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1974-03-05 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月五日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 山本 幸雄君    理事 阿部 助哉君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    奥田 敬和君       金子 一平君    鴨田 宗一君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君      小宮山重四郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    高鳥  修君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    田中 昭二君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省証券局長 高橋 英明君         国税庁次長   吉田冨士雄君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   笹山茂太郎君     植木庚子郎君 同日  辞任         補欠選任   植木庚子郎君     塚原 俊郎君 三月五日  辞任         補欠選任   塚原 俊郎君     奥田 敬和君   萩原 幸雄君     高鳥  修君   正木 良明君     広沢 直樹君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     塚原 俊郎君   高鳥  修君     萩原 幸雄君     ————————————— 三月四日  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第六九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第二五号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  各案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。野田毅君。
  3. 野田毅

    野田(毅)委員 所得税法人税、それに租税特別措置、この三つについて、まとめて質問をしたいと思います。  御承知のとおり、四十九年度におきましては、財政事情の非常にきびしい中で、ともかくも平年度ベースで二兆円に近いという所得税、住民税合わせての減税が行なわれた、あるいは長年の懸案であった給与所得控除抜本的改正、こういうような画期的な税制改正が行なわれたということは、これはやはり率直に与野党ともに評価しなければならないところであろうかと思います。  もちろん、これによって、税制改正について一〇〇%の満点がつけられるかどうかは、これは別でございますが、その中身については、逐次質問をしてまいりたいと思いますが、いずれにしましても、この結果によって、これまでいわゆる直間比率が、四十八年度見込みでは七一・二対二八・八というのが、四十九年度においては六九・九対三〇・一という形で、かなり直接税のウエートが低まってきた。もちろん、過去十年前と比べますと、これでもなおかつ直接税のウエートというものはかなり高いわけであります。  そこで、税制調査会答申なんかにも見受けられますように、こういう全般税体系の変更ということをも意図して、今回の税制改正を提案なされたのかどうか。その辺の全般的な考え方というものについて、お伺いをしたいと思います。
  4. 高木文雄

    高木(文)政府委員 一つは、やはり所得税については、何としても勤労者中心税負担が非常に重いということでございまして、昭和四十六年の夏に出されました税制調査会答申におきましても、現在の所得税累進構造との関連から、今後も所得税減税は繰り返して行なわれるべきであるということが指摘されております。  二番目は、法人税の問題でございますが、これは従来、産業復興ということを中心にして日本経済考える必要があるという点から、税の面におきましても、企業税負担について過重にならないようにという配慮からでございますが、国際的な水準に比べて、税負担水準法人税としてはやや低めであるということもございまして、今日の日本経済産業状態から申しますならば、これを国際水準並みに上げてもよろしかろうというのが第二でございます。  三番目は、ただいまお触れになりましたような直間比率の問題に関連するわけでございます。直接税と間接税比率は、そのこと自体さほど気にする必要はないというふうに思いますけれども、しかし、いつも申し上げておりますとおり、毎年だんだん直接税の比率が上がっていく、しかも、それが非常に着実なテンポで上がっていくということについては、やはり現在の租税構造に問題があるということでございまして、いずれがいいか、直接税がいいか、間接税がいいかということは言えないわけでございますが、要するに、両者のほどほどの組み合わせが望ましいということでございますから、その点を考えますならば、あまりにも直接税がふえていく傾向が強過ぎるということに問題が感ぜられるわけでございまして、先ほどもお触れになりましたように、今回、所得税減税が行なわれ、一方、法人税も増税がございましたけれども間接税について若干の増強をするということによって、直間比率を、大体、直税サイド七〇というところにとどめるということになったわけでございます。  全体としての考え方は、ごく大ざっぱに申しまして、いま申し上げたようなところでございます。
  5. 野田毅

    野田(毅)委員 これから所得税についてちょっとお伺いしたいのですが、私は、毎年税制改正の際に感ずることなんですが、過去ほとんど所得税減税をしなかった年はないわけであります。それで、いつも初年度分というものと平年度分というものの違いがある。  そこで、一つは、平年度ベースというものが、適用されたためしがないということであります。これは減税規模を表向きは大きく言うけれども、実際には、いつも適用になるのは初年度ベースであって、かなりそこに一種のごまかしと言うわけにはまいりませんが、何かそこに数字の魔術があるのじゃないか。  それから、もう一つは、実際の一線の職員たちが毎年困ることは、そういう端数、たとえば七千五百円とかそういうような端数をつけてみたところで、計算を複雑にするだけであって、かえって税務行政合理化のためにも好ましくないというふうな感じも抱いているわけであります。特に、今年度は、配偶者がいない場合の第一扶養控除を、一般的な扶養控除をうんと大幅に引き上げることによって吸収していくというような形で、これまで複雑で困るというような税制を何とか簡素化しようという動きもあるわけでありますから、この際、そういうややこしい端数は切り捨てて、もっとすなおに税制改正をされたらいかがなものだろうか、こう思うわけであります。  この点について、いかがお考えでしょうか。
  6. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまの御指摘は、きわめてごもっともでございまして、私どもといたしましても、日ごろから痛感をいたしておるところでございます。納税者からも、どうしてこういうふうにややこしい組み立てになっておるのかということを、しばしば指摘を受けるわけでございます。  今回も、できるならば、平年度初年度ということもございますけれども、少なくとも四十九年度、つまり、初年度分でございますが、四十九年度につきまして端数が出ないような組み立て方はないかということも検討いたしてみたわけでございますが、一つは、やはり租税法定主義との関連から、国会で御審議を願って、それが法律になりまして、そこから適用になる。所得税年分主義ではございますが、やはりいろいろの面において、四月適用ということがいろいろな部分に出てくるということがございます。やはり基本を平年分に置きながら四月適用ということで考えますと、四分の三という仕組みのほうがいろいろとテクニカルにやりやすい面もございます。  また、いまお持ちのような御疑問は、御指摘のように、毎年毎年所得税減税が行なわれるからであり、毎年毎年所得税減税が行なわれるということは、物価が戦後はほとんど経常的に動いているからでございます。ある程度平常の状態に戻れば、そう必ずしも、所得税減税がないということではなくても、すべてについて、つまり、人的控除についても、給与所得控除についても、その他もろもろの控除についても、すべて手直しをするという必要は起こってこないだろう。そういう事態を考えますと、平常の状態では平年度の姿というものと初年度の姿というものは、国会審議の期間、一月から国会が主として精力的に審議が始まる、そして三月末には大体法案を通していただけるというこれまでの慣例との関係からいいまして、やはりなかなかそこを断ち切れないという関係にあるわけでございます。  いまはほとんど毎年給与所得控除も直しておりますし、人的控除も直しておりますから、まさに野田委員指摘のような御疑問が出てくるわけでございますが、今後少しまとめて減税が行なわれる形になるということを考えますと、戦後二十年やってまいりましたやり方を変えて、初年度即平年度式の方式というものは、ちょっとまだ踏み切りがつかなかったということでございまして、率直に申しまして、今回の場合は、特にいわば財源もそうないわけではなかったわけでございますので、十分検討いたしましたが、やはりどうもいろいろ引っかかりがあったので踏み切れなかったという事情でございます。  しかし、御指摘の点はよくわかりますし、非常に納税者にも御迷惑をかけておりますし、税務職員のほうも一々その数字端数を覚えておるのもなかなかたいへんだということもございますので、なお今後引き続き御注意の点を検討してまいりたいと思います。
  7. 野田毅

    野田(毅)委員 いまの点は、私もかつておっただけに、その事情はよくわかりますが、ひとつぜひとも御検討いただきたい。  それから、給与所得控除の問題についてお伺いをしたいのですが、今回、非常に抜本的に給与所得控除引き上げた、特に五十万円までは定額控除にするということで、低所得者向けには非常に大幅な減税になったわけであります。しかしながら、そうはいっても、今回の四十九年度税制改正の結果、給与所得者納税者の中に占める割合が大体七一%弱ですか、ところが、これを五、六年前と比べますと、やはり六割台であったということで、これだけの減税にもかかわらず、なおかついわゆる納税者割合がふえてきておる。必ずしも納税者割合が常に一定あるいは減少傾向になければならないという理屈もないし、国民への国の行政サービスがふえてくればくるほど、当然ある程度国民税負担も上がらざるを得ないとは考えられますけれども、しかし、ほかの種類所得者に比べて納税者割合が高いということは、やはりサラリーマンにとって非常にきびしい税であるというふうな受け取られ方をするのももっともであろうと思います。  そこで、いま一つ、来年度以降もこの給与所得控除定額部分控除をさらに大幅に引き上げていく必要があろうかと思いますが、この点についてお考えをお述べいただきたい。
  8. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回の給与所得控除改善といいますか、拡大と申しますか、その点は戦後最も特色的なものだと思っております。御存じのように、従来、まず定額控除がございまして、その上定率控除であったものを、まず定率控除を置きまして、最低の部分についてだけ定額控除にしたということは、かなり基本的な改善になると思います。したがって、今後におきまして、サラリーマン減税をどういうふうに進めていくべきかというときに、いろいろな意味で、いままでとはまた違った意味でやりやすくなるといいますか、いろいろ知恵を出しやすくなったのではないかというふうに思っております。  ただ、納税者の数が非常に多いじゃないかという点につきましては、御指摘のとおりでございますけれども、しかし、一つには、給与体系が変わってまいりまして、初任給水準が非常に上がってきたということとの関連もありまして、必ずしもおっしゃるように昔の程度にまで、五割、六割というところへ戻すということは、財源事情その他からいいましてなかなか困難ではないかと思います。  ただ、将来の方向といたしまして、やや長期に見ます限りにおきましては、やはり低所得層の問題、あるいは独身サラリーマンの問題というのは、今後とも毎年の税制改正課題になってまいろうかと思いますので、いまの段階で来年はどうなるか、再来年はどうするかというところまでは申し上げられませんけれども、中期的、長期的に見ますならば、御指摘のようなことを絶えず頭に置いていくべきものというふうに思っております。
  9. 野田毅

    野田(毅)委員 この給与所得控除関連して、今回の改正の特色は、いわゆる最高限度額の廃止ということで、最高は一割というものが青天井控除されていくということなんですが、この結果、たとえば、軽減額割合高額所得者のほうがかえって百五十万あるいは二百万というようなところよりも高くなってきておるという数字がちょっと出ておるわけであります。こういうことに示されますように、高所得者優遇措置ではないかということがいわれておるわけでありますが、この点についてはいかがでしょう。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回の給与所得控除改善というのは、単に減税ということではなくて、かなり給与所得控除制度を根本的に手直しをいたしたものでございます。給与所得控除性格につきましては、しばしば当委員会においてもお尋ねをいただき、お答えを申し上げておりますとおり、必ずしも明快直截なものではないわけでございますけれども、しかし、何といいましても、必要経費概算控除という性格最大給与所得控除の本質でございます。  そこで、必要経費概算控除ということになりますと、事業所得者その他の場合について考えてみますと、御存じのように、頭打ち制度がないわけでございまして、たとえば、作家が著作物を出す、印税収入があるという場合に、毎年毎年その印税収入については、多い年もあり少ない年もあるわけでございますけれども、その場合の必要経費の見方というものにつきましては、いわゆる頭打ちということで、どこかで金額がとまってしまうということはないので、やはり収入の額に応じて増加していくという考え方をとる。これはいいか悪いかは別にいたしまして、長年行なわれてきたことであり、かつそれが一般の常識に合うということであるわけでございます。  それを考えますと、サラリーマン必要経費概算控除であるという性質を持つ給与所得控除について、現行制度のように、給与収入六百十六万のところで七十六万円の最高限度額頭打ちになっておるというふうな制度は、やはり何としても給与所得控除を本来の意味における必要経費として考えているものではない、不十分である、不徹底であるといわざるを得ないわけでございまして、私どもといたしましては、この問題を理屈の上で議論いたします過程におきまして、かねてから問題があるというふうに考えておったわけでございますが、これを今回のように青天井にいたしますということは、言ってみれば、その改正の時点においてかなりの財源を要することになりますので、数年前から心がけておりましたけれども、なかなか実現できなかったわけでございまして、今回かなり大規模減税ができるといいますか、減税のために財源を充当することができるという事情にありますということにも関連いたし、また給与所得控除制度頭打ちがあることがいろいろな税制上の弊害のもとになっておるという御指摘を各方面から受けましたことに関連いたしまして、踏み切ったわけでございます。  その結果、おっしゃるように、俗に金持ち減税といいますか、重役減税といいますか、そういう御批判を受けることになるわけでございますが、そのこと自体は、ある意味では、ことばが適切でございませんが、覚悟の上でといいますか、十分それを見きわめた上で、なおかつ思い切ってそういうことにしたほうがよろしいということでしたわけでございます。その結果、かなり軽減割合その他の点において、中級、高級所得者に有利な税制改正になっておるということは事実でございます。
  11. 野田毅

    野田(毅)委員 私は、給与所得について、従来のような控除限度額七十六万円、この頭打ちがあったということ自体が本来おかしいのではないかと思う。現在、総合課税ということが近代的な所得税であり、原則であるということになっておりますが、実際に中身を見てみますと、どうも汗を流して働いて得た所得というものに対する税の扱い方がかなり過酷である。  これに比べて、たとえば、土地の譲渡なり、株式の譲渡なり、あるいはまた、理屈はありましょうが、配当については配当控除もある。こういうような、知恵は働かせたかもしれませんが、汗を流さなくても得られるような所得、しかも、全般的に見て、いわゆる金持ちというものはどういう所得種類によって所得を得ておるかということを考えますと、やはりこういう資産性所得について、もっときびしくしなければいけない。ところが、現実には、いろいろな名目のもとにこういう総合課税というものの原則がくずされておって、結局は、給与所得者に対してかなりきびしい税体系になっておるということも事実であろうかと思います。  そこで、給与所得控除について青天井にされるということは、これはまたその意味でけっこうであります。もっとほかのものも含めて、実質的には一種総合課税というものがもうくずれておるのじゃないかという気さえするものでございますから、ここいらで一応分類所得税的なものの考え方、これはかつてあったわけでありますが、今日、必ずしも分類所得税によってのみ税体系考えようということではありませんけれども、もう少しそういう意味勤労性所得というものを優遇する、そして資産性所得に対してはもう少し重課していいのではないかという全般の哲学が、どうしても必要になってくるのじゃなかろうかと思うのです。こういう分類所得税というものについて、ひとつ局長自身のお考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在の所得税制は、御存じのように、総合累進ということになっておるわけでございますが、さて、現実はどうかということになりますと、御指摘のように、かなり総合累進から離れておる面があるわけでございます。総合累進からどういう面で一番はずれてきておるかといいますと、勤労性所得資産性所得の問題であるということも、これまた、ただいま御指摘になった点でございます。  そこで、所得税体系の問題として考えますときには、勤労性所得資産性所得のバランスを回復するということに最大の焦点を置かなければならないということも、いままさに御指摘のとおりでございます。そういう方向に向かう場合にどういう道があるかと申しますと、一つは、総合課税のたてまえをとっております現行制度のままで、いろいろくふうするという考え方でございます。この考え方の中でやり得る方法は、一つは、今回のように勤労性所得軽減を進めていくというのが、一つ両者の接近をはかる方法でございます。第二の方法は、資産性所得重課をはかっていくという方法でございます。  この資産性所得重課の問題は、どうしても考えなければならぬ問題でございます。特に、たまたま現在の資産性所得アンバランスの典型的なものは、土地長期譲渡所得分離比例税率というものがその最も典型的な形であり、言ってみれば、課税の公平を害するような形での税制になっております。これをどうするかというのが具体的な日程として考えられる問題でございます。現行長期譲渡所得分離制度は、御存じのように、四十四年から始まっておりまして、五十年の十二月三十一日までの制度になっております。これをぜひとも五十年度税制改正の際には何らかの形で考えなければならぬ。片方で、土地政策宅地対策ということを考えながら、同時に、税の不公平の是正という見地からメスを入れなければならぬというふうに考えております。  今回の四十九年度改正におきましても、むしろ日程を繰り上げてやってはどうかという御意見も各方面から寄せられました。私どもも研究いたしましたが、どうもまだ具体的にどうしたらいいかという名案が浮かばないということのために、予定どおり来年まで見送らしていただいたわけでございますが、そういう方向でひとつ資産性所得の中の、特に土地問題の税負担アンバランス是正努力を続けてまいりたいと思います。  第二は、御指摘のように、分類所得税に戻ってはどうかということでございます。このことは、私ども中で議論いたします際には、やはりちらちらと出てくる議論でございまして、私ども自身も全く頭にないというわけではございません。やはり、第一の総合所得税のままで改善する方法と相対応する考え方として、分類所得税という考え方を絶えず頭の中に置いてはおります。置いてはおりますが、しかし、総合所得税のままで現行弊害を除去するということを完全にあきらめるといいますか、ギブアップするには少しまだ早いのではないか。  土地につきましてもそうでございますが、株式につきましても、配当あるいは株式譲渡所得につきましても、それからまた利子につきましても、なおもう一段と総合の実をあげる方法はないかということについて、努力を繰り返していくべきではなかろうか。その上でなおかつうまくいかないという場合に、初めて昔の、戦前の分類所得税に戻るということが検討の課題になってもいいのではないかというぐらいのウエートで、現在のところは、分類所得税のことは頭の片すみにはあるという程度のことでございまして、いま直ちに、総合所得税がうまくいかないから分類所得税に戻るというふうには考えていないわけでございます。
  13. 野田毅

    野田(毅)委員 所得税についてはまだいろいろこまかいところがあるのですが、これはいずれほかの委員からも御質問があると思いますので、次に法人税の問題に入りたいと思います。  御承知のとおり、今年度税制改正案では、たとえば金融機関に対する貸し倒れ引き当て金繰り入れ率の縮小、あるいは法人税基本税率引き上げ、これに対して中小企業については、たとえば同族会社留保所得課税限度額引き上げ、あるいは軽減税率適用範囲拡大、こういう形で、いわゆる大法人に重く、中小法人には軽くというような方向づけが従来以上に強く、明確に打ち出されておるということは、やはり一つの前進であろうかと思います。  特に、かねてから批判の強い交際費損金算入限度額の縮小の問題、これをどういう形で縮小するか、たとえば四百万という定額部分について手を触れるのかどうか、いろいろ御検討なされたと思いますが、その結果、資本金基準というものについて、従来の千分の二・五から千分の一に圧縮をするというような形で、やはりそういう意味では、これも大企業に相対的に重くなるような配慮を加えられたわけであります。  そこで、これは前々から問題になっておるのですが、実際問題として、基本税率引き上げはなされたのですが、配当課税率が、これも一応引き上げになってはおりますけれども、やはりいわゆる経過措置がとられておるというこの問題でございます。  従来から、確かに、今日の日本税制そのものの考え方が、いわゆるシャウプ以来の法人擬制説の上に立ってなされておる。したがって、こういう配当課税率がいろいろあるわけでありますが、しかし、税制をつぶさに検討してみますと、必ずしもこの法人擬制説そのものが純粋な形で適用されておるわけでもないし、さらに重要なことは、一般国民がすでにそういうような考え方を持っていない。特に、資本と経営がかなり分離されてきておる、しかも、企業そのものが独立した主体として行動しておる、そういう社会的実態から考えますと、この際、配当控除をも含めて、配当課税率というような措置そのものについてもひとつ思い切って廃止したらどうかという意見が出てくるのも、もっともなことであろうかと思います。この点についての当局のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回の法人税率の手直し関連をいたしまして、法人税の仕組みをどのようにしたらよろしいかということも、かなり部内では検討をいたしました。政府の税制調査会に諮問といいますか、意見を出しますときには、その点は整理をいたしまして、今回のは法人税負担を上げるということに重点を置きまして、法人税の仕組みをどうするかということは来年度以降の問題にしてはどうかという形で、税制調査会の論議をあまり多方面に拡散することを防ぐ意味で、そういう持ち出し方をいたしました。しかし、繰り返して申しますが、部内では相当その点も研究したわけでございます。  いずれにいたしましても、法人制度につきましては、法人間の支払い配当、受け取り配当について、何らかの形による調整が必要でございます。現在は、御承知のとおり、これを支払い段階で調整するという感覚ではなくて、受け取り段階で調整するということにしておりまして、ある企業が他の企業から受けました配当は益金に算入しない、こういうことで、こちらで課税になり、もう一ぺんこちらで課税になるというのを防ぐために、支払いの段階では課税になるが、受け取りの段階では課税にならぬ、それから、受け取る人が個人であれば、それは配当控除という制度で調整する、こういうことになっているわけでございます。  この受け取り段階での調整制度がいいかどうかということにつきましては、いわゆる利潤税説であるとかあるいは実在説であるとかということとの関連から、考え直したらどうかという議論があるわけでございますが、そうかといって、二つの法人間あるいは法人と株主との間において調整をしないという議論はないわけでございまして、やはり何らかの形で調整は必要であるということは、これは理屈の上で当然だとされておるわけでございます。  そこで、ただいま非常に多様な御質問でございましたが、まず第一に、配当控除をやめたらどうかという御議論がございましたけれども、この御議論は、配当控除をやめるということは、配当につきまして、受け取り段階での調整をやめて支払い段階への調整に持っていくということでございまして、その場合には、配当軽課をいままでよりももっと厚くする。極端に申しますならば、配当も損金に算入してしまうというところまで議論はいくわけでございます。  そこで、どっちの方向へ行くべきか。あるいは現在の奨励措置でありますところの配当軽課措置をやめまして、そしてもっと受け取り段階での調整に、二重課税調整に徹すべきかというのをそろそろきめなきゃならぬ。もう少し割り切っていかなきゃならぬ。そうしないと、一般の方々にわかりにくい制度になり、何か法人だけいろいろな奨励措置があるみたいな印象が一般にありますから、それを一般の方にわかりやすい制度にするためにも、何らかの手を加えなきゃならぬということでございます。  ただ、今日の段階では、それをどっちの方向へ持っていくか。受け取り段階での調整の現制度をそのままにしておいて、そうして支払い段階での奨励措置であるところの配当軽課措置をやめるか、それとも根本的に法人税をやり直しまして、支払い段階の調整にするということにするかというあたりは、現在のところ、まだ、各方面の相当長時間にわたる大ぜいの方の御意見を徴しないと、結論が出ないと思います。  ただ、申し上げられますことは、今回の税制調査会からの答申では、「法人に対する税負担のあり方の問題に関連して、配当軽課制度、受取配当の益金不算入制度あるいは配当控除制度法人税基本的な仕組みについて本格的な検討を行なうとともに、所得に対する課税にとどまらず土地や償却資産に対する固定資産税等法人の負担に帰する各種の課税についても併せて検討すべきである」ということで「今後当調査会」、税制調査会のことでございますが、「当調査会に特別部会を設けて検討を重ねるべきであろう。」ということになっておりまして、今年の五、六月ごろからこの問題に税制調査会では取り組んでいただくということを予定いたしておるわけでございます。  欧米の法人税制も、御存じのとおり、たいへんゆれ動いているところでございます。それらをにらみ合わせながら、どこに落ちつけたらいいか考えてみたいと思いますが、現段階で、私が二つのうちのどっちがよりよいかという考えを持っているというわけではございませんので、その点は御了承を得たいと思います。
  15. 野田毅

    野田(毅)委員 いま非常に懇切に御説明があったのですが、一つ気になるのは、私が先ほど来ちょっと申し上げておるのは、配当軽課をやめて配当を損金に算入して、受け取り段階で調整をするということではなくて、支払い配当基本税率並みの課税をする、受け取り配当についても、当然これも所得として課税をする、そういう利潤税説あるいは実在説に立った考え方ですっきりしていけば、その点の調整の問題というようなことも、そんなに心配しないでいいのじゃないかという気がするわけであります。  これに似たようなことは、現在すでに——たとえば、受け取り側が益金に算入されるから支払い側は必ず損金にならなければならないという理屈はないわけなんです。支払うほうが益金に算入されても、受け取るほうがそれに対する課税を、つまり、両方ダブルパンチを受けてもかまわないという制度は、今日の税体系の中にもあるわけです。御承知のとおり、役員賞与については、これは払うほうも益金処分で法人税課税されるけれども、受け取るほうは受け取るほうで、やはり給与所得として所得税課税されておるわけです。そういうようなこともあるものですから、今後検討なされる場合には、ひとつぜひともその点も考慮に入れていただきたいと思うわけです。  つけ加えますならば、特に、受け取り配当益金不算入制度というものは、これまた実際の税務行政面で、負債利子控除なんかの関係もあって、きわめて複雑な計算をしなければいけない。これは法人としてもいろいろたいへんなことでもあろうと思いますし、前からそういう産業界の中で、負債利子控除をやめてくれというような要望があることも事実でございます。したがって、この問題も、税制の簡素化という観点をも含めて、早急に御検討願いたいと思うわけでございます。  この点について、重ねて御意見をお伺いしたいと思います。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃることは、非常によくわかるわけでございます。昭和四十年の初めごろでございましたか、政府部内におきましても、また税制調査会におきましても、利潤税説的な考え方あるいは法人実在説的な考え方でものごとを処理してはどうかという議論が盛んに論議されたことは、よく御承知のとおりでございます。したがって、御指摘のような考え方を前提にした法人税の仕組みを立てるということも十分考えられるところでございます。  しかしながら、問題は、もう一つ前に、日本企業のように金融機関から借り入れをして、そしてどんどん設備を拡張していく、その借り入れた利子は損金になっていくということ、つまり、明治以来の企業の間接金融方式については非常に問題があるわけでございまして、株式発行によって市場からみずから直接資金を調達する直接金融方式と、金融機関から金を借りて設備を増強したり、あるいはたなおろし資産の一部をそれでファイナンスしていくという間接金融方式とが(記号なし)ほどほどに組み合わされるべきであるということではないかというのが、また別の産業金融の問題としてたいへん問題になっております。  その産業金融の問題を考えます場合に、現在は総じて借り入れ金のほうが有利であって、みずから資本を調達する方式のほうが不利であるといわれております。それを実在説で二重課税をどんどんそこでやりますと、ますますその開きが大きくなってくるという問題がありますので、その日本企業金融のあり方いかんという問題とこの問題は密接に関連しておりますところから、そして今日のように自己資本率が二〇%を割ってしまったという現状からいたしますならば、はたして実在説的な考え方法人税を仕組むことがよろしいかどうかということについては、産業体制の問題として非常に大問題である。  先般来、国会で予算委員会等におきまして、一金融機関が一商社に多大の金を貸しているじゃないか、それはおかしいじゃないかという御議論がありますが、そういったこととも関連いたしまして、直接金融、間接金融の問題はまさに大問題であるということでもあるので、税制の問題としてだけでなしに、産業体制、産業金融のあり方との問題で、この問題は私ども取り組んでいかなければならぬと思っております。ただ、それはそう何年もゆっくり考えていればいい問題ではないということがありますので、税制調査会でも、再び特別部会を設けて、この際もう一ぺん取り上げて研究してみようという姿勢を示されたのは、そういう趣旨でございます。御趣旨はよくわかりますので、ひとつ大いに勉強してみたいと思うわけでございます。
  17. 野田毅

    野田(毅)委員 先ほど交際費についてちょっと触れたのですが、確かに課税強化がなされたわけでありますけれども、率直に言って、いまのままの形でいくならば、この四百万という定額部分が、たいしたことはないかもしれないが、悪用されていくという面がないでもないのではなかろうか。これを利用して、どんどん子会社をつくっていけば、完全にしり抜けになっていくのではないかという面もあるわけでございます。金額からいって、大企業が特にこれを利用しておるとかいうようなことはないかもしれません。  しかし、いずれにしても、そういう子会社をたくさんつくることによって、これをくぐっていく。特に、法人について多段階税率を採用しようというようなことを考える場合には、特にこの点が問題になっていく。利益を分割していく、これをどうやって監視をしていくかということになるわけですが、今日、企業の中においてもコンピューター方式を相当取り入れておるということも実態でありますし、特に大手の大商社あるいは大銀行を中心とする企業グループにおいては、企業ぐるみとしての決算といいますか、そういうものを一つ頭の中では当然こしらえておるはずであります。そういう連結決算というようなことを、もうそろそろ子会社をたくさん持つような大法人について義務づけていくということも考えていっていいのじゃないか。もうすでにそれが可能な事態にきているのではないかという気がするわけでありますが、この点について、お考えをお伺いしたいと思います。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘の連結決算といいますか、連結財務諸表の問題につきましては、現在、主として企業会計のあり方の問題として検討が進められております。  なぜそういう問題が日程にのぼってきたかといいますと、日本企業が国際化をしてまいりまして、日本の会社の発行株式が外国の証券市場で取引される、上場されるというような形にだんだんなっていくであろう、それから外国の発行会社の株が東京証券市場に上場されるということになっていくであろうということと関連をいたしまして、諸外国が大企業についてやっております連結決算方式というものを、日本の場合でも取り入れていかなければいけないということから、現在、企業会計審議会を中心にかなり精力的にその検討が進められておることは、御承知のとおりでございます。  これを税の面でどう受けとめるかという問題でございますが、率直に申しまして、私どもはまだその検討に入っておりません。いまのところ、企業会計審議会のほうで、この問題をどの辺のところに結着をつけるか、たとえば親子間の持ち株比率がどの程度のものから連結に持っていくかというようなことについていろいろの議論が進んでおりますので、それの成り行きを、言ってみれば、静かに見守っておるというのがわれわれの現在の立場でございます。  しかし、それが進行してまいりますならば、それに応じて税のほうでどう受けとめていくかということを考えなければならぬ段階に、だんだん入ってまいると思います。しかし、私自身あまりまだよく理解ができておりませんが、税のほうにこれを取り入れてまいりますことについては、税の制度が相当複雑になるようでございます。どういう問題が起こってくるか、なおいろいろ検討してみなければなりません。どういう問題がありそうかというテーマのリストアップをこれから始めようかというくらいの段階でございます。  先ほど、法人の税率について段階にしたらどうか、あるいは交際費の問題で子会社がたくさんあると問題があるじゃないかという御指摘がございましたが、まさにそういう問題がございます。そういう点から、税の公平の問題から何か考えてみたらどうかという御指摘でございますが、それも一つ考えではございますが、何もやっていないというわけではなくて、企業会計のほうでかなりそういう検討が進んでまいりましたので、それを受けとめる形で研究を進めてまいりたいと思っております。御趣旨とは若干ギャップがあるかもしれませんが、私どもも、そういう意味で連結決算の問題を、野田委員言われますほど積極的な意味ではございませんが、やや受け身の形でございますが、研究はしてまいりたいというつもりでおります。
  19. 野田毅

    野田(毅)委員 いまちょっと触れられたのですが、特に最近、大商社なり大手企業が海外に進出して現地法人をつくっていくという形がよく見られるわけでありますが、この前の予算委員会のいろいろな質疑の中でも、こういう海外につくられた現地法人所得がはたして正確に本社の所得に反映されておるのかどうか、その辺を実は国民も非常に知りたいわけであります。  特に、為替がこれだけ動いておるというような時期において、為替差損の計算がはたして正確にその点で反映されておるのかどうか、あるいは商品のやりとりの値段の問題、本社と子会社との間のやりとりのそこに何かごまかしがあるのではないかというような気持ちを抱いておるわけでありますが、この点は国税庁のほうになろうかと思いますが、こういう現地法人に対する調査は、現在はどういうような形で行なっておられるのか、あるいはまた、今後どういう形でこれを行なおうとしておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  20. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 御指摘のように、最近海外の取引がだんだんふえてまいりまして、商社その他大法人につきましては、海外の現地法人を利用しての取引が非常に多くなってまいりました。ある場合には海外の支店、ある場合にはこちらが一〇〇%出資の現地法人というかっこうでやっております。特に、出先国の方針がだんだん支店から現地法人のほうに推奨するように移ってきておりますので、そういう傾向が多いわけでございます。  御案内のように、海外法人の場合には、現地の所得自身は現地の課税ということでやっておるわけでございますが、それとの取引関係において、親会社のほうが取引の段階において売り上げを落としたり、あるいはかってに経費を計上したりということも、取引全体がふえてまいりますとだんだんふえてきております。私どもとしましては、これについてはできるだけ的確な調査をやりたいということで、いろんなくふうをしておるわけでございまして、第一には、何と申しましても、そういう海外取引に対する調査技術の開発と申しますか、こういうものの研修あるいは開発ということにつとめております。  それから第二は、租税条約におきまして、特定の国とは情報交換の制度がございますので、これをできるだけ活用してやっていく。それから、そういうものによって、まず、国内にある本社の帳簿を調べまして、それで疑わしい場合、あるいはよくわからない場合には、海外出張によって実態の把握をやるということもやってございます。  これにつきましては、やはりこれまでは何と申しましても、いろいろ現地へ出かけていってやるのには調査官自身の語学その他の限界もございましたので、先ほど申しましたように、まずそういう専門の調査員の育成、訓練ということに重点を置いてきたわけでございますが、最近はだんだんそういう不正所得も多くなってまいりますので、積極的にこちらから出かけていくケースもございます。
  21. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっといまのを補足して御説明させていただきたいと思いますが、ただいまのはわが国の企業の海外支店における活動の問題に関連して、調査が十分できるかどうかということの問題でございますが、実は、この問題は、国際的に非常に大きな問題になってきております。御存じのように、アメリカを中心としてコングロマリットというのが世界で活動しておる。それぞれ総括店はアメリカにあるが、ドイツ、フランス、イギリスというところにそれぞれまた関係会社がある、そのドイツ、イギリス、フランスの関係会社を、その出先出先の課税当局が十分にそれぞれ把握できるかどうか、そしてそれが総合した場合に、十分把握できているかどうかというのがたいへん問題になっておりまして、いまから三、四年前から、そういう欧米主要国とアメリカとの間において、一種の共同作業みたいなものをやってみたらどうかというふうな話が出ておるところでございます。  わが国の場合には、そういうものに比べますれば、まだまだはるかに多国籍企業というには値しない程度のものでございますが、それにしても、そういう方向課税の、国境をまたがる公平みたいなことを維持していくということを考えませんと、税の関係によりますところの企業間の税負担アンバランスが出てまいります。それからまた、税の安い特殊な国がありまして、そこへ税が逃げる、本社が逃げるとか支店が逃げるとか、いろんな問題がございます。  そういうことがございますので、私どもといたしましては、これは日本企業の問題につきましては国税庁のほうでいたしておりますが、国際的な処理の問題につきましてはまだごく初歩でございますが、いろいろな国際会議等の場におきましていろいろ研究が進んでおり、かなりアメリカ系の多国籍企業の問題については検討が進んでおりますので、そういうことも今後の参考にして、順次整備をはかってまいりたいということを申し添えておきたいと思います。
  22. 野田毅

    野田(毅)委員 これは税法と直接の関係はないかもしれませんが、きのうの何新聞でしたか、いま行政管理庁のほうで、いわゆる国民総背番号制の採用があるいは近くあるかもしれぬので、その秘密保持なりあるいはやり方なりについて指示をしたとかいうようなことが、ちょっと記事に出ておったような気がいたします。こういうことになってまいりますと、特に社会保険のほうからこの要請が強いわけでありますが、また特に預金の問題等をも考えますと、非常に税務行政の上にとってもこれはプラスになる措置である。いろいろ国民の中で反対論の強いことも事実でありますが、いずれにしても、これが早晩俎上にのせられて大きく世論をわき立たせるようなことになるかもしれない。  そこで、私は、もういまからすでに、その採用に踏み切った場合にどういうプラス、マイナスがあり、あるいはまた具体的にそれを取り入れた場合の税務行政のあり方と姿というものも念頭に置いて受け入れ準備をしておかなければいかぬだろうと思いますが、この点について、国税庁はいまどういう準備段階にあられるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  23. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、行政管理庁を中心にいたしまして、その問題はいろいろ勉強しておられるわけです。特に昨日新聞に出ておりましたのを拝見いたしますと、電子計算機が各省でいろいろのかっこうでやられている、それとの関連をどう考えるかというのが一つと、それから特定の省あるいは特定の庁であれば比較的秘密の保持が楽であっても、いろいろの省にまたがって一貫の番号をつけた場合に、場合によっては、どこかで一カ所秘密が漏れた場合に、一連のすべての資料がその番号によってわかるということは、個人的な秘密の漏洩から見て非常に問題じゃないかというような点もございますので、そういう電子計算機のあり方あるいは秘密漏洩防止のあり方と、そういう付番との問題の関連ども、やはり行政管理庁を中心にして、関係の省庁を集めて検討をしたいというように考えておられるようでございます。  私どももやはり電子計算機を持っておりまして、そういう面で、秘密の漏洩については、特に税の立場から非常に神経質にやっております。したがいまして、片一方で、おっしゃいますように、付番によりまして、たとえば資料総合するとかなどのときには非常にメリットはあると思いますけれども国民全般あるいは行政官庁全体のあり方との関連でわれわれは考えていかなければならないと思いまして、そういう意味で、いろいろ勉強はしております。
  24. 高木文雄

    高木(文)政府委員 税制との関連で申しますと、しばしば非難を受けております、また先ほど野田委員から御質問がありました利子配当総合課税を実現いたしますためには、それを完全に実施する方法としては、どうしてもこの制度との関連を忘れることはできないわけでございます。私どもとしては、ある意味でこの制度が早急に普及しますといいますか、実現に移るということは、課税総合の実をあげるという意味においては期待をしておるわけでございます。  しかしながら、反面、いまの答弁の中で指摘がありましたような、非常に弊害を伴う危険があるわけでございます。そこで、メリットとデメリットが非常に交錯をしているということでございまして、そのことがありますので、ただ、この課税総合の実をあげるということのためにのみあまりにこの問題を急ぐということでもいけないのではないかということで、慎重なかまえでおるところでございます。  しかし、いずれにいたしましても、行政の能率化という面のほかに、課税の効率化というためには、この制度はほんとうは非常に望ましいものであるというふうに考えております。
  25. 野田毅

    野田(毅)委員 この問題を取り上げましたのは、私自身もかつて税の職場におりまして、非常に申告審理なり内部事務に手がとられておるわけなんです。実際問題として、総稼働日数の半分ぐらいがほとんど内部事務の処理に追われておる。そういう中で、片や今回、超過利得税の課税の問題、あるいは徹底的に悪いやつをやっつけろという国民的な要求の高まり、こういうものにどうこたえていくか、あるいは、そうはいっても、現在かかえておる定員の中では部門間の異動をやっても、それだけではなかなか処理しきれない。したがって、特に法人税なんかの場合には、いわゆる優良申告法人制度というようなものを設けて、いわばいいところはもうあまり調査をしないようにしましょうというような形での合理化をはかっていく。なかなかそれなりの苦労はしておられるわけでありますが、税務職員の一線の苦労というものもやはりみんな理解してあげなければいけない、そういう点で質問をしたわけであります。  この点は、われわれが一番大事に考えておるのは、先般各先生方の協力によって、修正つきではありましたけれども、教職員の人材確保法案が通ったわけでありますが、それと同列に論ずることはもちろんできませんけれども、やはりこういう国家財政をささえておる第一線の、まあ警察はときには人を守ってくれるから感謝されることもあるけれども税務職員だけは絶対感謝されることがないというような実情の中で、黙々としてやっていかなければいけない。特にこういう世の中では、いろいろ反税団体なんかもありますし、その中でやっていかなければいけないということで、ひとつ税務職員の処遇改善についてぜひとも配慮していかなければいけない。この点について、今年度どういう点で税務職員の処遇が改善をなされたのかどうか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  26. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、税務職員は非常に困難な職場で仕事を黙々とやっておりますので、私どもとしては特に二つの点に重点を置いて来年もやり、これからもやっていきたいと思います。  その第一点は、一般の行政職と税務職との俸給の水準格差でございまして、御案内のように、四十七年のベースでは九・五%の水準格差でございましたのを、去年の八月の人事院勧告で一〇・三%まで引き上げていただきまして、これが本年度の予算に入っておるわけでございます。しかし、いまおっしゃいますように、教員等におきましては、三カ年で一〇%ずつという客観情勢もございますので、私どもといたしましても、さらにこの点努力していきたいと思います。  もう一点は、等級別定数を、より上位の定数を確保するように努力しております。これにつきましても、税務職員が一番関心を持っておりますのは特三等級と三等級でございますので、本年度はこれについてかなりの増加をいただいております。さらに、新しく一等級の上に特一等級というのを新設いたしまして、上位等級の頭打ちの解消をはかっております。  しかし、御指摘のように、われわれとしましては、非常に困難な職場であると同時に、終戦直後に入りました税務職員の方、ずっと苦労された方がそろそろ中高年の年代になられまして、その方が非常に多く、一つの特徴ある体系をなしておりますので、この中高年対策ということもからめまして、さらに努力していきたいと考えております。
  27. 野田毅

    野田(毅)委員 政務次官もせっかくお見えでありますから、政務次官は税関係だけでなくて予算のほうにも非常に敏腕を発揮されておりますので、来年以降もこの税務職員の処遇改善問題については積極的に取り組むのだというお気持ちをひとつあらわしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  28. 中川一郎

    ○中川政府委員 野田先生御指摘のように、確かに税務職員は好かれる商売ではありません。警察官ならばやっつけられるほうもいるけれども助けられるほうもいるという、相半ばしておりますが、税務職員は一方交通、恨まれる商売でありまして、第一線でほんとうに苦労されておると思います。  そういう意味において、人確法における特別措置まではもちろんたいへんだとは思いますが、気持ちの上でできるだけのことをしたい、来年度予算にも何らかの形で反映するようにしたいと存じます。
  29. 野田毅

    野田(毅)委員 最後に、これはお願いでありますが、いよいよ確定申告の時期も迫ってまいりまして、今年度は非常にいわゆる納税相談の簡素化をされたように聞いておりますが、特に白色の場合の納税相談に関連するのですけれども、今年度は特に売り惜しみあるいは買い占め、これが大企業だけでなくて、末端に至るまでこれに似たようなことがあって、いわゆる便乗値上げが見られた。これに対する利得をやはりきびしく税の面でも追及していかなければいけないという世論が非常に強いわけであります。この点については、非常にきびしくやっていただきたいのは当然なんでありますが、一方で、先日も実は熊本へ帰ってまいりまして、そういう事業所得者から泣き言を言われたわけであります。  この人は、まだ実際に納税相談に呼び出されたわけではないのですが、従来のようなセンスでまいりますと、いわゆる利益率なりそういう所得率というような段階で、ほかの人がこれだけの掛け率をやっておるのだから、あなたのところもそうだろうというような言い方をされると困る。これは実は、自分のところは物価抑制に協力をするつもりで掛け率を落として売っておる。それをほか並みに課税されてしまって、みんなと同じように便乗値上げをしたほうが、かえって得になるのだというようなやり方をされたのでは困る、こういうことを言っておったわけであります。  これはしごくもっともなことでありますので、その辺はひとつ、従来以上にきめこまかく各納税者の実態に即した納税相談のあり方なり、あるいは今後の事後調査においても、こういう点を特に念頭に置いて、実情に即した調査というものをやっていただきたい。これは要望でございます。その辺、ひとつよろしく国税庁のほうもお願いしたいと思います。
  30. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 便乗値上げその他によって非常に暴利をむさぼっているといいますか、所得をたくさんあげているものについては、法人中心でございますが、特に大きいものから重点的に、調査課所管を中心にしまして、現在実施しております。  ただいま御指摘のケースは、おそらく個人の白の営業者の方だと思いますが、その申告におきましては、ことしから納税相談のやり方をがらっと変えまして、いままでは署にお呼びしていろいろお話ししていたわけですが、原則として、今度は署にはお呼びしない。申告書を出していただけばけっこうだということにしております。したがいまして、いまお話しの点が起こったとすれば、事後調査をやるかやらないかという点、あるいは事後調査のやり方の問題だと思いますので、その点におきましても、大口あるいは税務から見た悪質というものを重点にやっていきたいと考えております。
  31. 野田毅

    野田(毅)委員 以上で質問を終わります。
  32. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 阿部助哉君。
  33. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何か午後から大臣の来る予定もあるようですし、お昼の時間の関係もありますので、私の質問の順序を変えまして、本論に入るのはあとにしまして、まず税務行政についてお伺いをしたいと思います。  税務行政の執行にあたっては、たとえ大企業でありましょうとも、また名もない庶民であろうとも、平等に取り扱うというのが法のもとの平等をうたった憲法上の要請であろう、こう思うのでありますが、この点はお認めになるのでしょうね。
  34. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、法令に従いまして公平平等にやるのがわれわれの責務だと考えております。
  35. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 さきに予算委員会で、大商社の脱税が問題になりました。これらの会社の社長も、大体その事実を国会で認めたところであります。これほどの事実がありながら、国税庁は青色申告の取り消しも行なわなければ、引き当て金や租税特別措置の取り消しも行なわない。これはどういうことですか。
  36. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 青色申告の取り消しにつきましては、いま御指摘法人税の場合は、われわれといたしましては、法人税法の百二十七条に従ってやっているわけでございます。通常の場合、この一号のたとえば帳簿等がはっきり書いてないとか保存がしてない、あるいは二号のそれに伴う税務署の指示に従わないとか、あるいは四号の申告書が期限までに出なかったというものは、比較的事実問題として的確に把握できますので、これによってやっております。  御指摘の点は三号の点でございまして、これにありますように、「取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある」かどうかという点でございまして、一般的には帳簿がわりあいにはっきりしておりまして、その一部に仮装、隠蔽があった場合にも、はたしてそれが全体について真実性を疑うに足りる事実があるかどうかという点で判断が非常にむずかしく、われわれといたしましては、そこはどちらかといいますと、慎重な処理をしておるわけでございます。
  37. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 国税庁はこれに重加算税を課したことは事実ですか。
  38. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 一般的にただいま申しました隠蔽、仮装の事実があった場合には、われわれとしましては、内部のことばでは不正所得といっておりますが、そういうものにつきましては重加を課しております。
  39. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私のお伺いしておるのを、あなたぼかしては困るのですよ。この問題になった商社に重加算税を課したのは事実かどうか、こう聞いておるのであって、これは一般論じゃないのです。具体的なんです。
  40. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 個別の問題は、われわれといたしましてはその基準がございますが、この問題につきましては、予算委員会で社長さん自身もはっきり認めておりますように、重加算税を課しております。
  41. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 重加算税を課しておると、こうはっきり言っておるのですよね。そうすると、重加算税はどういうときに課するのか。あなた、さっき条文をあげられた。もう私聞くまでもなく、仮装、隠蔽、こういうときに重加算税を課する。そういうことになってくると、これは仮装、隠蔽があった、だから重加算税を課したのでしょう。これは青色申告取り消しの要件ではないのですか。
  42. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 先ほど申しましたように、青色申告取り消しの要件は、私どもといたしましては、百二十七条の第三号で判断いたしております。そこに書いてありますのは、御案内のように、「取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある」という点でございますので、重加を課し、そのもとになります仮装、隠蔽があったということはその原因にはなりますが、判断といたしましては、帳簿の記載事項全体についてその真実性を疑うに足る相当の理由があるかどうかというのが、百二十七条の三号の考え方でございます。
  43. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも納得できないですね。疑わしい、まだはっきりわからぬ。また、あなたのことばで言えば、むずかしい、だから青色の取り消しをしなかった。疑わしいならば、なぜ懲罰的な重加算税を課したのだ。重加算税を課してないならいいのですよ。皆さんが重加算税を課したとすれば、仮装、隠蔽があった、だから懲罰的に重加算税を課したのでしょう。私、何も青色申告を取り消せというのじゃないのですよ。ただ、法のもとで平等で、重加算税を課するに足る重大な仮装、隠蔽があった、仮装、隠蔽があったから重加算税を課したのだ、だけれども、大商社だから、大企業だから青色の取り消しはしない。それで引き当て金の取りくずしは大目に見て、それは取り消さない。だけれども中小企業の場合には、ぴしゃりとこれをやってしまう。中小企業だって、青色を取り消されて、そうして専従者控除だ、事業主報酬だ、引き当て金、こういうものを取り消されてくれば、これはまさに中小企業にとっては死刑宣告だ。その点はあなた認めるのでしょう。
  44. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 最初に、先生のおっしゃいましたことについて、私が少し説明不十分だったと思うのですが、重加を課す前提といたしましては、仮装、隠蔽があったからということでございまして、その仮装、隠蔽がありますと、必ず重加を課します。重加を課すことイコール青色申告取り消しじゃございませんで、青色申告取り消しは、記載事項の全体についてその真実性を疑うに足る相当の理由がある場合であります。  したがいまして、中小企業の場合でありましても、重加をごく一部課しまして、それによって青色申告を取り消さないというケースはたくさんございます。したがいまして、われわれといたしましては、重加を課した、イコール青色申告取り消しではございませんで、やはりそこには、帳簿の記載事項全体について真実性を疑うに足る相当の理由があるかどうかという判断でやっております。
  45. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、どうもその点は納得できないな。中小企業の場合には、最近、特に皆さんの考えが、一罰百戒的な考えでぴしゃりやってしまうんだよ。これは例をあげろと言われれば、私、幾らもあげますよ。ところが、これだけ問題になり、いろいろ言うでしょう。帳簿がちゃんとついておるといったって、ちゃんとうそをつけておるということもあるんだな。うそをつけておるから、仮装、隠蔽があったから、皆さんは重加算税をかけた。そうすれば、これは青色取り消しの最も要件なんですね。それをおやりにならない。けっこうです、おやりにならぬでいいのですよ。  それならば、私が一番最初確認したように、法のもとに平等ならば、中小企業の青色申告もそうむやみやたらに取り消しては困るということなんでして、そういうのもあると言うけれども、それならば、重加を課して青色を取り消さなかったという件数をあげてみてください。
  46. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 四十七年実績でございますが、若干その統計のとり方は違うかと思いますが、青色申告に対しまして更正決定をやった件数、これは八万九千件、約九万件でございます。それに対しまして、青色申告を取り消した件数が七千八百七十五件、約八千件でございます。
  47. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 こういう形で青色申告を取り消されるということは、中小企業にとってはたいへんな苦痛なんです。ですから、法のもとに平等なんだというたてまえからいえば、これだけ国会で問題になり、いや買い占めだ、いや何だといろいろ問題を起こしておる。こういうときですから、皆さんのほうでは、大企業にはたいへんに甘いという印象を受けざるを得ない。私はこの点が、どうも日本税制そのもの全体を通じても、そういう感じを受ける。また執行面でも、こういう形で大企業にはいろんな理屈をおつけになって、そうして保護をされる。保護をされるのはほんとうにけっこうなんだ。  繰り返し言うけれども、私は取り消せという主張をしているのではない。だから、大企業もこうなんだから、中小のほうも取り消さないように、皆さんもう少しあたたかい指導をすべきだ。それでなければいかにも不公平だ。大企業だけが恩恵をこうむり、皆さんから保護されておるという感情を強く受けるということに、私はどうもあなたの御答弁にまだ納得がいかないのです。それならば、中小企業に対する国税庁の態度を、もう一ぺんお伺いしておきたい。
  48. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 御指摘のように、この百二十七条第三号につきましては、特にいろいろ判断の要素が入りますので、私どもとしては、法のもとに、大、中小とも平等にやるように心がけておりますが、なお不十分の点がございましたら、中小企業のほうも大企業も平等にやりますように、努力してまいりたいと考えております。
  49. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 委員長、どうでしょう、もう少しやってもいいけれども、本論に入るとお昼になって、切れ目が悪くなるのです。だから……。
  50. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、去る二月二十七日質疑を終了いたしております。     —————————————
  52. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  54. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 ただいま議決いたしました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して森美秀君外三名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。山田耻目君。
  55. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ただいま議題となりました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、私よりその趣旨の説明を申し上げます。  まず、案文でありますが、案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略いたします。  御承知のように、今回の改正は、当面の内外の経済情勢から見まして、国民生活や産業活動に基本的な重要性を持ちます物資について需給関係が逼迫し、価格の異常な高騰を招いている事例が多い実情にかんがみ、かかる物資については、関税が輸入障害になっていると認められる場合には、これを軽減し、供給を促進することが肝要であるのであります。  このような観点から、物価対策として、このような物資を中心に関税率を引き下げるとともに、通関手続簡素化のための税率調整を行なうこととしているのであります。  また一方、関税負担軽減のほか、国民生活に関連の深い物品については、経済諸情勢の急激な変化に対処し得るよう、一定の法定要件のもとで政令により弾力的に関税の減免を行ない得る措置の拡充をすることとしているのであります。  さらに、関税制度の面では、各種の産業優遇減税制度について、関税負担の適正化の見地から再検討を加え、新しい時代の要請にこたえようとするものであります。  しかしながら、以上の措置は、その内外経済に与える影響も大きいものがあると思われますので、本法の施行にあたっては、わが国経済の実情に即した運用が特に必要であると考えられますので、次の点について政府の特段の配慮を要請するものであります。  その第一は、弾力関税制度についてであります。  弾力関税制度は、国内の物資需給の安定をはかるため、現行の関税法、関税定率法の例外的な制度として実施されているものでありまして、現在その対象となっているのは、米、大麦、小麦、もみ、砂糖、豚肉の主要食糧六品目となっているのでありますが、この制度をさらに拡充し、衣類や食料品など国民生活に密接な関連を有する物品を追加しようとするものであります。  御承知のように、物品を政令で追加しようとするときは、その要件として、国内の関連産業に相当の損害を与えるおそれがないと認められることであることが要件の一つになっているわけであります。しかし、弾力関税制度実施の具体的な発動にあたっては、本制度が価格見通しの確実性や政令委任という性格からいたしまして、その運用いかんによっては、政令で定められた物品が急激に国内に輸入され、ひいては国内関連産業の経営を圧迫し、関連産業の存立に悪影響を及ぼすおそれもあるのであります。  したがいまして、政府は、この制度の実施にあたり、関係業界などの実情を十分勘案し、慎重に運用すべきであります。  その二といたしましては、本案におきましては、生活の安定、充実のため、生活関連物資の関税の軽減または免除を行なうこととなっているのでありますが、その引き下げ等の効果が中間の流通段階で吸収されることなく、末端の消費者価格に十分還元されることが肝要であるのであります。  このため、政府は、物価対策の観点から、流通段階及び輸入品の流通機構に対し追跡調査を徹底する等、監視の強化等について特段の努力をなすことであります。  以上で趣旨説明を終わりますが、何とぞ、各位の御賛同をお願い申し上げます。     —————————————   関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行にあたり、次の事項について配慮すべきである。 一、弾力関税制度の実施にあたつては、物品の輸入の急増等により当該物品の国内生産者に悪影響を及ぼすことのないよう慎重に運用すること。 二、生活関連物資の関税引下げ措置がとられたことに伴い、その引下げ効果が末端の消費者価格に反映するよう監視の強化等について特段の努力をなすこと。     —————————————
  56. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。
  58. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を尊重して善処いたしたいと存じます。     —————————————
  59. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  61. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 次に、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。阿部助哉君。
  62. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 午前中具体的な問題をお伺いしましたけれども、いよいよ本論に入りまして、所得三法についてお伺いいたします。  長年にわたって自民党政府と財界とによってとられてきました高度経済成長政策、これは国民をインフレの破局に追い込んだ。だれの目から見ても、高度成長政策は、抜本的に再検討され、転換をはからなければならない時期に来ていると思います。福田大蔵大臣もそのことを認め、狂乱物価の抑制、インフレ弱者、すなわち低所得層の保護が緊要であると述べているが、この点は大臣、間違いございませんね。
  63. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 間違いございません。
  64. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 今日までの税制は、この高度成長政策を推し進める重要な道具であった、こう私は考えるのであります。それだけに、当然税制もまた根本的に検討され、軌道の修正をはからなければならない。特に、当面インフレに対して非常に弱い立場にある、いわゆるインフレ弱者といいますか、被害者を救済する任務を果たさなければならない、こう私は考えるのであります。  この立場から見て、四十九年度税制改正案、きわめて不満足であります。それだけでなく、ある意味では逆行している面、内容が少なくない。私はこの四十九年度税制改正のおもな内容、所得法人、特別措置の三法の政府案に反対して修正を求める立場から、以下、御質問を申し上げるつもりであります。  その第一は、金持ち優遇と脱税装置になっている利子、配当への優遇を強めておる、こういうときに資産税のあり方がどうあるべきかという点についてであります。第二は、労働者に年度減税を実施するとともに、課税のあり方について抜本的な改正を求める。第三は、公害関係租税特別措置の拡充と租税特別措置のあり方について、私は反対の立場からお伺いをしたいと思うのであります。なるたけ簡単明瞭な御答弁をお願いしたいと思います。  まず、第一にお伺いしますのは、利子、配当についてでありますが、第一に確認しておきたいのでありますけれども、現在の預貯金の利子所得は、たてまえとしては確定申告で他の所得と合算され、累進課税される、これがたてまえであると思います。その場合、利子から、この利子の一五%の所得税が前もって天引きされる。しかし、利子から二五%の所得税の天引きを認めれば、確定申告で累進課税されない。また要求払い預金の利子は確定申告の必要がなく、元本百五十万円以下の利子所得は非課税、これは今度三百万になるようでありますが、こういうことになっておると私は思うのでありますが、この点は間違いございませんね。
  65. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおりでございます。そのとおりでございます。
  66. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、この二五%ですね、実効税率が二五%、こういう所得は、現在の税制でいったら大体どれくらいの所得の人に当たるのですか。
  67. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実効税率で申し上げることはちょっとむずかしいわけでございますが、現在の所得税の累進税率で申しますと、現行法で所得三百八十万円から三百二十万円の間が、二七%と二四%の刻んだところに来ております。でございますから、まあまあ三百八十万円以下くらいのところが限界税率でいって二五に当たる。ところが、新しい税率の刻みでいきますと、六百万円のところが二七%、それから四百万円と五百万円の間のところが二四%でございますから、六百万ぐらいのところに二五という率は当たるということになろうかと思います。
  68. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 実際に二五%、所得全部から取られるというのは、主税局長、その程度ですか。累進ですから、ここまでは何%、このこえた分は何%、こうなっていくんです。それ全部合わせて二五%を取られるのはどのぐらいの所得者かと、私はこう聞いておるのですよ。
  69. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いま直ちに調べてお答をいたします。  ただ、この利子の源泉選択が二五%であるということの意味はどう理解したらよろしいかと申しますと、その利子がずっと他の所得総合して最後の所得だと考えますと、六百万円をこえる方、他の所得が利子所得を除いて六百万円をこえる方は、明らかに総合するよりは源泉選択のほうが有利だ。六百万円の所得があるのに、そこへたとえ百万円でも二百万円でも利子収入がありますれば、その上積みの所得については六百万円をこえて働いてきますから、そこで、そういう方については、現在の源泉選択の二五の税率のほうが相対的に低くて済む。ところが、それ以下の方の場合には、むしろ源泉選択をするよりは総合を選んだほうが得だ。そこのところがクロスポイントになっているということだと思います。
  70. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもあなたは、私の質問にまともに答えていない。それはゆっくりあとでお伺いしますけれども、私の聞いておるのはそういうことではないのですよ。いいですか。
  71. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その利子所得についての総合課税意味というのはそういう意味だと思いますけれども、お尋ねが、実効税率が二五%のところはどの辺にきているかと……。
  72. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もう一ぺんぼくは言い直します、あなたが間違えておるから。そうじゃなしに、たとえば、累進、全部そんなものを抜きにして、全所得の中から二五%税金を納めておるという層は幾らぐらいの所得なんだ。そうすると、私の計算ではもっと大きいんですよ。そうでしょう。
  73. 高木文雄

    高木(文)政府委員 所得金額で一千万円でございますと、現行制度改正前で税率が二九%ぐらいになります。それから改正後で二三・二三ということになりますから、現在の改正後では千万円をちょっとこえたところの実効税率が二五である。現行制度では大体八百万ぐらいのところが二五であるということが、実効税率という意味ではいえると思います。  それはあくまで経費を控除した残りの所得の額で申しております。収入ではなくて、税率は所得の額にかかりますから、控除等を働かしたあとの所得の額で申しております。
  74. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなた、一つ一つ自分でこねくり回して答弁されるものだから私の質問と食い違うんでして、私は、どれぐらいの所得の人が二五%税金を納めておることになるかという、まことに簡単な、単純な質問なんですよ。そうすると、あなたが言う八百万円とか一千万円ということじゃないのですよ。国会議員の場合、所得は大体一千万ちょっと切れるというけれども、それほど納めていないでしょう。
  75. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは収入でございます。先生のおっしゃるのは収入でございます。(阿部(助)委員「だから所得でしょう」と呼ぶ)いや、所得というのは、給与所得控除を引きました残りが所得になるわけでございます。事業所得者は、収入から経費を引いたものが所得でございます。それから給与所得者の方は、給与の収入から給与所得控除を引いたもの、それがいわゆる所得概念でございます。ですから、その所得で、さっき申しました八百万と一千万の間ぐらいのところへくるという意味でございます。
  76. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私の計算ではもう少し大きくなるんだけれども、いま私、計算した資料を持ってきていませんからあれですが、そうしますと、結局、源泉選択で有利になるのは高額所得者。やはり高額所得者というのが、この累進税率を緩和されるということで、これは軽減されるということになるわけですね。
  77. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いずれにいたしましても、源泉選択は二五の一本税率でございますから、したがって、高額所得者には有利であり、それから、そのある線から下の方は源泉選択をしたらかえって不利になる。でございますから、源泉選択をしないで総合したほうが有利になるという形になっております。
  78. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 預貯金の利子に対する課税の仕組みは、どうも脱税の措置である、金持ち優遇税制のモデルだというふうに私にはとれるわけであります。匿名と架空名義の預金が脱税の武器、隠れみのであることは、もうこれは周知の事実であります。一五%の天引きですべてを済まそうとする者は少なくないし、その上、預貯金を分散して全く所得税をのがれている者も多い、こう聞いておるわけであります。こうした預貯金に対する対策というものをどのようにとられておるのか、お伺いしたいのです。
  79. 高木文雄

    高木(文)政府委員 預貯金に対する課税の問題は非常に長い歴史のある問題でございまして、どうやってこれを総合に持っていったらよろしいかということは、私ども税を担当する者にとっては、諸先輩以来、長年の懸案であったわけでございます。  御存じのように、現在の源泉選択制度というものは、四十五年度税制改正で取り入れられることになったものでございます。それまでは源泉選択制度ではございませんでして、分離課税制度であったわけでございます。現在の源泉選択制度では、あくまで総合課税をたてまえとしながら、ただし、特に源泉選択制度を選ばれるという方については二五%でよろしい、それ以上は課税をいたしませんという一種の優遇措置をとりながら、かなり高い税率である二五というところで線を切っておるわけでございます。  これを今後どのようにしたらいいかというのが一つの問題でございまして、源泉選択というのは租税特別措置による特別措置でございますから、近々また洗い直す必要があるわけでございますが、これを完全総合いたしますためにはどうしたらよろしいかと申しますれば、午前中の御討論にもちょっとございましたが、どうも完全名寄せが実現できませんことには、完全総合は不可能でございます。  金融機関がわが国の場合にはいろいろございます。たとえば、銀行の中でもいろいろございます。普通銀行のほかに、信託銀行なりいろいろございます。そういうふうに、金融手段、金融資産の貯蓄の手段がいろいろあります場合には、それをどうやって名寄せをするか、総合するかということができません限り、その総合課税は不可能なのでございます。  そこで、現在の段階では、何らかの意味におきまして、その総合の可能な範囲を狭める、全国の一億の方々の総合というのは不可能でございますから、その範囲を狭めるという意味も含めましていま選択制度をとっているわけでございますが、今後の課題といたしましては、何らかの意味における総合制度、税のサイドからしばしば例に引かれますのは、アメリカでとられておりますように、一定金額以上の預金についての税務当局への通報義務というようなものを置くかどうかというような問題を含めて、何か総合制度というものを考える必要があるわけでございますが、それには片一方のほうの預金奨励、貯蓄奨励の趣旨から申しまして、かねがね議論がございましたが、そちらの政策と衝突するということで、今日まで解決に至らないわけでございます。
  80. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いろいろおっしゃったのですが、貯蓄奨励の段階がいろいろあるから、それはまたあとでお伺いしますけれども、この段階で大蔵省は、国税庁、銀行局でこれについて覚え書きをかわしておりますね。
  81. 高木文雄

    高木(文)政府委員 覚え書きというのは、たぶん昭和四十六年か五年でありましたか、現在の源泉選択制度をとりますときに、税の執行の問題と、それから預金についての意欲の減退を来たしてはいかぬということの関係をどこで調整するかということで、源泉選択制度を採用するときに私どもが銀行局とよく相談をいたしまして、最終的には、たしか国税庁と銀行局の間で覚え書きを交換しておる。それに基づいて、その後も税務行政、金融行政をいたしておるということで、そのことではなかろうかと思います。
  82. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは四十五年の一月なんですよ。これは極秘文書だということで、極秘なんという判こを押してある。これを見ていきますと、私はこれを読み上げて一つ一つ問いただしてもいいんだけれども、大体どういうことをきめてあるのですか。
  83. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはちょっといまはっきり覚えておりませんが、たしかそれそのものは極秘文書でないと思います。私も当時主税局におりましたので大体覚えておりますが、一番問題は、源泉選択制度をとるということになりました場合に、その違反がある。つまり、いろいろな意味での源泉選択制度の違反、それから、源泉選択のほうじゃなくて、普通の、総合いたしますからということを前提にして、一五%の源泉徴収でお願いをしますと言った納税者がある。その者については、調書が銀行から税務官庁に出てくることになっておりますが、それを調べたら住所に該当者がいないとかいうことで、見つからないというようなことが起こる。その場合に、そういう支払い調書の提出金融機関の責任範囲をどのようにしたらいいかというような問題、それから、何らかの形で金融機関が源泉徴収をすべき額を徴収していなかった、そのことについて、金融機関サイドにそう強い責任を求めることができないような場合に、その一五%と二五%の差額についてどのような点まで金融機関に責任を持ってもらったらいいかというような、金融機関の責任の範囲という問題がございました。  源泉選択制度を採用するにつきまして、金融機関サイドは、非常に課税の公平のことはわかる。したがって、何とか協力をしなければならぬけれども、しかし、そうだからといって、税務官庁からみだりにいろいろ調査を受けるというようなことがあっても困るし、また経済的負担を受けるということがあっても困るから、源泉選択制度の採用にあたっては、ある程度の行政運営の基準というようなものを、銀行局と税務官庁との間で明らかにしてほしいという御要請がありました。それはごもっともだということで、銀行局と国税庁との間で、今後の行政はこういうふうにやっていきましょうというものをきめたものでございます。
  84. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは極秘文書でないというのなら、なんでみんな国民全部にわかるように出さないのですか。
  85. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは行政官庁としての国税庁と行政官庁としての銀行局が、それぞれ今後税務行政はこういうふうにやっていきます、銀行行政をこういうふうにやっていきます、その間において、銀行局が銀行にこういうふうにやりますよということを伝える、国税庁は税務官庁の職員にこうやりなさいと伝える。それで表に出るのはそういう形で出てまいりますが、両者にそごがあってはいかぬということで、その間で官庁同士の話し合いということでございますので、そう内容的には別に秘密でも何でもありませんが、一般に発表する必要もないという理解でございます。
  86. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それは話が違うのですよ。これはたいへん私はおもしろく読ましてもらいましたけれども、そんなことじゃないですよ。しかもこの中身は、私は脱税の方法まで教えておるようにしか思えないのだな。そこへ持ってきて、これを説明するのに、覚え書きの内容では、「次の主要団体、主要金融団体(専務クラス)に対して口頭伝達する」、こういうことまで言っておるじゃないですか。あなた、だから極秘だなんて判こを押してあるんですよ。それはあなたのおっしゃることと全然違いますよ。これを読んだことがあるのかな。
  87. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私がいま御説明しているのとちょっとあるいは違うかもしれません。どういうものか現物を拝見いたしませんとちょっとわかりませんが、別のものであればいけませんけれども、私が申しましたのは、主税局と国税庁対銀行局の間で了解をいたしましたものの書面で、はっきりこういうふうに今後やりましょうやということを交換した、その覚え書きのことを説明しておるわけでございます。
  88. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは一カ条、一カ条読んで皆さんの答弁を求めてもいいですよ。だけれども、あまりあれだから、もう少し簡単に約しますと、第一には、架空、匿名について銀行の責任は追及しない。架空、匿名はやりほうだいだ、こういうことなんです。二番目には、名寄せは店舗ではやるけれども、店舗が違えばやらない。だから、店舗を違えれば、何ぼ分割して貯金したって名寄せはない。三番目には、二五%納めればあとは終わり。ばれても、それが脱税であったということがわかったって、それは追及しない、こういうことなんです。四番目は、そのときでも預金がなければ、これは取らない、全部パーだ、こういうことなんです。そして五番目には、源泉選択申告書は提出しなくともよろしい。  これは、大体、大金持ち保護です。こういうことを取りかわしてあるのですよ。だから、それは、いまマル優を三百万にするというけれども、こんな一口をやる連中を相手にしてはいない。これは幾口も幾口もいろいろな銀行に分散して預けている連中。もう一つは、あなたがおっしゃる、銀行の預金を奨励する、預金をかき集める、そして銀行の金融能力を高めたい、こういう観点からこれをやっておるんだ、私はこう思うのです。  だから、あなたがいまのような答弁をなさるならば、これは一カ条、一カ条、全部読み上げて私は追及しますよ。私はそういうことじゃないと思うんだ。もう少しちゃんとしてくれなくちゃ……。
  89. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昭和四十五年に源泉選択制度を入れるということは、これは税制としては非常に長い間の懸案事項を片づけるための一つの一里塚ということで、非常に重要な意味を持っておりました。私どもとしては、非常に強くそれを主張いたしたわけでございます。金融機関サイドは、新たに源泉選択制度を採用するということは、長年の預金制度についての課税制度の特例に対して、五歩も十歩も後退するものであるということで、非常に強い抵抗感があったわけでございます。しかし、この際一歩でも二歩でも総合に向かって歩むべきであるということで、いろいろな経緯を経ました末で、現在のような、現行の源泉選択制度に入っていったわけでございます。その入っていく際に、どういうふうにやるかということでございました。  ただいま御指摘のうちの架空、匿名はやりほうだいというようなことは、それは私は存じません。架空、匿名は、当時からよくないということで、国会の御討論におきましても、しばしば問題がございました。当時の銀行局長も、まず無記名をやめなければならないということで行政指導をしていくことについて非常に強く御答弁を申し上げ、その後の行政指導もそのように進んでおるはずでございますので、架空、匿名については、いま御指摘のような、そうやりほうだいというような感じで了解しておるというふうには思っておりません。  二番目の、店舗の名寄せはしなくてもよろしいというのは、それはそういうことでございます。一つの店があります。ある銀行が、十なり二十なりの店舗を持っております。そこから支払い調書を作成して税務署に提出する場合、その支払い調書は、全店舗名寄せの後に提出するか、それとも各店舗ごとでよろしいかという議論がございました。これはそういう制度に入っていく段階において、A支店、B支店、C支店と三つのところに三人のお客さんが預金をしている。それの名寄せ義務を金融機関に課するということについては、かなり事務量の問題もありますし、それからそれの突合事務の問題がありまして、突合事務を金融機関が負うか税務署が負うかという問題がありました。とにかくだんだん課税強化に入っていくのについては、第一段階は、突合事務は金融機関は負わなくてもけっこうですということで、いわば税務サイドが譲歩したといいますか、ある意味では譲歩でございます。しかし、実態としては、とても名寄せ後に支払い調書の提出義務を課せられないという経緯から、そういうことになっております。  それから、二五%納めれば終りだ、こう書いてあるとおっしゃいますが、それはそうでございまして、源泉選択制度というのはそういうものでございます。二五%納めればそれで終わりだということでありますよと、単純に言ってしまえばそういうことなんですというようなことでございました。ですから、源泉選択制度というのは、ある意味からいえば、課税の公平はまだ果たされない。しかし、金融機関サイドから見れば、ある程度簡素なものになり得るという意味で、そういうことを言ったと思います。  それから、預金がなければあとはいいのだという問題でございますが、これはたとえば架空名義なりなんなりの預金がございまして、本来二五%取るべきものを一五%しか取っていなかったというときに、あとでそれがわかりまして、差額の一〇%を取らなければならぬということになりまして、金融機関では取りましょうということになったが、さて、そのお客さんは預金を引き出して全然おりませんという場合に、それがお客さんがいなくなって、元本がない場合どうするかという問題がありまして、少なくとも現段階で、片方において無記名預金という制度があり、かつ、はなはだ残念ながら架空名義預金が横行しておる段階においては、その段階にまで金融機関の責任を追及するのは無理であろうということで、そういう趣旨のことで了解をしておるはずだと思っております。  それから、源泉選択申告書を提出しなくてもよろしいというのは、これは当時からそれをどこへ保管をするかということでございまして、源泉選択申告書は提出しなくてもよろしいということには、あるいは私の記憶は間違っているかもしれませんが、なっていないと思いますが、とにかく店舗に置いておいてください、税務署が参りましたならば、いつでも金融機関はそれを見せてください、源泉選択をいたしましたよという申告書はかなり膨大な量になりますので、それを銀行から各税務署に送られましても、税務署のほうの保管整理の都合もございますから、源泉選択申告書というものが預金者から金融機関に出されておりますというところに、まず第一の意味があるというふうに考えました。その非常に少ない率のものについては、あとで抽出調査をするということを前提にいたしまして、とりあえずは金融機関の店舗に、ある期間を定めてあったと思いますが、保管をしておいていただきたい、税務署には出していただかなくてもけっこうですというようなことにしたと思います。  私も記憶がいま、急でもございますし、はっきりいたしませんが、大体話の筋はそういうことでございました。そういうことを通じて、そういう程度であれば、当然、総合課税というほうに向かうための一里塚として、金融機関が協力をするのもまずまずやむを得ぬだろうということでスタートしたという記憶でございます。
  90. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまいろいろおっしゃっておられるけれども、しかし、公平の立場からいえば矛盾があるということはお認めになりますね。
  91. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは源泉選択制度というものをどういうふうに評価していただくかということでございまして、完全総合に持っていきたいというのが私どもの念願でございます。そういう意味からいえば、はなはだ不十分でございます。  しかし、四十四年当時までありました一五%の分離課税制度からいえば、相当公平が進んだというふうに考えておるわけでございます。決して満足はいたしておりませんが、一歩前進ということに当時なったというふうに思っておるわけでございまして、そういう意味で、これが非常に不公平のきわみというふうには思っておりませんで、前よりは改善がされておるというふうに考えております。
  92. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 十年も前のことを言っておるのじゃない、この時点でやはり税は公平の原則にいかにして近づけるかということだと思う。皆さんはいま、これを前から見ればだいぶよくなったと言うけれども、前はよほど悪かったのですよ。これでも、利子配当、これが不公平だというのがいつの国会でも問題にされておる。それを皆さんが、できもしない行政サイドで処理しようとするところに無理があるのじゃないですか。これは法律でやるべきもの、それを行政サイドでやるから無理がある。無理があるからこういう極秘文書なんというのをつくって、専務理事クラスでなければ話ししないみたいな、ないしょごとでこれを処理していこうなんということに曲がっていく。  私は、銀行に何も無理して税務署が入ってくれなんて頼みませんよ。そんなことをするのじゃなしに、税法でちゃんとこういうものを公平の原則に近づけるように持っていくべきであるという、私は基本的なものをお伺いしようと思ってこの例をあげたのでして、その点でいま皆さんが検討をするというのだけれども、これは廃止の方向で検討されるのですか。  もう一つは、これと同時に配当の問題があるわけです。これもまた私たちから見れば、勤労者課税と比較してあまりにも不公平だという代表的な例として、国会のたびごとに追及しておるわけであります。そういう点で、ことしの税制を、大蔵大臣はたいへん自慢されるようだけれども、資産所得には手を触れない、そうして高額所得の層の保護にたいへん力点が入っておるというふうに考えるので、これからどのように検討されるのか、お伺いしたいと思うのです。
  93. 高木文雄

    高木(文)政府委員 大臣からお答えいただく前に、私ども考え方を申し上げておきます。  まず、利子でございます。利子については、これは先ほどもちょっと触れました。アメリカのように、金融機関が一定額以上のまとまった預金があれば、税務官庁はその氏名その他を通告する義務があるというような国もあれば、スイスのように、税務官吏は金融機関に足を踏み入れることはできないという国もございます。この預金と利息の関係というのはどのように考えたらいいのか、財産の秘密といいますか、そういうものと、それから税務官庁の権限の問題というのは非常にむずかしい問題でございます。利息だけでなくて、実は元本の問題にからんでまいりますだけに事が非常にめんどうでございまして、非常に残念なことでございますけれども、一部の脱漏所得が預金化しておるということが現実の問題としてございます関係で、預金についての税務調査というものはどうしてもナーバスになります。そこをどう調整するかということが根本にございますので、利子課税をどうするかという問題だけでなかなか片づかないわけでございます。  しかし、現行制度は五十年十二月三十一日までの制度でございますから、これは何らかの意味において、どうしても五十年度税制改正の際にはどのようにかしなければならない。これは資産課税重課という見地の問題と、それからもう一つは、貯蓄奨励の見地の問題、さらには、長い長い問題でございます税務官庁の権限と預金の秘密性の問題との関連をどう調整したらいいかという問題でございまして、むずかしい問題ではございますが、黙っておりましても期限が参りますので、五十年度改正の問題としては議論しなければならぬということになるわけでございます。  それから、二番目に配当の問題でございますが、配当の問題はある意味からいいますと、配当自体の問題であると同時に、預金との横並びの問題でございます。いろいろな貯蓄手段がある、いろいろの預金手段、金をためておく手段がある、その場合に、公社債のようなもので持つ方法と、それから金融機関に預託をするという方法と、株で持つという方法、そのほかにもいろいろありましょうが、典型的にはその三つの問題がある。  そういたしますと、利息についていわばどういう秘密性が保たれるか、かつどういう課税になるかということと、配当についてどういう秘密性が保たれ、どういう課税関係になるかということが横並びの問題でございまして、預金が有利になれば株のほうの取引が衰微をするというような関係にあり、株のほうが優遇されれば預金が集まりにくくなるという関係がありまして、その相互の関係一つ問題になってくるかと思います。  それともう一つは、株というものが非常に転々流通をいたしますという関係から、もう一つ根本的に株についてはなかなかむずかしい問題があるということでございます。同時にもう一つ、午前中御議論ございました法人税のあり方と関連をいたしまして、配当控除制度をどうするかということとも、この問題は関連をしてまいります。  しかし、これまた五十年末に預金の問題が議論されますときには、当然、配当の問題のあり方も議論されなければならぬと思っております。  それから、資産性所得の問題で最大の問題は土地の問題でございます。長期譲渡所得の分離比例制度というものが、これはやはり五十年十二月三十一日までの特例制度でございます。これがまた非常にめんどうな問題でございまして、土地政策土地供給を円滑にするというサイドからいえば、現行のような制度をさらに継続すべきであろうという御議論もございましょうし、これが税制の不公平の一番代表のようなことになっておる事実も否定ができない。これまた五十年十二月三十一日で現在の分離比例制度は一応終わるというたてまえになっておりますので、この三点をどう調整するかということが問題でございます。  その中で、土地の問題だけは四十九年度税制改正の際にも十分議論をいたしてみましたけれども、今日ただいまの段階では、どうも現行制度にかわるべきいい制度が見つからないということで、やはり来年まで検討を延ばさしていただいたわけでございます。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕  しかし、われわれといたしましては、御指摘のように、資産性所得勤労性所得アンバランスの問題は、所得税の本質をゆるがすような非常に大きな問題になっておりますので、将来の方向といたしましては、勤労性所得についてはより一そう軽課の方向に向かうべきであり、資産性所得方向については、より一そう重課方向に向かうべきであるというふうな基本的な考えを持っておりますが、株につきましても、預金につきましても、土地につきましても、それぞれ持つ経済性といいますか、そういう他の政策からの要請との調整に、非常に苦悩しておるという現状でございます。
  94. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 今度マル優を百五十万から三百万にする。この前の割増金付の論議のときも、預金者をいかに保護するかという問題が相当論議されました。そして今度それを三百万にする。いかにも大衆の預金を保護するかのように、こうなっておるけれども、ほんとうに保護するというのなら、またいろいろ手はあるわけです。ところが、あれを引き上げることが保護するかのようになっておるけれども、こういうところで制度上の穴があれば——大衆が、労働者が、三百万の預金を四口も五口も持つなんということは、私には考えられない。いまの勤労者の平均の預金金額は、たしか二百十万前後だと思いました。そうすると、三百万といったら、これは大きい。これを幾口か持つなんということはできないのです。現実あり得ない。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  そうすると、こういう制度、架空名義だ、匿名だというものを全部しり抜けにしておいて、しかも選択制をとっていくということになれば、大資産家は保護されるという点で、ますます税の不公平というものが拡大される。それを単なる行政当局だけの手段で解決しようとするのが大体無理なんだということが、私の言いたいところなんです。  だからこれは、あなたがいまおっしゃったように、五十年には十二月三十一日で期限がくる。期限がくるのは、目の前間もなくにきておるわけです。だから、これはいまから本腰を入れませんと、大蔵省の役人段階だけではなかなかむずかしいのではないだろうかという感じが私はするわけです。しかも、いま言ったように、預金者保護という金看板、このたてまえの中で、皆さんがいかに抵抗しようとしても、実際はむずかしい。そうすれば、これは不公平な問題が残ってくるわけであります。私が問題視するのは、これは、あなたがおっしゃったと同じように、利子をやれば同時に配当というものが、つり合い上どうしても問題にならざるを得ないからであります。  ここに東京都の都民の所得税負担率の調査がありますけれども、これからいくと、ある意味では、逆進的にさえなっております。なぜ逆進的になっておるのか。こういえば、それは資産所得に対する所得税の優遇という問題があるからなんです。その問題があるから、逆進的になっておるわけです。特に土地税制の分離課税なんというものを、なぜことし手をつけなかったのか、私はお伺いしたいと思うのです。  ことしの一番大きな課題は、大蔵大臣がおっしゃるように、物価の抑制、もう一つはインフレで悩む、苦しめられるところのインフレ被害者というか低所得層に対してどう手を差し伸べるかということが、今度の経済運営の一番大切なところじゃなかったのか。そうすればなおさら、こういう分離課税、特に資産課税の問題になぜ手を触れなかったのかというところを、これは大臣に、眠くなるといかぬから、ひとつお伺いします。
  95. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 所得税は、もう原則は何といっても総合課税、しかも比例累進である、こういうふうに思うわけであります。ただ、その政策をひた押しに押した結果、他の政策というものが阻害されるかどうかという問題がありますので、そこで、そういう際には、あるいは時限を切って、あるいは特例措置の内容に制限を加えまして、この特例措置を講じなければならない、こういう考え方になるわけです。  いま利子、配当についてのお話でございますが、これはもう申し上げるまでもない貯蓄の増強、これはまあ非常に重大な国策でございます。そういう方面から所得税の大原則に例外を設ける、こういうことも御理解は願えると思うのでありまするが、しかも、この例外を設けるにあたりましても、分離課税税率をかなり高目なものにする、こういうことにいたし、しかも、これを時限というふうにいたしておるわけであります。  それから、配当も同じような考えでございますが、土地税制につきましてはいろいろ御批判があるわけでございますが、これはちょうど私が前回大蔵大臣をしたときにでき上がった。私は、当時のねらうところの第一の目的は、到達していると思うのです。それだけに土地譲渡所得からの高額所得者というものが出てきたり、これはまさに土地を持っている方が、こま切れにしないで一括大量に放出したという証拠が出てきておる。問題は、この放出された土地がはたして住宅対策等の当面必要とされておるそういう目的に使用されておるか、こう言いますると、まあそういう際には、何といっても短期保有土地の譲渡という高率の税が当てはまるというような制約もありまして、必ずしもそういうふうになっておらぬし、また場合によりますると、土地がいわゆる買い占め、売り惜しみという結果になっておる向きもありまして、これは反省する必要があるわけなんです。  しかし、これは税制調査会でたいへん議論を願ったわけでありまするけれども、これは私がただいま申し上げましたような効果もあり、デメリットにつきましては、デメリットに対する施策を講ずるということで対処できるんじゃないか、まあこれは明らかに所得税の大原則に対する例外ではあるけれども、その例外であるというデメリットを無視いたしましても、またこれを存続させる理由はあるんだ、こういうような結論になってくる。  しかし、いずれにしても、これも時限立法でございまして、五十年十二月には有効期限が到来するわけでございまするので、その後の土地税制を一体どうするかという問題は、これは利子、配当に対する例外とともに十分検討してみたい、かように考えております。
  96. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さん前向きな御答弁なのでやめたいと思うのだけれども、答弁はわりとみんな国会では前向きなお話をされるんだけれども現実おやりになるのは、どうも少し違うんじゃないか。  今度の四十九年度改正で、配当の確定申告をしなくともいい、いわゆる不要限度額というのですか、これを五万円から十万円に引き上げるのですね。そうですね。一体、金持ちが幾日か株を持っておって、配当を不公平だと皆さんおっしゃっておるなら、何でこの際に、それを五万円から十万円に引き上げて不公平の上塗りをせにゃいかんのか。どうも皆さんの国会で答弁されることと現実におやりになることとはうらはらではないか、私はどうもこれはいただけないのですが、どうなんですか。
  97. 高木文雄

    高木(文)政府委員 お尋ねの御疑問はごもっともだと思うのでございます。  今回の改正の中で、もろもろの貯蓄奨励の措置というのは税制のサイドからだけ申しますと、非常に難点が多いわけでございます。非課税貯蓄のワクを百五十万円から三百万円に広げましたということにつきましても、また生命保険料控除なり損害保険料控除なりの所得税控除拡大いたしましたことにつきましても、それからただいま御指摘株式配当につきましての申告不要制度拡大につきましても、いずれも税の面から申しますと、やはり勤労性所得ではなくて、資産性所得ということでございますから、そういう意味から申しますと、問題が多いわけでございます。  しかしながら、四十九年度税制改正が問題になりました昨年の秋からこの冬にかけましては、何と申しましても物価問題が非常に大きな問題であり、そうして物価問題の中で非常にむずかしいことではございますが、消費需要の抑制ということがやはり大きな命題であるといわざるを得ないわけでございます。何としてでも、税制上の効果の有無に一方において疑問を持ちながらも、なおかつ貯蓄の奨励ということには、税のほうも政策的見地からの、いわばことばは悪うございますが、協力ということがなければならぬということになってまいりますと、非課税貯蓄の限度額につきましても、保険につきましても、配当につきましても、その種の金融資産、横並びのものをある程度バランスをとりながら、優遇を講ぜざるを得ないということになったわけでございます。  その場合に、貯蓄と、つまり預貯金と保険と証券という各種の金融手段、貯蓄手段というもののバランスを欠きますと、そのどこかにまた集まるという問題がございますので、その見地から、株式につきましても申告不要限度を上げるという措置によって、個人の株式所有をしやすくした。特に、一昨年から昨年にかけまして株が非常に企業に持たれることになりまして、個人の株式保有割合が非常に下がってきたということとの関係もありまして、株についてだけは何もしないということもできないという事情にあったことを御了承いただきたいと思います。
  98. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何か御答弁さっぱりわからぬのですがね。どうも頭が悪いせいか、さっぱりちっとも私にはわからない。物価抑制なんだかんだというのをおっしゃるけれども、一体どういうことなのかよくわかりませんがね。要するに、バランスをとらにゃいかぬ、こういうことなんですな。  そうすると、配当のほうを五万円から十万円、これは幾口か持ったってかまわないのだから、幾ら数をよけい持ったっていいのだから、そうすれば免税する。これは資産家の優遇なんですよ。だから、それにつれて今度貯蓄のほうもやる、一般大衆もマル優が百五十万円から三百万円になったから預金者保護だ、こう言うけれども、これもまた幾日か店舗をかえてやる大資産家にはプラスであるけれども、一般大衆はそんなに幾口か持つことはできない。こうなると、これもまた資産家優遇。資産家優遇を一つやっちゃ、みな平均して上げちゃ、またやっていったら、これは切りなく資産家優遇であって、勤労者はちょうどさしみのつまになって、資産家だけ優遇されておる、こういうふうに私が解釈するのは無理ですかな、これは。
  99. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そういう見方も成り立ち得ると思うのでございます。それはどこから来ているかというと、一にかかって名寄せの問題と関連してまいると思うのであります。貯蓄にいたしましても、株にいたしましても、なかなか名寄せの技術がうまく見つからぬというところに問題があるわけでございます。貯蓄奨励は大いにやるべきである、それがためには、税制においてある程度何らかの配慮があってしかるべきであるというところまではよろしいと思いますが、ただいま御指摘のように、それが結果としては単純に貯蓄奨励にとどまらないで、いわば資産性所得優遇につながっていくという現状に、一つ大きな問題があるわけでございます。  ですから、一番望ましいことは、貯蓄奨励もできるが、そのデメリットとしての資産性所得の過大優遇にならぬようにするにはどうしたらいいかというテクニックを、ほんとうはもう少し早く開発をする必要があるわけでございますが、それはやはりすべて、株の場合でも預貯金の場合でも、名寄せの問題につながっていくという問題でございます。ところが、その名寄せは、基本にどうも無記名預金制度がありましたり、架空名義預金の慣習が、よくないことではございますがございましたり、それを何らかの方法で、先ほどもちょっとお触れになりましたが、制度上押えるという手だてがとられておらないということがありまして、そこのところからどうしても、いわば抜けていくような形になっておるというところに、非常な悩みを持っておるわけでございます。  しかしながら、そういう悩みがあるからといって、それでは非課税貯蓄のワクを広げなくてもいいか、あるいは保険や配当について何らかの措置をしなくていいかということになりますと、やはりそれ以上貯蓄をしても非課税のメリットがないからということでは大衆の預金を集められないということもまた事実でございますので、その暗い面といいますか、不合理な面だけに目をとられて、現状のままがんばっていくというわけにもいかないというところから、片方において、そういうデメリットを生ずることはある程度のみ込んだ上で、貯蓄奨励のための改善といいますか、拡大といいますか、それを行なったわけでございまして、そこが私どもの税の立場では非常につらいところでございます。
  100. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、お聞きのような状態でありますから、この問題はここで終わりますけれども、これは行政のテクニカルだけではかえって矛盾をはらんでまいりますので、これはぜひ、期限も参ることでありますから、この辺でもう根本的な再検討をしていただくということを確認して前へ移りたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  101. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いずれ次の通常国会では御論議願わなければならぬ問題でありますので、それまでに十分検討いたします。
  102. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、次に、所得税の問題に入りますが、福田大蔵大臣の言をもってすれば、狂乱の物価上昇の中で、勤労者、労働者の生活は苦しくなっている、こういうことはもうだれでもが認めるところであります。労働者が今春闘を戦い、大幅賃上げを要求するのは、私は当然のことだと思うのであります。賃金が上がれば、税金はさらに大幅に取り立てられる。四十九年度大幅減税と銘を打っておられるのでありますが、はたして低所得層にそれほど恩恵があるのだろうかというと、私はいささか疑問があるわけであります。  そこで、この減税の予想でいくと、時間がかかるから、私、読み上げますが、皆さんのこの「税制改正の要綱」というのを見ますと、今度の減税で納税人口は二千九百九十一万人から二千五百七十四万人、こう減るわけですね。納税者給与総額は五十三兆四千百二十億円から四十九兆五千四百八十七億円に、これも減少する。したがって、課税額は三兆五千四百四十九億円からいろいろなものを差し引きますと、二兆一千八百八十億円に減少する、こういう見通しを立てておられる。これは、これを読んだんだから間違いございませんね。
  103. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  104. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、四十九年度の賃金上昇の割合を政府は何%と見込んでおられるのですか。
  105. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまごらんになっております印刷物の前のページにありますが、その前の七ページのところに「給与所得に対する源泉所得税」とありまして、「四十九年度分の給与総額の対前年度増加見込を一八%増とし」とあるのがそれでございます。
  106. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまの人事院の意向だとか、いろいろないまの財界の様相から見て、一八%前後の増でこの春闘が落ちつくというふうには、私にはとても思えない。今日の段階で二〇%を割って春闘が落ちつくなどという考えを、大臣、まさかお持ちではないでしょうね。
  107. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この一八%という数字に置きましたのは、例の経済見通しで四十七年度の雇用者所得実績が四十四兆一千六百億である。四十八年度の雇用者所得の実績見込みが五十四兆三千四百億である。それから四十九年度の見通しが六十三兆八千八百億である。四十七対四十八の伸びが一二三で、四十八対四十九が一一七・六ということを前提にいたしまして、国民所得推計を行なっております。その国民所得推計の伸び率の一一七・六というものをそのまま上にまるめていただきまして、一一八という数字で見たということでございまして、大体毎年度の当初の予算におきますところの歳入見込み額を立てますときの給与の前提となる雇用所得の見方は、経済見通しに準拠いたしております関係で、この二七・六に従ったということでございます。
  108. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 一八%にした経緯はそのとおりなんです。私のお伺いしておるのは、今日のこの物価狂乱といわれる中で、一八%でおさまると思っておられるのかどうか、こういう質問をしておるのです。これは大臣ですよ。
  109. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いまいろいろのことが春闘について言われております。いま総需要抑制政策の効果もだんだん出始めてまいりまして、二月の卸売り物価は中旬までしかまだわかりませんけれども、中旬では初めて上昇率〇%だというところまで来ておるわけです。それに対しまして一番大きな問題は、これから総需要抑制政策を進めていく、そしてまず卸売り物価から鎮静の動きが出てくる、こういうふうに思っておるのですが、春闘が一体どうなるか、これがこの物価動向に対して大きな影響を持つ問題だ、こういうふうに考えておるわけでございます。  そういうことを考えますと、何とかしてこの春闘というものが言われるような幅でないということを念願し、期待をいたしておる。そういうこともあるし、何%と言われる、それは大企業というか、そういうところの上昇率の問題でありますが、企業にもいろいろありますから、あの大企業の二〇%だ、二五%だというのをもって全部を類推するというわけにもまいらぬだろう。税収と経済見通しとの関係については、ずいぶん検討した結果なんでございますが、その税の前提となる一七・六という数字が、あながち空論であるというふうにいま考えておりません。
  110. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまここで何%上がるかということを、私、聞いておるわけじゃないんでして、一七・六が無理からぬ数字だなんということをお考えになっておるようでは、私は、今日の日本経済をしょって立つ大蔵大臣の現状認識を疑わざるを得ないですね。これでほんとうに一七・六でおさまったとすれば、私は国会議員首になってやめてもけっこうです。そんなに甘い——希望的観測は別にして、国会国民のためにお互いに質問し、討論しておるんだから、私は、いまこの段階で何%になるだろうということを聞いておるのじゃない。ただ、少なくとも今日の時点でこれよりも上がるだろうということだけは間違いないと思うのです。その辺の程度のお答えができない。自分できめたんだから、一応一七・六%前後になるんじゃないかなんということでは、私はちょっと大臣の現状認識の狂いをとにかく指摘せざるを得ないのですが、いかがですか。
  111. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この租税収入見積もり、これの前提となっておる賃金水準、これは全国平均の賃金でございます。これは言われておる大企業の賃上げ幅だけをとっておるわけじゃないんで、一体、全国平均がどうなるかというようなことにつきましては、これはまた、春闘といわれる賃上げ運動の結果の数字とはかなり違ったものが出てくるであろうということは御理解願えるだろう、こういうふうに思うのです。その御理解を願える立場の全国平均の賃金水準がどうなるかということを踏まえまして、この数字、税収の見積もりが行なわれておるということを御理解願いたい、かように存じます。
  112. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも私の質問が悪いのか、大臣の御理解が悪いのか、それは全国平均であることはもちろんであります。私も大単産だけとかいうことを言っておるわけじゃないんです。しかし、全体として皆さんのこの見積もりはいつも低きに失しておるのであって、これよりも上がるだろうということは、私は今日常識だと思うのです。  そこを押し問答してもあれなんだけれども、これでおさめたいという希望はわかりますけれども、その程度の、この以下におさまるなんということをお考えになるならば、私は、少し大臣の経済運営それ自身も疑わざるを得ない、あまりにも現状認識に欠陥を持ち過ぎておる、こう言わざるを得ないのでして、その点私ちょっと不満であります。  だけれども、まあその問題をさておいて事務当局にお伺いしたいのは、賃金が一%上がった場合、税収は大体どれぐらい響いてくるのですか。そして人員はどの程度ふえてくる見込みなんですか。
  113. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと正確には申し上げられませんけれども一つの御参考までに申し上げますと、今年度、四十八年度の当初の税収見積もりのときの雇用所得の伸びを見ましたのが、大体一五でございました。先ほど一八と四十九年度について見ておったのが一五でございました。これも当時の経済見通しの数字から引っぱってきた数字でございます。  補正予算のときに、新しい改定経済見通しが出ました。そのときの雇用者所得の伸びは二三でございます。一五から二三に、八%改定されたわけでございます。つまり、八%変わったわけでございますが、八%変わったのに伴いましてふえました源泉所得税中給与の増収見込み額が、約四千億でございます。この昨年の税制構造のときを前提にしてでございますけれども、八ポイントで四千億でございますから、これはやはりあるカーブがある、多少ともカーブがありますけれども、これも乱暴に平均に見ますれば、一ポイント五百億というのが、去年の租税構造のときの雇用者所得の伸びと税収の関係でございます。  今年度どうなるかは、ちょっと所得税の構造が変わっておりますから、明確には申し上げられませんけれども、そんなに大きな違いのあるものではない。昨年度の経験値がかなり参考になり得るような相関にあると言ってよろしいかと思います。
  114. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういたしますと、ことし大臣は一七・六ぐらいがいいところだというふうな御答弁でありますけれども、もしこれが——いま一般にいわれるのは、少なくとも二五%、三〇%といわれておる。また、いまの消費者物価の値上がり、そしてこれからまた石油の価格改定、それに関連する基幹産業の値上げ、皆さん押えておるというけれども、参議院選挙が終わればまた——参議院選挙用にこれは押えておるのだろうけれども、消費者米価、国鉄運賃の値上げ、もう軒並みに値上がりする中で、労働者の賃金が一八%や一七%でおさまるはずがない。生活破壊に持ち込まれる。そうすれば、私は賃金の上昇は当然のことだと思う。もし二五%賃上げが実現した場合、これはたいへんな税収の増加、裏返して言えば、低所得層の税金負担は大きくなる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  115. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それはやはり給与収入がふえれば、総額としてでなしに一人一人の給与収入がふえれば、たとえば、従来ならば課税最低限以下の方が課税対象になってくるということもありましょうし、二百万円の方が二百五十万円になれば、やはり税はどうしてもふえます。そういう関係で、一八という雇用所得の伸び率見込みが実際は上回るということになれば、やはり総額としての源泉所得税収はふえる。したがって、一人当たりの税負担額もふえるということになりますが、しかし、それは収入がふえてのことでございますので、ある意味では当然のことではないかと思われます。  なお、もう一つは、いま二五とおっしゃいましたけれども、いわゆる二五、二五といわれておりますのは、これは定期給与の問題でございまして、そのほかにいわゆる超過勤務手当とかその他の時間外手当の問題がございますから、そこらを全部をひっくるめての一八という率であるということをつけ加えさしておいていただきます。
  116. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いずれにせよ、名目賃金が上がれば税負担が上がる、収入がふえれば税金が取られるのはあたりまえだ、こうおっしゃるけれども、いま低所得層はインフレの問題、消費者物価の値上がり、名目が幾ら上がってみたからといって、実質的な賃金というものがどうなるのかというところに問題があるわけです。だから、皆さんが、二兆円減税とたいへん恩恵がましくおっしゃるけれども、なるほど、高額の所得者にとっては、実質的にもこれはたいへんな減税だろうと私は思います。  だけれども、税金を納めるか納めないかというような層の人たちにとってみれば、賃金が上がるけれども、それは名目賃金であって、消費者物価が上がるから上げざるを得ない、また要求せざるを得ない。名目が上がったからといって、税金がまた重くなってくれば、二兆円減税だなんて大きなことをおっしゃってみても、低額の所得者にとってみれば、これは何も恩恵がないということを局長は裏書きしたような御答弁だ、こう思うのですが、そうでしょう。
  117. 高木文雄

    高木(文)政府委員 二つのことをもってお答えいたさなければいかぬと思いますが、たとえば、給与収入百五十万円で夫婦子二人の場合でございますと、現在納めていただいている税金は二万九千四百七十八円になっております、平均的でございますけれども。それが今度、平年度では全額非課税になるわけでございます。それは軽減割合としては一〇〇%軽減されてしまうわけでございますけれども、しかし、もともと納めていただいている税金が三万円弱で、ございますので、それ以上は減税のしようがないというかっこうになるわけでございます。  平年度計算でなしに初年度計算で申しまして、二百万円のところで約五七%、三百万円のところで四五%でございますから、何をもってどういうふうに議論するかということによっていろいろ御意見があろうかと思いますけれども、やはりよほどの物価の上昇がありましても、税のほうの軽減割合も非常に大きなものだということは言えるわけでございまして、毎年毎年の通常におきます減税のような程度規模とは、ことしの場合はたいへん違う。毎年の減税割合は、物価が五%上がるとか何とかいうことを前提の場合に、一五とか二〇とか二五というような率でありますけれども、今回の場合には、いま申しましたように、二百万円で五六・八、三百万円で四四・四というようなことになっておりますから、たいへんな物価の問題があるということは承知をいたしておりますが、減税のほうの軽減割合も、非常に大きいということは言えると思うのでございます。
  118. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 百五十万で三万円だというが、これが二五%の賃上げをした場合はどうなりますか。
  119. 高木文雄

    高木(文)政府委員 二五%という場合に、現在百五十万円だという方がかりに二百万円になったということになりますと、現在納めていただいている税金が二万九千円であるのに対しまして、今度納めていただく税金は三万四千五百円でございますから、百五十万円から二百万円になれば約五千円増税になるということでございますが、これはやはり給与収入がふえれば、それに応じていまの累進構造の場合にはふえますから、今度の改正の場合には、大体、給与収入が二割ちょっとふえたところでほぼとんとん、それ以上給与収入がふえますと、むしろ若干増税になる、こういう感じになっております。
  120. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 でありますから、二兆円減税、こうおっしゃるけれども、今度の減税で一番恩恵率の高いのはたしか年収二千万円、この辺が一番減税の率の高いところ、こうなっておる。それに比べて、いまのように物価にあおられる、そして生活が苦しくなっておる、名目賃金がわずかに上がったといっても、税金のほうはさらにかさ上げされる。あなたは、収入がよけいになれば税金がよけいになるのはあたりまえだというように、簡単に一般論でおっしゃるけれども、私は、ことしの財政そして税制というものが、インフレに一番痛めつけられておる層にあたたかい手を差し伸べる、これが大蔵大臣の発想の転換というか、ほんとうに国民のための減税政策、財政政策というものだと思っておったところが、低所得のほうのお話をいろいろと聞き、私が試算をしてみれば、低所得のほうにはさっぱり恩恵はない。むしろ増税だということになってくるわけですよ。それは大臣お聞きのとおりなんです。  そうしてきますと、賃金があなたのおっしゃるように一七・六%でおさまるのか、私が申し上げるように二五%あるいは三〇%になるかもわからぬ、こういうときには、皆さんの国庫収入は、税収はうんとふえるわけです。一ポイント大体いまのお話で五百億とすれば、これでかりに一〇%ふえれば、五千億の増税になるわけです。この分は、インフレ被害者というか、低所得層、あるいはまた生活保護世帯とか、心身障害者とかという社会保障を必要とする層に配分してやるということでなければ、私はほんとうにインフレに悩む人たちに対する減税ではない、こういわざるを得ないし、理論的に理屈の上からそうなると思うのですよ。  そういう点で、皆さんは自然増ということばでおっしゃるかもわからぬけれども、この賃上げによって税収がふえるという見通しになれば当然労働者の低い層にこれを還元するとか、インフレに弱い層に手を差し伸べるということを当然やるべきだと思うのですが、大臣いかがですか。
  121. 高木文雄

    高木(文)政府委員 大臣のお答えの前に、先ほどのお答えがあまり適当でありませんから一言だけ申し上げておきますが、先ほどは四十八年度百五十万円の方が二百万円になるという例について申し上げましたが、四十八年度二百万円の方が二五%ふえて四十九年度に二百五十万円になるという場合には、税額は七万九千円強から七万五千四百円強になります。つまり、約五千円今度は減税になる。二割五分ふえましても減税になります。先ほど申し上げました百五十万円から二百万円という層のところは、これは実はもともと納めておる税額が低いということがありして、収入が二割ふえましてもかえって増税になるみたいになります。二百万から二百五十万に上がるという例でいきますと、今度は五千円減税になる、こういう関係にあります。それだけ補足させていただきます。
  122. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いわゆる自然増収があったら社会保障対象の人にこれを使え、どうか、こういうお話でございますが、自然増収とこの社会保障政策、これは私は必ずうらはらだという考えをする必要はないと思うのです。私は、必要があれば、何も自然増収だけを使うという考え方はとりません。  あなたがいまおっしゃるようなお話を進めれば、自然増収がなければ弱い人をほうっておいてもいいのかというような印象にもなりますが、私はそうは考えないのです。インフレが高進した、そういうためにいわゆるインフレ弱者というものがお困りであるという際には、自然増収とは切り離した考え方において十分対処しなければならぬ、こういうふうに思っております。
  123. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、たいへんいいことをおっしゃった、必要があればやる。今日この低所得層の人たち、あるいはまた生活保護世帯であるとか、心身障害者であるとか、またお年寄りの年金、今度五〇%上げて七千五百円にするといったって、七千五百円じゃ先進国の中の社会保障としてはみじめ過ぎるほどみじめだ。そうすると、これは大臣、必要がないんですか。
  124. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあ福祉年金がかりに一〇〇%上がって一万円になったといって、それで生活を保障できるかというと、そういうわけには私はいかぬと思うのです。福祉年金は、今日のわが国の社会体制においては、これはもう生活保障という色彩はきわめて低い、こういうふうに思います。やはり補完的な役割りにしかなっておらぬ、こういうふうに思っております。  もしこの生活保護者に対する生活保護費、そういう問題になりますると、これは生活保障でございまするから、物価が上がりましたといったら、この生活を保障するに足るように生活保護費を充実しなければならぬ。ところが、福祉年金は、わが国の社会保障体系のもとにおきましては、まだそういう役割りは演じておらないのです。  そういうことでありますので、四十九年度には五〇%上げの七千五百円になりますと、こういうことでございますが、こういうみんなの苦しい時期でありますので、ひとつ従来の計画でごしんぼうを願いたい、こういう考え方になるわけなんです。これが福祉年金で、全部これで生活してくださいと、こういうような性格の福祉年金でありますれば、これは当然何らかの、というよりは、十分の措置を考えなければならぬという性質のものであろう、かように思います。
  125. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣はいろいろとうまいこと、くるくると逃げられるけれども、しかし、日本は補完的なものである、これでいいということじゃないのでしょう。本来、私は社会保障はそうなるべきだ、こう思うのです。また、それならば、福祉年金だけの問題じゃない、全般の社会保障の問題についても、いまの日本のあり方は低きに失するわけでしょう。その点は認められるんでしょう。  そうすれば、これが必要であれば、自然増があろうとなかろうととおっしゃる。筋としてはそのとおりです。私もその点では、必要があればやるべきだと思う。では、大臣はそういうのに必要がないかと言えば、これは補完的だと、こう言うが、補完的でないものもあるのですよ。そういうところに、ではなぜ予算をもっと組まないのか。  私は、ある意味でたいへん自民党政府に親切に、せっかくつくった予算なんだから、あんまり変更するのもいやだろうから、ここでせめて自然増という使い道のない金が出てきたら、それをまず第一にここへ回したらいかがですかと、私、たいへん親切に言っておるつもりなんでして、本来ならば、防衛費をたたき切ってそっちへ回せというのが私の主張なんだけれども、そこまで言うのは少しここでは問題が大き過ぎると思うから、たいへん私はささやかな要求として、こういうぐあいに、この皆さんの見積もり、現実とは食い違っておるじゃないか、狂うじゃないか、そこでこの皆さんの賃上げの見積もりは低きに失するし、当然これは二五%、三〇%になるだろう、そうなるとすれば、今度の予算案自体がたいへんにいいかげんだ、こんな予算案があるかと、本来ならば、私はこう言いたいところなんですよ。税収見積もり自体が初めから、まだ通過をしない先から狂うだろうということがおおむねわかっておる、そんなお粗末な予算案は引っ込めて、もう一ぺん検討して出直してこい、こういうのが本来、私の腹の中にあるわけです。  だけれども、それもまた一部遠慮をいたしまして、それで、これだけ自然増が出てくるんだから、せめてその金は、いま一番インフレで悩む低所得層減税に充てるとか、あるいはまた、生活にあえぐ生活保護世帯というようなところに社会保障費としてこれを回すというのが、福田大蔵大臣のあたたかい大蔵大臣としての職務ではないかということで、私はたいへんな援護射撃をしておるつもりでおるのでございますけれども、どうです、大臣。
  126. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 援護射撃をいたしていただきましてありがとうございますが、要するに、いま予算は、歳出もあります、歳入もありますが、これは経済見通しに準拠しておるわけなんです。  経済見通しのほうは成長率は二・五%、そこから出発して今度の予算というふうになっておるわけでありまして、その経済見通しの二・五%という成長率は、これはまた賃金をどうします、物価の動きをどうします、いろいろの要素があってそこがきめられておるわけでございますが、いま私どもは、二・五%成長、これについてはいささかも変える考え方は持っておらないんです。ぜひそれでこの四十九年度予算が動くようにということ、経済が動くようにということを念願しておるわけであります。  したがって、その仕組みの一環としての賃金水準の上昇一七・六というものを、ここで変えるという考え方はないんです。どうも阿部さんのほうの考え方は、大企業のほうの賃上げということだけに頭を置かれまして御論議をされておりますが、これはもう全国津々浦々の平均の賃金水準のことを私どもは言っておるわけなんで、その辺にも多少の違いは出てくるだろう、こういうふうに思います。  同時に、わが大蔵省税務当局は堅実にこの税収見積もりをやっておる、いやしくも年度途中において不足を生ずるというような事態のないようにという点につきましては、特に配慮をしておりまするから、あるいはこの予算の実行過程において若干の自然増収という事態があるかもしれない。しかし、それとまた国の施策とは別の問題であります。その自然増収があろうがなかろうが、これはまあインフレ弱者がほんとうに困る、こういうような事態がありますれば、これはもう適当に対処をする、こういうことを申し上げておきます。
  127. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも大臣、せっかく援護射撃するけれども、さっぱり乗ってこない。昨年も当初は一五%で発足した、それが補正のときには二三%に変わっちまった、こうおっしゃっておるのですよ。皆さんのこの試算の段階では、希望的な意見としてはいま一七・六、これはわからぬではない。しかし、もうすでにその見通しは間違いなく違ってくるだろう、こういわれておる。違ってくれば、当然そこに自然増が出る。  私は、ほんとうを言いますと、税の自然増なんということは、大蔵省としてはほんとうに腹切り問題であるほど重大な問題だ、そう思っておるんです。たしか、私名前は忘れましたけれども、昔の話だけれども、イギリスでは、税を取り過ぎた、私のやり方が間違いだといって辞職をされた大蔵大臣がおった。取り過ぎちゃいかぬのです。それが少なくなってもいかぬけれども、取り過ぎたら、大蔵省、何か腕がよくて国民のために税金をよけい取ったような感覚で自然増を見られるところに、私はたいへんな不満があるんです。これはほんとうは大間違いですよ。自然増なんというものを当てにするほうも間違いだし、そんなものは本来あっちゃいかぬのです。皆さんが正確に判断をしてきめたら、そのとおりいくというのが理想だと私は思うのですよ。  ところが、残念ながら、最近の風潮はといえば、自然増一兆何千億なんて、何か隠し財源のごとく財政当局が心得ておるなんというのは、特に、国民からただ取り上げる税をよけい取り過ぎるなんというのは、ほんとうは大間違いだと私は思うのです。  だけれども、その議論はさておきまして、いまのように大臣は、必要があれば出すというなら、今日ほどこの物価高騰の中で、お年寄り、いろいろな低所得層の人たちがインフレでお困りになっておるときはない。いわゆるインフレ弱者といわれるぐらい困っておる。この層になぜもっとあたたかい手を差し伸べないのか。今度の二兆円減税も、さっき申し上げたように、年間二千万円というような大きな層に一番大きな減税をするよりも、その層にもっと手厚く施策をすべきだ、私はこう思う。  しかも、いまの私の見通しがある程度当たるならば二五%増、これはもちろん平均ですよ、そうすれば、税収はさらに皆さんの見込みよりも多くなる。そうすれば、これはとりあえず低所得層の人たち、このインフレでお困りの方々を救済する。実際いって、賃金が二五%上がってみたって、物価の値上がりがそれより激しい。消費者物価が二〇%をこすなんというのは、これは異常です。私は、そういう困っているところにこれを差し向けるのが当然過ぎるほど当然という感じを持つだけに、これをしつこく申し上げるわけでありますが、これはあとからまたわが党の人たちが同じような問題を、角度は違えても、当然要求をかねて質問するだろうと思います。  私、この問題をやっておると、四時間も五時間もかかりますので、あとまだ一ぱい残っておりますので進みたいと思うけれども、大臣、この点はもう少し考えるべきだと思いますが、大臣の御答弁を得て次へ移りたいと思います。
  128. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 阿部さんは、いま消費者物価が二〇%上がりました、そういう際に、低所得者層の問題を四十九年度の予算でもっと考えるべきだというようなお話ですが、いま消費者物価が上がっていることは事実です。これは二二%になりますか二三%になりますか、今月あたりはそういう水準にくるんじゃないかと思いますが、それをもってまた四十九年度を律するというところには飛躍があるんじゃないか、そういうふうに思うのです。  四十九年度の消費者物価が一体どうなるかということにつきましては、これはいまの二二、三%上がりますという、それは一つ働いてくるわけです。これがいわゆるげたというわけです。それに四十九年度中の消費者物価の上がりというものがプラスされる。そのプラスされたものを、いま私どもは九・六%になるというふうに見ておりますので、その辺をひとつ頭に置いて御論議願いたい、こういうふうに思うのが一つです。  それから、私どもがインフレ弱者対策についてあまり顧慮しておらぬというような印象の御議論でございますが、そうじゃないんです。今度の予算では、公共事業費は前年度以下に押えるというにもかかわらず、予算の規模が前年度比一九・七%のアップになったというゆえんのものは、特に社会保障費を三七%アップにした、こういう点があるわけです。もちろん医療費のアップということもありますが、医療費のアップは一七%台のアップの問題です。そこで、この社会保障費全体、その他の社会保障費とするとかなりふえておる、こういうふうに御理解願いたいのです。  そのふえたものをもちまして、あるいは生活保護者の問題でありますとか、その他の福祉諸施設、また年金対策、そういうものを充実しておるわけでありまして、かなりの配慮を払っておるということはひとつ十分御理解願いたい、そういうふうに思いまするし、同時に、私どもの見通しが狂いまして、消費者物価もずいぶん上がりました、ずいぶん施設収容者あるいは生活保護者が苦労されるだろうという事態に対しましては、これはまたそのとき適時適切な対策をとるというふうに考えておりますので、まあ気持ちは同じなんですが、どうも中身に割って入りますと、少し私どもの立場に対して御理解がいかないような面があることを指摘いたしまして、お答え申し上げます。
  129. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、大臣、あなたうまくごまかすんだけれども、四十九年度は、げたはあるけれども九・六%になるんだ、その見通しが狂ったらとおっしゃるが、それならば、四十八年度の物価見通しは何ぼだったんです。局長、何ぼでしたか。
  130. 高木文雄

    高木(文)政府委員 五%前後だったと思います。それで、実績は一四・〇で現在四十七対四十八を見ておるということでございます。
  131. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 とにかく四十八年度当初の物価見通しは五%か五・五%でしょう。それが今日二二%も物価が上がった。そうすれば、大臣のいまのお話の筋を通していくならば、見通しが誤った分を国民に返さにゃいかぬということになる。そういう論理になっちゃうわけですよ。だから、大臣はうまいことごまかしたつもりなんだろうけれども、それはちょっと話は違うのでして、ほんとうならば、政府が物価見通しを誤ったというのは、これはたいへんなことなんですよ。各家庭もみんなそれぞれ家庭の設計をしておる。それを、物価見通しが五・五%から二二%にも狂ってしまったなんていうことは、私はほんとうはこれだけでも内閣総辞職に値すると思う。責任をとって内閣総辞職すべきものなんですよ。それぐらい大きな問題です。  そうしてこれは、大臣のように、来年はげたはあるけれども九・六になるので、二〇何%にならないし、こうだなんというさっきの説明からいくと、その議論を前の年までさかのぼっていけば、見通しの狂った分だけこれは国民に何か返さなければいかぬということになってしまう。それでもいいのですよ、お返えしいただいてもいいのです。だけれども、いまそれも無理だろう。私はそういう点でたいへん穏やかに述べておるつもりなんでして、これはやはり年度減税あるいは社会保障費にさらに追加をするというくらいの大臣の見解をいただけるものだろう、当然過ぎる当然のことだというふうに私は考えてこの問題を質問したわけですし、いまみんなそれを期待しておるわけです。福田大蔵大臣にこれは期待しておるのだから、大臣どうです、もう一ぺんあまりごまかさないでやってくれませんか。
  132. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 四十八年度の消費者物価が当初五%であった、それが一四%になりそうだ、こういう事態は、御指摘のとおり、これはたいへんなんです。これは普通の事態じゃない、まさに狂乱というか、そういう事態であろう、こういうふうに思うのです。  そういう中において、社会保障対象の人はずいぶんお困りだろう、こういうので、先般の補正予算におきましても、また今回の予備費支出におきましても、そういう方々に対しましてはかなりの配慮をしておる、こういうことでございます。  来年度のことにつきましてどういうふうになるか。私はこういう狂乱の状態というものを一刻も早く克服いたしたい、そういうふうに考え、確信を持ってその鎮圧工作を進めておるわけでございますが、もし万一、私どもの見通し、また計画と違いまして物価が高騰いたしまして、そして弱い人に御迷惑を及ぼすという際におきましては、それに相当いたしました適正な措置をいたし、お困りにならないような措置を講ずるということは、これははっきり申し上げられます。
  133. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そのときには適正な措置をされる、こういうことでありますので、私はそれは社会保障のほうへ回すとか、あるいは低所得層にわれわれが主張する三万円の戻し税であるとかという何らかの措置を講ぜられるものと確信をして、次の問題に移りたいと思います。  税制調査会では、四十九年度税制に関する答申で、給与所得控除必要経費概算控除である、こう述べておりますね。四十九年度改正給与所得最高限度をはずした理由はこのことによるのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  134. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十九年度所得税減税中心は、所得税の中でもやはり給与所得者サラリーマンというところに置くということでございます。そこで、その場合に、当然ながら、給与所得控除に重点を置いて改正を行なうということが常識でございます。  さて、給与所得控除については、従来からいろいろ問題がございました。御存じのように、まず定額控除をいたしまして、それからそれに次いで定率控除をするという形をとっておったわけでございますが、その仕組みがたいへん複雑である、これを簡素化するという問題が一つございます。  それからもう一つは、現在の給与所得控除の一番大きな難点は、年収六百十六万円をこえますと、そこで一律七十六万円の控除頭打ちになる。六百十六万円以上の収入のある方は、幾ら収入がふえても給与所得控除がふえないという形になっております。これは給与所得控除が勤務に伴う必要経費概算控除であるというふうに説明されてまいりましたが、勤務に伴う必要経費概算控除であるというふうな意味給与所得控除をとらえるのであれば、他の事業所得者の経費が一定の収入に対応してどこかで頭打ちになっているという制度になっているならばともかく、そういう制度になっていないことを考えますならば、やはり給与所得控除制度は不徹底ではないかというふうに考えられるわけでございます。  現に、給与所得控除適用所得階層はだんだんふやしてまいりまして、先ほど六百十六万と申しましたが、それは何べんかの改正でその対象幅をふやし、また頭打ち額をふやすということをやってまいったわけでございますが、これをやってまいった理由は、やはり頭打ち制度というものが、給与所得控除必要経費概算控除であるという精神からいえば沿わないものであるということを頭に置きながら、しかし、なかなか一挙に改正ができないということで、今日まで漸次手直しをするということであったわけでございます。  そこで、この際、根本的に直すということであれば、片一方の事業所得について必要経費頭打ち制度がないのでございますから、何らかの意味において、給与所得控除についても頭打ち制度をなくしてはどうか。ただし、やはり収入の増加につれまして、経費の増加は逓減してまいるであろうということから、給与所得控除を一律にいたしませんで、たとえば百五十万円までは四割、次の百五十万円については三割、次の三百万円については二割、そして最後のところで、六百万円からこえました分は一割というふうに逓減的に見るという考え方をとってはどうかということで御提案をし、税制調査会におきましても、最もこの点は議論がございました。いろいろ論議の末、まあそれも一つ考え方であろうということになったわけでございます。  その場合に、もう一つ補足的に御説明いたさなければなりませんのは、先ほどお触れになりました勤労性所得資産性所得の負担のバランスの問題でございます。先ほども申しましたように、また御指摘も受けましたように、勤労性所得資産性所得の負担については、率直に申しまして、バランスを欠いておるというわけでございますが、このバランスを改善する具体的手だてといたしましては、午前中野田委員の御質問にもお答えいたしましたように、現在の総合課税ということを前提として考えますならば、一つ資産性所得についての課税重課していくということ、もう一つ勤労性所得についての課税を軽課していくということ、その両方をあわせ行なうことによってバランスを回復するということが必要であろうかと思うわけでございます。  その意味におきまして、給与所得控除というのは勤労性所得適用がある制度でございますから、これを拡充をいたしますということは、現在の所得税法の持っております最大のウイークポイントでありますところの勤労性所得資産性所得のバランスの回復に役に立つという意味において、有意義なものというふうに考えた次第でございます。そういう必要経費論、その性格論、もう一つは動労性所得資産性所得の負担のバランス論というその双方から考えまして、頭打ち制度をやめることに踏み切ることにいたしたわけでございます。  なお、その際、当然のことながら、諸外国の制度との関連考えてみましたけれども、アメリカにおきましても、西ドイツにおきましても、勤労性所得資産性所得では、実行上変えております。アメリカでは、御存じのように、税率を変えておる。西ドイツでは、税率は低くしておいて、資産性所得については財産税を課税するという方式で変えておりますということも考えまして、日本の場合に、税率で両者の差をつけるか、あるいは財産税を導入するか、それとも何か手だてがあるかということを考えまして、詳しくは御説明を省略しますが、いろいろ研究の末、当面はどうも給与所得控除をもってこの資産性所得勤労性所得のバランス回復の問題に当たるのがよかろうという判断をしたわけでございます。  以上が、給与所得控除につきまして頭打ちをやめました理由でございます。
  135. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 高木さん、たいへん親切に所得税の概論をお述べいただいたのですが、私はもっと簡単でいいのですよ。四十九年度答申で、給与所得控除必要経費概算控除である、こう税調は述べておるが、皆さんもそれを認めるのかどうかというのが一点。  それで、四十九年度改正給与所得控除最高限度をはずした理由は、そのことによるのかよらないのか、これを簡単明瞭にお答えを願えばいいのです。
  136. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおりでございます。私どもも、税制調査会の見解と全く同じ考えを持っております。
  137. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 意図した結果だと思いますけれども、今回の税制改正で一番負担率が低下したのは、先ほど来申し上げておるような大きな所得階層、大企業の社長、重役等の平均給与二千万円台のところだ、こう思うのですが、この層は、交際費は必要経費の中に含まれておるのですか。冠婚葬祭であるとか、社長や重役になるといろいろそういうものがかかりますということで、これが必要経費の中に含まれておるのですか、どうなんですか。
  138. 高木文雄

    高木(文)政府委員 冠婚葬祭ということになりますと、これは必要経費というわけにはまいらないというふうに思うわけでございます。その辺のところの議論で、どこまでが必要経費かということは非常にむずかしいわけでございますけれども、純粋な冠婚葬祭というものにつきまして必要経費と認めて、高額給与所得者についての頭打ちをやめたというわけではございません。
  139. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、頭打ちをやめた理由はどうもまだはっきりしない。さっきの前段の、税調と同意見だというのは確認しましたけれども、なぜ頭打ちを取っ払ったのか。この説明をもう少ししてくれませんか。
  140. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほども長々と申しましたが、簡明に申しますと、まず第一は、事業所得者とのバランスでございます。事業所得者は、収入から必要経費を引きましたものに人的控除をさらに引きまして、税率がかけられて事業所得に対する税額がきまります。その場合の事業所得者についての必要経費というものは、収入の額に応じてどういう関係にあるかと申しますと、現在の執行等を含めてみますと、ある程度収入の額がふえたならばどこかで必要経費の額を打ちどめにするという制度は、やっていないわけでございます。  一番わかりやすい例として申し上げますならば、作家の方が著作権収入があるという場合に、非常に評判がよくてたくさん売れる本と必ずしもそうは売れない本とあって、ある年に五百万円の著作権収入がある、ある年に千万円の著作権収入があるとした場合に、その著作権についての必要経費を見る場合に、どこかで頭打ちがあるということではなくて、その収入の大きさにある程度応じながら、またある程度軽減しながら、その必要経費の認定をやっておるという現状でございます。作家の方に限らず、すべてこの事業所得についての必要経費の認定の問題というのは、収入関連があるわけでございまして、どこかで頭打ちということはないわけでございます。  そこで、給与所得控除必要経費と概念するならば、そういう性格必要経費の第一の本質であるというふうに概念するならば、給与所得控除について頭打ちというのはおかしい、論理的にもおかしいし、実際的にもおかしいという考え方でございます。  第二の問題は、先ほど申しました資産性所得勤労性所得とのバランス論というところから起こっていることでございます。
  141. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これのバランスということでありますが、ですから、私が先ほど来申し上げておるように、再配分機能の問題、こういう問題を重視されないと、平面的な理屈で同じパーセンテージの税金をかけるとすれば、これはたいへんな不合理が出てくる。それだから、税制は大体所得税が累進になるというのは世界じゅう共通しておることなんです。それは再配分機能の問題だと私は思うのです。  それをいま申し上げたように、社長、重役減税といわれるほど高額のほうに有利に働いておるのが、私は今度の二兆円減税最大の特徴だと思うのです。そこにまた頭打ちをはずしてしまうなんというのは、皆さんは、ああ言えばバランスの問題・こう言えば配分の問題、こうなるだろうと思うのですけれども、これは何としても理解しがたいところなんで、必要経費というのはどういうものか、どうしてこれが必要経費なんですか。
  142. 高木文雄

    高木(文)政府委員 給与所得控除必要経費だ、ただ、その必要経費を、事業所得の場合のように、こういうものが必要経費、こういうものが必要経費というふうに個別に書き上げて、そして算定をして、それを収入から引くということをしないで、収入に一定の率をかけて出すというやり方をやっているわけでございます。  サラリーマンの場合、どこまでが必要経費かというのは非常にむずかしい問題でございます。たとえば、通勤に要する経費等は明らかに必要経費でございましょうけれども、洋服とか洗たく代とか、そういうものは給与を得るために必要な経費の部分と、生活のために必要な部分との限界が明らかでないわけでございます。言ってみれば、比較的安い洋服を着てがまんするというやり方もありましょうし、職業によっては、相当いい服をたくさん使わなければならぬという場合もありましょうし、そういう意味で、同じサラリーマンでも、職業によって、洋服代に多くを投ずる必要のある場合と必要のない場合とありましょうし、それから先ほど申しましたように、生活費の一部と見るべき部分と、給与を得るための部分というのがありましょう。それが分解がきかないということから、概算的に引いておるということでございます。  これをいま平均的なサラリーマンにつきまして、かりにいろいろ算定をいたしてみましても、今回の四割、三割、二割、一割という額には、なかなかならないということでございます。  以前は非常にその議論をしておったことがございますが、その後最近までは、いろいろな場合、特に訴訟の場合なんかでも、必要経費とは何だ、具体的にどの経費とどの経費をいうのかという論議がございますけれども、それは技術的と申しますか、実務的に算定はできません。算定はできませんが、しかし、そういう生活費ではない、何らかの意味において給与を得るために必要であろうと思われるものを概算的に見ているわけでございまして、それでは冠婚葬祭まで入るかと言われますと、それはどうも必要経費というわけにはまいらぬだろうということでございます。一々の、こういう経費が入るか入らぬかということになりますと、それぞれの項目ごとになかなか議論を呼ぶところであろうかと思います。
  143. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いままでは、必要経費だというふうにぴしゃりとは規定してありませんでしたね。
  144. 高木文雄

    高木(文)政府委員 給与所得控除というのは何のための制度であるか、これは必要経費であるかどうかということは、法律の上では明確になっておりません。これはお尋ねに対してお答えをいたしましたり、それから税の専門家が書物にいっておりましたり、あるいは最近では、裁判の際に給与所得控除とは何かということについていろいろ論議がございましたり、そういう形でございます。  ただし、そのすべての場合を通じまして、やはり給与所得控除とは必要経費の概算的な控除であるという説明が、多数説と申しますか、一般的に最も通用しておる説明のしかただというふうに思っております。これは何も今回の税制調査会がそういう定義を下したということではなくて、従来からそうでございましたし、私どもないし私どもの先輩の主税局の者も、大体、給与所得控除とは必要経費概算控除だという説明をしてまいっておると思っております。
  145. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 労働者の研究機関の調査によりますと、もっぱら夜間労働に従事しておる、いわゆる三交代制なんということで夜中に働かされておる労働者は、平均寿命で他の労働者に比べて四、五年短いという結果が出ておるそうであります。肉体の消耗が著しいというわけであります。事業所得必要経費の算出にあたっては、資本の再生産に必要な減価償却費の計上なんというのは、これは当然のこととして認められていますね。そうすれば、夜間労働には割り増し金、手当を出しておるのも、私はやはりそういうことだと思うのです。深夜労働だとか超過勤務だとかいうものは、たいへんに肉体の消耗が激しい。だから、これに対して金をよけい出しておる、こういうことだと思うのですよ。そうすれば、この著しい消耗をする労働者の資本である肉体、そういうものは一体どういうふうに消耗費を計算されておるのか、これをお伺いしたい。
  146. 高木文雄

    高木(文)政府委員 肉体の消耗を税制の上でどう見るかというのは、なかなかむずかしい問題でございますが、少なくとも、いろいろな各種のサラリーマンの間におきまして、給与所得控除制度論として、肉体の消耗を見るという考え方は、いままでいたしたことはないと思います。  お答えにならないかもしれませんが、肉体の消耗とは若干違うかもしれませんが、特殊なスポーツをやる職業の人が、特別に栄養をとらなければならないということで食費によけいかかるということの場合に、主として事業所得計算の場合に、その種の食費というものを普通の食費と区分して、むしろ必要経費の一部として論議されたことがございます。そういう形で、事業所得者については、そういう消耗を回復するための特別の食費というものについて、必要経費論で議論したことはございます。しかし、それは非常に珍しい事例でございます。私の承知をしております限り、何らかの方法で肉体の消耗というのを税制上取り入れてくるということは、あるいはちょっとやっていないのではないかと思います。  それから、ただいまお触れになりました夜間勤務の人、特に交代制勤務労働者についての深夜の割り増し賃金の問題というのは、これは非常に長い歴史がございまして、西ドイツにおいて税制上非常に長く論議された問題でございます。その結果、現在、世界の各国ではほとんどやっておりませんが、西ドイツだけにつきましては、交代制勤務について夜間勤務手当についての特別扱いが行なわれております。この論議の過程におきましては、いろいろ訴訟がありましたり、いろいろなことがございました。その過程においては、先生がお触れになりました特殊な肉体の消耗というような問題が論議されたやに聞いております。寡聞にして私ども承知しておりますのは、その程度のことでございます。
  147. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 夜間の労働とかいうものは、やはりたいへん消耗するわけです。人間やはりまだ農耕民族の血を引いていると見えて、太陽さんの出ているとき働くほうが楽なようです。そういう点で、これはたいへんな肉体の消耗をする。それだから、また、労働基準法やそういうものは、これに対して深夜手当を出せ、こういっておるのですね。だから、どこの国がどうかは私は寡聞にして知りませんけれども、これはやはり肉体の消耗——まあ皆さん資本に課税せずだとか生活費に課税せず、こう言うならば、労働者にとって労働力の再生産というものは何といったって一番基本的なものなんだから、そういう点で、肉体を消耗する超過勤務手当にまで課税をするということは、私は、人道的な立場に立って酷ではないのかという点で検討をすべき問題だろう、よその国がやっていないとかなんとかいうことじゃなしに、本質から見て検討すべきものだろうと思いますが、どうですか。
  148. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昨年のこの委員会におきましても、各種手当の税制上の問題についていろいろ御意見が提出をされました。また四十九年度税制改正を論議いたしました政府の税制調査会の場面におきましても、主として労働関係委員から、夜間勤務手当のうちの交代制勤務手当の問題について、非常にいろいろと御研究の上での意見の開陳がございました。これを税制上どうするかということは、かなり議論をしたのでございます。  しかしながら、もろもろの手当はいろいろな種類のものがございまして、なかなかどこでどうやって線を引くかということがむずかしいということがございました。現段階では、この種のものにつきまして、税制の上において何らかの手当てをするというのは、線をどこに引くかということがむずかしいということとの関連で無理ではないか。むしろやはり、従来わが国でやってきておりますように、収入サイドで見ていただく以外に方法がないのではないかということで、少なくとも四十九年度税制改正の問題といたしましては、いわば見送りということになっておるわけでございます。  ただ、この問題は、毎年毎年論議されるということでそのことが証明されますように、やはり相当問題があるところであるということは、私どもも否定するものではないわけでございまして、外国がどうだからというようなことで簡単にうまくいかないということだけで処理すべきものではないことは御指摘のとおりでございまして、今後とも検討の課題にはしていかなければならぬと思いますが、いままで毎年毎年議論されながらどうもまだ解決していないということは、ある意味におきましては、そのことの解決の出口を見つけることが非常にむずかしい問題であるということの証明であることを御承知いただきたいと思うのでございます。なかなかいろいろな種類の労働形態があり、いろいろな種類の給与形態がございまして、どこからどこまでをどうしていいのかということが何としてもむずかしいということから、解決の出口を見つけそこなっておるわけでございます。
  149. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、これはそんなにむずかしいことじゃないじゃないですか。私はしろうとだからあれだけれども、深夜手当だとか超過勤務手当とかいうものを課税対象からはずせばいいのだから、これはそんなにむずかしいことじゃないのじゃないですか。労働者の必要経費というのは、私は、先ほど申し上げたように、唯一の資本である労働力の再生産費だ、抽象的にいえばそういうことだと思うのですが、これはいかがですか。
  150. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるとおり再生産費であるという見地をとりました場合におきましても、その手当の中の何%あるいは何円という額が再生産費に当たるものかどうかというような問題が一つございますし、それから、いま夜間手当の問題を御論議でございますけれども、昼間勤務の場合でも、特別な消耗を伴うがゆえに、言ってみれば、再生産のために特別な配慮が必要だという職業もあるわけでございまして、夜間勤務だけということで問題は片づかないというところに、限界の引きようがないというところに問題があるということでございます。
  151. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はそれと切り離して、いまお伺いしたのは、抽象的にいえば、唯一の資本である労働力の再生産費、これは必要経費ということになるのだろう、こういうことですが、この点は認められるでしょう。
  152. 高木文雄

    高木(文)政府委員 労働の再生産費というものが、給与所得控除必要経費ということにはならないと私ども考えております。労働の再生産費というか、生活費というような意味におきまして、それを税制上どうとらえて、おるかというと、それは人的控除、つまり、基礎控除配偶者控除扶養控除、生活のために、生存のために必要なものというのは、むしろ人的控除というほうで見ておるわけでございます。  確かに激しい労働の場合に、通常の労働の場合よりは、たとえばよけい食費がかかるだろうとか、経費がかかるだろうとか、いろいろなことがあるわけでございますが、食費の部分を二つに分けて、人間が通常に生活していくために必要な食糧費と、それからその特別な労働をするために必要な食糧費とを区分して、片方はいわゆる人的控除の概念である、片方はいわゆる給与所得控除の概念であるというふうに区分してものを考えるということは、いまのところやっていないわけでございまして、その問題は単に給与所得控除制度の問題としてではなしに、人的控除制度の問題とからめた問題として論議が行なわれておるわけでございます。現在のところは、給与所得控除の中にそういう労働力再生産のための特殊な食費とかなんとかというものが入っているのかという御議論でございますならば、これは必ずしもそこにこれだけ入っておりますということではないというふうにお答えせざるを得ないと思います。
  153. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんは税金を取り立てる。税というものは、国にとってはたいへん大きな仕事なんですね。それだけに、非常なあいまいもことした形でこれをまけてやったり、これを取り立てたりするということ自体、私はたいへん問題があると思うのですよ。だから、その辺の概念はもう少しきちんとして、それが間違いであれば直せばいいのだけれども、いまお話を聞いておると、必要経費概算控除だと、こう皆さん規定しておる。しかし、必要経費とは何ぞやということになるとさっぱりわからないというのでは、何を根拠にしてまけたり取ったりされるのか。私は税というものはそうあいまいもこで取るべきものじゃないと思うのですが、その点はどうなんですか。  これは私は、ほんとうをいうと、税に対する基本的な態度だと思うのですよ。何かわけがわからないけれども、いただくのだとかなんとかということになったら、これはたいへんなことなんだな。しまいには、今度はいろいろ問題はあるけれども、何とか超過税みたいに罰則的に取るとか、今度はしゃくにさわるからおまえからよけい取るなんということになったら、これは税の体系もみんな乱れてしまって、どうしようもない。そういう点で、必要経費だということならば、必要経費はどういうことのための必要経費なのか。取るほうとしてはもう少しきちんとしなければならぬ問題で、あいまいもことした必要経費なんという概念では、税を執行する立場からいえば、これは私はどうも納得ができないのです。
  154. 高木文雄

    高木(文)政府委員 まさにおっしゃるとおりでございまして、われわれのように制度組み立てる立場にあります者から見ましても、またがって私自身の経験で、課税庁の立場に立つ場合におきましても、何しろ公平ということが最大の任務でございます。いろいろ違う形態の生活をしておられる、いろいろ違う形態の職業の方がある、それからいろいろ違う形態で違う大きさの収入を得ておられるという方の間に、どのような基準を置くならば最も公平と言えるかということを発見するのが最大の問題でございますから、その意味におきますと、国民の中で一番数の多い給与所得者の経費をどう見るかということは、非常に大きな問題でございます。  しかしながら、現在までのいろいろな研究といいますか、私どもだけでない、学者を含めて、その他の方を含めての研究の結果でも、また日本だけでない諸外国の人のいろいろな研究の結果でも、必要経費はここからここまでということは必ずしも明確になっていないわけでございまして、しばしば問題になります必要経費概算控除日本にあります給与所得控除のような必要経費概算控除と、必要経費の実額控除との選択制度をとりますような場合におきましては、その議論がとことん議論の焦点になってくるわけでございますけれども、それの場合にも、この必要経費の範囲はどこまでなのかという限界をつくることが非常にむずかしいようでございます。  御存じのように、アメリカにおきましては、ある種の実額控除制度をやっておるわけでございますが、実額控除をするにつきましてどうやって算定するかについては、経験的な積み重ねでできているようではございますが、なかなか線が引けてないというようなことのようでございます。  これはおしかりを受けるのはもっともでございますし、また、われわれとしてはここのところは非常に問題だと思っておりますが、現在の段階で必要経費とはかくかく、こういう項目からこういう項目のものでございますということを明確にお答えできません。しいてあいまいなお答えを申し上げているわけじゃなくて、われわれの今日までの勉強なり学者から教わったところでも、そこは明確にされていないというのが現状でございます。
  155. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 学者でもとおっしゃるけれども高木さんのほうがよっぽど学者なんだから、その辺、いま申し上げたように、一番数多くの人たちから税金をいただくわけです。その一番大きな部面の、そのまた一番基本的なあたりがあいまいもこでお取りになるということは、私はどうもこれはいただけないわけでございまして、税金を取るというのは、もう少しその辺の解釈、理論をきちんと詰めるべきだ、こう思います。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 これは鋭意努力してもらいたい。私なりに考えれば、労働力の再生産費だ、生活費プラス食糧費といいますか、そういうのが大まかな内容だろう、抽象的にいえばそうなるだろう、こう思っておったわけであります。ところが、局長のほうはどうもそれと違うみたいです。  いずれにせよ、この労働者から一律の給与所得控除をするということ自体、私、相当無理があるのだと思うのです。地域によりあるいは職業により異なると思うのです。ただ、これをある程度あまり不満のないようにするためには、この控除額を大幅に引き上げるか、それともまた選択制で自主申告、私はこれは日本の民主税法の基本だと思うので、そういう点で、勤労者の天引の源泉控除なんというものは、やりたい者がやればいいのです。控除額をうんと引き上げていけば、めんどうくさいことをするよりも一括控除をもらったほうがいいという人は源泉控除をやればいいし、そうではない、いろいろな条件があって、私の労働力の再生産にはかくかくの必要経費が要るんだ、こういうものは自主申告で、申告税制にするのが民主主義の立場からいっても当然のことであって、天引きでなければならないというようなことは、民主税制という立場からいってどうもおかしいと思うのです。これは当然自主申告というか、申告制度を労働者にも公平に認めるべきだと思うのですが、いかがですか。
  156. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在、日本税制の中で非常に特徴的なのは、サラリーマンについて源泉徴収制度が非常に厳格にきちっと行なわれているということでございます。それと同時に、制度面では給与所得控除があるということでございます。したがって、現在サラリーマンについては、給与所得控除がある上に、つまり、給与所得控除がある上にということは、必要経費の見方を実額によらないで概算によっておるという制度をとっておる上に、もう一つ源泉徴収制度が行なわれているということでございます。そのことについて御不満があることはよく承知をいたしております。京都その他において現在訴訟が行なわれておりますし、それから労働団体のほうから、いろいろ不服審査を求められたりしておるという現状もございます。そのこと自体は、そういう仕組みに御異論があるという方が大ぜいいるということの証明にほかならないわけでございます。  さて、しかしながら、必要経費概算控除をやめて、すべてのサラリーマンについて実額控除をとる、あるいは選択制にするということは、これは言うべくしてなかなかむずかしいわけでございます。それは、どなたが必要経費概算控除を選択しないで実額制を選択するかといいましたならば、四十九年度税制改正をベースにして申しますと、四割、三割、二割、一割というものを収入にかけていって出した額よりも、必要経費がよけいかかったという方だけが必要経費の実額控除を選択されるわけでございますが、そうするためには、四割、三割、二割、一割ではどの部分からどの部分までが四割、三割、二割、一割という計算でやってある給与所得控除でございますよという厳密なるものさしをつくることが必要でございまして、それを乗り越えたという証明、それにはまらなかったという証明があった方に限って初めて実額控除の選択ということになるわけでありますが、この四割、三割、二割、一割でどこからどこまで見たのか、たとえば洋服の場合であれば年何着まで、そして幾らの洋服まで見ることにするのかということ。それはその人の職業の種類によって洋服をしょっちゅう変えなければならぬ人があったり、いろいろしますものですから、そういうところまでいろいろな表をつくることにでもしないと、なかなかそれがうまく組まれないというあたりの問題がありまして、そこで、なかなか実額選択というのはむずかしいのではないかというふうに考えられるわけでございます。  それから、源泉徴収制度のほうの問題につきましては、これは初めから源泉徴収だけにするか、あるいはサラリーマンの場合でも源泉徴収をしないでもよろしいという制度をつくるかという問題が一つあるわけでございます。この問題につきましては、日本は源泉徴収制度がかなりうまくいっている国でございますが、このような場合に、三十年以上の歴史をもってやってきた今日の現状におきまして、これをやめて、たとえば源泉選択をしてもらうか申告にするかを自由にして、選択にするのがいいかどうかということになりますと、どういう結果になりますか、どちらをどういうふうに選択されることになりますか、その辺にも一つ問題があり、それに税の制度考えますときに、昔からよくいわれておりました徴税費最小の原則というものも、当然一つ考えてみなければならぬということもありまして、これまたそういう意味で、にわかに踏み切りかねるということでございます。  この二つの問題はしばしば一緒に議論されておりますが、一応、本来は別の問題として議論さるべき問題であろうというふうに思っております。  なお、しかしながら、この問題は非常に大きな基本的な問題でございますので、私どもの間でも、また私どもの諸先輩の間でも、いろいろな議論があるわけでございまして、現行制度だけが唯一無二のものであるというふうには考えていないので、今後ともやはり十分いろいろな角度から考えてみなければならない。いまのだけがいい制度であって、ほかに制度はないのだというようなかたくなな気持ちではおりません。ただ、いろいろそれを乗り越えていく問題が多いということで、言ってみれば、いつもお尋ねに対して、なお検討いたしますという御回答しか申し上げてないという経過でございます。
  157. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは長い間の論議でありますが、最近特に申告をしようという動きが強いわけです。これは御承知のとおりです。そうすれば、皆さんが概算控除の額をうんと引き上げれば、そんなめんどうくさいことをせぬでも、これで天引きしてもらったほうがいいやという人も、いまの段階ではたいへん多いと私は思うのです。実際また自分でいろいろと書類をつくったり何かするということは、たいへん手のかかることです。しかし、また、これはある意味で、国民が税を理解し、そして理解した上で納めるということからいえば、大いに勉強してもらうということは、これまたたいへんけっこうなことです。だけれども現実にはそんなに多くないと私は思う。  そうすれば、申告をしたいという者が申告をするというのは憲法上一体どこがおかしいのだろうかということになると、一つもおかしくないですね。あたりまえなんですよね。自主申告ということで、皆さんの行政上の繁雑さの出ることは私も想像します。だけれども、行政の繁雑さで憲法の民主主義の原則を踏みにじるなんというのは、私は絶対に許せないことだと思うのですよ。  そういう点で、皆さん、これは長いことかかっての懸案であります。もうこの辺で認めるべきものは認める。その原則は、その基本は何に依拠するかといえば、私は民主主義というもの、憲法というものに従ってこれを判断していく。そしてその中でやらして、認めるべきものは認めていくというのが、もう政治の常道だと思うのです。それを、行政費がかかりますとか、いやどうでございます、何だかんだということで押えつけていくのは、私は憲法のたてまえからいって、行政府のわがまま、こういうことになると思うのですが、この点は、もうこの辺で大臣、思い切って自主申告を認める。しかし、概算控除額をうんと引き上げておけば、必ずしもそう大ぜいがやらない。むしろ私は、大ぜいが自主申告するほど税に対する理解を得た国民であってくれたら、どれだけ日本の国は民主的でしあわせなんだろうというふうに逆にも考えますので、この辺で認めるべきだと思いますが、いかがです。
  158. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私、ちょっとさっき説明がまずかったのでございますが、給与所得控除制度と実額制度の選択制度にするという問題と、源泉徴収制度を申告制度にするという問題は、本来理論的には別の問題であるというふうに申し上げましたが、しかし、それはあくまで理論的な点から言っておるだけでございまして、実際問題としては、給与所得控除と実額制度との選択制度を設けた上で、一部源泉か源泉でないかの選択をまた認めたらいいじゃないかということが問題になると思うのでございます。そのことを頭に置きました場合の第一の難点は、現在の所得控除制度概算控除制度でどこまでカバーしておるということになるのか。それを越える部分というのを判定する場合には、その根っこの概算ではどこまで見ておるのだということがはっきりいたしませんといけませんので、その議論をどういうふうに展開していくかという問題が一つございます。  それから、第二は、おっしゃるように、私どもは確かに行政繁雑ということよりも、行政にあまり自信がないということがものごとの踏み切りをおくらしている大きな理由でございますけれども、それよりももっと大きな一つの問題としては、自信がないのは、行政が繁雑になるからとか、職員の数をふやさなければうまくいかぬとか、そういうことよりも、やはりいまの状態でそういうふうにすることが、より公平性が保てるかどうかというところに一つ問題がございます。  現在、営業所得者については、御存じのように、全部申告のたてまえになっておるわけでございますけれども、何といいますか、非常に言い方がむずかしいわけでございますが、営業所得者相互間における公平というものが十分保たれでいると言えるかどうかというあたりをながめてみますならば、申告制度にすることがより公平になるのかどうか。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 経費の概算控除制度をとってやっておりますサラリーマン相互間の不公平感というものがいまどの程度あるかどうか、営業所得者相互間の不公平感というものがどの程度あるかどうかということを静かに考えてみますと、全体について申告制度にしたほうがより公平感が維持できるということの自信がなかなか持ちにくい。これは言いにくいことでございますけれども、わが国の国民生活の中に、申告制度なり納税観念というものの定着性というものがある程度進んでまいりました段階と見合っていきませんと、自主申告で完全公平が維持できるということはなかなかむずかしいわけでございます。行政上の繁雑というような部面ではなくて、むしろそういう意味での公平論として、私どもはかなり危惧の念を持つわけでございます。
  159. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 過日の本会議でも御質問がありまして、源泉制と申告制と選択せしめたらどうかというようなことでございましたが、私はいまの源泉制、これはたいへんいま国民の間に慣熟をしておる、もう定着しておる、こういうふうに思うのです。そういう制度がかりに若干の欠点がありましても、これは悪制ではない。これは古来そういうふうな理解が税についてございますが、しかし、この場合におきまして、私は、そう欠陥があるとも思わないのですよ。  いまるる主税局長が申し上げましたとおり、これを申告税制に変えるということにいたしまして、はたしてこれで公正な税制であるかというと、必ずしもそうもいかない。のみならず、これは税務当局と二千三百万人といわれる給与所得者との間に非常に繁雑な手続関係が生まれる、そういうことではたしていいのか、こういうことを考えざるを得ないのです。そういうことを考えますと、理論的には阿部さんのお話、私は理解はできます。できまするけれども、実際問題として、いま今日この段階で妥当であるかということ等を考えますと、はなはだこれは疑問を持つという見解でございます。
  160. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はいますぐ全部が申告制になるというふうには思っていないのですよ。むずかしいから、いままでどおりでいいやということになるかもわからない、そういう人が大半かもわからない。しかし、選択制にするというのは、行政が多少繁雑になるとかどうとかいうことは二の次の問題ではないだろうか。やはり一人一人が自分でやってみなければ、税の問題なんというものは覚えるわけがない。国民に袋をかぶせておいて、みんなめくらにしておいて税金をふんだくるというなら、これはわかるけれども、そうではない。お互いに納得し合って納める。それで民主的にこれを運営するとすれば、それに何がしかの——民主主義は、それは経費もかかる、時間もかかる、私は当然なことだと思うのですよ。簡明直截に独裁政治であれば、こんな議会なんて、こんなひまをつぶすこともないのかもわからない。しかし、それでは大きな間違いを起こすというので、民主主義という、こういう手間のかかる——大臣に御出席願いたいといったってなかなか出ていただけないというくらいの手間のかかる仕事をやっておるのは、何のためなんだろう。やはり、回りくどいだろうけれども日本の民主主義を発展させ、育てていこうということで、お互いに苦労をしておると思うのですよ。  その観点からいけば、私は、確かに行政的には繁雑になるだろう、金もかかるだろう、それも十分わかります。だから、いま一ぺんに源泉を全部取っ払って申告制にしろとまでは、私は申し上げていない。しかし、この憲法の原則からいって、国民が税金のことを勉強し、それを理解をし、そしてやっていくためには、自分でやってみるということがいいことなんです。何がしかのやりたい者は、選択をして自主申告をやるということは、私は福田大蔵大臣が民主主義のチャンピオンになろうとするならば、当然その原則をまずお立てになる、その上で初めて多少手数の問題だとかいろいろな問題を御考慮なさるのはけっこうです。  だから、私は、控除をうんと引き上げろ、そうすれば、めんどうくさいから、こっちのほうから、源泉で天引きにしてしまっていいと言う人も多分に出ると思うのです。だから、いま一ぺんにというのは、私はこれはなかなかむずかしい問題だとは思います。だけれども、いまの大臣のように、ただ長年にわたってやってきた。確かに税の関係はあまり変更することはいいことじゃない。これもわかります。ただ、いまの大臣のおっしゃったお話では、何か憲法あるいは民主主義という原則を踏まえておらない御答弁ではないだろうか、私はこういう感じがするわけでして、その辺はもう少しお考えを願い、検討をしていただきたいと思うのです。
  161. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、阿部さんの御議論そのものに反対しておるわけではないのです。御趣旨はよくわかります。わかりますが、さてしからば、その御議論のとおりやってみて、これが日本税制としてはたして改善となるか、こういうことを考えますと、疑問がある、こういうことを申し上げておるわけなんです。税は何といったって公平でなければならぬ。その点から見ても、これは問題がなしとしない。それから第二に、税は簡素でなければならぬ、こういう原則がある。この原則から見ても問題がある。  そういうようなことがあるのでありまして、税の民主化というような立場の御所見の意味はよく理解できますけれども、なおこれは慎重な答えをせざるを得ない、こういうことでございます。
  162. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 最後に、では、これから特別措置の問題に入りますけれども、四十九年度税制改正で、政令により公害防止準備金の適用業種が拡大される、こう聞いておりますが、公害をたれ流す企業が公害の防止の費用を支出するというのは、私は原則だと思うのです。  ところが、この法律によると、そうではなしに、公害の防止の費用の支出に備えて、将来やるかもわからない、やらないかもわからない、これに備えて収入の百分の三とか百分の六を積み立ててこれを損金に落とす、税金が軽減される、こういう制度でありますけれども、これで見てまいりますと、どうも新日鉄ばかりやり玉にあげて気の毒だけれども、新日鉄のこれでまいりますと、四十八年の三月期には四十五億円、四十八年の九月期には九十六億円積み立てられたのであります。そうして、たとえば君津におけるように、あれだけ公害を出していながら一円も、びた一銭も公害防止のための支出として取りくずしてはいないのですね。そうすると、これは完全な内部留保というか、利益隠しの手段と見ざるを得ないのですが、この事実はお認めになりますか。
  163. 高木文雄

    高木(文)政府委員 公害防止準備金の制度は、現行租税特別措置法にありますもろもろの制度の中で、税制の立場から見ますと、あまり感心をしない制度であるというふうに考えております。  なぜこういう感心をしない制度をこしらえましたかと申しますと、また今回延長をお願いしておるのはなぜかということを申し上げますと、公害の問題がにわかに問題になりました際に、数年前からにわかに問題になってきたわけでございますが、毎年毎年、公害防止費用がかなりの勢いで逓増をしていかざるを得ない。しかしながら、企業所得の状況は、景気、不景気に応じまして、非常に大きな波が出ます。そこで、ある公害防止事業を二年先なり三年先なりにやろうと考えた場合に、所得のある時期とその公害防止事業を実施しようとする時期とが重なりますとうまくいくのでありますけれども、それが合わない場合があり得るということで、景気の変動に関係なく、景気のいいときにある程度のものを準備しておいて、景気が悪くても公害防止のための事業を平均的にできるということにしたらどうだろうかということから、この制度が始まったわけでございます。  しかしながら、私どもとしましては、それはあくまで公害の問題は——公害はある程度当然のようにして伴って出てくる、それは企業が当然に防止しなければならないわけでございますから、本来ならば、こういう制度は必要がないのではないかというのが私どもの立場でございます。それに対して、一つは、公害防止を緊急にやらなければならないし、その緊急にやらなければならないという理由は、企業のほうの経理状態とかなんとかいうものと関係なくやらなければならないのだから、所得のある時期にある程度積めるようにしておいて、そうして景気の悪いときでもそれを取りくずして、公害防止費用に回すという仕組みにしてはどうかということできたものでございます。  でございますから、現在は公害防止準備金を積めます企業がどうやって選ばれているかと申しますと、売り上げ高に対して公害防止費用が比較的高いという条件と、その業種の性格上、何といいますか、景気変動にさらされやすい企業であるという条件と、その二つの条件に重なったものだけを指定することになっております。現在その業種の数は三十数件に及んでおりますが、大体もうカバーをいたしております。ただ、二、三業種がその条件に該当するのだが、まだ指定漏れがあるということで、若干の業種についての指定を考慮いたしております。  と同時に、この制度につきましては今回延長をお願いいたしますけれども、どうもこのままいつまでも続けるということは適当でないというふうに考えておりまして、公害防止がいかに必要であり、また公害防止のための何らかの経理上の手当てが必要であるといたしましても、少し現在のは、ただいま御指摘になりましたように、いわば経理操作的に当てられる可能性を持った仕組みになっておりますので、これを直す必要があるということで、政府部内におきましては、担当部局、具体的に申しますれば、通産省なり運輸省でございますけれども、担当部局と十分協議をいたしまして、今回二年間延長をお願いいたしますが、その間にはよほど研究して、次回には漫然延長というようなことがないようにということで、研究することを要請いたしておるという実情にあるわけでございます。私どもといたしましても、これは大いに勉強いたしまして、御指摘のような弊害を何とか次回までには除去していかなければならぬと思っております。
  164. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 局長は率直に、あまり感心しない特別措置だ、こうおっしゃったので、あまり追及をするのが私も何かつらくなったのですけれども、公害と企業の大きさとは必ずしも関連がないのですね。大企業だから大公害を出すとばかりはいえないのですよ。ところが、この積み立てば、収入というか、結局売り上げの何%となると、たとえば新日鉄のように一年間でたいへん大きな売り上げをする企業、これはうんと積み立てることができる。小さな企業でも公害をうんと出す企業があるかもしれない。だけれども企業が小さい、売り上げが小さければ、この積み立てができない。  大体、これを積み立てておるのは大企業ですよ。しかもこれは、事実が発生したら減税措置だとかいろいろなことをするというならわかるけれども、いまの新日鉄のように九十六億円も積み立てておいて、びた一文も使わない。まさにこれは内部留保の典型的なものなんだ。こんなものをまたこの際に延期をするなんて、大体これは四十九年の三月三十一日までの期間だったのだから、もうこの辺で——これは皆さんがたいへん感心しない特別措置だとおっしゃるならば、しかも、私は先ほど来、大企業金持ちのほうに減税だとかいろいろな恩典を与え、そしてインフレ弱者のほうにはさっぱり恩典を与えないやり方だという指摘をしてきましたけれども、こんな気に食わない法律をまた二年間も延ばすなんというのは、これはまさに財界の圧力というのか、癒着というのかわからぬけれども、これはいただけない御答弁でして、これはおやめになったらどうなんです。延長なんというのはすべきじゃないのじゃないですか。
  165. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるような面が確かにあるのでございます。これは二年前に設けられた制度でございます。そうして当時、環境問題、公害問題のための臨時国会というのが開かれたあの直後に考えられた制度でございます。公害対策としてはいろいろなことが考えられておりますが、一つは、先生がおっしゃいました、具体的に公害防止の工事をやったという場合に、その設備について特別償却を認めるという制度一つございます。もう一つは、景気、不景気にかかわらず、コンスタントにこの公害防止事業をやることができるようにという公害防止準備金制度がございます。この二つが公害防止のための税制としては柱になっておるわけでございます。  ところが、それがどういうぐあいに運用されてきますかということは、たまたまいま新日鉄の例を御指摘になりましたが、私どももまだ二年間でございますので、これがどういう規模の業種にどのように活用されているかということは、必ずしもまだ残念ながら十分把握できていない。総体としてどのぐらいのものが積まれておるかということはわかりつつありますけれども、それがいろいろな業種、三十幾つ指定されておりますが、どういう業種がこの制度を最もうまく活用しているかとか、あるいはどういうふうにして取りくずされていくかとかいうことは、制度上は三年間たちましたならば取りくずすことになっておるわけでございますが、そこのところ、まだ三年目も来ておりませんので、取りくずしの状況も全くわからないということでございます。  それから、率が百分の六、百分の三とおっしゃいましたが、そうではなくて、売り上げの千分の六、千分の三でございます。この率が妥当かどうかというあたりも非常に問題があるわけでございます。その経験値がだんだん出てきましたならば、手直しをぜひとも求めたいと思っておるわけでございますが、いかにもまだ始まってから、四十七年の四月一日から始まったわけでございますので、実績経験期間は一年半ほどでございます。また一年決算方式でいいますと、まだ一回しか積んでないということでございますので、もうちょっと様子を見させていただいて、どこがこういうふうにぐあいが悪いから、この制度をこういうふうに直そうではないかということにして、ごかんべん願いたいというふうに思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、この準備金がかなりの額になってきておるということは、ある意味におきましては、公害問題の緊急性が一部にいわれておりました特殊の産業だけでなくて、かなり幅広に問題意識が広がってきたことの証明であるということは言えるのでございます。ですから、公害についてのものの考え方が定着をしていく過程におきまして、これが利益準備金的なものにならないように改正をはかっていくということは考えなければならぬと思っておりますが、それをやるにいたしましても、いかにもスタート以来わずか二年でございまして、データ不足でございますので、そっくりそのままの形で手を触れないということで延長をお願いせざるを得なかった、こういうことでございます。
  166. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この問題を出したのは、私はやはり特別措置の根本にかかわる問題だ、こう思うからでありますけれども、公害対策、これはもうたいへん緊要なことであります。しかし、私は、公害を防ぐのは、第一に企業の責任なんだ、企業の負担で行なうというのが原則だと思うのです。また企業の力で不可能だという場合には、国の補助金の制度もあれば、また融資の制度もあるだろうし、それに利子補給という手もないことはない。それをなぜこう準備金に積ませるのか、積み立てさせるのかという点になりますと、私はどうも理解できない。  しかも、昨年来過剰流動性の問題というのが大いに問題になり、福田さんは、いま金融の引き締めだ、設備投資の抑制だ、そして買い占め、売り惜しみの資金を融資させないようになんて言っておるけれども、片っ方の特別措置で全部しり抜けだなんということでは、どうしようもない。これじゃどうしようもないので、皆さんがどうしてもこれをやりたいならば、これを積み立てさせたら、政府なら政府に預かっておくとか凍結するということならば、まだ百歩譲って私はわからぬではないのです。凍結もさせないで、公害防止には一銭も出しもしないで、そうしてこうやって税金を免れる。  特に、いま新日鉄なんというのは、カルテル利益というか、あの不況カルテル以来、もうかってもうかって困っておる。しかも、大きな売り上げをやる大企業はうんと積むことができる。公害を出す出さぬにかかわらず、これは大きな企業は大きく積むことができる。売り上げの小さい企業は、かりに公害を出す危険性があるとしても、さっぱり積み立てることができないなんということになると、これはこの法律の根本のねらいが、もう大企業べったりという感じしかしないのでして、この影響というのは、特別措置を整理するという——いままで何年間かこの委員会で特別措置整理の方向というのは論議され、皆さんもお答えになっておるのです。こういうことからいけば、期限の来るこういうものは、まず第一番目にやり玉に上げて期限切れで終わりということに私はすべきものだと思うのですが、いかがです。
  167. 高木文雄

    高木(文)政府委員 決して、これは冒頭から申し上げますように、税制として非常にりっぱな制度だというふうには考えておりませんものですから、私どももいろいろ検討いたしたわけでございます。  おっしゃるのは、非常に象徴的な新日鉄の例をおとりになっておっしゃっておるわけでございますけれども、三十・三業種の中にはかなりこまごました業種もあります。たとえば、でん粉製造業であるとか、蒸留酒製造業であるとか、コークス製造業であるとか、かなりこまかい規模のほうがむしろ普通であるという業種もあるわけでございます。  そこで、おっしゃることは、あるいは必ず波があるといっても、そう大きな波があるわけではないということで、また売り上げ高が非常に大きいということで、一律千分の六、千分の三というようなあたりに問題があるということで御指摘になったわけでございますが、まさにそういう問題がいろいろあると思います。ですから、そこらの問題を何らかの形で是正していかなければならぬと思ったわけでございますが、いま申しましたように、できましてから時間が短いものですから、そういうデータ不足ということもありまして、どこをどう是正するのがよろしいか。それから、たとえば取りくずし規定の是正ども考える必要があると思うのでございますが、そこらの数字もなかなか現段階まででは把握ができておりません。四十七年実績だけしかわかっておりませんものですから、たった一年間の実績でございますので、それだけをもってすぐやめちゃうというのもあまり朝令暮改というようなことになりますので、しばらく見守らしていただきたいということにしたわけでございます。  どうか、今後必ずや直すということを前提にしてお認めをいただきたいとお願いをいたす次第でございます。
  168. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ必ず直すというのですが、これは二年また延長して、二年たったらまた延期するのじゃないですかな。どうもその点に関して信用ができないのですね。それ以上はあまりお伺いしても、必ずやめるということですから、しようがないのだろうけれども、ただ、それにしても、売り上げが大きければ積み立てが大きくできて、売り上げが小さければ積み立てが少ないという、公害と収入とは一体どういう相関関係を持っておるのですか。
  169. 高木文雄

    高木(文)政府委員 こまかい話になりましてたいへん恐縮で、ございますが、この制度ができました四十七年時点というのは、実はちょうどだだいまたまたま引かれました鉄で申しますと、非常に不況期でございました。それで、新日鉄はどうであったか、万こまかいことを記憶いたしておりませんが、かなり大きな製鉄メーカーも財産の一部を処分することによってようやく配当持続ができたというような状況にあったのでございます。たまたまそういう時期にぶつかりましたものですから、製鉄業の場合にも、この種の準備金がございませんと、長期計画を立てて継続的に公害防止事業をやるということが企業圧迫になる、経理圧迫になるということから、なかなか大規模な公害防止事業をやることについて踏み切りがたいという情勢にあったことは事実でございます。  そういうことを考えますならば、鉄は御存じのようにやはりどうしても波の大きい企業でございますから、そういう波の大きい企業の場合に、たまたま現在非常に好況期に当たっておりますし、所得も大きく出ておりますから、そういう感じを強くお持ちだと思いますけれども、好況不況を考えますと、不況期の時点でものを考えてみますと、やはりそういうものを積んでおかないと、せっかく公害防止事業を三年計画なり何なりで始めたのに、不況期になって詰まってきて、そうしてそれをまた延ばさなければならぬというようなことになっても困るというような事情があるわけでございます。  その辺の事情がありましたので、この制度は公害防止事業に金がかかる事業ならだれでも積めるというたてまえにはなっていないのでございまして、そもそも景気変動が比較的大きい事業についてだけ積めるということにしておるというのは、そういう意味なのでございます。でございますから、もう少し何回かの景気変動を経験いたしませんと、そういう理屈どおりに有意義な制度であるということが証明されることになるか、それとも先生御指摘のように、全くの利益準備金にとどまるということになるかは出ないわけでございまして、私どももどうもちょっといろいろ問題がある準備金だとは思いますけれども関係の官庁なりに、もうこの制度をやめようではないかということを、またこういうふうに直そうではないかということを説得するに至るまでには、少し実は材料が不足しておるということでございましたから、今回はそこまでいたさなかったわけでございます。底流といたしましては、私どももまさに先生御指摘のような気持ちを持っております。  それで、いろいろ縦からものを見、横からものを見まして、どうもやはりデメリットのほうが大きいということになりましたならば、そのデメリット部分是正すべく、必ずや御提案をする時期が来ると思います。漫然と続けていくということはとてもできないというような性質のものであるというふうに考えております。
  170. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 結局、この公害準備金だけじゃないのですけれども、こういう形にしながら、大企業の自己金融能力を高める。そうして、これなんかはまさに公害をえさにして自己金融能力を高める、そうして高度成長を続けよう。しかも、これは福田大蔵大臣がおっしゃる設備投資の抑制であるとか引き締めであるとかいうものと、これまた逆行する。確かに何かあると通産省は特別措置、税制でやれみたいなことを言うので、今度一ぺん何かの機会に通産大臣にここへ御出席願って、通産省では特別措置をやめろという話を一ぺんでもしたことがあるのかどうか、一体税法を何と心得ておるのかというようなことを、どうしても通産大臣にお伺いをする必要があろうと思います。  そういう点で、私は、これだけではない、もう期限の来る特別措置をひとつおやめになったらどうだろうと思うのです。それが福田大蔵大臣の発想の転換ということにつながるのではないだろうか。準備金、特別償却というようなものは、もう廃止されたらいかがでしょうか。特に今年期限の来る準備金は、なるたけおやめになるということは当然だと思うのですが、大蔵大臣、いかがですか。
  171. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 特別措置につきましては、税制調査会でも、十分検討してその整理、改廃につとむべし、そういうことは申しておるわけであります。そういう精神にのっとりまして今回御提案をいたしておる、こういう性格のものでございますが、特別措置はとにかくその中でも期限のついておるものが多いわけでございますから、特に期限のついておるものにつきましては、特別の事情のない限りその期限どおりにやるべきものだ、こういうふうに考えております。
  172. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、具体的にお伺いします。  証券取引責任準備金、これはたしか福田大蔵大臣が大蔵大臣のときだったと思うのですけれども、山一証券のときにつくったという点で、福田大蔵大臣のつくられた特別措置だと思うのです。それだけに、もうこんなものは私は必要がないと思うので、福田さんがあと始末をするという意味で、まずこの証券取引責任準備金というのは期限が来たらおやめになるべきだと思いますが、いかがです。
  173. 高木文雄

    高木(文)政府委員 証券取引責任準備金は実は昭和三十九年から始まった制度でございまして、ちょっと私いま記憶がはっきりいたしませんが、昨年もいろいろ御議論いただいたと思います。それで、期限は五十年の三月三十一日に来ることになっております。そして、ちょっと手元に資料不十分でございますが、四十八年の四月改正のときに若干調整をいたしました。いままでほどにはよけいにならない。累積限度額で、一株当たり十銭を積んだ額まで積めるということでありましたのを八銭にする。それからいまの累積限度額でございますが、新規積み立て額は一株当たり三銭ということになっておりましたのを二銭にするということで、積み立て幅を小さくいたしました。そして四十八年から五十年の二年間、五十年三月三十一日まで延ばすということにさせていただいたわけでございます。  これは昨年の春の国会でも御議論いただいたと思います。やめたらどうだという御議論もあったと思います。本来、証券会社が従業員等によっていろいろトラブルが起こったとか、証券事故が起こったとかいうことのための準備金でございます。もうすでに安定してきたのだからやめたらどうかという御議論であったと思いますが、それはまたいろいろ考え方もあるわけでございまして、私どもも何もしないで漫然と延ばすというわけではなくて、いまのように新規積み立て額にいたしましても、累積限度額にいたしましても、従来よりはカットしていくということをさせていただいて延長したわけでございます。  今回は、株式売買損失準備金につきまして、同様に積み立て限度額あるいは毎年積み立て額等につきまして、いままでよりは圧縮をするということを条件にいたしまして、若干の延長をお願いしておるわけでございます。ほぼこれと同じような精神により縮小をはかったということでございます。
  174. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 局長はもう何でも知っておるものだから、先回りして株式売買損失準備金までおっしゃったようですが、これも確かにおっしゃるように、百分の七十ですか千分の七十ですか、これを五十に減らしたようでありますけれども、これはもうなくしてもいいのじゃないか、期限が来るのだから。期限の延期をするならば、今度の公害でもそうですが、どういう成果があって、どういうメリット、デメリットがあったのだ、それでなおかつこういうことだから延期をしたいという、やはり明確な、国民にわかるような説明をつけて延期を提案するならまだわかるけれども、一ぺんやったものは、これはもう企業の既得権益だというような形でやられたのではしようがないし、皆さんだけではなかなか拒否しきれないというならば、委員会で大いにわれわれはこれを追及するから、その辺をはっきりしてやりませんと、まさに税の公平という大原則がみんなくずれてくる。先ほど私の申告の問題のときには、公平のあれがくずれるとかどうとかおっしゃるけれども、特別措置くらい税の公平を乱しておるものはないんでして、皆さん延期をしたいというならば、その延期をするときには、はっきりとそのメリット、デメリットをここで説明をされる必要があろうと思うのです。  そういう点で、私は、株式売買損失準備金、証券取引責任準備金、プログラム保証準備金、こういうものはもう期限が来たらやめますというはっきりした態度をおとりになるのが当然のことだと思いますが、いかがです。
  175. 高木文雄

    高木(文)政府委員 株式売買損失の準備金でございますが、これは四十一年から積み立ててきております。そうして、これは四十一年に十八億積み立てました。ずっとふえてきておるわけでございますけれども現実にやはり取りくずしが起こっておるのでございます。その取りくずしは、一つは具体的に売買損失が出た取りくずしというものもございますし、規定によりまして、五年経過後の取りくずしもございます。四十六年にちょっと企業がぐあいが悪い、証券会社がぐあいが悪いということがございました。これは全般的な問題ではございませんでした。先ほどお話のございました山一のときのような全般的な問題ではございませんが、一部にやはりそういう問題がございまして、取りくずしが行なわれたということでございました。些少の被害でございましたけれども、やはりそれなりに役割りを果たしたことは認められるわけでございます。  それにしても、おっしゃるように、積み立て額の増加程度が、非常に大き過ぎるということがございます。取りくずし額と積み立て額との関係から、年の純増額が非常に大き過ぎるということがございます。その意味で、おっしゃるように、一つのお考えとしては、もっとおまえしっかりせい、廃止をしてしまえということかもしれませんが、私どもも証券局を通じましていろいろ議論をいたしました上で、そこまではまいりませんでしたが、積み立て額を、従来の新規の場合に売買利益の百分の七十、または当該年度所得の百分の二十五というのを百分の五十なり百分の二十なりに落とすということに制度を改めることによりまして、新規積み立てが急増いたさないように処理をいたしたというのが、今回の手直しをしながらの延長のお願いでございます。  これはやはりおっしゃるように、時間をかけて順次縮小していくということの方向での一つのあらわれでございまして、四十一年以来手を触れておりませんでしたもので、しばしば当委員会におきましても御指摘を受けました。そのことを心得といたしまして、圧縮をはかったものでございます。これによってどういう結果になるかわかりませんが、今後の積み立て増加というものは、まずまずとまっていくということになるのではないかというふうに思っております。
  176. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はこういうふうに期限の来たのはやめていただきたいということで、あまりこの問題に深入りしようと思っていないのですけれども、逐次手直しをしておる、こうおっしゃるけれども、証券の場合、ちょっとひどいのですよ。これは全部の証券会社のうち大手四社、野村、日興、山一、大和、これでどちらも、売買損失も責任準備金のほうも似たようなものでして、四社で全部の五二・五%、五三・九%、これは四十七年九月期ですが、これだけやっておる。四社でほとんど半分持っておるのですよ。もっと言えば、野村証券はわずか一社で二六・六%持っておるのですよ。これだけ証券会社があるけれども、野村一社で二六・六%なんというのは、べらぼうな準備金を持っておるということになるのですよ。これはますます、証券界の民主化なんというものじゃなしに、だんだん独占、集中する。そして大きくなればなるほど、自己金融能力がこういうものでついていく、だからさらに大きくなる可能性を持っていくという、ある意味で独占、集中を皆さんは手助けしておるということになる。もうこの辺に来たら、本来ならば、集中排除法でも適用して二つぐらいに分けるのがほんとうなんだけれども、そうじゃなしに、皆さんは大手をますます太らせるためにこれをやっておるのであって、もうそういう弊害のほうがより大きくなっていると私は思うのです。  私は、この証券問題はあまり深入りしようと思いませんけれども、まあ、逐次、逐次とおっしゃるけれども、かくのごとく一社で全体の準備金の二六・六%なんというものは、私は特別措置の中でも異例の特別措置だ、こう思うのでして、私はこの辺で勇断をもってこれは廃止する、それでなかったら、もっともっと思い切った手直しをするということでなければならぬと思うのですが、大臣、お聞きになってどうです。ちょっとひど過ぎるです、これは。
  177. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 税制調査会でも、既得権化することについては非常に慎重でなければならぬ——慎重というか、厳に警戒しなければならぬ、こういうことをいっておるわけです。整理改廃ということを旨として大蔵省においても審議したわけなんでございますが、そういうことで、大体理由のつかないものにつきましては廃止する、あるいは改正する、こういうことにいたしておりますが、特別の事情のあるものにつきましてはこれを存続する、こういうのですが、とにかく基本的には特別措置は、法人税制といたしますとこれは異例のことでございますから、そういう考えのもとに、特別措置全体につきまして対処していくということをはっきり申し上げます。
  178. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 特別措置の問題でやればきりがないのですが、日本は、この本を見て、この青いほうが本法です、赤いほうが特別措置なんですが、特別措置のほうが多いぐらいあるのでして、特別措置は、財界保護の特徴的な日本税制だと思うのです。もうこの辺でやめてもらったらいいと思うのです。  私は常に一番腹の立ちますのは、退職給与引き当て金というのがありますね。私、こういう関係でありますから、倒産した、労働者がもう食べていけない、職場は閉鎖だというときに、退職金も何もない、おおむねそういうときには銀行さんや何かが担保で押えておるというようなことで、私はよく引っぱり出される。行ってみて、退職給与引き当て金なんというものを、銀行へ別ワクで残しておった会社は一ぺんもお目にかかったことがない。もちろんそうであります。会社の経営者としては、ありとあらゆる手段を尽くして倒産を免れようとして奮闘努力したに違いない。したがって、退職給与引き当て金なんというのは、かりに積んでおったとしても、全部使い果たして、刀折れ矢尽きて倒産になるのですね。そうすると、倒産する企業の労働者の保護には、退職給与引き当て金というのは何も作用をしないのですね。  ところが、大企業はといえば、都市銀行がつぶれるとき、新日鉄が倒産をして退職金を払わないかぬときなんというのは、これはまあ日本沈没か、革命のとき以外なかろうと思うのですよ。これがつぶれるときは、皆さん、山一証券じゃないけれども、政府がみずから乗り出してこれを救済するだろうということも、おおむね察しのつくところなんです。ところが、この百億円以上の大企業なんというのが、この退職給与引き当て金を最もよけい積み増しておる。これもまた、先ほど来申し上げたように、自己金融能力の増大なんだ。ある意味では、退職者のためと、こうおっしゃるならば、退職者のために政府がこれを凍結するとかなんかというなら、まだ私わかるのです。そうしてその退職者に、倒産したり何かしたときに、そこから出してやるというなら、これはまだ労働者のためにもなるんだから、私は認めないわけじゃないのだけれども、そうじゃない。企業にかってにやらしておけば、さっき申し上げたように、倒産する会社はもう刀折れ矢尽きるまで奮闘努力するんだから、退職給与引き当て金なんて、かりに積んであったとしても、こんなもの全部なくなっておる。そこで労働者は、路頭に迷うという結果になってしまうのです。  ところが、反面、絶対といっていいほどつぶれっこのない大企業は、これはしこたま退職給与引き当て金なんというものをかかえておる。この特別措置の税をまけてやるねらいというのが、一体どこにあるんだろう。ほんとうに退職する人たちのために、この税制をつくったんだろうか。大企業のために、それこそ大企業の自己金融能力を高めるためにこれをつくったんだろうか。これは局長、どっちだと思います。
  179. 高木文雄

    高木(文)政府委員 毎年どうも阿部先生から退職給与引き当て金のことについてはしかられるわけでございますが、先ほど来お話しの公害防止準備金や何かとは、若干、私はこの問題については、先生の御見解と意見を異にしておるわけでございまして、確かに退職給与引き当て金制度が倒産とかなんとかという場合に役に立たないことになるおそれがあるというのは、一つの問題でございます。問題でございますけれども、やはり十年なり二十年なり職員がつとめておる、その場合に、退職金を支払うという義務が企業側にある、それはやはり一種の経費性がある。支出の時期はあとになりますけれども、その期その期に応じてやはり引き当てておかないことには、その企業が将来どうなるかわからないわけでございますから、その分を利益と見て課税をしてしまうというわけにもなかなかいかないのではないか、ある種の経費性を十分認め得るものではないかというふうに考えられるわけでございます。現在、企業会計におきましても、商法の上におきましても、負債性引き当て金として認められているというのは、そういう理由であろうかと思うのでございます。  先ほどの公害準備金のような場合と違いまして、必ずそれはやめたときには払いますよという約束があるわけでございますから、その意味で債務性がある、負債性があるという点において、公害防止準備金について私は相当疑問があるように申しましたけれども、退職給与引き当て金については、その意味では、だいぶ公害防止準備金とはやはり性質が違うものではなかろうかと思うわけでございまして、現在、退職給与引き当て金につきまして二分の一までは認めておるということは、税法だけの特例措置ということではなくて、商法上の扱い、企業会計上の扱いとある程度歩調を合わせながらやっているという意味のものでございます。  ただし、おっしゃいますように、本来いざというときに役に立たぬではないかという問題につきましては、また別途、税法の問題外に問題があるわけでございまして、たとえば、中小企業退職金共済事業団への積み立てというような制度が現在ございます。そしてそれも税法上の特例措置といいますか、やはり同様の制度が認められておりますけれども、何かそういうふうに外部拠出のほうに持っていくほうがいいではないかということは、制度論として先生の御主張は十分わかるわけでございますけれども、そういうふうに外部積み立ての場合だけしか引き当てを認めないということも、税法でそこまで要求するのはいかがなものかと思うわけでございまして、その点では、残念ながら、先ほどの公害防止準備金とは若干私は違った感じを持っておるわけでございます。
  180. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 最後に、せっかく大臣お見えになっておるので、大臣からこれをお伺いして終わりたいと思いますけれども、私はどうも今度の減税には合点がいかない点が多々あったわけでありますが、今後減税をするそのあり方、これをちょっとお伺いしたいのであります。  一言で言ってみて、今度の場合にも、四、五百万円以上の人たちから負担が軽くなっているんじゃないか。そしてそれを補うために間接税の増徴、所得税人的控除引き上げは不十分だった、たいしてこれはやっていない。全体で見ると、地方税のほうも、これまた給料が上がってくると重くなってくるというようなことで、減税減税というけれども、低所得層や何かにはあまりありがたみがなかったのじゃないかという感じがするわけであります。  そこで、経済社会基本計画によりますと、昭和五十年までには租税負担率は二%から三%上昇を予定しておるようでありますけれども、これは間接税の増徴という形でいくのか、それともどういうなにによってこの二%から三%増税をしようとしているのか、その内容をお伺いをしたいと思うのであります。
  181. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どものいま持っております見通しでは、たとえば、特別な税制を新しく起こすというようなことをいたしませんでも、それからまた、毎年毎年の減税を全くやめてしまうということをいたしませんでも、従来ありましたような、よく物価調整減税というようなことをいわれておりました、あの程度減税をいたしましても、大体、目標年次までに二%ないし三%程度の負担の増は期待できるのではないか。これは実は四十九年度税制改正の際に、あまりにも大規模減税をいたしますと、あとになってから今度は増税をしないと福祉計画に適合するような税構造にならぬということになってはまずいということで、ごくラフではございますが、大見当はつけておるつもりでございます。今度のように、非常に大規模減税ということをそうしょっちゅうやるわけにはまいりませんけれども、今後も、従来ありました程度減税は行ないながら、かつ非常に大規模な新しい税制の想定ということをしなくても、ほぼこの計画のとおりに進行するということになるのではないかというふうに見ております。  ただし、それには大前提がございまして、この経済社会基本計画そのものがいろいろの前提を置いておるわけでございますけれども経済の成長率全体をどういうふうに考えたらよろしいのか、いままでよりはもう少しスローダウンした成長を考えるべきであろうとか、経済社会基本計画そのものを見直すべきだという議論がまた最近になってどうしても出てきておりますから、それとの関連でどうなってまいりますかは、だいぶ先のことでもございますし、なかなか見当をつけにくいわけでございますが、ごくラフな感じでは、いま申し上げたようなことを頭の中で考えておるというところでございます。
  182. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 経済社会基本計画は、私はいまの混乱の事態が終息をする、その終息したあとの日本経済の姿、それを踏まえ、それから今後の日本経済の歩みを策定する、こういう段取りになるのだろうと思うのです。したがって、いま経済社会基本計画がありますけれども、これはもう私は根本的に改定を要する、そういうふうに思うのです。ただ、その中にある一貫した思想として社会福祉政策を強化する、こういう考え方、これは私は思想として取り上げていい問題である、そういうことが今後の長期計画の非常に大きな柱にならなければならぬ、こういうふうに考えております。  そういうことを考えますときに、これはどうしてもそのための財源という問題が起こるわけです。それでありますから、今日の租税負担率よりやや重くなっていく傾向を持つであろう、こういうふうに思うのです。その重くなる率というもの、それはこの新しい経済計画がきまらぬときまりませんけれども、まあいずれにしても、成長がとまるということはありませんから、それに従いまして、多少直接税の負担率も上がってくることは可能であろう。あるいは場合によると、ほうっておきますると直接税偏重というような傾向さえ出ないとも限らぬ、こういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、その負担力が経済の成長とともに出てくるということは、これは私は予見していいと思うのです。  ただ、最初申し上げましたように、この経済社会基本計画というものは根本的に洗い直しをしなければならぬ、こういうことでありますので、いまの計画が予定しているそういう負担率の割合で負担率の増加ということになるかどうかは、いま予見できない、かように存じます。
  183. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 では終わります。
  184. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 次回は、明六日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十二分散会