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高木(文)
政府委員 先般、他の委員の御質問にも
お答えをいたしましたが、これはいろいろな
考え方があると思いますけれ
ども、現在の私
どもの
考え方では、配当につきましては受け取り段階で調整をするか、支払い段階で調整をするかがどうしても必要であって、受け取り段階でも支払い段階でもどっちでも調整を全くしない、そのつど課税をするという方式にはなかなか同意をいたしかねるわけでございます。
もしそういう調整を全くいたしませんと、
会社が幾つかありまして、親子間で株をずっと持っておりますと、何重にも課税することになりますので、そうなりますと、親子
会社的
制度というのは、全く成立しなくなる。そうしたらどうなっていくかというと、巨大
企業がどんどんふえていくということになっていくわけでございます。
会社を分離いたしまして親子間でずっと持っておりますと、その段階ごとにどんどん課税されていきますから、
利益が途中で発生しませんでも、元で一ぺん
利益が出まして、それを配当する、次配当する、次配当するというふうにいきますと、何段階かのうちに消えてしまうということになりますから、それではどうも成り立ちませんから、そういった
関連企業が全部合併をしてしまう
かっこうになるわけでございます。
そういう形がいいかどうかという問題がございますし、それから、
中小企業で非常にめんどうな問題が起こります。
中小企業の場合には、特に
同族会社の場合には、一人の株主が
会社の株のほとんど大部分を持っておるわけでございますけれ
ども、その株主と
会社の間で税金の調整をいたしませんと、非常に
負担が重くなってくるという問題が起こります。
そういうことがいろいろございますので、私
どもは、現段階では、どこかの段階で、つまり、受け取り段階か支払い段階か、いずれかの段階でやはり調整はしなければならない、そういう仕組みにせざるを得ないのではないか。これは実在説、擬制説ということは
関係なく、そういうふうにせざるを得ないのではないかというふうに考えるわけでございまして、各国の
税制を見てみましても、何らかの
意味において、受け取り段階か、支払い段階か、どっちかの段階で必ず調整をしておると言って過言でないわけでございまして、完全な
意味の実在説的な
考え方で、段階ごとにどんどん何べんでも課税を繰り返すということはやっていないのでございます。
そこで、受け取り段階で調整するのがいいのか、支払い段階で調整するのがいいのかということになりますと、これはたいへんな問題でございまして、わが国の場合には、現在は受け取り段階調整になっておりますが、同時に支払い段階で、先ほどの御質問のように、四分の一軽課
制度がとられているわけで、そこに非常に
制度としてわかりにくいことになっておるわけでございますが、最近の産業界の空気といたしましては、むしろ支払い段階のほうでの調整に持っていったらどうか。いまの御質問に対しては御
意見に沿うことになりますが、受け取り段階での調整をやめてしまったらどうかという
意見が、だんだん強くなりつつあるわけでございます。
しかしながら、各国の
税制を見てみますと、
法人税制はたいへんゆれ動いておるのでございますが、ここ一、二年大体安定をしてまいりまして、イギリスにおきましても、ドイツにおきましても、だんだんむしろ支払い段階での調整でなしに、受け取り段階での調整に戻りつつあるのでございます。
御存じのとおり、ECでは各国間の
税制はある
程度統一をいたしませんとうまくいきませんということがございまして、各国とも意識するしないにかかわらず、
税制がだんだん統一される傾向にございますが、そっちのほうではむしろ受け取り段階の調整に、相対的な問題でございますが、戻りつつあるように見受けられるのでございます。
そういったことで、非常に事はややこしいのでございまして、とてもなかなか簡単に結論を出し得ない
状況になってまいりました。
そこで、先ほど
指摘をいたしました
税制調査会での特別部会におきましては、その
中心課題は、この受け取り段階での調整にするか、支払い段階での調整にするかという問題に、最大の焦点が寄せられてこようかと思います。この問題は、日本の
企業の
あり方を左右する問題になってまいろうかと思います。また、直接
金融、間接
金融の
あり方を左右する問題になってこようかと思います。さらには、個人株主と
法人株主の
関係にも
影響のある問題でございまして、非常に大きな
影響をわが国
経済界に与えることになろうかと思いますので、慎重な検討を要するわけでございますけれ
ども、それにいたしましても、各方面の御
意見を広く受けとめまして、何らかの方向をつくらなければならぬというふうに思っております。
それから、ただいま御
指摘の負債利子控除の点は、これはちょっと先生何か思い違いをしておられるのではないかと思いますが、負債利子はほうっておきますと、借り入れ金でございますからどっちにしても損金になるわけでございますが、株を買うために使った借り入れ金の利子につきましては、益金に算入しない受け取り配当の額から引くわけでございますから、これは恩典とかなんとかにならないので、むしろ受け取り配当益金算入のメリットを減殺しておるわけでございますから、これは恩典の逆でございますので、その点はちょっと
制度があまりにもややこしいので、
一般にもよくそういうふうに御理解の方がございますけれ
ども、これはそっちのほうではなくて、受け取り配当益金不算入のメリットを小さくしておるというふうに御理解いただきたいと思います。
それから、ただいま御
指摘ありましたように、この
制度が始まりましたシャウプ勧告時代と今日とでは非常に株式の保有
状態が違うから、そのことも頭に置いて考えろよという御
指摘でございますが、これはまさにそのとおりでございまして、その点、ごく最近、特にここ二年間ぐらいの間にまた株主が個人のほうから
法人のほうに大量に移りましたこともございますので、それらも当然考えなければならぬと思います。この
法人税制論の最も基本のところに触れる御質問でございますので、私の答弁も非常にややこしくなりまして恐縮でございますが、どっちにいたしましても、問題意識は持っておりますから、そして各方面の権威に寄っていただいて何らかの結論、あるいは動かさないという結論になるかもしれませんけれ
ども、何らかの結論を導き出さなければならぬと思います。ぜひこれは真剣に研究してみたいと思っております。