○
高木(文)
政府委員 昭和四十五年に源泉選択
制度を入れるということは、これは
税制としては非常に長い間の懸案事項を片づけるための
一つの一里塚ということで、非常に重要な
意味を持っておりました。私
どもとしては、非常に強くそれを主張いたしたわけでございます。
金融機関サイドは、新たに源泉選択
制度を採用するということは、長年の預金
制度についての課
税制度の特例に対して、五歩も十歩も後退するものであるということで、非常に強い抵抗感があったわけでございます。しかし、この際一歩でも二歩でも
総合に向かって歩むべきであるということで、いろいろな経緯を経ました末で、現在のような、
現行の源泉選択
制度に入っていったわけでございます。その入っていく際に、どういうふうにやるかということでございました。
ただいま御
指摘のうちの架空、匿名はやりほうだいというようなことは、それは私は存じません。架空、匿名は、当時からよくないということで、
国会の御討論におきましても、しばしば問題がございました。当時の銀行局長も、まず無記名をやめなければならないということで行政指導をしていくことについて非常に強く御答弁を申し上げ、その後の行政指導もそのように進んでおるはずでございますので、架空、匿名については、いま御
指摘のような、そうやりほうだいというような感じで了解しておるというふうには思っておりません。
二番目の、店舗の名寄せはしなくてもよろしいというのは、それはそういうことでございます。
一つの店があります。ある銀行が、十なり二十なりの店舗を持っております。そこから支払い調書を作成して税務署に
提出する場合、その支払い調書は、全店舗名寄せの後に
提出するか、それとも各店舗ごとでよろしいかという議論がございました。これはそういう
制度に入っていく段階において、A支店、B支店、C支店と三つのところに三人のお客さんが預金をしている。それの名寄せ義務を
金融機関に課するということについては、かなり事務量の問題もありますし、それからそれの突合事務の問題がありまして、突合事務を
金融機関が負うか税務署が負うかという問題がありました。とにかくだんだん
課税強化に入っていくのについては、第一段階は、突合事務は
金融機関は負わなくてもけっこうですということで、いわば税務サイドが譲歩したといいますか、ある
意味では譲歩でございます。しかし、実態としては、とても名寄せ後に支払い調書の
提出義務を課せられないという経緯から、そういうことになっております。
それから、二五%納めれば終りだ、こう書いてあるとおっしゃいますが、それはそうでございまして、源泉選択
制度というのはそういうものでございます。二五%納めればそれで終わりだということでありますよと、単純に言ってしまえばそういうことなんですというようなことでございました。ですから、源泉選択
制度というのは、ある
意味からいえば、
課税の公平はまだ果たされない。しかし、
金融機関サイドから見れば、ある
程度簡素なものになり得るという
意味で、そういうことを言ったと思います。
それから、預金がなければあとはいいのだという問題でございますが、これはたとえば架空名義なりなんなりの預金がございまして、本来二五%取るべきものを一五%しか取っていなかったというときに、あとでそれがわかりまして、差額の一〇%を取らなければならぬということになりまして、
金融機関では取りましょうということになったが、さて、そのお客さんは預金を引き出して全然おりませんという場合に、それがお客さんがいなくなって、元本がない場合どうするかという問題がありまして、少なくとも現段階で、片方において無記名預金という
制度があり、かつ、はなはだ残念ながら架空名義預金が横行しておる段階においては、その段階にまで
金融機関の責任を追及するのは無理であろうということで、そういう趣旨のことで了解をしておるはずだと思っております。
それから、源泉選択申告書を
提出しなくてもよろしいというのは、これは当時からそれをどこへ保管をするかということでございまして、源泉選択申告書は
提出しなくてもよろしいということには、あるいは私の記憶は間違っているかもしれませんが、なっていないと思いますが、とにかく店舗に置いておいてください、税務署が参りましたならば、いつでも
金融機関はそれを見せてください、源泉選択をいたしましたよという申告書はかなり膨大な量になりますので、それを銀行から各税務署に送られましても、税務署のほうの保管整理の都合もございますから、源泉選択申告書というものが預金者から
金融機関に出されておりますというところに、まず第一の
意味があるというふうに
考えました。その非常に少ない率のものについては、あとで抽出調査をするということを前提にいたしまして、とりあえずは
金融機関の店舗に、ある期間を定めてあったと思いますが、保管をしておいていただきたい、税務署には出していただかなくてもけっこうですというようなことにしたと思います。
私も記憶がいま、急でもございますし、はっきりいたしませんが、大体話の筋はそういうことでございました。そういうことを通じて、そういう
程度であれば、当然、
総合課税というほうに向かうための一里塚として、
金融機関が協力をするのもまずまずやむを得ぬだろうということでスタートしたという記憶でございます。