○竹本
委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
会社臨時特別税法関係四案に反対の討論を行ないます。
第一に、税法の限界について申し上げたいと思います。今日、百三十万の
会社が利潤を求めて自由に行動しておる。これに対して政治や行政が介入しないことがむしろ資本主義の原則であります。そこには人々の創意くふうを生かすというメリットもありますが、同時に、悪徳業者の横行、生産の無
政府状態といったようなデメリットもあり、民社党が常々混合
経済を主張しているゆえんもまたここにあります。
最近における一連の悪徳業法、荒かせぎ等は
国民の憤激を買うものでありまして、それは主として
経済倫理の退廃、
政府の
経済政策の誤り、あるいはその取り組みのだらしなさによるものでありまして、政治の
責任はまことに重大であります。これを税法によってすべて解決しようということは、それ自身が無理であります。
第二に、何が
不当利得であるか、何が
超過利得であるか、何が異常
利得であるかということは、にわかに定めがたいと思います。さらに、根本的には、利潤追求を使命とする資本主義において、許される利潤の追求と許されない利潤の追求とを
区別することもたいへん困難な問題であります。最後に、
基準所得を上回るものを
超過利得とするにしましても、その
基準年次にたまたま不況であるとか、あるいは輸出が抑圧されておったとか、あるいはたまたまその年次に
企業が
創設されたといったような場合には、何をもってアブノーマルな
所得とするかということもたいへん決定が困難な問題であります。
したがいまして、関係
法案とましては、この点でそれぞれ
各党のお示しになりました案にも矛盾があって、にわかに賛成し得ないものであります。
ただ、その中で、公明党、共産党両党のお出しになりました案は、
課税技術上の困難性の問題においてその
考え方を私どもと異にいたしますけれども、
超過利得に対する発想の基本についてはおおむね同一であり、これを評価するものであります。
自民党、
社会党両案につきましては、われわれと発想の基本を異にいたしておりますので、遺憾ながら反対であります。
そうした事情を総合勘案いたしまして、民社党はこれらの税の限界と
超過利得課税の矛盾ということにかんがみまして、早くより売り上げ高
利益率を
課税基準とすべきことを主張したわけであります。すなわち、各
企業別に
昭和四十五年、六年、七年の三年間の売り上げ高
利益率、正確にいえば営業
利益率の
平均を出して、たとえば紡績業においては大体これは五%であり、製造業については大体八・三%でありますが、これを今後対象となる
事業年度の売り上げ高に乗じ、これを上回る当該
事業年度の
利益の差額を
超過利得とするものであります。
およそ売り上げ高というものは、不当な値上げその他のやり方がなければ、一度に急に大きく伸びるものではありません。また原価や営業費等の費用も、売り上げ高に対して一定のバランスを持つべきものであります。われわれは、アブノーマルな
超過利得は、この売り上げ高
利益率を
基準とするときに最も正確にとらえることができると信じます。
そうした意味において、民社党は、
資本金一億円以上の
企業のすべてを対象として、その売り上げ高
利益率を
基準とした
課税をしたい。
税率はおおむね三〇%、ただし
超過利得が五十億円以上百億円未満の場合には三五%、百億円をこえる場合には四〇%ときびしくしておるわけであります。これによって得た
税収は、
物価安定基金特別会計を
創設して、公共料金の
値上がりの
抑制、生鮮食料品の
価格の安定に使おうとしたものであります。
第二に、本問題に取り組む
政府の基本的な姿勢についても、われわれはすこぶる遺憾に存じておることを申し上げたいと思います。
悪徳商法と
企業のもうけ過ぎは、
経済のモラルに関する重大な問題でありまして、
政府は当然みずからの
責任において必要な
法案を
提案して、
社会正義を貫くべきであったと思います。しかるに、いつの間にか
議員立法という形になって、
自民党がこれをお引き受けになる。そのまた
自民党は、三月
期決算に間に合わすためにはあと一週間という時点に至っても、なおかつ
法案の
提出を見るに至らなかったのであります。そして去る二十二日に至って突然、本件は
与野党一致の
合意を見て
提案すべきことをわれわれに申し入れて見えたのでありますが、この最後の段階で示されました、いわゆる
村山私案ということでございますけれども、これは従来の
自民党の主張を百八十度転換して、
社会党案に近づいたものでありまして、いささかわれわれは
自民党の真意を疑ったのであります。しかしながら、問題の重要性と緊急性にかんがみまして、
各党の協力一致が必要であるとの大乗的
見地に立って、われわれはこれに一応賛同することに決定したわけであります。
しかるに、
自民党はぎりぎりのどたんばにおいてさらに三転、四転して、
企業のもうけ過ぎをねらいとした
超過利得税を
企業のための配当保障を行なうという、
超過所得を攻めるのではなくて、一割の配当を保障するという驚くべき大
修正を行なってきたのであります。
これは二十五億円以上の約四百の大
企業にはなはだ有利な
修正であり、
会社によっては十億円、二十億円の税
負担の不当な軽減であり、制裁を抜きにして配当を保障する案であります。特に、悪徳業者に対してわずかに
法人税額の一〇%の税をかけるのみであって、はなはだ不徹底であるのみならず、善意の
企業に対しても巻き添えの結果、関係のない税金の
負担をしいるというものでありまして、われわれの断じて許し得ないところであります。
およそ税に必要なものは公平の原則であり、政治の基本は
国民の信頼感であります。われわれは転機に立つ日本の政治の再建のために、かかる矛盾の多い
特別税に反対し、かっこの
特別税をつくる過程において示されました
政府・
自民党の態度にはなはだ遺憾の意を表明し、さらにまた、願わくはこの
企業経営の
社会化を徹底して、再びこうした悪徳
企業の出現することのないように、この際、
社会経済の制度改革を急ぐべきことを
要求いたしまして、私の反対討論を終わります。(
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