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1974-02-27 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十七日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 山本 幸雄君    理事 阿部 助哉君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君   小宮山重四郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       地崎宇三郎君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    田中 昭二君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      平井 龍明君         通商産業省通商         政策局国際経済         部通商関税課長 中沢 忠義君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     宇都宮綱之君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   大西 正男君     地崎宇三郎君   奥田 敬和君     笹山茂太郎君 同日  辞任         補欠選任   地崎宇三郎君     大西 正男君     ————————————— 二月二十六日  大和基地跡地公共的利用に関する請願(長谷  川正三君紹介)(第二三七七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第二五号)  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 関税局長、きょうはひとつよろしくお願いいたします。もうすでにわが党の委員からもお尋ねしていることに、また重複をするきらいはありますけれども、よろしくお願いしたいと思います。  生活関連物資弾力関税制度を拡充するという問題でありますが、これは租税法定主義という原理と、それからいまのようなこういう非常に変動の激しい経済情勢のもとで、行政弾力的に対応しなければならぬ、こういうふうな見地から出された問題だと思いますが、やはりその間には、どうしても原理矛盾があるわけであります。  そこで、そういう矛盾前提としながら、なおかつそういう弾力的な措置が必要になるとすれば、私は、その結果が、国民利益に確実に結びつく、こういうふうな結果がもたらされる、あるいはそのことが保障されるということによって、それが是認されるということになると思うわけですが、そういう意味においては、たとえば、おとといから予算委員会で各企業代表参考人として招いて、いろいろ各党代表がやっておりますが、あの論議のやりとりを見ましても、企業の側というのは、自分利益という立場を最優先するということから、なかなか国民利益という立場に立たない、こういう側面がよくあらわれていると思うのですが、そういう意味において、私は、政府とそういう政府措置関連する業界なり企業代表話し合いだけでは、いま言った点の効果をあげることが非常にむずかしい、こう思うわけです。  そういう点においては、私は、まず、そういう行政措置政府としてとられる場合に、その対象業界やあるいは企業に、その結果を必ず国民利益に結びつけるような措置をさせるその保障といいますか、あるいはその見通しということで、ひとつ局長のお考えをお聞きしたいと思います。
  4. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、私どももいわゆる関税定率法十二条に弾力関税のお認めをいただく以上、せっかく緊急な場合に政府権限によって一時的に関税を引き下げるということになった場合に、これが直接消費者利益還元をされるということでなければ、せっかくやることの意味はないと思います。  したがいまして、この法律の実際の運用といたしましては、とかく何もいたしませんと、先生指摘のように、これが中間マージン増大につながるとか、あるいは相手国輸出価格をそれだけ高く売ってもよろしいという、向こうの利益幅増大につながる可能性がございますので、私どもといたしましては、この法律を適用いたします場合には、もちろん緊急の事態でございますから、政府が例の国民生活安定法に基づきますところの標準価格設定する場合であるとか、あるいはそれに準ずるような価格政府指導によって決定をいたす場合に、それを決定をいたしますところの産業所管省、すなわち通産省であるとかあるいは農林省であるとか、こういうところから、標準価格設定するについて、かりに関税を引き下げればそれだけ標準価格が低くてしかるべきであるという保障を得なければ、この法律を現実に実行をするつもりはないわけでございます。  したがいまして、この法律発動いたします場合には、必ずそれが消費者に対して直接還元をされるような保障を、そういうことによって得るような運営をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 従来なかった新しい法律としての国民生活安定緊急措置法、これができて、その中でそういう標準価格設定というふうなことができるようになったいまの段階では、当然それとの関連で今後発動される、その場合の措置ということをいま御説明になったわけですが、参考までに、従来、そういう国民生活安定緊急措置法がなかった段階でこの弾力条項を適用された場合に、そのときその対象になった品目が、消費者価格の安定に具体的にこういうふうな結果があらわれてきたというような実績があれば、ひとつお示しを願いたいと思います。
  6. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、今日まで関税定率法の十二条におきまして弾力関税発動の適用が認められておりますのは、要するに主要食糧品品目豚肉、砂糖の六つの品目でございます。  今日まで発動した事例が一番数が多いのは、豚肉に関する弾力発動でございまして、その実際の例について申し上げますと、昨年は価格の高騰いたしました三月から十月まで八カ月間にわたり豚肉関税減免措置を講じてまいったわけでございまして、その減免をいたしました、要するに三月から十月までの八カ月間に日本輸入されました豚肉の量は、十一万三百十四トンでございまして、その他の期間輸入量は、昨年の場合、一万五千四百二十七トンであったわけでございます。この十一万三百十四トンという八カ月間の輸入量にこの一万五千四百二十七トンを加えました年間輸入量は、過去の記録としては最大のものでございます。  その間、一番豚肉国内におきまして高かったときには、キロ当たり五百五十一円、豚肉もいろいろの種類がございますが、一つの豚半丸枝肉というのを基準の例としてとりますと、これが五百五十一円であったわけでございますが、それが減免期間最終月である十月にはキロ当たり四百五十五円と、約百円その豚肉値段が低下をいたしております。もちろん、これはその関税を引き下げたから下がったという保障はないわけでございますけれども、一応関税を引き下げたことも役に立ちまして、大量に豚肉輸入をされた。それによりまして国内の需給が緩和されまして……(高沢委員「それは芝浦価格ですか」と呼ぶ)そうでございます。市況が落ちついたことにも大きな一助であった、かように私ども考えておるわけでございまして、本制度をうまく活用すれば、かような価格効果は出てくる、かように私ども考えておるわけでございます。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 今後の問題として、いまの情勢のもとでさしあたりこの制度を適用するとすれば、どんなような品目が浮かんでくるか、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  8. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは先ほど申し上げましたように、私ども一応この発動に関しましては、標準価格設定、あるいはそれにかわるような政府指導価格設定、こういったようなものと、現実問題としては、連動をさせながら発動をしたい、かように考えておるわけでございますので、ただいますぐこれということをこの場において私から申し上げるわけにはまいらないと思いますけれども、たとえば紙であるとか、そういったようなものが非常に急騰をした、それが関税を引き下げることによりまして標準価格を低く定めることができるというような場合には、考えられるかと思います。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 私は、先ほど言いましたように、そういう措置をとられる際の政府とそれから関係業界企業との話し合いだけでは、今日から見ても、われわれから見ても、なかなかそこは信頼できない、こういう感じが非常に強いわけです。そういう意味において、今後こういう条項発動される際、国民生活炭定法による標準価格設定なり指導価格設定と連動する、これは一つ保障になるかと思いますが、同時に、この大蔵の問題としては、この委員会のたとえば理事会、ここには野党の代表もそれぞれおられるわけでありますから、こういうところと十分協議もされ、あるいは情報も提供し、その意見も聞くというような段取りをしながら進められるというふうな措置がぜひ必要ではないか、こう私は考えるわけですが、局長のお考えをお聞かせ願いたい。
  10. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私どものところに、御承知のように、関税率審議会という審議会がございまして、関税に関する重要な事項はすべてその審議会の意向をお伺いをするということになっておりまして、四十八年度におきましても、年間を通しまして約十七回ぐらい開催をいたしまして、非常に熱心に関税率の問題に関しまして審議していただいているわけでございます。その審議会におきましても、これを発動するときには、必ず消費者利益還元をされるようなことが保障されるために、要するに、その審議会意見を十分に聞くようにという御意見も私ども受けておるわけでございまして、その意味におきまして、国会開会中でないような事態におきましては、必ず関税率審議会にもおはかりをして、これを発動いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。もちろん、国会開会中でございましたら、その旨をこの委員会におきまして御意見を承る、こういうことはもちろん考えまいりたいと思っております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 私は、この点は、国会閉会中であっても、閉会中審査ということもありますし、必要に応じては各党理事に積極的に御連絡になって、そしてその土でその意見を求め、そしてその報告もしながらこの措置を進める。これは租税法定主義というワクをこの部面に関してははずすという重大な措置でありますから、こういう措置はぜひとられるべきではないか、こう思いますので、重ねてひとつ御意見を聞きたいと思います。
  12. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私どもがこの法律によりましてこういう権限をいただきます以上、それが国民のためになるように運用いたしてまいることは当然の話でございまして、御指摘のように、この発動に関しましては、国会方面先生方の御意見も十分に承りながら、ただ緊急の場合、あるいはいろいろな事態が生ずるかとも思いますけれども、御趣旨の点は私ども十分体しまして、これを運用してまいりたい、かように考えております。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 次に、重油あるいは石油関税のほうの関係でありますが、この関係では、現在の制度の仕組みとして、重油関税あるいは原油関税石炭特別会計の歳入に入る、こういうふうな形になっておりました。予算を見ますと、昭和四十八年度のその関税収入は千三百四十四億、こういうふうな予算になっておりますし、それから四十九年度は千三百六十三億、ほとんど横ばい、変化がない、こういうふうな数字になっております。  そこで、四十八年度が昨年末から非常に石油情勢変動が伝えられて、あとになってみて、それはつくられた危機であったということもいわれておりますが、その辺を織り込んでの四十八年度の実績がどの辺でおさまる見通しであるか、それをひとつお聞きしたいと思います。
  14. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 原油関税は、御承知のように、従量税でございまして、一キロリットル当たり六百四十円ということでございまして、今年度の日本に対しまする原油輸入は、大体二億八千万キロリットルではないかと思います。したがいまして、私どもはそれを前提といたしまして、四十八年度中の原油関税見込みは一千三百八十二億円ということで、予算が一千三百四十四億円ということでございますから、約四十億円程度予算よりも実績が上回る、かように計算をいたしておるわけでございます。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 今度は四十九年度ですね、これはこれからの問題ですけれども、それはこの千三百六十三億という数字どおりに見ておられるとすれば、この四十八年度の実績から若干の減少になることになるわけですが、この辺は、そういうキロリットル関係ではどういうふうに見ておられますか。
  16. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 政府でつくりました経済見通しで、四十九年度中に三億七千万キロリットル輸入ということが前提となってつくられておりますので、私ども石油関税収入見通しといたしましては、それを前提といたしまして、一千三百六十三億円と四十九年度は見込んでおるわけでございます。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 重油に関しては関税割り当て制度がある、そのワクが拡大をされる、こういう予定であるというふうに聞いておりますが、その措置はどういうふうにお考えになっておりますか。
  18. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは先ほど申し上げました関税率審議会割り当て部会におはかりをして、上期、下期と一年を二期に分けて割り当てをいたすわけでございますが、これは産業所管省であるところの通産省、具体的には重油の場合には資源エネルギー庁のほうで、要するに上期におきます重油必要見込み前提といたしまして割り当てをいたしますので、これから資源エネルギー庁と相談をいたしまして、どのくらい上期に割り当てられるかということをきめる段階でございまして、いまのところ、どのくらいの数量になるということを決定いたしておるわけではございません。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 新聞報道では、五割程度拡大されるようであるというふうに伝えられておりますが、その辺は大体のめどを伝えておると見ていいわけですか。
  20. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、一カ月ほど前でございましたが、大蔵省意見として五割程度割り当てが拡大されるというような記事が出ていたのを私も記憶しておりますけれども、これは大蔵省として新聞記者にそういう意見を話した記憶は私としても全くございませんし、また、ほかの係官に尋ねましても、全く記憶がないわけでございまして、要するに、これは今後資源エネルギー庁意見も十分に聞きながら定めてまいるわけでございまして、五割という数字には全く根拠はないわけでございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 その重油なり原油なりの輸入関係ですが、輸入価格が非常に上がってきておるというふうな状況であるわけです。しかし、それを原料あるいは燃料とする全体の経済の中の物価という関係では、これを安定させなければならぬという非常な要請があるということで、そこに占める関税というもの、これは一方では、石炭対策というふうな産業政策の原資になる、こういうふうな位置づけにあるわけです。それらの関係をにらみつつ、この重油原油に関する現在の関税制度、これは先ほど言われましたように従量税というふうな形になっておりますが、これを変更されるお考えというものが一体あるかどうか。  もし従量税従価税というふうなことになりますと、こういう価格の動向の中で非常に大きな影響が出るということになりますし、また一方、四十九年度の税制改正に関する答申の中では、これは一般論としてではあるけれども、そういう間接税あり方として、従量税から従価税への移行についても検討すべきであるというようなことも出されているわけですが、この関税関係、特に石油に関する関税関係で、いまのような従量税従価税というふうな関係を何らか検討されるお考えがあるかどうか、お聞きしたいと思います。
  22. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 関税の場における従量税従価税の問題と、それからいわゆる間接税の場におきますところの従量税従価税の問題は、若干違うのではないかと思います。  と申しますのは、間接税の場合には、要するに、いろいろな物の税負担ということを中心として判断をすべき問題かと思いますが、関税の場合、その中にも二つの種類がございまして、かりにいわゆる奢侈品的な物に対してかける関税である場合には、高い物、要するに担税力のある人間が買うところの高い品物に対して高い税金をかけるという意味におきまして、従価税のほうが正しいかと思います。  一方、関税の主たる機能でございますところの国内産業保護という観点からいたしますと、外国から入ってくる高い物に対して高い関税率をかけましてますます高くするといっても、国内産業としてはその面はあまり関係がなく、むしろ国内産業保護のためには、安く入ってくるものに対してある程度の関税をかけてこれを高くして、要するに、国内産業競争力をつけさせるというところに意味があるわけでございまして、したがいまして、関税の場合には、従価税よりもむしろ従量税のほうが適当であるという面もあるわけでございます。  したがいまして、これは個々の品物の性格によりまして、従価税にするべきか従量税にするべきかということは判断をしなくてはならない問題かと思いますが、石油関税の場合には、これは若干現在の関税体系の中におきましては特殊なものでございまして、現在の関税の中で、いわゆる財政関税として、石炭対策のために必要な資金を国が調達をする財源として石油に対しまして関税がかかっているというかっこうになっておるわけでございまして、国内産業保護という意味は、原油関税の場合には全く持っておらないと思います。したがいまして、これが現在一キロリットル六百四十円という関税価格になっておるわけでございまして、従量税になっておるわけでございますが、原油に対して従量税関税をかけることがいいか悪いかということは、いろいろな見方があると思います。  ただ、現在のところは、いわゆる政策関税といたしまして石炭対策費のために原油に対して従量税がかかっておるわけでございますけれども、これに関しまして、これだけ値段が高くなったのであるから、しかも、国内廃業保護というものの意味がなければ、これはもうはずしてもいいではないかという意見もある一方、やはり石油を無限に使うことができない以上、国民石油をできるだけ節約をして使うためには、ある程度関税をかけてもいいではないかという意見もあるかと思います。  したがいまして、これは政策判断の問題であろうかと思いますけれども、今年度資源エネルギー庁におきまして、将来の日本エネルギー対策あり方というものを一年間かかって検討するということを聞いております。したがいまして、私どもといたしましては、これと密接な関連をとりながら、将来の日本エネルギー政策あり方との関連におきまして、原油関税あり方をも検討してまいらなくてはならない、かように考えておるわけでございますけれども、五十一年度まで石炭石油特別会計が御承知のように存続をしておりますので、現在のところ、この一キロリットル六百四十円という原油関税あり方を変更するということは考えておりません。もちろん、これを従価税に改める、こういうことも考えておるわけではございません。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 いま触れられた原油関税石炭対策との関連、それがいいか悪いか、今後どうするかという問題は、これはまた関税局長の持ち分とおのずから違うとは思いますけれども、この点では、私たちは、石油関税をどうするかという問題と切り離して別個に、石炭対策としては、当然石炭国内で産出するわが国から見れば一番大きなエネルギー源であるわけですから、これの開発、そして高度の利用ということのためには、むしろ一般財源でそのための対策を別個に講ずる。石油関税問題はこれとは切り離した別な観点から、いまおっしゃったような国民生活との関係でどうかというふうなことから判断していくことが正しいのではないか、こう思うわけですが、この点、租税当局立場からいまの点について、大体、従量税従価税というふうな関係ではお考えをお伺いしたわけですが、石炭政策との関係で御所見があればひとつお聞きをしたいと思います。
  24. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに石炭対策あり方の問題に関しましては、私関税局長としての立場からは、これは自分所管の外の問題でございますけれども、いろんな意見がそれぞれあると思います。また、現に今年度の関税定率法のこの内容に関しまして私ども自身検討をいたしました際にも、現在かかっておりますところの原油に対する関税あり方に対しましては、十分な議論を実は関税率審議会においてもやっていただいたわけでございます。その御意見の中には、要するに、これだけ原油が高くなったのであるから原油関税をかけているのはおかしいではないか、こういう意見も非常に多数あったことは、これは否定できません。またさらに、これは石炭対策のための関税ということであって、これを現段階においてやめるのはおかしいという意見もございました。  したがいまして、私どもといたしましては、やはり先ほど申し上げましたように、日本エネルギーの将来のあり方ということと全く関係なく、関税の面からだけ自分の庭先をきれいにするということだけの観点からこれを判断するわけにはまいらない問題ではないか、かように感じておるわけでございます。したがいまして、これだけエネルギー、ことに石油の問題が日本にとりまして重要な問題になったわけでございますから、今年度そういった問題を踏まえて、この原油関税あり方というものに関しまして基本的に検討をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 たいへん輸入価格石油に関しても上がってきておりますが、この結果としての四十九年度の外貨支払い、これはどんなふうな見込みを持っていらっしゃいますか。
  26. 平井龍明

    平井説明員 お答えいたします。  四十九年度の石油輸入につきましては、量的には先ほど関税局長から御説明申しましたとおり、二億七千万キロリットル見込みまして、金額的には約百五十億ドルを見込んでおります。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、その関係で、これは日本も非常に大きなそういうふうな石油のための外貨支払い、これは他の欧米諸国も同じようにそういう情勢が出てくるわけで、そこでいわゆるオイルダラーというものの大きな存在が、国際的な通貨情勢、あるいはまた国際的な金融情勢というものに対しても、実に深刻な影響を与えるようになるだろうと思うのですが、その国際的な影響と、今度はそれが日本へ及んでくる影響、こういうふうな影響をどういうふうにごらんになっているか、お聞きをしたいと思います。
  28. 平井龍明

    平井説明員 ただいまお尋ねのオイルダラーの問題でございますが、原油価格の上昇に伴いましていわゆるOPEC、産油国側にどの程度の外貨が入るかという点につきましては、四百億ドルとも六百億ドルともいわれておりますが、かなりの外貨がOPEC側に支払われるということは、これは避け得ないことだと思います。  ただ、これだけの外貨がどのように運用されるか。ある程度はOPEC国の輸入の増ということになりまして、先進国のほうにはね返ってくると思われますが、その他のものにつきましては、いろんな形で資本市場に出て運用されるのじゃないかというふうに考えられております。具体的にはまだ今後の問題でございまして、石油価格の上昇がフルに働いてまいりますのは本年後半のことかと見られておりますけれども、その場合に、資本市場に、ユーロ市場が主かと思いますが、出ました外貨、これがどういうふうに流れていくかという点は、ただいま御指摘のとおり、本年以降の国際金融情勢上非常に大きな問題になっております。ただ、いまのところはまだ今後の問題ではっきりしたことはわからないわけでございますけれども、まあ先進国側といたしましては、何らかの形でこれを借り入れるというようなことになるのではないかと存じております。  わが国の場合に、いま御指摘のどういう影響があるかという点でございますけれども、先ほど申しましたように、来年度の輸入を四百三十七億ドルほど見込んでおります中で、百五十億ドルの石油輸入があるわけでございますけれども、同時に、輸出のほうにもある程度その輸出価格の上昇というものを見込まれますので、明年度の国際収支の見通しにおきましては、かなりの石油支払いの増はございますけれども、一応貿易収支上ではなお三十四億ドル程度の黒字は出るのではないかというふうに見込んでおる次第でございます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 私は、この関係は確かにどうあらわれてくるか見きわめるのになかなかまだ見きわめがたい情勢だと思いますが、ただ、従来、この種の問題が、たとえばドルと円との関係においても、アメリカのニクソン大統領のことで何か出てきて、こちらは大騒ぎになるという経過を重ねてきております。その意味においては、むしろいまの段階から幾つかの想定される仮説を立てて、その仮説に応じて、その場合には対応策はこうでなければならぬ、この場合には対応策はこうでなければいかぬというような幾つかの仮説を用意しておいて、そしてそれがあらわれてきたときに、即座に対応できるというような体制も準備すべきじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、情勢が定まるまでただ待って、見る、ウエイト・アンド・シーというようなことじゃなくて、むしろそういう仮説を幾つか積極的に立てて、対応策のA、B、Cそれぞれの用意をしておくというようなことが必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
  30. 平井龍明

    平井説明員 お答えいたします。  ただいま申しましたように、わが国にとりましても、何らかの形でこのオイルダラーというようなものを吸収するというような必要も出てまいろうかと存じておる次第でございますが、実は御案内のとおり、昨年来わが国の国際収支はかなり赤字を続けてまいりましたが、その主たる原因が、いわゆる資本勘定の赤字にあったわけでございます。  したがって、この点も踏まえまして、かつ今後におけるオイルダラー等の問題も考えまして、昨年末以来のいわゆる外貨と申しますか、外資と申しますか、その取り入れにつきまして政策を若干変更いたしまして、外債の発行でございますとか、インパクトローンの取り入れでありますとか、この点につきまして為替管理面を非常に自由にと申しますか、フレキシブルにいたすと同時に、税制上の面でもある程度手当てをいたしまして、こういうものがわが国に入ってきやすいように、そういうかまえをとっておる次第でございます。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 今年度のわが国の保有外貨、その推移ですが、四十八年の年初には、百九十億ドルをこえるほどの非常に大きな保有外貨ができておった。それがその後の情勢でもって、非常にまた急激に減少したということになっておるわけですが、現状ではどのくらいの保有外貨の量があるか。  今度は、その保有外貨の内訳ですね。これがよく問題になって、わが国は手持ちの金が非常に少ない。一時は金とそういうドルとの関係で問題になったわけですが、ドルで手持ちをしておるにしても、短期債券あるいは中期債券、長期的な債券、いろいろあると思いますが、その保有外貨の量と内訳の現状をちょっとお聞きしたいと思います。
  32. 平井龍明

    平井説明員 先月一月末におきますわが国の外貨準備でございますが、百十五億六千六百万ドルでございます。内訳は、金が八億九千万ドル、それからSDRが五億一千三百万ドル、このほかにゴールドトランシュと申しましてIMFに対します一種の債権でございますが、いつでも外貨になる、これが六億二千九百万ドルございまして、残りの約九十五億ドル、これがすべて外貨ということに相なっております。  この外貨の内訳は、ほとんど全部米ドルというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。ごく少額ドイツマルクあるいはスイスフラン等ございますが、全額米ドルとお考えいただいていいかと存じます。  どういう形でこれを持っているかという点でございますけれども、大部分は銀行に対します預金並びに主として米国の政府証券に対する投資という形で運用いたしております。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 その米国の証券という形の手持ちの関係ですが、昨年そういう非常に大きな情勢変動の中で、アメリカの債券市場で長期債をかなり売り出された。一時的に相当日本からの売りが出て、アメリカの市場においてはそのために債券の値下がり、その結果、わが国として国損を生じた。こういうふうなことも新聞の報道では伝えられておるわけですが、この点についての情勢はどうだったのかということをお尋ねしたいと思います。
  34. 平井龍明

    平井説明員 御案内のとおり、昨年度わが国の外貨準備がかなり急激に減少いたしまして、その間の過程におきまして、従来比較的長期に運用いたしておりましたものを短期に切りかえるという操作をいたしました。ただいま正確に金額は記憶しておりませんけれども、その結果として、アメリカの公債市場の市場価格にある程度の影響が出たようでございます。  ただ、当初わがほうといたしましては、それを長期に運用いたしました結果、比較的高利の運用利回りを得ておりました関係上、結果的には、わが国として損になったというふうには考えていないわけでございます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 国際ラウンドについてお尋ねをしたいと思うのですが、昨年の九月十四日に東京会議が行なわれ、東京宣言がなされた。それでこれは五十年に完了という予定になっているわけですが、何ぶんにもガットの体制あるいはIFM体制が非常な混乱状態になっておる。そしてアメリカを見れば、かなり保護貿易的な傾向も出てきておる。あるいはECでは地域主義が進んでおる。また全体としての南北問題、これも課題として非常に叫ばれながら、むしろその格差を開いていく方向が進んでおる、先般の田中総理の外遊にあたっていろいろ起きた問題も、やはりこういうことを背景に踏まえておるということだと思うわけです。  そこで、そういう情勢の中で、この東京ラウンドを進めていく。その進めていくにあたって、せっかく東京でそういう国際会議もやっておるということからすれば、そういう国際的な関税政策あるいは通商政策のあるべき原則といいますか方向を設定していくにあたって、わが国が指導的な役割りを果たすことが必要じゃないか、こういうふうに考えるわけです。しかも、その面で指導的な役割りを果たす中で、わが国とたとえばアジア諸国との、そういう従来の経済協力関係あるいは経済進出でいろいろ生じてきた重大な矛盾も、その中で解消されていかなければならぬ、こう思うわけですが、この基本的な方向づけについて、関税局長のお考えをお聞きしたいと思います。
  36. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 非常に広範な御質問でございますので、一口になかなかお答え申し上げにくい面もございますけれども、御承知のように、確かにケネディラウンドの場合には、これは関税の交渉が主体になっておったわけでございます。全体的に世界の自由貿易を拡大をするということを目的といたしまして、全般的に関税を引き下げることによって自由な競争を推進をしようという一つの旗じるしのもとにおきましては、確かに国際競争力の非常に強い国々が、これは得をするわけでございます。関税が低くてお互いに自由に売りたいところに売れるという情勢になっていれば、一般的に申し上げて、国際競争力の弱い発展途上国等は、これによって得るところは比較的少ないことになるわけでございます。  したがいまして、前回のケネディラウンドそのものの成果につきましては、いわゆる発展途上国の側からは、これによって得をしたのは先進国であって、自分たちはこれから何らの利益も得なかった、こういうような批判の声があがってきておったことも事実でございます。  したがいまして、今回の新国際ラウンドにおきましては、それらの点も踏まえまして、いわゆる発展途上国の人々は、新国際ラウンドを開くことによって、発展途上国が利益を得るようなものでなくてはならないという基本的な姿勢をもって当初から臨んでまいったわけでございまして、一名、この新国際ラウンドと申しますものは、発展途上国のためのラウンドということもいわれておるわけでございます。  今回、先進国側といたしましても、これを踏まえまして、発展途上国のためになるようなことを何とかしようではないか、お互いに話し合いをしようではないか、先進国のある一国だけが抜けがけの功名と申しますか、何かやるということではなくて、お互いに国際的に話をし合って、そういうことも考えていこうではないかということでも非常に大きな意味があるわけでございまして、昨日もちょっと申し上げましたけれども、現在ガットに対しましてこの新国際ラウンドに参加を申し込んでおりますところの八十六カ国の国々の中の半数以上は、発展途上国から参加の申し込みがあるわけでございまして、発展途上国の新国際ラウンドに対しまして持っておりますところの期待も非常に大きいということを、ある意味におきましては示すものではないかと思います。  したがいまして、昨年の暮れ以来、非常に世界の経済情勢石油問題を中心といたしまして変動をしておりますので、日本がこの新国際ラウンドに対していかなる基本的な態度で臨むべきかということを最終的にきめますことは、通貨の問題もございますし、あるいは石油の問題もございますし、非常にこれはむずかしい問題であろうと私ども思います。したがいまして、これから今年度におきまして一番重要なことは、私どもがこの新国際ラウンドに対して、日本にとって国益に合致する方向で臨むのにはいかなる基本的な対策をもって臨むべきかということを真剣に勉強することだというふうに考えておるわけでございますが、中でも発展途上国に対しましての考え方を基礎といたしまして、日本の態度をきめなくてはならない、かような基本的な考え方は持っておるわけでございます。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 この発展途上国との関係では、当然それらの国の産品である一次産業に関する産品とか、あるいはそれらの国の軽工業関係の産品とかいうふうなものに対して、こちらが特恵を与える、あるいは関税率を低くするというふうな対応策は、どうしても迫られるということになると思いますね。  それで、国際的な関税負担率というものの数字を、今回のこの法律改正に伴って提出された資料で見ると、日本の場合には例年ずっと下がってきて、この四十九年度では三・九、こういうふうな見込み数字が示されておりますが、アメリカなり西ドイツなりあるいはヨーロッパ、これらの諸国は、これに比べて五・三なり五・二なり、四十六年度段階数字がそれほど下がってきていない、大体横ばいではないか、こういうふうに見られておる。それだけ現状においても関税負担率の差がある。こういう状態のもとでなおかついまのような要請に日本としてこたえなければいけない、こういうことになるわけですが、いまのような点を考慮に入れながら、この新ラウンドの中で日本がどういう対策をとるかということは、どういうふうにお考えになっていますか。
  38. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに昭和四十九年度におきますところのわが国の関税負担率、いわゆる関税収入を総輸入額で割りました数字は、三・九というふうに非常に低下をすることになります。と申しますのは、先ほど来議論になっておりますところの石油関税が、わが国の場合一キロリットル六百四十円という従量税になっておるわけでございまして、一方、石油価格そのものは非常に高騰をいたしておりまして、先ほど平井議官からお話をいたしましたように、明年度二億七千万キロリットル前提といたしまして百五十億ドルを払うことになりまして、実は従量税としてキロリットル六百四十円という金額をきめました際には、昭和三十七年度に、出時の値段がちょうど一キロリットル五千三百円でございました関係上、その一〇%ということを前提として考えておったわけでございます。ところが、この二月以降のように、一バーレル当たり九ドルをオーバーするような石油値段になってまいりますと、率に換算をいたしますと、石油関税と申しますものは非常に低い率になってまいるわけでございます。  したがいまして、それが非常に大きく影響をいたしまして、御承知のように、石油に関しましては千三百億円にのぼるような関税収入でございまして、関税収入の中におきまして石油関税の占める比率が非常に大きいために影響をいたしまして、いわゆる総輸入額に対します関税収入は低くなっておりますが、問題になりますのはいわゆる製品関税、列国との比較をいたします場合には、いわゆる製品関税率というものが各国の関税率を比較する場合の一つのめどとなっておるわけでございまして、私どもも年々歳々関税を引き下げてまいりましたために、製品関税率の面におきましても、大体六・八%台というようなことで、列国に比較をいたしまして決して見劣りのしないような関税になっておるわけでございます。西欧の場合にも、あるいは米国の場合にも、大体製品関税率の平均関税率は六%台ということで、日本とほぼ同じ水準になっておるわけでございます。  したがいまして、私ども関税に関しましては、日本といたしまして、ほかの先進諸国に先がけましてこれ以上製品関税率を引き下げるという必要は、対外国との関係においてはあまりないものと考えております。しかしながら、かりに下げるとすれば、これはむしろ国内問題として関税を引き下げる必要がある場合に下げるということで、国際的な問題におきましては、関税をあまり引き下げるという必要はないような感じを持っておりますけれども、いわゆる新国際ラウンドにおきましては、ケネディラウンドの場合と違いまして、むしろ関税だけではなくて、貿易上のいわゆる貿易障害と称せられるもの、あるいはセーフガードをいかなるときに発動をするか、またそれに対する監視機構はどうするか、あるいは先ほど来先生指摘のような、南北問題を中心とする発展途上国に対する対策、あるいは熱帯産品をどうするか、こういうようないわゆる関税以外の議題が新国際ラウンドにおいては取り上げられるということになっておるわけでございまして、大体現状は、私どもの感じといたしましてはそういうようなことでございます。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 最後にお尋ねをしたいことは、これはこの前の印紙税の際にも、われわれの同僚議員から聞かれた問題であるわけですが、直接税と間接税の将来への関係づけの問題です。  経済成長のいわばスピードが非常に早い。それからその中において、さらに加えて、物価の上昇も非常な大きな率で上がってくる。こうなりますと、その結果は、税収の弾性値の大きい所得税なりあるいは法人税なり、こういうところへは非常に大きな自然増収が出る。その自然増収を一方では減税財源にも充てるし、一方では政策財源にも充てる、こういうふうなやり方で、しかも、年々結果としては、財政規模は非常に大きく伸びてくるというふうな形で従来来たわけですが、こういうふうな形が今後も継続できるのかどうかということは、私はかなり根本的な問題じゃないかと思うわけです。  その場合には、これからも従来のような高成長が続くのか、また特に物価の上昇、これが今後も非常に大きく続くのかということが一つありますし、逆に、経済的な見通しとしては、今後は成長が非常に低成長の段階に入るというふうな見通しを持つか、そのことによってこういう租税あり方の基本的な形も当然変わらなければならぬ、こういうふうなことであるわけですが、まず第一に、そういう今後の見通し、これをどういうふうにお考えになっておるか、これもたいへん大まかな、むずかしい見通しだと思いますが、主税の大倉審議官のほうからひとつ御説明願います。
  40. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御質問にございます今後の見通しにつきましては、前提になります経済情勢の推移が従来の私どもの作業では、御承知経済社会基本計画を念頭に置いてやっておったわけでございます。経済社会基本計画が想定しておりますような、経済はかなり安定的ではあるがかなりの成長があるという予測のもとでは、まさしく高沢委員の御指摘のように、ほうっておけば所得税のウエートが相当急速に伸びてまいる。法人税は実は経済成長そのものに対して大きな弾性値を持っておるわけではございませんけれども、若干一に比べればプラスの弾性値を持っておりますが、間接税は、逆に一般論としましては、一よりも低い弾性値しか持たないということで、四、五年というレンジでものを考えました場合に、かなりの所得税の減税を行なってまいりましても、なおかつ直接税のウエートはじりじりと上がってくるのではないかというような予測を持っておったわけでございます。  ただ、経済社会基本計画が基本的に改定されるというようなことになります場合には、あらためて新しい予測のもとでの想定をいたしてみたい、かように考えております。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 私は結論から言いますと、いまの日本の資本七義経済というものの中で、インフレーションという問題は、これはなかなか直るということはないのじゃないか、こう思うのです。われわれはインフレをとめるということで要求もし、またそのための戦いもしているわけですが、しかし、財界を背景として、そして自民党の政治が続けられる、こういうことが前提となる限りは、やはりインフレは進むのじゃないか、こういうふうな考え方を持つわけです。   これは国家独占資本主義がどうこうという議論も当然からんでくるわけですが、そういうふうにインフレが今後も進む。われわれのインフレをとめる、押えるという要求にもかかわらず、現実には進む。こういうふうな前提に立つとすれば、この税の構造は、いま言ったようなそういう弾性値というものが非常に働いて、その結果、国民税負担という面においても、そのときどきの減税措置がいろいろとられるにしても、物価の上昇を取り戻す調整減税の効果も十分に持ち得ないような減税に結局は終わってしまう。こういうことで、いわゆる所得の格差の拡大というものが構造的に進む。  こういうふうなことを前提考えれば、そのもとにおける租税政策のあり方というものは、当然所得の再分配ですか、本来のそういう機能というものを最大限発揮するというようなことでなければならぬわけであって、そういう意味においては、租税政策の基本のあり方が、間接税、ことに  一般消費税としての付加価値税というふうなものを導入するということにもちろんなってはならないし、これは先般の質問の際にも大蔵大臣から、そういうことは考えておりません、こういうことが出されておりますが、それを押えながら、同時に、直接税の面においても、勤労者に対する大幅な租税の負担の軽減、一方、大企業なり高額所得者からはしっかりと税金を取る、こういう面のいわゆる累進性の役割りというものを最大限に発掘させる。これは所得税もそうであるし、また法人税もその点でわれわれは主張しておるわけですが、そういうふうな税制のあるべき基本的な方向というものを、これは今後の見通しとの関係で、われわれの見解として申し上げたいと思うわけです。  そうしてそれに関連して、ちょうど政務次官が見えましたので、最初に実は生活関連物資に関する関税弾力条項の拡大ということに関係して、こういう情勢では、当然行政弾力的に対応しなければならぬという役割りが非常に大きくなる、そういう課題が非常に大きくなるということと、しかし、それは結果としては、今度はいわゆる官僚統制というものをまた進めるという、そういう矛盾した関係にあるということから、関税局長には、そういう弾力関税制度を適用して品目を選んだ場合には、それが確実に消費者にとっては価格の安定につながる、引き下げにつながるというふうな効果を出すことが、官僚統制という弊害を防ぎながら、行政弾力性という役割りを果たすことになるではないかということを申し上げたわけですが、ここではひとつ政治家として政務次賞に、いま言った弾力性ということが要求される情勢のもとで、なおかつ官僚制度あるいは官僚主義を防ぐ、こういう面においての御見解をひとつお聞きしたい、こう思うわけです。
  42. 中川一郎

    ○中川政府委員 税金は、御承知のように国家の権力をもって徴収するわけですから、官僚的であってはならないというところから、租税法定主義というものが憲法で定められて、国会の御審議を逐一仰いでおったわけですが、御承知のように、最近の異常な物価高、国民生活に非常な不安を与えるというところから、許される範囲内での弾力条項ということで、今回もほんとうに大事な物資に限ってやらしていただくようにお願いしておるわけでございます。  しかし、この運用にあたっては、これが官僚的なものにならないように十分配慮してまいり、特に関税率審議会にもはかりまして、適正な運用をはかって、国民の皆さまから官僚的な、ファッショ的なやり方だと言われることのないように十分配慮していかなければならない、このように考えております。御指摘のとおりでございます。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 以上で質問を終わります。
  44. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 午後一時より荷閲することとし、この際、暫時休憩いたします。    午前十一時二十七分休憩      ————◇—————    午後一時四分開議
  45. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  46. 村山喜一

    村山(喜)委員 今回、関税定率法の一部改正が提案をされておるわけでございますが、まず初めにお伺いをいたしますのは、石油関税あり方の問題でございます。  そこで、しっかり基礎を据える意味において、原油及び石油製品の輸入数量と、それから輸入価格の動向について説明を願いたいと思います。
  47. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 輸入数量は年別で申し上げますか、あるいは月別で申し上げますか。
  48. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十七年と四十八年分並びに十二月と一月。
  49. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 四十七年度の石油輸入数量は、(村山(喜)委員「暦年だ」と呼ぶ)暦年の輸入数量は——ただいま手元に四十七年度しかございませんので、四十七年は四十七年度でお許しをいただきたいと思いますけれども、四十七年度が二億三千百三十五万キロリットルでございます。それから四十八年の十二月が二千五一百三十二万八千キロリットルでございまして、一月が二千百九十九万九千キロリットルでございます。  その間、四十七年度におきまする輸入単価の平均は、一キロリットル当たり四千八百九十三円ということになっておりますし、昨年の十二月、二千五百三十一万八千キロリットル入りましたときには、輸入の平均単価はキロリットル当たり八千八百四十円、さらに一月に入りますとそれが一万一千六十円となっておりまして、さらに最近、二月の上旬以降これがさらに急激に上がってまいりまして、円貨換算はいたしておりませんけれども、二月の上旬におきまする石油輸入単価は、一バーレル当たり九ドル七セントになっております。
  50. 村山喜一

    村山(喜)委員 私もここに関税当局から資料をもらっているわけですが、四十七年、四十八年の全体の数量が出ております。そして、価格も揮発油から灯油、LPG、それに軽油、重油合わせましての数字もいただいておるわけですが、この中で見てまいりますと、トータル分といたしまして、四十八年は一兆八千五百四十九億五千七百万円の原油並びに石油製品を輸入しているということになりますね。  そして、最近の価格の足取りを見てみますと、たとえば、原油の場合にはキロリットル当たり一万一千六十円、それから揮発油が一万三千六面七十七円、灯油が一万二千円、それに軽油が二万七百二十五円、重油が一万五千九百十八円、それにLPGが一万七千九百六十九円、こういうふうになっておるわけですが、この価格の上昇の中で一体——これからの外貨事情の問題等もありましょうが、これはまた塚田委員のほうで外貨の問題については触れることに相なっておりますので、私がお尋ねいたしたい点は、こういうふうに数量的にも決して減っていないし、まあ伸びてきているわけですが、こういうような価格が上昇をしていく中で、関税政策としては、どういうような政策をとったほうがいいというふうにお考えになるのか。  今度の改正の中でも、若干はそういうようなものが見えておりますが、この際、大蔵大臣は石油関税あり方についてどうなければならないというようにお考えになっているかを明らかにしてもらいたいと思うのです。
  51. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 石油関税につきましては、関税率審議会におきましても、これは非常な議論があったところなんです。それで、この審議会の相当多数の委員から、四十九年度関税改正において、石油関税制度を再検討すべきだという意見もありましたが、一方におきまして、石炭政策の問題があるわけでありまして、それで、これと密着しておる関税問題でありますので、そう結論を急ぐわけにはいかなかったのです。そこで、この一年間十分検討いたしましてひとつ妥当な結論を出そうじゃないか、そういうことにいたしたわけです。  関税制度一般につきましてはどういう見解かというお尋ねでもありますが、要するに、いま最大の問題は何といっても物価の安定だ、国民生活物資の確保である、こういうことでありますので、関税政策も、当面、その政策の運用の焦点をそこへ集中していかたければならない、こう考えております。
  52. 村山喜一

    村山(喜)委員 関税率審議会では、四十八年度末をもって根本的な再検討をはかるという決議をしておりますね。本来であるならば無税であるべき重油原油関税を、製品、商品前に徴収をして、その収入の一部を備蓄相半分に充当をするという考え方で、いわゆる関税還付型の消費者転嫁として、四十七年度に石炭石油特別会計が止まれたわけです。ところが、これは暫定二年ということで発足をいたしたわけですね。  そうなりますと、当然、ことしは四十九年度でございますから、四十七年度、四十八年度の二年度の間において暫定的なものとして発足をしたということになると、ことしは構想新たなものとして、四十九年度はその結論を出さなければならない年になっていると私は思うのです。それがなぜ今日、そういうような線をお出しにならないのかということなんです。  ということは、四十六年に日米経済協議会が開かれて、四十七年の四月からは軽油、重油の自由化をやりましょうということも協議をされて決定をされているようであります。自由化後二年間関税割り当て制度をとることは認めるが、というような話し合いも過去においてなされた事実もあります。とするならば、国際的には石油関税というものは撤廃をされているというのが、世界の主要石油消費国の現状でもある。そのときになぜ日本だけは特別な形をとらなければならないのか。  今回提案をされました中に、この重油なり、液化ガスあるいは揮発油、灯油、こういうようなものがございますが、この中の内容を見てみましても、製油用というようなものはキロリットル当たり六百四十円、そのほかのものは、二次税率でキロリットル二千二百八十円というのが重油関税でございます。液化石油、ガスの場合でも、五百五十円に対して製造用は二百八十円、揮発油の場合にいたしましても、千七十五円に対して製造川のものは百二十五円、灯油の場合には、これは区別がないようでございます。キロリットル当たり千十円。こういうようなふうに製造用のものには安い関税をかける、一般の消費用のものについては高い関税をかける。私は、はたして、現有のエネルギー消費を節約をしていこうじゃないかという情勢の中で、こういう税制、関税の政策というものが依然として続けられるという必要性がどこにあるのかという点を、この際、明確に大蔵大臣から、そういう国際的な約束までしておきながら、あるいは関税率審議会のそういう方針が出されているにもかかわらず、なぜいま依然としておとりになろうとしているのか、そしてそれが暫定的なものであるとするならば、いつ結論を得て処理をされる方針であるのかを、明確に承っておきたいと思います。
  53. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 村山さんの御指摘の、国際関係があるんじゃないか、つまり、石油関税につきましては国際的な何か約束でもあるんじゃないかというお話でございますが、さようなことはないんです。  ことし、私どももずっとこの問題は検討してきたわけなんでありますが、石油問題が発生した。そして石炭エネルギー資源としての地位というものが非常に変わってくるわけです。この石油関税は、その石炭政策と密着不可分の関係にあることは御承知のとおりであります。その密着不可分の関係にある石炭政策というものが、なかなか早急の際に立てにくい、こういう事情がありまして、関税率審議会におきましても、一年間みっちり検討して結論を出せ、こういうことになっておりますので、そのようにいたしたいというのが考え方でございます。
  54. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、一年後において、来年度は新しい構想のもとに結論を得てお出しになる、こういうふうに考えていてよろしいですね。
  55. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さようにいたしたいと考えております。
  56. 村山喜一

    村山(喜)委員 資源エネルギー庁の熊谷石油部長にちょっとお尋ねをいたしておきたいと思いますが、石油の得率の問題です。これはどういうふうになっているのか。私が聞いておりますのは、原油の中からどういうようなものを製造するかということは、一つの得率がある。上下に一%ぐらいは伸ばし得るけれども、という話を聞いているわけでございます。  その内容は、LPGの場合が三・一、ガソリンが一〇・六、ナフサが一二・一、ジェット燃料が一・六、灯油が八・九、軽油が七・〇、重油のAが六・九、Bが四・六、Cが三九・九、アスファルト用のそういうようなものが二・八、自家燃料分が二・五、ロスが〇・一、こういうような得率があるというふうに聞いているのですが、これは日本石油精製の場合には、標準的なものとして受けとめてよろしいのですか。
  57. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 先年がおっしゃいましたように、製品の得率につきましては自由自作に変えるということはできませんで、日本の場合には、大体いま先生がおっしゃいましたような水準でございます。  例を申し上げますと、四十八年度下期の生産得率を私どもは、ガソリンにつきましては一〇・七八、ナフサが一二・三二、合計二三%でございます。それからジェット燃料は一・九九、灯油は八・一六、軽油は六・六九、A重油は六・九、合計二一・七五、いわゆる中間留分でございます。それからB重油が五・三五、C重油が三九・八一、重油の合計が五二・〇六、こういうような計画を当初組んでおりました。  最近におきましては、ことしに入りまして一、二、三月、私どもとしましては、とりわけ灯油なり軽油なりA重油なり、この辺のところが民生用の確保の点で必要でございましたので、この三カ月は中間留分のほうに得率を上げるというような指導をいたしておりまして、試みにこの三月の供給目標におきましては、灯油につきましては八・六五、軽油は六・七一、A重油八・二一、合計いたしまして二三・五七、これは当初の計画から見ますと二ポイント程度上げているというのが実態でございます。
  58. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が先ほど読み上げたものと上下に一%ぐらいの開きがありますが、大体そういう範囲であるようでございます。  ところが、この前ニクソン大統領が石油メジャーとの間に汚職関係があるんじゃないかということで、アメリカの国会の中でいろいろと追及をされておりました。その中で報告が出されているのを見てみますと、一九六九年のアメリカの国内精製産出量——連邦取引委員会石油産業に関する調査レポートが出されたという記事がございますが、この中から見てみますと、ガソリンの得率が四五・五、蒸留燃料油が二一・六、ジェット燃料が八・二、それから灯油が三・六、潤滑油が一・七、そういうような形で残滓燃料油が六・八、こういう数字が出ておるわけですね。そうなってまいりますと、製法のやり方によっては、いま私が申し上げましたように、ガソリンを四五・五という得率に高めることができる。これは客観的な数字でございますが、日本の場合にはそういう技術というものはないのかどうか、これは一体どういうふうに受け取っていらっしゃるのですか。
  59. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 日本の場合には、石油製品の需要といたしましては、重油が御承知のように約半分を占めておるわけでございますが、アメリカの場合には、それに相当するのがガソリン需要でございまして、その辺は、いま日本のガソリン需要が大体一割程度というのと比べますと、かなり構造的な違いがございます。  アメリカの場合には、製油所が国内に不足いたしておりまして、最近、ここ一、二年冬場におきます燃料油の不足というのが問題になりまして、製品輸入をかなりいたしておるわけでございます。そういった需要構成の違いが、いま精製いたしますウエートの違いということになってまいっておるのだろうと存じます。
  60. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、製法のやり方の違いによりましてこういう差が出てくるということは、われわれが製品輸入をはかる場合に、どういう角度からその関税政策というものを立てるかという問題にもつながってくると私は思うのです。ということは、原油で入れて、日本国内で精製をする。その場合に、たとえば日本石油産業を発展させなければならないというので、ナフサに回す割合をよけいにとる。したがって、ガソリンのほうは少なくする、あるいは灯油の得率を高める、そういうようなやり方を石油のいわゆる経済政策というのですか、産業政策としてとることができる。日本石油産業との結びつきの中において、この得率というものを固定されたものとして受けとめておったら間違いがあるというふうに私は思ったわけです。  そこで、今度改正案として出されております重油、液化ガスあるいは揮発油、灯油、これのキロリットル当たり関税のかけ方ははたして合理的なものであるのかどうか、この点を局長のほうから説明を願いたいのです。
  61. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、原油に対します関税は、現存一キロリットル六百四十円ということになっておるわけでございます。これはもともと、昭和三十七年に従量税に変わりまして一キロリットル五百三十円ということになりました際には、当時ちょうど石油キロリットル当たりの単価が五千三百円でありました関係上、一応原油に対しまする関税が一〇%ということを前提として、五百二十円という値段がきまったわけでございます。その翌年に石炭石油対策に必要な財源を確保するという観点から二%上げまして、一二%相当分ということで一キロリットル六百四十円ということにいたしたわけでございます。現在、御承知のように、原油値段が非常に高くなっておりますので、このパーセンテージに関しましては非常に低い比率になるわけでございますけれども、この一キロリットル当たり六百四十円ということをきめました際には、そういう前提のもとであったわけでございます。したがいまして、原油に関しましては、一〇%ということは一応基準になる。  それから、石油製品に対しまする関税は、日本の場合、今日までの消費地精製主義と申しますか、できるだけ原油の形をもって日本輸入をいたしまして、国内においてこれを生産する、国内石油製品を生産することを奨励するという見地から、一応二〇%をめどに石油製品関税がかけられていた、こういうことが一つの目安になっておるわけでございます。  ところが、灯油に関しまして今年度お願いを申し上げておりますのは、灯油に関する関税は、いわゆる消費者保護という観点から、要するに、原油と同じ程度の負担をしていただくということにするべきではないかということで、灯油に関しまする関税の引き下げを今回お願いしておるわけでありまして、全体的な基本的な考え方といたしましては、原油に関しましては一〇%、それから製品に関しましては二〇%というのが今日までの考え方であったわけでございます。
  62. 村山喜一

    村山(喜)委員 その価格は先ほど私が読み上げたわけですが、その上から見まして、いまおっしゃった原則がそのとおり比例的になっていないわけですね。改正案は工業用の灯油も家庭用の灯油も一緒にしてできておりますね。ですから、灯油についてもっと民生用中心に安定をさせようという考え方であるならば、工業用と家庭用とは区別をするとか、何かそういう具体的な施策が必要ではなかろうか。それと、石油精製の消費地主義ですか、現地精製主義というもののあり方がいま問われているわけですから、その点についてももう一回検討していただく意味において、まあ改正案が出されておりますけれども、どうも基礎的な根拠が今日失われているような気がしてなりません。したがいまして、今後十分な検討をしていただきたいと思います。  そこで、これは非常に小さな問題でございますが、脱脂綿、ガーゼ、包帯という部類がございます。コード番号は五四一−九二〇ですか、この内容でございますが、脱脂綿なりガーゼは医薬用品として入れているのでしょうが、一体どれだけの輸入をしなければならない必要性がありますか、また輸入実績がどれだけございますか。
  63. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 脱脂綿、ガーゼ、包帯に関します昭和四十七年度におきます輸入額は、合計九千万円でございます。そこで、この脱脂綿、ガーゼ、包帯、こういったようなものの現行税率八%であるものを、今回改正案で四%にすることをお願いをいたしておるわけでございますが、脱脂綿、ガーゼ、包帯等、こういったような種類のものは、税関を通ります際に、似たようなものが非常  に多くございまして、似たような種類のもので税率が異なっておりますと、私ども税関実務上の観点から申しますと、非常に困惑をいたす場合が数多くございまして、似たようなものの中で一番低い税率に一本化いたしますことが税関実務上も便利であれば、さらに国民生活の上におきましてもそれが役に立つということで、今回、脱脂綿、ガーゼ、包帯、こういったようなものの現行関税率八%を四%にすることをお願いを申し上げておるわけでございます。
  64. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十八年十一月の「日本貿易月報」によりますと、一月から十一月までの集計が出されておりますが、全部で一億九千六百万円ということになっているようでございます。四十八年十一月は、二千七百万円入れているわけです。内容は何を入れているのか御承知ですか。脱脂綿、ガーゼ、包帯と書いてありますが、何が入っているのですか。
  65. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 脱脂綿、ガーゼ、包帯は、関税率の分類といたしましては同じ分類でございますが、実質の内容は大部分が包帯と理解しております。
  66. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは衛生材料として包帯を入れておりますね。脱脂綿なりガーゼというものが日本の医療機関で使われる場合に、アメリカなりあるいはヨーロッパの国で使われるガーゼと日本のお医者さんが使うガーゼと同じものだと私も思っていましたが、聞いてみると、だいぶ違うのですね。日本の場合には四〇のシングルのコーマ糸ですか、これを使っておる、あるいはカード下の糸を使っておる。そして非常に細い糸になっているわけですね。ですから、そういうような意味で、日本のやつは使いやすいけれども、外国のやつは入れてみてももう使いにくくてしようがないと言っておるのですよ。  そういうようなものも、八%を四%に下げましたから喜んでくださいということでお出しになっているのだろうと思うのだけれども、どうも実情に合わない形のものしかないじゃないか。衛生材料として包帯が、アメリカかあるいはイギリスあたりから入る程度でございましょうが、それは、こういうふうにやったら国民生活関連物資の関税を引き下げることになって非常によくなりますという証明としてお出しになったのでしょうが、どの程度実効性がございますか。
  67. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいまお話をいたしましたように、脱脂綿、ガーゼ、包帯を八%から四%に下げましたのは、主として税関行政の上におきまして、通関の際に、一本の税率にいたしますほうが、私ども税関行政立場からはぐあいがよろしい。しかも、なおかつそういうことをいたしましても、国民衛生上国民生活にとってマイナスになりませんばかりでなく、国内産業にとりましても支障がない、こういう判断から税率の一本化ということで、八%を四%に下げることをお願いをいたしておるわけでございます。   〔村山(喜)委員、標本を示す〕
  68. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間の関係がありますので、私はもうこれで終わりますが、最後に一問だけ大臣に質問をして終わります。  いま大臣のお手元に出してありますその標木は、いま大臣がお持ちであるのは非イオン系の洗剤でございます。これはアメリカ産の「ジャンボ」という商品です。それからその次にありますのは花王の製品です。それから「全温度チアー」というサンホームの製品がそこにございます。これをごらんいただいた場合に、関税の税率は一体どういうふうになっているのだろうか。私が調べてみましたら、これは同じなんです。六%ですね。  ところが、それの底のほうを見ていただきたいのですが、そちらの日本製のやつは、底のほうに非常に沈でんをしている。それが下水の中に流れ込み、そして水が富栄養化して、そして沼や池の燐酸分が多くなって、水質が汚濁されるというものです。片一方のほうは、御承知のように、底のほうに沈でん物は何もございません。そしてその使用量は三分の一以下で洗たくができる。私もやってみたのですが、そういうふうになります。ところがその日本製の「ニュービーズ」ですか、それを見てみると、洗たく機に三十リットルの水を入れた場合には、五十グラム入れなさいと書いてある。五十グラムです。こちらの「ジャンボ」のほうは十三グラム入れたらよろしいと書いてあります。そして公害はどちらのほうがよけい出るかというと、その五十グラム入れたほうがよけい出ることは、もう沈でん物の状態を見られたらおわかりになるとおりです。  とするならば、一体この関税政策の中で——福田大蔵大臣は非常にりっぱなことを本会議でもおっしゃったわけですが、国民のそういうような健康を守るとか、国民の快適な生活を守るとか、そういう立場から、できるだけ公害を少なくしていくような政策というものを関税政策の中でも進めていくというのが私はほんとうじゃなかろうかと思うのです。それが福田さんのおっしゃるところの一つの倫理観というのですか、政治観にも合致するものではないだろうかと思って、きょうはそこに標本の見本を持ってきました。これは私の知人の医者がその中に一さじずつ入れて、こういうふうになるのだということを私に示してくれたやつです。  大臣、関税政策の中で、やはりその界面活性剤の輸入の問題についても、もっと日本の政治のあり方というものの着目の上からお考えになることが必要ではなかろうかと思うのですが、いかがでございましょう。
  69. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これからの経済政策は、これはもう公害、こういうことにつきましては特段の配慮をしなければならぬ、こういうふうに考えております。  関税政策を行なう場合におきましても同様であろう、こういうふうに思いますが、ただ、こういういま御指摘のような案件になりますと、税関の窓口でこれは公害がどうだこうだというようなことは、なかなか判定がむずかしい問題がありはしないかと思います。まあ御趣旨の点は、私も十分同感でございます。技術的にそういうことが可能であるかどうか、そういう問題もあるということを御了承願います。
  70. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは非常にむずかしい問題ではあります。しかし、関税率はそういうようなものを外国から入れる場合は同じなんです。界面活性剤は同じ六%です。そうですね、局長
  71. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のとおりでございます。
  72. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、公害はどういうものから発生をするかということは、われわれが目で見ることによってわかるわけですから、関税政策の中でも差をおつけになっていいじゃないですか。このことを私は申し上げているわけです。
  73. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 だから、おっしゃる御趣旨は私も理解できますし、別にどうこう申し上げているわけじゃないんです。ただ、技術的にうまく税関の窓口でそういう選別ができますかどうかということも、あわせて検討する必要がある。なお検討してみます。
  74. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 塚田庄平君。
  75. 塚田庄平

    ○塚田委員 大臣にひとつお聞きいたしたいと思います。  貨物を輸入する場合には、税関に申告をしなければならぬものがあるわけですが、その場合、申告者、これは納税義務者ですね、これは輸入貨物が国内に到着したときの国内到着価格といいますか、これを一応申告しなければならぬ。特にそれが特殊な関係、つまり、輸入者と外国の輸出者ですね、これとの間に本支店の関係があるとか、あるいはまた同一の資本系列の会社であるとか、その他特殊な関係については特に評価申告といいますか、申告書においては明らかにする義務があるわけです。これは関税法七条二項に評価申告というふうに規定をしておりますが、この場合に、たまたま——たまたまというよりも、最近はこの申告が正直に行なわれておらない。  特に、本支店関係あるいは資本系列関係という場合には、たまたまこの問題についていろいろな違反事件が起きておるわけですが、ことに最近は、大手商社の場合は、取引の内容あるいは取引関係の全体について細大漏らさずに正確に申告するということは行なわれておらないというのが現状で、きのう同僚議員から差額関税あるいはスライド関税についての不正事件等について質問がありましたが、一体これをどうしたらいいのか。特に最近は、日本の資本の海外進出といいますか、合弁会社の形態をとるとか、あるいは資本輸出をするとか、投資をするとかという形で、いろいろ資源国との関係をつけておるわけですから、こういう批判はこれから多くなってくるのじゃないかということが予想されるわけです。これは関税政策というよりも、日本の資本の海外進出ということを考えてもゆゆしき問題だ、こう思うのですが、関税政策上そういった非違事件をどういうふうに未然に防ぐかという基本的な態度について、大胆の考えを聞いておきたい。
  76. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、最近、昨年摘発されましたところの豚肉脱税事件、あるいは銅の脱税事件の場合には、本支店勘定あるいは海外の取引先との共謀によってインボイスを書きかえまして、実際に買った価格よりも高い価格で買ったかのごとく見せかけて、日本輸入をして、関税を逋脱した、こういうような事件でございます。こういうような場合には、私どもも法に従いましてこれを現在告発をし、法のさばきを受けている最中でございますけれども、確かに差額関税の場合に、そういうことを誘発する動機はある。  さらに、普通の関税の場合でございますと、高い価格で買いますると高い関税を払う、低ければ関税も低いということで、むしろ逆に、実際に買った価格よりもインボイスを低く改めまして日本に入れてくるという可能性は確かにございます。  これはインボイスが正常なものであるかどうかということの判断は、私ども税関の窓口といたしましては、これをできるだけ正確につかむということが必要でございますが、現実問題といたしまして、海外で行なわれた取引のことでございますから、インボイスを改ざんをしてまで脱税をされますると、なかなかこれがつかみにくいということは、これは否定できません。税関の入関の窓口におきましては、ビジブルカードと称しまして、海外におけるおもな品物につきましての値段の現状がそれを検査する人間にわかるようなカードを置いておきまして、大体それの一%内外程度のものを一応の基準といたしまして、それをオーバーをするようなものに関しましては、それを後刻審理課のほうに連絡をいたしまして、追跡をして調査をするというような手段をも講じておるわけでございます。  こういったようなことに関しましては、私どもといたしましては、税関の窓口におきまして、それが正しいものかどうかを私どものできる限りにおいてチェックをし、さらに誤りが見つかった場合には、それは法に照らしまして厳正にこれを摘発をするということに努力をするということに尽きるのではないか、かように考えております。
  77. 塚田庄平

    ○塚田委員 大臣、いまの局長の答弁の中で、これは窓口の段階でやりますと言っておりますが、これはなかなかできないのですよ。  一つは、海外のそういった関係の調査といいますか、その機関なりあるいはそういう海外におけるいろいろな連絡ができないということが一つと、もう一つは、事後調査といっても二つの隘路があると私は思うのです。  一つは人が足りないということですよ。やれない。もう一つは、最近商社もだんだんずるくなって、こういう場合には一体どういうのがれ手を用いるかということを、全部研究済みなんですね。ひどいのになりますと、おそらくこれも限界があるので、帳簿を調べたり、運賃表を調べたり、あるいはその他いろいろな保険を調べるにしても、なかなか正直に出さないという事態が大手業者に実は出てきているのですよ。私の聞くところでは、大手商社は追跡調査をやれば五〇%ぐらいは——これは金額の多寡は別ですよ、そういう事件が発見されてくるというような事態なんですね。  これでは、税金を上げるとか下げるとかいったって、どんどん裏で脱税するような攻勢を向こうがしてくるということになれば、これはどうにもならぬと思うのですよ。その点をがっちりしなければ、税金の公正という面からいってもたいへんだと思うので、これは大臣ひとつ……。
  78. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほど局長がお答え申し上げましたように、海外関連案件となると、いまお話しのとおりでございますが、その調査はなかなかむずかしい。しかし、これが関係して関税額の査定が妥当でないということになりますれば、これはたいへんな問題でありますから、その辺は気をつけていかなければならぬ。  そこで、豚肉の問題とか銅の問題、これらはそれぞれ法に触れるような案件としての措置をとっておりますが、海外関連につきましても、できる限り何かくふうをしてみる。いまお話しの筋はごもっともなことでございますので、乏しい人員と経費でやっておることでございますが、何かそういう点につきましてもくふうはできないか、こういうふうにも考えますので、よく研究してみる、かようにいたしたいと思います。
  79. 塚田庄平

    ○塚田委員 十分検討してもらいたい。私の感想では、こういうことをやるにはまず人が不足ですよ。そういう面について十分なひとつ配慮をしてもらいたい。  関連して、どうですか局長、いろいろな事件がありますけれども、同じことを二度やったものは、金額の多寡によらず厳罰、告発の態度で進むべきだと私は思うのですが、どうですか。
  80. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、もし、一回法に照らして悪いということでやったものが二度目にやった場合には告発、これはなかなか一律にきめるわけにはまいりませんで、告発をいたしますのには、案件として立証と申しますか、要するに、立件をできるかできないかということに関しましては、検察庁の意見もかなり強く事前に打ち合わせをしなければならない問題がございます。告発をするだけでございましたらけっこうでございますけれども、私どもは、告発をする以上は、必ずそれが起訴されるということを前提として考えなくてはならない問題があるわけでございまして、実際問題といたしまして、やはり一回目よりは二回目、二回目よりはさらに三回目、これに対して処罰を与える場合には厳重にするという趣旨には、私どももきわめて同感でございまして、そういう精神をもって今後も対処をしてまいりたいと思いますが、一つの基準を定めるというようなことは、個々のケースによりまして判断が加わってくることでもありますし、あるいは証拠物件をどのくらい集められたかというようなこととも関連をいたしまして、むずかしい検討を要する問題ではないかと考えます。  具体的な問題といたしまして、確かに豚肉事件と銅の違反の事件が同時並行的に発生いたしております。豚肉事件で告発をしたところの関係会社が、さらに銅に関しましても同じようなことをやっていたということでございますが、これも要するに、やりましたのは同じ時期にやっておったわけでございまして、これも検察庁ともよく打ち合わせをいたしまして、同時並行的にやった場合には、いわゆる累犯というようなかっこうで通脱税額が一定限度以下の場合であっても告発をするということは、現実問題としてなかなかむずかしいというような判断も加わっておりまして、しかしながら、今後私どもといたしましては、御指摘のようなことで、できるだけ再犯、三犯のような場合、これを厳重に処罰をしていくという方向で対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  81. 塚田庄平

    ○塚田委員 時間もあまりございませんので、大臣の退席のあれもありますから、これは言いっぱなしです。  いま聞かないうちに答弁しましたが、銅については一千万円以上だけについて告発をして、同じ種類の脱税行為でありながら、一千万円以下であれば、これは告発していないんですよね。たとえば銅の場合、丸紅、伊藤忠あるいは兼松江商、こういうのは——まあ兼松、伊藤忠は別にしましても、銅でもやっている、豚肉でもやっている。しかも、片方のほうは、一千万円以下だから告発しない。これじゃ刑罰といいますか、趣旨からいって妥当じゃないのじゃないか、こう私は思うのです。  それからもう一つ、処罰の方法として、たとえば日商岩井とか丸紅に、国の系統の資金、輸出入銀行からどんどん融資しているんでしょう。国が底入れしているんですよ。たとえば、日商岩井、丸紅に、一体、輸出入銀行はどのくらいやっていますか。——時間もないから教えましょう。  輸出入銀行から九月末で日商岩井は四百三十億、丸紅は八百八十九億、これだけの底入れをされていながら、片方では脱税のトップ、銅にしたって、豚肉にしたって。どうですか大臣、こういう悪らつな代表者については、輸出入銀行の融資を自後一定の期間処罰としてとめる、やらぬ、そういう態度をとるべきだと思うのです。どうでしょうか。
  82. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 本委員会において、すでにそういうことの御指摘もありまして、それで、反社会的な行為をした企業に対しまして国家資金をどういうふうにやるか、こういう問題をどうするか、考えておるのです。いま御指摘の問題も、そういうことの一環になるわけですが、どういうルールで、法できめられている以外の行政的制裁を与え得るか、こういう点につきましては、なおよく煮詰めてみたい、かように考えております。
  83. 塚田庄平

    ○塚田委員 時間もありませんので、それはひとつ十分検討してもらいたいと思います。  それから、原産地を偽った表示等について、これはいろいろ処罰の方法はありますが、この場合、たとえば、去年ですか、中国産の生糸をイタリアに回して、イタリア産として入ってきた、こいうのがありました。最近は、これは一体どういうふうに見るのか、韓国へ糸を送る、韓国でつむいで大島つむぎ。その次はメイド・イン・コーリア、通関したらメイド・イン・コーリアを切っちゃう。何のことはない、国内産の大島つむぎで通るわけですよ。こういった事態が最近非常に多くなってきている。  特に、今度関税面では、再輸入については税金を下げるなんという恩典をやっているのですからね。これはいいと、おまけに先ほど言ったとおり、どんどん海外に合弁会社をつくって日本に輸出する、こういう事態がこれからひんぱんに起こる可能性が多いのですが、一体、違反事件はどのくらいありますか、原産地を偽ったやつは。
  84. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 原産地を偽りましたところの、特に最近大島つむぎに関しまして、韓国で生産をされたものがいろいろな表示によりましてあたかも原産地を偽るというような、メイド・イン・コーリアとかりに書いてございましても、これが日本に入りまするときに、あたかも本場の奄美大島であるとか、要するに日本の内地でつくられたかの表示のものが数多くあることは事実でございます。これに関しまして、私ども税関といたしましても、非常に注意深く入ってまいりますときにこれを注意をいたしておりまして、韓国に送り返させているというような実績も数多くございますけれども、ただいまの本場の大島つむぎだとかいろいろな形で本邦の大島つむぎと誤認を生じさせるような表示のございました輸入実績といたしましては、四十八年の四月一日から本年の一月三十一日までの八カ月間の合計といたしまして、件数は合計二百七件ございました。
  85. 塚田庄平

    ○塚田委員 いま答弁の中で、積み戻しということがありましたね。実際どのくらいやっているのですか。私はほとんどないのじゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  86. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 その措置の内容といたしましては、確かに積み戻しということをさせましたのは昨年の八月に一件あるだけでございますけれども、その他は表示を塗りつぶさせましたり、あるいは正当な原産地の表示をさせまして、それが入関後といえども消えることがないような、そういった措置を税関立ち会いの上でさせたり、あるいは表示を切断させたりというような措置を講じまして、通関を認めておるわけでございます。
  87. 塚田庄平

    ○塚田委員 表示を消したり何かしても、国内に入ってくるコーリア産、これは日本産品として通るのですよ。たとえば、あなたも朝鮮ニンジンをのんでいるのじゃないかと思うのですけれども、長野県でつくって、全く乾燥させて、持っていって、すぐまた直ちにこっちに逆にメイド・イン・コーリアで来るわけですよ。消したってそれはだめなんですよ。むだなことをやって、経費をかけて、どこでもうけているのか、そういう事態が多いわけですよ。  大体、積み戻しというのがないでしょう。あなたもいま、たった一件と言いました。そういう不都合なものは、これをやるべきですよ。日本の国に入ってこないということを徹底してやれないのでしょう。どうですか。それをこれからやれますか。
  88. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私どもといたしましては、これは要するに厳正な態度をもって対処いたしたいと思いますが、今後悪質なものに対しまして、必ず厳正な態度をもって対処をしたいと思います。確かに積み戻しは一件でございますけれども、この問題は、私ども税関といたしましても、非常な注意をもって見守っていることはやっておるわけでございますが、そういったものがただそういう表示があったというだけで、これを必ず積み戻させるということをきめることは、現実問題としてなかなかむずかしい面があるわけでございます。
  89. 塚田庄平

    ○塚田委員 大臣の退席時間ですから、私もちょっと行かなければなりませんから、別なところで、お目にかかります。
  90. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 午後三時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後二時五分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  91. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  92. 増本一彦

    ○増本委員 今回の関税に関する法案でも、関税の引き下げ、特に生活関連物資関係してその引き下げがなされているわけですけれども、従来から、関税の引き下げが物価によい影響を与えたかという点になりますと、実績から見ても、非常に心もとない点があったと思うのですね。一昨年の一括関税引き下げについて、昨年追跡調査をなすった結果を見ましても、必ずしも好ましい結果になっていない。  そこで、やはり物価によい影響を与える、物価がそれによって下がっていくような手だてというものを十分おとりになることも、この政策をなさっていく上で非常に重要なことだというように思うわけです。その辺について、大臣として、関税の引き下げとの関連での物価対策というものを、どういうようにお考えになっていらっしゃいますか。まず、その点からお伺いしたいと思います。
  93. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 関税国内の物価に重大な関係がある、こういうふうに思います。つまり、それは二つの面からなんですね。  一つは、関税を上げ下げすることによりまして、上げれば輸入が抑制される、こういうことになる。下げれば輸入が増加する傾向を持つ、こういうことですね。  それからもう一つは、価格の問題です。関税を上げますればこれはコストアップ、こういう要因になる。また関税を下げればコストダウン、こういう影響になってくる。そういう量と価格のコスト面から物価に重大な関係がある、こういうふうに考えるわけです。  ただ、増本さんがいま御指摘の、さしたる影響はないではないか、こういうことでございますが、やはりいま物価が急変しておる、そういう際でありますと、関税を引き下げて物価を下げるといいましても、上げるほうの要因のほうが下げる努力を追い越しちゃってどうにもならぬ、こういうようなこともあることかと思いますが、しかし、その場合におきましても、関税の引き下げが輸入量増大するということになりますれば、その面からはかなりの影響があるんじゃあるまいか、私はそういうふうに見ております。
  94. 増本一彦

    ○増本委員 この引き下げ分がそのまま価格に反映するように、やはり価格形成についての行政指導やその他の手だてというものが十分とられていくということが、一つは必要であるというように思うわけです。そういう点では、直接所管官庁というわけでもないでしょうけれども、しかし、いま政府の内部にも物価対策についての緊急対策本部もおつくりになっていらっしゃる。この面での関係所管官庁と大蔵省との協力関係とか、あるいは共同してそういろ価格形成によい影響を与えていくような仕組み、システムというものもやはり確立されていくということをしませんと、単に見えざる手によってそれがなっていくということでは、いまはそういう世の中ではないわけですね。その辺についてはどうお考えになるのでしょうか。
  95. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 関税率を改定する、そういう際には、所管官庁と非常に緊密な連絡をとるわけです。そして大体下げてくれというようなことを言ってくる品目が多いわけでありますが、そういった点はよく相談いたしまして、それから上げる場合におきましても、またよく相談をいたしてやるわけですが、その所管官庁との連絡の結果できた案を、また関税率審議会におはかりする、そしてきまったところによりまして、御提案を申し上げる、こういうことになりますので、連絡の下地ができております。  したがって、いま御指摘のような事後の連絡、これは相当やっておるのです。でありまするから、その体制につきましては、これという不足は感じておりませんけれども、その努力ですね、それにつきましては今後とも一そう進めてまいりたい、かように考えております。
  96. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、国民生活安定緊急措置法で、関税についての弾力的な運用の問題が掲げられてもいるわけですけれども、問題は、この関税が下がった分が価格にきちんと反映できるような、そういう意味での行政指導に必ずしもいままでは、十分下地がおありだったのかもしれませんけれども、行っていない。ましてや、先ほど大臣がおっしゃったように、ほかの物価が高騰していく要因が無数にあって、しかも、その圧力のほうがうんと強いという時期ですから、関税を下げても、そういうような効果というものは、全然けし飛んでしまう、そういういまの情勢ですね。  だからこそ、そこのところのメリットをほんとうに生かしていく具体的な手だてという上で、これはやはり十分に力を入れていかなければならない問題だと私は思うのです。これには具体的なシステム、機構みたいなものを両方が協力し合って、目をそっちのほうにずっと追跡調査をしながら向けていくような、そういう仕組みというものが、やはりこの際必要なんではないでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  97. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ごもっともなお話だと思うのですが、その仕組みは、現にできておるわけなんです。関税率を変えるというときから、もうできておる問題でございます。関税局と各省の物資担当部局との間に緊密な連絡をとって、この問題のフォローアップをしておる、かように御了承願いたいと思います。
  98. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、次の問題に移りたいと思いますが、関税引き下げが引き金になって輸入量がふえる、これは必要な情勢のもとでは、そういうことも十分配慮しなければならぬと思うのですが、その一方で、やはり国内の中小企業や地場産業と競合するような製品、こういうものの大量の輸入が行なわれますと、そういう国内の産業部門に否定的な影響を与えることになりかねないわけですね。こういう面は、関税政策といわばメダルの裏表みたいな関係で、常に問題にされてきたわけです。しかし、今日までのところ、こういう中小企業や地場産業と競合する製品についての関税引き下げに対する国内産業保護の手だて、この点では、必ずしも密接で十分であらたというふうには、私たちには思えないわけでございます。  今度の関税の引き下げでも、こういう繊維製品や木工製品、あるいはまたラジヤやテレビやその他の通信機の部品というようなものについての関税の引き下げが行なわれる。こういうものが中小企業に与える影響というものは非常に大きいように思うわけですが、ここいらで、こういう中小企業を具体的に守っていく手だてというものをしっかりと確立をしていただきたいというように思うのです。そういう意味で、大臣はどういうようなお考えをお持ちなのか、まず御所見を伺いたいと思います。
  99. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 関税制度があるゆえんのものは、そもそも国内産業保護、こういうことが出発点になっておるわけなんです。しかし、そればかりではなくて、今日はやはり物価政策という時局的な意味が大きくなってきておりますが、いずれにいたしましても、関税を上げ下げする、こういう際におきましては、物価問題、これに、先ほど申し上げたとおり、非常におもしをかけた考え方をいたしますが、同時に、関税率制度の本来の目的、使命であるところの国内産業保護につきましても、十分配意してまいりたい、かような考えでございます。
  100. 増本一彦

    ○増本委員 十分に配慮していただく、その御答弁はあれですが、具体的な手だてが問題なんだと思うのですね。  たとえば、いまここで繊維製品の関税が引き下げられる。メリヤスの下着とか、いろいろなそういう綿製品を中心にした引き下げが行なわれるわけですけれども、そういう事態になると、いま繊維産業が景気の上からいっても、非常にどん底の時期に来ている。だから、そういう事実を見ますと、具体的にどういう手だてをおとりになるのか。そしてまた、そのことを関連の業者の人たちも望んでおるというように思うわけです。  ですから、十分配慮される、そのおことばは積極的で、私も賛成ですけれども、そこで、どういう具体的な手だてを持っておるか、伺いたいと思います。
  101. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 増本さんが繊維について言及されたわけですが、今度の関税率の改正におきましては、婦人の下着で刺しゅうのあるものについての関税率を引き下げる、こういうことだけであります。ほかの問題には触れていないわけであります。これが一体どういう国内産業関係するかというと、私どもといたしまして、そう心配するような事態ではないのじゃないか。  まあしかし、一般論として、この繊維産業がいま非常に苦しい立場にあるということは、それは重々承知しているわけです。そういうことに対しましては、いわゆる中小企業対策という中に、繊維産業のことは非常に頭に置きまして、対処しつつあるというのが現状でございます。
  102. 増本一彦

    ○増本委員 これまでも、こういう関係で、特に特恵関税との関係あるいはその他の面でも、中小企業産品と競合をして、そして中小企業に非常に大きな影響を与えるおそれがあるということは、常に指摘されてきた点ですね。もちろん、これは関税が下がったから、それで国内産業が打撃を受けるということばかりではないわけですね。日本の中小企業というのは、基盤も非常に脆弱だし、一番景気動向の影響をいろいろ受けやすい。そういう分野ですからね。しかし、そういうところになおかつ、さらに海外的なそういう意味での圧力が加わってくるということになると、非常に問題になるという意味で、私は指摘をしているわけです。  そこで、一つは、これからのそういう中小企業あるいは国内産業を守っていくという面で、関税政策とのかね合いについてのお考えを伺いたいのですが、国内企業の強化ということ、これは非常に大事なことで、いま必要なことは、国内の需要を正しく見通して、それに見合う国内供給量も明確にして、不足分を計画的に輸入をしていくというような一定の見通しと手だてをとり、輸入自身も秩序を持ってやっていくというようなことをきちんと土台に据えて、こういう政策の運営をはかっていくということが、非常に重要だというように思うのですが、大臣としてのそういう面でのお考えはいかがなんでしょうか。
  103. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 国内の産業の動向、そういうものを十分にらんで関税政策は進めていかなければならない、こういうふうに考えています。  ただ、これはそういう方針で押し通せるかというと、そうでないのです。つまり、これは相手のあることでありまして、まあ相互主義というか、そういうことにならなければならない。わが日本だけがその保護貿易方針を貫くということになれば、これは資源小国たるわが日本とすると、たいへんなことになってくるわけなんであります。  そういう国際社会におけるわが国の立場をどうするかというその制約はありまするけれども、そういう制約の中において、関税政策をやっていく。その上におきまして、国内の産業の動向をじっと見つめてやらなければならぬということは、御説のとおりでございます。
  104. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、今度の法案とは直接の関連性は十分ではありませんけれども、いま大臣おっしゃったように、この経済の動向、需給の動向を十分に見きわめてやっていくということの重要性は、おっしゃるとおりだと思うのです。  しかし、現実に、たとえば、いま繊維産業を見ましても、三月、四月が非常に大きな危機だ。その一つの原因が、やはり東南アジアからの輸入が去年一年間で四六%も量的にふえて、金額の点では四七%の増になっておるのですね。これは一例ですけれども、量で四六%、金額で四七%増ですからね。これは価格が高くなって、実際に通関統計が上がっているということではなくて、量的にもかなり膨大なものが来ているということがはっきりしているわけですね。そのことがいまの繊維の危機を生み出している原因なんですが、そういうことを考えますと、やはり経済全体を見通してやっていく上で、輸入も秩序立ててきちんとやらせていくような手だてが、どうしても産業を守っていく上では、非常に重要だというように思うわけです。  これは直接の関税政策からはみ出した通商政策の問題ではありますけれども、そのことが日本経済や産業に与える影響というものがきわめて大きいだけに、国の経済、財政そのものに直接責任を持っていらっしゃる大京としても、こういう点については無関心ではおられないはずだと思いますし、その点についてのきちんとした手だてをこれからおとりにならなければならない問題だというように思うわけですが、いかがでしょうか。
  105. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 繊維のような人手を要することの多い産業になりますると、その生産がだんだんと開発途上国のほうに移っていく、こういう傾向は私はいなめないと思うのです。まあ南北問題がある。これはわが国といたしましても、先進工業国として、十分取り組まなければならぬ問題だ。また、わが国はかつて英国のランカシャーを制圧するというような立場までとってきたいきさつもあるわけであります。  そういういきさつを持ち、また南北問題で重大な立場を占めるわが日本が、これらの開発途上国から、その開発途上国が開発した有力なる輸出品を阻止する、輸入を阻止する、こういうことはまたなかなかむずかしい問題だろう、こういうふうに思うのです。現に、東南アジア諸国は、わが国に、全体として見ますと、かなりの出超になっておるように見受けられるのであります。そういう国でありますので、これを通商政策的に輸入を押えていくという考え方をとることは、なかなかむずかしいことかと思いますが、わが国の繊維産業対策としては、とにかく基盤を強化して、それらの開発途上国の繊維産業にも負けないという姿勢をとっていくことが必要である。そういうことでなお中小企業、そういう方面で問題がありとすれば、中小企業対策としてこれに対処する、さような考えであります。
  106. 増本一彦

    ○増本委員 この中小企業対策、まあ基盤を強化し、特におっしゃるような知識集約的なものに変えていこうという方向が示されているようですけれども、そこで、やはり当面の問題と、それから長期的に見て構造改善をどうしていくかという、この二つの問題が中小企業の問題にはあると思うのです。いずれにしても、これは金融とか資金の問題を十分に確保し、保障してあげないと、できる性質の問題ではないということも事実であろうと思うのです。  そこで、一つお伺いしたいのは、この中小企業向けの構造改善に資するような金融政策、こういう点では大臣としてどういうお考えをお持ちなのか。いまあるものについても、もっと長期低利の融資、あるいはもっと内容の改善したもの、もっと借りやすいものというような方向で、いろいろ中小企業者のほうの要求もあるわけですけれども、その点についていかがお考えなのか。  それから、特にこの三月、四月、五月については、非常に金融的にも危機的な状況に置かれている、この当面の運転資金をほんとうに確保してくれ、こういう要求が非常に強いわけですね。先日来、大臣から、年度末の政府関係機関の融資についてもお考えになっていらっしゃるようなお話もございましたけれども、そういう面を含めていかがお考えなのか。  二点について伺いたいと思います。
  107. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いまのような困難な異常な物価情勢下においてはどういう対策をとるか、こういうことになりますれば、何としてもこれは総需要抑制政策をひた押しに推し進める、そうしてもう早期に物価の安定をはかるということが施策のかなめであると思いますが、同時に、こういう異常な事態の中で損害をこうむる弱い立場の人のための対策ですね、それはとらなければならぬというので、四十九年度予算におきましても、社会保障費を充実する、そういう考え方をとりますと同時に、四十八年度の予算におきましても、その実行上、まあ弱者七百万人に対しまして一時金を支給するというような対策をとるとか、これは個人の問題でありますが、それから今度は、企業界におきましては、やはり何といっても中小企業者の立場を考慮しなければいかぬ、こういうふうに考えまして、あるいは四十九年度予算においては、三機関の融資限度を大幅に引き上げる、あるいは無担保の資金、これを千二百億円用意をいたしますとか、さらに私は市中の金融機関とも相談いたしまして、これはいつでも発動できる資金なんですが、三千二百億円、市中金融機関が自発的に用意してくださったのです。これも低利で中小企業だけにお貸しするという配慮がなされておるわけでありますが、いろいろ金融面におきましてはきめこまかく対策をとっておる。いろいろな事態が起こってくると思いますけれども、また事態の進行いかんによりましては臨機の措置をとってまいりたい、かように考えております。
  108. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、まず年度末の政府関係機関の融資ですが、これはもう三月危機という事態で、この点については具体的におやりになるのでしょうか。
  109. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま年度末の企業状態がどうなるかということを注意深く見守っておりますが、その状態に応じまして、手段はいろいろあるわけでございますが、臨機の措置をとりたい、かように考えております。
  110. 増本一彦

    ○増本委員 ぜひこの点については借りやすい金融、しかも、いま運営資金を非常に切実に求めていますので、その中小企業、特に零細業者に対する要求をぜひとも受け入れるような施策をとっていただきたいということを、強く申し上げておきたいと思います。  それと同時に、この関税制度の中で、国内の中小零細企業と競合するような産品がますます多くなってくるというような状況も考えられますので、国内産業保護育成にもひとつ十分な配慮と施策をとるように強く要求しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 田中昭二君。
  112. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 中東戦争に端を発しました石油危機から、世界のたいへんなインフレ、不況、こういうものと同時に、食糧の、不足、異常気象によります食糧危機の顕在化、こういうものが世界的大変動期になっておる現在におきまして、わが国の利害も対立し、その解決の道はたいへんきびしいものがある状況でございます。  そういう中で、この通商交渉においてもたいへんな困難があろうかと思いますが、昨年、東京宣言によりまして新国際ラウンドの開始が告げられて、自由貿易の拡大のために、関税率の引き下げ、非関税障壁の軽減、撤廃を求めて、その調整交渉が進められておるのでありますが、各国の関税水準を平準化せよ、EC等の諸国からはそういう主張がございますし、また原材料や半加工、加工製品等の関税の水準の引き下げ、格差の是正を訴える開発途上国もあるわけでございます。  こういう中で、わが国の関税を引き下げていく方法として、どのようにして基本的に臨んでいかれるのか、これは重複する点もあるかと思いますが、また同じく開発途上国に対しては、今後どのように対処していかれるのか、御意見を承りたいと思います。
  113. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 当面の関税政策の基本をどうするかということにつきましては、これはやはりわが国とすると、東京ラウンドといわれるところのあの関税並びに非関税障壁撤廃の世界的協力、これに大きく貢献をいたしていくということではなかろうかと思います。  この動きは、今日の当面する、石油危機によりまして、非常に環境が悪くなっております。しかし、環境が悪くなったからといって、この大きな世界的な協力方向というもの、これはいささかもゆるみがあってはならない、私はそういうふうに考えて、その国際ラウンドに決着をつける、その国際ラウンドの中において、わが国のとるべき基本姿勢というものを固めるというのが根本的な方針でなければならぬ、こういうふうに思います。
  114. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 開発途上国に対しても、そういう基本的なもの、それ以外にございませんですか。
  115. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 開発途上国に対する問題は、南北問題としてわが国が取り組むべき大きな課題になってきておるわけです。そこで、一方においては、経済的な協力を与えるという問題もありますし、他方においては、特恵関税を付与する、こういう問題もあるわけでございます。  これも大体わが国だけがというよりは、国際的協調のもとにおいて行なわれたほうが妥当であろう、こういうふうに思いますので、新ラウンドの中において国際的歩調がどういうふうになるか、これなんかはしっかり見詰めておかなければならぬし、また、その国際ラウンドがきまるという過程において、わが国としては発言を大きくしていかなければならぬ、こういうふうに考えますが、とにかく、そういう新しい国際協定が結ばれるというその以前におきましても、同じ方針で、世界各国の動き、そういうものも見ながら、発展途上国の苦しい立場、そういうものも考え、また、かたがたわが国の産業というものもにらみながら、対策を誤らないようにしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  116. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 最近の数年間におきます関税率の引き下げの傾向は、たいへん著しい引き下げが行なわれた。そういう状況で、国際的な水準から見ましても御案内のとおりであって、もう国際水準よりも以下、低いというような状態もあるわけでございますが、ここで、わが国の現在置かれております状況、こういうことを考えますと、通商貿易の面におきましても、もう一ぺん再考する必要があるのじゃなかろうか。すなわち、貿易総合収支におきましても、外貨保有などもたいへん心配される向きがあろうかと思います。この点で、今後、関税政策に影響がどんなふうに出るだろうか、そういう点についてお聞かせ願います。
  117. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 わが国の関税率の水準が、国際水準より低いことはないのです。むしろ、わが国は、関税障壁が高過ぎるといって諸外国から批判をされ、だんだんと関税を落としてまいる、また、これと並行いたしまして、輸入の自由化というものを進めてきたわけで、関税率についていいますれば、大体そういう努力をいたしまして国際水準に来た、こういうような段階でございますが、これは経済石油危機によって非常に変動する、変動したそのあとの日本国内の姿を見て、そうして関税率などにおいて改正する必要があるというものにつきましては、これは積極的に調整を加うべきである、かように考えます。
  118. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま大臣からそのようなお話でございますが、私が簡単に申し上げたからちょっと理解できなかった、面があるかと思いますが、関税負担率というのは、きのうからの当局からの説明によりますと、ことしの見込みでいきますと、諸外国のどこよりもたいへん低いようになるという点を私は申し上げたわけであります。  それと、いまもお話がありましたように、この関税制度が設けられておること自体が、わが国の国内産業との見合いにおいてこういうものをきめていくとするならば、当然、わが国だけがそういう関税負担率を下げたければならないという根拠もないのではないか、こういう疑問が起こってきたわけです。  そういうことでございますから、この関税負担率の見込み等については、当局のほうからお聞きしたいと思います。
  119. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに、関税額を総輸入額で割りましたところの関税負担率、昭和四十九年度におきましてのわが国の関税負担率と申しますのは、三・九%ということに相なるわけでございまして、関税負担率そのもの自体の数字は低くなるわけでございます。  ただ、これは、現在、原油関税が一キロリットル六百四十円という従量税になっておるわけでございまして、わが国の石油輸入の量が非常に多いにもかかわらず、従量税関税の負担は変わらないわけでござい逃す。したがいまして、千三百六十億円という非常に大きな金額の関税収入が総輸入額の中に含まれております関係上、関税負担率それ自体の数字は低くなっておりますけれども、列国と、要するに先進諸国と関税の問題を議論をいたします場合には、いわゆる製品関税率というものの高い低いということが、非常に議論の対象になるわけでございまして、製品関税率を取り上げますと、現在のわが国の製品関税率は、大体八・六%ぐらいが平均関税率になりまして、ほかのアメリカなりあるいはヨーロッパ諸国もともにやはり八%台の製品関税率になっておりますので、先ほど大臣が大体列国並みと申し上げましたのは、ほかの先進諸国も製品関税率が八%台であるし、さらに日本の製品関税率も八・六%であるということによりまして、列国並みに製品関税が下がってきた、こういう意味で申し上げたわけだと思います。
  120. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大臣は、先進国よりも商い水準にあるというようなことをおっしゃったわけですけれども、私聞き違いだったんですか。いま当局からは、大体先進諸国と同水準ぐらいの——まあいまの説明でよくわかりましたけれども、ちょっと感じが、大臣はずっと前のことをお考えになっていたんじゃないですか。
  121. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 国際社会で論ぜられるのは、製品関税率という問題です。これは日本が高い高いといって世界じゅうから責められたわけです。特に、アメリカからずいぶん苦情が出たわけなんです。それでだんだん下げてまいりまして、まあ大体国際水準かというところまできた、こういうことを申し上げておるわけです。
  122. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 了解しました。  次に、これもまたちょっと重複いたします点がありますが、お答えいただきたいと思います。  たいへんな石油危機、そしてその反面、エネルギー資源としての、石炭が見直されておりますが、いままで原料炭については、わが国の鉄鋼の伸び等によりまして、需要もたいへん著しいものがあったのでございますが、一般炭におきましては、ほとんどここ十数年間輸入もゼロであると聞いております。  ところが、最初申し上げましたような資源的な問題からいきまして、国内の一般炭との見合いもありまして、いずれはわが国のような資源のない国としましては、一般炭の輸入というようなことも、いろいろうわさもされておりますし、聞くわけでありますが、この場合に、一般炭の関税率は大体どういうふうに今後考えていくものでしょうか。
  123. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在、石炭に関しましては関税はかかっておりません。したがいまして、関税としての問題はないわけでございますが、国内石炭と若干競合を持ちますところの製品としてのいわゆる強粘結炭、要するに、石炭の中では一番質のいいものでございます強粘結炭以外につきましては、現在、輸入割り当て制度が依然として存続しておるわけでございまして、もしかりに国内石炭業界に対しまして支障があるような場合には、いわゆる輸入割り当て数量によって調節をいたしますれば、国内石炭産業に対しましては支障を来たさない。国内で出てまいりますものは全部これを使用することができて、その不足の残った分を輸入に仰ぐということが可能なわけでございまするから、その意味におきましては、むしろ石炭に関しましては、関税をかけることによって対策を講ずるよりは、要するに輸入割り当て数量によりまして、その国内産炭の保護ということを考えるほうが適当なのではないか、一般的にはかように考えられる種類のものではないかと思います。
  124. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、原油関税、原重油全部含めてでございますけれども、これについてはどのような関税政策を考えていくべきでしょうか。これも先ほど質問しましたことと重複しますけれども……。
  125. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 原重油につきましては、これは関税がかかっておるわけです。その関税収入を、石炭企業の合理化の財源に充てるという一連の仕組みができておるわけなんです。  そこで、いま石油問題が起こってきた。そこで、この石炭の見直しをやらなきゃならぬ、こういう際でありますので、その見直しをやって、そしてその見直しができた段階で、この関税をどうするかということを考えていきたい。つまり、昭和五十年度関税改正の問題としてこれから鋭意検討いたしてみたいと、かように考えております。
  126. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、産業助成のための減税制度というものがいままであったわけですが、今度の改正で重要機械類の免税制度の改正が行なわれたわけでありますけれども、その中にいわゆる公害防止、労働安全等云々というのがございますが、こういう減税制度を設けたことにつきましては、関税当局と通産当局といろいろな協議もなさって、間違いのないようにしてやるんだというような説明がございました。  それで、こういう公害防止のための品物というのはどういうものがあったか、代表的なものをお聞かせ願いたいと思います。
  127. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、重要機械類免税制度の改正案におきまして、今後、公害防止機器であるとか、あるいは労働安全の機器であるとか、こういったような、ものを重要機械類免税制度対象とするというふうに改正するべく御審議をお願いしておるわけでございまして、この対象となります機器につきましては、産業所管省たる通産省の各局と、その減税の対象にいたします際に、それぞれの具体的な機器に関しましては協議をいたしまして、政令によって定めることといたしておるわけでございます。  私ども現在考えておりますものの中には、公害防止の機器といたしましては、大気汚染防止用の機器であるとか、あるいは水質汚濁防止用の機器であるとか、騒音、振動等による健康障害を防止するような機械が入ってまいりますような場合に、これに免税の措置を講じたり、あるいは労働災害防止用の機器といたしましては、爆発性、発火性または引火性の物資に対する危険防止の機器、そういったようなものを中心といたしまして、産業所管省と協議して、そういったようなものに具体的に効果があるようなものが輸入される場合に、これを免税の対象といたしたい、かように考えておるわけでございます。
  128. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 通産当局のほうはお見えになっておるわけですか。過去にこの重要機械の関係で免税された品物の中に、何か石油たん白をつくって、石油たん白からいろいろな家畜の飼料等をつくる、そういう機械が西、ドイツから輸入されたというようなことを聞いておりますが、そのものはどういうものでございましたでしょうか。
  129. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 石油たん白の製造機械の一部でございますけれども、分離板型連続式遠心分離機を輸入いたしましたが、石油たん白の製造が現存禁止されておりますので、その機械は現在稼働せずに眠っております。
  130. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、せっかく免税をして輸入されたものが、いまお話しのとおり、所期の目的は達成せずに眠っておるというわけですね。  そうしますと、これは国が直接責任があるわけじゃありませんけれども、私はどうもたいへんむだなことをやっているのじゃないかというような感じがすることと、それからどうしてその製品が役に立たなかったか、こういう問題もあるかと思いますが、その点は関税当局としましては、そういう役に立たないものを輸入さしておいて、それには免税する。では、目的が達せられなかったら、免税を取り消して税金を取るのですか。
  131. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 この重要機械免税と申しますのは、個々の機械の輸入に際しまして通産当局から相談がございまして、これを指定すべきかどうかということで、個々の機械に関しまして免税を認めていっているわけでございますけれども、現在この機械に関しましては、当時これがおそらくもちろん使えるという前提のもとに免税の申請があったものかと思いますが、政令の段階におきまして、これがもし無用のものであれば、その指定は自今いたさないということに相なりますけれども、さらに、これが役に立たなかったからといって、税金を後ほど追徴する、こういうことはできないことになっております。
  132. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、いまの行政の縦割り行政の連絡の不十分というようなこともたいへん感じられるのですけれども、しかし、輸入するときには、それが役に立つだろうということで免税をそのつどきめた。物品個々についてきめた。しかし、こういうことは、やはり国の信用といいますか、国益といいますか、そういう信用を傷つけるというような面もなきにしもあらず、こう思うわけです。こういう点は横の連絡をよくやって、こういう免税制度というものが適用されるようにしなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  133. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さようなことがないように、十分気をつけてまいります。
  134. 中沢忠義

    ○中沢説明員 先ほどの基礎化学品課長の御説明で若干足りない点がございますので、補足させていただきますが、先生指摘の機械につきましては、当時検討いたしました結果、重免対象の機械として指定いたしませんで、通常の輸入として関税を払いまして入っております。
  135. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 こういう制度を設けられますと、わが国の現在置かれております立場等から考えますと、公害防止の機械にしましても、わが国がこれだけ進んだ技術を持っておりながら、海外のすぐれた技術を輸入する場合には免税するという制度があるために、国内のこういう公害防止の機械を一生懸命つくろうと努力しておることと、私はどうも相矛盾するように思うわけです。そういう面で、この減免制度国内のそういう技術開発というものの足を引っぱるようなことがありますと、私は、両面において損をする、また、むだなことをやらなければならないというような気がしてならないわけでございますから、そういう点はひとつ十分配慮していかなければならない問題ではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  136. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、国産でできるにもかかわらず、外国から同じような性能のものを輸入する際に、これを免税することはやってはならないことであろうと思いまして、この重免の対象といたします際には、国産不可能なものの機械に限るという限定を設けておりまして、国産し得るものの機械は、重要機械免税の対象にはしないことにいたしておるわけでございます。
  137. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは、現時点においては生産ができなくても、わが国のいままでの技術、それから今後またどんどん技術が発展していくわけですから、そういう点も考えてやってもらいたいということを申し添えておきます。  次に、最後になりましたが、いわゆる密輸人の問題につきましてお尋ねするわけですが、わが国の年間の密輸入の件数なり金額というものはどのくらいありますか。そしてその中で、特に私心配するのは、麻薬の密輸入であります。これがどのくらいの件数あって、どういう結果が出ておるか。また、これを取り締まる、検挙することについてはどういう点が当局として問題になっておるか、困難な点があるか、こういう点を一、二お聞かせを願いたいと思います。
  138. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 最近、御指摘のように、特に麻薬事犯の数が年々歳々ふえてきておりまして、特にヘロインとかモルヒネ、このヘロイン、モルヒネが最も悪質なものであろうと私ども考えておりますけれども、ヘロイン、モルヒネの密輸事犯が昭和四十五年をピークとして最近は減少する方向にございますけれども、反面、覚せい剤であるとかLSDとか大麻、こういうようなものの密輸が非常にふえてきている傾向にあるわけでございます。  私どものほうで検挙いたしました件数といたしましては、最近三カ年間数字に関して申し上げますと、昭和四十六年が八十七件、昭和四十七年が九十二件、昭和四十八年が現在十一月までの数字でございますけれども、七十二件ということになっておりまして、それぞれヘロイン、モルヒネ、アヘン、LSD、生アヘン、アヘンの水溶液、大麻たばこ、大麻草、覚せい剤、そういったようなもの、それぞれ数字がございますけれども、これは省略をさせていただきます。  私ども現在税関の職員が一番困惑をいたしておりますのは、密輸をしようとする人間がわが国に持ち込む方法がだんだん巧妙になってまいりまして、ごく最近におきましても、女性の陰部に覚せい剤を隠して入ってきたというものをつかまえたようなこともございますけれども、一番困りますのは、海外からの情報が非常にとりにくい。もちろん、例といたしましては、在外公館から、こういう人間は要注意である、その人間が日本に向かったから注意をしろという通報をあらかじめ受けまして、それに基づきまして羽田で検挙をしたという例もございますけれども、だんだん巧妙になってまいりまして、現在のところ、なかなか確実にこれを見つけるというきめ手はもちろんないわけでございまして、長い間税関の通関の窓口におきまして経験をしている人間が、相手の挙措動作が不審であるということによりまして、別室に連れ込んで検挙をするということが一番数は多いわけでございます。  ただ、最近非常に困っておりますのは、一日に羽田の税関に入ってまいります旅客の数が最近は大体七千人から八千人という非常に大きな数になってきておりまして、これをあまり厳密に検査をいたしますと、一般の善良な方々に対しては非常に不快の念を催させるという面がございまして、どの人間に対して厳密に検査をし、またどの人間に対しては検査をあまり厳重にしないで通過をさせるかという見分け方が、現実問題といたしましては、経験年数が相当ものをいう種類の仕事であるということでございます。金属探知器のようなもので、ピストルその他の銃機器の検査はかなり間違いなくやれるような体制をとっておりますけれども、麻薬その他の隠しての持ち込みというのは、年々歳々ただいま申し上げましたような案件の検挙数をあげておりますが、これが全体におけるどのくらいの把握率であるかということに関しましては、私どもも確たる自信はないのが現状でございます。
  139. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大臣、これは大蔵省としましてはたいへんゆゆしき問題をかかえた仕事でありますし、いまの当局の説明を聞いて、まず大臣はどのようにお考えになりますか。
  140. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 麻薬等の輸入は、これはわが国の社会問題として非常に重大な問題でございます。もとよりこの問題は税関だけでできる問題じゃございません。警察当局、この力をかりなければならぬ問題であります。税関でもできる限りこの問題には対処していく、かように考えております。
  141. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そういうお考えは、福田大蔵大臣には以前からずっとあって、いままで大蔵大臣もやられたことがございますし、取り組んでこられたと思いますが、しかし、いま当局から説明もあったように、年々歳々ふえている、そのやり方が巧妙になって、当局もこれだけいろいろなものが発達した中に、勘にたよってやっているような、海外の情報だけをたよりにするとか、そういうことでは、わが国が国際社会の中で大いに発展していくということから考えますと、これは税関の第一線というのは国を代表する一つの接触点であるわけですね。そういう点で、ただ注意してやっていくということだけでは、いままでのようなことを繰り返すのじゃなかろうか、私はこういう気がしてならないわけです。  そこで、これはこういうことを言っていいかどうかしりませんが、いままで私たちがこの密輸入のことにつきまして聞いております話は、現在の体制では、この密輸入は税関当局だけの動きでは全然タッチできないのだ、そういうことを少しお認めになったような御発言でございましたけれども、警察にたよるといいましても、警察もそういう場面に一々おるわけではございませんし、こういうことについては国民にたいへん不安感を与えるといいますか、はっきり申し上げて、麻薬の取り締まりは、麻薬をやる仲間の密告がなければあげることはできないということを言明しておる人もおるぐらいなんです。ですから、そういう点を考えますと、ひとつしっかりやってもらわなければいけないという気がしてならないわけでございますが、もう一度大臣から……。
  142. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まことに御注意ありがとうございます。警察当局とよく連絡をとりまして、なお一そうこの取り締まりにつきましては努力をいたしたい、かように考えております。
  143. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 では、しっかりやってもらいましで、質問を終わります。
  144. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 竹本孫一君。
  145. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初に、一つだけ関税局長にちょっと伺いたいのですが、関税定率法の第十二条のところですけれども、「食料品、衣料品その他の国民生活との関連性が高い貨物」とこう書いてある。「その他の国民生活との関連性が高い貨物」とはどういうものを予想し、考えておられるか。  それから、いま問題になっている油なんというものは、これに入るのか入らぬのか。  その二つだけ簡単に結論を伺いたい。
  146. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 いまお願いをいたしております、その他の国民生活関連の深い物資と申しますのは、たとえば、国民生活安定法の場合におきましては、国民生活の安定に関連の深い物資のみならず、いわゆる産業の原材料のようなものまでもその対象になし得るような法律的な表現になっておりますけれども、私ども弾力関税制度によりまして、三つの条件を満たす場合に、政令によって関税を引き下げることをお許しいただく対象となる品目は、いわゆる国民生活に密接に関連をする物資、これを必ずしもその品物ごとに明定をいたすわけにまいりませんものですから、そういう表現にいたしたわけでございますが、たとえば、現在の段階で申しますると、紙であるとかあるいは食料品の中の肉であるとか、そういったようなものを頭の中に描きながら、国民生活に密接な関係のある物資という表現を使用いたしておるわけでございまして、これが鉄であるとか、何かそういうような原材料を頭の中に描いているわけではない、こういう意味に御理解をいただけば幸いだと思います。
  147. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣、いまの経済の国際的な秩序というものは、われわれもそれを希望しておりますけれども、自由貿易の拡大ということを前提にしておる、またその方向にわれわれ日本も努力しなければならぬと思いますが、そういうように現実は必ずしもならない。いわゆるエコノミックナショナリズムもあるし、資源ナショナリズムもあるということで、その辺の問題を少し関税ともからめながら大臣の御意見を伺いたい、こう思うのです。  たとえば、いまの十二条にも書いてあるのですけれども、「国民生活の安定のため緊急に必要」なものということばが入っておる。もちろん、これはいま局長も言われたように、食料品、衣料品と、これは限定されておりますから、必ずしもこの十二条の限定で言うわけではないのですが、国民生活の安定に緊急に必要があるものという広い範囲の考え方でいった場合、そういうものが一体、これからも自由に入ってくると見ていいのかどうかという問題が一つですね。たとえば、アメリカ等においても食料品等について制限をする場合もあるだろうし、木材の輸入等についても、だんだんこの二月以降は制限をきびしくしようというふうな動きもあるようですね。  そういうようないろいろな動きを考えた場合に、日本経済の運営をやっておられる大臣の基本的な考え方として、この十二条は別としまして、国民生活の安定のために必要なものは入ってくるのか、あるいは来ない場合があるのか。その点について従来とまた同じ考え方で臨んでよろしいのかどうか。その点について一つだけ、まず大臣の基本的なお考えを伺いたい。
  148. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 結論的に申し上げますと、私は、わが国の国のあり方ということにつきましては、革命的な考え方の変革を行なわなければならぬ、こういうふうに考えております。つまり、今後の世界情勢というものを考えてみますと、今日まで経験したこともなく、また想像したこともないような事態が起こり得る可能性を持つ世界情勢だ、こういうふうに見ておるわけです。  私は、核兵器が開発された、そういう今日において、武力を行使する大戦争の勃発ということは、なかなか起こりにくくなってきておると考えるわけでありますが、この国の考え方を他国に強制する、そういう手段としては、いままでは何といっても何千年の間武力というものがその背景にあった。ところが、戦争がもう想望できないという際になってきておるのですが、そういう際に、武力にかえて自分の国策を遂行する、こういう動きが出てきておる。石油問題なんというのはその一つだと思うのです。つまり、イスラエルが、アラブ近隣の国々を占領して、これを返さない。国際連合にその問題の解決を依頼しても、国際連合は動かない。しようがない、自分らの持てる力をというので石油を使う、こういうことになってきた。  私は、この石油問題が順調に解決されることをこいねがっておるわけです。再びそういうような事態にならないように、この問題をほんとうにけじめの立った解決というところに持っていかなければならぬ、こういうふうに思いますが、もし万一この解決を誤りますと、これが石油だけにとどまらないかもしらぬというおそれも出てくるのです。銅を持っておる国が産銅国カルテルを持つ、ボーキサイドを持っている国がボーキサイド連合をつくるという動きに発展しないとも限らぬ。そういうことを考えますときに、今日は、歴史の一つの大きな転換期にもあるというふうな考え方を持つ。転換期になるおそれのある事態に直面しておるというふうに考えて支障ないんじゃないか。  そういう際に、わが国がこれからどういう世界に臨む姿勢をとるべきかということを考えると、これは非常に深刻、重大な問題である。そういう味意において、いままでのこの国のあり方という問題につきましては、これはほんとうに一大変革を行なわなければならぬ時期だ、そういうふうに考えております。
  149. 竹本孫一

    ○竹本委員 その一大転換期に関する問題ですけれども、国際会議といえば、通貨会議もあるし、いまの関税貿易の関係の問題もあるし、いろいろあるわけですが、この転換期にほんとうに対応するためには、通貨の問題とか、あるいは関税、貿易の問題とか、あるいは資源の問題、石油消費国会議の問題といったように、個々ばらばらの対応では、ぼくはだめだと思うのですね。  大臣も、この前外国に行かれましたときに、そういう趣旨の御発言があったように新聞でちょっと読んだのですけれども、私は、これからは資源の問題、通貨の問題、貿易、関税等の問題、あるいはさらに言うならば、労働力や人口の問題までも含めて、世界全体の経済会議といいますか、経済問題に対する取り組みをやらなければいかぬ。いままでのように個々ばらばらに部分部分について話しもだめである。特に通貨の問題などというものは、資源の問題等ともいかに重大な関係があるか、今度もよくわかりましたから、そういう新たなる国際的な対応のしかたを考えなければならぬ。  特に、日本のように資源のない国においては、その必要が多いと思うのですが、大臣は、いまは狂乱物価の鎮圧にたいへん忙しいと思うのだけれども、外の国際関係においては、せっかく御発言もあったようだけれども、その後の御努力はどういうふうになっておるか、あるいはこれからの対応はどういうふうにされるお考えであるか、その点に関してのお考えをお伺いしておきたい。
  150. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま大きく分けますと、問題が三つあるだろうと思うのです。  一つは、石油自体にまつわる問題です。これをどうするか。それからもう一つは、石油価格問題が生み出した国際収支の世界的な大影響に対してどういうふうに対処するか、こういう問題です。それからもう一つの問題は、これはいずれ、まあどういう事態になろうとも、石油資源というものは今世紀末くらいのところで掘り尽くされるであろう。それに対して代替のエネルギー源というものをどこに求めるか、こういう問題があるだろうと思います。  そこで、いま非常に大きな問題になってくるのは、これは石油自体の問題、それから、それにまつわる世界的な国際収支対策という問題です。それから長期的な問題として代替資源の開発、こういう問題、そういう理解でいいのじゃないかと私は思うのですが、しかし、この三つの問題を含めまして、竹本さんお話しのとおり、これは一国の努力によっては解決しません。これはどうしても世界全体の合意によってのみ初めて解決される、しかも良識ある合意ということが、ここでは第一になってくるのじゃないか。  いままでそういうような考え方を持ちまして、わが日本といたしましては、とにかくすでに既存のそういう問題に対処する機構があるわけです。一つは何だと言えばIMF、一つは世界銀行、また大きく政治問題という問題につきましてはこれは国際連合、こういうような仕組みがあるわけですが、それらの仕組みをフルに活用する。  それから同時に、そういう国際的場面での協力を刺激する、そういう仕組みが必要ではないか。たまたまワシントン会議において、石油問題に関する調整グループというものができたのです。したがって、わが国はその調整グループの一員としてこれに参加し、世界的なそういう協力を進めていく、こういう努力をいたし、またこれからもそれを進めてまいりたい、かように考えております。
  151. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの大臣の御答弁をさらに進めまして、関税についてかつてジャパンラウンドということばが言われたし、そういう考え方がありました。しかし、いま申しますように、関税だけの問題、また一国だけの取り上げ力では問題になりませんので、世界的規模において、しかも経済に関する、資源も人口もあるいは通貨も国際収支も含めた新しい総合的な、全面的な、国際的な新秩序といいますか、協力方式というものができなければいかぬ、しかも、それを一番必要としているのは、ある意味においてはまた日本でもあろう。そういう意味から、より広い視点に立ったジャパンラウンドというものを、これは福田大蔵大臣あたりがひとつ積極的に呼びかけるということが一番適切ではないか、そういう意味においてのより具体的、積極的構想はありませんか。
  152. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 わが国が資源小国として置かれている立場、そういうことを考えますと、わが国がこの問題について世界で指導的役割りを演ずるというのはなかなかむずかしいのです。したがいまして、これは各国と話し合いをしながら考え方を進めていかなければならぬ、そういう立場に置かれておるわけであります。しかし、プロセスは竹本さんのおっしゃることとは違う。  わが日本は、世界会議といっても、これはなかなかそう世界に対して影響力は私はないと思うのです。しかし、そういうアイデアを持って、国際機関の中にいまわが国は参加しているわけですから、参加しておるその場においてそういう意見を提唱する、あるいは石油調整グループというものができたわけでございまするけれども、そういう場においてそういう考え方を進める、そういうことにつきましては、竹本さんと同じような考えを持っております。
  153. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣は重要なお立場であるから慎重に答えておられると思うのですけれども、アイデアということでございましたけれども自分が初めからしまいまで主張するということでなくても、いろいろな根回しの方法もあるでしょうから、やはりそういう秩序を早く模索するところの段階へ本格的に入るように御努力を願いたいと、要望であります。  と申しますのは、いまの世界政治あるいは世界の経済というものは、私のこれは独断であるかもしれませんし、独断であれば幸いでございますが、大体アメリカ主導型の軍事、経済、全部そういうふうになっておる。あるいはなり過ぎておる、こういうふうに私は思い、心配をしておるわけです。  時間もありませんし、ほかの問題に触れても恐縮なんですけれども、私は大体こういうふうに思っておるのですが、お聞きをいただきたいと思うのです。  日本には、日本の政治の基本的目標が何であるか、あるのかもしらぬが、実は私もあまりよくわからない。これはむしろ残念に思っておるのですけれども、たとえば、ニクソンの場合には、きわめて簡単な政治目標を持っておると思うのです。これは私の独断であるかないかはまた御批判を待ちたいと思うのですけれども、いまのニクソンが考えておることは、アメリカの二百年祭を自分でやりたい、しかもそのやるときには、あと二年間ありますが、七六年の二百年祭は自分が大統領としてやりたい、裏からいうならば、ウオーターゲート事件が幾ら起こってもなかなかやめない、こういうことですが、それは別として、そのやるときには、アメリカを文字どおり世界第一の国にしておきたいということを考えておると思うのです。  その世界第一の国とは何かというと、ささえの柱が二つある。一つは核兵器である。一つはドルを世界最優秀の通貨単位にしよう、通貨価値としておこう、こういうことだと思うのです。この国会におきましては、核防条約の問題も日程にのぼってきたわけでございますから議論になると思うのですけれども、米ソが千五百発あるいは千五十四発の核兵器を独占しながら、核兵器を種に使いながら世界に号令をかけるというか、世界の共同管理、共同分割というか、したがって、私は、まだ核防条約については若干の疑問を持っております。核兵器を持たない国を核兵器を持っておる国が絶対攻撃をしないという約束は、現にソ連はまだしていないでしょう。そういうような情勢もありまして、軍事のほうについてもドミネートされるというような形では、われわれはなかなか納得できないと思います。  経済について、私は、これから一口申し上げてみたいと思うのですが、アメリカ大統領が七六年の二百年祭は自分でやりたい、やるときにはアメリカを最強の国にしておきたい、その一つの柱はドルである。ドルをもう一ぺん復権して、ドルをもう一度もとに返して、世界一強い通貨にしておきたいということが、ニクソン戦略の根本であると私は思うのですが、それに対する対応のしかたが日本にどれだけ準備されておるかということを、私は心配するわけです。  たとえば、アメリカのほうは、経済的にもドルを強くするということにおいても、経済の問題だけではなくて、御承知のように、海外投資もある、海外経済援助もある、さらにミリタリーの援助もある。大ざっぱな私の計算ですけれども、大体九十億ドルぐらいの国際収支、貿易収支の面における黒字を出さぬことには、アメリカのドルが世界最強になり、そしてアメリカが核兵器でやったと同じように世界を支配する、自分の主導権のもとに引っぱっていくということについて、なかなか困難がある。  そういう意味で、今日の戦略目標は、約九十億ドル前後の黒字を出すということにあると思うし、現にアメリカの最近における数字は、大臣のほうがよく御存じでございますけれども、輸出貿易などというものは、この間までの六十九億ドルの赤字が、去年はもう七億ドル黒字になったということになりますと、貿易が四四%ふえたということだけでなくて、貿易収支においては七十数億ドルの改善をやっておる。もう一回これと同じようなことをやれば、約九十億ドル近くの黒字が出て、私の言う経済援助も、軍事援助も、あるいは海外投資も、アメリカが世界第一の国としての威厳を保つのに十分なだけの財源ができる。そういうことで、いまアメリカは貿易政策も考えておる、ぼくはこう思うのです。  したがって、そのことは、日本に関する限りでいえば、一つは、ある場合において輸入を制限するという形で出てくる、ある場合においては輸出をどんどん向けて、アメリカの品物を買え、あるいはアメリカの自動車をもっと買え、そのために関税、物品税の四〇%なんというのはけしからぬというような、ここでも審議をしましたけれども、あれは単に税率がどうだとかいうような問題だけではなくて、アメリカはここまで経済の収支の体制を切りかえていきたいのだという大きな戦略目標がある。それを一つ一つ末端で受け取っておったのでは、対応が不十分だ。  そういう意味でぼくは申し上げるのですけれども、とにかく九十億ドル前後の黒字をかせぐためには、まず輸入を押えるものは押える、同時に輸出については、全力投球で一年間に四四%伸ばす。現に伸びておる。これをまたもう一回四〇%、五〇%伸ばしてくると思うのですね。そうすれば、大体、ニクソンが考えているようなところまでに、あと二年間で持っていける。したがって、ドルの物的基礎がそれだけ拡大強化される、こう思うのです。  そういう点から考えると、日本がほしいというものであっても、アメリカがかってによこさないものもあるだろう。また逆に、日本があまり入ってほしくないと思うもので、アメリカが貰えと言って押し込んでくるものもあるだろう。そういう点について、ただ従来のような、日本のほうでいえば、いままでの、数年前までの自由貿易理論みたいな形で対応する、あるいは単に、ことしはアメリカの輸出がふえているようだといったような形でこれを受けとめるということでは、不徹底だ。もうちょっと高度の政治的判断が要るのではないか。したがって、アメリカの輸出に対する意欲あるいは輸入を制限しようというような考え方は、単なる事務レベルや、単なる経済収支の問題だけではなくて、もっと大きな政治の基本戦略の上に立っているのだ、こう受け取らなければならぬと思いますが、大臣のお考えはいかがですか。
  154. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 どうもニクソン大統領がどう考えているかということにつきましてはお答えしにくいのですが、アメリカは二つのことを考えていると思うのです。つまり、自国の経済立場を強化する。そしてベトナム戦争の経過で弱められたアメリカの経済的地位、したがって、ドルの立場を強化しよう、こういうことはもちろん考えていることだろうと思いますが、同時に、アメリカの政策を世界に向かって行なうというためには、世界が安定しておらなければ困る、こういうことだろうと思います。そういう点に立つときには、アメリカとすれば、やはりECとわが日本、この経済が混乱するということについては非常に関心を持っておる、こういうふうに見ておるわけです。  ただ、私がいま竹本さんの御所見に対して注意を引くのは、これはもうアメリカがどうのこうのという問題よりは、世界そのものがかなり変質してくる可能性を持っておる、そういうおそれがある、こういうことなんです。そういう可能性に対して、わが日本がどういうふうな姿勢をとるか。私はいままでのような、ただ単に資源はどこからでも無制約に入ってまいります、そういうことを前提としての国のかじとりというものは妥当でない。よほどその辺については慎重な配慮、かじとりの行き力の根本的な再検討が必要であろう、そういうふうに思います。
  155. 竹本孫一

    ○竹本委員 アメリカへの対応が、いま私の言うように、いまの段階では不十分だと思いますが、世界の変質、世界の激流について、いま論議はあまりしたくないのです。私の考えが、先ほど申しましたように、独断であれば幸いだが、あるいは当たるかもしれぬという意味で、お聞き取りを願えばいいと思うのです。  そこで、ついでに農産物の問題についてちょっと一口言いますが、いまの十二条にも「本邦の産業に相当の損害を与えるおそれがないと認められるときは、」こういうことが書いてある。ところが、日本は、アメリカの農産物には、御承知のように、生産コストの面から見て太刀打ちできない。しかも、われわれは、アメリカの農産物といえば、お互い同僚議員の皆さんもそうじゃないかと思うが、われわれの頭に出てくるのは、余剰農産物という考え方です。余ったものを日本にくれるのだとか、余ったから少し日本に輸出するのだとかいう程度にしか、実はアメリカの農産物輸出を認識していないんじゃないかと思います。  時間がないから一方的に私の意見を申し上げますけれども、ところが、大臣の受け取り方は別として、われわれはやはり、いま申しましたニクソンの基本戦略からいえば農産物輸出というのは、一種の戦略物資にだんだん転化しつつある。ある場合には、日本を困らせるというために、輸出を押える場合も絶対ないとは言えません。しかし、いま当面の戦略的必要というのは何かといえば、私の聞いているところ、調べているところでは、アメリカは貿易収支の面において九十億ドル前後の黒字を出す、これで大体全体の構想をまとめつつあった。そこへ石油ショックが出てきた。  これは一つ伺いますが、石油ショックによって日本支払いの増加というでは、一番多く言う人は九十億ドル、百億ドルと言いましたけれども、やはり八十億ドル前後が大体の見通しとして妥当な線ではないかと思いますが、これは局長いかがですか。局長のだれでもいいです。
  156. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいま御指摘のとおりございまして、来年度の経済見通しの策定の際に、私ども従来のやり方と変えまして、石油だけ抜き出して、これについてこまかい見通しを立てました。そのときにも、本印度、すなわち四十八年度では七十億ドル台程度であろう、これが来年では百五十億ドル程度になろうということで、その増差額は八十億ドルでございます。
  157. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、大体、日本輸入量とアメリカの輸入量は、出ず大ざっぱにいって、とんとんでしょう。そうすると、アメリカの石油ショックの支払い超過も、大体、日本と同じだ。だれだったか、日本が九十億ドル、アメリカが九十億ドル、西ドイツが五十億ドルと言った人がおりますが、ちょっと日本のほうも少しオーバーなような気がいたします。かりにそれが八十億ドルと押えるとすれば、アメリカもまた八十億、ドルぐらいの支払いがふえる、こういうことになる。  そこで、基本的には貿易収支で九十億ドルなら九十億ドルというものの黒字を出すのだけれども、その黒字は、いま申しました経済援助なり、海外投資なり、軍事援助なりに使う。したがって、石油支払いの急にふえたやつは、その中からはどうも融通ができない。結局、これからアメリカが石油支払いの増加等に必要な新たなる資金というものを何でかせぎ出すかということについては、農産物輸出だと私は見ているのだ。  そうなりますと、農産物輸出は、去年も大体百億ドル前後の輸出になったようでございまして、御承知のように、貿易全体がアメリカは去年四四%ふえたのに対して、その中で農産物の輸出は八八%、倍になっておる。これは私の言う、ただ余剰農産物の輸出といったような感覚ではなくて、農産物輸出でまたこれからのアメリカの基本戦略をささえる大きく必要なドルをかせごう、こういう立場から、農産物輸出に非常な力を入れておる。したがって、今後、ことしは八八%ふえたのだけれども、来年はもっとふえるというような形で、それがまた日本の農業にいかなる打撃を与えるかということはあらためて論ずるとして、そういう形でいまやってきておる。まあ農産物輸出で大体百億、ドルの黒字をかせごうというのが、私の言う基本戦略じゃないかと思っているのです。  そういうことに対応するためにも、われわれは、経済政策全体で考えをひとつまとめておかなければならぬし、また関税政策を論ずる場合にも、第十二条に帯いてあるようなこと、これで全部を尽くしているのかもしれませんが、少なくともその運用の面では、よほどいままでと違った認識なり決意のしに立たないと、対応が不十分だということを私は指摘したいわけであります。  全体として、この関税法というようなものも、従来の、先ほど来大臣からもお話がありましたような、石油ショックというか、あるいは新たなる資源ナショナリズムというか、そういうものが出てくる以前の段階において考えられた法であり、これはわれわれの頭も大体そうなっておる。私はその切りかえが必要であるということを言っておるわけでございます。  したがいまして、大臣は農林大臣もされたことがありますから申し上げるわけですが、余剰農産物といったような考え方ではなくて、これまた戦略物資として、私のように考えるか考えないかは別としても、アメリカの農産物輸出に対する熱意と意欲というものはものすごい、これで百億ドルの黒字をかせごうとしておる。そういう意味で、その直接相手になっておる日本あるいは日本の農業ということからいえば、異常な決意が必要ではないかと思いますが、その点についての大臣のお考えを承っておきたい。
  158. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカの農産物の輸出が非常に拡大しておる、こういうことは事実そのとおりだと思いますが、これはソビエトロシヤや中国の小麦の不作、こういうことが大きく影響しておる、こういう問題があろうと思うのです。  ただ、しかしながら、竹本さんのおっしゃるとおり、アメリカばかりじゃない、世界の国々が、その持てる資源を、あるいは農作物を、自国の立場関連しながらその行使を考えるという傾向が出てくるおそれのある世界情勢になってきておるというふうには思いますので、そういう世界情勢の中において、わが日本がどういう立場をとるべきか、これは大きな問題になってきておると思うのです。  それで、関税政策のあり方等につきましては、これはやはり石油問題、それからもう一つは、石油問題等もひっからまりますが、いまのインフレ、物価高、これを何とかして短期に克服しなければならない。その克服した後の日本経済の姿というものは、かなりこれは混乱以前と変わったものでなければならない。その変わり方というものにつきましては、ただいまお話しのあります変貌する世界情勢ということを十分踏まえていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  159. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはひとつ慎重な対応をしていただきたいと要望申し上げまして、最後に一つ伺います。  それは貿易の輸出輸入見通し、総額に対する見通し、もちろん経済見通しに出ておりますけれども経済見通しの四百七十一億ドルの輸出と四百三十七億ドルの輸入、三十四億ドルの黒字といった見通し以上に私は輸出ができると思っておるのですが、実はけさのある新聞を見ますと、経済の実質成長は一・四%ということで、経団連さんが四十九年度の経済見通しをつくった。たいへん渋い予測であるが、これは春闘を意識したものであろうかというようなことが書いてある。その辺の政治的な批判は一応別にいたしまして、そこでは貿易の収支が十二億ドルの黒字になっておるのですね、きょうの経団連さんの計算を見ると。政府経済見通しでは、三十四億ドルの黒字が出るというふうになっておる。一体どっちがほんとうかということなんですが、私は、それ以上にことしは輸出はできるだろうと思っておるのです。  それは、一つは、御承知のように、為替レートが非常に下がっている。これが現実に、自動車にしても、オートバイにしても、その他の輸出にしても、非常な刺激を与えておる。レートが下がるということは、何と申しましても輸出について——アメリカの輸出が去年の第三・四半期から黒字になったのも、これはアメリカのドルの切り下げ、二回のドルの切り下げが一番大きな原因ではないかと思いますが、日本もそういう形で、円のレートが対ドルに対して下がった。三百円であるか三百三十円になるかは別として、二百六、七十円のものが一割もしくはそれ以上下がってきた。これは非常な輸出の刺激、力になる。  次には、国内の不況といったようなムードもありまして、これが逆に余力もできるし、ドライブもかかるので、輸出が大いに伸びるといったようなこと。  さらに、海外市況に対して、これはひとつ大臣に伺いたいのだが、非常に悪いという人と、すなわち、アメリカでも一%しか実質成長はできないという非常に暗いような見通しの人と、必ずしもそうでないというような見通しと二つありますが、大臣にお伺いしたいことは、一つは海外市況というものを大体いまどういうふうに押えておられるかということが一つ。  それから次には、この経団連の出した見通しの貿易収支十二億ドルの黒字というのは、政府見通しに比べても、三十四億ドルですから、あまりに低い、三分の一だということだけれども、実際は五百億ドルの輸出ができるという人もおりますけれども、私はそこまで楽観的に見ていいかどうかは疑問がありますけれども、しかし、実際問題として見れば、いま鉄鋼その他は世界的な鉄鋼不足で、輸出の量も近くは三千万トンになるであろうという人もおる。それからタンカーも百三十億だ、百五十億だといったものが、去年の暮れには二百五十五億ドル、さらにそのうち三百億ドルの引き合いも始まるという強気の考え方もある。  こういうような情勢でございますから、必ずしも貿易は政府の見通されたようなものにとどまらないで、場合によってはもっと伸びるのではないか、非常に伸びるというふうにさえも思っておる。五百億ドルになるか四百八十億ドルにとどまるかは別として、政府見通しよりもふえるかもしれぬといったときに、経団連のほうでは、とにかく貿易収支は十二億ドルの黒字といったような、こまかいことはよくわかりませんけれども見通しをいっておる。  そこで、大臣にお伺いしたいのは、いま言ったように、海外市況、世界の景気の動きというものをどういうふうに受けとめておられるかというのが一つ。  もう一つは、それとの関連において、また日本国内事情も考えながら、大体貿易というものは、ことに貿易収支というものは、三十四億ドル以上になると見るか、三十四億ドルと見るか、あるいは三分の一に激減すると見るべきであるか、その点についてのお考えを承って終わりにしたいと思います。
  160. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 経済見通しをつくっておるわけでありますので、貿易の見通しにつきまして、これを公式に申し上げますれば、これは経済見通しのとおりであります、こういうふうにお答えをせざるを得ないわけであります。  ただ、専門家の間には、政府の見ておる輸出よりも多少ふえるのじゃないか、こういう見方をする人がかなりおる。しかし、同時に、輸入もふえるのじゃないかという見方に、そういう人たちの見方はなってくるわけであります。やはり輸入がふえるというのは、石油関係、そういうものを考えておるのじゃないか。それから輸出がふえるというのは、国内経済政策、これがかなり抑制型になってきておる、そういうようなこと、それからいまの為替レートの問題、そういうものを頭に置いているのじゃあるまいかと思いますが、しかし、大体バランスがどうなるかということにつきましては、これは政府が三十四億ドルの黒といっておるが、大体その辺じゃないか、そういう見方が多うございます。数字がぴしゃっと合うわけじゃございませんけれども、傾向的にはそうです。  そこで、世界は一体どうなるんだということにつきましては、どうもEC諸国、これはわが国が二・五%成長といっておるのですが、それよりも多少低目に見ておるところが多いようでございます。それからアメリカはまだ公式に見解を発表しておりませんけれども、これは日本よりも多少高目に見るのじゃないか、そんな感じがするわけでございます。  いずれにいたしましても、世界はいま石油問題というものをかかえまして、工業生産力が著減をする、したがって、国民成長率、この速度が鈍ってくる、こういう状態に置かれておるわけでありまして、わが国もその一環をなすわけであります。そういうことから、二・五%成長という判断を示しておるのは、大体国際水準から見まして妥当なところではあるまいか、そんなふうに考えております。
  161. 竹本孫一

    ○竹本委員 以上で終わりますが、要望として二つ申し上げておきたいと思います。  一つは、大臣からも先ほど来御答弁がありましたけれども、いま世界の大きな流れというものが、従来の延長という形でなくて、根本的、本質的に変わろうとしつつある。そういう問題についての把握と対応を誤らないようにやってもらいたいということ、それが一つ。  それからもう一つは、いまの貿易収支も、十二億ドル説あり、三十四億ドル説あり、私は四十億ドルをこすというぐらいに見ておりますけれども、いろいろありますが、確かにこれはむずかしい話で、水かけ論になってしまいますが、ただ、政府経済見通しをはじめとして発表になるものについては、分析がないのですね。数字の結論だけだ。一応はあとで説明はありますけれども、これをほんとうにわれわれがディスカッションをすることができる便利なように、もう少し分析的な説明といいますか、そういうものがないと、三十四億ドルと出されてみても、それを信ずるものは救われるという程度になってしまうので、もう少し理論的分析が望ましいと、要望申し上げておきます。
  162. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  163. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 次に、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。     —————————————
  164. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより各案について、政府より提案理由の説明を求めます。福田大蔵大臣。
  165. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま議題となりました所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  初めに、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  政府は、昭和四十九年度の税制改正の一環として、最近における国民負担の状況にかんがみ、給与所得者の負担を大幅に軽減することを中心として所得税負担の適正化をはかるため、人的控除及び給与所得控除の引き上げ並びに税率の緩和により、初年度一兆四千五百億円にのぼる所得税減税を行なうことといたしておりますが、この空前の規模の所得税減税等を実施するため、ここにこの法律案提出いたした次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  第一に、中小所得者の所得税負担を軽減し、あわせて税制の簡明化をはかるため、人的控除を引き上げて一律同額とすることといたしております。  すなわち、基礎控除及び配偶者控除をそれぞれ現行の二十一万円から二十四万円に引き上げるとともに、扶養控除を現行の十六万円から二十四万円に引き上げることにいたしております。  第二に、給与所得者の所得税負担を大幅に軽減するため、給与所得控除について、現行の二〇%ないし五%の控除率を四〇%ないし一〇%の控除率に引き上げるとともに、これによる控除額が五十万円に満たない場合には一律五十万円を控除するという新しい定額控除を導入し、あわせて、収入が一定額に達すると収入が幾らふえても控除額は増加しないという、いわゆる頭打ちの制度を廃止することといたしております。この結果、給与所得者の課税最低限は、人的控除の引き上げと相まって、独身者の場合では現行の四十五万円から七十七万円に、夫婦と子供二人の場合では現行の百十五万円から百七十万円にそれぞれ引き上げられることに相なります。  第三に、税率の緩和を行なうことといたしております。  すなわち、所得税の累進構造を緩和するため、課税所得現行二千万円以下の税率の適用所得階級区分を約一・五倍に拡大することといたしております。この結果、所得税の負掛は全体としてバランスのとれたものになるものと考えております。  第四に、福祉政策等の見地から障害者控除等の特別な人的控除につきましても、一般的な控除にあわせて引き上げを行なうことといたしております。  すなわち、障害者控除、老年者控除、寡婦控除及び勤労学生控除をそれぞれ現行の十三万円から十六万円に、特別障害者控除を現行の十九万円から二十四万円に引き上げるとともに、老人扶養控除を十九万円から二十八万円に引き上げることといたしております。  第五に、白色申告書の専従吉控除について現行の二十万円を三十万円に引き上げることにいたしております。  第六に、退職所得の特別控除額を、勤続年数二十年までは一年につき二十万円、勤続年数二十年超については一年につき四十万円に引き上げることといたしております。この結果、勤続年数三十五年の場合の退職所得の特別控除額は、現行の八百万円から一千万円に引き上げられることに相なります。  第七に、貯蓄の奨励をはかる見地から、少額貯蓄非課税制度の非課税限度額を現行の百五十万円から三百万円に引き上げるとともに、生命保険料控除及び損害保険料控除につきましてもその控除対象限度額を現行の二倍に引き上げることといたしております。  第八に、寄付金控除のいわゆる足切り限度額の引き下げを行なうほか、実情に応じきめこまかな改正を行なうことといたしております。  すなわち、寄付金控除についてのいわゆる足切り限度額は、現在、所得の二一%か十万円のいずれか低い金額となっておりますが、これを一万円に引き下げることとしているほか、配偶者控除及び扶養控除の適用要件である配偶者及び扶養親族の給与所得等にかかわる所得限度額を現行の十五万円から二十万円に引き上げるとともに、寡婦控除の適用要件として特定の者について定められている所得限度額を現行の百五十万円から三百万円に引き上げるなど実情に即した種々の措置を講ずることといたしております。  第九に、災害被害者の負担を軽減するため、所得税の減免を受けることができる災害被害者の所得限度額を現行の二倍に引き上げることといたしております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  第一に、法人税の基本税率につきましては、現在、三五%に租税特別措置法により一・七五形が加算され三六・七五%となっておりますが、法人の税負担の適正化をはかる見地からこれを四〇%に引き上げることといたしております。  第二に、中小法人に対する軽減税率につきましては、中小企業の現状にかんがみ特にこれを据え置くこととするとともに、その適用所得の範囲を現行の三百万円から大幅に引き上げ年七百万円、ただし最初の一年間は六百万円にすることにいたしております。  第三に、同族会社については、各事業年度の所得のうち留保した金額が一定の控除額をこえる場合には、留保所得について法人税を課税いたしておりますが、この場合の定額控除を現行の年五百万円から年一千万円に引き上げることにいたしております。  そのほか、中小企業の納税手続を簡素化するため、中間申告書の提出を要しない税額の限度を五万円から十万円に引き上げる等所要の規定の整備をはかることといたしております。  最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  第一は、法人税の付加税率の廃止と配当軽課税率の引き上げであります。  すなわち、法人税法の改正により法人税の基本税率を四〇%に引き上げることに伴い、現行の基本税率三五%に一・七五%を加算することとしている特別措置は、適用期限の到来を待って廃止するとともに、配当等に充てた所得に対する法人税率を三〇%、ただし最初の一年間は二八%に引き上げることにいたしております。  第二は、自動車関係諸税の税率の引き上げであります。  すなわち、資源の節約、消費の抑制、道路財源の充実等の観点から、二年間の暫定措置として、揮発油税につきましては、一キロリットルにつき、現行の二万四千三百円を二万九千二百円に、地方道路税につきましては、同じく四千四百円を五千三百円に、また、自動車重量税につきましては、営業用自動車を除きその税率を原則として現行の二倍にそれぞれ引き上げることにいたしております。  第三は、既存の特別措置の整理合理化であります。  すなわち、耐火建築物等の割り増し償却制度並びに特定合併をした場合の割り増し償却制度及び登録免許税の税率軽減措置を廃止するとともに、株式売買損失準備金制度について、当期の繰り入れ限度額を引き下げることといたしております。  また、交際費の損金不算入制度について、損金算入限度額の計算における資本金基準を千分の二・五から千分の一に引き下げて課税の強化をはかるほか、試験研究費の額が増加した場合の税額控除制度について、五〇%の税額控除の適用基準である試験研究費の増加率を年一二%から年一五%に改めることにいたしております。  第四は、貯蓄の奨励、勤労者財産形成及び住宅対策に資するための措置であります。  すなわち、所得税法の改正による少額貯蓄の非課税限度額の引き上げとあわせて少額国債の非課税限度額及び勤労者財産形成貯蓄の非課税限度額を三百万円及び五百万円にそれぞれ引き上げるとともに、確定申告を要しない配当所得の限度額を、現行一銘柄年五万円から年十万円に引き上げることにいたしております。また、持ち家取得を目的とする勤労者財産形成貯蓄のうち積み立て期間七年以上のものについての住宅貯蓄控除額を現行の六%、三万円から八%、四万円に引き上げ、さらに、住宅取得控除についても、その控除限度額を現行の二万円から三万円に引き上げる等の措置を講ずることといたしております。  第五は、公害対策に資するための措置であります。  すなわち、廃棄物再生利用設備について初年度三分の一の特別償却制度を創設するとともに、金属鉱業等の特定施設の使用の終了後における鉱害の防止に要する費用の支出に備えるため、金属鉱業等鉱害防止準備金制度を創設することといたしております。  第六は、中小企業対策に資するための措置であります。  すなわち、中小企業者の機械の特別償却制度等本年三月末に期限の到来する措置について、その適用期限を延長する等の措置を講ずることといたしており、また、伝統的工芸品産業の振興に関する法律の制定に伴い、伝統的工芸品産業振興準備金制度を創設することにいたしております。  第七は、農林漁業対策としての措置であります。  すなわち、肉用牛の免税対象に、特定の農業協同組合等を通じて販売した乳用雄子牛の販売所得を加えるほか、農業生産法人が農地保有合理化のために農地等を譲渡する場合について、二百五十万円の特別控除を設けることとし、また、森林施業計画に基づき山林経営を行なう個人が山林を現物出資して法人成りする場合の山林所得の課税について、納期限の特例を設ける等の措置を講ずることにいたしております。  第八は、宅地対策に資するための措置であります。  すなわち、五百万円の特別控除の適用対象に、住宅の建設または宅地の造成を目的とする事業の用に供するため、または公有地の拡大の推進に関する法律による協議に基づき、土地等が地方公共団体等に買い取られる場合等を加えることといたしております。  以上のほか、労働災害防止設備の特別償却制度対象設備に特定の消防設備を加える等所要の措置を講ずることといたしております。  以上、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し上げました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  166. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これにて各案の提案理由の説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、来たる三月一日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十八分散会      ————◇—————