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1974-02-15 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十五日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    奥田 敬和君       金子 一平君    鴨田 宗一君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君      小宮山重四郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    小林 政子君       田中 昭二君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局次         長       後藤 達太君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      藤井 良二君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         大蔵大臣官房審         議官      田中啓二郎君         国税庁直税部長 田邊  曻君         農林大臣官房審         議官      堀川 春彦君         労働省労働基準         局監督課長   岸  良明君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     不破 哲三君   田中 昭二君     広沢 直樹君 同日  辞任         補欠選任   広沢 直樹君     田中 昭二君 同月十五日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     中澤 茂一君   不破 哲三君     荒木  宏君 同日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     松浦 利尚君     ――――――――――――― 二月十四日  所得税課税最低限引上げ等に関する請願(広  瀬秀吉紹介)(第一八八四号)  都市近郊農業後継者に対する相続税特例措置  に関する請願阪上安太郎紹介)(第一八八  五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十三日  昭和四十九年度税制改正に関する陳情書外二件  (第一二二号)  昭和四十九年産葉たばこ収納価格引上げ等に  関する陳情書外一件  (第一二三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  割増金付貯蓄に関する臨時措置法案内閣提出  第一一号)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  割増金付貯蓄に関する臨時措置法案を議題とし、質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    竹本委員 きょうはいろいろお尋ねをしたいのですけれども最初に、先ほど理事会で出ました問題、どうも答弁がはっきりしなかったので、銀行局長にお伺いをしたいのです。  この割増金付貯蓄という問題について、これはわれわれの考えからいえば刑法百八十七条にひっかかるような問題だというふうにまで思うわけだけれども、そういう問題については同僚議員から十分論議がありましたので、私はこれはもうやめます。ただ、先ほども理事会で出た問題で、これは銀行の二重構造みたいなものを強くしはしないかとか、あるいは割増金というか富くじというかをやる範囲が小さい場合には、非常に小さい物的な基礎の上に立っている機関は苦しい立場に追い込まれるということで、いろいろ悩みを持っておるだろうと思うのです。  そこで、こういう関係者に重大な利害が伴う、国民の側だけでなくて、金融機関内部においてもいろいろ問題があり得るというような問題について、はたしてどの程度に念を入れて業界意見をくみ取って、その上で出されたかということについて、ひとつやや具体的に御説明をいただいて、やはり十分念を入れ、手を尽くして、その上でまとめ上げた法案で、これがために国民の側にどういう問題があるかというのは本委員会論議ができますけれども金融機関内部に不当な心配や混乱を起こすおそれはないか、そのためにどれだけの手を尽くされたかを銀行局長から御説明願いたい。     〔委員長退席松本(十)委員長代理着席
  4. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私どもも、その辺につきまして、実は非常に気を使ってまいりましたつもりでございます。特に、中小金融機関の場合に数が非常に多いわけでございまして、必ずしも全員についてこれを聞いたというわけではございません。率直に申しまして、いろいろの意見があり得るかと思います。ただ、協会を通じまして、この問題で十分意見を明らかにしてもらうように、あるいは具体的な注文を出してもらうようにということについては、特別配慮したつもりでございます。  率直に申しまして、私ども信用金庫協会長などは、むしろこういう問題が表になる前に、割増金付貯金というのも一つ方法ではないかという御意見をお持ちになっておったということを聞いておりましたし、必ずしもこれが大銀行に有利になるという形で受け取られているというようなことがあってはならないと思いますので、実は今度のやり方につきましても、その配分を非常に気にいたしておるわけでございます。この前の審議のときには明らかでございませんでしたが、実は昨日、地方銀行協会におきましても、大体地方銀行はこれを一本でやるときめたようでございまして、その資金量募集は三千億ということになるように聞いております。  そういたしますと、都市銀行が大体五千億、それから地方銀行が三千億、信用金庫相互銀行がそれぞれ千億ずつぐらいの単位のものを考えるのではなかろうか。しかも、おそらく一本で斉一に行なうのではないか、かように考えております。その辺の募集計画でございますと、特に現在の金融機関の資力と申しますか、能力からいいまして、非常にアンバランスであるという感じは私どもはいたしておりません。申すまでもないことでございますが、一年定期の場合には、いかなるものも二十億を単位としてやるということでありますし、六カ月定期でございますと、例外として三十億を認める。ところが、事実上は、六カ月一斉に三十億ということで各業界がやるようでございます。特に、これが中小金融機関の今後の融資能力に非常に影響を与えるというようなことにはならないように、これからも個別に募集計画を受け取って指導していくつもりでございますので、特に一本でやるということになりますと、非常に私どもも指導しやすい。御指摘の事実というものは私ども十分注意いたしまして、一生懸命その辺に配慮してやっていきたい、かように考えております。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 配分が五千億、三千億という御説明がいま局長からありましたけれども、私ども心配をいたしておりますのは、その三千億とか千億の金を喜んで消化するように努力をする形になっておるのか、あるいはやむを得ずこわいからそのままやるのだというような形になっておるのかという点について心配をしているわけです。  そこで、これは要望にとどめますけれども、こういう関係者に直接重大な利害が伴う問題あるいは困難の伴う問題については、十分手を尽くした上で法案をまとめていただきたいということであります。なお、それは十分御承知でしょうけれども、総会できめたとか、局長がお会いになったときに喜んでやるといったとかいうことも、表面的な場合がありますから、裏も読んで十分考慮していただきたいということも、あわせて要望しておきます。  そこで、この問題はこのくらいにいたしまして、ちょうど金融の問題にいまみんなの関心が大きいものですから、二、三、一般的な金融の問題について伺いたいと思います。  まず第一は、いわゆる高度成長経済GNP中心主義はやめて、これからは福祉国家建設だ、福田大蔵大臣に言わせれば、安定成長だということになりました。   〔松本(十)委員長代理退席委員長着席〕 そこで、大蔵省金融行政の面においては、福祉国家建設ということについていかなる反省が行なわれ、いかなる具体的な手が打たれつつあるか。従来の延長線では困る。どういう点で発想転換があったか、具体的に承っておきたい。
  6. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常に大きな問題でございますので、網羅的に申し上げることがどの程度できますか、後ほど補足させていただくこともあろうかと存じますが、基本的には、やはりこれまでのわれわれの経済成長のパターンと申しますか、型というものが、高度成長をささえる仕組みとして、戦後三十年くらいの間、秩序ができ上がってきたということが言えるだろうと思います。これはもちろん私見でございますが、一つには戦後のいわばインフレに対応するしかたといたしまして、いわゆるドッジ・ラインというものが確立されまして……
  7. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっと、御答弁中だけれども、大体私も知っているんだから、私がいま伺っているところだけ言ってもらえばいい。要するに、発想転換はいかに具体的に行なわれておるか、そこだけ言ってもらえばよろしい。
  8. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 発想転換金融面で申し上げますならば、一つには、金融政策上の運営として、できるだけ需要管理を今後厳格にしていく。したがって、成長ということに重点を置くよりは、安定ということに重点を置いた金融政策がとられるべきであろうということが一つでございます。  それから、金融行政の面におきましては、従来の金融機関の指導ということが、これはやはり経済秩序を背景といたしまして、企業金融産業金融ということに重点が置かれておりましたことより、多くの資金利用者に、企業金融以外の面に、より資金配分していくようなあり方を考えていくべきであろう、かように考えております。  それから、金利政策の面につきましても、わが国金利体系というものが、いわば低金利政策という中で経済が回転してきたことに対して、やはり見直していくという姿勢が必要であろうかと思います。ただ、御承知のとおり、金利あり方というものはなかなか急激にやっていくことには問題があるということで、やはり着実にそういう低金利政策修正というようなことを考えていくべきではなかろうかということだと思います。  それから、金融機関利用者との関係におきましては、従来の企業金融のものの考え方というものが、たとえば消費者金融でございますとか住宅金融でございますとかというときに、どうしてもそのまま取り入れる傾きがございますので、これがいままで金融になじみにくかった人たちにもわかりやすい契約のあり方、あるいはそういうルールをつくっていくということが大事ではなかろうかと思います。  なお、最後に、金融機関店舗あり方等につきましても、従来は金融機関資金の吸収ということに非常に重点が置かれておりましたわけですが、できるだけ利用者サイドに立った店舗あり方ということにも配慮して、店舗の認可につとめてまいりたい、かように考えておりますし、昨年来の店舗行政にも、そういう考え方を取り入れておるわけでございます。
  9. 竹本孫一

    竹本委員 私のほうから今度は具体的に承ります。  第一に、設備投資主導型の高度成長経済を改めるんだ、これが根本だと思うのです。福田大蔵大臣もそのことを力説しておられる。私もその点は賛成をしておる。そうなれば、一つは、いまお話しのありました低金利政策を改めるということでなければならぬ。それから第二は、間接金融中心主義はいけない。ことに最近、商社が悪いことをしているのはみんな間接金融だ。そういう実態を改めさせるために、具体的に何をしておるか。たとえば、いま低金利政策を改めようということは特にはっきりはおっしゃらなかったような気もしたが、いずれにしても、最近金利が上がったのは、それ以上暴騰した狂乱物価のおかげで何とかしなければならぬという、あわてて対応したというだけであって、低金利政策を改めて、金利政策方向転換をやったんだと受けとめることは私はできない。そういう意味で、低金利政策を改めるのか改めないのか、改めるとすればどういう改め方をするのか、それが一つ。  二つ目は、間接金融中心でいままでやってきておるが、その間接金融中心のものがいわゆる高度成長をささえたのですから、高度成長を押えるということになれば、間接金融を押えなければいかぬ。押えるためには、何をして押えるんだ。たとえば、自己資本がこれまでにはこれくらいしかない。一五%か二〇%しかない。それを少なくとも外国並みに持っていかなければいかぬ。そういうことを促すために、金融面からはこういう手を打っておる、そういう発想転換を、具体的に金融行政の面から、低金利政策についてはこういう点を改めていくんだという努力の過程並びに目標。それから、間接金融についてはこういうふうに改めていくのかいかないのか。いくならば、どこに目標を置いて、どういう具体政策で持っていこうとしておるのか、その点を伺いたい。
  10. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず低金利政策というものに対する修正の具体的な姿を示せということでございますが、低金利政策と申します基本は、預金金利あり方ということが一つの姿だろうと思います。  御承知のように、三十年代を通じまして、預金金利はほとんど――三十六年に一度預金金利を引き下げたということがございましたが、むしろ預金金利は据え置かれておったということ、その前提に立って、貸し出し金利はどうあるべきかということで需要管理政策が行なわれてきた、それが公定歩合政策の姿であったと思います。その姿というものは、四十年代に入りまして、特に昨年二%の金利引き上げが行なわれたというようなことは、やはり一つ修正の姿であって、特に預金金利というのは、そのときどきの経済情勢で動かし得るものでない。わが国経済の場合には、非常に下方硬直性という性格を持っている。一度上げたものはなかなか下がらないという前提で、あえて預金金利というものの水準を修正しつつあるというのが、今日の姿ではなかろうかと考えております。  それから、間接金融中心経済構造を直していくという問題につきましては、一つは、いま御指摘のように、自己資本というものが非常に少ないという問題がございます。これは自己資本が少ないのが原因であるのか、むしろ成長が高いために、投資額資本蓄積が追いつかない状態にあった。各企業にとっても、その成長のテンポが非常に急激であるために、資本充実が追いつかないという姿ではなかろうかと考えております   〔委員長退席松本(十)委員長代理着席〕 そういう意味からいたしますと、むしろ企業の非常に大胆な投資を押えていくということが自己資本充実一つ基本的な条件にならざるを得ないだろう、これは諸外国の例から見てもそうであろうと思います。したがいまして、何と申しましても、企業成長スピードそのものに対する政策というもの、いわゆる安定成長というものを基本としてやることがまず基本的に第一だろうと思います。  それから、具体的な話といたしましては、この前も御提案のございました大口融資等規制を通じ、間接的にこれを充実さしていくというような方法も必要であろうと存じます。それから、四十年以降国債政策がとられて以来、企業自己金融力というものは三十年代とは非常に変わっておりまして、むしろ構造的に自己金融力が強くなっておるわけでございます。その自己金融力の中身が金融機関の借り入れによるのか、あるいは自己蓄積によるのか、あるいはもっと社債市場などを通ずる長期市場でいくのかということで、これからさらにその問題が具体的に固まっていくだろうと思いますが、何と申しましても、やはりある程度金融緩和状況のもとでないと、社債市場というものがなかなか育っていかないということもございますので、現在のところ、債券市場長期資本市場の育成ということは非常にむずかしい状況になっております。むしろ、私どもといたしましては、銀行企業との密着関係というものをできるだけはがしていくような努力をこれからすべきではなかろうか。そういう意味からいたしましても、大口融資規制というようなことにつきましては、これは単に今日の経済情勢に合わせるという問題よりは、より長期的な日本構造の問題として計画的に進めていきたい、かように考えております。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 中川政務次官は、政治的感覚の非常に鋭い方として敬意を表しておるので、   〔松本(十)委員長代理退席委員長着席政務次官にお伺いをいたしたい。  いま銀行局長答弁を聞いておると、私はほんとうの意味での発想転換はないと思うのですよ。きわめて事務的な説明だけれども、新しい理念的なものを、サムシングを全然私は感じない。たとえば、低金利政策を改めるということだけれども、前に引き下げたんだからそれをもとへ戻すとか、インフレ物価が二〇%上がっているときに二%ほど金利を上げますとかいうようなことは、発想転換でも何でもない。そうでしょう。高度成長経済失敗でした、あるいは少なくとも行き過ぎました、こういうことは、まあ失敗か行き過ぎかについてはいろいろ議論があるけれども、少なくとも行き過ぎましたということについては、おおむねこれはコンセンサスはあるわけですね。だから、高度成長経済はやめましょう、安定成長に切りかえましょうと言っているんだから、安定成長に切りかえるためには切りかえるような、銀行局銀行局としての金融行政をやらなければいかぬと思うのですね。金利が二%上がりましたとか三%上がりましたというようなことは、かりにその発想転換がなくたって、どこのだれでもやることでしょう。こんなに物価が上がれば、二%や三%上げるということはあたりまえの話なんだ。だから、それらを乗り越えて、さらにこういうふうに、たとえば金利なら金利も、ヨーロッパのように私は一〇%以上に上げろとよく言っているんだけれども西欧並みに上げますと、ただし、それは一〇%に上げたにしても、そのうちのこれだけはインフレ分だ、これだけは前のやつの取り戻し分だ、そのほかに発想転換としてこれだけのものがあるんだというような話でないと、われわれの政治家としての感覚からいえば、発想転換はあったとは言えない、こう思うのですね。その点について、直感として、一体、政務次官はどう思われるかということを伺いたい。私は、非常にどうも事務的答弁過ぎるし、事務的対応に過ぎておると思うのです。  二番目。二番目は、間接金融中心では困る、まあこれからはいろいろやりたいとか、いろいろ御議論もありましたけれども、その中で、局長説明は、これまた大部分は事務的弁解に終始しておると思うのですね。政治的発想なり発想転換というものを考えられないで、たとえばいま御説明中心というものは、自己資本充実が必要であろう、しかしながら、自己資本充実が間に合わないほど高度成長したんだ、こういうお話なんだ。それは順序が逆なんです。間接金融でかってなことが幾らでもできるというようなことだから、商社買い占めしておる実情を見てもわかるように、自己資本で縛っていくということになれば、人間もそうだし会社もそうで、一ぺんにジャンピングはできないのです。ところが、足らなければ言うてこい、銀行幾らでも金を貸してやると言うから、幾らでも膨大な設備投資計画もできるし、買い占め計画もできるわけです。自己資本充実が間に合わなかったほど高度成長をしたというのじゃなくて、高度成長にかり立てておるから自己資本ではなおさら間に合わないんだと思うがどうか、その点。
  12. 中川一郎

    中川政府委員 竹本先生指摘のように、日本の今日は高度経済成長に誤りがあったというふうに言っていいのか、もうそろそろ高度経済成長はとるべきでない、そして安定成長に移らなければいかないというのは、大蔵大臣も、また私どももそう思っております。諸悪の根源高度成長にあり、対外的にも、あるいは国内の問題からしても、反省すべき時期に来ておる。  そこで、財政については圧縮という基本、そしてまた金融については引き締めという柱を打ち出しておるわけでございます。今回割増金付貯金をお願いしておりますのもその一環ではあるけれども、ほんのささやかなものであり、根っことしては、金融について抜本的にやはり考え直すべき時期だというところから、少ないながら二%の金利引き上げをやっておりますし、かなり貸し出し規制、特に窓口規制というようなものもやりまして、不要不急なもの、あるいは資材をたくさん使うような建築については、かなり規制をいたしております。これは臨時的な措置であると同時に、これからも長期的にそういう方向で進めていかなければならないと存じます。  そこで、一〇%がいいのかあるいは何%がいいのかわかりませんが、現段階としては七・二五%程度がぎりぎりではないか。かなりこれでも効果があるであろう。そして、しかもこれはかりに物価問題が解決しても、この高金利そして貸し出し規制、低金利を改めるという方向は、堅持してまいらなければならない日本経済情勢にあると判断をいたしております。  第二番目の間接金融中心、確かにそのとおりでございまして、商社等買い占めをするということについては、厳重にこれからやっていかなければなりませんし、自己資本引き上げ、まあ具体的に言うならば、たとえば自己資本の五倍までしか貸せないとか、三倍までしか貸せないとかいうような規制をすることが一番効果があるのではないか、端的に言えばそういう御質問かと存じます。私どもも、政治家としてはそれくらいの考え方をもうとっていかなければ、日本企業があげて金融に片寄っておる、こういう点については反省していかなければならないと思いますが、商法その他の関係もありまして、にわかにこれを採用するというわけにはまいらないのでございますけれども、そういう方面にも配慮していかなければならないのではないかというふうに考えております。
  13. 竹本孫一

    竹本委員 政務次官もたいへん用心をされて、きわめて事務的な答弁に終わったというような感じですけれども、これは局長、私がいま指摘した二つ問題点については、これ以上は追及もしませんが、ひとつ新しい問題意識として十分検討していただきたい。少なくともいままでの御答弁では、ただ従来の延長線上の話をしておるだけで、発想転換したという感じは受けない。発想転換すれば、転換した結果どこをゴールにねらっていくのか。同じ金利の七・二五%でも七・五%でも到着の終着駅が違うはずなんですね。だから、私は、そのゴール設定自体が問題だ。そしてそれに対してはもちろん着実、堅実に一歩一歩、ステップ・バイ・ステップで近づいていく以外手はないので、一番最初のスタートのときは、いままでの考え方あるいは結果とあまり変わらないかもしらぬけれども終着駅がはっきり違うということでなければ、発想転換にはならない。その転換について、いまの低金利政策、それから間接金融安定成長という以上はこの二つにメスを入れない安定成長はないのですよ。ことばだけあったってだめなんだ。特に、金融行政は一番重要性を持っておるものの一つですから、具体的に安定成長時代へ入ったのはこういう形ですということが示されるのでなければ意味がない。物価調整減税というのがあるが、物価調整範囲内の金利引き上げなどというものは、何も低金利政策修正でも発展でも前進でもないということであります。これは御検討願うということにしておきましょう。  そこで、銀行局長、この間からいろいろこの委員会におきましても議論が出ておりますが、あなたは、こまかい数字はやめますが、日本金利水準はいまの七・五ぐらいが一番最高のようだが、そういうものをヨーロッパの水準に合わせる、あるいは低金利政策修正するというようなことをねらいとして一〇%以上の金利というものも全面的にというか、例外的にというか、これまた行政のやり方にいろいろくふうがあるでしょうが、少なくともその辺までのものを目標として努力する意思あるいは政策の決定がありますか、それをひとつ伺いたい。
  14. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私は、やはり貸し出し金利の水準というもの自身がある程度高くなっていくということが、安定成長経済の中での姿だろうと思います。そういう前提からいたしますと、現在の水準はどうだというお話があろうかと思いますが、今日の水準というのはあくまで引き締め下における、いわば異常事態における水準であって、現在の時点においてこれからの経済成長の姿、安定的な経済の姿の中での金利水準ということは、いまここでなかなか予測しがたい問題だろうと思います。また今日の段階において、軽々にそれを予測すべきではないと考えております。ただ、諸外国貸し出し金利の水準におきまして、特にヨーロッパにおきましては、貸し出し金利としては一四%前後の水準になっておる国がございます。イギリス、西ドイツあるいはフランスも一〇%を貸し出し金利の水準としてはこえておる。わが国の場合に、おそらく昨年来の預金金利の二%の引き上げというものが徐々に貸し出し金利のほうに移ってまいりますれば、現実にはこういう姿に近くなっていくだろうということは予想されるわけでございます。ただ、これもあくまで景気調整下における金利水準である。そのことはやはりヨーロッパでも同様でございます。  貸し出し金利の水準についてはそういう状況だろうと思いますが、問題は預金金利の面でございます。いずれの国におきましても、一〇%をこえる高い預金金利の姿が見られるわけでございますが、私どももこういうことを参考にして鋭意研究しておるわけでございますが、もう先生も御承知のように、こういう高い金利というのは、やはり大口預金に限られた形で外国では進められている。特に、法人預金だけを大きくせざるを得ないという形で、ヨーロッパ、アメリカでもやっておるようでございます。小口の貯蓄預金金利という点に着目いたしますと、わが国の七・二五という水準というものは、むしろ高いほうに入る。  問題はむしろ、消費者物価の上昇率が非常に異常であることに比べて、アンバランスではないかという問題ではなかろうかと思います。やはり貸し出し金利水準もさらに上げることを通じて、預金金利の水準を上げていくという道も一つにあろうかと思います。同時に、今日の引き締め下で、今後のいろいろの経済状況を予測した場合に、いまの時点において、貸し出し金利水準を上げることを決意すべきかどうかとなると、そういう時期ではないように思います。むしろ現在の段階において私ども検討すべき立場といたしましては、できるだけ貸し出し金利の水準――貸し出し金利と申しますのは、政府金融も含めての国際金利、政府機関金利も含めてのそういう貸し出し金利の水準とは切り離して、預金金利というものをできるだけ預金者の要望に沿い得るやり方はないかということで、現在研究を進めておるというのが正直なところでございます。
  15. 竹本孫一

    竹本委員 貸し出し金利を上げるということについて、いまいろいろ御発言がありましたが、低金利政策のおかげで高度成長ができておるという問題を反省するならば、貸し出し金利についてもやはり反省をして、検討を加えなければならぬではないかということが一つ。  それからもう一つは、いまの債務者利益というものはものすごいものがある。一兆円金を借りても、物価が一割暴騰してしまえば、場合によれば  一千億円助かったようなものだ。そういう意味での債務者利益というものが過大であり過ぎるというところに問題がある。そういう点については、一体、銀行局長はどういうお考えなのかさっぱりわからぬが、とにかく債務者利益というものが不当に大きいのに対して、たとえばブラジルのごときは、一方で預金の金利を上げるとともに、債務者に対しても貸し出しの金利も上げるということをやっておる。ブラジルのように簡単にいくかいかないかは一応別にいたしまして、考え方基本からいえば、低金利政策を改める意味からいっても、貸し出し金利に再検討を加えるべきである。特に、大企業は金を借りて、それがために非常な利益を得ておる。借りて土地を買えば、土地が倍になれば半分売れば借金は返せるのだから、そのことがいまいろいろ問題になって、そういう考え方一つとして超過利得税問題も出てきているわけですから、債務者利益をどう修正しようかということについては、もう少し銀行局としても考えなければならぬのではないか。  あれこれ考えて、結論として三つほど伺うが、一つは、一〇%くらいの預金金利をいま一ぺんに全部上げろというとちょっと問題がいろいろむずかしくなるから、簡単に聞くのだけれども定期制預金なら定期性預金、一年ものなら一年ものについては、少なくとも一〇%くらいの金利のものをつくっていく、あるいは公債を発行するような場合においても、特定公債を発行して一〇%の利子をつける。そのかわり、これで中央突破をして過剰流動性も吸収するし、同時に、いままで預金をして目減りで損をしているまじめな勤労大衆等について、何らか一つ報いるところがあるという努力をする。そういういろいろの理由をつけて、一〇%の預金金利というものを、あなたの考え方からいえば例外的でもいい、そういうものを一体認めていく意思があるのかないのか、その点だけはっきり言ってもらいたい。  それから第二番目、いまあなたは異常事態であると言われた。そこで異常事態ということについてひとつお伺いするのだけれども日本物価が卸三〇%あるいは三四%、消費者物価が二〇・四%、これは異常事態であるとわれわれとしても言いたい。しかし、異常事態という以上は、それは異常なんだから、通常の状態があるわけだ。通常の状態に返るという見通しがなければ異常じゃない。異常が普通になってしまうかもしれぬ。そういう意味で、日本物価の上昇を異常事態として理解するほど短期間に、ちょっとがまんしておれ、しかたないや、突風が吹いてきたようなもので、頭をかがめておればいいのだというような考え方で、異常事態はきわめて短い、それが異常事態ですね。異常事態が半年も一年も二年も続くようになったら、異常事態じゃない。そういう段階に突入したということで、新たな決意と構想を持たなければいかぬ。異常事態というのは期間的にきわめて制約されるとぼくは思うが、あなたの異常事態というのは期間はどのくらいか。  三番目、異常事態がかりに半年でも一年でもよろしい、半年でも一年でもありとすれば、その異常事態に――一日か二日なら別ですよ。しかし、相当長くこの異常事態が続くということになれば、それに対応する金融政策金融行政がなければならぬと思うが、異常事態はあなたは期間をどのくらいに見て、そしてその期間においては、異常事態だからがまんする人はがまんしておけということでいくのか、それに対応する行政措置を考えようとしておるのか、この三つを伺いたい。
  16. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず最初に、一〇%くらいの預金金利の水準ということを目標にしておるのかどうかというお尋ねでございますが、当面の目標といたしましての一〇%というものは、私どもが事務的に検討いたしましたときには、非常に高い数字であると残念ながら申し上げざるを得ない実情にございます。将来の問題としての一〇%という問題は、経済が一応こういう――私、異常事態と申し上げましたが、それを脱して後の経済の姿、あるいは国際的な環境の姿という中で考えるべきであろうと思いますが、当面の問題としての一〇%というのは、私どもがいわば金融の仕組みの中で考えます限りにおいては、非常に高い数字であると申し上げざるを得ないと思います。しかし、それに近づける努力というものは常にやりたいと考えております。  二番目の点は、異常事態というものが長期化すれば、まさにそれが恒常的な事態にならざるを得ないわけでございます。そういうことであれば、そういう事態に即応する金融の仕組み、秩序というものをつくり上げていくべきでございます。またつくり上げられなければならないと思いますが、何と申しましても、物価の上昇を、大臣は両三カ月とおっしゃっておりますが、物価の上昇という問題とは別に、現在の流通機構だとかあるいは生産機構の混乱というようなことも含めまして申しますならば、こういう状態というものは、より長い期間として取り組むべき性質のものではなかろうか。一年以上こえれば確かにもう長期の問題ではございますが、今日の経済界が新しい事態に適応していくための摩擦現象というものは、これを短期に考えていくというやり方では、むしろより大きな摩擦が起こっていくのではないか。そういう意味から考えますと、ある程度の、両三カ月をこえた期間を臨んでの異常事態対策を考えていくべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。その間において、金融行政の面におきまして、金利の問題については先ほど申し上げましたようなことでございますが、その他の銀行の融資のあり方等につきましては、やはり異常事態に対応する常時のやり方でないやり方、選別融資もそうでございますし、その他の方法をもって、できるだけ今後新しいやり方も考えていかなければならない、かように考えております。
  17. 竹本孫一

    竹本委員 当面考えていないとおっしゃったけれども、当面とは一体どのくらいの期間であるか。一〇%ぐらいまで金利を上げるということは、私はいまここでも全部上げろとは言いませんよ。少なくともそういう預金金利の特別な場合について、あなたの立場でいえば例外的にといってもいいが、そういうものを認めていくということでなければ、大衆が救われる道がないのですよ。一%上げてもそれでわっと人が集まる。今度は割増金でもっと集めて、一兆五千億ぐらい集めよう、こういうことでしょう。ちょっと金利が上がっても、ちょっと何か誘惑をされるか、あるいはちょっと射幸心を刺激されればそこに集まってくる。その気持ちなり、そうしなければならない環境なりが問題なんです。だから、私はいまの大勢からいえば、預金の七・五、だいぶ努力もされました。しかしながら、異常物価には追いつかないのだから、一%の預金ぐらいは考えてもいいではないか、あるいは例外的に考えてもいいではないかということで、局長の御答弁は、当面はそんなことは検討してみてもなかなかむずかしいという結論であったというようなお考えのようだけれども、その当面とはいつまでのことか、それが一つ。  次にもう一つは、二、三カ月以内に、こういうことなんだけれども、いま政府が言っているのは、二、三カ月以内に、福田さんのことばで言えば、狂乱状態が鎮静化するであろうということを言っているのですよ。そうでしょう。そこで、私がそれに対して反論として言いたいことは、一昨年の十月、中曽根さんが調整インフレを言ったころから日本経済はカーブを間違えて切っておるのだが、その辺からもう物価は上がり始めておる。日銀券の増発も激しくなっておる。日本としてはその辺からが異常事態なんです。いまあなたは、二、三カ月以内におさまるだろうと言うが、かりに二、三カ月以内におさまったとしても、貯蓄をしている国民大衆、家庭の主婦は、もう物価の値上がりで目減りを受けて、ひどい犠牲を受けているのは、すでに一年もしくは一年半たっているのです。それに、プラス二、三カ月だ。ところが、その二、三カ月もまだ狂乱状態が鎮静化するだけで、物価が安定して消費者物価の上昇が四%になるという保証、そんなものはおよそ縁が遠いのですよ。二〇%や二三%になるやつが鎮静化して一〇%前後に落ちつくかどうかということだって、まだおそらく大臣も確信はないでしょう。それが異常状態というのです。だから二、三カ月なんということはどういう意味で言っておられるのか、それがよくわからぬ。私に言わせれば、異常状態というものは、あるいは一年もしくは一年半続いて、その間まじめな預金者は常に損をしている。常に目減りの犠牲を受けている。それに対して一体何をしようとしているのか、そこがさっぱりわからぬ。そこを聞きたい。
  18. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私、異常状態を二、三カ月のように申し上げましたが、申し上げ方が悪かったので、大臣が、物価上昇について両三カ月をぜひ見守りたい、その間を期待しておるとおっしゃったわけでございますが、金融界の異常状態と申しますか、あるいは経済の異常状態と申しますのは、それよりも長い期間ではなかろうかということを私申し上げたつもりでございまして、この点につきましては、先生と全く同様に考えております。  したがいまして、その間において何をなすべきかということにつきましては、これは私も先ほど申し上げたつもりでございますが、できる限りの手段をとっていきたいということでございます。ただ、これはもう釈迦に説法になるわけでございますが、一つ経済秩序を変えていくということでございますので、積み上げ的にやっていかざるを得ない。一挙にそれをやっていくということについては非常に問題があるのではなかろうか、かように考えております。  そういう意味で、一〇%の預金金利というものは、現在の段階においては、たとえば金融機関の実情、あるいは産業界経済界の実情、あるいはわが国の中小企業がGNPの半分を占めておるというような経済構造等から申しまして、たとえ例外的な措置をとるにしても、例外にとどまらないほどの高い数字ではなかろうかと考えておるということを申し上げたわけでございます。これがその後どうであるかということについては、今日のところはっきり申し上げられないというのが率直なところでございます。
  19. 竹本孫一

    竹本委員 それでは銀行局長伺いますが、いま二年ものの金利が七・五%ですか、預金金利物価の上昇と関係があるかないか、あるいはあるべきかないべきか、あってはならないか、預金金利物価の上昇との関係。次に、七・五%は消費者物価が何%ぐらい上がるということを前提にして考えておるか。その二つを聞きたい。
  20. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私ども預金金利物価という問題と直接的にリンクするという考え方を実はとっておりません。この辺のところにつきましては、一つの逆の考え方、直接的にリンクして物価とスライドすべきでないかという考え方があろうかと思いますが、私どもは、リンクすべきではない、むしろ恒常的な一国の国民経済における貸し出し金利の水準を見きわめて預金金利の水準がきまるべきものではなかろうか。要するに、資金の需給関係からするところできまるべき預金金利を、国民にできるだけ影響を与えないという意味で告示をして、これを規制しておるという状況でございます。したがいまして、物価上昇率との乖離が今日目立っておるということについてははなはだ遺憾でございますが、むしろ物価対策に対する努力基本であって、預金金利の水準をこれに合わせるというスライド制の考え方については、いささか疑問を持っておるわけでございます。ただ、そうは申しましても、その中間的なやり方があるのではなかろうかということで、いろいろいままでも努力してまいったつもりでございますし、これからもそういうことでできるだけのことをやっていきたい、こういうふうに考えております。
  21. 竹本孫一

    竹本委員 とは申しましてもということで、前とうしろがまるきり違うのを結ばれたので、質問はさっぱりできなくなるが、もう一度明確に聞きますが、物価の上昇と預金の金利とは直接的には関係はない。しかしながら、物価が上がれば預金しておる人の立場は非常に苦しい、目減りその他で犠牲を受ける。そうすると、預金者の立場は直接的には大蔵省は関心は持たない、こういうことですか。
  22. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 物価の水準というものが、私どもはこれが本来の物価の姿であるとは考えていないわけでございます。こういうものが何とかして下がった姿が、本来の正常な経済の姿であるということで考えておるわけでございます。預金金利をそれにスライドさせてやっていくということは、むしろその考え方とは逆のやり方になるのではなかろうか、かように考えておることを申し上げたわけでございます。  ただ、預金者はどうなってもいいというようなつもりではもちろんございません。したがって、過去一年間にもいろいろ努力してまいりまして、二%という水準を上げたわけでございます。もちろん今後とも、そういう状況が続く限りは、そういう政策もとらるべきことだと思います。ただ、現在のお答えすべき問題としての一〇%、今日それを考えておるかどうかということについては、これは非常に高い水準であるということを申し上げておるわけでございます。
  23. 竹本孫一

    竹本委員 これは局長の立場もありますし、限界もありますから、これ以上言うのはちょっとお気の毒な点もあるのだけれども、しかし、考え方として、預金者を保護するということも銀行局長の責任の一つじゃないですか。そういうことを考えると、預金者あるいは預金金利と消費者物価というものが直接的に関係がないといったような答弁というものは、重大なる政治問題になる。そういうことがはっきり言えますか。預金者はおこってしまいますよ、そんなことを言われたら。預金金利の上昇と物価の上昇とは直接的には関係ないということになると、これは重大な政治的な問題だと思うのだけれども、もう一ぺんそこを伺いたい。  それからもう一つ、いま、金利が二%上がったことをよく言われるのだけれども、二%上がっているあるいは上げた間に、物価は何%上がりましたか。それから、先ほど答弁が抜けておったけれども、七・五%の金利物価の上昇を全然考えないできめておるのか。先ほどおっしゃったように、直接的に関係ない、需給だけできまるのだというようなことかもしらぬが、しかし、少なくとも、預金金利は七・五%にするか八%にするかというときには、消費者物価の動向はこんなものだということがある前提になっていなければならぬと思うのですね。一体何%の前提で七・五%をきめられたか。これも全く機械的に、需給のバランスだけできまったと言われるのか。消費者物価を考慮に入れておられるのか、おられないのか、それをお聞きしたい。
  24. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 直接リンクをさす考え方をとっておりませんということを申し上げたわけでございまして、それが預金者には無関係であるとか、消費者物価とは無関係であるというようなつもりは毛頭ございません。
  25. 竹本孫一

    竹本委員 では、関係はどうするのだ。
  26. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 それは計数的に、物価の上昇が何%になったから預金金利はこうあるべきだという結びつきということは、実際問題として非常にむずかしい問題ではなかろうか。預金金利は、申し上げるまでもなく、一年定期、二年定期といった構造を持つものでございます。消費者物価についてはできるだけ早くこれを引き下げるという努力をしておるわけでございまして、その辺のところを直接的に数字として結びつけて、預金金利の高さを判断するということは、気持ちはございましても、実際問題としては非常にむずかしいのではなかろうかということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、昨年来とってまいりました預金金利のやり方を、全然、物価の上昇ということと無関係にやったのだというようなことでは毛頭ございません。むしろ、そういうことが背景となって、上げ得る限度ぎりぎりはどのぐらいであろうかということできまったものと私どもは考えておりますし、今後ともそういう状態が進みますれば、もちろん資金の提供者をできるだけ配慮していくということは非常に大きな考え方でございまして、そういうことを考慮しながら、ぎりぎりのところを、実際問題としてどれだけ上げるのが一番いいかということで考えていくべきことではなかろうかと思っております。
  27. 竹本孫一

    竹本委員 関係あり、無関係ではないと言われる。関係ありとすれば、どういう関係があるか、どういうふうに関係づけるのかということを、きょうは時間がありませんから、これはあらためてまた聞きますので、十分検討しておいていただきたい。預金金利は消費者物価関係があるか、関係なくきめられるか、関係ありとすれば、どういう程度にどういう形で関係づけられていくのか。いいですか。この点はあらためてまた別の機会に十分検討さしていただきたい。  時間が参りましたので、最後に一口――一口じゃない、答弁次第では長くなるが、一つ聞きたい。  一体、預金とは何ぞや、金利とは何ぞや、これを一ぺん本格的にこの問題と関連して議論をしなければならぬ。十万円の金を預けるということは、倉庫に物を入れるように銀行に一万円札を十枚置いておくことか、どういうことですか。
  28. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常に哲学的な問題でございまして、私が正確にお答えできるかどうかわかりませんが、確かに金利資金の利用度に対する価格だと思います。一方、消費寄託という形の、法律的にはそういう形式をとっておることからすると、いわば保管をしてもらうという側面もあろうかと思います。しかし、実際の経済の段階においては、やはりお金の値打ちであると申しますか、お金と申しますか、その資金を利用してもらう価格であると考えるべきではなかろうかと思います
  29. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっとまだよくわかりませんが、もう一度聞きますよ。たとえば中国の場合では、点数をつけて、御承知のように四品目か生活必需物資について点数をつけて、それで、上海が二千五百点、米と食用油と炭ですか、そういうものを入れて四点で点数をとって二千五百点だ。それが五千点になる。そうすると、物価が完全に倍になったので、日本的に簡単にいえば、何万円預かったということは米一俵預かったのだという形にして、米に換算し物に換算をして、その物が倍になれば、極端にいえば、預金を返すときには倍返す。一種の修正価値論ですね。そういう形にまで考えておるところがあるから、特に問題にして言うわけですけれども、要するに、十万円の金を預かるということは、一万円札を十枚預かるという金額を預かるのか、一万円札を物にして物を預かるのか、あるいはその購買力、十万円によって保証されておる購買力を預かるのか、価値を預かるのか、どれなんですか。  たとえば、ブラジルは安定価値計算ということを言っておる、あるいは修正価値計算ということを言っておる。すなわち、預金を預かるということは、それだけの価値を預かるのだ、それだけの労働生産物を買う力を預かるのだ、こういうことになっておる。銀行局長の定義では、預金を十万円預かるというのはそのどれですかということを聞いておる。もっと明快に言ってください。
  30. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かにブラジルの場合は価値修正率というものを使って修正しておるわけでございます。ただ、これは単に預金だけではございませんで、賃金だとか、固定資産の評価だとか、その他あらゆる契約について価値を修正する、それを運用することを通じていわゆるスライド制をとっておるということでございますので、預金の価値ということに結びつけられるかどうか、私もまだこれから勉強しないといけないとは思います。確かに……(竹本委員「じゃ、中国の場合はどうですか」と呼ぶ)中国の場合は、私、はなはだ不十分ではございますが、確かに品物というものでやっておったと記憶しております。中国の場合は確かにそういうふうにやっております。ただ、今日のわが国の場合、あるいは市場経済法則にのっとって経済が動いておる国においては、必ずしもその価値というものについては一貫したはっきりしたやり方をとってないというのが正直なところではなかろうか。確かにその預けられたお金の購買力という側面もあろうと思います。それから、それの資金の価格という面もあろうかと思います。先ほど私が非常に不分明だとおしかりをいただいたような消費者物価金利関係という面につきましても、実態がやはり物価というものを無視できない側面がある、と同時に、物価だけではやれないという問題と同じ問題として、この預金というものをどう考えるかということについては、非常に明確なお答えが、そういう側面からいたしますと、できないということをおわび申し上げます。
  31. 竹本孫一

    竹本委員 これはやはり重大な問題で、銀行が、すべての金融機関が、金を預かる。金を預かるとはどういう意味か、どういうことかということの本質論に触れてこれまた一ぺん機会を改めて論議をします。そうしなければ安定価格計算も、修正価格制度も何も出てこない。とにかくこれだけ異常に物価が上がってくれば、預金者の保護ということについても、政治的にももう少し前向きに取り組まなければならぬのではないか。それから、純経済的あるいは経済学的に言いましても、金を十万円預けても、われわれの生命保険もそうですけれども、五十万円かけてみたってただみたいになってしまう。それで、それらについて政策的立場からいっても、補正の努力をしなければならぬでしょう。やってないほうが間違っているんだ。そういう意味で、銀行局長だから銀行の預金とは何ぞや、それからまた、きょうは触れませんけれども金利とは何ぞや、これは何も経済学の議論をここでしょうとは言いません。政治的、行政的な高いというか、広い立場に立って、物価の値上がりで、目減りで大きな犠牲を受けている人たちの立場を考えながら、どういうたてまえ、どういう解釈をすることが新しい時代の対応に沿うゆえんであるかということについては、ひとつまじめに、頭のいいところで大蔵省で検討を深めてもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  32. 安倍晋太郎

    安倍委員長 増本一彦君。
  33. 増本一彦

    ○増本委員 きょうは法案に即して政府のお考えを伺いたいと思います。  初めに、政務次官、たとえばこの割増金付貯蓄で具体的な例を出しますけれども日本で一番大きい銀行、第一勧銀がホームラン定期というのを出す、割増金付貯蓄でですよ。それからある相互銀行がラッキー定期というものを出す。信用金庫もハッピー定期というのを出す。そうしますと、それぞれの都市銀行を除いた相互銀行とか、信用金庫ですね、こういうところは都市銀行と同じ口数を全国的に販売するということはできませんね。そうすると、ここでもやはり都市銀行や大手の銀行のほうが預金をたくさん集めることができるという結果になると思いますが、こういう事実はお認めになりますか。
  34. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 ちょっと御質問のお答えになるかどうかわかりませんが、現在のところ都市銀行は、五千億ということを目標として、三十億円単位の六カ月定期計画しております。それから地方銀行が先ほど申しましたように三千億、それから相互銀行信用金庫がそれぞれ千億くらいではなかろうかと考えておりますが、これは具体的に一つ単位を幾つやるかということで届けを持ってくるわけでございますから、いずれははっきりするわけでございます。で、そういうバランスが、大きな銀行だから大きいかどうかという問題だろうと思いますが、私ども、そのバランスでございますと、現在の資金量その他金融機関の体力から申しまして、適正なバランスではないか。その五千億が五千億以上になるかどうか、それを私どもが認めるかどうか、それはその募集計画書を認めるかどうかというところで考えるべきことではなかろうか、かように考えております。
  35. 増本一彦

    ○増本委員 それぞれ一行当たりで考えてみますと、都市銀行相互銀行信用金庫でやはり一行当たりの資金の吸収量というのは都市銀行のほうが多いだろうし、相互銀行のほうがその下へいくだろうし、信用金庫はさらにまたその下へいくかもしれぬ。こういう事態になるということは、これはお認めになるわけでしょう。
  36. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 それはやはり現在のたとえば支店の数でございますとか、あるいは従業員の数といったところから、おのずから規模の大きなと申しますか、大きな金融機関と小さな金融機関、それぞれ能力に応じて差が出てくるだろう、これを機会にそれを変更さすようなことはすべきでない、かように考えておるわけでございます。
  37. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、この都市銀行地方銀行、それから相互銀行信用金庫、この一月末での預貸率ですね、これが現状でどういうようになっているか、ちょっと数字を御報告いただけますか。
  38. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま手元にございます数字を調べますから、ちょっと御猶予願います。  なお、信用金庫については、おそらく一月末の計数は報告が出ていないのではないかと思いますが、出ておる限りの数字で……。  いま手元にございますのは十二月末でございまして、全国銀行で九二・八%でございます。それから相互銀行は、十二月末で八五・三%でございます。信用金庫はちょっと新しい数字が少しおくれるかと思いますが――ございました。十二月は速報でございますが、八三・四%でございます。
  39. 増本一彦

    ○増本委員 全国銀行協会が二月の上旬に一月の銀行勘定を発表して、その中で非常に大企業の手元資金の取りくずしが多くなって、預貸率が一〇〇%をこえている、こういう事実になっているということは大蔵省では御存じですか。
  40. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 おそらく増加額対比、いわゆる私どもが言っております限界預貸率、要するに預金の増加額に対する貸し出しの増加額という、それを私どもはいわゆる限界預貸率と言っておりますが、そのことを言っておるのではなかろうかと思います。
  41. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますと、いま全国銀行で十二月末で九二・八%の預貸率だ。これは現状を見て大蔵省のほうではどういうようにお考えなんですか。これはちょっと高過ぎるのですか、これでもよいということなんですか。いかがですか。
  42. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 一つは、この全国銀行全部で約八十行余りを平均した数字でございます。その限りにおいて申し上げますれば、私どもこの預貸率の低下ということに努力してまいりましたわけでございまして、かなりここ数年はそれが改善の兆を見ておりました。しかし、今日の引き締め下で、法人、会社が預金を取りくずすとかいうことで、むしろこの数字というものは四月-六月期の九一・一でございますか、その辺から申しますと、非常に高いといいますか、数字ではむしろ悪化しておる数字だというように考えております。特に、個別の銀行にとっては非常にでこぼこがあり得るわけです。この辺のところは、預貸率の低下ということについては、やはり私どもとしては非常に注意をして、その改善を求めておることを続けておりました。
  43. 増本一彦

    ○増本委員 それからもう一つ、四十八年一年間あるいは最近の状態を見て、それぞれの各銀行の預金の伸び率というか増加率、特に個人預金の増加率はどういうぐあいになっているのでしょう。
  44. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いずれ計数で申し上げますが、大体の感じで申しますと、法人預金は非常に減少しておりますが、個人預金は大体二〇%をこえたところで推移しております。ただ、こまかな数字で申しますと、多少低下しておるということであるように思います。  ここで都市銀行について申し上げますと、四十八年の初めは、個人の預金が二六・三%の伸び率でございました。これは金融緩和を受けての預金の増加だろうと思います。それが六月には二四・八%、九月に二一・二%、十二月に入りますとまた持ち直しまして、二二・五%ということになっております。  なお、このうちの定期性預金というものにつきましては、さらに比較的安定的な数字と申し上げることができると思います。四十八年の三月が二四・七%で、四十八年の十二月が二四・三%という数字になっております。
  45. 増本一彦

    ○増本委員 いまの都市銀行の数字を見ましても、ずっと低減してきていますね。二四・八が二一・二になり、若干持ち直して二二・五というけれども、そして預貸率が高くなっている。  そこで、今度の割増金付貯蓄で、非常にシェアと競争力の強い都市銀行が、数は少ないのに五千億集める。こういうことによって、いまの都市銀行の経営の弱くなっている点、不安定になっている点、これを解決させようというところに、政策一つの目的なり意図というものを持っているのじゃないだろうか、こういうように思いますけれども、その点はいかがなんでしょうか。
  46. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほど申しましたように、いまの都市銀行募集計画というものは、決してほかの金融機関に比べてこれを機会に伸びをしようというものではございません。むしろ、現在の秩序の中で、私どもが見てまあそんなところだろうと思う数字でございます。これで差をつけるというようなことは、もとが五千億でございますし、ちょっと私どもはそういうふうには考えておりません。もともとその五千億というものの中に、預金からの振りかわりということもございまして、各金融機関によって体質は違うかとも思いますけれども、そういう考え方は毛頭ございません。
  47. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、私が調査してみますと、四十七年の十二月末と四十八年の十二月末で、都市銀行の場合、年間の預金のふえ方を残高で見てみますと、九・九%しかふえていないのです。地方銀行は残高でどのくらいふえているか、率で見てみると一九%、相互銀行の場合ですと、二六%以上ふえている。信用金庫でも二四%。一番少ないのは都市銀行です。  ここで、こういう種類の定期預金を新たに売り出すことによって、都市銀行へ大衆の持っている資金を吸い上げていこうという一つの道をつけることになる、こういうことになりませんか。また、そのことが政策一つの目的になっているのじゃないですか。
  48. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 都市銀行の預金の伸び率が下がるというのは、これは金融の引き締めの影響を最ももろに受けておるという結果でございます。これは過去の引き締め期においても常に出てくることでございまして、まず貸し出しの減少から始まりまして、企業が預金を取りくずしていくという形で、むしろその効果が出ておるものであると考えておるわけでございます。私どもは、この割増金付貯蓄というものでこれをしり抜けをさすというような気持ちは、全く持っていないわけでございます。この辺のところは、先ほど来御説明した数字からも御了察いただけると思います。何か裏にそういう意図があるのではないかということでございますが、これは全くそういうことはないと申し上げざるを得ないし、結果的にもそういうものではなかろうというようにお答えいたします。
  49. 増本一彦

    ○増本委員 四十七年と四十八年の一年間で、都市銀行でふえているのは大体三兆九千三百七十三億なんですね。ここで五千億吸収するというわけですから、ほぼ八分の一の均てんはできるという結果になるわけです。だから、そういう道を切り開くということになると、あとまた吸収された資金をどういうように使われるかという問題ともからめて、たいへん重要な問題だというので指摘したわけですが、これはあとのどういうように締めていくかという問題とあわせて、さらに質問を移していきたいと思います。  一兆五千億円くらいのお金をこの預金で吸収するというお話でしたね。政府は、従来からやってきている金融引き締めのワクの中に入るものだからだいじょうぶだ、こういうようにおっしゃるのですが、これだけのお金を吸収して、その結果、特に大企業向けにさらに金が流れやすくなるということのないようにするために、この預金で吸収した段階で、これだけ個別にということはともかくとして、特別の手だてをお考えになるかどうか、その点はいかがでしょう。
  50. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず一兆五千億ぐらいではなかろうか、推察は非常にむずかしいが、一兆から一兆五千億ぐらいだろうと申し上げたのは、地方銀行が三千億ということが固まりますと、まずその辺のところで一兆、残りが郵便局、農協等でその間ぐらいになるだろうということを申し上げたわけでございます。  それから、それは受け入れ額でございまして、純増額にぴたりといく数字ではないということは、おわかりいただけるだろうと思います。どれだけが定期預金から振りかわるかどうかという問題も、一つあろうかと思います。  それにいたしましても、いまお話しのように、私どももこれで新たな資金吸収をねらうわけでございますから、資力が増加するということは当然だろうと思います。それを何らかのかっこうの歯どめを考えるべきではなかろうかという御質問は、私もそれなりによくわかるわけでございますが、何ぶんこの五千億なら五千億というのが、最初にぼこっと集まる性質のものではございませんで、一年間の計画であるということからいたしますと、月を追ってこれの変化が出てくるということであるだけに、やはり金融調整という中で、具体的に申しますと、窓口規制という問題の中で貸し出しワクを押えていく。そうしますと、先ほど先生が御指摘になりましたように、預貸の関係が変わることを通じて、日本銀行との金融調整が改善されるかっこうになるという形でやっていくべきではなかろうかと考えております。
  51. 増本一彦

    ○増本委員 ところで、せんだっての委員会で大口の融資の実態を局長は明らかにされましたが、大口融資に対する規制を実際におやりになるのかどうかということと、やるとすれば、いまどういう方向で、どういう内容でおやりになろうとしているのか、このことをひとつ明らかにしていただきたい。
  52. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 大口融資規制という問題は、私どもとして古くて新しい問題であるだけに、先ほど来の経済安定成長への転換というこの機会に、ぜひやりたいと考えております。  ただ、幾ぶん釈明になりますが、戦後二十数年の経済の運営の過程でできてきた秩序を、これからそういう面から変えていくわけでございますので、短兵急という形にはなかなかいきにくい性質のものであろうかと思います。特に、大口融資の相手先の大部分が商社であるという問題が一つにございますと同時に、その商社かなりの部分が、中小金融の形でかかわり合いを持っている。それの当否は別といたしましても、現実にはそういう姿になっておるということを考えますならば、非常に計画的と申しますか、現実的な方法で考えていくべきではなかろうかと思います。ただ、従来の大口融資というものはきわめてよろしくないといういわば道徳的説得を続けておるだけでは、経済の変化に伴ってまたあと戻りいたしてまいりますので、そういうあと戻りしないようなやり方をまず第一にとって、計画的に現実的な方法で進めていくべきではなかろうか。しかし、この機会にぜひその一歩を踏み出したい、かように考えております。
  53. 増本一彦

    ○増本委員 おやりになるというのはわかりましたけれども、ではどういう内容になるのか。せんだっての委員会では、自己資本の二〇%というところで線を引いて、それをこえている企業について報告されましたね。これが一つの線になるのかどうか、あるいはもっと別の手だてをおとりになるのか、この点はいかがなんでしょう。
  54. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 現在そういうことも含めてもちろん研究しておるわけでございますが、一つには、金融機関というものは大口に貸してはならない、融資を分散すべきであるという一つの理念の上に立っておることでございますと、どうしても、自己資本というものを基準にするか、あるいは貸し出し額を基準にするか、あるいは預金の大きさを基準にするかというような幾つかのものさしが考えられると思います。  ただ、これは国際的にもそうでございますし、またわが国の場合にも、歴史的にもやはり自己資本というものが一つのものさしにならざるを得ないのではないかと思います。現に、相互銀行信用金庫について自己資本の二〇%という規制をやっておるのも、そういうところからでございます。そういう意味では、自己資本の何%ということで、自己資本を基準にするという考え方がまず最初に出てくるだろうと思いますが、先ほど申しましたように、自己資本の二〇%ということにいたしましても、なおかつそれだけでは足りないと申しますか、着実に計画的にそういうところに持っていくためには、それだけではなかなかうまくいかないのではないか。さらにその他の基準というものも考え、あわせ並行してやっていくことも必要ではなかろうかということで、現在検討中でございます。
  55. 増本一彦

    ○増本委員 大口融資規制をするというのは、単に金融機関あり方という理念の問題だけじゃないと思うのですね。今日の異常な事態というのは、やはり物価問題でしょう。そして、しかも局長の報告によると、いままでもそういう大口の融資は、商社が大部分である。こういう商社などを通じて買い占め資金に使われる。こういうところを押えていかなくちゃならないということも、一つ金融政策の上からいって、物価問題と関連して、やはり問題の発想一つがあるというように思うのですよ。ですから、いま三〇%以上借りている企業もあるということなんで、これを一挙に全部そこまで引き戻すということになるとショックが大きいからということだけで、時間がいつまでもたっていってしまうと、いまやらなければならないそういう手だての時期を失してしまうというように思うのですね。だから、大口融資規制といっても、やるやるとおっしゃっていても、しかし、まだ方法も手だても固まっていないということになると、このままの状態で、さらに金融の問題を通じて、物価高をそこからささえていくようなことになりはしないかというように思うのです。  そこで、もう一つの問題は、自己資本の二〇%とかいう線で引けば、今度やはり大手の銀行資本の大きい銀行がどんどんほかのところに進出して、小さい銀行を駆逐して系列化を一そう進めていく、新しい系列融資のひもが生まれてくるという問題もあると思うのです。そういうところの手だても考えておやりにならなければならないと思うのですが、もう少しその辺のところを含めて、具体的にお話を伺いたいと思います。
  56. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 大口融資ということばは、いわば私どもの言っておる大口融資という意味で申し上げた場合と、それから具体的な現実の問題としての商社とかに対する貸し出しをどうするのだという問題と、多少重点の置き方が違うようでございますので、その辺のところにつきましては、むしろ日本銀行窓口規制等を通じまして、具体的に商社にワクをかぶせるということでやっていくのが一番実際的ではなかろうか。  もう先生御承知のように、一つには商社の振り出した手形の買い入れ限度という二十二の大企業に対する規制をやっております。それから、窓口規制の中で、さらに商社に対する貸し出し規制もやっております。私どもは、これをもって十分であるかどうかということについてはなおかつ研究し、具体的な当面の問題として、いまの御指摘のような事態に対処していくべきであろう、こう思うわけです。問題はむしろ、それとは全然無関係とは申しませんが、より長期的に一つ金融機関と産業との関係というものを、もう少し正常化できないかという側面から考えていく面として、こういう規制方法があるということを申し上げておるわけでございまして、これをもって今日の金融政策のすべてであるというようなつもりは毛頭ございません。
  57. 増本一彦

    ○増本委員 日銀の窓口規制によって商社のいろいろな買い占め資金が流れるのを押えていく。しかし、その商社自身はやはり金融業みたいなことをやって、だぶついている金を預金しないで、ほかにどんどん回していくというような実態もあるようですね。商社金融についての実態は、大蔵省としては調査をされているのでしょうか。
  58. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 商社金融の実態については、現在得られるものといたしましては、公取があれだけの時間をかけ、人員を投入してやったものというのがやはり一番正確と申しますか、信頼すべきものではなかろうかと思っております。私ども金融機関を通じて商社というものの金繰りを調べるにいたしましても、はなはだ隔靴掻痒の感がございます。もうこれは御説明申し上げるまでもなく、総合商社というものが一つの大きな金融能力を持っており、一つ金融力になっておるということから、銀行との関係一つ一つのプロジェクトについて借り入れを申し込んでくるというかっこうではなくて、その組織の中の資金のしりを金融機関に仰ぐというような形で行なわれておるのが実態でございますので、その膨大な総合商社資金の流れについて、詳細に金融機関を通じて調べるということは非常にむずかしいと考えております。
  59. 増本一彦

    ○増本委員 でも、六大商社を見ましても、それぞれの商社都市銀行がみんなたくさんの株を持ってくっついているのですよね。たとえば伊藤忠商事は住友銀行と第一勧業銀行がそれぞれ四千六百六十四万株ずつ持っておる。丸紅は富士銀行が四千八百万株、三井物産は三井銀行が三千六百八十一万株、三菱商事は三菱銀行が五千二百五十九万株、みんなたくさんそうやってくっついているわけでしょう。それで、全体の資金の足りないところのしりだけ持ってきて、ここのところでやるんだから、それの貸し借りだけを押えていけということが日銀の窓口規制だということだとしたら、公取で四十七年のあの実態が明らかになった今日、そういうものについてどういう手だてをとるかということは、もう一つ都市銀行を通じての具体的な行政指導の上でも緊急に手だてがとられてしかるべきだというように思うのですけれども、その点はいかがなんでしょう。
  60. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 比率そのものはもう御承知のように、独禁法の中で一〇%以内ということでございます。それにしても大株主だから、その株主を支配して調べればどうかということ、あるいはその株主としての能力を発揮すればどうかという問題かと思います。もちろん、それについても全然やれないということは申し上げたくはございませんが、それにしても、何と申しましても限界があるということでございます。やはりそういう商社そのものを直接監督する形でもない限りは、それについてのはっきりした実態ということを承知することは、非常にむずかしいと考えております。もちろん商社も借り入れ者でございますから、その点からの貸し出しの指導については、私どもはできるだけのことはしたいと思っております。
  61. 増本一彦

    ○増本委員 いまの金融引き締め政策の中での柱は、不要不急のものには貸さないということが前提ですね。ところが、商社の場合には、いろいろなプロジェクトにしてもいろいろなお金を運用して、足りない部分を帳じりだけ持ってくるわけでしょう。その中には不要不急のものも何でも込みになっていて、ただ帳じりだけ持ってきて貸せというやり方になっているわけですから、幾ら日銀の窓口規制だといっても、窓口規制そのものが具体的でないわけですね。そういう全体の問題を金融の面からもやはり点検し、チェックをする、そういう個別的な指導というものもやるべきじゃないでしょうか。たとえば、不動産関連融資についての窓口規制ですと、これは土地を買うんだということでずばりきまっておるわけですね。だから、これはいかぬとかどうだとか、指導の内容としてはっきり締めることができるわけです。ところが、商社の場合には、全部込みになってきて、その足りない資金の足りない部分だけ貸せと言ってきて、そのときの窓口規制なんというのは、結局、中身はあまりないわけですね。ワクだけでどうするかという問題だけになってしまうわけでしょう。ここいらのところを具体的に、個別的な手だてというものをその中でとっていくということができないのか、この点はいかがなんですか。
  62. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 総体的な問題として、もちろん言ってくれば貸すというようなことを、毛頭しているわけではございません。結局いま御提起の問題というのは、選別的な規制というものと量的な規制というもののかみ合わせの問題だろうと思います。どちらか一つで完全を期し得るものでないわけでございます。特に事柄が金融ということになりますと、水と同じで振りかわりが行なわれやすいということからいたしますと、両方でやっていかざるを得ないのではなかろうかと思います。  一つは、手形に着目した規制と、それから貸し出しワクに着目した規制をやっております。私どもとしましては、もう一つは業種としての卸売り業、中小企業を除いた卸売り業ということになりますと、商社が入ってくる、それで規制をしていく。それからあとは、確かになかなか具体的な例示問題として基準をつくりにくい問題ではございますが、投機でございますとか、買いだめ資金でございますとか、あるいは土地というようなものに回ると思われる融資はやめてほしい、こう言っております。これがいま申し上げました資金のしりだけが来るじゃないかということとどうかみ合うのかという御意見だと思いますが、その中でも担保にとるべき手形なりを見て、できるだけそういう選別をしてもらうようにということで指導しておる。要するに、明確、具体的な基準というものでなくても、両方のやり方でやっていけるのではなかろうかというように考えております。
  63. 増本一彦

    ○増本委員 持ってきた手形でチェックするとおっしゃっても、商社なんかの場合には、たくさんの手形がいろいろなところから来るわけでしょう。そのうちから選べばいいわけですからね、担保に使う手形はこれこれだということで。だから、そういう出されたカードだけ見てそれできめるということでは、締まるべきものも締まらないのじゃないだろうか。だから、もちろん量的な規制と同時に、その内容についての個別的な規制にも、やはりもっとメスを入れる必要がある。もし大蔵省だけでできないのだったら、こういうものこそ通産省と一緒になって共同しておやりになるとか、その辺のところのやり方も、もっともっとくふうされてしかるべきだというように思うのですが、そういう政策方向の問題ですから、いまの議論の上に立って、ひとつ政務次官からお答えいただきたい。
  64. 中川一郎

    中川政府委員 大事な問題でございますから、大蔵省としても過去において真剣に検討し、現在のような選別融資、窓口規制というようなことでやっておりまして、かなり効果をあげておる。今後とも経済の状態、商社の動向等を見きわめた上、強化すべき状態になれば強化をしていきたいということでございます。
  65. 増本一彦

    ○増本委員 政務次官かなり効果をあげているとおっしゃるけれども商社について一番はっきりしている正確なものは、公正取引委員会の報告だということを、先ほど局長言ったわけですよ。あれは昭和四十七年の商社の事業活動なんです。四十八年、それからその上に立って今日どうするかという点では、実態ということになると、その寄るべき足を踏む踏み台そのものが、商社の問題については実態がないといってもいいと思うのですね。ですから、こういう商社の問題について、内容と量と両面から規制する。内容の問題については、金融だけでは入れないのだったら、通産省とも協力してやるべきではないか。その点についてはおやりになるのかならないのか、このことだけ答えてください。
  66. 中川一郎

    中川政府委員 御承知のように、通産省は業界保護の立場にありますし、やはり商社といえども悪い面は悪い面として規制していかなければなりませんが、やはり日本における産業活動の重要な地位を占めておりますから、それなりの使命、国家的使命もありますので、銀行行政は銀行局においてできる範囲内のことをやっていくべきだ。  繰り返して申し上げますが、資金量なりあるいは選別融資ということで個々にやっていて、十分とは言いませんけれども効果はあげられるという確信のもとに、今後とも御意見を承りつつしっかりやっていきたいと存じております。通産省と一緒になって立ち入り検査をしてというようなところまではいかないかと考えます。
  67. 増本一彦

    ○増本委員 通産省は業界擁護の立場だ、このことは私は印象深く伺いましたので、それだったらそれこそ、これはもう商社のほうは、通産省がどんどんやらせておいて、大蔵省ははじき飛ばされて困っておるというような事態になってしまうでしょう。だから、きちっとこの点は検討して、正しく実態にメスを入れるということで努力をすべきだということを申し上げて、次に移りたいと思います。  割増金金利の問題については、これまで各委員からいろいろな角度から議論がありました。私は、一つはくじ引きで三分の一の人は抽せんに当たっていわば得をするけれども、三分の二の人は通常の定期預金の金利よりも低い金利でがまんする。選択の自由はあるかもしれないけれども、しかし実態として不公正な結果が生まれるという、このことはお認めになると思うのです。  もう一つは、マクロ的に見れば、銀行は結局支払い利息総額には変わりはない。しかしミクロで見ると、銀行はお客さんとの間に一つ一つの個別の消費寄託契約の関係であるわけですね。その関係では、得をさせるお客さんと損をしてしまうお客さんと、二通りに分かれてしまうという結果になる。法律的にいえば、この金利というのは元本使用の対価です。同じ元本を銀行で使っていながら、支払う対価が偶然の条件によって違ってくる、こういう不公正な状態を、国がやむを得ないということで公認をするということ自体が重大な問題だというように私は思うのです。  本来、みんなにきめられた均一の平等な金利を結局一部の人が取ってしまって、ほかの人が損をする、それは運がよかったからだというような、あるいは当たらなかった人は運が悪かったのだということだけで済ましてよいのか、今日のいろいろ悪徳商法や便乗値上げ、買い占め、投機的な活動が横行しているようなこういう風潮のときに、このときにこそ私は、政府がまず姿勢を正して、そういうものを押えていかなければならないわけですから、偶然の条件にかかわらせて得をする人と損をする人をつくってしまうというようなやり方はやめる。むしろそういうことを押えていくことにこそ努力をすべきであるというように思うのです。これは政府の政治姿勢の問題だと思うのですね。そういう意味では、政府こそまずえりを正し、しっかりとした品性を持ち、道義的にもやましくないような態度をとるべきだと思うし、そういう立場から見れば、こういう法案はむしろ撤回をして、そうして投機的な便乗値上げやその他の悪徳商法を押えることにこそ全力を尽くすというところに進まなければいけないというように思うのですが、その点での政務次官のお考えをはっきりとお伺いしたいと思うのです。
  68. 中川一郎

    中川政府委員 この点につきましては、昨日来、非常に議論のあったところでございます。確かに当たった人はいいし、当たらない人はまるきり金利はもらえないというところからいくならば、射幸心をあおるものであり、よろしくないのではないかという意見が一方にあります。しかし、元本は返ることであり、一定のそこにはルールもありますから、この程度なら社会不安とかあるいは家庭に問題を起こすような悪の射幸心とまできめつけられない、すなわち許される範囲内の射幸心ではないか。本来ならば、こういう制度で預金を集めるということは正常のやり方ではありません。正常な金利を払って、そうして預金吸収をするということがたてまえでありますけれども、一方に、今日のようなインフレ、狂乱的な経済の状態を何としてでも鎮静をしなければならないという国家的使命があります。  そのために、財政、金融貯蓄、あらゆるくふうをしていまやっており、悪徳業者あるいは便乗値上げ等についてもそれぞれの法律をつくり、一生懸命対策を講じておりますが、一方、預金の吸収という面において、射幸心は入っておりますけれども、これは自由でございまして、正常な預金に来ることを何ら拒むものではありません。それはそれとしてあり、一方、金利はもらえない危険性もあるけれども、多額の利子がもらえるという一つの希望もある。そういう希望心をあおるというわけじゃありませんが、それにこたえてこういった制度を設けておくことも、現段階においては必要なことではないか。御指摘のように、これがルールになってしまって、預金が全部こちらに来るというようなことになれば、これはたいへんなことだと思いますが、五十兆からの個人預金のうち一兆そこそこが見込まれる程度のものでありますので、そう大きなウエートになるものでもありませんので、ぜひとも御理解をいただいてやらしていっていただきたいと存じます。
  69. 増本一彦

    ○増本委員 私は了解しません。あと、時間が来ましたので、特にこの預金が売り出されると、二カ月とか三カ月とか短い期間に発行する商品を全部売ってしまわなくちゃならぬ。そのために預金獲得の従業員の仕事というのも非常にふえる。現にボーナスのあの暮れの定期預金の売り出しのときにも、それぞれの銀行、特に地方銀行とか相互銀行とか信用金庫とか、都市銀行と違ってシェアの小さいところはいろいろな努力をする。それがみんな従業員にしわ寄せになってくる。たとえば外交を積極的にやったり、それから街頭でチラシを配ったり、あるいはある地方銀行の支店では駅前で一万個のマッチ入りのチラシを配った、そういうようなことが今度またこの預金の売り出しによって行なわれる。これは、新しい商品が出れば、必ずそういう宣伝から何から各支店ごとにやるわけですね。チラシの配布のときには、女子の従業員も含めて朝七時から来いというような通達を出して、たすきがけでやるというようなことまで実際にはやられてきているわけです。こういうことがこの預金によってまた行なわれるということになると、いまでもいろいろ各銀行の中で労働基準法に違反して労働基準監督署から勧告を受けたり、あるいは立ち入り調査を受けたり、いろいろな事案もあるわけですから、ここいらのところの歯どめを、これは労働省の所管だということだけでなくて、皆さん方の指導の中でも、銀行の業務のあり方として適切に指導していくということが非常に重要だと思うのですね。その点についての当局の心がまえ、お考えというものをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  70. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この割増金付貯蓄に限らず、金融機関の過当競争という問題については、仰せのように過当競争ということのないように、非常に厳格に注意してまいりたいと思います。特にこの割増金付貯蓄ということについては、この委員会においてもいろいろ御議論がございましたように、これがあまり大々的に宣伝をすべき性質のものであろうとは思っておりません。そういう意味からいたしまして、できるだけじみな形でやってもらうように金融機関を指導していきたいと考えております。特に、募集計画書というようなものを届け出さすことにいたしておりますので、もしもそういう非常に目に余るようなことがございましたら、その次の募集のときにはこれをやめさすとかいうようなことで十分配慮していきたい、かように考えております。
  71. 増本一彦

    ○増本委員 それでは局長、たとえば自分のところのホームラン定期だということで、駅前で一万個ぐらいのチラシの入ったマッチを配るとかこういうような宣伝というのは適当なんですか、適当でないのですか、この貯金との関係では。
  72. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この割増金付貯蓄にそういうことをやるということは、私といたしましてはあまり適当なことではないと思います。そういうことはやめてもらうように、街頭に出て宣伝するようなことはひとつやめてもらうようにしたいと思います。
  73. 増本一彦

    ○増本委員 それから、週休二日制がとられるようになってきている状態で、これまでも新しい定期預金が出ると、年末のボーナスの定期のときもあったのですけれども、週休二日で休んでいる人を呼び出して仕事をさせるというような、そういうようなこともあるのですが、こういうことも適当でないですね。
  74. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その辺の問題になりますと、一がいに言えない問題ではなかろうか。通常の銀行業務として、この問題だけにそれがいいとか悪いとかいう問題ではなくて、一般の何と申しますか、やはり勤務条件の問題ではなかろうかと考えます。
  75. 増本一彦

    ○増本委員 一般の勤務条件であればなおさら、週休二日で休暇の権利があるのにそれを呼びつけるというようなことは、銀行の業務活動一般としても適切でない、こういうことははっきり言えるのじゃないですか。
  76. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その辺は、呼びつけるというような実態なのかどうか、具体的によく見てみないと必ずしもわからないことだと思います。その辺はまさに労働協約の問題でもあろうかと思います。
  77. 増本一彦

    ○増本委員 私が言っているのは、呼びつけるというような事態がもしやられるようなことだったら、これは銀行の業務活動、営業活動そのもののあり方としても適切でない、こういうように思うのですが、そういうことに限定すれば、いかがお考えですか。
  78. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 一般的に割り増し定期貯蓄の宣伝活動というものをほかの貯蓄の宣伝活動以上にはなばなしくやるというようなことは差し控えてもらいたい、こういうように考えております。むしろそういう中で、当然判断してもらうべきことではなかろうかと思います。
  79. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、最後に、外務省に来ていただいていますので、外国銀行の問題をちょっと伺いたいと思います。  実は去年の十一月八日に、米軍の府中基地の中にあるチェース・マンハッタン銀行の支店に勤務している日本人労働者が、一方的に米軍によって入門を拒否されて仕事ができないという事件がありますね。この点については、外務省に調査を私もかつてお願いをしたことがあるのですが、なぜ入門が米軍によって拒否され、日本人労働者が就労の権利を奪われているのか、その米軍の言っている根拠、理由というのは一体何なのか、日本政府はそれに対してどういうような対処をしているのか、この点をまず御説明いただきたいと思います。
  80. 角谷清

    ○角谷説明員 外務省にかつてお問い合わせがございまして、先生の秘書を通じましてお答えはいたしておるはずでございますけれども、事実関係といたしましては、当該日本人従業員、これは昨年九月より米軍が府中の基地内に立ち入りを禁止しておるということでございますけれども、その理由といたしましては、基地内に立ち入るために必要となりますところの通行証というものを取得するために米側に出しました申告書、これの記述内容が事実と相違しているということが判明いたしまして、アメリカ軍はその通行証の取り消し処分をとったと、このように事実関係はわれわれ了承しておるわけでございます。  次に、それではアメリカ軍がそういうことをできるのかという問題でございますけれども、これは先生御承知のとおり、米軍の日本駐留に関連いたしまする地位協定というものがございまして、地位協定の第三条に基づきまして、いわゆる管理権というものが米軍に与えられておるわけでございます。この管理権の権利の行使の一つの態様といたしましてアメリカ軍はこういう措置をとったわけでございまして、法律的に申し上げますると、これは米軍の行ない得る権能を行使したものである、このように解釈をいたしておるわけでございます。
  81. 増本一彦

    ○増本委員 通行証の申告書の記述内容に事実と相違する点がある、こういうことですが、それはどこがどういうように違っているのかということは確かめていらっしゃいますか。
  82. 角谷清

    ○角谷説明員 これは事実関係は、われわれといたしましても必ずしもつまびらかにはいたしておりませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、第三条に基づきまする米軍の管理権というものの態様におきまして、これはアメリカ軍が管理権の行使としてとった一つ措置、このようにわれわれは了解しておるわけでございます。
  83. 増本一彦

    ○増本委員 これは米軍に管理権があるといっても、理由や根拠がはっきりしない。乱用かもしれない。しかも、われわれと同じ同胞がそのために仕事にもつけない、こういう事態でしょう。われわれ日本の民族の誇りを傷つけられているかどうかという性質の問題だと思うのですよ。米軍が管理権があって、入れないといったからもうあとは事実は確かめない、こういう姿勢は、私は大問題だというふうに思いますね。事実をお確かめになったんですか、ならないんですか。米軍からの報告のままうのみにされているのですか、どうなんですか。
  84. 角谷清

    ○角谷説明員 われわれといたしましては、アメリカ軍への申請書に虚偽の点があったということを聞いておるわけでございまして、われわれの仄聞いたしますところは、この申請書におきます記述の内容というものが事実と相違しておるということでございまして、この点につきましては、協定三条の権限の行使というように理解せざるを得ないわけでございます。
  85. 増本一彦

    ○増本委員 いいですか、どこがどういうように違っているかというのは確かめていらっしゃらないのでしょう。事実は聞いていらっしゃらない。しかも、事実と相違しているというのを仄聞したというだけじゃないですか。それで三条の管理権だ。管理権があるのはいいですよ、一般的な管理権は。その管理権の具体的な行使が乱用なのかどうか、そういうところまできちんとさせるということが必要なんじゃないでしょうか。少なくとも主権の一部はアメリカに移譲しているんだから、だから、その管理権が適切に行使されているのかどうかということは、日本の主権にかかわる問題でもあるわけでしょう。  伺いますが、この事実がどこでどういうように申告書で相違しているのか、そのところを米軍との間でひとつ詰めていただいて、そしてまた当委員会にひとつ報告をしていただきたい。その上で私の質問を続行したいと思うのです。いかがですか、返事だけしてください。
  86. 角谷清

    ○角谷説明員 日米の条約関係を申し上げますれば、アメリカ側といたしましては、その立ち入りを拒否したという理由を必ずしも明らかにする義務を負っておらないわけでございまして、これを裏返せば、われわれといたしましては、それをアメリカ側に要求する権限を持たないということになると思うわけでございます。
  87. 増本一彦

    ○増本委員 これは協定、条約の当事者同士ですから、そこで与えられた権限、与えた権限は適切に行使されるかどうか、その根拠は何なのかということをそれぞれ互いに明確にし合うということによってこそ、条約の適切な運用というものがはかれるんじゃないでしょうか。私はそのことを主張しまして、質問を終わります。
  88. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十七分開議
  89. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤観樹君。
  90. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 提案になっている割増金付貯蓄について、きょうの読売新聞は、金融政策の中で史上最低の無策の策である、とにかく物価がこれだけ上がっているのに、一〇%以上の金利もつけないで、三位まで当たる人を入れても十人に一人しか当たらない、こういったことでは全く史上最低の無策であるという表現になっているわけでありますけれども、その辺のことにつきましては、各委員からいろいろお話があったので、若干それに触れながら、二、三の御質問をしたいと思うわけであります。  一つ目は、この前からお話しのありましたように、大体十億円がワンロット、このくらいにしないと一千万円の賞金というのは出てこないということであります。十億円というと、都銀の大手はいいけれども、相銀なり信金なりあるいは地銀なり、こういうところになると、ワンロット十億円というのは一行では無理じゃないか。相銀なんかは全部相銀協会としてやるという話も聞いておりますし、あるいはところによっては都銀と組んでとの割増金付貯蓄を売り出そうというような話もあるわけでありますけれども、いわゆる預金のシェア競争というのは銀行にとっては死命を制することなんで、今度の割増金付貯蓄を売り出すことによって、そういったシェア争いにますます火をつけることになるんじゃないか、あるいはそういった系列化がさらに進むのではないか、こういうことが懸念されるわけでありますけれども、この辺のところは大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 一つ金融機関が単独でやっていこうというものはそれでやる。それから希望により、他の金融機関と組んでやっていこうという希望のものがありますれば、これはそれでもよかろう。あるいは業界相互銀行協会とか、信金協会とかそういうものが全体としてやっていく、それでもよかろう、こういうわけですが、いずれにいたしましても、過当競争になるということは避けなければならぬというふうに考えておるわけです。  それで、事業計画がきまりますれば、その計画を役所へ持ってくる、こういうことになりますので、それの審査等を通じまして、過当競争にならないように厳に指導してまいりたい、かように考えております。
  92. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 大体この審議で問題になっておりますように、三カ月間にかなりの額の預金を集めなければいかぬということで、いま大臣から御発言がありましたように、預金集めの過当競争がかなり激しいのじゃないか。結局、売れ残ったやつは個人ではとても消化できないので、法人筋に各営業店が押し売りをするというような形になって、いずれ結局、これはまた歩積み両建てというものを促進するような形になるのじゃないかというのが、これは私の意見じゃなくて、金融筋の意見からそういうことが出ているわけでありますけれども、その辺のところはいかがお考えでございますか。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 歩積み両建てにつきましては、こういう経済情勢のもとにおきましては、一般論といたしまして、これはそういうことにならないように指導を厳重にいたしておるわけでございますが、その歩積み両建てが割増金付定期預金という形において行なわれるということにつきましても、これはさようなことにならないように指導いたしたい、かように考えております。
  94. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この前の委員会で、質問するほうは、この割増金付貯蓄につきましては賛成する者はいなかったわけでありますけれども、そこで言われたのは、過剰流動性を吸い上げるという問題、この量を吸い上げるという問題と、もう一つ預金金利を上げる、つまり厚みの問題この二つの問題があると思うのですね。厚みのほうの話をかなりいろいろの方が詰めたわけでありますが、預金金利を上げるということは、いろいろの影響があってなかなかむずかしいということも、私もわからぬわけではないわけであります。この前の御発言で、新聞ではかなり大きく、一〇%以上の預金をいろんな方法で考えていらっしゃるということが出たわけでありますが、大蔵大臣の前々からの御発言を聞くと、なかなかこれは現実にはむずかしいのじゃないかというふうに、大体私は思っているわけであります。  そこで、いま都銀でいわれているのが、郵便局の定額貯金のようないわゆる定額預金というものを考えてもらえないだろうかということ、おそらく大臣もお聞きになっていらっしゃると思いますが、いろいろ要望があるようであります。大体六カ月以上のもので半年ごとに複利にしていって、郵政省との関係もあるでしょうから、たとえば五年ものとか三年ものとかいうことで、とにかく六カ月ごとの複利の定額預金というものは考えられないのだろうか。ただ、これにも若干問題があるわけですね。私が冒頭に申し上げましたように、いわゆる相銀とか信金なんかで非常に預金コストが高くなりますから、その辺のところの経営上の問題があるし、いわゆる長短金融長期と短期のものを分けるという方針からいきますと、これも若干いろいろ問題があろうかと思いますけれども、いわゆるこういった半年ごとの複利の預金というのは一体どんなものだろうか、蔵相の頭の中ではどういうふうに考えていらっしゃるだろうか、そこのところはいかがでございますか。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、預金の金利につきましては何かいい方法があれば考えたい、こうは思っておるのです。ただ、金利体系全体として底上げをするという形に自然なりがちなものですから、そこで経済全体に及ぼす影響、財政に及ぼす影響、そういうものを考慮いたしましてなかなかふん切りがつかぬ、こういうような段階であります。ですから、そういう弊害面につきまして捨象ができるといいますか、そういう研究ができますれば、私はそういうものを取り上げていきたい、こういうふうに考えているわけです。  ただいまの定額貯蓄を一般の金融機関においてもこれを適用するというような問題につきましても、ただいま申し上げましたようなワク組みでいま研究をいたしておる、こういうことでございます。
  96. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 研究をしているうちに結局目減りをした、庶民だけがたいへんな損をするというようなことでは、これはしようがないので、早いところほんとうに預金金利を上げる何らかの――これは私はほんとうに短期なものでもいいと思うのです。六カ月なり一年もので、ボーナスのときにかなり吸収ができたわけでありますから、そういった短期のもので、大蔵大臣言われるように短期決戦の一つの方策でありますから、若干一時期金利体系に大きな狂いが生じたとしても、これは前年同月比三四%なんという物価上昇というのは異常なことで、今後二度とあってはならぬことでありますから、それに備える意味で、短期のもので具体的な方法が何かできるのではないか。   〔委員長退席松本(十)委員長代理着席〕 いま私が定額預金というのをあげたのは、これも銀行間ではいろいろ問題がありますけれども、具体的な一つの方策としてあげたわけでありますので、いま国民は待っているわけでありますから、ひとつ早急に考えをまとめていただきたい、こう思うわけであります。  次に、割増金付預金と直接は関係ないのでありますけれども、私が冒頭に触れましたように、いまますます銀行の系列化あるいは吸収合併、こういうことがこれによって若干なりとも助長されるのではないかということを考えているわけであります。その中における相互銀行というもののあり方、これは大蔵大臣よく御存じでありますけれども、現在の体系が、都銀、地金を含めた普通銀行相互銀行信用金庫、信用組合、民間の金融機関ではこういう四つといいますか、五つと申しますか、段階になっているわけでありますね。ところが、相互銀行もだんだん発展をし、さらに昨年の法改正で預金の貸し出しのワクもふえ、あるいは外国為替もできるようになった。この意味では、性格的にはほとんど普通銀行と変わりがなくなってきているわけであります。しかし、相互銀行というものがいわゆる言われ方としては中小企業の専門金融機関である、こういう位置づけになっているのでありますけれども、制度としては、そういった中小企業専門金融機関としての一つの制度的な裏づけが何かあるのであろうかということになると、これは必ずしもそうはなっていないと私は思うわけであります。だんだん性格的には相互銀行というものが普通銀行と質が一緒になりつつあるわけでありますが、一体、今後、相互銀行というものをどういうふうになさっていこうと頭の中で考えていらっしゃるのか、その点はいかがでございますか。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 相互銀行は、一般の銀行それから中小企業専門の銀行という二つの系列の中で、どちらかというと一般の金融機関に近い立場の中小企業専門金融機関だという位置づけになってきたわけです。そういう一般の金融機関に非常に接着しておるという場面をとらえまして、その相互銀行の位置づけをどうするかといういろいろな御意見等もありまして、あれは昭和四十三年でありましたか、金融制度調査会にもおはかりいたしまして、どうするか、こういう検討をしてみたのですが、結局これは、中小企業専門金融機関として明確に位置づけをすべきであるという結論になって、そのとおりの方針でやっておるわけであります。でありますので、私どもはそういう立場に立ちまして、これからも相互銀行の指導にあたっていきたい、こういうふうに考えております。  それで、相互銀行の中に普通銀行になりたいというような希望を持っておる銀行も実はあります。ありますが、いまはとにかく希望のいかんにかかわらず、今日のこの経済情勢は非常に異常である、そういう際に、個々の金融機関の問題であるとはいえ、機構の改正というか、あるいは系列の変更でありますとか、そういうことが行なわれることは妥当でないというふうに考えまして、とにかくこの異常事態の間にそういう問題は取り上げない、こういうふうな方針でございます。
  98. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いまの大臣の御発言ですと、相互銀行の今後というものは、いわゆる中小企業に対する専門金融機関、こういう位置づけをなお一そうはっきりしていくんだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 そことおりでけっこうでございます。
  100. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ところが、それならばそれで何かそれなりの裏づけというものが制度上なければいかぬだろう。私は制度というものはやはりそういうものだと思うのですね。われわれがこの問題を考えるときに、中小企業に対して長期的に安定的に良質の資金をどうやって供給をするか、それと同時にやはり金融の効率化、中小企業という弱い立場にある企業でありますから、なるべくコストを少なくして安い金利のお金を貸していく、このこともまた大事だと思うのですね。この観点からいって、局長どうですか、いま普通銀行相互銀行を機構的、機能的に比べた場合、一体どういう差があるだろうか。中小企業専門の金融機関というけれども、一体、相互銀行におってどういうメリットがあるだろうか、その辺のところを、まずその前提からお伺いしておきたいと思います。
  101. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 多少事実にわたることでございますので、それでは私からお答えさせていただきますが、確かに組織の、あるいは法律的にはいわゆる恩典と申しますか、そういう意味のメリットということは与えられておりません。むしろやっておりますことは、現実には運用の面で、たとえば預金の準備率について特別の配慮をするとか、窓口指導についても中小企業対策の一環として配慮していくというようなことでございます。  問題は、中小企業そのものが国民経済的にももう半分の付加価値を生み出す実態がございまして、そういう意味からいたしますと、御指摘のように相互銀行というものと普通銀行というものが同質化せざるを得ない実態、これはむしろ中小企業の発達とともにそういうことになっておるという面もあろうかと思います。そういう意味では、特別に相互銀行を優遇するとかあるいは中小企業金融機関全体を優遇していくということは、組織の問題よりはむしろ運用の面でやっていくべきではなかろうかと考えております。
  102. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 確かに運用の面では、この金融引き締め下において、預金準備率にしてもあるいは窓口規制にしても、相手が中小企業であるということに立って、普通銀行の締め方よりもゆるかったということは私も認めるわけであります。ただ私は、制度とかあるいはそれの果たす機能とかいうものと、その業態あるいは経営、運営、これとはやはり若干違うのじゃないかと思うのですね。制度というふうに一つのかきねがある以上は、その制度の持っているよさというものが何かなければ、やはりそこにおるものは伸びていかないのだと思うのですね。  少し話を前に進めますけれども、こういった相互銀行がいいか悪いかは別として、普通銀行に同質化をしていく、質的にはほとんど一緒になっていく、ただし貸し出し先はおもに中小企業である、こういうところに立って考えていきますと、大臣の先ほどの御発言では、今後とも中小企業専門金融機関だという方向で伸ばしていくということでありますが、大臣もお聞きだと思いますけれども、具体的な例を申し上げますと、いわゆる青森県の青和銀行と弘前相互銀行、この合併の話が――合併と申しましても、異種でありますから、これは何というのですか、合併は合併ですが、普通銀行転換をするという話が、おそらく正式には大蔵省にまだ届け出が出ていないようでありますけれども、出ているわけですね。この場合には、地方銀行である青和銀行資本金が四億、それに対して弘前相互銀行のほうが十億、あるいは融資量についても、地方銀行である青和銀行のほうが五百四十五億、弘前相互銀行のほうが一千四百三十五億、いわゆる地方銀行相互銀行という観念が、従来からの観念はもう完全に逆転をしてしまっているところまで、相互銀行というものは発展をしているわけであります。この合併の話というのはかなり長く続いているわけでありますけれども、いろいろな推移でまだ正式には出されていないわけであります。大臣もお聞きになっていると思いますが、この合併については、まだこれは具体的にあがっていませんから、なかなか大臣としても発言はむずかしいと思いますけれども、いかがお考えでございますか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほども申し上げましたが、いま金融機関には、合併でありますとか、あるいは業種、業態の変更でありますとかそういう金融自体、仕事自体に関係のない問題で精力を使うという時期ではないのだ、こういうふうなとらえ方をしているのです。ですから、それだけの精力があれば、それは預金の吸収でありますとか、貸し付けの適正化でありますとか、そういう方向へ使ってもらいたい、こういうふうに存じます。したがって、いま相互銀行間の合併のお話でございまするけれども、この問題に対する態度としても、そういう方針で臨みたい。
  104. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その理由は、いまのような異常な経済情勢のもとであるからということですか。普通の経済情勢、まあインフレについてもある程度おさまって、そういった金融情勢、いわゆる公定歩合がどのくらいが適当かというのはまたなかなかむずかしい問題でありますけれども、いまのような異常な事態下でこれを考えることは労力的にロスであるし、もっとやるべきことがあるのじゃないか。つまり、この理由については、この異常な事態のもとでは、というふうに考えてよろしいですか。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。
  106. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いわゆる金融機関の合併転換法、これができたときには、合併なりあるいは転換、つまり、たとえば相互銀行なら地方銀行になっていくというようなことについて、大蔵省として、あるいは銀行局としては賛成である、あるいは前向きに考えるというような方向で、合併なり転換なりというものを前向きに促進をする、そういうように考えられた時期があったのじゃないですか。
  107. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 合併転換法というものができましたのは、もう御承知のように、わが国経済の効率化を背景として、金融の効率化という考え方があったわけでございまして、この合併転換法につきましても、その考え方といたしましては、そういう合併なり転換というものが経済の中で非常に効率的になる、それに資するものであるということ、さらに中小企業金融に支障がないということ、あるいは金融機関間の適正な競争関係が阻害されないように金融秩序が維持されることという条件が満たされれば、これについてはできるだけ考えていこう、こういう考え方でやってまいりまして、以来数年を経て、かなりの合併あるいは転換の事実があがっておるということになっております。
  108. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、いま言われた条件下においては、それほど基本的なことは変わっていない。特にいまの時期については、異常な事態であるから、銀行間の合併なり転換なりというものは、まあ慎重に考えてもらいたい、こういうようなことで、銀行局なり大蔵省としての方針そのものは、合併法ができた四十三年の当時と基本的な方針については変わっていない、こういうふうにお聞きしてよろしいですか。
  109. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 基本的には、やはりいまの事例でございますと、青森県における金融充実に資するかどうか、要するに、二つ金融機関がある場合と、それが一緒になることが中小企業金融中心とする金融の疎通に資することになるかどうかということが、一番の判断の基本であろうかと思います。同時に、それができるだけいろんな金融秩序に障害にならないようにというようなことをやはり考えなければならないだろう、こういうふうに考えております。したがいまして、今日のような異常事態が過ぎました後における金融の実情によって、その両者が二つあるよりは、両者が円満に合体することによってより効率的な金融を行なおうというのであれば、大蔵省としてはその観点に立って、判断をすべきことではなかろうかと思います。
  110. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 先ほど申し上げましたように、質的には相互銀行もほとんど普通銀行と同質化してきているわけでありますが、特に昨年の相互銀行法の改正によって、いわゆる貸し出し先が自己資本の一〇%から二〇%でありますから倍になりましたし、外国為替も扱えるようになったということで、制度的にはだんだん同質化をしていくわけでありますけれども、大臣御発言のように、今後とも中小企業の専門金融機関、これは非常に大事なことで、ぜひこれは進めていかなければいかぬわけでありますが、それについても 昨年相互銀行法を委員会で審議をしましたときに、参議院の大蔵委員会のほうで附帯決議がついておるわけですね。この一番最後に、「政府は、相互銀行等の中小企業専門金融機関における国、政府関係機関及び地方公共団体等の公金取扱業務の充実に努めること。」ということが一項目ついているわけであります。これについて、局長どうですか。これを受けて、具体的には何かそういったたぐいの公金を相互銀行にも扱わせるような処置が、これを行ないましたのは昨年の五月でありますけれども、今日まで何かあったのでございましょうか。
  111. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この問題は、私ども主として銀行行政に関係しておるものといたしましても、日本銀行あるいは関係の方面等にいろいろ話し合ってやっておりますが、ちょうどここに歳入代理店関係をやっております理財局からも来ておりますので、むしろそちらからお答えさしていただきたいと思います。
  112. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私からお答えいたしますが、昨年あの附帯決議をいただきましたことを契機といたしまして、さらに前向きに検討を続けております。具体的には、代理店の関係は、御案内のように、歳入代理店と一般代理店の二種類ございますが、特に歳入代理店につきましては、相互銀行店舗で歳入代理店をお願いしておりますものが比較的少ない現状でございますので、これを定期的にふやすような検討をいたしておりますが、その中で一そう相互銀行店舗につきましては、歳入代理店をお願いする数をふやしてまいるということを実際に進めてまいっております。  なお、一般代理店のほうにつきましては、官庁の会計事務の関係もございますので、その進め方につきましては、ただいま日本銀行と一緒に検討いたしているところでございます。
  113. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 大臣、私はこう思うわけです。いわゆる中小企業専門金融機関というならば、やはりこういった公的な資金についても扱わせて、つまり、あまり手間のかからない資金を中小企業専門金融機関に入れることによって、資金コストをなるべく安くして、それで現実に金利がどのくらいになるかわかりません。貸し出し金利が即下がるというものではないと思いますけれども、そういった手間のかからぬ公的な資金をこの相互銀行にも扱わせることによって、中小企業貸し出し金利を、もちろん金融というのは金利だけの話ではありませんけれども金利をできるだけ安くするような方策というもの、相互銀行を今後とも中小企業専門の金融機関として伸ばしていくためには、やはりこういった配慮がなお一そう必要なんじゃないか、こう私は思うのでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごもっともと思います。ただ、この問題は主として地方自治体の裁量によるものであります。政府がこれに干渉するわけにはいかないわけです。しかし、何かアドバイスを求められるというようなチャンスもしばしばあろうかと思いますが、そういう際には、ただいまお話しのような方向で対処していきたい、かように考えます。
  115. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その次に、農協の資金のことについて若干お伺いをしたいわけであります。  これだけ金融を引き締めてきたわけでありますけれども、いろいろ聞くところによると、農協関係のいわゆる系統金融のほうは非常に貸し出しがふえていて、昨年春から毎月毎月一千億から一千五百億ぐらいずつふえている。たとえば増加額で見ますと、一-三月が約三千億農協資金が出ているわけです。四-六が四千五百億、七-九が四千五百七十一億という膨大な量が出ておりまして、これは都銀に比べればそれほど大きな額ではない、都銀の約三分の一でありますけれども、長銀とか信託に比べると、それよりもすでに大きくなっているという、貸し出しの増加テンポが、大臣御存じだと思いますが、たいへん早いわけですね。これは農協資金というのが、金融引き締めのしり抜けの要因になっていたのではないか。片方では、金融を締めまして、預金準備率を上げる。そのときに、預金準備率を上げた額が一回に二千億あるいは三千億、こういった資金を凍結している片方で、農協資金のほうは、いま申しましたように、毎月一千億から一千五百億という額が増加額として出ていっている。この辺で私は、農協の資金についてもう少し監視体制を強めなければいけないのではないかという気がするわけであります。  そこで、まず農林省にお伺いをしたいのでありますけれども、農林中金、それから信農連、農協、この預金量または貸し付け残高、私は合計すると大体十兆近くになると思うのですけれども、こまかい端数は要りませんので、一番新しい大ざっぱな数字で、農林中金と信農連、農協の預金量がざっとどのくらいあるものか、お答え願いたいと思います。
  116. 堀川春彦

    ○堀川説明員 昨年の九月末現在の数字でございますが、単協におきます農家の貯金の総額が十兆四千億円ということでございます。単協から信農連に対しましては預金が五兆二千億円、それから信農連から農林中金に対しましては二兆円預金をしております。その他農林中金には信農連以外のものからも六千億円ばかりの預金がございます。
  117. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、これは単協のほうから信農連へ約半分上がっていくわけでありますから、合計は約十二兆ぐらいになるのかな。
  118. 堀川春彦

    ○堀川説明員 系統農協の信用事業はそれぞれ段階を持っておりまして、末端が単協、それから中間に県の信農連というものがございます。それから最上部に農林中金がございます。したがいまして、その預金を全部それぞれの段階のものを合計いたしますと、ダブリが出てくるわけでございます。したがいまして、農協系統の貯金と申します場合には、通常、私ども、農家から、単協から上がってきます十兆四千億ほどのものをさしております。
  119. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 わかりました。約十兆四千億、九月末でありますけれども、こういう数字でありますから、これはかなり大きいわけで、たとえば、都市銀行の総貸し出し額が約三十七兆円、地銀が二十兆円、信託が二兆六千億、それから相互が九兆、それから信用金庫が十一兆八千億という数字でありますから、農協の資金というのは、これから見ても私はかなり大きなウエートを占めていると思うのであります。そして、この農協の資金が不動産とか建設とか商社とか百貨店、私鉄の不動産部門、こういういわゆる五悪業種とこれを言うのだそうでありますけれども、ここにかなり流れていたというふうにいわれておる。したがって、都銀のほうあるいは地銀のほうで締めても、このいま申し上げました不動産にしろ、商社にしろ、建設にしろ、これが農協資金のほうにかなりたよっていたので、なおかつ手元流動性についてもだいぶ高い数字を示したのではないかといわれるのですね。そうとしかいえないところに私は非常に問題があると思うのですけれども、この辺の実態はどうなんですか。
  120. 堀川春彦

    ○堀川説明員 確かに先生御指摘のように、農協系統の金融が、一般金融調整の政策のもとで従来やや不徹底であったという批判がございます。そこで、昨年来、金融引き締めを強化するという中で、この金融調整政策に農協系統も協力すべきであるという考え方に立ちまして、大蔵省、農林省がこれを監督しているわけでございますから、信連段階につきましては、これは各四半期別の新規貸し出しのワクを新たに設定をいたしまして、そうして貸し出しの抑制をはかる。なお単協につきましても、単協は信用事業を行なっておりますのが約五千四百ばかりございますが、非常に数が多いわけでございまするけれども、これが数がたくさんございますために、まとまれば相当の量になるということが考えられますので、これにつきましても、現在、貯金量の大きな単協につきましては、大口の貸し出し、三千万円以上の貸し出しというものにつきましては、報告を徴しておるわけでございます。
  121. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それで、まず農林中金のあたりからいきますと、予算委員会に資料が出ているわけでありますけれども、そこに上位五十社の貸し付け残高が出ているわけであります。これを見ますと、上位五十社の合計が八千百二十八億円、うち、商社向けが千六百二億円、約二〇%を占めているわけでありますね。この商社向けの、この用途によりますと、飼料とか食品等、農林水産物、こういうふうになっているわけでありますが、たとえば四十八年になったらこれは特別多くなっているのですか。農林中金から商社に対しては、こういった用途に対してこのくらいの額というのは、これは絶えず出ていたのですか。どうなんですか、そのあたりは。
  122. 堀川春彦

    ○堀川説明員 関連企業に対する貸し出しの問題だと思うわけでございますが、商社に対します中金からの貸し出しも、農林水産業に関連する事業を営む法人に対する貸し付けということで、農林中金法に基づきまして、農林大臣、大蔵大臣、主務大臣の監督のもとに、その認可を受けて実行しておるわけでございます。金融が緩慢でございました四十七年度あたりから、確かにこういういわば系統の外におきます、しかし農林水産業に関連のある法人の、しかもどんな資金でもいいということでなくて、たとえばえさの原料の購入資金でありますとか、肥料の原料の購入資金でありますとか、そういう農林水産業に直接かかわりのあります資金につきまして貸し付けをしておるわけでございます。   〔松本(十)委員長代理退席委員長着席〕 しかしながら、四十八年に入りまして、非常に金融引き締めということが強く要請されてまいりましたので、その方針のもとに、私どもといたしましては、その関連産業貸し付けに対しますワクを大蔵省と相談いたしまして設定をいたしまして、そのワク内において運用いたしておる。その場合におきまして、しかし、ワク一ぱいに貸すという態度をとっておりませんで、中金といたしましても、日銀等と連絡いたしまして、ワクの中において極力貸し出しの適正をはかるという形で圧縮につとめてまいっておるわけでございます。
  123. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま御答弁がありましたように、私も法的にこれが間違って融資をしておるとは言ってないわけですよね。法的に、商社だって関連産業でありますから、農林中金法によって出ていることは間違いないと思うのです。それはないのですが、どうもいままで大蔵委員会の審議の中でも、都銀関係を締めることばかり見ておりまして、農林中金をはじめとするいわゆる農協系統金融機関については、額の多い割りにはどうもチェックが足りなかったのじゃないかという気が私はするのです。たとえば、銀行局長と農林省の農林経済局長の名で知事あてに農協資金規制について出されております。これについても、金融引き締めが始まったのは、一番最初は預金準備率ですか、公定歩合ですかをいじっているわけでありますから、その辺からずっと金融引き締めのことを考えてみますと、四十八年の九月二十二日に出た「農協の貸し出しに関する取り扱いについて」というのがおそらく農協に対する銀行局長あるいは農林経済局長からの通達の一番最初だと思うのですね。この辺のところで、大蔵省と農林省の共管だということもあるかと思うのですけれども、やはり農協の資金に対して手を打つのが若干おくれたのではないかという気が私はしてならないわけであります。  話を前に進めて、たとえばこの通達の中で、九月の段階で預金残高が五十億円以上の大規模農協に対して、一件当たり一億円以上の大口貸し出し先については報告をするようにというふうに、これは農林経済局長あてになっているわけでありますが、これは実際に報告が何件かあったのですか。
  124. 堀川春彦

    ○堀川説明員 これにつきましては、昨年の七-九以降の実績につきまして報告を徴しておりまして、その後毎月調査をとっておるわけでございますが、その発足当初は、先生のおっしゃったような貯金量並びに貸し出しの額についての基準を設けてやったわけですが、しかしながら、現在におきましては、さらにそれを強化をいたしまして、貯金量二十億、一件当たりの貸し出し額が三千万円ということで基準をきびしくして報告を徴しております。こういうことの結果と存じますが、月を追いまして非常に数が少なくなってきておる傾向がうかがわれております。
  125. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 時間がありませんので、少し先へ進みますが、この農協、いわゆる一番末端の単協といわれるものについては、一応原則的には一般企業向けの貸し出しというのはしてはいけないということになっているわけですね。ただし、組合員以外のものでも認めておるものもあるわけでありますけれども、ところが、どうもいろいろ聞いてみると、この使われ方が、個人名義を装ってそれの属している企業に貸したり、あるいは銀行が保証をつけて農協から資金を出すように銀行が手配をつけたり、あるいはその証書がなくて銀行が保証するからという念書をつけて貸し出しを農協に頼んだり、こういったようなことがいろいろといわれているわけであります。おそらく銀行局のほうとしても耳に入っていると思うのでありますけれども、こういった念書なりあるいは銀行が保証をつけて、農協の資金を本来出してはいけない企業に個人名という形でやっていることに対して、銀行個別に呼び出して実態を調査するとか事情を聴取するとか、こういうようなことは銀行局のほうの仕事だと思うのでありますけれども、この辺のことはやられたことがあるのかどうなのか、その辺はいかがですか。
  126. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 事実は先生御指摘のとおり、銀行が保証しておるというのが、去年の秋非常にふえた背景となっております。去年の秋おそく、その保証の銀行を調べまして、個別に呼び出して厳重に注意いたしました。したがいまして、選別融資の通達の中でも、保証というものは融資と同じに扱うということで現在指導をいたしております。ただ、そういうことの結果、念書というような、保証にも至らないような形での問題がなお起こってくるのではないかと思いますが、この辺のところは、ひとつできるだけよく注意して見てまいりたいと思っております。
  127. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私もいろいろ事情を聞いてみましたら、銀行局が農協系統金融機関に対してこれだけ通達なりを出したのは初めてだということのようでありますけれども、私は、大臣、こう思うのです。戦後の一時期を除いては、これほど経済が混乱をした時期はないわけで、再びこういうことがあってはならぬわけでありますので、ここで得た教訓というものを非常に重要に今後の経済運営に使っていく、これは非常に大事なことじゃないかと思うのです。その意味では、すでに私が冒頭お伺いしましたように、農協系統の資金というのは約十一兆近くに、たいへん膨大な額になっているわけであります。これは農林省と大蔵省の共管になっていて、農林省のほうでも金融課と農業協同組合課と二つにまたがっているというようなところもあって、金融の一元化ということから考えますと、これだけ大きな資金量を持っているものに対してやはり若干目が届かないところがあるんじゃないか。特に、五千何百という単協に対して、私もそれ以上よく調べていないのですが、統一経理基準になっているのかどうなのか、聞いてみますと、その辺もどうもあいまいのようだし、その辺からいきますと、いつもこうやって大蔵で話をしている人間にとってみますと、どうも少しゆる過ぎないだろうかという気がしてならないわけであります。この辺のところで、いまいわれておりますように、問題になっている商社なり不動産なり、確かに締めることは締めたけれども、若干手がおそかったんじゃないかという気がするわけなんで、その意味で、大蔵省としてもなお一そうこの農協系統の金融機関に対して目を配る必要があるのじゃないかということを、調べていくに従ってつくづく感ずるわけなんでありますが、その辺の御見解はいかがでございますか。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は佐藤さんのお話、全くごもっともと思います。今回の金融引き締め措置の中におきましても、この系統金融に対する区分がたいへん立ちおくれておった。また、その結果、いろいろ好ましからざる現象も起こったということも多々聞いております。そういうような次第にかんがみまして、いま政府委員のほうから申し上げたとおり、融資についての報告を聴取するという形を通じまして、珍しいことでありますけれども、農協系統の金融につきましても、これが規制を厳重にするということに乗り出したわけでございます。御説のように、今回の事態をただ単に今回だけのことにしちゃいかぬと思うのです。今後への戒めといたしまして、十分生かしていきたい、かような考えでおります。
  129. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ひとつそういった結論のように、今後の金融政策というか、金融機関に対する監督というものをしていただきたいと思うわけであります。  最後に、たいへん時間がなくなりましたが、これは予算委員会でも問題になって、大臣も御存じだと思うのですが、民間企業からいわゆる出向という形で、これは非常に身分があいまいなんでありますけれども、非常勤の公務員という形で各省庁に来ているわけですね。大臣も、大蔵大臣になられる前行政管理庁長官をやっていらしたので、その辺の事情はよく御存じだと思うのでありますけれども、とりわけ今度の数字のあがった分を見ますと、これは本庁だけの話でありますから、公社公団になるとおそらくまだまだいらっしゃるんだと思うのですが、銀行の出身がきわめて多いのですね。百十九名のうち八十四名が銀行、証券会社が三名、生命保険が七名、電力が七名ということで、とにかく銀行からの出向というのがたいへん多いわけであります。この出向という形になっている非常勤の国家公務員――これは非常勤の国家公務員かどうかもたいへん問題なんでありますけれども、この辺のことについて大臣は、行政管理庁長官をやられた経験からいって、いかがお考えでございますか。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 大蔵省におきましても、金融機関の者が九名調査員というような形で出向しておりますが、大蔵省で調べてみたところによりますると、何ら弊害を伴うものではない、こういうふうに申しております。つまり、政策の立案とか企画とかそういうものにタッチするのではなくて、もっぱら調査研究、また資料の作成というような事務に従事しておる。その辺は弊害の起こらないように十分配意しながらやってきておるようでありますが、この問題につきましては、そういうふうに弊害が起こらないような仕組みが何かでき得るかどうか、なお今後検討してみたい、かように考えます。
  131. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 総理府、いらっしゃいますね。ちょっと前提としてお伺いをしておきたいのですが、これは政府として、こういう方々はいわゆる非常勤の国家公務員であるという統一見解にはたしてなっているのですか。  それから、たとえば大蔵省にこの人たちを入れるときには、これはだれが辞令をいま出すのですか。  それから実態的には、これは大蔵省のほうから銀行のほうに、ひとつ手が足りないので来てくれと言うのですか、それとも、銀行なりいわゆる出向させる会社のほうから、こういう若いのを大蔵省なら大蔵省でひとつ勉強させてくれないだろうかというふうに言ってくるのですか。  それから、秘密を守る義務というのが国家公務員の方にはあると思うのでありますが、この辺のところは、そういった秘密を守るという意味で、国家公務員法の適用になるのかどうなのか。  それから、こういう人々は庁内では何と呼んでいるのですか。ことによると、何か部員だとかいう名前を聞いたこともあるわけですが、その辺のところはどうなっているのかということ。  それから、こういう人々は、いま大臣から若干お話がありましたけれども会議というものには参加できるのかどうなのか。いままでしていたのかどうなのか。  それから、ところによっては身分証明書をその省庁の名前で出しているということも聞いているわけでありますけれども、このあたりは一体どうなっているのか。  簡単でけっこうでございますので、いま言った点だけちょっとお願いいたします。
  132. 藤井良二

    ○藤井説明員 お答え申し上げます。  まず第一に、非常勤職員かどうかという問題でございますけれども、実態を調べましたところ、各省庁におきましては、部員だとか調査員だとか、あるいは研修員というような形で、民間企業の身分を持ったままつとめていると申しますか、仕事のお手伝いをしていると申しますか、そういった人たちがいることは事実でございます。その身分関係がはっきりしませんので、来年度から非常勤職員という身分を与えて、これに国家公務員法を適用していくという形で考えたいということで、目下検討を進めております。非常勤職員になりますと、まあ若干の例外はございますけれども、国家公務員法が適用になるわけでございます。先生がいま言われました服務に関する規定、特に秘密を守る義務、それから信用失墜行為の禁止、そういった規定はすべて非常勤職員といえどもかぶることになると思います。  それから、非常勤職員の任命権者の問題でございますけれども、非常勤職員につきましては、各省庁がそれぞれ予算の範囲内で非常勤職員を任命することになっております。非常勤職員と申しましても、これは非常に種々雑多でございまして、たとえば夏休みのアルバイトで仕事をしてもらうというような非常勤職員から、責、顧問、参与というような方々の非常勤職員まで、非常に種々雑多あるわけでございます。この辺につきましては、いま申し上げましたように、各省庁がその予算の範囲内で任命するということになっております。したがいまして、いま先生がおっしゃられました企業のほうから要請があるのか、各省のほうから要求するのかという問題でございますけれども、非常勤職員となりますれば、一応任命権者が必要と認めて特定の人を任命するという形になろうかと思います。  それから、これは非常勤職員でございますから重要な会議には出席させていないと思いますけれども、その省庁の必要性に応じて、要務の実態に応じてやっているのではないかと思います。  それから、身分証明書につきましては、これは身分証明書に関する統一的な根拠規定はございません。したがいまして、われわれのような常勤職員あるいは非常勤職員も含めまして、それぞれ各省のほうでおきめになって発行していると思います。
  133. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで、具体的に大蔵省の例をあげてみますと、官房長いらっしゃると思うのだけれども、あなたのところに九人全部いらっしゃるわけだね。それが、銀行名は御存じと思いますけれども、興業銀行、東京銀行、富士銀行、住友銀行、三菱銀行、三和銀行、太陽神戸銀行、第一勧銀、東海銀行と、九人ともみんな銀行出身で、先ほど申しましたように、とにかく驚くのは銀行出身者がほとんどであるということと、それからこの九人の方は、大臣官房の調査企画課というところにいらっしゃるわけですね。この調査企画課というのは何をするところですか。
  134. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 官房におきますところの調査企画課は、国内、国外の経済情勢の分析でございますとか、大蔵省のいろいろな政策を出すところでございますけれども、そこに配属されておりますいまお話しの調査員は、先ほど来御説明をいたしておりますように、資料の作成でございますとか、そういった経済動向の調査とかいうことをいたしておりますので、先ほど御質問のございましたように、いわゆる会議、といっても広うございますけれども、いわば官房におきますところの会議とか各局におきますところの会議には、こういった人たちは直接は参加いたしておりません。もちろん自分がつくりました資料でございますから、それを課長に説明するのを会議といえば、そういう点ではそういうことをやっておりますけれども、いわゆる大蔵省政策立案という意味におきまする会議には、参加をいたしておりません。
  135. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 しかし、私は会議だけが大事だとは思わないのですね。われわれが結局ここで論議するときは、数字というものが一番大きな問題になるわけですね。その意味では、基礎的な調査なり研究というものがあがっていって、大臣官房の調査企画課でありますから、大蔵省政策なり何なりの基礎的なデータはここでつくられると私は思うのです。もちろん銀行局銀行局でおのおのあると思いますけれども、別に会議に参加をしないからどうのこうのということじゃなくて、かなり頭脳的な基礎的な部門を、これはいわゆる国家公務員といっても、身は会社、銀行にあるわけでありますから、そういう方に委嘱をするというのは、これは私は政府のあり方として正常でないと思う。ただ、これは二十何年間歴史があることは私も知っております。いまは時間がありませんからやりませんが、その意味で、前向きに考えるならば、はたしてこういう人がいなければ調査企画課というものは仕事ができないのですか、どうなんですか。
  136. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 もちろん、私どもの仕事につきまして、こういう人たちがつくる資料も非常に重要な資料でございます。それから、その資料だけによりませんで、本来の大蔵省の職員である者がつくる資料もございますし、また部外の資料を大蔵省の職員が読みましたり、またこういう人たちの調査員が読んだりする。総合的な判断をいたすわけでございますから、あながちこれらの人々がつくる資料だけでもって私ども政策を立案するということは当たっていないと思います。  今後のことでございますけれども、もちろんこういう人たちに調査員として調査企画課において勉強していただく、またその資料についてわれわれも大いに裨益するところもございましたから、そういう意味では、この人たちの力というのは、現在の調査企画課の中でも非常に有力であることは間違いございませんし、今後もそういう力が必要であるということは確かでございます。  しかし、それにつきましては、先ほど来御指摘のように、いろいろ注意しなければならない点がございます。あるいは身分上の監督とか、あるいは秘密を守る点についての徹底とかいうことで、先ほど総理府からもお話がございましたように、非常勤職員というような資格をもって、そういう点は十分注意をしてまいりたいと考えております。
  137. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 資料を、ここから出たもの、あるいはこの人たちがつくったものだけを使っていると私も思っておりません。膨大な資料があるわけです。ただ、問題になるのは、たとえばわれわれが質問する中で、いろいろ企業の個人名をあげられない、あるいはどこにどういうふうに融資をしているかあげられないということで、この委員会と政府との間でいろいろ問題になるわけですね。しかし、こういう方々というのは、もとの資料を、あるいは銀行がどこにどれだけ融資をしているとか、たとえばの話ですよ、銀行のデータをおたくがすぐ使うかどうかは別として、そういったもとのデータは、とにかく大蔵省としては、権限内のことは入ってくるわけですね。国会には出せないけれども、そういった非常勤公務員という形で、あるいは勉強するというような形で、あるいは研修するというような方々が、その資料が見られる。これは私は正常な状態ではないと思うのですね。しかも、問題になるのはみんな銀行でありますから、それなりに、大蔵省のこれからやろうとしていること、あるいは何をどういうふうに考えているかということを、これは当然一般国民より早くわかり、それがやはり親企業へ抜けていくということに当然なると私は思うのです。これは昨年の六月に参議院の内閣委員会でもたいへん大きな問題になって、いろいろな事例があげられているのは御存じだと思います。その辺のところで、もう時間がありませんのでやめますけれども、大臣、いかがですか。たびたび私が言うように、大臣は行政管理庁の長官もやられて、どう見てもこれは――いま中橋官房長からもお話があったように、きわめて有能のように聞いておりますし、この人がすぐぽっとここから抜けたら、国では即座に仕事に影響があるかと思います。しかし、いわゆる公務員じゃない方に、しかもきわめて利害関係の深い銀行出身者に、いまのような形で、業務をさせておくというのか、してもらうというのかわかりませんけれども、しておくというのは、私はやはり正常な形じゃないと思うのです。この点、いかがでございますか。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘の出向者の問題につきましては、国会でもしばしば議論があり、またきょう佐藤さんからもいろいろお話があったわけであります。そういういきさつにかんがみまして、政府のほうでは一つの方針を出しておるわけです。それは、この出向者の状況を調査いたしまして、これを廃止いたしましてもそう支障がないというものにつきましては、これを廃止する。それから、存置を必要とするというものにつきましては、非常勤公務員という格づけをいたしまして、公務員法によるところの秘密を守る義務その他の制約を受けるようにいたします、こういうふうに四十九年度からいたそうというふうになっておりますので、そのようにいたしたいと考えます。
  139. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最後に、もう一点お伺いをしておきたいのは、具体的に、大臣がいま言われたのは、一般論なのか、他の省庁までのことなのか、大蔵省のここにいらっしゃる方なのか、その辺のことと、もう一つ、私がこの問題についての冒頭で申し上げましたように、残っているのはほとんど銀行出身者なんですね。これはだんだん国会で問題になって、減っていったことは私も知っているのですが、残っているのはほとんど、私が先ほど数字をあげましたように、銀行出身者である。このあたりは、銀行局長もいらっしゃるけれども、やはり考えていかなければいかぬじゃないか。銀行を監督する立場にある大蔵省に、これはそれほど力を持っているとは私は思いませんけれども大蔵省が何を考えているかということがすぐわかる出向社員がいるというのは、どうもおかしな状態である。しかも、他の省庁に、経済企画庁においても通産省においても、きわめて銀行の出身者が多いということは、やはりいろいろと問題があるんじゃないかと思うわけであります。その意味で、大蔵省は具体的にどうするのかということと、それから銀行に対して何らかこのことについて意見をかわす必要があるんじゃないか。あるいは銀行を監督する立場にある大蔵省としては、何らかの措置をしなければいかぬのじゃないか。措置といっても、こちらから頼んだということでは措置ということはできませんから、やはり何らか正常化するように考えなければいかぬのじゃないか。その意思があられるかどうか、それをお伺いしておきたいと思います。
  140. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどの、出向者の必要でなさそうなものにつきましてはこれを廃止する、また、必要があって、引き続いて存置するものにつきましては、非常勤公務員として弊害の起こらないような措置をとる、こういうふうに申し上げましたのは、政府の一般的な見解でございます。  それから、大蔵省はいま九名おるわけでございますが、おそらくいずれも金融機関から来ているんじゃないか、そういうふうに思います。その金融機関から来ておる者について一体支障があるのかないのか、その辺につきましては、なおよく調査をいたし、支障があるというものにつきましては適切な措置をとりたい、かように考えております。
  141. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それから、銀行に対して、他のところへ出向……。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 銀行に対しまして他の省庁等に出向する、そのことにつきましてどういう態度をとるか、これにつきましてはいま直ちにお答えすることはちょっとむずかしいのですが、考えたそのあとでお答え申し上げたい、さように存じております。
  143. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 終わります。
  144. 安倍晋太郎

    安倍委員長 武藤山治君。
  145. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案、政府のお出しになっている法案中心にして、大臣の見解を伺いたいのであります。  第一は、大臣の提案理由の説明の中に、「最近の経済情勢に即応し、国民の堅実な消費生活の実現をはかるため」、目的はこれですね。「国民の堅実な消費生活」、大臣が期待をする具体的な消費生活水準あるいは金の使い方、そういうようなものに何か今日は異常なものがあるのでこういうものをつくるんだという意味だと思うのでありますが、大臣のお考えになる国民の堅実な消費生活の実現とはどういうことをねらいとしておるのか、それの全貌を明らかにしてください。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお話しの提案理由ですね、これは要するに貯蓄の奨励をはかることが重要である、こういうことを力説しておるわけなんです。貯蓄の奨励は、私から申し上げるまでもありません、今日、個人にとりましても、国、社会という立場にとりましても、非常に重大な問題である。そういう観点に立ちまして、貯蓄手段を多様化しておく必要があるというふうに考えまして、いろいろ御批判はあるようでございますけれども、あえて割増金付貯蓄というものの創設をお願いしたい、かように考えたわけでございます。
  147. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣のお考えでは、どのくらい貯蓄性向が高くなることを期待し――国民は金を持ち過ぎる、あるいはたんす預金をし過ぎるとお考えになっているのか。貯蓄性向をどの程度まで上げることが大臣のねらいなんですか。
  148. 福田赳夫

    福田国務大臣 貯蓄性向につきましては、国際的なパーセンテージの比較がありますが、これは調査、統計のやり方でまちまちな点もありましょうから、正確にこれを論ずることはできませんけれども、わが日本におきましては、貯蓄性向というものが比較的高いように感ぜられるような数字が出ておること、これは御承知のとおりであります。  そこで、いま問題になっておりますことは、総需要の抑制という問題で、財政政策はそういう方向でやっております。また、金融政策もやっております。それから、残っておる国民の消費についての問題、これは私はいろいろ考えてみておるのですが、いわゆる所得政策的な行き方というものは、とりたくないというふうに考えております。そこで、国民の自発的なお考えに基づくところの貯蓄、これがとにかく最も好ましい姿ということではなかろうか、そういうふうに考えるわけであります。これは国家、社会の今日の経済情勢に対して裨益するのみならず、つまり、総需要の抑制という面から見て個人消費の抑制ということになるのみならず、また、個人個人の家庭におきましても、貴重な生活の設計への材料となり得る、こういうふうに考えておるわけであります。
  149. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、日本は個人の貯蓄性向は世界一ですね。おそらくいま二一あるいは二二に近い数字になっている。ちょっと銀行局、ひとつ世界の工業先進国でもよろしい、十カ国で貯蓄性向はどんな状況になっているか、高い順から明らかにしてください。
  150. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 貯蓄率は、いろいろな見方がございますが、個人貯蓄率で申しますと、同じ時点でとりますと、一九七一年になりますが、日本が二〇・二%、アメリカが八・四%、イギリスが六・一%、西ドイツが一四・四%、フランスが一三・六%ということになっております。
  151. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、いまの数字でおわかりのように、日本は、これは七一年、現在は、この間銀行局にちょっと聞いたら、四十七年末あたりは二一・幾らぐらいにいっているだろうというのですね。貯蓄性向はさらに上がっているのですよ。日本の次に高いところの西ドイツでも一四・四%。これをさらに上げようというのですからね、大蔵大臣大蔵大臣はいま、国民の自発的な貯蓄が大いに好ましいのだと言われた。しかし、今度のはこれは自発的じゃないのだな、割増金というのは。何か投機の気持ちをあおるような、この預金で、どうだ、一千万円の夢を買わぬかという、夢を売るわけでしょう。そういうことまでやっていまの貯蓄性向というものをどの程度まで――いま発表になられた二〇・二というのは過去の数字でありますが、この数字がどの程度までいくことを大臣として期待するのかぐらいは、答える義務はあるでしょうね。どの程度まで持っていこうとするのか。
  152. 福田赳夫

    福田国務大臣 この貯蓄を創設いたしまして一体幾らぐらい新しい金が集まるかという問題になりますが、表面的には一兆とか一兆五千億とかになるということを銀行局長は言っておるわけですが、ただ、横流れがありますからね。そこで、それを差し引きますと、ネットは数千億ということになってくるのではあるまいか、そういうふうに見るわけであります。貯蓄総額の中においてそれがどのくらいのウエートを占め、そうして貯蓄率がどういうふうに変化するか、そういう数字の検討まではしておりませんけれども、つまり、ほかにもいろいろ貯蓄手段等もありますものですから、そういうものとの権衡等もありますから、なかなかそういう検討はむずかしいのじゃないかと思いまするけれども、とにかく今日のこの経済情勢を見るときに、政府もその財政面において非常にきびしい姿勢を出さなければいかぬ、また金融引き締めを通じまして企業の方面の節度というものも求めなければならぬけれども国民にとにかく貯蓄ということを通じまして御協力を願うということはまことに好ましい事態である、かように考えております。
  153. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 利息を払って、いわゆる蓄積手段として――貯金というのは金をためることなんだね。利息を生むということが貯金なんですね。これは利息を生まないのだよ。半分以上の人が損をしてしまうのですね。たとえば一年ものにした場合に七・二五だというと、七百二十五円の金利がつくわけなのが、ところが今度の場合には、つかない人がたくさん出てくる。あるいはかりに三%にした場合、普通預金の金利にした場合でも、損をする人数のほうが多いのだよ。だから割り増しじゃなくて割引なんだね。損をする人の立場に立ってみたら、これは割引貯蓄なんです。(「不当表示だよ」と呼ぶ者あり)不当表示だよ、ほんとうに。どうしてこれを割り増しと言うのか、私、理解に苦しんだのだよ。貯金した人の半分以上の人が損をするのに、割り増しの貯金だなんて言うんだ。これは国民を偽る表示ですね。これはやはり割引貯蓄と直さなければいかぬですね、大臣。私はこれが正直な表現だと思うのですよ。どうですか。
  154. 福田赳夫

    福田国務大臣 いずれにいたしましても、割引といえば元が減るということでありますが、これは元は減らしません。元は残っておるのであります。それに対しまして幸運な人は割増金がつく、こういうことから割増金と言っておるわけでございます。そういうことでございます。
  155. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、貯金というのは元だけを保存するためじゃないんだね。やはり果実を求めているわけです。あり得べき利益というものを追求しているわけなんです。そのあり得べき利益がなくなるのですから、これは減ることを意味するのです、大臣。いまのはやはりこじつけだね。どうも納得いかぬ。  まあそれはそれとして、かりに一兆円から一兆五千億円の金が集まる。銀行局長はそういう予想を踏んでおる。都市銀行五千億円ぐらい、地方銀行三千億円ぐらい、相銀、信金で一千億円ぐらいは何とか計画に乗せたい、こういうことを午前中銀行局長はお答えになったのでありますが、これは何カ月間でこのくらいの金を集めようというのか。  それともう一つ、いまも大臣おっしゃったように、横すべりがある。いまある預金を下げてきてこっちに切りかえるというのもある。そうすると、純増というのは一体このうちどのくらい見込めるのか。純粋に預貯金として乗っかってくるものはどのくらいになると予想されるのか、その辺ひとつ明らかにしてください。
  156. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず、一兆ないし一兆五千と申しますのは、募集計画を逐次固めてまいります金融機関のいわば積み上げで計算した数字でございます。その募集計画というのは、やはり一年間を通じてということで、何単位ぐらいなら無理なく消化できるかということで考えているようでございます。しかも、地銀とか以下は大体全部一本で共同で募集するというようなことでございますので、まずあまり違わないのではないかと考えております。ただ、これが実際の資金の吸収がどのぐらいになるかということは、非常にむずかしい問題でございます。たとえば、いわゆるシフトと呼んでおりますが、二年もの定期預金ができたときには、シフトがある説には四割ぐらいではなかろうかと見られる傾向があったわけでございまして、今回どの程度を考えるか、できますればその部分がシフトでなくて純増であるという割合が大きければいいわけでございますが、まあかたく踏みまして半分ぐらいの資金吸収ということではなかろうか。ただし、これも全く根拠のない推算でございますが、そういうふうに考えております。
  157. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは銀行局長、一年で一兆から一兆五千億円なんですか、それとも最初の売り出してから三カ月なら三カ月間に、いまの物価が狂乱状態であるから、近い期間で、少なくとも六カ月間ぐらいの間に効果をあげなければ、短期決戦の蔵相の決意にかなう結果にはならないのですね。だから、これは三カ月ぐらいで一応締め切るわけでしょう。そうすると、三カ月サイドで見た場合にどのくらいの資金が集まり、いま日本の個人預金というのは、一カ月にどのくらいずつ純増というのがあるのですか、一カ月に個人預金の純増分は。
  158. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 五千億といいますのは、確かに年間計画でございまして、最初におそらく一斉に売るようなことになるのではなかろうかと思います。その場合に、五千億全部は最初に出発するのではなくて、大体募集期間をいまお話しのように二カ月ないし三カ月の間に消化していく、それを年に六カ月定期でございますと二回ぐらい、一年定期でもやはり二回ぐらいではなかろうかと考えております。その辺のところはむしろまだ詰めてないようでございますが、最初の出だしにやはり重点がかかるのではなかろうか。そのウエートがどのくらいになるかは、ちょっとここでお答えするだけの資料を持ち合わせておりません。なお、個人の定期預金の増加額は、一年に大体五兆少々というところでございます。
  159. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、一カ月四千億円程度ですね。十二カ月ありますから、一カ月四千億円ぐらい個人の預金増がある。その預金とは全く別に、今度の割引貯蓄のほうですね、減価貯蓄、このほうの分をどのくらいまで吸い上げても生活水準というものを切り詰めなくて済むのか、それともいまの消費者というのは、大体いまの一カ月四千億円ぐらいの貯金をする余裕しかないのだ、しかも物価が、一年間に卸売り物価が三〇%も上がるのでは、現実には実質生活水準は低下しているのだ、だから四千億円の純増分プラス今度の預金分までは回らぬぞと、こういう判断も立つのでありますが、その辺の個人消費の実質生活水準と預金との関係を、専門家のほうはどう見ているのですか。
  160. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これはマクロで申し上げるといまみたいな話でございますが、もうこれは先生もすでに御承知の上での御質問だとは思いますが、万人が一様に買っていくということは非常に少ないのではないか。むしろこの前の御質問にもございましたように、市中銀行のアンケートで調べますと半々で、自分は買うという人と買わない人とが半々だというのが、預金者の中での数字でございます。したがいまして、これを個人貯蓄の今度はミクロの生活にこの金額をそのまま割り当てて計算するというのは、むしろ実情に合わないのではなかろうか。まあ個人差がございますし、また個人の人生観と申しますか、そういうこともございまして、競馬、宝くじといったところにもかなりウエートをかけて支出をする層もございます。この辺のところは、むしろ単に計算的に割り振るということは非常にむずかしいのではなかろうか、かように考えております。
  161. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 競馬、宝くじの場合は、局長、百円なんだ。宝くじ百円、東京都の美濃部さんがやっているから福田さんもやっていいじゃないか、こういう理論を言うのでありますが、宝くじの場合は百円で、子供のあめ玉代なんだね。百円で夢を、すなわち一千万円の夢を百円に託せるから、庶民が軽くぱっと百円出すわけですね。一万円となるとそうはいかないのだね。だから、宝くじと同じ発想でこの預金を考えるということは、私は断じて許せない。しかも、かりに一万円の貯金をして七百二十五円の金利を半分に減らされるとする。中身はどういうのだかまだ聞いておりませんけれども、どういう省令の中身なのかこれから聞くのでありますが、その七百二十五円で一千万円の夢を追う場合には、東京都の宝くじの場合は七枚買える。福田さんのほうの宝くじでは、一枚買って一万円の金利を全部捨てるわけですね。同じ一千万円の夢でも、なるほどこれは庶民の遊び程度の金だなというならまだわかるのだ。だから、宝くじと同列に考えることはいけません、一万円の場合と百円の場合と。  これは福田さん自身が一億総投機、一億総相場師というようなことも冗談まじりにおっしゃったことがありますが、そういう時代だから、それに乗っかっちゃって、迎合しちゃって、大蔵省みずからが一億総宝くじ的な方向に持っていくというのは、財政家として将来汚点を残すのじゃなかろうか。福田蔵相というのはやはり日本大蔵大臣として歴史に残る人物だと、そう思われつつあったのです、この間まで。まだこれからわかりませんよ。これからの真価は後世の史家がどう評価するかでありますが、今回の状況では、福田さんが登場したことによって何とかなるだろうと、国民の期待は非常に大きいのですよ。そういうときに、こういう宝くじ的な発想で預金が集まるだろうなんということは、財政、経済理論の通である福田蔵相のとるべき態度ではないのじゃなかろうかなと、こう私は思うのですが、御心境いかがですか。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は割増金付定期預金にインフレ問題のすべてがかかっている、あるいはその主力がかかっておるのだ、こういうふうには考えておらないのです。しかし、とにかくこの異常な事態を何とか早く押えなければならぬ、それにはあらゆる手段をここで動員しなければならぬ、こういうふうに考えておるわけなんです。  それで、割増金付定期というものも戦後のあの混乱のときにもかなりの役目をしておったと私は思うのですが、ああいうことを顧みてみましても、この行き方というものは、そう多くを期待することはどうかと思いますけれども、何がしかの効果はあげ得るのじゃあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。ただ、お話しのように、これが射幸心をそそるというような問題これにつきましても十分考えております。であればこそ、この割増金付定期の発売方法等につきましては十分の制限もする。それから、これをやる期間といたしましても時限的なものにするというような特別な配慮をしておるのですが、何せいまのこのすさまじい物価騰勢、これをどういうふうに静めるかということになりますと、とにかく少しでも役に立つという方法があれば、これを活用するということを考えるのは当然じゃなかろうか、かように考えております。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 政策というものは、この一つだけを見て是か非か、絶対かゼロかという議論は間違いだと思うのです。やはり比較しながら、何と何を比較した場合、よりどちらがベターであるかということが政策の選択の基準だと思うのです。では、これ以外に方法はなかったのか。たとえば法人預金と個人預金の分離をして、個人預金だけ期間を限って、物価がこう上がる時代だから利息を上げてやろう、しかし新規の預金だけだ、何月何日から何日までの間に預金をしたものについては、個人預金の金利を思い切って二一%に上げましょうと、別な発想が、やはりこういう相場師的な発想じゃなくて、もっと堅実な、消費者が期待をしているような、そして預金が横すべりじゃなくて純増でふえるような、そういう手だてというものがまだほかにあるのじゃないかと私は思うのですよ。そういう道をなぜ選ばぬのか、その道を選ぶべきじゃないか。この点はいかがですか。  前の愛知大蔵大臣は、おなくなりになる直前、ここで大蔵委員会で質問をやったときに、法人預金と個人預金の分離方針、武藤さんの意見に賛成です、検討しましょう、こう言ったことがあるのです。言ったことがあるのですが、ついにおなくなりになって、その後実現しなかったのでありますが、福田さん、それについてはどうお感じになりますか。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 何か、貯蓄手段、別にいろいろあるのはすっぽらかしておいて、そして割増金付定期預金だけをやるようなお話ですが、そうじゃないのですよ。もう貯蓄手段につきましては多様化ということで、あれやこれやと考えております。現に暮れなんかは六カ月定期、これをやっておるのです。またマル優の制度の拡大というようなこともやっておる。あるいは一般の金利も、とにかく二分も引き上げるということもやっておる。いろいろやっておるわけなんです。そのやっておる多様な貯蓄手段にもう一つの一様を加えよう、こういうことでありますので、決して他の貯蓄手段を度外視しておるというわけではございません。  それから、法人預金と個人預金を分離いたしまして利息を考えたらどうだというお話でございますが、これは諸外国なんかでは大体分離しておるようです。しかし結果は、武藤さんがおっしゃるのと逆でございまして、法人のほうには高くつける、そして個人の小口貯蓄性預金のほうは低くつける、こういうふうにしておるのです。それは結局、法人の貯金というものが大口で手間がかからぬ、こういうようなことであるのに反し、個人の零細な貯蓄というものは手間がかかるというようなことを考えてのことじゃないか、こういうふうに思いますが、さてわが日本において欧米各国のような仕組みをとるかということ、これは私は意味はないと思うのです。逆に、武藤さんがおっしゃるように、法人、個人を分けて、個人に厚くする、法人には低くする、こういうふうな考え方をとるだけのメリットがあるかどうかということを考えてみますと、愛知前大臣は前向きのお答えをされたというお話でございますけれども、私はいまここで前向きのお答えをするわけにはいかぬ、かように思います。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 世界各国の様子が逆だ――いま日本の場合、ノーマルな金融論争あるいは経済論争ができないほど、物価問題が異常なんですね。福田さんがおっしゃるように、狂乱なんですね。その中で庶民は、年間二〇%以上も物価が上がるということは――田中内閣になってから、前年の物価上昇分まで入れたら、一年半で三〇%も物が高くなっているわけです。でありますから、国民の実質生活水準というものは、たいへんな犠牲を受けているわけですよ。一万円が七千円の値打ちになってしまったのですからね、一年半で。預金をしろ、しろというからには、そういう物価で犠牲を受けている庶民大衆に、なるほどと納得されるような金利には上げなければならぬ、しかし、私はこれを無制限に上げろなどということは言わない。それはブラジルのように預金金利が一九%、貸し出し金利二一%なんという国は名誉じゃありませんから、ただべらぼうに預金金利を上げろなどというべらぼうな議論をしようとは思いません。思わないけれども、いまのように一年半に三〇%も上がって、生活水準を切り詰めねばならぬというときに、七・二五の年間預金金利というのは、あまりにも低過ぎる感じです。それを何らかの方法で埋め合わせる、そういうほうが先なんだ。景品つき夢を与える貯金で金を集めることよりも、そういうほうがより先に国民が期待をしている政策なんじゃあるまいか。  あなたは、まあいろいろ手段を講じておると言うけれども、いまの定期預金は二年ものだって七・五でしょう、一年もの七・二五でしょう。これじゃ検討しているといっても、いまの物価高から見たら三分の一じゃないですか。思い切ってやはりこの辺で何らかの――もし中小企業貸し出し金利に波及してたいへんで、できないのだというならできない、しからば何か別な方法として、こういうものも検討したが、こういうネックにぶつかる、幾つかそういうことを考えてネックにぶつかった案があるなら、ちょっとお示し願いたいと思うのです。ただ、努力した、努力しただけでは、納得できぬです。どうですか。
  166. 福田赳夫

    福田国務大臣 結局、貯金の利子を引き上げるという場合には、金利体系全体の底上げという問題があるわけですね。そういう問題が一つある。これは国債をどうするとか、一般の社債をどうするとか、そういう非常にむずかしい問題に発展するわけです。  それからもう一つの問題は、これは一体その利払いの財源をどうするのだ、こういう問題があるわけですね。これは金融機関に持たせるということになれば、金融機関はその財源を一体またどこから調達するのだ、貸し出しの問題、そういう問題が起こってくる。それはまた企業のコストにはね返ってくる、こういう問題になってくる。また、それじゃ政府が持ったらいいじゃないかという意見もあり得るわけですが、政府が持つ場合は、その膨大な財源を一体どうするのだ、公債だ、公債をそんなにこういう際に発行するということがはたしていいのか、こういう問題がある。  貯蓄ということだけを考えますれば、それは貯蓄金利を上げるということはこれにこしたことはありませんけれども、世の中は貯蓄だけでまた動くものではない。有機的な、総合的な関係にあるこの社会でありますから、全体としてのとらえ方をしなければならない。そういうことになるとなかなか――まあ貯金の金利を上げたらどうだというお話、これは耳ざわりはよろしゅうございますけれども、実際これはなかなかむずかしい問題なのです。  そこで、ずいぶんいろいろ考えておる。一般の金利もとにかく二%も引き上げてきておるわけなんです。それから、御承知のように、半年定期というようなものもやってみた。マル優というものもやってみた。いろいろやってきておるわけでありますが、さてこの上さらに何をするかということになると、私もその意欲は十分あるのです。意欲は十分あるのだが、まだ具体的にこういうことをやったらいい、こういう結論に到達しておらぬというのが率直なところでございます。
  167. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 銀行局長、いまの金融引き締めで、預金金利はさほど動かない、貸し出し金利はばんばん上がっている。銀行の決算見込みは、今後このままいくと私はたいへんな利益がでると思うのですが、その趨勢についてはいかがですか。
  168. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 公定歩合が四・七五%上がってまいりましたが、それにスライドして上がりますのは約一割ぐらいを占める標準金利、いわゆる大企業向けの金利はそのまま上げております。それ以外の金利というのはなかなか公定歩合が上がったからといって上がらない実態になってきておるわけでございまして、現在一番新しい時点におきまして、公定歩合を上げたのに対してどのぐらい貸し出し金利が上がりましたかといいますと、その追随率は、大まかに申しまして、実は四・七五%上がったわけでございますが、いままでの二・七五%上げた昨年末の実績で申しますと、大体二・七五%の四〇%くらい、いわゆる一・二%くらいが約定平均金利の上昇になっているというのが全国銀行でございます。相互銀行の場合でありますと、大体それが一六%ぐらいしか上がらない。公定歩合が上がりました幅の〇・一六、一六%しか上がっていないという状況になっておるのが十二月末の状況でございます。  それがさらにことしに入りまして、二%公定歩合を上げたために四・七五%の上げ幅になってどれだけ追随してくるかとなりますと、そうもう追随し得ないような状況にあるように思います。と申しますのは、やはり大部分の都市銀行は比較的上がる率が大きいわけでございますが、それにいたしましても、おそらく五割前後ではなかろうかと見ております。その他の金融機関は、やはり地域的にもあるいは取引企業が中小企業であるというところからも、なかなか上げ得ない状況になっておる、こういうことになっております。  一方、都市銀行の場合は貸し出し金利が上がります反面、資金需要が殺到いたしまして、けさも御議論がございましたように、預貸率が悪化し、オーバーローンというかっこうで取り入れ金利が一二、三%でよそから借りておるという状況になっておりますので、三月末の決算必ずしも好調になるかどうか、むしろ私はむずかしいのではなかろうかという感じがいたしておりますが、まだ断定的なことは申し上げられません。
  169. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は銀行局長と逆の見通しを持っている。あなたはこれは原則論の貸し出し金利引き上げ幅がほんのわずかだ、こうおっしゃっていますが、けさも私寝ている間に中小企業のおっさんから電話があって、ついこの間までは七・五で手形を割っていたのが九・五にされて、九・五だと思ったら、ほんのわずかで今度は一〇%だというのですよ。かりに中小企業で五千万借り入れがあって、常に手形でぐるぐる返してやっていった。そういう実例を頭に浮かべて考えてみると、一カ月の金利負担のふえた分というものはたいへんなものですね。このパーセンテージがちょっと二、三%上がるだけで、三、四十万ふえてしまう。そうすると、中小企業で一カ月三、四十万金利の負担がふえるということは、従業員を三人か四人置けるだけの金利になるのですね。これはたいへんなことなんです。  そういうような状態を考えると、銀行はまた相当利益が出るな、したがって、こんなけちな割増金付貯金だといって利息を減ずらないで、銀行が出したらいいじゃないですか。だって、一セット当たりの賞金というのは八千五百万かあるいは七千二百五十万か、B、C案いずれかでいっても、その程度で一セットできるわけでしょう。二十億円ぐらいの金が集まって、その賞金というものは八千五百万円か七千二百五十万円でしょう。これを銀行が出せないはずはないですよ。こんなもの十口くらい出したってへのかっぱです。二百億ずつももうかっているのだから、営業利益を出しているのですから。この際、銀行に吐き出させたらいいじゃないですか。   〔委員長退席松本(十)委員長代理着席〕 そうすると、銀行局長はおそらく、これは小さい銀行が困りますよ、信用金庫労働金庫の小さいところが、そういう負担をしたら経営内容が悪化してたいへんなんです、こう逃げる。そんなことはないですよ、あなた。七千二百万や八千万の賞金が出せないようなことはない。ほんとうに本気で国民大衆に損害をかけないで、しかも預金をごっそり集めようというなら、この際は少々銀行の利益を減らしても賞金は負担さすべきだ。それがほんとうの国民向けの割り増し貯金だ。私はそれくらいのことを福田さんは断行するのだと思ったのですよ。大蔵省はどの案でいくのですか。
  170. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いまの銀行が負担すべきではないかというお話は、私は一つ考え方だろうと思います。ただ、そういう形の特定の有利な貯金形態が、一般の定期預金より有利なものができますこと自身が、割増金付貯金というものにふさわしいものかどうかという考え方も、すでに御質問が出ておったわけでございます。二年間の臨時立法として制限的に考えますことからいたしますと、むしろそういう特別有利な預金というものは別の方法で考えていくべき性質のものではなかろうかという問題もあるように思います。  どの案でと申されますのは、省令の考え方のいろいろな具体的な話をお答えすべきことなのか、ちょっといま御質問の趣旨がよくわかりませんでしたので、この程度にいたします。
  171. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省からもらった資料では、一応金利ゼロの場合、利息を全然つけないで、金利部分を全部賞金に充てる場合と、三%ぐらい普通預金程度金利をつけてやる、残余の部分を賞金に回す案と、それからフィフティー・フィフティーで、七・二五を折半した金利ぐらいつけてやろうというのと、いろいろ考えているようですね。省令はどれを一応実行しようとしているのか。
  172. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 研究の段階ではいま申し上げましたような幾つかのバリエーションを考えておりました。しかし、現在のところ具体的な方法といたしましては、結局は二つ方法で、一つは通常通りの利子、定期預金の利息全部を割増金に充てるのが一つ。それからもう一つは、普通預金程度の利息をこえた部分を割増金に充てるというやり方と、二つでございます。省令としてはそういう方法を考えておるわけでございます。  と申しますのは、現在、郵便貯金法の中ではむしろ全額を割増金に充てるという法律の規定になっておりますので、一応両方を制度としては用意しておいたほうがよいのではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございまして、実際問題のこれからの行ない方といたしましては、むしろ第二の普通預金金利をこえる部分のみを割増金につけるという形が一般になるのではなかろうか、かように考えております。この辺のところも今後さらに研究してまいりたいと考えております。
  173. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、そこで決断をひとつお聞かせ願いたいのでありますが、まだ省令をつくっておらぬから、これからつくるのだという状況のようであります。大臣、全く利息がゼロということは、現下の情勢にかんがみ好ましくないと思うのであります。そこで、いま局長がほのめかした、まだコンクリートにはされておらぬがという、一般的な三%ぐらいの利息はつけて、残余の部分を賞金にやるのだ、こういう案でいくということを天下に発表できませんか。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 なおよく考えてみるということをお答え申し上げます。
  175. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、大臣の意見は、なおよく検討してみたい、利息は全くやらない、ゼロと、こういうこともまだあり得るという考えを持っているのですか。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのところは、まだそういうふうな考えでございます。
  177. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 利息が全くゼロだなんということになったら、もう断固としてこの法案を阻止するために私は戦う。そんな国民をばかにした――今日のこういう物価情勢の中で、金利をまるでゼロにして、そしてこういう射幸心をあおるような預金制度なんというものには、社会党は断じて賛成できない。  もう一回大臣に、いま銀行局長は三%ぐらいの金利をつけることが大体一般的ではなかろうかと言っているのですから、大臣に決断を迫っているのですから、局長こうしなさいと、あなたが決断すべきじゃありませんか。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 よく考えてみます。
  179. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 われわれのほうも、そうなれば、この法案についてはよく考えて審議を続行いたします。いいですね。これは上げない。断じて採決に応じない。その決断。省令の中身が出るまでは、本委員においては質疑を続行いたします。省令の中身を明らかにしてもらう。大臣がここで決断を示せないのだったら、それは省令の中身を見ない限り、国会は国民にどういうことで責任を持てるのですか。それはいかぬ。大臣もう一回、私の質問が終わるまでの間に局長と相談をして、この案でいこうやということを決断しなさいよ。  それから、先ほどこういう制度は、結局、大きい都市銀行が有利になって、都市銀行資金が大量に集まって、小さな金融機関は集めにくくなる、そういう傾向を持つという質問をしたときに、銀行局長は、そういうことはあながちないということを答えられた。大臣、どうお考えになりますか。
  180. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようなことが起こらないようによく行政指導いたします。
  181. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 起こらないようにというのは、まあこれはゾルレンだね。過去においては結果はどうか。過去にやった結果を見ると、こういう預金制度、昭和二十七年からずっと三十三年までの実績が手元にあるのでありますが、たとえば二十七年三月、全国銀行が四千二百三十一億円集めているのに対して、相互銀行は二百四十七億、信用金庫は百五十一億、問題にならない。二十八年三月期は全国銀行六千三百九十五億円、それに対して相互銀行三百七十二億、信用金庫三百四十三億、ずっとこれを見ると、最高の金額の三十年三月を見ても、都市銀行八千四百四十四億、それに対して相互銀行五百七十億、信用金庫四百八十七億、信用組合わずか十億、こういうことになるんですね。  この事実をみると、都市銀行に集中するようなことはしたくないという希望、願望はわかるけれども、過去の実績においては、残念ながら都市銀行集中型である。したがって、都市銀行は預金が貸し出しにマッチしていかない、オーバーローンであり、日銀から借りて貸し付をしておる実情であるから、都市銀行にもっと預金を集めるためにこういう制度をやるんだと勘ぐられてもしかたがないほど、過去の実績はこうなっている。実績は否定できませんね、大臣。実績まで否定なさいますか。この実績を今後はどう直すか、どういうところに主眼点を置くのか、ひとつ説明してください。
  182. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 お話のように、二十六年から八年ぐらいは全国銀行がウエートが非常に高うございました。これはやはり私考えますのに、二つの理由があったろうと思います。  一つは、相互銀行なり信用金庫が出発いたしましたのがやはりこの時点でございまして、まだいわゆる預金を扱う金融機関としてようやく新しい制度に乗ったばかりであったということが一つあろうかと思います。今日の相互銀行及び信用金庫の体力と申しますか、段階から見ますと、格段の違いがあるということが一つございます。  もう一つは、このころはいわば届け出だけで野放しにしておったということも一つあったろうかと思います。ようやくそれを指導するようになりましたのは三十年からあとでございまして、今回私どもがもしもこれでやっていきます場合には、募集計画書というようなものを事前に受け付けまして、御指摘のような事実が起こらないように十分配慮していきたい、かように考えております。
  183. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 まあ局長としてはその辺までしか答えられないでしょうね、過去の実績を否定するわけにはいかぬですから。指導をやるといったって、これはなかなかむずかしいです。結果的には、またこういう結果が出ますよ。だから、こういうものは早くやめたほうがいいですね。  時間がありませんから、最後に一つ大臣の見解を伺いたいのは、とにかく日本の六大商社、十大商社というものの大きさに実は私びっくりしたのであります。三井物産の四十八年九月末の借り入れ金が一兆千三百億円、三菱商事が九千八十億円、丸紅はちょっと落ちて六百四十四億円。それから貸し付け金が、これだけ銀行から借りていて、さらに商社がまた子会社やそれぞれに貸している金が三井物産二千二百九十七億円、三菱商事が一千百二十六億円貸し付けをしている。決算書を見ると、その受け取り利息及び割引料が、三井物産が一年間に五百六億円の利息収入、三菱商事が二百六十二億円、丸紅が百五十億円というような利子及び割引料。この中に先ほどの三井物産の場合、二千二百九十七億円という貸し付け金に対する利息収入もかなりある。商社が割引をしているあるいは貸している金利というのは幾らぐらいなのか。銀行局の調査では幾らぐらいで商社はこういう割引をやっているのですか。商社がやっているやつですよ。
  184. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 商社がどの程度の割引料を取っているかどうか、私のほうには残念ながらデータはございません。
  185. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣にお尋ねしますが、物を売り買いする商社がこんなにも金を貸して、利息収入を得ているこういう姿というのは専業に徹している姿じゃない。きょうは時間がないからこまかい論争はやめますが、銀行というのは大臣の認可制、金貸しの場合は市中金融でも知事への届け出制、商社がやる場合は全く自由なんでしょうか。定款にあるのでしょうか。定款にないのにこういうことが平然と許されているということは、金融をあずかる大蔵大臣としてどう感じますか。
  186. 福田赳夫

    福田国務大臣 おそらく業として借り貸し勘定が起きたという状態じゃないのじゃないかと思うのです。たとえば売り掛け金になっておるとか、そういう状態じゃないかと思います。(武藤(山)委員「別です。違います。売り掛け金じゃない。売り掛け金は別に出してありますから」と呼ぶ)それでなければ、私は実情をよく知りませんので、お答えいたしかねます。
  187. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 売り掛け金は全く別です。これは全く純粋の貸し付け金としてここに――私は証券報告書の中から六社のを全部取り寄せて、中身を検討して、自分で一覧表にしてみたのでありますから。まさに一部は金融業です。だから、一体、銀行局金融引き締めというものを本気でやっているのなら、十大商社の一覧表くらい――私は、自分で、個人でつくったのですけれども、荒利益がどのくらいで、海外投資準備金がどうで、現金、預金がどうだ、受け取り配当の状況がどうだくらい、一覧表にして、どの商社はまだこんなに個別遠慮できぬか――貸している銀行の一覧表も全部有価証券報告書についているのですから、こういう怨嗟の批判の出ているときでありますから、十大商社ぐらいは個別指導するぐらいなきちっとした姿勢を、私は大蔵大臣に望みたいのであります。  時間がありませんからこれで終わりますが、大臣の所見を伺ってやめたいと思います。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 企業に対する貸し付けの問題につきましては、二つのサイドがあるのです。企業側が一体姿勢としてそんなに金を借りるのがどうかとか、また借りた金をどういうふうに使うかという問題は、これは所管官庁、つまり主として通産省の問題です。大蔵省の問題としては、一企業に対して銀行の力から見て過大の貸し出しをしているか、こういう問題が直接の問題としてあるわけであります。その問題につきましては、ただいま適正な貸し出しということを目途といたしまして、どういうふうにするかということを鋭意検討いたしております。遠からず結論を得たいと思います。
  189. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうも大臣は現実を知らぬからそういうことをおっしゃっていますが、通産省であろうと何であろうと、政府は一体なんですからね。やはり政府の大臣という立場で、金融引き締めの効果が及ぶようにしないといかぬと思うのであります。  たとえば、一社に対して四百億円ずつも貸しているのですよ。三井物産一社だけに銀行が、三井銀行だけで四百十二億円貸している。富士銀行は四百十八億円。東京銀行は、これは輸出入がありますから四百三十七億円、住友銀行は百七十七億円、三井信託は四百九十二億円。一社に対して、いなかの一信用金庫資金全部以上、もっとだ、そういうものを都市銀行は全部出しておる。金融引き締めのときには、こういう中身を具体的に銀行局は検討して、やはり総需要の抑制の効果がそういうところに及ぶような、きめこまかい配慮をしなければいかぬと思うのです。大臣のいまの答弁は、通産省の管轄だと言わんばかり、これはやはりきちっとしなければいかぬと思う。
  190. 福田赳夫

    福田国務大臣 まさに武藤委員が最後におっしゃったようなことをいま検討しておるということを申し上げておるのです。企業の借金が多過ぎるとか、あるいは企業がその金をどういうふうにしておるかということは、まさに通産省の問題だが、銀行金融機関がある一企業に集中的に過大な融資をしておるというような問題につきましては、ただいまこれが是正方を検討しておる、こういうことであります。
  191. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間ですから終わります。
  192. 松本十郎

    松本(十)委員長代理 荒木宏君。
  193. 荒木宏

    荒木委員 この法案の提案理由を拝見しますと、現下の経済情勢に即応する措置として貯蓄の増強に資する、こういうふうに述べられておりますが、現下の経済情勢の最大の問題は、申すまでもなく物価の安定、引き下げであります。そういったことから、それに関連をして貯蓄の問題を論ずるときには、まず第一に大衆預金者の保護、そして小口融資先への配慮、それから第二には大口融資先に対する適正な規制、こういったことが施策の中心として考えられなければならぬと思うのでありますが、その点についての大臣のお考えをまず初めにお伺いをしたいと思います。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはそのとおりだと考えております。
  195. 荒木宏

    荒木委員 そこで、まず第一に大衆預金者の保護でありますが、目減り問題は、すでにこの法案がかかりましてから再々論議をされました。先ほども大臣の御答弁の中で、具体的な目減りを完全に回復させる方策のお示しがなかったように伺ったのでありますが、そういった大衆預金者の目減りを完全に回復させるための手だて、これはいろいろありましょう。総合的に考えるのだというお話もあったのですけれども、事は日々物価の問題が激しくなっておる時期でありまして、いつごろどういう方向でお考えなのか、そういったところを大臣から伺いたいと思います。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ貯金者に対する配慮、これは何といっても物価の異常な状態を一日も早く克服する、その一点に尽きると思うのです。あといろいろの手段が考えられましょうが、それはほんとうに補足的な手段であって、きめ手は何といってもインフレ、異常物価高を断ち切ることである、こういうふうに私は考えておるわけであります。その状態を一日も早く実現をしたい、こういうので、短期決戦ということで日夜精励しておる、かように御了解願います。
  197. 荒木宏

    荒木委員 いまの基本的な物価の問題については、関連して後ほどお尋ねをしたいと思います。  しかし、金融の分野においても、大衆預金者あるいは小口融資先のいまの政策による被害というものは、決して少なくありません。現に、先日の新聞に報ぜられておりましたが、たとえて申しますと、住宅ローンの契約者が契約の存続中に標準金利が上がった、公定歩合が上がったということのあおりを受けて、約定金利引き上げを求められる。これは新聞の報道によりますと、さっそく大蔵省のほうでその案件は個別に指導なさって、千葉県のほうの信用組合であったようですが、引き上げをもとの状態に戻させるように指導した、こういうふうに報ぜられておるのですけれども、これは事実でしょうか。   〔松本(十)委員長代理退席委員長着席
  198. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 そのとおりでございます。と申しますのは、その話の内容が、これまでもうすでに住宅ローンを契約しておる者に対して、いわゆる既契約の利率に対して上げようという事案でございます。これにつきましては、私ども基本的な方針として、あるいは金融制度調査会の答申にもございますように、そういうことはむしろ望ましくないということで指導しておりますので、そういう事例がございますれば、当然それの是正方を指導しておるわけでございます。問題は、新規の契約をどうするかということと混同されて金融機関が扱っておる面もあろうかと思いますので、その辺のところは十分厳格にやっていきたいと考えております。
  199. 荒木宏

    荒木委員 新聞で大きく取り上げられました事例がさっそく是正をされたということは、それはけっこうなことだというふうに思います。しかし問題は、たまたまその件が新聞に報道されましたがためにそういった解決を見たわけであります。それ以外にも、同じ日に私どもの党のほうへ、たとえて申しますと、北群馬の信用金庫から、契約中であるにかかわらず大幅な引き上げの要請を受けた、通知があった、これを何とかしてほしい、こういう訴えがありました。私はさっそく連絡をいたしまして、相互銀行でありますとかあるいは信用金庫協会の皆さんに実情を伺ったのでありますけれども基本的には、これはそれぞれ会員の金融機関の自主的な判断にゆだねられる、こういうことでありまして、できるだけいまおっしゃった線に沿って協力を要請しているけれども、実情はまだ十分に把握されていない、こういった回答でありました。そこで、私は、全国でこういった事例はたくさんあろうと思うのですが、そういうふうな通知を受けた小口融資先の人たちが、具体的に、ではどこへ言っていけばいいのか、大蔵省のほうへ直接電話をすればよろしいのか、あるいは私どもの党のほうへ申し出があって、それを大蔵省の皆さんにお話をして、具体的に解決をしましたあの件のようなコースをたどって是正をしていくのか、具体的な解決策をひとつお示しをいただきたいと思います。
  200. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 指導方針が徹底してないということ対しては、非常に残念でございます。さらに今後、まずその方針を徹底さすように努力いたします。そういう場合に、なおかつそういう苦情の問題がございますれば、全国にございます財務局の中に苦情相談所というのが設けてございます。できますれば、そこにお話しいただくなり、あるいは各県に財務部というのがございますので、そちらにでも電話をしていただくというような方法が一番適切ではなかろうかと思います。しかし、そういうことのないように、いままたあらためて協会を通じて指導しておるところでございますので、できるだけそういうことのないようにしたいと思います。
  201. 荒木宏

    荒木委員 こういった事案の全部を是正されるように、特段の御努力を強く期待したいと思います。  第三に、大口融資先に対する規制の問題であります。先日、わが党の増本議員が質問をいたしました。そして、都市銀行からの大口融資の実態の一端が明らかになりました。詳しい数字はここに繰り返して申し上げませんけれども答弁を伺って、さもありなんと、まことに常々思っておるようなことが、数字として、事実としてあらわれてきつつある、こういうふうに思ったのでありますが、おりしも先月の下旬に、東京の外為市場で大量のドル買いがありました。七億ドルをこえるような巨額のドル買いがあったのでありますが、いま金融引き締め下にあける大企業大口融資先への資金の行くえ、そしてそれの使われ方ということがたいへん問題になっております。この問題では、先般本委員会理事会で、実態を調査して報告をするようにということが求められたというふうに伺っているのでありますけれども、私はまずその御報告の前に、新聞報道によりますと、あの七億ドルをこえるドル買いのうち、かなり巨額の部分が商社それから石油企業であるというふうに報ぜられておるのですが、それが事実かどうかという点をまずお尋ねしたいと思います。
  202. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 前回この委員会で、目下調査中でございますと申し上げたその調査につきましては、現在為替検査官がやっておりますので、いましばらく御猶予を願いたいと存じます。いずれ国際金融局から御報告することになろうかと思いますが、私ども承知いたしております限りにおきましては、その大部分が商社である、かように考えております。
  203. 荒木宏

    荒木委員 石油企業の名前も出ておるのでありますが、この業界はいかがでありますか。
  204. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その中には石油企業も入っております。
  205. 荒木宏

    荒木委員 そこで、こういったいまの事態における貯蓄金融あり方が問題になっておりますときに、この巨額の資金をもってドル買いにさえも向かうといったような大口融資先、大企業金融についての規制の問題これを私は大臣にお尋ねをしたいと思うのでありますが、いま国民のきびしい指弾の目が、石油企業、大企業、それから商社をはじめとするいろいろな価格つり上げだとかあるいはこの機会に便乗した荒かせぎといった方向に向かっていることは、御承知のとおりであります。ここで新聞の報ずるところでは、外為銀行に対しては、それだけ金があるのなら日銀に金を返しなさい、こういった処置もとれようけれども、石油企業や大商社に対しては、直接大蔵省としてはいかんともなしがたい、こういうような論評があるのであります。しかし、私はいろいろ考えてみますと、いまの法律の中でもやれる余地は幾らもあるのではないか、そういったふうに思うのでありますが、大臣は現在の大蔵行政の中で、いま話が出ましたような大口融資先に対する規制の問題国民の目がその方向にずっと向いている、そういった荒かせぎをしておるという強い疑惑ですね、これを明らかにしてほしい、これを規制してほしい、こういった国民の要求にこたえて、大蔵行政の中で大臣としておやりになれることがあるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  206. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ金融引き締め政策を進めておるわけでありますが、量的規制のほうはかなり進んだのです。もう企業全体とすると手元流動性なんというのは非常に少なくなってきておる、そういう状態まできておるわけでありますが、質的というか、融資、金融の内容の問題になりますると、また別の問題があろうかと思う。そこで、これからの金融引き締め政策は、従来の量的な規制方向もこれを堅持してまいるが、と同時に、質的規制という問題に重点をひとつ置いていこう、こういう考えです。  その方法といたしましては、選別融資ということを始めておるわけですが、たとえば商社に対する金融にはワクを設定して、それ以上の貸し出しはしないようにという指導をいたしますとか、あるいは不動産融資につきましてはこれを特に抑制をいたしますとか、あるいはこれは投機資金だ、あるいは何か経済秩序を乱すことになりそうだなというような金融につきましては、これを抑制するとか、そういうきめのこまかい選別融資方針というものを、これはまだそう時間がたっておりませんけれども始めまして、その線をずっと進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  207. 荒木宏

    荒木委員 いまおっしゃったことを政府系金融機関、たとえば輸出入銀行あるいは開発銀行、また海外経済協力基金、こういったところの融資方針の中にも同じように、量的だけでなくて質的な規制の問題を採用なさるお考えはありませんか。
  208. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはましてやと、こういうふうにお答え申し上げたいわけですが、一般の金融機関についてそういう考えでございますので、ましてや政府機関金融関係につきましては、同様の方針をとることはもちろんでございます。
  209. 荒木宏

    荒木委員 いま問題になっておりますたとえば石油大企業あるいは大商社、こういったところは輸出入銀行それから開発銀行、海外経済協力基金から巨額の融資を受けておることは、御承知のとおりでございます。数字は詳しくは申し上げませんけれども、今後の貸し出しに対して私が申し上げたいのは、質的選別、その中に社会的な非難を受けておるそういった企業に対しては、これは政府系金融機関からお金を出すべきでない。すでに予算委員会でも審議の中で明らかになりましたけれども、たとえばある石油企業国民をだまし、報道機関をだまし、政府をすらだまして、そして価格のつり上げをしようとした事例、あるいはまた、脱漏所得の問題なども指摘をされました某大手商社の問題などがあります。こういったところに、従来と同じように政府系の金融機関からお金を出すということについては、再検討すべきである。それがいまの時期における金融についての国民の要求である、こう考えますが、この点についての大臣のお考えを聞かしていただきたい。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 これがほんとうに経済秩序を紊乱し、反社会的行為をした、こういうような企業でありますれば、それが政府金融を受けるということにつきまして、私は資格はないと思います。ですからこれはケース・バイ・ケースでよく調査をいたしまして、慎重に対処してまいりたい、かように考えます。
  211. 荒木宏

    荒木委員 すでに企業自体で事実を認めて、代表取締役が責任をとられた事例もあるわけでございますから、いま大臣がおっしゃったおことばのとおりに、これは直ちに実行していただきたい。  なお、いま申し上げたのは将来の問題でありますけれども、現にそこへ政府系の金融機関から金が行っておるわけですね、現在行っておる。残高はたいへんな額にのぼります。これについて返済を求めるような手だては、行政上いまあるのかないのか。この点についてはいかがでしこう。
  212. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 もう御承知だと思いますが、輸銀が貸しておりますのは、その相手先で判断をしますよりは、輸銀なり開銀の場合はいずれも長期資金でございますので、それが何に使われるかということで、それが政策目的にかなっておるかどうかということで、実は判断をしておるということは申すまでもないことだと思います。そういう意味で、石油産業についてはエネルギー資源開発といった科目の中から出しておるということでございます。したがいまして、それがたとえば輸銀などの場合でございますと、商社自身の金繰りになるような貸し方はしておりませんで、むしろ商社を通じて直接の投資に向けられるという使途については、非常に厳格にやっておるように聞いております。  したがいまして、その中に入っておる商社が社会的に非常に問題を起こしたということが明らかでありますれば、当然またそういう問題として考えるべきことではございますが、一般的に単にたとえばその辺が商社であるからどうこうというようなことでは、貸し付け契約というものを変更することはなかなかむずかしいのではないか、かように考えております。
  213. 荒木宏

    荒木委員 私は問題をもっと具体的に提起をしておるのです。もちろん政策金融でありますから、その融資については一定の政策目的があることは当然であり、その政策目的に沿わない場合に、その融資を継続すべきかどうか検討されることも、また当然であります。しかし、いま言っておりますのは、その融資を受ける企業が、現在の国民的な要望から見て、反社会的な行為をしているのではないか、つまり政府系金融機関から融資を受ける資格そのものが問われておる、こういうふうな場合をいま問題として提起をしておるわけであります。ですから、たとえその融資を受けた金融の使途が政策の大筋に沿うものでありましょうとも、その金融を受ける資格そのものが問われるような場合には、これは引き揚げを検討すべきではないか。  また、別の点から申しましても、開発銀行からいただきました標準契約書の第五条によりますと、手元に金が余っておるような場合には、その返済を求めることができるという約定があります。「収益の増加その他の事由により、事業経営上、この契約による弁済能力に余力が生じたと認めたときは、弁済方法の変更ができる。」こういう約定が入っておるのでありますから、こういうことも十分考慮して、そしてたとえば、昨年の九月期に東京証券取引所一部上場の石油大手八社では、計上利益が二百三十五億円であります。また商社の計上利益の合計は、千二百五十億円をこえております。そしてその上に、その金がいろいろな買い占め、売り惜しみの資金になり、また在庫投資資金になり、さてはドル買いの資金になる。公正取引委員会の報告の結果でも明らかでありますように、商社金融の大きな一部分にもなるということになれば、これはこの条項を活用して返済を求める。さらに、そういった金融を継続して受ける資格があるかどうかを再検討する、これは政府として当然なすべきことだというふうに思うのでありますが、こういうふうに全体として大口融資先の政府系の金融を受ける資格の有無の再検討、それから返済を求めるかどうかの再検討、この点を大蔵大臣としてどのようにお考えになるか、伺いたいと思います。
  214. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、ほんとうに反社会的行為をするような企業、そのほんとうにというところが大事だと思うのですよ。ただ新聞に出ましたからそれが反社会的行為だというふうに断定することはできない、あるいはどなたかが発言したから、それで反社会的行為という断定はできない。これはよほど吟味をする必要がある問題だというふうに考えまするが、そういう吟味を経た後、これは反社会的行為をなした企業である、こういうふうなことになれば、これは当然ブラックリストに登録せらるべき企業である、こういうふうに私は考えます。そういうブラックリスト企業というものにつきましては、政府としては政府の持っておるいろんな立場があります。その立場立場に応じまして、それ相当の処遇をすべきである、かように考えます。
  215. 荒木宏

    荒木委員 たとえば、先般の予算委員会の総括で私が指摘をいたしました。田中総理は、それは悪徳商法の見本のようなものだ、こういうふうにお答えになりました。たまたま大蔵大臣は当日おからだのぐあいが悪くてお休みでありましたけれども、そのことがいま社会的に事実であったということは、当の企業すら認めておるのであります。国権の最高機関である国会で論議をされて、総理がこれはもう悪徳の見本だというふうにおっしゃって、その上さらに当該の当事者が認めている。私はこれ以上にはっきりした事実はないと思うのです。また、商社筋で申しますと、脱漏所得のあったことが指摘をされまして、そして事実関係については国税庁の責任者もほぼお認めになって、そのときに大蔵大臣も、当該委員会に御出席でありました。そして大体御子案を願ってはどうかという趣旨の答弁もしておられるようでありますけれども、そういったように国会の論議の中で明らかになっておる、そうして政府もお認めになり、当事者のほうも、それについての評価は別として、事実関係は認める、こういったようなことになれば、先ほど大臣がまさにおっしゃった、政府系の金融を認める資格がないというふうに断じても差しつかえないと思いますが、いかがでしょう。
  216. 福田赳夫

    福田国務大臣 その個々の具体的なケースについて、これはこうだああだという判定を下すということになると、これはよほど慎重に検討しなければならぬと思います。まあああいう国会のやりとりなんかの場合にそういう企業かな、これはけしからぬというような感じを持つことがあります。ありますが、その感じだけで事を断じてはいかぬ、こういうことを申し上げているのです。これはやっぱりその企業の名誉に関する問題でもあり、企業の立場にも関する問題でありますので、それはよほど慎重、周到な吟味を経た後、結論を出すべき問題である、こういうふうに考えます。
  217. 荒木宏

    荒木委員 私が申し上げているのは、ここで国民が求めておる立場にお立ちになるのか、あるいはそういった企業を擁護される立場に立たれるのか、この問題であります。なるほど事実関係の究明についてはいろいろありましょう。手順もいろいろございます。また制度としては、たとえば私法上の手続、そういったこともいろいろあります。しかし、問題は行政の場で、国政の場で論じておるのであります。事実の存否そのものがとことん具体的に細部まで明らかにならなければ、行政が発動できないというふうな性質のものではないと思うのです。ですから、私は、先ほど来の大臣の御答弁で、どうも一般的なお話はわかるけれども、具体的な行政権の発動としての線引きがはっきりしない。そこで、大臣もよく御存じであり、私どももよく知っており、国会の関係者がみんな知っており、報道機関の報道によって全国民が知っている事実を提起して、これはどうですかと言っているのです。これについてどういうお答えがあるかは、国民の立場に立たれるか、あるいは糾弾を受けている大企業擁護の立場に立たれるか、私はこれはかなめだと思います。もう一度はっきりお答えいただきたい。
  218. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府は企業の立場にのみ立つということもなく、国民の特定の個々の方々の立場に立つということもなく、公正に政務は執行しなければならない、こういうふうに思うわけであります。  私がいま申し上げておりますのは、反社会的な行動をする企業に対しましては、政府としては反社会的行動をする企業であるという認識のもとにあらゆる対応をすべきである、こういうふうに申し上げている。それは荒木さんも御異論はないところじゃないかと思いますが、その反社会的行動をなす企業であるかどうかという認定は、ただいろいろやりとりがあった、あるいは新聞、雑誌に書かれたというだけでこれを断ずるべきではない。これは企業の名誉に関することでもあり、また企業の立場にも関係する問題でもあり、これは慎重に総合的に調べて判断すべき問題である、こういうことを申し上げておるわけです。
  219. 荒木宏

    荒木委員 具体的に態度で示していただきたいのであります。  そこで、さらに進んで申し上げますけれども、あの指摘をされましたたとえば二大某商社、あれは脱漏所得があったということを国税庁の長官もお認めになったようでありますけれども、問題はそのあとの処置がどういうふうになっているか。私どもの通常の理解あるいは私どもの耳に入ります通常の話では、更正処分がありますと、ほとんど同時に青色申告の承認取り消しの通知が参ります。私どもが調べた具体的な事例では、零細小規模の法人の人たちは、みんなそういう扱いを受けているのです。そこで、国会で具体的に論議になりましたが、こういった脱漏所得があった、更正処分が発せられた、これに対して青色申告の承認の取り消しがされるたてまえになっておるかどうか、これは国税庁のほうに伺いたいと思います。
  220. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいまお話しのございました租税の更正処分と青色申告の承認取り消しということは、それぞれ法律に定められております要件に従いまして行なわれるものでございますので、お話しのように同時に行なわれる場合もございますし、別に行なわれる場合もございます。
  221. 荒木宏

    荒木委員 私のほうから申し上げますけれども昭和四十二年の二月三日付で青色申告の取り消しに関する国税庁の通達が出ておりますね。まずこのことから確認したいと思います。
  222. 田邊曻

    ○田邊説明員 現在、青色申告承認取り消しの取り扱いにつきましては、公に公表した通達はございません。
  223. 荒木宏

    荒木委員 四十二年二月三日付の通達はいかがですか。
  224. 田邊曻

    ○田邊説明員 四十二年二月三日のお話しの通達は、行政上の秘の取り扱い通達でございます。
  225. 荒木宏

    荒木委員 そこで、この内容によりますと、年にして一億円をこえる場合は、その脱漏の所得金額が全体の更正決定後の所得金額の二割をこえる場合に取り消しの対象にする、こういうふうな扱いになっておるようですけれども、この内容は間違いありませんね。
  226. 田邊曻

    ○田邊説明員 青色申告の承認の取り消しは、先ほどお答え申し上げましたように、法律に定めてございます一定の要件に従いまして発動いたすものでございまして、たとえば納税者の記帳の状況が法律で定める要件に従っていない場合とか、または記載の状況が仮装、隠蔽とか、その他記帳が全体としてその真実性を疑うに足るような場合というような表現になっておりますので、その趣旨に従って取り扱っております。
  227. 荒木宏

    荒木委員 論議をもとへ戻さないでくださいよ。法人税法の規定は私もよく知っておるのです。問題はそれをどう運用しているかということです。これについて先般の国会の論議でも大きく取り上げられたのですから、具体的に国民の目は、一体あれはあとどうするんだ。われわれのほうだったら、もうすぐに、同時に青色の取り消しをやってきよる、一体あれに対して政府はどうするんだ、こういうふうに見ておるわけです。ですから、具体的に通達の内容も申し上げて、これが事実かどうか、これは再検討の余地がないのかどうか、こういうふうに伺っておるわけです。
  228. 田邊曻

    ○田邊説明員 個別の事案につきましては、ただいま私所掌しておりませんのでお答えを差し控えさしていただきたいと思いますが、青色申告の承認取り消しの運用につきましてはいろいろ問題があるというお話でございますれば、われわれとしましても現状を十分に検討し、改善すべきものは改善いたしたいと存じております。
  229. 荒木宏

    荒木委員 これは四十二年の内部の通達でありまして、しかも、その後物価の騰貴はたいへんなものであります。一方、大企業の石油危機に便乗した荒かせぎというもの、これもまた前代未聞のことであります。ですから、そういったときに対応する青色申告承認の取り消しの基準としては、私はこれは再検討されるべきだと思います。そしてまた、その再検討の結果を本委員会に御報告願いたい、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  230. 田邊曻

    ○田邊説明員 御趣旨のほどは十分に検討さしていただきたいと思います。
  231. 荒木宏

    荒木委員 それでは、関連して次のお尋ねに移りますが、いま国民の間では、大企業の元値を明らかにしてほしい――いま金融の問題が本委員会で論ぜられておるのですけれども、大臣も、具体的な金融プロパーの対応策というよりも物価を下げる、これにしぼってやる、こうおっしゃるわけであります。ところが、国民のいまの要望は、大企業の製造元値を明らかにしてほしい、こういったことがどんどんどんどん起こっておるのでありますが、ここの委員会の所管の事項として申しますならば、私は有価証券報告書の中の当該部分について再検討する余地がないかどうか、これが問題になると思うのであります。  そこで伺いますが、証券取引法の規定によりますと、大蔵大臣が省令でもってその内容をおきめになる、しかしこれは公益をはかる目的のためにそういった省令をつくる、こういったことになっておりますが、この事態に、いまの時点でこの公益とは一体何をさすのか。大臣としてはどのようにお考えになりますでしょうか。
  232. 福田赳夫

    福田国務大臣 有価証券報告書は、あれは企業の内容につきまして一般国民が正確な認識、評価をなし得るようなこと、これが報告書の求めておる公益というか、目標になっておるのじゃないか。それがつまりあの報告書の求められておるところの公益というところに該当するのじゃないか、かように思います。
  233. 荒木宏

    荒木委員 この基準につきましては、大臣の定められた省令の中で、公正妥当な会計基準によるというふうにされておりますが、このいうところの公正妥当な会計基準というのは、言うまでもなく大蔵省企業会計審議会で認められた原価計算基準、これをさしておるのだろうと思います。  そこで、原価計算基準の中できめられました原価計算の類別によりますと、これは五つありますけれども、その中で、大臣がおっしゃった最も正確に企業の実態、製造原価を明らかにする原価計算の方法は、五つのうちのどれだというふうにお考えなのでしょうか。そのことをお尋ねしたいと思います。
  234. 福田赳夫

    福田国務大臣 あまり詳しくないですから、政府委員のほうに……。
  235. 田中啓二郎

    田中説明員 ただいまの原価計算基準の五つですが、ちょっと時間をかしていただきます。
  236. 荒木宏

    荒木委員 それでは、その間に関連して別の質問に移りますが、同じく物価に関する問題として、中でも地価の問題ですね。これは非常に大きな問題になっておりまして、御案内のように新全総について見直し作業も進められ、中間報告ではこの五年間に約四十万ヘクタールの土地が大企業によって、正確には法人によって取得されたという報告があります。そこで、私は物価の問題を解決するという中で、大企業が持っておる土地の実態も明らかにするように有価証券報告書の記載も検討されなければならない、こう思うのであります。ところが、先ほど申し上げた現在の証券取引法を受けた財務諸表規則並びにそれを受けたその取り扱い要領によりますと、流動資産としての土地の表示は、不動産が持っているものに限る、こういうことになっておるのであります。しかし、いま土地を持っておるのは不動産業者だけではございませんで、それ以外の大企業が、先ほども申し上げたような土地を取得した事例はうんとあります。したがって、こういう点からも、この取り扱い要領は、即時、不動産業に限るという趣旨を改めるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  237. 田中啓二郎

    田中説明員 ただいまの御指摘でございますが、土地に関しましては、有価証券報告書では、簿価は全部出ております。それから流動資産の部、それから固定有価資産の部に類別がありまして、固定有価資産のうちの、現に営業の用に供している生産設備及び生産以外の設備につきましては、土地の坪数及び簿価、これを表示するというふうになっております。
  238. 荒木宏

    荒木委員 時間があまりありませんから、お聞きしておることにお答えいただきたいのです。  私が申し上げておるのは、取り扱い要領の第二十五に、流動資産の中の「販売の目的をもつて所有する土地、建物その他の不動産とは、不動産の売買、あっ旋等を業とする会社が販売の目的をもつて所有する土地、建物」、それをいう、こうあるのです。これはいかぬじゃないか、いまは不動産業以外の企業でも、どんどん地価が上がっておるときでありますから、ため込んでおる事例がたくさんある。現に新全総の見直し作業の中で指摘されておる、四十万ヘクタールも。ですから、これは理財局長の通達でありますけれども、これを改める必要があるのじゃないか、これが一つなんです。  それからもう一つは、先ほど申し上げた製造原価について五つの類型のうちで、一体どれを大臣がおっしゃった最も正確な実態をあらわすものとしてとられるのか、この二つをお尋ねしておるわけでありますから、そのものずばりでお答えいただきたいのです。
  239. 田中啓二郎

    田中説明員 前段の御質問に関しましては、流動資産の中にいわばたなおろし資産として将来売却することがあるべき土地ということで含めておりますが、その辺の区分が適不適であるかどうかということに関しましては、この制度そのものが投資判断上必要なものを開示するということが目的でございますので、その基本目的に照らして、現段階においては、現在のような省令で処置しているということでございます。  それから、先生の御指摘の件は、単純総合原価計算によるか、等級別総合原価計算によるか云々、この五つの点をおっしゃっているのかと思いますが、この点はそれぞれの企業の類型によりまして、適、不適が判断されるのでございまして、五つのうち絶対あらゆる企業に対してこれが最も正しいということではないのではないかと考えます。
  240. 荒木宏

    荒木委員 ところが、皆さんのほうのおきめになったこの原価計算の計算方法取り扱い要領によりますと、ここにあります部門別の計算、それから製品別の計算、こういう計算の方法ではなくて、形態別分類というのをとっておられる。これはちゃんとこの取り扱い要領の中に書いてあります。だから私は、いまの時点では、元値を明らかにしろ、こういった国民の要求が非常に強いのでありますし、また、不動産業以外に流動的な不動産を取得している事例もたくさんあるのでありますから、この点は、従来のたてまえはそうであったかもしれませんが、この時期には再検討をなさるべきではないか、そして国民の要請にこたえて、十分、いまの手だてでいいかどうか、これを検討なさるべきではないか、こう申し上げているのです。大臣、この点はいかがでしょうか。
  241. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もその辺あまり詳しくありませんので、的確にお答えすることは困難かと思いますが、要するに、有価証券報告書は、一般の投資家保護という目的を持っておるわけです。一般の投資家を保護する、つまり、一般の投資家が正しい企業の実態の認識と評価をなし得るに足る資料ということで、いま国の経済の状態がどうで、そしてそのためにこういう施策をしなければならぬというような、特定の目的を加味してつくられるという性格のものではないのです。要するに、一般投資家に間違った企業評価、企業認識を与えない、こういうことにあるので、もしいまの時局で、こういう土地の問題についての認識が政府として必要だろう、あるいは国民として必要だろう、それだから有価証券報告書の土地に関する報告の内容はかくなければならぬ、そういう発想だと、正しい結論を導くことにはならぬと私は思うのです。どこまでもこの企業に対する認識と評価の問題、そういう問題としてとらえるべき問題である、かように考えております。
  242. 荒木宏

    荒木委員 初めに、さればこそ公益という目的が法律の中に明記されておるのでありますから、その趣旨を伺ったのでありますが、立法の趣旨からいって、投資家保護の要請があることは、これは否定をしません。しかし、そういう立場からいいましても、いま具体的に指摘されておる荒かせぎをやっておるような、そういう手口があらわれないようなことでは、これは大衆の投資家の保護にすらならないのではないか。だって、そうでしょう。国民をだまし、政府をだまし、そうしてまでやるようなことが、いまのこの取り扱い要領によれば可能になる。可能性はきわめて強い。現にそうなんですよ、中身はわからないのだから。ですから、そういう面から、大臣がおっしゃった投資家保護という要請がある、私は、それは否定しません。しかし、そのことも含めて、まさに実態を明らかにし、公益を実現させるために再検討も考えなければいけないのではないか、こう申し上げているのであります。それもひとつ含めて、一言お答えをいただきたいと思います。
  243. 福田赳夫

    福田国務大臣 よく研究させますが、要するに、研究すると申し上げましても、たとえば土地の買い占めという問題社会的、政治的問題がある、その資料として有効なものにしよう、そういう目的で検討するのじゃありません。一般投資家を保護する、こういう見地から見て、いまの様式が妥当であるのかないのか、こういう見地で研究をする。こういうことでございます。
  244. 荒木宏

    荒木委員 研究の結果は、本委員会に御報告をいただきたいと思います、ここで問題提起をさしていただいたのですから。  最後に、私は、この割増金付貯蓄に関する臨時措置法の実際の募集実務の点で問題があるのじゃないか、このことについてお尋ねをしたいのでありますが、すでにこの法案は、一度同じような内容のものが前にも実施をされておりますが、消化状況について特に問題はなかったのでありましょうか。その点についてひとつお伺いしたいと思います。
  245. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この前の法律、いわゆる旧法と申し上げさせていただきますと、三十九年まで続いておったわけでございますが、正直に申しますと、三十九年ぐらいはほとんど無視されておった状況のように思います。したがいまして、問題が起こり得たということだといたしますと、昭和二十六年から三十年ぐらいまでの非常に売れ行きのよかった時期に、確かに問題はあり得たのかなと思いますが、現在までのところ、金融界のその当時携わった人、あるいは私のほうの記録を読んでみますと、その辺の具体的な問題として特にあげられておるものというものは、ございません。したがいまして、ちょっとここで、こういう問題がございましたというような形で整理いたすわけにはなかなかいかないわけでございますが、大きな問題はなかったというように承知いたしております。
  246. 荒木宏

    荒木委員 昭和二十八年三月十九日、銀行局長からお出しになり、四十三年十二月十八日に一部改正されました通達によりますと、「割増金定期預金の募集に当り、不当に多額な計画を樹て、その結果消化困難となった分について、預金、貸出の両建等不健全な方法により、表面をこ塗しているものが見受けられる」、こういう御指摘があるのであります。わざわざ通達をお出しになっておるのですから、かなりな事例があったのだろうというふうに思います。  私がここで申し上げたいのは、旧法でそういった事例が現にあり、通達も出していらっしゃる。いま金融機関で、もしこの法案が成立をしますと、実際募集計画が立てられるでしょう。そうしてその募集業務に当たるのは、これは職員の皆さんであり、金融労働者の皆さんなんです。ところが、この職場における労働条件、労使の実態というものは、これは非常に問題があります。前国会でも、私どもはたびたび指摘をいたしました。また、銀行局にもたびたび要請もし、その指導も強めていただいたところであります。内国銀行も大いに問題があるのですが、私が特にここで申し上げたいのは、外国銀行の職場でこういった募集業務に従事する、そういったときに、計画が大きい、そしてそのためにしりたたきになると、一体、外国銀行の職場の労使の実態、そういった職場の雰囲気はどうであるか。このことは、この法案の審議にあたっても、ぜひ検討されなければならぬことだと思うのです。  そこで私は、一つこの外国銀行日本の国の法律を守っているのだろうかということを、あわせてこの際問題にしたいわけでありますが、銀行法の規定によりますと、日本に支店、出張所を置いた外国銀行は、これは銀行法上の銀行とみなす、こういう規定があります。御承知のとおりであります。そして銀行法の施行細則によりまして、これはやはり同じように貸借対照表を公告する義務がある、こうされておりまして、その貸借対照表の公告についての局長通達の様式を見ますと、当期の純利益を計上しなければならぬと様式の中に明記されておる。ところが、実際に公告された外国銀行の貸借対照表を見ますと、これは様式できまっておる当期純利益の記載がありません。資本金の部と引き当て金の部類は、これは局長の通達によっても内容の省略ができないということは、はっきり銀行法の施行細則にもうたっておるわけでありますが、こういったことは、やはり指導で改めていただかなくてはならぬじゃないか。そしてまた、それとあわせて外国銀行の実態、それからその中おける職場で日本の国の法律を守らせるというふうな指導を強めていただく必要がありはしないか。こういうふうに思うのでありますが、政府の御意見伺いたいと思います。
  247. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず最初に、外銀がこの割増金付貯蓄にどうかということでございますが、私どもは、外国銀行の支店は、おそらくこれをやらないだろうと思います。  それから、第二の貸借対照表の問題でございますが、何ぶん銀行法が適用されるのは、こちらの支店であるということからいたしますと、たとえば損益計算ということなどが、非常に特殊な計算をしないといけないという特殊性があろうかと思います。その点、現段階におきましては、まだ十分完全に行なわれてない面があろうかと思います。外銀が出てまいりましたのがここ数年でございますので、この辺のところは、今後十分、できるだけ日本の実情に合った公告をしてもらうようにということで、その決算の時期がまず違うというようなところから非常にむずかしい問題がありますが、今後研究していきたいと思っております。
  248. 荒木宏

    荒木委員 ちょっと問題をほかのほうへお移しになったのですけれども、私が申し上げておるのは、銀行法と施行細則と局長さんが通達なさった様式できちんときまっておる。にもかかわらず、実際にここに出ておる公告は、全部当期純利益すら出ていない。これはやはり指導して、是正されるようにするべきじゃないか。基本的なあり方を再検討されることももちろん必要でしょう。現在の実態が合ってない点はやはり指導されるべきじゃないか、こう申し上げておるのです。
  249. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 そういう公告をやるというためには、現在のわが国銀行と外銀が決算時期が違うのに、わが国の支店についての決算をどうさしていくか、その辺の技術的な問題がございますので、十分、いま御指摘のような方向で研究をさしていただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  250. 荒木宏

    荒木委員 そこで、今度は、表の問題じゃなくて人の問題であります。  労働省にお伺いをいたしますが、すでに外国銀行の中でチャータード銀行、マーカンタイル銀行、オランダ銀行、インド銀行につきまして、外銀労という上部団体に属しくおる職員の人たちは、昨年の年末手当すら支払われていない。この点については、別の組合に属している人は支払いを受けている。それから全然組合に属していない人も支払いを受けている。にもかかわらず、私が申し上げた組合に所属している人だけは、あの物価高で悩んだ年の瀬に、年末の一時金すら支払われないで年を越して、今日まで及んでおるわけです。これは労働基準監督署も支払いの勧告をいたしました。また地方労働委員会でも、その点について支払いをするようにと言われておるわけです。労働省としては、これをどういうふうにごらんになっているか。いまの事実関係も含めて、簡単におっしゃっていただきたいと思います。
  251. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま御指摘の件でございますが、これは昨年の暮れに大阪のオランダ銀行の支店の組合から申告がございまして、これについては昨年の十二月十七日に勧告をいたしております。そのうち、引き続きまして神戸のオランダ銀行、チャータード銀行、それから東京のオランダ銀行、インド銀行、チャータード銀行、そういう各支店から御指摘のような事案が出てまいりました。ちょうど東京に出てまいりましたその申告が一月の二十一日でございますので、その間私どもとしては、年末手当が支払われないという問題については問題があるということで、労政当局、私ども事業主を呼びましていろいろとその是正方を勧告をいたしておるわけであります。いまちょうど東京のほうで統一的な交渉が行なわれておるところでございますので、その点は東京のほうの中央監督署で問題の処理にいま鋭意つとめておる、こういう状況でございます。
  252. 荒木宏

    荒木委員 一言重ねて労働省に伺いますが、鋭意問題の解決につとめている、それは要するに払ってやれ、こういうことですね。
  253. 岸良明

    ○岸説明員 そのとおりでございます。
  254. 荒木宏

    荒木委員 大蔵省のほうは、いまお聞きのとおりでございますが、この法案募集外国銀行があまり関与することはないだろう、こういうお話ですけれども、しかし、いずれにしても、これは日本の国の法律で規制をするようになっているわけです。そして、現に貸借対照表の公告問題についても検討するといま局長がおっしゃったわけでありますが、日本の労働者の諸君がそういったような目にあって、しかも労働省のほうも払えという趣旨でやっておるという状態がまだ続いている。この労使の問題は、確かに所管は労働省でありましょう。しかし、先ほどの、日本の法律を外国銀行にも公正に適用するという点を含めて、監督庁としてこの問題の早期の解決について努力をされるように要望し、その点についての御意見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  255. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは外国あるいは本来のわが国企業銀行に限らず、同様の姿勢で臨んでおるわけでございます。この辺のところは、あくまで労使が労働三法の規定に従って適正な労使慣行を確立してもらいたいということでやっておるわけでございます。  いまの御指摘銀行につきましてはできるだけ自主的な解決をはかりたいということで、今月の下旬に団体交渉を行なう意向であるということも聞いております。たてまえといたしましては、もちろんあくまで日本の法律を守ってやっていくべきことは申すまでもないことだろうと思います。
  256. 荒木宏

    荒木委員 そこで、大蔵省のほうも御存じのようですから、その実態を調査をしてここに御報告をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  257. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その交渉の結果がどうなったかというようなことについては、もちろん御報告させていただきます。
  258. 荒木宏

    荒木委員 指導の状況ですね、それも含めて御報告いただきたいと思います。
  259. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 指導の問題につきましては、かねてから申し上げておりますように、私どもといたしましては、あくまで中立的な姿勢で労使の交渉にゆだねたい、かように考えております。
  260. 荒木宏

    荒木委員 労働省のほうから積極的な意思表示があったわけでありますから、指導のやり方についてはいろいろありましょうが、しかし、法律に違反しているということを日本の労働省が国会の場で言っておるわけですから、そういう点も含めて、強力な即時解決の方向を強く要望しておきたいと思います。  最後に、大臣のほうからいろいろ御意見も伺ってまいりました。私は質問の中でも申し上げましたけれども、いま大臣がおっしゃっておる物価問題の解決のためには、やはりいま価格つり上げのもとになっている大企業製品のからくり、これを明らかにしなければだめだ。その実態究明のために、いま国会でいわれております証人喚問の問題も含めてやらなければ、いつまでたっても物価安定の根本問題というものは解決しないということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  261. 安倍晋太郎

    安倍委員長 田中昭二君。――田中君、質問をお願いします。  ちょっと速記をとめて   〔速記中止〕
  262. 安倍晋太郎

    安倍委員長 速記を始めて。  田中昭二君。
  263. 田中昭二

    田中(昭)委員 質問を続けさせてもらいます。  割増金付貯金につきまして大臣にお尋ねするのは初めてでございますが、時間の関係、諸般の事情がありまして、簡単に質問を進めてまいりますから、どうかひとつ的確なる御答弁を期待しておきます。  まずこの提案理由の説明を見ますと、確かに、現在の混乱した状況の中で、一つの施策として貯蓄の奨励が重要な問題であることは私もわかるわけでございますが、その結果、国民のいわゆる堅実なる消費生活が実現する、前にそういう目標があるわけですね。そうすれば、政府としては、貯蓄の増強がなされたとして、健全なる消費生活というのはどういうものを描いておられるか、大臣からお答えを願いたいと思います。
  264. 福田赳夫

    福田国務大臣 健全な消費生活ということは、これは人生の将来に向かって希望を持ち、その希望を実現するための計画を立て、その計画を実現するための具体的ないろいろな手段を講じていくこと、そういうことが一番大事なことじゃないか、そういうふうに思います。
  265. 田中昭二

    田中(昭)委員 私、先日の質問でまだ質問できなかった分の残し分がございますが、その中で、今度の法案の第四条関係でございます。「増割金付貯蓄の条件」というところで、増割金支給に振り当てる額は利子、配当額の総額の範囲内とする、こういうことになっておりますが、この点は前回実施されておりましたものから見ましても、結果的にはたいへん射幸心をあおるような、いわゆる割増金範囲を大きくしたといいますか、前回は、利子、配当の大体七分の三を割増金に充てる、こういうふうになっておったわけでございます。そういう意味からいきましても、きょうもいろいろ論議されました、いわゆる射幸心、ギャンブル的なことを政府はさらに拡大するというふうにも受け取るわけです。そういう点について、四条にありますその項目のほんとうの意味をお聞かせ願いたいと思います。
  266. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の割増金付定期預金と射幸心との関係ですが、そういう点も十分配慮しておるわけなんです。つまり、これはただいま申し上げましたような射幸心というような問題を提起される一つの理由もある。あるが、しかし、さほど大きな射幸心という問題でもないのじゃないか、つまり元は残るのじゃないか、こういうことでもあり、またいろいろな制限を設けておる。しかも時限の、二年間の緊急的な立法である、こういう点で御理解は願えるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、先ほど武藤委員からもいろいろお話がありまして、それで利子の全額を配当に充てるというのはいかがなものであろうか、いかなる場合におきましても、そこばくかの利子について残るんだというふうにすべきじゃないかということなんです。私はそれに対しまして、これはよく考えてみる、こういうふうにお答えいたしまして、具体的なお答えはしなかったのですが、その後考えてみました。みました結果、現在でも各種金融機関からの実施案がほとんど普通預金金利程度を付する案になっておる。そういうようなことも考え、また本委員会における御論議等も顧みまして、大蔵省としてはできるだけ皆さまの御意見に沿うようにいたしてまいりたい、かように考えております。
  267. 田中昭二

    田中(昭)委員 その問題はそうやってもらえますことが、国民貯蓄に対します貯蓄心といいますか動機といいますか、またくじからはずれた人たちも当然出るわけでございますから、そういう方たちに対しても当然の処置だろうと思います。ほんとうはそのことにつきましては、省令でおきめになるということでございますから、はっきりその点を重視した、いわゆるはずれたくじには全然利子もつけないというようなことは省令の中に入れないという方向で、ひとつ御検討いただきたいと思います。  委員長、先ほどからこの委員会も水が入っておるような状態でございまして、ここで私の質問を保留しておきたいと思います。
  268. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は来たる十九日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四分散会