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1974-03-12 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十二日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       毛利 松平君    山下 元利君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    小林 政子君       広沢 直樹君    内海  清君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         国税庁次長   吉田冨士雄君  委員外出席者         国税庁長官官房         総務課長    吉野  實君         国税庁長官官房         人事課長    篠田 信義君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   塚原 俊郎君     奥田 敬和君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。小林政子君。
  3. 小林政子

    小林(政)委員 所得税二兆円減税などということで早くから大幅な減税が言われておりましたけれども、四十九年度の所得税額は、自然増収一兆九千九百八十一億円のうち一兆四千五百億円という最近にない大幅な減税額でございますけれども、この内容は、人的控除引き上げ分として四千六十億円、給与所得控除引き上げ分として八千四百二十億円、税率緩和分として二千二十億円、合計一兆四千五百億円ということになっておりますけれども、しかし、今回の改正内容を調査いたしてみますと、勤労者、国民の減税のあり方という観点から見て、相当大きな問題があるということを指摘しないわけにはまいりません。以下、私は何点かにわたって質問をいたしたいと思います。  まず第一に、今回の改正によります給与所得控除の新しい制度についてでございますけれども、特徴としては、定率控除一本にいたしたことでございますし、また収入六百十六万円、七十六万円の頭打ちを廃止をいたしたことでもございます。五百万円の年収がある場合には、控除額は従来七十万二千円であったものが百四十五万円に、七十四万八千円の増加額でございますし、また七百万円の場合を例にとると、控除額七十六万円のものが百七十五万円、九十九万円の増加でございます。一千万円を例にとれば、七十六万円が二百五万円、百二十九万円の引き上げということになります。二千万円では、七十六万円が三百五万円、二百二十九万円の引き上げであり、五千万円を例にとると、七十六万円が六百五万円、五百二十九万円の引き上げ。この分だけが非課税になるという、いわゆる給与所得控除が大きくなればそれだけ減税分が大きくなる、こういうことになっておるわけでございますから、このこと一つを見ても、今回の税制改正が少数の高額所得者のための減税対策ではないか、このようなことがいえると思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  4. 高木文雄

    高木(文)政府委員 小林委員指摘のように、今回の所得税減税の主たるねらいは、サラリーマン減税にございますし、サラリーマン減税の中の主要な部分が、給与所得控除抜本的改正にある、その抜本的改正の中の二つの柱が、一つ定率による控除にするということであり、一つはいわゆる頭打ち制度をなくすということにある、それらの御指摘はおっしゃるとおりでございます。  それは、いわば所得上層階層のための減税ではないかというお尋ねだと思いますが、このような案のもとの案を私どもといたしまして政府税制調査会にお示しをいたしましたときに、委員のほとんど全員の方といってもいいぐらいから、この案は少しおかしいのではないか、上層階層に寄り過ぎた減税になりはしないかという御指摘を受けたわけでございます。  そこで、私どもは非常に長い時間をかけて、なぜこういう減税を行なわなければならないのか、なぜこういう減税がよろしいと思うのかということを御説明をいたしました結果、最終的には、数名の方は必ずしも積極的に賛成はできないということでございましたが、三十人の委員の大部分の方の御賛同を得られるに至ったわけでございます。それはなぜかと申しますと、一口に申しますと、やはりこれまでの税制に相当無理があったということであろうかと思います。  ただいまお出しになりました疑問点、それはおそらく、非常に大ぜいの方がお持ちになっている疑問であろうと思います。しかし、まず給与所得控除だけについて申しますと、給与所得控除がどういう性格のものであるかという点についてはいろいろ論議がございますけれども必要経費概算控除であるという性格が最も強いのだという前提に立つ限りは、先般来当委員会で御説明申し上げておりますように、必要経費頭打ち制度を置くということは論理的に成り立たないということでございます。このことにつきましては、私どもは、実はかなり以前からそういうふうに考えておったのでございますが、今回の減税でおわかりいただけますように、頭打ちを全くなくすということにつきましては、かなりのいわば減税財源を要することもございまして、これまでもそこに非常な矛盾を感じてはおりましたけれども手直しをする機会がなかったということでございます。そのかわりに、いわゆる頭打ち限度額を数年かかってだんだん広げてまいりまして、やっと四十八年度の税制改正で六百十六万円のところまで来たわけでございます。  しかし、そのように部分的手直しを繰り返しておりましてもなかなか問題の解決にならない。少なくとも理論的には問題の解決になりませんし、今回かなり減税ができることになりましたし、それからどこでとめるか。かりにほかの案としましては、六百万はまあ少し無理かもしれない。所得が皆さん平均的にふえてきておるわけですから、それをたとえば千万円でとめたらどうだとか、あるいはとめないまでも途中でもう少し率を下げたらどうだとか、いろんなことを議論したわけでございます。四〇%、三〇%、二〇%、一〇%というふうな仕組みになっておりますが、それをある金額から上のところは五%にしたらどうだというようなことも、税制調査会の中でそういう御提案を具体的になさった委員もおられましたし、それから六百十六万を上に広げるのはいいとしても、たとえば千万円ぐらいのところでとめたらどうだというようないろいろな御議論があったわけでございますが、まあ所要財源その他のことも頭に置き、かつ理論的な点も考えますというと、やはりこの際思い切って一挙に本来あるべき姿のほうに近づけたほうがよろしかろうということに踏み切ったわけでございまして、小林委員がそのような疑問をお持ちになるのも、私はある意味では当然のことと思いますけれども、同時に、この案の持ちます意味について御理解を求めたいと思うわけでございます。
  5. 小林政子

    小林(政)委員 いま主税局長るると述べられましたが、その結果、今年度の減税を調べてみますと、夫婦子二人の標準家族の場合に、収入百五十万円の場合には減税額二万九千四百七十八円、これは一カ月で二千四百五十六円にしかなりません。しかし、五百万円の収入の場合には二十四万二千四百二十七円の減税、一カ月二万二百二円です。一千万円の収入の場合には九十一万円の減税になります。一カ月、これは機械的に割りますと七万五千九百五十四円。まさにこんなに大幅な、こんなに多額の減税というものは私はいままでかってなかったと思いますし、まさに未曽有減税ではないかということがいえると思います。  特に絶対値で見てみますと、年収百五十万円の収入の者に対して五百万円の減税額は八・二倍にもなるわけです。また、一千万円のいわゆる減税額九十万円を見てみますと三十・九倍というような非常に大きな減税がここで高額所得者に行なわれているということは、たとえどのようにいまいろいろと経費問題等についての御説明がありましても、減税額自体がこんなに大きな開きが出てきている、まさに金持ち減税ではありませんか。高額所得者優先減税ということがはっきりといえるのではないか、私はこう思いますが、いかがですか。
  6. 高木文雄

    高木(文)政府委員 所得税減税の案を御審議いただきましたつど、どのような案を立てましても、ただいまのような御質問をいただくことになるわけでございます。百五十万円の方について二万九千円の減税をする。それ以上の減税案を考えろといわれましても、もともと二万九千円しか納めておられませんのですから、いかにやりましても、それはそれ以上の減税にはならないわけでございます。いまの二万九千円は、一〇〇%の減税で二万九千円でございます。それから、高額所得者減税の額が大きいとおっしゃいますが、これはその程度にはいろいろありましょうけれども、もともと納めておられる額が大きいのでございますから、額と額との比較をする限りにおいては、どのような案をつくりましてもどうしても上のほうの額が大きくなるというのは、これは意図的にそうするとかしないとかいうことではなくて、そういうふうになるわけでございます。  したがって、やはり減税の場合の階層別バランスをどう考えるかということについては、私どもは率で考えていきたいと思います。率で考えました場合に、今回の場合には、収入階層一千万円の場合でも平年度では減税割合が四五・二%になりますから、この点では従来の減税と比べますと、非常に上のほうの階層に厚い減税だということは間違いないことでございまして、その意味で上のほうに厚い減税であるという御指摘あるいは御批判というものは甘んじて受けますけれども、額による比較によってそれを論じられるということについては、承服いたしかねるのでございます。  なぜ上のほうの階層減税幅を大きくしたかということは、これはまたお尋ねによってお答えをいたしますが、その場合の意味は、ただいま申しましたように、額での議論でなくて率での議論でございましたならば、お尋ねの点は御指摘のとおりというふうにお答えできると思います。
  7. 小林政子

    小林(政)委員 額についても、また率についても、大幅な上部の減税であるということは、私はこれは数字の上でもはっきりしていると思います。したがって、特に今回のこの減税がなぜこのような形で行なわれたのか、この問題について、先ほど局長いろいろと述べられましたけれども、たとえば、三百万円超六百万円までの給与所得控除が従来は五%であったものを、定率控除を二〇%に改正したわけですね。そうして六百十六万円のいわゆる七十六万円の頭打ちを取り除いた。これが一つの大きな問題になってきているわけです。  一体、私はこの部分減税額というのは総額でどのぐらいになるのか、この点ひとつはっきりさせていただきたいと思います。いわゆる給与所得者控除分として一兆四千五百億円のうち八千四百億円が減税分として計算されておりますけれども、そのうちいわゆる頭打ちを取り除いたこの減税額というのは、給与所得控除分の八千四百億円のうちどのぐらいになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  8. 高木文雄

    高木(文)政府委員 六百十六万から上の頭打ちを取り除きましたが、それを取り除く場合と取り除かない場合の給与所得控除だけによる減税メリットは、大体百億ぐらいでございます。
  9. 小林政子

    小林(政)委員 頭打ちを取り除いた場合の減税額百億ということで、取り除く前とあととでは百億ぐらいの差であるということですけれども、現実に五%であった定率控除は二〇%になり税率緩和が行なわれておりますし、これらの点を踏まえると、実際にそれではどの程度減税額になるのかというのを階層別にひとつお出しをいただきたいと私は思いますが、いかがでしょうか。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その計算かなり複雑であり、推定を要しますので、なかなかお出ししにくいわけでございますが、御指定でございますので、その資料提出につきましては、理事会で御協議願いたいというふうに思います。
  11. 小林政子

    小林(政)委員 その資料提出の場合に、今回の税率緩和によって、いわゆる一〇%から七五%のこの税率の刻みはそのままにして、その適用区分を拡大しているわけですけれども、この税率緩和影響を受ける階層は、大体収入ではどの程度から影響を受けるというふうにお考えでしょうか。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いまのお尋ね趣旨、私ちょっと十分のみ込みかねますが、減税の一兆四千五百億円の計算は、まず給与所得控除とそれから人的控除税率とを全部一ぺんに、順々に積み重ねてでなしに一ぺんに計算をしておりますので、なかなか出しにくいわけでございますが、特にいまのお尋ねの点につきましては、お尋ね趣旨がよくのみ込めませんでしたので、恐縮ですが、もう一ぺんお願いいたします。
  13. 小林政子

    小林(政)委員 三つの点で減税を幾らという形で出しておりますけれども、私がいまお聞きしたのは、税率緩和によって影響を受ける所得階層税率緩和によって有利に影響を受ける所得階層というのは収入で大体どのくらいの、たとえば三百万円とか、あるいは三百万円、四百万円からどのぐらいというような、影響を受ける範囲というのはどの程度なのかということをお聞きしたわけです。
  14. 高木文雄

    高木(文)政府委員 税率は一円から四十万円までが一〇%でございましたのを、一円から六十万円までを一〇%とし、四十万一円から八十万円までが一二でございましたのを、六十万円から百二十万円までを一二とするというふうに下から順番に直しておりますから、納税者全員税率メリットを受けております。
  15. 小林政子

    小林(政)委員 税率緩和による減税額というのは一応二千二十億円ということになっておりますけれども、それでは、所得階層別にこの内訳を先ほどの資料と一緒にお出しをいただきたいと思います。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど申しましたのと同じでございまして、これは給与所得控除定額控除税率を全部組み合わして、たとえば階層別にどうなるというような表であれば作成可能かと思いますが、ここにあります人的控除引き上げ分の一減税額四千六十億円を階層別に、それから給与所得控除拡充額八千四百二十億円を階層別に、税率緩和分階層別にという計算は、これはなかなかむずかしいというか、ほとんどできないのではないかと思います。  本来、一兆四千五百億という数字は、これはいろいろの計算でぴたりと出てまいりますが、この区分で四千六十億と八千四百二十億と二千二十億に分けること自体、相当幾つかの前提を置いた計算でございます。これをさらに階層別に分解をしていくということは、非常にむずかしい作業になります。しかし、御要求でございますから、一定の前提を置いてどの程度までにか——いまの御要求どおりにはなかなか不可能でございますが、どの程度にか簡素にさしていただくことを御了解願って、それで理事会で御協議の上で提出申し上げたいと思います。
  17. 小林政子

    小林(政)委員 ぜひ提出お願いいたしたいと思います。なぜ私がそのような資料提出お願いしたかと申しますと、今回の減税額相当部分をやはり高額所得者減税部分に充てられているのではないか、このようなことは当然推定できるわけでございますし、また、当然積算の基礎というものもいろいろと大蔵省は立てていられると思いますので、ぜひひとつこの資料については御提出お願いをいたしておきたいと思います。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そういう御趣旨であれば、たとえば、こういう案にしたらどうなるかというような、どこかそういう案をひとつ考えていただいて、それで計算するというなら一つ方法かと思いますので、何かの方法で御要求趣旨に合うような前提を置いて作業をいたすことで御了解を願いたいと思います。
  19. 小林政子

    小林(政)委員 これはいつごろお出しいただけるのでしょうか。実は私のほうでも、前々からこの問題については大蔵省お願いをいたしてあった資料でございます。しかし、計算がまだできていないというようなことで、理論的にできないことはないけれども日数等の物理的な点でまだできかねているというような御返事もいただいておりますので、もう期日も相当たちますので、できるだけ早く御提出を願いたいと思います。
  20. 安倍晋太郎

    安倍委員長 小林君に申し上げますが、ただいまの御提案につきましては、理事会で検討を至急にいたしまして、御返事を申し上げます。
  21. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御要求が、複数のいろいろな組み合わせを御要求でございますと時間がかかりますし、単数の何か案でありましたらわりあいに時間がかかりませんしいたしますし、それからもう一つは、数字をどの程度のこまかさのものか、ある程度の大づかみの数字でよろしいというようなことであれば、また時間はそうがかりませんしということでございますので、その点も御協議願いたいというふうに考えます。
  22. 小林政子

    小林(政)委員 給与所得の問題についていろいろと質問をいたしてまいりましたけれども、私は、いわゆる今回の減税が、給与所得一つを見ても、これは高額所得者減税だということをいま述べてまいったわけでございますけれども、本来であれば、大幅減税というのは、物価高の中でいまやりくりに苦しんでいる勤労者をはじめとする低所得者層、こういう層にこそ、この際一兆円以上の減税ということであるならば、相当重点を置いて考えるべきではなかったかというふうに思います。  たとえば、給与所得者の中での源泉所得の場合の納税者を調べてみますと、納税人員は二千六百三十七万人、この二千六百三十七万人中、二百万円以下の納税者は二千二百七十五万人で、八六%を占めているのですね。これは四十七年の大蔵省資料です。そして三百万円で線を引いた場合には二千五百四十六万人、いわゆる九六・五%を占めているわけです。したがって、いわゆる三百万円以上五百万、一千万、こういう高額所得者層というのは、納税人口の中においても比率はきわめて小さいものであり、大多数の納税者が二百万円以下、三百万円以下というところで、九六%、八六%を占めている。こういう実態から考えても、私はむしろ、減税はこの際高額所得者層中心であってはならないというふうに考えますけれども、この点について再度御答弁をお願いいたしたいと思います。
  23. 高木文雄

    高木(文)政府委員 所得税減税は、戦後ほとんど毎年行なわれております。行なわれませんでしたのは、三十三年と三十五年でございます。その毎年行なわれております所得税減税のうちで、三十二年の減税と、それから四十三年答申なるものを受けました四十四年、四十五年減税と、その二回を除きましてはほとんど人的控除の改定を中心とするいわば物価調整減税というもので組み立てられております。  それで、物価調整減税とよくいわれておりますのは、主として人的控除の拡大を中心といたしまして、したがって、課税最低限を若干引き上げ、そして課税最低限のすぐ上にあるところの階層に最もメリットの及ぶような減税でございます。そのような減税を繰り返しますと、所得税構造は非常にいびつなものになってまいります。  所得税は、御存じのように、人的控除税率との組み合わせ、さらに必要経費の見方の一つとしての給与所得控除、この三つ減税に最も響きますところの大きな要素でございますので、それらを絶えずバランスをとりながら手直しをしてまいりませんと、非常にゆがんだ構造のものになってまいります。そこで、せめて五年に一回とか十年に一回とかいうときには、そういう全体の構造の組み直しということが本来必要なわけでございます。最近数年間、四十五年以降かなりまたいわゆる人的控除引き上げをやってまいりました結果、所得税構造上のひずみというものが大きくなってまいりましたので、でき得るならば早い機会にいたしたいというふうに思っておったわけでございまして、今回それをぜひお願いをしたいと思うものでございます。  しかし、いずれにいたしましても、減税機会には、また同時に非常に重要なことは、納税人員をできるだけ減らすということでございます。四十八年度の予算におきまして予定いたしました納税人員は二千八百五十万ぐらいであったと思いますが、それを今度、このまま放置いたしますと、この表でお示しいたしましたように大体三千九百九十万人ぐらいにふえる。これは給与所得者だけでございますが、それを今回の課税最低限引き上げ等によって二千五百七十四万人まで減らす。少し正確に申しますと、四十八年度の当初予算で予定いたしました給与所得者についての納税人員は、二千八百四十七万人でございましたが、これを改正いたしませんと二千九百九十一万人になると見込まれますものを、二千五百七十四万人まで減らすということが見込まれておるわけでございます。  毎年の減税では、納税人員を何とかふやさないようにしたいと思いながら、なかなかいままでの減税規模ではそうはいかないということであったわけでございますが、今回は確実に数百万人というかなり大ぜいの納税人員が落ちることになるわけでございます。
  24. 小林政子

    小林(政)委員 毎年毎年わずかながら人的控除中心にして減税を行なってきたのだ、そして五年に一回ぐらいはここでひとつ大幅に、高額の所得者層にも及ぶような、こういう税率だとかあるいはまた大幅な改正というものが必要なんだ、こういうことですけれども、実際問題として、いままでだって人的控除を一万円ぐらいずつしか上げてきていなかった。去年のときにも私は、一体、一万円という根拠は何なのだということで質問したのを記憶しておりますし、事実所得税減税は四十四年千五百三億円、四十五年二千四百六十一億円、四十六年千六百六十一億円、四十八年三千百五十億円、そうして四十九年一兆四千五百億円と、こういう形で、実際にはその減税額というものも、人的控除といっても一万円ほどのわずかずつの減税にしかすぎない。自然増収を見れば、四十八年を例にとればさらにふえている。一兆一千五百九十六億円の自然増収に対して三千百五十億、こういう減税額でしょう。こういう点から考えれば、いままでもう減税はずっと積み上げてきたのでこれで事足りているのだ、しかも、人的控除中心にやってきたのだから、いわゆる所得のあまり多くない人たちに対してはこれでもう足りているのだ、だからこの際高額所得者にというような、こういう印象に受け取れるわけですけれども、私はそれは事実に反しているのじゃないかというふうに思います。  一体、給与所得控除というのはそれでは何なのか、そしてそれは職業上の必要経費というものをさすものなのかどうなのか、ひとつ性格づけを明確にしていただきたいと思います。
  25. 高木文雄

    高木(文)政府委員 毎年の控除の上げ幅がいままで非常に十分なものでない、これは十分と考えるか十分でないと考えるか、いろいろ考え方はございましょうが、とにかく毎年課税最低限引き上げ幅が、物価の上昇率、五%と考えますと、それを上回ること二、三%の、七、八%という水準できたということでございます。それに比べますと、今回は百十五万円から百五十万円までということでございますから、大体三割になるわけでございますので、これは非常に残念なことに物価が上がってまいりましたので、三割ということの持つ意味というものはかなり帳消しになってしまったわけでございますが、しかし、税の面だけで見ますと、毎年の七、八%の改善率と今度の三割の改善率は本質的に違う程度の改善幅になったわけでございます。  人的控除につきまして毎年ずっと一万円ずつの上げ幅でございましたが、今回これを三万円上げることをお願いいたしておりますし、また扶養控除につきましては十六万円から二十四万円まで、八万円上げることにいたしておる。五割の上げ幅であるということでございますから、これはかなりの上げ幅でございます。  そこで、所得税構造を直すために自然、収入階層別、所得階層別に見て、中から上のほうの階層にまでかなり減税メリットが及ぶような案になっておりますけれども、それでは御指摘の限界階層といいますか、低所得層のところの減税が非常にみすぼらしいものであるかというと、それはそうではないのであって、従来の一万円が三万円ということであり、特に扶養控除については八万円上がっておりますし、それから給与所得控除についても、下は二割から始まっておりましたものが四割になっておりますし、また独身者等のことを考慮した最低保障制度について五十万円という制度も設けてございます。私どもは、今回の減税は中高層のための減税だというようには決して思っておりませんので、何といいましても、当然のことながら中心は低といいますか、一番納税人員の多いところに一番メリットが及ぶように組み立ててあるつもりでございます。  次に、給与所得控除性格は何かというふうにおっしゃいましたが、これは非常にむずかしいわけでございまして、何度も当委員会においても御議論いただいておりますけれども、やはり何といいましても、必要経費の概算的控除というのがこの給与所得控除の圧倒的な性格でございます。  所得税は、収入から経費を引きまして、経費から一定の人的控除を引いて、それで所得計算をしておるわけでございますが、サラリーマンにつきまして——営業をやっていらっしゃる方は、精粗の差はあれ、必ず帳面があります。メモぐらいなものは必ずありまして、幾らの売り上げがあるとか、どのくらいの仕入れをしたということは、帳簿というような形式のものまでは至っておりませんでも、何かの形でメモ程度のものはお持ちなのが実際のところでございますけれども、サラリーマンの実態というものは、収入についても、経費についても、まあいわば特にそういうことに心がけのいい方が、手帳あるいは家計簿等をつけておられるということはありますけれども、一般的にサラリーマンが日々の収入なり支出なりを控えておる、朝家を出てから夜休むまでの間にこれだけの経費がかかった、支出をしたということを控えておるというのがサラリーマンの通常の生活態度だということはいえないわけでございますので、そこで、そういうものを前提にし七、収入から経費を引いて、そしてそれで税額計算をいたしましょうというのは実態に合わないということでございますから、そこのところをまあ平均的な率で、収入に対する率で計算するほうが現実的ではないかということで仕組まれたのが給与所得控除であるというふうに考えております。
  26. 小林政子

    小林(政)委員 そうしますと、必要経費概算控除ということで、いまごく一部の人は家計簿などもつけているであろうけれども、サラリーマンの場合はなかなかメモ程度もつけていない。したがって、概算控除ということである程度の概算の控除を行なうのだ、こういうことですけれども、いわゆる家計簿などがつけてあるということであれば、その中に含まれている生計費的なものは必要経費という形で認められるのか、それとも勤務に伴う必要経費という範囲というものは一体どの範囲のことをおっしゃるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  27. 高木文雄

    高木(文)政府委員 しばしばサラリーマンにつきまして、いまの給与所得控除のような概算的控除制度と実額控除制度との選択を認めてはどうかという御議論が出るわけでございますが、その際に行き詰まりますのが、ただいま御指摘の点でございます。ごく一部の方であっても、家計簿なり手帳なりに詳細に経費をつけておられるという例がございますから、その場合を頭に置いて考えました場合に、その経費のうちどの部分が勤務に伴う必要経費であるのか、どの部分が生活に伴う必要経費であるのかということの区分が非常にむずかしいということでございます。たとえば、洋服を買うという場合に、また衣類、はだ着類を買うという場合に、またクリーニング代を払うという場合に、その全体が勤務のために必要な必要経費だとはいえませんでしょうし、またその全体が生活のために必要な経費であるともいえないであろう。要するに、そこはこん然一体として洋服代なり衣類費なり洗たく代ということになっておるわけでございますから、それを区分することが非常にむずかしいだろうというふうに考えられるわけでございます。したがって、現在の四割、三割、二割、一割という率をきめるのにつきましても、それではおまえは洋服代なり洗たく代なりをどの程度勤務に伴うものとして計算したのかというお尋ねをかりにいただきましても、私なかなか答えられないという実態でございます。  そこで、さらに申しますならば、本来は、サラリーマンについていうならば、ただ一ついえますことは、給与所得控除人的控除を全部突っくるみにいたしまして、それで生計費と勤務に伴う経費とをまかなうに足るものとしてまずまず十分なものかどうか。たとえば独身者であれば、今度の場合は七十万という額が勤務のために、そしてまた生活のために相応の額といえるかどうか。それを必要な経費と見ることが相応な額といえるかどうか。夫婦と子供二人の場合に百五十万円なり百七十万円という額が生活と勤務のために必要なものとして相応なものといえるかどうか。サラリーマンについてはむしろ両方を合体したところで判断をするということは必要でございましょうし、またそれならばある程度可能であろうと思いますが、その七十万の部分、百五十万の部分をそれぞれに生活の部分と勤務の部分に分けて判断をし、さらにその細目に入って、いろいろの経費、雑費等につきましても、勤務等のためのものか生活のためのものかというふうに分けていくことは、ほとんど不可能なことだというふうに考えております。
  28. 小林政子

    小林(政)委員 収入増加に応じて経費増加する、今回そういう趣旨で、頭打ちを取り払ってもといわれるわけでありますけれども、具体的な実態の調査なんということは、大蔵省やったことはないのでしょう。
  29. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実態の調査では、一番しっかりしておるのは生活保護基準をつくるときの生計費調査でございますが、生計費調査によりますと、世帯人員がふえるのに従って一人頭の生計費は落ちていくというふうな調査はございます。しかし、収入経費との関係につきましては、これは家計費調査等でおわかりいただけますように、収入がふえましたならば逓増的にふえますけれども、しかし、その割合は落ちていくといいますか、だんだん低くなっていく。収入と生計費の関係は、収入が低いほど収入のほとんど全部が生計費に充てられるけれども収入がふえるに従って生計費の割合が下がってくるという関係にあることは一般的にはいえますが、それを給与所得控除との関連において、つまり、先ほど申しました扶養控除、配偶者控除等の人的控除の対応として考えられるべき部分と、給与所得控除の対応として考えられるべき部分とに分けてそういうものを調査するということは、本来分けることに相当な無理があることもございまして、調査をいたしていないわけでございます。  しからば、なぜサラリーマンについて、収入に応じて青天井に経費がふえると判断したかということであろうと思いますが、これは現在の所得税で、サラリーマン以外の部分、主として事業所得部分についてよく考えてみますと、製造業や卸売り業、小売り業というような場合には、必要経費というものが、仕入れであるとかあるいはいろいろな原料費であるとか、そういうものがありまして、その部分必要経費と見て引くわけでございますが、自由業等の場合には、必要経費の算定が非常に困難でありますところから、ずっと長年の間にわたりまして、納税者と税務署とのやり方は、収入に応じて必要経費を見るというやり方が定着をいたしております。  最も典型的なわかりやすい例として申しますならば、作家の方が創作をされて本を出す。本の著作権収入といいますか、印税が入ってくる。この印税収入とその本を書くのに必要な経費は幾らと見たらいいかということの関連を見ます場合に、その収入に対してある一定の率で経費を見ていくというやり方が長年行なわれておりまして、それが定着をいたしております。その場合に、百万の原稿料収入、五百万の原稿料収入、千万の原稿料収入というふうに印税収入かふえていった場合に、六百十六万のところについて七十六万で頭打ちというような形での、何らかの意味での、その創作をなさるための必要経費について頭打ちということがやられておりません。頭打ちということはやられておりませんが、それでたくさんの収入のある作家とあまりたくさんの収入のない作家のバランスは一応とれているものということでまあ落ちついております。こうした関係は、他の自由業等についても同様でございます。  そのことから、経費というものはやはりだんだん減っていくことはいくけれども収入がふえるに従ってやはりいささかはふえるというふうに考えることが、むしろわれわれの社会、お互いの社会において、ある種の常識として定着をしているのだというふうに考えられる。にもかかわらず、サラリーマンについてだけは六百十六万円について七十六万で終わりであって、あといかに収入がふえてももう経費は見ませんよということ自体が、どうしてよろしいのかということのほうがおかしいのではないかということは、実はもうかなり前から私どもとしては困っておった問題でございます。その種の議論は、納税者の方々からいろいろな機会にいろいろ話があります際に、なぜサラリーマンだけはどこかで経費頭打ちになると考えるのか、むしろそれは、率は下がるかもしれないけれども頭打ちでないほうがわかりやすいといいますか、のみ込みやすいのではないかということをしばしば言われてきたわけでございますが、やはりこの制度ができましたとき以来の長年の経緯があり、そう簡単に切りかえができないで今日まで至ったわけでございます。調査その他を通じて、収入に応じて経費がどのようにふえていくかという調査はいたしませんでしたけれども、しかし、そのことはものの考え方としてむしろ常識的ではないかというふうに判断をいたしたものでございます。
  30. 小林政子

    小林(政)委員 私は、昨年の給与所得控除に関しての高木主税局長の御答弁、速記録をちょっと見てみました。その答弁の中で、給与所得控除性格について、いわゆる「必要経費概算控除という部面に多く着目して給与所得控除という制度が組み立てられておる」ということを述べられて、そして「総所得が大きくなったからといって必要経費がふえるはずがないからという理由で、六百十六万円まで漸次給与所得控除の額がふえてまいりますが、それをこえた場合には、もう給与所得控除はふえないというかっこうをとっておりますのは、一種の必要経費の考え方から出てきているものでございます。」このように答弁されているのです。  これは私はそのとおり速記録から抜いたものでございますので、そうしますと、一種の必要経費の考え方から出ているのだということで、収入がふえるからといって、総所得が大きくなったからといって、必要経費がふえるはずがない、こういう考え方と、今回の上限を取り払ったということは、一体どう関連して理解したらいいのですか。
  31. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は全く矛盾をいたすわけでございます。私どもは、従来は、ただいま御指摘がありましたような、昨年までの私の答弁にあらわれておりますような考え方を、私だけじゃなくて、ずっとそういう説明をいたしてまいりました。納税者からしばしば、それはおかしいじゃないかということを言われましたけれども、いや、必要経費というものは、やはりサラリーマンの場合についていえば、あるところまででとめてもいいのだ、いま私が申しましたのとはちょうど逆に、作家の場合とは違うのだ、こういう説明をして、言ってみれば、強弁をしてまいりました。しかしながら……(小林(政)委員「それはおかしい」と呼ぶ)それはおかしいのです。おっしゃるようにおかしいわけです。ですから、何か機会があれば直したいというふうに考えておったわけでございまして、その点で従来の御説明のしかた……(「うその答弁」と呼ぶ者あり)うその答弁ということではないつもりでございます。どういうふうに考えるのがよろしいかということでございますから、うその答弁ではないつもりでございまして、私どもとしては、どこに、だれに聞かれましても、いままではそういう答え方をしておったわけでございます。  しかし、胸のうちでは、これはかなりむずかしい点があるな、かなり説明しにくいフィールドのものであるというふうに考えておったわけでございまして、そうでなければ、たとえば昨年でも四百十三万から、何で一年間に急に六百十六万になるのか、昭和四十七年度のサラリーマンは四百十三万円までについて五十三万円の必要経費を見ればよろしい。それが四十八年のサラリーについては七十六万円まで見ればよろしいと、なぜ五十三万円から七十六万円に、そこでわずか一年間に二十三万円ふえるのかというところも、言ってみればおかしいといえばおかしいわけでございまして、つまり、そういう意味でだんだん徐々に直していくというやり方はしておったわけでございますが、どうもあっちこっちの方々に議論を吹っかけられて議論をしていきますと、際限なく少しずつ広げていくというのでは、どうもうまく説明がつかない。おりがありましたならば、これはすっきりしたほうがいいのではないかというふうに考えました。必ずやこの国会では、いままでの答弁と今度の答弁とは食い違っているぞという御指摘を受けることはいわば覚悟の上で、よく考えまして、この際思い切ってはずしてしまう。  それで、税制調査会委員の間で非常に議論のありました一つの重要なポイントは、まあどこが境目ということもなかろうから、たとえば八百万とか千万ということで切ったらどうかということを非常に強く主張された委員が、政府税制調査会の中にございました。それもなるほど一案である。四百十三万円から六百十六万円のところまで一年に直したわけですから、それをまた今度八百万円にする、あるいは千万円にするとやってだんだん広げていくというのも、確かに一つの組み立て方だとは思いますけれども、どうもそこのところが、いつまでたっても何となく割り切れない説明を繰り返していかざるを得ないという現状でございますので、まあこの際思い切って、従来の考え方を基本的に転換をしてしまうということにいたしたわけでございます。
  32. 小林政子

    小林(政)委員 私は、主税局長の答弁をたいへん事実に基づいた御答弁だということで常日ごろ聞いておりましたけれども、何か心にもない答弁をしていたんだ、こういうことでは、実際これは、公の席でこういうことをおっしゃったということは、私はこれからはもう答弁について信用できない。心にもないことをまた言っているんじゃないかと疑ってかからなければならない。こういうようなことが、議会制民主主義の上で、討論の中であり得ていいものかどうか、こんなことが許されていいんでしょうか。
  33. 高木文雄

    高木(文)政府委員 給与所得控除制度について、頭打ちがあるほうがいいか、ないほうがいいかということは、これは非常にむずかしい問題でございまして、二つの見解があり得るところであると思います。それでは、四十八年度までの制度は間違いなのかと言われましたならば、それは間違いだということは言えないわけでございまして、それは常にどっちの制度のもとにおきましても、反対側の、もう一方の制度は間違いだということは、私は言えないと思うのでございます。それは、専門家の間でいろいろ議論をしていただいて、かつ、国会で御審議をいただいて、そうしてきめられたところに従って組み立てればよろしいのであって、どっちが間違いだということはないと思うのでございます。  ただ、どっちがより論理的であろうかということをいろいろ考えました場合に、私どもも、長年そういう制度できておりましたから、別に頭打ちについてそんなに実は矛盾を感じていなかったのでございますけれども、だんだんやっています間に、そこの論理を詰めていきますと、非常に筋が通りにくい。  一方、外国の例を調べてみますと、アメリカでは、税率でもってサラリーマンとその他を区別をいたしております。日本と同じようにアメリカは、大体七〇%前後まで最高税率は累進でまいりますが、サラリーマンについてだけは五〇%で税率がとまっておるわけでございますし、ドイツの場合には、一般的に税率が五三%になっておりますが、サラリーマン所得以外の資産性所得については、財産税が毎年かかっておるということを通じて、資産性所得給与所得とのバランスをとっておる。  そのことを考えてみますと、一方において、しばしば御指摘のように、日本の資産性所得についてはなはだ現在不満足な状態にある、これは何とかしなければならぬわけでございますが、資産性所得と勤労性所得とのバランスをとる上において、土地とか株の譲渡とか預金の利息、そういうものについての何らかの対策はとらなければならぬことは言うまでもございませんけれども、一面また、給与面について何か抜本的に考え方を改めるということが必要であろうかというふうに考えました。  そういたしますならば、日本の場合には、税率で手当てをするとか、ドイツ方式のように別途の税を設けるとかいうことも現段階において現実的ではない、直ちになかなかできることではないと考えましたので、そこで、給与所得控除制度についてのものの考え方をある程度直そうということで、頭からかなり高い税率控除にいたしました。四割という率も、これはかなり高い率でございます。頭からかなり高い率にし、かつ頭打ちをやめるということにするならば、ある程度勤労性所得と資産性所得についての従来のアンバランスを若干とも修正することができる方向にいけるであろう。  そこで、そういった場合に、いままでの給与所得控除制度を——いまたいへんおしかりを受けましたようなことになることは十分考えました。そのことがいいか悪いかも十分考えました。その上でなおかつ、それをこの際直す、考え方をそこで切りかえていくということが現実的な案であろうかと考えたわけでございます。  そういう覚悟といいますか、転換に踏み切りますにつきましては、昨年までのお答えのしかた、これは私だけではございません、従来、主税局としてお答えしてまいりました考え方がそこで変わるわけでございますので、従来の説明のしかたがそういう意味でたいへん、ある意味では不十分であったと申しますか、誤りとは言いたくないのでございますけれども一つの立場に片寄り過ぎた考え方で御説明をしておったということについて、この際、おわびをいたします。
  34. 小林政子

    小林(政)委員 私は、国会の審議というものは、その場さえ通してしまえばそれでいいんだというようなことであってはならないと思います。やはりただいまの答弁にしても、私はむしろ、それは高木さん個人の御意見なのか、政府として一貫してそういう姿勢で臨むということが決定されてやられていたことなのか、この点はひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  35. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは個人の答弁ではございませんので、税制調査会におきますところの御答申の文章及びいろいろな資料等を見ていただけばおわかりいただけると思いますが、その点は非常に、そういうふうにものの考え方を変えるということの是非を含めて、税制調査会でも御審議を願ったわけでございます。しかし、税制調査会の方々というのは専門家ではないわけでございまして、いわば納税者代表、学識経験者代表でございますから、そういう方々に責任を持っていただくわけにはまいりませんので、事務局であるわれわれが責任を負わなければならぬものでございます。  そして、従来の私ども説明は明らかに、先ほど小林委員が御指摘になりましたように、私がこれまで、昨年の国会で御答弁申し上げたような考え方で言っておったわけでございますが、その点につきましては、いまから考えてみますと、二つの考え方があり得るわけでありまして、これはその点はどっちがいいかということで、こっちでなければならぬということではないと思うのでありまして、その点いささか片一方の意見に片寄り過ぎて御説明を申し上げておったということについては、これは私だけではなしに、従来の私ども大蔵省といいますか、主税局といいますか、その考え方がそうであったということで御了解いただいてけっこうだと思っております。
  36. 増本一彦

    ○増本委員 関連でやります。  いまの御答弁ですと、一つは税調からの答申があった。しかし、政府がその答申に基づいて、今回のように天井をはずすという一つの政策選択をしたわけですね。その選択をした根拠がどこにあるのかということが、いま一つはっきりしていないわけですね。考え方が二つあって、片一方に片寄り過ぎていたから、今度はもう一つのほうにいきなり傾斜したわけでしょう。ですから、その傾斜した根拠が一体どこにあるのか。それは、四十七年、四十八年までと来年度以降との間に、そういうようなもう一方の極に転換をする上での、何か経済的な面でも、あるいは税の執行の面でも、いろいろな点で、実体的な変化が具体的にあったのかどうか、その辺のところまで含めて、もう一つ突っ込んだ答弁をしていただきたいと思います。
  37. 高木文雄

    高木(文)政府委員 まず、所得税減税ということは毎年毎年行なわれておりますけれども、先ほどもちょっと触れましたように、主として人的控除の拡充ということを行なってきたわけでございます。それで、非常に大きな所得税減税というのは、昭和三十二年に行なわれました。このときはいわゆる千億減税、千億施策というようなことがいわれたときでございますが、非常に大きな減税が行なわれました。その次には、昭和四十三年の税制調査会の答申を受けまして、昭和四十四年度と四十五年度と二カ年にわたりまして、これまたかなり大きな減税が行なわれました。今回の所得税減税といいますか手直しは、根本的な手直しをしたという意味におきましては三度目でございます。  そこで、そういうかなり大きな財源の中でいたしませんと、そういった大きな基本的仕組みの組み立て直しということができないわけでございます。と申しますのは、今度の例が一番いい例でございまして、たとえば、給与所得控除頭打ちをやめるというようなことをいたしますというと、そのこと自体たいへん金持ち減税ではないか、こういうことになります。減税は決して金持ち減税であってはなりませんから、中階層、低階層についても相当大きな減税ができるような時期でないと、その切りかえができないわけでございます。ほかのことはやらないでおいて、頭打ちだけやめるということになりますと、まさに金持ちだけのための減税みたいになってしまいまして、あとのほうは何もできないことになってしまいます。したがって、人的控除も相当拡大をし、また税率等についてもある程度手直しができるというような、いままでの普通の年とはちょっと違うスケールの大きな所得税のやり直しというようなことを行なう時期でないと、そういう仕組みの改造ということはできないわけでございます。  したがって、四十八年度と四十九年度との間で何かそういうことをやらなければならない、給与所得控除頭打ちをやめなければならないような直接契機となるような事件があったか、あるいは日本経済に環境の変化があったかと申しますと、それは別にございません。ございませんが、いつやるかということは、所得税の規模において、大きな規模の減税ができるときかできないときかということによってきまるのであるというふうに私は判断をいたすわけでございます。したがって、こういう機会でないとそれはできませんので、普通の程度の数千億の規模の減税というような時期には、こういう大きな仕組みのやり直しということはできないわけでございます。
  38. 増本一彦

    ○増本委員 一つは、給与所得控除の天井が上がるというのは、去年の審議でもやったわけですね。天井が上がった。今度はその天井を、ふたを取ってしまったわけですね。去年の答弁を見ても、先ほど小林議員が指摘したとおり、天井はあくまでもふたはしておくのだということを前提にした答弁であったわけです。そこには、高額の収入の者も給与所得控除を、最後までずっと経費というものを認めていくのだ、そういう方向というものは片りんすらなかったわけですね。答弁の中にはそういうものはない。  しかも、今回提案趣旨説明の中でも、政府のこれまでの見解や政策がここへきて変わるのだ、そういう点での説明も、趣旨の弁明もなさっておられない。しかも、経済環境の変化もない。そういう事件もなかった。こういうことだと、いままでのやり方をなぜ変えなければならないのかということについては、単に両極の意見があって、片方の意見のほうが正しくて、いままでのは片方に片寄り過ぎていたということだけでは、やはり国会の答弁としても責任を持った答弁とは言えないし、しかも、それを審議するわれわれとしても、政府の見解がそのように浮動的であれば、責任をもって審議することはできない。一体こういうことでよいのか、そういう根本的な問題だと思う。そこのところをいまひとつはっきりさせていただくと同時に、遺憾の意を表されるならば、その上に立ってはっきりさせていただきたいというように思うのです。
  39. 高木文雄

    高木(文)政府委員 大臣が国会で御説明いたしました提案理由の説明の中では、給与所得控除のいまの頭打ち部分につきましては、「給与所得者所得税負担を大幅に軽減するため、給与所得控除について、現行の二〇%ないし五%の控除率を四〇%ないし一〇%の控除率に引き上げるとともに、これによる控除額が五十万円に満たない場合には一律五十万円を控除するという新しい定額控除を導入し、あわせて、収入が一定額に達すると収入が幾らふえても控除額増加しないという、いわゆる頭打ち制度を廃止することといたしております。」というふうに御説明をいたしておるわけでございます。それはそれ以上のことは申しておりませんが、提案理由全体といたしまして、各部分についてその理由を詳細に説明するということになりますと非常に長いものになりますので、省略しておるということでございます。  いまの点は、昨年度の六百十六万円にしていただくということの際に、将来頭打ちをやめるということには全然触れなかったではないかという御叱正でございますが、正直のところ、四十八年度の税制改正の審議をお願いいたします祭には、とうていこのような大規模な減税を行なうということはその時点においては頭に置いておりませんでしたから、したがって、いまも繰り返し御説明いたしますように、大規模な減税のときでありませんとそういう切りかえはできませんから、将来いずれのときにかそういうことはあってもいいということは、あるいは当時考えておったかもしれませんけれども、とてもここ二、三年の間にそういう時期がめぐってくるというふうには考えておらなかったというのが正直なところでございます。
  40. 増本一彦

    ○増本委員 先ほどから局長は、従来の天井をつける考え方、片方に片寄り過ぎていた、片寄り過ぎを修正するのならまだどこか中間に行くのだろうということになるんだけれども、そうじゃなくて、それを取り払ってしまうというんだから、もう一方の極端に行くわけですね。そういう片方の極から片方の極へと、いわば百八十度転換したわけです。その転換をした根拠は何かというと、その根拠は実体経済を踏まえたものではない、大幅減税をやるための一つの政策の手だてなんだ。だけれども、ほかにもその減税の手だてというのはあるわけですね。税率についても、もっと下の所得層についてはさらに刻みの幅を長くして、そして上のほうにこそ刻みをつけていくというようなやり方もあるいはあるだろうし、あるいは人的控除引き上げをもう少し考える、これはいろいろ手だてはあるわけですね。そのうち一言ってみれば、減税規模全体をかなり大きくするためにこの天井をはずしたということになるわけですからね。いままでの御答弁を聞いていてもそうなる。だから、なぜそういう手だてがいまこの段階で必要だったのかということも含めた説明というものがもう一つないと、私はほんとうの趣旨弁明ということにはならないと思うのです。  先ほどから指摘していますように、大臣のその趣旨説明のときでも、結局、今度はこうなりましたという経過の説明だけであって、なぜ天井はずしという政策を選択したかという、ここでの方向転換が片方の極に今度は行ったにもかかわらず、その点についての説明もないし、いまの皆さんのお話を聞いても、納得のいく説明を得られたというようには考えないわけです。しかも、従来からの国会の答弁とは、木に竹をつぐ以上に大きな転換になっているわけです。これで皆さん方の答弁が、ほんとうにわれわれが徹底審議、慎重審議ということをやっているにもかかわらず、それに政府自身が真剣に答えているということになるのか、そういう大きな政治的な問題であるというように私は思うのです。その点、政務次官もひとつそこのところを踏まえて、はっきりとした御答弁をいただけますか。
  41. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは非常に問題のところでございます。冒頭にも申しましたように、税制調査会等におきましてもこの点が最も問題になったところでございます。ですから、いま小林委員や増本委員から御疑問の御提示があるのは、ある意味では当然のこととというふうに思うわけでございます。それはいろいろな角度からまだこれから何度でもお尋ねお答えをしていかなければならぬというふうに考えるわけでございます。  先ほど小林委員お尋ねにありました、それにお答えをいたしましたように、給与所得控除を六百十六万円で頭打ちのところから上を取っ払ったことによる減税額は、一兆四千五百億円のうちで百億円ということでございますから、考えようでございますけれども、そんなに大きな金額ではないわけでございます。そうしますと、私が説明しましたように、たいへん大きな減税をやるときでなければそういうことはできないという説明と一見矛盾するようにお思いになるかもしれないと思いますが、しかしながら、そういう高額所得者の人数が少ないから、そしてサラリーマンについての高額所得者というのはそう大ぜいいませんから、したがって、そこの天井のあるなしというところは百億程度しか影響がないわけでございますけれども、しかし、所得再分配という概念からいきますと、そこのところが重要な意味を持つわけでございます。でありますから、たいして大きな減税ができないときにそこのところを変えるということは、これは切りかえにあたってはなはだ不適当であるという御批判を受けることは必至でございます。  今回の場合には、たとえば課税最低限につきましても、毎年六%とか八%とかいう程度の改定でございますところを、初年度でいきますれば百十二万円から百五十万円まで、平年度計算でいきますれば百十五万円から百七十万円までということで、三割強の課税最低限引き上げでございますし、扶養控除のものの考え方につきましても、ある意味からいいますと、あるいはまたおしかりを受けるかもしれませんが、従来の説明とは違う考え方に立つわけでございます。従来は、夫と妻は同じだけ引きましょう、しかし子供については、あるいはおとうさん、おかあさんの扶養親族については、三人目、四人目の生計費というものは、かまどが一つであれば一人当たり生計費はだんだん低減していくから、片一方が二十一万円であっても扶養親族は十六万円でいいんですというふうに御説明しておりましたけれども、今度はむしろそれを一挙にそろえますというふうに説明するわけでございます。  ですから、決して金持ちに影響がありますところの給与所得控除の切りかえのところだけではなくて、扶養控除のところの考え方も、従来とは考え方をかなり基本的に変えたわけでございます。そういう意味におきまして、今度の所得税減税というものは決して規模が大きいということだけでなくて、構造を全面的に改めたという意味で、かなり重要な意味を持つものであるというふうに考えます。給与所得控除についても、扶養控除のあたりにつきましても、そういうふうに従来の考え方と変えました点につきましては、ひとつ十分お尋ねをいただいて、御納得がいきますまでお答えをしてまいりたいというふうに思うわけでございます。  しかし、それをなぜ今回やったかといいますと、扶養控除部分につきましても、給与所得控除部分につきましても、両方ともこのような基本的な組みかえをいたしますにつきましては、いろいろなバランスがあります。いろいろな所得階層別バランスとか、また世帯間の家族構成別バランスとかいうものがありまして、切りかえが大きいだけにバランスに変化を来たしてまいりますからして、相当大きな減税をやらしていただくときでないとできないのでございまして、そのことをひとつまず御理解いただきたいと思います。
  42. 中川一郎

    ○中川政府委員 ことしの税制改正での問題点は、頭打ちの撤廃であります。これも大蔵省内部で十分議論したところですが、従来までは給与が相当高額であっても経費というものは一定額をこえるとふえないという、給与所得控除経費概算控除ということになっていますから、経費がそれほどふえないという考え方のもとに頭打ちをしてまいりました。ところが、一方では、先ほど来局長が説明いたしましたように、給与がふえればふえるだけ、それでは全く経費がかからないかというと、やはり高額所得者になりますと、たとえば、香典の支出が多いとか、あるいは仲間と一ぱい飲まなきゃいかぬとか、高額所得者としてのメンツというものもある。しかし、従来は、高額所得者のそういった経費経費として見るべきでない。というのは、低所得者の方々に多額の税負担を求める段階で、高額所得者の方々が使っているそういうものを控除したのでは、金持ちに優遇ではないかという御指摘を受けます。  しかし、この際、一兆円を上回る、構想としては二兆円減税、最低の額も百七十万円、国際水準を上回る額の控除をする際ならば、ひとつそういった問題も取り上げていこう。言いかえるならば、そういった経費も認めてもらえる社会的条件になったのではないか、こういう判断のもとに、昨年までとは違った考え方をとり、その面に必要な経費経費概算控除として取り入れる。このことは、国民の皆さん方にも、国会の皆さんにも、理解していただけるだろう、こういう判断のもとに提案申し上げているところでございます。要するに、こういった経費がいままでは税制上の経費として見れない、しかし、今後はこういうものは見れるだけの余裕が税制上出てくるというところから、今回改正に踏み切り、これを経費として見ていただくようにお願いしておるわけでございます。
  43. 安倍晋太郎

    安倍委員長 関連して、阿部助哉君。
  44. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私、基本的な立場で、局長、あなたのあげ足をとるわけじゃないのですけれども、私はやはり国会侮辱だと思うのだな。あなたは去年心にもないことをここで答弁したんだというなら、委員長、この委員会をとめて理事会を開いてもらいたい。  ここは国民のためにお互いに真剣に討論をする、そしてそれを転換するなら転換することはあり得る。あなた、転換をしたことを説明する場は、いままでこの委員会で幾らでもあったんです。それを、前の速記録と比較して小林委員がやって、初めてここでそういう答弁をされておる。それは、うまくいけばごまかして通してしまおうという考えだと見ても無理ではない。そういう答弁をされるならば、もう局長は答弁しないでいい。大臣や次官にわれわれはこれから質問を集中いたします。心にもない答弁をここでされるなんということならば、もう局長以下の答弁はわれわれは必要といたしません。私はそれをちゃんと理事会できめたいと思います。  いろいろな情勢の中で、基本的に皆さんが転換するということはあります。しかし、そういう大事な転換をするときには、皆さんがむしろ進んで、いままでこういうふうにやってきたが、今度はこういうふうにいたしますということを国民のために懇切に説明をなさるのが、私はこの委員会の任務であろうと思う。それを、いままで説明する機会が何べんもあったにかかわらず、前の速記録を出すまではそういう答弁をされないなんというあり方ならば、皆さんはそれほど責任はないんだから、これからは責任のある大臣か次官に対してわれわれは質問を集中いたしますから、皆さんはただ資料だけを出しなさい。皆さんには答弁を求めません。私、そのことを理事会で一ぺん御相談を願うまで、この委員会は休憩してもらいたいと思います。
  45. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  46. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほどの小林委員質問に対する主税局長の答弁についての問題については、理事懇談会での協議に基づきこれを保留し、午前に引き続き質疑を続行することといたします。小林政子君。
  47. 小林政子

    小林(政)委員 ただいまの問題の性質は、きわめて重大な問題であります。昨年と全く異なった提案を十分な説明もなくしたことは、国民に対する背信行為であると私は思います。この問題はうやむやには済まされません。誠意ある態度を示すべきでございますし、それを見た上で委員会で質疑を続けたいと思います。したがって、この問題については質問を保留いたします。  次に、私は、一千万円、二千万円というような非常に高額な所得者、この場合はおそらく会社でも相当の地位にもつかれていて、結局は会社の交際費あるいは必要経費というようなものが自由に使えるという立場にある方ではないだろうか、このように考えられるわけでございます。  また、その反面、最近の一般勤労者の世帯では、夫の収入だけでは家計を維持していくことがきわめて困難になってきているというのが現状であります。共かせぎの世帯が非常にふえてきています。働く婦人の中で、家事労働を負担しながら働く婦人、非常に社会的にも数多く進出をしてきておりますけれども、女子雇用者の中に占める既婚婦人の割合というものは五〇%をこえているといわれていますけれども、その場合に、子供を保育所に、あるいは無認可の保育所に預け、また知人に預かってもらって仕事をしているという婦人の数が最近非常に目立ってふえてきています。共かせぎの場合には、どうしても出費がかさむわけでございまして、外食などもふえますし、収入を得るための必要経費というものが非常にふえてきているというのが現状です。これらの問題等について局長は、これが収入を得るための必要の経費であるということについてどのような見解をお持ちになっていらっしゃるのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  48. 高木文雄

    高木(文)政府委員 たとえば子供さんのある御婦人が仕事に出られる場合に、いろいろ保育所に子供を預けなければならない、あるいは家事手伝い人を家に置かなければならない、そういうことによって掛り増し経費がかかるという場合に、その種の掛り増し経費はどこでどういうふうにして税法上扱っているのかという趣旨の御質問ということでお答えを申し上げますが、それはやはり現在は、給与所得控除というものの中でそういうものも見られているんだという考え方であろうと思うわけでございます。  その場合に、給与所得控除は一定の収入に対して一定の率で算定されておるから、そういう個別事情を十分にしんしゃくすることができないような仕組みになっているのではないかという問題があるわけでございますけれども、その点については、それでは現在の収入に対して四割なり三割という給与所得控除のきめ方、それから最低額五十万円というきめ方が妥当であるかどうか。もしそれが非常に低い水準にありますれば、非常に多くの方の場合になおカバーし切れてないということになろうかと思いますけれども、今回の改正の関係もありまして、四割なり三割なりという水準であれば、かなり程度に大部分の方のそういう掛り増し経費を含めてカバーし得る水準にあるというふうに考えております。
  49. 小林政子

    小林(政)委員 局長、いま保育園の、公立、私立もございますけれども、保育料というものが大体どのくらいかかるかというようなことを御存じでしょうか。
  50. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いま手元にその数字を持ち合わせておりませんので、正確にお答えできません。
  51. 小林政子

    小林(政)委員 私が調べました資料によりますと、保育料は三歳以上の場合には、これも私立、公立によって違いがありますけれども六千二百円、三歳未満の場合には七千円でございます。また公立の保育所あるいは認可保育所が数少ないために、最近無認可の保育所というものがたいへんふえてきておりますけれども、この無認可の保育所の場合には一カ月一万八千円、お弁当をめんどうを見てもらうということで二万五千円ということが普通標準になっております。  この場合に、もし三歳未満の子供で七千円の保育料を払っているとすれば、年間で八万四千円になります。また無認可の保育所に子供を預けているということになれば、これは年間三十万円です。収入を得るために非常に多額の経費が特に婦人の場合にはかかるわけですけれども、これらの問題について、経費のカバーをするということで税額控除としてこの問題などを当然認めていくべきではないだろうか、このように私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  52. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほどお答え申し上げました中で、子供を預けておられる場合というのを申し上げましたけれども、どこまでが働いておられる婦人の給与所得控除の対象の問題として考えられるのか。それから、どこから今度はその子供さんについて認められる扶養控除制度の問題として考えられるのかという境目の問題は、必ずしも明確でないわけでございますが、三歳なり四歳なりの子供さんを保育所で教育をしてもらうというか預けてある、幼稚園に通わせるという経費の問題は、これはむしろ扶養控除の問題として考えていただいております。  その場合に、いま御指摘のように、保育所にも非常に経費のかかる場合があるわけでございますけれども、そのことはまた、子供さんを高等学校なり大学に通わしておられる父兄から見ますと、今度は、先般他の委員から御質問がありましたように教育費についてどのように見るべきかという問題として問題が起こってまいるわけでございます。昨年の国会におきましても、教育費控除制度を設けてはどうか、あるいはそういう幼児を保育所に預ける、そういうための経費を特別に何らかの制度で認めてはどうかという御議論がございました。これは実はほとんど毎国会、いろいろと御意見の出るところでございます。  それに対しまして、私どもの従来の考え方は、各種の個別事情を織り込んだ控除制度を設けますことは、いたずらに所得税制度が複雑になることになるので、いまの小さい子供さんを預けるのにお金がかかるという問題、子供さんを高等学校や大学に通わせるのにお金がかかるという問題は、実態としてそういう実態があることはわかりますが、さりとてそれを一つ一つ制度として取り上げて何々控除制度というのを設けるのはいかがなものであろうかというふうに考えました。従来から、税制上の簡素簡明化という問題との関連でこれを処理してまいりたいという気持ちを強く持っておったわけでございます。今回の改正におきまして、基礎控除について、また配偶者控除については、現行制度の二十一万円から二十四万円に三万円引き上げることにいたしました際に、扶養控除については、現行の十六万円から二十四万円に一度に八万円引き上げる。扶養控除について特に大幅な引き上げをいたしましたことは、そのような教育費の問題また保育費の問題等が片方にあることをのみ込みまして、同時に税制制度をより簡明にするためという趣旨を含めまして、基礎控除、配偶者控除、扶養控除等を、従来との比較でございますけれどもかなり高い水準でそろえるということにいたしたわけでございます。十六万円を二十四万円に引き上げました八万円、この八万円の持ちます意味というものはそういう意味で、御指摘のような経費につきましても、完全ではないかもしれませんけれども、従来よりはある程度カバーし得るようにという気持ちからそのようにいたしたわけでございます。  なお、この点につきましては、今回の税制調査会の御議論を願いました際に、教育費その他のいろいろな特別な支出が家計費にどの程度影響するかということを見て新しい控除を認めようという要望が強いけれども、これは検討の結果、やはり扶養控除のほうで処理することが望ましいという御答申をいただいておるところに従ったものでございます。
  53. 小林政子

    小林(政)委員 婦人が外で働く場合にも、家事労働、育児というものを、自分は外で仕事を持っているからといって免れるというようなことはいまの生活の中ではほとんど不可能であり、できないことでございます。したがって、その時間というものをどうして生み出していくか。そのためには、たとえば食糧の確保をする場合一つをとりましても、やはり何日分かのストックを用意をするとか、その処理などについても相当くふうをしたり努力をしたりというような中で家事を処理している、これが仕事を持つ婦人の実態であります。したがって、そのためにどうしても支出というものも伴いますし、家事、育児というようなものを続けながらもなおかつ仕事をしていくという現在の状態の中で、いままでは家計の中でのやりくり、個人の努力、くふうというようなものによって、それを何とかまかなってきたわけでございます。  私は、現在の人的控除——教育の問題等については扶養控除をここでもって八万円もふやしたんだ、こういうお話がいまございましたけれども、しかし、これらの経費まで現在の人的控除で何とかやりくりをしていこうとしても、そのワクはあまりにも低いということが実態だと思います。こういう点から、本来であれば人的控除をもっとふやして、そこでまかなっていけるような体制を早急にとるべきだと私は思いますけれども、しかし、現実の問題としては、当面の措置として税額控除などを行ない、そして人的控除を拡大していくという方向でこれらの経費もまかなっていける、こういう方向に持っていくことが望ましいというふうに考えますけれども、局長の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  54. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘の点は確かに問題のある点でございまして、従来からもそういう御意見がしばしば出されておるところでございます。ただ、税におきまして、婦人の問題をどのように考えるかということはいろいろとむずかしい問題がございます。現在の所得税は、御存じのように、課税単位といたしまして稼得者単位の課税になっております。  もう一つこれに対応する考え方としては、消費単位ということで考える考え方がございます。夫婦で共働きの場合に、現在は夫は夫の収入を基準にして独立の納税者になりますし、妻に収入がありますれば、妻は妻として独立の単位として納税単位になるわけでございます。このように収入を稼得する方を納税者とする制度を稼得者単位と呼んでおりますし、夫婦の所得を一緒に見まして消費の単位を一つの単位として課税する方式を消費単位と申しております。  現行の日本の制度は、稼得者単位になっております。御存じのように、所得税は累進税率になっておりますから、たとえば、同じ二百五十万円なら二百五十万円の収入があります場合に、夫が二百五十万円を一人で収入する場合と、夫が百五十万円で妻が百万円の収入がある場合と比べますと、稼得者単位で課税をするというほうが課税単位が二つに分かれ、累進が働く程度が少なくなりますから、稼得者単位のほうが税が総体としては軽くなる、こういうことになるわけでございます。  そういう意味から申しまして、現在の日本の税制は、全体として見る限りにおきまして、まずかなり働く婦人の地位のほうが比較的有利である。一方からいいますと、夫だけが働く場合にも、妻が家にあって家事その他をいたしておるということによって安心をして夫の収入が収得できるのだから、夫が一人で収入をあげるのについても妻の地位を考慮して、たとえばいろいろな国でやっておりますように、二分二乗方式というような形で、夫の得た収入を夫と妻の二人で得たものとして考えて計算するようにしてはどうかというような議論もあるわけでございます。そういう意味から申しますと、婦人の税制上の地位をどのように仕組んだらよろしいかということは、共働きの御家庭の場合と片働きの御家庭の場合とで、それぞれ両サイドからの御議論があるわけでございます。  そういう点も考え合わせますならば、おっしゃるように、実態としてつとめに出られる婦人の家庭について何らかの配慮をすべきだという御意見が従来からもございますし、私どもといたしましてもある程度理解はできるわけでございますけれども、しかし、いま申しましたような所得税全体の仕組みを考えまして、片働きの家庭における税の問題というものを考えますならば、にわかにそれをよしとするわけにもまいらないというようなかっこうになっております。この問題はわが国だけでなくてよその国でもいろいろ議論されておりますところでもありまして、各国の税制にもいろいろな形のものがあるわけでございますが、そういうものと所得税の仕組みの問題とをからみ合わせながら考えるべきであって、にわかにそういう税額控除なり所得控除なりということで、その種の小林委員指摘経費控除制度を設けることには、必ずしも賛成いたしがたいという状況にあるのでございます。
  55. 小林政子

    小林(政)委員 しかし、共かせぎの家庭あるいは共働きの場合には、当然その収入を得るについての経費が必要である。私はその一つの例として、子供を保育所にという問題をあげたわけですけれども、決してこれだけではございません。幾多の経費が必要であることはもう現実の問題でございますし、であるならば、私はほんとうに課税最低限をもっと引き上げて、これらの経費等も吸収ができるような水準にまで持っていくということが必要ではないだろうか、このように考えますけれども、特に課税最低限は、今回平年度で百十四万九千円から百七十万円に、初年度で百五十万円になったと説明されておりますが、人的控除額では平年度九十六万円にしかなっていないというのが現状でございます。特に最近のようなインフレ、物価の狂乱のもとで、国民生活の実態というものは決して豊かになっているどころか、最近はいろいろな意識調査などを見ましても、また家計の実態などを見ましても、相当深刻な状態になっているということがいえると思います。  私は、昨年、税制のこの問題を質問いたします際に、家計簿を調査したその実態を示しながら御質問いたしたわけでございますけれども、今回も家計の実態が現在一体どうなっているのだろうか、こういう立場に立って、いろいろと家計簿の調査をされている、あるいはまた家計簿を綿密につけていらっしゃる方々のお話を伺ったり、それを見せていただいたりいたしまして調査をいたしたわけでございます。  ここにいま一つの例をあげたいと思いますけれども、この家族の場合は、これはことしの一月の収入の家計簿でございますけれども、家族構成は夫と妻、子供三人の五人世帯の共かせぎの家庭でございます。収入を見てみますと、夫の一カ月の収入が十一万六千三百十七円、妻が共かせぎで働いておりますが、妻の収入が五万四千百八十円、いわゆる非消費支出を差し引いて収入合計が十五万五千六百九十四円、これが収入であります。  そうしてこの家の生活状態というものがどうなっているだろうか、こういうことでいろいろお話を伺い、また現実に家計簿などをいろいろと説明をしてもらったわけですけれども、この家の場合には、支出の面では主食が二万一千六百五十五円、これはパンとお米です。副食が三万九百十二円です。また子供がおりますので、菓子だとかくだものだとかいう嗜好品が一万三千八十二円。食費の合計が五万五千六百四十九円になるわけです。そして住居費は五万五千四百六十九円。この住居費の中には、ガス代が少し多目に入っております。一万六千二百円ですけれども、これは説明を受けますと、ガス代が多いのは前年の十二月の分が入っているんだということでございまして、一応住居費が五万五千四百六十九円。通信・電話費が八千三百九十円。保健・医療費が九千五百五十円。教育費が九千六百三十円。被服費が一万六千五百九十円。交際費、小づかい、その他を含めまして雑費が四万二千二百二十九円で、総支出合計が十九万七千五百七円。収入が先ほど申し上げましたとおり十五万五千六百九十四円で、そして支出が十九万七千五百七円、これはもちろん非消費支出を差し引いた内容でございますけれども、この家の家庭の状況等、いろいろと私もお話を伺ったりして中身を検討してみたわけでございますけれども、四万一千八百十三円のマイナスになっているわけでございます。  私は、ここのうちの家計簿はそう低額所得者というところではなくて、むしろ標準的な家計であろうというふうに思いますけれども、それでいても、なおかつ実際に赤字を一カ月の中で出している、こういう状況でございます。このことを考えますと、やはり家計支出に見合って人的控除というものをもっと引き上げていくべきではないだろうか、むしろ給与所得控除などに天井をはずすなどというようなことではなくて、その財源をもっと人的控除に振り向けていくべきではないだろうか。このように家計簿の実態等を見てしみじみと痛感をいたしたわけでございますけれども、この点についてどのようなお考えをお持ちか、御見解を承りたいと思います。
  56. 高木文雄

    高木(文)政府委員 従来は、先ほども小林委員から御指摘がございましたように、毎年の人的控除引き上げ幅が一万円であった。それに比べますと、今回は基礎控除、配偶者控除は三万円、扶養控除は八万円ということでかなり思い切って引き上げたつもりでございますし、その結果と給与所得控除の改善とを合わせまして、百十五万という課税最低限が平年度百七十万になったわけでございます。私どもといたしましては、従来から比べますならば、かなり思い切った措置であるというふうに考えてはおります。  しかしながら、御指摘のように、この水準というものはこれでもう完全に満足であるかどうかということになると、それはまたいろいろ議論があるところでございまして、いま御指摘になりましたような点を踏まえて、今後のいろいろな政策が考えられてしかるべきであろう。しかし、私どもといたしましては、何としてもそこに相当問題ありということで、一兆四千五百億の中の相当部分人的控除の改善のほうに充当いたしたわけでございます。  それで、将来の問題としてどのようにするのがいいのかということは、先ほど御指摘がありました保育児を持っている場合の家計費負担との問題等も総合して考えますならば、今後におきましても、もちろん物価の情勢等にもよりますけれども、絶えず十分の配慮を払ってまいらねばならぬ。やはり税の中では、この人的控除の問題が本来最も重要な問題であるというふうに考えております。ただ、何度も申しますように、人的控除は、たとえ一万円という少ない額でございましても、ほとんど欠かすことなく毎年改善してきているわけでございまして、今回はある程度全体としての仕組みを直したいという気持ちが強く働きました関係上、給与所得控除なり税率なりの点に触れたわけでございますけれども、このような改正というのはとうてい毎年できるわけではございませんので、通常の年の改正の問題としては、やはりただいま御指摘人的控除に最大の重点が置かれていくことに将来においてなろうかと思います。
  57. 小林政子

    小林(政)委員 私は、やはり人的控除中心にして、ぜひこれを引き上げていくべきだということを前回のときにも強く主張いたしましたけれども勤労者の場合の控除は、生活費非課税という立場から考えましても、人的控除引き上げということがきわめて重要であろうというふうに考えます。  ここのところ十年来の、給与所得者の給与総額を一〇〇とした場合の各控除額の比率を大蔵省の方に計算をしてもらって、先日出してもらいました。それによって見ましても、基礎控除の場合には、昭和四十年二一、四十一年二〇・九、四十二年一九・二、四十三年一八・七、四十四年一八・五、四十五年一七・二、四十六年一一・六、四十七年一五・五、四十八年一三・七、四十九年一二・一。いま局長が最も重視すべきであると言われた人的控除、その中でも基礎控除がこの十年来年々一貫して下がり続けてきている。  また配偶者控除を見てみると、四十年七・四、四十一年七・五、四十二年七・二、四十三年七・一、四十四年六・九、四十五年六・六、四十六年五・九、四十七年五・八、四十八年五・二、四十九年四・七と、これもやはり年々下がってきている。  そして扶養控除の場合には、四十年の六・八に比べて四十九年は八・五ですから、これは若干、ずっと上がってきているという数字がここに出ております。  しかも、給与所得控除の場合は、四十年一八・八、四十一年二〇・五、四十二年二二・八、四十三年二五・三、四十四年二六・一、四十五年二五・四、四十六年二五・七、四十七年二五・二、四十八年二五・八、四十九年三二・六と、これは逆に一貫して上がってきている。こういう統計が計算してもらった結果出てきたわけであります。  私どもこのことを考えましても、やはり基礎控除あるいはまた配偶者控除、扶養控除、こういう人的控除を、特に年々下がってきている基礎控除、配偶者控除等の点を見ましても、これをやはり引き上げていくということが非常に重要ではないだろうか、このように考えますが、御見解を承りたいと思います。
  58. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまの表は御指摘のとおりでございますが、その数字の持ちます意味は、四十九年を例にとりますと、四十九兆五千五百億の給与手取りに対しまして給与所得控除が十六兆一千五百億であり、基礎控除が五兆九千八百億であり、配偶者控除が二兆三千四百億であり、扶養控除が四兆二千二百億であり、社会保険料控除が三兆一千億である、こういう数字でございます。  おっしゃるとおり、さらにこれを十年にわたって比較してみますと、最も拡大をいたしておりますのが給与所得控除であるということが明白でございますし、基礎控除がウエートが落ちておることも明白でございます。このことは何を意味するかと申しますと、何といたしましても、最近十年間の所得税減税はサラリーマンを中心に行なわれるべきであるということが大体の国民の皆さんの合意であるということがあったわけでございまして、サラリーマンを中心減税をすべきであるということになりますと、人的控除が非常に重要であるとは申しますものの、やはり何としても給与所得控除を改善するということでないと、事業所得者とのバランスの問題からいいまして、そのバランスを改善しようというのであれば、給与所得控除にウエートを置かなければならない。これは、意識するとしないとにかかわらず、そういうことから給与所得控除に重点が置かれて今日に至っている最近十年間の所得税減税の姿を端的に示すものと思います。  それから、基礎控除が下がっておりますのは、これはある意味から申しますと、中堅階層といいますか、子供さんが多い家庭のほうをよりウエートを置いてものを考えた、サラリーマンの中で子供さんの多い家庭のほうに重点を置いて考えられてきた結果であると思います。  おっしゃるとおり、今回ある程度落ちついた姿に到達してまいりましたように私は思っておりますので、今後の問題といたしましては、まさに基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これは今回同額になりましたから、これである程度バランスがとれた姿になってまいりましたわけでございますから、この人的控除中心にしてもし所得税減税が進む場合には、そしてまた通常の減税の場合には、この三控除中心にして改善がはかられていくべきものではないか、この点は大筋において小林委員の御指摘と、私の現在考えておりますことと全く同様でございます。
  59. 小林政子

    小林(政)委員 私どもやはり最底生活には課税はしない、こういう原則といいますか、そもそも人的控除が当初決定されます際に、最低生活には税金はかからない、かけない、こういうことが一つ中心的な思想として設けられたものであるというふうに聞いておりますし、当然またそうでなければならないと思います。したがって、今後課税最低限引き上げという問題と同時に、やはり生活費は非課税だ、こういう点をぜひとも実現していきたいというふうに思いますが、この点について局長の見解を伺いたいと思います。
  60. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昨年も同種の御質問をいただきまして、それに対して若干お答えが混乱をいたしまして、あとで直さしていただいたようなことがございますが、生活費につきましては、御指摘のように、本来非課税であるべきものというふうに考えます。ただ、その生活費は何を基準にして算定すべきかということにつきましては、いろいろな御意見があるわけでございまして、しばしば、統計的にあらわれました家計費調査等による生活費のすべてについて、平均的なものである限り非課税とすべきだという御議論がございますけれども、いわゆる生計費調査の中にありますものは、必ずしも衣食住の最低のものということではないので、実際に使われました経費の結果の集計でございますから、いわゆる生計費調査によるところの生活費のすべてをカバーし得る水準まで人的控除をそろえなければならないという御意見については、若干の異論を持つわけでございます。考え方として、生活をするためにどうしても必要な最小限度の生活費というものについては、これは課税対象外にしなければならぬという点については御指摘のとおりだと思います。
  61. 小林政子

    小林(政)委員 これは高木主税局長のお書きになったものではなかったかもしれません。ちょっといま手元に正確なものを持っておりませんけれども、今回の課税最低限引き上げについて、やはり蓄積といいますか、貯蓄とかそういうゆとりのある水準というようなことが何かに書かれていたように思いますけれども、私は、課税最低限というものはぎりぎりの生活ということではなくして、やはりゆとりのある文化的な生活、こういうものが保障されるべきであるというふうに考えますけれども、いかがですか。
  62. 高木文雄

    高木(文)政府委員 一般的に申しまして、税制、特に所得税制を考えます場合に、どの程度のところまでを非課税とすべきかということにつきましては、一がいにはいえないと思います。過去におきまして、昭和二十四、五年から三十年代の初めまでにおきましては、ほんとうにぎりぎりの生活費だけしか非課税対象にできないような財政事情であったわけでございますが、最近では漸次国民の収入水準も上がってまいりましたし、国民経済も大きくなってまいりましたし、財政のほうも二十二、三年に比べれば、また三十年代の初めに比べれば、余裕、若干のゆとりというようなものも出てきておりますということを考えますならば、最近の現状から申しますならば、やはり課税最低限等をどの水準にきめるべきかということにつきましては、おっしゃるように、ぎりぎりの生計費ではなくて若干のゆとりというものを頭に置いていかなければならない、また、それが可能なときにだんだんなってきているというふうに考えるわけでございます。  ただ、たとえば収入階層別に日本の世帯を五分位なら五分位に分けまして、まん中の第三分位と申しますか、まん中の分位の中間辺までこれでまかない得るような水準にすべきだという御議論もときおり耳にするわけでございますが、そこまではなかなかいかないのではないか。その具体的なきめ方については、ゆとりといいましても、これは経済事情なり財政事情なり、そういうものとの総合できめられていくものであるというふうに考えられます。今回、扶養控除を配偶者控除、基礎控除とそろえますにつきまして、どういうわけでそろえるかということについて、若干のゆとりというような表現が税制調査会の答申においても使われておったと思いますが、そういう気持ちは持っておりますし、今後とも日本の経済が順調に伸びていくならば、やはりそういう配慮が必要であろうかというふうに考えております。
  63. 小林政子

    小林(政)委員 私は、いま、特に給与所得控除並びに課税最低限、あるいはまた、今回の減税内容等について質問をいたしてまいりましたけれども、今回のこの減税が、ほんとうに国民が望んでいる一般勤労者のための減税というよりも、重役減税とか、あるいはまた高額所得者対策とかということがいわれている実態が、この中でも相当浮き彫りになってまいりました。一面、国民の生活水準というものは、現在非常な物価高の中で、いろいろな例をあげて御質問をいたしたわけですけれども、このような中で、今後、大幅減税を実際に行なわなければならないところはどの階層なのかという点も、明確になってきたということがいえると思いますし、この点については、今後さらに引き続いて、また質問をいたしていきたいというふうに考えます。  続いて、私は、自動車重量税の税率の問題について質問をいたしたいと思いますが、自動車重量税の税率引き上げ租税特別措置法で二年間の時限立法ということにした理由と根拠は一体何なのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  64. 高木文雄

    高木(文)政府委員 自動車重量税は、三年前に当委員会で御審議をいただいて、成立をいたした新しい制度でございます。その創設をされました際には、これは制度的には目的税的な体系をとっておりませんけれども、しかし、やはり道路を中心として交通の整備に主として充てるという意識でもって、一般財源ではございますが、そちらのほうの財源が不足だからという意識をもって創設されたものでございます。  ところで、昭和四十八年の上半期に、昭和四十八年度を初年度とするところの第七次道路整備計画というものが策定をされました。この計画では、十九兆五千億という規模のお金を使って、五年間で道路の整備をいたそうということが政府の方針として閣議決定されたわけでございますが、その際に、本計画を遂行するための必要な財源措置については、四十九年度予算編成時までに所要の検討を行なうということで、閣議了解をされたのでございます。その日付は四十八年の二月十六日でございます。  そこで、この政府の方針に基づきまして、道路計画のための所要財源をどのようにして調達をしたらよろしいか。これを公債によるべきや、一般財源によるべきや、その他いわゆるガソリン税等の目的税、ないしはその他の自動車関係諸税によるべきやという議論を繰り返しておったわけでございます。  ところが、四十九年度税制政府原案をきめます最終段階に至りまして、石油問題というものが起こってまいりました。そして一方において、石油の消費の抑制という問題が起こってまいりますと同時に、財政全体として、物価対策に非常に重点を置いた財政を組まなければならない。それがためには、まず何よりも公共事業費を抑制すべきである。そこで、昭和四十九年度の予算におきましては、道路整備計画をはじめといたしまして、すべての公共事業費関係の長期計画につきましては、一時たな上げにしておきまして、そして四十八年度並みの予算を組みましょうということになってまいったわけでございます。  そういう段階になってまいりますと、昨年の春以来考えてまいりましたような考え方は、考え直しの必要があるわけでございますが、しかし、四十八年度の予算におきまして、すでに若干目的税的な分野が足りなくて、特定財源的な部分が低くなってまいりました。一般財源的な部分がふえておるということでございますので、四十八年度と横すべりの予算を四十九年度に組むといたしましても、若干、特定財源の充実をはかるという必要はありますし、また資源節約、消費抑制というような社会的要請にこたえる意味におきましても、ある程度、自動車利用者に負担を求めてもよろしいのではないかという考え方になったわけでございます。  しかしながら、それを自動車重量税法あるいは揮発油税法等に定められております税率を直しまして、恒久的にいたしますには、あまりにも情勢が不安定である。その情勢と申しますのは、道路整備計画そのものを一体今後どういうふうに考えていったらいいのかというようなことであるとか、ガソリンの消費についてどのような姿勢で臨むべきであるかということであるとか、さらに言うならば、わが国のエネルギー資源の使い方、あり方というものをどういうふうに考えていったらいいのかということであるとか、そういうことがきわめて不安定である。とするならば、自動車重量税法なりガソリン税法なりというものを直していくというのには、時期として非常に適当でない。さりながら、やはり若干特定財源を充実する必要がありますし、消費抑制、資源節約の見地を織り込んだ税制として、自動車利用者に負担を求めることも理由があるであろうということで、そこで、しばらく情勢を待ちながら最終的にきめてはどうかということで、二年間の暫定措置にしたわけでございます。  暫定措置ということであるならば、法律の形式としては、自動車重量税法や揮発油税法等の暫定措置でありますけれども租税特別措置法というのは、もろもろの法律についての暫定臨時の措置をきめてあるものでございますから、そこで、租税特別措置法改正という形式でこの暫定措置をきめていただくという法規形式をとったらよろしかろうという判断でございます。
  65. 小林政子

    小林(政)委員 いま御説明を聞いていて、政府が何か非常に一方的に、便宜的に、このような措置をとられたんだということを痛感いたしますけれども、御承知のとおり、この自動車重量税は、道路財源との関係で、車の走行に伴う社会費用を負担するのだということで設けられた、当初の説明で言われているわけですね。したがって、車の重量によって課税するのだということがたてまえになっている税金です。ところが、自家用と営業用を区分して課税するということは、この車の重量によって課税するというこの税の性格から見て、こういったようなことがかってにできるものなんでしょうか。
  66. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点はただいまちょっと説明を落としましたが、非常に今回の改正の問題点であるわけでございます。この原案を作成をいたします昨年の十一月、十二月段階には、御存じのように、今日の段階よりもさらに強く石油の数量が減らされるかもしれない、また価格も上がるであろうというショックが大きかった時期でございます。そこで、その石油の数量が減ってくる、価格が上がるということが日本経済にどのような影響があるかということは、今日でもそうでございますが、当時はもっとわからない情勢でありました。これが物価情勢に及ぼす影響というものが非常に重要なことになるのではないかと考えられたわけでございます。  そういうわけで、四十九年度予算の編成にあたりましては、すべての点におきまして物価への影響ということを十分配慮をしつつ組み立てられたわけでございますが、それを考えるのにあたりまして、やはり営業用に使われております車両について負担の増加を求めることは、いかがなものであろうか。これがいろいろ運賃なり何なりに波及をしてまいりますと、いろいろ問題があるということがございました。特に、米の消費者価格の値上げを延期すると同時に、国鉄の運賃の値上げも延ばす、私鉄等の料金についてもそろそろ改定時期が迫っておりますけれども、これも動かすわけにはまいらぬだろう、こういう情勢でございましたからして、こういう輸送関係に関しましてコストの増加を来たすことには問題があるという認識がございました。  そこで、燃料税のほうにつきましても、タクシーに使われておりますプロパン等については税率を動かさない。また、トラックやバスに使われておりますところの軽油につきましては、軽油引取税というものが地方税としてございますが、これも動かさないという考え方をとりました。それで、それとの関連で、重量税につきましても、本来ならば、ただいま小林委員指摘のような性格の税でございますから、その車両の使用目的に応じて区分をするということはなじまないものでございますけれども、物価対策というものを非常に強く考えまして、もろもろの予算編成に当たりました関係上、この重量税の増税部分につきましても、同様の配慮から据え置きとするという特例措置をとったわけでございます。
  67. 小林政子

    小林(政)委員 いろいろといま理由を述べられましたけれども政府の一方的な解釈で、この基本税率というものが安易に、そのときそのときの便宜的といいますか、そういうことで、たとえ暫定とはいえ、こういう特別措置の形で変えられる、こういう措置がやられるということに対して、妥当であるのか、どうなのか、私はこの点は非常に疑問だと思います。本来、こういう総需要の抑制だとか、いま石油問題など、相当大きな政治問題、社会問題が発生しているときに、政府がみずから、十九兆円にものぼる第七次の道路整備五カ年計画、その財源として充てられるべき重量税をここで値上げするなどということは、筋が通らないのじゃないか、むしろこの計画自体を再検討すべきではないかというふうに私は考えます。  しかも、自動車重量税の場合は、これは自動車というものは非常に数多くの税金がかけられているわけですね。実際には、自動車関係諸税の実態を見てみますと、国税だけでも自動車重量税、石油ガス税、地方道路税、揮発油税、物品税、地方税については軽油引取税、自動車税、自動車取得税、軽自動車税など、非常に数多くの税金がついているわけですし、その上、いま問題になっております第七次道路整備五カ年計画、その財源としてここで一そう税率引き上げるなどというようなことは、これはいまこそやるべきではない、このように考えますけれども、いかがでしょうか。
  68. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点もまさに御指摘の問題点でございます。道路計画そのものにつきましても、経済社会基本計画そのものを見直す必要が起これば、直される可能性があるわけでございます。そこで、今回の引き上げ幅はそういうことも考慮したつもりでございます。  そのことを数字的に申しますと、第六次道路計画における特定財源比率は、計画におきまして八九・八%という計画になっておりました。ただ、自動車重量税は特定財源でございませんので、それはどう見るかという問題がございますが、かりに自動車重量税の八割を道路財源に充てるという前提を置きました場合に、六次計画におきますところの特定財源比率は八九・八ということでございました。今回改正お願いをいたしまして、そしてこれを四十九年度の予算比較してみますと、四十九年度の道路計画によります事業費は一兆三百一億円でございます。それに対しまして、特定財源と自動車重量税の八割を加えました金額が八千六百六十一億になります。その比率が大体八五%ぐらいになるわけでございまして、そういう意味で、もし第七次の道路計画を前提にして税率をきめるということでございますならば、今回の程度の重量税の二倍上げ、ただし営業車は上げません。それからガソリン税を二割上げますというのでは、うまく符合しないわけでございます。そうでなしに、むしろ第七次道路計画とは別に、とりあえず四十九年度の予算とにらみ合わせた場合の特定財源比率がまずまずあまり下がらないようにということで、税率その他の水準をきめたものでございます。  なお、この増税は、言ってみれば、それだけ一般財源比率が減ったわけでございますから、その分だけ一般会計におきます公債発行額の減少に役立っておるというかっこうになっておるわけでございます。
  69. 小林政子

    小林(政)委員 私は、やはりこの際、こういう時期に自動車重量税という形で自家用の乗用車二倍、貨物の場合には一・四倍の引き上げというようなことはやるべきではないというふうに考えます。特に、この貨物の普通あるいは小型車の場合には、これはやはり中小業者にとっては営業を続けていく上で不可欠なものでもあります。したがって、これは単なる資源の節約とか消費の抑制などというような対象になるべきものではなくして、車そのものがなければ営業ができない、こういうような性格を持つものでございますし、特にライトバンなどは仕事の上で欠かすことのできない問題になってきておりますし、こういう中で一・四倍の自動車重量税を引き上げるというようなことについては、これは明らかに私は大衆課税である、こういうことがいえると思います。  また、自家用の乗用車の場合についても、これもやはり団地などに住んでおります場合に非常に駅まで遠い、しかも、バスが運行されているけれども、朝の通勤時などはもうそのバスにもなかなか、よっぽど運がよくなければ乗れない。あるいは自宅から駅までがたいへん距離があるというような中で、公共交通機関がやはり完備されていない、こういうような状況のもとでやむを得ずやはり車を補って使っているというような実態というものも随所に見られるわけでございますし、これらの点を考えれば、何か資源の節約だとか消費の抑制の対象だなどというようなことで、営業用の車を取り除いて自家用だけをここで値上げをするというようなことについては、やはり私は黙っているからそれを引き上げるんだ、こういう片手落ちの措置であり、またこういう時期に値上げをすべきではないんじゃないか、こういうことがいえるのではないかと思いますけれども、いかがでしょう。
  70. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘のような見解をお持ちの方が多数おられることは承知いたしております。  今回この議論をいたしますときに、その辺はたいへんいろいろ両方からの議論があったわけでございます。しかしながら、最近におきます、最近と申しましてもやや長期の経験によりますと、道路を整備いたしてまいりましても、際限なく自動車がふえますということになってまいりますと、これはまあいわば追っかけっこのようになりまして、幾ら道路を整備していきましても、その道路の整備の進捗以上にまた自動車がふえていくという状況が大体の今日までの状況でございまして、そのことのために、また公共交通機関の効率が落ちていくという現状にあるわけでございます。まさに御指摘のように、バスやその他の公共交通機関が整備されていないからやむを得ず自家用の乗用車や自家用のトラックを使わざるを得ないという状況からいうならば、そういうものに負担を求めるのはおかしいではないかという議論がある一方において、何とか自動車の台数を多少とも抑制ぎみにすることによって、公共の交通機関が早く走れるようにする、また営業効率があがるようにするということにしなければ、いよいよ公共交通機関は成り立っていかなくなるではないかという問題がございます。御存じのように、公営交通についてはいろいろと都道府県、市町村その他で赤字がたくさん発生するような状態になっておることを考えますならば、こういう議論もまた二面考えられるわけでございます。  トラック等につきましても、また乗用車につきましても、どうしても自家用車は使用効率が悪いわけでございます。道路占用の状況とそれによる輸送効率というものを考えますと、どうしても自家用車よりは営業車のほうが効率がよろしいということになるわけでございます。この辺につきましては、必ずしもまだどの程度自家用の乗用車、自家用のトラックを抑制すべきやという数量的なものは明確になっておりませんし、また今回の値上げ程度をもってして、それがどの程度の抑制効果があるものかということは明快ではございませんが、しかし、どちらかというと、むしろ自家用の自動車、自家用のトラックについては抑制ぎみであるべしという方向でものを考えてよいのではないかというほうの考え方のほうが、若干強いようにお見受けするのでございます。  しかし、関係者の中には、そうは言っても非常に遠いところから通っておられる方もございますし、それから仕事の性格上どうしても自家用の車を持たなければならぬ方もございますから、私の申しました意見と違いまして、小林委員と同じ意見の方もたくさんあることは事実でございます。その辺は政策判断の問題としていろいろ御批判を願い、御論議願いたいと存じます。
  71. 小林政子

    小林(政)委員 このような形で、平年度で自動車重量税九百五十億、初年度で七百九十億、私はやはりこれは相当膨大な額でございますし、この際物価を引き下げなければいけないといわれているようなときに、税率引き上げていくということは行なうべきではないというふうに考えます。  また、これとの関連でガソリン税も一キロリットル当たり二万八千七百円から三万四千五百円に、いわゆる約二〇%の値上げを行なっているわけですけれども、これも平年度で千百九十億円という膨大な額でございますし、初年度九百九十億円、このように計上されておりますけれども、この増税見込みを立てたこと自体、私は問題だと思います。いま原油の値上げに伴う石油製品価格の値上げが大問題になっているときに、政府が率先してガソリン税に対して大幅な税の値上げを行なう、こういったような問題については、物価をほんとうに引き下げてほしいと願っている国民の要求から見ても重要な問題だと思いますけれども、見解を伺っておきたいと思います。
  72. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ガソリン税と価格との関係の問題につきましては、御指摘のような問題があるわけでございます。ガソリン税は三十九年以来増税を行なっておらないわけでございますが、前回増税されました時点におきますところの三十九年六月のガソリン税の負担率は、当時の小売り価格がリットル当たり四十五円七十八銭、税額が二十八円七十銭でございますから、小売り価格中に占める税負担割合が六二・七%というたいへん高い率であったわけでございます。最近になりましてたいへん異常な価格を示しておりますが、その直前、昨年の六月ころの状況では、小売り価格リットル当たり五十五円八十八銭という平均値段に対しまして、税負担率は五一・四%、三十九年から十年間税額が固定いたしておりますので、六二%から五一%まで、自然、税負担率が下がったという関係でございます。近ごろの値段はちょっと動きが大きいのではっきりいたしておりませんが、かりに八十円と置きまして、税額を二十八円七十銭のままで固定をいたしておきますと、三五・九%という率になります。今度の改定案でやりますと、八十円という場合には四三%くらいになるわけでございます。これは八十円ではとてもとまりません。もう少し上がることになると思いますが、そういう意味から申しますと、税の占める率というものは、かつてはたいへんガソリンの中で大きいといわれておりましたけれども、今日はそういう状態になっておりますし、諸外国の例で見ますと、アメリカだけが、アメリカはある意味では産油国でございますから、わりあいに税負担率は低くて、連邦税と州税と合わせて考えますと、小売り価格に対して大体三〇%くらいになっておりますが、イギリスで六五、フランスで六七、西ドイツで七〇というような税率になっておるわけでございます。  また、しばしば税の負担が大きいということが産油国サイドから問題になるような記事が新聞に出ております。しかし、日本の税負担は非常に低いわけでございまして、原油当たりで考えましても、日本は現在、消費、関税を通じましてバーレル当たり三ドルくらいの負担になっておりますが、この負担水準は、ヨーロッパにおきます平均水準のバーレル当たり十ドルをこえているという状況に比べましても低いものでございます。  次に、御指摘のような価格への影響の問題でございますけれども、私どもの考え方といたしましては、日本のような国の場合には、何としてもやはり石油資源の節減ということに相当焦点を当ててまいりませんと、全く石油資源を持たないわが国といたしましては、いままでのように買えば幾らでも輸入ができるという状態ではまずいわけでございまして、特に外貨事情等にも、こういう高い油の値段になってまいりますと非常に影響が出てまいります。したがいまして、物価の問題について大問題であるということはまさに御指摘のとおりでございますけれども、同時に、これをこのまま放置していいというわけにもなかなかまいらぬのではないか。  昨日も予算委員会におきまして、ただいま小林委員の御指摘になったような意味での御質問がございましたけれども、大蔵大臣といたしましても、やはりこの際としては多少の値上げはやむを得ない、また多少の税の引き上げはやむを得ない、これにかわるべき財源を容易に見出しがたいのではないかという答えをいたしておりましたが、私どもも、現在の段階でも二割程度であればこれはやはりがまんをしていただかざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  73. 小林政子

    小林(政)委員 道路財源として使うものだということではありますけれども、いま政府がそれぞれの産業界に対して、コストの問題等も含めて、値上げについては極力これを押えるというような行政指導も行なわれているときに、幾ら道路財源が必要だということであっても、私はこの際、ガソリン税をここで大幅に引き上げるという行き方に対しては、やはり批判を招くもとではないか、このように考えます。この点について再度答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  74. 中川一郎

    ○中川政府委員 小林委員指摘のように、確かに、この種のガソリン税ないしは自動車関係税を上げるときに物価に対する配慮をいたしまして、先ほど答弁いたしましたように、直接大衆と関係のあるトラック、バス、ハイヤー、そういうものについては十分配慮し、ガソリンについても当初は相当税率を上げるようにという議論もありましたが、最小限度にとどめたのであります。御指摘のとおりでありまして、この点については、今後とも物価高に影響を与えないように、われわれも最善を尽くしてまいりたいと存じます。
  75. 安倍晋太郎

    安倍委員長 広沢直樹君。
  76. 広沢直樹

    ○広沢委員 税法三法の質問に入る前に、私は税務行政について二、三点お伺いをしておきたいと思います。  さきの予算委員会におきましても、また当委員会におきましても、今回、大口の脱税問題あるいはそういった税務行政の問題について、また税の公平な課税といった問題についても非常に問題となっておりました。ところが、きょうの昼の時間に、国税労働組合全国会議、また全国税労働組合のほうから陳情もありましたし、その前に私も二、三具体的な問題を聞いておりましたが、きょうはその具体的な問題を一つ一つやるつもりはありません。  ただ、その中に、非常な経済の発展に伴って納税人口が急増している。そしてまた取引の規模の大型化だとか、あるいはその内容について複雑多様化している。こういうことに関連して、現在の状態では納税者に対する適正な指導もままならず、かつまた不正所得把握のための調査割合も激減している。こういうような現状を放置していくならば、「適正公平な課税は期し難く、税務行政の前途、ひいては、国家財政も極めて憂慮すべき事態に立ちいたるものと覚悟しなければなりません。」こういうふうに述べられておるわけですが、これは非常に重大な問題だと思うわけであります。  先ほども申し上げましたように、今回、企業のいわゆる先取り便乗値上げだとかいうことが非常に問題になり、それに対して政府としては、税務当局を動かしても、あるいはそれぞれの機関を動かしてでも、こういったことは国民が納得のいくような適正なやり方をとっていくということを答弁されております。しかし、ここに陳情された方々は国税の職員の方々であり、いわば第一線で働いていらっしゃる、いわゆる徴税の任に当たっていらっしゃる方々のすべての意見をまとめた陳情になっているわけであります。したがって、こういうようなことでは非常に憂うべき状態ではないかと思うわけでありますが、その実態について、まず当局としてはどういうふうに認識されておるのか、伺っておきたいのであります。
  77. 吉野實

    ○吉野説明員 お答えをいたします。  いま先生から御指摘のように、最近経済の高度化、発展に伴いまして、納税人員が急増いたしました。それから高額な納税者の割合が非常に急増いたしました。また事案の内容はますます複雑になってきておるわけでありまして、執行のサイドにおきましては、第一線でいろいろと苦労しておるわけでございます。  数字で簡単に申し上げますと、十年前と現在をちょっと比較してみますと、国税収入におきましては、御存じのとおり、四・五倍くらいにはね上がっておりますし、たとえば申告所得税納税者数で申しますと、十年間に二倍になっております。申告所得税のうち手間のかかるといいますか、複雑度の高い譲渡所得税とかその他の所得税につきましては、二・五倍ないし三倍をこえておる。法人税につきましては、五千万以上の法人の数をとってまいりますと、この十年間に三倍にもなっておるわけでございます。なおかつ、経済の成長とともに、高度化とともに、都市に事務が集中してまいる。  そういうことで、われわれのほうといたしましては、第一線の仕事がますますたいへんになります。先ほどちょっと先生から実調率の話が出ましたけれども、一人当たりの要処理の件数について見てまいりましても、この十年間に、たとえば所得で申しますと、二倍の事務量を要する、二倍の負担をかかえておるわけでございます。法人につきましては、一・三倍というような数字が出ております。われわれといたしましては、ただ定員の増加を望みたいところでありますが、そしてここ最近は当局の御認識をいただきまして、若干名でありますけれども定員の増加をいただいておりますが、いま申し上げましたような倍率に見合うような定員は、諸般の情勢からわれわれもなかなか望めないところであります。  そこで、われわれといたしましては、内部努力と申しますか、事務の簡素化あるいは機構面におきまして、地方局の税務署の職員を都会局に回す、つまり定員の配分をいたします。あるいは間税の職員とか徴収の職員から直税のほうに定員を回す。あるいはまた機構といたしまして、新しく、いままで課長、係長制度であったものを、つまり六人に一人の管理者を必要としていままでやっておったわけですけれども、これを十人ぐらいで一人の管理者というようなことまで考えまして、実働人員をふやす、こういうようなこと。それからさらに、税務署の統廃合といいますか、都会地におきまして納税者数の非常に多いところにおきましては税務署を強化する、一方におきまして、地方局で小さいところの税務署につきましては大方の御理解をいただいて統合する、こういうようなことをいたしまして、実働人員を繰り出すために努力をしてまいったわけであります。  同時に、現在におきましては、仕事のやり方といたしましても、高額重点ということで傾斜をした調査をするということをやっておりますし、同時にまた、民間の諸団体が税務行政に協力してくださる方々がありますので、そういう人たちには積極的に働いてもらう、こういうようなことをいたしまして、適正なる税務執行を期すように努力しておるところであります。
  78. 広沢直樹

    ○広沢委員 この問題については、正式に当委員会のほうにも陳情がありましたので、別の機会に具体的な内容については検討される機会もあろうかと思います。しかし、私が取り上げているのは、この税三法の具体的な法律問題、いろいろなことをここで論議しましても、実際に第一線で活躍する税務の職員の皆さんが、それなりの十分なる立場を保障されてやっていかなければ、これは十分なる公平な徴税というものはできないわけであります。それが、きょうのいろいろのお話を聞いておりますと、そういった面が特に問題ではないかということで指摘申し上げておるわけでありますが、いまお話がありましたように、ことばの上ではいろいろそう申しておりますけれども、具体的に数字の上から見ても、あるいは実際にその第一線で働いていらっしゃる皆さんの話を聞きましても、非常にこれは過重労働になっているという面がもう顕著であります。  たとえば、法人につきましても、納税数というものは十年前から比べると一・八倍にふえております。そしてそれに対して、全体として一年間に実態調査をやる件数というものは十分の一ぐらいしかできない、こういうことですね。いま傾斜調査だとかいうふうなことを言っておりましたけれども、ところが、調査した内容というものは、そのうちの大半がやはり更正決定だとか、そのまた約二割近くは重加算税とかいう問題であって、不正であるというふうにみなされるものである。ですから、もちろん、これは納税している人たちが悪いと言っているわけじゃありませんけれども、正しく申告され、どうなっているかということをやはり税務調査して、その上で判断していくことがいいのじゃないかと思います。  ところが、このように法人数はどんどんふえていく、そしてそれに当たる職員はあまりふえない。したがって、処理能力というものは低下するということになりますと、ここに提出されている資料による数字でいきますと、全部一応当たるということになれば、十年かかるという数字が出ておるわけでありますね。これを全部見るということは、それは人員やいろいろな関係で不可能かもしれませんけれども、やはりこういうふうに年々低下していくような状況では、適正なそして公平な課税ということは期しがたいのではないか。  さらに、職員の具体的な実態も出ておりますけれども、仕事を持ち帰ってやらなければ、労働時間内にその仕事の処理ができないという方々が非常に多い。半数以上でありますし、あるいは当然与えられている年次休暇にいたしましても、この実態表によりますと、大半の人が十分なる日数をとることができない、休養はとれない。これも皆さんも御存じだろうと思います。この陳情書はもう当局は御存じですね。そういう問題から、あるいは中高年齢層のいろいろの問題、機構の問題とかいろいろあります。しかし、いまの仕事の関係からいいますとこういう実態なんですね。その上、最近盛んに問題になっておりますいわゆる法人の先取り値上げがあるのではないか、あるいは不当利得があるのではないかということで、特に徴税当局に課せられた国民の期待というか、そういう面に対する調査というものも大きく期待されているわけでありましょう。したがって、それだけの事務量がふえてまいります。こういう状況の中で新たにそういう要素が加わってまいりますと、完全なる、いわゆる適正、公平なる徴税というものができるだろうか。おそらく第一線でがんばっていらっしゃる職員の皆さんは、それこそ非人間的といいますかオーバーワークもいいところで、たいへんな状況になってくるのではなかろうか。こういうことをこの実態調査並びに陳情から危惧するものであります。  したがいまして、それに対して具体的にどう対策を立てていかれるのか、そういうことでなければ、幾らりっぱな法律ができても、実際にそれを担当される方々がこのような現状では、十分に法が生かされていかない、こういうことになりかねないと思うわけでありますが、その点についてお考えをいただきたい。
  79. 吉野實

    ○吉野説明員 先ほどちょっと私のほうから御説明申しましたけれども、重点傾斜調査、悪質大口のものを重点に調査するように、われわれのほうの仕事の仕組みを相当思い切って変えるように昨今いたしておるわけでありますが、さらにいま御指摘のありましたように、超過利潤といいますか、好況業種を対象といたしまして、これから積極的といいますか相当厳密な調査も要請されるというような状態でございますので、われわれといたしましては、当面の問題といたしましては、たとえば地方の局におられる職員を東京あるいは大阪に兼務発令をしていただきまして、しばらくの間応援をしてもらう。上家族の人たちにあまり負担のかかるようなことのないようには配慮しなければなりませんが、そういうことも実は考えておるわけであります。  長い目で見てまいりますと、やはり事務機械化あるいは仕事のやり方を重点的にやるといいますか、省略できるものは省略をして、重要なところだけはともかく重点的にやる、こういうような方向でさらに一そうわれわれのほうとして事務改善に努力しなければならぬと思っております。もちろん、われわれといたしましては、定員の増加というようなことも今後ともお願いをするつもりでありますけれども、そういう点にこれから一そうくふうをこらして、さらに努力をいたしたいと考えております。
  80. 広沢直樹

    ○広沢委員 きょうは長官もいらっしゃいませんし、次長もいらっしゃいません。直接担当の課長さんからのお答えでありますが、政務次官もこういう実態については当然御存じになっていらっしゃると思うので、やはりいま課長がお答えのような善後処置、臨時処置というものはそれぞれやりくりをしながら考えていらっしゃると思う。これは人事院の関係もあるし、定員法の関係もありますから、国税庁だけで人員をふやしたり、減らしたりすることもできませんし、たいへんな問題だと思いますけれども、やはりそういう大きな責務を特っているこの国税庁の職員の現状というものに思いをいたして、十分その意見が反映できるようなシステム、そしてまた条件、そういうものを整えていただくように強く要望いたしますが、この問題についての次官のお考えをお伺いして、次の問題に移りたいと思います。
  81. 中川一郎

    ○中川政府委員 広沢委員指摘のとおりでございまして、徴税の額においても、あるいは内容においても、件数においても、非常に複雑になっております。また、納税者側の考え方というものも非常に尊重しなければならないという、ほんとうに第一線で働く人々が御苦労されておる。そしてややもすれば過労になったり、あるいは公平な徴税ができなかったりというような問題があることは、率直に認めなければならないと思います。これは国税のみならず、地方税、そしてまた関税においても私はいつも考えるところでございまして、何とか処置しなければならないと思います。しかし、総定員法、その他の縛りも一方に強くあります。しかし、そういうことを乗り越えてできるだけのことをして、第一線の方々が苦労からのがれられるように、また公正が期せられるように、今後とも御指導いただいて最善を期していきたい、こういう気持ちでおります。
  82. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、この問題については別の機会に、またこまかい陳情も数々ありますので譲りたいと思います。  そこで、今度はおもに主税局長にお伺いいたしますけれども、まず最初に、今後の租税政策のあり方についてお伺いしておきたいと思うのですが、これは東洋経済に主税局長がいろいろ見解を述べられたことが出ておりました。その冒頭に、主税局長のこれは見解でございますね、お考えがるる述べられておりましたけれども、いままでの産業基盤の拡大、育成、あるいはまた国際競争力をつけていかなければならないという意味からの税制、財政の運用、経済の運用というものは一応目標が達成できた、と言い切ってしまったら語弊があるかもしれませんが、世界的水準になっているわけであります。したがって、これからは国民の福祉というものに注目し、それを充実していくような税制、財政、いわゆる税制では福祉税制といっておりますが、そういうふうに発想の転換をしていかなければならないという意見がある。それを肯定していらっしゃるわけであります。  そこで、そういうことになれば、当然、政府与党のほうにおきましても、去年は福祉元年ということで、福祉への発想の転換、切りかえということを約束されました。内容については、われわれが再三指摘しているように、まだ十分とはいきません。これから私が申し上げる租税三法の問題についても、まだ思い切った転換というものはなされていないと思いますけれども、少なくともいまそういうふうな転換を迎えなければならぬということは国民のコンセンサスであり、あるいは政府においてもそのことはお認めになっていらっしゃるわけですね。  そこで、その裏づけとなっていく財源の問題についてでありますけれども、これは四十八年の二月十三日に閣議決定された経済社会基本計画によりますと、「国民福祉の充実のためには、その裏付けとなる財源を確保する必要がある。このため国民の租税負担は所得水準の上昇に応じて上昇し、国民所得に対する「税および税外負担」の比率は計画期間中おおむね三%程度高まらざるをえないと見込まれる。」とあります。ですから、すべて経済の運営というのは、いままでこういう五カ年計画を立てて、その経済の成長やあらゆる面をその指標の中で考えられてきたわけでありますが、単年においても経済見通しを立ててやっておりますけれども、しかしながら、統計によりますと、四十七年度の国民所得に対する税負担というのは二〇・二%、これは四十九年度の「税制改正の要綱、予算説明」の裏についておりますけれども、四十八年度においては二〇・七%の見込みになっております。それから四十九年度においては、これは当然見込みでありますが、もちろん大幅な減税をやっておりますので、一九・九%になっていますね。したがって、結局、この見通しからいいますと、こういうふうに単年度においてはでこぼこがあるかと思いますけれども、三%の上昇にならざるを得ないという指摘があります。当局としてはそういうような大きな福祉充実の路線の中で、この税制の方向というものをどのように考えているのか。これは主税局長だけの考えでは、政治的な問題も含まれておると思いますので、大臣並びに次官のお答えもいただきたいと思うわけでありますが、まず担当であります局長の御意見を伺っておきたいと思うのです。
  83. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回、かなり大幅な所得税減税のことを考えますときには、御指摘のように長期の計画との関連はどうなるであろうかということを、ごくばく然とではございますけれども、一応検討いたしてみたわけでございます。後に申しますように、経済社会基本計画そのものについていろいろ新しい問題が起こっておりますけれども、その問題は別にしてみますと、いま御指摘になりました三%程度引き上げということば、今回のようにかなり思い切って所得税減税をいたしましてもなお実現可能であるであろう。ただし、それには幾つかの前提がございますが、その中の前提といたしましては、今後所得税減税は、今回のような大規模な減税を行なうことはこの期間中は無理である。もちろんある種の物価調整減税的なものは考えなければなりませんけれども、それを除きますと、今回のような規模の大きな減税をやるということは無理であるということを考えました。  一方において、間接税等につきまして、前回の長期答申の中にありましたような一般消費税というようなものを導入するというようなことを考えませんでも、若干の間接税の手直し——若干のというのは、今回お願いしておりますような定額税から定率税への改正というようなああいう意味での手直しというものをやりながら、また所得税については毎年お願いしております程度減税をやりながらやっていけば、まずまずこの基本計画のあり方としていっております三%の水準というのは達成が可能であるだろうという、非常にラフな試算だけはやってみたわけでございます。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕  ただ、それはやってみましたが、むしろ問題になりますのは、経済社会基本計画は、基本におきまして国民総生産の成長割合を実質におきまして九%ということに置いてすべてを考えておるわけでございます。この九%という成長は、若干最近の見方では高目に過ぎたのではなかろうか。そういう意味におきまして、経済社会基本計画そのものを見直す必要があるのではないかというような発想がかなり一般化しつつあるわけでございます。  そうなってまいりますと、経済社会基本計画にありますようなテンポでの社会保障政策の充実というものについても、また同時にある程度考え直しませんことには、税だけの問題でなくて、自己負担の問題等を含めて、かなり実現が困難になってくるというような問題がありますし、税自体の問題といたしましても、やはり経済の伸びがスローダウンしてまいりますと、ちょっと三%というのは上昇割合がきつ過ぎるというような、つまり負担感が強まり過ぎるという心配があるという問題があるわけでありまして、先ほど引用になりました私の書きものは、昨年の夏くらいの時点の状態を中心にして書いたものでございます点もありまして、その点は触れておりません。石油問題その他との関係から、経済社会基本計画そのものをある程度見直さなければならぬというようなことを大臣も申しておるわけでございます。そういう意味からいきますと、少しく経済が安定いたしました際に、この経済社会基本計画のほうも見直していただくと同時に、われわれの長期見通しも、また少し変えなければならぬという事態になりつつあるというふうに考えておるわけでございます。
  84. 広沢直樹

    ○広沢委員 長々といろいろ御答弁いただきましたけれども、要は、確かにいまおっしゃったように、相当経済見通しが狂ってきておりますので、さきの予算の分科会におきましても、経済企画庁長官は、この経済社会基本計画というものは大幅に見直さなければならぬということを言っておりますね。すでに作業にかかっておるようであります。したがいまして、その租税負担につきましても、やはりいまおっしゃったように、三%というものがいいのか悪いのか、いままで目安にしてきたものがいいのか悪いのかという問題になる。おそらく経済が九%のGNPの伸びじゃなくて、それより落ち込んでいくことは間違いないということになりますので、この期間中におきましては、当然これは相当見直さなければならないだろう。  そこで、もう一点お尋ねしておきたいのは、三%くらいにはなるのではないかというお話も先ほどちょっと出ておりましたけれども、そうなりますと相当負担が上がってくると思うので、この期間中においては、この計画に基づいて大体三%目安に税制のあり方というものを考えているものを、もう少し低く考えていくというふうに理解していいのかどうか。  さらに、この負担はすべてが含まれた中の負担でありますから、現在の直間の比率というものをどういうふうに考えているのかということをお伺いしておきたいわけであります。この期間の中において、期間も変えられるには違いがありませんが、やはり直間比率を変えてでもその財源確保のためには持っていかなければならないと考えているのか。いや、この期間中にはそういうことじゃなくて、やはり現在のままの姿で持っていこうと考えていらっしゃるのか、その面も含めてお尋ねします。
  85. 高木文雄

    高木(文)政府委員 経済社会基本計画がどのように変わるかということがかいもくまだ見当がつきませんから、したがって、これが改定されました後のやや長期的な租税政策がどのようにあるべきかということについては、ちょっと現段階で見通しを申し上げることはできないわけでございます。  特に、実は昨年の夏以来、これは主税局だけではございませんが、大蔵省といたしまして、やや長期的な一種の福祉計画というものを立てられることを期待をいたしておるわけでございます。やはりどうも将来における福祉計画の姿がもうちょっと具体的にはっきりしてまいりませんと、財政政策が非常に立ちにくいということでございまして、厚生省のほうに現在のところ頼んで、厚生省のほうでも非常に苦慮はされておるようでございますけれども、漸次福祉計画を立ててほしい、その福祉計画が立ちましたならば、次に私どもといたしまして、私どもという意味は、主税局だけでなくて大蔵省全体といたしまして、その福祉計画を実現するためにどの程度保険システムによって自己負担を求めていくか、雇い主負担を求めていくか、そして残るところを税のほうでどの程度カバーしていくかというあたりのところを、もう一ぺん少し詰め直してみる必要があるというふうに感じております。  そういうことと組み合わせてみませんと、この三%が今度どういうふうに変わるかということはちょっと申し上げにくい段階でございますが、おそらくは御指摘のように、下がることはあってもなかなか上がることはないであろうというような感じは、ばく然とはいたしますけれども、しかし、あまりそういうことを責任を持って申し上げられるような程度には作業をいまいたしておりませんので、この点についてのお答えはお許しを願いたいと思います。  それから、それとの関連で、直間比率の問題でございますが、これは結論的には、現在の四十九年度予算お願いしておりますところの税制の結果としていま見込んでおります直間比率は、直接税が六九・九%、まず七〇%というところにあるわけでございますが、この直接税の七割という水準を、大体、今後数カ年は維持をしてまいりたいという気持ちを持っております。  ちょっと数字を申しますと、四十八年度の当初予算におきますところの直接税の割合は六九・六%でございましたが、補正予算の際に所得税、法人税等の増収が見込まれました結果、この率が七一・二に上がっております。これが税制改正をいたしませんならば七三・九まで上がるはずのところを、税制改正の結果六九・九になった、こういう経緯でございます。  今回の場合と同じように、やはり若干とも毎年所得税減税を行ないまして、それと同時に、間接税について多少ともてこ入れをいたしまして、何とか七〇の水準で推移できないものか、これを努力目標としてやってまいりたいと思っておりますが、これはあくまで努力目標でございまして、七〇、三〇という水準を維持することは、相当いろいろな意味での手直しをやってまいりませんと、なかなか実現しない。ほうっておきますと、さらに直接税のほうのウエートが上がるような傾向になるのではないかと考えておるわけでございます。直接税があまりウエートが高くなりますと、いろいろな意味での税制上のひずみが出てまいりますので、この点については、あまり直接税が上がるのは避けるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  86. 広沢直樹

    ○広沢委員 直間の比率が数年間は変わらない見通しである、こうおっしゃっておられますけれども、こういう基本計画で一応税負担がふえていかなければならない、またそうしなければ、福祉税制の財源というものの見通しが立たないという基本計画の前提に立って考えていきますと、それで直間の比率は大体現状を維持していく、こういうことであれば、所得税の今後の負担の軽減についてどういうふうにお考えになるのか。今回大きな所得減税をやったから、次回は、いまの計画とにらみ合わせれば、もういままでやってきたような小さな調整的なものしかできないとかいろいろあると思うのですが、その見通しについて、非常にまあ見通しですから言い切ることはむずかしいかもわかりませんが、当局の考え方をひとつ伺っておきたいのです。
  87. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どもが昨年の夏から冬にかけまして、現在御提案しております所得税改正案を税制調査会等で御審議を願いました段階では、実はかなり今回御提案いたしました案は大規模なものでございました。まあ言ってみれば、このような大きな規模の減税というのは、四、五年はやらなくてもだいじょうぶではないか。毎年の減税と申しますのは、四十八年に行なわれました程度の規模のものであればほぼよろしいのではないかと考えておったわけでございます。ただし、最近に至りまして、たいへん消費者物価が上がるというような状況になってまいりましたから、昨年の夏から冬にかけて考えておりましたような感じとは、だいぶ事情が変わってきておるわけでございます。  そこで、現時点で、将来どのように見通すかということは非常にむずかしいわけでございます。率直に申しまして、やはり卸売り物価がある程度安定いたしましても、それを追うようにして若干の消費者物価の上昇は避けられないところであろうかと思われますので、それがある程度安定をした姿になってみないと、今後どの程度に、どういうふうにしたらよろしいのかということは、ちょっと見通しにくいというふうに思っております。
  88. 広沢直樹

    ○広沢委員 私がお尋ねしているのは、この計画においては、大体おおむね三%財源というものを期待された書き方をしているし、それに沿っていろいろ考えているということになり、それから直間の比率は、先ほど御答弁いただいたように、あまり変わらないということになれば、結局、所得税におけるいわゆる財源というもののほうがある程度の負担が高まっていくということを望んでおるということになるわけですが、それで、それに対する所得減税というものは今後どういうふうに考えていくのか。単なる物価調整減税ぐらいにしか考えていないのか、それとも、もう少しやはり現在の所得の再配分、不公平といったものを是正する意味での抜本的な改正というものも中に織り込んで考えているのかどうか、その基本的な考え方を伺ったわけであります。
  89. 高木文雄

    高木(文)政府委員 通常の場合と違いまして、このように物価の変動が起こってまいりますと、いろいろな意味でのひずみが出てまいるわけでございます。ある意味で富の偏在ということも起こり得る心配がございますし、それから企業の税につきましても、いろいろのブッキングバリューが実際の価値と差異が出てくるという問題もございまして、そこで、今回のこういう大きな物価の変動というものは、かなり大きく税制影響してくるだろうと思うのでございます。そして、こういう情勢に応じて新しい手当てをしなければならないいろいろなことが起こってくるのではないかというふうに考えております。したがって、そのいろんな動く要素があると思いますので、先生から御指摘がありました、ここ一二年なり四年先に向かっての中期的な税制改正のあり方、特に所得税税制改正のあり方という点は非常にむずかしいわけでございまして、それについていまここで何らかのお答えを申し上げることは、非常に無責任なお答えになるかと思いますので、ひとつ御容赦願いたいというふうに思います。
  90. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、四十九年度の所得税減税の問題について、具体的にお伺いしてまいりたいと思います。  所得税減税は、各委員の皆さんからもう数々指摘がございましたように、やはりポイントになるのは課税最低限の問題と、先ほども問題になりましたいわゆるその内容ですね。人的控除もあれば給与所得控除の問題もある。特に重役減税だとかあるいは金持ち減税だといわれる給与所得控除の青天井になったという問題、大体そういったところが、大きく分けて問題点じゃなかろうかと思うのです。多少重複する点があるかと思いますけれども、わが党の主張を含めながらお伺いしてまいりたいと思うのであります。  そこで、まず、前年度四十八年度改正にあたりまして、わが党を含め各野党におきましては、課税最低限を百五十万円に、こういうことを強く主張してまいりました。政府はそのときにはそれにはおこたえにならないで、この四十九年度改正において初年度において百五十万円、平年度で百七十万円、大幅な課税最低限引き上げを行ないました。これが悪いというんじゃありませんよ。これは当然のことだと思うのですが、この時点においてこの大幅な改正を行なった背景というか、理由というものをひとつ説明していただきたいと思います。
  91. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これはやはり先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、毎年毎年課税最低限手直し、特に人的控除手直し中心として減税をやってまいりますと、所得税構造自体にいろいろゆがみを生じてくるわけでございます。ゆがみと申しますのは、所得税構造は、いつも申し上げておりますように、控除税率とを組み合わせてしかるべき累進の形になっておるということがよろしいわけでございますが、そのしかるべき累進の形というものが、控除のほうだけを手直しをして税率のほうの手直しは全くしないという状態になりますと、再分配のための累進カーブというものがかなり途中から急激にきつくなってくる、こういう現象を生じます。そういうことを中心に考えますならば、やはりときおり全般的に見直す必要があるわけでございます。  と申しますのは、あまりこの税率構造が急激なカーブになりますと、やはりいろいろな意味での租税回避的な動きというものが現実に出てくるわけでございます。税法にはちゃんと従っておりますけれども、いろいろと出てくる。たとえば給与にいたしましても、やはり現金給与と現物給与の関係であるとか、給与を上げないで別の方法でもって何か実質的にメリットがあるような手当てがなされるとか、そういう危険が出てまいります。  それから、しばしば御指摘の資産性所得のいろいろな特別措置をやめるということを考えますような場合にも、資産性所得というものは金額が大きいものでございますから、したがって、わりと高い累進税率のところにぶつかるということがありまして、そしてそういうことのために、なかなか現実問題としてその累進が働くことがむずかしい、よってもって比例税率みたいなものが導入されてくる、こういうかっこうになってまいります。  そこで、一方において、そういう税制は直していかなければならぬのでございますが、その前提としては、やはり基本構造を変える必要があるわけでございます。そういう意味から申しますと、やはり五年に一ぺんとか七年に一ぺんとか、そういうときにある程度まとめて減税を考えさしていただきたい、そしてある程度バランスのとれた姿にときどき直さしていただいて、自余の年には主として、物価がこういう事情でございますから、普通のときでもどうしても四%とか五%とか六%とかいうような形で物価が少しずつ上がっていく現状でございますから、その物価のことを頭に置きまして、人的控除中心として、特にその結果として課税最低限手直し中心とした改正を行なうという組み合わせが必要であろう、毎年毎年の改正と何年かに一ぺんの組み合わせが必要であろうと思われるわけでございまして、そろそろどうしてもそういう基本的な手直しの必要に迫られたということが、今回改正をさしていただいた一番基本的な問題であると思っております。
  92. 広沢直樹

    ○広沢委員 私の聞いていることに正確にお答えになっていらっしゃらないのでもう一ぺん申し上げますけれども、百十五万円から百五十万円まで初年度において課税最低限を急激に上げましたね。平年度に直すと百七十万円であります。それはわれわれはわれわれなりに理由を言って、昨年度において物価とかあるいは実態に応じて百五十万円までに課税最低限を上げなさいということを言い、あるいは改正案も出してきたわけです。今度皆さんのほうでは、やっとそれを一年おくれでお認めになって、課税最低限を百五十万円まで上げられたわけですね。その理由は、われわれがいままで主張してきたことをお認めになって上げたのか、それともいまあなたが最後にちょっと触れておられたように、微調整でずっとやってきたのだ——確かにいままでは減税に値しない減税でありましたから、それを今回まとめてどかっとやったから、課税最低限の百十五万円であったのが一挙に百七十万円まで上がった、こういうお答えなのか。その点どうなんです。
  93. 高木文雄

    高木(文)政府委員 しいて申し上げますれば、ただいま先生言われたあとのほうの問題が中心でございます。今回の減税規模をどうやってきめたか、たとえば百五十万円という水準をどうやってきめたか、給与所得控除をなぜ四割、三割、二割というふうにして考えたか、人的控除についてはなぜ三万円にしたかという一つ一つについて明快にお答えすることはできません。と申しますのは、基礎控除なり何なりをなぜ四万円にしないで三万円にしたか、なぜ二万円にしないで三万円にしたか、また給与所得控除については四割、三割、二割という場合に百五十万円まで四割にしておりますが、なぜそれを二百万円まで四割にしないかというような一つ一つについては、実は明快な率直なお答えはなかなかできにくいのでございます。  簡単に申しますと、ある意味におきましては、全体として一兆五千億くらいの減税ということがまず頭にあるわけでございます。それはまた同時に、大体いつもの減税では、なるほど減税にはなっているけれども、サラリーが増加をいたしますとやはり増税になるということでございますけれども、今度の減税でございますれば、大体、給与が二割ないし二割五分上がりましても、上がります前に納めていただきました税を、ベースアップ後も納めていただけばよろしいくらいの減税割合になっております。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  それからまた、税率等につきましては、過去におきますところの物価の上昇と税率階級区分の関係を調べてみますと、大体、所得金額で五百万円からちょっと下くらいのところは、昭和三十二年の税制改正の時点と比べまして、すでに物価の上昇率よりも十分の改善がなされておりますが、その上はきいておりませんので、それを直すというようなことをいろいろ考えまして、それぞれについていろいろ組み合わせを考えてみました。結果的に、独身者の場合はどの程度軽減されるか、夫婦ものの場合はどの程度軽減されるか、夫婦と子二人の場合にはどの程度軽減されるか、かつそれが収入階層別にどんな軽減割合になるかというのを、縦横にいろいろ何べんも作業をやってみました。そうして考えて落ちついたところがこの案であるわけでございまして、まず百五十万円があるべき水準、たとえば生計費なら生計費の水準との関連で、このくらいのところがまず望ましいところであるというふうなことを先に置いて百五十万のほうがきまってきて、また給与所得についても同様なことが何かあって、そういうものがきまってきて、そして今日の案になった、というよりは、先ほど申しました全体としてバランスのとれた案を今回はつくらしていただきたいということでございましたから、一方において、サラリーマンについてのいわば自然増収額の大きさとほぼ見合う程度減税規模ということを頭に置きまして、そしていろいろ組み合わせを考えて、低所得層の減税割合と、中間所得層の減税割合と、その上とのバランスがくずれないようにというようなこともいろいろ考え合わせまして組み合わせたものでございます。
  94. 広沢直樹

    ○広沢委員 非常にまわりくどいいろんな説明がありましたけれども、やはり財源は限られておりますから、幾らでも下から積み上げたものであとから財源をひねり出すというわけにはいかないもので、総体的な財源の中で配分するから、できるものも、できないものもありましょう。しかしながら、理論的には、先ほどもほかの委員質問なさったとき、生計費には課税しないというのも、それはもう当然そういう考えだということを局長はお答えになっていらっしゃるわけですね。課税最低限というのは総ワクの中で考えていくというよりも、やはり現実の実態の中から、こうあるべきだという一つの理論というものを、この際はっきりしておくべきじゃないかと思うのです。課税最低限の問題が問題になりますと、絶えずそういう議論というものが出てまいります。二通りの考え方が私はあるのじゃないかと思うのです。  先ほども人的控除の話がありましたけれでも、純然たる生計費、いわゆる食べるだけですね、それだけを基準にして考えるのか、あるいは憲法でいわれております二十五条のいわゆる最低の文化生活というものを基準にして考えるのが妥当であるのか、その辺がはっきりしませんから、当然課税という面に関しては、生活にこと欠く人からも税金を持っていく、そういういまの体制でありませんし、ですから、当然生計費は非課税だという考え方でいままでやってきたし、ある時期においては大蔵省は、大蔵メニューというものを出して、その点は、いろいろな説明をなさっておられたし、そういうこともあったわけでありますから、この際やはり課税最低限の問題については——これはもう納税の義務がありますから、納めぬでいいというものじゃないのですよ。みな納めなければなりません。しかし、当然その負担にたえ得るもの、担税力の強いものと弱いもの、そこに所得の再配分を考えなければならないわけでありますから、その点を加味する以上は、税金を納めないでいい層のところは何を基準にしてやっていくのかという理論は、この際やはり詰めておく必要があるのではないでしょうか。それがいま詰まっていないなら詰まっていないとおっしゃってけっこうです。詰めて皆さんが考えていらっしゃるのだったら、こういうわけだということを、基準をひとつ示していただきたいのです。
  95. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いつもそういう御議論になるわけでございますが、私ども作業の進め方との関連で申しますと、家計調査その他でもって生計費がこうなっているから、まず課税最低限はかくあるべきだというような意味で、生計費と課税最低限を結びつけて考えておりません。そうではなくて、税はやはり何と申しましても、まず第一に、財源調達のための手段でございますから、そのための手段としての姿の問題、それともう一つは、所得再分配のあり方の問題、それから財政政策のあり方の問題、こういう三つが絶えずからまってきておるわけでございまして、まず第一に、ほかのはともかくとして、家計費との関係で基準をきめて、その上に積み上げていくという考え方はとっていないわけでございます。ただし、でき上がりました案、またそういう案をつくり上げます過程におきまして、絶えずそういうものとのチェックはいたしております。  でございますから、家計費との関係でございますと、四十七年の家計費調査によりますと、まん中の分位、第三分位の平均が百十四万九千円になっております。この場合の家族構成は三・八六ということになっております。それで、最近の家計費の伸び率は年率で大体一一%くらい、昭和四十年から四十九年の間に家計費は二・一倍というようなことになっております。そういうものを考えまして、たとえば四十八年の課税最低限は百十五万である。それで、四十九年の課税最低限はいかにあるべきかということであれば、まあ最小限度の要請としますならば、課税最低限を一割くらい上げればよろしい、ほんとうの最低限の上げ幅でいえば一割くらいの上げでもよろしいということになりましょうけれども、今回は、この際ひとつ思い切ってもっと上げ幅を大きくしましょうということでございました。  その上げ幅が一割五分がいいのか二割がいいのかということにつきましていろいろ議論があるわけでありまして、実際には百十五万が百七十万でございますから、その間五十五万ということは、約五割上がっているわけでございます。それでは家計費のほうからいえば、どこから見ても五割上げるという筋は出てこないわけでございます。そういう意味におきましては、必ずしもこれに引っぱられているというわけではないわけでございまして、ただ、まあそれも十分にらみ合わせながらでなければならないという意味において、毎年の税制改正のつど家計費調査等チェックはいたしておるわけではございますが、これがこうなっているから課税最低限を百五十万にした、たとえば四十七年が百十五万であるが、四十八年、四十九年と物価がなお上がるであろうから、四十九年の家計費ではこの第三分位のところがこのくらいになるであろうと推定して、そして百五十万に持ってきたという意味ではないのでございます。  と申しますのは、課税最低限のあり方というのは一体どうやって見るかという問題があるわけでございますけれども、たとえば第二分位のところの平均で見たらよろしいのか、あるいは第二分位と第三分位のまん中くらいのところで見たらよろしいのか、そういった議論は、結局、勤労者の中のどのくらいの数の方に税金を納めていただくかということとも関連をしてくるわけでございまして、なかなか決定的な要素にならないわけでございます。もし平均的なところで見ると、しかも、午前中の御質問お答えをいたしましたように、この家計費調査にあらわれておりますのは、これは支出そのものでございまして、最低生活費ではないわけでございますから、そういったところとも比べますと、なかなか家計費をベースにして課税最低限をきめるということは困難なわけなのでございます。  そこで、私の説明、たいへん回りくどいと言われましたけれども、そこのところはやはりいろいろな案をつくってみましたが、最終的にやはり何と申しましても決定的な要素になりますのは、実現可能な案でなければならぬものでございますから、減税の大きさというようなものが一つ考えられまして、それをサラリーマンとそうでない方とにどう配分するか、それから家族構成によってどう配分するか、それからまた収入階層別にどう配分するか。これは税の問題はやはり公平という問題が一番問題でございますので、どういう収入階層、どういう所得階層にどの程度持っていくかというバランスの問題でございますので、そのでき上がりましたバランスが多くの方に御納得いただけるかどうかということで判定すべきものであるというふうに考えております。  先ほどちょっとお触れになりました大蔵省メニューというお話がございましたが、確かにそういう時代がございました。それは非常にきつい時代でございまして、かつかつの生活をすることができるあたりのところと課税最低限の水準が接近をしていた時代には、そういう意味での課税最低限のきめ方が所得税制をきめる際に最も重要なポイントになっておったわけでございますが、若干いま余裕ができてまいりました。余裕というとしかられるかもしれませんが、若干余裕が出てまいりましたということで、現在ではその家計費との結びつきをまず第一の柱に据えて、それをいしずえとしてその上に家を建てるがごとく所得税構造をつくっていくということはいたしていないということでございます。
  96. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、念を押しておきますけれども、最低生計費、これはいろいろな議論があります。さっき大体このあたりで基準を詰めたらどうかと申し上げたのですが、いまのところいろいろな議論があります。議論はありますが、いまあなたのお答えは、大蔵省当局はそれも一つの算定に入れながら総合的に考える、そういうお答えなんですね。もしもそれにかかったとして、結局、課税最低限は、財源やいろいろな都合によって、もしも生計費に食い込むようなことがあっても、非課税の原則ではなしに、課税するのかどうか。その点が、先ほどの小林委員質問に対しては、具体的に生活の内容をもとにして質問されておりましたけれども、やはりその中で、生計費には課税しないという考え方というものは置いておやりになるということですが、いまのお答えを聞いておりますと、総合的なことを組み合わせて考えていくのだ、生計費の問題はほんの参考程度にちらっとは加味するけれども、そうではないのですよという感覚なんですね。逆に言えば、生計費にかかるようなことになったらどうなるのだ。そういうことはどうなんですか。
  97. 高木文雄

    高木(文)政府委員 将来の問題でございますけれども、たとえば物価が著しく高騰してまいりましたというようなことになって、現在の、百五十万、百七十万という水準が生活に非常に食い込むような水準になってきたという事態でものごとを考えてみますと、その場合には、家計費の中の食料費、住居費、被服費、つまり衣食住のために充てられる部分というものにつきましては、これは割り込んではならぬ。もちろん衣食住の中にも、平均の数値でございますから、食の中にも比較的、何日かに一ぺんではありましょうけれども、ごちそうを食べられたというものもこの中には入ってきておるわけでございますけれども、まあそれにしても、衣食住というようなものについては割り込んではならぬというような感じがあると思います。ほんとうのぎりぎりのときには、衣食住もまた、さらにぜいたくな衣、ぜいたくな食、ぜいたくな住というものが入り込んではならぬわけでありますが、第一次的には、衣食住なりそれから平均的な雑費なりというものが入ってくること、そこまでは割り込んではならぬということはいえると思います。  ただ、現在の状態は、私どもは百五十万という水準と先ほどちょっと申しました四十七年の水準と比べまして、その後の物価の上昇はありますけれども、その場合についてぎりぎりした生計費論をやって、その生計費を割るような水準より下にあるような水準に現在の百五十万があるというふうには考えないものでございますから、そこで御疑念が出ますようなお答えのしかたをしたわけでございます。
  98. 広沢直樹

    ○広沢委員 あなたのいまのお考え、大蔵当局のお考えは、衣食住、大体それを基準にしてものを考えているのだ。こういう大まかな基準というものは出たようでありますが、やはりここで先ほど申し上げたとおり、生計費の考え方は二通りある。いまあなたがおっしゃったような衣食住だけ、いわゆる最低生活というよりも生きているという、食べるだけという考え方、たまにはいまお話があったように、ごちそうを食べる日もあるかもしれないけれどもという注釈つきでありますけれども、そうじゃなくて、やはり憲法で保障された最低生活というものを基準にする、その限度をどこに置くかということについてはいろいろな議論があるけれども、やはりこういったものは詰めて、国民の税負担、納税義務を負っている国民が喜んで納税できるというそういう体制、基準というものをはっきりさした課税のあり方というものが必要ではなかろうかと思うのです。  そこで、いまさっき局長が参考に出されましたいわゆる総理府の統計によります国民の実際の支出ですね。四十七年度を例にとっておられましたけれども、これは世帯人員がおっしゃったとおり三・八三です。実支出が月十二万六千七百二十円、これは総理府統計の家計調査報告に入っております。これを十二カ月しますと百四十万になる。これは四十七年度です。ここはいいのですけれども、ところが、四十八年度の物価の上昇、これは単純に物価の上昇を掛けてみますと、百五十九万、約百六十万になる。それから、今度の政府の経済見通しは狂ってしまっていますから当てになりませんけれども、消費者物価の上昇は一ケタの九・六になっています。これも単純に掛けさしていただきまして四十九年度を展望してみますと、百七十五万になるわけです。これはずっと単純に掛けてきた。基軸も平年度でいえば総理府の家計調査をもとにした、実質をもとにしても単純に掛け合わしてきたら百七十万になる。こういう計算のあり方もあるのですが、内容が問題なんですね。  たとえば、食費の問題にしても三万となっておりますが、これは計算してみますと、この当時でも一日に一食一人当たり八十円ぐらいしか計算されておりません。あるいは住居費にしても公の家賃、いわゆる公団等の家賃から比べると、全然話にならない計算になっているということを考えてみますと、これはもう実態に合わないわけなんです。ですから、皆さんがそういったことをいろいろ参酌されるときに、ここに日本賃金研究センターの資料がありますけれども、この中に人事院のも載っておりますし、いろいろなのが載っているのです。この中に総評の理論生計費の昭和四十七年度の見通し、これもあります。あるいは電機労連の標準生計費の見通しもこれに出ております。あるいは食品労連の見通しも出ておって、それぞれ多少違いますけれども、少なくともこういった実態調査に応じて、あるいは労働者の実際の報告に基づいて組み立てられてきた実態調査のこういった面と、総理府統計みたいに統計から数字的に率を割り出してきた分、あるいは抽出的にごく一部だけをとってそういうふうに計数的に直した分の考え方というものと、大きく違いがあるのです。いまの実態面からいいますと、これはすでに二百万円をこえております。貯金だとかあるいはその他のいわゆる消費支出以外のものをのけてしまいましても、実際かかっている費用というのは二百万円をこえているわけです。これは標準ですが……。  いま申しましたように、総評とかあるいは電機労連とか、具体的にそういう労働者の生活実態から割り出された計算によりますと、衣食住だけをとらえても大体二百万円を若干こえるぐらいになっています。ですから、当然、先ほど言ったように、加味されるということであるならば、今後の課税最低限のあり方については、理論的ないわゆる憲法の問題を持ち出す前に、そういう実態を加味して考えていくべきじゃないだろうか。したがって、わが党においても——今回の課税最低限については、確かに五、六年に一ぺんの大調整であるとおっしゃって五〇%も課税最低限を上げた、いままでにないことだ、確かにそのとおり評価すればいままでにありません。しかし、いままでが、あなたも微調整とおっしゃったように、いままでやっていなかったのですから、それを一挙に調整されたというだけで、実態に合っていないのであります。その点をやはり十分に加味して、今後の課税最低限のあり方にも、やはり生計費の実態というものを踏まえて考えていくお考えはないのかどうか、それを念を押しておきたいのです。
  99. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ある面では広沢委員のおっしゃることに共鳴できるわけでございますが、二、三の点についてやや見解を異にするわけでございます。  一つは、標準生計費という概念でございますけれども、一体いかなる方法で標準生計費を探るかということが非常に議論の多い、むずかしい議論だと思うのでございます。そこで、標準生計費という概念を絶対的なものとして考えるというほどにはなかなか標準生計費の議論が実証的に詰まってこないのではないかという問題が一つございますね。  さて、今度は平均生計費というような概念でいきますと、平均生計費でありますれば、要するに、簡単に申しますと、これは結果で出てくるものでございますから、納税者を全サラリーマンの半数にしなさいということを意味することになりますが、それがいいか悪いかという問題が出てきますので、生計費を基準にいたします場合にも、平均生計費というもので現在見るということは、日本の経済なり財政の構造からいって、まだまだ、幾ら余裕があるといっても、そこまでは困難な状態ではないかというふうに考えますので、やはりあるべき水準と実績値との比較議論する場合にも、たとえば第二分位のところとかなんとかで見なければならぬのではなかろうかというように考えられるわけです。  それからもう一つは、これは課税最低限の持ちます意味というものは、要するに、どこから所得の再分配機能を働かすかということでございます。その所得再分配を働かすポイントを上のほうに上げていけば上げていくほど、社会保障の対象となる、もう少し具体的に申しますと、生活保護の対象となる家庭とそれから課税最低限が始まるところの家庭の中間の家庭、つまり歳出をもって手の届く家庭、それから税でもって手の届く家庭のまん中のところがだんだん広がっていくという問題がありまして、そこのところを社会保障と税との組み合わせでどこに置くのか、全体の二千六百万とか七百万とかいう世帯の中のどの程度が、これはわが国の課税は稼得者単位でございまして、世帯単位ではありませんけれども、結局、納税者がいる家庭といない家庭とどういうふうに分布していったらいいのかという問題がございまして、みだりに課税最低限を上げていきますと、そこのところが中間帯みたいなものができてくるわけでございます。  私どもは、先ほど来申しておりますように、生計費を重要な要素として、そしてチェックポイントとして見てはおりますけれども、その場合、いま言ったような三点のような見地から、生計費基準で課税最低限をまず設定するということの考え方にはどうもなじみにくいというのが、私ども現在の持っております感覚でございます。
  100. 広沢直樹

    ○広沢委員 私がいま申し上げたいのは、いわゆる生計費だけで課税最低限は全部推しはかれと言っているわけじゃないのですよ。確かにおっしゃる意味もわかるのですけれども、しかし、納税義務はみな国民にありますから、全部が一応納めると仮定しても、現在のように所得の再配分を行なわなければならないという次元に立っていけば、いわゆる生活に追われていると見られる者からまで結局税金を取らなければ、いまの財政というものが窮迫してどうにもならないのかどうかという問題にまで発展してくるわけです。それを重要な要素となさるのはけっこうです、財源の問題もありますから。しかし、重要な要素となさるといっても、幾らでも上げていけというわけにはわれわれもいかないと思うのですよ。ある限度はあると思うのです。  そのある一定限度を設定する場合に、やはり基準というものはここに明確にして、いま言うように平均ではいまの財政ではもたぬとおっしゃるならば、いまの財政ではここぐらいまでを基準にしていかなければならぬからというように、ちゃんとその点を明確になさったほうがいいんじゃないかと思うのですよ。課税最低限というものを重要な要素にしますというかたわらでは、そうじゃございません、なぜ百五十万まで上げたのかといえば、いや相対的ないろいろな要素がかみ合ってというようなあいまいなお答えをなさり、ではそれが基準によっては食い込んでもいいのかというと、いやそれはやはり重要な要素でありますとか、そこの点のあいまいさというものが課税に対する一つの大きな不満になってくるのです。財源がないならないなりに、ここまでの線でいま考える。この次はこの線まで上げることができる。これをはっきり納得のいくように説明をしていただければ、いまのように憲法問題を持ち出して文化生活の最低というものはどの辺かなんという論議をしなくたって、いまのところは衣食住のこの辺まででひとつやっていかなければ、財政全体の体制はこうなっておりますから、最低限の考え方、あるいは生計費の考え方というのはこの辺でいきたいのです、こういうふうに言われるなら、何も実態のメニューを持ってこい、昔やめたメニューをもう一ぺん持ってこいなんて言いはしません。  そういうことを一ぺん十分検討なさって、そういうマクロ的なあいまいな答えじゃなくて、それが重要な要素であるというならば、重要な要素になっているその一つはこういう基準で考えていますということを、はっきりしていただきたいのです。いまお答えできなければ、よく検討して、これは前にも申し上げてありますので、後日御回答いただきたい、こう思います。よろしいですか。
  101. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は、生計費の問題については毎年当委員会で御指摘を受けておるのでございまして、絶えずそれは注視をしていかなければならないということは忘れておりません。たとえば四十七年の例をもってみますと、平均で消費支出の中で、食料費、住居費、光熱費、被服費を除きました雑費の占める割合が四三・五%になっております。雑費というのはどんなものがあるかといいますと、教養娯楽費、自動車関係費、交際費、教育費といったものがいろいろ入っておるわけでございまして、こういったもろもろの雑費のうち、どのくらいをこの生計費論のときに入れてくるかというような問題になってくると、非常にむずかしい論議になってくるわけでございます。したがって、この生計費論というものについてはやはり相当いろいろな角度で御議論いただくことは私ども全く賛成でございますけれども、あくまでこの生計費を基準として所得税制を組み立てていったらどうだという点で、そこを強く結びつけられて考えますと、若干私どもとして賛成をいたしかねるような感じがいたすわけでございます。  税というのはなるべく少ないほうがよろしいことは間違いないわけでございますが、しかし同時に、財源調達のために所要の額というものがありますし、公債をむやみに発行するわけにもまいらぬという関係にもございますので、そして所得税のウエートか税の中で非常に重いだけに、やはり総合的判断ですべてをきめていただくことでございませんと、まず生計費と結びつけて所得構造をきめていく、そしてそれとの関係で他の税を考え、財源の所要額を考えて税構造を考えるというわけにもなかなかまいりにくいということで、御指摘に対していつも何か回りくどい御答弁を申し上げておるわけでございますが、その辺の事情もおくみ取りいただきたい。  ただし、あくまで生計費の問題については絶えず注視をしてまいらなければなりませんし、また、最近特にこういう物価情勢でございますから、私は決して百十五万円が百七十万円に上がったからもうそれでよろしいというようなわけではなくて、その辺のところは絶えずよく見守っていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  102. 広沢直樹

    ○広沢委員 私の言っている意味もだいぶ理解しておられるようでありますので、ただ答申の中にも、これから求めるいわゆる「活力ある福祉社会にふさわしい安定した生活を築くためには、家計における蓄積の充実を図ることが肝要」なんだ、このような観点からも所得税というものは考えていかなければならぬということがあるわけです。そういうふうな観点からも、十分にその点を配慮して今後もやっていただきたい、こう思います。  あまりこの問題ばかりやっておりますと時間がどんどんたってまいりますので次へいきますが、そこで、もう一つの先ほど申し上げました所得減税の柱であります給与所得控除の問題であります。  これは、本質は何ぞやということも先ほどいろいろ議論されましたので、あえて問いません。必要経費の概算であるということ、その他いろいろな理由があります。  そこで、今回このようにいままでの限度額、いわゆる給与所得控除限度額をはずして全部一〇%というふうにしてしまいました。そういうことによって重役減税あるいは金持ち減税という一端を如実にあらわしているという評価をされているわけです。この点は確かに大蔵省計算された資料によりましても、初年度においては標準世帯で百五十万円まで税金がかからぬようになるわけですから、これは率でいえば一〇〇%になりますね。それからだんだん計算して、一千万円、あるいは二千万円、三千万円のところにまいりますと、それに対する給与所得控除はいままでゼロだったのが約一割以上も控除を認めるという形になるわけです。そういうことになるわけですね。それによってはじき出される税額というものが、ここにもはじき出されておりますが、一千万円のところで減税割合が三五・五ですか、それ以下のところでは七百万円が三七・八、以下だんだん金額が下がるに従って割合が上がってきていますね。この割合でいいますと、確かに下のほうに大きく減税したことになりますよと言うのですが、絶対額においては一千万円、二千万円、三千万円のほうが大きく減税されていることになっているわけですね。  そこで、先ほど問題になった議論に戻ってくるわけでありますけれども、いまこういったいわゆる所得再配分をしていかなければならないということが非常に国民のコンセンサスになってき、あるいは当面の政策課題になっているときに、なぜこういうふうな絶対額において大きく所得を得る者について——資産じゃありませんよ、同じ給与所得の中ですよ。これについて絶対額においてこんな大きな減税をされるようなことをやるのかということが問題なんですね。先ほどおっしゃったような資産所得との関係もあるでしょう。いろいろな関係もあるけれども、結局、いままでの概念でいけば、先ほども問題になったように、それだって間違った理論ではない。そしてまた、今度おとりになった理論も間違った理論じゃないというようなことでありますから、どちらもその理論としては考えられるということだったら、なぜこの機会に、こういったいわゆる所得にしても何にしても、すべてにアンバランスになっておってこれを是正しなければならぬという時点において、あえてこれをおやりになったのか。大幅減税をやったというけれども、その問題というものは、所得再配分とからんだ問題とは基本的に違うと思うのです。その点をひとつ説明していただきたい。
  103. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど小林委員お尋ねお答えいたしましたように、全体としての減税の所要額は四十九年度において一兆四千五百億でございますけれども、かりに給与所得控除頭打ち制度、六百十六万円について七十六万円という頭打ち制度を残した、それ以上は頭打ちを残すということにした場合に、減税額としてどのくらいの影響があるかということのお尋ねがあって、それに対して約百億足らずだというふうに申し上げたわけでございます。  そのことでおわかりいただけると思いますが、給与所得控除の拡充による所要額は一兆四千五百億のうちで八千四百二十億でございます。その頭打ちをはずすかはずさぬかの影響は、八千四百二十億のうちで百億ということなのでございます。そこで、要するに、それほど今回の減税の中でこの問題が占めている金額的ウエートというのは大きくないわけでございます。にもかかわらず、理論的にはなぜサラリーマンにとってだけ頭打ち制度があるのか。必要経費概算控除だという概念からいたしますならば、普通の営業をやっていらっしゃる方、普通の営業とはちょっと趣を異にいたします自由業をやっていらっしゃる方、そういう方の場合にも必要経費概算控除制度というものがないわけでございまして、どういうわけで必要経費概算控除について頭打ち制度がサラリーマンについてだけなくてはいかぬのかということに、私どもはやはり本来的に疑問を持つわけでございます。もしこれが非常に巨額になる——一兆四千五百億も減税をした、減税をしたというけれども、しかし実は、非常に給与所得控除頭打ちをやめたことによる減税が大きいんだということになれば、いろいろ非難を受けるに値いたそうかと思いますが、これが百億足らずのものであるということならば、理論的にも非常に問題がございます頭打ちというものをやめるということに、それなりの意味があるというふうに私どもは考えるわけでございます。そしてそれがかねてから問題になっております資産性所得と勤労性所得のアンバランスの問題というものを考えました場合に、資産性所得の拡充をはかっておる現在のいろいろな特例措置をだんだん何とか整理する方向で考えなければなりませんが、それにもなかなか時間がかかるという場合に、同じ一千万円の収入のあるサラリーマンと一千万円の収入のある資産性所得の方とのバランスの問題もまた考えてみなければなりませんということを考えますならば、そこはお許しが願えるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  104. 広沢直樹

    ○広沢委員 この問題は質問も保留されているようですので、また大臣がお越しになったりしましたときに、いろいろ詰めてみたいと思うのです。  ただ、金額だって百億円、こうおっしゃっていますね逆にいえば、百億円くらいのことだから、むしろそれよりも、残した制度の問題——いまはそんな何千万円も給与所得でとっているという人は少ないから、結局、これに当てはまる金額というものも、総体的な金額からいえば少なくて百億くらいだということになるのでしょう。しかし、こういうふうに制度を変えたというところに、先ほども問題になりましたが、問題があるのじゃないかということです。  いままで長い間そういうやり方で来たのです。ここでいろいろの説明をいままでずっと聞いておりますと、諸外国の例もお引きになりましたし、勤労性所得と資産性所得の話も出していらっしゃいます。しかし、そういういろいろな諸外国の例だって、所得に対する最高税率というものが日本の場合と大きく違ったりしておりますね。そういう基本的な問題に触れて、それも全部変えていろいろな面を検討しているというならば、いままでの基本の体系というものをこういうふうに変えていくということも考えられるのじゃないかと思うのです。先ほど言ったようないわゆる所得再配分の求められているとき、さらには、いままで頭打ちを残してきた数々の理由を述べられておる、そういったことを正当化してきたのに、今回直ちに変更されたということは、ちょっと世論に対しても逆行する考え方ではないのか。  この点はまた、先ほど申し上げたとおり、大臣も御出席のときに意見も踏まえて申し上げたい、こう思いますので、その次に参ります。  そこで、次は、未成年者の控除の問題について。これは昨年のときにも盛んに強く要望したところでありますが、この際、未成年者控除という新しい控除制度をつくるよりも、やはり総体的に、課税最低限がこれだけあり、あるいは控除率というものが、人的控除にせよ給与所得控除にせよ上がってきたから、計算しますと、社会保険控除も入れて大体七十七万五千円ですか、ここまで一挙に上がったから、おそらくこれは課税されないだろうということでありますね。そうでしょう。  そういうことでありますけれども、やはり中学校あるいは高校を出てきた方々の初任給も上がっているわけです。さらに今度の物価の上昇、いろいろな面から考えてみまして、大幅に初任給も上がっていくのではないか、こういう見通しが、やはり先ほど申し上げましたこの日本賃金研究センターの具体的な資料の中にも出ております。これもあらゆる部門で検討された初任給というのが出ているのです。これは出どころは産業労働調査所でありますけれども、見込み初任給と決定初任給の推移というのが出ております。  それによりますと、四十八年で高校卒の決定初任給が、男子事務系で五万五百五十二円、技術系で五万一千百五十五円、女子で四万八千八百八十九円。それから、中学卒でも男子の場合が四万四千七百八十九円ですから、ざっと四万五千円。それで四十九年度は、これは見込みしかわからぬわけでありますけれども、見込みでも大体高校卒の事務系で五万六千円、中卒の男子でも約五万円、こういうのが出ているのですね。こうなるとは限りませんけれども、これはいままでの推移から割り出した見込みでこういうふうに出ております。その他人事院関係もこれにも出ておりますが、いろいろな統計から見ましても、たとえば五万円と計算していきましても大体七十七万五千円はオーバーするわけでございます。そういうわけですね。ですからやはり、こういうふうに総体的に人的控除給与所得控除を上げたから、いわゆる未成年者へはかからないと言っておりますけれども、いま言うように、ベースアップがあったら直ちにかかってくることになるのですよ。初任給五万だったらもうすでにかかってきますよ、賞与も入れますと。この未成年者控除というものの意味は、選挙権もない、学校を出たばかりで、高校卒あるいは中卒、いまの場合は上級学校へ行きますから、こういった方々は特殊な方ですね、家庭の事情とか。そういったことも加味して、気の毒ではないかということで、やはり未成年者控除というものを設けてあげるべきじゃないか。  これは、未成年者といっても、いろいろな勤労的なのもあれば、タレント的にかせいでいる人もありますから、そういう意味では、ある程度の制限というものもありますし、そのためのワクというものを考えてあればいいので、それをこえた多額のそういうような収入のある分については、また別途考えればいいのであります。  それから、あるいは勤労学生控除の分につきましても、今度は大体収入の九十万円までですか非課税になりますね、計算しますと勤労学生の場合は。それは勤労学生ですから、われわれも主張してきたところで、当然でありますからけっこうなんですが、未成年者に限ってはそういう特殊な事情を加味して、未成年者控除をつくるべきである。でなければ、ことしはこういうふうに上がり、また次も上がっていくということになれば、これを変えていかなければ、必ずまた次の時点において課税対象になるということになるのですよ。その点どうですか。
  105. 高木文雄

    高木(文)政府委員 未成年者控除制度の問題につきましては、昨年もさんざん御論議をいただきました。この問題を実質的に何とか解決しようということで一生懸命努力をいたしたつもりでございます。ただ、今度の七十万という水準がまだ不十分であるという御意見でございますれば、確かにそういう点はいろいろ政策論議として議論していただいて、大いに私どもも勉強させていただきたいと思うわけでございます。  ただ、なぜ未成年者控除という制度をつくりませんでしたか、そのかわりに基礎控除を上げましたことと給与所得控除の中に最低限五十万円という制度をつくりましたかということを申しますと、一つには、未成年者控除なりあるいは一定の年齢までの特殊控除をつくりますと、その年齢を突き抜けたとき、未成年者であれば未成年者から成年になったとき、そこでいきなりかなりの額の急激な課税が起こってくる。断層といいますか、非常に急激に課税問題が起こってくるという問題があるということが一つあるのでございます。  もう一つは、未成年者控除の御議論の中には、普通の人はこのごろは高等学校なりに行くようになった。ところが、中学校を出てすぐ働かなければならぬ状態である。それではどうもいかにも気の毒ではないか、税制上もう少し考えるべきではないかというような、一種の弱い方々に対する御配慮ということからそういう論議が展開してきたと思うのでございますが、その種の御論議は決して未成年者に限らないわけでございまして、御婦人で途中で不幸にあわれたというようなことで、中年で働きに出られるというような場合につきましても、やはりいろいろな問題がございます。また御主人が病気のために奥さんがつとめに出ているというような場合などを考えてみますと、要するに、これは何らかの意味において税法上の独身者、実質の独身者でなくて税法上の独身者の課税最低限の問題ではなかろうか。そういうふうにいたしませんと、未成年者以外の、もうすでに成年に達した方であっても、やはり非常に弱い社会環境にあるために働かざるを得ない人とのバランスをどうするかという問題がどうしても出てまいります。  そこで、未成年者問題についてある程度おこたえをしながら、なおかつ、独身で弱い、あくまで税法上の独身者で弱い方について何か考える方法はないかということでいろいろ考えたのでございます。それがちょうど、給与所得控除についてまず定額控除十六万円というのがありました。その上に定率控除があるという制度と組みかえをいたしまして、まず定率控除から始めるという制度にいたしますと、かえって低所得の場合にはいままでよりも非常に不利になるということが出ますので、そういうことを起こさないために、新しく一種の最低保障的な意味での定額控除制度をつくったということでございます。そこで、最低保障の五十万円と基礎控除の二十四万円を足した七十四万円、それに社会保険料控除を加えたものが課税最低限になる、こういうかっこうに組み立てたわけでございます。  でございますので、未成年者控除を主張なさいました大ぜいの方がいらっしゃいますが、その全部の方のお考えにおこたえしたということにはならないと思いますが、未成年者控除の御主張の中にも相当いろいろな御主張がございましたから、そういう意味で、全部の方の御主張におこたえできたということにはならないと思いますけれども、相当数の方の御主張には、これでおこたえし得たものと思っております。  ただ問題は、それでは水準がどうかという問題があるわけでございますが、私どもの検討でも、たとえば中学を卒業して就職をされた、学校には行かなかったという人について、これでうまくいくかというと、そうはとてもできません。現在の水準ではそういうことにはならないと思います。ただ、昨年非常に熱心に御議論願いましたように、四十八年度の状態では、中学を卒業した方が初年度から税金がかかってきてしまう。その方々は四月からつとめるわけでございますから九カ月分しか収入がないのに、それでも初年度からかかるようになってしまった。そういう状態が大体四十六年から、それは平均的な中学卒業の給与の方でございますが、そういう方の場合でも、四十六年ぐらいからぼつぼつ、わずか九カ月の収入にボーナスを足しただけでも、すでに税金がかかってくるようになってしまったということがございます。そういうことは幾ら何でも起こらないようにということを、一つ頭に置きながら言っておるわけでございまして、今回の案でも、いろいろな先ほど御引用になりました調査のいずれをとってみましても、給与の伸び等を考えてやってみますと、就職初年度でなしに二年目あたりになりますと、やはり課税関係に平均的な収入の方は入ってくるということになろうかと思います。  その問題は、なおどの程度のあれにすればよろしいかということは、これはそういう独身者のいろいろな課税最低限のあり方と、それから他の夫婦子二人というような家族構成の方の課税最低限のあり方の問題として、今後も熱心に私どもも研究してまいりたいと思います。今回の処置でもって完全にこれが解決がついたということではなくて、その水準論としては今後とも残ると思います。ただ制度論としては、私は未成年者控除制度をつくるよりは、こういう方式で考えていったほうが、他の弱い税法上の独身サラリーマンとのバランス上よろしいのではないかというふうに考えております。
  106. 広沢直樹

    ○広沢委員 それは局長の言っていらっしゃる意味もわかりますが、いわゆる成年に達したら、極端にすぐに税がかかってくるじゃないか、そういう理由も申しておられましたけれども、それは課税最低限の場合も同じことがいえるのでありまして、課税最低限をこえた人というのは、最低税率一〇%ですから、急に一〇%ばさっとかかってくるわけですね。そのすそ野の人が多いということで、ボーダーラインが多いということでいろいろ理論が展開されておりますけれども、それは一応どこかで線を切っているわけですから、未成年者、いわゆる有権者でもない、社会的に一人前でもないけれども、家庭の事情や環境によって、働いて家計を助けなければならないというような環境に置かれている方々が、額に汗して働いたそのわずかばかりのお金に、やっと最初の給料をもらったときから税金がかかるようでは気の毒ではないか、いわゆる未成年者控除かそれにかわる体制というものを考えていきなさいということで考えられてきた。  ところが、いま指摘しましたように、現実には四十八年度でも五万円ということから考えていきましても、それは五万円という高い給料を取っているからしかたがないではないかと言うけれども、特殊な仕事をしている場合は別ですよ、いわゆるタレントとか。ただ勤労的な場合においては、これはやはり考えてやる必要があるのではないでしょうか。片一方、低いほうはかからないで、高いほうは、少々いいところへ入って、給料のいい人はかかっちゃうなんというふうな不公平がないように、やはり未成年者には、そういう趣旨のもとにこの制度というものが加味されてくるものであるならば、公平にかからぬようにしてあげるべきじゃないか。こう思うわけでありまして、いまこれは最終的に、そういうかかる状態であるならば、今後とも税制改正のときに加味するということであれば、そのときに十分検討していただくことにして、次の問題に移っていきたいと思います。  そこで、所得税の問題、たくさんありますけれども、本会議も迫ってまいっておりますので、一まとめにして聞いてみたいと思うのですけれども、まず税制改正にあたっては不公平な負担を是正して、公平な負担に変えなければならぬ。そこに一つの大きな税に対する国民のいわゆる重税感もあれば、不満もあれば、いろいろな問題がある。ところで、給与所得者、いわゆるサラリーマンと事業所得者とを比較した場合の不公平な問題というのは、これは昨年の税制改正の事業所得者を考えた事業主報酬制度をつくったときにも問題になっておりますね。その面から事業所得者としての種々の恩恵というものを加味していくならば、サラリーマンにもそれにかわるいわゆる控除制度、いろいろな考え方があろうと思います。特別控除ということもあろうかと思いますし、あるいは源泉徴収控除といいますか、先取り控除とかいろいろなものがありますね。そういうような特殊な、同じサラリーマンの中でのいろいろな調整もあるし、今度は同じ所得者の中にもサラリーマンと事業所得という違いがありますね。その是正をどういうふうに考えていくのか、その点をひとつ御見解を承りたいのです。  たとえば、申告制度と源泉徴収という考え、あるいは前納と分納している考え、あるいは青色申告によっての特典が特に与えられているという問題、これは白色との関係もありますけれども、サラリーマンと比較した場合には、やはりその違いがある。こういったものも含めて、そういう面を埋め合わせていく上の公正な考え方から、特に控除を認める考え方はないのか。いかがでしょうか。
  107. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと私、御質問趣旨を十分くみ取れないのでございますが、サラリーマンのほうが事業所得者よりはいろいろな面において不利になっていはしないか、そこで、サラリーマンについて何か特別なことを考えてはどうかという御趣旨お尋ねでございますれば、まさに給与所得控除制度を拡充するということがそれに対するお答えになるのではないかと思うわけでございます。事業所得者には給与所得控除が適用にならないわけでございますから、サラリーマンにだけ適用になる制度というのが給与所得控除制度でございますから、給与所得控除を拡充するということ、今回それを中心にいたしましたつもりでございましたが、それをするということが、つまりサラリーマンを事業所得者とのバランスにおいてなるべく不利な状態にならないようにということでございます。ちょっと質問趣旨を取り違えているかもしれません。しかし、いまそういうふうに受け取れましたので、その意味でございましたら、今回の給与所得控除の拡充がそれにこたえるものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  108. 広沢直樹

    ○広沢委員 そういうことなんです。別にお答え取り違えているとは思いませんが、そういうことになると、また先ほどの話に返ってまいりまして、いわゆる給与所得控除というのは具体的に何なんだ。いろいろな、もろもろのそういうものを含めているから、今度は給与所得控除の中に加味していままでの率を変えたんだと、こうおっしゃるならば、前々から問題になっております、いわゆる給与所得控除は他の職業と比べて——自由業の人もあればいろいろありますね、その必要経費を具体的に申告によって認めている。そういうものとの違いというものが、そこでやっぱり論議の的になってくるわけですね。給与所得控除は、四〇、三〇、二〇、一〇ですか、こうなっていますね。実際にこれを平均した場合に、大体四十八年度で二八・五%になると、こう出ているんですが、大体そうなんですか。
  109. 高木文雄

    高木(文)政府委員 たとえば収入が百五十万円という方でございますと、四十八年の給与所得控除は、収入に対して四十二万八千円でございましたから、その率は二八・五%でございました。今度は百五十万円まで四割でございますから、六十万円が控除になりますので、ちょうどそこまではぴたり四〇%になります。つまり控除割合は、百五十万のところでは二八・五から四〇に上がるということになります。それから少し上に行きまして、たとえば三百万のところになりますと、従来は三百万に対しまして五十九万四千円の控除額でございましたから、これが一九・八に率ではなっておりましたものが、今度は百五万円までなりますから、そこで三五%の控除率になります。一九・八が三五になるということでございます。そこから先は先ほどの問題点であるわけでございますが、五百万円のところで申しますと、七十万二千円、一四%の控除であったものが、今度は百四十五万円、二九%の控除率に上がる、こういうことでございます。  いま御説明しましたのは、これは税制上の平年分の比較でございますので、四十九年の初年分は、手元に数字がございませんが、今度こうなりますと申し上げました数字よりはちょっと小さくなりますが、平年になりますとそういうふうになります。ということは、そういうふうにして給与所得控除が相当に拡大をするわけでございまして、その拡大した意味は何かというと、これは午前中の論議とつながってくるわけでございますけれども、あくまで制度としては必要経費概算控除であるというふうに説明しておりますが、先ほどお触れになりましたように、事業所得者とのバランスを総合的に勘案したものかという御指摘に対しては、確かにその点も頭に置いてのことでございまして、必要経費が非常にふえてきて、そういうふうに必要経費がふえたので、そのことを何らかの方法で認めてこの率を上げたというよりは、事業所得者とのバランスを考えて、ある程度これを手直ししたということでございまして、これはなかなか言い回しといいますか、表現がむずかしいわけでございますけれども、先ほどおっしゃいましたお尋ねお答えしたことと含んで御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  110. 広沢直樹

    ○広沢委員 ちょっとこの点、もう一ぺんお伺いしますけれども、いま百五十万、三百万、五百万、こうおっしゃいまして、その率は確かに上がってきているんですが、大体三百万だったら三五%くらいだ、それが百五十万で四〇%くらい、五百万でまあ二九%、約三〇%ですか、こういうふうになる。だんだん上に行くほど、結局、必要経費の率というものは下がってきているわけですね。そうして先ほど言ったように、上のほうは青天井にしてしまって、全部頭打ちがなくなってしまう。そして所得の多いほど大体いろんな経費が重なるから青天井でもいいじゃないかという考え方は、ちょっとおかしいんじゃないかと思うのですね。やはり上にいっても一人が使う限度というものは、これは給与所得者として考えているわけですから、そんなに所得に比例して違うということはない、事業をやっている場合とは、これは全然、趣、考えが違ってくるはずなんです。  事業をやって事業の売り上げがあり、収入があり、それに要るだけの経費というものをどうしても使わなければならないということになれば、それだけの経費というものは、ある程度、実際にこれだけ要りましたという申告ですから、それで見ていってチェックすれば、これだけ要った、あるいはこれは過大ではないか、収入とあるいは売り上げとあるいは利益といろいろ勘案して、経費だってこれは過大な経費ではないかということでチェックできるわけですけれども、それと給与所得者との必要経費の考え方というのは、そこが違ってくるんじゃないかと思うわけですけれども、いまも御説明の中からちょっと感じたんですが、その点はいかがですか。
  111. 高木文雄

    高木(文)政府委員 事業所得者の場合は、おっしゃるように、収入から経費を引いたものが所得だということになるわけでございます。その経費はどうやって見るのがたてまえかといえば、実際にお使いになった経費というものを、何らかの形で証明してもらうというのが本来でございます。しかし、非常に多くの場合、その証明はできない、何もブッキングはないという場合がございます。いわゆる白色という場合でございます。そういう場合でございますと、収入に応じてある程度経費を見ていくということになるわけでございます。でございますから、税法のたてまえとしては、あくまで収入から経費を引く。その経費というのは、実際使った経費を何らかの形で主張して証明していただくというのがたてまえではございますけれども、一人、二人の従業員を使っておられる程度の規模の場合には、全部の方がそう詳細にブッキングをしておられないという実態にございます。  そうなりますと、御存じのように、実行上の問題といたしましては、白色事業所得者については、いわゆる標準率制度というようなものをもって経費を平均的に見ていくことになるわけですが、その経費を平均的に見ていく場合には、かりに証明がなくてもある程度の率で、収入に対応する率で経費を見ていくということになるわけでございます。その場合に、五百万円の売り上げの方と千万円の売り上げの方が二人あった。八百屋さんなら八百屋さん、魚屋さんなら魚屋さんで二人あったという場分に、五百万円の方については、たとえば四百万円なら四百万円の経費を認めますが、千万円の方についても、どこかで頭打ちで四百万円しか認めないというわけにいきませんので、やはりある程度の率で伸ばしていくわけでございます。そうすると、白の場合には、収入が千万円であろうと二千万円であろうと三千万円であろうと、だんだん収入が伸びていくに従って、経費はやはり逓減的ではありますけれども、ふえて見られる、こういうことになるわけでございます。  そこで、サラリーマンについてだけは六百十六万円について七十六万円で終わりというのは経費論としてどうしてもおかしいわけでございまして、やはり収入がふえればふえる。すべての場合に経費が証明されなければだめですということになっていれば別でございますけれども、事業所得者についても、非常に多くの場合に、そういう収入に応じた経費の見方というやり方をしているわけであり、現に所得税法のたてまえは、現実には青色申告制度がありますけれども、白色というのが前提でございまして、青色というのはむしろ特例的に考えておるわけでございますから、そういうたてまえからいいますと 所得税のうちで、事業所得者だけは収入増加に対応してある程度経費を見ているのに、サラリーマンについてだけはなぜ見ないのだということについては、どうも理論的に一貫しないというふうに考えられるわけでございます。  その最も端的な例が、先ほど例に引きました作家の方が本を書いて印税収入があるという場合に、非常によく売れたはやりの本があった場合に、一億の印税収入があったという場合と五千万円の場合と千万円の場合で、やはり若干率は落としておりますけれども、実際一定率経費があったものと見てそれを引いておるという実態を考えますと、たとえば、作家の場合とサラリーマンの場合とはアンバランスが出てくる。また別の表現をとりますと、たとえば、新聞記者なら新聞記者の方が新聞社からもらっておるところのサラリーについては、どこまでいっても七十六万でとまってしまうわけですが、その方が別の評論家の立場で雑誌その他に投稿なさったそういう経費については、その投稿なさった原稿料収入がふえていけば、それはその原稿料収入が百万円の場合、二百万円の場合、三百万円の場合に応じて経費がだんだんふえていくわけでございまして、これもこっちの原稿料収入のほうは七十六万でとまっちゃってということはないわけでございます。  ですから、片方で自由業的な仕事をしておられ、片方でサラリーマンのあれがある方にとっては、なぜ片一方の経費が七十六万でとまらなければならぬのはどうしてもおかしいじゃないかという議論がだんだん出てまいりまして、そういう議論から、やはりどうも頭打ちというのはどうかなあということにだんだん私どもの考え方がなってきたということでございます。
  112. 広沢直樹

    ○広沢委員 それはまたさっきの問題に帰ってまいりますので、これはまた発言の機会がありますから、別の機会に譲って質問したいと思います。  そこで、主税局長、これからも物価調整減税というものは考えるというお話が最初にございましたけれども、今後の所得減税、この点はどうですか。
  113. 高木文雄

    高木(文)政府委員 率直に申しますと、昨年夏以来、今回の減税の案を作業さしていただいております過程におきましては、たとえば課税最低限一つとってみましても、従来の改善幅が毎年一〇%くらいでございましたから、それに比べまして今度の課税最低限の改善幅は三〇%にも及ぶということでございますので、必ずしも毎年毎年やるよりはまとめて減税したほうがいいのではないかという思想が背後にあったわけでございますが、最近に至りますと、たいへん物価の状況が変わってきておるわけでございますから、やはりある程度物価が落ちついてみないと何とも申し上げかねるわけでございますけれども、今後ともいろいろな角度で見直しを行なわなければならないというふうに、この案を最初考えておりました昨年の夏から秋にかけての情勢と今日ではたいへん変わってきているというふうに考えますが、何ぶんにもまだ物価情勢がこういうことで不安定でございますので、今後どういうふうにするかというところまでは、なかなか先のことについては申し上げにくい段階でございます。
  114. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、今回は大幅な減税ということが行なわれておりますけれども、われわれから見れば、まだまだ減税の——全体の財政そのものがどうこうというよりも、中身についてはいろいろ問題があろうかと思うのです。  そこで、まず、今回の大幅減税に全然恩典のなかった約三百万近くの低所得者、いわゆるインフレ下において、物価調整減税も含めて大幅減税だといわれてきたわけですが、全く関係ない人がおるわけですね、課税最低限以下ですから。物価を減税の中に多少加味することであるならば、当然これに対して、福祉税制の立場からは、負の所得税あるいは補給金と言っていますか、いろんな言い方があるでしょうけれども、考えてあげる必要があるんじゃないだろうか。これは財源の問題があってそこまでいかぬという議論がいままでもありました。しかしながら、非常なインフレで、国民の生活というものが非常に苦しいときに、大幅減税をしていって物価に対してもこれだけのことはやりましたよということであれば、その恩恵を受けない層に対しても、ある程度は考えてあげるような制度というものを今後考えていくべきじゃないか。いま案がなければ、これからそういうことを検討する余地があるのかないのか、その点を伺っておきたいのです。
  115. 高木文雄

    高木(文)政府委員 負の所得税の問題につきましては、かねがね私どもも、諸外国でかなり積極的にやろうとして研究が進んでおるところがございますので、関心を持っておるところでございます。ただし、この諸外国の研究も必ずしもスムーズにはいっておりません。それから、負の所得税をやろうということで研究をしております国の場合には、それぞれ日本の場合と違いました特殊な事情がいろいろとあるわけでございます。日本の場合には、まだ社会保障制度そのものに基本的な問題がございます。そこで、もう少し社会保障制度の問題のあり方の検討が進みましてから考えるべきではなかろうか。まだちょっと、そこへいくには現在の社会保障制度のもろもろの研究が、将来のあり方の研究が少し進みがおそいのではないかというふうに考えておるところでございます。  諸外国でもいろいろ研究はされておりますけれども、まだなかなか定着した形にはなっていないという実情もございますし、その原因は、それらのことが進んでおります国は、日本よりももっとそこのところが複雑な、うまくない仕組みになっておる国で、それを直そうということでいっているわけでありまして、私どもといたしましても、この勉強は続けてまいりますが、非常に短時間において、ここ数年の問題としてこれを取り上げるというところまではなかなかまだいきにくいのではないかというふうに思っております。
  116. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま頭にないことを急にやれと言ったってできないのかもしれませんが、いままでの微調整の減税のときには、当局の説明では、やはり物価調整減税、あるいはそういった意味を含めているのであると言われておりましたね。われわれも物価の立場から、あるいはまた、それに基づく家庭生活の立場というものをもとにして、減税幅も大きくしなさいということをいままで主張してきたわけです。したがって、こういうような非常なときに、むしろ社会保障制度が完備してくればそちらのほうで全部救済していきますから、別にいまの負の所得税がどうだとか、逆に補給金を出してその生活を守ってやれとか、そんなことを言う必要はないわけでありまして、むしろ、そういうことが諸外国と比べても完備していない日本の国、そして物価というものが家庭生活を圧迫するというような状況の中で、物価調整減税を片方で考えるならば、今度は逆に、その恩恵を受けていない者に、物価については同じように影響を受けているわけですから、それについてのある程度の補給金というものを考える、いわゆる負の所得税というものを考える余地があるのではないか。私は逆にそう考えているのです。  この点、ちょっと意見が食い違うかもわかりませんが、そういうようなお考え、いまのところは、ある、ないでけっこうですから、その点だけをもう一度お答えいただければと思います。
  117. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いまの日本の非常に大きな課題としては、社会福祉制度をどういうふうに進めていくかという問題があると思います。その社会福祉制度のあり方という問題と関連させながら、いろいろ税の姿の問題を結びつけていくべきものではないかと私ども思っておりますが、いずれにいたしましても、イギリスのように非常にもろもろの社会保障制度が入り組んでいます国の場合には、そっちのほうが行き詰まってきたこととの関連上、いろいろそういうことが考えられる必要があるわけでございますが、日本の場合には、まだもう一段と社会保障制度を今後どういうふうに発展させていくのかという基本問題が残っておりますので、そういう問題とからめながらこの問題も検討してまいるべきものと思っております。
  118. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、所得税、法人税、租税特別措置、この三法を一本に審議しろということでありますので、まだ所得税関係、ありますけれども、これから法人税に入りたいと思うのです。しかし、これは一つ一つやっておりますとちょっと本会議の時間までに間に合わないかもわかりませんが、時間のある限りやりますので、ある程度時間が来たら、委員長において裁量されて、若干の質問が残りましたら保留して、後日に回させていただきたいと思います。  それでは、大急ぎで進めていきます。  法人税につきましては、今度の一番大きな改正というのは、やはり基本税率引き上げたということ、それから配当軽課についても、いままではそのままに据え置かれてきたことが今度率を引き上げたということ、大体そういったところが問題点であります。われわれの主張からいえば、受け取り配当益金不算入についても問題があろうかと思いますので、大体この三点を概略お尋ねしておきたいと思います。   〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕  まず、法人税の税率を三五%プラス一・七五、いわゆるこれは租税特別措置で認めているわけですが、今回期限が来たということで、これを租税特別措置で認めた一・七五も含めて四〇%まで引き上げる、こういうことになっているわけであります。これは、先ほど申し上げました高木局長の東洋経済に載せました「法人税負担の現状についての試算」という中でのお話を私も十分読ませていただいたわけでありますが、実効税率としていまきめられておりますのが、現状では四五・〇四%、これは配当が約三〇%と見て試算されておるようであります。今度の改正で大体四九・四七になるということであります。またその引き上げについては、これはまあいろいろな理由があろうかと思いますが、結局、四〇%までに引き上げたその背景といいますか、理由について一応御説明いただきたいわけであります。   〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 高木文雄

    高木(文)政府委員 法人税の税負担というものは、一つは、やはり国際水準というものを考えておく必要があると思います。法人税は所得にかかるものでございますが、反面、これは裏から見ますと、企業にとってはやはり負担になるわけでございます。したがいまして、これは各国とのバランスかなり考えませんと、日本の企業の競争力という問題に影響があるわけでございます。  そこで、諸外国の実効税率を見ますと、大体五〇ぐらいのところにきておるわけでございます。日本の実効税率は四五ということになっておるわけでございます。この実効税率を四五にいたしましたのは、これはやはり過去におきまして日本が戦争によってかなり破壊をされた、それから立ち直るということのためにかなり産業にウエートを置いて考えておった結果であろうかと思うわけでございます。しかしながら、いまや非常な力を持つようになりましたから、法人税負担についてもまずまず国際水準に合わしてよろしいのではないかというように考えるわけでございまして、そういう角度から、昭和四十六年の八月になされました政府税制調査会でのいわゆる長期答申におきましても、法人税の負担を諸外国並みに持っていってよろしいのではないか、なお負担能力ありというふうな意見が出されておりました。私どももなるべく早い時期にこれを実行いたしたいというふうに考えておりました。  しかしながら、たまたまそういう御答申を政府税制調査会からいただきまして二週間たたないときに、いわゆるニクソンショックが起こりました。自来、日本の経済がどういうふうになっていくのか、十分国際競争に耐えていくのかという心配がございましたために、そのことに直ちにこたえられない状態でありましたが、昨年の二月の為替の調整の後におきましても、どうやら日本の経済が国際経済に対応していける力を持っているということが証明されましたので、この機会にひとつ税負担を国際水準並みに合わすということを主として考えました。大体、世界の水準の五〇%というところに合いますようにしてはどうかということでございます。  その際、法人税だけで考えるわけにはまいりませんので、地方の法人にかかりますところの住民税等のことも考えまして、それを合わせまして、配当が三割だと考えました場合の実効税負担が四五・〇四から四九・四七と、五〇をちょっと欠けるというところの水準に合わすというような考え方で、法人税の基本税率を三六・七五から四〇にいたし、配当軽課税率を二六から三〇にする、また住民税の税率も若干引き上げる、こういうふうなことにいたしてはいかがということで御提案をいたしておる次第でございます。
  120. 広沢直樹

    ○広沢委員 先に聞いておきますが、かつて法人税率は、基本税率が四二%であった、二十七年ですかね。その後だんだん下がってまいりまして、三五%まで下がって、それから特別措置で一・七五プラスされたわけでありますが、現在やはり四〇%にまで戻したということで、いまいろいろな情勢をお述べになりましたが、それによってはなおかつ上げる場合もあり、下げる場合もあるでしょうけれども、その点は情勢によって考えるということですか。
  121. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは二つ問題がございまして、法人の税負担というのは、法人の所得をどう計算するかということに一つ問題がございますから、その所得計算が国際的水準と比べてどういうことになるかという問題が一つございますけれども、いま一応それをのけまして、税率の問題だけ考えてみますと、日本の法人税制は非常に複雑でございまして、国税と地方税とがございますし、しかも配当軽課税率というようなものがございますので、諸外国の税制よりは複雑なものになっておりますが、大体、税率に関する限り諸外国と合わせてまいりたい。これだけ日本の経済は国際経済と密接な関係になっております以上、あまり多くの負担を法人に求めるということは、国際経済との競争力の関係で問題が起こってまいります。さりとて、もうこれだけの力を持ってくれば、国際経済並みまで持っていってもいいではないかという感覚でございます。  それで、御在じのように、アメリカの場合には、州税をどう見るか、州によって違いますので、州税をどう見るかということに問題がありますが、大体五二%ぐらいのところにきておるのが多いようでございます。イギリスは五〇%になっております。西ドイツは現行法は四九・〇五でございまして、これを若干また直して上げるかという話がいま出ております。フランスはちょうど五〇でございます。そこで、四九・四七ということであれば、まずまず各国の水準並みになったものというふうに考えておる次第でございまして、将来いろいろな議論が展開されます際にも、まず今回の税制改正の結果の水準である五〇%というところを基準にして御論議願ってよろしいのではないかと思っております。  過去において四二%ということがございましたが、これは朝鮮動乱のとき三五%から一挙に二割上げまして、三五かける一二〇%ということで四二になった歴史がございますが、これは当時まだ占領中でございまして、ある程度朝鮮半島におきまして戦争が続けられ、そしてアメリカ人の血が流されるというような状態のときに、日本の経済の景気が過熱をいたしまして、その当時に、米側の占領軍サイドからのかなり強い要請が背後にあったというような事情で四二ということになっておった時代がございますが、今度の四〇という数字、そして地方税を含めて四九・四七という数字は、一つの国際水準にもうすでに到達したものというふうに私どもは考えます。
  122. 広沢直樹

    ○広沢委員 いままでの説明を聞いておりますと、今回の引き上げは、基本税率が四〇%になった。地方税も含めますと実効税率が四九・四七ですから約五〇%、諸外国並みになった、そこまで引き上げたということですね。  ただ、私は、その議論を聞いておりまして、いままで非常に都合のいいことを当局はおっしゃっている、こう思うのです。いままではわが国経済の実態に即しまして——諸外国は非常に高いじゃないかと毎年毎年議論もあり、いろいろなところで議論されてきたのですが、いま言うように、為替レートがどうであるとか、日本の経済基盤がどうであるとかいろいろな理由があったわけですね。しかし、諸外国はどうあろうと、わが国の経済の実態に即してだんだんだんだん下げてきたわけですよ。  今回は、いま当初に申されたとおり、そしてまた局長もこの本の文中の冒頭に書かれているとおり、いま転換をしなければならないと認識をされた。輸出競争力だ、あるいは経済基盤だといっていままでの税制や財政を動かしてきた、それがいまは輸出についても一応反省をしなければならぬという状態のやり方になってきた。あるいは産業基盤についても、世界的に屈指になってきたというぐらいの大きな広がりようになってきた。ここで福祉に転換しようというわけですから、諸外国との率がどうだということはあまり強調なさらないで、わが国の経済の実態に即して、少々はこれから負担を大きく持ってもらおうじゃないか、それを福祉に回していこうじゃないかという考え方に、基本的には立ってもらわぬといけないわけです。いまのお答えの中でも、外国との比較ばかりおっしゃっていらっしゃる。だから、都合のいいときは外国と比較なさって、都合の悪いときにはわが国の実態はこうですと御説明なさるのは、ちょっといただけないんですよ。もちろん、外国との比較を全然無視しろという意味ではありません。それは国際的になったわが国の経済ですから、すべて外国を無視してうちらばかり考えてやっていけというわけにはいきませんけれども、それはいま言ったようなことで、少しその点の認識を改めていただきたいと思うのですね。  そこで、外国とかりに比べたにしても、わが国の法人税の負担の実際のいろいろな制度、これも基本的に違いますし、諸外国の場合における制度もいろいろ各国によって違いがある。それは国々の実情によって、あるときは産業基盤の育成のためにいろいろな措置を講じたりしてやってきていますね。それも改廃をしながらやってきている。いまもお話があったように、西ドイツにおいても、またこの税率を上げようかという段階がいま来ているということですが、わが国においても四〇%がいいのか、またわが党でも主張しております四二%までこの際一挙に、以前にもあったわけですから、戻すべきであると言っているのが正しいのかということは、いろいろな理屈もあろうかと思います。  ですから、最初にお伺いしたように、四〇%まで持ってきた、もうここまでがいまの経済の実態であるのか、これからの四二になったり、あるいはそれ以上になり得ることも実態においては考え得るのか、私はこういうことをお伺いしたいのですが、それに対して明確なお答えがない。ほかとの基準を合わせてみてこの線までやっと持ってきたんだというお話があったのですが、その点いかがですか。
  123. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回の法人税率引き上げにつきましては、やはり四十六年の八月に出されました政府税制調査会からの答申が非常に有力な根拠になっております。政府税制調査会での答申は、これはかなり大ぜいの専門家の方にお集まりをいただきまして、正規の委員のほかに専門委員のような方にお集まりをいただきまして、いろいろ議論の末に出された原案をベースにして、正規の委員の方が御審議の上で答申ができておるものでございます。法人についてはなお負担を上げてもいいでしょうということで、「法人税の負担水準をみると、昭和三十年代に比べて引き下げられており、また、欧米諸国のそれに比べて必ずしも高いとはいえない実情にある。今後わが国の経済が相応の成長を続けるとじた場合、法人税については、税体系上少なくとも従来と同じ程度の役割を期待すべきものと思われる。」というのが答申の本筋でございますが、そういうことでございました。  私どももでき得ればもっと早くこれを現行税制の中に持ち込みたいと思ったわけでございますが、先ほどちょっと触れましたように、この直後から為替の変動というような問題が起こってまいったということでございますので、私どもとしては相当大ぜいの方にお集まりいただいて、研究の結果を今度初めて実現することになったというふうに理解をいたしておるところでございます。  今後の問題につきましては、もうこれで終わりかどうか、さらに引き上げるかどうかというような問題につきましては、これはまた別途あらためて各方面から広く意見を寄せていただいて、それらを中心に私どもが勉強してまいりませんと、さらに将来の方向をどのように持っていくべきかということは、なかなか今日の段階で申し上げる立場にないわけでございます。為替のほうもいろいろ変動に変動を重ねてまいりまして、もう少し様子を見ましたならば、こういう為替水準、こういう税水準の場合に、どうしても国際経済にたよっていかなければならない日本の経済を頭に置きました場合に、どういう競争力を持つことになりますか、それを多少実証的にながめてみませんと、今後の税負担水準のあり方がどの辺がいいかどうかということはなかなかきめにくいのではないかと思います。  法人税につきましては、しかしながら、まだ別途税率の問題のほかに、いつも御指摘を受けております課税標準のほうの問題、要するに、税率をかけられます前の所得計算のほうの問題についてどう考えたらよろしいかという大きな宿題が残っておるわけでございまして、今後しばらくの問題としては、そっちのほうの問題をどう考えるべきかということが出てこようかと思いますが、税率の問題につきましては、少なくともなお数年の間は、この辺のところがほぼ落ちついた姿ではないかというふうに考えるわけでございます。
  124. 広沢直樹

    ○広沢委員 法人税については、諸外国と違うところは、特別措置についてもいままで非常に企業優遇的なやり方をやってきておることであります。特に輸出競争力というような問題と関係のありました輸出に対する特別措置なんかはなくなってきておりますけれども、その他、準備金だとか特別償却だとかあるいは試験研究の税額控除だとか、こういった問題がいろいろ含まれている。諸外国にも、それぞれに特別償却だとかいろんな制度は若干あります。ありますけれども、わが国の場合は、法人税の中でも、いわゆる企業会計原則に基づいて引き当て金だとかいうふうに企業の体質を充実しあるいは強くしていくための原則がいろいろ認められている以外に、なおかつ政策的に、こういうものが租税特別措置によって大幅に認められておるわけです。  それらについては各方面からいろいろな試算が出ておりますけれども大蔵省がお出しになった四十六年度の資本金階級別法人税負担割合の試算の中にも、準備金、特別償却、あるいは技術等海外所得の特別控除、あるいは試験研究費の税額控除、こういうものが、現実的には法人税額いわゆる算出税額から引けていくということになっているわけですね。したがいまして、先ほど諸外国と比べるようなお話をなさいましたけれども、こういった恩典から考えていくならば、やはりお比べになるならばこういったものも含めて考えていくべきではないか。この資料で皆さんがお出しになった税率においても、資本金百億円以上においては約四%、一億円から百億円未満のほうにおいても二、三%、これだけの恩典というものが出てきているわけであります。したがって、そのことを加味するならば、四〇%で諸外国に見合うならば、四二%のところまで持っていってもと、いま諸外国と比較して申されるからあえて申し上げるのでありますが、そういうことも考え得るんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  125. 高木文雄

    高木(文)政府委員 従来当委員会における御意見等もございまして、また各方面から寄せられた御意見もございまして、租税特別措置を中心にいたしまして、課税標準、つまり所得計算のほうの整理、合理化にできるだけ努力を続けてまいったわけでございますが、今回はいよいよその税率のほうを直そうということにしたわけでございます。  それで、今後の問題をどっちへ持っていくのかということにつきましては、税率というものは何かこういう率しかないんだということでは決してございませんので、御指摘のように将来さらに上げるということも十分研究の余地のある問題ではございましょうが、しばしば御議論がございますように、課税標準のほうの問題になお問題が残っているのではないかというふうに考えるわけでございまして、準備金なり特別償却なりについて相当程度努力はいたしておりますが、これはまだまだ研究を要する余地は残っておるわけでございます。  もし今回御提案申し上げております税率改定をお認めいただきました場合に、将来の問題としてどういう問題があるかということでございますならば、私は、さらに税率引き上げるという問題よりは、いずれかと申しますと、かねて御指摘がございますこの所得計算の問題について、なおいろいろと研究をいたすべきではないか、また、所得階層別の問題、資本金階層別の問題というようなこともなお研究をいたすべきではないかというふうに考えておるところでございます。
  126. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、明十三日水曜日午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会