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1974-03-15 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十五日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       奥田 敬和君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       坊  秀男君    毛利 松平君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    小林 政子君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主税局長 高木 文雄君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         大蔵省関税局輸         出課長     斉藤 盛之君         大蔵省銀行局総         務課長     米山 武政君         大蔵省銀行局銀         行課長     清水  汪君         国税庁直税部長 田邊  曻君         農林省農林経済         局統計情報部経         済統計課長   遠藤  肇君         資源エネルギー         庁石油部精製流         通課長     松村 克之君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 三月十四日  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等  共済組合法に規定する共済組合が支給する年金  の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等  共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第八〇号) 同日  中小業者に対する減税措置に関する請願(三谷  秀治君紹介)(第二五三五号)  同(金子満広紹介)(第二五六六号)  同(小林政子紹介)(第二五六七号)  同(増本一彦紹介)(第二五六八号)  同(米原昶紹介)(第二五六九号)  同(栗田翠紹介)(第二五九五号)  同(青柳盛雄紹介)(第二六一六号)  同(浦井洋紹介)(第二六一七号)  同外三件(瀬野栄次郎紹介)(第二六一八  号)  同(田中美智子紹介)(第二六一九号)  同(東中光雄紹介)(第二六二〇号)  同(不破哲三紹介)(第二六二一号)  同(松本善明紹介)(第二六二二号)  同外五件(近江巳記夫紹介)(第二六四五  号)  同(伏木和雄紹介)(第二六四六号)  大和基地跡地公共的利用に関する請願(大野  潔君紹介)(第二五九四号)  同(和田耕作紹介)(第二六一五号)  同(土橋一吉紹介)(第二七〇一号)  中小業者に対する税制改正等に関する請願(瀬  野栄次郎紹介)(第二五九六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二六六九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。塚田庄平君。
  3. 塚田庄平

    塚田委員 この前質問しまして、きょうはあと特別措置のほうにちょっと入っていきたいと思うのですが、その前に、これは本法で規定されておりますけれども引き当て金について若干質問をしたいと思います。  おとといですか、税調会長参考人として呼んでいろいろと御意見を聞いたのですが、あの東畑さんの意見の中で、たとえば特別措置等については、これは毎々言われていることなのですけれども、早急にひとつ整理統合といいますか、進めるべきだ、そういう面で診療報酬をはじめとして、特別の部会等も開いて検討税調としても進めておる。その際、私はたいへんおもしろいことを聞いた――私はというのは東畑さん自身です。引き当て金についていろいろ検討を進めなければならぬという考えであったけれども、これは本法で規定されているのだということに実は気がついたというか、そういうことでという発言がありました。これは、私は、引き当て金という性格についての感じといいますか、これをいみじくも会長特別措置と一緒にしたところに、やはり真相を突いているのじゃないか、真実、現実を突いているのじゃないかという感じもしたわけですよ。そもそもこの引き当て金というのは、本法で規定されておりますけれども、元来これは特別措置で規定されていたものでもあるし、そういう面で、特別措置を議論するときには引き当て金というのを避けて通るわけにはいかない、こう考えるわけです。  そこで、引き当て金の中で非常に大きいのは、貸し倒れ引き当て金並び退職引き当て金が金額的に非常に大きいと思うわけですが、この貸し倒れ引き当て金というのは、これはたいへん初歩的な質問になりますけれども、どういう段階でこの目的どおり使用されていくのか、あるいはどういう引き当てのしかたを法律で規定しておるのかということを、これはひとつ長くなく簡単に説明してください。
  4. 高木文雄

    高木(文)政府委員 貸し倒れ引き当て金は、売り掛け金貸し付け金がございますと、それが全部が全部一〇〇%回収できるというわけではありませんので、その貸し倒れによる損失見込み額ということで、一定額引き当て金として企業が繰り入れましたならば、その繰り入れ額につきまして税法上損金として扱うことを認めるということでございまして、計算の基礎は、いずれも売り掛け金貸し付け金期末残高でございます。その率は、貸し倒れが起こる可能性ということを考慮いたしまして、卸売り業小売り業について最も率が高く千分の二十、製造業は千分の十五、その他は千分の十二ということになっております。
  5. 塚田庄平

    塚田委員 そこで、貸し倒れ可能性、将来起こり得るそういった事態を予想して、あらかじめ引き当て金を積んでおくという制度ですが、この引き当て金残高で一番高額なのは、これは金融保険業です。大蔵省から私どもに示された資料によりますと、四十七年度で八千五百五十八億円、貸し倒れ引き当て金全部の四五%を占めております。それから次に大きいのは卸売り業です。この卸売り業の中には、最近問題になっております大手商社、これがおそらく全部入っておるのじゃないか、あとに入りようがありませんから。これが五千二百五十八億円、全部の貸し倒れ引き当て金残高の大体二五%を占めております。合わせますと、全部の貸し倒れ引き当て金の七〇%はこの金融業卸売り、しかも、この詳細なあれはありませんが、資本別の分け方から見ましても、たいへん大きな資本金会社がこの引き当て金積み立て率が非常に高い、こういうところを見ますと、端的に言いますと、たとえば金融業をとってみます。これは貸し倒れが将来非常に多いということの予想される業種かどうかということが一つ問題だと思うのですよ。  これはいつも出る論文なんですが、東洋経済論文では、この貸し倒れ引き当て金退職引き当て金――退職引き当て金についてはあとでお話ししたいと思いますが、こういったものは、経験値をはるかに上回るというものについては、これは利益社内留保という疑問を抱かれるのは当然だ、あなた自体そういうことを指摘しておるわけですよ。経験値をはるかに上回るという場合においては、たとえ債務性というものがある程度加味されるとしても、これは不届きだということをあなたは指摘しておると思うのですね。その際、金融業というのは御承知のとおります担保は確実にとりますね。言いたくないが、歩積み両建てをやりますね。どんなことをやったって貸し倒れのないような方式で金を貸す、これがたてまえになっておるのですよ。こういった業種が四五%も占めるという事態については一体どう考えておるか。あなたの言う経験値と照らして御見解を承りたいと思います。
  6. 高木文雄

    高木(文)政府委員 金融機関貸し倒れ実績貸し倒れ引き当て金の率であります千分の十二という率との間には、御指摘のように非常に大きな乖離があるわけでございます。その意味におきまして、貸し倒れ引き当て金は本来その性格といたしましては、ただいま御指摘の、私が書きましたものでも申しておりますように、債務性の強いものであるという性格のものではございますが、その実績率との関係からいいますと、現在の実績率の場合に、そういう非常に債務性の強いものだということだけで説明し切れるものかどうかということについては、御指摘のような実態との関連では、問題があるというふうに思います。  ただ、この貸し倒れ引き当て金制度金融機関についてどのようにしたらよろしいのか、また率をどのようにきめればよろしいのかということはなかなかむずかしい問題でございまして、実績率であればよろしい、実績率まで下げなければいけないということではないと思います。金融機関貸し倒れが起こるということは、非常に特別の時期に集中的に起こり得る可能性はやはりあるわけでございますし、わが国の場合では、昭和の初めのときの抜きがたい記憶というものが預金者にまだ残っておるという現状にもございますので、ある年ある年の貸し倒れ実績が低いからといって、必ずしもその率まで下げなければならないのだという理屈でもないように思います。どこへそれを求めたらいいのかということは、正直のところ私どももなかなかめどを見つけにくいということで、毎年議論にはなりますが、ただ過去のここ二年ほど前に千分の十五から千分の十二に下げ、今回また十に下げるということをやってはおりますけれども、特にどこまで下げたらよろしいのかということの研究は、率直に申しましてまだ不十分でございます。この点については今後の問題として検討してまいりたいと思います。
  7. 塚田庄平

    塚田委員 銀行の場合、実際の貸し倒れ実績というものは、私はきのう一日、銀行の五つないし六つの有価証券報告書で調べていきましたが、まずほとんどない。私どものところに来ている資料で見ましても、実績は〇・〇〇二とか――これは銀行といいましても都市銀行から信託、あるいは地方銀行、金庫、いろいろな差はありますよ。差があるというのは、だんだん下になってくると貸し倒れ率は高くなってきますけれども、ほとんどない、こういう状態なんですよ。だから、取りくずしも当然ないし、そのまますべっていく。そうして毎年毎年それに対して税金でまけてやっている。これはあなたの言う経験値という面からいっても、千分の十ぐらいではとてもおさまる筋合いのものではないのじゃないのか。  いま、銀行昭和初期の大不況、ずいぶん古い話を出しましたけれども、あなたは一体この特別措置についての税調長期答申というのを読んだことがありますか。これは準備金も含めてですけれども、将来の偶発的な損失、これは昭和初期のそういう事態をいうのでしょう。あるいは不確実な支出に備えたこういった貸し倒れ引き当て金、あるいはあとでいろいろ質問しますが、準備金、これは単純な利益留保とみなされる。だから、これについては整理統合を急ぐべきだという長期答申も出ているでしょう、どうですか。ましてや、銀行商社大手というのは、最近手持ち流動資金といいますか、金はたいへんたくさん持っておる、積んでおりますけれども、別にお金にはしるしがついているわけじゃないですから、これはみんな使われていくでしょう。私はこういう不適当な引き当て金というのは、将来にわたってと言わぬで、ことしはとにかくとして、来年度はもうこれを整理する。どこまで引き下げるかじゃなくて、二%程度じゃなくて、これは思い切った整理を断行しなければならぬ時期だ、こう思うのですが、どうでしょうか。
  8. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どもも、基本的には税制のほうから見ますと、貸し倒れ引き当て金制度は、ただいま御指摘のような問題点があるというふうに考えております。したがって、税制調査会答申趣旨に沿って、まあ二年前に千分の十五から十二に下げまして、ことしからまた千分の十二から十に下げるようにいたしたいというふうに考えておりますが、塚田委員指摘の点は、そういう小手先の直し方でなくて、もっと根本的に考え直せという御指摘だと思いますが、そういうことになりました場合には、一つ問題がありますのは、やはり金融機関体質といいますか体制といいますか、そういう問題としてどのように考えたらよろしいのかという問題ではないかと思います。  現在、実は大蔵省懸案事項として長年銀行法の審議ということがあるわけでございますけれども、何度か手をつけかけてはなかなか問題がむずかしいだけに手をつけ切れずに、また順延ばしになってきておるわけでございまして、それはそれなり銀行行政の問題としてはむずかしい問題があるのでございましょうけれども、どうしてもいま御指摘のような意味での抜本的と申しますか、根本的な立て直しということを考えるのであれば、そういった銀行制度論との関連をやはり議論する必要があるのではなかろうか。それなくして、税の上でこれを全くやめてしまうというわけにもなかなかまいらぬのではなかろうかというような感じを持っておるわけでございます。  しかし、率直に申しまして、同じ大蔵省の中ではございますが、われわれ税の立場からは、実は非常に迷惑な制度でございまして、このままではいかぬということで、今後とも検討はしてまいりたい。御指摘の点は、私どももある意味で共感できるものがたくさんありますので、そういう点も含めて検討してまいりたいと思います。
  9. 塚田庄平

    塚田委員 たいへんこれは迷惑な制度だと、こういう発言がありましたので、おそらく主税局としては、これに早急に手をつけていくというふうに理解したいと思います。お説のとおり、金融機関税制だけで調整するという筋合いのものでもないし、また、それはたいへんだと思いますよ。最近は、たとえば自己資本金の二〇%以上を特定業者に貸しつけてはならぬというようなことも検討されたり、あるいは貸し付け準備率という制度考えてみなければならぬじゃないかといわれているほどなんですから、税の面ではもうそういった優遇策を全廃するという気持ちで整理に当たらぬことには、国民に対する不公平感というのは払拭できないと思うのですね。そういう面で、ひとつ決意をもって当たってもらいたいと思います。  これに類するものとして、例の退職引き当て金というのがあるのですね。これは同僚阿部議員からも、たとえば新日鉄の例を出しましていろいろお話がありました。退職引き当て金といいましても、中小ではなかなか退職引き当て金積み立てするというような事態にない情勢等もいろいろと指摘されたりしておりましたが、この際、また銀行の話になりますけれども銀行経理基準というものがありまして、百分の五十という法定引き当て金に、さらに、これは有税分になりますけれども、五〇%上積みして百分の百、これを退職引き当て金として積み立てておるわけです。百分の百というのはどういうことかというと、取りつけか何かがあってその銀行がばったりつぶれて、そして全員退職という場合を予想しての措置だ、こう見られるわけですけれども、どうですか。一体、銀行だけがかりに有税分とはいいながら退職引き当て金を百分の百も積み立てていく。他の中小企業その他は法できめられたものさえ積み立てられない。こういうアンバランスですね、この点を一体局長はどう考えられておるか、御見解を承りたい。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまの経理基準の問題は、銀行局が各金融機関指導いたします場合の一つ基準でございまして、銀行局としては、やはり金融機関内部留保ができるだけ厚いことが望ましい、利益があったからといってそれをどんどん配当するということでなしに、金融機関内部留保が厚いことが望ましいということから、税法上は認められないものであっても、十分に引き当てをするということによって内部留保を十分にするという趣旨のものであろうかと思います。私はその点につきましては、それぞれの行政官庁がそれぞれの企業性格に応じてどのように引き当てをするかということについて指導をするのは、その業界の体質に応じておやりになればよろしいのであって、ただいまの金融機関退職給与引き当て金は、税法で認められている二分の一額以上のものについては有税積み立てるわけでございますから、その点は特に塚田委員指摘のように、強く非難するには値しないのではなかろうかという感じを持っております。  企業によって事情が違いましょうけれども、何と申しましても金融機関信用第一の仕事でございますから、その意味におきまして、どういう形式にもせよ内部留保を十分に持っておるということは、やはり必要なことじゃないかというふうに考えるわけでございます。税といたしましては、これはやはり納めてもらっておるわけでございますから、かねがね各産業界からは、二分の一だけいま税で認められておるけれども、全額について認めてほしいというような要請がありますが、税としてはそういう要請に応ずるつもりはございません。現在の二分の一でまずまず十分であろうというふうに考えております。それから先は税とは別の問題というふうに理解をいたしております。
  11. 塚田庄平

    塚田委員 つまり有税分積み立てるというのは、社内留保といいますか、配当も制限されておる、金はだぶついて余っておる、どこかで積み立てなければならぬということで、準備金とか引き当て金積み立てておるわけなんですよ。だから、こういった企業に対しては、非常に乱暴な言い方ですけれども、百分の五十の優遇措置だって、そんなに有税分積み立てるのだったらやらなくていい、有税分で百分の五十も積み立てるのですから。退職した場合に不都合のないような金をちゃんと税金を納めて積み立てられる、こういう会社なんですから。だから、そういうものにさらに税金優遇措置を講じてやるということ自体、これも経験に照らしてどうも不都合だと思わぬですか。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはちょっと私どもは違う考えを持っておりますが、二分の一のところまでは税なしで積める、しかし費用の期間案分の概念から言いますと、二分の一では不十分であってもっと積んでおくほうが望ましいということは、やはり否定できないのではないか。流出をしてしまうよりは内部留保しておくことが望ましいということは否定できないのではないかというふうに考えますので、二分の一の部分については無税で積み立てられる、その上は有税で何ほどかなるべく積み立てておくということは、これは株主なり経営者なりの判断であって、ここは認めてもよろしいのではないかというふうに私ども考えます。
  13. 塚田庄平

    塚田委員 銀行局来ていますか。いま主税局長から退職金の問題について話があったのですけれども銀行経理基準というものがあって、これもずいぶんいろいろ改正されていますね。昭和四十二年、四十四年、四十五年、四十七年とそれぞれ基準を改正して、指示指導しているわけですね。この経過を見ますと、四十七年、四十八年、銀行は相当のだぶつきを持っていて社内留保を持っていて、それを貸し出すという情勢にかんがみて、それを引き当て金準備金あるいは償却で十分なほど積み立てろという指導をしているような気が私はするんですね。  その一つは、たとえば不動産についても、これは一六〇%の不動産償却指示したり、あるいは貸し倒れ引き当て金については三年間で漸減するような措置を講じさせたり、あるいはいま言った退職引き当て金等については百分の百を目標にしてやれという指示をしたり、こういう引き当て金とか準備金積み立てではなくて、さっきあなたがいないときに局長が触れたのですが、銀行はもっとほかの政策で過剰流動を引き揚げるということをむしろ積極的にあわせてやる必要があるのではないか、あるいは不都合な貸し出しを押えるという指導方法をもっと積極的にやる必要があるのではないかという感じがどうもしてくるのですよ。そうでないと、税制というものとの間に大きなギャップといいますか、アンバランスが出てくるわけですよ。どう思いますかね、銀行局は。
  14. 清水汪

    清水説明員 お尋ねの点につきまして、一つ内部留保の問題を御指摘いただいたわけでございます。その点につきましては、税制の問題につきましてはもちろん銀行もその税制のもとにあるわけでございますので、その原則に基づくことにいたしておりますが、その上で私どものほうで通達いたしております統一経理基準におきまして、いま御指摘のように、それを上回るような償却なり引き当ての処理を指示しているわけでございます。  この趣旨につきまして一言申し上げさせていただきたいのでございますが、戦前に比べましても、現在なお銀行自己資本、広い意味でとりまして、自己資本というものの比率は、必ずしも十分だとは申せない実情にあるわけでございます。そしてやはり銀行が一般の企業と違ってもっぱら信用事業を専業にしているというその特殊性等から見まして、長期的に見まして、銀行内部留保を厚くしていくということは、依然必要だろうというふうに申し上げたいわけでございます。そうしました内部留保は、銀行経営安定基盤になるということはもとよりでございますが、またそのことが、内部資金資金全体といたしましてコストの引き下げ要因になることも確かでございます。そういうことは、結果といたしまして、銀行貸し出しあるいはその他各種のサービスを遂行していく上で、それなりによい影響があるということは申し上げられるかと思います。  それから、そういう内部留保を厚くしているということだけでなくて、もう少し幅広い銀行行政という問題が考えられるのではないかという御趣旨のように伺ったわけでございますが、そういう点につきましても、いろいろ私どもとしても考えていかなければならないことは多いと思っております。先般来、当委員会におきましても御指摘をいただいておりますたとえば大口貸し出し問題等につきましても、現在鋭意検討中でありますけれども、それだけでなくて、さらに銀行融資のあり方の問題につきましては、最近の特殊な状況に対応して、選別融資というようなことも現在行なわれつつありますけれども、一時的なそういう問題だけでなく、さらに長い目で見た問題というものも今後考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  15. 塚田庄平

    塚田委員 銀行のあれについてはまたいずれ別の機会に聞きたいと思いますが、そこで局長、ちょっと資料ができるかできないか、貸し倒れ実態というのはわかりますか、各業種別に。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 金融機関のような場合にはわかるはずでございます。現にわかっております。ただ、全国で百万をこす法人貸し倒れ状況がどうなっておるかということについては、これはちょっといま……。
  17. 塚田庄平

    塚田委員 上場会社だけでいいですよ。これは有価証券報告をみな受けておるでしょう。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっといますぐわかりません。有価証券報告書の表示の上でどうなっておりましたか、ちょっといまここでわかりませんのですが、たしか特別に貸し倒れ額を表示していなかったのではないかと思います。
  19. 塚田庄平

    塚田委員 私はいまここに有価証券報告書を持ってきていないのですけれども、それは心配ないですよ。引き当て金として明細が出ています。そして引き当て金という中に、準備金も含めて当該取りくずしはどのくらいあったかなかったかということも全部上期下期で分かれて出ていますから。それをつかまぬで抜本的に引き当て金制度について検討を進めたいといっても、そういう基礎的な資料さえまだつかんでいないでは、ことばだけになってしまうのじゃないですか。
  20. 高木文雄

    高木(文)政府委員 貸し倒れ引き当て金について最も問題がございますのは金融機関についてでございます。私ども税の立場から問題を見ておりますのは、金融機関についてでございます。  それからもう一つ、非常な特殊な引き当て率を認めておりますところの割賦販売業の問題というのがございます。これらにつきましては、いずれもよく実績を調べておりますが、実は製造業その他については非常に多岐にわたっておるわけでございますので、いま実はあまり問題意識を持っておりませんものですから、そういう実績を特別に調査するということをいたしておらないということでございます。上場会社については、あるいは有価証券報告書をいろいろ分析等することによってできるかもしれませんが、貸し倒れ引き当て金につきましては、塚田委員よく御存じのとおり、毎期洗いがえでございまして、期末の貸し金、売り掛け金残高に全く洗いがえてかけていくわけでございまして、取りくずしといいましても、ちょっと取りくずし額という概念がはっきりいたしませんので、出ますかどうか、なお検討をいたしてみます。
  21. 塚田庄平

    塚田委員 つまり貸し倒れ引き当て金が目的に使用されておるかどうかということなんですよ。洗いがえというのはありますよ、そのまま次の期に横すべりしていって。目的使用になっておるかどうかということなんですよ。
  22. 高木文雄

    高木(文)政府委員 恐縮でございますが、うまく説明できませんので、一課長からその貸し倒れ引き当て金のやり方について補足的に説明させます。
  23. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 補足して御説明さしていただきます。  貸し倒れ引き当て金は、従来は、先生ただいまおっしゃっておりますように、毎期積み立てて積み増ししてまいりまして、貸し倒れがあると取りくずすというかっこうになっております。それが昭和四十年の改正だったと記憶しておりますが、そのときにいわゆる洗いがえの引き当て金というふうに組みかえまして、現在ではいわゆる評価性引き当て金と申しまして、たとえば債権が百億あるとすると、百億にこの千分の十なら十をかけましてその金額を積んでおく。翌期首にそれを全部益金に戻しまして、また翌期末においてもし債権が百十億になっておりますと、その百十億に千分の十を乗じましてまた評価して引いておく。いわば債権の評価勘定的な性格を持っております。企業会計上も評価の立て方で、場合によると、債権の金額に一定率を掛けまして、それから減算するかっこうで書いております。したがいまして、現実の貸し倒れ損というのは、特別損失あるいは普通の費用の経費として、あるいは雑損として、百億円のうち一億円かりに損があれば、そういうふうに出てまいりますので、実は貸し倒れ引き当て金積み立て、あるいはその益金算入のぐあいをトレースいたしましても、関係がなく貸し倒れ実績が動いておりますので、全く別の資料によりませんとちょっと出ないというふうな形になっております。
  24. 塚田庄平

    塚田委員 いまの説明でますますわかってきた。何でそれじゃ貸し倒れ引き当て金なんという名前をつけて社内留保させているかということ、その基本に触れる問題になってくるわけですよ。そうですね。とにかく債権について頭から何%と積み立てて、その次に債権が多くなれば積み増しをして、そういう取りくずしはないのですから、つまり引き当てるべき何ものも実態としてはないわけですよね。そうでしょう。もう社内留保の一形態だ、完全に。
  25. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはちょっと私ども見解を異にしておるわけでございます。ただいま税制課長が評価性引き当て金ということばを使いましたのですが、一億なら一億の貸し金があるというときに、これをどのようにブッキングするかというブッキングのしかたの問題でございます。とにかく一億貸してあれば、あるいは一億円の売り掛け金があれば、これは一億というふうに資産に計上するということになっておるわけでございますが、非常に少ない量ではありましても必ず、ごくわずかの率ではございましょうが、売り掛け金が取れない、特に小売り業なんかの場合は売り掛け金が取れないということは、現実問題としてあり得るわけでございます。売り掛け金が取れないのだから、一億の債権、売り掛け金がある場合に、それを一億まるまるぽんとこう計上することを義務づけることは、それはちょっと無理があるわけでございます。それを評価をして、たとえば一億売り掛けがありましても、たとえば九千五百万円とか九千八百万円とかいうことで計上する方法もありますが、そういう方法をとらないで、そこは一億のままで計上いたしまして、反対勘定といいますか、引き当てという意味で、千分の十五とか十とかいう率だけ別に損として見ることができるという制度が、貸し倒れ引き当て金制度でございます。  これは税法というよりは企業の会計簿記のやり方、その帳簿に貸してある残高を必ずそのまま評価をせずに載せるかわりに、そういう制度があるわけでございますので、そこで毎期毎期洗いがえをいたしまして、期末の債権、売り掛け金というようなものについて総額を載せるかわりに、そういう率で引き当てる、こういうシステムでございますので、それはそれなりに理由があるものというふうに考えるわけでございます。
  26. 塚田庄平

    塚田委員 まあ時間もたってきておりますので、局長、先ほど言った金融機関についての貸し倒れ引き当て金については、早急にひとつ実態を明らかにして整理していく。これは特別措置じゃありません、本法規定ですが、その線でひとつ御努力を願いたいと思います。  そこで、次は特別措置に移りたいと思うのですが、今度三月で期限の来る特別措置は大体どのくらいありますか。
  27. 高木文雄

    高木(文)政府委員 すぐ調べます。――期限が参りますもので延長するものが二十七件、廃止をいたしますものが四件ということでございます。
  28. 塚田庄平

    塚田委員 二十七件のうち拡充して延長する、こういうのは何件ありますか。
  29. 高木文雄

    高木(文)政府委員 五件でございます。
  30. 塚田庄平

    塚田委員 廃止するもの四件、拡充して延長するもの五件ですか。あと二十数件は単純延長、こういうことになるのですね。
  31. 高木文雄

    高木(文)政府委員 廃止するもの四件、拡充して延長するもの五件、縮小して延長するもの二件、単純延長するもの二十件ということになります。
  32. 塚田庄平

    塚田委員 どうですかね、それで整理が進んだという感じを受けますか。単純延長が二十件、しかも拡充するというのが五件、廃止は四件だ。これは件数だけでものごとを判断するのは誤りかもしれませんが、とにもかくにも二十件以上の、拡充を含めますと二十五件ですかね、これが自動的に延長されていく。一体これは長期答申なり、税調のいっている趣旨に合致するものでしょうかね。また局長が再々答弁されておる整理統合という面からいって、これはどうですか、一体。
  33. 高木文雄

    高木(文)政府委員 件数で申しますとそういう印象をお持ちになるのもごもっともだと思うのでございますが、現在のこの特別措置の期限のつけ方と申しますか、立て方は、大体、標準的には二年間の期限でやっておるわけでございます。二年間の期限でございますので、いろいろな制度として何年ぐらい安定的に継続していったらいいかということにもよりましょうけれども、私どもといたしましては、必ずしもそうひどく甘いというふうにも思ってはいないのでございます。  ただ、いつもと比べてどうかということは、実は件数で比較してはおりませんけれども、本年は、四十九年度の改正は、何といいましても法人税率の引き上げということに最大の重点が置かれてまいりました。四十六年度、四十七年度、四十八年度あたりには、どちらかといいますと所得計算の、何といいますか、整理、合理化ということに頭を置きましたが、かねがね税率をもう少し考えたらどうだという御指摘がございましたので、ことしは税率のほうに非常に重点があったわけでございます。したがって、私どもの仕事の精力の使い方も、いずれかというとそっちに片寄りまして、若干あるいは御指摘のような点があるかと、私どもとしてもそういう気持ちはないわけではございません。率直にそれは申し上げますが、しかし、そうだからといって、例年に比べて特に租税特別措置の項目整理が著しく悪いというわけでもないのではないかというのが自己批判でございます。
  34. 塚田庄平

    塚田委員 悪くないんじゃないかという気持ち、そんな自己批判がありますか。つまり、自己批判じゃなくて、例年に比べて悪くはない、ことばをかえていえば、だんだんと慣例化され、既得権化され、二十件延長したって、これは例年に比べてたいしたことないんだという観念にもうなっているわけですね。  私は特別措置というのは大体二年間――これはひどいのになると、もう十年ぐらい続いておるのもあるわけですね。特別措置というのはやはり機動的に運営すべきであって、二年間たったら、その時点で十分見直して廃止の方向に向かう、必要になったらまた起こしてもいいんじゃないですか。ところが、十年間だらだらと続けられてきているものがある。これが税調あたりで指摘されておる既得権化、慢性化の実態だと思うのですね。私は、そういう例年に比べて悪いとは思わぬという考え自体に、この特別措置に取り組む真剣さがないんじゃないか、こう思うわけです。そして、この長期答申でも指摘されておるとおり、延長するときには特別措置を新設するんだという気持ちでぶつからなければだめだ、こういっているでしょう。延長は新設と同じだ。そういう気持ちはないでしょう。だから、こういう実態が出てくるのです。いま局長は、一体特別措置というのは何件あるかと聞かれても、おそらくそれは即答できないでしょう。  もう一つは、いま局長は、今度は法人税の税率の引き上げに重点を置いたと言われた。私、賛成ですよ。四〇%でもまだ少ない。だけれども特別措置を残しておいたのでは、どんなに税率を上げたって、少なくとも税の最も大きな不公平というものは残ってくるのですよ。これは個人の所得者、給与所得者を除外しても、同じ法人であっても大法人中小法人特別措置という規定があっても、小さい法人は条件に満たないために利用できない、手続が非常にめんどうだ、こういうことで、同じ法人の中でもアンバランスがきているでしょう。そういう中で四〇%に一律に上げる。四〇%に上げる、四二%にするんだったら、まず特別措置整理してやる、これが並行しなければ税の公平が期せられないですよ。そう思わないですか。どうですか、その点は。
  35. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはやはり、法人税は所得に税率をかけて算定をするわけでございますから、所得計算について正しいものでなければなりませんし、税率も適正でなければならないわけでございまして、両々相またなければならないというのは、御指摘のとおりでございます。よってもって、私どもも反省をしていまして、決して十分であるとは思っていないわけでございます。従来からもいわれておりますし、今後とも努力を続けてまいらなければならぬわけでございますが、まあ一言、弁解になりますけれども申し上げますと、本来、基本法的なものが各省関係の法律にございまして、その基本法的なものの中で、たとえば税制上、金融上の特別措置をとるという精神を受けまして、租税特別措置法のほうでいろいろ制度を設けておりますが、その場合にも、基本法のほうにはいわば年限が、必ずしもそんなに二年というような短い年限でございませんでも、税法のほうは年限を付しておるということがございますので、そういうものにつきましては、基本法が続きます限りにおきましては、多少とも拡充をしたり縮小したりはいたしますけれども、やはりなかなかやめるということまでにはいかない場合が多いわけでございます。そういう事情で、思うほど少なくとも件数に関しては減らすことがなかなかできないでおるわけでございます。しかし、御指摘の点は私どももそう思っておりますので、今後ともそういう努力を続けてまいりたいと思います。
  36. 塚田庄平

    塚田委員 それでは、時間もございませんので次に移りたいと思いますが、特別措置の中で価格変動準備金ですね。これは四十七年の残高ですが、六千四百二十九億円、たいへんな金額ですが、この価格変動準備金というのは、価格変動といいますけれども、この際値下がりを予想して期末のたなおろし価格に対して一定のパーセンテージをかけて、それを準備金として積み立てる、税では優遇措置を講ずる、このパーセンテージも、それぞれ変動の激しい物品とか株式についてはさらに上回った率を規定しているわけなんですが、このように、持っていれば値段が下がるということを予想して、その値下がりについての損失をこういう面でカバーしてやるといっては何ですが、準備金で落とす。しかし、私は、ここ二、三年、数年の傾向は、持っていれば値がどんどん上がってきて、むしろもうけ、利益がふえてくるというのが実態じゃないかと思うのですよ。これも、もちろん洗い直しという方式が採用されておるのですけれども、そういう経済の変動に即応して、今度はやめようじゃないか、今度はひどいからまた起こそうじゃないかという機動性がないままに、価格変動準備金というものがずっと引き継がれてきているわけですよ。この面については税調あたりでもひとつ十分な検討を進めなければならぬということが毎々指摘されておるのですね。この点についてどう思いますか。私は、この準備金というものはむしろ売り惜しみ優遇税制だ、こう現在の段階では考えざるを得ないと思うのですけれどもね。
  37. 高木文雄

    高木(文)政府委員 価格変動準備金は、ただいまお触れになりましたように、物の値段、たなおろし資産等の値段が急に下がることがあるということを考慮して設けられているものでございます。私どもは、そのこと自体は、経済は生きものでございますから、やはりそういう制度があってもよろしいのではないかと思います。  ただ、まさに御指摘のように、最近置かれております環境のような場合には、確かに一般的に申しまして、価格が上がることはありましても下がることはまずないであろうというのが一般的な現象であるということは御指摘のとおりでありますので、現在のような事情の場合には、はなはだ理解がしにくい準備金制度になってしまっておるということは言えると思います。しかし、これは常にそうだというわけでもないわけでございますので、制度論としては、このようなものがあることは、私はやはり容認されてしかるべきものではなかろうか。  ただ、率その他につきましては問題があるのではないかということもありまして、たとえば四十八年度の改正の際に、若干ではございましたが率の改定を行なわさしていただいて、しばらく積み増しがふえないようにしたということはございます。今後ともそういう方向では考えたいと思いますが、基本的にこの制度をやめてしまうというのはいかがなものであろうかというふうに考えます。
  38. 塚田庄平

    塚田委員 やはりその答弁を聞いている限りでは不徹底なんですよね。私は何度も言いますけれども特別措置というのは、廃止して起こしてもいいと言うのですよ。あるいは価格変動準備金というのを眠らしたらどうですか、この際。完全に眠らす。つまり、まるっきり準備金なきがごとき率に下げてしまう。そんなにこの名前にごだわるのだったら、少し眠らしたらどうですか。  特にこの際もう一つ聞きたいのは、銀行にもこの制度がありますね。おそらく銀行は株式の売買だと思うのですよ。株屋はこれまたずいぶんもうけているでしょう。普通のあれでは三%で、銀行は変動の激しい物品並びに株式という、その株式のあれだと思うのですけれども、品物を売っているんじゃないですから。
  39. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答え申し上げます。  銀行につきましては株式、株式も非上場株式と上場株式に分けまして、それからさらに、そのほかに公社債についての価格変動準備金というものを積むことが認められておりますけれども、現実の問題として、私、実数は現在把握しておりませんけれども、公社債等につきましては、値下がり損を相当出していると聞いております。
  40. 塚田庄平

    塚田委員 さっきの準備金は眠らせるということについての答弁はどうですか。
  41. 高木文雄

    高木(文)政府委員 確かに御指摘のように、こういう事態のときにはおかしい分野もあるわけでございます。ただ、四十八年につきましては改正をいたしましたので、四十八年中はほぼ眠っておった状態にあるわけでございます。それで四十九年度についてどうするかということでございましたが、四十九年度には、こういうふうな物価の状況でございますので、積み増し停止になっておりましたものが若干動き出すと、少しはメリットか出てくるということになろうかと思います。その点につきまして確かに問題があるということで、四十九年度についてもどうするかという議論はいたしたのでございますが、四十八年度、四十九年度と二年度続けて改変をするということも制度の安定性の問題で問題があるのではないかということで、あるいはそれは非常に弱気だといっておしかりを受けるかもしれませんが、二年連続ということもいかがかということで、四十九年度は行なわないことにしたわけでございます。  さらにそれを、この際であるから何か一種の積み増し停止制度をやってはどうかということでございますけれども、しかしそれは、制度制度としてそれなりに安定性というものも必要でございます。何年かに一度の手直しはよろしかろうと思いますが、現在の段階で急にこれをとめるということについては、私どもといたしまして、現段階でにわかに賛成をいたしかねるということでございます。
  42. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ちょっと関連しますが、この問題は、この前予算委員会で私は大臣に聞いておるわけですよ。実際言うと、私はあのときも言ったけれども、これは買い占め、売り惜しみの奨励金ですよ、在庫がふえればふえるほど税金が少なくなるなんというのは。ことばをかえて言えば、いまのような買い占め、売り惜しみを防がなければならぬという時代に、在庫がふえればふえるほど税金がまけてもらえるなんという制度は、私はどうかと思う。ましてや国民の生活に一番関連があり、一番問題になっておった品目が、一般よりもあれは百分の二ですか三ですか、積み増しになるんでしょう。たとえば冷凍マグロだとか石油だとか木材だとか合板だとかいうような、売り惜しみ、買い占めで問題になったような品目は積み増しになる。ことしは、皆さんがいまの物価高、国民生活の問題を考えれば、こんな積み増しを残しておくなんというのはおかしい。  私、いま速記録を持ってきておりませんけれども、たしか大臣もあのとき、品目が多いから全体の検討はむずかしいけれども、何ぼかの手直しをしなければいかぬみたいな話をした思う。これは法律事項じゃないんでしょう。皆さんがここで決意さえすれば、政府の政令ですか通達ですか、それで処理できる問題なんです。何もここで法律を議決しなくともいい問題なんですよ。皆さん、ここで与野党みんなに聞いてごらんなさい。この生活物資の値上がりの中で、国民生活に関連のあるそういうものの買い占めをやって、在庫をふやせばふやすほど税金が少なくなるなんというばかばかしい制度に賛成される議員は、おそらく与野党一人もいないと私は思うのですよ。これは世論ですよ。皆さんが決意さえすれば、これはできる問題なんだ。そんな問題もやらないで、今日、国民生活の安定だとかなんとか言ってみたって私は始まらぬと思う。  これは政務次官、たしか大臣は手直しする、検討すると、こう言っておったと思うのですよ。だから、ここで皆さんの決意さえあれば与野党全員反対する人は一人もいないと私は思うのだが、私もこの問題は詰めようとは思っておったのですが、ここで次官から政府を代表してはっきりと言明をしてもらいたい。
  43. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先に私からお答えをいたします。  阿部委員から予算委員会で大臣のお尋ねがございましたときに、私も政府委員席におりましたのでよく存じ上げております。私がいま記憶しておりますのでは、大臣がお答え申し上げましたのは、確かに御指摘のような問題があるので、これはぜひ洗いがえといいますか洗い直しをする必要がある。ただ、自分も正確には覚えていないけれども品目の数が三十幾つあるし、それがいろいろと各省物資にまたがっておるので、大蔵省だけでやるということもなかなかむずかしい。しかし、そうはいっても問題が問題であるし、御指摘のように、法律できまっているわけではない。告示できまっている問題でもあるから、早急に各省庁とも打ち合わせをしていろいろ検討をいたしてみたいというふうに大臣からお答えをされたというふうに思います。  それで、私どもも、そのような答弁がございましたから、したがって、なるべくすみやかにこの仕事に取りかかりたいというふうに考えております。それはただいま阿部委員から御指摘がございましたように、価格変動の著しい物品についての二%の積み増しという問題について、そのように品目検討をやらしていただきたいというふうに考えております。  それから、もう一点ちょっと触れておきますが、価格が、上がれば上がるほどというとことばは悪うございますが、上がった場合に、それだけ価格変動準備金のメリットが非常に大きくなるではないかという御指摘でございますが、それは確かにそういう面がございます。ただちょっと申し上げさせていただきたいのは、いままでたとえば千円であったものが千五百円になりますと、数量が変わらない場合には、たなおろし評価額は千円かける個数から千五百円かける個数にふえるわけでございますので、もし価格変動準備金なかりせば五百の部分が益金増になってくるわけでございます。  それに比べまして、今度は価格変動準備金のほうは、たとえば百分の五なら五といたしますと、そのふえました五百に対して百分の五だけショックを緩和する、こういう働きになるわけでございますので、やはりたなおろし資産の評価がふえますれば、たなおろし資産の価額が上がりますれば、それはどうしても税金はまずふえるわけでございますが、ふえるもののショック緩和という働きになるわけでございます。しかし、それでもやはり問題があるじゃないかといえば、御指摘のとおりでございます。そういう意味で、価格変動というのは、上がるときには少しおかしいのであって、下がるときに備える制度であるということでございますから、先ほど来塚田委員のおっしゃるような問題点があることは承知をいたしておるわけでございます。  重ねて、価格変動の著しい物品の、商品の洗いがえのことについては、御指摘のとおりに検討をさしていただきたいということを申し上げておきます。
  44. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次官の前にちょっと……。  局長、あまり回りくどくいろいろなごまかしみたいな話をされないほうがいいと思うのです。金額が千円から千五百円に上がれば益金として出るのはあたりまえなんです。そういうことをあなたがおっしゃるならば、いまの制度、早く仕入れたものは早く出すというこの制度にぴしゃりとするならばまた別なんですよ、一貫するならば。ところが、いまの在庫の評価のしかたは、先に買ったものが先で、あとに買ったものがあとから出るというような仕組みになっていない。その帳面のつけ方は幾らでもあるでしょう。そういう帳簿上の操作によって、とにかくいろいろなやり方を企業はやるわけですから、そういうものも防いだ上でならば、いまのあなたのお話は私は理解をするけれども、そういうしり抜けをしておいていまのような答弁をされても、私は了解ができないのでして、そんなことじゃなしに、一応、一番簡単に話をすれば、在庫がふえればふえるほど、価格の問題を別にすれば、これは税金がまけてもらえる、こういう制度であると言って私は指摘しているのであって、その論議をすれば、別にまた論議をしなければいかぬのですよ。そういうことじゃなしに、いまのをすっぱりと割り切れば、いまの買いだめ、売り惜しみを防ごうという国の政策の中で、在庫があればあるほど得をするというような制度、特に積み増し分を早急に各省との話があるならばして、それで大蔵当局は整理すべきものは整理するというのが常道だと私は思うのです。こういうことを一つつけ加えておいて、次官からの答弁をお願いします。
  45. 中川一郎

    ○中川政府委員 この制度そのものは、中小企業その他業界で必要であるのですが、昨年来からの異常な物価高、そして売り惜しみ、買い占めがあって、国民の皆さんに御迷惑をかけている点からいうならば、確かに阿部先生御指摘のとおり、売り惜しみ、買い占めを促進するという働きのものであることは間違いありません。  ただし、四十九年度においてはそういった物価は何としてでも押えたいということでありますから、四十九年度もそういう作業をするかどうかわかりませんけれども、大臣が価格変動の著しい物品の内容については各省と検討して洗い直してみるということを答弁しておりますとおり、いままた局長も答弁しましたように、洗い直しをして、納得のいくように是正をしてまいりたいと考えております。
  46. 塚田庄平

    塚田委員 それじゃいま答弁をいただきましたので、その方向で努力していただきたいと思います。  ただ、この際、局長、資産がたなおろしして値段の下がったとき、そのときには値段の下がったところで税金をかけるのですから、何も二重にやってあれする必要はないでしょう。たなおろし評価で税金をかけるのですから、百円のものが五十円になれば五十円で税金をかけていくのですからね。だから、何もそういうあれをしてやる必要はない、こう私は思うのです。その議論は進めて  いけば切りがないので、ひとつそういう方向で進めてもらいたいと思います。  それから、もう時間がないようで責められておりますが、準備金ですね。期末残高、これは四十七年調べで一兆円をこえるたいへん膨大な金なんですけれども、いま言った価格変動準備金というのは、これは大口のほうです。海外市場開拓準備金、これもたいへん大口、しかし、これは手直しがされておりますからあれとして、その次に大きいのは株式売買の損失準備金なんですよ。これをこのままのことばで税金に知識のない人に見させれば、株式売買損失、最近は株でずいぶんもうけているんだけれども、こんな準備金まで税法上の優遇措置をしなければならぬのか、大体こう考えてくるのが常識だと思うのです。これがまたばく大、八百六十億という金が準備金として積み立てられるわけですよ。これは一体どうなんですか。
  47. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この株式売買損失準備金というのは、四十一年にできた制度でございます。例の山一問題なんかのあとにできた制度でございます。あの当時から証券局といたしましては、証券会社は株式売買ということを漸次やめて委託による仕事をすべきであるということに、非常に明確に指導方針を打ち出しました。ただ、ある程度証券会社に株を持っておりませんと、品がすれというか玉がすれという現象を来たしますので、そこで、損失利益ということに関係なく、一定限度の株を持っておりませんならば委託にも応じかねるということが出ますので、それに対応する制度として、何か考えるべきであるということからスタートをいたしたものでございます。  しかし、おっしゃるように、その後何度かいろいろな論議がありました。実は二年前にも改正しようかということをいろいろ論議したのでございますが、そのときには結論を得るに至りませんでした。やっと今回、若干手をつけることになったわけでございます。それはやはり御指摘のように、だいぶ積み増し額がふえてきておりますし、もうすでにこの制度も、ある程度の規模のものに準備金の額がなってきておりますから、もうこれ以上積み増しの必要はあまりないのではないか、多少のことはあろうかと思いますが、ないのではないかということで、例の売買利益基準、それから所得基準、いずれも圧縮をするということにいたしたわけでございます。気持ちといたしましては、圧縮、整理という方向であることは御指摘のとおりでございます。
  48. 塚田庄平

    塚田委員 そういう気持ちは今度の改正にはほとんどあらわれていないと私は思うのですよ、局長。まず、今度この適用期間を三年延長しましたね。これは延長期間としては、大体特別措置というのは先ほど二年間くらいを限度にしてそれぞれ情勢を見て改廃、延長というものを考えると言いましたが、今度はこの準備金制度をまず三年延長した。これはいまの局長の気持ちからいうと全く逆行しているのですね。  もう一つ、株式売買益の七〇%を五〇%に、現行所得の二五%を二〇%に、表面はこうなっていますけれども、まず第一に、現行株式売買益の七〇%を五〇%という中に、経過措置の六〇%がそのまん中に入るでしょう。しかもこれは二年間。三年延長して、二年間六〇%なんですよ。だから、ここに出ている七〇%を五〇%にというのは、これは全く見せかけですよ、三年延長して二年間は六〇%なんだから。何で六〇%ということを原則として掲げなかったか。  現行所得の二五%を二〇%、これなんかごまかしの最たるものですよ。最初の二年間は二五%だというのです。変わらぬということでしょう、これは。局長、二五%を二〇%にする、しかし最初の二年間は二五%だというのだ。実際は変わらぬということですよ。カッコの中が生きるだけですよ。こういうごまかしでは、一般の国民というのは承知しないですよ。どうですか。
  49. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そういう御非難を受けることは非常に私どもも理解できるところでございます。しかしながら、制度の改変でございます。そこがなかなかどうも既得権化という問題がございまして、むずかしいわけでございます。最大限の努力をしたつもりでございますが、おしかりを受けますのも、またやむを得ないところであると思っております。  いろいろこまかい点につきましては、申し上げると長くなりますので差し控えますが、私ども、むしろ若干長期的に見て制度を圧縮していきたい。最後のゴールといいますか、目標のところを低いところに置くということを主体にして、制度の合理化につとめるということに努力をしたつもりでございますが、その反面、経過規定が甘くなったということがある、それは意味がないではないかという御指摘でございます。私どももそういう点はたいへん悩んだわけでございますけれども、最後の落ちつきのところをむしろきつ目にするということで、こういう仕組みでお願いをするということで御提案申し上げておる次第でございます。この辺の事情をおくみ取りいただきたいと存じます。
  50. 塚田庄平

    塚田委員 局長は悩んだと、おそらくその上の次官よ、あなたは悩まなかったのでしょう、この点は。  もう一つ、もう最後です。大きいのは異常危険準備金というやつですよ。これは将来に五〇%以上支払う異常危険を想定して、準備金積み立てておるわけです。これは損害保険会社がおもなものだと思うのです。二千八百二十七億、たいへんな金ですね。  そこで、これは税調答申、つまり、異常な事態を予想しての準備金を長期にわたって積み立てるということは、これはもう利益隠しだ、そういうことばは使っていませんが、社内留保をいたずらにふやす、利益を隠していく、こういう指摘があるにもかかわらず、これは延長されて、しかも五〇%以上支払う異常災害、これは関東大震災でも予想すればこういう事態があろうかと思いますが、これは全くそういう異常を想定した利益隠し。関東大震災なんというああいう事態は、これはもう準備金とかなんとかいう問題ではなくて、国としてどう取り組むかという異常な事態なんで、一体これはどう考えますか。こういう準備金をばく大に積み立てさせる、しかも年々積み増しが多くなってきている。局長見解を聞きたいと思うのです。
  51. 高木文雄

    高木(文)政府委員 異常危険準備金という制度は、これは損害保険というものの性格上、ある程度こういう制度がなければならないというふうに思います。ただ、いま御指摘がありましたように、非常に積み増し額が大きくなってまいりましたので、これはどうであろうかということで、いろいろ検討いたしまして、今回、率を改定をすることにいたしたわけでございますが、同時に、この問題につきましては、私どもとまた別の立場でございますが、損害保険の料率の問題というのが片一方にやはりあるわけでございまして、それの料率の合理化というようなものも同時に行なわなければならないという事情がございます。  今回このように積み増しがふえてまいりました大きな理由といたしましては、自動車の部分につきまして非常に金額がふえてきたということがございます。自動車保険は、最初不安定な状態でスタートをいたしました。いろいろな統計上の数字等も出てまいっておりませんでしたので、七%という高い率での積み立て税法上認めておりました。これが結果的には、非常に単純なことばで申しますと、甘い結果になっておったと思いますので、この自動車の積み立て率を七%から一挙に二%に落としたわけでございまして、これによってかなりこの制度の目的に沿いながら、まずまずの適正水準にこれでなり得るのではないかというふうに考えておる次第でございます。  しかし、今後の危険の発生状況なり何なりをよくにらみながら、また準備金の積み増し状況を見ながら、今後のことは今後のことで、また考えてまいりたいというふうに思います。
  52. 塚田庄平

    塚田委員 これは最後ですので、次官の御答弁をいただきたいと思いますけれども、一番最初に言いましたが、ことしは法人税を四〇%に引き上げた、だけれども、私は特別措置で課税ベースががたがたになっていると思うのですよ。そこで、せっかく四〇%に上げ、あるいは四二%に上げたとしても、この特別措置がこういう形で残ってくるということは、税の不公平をむしろ拡大していくということになっていく危険性もあるわけです。  特に、この特別措置は、いま言ったいろいろな準備金にしても、中小あるいはその他ほんとうに小さい企業は、これを利用できる条件にはないわけですよ。あるいはこれはPRも不足で、こんな準備金があるなどということも知らない者もたくさんいるでしょう。そういう中で中小と大企業との格差もまた拡大していく要素になってきているわけなので、私は租税特別措置というものを徹底的に征伐せぬ限り、税の公正は期せられない、こういう信念を持っているわけです。いま幾つか指摘した問題について、前向きで検討するという答弁をいただきましたが、基本的にこの問題は、これだけ成長をとげた、しかもいまいろいろな社会悪が出てきている情勢の中では、これを早急に整理する。何べんも言いますけれども、必要があれば議会と相談して、われわれと相談して、起こす場合もあり得るし、眠らせる、殺す、とにかく徹底的な征伐をするという態度でなくちゃいかぬと思うのです。どうですか。
  53. 中川一郎

    ○中川政府委員 確かに先ほど来御指摘がありました準備金の問題、あるいは引き当て金の問題も含めまして、特別措置が公平を欠いているという感じは私どもも持っております。そこで、漸次これを改正をしていかなければならないという気持ちがありましたために、若干ではありますけれども、今回もそれぞれ率等の是正を行なってきております。私ども、こういうものを扱う場合に、急に眠らせるとか廃止をするということによって、株式なり業界に混乱を起こさせてはという一面もあります。山一証券のような問題もありましたし、あるいは異常な災害が全くないとはいえないというようなこともありますから、そういったことも考えて準備はしておかなければなりませんけれども、それが業界の保護というようなことになっては、これは公平感を欠きますから、先ほど来御指摘の点は私どもも率直に受け入れまして、ことしはこの程度でありますが、引き続き明年度においても検討して、改正すべきものは改正していく、このようにしてまいりたいと思います。
  54. 塚田庄平

    塚田委員 終わります。
  55. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      ――――◇―――――    午後一時十八分開議
  56. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広沢直樹君。
  57. 広沢直樹

    ○広沢委員 前回に引き続きまして、法人税の改正についてまず御質問申し上げたいと思います。  質問に入ります前に、ちょっと資料の確認をしておきたいのです。と申し上げますのは、昨年大蔵省阿部委員の要求で出しました「資本金階級別法人税負担割合(試算)」がございますが、せんだっても私、この資料をもとにいろいろ御質問申し上げたのですけれども、この中の所得金額というのは、これは調査所得金額なのか申告所得金額なのか。  この四十六年の「法人企業実態」、これは国税庁の総務課で出しておりますが、これを集計いたしますと、一億円以下の所得金額あるいは一億円以上百億円未満の所得金額の合計がちょっと違っておるんじゃないかと思うのです。この点はどういうふうになっているのか。そして百億円以上の金額は、この統計に出ているのとぴったりあっています。合計においてもこれはきちっと合っているわけですね。その点どうなっているのか、ちょっと御説明いただきたいのです。
  58. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いまお尋ねの点、ちょっとよくわかりませんでしたが、「法人企業実態」のほうは、調査所得金額の数字でございます。ただ、いまの区切りのところが違いますのは、こちらの「法人企業実態」のほうは、たとえば一億のところでいいますと、一億円以上、それからあとは百億円以上ということになっているわけですが、片方は一億円以下ということになっておりますので、そこのところの刻みが向こうへ行ったりこっちへ行ったりしているという点があるのではないかと思いますが、もう少し正確にあとで調べます。  いずれにしても、この数字と合わなければならないわけですが、境目をどこへ持っていくかというところで、ちょっと違っているのはその関係ではないか、ちょうど一億円のときにどっちへ入るかということではないかと思います。それだけの違いで、ベースは、この表のもとになるいわば個票といいますか、そういうものからとっております。
  59. 広沢直樹

    ○広沢委員 別に私が最近資料で個人的に出してもらったのによりますと、やはりこの企業実態からとってあるんですが、一億円未満が三兆一千七百二十二億六千八百万円、それから一億円以上百億円未満が二兆五千二百六十七億五千百万円、こうなっておりますけれども、このいまの企業実態を集計いたしますと、一億円以上、一億円未満でありますと、これは相互に千三百七十億円の違いがあるんです。  そうしますと、このあとから出していただいた資料に基づいて計算しますと、ここに出ております、いわゆるいままで御説明なさっておられた一億円以下の企業というのの負担率がやはり一番多くなって、一億円以上百億円未満の企業がその次に負担率が多くなり、そして百億円以上が一番少なくなる、こういう実態になるわけですね。総合計で合っており、百億円以上でも金額が合っているのですが、どうしてこの点が違うのか。これはやはりいままでの説明のしかたに一つ大きな問題があるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  60. 高木文雄

    高木(文)政府委員 一億円以下というときには、資本金一億円のものは含んでおるわけでございます。資本金一億円という企業は、ちょうどまるい数字ですからわりにたくさんあるわけですが、資本金一億円の企業は、資本金一億円以下の欄に入っております。  今度は、資本金が一億円未満というときには九千九百九十九万幾らというところまででとまっていまして、一億のほうはこっちの隣の欄のほうに移っていく。そのちょうど一億のところが、いまおっしゃった千三百何億かになりますので、それで区分をいたしておるわけでございます。  それで、なぜこの阿部先生の御要求に基づいてつくりました資料のほうは、この統計のように未満とかなんとかということにしないで一億円以下でいったかといいますと、軽減税率の適用がありますのは、資本金一億円未満ではなくて、以下の法人の三百万円までの所得ということになっているものですから、軽減税率の二八と二二という税率がどういうふうに響いてくるかということを知るためには、未満で切るのではなくて以下で切ったほうがよろしかろうということで、そこで切ったわけでございます。
  61. 広沢直樹

    ○広沢委員 この数字の問題は、あと一億円のはどれだけあったかということを四十六年度で数字を出していただければはっきりすることです。ただ、前回私が法人税の問題に取りかかったときに申し上げましたのは、やはり資本金が大きくなるほど税率が安くなっているんじゃないかということであったのですが、中小法人については基本税率が低くなっておりますから、そういう関係もあって、やはり一番多くなっているのが、一億円以上百億円未満のが一番多いというデータを出していらっしゃるので、この企業統計の実態に合わせて計算しますと、いま言うような計算が出てくるわけです。百億円以上がぴったり数字が合っておりますし、合計が合っておりますので、その点の数字が行ったり来たりしますと、やはり実際の統計、パーセンテージを出したときに大きく判断の狂いが出てくるんじゃないか、こういう面でちょっと気になったものですから、最初に確認させていただいたのですが、これはもう少し明確にするために、それじゃ、一億円というのがどのぐらいあるのか、あとから一ぺん調べていただきたいと思うのですね。ちょうどこの差額である一千三百七十億円になるのかどうかですね。
  62. 高木文雄

    高木(文)政府委員 間違いなくその数字になると思います。この委員会要求資料を作成いたしますときに、当然、いまの「法人企業実態」の数字をとったわけでございますが、その際、せっかくのことならば、この線を引くのについて軽減税率のところを見ておいたほうがよかろうという趣旨で、この「法人企業実態」の区分と、そのちょうど一億円の法人だけ欄をこっちへずらしたというよりも、そういうふうにまん中の欄に集めて集計したということになっておりますので、そこのところの違いが出たものと存じます。しかし、御要求のとおり、そこはぴしっと資料整理して提出いたします。
  63. 広沢直樹

    ○広沢委員 では、本題に入ります。  そこで、まず、答申の中にもありますし、あるいは大蔵省税調へ諮問された中にも、法人税の改正にあたっての基本的な趣旨、いわゆる産業基盤は拡大し、そしてまた、国際競争力も強くなってきた。そこでやはり福祉へということでありますから、それに対する財源として応分の負担を求めるべきであるということですが、その考え方においては当然だと思うのですけれども、今度の法人税改正の中身を見ましたところが、基本税率は確かに三六・七五%から四〇%になっておる改正案が出ております。  しかしながら、あと、今日まで問題になっておりました配当軽課制度の問題、あるいは受け取り配当の益金不算入の問題、こういったような問題については、基本的に何ら手が加えられていない。配当軽課税率は、基本税率が上がったので、旧来の考え方を踏襲して、それに合わせて率が上がっているというだけであって、基本的に、その配当軽課のいままで幾つか問題になった点が参酌されておるというわけではありません。そこで、やはりこれからの法人税のあり方というものは、最初の趣旨に合わせて、課税当局としては基本的にどういうふうに今後考えていくのか、その点をひとつ明確にしていただきたい、こう思うわけです。
  64. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そこは実は非常にむずかしい問題でございまして、シャウプ勧告のとき以降は、基本税率一本であったわけでございます。その後いろいろな議論が出まして、資本充実論というようなことと関連して、借り入れ金の金利負担の場合には損金になるし、増資をした場合の配当は益金処分でありますゆえに損金的扱いを受けないということがあって、そのことのためになかなか資本の充実がうまく進まない。そこで、奨励措置として、配当に充てる分の税率を下げたらよかろうということで、現行のような複雑な仕組みになったわけでございます。  これは当時の経過におきましても、税の立場のほうは、やはり基本税率一本が望ましいという考えは根底に流れておるわけでございまして、しかし、産業体制を整備するという立場から、資本の充実のためにはということも非常に必要であろうから、そのためには税制が多少それに協力ということはおかしいかもしれませんが、税としてもお手伝いをするという見地から、配当面の軽課税率ができたわけでございますから、その経過から申しますと、私は、やはり基本税率一本であるということが本来の姿であるというふうに、税の立場からはいえるのではないかと思うわけでございます。  しかし、別の立場の、税の公正はあくまで産業体制のあり方という問題と関連して考えなければならぬじゃないか、わが国の場合はいかにも間接金融のウエートが高過ぎて直接金融が伸びていかないからという見地の方は、むしろさらに配当を損金のほうに持っていくべしという議論があるわけでございますので、そういう私どもとちょっと違う見地の方もおられるわけでございまして、二つの意見があると申さざるを得ないので、そのうちのどっちが正しくてどっちが間違いだというわけにはなかなかいかぬのじゃないか。それが本件について、長い論議を繰り返しながら、なかなか決着がつかないゆえんでございます。
  65. 広沢直樹

    ○広沢委員 せんだっても局長は、四、五年に一ぺん大きな改正をやるんだ、こうおっしゃっておられた。その間は微調整であった。確かに今回の改正は、実態に合っておりませんけれども、いままでと比べてみれば大きな改正に違いありません。いま求められているこの大きな改正というのは、所得の再配分であり、そしてまた、資源の再配分をやっていって、いまの体制というものを変えていかなければならないということでありますから、やはりそれに応じた、これまで優遇されてきた法人税制というものはこのあたりで基本的に見直してみるべきじゃないだろうか。何もいまあわてて、この福祉への転換ということがいわれているわけじゃありません。あるいは所得の格差が増大してきたものの是正を、いますぐあわてて気がついてやらなければいかぬという問題でもない。これはもう四十年代に入ってから強くこういう問題が叫ばれてきましたし、いまや国民のコンセンサスです。したがって、それにこたえて経済体制を転換していこうということであれば、大改正にあたっては、ある何らかここに具体的な方向づけがあってしかるべきじゃないだろうかと思うのですね。  ところが、基本税率が四〇%だけで、あと優遇措置でいま事で問題になってきた軽課制度にしましても、益金不算入の受け取り配当の問題にしましても、これはそのままというように、基本的な考え方は何ら変わっていないというところに、私は非常に問題があるのじゃないかと思うのです。答申の中には、今度部会を設けて法人税の基本的なあり方を検討する、こういうことになっているわけですね。ところが、その答申をまたよく読んでみますと、確かにいま局長がお答えになりましたように、両論があります。一つは、「本制度を一挙に廃止することは適当でない」ので、これは段階的という意味にとれるわけですが、そういう意見もあるということを載せておりますし、片一方では、「配当軽課税率はむしろ配当損金算入の方向で検討すべき」である、これはまたまるきり反対の意見ですね。そういう意見を述べている者もあるわけですね。したがって、当局としては、これは基本的には、いま局長がお答えになったように、基本税率一本でいくべきであるという考え方に立っているのか、いまの両極端の意見がありますけれども、どういう基本的な考えに立っているのか、そういう点をひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  66. 高木文雄

    高木(文)政府委員 何度も繰り返しになって恐縮でございますが、ここはやはり非常にむずかしい問題でございます。純粋に税の立場から申しますと、先ほど申しましたように、配当に対する軽減税率というようなものはないほうが、簡明でわかりやすいということであろうと思います。しかし、法人税の仕組みが産業のあり方に非常に影響することはもう否定できない事実でございまして、その場合、日本の産業の最大の問題点は、やはり何といっても自己資本が低い、しかも、どんどん悪くなってきたということでございます。要するに、株式会社制度をとっておりながら、非常に極論いたしますならば、株式会社の実体を備えていないということもいえるわけでございます。もっといえば、金融の支配力が非常に強くなるということでございます。その後者の見地からいいますならば、やはり何とかして自己資本比率を上げることを考えなければならないということは否定できないことだと思うのでございます。  ただ、こうやって十年近く配当軽課制度をやってまいりましたけれども、ここにも書いてございますが、必ずしも配当軽課制度がどの程度自己資本比率の改善に役に立ったか、あるいは悪化を食いとめることができたかということは証明できないわけでございまして、私どもとしては、単に配当軽課制度だけをもってしては、自己資本比率を充実していこうということを実現することはむずかしいのではないか、もっと税以外の他の制度と組み合わせていくのでなければ、本問題の解決はできにくいのではなかろうかというふうな感じを持っております。本来ならば、そのように他の制度、他の立場からの自己資本比率充実の諸施策がとられていかなければならない。それがたいへんおくれているというところに非常にもどかしさを感じておるということでございます。そうはいいましても、多かれ少なかれこの制度自己資本比率の改善ないしは悪化の食いとめに役立っていることは否定できないものでございますから、本来の税の立場だけに立ちましてこれを全部やめてしまうということに、なかなかそれが正しいのだと言い切れない面があるのでございます。  そこらあたりの問題が一つと、どなたか他の委員の御質問にお答えしたかと思いますが、ヨーロッパにおきます傾向がどっちかといいますと、そう割り切れたものではございませんが、配当軽課制度をやめるような方向に動いているということも一つありまして、これは企業の国際化という問題に関連いたしまして、そういう諸外国におきます企業の動き方というものも一つ考え合わせ、今後の日本の産業構造というものを大ぜいの方に議論していただいて結論を出したいということでございまして、私どもとしていまどっちへ向かって歩くのだということを、私の立場において申し上げる段階にはないということを了解願いたいと思います。
  67. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、確かにこの配当軽課制度ができたのは三十六年、そのときの提案になった趣旨説明もよく読んでみたのですが、この目的は企業自己資本比率を高める、いわゆる自己資本を充実するということがねらいであるということは明確ですが、その点、間違いないですね。
  68. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  69. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、そうなりますと、実際にここには統計が出ておりますけれども、三十六年から最近に至るまで自己資本比率というものは高まってきたかというと、むしろ逆に低下してきていますね。ここに統計が三十八年しかありませんが、これは三十八年の主要企業資金調達状況自己資本比率の国際比較という統計の中から見比べてみますと、三十八年で二六・三%の比率が四十七年では一五%近くに下がっております。また全企業を対象にした場合においては、三十八年が二〇・五%、それが四十七年で一五・三%に下がっています。その中で、特に配当性向が高いといわれている企業、鉄鋼、金属鉱業ですか、そういうものを例にとってみましても、これは三十八年で二七・八%であった比率が四十七年で一四・八%、全企業の平均の比率よりもまだ低下しておりますね。  ですから、そういう配当性向の高い企業のために設けられた制度であるならば、こういうふうに平均から下がるということ自体は、それだけの効果をあげ得ていない。したがって、その自己資本の充実には、税制面の助成というよりも、むしろ資産の再評価を行なうとか他の面があり、またそういった他の面を重点にすべきじゃないかと思うのですね。この制度はこういう特別措置として当時は発足しているわけでありますが、そういう効果がない、具体的にどの程度役立ったかわからない――実態はこのようにして充実しなければならぬものが減ってしまっているという実態から見て、これは無用であるということが言い得るわけですよ。  そういう判断のもとに、税制優遇措置だといわれ、あるいは税制面を複雑にしているといわれるこういった問題については、早急に検討しなければならない。何もきのうきょうに下がったわけではないのです。年々これは下がってきています。確かにお話がございましたように、わが国の企業は他人資本にたよってやってきているという特徴があります。それは結局、しかたなくそうしているという面があるかもしれませんけれども、ほとんどが他人のふんどしで相撲をとってもうけて、からだけ大きくなってきた。今度の予算委員会で問題になりました商社の問題にしても、非常に小さい資本で、もう何十倍という他人資本を借りて、それで商いをしているという実態があらわれてきています。そこにひとつ大きな検討が加えられなければならないという状態が出ておりますね。  ですから、そういうことを考えてみると、いつまでも単なる理論的な面からだけ考えて、既存の措置をそのまま残していくという形よりも、やはり改廃にあたっては実態に即して早急にやるべきじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 高木文雄

    高木(文)政府委員 広沢委員御指摘の傾向にあることは事実でございます。特に、鉄とか電力とか私鉄とか、そういう設備投資を非常に要するものこそ、ほんとうは資本の充実が進まなければならないはずのところ、なかなか資本の調達ができない。比較的安易な方法であるところの金融機関からの借り入れとか社債の発行とかに依存をするという傾向がありまして、ある意味から申しますと、一つは経済の成長が非常に早いので、会社の基本構造がそれに追いついていかないということもあったのでございましょうけれども、そういう傾向に進んでおります。  それは、そのことをベースにして二つの意見が出てきました。ただいま広沢委員御指摘のように、税のほうが多少複雑になっても、せっかく配当の軽課制度をもうけているのに、こういうふうにどんどん資本の充実がおくれて、自己資本比率が下がっているのでは、この税制はメリットがないじゃないかという見解をとる方がたくさんおられるわけでございます。しかし、反面、たとえ四分の一でも軽減制度があればこそこの程度にとどまったのであって、もしこの制度がなければ、もっと事態は悪くなっていたかもしれないし、何とか自己資本を充実するというのであれば、いまの四分の一軽課でなくて、さらに軽課を厚くする方向にしたらどうだという意見もあるわけでございまして、そこはどうも水かけ論になっております。  私どもといたしましては、いずれにしましても、資本市場が充実してこないとうまくいかないというふうに考えるわけでございますが、せっかくこの制度が三十六年から始まりましたのに、四十年、四十一年に例の山一問題のようなことがありまして、証券の民主化といいますか、個人株主が株式保有に興味を持つということについて、ああいう騒ぎが起こりまして非常に水をかけてしまったということがあり、その後証券市場がだんだん立ち直ってまいりましたけれども、そしてまたいいか悪いかは別にしまして、時価発行というようなことがせっかくある時期には進みましたにもかかわりませず、今度は時価発行の行き過ぎみたいな問題が起こってまいりました。いままたちょっとここ一年ぐらいのところ、資本市場の発展が伸び悩んでおるという状況でございます。これはわれわれのほうからいいますと――われわれと申しますのは税のほうから申しますと、非常に困ったことでございまして、最も基本問題であるそういった資本市場の育成といいますか成長といいますか、個人株主が安心をして株を持てるような雰囲気というものがもっと醸成されてこないことには、何としても自己資本の充実が進まない。せっかく資本を増加しましても、その株を個人が持つのではなくて、他の企業が持つというようなことになってしまいますので、そこらあたりに実は根本的な問題があるわけでございます。  私ども大蔵省の中では、証券局が鋭意その問題に取り組むわけでございますが、そっちのほうと密接な連絡をとりながら、どうしたらよろしいのか、これはわが国産業構造の基本の問題でございますので、そこはやはり相当慎重に考えなければならぬ問題だというふうに考えます。広沢委員御指摘の御意見はかなり広く言われている議論でありますけれども、同時にまた、全く反対の意見もあるわけでございますので、やめてしまうという方向でわれわれが取り組むべきであるというふうに、ここで私どもとして申し上げるわけにもまいらぬという現状でございます。
  71. 広沢直樹

    ○広沢委員 行政当局は片方に優遇をして、片方には冷淡ではないかといういろいろな批判があります。それはやはり判断の問題だと思うのですね。確かに理屈を言えば、いま言ったようにどんどん自己資本比率は下がるけれども、この制度がなければもう少し下がったかもしれないのだという理屈にはなるかもしれません。確かにこれは基本税率より下げた税率で考えていけば、それだけ留保分がふえるわけですから、理屈を言えば、確かにそれで企業留保が拡大してくることは間違いありません。しかし、現実にはそれがあまり変わらないというならば別問題ですが、年を追うごとにどんどん下がっていってしまうというこの現実の姿から見て、これだけの行政効果というものをねらって税制面で優遇措置、特別の措置を与えるわけですから、その効果が上がらないときはほかの面で努力をしてもらうとか、あるいはほかの面をもう少し鋭意検討して結論を出してもらって、税というのは公平な負担をしていかなければなりません。  ですから、そういう結論のつかない、竜頭蛇尾な、単なる議論の水かけ論みたいになっていくような議論の中に、当初出発したこの特別措置そのものを残しておくのがいいのかどうか。その面の考え方が、いまの当局は産業優遇じゃないかという考え方になるわけです。ですから、いま言う法人税の基本的なあり方は、やはり早急に時代に合わして検討すべきじゃないか、こう思うわけですがね。  そこで、税調においては特別部会を設けて検討するというのですが、これは日本の産業構造の転換という一つの大きな命題を背負っての問題でありますから、十分検討しなければならぬことは間違いありませんが、ただいつまでも検討検討中では問題にならないので、先日も東畑会長参考人としてこちらへお見えになったとき、私のほうから、一体、基本的な法人税のあり方というものはいつ結論を出すのだという話を申し上げたのですが、いつと言われたって、単年度で出せと言われたって困るのだということで、明確なお答えがございませんでした。ならば、私は逆にいま当局にお聞きしたいのですが、諮問される以上はある一定のめど、限度というものを考えて諮問されるはずであります。ただ検討しておけということでは、片方でもう企業の社会的責任だとかいろいろな美辞麗句を並べてみても、実際その基本をなすものがいつ検討が終わるのやらわからぬような諮問のしかた、あるいは検討のしかたでは、これは転換することはできないんじゃないかと思うのです。したがって、どういうふうに当局はこの基本的な問題についてのめどというか考え方を持っているのか、もう一ぺんその点を明確にしていただきたいと思います。
  72. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この税制調査会答申の中で、こういった問題を検討するために特別部会を設けることになったわけでございますが、この特別部会を設けることになった経緯を考えてみますと、他にもございますけれども、配当軽課との関連で申し上げますと、ちょうどいま広沢委員が言われましたような見地から、つまり、配当軽課制度はどうも税制としてあまりいい制度ではないではないかという見地から、何かそこにメスを入れるべきだという意味検討すべきだという主張をされた税制調査会の委員がおられます。しかし、反面、逆に現在の四分の一配当軽課を不十分である、一気に配当損金算入とまではいわないにしても、もう少し配当についての優遇措置を講ずることによって自己資本比率の向上に資すべきである、当然、私が先ほど触れましたように、他の諸制度との斉合性がなければだめであろうけれども、しかし、それを考えるべきであるという見地から検討すべきだということを言われた委員がございました。いわば同床異夢のような形で、いずれにしても検討しようやということで、特別調査会が設けられたという経緯がございます。  したがって、そのような経緯を考えてみますと、その税制調査会の事務局に当たります私どもといたしまして、それはどっちの方向に向かって検討をするんだ、それを話せとおっしゃいますが、その点は私どもも、税制調査会の中の委員の方々の御意見が、相反する二つの意見の上にとにかく両方で寄り合って専門家を集めて相談しようやということになりました経緯にかんがみまして、それはどっちの方向でそこへ諮問するんだということを申し上げられない状況にあるわけでございます。
  73. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは非常に重大な問題ですから、局長として、事務当局として、明確にその方向を示唆することも非常にむずかしいというような答弁のしかたなんですが、しかし、それは言わんとする意味はわからぬでもないのですけれども、やはりこういうふうな一つ一つあとから租税特別措置法の問題にも多少触れますけれども、そういったいままでの産業基盤を拡大し、あるいは経済力を強化して国際競争力をつけるという名目のもとに、あらゆる企業優遇税制をとってきた。また金融にしてもそう、財政にしてもそうですが、そういうふうに持ってきたわけですね。  確かにその効果が一つもなかったとはいいません。急速な経済の発展をしてきたのですから、それはあったと思うのでありますけれども、いまここにおいて一つ大きく転換をしなければならぬときに、その根幹をなすものがいつになることやらわからぬということでは、幾ら私たちが声を大にして福祉への転換だ、あるいは経済の転換だというようなことを叫んでみたところで、それはいつになるかわからないということ、微調整だけしかできない、そういう結果になるのではないかと思うのですね。ですから、そういう観点からも、ひとつ十二分にそういうことを踏まえて今後検討していっていただきたいと思うし、さらにこれは次官も出席ですから、大臣や次官にもそういった方向についての考え方というものを、この問題の最後にお伺いしておきたいのです。
  74. 中川一郎

    ○中川政府委員 確かにこの問題は、御指摘のように、配当軽課措置自己資本比率を上げることに役立っているのかどうか、実態は逆になっておりますから効果がないのではないかという御指摘もありますが、いま局長が申し上げましたように、この制度なかりせばもっともっと異常な事態になっておったのではないかという認識もあります。しかし、現実が現実でありますし、日本の経済も大きく転換をする、しなければならぬ。資源問題、物価問題、あるいは交通問題等からいって、いままでのような企業優先、産業発展、経済の伸長というものに別れを告げなければならない転換期でありますから、そういった問題等も含めて今後ほんとうにまじめに、慎重にこのことについては検討を進めてまいりたいと存じます。
  75. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、受け取り配当の益金不算入の問題についても、あるいは配当控除の問題についても、これは一連として基本的な問題として考えていかなければならない問題だろうと思うのですが、やはりわが党としての意見を申し上げておきたいと思うのでありますけれども、こういう税制を複雑にする、あるいはいま言うような実際の効果のあがらない、顕著にあらわれてこない、そういったものに対して、いつまでも優遇処置を続けていくということに対しては反対なんです。したがって、配当軽課制度の問題あるいは受け取り配当の益金不算入の問題につきましても、これは早急に改廃すべきである、こういうふうに申し述べておきますので、十分に御検討いただきたいと思います。  それから次は、税法の施行令の一部改正で、いわゆる金融機関貸し倒れ引き当て金の問題、先ほど塚田委員のほうからいろいろお話がございました。今回の千分の十に改定した分を今後また検討してみるということでありますので、同じ趣旨でありますから省きますが、ここで一言申し上げたいのは、製造業にしましても、小売り業にしましても、割賦販売にしましても、それぞれやはり実態を加味して率が違っております。やはりこれはその実態に合わせてやっていくべき問題ではないか。貸し倒れ引き当て金については、やはり非常に優遇的に受け取れるわけですね。ですから、そういう面から考えてみましても、やはり実態に合わせてこの改正を考えてみるべきじゃないかと思うのです。ところが、先ほども指摘があったように、千分の十にかりにしたところで、実態とは大きくかけ離れている。さきの説明の中にも、実際の貸し倒れがどれぐらいあったかというのを銀行別に調べた統計が出ておりましたけれども、これとも大きく離れておりますね。したがって、これが一つの大きな優遇措置という形になっているわけでありますから、これも含めて十分検討して、実態に合わせて見直していただきたい。このことは要望として申し上げておきたいと思います。  それでは、租税特別措置法の問題に入ってまいりたいと思います。  これも一つ一つやっておりますと相当時間がかかりますので、おもな点をピックアップして申し上げておきたいと思うのですが、一つは、今度の改正の中で自動車関係諸税の税率の引き上げがあります。これはいままでにもいろいろ説明がありましたけれども税制一つの制約的なというか罰則的な役割りを果たすのはよくないという議論があります。確かにそういう議論も至当であろうと思うのですが、今度の自動車税を重課していく上においては、資源の節約だとか、あるいは消費の抑制だとか、環境保全という面からも配慮してということが加わっているわけでありますが、やはり私はこういうふうな問題については、別の行政的政策面で考えるべきであって、税をそういうふうにしていくことによって抑止力を働かしていこうというような考え方であるならば、当局がいままで答えてまいりました税が罰則的な色彩を持ったような考え方はよくないという面にまで影響してくる問題じゃないかと思うのですね。  それは確かに消費抑制という問題の中には、いままでにもぜいたく品には間接税でも大きくかけるという問題がありました。しかし、これは消費抑制というよりも、ぜいたく品とみなされるものを買おうという者には担税力があるとみなしての話なんです。自動車などというものは、御承知のように、いま生活レベルがぐっと上がって、自動車の保有台数も諸外国と匹敵するぐらいに日常化したもの、大衆化したものになっていますね、担税力云々という問題よりも。ですから、今度の改正の中にこういうような色彩、制裁といったらおかしいのですが、そういった色彩を持たせたような感覚で改正をなさるというのはちょっと疑問だと思うのですが、その点いかがですか。
  76. 高木文雄

    高木(文)政府委員 税の中に罰的な要素があまり入ってくることは御指摘のように好ましいことではないと思いますが、その場合にも、いろいろ濃淡の差はあるのではないかと思います。私ども感じでは、非常に大ざっぱに申しますと、直接税の場合には所得に応じて課税をされるということでございますので、所得の中身をまたいろいろ選別いたしまして、そして所得の中でもこういう所得については高い税率とか、こういう所得については、たとえばある部分について損金性を否認するとかいう形を通じて、税の中に罰的な要素を入れてくるということについては、率直に申し上げて、非常にいろいろな意味での抵抗感を持つわけでございます。  本来、税と罰とは違うものでございますけれども、そのぐあいの悪い点は――間接税の場合には、これは一つには長い歴史がある関係もございまして、所得税や法人税におきますよりは、税の中にそういう要素が入り得る余地があり得るのではないか。たとえば、間接税の中で最も歴史的に長い伝統を持っております酒の税金とかたばこの税金とかいうものを考えてみますと、ある意味では嗜好品であるとかぜいたく品であるとかいうこともありますけれども、やはり抑止的な意味も持っていたのではないかというふうにいえるのではないかと思うわけでございます。その意味において、あまりその面を強く出し過ぎるということには問題はありましょうけれども、間接税の中に、あるいは流通税の中に、ある程度抑制税的な色彩のものが入ってくることは、かなり広範にシステムとしてもあることではないかというふうに思っております。  具体的に、ただいまの自動車の場合については、すでに自動車がむしろ必需品的な要素になっておるという御指摘でございます。その点はいろいろ見方があるだろうと思います。したがって、自動車について今回のように重量税の引き上げというようなこと、あるいは燃料税の引き上げというようなことがよろしいかどうかについては、確かに御意見もあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、やはり最近のような資源状態なり道路の状態のときにおきましては、少なくとも自家用乗用車、自家用のトラック等につきましては抑制的であるべきではなかろうかという見地に立って、今回の増税をお願いしておる次第でございます。
  77. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから、住宅貯蓄控除制度、この適用を今度二年延長することになっているわけでありますが、これは現行は三万円でありますけれども、今度最高四万円になるわけでありますね。これは確かにこれだけで住宅政策を促進するという柱ではありません。補完的なものには違いありませんけれども、やはりこれは財産形成の一つとして考えられてきているわけです。何年間か貯金をしていく、その何年か後にそれで家を建てよう、こういう考え方においてはいい考え方だと思うのですが、実際には、このようなインフレ状況であれば減価してしまって、貯金したものが実際にそれだけの効果をあらわさないという問題がありますね。  したがって、これは税だけの問題ではございませんけれども、やはりそれだけの目減りした利子の補給をするとか、あるいは他国の制度に見られるような割り増し金をつけるとか、そういう制度がなければならないと思うのですね。それの補完的な立場として生まれたこの税額控除の問題につきましても、やはりこれは実態から考えてみた場合に、将来の七年先の経済がどうなるかということは非常にわからぬ話ですけれども、現実の実態から見た場合に、実態にそぐわないと思いますね。補完だからいいでしょうというかもしれませんが、ほかの制度が進んでなくて、税の面からでもこういう問題をもう少し国民に希望の持てる、魅力あるものにしようというものであるならば、やはり実態に即した考え方でこの制度というものは考えるべきではないだろうか、こう思うわけでございますが、その点いかがでしょうか。
  78. 高木文雄

    高木(文)政府委員 住宅貯蓄控除の制度は、でき上がりました経過において二つの流れがございます。前からありました住宅貯蓄控除制度は、金融機関が住宅ローンをやります際に、お客さんにまず頭金を積んでおいてもらう。それで、一定の頭金になりましたならば、金融機関がそれにいわゆる住宅ローンとして必要な金を提供するということで、その住宅ローンの前提としての頭金奨励策としてスタートしたわけでございます。  もう一方の流れは、一、二年前からスタートしたものでございますが、いわゆる勤労者の財産形成というものの一環といたしまして、雇い主がある程度従業員の貯金について手伝いをして、そしてまた管理をしていくというふうの、勤労者財産形成といわれる制度の中の住宅貯蓄のための頭金部分についての奨励制度であります。  今回、八%、四万円という制度ができましたのは後者の系列に属するものでございます。前者の系列のものはどうもなかなかうまく発展してまいりません。一つは、あとで家が建たない場合にどうするか。過年度において認められました税額控除額を後年度において戻してもらわなければならぬという問題があります。そのことのために、第一の系統の流れのものは、今日まで率直に申し上げて伸び悩みであったわけでございます。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕  一、二年前から始まりましてさらに今回拡充いたしました勤労者財産形成と結びついた制度のほうは、幸いにして勤労者と雇用主とが共同して事業を進めるという関係もありますし、あとで家が建つとか建たないとかいう問題について勤労者に対して雇用者の目が届くという関係もありますので、私は、このほうの制度は将来かなり伸びていく可能性があるのではないか、PRいかん等にもよりますし、雇い主が従業員のためにどの程度の手をかすかということもありますけれども、こっちのほうは相当伸びていく可能性を秘めているのではなかろうかと思っておるわけでございまして、まだスタートして間もないことでございますのでよくわかりませんが、かなりの効果を出すのではないかというふうに考えております。
  79. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは私は税のほうからよりも、住宅を希望していらっしゃる勤労者に対しては、もっと実際に希望の持てるような制度にしていくべきではないかと思うのですね。その面からいえば、いまのわが国の制度というものはすべて、どの制度をとらえてみましても、こういうふうにもう非常に補完的なものが一ぱいついているわけでしょう。ですから、ますますややこしくなっているだけであって、非常にわかりにくくなってきているわけですね。  いま指摘申し上げたとおり、確かに税の面では年々ある程度率を上げてきていますかち、あるいは控除額を上げてきていますから、それなりの効果というものは期待しているわけでしょうけれども、いま言うような大きな背景のある貯蓄制度を設けて、目減りした分については税のほうである程度カバーをして税額控除してあるからその分を割り増し金だとかほかの件でしなくてもという、そういうややこしい制度へ結び付けているような感じがするわけですね。ですから、そういうようにややこしくしないで、やはりやるなら、もう少し明確にこれを大きく、効果が上がっていくように、そしてその制度が明確にわかるような形にしていかなければならないと思うのですね。その面から、この制度は、税制面の制度がいい、悪いという問題よりも、基本的な問題があろうかと思います。これはまた別の機会に触れていきたいと思うのですが、ただ実態に即してこれは年々上げてきているわけでありますけれども、今後もやはりこういう控除限度額は上げていくお考えがおありなんですか。
  80. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまの四万円、八%という水準は、これはかなり高い水準であるということができようかと思います。したがって、ここ数年三万円、六%という制度ができたりいたしてまいりましたけれども、ほぼこの八%、四万円という水準というのは限度に来ておるのではなかろうか。この制度におきましては、あくまで住宅を建てるという前提ではございますけれども、非常に長期にわたって貯蓄をされて、そうして結局何らかの事情で家が建てられなかったという場合についても、この四万円、八%はあとで返してもらわなくてもよろしいというような仕組みになっておることとも考え合わせてみますならば、ある意味では、実質的には利子補給みたいなかっこうになっておるものでございますから、そういうことを考えますと、あまり優遇程度を広げるのもいかがかと思うわけでございまして、まずまずこの辺のところが限度ではなかろうかというふうな感じがいたしております。
  81. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは、ここだけで検討しますと、限度というよりも、実態には全然合わないわけですね。五十万円までについて最高四万円までですからね。年間五十万円貯金した分について税額四万円引くというわけでしょう。  それから、時間がありませんので、二つ、三つあとお聞きしたいことがありますので申し上げておきたいと思うのですが、確定申告を要しない配当所得の限度について、現行の一銘柄五万円から十万円に引き上げる、この問題もすでにもういろいろ問題として出ておりますけれども、やはりほかとのバランスの関係はあるかと思いますが、これも一つの大きな優遇措置ではないか。資産所得と勤労所得とか、いろんなそういう関係の所得の配分の問題だとか、あるいは格差の問題だとか、優遇の問題だとかいうことが出ておりますが、これもやはりほかとのバランス上ここまで上げたと  いうことになっておりますけれども、これ自体が  一つ優遇策になっているのではないかという面を一つ指摘しておきたいということ。  それからもう一つ、技術の振興と資源開発の問題ですが、この中での試験研究費、これについても今度増加率を変えておりますけれども、これぐらいの率であるならば、物価、人件費の上がった分でこの分ぐらいは年々上がるのは当然じゃないかと思われるので、これくらいの微調整に変えただけでは、これはある程度配慮したということはいえないじゃないかという問題が一つあります。  それから、試験研究費の中においては、まあ私企業の商品の研究という面までやはり税制、いわゆるこの補助金的な立場にありますこういうようなもので見なければならないのか、そういう基本的な問題があるので、大きな優遇措置になっておりますし、その点を十分今後配慮すべきじゃないかと思うのですが、それに対する御意見。  もう一点お伺いしておきたいのは、今時公害が問題になっております。その公害対策として準備金制度をつくっておりますが、これはもう他の党からも指摘があったとおりでありまして、利益留保性が非常に高い準備金というものを、いまの環境問題からどうしても公害を早急に解決するということで税制面でも考えられたものであろうと思うのですけれども、やはり公害問題のモラルの問題としては、当然これは企業がこの準備金を積んで順次変えていこうというんじゃなくて、早急に改革しなければならない問題でありますから、こういう制度での優遇という面には一つ大きな疑問がありますし、これこそ大きな企業の優遇になるんじゃないか、こういうように思うわけであります。  いま時間の関係で二、三ピックアップして申し上げましたが、それに対する考え方をお伺いしておきたいと思います。
  82. 高木文雄

    高木(文)政府委員 まず、申告不要制度につきまして一銘柄年間五万円という限度額を十万円に引き上げましたということについてでございますが、これは他の機会にもお答え申し上げましたが、貯蓄奨励の趣旨から、いわゆるマル優と申しますか、非課額を百五十万円から三百万円に引き上げましたり、所得税法の上で生命保険料控除なり損害保険料控除なりを引き上げましたのといわば横並びの関係で改正をいたしたものでございます。この制度が別途いろいろ問題があることは十分承知をいたしておるわけでございますけれども、しかし、個人がどういうふうな形式で貯蓄をするか、金融資産を持つか。その場合に、金融機関に預金をするという場合、それから保険に加入するという場合、株式を保有するという場合、いずれも金融資産を持ってだんだん財産を形成していく形態でございますけれども、そのいずれに片寄りますことにも問題があるわけでございますので、どうも他の制度について拡充をはかりながら、これだけは何ら手を融れないというわけにもまいらぬかということから、今回、四十年度以来据え置きになっておりましたから、これを五万円から十万円に引き上げたということでございまして、別途この問題については、株式の配当についての課税問題、全般の問題の一環として、なるべく早い機会にまたいろいろ議論していただかなければならぬ問題であるというふうには考えております。  試験研究費の税額控除の制度につきましては、これは他の租税特別措置とはやや趣を異にいたしておりまして、税額控除ではありますけれども、むしろ補助金ともいうべきものであるというふうな性格のものでございます。これまた他の機会に申し上げましたが、わが国では私企業に対する試験研究費を歳出を通じて支出をするということがきわめて極限されております。歳出を通じてやることがよろしいか、税をもってやることがよろしいかということは論議のあるところでございますけれども、この制度は、試験研究費を増額しましたならばそれについてメリットがあるという仕組みになっておりますので、その意味では、歳出を通じていたします補助金よりは、比較的奨励措置としてのインセンティブ効果が大きいのではないかと思っております。  ただ、御指摘のようにきわめておおらかに仕組まれております関係上、私企業の全くの商品のようなもの、そういうもののための研究にも向けられるということになっておりますが、さてしかし、いろいろな研究のうちどういう研究はいいがこういう研究はいかぬというようなことを選別をいたしますことは、実際上、もし税のほうでやりますたてまえをとる以上は不可能に近いわけでございまして、そういう選別をやるべきであるというお立場でございますならば、やはり税ではなくて歳出のほうで仕組むという以外に方法はないのではないかと思っております。  それから、人件費の増加割合が最近は高くなっておりますから、現在の一二%をこえましたならば五〇%の税額控除というような制度は甘いということは御指摘のとおりでございまして、そのことを頭に置きまして二五%の優遇措置と五〇%の優遇措置の限界点を、従来の一二%から一五%までに引き上げたわけでございます。一五に引き上げましても、最近の人件費増加率からいえばなお甘いではないかという論議があろうかと思いますが、まあここ一、二年のベースアップ率は異常なものでございますので、制度の仕組みといたしましては、制度でございますから制度として考えます以上は、まあ一五%というのはある程度の水準ではないかというふうに考えます。  三番目の公害防止準備金の問題につきましては、これまた他の委員のお尋ねにお答えをいたしましたが、確かに問題のある制度でございます。公害対策が緊急に進められなければならないことであり、同時に、公害問題が最近になって急に大きくなった問題でありますために、何らかの対策が必要だということでこういう制度が設けられたわけでございますけれども、この制度と公害防止準備のための支出とが結びついていないという点において、かなり大きな弱点を持った制度でございます。今回もその点を何とか改善をした上で延長をお願いするということにできないかと思いましたけれども、どうもうまく結論を得るに至りませんでした。  そこで、主たる官庁であります通産省なり運輸省なりとの間におきまして、何とか緊急にこれが改善の方途を見つけるということをお互いに協力して努力するといういわば申し合わせのもとにおいて単純延長をお願いすることにした次第でございまして、私どももこの制度には相当改善すべき余地があるというふうに考えております。
  83. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、最後に申し上げておきたいのですが、今度の所得の減収額試算表によりましても、これは大きくふえております。内容は少額貯蓄の利子等の非課税、そういったものもふえておりますけれども、いまも二、三いろいろ指摘しながらお話し申し上げましたように、やはり企業優遇という措置がいわゆるペンディングになったままで、思い切った洗い直しというか改正というものが如実に行なわれていないために、今度、準備金がいろいろな関係で大きくふえて減収になる、あるいは価格変動準備金も大幅な減収になる、これは数字的にも出ておりますが、やはりこういったいままでの企業優遇の税制の形を、先ほどの配当軽課の問題にしても、所得の問題にしても、これを機会に大きくメスを入れて抜本的に洗い直すという必要があるのではないかと思うので、その点について当局としての今後の取り組み方を最後にお伺いして、終わりにしたいと思います。
  84. 高木文雄

    高木(文)政府委員 経済が伸びてまいりますと、どうしても所得も大きくなってまいりますし、税額も伸びてまいりますので、多少とも、たとえば率でいろいろな準備金制度をきめておりますと、特別措置の減収額が大きくなってまいります。そこで、御指摘のように、絶えず洗いがえに留意をしていかなければならぬわけでございます。  今回も、先ほど申しましたが、いずれかと申しますと、昨年あたりに比べますと、ことしは税率のほうにいろいろ精力を投入したかっこうになっておりますけれども、それでも相当努力をいたしたつもりではございましたが、先ほど来御指摘のように、なお問題があるということは、私どももそのとおりと考えます。税制調査会からもいわれておりますし、当委員会におきましても、毎年御指摘を受けていることでもございますので、なかなか容易なことではございませんが、今後ともいろいろの問題点を洗い出してまいりたい。そうして、いやしくもみだりにこの減収額が増加することがないようにいたしてまいりたいというふうに考えます。
  85. 松本十郎

    松本(十)委員長代理 村山喜一君。
  86. 村山喜一

    村山(喜)委員 きょう確定申告の締め切り日でございまして、所得税の確定申告をそれぞれやっているわけでございますから、その立場からちょっと税法の基本的な問題を論議をしてみたいと思うのであります。  所得税法の百二十一条で、五百万円以下の給与所得者は申告をしなくてもよろしいということになっておりまして、所得税法の六条で、二十八条一項に規定をする給与等の支払いをする者は源泉徴収が義務づけられておることは主税局長も御承知のとおりでございます。同じく百八十三条で、給与等の支払いをする者は、支払いのときに所得税を徴収し、翌月の十日までに国に納入しなければならないとされております。そしてそれらの行為を担保するために、二百三十九条によりまして、偽りその他不正の行為で義務を果たさなかった者は、「三年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という罰則規定がございます。  そこで、ことしは約二万名ぐらいのいわゆる源泉徴収の居住者が税務署に対しまして確定申告の要求をして、それぞれ各所轄の税務署に自分たちの所得の確定の申告をしている状況を聞いております。前にこの問題で、昨年の三月二十七日、高木主税局長は山田耻目君の質問に答えて言われるには、所得税法の六条と百八十三条を引用されまして、給与支払い者を源泉徴収義務者としているので、裏側の解釈から納税者は受忍義務がある、そういう法律解釈で受忍義務の範囲だということを言われたことを銘記しているわけでございます。  そこで、この関係は、やはり憲法の納税の義務、納税者としての権利という問題に関連をいたしておりますし、この問題につきまして本来のいわゆる納税義務者である源泉徴収の受給者、それから源泉徴収義務者であるところの支払い者、それから国という三者が構成をされて、そこで源泉徴収義務者というのはいわゆる二つの性格を持っている。第一は徴税機関的なその地位であり、そして納付しない場合にはこれは納税者的な地位に立たせられるという関係にあります。したがいまして、これは公法上の租税法律関係にあることは間違いない。しかし、今度は本来の納税者であるところの受給者と支払い者の間の問題は、これは公法上の関係ではなくして民事上の関係だというふうにわれわれは受け取っておるわけでございますが、そういうふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  87. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そのような御解釈でけっこうであると思います。民事上の関係であるという御解釈でよろしいのではないかと思います。
  88. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、いわゆる本来の納税者であります受給者と支払い者の間は求償権をめぐるところの民事関係が存在をするだけであって、徴税義務者が代替納付をした源泉徴収税額については、受給者に対して求償する場合にはどういうような措置をとるのですか。
  89. 高木文雄

    高木(文)政府委員 所得税法の二百二十二条というところで、源泉徴収義務者は従業員等から請求をするという規定がございまして、その関係で、雇用者と源泉徴収義務者との関係はこの規定によって律せられることになっております。
  90. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは通常の民事手続によらざるを得ないということになりますね。
  91. 高木文雄

    高木(文)政府委員 源泉徴収義務者は、根拠規定はこの規定にありますが、手続としては民事手続によって請求することになると思います。
  92. 村山喜一

    村山(喜)委員 その求償権を行使する場合に、遅延損害金の場合は、これは何によりますか。
  93. 高木文雄

    高木(文)政府委員 お尋ねの趣旨は、先に源泉徴収義務者が国に払っているので、その分を従業員から徴収する場合の、その期間の遅延利息という意味と解してよろしゅうございましょうか。――二百二十一条で、「(源泉徴収)の規定により所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかったときは、税務署長は、その所得税をその者から徴収する。」とありまして、それで、この規定によって納付した税額について請求できるというのは、先ほどの二百二十二条でございますので、ただいまおっしゃるような意味での負担については、源泉徴収義務者は二百二十二条によっては請求できないと解すべきではないかと思います。あとでもう少しよく検討して正確にお答えいたしますが、いまちょっとこれを読みました感じは、この規定による請求はできないのではないかというふうに考えております。
  94. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十五年の十二月二十四日に最高裁の判決が出ておりますが、これによりますと、「源泉徴収による所得税を税務署長から徴収されまたは期限後に納付した支払者の、受給者に対する求償権は、右所得税の本税相当額についてのみ行使することができ、附帯税相当額に及ばない。」また、求償にあたっての遅延損害金は、民事法定利率によるべきであるという判例が出ておりますね。
  95. 高木文雄

    高木(文)政府委員 手元にその判例の解説を持っておりますが、ちょっと実は不勉強でよく見ておりません。正確には、もう少しよく勉強いたしましてからお答えをいたします。
  96. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、そういうようなのをもとにいたしまして、受忍義務の内容と限界というのは一体どういうふうに高木主税局長考えていらっしゃるのか、このことを明らかにしておかなければならないと思うのです。税法上は労働者の人格権が認められていない。納税者として取り扱われていないわけです。受忍義務というのは税法上発生をしているものではないとわれわれは考えている。それは民事上の問題だというふうにとらえておるのですが、それで間違いございませんか。
  97. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昨年も、先ほどお触れになりましたように、山田耻目委員のお尋ねに対して、御紹介いただきましたような形でお答えを申したわけでございますが、その関係は、第六条で、給与等の支払いをする者は、支払いにかかる金額につき源泉徴収をする義務があるという規定がございます。そこで、支払いを受けた者の義務をどう理解すべきかという問題でございまして、昨年のお尋ねのときには、六条と他の規定との関係から、やはり受忍義務ということで理解すべきではないかと申し上げたわけでございますが、さらにその後いろいろ勉強いたしましたところでは、その六条の前の五条に「居住者は、この法律により、所得税を納める義務がある。」という規定がございます。給与等の支払いを受ける者というのは、本来的には、まず五条で納税の義務がある。ただ、六条で、その関係について具体的に、給与の支払いをする者が支払いにかかわる金額につき源泉徴収をする、こういう形をとっておるということでございまして、昨年のときには、この五条と六条の関係を十分説明をいたしませんでしたけれども、給与の支払いを受ける者は、六条の裏解釈というようなことだけじゃなくて、本来的に五条によって納税義務があると解すべきではなかろうかというふうに解します。  ただ、その支払い者と支払いを受ける者との間においてはどういう関係があるのかということは、現行税法上正面から規定はございませんので、先ほどおっしゃいましたように、何らかの紛争があります場合には、民事関係によって処理されるべきものであるという先ほどお尋ねがあり、それでよろしゅうございますと申し上げた解釈になるものと思っております。
  98. 村山喜一

    村山(喜)委員 所得税法の第五条で、居住者は所得税法により所得税を納める義務があるということは、私も知っております。しかし、そこには源泉徴収をされる義務は法定化されておりません。それは給与を支払う者については、その支払いのそういう源泉徴収の義務はありますが、しかし、給与を受ける、本来のいわゆる納税義務者である者は、源泉徴収をされる義務というものは法定化されていない、こういうふうになっておりますね。したがいまして、第五条というのはそういう一般規定にすぎない、そういうふうに解釈せざるを得ないと私は思うのです。  そこで、受忍義務者としての納税者の法的地位というものは、そういうような意味からいったときに、国税通則法の四十六条、これはどういうように適用されますか。
  99. 高木文雄

    高木(文)政府委員 正確にお答えいたしますために、ちょっとお待ちいただきます。
  100. 田邊曻

    ○田邊説明員 主説局長にかわりましてお答え申し上げます。ただいまお触れになりました国税通則法の四十六条は、主として徴収義務者がその徴収して納付すべき税額につきましての徴収猶予につきましての規定でございます。別途お触れになりました給与所得者それ自身につきましては、たとえば災害減免法の規定によりまして、家財その他につきまして甚大な被害を受けた場合には、その法律に基づきまして、支払われた給与についての源泉徴収税額の徴収猶予なり減免の規定がこの規定に基づいて働くわけでございます。
  101. 村山喜一

    村山(喜)委員 災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律、これは確定申告の段階で働くことは私も知っております。いま私が質問をしているのは、その受忍義務者としての納税者の法的地位の問題を明確にしておかなければならない。国税通則法の四十六条で、事情考慮の原則というものが受忍義務者であるところの源泉徴収を受けている者にはどの程度適用されているのかということを聞いているわけです、猶予制度が。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕
  102. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいまの御指摘の点につきましては、現行法上はございません。
  103. 村山喜一

    村山(喜)委員 全然ないのですか。
  104. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十六条は、これは源泉徴収義務者がいまの納税者といいますか、給与の支払いを受けた者から源泉徴収して納める税の場合の猶予規定でございますので、いまの支払いを受ける者の問題は、四十六条とは無関係という関係にあると思います。
  105. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、納税の猶予とかあるいはその納税者と生計を一にする親族の病気とか負傷、それについては猶予という制度はないわけですね。
  106. 高木文雄

    高木(文)政府委員 災害に関しましては、その猶予の規定が災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律のほうで、その地位が給与  の支払いを受ける者について認められておるという関係になっております。
  107. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは別の法律で保障されている。しかしながら、納税者と生計を一にする親族の病気等については、あるいは負傷については、そういうような猶予の制度はない。これは不公平じゃございませんか。
  108. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いまちょっと見たところでは若干そこの問題があるように思いますが、いますぐにはちょっとお答えできませんので、少し勉強させていただきたいと思います。
  109. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは法律条項にないのですよね。直接の規定はないのです。だから私は、不公平だということを言っているわけです。法のもとに平等であるべきものが、本来の納税者としての権利が確立をされていないために生まれている一つの不平等な取り扱いだ、差別だと思うのです。  そこで、第三の質問ですが、事業主が税金の計算を間違った場合の救済策はどうですか。
  110. 高木文雄

    高木(文)政府委員 間違って申告をした場合、あとでそれに気がついたという意味でございましょうか。
  111. 村山喜一

    村山(喜)委員 その場合と気がつかない場合と、二つありますね。
  112. 田邊曻

    ○田邊説明員 納税者が間違いまして、その意思の表示を納税者側がみずから行なわれる場合と、それから納税者の意思がなく税務署側が積極的に行なう場合と二つございまして、現行法上は国税通則法のまず二十三条で、納税者が気がつかれた場合には更正の請求をいたします。更正の請求がない場合は、やはり同じ国税通則法の二十四条の更正で、減額更正の処分をいたします。
  113. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは、源泉徴収を受けている給与をもらっている人は自分で自分の計算をやっているわけじゃありませんから、自分の行為に対して責任は持っていないわけです。これは事業主が源泉徴収義務者ですから、その人が税金の計算をやって、それでその給与を受ける者がそのために不利益を受けた場合、事業主が気がついたらそれは更正の手続をとるでしょう。税務署が気がついたら同じような措置をとるでしょう。こういうような場合が出てきているわけです。通勤費を、中小企業ももう小企業から零細企業のあたりになりますと、ぶち込みで、おまえのものはこれだけの給与という形で払っておる。中には通勤費が入っておる。ところが、現行法律によると、六千円までは非課税の措置がとられるでしょう。しかし、その人はそういうようなことも知らない。そうして経営者も、六千円になるかならないかも知らないでもうぶち込みでおまえのものは六万円だ、こういうようなふうにした場合、それはどういうふうにして救済をしますか。
  114. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは先ほどの地位のところでお触れになりましたことにつながっているわけでございまして、やはり支払いを受けた者と支払いをした者の間の民事関係の処理ということになろうと思います。
  115. 村山喜一

    村山(喜)委員 民事関係のものということになりますと、裁判所に訴えまして債権債務を確定して、そして強制執行の手続きをとって執行吏がそれを行なうということになりますね。
  116. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そういう筋道になります。
  117. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういうようなめんどうなことを雇用主と零細な企業に働く労働者の間で行なう、そういうような実例というものはあり得るとお考えですか。
  118. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはないとはいえないと思います。そういう事例が全くないとはいえないと思います。
  119. 村山喜一

    村山(喜)委員 では判例がございますか。
  120. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どもは判例があるというふうには承知はいたしておりません。
  121. 村山喜一

    村山(喜)委員 判例がないということは、そういう裁判によって争われたことが現在まではないということ、先ほどはあるとおっしゃった。
  122. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いや、民事上の関係にあるということでございます。現実にそういう争いがある、起こっておるというふうに申し上げましたならば、その点は訂正をいたします。
  123. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういうような場合の真の責任者というのは、一体だれです。
  124. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おそらくちょっと、正確に申し上げないといけないところでございますが、法律論でございますからむずかしいところでございますが、先ほどの通勤手当の場合でございますと、給与の支払いについての、つまり給与として支払うのか、通勤手当として支払うのかという問題が一つと、もう一つは、それを給与として源泉徴収をするにあたって、通勤手当分は通勤手当として一定の額の非課税扱いをすべきところ、そこに誤りがあったということになろうかと思いますので、その意味においては、給与支払い者の責任と言わざるを得ないと思います。
  125. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、私はこの源泉徴収制度というものを考えてみますと、このやり方というものは本来は所得税の前納制度にすぎないんじゃないか、そういう解釈を最高裁の判決の主文から見ましても、あるいはまた、いま申し上げましたような受忍義務の内容や限界とか、あるいは納税者としての法的地位とかいうような問題を振り返ってみますと、そういうふうに解釈をせざるを得ないと思うのです。この点はいかがですか。
  126. 高木文雄

    高木(文)政府委員 前納というのはどういう意味でおっしゃっているか、またどういうふうに見るか、なかなかむずかしいところでございますが、単なる前納ということでは現行制度上の仕組みは割り切れないと申しますか、説明し切れない仕組みでございまして、源泉徴収義務者自体が一定の法律上の義務を負っておるという関係にあると思います。単純なる前納という関係で組み立てられているという仕組みにはなっていないのではないかというふうに理解をいたしております。
  127. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題は、やはり源泉徴収制度というのがあるのは、私は取る側の税法の理論構成に基づいたものであって、取られる側の納税を主体にする、その納税者としての主権行使のためのものではない。だから、そういう源泉徴収制度をやって給与支払い者に納税の義務を課することによりまして、徴税費は要らないわけですね。ただで非常に簡単に、そうして文句も言わせないで、延納の手続なども給与受給者にはさせないで、そうして有無を言わせず取り立てて、五百万円以下の場合には年末調整で処理をつけて、確定申告のときには、災害やその他の特殊の条件のもの以外は恩恵を与えない、こういうような制度の仕組み自体に問題があるのだという指摘を残念ながらせざるを得ないと思うのですが、そういう意味において、私は、本来所得税の前納制度である、こういうふうな定義づけを明確にすべきではないか、こういうふうに考えるのですが、その点いかがですか。
  128. 高木文雄

    高木(文)政府委員 源泉徴収制度につきましては、いま御指摘のように、徴収サイドと申しますか、もっと簡単なことばで言ってしまえば、国側の便宜という面が相当大きなウエートを占めていることは事実でございます。しかしながら、それは全く国側の便宜だけのためということでスタートしている制度かというと、それは必ずしもそれだけで割り切れるわけではないのでございまして、納税者サイドから見ましても便宜であるという面があることは否定できないと思うのでございます。  現実問題といたしまして、給与支払い者が源泉徴収義務者でありますと同時に、税務の仕事を代行するというかっこうになっておりまして、そこにはそれぞれその仕事にたんのうな方が担当しているという現実がございます。それで、必ずしもそういう制度があることが納税者サイドにとって単純に不利一本のものであるということではないのではないかというふうに私どもは理解をいたしております。従来からそうした問題は、いまここに持ち合わせておりませんが、いろいろな機会に法廷等で論議がありました際にも、私どもといたしましては、そういうものの考え方で臨んでおるわけでございます。
  129. 村山喜一

    村山(喜)委員 今日の民主憲法のもとでは、国民の主権意識というものが定着をしておる。それは国民の固有の権利である納税というものについての自己賦課権といいますか、自分の所得はこれだけある、だから、税法に従ってこれだけの税金を納めなければならない、そうしてまた、自分の経費というものはこれだけあるのだから、それを認めてもらわなければならない。やはりそういう基本的な考え方に立って喜んで税金を納めるという体制がなければ、ただ、おまえのやつは源泉徴収だからそっちのほうが便利だろう、税金を取る側の解釈だけを源泉徴収を受ける者たちに押しつけていくというやり方は、私は納税に対する意欲というものを失わせていくというデメリットが働いているのだと思うのですよ。そういうような意味から、先ほどはまだお答えをいただいておりませんが、税法上の受忍義務者の責任というものを私は明確にしておく必要があるし、また年末調整によって、家族が病気をしているのに、困っているのに、そういう事情等に対する考慮の原則も適用されないで、強制的にやられるようなやり方というのはこれはおかしい。したがいまして、もう少しそこら辺の年末調整というものに対する選択権というものをいわゆる受給者に与えていくというような基本的な考え方というものを立てなければ、もうこういうふうになってまいりますと、全部便宜主義だけで、徴税の側のそういう考え方だけで律していくというのは間違いであるというふうに私は思わざるを得ないのでございますが、そういう立場から四十五年の最高裁の判決の主文を見てみると、源泉徴収制度というのは本来所得税の前納制度にすぎないのだという統一した解釈が生まれてくるような気がしてなりません。私はそれをもっと徴税の側にある人たちが検討をされることを要望したいと思うのですが、中川政務次官、どうですか。
  130. 中川一郎

    ○中川政府委員 非常に微妙な問題でありますので、十分検討さしていただきたいと存じます。
  131. 村山喜一

    村山(喜)委員 これに関連をいたしまして、いわゆる税金を納めなかった不納入の行為というものが故意に脱税をした者と同じような刑罰に処せられるということは、憲法三十一条の規定から見まして、これは偽りやその他の不正の行為によって税を免れることを犯罪構成要件とする通常の脱税犯と罪質が異なるのではないだろうか、こういうふうに私は考えるのですが、それはやはり同じだと解釈をされますか。
  132. 高木文雄

    高木(文)政府委員 二百四十条には明示の規定はございませんが、これらは刑罰でございますから、刑法の原則に従って、不納付でありましても、故意犯、故意によって行なったという場合に限ってこの二百四十条による三年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金に処するという規定が働いてくる。その他の規定にはなるほど「偽りその他不正の行為により、」という文言がかぶっておりますが、二百四十条にはそのことが明示されておりませんけれども、刑事犯である以上は、当然に故意がなければこの二百四十条による科罰が行なわれないというふうに解釈をいたしております。
  133. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは地方税法の百二十二条の一項と同じなんでして、そういうような意味においては、故意というものを要件として成立することは間違いないわけです。しかし、私が言うているのは、偽りやその他の不正行為によって税を免れる行為をやる、それを犯罪要件として通常のいわゆる脱税犯というものが確定をする、その場合のいわゆる罪質と同じようにとらえていいかどうかという問題、これは憲法の三十一条の上から見て、どういうふうに皆さんは解釈をしていらっしゃるのかということをお尋ねしているのです。同じだとお考えですかということを言っているのです。
  134. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は御意見のとおりで、同じだと考えております。
  135. 村山喜一

    村山(喜)委員 同じだというのは、それは、そういうような犯罪構成要件、偽りや不正やの行為によって税を免れる行為をその犯罪構成要件としております普通のものと、故意の場合は何ら変わりがない。これは強制力を持たした形でそういうようなことをおやりになる考え方は、現行の法律はおっしゃるように三年以下の懲役もしくは百万円以下の云々というのがありますから、同じ構成になっているのは私は間違いじゃないかということを言っているわけなんです。
  136. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっとお尋ねの趣旨が正確にわかりませんので、実はこの刑罰規定の解釈権限は私どもにではなくてむしろ法務省刑事局のほうにございますので、ちょっと不正確なお答えをするのもいかがかと思いますから、必要があれば法務省のほうからお聞き取り願いたいというふうに思います。
  137. 村山喜一

    村山(喜)委員 ではそれはおいておきますが、きょうは所得税の確定申告が行なわれておりますが、その中で、源泉徴収を受けている者が医療費の控除が発生をしている、雑損控除がある、住宅取得控除がある、こういうようなものは本人がみずから申し出て申告をしない限り控除されませんので、税務署に確定申告の手続きをやっておるわけですが、そういうような意味においては、いま税法の上でただ受忍義務者だという形で取り扱われている源泉徴収を受けている給与をもらっている人たちの税法上の地位というものがもっと明確に規定をされて、そして本人が源泉徴収の適用を受けるかあるいは年度末に確定申告をするか、いずれかの取捨選択の権利が与えられなければこの問題の解決は十分にできない、そういうふうに考えているわけでございますが、いま申し上げました三つの控除については、確定申告を求めてきた場合には、それに対して、おまえは五百万円以下の収入しかないから云々というようなことで追い返すようなことは絶対ないでしょうね。
  138. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは当然申告要件になっておりますので、申告をしていただくことになっておりますから、受け付けないというようなことはあり得ないわけでございます。
  139. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、高木さん、この問題を私はやはりもう少し、現在の税金を取る側の理論だけではなくて、納税者としての権利義務、そういう立場の上から、喜んで税金を納めるような体制、そして納税というものに対する国民の意識を高めていくというような意味からも、私は急にこれを改正しなさいと言ってもできないと思いますが、長期的な課題として検討されるべきだ、こういうように思うのですが、いかがでございますか。
  140. 高木文雄

    高木(文)政府委員 たいへん細部にわたりまして御指摘をいただきまして、十分答弁できませんで恐縮でございましたが、そこのところは、まさにおっしゃる問題があるわけでございます。  実は現在の所得税法は、昭和四十年に全文改正をいたしたのでございますが、その全文改正をいたします際に、いろいろと問題がございました。でき得れば、源泉徴収に関する規定をもう少し、より明確にできないか。それは国と源泉徴収義務者と、それから先ほどの例でいいますと、給与等の支払いを受ける者との関係を、何らかもう少し明快にできないかということが、四十年の全文改正のときの一つの課題でございました。それまでも源泉徴収に関しまして、ただいまは給与についてございましたが、その他の利子等の問題につきましても、いろいろ訴訟事案等がございました。それで、いろいろとそこをもう少しより明確にすべきだという問題があったのでございます。  それで、当時、担当者はかなりいろいろ研究いたしましたのでございますが、実は時間的に制約がございましたのと、そこを変更すればするで、旧来とどういうふうに変わってくるのかというあたりに、また問題が起きてまいりました。最後に、いろいろの論議の末で、実はやむを得ず見送ったという経緯がございます。  そのことを申しますのは、私どももそこに問題があるということはかねがねある程度承知をしながら、実は申しわけございませんが、今日まで来たわけでございます。御指摘のように、いろいろ納税者の地位、源泉徴収義務者の地位、それと国との関係というものが、必ずしもぴったりいっていない点がございます。それらを全部きりっとすっきりするということは、なかなかむずかしいことでございましょうけれども、たとえ部分的にでも考えまして、直し得るものから漸次直していくという態度で臨んでまいりたいと思います。御趣旨はよくわかりました。
  141. 村山喜一

    村山(喜)委員 第二の問題点ですが、衆議院の予算委員会、いままた参議院でやっておりますが、この中で明らかになりましたのは、大商社、大企業者がたいへんな悪質脱税行為を続けてきた。所得を隠蔽をし、そして仮装をして申告書を提出をする。それの処理に当たりましては、重加算税等によりまして処理をされた向きもあるようでございます。日本の税法上の過少申告なりあるいは無申告、不納付あるいは重加算、その場合の無申告と不納付の場合の差もありますが、これらのいわゆる脱税事犯に対します徴収の加算税の問題、あるいは国税の徴収権の時効の完結の問題、この問題は、私はここら辺で考えてみる必要があるのではないだろうかという気がするのでございます。  アメリカの場合やイギリス、西ドイツ、フランス、イタリアというような国々の例も調べてみましたが、いま日本の場合には、五年ということになっているようでございます。ところが、アメリカの場合等は、虚偽の申告がなされた場合は無期限となっているわけでございまして、イギリスの場合でも、脱税の場合には無期限ということで処理をされている。西ドイツの場合は脱税は十年。こういうことになっておるわけでございますが、日本の場合には国税通則法の七十二条、会計法の三十条、これで五年で時効の消滅ということになっているわけですね。  これらの問題については、最近のそういうような事例から考えまして、やはりきびしく処理をしていくということがなければならないと思うのでございますが、それについてはどういうふうに税務当局はお考えでございますが、考え方をお聞かせを願っておきたいと思うのであります。
  142. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この問題は、かなり沿革的なものでございます。また一方においては、除斥期間なり時効なりの期間があまり長いということになりますと、不安定な状態に納税者のほうを置く。これはしかし、不正、不当なんだからいいではないかと言ってしまえばそれまででございますけれども、またそこに問題がある。さりとて、大企業と小さい企業と分けるというような問題も、なかなか問題がまたございます。そういうことでございますので、しょっちゅう問題になります。あるときには、これをもう少し場合によっては短くしたらどうだという角度からの御議論もございますし、また、ただいま御指摘のように、特に大企業等につきましては帳簿その他もあるのだし、そういうものの保管能力もあるわけだから、もっと延ばしたらどうだという御意見もあるわけでございます。そこらは、従来からもある程度問題認識はございまして、たとえば、いろいろな国税通則法でございますとかその他の法令、規程の改正の機会に論議したことはございますけれども、より延ばすのがいいという議論も、またより短くするという議論も、なかなか出しにくいということで、今日まで大体従来のやり方を踏襲してきたという経緯でございます。  しかしながら、また諸外国で無制限ということになっておりますが、これも一体どういうふうに現実にやっておりますのか、よくわかりません。実際のやり方として、無制限にさかのぼるというのは、執行上は一体どういうふうにやっておるのであろうかというようなことも、よくわからぬ点があるわけでございます。  いずれにいたしましても、しかし一方におきまして、また実は現在の執行の状況から申しますと、御存じのように、いまでもなかなか手が回りかねておるという現状も一つございます。企業の活動のほうはどんどん拡大をしてまいりますので、職員の諸君も非常に苦労をして、まただんだん経験を積んで、少しずつは能率も上がっております。また、機械等を入れることによって、人力から機械力に置きかえることによって余裕を生み出して、調査等に人を回すというようなこともやっておりますけれども、いかにもどうも経済の拡大が大きいために手が回りかねているというような現状でございますので、ごく最近、ここ一、二年のところでは、いま村山委員御指摘のように、もっとこれを延ばしてはどうかというような意識は、実は率直に申しまして、必ずしも持っていなかったわけでございます。しかし、ときおり悪質なものというようなものが出てきましたときに、場合によりましたならば、もう少し延ばしたらいいんじゃないかといった議論が出たりするわけでございます。今後とも、重ね重ね検討はいたしてまいりたいと思います。
  143. 村山喜一

    村山(喜)委員 これに関連をしまして、租税の消滅時効について小規模事業者に限っては三年にしよう、こういうような案が――私は政府にあるとは言いません、これは一人の国会議員の案にすぎませんが、そのねらいは民商対策だというような、政治的なねらいを持ったものが浮かんできているやに聞いているわけです。その記事も見たことがございますが、具体的な名前はこの際あえて避けますけれども、そういうようなふうに税法というものを便宜的に考えていけば、悪いことをしたやつはいつまでも抜け穴があるようなかっこうになって、そして正確を期さなければならないその税の執行の面において、それがどうにもならないようなかっこうになってくる。それを政治的に悪用しようというようなやり方は、これは許してはならない。  むしろこの際は、そういう脱税を意図的にやっているようなものについては、先進資本主義の国々の実例等も見てみますと、非常にきびしいものがあるわけでございまして、私は、やはりえりを正さなければならない場合にはきちっとしておかないと、筋の通らないものを打ち出されてきたんでは、税の執行に当たる皆さん方をはじめ、税理士あるいはその他の関係者にもきわめて悪影響をもたらしてくるというふうに思うのでありまして、そういうような意味から、政治的な意図がどこにあるか明確にさせなければならない時期も来るかもしれませんが、そういうような時期が来ないように、むしろ現在のその五年というのをせめて西ドイツ並みあたりに、十年あたりに脱税は時効完結が延長されるような措置をとらなければならない段階にきているのではないか。特に、大企業がああいうような過少申告というような措置をとった実例等が出ておりますので、そういうような立場からこの問題についての所見を申し上げたわけでございます。変な政治的な動きに左右されることがないように、私は、筋を通される中川政務次官はその点はきちっとされるだろうと思うのだが、いかがでございますか。
  144. 中川一郎

    ○中川政府委員 貴重な意見でございますので、政治的な圧力によって時効を短縮するようなことは絶対にいたさないというふうに、厳に慎んでまいりたいと存じます。  ただ、時効を長くしたらどうかという御意見も、また確かに一つ意見でございますが、他の犯罪との時効関係もあります。しかし、村山委員御指摘のように、源泉徴収者との今度は横並びからいくならば、よりまた公平感を欠く。非常にむずかしい問題でございますが、あれこれ慎重に検討してまいりたいと存じます。
  145. 村山喜一

    村山(喜)委員 わかりました。  そこで、税法の改正案の内容に入ってまいりますが、まず所得税法の改正案の中で、もはやこれも触れられておるかもしれませんが、少額貯蓄のあり方の問題ですね。一体、現在の個人の貯蓄額というものは、それぞれ勤労世帯なりあるいは商人、職人あるいは従業者、さらにまた農家や漁業者、そういうような上から見まして、現在どれだけの貯蓄の実態があるというふうに推計をされておりますか。
  146. 米山武政

    ○米山説明員 お答えいたします。  なかなか勤労者の貯蓄が幾らかというのは、勤労者の定義等非常にむずかしいわけでございますが、先生がいまおっしゃったような分類で、総理府統計局の貯蓄動向調査等から推計いたしまして、四十七年末ぐらいの数字になりますが、雇用者は大体三十兆四千億程度、それから商人、職人あるいは個人経営者等いわゆる小企業者でございますが、これが十五兆五千億程度、それから農業者、漁業者等も同じく十五兆五千億程度、合計しまして、いわゆる零細の勤労者等を中心とする方々の合計は六十一兆四千億程度になるのじゃないかと思います。
  147. 村山喜一

    村山(喜)委員 その場合の世帯平均の貯蓄額は幾らになりますか。
  148. 米山武政

    ○米山説明員 これはやはり、いま申し上げました雇用者、小企業者、農業者等でずいぶん違いますが、雇用者の場合、一世帯当たり百七十三万円程度、それから小企業者は二つに分かれまして、いわゆる個人経営者と商人、職人等に分けまして、商人、職人等が二百十六万円程度、それから個人経営者が五百三十四万円程度、それから農業者が大体三百万円程度、漁業者で百三十七万円程度であります。
  149. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、平均いたしますと二百十五万程度、こういうことでよろしゅうございますか。
  150. 米山武政

    ○米山説明員 その程度でございます。
  151. 村山喜一

    村山(喜)委員 これはいつの新聞でしたか、消費者物価の上昇が続いていく中で、一年二カ月で一世帯当たり五十七万円目減りがしたということを総理府の貯蓄動向調査に基づいて計算したのが新聞に大きく報道されておりました。その場合の四十七年度末の雇用者のいわゆる平均貯蓄額というのは、先ほど言われた数字より少し上回っておりまして、百七十八万八千円程度であるということが新聞にも報道されておりました。大体二百十五万というのが、高木主税局長、全世帯の平均的な預金額になるようでございます。  ところが、今度提案をされております少額貯蓄、これは三百万円ですね。一人ですよ。四人おりましたら三、四が十二、千二百万円ですね。千二百万円は少額でございますか。私はその少額という意味がどうもわからないのでありまして、私自身もそんな金を持っておりません。皆さん方の中には、政治家の中には持っていらっしゃる人もおるでしょうが、そこにお並びの局長や各部長、課長、そんなお金をお持ちになっていらっしゃる人はいないと思うのです。いらっしゃるのだったら、ひとつおれは持っているということを発表願いたいのですが、そうすると、国会議員の金持ちの人は別にしまして、中川政務次官なんかはそれはたいしたものでしょうが、われわれクラスはそんな金を持っていない。高級官僚であるあなた方も持っていない。とするならば、少額貯蓄という名前でいわゆる税法上の特別の恩典を所得税法で与えなければならない理由について承りたい。
  152. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どももいつもこの問題については、いま御指摘のような感触を持つ場合もあるわけでございます。しかしながら、金融のことに携っている、たとえば貯蓄を集めることに従事している金融機関の人、あるいは郵便局の方、あるいはまた保険会社の勧誘の方、また証券の人たちの意見を聞いてみますと、やはり現行の百五十万円で限度がきておるという方もあるようでございます。どうも貯蓄については、事の性質上、平均的な数字はいま米山総務課長から御紹介申し上げましたようなことであり、すでにここで御議論がございましたようなものが平均的な水準であると統計的にはいわれておりますが、分布に関する調査が十分できていないのでございまして、現場でいろいろ仕事をしていらっしゃる方の話を聞きますと、この際さらに貯蓄を奨励するといいますか、願うという趣旨からいえば、いまの百五十万円を三百万円にすることがそんなにひどく公平論からいいまして行き過ぎになるということではないというふうに話を伺っておるわけでございます。その辺は、私ども自分で金を集めるほうの役をしたことがございませんので、よくわからないわけでございますが、従来からきました経過等を見まして、何年かに一度ずつワクを広げていくという経過からしますと、今回二百五十万円なり三百万円まで上げるということは、さほど従来に増して不公平を拡大するということにはならないのではなかろうかというふうに考えます。  ただ、ただいま御指摘にありましたように、これは一人についてであるということがまず一つございますし、それから非課税貯蓄の優遇制度のほかに、郵便貯金もありますし、国債別ワク制度もございますということになりますと、千四百万円まで活用できる。もし非常にじょうずにいろいろな制度をうまく使いますれば、何も不正とか不当とかいうやり方をしませんでも、一人千四百万円まで使えるということでございます。その辺をどう考えるかということでございますが、そうかといって一般の非説税貯蓄と国債別ワクと郵便貯金と振り分けてやるということを前提にしてこの制度をきめるわけにもいかないということがございまして、いろいろ論議の末、こういう貯蓄を奨励することが非常に重要な時期であるということでもありますので、倍額ということで踏み切ったという次第でございます。おっしゃるとおり、その運用その他を誤りますと、税の公平論からいって問題が出てくる心配があるということでは同意見でございます。
  153. 村山喜一

    村山(喜)委員 少額貯蓄の利子等の非課税の奨励措置によりまして、四十九年度税収の中でどれだけ減収になるのですか。
  154. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先般御提出いたしました資料にございますとおり、私どもの試算では、八百七十億ということになっております。これはしかし、一定の前提を置いて試算をいたしたものであることを御了解いただきたいと思います。
  155. 村山喜一

    村山(喜)委員 八百七十億も平年度に減収を見込まなければならない少額貯蓄の利子等の非課税措置が、はたして今日正しいのかどうか。私は百五十万円というものを二百万なら二百万に引き上げるというのであるならばある程度了承もできますが、しかしながら考えてみますと、一人当たりで三百万、そうすると、それが四人おった場合には千二百万、また国債の非課税措置がありますから、その分が加わる、あるいはそれが勤労世帯であった場合には、今度はまた財産形成のほうで加わる、こういうようなことを考えてまいりますと、最高限度この恩典を利用した場合には幾らになりますか。
  156. 高木文雄

    高木(文)政府委員 一人千四百万でございます。ただし、そのうちの五百万は勤務先を経由しなければなりませんから、夫婦で働いておられる、両方ともその勤務先で財形貯蓄制度があるということになれば、二千八百万までいきます。その他はたとえばお子さんが二人あるということになりますと、お子さん等についてはいろいろ贈与等の問題が起こってまいりますけれども、その名義で行なわれると、お子さん一人についてワク一ぱい使ってしまうと九百万までいける、そういう計算になるわけでございます。
  157. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、四人世帯の場合には限度一ぱい使ったら何ぼになりますか、それを積算したら。
  158. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四千六百万円になります。
  159. 村山喜一

    村山(喜)委員 四千六百万円、これを少額非課税、私はそういうようなのは少額という名前をつけること自体に抵抗を感ずるのです。そしてそういう人たちは、そういうような利子に対する非課税措置をやって優遇をしなければ貯蓄をしないような人ではない。とするならば、一体これは何のために設けられているのか。金持ち優遇のために、金がある人のために、そういうふうに限度ワクを広げたのだとしか説明ができないじゃございませんか。これは中川政務次官、政治的な問題ですし、あなた方が三百万に引き上げた根拠について合理的な説明を願います。
  160. 中川一郎

    ○中川政府委員 実は少額貯蓄と銘打っておりますのは百五十万円を三百万円に上げただけでありまして、それ以外はやはり国債を吸収したい、あるいは郵便貯金を伸ばしたい、あるいは財産形成をやりたいというそれぞれの目的がございまして、村山委員御指摘のように、少額だからということで一人千四百万円になった性格のものではありません。それぞれの目的で、少額と名のつくものは三百万円だけであります。  それから、最高千四百万で、奥さんを入れ、子供を入れると四千六百万とおっしゃいますが、むすこさんの名前あるいは奥さんの名前で貯金をしようということになると、ばく大な贈与税が課せられることであって、贈与税を納めて貯金したほうがいいのかどうかということになってくると、これはおそらくそれまでやって国債を買ったり、少額貯蓄をやったり、郵便貯金をやったり、財産形成をやったり――財産形成だけはできませんが、その他の先ほど言った九百万円をそういう形でその特典に乗っかったならば、おそらく相当の贈与税がかかってマイナスになるだろう、こういうことでありますから、単純に四千六百万円がこの恩恵に乗っかってうまくいくという性格のものではない。しかも、それが全部少額貯蓄と解釈されるのは、少し考え方が狭くなり過ぎておるのではなかろうか、こういう見方でございます。  なお、今回、インフレ対策と総需要の抑制からいくならば、預金吸収ということも政策的に非常に必要なことでございますので、若干大き過ぎたというきらいがあるとすれば、その面を特に配慮したということもつけ加えさしていただきます。
  161. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、具体的にお聞きします。そういうような名分けをしたものを贈与税としてあなた方は徴収した事例がございますか。何件ありますか。
  162. 中川一郎

    ○中川政府委員 これは事務的に答弁させますが、たてまえはそういうことになっておるのであって、現実はあるいは若干インチキしている人がおるかと思いますが、われわれとしてはそういう者の保護ということではなくして、いま言ったように、国債だとか郵便貯金だとか、特に財産形成は勤労者の方々の非常に強い要請でございまして、当初三百万円ぐらいと言ったのですが、労働省はじめ労働団体等からも、それぐらいでは困る、いまの時期に三百万円程度で財産形成ができるかというようなことで、大きなものが中に入っていることをひとつ御理解いただきたいと思います。千四百万円のうちの大きな五百万円は財産形成という特殊な要請にこたえたものだということも御理解いただきたいと存じます。
  163. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、贈与の事実がある場合に、もし少額貯蓄非課税制度の適用を受ける場合には、まず贈与税の問題がございます。贈与税の問題を避けようとしますと、少額貯蓄非課税制度の適用が受けられないものを受けておったということで、追徴されることになります。
  164. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、あなた方は、そういうふうにして財産を――かりに私なら私が自分一人ではもうまかない切れないから、これを子供なりに名義だけを変えまして、少額貯蓄の判こを押してもらって預金をした、それを調べ上げて、これは明らかに贈与したものであるという認定をして、贈与税を徴収したその実例をお持ちでございますかと聞いている。私は不幸にしてそういうような実例があるというふうに聞いていないから、お尋ねしているわけです。
  165. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいまお話しのような形での報告を特にとっておりませんので、手元には現在ございませんが、先ほどもお答え申し上げましたとおり、贈与税の課税になるか、または少額貯蓄非課税制度の適用を受けられないものを受けておったということで追徴税額を納付することになるか、その二つの方法で処理されます。
  166. 中川一郎

    ○中川政府委員 残念ながらまだ三百万円とか五百万円とかいう制度は発足いたしておりませんので、これからもしやりましてそういうことが顕著であれば、当然これは金額が大きくなっただけに、実際上そういうことが行なわれないように厳重な対策を講じていかなければいかぬ。いままで三百万円で名分けした事実があるかといわれますと、実はまだ架空のものでありますから、ございませんということしか答えられません。
  167. 村山喜一

    村山(喜)委員 三百万円はいま議案の審議中です。だから、三百万円でそういうことを聞いているのじゃない。百五十万円でいいですよ。百五十万円について答えてください。
  168. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  169. 安倍晋太郎

    安倍委員長 速記を始めて。
  170. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは私、少額三百万というその少額というのが出てきたので、この名前がやはり気に食わぬわけです。ですから、問題は、それをなくしていくためには背番号制をつくればいいわけです。しかし、それをやったらプライベートな問題が全部握られてしまうことになりますから、きわめて基本的な人権の問題等の関係において、これはそこまでいけない。だから私は、基本的には――貯蓄をしなければならないということは、みんなそういうふうに考えているのです、不時の用にしなければならない。こんなにインフレが進む中でも、万一のことを考えながら、減価されながらも貯蓄をしているのが大衆の姿です。それに少額貯蓄の利子等の非課税措置税法上与えなければならないような預金動向であるのかどうか。貯蓄動向を見てみれば、確実にインフレで収奪をされながらも、ほかにインフレヘッジをする道を大衆は知らない、だから、手近にある郵便局なりあるいは信用金庫か信用組合かあるいは都市銀行、地方銀行等に預金をするのです。そういうような状態から考えたときに、罪をつくるような――また、その必要性が日本の今日の貯蓄動向の中から見てあるとは私は思えない。八百七十億もこれによって減税をしなければならないその理由が――いままでは何ぼかあったかもしれません。しかし、もう今日のこの段階の中で、百五十万円を三百万円に引き上げるその積極的な理由を見出すことができません。そういうような意味において、私は質問を申し上げたわけです。これは十分お考えを願いたいのであります。
  171. 高木文雄

    高木(文)政府委員 確かに御指摘のような問題がいろいろ背後にございます。一つには、ちょっとお触れになりました名寄せの問題が介在をいたしております。それから、それとは別に、現在、預貯金制度につきまして、架空名義、無記名制度というようなものが事実問題としてあるわけでございます。そういうものがからみ合っておりますので、私どもはできましたならば、非課税貯蓄限度等を拡大いたします機会に、まず何とかその点を、もちろん背番号というようなことになりません限度におきまして、何とかいい方法はないものかということを検討いたしたわけでございますが、そこに至らなかったわけでございます。  片やこの預金収集の仕事に回っておられる金融機関の方々とか、国債の売りさばき等に回っておられる証券会社の方々のお話を聞きますと、必ずしもそうでたらめに全部が動いているわけではなく、現実に百五十万円の頭を打っておりますので、そこでもうちょっと伸びがとまっておる方も現実問題としてあるわけでございます。それを考えますならば、一方にどうもうまくいっていない実態がこちらにあるといっても、せっかく片方で、百五十万円の上にさらに順次四十万円なり五十万円なり貯蓄をふやしていきたいという、きちっとやっておられる方があるという現状からいいますと、やはりそれをこの際拡大するということも、また意味がないわけではないではないか。そして、先ほど御指摘のように、そんなに一ぺんにふやさないで、何年間に一ぺん少しずつふやしていったらどうかというお考えもあり得るわけでございますけれども、しかしまあそう毎年とか二年おきというふうに直されるのも困るということで、ほんとにこれが最後のような心境で、それでは倍にいたしますかということにいたしたという経緯でございます。非常にきちっとやっておられる方と、それから必ずしもそうでないというフィールドの者とが混在をしておるというところにこの問題のやっかいな問題があるわけでございますので、そこをおくみいただきたいと思うのでございます。
  172. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、次の問題に移ります。  税制調査会に出されました資料の中で、給与所得者の給与収入階級別の人員の推移というのがございます。この中で、一千万円以上の所得のある者九千九百人というのがございますね。この内訳を説明を願います。
  173. 高木文雄

    高木(文)政府委員 民間給与実態調査という調査を国税庁でやっておりますが、その調査によります結果でございまして、おっしゃるように、四十七年でございますが、その統計では給与所得者が全体で二千六百四十五万人おりますうちで納税者が二千三百四万人である。それを収入の大きさで幾つかに刻みまして、一番上の刻みを一千万円以上といたしました場合に、その人数が九千九百人ということでございまして、この統計では、五十万円まで、七十万円まで、百万円までというふうに順に刻んでいっておりますので、一千万円超というところで一番上をいっておりますから、この一千万円超をさらに分けるということは、いまちょっと、この資料ではないわけでございます。
  174. 村山喜一

    村山(喜)委員 その九千九百人が一千万円以上であることは間違いないのでしょうが、その人の所得階層は上のほうにどういうふうに伸びているのかということをお尋ねしているわけです。
  175. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと端数のところで数字にズレがございますが、一つだけいま手元の数字で刻みがわかりますが、二千万円超になりますと、六百五十人くらいのところでございます。この九千九百人の中で約六百五十人ぐらいのところ、それ以外の刻みはこの資料でもございません。
  176. 村山喜一

    村山(喜)委員 給与所得者ではそんなものでしょうが、大会社の役員等をしておりまして、そういうような役員賞与を受ける者の所得の状態はわかりますか。
  177. 高木文雄

    高木(文)政府委員 賞与もいわゆる給与の中に入ってしまいますので、一緒になって出てまいりますから、それを区分することはちょっと調査統計の上では、手元のものではございません。
  178. 村山喜一

    村山(喜)委員 最高の者は幾らですか。日本の最高の給与なりあるいは賞与の所得者というのは幾らですか。
  179. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと正規に調べたものはございませんが、私が若干個人的に興味を持って調べたもので、一番最高の方はどなたかということを申し上げるのはごかんべんいただきたいと思いますが、一番最高の方で一億をこえる方がたしか一人だけおられるというふうに思います。そのこえるという程度は一億をちょっとこえるというくらいの方で、それが全部調べるわけにいきませんので、見当をつけてちょっとのぞき見ましたところで、一億をこえる方が一人おられたと思います。
  180. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、今度、給与所得控除が青天井になった関係でどれだけ減税が――率じゃなくて減税額が実現をされるのか。たとえば一千万円の、これは一千万円といえばわれわれ国会議員クラスですね、その場合に手取り額が幾らにふえるのかという計算をして見たわけです。  それから、一番所得階層の中で多いというのは百万から二百万円までの階層ですね、四一%を占めております。その階層においてどれだけの減税の恩恵が与えられるのかということを調べてみました。一体、どういうふうに軽減されているというふうに皆さん方は見ていらっしゃいますか。数字を発表願いたい。
  181. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いずれにいたしましても、その数字をお出しいたさないといけないと思いますので、近日中といいますか、もうすぐにでも所得階層別の減収額表を出さしていただきたいと思います。先般からそういう御議論がございましたので、いま作業をさしております。もうすぐできると思いますので、階層別減収額表を出さしていただきたいと思います。いま手元に持っておりません。
  182. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは地方税まで含めて手取り額がどういうふうに変化をするのか、その場合のいわゆる増加額がどうなるのか、そしてその割合は何%になるのか、私のほうでもここに資料がございます。一千万円の所得者の場合には、増加額が百万をちょっとこえる。平年度化した場合、そういう数字になります。そこで、こういうような割合をずっと広げてみますと、二千万円のところでは、四十九年度で割合は二三・八一、五十年度で三一・六四の軽減率になる。まさに重役減税です。ことし大幅に一兆四千五百億の所得減税をきれることは、物価の上昇やその他から見まして英断であったと思うのだけれども、中身はどうかというと、内容の操作によりまして天井をなくしたものですから、上に行けば行くほど大幅減税になっている。特に、一億円の所得のある人の場合には、初年度において軽減率三三・四四%、平年度化した場合には四四・五四%になる、こういう数字が出てきているわけでございます。  だから、私は、これをはっきり提示を願いたいと思います。そしてどの層が、率ではなくて、どれだけの可処分所得がふえるのかということを明確に示しながら、これについての結論を出すべきだ。ただ腰だめ的に、税法の改正によって大幅減税をやりましたというんでは、国民は納得をしないと思います。そのことを要請をしておきますが、よろしゅうございますか。
  183. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと私お尋ねを取り違えましたが、要するに、サラリーマンならサラリーマンの場合に、収入階層別に軽減額がどのぐらいになるかということでございましたならば、一千万円のところまでは、御存じのように、閣議決定になっております税制改正要綱に添付されたもので出ておる数字でございます。夫婦子二人の場合に、一千万円のところで初年分が三五・五、平年分が四五・二でございます。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 それから上はこの表には出ておりませんが、口頭で申しますが、二千万円でございますと、初年分が二五・四、平年分が三三・九でございます。三千万円でございますと、初年分が二〇・八の軽減率で、平年分が二七・九でございます。それから上はいまちょっと手持ちを持っておりませんので、あと資料をもって提出をいたします。  それから、先ほどの一億のところがどうなるかは、実は地方税の頭打ちの問題という問題がございますので、どこかで一つ断層ができるところができるかもしれませんが、先ほどお示しのような高い率にはならないのではなかろうか。ただいま読み上げました一千万円、二千万円、三千万円の数字で軽減割合が収入の増加につれてダウンいたしております、この傾向ですっと伸びてまいるはずでございますから、先ほど御指摘になりましたような高い数字にはならないのではないかと思いますが、さっそくに計算してみたいと思います。
  184. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは私の場合は単に所得税だけではなくて、地方税まで含めた手取り額のウエートを見ているわけでございますから、若干の数字の違いはあるかと思います。  次に移ります。きょうで終わります所得税の確定申告の中で、農業所得の標準率をつくられまして、これだけの所得率があるからあなたのところは差し引き所得はこれだけだという形で、農業所得の標準を示して、それで措置をされているわけでございますが、このやり方の中身の問題でございます。  具体的な一例を申し上げますと、これは熊本国税局が取り扱った分でございます。養鶏の所得率は五%ということになっております。一体、五%あるのかないのか。ブロイラーの生産原価、これはわが鹿児島がいまでは日本一のブロイラーの生産県になっておりますのでお尋ねするわけですが、えさのブロイラーの一羽当たり、キログラム当たりの中に占めるウエートというものは、大体六割でございます。その六割のえさが、昨年一年間に大体どれぐらい上がったんだろうかというので調べてみると、六一%えさ代は上がっております。これは供給単価で配合飼料の価格を調べたものでございまして、系統農協の資料でございますから間違いございません。そうなると、一羽当たりの、あるいはキログラム当たりのブロイラーの生産原価の中に及ぼす影響は大体三割六分、こういうことでございます。えさの価格が上昇をすることによって、ことしの二月からはさらにまた――ことしになってからはなおひどいのですが、昨年の一年間においても三割六分もコストの中において価格が上昇をしているわけです。それをなお養鶏については差し引き黒字である、そして所得率は五%あるというとらえ方をされることが正しいのかどうか、私はこのことについて疑問を感ぜざるを得ないのでございます。  それから、養豚の場合等もそうでございますが、繁殖豚の場合に所得率は三二%あるという標準率を示しておられます。その養豚用のえさの値上がりというのは、一年間に五〇%でございます。そして一頭当たりの生産原価の中に占める飼料費の割合というのは、これは六割をちょっとこえておる。そうすると、三〇%高くなっているという状態ですが、販売価格のほうはどうかというと、さほど上がったということを私は知りません。これは値を冷やすために外国からずいぶん輸入もいたしましたし、そういうような意味では、現実に養豚なり養鶏の専門農家というのは赤字を出して、たいへん苦しんでいるという状態になっている。ですから、このごろは、成鶏ですが、一羽百五十円ぐらいでたたき売りを始めておる、こういう状態にございます。もうえさが思うように手に入りませんので、高いえさを食わしていけば、豚を飼いますと、大体一月に一頭当たり五千円の赤字でございます。そしてまた、牛を飼いましたら大体五万円くらいの赤字だ、こういう状態に畜産農家はあるわけです。ブロイラーの場合の計算をすると、一羽当たり生産原価で今日六百六十円ぐらいかかるものを、百五十円でつぶさなければならないような状態にきている。その中でなお所得率はそういうようなものであるという姿で、三二%も所得率があるという姿でお出しになる、これが正しいかどうか。私はこの計算の基礎について、四十八年度農業所得の標準について承りたいのであります。  そこで、それに関連をしまして、一体どこでそういう数字をおつくりになるのか。まあ当該経済団体、農協やその他と打ち合わせをしてつくられるのでしょうが、この際、農林省のほうで統計的な数字をお持ちであります。だから、一体、その数字というのは四十八年の数字に基づいておやりになったものを使っていらっしゃるのだろうか。聞くところによりますと、いわゆる農畜産物の生産費調査というのは、まだ昨年の分はどうも集計ができていないようにも聞いているのでございます。その価格の動向を調査して、そしていまの標準率というものをお出しになるのが正しいのではなかろうかと思うのでございますが、ただ、農業団体のほうと話し合いをして、それで標準率をきめるというようなやり方が正しいかどうかということについて説明を願っておきたいのでございます。この点は農林省の経済統計課長も見えておりますので、そちらのほうからも説明を願います。
  185. 遠藤肇

    ○遠藤説明員 先生御案内のように、農林統計におきましては各種の統計調査を実施いたしております。ただいま先生が問題にされていらっしゃいますいろいろな作目に関する所得率、あるいは生産費、あるいは収益性というような調査は、農畜産物生産費調査と名づけておりまして、全国、米をはじめ各種の作物についてやっております。御承知のように、わが国の農業経営は非常に自給的な要素を持っておりまして、自家労賃の評価なりあるいは地代の評価なりいろいろ評価技術上の問題をかかえておる次第でございます。ただいま先生の御発言がございましたように、この農畜産物生産費調査につきましては、それぞれの作物についてそれぞれ調査期間を設けております。具体的に申し上げますと、米の場合一月から十二月、あるいは豚の場合七月から六月というようにそれぞれ調査期間を設定いたしまして調査をいたしておるわけでございます。  ただいまのところ、私どもは、四十八年の農畜産物生産費調査については出張所段階における調査は完了いたしておりますけれども、それぞれ現在集計作業を進めているところでございます。具体的に申し上げますと、一例といたしまして、米の場合につきましては、本年六月末を目途にいたしまして現在鋭意作業を進めておるような次第でございます。それからまた、豚につきましては、御案内のように、安定帯価格に関します価格審議が三月末に開催が予定されておりまして、私どももそれに間に合わすべく現在作業を進めておるというような次第でございます。
  186. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、国税庁のほうから見えておると思いますが、米については四十九年の六月末に農畜産物生産費調査の結果が出る、畜産物については今月の末にならないと出ない、だから、これは四十七年の七月から四十八年の六月までの分がことしの三月末に出るんだという話でございます。そうなりますと、ミカンの場合には、ことしの暮れにならなければ昨年のやつはわからない。課税は四十八年について課税をする。となれば、国税庁はそういうような生産費調査というものに基づいたものを使うことはできない。とするならば、そこら辺の農業団体の意見等を聞いて一つの標準率を設定をするという形で出されて、これだけのミカンの面積があるからあなたのところはこういうふうな所得があるはずだということで、その標準を示しながら申告を求めるということになると思いますが、あなた方のその繁殖豚が三二%も差し引き所得率があるという計算をされた根拠を承りたいのでございます。
  187. 田邊曻

    ○田邊説明員 御存じのように、農業所得を計算いたします場合に、一応たてまえは、税法に規定してございますようにその農家の一年間、これは四十八年の暦年でございますが、この総収入金額からかかりました必要な経費を引くということになっております。したがいまして、実際に幾らお払いになられたかという実額がおわかりになられる場合は、当然その実額によって所得が計算されるわけでございますので、納税者ごとによってその所得率が違ってくるかというふうに存じております。  ただ、御案内のように、農家の方は必ずしもそういうような実際の額を記録されているということを一般的に期待することはむずかしいわけでございますので、青色申告者とかその他記帳をされております方以外の納税者につきましては、一つの申告をされる場合のめどがいまお話に出ております農業所得標準でございます。  そこで、具体的には農業所得標準の計算は、御指摘のように、飼料代その他たいへん上がっているように伺っておりますし、事実、これを作成いたしますのは税務署でございますが、税務署が四十八年分の所得標準を作成するにあたりましては、まず第一には、お話しのような統計といいますよりも具体的なサンプルをとりまして、そこで収支の実態を調査いたします。その実態基準といたしまして、なお、お話に触れられましたような各種の統計なり協同組合などにおきます取り扱いとか売買の状況なりを収集いたしまして、それらをさらに補正して、具体的な地域地域の実態に合うように、関係団体の御意見もお伺いしているわけでございます。  昨年は、御指摘のような問題がございまして、豚につきましては前年よりもだいぶ所得標準が下がっているように伺っております。場所によりましては、お話しのような赤字の標準もあるように聞いております。鶏につきましても同様なことだというふうに伺っております。
  188. 村山喜一

    村山(喜)委員 ではお尋ねしますが、石油危機のための肥料代値上がり分、それから農機具、農薬、こういうものについての必要経費の増大は認めたわけですね。飼料価格はどの程度認めておりますか。
  189. 田邊曻

    ○田邊説明員 それも費目によりましてそれぞれ、先ほど御説明いたしましたように、基準実額調査のサンプルをもとにして実際にかかったものを単位当たり織り込んでございます。
  190. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は先ほど具体的に価格の上昇率を示しながら、それが生産原価の中における割合を言ったわけでございますが、ブロイラーの場合には三割六分のそういう上昇があった、そういう計算が出てくるわけです。鶏卵の場合には、同じように三割五分のそういうものの値上がりによって必要経費に落とさなければならないような経営状態になった。こういうようなものは当然見ていらっしゃるわけでしょうが、どういうような程度まで認めておいでになるかということをお尋ねしておるわけです。
  191. 田邊曻

    ○田邊説明員 お話しのように、実際に飼料代の値上げは当然に反映されているわけでございます。それの見方につきましては、繰り返しになりましてたいへん恐縮でございますが、実際に経費としてかかった額の記録がされている場合、それはその全額が認められております。それから、記帳のない方につきましては、一般的な基準実額調査のもとになりましたサンプルをもとに最近の情勢を織り込んである、こういうことでございます。
  192. 村山喜一

    村山(喜)委員 具体的にはどの程度織り込んでいるのかということを私はお尋ねしておる。
  193. 田邊曻

    ○田邊説明員 納税者ごとに違いますし、また標準は課税の、または申告の一つのめどでございますので、実際の申告はまた違ったような形になりますので、そこら辺の事情を御賢察いただきたいと思います。
  194. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は標準でお尋ねしておるのです。
  195. 田邊曻

    ○田邊説明員 所得標準は、先ほど来繰り返し御説明申し上げておりますように、一つの申告のめどでございますので、具体的な内容につきましてはちょっと差し控えさしていただきたいと思います。
  196. 村山喜一

    村山(喜)委員 なぜ言えないのですか。というのは、標準ですよ。私は個々の農家について聞いているわけじゃございません。標準を設定されたその根拠の中で、その飼料代の値上がり分をどの程度見込んでいらっしゃるかということは、これは別にはっきりここで言われても差しつかえないのじゃないですか。それは徴税にあたって支障がございますか。
  197. 田邊曻

    ○田邊説明員 農業所得標準は、ちょっとかたいことばになりましてたいへん恐縮でございますが、納税者と税務官庁との間の一つの便宜的なめどとしまして署が作成いたしておるものでございまして、これを一般的に公開するとか、一般的に御披露申し上げるような性格でないということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  198. 村山喜一

    村山(喜)委員 一般的に公開をするものでなければ、何で新聞に載りますか。新聞に載ったやつをもとにして私は言っているのですよ。だから、やはり標準を示されるにあたっては、これだけの値上げ分はあったのだから具体的に認めましたということを言われるのが当然ではないですか。
  199. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいまのお話しの新聞記事、私まだ存じておりませんが、もし出ておりますとすれば、それはある地域のある団体が何かお話し合いをされたようなものでないかと思いますし、私どもといたしましては、これはもし一般的にそういうものにつきましてお話しするということになりますと、そこまで申告すればよろしいというような、本来のたてまえと違ったような効果も出てまいりますので、そこら辺につきましては、法のたてまえと実際に行なわれております執行上の便宜なり納税者の申告の便宜ということとのかね合い、そこら辺についてデリケートな問題がございますことを御理解願いたいと思います。
  200. 村山喜一

    村山(喜)委員 納税者の立場を考えてあなた方が標準を示される、これは農業団体と相談をして標準を示されて、それを一つの目安にして所得の確定申告をしなさいということで指導されている。とするならば、その中における大きな要素である畜産農家の場合の飼料の値上がり分がどの程度あったということは、これは客観的な資料に基づいてどの程度は認めますということでなければ、指導にならないじゃございませんか。そのことさえも国政審議に当たるこの大蔵委員会で発表ができないということは、私は納得ができない。  委員長要請をいたしますが、この問題の取り扱いは理事会で検討を願いたい。よろしゅうございますか。
  201. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 本問題につきましては、後刻理事会において協議をいたします。
  202. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、白色申告者の事業の専従者控除額の問題でございますが、これが今度二十万から三十万に上がりますね。これは青色の実態に照らし、またパート等の給与の実情に照らして均衡をとる意味において上げたのだというのが説明として書いてございます。そこで、青色の実態はどういうふうになっておるわけでございますか。
  203. 高木文雄

    高木(文)政府委員 従来から白色の専従者控除制度は、金額を法定されておるわけでございます。それから、青色のほうはいわゆる完全給与制ということで、実際に支給された額によってきめられることになっておるわけでございます。白の専従者控除という制度につきましては、昨年といいますか、四十八年度までは、基礎控除が二十一万円で扶養控除が十六万円のときに、基礎控除と扶養控除との中間にあったわけでございますが、今度扶養控除と基礎控除が統一されまして二十四万円になりました関係で、全く従来とは違った考え方をとる必要があるというかっこうになったわけでございまして、そういう意味で、従来の考えとは全く変えまして――従来はずっと伝統的に、御本人より専従者控除が多いというのはいかがなものであろうかということで、基礎控除よりも低い額でございましたけれども、それを考え方を変えまして、基礎控除よりもさらに高い額とするということで、そのめどをどこに置くかというのは非常にむずかしいところでございますが、これをあまり高くするということも基礎控除との関係で問題もございますところから、今回三十万という水準にきめたわけでございます。  ところで、この青の水準でございますが、これは実際に各企業が完全給与制をとっておられるそれの平均額でございますが、四十六年では約四十万、これは申告の実績でございます。四十七年では四十五万ということになっておるわけでございます。  以上でございます。
  204. 村山喜一

    村山(喜)委員 いわゆるパートとか内職収入とか、こういうような配偶者等の所得がある場合の配偶者控除の問題からのにらみ合わせ、それとの関係はございませんか。
  205. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在パートの場合には、いわゆるパートタイマーの課税最低限につきましては、御存じのように、給与所得控除の最低保障額が五十万になりました関係で、配偶者控除の適用を受けるための所得限度額を今度直しました。したがって七十万になるわけでございます。
  206. 村山喜一

    村山(喜)委員 青色申告の実態は、専従者控除で四十五万、まあ大体そんなものだろうと思います。ところが、白色の場合には今度上げて三十万、これはちょっと開きが縮まったわけでございますか、拡大をいたしましたか。
  207. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この白色の専従者控除の額のきめ方の問題につきましては、今回非常に困りまして、率直に申し上げて、どの水準に置くべきかということは非常にむずかしい議論であります。と申しますのは、やはり基礎控除との関係を考えないと、たとえば夫婦で仕事をしておる、御主人のほうについては基礎控除が働いていく、奥さんにつきましては、こういう制度にしますれば配偶者控除でなくて専従者控除のほうが働いていく、こういう関係になります。そこで、いま御指摘のように、外へ出て働くという場合のパートタイマーとのバランスの問題というのも、確かに一つの問題でございます。確かに一つの問題ではございますが、まず何よりも、やはり一つの家計の中において御主人と奥さんとで一緒に仕事をしているわけでございますが、基礎控除の水準との関係を全く分離して考えることはなかなかできにくいのではなかろうかということでございまして、おっしゃるような角度からいたしますと、給与所得者の独身者につきまして、この際、相当思い切った措置をとろうということで考えられました五十万円の最低保障システムとの関連から申しますと、御指摘のようなバランス論というのが出てくるわけでございますが、片方においては、また本来の基礎控除とのバランスをどう考えるかという問題があるわけでございまして、そこのところを今後この白色の控除制度についてどのように考えていくべきやということは確かに御指摘問題点がございますが、本年度といたしましては、従来と違いましてさらに基礎控除よりも高い額にするということで、そこはかなり思い切ったつもりでございますが、さて水準をどの辺にすべきかということについては、まだ十分の検討ができておらないというのが正直なところでございまして、御指摘のように一つ問題点があるということは承知をいたしております。
  208. 村山喜一

    村山(喜)委員 やはり青色申告を推進するという立場からとられている政策的のものもありましょうが、しかし、いま七十万円の内職の場合の問題もございますし、独身の場合の五十万円のいわゆる控除の問題もございます。片一方、青色申告の実態が四十五万ということになっておるのであれば、やはりこの際、三十万円というのはちょっとまだ低過ぎるのじゃないだろうか。二十万を三十万に上げる意味で十万円上げられたわけでございますが、まだ実態に即していないのじゃなかろうかという気がしてなりません。  ですから、この点については、ぜひ今後実態面の上から、また他との均衡の上から、あまりにも制裁的な色彩を持つような考え方ではなしに、実態に即した均衡のとれたものとして処遇をしませんと、そういうような記帳能力がないがために青色申告の手続ができないというような者もあります。そして中小企業経営実態の上から見まして、主人と一緒に一生懸命仕事をしておる奥さんのそれも、青色のほうは四十五万だけれども白色のほうは三十万でかんべんしなさいというようなことでは、これはちょっとぐあいが悪いのじゃないかと思うのです。この点については、さらに前進をされるように私のほうでも要望を申し上げておきます。よろしゅうございますか。
  209. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この辺は確かに非常に問題がございまして、先ほど申しました四十五万という水準は、これは四十七年の実績値でございますし、いま当面問題にしなければならぬのは四十九年の問題でございますから、いろいろとその辺のところも一つ問題がございますし、白と青との間でどの辺でバランスをとるべきか。先ほどの四十五万は平均でございますから、平均で見るのがいいかどうかというような問題が一つ。それから、いまの専従控除というのは、要するに夫婦で一緒に働いている場合の話でございますし、別々に、たとえば農業の例でとりましても、むしろ奥さんのほうが家で農業をやっておられて御主人が給与所得者だというような場合の問題だとか、どうもいろいろ問題がございまして、そこのあたりの論議がまだ十分尽くせておりません。御指摘のような問題があることは事実でございますので、ひとつどういうふうに考えたらよろしいかいろいろと検討はいたしてみなければならぬとかねがね思っておったところでございますので、御注意をいただきましたから、よく勉強を重ねてまいりたいと思います。
  210. 村山喜一

    村山(喜)委員 残りの時間がもう少なくなってまいりましたので、租税特別措置の問題に入ります。  この中で、いよいよ近いうちに総理大臣が決断を下して石油のあるいは製品の価格の決定をするやに見えるのでございますが、私はここで、価格の形成というものが、いま実勢価格といわれるものがはたして妥当なものであるのかどうかということについて疑惑を感じますので、この点を明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  そこで、まず、関税のほうからおいでいただいておりますので、最近の数字でよろしゅうございますが、原油なりあるいは揮発油、灯油、軽油、重油、LPG、これのCIF価格でどれだけで入ってきているのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  211. 斉藤盛之

    ○斉藤説明員 最近の数字でございますれば、原油につきましては、四十九年二月分の集計をもとにしまして申し上げます。  バーレル当たり九ドル九十セントで、円で換算いたしますと、キロリットル当たり一万八千五百二十円でございます。揮発油以下につきましては、速報段階でございますので、一月の数字が一番最近の数字でございます。以下キロリットル当たり円で申し上げますと、揮発油が一万三千六百七十七円、灯油が一万二千円、軽油が二万七百二十五円、重油が一万五千九百七十六円でございます。
  212. 村山喜一

    村山(喜)委員 その実勢価格を、通産省、お答えいただきたいと思いますが、揮発油から灯油、重油に至るまで、幾らでございますか。
  213. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  最近の実勢価格でございますが、元売りについて申し上げますと、四十八年の十二月の段階で申し上げますと、ガソリンのレギュラーが二万六千円から二万七千円程度でございます。それから灯油につきましては、家庭用については凍結をいたしております。したがいまして、一万三千円程度でございます。それから、工業用につきましては凍結をいたしておりませんので、その価格は大体  一万七千円程度、軽油が一万六千円程度、A重油も大体同様でございます。B重油、C重油については、一万一千円から一万二千円といったところであろうと思います。
  214. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、レギュラーの揮発油で例をとりますが、これは新聞にもキロリットル当たり二万六千七百円という数字が出ておりますから、それで申します。  製品として入ってくるのは、キロリットル当たり一万三千六百七十七円、元売り段階で実勢価格として示されているのは二万六千七百円、これは税金が別に入っているわけではございません。とするならば、この二万六千七百円という価格の形成は、揮発油という製品としてCIF価格で入ってくる価格の大体二倍ですね。これは適正な価格であるというふうに通産省は認めているのかどうかということが第一点の問題点であります。  それから、軽油は、輸入いたしました価格は二万七百二十五円、それが実勢価格の上においては、  これだけは安い一万六千四百円で売られている。もちろん、原油からガソリンをとり、いろいろななにを得率の上において抽出していく過程の中で、ガソリンをたくさんとればとるほどそれだけコストがかさんでくることは間違いありません。ところが、日本の場合のガソリンの得率は、一〇%ないし一一%でございます。だから、非常にとりやすいところでとっておるのですから、得率が低い日本の状態の中では、外国に比べてそうコストが高いとは思われません。しかも、製品価格として入ってくるのは一万三千六百七十七円で入ってきているものが、実勢価格としては二万六千七百円で売られている。一体その市況というもの、実勢価格というものが正しい形成をされたものであるのかどうか、私はどう考えてみてもおかしいと思うのです。というのは、揮発油として製品で入れたほうが、原油からガソリンをつくるよりもかえって安くつくんじゃないか。そういうような結果に、結果論的に落ちつかざるを得ないわけでございます。そうしてこれが妥当なものとして、その上にまた八千円なり九千円が上のせされる、これがいいのかどうか。まあそれはやむを得ないというふうにお考えであるならば、その根拠について、この際説明を願っておきたい。
  215. 松村克之

    ○松村説明員 先生からいまお話がございましたとおり、石油製品は連産品でございますので、たとえば家庭用の灯油について価格を凍結するといったような政策をとりました場合には、そのコストの分が他に付加されるといったような傾向もあろうかと思います。  それから、いま先生から、ガソリンの輸入価格が一万円あるいは一万三千円程度である、それに対して国内のガソリン価格が非常に高いではないかという御質問でございましたが、私、先ほど御説明を省略したわけでございますけれども、ナフサについて申し上げますと、現在の国内価格が――現在といいますか、十二月段階で申し上げまして、一万二千円ないし一万三千円ということになっているわけです。それで石油化学用ナフサがだいぶ輸入されているわけでありまして、それとの価格比で考えますと、大体いいところじゃないかというような考え方をとっているわけであります。
  216. 村山喜一

    村山(喜)委員 ナフサは一万二千二百円ですよね。これはもともと、値段のつけようのないものなんでしょうが、その分が揮発油のほうに加わるというのですか、あなたのおっしゃる意味は。そうじゃなくて、私は、揮発油という一つの製品として押えた場合に、輸入製品であるならば半分の値段で入ってくるのに、なぜ国内の価格はそういう高い実勢価格を元売り段階で示しているのかということを、あなたに聞いているのですよ。それはナフサとの関係じゃないでしょう。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  217. 松村克之

    ○松村説明員 私が申し上げましたのは、ナフサの段階で考えれば、日本のナフサと輸入ナフサとは、むしろ現在の実情で申し上げますと、日本の国内のナフサのほうがどちらかといいますと若干低いといったようなかっこうであります。それに加えまして、たとえばFCCでございますとかそういった装置を通しまして、これをガソリンにするわけでございますけれども、そのコストというものがあるわけでございますが、それはいまの輸入価格でいいますと、輸入の一万三千円と一万二千円の差、千円といったものではなくて、もう少し高いものであろうかと思うわけであります。  ただ、先生のお話しのように、ナフサの価格とガソリンの価格との格差が非常に高いではないかというお話につきましては、これは連産品でございますから、たとえば軽油と中間留分を安くするということになりますと、どうしてもガソリンのほうに負担させることになるということでございます。
  218. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が聞いているのは、この揮発油というのは、ガソリンでしょう。揮発油がハイオクとレギュラーとあるわけでしょう。それで、ハイオクの場合には三万一千五百円だということで、あなた方、この前新聞発表されていますね。レギュラーが二万六千七百円だ。そのいわゆる実勢価格と外国から製品として入れる価格との間には二倍の開きがあるのじゃないか。二倍ですよ、CIF価格で一万三千六百七十七円ですから。だから、なぜそんなに日本の揮発油の実勢価格は高いのかということを聞いているのですよ。
  219. 松村克之

    ○松村説明員 日本で輸入するガソリンの価格が一万三千円というようなお話があったわけでございますけれども、それはちょっとつまびらかにいたしませんが、たとえば、各国の自動車ガソリンの卸売り価格が幾らであるかといったような点についてちょっと申し上げさしていただきますと、イギリス、フランス等で、たとえばイギリスでございましたら、これは値上げ前の数字でございますが、二万一千円。それからフランスでございますと一万九千八百円といったような数字、これは公式のものではございませんが、私どもが持っております数字として大体その程度のものではないかというふうに考えております。  したがいまして、輸入価格で一万三千六百七十七円というようなものがはたしてどういうガソリンであるのか、ロットがどのくらいであるのかちょっと私存じませんけれども、海外のガソリンの卸売り価格に比べまして、日本が倍の価格であるということではないというふうに考えております。
  220. 村山喜一

    村山(喜)委員 では関税当局に尋ねますが、この揮発油として入れているのは、市場で普通いわれている揮発油、これと成分が違うのですか。
  221. 斉藤盛之

    ○斉藤説明員 ただいま一万三千六百七十七円のCIF単価で一月に入着いたしましたと申し上げました揮発油は、私どもの統計品目番号では、三三二-一というところに分類されておりますモータースピリットでございまして、通常の揮発油であろうかと存じます。
  222. 村山喜一

    村山(喜)委員 通常のものであるとするならば、私はここになぞがあるというふうに指摘をせざるを得ないのです。先ほど課長が説明をしたその数字を聞いても、イギリスの場合でも日本の価格よりもずっと安いですよ。フランスの場合でも安い数字を言われたでしょう。そして日本の場合には製品として入ってくるそのものが、これは関税かけませんね、そのままストレートに入ってくる。それが一万四千円足らず、一万三千円台。そうして、日本の製品のレギュラーの実勢価格として卸売り段階で示されるのはその倍でしょう。だから、これを正しいものとしてあなた方が処理しようというところに、いわゆる石油産業とあなた方のつながりの問題が云々される原因が一つあるのではないですか。なぜこんなに高くなっているのかこの中身を説明してください。  時間がありませんので、あとでまとめて答弁を願いますが、これで計算をして、いま税金はガソリンの場合は地方道路税まで入れましてキロリットル当たり二万八千七百円ですね。これは間違いございませんね。
  223. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  224. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、CIF価格で入ってくるガソリンを原価計算すると、税金まで入れるとリットル当たり四十二円ですね。それが末端に行くと八十五円で売られている。この流通の経路を追っていった場合に、どこでどのような価格形成が行なわれているのでしょう。また、通産省が発表した実勢価格で押えてみましても、なおそれよりも一万三千円くらい上がるのですから、五十五円になる。五十五円くらいのものが八十五円で売られる。これは小売り段階の中でもうけとして上がっている分ですね。流通経費の中に消えていく。こういうような状態の中で価格の形成が行なわれている。  今度また税金が重くなります。今度の改正によりまして揮発油税がキロリットル当たり二万九千二百円になる。地方道路税が五千三百円ですから、三万四千五百円、その分が前よりは多くなってくる。二万八千七百円より上がるわけですが、その場合の末端の価格というものを幾らにしようということをお考えになっているのですか、事務当局として。
  225. 松村克之

    ○松村説明員 今回の石油の値上げ、原油の値上げに伴いまして、石油製品の値上げが近く行なわれなければ、非常に経済的に申しましても不合理なことであろうかと思うわけです。それで、価格が上がった場合に、それを流通段階についてどういったふうに対処させるかということにつきましては、いま政府全体といたしましていろいろ検討いたしているわけでございますが、近くその点についても、全体の結論を得て発表するということになろうかと思っております。現在の段階ではまだ確定いたしておりませんので、ちょっと控えさせていただきます。
  226. 村山喜一

    村山(喜)委員 もう時間がありませんから、わずかの時間でやめますが、この点はLPGについても同じようなことが言えます。中川政務次官、よく聞いておってください。一月のCIF価格の場合にはトン当たり一万七千九百六十九円、それに関税が、まだ改正されませんから八百八十円かかりますね。そうすると、キロリットル当たりに直しますと九千八百円程度になるようでございます。これに八百八十円を割りくずしてまた換算をしてやりましても、言うならば一万円程度、だからリットル当たり十円ですね。それが末端で幾らで売られているか、自動車用のLPGが幾らで売られているか御存じだろうと思いますが、いま四十五円くらいですね。液化石油ガスのほうは四十五円。ガソリンのほうは、今度かりに八千円なり政策的ななにで九千円、こういうふうになったとしますと、税金の値上がり分と価格の改定分の値上がり分とを合わせていくならば、一リットル百円ですね。百円のガソリンが出てきた。そうすると、LPGのほうからいくと、元値は十円ですから、これをもっと下げることによりまして、今度はLPGの使用のほうがふえてガソリンのほうの使用量が減る、こういう事態が出てきますよ。  その場合に、いわゆる税収として見積もっておる分がはたして正しいのかどうか。その価格の形成によって流れが変わっていく可能性というものはないのかどうか。これは政務次官に答弁を願わなければならない点だと思うし、私が指摘をしたように、CIF価格というものは、関税当局はあなたの所管ですから、その所管の中で、いまの価格は一体どれだけのなにを持っているのか。とするならば、いまの政府がきめようとしているこの新しい価格ははたして妥当なものであるのかどうかということについて、もっと事務当局の考え方をまとめさして、そして大蔵省としての立場から問題をお取り上げにならないと、無制限に原油を買うだけの外貨はないわけですね。  経済見通しでは二億七千万キロリットル、これをことしの状態で実勢をはじいてみると、二億八千万キロリットルを上回って輸入されているわけですね、四十八年分は。そうすると、三億ぐらい入ってくる可能性さえある。そのときに、外貨は十分の手当てができないというような問題にも関係があるわけです。私はその点、時間がありませんので、それをさらにまた詰めていこうとは思いませんが、そういうような問題をとらえながら、この石油の価格の改定、それから課税のあり方の問題、これは単に高いものを買わされるのがいやだということではありません。物の流れの変化がそれによって伴ってくるのではないかということを指摘をしておきたいと思いますが、それに対する具体的な答弁、これだけの財源が揮発油税収によって確保できるんだという見通しがございますかどうか。
  227. 高木文雄

    高木(文)政府委員 率直に申しまして、現在の税収見込みを立てます際には、ただいま御指摘のような問題があることは、ある程度は予測されてはおりましたが、しかし、とうていそこまでどういうふうになるのか見当がなかなかつきませんものでございますから、全体としてむしろ消費量が若干減るのではないかというふうに考えました。いままでは、ガソリンにいたしましても毎年一二、三%ずつふえておりましたけれども、今度はむしろ減るのではないかというような予測は立っておりましたが、ただいまきめこまかく御指摘がありましたように、シフトの問題等は織り込んでいないわけでございます。  そこで、今度の石油関係の価格のきめ方等によりましては、いろいろそういう問題が出ようかと思いますが、お尋ねのガソリンとLPGとのシフトの問題につきましては、一つにはLPG車にガソリン車を改造するということにつきましてはかなり費用がかかりますことが一つと、それからガソリンのスタンドとLPGのスタンドの数が、普及度が非常に違うということがありまして、どうもいわゆるマイカーといいますか、自家用車の方々が急激にガソリン使用からLPG使用のほうに変わっていくということは、そう急には起こらぬのではなかろうか。もしそういう価格体系になりますと、長期的にはだいぶそういった問題が出てくるおそれがございますが、急にそういうふうになるかどうかということについては、そう大きなシフトは当面は起こらぬのではないかというようなことが、運輸省の車両のほうの御専門の間とかそういう方々の間ではいわれておるようでございます。しかし、これはいずれにしてもなかなか問題でございますので、私どもといたしましては、よく事態の推移を見守っていかなければならぬというふうに考えます。まさに御指摘のような問題が起こりつつあるということは、承知をいたしておるところでございます。
  228. 中川一郎

    ○中川政府委員 たいへんな問題でございますから、これから値上げが近々といわれておりますし、今後推移を見守って、御指摘の点は十分腹に入れておきたいと考えております。ただ、そう大きなシフトは起こらないのではないかということについては、いま局長が答弁したとおりでございます。しかし、かなりの問題が起こることを覚悟の上でしたい、このように思っております。
  229. 村山喜一

    村山(喜)委員 もう一つ産業関係の税制の問題について質問をしたかったのでございますが、時間が参りましたのでこれで終わりますが、問題はいま関税の面からとらえ、あるいは消費税としてとらえていく。その中でわれわれが願うのは、原油の値上がりに伴いまして、ある程度の価格の改定はやむを得ない点があるであろう。しかし、それが合理的になされなければおかしなかっこうになっていく。しかも、その百円ガソリンというものが出現をしたときには、もっとコストの安いものに転換していく。われわれが二千ccの車を使っておった、ところが、それを千六百にダウンをしてガソリンの消費の価格というものは大体均衡しました。しかし、今度これだけ値上がりをしたら、それをもっと千二百クラスに落とすか、あるいはさらに小さなものに落とすということで収支のバランスをとらなければならない。むしろ月に一万円も二万円もガソリンの値段が前よりも高くなるのだったら、この際LPGに切りかえよう。LPGのスタンドはあちらこちらにあって四十五円で手に入る。あるいはこれは詰めていけばもっと下がるかもしれない、前は二十三円くらいで手に入っておるのですから。  そういうようなことを考えていくならば、ガソリンの消費税というものが今度引き上げられるけれども、それだけ税収はふえないことになる。これはやはり個人は自分の家計の中でやりくりをするわけですから、そういうようなものの流れを的確に押えていかないと、これだけ上げたらこれだけの収入があるだろうというような見積もりでは、適確性を欠くのではないだろうか。また、そういうような面から、ひとつ価格の問題と税のあり方の問題については、全体をもう一回再点検をしてもらいたいということを要請いたしまして、私の質問を終わります。
  230. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、来たる十九日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時八分散会