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高木(文)
政府委員 未成年者
控除制度の問題につきましては、昨年もさんざん御論議をいただきました。この問題を実質的に何とか
解決しようということで一生懸命努力をいたしたつもりでございます。ただ、今度の七十万という水準がまだ不十分であるという御意見でございますれば、確かにそういう点はいろいろ政策論議として
議論していただいて、大いに私
どもも勉強させていただきたいと思うわけでございます。
ただ、なぜ未成年者
控除という
制度をつくりませんでしたか、そのかわりに基礎
控除を上げましたことと
給与所得控除の中に最低限五十万円という
制度をつくりましたかということを申しますと、
一つには、未成年者
控除なりあるいは一定の年齢までの特殊
控除をつくりますと、その年齢を突き抜けたとき、未成年者であれば未成年者から成年になったとき、そこでいきなり
かなりの額の急激な課税が起こってくる。断層といいますか、非常に急激に課税問題が起こってくるという問題があるということが
一つあるのでございます。
もう
一つは、未成年者
控除の御
議論の中には、普通の人はこのごろは高等学校なりに行くようになった。ところが、中学校を出てすぐ働かなければならぬ状態である。それではどうもいかにも気の毒ではないか、
税制上もう少し考えるべきではないかというような、一種の弱い方々に対する御配慮ということからそういう論議が展開してきたと思うのでございますが、その種の御論議は決して未成年者に限らないわけでございまして、御婦人で途中で不幸にあわれたというようなことで、中年で働きに出られるというような場合につきましても、やはりいろいろな問題がございます。また御主人が病気のために奥さんがつとめに出ているというような場合などを考えてみますと、要するに、これは何らかの
意味において税法上の独身者、実質の独身者でなくて税法上の独身者の
課税最低限の問題ではなかろうか。そういうふうにいたしませんと、未成年者以外の、もうすでに成年に達した方であっても、やはり非常に弱い社会環境にあるために働かざるを得ない人との
バランスをどうするかという問題がどうしても出てまいります。
そこで、未成年者問題についてある
程度おこたえをしながら、なおかつ、独身で弱い、あくまで税法上の独身者で弱い方について何か考える
方法はないかということでいろいろ考えたのでございます。それがちょうど、
給与所得控除についてまず
定額控除十六万円というのがありました。その上に
定率控除があるという
制度と組みかえをいたしまして、まず
定率控除から始めるという
制度にいたしますと、かえって低
所得の場合にはいままでよりも非常に不利になるということが出ますので、そういうことを起こさないために、新しく一種の最低保障的な
意味での
定額控除制度をつくったということでございます。そこで、最低保障の五十万円と基礎
控除の二十四万円を足した七十四万円、それに社会保険料
控除を加えたものが
課税最低限になる、こういうかっこうに組み立てたわけでございます。
でございますので、未成年者
控除を主張なさいました大ぜいの方がいらっしゃいますが、その全部の方のお考えにおこたえしたということにはならないと思いますが、未成年者
控除の御主張の中にも相当いろいろな御主張がございましたから、そういう
意味で、全部の方の御主張におこたえできたということにはならないと思いますけれ
ども、相当数の方の御主張には、これでおこたえし得たものと思っております。
ただ問題は、それでは水準がどうかという問題があるわけでございますが、私
どもの検討でも、たとえば中学を卒業して就職をされた、学校には行かなかったという人について、これでうまくいくかというと、そうはとてもできません。現在の水準ではそういうことにはならないと思います。ただ、昨年非常に熱心に御
議論願いましたように、四十八年度の状態では、中学を卒業した方が初年度から税金がかかってきてしまう。その方々は四月からつとめるわけでございますから九カ月分しか
収入がないのに、それでも初年度からかかるようになってしまった。そういう状態が大体四十六年から、それは平均的な中学卒業の給与の方でございますが、そういう方の場合でも、四十六年ぐらいからぼつぼつ、わずか九カ月の
収入にボーナスを足しただけでも、すでに税金がかかってくるようになってしまったということがございます。そういうことは幾ら何でも起こらないようにということを、
一つ頭に置きながら言っておるわけでございまして、今回の案でも、いろいろな先ほど御引用になりました調査のいずれをとってみましても、給与の伸び等を考えてやってみますと、就職初年度でなしに二年目あたりになりますと、やはり課税関係に平均的な
収入の方は入ってくるということになろうかと思います。
その問題は、なおどの
程度のあれにすればよろしいかということは、これはそういう独身者のいろいろな
課税最低限のあり方と、それから他の
夫婦子二人というような家族構成の方の
課税最低限のあり方の問題として、今後も熱心に私
どもも研究してまいりたいと思います。今回の処置でもって完全にこれが
解決がついたということではなくて、その水準論としては今後とも残ると思います。ただ
制度論としては、私は未成年者
控除制度をつくるよりは、こういう方式で考えていったほうが、他の弱い税法上の独身サラリーマンとの
バランス上よろしいのではないかというふうに考えております。