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1974-03-08 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月八日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       村山 喜一君    山中 吾郎君       小林 政子君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      磯辺 律男君         国税庁税部長 田邊  曻君         国税庁間税部長 横井 正美君         国税庁徴収部長 熊谷 文雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。村岡兼造君。
  3. 村岡兼造

    村岡委員 現在三月十五日、所得税期限になっておりますけれども国税庁の方にお尋ねをいたします。  まず最初に、国税庁のほうでは、今冬、新潟、秋田、山形、青森、福島を襲いました豪雪、明治二十三年以来、秋田気象台始まって以来の豪雪、二メートルから三メートルあるいは四メートル、こういうような状況を知っておりますか。
  4. 熊谷文雄

    熊谷説明員 先般一月以来、二月、三月にかけまして三回特に大きな豪雪があったと承っておりますが、秋田県のみならず、仙台管内におきましては、かなり大きな被害があったということは承知いたしております。そういう事態は承知しております。  それを体しまして、庁といたしましては、局に対しまして十分にそれに対する措置につきまして指示をいたしておる次第でございます。
  5. 村岡兼造

    村岡委員 その概況をかいつまんで申し上げますけれども、一月の国鉄の輸送状況について、一月二十日から二月の二十日ごろまで、客車は本線、支線とも全面運休が五日間ほどあった。あとの二十五日間は、長距離優等列車、その他特急、普通ともすべて五〇%程度運休している。通勤列車通学列車、約その間三〇%程度の運転しかしなかった。同時に、二日間ほど列車の中に乗客が二十四時間とめられた、こういうことが二回ほどあった。貨物列車はこれよりももっとひどく、一月二十六日から三十日までは全面運休。二月十六日に至りまして、ようやく秋田操車場の能力が六〇%まで回復し、一〇〇%回復というのは二月一ぱいかかる、こういう状況でございます。  道路は、県で管理する国道、県道百四十九路線中、一月二十七日、二十五路線、百三十九キロが全面不通。二月十五日現在で十二路線、七十六キロが不通市町村道五千八十二キロのうち、二月十五日現在で千百七十四路線、千五百十三キロが不通だ。バスの状況は、二月一ぱい県南部で六〇%運休中央部で四〇%運休県北部で二〇%運休孤立集落が七百七十七、約四千人が十日間孤立した。  死傷者が雪のために九人、傷者が二十七人。これは二月十五日現在でございますから、今後どのくらい発生するかまだわかりません。住居の損壊が三百十戸。臨時休校が五百十七校。授業打ち切りが四百八十四校。これは秋田県の場合でございます。  農業災害あるいは中小企業被害はまことに甚大で、これが救護のために自衛隊災害派遣出動をお願いし、延べ五千八百九人、県内自衛隊が出ておるわけです。  この前の災害対策特別委員会でいろいろな対策をお願いいたしまして、国有林木材代金約七十億円の延納を許可されました。  それから、本県は有数の出かせぎの県でございます。ところが、雪のために家が崩壊をする。この雪おろしをする人がいないということで、各市町村東京都内事業所に呼びかけまして、雪おろしのために何とか帰省さしてくれ、こういうことで打電までしておるわけでございます。  県内中小企業は、金融でたいへん困っております。一万五百の中小企業があるわけでございます。工場、店舗、建物、設備、製品、商品、これの直接被害のほか、除雪費、操業の短縮あるいは輸送の停滞による売り上げ減で、被害は二月十六日現在、中小企業で約五十億円程度、こういうふうに見込まれております。  こういうような状況で、ついては、国税庁のほうの問題でございますが、県におきましては、この豪雪に対して各財務事務所豪雪に対する相談所を設けておる。それから、県税減免あるいは徴収猶予市町村税についてもそういうことをとっておるわけでございますが、国のほうに対しても、県あるいは市町村長からこういうお願いが来ておるのを御存じでございますか。
  6. 熊谷文雄

    熊谷説明員 ただいまお話しのような秋田県を中心とする豪雪に対しまして、そういう事実の認識を十分持ちまして、私どもといたしましても、県庁あるいは市役所からの御要請に応じまして、すでに庁から局に指示をいたしまして、そのための会等も数回やっております。そうして、税務署は何といいましても世帯が非常に広うございますので、税務署の職員の一人一人がそういう事態を体しまして、そういう課税の減免措置でございますとかあるいは納税猶予措置、そういった点につきまして、納税者個々実情を十分把握して、個々納税者方々事情に対処するように指示をいたしております。  なお、重ねて申し上げますが、そういう豪雪地帯におきましては。税務署に出署していただくのはたいへん不便な場合があるかと思いますので、私ども継続して納税しておられる方々につきましては把握いたしておりますので、こちらからお電話で事情等をいろいろ御相談するように配慮いたしております。  それから、いまの相談体制でございますけれども、いまたまたま確定申告期でございますので、いわば挙署一体体制をとりまして納税相談をいたしておるわけでございますけれども、署におきましては、そういう県庁等の窓口の体制に即応いたしまして、できるだけそういう専担のものをつくってまいりたいというふうに思っております。
  7. 村岡兼造

    村岡委員 お答えによれば、そういう措置はとられておるというようなお話でございますけれども、実際いま申告期限が迫っておる。昨年の一月から十一月ぐらいまではよかったのですが、十二月からこの三月一ぱいまでは豪雪で、これからまた相当な融雪災害が予想されるわけでございますけれども、一方、金融の引き締めというような状況にありまして、県内中小企業が税の納付の場合、非常に資金繰りに苦しんでおるわけでございます。たまたま売った金はもうとれない、材料はその場に停滞する、それから生産はとまる、こういうような状況でございまして、きょうはまだ中川政務次官が見えられておらないのですが、私ども雪国でございまして、例年にない雪でございます。  ところが、風やあるいは水害、こういうものは一ぺんで被害がわかるわけですが、雪の場合は、十二月から四月一ぱい、四カ月間も五カ月もじわじわ来るような災害で、これに対して、国税庁として従来とられた対策でなしに、ひとつ法ばかりでなしに、実情を勘案して徴収猶予あるいは減免の処置をとっていただくことを強く要望しておきたい、こう思っております。
  8. 熊谷文雄

    熊谷説明員 ただいまの先生の御意見の御趣旨を体しまして、私どもとしまして、重ねて局署指示をいたしたいと思います。
  9. 村岡兼造

    村岡委員 国税庁のほうは以上でけっこうでございます。  法人税法の一部を改正する法律案についてですが、今回の改正で、中小法人に対する軽減税率は、第一に据え置き、それから中小企業に対する適用範囲を三百万円から大幅に七百万円まで引き上げる、また同族会社定額控除を五百万円から一千万円に引き上げる、こういうふうなことで、中小法人に対する今回の改正はたいへん私どももありがたいと思っておるわけでございますが、一方、大企業のほうは四〇%に引き上げた。  ところが、これは局長にお伺いいたしますけれども中小企業というのは、五百万円や七百万円あるいは一千万円という利益をあげるのにたいへん苦労する。と申しますのは、はっきり申しますと、五百万円か一千万円ぐらいの利益をあげないと銀行信用してくれない。マイナスの決算を出しますと、銀行で金も貸してくれない。商売の信用もない。したがって、そうなりますと、大企業に比べて、利益は出ているのだけれども給与面というものは非常に劣悪である、あるいは福祉面というものが非常に劣悪である、それから退職金にいたしましても、今回一千万円まで無税ということになりましたけれども一般中小企業で、あるいは零細企業で、三十五年つとめまして一千万円出せるという企業は少ないわけでございます。  そういう観点から、私は、今回の据え置きはたいへんけっこうなんでございますが、この一千万あるいは二千万程度中小企業利益に対しては、むしろもう少し下げるべきでないか。中小企業決算内容というものは、大企業に比べましてたいへん劣っておる。こういう観点から、ひとつ今後の考え方局長からお伺いしたいと思います。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 中小企業に対する対策は、最近十年ぐらいの間、いろいろな角度でとられてまいりました。税制におきましても、たとえば、貸し倒れ引き当て金についての二割増しの制度であるとか、それから取得価額五十万円以上の機械の、新たに取得した場合の割り増し特別償却制度であるとかいう形で、比較的簡易な方法で活用できるような制度を漸次くふうをいたしたりしておるところでございます。今回の措置によりまして、一つには軽減税率適用範囲を本年は六百万円、来年は七百万円ということに拡大をいたしました。そういうことと関連をいたしましてかなり配慮はいたしたつもりでございます。  それで、今後の問題についてのお尋ねでございますが、御指摘のような問題があるわけでございますけれども中小企業法人税税負担の問題というのは、個人経営でやっておられる場合の税負担の問題とある程度バランスをとりながら考えなければならない。所得税のほうは、御存じのように、累進構造になっております。法人税のほうは比例税率になっておりますので、どこかで、所得税負担法人税負担がある所得階層のところでクロスポイントができるわけでございます。そこで、単純に法人税だけの問題で処理できませんので、所得税あり方の問題と関連をしながら考えていかなければならないわけでございます。  なお、昨年度の租税特別措置法改正によりまして、個人事業主についていわゆる事業主報酬制度というものをいわば試験的に施行するということで、五年間の臨時措置としてそういう制度ができたわけでございますが、これはある意味で非常に複雑でございますし、指導体制も徹底しておりません関係もございまして、いまスタートをしたところでございまして、まだ普及に至っておりません。こういった制度普及がどのように進んでいくかということとも関連をいたしまして、個人経営法人経営を通じてある程度バランスをとりながら、ただいま御指摘のような問題を頭に置いて今後の処理に当たってまいりたいと思うわけでございます。
  11. 村岡兼造

    村岡委員 いま、所得税の問題と法人税の問題もからみ合わせて考慮をしなければならぬ、こういう答弁がありましたけれども、しかし実際に考えてみまして、退職金を一千万出せる中小企業、あるいは五百万出せる中小企業というものは、ほとんどないわけでございます。同時に、中小企業はいわば大企業の犠牲になってやっておる。こういうふうな関係で、所得税のほうとのバランスをとるために中小企業法人税だけ考えるのはうまくないというようなことを言われましたが、理論としてはそうでしょうけれども、実際に中小企業は、七百万程度利益をあげても、来年度、経済のあれでどうなるか。給料を上げたくても、福祉をやりたくても、来年、再来年のことを考えて、やれない。いま春闘とかいろいろことしの賃上げで、二〇%とか二五%とか三〇%とかいわれておりますけれども中小企業というものは、そんなには上げられない、上げれば会社が倒産する、倒産すれば働いている人も元も子もなくなるというような状況で、ストライキもできない、こういうような状況下に置かれているわけです。  したがって、所得税からくる税率バランスをとるためにという考え方でなく、ひとつ二千万程度ぐらいまではということで、中小法人というものの考え方を改めていただきたい。同時に、それに対して、中小企業に対する福祉中小企業の社長でも何でも、従業員に対して給料を上げたい、あるいは福祉を増進したい、ところができない状況である。税制の面からこれらに対してもう一つ配慮を願いたい、こういうことでございますけれども、いかがでございましょうか。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回の改正の際に、法人税税率のうちで、資本金一億円未満の法人適用になりますところの軽減税率適用範囲を、三百万円から本年は六百万円に上げましたということの持つ意味でございますが、それは計算をやってみますと、地方税と込みになりますので非常にややこしい計算になるのでございますが、所得で千二百万強、もう少し詳しく申しますと、千二百二十八万円というところから以下の方の場合には、総合をいたしまして法人税税率が上がらない、むしろ場合によって下がるということになります。それで、三百万円から六百万円に二八%の適用の幅を拡大をいたしたわけでございますけれども、それは下の二八は固定しておりまして、上のほうは税率は上がりましたが、今度は二八適用になる範囲が広がりました結果、三百万円がただ六百万円になったというだけでなくて、所得で千二百二十八万円から以下の方は、何がしかの程度において軽減になるというかっこうになっておりまして、千二百二十八万円をこえますと、三六・七五の税率が四〇に上がったということの影響のほうを今度は強く受けまして、若干増税になっていくというかっこうになります。  三百万円を六百万円にいたしましたということの意味は、まあどこに基準を求めるかということでございますけれども、千万円を少し上回る程度所得であれば、いまいろいろ法人税全体としては税率を上げなくてもよかろう、むしろ税率を上げないほうがよかろうという大体の線を千万円強というところに置いたわけでございます。でございますから、何か三百万、六百万といいますと、かなり所得の低いほうの法人についてだけ配慮をいたしたような印象を持たれるかもしれませんが、三百万円を六百万円に広げましたということの持ちます意味は、千万円超、より正確には千二百万円ぐらいのところまでは影響がない、それから上は税率を引き上げた、こういうことでございます。  いろいろ御意見はおありかと思います。だんだん経済規模も大きくなっておりますし、取引の規模も大きくなっておりますから、その線の引き方として千万円超ということではなお不十分だという御意見かとも思いますが、私どもといたしましては、今回は、全般的に税率が上がる際でもございますので、まずまず千万円というあたりに一つの目安を置けばよろしいのではないかと考えて、御提案申し上げている次第でございます。  なお、しかし、これらにつきましては、いまの計算は、事業税住民税等を含めまして、法人所得についてかかる税について全体を見たものでございますが、なお今後起こってまいります問題といたしましては、固定資産税問題等所得にかかる税でないもの、こういうものが土地の評価に伴って漸次負担がふえるというような問題がございます。これは大法人たると中小法人たるとを問わず問題があるところでございまして、本年から政府税制調査会の中に特別の部会を設けて法人あり方について検討しようということになっておりますのも、そういった点も含めての問題でございますので、そういう場で法人負担の問題が議論されます際には、御指摘の点もよく頭に置いて検討してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  13. 村岡兼造

    村岡委員 この中小法人に対する軽減税率、決して悪いと言っているのではございません。ただ、この中小法人のいわゆる内容、大企業に比べてたいへん劣っておる。給与面、あるいは福祉面退職金の面、もうあらゆる面で劣っておりまして、一千万や二千万上げましても、中身はもう大企業に比べてたいへんな状況である。しかも、それを出さないとその会社信用がなくて銀行からも金を借り入れられない、商売するにもたいへんである、こういうような内容をよく今後とも税制調査会あるいは局長のほうで検討せられまして、この中小企業零細企業に対する税制考え方を特段と前進さしていただくことを特に要望しておきたい、こう思っております。  さて、次に所得税法でございますが、今回の改正により、中小所得者負担軽減あるいは給与所得者所得税負担が大幅に軽減される、あるいは税率緩和退職所得特別控除、かつてない改正でございますけれども物価というものが非常に上がっておりまして、改正した点は非常にいいのですが、それだけ国民はまだ感じていない。一方で物価がどんどん上がってくる。それからまた、給与所得者納税者が、資料によれば四十三年が千八百九十一万人、四十八年の見込みは二千八百六十七万人にふえておる。今回の改正により、四十九年の見込みは二千五百七十四万人、こういうふうに減る、こういうような状況でございますけれども、過日問題になっておるのですが、アメリカは別として、欧米各国に比べまして日本は直接税が高過ぎる。間接税の問題がいつも問題になるわけでございますが、今回、間接税についても多少のパーセンテージが上がったわけでございますけれども、これらについて何か参議院でも大蔵大臣が発言なされたようでございますが、直接税と間接税の比率の問題、今後またどのようにしていかなければならないのか、お答えを願いたいと思います。
  14. 高木文雄

    高木(文)政府委員 直接税と間接税との割合は、現状をまずちょっと御説明をさせていただきますと、その前に戦前の姿では間接税のほうが多かったわけでございます。よく基準になります昭和九年-十一年には、間接税のほうが六五%というような状態であったわけでございます。戦後、直接税のほうを中心とする税制に漸次変わってまいりました。もちろん、これは戦前の中でも戦時中に財源を強化するという趣旨でいろいろと直接税が強化されていった過程を途中に経まして、戦後においては、だんだん直接税のウエートが高まっていったわけでございます。それで、いまから約十年前、昭和三十八年で見ますと、間接税のほうが四二%ということであったわけでございますが、その後約十年の間に、大体年に一%ずつ下がってまいりました。現在は、大体、間接税が三〇%ぐらいで直接税が七〇%ということになってきたわけでございます。  ごく最近の状況を申しますと、四十八年度の当初の予算では、少しこまかい数字になりますが、直接税が六九・六%ということで予算案でがきておったわけでございますが、その後経済伸びが大きいというようなことがございまして、そこで、法人税所得税増収が見込まれました結果、補正後の四十八年度予算の姿では直接税が七一・二%になるということで、初めてついに間接税ウエートが三割を切るというような状態までなっていったわけでございます。  もし四十九年度におきまして税制改正をいたしませんという状態で、かりに計算をいたしてみますと、さらに直接税のウエートが高まりまして、七三・九くらいまで直接税が上がっていき、間接税が二六%台になってしまうということでございます。今回の所得税のかなり大規模減税、しかし一面、法人税増税がございますけれども間接税を多少手直しさせていただくということを通じまして、いまお示ししております案では、直接税の割合が六九・九になる、ほうっておきますれば七三・九になるものが、六九・九まで直接税のほうが下がる、つまり、昨年の当初予算のときの六九・六とほぼ並びのところに来るというような感じでございます。  それで、私どもはやはり税の中では所得税法人税のような直接税が基本的な税ではないかというふうに考えております。ヨーロッパ、特にフランスに見られますように、間接税を税の体系の中の中心に据えるということがいいというふうには考えておりませんので、現在のように所得税法人税が税の中の中心を占めるということでよろしいのではないかと思っておりますが、ただ、御存じのように、直接税、特に所得税の場合にはいわば弾力性が大きいといいますか、経済伸びますと、それに伴って伸び可能性が大きい。ところが、間接税のほうはなかなか経済伸び割合ほどには伸びないという関係がありますので、ほうっておきますと、直接税の割合がいまよりもどんどん上がっていくということになるわけでございまして、このことは、いま少し必要以上にこまかく御説明いたしました四十八年度から四十九年度へかけての数字動き、もし制度を変えませんでしたならば起こるであろう数字動きを見ていただけばおわかりいただけるような傾向にあるわけでございます。  そこで、私ども考え方は、もっともっと間接税ウエートを置いて考えていかなければならぬと思っておりますけれども、その趣旨は、必ずしも直接税のウエートを引き下げて、さらに間接税ウエートを高めようということまでは考えておりませんので、このまま放置するならばどんどん直接税のウエートが高まるというのを、そんなに上がらないように、いまの三〇、七〇くらいな割合で推移する程度にしていったらいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。その場合におきましても、なおかつ、相当、毎年直接税については長期的には減税を考えてまいらなければなりませんし、間接税については、少しずつではありましょうけれども手直しをして、増収をはかることを考えていかなければならないというふうに考えるわけでございます。  とかく一般に、間接税中心主義税制のほうに切りかえるほうがいいのだというふうに私どもが考えているように受け取られがちでございますけれども、そういう意味ではないのでございまして、七対三くらいの水準をなるべく維持していったらどうか、それを維持すること自体が、しかし相当困難でございまして、かなり間接税ウエートを置くものの考え方をとってまいりませんければ、七〇、三〇という関係にはなく、七〇がだんだんさらに高まり、三〇がだんだんさらに低まるということになる可能性を持っているので、いささかそこに力点を置いて、間接税の持つ意味というものを特にもう一ぺん見直してまいりたいということを、いつも強調いたしておるわけでございます。
  15. 村岡兼造

    村岡委員 いまのお話ですと、税は基本として所得税法人税を七〇、あるいは間接税を三〇、ほうっておきますと、直接税のほうがどんどんふえてくるから、間接税のほうを手直しし、所得税法人税というものを緩和していく、こういうお話のようでございますが、これは一%あるいはその程度のものでありますと、所得税法人税が一兆円あるいは一兆五千億円減税になりましても、国民の側から見ますと、賃金、物価の上昇であまり減税感がわいてこない。  いつでもヨーロッパ関係のほうを引き合いに出されるわけですが、基本的にいうと、これは間接税の比率を高めるというのでなく、それでは直接税は七〇くらいにして、あくまでも基本として間接税は三〇%にしていくというお考えなのか。同時にまた、そうなりますと、いつまでも直接税だけ幾ら減税になっても重税感が強いという感じがする、あるいは間接税を四〇くらいに上げていこうとする場合に、どういう難点があるのか、どういう問題があるのか、ございましたら、お答えを願いたいと思います。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 間接税を増徴するということを考えます場合に、考えられる方法といたしましては、現行の制度のままで若干手直しをしていくということが一つございますが、そういう方法でありますならば、村岡委員が御指摘のような四〇というような率にはとてもなかなかならない、相当急激な大増税でもなければ、なかなか四〇という率にはならないというように思います。  現行の日本の間接税の最大の特色は個別消費税ということでございまして、いわゆる一般消費税という形をとっていない。何を一般消費税というかと申しますと、売り上げ税とかあるいは取引高税とか付加価値税というふうに、一般的に取引に対して何らかの形で間接税体系をつくるというのを、私どものことばで一般消費税と呼んでおります。それに対して、現在のように、物品税であるとか酒税であるとかあるいはガソリン税であるとかいうように、個別の品物に着目をして、あるいは有価証券取引税や印紙税のように、個別の流通形態に着目をしてのみ課税をしている形を、個別消費税の方式と呼んでおります。個別消費税の方式をとっております限りにおきましては、なかなか簡単には間接税を大幅にふやすということにはならない。  そこで、もし村岡委員のおっしゃるように、間接税ウエートを高める必要があるということであるならば、やはり一般消費税方式というものに着目をしていかなければならないと思うわけでありますが、税の制度というものは、やはりその国の歴史なりあるいは国民感情なりというものを十分くみ取った上で考えなければならないわけでございまして、ヨーロッパにおいてはきわめて自然な形で一般消費税が行なわれておりますけれども、これはそれぞれ少なくとも五十年以上の歴史をもって積み上げてきて、今日の形になったわけでございます。  わが国の場合には、かつて一般消費税的なものがたまたま二年だけ戦後にあった時代がございますけれども、これがうまくいきませんでした。例の取引高税が、やや政府のものの考え方も性急であったというようなこともありまして、うまくいきませんでしたというようなよくない思い出を持っておりますというような関係もございまして、なかなか一般消費税が受け入れがたい土壌にあるといわざるを得ないのでございます。そのことを考えますならば、やはり一般消費税は遠い将来の問題としては十分考えなければならぬ問題であり、かたがた税の制度というものは、最近の国際交流の緊密化に伴いましてだんだん国際的に均一化していくという傾向もございますので、そういう意味から申しますと、一般消費税について将来の問題としてはどうしても考える必要があると思いますけれども、それには時間をかけて、広く国民の理解を求めていくことが必要でございまして、性急に一般消費税に移ることはむずかしい。そうなりますと、御指摘のように、四〇%程度にまで間接税収を引き上げる、直接税を軽減するということは、言うべくしてなかなかむずかしいというのが今日の現状であるというふうに私どもは考えておるのでございます。
  17. 村岡兼造

    村岡委員 直接税、間接税の問題で、わが国は個別消費税を取って、一般消費税をかけるためにはたいへんいろいろな難点もあるということですが、しかし、現在の体系をとっている限り、なかなか所得税法人税軽減しても、大企業法人税は別といたしまして、国民の間に減税感がわいてこない。したがって、このことは税制調査会でも今後の問題として、あるいは大蔵大臣も発言されておると思いますけれども、こういう直接税である所得税あるいは中小企業法人税の問題からもひとつ今後とも十分に考えていただきまして、私の言った四〇%というのは例でございまして、少しでもそちらのほうにウエートを移して、ひとつ減税の効果があらわれてくるような方策にしていっていただきたい、こう思うわけでございます。  同時に、今度は租税特別措置法でございますけれども法人税関係の配当軽課税率の引き上げ、あるいは自動車関係諸税の税率の引き上げ等、こういうことが行なわれたわけでございますが、この点に関し揮発油税及び地方道路税の引き上げにより揮発油の小売り価格に占める税負担割合はどの程度になるのか、これを過去との比較、あるいは諸外国との比較から見た場合どう考えているか、この点をお答え願いたいと思います。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ガソリンの中に占める税負担割合の問題でございますが、まず、わが国の数字を最初に申し上げます。現行の制度、揮発油税と地方道路税を合わせましてリットル当たり二十八円七十銭でございますけれども、この二十八円七十銭がきまりましたのは昭和三十九年でございます。当時の小売り価格は、統計によりますと、四十五円七十八銭でございましたので、現行制度が定まりました三十九年度におきますところの小売り価格中に税の占める割合は、六二・七%でございました。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 その後、二十八円七十銭はずっと固定をいたしております。小売り価格のほうは若干ずつ変動いたしておりまして、最近の大きな変動は別といたしまして、わずかながら上がってきております。  そこで、四十五年の六月をとってみますと、ただいま申しました六二・七が六丁二に下がっております。一年たちました四十六年六月には、六一・二からさらに五七・〇に下がりました。四十七年六月には五六・六に下がりました。昨年の六月にはすでに今日の気配がありまして、小売り価格が急激に上がり始めました関係で、昨年の六月当時のガソリンの価格は五十五円八十八銭と出ておりますが、その関係で、ガソリン税の負担割合は五一・四にさらに下がったわけでございます。  昨年の十二月に、御存じのように、ガソリンの値段が急に上がりまして、大体八十円ぐらいになりました。昨年の十二月現在では、ガソリンのほうが八十円で、ガソリン税のほうは相変わらず二十八円七十銭でございますので、三五・九%まで下がってまいりました。急激にガソリン税負担割合は下がった、これは税は固定しておるわけでございますので、小売り価格が上がったから結果的に率は下がった、こういうことでございます。  そこで、これからどうなるかということにつきましては、けさほど来の新聞等でも出ておりますように、ガソリンの値段がだいぶ上がるようでございますので、どういうふうに推移するかわからぬのでございますけれども、実は一つ数字といたしまして、これは現時点ではちょっと見方が低いかもしれませんが、ガソリンの値段を八十六円ぐらいに見まして、それから税のほうが今度の上昇を見まして、いままでの二十八円七十銭が三十四円五十銭に上がりますということを見ました場合に、大体四〇%ぐらいになるということを想定しておったのでございますけれども、その後、ここ一カ月ぐらいの間に――御提案を申し上げるころには大体このぐらいの感じでおったわけでございますが、さらにガソリンの値段が上がるようでございますので、ガソリン税負担率は四〇を切るであろうというふうに思われます。  諸外国の状況はどうかということでございますが、これも各国ともガソリンのほうの値段も動いておりますし、各国とも、わが国の場合と同じように、ガソリン税の増税の計画が立てられております。そういう関係で、多少数字がきちっといたしませんけれども、私どもが持っております資料では、アメリカが大体三〇%、これはアメリカは自分が産油国でございますから比較的低いわけでございます。イギリスが六五%、西ドイツが七〇%、フランスが六八%、こういう感じでございまして、まだいろいろな国を調べてみましても、自分の国で油が出ません国の中では、日本はガソリン税が極度に低い国のほうに入っております。
  19. 村岡兼造

    村岡委員 石油の産出国では、消費国が高率課税をしているから産油国としても値上げをせざるを得ないのだ、こういうようなことを言っているように聞いておりますが、そうだといたしますと、今回の改正は、日本の税制上の問題はともかくといたしまして、資源対策の面で問題がなかろうか、この点に関してどうお考えになりますか。
  20. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は今回の改正に際しましても、非常に神経を使った点でございます。しばしば産油国サイドから、産油国の取り分が多くなることについて非難するのであれば、消費国のほうの負担を、まず政府の取り分を減らすべきではないかという意見があるというようなことが外電等を通じて伝えられまして、いろいろ検討してみたわけでございますが、大体ヨーロッパの先進国では、原油一バーレル当たりの政府の取り分と申しますか税負担は、十ドルをこえております。イギリスとかフランスとか西ドイツ、イタリアというようなヨーロッパにおける非産油国の政府取り分は、平均しますと十ドル以上になっております。それに対してわが国の税負担は、原油関税を含めまして一バーレル当たり三ドル程度でございます。  したがいまして、ヨーロッパにおきます十ドルという水準と、わが国におきますバーレル当たり三ドルという水準を比べますと、極度に低いわけでありまして、今回若干この揮発油税につきましての値上げが行なわれたといたしましても、この非産油国のよその国と比べて問題にならない水準であるというふうに考えられますので、私どもは産油国からその点に関して非難が寄せられるのは当たらないというふうに考えております。  先般来、しばしば産油国の関係の閣僚等が見えました機会にも、もし必要があれば、そういう反駁なり説明をするということで、政府部内で意見の統一ができておりますが、今日までのところでは、最近各国から見えました産油国の閣僚から、その点について特に日本を名ざしての非難があったという例はないように聞いております。
  21. 村岡兼造

    村岡委員 時間も迫ってまいりましたので、一括して質問をいたします。  税制調査会の答申に、社会保険診療報酬課税の特例の是正について、特別部会を設けて検討を進めており、別途答申するというような意見が出ておりますけれども、四十八年度は八百八十億円の減収、これに対して今後どのように考えているか。  それから、交際費課税。これは損金不算入を千分の二・五から今回千分の一に引き上げる。交際費は一年に約一兆三千億円使われておる。これは今後、実際に税収入面でどうなっていくのか。また、この交際費の課税というものは、これでいいのかどうかというような考え方。  あるいはまた、広告宣伝費が昭和四十二年は四千五百億円、四十七年は約九千億円近い。いろいろなテレビやあるいは新聞、雑誌、あらゆる広告宣伝が相当なされておるわけでございますが、なされればなされるほどその広告料というものは原価に入ってきて、それが物価というものに占めてくるわけです。広告宣伝費についての、たとえば税金をかけるとかかけないとかというようなお話もあったわけですが、この考え方についてお答えを願いたい。
  22. 高木文雄

    高木(文)政府委員 まず社会保険診療報酬でございますが、これは先般、山中委員の御質問にもお答えいたしましたとおり、ことしの十月の初めに現在の税制調査会の委員の任期が切れるということもございまして、二年ほど前から、かなり一生懸命いろいろな角度からこの問題を特別部会で審議をしていただいた関係もございました。少なくともどんなにおそくとも、この現在の税制調査会の委員の任期中には、かなり具体的な案を出していただきたいということを強く税制調査会にお願いをいたしております。税制調査会のほうもその心組みでおられますが、事が事でありますので、きわめて慎重に考えておられるということであるかと思っております。  交際費の問題につきましては、四十八年度に約千八百億円のいわば増収になっておるわけでございます。なお、四十七年の交際費支出は一兆三千一百億ということでございました。そのうち、私どもの考えでは、交際費は会社から支出されるわけでございますから、本来損金である。しかし、一定の限度を越えた交際費は、その損金を税法上否認しておるわけでございますが、その損金不算入額が、ただいま申しました一兆三千二百五十五倍の交際費支出のうち、三千六百三十九億ということになっております。全体の中で二七・五%が損金にならないということになっておるわけでございます。これは四十七年実績でございますから、四十八年から損金否認割合を御承知のように七〇から七五に上げましたので、この二七・五という率はさらに高まってくるものと思います。今回御審議をお願いしております改正案では、さらに資本金基準を低くすることによって損金杯算入額が小さくなりますから、したがって、不算入割合は大きくなる、否認割合が大きくなるということになろうかと思います。  なお、これでも不十分ではないかという御意見は各方面から承っております。そういたしますと、問題は不算入基準の四百万円というのが大きいかどうかという問題が一つと、それから七五という否認割合が低いかどうかということが一つ、その二つが問題になるわけでございますが、四百万円は確かに中小企業でも大企業でも四百万円一律でございますので、小規模企業にとりましては、若干四百万円という定額は高過ぎるという傾向にあることは事実でございますけれども、一方において、四百万円というのは長い間定額で固定しておりますわけですから、定額というのは貨幣価値の変動に伴って意味がだんだん小さくなるわけでありますので、それをさらに狭めることがいいかどうかという問題が一つあり、それから七五の否認割合のほうは、いろいろと立場立場によって見解が違うわけでございますけれども、私どもは、本来、交際費は会社から外に出てしまうという意味で損金であることは間違いないのでございまして、それの否認割合をあまりにも高くすることについては、理屈の上からいって非常に疑問を持っておるわけでございます。国民感情といいますか、一般感覚といいますか、そういうものからすれば、いろいろな企業がむだに交際費を使っておるということからいいますと、もっと高い率で否認をしてもいいじゃないかということはわかるのでございますけれども、しかし、実は税務行政の第一線の執行の状況等とも勘案して考えますと、交際費の否認割合が高まってまいりますと、どうしてもいろいろ申告と調査との間のトラブルが高まっていくというようなこともございまして、私どもとしては、七五という率はかなり目一ぱいに近い率ではないかと思っております。  広告費につきましては、いろいろ御意見がございまして、これは何か少し抑制をすべきではないか。特に最近の消費需要抑制という見地からいたしますならば、広告費のようにどんどん物の消費を促進することに役立つ経費については、何らかの抑制が行なわれてしかるべきではないかということであったわけでございますが、いろいろの販売手段の中で、新聞とかテレビとかいうことを通ずる販路の拡大ということのほかに、他にいろいろな方法による販路の拡大方法がございます。そのいろいろの物を売るための販路の拡大の手段の中で、特に広告費、宣伝費というものが悪いものであるということの判定づけをすることがよろしいかどうかということには問題がありますのと、実は石油問題との関連で、むしろ電力節約とかそういう見地からも広告費を押えてはどうかという御主張が与野党を通じて非常にあったわけでございますけれども、また反面、現実問題として、新聞の紙の割り当てが減ったというようなことであるとか、テレビの放映時間が少しではありますが短くなったとか、それからネオンに対する電力制限ということを通じて、現実にすでに広告の抑制が税以外の方法でも進んでいるということもございまして、本来的に税で広告を抑制していくということには、テクニカルに相当無理があることも基本的にございますので、現在、紙の割り当てとか、そういういろいろな他の方法で現実に広告の抑制が進んでいる現段階においては、しばし見送ってどうかということになったわけでございます。  税制調査会におきましても、いろいろなことを論じました上に、最後に、「なお引続き具体的な検討を加える必要がある」という結論を出しておるわけでございまして、広告費課税は適当でないとか、やめたとか、やらぬほうがいいとかいうことではなくて、なお具体的に検討してみる必要があるという程度の答申になっておるわけでございます。
  23. 村岡兼造

    村岡委員 広告宣伝費あるいは交際費の課税について御意見を伺ったわけでございますが、私が先ほどから一貫して言うのは、いずれの問題についても、中小企業というものが非常に悪い状況にある。中小企業なんというものはほとんど広告もできない状況にある。大企業のほうはどんどん宣伝をして、それを物価に入れてやっておる。それから、交際費課税にも損金不算入制度というものがある。それからまた、税制調査会においても、特別措置法というものは弾力的に改廃をはかるべきであるという意見が毎年出されておるけれども、何らこれについて明確なあれがない。  中川政務次官が出席されましたので、時間も参りましたけれども、先ほど私が第一点にお願いしましたことは、今回の新潟やあるいは福島、山形、秋田、青森あるいは北海道、こういう地帯を襲った豪雪に対する税の減免あるいは徴収猶予、先ほど国税庁からお考えも聞きましたけれども、ひとつ特段の御配慮を願いたい。じわじわ来る災害、これをいままで国はある程度ほうっておいたのではないか。六カ月も経済活動が停滞をし、金融面、あらゆる面でいわば穴蔵の生活をしておる状況、これをひとつ国のほうでも非常に今後力こぶを入れて、税制の面からも対処していただきたい。  もう一点は、中小企業の税の軽減が今回はかられたことにはたいへん感謝をいたしますけれども中小企業の経営の内容なんというものは、七百万円か一千万円の所得をあげましても――先ほども申しましたが、実はこの利益をあげるために何とか銀行から借金も受けられる、信用もつく。したがって、七百万円か一千万円程度利益をあげたぐらいでは、給料面、福祉面退職金、そういうものを縮めてやっていかなきゃいけないというような状況なんで、中小企業に対する今後の税の軽減、この二点を特にお願いをいたしまして質問を終わりたい、こう思います。
  24. 中川一郎

    中川政府委員 御趣旨はごもっともであり、特に北海道は、私の選挙区ですが、豪雪被害は北見方面でもたいへんであります。東北、北陸方面の豪雪もことしはたいへんのようでございますので、執行面を通じてできるだけの措置をしたい。  また、中小企業対策については御指摘のとおりでございまして、広告税なども中小企業対策上の問題だと指摘された点は、私もかねがね考えておったところでございまして、先ほど局長が答弁いたしましたように、今後慎重に検討して善処してまいりたいと考えております。
  25. 村岡兼造

    村岡委員 以上で終わります。
  26. 松本十郎

    ○松本(十)委員長代理 塚田庄平君。
  27. 塚田庄平

    ○塚田委員 まず銀行局に、少額貯蓄のいわゆるマル優制度と称して利子についての非課税の制度があるわけで、今度この金額も上がってきておりますが、この扱いについて、私ども調べた範囲ではたいへん思わしくないことも起きておりますので、ちょっと御質問をしたいと思います。  この少額貯蓄の非課税ですが、これは税務署で一体具体的にどのようにチェックを進めておるか。と申しますのは、これは今度一人三百万ですかに上がるわけですね。いままで百五十万にきめられていたわけですが、高額所得者は幾つにも細分して、そして各銀行へ、あるいはそれぞれ方面を変えて非課税申告をするという事態等も出てきておりますので、これを一体どういう機構でどういうふうにチェックをしているかということについて伺いたい。これは国税の関係ですね。
  28. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいまお話のございました少額貯蓄非課税制度は、この制度が新しくできました昭和三十八年からもう十年ほどたっておるわけでございますが、ただいま御指摘のような問題もございまして、それからまた、税務署提出されております利用者、これは制度的には非課税貯蓄申告書の枚数でわかるわけでございますが、それが現在、一億三千万枚をこえているわけでございます。このようにたいへん膨大な数の申告書が提出されておりますので、国税当局がその全部にわたって悉皆調査をすることはおよそ不可能でございます。  そこで、適宜金融機関に臨場いたしまして調査をするなり、また調査だけではその効果を期待できませんので、源泉徴収事務につきましての指導を実施いたしまして、御指摘の問題の、具体的にはまず第一が限度額をオーバーしておるもの、そういう貯蓄は税制上の非課税の取り扱いはできないわけでございます。それからさらには、実際の納税者でない方の名前を使っておられる、架空の名義などによる不正もございますし、こういうような問題点を是正するように、鋭意努力しているわけでございます。
  29. 塚田庄平

    ○塚田委員 いまの答弁の中で、金融機関にも調査を進めるようにということですが、金融機関が本人であるかどうかということについて調査するには、これはたとえばいろいろな証拠書類――顔を見知ってはっきりしておるというのは別ですけれども、この申し込み書を銀行段階でチェックするものとしては、実際その住所におる本人であるかどうかについては年金の通帳とか、あるいはまた確実な郵便物等八項目にわたっていろいろ証拠書類を見て確かめるというような手だてはあるのですけれども、はたして本人か架空名義か――これが一番多いのだろうと思うのですけれども、架空名義でどこそこへやっているかどうかということは、いま銀行に依頼してとおっしゃいますけれども、これは銀行の能力ではたしてできる筋合いのものかどうかということなんです。つまり、何千枚、何千万枚集まってくる、これは税務署ではとてもできない、まず銀行でというようなやり方で、銀行でもこれはわからぬと思うのですよ。それからまた、実際、権限が国税庁と違ってないのですから、その点は一体どういうことになるのか、もう一ペん答弁してください。
  30. 田邊曻

    ○田邊説明員 この少額貯蓄非課税制度が具体的に適用される場合には、まず預金者が銀行に非課税貯蓄申告書というものを出さなければならないことになってございます。その段階で金融機関は、これは格別税の問題と申しますこともさることながら、当然、銀行業務の預金の受け入れでございますので、その住所、氏名の確認をされるわけでございますが、お話にもございますように、仮名で申告される場合のケース、これは受理してはいけないという法律の規定がございます。  それから、具体的に預金契約をされる場合は、またそのつど、その方が先に出されました申告書の名前と同じであるかどうかということを照合しなければならぬという規定にもなっております。これはいまお話しのように、いろいろな通帳とか手帳などによって確認されるわけでございますが、やはり制度の正しい執行が行なわれるためには、銀行側と税務官庁が相互に協力し合って、この制度をになっていかなければならないということが前提になっておるようでございます。
  31. 塚田庄平

    ○塚田委員 どうもさっぱり答弁がわからぬですが、たとえば、塚田庄平は第一勧銀に百五十万、富士銀行に百五十万、拓銀に百五十万、合わせて四百五十万、三つに分割した。だれが調べるのですか。どこでつかむのですか。
  32. 田邊曻

    ○田邊説明員 お話しの点は二つの問題がございまして、いま私が申し上げましたのは、あるAという銀行のその店舗の中での預金者の確認の問題でございます。それから、店舗が幾つかにまたがる場合、銀行が幾つかにまたがる場合、これは非課税貯蓄の種類が幾つかある場合でございます。これは先ほど私が御説明いたしましたように、ちょっと技術的なことになって恐縮でございますが、一番最初の段階で預金者から非課税貯蓄申告書というものが金融機関に出されますと、これには一定の限度、預入限度が記載されておりますが、それは金融機関の所在地の税務署長に対して翌月十日までに提出されることになっております。この提出されました申告書は、各納税者税務署へ移送されます。そこで、全国から各納税者税務署へ移送されましたそれぞれの種類の非課税貯蓄申告書は、税務当局が名寄せいたしまして、もしお話しのような点の不備がございますれば、是正するというような仕組みになっております。
  33. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、これは率直に言ってほしいのですが、先ほど一億三千万枚と言いましたね。いま一体それを精査する体制税務署はあるのかどうか。一億三千万枚一々これを照合しなければならぬわけですよ。そういう体制があるかどうか、そして実際やり切っておるかどうか。
  34. 田邊曻

    ○田邊説明員 約十年間で累積したものが一億三千万枚をこえておりまして、たいへん膨大な数字でございます。したがいまして、率直に申し上げまして、その名寄せにつきまして執行官庁が完全なる責任を果たすことは非常にむずかしいと思います。ただ、われわれが税務の調査をいたしますのは、すべて悉皆的に調査するというわけではございませんので、たとえばサンプル的にとか、ある地域を限るとか、ある年度を区切ってというふうにいたして監査を行なっておるわけでございますが、一番最初に申し上げましたように、この制度は、やはり貯金者、預金者と金融機関、さらにそれを取り巻く税務官庁、この三者がそれぞれの相互信頼のもとに仕組まれて、また運用されているというふうに理解されるわけでございまして、税務官庁の監査が悉皆的に行なわれ得るかどうか、またはこの監査の程度いかんによらず、この制度の運用が望ましい方向にいくことを期待するというふうにお答え申し上げたいと思います。
  35. 塚田庄平

    ○塚田委員 いま完全には行ない切れない。そこで、一つは、これで税務署員はたいへんなオーバー労働になっておる面があるわけですよ。毎日夜勤しながらやっておる。そこで、まず第一に体制を整える。つまり、この種の業務につく税務署員の人数をふやしていく。そうでなければ、結局、銀行にたいへんな負担をかけていくわけです。  たとえば、五年、六年たってこれは不適格だ、だめだ、だから税金を追徴しなさいといってきても、銀行では、もう五年、六年たちますと、解約あるいは住所不明といいますか、何べんも転勤してなかなか見つからぬ、こういうような点があって、これまた銀行員は、この処理にたいへんな手間をかけるわけです。  そこで、税務署はまず人員をふやしてその処理に万全を期すと同時に、これは高木さん、基本的には、マル優制度も金額を上げましたけれども、もう少し上げて、こういう手数をできるだけ省くような方法ができないものか。つまり、個人貯蓄が二百万、二百五十万と平均して上がっているのですから、これを五百万なら五百万という点にまず上げて、そしてそういう手数をできるだけ、たとえば半減するというようなことも考えられますし、あるいは少なくとも割り増しつき貯金よりもむしろ、過剰流動性の吸収といいますか、貯蓄を奨励する、集めるというような面では、非課税のほうがずっと効果があがるのではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  36. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回、非課税貯蓄の限度額を、各種の制度につきまして百五十万円から三百万円まで引き上げるという制度改正をお願いいたしますにつきましては、ただいま御指摘の点を実は相当研究をいたしたわけでございます。  問題は二つございまして、一つは、改正後の数字で申し上げますが、三百万という場合に、その三百万円はAならAという方が貯蓄をした全店舗を通じて、先ほど例としてあげられましたABCの銀行のすべての店舗を通じて三百万円という約束でございます。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、全店舗を通じて三百万円をこえているかいないかということは、これは御本人が銀行の窓口に見えたときに、銀行のほうから、他の店舗に預けておられる金額が幾らになっているか、同店舗にお預け願う金額が幾らであるか、合計して三百万円をこえるかこえないかということを一応チェックするたてまえになっておるのですが、預金者が他に預金を持っておるという事実を秘匿されますと、銀行のほうではそれはわからないということになっておりますので、それではどうもぐあいが悪いからということで、何らかの方法でこのチェックをする方法はないか。  たとえば、昨日社会党の広瀬先生からの御質問の中にありましたように、健康保険証を活用して、二重三重にそういう預金の設定が行なわれないようにチェックができないかということを研究いたしました。これは、実は銀行側でも、先ほど来塚田委員が御指摘のように、非常にこの問題でトラブルが起こっているものですから、そろそろ何とかしなければならぬということで、銀行サイドからもチェックの方法をくふうしたいということで、むしろ銀行サイドとしても積極的にそういう方法を税の上でとったらどうかということがありました。  また、税務署におきましても、ただいま御指摘のように、非常にいろんな意味で労働過重になりますし、また労働過重と申しましても、ある程度の調査をいたすにいたしましても、果てしないことでございますので、徹底した調査ができないという事情もありまして、そこで何とか根元のほうでチェックする方法はないか、チェックができれば、塚田委員御指摘のように、多少限度を思い切って上げてもいいのじゃないか、チェックができないままで限度を上げますと、非常に大口の方で悪意を持ってやられますと、利子については実行上全部非課税になってしまうということになりますので、それはぐあいが悪いものでございますから、チェックができるということを片一方において仕組みながら、片一方においてもっと思い切って上げてしまうこととしたらどうかということで、だいぶ検討いたしたのでございますが、実はまた別にネックがございました。  それは郵便貯金のほうで、郵便貯金では銀行におきますように貯金通帳によって預金のあり高を確認するという貯金方式よりは、小口の債券を売っていくという方法で行なわれる貯蓄のほうが圧倒的にボリュームが多いわけでございます。預金通帳方式でできますのであれば、最初に通帳を設定する際に何らかの方法で確認をいたしまして、たとえばきのう御指摘のような保険証書みたいなもので確認をしておけば、まあそう乱用は起こらぬということになるわけでございます。  つまり、その店舗とおつき合いの始まる一回目のときだけに確認すればいいのですからそれでよろしいわけですが、郵便局のほうは通帳方式でなくて、債券売却方式によるもののほうが圧倒的に多いものですから、そうしますと、言ってみれば、貯金のつど保険証書の提示を求めたり、それに預入額を何らかの形で記入したりということになってきまして、現在の証券方式によるところの貯金方式、郵貯事業の主体であるところのもの、これを実態的にはやめなければいかぬ。郵政省の貯金方式のほうも金融機関と同じように通帳方式に切りかえていくことにでもしないことには、うまく動かないということになってまいりました。  そういう事情になりまして、相当一生懸命各方面、各機関と昨年の夏以来交渉をいたしてまいったのでございますけれども、申しわけございませんけれども、ついに名案を発見するに至らずということで、今回の改正にあたりましては、非課税貯蓄の限度額確認方式を、従来方式から変更するという方法が見つかりませんでした。そのことがありまして、そうであれば、御指摘のように、あまりに限度額を上げますと、今度は高額資産家に何口にも分けられますと何ともならぬということになりますので、やはり憶病にならざるを得ない。  現在のやり方でも、マル優が三百万、郵政が三百万、別ワク国債が三百万、これだけで一人九百万でございますし、それに財形貯蓄を加えますと五百万それに乗りますので、まあそういうふうにうまく分散をして貯蓄をされるという方もないとは思いますけれども、それをうまく使うと千四百万まで非課税になる、こういう額でございますので、この千四百万という額は、ある意味からいいますとかなり大きな額になってくるのではないかということもありまして、まあまあ御指摘のような問題はありますけれども、百五十万を三百万にする、倍にするということはかなりの拡大であるということで、残念ながら基本的改正ができないまま終わったということでございます。  この点は、われわれ税の制度を扱います主税局の責任でございまして、今後とも金融機関なり、さらには郵政当局なりと何らかの新しい方法を発見するように努力は続けてまいりたいと思いますが、たとえば明年どうするとか、二、三年のうちにどうするとかいうような簡単な問題ではないようでございまして、何らかの方法で基本的に改善をはかりませんと、課税の公平という意味においても問題がありますし、金融機関及び税務署の労務の問題もございますし、じんぜん放置はできない問題だということは承知をいたしております。
  37. 塚田庄平

    ○塚田委員 国税当局と銀行との関係ですけれども、私ども調べたり聞いている範囲では、払い戻しの税金ですね、いろいろ取れないというので、銀行が一括して、たとえば一支店年間二十ないし三十万、それをむしろ税務署の方が強要している。あまり多くても困るし、あまり少なくても困る、まあ一支店二十ないし三十万つかみで持っていっているというようなうわさもいろいろ出てきているわけです。おそらくこれは、一行にすれば一千数百万あるいは二千数百万にのぼってくるのではないか。どうもそれができない、そうかといって幾らか実績をあげなければならない、多くてもだめだからまあ二十ないし三十万、しかし、これでも一行にするとたいへんなあれなんです。局長、そういう実態を知っていますか。
  38. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 金融機関と税務当局の間で紛争といいますと大げさですが、ある問題でございましょう。一つには、金融機関自身の手落ちで起こった部分というのもかなり中に入っておるようでございます。先ほど御指摘のようなことでほんとうに確認しているかどうかということについては、たとえば金融機関は、預金を受けたときには、ありがとうございますという手紙を出すようにやっております。それが先方に着かない場合には架空名義であるというような形でのやり方も指導しており、それにいたしましても、実際問題としてはなかなか確認できないという問題があります。  預金者の方がいなくなったという相手方の事情によります場合と、それから金融機関自身でやはりもう少し慎重に調べるべきであった、あるいは手続を厳正にすべきであったという部分が混在しておりまして、常に国税庁と私ども一緒になっていろいろ御相談をしておるというような問題でございまして、御指摘のような問題があるということは承知しております。
  39. 塚田庄平

    ○塚田委員 最後に、これは要望というか希望として、その点は非常にオーバーになっていることも事実ですけれども、反面、また国税庁のほうでは、国民背番号というか、いま健康保険手帳といいましたか、そういうことで、べたべたみんなに判を押して、あらゆる書類をコンピューターで処理するなんというようなことのないように、これはひとつ私どものきつい意見として申し上げますが、しかし、事務的にそういう繁雑なことで、銀行は、夜の十時、十一時までこの処理に毎日かかっておるというような事態なんですね。だから、その辺は国税庁のほうでも十分人をふやして、いやしくも銀行従業員に迷惑をかけるようなことのないように注意していただきたい、これは希望です。  さて、今度、税制三法の改正がありましたが、特にこの際、法人税と特別措置についてお伺いしたいと思います。今度の改正をした基本的な目標というか、方向というか、あるいは意図というか、その辺についてまず局長のほうから御答弁願いたいと思います。
  40. 高木文雄

    高木(文)政府委員 戦後のわが国の経済復興政策といたしましては、まず第一に、焼け野原から立ち直るという時代から国際社会に乗り出すという時代を通じまして、産業の競争力を強めるという政策がとられてきたわけでございます。それは、税制におきましても、金融におきましても、その他の面におきましても、いろいろとられたわけでございますが、税制におきましては、意識するとしないとにかかわらず、やはり法人税率のきめ方なり課税標準のきめ方なりと申しますものは、具体的には租税特別措置法あり方なりを通じて、産業にかなり配慮を加えた税制がとられてきたわけでございます。  これは、しかし、今日のように日本の経済がかなりの競争力を持つに至りました段階におきましては、この辺で終止符を打つといいますか、転換をはからなければならぬ時代が来たと思われるわけでございまして、昭和四十五年度に三五%の法人税率がその五%だけ加算されることになりました当時から、その後四十八年度までにかけまして、当委員会の御審議等の関係もあり、いろいろと租税特別措置の整理合理化を特に産業を中心に進められてきたわけでございますけれども、なお現行制度のもとにおきましては、諸外国の場合に比べまして、法人税負担は低いのではないかというふうに考えられます。  そのことは、昭和四十六年の八月に行なわれました税制調査会の長期答申におきましても、明確に示されているところでございますが、この長期答申が出されるのにつきましては、かなり各界の専門家の方に、税制調査会の委員以外に専門委員として審議に参加していただき、そして研究の結果、そういう結論に到達したわけでございまして、自来、税制調査会等からも、すみやかに税負担をまず国際水準並みにすべきであるということで、法人になお税負担を求めてはどうかという意見が出されてきたわけでございます。  しかしながら、時たまたま通貨の改定問題に当たっておりました。四十六年の八月の答申のわずか二週問後に、いわゆるニクソンショックというようなことが起こりました。そこで、戦後ずっと続いてまいりました三百六十円水準というものを続けていくことができなくなりまして、それがわが国産業に与える影響が非常に大きい、企業がつぶれるのではないかというような問題が起こってまいりましたために、当時そのことを心配をいたしまして、見送ったわけでございます。しかし、スミソニアン体制後、また昨年の春の三百八円ベースからの離脱を経ましても、なおわが国の産業は相当強靭な国際競争力を持っているということも証明されましたので、この際、国際水準に合わすべきであるというふうに踏み切ることにいたしたのでございます。  その国際水準というのはどういうことかといいますと、法人税地方税、これは道府県民税、市町村民税、事業税、いずれにいたしましても、法人所得に課税されますところの税を全部合わせてみました水準を大体五〇%くらいにしようということでございます。アメリカは、普通税と付加税と州の法人税、州の法人税は州によって違いがございますけれも、大体五二%くらいになっておりますし、イギリスが五〇%になっておりますし、西ドイツが四九%、これまた新しい改定案ではさらに引き上げることが考えられております。またフランスがちょうど五〇%になっております。そういうようなことを考えあわせまして、日本の法人所得にかかる税負担を五〇%くらいにしてはどうかというのが今度の改定の目安でございます。  なお、その場合に、御存じのように、日本の法人税は留保についての税金と配当についての税金が変わっております。配当軽課税制がございます。そこで配当軽課、所得のうち配当に充てられる部分が三割であろうということで計算した場合の税負担を、大体五〇にするということでいたしております。  今回の改正で、法人税の基本税率を四〇にいたし、それから道府県民税及び市町村民税の税率を一七・三にいたしました。そういたしますと、配当が三割でありました場合の実効税負担は、現行制度の四五・〇四から四九・四七に上がります。これによりまして、まあ五〇ということになるかということでございます。これが今回の法人税率の引き上げの基本的な考え方でございます。
  41. 塚田庄平

    ○塚田委員 四九・四七というのは、これに租特の関係を加味した場合の実効税率は、今度の税制改正でどのくらいになる見込みになっておりますか。
  42. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは要するに課税標準をどう見るかということでございますが、私が申し上げましたのは、現行の課税標準、租税特別措置法を含めました課税標準を前提に考えておるわけでございまして、その租税特別措置によりますところの軽減額がどのくらいになっておるかということにつきましては、別途昨年も資料を提出いたしましたが、先ほど申しました四九・四七の中に占めますところの法人税だけの部分、四九・四七は地方税事業税を含めて四九・四七でございますので、その法人税だけの部分を理論計算上算出いたしますと三三・〇四になるわけでございますが、現在の実際の率はそれが実は配当と留保の関係が三割で計算した場合でございますが、これは実態はもう少し配当のほうが少ないというような問題がございまして、そこのところは少し数字がややこしいので、別途資料をもって御説明いたしますけれども、大体四十六年度では租税特別措置なかりせばの率が三四ぐらいになるはずのところが、いま三二ぐらいに下がっているわけです。約二%、準備金、特別控除によって全法人の平均では、昨年当委員会に出しました資料では三四・一から三二・一に下がっているということでございますから、租税特別措置による軽減総額は二%というぐらいになるかと思います。これは全然別の見地から出しておりますから、先ほどの四九・四七が二%下がっていると見ていいかどうか、そこは非常に問題のところでございますけれども、まあまあしかし大体の感じといたしましては、そう大きな食い違いはないということであろうかと思います。
  43. 塚田庄平

    ○塚田委員 それでは資料の問題、私ども実はことしは、いまこうして質問するこの瞬間まで租税特別措置による減収調べの資料をまだ手にしていないのですよ。これはおそらく予算資料として当然提出しなければならぬいわば重要資料で、毎年われわれはこの三法審議の際にはすでに手に入って、いろいろと調査の資料になっていくのですが、どうしてことしはもうすでに質問に入っておるのにこれが出てこないのですか。
  44. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は非常に恐縮に存じております。実は私、昨晩最終的に目を通しまして、ここにプリントを持っておりますが、大体算定を終わったところでございまして、けさ印刷のほうに回しました。来週の月曜日ぐらいまでには予算委員会及び当委員会に御提出申し上げるつもりでございます。  昨年度の数字が、御記憶かと思いますが、租税特別措置による減収額試算、四十八年度分四千六百四十五億という数字でございましたが、それが四十九年度は五千二百億になるということでよろしかろうかということで、昨晩おそくまで作業をいたしまして、大体そういう数字でございます。申しわけございませんが、月曜日までには必ず配付をいたすように手配をいたします。
  45. 塚田庄平

    ○塚田委員 それでは、私おそらくこの調子ですと、質問も午後に入ると思いますので、それをコピーして直ちに出してください。いいですね。それはもう成案でしょう。
  46. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実はちょっと大臣の決裁とか何とかそういう手続が残っておりますので、きょうはちょっとごかんべんいただきたいと思います。
  47. 塚田庄平

    ○塚田委員 手続があってなかなか出せないと言うのですが、これは私はやはり怠慢だと思うのですよ。予算委員会ももう分科会に入っているのでしょう。しかも、きょう、あすで終わるのでしょう。予算委員会に提出すべき重要な資料を、いまこの段階で決裁も得てないというのは私は怠慢だと思うのですね。どうですか、来年度以降もこういう調子で出ないのですかな。
  48. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはそうではないのでございます。実は弁解がましくなりますけれども、減収額というのは理論値でございますので、たとえば一例をあげますと、社会保険診療報酬による減収額が幾らに出るかという場合に、所得税税率が変わりますと、上積み税率影響がどうあるかということでございます。つまり、七二%で幾ら軽減されるかということを計算します場合に、お医者さんの所得所得分布を考えまして、その考えました所得分布と、それから七二で切った場合に所得階層別にどういうことになるかという計算をやりまして、そうしてお医者さんのその軽減されます所得に対応する適用税率が平均的に幾らであるかというような問題があります。  そこで、税率が変わりますといろいろやらなければならない計算がございまして、いまは所得税の例で申し上げましたけれども、本年は所得税のほうも税率を変えましたし、法人税のほうも税率が変わってまいりましたものですから、そういういろいろの計算をやりますのに、通常の年よりは特に時間もかかるというような事情もございましておくれたわけでございます。結果としておくれておるのであるから怠慢であると言われればおわびを申し上げますが、ただじんぜん日を送っていたわけではなくて、そういう意味でございますので、いつもそれだけ時間がかかるということではないわけでございまして、その年その年の事情によりますけれども、本年度としては特別にそういう事情があったことも御了解いただきたいと思います。
  49. 塚田庄平

    ○塚田委員 予算委員会に出すべき重要な資料なのですから、来年度からはとにかく予算審議に間に合うように、その種資料は作成を急ぐべきだという希望をひとつ述べておきたいと思います。
  50. 高木文雄

    高木(文)政府委員 とくとそのように心得ます。
  51. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、特別措置による減収見込みというのは毎年、今回のようにおくれますけれども出てくるのですが、減収見込みは出てくるけれども、たとえばことしはもう四十七年度の決算が終わっておるのですけれども、一体現実に帳じりはどうなったのか、こういうことはわれわれに知らされたためしがないわけですよ。見込みだけは出てきて、一体、減収決算はどういうふうになってきているのか――最近のようにどんどんと自然増収と称するものがふえてきておるという状態の中で、租税特別措置法による減収というのは一体どういう役割りを具体的に演じたのか、こういう点がわれわれにはさっぱり知らされていないのですよ。そういうことはどうでしょうかね。
  52. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点につきましては、四十六年度、四十七年度の税制改正の御審議を通じまして非常に強く御要求がございました。昨年からその種の計算をすることにいたしまして、昨年初めて、四十六年度におきますところの租税特別措置による軽減状況の表を作成をいたしまして、配布さしていただいたわけでございます。それで、昨年はそれを提出いたしますのがとうとう八月になってしまったわけでございますが、ことしはだいぶなれてまいりましたので、現在すでにその作業をほぼ完了をいたしております。四十七年度の法人負担状況は、国税庁のほうの法人企業実態というものの統計ができてまいりましたから、それを集計しておるところでございます。  なお、具体的に、法人企業の引き当て金、準備金、特別償却等の四十七年度の利用状況等は、すでに提出いたしておるそうでございます。貸し倒れ引き当て金残高が幾ら、退職給与引き当て金残高が幾ら、賞与引き当て金残高が幾ら、価格変動準備金残高、海外市場開拓準備金残高、海外投資損失準備金残高、特別及び割り増し償却の実施額、これだけの表はすでに御提出済みだそうでございますが、先ほど御指摘がありましたように、全体としてどういうふうなメリットがあったか、結果的に租税特別措置でどの程度軽減率になっておるかという表は、これも近々のうちにお出しできる状態になっております。
  53. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、実効税率の問題に移っていきたいと思いますが、高木さんは高木文雄名義で、これは東洋経済ですか、昨年の十月、「正しい法人税論議のために」ということで、局長の肩書きで、実は一つの試算といいますかが出たわけですけれども、この試算自体についてこれからいろいろ議論を進めていきたいと思いますが、高木さん、自分の書いたものを持ってきていますか。
  54. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いま持っておりませんが、数字はここにございます。
  55. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、その方式で今後の実効税率を出した場合にどうなるかということを試算したことがありますか。
  56. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四九・四七という数字、四五・〇四という現行の実効税率、これは表面税率ではありませんが、理論値であることは理論値でございます。四五・〇四から四九・四七へ上がるということを考えておるわけでございます。それは地方税事業税を含めて全部でございます。その場合に法人税がその中で幾らになるかというのは三三・〇四になるわけでございますが、私がその御指摘の印刷物に書きましたのは、四五・〇四から四九・四七に上がるといううちの、そこに書きましたのは法人税だけでございますから、二九・九三から三三・〇四に上がるはずでございます。この二九・九三と三三・〇四の上げ幅は約一割になりますから、そのお手元の中の表のありますところの所得金額と法人税額の割合の総平均三四・一というものも大体一割上がるはずである、理論的にはそういうことになるかと思います。
  57. 塚田庄平

    ○塚田委員 全体的に一割上がるのですね。  そこで、この法人税負担割合の算出のしかたなんですけれども、この資料によれば、A分のB段階で三四・一%、これと現行の法人税率三六・七五%の差は、これは主として、いろいろほかの要素もありますけれども租税特別措置による配当軽課率が作用しておる、こう断定していいでしょうか。
  58. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘のとおりでございまして、この三四・一というのは、三六・七五という率とそれから二六という率の混合の結果出てきている率でございますから、もし配当軽課税率制度がなければ、この三四・一という数字は三六・七五という数字に非常に近づくわけでございます。  御参考までに申し上げますが、理論値で申しますと、改正前では配当がない場合は全部三六・七五がかかります。配当が一〇%入ってまいりますと三五・六八に下がる。配当が二割ありますと三四・六〇に下がる。三割ありますと三三・五三に下がるということでございます。この表にあります三四・一という率がございますのは、いま読み上げました一〇%の三五・六八と二〇%の三四・六〇の間にありますから、つまり配当割合が一九とか――失礼いたしました。二割の場合に三四・六〇で、三割の場合に三三・五三でございますが、実績値は三四・一になっておるということは、二割のちょっと上のところに配当割合がある。つまり二割一分ぐらいのところに配当割合があるということを示しているものというふうに御理解いただいてけっこうであります。
  59. 塚田庄平

    ○塚田委員 あまり数字のこまかいことをがたがた言ってもあれですから、つまり三六・七五と三四・一との差二・八五というのは、全く特別措置による軽減措置だ、こう考えていいのですね。二・六五%は三六・七五と三四・一%の差なんですから、その差はまるっきり特別措置による軽減措置だと……。
  60. 高木文雄

    高木(文)政府委員 三四・一と三六・七五の差は、先ほど配当軽課の影響だけであるというふうに申し上げましたが、それはちょっと誤りでありまして、例の資本金一億円未満の法人軽減税率二八も働いた結果でございますから、三六・七五と三四・一の差は配当軽課部分と、それから資本金一億円未満の法人の三百万円以下の所得についての部分の影響が混在しております。その左の欄の三四・四という率、さらにその左の欄の三五・〇という率は、これはいずれも資本金一億円以上の法人のものでございますから、これと三六・七五の差は全部配当軽課でございます。それからいま御質問がありました三二・一と三四・一との間のこの開きは、ここにあります準備金、特別償却、技術等海外所得特別控除、試験研究費の税額控除の影響でございます。
  61. 塚田庄平

    ○塚田委員 その際、高木試算では、交際費の損金不算入を入れていますね。これをGとして入れているわけですが、この損金不算入というのは増額措置なんですから、軽減だけを見る場合には、これを除外するというのがたてまえだと思うのですが、どうでしょうか。
  62. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そのとおりでございまして、したがって、そういう見地でものを見ていただく方には、このややこしい表の(B-F)/(A+C+D+E)の欄、つまり、いまおっしゃいました三二・一の率を見ていただけばよろしいわけでございます。ただ一方から申しますと、交際費は社外流出をしておることだけは間違いないわけでございますから、そういう意味において、普通の法人税とはやや趣を異にいたしまして、若干罰則的な意味の税だというようなこともいえるわけでありまして、企業会計上、あくまで交際費は全部損金でございますから、そういう意味でその部分はやはり別に見るべきだという意見も当然出てくるわけでございますし、さればこそ私どもは、交際費の損金不算入の問題は租税特別措置として扱っておるのでございまして、法人税として扱っているわけでないのでございます。  ですから、そういう二つの見方がございますから、その論議を避ける意味で二段掛けにしたということで、御主張のようなことであれば、この三二・一のほうを見ていただけばよろしゅうございますし、交際費まで含めたところで見ようということであるならば三三・三のほうを見ていただく。それはそれぞれのものの見方といいますか、見解によってどちらを見ていただいてもよろしいということになるわけでございます。
  63. 塚田庄平

    ○塚田委員 これもこまかい数字ですから何ですが、しかし、特別措置であることは私ども認めておるのですよ。しかし、ただこれは特別の増ワク額なんですから、これは軽減を見る場合には当然除外して計算していいものだというようにわれわれは考えておるんです。これは見解の相違ですから、その点はひとつ……。  そこで、このようにして特別措置でどんどんと実効税率が下がっていっているということですが、その際、私はこれからいろいろと具体的に聞きたいのですが、高木局長意見の中で傾聴すべきものが一つあると思うのです。実効税率、まあこの際実効負担と言いますが、実効負担の試算にあたっては、貸し倒れ引き当て金や退職給与引き当て金、これは考慮の外に置かれておる、それはそのとおりですね。これらの引き当て金は債務性が強いからだという理由を付しておるわけですよ。  そこで、たしかこの前同僚議員の阿部さんからの質問もあったかと思いますが、あとで具体的に聞きますが、貸し倒れ引き当て金、退職引き当て金、これは退職したら払わなければならぬのですから、貸し倒れしたらそれだけ損失になるんですから、確かに債務性はありますけれども、しかし、実際引き当て金として積まれておる金は、たとえば銀行では一〇〇%である。これは一般は五〇%ですけれども銀行では経理基準というのがあって一〇〇%満度、つまり、全員退職するということを予想しての引き当てをやっておる。あるいは貸し倒れ引き当て金等については、われわれの調査したところでは、まあこれは大蔵省も認めているんだろうと思いますが、銀行の占める率は金額で四五%もあるわけですね。ところが、銀行というのは、法律のたてまえからいっても、貸し倒れとかなんかについてはあまりないランクに入っているわけですよ。一番多いのは卸売り、小売りです。これは物品の売買をやりますから貸し倒れがありますね。その次は製造業です。これは新日鉄のようなああいう物を製造しておるところですよ。その他の項目に、実は銀行がぽつっと入っているわけですね。ところが、そのその他の項目の銀行が、全部の貸し倒れ引き当て金の四五%を占める。しかも銀行はどうかというと、まず貸すときには担保を取りますね。ここで言いたくないが、歩積み両建てと称して、どんなことがあっても絶対に貸し倒れのないような方式を現実に行なっておる。  それで、あなたはこのあとでこう言っていますね。確かにこれは考慮の外にあるけれども、経験値からいってこれはどうもおかしいと思うものについては、まあ検討するということばはないのですが、これは非常に疑問だということをあなた自体が投げかけているわけですね。その点については、またあとで具体的に質問をしていきたいと思うのですけれども、どうですか、こういう実態。
  64. 高木文雄

    高木(文)政府委員 銀行局長おりますので、あるいは別の見解を持っているかもしれませんが、私ども税の立場といたしましては、貸し倒れ引き当て金という制度は引き当て金としてりっぱなものである。債務性のあるものであると思いますけれども、その引き当て率が幾らであるべきかということについては、現在の引き当て率が非常によろしいというふうにはなかなか考えられないわけでございまして、それは検討に値するというふうに考えております。  それで、今回、ささやかながら貸し倒れ引き当て金の引き当て率を引き下げることに予定をいたしておるのでございまして、これは法律事項ではなくて政令事項でございますけれども、現在の貸し倒れ引き当て金の率は、普通銀行が貸し金の千分の十二になっております。これは二年前に千分の十五から十二に落としたものでございますが、今回の法律改正と同時に政令改正を行ないまして、千分の十二から千分の十に引き下げることを予定をいたし、それを前提として予算その他を編成いたしております。千分の十という率でありましても、実績率との間にはなお相当の乖離があるわけでございますけれども、これはやはりショックの緩和ということもありますので、漸次実情に合わしていくべきであろうという見地でございます。そういう意味で、塚田委員御指摘貸し倒れ引き当て金の引き当て率が適当でないではないかという点については、私も同感でございます。
  65. 塚田庄平

    ○塚田委員 それで、高木さん、いま言った貸し倒れ引き当て金について、たとえば銀行の場合は、引き当て金の全体額で四五%を占める。それでさっき言ったとおり、償却ということになると、これはたいへん低いわけですね。率でいいますと〇・〇〇二%、これは百分のですよ。なるほどこれは地方銀行、相互銀行あるいは信用金庫ということになりますと、少しずつでありますけれども償却率は高くなっていきます。まあ端的に言うと信託はゼロですね。ない。貸し倒れ償却はない。現実に、ほんとうにごく例外を除いてはない。こういう制度になっておるわけですね。だから千分の十といっても、私はこういった――これはあとでいろいろほかの大企業の面との関連でも聞きたいと思いますが、銀行にこの制度をつくるという意味はあまりないんじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  66. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実はいつも当委員会でその御議論が展開されるわけでございます。千分の十という率と十万分の二という率はあまりにもかけ離れてるんではないかという御議論があるわけでございますが、私は実はそこはちょっと異論があるのでございます。その二つの率を対比すべきかどうかは、ちょっと異論があるのでございます。  と申しますのは、千分の十というのは、何といいますか貸し金の残高に対する率でございます。それで、金融機関の貸し倒れということを考えます場合に、金融機関が倒れたらたいへんでございますから、貸し倒れに対して十分担保がなければならぬ、預金者保護の見地からいったら十分担保がなければいかぬわけで、それがどういう状態のときに出るかと申しますと、毎年毎年平均的に出てくる率は十万分の二というような低い率かもしれませんが、これは要するに、金融恐慌とかなんとかいう場合も、ある程度、大なり小なりそういう場合のことも頭に置きながら考えておかなければならぬわけでございますから、そういう年々起こります平均的な率が非常に低いということと、それから、それと比べて乖離があるということだけではちょっと結論に結びつけがたい。  それで、いまの千分の十二を千分の十にカットいたします際に、ではどこまでいけばよろしいのかということを何か発見しなければならぬということなんでございますけれども、実はそこはまだ銀行局との間でも意見は詰まっておりません。諸外国におきます会計上のいろいろな扱い、さらに税務上の扱い等におきましても、やはり金融機関の安全性というものがだんだん高まってまいりました関係で、アメリカ等におきましても、アメリカの税法でも貸し倒れ引き当て金の率を下げるということが行なわれることになりましたけれども、しかし、やはり多かれ少なかれ日本の千分の十というような率とほぼ似たようなところを前後して、多少削るというか減すというか、そういうことをやっておるわけでございまして、実績貸し倒れ率と結びつけて率を訂正するということだけではないようでございます。  この問題は、しかし金額も非常に大きい問題でございますし、一方におきまして金融機関の安全性、預金者の保護ということは絶対忘れられないことでもございますので、その両方から詰め合わせていく必要がある。二回にわたり、千分の十五から千分の十二に落とし、さらに千分の十に落としましたけれども、どんどん落としていっていいというものでもないのでございましょうし、さりとて何かしかるべき、この辺ならば妥当であるというところを見つけなければならぬという問題であろうかと思っております。
  67. 塚田庄平

    ○塚田委員 あと価格変動準備金等の関係でもいろいろお話ししたいと思いますが、私はこれはやめなさいと言うのですよ、やめなさいと。やめなさいと言っても、全部積むなと言ってはたいへんだろうと思うのですが、いま超過利得税その他いろいろやっていますね。つまり大企業銀行も含めて利得を何とか吸収していく。一年なり二年なりこの税制上の優遇措置、引き当て金をやれば、損金で落とすのですから、それは取り戻しはやりますよ、だけれども、とにかく当該年度は損金で落とすのですから、これはばく大な優遇措置ですよ、しかも、それはただ積んでおくだけでしょう。実際に償却はない。ゼロにひとしい。こういうことを各準備金についてもずっとやっているわけです。これをもし一年なり二年なりやめれば、利得税と同じ効果をあらわすと思うのですがね。特にいまの場合は銀行に限定して言いますが、局長、これは一般であれば、たとえば千分の十五から十二、十二から十に落としたという場合には、次期からはそれに従って直ちに引き当て金は下がってくるわけですね。どうですか。
  68. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは経過措置との関連で御説明しなければならぬわけでございますが、千分の十五から千分の十二に下がるということは約三割ほど下がるわけでございますから、預金、貸し金の額が三割程度伸びなければ前の水準のままとまっておる、こういうことでございます。ですから、千分の十五から千分の十二に下げました過程におきましては、しばらくとまっておったわけでございます、これは二年前から今日まで。しかし、貸し金の伸びが三割か何かを今度は越え出しますと、また新しく積めるようになるわけでございます。ですから、現実に申しますと、各金融機関ごとに事情は違いますけれども昭和四十八年の九月期くらいからぼつぼつまた積み始め得る状態になってきております。今度また千分の十二から十に下げますと、これは四十九年の九月期決算から適用になりますから、四十九年の九月期決算からはまた貸し倒れ引き当て金を事実上積めない、約二割、三割ほど、十二分の十ですから二割五分ですか、貸し金が伸びるまでの期間は積めない、こういうことになるわけでございます。  それで問題は、一番肝心のこの三月期は積めるじゃないかという問題が出てくるわけでございます。そこはまあ税法の安定性の問題でございまして、二年前に税制改正をする際にお約束をして、同時に政令を直したという経過がございますので、それを二年になるか三年になるか、三割くらい貸し金がふえる間は積めないんだということで、ずっとそういう頭で金融機関の経理その他動いてきているわけでございますので、それを途中の段階で、何といいますか、足払いみたいなことになるものでございますから、それはやはり安定性の見地からやむを得ぬ、しかし、今後どんどん積めるという状態はおかしいからということで、十二を十に切った、こういうことでございます。  価格変動準備金につきましても似たようなことがございます。これは四十八年度の税制改正で百分の六のものを百分の五にする……(塚田委員「それはいいですよ、変動準備金はあとで」と呼ぶ)
  69. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      ――――◇―――――    午後二時八分開議
  70. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。塚田庄平君。
  71. 塚田庄平

    ○塚田委員 今度の税率改正で、法人税は留保分四〇%、配当分については三〇%を経過措置で今年度は二八%。そこで、ことしは思い切って三〇%にしないで、二八%にしたのはどういう理由か。
  72. 高木文雄

    高木(文)政府委員 原則は大体基本税率の四分の三ぐらいのところに定めたらどうであろうかという考え方でございます。  この制度ができましたのは三十年前後でございましたが、その当時の基本税率は三八でございました。三八のときに二八であったわけでございます。初めて配当軽課税制というものをつくりましたときに、奨励措置として大体四分の一ぐらい基本税率よりも下げておこうということであったわけでございます。その後、基本税率が三八から三五に下がります段階で、あるときは下げ、あるときはそのままという経過を経て二六まで下がっていったわけでございます。  そこで、今回の法人税制の改正につきましては、法人税の仕組みを変えたらどうかということも検討いたしました結果、それはやらないで、全体として水準を上げよう、それには三六・七五を約一割上げるということで、平均的にすっと上げるということにしてはどうかという基本的な考えでございます。  その場合に、実は経過時の税率を置きました理由というお尋ねでございますが、企業の中で配当軽課税率適用を受けている企業とそうでない企業とがございます。たとえば、損害保険会社でありますとか銀行でありますとか、あるいは証券会社とかいうところは、これは受け取り配当がたくさんございます関係もありまして、配当軽課税率適用がないということでございます。  ところが、私鉄とか化学とか電力とかいう企業、言ってみれば施設、設備に巨大な投資を必要とする企業の場合には、どうしても資金調達が必要である。公社債を発行するについても、資本金との倍率の関係がありますものですから、資本金をふやさなければならぬということになりますので、電力、化学、私鉄、さらには製鉄といったような企業の場合には、資本をどうしても大きくしなければならぬ。そういうところの場合には、資本が大きいから、よってもって所得のうち配当に回すべきものが大きくなります。そこで、電力は御存じのとおり、いま非常に経営が困難になっております。今度の石油問題以前において、すでに経営が困難になっております。私鉄も値上げを迫られるというような状況になっております。  そこで、そういう非常に固定資本、固定設備の多くを要しますところの企業については、配当軽課税率を上げますと、そのショックが非常に大きいわけでございます。そういう点から、配当軽課税率据え置き論というのが、今度の改正の論議を続けております際に、政府の調査会等においても論議されました。なるほど、電力なり私鉄なりについては、税金が高くなりますれば、その分だけある程度料金値上げ圧力が加わるという問題があります。そうかといって、現在、配当軽課税率を上げないというわけにもまいらぬだろうということで、その両方をにらみ合わせた一種の妥協ということで、配当軽課税率はあるべき姿のとおり二六から三〇に上げるけれども、やはり急激なショックを避けるべしという趣旨で、中間の段階で一年だけ置いておこうということになったわけでございます。  理論的には、私どもも、本来ならばこういう経過時の税率があることは望ましくないと思いますけれども、現実に電力の問題や私鉄の問題を考えますと、公共料金として問題がある企業でございますので、たとえ石油の問題がなくとも、やはりそういう問題については若干の配意があってしかるべきではないかということが問題になりまして、そういう点から経過時の税率を置きました。経過時の税率を置きますれば、その期間中に企業もいろいろな形で対応していくことができるだろう。税が変わったことが料金改定への引き金になるというような芳しくない批判を受けなくとも済むだろうというようなことでございます。  以上が経過時の税率を置きました理由でございます。
  73. 塚田庄平

    ○塚田委員 この軽課税率についてはいろいろ従来とも議論のあるところで、こういう配当についての軽課措置をとるのは、配当性向の高いそういう法人に対しての優遇措置ではないかというような議論等もあって、一部にはこういうのを廃止したらどうかということが年々いわれてきたと思うのですね。特に最近の状況を見ますと、大法人、大商社等の利益率というのは、おそらく三月決算では相当上がってくるだろう。ここでつかまなければというような情勢の中で、超過利得税等もみんな考えられているさなかで、私は、三〇%に上げたならば、むしろこの一年間の二八%の暫定措置というか経過措置というか、こういう措置をとらないでやるべきではないか、せっかくの政府の処置も、この経過措置の中で二%削減されておるというのは、こういう情勢ではむしろ手ぬるいんじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  74. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そこは実は非常にむずかしいところでございまして、私ども税の立場といたしますと、基本税率と配当軽課税率と二本立てになっておることは、言ってみれば、やや中途はんぱな税制であるという感じがするわけでございまして、現行の配当軽課税制については、-塚田委員御指摘のように、相当問題があると考えております。  しかしながら、別の角度からいたしますと、最近の十年をとらまえてみましても、今日なお自己資本の率は下がってきております。製造業なり卸売り業なりの借り入れ金比率が上がってきております。このことは、いろいろな意味で望ましいことではないのではないか。まあ戦前のように高い自己資本率まで戻らなくてもよろしいかもしれませんが、あまりにも自己資本率が低過ぎる。たとえばいまから七、八年前の昭和四十年代、四十年の初めぐらいでも自己資本率は大体二一%ぐらいでございましたのが、最近では一五%近くまで下がってきております。諸外国とは全く比較のしようがない状態でございます。それを考えますと、自己資本をやはり何かの形でふやすことが望ましいということは理解できるわけでありまして、そのことは昨日でしたか、数日前に申し上げましたように、やはり産業金融あり方が、直接金融へもう少し移るほうがよろしいのではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう産業構造論のほうから申しますと、あながち配当軽課制度が悪いということも言えないわけでございまして、各方面の御意見の中には、現在の配当軽課制度からさらに一歩を進めまし又極端にいえば配当損金制度にしてはどうか。借り入れ金利の場合はこれが損金になるが、配当負担については損金にならないというところから、企業がどうしても自己資本充実のための努力を怠るということがあるんだから、思い切って配当を損金算入にしたらどうかという議論があるくらいでございます。  そこで、この問題は今後とも研究していかなければならないということで、当委員会でしばしば御答弁申し上げておりますように、本年春にでも税制調査会に特別部会を設けて、こういった法人税制のあり方について検討しようということが税制調査会の答申でございました。それで、ある程度の結論が出ますまでは右にも左にもいかない、現状のままでいこう。そこで、その率のあり方は、配当軽課制度を導入した制度の当初に戻って四分の一ぐらいの軽課にしておこう、こういうことになったわけでございます。  ただ、その場合に、なぜ四十九年度は三〇にしないで二八の二%にしたかということについては、これはあまり理論的にそうあるべしということではないわけでございまして、いま申し上げました意味での激変緩和、特に資本金の大きい企業であり、基幹産業である私鉄や化学や電力や、場合によりましたならば製鉄といったような企業のショックを緩和するということであったわけでございます。  確かに、その論議がありました際には、若干物価問題が起こってきてはおったわけでございますけれども、今日ほどいわば狂乱物価であるとか、水ぶくれであるとか、大企業が価格を上げ過ぎているとかいうような議論は、昨年の暮れにはまだそれほど激しく起こっておりませんでしたものですから、そういう時点での論議といたしましては、こういう経済情勢を踏まえてであればその二%論議もあるいは変わっていったことがあるかもしれませんけれども、しかし、その当時はむしろそれよりはショック緩和ということに重点を置かれた議論になったわけでございます。  それにいたしましても、一年間だけの経過措置でございますから、私どもといたしましても、来年になりますれば安定した姿になるということで、税制にとってそれほど致命的な経過措置ではないというふうに理解をいたしたわけでございます。
  75. 塚田庄平

    ○塚田委員 いま激変緩和ということばがありましたが、この法律の制定当時は、今日のような狂乱物価というような事態は予想していなかった、そこで、激変緩和というのは、つまり二六から三〇に上げる、これはあまりにも激変だ、それを緩和するという意味で言われたと思うのですが、しかし、こういう対応策をつくったというこのことは、世の中の経済の激変に対応した措置として三〇%に上げた、こういうことだと思うのですよ。むしろ激変は、経済状況の中にあると思うのです。それに即応して、変なことばですけれども、激変させたわけですよ。それを半減するということになれば、むしろ経済の激変に即応しない措置として、しかも、この一年間きわめて高い率の物価が出ているのですから、これは私は時宜に即した政策ではない、こう考えるわけですが、どうでしょう。
  76. 高木文雄

    高木(文)政府委員 少し極端な例をあげまして恐縮でございますが、昭和四十七年の上期、下期におきます電力会社の総所得の中の配当に充てられました割合は、八二%にも及んでおるわけでございます。ということは、電力料金が長い間据え置かれました結果、電力の経理バランスがだんだん悪くなってまいりました。配当すれば全然おしまい、留保にはもう残す余地がないという程度にまで追い込まれてきているわけでございます。そうして、昨年の夏から秋にかけまして、関西電力なり四国電力の値上げはやむを得ないところに追い込まれてきた。さらに近く、東京電力等の値上げの問題が起こってきた。これは油の問題等とは別にそういう状態になってまいったわけでございます。  それで、配当軽課税率を上げますというと配当所得の占める割合の高い電力というようなところに、非常にショックが来るわけでございます。程度の差はありますが、私鉄も同じ問題があるわけでございます。電力、私鉄につきましては、配当軽課税率の上げ幅が大きいと、税の問題自体がどうも料金にはね返る危険が出てきたわけでございます。程度の差は、金額は、そうたいしたことではないのでありますけれども、いわばそれがきっかけになる危険が出てまいりました。  そういうことを考えまして、われわれといたしましては、そういう非常に設備の大きい、したがって、資本の占めるウエートが高い、借り入れ資本が相対的に小さいという企業について、あまりショックを与えるのはどうかということを考えたわけでございます。この点については、率直に申しまして、さんざん私どもとそういう関係者の間で議論がございました。関係者からは、この点は非常に強い要請がありました。制度論としては、配当軽課税率を上げることはけっこうであるが、いかにも現在のそういう設備投資の大きい企業、なかんずく公共料金としての制約を受けている企業、この企業の料金問題に関連した問題が非常に強く出てまいりました。  担当省、まあ通産省なり運輸省なりというところ、そういう公共料金を扱っているところからも、やはりそういう問題についての要望のようなものが出まして、私どももその経理バランスを検討いたしましたけれども、かなり耳を傾けるに値するものありということで、一年間ということで譲歩をいたしたような経過でございます。  正直なところ、そういうところでございまして、普通の企業の場合には三六・七五から四〇のほうの影響が大きいわけでございますが、そういう配当所得割合の高い企業のほうは、二六から三〇への影響のほうが大きくなるものでございますから、そこらのあたりを考えまして、一年間だけの暫定措置ということにしたわけでございます。
  77. 塚田庄平

    ○塚田委員 時間もありませんので、いまの局長の答弁については、おそらくこれからあと同僚議員等も引き継いでやるだろうと思いますから……。  この配当の問題とからんで、受け取り配当の益金不算入の制度というのがあるわけですよ。あれこれとずいぶん大企業にはいろいろ保護政策をやっているのですが、これを議論するときに、法人の擬制説あるいは実在説等いろいろ基本的な議論がありますが、きょうはそういった議論は避けたいと思うのです、いつまでやってもおそらく並行線をたどる議論ですから。  大蔵省は擬制説の上に立って、益金不算入というのは二重課税を回避するための調整措置だ、こういうことで終始答弁してきたわけなんです。この制度というのは、シャウプ勧告当時からずっとできておる制度ですが、その当時の株式の所有比率を見ますと、大体個人の所有率は六〇%をこえていたと思うのですね。それに比較して法人の所有といいますか、法人の持ち株といいますか、これは三五%程度で、非常に低い状態であったわけです。  ところが、昨今、特に四十七年度の統計を見ますと、この比率はまさに逆転していますね。法人はもう七〇%近くに実はなっておるわけですね。こうして、大企業の株の持ち合いというか、そういう情勢がどんどん進んでおります。特に、大企業についての系列会社というのは、もう数えるにたいへんだというくらい、系列支配の進展というのはあるわけですが、こういう実態に照らした場合、受け取り配当の益金不算入は、私はいま考え直す時代に来ているのではないか、こう考えるわけですよ。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 そしてこの不算入の金額たるや、これまたばく大な金額になっているわけですね。  私のところの法人企業の実態から拾ってまいりますと、受け取り配当額は四千百二十五億円。これは四十六年度分ですね。これは受け取り配当金額全額です。このうちから非課税分といいますか、控除負債利子、つまり金を借りて株を買うという場合、これは差っ引くのですから、これなんかもずいぶん変な制度じゃないですか。株を買うのに金を借りる、金を借りたらその利子を差っ引くというのですから。株を買うのはもうけるために買うのですね。金を借りてきてその利子を控除してもらう、これまたいい恩典ですよね。  いずれにせよ、こういう控除負債利子と益金の不算入額を合わせますと、四十六年度分で三千九百八十六億。これを現行制度の非課税分で計算いたしますと、二千六百二十六億。それに、その前の税率三六・七五%を掛ければ、まさに九百六十五億、約一千億の膨大な金が出てくるわけですよ。この金額の計算は別にして、いまそういう実態からいって、受け取り配当の益金不算入制度というのは改めるべき状態にきているのじゃないか、こう考えるのですが、ひとつ率直大胆に方向を示していただきたいと思う。
  78. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先般、他の委員の御質問にもお答えをいたしましたが、これはいろいろな考え方があると思いますけれども、現在の私ども考え方では、配当につきましては受け取り段階で調整をするか、支払い段階で調整をするかがどうしても必要であって、受け取り段階でも支払い段階でもどっちでも調整を全くしない、そのつど課税をするという方式にはなかなか同意をいたしかねるわけでございます。  もしそういう調整を全くいたしませんと、会社が幾つかありまして、親子間で株をずっと持っておりますと、何重にも課税することになりますので、そうなりますと、親子会社制度というのは、全く成立しなくなる。そうしたらどうなっていくかというと、巨大企業がどんどんふえていくということになっていくわけでございます。会社を分離いたしまして親子間でずっと持っておりますと、その段階ごとにどんどん課税されていきますから、利益が途中で発生しませんでも、元で一ぺん利益が出まして、それを配当する、次配当する、次配当するというふうにいきますと、何段階かのうちに消えてしまうということになりますから、それではどうも成り立ちませんから、そういった関連企業が全部合併をしてしまうかっこうになるわけでございます。  そういう形がいいかどうかという問題がございますし、それから、中小企業で非常にめんどうな問題が起こります。中小企業の場合には、特に同族会社の場合には、一人の株主が会社の株のほとんど大部分を持っておるわけでございますけれども、その株主と会社の間で税金の調整をいたしませんと、非常に負担が重くなってくるという問題が起こります。  そういうことがいろいろございますので、私どもは、現段階では、どこかの段階で、つまり、受け取り段階か支払い段階か、いずれかの段階でやはり調整はしなければならない、そういう仕組みにせざるを得ないのではないか。これは実在説、擬制説ということは関係なく、そういうふうにせざるを得ないのではないかというふうに考えるわけでございまして、各国の税制を見てみましても、何らかの意味において、受け取り段階か、支払い段階か、どっちかの段階で必ず調整をしておると言って過言でないわけでございまして、完全な意味の実在説的な考え方で、段階ごとにどんどん何べんでも課税を繰り返すということはやっていないのでございます。  そこで、受け取り段階で調整するのがいいのか、支払い段階で調整するのがいいのかということになりますと、これはたいへんな問題でございまして、わが国の場合には、現在は受け取り段階調整になっておりますが、同時に支払い段階で、先ほどの御質問のように、四分の一軽課制度がとられているわけで、そこに非常に制度としてわかりにくいことになっておるわけでございますが、最近の産業界の空気といたしましては、むしろ支払い段階のほうでの調整に持っていったらどうか。いまの御質問に対しては御意見に沿うことになりますが、受け取り段階での調整をやめてしまったらどうかという意見が、だんだん強くなりつつあるわけでございます。  しかしながら、各国の税制を見てみますと、法人税制はたいへんゆれ動いておるのでございますが、ここ一、二年大体安定をしてまいりまして、イギリスにおきましても、ドイツにおきましても、だんだんむしろ支払い段階での調整でなしに、受け取り段階での調整に戻りつつあるのでございます。御存じのとおり、ECでは各国間の税制はある程度統一をいたしませんとうまくいきませんということがございまして、各国とも意識するしないにかかわらず、税制がだんだん統一される傾向にございますが、そっちのほうではむしろ受け取り段階の調整に、相対的な問題でございますが、戻りつつあるように見受けられるのでございます。  そういったことで、非常に事はややこしいのでございまして、とてもなかなか簡単に結論を出し得ない状況になってまいりました。  そこで、先ほど指摘をいたしました税制調査会での特別部会におきましては、その中心課題は、この受け取り段階での調整にするか、支払い段階での調整にするかという問題に、最大の焦点が寄せられてこようかと思います。この問題は、日本の企業あり方を左右する問題になってまいろうかと思います。また、直接金融、間接金融あり方を左右する問題になってこようかと思います。さらには、個人株主と法人株主の関係にも影響のある問題でございまして、非常に大きな影響をわが国経済界に与えることになろうかと思いますので、慎重な検討を要するわけでございますけれども、それにいたしましても、各方面の御意見を広く受けとめまして、何らかの方向をつくらなければならぬというふうに思っております。  それから、ただいま御指摘の負債利子控除の点は、これはちょっと先生何か思い違いをしておられるのではないかと思いますが、負債利子はほうっておきますと、借り入れ金でございますからどっちにしても損金になるわけでございますが、株を買うために使った借り入れ金の利子につきましては、益金に算入しない受け取り配当の額から引くわけでございますから、これは恩典とかなんとかにならないので、むしろ受け取り配当益金算入のメリットを減殺しておるわけでございますから、これは恩典の逆でございますので、その点はちょっと制度があまりにもややこしいので、一般にもよくそういうふうに御理解の方がございますけれども、これはそっちのほうではなくて、受け取り配当益金不算入のメリットを小さくしておるというふうに御理解いただきたいと思います。  それから、ただいま御指摘ありましたように、この制度が始まりましたシャウプ勧告時代と今日とでは非常に株式の保有状態が違うから、そのことも頭に置いて考えろよという御指摘でございますが、これはまさにそのとおりでございまして、その点、ごく最近、特にここ二年間ぐらいの間にまた株主が個人のほうから法人のほうに大量に移りましたこともございますので、それらも当然考えなければならぬと思います。この法人税制論の最も基本のところに触れる御質問でございますので、私の答弁も非常にややこしくなりまして恐縮でございますが、どっちにいたしましても、問題意識は持っておりますから、そして各方面の権威に寄っていただいて何らかの結論、あるいは動かさないという結論になるかもしれませんけれども、何らかの結論を導き出さなければならぬと思います。ぜひこれは真剣に研究してみたいと思っております。
  79. 塚田庄平

    ○塚田委員 株の問題に入ったので、もう一つ株で、例の所得税法九条の問題です。つまり、株の売買益の問題ですけれども、これが売買益は非課税になる。  ここに、これは市販されているのですが、大和証券という証券会社から出ておる「税金読本」というのがあります。これはまあ株屋ですから若干オーバーなことばもありますが、所得税法第九条は、「株式の売買でどれだけもうけても、税金は取りませんというわけです。かなりの所得があるのに課税にならないのは、この株式などの売買益と、宝くじの当選金ぐらいなものです。」その次がひどいのですね。「資産家たらんと欲するもの、この恩典をフルに活用しなければ損というものです。」こういう実は会社の宣伝がなされておるわけです。  私は、これはある面、裏から見て正直に言っておると思うのですよ。これをフルに活用して、いま株式会社はどんどんとほかの会社の株を買いあさる。その利益は非課税。一体、局長、こういう制度がいまの経済情勢の中で存在していいものかどうか、この点についてもひとつ見解を承りたい。
  80. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在、税法の中でいろいろ不公平税制といわれるものがあるわけでございますが、御指摘の株式の譲渡所得の非課税も、そのうちの一つであることはよく御承知のとおりでございます。そこで、税の理論といいますか立場、特に公平論から申しますならば、株の譲渡所得が非課税であるということは非常に理解できないところでございまして、本来、株の譲渡所得は課税であるということでなければならぬと思うわけでございます。その点は、塚田委員御指摘のとおりでございます。  ただ、現行制度がなぜそうなっておるかということにつきましては、当委員会におきましても何度も御説明申し上げておりますとおり、かつて昭和二十年代の末に一ぺん課税にしようということでやったわけでございますけれども、うまくいかなかった。  なぜうまくいかなかったかといいますと、株の譲渡所得が課税になります以上は、株の譲渡損も、これは損として見なければならない。譲渡益に課税する以上は、譲渡損を見なければならない。当時、たしか二年間だったと思いますが、株式の譲渡所得につきまして課税したわけでございますが、その実績は、課税、プラスのほうの申告があまり期待できませんで、譲渡損のほうの申告だけが出てまいりました。株の譲渡損を他の所得から引くという申告が出てまいりました。かえってこれが別の意味での不公平を招来する。そうかといって、税務署が株の譲渡益を追及できるかということになりますと、株式市場等におきましてああいう形で流通をしているわけでございますので、株主さんからの申告がなければ、株を売った人からの申告がなければ、とうてい税務署が追っかけ回すということは不可能に近いわけでございますから、したがって、なかなかうまくいかない。そういうことで、株の譲渡所得を課税にすることに伴う不公平というものを十分承知の上で、今度は株の譲渡所得を課税にすることによる不公平を回避するために、わずか二年間でやめてしまったという経緯があるわけでございます。  しかしながら、世の中はだんだん変わっておるわけでございますから、昭和二十年代の末ごろにうまくいかなかったからといって、今日でもうまくいかないということではないのではなかろうかということで、いろいろ検討いたしておるところでございますが、非常にいま環境が熟しておりませんのは、昨年、一昨年いわゆる過剰流動性論が起こりました時分に、株がむしろ個人を離れまして非常に法人のほうに集まっていったという現状でございました。現在の株の問題、企業資本金調達の問題の最大の課題は、いかにして個人株主をまたふやすかということに焦点が置かれておるわけでございますので、それを何か方策を立てませんと、これは先ほどもちょっと触れました直接金融、間接金融の問題に関連するわけでございますが、また昨日、他の委員から銀行局に対して御質問がありました金融機関のあり方の問題にも関係するわけでございますが、何かそこらのところを一連の考え直しをしなければならぬ時期に来ております。そういう時期に来ておるだけに、いま御指摘になりました株屋さんの宣伝文書にありますように、ある意味では非常に不愉快なことがあるわけでございますけれども、そうかといって、これだけどんどん個人株主が減っておりますときに、この制度の改変に手をつけることがいいかどうかということには、若干の疑問があるわけでございます。  ただし、実は非常に注目すべきことがございますのは、最近カナダにおきまして、約十年間ぐらい検討の末に、この問題を取り上げることになりました。若干の猶予期間を置きまして、株の譲渡所得の課税をする方向に動いております。そういった先例がございますので、われわれもまたひとつ勇気を出してこの問題の出口を見つけるべく努力をいたしたいというふうに考えております。
  81. 塚田庄平

    ○塚田委員 その努力、せっかくそういう方向でひとつなるべく早い機会に、こういった不都合な非課税制度をなくするということで努力をしていただきたいと思う。  しかし、局長、継続取引というやつがあるんですね、これは一体どう考えられますか。
  82. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いま御指摘のように、早く手をつけなければいけませんので、具体的には今春からでもひとつ株の方面の専門家、それから企業のほうの専門家に集まっていただきまして、研究グループをつくって検討を開始いたしたい。  その際に、その検討項目の中の一つに、いま御指摘になりました継続取引の問題、継続取引による課税という制度が現在ございますけれども、これが必ずしもうまく動いていない。たとえば査察のような場合に、殖産住宅のような場合が最も典型的な例でございますけれども、ああいうような場合に、把握される場合もございますけれども、継続取引の規定に基づいて申告される方というのはあまり数多くないし、税務署その他の調査で、この継続取引に該当するものとして把握されるという例も幾らかふえてまいりましたけれども、まだまだ不十分でございますので、その研究の際には、一つは、一般的な株式の譲渡所得の課税は非常に困難であるとしても、少なくとも継続取引に関するものの課税が、いまよりははるかに現実的に行なわれ得るような何か方法を見つけられないかというようなことを中心に研究を進めたいというふうに考えております。
  83. 塚田庄平

    ○塚田委員 何か具体的な問題、こうさあっと、たとえば継続取引ですね、これは年間五十回、しかも二十万株というあれですね。しかも、その二十万株も、一つの注文表は一回と数えられるのですね。その一回の注文表に、たとえばソニー何万株あるいは明乳何ぼと、こう書いても、それは一回に数えられるわけですね。これでは五十回二十万と規定していても、実際問題としてこれはしり抜けじゃないですか。どうですか。
  84. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現行制度では、お客さんから株屋さんがあの株を買ってくれということの依頼を受けましたときに、依頼のつど注文の総括表というものを作成することになっております。その注文総括表の作成回数が年に何回あるかということによって判断をすることになっておるわけでございます。ところが、その注文総括表の制度がなかなかうまく動いてないというところに問題があるわけでございますので、その辺については、何か証券会社といたしましても、あたかもいわば租税回避ないし脱税に協力をしているような形になるのは非常にぐあいが悪いということでありまするからして、われわれのほうも、証券会社として現実可能なような方法で、そこのあたりの仕組みをもう少し考えるということを通じて、やはり継続的な大量取引については、税務署が追っかけるみたいな形でなくて、おのずからある程度自然に申告の雰囲気が生まれてくるような制度に仕組んでいく必要があるのではないかというふうに考えております。  御存じのとおり、宣伝とは全く違いまして、最近は全体として申告制度が非常に定着したわけでございますから、あくまで申告制度におのずから乗りやすいような仕組みを考えませんと、単に何か税務署がいろいろと資料を集めてそれを追及するというような制度ではなくて、本来の姿である申告がスムーズに行なわれ得るような、また株の売買をなさる方もそういう心境になり得るような、そういう仕組みに持っていきたい。それがためには、ぜひ専門家を集めました研究グループをつくりまして、税だけでなくて証券界も一緒になって研究しようという雰囲気がやっと最近できてまいりましたので、せめてその辺から入り口を見つけて、この問題にだんだん入っていくようにいたしたいというふうに考えております。
  85. 塚田庄平

    ○塚田委員 時間がございませんので、残余の問題はまた機会をおいて質問したいと思います。  いまの答弁の中で、受け取り配当の軽課の問題、それから証券の売買益非課税の問題等については、これは局長も、この制度についてはこのままではいかぬという考え方を持っておるように受けとめましたし、特に株の売買益、証券の売買益等については、カナダの例等を出されまして、将来カナダはこれは廃止するという結論を、最近、十年間の研さんといいますか研究の結果出したと言っていますが、そういう進んだ国のデータ等も早急に集めて処理するということにしていただきたいし、とりあえずは、いま言った継続取引等の脱税といいますか、こういうやり方ですとそういう余地は幾らでもあるわけですよ、これを早急にひとつ改めるということで理解していきたいと思いますが、どうでしょうか。
  86. 高木文雄

    高木(文)政府委員 証券界のほうも、個人株主をふやすことが急務でございます。そのためには、先ほどお読み上げになりました宣伝パンフレットにありますような何か抜け道ばかりさがしているというようなことではうまくないわけでございまして、正々堂々たる姿で、なおかつ株を持つことが好ましいことであるというふうに個人株主に思われるような雰囲気をつくらなければならぬということで考えているようでございまして、その証拠には、昨年の夏、証券業界でも調査団を編成をいたしまして、アメリカやカナダの状況を調べに行ったということもあるわけでございます。  そういうことで、おかげさまで若干は空気が変わってきているように思いますので、ただいま先生の御激励も受けまして、また、われわれとしては一そう、何とか、前々から申し上げておりますような、見つからない、見つからないと申しておりました糸口を少し見つけられそうな感じになってきましたので、そこのところをとっくりと進めていきたい。なかんずく、その継続取引のところをまず糸口にしていきたいというふうに考えております。
  87. 塚田庄平

    ○塚田委員 ひとまず終わります。
  88. 松本十郎

    ○松本(十)委員長代理 佐藤観樹君。
  89. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、きょう現在のこの悪性インフレ、ここに至るまでの税制、そしてこれからの、いわゆる福祉重点の社会をつくっていくというための税制、その意味では、このあたりがそろそろ転換の時期になっていると思うのでありますけれども、どうもなかなかその糸口が現状ではまだ見出されていないような、ここに出された改正案も、まだそういう意図というか、そういう方向に向かっているようにはどうも思えない。あるいは税務行政においても、まだまだそういうところが多々あるのではないか、こういうふうに思うので、一連で、産業優先の税制から福祉優先の税制へこれからどうやって変えていくんだということを大きな柱にしてお伺いをしていきたいと思うわけであります。  それで、まずお伺いをしたいのでありますが、これは主税局長直接の管轄ではないかもしれませんけれども、現在のこの悪性インフレ、これを短期的に見れば、金融政策の失敗、財政政策の失敗、これは田中内閣ができてから二、三年の間に、短期的な――二、三年もたっていませんな、まだ一年半ですな、短期的なものだと思うのです。その背景に、やはり大企業が、高度成長政策の中でだんだんと大きくなって市場を寡占化してきた、こういったような問題が背後にあるから、予算委員会で個々のメーカー、金融界、商社、こういうものをたたいてみても、それなりにその企業は若干姿勢は直すかもしれないけれども、あるいは国民の目がテレビを通して予算委員会に注がれ、やはり国会でやれば、実際に石けんが出てきたり紙が出てきたりといったような事実上の反応はあるけれども、しかし、しょせん、これは一時的なものにすぎないのではないか、私はこう思うわけであります。  まず私は、冒頭にお伺いをしたいのは、この悪性インフレの、いろいろな要素があると思うのでありますけれども、このあたりを、税といってもこれは全く無関係ではないわけでありまして、局長としてどういうふうにごらんになっていらっしゃるか、長期、短期の、この悪性インフレになった原因について、お考えをまずお伺いをしたいと思います。
  90. 高木文雄

    高木(文)政府委員 非常に広範な御質問でございますので、どういうふうにお答え申し上げたらよろしいか、的確にお答えができるかどうかわかりませんが、現在のところ、私は、現在の税制それ自体の中で直接にそのインフレを誘発するような何か仕組みというものが多々あるということではないと思うのでございます。ただ、非常に問題は、当委員会等でかねがね御指摘を受けました、だんだん日本の経済体制その他の変化に即応して税制を直してきておるわけでございますけれども、どうも少しずつおくれぎみになっておるという感じが、率直に申してするわけでございます。  たとえば、法人税税率の引き上げなんかにしましても、もう少し前の時期から私どもとしては行なえないものかということは考えておったわけでございますが、どうもやはり通貨の改定という問題がありまして、それが日本の経済にどういうショックを与えるかわからない、何ぶん初めての経験であるからやむを得なかったとは思いますが、わからないというようなことがありましたために、四十六年の夏に税制調査会の答申を受けましたけれども、やっと今回実現の運びに至るというようなことで、あとから反省をしてみますと、そういう点でいろいろおくれが起こってきておるということを感ずるわけでございます。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  たとえば、ある年には租税特別措置の整理その他によりまして課税標準の整理を進めていく。また、今回のように今度は税率を直すということをやるということで、私どもがぜひやりたい、やらなければならぬと思っておったもろもろの一連の作業は、たとえば法人税についていえば、先ほど塚田委員の御質問にお答えしてまいりました基本問題を除きまして、税負担水準の問題としてはかなりいいところまで到達してきたと思うのでございますけれども、その経過において、時間的にそれが適切であったかどうかというあたりには、われわれも謙虚に反省をしなければならぬ点があると思うのでございます。  そういった点で、決して私ども税制を担当いたします者につきまして、その責任がないとは申しません。申しませんけれども、しかし、基本的な仕組みにおいて何か非常にインフレを助長するというか、つくり出すようなものがなおたくさんひそんでいるということではないのではないかという認識でございます。
  91. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 法人税の引き上げがおくれた。これはわが党の堀政審会長も、せめて昨年からそれに手をつけていくべきではなかったかという指摘をされているわけでありますけれども、その点については私も局長の御答弁と同感で、法人税の引き上げをもう少し早くやっておけばよかったんじゃないか。つまり、それは法人の社内留保というか、全体的な力をもう少し税制でチェックしていく必要があったのではないか。私はその点では局長の言われることと一緒なわけであります。  ただ、ちょっといま予算委員会の例をあげましたけれども、私もさっき触れたように、今度のインフレというのは、単に短期的なものではとても直らないだろうというふうに見ているわけであります。それはさっき例をあげましたように、たとえば石けんの問題についてやはりあれが便乗値上げであった、あるいは業界が品不足を吹聴をする仕掛け人であって、ではあの部分をなくせば、今後のインフレの問題、物価高、これは直っていくかというと、私はそうは思わないのであります。  その面で、田中内閣ができてから過剰流動性を生み出し、いまなお、きのう福田大蔵大臣と討論をしましたように、過剰流動性が業界によっては偏在をしている。このくらい金融政策は失敗をした、私はこれは一つあると思うのですね。それから財政政策として、これもわが党が何回も言ってきたことでありますけれども予算規模がやはり大き過ぎたのではないか、公共投資が大き過ぎたのではないか。これは事実、公共事業費の繰り延べという形で認められているし、今度の福田大蔵大臣の大きな柱は何といっても総需要の抑制という観点であるということは、裏返せば、いままでの財政政策というものが、特に国債を発行するようになってから大規模になり過ぎたのではないか。そういったこの一、二年、あるいはさかのぼれば五、六年の金融政策、財政政策の失敗、間違い、これは私は確かにあると思うのです。  しかし、その背景に、ではなぜ簡単に石油業界にやみカルテルができるのだろうか。そのあたりが、やはり石油業界に限らず、どこの業界でもきわめて企業が寡占化をしてきている。それから管理価格にしても、やはり業界にわずか数社しか企業がないということになれば、管理価格になり得る可能性というのは十分ある。そういった業界をつくってきたというのが――業界をつくってきたという言い方は少しオーバーかもしれませんし、的確ではないかもしれませんが、そういった経済体質になってきた。これはいまの税制法人税あり方、これは塚田委員からもいろいろと御指摘がありましたし、それから租税特別措置法のもろもろの特別措置、こういったものが私はやはり大きな要素になってきているんじゃないか、こう思うわけであります。  その意味で、主税局長、短期的な金融政策、財政政策の失敗のみならず、その基盤となっている産業界の寡占化、これに対して税制が果たした悪い意味での役割り、これはかなり大きいんじゃないか、こういう認識に私は立つわけでありますけれども、その点いかがでございますか。
  92. 高木文雄

    高木(文)政府委員 各般の問題がからんでおりますので、なかなかむずかしいわけでございますけれども、おっしゃるように、いろいろな原因がからんではおりますが、その中の一つに、産業構造の問題、それからいつも申し上げます金融の調達方式の問題というような問題があろうかと思います。  その現在の産業構造なり金融あり方の問題に関連して、税制がもう少し何か配慮すべき点があったかどうかという点でございますが、これはにわかに税だけでいろいろやることがむずかしいわけでございまして、そういう意味での世直し的なことを税に期待をされましても、なかなかそれには限界があるというふうに考えるわけでございます。  税の中にその責めの一端を負うべきものがあったかなかったか、その点、私はいま先生のお話を承りましても、こういう制度がなるほどこういう点で悪かったというすぐ思いつくものがないわけでございます。しかし、そうだからといって、もう少し他の諸施策、産業構造なり金融なりの問題とひっくるめて何らかの対策がとられてしかるべきもの、これは今日までの問題もありますが、今後の問題としても考えていかなければならぬ問題がいろいろあるように思うのでございます。  なかんずく、それは法人税の仕組みの問題と関連した問題がいろいろあろうかと思います。したがって、それには今後法人税の仕組みの問題を考えますときには、いま御指摘のような点への影響、どういう仕組みをとればどういうふうに影響していくかということをよく考えていかなければならないというふうに考えるわけでございますが、これはきわめて広範多岐の問題でございますので、それでは具体的にどうしたらいいのかということについての見解を持つという段階にまでは至っていないということでございます。
  93. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私も、いま局長が言われましたように、経済体制ができるまでに税だけでチェックできるとは思っておりません。いま臨時利得税にするか、このインフレ利得をどういうふうに吸収するかというのを各党話し合う中でも、きわめていろいろな問題がある。そういった意味では、金融のように、ある程度公定歩合の上げ下げによって、あるいは窓口規制によって、あるいは預金準備率の引き上げによってといったような量、質、そういった意味での窓口の数が非常に少ない金融政策ですと非常にやりやすい部分がありますが、税というのはそういった面ではかなりやりにくい、これも私は理解できるわけであります。  私が申し上げましたのは、やみカルテルが行なわれる、あるいは価格が現状では実際の需給バランスではなくて、管理価格になっている。これはやはりその業界で三社なり三社なりが、販売においても、生産においても、ほとんどのシェアを占めている。公正取引委員会の白書によるまでもなく、あらゆる業界が大体そうなってきている。そういったところに、私は、やみカルテルの問題にしても、管理価格の問題にしても、問題があると思うのですね。  では、なぜそういった業界の中に二社なり三社なり、事実上それによって価格がきめられてしまうような経済体制ができるかというと、やはり法人税租税特別措置法の持っている役目というか役割りというのが、大きな役割りを果たしたと私は思うのです。  あとからもう少しこまかくお伺いをしますけれども、たとえば、先ほど塚田委員からも御指摘がありましたけれども資本金別に実質的な法人税負担率というのを見ると、百億円以上の資本金となると、三〇%程度にしか現実にはなっていない。これはもっと別のこまかい数字を私はあとからお伺いをしますが、大蔵省の昨年出された資料によっても、百億円以上の資本金企業というのは、表面税率法人税三六・七五ということになっておりますけれども、実際は三〇%、あるいは統計のとり方によっては二十数%しか負担をしていないんだという数字もあるわけであります。  そういったことからいくと、いまの法人税租税特別措置というのは――租税特別措置については、私も事実をあげて、中小企業にも表面上は法律上はきくようになっておりますけれども、現実にはなかなかそれが使い切れていない、こういった現状についてもまたあとでお伺いしますが、そういった意味で、法人税租税特別措置法の法のあり方自体が、大きなものはますます税法上有利な立場に立って大きくなり、そして中小企業はある程度現状維持かさらに圧迫をされていく、そういう意味で、業界においても大きなものはますます大きくなって市場を寡占化さしていく。事実上業界によっては二社か三社で、実際にはもうそれしか業者がない、企業がないという状態になっておる。私は、そういった経済体質になってきたからこそ、やみカルテルなり管理価格なりという現在の物価の問題、いわゆる金融の問題、財政の問題を除いた価格問題というのはあるのだと思うのです。そういった意味で、法人税租税特別措置法というものが、今日までのこのインフレをもたらした原因の中ではかなり大きな要素を持っているのだ、こう私は思うわけでありますが、この見解についていかがお考えでございますか。
  94. 高木文雄

    高木(文)政府委員 問題は二つあると思うのでございます。一つは、鉄とかその他電気とか、そういういわば基幹産業についてはかなり意識的に産業奨励措置をとってきたということではないかと思います。それはやはり非常に戦争による被害、壊滅状態というところから立ち直る場合に、まず経済復興が必要であるが、そのためには産業復興が必要である、そしてその中でも基幹産業の体質を強化することが必要であるという認識のもとに、二十年来の産業政策が進められてまいりましたので、租税政策においても、そういう見地で進められてきたことは事実であると思われます。  法人について配当軽課制度があるということの意味は、やはり資本の大きい企業――資本の大きい企業というのはどういう企業かといいますと、いわゆる大企業の中でも固定資本をよけい要する企業ほど自己資本をみずから調達するものがなくてはならぬ。短期資金は金融的に調達ができますけれども、長期資金は金融では調達できませんから、増資をして資本調達によってやっていかなければならぬということでございますので、そういう固定設備を要する基幹産業ほど資本が大きい、その資本の大きい企業については配当を軽課するというようなことでおわかりいただけますように、事実問題としてそういう基幹的産業に対してかなり優遇的な仕組みになっておったことは事実でございます。それがもうすでに日本の経済がここまで来ましたから、いまやそれをだんだん直していこうという雰囲気に一方においてあるわけでございます。  租税特別措置についても、ある意味では、それを意識してそういうことをしてきたということもいえるわけでございます。それをいまや時代が変わってきたから順次取っ払っていこうということで、ここ数年来、主として輸出に関する租税特別措置を整理いたしましたり、重要産業用合理化機械等特別償却制度をやめることにいたしましたり、さらに今回また税率を上げることにし、その際初めて配当軽課税率を上げることにいたしました。前回三六・七五のときには基本税率だけは引き上げましたが、配当軽課税率は直していなかったわけでございますが、今回は配当軽課税率を含めて直すことにいたしたわけでございます。そのことは、方向としては佐藤委員御指摘の方向に向かっているということではないか。  ただ、第二の問題として、先生御主張の中において、やはり規模の大きいことからいろいろ弊害を生じておる、したがって、規模が大きくなるということについて何らかの意味において抑制的であるべきではないかということを背後にお持ちになった御質問がございましたが、その点についてはいろいろ議論があるわけでございまして、規模の大きいものが節操なくいろいろなことをすることになりますと、いろいろ弊害をまき散らすということになるわけでございますけれども、一面やはり規模の大きいことによるメリット、たとえば収益が結果的には少なくて済むという面がございます。  現にわが国の場合には、資本の大きい企業ほど資本収益率が低いということで証明しておりますように、資本の大きい企業が必ず利益が大きいというわけではないわけでありまして、むしろ資本の大きい企業利益が相対的には小さいという実態を考えますならば、そういう規模の大きさというものが経済なり産業なり全体に害毒を流すのみであったかというと、そこらは、いろいろ議論があるところではなかろうかと思います。  税のサイドでは、そういった問題、企業の大きさとその産業界に及ぼす影響の功罪というものを今後広く御議論いただいた上で、また次のステップの税のあり方の問題に入っていかなければならぬわけでございますが、今日までのところは、少なくとも多少傾斜がついておりました。つまり、優遇がそういう基幹産業に向いておりましたものを取っ払って、何というか、全部平等といいますか、白紙にしたというところまでが今日の過程でございます。今後はどちらに向かうべきか、これは大いに今後の世の中一般の御議論を注視してまいりたいと思うわけでございます。
  95. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 基幹産業について、確かに意識的に奨励策をとってきた。これは戦後復興経済の中でやむを得なかったことだし、ある意味では、私も必要なことであったと思うのであります。ただ、それがある程度、日本の戦後の経済をずっと見てみますと、あるいは税制の中でも、いまだに何か続いているのじゃないかという気がしてならないわけですね。  そこで、確かに日本は国際競争力がついたというけれども、どうもそれは、ちょうど暖房のきいた部屋の中で裸になって、おれは強いんだぞと一人で張り切っているみたいなものでして、実際に外のほんとうの――虚弱体質がほんとうの強い体質になるということと違うのじゃないかという気がするわけです。その意味では、今後は国際的には何といっても日本は貿易立国ですから、その面ではほんとうの意味での国際競争力というのをつける方策、それはある意味では過保護のいろいろな優遇措置というものを取り払っていく方向でほんとうの国際競争力をつけていく必要があるだろうと私は思うのです。  それから、二番目の問題ですけれども、確かに規模のメリット、スケールメリットというのは、私は必ずしも否定するわけではないわけです。しかし、問題はやはり限度の問題になろうかと思うのです。いまの管理価格の問題あるいはカルテルが簡単に行なわれやすくなっている情勢というのは、やはり規模の効果――規模の効果もある程度のところまでは規模の効果を持ってきますけれども、そこからは、いま局長は大きなものはそれほど収益があがっていないと言われましたけれども、しかし、さらにそれが独占化が進んでいけば、いずれはもうその市場はわがものということで、実際には単独で管理価格をきめて、超過利潤を取り得るような状態になり得るということで、私は規模のメリットについて否定するものではありませんけれども、これはやはり節度ある大きさにチェックをしていかなければならぬものだと思うのですね。  いま局長のおことばの中にあった企業の節操とかあるいは社会的責任ということがいまよく言われているわけですけれども、私は実はあまりこのことばを信用しないわけであります。資本主義でありますから、必ずこれは利潤を最大にするように、市場を占拠する方向に向かっていつも企業というものは動いているわけでありますから、単に社長の個人的な社会的責任とかいったものに依拠しているものというのはきわめて弱いと私は思うので、そういった面では、やはり税制において、ある程度規模になったものについてはこれに対して抑制的に働くような税制というのもこれから考えていかないと、私は現在の悪性インフレ、つまり、市場において数社しかもう存在をしないというような中で管理価格がきめられ、そしてやみカルテルが行なわれて物価のつり上げが行なわれるというような現状の悪性インフレについてチェックはできないのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。重ねてその辺の御見解をお伺いしたい。
  96. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおり、暖房のきいたあたたかい部屋に住んでおったという現状であったわけでございまして、その最も典型的なものの一つとしては、輸出に関するいろいろな奨励措置というようなものにあらわれていると思います。しかし、国際価格の中で相対的に安い価格で鉄なら鉄を生産することができたということが、自動車の輸出なり船舶の輸出なりにある程度の貢献をしてきたことは事実でございますが、最近に至りましては、自動車にいたしましても、船舶にいたしましても、必ずしも安い鉄を使わなくても十分輸出をして、国際的に競争し得る力を持ってきたわけでございますから、そういう意味で、あたたかい部屋に住んでいる必要はないということから、少なくとも特別の温室の中から外へ出すということで、輸出奨励のもろもろの税制というものははずされたわけであり、それをはずしてみても、なおかつ今日のように相当な力を持って国際的に競争していけるというので、そのことが証明されたわけでございます。  さて、その次に、いま佐藤委員御指摘のように、大きくなるといろいろな弊害を生ずる、社長自身の統制力を失うというようなこともあるのだから、あまり規模が大きくならないように税制上考えたらどうかということを含んだ御指摘がございましたが、私もそこのところは非常にまだ、どういうふうに理解してよろしいのか、勉強が足りませんで、よくわかりません。企業の大きさとの関係でどういうふうに日本の経済、産業の構造を誘導していくべきかということは、私自身はまだ勉強が足りませんで、よくわかりません。産業の種類によって、また、どの程度規模の大きさが妥当なりやということでも非常に違い得るのではないかというふうに考えられるわけでありまして、特別措置のようなものでありますと、産業の種類とか、体制とかに応じていろいろな制度ができますけれども法人税の基本体制は、どういう企業はどういうような税率をもって臨むとか、どういう所得計算をもって臨むとかいうふうに差別を設けることは、税制ではほとんど不可能でございます。  そこでやはり、もし企業規模の問題に触れて何らかの税制上の制度を考えるべきであるということになりますならば、将来の租税特別措置において何らかの形で、過大企業といいますか、不適当な規模のものについて何らかの措置が行なわれるといったことが考えられる時代が来るかもしれませんが、現在の段階では、どの程度規模になったらそれはぐあいが悪いのだというような尺度というものがとても生まれてくる時代ではありませんので、ここ何年か短い期間の間に、そういう規模税制とを組み合わすということは現実的に困難ではないか、現段階ではそう考えております。
  97. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私も企業別に確かにどれくらいの大きさが適当なのか、これは鉄鋼業といわゆるその他の製造業とは若干やはり大きさによっても、規模のメリットにしても違うと思うので、企業別に税率をきめる、これはなかなかできないと思うのです。  私が思うのは、それはできませんが、いままでの税制というのはとにかく法人税にしろ、租税特別措置法にしろ、私が申し上げましたように、大きい企業ほどこの税制の恩典がまた非常に大きい。したがって、大きいものほど非常に大きくなりやすい。その大きくなることがいいことか悪いことか、これはもう一つ前の御質問でお話をしたので置いておいて、いまの税制あり方では、法人税租税特別措置法あり方では、実質的な負担率から見ましても、大きいものほどますます大きくなりやすい。中小、たとえば十億円以下の企業のほうは、いまの法人税租税特別措置あり方では、なかなか大企業ほどは大きくなりにくい、こういう現状になっているということについてはお認めになりますか。
  98. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現実の問題として、いろいろな輸出の奨励措置とか重要産業用の合理化機械等の特別償却というような制度もございましたから、これまでの制度の中では、規模の大きいものに現実的にメリットが及ぶような特別措置があったということは認めるのでございます。そうして、現在の段階でも、多少ともそういうものが残っておるということは否定をいたしません。否定をいたしませんが、しかし、その程度は、ここ数年にいろいろ御指摘を受けて是正してきた過程を通じて、私はかなり根本的に是正されてきたように思うのでございます。もちろん今後とも、残りましたものについて、なおそういう目で見直す必要はあるわけでございますけれども、三年前、四年前とは情勢はかなり違って現行税制は来ているのではないかというふうに思われるのでございます。  それからもう一つは、小さい企業に対する対策につきましては、一つは、例の中小企業に対する貸し倒れ引き当て金の率を割り増ししましたような制度でありますとか、あるいは中小企業の機械等の特別償却について比較的単純に適用できるような制度をつくったことでありますとか、そういうことを通じまして多少とも、あまりこまごました仕組みでないシステムを通じていろいろ配慮をしてまいったつもりでございます。今後とも、何かそういう名案がございましたならば、いろいろ中小企業全般について適用し得るような、中小企業であるがゆえに適用し得るような仕組みというものは考えていくべきでありましょうし、今回、法人の基本税率のうちの資本金一億円未満のものに適用があります軽減税率適用範囲拡大いたしましたのもそういう趣旨でございまして、御指摘のような心がまえで今後とも臨んでまいりたいというふうに考えます。
  99. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 昨年当委員会に出していただいた、これは実効税率というのじゃなくて、何というんですか、実質的な税負担というんですか、実質負担率というんですか、これがありますね。これをちょっと教えてください。
  100. 高木文雄

    高木(文)政府委員 お手元にあるかどうか、わかりませんが、資本金一億円未満のところでは三三・三%になっておる。これはどういうことかと申しますと、一億円未満の法人の三百万円以下の所得軽減税率の問題と、それから配当軽課税率のかみ合わせ、つまり三六・七五と二八と、もう一つは二二という税率と、それから三百万円超の所得についての二六という税率のかみ合わせが結果的に三三・三になっておるということでございますし、一億円と百億円の間ではそれが三五になっており、百億円以上では三四・四になっておるということでございまして、現在のところ、実質の法人税負担は一億と百億の間が一番高くなっておるということを意味するわけでございます。  今回、三六・七五を四〇に上げ、二六を三〇に上げ、そして二八と二二は据え置きということにいたしました結果どういうことになるかと申しますと、三三・三のところが上に上がってきますか、あるいは下に下がりますか、これはちょっとすぐには見当がつきませんが、三四・四のところが確実に上がってくるはずでございますし、三五のところも確実に上がってくるはずでございます。これはどのぐらい上がるだろうかということは、午前中塚田委員の御質問にもお答えいたしましたとおり、大体三四・四のところで一割ぐらい上がってくるだろうというふうに考えられます。したがって、租税特別措置法の問題を全部抜きまして基本的な法人税税率の問題で考えましても、たとえば、こういう一億円以下と百億円以上とその中間のものと三段階に区分いたしました場合に、この表のA分のBの欄の一億円以下三三.三、一億円と百億円の間三五・〇、百億円以上三四・四というこの率は、資本金の大きいほど率が上がるという傾向が今度の改正ではっきり出てくるだろうというふうに考えております。  それから、租税特別措置につきましては、これは全般的に縮小の方向でございます。租税特別措置による減収は全体としては約一割強また四十九年度はふえると思いますが、それは貯蓄の奨励その他個人向けのもののほうが租税特別措置としてはふえてまいりました。産業的なものはほとんど据え置きでございますので、ここのところの率はあまり動かないのではなかろうか。むしろ百億円以上の資本金のものの特別償却がだんだん落ちてまいりますから、この率は、この部分は減ってくる。よってもって、資本金百億円以上のところの実質法人税負担率は相当上がってまいることになろうか。相当と申しますのは、一割ぐらい上がってくることになろうか、そして一億円以下のところはまあまあ横並びかあるいは少し上がるかというぐらいの感じではなかろうかなというふうに思います。
  101. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ちょっと、私は昨年もらった資料と数字がどうも違うような気がするので、またあとでお伺いをしますが、昨年の資料ですと、たしか百億円以上のほうが一億円以下よりも実質税負担というのは低くなっていたように思っている……
  102. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは六欄です。
  103. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 六欄ですね。こういうことですから、いまのように六欄で見て資本金一億以下が三二・五、一億円以上百億円未満が三三・〇、百億円以上が三〇・一とこういう負担率になっておる。これはちょっと中間が、一億と百億の間が出っぱっている。この四十六年の実績では出っぱっているのはひとつ問題があると思いますが、とにかく百億円以上のほうが少なくとも四十六年の資料を見る限りは負担が少ない。  それから、私もあとでお伺いしますが、たとえば試験研究費の税額控除、こういったものも現実には中小企業はなかなかこれが適用されていない。こういう現状から見ると、私はいまの実質負担を見ても、今度配当軽課についても二%上げ、留保分についても三六・七五から四〇に上げたということで、その面では確かに若干なりとも、一割程度上がってくるとは思いますが、しかし、まだまだ大きな企業のほうが実質的な税負担としては軽いものになっていくんじゃないか。その辺で、私は、いまの税制というものを今後福祉税制に変えなければいかぬという観点に立って見ると、まだまだ足りない部分がたくさんあるのではないか、そういうことで現状のインフレとあわせてお伺いをしたわけであります。  その延長の問題として次の問題に入りたいわけでありますけれども、いままでの税制は、いま局長からお話がありましたように、やはり高度成長、輸出第一、国際競争力をつける、こういった意味で、私たちのことばでいえば、大企業優先の経済政策からくる税制だったと思うのでありますけれども、今後は何も税制に限らず、国民福祉中心にした税制、国民福祉中心にした経済政策に転換をする時期に来ている。これを私に言わせれば、ある意味ではあたりまえのことで、われわれはもうずっと前からそのことは言っていたので、昨年が福祉元年だなんというのはおかしいわけでありますけれども、今後の経済政策が、老後の生活とか医療、社会保障の充実とか、あるいはインフレ弱者に限らず、政治的な弱い立場にある人々、身体障害者の方々とか、そういったハンディキャップを負った方々を優遇する政策、税制、これに変えていかなければいかぬということについては、この原則論については、局長もお認めになると思いますが、いかがでございますか。
  104. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおりだと思います。先ほどの御質問にお答えするお答えのしかたが不正確でございましたから、まずそれをちょっと補足してからいまの御質問にお答えをいたしますが、先ほど資本金一億円以下は三三・三、一億円と百億円の間は三五、資本金百億円以上は三四・四になっておる、こう申し上げましたが、佐藤委員は、租税特別措置というものがあって、その影響で、資本金一億円以下は実質三二・五になっており、一億円と百億円の間は三三になっており、そうして百億円以上は三〇・一になっておる、こう御指摘でございますが、今度の改正によりましてまず基本税率が変わりますから、この三三・三、三五、三四・四に変化がくるわけでございまして、その変化の来かたは、資本金百億円以上のところが一番大きく上がり、まん中が二番目に少し上がり、左の資本金一億円以下のところは、これは少し上がりましょうけれども、上がり方があまり大きくないというかっこうになってくるわけでございます。そうして次の六欄のところ、三二・五、三三・〇、三〇・一、この欄のところは、四欄の特別償却の金額が輸出の奨励措置その他の整理が働いてまいりますから、この三四・四と三〇・一の差額、これが小さくなっていくと思うわけでございます。よってもって、本年度の法人税改正まででここのところが変なふうな形に逆転をしておるという姿が、大体今度の法人税改正と昨年度までの特別措置改正によりまして常識的なところになっていく、なだらかに資本金の大きいほど負担が大きい形になっていくということになろうかと思います。  そこで、ただいまの御質問に対するお答えでございますが、福祉の時代になっていけばいくほど、さらにこの傾向を強めていくべきではないかというお考えにつきましては、大きな方向はそういうことであろうかと思いますが、その際ひとつお考えいただきたいのは、やはり国際化が非常に進んでおりますから、法人税負担あり方というものは国際競争との関係で考えなければならないわけでございますので、この率がどんどん上がるような結果を招来するようなほどに負担を求めてよろしいかどうかということについてはちょっと疑問でございまして、為替のほうも、こういうことで何回かの非常に大きな試練を経まして安定すべきところに安定してまいりましたし、税制のほうも、こういう形でほぼ国際水準並みになってまいりましたところで、日本の経済力が国際経済力と比べてどういうことになるかという推移を見ながら、今後のあり方を考えてまいらねばならぬと考えるわけでございまして、まずここで、過去におきましてしょっておりましたいろいろな雑物を全部取り払ったのが四十九年度改正後の姿ではなかろうか。それからあとどういう方向に進んでいくかは、しばらく様子を見た上で考えなければならないのであって、簡単にこの税率の水準を上げてもいいということにはなかなかなりにくいのではなかろうか。ただ、同時に、資本金一億円以下のところあたりについて、その後いろいろ考えられました特別償却制度や準備金制度がきいてまいりましょうから、それの様子を見ながら、なおこの資本階級別のバランスを考えて、福祉にふさわしいものにしていく必要があるというふうに考えるわけでございます。
  105. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうも初めから、私があれしないうちから、あまり法人税率を上げてはいかぬという答弁のほうが先で、まだそこまで話はいっていないので、チェックするほうがどうも先のようでありますが、局長の前半の御説明については、今度の改正について確かにそういうことなんでしょうけれども、私は現状のインフレになった原因の中に、過去の四十六年の数字を見ても、実質負担率というのは百億以上が低いわけでありますから、そのあたりのことが積み重なってきて市場の寡占化というものをもたらし、そして現在の悪性インフレになったのではないかというふうに見る一つの考えを言っているわけでありますから、まあ四十六年度ぐらいまでの数字でいいのだと思うのですね。今度の改正の話は、これは大体わかります。  私は、ことばで簡単に福祉政策あるいは福祉税制というけれども、もう少し福祉税制の中身、福祉税制とは一体何だろうかということを詰めていかなければいかぬのではないだろうかと思うのです。福祉税制ということばはいともおかしなことばのようでありますが、われわれが考えていることというのは、ある意味では過去からずっと言ってきたこととそれほど変わるわけではないので、弱者についてはもう少し税における優遇措置があるのではないか、あるいはもっともっと社会保障なり社会福祉についての財政措置をすべきではないか。そうしたら資金はと言うから、これはもう少し法人税から取るべきではないかと、そういった意味からいえば、何も私たちの言っていることは、福祉税制といっても実は目新しいことではないのではないか。これをやっと政府側がこの二、三年になって、やはり世論の高まりの中で認めざるを得ないようになってきた。そして、昨年初めて福祉元年だといってやってはみたものの、インフレで福祉どころの騒ぎではなくなったというのが現状だと思うのでありますけれども、一体、福祉税制というのはどういった中身なんだろうか、その辺のところは局長はどういうふうにお考えになりますか。
  106. 高木文雄

    高木(文)政府委員 福祉のもとにおいて税制がいかにあるべきかということについては、非常にむずかしい問題だと思います。私は、福祉というのは、歳入面と申しますか、税の面でいろいろくふうをする余地というのは基本的にはあまり多くないのではないか。全体として福祉財源を調達をするために、税全体の水準をどこへ持っていくか。例の国民所得に対する税負担割合が、四十九年度では一九・九ということをいま予定しておりますが、その水準をどこへ持っていくかという問題が一番問題でございまして、それぞれの税制の仕組みにおいてどのようにしたらよろしいかということよりは、やはり税負担水準の問題がいかにあるかということでございます。  それから第二点は、福祉を実現するための財源を、一体、税で調達をしていくのか、受益者であるところの、たとえば年金であれば従業員なり雇い主なりがどのように分担していくかという、分担割合をどうきめていくべきかという問題が非常にあると思います。そういう意味で、私は福祉あり方、それと財源調達のあり方、もう少し端的なことばで申しますと、社会保障と税とをどうつないでいくかということをこの辺で一ぺん洗い直してみなければならないということが、福祉時代においてわれわれの与えられた検討項目の最大のものではなかろうかと思うわけでございます。  三番目に、税の中の問題といたしましては、やはり何といいましても個人関係の税の問題、具体的には所得税なり相続税におけるいろいろなあり方の問題というのが、具体的に問題になり得る問題ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  それから次に、本日の課題でございますどころの法人税との関連で、福祉時代についてどう考えるかという問題につきましては、今回の法人税の引き上げは、ある程度国際的な税率の水準とにらみ合わせて、その水準にまで日本の法人税の水準を合わそうということできているわけでございますが、肝心のその税率の前の所得計算がどういうことになっているかというむずかしい問題がございまして、日本の所得計算が諸外国の所得計算と比べてどういう状態にあるかという問題がございまして、これをもう少し究明いたしませんと、日本の法人におきますところの税負担が適当かどうかということはわかりません。なかんずく、その中に隠れてしまっておりますところの固定資産税、その他損金になっておりますところのもろもろの税の水準というようなものをもう少しいろいろ研究してまいりませんと、日本の法人税負担はよくわからないということでございます。  そういったあらゆる問題を考えます場合に、そういう福祉の時代に移りつつあるという認識を十分持ちながら考えなければならぬということでございまして、いま直ちに福祉税制といえば、たとえば税率をどうするのだとか、あるいは所得計算を具体的にこうするのだとかいうことの答えはなかなか出てこないのではないかというふうに思っております。
  107. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 冒頭に述べられた税負担の問題については、高福祉、高負担ということで、このこと自体はわが党も別に反対しているわけではないのです。これは社会保障をほんとうに徹底的にやろうと思えばばく大な財源が必要なわけで、高福祉、高負担ということ自体には別に反対をしているわけではないわけです。ただ問題は、高負担のほうが先に立って、そして負担はふえたけれども、それが自衛隊に行ったり、そのほかインフレ要因になるような経済政策に使われていくということが問題なんであって、高負担になった割合に応じて政策として弱者に予算が回っていくということならば、これは私は別に高福祉、高負担というものは決して反対すべきものではないと思うのです。  それで、いま福祉時代における税制の問題点についてお話があったわけでありますけれども、その前提に立って、現状における税制の問題について幾つかお伺いをしたいと思うわけであります。  法人税の基本的な改正の問題については、先ほど塚田委員のほうからお話がありましたので、私はもう省きたいと思います。これはもう何年来とやっていることでありますし、先ほど来の局長からの答弁は、まあわれわれにとっては不満ではありますが、これは続けていてもこれだけで二時間、三時間かかってしまうので、もうこの項目は私は除きたいと思うのです。  ただ、法人間の受け取り配当の益金不算入の問題、この問題と証券市場において個人株主の比率が低下をしている問題、これは塚田委員もちょっと触れられましたけれども、もう少し私はこまかに見ていく必要があるのではないか。これは昨年の九月でしたか、田中首相自身も証券大会で、大きな柱として、個人株主が減っている、法人株主がきわめて大きくなっていることで、証券市場に非常に大きな問題になっていることを言われているわけなんで、法人間の受け取り配当の益金不算入とからんで、この問題について若干詳しくお伺いをしていきたいと思うのであります。  まず、証券局にお伺いをしますけれども、最近における証券市場の個人投資家と法人株主、これとの比率は、簡単でけっこうですが、大体どういう推移になっておりますか。
  108. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 個人株主については、大体昭和二十年の半ばごろから急に低下を続けてまいりました。昭和二十五年当時の個人株主の比率は六一・三%でございましたけれども、それが四十七年の末では三二・九%というふうに下がってきております。
  109. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それは四十七年の上期ですね。
  110. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 四十七年度末でございます。
  111. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それが幾つですか。
  112. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 つまり、四十八年三月末が三二・九%です。
  113. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ちょっと高いんじゃないですか。四十七年の下期に東京証券取引所が発表した数字では、個人株主の保有高というのは二九・二八という数字が出ているんじゃないですか。三〇%割った、たいへんだというのでやった覚えがあるのですが……。
  114. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 正式の発表では、四十八年三月末の三二・九%でございます。
  115. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 まあ大体個人株主が三割、それから法人、もちろんこまかくいえば外人株主もありますけれども、そういうものを入れて残りは大体七割、三対七という比率に大体なったということであるわけでありますけれども、この個人株主の比率が低下した、逆にいえば、法人株主のシェアが証券市場においてたいへん大きくなったということでいろいろな悪影響があるわけでありますけれども、どんなようなことがいま考えられますか。
  116. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 証券市場の面から考えますと、やはり流通面におきましての公正な価格形成に非常にマイナスが出ておるということがまず一つだろうと思います。  それから、また企業側で見ますと、いわゆる系列化等が進み、それから法人相互の持ち合い等が進みますと、どうしてもそこで企業間の公正な競争というものが阻害される。それから企業自身で申し上げますと、やはり法人間の相互持ち合いといいますのは、法人の資本充実の原則から考えまして非常に問題があろうか、かように考えております。
  117. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 一時、証券界では法人株主即安定株主である、こういう神話のようなかっこうになっていて、とにかく法人に持ってもらいたいということが非常にいわれていたわけでありますけれども、このことについては証券局としてはどういう考えを持っていらっしゃるのですか。
  118. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 やはり資本取引の自由化ということが叫ばれまして、各企業はいわゆる企業防衛のためといいますか、安定株主工作ということで、法人間の持ち合いが非常に進んだわけでございます。これは先ほど申しましたように、証券市場にとりましては非常にマイナスな面がむしろ多いのではないか。浮動株が少ないということは、今後の増資につきましてもやはりいろいろ問題がありましょうし、公正な株価形成についても問題がある。それから先ほど申し上げましたけれども、資本充実の原則の点からも問題があるというふうなことで、行き過ぎた法人間の持ち合い、つまり裏を返しますと、個人株主の減少の問題は、今後の資本市場にとってはたいへん大きな憂慮すべき問題であろうと考えております。
  119. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは私が冒頭に言った各業界とも寡占化していると同じようなことで、証券市場においても法人が株を持つ。そうしますと、大体持つだけであまり市場に出さない。品薄になる。そうなると、価格形成というものがきわめていびつな価格形成になってくることは当然考えられますし、品薄になって、そしてそれによって株価が不安定になってくれば、株式を通してのいわゆる直接金融によるところの資金というものが集まりにくくなってくる、こういうことが当然考えられるわけでありますけれども、どうしてこのように個人株主が減って法人がふえたのか。  これはいま審議官からお話がありましたように、一つは、企業自身が系列化あるいは融資系列のような形を通して、とにかく系列化を強化しようという一つのあらわれであるというふうに私も思うわけであります。その辺がアメリカのように、他の会社の株を持って資金運用にやっている、この辺のところと若干日本の株の持ち方というのが違うように思うわけでありますけれども、どうしてこういうふうに個人株主が、かつて三十年の下期には半分、五〇%近くあったものが三〇%前後ということで、証券市場ではたいへんな問題になっているということになったのか、その辺のところの原因についてはどういうふうに判断なさっていらっしゃいますか。
  120. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 先ほどちょっと申し上げましたけれども、やはり資本の系列化、集中化というものが非常に行なわれてきたということと、それから資本自由化対策としての安定株主工作が進んできたということ、それからさらにまた、特に四十七年度におきまして個人の特ち株比率というものが減ったわけでございますけれども、やはりその背後には、四十七年度を中心とします過剰流動性ということが、法人の資金運用というものを株式取得に向けさしていったというふうなことがあろうかと思います。その結果、その反作用としましてかなり株価が高くなってまいりましたために、個人がそこで株式を手放す。しかし、また株が下がらないために、あらためて新規参入するということが非常に困難になってきておるということもあろうかと思います。  それからさらにまた、行き過ぎた時価発行増資といいますか、これがどうしても法人のほうに有利に働きまして、個人ではそういった高い株価では新たな増資に応ずることが非常に困難になってきたというふうなことがあろうかと思います。  まだいろいろ原因は考えられますが、やはり証券会社自身の営業政策といいますかビヘービアの問題、さらにまた証券市場に対する投資家大衆の不信感といいますか、こういったこともその背後にはあろうかと思っております。  なおまた、いわれておりますのは税制の問題それが法人の保有に対しては有利であるけれども、個人に対しては配当税制関係で不利である。あるいは株式の譲渡所得に対しましては、一定の資格要件を備えました個人には原則として非課税である。しかし法人については譲渡益というものは課税対象になるというふうなことで、現在の税制というものが、法人は保有に有利に働き、個人には売買に有利に働く。したがって、個人株主というものが減少してきたというふうな説もいわれております。
  121. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは単に証券市場全体の問題ばかりでなく、やはり証券会社の姿勢についても、いまお話があったように、時価発行をどんどんして、当の大蔵委員会でもたいへん問題になりましたけれども、証券会社が発行会社のほうの立場に立ってしまって、証券を買うところの、所有するほうの個人よりも発行会社寄りの業務姿勢をした、こういうようなことに私はやはり問題があったと思うわけでありますけれども、その背後に、やはり法人がたくさん株を持っても、支払い配当をこえない限りは、あるいはこえても七五%は益金に算入をしないという法人にとりましてはきわめて有利な現在の法人間の配当益金不算入というのが、他にいろいろな要素もありますけれども、これもやはり法人の持ち株を進めたプラス要因になっているんじゃないか、私はこう見るわけであります。  いま証券局のほうからはそういう説があるという――前にとにかく局長がいるものですから、どうもあまり正直なことは言えなかったんじゃないかなと、これは私が個人的に思うわけでありますけれども、そういうことで、幾ら株を持っても一〇%、一五%の配当というものについては益金に入らぬというたいへん有利な税制というのは――いろいろこういう税制がとられている理由があることは大体知っています。知っていますが、これはやはり証券市場において法人株主をきわめて大きくした、そしていまの証券市場をきわめていびつな形にした一つの原因になっているんじゃないかと思うわけでありますけれども、主税局長はいかがお考えでございますか。
  122. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そこは非常にむずかしいところでございます。現在かりに百なら百の余裕資金がある。その場合に、その余裕資金で株を買う。そうすると、その配当は益金に不算入だからという関係があることは事実でございますが、もしそれを法人が金を借りてきて株を持つということになりますと、その株の配当収入から借りてきた金の負債利子を引いたものしか益金に入ってこないということになるものでございますから、つまり非常にややこしい制度になっておりますが、この負債利子控除という制度があるものでございますから、受け取り配当の益金不算入制度というのはそれほどにはきいていないのじゃないかという感じがしないでもないのでございます。むしろ問題は、個人サイドにいろいろ問題があるのではないかというふうに考えるのですが、しかし、個人サイドの問題は税では何ともならぬ問題でございまして、いまちょっと佐藤委員お触れになりましたように、証券会社の姿勢といいますか、販売姿勢の問題であるとか、それからどうも現実問題としては株価水準が高過ぎて、個人としてはなかなか手が出ないという現状であるとか、そういうことでそっちがうまく伸びてこないということあたりに問題があるように思うのでございまして、いまの株の法人への偏在の原因を税制にありといわれますことについては、いささか私は、あまりに税の責任を追及される点が過大ではないか。それほど税制のゆえに現在個人から法人のほうに、税制と申しましても、この受け取り配当の益金不算入制度のゆえに個人から法人のほうに株が移ったということではないのではないかという感じを持っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、現在の益金不算入金額というものは、実際に法人が受け取りました配当金額と比べますとかなり少ない金額になっております。負債利子控除の関係がありまして、かなり小さい金額になっております。手元には古い数字しかございませんが、四十六年度で申しますと、欠損法人を抜きますと、利益法人が受けました受け取り配当が三千八百億でございますけれども、そのうち負債利子として千二百五十億控除されまして、二千五百億が益金不算入額ということになっておるわけでございます。そういう関係で、負債利子の額というのはかなり大きくなっております関係がありまして、そういうことも考えますならば、受け取り配当の益金不算入制度というものが、株の法人所有、個人所有にどの程度まで影響を及ぼしているのかということは、あまり強く見過ぎてもいけないのではないかという気がしてならぬのでございます。
  123. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ですから、私もこれがあるために全部あれしたとは言っていないわけですよ。私の表現は、一つの理由になっているのじゃないかということと、あるいは少なくも法人が株を持つことにプラスの要因になっているのじゃないかという表現であって、私は、何でも税制のみがこれをこうしているんだというふうには言っていないわけですね。  特に、公正取引委員会が、これは商社に限ってしかまだ調べていないわけでありますけれども、商社の株式保有制限を検討中と、これはどこまで実現するかわかりませんが、検討中ということで、いまの六大商社、三菱商事、三井物産、丸紅飯田、伊藤忠、住友商事、日商岩井、これの株式取得は、四十七年末で、国内の上場株式で延べ数で千八百四十八社、非上場を加えると延べ五千三百九十社、六社が筆頭株主になっている企業数が千五十七社、その年間売り上げ高は六兆二千五百億円と、六大商社だけでたいへんな株式を保有しているわけですね。こうやって商社という企業集団がいろいろな業界に影響力を強めて、そして相互の株式持ち合いを進める。そして一カ月なり一週間に一回社長会を開いて結束を強化している。  こういうような情勢からいっても、いま時代は、こういった系列化について、私が冒頭に申し上げましたように、企業集団というものが持っている悪、それが市場を寡占化している悪についてチェックをしなきゃいかぬ。その意味でやはり株式保有の制限をしなきゃいかぬ。これにもいろいろ抜け道はあることも私は存じておりますが、そういった中で、いまの局長の御答弁でも、益金不算入額が二千五百五十億ということになるわけですね。そう大きくはないと言われるけれども、そう小さくもない額だと私は思うのですね、二千五百五十億という数字は。これはもう負債利子控除をしてからですからね。そういった意味でいくと、この配当の益金不算入というのはやはり廃止の方向で考えるべきじゃないか。これはいろいろの理由があることを塚田委員に御説明があったことも私も存じておるわけでありますけれども、どう見ても、これからは法人間の株の持ち合い、あるいはそれを通しての系列化、企業集団化というものをチェックをしなきゃいかぬ時期に、少なくも税制でこれを優遇をしているというのは、私は、方向があっちこっちじゃないだろうか、こう思うわけでありますけれども、再度御見解をお伺いをしたいと思います。
  124. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御説はよくわかるわけでございます。それで、非常にスケールの大きな企業が株を持つ、そしてまた孫会社を持つということによって実質的に支配力をどんどん大きくしていくということは非常に問題であるということについては、佐藤委員御指摘の感じ、私も、これは主税局長というよりは、個人としても非常にそういう感じを持っておるわけでございます。何らかの形でそういうことについての一種のルールというものができなければいけないのではないかということは感ずるわけでございますが、さて、それでは何らかの形で、他の法制なり何なりでそういうルールをつくられまして、税の面でも受け取り配当の益金不算入をやめるということにした場合には今度はどうなるかという問題を一つ考えてみますと、二重課税をどんどんやれという論議を展開いたしますとまた話は別でございますが、二重課税を回避するという前提に立ちます限りは、今度は支払い配当の段階で、現在の四分の一配当軽課というようなことではなくて、支払い配当を損金に入れてくれという議論を誘発をいたすわけでございます。  極端な議論をいたしまして、支払い配当をもし損金に入れるような形になってまいりますと、配当原資だけあればそれ以上は所得を生む必要がないということになってまいります。そういう形になってまいりますと、法人税の姿がすっかり変わってくる可能性が大いにあるのではないかということを心配をいたしておるわけでございます。いまから七、八年前に、税制調査会中心にして利潤税論を盛んに議論しました当時にも、一部では支払い配当の損金算入論というものが議論されたわけでございますけれども、それはとても法人税全体にとって著しい影響があるのではないか。現在は非常に大きな企業でございましても、きわめて具体的には製鉄会社のような大きな企業でございましても、先般、四十六年から四十七年にかけての不況のときには、資産を売りまして、あるいは株を売りましたり土地を売りましたりしましてやっと所得を出しまして、そうしてそれを配当したというような期が何期かございます。  その場合でも、なぜその資産を売って所得をあげたかといえば、やはり配当をしなければならない。そうしてその配当をすると同時に、軽課税率、すなわち基本税率よりも低いほうの税率、二六%のほうでございますけれども、それで税が納められてくるわけでございますが、もし配当が損金に入ってまいりますと、そういう事態になりました場合には、土地を売ったり株を売ったりしてまで所得を捻出してくるという企業努力をする必要がなくなってくるというようなことから、法人税収がさま変わりになってくる可能性があるのでございます。受け取り配当の益金算入の結果として、もし支払い配当のほうで調整するということになりますとそういう問題を誘発してまいりますので、なかなか簡単にはいかない。  それでは、いっそ二重課税に持っていくかという問題になってまいりますが、二重課税に持っていくということになりますと、何べんでも課税になるということになりますから、その場合にはよほど明確な形で、何らかの企業あり方というものについてのコンセンサスが得られてこなければならぬということになり、そうして子会社を持つというと、子会社から受ける配当について課税になり、その子会社は孫会社から受ける配当について課税になるということであるならば、会社を親、子、孫と分けるのでなくて一つにしてしまおうということになって、またある意味での巨大企業を生んでくるという関係になりますので、そこのところは企業の構造論に結びついてまいるわけでございますので、なかなかむずかしい議論になってくると思うのでございます。受け取り配当の益金不算入が何らかの意味におきまして、いま御指摘のいろいろな問題に弊害があるといたしましても、そうだからといって簡単にやめる方向で考えるというのは、法人税全体の問題にからむ、そうして産業構造全体の問題にからむ大きな問題であるといわざるを得ないのでございます。
  125. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま局長から答弁があったことについて、確かにいろいろな問題もあるように思いますので、われわれのほうでもこの問題についてはさらに検討してみたいと思うのです。  その次は、ちょっと冒頭の問題にも戻るような形になりますが、先ほど大企業中小企業規模別によってかなり実質的な税負担が違うじゃないか、特に大企業のほうが低いじゃないかということについてお伺いをしたわけであります。これについてはいわゆる三六・七五、これが四〇%になるわけでありますけれども、これと実質税負担の乖離、この理由はわかるわけでありますけれども、いわゆる実効税率四十何%といっても、それはほんとうの実効税率じゃなくて理論上の税率にしかすぎない。大蔵省の出してくるものはそういうものが非常に多いわけでありますけれども、どうもその辺のところがぴしゃっといかない。  これは慶応大学の植草益助教授の計算によりますと、若干大蔵省のほうと違う試算でありますけれども、大蔵省のほうは、おそらく先ほどの数字は、準備金と特別償却と海外所得控除に所得をプラスしたものを分母にして法人税額を割ったものだと思うのです。植草助教授のほうのものは、準備金、特別償却、海外所得控除、この部分を貸し倒れ引き当て金、退職引き当て金、価格変動準備金、特別償却、これだけを所得に足して、そして法人税額を割ったものでありますけれども、これによりますと、資本金が一千万以上だと実質的な税負担が三〇・七、五千万以上だと二九・八、一億円以上だと二九・八、十億円以上だと二八・二、五十億円以上だと二六・三、百億円以上になると二一・八という数字がはじかれているわけですね。  これは大蔵省の資料に比べて若干刻みも小さいし、それから所得にプラスするものをどこまでとるか、負債性の強い退職引き当て金まで含めるのはどうかこうかという問題もいろいろありましょうけれども、明らかに規模が大きくなるに従っていろいろな社会資本を使う率というのは大きいにもかかわらず、実質的な税負担というのはきわめて低くなってくる、こういうことになっているわけでありますけれども、これについて先ほど局長から、だんだん逆にしていくんだ、つまり、百億円以上のほうの実質的税負担もふやしていくんだ、こういうふうな御答弁があったように私は思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  126. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど塚田委員からも引用されました私が東洋経済に出しております文章の中でも明らかにいたしておりますように、ただいまおっしゃいました植草先生の検討というのは、幾つかの点で私ども計算とは違う計算方式をとっておられるわけでございます。そのこまかい点は申し上げませんけれども、たとえば特別償却につきましては、ある年に特別償却をいたしますと翌年度以降の普通償却が減ってくるわけでございますから、特別償却のメリットというのはいわば期間損益の問題でございまして、特別償却の実施額だけを計算に入れますと、翌年度以降に普通償却がよけいになるという部分が消えてしまうというようなことがございまして、そこを修正いたしましたのが私ども計算でございます。  まだほかに、御指摘の債務性の引き当て金を全部入れておられるというような問題があるわけでございまして、そういう計算をすればどうなるかということになりますと、それはこの率とは違ったことになりますが、しかし、法人税税率が上がりますということ、それから租税特別措置が全体として圧縮されてまいりましたということからいたしますと、植草先生のやられました計算方式による計算をやりましても、今度の法人税法改正とここ数年の租税特別措置の整理によりまして、方向としては植草先生ペースで計算していってもはるかに税負担がふえていくという計算になることは間違いないところでございます。ただ、私どもは植草先生の方式による計算方式は、失礼でございますけれども、あまり意味がないような感じがいたしますので、そういう計算方式に基づいてその後の改正を織り込んだらどうなるかという計算はいたしておりませんけれども、しかし、あの方式で計算をいたしましても、なおかつ法人税負担は相当程度高まっていく、特に資本階級別に資本の多い企業ほど高まっていくという傾向にあることは、理論的に間違いないところであると確信をいたします。
  127. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうも私はそういうふうに思えない。いや、数字はわからぬわけじゃないですよ。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 わからぬわけじゃないが、あとで試験研究費の税額控除を例にとってお伺いをしたいと思うのですけれども、その前にいままでの、少なくとも四十六年までの法人税租税特別措置で、百億円以上、いわゆる大企業の実質税負担が少なかったという税制になっていたということは、私は税のいわゆる所得の再配分機能あるいは応分負担と申しますか、社会資本をより多く使うものについては税をより多く負担をしてもらうという原則からいっておかしいんじゃないか。特に私は、またあとで数字を詰めたものをいただきたいと思うのでありますけれども、大きな企業ほど税負担が少ないということは、これは税の持っている基本的な所得の再配分機能というものをそこなうものであって、私が冒頭に申し上げたように、大きなものはますます大きくなりやすい、そういった現象を生み出すことになるのではないかというふうに思うわけであります。  その点について、局長お話は、今度の改正をすれば百億円以上がやはり一番実質税負担は大きくなってくるから、そういうことはないんだというお答えになろうかと思いますけれども、重ねてそのあたりをお伺いをしたいと思います。
  128. 高木文雄

    高木(文)政府委員 すれ違いのお答えになるかもしれませんが、私はむしろ昭和三十年代から四十二、三年にかけましては、むしろ意識的に基本産業、基幹産業の税負担軽減することによって産業復興を進めてきたということであろうと思います。  先ほどおっしゃいました議論の中に、所得の再分配という御議論がございましたが、この点は多少私は異論がございますけれども、むしろそういうことよりも、基幹産業の強化をはかることによって、そして、結果的には税はまたコストとなりますから、鉄なり何なり基本的な素材についての原料費を引き下げることを通じて、結果として日本の製品を安くし、そして輸出しやすくするという方向を意識的にとってきたというふうに考えるわけでございます。したがって、企業の大小によってそこのところに差があっても、むしろよろしいのだという意識のもとに進んできた。しかし、もうそういう時代は過ぎたというふうに理解をいたしておるわけでございます。  次に、大きな企業と小さな企業の間に差があるべきであるという御議論でございますが、そもそも法人の場合に、所得再分配という概念は、なかなか私としては理解いたしがたいわけでございます。所得税が分配をし直すためのものであることは間違いございませんが、これはあくまで個人の問題でございまして、個人課税についての所得税であるとか相続税であるとかについて、分配のし直しということがあるわけで、さればこそ所得税につきましても相続税につきましても、非常に急激な累進構造をとることによって、所得再分配をはかっておるわけでございますけれども法人について所得再分配という概念は、これはなかなか成り立たないのではなかろうか。そこは法人は個人の集まりであるということの擬制説をとるかあるいは実在説をとるかということとは別にいたしまして、かりに実在説をとりましても、法人間の所得の再分配という概念は、これは成り立たないのではなかろうか。  佐藤委員の御指摘は、やはり大きな法人であればそれなりに多くの社会的な便益を得ているのだから、便益を得ている以上はそれなりに負担をすべきであるという御議論であろうかなとも思いますけれども、そういう便益論からくる問題でございましたならば、あるいはそういう問題があろうかと思います。現在まだ成立はいたしておりませんが、地方税の問題としてかねて検討いたしております、事務所、事業所税というようなものを議論した過程のことを呼び起こしてみますと、やはり大きな建物を持って、大きなスペースを大都市のまん中に持って、そうして事業をやっている場合には、都市の便益というものがあるのだから、それは負担をしてもいいではないかというような議論をしたことがございますが、一体、法人の大きさによって便益が違うとか違わないとかという議論ができるかどうかはわかりませんが、便益論としてあるいはそういうことがあり得るのかもしれませんが、しかし、私の承知いたします限りでは、一般論として、法人間において所得再分配ということがあっていいのだという議論はなかなかむずかしい議論ではなかろうかという意味で、私はその御議論には残念ながら賛成をいたしかねるわけでございます。
  129. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は所得の再配分のときに、法人間なんて一度も言わないですよ。私たちがいま検討しているいわゆる現在のインフレに対する超過利得と申しますか、これの吸収のしかたでも、やはり非常に高額なものについては累進税率を課すべきであるという考え方に立っているのに対して、おそらく局長は、これは法人擬制説からいって、法人は個人と違うのだから累進的なものにすべきではないというお考えになろうかと思いますが、確かに所得の再配分ということばはそういった意味では若干練れてないかもしれませんが、考え方の基本としては、ある程度大きなものは、私が冒頭に局長と論議をしましたように、規模のスケールメリットもけっこうだけれども規模があまりにも巨大化することによる悪をチェックするために、あまりもうけても税で吸収されるんですよという意味で、累進税を法人税にも適用せよというのがわが党の主張であります。そういった意味で、これからの福祉税制の中でやはり応分の負担を大きなものにはしてもらう必要があるのではないか。そういった意味所得の再配分という――これは局長の御指摘があるように、あまりことばとしては確かに練れていないと思うのであります。思うのでありますが、そういった意味で、便益論も含めまして、やはり過去の法人税あるいは租税特別措置あり方からして、税負担についてやはり規模に沿った負担をすべきではないか、こういうふうに思うわけであります。  局長はいろいろ数字をあげられましたけれども、今度の改正で百億以上の大企業については十億円以上百億円未満の企業よりも税負担は重くなるのだというふうに言われますが、たとえば試験研究費の税額控除という制度がありますね。これなんかを具体的に例をとってみると、これは一つだけの例ではだめだというふうに言われるかもしれませんが、大きなものがより大きな実質的な税負担になるというふうにはどうも思えないわけであります。  話の前提として、簡単でけっこうでありますので、この試験研究費の税額控除というのはどんな制度説明してください。
  130. 高木文雄

    高木(文)政府委員 試験研究費税額控除制度は、いまもちょっとお触れになりましたように、非常に特異な制度でございます。これは諸外国、特にアメリカでは主として国防関係のことを中心にでございますが、歳出サイドでものすごい額の研究費が企業に流れておるのでございます。日本の研究費につきましては、かなり充実はしてまいりましたけれども、歳出面におきます研究費というものは、原則はやはり学校の先生方の研究を中心にする研究助成費がいろいろな形で出ております。国立学校につきましては、研究所の人件費から設備費から全部見ますというような形もございますし、それから研究奨励金みたいなものもございますが、全くないわけではなかったと思いますが、民間企業に委託をして研究するということについて歳出面での配慮というのは、現在の日本の歳出予算ではあまり見られてはないわけでございます。  それで、これをどういうふうに処理をするかということを考えました場合に、歳出サイドで民間に補助金を出したほうがよろしいのか、それともそうでなしに、税というからくりを使いまして、税額控除というのは、実は実態は補助金でございます。その補助金を税というからくりを使いましてやりましたほうがよろしいのか、論議の末に、これは四十二年にできた制度でございますが、税のほうでやることになって今日に至っているものでございます。そしてこの制度は、前年度よりも研究費をよけい使いましたならば、それだけ企業にメリットを与える、補助金を与えるという仕組みになっておるわけでございます。  現在、日本の民間におきます研究は、やはり何といいましても非常に大きな企業で行なわれております関係で、この表でもおわかりのように、資本金百億円以上のところと、それから資本金一億円から百億の間のところとでほぼ全体のメリットを分け合っておるという形になっておるわけでございます。なお、この試験研究費につきましては、少しこのメリットが大き過ぎるということがありまして、今回若干の手直しをお願いして、いままでよりはわずか少しではありますが、辛くすることにはしておりますが、しかし、この制度はわが国におきます民間研究を奨励いたしますために有効な制度だというふうに考えているわけでございます。
  131. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これはたとえば研究所とか試験所なんかでも専従者じゃなければ事実上はだめなんでしょう。つまり、ここの税法でいうところの費用というのは、技術改良とか、それから考案、発明に要する原材料、諸経費、人件費、こういうようなことがはっきり明確に掌握できる額じゃなければ引けないわけですね。この控除は原則としては中小企業にも適用され得るわけでしょう。その点いかがですか。
  132. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、研究部とかあるいは研究所とかいう名前で、そういうセクションがございましたならば、そういうセクションで使っておりますところの人件費から機材費、光熱水料、いろいろな実験動物の経費だとか、そういう一切のものを前提にして、その支出額を基準にしてやっておるわけでございます。したがって、それはもちろんそういうものであれば、中小企業の場合といえども当然に適用になるわけでございますから、先ほどの東洋経済に掲載いたしました表にもありますように、資本金一億円以下の法人でも四十六年度において十一億ございます。金額は非常に少のうございますが、税額控除は働いてはおるわけでございます。ただ、わが国の試験研究の実態が、ほとんど資本金の大きい企業は研究所を持っておりますけれども、中小の場合には持っていないということでございます。
  133. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そういうことですから、事実上これはもう税額控除ですから、いま局長自身から言われましたように、実質的にはこれはもう補助金と同じわけですね。それが確かにこういう制度があって中小企業もというけれども、とても中小企業が独立した試験所とか研究所なんというのは持てないわけで、たとえば名古屋のあるF機械製作所、資本金は大体四千八百万円ぐらいの会社ですけれども、これはアイスクリームやパンの包装機械のメーカーですけれども、すでにいままで六十数件のパテントを持っているし、それから高速万能包装機械の考案で通産大臣表彰も受けたという会社です。こういう会社でも、事実上税の恩典というのがない。なぜかというと、私がいま申し上げましたように、特別な研究所もなければ試験所もない。事実上は毎日の製造がそのまま試験研究になっているし、それから全従業員が研究員である。こういうような中小企業には、現実にはこの試験研究費税額控除というきわめて恵まれた特典は事実上働かないわけですね。これは一つの例でありますけれども、そういった面からいっても、私は大企業はたいへん優遇をされていると思う。実質的な負担率はこれから大企業が多くなると言われますけれども、こういったような例は数々あるわけで、どうも局長数字で言われるけれども、実態面からいくと、私はこの事実のほうが十分納得ができるわけであります。その辺のところについていかがお考えでございますか。
  134. 高木文雄

    高木(文)政府委員 試験研究費は、今後やはり相当重視していくべきものと思っております。その意味におきまして、いま御指摘があったような事例の場合に、なかなか試験研究費の税額控除が働きにくいという点は何か一考を要する問題ではないか。つまり、研究所とか研究部とかいう形でなくて、事業経営と不可分一体になって研究が進んでいるというような場合に、現行制度がうまく働かないという仕組みについては何らかくふうしてみる必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。  それから、試験研究費の税額控除の中で鉱工業技術研究組合法という法律がございますが、そういう法律に基づきまして、中小企業方々がお金を出し合って研究部分についてだけ組合をつくって研究を進めていく。その場合に企業からその組合に出しますところの会費といいますか賦課金といいますか、そういうものについては試験研究費の税額控除が働くようになっておるのでございますけれども、この鉱工業技術研究組合法による研究制度というものが通産省の仕事、工業技術院の仕事でございますけれども、もう一つうまく働いてないということで、残念ながら、御指摘のように、中小企業関係の試験研究費についてせっかくのこの補助金制度がうまく動いていないという事実があるわけでございます。  しかし、そのことといまの歳出面での試験研究費の配慮が民間部分については非常に不十分であるということとの関連から申しますと、やはりこの制度は漸次改善をはかりながら、なお今後相当有意義なものとして考えていくべきものではないか。これは税負担の問題といたしましては明らかに相当問題のあるところでございますけれども、むしろ税負担論よりは一種の補助金論として御研究願いたい、御批判願いたいというふうに考えるわけでございます。
  135. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それに関して私は具体的な事例を知っているわけじゃないのですけれども、いま言われていることは、どうもこの税額控除の規定が――税額控除の規定というよりも、試験研究費というものの規定が非常にあいまいなものだから、だいぶ研究費が水増しされている、水ぶくれになっているという話がそういう関係者の間ではささやかれて、新聞なんかによれば、大蔵省の主税局もある程度認めているというようなことが書いてあるわけでありますけれども、その辺のところはいかがなんですか。
  136. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実はこの制度は、言ってみれば、非常におおらかな面があるわけであります。歳出を通じての補助金でございますと、ある研究をやりますと、そのためにこういう経費がかかります、それには人間がどれだけかかります、材料がどれだけかかりますというようなことをことこまかに内訳をつくりまして、要求書をつくりまして、そうして予算を持っている官庁がそれを査定して配分をするというような経過をたどるわけでございますが、研究についてあまりこまかいことをいわないで、言ってみれば、非常におおらかに認める制度になっております。  極端なことを申しますと、その試験研究所につとめておる職員の人件費について見ますと、そこにつとめておる職員であれば、はたして研究をやっている職員なのか補助職員なのか、またその補助職員のまた補助職員のような人なのかという問題がほんとうは出てくるわけでございますが、そこまでどうも税務署が立ち入っていろいろものを言うことは適当でなかろうということで、その研究所で使われておりさえすれば、どのような経費で置いてもよろしいということになっておるわけでございます。  そこは二つの議論があるわけでございまして、研究の内容だの経費のあり方にまで一々税務署がタッチしないほうがよかろうということで、そのかわりどんな研究費でも認めるというのではございませんので、前年よりも研究費がふえませんとこの税額控除は働かないわけでございますから、少しでも研究費をふやすということに対して間接的に圧力をかけるという形の仕組みになっておるわけでございます。  今回、実はその基準を若干辛くさせていただきましたのは、給与の上昇率が最近は高いものでございますから、したがって別に特別に努力をして研究費をふやしませんでも、黙っていても人件費が増加してきますから、それで自動的にこの税額控除が働くような傾向にありますので、それを多少とも是正する措置をとったわけでございます。そこは御批判があろうかと思いますし、われわれもときおり問題ではないかと考えることもありますけれども、しかし、何としましても増加しなければだめだというところに一つの大きな刺激材料がありますので、この制度でまあまあもうしばらくやっていっていいのではないかというふうに思っております。
  137. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いまの実態面について、税務行政としての面の問題でありますけれども、この税制によって一番恩典を受けているのは何と言っても大きな企業、日立製作所が約八億円ぐらい、新日鉄が約七億円から八億円近く、それから川崎製鉄クラスで約二、三億円台だといわれているわけで、その面ではかなり実質的に税金をまけているという形になっているわけですね。これがいま局長お話しにあったように、研究員の補助の補助の補助でもいいということになりますと――中小企業なんかは事実上、われわれの耳に入ってくる、あるいは苦情を言われる税務調査ということになりますと、きわめてきびしいわけですよね。  ところが、いま言ったように、実質上、研究所、試験所を持っている企業というのは数がある程度限られているわけで、それに税額控除という隠れた補助金のような形で国がめんどうを見るからには、やはりその辺の税務行政も、業種についてもそれなりに限られなければならぬだろうし、もう少しさらにこまかく、実態面は私もかわりませんが、いま局長自身からも大甘な税制であると言われたようなことでは、私のように中小企業の皆さん方が税務調査に入られたときのこまかさというものを実感的に知っている身から言いますと、どうもその面でも大企業に対しては甘いということをつくづく感ずるわけですね。私もいま申し上げましたように、事実上どういうふうになっているのか詳しいことを知りませんので、これ以上は申し上げませんが、やはりその辺はほんとうにその研究に使われているものなのかどうなのかということをもう少し精査する必要があるのじゃないですか。どうも私は税務行政の面においても中小企業との差というのはきわめて大きいような気がするのですが、その辺はいかがなんですか。
  138. 高木文雄

    高木(文)政府委員 日本の研究所の実態というものが、先ほど申しました国立の研究機関とか、あるいは地方公共団体の研究機関とかというものを除きますと、現実には非常に大きな会社に限られているわけでございます。どうもうまいぐあいに中小企業者が集まって金を出し合って研究するということが伸びていかないわけでございます。しかし、大会社の研究というものは、これはその研究が必ずしもその大会社の直接に製造製作している部分だけに限りませず、自動車でありましたならば、自動車のあらゆる部品についての研究もメーンメーカーのほうで研究が行なわれているということがあるのでございます。そういう実態から、年間の試験研究費が何十億というオーダーになる民間研究機関がだんだんふえてきておるのでございます。  そういうものをどこまで育てていくのがよろしいか。あるところまで育っていったならば、もう税額控除というようなことで、つまり補助金で国がお手伝いしなくてもいいではないかという議論があるいは出てくるべきかもしれない。漫然と十年も十五年も続けてそういうことをする必要があるのかどうかというあたりには、なお研究を要する点があるかもしれません。あるかもしれませんが、しかし、これからは輸出奨励とかそういう形の税制をやめまして、むしろ質でもって国際的に競争していくということでございますし、日本はあらゆる意味において、まだまだ技術とか特許とかいう点においては世界の先進国に比べて弱いわけでございますので、そういう角度からいたしますならば、もうしばらく続けていってもいいのではないか。  さらに、ただいま御指摘の、それはかりに認めるとしても、研究所が使っている金ならば中身をよく見ないで企業の申告どおり認めているような実態になっているのはいかがかという点については、御指摘でございますので私も少し勉強をいたします。やり方を考えてみるということについては、佐藤委員のサゼスチョンに従って少し勉強してみたいと思います。
  139. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この制度の今後の問題なんでありますが、昨年の九月の新聞記事でありますけれども、通産省のほうは、今後もこれを続けてもらいたい、そして特にその額について、試験研究費の増加分に対する税額控除も延長する一方、控除比率を引き上げてもらいたいということが第一点。それから、いわゆる海外との技術交流、これについての同じような控除制度をつくってもらいたい。それから、現在は技術輸出の振興をはかるための技術取引に対する控除制度があるわけですが、これを海外との技術取引についても所得控除の制度をつくってもらいたい。  こういった内容の要望を通産省は大蔵省にするのだというように報道されていたわけでありますけれども、この辺のところはどうなっているのか、この制度の今後の方向というものについて考えをお伺いしたい。
  140. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その問題は、先ほどお手元にありました資本金階級別法人税負担割合の表の第五欄にありますところの技術等海外所得特別控除の問題でございます。この技術等海外所得特別控除制度と申しますのは、たとえば工業所有権を外国に売りましたという場合については、その七割を所得控除する。著作権を譲渡いたしました場合には、その収入金額の三割を所得控除する。それからもろもろのコンサルティング業務につきましては、収入金額の二割を所得控除する。ただし、そういうものを全部総合いたしまして、当該企業の当該事業年度の所得の五割が限度である、こういう仕組みになっております。  それで、それによる減収は、そこにありますように、四十六年当時は、現在の制度よりも少し広くなっておりまして、たしか四十八年度でございましたか七年度でございましたかの税制改正で現在は縮小しておりますが、四十六年度当時はなおいま申し上げましたもののほかにいろいろ認めておりました関係で、かなりの大きなメリットになっておることは、その表でごらんのとおりでございます。  この制度につきましてのただいま御指摘の新聞報道は、若干新聞報道に誤りがありまして、海外にいろいろ技術を売りました場合には現在でも所得控除の制度があるのでございますが、技術を国内で売りました場合にもそれを特別控除の対象にしてほしいというのが、四十九年度の通産省から私どもへの御要求であったわけでございます。要するに、物をつくって売る、あるいはサービスを売るというのでなしに、知恵を売るということについて何かもう少しメリットがあるようにしたらどうだ、どうも日本はそういうものについての見方が不十分だから、それを認めてもらいたい、Aの企業が考え出した知恵をBの企業に売ったという場合にも、それは品物を売った場合と同じではいかぬので、何か奨励制度として認めてほしい、したがって、ただいま申し上げましたように、現行制度では海外に工業所有権等を売った場合に限定しておりますのを、率は低くてもいいから国内に売った場合にまで広げてくれ、こういうことであったわけでございますが、どうもそれはいかがかということで、本年度は制度を改めることはいたしませんで、従来どおりということにして、通産省の御要求はお断わりをしたという経緯がございます。
  141. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その次に、これは本会議でも質問をしたわけでありますけれども、いわゆる海外投資等損失準備金の問題です。  これは前段を言うまでもなく、日本の外貨保有が急激に減ってきたわけであります。今後も、原油価格の値上がり、こういったもので大幅に日本の外貨保有高はまた危機にさらされるだろうということを見越してみますと、田中内閣ができて以来、急激に海外投資が行なわれている。まさに過去十年間に匹敵するくらいのものが一年間に出ていっている。それは当然、外貨保有高の長期資本収支の大幅赤字となって出てきているわけでありますけれども、やはりこれは、田中首相が東南アジアを回って、日本の海外進出というものがアジアの平和にとっても、あるいはその当事国の経済にとってもたいへん大きな問題になっているということが事実としてああいう形で証明をされたと私は思うわけであります。  そういう意味で、この日本企業の奔流のごとく出ていく海外進出、これを背後で助けている海外投資等損失準備金というものは、もう一回改める必要があるんじゃないか。それは海外投資をすること自体にすでにいろいろな問題がある。これは韓国との問題で、金大中氏事件が起こったときにも問題になったわけでありますが、その問題と同時に、日本の外貨保有の問題として問題がある。福田大蔵大臣は、為替管理でやるから海外投資等損失準備金は変えなくてもいいのだということでありましたけれども、このことについて主税局長はいかがお考えでございますか。
  142. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先般、予算委員会でその問題を委員から御指摘がございまして、その後もなお引き続き省内においてもいろいろ議論をいたしました。  それで、この問題についてどのように考えるべきか。まず一つは、こういう為替事情にございます関係上、海外投資を締めるべきかどうかということが一点でございます。一方におきましては、資源とか、そういう問題との関連上、やはり海外投資を続けるべきではあろうけれども、しかしながら、直接投資の中には必ずしもわが国にとって喫緊のものでないと思われるものもあるではないか、まあ適切かどうかわかりませんが、土地投資であるとか、それから観光事業を国外において行なう、具体的にはホテルを海外に建てる、そういうような仕事を一体どんどんやるべきかどうかという問題でございます。  一時は、実はわが国の外貨準備高が急増をいたしましたこととの関連で、一昨年の暮れぐらいから昨年この海外投資をたいへん奨励いたしたわけでございますが、ちょっと行き過ぎの面もありますし、それからまた外貨事情がすっかり変わってまいりましたので、今後は少し抑制ぎみに進めていこうということになっております。  ただ、わが国の海外投資は非常にさびしい状態にあるわけでございます。たとえば日本の輸出をアメリカの輸出と比べてみますと大体六割ぐらい、アメリカの輸出を一〇〇として日本の輸出が六〇ぐらいになっておりますし、それからアメリカの輸入に比べて日本の輸入というのは三分の一ぐらいになっておりますが、海外投資の残高は十五分の一ぐらいしかないという現状でございます。アメリカは御存じのように、非常に積極的にヨーロッパ投資をやった国でございますから、これを先例にするわけではございませんが、いずれにいたしましても、日本のような国の場合に物の輸出に片寄り過ぎという傾向がありますので、やはりそう直に海外投資を押えるということについてはいかがなものであろうかということで、その辺の手綱の締め方につきましては、国際金融局を中心にいろいろ御意見もございますので、今後慎重に運用してまいりたいということになっております。  さて、その場合に税制との関連なのでございますが、確かに海外投資損失準備金の残高、これは最近かなり急激にふえてきておるのでございます。しかし、為替の面でコントロールいたします場合には、どういう投資であるかということをある程度質的にコントロールすることが可能でございますが、税制で個別審査をして、ものによって、たとえば石油とか鉱物資源であるからよろしいとか、不動産であるからよろしくないとかいうことを審議するのがよろしいのか、それともむしろ為替の面で審議するのがよろしいのかということを検討いたしました結果、やはり為替の面でコントロールすることが適当であろうということで、役所の中で大体意見が一致をいたしました。その運用につきましては抑制ぎみにやっていきましょう、それは国際金融局で、海外投資についてのいろいろな為替管理法上の申請がありました時点におきましてコントロールしてまいりましょうということになりました。税のほうでいま一々審査をするということにはしない、したがって、税制としては特別にそれは変えないということに、いまのところは大体合意をいたしております。
  143. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうもその辺が、またIDAの審議のときに少し徹底的に審議をしなければいかぬと思うのですが、たとえば、いま局長のおことばの中に投資残高がアメリカの十五分の一だ、この辺は別に私は何もアメリカと比べて低いからといってどうということはないし、むしろ問題を起こさないんじゃないかと思うのですね。その話の前に、海外投資等損失準備金という制度が海外投資をするにあたってきわめて有利に働いている、また海外投資をかなり促進をした。簡単にいえば、たとえば非常にもうけがあがった場合には、利益を国内に置かないで海外に投資をすれば、それの相手国によっては十分の一あるいは半分、こういったものを準備金として積み立てられるというようなことで、利益一つは海外に投資をしてメリットを得るという利益があり、また国内の会計法上は準備金として税の繰り延べができるというきわめて有利な措置である。そういった意味では、この海外投資等損失準備金という制度は海外投資をするについてはきわめて有利な条件である。  先ほど私は、法人株主、個人株主の話で、いわゆる法人間の受け取り配当益金不算入の問題を論議しましたが、あれは確かに何もその益金不算入のみが個人株主が減ったという理由じゃないということは私も申し上げたとおりでありますけれども、この海外投資等損失準備金というものは、いま申しました二面の意味で海外に投資ができる、しかも、それは経理上国内でも利益を――利益というか海外で起こり得る損失というものを補てんしてくれる、会計上見てくれる、そういった面で、海外投資、日本の海外進出にきわめて有利な、逆にいえば、海外に日本企業が進出する条件はこれが非常に大きなものであるという認識に立っているわけでありますけれども、その点はお認めになるのですか。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  144. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この制度はかなりメリットが大きいと私は思います。ただ要は、海外投資をどの程度促進すべきやということに尽きるのではないかというふうに考えるわけでございます。戦後今日までの間、だんだんだんだん輸出を伸ばしてまいりました。資源の足りない国としては、輸出でやっていく以外にないということでどんどん輸出をしておった。輸出一本できたわけでございますが、あまり輸出一本でいくよりは、たとえば海外に自動車工場をつくるとか、あるいは海外に製材なり製鉄なりの工場をつくるとかいう形で、物で輸出をするのでなくて、資本で輸出をしていくということが今後の日本の国際経済にとっては望ましいのではないか、単に資源の面だけでなくて、そういう点があるのではないかと考えられるわけでございます。私どもは、十分な評価は私どもだけではできませんけれども、相当海外に企業が進出をして外で物をつくるということの意味が大きいのではないかと考えておるわけでございます。  そういう前提に立ちます限りは、なるほど現在の一〇〇%、五〇%、一〇%の準備金制度は甘いかもしれませんが、しかし、大体、海外で仕事をいたします場合には、後進地域の場合には非常に政情が不安定であるというような問題がまず一つございますし、それから先進地域の場合等におきましても、やはり先方の風俗、習慣等に慣熟をして、そうして工場がスムーズに動くまでには相当時間がかかるわけでございますから、したがって、五年間準備金を積みまして、そうして五年後、次の五年間に均等で取りくずしていくという制度は、つまり、まずまず五年間は収益が全く期待できないだろうということを前提に仕組まれているわけでございまして、そういう程度のメリットがなければ、明らかに投資をいたしましても直ちに何の見返りもない期間が相当あるという現状からするならば、まあものは考えようと申しますか、それほど甘い制度だともいえないのではないかと考えております。ただし、月曜日に御提出申し上げることにしておりますけれども租税特別措置の中で海外投資損失準備金の占めるウエートは、最近急激に高まってきております。そういう状況からいたしますならば、なおこの優遇措置があまり過大におちいらないようには、いわばよく見ていかなければならないと考えております。
  145. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この問題はきわめて内容のある重大な問題だと思うので、いずれまた福田大蔵大臣が当委員会に見えたときに、海外投資というものが、日本の企業進出というものが、一体どこまで是認されるべきであるかという問題について、さらに私は、いま局長が言われたような内容について突っ込んだ論議を一度しなければいかぬと思うのです。  それと同時に、この時点でお伺いをしておきたいことは、先ほどの局長の御答弁では、税のほうは当面はいじらぬ、現実には為替管理でやっていく、それで、具体的には選別、これは融資じゃないですから、選別窓口管理みたいなものでして、窓口規制のような形で、土地の投資とか観光事業とか、こういったようなものについては為替の窓口で規制をしていこうということのようでありますが、それは私が冒頭に申し上げましたように、この問題に二つの側面があって、一つは日本の海外進出というものが、田中首相が東南アジアを回られてああいう暴動に近いことまで起こった。もちろんいろいろ内情を聞いてみますと、日本の問題ばかりじゃない部分もあります。それもありますが、その問題と、もう一つ私は、外貨の保有高の問題、この二面から問題があると思うわけです。為替で事を処理をしようというのは二つの問題の後半の部分、つまり、いま外貨保有高が百二十億ドルぐらいに減ってきた、かつては百九十億ドルあったのに急激に減ってきた。しかも、今後も外貨保有高は減っていく可能性がきわめて大きい。そういった意味で、当面はとにかく為替で処理をしていこうというふうにいままでの御答弁を理解してよろしゅうございますか。
  146. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは本来、国金局のほうからお答えをしなければならない分野が相当あるわけでございますが、いまから五年ぐらい前から例のニクソンショックの前後を通じまして、資本の自由化、輸入の自由化ということに精力的に取り組んでまいったわけでございます。これは資本の自由化という場合には二面ございまして、海外のよその国が日本に出資をしてくるという場合の資本の自由化と、こちらから向こうへ出ていく場合の資本の自由化とあったわけでございます。いずれにいたしましても、品物の自由化問題と並んで資本の自由化問題を今日まで相当積極的に推進してまいったわけでございます。  それに加うるに、昨年一年間におびただしく為替事情が変化をいたしました。外貨準備がふえるというような事情になり、外貨準備があまりふえるということが国際的に非難を受けるようなことがございました。大体、相当積極的に海外投資を進めたのは事実でございます。その場合に外貨で持っているのがいいのか、それとも海外に投資をいたしまして海外における資産という形で持っているのがいいのかということについては、いろいろ論議のあるところでございまして、単に外貨なりそういう通貨で持っていることだけがメリットではなくて、資産という形で持っているということにも大いに意味があるわけでございますので、このような外貨事情になりましたからといって、直ちに海外投資は一斉にやめてしまうというようなことでないほうがよろしいのではないか。ただ、いかにも外貨事情がこういう事情でございますから、よってもって、その外貨事情をにらみながら、長期資本収支の姿をにらみながら適切に運用していきたいというのが、現在の国際金融局の考え方でございます。  これはいまちょっとお触れになりましたように、一種の選別融資的なことが現実にできるわけでございますので、税制とダブルチェックにする必要もなかろうということで、いまのところは国金局でその質的調整をしていってほしい。ただし、それは国金局の立場といたしましては、資本の自由化ということについての国際的なおつき合いもございますので、そこらあたりはどういうふうに運用していくか、細目は私からお答えする能力を持ちませんけれども、いずれにいたしましても、外貨事情等も考え、かつ長い諸外国とのおつき合いも考えながら、適切に運営していこうという方針で省内の意見は固まっておるわけでございます。
  147. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そろそろ時間のようであります。前半の部分については、まだまだ産業優先の税制が色濃く残っておる。これから後半の部分に入ると、福祉税制福祉二年目だというけれども税制ではまだまだ全然そこまでいってないという点について指摘をしたいと思ったわけでありますが、だいぶ時間もおそくなりましたので、きょうはこれまでにさせていただきます。
  148. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、来たる十二日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十三分散会