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1974-03-20 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    大西 正男君       金子 一平君    鴨田 宗一君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君  委員外出席者         議     員 武藤 山治君         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         大蔵省銀行局銀         行課長     清水  汪君         大蔵省銀行局保         険部長     安井  誠君         大蔵省銀行局保         険部保険第一課         長       浅谷 輝雄君         国税庁税部長 田邊  曻君         国税庁税部所         得税課長    水口  昭君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         日本専売公社営         業本部本部長 飯田 頼之君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 三月二十日  昭和四十九年分の所得税臨時特例に関する法  律案武藤山治君外五名提出衆法第七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税の減税、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)  昭和四十九年分の所得税臨時特例に関する法  律案武藤山治君外五名提出衆法第七号)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する祖税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 おはようございます。よろしくお願いいたします。  私は初めに政治資金の問題、それと税法関係というような関連でお尋ねをしたいと思いますが、この問題ではひとつ政務次官に御答弁をお願いしたい、こう思うわけであります。  ことしの一月二十四日、この国会の初めにあたって参議院の本会議で、わが党の藤田進議員代表質問を行なったわけですが、その中で政治献金の問題に触れているわけであります。その政治献金の問題に触れた中で、特に、田中総理大臣あるいは福田大蔵大臣、それから大平外務大臣三木環境庁長官中曽根通産大臣、それぞれの各大臣に対して、自治省の発表によるとそれぞれの派閥に対する政治献金というものはどのくらいあるということを指摘して、それに対して各大臣見解藤田議員が求めたわけであります。  それに対する各大臣お答えは、大まかにいいますと、政治献金は受けているけれども、しかし、それは政治家倫理の問題として自分たちは身を正しておる、こういうことが一つであります。それからもう一つは、自民党として、党として献金は受けてはいない、そういうものは第三者の機関である国民協会というようなものを通じて受けている、そこで、その国民協会へ入るお金がだれからどれだけというふうなことが別にわかる仕組みにはなっていないので、したがって、そういう政治献金行政上何らかの影響を受けるというようなことはない、こういうふうな答弁であります。それからもう一つは、企業がそういう政治献金を出すということは、これもいわば一種国民としての自発的な政治参加の形である、そういう自発的に企業が出す浄財はこれを断わるつもりはない、これは受け入れていく、こういうふうな形の答えがそれぞれ各大臣答えの中で出ているわけであります。  そこで、私がまずお尋ねをしたいことは、はたしてこういう企業献金が自発的なものであるのかどうかということなんであります。これは新聞でも明らかになりましたように、その献金を集める機関である国民協会のほうが、各業界や企業に対していわば割り当てのような形をやっているわけですね。その割り当ての額が、今度は三倍あるいは四倍というふうに非常に大きく引き上げられる。それに対して企業の側では、とてもそんなに出せない、こう言っている企業もあるというふうなことが新聞で報道されておりますが、そうすると、これはどうも、自発的だという見方がはたしてできるのかどうか、この点も非常に問題だと思います。中川政務次官は、まだここでそれぞれ各大臣の何々派という名を呼ばれるところまではいっておりませんが、しかし、政治家として福田大蔵大臣と同じ責任をになっておられる立場から、この問題についてひとつ御見解をお聞きしたい、こう思うわけであります。
  4. 中川一郎

    中川政府委員 会社政治献金をする。その政治献金が何らかの見返りを持ったり、あるいは何らかの圧力があったりしてなされる場合には、これは許されることではない。しかし、会社が自発的に浄財を、日本社会をよくするための政治活動を支援するという意味において、あまり多額にならない程度のものを寄付するということは許されることではないかというふうに思います。国民協会を通じて入っている金の中で、何か割り当てをしているといううわさのあることも事実でございますが、その点については、われわれも党内にありまして、明らかにしなければ国民の疑惑を受けるということから、その真相について国民ないしは少なくとも代議士間において納得のいける姿のものにしておかなければならないということの動きが、自民党の中にあることも事実でございます。私としては、今後ともそういう不明朗な、疑問を抱かせるような金の集め方ということについては、十分気をつけていかなければいかぬ、こういう考え方を持っております。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 すると、国民協会の集め方の中には、ほんとうに自発的な形でない、いま言われたことばによれば、不明朗な側面もどうもあるように見受けられる、こういうふうにお考えなわけですか。
  6. 中川一郎

    中川政府委員 あるように伝えられておるということから、その点を明らかにすべきだというふうに私自身も思っております。伝えられておることが真相であるかどうかは、私はまだ調べておりませんので、近々そういうことを明らかにするように仲間の者とも相談し合っている、こういう段階でございます。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 自民党内部でそういう点を明らかにしたい、こういう政務次官お答えでありますが、いまのような非常なインフレ、あるいは企業あり方というものが非常に国民的な問題になっているときに、その企業あり方国民協会関係というものがまた非常に国民批判を受けている、こういう実態であると私は思います。そうすると、私は、国民協会のしかるべき責任者自民党あり方をただすということも一つとは思いますが、国会という形でそのあり方をただしていくという面も必要だと思いますので、これはしかるべき機会にこの大蔵委員会国民協会責任者参考人としてお招きして、ほんとうに自発的であるのかどうか、割り当て制というふうな不明朗なことをやっているのかどうかというふうなことも含めて明らかにするということが必要だと思いますので、これは委員長のほうでまたおはかりをいただいて、そういう参考人として招くということについても手続をお願いしたい、こう考えるわけであります。
  8. 安倍晋太郎

    安倍委員長 理事会において御相談をいたします。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、そのことからもう一つ進めまして、法人性格といいますか、これがいわば税制の問題にも非常に関連してまいりますので、そのことでお尋ねをしたいと思うのです。  実は、きのうこの委員会福田大蔵大臣出席をされて、わが党の山中吾郎委員がいわゆる法人税の基本的なあり方大臣やりとりをしたわけですが、その中で大蔵大臣は何回か、法人というものは自然人とは違う、こういうふうなことも述べられているわけであります。また、わが国の法人税あり方、その原理というものも、いわゆる法人実在存在であるか、あるいは擬制的な存在であるかというようなことの論議があって、方向としては法人擬制説というような方向づけがあって、そこで、いろいろな配当に対する軽課措置控除措置がとられている、こういうことだと思うわけです。  ところが、いま言った大企業政治献金をやる。その政治献金は自発的にやるんだ、その企業が望ましいと思う政治方向を実現するために、その方向政党に対して政治献金をやるというようなことになってくると、企業あり方はいわば自然人と同じあり方ということになってくるのじゃないか、それは一種法人実在説というあり方につながる問題じゃないか、こう私は思うのであります。  そこで、一つの実例をあげて申し上げますと、これは政務次官御存じかと思いますが、昭和三十六年に、出時は八幡製鉄、まだ新日本製鉄に合併する前の八幡製鉄株主であった有田さんという人が裁判を起こした。それは、会社自民党政治献金をやっておる。それは有田さんの考え方によれば、企業というものは株主集合体である。その株主すべてがすべて自民党支持者ではない。ところが、株主総会にはからずに、八幡製鉄会社役員会では自民党政治献金をやっておる、これは株主利益に反する行動ではないかということで裁判をやられたわけです。この有田さんの立場というのは、企業というものは株主集合体である。これはまさに法人擬制説立場に立って、そういう立場から裁判を提起された。  ところが、それに対して最高裁判決昭和四十五年に行なわれたわけですが、この判決によれば、非常にはっきりとした法人実在説立場に立った判決が出されているわけです。その判決文によれば、政治献金というものは、これは災害救援資金寄付とか、あるいは地域社会への財産上の奉仕とか、あるいは各種の福祉事業への資金面での協力とか、こういうものと同じ性格のものだという言い方をして、会社が納税の義務を持ち、自然人である国民とひとしく国税を負担している以上は、国や地方公共団体の施策に対して意見の表明その他の行動に出たとしても、それを禁止する理由はない。企業といえども、悪法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、内国の法人に対しても自然人と同様に適用されるべきである、こういう立場をとっている。そこで、会社が国やあるいは政党の特定の政策を支持し、あるいは推進し、あるいは反対する、こういう政治行動をする自由もあるし、あるいは政治資金寄付することもその政治行動の自由の一環であって、それが会社によってなされたからといって、これは国民寄付と特別、別に扱う必要はないんだ、こういう判決最高裁から出された。つまり、これは徹底した法人実在説という立場に立った判決ではないか、こう思うわけです。  ここで、いわば法人あり方について、政治献金という問題をめぐって法人擬制説あるいは実在説という二つの原理がはっきりぶつかってきておる、こういうことだと思うわけですが、私は、税法配当に対するいろいろな措置という面では擬制説という立場に立った措置がなされながら、一方、政治資金の面では法人実在説という立場に立って、そうした会社企業献金が幾らでも自由にできる、しかもそれは税の負担を免れることもできる、こういういまの政治資金規正法あり方というものは、原理上非常に矛盾しているのではないか。これはいわばどちらかに統一されなければいかぬじゃないか、こういうようなことを考えるわけですが、この点について、政務次官原理上のお考えをお聞きしたい、こう思うわけです。
  10. 中川一郎

    中川政府委員 非常にむずかしい問題で、お答えするのにもちょっと迷うわけですが、この問題はそれほど深く考える必要があるだろうかという気がいたします。税制上では確かに擬制説をとっておりますが、裁判所の判決がどうあろうとも、かりに擬制説であろうと実在説であろうと、構成している会社社会的活動一つとして政治献金をする。ところが、内部に反対している人もいるというのが八幡製鉄裁判の提訴の理由ですが、かりに反対している人が、一、二あったにしても、役員会というんですか、会社意思決定機関でそれが承認されたということになれば、それは全体としての意向であって、実在説であろうと擬制説であろうと、それほど問題にすべきことではないのじゃないか、こういう考え方でございます。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 よくこの問題が出ると、すぐ労働組合もやっているじゃないか、こういう議論が出るわけですが、労働組合営利法人とは全く法人性格が違うわけですが、労働組合の場合でも、そうしたある政党を支持する、あるいはある政党の選挙の候補者に対して資金協力をするというような場合には、組合員の総意を表現できる大会やあるいは中央委員会や、そういう場できめて実行しておる、こういうことであるわけですから、まして、そういう労働組合性格の違う法人である会社企業がそういう行為をなす場合は、役員会というよりはやはり株式総会というようなところにはかって――少なくもやるとすればそういうところにはかった上でやるというのが当然のあり方じゃないか、こういうふうに考えるわけです。  それは一応別といたしましても、いま言ったようなあり方があるとすれば、この租税三法の論議の中で租税特別措置の撤廃ということに関する議論がずっと進められてきておるわけですが、また、その必要性ということも、政府側答弁の中でもかなり含意としては、意味としては認められてきておる、私はこう思うわけですが、この際、そういうふうな法人あり方原理を思い切って統一して、そして配当軽課措置なり配当控除措置なりをやめていくという方向一つはこの原理の統一をはかるべきではないか、こういうふうに考えるわけですが、これについて政務次官のお考えをお聞きしたいと思います。
  12. 中川一郎

    中川政府委員 税制上からいくならば、擬制説が現段階においては一番適当であろう、こういう考え方のもとに大臣答弁したように、自然人とは違うという根底に立ってもろもろの制度をつくっておりますが、先ほど申し上げましたように、労働組合においても確かに労働組合大会を開いて了解を得ておるのと同じように、役員会、やがて決算等においては株主総会というものも経て、会社全体としての意思表示、まとまった意見として献金がなされておるものだ。ですから、その株主総会においていかぬということになれば、それはできないという性格で解決できる問題ではないか。ですから、この問題と税制との問題を考えて、実在説に持っていって税制もそれに合わせろという見解はまだとりがたいというふうに考えます。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、そういうふうに分離して政務次官考えておられるようですから、私としては、この場合は、政治家倫理の問題として、政治家の側から、あなた方の側から、ひとつそうした政治献金については自発的に遠慮する、慎む、こういうふうな態度が示されるべきじゃないかと思いますが、この点はどうでしょう。
  14. 中川一郎

    中川政府委員 それは個々の代議士によって違うことで、規制するわけにはいかぬと思いますが、政治家として国民批判を買うような多額の、あるいは何らかの関係を持つような金銭の献金というものは厳に慎みたい、私自身はそのように考えております。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、先ほども申しましたように、この問題では国民協会責任者参考人という問題についてもう一度お願いを申し上げまして、次へ進みたいと思います。  東京都がいま過大都市における都市政策を進めていくという関係で、いわゆる集積利益集積の不利益、こういう観点に立って、法人に対する法人住民税やあるいは法人事業税の特別な一つ負担を求めていきたい、こういう考え方を持っている。そういう立場から、現在の法人の実質の税負担の姿がどうなっているかということを東京都の立場調査し、研究して発表したということがあるわけであります。しかも、その発表は、資本金階級別にずっと調査をして発表しておるということであるわけですが、それに対して大蔵省主税局のほうから、あるいは高木主税局長のほうから批判もまた出されるというようなやりとりが行なわれているわけであります。それから、きのうはまた衆議院の地方行政委員会で、その問題で社会党の岩垂議員質問をしてまたこの議論があったわけでありますが、私もこの機会に、その問題についてひとつ見解お尋ねしたいと思うわけです。  これは主税局長にお願いしたいと思いますが、三月十六日の毎日新聞高木さんの談話が出ているわけであります。東京都が出した、法人税税負担がいわば逆累進になっておる、資本金の大きな企業ほど実質的な負担が軽くなっておる、こういうふうな資料に対して、「国税庁で発行している「法人企業実態」に出ている数字を足したり、引いたりしていじくれば、ある程度の負担率は浮きぼりにされてくる数字自体に間違いはなかろうが、しかし、それはあくまでも数字の上のことで実態を正確にとらえたものではない。われわれとしてはこれが最善とは思わぬものの、ちゃんと大企業の方からより多くの税金を徴収しているつもりだ。大企業からもっと取りたいとも思って検討はしている。しかし、都が出している数字はその一面を誇張しすぎたオーバーなもので、われわれはそんなことでは驚かない。どうしてもというならある程度の資料を出し税金論争を受けて立ちますよ。」こういふうな高木さんの談話が出ているわけであります。  ここで「法人企業実態」に出ている数字を足したり引いたりして、いわばいじくっているんだ、操作しているんだ、こういうふうなことを言われているわけですが、しかし同時に、数字自体に間違いはない、こういうふうにも言っておられます。その足したり引いたりという数字自体に間違いがなければ、それを加えたり引いたりして操作をしたにしても、出てくる結論というものは当然間違いがないはずだ、こういうふうに考えるわけですが、この点について局長の御見解をお聞きしたいと思います。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは国税庁が発行しております、先生も御存じだと思いますが「法人企業実態」の数字ベースにして、所得金額と、この表の表現によりますと特別措置による損金扱いになっている金額、そして法人税額というところまで算出をいたしておるわけでございます。そのあと法人住民税の額と法人事業税の額は、これは「法人企業実態」とは別に、理論計算税法上の税率を用いまして算定をしておるということでございまして、法人所得金額から法人税額までは実績数値でございます。地方税のほうは理論数値でございますから、したがって、その足した数字というのは結果的には架空の数字になっております。私がこの反論という形で述べましたことは、これは電話で真夜中に照会がありまして、現物を見ずに返事をしたものでございますので、そこまでこの表の持ちます意味を知らずに電話で回答したものでございますので、この表を見ました感じでは、さらに実態とは離れておるという点が一つ問題があるということを、あとで気がついたわけでございます。  それでは、所得金額なり法人税額なりという「法人企業実態」のほうから引用した数字はこれでよろしいかと申しますと、非常に問題がありますのは法人税額数字でございまして、これはある意味から申しますと、国税庁の編集しております「法人企業実態」に掲げております数字に若干不備があるということにも基因しているわけでありますけれども、ここにあげられました法人税額というのは、いわゆる算出税額ではなくて納付税額と申しまして、現実に法人法人税として納めた額だけを算定をいたしております。現行法上の法人の納めるべき額、納付税額は、所得に三六・七五とかあるいは二六とかいう税率をかけまして算出しました算出税額から、法人所得税の形式で納付いたしました源泉徴収税額なり、外国において納めました外国税額なり、あるいは租税特別措置法上の特例措置でありますたとえば試験研究費税額控除といったものを控除した額が納付税額ということになるわけでございまして、「法人企業実態」には算出税額集計が計上されておりませんで、納付税額だけが計上されている関係で、「法人企業実態」をベースにして法人負担を見ようとすればこの数字しかないということになりますけれども、それではそれが法人企業税負担率を示すものかというと、そうではなくて、それはやはり算出税額をもって見なければならないわけでございます。  算出税額につきましては問題がございまして、  一昨年の国会以来何かそれを解明すべきであるということになっておりまして、昨年の国会で四十六年分につきまして当委員会に御提出をいたしたのでございますが、その資料で見ていただけばおわかりのように、この資本金階級区分は、その場合にはこのようにこまかくはなっておりませんでしたけれども、この表にありますほど資本金階級別負担率が違っているという関係にはなっていないわけでございます。  なお、こういった問題は大いに現状を明らかにいたしまして、各方面で広く御論議をいただくことが望ましいことでございますので、このようないわば誤解というものが出ませんように、たとえば「法人企業実態」の集計しかた等につきましてもただいま検討中でございまして、今後とも同じ数字の上でそういうことの論議が進むような材料を提供しなければならないというふうに考えておりますし、昨日他の委員から御要求がございましたので、この数字と私ども考えております数字との対比をいたしました説明資料提出するつもりでおります。  なおもう一つ特別措置による損金扱いの五項目というものにつきましても、これは当委員会におきましてもしばしば御質問になりお答えをいたしておりますように、いろいろ問題があるところでございまして、このB欄というものの数字をそのまま承服するわけにはいかない、賛成するわけにはいかないという事情でございますが、その辺は長くなりますから省略をいたします。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 納付税額でこの表がつくられているということは、これはいま発表されている統計資料ではこれしかとらえようがない、こういうことでなっているということは局長もいまお認めになった。そこで、いわゆる算出税題というものを土台にしてこういう表を作成する作業をいま進めておる、こういうことですね。では、そういうものが示されて、そこで税負担率が各資本金階級別にどういう姿になっておるか、これが近い将来に国の立場からも明らかにされるというふうに考えてよろしいわけですね。時期的には大体それはいつごろできるようになりますか。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そんなに時間はかからないと思います。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 それから、それに関連して私はこの際申し上げたいことは、昨年の九月に阿部委員の要求に対して出された「資本金階級別法人税負担割合」、これは資本金が一億円以下、一億円超百億円未満、百億円以上、この三つの段階に区分されているわけですが、この点は東京都の出した資本金階級別区分はもう少しこまかい区分になっておるわけですが、私は今度出されるそういうふうな資料というものも、こういうこまかい区分で出されることが国民の理解を進めるためにも、またこの問題の性格を明らかにするためにも非常に親切じゃないかというように考えますので、この資本金の階級区分というのは三つの段階の大まかな分け方ではなくて、東京都が出したようなこういうこまかい区分を採用されるようにお願いしたいと思いますが、この点はどうでしょうか。
  20. 高木文雄

    高木(文)政府委員 話がこまかくなって恐縮でございますが、この東京都のほうの資料特別措置による損金扱いというのは、たとえば特別償却で申しますと、当年度の特別償却額を計上しているわけでございます。ところが、特別償却というのは、機械を取得した年度もしくはそれに非常に近い年度においてよけい費用配分をするということでございまして、特別償却をすれば後年度以降におきますところの費用配分は減ってくる、したがって後年度においては所得がふえてくる、したがって税負担がふえてくるという関係にありますので、特別措置による税負担の軽減を計算をいたしますには、その年その年の特別措置による特別償却額を計上したのではいけないのであって、当該年度の特別償却による償却の追加額と申しますか、そういう額から過年度の特別償却による普通償却の減少額を差し引いた額というものを特別措置のメリットとして計算しなければならないというふうに私どもは考えております。  そのような計算をいたしましたのが昨年の九月に当委員会に御提出いたしました計算でございます。その表をお手元にお持ちかどうかわかりませんが、四欄の特別償却という欄に、「注」にも書いてございますように、その年の特別償却の実施額からいわゆる取り戻し額を控除したものというふうになっております。この計算は実は非常にめんどうな計算でございまして、従来の統計にないものでございます。取り戻し額の算定が個別に資料がないとできないということがございます。そういう事情がございますために、昨年この資料を半年がかりで作成して提出いたします際に、事情を御説明して御了解を願ったわけでございますが、九月の提出資料所得金額法人税額というあたりの金額の欄はもっと資本階級別にこまかく算定することが可能でございますけれども、三、四、五、六欄あたりの金額のうち、あるものにつきましてはこまかく算出するについてはそれなりに非常に多くの資料を集め、作業をしなければならぬという関係になっております。  そこで、いま考えておりますのは、東京都のほうの資料ベースにいたしましていろいろの取り戻しの部分その他については、一定の概算数値等を用いることによって何らかの方法で算定をいたしたいと思いますけれども、その意味においては、昨年の九月に提出いたしました資料ほどの正確性を持ったものは、こまかい階級区分別には出しにくいということになっております。しかし、ある程度その関係を明らかにする必要がありますから、雄定値なり概算値なりを入れながらこまかい階級区分のもとに算定をしてみたいというふうに現在の段階では考えておりますが、作業をやってみませんと、これだけこまかいものが出せるかどうか、いま御確約はできないということでございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 局長のお感じとしては、そういういま言われたような作業をやって資本金階級別税負担率というものを出してきた場合に、東京都の表で出ているように、資本金の大きな階級へ行けば行くほど実質的な税負担率は軽くなっておるという、この関係に変化が出てくるというふうにお考えですか。
  22. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはまず算出税額のところで見ていただきますとおわかりいただけると思いますが、東京都のほうの数字によりますと、二兆三千四百十五億というのが法人税額の合計欄にあがっております。これは納付税額でございます。これに対しまして、私どもの数字算出税額としてあがっておりますB欄数字は二兆五千四百億ということになっておりますから、そこで約二千億の差が、一割の差があるわけでございますが、この算出税額納付税額の差というものは、資本階級別に見ますと、比較的に大きな企業ほど受け取利子、受け取り配当が多いというようなことがありますから、それによって源泉徴収を受けている所得税の額が大きいというような関係がありますので、大体においてその算出税額納付税額の差は大きな企業ほど大きくなってくるという関係がございます。したがって傾向としては、この東京都の出した数字よりは大きな企業のほうの率が上がっていくというかっこうになっていくはずだというふうに考えます。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 この東京都の数字によれば、一千万円以上というところが地方税も含めたそういうふうな法人三税における負担率では四五・六九、非常に高い比率になっておりますね。それから資本金百億円以上というところの一番高い階級は三二・二四ということで、四五・六九と三二・二四では非常に大きな負担率の差になっておる、こういうふうな状況であるわけですが、こうした関係が根本的に逆になっておるというふうなことは、そういう計算上の基礎に変化があったにしても私はまさかあり得ないだろう、こう思うわけですが、その点は局長、いかがですか。
  24. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昨年九月当委員会に御提出いたしました数値で大体ごらんいただけますように、ある程度租税特別措置を考慮いたしますと、やはり大きな資本金企業負担率が若干下がっておる。その下がっておるのは、一番大きな影響は配当軽課税率の影響が大きいということでありまして、この昨年九月提出資料の一番下の欄にございますように、平均は三三・三%でございますけれども、資本金百億円以上のところでは三一%というふうに、二%強平均よりも資本金百億円以上のところで下がっておるというのが私どもが作成をいたしました数字でも出ているところでございます。さらに交際費の問題を別にして考えますと、平均は三二・一で、資本金百億円以上では三〇・一ということでございますから、やはり百億円以上のところは若干下がっておるということでございます。住民税と事業税はこれは比例的でございますから、ほとんどそれには影響がないというふうに考えてよろしいわけでございますので、その意味においては、四十六年時点においては明らかに、東京都の表ほど激しいことではありませんけれども、大法人のほうの実質法人税負担割合が低くなっておるということは間違いないと思います。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 それから、貸し倒れ引き当て金とかあるいは退職給与引き当て金とか、租税特別措置法による措置とは違うけれども、しかし、こういう租税特別措置性格を持つようなものは、いま言ったような税負担率資料を出される場合には当然計算の中に入れるべきじゃないか。東京都の場合入れておるわけですが、この点はいかが考えられますか。
  26. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は当委員会においてもしばしば御議論が出ておりますけれども、私どもは貸し倒れ引き当て金につきましても、退職給与引き当て金につきましても、いわゆる債務性のある引き当て金、企業会計上も当然債務性のあるものとして認められている引き当て金につきましては、いわゆる特別措置というふうに考えるべきものではないというふうに思っておりますので、税負担を見ます場合には、特別措置として考えるのは適当でないというふうに思っております。  ただし、問題は、貸し倒れ引き当て金の中でしばしばここで御議論いただいております実績貸し倒れ率と引き当て率について乖離が非常に大きい。金融機関についての貸し倒れ引き当て金というようなものについては、ある意味において御指摘のような問題があるということはわかるわけでございますけれども、事の性質としては、やはり貸し倒れ引き当て金はあくまで債務性を持った引き当て金であるということでございますので、それが税負担率を引き下げておるということは、一般論としては同意いたしがたい。ただ、その影響が率にどう響いているかということを、何らかの形で別途の意味論議するのはそれなりの意味があると思いますけれども、一般的な現行租税負担率法人税負担率というものを論ずる場合に、それらをいわゆる租税特別措置だというふうに判断をすることは適当でないというふうに考えております。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 租税特別措置あり方は、いまでも非常に国民的な論議の焦点になっておりますし、これからもいよいよなると思うわけですが、そういうふうな論議一つの土台として、この措置に関するいろいろな親切なデータが政府の側から当然発表されるべきだ、こう思うわけです。  それで、これは昭和三十五年に出された「当面実施すべき税制改正に関する答申及びその審議の内容と経過の説明」、この資料によれば、当時は租税特別措置を受けている大法人と中小法人、大法人の場合には百三十六社、中小法人の場合には三百社をとって、それぞれサンプル調査をやって、その結果、各特別措置でどういうふうな軽減措置になって、総計して総所得と課税所縁との比率がどうなっているか。この数字によれば、大法人の場合には、総所得が一〇〇%であるのに対して課税所得は七九・五%、中小法人の場合には、総所得一〇〇%に対して課税所得は九一・二%、したがって、租税特別措置を受けた後における課税所得は、大法人の場合にはこの軽減率が非常に大きい、こういうふうなことが三十五年のこの調査で出されているわけであります。  それから、同じその三十五年の調査の中には、これも中小法人の場合と大法人の場合でそれぞれ産業別に、たとこば中小法人の場合には、石炭販売であるとか、窯業であるとか、アンテナ製造であるとか、練炭製造であるとかというように、非常にこまかくそれぞれの業態別に、総所得特別措置を受けた後における課税所得金額がどのくらいの率で軽減されているか、それから大法人の場合も同じく化繊であるとか、紙であるとか、鉄であるとか、電機であるとか、電力であるとか、こういうふうなそれぞれの業態別、産業別に、総所得特別措置を受けた後の課税所得の比率がどのくらい下がっておるかというようなことが、ずっと調査して発表されておるということがあるわけですが、こういうものを見ると、国民としてはこの租税特別措置性格あり方論議するのに非常にものごとの性格が理解しやすいわけで、かつて昭和三十五年の段階でこうした調査資料発表されているというような実績があるわけですから、その後ましてコンピューターとかいろいろな計算手段も発達してきているわけですから、これからの将来の段階においては、こうした親切な調査と統計を発表していくというふうなことをぜひお願いしたいと思うわけですが、局長のお考えはいかがでしょう。
  28. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その前に、当時のこの表は、特に税制調査会でこの種の問題を大いにその当時論議をされまして、その機会に、特別に、サンプルではございますけれども、調査をいたして作成したもののようでございます。最近は、御指摘のように、いろいろの統計表を整備いたしますのにだんだん便利になってまいりましたから、そういうことはあえてサンプル調査をやらなくてもある程度できる可能性を持ってきております。今後とも、先般も申しましたが、四十九年度の改正におきましては税率の問題が非常に主体でございましたけれども、私どもの感じでは、基本的仕組みの問題が残っておりますけれども、税率水準の問題としてはある程度のところまできておりますので、法人税の問題は、御指摘のように、今後はそういうタックスベースの問題、課税標準の問題ということにより重点が置かれていくべきであろうと思います。  したがいまして、私ども自体の仕事もそちらに重点が寄っていくべきことになると思いますので、いま直ちにどういう資料をどういうふうにつくりますということはお答えいたしかねますけれども、私ども自身の仕事の都合もございますし、それから社会からの御要求もございますから、そういう角度でのいろいろな資料を整備して検討していくということをいたすべきものというふうに考えます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 私はそれに関連いたしまして、これは国税庁に対するお尋ねになるわけでありますが、法人税の申告をするにあたって申告書の別表四というものがあるわけであります。この別表四というのには、非常に詳細にこまかく、各特別措置の適用を受ける減額措置というふうなものの各項目がずっと示されているわけですが、法人税法百五十二条には所得二千万円以上の法人の申告書の公示というふうな項があるわけですから、この二千万円以上の法人のその所得の申告書の公示をするにあたっては、いま言った別表四のこうした項目をも含めた形で公表されるということになれば、私がいま主税局長にお願いしたそういう特別措置関係等で、非常に法人に関する税務の実態というものを国民は理解ができやすくなるわけであります。そういうふうなことをぜひお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
  30. 高木文雄

    高木(文)政府委員 一つの御提案だとは思うのでございますが、現在の税法上のたてまえといたしましては、個人につきましても、法人につきましても、所得の全体の合計額といいますか、総計額といいますか、そういうものを公示するということで定めができておるわけでございます。したがって、個人の場合でも所得一千万円以上の方については毎年公示をしておるわけでございますが、その公示の内容というのは、所得金額そのものだけということになっております。したがって、所得の公示がございましても、その中身が譲渡所得であるのか給与所得であるのか、あるいはまた、その他の雑所得であるのかというようなこと、あるいは株の譲渡益というようなものについて申告があるのかないのかというようなことは、あの数字を見ただけではわからないわけでございます。  それをどの程度明らかにするのがよろしいのか。要するに、いまの所得の公示制度というものは、所得の公示を通じて一種の間接的な、何といいますか、納税者に対してその責任を求めるという趣旨から制度が仕組まれていると思いますが、それをあまり微細に表現することになりますと、今度はそれを見て他の方が、だれがどういう所得を申告をしていないではないかということで、それを利用して攻撃が行なわれる。その接点をどこに求めたらよろしいかということは非常にむずかしいわけでございます。  法人についても、事情は同様でございます。ある意味から申しますならば、そういう点を明らかにして、そして企業がきちっと経理をするように、また他から見てそれがガラス張りになるようにということが、御指摘のような観点から申しますれば、一つのよろしいことだということもいえるわけでありますけれども、同時にまた、そう微細な点に至るまで大衆の目に触れるようにすることがいいのか悪いのかというあたりは、なかなかむずかしいところでございます。この公示制度につきましては、御存じのように、戦後明らかになりまして、ずっと今日に至っておるわけでございます。昔は、御存じのように通告とかいろいろな制度がありまして、脱税の通報をした方には報償金を出すというようなことまでやっていた時代もあります。時代とともに変わってくることはよろしいことではございますが、それをどの程度に公示することがよろしいのかということは、よほど慎重に御議論願う必要があるのではないかというふうに思います。  ただ、先ほど来御指摘のように、何となく特別措置の姿がベールに包まれているように思われておりますので、その点は非常に遺憾でございますので、それは何らかの形において明らかにしていかなければならない。ただ、企業別にそれを出すことがよろしいかどうかということは、私がいま申し上げましたような意味で、よほど慎重に考える必要があると思うのでございますが、その前に総体として、あるいは業種別に、あるいは資本階級別にというようなことで、そこらの実態をまず明らかにするということは、少なくともこの税の制度を健全に発達さしていくために私どもが努力をしなきゃならぬ点でございまして、今後ともそういう努力については御趣旨に沿うようにいたしてまいりたい、公示制度についてはもう少しいろいろ検討をさしていただきたい、こういうふうに思います。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 私も、個人所得の場合は、いろいろそういういわゆるプライバシーというような問題があるので、これはそう一律な扱いはできないと思います。けれども、法人の場合には、まさにきのうの大蔵大臣のことばじゃないが、自然人である個人とは違う。そして今日、法人社会的な責任が非常に強調されているときでもあるということから、一方では、例の証券取引法関係で有価証券報告書というふうなものが株式を上場している会社については義務づけられているわけであります。その制度とこの税の公示制度とを何か結びつけて、その報告書というものがこの税務という面で見ても国民に内容が理解できる、こういうふうな点を明らかにする措置がどうしても必要じゃないか、いま言った公示制度とプラス有価証券報告書の結合のところで何らかの措置があっていいんじゃないか、私はこう思いますが、御見解をもう一度お願いします。
  32. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先般来と申しますか、ここ二、三年来、その種の議論がいろいろ強く各方面から展開されてきておりまして、御指摘のように、有価証券報告書にいたしましても、どうも少しわかりにくい点があったり、誤解を招く点があったり、債権者なり株主立場から見てもっと知りたいことが明らかになっていない点があったり、いろいろするように思うわけでございます。  そこで、一つの方法は、有価証券報告書の形を少し変えていくことができないだろうかというようなことで、内部のことでもございますから、担当局である証券局との間でも議論をいたしております。  それから、いまの御指摘は税のほうの問題でございますが、少なくとも特別措置のような特別の奨励制度の恩典を受けた場合には、何らかの意味においてそれが公示されてしかるべきではないかというのも、確かに一つの御見解と思うわけでございます。それを法人であるから個人とはだいぶ趣を異にするので明らかにする責任企業に求めてもいいではないかという御議論一つでございましょうし、そうでなしに、法人たると個人たるとを問わず、特別措置であるから、つまり奨励措置であるのだから、特別な奨励をしてやったんだから、それは明らかにしてもいいではないかという考え方もあるのではないかと思います。  その辺のところは、高沢委員の御指摘の点は、私どもも日ごろから何かしなければならぬのではないかというような、くふうをする余地があるのではないかというような、これは若干個人的でございますが、そういう見解を私も持っておるのでございますが、まあ事務量の問題があってみたり、企業側にどういう反応があるかというようなことも考えてみなければなりませんし、なおしばらく検討さしていただきたい。御趣旨は私どもも非常によくわかります。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 その点の措置はぜひひとつ前向きにお願いをしたいと思います。  それとまた似たような性格の問題ですが、もう一度租税特別措置に戻りまして、これも私の手元にある古い「昭和四十四年度の租税特別措置による減収額の見積り概要」、これは当時大蔵省主税局で出された資料ですが、これで見ますと、特別措置の各項目別に、配当所得の課税の特例であるとか、あるいは生命保険料控除であるとか、利子所得の分離課税、税率軽減の措置であるとかいうように各項目別に、その措置で減収になるその土台の対象になる所得はこのくらいで、そして減収額がこのくらいになるというふうな試算が示された、そういう例が四十四年度にはあるわけですが、私は毎年度の特別措置による減収見込みを発表される際には、その内訳としてこういう試算をいつもつけて出されるということが非常に必要ではないかということを一つ考えます。  それからもう一つは、年度の初めにその年度の特別措置による減収見込みというものは出るけれども、今度はそれが過ぎた後に、その減収というものが実績においてどうなったか、その決算というものが示されていない。これもわれわれ非常に知りたいところであるわけです。いま言ったような租税特別措置の各項目別の計算基礎というものがちゃんととらえられておれば、決算というものもまた当然出てくるのではないか、こう考えるわけですが、そういう出し方をお願いしたいと思いますが、これはどうでしょうか。
  34. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、見積もり概要のほうは過去において御要請に応じて提出いたしたことがございます。その後提出いたしておりませんのは、実はその特別措置の性質上、項目ごとにいろいろと推定値の正確度といいますか、そういうものに非常に差があるものでございますから、そういう点もありまして、率直に申しまして、一項目一項目の減収見込み額について間違いなくこのくらいになりましょうということで推定をしているものと経済の状態が変わったりいろいろ前提が変わったりして、実際やってみますと相当狂いが出るというものもありまして、かえって誤解を招いてもいけないということもございまして、その後は提出を差し控えさしていただいているわけでございますが、最近は特に特別措置の問題は、また今後の重要課題になってきていることでもございますので、高沢委員の強い御要求がございますから、そういう程度の資料である、予算の歳入見積もりなどと比べますと、数字の精度がそれほど高いものではないということをお含みの上で、ひとついろいろ作業して至急に提出さしていただくということにいたしたいと思います。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕  それから、実績のほうでございますが、これは各項目ごとに非常に事情が違うのでございます。たとえば、もともとこの見積もりのほうがかなり思い切った多くの前提を置いた算定をしておりますので、その見積もりを立てるときに置いた前提がこういうふうに変わったから、たぶん特別措置による減収実績額もこんなふうに変わったでしょうという程度の意味のものでございますれば出ると思いますけれども、たとえば百五十万円まで貯蓄が非課税である、あの制度を実際に利用した人が何人あってその総貯蓄額が幾らでというようなことを精密に全部集計をして出すというようなことになってまいりますと、これは不可能なことではないと思いますけれども、事務量的に非常にばく大なものになりますので、これは実はごかんべん願いたいと思っておるわけでございます。そういう意味で、経済企画庁がよくやっております経済見通しを、あとになりましてもろもろの事情を織り込んで実績見積もりというようなものを途中で出しますが、ああいう感じの、前提がこう変わりましからひょっとすれば前にお出ししましたこの数字はこんなふうに変わっているはずでございますという程度の意味の実績の数字なら出せますけれども、真の意味の実績というものはなかなか出せないわけでございまして、そこでそれにかえる方法として、当委員会で二年間いろいろ御議論を願いました末で、先ほどの昨年九月提出数字のようなああいう作業をやることにいたしたわけでございます。したがいまして、ただいまの御要求のうち、見積もり数字については至急作業をして四十四年と同じようなものを出したいと思いますが、実績のほうについては、なお検討はいたしてみますが、どういう形式でお出ししたらよろしいか、なかなか正確に出せませんということがありますために、いままでもお出ししていないわけでございますので、しかし、御要請に可能な限りにおいて応ずるようにはいたしてまいりたいと思います。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、いまの局長の御答弁の線で、たとえば今度は四十九年度の、新年度の減収見込みというものが出るときは、去年の、四十八年度の減収見込みは現段階ではこういうふうになっておるだろう、こういうふうなものを今後あわせて出すようにお願いをしたい、こう思います。  そこで、次へ進みまして、消費者物価の上昇に伴う所得税の物価調整減税、この関係ですが、これは大蔵省の試算によれば、昭和四十八年度は消費者物価の上昇五・五%、こういう前提のもとに、それに見合う物価調整減税の性格を持つ減税部分は千三百七十億である、こういうふうに出しておられる。その四十八年度の所得税の減税額は総額三千百九十一億、こういうことであったわけですが、それがその後の物価の上昇は状況が変わって、五・五%ではなくて、四十九年度の、ことしの歳入予算の前提の主要経済指標の見通しの中では、四十八年度は年度平均しての消費者物価は一四%の上昇、こういう数字になっておるわけです。そうすると、五・五%の前提で千三百七十億、こういう物価調整減税の見込みであったのが、一四%に物価が上がったということになれば、それに見合う物価調整減税というものは、これはもう当然三千億をずっと大きくこえて、おそらく四千億くらいになるのじゃないかと私は思うわけですが、そうすると、去年の三千百九十一億という所得税減税分というのは、全部物価調整減税の中で消えてしまっておる、こういうことになると思うわけです。このことは、先般この委員会にお招きした参考人の学者の皆さんも一致して指摘されていたわけですが、そういうことからすれば、四十八年度の所得税減税というのは一体何だったのかということになると思うのです。  そこで、私たちもここで繰り返して年度内減税をやるべきだということを主張してきて、それはいまのところ、政府、与党はまだやるという態度になっていないわけですが、いま言ったそういう点からも、何らかそうしたものを取り返す措置というものが当然なければならぬと思うのです、どうでしょうか。この点は政務次官、政治的な性格の問題を含むと思いますから、ひとつ大局的な立場見解をお聞きしたいと思います。
  36. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと事務的に御説明をいたしておきますが、私どもは毎年の所得税減税をなぜやっているか。四十九年度のような大規模な制度改正でないふだんのいわゆる課税最低限の改定等はどういう趣旨でやっておりますかと申しますと、それはやはり物価のことに非常にウエートを置いて考えていることは間違いない事実でございます。しかし、必ずしも物価だけを考えておるわけではないわけでございまして、でき得れば少しずつでも納税者負担所得税については軽減をしていきませんと、累進構造の関係でぐあいが悪いということを考えておるわけでございます。したがいまして、毎年の課税最低限の改善率は、消費者物価の上昇率よりは上回ったものにしておるつもりでございます。したがって、課税最低限と物価との関係は、四十八年度のように見込み違いになりましても、やや長期に見ていただければ、どうしても改善をしないとぐあいが悪いというものではないと思います。  ただし、御指摘のように五・五が一四%になりますと、四十八年度に関する限りは、私どもが考えておりましたことと見込み違いが起こっていることは事実でございます。それじゃ直ちにそれを手直しすべきかということになりますと、やはりそれは三年間なり五年間なり、ないしは十年間なりということで、やや長期に見ていただかなければならぬわけでございまして、そういう意味で、経済政策的な見地もあり、いわゆる四十八年度の減税の手直しが必要である、必至であるというふうには考えていないというのが事務的な立場での考え方でございます。
  37. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘の問題は、確かに国民の中にも、また政治の中でも非常に強い主張のあるところでありますし、昨年の税制審議のときにも、見通しの五・五%を上回るような場合は年度内にも調整減税をやる、やりたいという答弁を愛知大蔵大臣がしていることも事実であります。そこで、昨日も議論したのでありますが、愛知大臣も年度内減税をやるべきではないかという気持ちもあったようでありますが、今日の物価が異常高である、そこで物価を押えることに最重点を置くべきだということにし、減税については四十九年度にまとめてひとつやるという方向に変わりまして、愛知大臣自身も、年度内減税は思いとどまった。  あとを受けました福田大臣も、確かにそういったことも考えなければならないけれども、たいへんな異常事態であるのでということから、物価を押えるための緊急避難というものに取り組みました。そして御承知のような金融の引き締め、財政の繰り延べ、そして四十九年度予算編成にあたりましても、財政の圧縮、特に物価に直接影響いたします公共投資というものを思い切り削減する。金額的には前年同額程度ですが、実質的な仕事としては二割前後圧縮されるというような思い切った予算を編成するなど、緊急避難としての措置をとりました。  そこで、最近においても物価調整減税をやるべきだという意見があり、私たちもその気持ちはわかるのでありますけれども、それでは政治家として考える場合に、税金を納められておる人は三万円なり何がしかの調整はできても、税金を納めていただいていない人のこの面はどうするのかということを考えますと、これは手の打ちようがない。どちらかというと、低所得の方々がほんとうにたいへんな被害を受けているわけでございます。低所得というのは税金を納められない方々、こういう人に対してできるだけのことをしなければならぬという立場考えますと、にわかに年度内調整をとり得ないというところから、しばらくごしんぼう願って、そのかわり新年度からは思い切った減税をすると同時に、物価についても大体鎮静ムードが出てまいった、そして必ずこの七、八月までには物価を押えるんだ、そして国民の皆さんには御迷惑をかけないようにする、この際はひとつ国民にもがまんをしてもらわなければいかぬ、そして長期的には物価の吸収は税金でやれる、ここしばらくはひとつごしんぼう願って、この元凶である物価を押えることに御協力を賜わりたい、こういう考え方であります。
  38. 高沢寅男

    高沢委員 去年がそういうことになって、四十九年度九・六%という消費者物価の見通しになっておりますが、そこで、何とか押え込むために全力をあげておる、こう政務次官は言われたわけですが、万一また今年度がその九・六をこえて、さらにまた消費者物価が上がったというふうな事態になった場合には、いま局長は少し長い目で見てくれと言われるわけですが、もう何年かにわたってそういう事態が連続するということになれば、これは国民からすればどうにもがまんのならぬことになるわけですから、今年度そういう事態になったら、これはもう必ず年度内調整減税をやります、こういうふうに答えるべきではないかと思いますが、どうですか政務次官
  39. 中川一郎

    中川政府委員 私は、ことしはもう絶対そういうことはさせないということを至上命令にしなければいかぬ。消費者物価が九・六を上回るようなことが引き続いて行なわれる、このインフレ傾向が二年、三年にわたって続くというようなことは絶対やってはならないことだし、あり得ないと信じております。その証拠には、だんだん鎮静化してきたというふうに見ておりますし、必ず鎮静化する。ただ、ことしの場合、石油という異常なものが重なってきた。昨年の財政も少し大き過ぎた。そして、鉄やセメントや木材が昨年の春ごろから品不足を生じた。そして、買い占めというようなものがその上に重なり、諸外国の事情も入ってくる。さらに、国民の中に買い占め、売り惜しみというものが商社のみならず発生をした。その上に石油という問題が重なって、猛烈な火の手をあげてしまった。こういうことで国民の皆さんに御迷惑をかけておりますが、ことしは二度と再び上がらないように、福田さんも政治生命をかけてがんばっておりますし、われわれも微力ながらそういうふうな方向でやっていきたい。  しかも、これからの財政は、かりに物価がおさまったとしても、いままでのような高度経済成長ではなくして、安定成長というものに持っていかなければいかぬ。資源問題からいっても、インフレ問題からいっても、あるいは公害問題からいっても、すべてもう安定成長に持っていかなければならぬ時代でありますから、まずまず物価問題で御迷惑かけることだけは、内閣といわず政治家全員の責任として防いでいきたい。  まあ、かりにそれでも九・六%上がったときにはいかがかと言われますが、その物価の上がり方その他も考えて、そのときになってみないと、いまから責任ある調整をやりますとかやりませんとか言い切れる性質のものではない、その時点でのインフレの状況、物価高の原因等を勘案して対処すべきことであろう、こういうふうに思います。
  40. 武藤山治

    武藤(山)委員 関連して。政務次官、あなたはきのうおらなかったから、大臣がどういう答弁をここでな、されたか知らぬのですね。きのう、いまと全く同じ趣旨の質問を私はここでやったわけです。そのとき、あなたの上司である大臣は、四十九年中のいつかの時期に、日は言わぬわけですが、いつかの時期には検討せざるを得ない場合があるかもしれない。そこで私は、いつかというのは、いま予算を審議し、あるいは税法三法を審議しているこの時期に、大臣に時期を言えというのは酷かもしらぬ、しかし六月になるか七月になるか、物価の情勢というものの推移を見て検討するという意味だと私は受け取るがと、そういう質疑応答がきのうあったわけですよ。だから、あなたの言うように、物価は絶対上がらないのだ、安定成長だと期待ばかりを述べているのではなくて、現実の推移というものをやはりそのときには勘案しなければならぬという趣旨のことをゆうべ言ったのですよ。もし疑うなら、速記議事録を写してきてもいい。同じ大蔵省大臣政務次官が、ニュアンスの全然違う答弁をされたのでは困る。それはやはり物価情勢の推移というものを勘案して、いつの日か、いつの時期かという表現で大臣はやはり答えているのですよ。だから、それはやはり検討する時期があり得るということをはっきりしなければいかぬ。全くないようなことはいかぬ。
  41. 中川一郎

    中川政府委員 私もそういう意味で言ったので、大臣もおそらく物価は下げられないとかいう気持ちではなくて、下げたいという気持ちは私と何も変わっておらないと思います。しかし、それでも、いま言ったように、かりに九・六%を上回るような、物価の鎮静が見られないという段階には、そのときには、そのときになって考えてみなければいかぬということを申しておるのですし、大臣考え方も私の考え方も間違ってはいないというふうに思います。そういう事態がないとは神様でもない限り言い切れないことでありますから、先ほども後段ちょっと触れたのはそういう意味で、もしそうなったらという場合は、またそのときに調整をやるのかやらないのか検討をする、こういう意味でございます。
  42. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、ただいまの武藤委員の関連質問も含めて、そういう事態の場合には、これはもう当然政治責任の問題としてその問題が発生してくるということを確認して、次へ進みたいと思います。  これはたいへんこまかい技術的な問題ですが、局長昭和四十九年度の「税制改正の要綱、租税改正の要綱、租税及び印紙収入予算の説明」いう薄いパンフレットがありますが、これの一八、一九ページをあけていただきますと、今度の改正案による給与所得者の所得税負担の軽減調べというのがありまして、この表によって百五十万円の年収の欄を見ていただきますと、一番下のところに軽減割合が一・〇〇%と出ております。つまり年収百五十万円の夫婦子供二人、この人たちは従来四十八年度は二万九千四百七十八円の所得税負担したのが今度はゼロになりますから、したがって軽減割合というものは一〇〇%である、こういうふうに示されているわけです。一方、一千万円という所得階層の人たちを見ると、従来二百五十六万九千九百円の負担をしたのが今度の負担は百六十五万八千四百五十円の負担になるから、軽減割合は三五・五%であるというような形で、つまり所得一千万円の人よりも百五十万円の階層の人のほうが軽減を受ける割合がずっと大きい、こういうふうな数字で示されているわけです。  しかし、別の視点で考えれば、この四十八年度の所得税を納めた二万九千四百七十八円という金額は、この百五十万円という所得総額に対しては一・九六という比率ですから、それがゼロになるということは、つまり軽減の率が一・九六軽減される、こうなるわけですね。それに対して一千万円のところの人は、去年の四十八年度の租税負担所得の総額に対して二五・六九、それが今度は四十九年度では一六・五八になるわけですから、その軽減の割合は九・一一%というふうな軽減の割合になる。百五十万円の階層の人が一・九%に対して一千万円の階層の人は九・一一%というずっと軽減割合が大きい、こういう数字もまた出てくるわけなんです。したがって、来年度からこういう表を作成される場合は、いまのような率も入れた表で作成をしていただくということになるとこの減税の実態が明らかになる、こう思うわけですが、いかがですか。
  43. 高木文雄

    高木(文)政府委員 このカッコの中にあります数字は、備考の2に書いてございますように、収入金額百円について幾ら納めていただいておりますかということを示す数値でございまして、百五十万円の方は百円について一円九十六銭ずつ納めていただいております、一千万円の方は百円について二十五円六十九銭納めていただいておりますという、百円当たり負担額というものでございます。それで、ある意味ではいまおっしゃいますように、今度納めなくていいわけですから百円当たり一円九十六銭安くなるということでございますし、一千万円のほうは二十五円六十九銭から十六円五十八銭になるわけでございますから、まあその差だけ、九円何がし安くなるということでございます。ですから、それは率ではなくて実額で幾ら減るかという意味でございますので、それはおっしゃるとおりでございまして、いつも申し上げておりますように、納めていただいている額が多くなりますと、同じ一割なら一割軽減でも軽減額の実額は大きくなるということは、これはどうしてもそうなるわけでございます。  そこで、この表のつくり方は、そういう考えでもよろしいかもしれませんが、もともとその率を示すものでございますが、率というのは収入金額百円当たりに対する額を書いているわけでございますので、そういうことを表現いたしますことは、それなりに意味はないわけではないと思いますが、はたしてその必要があるかどうか。まあ幾ら安くなるかといえば、二十五円六十九銭から十六円五十八銭引いていただけばいいわけです。いまお示しいただいた計算のとおりでございます。私もいま御指摘を受けますまでは、なぜここにその金額が書いてないかということをそうつまびらかに研究したわけではございませんが、非常に長い間こういう表の慣例になっているのは、おそらくそれなりに意味があることであろうかと思います。御注意でございますから検討はしてみますけれども、やはりこの表にカッコがついていることがあるいはいけないのかもしれないのであって、便宜百円当たりの額を打ち込んでしまったのでいまみたいな御疑問が出るのかもしれませんが、これは百円につき幾らになりますよというだけの意味のものでございますので、それでよろしいのではないかと思いますが、まあしかし、御注意でございますから研究してみます。
  44. 高沢寅男

    高沢委員 つまり、いま局長も言われたように、百円についてこれだけということはパーセントでしょう、別なことばで言えば。要するに、所得に対する税負担のパーセントが百五十万円のところはいままで一・九%であった、それが今度はゼロになる。一千万円のところは、いままで所得に対する税負担が二五・六九%であったのが一六・五八%になる。したがって、こういうパーセントの下がるその比率が高額所得ほど大きいじゃないかということを私は申し上げたわけです。そういうことが示されるような表のつくり方をお願いしたいと言ったわけですが、そういう点はまたひとつくふうをされるようにお願いしたいと思います。  それでは、次に移ります。銀行局にお願いしたいのですが、生命保険の問題について、私、若干お尋ねをしたいと思います。  いまインフレーションが非常に進んでおるということで、インフレの中での生命保険のあり方というものが、非常に国民の間で論議を受けておるわけであります。わが国の保険の実態を見ますと、昭和四十七年度末において生保の二十社合計で百二十二兆円という契約金額の総額になっておる。たいへん大きな金額であるわけであります。ところが、その保険契約をしている人の立場から見れば、最近の物価のたいへんな上昇によって、たとえば五年前に保険契約をした人は、その契約金額は当然変わっていないわけですが、貨幣価値としてはもう五年間で二分の一に下がってしまっておる。あるいは十年前に契約を結んだ人は、十年間で四分の一にもうこの価値が下がってしまっておる、こういうふうな実態であるわけです。こういうインフレの中における長期的な保険のあり方というのはたいへん私は今日重要な問題であると思うわけですが、銀行局としてはこれに対する対策をどういうふうにお考えになっているかということをお尋ねしたいと思います。
  45. 安井誠

    ○安井説明員 御指摘のように、生命保険と申しますのは、基本的に二十年あるいは三十年という長い期間、一方で死亡等に対しますところの保障をいたしておりますとともに、その二十年、三十年後にこのお預かりした保険料をもとにして満期の保険金を支払う、つまり実質的な要素も持っているわけでございます。したがいまして、長期間の貯蓄であればあるほど消費者物価の値上がりに対しまして非常に弱いといわれておりますのも、御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては、基本的にこの生命保険の保険料のお預かりしたものの運用につきましても、たとえば貸し付け金に回すとか不動産の運用に回すとかいうことをいたしておるわけでございますので、特にそれだけを他の貯蓄手段に比べて有利に扱うということもそれ自身むずかしいことでございますが、少なくとも契約者のほうに不利益を与えないと申しますか、少しでもインフレに弱いといわれております人に対しましての還元をしたらよかろうということから、契約者配当の形で極力配当をふやすようにということを言ってまいったわけでございます。四十六年度から株式等のキャピタルゲインを財源にいたしまして、長期の契約に対しまして――長期と申しますのは十年以上の契約でございますが、特別配当というものをいたしております。さらに四十八年度におきましても、それをふやす方向でやっております。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 また、本年度におきましては、特にこういう異常な状態でもございますし、生命保険の経営者の立場から申しますと、一年限りの配当というのに対しまして非常に抵抗もあったわけでございますけれども、かりに一年限りであってもいいから配当をふやしたらどうかということで、現在、極力話をしている段階でございます。  具体的に申し上げますと、昨年度は、四十七年度の決算では、配当が約四千億だったわけでございます。それが去年と同じやり方をいたしましても、本年度の配当が四千五百億ぐらいになるわけでございますが、制度を改めまして、さらにそれに五百億ぐらい上積みをいたしまして五千億程度にはいたしたい。まだ現在、業界のほうと話をしている状況でございますが、こういう形で契約者配当をふやして生命保険の契約者に報いたいというのが私どもの考え方でございます。
  46. 高沢寅男

    高沢委員 これは私、聞いた話で、外国ではそういうふうなインフレの進行に対して保険契約金額を何かスライドさしていくというようなやり方をとっている国もあるというふうに聞いておりますが、それは一体どういうことでそういうふうにできるのか、やっているのか。それからわが国でもそれをやる条件があるのかないのか、これはどういうふうにお考えになっていますか。
  47. 安井誠

    ○安井説明員 いま先生御指摘の生命保険の形といたしましては、変額保険というのがございます。通常私ども現在扱っておりますのが定額、つまり額が定まる保険でございまして、たとえば三十年満期で百万円という額がきまりますと、その百万円は死亡のときでもあるいは満期のときでも保障をする、これが定額保険でございます。  これに対しまして変額保険は、資産運用を貸し付け金等にいたしませんで、株式に運用するわけでございます。したがいまして、満期が到来する、あるいは満期ではなくて途中で死亡するような者もございますが、少なくとも保険金を支払いますときに、その株式の運用したものにつきましてそれぞれの保険料の占めておるウエートで割り直す、つまり金額が常に浮動するわけであります。つまり、株式が上昇期でございますと非常に額が上がるわけでございますが、逆に下がるときもあるわけであります。一昨年、保険審議会でも、この変額保険を日本でも採用することを考えたらどうか、しかも制度も、変額保険にいたしますと定額保険を持っておられる契約者に迷惑をかけてはいかぬわけでございますから、分離勘定をつくるとか、いろいろなことの答申をいただきまして、昨年の四月から大半の会社が定款等も直しておりますが、現在まだ実施に至っておりません。  いまいろいろ申し上げましたことからもおわかりのように、インフレに強いといわれておる状態でそういうものを売り出していいかどうか。つまり、株式というものは上がることもあるけれども下がることもあるわけでございますから、株式投資の運用成果を生命保険の形で返すというものだということの認識が非常に大事でございます。その他実施上の問題点につきまして、いま業界でもいろいろ検討しておるのが現状でございます。
  48. 高沢寅男

    高沢委員 わが国の社会保障が非常に不備であるということから、国民の大多数がこういう生命保険というものに依存せざるを得ない現状になっておるわけですが、しかも、インフレは進行しておる。そこで、やればやるほど損をする。こういうふうな状態の中で、国民の損失を少しでも防ぐという立場から、たとえば損害保険のような掛け捨て方式というような形、したがって掛け金も安くて済むというようなやり方、あるいはまた、契約の期限を短期の契約でもってつないでいくというような方式とか、いろいろ考えられると思うのですが、こういうふうなことについてはどういうふうに考えておられますか。
  49. 安井誠

    ○安井説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、掛け捨ての保険に対しますところの要望も強いわけでございます。現在、定期つき養老保険と申しておりますが、満期のときには百万だけれども、途中死亡の場合には三倍保障とか五倍保障と申しまして、三百万とか五百万とかいう形での保険の種類がございます。それが十年ぐらい前には一、二%のウエートだったわけでございますが、現在それが六割近くなっております。その意味では、非常に御要望に沿っておることになっておるかと思います。  また、各職場でございますと、職場保険といいますか、グループ保険というのは、大半が掛け捨てでございます。これも保険料が低くて保障額を高くするという形での御要望に沿っておるものでございます。  さらに、個人個人に対しましても掛け捨ての保険を――昨年アメリカの保険会社を認可いたしました際に、アメリカの保険会社が掛け捨ての保険を組みましたことが契機になりまして、日本国内でも、現在、約十社程度が外務員あるいは店頭で掛け捨て保険を売るようになっております。  それから、もう一つ短期の保険でございますが、これも現在五年満期あるいは三年満期のいわゆる貯蓄保険と申しますものも売られておりますが、これも先生御指摘のような線に沿いまして、各保険会社のほうの要望もあるようでございますので、逐次認可をしていきたい、かように考えております。
  50. 高沢寅男

    高沢委員 その生保の資産の運用ですね。これは二十社総計して大ワクでどんなような状況になっておりますか。
  51. 安井誠

    ○安井説明員 四十七年度末の資産の総額が八兆二千億ばかりでございます。その中で一番多いウエートを持っておりますのが貸し付け金でございまして、五兆五千億で約六八%でございます。次ぎまして有価証券に対します運用が一兆七千億で二一%、あとその他不動産に対します運用は六千九百億ばかりで八・五%、大体このようなことでございます。貸し付け金、有価証券、不動産というような順で運用いたしております。
  52. 高沢寅男

    高沢委員 不動産が六千九百億ということで一番少ない、こういう形になっておりますが、実態としてみると、各生命保険会社はいわば自分の子会社をつくって、子会社である不動産会社へ貸し付け金の金額を非常に大きく回して、そこで不動産の買い付け、それからいろいろな開発、そうして土地の分譲、こういうふうなことを進めておる実態があるわけですね。  この面において、それが特に最近、日本列島改造論との関係で問題になっておる非常な土地の投機、それから土地の値上がりというものを進めて、今日住宅に困窮しておる勤労者にそのことが実は非常に大きなマイナスを与えておる、こういうふうな状況をつくり出しているわけですが、この生命保険の資金というものは、一体こういうふうに運用されることがはたして社会道義的に許されるのかどうか、この点は大蔵省としては、どういうふうな考えでどういう指導をしているか、お聞きをしたいと思います。
  53. 安井誠

    ○安井説明員 不動産に対しますところの資産運用につきましては、生命保険会社自身が投資いたします場合と、子会社を通じまして投資いたします場合と、私どもも同様に考えているわけでございます。つまり、生命保険は、先ほど申し上げましたように、基本的に長期の貯蓄の分が多いわけでございますから、不動産に対します資産運用も、貸し付け金なりあるいは有価証券などの保有と同様に、保険業法上も総資産の二割以内は持つことを認められているわけでございますし、たとえば現在各地で見られておりますような貸しビルのようなものは非常に安定した資産運用になりまして、それが契約者に契約者配当という形で返るわけでございますので、望ましいと思っているわけでございます。  ただ、先生御指摘の最近の土地問題につきましては、生命保険会社も他の金融機関と全く同様でございまして、四十七年の十二月から、土地取得関連融資につきましては、生命保険会社自身が行ないますところの土地取得につきましても、また子会社が取得いたします土地取得につきましても、地価抑制に十分に留意しろという指導をいたしておりますし、また最近におきまして、個別にいろいろ相談がございますときにも、たとえば宅地造成用その他の住宅開発関係投資につきましても、地元の公共団体の開発許可見込みがあること、あるいは地元の地域開発公庫との調和ということも考え、かつ良質低廉な住宅の供給を目ざすような土地取得に限るようにということを個別に指導いたしておりまして、先生御指摘のように、少なくとも生命保険会社が土地を買って、それが地価騰貴になることのないようにということを強く申し述べておるところでございます。
  54. 高沢寅男

    高沢委員 そういうふうに説明はされるわけですが、実態は決してそうではないわけであって、いま国民の中で、そうした自分たちが非常に苦労して掛けておる生命保険の掛け金が、結局、回り回って自分たちを苦しめるための資金に活用されておるというふうなことについては、非常な疑問と怒りがあるわけです。  先般、いわゆるいまの国民春闘の中で、春闘共闘委員会の代表が、そういうことを踏まえて生命保険協会の代表とも話し合いをしておる。その際に、いま言った土地なりあるいは建物なり、こういうふうな不動産の生命保険会社所有の実態を知りたいというふうなことで問題が出されたわけですが、その場所での生命保険協会の古川専務理事答えでは、それはお答えができない、そのことについては検討さしてもらいたいというような答えになっているわけです。その点は保険業法で見ると、八十二条、八十三条で、八十二条では、生命保険会社は三月末日に帳簿を閉鎖し、総会を終了した後、その財産目録や貸借対照表あるいは事業報告書、損益計算書、基金の償却、基金利息の支払い、準備金それから利益、剰余金配当に関するそうした報告を主務大臣に出さなければならぬ。それから八十三条では、保険の契約者あるいは被保険者、保険金額を受け取るべき予定者、こういう者が求めた場合には、保険会社はそういうふうな資料の閲覧を認めなきゃならぬ。あるいはそういう書類の謄本や抄本を出さなきゃならぬというふうなことが規定されておりますが、この規定が文字どおり活用されて、そしていま、保険会社あり方に対する国民の疑問が、そういうふうな資料を得ることによって解明されるというふうなことがぜひなければならぬと私は思うわけですが、この点については、保険会社がそうした国民の側からの要求にこたえて、必要な資料をこの法律の規定のとおり出すように、こういうことはひとつ大蔵省側で十分指導される必要があると思いますが、どうでしょうか。
  55. 安井誠

    ○安井説明員 先生御指摘の条文に書いてございますことは、法律上定まっておることでございますので、十分指導してまいりたいと思います。
  56. 高沢寅男

    高沢委員 この生命保険業務と独禁法の関係お尋ねをしたいと思います。  損害保険に関しては、保険業法の十二条の三で独禁法の適用除外というふうなことになっております。生保に関しても、これははっきり法文上独禁法の適用除外という形にはなっておりませんけれども、そこのところは、保険料率の計算基礎などが、大蔵省の指導で各生保の会社が統一されるというような実態になっておることは、独禁法の適用除外という姿に実際上なっておる、こういうふうに見ていいと思うわけです。  これは、いわゆる保険関係の専門家の間では、船団行政というふうなことばがあるそうでありまして、二十社の保険会社一つの船団を組んでそろって進んでいくには、一番船足のおそい船に速度をそろえるというようなことで、経営内容の一番弱いところにそろえた指導がなされておる。そうすると、強い条件を持った会社は、そのことによって非常に有利な条件を得るというようなことになるわけですが、いま言ったようなインフレ情勢ということも含めて、国民の側からすれば、より安い、そしてより内容のいい保険が提供されるということが非常に望ましいわけであって、そういう意味においては、むしろ私は、いまの情勢では、政府側の指導としてはある程度二十社の中に公正な自由競争的なものを促進をして、そういう競争の中で、よりよい、より有利な保険が国民に提供されるというように促進すべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  57. 安井誠

    ○安井説明員 先生御指摘のように、護送船団行政というふうなことをいわれたこともございます。ただ、昭和四十四年に保険審議会で御議論ございまして、効率化答申と申しておりますが、企業の経営内容を効率化することによって、それを保険料なり契約者配当に反映させるようにという答申をいただいたわけでございます。  その後、たとえば昨年度の配当を見ておりましても、二十社でございますけれども、配当金額は、たくさん種類がございますから、その中の一つのモデルで試算してみますと、十種類ぐらいにすでに配当も差がついております。私どもむしろ、ことしも各社の配当の見込みをお出しいただきますときに、各社ごとにお出しいただいて、会社の内容を見ながら、上のほうへそろえて少しでも多く配当をするようにしたらどうかというような指導はいたしておりますが、逆に低いところへそろえるというふうなことは全くいたしておりません。先生御指摘のような形で、契約者のほうへ利益を還元してまいりたい、こういうふうに考えております。
  58. 高沢寅男

    高沢委員 これも独禁法の関係になるかと思うわけですが、日本生命が第一火災の基金の九四・五%を所有しておる。これは第一火災の場合には、基金が一口一万円で、そして五万口の基金で合計五億円。その基金の九四・五%を日本生命が所有しておる、こういうふうな実態があるわけですが、御承知とおり、独禁法の十一条では、金融業を営む会社は、他の会社の株式の一〇%以上を所有してはならぬ。この場合には、株式についてではなくて、この第一火災は相互会社ですから、株式という形はとっていない。しかし、その基金というものは、株式と全く同じ性格のものであるわけですから、それの九四・五%を所有しておるということになると、これは明らかに独禁法の規定に触れるんじゃないか、こういうふうに考えるわけですし、それからまた、その第一火災と日本生命では、役員の関係が、第一火災の取締役会長が日本生命の取締役であるというふうな関係、またそういう相互関係が何人か重複しております。そういうことから見ると、この第一火災というのは、実際上、日本生命が損害保険を別な形をとって営業しておるということになるとすれば、これは保険業法の兼業を禁止しておる規定にも触れるんじゃないかというふうに考えるわけですが、この辺の実態及びそれに対する見解お尋ねしたいと思うのです。
  59. 安井誠

    ○安井説明員 第一火災保険会社は、先生御指摘のように、相互会社でございます。したがいまして、株式ではなくて基金になっておりますが、いま先生の御指摘のように、基金の九十数%を日本生命が持っているかどうかということにつきましては、ちょっと手元に資料がございませんで、至急検討してみたいと思いますが、私どもの感じでは、基金でございますので、日本生命自身の株式と同じような形での支配権ではないのだろうと思います。通常の損害保険会社の場合でございますと相互会社でございますが、この基金はほとんど償却済みになっておりますが、火災保険会社の第一火災の場合にどうなっておりますか、その辺は調べて後刻御報告いたしたいと思います。
  60. 高沢寅男

    高沢委員 では、その点はひとつ調査をした上でお答えを願いたいと思います。  それから、実際上のカルテル体制ですね、こういうふうな状態があると私は見るわけですが、それがあるもとで、非常にしかし激しい競争が各保険会社間で行なわれている。そういう競争が結局は募集業務、外務員にそのしわがもっぱら寄せられておる、こういう姿になっていると思うわけです。そういう点から、この非常に激しい募集競争の中で外務員の労働条件というものは非常に悪化しておりますし、その中にはある意味においては非人間的な、むちでたたき、あるいはニンジンでつる形で外務員に業績をあげさせるというようなことがどの会社でも促進されておるということ。  今度はそれに対して外務員の側でも、何とか成績をあげたいということから、たとえば架空契約というふうなことまでする、あるいは無資格の外務員までが動員されるというようなことで、これはよく新聞などでも報道されている非常に多くの社会問題が発生しておるわけです。こういうことのあり方は、私は根本的に正さなければ、保険というもののあり方というものからいってこれは許されないと思うわけですが、この辺の指導はどういうふうにされておるか、お聞きしたいと思います。
  61. 安井誠

    ○安井説明員 ただいま先生の御指摘のように、外務員の問題が生命保険事業にとって最大の課題だと私ども考えているわけでございます。外務員が一年間に相当数新たに入り、同時に同じ程度の数がやめていく状態、あるいはその外務員がとりました契約が、一年後には七六%程度しか継続をしていないというような状況があるわけでございます。こういう問題をいかにして直していくかということが、生命保険事業の社会責任を果たす上で最も大事なことであるということで、ここ数年来、この業界に対しても強く是正方を求めているわけでございます。現在、保険審議会を昨年の十月から再開いたしまして、議論しているわけでございますが、この四月以降は、生命保険につきましては約三カ月ぐらい集中的に審議をして、一番先に手をつけることだというふうに考えているわけでございます。
  62. 高沢寅男

    高沢委員 この点は、いわゆる労働基準法に触れるというふうなケースが非常にたくさんあるわけでありますから、そのことではぜひとも大蔵省当局としても、これに対する指導なりあるいは規制というものを強化するということでお願いをしたいと思います。  そこで、それに関連して、こうした架空の契約というようなものが非常にある、あるいは会社会社の間で、契約の一方を取り消さしてこっちのほうに契約しなさいとかいうふうなことで、最近非常に解約がふえておるというのが実態であると思うわけですが、この解約の実態というものが明らかであれば、ひとつここで示してもらいたいと思います。
  63. 安井誠

    ○安井説明員 いまの先生の御指摘になりました架空の契約と申しますのは、業界で作成契約といわれているものでございます。昨年六月にもある大手の保険会社が横浜で事件を起こしまして、警察の手も入ったケースがございます。架空の名義で契約を結べば詐欺になります。実在の人物でも、本人の承諾を得ない契約を結びますと、私文書偽造になるというようなことで、業界全体が非常に自粛をしなければいかぬというパターンになっているわけでございます。  それから、もう一つ御指摘の、ほかの契約をやめて、新しい商品が売り出されますとそれに乗りかえをするという問題がある。これらの問題を含めまして、結果的に先ほど申し上げました継続率が低いということになってきておるわけでございまして、これの改善が保険審議会でもたびたび論ぜられているわけでございまして、かつて昭和四十年には、この継続率が一年後に七〇・六%だったわけでございますが、昨年四十七年度で、先ほど申しました七六%まで、わずか五・四%でございますが、改善は加えられてきておるわけでございますし、今後もこれには全力をあげて改善の方向に進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  64. 高沢寅男

    高沢委員 この生命保険の問題は、非常に含む問題点が多いと思いますので、これからもわれわれもまた研究して、いろいろお尋ねをしたいと思いますが、そういう内容の改善については、ひとつよろしく努力を願いたいと思います。  以上で質問を終わります。
  65. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十分開議
  66. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  すなわち、本日付託になりました武藤山治君外五名提出にかかる昭和四十九年分の所得税臨時特例に関する法律案を議題といたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  昭和四十九年分の所得税臨時特例に関する法律案を議題といたします。
  68. 安倍晋太郎

    安倍委員長 まず、提出者より提案理由の説明を求めます。武藤山治君。
  69. 武藤山治

    武藤(山)議員 私は提出者を代表いたしまして、ただいま提案されております昭和四十九年分の所得税臨時特例に関する法律案につき、提案理由及びその概要を御説明いたします。  今日の異常な物価高騰のもとで、インフレによる所得と消費の減価に加えて、勤労者の税負担は急増し、勤労者の生活に深刻な打撃を与えております。そのため、勤労者、とりわけ低所得層の減税要求はきわめて強く、低所得層中心の大幅減税が強く求められているところであります。  しかるに、今回政府の提出したいわゆる二兆円減税案も、その実態は、インフレ、物価高に苦しむ勤労大衆の救済を内容とするものではなぐ、給与所得控除の上限撤廃、高額所得層の税率軽減など、減税の重点が高額所得層に置かれているものであります。この政府案は、すでに総合累進課税体系が崩壊し、高額所得層ほど税負担が低下している逆累進の傾向をますます助長し、税の不公平を一そう拡大するものであります。  したがって、本臨時特例法案は、物価高の中で勤労者の税負担の緊急大幅減税を行ない、生活費非課税の原則を貫くため、所得税は四人家族年収二百十五万円まで無税とするよう世帯構成に応じた税額控除を行ない、低所得層中心の減税を行なうこととしたものであります。  その内容は、第一に、昭和四十九年分の所得税については、現行税法算出された所得税額から、それぞれ世帯構成に応じた税額控除を行ない、税負担を軽減することといたしております。  税額控除額は、居住者につき二万五千円、居住者が控除対象配偶者または扶養親族を有する場合には、その控除対象配偶者または扶養親族一人につき一万五千円を加算した金額に、現行所得税法による所得税額の二二%の金額を加えた額とする。ただし、この税額控除には控除最高額を設け、最高額は居住者につき五万円、控除対象者が一人ふえるごとに四万円を加えた額とすることにいたしております。  したがって、四人世帯の場合の税額控除額は、七万円に現行所得税額の二二%を加えた額となり、控除額は、最高十七万円で頭打ちとなります。なお、これにより、給与所得者の場合、四人世帯で二百十五万円まで無税となります。  第二に、以上の税額と並行して、次の改正を行なうことといたしております。  すなわち、内職収入については、控除対象配偶者の配偶者控除適用限度所得を、実態に即して引き上げることとし、現行十五万円を四十五万円に引き上げることといたしております。これにより、パートタイムの場合は収入七十二万三千円まで控除対象者となります。  また、勤労学生控除についても、その所得要件を、現行三十四万円から六十万円に引き上げることとし、これにより給与収入は九十万円まで控除適用対象となるよう改正し、寡婦控除についての所得要件も、現行百五十万円から三百六十万円に引き上げ、これにより給与収入では四百三十万円まで控除の適用対象となるよう措置いたしております。  以上が、本法案の概要であります。  何とぞ、御審議の上、御賛成賜わりますようお願い申し上げます。
  70. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。      ――――◇―――――
  71. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次に、内閣提出所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  72. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 議題となっております租税三法について質問をいたしますが、最初にまず、昭和四十八年度の税制と物価問題との関係について質問をいたしたいと思うわけであります。  四十八年度の税制改正で所得税減税額三千百九十一億、平年度でありますが、そういう状態でございまして、これは消費者物価の上昇率が五・五%ということで、そういうものを前提にし、また給与の伸びというようなものについても一七%というようなことで推定をされたわけでありますが、その後の状況を見てみますと、少なくとも五千五百億ないし六千億くらいの所得税における自然増収というものはあったはずであります。そういう点から見まして、しかも、政府自身がこの物価の上昇率、実績見通しを改定をいたしまして一四%にしておる。これは単にそれだけではなしに、民間の有力な物価上昇率の見通し、こういうものなどを見ましても、少なくとも一四%――政府みずからが一四%というのは認めているわけでありますが、これが一五%にもなるだろう、こういうことはもう必至だろうと思うのです。  そうなりますと、物価調整減税というものが、そういう物価の見通しというものの五・五%から一四%ないし一五%くらいになるというようなところから見ますと、当時物価調整分というのは千三百七十億くらいで足りるというような試算が行なわれておった。ところが、これが倍以上に、三倍近くにもなるというようなことになりますと、まあ一四%としても大体三千四百八十七億くらいの物価調整減税を必要としたということにならざるを得ないわけですね。そうしますと、すでに消費者物価が二月段階で対前年同月比二四%、そういう上昇率を示したという段階で、大々的に新聞にも報道されましたように、もはや実質賃金が四%減った、こういう事態にもなっているというようなことも踏まえて考えてみますと、これは四十七年度はまさに税制の面における実質増税を意味している、そういうように理解をされるわけでありますが、主税当局はこの点についてお認めになりますか。
  73. 高木文雄

    高木(文)政府委員 毎度申し上げますように、毎年の税制は、物価だけでものごとを判断するわけにはまいらぬということでございまして、ただしかし、物価が非常に重要な要素であるということは事実でございます。そこで、確かに四十八年度の税制改正の際には、経済見通しにおきまして、消費者物価の上昇率が五・五%だということを前提としておりました。それが実績では、年度では一四%、暦年ベースでは一二%弱ということになりました。その意味においては、いわゆる物価調整減税として見るべき額が千三百七十億であるというふうに御説明申し上げておりましたけれども、それでは不十分でございまして、年度ベースでいえばただいまお示しの三千四百九十億弱というものがそういうものとして必要であるということが言えることは確かであろうかと思います。  ただ前提といたしまして、ただいま御指摘のように、いろいろ実質賃金減というような問題もございますけれども、しかし、現在の税制は必ずしも物価だけで組み立てられているわけではなく、三年前、五年前、十年前と比較していただきますれば、全体としてかなり他の要素を考慮した改善が行なわれておるわけでございますから、ただいま御指摘のような面から見ますれば、明らかに当初考えておりましたものとは実態が変わってきたということは言えますけれども、そのことから直ちにこのままでは何ともならぬ、なお四十八年度につきまして追加して税制改正を行なわなければならないというふうには、断定できないのではないかと思うのでございます。  その点につきましては、政府部内におきましても十分議論をいたしました。昨日他の委員との論議において応答がございましたように、予算委員会等におきまして前大臣が、場合によっては検討するということを申し上げた経緯もございました。十分に検討いたしましたけれども、昨年の秋の判断では、やはりこのような物価情勢の際に減税を行なうということは消費需要を刺激するという意味もございまして、必ずしも適策ではないということでそれを行なわない、そのかわり、まとめて四十九年度の減税はかなり大規模なものであってよいのではないかという前提で、今回の案を御提案しておるわけでございます。
  74. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういう点もあるからまとめて四十九年度は大幅な減税をやるんだ、まあこういうことなんですけれども、いま私が議論しているのは、あくまで四十八年度のことなんですね。四十八年度では政府の改定見通し一四%ということ、これでおさまりそうもない情勢であることはもうだれしもがそう思っておるわけですが、これを日本経済研究センターの一四・八%、約一五%上がるだろうという見通しで計算をしてみると、物価調整の減税額は当然三千六百八十七億ぐらいにならざるを得ない。同じ計算方式ではじいてみて約三千六百八十七億ぐらいになるだろうということであります。それに対して、年度当初の減税額が三千百九十一億ということになれば、これは明らかに五百億からの実質増税になっている、物価調整すら行なわれ得ないものであったということだけははっきりすると思うのですね。  私は、この問題にあまり時間をとりたくないものですから、中川さんに聞いて先に進みますが、そういうものであったということはこれはもうはっきり認められる。いまのところわれわれはそのことで年度内減税――年内減税でチャンスを逸し、さらに年度内減税ももう物理的にそろそろ不可能というような事態になってこのことをしつこく聞くというのは、年度内減税をまだやるチャンスはあるという意味も含めて、しかし、そうはいってもなかなかむずかしい、もうタイムリミットも来ているというようなことから、こういう実質増税をやったというようなこと、そういうものを四十九年度に持ち越しているのだという確認だけはぴしっとしておいてもらわぬといかぬ。そういう意味で、四十八年度はやはり物価状況との関連において税制は実質増税になっておるということはこういう数字からはっきりしていると思うのですが、その点ひとつ認めていただきたい。
  75. 中川一郎

    中川政府委員 税が物価をすべて吸収する、それだけで仕組まれていないことは御承知のとおりでございますが、やはり物価高を吸収するという数字を昨年でも明らかにしておりますように、そういうことも大きな配慮において減税が行なわれております。ところが、御承知のように異常な物価高によって吸収し切れないぐらい所得者の生活が楽でない。実質増税ということばが当てはまるかどうかわかりませんが、実質の生活に食い込むものであったということは間違いないと思います。そういうものを踏まえて四十九年度税制は仕組まれております。ですから、広瀬先生御指摘のとおりの実態であることは認めなければならないと思います。
  76. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、この四十九年度の所得税の減税の問題、税法改正の問題について触れますけれども、これは大蔵省から出された資料でありますけれども、四十九年度税制、なるほど所得税を一兆四千八百十億ですか、差し引きして一兆四千五百億という減税をやることにしておりますけれども、これがやはり高額所得者減税が非常に目立つ減税になっている。こういう点についての指摘は各委員から鋭く行なわれ、きのうも松浦委員から、それぞれの所縁階級区分に従っての減税額、減税の率、それから減税による手取り額の増加というようなことも数字をあげて質問があったわけですが、私はごく大ざっぱに、この大蔵省資料に基づいてお聞きしてみたいと思います。  たとえば一千万円のところで二〇・五%の控除割合だ、五千万円のところで一二・一%だ。なるほど控除の割合は減少をしている。さらにまた百万円のあたりで見ると、控除割合は五〇%になった。最低控除額五十万円の創設という新しい制度を設けたわけですから、そういうところで五〇%になっている。しかし、この控除の割合はなるほどそういうようにきれいに、なだらかに減少をしていくということになっておりますが、庶民大衆、国民大衆が問題にするのは、そして重税感、不公平感というようなものは、控除のそういう専門家的な率ではなくて、実際に控除される額が問題であるわけです。  そうしますと、百万円のところで五十万円の控除である。ところが、三千万円のところへいきますと四百五万円に控除額がはね上がる。五千万円のところでは六百五万円になるというようなぐあいに、控除額がものすごくふえていくわけであります。控除額には税金がかからぬわけでありますから、この分は完全に税金から非課税部分になるわけであります。五千万円の所得者というようなものは非常に限られた高額所得者であって、人数もきわめて少ないわけです。今日の物価上昇の中でも、五千万円からの年所得があれば、これはかなり優雅な、豊かな暮らしができるはずであります。しかも、そういうところには物価上昇というものもそれほど端的に、シビアに響いていかない。そういうところであるにもかかわらず、六百五万円の控除をやるということの意味を一体どういうように主税当局としては理解をされて、昨年までは給与所得控除額の頭打ち七十六万円、六百十六万円のところで押えておったのを、野放しに青天井で一〇%にしたのか。こういう点については、どうしても国民感情としても、また公平を求める理念的な国民立場からも理解のできないところなのですね。重役減税だといわれ、あるいは社長減税だといわれるゆえんはまさにこういうところにあるわけでありますが、五千万円のところで六百五万円控除をする理由というのはどこにあるのですか。国民が納得できるようにひとつ御説明をいただきたいと思います。
  77. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点につきましては先般来しばしばお答え申しておりますが、やや説明が混乱をいたしましたので、昨日、大蔵大臣から統一的に提案理由説明の補足説明を行なったことで御理解いただけると思います。  すなわち、繰り返しになりますが、従来の制度は、給与収入が一定限度を越えると給与所得額を増加させない、いわゆる頭打ちになっておったわけでございます。このことは、従来の制度におきましては、給与収入が一定額をこえれば、こえた分についてはもはや追加的な必要経費のしんしゃくを与えなくてもよいのだという制度になっていたわけでございます。つまり、いま広瀬委員が御指摘になりますように、五千万円というような高額の給与収入者というものについては、ある額まではともかく、それをこえた部分についてはもはや追加的な必要経費のしんしゃくを与えなくてもよろしいというふうな判断のもとに組み立てられていたわけでございます。  それで、今回大幅な所得税の減税の際に、特にサラリーマンの税負担の軽減を最重点といたしまして、税制調査会において給与所得控除制度の基本的な見直しが行なわれたわけでございますが、その際に、税制調査会の答申でもただいま御指摘の点についてかなり詳しく述べられておりますが、その要点だけを申しますと、いわゆる頭打ちにつきまして、事業所得者の経費は一定の収入に対応するところで頭打ちになるという考え方をとっておりません、というのに対して、給与所得控除の場合には、勤務に伴う必要経費の概算控除と説明されているにもかかわりませず、収入の増加に応じて何がしかの経費が増加するという事実を反映しない仕組みになっている。五千万円についても七十六万円でとまってしまう、それ以上は見ないという仕組みになっているのはどうも理論的に不徹底であるというのが一つ理由でございます。  第二番目には、諸外国の例を見てもわかりますように、それぞれの実情に応じて、勤労性の所得と資産性の所得との負担のバランスにくふうをこらしておりますが、わが国の場合について申しますれば、給与所得控除の仕組みを活用いたしまして、両種の所得の実質的な負担の調整をはかることが一つの解決方法である。この二つのポイントなど各般の見地を総合いたしまして、給与所得控除の仕組みを基本的に見直す機会に頭打ちを廃止することに踏み切るべきだというふうに答申されているわけでございまして、私どもの考えております考え方も、この答申で説明されておりますところで尽きておると思うのでございます。二つの考え方があり得るわけでございまして、従来は追加的な必要経費のしんしゃくをある程度額以上には与えなくてもいいではないかという考え方に立っていたわけでございますが、いろいろ議論の末に、いまのような判断から従来の考え方を変えまして、やはりある程度他の所得とのバランスも考えますならば、収入に応じて、程度の差こそあれ経費がふえていくと考えるべきであろうという考え方に立つわけでございます。
  78. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 なおその追加的必要経費というのも高額所得者になるに従ってふえていくであろう、こういうことですけれども、その追加的支出というのは、まあある程度わからぬでもないけれども、それは具体的にどういうものですか。こういうものが追加的支出として、しかもこれはもう当然そういう人たちに見てやらなければならない、税制上配慮をしなければならない、納得のできるようなものというのはどういうものが想定をされておるのですか。
  79. 高木文雄

    高木(文)政府委員 もともと給与所得控除とは何かということについて、主たる本質は必要経費の概算控除だということで御説明いたしておるわけでございますが、それでは具体的に、サラリーマンが費やしております経費のうちでどういうものが必要経費として考えられるのかということの概念規定は、はなはだ不明確にならざるを得ないのでございます。  勤務に伴う必要経費と申しましても、これはいろいろと勤務の内容によって違いましょうけれども、ごく一般的なサラリーマンでいいますれば、やはりたとえば洋服代であるとか洗たく代であるとかいうものについても、一部は生活のために必要なものでございましょうし、一部は勤務のために必要なものとなりましょう。また、いろいろ図書費であるとか、あるいはいろいろと自分で研修を受ける経費であるとか、そういうものもまたある程度は勤務のためのものである、ある程度はまたその人その人の趣味、娯楽のものであるということであろうかと思われます。したがって、研修経費なり図書費なりというものを一つとらえてみましても、その全部が勤務に伴う必要経費だとは言えないし、また相当部分は必要経費だということは言い得るのだろうと思います。  そういったものを考えました場合に、今度はそれが、収入が百万円の場合にはどの程度が図書費として必要か、研修費として必要か、また教養を高めるためのもろもろの経費として必要か、収入が二百万円になったらそれは多少ともふえるであろうけれども、どの程度にふえるか、三百万円になったらどうかということは、それはなかなか証明し得ないわけでございます。ましてや千万円の場合はどうだ、千万円と五千万円ではどの部分がどういうふうに違うのだということは、なかなかそこは説明といいますか、数量的にまた性質的に説明のつかないものでございます。  昨日の御質問でも大臣お答え申し上げましたとおり、たとえば千万円の収入の人がどのくらい経費がかかっているということについて調査をしたのか、五千万円の人はどのくらい経費がかかっているという調査をしたのか、調査をしていなかったとするならば、調査をした上でそういう法律を提案してはどうかという御質問をいただきました。大臣からは、いやそれが調査してもなかなかわからぬ、そこは概算的に踏み切るよりしようがないというところに現在のサラリーマンの必要経費というものの本質があるのではないかという、まあすれ違いのようなお答えをいたしたわけでございますが、昨日他の委員お答えいたしました大臣答弁と同じ答弁を、私といたしましても繰り返して申し上げるわけでございまして、具体的にどんな性質の金額が幾らぐらいどこにあるのかということは、なかなか御説明できない性質のものだと思うわけでございます。
  80. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 説明できないのが当然であろうと思うのですね。まあ追加的必要経費の増大というようなことはいかにもばくとしておって、これはなるほど、地位が上昇し高給をはむようになれば、何ほどかの必要経費の追加的支出というものは増加していくであろうということは概念的には言えますけれども、具体的にどうだということになれば、その実態はどうしたって証明されないだろうと思うのです。しかも、そういう状態の中で、百万円のところと五千万円のところと、百万円のところでは一年分の必要経費が、五千万円のところでは一カ月五十万円ということで見られるわけですね。十二倍の状況だ。それだけのものが追加経費としてかかるのかというようなことを考えてみれば、それは青天井にして一〇%控除というような制度を設けて、こういう具体的な金額表示になるとするならば、これはどう見たって不公平であり、いわゆる高額所得者に対する優遇措置として行なったという以外には説明のしようがないだろうと私は思うのです。研修のためにも、あるいは業務上の必要に応ずる交際費の支出というようなことなどもいろいろ考えられるだろう、あるいは常時自動車を使用し、専属の運転手をその中から雇うというようなこともあるかもしれない。しかし、そんなものは、大体その辺のクラスになれば、もう社用費で全部落とされているに違いないのですよ。そういうようなことを考えると、どうしたってそれをやったということには無理がある、私はこのように考えるわけです。  具体的に、合理的に、この十二倍の差、片方百万円ぐらいの低所得層は、ほんとに毎日満員電車にゆられながら、心身をすり減らしながら、しかもこの辺は若い層でありますから将来に向かって一生懸命研修もしなければならぬ、勉強もしなければならぬ、そういうような階層の一年分の必要経費の概算控除が、片方五千万円クラスの一カ月分の必要経費としての概算控除にしか相当しないんだ。これではどう考えても説明のつく道理はないと思うのです。  これを青天井にしたらどうかということは、前々からこの委員会でも議論されておりました。しかし、高額所得者については、もういろいろな諸控除をそこまでやる必要はないじゃないか、控除の消去をやったらどうかというようなこともずいぶん論議をして、そういう方向考えるんだということで、いままでずっと頭打ち、現行法では六百十六万のところで七十六万という限度額を設けて、それまでしかやらなかったということのほうがむしろ合理性があるのであります。その限度額を若干引き上げる、百万なり百五十万なり、今度の減税の課税最低限の引き上げ率程度に頭を上げていくという程度はいいと思うのですけれども、こういう青天井、野放しの高額所得優遇の控除率を設定する、こういうことについてはどうしてもこれは納得できない。中川次官、この点はいかがですか。
  81. 中川一郎

    中川政府委員 確かに御指摘のようなことがありましたから、昨年まで頭打ちということになっておりましたし、そういう性質のものであるということを大蔵省当局も答弁をしてきたわけであります。しかしながら、一方では、一千万の人も五千万の人も経費が全く同じだという見方もおかしいのではないか。やはり高額所得者になれば、高額所得者としての生活様式なりあるいは研修なりあるいは交際なり衣服なり、どれが必要経費かということははっきりしておりませんから、どれがどうだということは言えませんけれども、必要な経費がふえてくることだけは事実でございます。その辺をもうそろそろ着目していい時期ではないか、こういうものは窮屈な時代にはできませんけれども、一兆数千億からの大幅減税をやり、特に免税点といいますか課税最低限を大幅に引き上げる、このチャンスならば、ある程度のものを見ていいのではないかということからこういうふうな改正を行なったのでありまして、これは判断としておかしいという見方も確かに成り立つと思いますし、またこの際は、これくらいは取り入れてもいいのではないかという判断を持つことも許されるのではないか、こういう考え方でありまして、われわれとしてはこういう大幅減税のときには、少々給与所得額がふえた人にも概算的ではありますが経費を見てやろうということで改正に踏み切った次第でございます。御指摘の点は十分われわれも理解できるところでありますが、ひとつ今回のところはこれで御了承いただきたいものだと思います。
  82. 高木文雄

    高木(文)政府委員 確かに御指摘のように、従来の制度との対比において考えますと、同じサラリーマンの中の収入階層別の軽減の度合いというようなものを考えますと、おっしゃる面が非常にクローズアップされてくるわけでございます。ただ、税制調査会の答申を引用して先ほど御説明いたしましたように、他の所得者とのバランスもひとつ広く考えていただきたい。事業所得者の場合で白色の場合に、収入に応じて経費を算定するということが実際上納税者と税務署との間で行なわれておりますが、その場合には、やはり五百万円の収入の方と一千万円の収入の方とさらに三千万、五千万の収入の方とでは、実際問題としてその経費の見方が違っておる。やはり収入に対応して経費を見ていくということで、納税者との間で実際の仕事はそういうことで進んでおる。直接的な経費である仕入れとかそういうことでなく、他の経費につきましてはある程度収入と経費のリンクということが考えられているわけでございまして、そういう面から申しますと、同じ千万円の収入のあるサラリーマンと自営業者というものを比べました場合のアンバランスが、片方が頭打ちであるということのために、収入階層が大きいほど実際の取り扱い上の差が大きいということが従来から問題であったわけでございます。  ただ、従来は、先ほど来御説明申し上げておりますように、また広瀬委員御指摘のように、収入が大きくなるからといって、多少とも経費がふえるにせよ、そのふえ方はそれほど大きくないのだからまあまあがまんしてもらうかというような感じで頭打ちになっておったわけでございますが、それはやはりどうも理論的にもまた実際問題としてもなかなか説明のつくところではないということでございまして、おっしゃるように、同じサラリーマン相互間を収入階層別に見ますと御指摘のような面が特に切りかえにあたっては目立つわけでございますが、他のサラリーマン以外の所得者の場合とのバランスということも一つ頭に置いて判断をしたという、税制調査会の考え方なり私どもの考え方に御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  83. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私どもはどうしても理解ができないのですが、ただ気になるのは、中川さんのおっしゃられたこの際はというのは、四十八年度と四十九年度でどういう状況の変化が――課税のバックグラウンドというか、税制改正のバックグラウンドとしての状況の変化というか、何かそういうものを想定して、この際はという御発言があったのだろうと思いますが、この際はというのはどういう意味ですか。実は福田大蔵大臣自身も、もう自分だけよければというような時代であってはならないんだということを国会の冒頭の財政演説でもおっしゃっているわけですよね。自分だけよければというようなことであってはならぬ。そういうことの中で、この際はということがいかにもそういう意味では反するのではないか、そういう感じを私は持つのだけれども、この際はというあなたのおっしゃり方の中で、どういう状況の変化があったから、これがいままでの七十六万の控除から五千万あたりのところで六百五万、三千万のところで四百五万というようなことが妥当性を持つと考えられたのですか、ことばじりをつかまえたようで申しわけないけれども。
  84. 中川一郎

    中川政府委員 いいえ、決してそうじゃありませんで、二兆円減税ともいわれる大幅減税をやるこの際という意味であり、しかも課税最低限が百七十万と国際レベルを上回る、こういう税制改正の際という意味でございまして、あまり減税のできないときには、そういう高額所得者について目を向けるということはできませんけれども、そういった低所得者に対して手厚い改正を行なった際にはという意味で去年からことしにかけての変わり方、そういう点をさしたつもりでございまして、自分だけよければという意味じゃない、みんながよくなるこの際はと、こういう意味でございます。
  85. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 答弁としてはあなたのおっしゃり方わかったけれども、二兆円減税という大きい減税をやるのだ、実体は一兆四千五百億だけれども、そういう意味だということは理解をします。しかし、それではほんとうに低所得層が目に見えたような減税になったのかというと、われわれがいままで所得税の問題で常に議論をしてきたのは、低所得者にきわめて重いという重税感が常につきまとって、しかもその重税感が発展して、きわめて日本税制は不公平なものであるというような問題意識というのが国民の間に根強く存在している。  そういうようなところから、われはわれは、昨年も一昨年も非常に強く未成年勤労者の控除をもっと引き上げて、これは非課税にしなさいというようなことも実は言っておったわけです。その点に十分こたえたというふれ込みであったのです。最低控除額という制度を設けて、最低控除率としては四〇%であるけれども、それに該当しない低所得層について五十万円という最低控除額を設けた、これはもうたいへんな控除額の低所得層に対する優遇である、こういうように、主税当局としては、言うならば所得税改正における目玉商品のごとく宣伝をされてきたわけです。しかし、それがほんとうに今日のこの狂乱といわれる物価事情の中で、そしてまたそれに追随して名目所得も上げざるを得ない、そうでなければもう生活が破綻するのですからやむを得ないことである、そういうような状況で、大蔵省自身資料を見ましても、私どもが勤労未成年なんかは無税にしろという思想と実態が非常に乖離をしてしまっているのではないかということを考えるわけです。  ここに大蔵省資料で、新規学卒者の就職の年及び翌年の年間給与額と課税最低限の比較という表がありまするけれども、もうすでに中学卒業者が金額で五十三万三千円、これは就職の年です。年間給与が五十三万三千円になっている。これが四十八年度であります。そうして高校新卒者は六十万一千九百十四円になっている、こういうことなんです。さらに就職の翌年は、今度は一月からずっと十二月まで全部給料をもらうわけでありますから、これが中学新規学卒者で七十七万七千円になっている。高校新規学卒者で八十七万七千四百四十六円と、こういうことになっているのですね。  そして、もうすでに昭和四十九年度に採用されることしの三月卒業生の初任給がぼつぼつきまりつつありますが、高校卒業生でもうすでに六万二千円から六万三千円というのがどんどん出ておるわけであります。これが十カ月といたしましても六十三万円、四月からもらうわけですから、九カ月で六、九、五十四で五十四万円になる。それにさらに三カ月くらい六万何千円でボーナスをもらう、これは四月から入ったとしても正規な職員で入るわけですから、三カ月くらいは初年度でももらう。これは最低の率ではあろうけれども、その辺になるということになりますと、五十四万円に十八万円というようなことで、もうすでに今度の独身者の課税最低限七十万七千円というようなものは軽く突破してしまう、こういうことになるし、この四十八年度の高校新規卒業者の次年、就職の翌年では、もうすでに八十七万七千円になっているというようなことで、おそらくことしでは百万円になるのじゃないか、百万円をこす、こういうような状況である。  それから、中学卒業者の場合でも、就職の翌年、いま四十八年度で七十七万七千円になっているわけですから、これが三〇%までは上がらないにしても、かりに二〇%上がるとしても九十万くらいにはもうなってしまうわけですね。そういう人たちに対しては、今度のせっかくつくったこの五十万の最低控除というようなものもほとんど有効に働かない。みな就職の年からでも課税の対象になるし、これは課税額としては若干少ないけれども、そういうことになる。そうしてもう中学卒業生も、高校卒業生も、十八ないし十九歳あるいは十六歳、十五歳というようなところから税金を納めるというような状況は解消しないわけですよ。そういうところにはもっとあたたかい思いやりのある配慮というものがなされないで、一方において、そういう高額所得層優遇をやった、こういうことが何ともどうも、幾らあなた方がこういう大幅減税をやったこの際だからという説明をしようとも、納得のできない大きな原因がある。  この辺のところは、どのようにこの四十九年の初任給の値上がりを想定され、また、これは中学生、高校生両方について、どのくらいの初任給でどのくらいの年間給与額になるか、ボーナスを含めてどの辺の見通しであるのかということを説明して、これでこの五十万円の最低控除額でかなりカバーできるのだという証拠があったらお示しをいただきたいと思います。
  86. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいま私どもが試算しております数字ベースにしてお尋ねでございましたが、まさにその数字のとおりでございまして、中学新卒者につきましては、昨年までは、わずか九カ月の勤務でございましても大体五十万をこえる収入がある、それに対して課税最低限が四十四万でございましたから、大体六割から七割くらいの方が初年度から課税対象になるということであったわけでございます。先ほどお示しの数字からいいましても、中学新規卒業者を例にとりますれば、大体六十三万円くらいが平均のところの就職初年度の収入ではないかと推定しております。これはしかし、初任給水準はどういうふうに変わってまいりますか、この春の賃金のきまり方でまた変わってくるかもしれませんが、まあ六十三万とか六十四万というところになるのではないかと思われますので、そういたしますれば、本年のいわゆる最低保障制度を五十万円にいたしましたこととの関連で、初年度の課税最低限は独身者の場合七十万五千円になりますから、大体平均の方ならば十分カバーできますし、おそらく中学新卒者の三割とか三割五分とかいう方が課税対象になってくるということであろうかと思います。  御指摘は、それでは不十分であって、それでは平均的な人の場合でも高校卒業生であれば二年目からは課税になるではないかということであろうかと思います。その点は、私どもも、とても今回の改正で一挙にそこまで解決するまでには改善することができなかったわけでございまして、気持ちといたしましては、非常に進学率が高まっております際に、中学卒業直後に就職、高校卒業直後に就職という方について、あまり課税人員が多くならないようにということは今後とも考えてまいりたいと思いますが、それはやはり年を追うて改善をしていくということであって、なかなか一挙に改善できないということでございます。  それにいたしましても、従来から比べますれば――大体四十五年ぐらいまでは、平均的な収入の方でありましても、そして就職初年度でありましても、中学卒業の方についてすら課税になるようなことになっておったわけでございますから、その意味では、ここ数年いろいろの御指摘を受けましたゆがみといいますか、そういうものを相当程度改善できたというふうには考えているわけでございまして、御指摘の点は、将来の問題として、なお引き続き検討さしていただきたいというふうに考えます。
  87. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 将来に向かって引き続き検討をするということですから、この点について私もこれ以上深く追及しませんけれども、しかし、いずれにしても、昭和四十九年度中学卒業生、十五歳かそこらだと思うのですけれども、この人たちをかろうじて今度の措置でカバーできるかどうかというボーダーライン、一部には中学卒業生で、十五、六歳のところでもう課税の対象になる人たちが出てくる。これは家庭的にも進学ができないというような人もあろうし、そういう金の卵といわれて就職戦線に入っていく人たちが就職の年から中学卒業生ですら課税対象になるということが、確かにある程度はカバーされる、これは認めますよ。しかし、それすらオーバーする場合もあり得るというものでしかなかったということ。それから高校生では、四十九年度ほとんど軒並みやっぱり九カ月しか勤務しないという就職初年度においてもおそらくオーバーしてほとんどの者がかかるであろう、課税対象になるであろう、こういうことだと思います。もう次の年度になったら全然問題にならない。これは就職次年度になったらみな課税になる。そういう数字がはっきりしているわけです。  だとするならば、昭和四十九年度において、先ほどのような高額所得層にきわめて有利なものを減税額全体が大幅であるということからこの際という形でやるよりは、この辺のところにもう少しあたたかい配慮というものをやるべきであった、こういうように思うのですが、来年度もこういう私どもがずっと主張をしてまいりました特別の最低控除額というようなもの、五十万今度設定されたことは一つの前進ではありまするけれども、来年もこれは実情に即して、そういう中学卒業生あるいは高校卒業生の初年度あたりには少なくとも税金がかからぬ、所得税の対象にならぬという程度のものにまで具体的に、たとえば最低控除を本来ならば四十九年度から八十万ないし百万くらいのところに設定をするというようなことにしなければならぬだろう。まあこういう人たちには百万くらいのところまでは絶対課税対象にならぬように配慮するという形で、百万あるいは九十万、幾ら低くても八十万くらいのところにことしから本来ならばやるべきであろう、私はこういうように思うのですが、そういう方向検討をされるというおつもりであるのかどうか、中川政務次官からお答えをいただいて、次の質問に入りたいと思います。
  88. 中川一郎

    中川政府委員 先ほど広瀬先生からお話があったように、いままで二〇%であったものを四〇ということに引き上げ、しかも最低五十万という、これは相当画期的な改正でありますし、結果として出ました初年度七十万五千円というものを昨年度の四十三万九千円に比較いたしますと、六〇%のアップになっております。ここでいまちょっと簡単に計算してみたのですが。平年度で言いますと七十七万八千円は昨年度の四十五万一千円に比較して約七〇%、ですから、六、七〇%のかさ上げをしたということでございますので、この点は相当張り切った。  しかし、広瀬先生御指摘のように、まだ未成年者の中高卒の方々に税金のかかるという点については決して自慢できたものではありませんので、ことしはかなりやりましたが、引き続き先生御指摘の趣旨を体して、未成年者には税金がかからないというぐらいまでの方向に持っていくように努力をいたしたいと存じます。一方で言うならば、いま日本の給与体系もずいぶんとよくなったというふうにも思いますが、よくなった上に税制もさらに完備していくということが必要なことだと思いますので、検討させていただきます。
  89. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体、答弁が満足とまではいかなくとも将来を期待できる答弁であったと理解をして次に進みたいと思いますが、ただ、日本の場合に、それだけ所得がふえたということは、OECDあたりでも日本の物価は世界一だと全世界から認められているそういう状況の中でのことですから、実質所得がどれだけふえているかということについては、むしろもうすでに二月段階では実質所得は減りました、こういう事態の中でわれわれはいま議論を進めているということをお忘れなく、ひとつ十分考えていただきたいということだけ申し添えておきたいと思います。  それから、所得税の問題でもう一つ問題にしたいのは、今回いままでの二十万から三十万に引き上げを見ました白色申告者の専従者控除額、これも先ほどのようなお話で、この際思い切って引き上げました、こういうお答えがはね返ってくるに違いないと思うのですが、商売をやりながら、まだ基礎も薄弱で資本らしい資本もない、夫婦かけ向かいという姿で商売をしている、こういうことで、だんなさんが仕入れをしてくる、奥さんは常時店番をして一つ一つ品物を売っている。こういうような人たちが大体白色申告者に多いわけでありますが、一方において、同じような業態、しかし片方では青色申告を認められてやっているという場合には、いわゆる天井が、制限が別に法律上もまた規則上もない、常識的な線で給与制というものが取り入れられている。それにもかかわらず、同じ実態にあるという中で、白色申告者の細君だからといってこれが三十万の控除にしかならぬ。これも二年ほど前には妻としての配偶者控除よりも実は十七万低かった。そういうような現実から去年引き上げをし、ことしはまた二十万円から十万円引き上げて三十万円ということになった。これも大幅にやったつもりだとおっしゃるだろうと思うのですけれども、これも青色申告における給与制というものとの関係において、それから、ことしはまたパートタイマーといわれる、家庭の主婦が中心でありますが、そういう労働者の課税最低限というものも大幅に引き上がる結果になっている。こういうこととの関連からいいまして、もう商売をやめてパートタイマーで行ってやったほうがよほど得だという、そういうものとの関連というようなものもあり、何としてもその点納得ができない。  私どもは、青色申告はやはり制度として伸ばしていきたい。それについては政策的にメリットをつけたい、その気持ちはわかります。それは、そういうある程度の誘導措置というのが税制面においてもそういう方向を目ざしてずっときておるわけですから、それはわかります。しかし、あまりにも乖離が激しくなっているということからすれば、この程度のものは家族専従者控除というところから給与制に移行して、これも青色申告で別に制限は設けていないけれども、この前質問答えて、きわめて常識的な線で配偶者の給与というものが行なわれているということから考えても、その面ぐらいは一緒にしてやっても一向差しつかえないことではないのか。これが小零細企業に対する一番身にこたえるというか、ありがたみのある減税のやり方ではないかと思うのです。その点について主税当局のお考えをただしたいと思うのです。
  90. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど御指摘の、未成年者といいますか若年労働者といいますか、その問題は前国会でもたいへん御論議をいただきまして、かなりいろいろ議論をした上で五十万という線をきめたわけでござます。  率直に申しまして、白色の専従者給与の水準をどこに定めるべきかということについては、それと対して考えますならば、私どもの内部の研究も十分詰まっていないということでございます。ただいまもちょうどお触れになりましたように、昨年までは白色専従者の控除額は基礎控除額よりは低く、扶養控除額よりは高くということであったわけでございまして、配偶者で白色専従者である方については、白色専従者控除はメリットがないという形になっておったわけでございます。今回、扶養控除額を基礎控除、配偶者控除の額と同額といたしましたということと関連いたしまして、基本的に白色専従者の控除の制度をどのように考えるべきかということが浮かび上がってきたわけでございます。  御指摘のように、外でサラリーマンとして、パートタイマーとして働く場合と、家の中で仕事をする場合のバランスの問題ということは確かにあるわけでございますけれども、さりとて、事業経営主体である御主人のほうについて適用になります基礎控除の二十四万円という水準との関連も、これまた何とも無視するわかにはまいらぬではないかということを考えてみますならば、そういうパートタイマーといいますか、最低収入に近い給与所得者とのバランスのみをもってこの制度を考えることもなかなかできにくいわけでございます。まあいろいろ考えました末に、かなり一つの踏み切りのような感じで三十万円という数字にして御提案申し上げているわけでございます。  しばしば、当委員会で先日来御指摘を受けておりますように、そこに一つの問題があることは私どもも承知はいたしておりましたが、またあらためて御指摘を受けたわけでございます。これにつきましては、制度的にどのように考えたらよろしいか。青色の問題は若干違いまして、青色の場合には、実際に支払われるということが前提になっておるわけでございます。白色専従者控除というのは、払うとか払わぬとかいう概念ではないわけでございます。そこにも違いがありますので、青色の控除額、実支出額によって算定しております控除額に右へならえというのではないかというふうに思います。これはいろいろな角度からもう一ぺんながめてみたいと思います。御指摘のような角度から指摘をされますと、確かになお問題があるということはよくわかるわけでございますので、ひとつ考えてみたいと思います。
  91. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 考えてみるという御答弁でありますが、これは引き続いて三十万を少しまたそれじゃふやそうかというようなことじゃなしに――青色申告をやっているという場合に、ちゃんと月給袋に入れて、これは奥さんの分だといってはたして出しているかどうかということは、青申はやって帳面はちゃんとつけているけれども、その辺のところになると同じような実態なんですね、実際には。帳面がつけてあるかどうかというだけの差なんです。それで奥さんが、青色申告者の奥さんと同じように小売り商をやっている、八百屋さんをやっている。奥さんがちゃんと店に出て朝から晩まで小売りの仕事をずっとやっているんですね。  サラリーマンもなるほど二十四万円の配偶者控除、今度三万円上がってこういうことになったわけですけれども、それとの比較だけではやはりいけないだろうと思うのです。仕事をやって、それによって奥さんと御主人の二人でその事業所得を得ているわけです。そういう形になっているのですから、これはもちろん、サラリーマンについても夫婦の二分二乗方式をとれ、あるいはまたもうとっておる国もある、そういうようなこともあるわけですけれども、そこに実際にその事業所得を得るために専従的に仕事をしている。明らかにそれは態様としてそういう姿が現実に示されている。ただ税制上、帳簿をつけて青色申告をやるかどうかというだけの差なんですから、常識的な線で給与性というものを取り入れてもいささかもおかしくはないし、もし不当な金額を計上してきた場合には、白色のことですから、ある程度否認をするということがあっても、やはり常識的なものについては給与性という形で認めていく、そういう方向に向かって検討をされる、こういうお気持ちと了解してよろしいのでしょうか。
  92. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまも申しましたとおり、一つは青とのバランスということも御指摘のように考えなければなりません。それから、一つはまた、外に出て働く方とのバランスということも考えなければなりません。しかしまた同時に、基礎控除、配偶者控除との水準の問題も考えなければならないと思うのでございます。もう少しいろいろな角度からひとつ考えてみたいということで、今日の段階で、主としてこの角度から水準を考えることにする、どの角度に主体を置いて検討いたしますというところまではちょっと申し上げにくいわけでございまして、率直に申して、いろいろな角度からの検討をなお続けさしていただきたいというところまでで御了解いただきたいと思います。
  93. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十分質問者の意のあるところをくんでいただいて、前向きの姿勢でひとつ取り組んでいただきたい、こういうように思うのですが、この点、次官いかがですか。
  94. 中川一郎

    中川政府委員 青色の問題との比較において、白色の問題は非常に微妙といいますか、税制上からいうならば、あるいは中小企業の健全な育成ということからいくならば、青色申告制というものを育てていかなければいかぬという気持ちが非常に強くあります。しかし、白色専従者はどうなってもかまわぬというものではもちろんありませんし、いま広瀬先生から御指摘のような実態も、これは考えなければいけないところであります。しかし、また別には、いま言いました基礎控除、給与所得者の扶養控除とのかね合いというものも無視するわけにいかないという角度もありますが、十分これは前向きというか、せっかく御指摘でございますから、十分検討さしていただきます。
  95. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十分検討して、実現をはかるように御努力をいただきたいと思います。  次に、もう一つ、これはもうすでに議論がだいぶ出ておるところでありますが、夜勤手当、いわゆる深夜勤務に対する割り増し賃金分については課税をしては相ならぬという主張が、この委員会でもずいぶん多くの人たちから主張されてきていると思うのであります。そこで、私もその立場質問するわけですが、深夜にわたって勤務をしなければならないという業種が幾つぐらいあるか、そういうことで働いている人たちがどのくらいの人数になか、そしてそのいわゆる深夜割り増し賃金分、課税所得としての対象になっている割り増し賃金分はどのくらいになるか、この数字をちょっと教えていただきたい。
  96. 高木文雄

    高木(文)政府委員 恐縮でございますが、いまお尋ね資料はただいま手元に持っておりませんので、もし必要であれば後ほど……。オフィスのほうにはございますが、いま持っておりません。
  97. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 では、資料あとでひとつ届けてください。  そこで、深夜勤務者は、たとえば鉄鋼業で溶鉱炉の火を消さぬというようなことでどうしても必要だ、国鉄のごとく深夜にわたって非常に長い国土を縦断、横断して走っている深夜勤務者、あるいは看護婦さん、まあ代表的にはそんなところですけれども、そういう人たちがなければ、経済活動というのはたいへんなことになるわけであります。そこで、深夜というのは、大体人間の自然の生活のサイクルの中では、普通ならば、いまのようにそういうものが人間に対する財とサービスの提供として複雑に行なわれない昔ならば、みなもう人間は寝る時間なんですね。その人間が寝なければならぬ時間――人間はそういうようにつくられているのですね。夜は寝る。それが人間なんですね。これはもうやむを得ない。動物で寝ないのもあるいはいるかもしれないけれども、ちゃんと夜は寝るのだということは、人間生活の基本的な形態なんですね。  それに対して、人間が寝ているとき、しかも寝静まっているとき、しかも肉体的に夜は寝るようにつくられている人間が、そういう深夜にわたって活動するということは、たいへんなエネルギーの消耗であり、人間生活にとっては非常な苦痛でもある。それをあえてやらなければ、今日の社会、経済の機構というのは円滑に動いていかないという仕組みになっているわけです。おてんとさんが出ている間に働いているという人たちと、まるっきりその点では違うのです。だから、労働基準法でも、それに対する割り増し賃金というのをちゃんと出しているわけですね。そしてそういう労働者を確保する。これがおてんとさんの出ていを間における労働と同じように課税の対象になっておるわけです。  私は、せめてそういう非人間的な、あるいはまた家庭生活なんかについても非常に不便を来たすような、そういう勤務をあえてしなければならぬ人たちの割り増し賃金についてまで、日勤勤務者と同じような立場で課税対象にしていくということは、どうしても――これは非常にめんどくさいことはわかります、たくさんの業種もあるだろうし、数も比較的多いから。しかし、その割り増し賃金分というのはそれほど巨額のものではない。税制上これを落としたところで、全体的にそれほど減収になるわけでもないだろうと思うのです。その数字を正確に知りたかったのですけれども、まあ調べがあるそうですが、それほど巨額にのぼるようなものではない。そういうことですから、たとえばそういう深夜にわたって勤務をするようなところにだんだん人が採りにくくなるというようなことがそういう面からも出てくるのではないか。そういうことをやはりいまのうちから手を打っておく、そういう面で税制上も配慮をちゃんとしておくというようなことが必要なことではないか、こういうように思うのです。  これはいままで壁にぶち当たったような形で、前向きの答弁が全く得られないで推移してきている。この点については、たいへんであっても、これは源泉徴収の場でちゃんとやるのですから、何千、何万、何十万という源泉徴収義務者がちゃんとその分は差し引いて税額計算はやれるのですから、これはそういう税法だけつくってやれば、別に徴税費がよけいかかるというわけでもないのだし、そういうことになるだろうと思うのですよ。そういう面を、あらゆる点を踏まえて、この際ひとつ踏み切ってみたらどうか。これは非常に政策的意義もあるし、今日の経済、社会を円滑に回していくためにも必要な配慮である、欠くべからざる配慮である、こういう立場でお考えをただすわけですが、いかがでございますか。
  98. 高木文雄

    高木(文)政府委員 深夜手当問題につきましては、かねてから非常に強い御主張が寄せられておりますし、私どもといたしましても、それなりにそういうものの持ちます意味というものは理解できるわけでございます。しかしながら、深夜に勤務するということは不自然でございますし、またいろいろと、ある意味では経費もかかるということでございますから、そういう意味において手当の面で何らかの配慮がなさるべきであるということについては十分理解できるわけでございますが、さて、これを税の面でどのように取り上げますかということになりますと、なかなか困難であるといわざるを得ないのでございます。なぜかと申しますと、現在の給与収入についての取り扱いは、すべての収入につきまして、名目のいかんを問わず同様に扱うということにいたしておるわけでございます。それはたいへんかたくななようにお受け取りになるかもしれませんが、もしそれをいろいろな理由によって、いろいろな名目で出されます手当を給与の中でいろいろ税制上仕分けをするということになりますと、本俸が多くなるよりは何とか手当が多くなるほうが有利であるというようなことに実質上なってまいりますので、給与体系を混乱させるということになりますことがございますから、そこで、現在のところ、およそ勤務に伴う収入につきましては一切区分をいたさないということで一貫をしているわけでございます。  これはわが国だけの場合ではなくて、税での特殊性の問題でございまして、さればこそ、諸外国等を通じまして、一貫した取り扱いでございます。その唯一の例外が、西ドイツにおきますところのいまの深夜手当等の若干の問題でございますが、これにつきましては、御存じのように、長い歴史がございまして、ドイツにおきますいろいろな勤務についての国民性といいますか、ものの考え方といいますか、そういうものによって形成されてきたものでございます。しかしながら、ドイツにおきましても、わが国におきます税制調査会に当たりますような機関からは、すみやかにこの制度をやめるべきである、深夜についての交代制勤務についての割り増し賃金に関して税法上特例をとっているという長い慣例は、税制上も非常に問題があるのでやめるべきであるという勧告がしばしば出されておるという経緯があるのでございます。  そのことで御承知いただけますように、この手当を、いろいろな特殊事情がございましても、他の勤務に伴うところの収入と区別するということは、ひとり税の問題ではなくて、給与のあり方の問題との関連が起こりますので、税制だけの問題としてでなしに、なかなか問題があるわけでございます。おっしゃるような、どのようなものを深夜手当とするかということをきめさえすれば、源泉徴収等の手続上、それらの勤務を求めておる雇い主はそれを承知をしておればよろしいわけでございますから、源泉徴収事務の上で何か混乱が起こるというようなこともございませんでしょうし、もちろん減税額といたしましてもほとんど問題にならない、そんなに大きな金額のものではないのでございますけれども、深夜手当だけということについて非常に問題がございまして、深夜手当に関連して他のもろもろの手当の問題がたくさんございますし、となってまいりますと、いろいろ給与体系の問題に影響してくるということなのでございます。  このことにつきましては、実は四十九年度税制改正にあたりまして、税制調査会の中におきまして、一部の委員から非常に強く主張もされました。また、場合によりましては、関連企業の経営者サイドからもかなり強い要請があったのでございますけれども、ここらの事情をいろいろ御説明をいたしまして、なお今後の問題として検討しようということになっておるわけでございます。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕  これはしかし、ただいまの広瀬委員の強い御主張でも私どももよくわかりますように、それはまた、片方から見ますればそれなりに十分理由のあるところであると思っておりますから、これでだめだということで問題外というような態度で私どもは臨むつもりはないわけでございまして、何かうまい方法があればということは一方において考えておりますから、今後もそういう態度で臨みたいと思いますけれども、私どものこれまで研究いたしました経験では、なかなか出口を見つけにくい問題である、きわめて困難な問題であるという感触がしてならないわけでございます。お求めになります御趣旨はよくわかりながら、私どもとしてなかなかむずかしいという事情にございます点を御了察願いたいと思います。
  99. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 前向きで検討するかのごとく、また否定的かのごとく、とりようによってはどうにもとれるような御弁答で、私も主税局長の真意をはかりかねているわけですけれども、その分だけを取り出してということになると、ほかにいろいろな手当が確かにあります。たとえば高圧活線手当、高圧の電柱によじのぼって、そういう生きた線について作業をやるという危険手当なんかも入る、それから高所作業手当なんというのもおそらくある。そういうようなことがおそらく主税局長の頭に浮かんで、とめどもなく広がっていくだろう、こういうお考えだろうと思うのですが、それは真にやむを得ざるもの、そうして人間が命がけで働いているというような問題であるとか、そういう生活のサイクルをまるきりどんでん返しにするような仕事で割り増し賃金をもらっているというようなものとか、そういうものはある程度広がりがあっても、これはやはり通常の、朝八時から四時ごろまで、あるいは九時から五時ごろまでというような、そういう日勤で、通常の仕事の中で稼得される所得とは別扱いにして、それに対する非課税措置というようなことを考えていくということは、これはとめどもなく広がる問題ではないと思うのです。これは税制の専門家として大蔵省がそういうことに踏み切るならば、これはおのずから限界というものは、やはりこの大蔵委員会の審議を通じて、また税制の専門家である主税当局が、この程度にしようということで常識的に考えてくるならば、そういうところでも満足しますよ。  しかしながら、こういう深夜勤務手当、それからたとえば高圧活線作業手当というようなものぐらいは、これは少し幅がつい広がってしまったけれども、確かにそういうものもあるけれども、そういう線をどこかに引いて、そういうものについてはやはり通常デスクワークの中で、あるいはまたそういうことになるとそれじゃ屋外作業手当そのものをやるかというような、いろいろこれはとめどもなく発展するという、そのことばかりあまり考えないで、ほんとうにこの委員会で主張され、なるほどと思うようなところはやはり課税対象からはずしていくというような態度というものは、ぜひひとつとっていただきたいと思うのです。いかがでございますか。
  100. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いまの深夜の手当の問題は、ごく最近特に強く主張が出てきておりますのは、製鉄業の溶鉱炉というように、一日も火を消すことができない、したがってだれかが必ずやらなければならない、だれかがやるといっても、みないやがります関係で、交代でやらざるを得ないというような勤務について支給されるもの、その方面から非常に強く主張をされております。また看護婦さんのように、これまた夜間にだれか必ず勤務しなければならぬというのもその例であろうかと思います。  しかし、夜間勤務というのは、最近はある意味ではまた非常に多くなってきている面もございまして、たとえば、東京都内におきますところの地下鉄等をはじめといたします道路工事というような場合にも、昼間の交通制限がむずかしいというような関係で、この場合には交代でなしにもつばら夜間勤務がふえているというような状況にございます。そうして、この夜間勤務という形態は、またそのほか、気象観測であるとか航空関係の仕事であるとか、いろいろ夜間どうしてもだれか起きていなければならぬということがあるわけでございまして、かなりこれは広範囲なものといわざるを得ないわけでございます。それから、ただいま御指摘ありました高圧線その他の高所勤務の問題であるとか、あるいは緊張を特別要求する航空管制官の問題であるとか、それから常に危険伴がいます飛行機の搭乗員の問題であるとか、いろいろ危険とか緊張度とかいうものまでいきますと、際限なく広がっていくということになるわけでございます。  そういうふうにものごとを考えてまいりますと、何とか常識的な線で線を引けば線が引けるよという仰せでございますけれども、現実にはなかなかそれはむずかしいのではないか。私どもの周辺で見ましても、たとえば大蔵省の中で考えましても、税関関係の監視職員のような場合にも、かなり交代制夜間勤務者がたくさんおるわけでございます。どうも、それをどこで線を引きますかといいましても非常にむずかしいことでございまして、これは自分の庭の前をきれいにするような言い方で恐縮なんでございますが、やはりこの問題は、なかなかだれもがやりたがらないというものであれば、手当の問題として考えていただかざるを得ないのではないか。そして、現実にいまの航空機につきましても、その他につきましても、看護婦さんのような場合を除きますと、平均よりもどうしても実際問題として給与が高い場合もあるわけなのでございまして、その一平均的な給与よりも高い給与を受けておられる方について、さらに上積み部分について非課税にするということについては、それはそれなりにまた問題が出てくるわけでございます。  しかし、これだけ各方面から御熱心に御要請があることでもございますので、ただ入り口でだめだだめだと申し上げていることではなくて、なお研究は続けてまいりたい。しかし、将来にあまり期待を抱いていただいても私どももなかなか、入り口と申しますか、出口を見つけるのに困難であるというような感じを持っておるということを率直に申し上げる次第でございます。
  101. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一度これは主税当局でそういう実態調査でもやってみたらどうかと思うのです。夜勤をやっている現場に行って、どういう状況で深夜にわたって働いておるか、そしてそれに対する割り増し賃金がどういう状況になっておるか、総額でどのくらいになるのか、こういうようなことをある程度――これだけ、もう一切の手当の中でこれだけと私どもも限定する勇気はありません。いまおっしゃったような深夜にわたる航空機の乗務手当だってそれはあるでしょうし、しかし、そういうものも、それはそれなりの中でやはり深夜にわたって航行するというようなものを抜き出すことだってできるわけですし、あるいは高圧活線の作業というようなことがどの程度のものであり、どの程度の危険を伴うものであるかというようなことについても、やはりヒューマンライタな立場でひとつ実態調査するというようなことをやって、どの程度にしぼるかというようなことも、これは主税当局みずからそのくらいの努力はやってもらいたいというように考えるわけですが、そういう気持ちというようなものはございますか。そういう中からぎりぎりしぼり上げて、この深夜業務に対する手当というようなものを課税対象からはずしていくというような方向が打ち出されてきて当然しかるべきであろう、こう  いうように思うのですが、いかがでございますか。
  102. 高木文雄

    高木(文)政府委員 まあこの各種の手当問題というのは、給与問題の中で非常に重要な問題でございます。人事院等でも絶えず研究をいたしておりますし、私どもの主計局給与課でも若干の資料は持ち合わせております。そういうこともございますから、ひとついま広瀬委員得指摘のような角度から参考となるようなものを、手当のサイドから少し集めてみるというようなことはやってみてもよろしいかと思います。また、ある種の資料は、労使の間で給与の問題を検討しておられるグループにおいてお持ちのようでございますので、いろいろその種の資料を少し収集してみるということをやってみるあたりからひとつ検討してみたいと思います。
  103. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十分ひとつ検討して、この問題については前向きに何らかの結論が出るように、これはずいぶん長い歴史のある論争点ですから、何かひとつこの際――この際というのはこういうところにほんとうは使ってもらいたいのですが、こういう大幅減税をやるようなときに――これはもう十年来の懸案ですよ。十年来というか、二十年来の懸案だと思うのです。これはもうずっと前からやられておる問題ですから、こういうところに一歩大きく踏み出すということがあれば、まさにこれは、ことしの減税たいしたものだということで、われわれは評価するにもやぶさかじゃないんだけれども、先ほどのような状況ですから、そういう意味も含めて前向きの検討を希望して、次の問題に移りたいと思います。  さて、法人税の問題ですが、これはいろいろ擬制説だとか、やれ実在説だとか、そういう学者にまかせておいていいような議論はさておいて、もうそろそろこの議論も――企業課税のあり方法人課税のあり方ということで、特に租税特別措置における配当課税の優遇の問題あるいは配当軽課の問題、受け取り配当の益金不算入の問題、こういういろいろなからみがあってむずかしいことになっておりますが、もう日本の経済も世界第二位だというようなところまで発展してきておるんですから、自己資本の充実であるとか、あるいは内部留保の充実のためにというような形でたいへんな優遇措置を長年にわたって、政策効果もそれほど明確でないままに既得権化し、慢性化しているというような指摘をいただいているようなことでありますから、この法人税全体について、いままでの問題点をもうそろそろ整理していい段階じゃないか。  そういう点で一つ参考になるのは、四十三年度の長期答申に基づいて皆さんのほうで法人税改正の仮案をつくられた。そういうものは一つのやはり有力な、今日のいろいろな混乱を解消してすっきりさせる一つの手がかりだと私は評価しているんです。そういう立場で、法人税は個人株主所得税の前取りであるのかどうかというような点についても、もう法人法人として社会的な実在であり、独立の課税主体である、こういう立場で割り切ってもらいたい。そういう意味で、この法人税の課税標準を純利潤で押えていくというようなことにしてもらいたいし、さらに個人株主に対する恩恵として悪名高い配当控除制度というものも、一兆四千五百億の減税の中で課税最低限がやっと百五十万七千円まで来たというときに、いまなおこの制度あるがゆえに、配当所得だけの所得者については、三百五十七万円という課税最低限になっている。こういうことがいかに不公平なものであるか、そういう点も解消してもらいたい。それから、法人の受け取り配当益金不算入の問題もやめてもらいたい。そしてまた、基本的に法人の支払い利子との関連で配当の問題がいつも議論になるけれども、利子は損金になるけれども、配当利益の処分ということなんだ。こういうことでありますから、法人配当分については損金扱いにしてもいいじゃないか、思い切ってそういうことにする。そのかわり標準貸し出し金利ぐらいのところで配当の最高限というものを設けて配当を押えていく、こういうことを考えていく。そういうような基本的部分について、やはりこの際割り切った処置をすべきではないか。  もちろん、われわれも、大法人と中小法人との間に税率の差というもの、軽減税率を設けるということは残してよろしいことである。そういうことは留保します。それは所得税における所得再配分ということではなくて、大企業が担税力があるのだという立場。もう一つは、社会的費用というか、社会的な外部不経済の費用を大企業が応分に負担すべきである。そういうような思想から、大企業には税率を重くしていくということでやっていただきたい。そういう点では、私どもは、一本税率ということを原則にしながらも、なお利潤の額についてやや累進性を持たした多段階税率を設けて差しつかえない。中小と大きいものというふうに分けると同時に、法人税についてもある程度多段階のやや累進性を加えた税率の差というものを設ける。こういうようなことにしていいではないか。そういうように、法人税の問題は配当の取り扱いの問題とからんでそういう方向に大胆に転換すべき時期に来ているのではないか。こういうように考えるのですが、その点いかがなものでしょうか。
  104. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいま、かなり具体的な御提案をいただいたわけでございます。御提案を翻訳いたしますれば、配当を受け取り段階で調整している制度をやめなさい。受け取り配当の益金不算入も所得税配当控除の制度もやめてはどうか。むしろ支払い配当段階での調整を考えて、ある程度までの分は損金に算入することにしてはどうかという御提案が一つありましたが、それは一つ考え方であろうかと思います。  法人税にはいろいろな問題が混在をいたしておりますが、一番基本の問題といたしましては、配当を受け取り段階で調整をいたしますか、支払い配当で調整いたしますかということが一番の基本になる問題だと思います。しばしばこの擬制説との関連で、法人株主の集団であるからということがあるがゆえに、受け取り配当の益金不算入なり配当控除なりという制度が置かれておるという説がなされておりますけれども、必ずしもそういうことではなくて、擬制説たると実在説たるとを問わず、何らかの意味において配当の調整は必要なわけでございますが、その意味でただいまの御提案は、そのことをお認めになることを前提にして、ただし受け取り段階での調整をやめて、支払い段階での調整に移してはどうかという御提案でございますから、それは一つ考え方であろうと思うのでございます。  最近、実は産業界の中におきましても同様な考え方がございまして、現行の税法はあまりにも複雑であるということもあり、それから支払い配当負担の問題もいろいろありまして、そっちの方向に向かって現行法人税制を整備していってはどうかという議論もかなり広範に行なわれているわけでございます。  私どもは、それに対して、理論的におかしいとか、基本的に反対であるとか、そういう気持ちを持っておるわけではないのでございますけれども、税制の専門の立場でものを考えました場合に一番ひっかかりますのは、ヨーロッパにおきますところの法人税制が、実はそのような方向とは逆の方向で最近動き始めておるのでございます。  OECDにおきましては、傘下各国の税制をある程度統一をしてまいるということでありませんと、なかなか経済の統一ができないということでございますので、いずれにせよ相当時間をかけての話ではございますが、だんだんと税制をヨーロッパの中におきまして統一をしていきたいという空気がございます。また、アメリカ資本がヨーロッパをあばれ回って困るということとの関連もいろいろございまして、各国でいろいろ研究が行なわれておりますが、イギリスにおきましては、いまの御提案とは逆に、受け取り段階での調整をやるという方向に持っていく、アメリカ方式のほうにだんだん持っていくということで、改正の案が今度敗れました保守党サイドからつい先般出たという状況にございます。ドイツにおきましても昨年の十月に、数年間さんざん論議を重ねました結論といたしまして、配当軽課を減らして、むしろ受け取り段階での調整を強化しようという方向に試案がいま提案されているところでございます。  配当段階で軽課をいたしますと、外国資本が入ってきた場合に抵抗力がないということで、国際的な資本移動関係からやはり受け取り段階での調整のほうがよろしいのであって、支払い段階で調整をいたしますと、たとえばフランスなりドイツなり、ヨーロッパにある企業で申しますと、アメリカから入ってきた資本が支払い段階での課税を免れまして、その利益を本国のほうへ持っていってしまうというような問題がありまして、ただいま広瀬委員御指摘の方向、そしてそれは従来から日本の中でもよくいわれておりましたし、最近でもわが国産業界でいわれております方向とは逆の方向で、実は最近ヨーロッパが動き出しておるというような情勢にございます。  そういった事情をいろいろ踏まえまして、専門家の間であらためて議論してもらおうかと思っております。わが国の法人税制が議論をしておるばかりで何ら結論を出していないじゃないかという歯がゆさをお感じと思いますが、これは日本だけのことではございませんので、諸外国でもたいへんゆれ動いていることでもございますし、なぜゆれ動いているかというと、単純に税制の問題だけでなくて、経済体制の問題とからんでいるからでございます。  それから、もう一つの御提案の多段階税率の問題でございますが、これは率直に申しまして、私どもといたしましては、あまり気乗りがいたさないというか、反対であるといわざるを得ないわけでございます。その事情は詳しくは申しませんが、何といいましても、一番簡単には、多段階税率にいたしますと、期間損益のとり方によりまして、ある期に所得が多く出ますと、そこではよけい税がかかってくる。他の期に所得が減りますと、そこでは税が減ってくるということで、たとえば三年なら三年内に、二つの企業で同じく一〇〇の所得であっても、その期間の中で変動があった場合と平均的であった場合と、税負担が違ってくるというところの関係の調整が、多段階税率にいたしました場合にはどうしてもつかないわけでございます。それで法人税は、世界的に全部比例税率になっているわけでございまして、日本の中小企業に対する軽減税率と同じように、よその国でも、小規模のものについて特例的軽減税率はございますけれども、法人税全体の仕組みはあくまで比例税率になっておるというのは、そういう事情によるものでございます。  これはたいへん複雑でございますので、また機会がございましたならばいろいろ申し上げますけれども、あまり長くなりますからこの程度にとどめておきますが、多段階税率につきましては、しばしばこの委員会で回答を申し上げておりますように、私どもといたしましては、基本的には反対と申さざるを得ないと思うのでございます。
  105. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もう時間なので、そろそろやめろという委員長のあれですけれども、いまの法人税の問題についてまとめて……。  いままで擬制説の上に立った基本的な仕組みを実在説立場で修正を加えてきたということで、いまの法人税全体が、支払い配当の問題、受け取り配当の問題、個人配当控除の問題、それから負担における段階の問題、いろいろ混迷をしている。しかし、これをやはりすっきりさせた法人税制に改めるべき段階に来ているのではないか。私は新しい時代というのは、これからの福祉の時代だと思うのですね。そういうような点からも、いろいろ考えていくべきではないかと思う。  たとえば、投資を促進させるという基本的な立場配当軽課措置なんかにもあったろうし、それからまた、個人配当控除というような点にも、自己資本を充実させる、内部留保を厚くする、こういうようなことが投資を促進させて経済を発展さしていくんだ、大きいほどいいものだというような立場で、混迷に混迷を重ねながら特別措置を加えて、そういうことが日本税制で展開されてきた。私はこういうところにそろそろ決着をつけるような税制改正というものが必要ではないかということをまとめて提案してみたわけですけれども、時間があまりないので、この問題はまたいずれ機会を改めたいと思いますが、特に、自己資本の充実ということが、ずっといわれてきたけれども、自己資本比率というものを見てみると、経済の成長過程において、ずっと下がりっぱなし、こういうことである。一つも自己資本がふえないというのは一体どういうわけなんだ。その反面、今度は、いわゆる実質は資本準備に相当する内部留保の増勢が非常に強まってきている。これは税制がその面で果たしている役割りというのは非常に強いと思うのです。  これは四十六年の法人企業実態ですが、四十七年のがまだ出ていませんものですから、一部、官報資料版で、四十七年の税務統計から見る「法人企業実態」というのを見てみますと、資本金総額は大体十四兆円である。これが自己資本の一つ数字にとられているわけですが、これを四十六年の引き当て金、準備金、こういうようなもので見ますと、十四兆といわれる自己資本に対して、六兆九百二十億、これはおそらく四十七年度ではかなり手厚く積み増されている。引き当て金、準備金というようなものでおそらく七兆を軽く突破しているのじゃないか。いわゆる自己資本の五割以上にも達しているだろう、こういうように推定をされるわけなんです。  そういう中で、いろいろな引き当て金がこの委員会でも問題にされてきたと思うわけですけれども、特に貸し倒れ引き当て金、それから退職給与引き当て金、価格変動準備金、これが非常にふえている。その中でも退職給与引き当て金は前期一六・五%の増を示している。四十六年度対比において三千二百五十八億円も積み増されている。こういう数字が、官報資料版、四十七年度の法人企業実態として出ておるわけですけれども、退職給与引き当て金、これは労働者を主体に―これは労働者ばかりではありませんけれども、これが安定性をもって積まれておって、労働者がその退職金をそういう中からもらえる、こういう点では、制度として存在することはわれわれは認めるわけですけれども、しかし、非常にもうかった企業がそういうところに利益隠しの手段としてこれをどんどん入れていくというような実態を見たり、また、今日の積み立て限度額が、大体従業員の半数程度がいますぐに退職してもだいじょうぶだというところまで積んでいる。これが法定限度になっている。それをさらに金融機関あたりでは、全員やめてもだいじょうぶなだけ積み増ししている。こういうような実態にあるということはいかにも不自然ではないのか。これはやはり利益留保としての形が、そういう面であまりにも優遇的に措置され過ぎてはいないか、こういう点がある。  それからさらに、小さいところなどで倒産をしたというようなときには、この引き当て金が生きて、倒産をしてもその従業員には全部、退職金がリザーブされてちゃんと払いますというようなスタイルになっているならいいけれども、倒産したらこんな引き当て金は、幾ら積み増ししておっても、その際は何の役にも立たない、退職金ももらえないでほうり出されるというようなことにもなる。こういう点について、一体どういうようにお考えになっておられるのか。たとえば、この引き当て金については、これはもう別途預金というようなことを義務づけということがあれば、ほんとうに労働者がどんな場合でも退職金だけは支給されるのだという安心も得られるのだけれども、そういう点もはずしてしまっている。こういうような問題についてどういうようにお考えになっておられるのか、その点をお聞きしたい。
  106. 高木文雄

    高木(文)政府委員 退職給与引き当て金は、これはある程度負債性の引き当て金でございます。企業会計におきますところの費用配分の原則の精神からいいましても、当然認められてしかるべき性質のものではないかと私どもは考えておるわけでございます。当該期間の損益を算出するためにはどうしたらいいかということが企業会計の考え方の基本でございますが、やはりあれだけ明確にやめた場合には払うという負債性を持っているわけでございますから、それはやはり何としても売り上げに配賦していかなければならないものであると同時に、引き当てておかなければならないものであるという性質のものであることは、私は否定できないと思うのでございます。しかしながら、いま御指摘のように、せっかくそうやって引き当てても、たとえば企業が倒産した場合にはそれがもうすでに何もならない、役に立たぬということになっているということが間々起こるではないかということについて、どのようなことを考えたらいいかということでございますが、これはむしろ労働者保護という立場から何らかの手当が行なわなければならないわけでございまして、現行制度で十分だというふうには決して考えないわけではございます。現行制度では、たとえば、中小企業退職金共済事業団によりますところの積み立て制度というものがございます。それから、発足以来まだ日にちが浅いわけでございますが、いわゆる適格退職年金による積み立て、外部拠出による積み立てが行なわれている制度が生まれてきておるわけでございまして、適格退職年金などは、アメリカ等では非常に進歩をしておる、おくればせながら、わが国の場合でも十年ほど前からスタートして今日に至っているということでございます。徐々にではありますが、そういう方向に動いているわけではございまして、労働政策としてそういう面をさらにてこ入れするというか、強めていただくということが進むことが望ましいというふうに私どもは考えているわけでございます。  しかし、それは企業会計なり労働政策の問題でございまして、これは税務でどう受けとめるかということにつきましては、いわば中立的な立場という意味をもちまして、内部引き当てにつきましては全額は認めません、半額までは税法上は認めましょう。本来ならば、企業会計の立場からいえば、完全に引き当てるのが当然であろうと思いますが、それは税務のほうは認めません、半分まででございますよ、という立場でございますし、広瀬委員が御指摘のように、事件が起こらないように外に積み立てることを奨励する趣旨で、外部積み立てのものにつきましては税制上これを損金扱いにするような形で優遇をしておるわけでございまして、現行制度でも、中に積むよりは外に積むほうがより有利になるような腹がまえで制度を仕組んでおるつもりでございます。  退職金について拘束性を持たしたらどうか、たとえば特定預金として設定するものだけに限定してはどうかという御意見でございますが、これは前はそういう制度でございましたのを、最近はそういう条件を、前回のたしか法人税法の改正の機会か何かにはずしております。これはなぜそうしているかという経緯につきましては、私ちょっと事情をつまびらかにいたしません。これは、現在の企業会計の考え方税法とのつながりの問題ということで、いまのような制度にしていると思います。それは将来問題としては、御指摘のような角度から検討をいたしてみなければならぬかもしらぬ問題であるというふうに考えます。  これらの問題は、徐々にではありますが、進歩をしつつあるということでありますけれども、なお、御指摘のような点において不十分な点があることは私も同感でございますので、御注意を頭に置きながら、今後考えてまいりたいと思います。
  107. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間にせかれているものですから、詳しく租税特別措置の問題もいろいろな項目に分けてやろうと思ったのですが、やれません。それで、中川次官、いま退職給与引き当て金、これは費用性の非常にはっきりしたものであり、費用として計上されることは私どもちっとも反対じゃない。しかしながら、有税積み立てであっても、そういうものが積み立てられてそれが運転資金にどんどん使われていく、いろいろな投資にも使われていく、そういうようなことになっておりながら、いざ倒産というようなことになったら、一つもそれに引き当てられないでどっかへいってしまうということではならないわけですね。これをつくった、そして費用性が高いのだ、これは費用そのものであるというような形で積み立てが認められたというのは、現実に従業員に対して支払わるべきものという大前提があって、それを担保するためにこういう税制をやったと思うのです。それがいざという場合にはだめなんだ、通常の場合は別として、そういう倒産企業というような場合にそれが全然生きてこないのだというものについては、ある程度安全率を見ながら別途積み立てというようなことを、どこかでやはり拘束してやらせなければならぬ。前にはあった制度なんですから、そういうものを生かしてもらうように、これはひとつあなたに考えてもらいたいと思うのだが、いかがですか。
  108. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘の点は全くそのとおりだと思います。せっかく積み立てておいて、しかも税制の優遇措置を受けておいて、いよいよとなったら退職金が支払われないというようなことは、これは許されるべきことではありませんので、退職引き当て金が実際使われる方向に持っていくように最善を尽くしたいと思います。
  109. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その点確認をしておきたいと思います。  それから、法人企業統計でちょっと見ただけでも、いかに特別措置が大企業に偏在しているかということがわかるのです。貸し倒れ引き当て金、これは四十六年の数字でありますが、金額で一兆八千四百三十億あるわけですが、その中で一兆四千億というのは一億円以上の資本金のいわゆる大企業に所属している。これは大体六割以上ですね。それから退職給与引き当て金については一兆九千七百十一億七千二百万円、この積み立てのうち一兆七千億は、これは約九〇%になると思いますが、目見当ですから若干誤差はあると思いますが、これも大企業。それから価格変動準備金、六千二百七億円の積み立てに対して四千二百億、これも約七割は大企業。総額で見ましても、六兆九百二十億のうち、約三兆八千億ぐらいは大企業に偏在をしておる。これは非常にマクロのものですけれども、やはり租税特別措置における主体をなすものですね。これがそういうように六割ないし七割というものが大企業にそのメリットが帰属するものであるということは、これはずっと十二年ぐらい前から私ども議論しておるところなんですが、この状況がいまになっても直っていない。これはいかに日本租税特別措置の主たる恩恵が大企業に及んでいるかということを端的に示すし、それから、それにもかかわらず自己資本比率というものが低いということで、内部留保や何かはそういう形でどんどん巨額にふえて、それが利益隠しというようなことにもつながりながら積み増されている。それがまた、さらに減価償却、特別償却というようなことも加えれば、この比率はもっと上がると思うのです。そういうような状況というものが、整理改廃をするのだと言いながら、一つも改まっていないということについては、私どもどうしても納得ができないわけで、これもほんとうに主税当局においてこの改廃を大幅に、大胆にやって、税の公平を回復していかなければいけない。その時期はまさに今日この際であるということを申し上げておきたいと思うわけであります。  それからもう一つ、これはいつも租税特別措置議論において私ども主張しておるところなんですが、いままでいつも試算は示される。審議にあたって、これだけこういう項目で減収になりますと試算は示されるけれども、それについて実績、決算というものが示されたためしがない。この租税特別措置法というものは税制の重要な一環である。しかも今日、国民立場からすれば、まさに悪名高きといわれる不公平税制の象徴としてこれが存在している。しかも、その実績がどういう状態になったのか、しかも政策効果をねらって出すのだが、その政策効果がかくかくあらわれましたという報告も何もない。これは財政民主主義の憲法の規定、九十一条、さらに財政法四十六条、こういうようなところから、内閣が財政についての諸般の問題について国会に報告しなければならぬ、国民に報告しなければならぬというような立場からしても、きわめてけしからぬことだ、こういうように思うのです。  そこで、ことしも、教えてみるとたくさんの新しく創設するものがあります。それは、それなりに理解のつく、まあよかろうと思うものもあるけれども、そういうものを含め、疑問のあるものも当然たくさあるわけです。そういうものを一つ一つにわたってやるつもりだったのですが、時間の関係でやれませんし、ほかの委員がだいぶ取り上げておられると思うので、私はこの辺でやめますけれども、そういうものについて、少なくともこれから先の問題だけでも、今度これをやります、ついては、これについてはこれだけの政策効果がありました、それで適用件数はどのくらいありましたというようなものぐらいは報告する、これからつくるにあたっては、ひとつそこまで決意をしてやっていただきたい。これからつくるときには、ことしやった、初年度においてこういう実績があらわれましたというようなことぐらい報告するという義務づけを当局にやらせないこと、あとからあとから、何でもかんでも租税特別措置租税特別措置――これは本来の原則をくずして、本来課税対象にすべきものもみな課税対象からはずして、繰り延べをさせたりあるいは税額控除をやったりというようなことになるわけですから、しかもさっき言ったような形で大企業にそのメリットのほとんどが帰属する、そういう点で不公平感というものを一そうあおることになる。したがって、これをやることには非常に慎重な政策態度、それから実績については今度は報告するのだということになれば、非常に厳格なチェックもされることになるだろう。私は、主税当局が新しくつくるものについては、やはりその年度その年度で一つ一つ状況を報告する、こういうようなことがあって当然であろうと思うのです。  これは、もう何もかも全部実績を報告しろということを何回も言ったけれども、それができないとするならば、せめて四十九年度に新設をしたようなものについて、その結果を翌年度に報告をする、あるいは翌々年度になってもいいかもしれぬけれども、そういう形で報告していくということを少しは義務的に考えていく。しかも、憲法九十一条と財政法四十六条、これは財政民主主義の要請にこたえるためにそういう規定があるわけです。ですから、これは憲法の規定、財政法の規定からいっても報告しなければならぬ、そういう関係にあると思うのです。その点についてのお考え中川次官に最後にただして、私の質問を終わります。
  110. 中川一郎

    中川政府委員 確かにそのとおりだと思います。ただ、弁解するわけではありませんが、租税特別措置は補完的措置でございますので、そのものずばりでどれだけのメリットがあったかということを明らかにしがたい場合が多いかと思いますけれども、その措置がどんな形での政策効果を生んだのかわからぬままでいるということは、これは国民に対しても申しわけないことだと思いますので、その面については、わかる限りこれから義務づけられたような気持ちで明らかにしていくようにいたしたいと存じます。
  111. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 荒木宏君。
  112. 荒木宏

    ○荒木委員 政府委員に伺いますが、専従者控除の問題であります。いま金額は年々手直しされておりますけれども、白色、青色それぞれ一定粕で頭打ちがあります。この頭打ちになっているのは、一体どういうわけか。その論拠をひとつお示し願いたい。
  113. 高木文雄

    高木(文)政府委員 専従者控除は、まず白色につきましては、御存じのように、定額になっております。白色というのはあくまで帳簿がないという前提でございます。事業主が家族と一緒に仕事をしておる。その場合に、家族について何らかの意味において給与性といいますか、何らかの形での労務の提供があるわけでございますから、現実に事業主からその家族に金銭の支払いがあるとかないとかいうことと関係なく、やはりそこに一種の経費性を認めるべきであろうということから、部外に支払われる経費とは違いますけれども、一定額の経費を認めるということでできている制度だというふうに理解をいたしております。  ただ、それは家族でございますから、何らかの意味におきまして、基礎控除なり配偶者控除なりとの調整をどういうふうに考えるかという問題があります。ある時期には、配偶者控除と同額であった時期もございます。配偶者控除と同額であったということは、扶養控除よりは高かったということでございますから、その時期には扶養親族については専従者控除意味がある。しかし、配偶者控除と同額ということは、配偶者についてはそういうものを認めないという考え方をとったという形になります。それからまた、ある時期には――ある時期というのは、たとえば昭和四十一年には白色の専従者控除は十五万円でございました。配偶者控除は十三万円でありました。扶養控除は六万円でございましたから、その時期には配偶者につきましても専従者控除のメリットがわずかながらあったということでございます。  そういうことでおわかりいただけますように、専従者控除あり方というものについては、かなり経緯的にフレがあるわけでございます。最近は、大体、配偶者控除と扶養控除の中間の段階に白色控除がありましたから、専従者控除制度の持ちます意味というものは、配偶者以外の者、言ってみれば扶養親族についてのみ意味があるという時代がかなり長く続いてまいったわけでございます。  今回、配偶者控除と扶養控除とを同額にいたしました。それとの関係で専従者控除をどう考えるべきかということをいろいろ議論をしてみたわけでございますが、これはなかなかむずかしい議論でございます。従来から白色の専従者控除が基礎控除の額を上回ったということはないわけでございますので、そこのところをどう考えたらよろしいかということはいろいろ議論してみたわけでございます。これといってきめ手のある議論が十分できておりません。ただやはり白色専従者控除というものがあります以上は、通常の配偶者控除よりも高い水準に置くことが妥当なのではなかろうか。基礎控除よりも上回ったとしても、それはよろしいのではなかろうかということで、金額そのものの水準は、別にこれといった明確な御説明ができるような水準ではございませんが、現行の二十万円というものを考え、それから新しい配偶者控除、基礎控除の水準の二十四万円というものを考えました、従来の五割増しというような感じで三十万円というところに置いたわけでございます。  青色の専従者控除につきましては、歴史的には白色の専従者控除とあまり性質を変えては考えていなかったのではないかと思っております。現在のような完全給与制になります前は、前の四十一年、四十二年あたりは、四十一年では配偶者控除が十三万円、四十二年では配偶者控除が十五万円でありましたけれども、その際、青色の専従者控除は二十四万円というかなり高い水準に置いております。これは当然基礎控除を上回っておるわけでございます。これはもう言うまでもなく、青色申告制度の奨励措置と申しますか、そういう趣旨で白色よりも高く置いたのであろうかと思います。  四十三年に根本的な改正がございまして、青色の専従者控除について、いわゆる完全給与制と申しますか、自由性と申しますか、原則として企業が専従者について支払ったということでブッキングを行なっているという場合には、その金額によることにいたしておりまして、よほど異常な状態でない限り、その企業が支出したとして経理をしておる額、それまでを専従者控除として認めるようになったわけでございます。自来今日まで、青色の申告控除については、いわゆる定額とか頭打ちという概念はないわけでございます。
  114. 荒木宏

    ○荒木委員 委員長にお願いがありますが、局長答弁は、質問に対してなるべく簡潔に、要領よくお答えいただきたいと思います。
  115. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 この際御注意申し上げます。主税局長答弁を明確に、簡単にお願いをいたします。
  116. 荒木宏

    ○荒木委員 私がお尋ねいたしましたのは、専従者控除の制度の由来でありますとか、制度の内容の御説明を伺ったのではないわけです。これは社会実態からいって労働の提供に対する対価であります。関係はいろいろありますけれども、働いてそれに対する対価が給付される。それに対して一定の限度で線を引いている。線を引いている理由は一体何か。それは一つなのか、二つなのか、あるいは三つなのか、この点を伺ったわけであります。これは社会的にも、いま同居の親族の人にとっては非常に関心の深い問題であります。ですから、もしその帳簿がないということで一定の頭を打っておるということなら、そういうふうにお答えいただきたい。その質問に対する答弁を簡潔にお願いしたいと思います。
  117. 高木文雄

    高木(文)政府委員 労働に対する対価という概念ではございません。もし労働に対する対価という概念であれば、支払いとか支払ったとかいうことが条件になるはずであろうと思います。これは控除制度でございます。あくまでその背後に労働があるということは前提にいたしておりますが、しかし、対価という概念ではないと思います。
  118. 荒木宏

    ○荒木委員 労働省お見えですね。――労働省に伺いますが、たとえば事業主がいる、それから青年のむすこさんがそこでおやじの手伝いをして一カ月働いたら、それではまあ、ほかへ働きに行くかわりに五万円やろう、こういう話をきめて働いている。ほかに雇い入れた同じ年輩の人が一人いる、こういうふうな場合に、労働基準法の適用はありますか。
  119. 山口全

    ○山口説明員 労働基準法の適用は、労働基準法第八条で規定されている事業または事務所に雇用される労働者というふうになっておりますので、同居の親族だけを使用する場合には基準法の適用はないわけでございます。  先生いま御質問の、労働者を一人使ってなお家族を使用しているという場合、労働者一名でも使用しておれば、その事業は労働基準法の適用があるということになります。
  120. 荒木宏

    ○荒木委員 そういたしますと、労働省に重ねて伺いますが、その事業主であるおやじさんと、それから青年のむすこが一カ月五万円で働きましょう、私はよそへ行くよりも家の仕事をやるのだ、こういった場合に、その契約は労働基準法上認められる労働契約になりますか、いかがですか。
  121. 山口全

    ○山口説明員 労働者を一名以上使用していて、なおかつ家族を使用する場合、その事業は労働基準法の適用があるということを申し上げたわけですが、その家族従事者が労働者であるかどうかということはまた別問題でございまして、一般的には家族従事者は労働者として扱っておらないわけでございます。
  122. 荒木宏

    ○荒木委員 特に設備だとかあるいは労働手段の提供を受けずに、労働だけを提供して、おやじの言うところに従ってまじめに働いている、その店にいるほかから来た労働者と同じようにやっている、つまり、もう一人の労働者に使用従属関係が認められると同じような労働形態をとっている場合に、この間に差別を設けますか、これは同じに扱っておられますか。
  123. 山口全

    ○山口説明員 一般的には、先ほど申し上げましたように、労働者として扱っていないということは、生計の一体性というようなことに着目しておるのだろうと思います。
  124. 荒木宏

    ○荒木委員 一般的じゃありません、いま私が言ったような場合はどうですか。使用従属関係が認められると同じような労働形態をとっておる……。
  125. 山口全

    ○山口説明員 全く一般労働者と同様の形態にあれば、労働者と同様に扱われるということになろうと思います。生計の同一性だとかあるいは勤務の形態その他によって差異があれば、原則的には労働者として扱っていないということを申し上げたわけであります。
  126. 荒木宏

    ○荒木委員 重ねて伺いますが、こういう場合に、一般の他の労働者と同じに扱われるような場合には、労災保険の適用対象にもなりますか。これは人数の制限がありますから、その人数の制限を満たした場合にはその適用対象になりますか。
  127. 山口全

    ○山口説明員 基準法上の労働者の範囲をそのまま受けておりますので、基準法上労働者であれば、労災保険法上の労働者ともなります。  なお、基準法上の労働者でないという場合に、先生御質問の、人を一人使っている場合に、その者について労災保険の適用がございまして、労働者でない場合にはずばり労災保険法の適用はかぶらないわけですが、特別適用という規定がございますので、その限りで労災の適用を受ける余地はございます。
  128. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、いろいろな関係で取り扱いは区々であるけれども、しかし、労働基準法の適用を受ける実態を備えておれば、これは労働基準法の適用対象になる、労災保険の適用対象にもなる。そうすると、その場合には賃金の支払いは、もし支払いがなければ当然罰則規定とか賦課金とか、これは同じように考えていいわけですね。
  129. 山口全

    ○山口説明員 賃金を受けている場合は、当然その賃金が基礎日額になります。賃金を受けていない場合、特別適用で保険に加入する場合には、基礎日額を特定しまして、その額を平均賃金とみなして適用していくということになります。
  130. 荒木宏

    ○荒木委員 こういう場合には賃金台帳をつくるということになるんじゃありませんか。
  131. 山口全

    ○山口説明員 基準法の適用がある労働者であれば、当然、賃金台帳が作成されます。
  132. 荒木宏

    ○荒木委員 主税局長に伺いますが、こういうふうな場合は、社会的な実態として労働があり、対価の給付がある。労働省ではそれを、具体的な事実関係の認定によりますけれども、労働基準法上保護すべき契約関係であり、その請求権は罰則づき、賦課金づきで支払い調整を受ける。賃金台帳も、国家機関の監督のもとに作成を義務づけられている。こういうふうな実態にあれば、これは先ほど局長は給付じゃない、対価ではないと否定されたけれども、国家機関の中では対価であり、それは労働給付だという、そういう場合があることを認めておるんじゃないでしょうか。これは税制上もそういう実態があり、国の労働に対する方針として税法上考慮すべき、検討すべき余地があるんじゃないでしょうか。
  133. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまのように、いろいろの法令上の規定に従って給与台帳があり、それによって現在支払いが行なわれておるという方で、なお青色申告でなしに白色だという場合の問題であると思いますが、その部分についてそのような経理が行なわれておりましても、企業全体として帳簿がない。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕 帳簿があってその扱いを受けるということであれば、いつでもそういう申告をしていただけばよろしいわけでございますから、それを帳簿があるということを御主張にならないということでありますれば、それは給与の支払いの実態があるかないかということにかかわらず、普通の専従控除ということで、控除制度で処するほうが確実に処理できると思います。
  134. 荒木宏

    ○荒木委員 先ほど伺った理由それは給与ではない、これが理由なんだ、こういうふうに伺ったわけですね。ところが、いまのお話ですと、かりに給与の実態があろうとなかろうと、要するに、ある一定の青色申告というふうな制度を設けてあるから、それを採用しなければ実態があってもだめなんだ、こういう答弁です。実態がないという答弁と、実態があってもだめなんだという答弁は、これは明らかに違うわけでありまして、私がお尋ねしたいのは、なるほどそういう青色申告という制度があります。しかし、また一方、白色申告という制度もあるのでありまして、これは帳簿がないというんじゃないですね。帳簿の作成が法律義務づけられていないというだけであります。白色は全部帳簿がないというのは、これは独断もはなはだしいんじゃありませんか。白色の場合でも、賃金台帳をつくり、労働基準法上保護され、その支払いは国家機関が関与をする。明らかに労働であり、その対価である、こう認めているわけです。  だとすると、皆さんのほうでおきめになったワクの中へ入らなければ、これはだめなんだという態度、これも一つでありましょう。しかし、社会的に実態があり、国家機関が認めておれば、その制度自体を実態に合うように改善検討していく。これが社会実態が進むに対応した税制あり方という点でもあろうかと思うのです。  ですから、私は、そういう点で、従来この専従者控除ということについて、白色の場合にしかく画一に扱われておりましたが、まず第一に、こういった労働給付があるという実態を十分把握すべきである。現にそれがあるということは、労働省も制度上認めておるわけですよ。基準法の適用があるんだ、こう言っているわけですからね。全部じゃないにしても。ですから、そういう点で、いまの御答弁を、実態に合うように検討をする、こういうふうに前向きにされるのが、私はそれこそ民主的な妥当な税制あり方じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  135. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在の白色の制度と青色の制度については、いろいろ御批判があろうかと思います。現行の制度は白色を大原則にいたしまして、そして青色を特例ということで組み立てておるわけでございます。ですから、特別に青色のほうを選ぶということであれば、それなりにそういう扱いをいたします。そのかわり、青色の場合にはかくかくの要件を備えていただきましょう、こういうことになっておりまして、その選択は納税者の自由だということになっておるわけでございます。  ただいまいろいろやりとりがございましたように、家族労働者の実態にはいろいろなものがあろうかと思いますけれども、税務の上での扱いといたしましては、そのように納税者が青色の制度を選ばれるか選ばれないか、選ばれた方であれば、給与の支払いをしたという場合には制限がない。白の場合には、白のほうを特に選んだといいますか、特別の青の申告がないということであれば、給与の実態なり労務の実態なりに関係なくこういう制度でいきましょう、こういうたてまえになっているわけでございます。基本的に一体そういう立て方がいいか悪いか、立法政策論としてはいろいろ御議論があろうかと思いますが、そこは現在のところは専従控除の部分だけでなくて、全体として税法上の組み立てがそういうことになっておるわけでございます。  この問題については、いろいろ御議論のあろうところかと思いますが、そうしてまた、将来の問題としていろいろ検討に値する問題があろうかと思いますが、それは私はむしろ専従者控除制度自体の問題というよりは、青色申告制度なり白色制度なりというものの全体の問題ではないかというふうに考える次第でございます。
  136. 荒木宏

    ○荒木委員 厚生省お見えになっていますか――ちょっと呼んでくださいませんか。その間、質問は別のところにします。  保険部に伺いますけれども、自動車損害賠償の関係で、たとえば主人が運転をしていた、そして一緒に乗っていた主人の仕事を手伝っている奥さんが御主人の運転によってけがをした、こういう場合に、奥さんの側から御主人に対して損害賠償の請求権があるんでしょうか。
  137. 安井誠

    ○安井説明員 突然のお尋ねでございますので用意がございませんが、記憶ではたしか最高裁の判例が変わって、自賠責については請求権が認められたのではなかったかと思いますが……。
  138. 荒木宏

    ○荒木委員 これはきょうお尋ねすると念を押してあるんですけれども……。  そこで、主税局長にもう一度伺いますけれども、この夫婦だとか親子の関係ですね、同居の場合のこういう関係については、いまのこれは契約関係ではなくて、不法行為関係ですけれども、従来の考え方から、それぞれの立場を独立主体と見て扱うように損害保険法のたてまえも変わってきておるわけですね。つまり、これについての請求権については、これは保険制度ですから国が補助金を出しております。そしてそれについて、いろいろ国としての請求権を認めるという関係になっております。ですから、そういった考え方の前進、つまり同じ生計を一にする夫婦、親子であって事業をやっておっても、それはそれぞれ独立の主体と認める、こういうような考え方に来ておるわけですから、先ほど立法論としてはともかくというお話だったのですけれども、私は制度を改正していく、改善していく方向として、そういう方向考えるべきではないか、こういうふうに申し上げておるわけです。  つまり、いまの制度を固定的に全部青色のほうへ吸収していくというよりも、実態が変わっておるわけですから、その給与の支払いを労働の対価として認める方向税法考えるべきではないか。労働省の考え方もそう変わり、それから保険関係考え方もそういうふうに変わってきておるわけですから、そのことを申し上げておるわけです。
  139. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おことばではございますけれども、その給与の部分についてだけそういうふうに社会実態が変わったということが言えるのか、世の中全体として社会実態が変わってきたから青白の組み立て方を変えたほうがいいのか、そこらもなお研究課題であろうかと思います。
  140. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、局長に伺いますが、かりにこの専従者控除の額をこえて、これは給与だといって払った場合に、税法上どういう取り扱いになりますか。
  141. 高木文雄

    高木(文)政府委員 払う払わぬにかかわらず、白色の場合には専従者控除以外のものはないわけでございまして、支払った支払わない、額の多い少ないということは関係がないというのが現行税法のたてまえでございます。
  142. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、現実に金銭の移転があっても、それは税法上課税対象としては問題にしない、こういうことですね。
  143. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  144. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、これは金銭に限らず現物給付として物の移転があっても、これは贈与には見ない、こういうことですね。
  145. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは所得税法の計算上の話としては、先ほどお答えしましたように、実際に金銭の支払いがあったなしにかかわらず、控除制度の適用がある。逆に申しますと、支払いがなくても、今度の制度では三十万まで控除されますということでございます。  いまの第二の御質問のほうは、何か資産の贈与の話のようでございますが、贈与税のものの考え方は別の考え方をとっております。
  146. 荒木宏

    ○荒木委員 金銭の場合も、受け取ってもそれは贈与にならぬ、こういうことですね。私が伺ったのはそれなのですが、たとえば五万円という約束をした。そうすると、年間で六十万円になります。かりに三十万円だとおっしゃれば、三十万円オーバーするのですけれども、金をもらっておってもそれは贈与ではない、かりにそのことが税務署にわかっても課税をしません、こう伺ってもいいかと念を押しているのです。
  147. 高木文雄

    高木(文)政府委員 所得税法の計算上、白色申告者については、金銭の支払いがあってもなくても、事業に従事しておれば再従者控除として適用があるということであり、今度はいまの、主人が奥さんに何かお金を払ったという場合には、それが事業所得者であるかないか、そういうこととは全く関係なく、これは主人の資産が奥さんなり親族なりに支払われたということであれば、金銭であっても品物であっても、それはやはり贈与になるということであろうかと思います。それはまた今度は贈与税のほうの話になりますれば、それは事業とか事業でないとかいうこととまた別の問題になってまいります。
  148. 荒木宏

    ○荒木委員 しかし問題は、その基礎になっておる実態一つであります。そしてその実態は、当事者がかってにきめたのではなくて、労働省が認め、それから、まだ見えていませんけれども、厚生省のほうでも、たとえば健康保険の関係あるいは厚生年金保険法の関係で標準日額をきめるにあたって、国がこれは報酬だと認めておるわけですね。国家機関が認めてそれは労働の対価だとしたものを、大蔵省はかってにその給付原因がないんだと、こういうふうに見てもいいのかどうか、こう伺っておるわけです。  もう一言念を押しますが、たとえば厚生省なり労働省なりのほうが、これは給付すべき原因がある、その原因は労働であり対価だ、こう言っている。大蔵省は、原因がない、こう言う。これは一体どういうことですかという質問です。
  149. 高木文雄

    高木(文)政府委員 突然のお尋ねでございますから、十分勉強してきておりませんし、法律的な問題でございますからあまり不正確な御答弁もいかがかと思いますけれども、いま考えまして、ちょっと思っておりますところでは、贈与税法の扱いの上では、何らかの意味において贈与と考えるかどうかが問題でございまして、その何らかの勤労の対価なり何なりということで金銭の授受があったというものが、民法上の贈与の概念に当たるかどうかということが、まず贈与税法のほうの問題として今度は議論せられるべきではなかろうか。いまの労働関係法規その他でどういうふうに規定されているかということ、その金銭の授受についてどのような契約があったと見るか、契約があったのであろうかという個々の場合によってもいろいろ事情は違うだろうと思いますが、契約がきちっとしており、そうして公的機関が承認された労働の対価であるということであれば、民法上のそれが贈与になりますかどうかということでございまして、どうも伺った範囲では、そのような場合には贈与概念にならないのではないかという感じがいたしますが、正確にはもう少しよく法律的に詰めてお答えすることにいたしたいと思います。
  150. 荒木宏

    ○荒木委員 これは法律論じゃないのです。立法論、制度論として言っておるわけです。いまのお話でありますと、たとえば労働省なり何なりが、これは労働契約だというふうに認めたということがある。その場合に贈与ではない、つまり片務契約ではなくて双務契約だ、労働してその対価として払っているの、だから贈与ではない。もしこういうふうなことになるとしますと、それは全体を労働の対価だと見なければ、専従者控除をこえた部分だけこれは労働の対価であります、専従者控除の適用の範囲内の部分だけはこれは労働の対価ではないのですというふうな扱いは、これはだれが考えたって筋が通らない。そうじゃありませんか。  たとえば働いて、先ほど申しましたけれども、五万円はちょうどになりますから金額を変えるとして、月六万としましょう。年間七十二万、白の場合は三十万ですから、その上四十二万こえる。四十二万についてよくよく調べてみると、これは労働契約だ、労働の対価だ、だから贈号ではない。こうなりますと、四十二万円分はこれは労働の対価だと認めたということになります。そうでしょう、贈与じゃないのですから。贈与でなくして金が払われれば、他に原因を求めなければならない。その他の、原因は何かといえば、これは労働だと国家機関が認めている。それじゃ、一月六万円でおやじとむすこが話をして働いて年間にして七十二万、そのうちの四十二万だけはこれは労働の対価だ、専従者控除の範囲内の三十万はこれは労働の対価じゃないのだ、これはちょっと筋が通らぬ考えだと思いますが、その筋が通らないゆえんが、いまの白色専従者控除という考え方に固執をされる限りそういう結果になるのじゃないか、こういうことを申し上げているわけです。
  151. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ある意味ではおっしゃるとおりでございまして、先ほどから申しておりますとおり、専従者控除というのは控除制度でございまして、支払われたとか支払われないとかいうことは関係ないのでございます。いまの例で毎月六万円支払ったとおっしゃいましたが、全然支払いがなくても三十万円まで控除になるのでございます。でございますから、その控除の概念ということと、労働の対価として見ているか見ていないかということ、そこで問題が分かれてまいるわけでございます。
  152. 荒木宏

    ○荒木委員 それじゃ、矛盾をそのまま認めるということじゃないですか。つまり、そういった矛盾を改善するための手だてをとられるべきではないか、こう質問をしているわけです。いまの制度ならそうなります、つまり、いまの制度はそういう矛盾を惹起します、そういう説明だけですね。解決する手だてはないのですか。つまり、そのためには、いまの専従者控除という固定的な考え方を、白色の場合にも実態をよく見てそうして給与性という考え方を入れる方向検討するというのが解決の一つの道ではないか、こう言っているわけです。
  153. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そういう御議論は従来からあるわけでございます。あるわけでございますけれども、その労務の部分についてだけ支払ったという事実があれば、それで給与として見るか見ないかというのは、それは税法上の立法政策の問題であろうと思います。他の分野については実際支払ったとか支払わないということは関係なく、家族関係についてだけ支払った、支払わないによって差異を設ける制度がよろしいのかどうかというあたりの問題であろうと思います。
  154. 荒木宏

    ○荒木委員 これは少し違うのですがね。他の関係では、払えば経費として認めるのでしょう。白色であっても、たとえば原料費を支払えば経費として認める。だから、白色であっても実態がちゃんと備わっておって、それで払えば給与を経費として認めるというのが統一的な考え方ではないか、こう言っておるわけです。政務次官、いかがですか。先ほど来申し上げておるのですが、立法政策の問題ということを局長はしきりにおっしゃっているんですけれども、そういう方向で立法を検討して、もう少し実態に合ったすかっとしたものにするべきではないか、こういう検討をされるべきだと思いますが、どうですか。
  155. 中川一郎

    中川政府委員 非常にむずかしい問題といいますか、御指摘の点わからないわけではありません。支払いが対価なのか対価でないのか。別の意味では対価であるし、税制上では対価と見ないという複雑な問題がありますが、要は対価を支払おうが支払うまいが、基礎控除として今度の改正では三十万円までは引くという単純な考え方でやっております。青色になれば、完全給与として払ったものはこれを控除していく。なぜそういう差をつけておるかというと、青色のほうできちんとやっていただく、こういうことの奨励策といいますか、差をつける意味でも、そのけじめが必要ではないかということが一つと、もう一つは、白色であっても親族がほんとうに給与として払っているならば、それを認めてもいいじゃないかという議論も御指摘のとおりあります。ありますが、日本ではまだそういう親族関係の給与関係がはっきりしてないという実態からするならば、まだそこまで踏み切るべきではないのではないか、やがてそういうものの慣行がはっきりしてきたという段階においてそういう方向に持っていくべきではないか、こういうふうに思います。
  156. 荒木宏

    ○荒木委員 時期尚早論というのが出てきましたね。私はこう思うのですよ。ほかの役所のこの問題に対する取り扱いに比べて、大蔵省はずいぶんおくれていると思うのです。税制サイドの対応はまことに遅々たるもの、遅々たるものというよりも、全然踏み出していない。  労働省に伺いますが、家内労働法というのがありますね。ここに「補助者」という規定がありますが、この補助者には権利は認められていますか、いかがですか。
  157. 山口全

    ○山口説明員 直接の担当者でございませんので、詳細には存じておりません。
  158. 荒木宏

    ○荒木委員 家内労働法では、まさに税法上、同居の親族と規定しておる立場の人に補助者という概念規定をして、そして委託者との間の契約関係に違背があれば、関係官庁に対する申告権を認めておるわけです。つまり、そういった立場の人に権利を認めて、それを保護していく、こういう方向をとっているわけですね。ですから、そういう点からいけば、用意をした青色がいいんだからということで、そこへこなければ、実態がどう変わろうと、他の役所の対応のしかたがどんなふうに変わっていこうと、それはもう一切当方はおかまいなしというのでは、これは実態に合った民主的なやり方とは言いがたいと思うのです。  ですから、私は、そこに差をつけておる立法趣旨はたびたび伺いました。しかし、義務ではありませんから、選択は自由なんですから、その自由に選択した白色の場合に、実態があり、そしてその実態社会的にいまや認められてきており、対応する法制度があり、しかも、いまの大蔵省考え方を貫けば矛盾が起こり、説明ができない部分がある。将来の問題としてとかあるいは時期尚早とかおっしゃいますけれども、事態はもっと進んでおるのですよ。ですから、政務次官、いま慣行がないとおっしゃったけれども、補助者の立場というのは認めているのですよ。権利を認めておるのですから、だから検討は私はすぐなさるべきだと思いますが、いかがですか。
  159. 中川一郎

    中川政府委員 検討してみます。
  160. 荒木宏

    ○荒木委員 いまおことばがありましたから、問題点は十分申し上げましたので、すみやかに御検討いただくように希望しまして、次の問題に移ります。  昨日は、石油の大幅値上げに伴う対策として、値下げのためのかわり財源、これで貸し倒れ引き当て金の問題を申し上げました。先ほども同僚議員からその点についての御指摘があったのですが、これの内容を少し伺う点はあとへ回しまして、それの一環として、保険契約の契約者配当金の問題について伺いたいと思います。  これは法人税法に規定がありますが、私がまずお尋ねをしたいのは、保険契約者の配当金が損金算入されておる、この理由は一体どういうことかということを最初に伺いたい。
  161. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 現在、ただいまおっしゃいましたように、法人税法六十条において契約者配当の損金算入の特別の規定が設けられております。これは黙っておきますと、資本取引と見られる可能性がございますので、特別の規定を置いたものでございますが、それは法律の体系からむしろ置かざるを得なかったものでありまして、法人税法の精神から申しますと、これはむしろ本来、保険料として支払われたものについての値引きと申しますか、修正と申しますか、そういう性格のものと考えております。
  162. 荒木宏

    ○荒木委員 世間で値引き、修正といいますと、これは売り上げにかかるものですね。売り上げ代金があり、そしてそれの対価関係に立つものとして売り上げ商品がある、商品に傷があったから値引きをする、こういったのが普通の考え方でありますけれども、そうすると、これは保険給付にかかっておるわけですか。保険契約で、売り上げ商品というのは保険給付ですけれども、この配当金というのは保険給付にかかっているのですか。その点いかがですか。
  163. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 保険給付にかかるという意味がちょっとわかりませんので、おそれ入りますが……。
  164. 荒木宏

    ○荒木委員 これはもう常識的に申し上げておるのですけれども、つまり、納めた品物に傷があった、だから値引きをしましょう、あるいは毎々お取引願っておるからひとつ割り戻しをしましょう、こういうのがありますね。しかし、それは売り上げ代金を回収して、その回収した代金をどう運用するかにはかかわらぬものですよ。もうかったからそのもうけに応じて割り戻ししましょうというものではなくて、普通の値引きというものは、大体、保険料と保険給付と、その範囲内での処理ですから、それが値引きというものですけれども、この契約者配当金というのはそういうサイドのものではなくて、保険会社に一たん入っちゃった、入ったものを、株を買うなりあるいは投資をするなりしてだいぶ入った、入った中から一定量を返しましょうというのですから、つまり問題の領域が違うのではないかということをまず最初に一つ申し上げているわけです。
  165. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 契約者配当の内容につきましては、通常付加保険料と申しますか、そういう費用に充てられるべき付加保険料の取り過ぎたものを返す、あるいは死差益と申しまして純保険料の取り過ぎ分、あるいは利差益と申しまして、保険料として収受いたしましたものを運用しておりますその運用の見積もりが、保険料計算を行ないますときに比べましてさらに運用益が多くあがった、こういう三種類の部分からなると考えております。
  166. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、株主配当とはどこが本質的に違うのでしょうか。一たん保険会社に入った、運用して、そして入ってきたそいつを割り戻しするというのでしょう。株主配当と違うというのはどういう点でしょうか。
  167. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 これは保険業法に基づく保険会社についてのみ適用がございますものでございまして、株式会社における配当と申しますのは、株主に対して戻される、戻されると申しますか、支払われるものでございまして、この相互会社の場合にはそういうふうな考え方には適さないのではないかと考えております。
  168. 荒木宏

    ○荒木委員 しかし単純な取引と違って契約者は社員になるわけでしょう。ですから、そういう意味からいえば団体法の領域に入るんじゃないですか、単なる個々の契約じゃなくて。その点で株主配当と一体どういう点が違うのか、そこのところをひとつわかりやすく説明してください。
  169. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 保険業法上の相互会社につきましては、これは営利を目的といたしておりませんので、営利を目的として株主が出資する場合と、相互会社の社員になっている場合と、これはやはり相当違うのではないかと考えております。
  170. 安井誠

    ○安井説明員 契約者配当の問題でございますので、私のほうからお答えさしていただきたいと思います。  先ほど一課長が申しましたように、保険料をきめますときに、どれだけ人が死ぬであろうかということを考えて保険料を算定する基礎になりますのが予定死亡率でございます。これは御承知のように、生命表の逆で出てくるわけでございます。それから、保険料をいただきますときに、将来満期になりましてどれだけお払いするかという蓄積部分があるわけでございます。これを計算いたしますときに利子率を立てなければいけませんので、これは予定利子率で計算をするわけでございます。それから最後の三番目が、保険会社がどれだけ費用はかかるであろうかということを見込みまして、その予定事業比率というものを出すわけです。つまり予定死亡率、予定利子率、予定事業比率、これをあらかじめ計算いたしまして保険料をいただくわけでございますが、この結果、一年なら一年たちまして、あるいは二年たちましたときに、それぞれの利子率あるいは事業比率あるいは死亡率に余りがくるわけでございます。これはやはり最初もらい過ぎておるものでございますから、たとえば死亡率でございますと、かりに千人のうち十人死ぬであろうということから一%分だけ取っておいたものが、実はそれまで死ななかったということになりますと、そこに差額が出てくるわけでございますから、本来保険料としてもらうべきものではなかったということから、その部分は本質的に契約者に返さなければいかぬものであるという形で、この結果として出てまいりますのが費差益であり、利差益であり、それから死差益になるわけでございます。  したがいまして、先生御指摘の同じ配当という名前は使っておりますが、そしてまた先生のおっしゃるように、団体法的な部分もございますけれども、株式会社配当のように、利潤が出たから、利益が出たから配当として返すというのではなくて、本来、保険商品を売りますときのその対価でありますところの保険料が取り過ぎである、その分をお返しするというのがこの生命保険上の契約者配当というように私どもは考えているわけでございます。
  171. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの御説明でおっしゃる意味はよくわかりました。私が申しておりますのは、実はすでに審議が終わりまして法案としては成立をいたしましたけれども、印紙税法の審議にからんで、はたして保険料が売り上げ代金になるのかならないのか、そういったところから保険料の性質そのものと、それからそれに見合う配当金が損金になるかならないか、こういう点が関連するものとして法人税法の領域と印紙税法の領域で取り扱いが区々になる可能性があるのではないかというところから問題提起をしておるわけであります。  そこで、関連して一言伺っておきますけれども、保険料は印紙税法上では階級定率ですか、あるいはそれとも固定定率の扱いになっておるのですか。つまり売り上げの受け取りというふうに扱われたのかどうか、その点をひとつ念のために伺っておきたい。
  172. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 突然のお尋ねでございますので、ちょっと法文そのものをここに持ってまいっておりませんが、今回の改正案におきます階級定額税率は適用しない、つまり売り上げ代金以外の領収書の区分のほうに入れております。
  173. 荒木宏

    ○荒木委員 保険協会のほうから大蔵省のほうに昨年この点で陳情がありましたね。  これは保険部のほうに伺いたいのですが、保険協会のほうから扱わないでほしいという陳情があったように聞いておりますが、その点はいかがですか。
  174. 安井誠

    ○安井説明員 はなはだ申しわけございませんが、あったような気もいたしますし、税金の話でございますから直接主税局のほうへ出ている話でございます。私どものところへはこなかったように思いますが……
  175. 荒木宏

    ○荒木委員 昨年の十二月の二十七日に、保険業界の代表が主税局税制二課の担当者とお会いになっている、この事実がありますか。
  176. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 突然のお尋ねでございますので、税制二課にそういう要望がございましたかどうか、事実を調べましてお答え申し上げたいと思います。
  177. 荒木宏

    ○荒木委員 その席には保険部の保険関係の担当者も同席しておられますが、この点はいかがですか。
  178. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 その点もあわせまして事実関係を……。
  179. 荒木宏

    ○荒木委員 保険部は見えているでしょう。
  180. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ああそうか、失礼しました。
  181. 安井誠

    ○安井説明員 事実を調べまして御返事申し上げたいと思います。
  182. 荒木宏

    ○荒木委員 課長見えているのじゃないですか。
  183. 浅谷輝雄

    ○浅谷説明員 いまの先生のお話でございますが、二十七日にその協会が税制二課に陳情に行ったこと自体も私いま初めて知ったわけでございますし、また私自身もその席に同席しておりませんし、実態関係につきましては調べてみたいと思います。
  184. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは、こういうお取り扱いを願いたいと思いますが、いまこの階級定率を適用しない扱いだということをおっしゃった。これは初めからそうでしたか。大蔵省のほうはこの立案の当初からそういうお考えだったのですか、その点はいかがですか。
  185. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 私ども立案をいたします過程で売り上げ代金の領収書とそれ以外の領収書を区分して考えたらどうかという議論をいたしました。その場合に、売り上げ代金とはそもそもどこまでの範囲を売り上げ代金といったらいいのかという法律的にも実態的にも非常にむずかしい問題があるということは夏ごろから意識いたしまして、勉強を続けてまいっておりました。その過程では、やはり貸し付け金利息とか保険料というものの受け取り書についてこれは売り上げと観念すべきか売り上げではないと観念すべきかということを、私どもの部内で相当議論いたしておりました。それにつきましては、いわゆる売り上げ税ないし付加価値税を課税する場合に、これを売り上げと見ておるかどうかというような外国の例も担当課のほうではかなり調べておった記憶がございます。いろいろな状況を総合的に判断いたしました上で、主税局独自の判断として、保険料は売り上げ以外のほうに分類するのが妥当であろうという結論を得たという記憶がございます。
  186. 荒木宏

    ○荒木委員 きょうは直接審議の法案の対象ではありませんので、ただこの点だけを申し上げておきたいと思うのですが、昨年来、関係業界が大蔵省のほうにたびたび陳情した記録があります。そして大蔵省の回答は、いま審議官がおっしゃったように、これは売り上げ代金と見られるという意見であったわけですね。その中に純保険料だとか付加保険料とかいろいろありますから、これは売り上げ代金だ。だから、そうでない扱いというのは非常にむずかしい、こういう回答がなされておるということが業界の中では発表されておるわけです。  ところが、本年の一月から二月になって、その間に何らの説明なしに突如として扱いが変わっているというふうに記録の上ではなっています。ちょうど法案がかかる直前でありますけれども、私は、なぜそういうふうに変わったか、この間のいきさつを調べていただいて、考えが変わった時点と、なぜそういうふうに変わったかといういきさつですね、交渉の経過、これをひとつ報告をいただきたいと思います。この問題の質問はその機会まで留保させていただきます。
  187. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 突然のお尋ねでございますので、記憶にたよってしか御答弁申し上げられないのでございますが、担当者がかりにそういう趣旨の説明をいたしたといたしましても、それは必ずしも主税局全体の考え方を即座に代表しているのではございませんし、また保険料の取り扱いにつきましては、私自身が夏以降に、付加保険料部分についてはどう考えるか、純保険料部分についてはどう考えるかという問題があるぞということを指摘してまいっておりましたから、あるいはことばが足りないで、付加保険料部分については売り上げと見るほうが普通ではないかというようなことを言ったことがあるのかもしれません。いずれにいたしましても、担当者が立案の過程で関係の方々の御質問に応じてお答えしたことが、すなわち最終的な主税局の判断であるということには必ずしもならないケースが間々ございます。
  188. 荒木宏

    ○荒木委員 それはそうかもしれません。しかし、窓口として応対をされてはっきり言っておられるのですから、その変わった理由と経過は、調査の上で御報告をいただきたい。いかですか。
  189. 高木文雄

    高木(文)政府委員 変わったとか変わらぬとか言われましても、私のほうではいろいろ考えて、私、印紙のこまかいことはわかりませんのでやってもらったわけでございますが、私どもでは、それはあんなものもある、こんなものもあるということはあったかもしれませんが、変わったとかいうことではないと思います。事実を調べろとおっしゃれば、何らかの方法でそれは調べますけれども、変わったとか変わらぬということの前提でなしに、事業だけ調べたいと思います。
  190. 荒木宏

    ○荒木委員 事実調査をするといおう話でありますから、調査をしていただく便宜のために事実関係を申し上げて、報告をいただくことをひとつお願いしたいと思います。  十二月二十七日に大蔵省主税局会議室で午後二時から三時三十分まで、損害保険協会から吉見常務理事主税局税制二課から担当者、保険部から担当者がおいでになってやっております。それから、越えて一月になりまして、一月の十日に同じく主税局関係者と交渉があります。業界から要望書が提出されたのは十二月の十四日付であります。  以上の経過をお調べいただいて御報告願って、質問はその上ということにさせていただきたい。担当された方のお名前その他は御遠慮させていただきますから、御調査願って御報告いただいた上でということにします。局長、よろしゅうございますか
  191. 高木文雄

    高木(文)政府委員 はい、よろしゅうございます。
  192. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは、昨日途中になりました質問の続きを、あと若干の時間続けさせていただきたいと思います。  先ほど来も同僚議員からお話が出ておりましたけれども、貸し倒れ引き当て金の問題ですね。これは、積み立て限度、繰り入れ限度は経験値と対応するものということに四十六年の税調の長期答申でも指摘をしております。これは局長お尋ねしますけれども、いま経験と実績値とはどのぐらい離れておるのでしょうか。
  193. 高木文雄

    高木(文)政府委員 貸し倒れ損失の発生状況は一般的な統計がございません。ただ、私どもも状況を見ておく必要がございますから、ごく少数のサンプルについて申告書等を調べてみたものがござまいす。四十七年の二月一日から四十八年の一月三十一日までの間に終了した事業年度のものにつきまして、私どものところで六百一件について調べたものがございます。それによりますと、卸、小売り業が千分の二、割賦販売業が一五・二、製造業が二・三、その他事業が三・五平均いたしますと千分の三ぐらいということになっております。これは割賦販売業についてはかなりの貨し倒れ率になっておりますが、他については実績率から見ますとかなり低いものになっております。  金融機関は別の機会に別の方法で調べておりますが、これは昨日もいろいろお触れになったように、都市銀行では十万分の一、地方銀行では十万分の四、相互銀行では十万分の十八、信用金庫では十万分の四十四というような結果が出ております。
  194. 荒木宏

    ○荒木委員 ずいぶん離れておるように思いますけれども、これについて税調の答申ではどうすべきだというふうにいっておりますでしょうか。
  195. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十六年七月の長期答申のときに、この引き当て金制度について一般的にどう考えるべきかということを御議論いただいております。それについて「企業利益の有無にかかわらず引当金を計上するという会計慣行が確立している」ということが必要である。「繰入率につき客観的かつ合理的な経験値がある」ということが必要である。「当期の収益に対応するその費用が翌期以降に支出されることが確実であること及び引当額が相対的に大きいため企業経理に相当影響することなどの要件を満たしていなければならない。今後においても、引当金についてはこのような考え方を維持すべきものであり、また、その概算繰入率については常に実績をしん酌しつつ適正なものとすることが必要である。」というのが結論でございまして、事後特に引き当て金についての御答申はいただいておりません。
  196. 荒木宏

    ○荒木委員 政務次官に伺いますけれども、実態とずいぶん離れている。答申もいまお聞きのとおりであります。昨日、大臣にもいろいろお尋ねをして検討するということばをいただいたのですけれども、しかし、これだけ離れておって、しかも実績見合いで適正、合理的なものとする、こういうことになりますと、いまどういう程度にまでこの繰り入れ率を検討しておられて、それではたしてそれが客観的かつ合理的といえるかどうか、これは問題になるかと思います。ですから、これはたちまち政令で繰り入れ限度をきめるという問題になりますし、その辺のところ、ひとつ政務次官のほうから、きのうの大臣答弁を進めた内容をはっきりとおっしゃっていただきたいと思います。
  197. 高木文雄

    高木(文)政府委員 貸し倒れ引き当て金についてはきのうも大臣の御答弁がございましたが、私どもといたしましても、何とかこれはこの答申にありますような姿に持っていかなければならないと思っております。ただ、ある意味では私どもの怠慢でございますが、この客観的かつ合理的な経験値というものをどうやって発見するかという問題であろうかと思います。先ほど申しました、たとえば卸売り業の千分の二と申しますのは、ごく数少ないサンプルでございますが、これは百三十の企業につきまして四千六百七十二億六千百万円に対して九億四千七百万円の貸し倒れがあったから千分の二だ、こうなっておるのでございますが、実はこれはあまり意味がない数字でございまして、この九億四千七百万円がどこかに片寄っているということになりますと、平均値で引き当てましても意味がないわけでございまして、ある程度の蓋然性を頭に置きながら率をきめなければいけないということになるのだろうと思うのでございますが、卸、小売業者の現在の繰り入れ率、千分の二十という比率と、それから卸、小売り業の、数が少なくてお恥ずかしいわけでございますが、百余りの件数の平均の千分の二という率と比べて、これで大体よろしいと見るかどうかというあたりがむずかしいわけでございます。  これを見ますにつきましては、やはりどこかで集中的に貸し倒れ率が起こるわけでございます。起こった場合に役に立たなければ何にもならないわけでございますから、そこのあたりを何か検討いたしましても、また専門家の方にお集まりいただきましても、なかなか結論が出にくいかとは思いますが、そうは言いましても、先般来、当委員会において各委員から貸し倒れ引き当て金制度についてこれだけ御指摘を受けている際でもございますし、どの程度の平均率との開差を見るべきものなのかというようなことを少しいろいろ研究をしてみたいというふうに考えております。
  198. 荒木宏

    ○荒木委員 研究、検討はもう昨日お伺いをしたわけでありますけれども、たとえば金融機関のような場合に、貸し倒れ引き当て残高が何万倍という比率になっているということについては、これは異常事態ではないかと思うのです。  そこで政務次官、いかがですか。この点はいま局長がおっしゃったように十分実績のない面もあります。しかし、はっきり伺っておる金融機関数字では、これはもう異常な開きです。もう普通じゃ考えられぬような、どうしていままでこんなことに手をつけずに、わずかばかりの手直しでやられてきておったのか。いろいろ関係の向きから陳情書などもきておりますけれども、そういうふうなことがいままでこの問題を放置させた一つの原因ではないかというふうに勘ぐられもするわけでありまして、大臣はお見えじゃありませんけれども、政務次官のほうでひとつ前向きの、もう少し突っ込んだお話を伺いたいと思います。
  199. 中川一郎

    中川政府委員 確かにこの貸し倒れ引き当て金につきましては、実績と制度の上に開きがあるということは御指摘のとおりでございますけれども、いま局長が御答弁申し上げましたように、これは平均的な実績であって、個々のケースになりますと千分の二十あるいは千分の二十五以上、あるいはそれに近い貸し倒れもあることでありまして、企業会計がそれだけ引き当て金として見るものをこれを否認するということもなかなかむずかしいことであって、こういった制度が徐々にしか改善をされておらないという実態であろうかと思います。  そこで、私は、その中で金融機関の千分の十二というものは、これは実績からいってもそういうことはありませんし、あまりにも引き当て金の額が多いということは、率直に申し上げて認めざるを得ません。それで、これだけは何とかすべきだということを主張してまいりましたが、金融機関社会公共性というものからいくならば、万が一過去に実績はないとしても、あった場合に社会不安を起こしてはならないという要請も裏あるというところから、なかなか実行に踏み切れなかったところでございますが、来年度は千分の十二を二だけ減額して千分の十にまで持っていくという、ほんの少しではありますけれども、前向きの改正を加えたということであります。しかしながら、御指摘のように、金融機関は、保険業を含めて、引き当て金が実態より多いのではないかということについては、私もこれに反論するものではありませんので、現実について少し検討を加えさしていただいて、できるだけのことはしたいものだと考えております。
  200. 荒木宏

    ○荒木委員 この問題は再々申し上げましたからこれ以上言いませんが、一言念を押さしていただきますけれども、千分の十二を十というお話は前々から出ておるわけですね。私が言っておりますのは、きのうも数字を言いましたように、二万五千倍もあるようなところで千分の一や二というようなことで一体どうなるかというのです。ですから、いま政務次官が言われたように、なお今後そういう方向検討するというのは、千分の十からまだもっと下げるように検討する、うんと下げるように検討する、こういうことですね。
  201. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十九年度におきましては、千分の十二を千分の十にいたしますと積み増しは起こらないという感じでございます。私どもも、先生御指摘のとおり、また他の委員からも御指摘がありますとおり、この問題はもっと基本的にいろいろ研究しなければならない問題だとは思っておりますが、さりとて、これは金融機関にとっては非常に重要な留保になっておるわけでございます、預金の引き当てになっておるわけでございますから、これを取りくずすというところまではいまのところは考えていないわけでごごいまして、せめて積み増しを起こさないようにということを基準にしていたしたい、そういうことでいろいろ検討をいたしまして、千分の十という率をきめたわけでごごいます。  四十九年度には、よってもって新しい積み増しは起こらぬということを予定しておるわけでございまして、昨日大臣とのいろいろ一問一答もございましたが、今後私どもとしては、さらに将来の問題としても、次々と積み増しが起こらないような程度にやっていきたいと思いますけれども、銀行サイドの問題としては、また別途の見地があるわけでございますので、そこのところはもう少し議論してみなければわからぬ、にわかに結論を出しにくいということでございます。四十九年度に積み増しは起こらぬということだけは申し上げられると思います。
  202. 荒木宏

    ○荒木委員 私、政府当局に政治的な答弁を求めたのでありまして、主税局のほうでそういうお考えだということは前々から伺っておりますから、あらためてお聞きしなかったわけですけれども、いまこれだけ開いておるものをこれ以上にならないようにストップするということで、はたしてそれが客観的かつ合理的な経験値と見合うような繰り入れ率といえるかどうか、このことですね。ですから、私は、うんと下げる方向に、千分の十からまだ下げる方向検討されますな、こう言ったら、政務次官はいま、うん、うんとうなずかれた。  問題は、私が言っておるのは、いま事務当局で言っておられるような程度のことではない。実態を申し上げて、その実態については、政務次官もそのとおりだと認められたわけでしょう。それこそうんと開いておるということですよ。だって何万というのと千分の何ぼというのですから。ですから、いまの千分の十からまだ下げる方向検討すべきだ、このことを私は、税調の答申からいっても、いまの積み増しの実態からいっても、考えていただかなければいかぬと思うのです。これは政務次官、いかがですか、政策の問題です。
  203. 中川一郎

    中川政府委員 ですから、確かに格差があることは認めましたが、たとえば、金融保険業についていうならば、確かに差はあるけれども、金融機関あるいは保険業というのは、一般大衆といいますか事業家といいますか、社会公共性の非常に強いものであるので、実績に近づけるということについても、万が一を考えると、やはりそういうことを担保しておかなければいかぬという社会的要請もあるので、一がいに近づきがたいけれども、そういう声も反映をして、四十九年度は少なくとも積み増しがないという程度の千分の二の引き下げを行なった。しかし、今後においても、そういう意見は私も賛成するところがありますので、検討はしてみたいと思います。
  204. 荒木宏

    ○荒木委員 千分の十から下げる方向検討してみたい、こういうことですね。
  205. 中川一郎

    中川政府委員 もちろんそうですが、それが来年度、四十九年度にできるかどうかはわかりませんが、少なくとも五十年以降についてはそういう方向になっていくだろう、このように思います。
  206. 荒木宏

    ○荒木委員 私どもが石油の大幅値上げに関連して主張しておることは御承知のとおりです。昨日もだいぶ大臣に申し上げたところです。ですから、そういういまの期待を踏まえて、いま政務次官は千分の十からさらに下げる方向検討すると言われたのだから、検討はすみやかに誠実にやっていただきたい。  退職給与引き当て金の点も、先ほど来触れられておりました。ですから、これも端的に伺いますけれども、離職率はどのくらいになっておりますか。
  207. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 適格退職年金には予定利率というものがございますけれども、退職給与引き当て金には離職率というふうなものはちょっとございませんですが……。
  208. 荒木宏

    ○荒木委員 労働省のほうからいただいた資料によりますと、四十六年度では千人以上の事業所では一六・八%、四十七年度は一四・五%、ずっと年を追うて低下してきているわけです。いま五〇%まで認めていますね。そうすると、実際のこういった税調の答申にあるような点からいえば、一面、労働者の退職金を十分手当てしなければならぬ、保護しなければならぬという要請があります。しかし、これは先ほど来指摘されておりましたように、それに対する管理をしておく裏づけもなければ、また実際問題としてそれが他の資産にかわって、それが担保に入って、先取り特権からいえばおくれるわけです。労働者のほうは、一般の先取り特権しかないわけですからね。そういう点から、それが企業の資産運用のほうに流用されて、そして労働者を食いものにしている。  こういう点から、片や、先ほど若干の答弁がありましたけれども、強制預金であるとか、支払いを保証するシステムと同時に、そういった企業のほうに回る分を押えていくという点で、政務次官、この点も現行からさらにそういう両建ての面を含めて検討し、前向きに改善をしていく、こういうことをお約束いただきたいと思います。
  209. 中川一郎

    中川政府委員 この点につきましても、先ほど広瀬委員から御指摘がありまして、退職引き当て金を積み立てたが、実際は会社が倒産しても支払いができなかった。そういうことがあっては、目的が達成されない積み立て金、引き当て金になってしまうので、実際問題として会社が倒産をしたりあるいは労働者がやめられたときに不足がないような方向に持っていくように、前向きで検討いたします。
  210. 荒木宏

    ○荒木委員 この点も、石油製品価格の問題と関連して、その財源にも充てるということで私どもは主張しているわけですから、早急に検討を進められることを希望いたします。  時間がだいぶ近づいてきましたので、最後に税務行政の点を一言お伺いしておきたいと思います。  端的に伺いますけれども、資料せんの問題であります。専売公社の方お見えになっておりますか。――専売公社のほうでは資料せんというのを出しておられるでしょうか。
  211. 飯田頼之

    ○飯田説明員 いま先生がお尋ねになります資料せんと申しますのは、小売り店のたばこの売り上げ額のことでございましょうか。
  212. 荒木宏

    ○荒木委員 そうです。
  213. 飯田頼之

    ○飯田説明員 はい、出しております。これは一がいにあれですけれども、専売公社といたしましては、個々の営業、小売り店の月別の売り上げをもちろん集計しております。したがって、年間集計もできております。それを国税当局の要求があります場合には出すという慣行がございます。
  214. 荒木宏

    ○荒木委員 国税庁に伺いますが、専売公社から回ってきた資料せんはどういうふうに処理されておりますか。
  215. 水口昭

    ○水口説明員 いま専売公社のほうからお話がありましたように、税務当局といたしましては、専売公社の地方の支局等から、専売公社がたばこの小売り尾さんに対してお売りになった数量等の資料をいただくわけでございます。それをもとにいたしまして税額を計算する、こういうふうな利用のしかたをいたしております。
  216. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、資料せんは税務署の手元に保管されるわけですか。
  217. 水口昭

    ○水口説明員 そういうことでございます。
  218. 荒木宏

    ○荒木委員 私の手元に、昭和四十七年度のたばこ売り渡し高の資料せんというのがあります。これは業者の皆さんのほうへずっと配付されているわけですね。いまあなたがおっしゃるように、税務署の中で保管されておるものが、一体どうして業者の手元に配付されておるのか、その辺について、もしお心あたりがあればいきさつを伺いたい。
  219. 水口昭

    ○水口説明員 急のお尋ねでございますので、いま確かな御返答をいたしかねますので、あとで調べて御報告いたします。
  220. 荒木宏

    ○荒木委員 御調査の結果、もしそういうことがあれば、国税庁としてどういうふうな処置をおとりになるのでしょうか。
  221. 水口昭

    ○水口説明員 事実関係調査いたしてからお答えさせていただきたいと思います。
  222. 荒木宏

    ○荒木委員 事実は御調査いただいたらけっこうでありますが、しかし、事実の問題点は簡単であります。税務署の中にあるべしとこうおっしゃる。あるべきものがずうっと配られている。内容は個々の人の売り上げ高であり、課税標準である。これをどう処置するかというのは、そんなにむずかしいでしょうかね。これは国税庁のほうから見て一体どういう事態なんでしょうか。つまり、それはよろしいとおっしゃるのか、あるいはぐあいが悪いとおっしゃるのか、どちらですか。
  223. 水口昭

    ○水口説明員 先ほど申し上げましたように、急のお尋ねでございますして、調べておりませんので、調査した結果御報告いたしたいと思います。
  224. 荒木宏

    ○荒木委員 事実は御調査いただいたらけっこうです。しかし、私が申し上げておる事実は――事実のあるなしは一たんおきましょう。そういうことがあれば、これは国税庁としての御意見はどうですか。
  225. 水口昭

    ○水口説明員 仮定の話でございますが、ある人の所得等を記載した資料がほかの人にも渡るというふうなやり方は、好ましくないと思います。
  226. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、この点の取り扱いは、調査をされてその上で御報告をいただいて、あらためてまた質問なりあるいは別途に是正方を提案さしていただきたいと思います。  この前の質問でも申し上げましたけれども、たとえば、ある地方局の責任者の方のお話だとか、あるいは現地の税務署の責任者の方のお話であるとか、あるいは先日増本議員のほうから指摘がありましたようなこととか、いろいろありますので、私としては、この際、そういったような民主的な公正な税務行政あり方について、ひとつ国税庁として、出先機関のほうにそういうことのないようなしかるべき適切な方法をぜひ検討していただきたい、こういうふうに思います。ですから、その点の御返事を承って、大体時間が来ましたから、きょうの質問を終わりたいと思います。
  227. 水口昭

    ○水口説明員 よく調査をいたしまして、不適当な点があれば是正をいたしたいと思います。
  228. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、来たる二十二日金曜日、午後一時理事会、一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十三分散会