款については特に韓国関係追跡調査はいたしておりません。
  168. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは具体的にお伺いしますけれども、皆さんのところで中小企業銀行あるいはまた外換銀行、ここへ五十四億ずつ出した。この出した金を向こうの外換銀行ないし中小企業銀行が外貨を貸すわけですね、割り当てるわけですね。当時その金利は幾らですか。
  169. 林大造

    ○林説明員 その関係の金利は外換銀行の金利とは違っておりまして、それは八・二五%でございます。
  170. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 日本からは六・二五%ですね。それで向こうで八・二五、私はたしか九%だと聞いたのだけれども、いまあなたは八・二五と言う。まあ八・二五でもようございます。そうすると、二%の金利差があるわけですね。この金利差は何ですか。
  171. 林大造

    ○林説明員 金利差はいろいろな関係で生じてくるものでございまして、相手国の銀行、この場合で申し上げますと、外換銀行ないしは中小企業銀行は、その国内の外貨の貸し付けにつきましての、その銀行の融資方針に従います金利を徴収するわけでございます。それはこれらの銀行が海外から受ける借り入れ金の金利と直接の関係はない。たとえばドイツの開発銀行、いわゆるクレジットアンシュタルト・ヒュール・ビーダーアウフバウ、復興銀行と申したほうがいいかと思います。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕  これは日本の輸銀と開銀に相当する銀行でございますが、そこから借りております金利は三・〇%でございますが、貸し付けは八・〇%で出しております。それからアジア開発銀行から借りておりますものは、これは一次の借款の金利は六・八七%で借りておりますが、国内の転貸の条件は一〇%になっております。相手国の国内の金利はそのようなことで、各種の条件、たとえば国内における金利水準でございますとか、あるいは国内における各種のリスクの算定、それから為替リスクも含まれる場合があるわけでございますが、このようなことを勘案いたしまして、その金融機関独自の方針できめる。そこから生じてくる利ざやというのが、場合によっては生まれることもあるわけでございます。それはその受け入れ金融機関の業務資金として活用されるということは、この種のいわゆるバンクローンにおきましてはしばしば認められることでございます。
  172. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この当時、一般の韓国の市中金利は大体どのくらいだったのですか。
  173. 林大造

    ○林説明員 これが行なわれましたのがちょうど昭和四十六年でございますが、昭和四十六年ごろの金利は、国内で二二%でございます。
  174. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ですから、いまの御答弁のように、一般の市中金利というものは二二%と高い。したがって、日本からの融資がいく、外貨がいく、その外貨を場合によれば高利に回したほうが企業に投資するよりもたいへん効率よく利益をあげることができるというのが韓国の実態なんですよ。そうすると、いろいろ問題が出てくる。  これは政府でやったのかどうか知りませんが、政府の役人さんがだいぶ入りておるから高島ミッションというのは公的な調査団でしょう。その高島ミッションでもこう述べておるのですよ。「さらに一言韓国経済について苦言を呈するならば、経済問題に過度なまでに経済外的要素が作用している面が見受けられる。その点がわれわれにとって気がかりだった。」こう言っている。そして「輸入外貨割り当て、商業借款供与ワクを受けるためには、すべて有力者の口添えが必要であるとの声が聞かれた。」みんな政治的に口添えがある。そこで融資を受ける。その融資がはたして皆さんの意図するようなプロジェクトに投下されるのかどうか。一部はやみ金融というか、高利の金融に回ってしまう。そのほうが実際利回りがいいわけですから、利益をあげられるわけですから。  そういうようなことをやって、しかも、その借款の返済は韓国の国民の血税で払ってくるわけでしょう。だから、不実企業というのが出てくるわけですよ。そしてそのしりぬぐいは全部韓国の国民の血税でしりぬぐいせざるを得ないとなれば、日本のいまの借款のあり方というものが一体どうなのか、韓国の受け入れる側の姿が一体どうなのかということの見きわめもなしに、皆さん、先ほど局長のおっしゃったように、韓国の外貨事情がたいへん悪いからこれにつかみ金をやるなんということは、一体やられていいのかどうか。そのことがますます韓国経済をどろ沼の中に引き込むことになりはせぬのかというあたりも不安を持たざるを得ないのでして、そういう点で、金利の差というものはたいへん大き過ぎる。この金利差がまたいろいろなところに、政治の腐敗に結びつかないという保証はないと私は思うのです。  だから、いま読み上げたように、政治的な要素が加わり、有力者の口添えというものがなければ金融一つできない。そうして、金融を受けさえすればたいへんなやみ利息をかせぐことができる。こういうあたりに、今日、韓国経済、韓国への問題があろうと私は思うのです。それを考えないで、ただやればいいじゃないか、あたたかい手を差し伸べるんだということを皆さんが幾らおっしゃってみたって、現実はわからない。だから、われわれは一ぺん目で見たい、こう言うのです。その目で見ることもできない。一体何をもとにして審議するのかという疑問を私は持たざるを得ない。それだけに皆さんのほうでもう少し、さっきの外務省の答弁のようなことじゃなしに、もう少しきちんとした御答弁を願いたいと私は思うのです。
  175. 松川道哉

    松川政府委員 ただいまの阿部先生の御指摘の数々、私も共鳴することが多うございます。私が先刻御説明いたしましたように、本件は、その金が日本からの物の輸入に充てられますれば一応そこで役目が終わるプロジェクトローンとは違うのだというその差はございますが、いずれにしましても、対韓援助の全体については、ただいま先生が御指摘のようなことがあろうかと思われます。  そこで、私どもといたしましては、先刻外務省からも御披露がございましたように、この種対韓借款の追跡調査をする道は開かれております。したがいまして、できるだけ近い将来、この対韓借款の追跡調査をぜひやりたいということで、ただいま外務省を中心にいたしまして、あるいは民間委託の形をとるかもしれませんが、対韓援助の実態を追跡調査してみたいということで、着々計画を進めておるところでございます。
  176. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 繰り返し繰り返し私はしつこく申し上げるけれども援助というものが皆さんの意図と反してアヘンのような役割をしてみたり、ときには腐敗政権をますます腐敗させてみたりする。特に私たちがいま問題にするのは、やはりすぐ隣であるだけに、韓国の問題だからなんです。そして、先ほど韓国の公害問題の質問が出たけれども、公害問題にしたって、どうも韓国政府自体にもやはり大きな問題を持っておるような気がしてならぬのであります。また、観光問題なんか、これはちょっと失礼になるかどうか知りませんが、しかし、これは副総理兼経済企画院長官の太完善さんのおっしゃったことばですが、こういうことをおっしゃった。  「高度成長を謳歌する日本の観光ブームによって、地理的に近いわが国日本の観光客が急激にふえている。観光が経済面に寄与する比重は国によって異なるが、一〇〇%の外貨獲得が可能だという点で、観光収入の増加がさらに望ましいことである。」一〇〇%の収入だ、こう言うのです。「そこで、遺憾なことであるが、そのうち一部が、われわれの美風良俗の観念に背馳する行為を見せていることも事実である。ときに、このような日本観光客の一部の醜態は政府の無分別な観光政策に基因するものではないかとの批判が提起されている。しかし、わが国のことわざに、南京虫をとらえるために家を焼くわけにはいかないということばがある」、名文句でありますが、「南京虫をとらえるために家を焼くわけにはいかないということばがあるように、一部観光客の品位が目に余るものであるといっても、観光振興政策を基本的に変更することはできない。」、こうおっしゃっています。  これを見ただけでもほんとうに、韓国自体の問題もあろう、同時に、それに援助を与え、そしてある意味では腐敗をさらに強める、そして独裁政権の維持に協力するだけであるというような援助であるならば、心ある韓国の人たち、日本におられる人たちから聞けば、どうか日本援助はやめてくれ、援助をすればするほど韓国は腐敗し、だめになってしまうのだ、だから皆さん、どうか日本援助は打ち切ってくれと、これはもう涙ながらに訴える、この姿をまざまざとこれで証明されておるのじゃないだろうか。高島ミッション自体も、各所でそういうことを言われておるのです。この高島ミッション自体も、皆さんお読みになっておると私は思うのだ。これにあっちこっちで、この不実企業のあり方、なぜこういう企業ができるのかという究明は、相当にやられておる。それにもかかわらず、また援助をふやす。何か去る二十七日パリで、また対韓援助グループは、これから十五億ドルも出してやる、そのうちの三〇%前後ですかは日本の担当だなんということで、日本は韓国援助は減らさないということなんでしょう。昨年の閣僚会議は、例の金大中事件があった、国内の世論操作という観点からも渋ったように見せかけたけれども、また韓国援助はこれをふやそうということなんでしょう。その方針はもうきまっておるのですか。
  177. 菊地清明

    菊地説明員 二十七、八日のパリにおきまする世銀の対韓協議グループに関しましては、御承知のように、協議グループと申しますのは、午前中も御説明申し上げましたように、情報交換の場でございまして、韓国の去年一年の経済状況、それから今後の展望につきまして討議をし、かつ情報交換をするというところでございまして、各国とも、幾ら出す、幾ら韓国援助を行なうということを約束する場ではございませんので、したがって、日本側としても、日本の代表といたしましても、そういった約束をした事実はございません。
  178. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 はっきり約束しないけれども政府方針はどうなんだと聞いておるのです。
  179. 菊地清明

    菊地説明員 ただいまのところ、ことしの対韓援助をどういう形で、どういう金額といいますか、その態様につきましては、いまだ決定いたしておりません。これはこの協議グループで得ました情報資料その他を今後検討いたしまして、検討するということになっております。
  180. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 協議グループとこうおっしゃるけれども、結局その中心はアメリカであり、金を出す中心は日本ということになるのじゃないですか。  それで、いままで私が一例をあげた外換銀行、中小企業銀行に対する金のような、つかみ金の援助であるとかというような形でやられる限り、ほんとうに日本援助というものは、国民怨嗟の的になるだけではなしに、いわゆる朝鮮の統一問題をむしろ阻害する役割りを日本政府も一緒になってやっておると言って間違いがないと思うのであります。皆さんは援助援助と言うけれども、私が一番冒頭にお伺いしたときに、援助は人道的な立場でやるのだ、こうおっしゃっておるけれども、私もそのとおりに、ほんとうにそれがそのとおり行なわれるならば、われわれ双手をあげてこの援助に賛成をします。しかし、いまのような援助のあり方、それが証拠に、田中総理がああいうデモを浴びるというような結果になっておることを見ても、この日本政府の姿勢、ひいてはそれが各進出企業の姿勢に波及している。それがああいうぶざまなことになってしまうわけであります。  そういう点を考えると、この援助という問題は、もう一ぺんほんとうに、その人たちの将来、長い展望を持った将来、その人たちにプラスをするという確信を持つまで、あまりむやみに金さえ出せばいいものではないのであります。自分の子供だって、あまり金ばかりくれていると、どらむすこになってしまうのだから、あまり金を出すだけが能じゃない。私はもう一ぺんこの援助の問題を根本から再検討されることを望むし、特に韓国への援助の問題は、さらに真剣な再検討を期待して、私の質問を終わります。
  181. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 次回は、来たる五日金曜日、正午理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時十六分散会