運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-02-13 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十三日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    田中 昭二君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   地崎宇三郎君     奥田 敬和君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度の米生産調整奨励補助金等につ  いての所得税及び法人税臨時特例に関する法  律案起草の件  割増金付貯蓄に関する臨時措置法案内閣提出  第一一号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度の米生産調整奨励補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来理事会等で御協議願い、お手元に配付いたしましたような草案を得ました次第であります。     —————————————
  3. 安倍晋太郎

    安倍委員長 まず、本起草案趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  本起草案は、昭和四十八年度に政府から交付される米生産調整奨励補助金または米生産調整協力特別交付金について、税制上、次の軽減措置を講ずるものであります。  すなわち、第一に、個人交付を受ける同補助金または同交付金については、一時所得収入金額とみなすとともに、転作に伴う特別支出費用、休耕田の管理費等は、一時所得必要経費とみなすこととし、第二に、農業生産法人については、圧縮記帳特例を設け、当該法人交付を受ける同補助金または同交付金については、交付を受けた後二年以内に事業の用に供する固定資産の取得または改良に充てる場合には、圧縮額を損金に算入することといたしました。  なお、本特例措置による国税の減収は約五億円と見込まれます。  以上が本草案趣旨及び内容であります。  この際、本案は、歳入の減少を伴うこととなりますので、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣において御意見があれば発言を許します。中川大蔵政務次官
  4. 中川一郎

    中川政府委員 この法律案につきましては、米の生産調整対策必要性に顧み、あえて反対いたしません。     —————————————
  5. 安倍晋太郎

    安倍委員長 おはかりいたします。  この起草案委員会の成案とし、これを委員会提出法律案として決定するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次に、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部哉君
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この割増金付貯蓄に関する臨時措置法に対してお伺いをいたしますけれども、私は、政府部内でこの割増金付預金を思いついたという報道を新聞で拝見したときに、どうもこれはおもしろくない法案だという気がしておったわけであります。まあ、ある意味では実にいやらしい発想だ、そして貯蓄をする人たちに対してはたいへん不利なことになるのではないかという感じがしたわけであります。  そこで、政府がこの法案をどういう理屈をつけて提案してくるのか、現下の時局に対する政府認識がどのように証明されるのかと、こう注目をしておったわけであります。おそらく、いろいろ問題はございますけれども、当面貯蓄をふやしたいというので、まあ御審議を願いたいといったぐあいに、ある意味では、おそるおそる出てくるのではないかと思っておったのでありますけれども、先日の政務次官お話しになりましたその提案理由説明を聞いておりますと、「最近の経済情勢に即応し、」と前置きをし、事もあろうに、「国民の堅実な消費生活実現をはかる」と、こうおっしゃっておるわけでありますけれども、民の堅実な消費生活とこの宝くじつき貯金はどんなふうに関係するのか、現在、国民生活はどのように堅実でないというのか、まず、これは政務次官からひとつお答えを願いたいと思います。
  10. 中川一郎

    中川政府委員 阿部委員指摘のように、この法案射幸心に関係を持っておるということは事実でございます。しかし、一方では、御承知のように、非常な物価高インフレ現況下にございます。そこで、政府としては、財政金融そして貯蓄という三つの柱を立てまして、強力な施策を講じております。その中の一環として、今回、割増金付貯蓄をお願いしておるわけでありまして、国民生活の健全という意味は、いまどちらかといいますと、国民の持っておるお金が買い占め等に振り向けられる。具体的に申し上げますと、貯金をするよりは何か買っておいたほうがいいという堅実でない面がございますので、預金金利の引き上げを行ない、預金吸収をはかるとともに、こういった別の観点からの預金吸収ということもはかるほうが、国民生活の健全という意味から意義があるのではないかというふうに考えまして、この法律案を提出した次第でございます。決していい制度とは思っておりません。そこで時限立法とし、しかも元金は返るという意味では、ほかの宝くじその他の射幸的なものとは違って歯どめもあり、また配当金についても一定の頭打ちをするというような歯どめを加えたことによって、射幸心にもブレーキをかけるというような条件も加味しまして、御審議をお願いしておる次第でございます。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、いまの御答弁からいくと、要するに、インフレ対策ということになるわけですね。
  12. 中川一郎

    中川政府委員 そういうことです。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、この宝くじつき貯金をする人たちが、買い占めをする、だから物価が上がるというのが政府認識でございますか。
  14. 中川一郎

    中川政府委員 もちろん、物価の上がる要因はほかにたくさんございます。しかし、この対策としての総需要抑制の中には、一部として、そういった物を買っておいたほうが得だという心理あるいはその現象が、物価高を押える上の一つ問題点である。もちろん、これが全体であるなどということはとうていあり得ません。一つの問題として考えなければならない点である、このように考えております。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまわが国金融上の最大の問題は、インフレによって大衆預金が急速に目減りをする。問題はこれをどう救済していくか。もう一つは、一面今度は、大量に金融を受けておる人たち債務者の利益という問題をどうするのか。この両者の問題だと思うのです。  片一方では、なけなしの金を貯金していく。貯金しながら、それがさらに目減りをしていく。この人たちをどう救済するかというのが、私はインフレ対策最大のかなめだと思うのだけれども、これでこの貯金を集めて一体どうするのかという対策なしに、ただ金さえ集めればいい。いまのインフレのより大きな問題は、大企業、そういうものの買い占め売り惜しみというのが中心であって、個々の家庭や何かが、生活を切り詰めて何がしかのトイレットペーパーを買う、洗剤を二箱か三箱よけい買うということじゃないでしょう。もし、これがいまの政府インフレ対策だというならば、私はそれなりで今度私の質問を展開しますけれども、そこに中心があるのではないのじゃないか。  いま一番の中心は、これは二月十一日の日経で発表されておるのを見ますと、皆さんのほうでも、このインフレに食われて預金目減りが一そう激しくなる、この個人のこういう人たちの問題と、もう一つは、法人や何かの債務者の利得とが、非常にアンバランスになっていく。これに対して今度はもう少し預金金利を上げようと検討しておるという記事が載っておるわけですし、このことが今日の一般の庶民、特に長年つとめたお年寄りがせめてもの退職金をもらって、預金利子等生活の重要な一部にしておられるとき、これがどんどん目減りしていくことに対して対策を立て、手を差し伸べるということが、私はインフレ対策の急務だと、こう思う。  にもかかわらず、今度は、金を集めるというこの対象は、あとでお伺いしますけれども、一体どの層をねらっておるのかということになってきますと、ますますいまのインフレ対策とは逆行した形でこれが進むのではないか。次官は、いまインフレ対策だとおっしゃるならば、それは本末転倒もはなはだしいというふうに私は考えるのですが、いかがです。
  16. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘のとおりでございまして、私どもインフレ対策のすべてをこのことによって解決しようとは全然考えておりません。御承知のように、福田さんが財政をおあずかりいたしましてから、総需要抑制ということをまず念頭に置きまして、財政支出を押える、あるいは金融を極度に引き締める、特に、不要不急の土地、あるいはゴルフ場、あるいはボーリング場といったようなものについては徹底した引き締めを行なって、そうして総需要を押える、選別融資をする、きびしくやってございます。  それともう一つは、何といってもやはり貯蓄増強というところから、本年早々に七分五厘という、いままでにない預金金利制度も設けました。これが大きな柱でありますけれども、あわせて、こういうような多様化した制度も、ほんの補完として、これを補うことが一つインフレ対策のほんの一部分にでもなるのではないか。言ってみるならば、この際、インフレ対策として考えられることはすべてやってみよう、そうして短期決戦、この物価高の火を消そう、そういう必死の気持ちから出てきたほんの少しの対策でございまして、この問題が、インフレ対策の堂々としていばった政策だなどということでは毛頭ございません。  あと、どういう方面から集めるかについては、事務当局から補足して説明をさしていただきます。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、私は次官見解とは全く反対の見方をしておるわけです。いままでわが国インフレを促進してきた、こういう物価高を招来してきた原因に対する次官見解が、さか立ちしておるのではないかという感じがいまの答弁でするわけであります。  それは、もう一ぺん申し上げますけれども国民貯蓄をしてきた、そしてそれは目減りをしてきた。片方では、金融機関からその大衆貯金を大きく借りて、そして売り惜しみだ、買い占めだということで物価を上げてきたわけです。いままたこれで、割増金宝くじをつけて金をよけい集めよう、いままでではなかなか集りにくいから、もっとこれを集めるために宝くじをつけよう、こういうことでしょう。それで、集めた金は、またさらに買い占め売り惜しみをする資金のほうに流れていく。大衆預金をして、物価高の中で元金までが目減りをしていく。いままでのやり方をますますさらに拡大生産をするだけであって、一体これで、これがインフレ対策だなどということではないんではないか。  むしろ問題は、この人たち目減りをしないような手をどうやって打つか。この人たちにどうやってあたたかい手を差し伸べる政策を立てるかということが中心でなければならぬのに、逆にますますそれを拡大するという方向にいかざるを得ないということになれば、これはインフレ対策なんというよりも、大衆を犠牲にしてさらに大企業に奉仕する政策につながるだけであって、インフレ対策ならインフレ対策で、もっと別の手が幾らでもあるじゃないですか。特に大蔵省は、いろいろな点で頭のいい人たちがよけいそろっていて、いろいろやるのに、こんなけちな人だまし政策をお立てにならなくたって、もっと堂々とその政策を展開するという道は幾らでもあるのではないか。  しかも、先ほど来お話が出ましたように、あなた自体が認められるように、射幸心をあおるというこの間違い、前にはやっておったけれども、いろいろな問題があるからこれはやめにしたといういわくつきの問題を、この際にお取り上げになるというのは、これは野党だれしもが理解のできないところなんでして、問題はその大衆目減り、これをどうするかというところにもう少し具体的なお話がなければ、これはどうしようもないんじゃないが。  まず、あなたの提案理由説明、これは撤回されたらどうなんです。「最近の経済情勢に即応し、国民の堅実な消費生活実現をはかる」なんということとは全くうらはらで、これはどうしても私は納得できない。ただ、何でもいいから金を集めたいんだというだけならば、これは私は理解します。だけれども、「国民の堅実な消費生活実現」、こう言われると、私には何ともこれは理解ができない。次官、これは撤回されたらいかがですか。
  18. 中川一郎

    中川政府委員 阿部先生指摘気持ちは、よくわかります。過去の財政金融が誤っておったために、物価高になったということですから、根本的な面のやりかえもやっておりまして、必ずや数カ月のうちにはいい方向にいくだろう、思い切った万般の策を講じているところでございます。  なお、御指摘のありました「国民の堅実な消費生活実現をはかるためには、貯蓄奨励をはかることが重要であります。」これは貯蓄奨励全般をさすのでございまして、全般についての心がまえを申し述べたまででございまして、割増金付貯蓄だけにかかるという誤解も受けますが、貯蓄を進める心がまえまくらことばとして御説明申し上げましたので、御理解をいただきたいと存じます。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この法案提案理由の最後についておる理由、これを見ますと、たいへんこれは抽象的で、低姿勢といえば低姿勢、あいまいな表現いかようにもとれるように簡単に書いてあるんですよ。ところが、それはそれでいろんな解釈のしかたが出てこようかと思うのです。だけれども提案理由説明の「堅実な消費生活」というのは一体何なんだろう。いままで堅実でなかったとすれば、その原因は一体どうなんだ。堅実であるとするならば——今日のあれは堅実だと皆さんは認めておらぬと思うのですけれども、その点で、堅実なというために割増金付貯蓄をやるということは、私はちっとも堅実にならぬと思うのです。そのところをもう一ぺん明快にひとつ御答弁願わぬと、これを撤回しないことには私は入れないと思うのですよ。
  20. 中川一郎

    中川政府委員 政策のよろしきを得なかったためでありましょう、貯蓄するよりは物を買っておいたほうがよいという傾向が出てきた。これは当然目減りをいたしますから貯蓄心が起きない、全般的なこういう感じ、現状が、国民の堅実な消費生活ではなかった。  そこで、先ほど来申し上げましたように、財政金融万般について思い切った抜本的な方策を講ずると同時に、貯蓄奨励ということも大きな柱として取り上げた。その貯蓄全体について、いまの「国民の堅実な消費生活実現をはかるため」というところは使っておるのでございまして、大上段に、割増金付貯蓄国民の堅実な消費生活をはかる、こういう大それた気持ち提案をしておりませんで、こういった考え方で貯蓄増強をはかる、その一環として、こういう割増金付貯金貯蓄多様化一つの柱として、大きな柱ではありません、小さな柱として講ずることがこの際必要ではなかろうかということで、お願いを申し上げている次第でございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はたいへんこだわるようですが、政府の基本的な認識にかかわる問題だから、これはしつこくお伺いするわけです。それは、日本社会保障が非常に貧弱です。そのために老後の心配があるとか、あるいは住宅が非常に逼迫しておる、不足しておる。だから、住宅を建てるために生活を切り詰めても貯金をするとか、あるいは子供の教育費というものに、ほんとう生活を切り詰めてまで貯蓄しておる。そういう点で、日本では貯蓄性向が高いし、あるいは貯蓄がたいへんよけいあるわけです。  ところが、その金を使って今日まで高度成長して、そうして昨年の国会では、過剰流動性であるとかいろいろなことをいわれながら、買い占め資金売り惜しみの金にそれが回ったと見られておる。そうして勤労大衆が、先ほど言ったように、洗剤一つか二つよけい買うとか、そういうことが起きたのもそうだし、そのことが大きな物価高要因皆さんが見ておられるというほど貧弱な見識ではなかろうと私は思う。そうすれば、一番もとは何かといえば、大企業売り惜しみ買い占めという問題だということになる。そうなると、それにさらに大衆預金を集めてこれを助長することになっても、これはインフレによる被害から大衆を救済する手段にはならないんだという私の認識なんです。その認識が間違っておるのなら御指摘を願いたい。もし私の認識が正しければ、いまここに書いてあるこの「国民の堅実な消費生活実現をはかるため」なんという表現は、全くまやかしだといわざるを得ないのであって、私は、この文章は削除すべきだ。そうでなければ、私はもっと例をあげて御質問をいたしますけれども、この文章政府認識の狂いなのか、筆がちょっとすべったのかどうなのかということで、このとおりの認識であるとすれば、もうこの法案もいまの予算も問題にならないと、こういう感じが私はするので、ここは少しこだわるようだけれども政府認識のいかんをただしたいので、これはあえて幾たびでもお伺いをいたします。
  22. 中川一郎

    中川政府委員 では、もう少しこまかいところを、事務当局から答えさせます。
  23. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この文章をつくりました責任が私にございますので、むしろ私から答えさせていただきたいと思います。  阿部先生お話しになりましたような認識というものは、私どももおよそ同様の見解であると考えて差しつかえないと思います。と申しますのは、これからの経済運営をつかさどっていくためには、従来の高度成長の秩序であるとか、あるいはその間にできた慣行を改めていくことから出発していくことが大事であるということは、私のほうの大臣の演説にも申し上げておるところでございます。基本的なお考えについては、私どもとしても、全くその趣旨として何ら異論があるわけではございません。ただ、そういう中で貯蓄奨励を行なっていく必要があるんだという問題として、私どもはこういう表現をいたしたわけでございまして、これがあるいはさらに産業設備あるいは大企業のほうに資金が流れていくことについては、もちろん総需要抑制政策あるいは個別的な選別融資なり財政金融政策、あらゆる手段を動員いたしまして、これまでの高度成長の中で出てまいりましたいろいろな矛盾を再び起こさないようにやっていきたいと考えております。  この表現が非常に短絡的に、堅実な消費生活が失われておるから、これを貯蓄奨励ということで国民を教育していくんだというような、そういう大それた感じにとれますならば、私どもとしては、まことに申しわけないことだと考えております。ほんとう趣旨はそういうことではございませんで、いささかたりとも貯蓄増強に資することならば、先ほど政務次官が申し上げましたように、この際、できるだけの手段をやってみたい、かように考えておるわけでございます。
  24. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、「国民の堅実な消費生活実現をはかるために」、値上げ要因となる買い占め売り惜しみをなくしていこうということになりますと、物価値上げの張本人は大衆の買いだめにある、こういう政府の御認識ということになるのですか。
  25. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 全くそういうようには考えておりません。御承知のように、やはり経済拡大スピードが速過ぎたということが基本的な条件であろうと思います。それはわが国の場合がそうでございますと同時に、国際的な環境からするいろいろな対外商品高騰ということもあったかと思います。さらには、一昨年の国際通貨に対するわが国変動相場制という非常に特殊な事情において、いささかむしろ不況対策ということ、それを通じてわが国国際収支国際均衡に重点を置いたということのあらわれが今日の過剰流動性というような問題にさいてきておるということも、基本的な条件一つであろうと考えております。  したがいまして、いわゆる消費者態度を改めれば、物価高騰が防止できるということではございません。むしろ経済拡大をささえておる産業界はもちろんのことでございますが、経済に参加しておるわれわれ一同が、これは特に政策当局の一員として、そういう反省の上に立って、できるだけ渋めの、安定的な成長をはかっていくべきではないか、かように考えておるのが正直なところでございます。  ただ、ここで「国民の堅実な消費生活実現をはかるため」という表現になりましたのは、やはり今後の経済成長にあたって、これは消費者という意味だけではございません。経済に参加しておる、われわれ社会に参加しておる者がすべて、できるだけ三十年代の高度成長とは違った態度で、経済運営あるいは生活に当たらなくてはならないという気持ちがこういう表現になったわけでございまして、その辺のところは、あるいは表現が適切でなかったかとも存じますが、御了承願いたいと思います。
  26. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうもはっきりしないのですが、この文章からいって、この割増金付を買う層というものを大体どの辺に置いておられるのか、これは大法人や何かをねらっての制度ではなかろうと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  27. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これはおそらく、一般大衆の方々が主としてこれを利用されることになると思います。と申しますのは、一つは、ある銀行の窓口でアンケートをいたしました状況から見ましても、たとえば、一万円だけを預金するというような答えが過半を占めておる。二万円、三万円、五万円となるに従いまして、その率が少なくなっていくという状況から申しましても、おそらく多額の預金をこれに充てるということにはならないのではなかろうか、またそういうように期待すべき性質のものではなかろう、かように考えております。  私どもといたしまして、望むらくは、現在、たとえば宝くじが行列をしても売り切れてしまう、あるいは非常に馬券がよく売れておるというような状況にかんがみまして、せめてもそれが貯蓄という形に資金吸収される何ほどかの効果があるのではないか、かように期待しておるわけでございまして、おそらく事業法人であるとか、あるいはもちろん大法人というようなものがこれを買うということは、また期待すべくもございませんし、おそらくそういうことにはならないと考えております。
  28. 阿部助哉

    阿部(助)委員 局長、たいへん正直な見通しだし、私もそう思うのですよ。そうすればするほど、この貯蓄奨励をはかるというのとひっかかってきて、何かいままでのインフレが、この連中が貯蓄をしないからインフレになったのだから、今度宝くじをつけてこれを吸収するというふうに解釈せざるを得ない文章なんですよ。だから、その点で、これはせっかくのあれでありますけれども、私はこれを取り消していただきたいのだ。そうじゃなしに、ただ貯蓄奨励をはかるというだけなら、私は、それはそれなりに、いろいろな問題はあるにしても、わかるのですけれども、この「国民の堅実な消費生活実現をはかる」というふうになってくると、いまの皆さんの御答弁からいってみても、これは何か大衆インフレの張本人だということにならざるを得ない。私は、この文章はどうも気に食わないので、次官どうです、これは撤回されたらいかがですか。
  29. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 次官のお答えのある前に、もう一言申し上げさせていただきたいと思います。  確かにこの文章がそういうように誤解を招いたということについては重々おわびいたしたいと存じますが、私ども日本銀行と一緒になりまして、貯蓄増強中央委員会をかねてから戦後ずっとやっておりまして、貯蓄増強運動ということを扱ってまいったわけでございます。貯蓄増強ということは、いわば単に貯蓄の金額がふえるということではなくて、一種の生活運動という意味貯蓄増強運動をやってきたということが私ども気持ちの中にあるものでございますので、およそ貯蓄増強というもののねらいは何かというと、一つ生活運動として貯蓄心をつくっていくという考え方からやっておったわけでございます。そういうものの考え方の背景がございまして、やはり堅実な生活態度というものをそれを通じて国民の方々に訴えたいという感じが、つい今度のこの割増金付貯蓄がこういう生活態度の改善であるかのようにとられるような表現になったことは、はなはだ筆が行き届かなかったことだと思います。真意のあるところ、あるいはこの文章自身といたしましては、そういう気持ちがあったものでございますので、消費生活実現をはかるためには貯蓄増強貯蓄奨励をはかることが重要であるというまくらことばになったことを、ひとつ御了承願いたいと存じます。
  30. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の基本的な考えは、むしろ、こういう形で大衆預金を集め、それをいままで企業に投入をして高度成長をはかってきた。しかも昨年は、過剰流動性なんという中で、手を打たないために、売り惜しみ買い占めというものが起き、そしてさらに物価引き上げの要因をなしてきた。それは、対外的な問題もありましょうけれども、しかし、外国よりも、いま卸売り物価消費者物価が、日本は特殊な形で上がっておる。もう一つは、土地の値上がりというのは、これは日本独特なんです。その土地というものが何かといえば、銀行から金を借りるときの一番大きな担保力を持つのは土地だった。それが世界に例のない上昇をしておるあたりに、日本物価の特殊性が私はあると思うのです。そのもとをなしたものは何かというと、大衆預金というものが非常に大きな力になっておる。そうして大衆預金はといえば、どんどん目減りをしていく。そういう中でさらにこれをやるということは、私は、政府認識が狂っておるのではないだろうかと思う。  そこで、私は、先ほど読み上げた、年利一〇%ものを検討する、預金者の保護について大蔵省は検討し、努力をしておるということについては、これは理解できるのです。そういうものとこの宝くじとはいささか矛盾するのではないだろうかという感じがするので、基本的な態度を聞いたわけでありますが、それならば、預金者保護という点でこの年利一〇%ものなんというものを、これはいま検討中と出ておりますが、これはどうなんですおやりになるお考えはあるのですか。
  31. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まさに先生御指摘のように、本来のインフレに対して生活を守るという問題からいたしますと、預金金利の問題であろうと思います。したがいまして、私どもは、この割増金付貯金がそれにかわるべきものであるとは毛頭考えていないわけでございまして、たとえて申しますと、預金金利が今後かりに上がった場合におきましても、その預金金利のいわば配分の一つとして、こういう割増金付貯金というものが一種の貯蓄資産の片すみにでも、まあこういう物価の異常な時期に二年間を限ってあってもいいのではないかという程度のことでございまして、これが本筋であるとは考えておりません。そういう意味で、このインフレに対応していくために預金がいかにあるべきかということの本筋は、まさに御指摘のとおり、預金金利がいかにあるべきかということに着目し、それが本筋として考えられていくべきものであろうと考えております。  御指摘になりました、今後の預金金利をどうしていくべきか、上げていくことを考えておるのかという問題でございますが、正直に申しまして、私どもは、常に預金金利というもののあり方を考えておると申すべきであろうと思います。ただ、率直に申し上げさせていただきますならば、今日のインフレ対策というものは、あくまで物価の上昇を押えていくということが本筋であって、預金金利を上げていくということは、対策というよりは、ある意味ではむしろ対症的な措置としてやはり重要なことではなかろうか。したがって、いわば、例が適切であるかどうかは存じませんが、物価高騰に対応する金利というものの考え方は、一種の鎮痛剤と申しますか、そういう性質のものである。もちろん、そういうことは必要ではありますが、同時に、それのもたらす副作用なり後遺症の問題等をかね合わせて考えていかなければならない。こういうところで、直ちに結論を出しがたい性質のものだろうと思います。  私ども預金金利という問題を考えます場合に一番大きな問題は、預金金利というものは非常に長くその影響が残るものであるということでございます。その結果、今日、やはり大企業と中小企業との関係から申しますと、中小企業わが国経済の中の半分をこえるようなウエートを占めておる状況の中で、それを転嫁させていくことがはたして適当かどうかという問題が一つございます。もう一つの問題は、やはり郵便貯金あるいは国債を通ずる財政負担のかね合いの問題だろうと思います。  そういう意味から、この預金金利の問題については今後ともやはり研究を続けていくべきだろうと考えております。そういう金利体系の中でどうすべきかということでございまして、現在のところ、ここで具体的にお答え申し上げるまでには至っていないことを、御了承願いたいと思います。
  32. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ちょっとこの中心の問題からはずれますけれども、大体、物価が上がるというのは何と比較して上がるということになるのですか。
  33. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 むずかしい質問でございまして、お答えになるかどうか知りませんが、やはり物価というものは貨幣の購買力というものでございますから、結局、前年に比べてどうか、あるいは前月に比べてどうかということが基準になると思いますが、それがおそらく、自分の持っておる貨幣なり貯蓄というものの購買力がそれだけ減っているのではないかということでありますれば、まさにそのとおりでございまして、自分の一定の貨幣的購買力というものが、時間がたつにつれて失われていくということが物価の上昇であると申し上げてもいいのかもしれないと思います。
  34. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、まあ普通常識でいえば、貨幣の購買力ということになる、貨幣との比較だと思いますが、いま残念ながらドルも円もこれはある意味では紙きれでして、労働の結晶である金というものが裏づけになっておるならば、まさに貨幣の購買力との差だと思いますが、いまそれがないとすれば、やはり個人の収入の高と物の高との比較の上で上がったということであって、だから、低所得層にとってみれば物価値上げはたいへん困るけれども、政治献金を十六億もいただいておるような福田さんなんかに至っては、これは物価は毎日下がっておるということになるんじゃないですか。私は収入との比較だと思う。そうすれば、収入の多い人、いま言ったように、政治献金を何十億ももらうような人にとってみれば、物価はたいへん下がっておるという表現をしても間違いがないんじゃないか。  私は、インフレ対策は、一つはこの一般大衆の収入に比べて上がるものを押えるということが一つと、もう一つは、こういう預金やなんかの目減りするものをいかにして目減りを補償してやるかという対策、収入をいかに確保してやるかという対策。それには社会保障もあるでしょう。この前の日銀総裁に対する質問のように、預金金利のスライド制というのもある程度考えられるかもわからない。そういうものをどう救うかというところに、一番対策中心がある。そのために国民生活の健全な何とかというならば私はわかるのだけれども宝くじつき預金国民生活の健全につながるなんということにはならないんじゃないか。皆さん、これは割増金付と、こう言うけれども、一体、当たる人は何割あるのです。
  35. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 最高一千倍までといたしました場合、それ以下の配分によって必ずしも正確には申すことはできませんが、最高が三分の一ということで、おそらくそういう三分の一程度が何らかの形で当せんするような配分が行なわれる、かように考えております。
  36. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは皆さんのあれからいくと、一般の六カ月もの、六・何ぼでしたね、それはそのまま金利をつけてやって、そのほかにこの宝くじがつくんだと私思っておったところが、そうではなしに、一般には六分何厘を三分ぐらいに減らしておいて、その残ったものをくじで配分するということになるわけですね。そうしますと、皆さんの試算を見ますと、大体二割ぐらいの人たちが何らか割増金付とこうなるけれども、約八割の人は割引貯蓄ということになるんじゃないですか。大多数のほうは黙って定期預金に預けたほうが金利が高くついて、この宝くじつき貯蓄をすると、これは大多数の七割か八割の人たちは、金利を損をするということになるんじゃないですか。
  37. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 そのとおりでございます。
  38. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、大蔵省のほうはなるだけ少数の人たちが世の中を代表しておると、こういうふうにお考えになるのですが、私はやっぱり、なるだけ大多数の人たちの立場でこの名前をつけ、なにを処置するということになると、これは割引貯蓄ということにならざるを得ないのだけれども、この点はいかがなんです。
  39. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かにこの割増金付貯蓄というものの問題は、御指摘になったところだろうと思います。したがいまして、これを大々的に今後の貯蓄の大宗といたしまして宣伝さしていくというようなことは、やはり毛頭考えておりませんし、それからこういうものが恒久的な制度として残ることについても、やはり問題があろうかと思います。あくまでいわば貯蓄手段の片すみにこういうものがあって、異常なこの時期において、もしも国民需要というものがそこにあるのであれば、そういう方々にも何がしかの御期待にこれをもってこたえたいという程度のことでございまして、御趣旨のことからいたしますと、そのとおりだと考えております。
  40. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう一つは、一口一万円ということになるようですが、この一口一万円ときめたにはどういう理由があるのでございますか。
  41. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 大体一万円というのが一番適当ではなかろうかということでございますが、五千円の口もやれるようにはいたしております。したがいまして、五千円口はあるいは農協なりあるいは信用金庫などでやるという話もかつては聞いたことがございますが、おそらく一万円口になるのではなかろうか、この辺のところが現在の状況からいって一番妥当な金額かな、かように考えたわけでございます。
  42. 阿部助哉

    阿部(助)委員 一口百万円か一千万円にしたらどうです。そうすれば、過剰流動性といわれる人たちから金を集めることになるので、私賛成をするのですけれども、一口一万円ということになると、これは大衆から集めて割引貯蓄ということになる。それでなければ、これは割増金付という名前を変更して、大多数が、多数の者が損をするのだから、割引貯蓄というふうに名前を変えてもらわぬと、どうもこれは納得ができないのですね。  それとも、都市銀行あたりはたいへんにもうかっておるし、先日来この委員会で政治献金の話もたいへんよけい出ておるのだから、金融機関は大体もうかり過ぎておるようだから、年々前の期をオーバーする利益をあげておるようですから、この辺で、金利はいままでどおりつけて、割増金はさらにその上に上のせをするという制度でいくならば、これはまさに割増金付ということになるので、そういうことで、どちらかにするほうが当然だと思うのですが、いかがですか。
  43. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに割増金の部分は金融機関が持ち出しにして、通常の預金金利の上にこれをつけたらどうだという考え方というのは、あり得ると思います。  ただ、おそらくそうなりました場合には、従来の普通の、いわゆる通常の正常な貯蓄というものがそちらにシフトするという問題もあるので、それは基本的にはやはり預金金利の問題として考えるべきではなかろうか、あくまで金利の問題として帰ってくることではなかろうかと思います。特に、やれる金融機関がそういうことにしていくということになりますと、いわゆる私どもが特利と称しておりますいわば過当競争の現象になるだけに、その辺のところはむしろ慎重に考えるべきではなかろうか。やはりもしも金利水準の問題として考えますならば、できるだけ高い金利をつけるべきであって、割増金付貯蓄というものをそういう方向に持っていくということは、先ほど申し上げましたような考え方からいたしましても、むしろ問題があるように考えております。
  44. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういうお考えであるならば、これは羊頭狗肉で、名前が割増となっておるからいかぬので、大多数が割り引かれるのだから、割引貯蓄というふうに、せめて名前だけでも変えるお考えはありませんか。これは政務次官どうです。
  45. 中川一郎

    中川政府委員 そういうことにもなるのかもしれませんが、先ほど来御指摘があったところではありますけれども預金というのはやはり割増金付という変則的なものではなくて、普通ある、いままでの金利体系でやるのが常道であります。今度お願いしておりますこれは、こういう際であるので、特別な配慮として設けてはどうかということであります。  しかも、三分の一以下は当たるけれども、三分の二以上というような程度のものが当たらないとすれば、割引という名前にしたらどうかという御意見でありますが、その面からとらえればそういうことも言えるかと思いますけれども、過去ありましたこういった制度の名前が「割増金貯蓄」ということになっておりますので、特に変える必要もないのではないか。こう使ったからといってそう弊害もないかと思いますので、ひとつ御了承をいただきたいと存じます。
  46. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまこういう際だからという、このこういう際だからということが、私が冒頭に申し上げた堅実な消費生活云々とからんで、やはり政府認識が、大衆インフレで悩んでおる、その問題にどう対処するかという点が私は間違っておるんじゃないか、狂っておるんじゃないか——たいへん失礼な言い方だけれども、狂っておるのではないだろうかという感じがするのです。  この際だからというのは、一体どういうことなのか。私、そこが基本だと思うのですよ。その上で、貯蓄をするというならするでいいですよ。インフレ対策の基本はどうで、どの層がいま一番困っておるんだ、どの層にどういうふうに手を差し伸べるかというのが、いまの政策当局政府の一番重大関心事でなければいかぬ。それを、ただ金を集めるだけ。集めた金は一体どこへ行くんだということになれば、これはどんなにしたところで、また大企業のほうへ回らざるを得ないのですよ。銀行が預かっただけでほっておけば、これは金利を払うだけなんだから、どこかへ貸さなければいけない。それは預貸率の問題、銀行局は何ほどか選別融資だとか預貸率を引き下げるとかいう問題はあるにしても、銀行の性格からいって、預かりっぱなしで全然貸さないなんということになれば、銀行は欠損するにきまっている。これはそんなわけにいかぬのです。それが今日まで、日本高度成長、そして大企業がどんどん大きくなってくる中で、インフレが起き、農業は破壊されてくるという問題につながってきたと、私は私の認識があるわけです。  そうすると、この際だからという、この際というのは一体何なのか、そこに問題があると思うのです。だから、まあせめて百歩譲って、名前だけでも正確に、大衆の、より多くの人たちの立場に立った名前をおつけになったらいかがですか。これは私は百歩譲っておるのですが、いかがです。
  47. 中川一郎

    中川政府委員 先ほど来申し上げましたように、このことの問題でインフレを解決しようとかというふうには考えておりません。もっともっと大きな根っこの問題があって、日本はいま火のついたような状況にあります。その根っこの問題として、やはり総需要抑制というところから、財政についても、あるいはいま御指摘のありました貸し出しについても、物価値上げするような土地、建物、こういったものに対する融資も押えまして、物価高の元凶にメスをふるう、そうしてまた、貯蓄増強ということも柱の一つとして必要なことではないか。そのまくらことばとして、国民の堅実な生活実現をはかるため貯蓄云々というふうにかかってくるわけでございます。  そして、先ほど銀行局長が言ったように、今度の割増金付貯蓄については、その貯蓄のますの中のほんの片すみ程度のウエートとして、多様化の一本の柱として必要ではないか。先ほど御説明申し上げましたように、宝くじとかあるいは馬券とかいう、そういう投機的なものに殺到しておる現在の実態にかんがみるならば、元本が返った上でそういった射幸心も満たされるというものの制度をつくることが、この際は必要ではなかろうか。したがいまして、これは臨時立法としてお願いをし、平常のときにはこういう制度は必要はない、こういう認識のもとに出してございます。  割引つき貯金というので出すのであれば、これはせっかくつくりましても、その制度に乗る人も少なくなるのじゃないかと思います。実際は、割り増し、普通の利子よりは高くなるという点をとらえて預金吸収に当たらしていただきたい、このように思うわけでございまして、われわれ、決して、このことによって経済インフレを押える大きな柱だとも思っておりませんし、また、大衆が金を持っておったことが物価高原因であったなどとは思っておりません。集め方についてもあるいは使い方についても、これから御指摘のような物価高にならないように十分配慮して、国民の期待と阿部先生の御指摘にこたえてまいりたい、こういう考え方でございます。
  48. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあこれはインフレ対策ではたいしてないのだ、ほんのかすかなものなんだ、こうおっしゃるのですが、それだと、皆さんからいただいたあれによると、刑法では富無罪ということで、大体宝くじとかそういうものが一般にやられることを禁止しておるわけですよね。これはなぜ刑法で、宝くじ一般がやることを禁止しておるのですか。
  49. 中川一郎

    中川政府委員 そういう投機的なことがみだりに起きては社会不安をもたらす、やはりこういう宝くじというようなものは国の機関あるいは都道府県等の公的機関が一定のルール、しっかりしたものでやっていかないといけない、こういう考え方ではないか、一般にそういうことは認めていいものではない、こういうように考えます。
  50. 阿部助哉

    阿部(助)委員 要するに、国民射幸心にあおられてそういうふうな風潮を持つことが勤労意欲をそこねるということでよくないということだろうと私は思うのでありますけれども、そのよくないということは、ほんとうならば、個人がやろうが政府がやろうが、よくないことはよくないのですよね。皆さんはまあ今日の緊急非常な事態だからこれをおやりになるということなんだろうと私は思いますけれども宝くじとか射幸心というものがよくないんだということは、それは公がやろうと個人がやろうと、射幸心をつのるということはよくないということだと思うのです。だから、刑法でとめてある。だから、法律で、これはやむを得ないとか、何とか資金集めのことでやむなくやっておるという、特別のケースだけやむなく認めておるということであって、本来はよくない。なぜ一体よくないんだ。そこらあたりが政治をやる者の基本だと私は思うのです。  まあ私は私なりで考えを持っております。間違いかもわかりません。世の中は、本来ならば等価交換の原則というのが底流にあると私は思う。私が汗水流した結晶と、中川さんの汗水流した結晶とが交換される、その媒介はやはりその労働者の汗水の結晶である金というものがその仲介をなす、この底流が一つある。もう一つは、よりもうけようとするならば、できるだけ能率をあげるとか、新しいものを開発することによる不等価交換をやっていこうという、この二つの面、この二律背反するものがからみあいながら、一方ではやはり等価交換の原則というものが底流にある。ところが、射幸心だ、宝くじだというものは、まさに不等価交換の代表だ。そうして、競馬だ、競輪だというところへみんな行ってしまって、いわゆるほんとうの勤労、汗の生産というものが失われてくれば、国の将来、人類の将来というものはなくなるという一つの法則というか原則というものが、私は底流にあると思うのですよ。それを抜きにして、何でもいい、金を集めればいい、もうければいいということになってくれば、一番いいのはどろぼうか詐欺ですよ。どろぼうか詐欺にほうびを出したほうが一番いい、私はそういう世の中になってくると思う。そういう点でこの刑法がこれを禁止する。民法の契約の原則なんかも、私はそれの上に立っておる道徳であり法律であるというふうに、私は私なりに考えを持っておる。  そうすると、この宝くじというものはやはりいいことじゃないんだ。ただしかし、いいことじゃないけれども、今日置かれておる勤労者の立場は、インフレでどんどん収入は減っていく、貯蓄したものは目減りしていく、そうして住宅を建てたいにも建てようがない、もう土地は高くなって手の届かないところへ行った。そういう先の希望の暗さから、せめて一獲千金ということで、競馬だ、競輪だ、これが非常な盛況をきわめておるというのは、たいへんに嘆かわしい現状だと思うのですよ。これは嘆かわしい。  それはなぜかというと、今日までの政策がこういう非常なインフレというものを招来し、大衆を収奪してきたというところに一番問題がある。先ほど申し上げたように、社会保障が低いから貯蓄をせざるを得ない。貯蓄をすることによってますます貧富の差は離れていく。このからみ合いを政府認識をしていただきたいというのが、私の基本的な質問の要旨なんですよ。貯蓄をする、それを使って片方はもうけていく。貯蓄した人たちは、大衆貯蓄はだんだん目減りして、貧乏になっていく。そうして貧富の差が離れていく。離れていくから、ここで何か一獲千金ということで、競輪、競馬、賭博というものがますます広範に広がっていく、こういうことは、今日これからの日本の将来を展望するときにたいへん不幸なことなんだということが、私は基本にあるわけです。そこが私といまの政府皆さんとの見解がどうも違うのではないだろうか。その点が一致をするならば、私は賛成はしないけれども、この貯蓄をこの際いろいろな点を勘案してやらざるを得なくなったという皆さんの立場を理解しないではないんですよ。だけれども、その基本までが狂っておるならば、私はもう少しその意見を戦わさないといかぬのだ、これは私の基本的な考えなんです。その点はどうなんですか。
  51. 中川一郎

    中川政府委員 先ほど阿部先生から、物価高とは何を基準にして言うのか。局長からは前年、前月、あるいは昨日に比べてというお答えがあり、阿部先生からは収入に比べてという御指摘がありました。さらには金利との関係に比べて、預金金利を上回る物価高という尺度も一つあると思います。特に御指摘がありました、生活程度の低い人、ベースアップの行き届かない人に対しての物価高というのが一番許されない大きな一つの尺度であろうと存じます。そこで、政府としては、そういう生活保護者、年金生活者等については、ことしも補正を行ないましたが、来年度は三十数%という配慮を加えて物価高に対処しようというふうな認識を持っております。  また、今度の割増金付貯金がギャンブル精神をあおるようなものであって、決していいものじゃない、そのとおりだと思いますが、人間には本来射幸心というものもどこかにはある。英国などでも、ある程度のものは許される。これは人間本来の欲望である。ですから、家庭生活がおかしくなるというような宝くじであったり馬券であったり、この貯金がそういうことになるとするならば、これは許されない。しかし、ある程度ある射幸心を満たす程度というものであるならば、これまた国民の要望でもないのかと考えます。今回提案しております割増金付貯金は、家庭生活を破壊するというような罪悪を招くような内容のものではない。しかし、正常なやり方としては、預金金利物価高に負けないようにできるだけ配慮してあげるということが基本にありますから、昨年来四回にわたって金利の引き上げを行ない、過去にない七分五厘という制度も設ける。それが本流であって、今回御提案を申し上げておりますのは、社会悪を起こさない、許される範囲内の射幸心程度のものを、貯蓄多様化一つの小さな柱としてお願いをしておる、こういうふうに御理解をいただきたいと存じます。
  52. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまあなたがおっしゃるように、私も本来は、人間の何がしかの投機的な心理というものを全然無視するものではないのです。世の中の進歩というものは、ある意味では、やはりそういうものがなければ、いままでの経験のワクの中だけでとどまっておる限り世の中の進歩はないのかもわからぬ。私はその点ではあなたの答弁理解できるわけであります。  それで、それならば次にお伺いしますけれども、大体どの程度の預金を集める見当でおられるわけですか。
  53. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常にむずかしい御質問でございますが、私どもは、これが爆発的に売れるというようなこともあるいはあるのかなという、むしろその辺の心配を一方ではいたしておるわけです。それは決して望ましいことではなくて、むしろいまの世の中のこういう物価問題というものの反映であるということで、必ずしもそれは期待すべきことではないと考えております。  そういうようなことでありますが、かりに試算をいたしてみますと、結論から申しますと、大体一兆五千億前後ではなかろうかという感じでおります。一つは、積み上げの計算で、どれだけの金融機関がどういう計画を持っておるかということからいたしますと、大体、都市銀行が五千億ぐらいでございまして、私どもが監督させていただいております相互銀行、信用金庫ぐらいまで入れまして大体一兆ぐらい、それから農協、信用組合等を入れますと、大体一兆五千億ぐらいの感じで見られるのではないか、かように考えております。一兆五千億という金額を逆に引き戻してみますと、大体、定期預金の残高の二割ぐらいの感じでございまして、この前のボーナス貯蓄の例から見ましても、あるいは金融界のかつてやったことのある人たち感じから見ましても、まあ妥当なところではなかろうか、こういう感じでおるわけでございます。
  54. 阿部助哉

    阿部(助)委員 局長、いま個人預金はどれぐらいあるのでございますか。
  55. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほど個人定期の二割と申しましたのは間違いでございまして、六カ月定期預金の残高の二割でございます。なお、個人定期預金の増加額の二割ということにもなるわけでございますが、訂正させていただきます。  なお、個人預金の総額につきましては、大体五十兆ということでございます。
  56. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほど物価の問題でお話しがありましたように、五十兆というと、いまのように二〇%の消費者物価の上昇ということになると、大体この預金者は十兆円購買力が減る、こういうことになるわけですね。
  57. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに二〇%、前年同期比でやりますとそういうことになると思います。ただ、年度間の上昇率で消費者物価がどのくらいになるかということでございますが、かりにいま先生のお話しのように二〇%というようなことになりますと、まさに十兆になると思います。ただ、私どもといたしましては、前年同期比はそういうふうに出ましても、年度間の平均の上昇率というものは、この前の経済見通しにあるように、何とかしてできるだけ少なく押えていきたいと考えております。二〇%というようなことにはならない、あってはならない、かように考えております。
  58. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは希望的な観測でしてね、いままでも物価問題のときには、定期預金の金利以上上がったらこれはたいへんなことだなんという大臣答弁は、何べんもこの部屋でお伺いをしてきたわけですし、政府物価見通しが当たったためしが最近ない。天気予報よりまだ当たりが悪いという形でありますから、その点ではさっぱり保証がないと私は思うのですよ。  昨年の当初予算のころに、政府の見通しよりは少し上がるんじゃないかと思ったけれども消費者物価が二〇%も上がる、卸売り物価が三〇%も上がるなんということを政府もおそらく予想をしておられなかったんじゃないだろうか。もしこれを予測しながらやったというなら、これはたいへんなことなんですが、おそらく予測をされなかったと思う。しかし、いまのようにいろいろな加速がついていきますると、これは皆さんの言うような希望的な観測だけでは済まされないんじゃないか。  こういうことを考えてみますと、いまのように、個人のほうの預金が五十兆で毎年十兆も目減りがするということ、そして、目減りするものは消えてなくなるわけじゃないんだから、片っ方でだれかのほうにこれが上積みされるということなんですね。問題は、この上積みされるほうにどう対処するか。これにどう対処するかという問題を明示されないで、こういう貯金をふやそうというだけでは、あまりにも大衆を愚弄する政策ではないだろうかという感じがするのですが、いかがです。
  59. 中川一郎

    中川政府委員 まさしくそのとおりでございまして、五十兆円の個人貯蓄があって、物価が二〇%上がれば二〇%、すなわち十兆円分だけ購買力がなくなるわけですから、貯金した人に御迷惑をかけていることは、もう間違いのない事実でございます。  そこで、政府としては、こういう異常な事態がないように、特に福田さんが財政をあずかられましてからは、物価抑制予算だといわれるぐらい、物価抑制をはからなければならぬというので、気違いじみた気持ちで予算の圧縮を行ない、特に公共投資などは前年を下回るということ、事業量では昨年よりは下回る、一割になりますか二割になりますか、ものによって違いますけれども、これは異常な事態でございます。そうして物資の放出という形を通じて卸売り物価の低落をはかる、ないしは、最近ではオーバーキルになるんではないかといわれるくらい金融引き締めを行なうということも徹底的にやっておるつもりでございまして、最近、卸売り物価、特に鉄、木材等に値くずれの現象があらわれてきたということでございます。  そういうこととともに、やはり貯蓄増強していくという政策もあわせてやっていかなければ、この二〇%に及ぶ物価高を押えることはできない。根っこはそこに置きまして、正道を行く金利の引き上げ、公定歩合の引き上げ等々をやることが基本である。それにあわせて、先ほど来御説明申し上げておりますように、補足としてこういうこともやってみたらどうか。しかも、国民生活を脅かすようなギャンブル的な、特に家庭生活にひびを入れるような制度であっては、これはもちろんいけませんけれども、許される範囲内のこういうこともあわせ行なうことが許されるのではないか。必要だというようなことは申し上げません。この程度なら許されることではないかという気持ちで御提案を申し上げておる次第でございます。  ですから、阿部先生の御指摘のとおり、根っこの問題こそ大事でありますから、最善を尽くしたつもりであり、今後また御指導をいただいて、足りない点がありますならば、徹底的にやっていきたいというふうに考えます。
  60. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、この宝くじつき預金をさせた場合、これは凍結されるのですか。
  61. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは一般金融政策のワクの中に入る性質のものでございます。ということは、現在、都市銀行及び地方銀行については、日本銀行の窓口規制という形で凍結されると申しますか、貸し出しの規制ワクが非常に厳格に行なわれております。最近は相互銀行、信用金庫の一部にもそれが行なわれておるわけでございまして、いわば七割程度が日本銀行金融政策のワクの中に入ると考えます。  残り、たとえば農協部分、あるいは信用金庫の大部分、それから信用組合という問題については、これは厳格な意味での凍結ということは行なえない仕組みになっております。ただ、農協につきましては、私どもといたしまして、やはり規制ワクで最近十二月以来その指導をいたしております。信用金庫及び信用組合につきましては、やはり中小企業専門に一番零細なところを相手にしておるということからいたしまして、これは規制の外になっておるというのが実情でございます。
  62. 阿部助哉

    阿部(助)委員 結局、これをおやりになる一番基本は、まあ簡単なことばでいえば、総需要抑制という問題が皆さんのほうではあるわけでしょう。そうすれば、それを抑制することになると考えておる一方で、預金をうんと集めれば、銀行金融能力を高めることになるわけですよ。それは皆さんは、ある程度、選別融資である、何であるということはやっておられるけれども、総ワクがふえてくるわけですよ。そうすれば、銀行はますます優位な地位に立ち、それを活用していくということは、これは当然のことなんですよ。そうすれば、これが総需要抑制につながっていくのかどうかという問題がある。  これは金融だけの問題でなしに、全般の問題でありますけれども、一番最初に申し上げたように、やはり日本インフレの元凶は何といっても、昨年あれだけ論議されたけれども政府が手をつけなかった過剰流動性の問題、特に皆さんも認めておられるように、あのニクソン・ショックのあとのドルの問題ということで過剰流動性を来たした、ある意味では手おくれだったという認識は、総理大臣以下みんなお持ちになっておるわけです。これは金がだぶついておるということなんでしょう。そうしたら、そのだぶついておるほうからどう取り上げるか、その点で、これはいまこの問題に直接関連はないけれども、そういう問題がまずこのインフレ対策としては先なんではないか。そのためには、まず、法人税の引き上げもけっこうだけれども、特別措置というようなものをこの際に思い切って大なたをふるうなんという問題をからめていかないと、ただ大衆貯金を吸い上げていく、そして大衆はこれによってまた損をする、目減りをする、犠牲をしいておいてそこばかりいじめていくという政策は、どうも合点がいかぬわけでして、そういう問題を、政府ほんとうに本腰を入れて、ともにこれをおやりになるのですか。
  63. 中川一郎

    中川政府委員 吸収のほうもさることながら、使い方についても過剰流動性にならないように十分配慮しろという御指摘、まことにもっともでございまして、そのために法人税率の引き上げということもやりましたし、それから選別融資によってインフレ傾向になるようなものについては、特に不要不急のものについては規制をするという措置もいたしております。  同時に、最近問題になっております超過所得についても、政府としても何とかやりたいという気持ちがありまして、八方研究を重ねておりますが、それにはそれなりのまたむずかしさもございまして、党やまた野党の皆さん方の知恵もかりてという国民的な研究課題になっておりまして、そちらのほうをないがしろにいたしておるわけではありません。税務当局としては、罰金的な超過所得を税で取ることの性格の問題もありまして、悩み続けておりますが、まだ実現には至っておりません。しかし、そちらのほうもないがしろにはいたしておりませんことだけはひとつ御理解をいただき、また今後とも御指摘がありましたならば、その方面についてもさらにくふうを重ねていきたいというふうに考えます。
  64. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これを実施いたしますと、金融機関はたいへんなことですよ。いまでも、週休二日制なんということがいわれておるときにも、銀行というものはたいへん労働が強化しておるわけですよ。具体的例をあげろといえばあげますけれども、たとえば、女の子なんかも超過勤務をさせるけれども、なかなか超過勤務の手当を出さないですよ。婦人の超過勤務は週制限がございますから、そのワクをはずれるとたいへんだというので、ワク外には、超過勤務はさしても超過勤務手当を払わないで使っておるなんというのが、あっちこっちの金融機関にあるのですよ。ところが、今度これをやりますと、どうしてもワクだけはさばかなきゃいかぬということになってくる。ある意味でいうノルマをきめられる。いまでもあるのでしょうけれども、ノルマをきめてぎゅうぎゅう押しつけられていったら、働く金融機関の労働者は、たいへんな苦労になるのです。その点は何か御指導するお考えはおありなんだと思うのですが、いかがですか。
  65. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに銀行の過当競争ということの背景があるところで、こういうことをやって非常に無理がいくのではないかという心配というのは、ごもっともだろうと思います。私ども全く同様に考えでおりまして、そういう意味から、事前にやはり計画を出さして、それによって無理かどうかをチェックしていきたいと思います。と同時に、できるだけ、やれるところは多くやるというようなことでなくて、一種の型をつくりまして、その原則に従ってやってもらうという指導をしていきたいと思います。  具体的に申しますと、募集する単位というのは、一年定期の場合でございますと、やはり二十万口というのが適当ではなかろうか。大銀行であるから大きくやり、零細な金融機関だから小さくという形でなくて、まず、やれるところが一斉に無理なくやれる程度というように考えております。もしもそういうような事態がございましたら、そういうときには、これは年におそらく数回募集することになると思いますが、次からはそれを差しとめるとか、あるいは計画を変更さすというような措置も考えてみたいと思います。
  66. 阿部助哉

    阿部(助)委員 では、この辺で終わりますけれども、私はこの預金はある意味でいうと爆発的な人気を得て、たいへんに売れ行きがいいのではないだろうか、実はこう思うのです。これは実際そうなるんだろう。  しかし、それは一面たいへん悲しいことでして、ほかに家を建てることもできなくなった、何することもなくなった、せめてこれに夢を託さなければならないという勤労者一般人たちの数が多…ということなんでして、そういう点で、これがよけい集まるような事態になればなるほど、私は何か悲しい世の中なんじゃないだろうかという感じがするわけです。そして貧しい国民宝くじつきのあれでつり上げられる、そして目減りをしていく。何か右のほおも左のほおもひっぱたかれるようなことになるのじゃないだろうか。だから、せめてこういうような世の中じゃない——一億総インフレですよ。それで総投機なんです。そうして大企業は、皆さんの御指導もなかなか言うことを聞かないほどの情勢になっておる。一億が総賭博に入るような気分をつくるという点で、私は何かこの法案に寒々したものを感ずるわけであります。おそらく政策当局銀行局等の皆さんも、これはあまり気乗りのしない法案だ、こうお察しを申し上げるわけであります。  そういう点で、私は先ほど局長がおっしゃったように、ほんとう預金を集めようとするならば、一般預金者の立場に立って、金利の引き上げであるとか、そしてせめて目減りだけでも何がしか防いでやろうという検討をしておるようでありますから、せめてそれを熱心に鋭意検討をしていただいて、できることならば、こういう法案を出さないでいいような政策の立案を希望申し上げて、私の質問を終わります。
  67. 安倍晋太郎

    安倍委員長 山中吾郎君。
  68. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 一点だけお聞きいたしたいと思うのですが、この種の法案を立案する政治思想について誤りがあるのではないかということだけ、今後政府がこういう関係の法案をつくるときに、審議をする者も含んで、反省すべきものがあるのじゃないかということを一点お聞きしたい。  この法案を一覧しますと、一口にいえば、国民の立場を守る思想、この場合は、貯蓄国民の立場を守る思想が非常に乏しい。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 結果的には、金融機関保護法になっているのじゃないか。だから、国民貯蓄奨励するならば、国民を保護しながら奨励する発想で国会に提案をすべきでないかということを非常に疑問に思うので、お聞きしたいと思うのです。  それは、この割増金付貯蓄を見ますと、一般預金の場合と利子総額は同じである。そしてくじを引いて当たった者には一千万あるいは何百万。その分はだれから差っ引くのかというと、他の預金者である。貯蓄奨励に協力した預金者。その預金者も、馬券を買うとかあるいは富くじを買う庶民、幾ら働いても豊かにならない者の追い詰められた投機心から出ておる一般の貧乏人だと思うのです。したがいまして、くじに当たった者は何百万か得するが、その得した分は、他の庶民の貯蓄の利子を請求する権利を放棄さしての預金である。そういうことから、私は投機心理は否定しません、これも政策の計算の中に入っていいと思う。金融機関からいいますと、払うべき利子の総額は同じであって、一部の人に割増金——これは割増金じゃないというんですね、割り増しじゃない。その渡した分は、他の払うべき預金者から利子を払う権利を奪っておるのでありますから、まさしくこの法案の本質は金融機関保護法である。われわれが法律をつくるときに、絶えずこういう発想、こういう伝統で立案をするということは、憲法以前の政治感覚であって、いまの民主憲法感覚では、政府としても、われわれとしても、法案発想の思想を変えるべきではないか、こう思うのであります。  そこで、先ほども、大体総額一兆五千億ぐらいになるのではないかという予算を立てられた。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 集まった分を、今度は金融機関は高い利子で他に貸し出すわけですから、その貸し出した分の何分かの利子を、こういう預金の場合には金融機関も犠牲を払う、それが割増金だと思うのです。一般の単純な私たちが、法律家でないのですから、庶民感覚でこの法案を見たときに、割増金付貯蓄というと、金融機関からいえば払うべき利子を払ったほかに、くじを引いた者に何ぼか割り増ししてやり、貯蓄奨励するという感覚に受け取れる。この法案の立案について、非常に憲法感覚が鈍い。貯蓄国民を犠牲にしないで貯蓄奨励するという思想が少ないのではないか。まさしく金融機関保護法だと思うが、次官いかがですか。
  69. 中川一郎

    中川政府委員 金融機関を保護しようという思想は全くありません。ただ、先ほど阿部先生からも御指摘がありましたように、この制度が、好ましい制度、いばった制度でないことも事実でございます。こういう制度をつくらなければならない今日の経済情勢を憂慮しなければならないのであって、しかし、こういう事態ですから、緊急措置としてお願いもしなければならぬという必要性。特に、御指摘のありましたように、割増金であるから、一般金利の上に銀行が何かを積み上げるということにしてはどうかということでございますが、われわれもそういう方法も考えるのですが、そうしますと、結局はその預金だけが有利になってしまって、ほかの預金が損になるというか、全部振りかわってしまうだけで、結局はプラスした分だけの金利の引き上げという効果しかないというところにむずかしさがあります。ですから、そういう割り増しをするのであるならば、特別の人に足すのではなくして、全体について引き上げるのが筋だというところから、過去四回も引き上げをし、今後もできることならば、預金金利を引き上げることに最善の努力を払う。しかし、新聞に載っておりますように一〇%ということになれば、貸し出し金利のほうにも影響するし、郵便貯金その他を通じて国の支出も多いというまた制約条件もございますので、なかなか一ぺんに物価吸収するような金利というものは採用できない悩みも持っております。  しかし、今度の法は、そういう金利の上積みということではなくして、先ほどから議論のありましたように、国民の許される射幸心というものもある。その程度でひとつささやかに一部屋をつくってみよう、そして射幸心を満たそうという人の御要望にこたえるということも、国民的な要望に対する答えではなかろうか。しかも、これはいばれることではなくして、許されることではなかろうか。そのことが物価高の多くの柱、先ほど言っております財政金融、これは大きな柱でございます。同時に貯蓄増強、そのうちの一こまになればというほんとうにささやかな気持ちで、決して銀行保護などということは考えておりませんことを、御理解いただきたいと思います。
  70. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 射幸心という点からあまり望ましくないというので時限法にした、これはそのとおりで、それの論議ではないのです。あなたのおっしゃる思想全体が、いわゆるこういう貯蓄奨励という政策をとる場合にも、貯蓄国民を犠牲にするということが常識になっておるから、そういう論理が出るのです。金融機関からいえば、一定の総額を示して募集するのですから、支払うべき金利は同じなんです。同じで、特定の者にくじ引きをしてやった分は、他に受け取るはずのものを犠牲にしてやるだけの話である。こういう発想のしかたは、金融機関保護法なんだ。  それで、総需要政策も私は正しいと思うのですが、その場合も、国民を犠牲にしない思想の上に立って総需要政策をやるのか、財界、企業保護の立場で総需要政策をやるかで、立法が違ってくると思うのです。これは例ですよ。いま貯蓄奨励を非常時のときにする場合について、たぶんこの対象は庶民なんだから、貧乏人なんだから、こういう富くじに飛びついてくるのは。豊かな者は、そんな五百万や六百万で飛びついてきません。そういうものに対して、法律をつくるときに、金融機関になぜ犠牲を要求しないのか。たとえば一兆円という総額を予定しておれば、その一兆円が預金されたときに、また一割とかいう利子で銀行はほかに貸せるのですから、一兆円の一割ならば一千億円でしょう。一千億の三分の一は大体三百億でしょう。その分を割増金貯金のときに、金融機関も犠牲を払って、預金者に三百億円を割増金として、景品つきにして出すような法律発想をすべきじゃないか、われわれこの憲法下におる政治家は。そういうところに、絶えず伝統的な、ずっと古い法案を発想するという思想の中に、憲法の前とあとに反省がない。同じことを繰り返して、こういう法案が出るたびにわれわれはそういうベースで論議をしている。  それで、投機心のことだけが道義的に問題になっておるのですが、それ以前に私は、この法案の中に、動機がどうだこうだ、幾ら説明しても、金融機関保護——金融機関は喜んでいますよ。ああこれはまた預金がふえる、少しも損はない、そして名前は割増金、その法律をつくってくれるのだ。おそらく金融機関は双手をあげて喜んでいるのでしょう。そして実体は、預金者の貧しい国民を犠牲にしておる法案である。こういう非常時であるから、国民に犠牲を払わして物価抑制するという思想を、われわれはとってはならぬはずなんです。あなたの総需要抑制思想もそうでしょう。あなたが明確な意見を述べられておるのを、これもよく雑誌その他で見ますが、いまおっしゃる思想を変えるべきではないか。その方向性が、私の言ったように、貯蓄国民を守りながら貯蓄奨励する構成になっていない。総金利は同じである。同じ金利の中で一方にくれてやる、他のほうは犠牲だという構想になっているから、こういう発想のしかたそのものに、非常に時代錯誤的な古いものがあるのではないか。ぜひそれは反省をすべきであると思う。大蔵省関係には、そういう法案、類似の法案が絶えず出ると思うので、まず基本的に、政治思想として、こういう法案を発想するものについて、提案する政府も深く反省し、審議する者もそういうベースで審議をしなければ、少しも立法、審議が進歩しないと思うので、申し上げたい。私の考えにどこか——局長も何か意見を述べなさい。
  71. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 金融機関を保護しておるのではないかという御指摘、私ども金融機関をこれで保護しているという発想はないと申し上げることは当然でございますが、同時に、先生にお答えする前に、この問題は非常に金融技術的な制約がある。それがこういう形で、割増金付貯蓄というものの金利が、要するに金融機関というものが一つも腹を痛まさないでやるかっこうになったということの直接な原因であろうと思います。というのは、先ほどもお答えしたわけでございますが、結局は、いま先生御指摘のような、たとえば金融機関がこれを負担する、割増金部分を負担するということは、法律的あるいは形式は別といたしましても、実体的にはやはり金利として負担することにならざるを得ないわけでございます。あくまでやはり特別のものに有利な金利をつけるという形に実体は出てこざるを得ない。そこに問題があろうかと思います。金利というものがやはり相手によって預金金利を違えるということがむずかしいのと同じように、特定のものに金利のでこぼこがあれば、必ず水と同じように貯蓄がそちらに流れてしまうということにならざるを得ない制約がある。  ただ、ボーナス定期というものを年末につくりました。これなどは、ある意味では、その常識を一歩踏み越えたものと言えるのかとも思います。六カ月定期の金利に、一年定期に相当する金利を一カ月間だけつけたというようなのは、確かに従来からいいますと、金利の常識を破ったものと申し上げることもできるかと思います。ただ、こういうことは、あくまで基本的には長続きはできないものである。たとえば、これを臨時立法にいたしましても、たとえば一年なり二年続く間には、必ず経済の原則として、やはり貸し出し金利に反映せざるを得ない。確かに大銀行はこれを吸収する余地はあろうかと私は思います。その場合には、大銀行だけが高い預金金利を払い、その他の零細な金融機関は低い預金金利を払わざるを得ない、それも一つの割り切り方だという考え方もあろうかと思います。これが金利自由化というものの発想の根拠になっておる考え方だろうと思います。しかし、現実的には、なかなかそれはむずかしいと考えざるを得ない。結果的には、やはり先ほど申しましたが、三分の二が中小企業金融機関の分に貸し出し金利としてはね返っていくのではないかというように考えております。
  72. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 立法技術上非常にむずかしいというように考えられるところに伝統的な偏見があると思うので、これからはやはり角度を変えて発案すべきだということで意見を申し述べているんです。  この割増金付貯蓄の場合は、たとえば定期の利子の二分の一を払って、その二分の一をいわゆる景品分にすれば、逆に当たらない者からいったら、半分の低利子を認めた貯蓄になるでしょう。五分支払うべきものを、三分だけは利子で払って残りは割増金にするというならば、この貯蓄に関する限りは、一定の利子を三分にするんだという思想なんです。そしてあとは景品。だから、一定の利子を守るならば、この場合も利子は利子として払う。そして銀行のほうで、集まった分を貸し出す利子の何分の一かを割増金にせいというのは、立法技術上何にもむずかしくはないし、一定の利子を守る原則は貫いていくのですから、やはり立案するときの政治思想、立法思想の問題ではないかと思うのですね。私はどうしてもそう思う。動機はそうでないといっても、方向性からいえば、国民にいま定めた一定の利子を請求する権利を放棄さして、投機心を悪用して一部の者に与えるという、いまの認めた利子そのものを無視して、投機心理を活用する立法になっているのじゃないですか。だから、そういう考え方というのは、あなたがおっしゃるように、技術上不可能だというのは、伝統的な偏見があるからそうなるのではないかと私は思うのです。絶えず国民のほうを守る立場が非常に薄い。結果論からいって、確実に金融機関保護法で、貯蓄国民保護法にはなっていない。そういうこの法案の発想を、ちょっと見ましたら非常に疑問に思った。これでわれわれは新しい政治がいいのかということを感ずる、これは考え直すべきだ。私は、基本的なものの考え方において、根本的にこの法案に反対するのです。  時間を三十分だけいただいたので、こういうことについてまた次の機会に具体的な問題で論議しなければならぬと思いますから、ぜひ大蔵省も、いままでの法案の発想のしかたについて白紙で考えるという態度をとるべきではないかということを申し上げたいと思います。次官の意見を聞いて終わります。
  73. 中川一郎

    中川政府委員 山中先生の言われること、わからないわけではございません。わからないわけではないのですけれども、なかなかそれはむずかしいことでございまして、普通金利の上に、預金者の犠牲でなくて銀行がプラスするものでやったらいいではないか、同じ貯金した人に払うべき利子でやるのじゃなくて、利子は利子で払った上にプラスしてやるべきじゃないか、私ども、そういう余裕があるならば、これは宝くじにしないで、全部の預金者にプラスしてやるべきである、それはそれとして最善の努力をする、銀行がもうけ過ぎないように、預金が集まるように。しかし、それには一定の限度がある。そこで、やるとすれば、いま言う射幸心を入れたものならば貯金をしようという人もあるのではないか。普通の制度をやめてしまって、全部これに変えたというならば、なるほどこれは銀行保護ですが、この選択は預金者にあるわけですから、普通の金利でもらったほうがいいか、金利は犠牲になるかもしらぬが、ひょっとしたらという気持ちの人もある、そういうことを選択する国民があるとするならば、そこにも窓口をあけてやっていいのではないか、こういう気持ちでございまして、決して銀行を保護して、力のあるのに銀行に出させないで、預金者の利子を犠牲にしてという発想ではない。預金はあくまでも普通の従来の預金がいいのであって、割り増しできるものならば皆さんに一厘でも高くしてあげる、こういう思想でいくべきであり、それとは別の発想のものもひとつ添え木として添えておいたらどうだろうという、ささやかな気持ちでありまして、銀行を保護しようという気持ちから発想したのではないということだけは御理解いただきたいと存じます。
  74. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 また今後論議しましょう。考え方が非常に冷酷ですね。
  75. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時三十二分開議
  76. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林政子君。
  77. 小林政子

    ○小林(政)委員 割増金付預金の創設の目的というものは、先ほど来午前中の論議でもいろいろ言われておりましたけれども、あらためてこの時期に割増金付預金を創設するというその目的は那辺にあるのか、この点を明確にお答えをいただきたいと思います。  また、これもすでに質問の中で午前中取り上げられてはおりましたけれども、募金額についてひとつ各行ごとに、都銀、地銀、相銀、信金など、これはできれば資料によって、大体どの程度かを行別に出していただきたいと思います。
  78. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 割増金付貯蓄をこの際はかる、こういう趣旨を考えたのはどういうことかという御質問でございますが、昨年来、貯蓄増強のためにできるだけのことをやってまいろうということでございまして、その基本的なものは、預金金利を二%数次にわたって引き上げたということ、あるいは税制上少額貯蓄の優遇のために新たに今度措置をしようとすること、こういうことがやはり貯蓄増強の基本的なものの考え方であろうかと思います。しかし、同時に、年末のボーナスの支払い等非常に市中に資金が出回るようなときには、ボーナス貯金というようなことでこれの吸収もはかるというような措置をとってまいりました。そういうことからいたしますと、この割増金付貯蓄につきましても、できるだけ早く、市中にある消費に向かうようなものがいささかたりとも貯蓄に回ることを通じて、現在の総需要抑制策に寄与し得ればという意味で、今回割増金付貯蓄をつくったわけでございます。  御承知のように、戦後、この割増金付貯蓄制度は三十九年までございましたが、やはり経済が混乱しておりました昭和二十六年から二十八年にはこれが非常に活用されたということにも顧みまして、今日のような物価上昇の時期におきましては、できるだけいろいろな方々の貯蓄と申しますか、貯蓄手段多様化することによってあらゆる資金吸収をはかりたい、こういうことでございます。  なお、各金融機関ごとの大体のもくろみでございますが、わかり次第資料で御提出申し上げますが、何ぶんこの法案審議中でもあり、具体的な計画ということはまだ固めてないのが実情かと思います。ただ、金融機関ごとでは、ある程度の腹づもりで研究をしておるというのが正直なところでございまして、先ほど都市銀行五千億程度と申し上げましたのも、大体五千億から六千億程度で考えておるように聞いておるということでございます。  それから、農協が比較的研究段階としては進んでおるように見受けられまして、たとえば農協の場合は、現在のところ、二十三単位ぐらいで、ブロックに分けて計画しておられるようでございます。千五百億ぐらいということになるのではないかと考えております。  地方銀行、相互銀行、信用金庫は、今日までのところ、まだ共同でやるか、個別でやるかというようなことについても研究中のようでございまして、具体的な計画というのは、まだ私どものほうには金額の入った計画は入っておりません。  なお、その他の金融機関もほぼ同様でございまして、具体的な計画が進み次第また逐次御報告さしていただきたい、かように考えております。
  79. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまの御説明ですと、貯蓄一つ手段、いわゆる多様化していく貯蓄一つ手段としてこういうものを創設をしたんだということですけれども、今回の割増金付預金は、総需要抑制する一環として、個人の消費を押えるために、個人の手持ちの資金をやはり吸収していく、こういうことが目的でつくられたのだということをはっきり政府説明でも言っているのですね。私は、これは単なる貯蓄増強一環のために有利な手段を設けたのだというふうにおとりになる者は、これは国民だれもいないと思うのです。その辺どうなんですか。  それからまた、数字の問題につきましても、都市銀行五千億から六千億、大体まだ研究の段階であって、具体的な数字についてはわからないというのですけれども、私はやはり、少なくとも、この募集計画等を銀行局は提出をさせて、各金融機関の能力に応じて行政指導もやるんだということも言っていますし、政府資金吸収計画というものはおのずから持っているんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、何ら政府はそういう計画すらも持っていないのですか。
  80. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほども申し上げましたように、これが格段にほかより有利な貯蓄手段であるというようなこととしてこれを打ち出していくつもりは毛頭ございません。むしろこれは幾つかある貯蓄の中の新しいタイプの貯蓄である、しかし、これについてのいろいろな問題もあることにかんがみまして、いわば時限的に二年間の臨時措置としてやりたい、かような措置でございます。  なお、それが何を期待しておるのかといいますと、直接的には、私がさっき申し上げましたように、貯蓄手段多様化することを通じましていささかなりとも貯蓄吸収に寄与できればこれが一番いいんだ、こういうことでございます。ただ、なぜ貯蓄増強が必要であるかということになりますならば、それは確かに総需要抑制策というものを一方では基本的にやりながら、できるだけ貯蓄手段を活用いたしまして、貯蓄増強をしていくことを通じて経済の安定化をはかりたい、こういうことでございます。  なお、各銀行もちろんいろいろ研究しておると思います。しかし、何と申しましても、まだ現在審議中の法案でございまして、これが御審議を仰ぎ、成立いたします前後には、もう少し各銀行が具体的に計画をつくってまいるだろう、かように思います。  ただ、その場合に、私どもがそれではそこまで何も持っていないのかという御質問でございますが、先ほども申し上げましたように、われわれの推計といたしましては、大体一兆から一兆五千億くらいがこれで吸収されるのではなかろうかという、その積算の基礎として、いま申し上げたような数字があるわけでございます。同時にまた、現在の六カ月定期というものをめどにいたしまして、その二割くらいが吸収できるのではないかという金融界の専門家の意見もあり、その辺を推計して一兆五千億、こういうふうに考えております。  なお、それでは五千億なり六千億なり、あるいは農協の千五百億というのはどういうことから出たのかという御疑問かと思いますが、これはたとえば、私どもはかりにこの法案が成立いたしました暁には、ある一定の指導の基準をつくりまして、それによってできるだけあまりまちまちにならないようにやっていきたいと思っております。その中で一つの単位としては、二十万口を単位としてこれを二カ月間募集する、その場合のやり方等についての基準というようなものは考えておるわけでございます。いずれ省令というような形でこの法案が成立した場合には出していきたい、かように考えておるわけでございます。
  81. 小林政子

    ○小林(政)委員 このことを実施することによって、それでは物価引き下げにどれほどの抑制力を持つというふうにお考えになっているのですか。
  82. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この措置が直接物価にどれだけ寄与できるかということについては、残念ながら、これが直接的にここでお答えできるような具体的な効果ということは期待できない、かように考えております。
  83. 小林政子

    ○小林(政)委員 結局、今日のインフレ下における総需要抑制ということの一環としてこの貯蓄が新たにここでもって取り上げられたということは、これはおたくのほうの説明でもはっきりしているのですよ。こういう点から考えると、個人資金吸収していく、そのことが総需要抑制していく上で非常に大きなウエートを占めているかのごとき印象を与えているわけですね。私はやはり、この今日の物価のつり上げというものが一体なぜ起こったのか、これは昨日発表された日銀の一月の卸売り物価が前年同月比三四%、そしてまさに記録的な高騰であるということがきょうの新聞に一斉に載っています。また消費者物価も一月は二〇・四%ですね。まさにもうこれでは全く異常な状態だ。こういうような状況の中で、製品の価格の高騰がさらに今後上昇していく、こういうことも見込まれるということは、昨日の経済閣僚懇談会ですか、そこでも了承されている。こういうことを考えますと、国民は実際には実質所得がもうどんどん減っているのです。そうして生活危機に現在はおちいっていると言っても私は言い過ぎじゃないと思います。こういう中で、一体、国民消費が伸びることが総需要をさらに何かだぶつかせていく一つ原因になるのだみたいな、こういう感覚でこの預金が取り上げられたということは、全くこれは筋違いだと思います。  確かに国民の消費支出も伸びてはきていますけれども、しかし、それだって、実際にはインフレのために上がっているのですね。数字の上では伸びているのです。国民生活内容というものを考えれば、消費支出が伸びたから生活がさも豊かになったかのような、数字の上ではそういう形で出ますけれども、実際には異常なインフレ物価高で、実際は逆に、生活面では苦しくなってきているというのが現状だと思います。春闘で二〇%の賃上げを昨年からとったって、二一%も消費者物価が上がっちゃったのでは、もう元も子もなくなってしまっている、こういう現状というものを一体どう見ているのか。そうして個人が持っているわずかばかりの手持ち資金吸収することがインフレを押えることになるのだみたいな、こういうお考えというのは、これは全く筋違いだと思いますけれども国民が納得するようにひとつ御説明を願いたいと思います。
  84. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほど来お答え申し上げましたように、これは貯蓄手段多様化することを通じまして国民貯蓄をしていただくという性質のものでございまして、これが消費を押えていくための非常に強力な武器であるかのような御説でございますが、私どもは必ずしもそういうものとは考えていないわけでございます。したがいまして、こういうことはほかの貯蓄手段条件においてはできるだけ有利不利のないようにやっていくということで、あくまで国民の選択にかなうものをつくっていく、こういう趣旨でございます。  ただ、もちろん、総需要政策を進めてまいります場合に、国民経済計算上の需要項目というものは、御承知のように消費が五〇%を占めておりますし、その他の企業設備あるいは政府支出というもの、すべての需要抑制していくということをねらいにしておるわけでございまして、そういうことからいたしますと、それにかかわりのあるものについては、できるだけの手段を設けて、これの需要拡大を適度に押えていきたい。こういうことに通ずるものであることは、これはもう申すまでもないことであろうと思います。
  85. 小林政子

    ○小林(政)委員 何か国民の総支出の中の五〇%は、いわゆる消費支出が占めているので、それをやはり抑制していくことは必要なんだ、こういうふうなことですけれども、私はやはりさっきも言っているように、国民の消費支出が現在数字の上では伸びていても、国民生活の質の問題、生活内容の問題というのは、実はもう国民所得そのものが減価しているのですから、これはもう非常に苦しくなってきているし、また実際に、一人当たり消費支出の国際比較を見てみましても、日本の卸売り物価は世界で第一番のものすごい値上がりですけれども、消費支出はどうなっているのかということで見てみれば、実際には国民一人当たりの消費支出は、欧米諸国に比べて、これはもうむしろ主要国に比べて最低じゃないですか。たとえばアメリカの場合は、これはドルで計算してありますけれども、三千四百七十八ドル一人当たりの消費支出、英国の場合には千七百二十六ドル、西独の場合には二千二百八十五ドル、フランスの場合には二千二百九十三ドル、日本の場合には千四百四十八ドル。いまあげた主要な国々の中で、一人当たりの国民消費支出というものは、日本が一番少ないのですね。そして卸売り物価消費者物価だけは実際には世界第一位。こういうような点から考えても、私は、単なる多様化した貯蓄の一手段だなどというような、そういうことでこういうギャンブル性の強い貯蓄を取り上げたということは、どう考えてもこれはやはり納得できません。  具体的にお伺いしたいと思いますけれども割増金は利子総額の範囲内でつけるのですね。
  86. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 そのとおりでございます。
  87. 小林政子

    ○小林(政)委員 そして、しかもそのやり方は、利息の総金額を割増金に回すというやり方と、利息の中からある程度低い利子をつけて残りの利子を割増金に回すというやり方と、二通りが提案されていますけれども、そのいずれをとるかは金融機関の裁量になるというふうに書かれていますけれども、このことは、いわゆる満期においても無利子で元本を返しても差しつかえない、こういうことに道を開いているのですね。どうでしょう。
  88. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 満期になって無利子で返して差しつかえないことに道を開いておるという御趣旨が、よく私正確に理解したかどうかわかりませんが、あくまで預金者がそういうことを納得の上でこれを買っていただくという場合には、結果としてそういうことにはなり得る、しかしこれはあくまで預金者の選択の問題である、かように考えております。
  89. 小林政子

    ○小林(政)委員 いや、私は法律を提案している立場から聞いているのです。いわゆるこういう二本立てでいくのだということをきめたということは、満期になっても無利子で元本を返しても差しつかえない、こういうことを法律が保障しているということですねと聞いているのです。はっきりお答えください。
  90. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 法律で保障しておりますのは、元本は必ず返さなくてはいけないということを法律では規定しておるわけでございまして、そのやり方をどうするかということは、一応、最高の場合にはいま御指摘のように利息部分を全部割増金に回すことが最高であり、それ以下の中でどうしていくかということは、私どもがこれからやはり研究を要することだろうと思います。現在のところでは、普通預金程度の利息をつけるタイプと、それから利息を全然つけないタイプとが適当ではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、具体的には省令をもってその辺をきめるべきではなかろうか、かように考えております。
  91. 小林政子

    ○小林(政)委員 しかし、ここにははっきりとそういうふうに書かれているわけでしょう、二通りあります、一つには利息の金額全額を割増金に回すという方法と、そしてまたもう一つの方法と。はっきりしてください。
  92. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この範囲内でやりなさいということが四条で書いてあるわけでございまして、これは大蔵省令で定めるところによりやります、こういうふうに書いてあるわけでございまして、法律そのものはその金額をこえてはならない、こういうふうに書いてあるわけでございます。
  93. 小林政子

    ○小林(政)委員 しかし、二通りじゃないのですか。私の理解の間違いでしょうか。はっきりしてください。
  94. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 法律上はいま申し上げたとおりでございますが、私どもがこの法案が成立いたしました暁には省令をもってその二通りがやれるということを考えておるということを、おそらく先生が御理解になっておるのだと思うわけでございます。この法律上からはそういうことになっているのではなくて、この法律が成立した暁には、大蔵省令で二通りの基準をつくってやっていくという考えがあるということでございます。
  95. 小林政子

    ○小林(政)委員 なお私は問題だと思います。ということは、具体的には、元本をともかく返せば満期になっても利子は全然つかないものがあってもよい、こういうことですし、このことは、利子をすべて割増金に入れることによって非常に賞金を高くすることが計算の上でできるわけですね。賞金が高いということは、それだけやはり射幸心を大きくあおっていくという道に通ずるわけです。むしろ、先ほど来から貯蓄増強一環だなどと言っていますけれども国民射幸心を大きくあおって、そしてそれによって貯蓄増強をはかっていこう、いわゆる個人の手持ち資金吸収をはかっていこう、こういう意図というものがはっきりしているじゃないですか。どうですか。
  96. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 普通預金の金利を払います場合におきましても、あるいはこの利息全部を割増金に充てる場合におきましても、賞金の最高限度額は法律で一千倍にしておるのは、まさにいま御指摘のような、あまりにも射幸心を利用し過ぎるということについて歯どめを設けた趣旨でございます。
  97. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは、当せんをした預金者に割増金、賞金をつけるわけですけれども、この場合に銀行政府が、割増金付預金といっていますけれども、一体負担をするのかどうなのか。
  98. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは、この法律にもございますように、利息相当分をもって割増金の総額とするということでございますので、政府等がこれを負担するというたてまえにはなっておりません。
  99. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、預金者がお互いに利息分を出し合っていわゆるギャンブルといいますか、かけをやらせる、それを政府が公認するということですね。
  100. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 利息相当分をいかに配分するか、それをくじによってやるということでございまして、その限りにおいては射幸心をそそるものではないかという御批判もあろうかと存じます。そういう意味で、いろいろの歯どめをつくっておるということでございます。
  101. 小林政子

    ○小林(政)委員 射幸心をそそらないための歯どめとはどういうものでしょうか。
  102. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 射幸心を絶対にそそらないというものではございません。その射幸心を過度にそそることを歯どめをしておるということは、賞金の最高額に限度を設けておるということ、それから私どもといたしまして、できるだけ省令をもってこれの指導について現実的に具体的な指導をしていきたいということもそれでございます。また、この法律を臨時措置のものとして二年間の時限立法にしておるというのも、そういうことに対する配慮でございます。
  103. 小林政子

    ○小林(政)委員 一体どこまでが射幸心になるのか、非常に何かあいまいなんですね。何か射幸心の歯どめのためのいろいろな措置を講じている。この預金そのものがともかく射幸心をあおるものだという質問に対して、そのための歯どめがつけてあるのですという。一体それじゃどこまでが射幸心をあおるということにならないのか。金額が低ければ射幸心をあおらないというふうに見ているのかどうか、非常にあいまいだと思います。  それからもう一つが、だからこそ一応二年間という時限立法にしてありますとおっしゃるのですけれども、これはうまくいけば、あるいは応募者の数が予想以上に集まったというようなときには、さらに二年間延長するというお考えがあるのですか。二年間だけで打ち切るということなんですか。
  104. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 最初の射幸心という問題は、非常に主観的な要素が入っておる問題でございます。先ほど政務次官からも答弁がございましたように、射幸心というものは、それぞれ人によって多少の差はあれ持ち合わせておるものであり、これを全然、一切射幸心ということは利用しないのだということを申し上げるつもりはないわけでございます。多少なりともその射幸心をそそる要素というものをいわば活用したいというのが、この法案でございます。同時に、それがあまりにも世の中に弊害をもたらすような、そういう歯どめだけはとっておきたいというのが、賞金額を制限したり、その他先ほど申し上げましたことをやっておる趣旨でございます。  この期限を二年といたしておりますのは、私どもはこれは二年で十分である、かように考えております。ましてや、これはこの法律によって行なわれるものでございますので、国会の御意向なくしてこれを延ばし得るものでないこともよく承知しておりますし、政府といたしましては、現在、二年をもっておそらくこの異常な物価の問題というものを阻止し得るものであると考えておるわけでございます。
  105. 小林政子

    ○小林(政)委員 非常に歯切れが悪いのですね。この預金射幸心を利用しないということではないんだ、こういうのですね。射幸心を利用しないという預金ではないんだ。だから、射幸心を利用してやる預金なんだ。そのために歯どめをいろいろとやっているんだ。こういうことなんですけれども、それじゃ、政府が認める許された射幸心というのはどういうことなんですか。
  106. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 それが、この提案を申し上げている程度であれば、まずお許しいただける程度ではなかろうか、こういうことでございます。
  107. 小林政子

    ○小林(政)委員 どうも、これは納得できないですね。しかも、この預金射幸心をあおる行き方というものは、まだまだいろいろ問題がここには出てくるということが予想されます。最高賞金が一千万円、こういうことで、一口一万円の一年定期のもので、利子が七百二十五円つく。賞金一千万円は、一万三千七百九十口以上の利子総額に相当するのです。そうすると、一人の当せん者のために、他の大部分が無利子でがまんしなければならない、こういう結果がおのずから出てまいります。このような激しいインフレによって預金目減りなどが非常にいま大きな問題になってきているときに、国民資金射幸心に訴えて、その大部分が無利子であってもしかたがないというようなことを、公認でもって、今回法律によってやるということは、正しい金融政策の上からいっても、あるいはほんとうに安全というものを何よりも大事にする預金政策という立場からいっても——一人のために、大部分の人たちがはずれた場合には利子がつかない、あるいはごく低い利子しかつかない。そして賞金は、ごく一部の人たちのために相当高いものが宣伝される。一体、こういうような預金制度というものが、正しい預金制度だというふうに本気になって思っているのですか、どうですか。はっきりお伺いさしていただきたいと思います。
  108. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 二年間の時限立法にしておるゆえんのものも、これが恒久的な制度としてわが国の中に今後とも取り入れていくべきであるということを考えているわけではないことを意味しているわけでございまして、今日のような事態に即応するものとして、けさほど申し上げましたように、宝くじあるいは競馬といったようなものに向かうべき資金が、それが売れておるということから考えまして、多少ともこれの貯蓄吸収できればという趣旨のものであるというわけでございます。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕
  109. 小林政子

    ○小林(政)委員 預金の正しいあり方だというふうには、お考えになっていないんですね。
  110. 中川一郎

    中川政府委員 先ほど来申し上げましたように、射幸心というものが、社会不安を起こしたり、家庭生活をおかしくしたりするようなギャンブルであってはならない。人間には、本来大なり小なり、許される射幸心というものがあるのではないか。そういう範囲内ならば、宝くじにしろ馬券にしろ、これは法律でもって許されておる。とするならば、今回の射幸心をそそるといわれる割増金付貯蓄は、社会不安や家庭生活を脅かすような性格のものではない。  しかし、貯蓄は、本来は一定の利子、たとえば一万円貯金すれば七百二十五円当たる制度、こういうものにのしていくのが普通でありますけれども、いまや総需要抑制、そして物価の安定という最大課題がありますから、財政金融においてもいままでにない、たとえば公共事業費も前年同額、実質事業量は二割近く減るというような異常事態でありますから、貯蓄についてもいままでにない政策をとり、過去四回金利の引き上げをして、二分程度も引き上げた。これに補足をして、今回、割増金付貯蓄を加えてこの非常事態に備えよう。これが本来の貯蓄制度でないことは当然でございまして、こういう異常事態だけに許されるものではないのか。これぐらいの非常事態として、当面の物価問題に対して財政的に措置することが国民のためにいいのではないか。  ただ、何か御指摘のように、いままでの制度を全部なくしてこういう制度をつくって、当たる人は一千万円当たるし、当たらない人はゼロだ、これだけに限ったのではこれは大きな誤りですが、従来の制度は従来の制度として強化をし、それ以外に一つの方法として、国民の中に、いまいう許される射幸心の範囲内で、こちらに貯蓄をするという人が出てくるならば、これもけっこうなことではないか、こういう気持ちでございます。
  111. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、本来の貯蓄制度からいって、やはり公共性を持つ公の機関が、このような異常事態なんだから、利子なんかもらわなくてもやむを得ないんだというような、そういう射幸心を集めるような貯蓄制度というものはやるべきではないというふうに考えています。異常の事態であればあるほど、いままじめに働いて貯蓄をしてきている人たちのこの目減りこそどうするのかということが大きな問題であって、私は、このような問題を抜きにして、そして利子は、自分がはずれた場合にはもともと承知の上で買ったんだから、それはあきらめてもらいますというような内容を持つ貯蓄というものは、やはり邪道であるというふうに考えます。いかがですか。
  112. 中川一郎

    中川政府委員 確かに物価高のときには金利の目減りがあるので、国民が非常に困っておるということは理解できますから、目減り幾らかでも埋めるようにということで、過去四回金利の値上げをいたし、穴埋めをいたしておるわけでございます。  なお、今後においても、許されるならばそういったことをさらに検討してまいらなければなりませんけれども、この目減りを埋めるのにもまた一定の制約がある。たとえば、貸し出し金利に大きく影響して、中小企業その他が事業できなくなっても困りますし、あるいは郵便貯金等に対する政府の手当て等の支出も大きくなってくるというようなことから、一定の限度があります。ありますが、これについても最大限のことを政府としてはやっておるわけでございます。  なお、補完として、いま言ったような金利よりは、そういった割増金付貯蓄を好む階層があるとするならば、そういうことに対して受けざらをつくってやることも国民に対するサービスであって、決して自慢できる制度ではないけれども、国家にとって、国民にとっていま許される貯蓄一つの方法ではないかというふうに考えて、御提案申し上げている次第でございます。
  113. 小林政子

    ○小林(政)委員 自慢すべき制度ではないということであったら、この際やはりそういうことはやめたほうがいいのじゃないでしょうか。
  114. 中川一郎

    中川政府委員 確かに、こういう制度をしなくて物価高も防げるというのであれば、これは取り下げてもいいのですが、物価高にはあらゆる手段を、考えられることは国民皆さんの知恵を総しぼりでやらなければならないことですから、これが効果のあることだけは間違いないのでございます。先ほど言ったように、一兆円からの預金吸収が予定されるということであれば、何ぼ物価に影響するかといわれても、これはちょっと計算には出てまいりませんが、プラスの方向に働くことだけは間違いない。とするならば、これは政府として設けるべきであって、これを国家が強制をするということになったらこれはいかぬことだと思いますけれども強制はしないで、自由な選択において貯蓄心を増してくるということであれば、これはけっこうなことであって、取り下げるべきではなく、ぜひとも御理解をいただいて、御協力をいただきたいと存じます。
  115. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま、まじめに働いて貯蓄をしている人たち預金がどんどん減価をしているということに対して、非常に強い不満が出てきています。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 私はむしろ、今回の新たな射幸心をあおるような預金をつくることによって、利子そのものがからくじでゼロになってもそれは本人が納得してやったんだからいいんだというような、そういう射幸心につながるような考え方が、預金目減りについても、このインフレなんだからというように、不安を持っている人たち気持ちをそらしていく、こういう役割りに使われるんじゃないか。非常に危険だと思います。
  116. 中川一郎

    中川政府委員 物価問題をこの貯金制度だけで吸収するということであればそうだと思いますが、先ほど来御答弁申し上げておりますように、今日の異常な物価高はそれなりの原因もあり、また押える方法にもいろいろな方法がある。何といっても総需要抑制というところから、財政の縮小、圧縮、思い切ったことをやる。それから貸し出しも規制をする。特に物価高を招くような土地、あるいは不要不急の建物、こういったものについては、極力資金を出さないようにする。そして必要最小限の、必要な中小企業金融は確保していく。こういうことと同時に、貯蓄増強ということも一つの柱として必要であるというところから、先ほど来申し上げたように、金利条件の改定であるとか、あるいは利子の控除制度の強化とかいうものを万々やった上に、こういうことも補完として必要なことではないのか。  もう一つ言えますことは、射幸心国民にありますから、貯金するよりは競馬をやったほうがいい、あるいは宝くじを買ったほうがいいというほうに流れる資金を、元金だけでも確保できる、射幸心からいうならば、そちらに移るよりは質のいいというものに転換してやる窓口を設けるということのほうが、現実的な国民へのサービスではなかろうか。現実問題、いまの社会がいいとは思いません。非常に悪い社会で、こういう制度をつくらなければならないこと自体にわれわれは非常に申しわけない気がいたしますが、こうなった以上、これを解決する政府の立場としては、こういうものを設けてやることのほうが国民に対するサービスである。決して自慢してお願いしているわけじゃなくて、ほんとうに申しわけないという気持ちでお願いしておりますので、ぜひとも御理解をいただいて、御協力のほどをお願い申し上げます。
  117. 小林政子

    ○小林(政)委員 とにかく、こういう預金制度を設けたことが国民サービスだなどというようなことを言われたのでは、これは私は問題だと思います。実際にこの預金目減りをどうなくしていくのかというようなことを抜きにして、現実にせめてもの国民のサービスなんだというようなことは、私は筋が通らないと思います。それに物価高抑制するということをおっしゃっていますけれども、今日の物価高騰は、先ほどからも問題にしていますけれども、むしろ一般消費者の消費支出を押えるというようなことによってなくなるものじゃないと私は思います。問題は、いままで企業の過剰手元資金がだぶついていて、そして土地や株式の買い占め、あるいはまた投機行為、こういうものに走った、ここにこそ問題があり、また卸売り物価の上昇にも明らかなように、価格のつり上げをはかって実際に暴利をむさぼってきている。こういう企業のあり方に、物価つり上げの根本の原因があると私は思うのです。ここのところにメスを入れないで、国民の消費を押えることが抑制になるんだなどという考え方は、根本的に改めるべきではないだろうか、こういうふうに思います。いかがですか。
  118. 中川一郎

    中川政府委員 お説のとおりでございますので、たとえば法人税の引き上げもその一つでございます。あるいは予算規模の圧縮、縮小ないしは予算、財政支出執行の繰り延べというような財政面からの措置も、物価の問題に配慮してできるだけのことはしたつもりでございます。  また、金融面についても、いま御指摘のあったように、物価高原因と見られるような、あるいは不要不急なものをつくることによって資材不足を起こし、それが物価高の元凶になるものについては、選別融資の道を講じて、極力これを征伐するといいますか、対処していくという措置はあわせて講じております。  それから、貯蓄につきましても、こういう射幸心をあおるようなものだけにたよっているのではなくして、預金金利の引き上げということも、いままでにない七分五厘という制度もつくりました。これにあわせて、ささやかながら、こういったきめのこまかいこともやっていこうということであって、このことによってすべてをやっていこうということではありません。  もう一つ、御指摘のあります商社等の異常な利益につきましては、これは政府としても何らかの過剰所得に手を打ちたいというので、鋭意努力中でございます。ただ、やるにあたりましてはいろいろの問題、たとえば所得政策に突き当たるとか、いろいろな問題があって、まだ成案を得ていない。しかし、このことについては今後とも自民党のみならず、野党の皆さんの御協力もいただいて、そういった過剰所得に対する処置はとってまいりたい。このことを忘れておるわけではありませんで、御指摘のありました根っこの問題についてもしっかり取り組むと同時に、こういった貯蓄についての多様化の一本の柱として、小さな柱として、これもお許しをいただき、御理解をいただきたい、このようにお願いしているわけであって、根っこの問題をすべて忘れてこれにたよっておるのではないことを、御理解いただきたいと存じます。
  119. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はむしろ、射幸心をあおるこれらの問題に法律をつくってまで取り組むということよりも、現在の預金目減りほんとうにどう解決していくのか、ここにこそ重点を置いて真剣に考えるべきじゃないだろうか。本来の金融預金政策は、私はいまのようなこういうやり方であってはならないというふうに思います。  ちなみに、預金目減りがどんなに大きく行なわれているか、このことを私はちょっと調べてみましたけれども、たとえば四十八年の四月、これを一つの時期として、定期預金の一年ものの利子は五・二五です。そしてそのときのいわゆる消費者物価は対前年の同月比で九・四%、それからまた四十八年の九月段階をとってみますと、定期預金の一年ものの利子が六%、そのときの消費者物価の対前年比上昇は一四・六%、また十月の段階を見てみますと、一年ものの定期はその利子が六・二五、少し上がっているわけですけれども、しかし物価の上昇率は一四・二%。また昨年の十二月を見てみますと、一年ものの定期の利子は同じ六・二五ですけれども消費者物価対前年比上昇率は一九・一%です。ことしの一月を見てみますと、確かに一年ものの定期は七・二五、しかし物価の上昇率は二一%。私はこのことを考えてみますと、実際に将来のことを考え、先行きの不安もあり、わが国社会保障制度というものも非常にまだまだ劣悪であるという中で、万が一何かあったときにはということで貯蓄をしている国民が、実際にいまあげた数字のように、まじめに貯蓄をしても、預金利子が七・二五なのに消費者物価が二一%というような中で、どんどん預金の価値が減っていってしまう、こういうような問題について、一体、政府はこの損害分についてどう対処しようとしているのか、私はこの点はっきりさしてもらいたいと思うのです。現実に、こんなにもひどい勢いで減価しているんですよ。私は、この問題こそもっと根本的にはっきりとした方針を打ち立てていくべきだと思いますけれども、お聞かせを願いたいと思います。
  120. 中川一郎

    中川政府委員 確かに、御指摘のように、預金金利を上回る物価高消費者物価も卸売り物価も上がっておりますから、われわれも率直に反省をし、この事態を何としてでも切り抜けなければならないということで、先ほど来申し上げたような万般の施策を講じて、ことしの四、五月、おそくても七、八月ぐらいまでにはこの異常な事態から脱出をしたい、その責任があるということで、福田蔵相のもとで、大蔵省大蔵省なりにまじめに一生懸命やっております。ただ、この穴埋めをせよと言われましても、金利で穴埋めをするのには限度がありまして、市中銀行貸し出し金利の問題等々ありますから、それで補うことはできませんけれども、先ほど言ったように、二%程度のものを四回にわたって引き上げをしたということの誠意だけは認めていただきたい。今後はこれ以上物価の上がらないように、ほんとう政府としては誠意をもって対処していることも御理解をいただきたいと存じます。  御指摘の点は、確かに異常であり、国民に迷惑をかけておるということは率直に認めざるを得ない現状でございます。ただ、物価の上がった原因にはいろいろなことがあります。海外の事情もあれば、あるいは異常な買い占め売り惜しみというような問題、いろいろと原因があったのでございますが、この原因の排除と同時にこれに対する対処というものについて一生懸命やりまして、今後かかることのないように配慮していくことこそが、われわれの任務だと考えております。
  121. 小林政子

    ○小林(政)委員 預金目減りは、これは個人の責任じゃないんですね。政府政策によるインフレという中で出てきている問題であって、個人が自分はあの貯金を選べばよかったとか、この銀行預金すればよかったとかという個人の選択の範囲内だけの問題じゃなくして、こんなに大きな目減りというのは、明らかに政府インフレ政策によって起こっている問題です。この問題について、ことしの七、八月ごろに物価を下げますということだけでは、私は具体的な解決にはならないだろうと思います。物価を引き下げるということは根本の問題です。  それと同時に、私は射幸心をあおるようなこの預金に力を入れるよりも、むしろこの問題の解決こそが重要じゃないだろうかというふうなことを思いますけれども、特にまたこの点については、後ほど大臣も見えますので、そこでもはっきりさせたいと思いますけれども、いまのお話では、そのうち物価が下がるからそれまではやむを得ない、こういうふうにしか受け取れませんけれども、よろしいですか。
  122. 中川一郎

    中川政府委員 確かに預金者に対しては物価高の影響を受けて御迷惑をかけておりますが、何とか金利の引き上げについても、目減りを少なくすることについてもくふうはしてまいりますが、それには制約もあることでございますので、それなりの努力はしますが、それよりはもっともっと大事なことは、この異常な物価高を押えるということが政府に与えられた最大の課題であろうというところから、先ほど申し上げたような万般の施策を真剣にやっておる、そしてこの迷惑を早く解消するというふうにしてまいりたいと存じます。
  123. 小林政子

    ○小林(政)委員 さらに、私は、目減りの問題もさることながら、割り増し預金がむしろ大手の金融機関にとって募集が有利に働いて、弱小の金融機関との間に、預金確保という点で、預金獲得の上での格差といいますか、こういうものが非常に大きくなるんじゃないだろうか、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
  124. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 無制限に各金融機関が募集いたしますというようなことになりますと、何と申しましても大きな金融機関ほど有利であるということになろうかと思います。そういうことからいたしまして、私どもといたしましては、一つの単位を制限いたしまして、その回数等についても、そういういま御心配のようなことのないように、十分配慮していくつもりでございます。一年もの定期の場合でございますと、二十億単位ということでございますれば、いかなる金融機関もこれがやれないということではございません。特に地域的に限られておるような信用金庫とか農協というところは、むしろグループとしてやりたいということでございます。決して手の届かないような単位というようなことは考えておりません。この辺のところは、各金融業界の意向を十分くみながらそういう指導をしていきたいと思っております。
  125. 小林政子

    ○小林(政)委員 おそらく都市銀行あたりは、店舗も全国的に持っていますし、従業員の数も多い、あるいはまた現在オンライン化がほとんど完成をしているという土台の上に立ってコンピューターなどを活用するとか、体制が非常に整っている。こういう完備しているという点から見ても、また大手都銀の現在のシェア、いままでの預金の広さ、こういったような点から見ても、私は有利な条件で大手は募集をすることができるのではないか、こういうふうに考えます。また金融機関の大小、大きい小さいによって割増金の額もおのずからそこにはいろいろ違いが出てくる。こういう点からも、非常に有利な条件でもって大きいところ、都市銀行に集中していくというような可能性があると思いますが、いかがですか。
  126. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 単位の大きさを変えますと、確かに割増金総額が違ってまいります。したがいまして、むしろ単位を同じ二十万口といたしますれば、それによって得られる賞金総額は一定でございますので、それを一等、二等、三等にいかに配分するかという配分のしかたは、これはあろうかと思いますが、総額そのものは全く同じ規模で、たとえば都市銀行が二十億を売る場合と、それからその他の金融機関が二十億売る場合と、割増金の総額そのものは同じでございますから、そういう有利不利ということはないように思います。  ただ、できてまいります差というのは、利息を全部割増金にする場合と、それから普通預金の金利をつける場合とによって差はございます。しかし、これは金融機関の差による種類ではなくて、そのやり方の違いから来る差でございます。
  127. 小林政子

    ○小林(政)委員 具体的、技術的な、どういう問題がこれから出てくるかはまだわかりませんけれども、私は、こういうものはやめろというたてまえから言っているわけです。額を一定にすればそう差は出てこないということを言っていらっしゃるわけですけれども、過去の、戦後発行されていた割増金預金のいわゆる二十六年から三十四年当時の実績、これを見てみましても、全国銀行預金に対する定期預金の割合というものは少ないですね。ところが逆に、今度は定期預金の中に占める割増金付預金の比率というのは、非常に高いのです。  たとえば二十六、二十七、二十八、二十九、三十年とずっと続いているわけですけれども、二十九年を例にとっても、預金総額の中に占める定期預金の割合というのは、全国銀行の場合には四二・四六、信用金庫が六六・二九、相互銀行が六一・一九ですから、総預金の中に占める定期預金の率というものは、全国銀行の場合には非常に低いのです。ところが、同じ二十九年を見てみますと、全国銀行の場合には定期預金の中に占める割増金付預金の率は六二・九%、信用金庫が三〇・三%、それから相銀が五八・八%。この数字を見ても、やはり当時行なっていた過去の実績から見て、全国銀行に非常に集中をしている、率としても高い。こういう数字が過去の実績としてはっきりしてきています。  私は、これらの点から考えても、大きなところに集中していくという方向というものが非常に強いのではないか、このように思いますけれども、いかがでしょう。
  128. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほど申しましたように、一つ一つの定期預金の有利、不利さは全くございません。これは割増金の総額がきまっておりますので、それをどれだけ賞金に回すかということによってきまることでございますので、そういう事実は全くございません。ただ、都市銀行がその割増金付を何回売るか、あるいは信用金庫なら信用金庫が一年に何回売るかというようなことによって募集の実績が違ってくるということはあろうかと思います。それはたとえば、都市銀行の中でもこの割増金付定期預金に努力と申しますか、これに重点を置く銀行とそうでない銀行によって、たとえば募集の回数を多くするとか少なくするというような差は出てくるかとも思います。  ただ、私どもといたしましては、これは今後の問題でございますが、前回の割増金付貯蓄をやってまいりました当時に比べまして、できるだけ今度は斉一でやらしていきたい、かように考えておりますので、できるだけ金融機関ごとのあまりなアンバランスはないようにやりたいと思っております。ただ、金融機関によっては、自分のほうはこれは扱わないんだという金融機関もあり得るわけでございますので、そういうところに私どもは、やりなさいというような慫慂をするつもりもございません。そういうことからいたしますと、金融機関ごとの実績としての違いというものはあり得ることだと思っております。
  129. 小林政子

    ○小林(政)委員 予定されておりました時間が来たということでございますので、質問はまだ残っておりますけれども、私の場合保留をいたしたいと思います。
  130. 安倍晋太郎

    安倍委員長 田中昭二君。
  131. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ただいま提案になっております割増金付貯蓄につきましては、けさほどから各委員のいろいろの質疑等、また政府答弁を聞いておりまして——私も質問を繰り返すところがあるかと思いますが、これはいままでのことを聞いておりますと、この法案は、たいへん善良な国民貯蓄に対する考え方というものに対して、いままでにないことを行なおうとしておる。先ほどの政務次官答弁の中からも、これはあまりよくないから差し控えたいけれども、とにかく物価抑制のためにやらしてもらいたいというようなものであるということを聞きました。また、政府のそういう考え方を私聞いておりまして、政府が考えたことはとにかくやるんだというような感じがする反面、そのことが確かに国民としても理解ができ、また協力すべきものであるならば、私はそうしなければならないと思いますけれども、先ほどから出ておりますように、いままでの貯蓄というのは元本に利子がつくのがあたりまえ、それを一部分的に元本に利子もつかないような貯蓄という道を開いていくということもあり得る。それですから、極端に言えば、これは割増貯金じゃない、割引貯金だというような御発言に対しても、政務次官もそれは認めるというお話ですね。だけれども、窮余の一策として、緊急を要するからやらしてくれ。こういう議論を繰り返しておりますと、私は、この法案は、両方異なった立場での議論が多過ぎるような感じがしてならない。  そこで、ほんとうはこの提案理由説明からお聞きしなければならないわけでございますけれども、また重複しますと、変なことが飛び出すと困りますし、先ほどからずっと聞いておりましたからそのまま行きますが、そこで、こういう法案をつくりました場合に、何らかの基礎になった一つの過去の実績——過去の実績があることは、終戦後にこれができて途中でやめたという経過もある。しかし、これを再度また緊急の一策で始めるにしましても、国民のそういう射幸心というものも、許される範囲内の射幸心は法的にも許されているという先ほどの政務次官お話、そうしますと、その射幸心というのは、国民のどういう階層の人がどういうふうに持っておるのか、競馬、競輪、そのほかのギャンブル、それ以外の人もおるかもしれませんね、射幸心を求めておる人がおるかと思いますが、そういうことにつきまして、政府は確たる調査か何かなさいましたか、どうでしょうか。
  132. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 射幸心とはどういうものであり、どういう層にそういうものが特に強いかといったような、そういう調査はやっておりません。と申しますのも、大数観察で各層を見きわめて、その層に射幸心がある、なしというようなものでなくて、ある意味では、非常に個人差もあり、人生観にもかかわるような問題ではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、射幸心といったものを、たとえば社会学的に調査するといったことはいたしておりません。
  133. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 調査はしていない。調査はする、せぬにかかわらず、政府のほうでも国民のそういう欲望といいますか、要求というものをある程度つかんでおるから、そういう要求があるからそれに応ずるためにもこれは必要だ——必要というよりも、いわゆる提案説明の中にありますように、貯蓄多様化といいますか、そういう意味があろうと思うのですね。そういう調査はしていないが、しかし、国民がそういうギャンブル的なものを要求しておる。そして、うまいぐあいに当たれば相当な貯蓄増強になる。結論的には、先ほども問題になり、私も問題にしたいと思っておりましたが、健全なる国民消費生活、こういうものも必然的に描いておるということになりますと、私は、調査もやらずに、ただそういうことだけでこれをやることがまず第一番に納得できないのです。これはどうでしょうか。
  134. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 こういう宝くじつきと申しますか、割増金付貯蓄というものを考える一つの契機といたしましては、これはもう御承知だろうと思いますが、戦後二十六、七年にこれが非常に利用されたという実績、特に三十年代に入りまして世の中がだんだん落ちついてまいりますと、減ってまいりまして、三十九年にはもうほとんど少なくなってしまったという一つの過去の経験がございます。御承知のように昭和二十六年から二十八年ぐらいまでは、非常にインフレの高進しておった時期でございます。そういう世の中の背景が、こういうものを大きくした一つ条件だろうと思っております。  なお、そのほかに、新聞にも出ておりますが、ある都市銀行が窓口で預金者の方々にアンケートをした事実がございます。しかし、これは何ぶん千人を単位とする、おそらく二千人ちょっとだったと思いますが、その程度のアンケートでございますので、ここで御披露するのもいかがかと思いますが、そういうアンケートによりますれば、大体半々、少し多い五〇・二%ぐらいがこの割増金付貯蓄を一回自分も利用してみようという答えになっておるように思います。その中で、やはり一万円だけを買おうという人が非常に多くて、金額が多くなるに従ってそのウエートは減っておる、こういうアンケート調査は持っております。  それから、外国の場合をいろいろ調べてみましたが、何と申しましても、外国の場合には、大体金融資産、貯蓄という場合には有価証券が非常に多いというような状況から、債券に割増金をつけておるという例が一、二あるようでございます。こういう問題は国情によって違いますので、むしろあまり参考にならないものと私どもは考えております。
  135. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま、詳しく調査したことはないけれども、ある貯蓄銀行のアンケートがあるというお話、私はやはりこういうアンケートというものがある以上は、政務次官も御存じになって、内容をよく御検討なさったのかどうか、その辺わかりませんが、いま都合のいいことだけおっしゃったような気持ちがしてならないのです。  まず、いまのアンケートは、二千人ぐらいだというけれども、私が調査したところでは、約千人に足らない。全国の射幸心を求めておる人の中の千人のアンケートですよ。それによりましても、五割が買いたいと言っていますけれども、そのほかの調査事項を見てみますと、第一、全国民の中でそれはたった九百人、千人ぐらいですから、正確でないとしましても、全国民の中でいま宝くじがたいへん売れておるそうでございますが、宝くじにしましても、ときどき買うというものはたった三〇%に満たないという数字が出ておる。あとの七〇%近い人たちは、こういうものは買わない、買ったこともない、こういう人たちが七〇%近くおる、こういう事実が出ておるのです。先ほどから聞きますと、そういう許される範囲内の射幸心を求めるものは全国でどれだけおるかもわからない、その中のたった千人のうちの半分は、こういうものがあってもいいだろうと言った。しかしその反面、全体の国民の中で射幸心を求めない人の中からとってみたときには、七割近い人たちは、これは買わない、こういう調査も出ております。ですから、私が言っているのです。  政府は考えたことは何でも一方的にやろうという体質があるから、先ほどから言われるように、やれ金融機関擁護の法案だとか、この法案に隠されている政治思想まで云々される。私は、やろうというものの中には確かにメリットもあり、デメリットもあるということは、初めからお互い政治家として承知しておることだと思うのです。しかし、その根底に流れておる問題を指摘された場合に、両方の立場になって聞いておっても、どうしても片方は預金者のほうの立場から、また九八%は利子ももらえないという犠牲者の立場に立ってみれば、こういうものはいわゆる貯金ではないのだ、そしてたった二%そこそこのくじに当たった人が、というような問題ですね。それと、いま言うたように、だから割引貯金だというようなことまで出てくる。これもその現実はお認めになった。ことばが適当であるかどうかはわかりません。現実はそうなんです。  ここにいま例を二つか三つ、A、B、Cといって考えてあるものをいただきましたけれども、利子を全部割増金に充てる場合のAをとった場合は、二十万口の中に当せん本数というのはわずか三千八百三十五本ですよ。これは二%に満たないのです。  先ほどから話が出ておりますから、お互い話は理解したものと思いまして、少しはしょりますが、まず、先ほどから二種類というようなことがありましたけれども、そういう省令できめる種類を幾種類考えておりますか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  136. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 現在のところでは、普通預金をつけて、それをこえる部分を割増金にするというのと、それから一切金利をつけないで、全額利息相当分を割増金とするという方法と二つが適当ではないか、かように考えております。ただ、私ども最初にやるときには、おそらく普通預金の利息をつけるという形で出てくる金融機関が大部分ではなかろうか、かように考えておりますが、とりあえず省令の段階では、そういう二つの方法を現在考えておるということでございます。
  137. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 政務次官、お答え願います。  先ほどの私の前段の問題ですね。結論的に申し上げますと、先ほどのようなアンケートですね、これも一つの考えのヒントにはなっておる。そうしますと、たいへんこれはよくない、こういうものはないほうがいいんだ、国民の中にこういう射幸心をあおるようなものは買いたくないという人が七〇%近くおる。その辺、もしもそれを承知の上でやられたとするならば、私は——このアンケートは、政府が指示してそういうことをやったんですか。それはどうでもいいにしても、私は、いま社会の不公正がたいへん増大しておるときに、大臣も、社会的不公正がいままで多過ぎた、何とか直そうとしているということを財政演説の中で述べておられるわけですが、この割増金付貯蓄はそういう基本的な考え方と相反するんじゃなかろうかと思いますから、これはそういう立場に立ってひとつ政務次官からお答え願いたいと思います。
  138. 中川一郎

    中川政府委員 実はこの割増付貯蓄を考え出しましたのは、正直のところ福田大臣でございます。福田大臣としては、何としてでも総需要抑制して物価高を押えなければならないとまじめな気持ちで考え、財政について、金融について、また貯蓄制度について、くふうしてまいったわけでございます。その中で福田大臣としては、長い経験の上からいって、こういうことをこの際補完的に行なえばかなりの効果があるんではないかという気持ちを持たれて検討を開始したわけでございます。  その結果、先ほどお話しのありました、千人足らず、九百幾つですけれども、窓口でアンケート調査をしてみましたところ、半数以上の者がそういうものがあったら買いたいということも明らかになりましたし、私どもも政治家として、家庭において、あるいは代議士さん、皆さん方に、こういう制度をつくったらどうじゃろうか、いやそれをやったらぜひ買いたいなという人がかなり多いということと、それから宝くじとの比較の御議論がありました。なるほどそのとおりでございますが、私ども宝くじは買う気がなかなか起きないというのは、金額が少ないのに配当金が非常に多いということになりますと、当せん率が非常に少ない。われわれも買ってみて買ってみてずいぶん買ってみたけれども、当たるほうが少ない。ほんとうのギャンブルであって、非常に楽しみがないものとして、なじみが私には少ない。  しかし、今度の場合は、一万円に対して一千万円という千倍程度の配当率ですし、それから二等、三等、いろいろ段階を設けております。かなり多くの人がこの配当を受ける。大体三分の一以下の者が、大きなものは当たりませんけれども、かなりの方が配当を受けられるようになるとするならば、相当希望者があるのではないかという、政治的といいますか感覚をもって、この際——先ほどから申し上げますように、あまりいい方法ではもちろんありません。しかし、物価高を何としてでも押えなければいけないという責任に立つ者としては、この際、ひとつこういう方法も講じて資金吸収をはかりたい。しかし、これはあくまでも押しつけではありませんで、国民皆さんの三〇%ありますか五〇%ありますか、われわれとしては短期ものの貯金をできるような人の二割程度を想定して、約一兆円か一兆五千億ぐらいのものはこちらに回ってくるのじゃないかという想定も立てて、成案を得て御審議を願っておるところでございます。  決して国民の意思を無視して、反対しておる者が多いのに、政府が一方的にやるときめたんだからやるんだという姿勢ではなくして、謙虚な気持ちで、この際、非常事態に対処する多様化の中の一つの形態として、まじめな意味で御審議をお願いしておる次第でございます。
  139. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 くじつきのこの定期と、先ほどの私が言いました宝くじとは違うというような感じお話もありましたけれども、それからいま三分の一以下が当たるのだと言うけれども、先ほど局長さんからお聞きしたように、二種類のものからいけば、三分の一とはきめてあるでしょうけれども、実際は二%、百人のうちに二人しか当たらないのですよ。百人のうち二十九人か三十人か当たればいいのですが、現実にいまお聞きした二種類の種類からいけば、百人のうち二人も当たらない、一・九人になる。  ですから、先ほどから言いますように、庶民のささやかな金利、ほんとうはその金利も、この物価上昇のおりですから、目減りしているという話もありました。私はこれは大事な問題だと思います。しかし、そのわずかな金利、ささやかな金利も奪ってしまって、当たりくじとなります人たちの賞金のために、九八%の人が奉仕しなければならない。その場合は、二%の人は射幸心を満足するでしょう。しかし、はずれた人は、ただは、ずれたと言うだけで、金銭的なトラブルは起こらないかもしれませんけれども、九八%のはずれくじになった人は、精神的にどういう作用があるか、私も調べたことはございませんけれども、自分がかりにそれを自分の子供なり何なりに買わしたとした場合に、かえってそのはずれた人たちが恨むんじゃないですかね。このアンケートは、初めに、発行するときに千人のうち二十人しか当たりませんよ、そういうことを言って、このくじ引きつぎ定期が買いたいですかという質問の設定じゃないのです。ですから、先ほどからいろいろ言われるように、いわゆるギャンブル的な、投機的なことを増長するという問題、それから最初の提案理由にありますけれども、現在金利を上回るような物価の上昇、こういうときにさらにこういう低金利あるいは全然金利がつかないという、そういうことは国民貯蓄心というものをたいへん混乱させる、当たらなかったら恨みも持ちますからね。これがかりに貯蓄増強になってみても、そういうことを考えれば、これが健全な消費生活を向上させるものとは私には絶対に思われない。この狂乱物価の時代に、こういう投機的な行為、そして恨みを持つような、千人のうちに九百八十人は恨みを持つような投機性の助長、増長、いわゆる社会的不公正の増加ということは、政府はやるべきではないのではなかろうか。私はどこから考えてみてもそういうふうに思うのですが、ひとつ簡単にもう一度お答え願いたいと思います。
  140. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その前にちょっとおわびを申し上げないといけないと思います。  政務次官がお答えする前に、ちょっと私のほうから訂正さしていただきますと、先生のお手元に参りました資料に、賞金の当せん率が一・九二%とございますのではないかと思います。これは非常に説明不十分で申しわけございませんでしたが、一番極端な金額の配分をいたしまして、非常に上の一千万円を多くしたときのいわば計算として一・九二%になっておりまして、大体、現在私どもまでにきております都市銀行の案は、下一けた十本に一本が当たるような案、農協も大体そういうようなことを考えておると聞いております。そういう意味では、下一けた十本に一本ということが一応これからのベースの案になるのではなかろうか、説明が不十分ではなはだ申しわけありませんでした。
  141. 中川一郎

    中川政府委員 田中先生御指摘のように、確かに当たらなかった人はがっかりするだろうと思いますが、(田中(昭)委員「その人たち社会暴動でも起こしたらどうしますか」と呼ぶ)百人に二人になるのか、百人に十人にでもなるのか、これは必ず当たると言って買わして、そして当たらなかったらおこるだろうと思いますが、おそらく私が買う場合は——田中先生どういう気持ちで買われるか、私が買う場合には、当たらないことがまずまず一〇〇%、当ればもうけものだなという気持ちで買う。そういう人だけにお願いするのであって、これは当たりますから買ってください、必ずあなた当たりますというような勧誘をもし窓口がするとしたら、社会暴動にもなるかもしれませんけれども、売り出すときからの心がまえが……(田中(昭)委員「そういう人が多いのです」と呼ぶ)そういう人が多いとするならば、十分配慮して、窓口で働かれる人方がそういう必ず当るようなことを言わないで、これは投げたと思ってという気持ちで御参加というかお預かりさしていただくように、厳重に注意してまいりますが、私どもが買うとするならば、当たらないのは当然だ、当たればもうけもの、これぐらいの気持ち、一万円で七百二十五円投げた気持ちで買うであろう。したがって、社会的暴動が起きるようなところまではいかないし、そんなことがあってはたいへんですから、窓口においては、田中先生御指摘の点を十分配慮して、詐欺みたいなことになるような募集は厳重に慎むようにやって、おかしなことにならないようにしてまいりたいと思います。
  142. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 どうもすっきりしないのですけれども、時間が限られてますから次に進みますが、先ほどから聞いておりますと、貯蓄増強という目的はある程度その成果がある、しかし、成果があるけれどもはっきりわからぬ、だけれども、金は大体目標としては一兆五千億くらい集まるだろう、こういうことですね。これはあくまで予想ですね。  そうしますと、一兆五千億という金は、先ほどから出ましたような金をたくさん持っておる人とか金利で生活しておるそういうりこうな人はこれは買わないのですよ。おそらく買わないのです。やはり先ほどから話が出ておりますように、庶民のささやかな金であり財産なんです。その点はそうでございますね。そうしますと、これが金融機関に集まります。一兆五千億がそれぞれの金融機関に集まる。そうしますと、先ほどから出ておりますように、これを今度は企業に貸します、大企業だけじゃないでしょうけれども。大企業だけに片寄ってはならないというのが私の考えている本意ですけれども、そうすると集められた金が——集められた金というのは、これは普通預金と違いまして半年とか一年とか安定した、金融機関としてはもうのどから手が出るような、いわゆるうまみを持った資金が集められる。それが庶民のささやかな金であるならば——いま一番困っておる問題は、中小企業が窓口規制等もありまして融資に困っておる。大企業過剰流動性がある。だから、この一兆五千億何がしかの金というのはもうひもつきで、これは大企業には融資をしないのだというようなことを法律に書いてはいかがですか。それが一番いいと思うのですが、どうでしょうか。
  143. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず一兆から一兆五千億と推算しております中で、いわゆる大企業と関係のある都市銀行が三分の一ぐらいというように見られます。残りの三分の二は、もう中小企業に金が向けられるべき性質のものだろうと思います。  なお、都市銀行の場合におきましても、現在、都市銀行の三六、七%は中小企業に金を貸しておるという実情でございまして、この場合には、先ほど来御質問が出ましたように、この金がそのまままた世の中に出ていくということでなくて、やはり一応金融政策の網を通してこれを考えていくべき性質のものではなかろうか。何と申しましても、二年間の臨時立法ではございますが、その二年間の間にはやはり金融政策の変化に対応するような臨機の姿勢を確保しておく必要もありますので、むしろ金融政策上の姿勢として、そういう方針、基本的なものの考え方でやっていくのが一番現実的ではなかろうか。むしろこれを法律的にひもつきにするということは、実際上として非常にむずかしい問題が起こってくる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  144. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ここは大事なところなんですよ。いまのお話をそのまま受け取って、政務次官理解してもらいたいのです、理解できておると思いますけれども……。  かりに一兆五千億としますよ。そのうちの三分の一が都市銀行に集まるだろう。五千億です。その五千億のまあ六〇%くらいは大企業に融資されるだろう、三十何%が中小企業にいくというのですから。そうしますと、三千億ですね。いま大企業に三千億ばっと出したらどうなりますか。いま大企業は金がもうかり過ぎて、それをどうして隠そうかとか、いままでのような投資のしかたを変えて、だぶついた金をどうしようかといっておる。そういうことが物価を上げてきた原因になっているわけでしょう。そこにまたそれだけ持っていくのですか。理論的にはそうなるのです。そういう可能性が十分含まれておることでありながら、いわゆる消費を押えるための貯蓄政策だ、こういうふうに初めから言っておるわけですよ。合わないじゃないですか。それだったらいっそのこと、都市銀行吸収した資金はそのまま凍結して、信用組合か、そういう中小企業に金を流す方向へ全部移しかえせばいいのです。法律にきめなくても、これは指導でも何でもできると私は思うのです。どうですか、政務次官
  145. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず、この臨時的な割増金付貯蓄に集められた金であろうとなかろうと、現在、今後銀行が集めてまいります資金というものはすべて、たとえば都市銀行の場合でございますと、日本銀行の窓口規制の対象といたします。たとえば一月から三月まででございますと、総額八千七百億以上は貸し増してはいけない、こういう扱いでやっておるのが窓口規制の実態でございます。  したがいまして、たとえこれの分が純増部分となりましても、貸し出し部分は、窓口規制のワクにこの部分が加わるわけではございませんで、全体の金融の総量の調節の中で貸し出し額がどのくらいが適正であるかということで考えていくやり方をやっておるわけでございます。その中で、たとえば商社なりあるいは選別融資で重点的に配分していくというわけでございますので、この部分がそれに加わるものというようにお考えをいただかないで、むしろこれからの預金の増加部分すべてが同じような問題であり、それをいかに運用していくかというほうを、日本銀行なりが金融調節として貸し出しワクを調節しておる、こういうわけでございます。したがいまして、その一環として、その日本銀行の貸し出しワクが大き過ぎるか大き過ぎないかという問題として考えるべきことではなかろうか、かように考えております。
  146. 中川一郎

    中川政府委員 いま銀行局長答弁申し上げたとおりでございまして、貸し出しに対しては、こういう物価高、異常なインフレの時代には、かなりきびしい窓口規制というものをやりまして、土地についてはもう一切出してはならないとか、建物についても規制をするとか、いろいろなきびしい規制をやりまして、出すところでコントロールする。先ほど網ということを言いましたが、網を通す金であれば、その網でもって規制すれば十分こと足りることであって、預金が集まったからそれがストレートに、都市銀行で五千億、その六〇%で三千億、それは大資本にそのままいくという仕組みになっておりません。それではたいへんなことですから、十分その点は、経済物価高買い占め等、現状並びに将来を見詰めまして、物価高の元凶になるようなところには——この預金はもとより、一切の預金を通じて金利を一〇%に上げるなどして、預金吸収に努力をいたしておりますが、集まった金すべてについて、御懸念のないように十分の網をかけていきたい。私どもも政治家として、最近はよくなっておりますが、過去のような貸し出しの状況はよくないと思っておりまして、銀行局とも相談して、インフレを押える窓口規制というものを徹底的にやるように、具体的にもし御要望があれば御説明申し上げますが、そういうルールなり考え方でやっておりますので、決してインフレを助長するものではないということを申し上げたいと存じます。
  147. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 金融の問題はそう単純にいかないということは、私も少しは知っておるつもりです。しかし、そういうことを言うのだったら、はっきりいえば、金に色をつけなければわかりませんよ。定期預金で集まった金に色でもつけておく以外わかる方法はない。そういうことで、こういう議論の場ではそういうことは言えますけれども、私は、この前銀行の各代表が参考人としてお見えになって、いろいろ聞きました。全国銀行さんは、資金集めにはほんとうにいい方法なんだから、この法案には賛成だという。しかし、相互銀行の代表の方でしたか、これは貯金としてははっきりいって良質のものではない、よくない。だけれども、賛成せざるを得ない。ということは、裏を返せば、資金が集まってきて、その集まった有利なといいますか、安定した資金、定期預金ですから。これはそのまま銀行さんがじっと持っておるわけじゃないでしょう。何らかの形で融資しなければ、銀行さんは倒れてしまいますよ、預かっておるだけじゃ。金融のそれから先の裏での操作というのはいろいろありましょうけれども、先ほどから言いますように、それではそういう実態をほんとう銀行局で全部金に色をつけたように把握できるか、できるわけないじゃないですか。  これは実行する金融機関のほうから、どうぞこれをひとつやってください、そういう要望を出されて、政府が、ああこれはいいことだ、物価抑制になるとか、そういうことでやられたのかどうかわかりません。しかし、先ほどから聞いておりますと、利子配当分を全部報償金に充てるといっても、これは確かに集まった金を銀行はその利子以上で融資をすれば、結局、その一割なら一割と七分二厘五毛の差額は銀行はもうかる。そういうことを繰り返してきて、現在、銀行のもうけは、法人のベストテンの中にだあっと出ておる。銀行さんは、景気のときであれ不景気のときであれ、金もうけのトップに出ている。これはだれでもそんなものかなと思うし、私も単純にそう思います。昔から、銀行さん、金融機関というのは、景気のときであれ不景気のときであれもうかる、これは一つの真理みたいにいわれておりますけれども、そういう中で、いま申し上げましたように、理由がどうであろうとも、確かに計算的には安定資金が確保できるということ。それは何がしかの融資をするわけですから、かせがせるわけですから、その分の差額は銀行さんはもうかる。ということならば、先ほどから私が言いました、くじにはずれた九八%の人たちは、当せんの率が三分の一以下でもいいでしょう、六七%の人たちから見れば——先ほどこの法案の思想は、金融機関擁護の法案ではないかという話が出た。政務次官も、一応そういうことは言えるでしょうと、そのこともお認めになった。  それと、昨日でしたか、新聞に出ましたね。自民党に献金されます、国民協会に出る会費が、いままでの三倍にも四倍にもなった。国民は、こういうことをやはり毎日報道なり新聞等で見ておるわけでしょう。しかも、金融機関の会費がふえた分も、大体平均の二倍半から四倍。月の会費が金融機関だけで四千四百万円。東京銀行協会だけで月二千万円、地方銀行協会は四百万円と、だあっと出ています。金融機関だけで月に四千四百万円。これは前回までの会費の三倍から四倍ぐらいになっている。中には六十倍とか四十倍になったところがある。これに出ておる。その中で金融機関はささやかだけれども月に四千四百万。そのほか派閥に献金される寄付金はまた別だ。これははかり知れない——はかり知れないとは書いてない。とにかく多いと書いてある。  そうしますと、いずれにしろ金融機関は金がもうかる。この法案は、金融機関擁護のための法律だというふうに言われる。その金融機関が、月に四千四百万も国民協会を通じて自民党に会費を納めておる。こういうことを国民の側から率直に見た場合どうなりますか。そういう議論も結局裏づけられる、実際がそうなんですから。そういうことを考えますと、やはりこの法案は取り下げたほうがいいのではないですか。時期がよくない。どうですか。
  148. 中川一郎

    中川政府委員 先ほど答弁の中に銀行擁護を認めたという、認めてはおりません。銀行擁護のためにやったものではない。  簡単にいいまして、たとえば一億集まったとします。そうすると、普通の定期預金で七百二十五万ですか、金利を支払うわけです。今度の場合も、七百二十五万ですか支払うわけであって、銀行がもうかる、もうからないとは全く関係ない。利子の払い方を、くじの当たった人には重く、くじの当たらない人にはいかない人、軽い人という差ができるだけであって、銀行側の出し入れには、この制度ができたから利益になるというものではない。  ただ、御指摘のように、銀行がもうけ過ぎておるじゃないか、七百二十五万金利を払って、一千万円金利をとって貸しているじゃないか、その差額の二百七十五万はもうけているはずだということでございますが、これにはやはり資金コストというものがありまして、大部分のものは資金コストに回されて、何がしかの利益というものが銀行利益になる。銀行がもうけ過ぎておるのではないかという御指摘でございますが、銀行だけは、これは公的機関と考えてやらなければならないところもあるのです。もし経済が混乱してきて、銀行も混乱したということになりますと、これはたいへんなことになりますから、好景気であろうと不景気であろうと、銀行だけはしっかりしてもらわないとたいへんなことだという基本的考え方を持っております。ただ、もうけ過ぎるというようなことはあってはなりませんし、他の産業、業界に比べて、銀行が過度の政治献金をしておったということについては、これは公明党さんから御指摘を受けるまでもなく、われわれ自身も監視していかなければならないところでございまして、この額が現在の銀行の経営からいって過度のものであるのか、まあまあこれぐらいならばというものであるかの判断につきましては、われわれも御指摘を受けて反省すべきところがあれば、これは大蔵省の問題ではありません、自民党の問題ではありますけれども、私ども自民党の一員として十分耳を傾けて、しかるべき場所でただすべきことはただしていきたい、このように考えます。
  149. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 政務次官、ちょっと違うのです。私はもうけ過ぎと言いましたが、もうけ過ぎということばの意味を取り違えているように聞こえる。というのは、いままで一年なら一年の定期預金があるわけでしょう。今度のこの法案をつくれば、定期預金で入ってきておった以上に、別の貯蓄増強はできるわけでしょう。その分についても、賞金を払ったとしても七分二厘五毛しか払わなくていいのですから、全部を含めて一割なら一割で貸したとすれば、普通の定期で入ってきておった以外に、この法案によって定期預金がふえるのですから、その利率は一緒なんですから、結局、その分だけよけいにもうかるわけじゃないですか。私が言うのは、もうけがふえたということですよ。もうけ過ぎたと言ったら、訂正しましょう。もうけがふえる、預金量がふえて融資がよけいできるのですから。それはわかりますね。だから、そういうもうけをよけいさせるときと、こういう政治資金がいま問題になっているときと、時期が悪いんじゃないですかと、言ったのはそういうことです。それが一つ。  いいですか、委員長、あまり時間がございませんから……。私がけさほどの理事会から言っていることは、政府金融機関擁護論でないというのは、それは政務次官の発言です。実際は、銀行さんに事実もうけがふえる部分は、これはふえますねということは、銀行さんに聞かなければわからないのです、政務次官から聞いても。そうでしょう。政務次官金融機関擁護論じゃないと言っても、金融機関のほうが、私のほうはたいへん擁護してもらっています、おかげでこれだけもうけもふえますと内心は考えておるんですよ。どうしてもやはりここで銀行を参考人に呼んでもらってたださなければ、そのままでは済まされないということになるわけですよ。そうでしょう、委員長
  150. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ちょっと田中委員に申し上げますが、ただいまの御発言の中で、参考人を呼べという御要請がありましたが、この件につきましては、先ほどの理事会において論議していただきましたように、各党の理事の間で折衝をしていただきまして取りきめていただきたいと思いますから、御了承いただきたいと思います。
  151. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 では、続けます。ほんとうは、いまここに参考人がおられたら一番いいのですけれどもあと理事会でお取り計らいをいただくということでございますから、ありがたい御配慮と承って期待をしておくわけでございます。  次に——ほんとうは次に入れないのですよ、それがはっきりしないと。私は、この制度が前に戦後一回行なわれたことは、先ほども触れました。射幸心をあおるような制度貯蓄増強をはかったのですが、今回のもそれに似通ってはおりますが——その前に、政府はたいへんいいことをされた。貯蓄一つ手段として、昨年末に、いわゆる特利つきのボーナス預金をされましたね。それがたいへん好調だったと聞きますが、これはどういう結果に終わって好調だと判断すればいいのでしょうか。
  152. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 ボーナス預貯金の受け入れ実績といたしましては、都市銀行が約一兆七百億ふえておりまして、地方銀行が五千五百億、相互銀行が約三千八百億、信用金庫はまだ全国的に集計ができておりませんが、そういうところで、信用金庫を除きまして大体二兆ほどが民間金融機関で集まったという形になっております。  なお、このほかに郵便局とそれから農協がございますが、数字は現在のところまで、まだ手に入れておりません。
  153. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 たいへんな好成績だったということですね。  そこで、先ほど銀行局長さんからお話がありましたけれども、これは特例的なことで、いわゆる金利というものの基本的な考え方からいくと、緊急、特殊なことであるということですが、そういう道をせっかく開かれたのですから、ここで金利の物価上昇によるところの目減り、そういうことを考えれば、何とかしてその目減りを補ってやりたいということは先ほどからお話がありますし、そういうボーナス預金については成績もよかったし、特例で金利を結局は短期間に上げたという結果をつくったわけですから、私は、この割増金付貯金も、何かそういう普通の預金金利以上に、普通預金金利に上のせして割増金をつけるということは、先ほどのボーナス預金と同じ結果になることで、これはまたそういうことではたいへん喜ばれるのではなかろうか、こういう感じがしてならないのです。せっかくボーナス預金で金利を上げた。これは一カ月分だったからそれでいいというけれども、一カ月分を半年分延ばすぐらいのことは、ここで踏み切るべきじゃないでしょうかね。
  154. 中川一郎

    中川政府委員 二兆数千億の金が集まったということは一つの効果があったことで……。しかしこれは、いまお話がありましたように、わずか一カ月の、しかもボーナスが出回った特殊な時期に、特殊な金利をつけたということでございます。こういう考え方を今度の割増金付貯金にもやるということは性格が非常に違う、特別な金を目的とした貯蓄ではありませんで、いま庶民が持っておられる全般のお金に着目をしてやっておるのでありまして、先ほど来御説明申し上げましたように、特にこれだけプレミアムをつけるということになれば、ほかの金融が全部ここに殺到してくる、ほかの金融がからっぽになってしまうということも、かりに二年間やるとすれば考えられることでして、これは預金金利の引き上げ以外の何ものでもない。そういう余力があるならば預金金利の引き上げをやることが順当であり、過去においても四回やり、また今後も、今後の経済の状態のいかんによりますけれども預金金利の引き上げによる預金吸収というものは、それはそれとして別途に考えるべきことであって、今回の制度をそちらへ切りかえる理由にはならないのではないか。これはあくまでも選択的に、こういう制度なら、同じ金利だけれども、うまくいけばたくさんもらえるし、へたすれば当たらないしという、別途の心理を誘発するというのですか、そういう方々への窓口も開いておくということであって、特別に金融機関が利子をつけてやるこの前のボーナス貯金とは背景が違う、また考え方も違うということで、そちらのほうにはなじまないといいますか、そちらを採用するというわけにはいかぬのではないかと思います。
  155. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 これもやはり当局の一方的な言い分になるように、私はそういうような感じがしてならないのですよ。  そこで、もう少し聞きますが、予想に反して成績がよかったと言いますけれども、どうしてそういうようによかったのでしょうか、その理由と、どのくらいよかったのか、ちょっと具体的に、参考に聞いておきたいと思います。
  156. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは、ある意味ではほんとうに予想に反してという感じでございます。もともと六カ月定期預金というものは、いままでなじみが非常に少ない預金でございまして、まあ大体一年かそれ以上の一年半定期というのが、一般貯蓄の一番の手段であると考えられておったわけでございます。それが六カ月定期というものがこれだけ売れたということは、一つは金利が高かったということのほかに、同時に、普通預金もこの期間には非常にふえておるようでございます。率直に申しまして、一般大衆の方々は、こういう物価高のときに、長い定期預金にしておくよりは、やはりボーナスをとりあえず何らかの機関に置いておこうという意味で、比較的短期で有利なものというようなことで、このボーナス預金というものが利用されたのではなかろうか、かように考えております。  ただ、これは先ほどの政務次官の御答弁にも関係がございますが、こういうものがきわめて短期のやり方としてやれたというのは、やはりこれが銀行の貸し出しコストにできるだけ反映しないという趣旨でこれが短い期間にせざるを得なかったということでございまして、長い割増金付貯蓄一年定期といったようなものを恒常的に二年間やりますと、どうしても銀行の貸し出しコストにはね返って、一般の中小企業金融の貸し出し金利がどうしても高くならざるを得ないのではないかという心配がございます。  なお、この割増金付貯蓄そのものに対して、これを一番、ほかより有利な貯蓄形態にしたいということ自身に問題があろうかと思いますので、これのみに特別有利な金利をつけるということについては、私どもは、むしろ問題があるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  157. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そのたいへんよかったという理由を一応お聞きしたわけでございますが、どのくらいよかったか、予想よりもどのくらいオーバーしたのかということについてお聞かせ願えますか。——ではあとで……。  急に臨時の措置としてそういうことをやられたわりあいにしては成績がよかった、こういうことになりますね。今度のこの割増金付も、窮余の一策として、もうこれを貯蓄増強の一部分としてとにかくやるんだということも、私はいままでのいろいろな質疑応答なんかを考えてみますと、これは思いつきといいますか、思いつきじゃないでしょうけれども、やはりどうしてもすっきりしないところがあります。というのは、その反面、この特利つき定期預金がよかったということは、健全なる国民貯蓄心といいますか、そういうものがまだ国民の中には健全にある。ちょっとでも金利を上げてもらって自分の余分な金を貯金しておこうという健全なる国民貯蓄心というものを考えますと——大臣いまお見えになりましたけれども、いままで政務次官といろいろ論議いたしましたけれども、その結果から見て、それと射幸心をあおるような今度の制度を考えてみますと、どうしても私は不安が残ってしかたないのです。  あと時間がなくなりましたから、最後に、私は今度のこの法案と過去に制定されました法案と、いろいろ比較してみました。その比較しましたときに私の疑問点がずっとございますから、それをいまから申しますが、これはあとで当局のほうから説明でもいただくようにして、質問を終わりたいと思います。  一つは、前回のときにはたしか「目的」という中に、「貯蓄者が自由に参加する」という一つの項目があったと思います。今度はそれがないようでございます。これはどうしてなのか。  それから、こまかいことでございますが、前回は、「割増金品」、こういうようになっていた。今度は「割増金」と、こうなっております。どういう目的がそこにあるのか。  それから一番問題のあるのは、その次のいわゆる割増金は、利子または配当の七分の三以下で、そして当せんの数は、三十分の一以上三分の一以内というのがあったわけですけれども、今度は割増金を支給できる金額だけがきめてあって最低がきめてないといいますか、私のことばが間違いならばあれですが、とにかくこうなっておったと思うのです。そういう点が違いますし、これは究極のところ、普通の預金利子の全部を割増金に充てるというのではないのだというふうに私、理解しておりますが、その点が違っております。  それから前回は、最高の割増金というのは政令できめたのですけれども、今度は額が大型になったからかどうか知りませんが、それを法律できめてある、こういう点ですね。  その次は、最高の割増金の金額が今度は一千倍になっておりますけれども、これは前回は政令できめてある。  最後に、課税上の特例でございますけれども、前回はこの預金証書に張ります印紙税も免税になっております。今度は所得税だけしか非課税になってない。今度の国会には印紙税の大幅増徴の法案が出されております。こういうことを考えますと、私は、この印紙税も確かに物価を下げることには作用しないと思うのです。いままで二万円の印紙税が五万にも六万にもなったりしておるような状態を考えますと、いまの取引は何億円というのがしょっちゅう行なわれるということから考えれば、印紙税もたいへん増徴になっておりますし、その増徴とこの問題とは直接関係ございませんけれども、そういう非課税からそういうものをはずしたという理由、そういう点については後ほどまたお聞きすることにいたしまして、資料でもようございますから提供していただきまして、質問を重ねていきたいと思います。  以上で終わります。
  158. 安倍晋太郎

    安倍委員長 山田耻目君。
  159. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣委員会初めての審議で、きょうお見えになったわけですけれども、かぜをひかれておったそうでしばらく見えませんでしたが、調子はいかがでございますか。  きょう、提案されました割増金付貯蓄についての法案審議に入ったわけですが、最初から大臣お見えいただきまして、ことしは委員会審議には積極的に出たい、こういうお気持ちのようだとうかがいまして、非常に感謝しておるのですが、どうかひとつさい先よい審議の実をあげていただけるようにお願いいたしたいと思います。  インフレが非常に狂乱の状態に入っておりまして、ますます卸売り物価消費者物価含めて高騰し続けている。けさの新聞を見ますと、国際的にもイタリアを倍以上こえてしまっておる。こういう状態でどうなるのだろうかという国民の心配が、非常に不安をまじえて強まっています。部分的には、生活破壊も、特に低所得者層には大きく起こってきております。こういう経済の状態になりまして、今日の経済の現状にひとつ即応する臨時の措置として今回の割増金付貯蓄を出すという、たいへん大だんびらを振られての趣旨説明次官から伺ったわけですが、はたしてこの割増金付貯蓄が現在の経済情勢に即応した臨時の措置としての効用を果たし得るかどうか、私、若干疑念もありますし、大臣にお伺いしたいと思うのです。  先ほど午前中からの審議の中で、次官のほうから、大体割増金付貯蓄の発想は福田大蔵大臣がなさったのだ、こういうお話でございました。しかも総需要抑制インフレ鎮静への一石として出されたものであるということを伺いまして、大臣気持ちの中には、国民に向けてこういう貯蓄政策を求めておられるのですから、インフレ鎮静への確信のほどが伺えるのではないかと実は私期待を持っておるわけですが、大臣お話伺いつつこれから審議を深めていきたいと思いますので、まずその点についてお話伺いたいと思います。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、もうとにかく今日の狂乱と呼ばれる物価情勢をすみやかに転換しなければならぬ、そういうふうに考えておるわけですが、そのためには何としても総需要抑制政策、これはまあいわば大謀網というか、目の荒い政策でございます。それに対してこまかい詰めをしなければならぬ、こういうことからいわゆる物資三法というものを御制定願っておるわけですが、この二つの政策が何といっても異常事態を克服するための両翼をなす、こういうふうに考えておるわけです。この政策が進められておる。まあ私は大体もう峠に差しかかっておる、こういうふうに観測をしておるわけです。この総需要抑制政策、また物資三法による行政措置、こういうものが動き出した。そこで、そう時間のかからない間に、いままでの異常な流れ、こういうものは大きく転換を見るであろう、こういう見通しを持っておるわけであります。  そういう間におきましても、考えられるあらゆる物価狂騰抑制の施策が考えられなければならぬ、こういうふうに思いまして、この割増金付貯蓄、これが非常に大きなウエートを占める、こういうふうには申し上げません。しかし、これもまた異常事態を打開するために一役を買うであろう、そういう期待を持っておるわけですが、とにかく私は、もう今日の事態は峠に差しかかっておる、もう一押しこれはがっちりと総需要抑制政策を進める、また物資三法によるところの行政措置を強力に進める、ここで流れ転換への大きな力となってあらわれるであろう、こういうことを確信しております。
  161. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 インフレの鎮静化も峠をどうやらまたぐ段階に来ている、しかもその役割りを果たしていったのは物資三法であるし、しかもその鎮静化の速度を強めるために、ここで一石ではあるけれども割増金貯蓄政策をとる、こういうお話だと思うのです。  ここで、私、二つ疑問が出てくるのですが、一つは私が冒頭に申し上げましたように、物価はたいへんな過熱の状態に入っております。一月で卸売り物価が三四%強、消費者物価は二一%、まさにおっしゃっているように狂乱の事態です。これがもう峠である、これからもう下降線をたどるということになりますと、大体下降線の下限終着は何月ごろになるのか。私たちもいろいろ国民皆さんによく問われます、どうなるんですか、おれはよくわからぬと言えば、何だ政治家のくせにばかやろうということになるわけです。それは福田さんはわかっておるだろうと実は私は思う。いま峠の話が出ましたので、一体いつごろが下降の落ちついたところの線になるのか、一体それはいつごろかということをひとつ伺っておきたいし、それからいま一つは、やはり割増金付貯蓄、一石として投ぜられた有効な手段とは必ずしも言えないけれども、ある意味では、側面的に貴重な一石であるというふうに私は受け取っておりますが、その分をずっと広げてみますと、国民が金を少し持ち過ぎていて、品物を買いあさるからインフレが起こっておるのだ、何か国民に責任の相当部分が転嫁をされたというふうに聞こえてならぬので、そこを少し大臣見解を掘り下げて伺っておきたい、この二つです。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 まずあとのほうの話ですが、私は今日の異常物価高国民態度から来ておるのだ、そういうふうな理解はしておらないわけであります。これは海外的要因という問題もあるし、また国内における景気刺激的な施策、これが財政金融両面においてとられたというようなこともあるし、いろいろありますが、国民にその責任を押しつけるのだというような気持ちは一切ありませんから、その辺はひとつ誤解のないようにお願いしたい、かように存じます。  それから第一の問題でありますが、これはいつ物価が鎮静しますか、あるいは安定しますかと言われますが、私はそれは非常に当惑するのですよ。と申しますのは、これは汽車の時間表のようにいつの何時になったらこうなると、こういうふうに言える筋合いのものではありませんものですから、そこでそういうふうなお尋ねのしかただと非常に当惑しますが、私が申し上げたいことは、いま日本社会日本経済情勢、これは非常に異常な事態だと思います。一億総投機心というような気持ちになっておる。先にいけば物価は高くなる、そういうようなことで、少し持ちだめをしておけばそのほうが有利だ、こういうような気持ちにもなってくる。家庭までがそういうような状態である。事業のほうはもちろんです。そういうような一つの大きな投機心理的な流れがある。この流れの転換、これがとにかく非常に重大な問題である、こういうふうに考えておるわけでありますが、この流れの転換はそう私は時間はかからない、こういうふうに思うのです。もうこの両三月というか、そういううちには国民経済に対する、あるいは社会に対する考え方、受け取り方というものが非常に違ってくる、またそうさせなければならぬ、こういうふうに考えております。
  163. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 鎮静化の時期がいついつ来るということを答弁することに非常にちゅうちょするし、ある意味では言いにくい、もっと裏から言えばよくわからない、こういうことに私はなるのだと思う。その意味で、私と同じですね。よくわからない。しかし、やはりあなたは、金融財政経済日本の国務大臣の中では中核的なお方ですから……。  国民はいまのように物価が狂乱することについて、日本の政治そのものにたいへんな不信を抱き始めているのです。だから、私は、政府のおとりになる諸政策も、その意味ではかなりのあせりをお感じになっていると思います。その意味で、私もやはりこうした問題を審議する国政の場におる一員として、国民に対しては共通の責任を私も感じます。しかし、私たちは政治というもののヘゲモニーを直接持っておりませんだけに、やはりその中核であるあなたに対して、もっとやはり具体的に、当惑するということばだけでは国民は納得をしません。やはりこういう割増金付貯蓄を打ち出されたのも、ただ単なる一つの思いつきであるということだけで私はこの法律をお出しになったものとは思わないし、これがある意味では有効な一石となるという確信を持ってあなたの発想がこの法律になったということを聞きますれば、やはり私はあなたには鎮静化をさせる時期的な確信もある、こういう立場を、法律を提案なさった、あるいはこういうことをお考えになったあなたとしてお持ちだという気持ちを私は実は持つわけなんですよ。だから、そのことについて、かぜも十分なおらぬのにおいでになって、そうして努力いただいておるということに私感謝いたしますけれども、最近のインフルエンザはなかなかなおりにくい、日本インフレもなおりにくい、こういうことだけで当惑をなさっていたのでは私は困る。だから、ひとつきょうのあなたからは、やはりこの割増金付貯蓄法案をお出しになったその背景は、インフレを鎮静化させていく側面的ではあるけれども一つの石を投げたのだ、こうおっしゃる限りは、そのことを国民に同意をお求めになる限りは、日本インフレの鎮静はこの時期にはさせるぞ、こういう言明をしていただかないと、日本の国の政治をおあずかりになる中核的なあなたとしては、多少姿勢に欠けるのではないだろうか。当惑するということばではちょっと私いただけない気がするのでございます。そこをひとつ大臣、もっと詰めて、きょうはざっくばらんにあなたの思っておられることを述べていただいて、国民皆さん理解を深めていただきたいと思います。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、もう一刻も早くこの物価の異常事態、このとうとうたる流れ、これの転換をしなければならぬ、こういうふうに考えているわけです。とにかく財政金融を通じ全面的に総需要抑制政策というものが発動されましてまだそう時間もかかっておらない、その間に石油というような異常な事態も発生しておる、こういう状態でありますので、私も、お話しのとおりたいへんあせっておるのです。あせっておりますが、先ほどから申し上げておりますとおり、大体もう峠に差しかかってきておるのではないか。この政策姿勢を推し進めますれば、まず先ほども申し上げたとおり、両三月の間には私は非常に大きく流れを転換する、そういう時期が実現される、かように考えておるわけなんです。両三月でとにかく流れは転換させる、こういう決意でやっておるわけです。
  165. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 まあ大体三月ぐらいが一つの峠から下り坂に入っていく、こういう時期と大臣はおっしゃるわけですね。せんだっての本会議で田中総理も、大体七月ごろになったら何とか鎮静化の方向に手が足るだろう、こういうおっしゃり方をなさっておられる。いま大蔵大臣のおっしゃいました、いろいろ施策を積み重ねていって流れを変えるとおっしゃいますから、その具体的な流れの合流点が大体三月ごろから逐次下降し始める、こういうふうに私は受け取りたいと思います。  そこで、あなたのさっきのおことばの中に、日本インフレを促進させていったという一つの背景には、非常に投機性を帯びたものが多くあったし、しかも、一億総投機というふうな立場にあおられてインフレを促進させてきた、こういうふうなお話があったように私伺ったわけです。せんだってまでの大蔵委員会にしても、あるいは予算委員会にしても、本会議にいたしてもそうでございましたが、大商社なり大企業過剰流動性というのが片側で非常に投機性を大きくのさばらせてしまって、たいへんなインフレへの引き金となってしまった、こういう行き方が大きく指摘をされまして、国としても金融財政政策の、特に金融政策のまずさといいますか、そういうことについては反省をされていたという部分があったように記憶いたしております。今回の割増金付貯蓄というのは、さっきからの議論の中で、国民射幸心をあおるのではないか、いまあなたのおことばにございました一億総投機心をかり立てる、こういうものと全くうらはらではないか、こういうふうに私はいまお聞きしたわけです。  午前中からずっと議論の中で、割増金付貯蓄のこの制度というのは、インフレの鎮静化への働きはしない。むしろ零細な国民射幸心をあおらして一獲千金の夢を追わせて、それが直接一つの犯罪行為に発展するとは言えないけれども、家庭の不和を増大させたり、国民の中の気持ちを非常に不安定なものにさせたりする、そういう役割りを果たしていくのじゃないか。全く射幸心の一語に尽きる。当せんをして賞金をもらうのも二%内外である。九八%が七分二厘五毛の金利はみな巻き上げられていく。この貯蓄債券を買った、貯蓄を一口いたした人たちの金利分だけを出し合って、そうしてそれでくじ引きをやれ、政府はそれを奨励する、こういう点が強く指摘をされておりました。こういう射幸心をあおる、一億の投機心をあおり立てる、その立場を強く今回は零細国民に求めておる、こういうふうな見解がしばしば述べられております。一体、これに対して大臣どのようにお考えでございますか。
  166. 福田赳夫

    福田国務大臣 国民が今日の異常事態のプロモーターであるというふうには私は考えませんけれども、やっぱりこの事態を克服するためには国民の協力も必要である、こういうふうに考えるわけです。国民の協力をどういうふうにしてかちうるか。大蔵省の担任する問題とすると、主としてどうしてもこれは貯蓄ということになる。貯蓄はいまこの異常な経済情勢の中においては非常に困難な問題なんです。そこであの手この手といいますか、貯蓄手段多様化ということも考えていかなければならぬ。  そこで、割増金制度でありますが、私はとにかく短期決戦論という方針を打ち出しておるわけです。その短期決戦を進める、実現する、こういうためにはどうしたってこれは道はきびしい道になる。総需要抑制されます。こういうようなことになればどうしたって経済的にはこれは鎮静化という方向に行くわけです。そういう少し暗いというと語弊があるかしれませんけれども、沈みがちなこの社会情勢、経済情勢の中で、多少息抜きの面もあっていいのじゃないか。しかもそれが貯蓄へつながっていくというようなことで、割増金付の定期預金という問題は、私はすなおに受けとめていただきますれば、ああ、これも一つの考え方であるかなあというふうに御理解を願えるんじゃないか、そういうふうに考えておるわけなんでございます。  とにかく、何としても貯蓄を通じて国民に御協力を願わなければならぬ。それには貯蓄手段というものを多様化しておく必要がある。魅力というものは、いろいろな角度から備えられたものであるということが必要である。こういうふうに考えまして、その一つといたしまして割増金付定期預金ということを着想したわけなんです。決してこれで射幸心をそそって、そして逆に、貯蓄する人に迷惑を及ぼそうとか、あるいは苦しめようとか、そういうのじゃなくて、こういう先々の構い世の中で、多少は明るい気持ちにもなっていただく。また、それが国の経済に対しましても御協力をしてくださるという結果につながってくるということになれば、これはまた私は一つの取るべき道ではあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。
  167. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 せんだっての新聞にも出ておりましたが、恥ずかしいことですけれども、私や安倍委員長あたりの郷里の山口県下関で、自動車の運転手が某金融機関の女の人をうまく利用して、帳簿の改ざんをさせたり、あるいは公文書の偽造をしたりして、数億の金を男は引き出させた。そうして使った金が、おもに競輪、競艇に多く使っているのです。こうしたものは刑事犯罪を構成いたしまして、きびしく制裁を受けますので、事例としてはあるいは多くないんじゃないかと思いますが、私はよく方々に出かけるわけですけれども、きょうはたいへん車がこんでいるなと思いますと、競輪、競艇をやっている。そして夕方近く帰り始めますと、貧しい人々らしき服装した人々が、その競艇場、競輪場のあき地に吹き散らされている古い車券なり競艇券を追っかけ回して、見てはさがしている。その中にもしか当せんくじでも落ちちゃいないだろうか。それは一人や二人じゃないのです。何十人、何百人とそういう作業をしている。私はそれを見まして、ほんとうに人生というものが、ときにはみずからさもしくなるような気がするのです。一日も早く、こうした一つの姿というものが、私たちの目の中から消えていくように、見ぬで済むような、そうした一つ社会を早くつくりたいなあと私はいつも思うのです。おそらくその人たちは、帰るときにどこかに寄って一ぱいコップ酒をひっかけて帰るという金もないんだろうし、おそらくもらった給料を使い果たして、家内に渡す金もあるいは使い果たしたのかもしれない。いろいろな悲劇、喜劇を、こうした賭博性を帯びた公営ギャンブルというものは持っているのです。  今回のこの割増金付貯蓄というのは、二%程度の当たった人は、これはうれしいかもしれません。しかし九八%の人たちは、わずか七百二十五円という金利を捨てたと思えば簡単だという、あるいは中川次官の申されたような、それに似たような軽い気持ちで見る方もいるかもしれないけれども、しかし、そういう一つの風潮が積み重なっていきますと、そこに何か一石投ぜられると、社会事象としては好ましくない現象にいつも転化をする要素を持っているんじゃないだろうか、そういう気持ちが私はするわけです。しかも、この制度というのが有用な役を果たすとは思えないけれども、総需要抑制政策一環を負うんだ、こういう気持ちをおっしゃることによって、多少片目をつぶりかけて、うなずこうとするけれども、ふと私はやはり賛成できない気がする。  さっきから聞いておりました中で、大体この口数で一兆五千億ぐらい集まると試算されると銀行局長は申しておりました。そのうちの三分の一は都銀に集まる。総需要抑制政策、これの一番の中心は、零細な国民大衆のふところに求めるのじゃなくて、私はやはりたいへんな利潤をあげていっておる大企業なり商社なり独占企業に求めるべきである。ところが、都市銀行に集まりました三分の一の五千億程度の金というのは、銀行はだれかに貸さなければ金利がかせげない、金利がかせげなければ、賞金の金利も出ない。そこにまた一つの、インフレ抑制とは違った別のインフレ促進への役割りを果たす要素があるんじゃないか。しかも、それを政府が零細な大衆のふところからかき集めてきて、片側では射幸心をあふり立てて、集めた金をそのような方向に使わせている、こういう私は心配があるわけです。その点、大臣いかがでございましょうか。
  168. 福田赳夫

    福田国務大臣 集まったその資金が、これはまた貸し出しに回ってインフレを刺激するのではあるまいか、そういうようなお話ですが、集まる金とそれからこれを使う問題、これはまた別に分けて考えられてよろしいかと思うのです。つまり貸し出しのほうは貸し出しのほうで、これは総需要抑制金融的側面、それの規制を完全に受けるわけであります。もし割増金付定期預金によるそれだけの資金の調達がない、こういうことになりますれば、あるいは必要に応じては日本銀行との間に借り貸しだ、あるいはオペレーションだということで、割増金付定期預金預金があった場合と違った結果が出てくる。そういうようなことを通じまして、金融機関を通ずる貸し出し、それは一応というか考え方として、完全に割増金付定期預金のその量の問題と切り離して考えられてしかるべきである。私どもは、割増金付定期預金が集まったから、それだけよけいに貸してよろしいんだというような行政指導はいたしません。
  169. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣のおっしゃること、わからないことはないんですけれども、それは預金と貸し付けとは別だとおっしゃれば、直截簡明なんですけれども、しかし、民間銀行が集める預金ですからね。銀行は自分の企業の収益率を高めるために、まあ三べんに一ぺんくらい、ちょっとぐらい政府の言うことを聞かぬとしかられるから、まあ何とかすれすれのところまで、収益率を高めるために、いろいろと貸し付けワクの問題等も含めて一生懸命操作をしておるのが、私は現実だと思うのです。しかも、こうしたかなりの金が都市銀行に集まっていく。しかも、これが民間の中小に流れておる都市銀行の金は三四、五%ぐらいですか、残りはほとんどみな大企業のほうに回っておる。しかも、大企業がまだ手元資金をしっかり持っている。こういう事情の中で、一番困っているのは中小零細企業なんですから、だから、日本預金と貸し付けは違うという立場から、そのような方向でながめていきますと、今回こうして集めた金が、第一の点では、これは国債として買わされていて、そしてこのような賞金がつけられてやられるなら、総需要抑制政策一環として私はあるいは賛成するでしょう。しかし、そういうことになっていない。民間金融機関ペースでこの種の制度を受けてやるわけですから、やはりそこで集めた金が懸念なく総需要抑制政策金融政策のほうに回っていくか、いくというんだったら、ひとつ大企業のほうに回さずに、制度金融を通して中小企業なりその他のほうに回していくという手だてが考えられないものだろうか、そういうことを考えてはいけないんだろうか、私は大きな疑問を持つわけですよ。  もう一つの点は、銀行はたいへんもうけていますね。たいへんもうけている。これは後ほどまた触れてみたいと思いますけれども、この都市銀行、特にたくさんもうける都市銀行は、こうして集めてきた預金を、日銀から今日まで借りていますね、この日銀の返済分に充当する、こういう措置がとれないだろうか。  一つは、制度金融として中小企業の分に回していく、そういう一つの分野と、一つは都市銀行が日銀に返済をする資金に充当する、そういうふうにこの割増金付貯蓄が振り分けられていけば、私は、もっと国民認識も、私たちの認識も、総需要抑制インフレ鎮静化という方向については変わってくると思うのですけれども、そういう手だてというものはとることができないわけですか。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話の筋は大体わかりますが、結局、山田さんのおっしゃるようなことになるのです。銀行が日銀から借りている。しかし一方、まあどのくらいの割増金付定期預金が集まるか、これはなかなか見通しも明確にはいたしがたいですから、これがよけいに集まるということになれば、結局、日本銀行から借りている銀行につきましては、それだけ日本銀行へお返しすることもできるし、あるいは借りなければやっていけなかったような場合におきましては、借りぬでもやっていけるんだということになるわけです。結局そういうことになってくるわけですね。でありまするから、この割増金付貯蓄、そういうものがよけいに集まって、そしてその所期の効果をあげるということになれば、日本銀行を通ずるところの信用供与という面におきましては、それだけ信用供与の量というものを減らし得ることになる、そういうことを期待しつつこういう制度を御提案申し上げているわけでございます。
  171. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 結果的には、よけい集まればそういうことが起こるかもしれない、こういうおっしゃり方なんですけれども、総需要抑制政策の一こまとしてお出しになるこの法案ですから、しかも、法律でお出しになるわけですから、ただ単に割増金付貯蓄をして国民一つの刺激を与えていく、ときに期待感なり喜びというものを与えていくというふうな、何とない平常な状態で行なう割増金付貯蓄じゃない。今日の経済の現状に即応する緊急な臨時の措置として二年間の時限立法で行なうというのが立法の趣旨なんですから、せっかくこうしてお集めになった金は、その主題に即応できるような施策を政府みずからがちゃんとお示しになる。よけい集まり過ぎたら結果的にはそうなるでしょう、こういうものじゃなくて、私は国が積極的にその方向に一歩踏み出して指導する。それが国民の期待するインフレ鎮静化への大きな踏み出しになるのだ。国民の協力も求める、大蔵省もその立場で、峠を越しかけ始めてきたいまのインフレ鎮静を一歩でも早く進めていくのだという立場でそういう措置を明確にお示しになるということのほうが、福田さんが積極的にインフレ収束に取り組んでおられるという——結果はわかりませんよ、どうなるかわからぬけれども、少なくともその姿勢があるのかないのかということを国民は期待しておるのですから、そういうふうに集めた資金は都市銀行は日銀に戻せ、そういうふうな強力な指導をおやりになっていただきたい。よけい集まったら結果的にはそうなるでしょうという、これは山田に対するあなたの御答弁なら、ちゃちな私ですからそれで済むかもしれぬけれども国民は真剣に見ておるのですから、やはり国民にこたえてあげるために、そういう姿勢をひとつ明確にお示しいただけませんかね。
  172. 福田赳夫

    福田国務大臣 貯蓄手段多様化される、それに伴いまして貯蓄が伸びるということになれば、それは結局、日銀からの貸し出し、そういうものを減らすことにもなる。それを日銀との貸借関係、それを割増金付定期預金の額ときちんと結びつけて申し上げておりませんのは、結局、日銀と金融機関との関係は、貸し出しばかりじゃないのです。借り貸しの関係だけじゃない。これは一番大きなのは何といってもオペレーションの関係ですから、国債を売りました、買いました、その他の有価証券を買いました、売りました、こういう関係が非常に多い。いま日銀からの借り入れというものは非常に狭小になってきておりまして、銀行によりましては、お話しのような金が割増金付貯金で集まってきた、そう言うが、その貸し出しを返済するというようなそんな借り入れはしておりません、こういうような銀行もあるわけですから、そう狭く結びつけないで、広く市中に存在するところの流動性というものをいろんな手法をもって回収していく、こういうことをねらいとし、やっておるということで御理解をいただきたい、こういうふうに思うのです。  総需要抑制政策といえば、申すまでもありません、財政金融、これが両翼をなすわけですから、その金融的側面におきましては、決して集まった金をむだにする、こういうようなことはいたさない。それが総需要抑制政策のかなめでございますから、おっしゃられる御期待には必ず沿うように、別の総需要抑制政策という中においてこれをこなしていく、こういう考えでおります。
  173. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 あなたのお話、時間があまりありませんから、額面どおり受け取りまして、そういう私が申し上げたような趣旨が、確かにそういう層が広いと思いますから、その中に十分生かされていくように、間違いなく配慮をしていただきたいと思います。  私、時間もございませんからあれですが、少し大臣金融機関に甘いんじゃないですか。私はそういう気がするのです。たとえば、いまの総需要抑制政策の中をずっと見ていったり、なぜ今日のインフレがこのような狂乱状態になってきたのか。この割増金付制度が終戦直後できてきましたが、あの当時のインフレというのは、全く物不足のインフレです。いわゆる物を隠したり便乗値上げをさしたりするというインフレの本体は持っていません。全く物不足でインフレが起こっています。しかし、いまのインフレというのは、いわゆる便乗値上げをねらって、そこに利潤を求めて、品物を売らない、隠しておる、こういう状態というものは、ずいぶん摘発されておりますように、随所にあるわけです。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 だから、こういうふうなインフレの進行の度合いの中でだれが一番インフレの被害を多く受けているかといえば、これはもうおわかりのように、資産よりか負債率の少ない、いわゆる零細な金を貯金にしておる、こういう勤労者なりあるいは老人、退職者、身体障害者、母子家庭、年金生活者、こうした人たちが受ける被害というものが非常に大きいのです。零細な貯金をして、老後のことを考え、子供の教育のことを考え、雨漏りのする家を何とか直したい、こういうことで零細貯蓄をしている人たちの金利は、少なくとも物価に対応さしてマイナスをあらわしておるわけですね。こういう状態からい今日の日本国民の中には、裁判で争おうとする空気まで出始めてきている。現実にやられている。この状態は、いろいろ金融政策上の問題はあろうとも、これ以上放置できないんじゃないか。  午前中も議論がございましたが、確かに四十八年前半、四十八年後半では、六分二厘五毛が七分二厘五毛になっております。金利は一%上がってきました。しかし、物価は二〇%をこえている。こういう状態のときに、国民の消費抑制をするために割増金付貯蓄に道を求める、射幸心をあふる。確かにそれはそれなりに、やけくそも手伝って、何とかおれもひょっとしたら当たるかもしれぬなという夢のような期待感でこの募集に殺到する人はかなり多いと思う。しかし、その夢が破れたときにやけになるのですよ、人間の心理は。それは私は、安定した貯蓄性向を強めるというものじゃないと思う。だから、国民皆さんたちの中から、ほんとう貯蓄を、国への協力、経済安定のために、インフレ克服のために積極的に貯蓄をするという気持ちを求めるのは、物価にプラスした金利政策をとることです。それしかないと思う。それはそうでしょう。韓国でもインドネシアでもブラジルでも、物価を上回る金利政策をとって、ようやくあれだけの預金吸収ができ始めてきたわけですね。そういう例証があります。  きのう新聞をちょっと見ていましたら、金利の引き上げもお考えになっているようであります。きょう阿部議員のほうから銀行局長にも伺っておりまして、中でうまく詰めがまだできていませんけれども、これは私は無理はないと思うのです。私は今日の国民貯蓄性向を高めるためには、やはり金利政策というものを、もっともっと思い切って、重要なものとして扱っていかなくちゃならぬ時期に来ているのじゃないか。それはいまの零細国民の人々に対する、ある意味では補償の措置なんですから、その補償の措置をすっかりしてあげながら貯蓄性向を高めるという立場を貫いていく、この立場をひとつお考えになっていただけないものだろうか。日本経済研究センターのデータを見ましても、一−三月と四−六月、大体金利の上昇三・八%、年利一六%と出しております。それぐらい引き上げなければ零細国民は救済できないのだ。補償できない。前者のほうはそれ、後者のほうは貯蓄性向を高めて、インフレ鎮静化への金融政策の大事な柱としていく、こういう立場を両者かみ合わせて考えていくならば、インフレが峠を越す時期に来たと大臣はおっしゃっている、この時期に、特に私は短期の預金金利についてしっかりお考えいただく。あなたは、両三月ごろからインフレが鎮静の度合いを強めていくめどがつくとおっしゃる。それに対する間違わない前提の配置として、短期の預金金利を引き上げていく、こういう立場をおとりになることができないのだろうか。できないとすれば、どうしてできないのだろうか。私は実はその理由が知りたいわけです。しかし私は、大蔵大臣気持ちの中には、決して私の申しておることを全部否定はされていないと思います。そこに私は期待をして、預金金利の引き上げについて、大臣見解伺いたいと思います。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 山田さんのお話を承っておりますと、預金金利を短期的にスライド制をとったらどうか、こういうことかと思うのですが、スライド制にする、それは一体財源をどこに求めるのだ、こういう問題がすぐ起こってくるわけです。その財源を金融機関の貸し出しに求めるかということになると、これはもう金利水準がずっと上がってしまうわけですね。そういう問題もあります。また、これを今度それじゃ政府が負担したらいいじゃないか、こういうような考え方を持つ人もあるわけです。一体そんなに多額の負担を財政ができるか、こういう問題にもなってくる。そういう財源上の非常にむずかしい問題がありますと同時に、また預金というような国の経済の根幹をなす仕組みにスライド制が採用されたということになると、経済各般にスライド制という問題がまたつきまとって起こってくる、こういうことになってくるわけです。そういうことではたして経済運営自体が動くのか動かないのか、こういう問題もある。そういうことを考えますと、これはスライド制、ちょっといい響きもするようでありまするが、そう簡単な問題じゃないのであります。  まあしかし、そうは言うけれども、いま山田さんの御指摘のように、預金する人の気持ち、これは私どもわからぬわけはありません。また特に金融所管の大蔵省といたしまして、預金する人の立場というものも十分考えなければならぬ、こういうふうに思いますが、そういう預金者の立場を考えましてどうするかということを考える場合には、やはり一刻も早くこの異常事態を抜け切る、そのための施策をとるんだ、これが私は一番の早道じゃないか、そういうふうなことを確信をいたしておるわけです。ですから、産業界に対しましても、あるいは国民に対しましても、ずいぶんきびしい総需要抑制政策というものを出しておるわけです。これでまだ不十分であるということになれば、まだまだこれをまた強化するとかなんとかいうことも考えなければなりません。しかし、そういうきびしいというか、また暗いというか、そういう時期をなるべく一刻も早く断ち切る、そうして預金する人のお気持ちにこたえるということが、これは回りくどいようであるが、一番早道である、これが私の考え方の基本でございます。  しかし、まあそうは言っても、預金する人に何か報いる道はないかということにつきましては、私はこれはもう常時考えておるわけであります。考えがまとまり次第、それを実行に移すというふうにいたしたいと考えております。
  175. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣お話、私の伺ったことに対して満足できるものじゃありません。ただ、財源をどうするのか。貸し出し金利を引き上げる方法も一つあるでしょう。あるいは政府が金利助成をするという立場もあるでしょう。あるいは銀行みずからが少し犠牲を受けるということもあっていいじゃないですか。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 いまの貸し出し金利の中には、一〇%をこえて一一%近い貸し出し金利をとっている銀行だってありますよ。  さっきも話がございましたが、金融機関というのは好不況にかかわらずもうけている。いま私が言いました零細国民は、ほんとうに自分の生涯の生活設計を立てながら、あるいは子孫の教育のことを考えながら、病気になったことを考えながら貯蓄していく。日本貯蓄性向が国際的に見て非常に高い、一位の水準を保ってきたというのは、銀行の調査はそれでしょう。理由を大きく三つに分けて、そこにしぼっております。その貯蓄が、金利はおろか、元金まで目減りを始めている。これを救済していくということは、早くインフレを鎮静させたらいいんだ、それまではしんぼうしてくれ、こういうふうな言い方では、国民大衆に対して国の政治が親切であるとは言えないのです。むしろ、国の政治の顔は、金融機関のほうに向いているのです。それじゃいけない。だから、預金金利も引き上げる。それは貸し付け金利が若干引き上がっても、貸し付けの金利、預金の金利双方が上がっていく、公定歩合も引き上げる、こういう状態が起これば、便乗値上げの時期を待って在庫投資をしていくことがくずれて、在庫投資をしておるよりか早く払い出したほうが企業に対するメリットが大きいと企業に判断をさせるのが、私はこうした場合の金融政策のてことしての大きな役割りであろうと思う。そういう立場で、広げてながめて金利政策というものはとられなければ、ただ財源がない——政府でもいいと占う人もおるし、それは膨大な金額だ、貸し付け金利を引き上げる、それもたいへんだ、こういうことだけでこの事実に口をおおっておくということは、私はいけないと思う。だから、貸し付け金利もあるいは公定歩合のほうも引き上げながら、銀行も、多少もうけ過ぎておる銀行ですから重荷を負ってもらって、零細国民目減りを補償してあげる、そうして貯蓄性向を強めてあげる、これが私は金融政策のあり方でなくちゃならぬと思う。  しかし、もう時間も過ぎてしまいましたので、私はここで大臣となお詰め合って御意見を伺うということはできませんけれども、ただ私は、きょうも午前中話がございましたが、自民党と財界、ここで相談がまとまりまして、国民協会の献金を四・一倍に引き上げる。その相談が始まってきたのが去年の四月、下期九月から割り当てた金で取り立てる、七百五十一社のうちことしはひとつ新規二百三十九社を入れよう、こういう相談がまとまったと新聞は報じております。自民党は橋本幹事長、そうして植村経団連会長、財界首脳部、こういうふうに報道されております。しかも二百三十九社の人たちは新規加入ですけれども、ずっと見てみたって、石油、大商社、鉄鋼、繊維、パルプ、石油化学工業、このインフレで大もうけをした人たちはみんなこの列に組み込まされている。しかも土地・不動産会社は、三菱地所は四十四倍のふくらみ、総体的に不動産・土地会社は四三倍のふくらみでしょう。私この新聞を見まして直感しましたのは、何のことはないな、業界、財界は便乗値上げやそして投機であおれるだけインフレをあおってもうけて、そのもうけた金を自民党と財界と分け取りをしておる。しかも、その中には銀行八業種、一月四千五百万、年間五億四千万という金額を銀行は納めます。大臣、たいへん銀行はもうかるのですね。しかし、それに付記がしてあります。これは国民協会に出した表向きの金額で、これ以外に臨時寄付、臨時会費、こういうものを取り立てるから相当な金額になるであろう。せんだって武藤さんが述べておりました、あなたの後援会に対するものもございましたね。私はきょうそこに触れようとは思いませんけれども、全体合わせるとたいへんな金額になる。国民はそれを見てますます政治不信を強めているのですよ。日本消費者連合会あたりは、持っていった金額だけ品物の値段を下げてくれ、物価を下げてくれ。私は、この意見というものは、理屈も何もない、いまの国民大衆が直感的に感じていることが、そのように述べられているのだと思う。  きょうここで、自民党に対する政治献金の中身を私はどうしようというのじゃありません。こうした割増金付貯蓄をすることが総需要抑制の一石であるし、インフレ鎮静化の側面を持つんだ、こういう主張だけであって、具体的に国民インフレ鎮静化への足音を身近に聞けるような施策、そういうものに対しては、政府は何も知らぬという顔をしておる。そうして裏側では、共同してもうけの分け取りをしておる。片一方の手はまつ黒によごれておって、片一方の白い手のほうを見せながら、インフレ鎮静化のために命をかけて政治転換、流れを変えるためにやっておるんだ、百万べんそういうことを言ってみたって、国民はもう信じませんよ。私は、インフレ日本国民に与えたほんとうの大きな悲劇とともに、この政治不信をもたらしたということこそに、政治家の端くれの一人としてもたえられない気持ちでいるのです。  私は、今回の割増金の問題については、原則的に反対をします。もっと中身を詰めていって、そうして国民目減り分をどうして補償してやるかという具体策を持ちながら貯蓄性向を強めていく、みんながほのぼのとして喜び勇んで参加できる、そういう貯蓄政策をとってもらうことを、私は福田さん、ほんとうにあなたにお願いします。そういう立場をどうか前向きで真剣に育てていただきますようにお願いをしまして、私は終わります。ありがとうございました。
  176. 安倍晋太郎

    安倍委員長 小林政子君。
  177. 小林政子

    ○小林(政)委員 割増金付貯蓄は、国民の消費支出を押えていくという貯蓄政策ですけれども、この問題について先ほどからいろいろと質疑をいたしましたけれどもインフレ下の個人の購買力を、結局は国民射幸心に訴えてその資金吸収していくというような行き方について、私はやはりこれは納得をすることができません。先ほど答弁の中でも、射幸心を利用していないということは言えないけれども、しかし物価鎮静という点での非常な措置なんだ、そういう状況のもとでつくられた貯蓄なんだ、こういうお話もございましたけれども、このようにしていま集まった金が一体何に使われるのだろうか、そしてどこにそれが使われていくのだろうか、このことは国民が非常に大きな関心を持っている問題でございます。ある人は、自分たちが苦労していままで貯蓄をしていた、貯蓄をすればするほど自分の首を絞めるような結果になるのじゃないだろうか、いわゆる買い占めあるいはまた投機などにその金が流れていく、そういう可能性というものが非常に心配だということを言っておりますけれども大臣、決してこの金が企業買い占め資金に流れることはないのだという歯どめですね、この歯どめについて、やはりはっきりとこれをかけていくべきではないかというふうに思いますけれども、その点について御意見を伺いたいと思います。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 いろいろな貯蓄手段を通じまして金が金融機関に集まります。集まりますが、その金が経済秩序を乱すような、そういう使い方になっては困るのです。そこで、総需要抑制政策の中において金融政策が非常に大事である、こういうことを申し上げておるわけであります。この上とも、総需要抑制政策につきましては厳重にこれを金融面からも進めていきたい、こういうふうに考えております。これは割増金付定期預金に限らず、ほかの貯蓄手段によって集まった金につきましても、そういう意味において厳重にこれを管理してまいりますから、御心配はおかけしないようにいたします。
  179. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、いま大臣からそういう御答弁をいただきましたけれども、であるならば、少なくともいままで不当な価格のつり上げや、あるいはまた買い占め売り惜しみや投機など、不当な暴利をあげていたというようなことで、社会的にもその企業の反社会的な活動がいろいろ問題になっているおりに、こういう企業に対しては厳重な態度で臨むということ、これはもう当然のことだというふうに思います。それと同時に、従来の系列融資、こういったようなものについても、歯どめの一つとして、やはりこれはやめるべきではないだろうか、このように思いますし、また業種や業界あるいは個別企業などで便乗値上げを明らかに行なっていた、こういうところに対しても、やはり融資の面で個別に規制をすべきではないだろうか、あるいはまた手形の割引なども認めない、こういったようなことについて強い規制な行なうべきだというふうに考えますけれども、この点について御意見を伺いたいと思います。
  180. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体そういう方向で考えておるのです。たとえば、商社につきましては、日本銀行を通じて貸し出しワクを設定いたしまして、そうしてこの資金の量を規制する、あるいは不動産業に対しましても同じようなことをいたしますとか、あるいは他の不要不急というふうに目されるような、特に投機的な商行為をしよう、こういうようなものに対する貸し出しを抑制するとか、きめこまかな措置を講じておるわけなんです。何か具体的に商社やその他の企業なんかで反社会的な行為がある、そういうものでいわゆる物資三法に触れるというような事態がありますれば、これは直ちに通報を受けることになっておりまして、そういうものに対しましては、金融上もそれぞれ適正なる措置を講ずる、こういうことも考えておる。  とにかく日本全体に存在する金はずいぶん大きゅうございますものですから、全部が全部捕捉し切れないという面がありまするが、極力、大事な国家資金でありますから、これは政府資金というわけでないにいたしましても、これはもう国家経済を動かしている大事な金でございまするから、そういう金の使途につきましては、厳重にこれが乱に流れないように規制をしてまいりたい、かように考えます。
  181. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま具体的な便乗値上げとか、あるいはまた、この前も悪徳商法の見本などといわれるほどのいろいろな事態が問題になってきておりますけれども、これらの問題について、金融面から具体的な調査といいますか、そういう企業についての実態調査、こういったようなものは、いま金融面を通して具体的にどう規制していくかという点で、御調査をされたことがあるかのかどうか、この点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ商社の活動の調査ということになると、大蔵省の所管じゃございませんものですから、商社自体の中へ立ち入っての調査はいたしませんけれども金融機関が商社なりいろいろな大企業に対しましてどういう貸し出しをしているかということにつきましては、常時これを調査いたしております。その調査を通じまして、先ほど系列融資というか、そういう御指摘がありましたが、ある一社に片寄って金融が行なわれておりますとか、あるいはある企業に対しまして金融機関の実力以上の貸し出しをしているとか、そういうような点の目につくこともあるわけなんです。そういうことにつきましては、何らかの規制措置をとらなければならぬかなと思って、いま検討しておるところでもあります。
  183. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、大蔵省金融面を通じての系列融資等の実態といいますか、どういう実態になっているのか、こういう実態の調査を、まだしていないのであるならば、これは早急に調査をする、もししてあるのであれば、その調査の実態を具体的に委員会に報告をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま政府委員から……。
  185. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これはいまここで口頭で申し上げるほうがむしろいいかと存じますので、都市銀行の大口貸し出しということがどうなっておるかということについて申し上げたいと思います。  大口貸し出しを、何をもって大口貸し出しと考えるかということでございますが、一応、自己資本の二割をこえておる大口融資がどのぐらいあるかということで申しますと、現在、全体として件数二十七件ございます。そのうち商社が二十四件で、その他が三件、かような形になっております。なお、その分布も、二十七件のうち非常に片寄って高が大きいというものもございます。たとえば三〇%をこえるものが十二件ございまして、残りが二〇%から三〇%の貸し出しの状況であるということでございます。ただ、件数にして二十七件でございますが、実体の数としては、これが企業の数としてはそう多くございません、九企業という状況になっておるわけでございます。企業の数は十二企業でございます。  以上がその概要でございます。
  186. 小林政子

    ○小林(政)委員 まあ具体的にどういう調査をされていまこの企業の数などが出てきたのかという実態がよくわかりませんので、きょうは時間もありませんから、私はこの実態の中身を早急にひとつ委員会に提出をしていただきたい。このことを委員長にもお願いをいたしたいと思います。
  187. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この御報告につきましては、これは私のほうの検査等を通じて調べたものでございますだけに、個別企業あるいは個別銀行の名前を出すということについては御容赦願いたいと思います。しかし、できるだけその実態がわかるように、従来の慣例に従いまして、まとめた計数として御提出させていただきたいとは思いますが、特にお願いを申し上げたいと思います。
  188. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はその企業名をなぜ出せないかという点、これはやはり明らかにしていただきたいと思いますし、企業の機密云々というようなことがとかくいろいろと問題になりますけれども、私はやはりそういう実態を明らかにすることは、何ら企業の機密に関する問題ではないというふうに考えておりますし、委員長、その点ひとつ理事会でも取り扱いを協議していただいて、ぜひ出してもらいたいと思います。
  189. 安倍晋太郎

    安倍委員長 小林委員に申し上げますが、従来の慣例等もありますので、理事会で取り扱いについては協議したいと思います。
  190. 増本一彦

    ○増本委員 関連質問、一点だけ。  そこで、大臣、いまの大口貸し出しの実態で、これはやはり一つは、大臣の言われる水ぶくれの原因をつくっていく問題だ。こういうものを押えていく手だてですね。これをどうするかということは非常に重大な問題だと思うのですね。企業数にして十二社ですけれども、このほかにこれに接近している企業ということになりますとさらに多いでしょうし、また業種別に見ると、たとえば最近の調査によりましても、石油関連とか鉄鋼などについては法人預金の取りくずしは依然としてあまりない、そして手元資金はまだある、こういう実態も報告されているわけですね。こういうものに対する、日銀を通じての個別のそういう企業、業種に対する積極的な窓口規制、貸し出しの規制というような手だてはどのようにおとりになろうとしておるか、その点だけ一点、ちょっとお伺いしたいと思います。
  191. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 もう御承知のとおり、日本銀行が中央銀行として取引し得る相手はすべて金融機関であるというたてまえになっております。したがいまして、その金融機関が個別の各企業に対する融資というものに対してコントロールし得ることは、きわめて間接的な形にならざるを得ないというのが実情でございます。その間接的なコントロールといたしまして、金融機関を指導してまず貸し出しの大ワクでワクをはめて、これ以上貸し出しをしてはいけないということをやっておるのがまず窓口規制でございます。  それとは別に、銀行が持ち込んでくる手形の割引の場合に、これは本来でございますれば、日本銀行はその手形が中央銀行が持つにふさわしい資産であるかどうかということを判断をしてその手形を割り引く、あるいは担保にとるというやり方をしておるわけですが、昨年からその担保の内容といたしまして、二十二の企業に対して一定の限度を設けまして、これ以上はいかに優良企業であってもこの手形は割り引かない、あるいは担保にとらないという規制ワクをやっておるというのが、現在の企業に対するコントロールでございます。あくまで中央銀行と個別銀行という形での取引を通じて、そういうことが限界があるということだろうと思います。
  192. 増本一彦

    ○増本委員 一つは、この二十二の業種別の内訳でいいですから、それをひとつ明らかにしていただきたい。  それからもう一つは、今度の場合でも二十四が商社である。大手商社をずっと見てみますと、都市銀行が大体筆頭株主になっているわけですね。こういうところでゆるんでいないのかどうか。これは個別企業と商社との貸し出しの関係で、この点についてはもう日銀は何も入らないというようなことだけでいきますと、これはやはり国内では在庫の積み増しの資金に使われるとか、あるいはせんだっての一月二十三日の、まだ報告を受けていませんけれども、ああいうドル買いのような問題も起き、社会的な疑惑も生ずる。いろいろ問題が多いわけなんで、この辺のところの規制をどうするか。お願いと質問の二点で、私の関連質問を終わります。
  193. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず手形の買い入れ限度につきましては、商社はいわゆる十大商社が入っております。それと建設業が三企業、その他が製造業という形で、手形の買い入れ限度をもうけております。  なお、これとは別に、商社に対する窓口規制という問題として、総ワクをきめまして、たとえば一月から三月までに九百何がしを総ワクとして、これ以上商社に貸し増しをしてはいけないという指導を行なっております。
  194. 小林政子

    ○小林(政)委員 ぜひその資料を提出をしていただきたいと思います。  それで、時間がありませんので先へ進みますけれども割増金付預金を実施するということで、これはそれぞれの銀行では相当やはり具体的な問題として、いろいろ労働強化の問題などともつながるわけです。なぜかといえば、募集の時期が一カ月から三カ月というきわめて限られた短期間に募集事務を行なうわけですから、したがって、その期間中に募集金額の消化やら、あるいはまたそれを売りさばかなければならない。こういったような問題等も出てまいりますし、大臣は現在、銀行の実態というようなものについて詳しく御存じでしょうか。
  195. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体承知しておるつもりであります。店の窓口は三時になると締めますが、しかし、ずいぶん仕事は残っておりまして、職員がうちへ帰るなんというのは思ったよりは早いわけじゃない。かなりよく働いておる、こういうふうに認識しております。
  196. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまの御答弁で、三時に窓口は締まるけれども、早く帰るわけでもないようだということですけれども、実際に銀行の実態というものは、最近非常にたいへん仕事の量がふえてきている。そしてそのわりに人の数がふえてない。こういう中で、いろいろの問題が起こってきています。たとえば、消費者ローンなんか一つを見ましても、これはある都市銀行ですけれども、百十六種類ぐらいの取り扱いを行なっておりますし、また自動振りかえなども、何年か前に比べてもう十六倍にもふえてきている。こういうように非常に事務量がふえていると同時に、行員の場合には、実際には朝七時半ごろから出勤をいたしまして、夜も婦人も含めて八時、九時というようなことなんです。現実には、いまの仕事の処理をしていくためには、そのくらいの時間というのはざらになってきている。こういうような中で、むしろ健康状態がおかされてきているというのが実態なんです。まさにぎりぎりの段階に来ているというふうなことが私は言えると思います。こういう中で、特に若い婦人の方なんかも、労基法違反というような、そういう問題等も発生をしておりますし、また頸腕症候群という、いわゆる職業病ですか、若いお嫁に行く前の娘さんが半身不随というような状況にまでなってきているという件数も、非常にふえてきているのです。  大臣、私はこういうことを考えてみますと、いまの銀行の業務の実態というものから見て、人が足らない、そして仕事の量は非常にふえている、あるいはまたぎりぎりの状態のところに来ているだけに、これはもはや人権問題にまでなってきている、これが銀行のいまの実態です。こういう問題等をほんとうに解決をしないで、さらに仕事の量をふやしていくというようなことについて、大臣、どのようにお考えになりますか。私は、むしろその仕事の実態に見合った適切な人員の増というものを当然行政指導で行なうべき段階であるというふうに思いますけれども、この点について意見をお聞かせ願いたいと思います。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 金融機関の繁閑、これはその金融機関によってずいぶん違いはあると思いますが、割増金の定期を始めました、そこでまた非常な窮屈になるというようにお考えになる銀行あるいは金融機関がありますれば、またそれぞれその金融機関は、どうしようかというくふうもしてみるだろう、こういうふうに思うのです。割増金付定期預金制度が始まりましても、これをどこの銀行もしなければならぬというわけじゃないのです。それから、する態様につきましても、これは銀行のお好みになる態様でけっこうです、こういうふうに考えておるわけでありまして、この法律が施行になりましたら銀行勤務者の仕事が非常に重加するのだというふうな考え方はいたしておりませんけれども一般論といたしてみますれば、この割増金付定期預金というふうなものにかかわりなく、一般金融機関の仕事が非常に窮屈になってきておる、こういうようなお話でありますれば、なお私どもも、その状況をつぶさにまた調査してみるというふうにいたしたいと思います。
  198. 小林政子

    ○小林(政)委員 私がいま申し上げた実態というのは、いますでにそういう状態であるということでございまして、その上にこの割増金が今後実施をされるというような実態になれば、一体これはどういうことになるのだろうかというふうに考えます。たとえば、抽せん番号の管理だとか、賞金の支払いだとか、あるいはまた中途解約などのそういう複雑な事務も当然伴って出てまいりますし、私はそういう点から考えても、非常にたいへんな状態になるのではないだろうか。銀行局長は、いまの銀行の状態というものを調査されたことがあるのかどうなのか。そして行政指導の面で、これらの問題等について何らかの措置をおとりになったというようなことがあるのかどうなのか、私はお聞かせを願いたいと思います。
  199. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 労働条件の問題につきましては、いろいろわれわれのほうもお話を伺っております。ただ、この問題につきましては、私ども監督の立場にある者といたしましては、あくまで労使の問題は労働基準法関係の法律によって実施されるべきものであり、私どもといたしましては、労使双方のいずれの側にも関与せず、むしろ中立的に、公正に扱われるべきものであるという基本的な態度でやっております。ただ、銀行に働くべき方々ができるだけ気持ちよく働いていただくということは、これはあえて行政指導の対象であるというような問題ではなくて、当然経営者として考えるべきことであろうかと存じますので、私どもがあえて行政指導をするというようなことになりますと、これは労使問題に介入するという、本来、私ども監督の立場にある者としてむしろ望ましくない立場に入ることを非常に配慮をしておるわけでございます。  もちろん、この割増金付貯蓄というものが、労働強化につながるかどうかという御疑念もあろうかと存じます。ただ、私ども、この募集にあたりましては、募集計画書の届け出を義務づけまして、万一その段階において、募集期間あるいはその他の点について無理がある、あるいは過当競争があるというようなことでありますならば、そういう面からの指導をすることについてはやぶさかではございません。
  200. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題の実態についてぜひひとつ調査をした上で、これは民間の企業の問題だから、労使の間で解決すればよいことであって、特別行政指導の対象としてとやかく言うべきではない、こういうお話ですけれども、実際に人権問題にまでなっているようなぎりぎりのこういう実態、一体、何時まで夜働いているのだろうか、あるいは個別割り当てでもって、男子の従業員がその割り当てを百五十万円消化しなければならない、婦人の従業員が百万円の消化を割り当てられている、あるいは夜もおそくまで残業している、あるいはまた駅前にチラシや何か持っていって、そしてその宣伝などに、預金集めのために行動している。こういうような実態というものについて、もっと真剣に、これは単なる労使の間の問題であって云々ということではなくて、現在のこの実態というものを調査すると同時に、その適切な解決策というようなものについて、当然、私は銀行局が措置をすべきであろうというふうに考えますし、その点について再度実態の調査を行なう、これはやるのかどうなのか、あるいはまた、個人に対する割り当てなどの過当競争の状態を通じてのこれらの問題について、調査をなさるのかどうか。この点、明確にお答えをいただきたいと思います。
  201. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私どもは、金融機関に対して調査をいたします場合には、やはり銀行検査という方法をもっていたしますか、あるいは監督上の事情聴取というのがその手段、方法でございます。したがいまして、そういう労働条件の、実態に関する調査ということになりますれば、それはおのずからたとえば労働基準監督署あるいは労働省を通じての調査という問題になるべきではなかろうか、かように考えております。もちろんこの割増金付貯蓄というものの募集が、金融機関相互間の過当競争というような問題になりますれば、これは一つ金融秩序のみならず、社会的にも問題があることでございますので、その辺の角度からの注意というものは、十分今後ともやっていきたい、かように考えます。
  202. 小林政子

    ○小林(政)委員 最後に、一言だけ……。  私は、これらの実態等を全く無視して、そして割増金付預金は直ちに行なうべきだ、しかし、銀行がいやならやらなくてもいいのですという問題じゃなくして、その職場で働いている人たちのいまのもうどうにもならなくなっているような実態というものを無視して、このようなことを行なうべきではないし、またできない、このように思いますけれども、その点を強く要求いたしまして、時間がありませんので、私の質問を終わりたいと思います。大臣、いかがですか。
  203. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま銀行局長からお答えしたとおり、この労働条件、こういうような問題になりますと、これはそちらのほうの役所に調べてもらうほかないのです。私のほうは、銀行行政が適正であるかどうか、こういうことを銀行検査とか状況調査とか、そういう面で調べるわけでございますが、お話を承っておりますと、労働条件が過酷に過ぎる、こういうような状態があるので調査せい、こういうような御趣旨のようでありますが、そういうことでありますると、大蔵省としては、ちょっと発言とか調査とか、そういうことはいたしがたい、こういうことに御了承いただきたいと思います。
  204. 小林政子

    ○小林(政)委員 最後にもう一回、過当競争の問題が、相当ひどい形で行なわれておりますので、その点をぜひ調査をしていただきたいことを要望して、私の質問を終わります。
  205. 安倍晋太郎

    安倍委員長 竹本孫一君。
  206. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、最初にちょっと、三月に近づきまして、納税の時期ですから、税金の問題で、一つだけ簡単にお願いを兼ねてお伺いしておきたい。  それは、最近金融の引き締めの結果、中小企業の滞納が非常に多くなっていると思うのですね。新聞で一つ見たのですけれども、これは下谷の税務署管内での四月、五月の決済期を迎えた会社についてですけれども所得がふえたけれども、手形をたくさんかかえ込んでおるとか、その他決済資金が要るとかいうような事情で、延納の手続をとった者、また滞納をしておる者、特に滞納については、前年の十倍になっておるという。これは下谷税務署だけかどうかわかりませんが、おそらく一般的な傾向だろうと思うのですね。  そこで質問なりお願いなりということになるわけですけれども、これは大臣短期決戦の結果でもあるし、それだけ資金が締まるということは、ある意味においては、けっこうなことだと思うのです。しかし、それだからといって、一ぺんに、滞納であるから利子はこれだけだといったように、従来の考えのとおりに機械的に適用していくということは、少し無理がありはしないか。そこで、何らか今回に限って、滞納、延納といったようなものについても、税法上、特別な考慮があり得るのかないのか、その点だけひとつお伺いしておきたい。
  207. 福田赳夫

    福田国務大臣 延納につきましては、これは一般の原則があるわけですから、その原則によってこれをやっていくということになろうかと思いますが、まだ延納の要請が非常に多いのだとか、納税状況に変化が来ておるとか、そういう報告には接しておりません。きょうは国税庁来ておりませんから、よく伺いまして、実情に適応するようにいたしたい、かように考えます。
  208. 竹本孫一

    ○竹本委員 要望ですけれども、いまの特別な金融情勢下ということを何とか考慮に入れて、適当な処置を考えていただきたいと思います。  次に、今回の割増金付貯蓄の問題でございますけれども、これは率直に申し上げまして、われわれから言って、きわめて不愉快な法案である、また大蔵省としては、きわめてできの悪い、品の悪い法律であると私は思うのです。だれの発想かはあまりせんさくする必要もないけれども、おそろしく感じの悪い法律だと思うのですが、これで一体どのぐらいの貯蓄をふやそうということをお考えになっておるか。  それから、もう一つあわせて、時間がないからですが、この間もちょっと言ったのですけれども銀行の力の弱いところは、こういう考え方に従って思い切ったことをやるという資金的基礎がないと思うのですね。たとえば相互銀行その他の場合には、やはり全国を一つのプールにしてやらなければならぬということになるのではないかと思うのですけれども、プールした場合には、北海道がたくさん買って、沖繩が少しも買わなかったというのに、沖繩のほうにばかり賞金が行ったなんというようなことになると、銀行的なベースからいうと、たいへんおかしなものになる。しかし、それはうまく分けていくのだ、こう言うても、それじゃそれこそ富くじ性を失ってしまうということで、実際問題として非常に無理がある。その二つをお伺いいたしたい。
  209. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず最初に、どのぐらいの資金がこれで集まるであろうかという問題は、正直に申しまして、私ども全く推定の域を出ない性質のものでございます。ただ、一つの手がかりといたしましては、私ども金融機関からいろいろこういうことでやってみたいという計画が参っておりますので、それを基礎として積算をいたしました方法がございます。それによりますと、都市銀行は五千億から六千億ぐらいを一年間で吸収しようと考えておるというわけでございます。もちろんこれには重複がございます。したがいまして、これが資金の純増であるというわけにはいかないと思いますが、そういうように聞いております。それから、もう一つ具体的な計画として現在聞いておりますのは、農協が全国を八ブロックに分けまして、二十三の単位で農協の割増金付貯金という一つの商品をつくるというような計画が進んでおるように聞いております。これが大体千五百億ぐらいではなかろうか、かように考えます。地方銀行、相銀、信金が現在まだ寄り寄り協会段階で協議しておりますので、具体的な数字はわかりませんが、この辺を基礎として推定いたしますと、大体一兆から一兆五千億ぐらいが総体の資金の額ではなかろうか。  この中で、たとえば六カ月定期でございますと、一回半年貯蓄が終わりますと、その次にまたそれを振りかえて次の六カ月というようなこともあろうかと思いますし、それからほかの定期預金を振りかえるというのも多少はあろうかと思いますので、純増がどのくらいになるかということはわかりませんが、大台としてはその程度のものではなかろうか。爆発的に売れるということでない限りは、そういうようなものではなかろうか。この数字というものを別に引き直してみますと、個人の持っている定期預金の増加額の約二割ぐらいの数字に当たるわけでございます。それからまた結論としても同じでございますが、六カ月定期預金の残高の二割ぐらいという数字にこれが該当いたします。したがいまして、普通であればそのぐらいではなかろうか。場合によっては、非常に爆発的にこれが売れるということがあろうかとも思いますが、いまのところはそんなことではなかろうかと考えております。  なお、いまお説のように非常に地域的に当たりはずれのアンバランスがあるのではなかろうかということは、正直申しまして、地方銀行でございますとか相銀、信用金庫の中でも、いろいろそういうことを懸念しておるようでございまして、ブロックを分けるときに、できるだけそういうことを配慮したいというように聞いております。
  210. 竹本孫一

    ○竹本委員 二割、一兆円ぐらいの金を集めるということになれば、大蔵省が魅力を感ずるのも少しわかりますけれども、しかし、いずれにしても、これは大臣、私は今日のあるいは今後の日本経済運営の根本というのは、やはり原点に立ち返って、勤倹貯蓄ということでなければならぬ。したがいまして、やはりほんとう意味の本格的な貯蓄奨励していく、貯蓄心増強していくということから考えて、これはむしろマイナスであると私はどうしても感じます。むしろ、そういうことをしなくても、たとえば、私は特に最近思っているのですけれども預金の金利をまず一〇%ぐらい上げたらどうか。  大蔵省の調査で見ましても、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、それぞれの国が、平均のものもあるし特別なものもあるのですけれども、一五、六%ぐらいまでいったのがある。一〇%以上のものが相当あります。そういうことで、先ほども御議論がありましたけれども、卸が三四%、消費者物価が二〇・四%ですか、二〇、三〇というけたで、大体ドイツのかれこれいま四倍でしょう、アメリカの二倍だというように物価が上がっているときに、アメリカでやっている金利よりもさらに低い預金金利ということ自体が、矛盾しておると思うのですね。そういう意味で、いまのアメリカでも八・三七五という数字があがっておるし、イギリスの場合なんか一六%、ドイツも一五%のものもあれば一一%のものもあるという。したがって、ドイツと比較しまするならば、ドイツの四倍物価が上がっておるいまの状態、これがいつまでも長く続いても困りますが、そういうときにドイツよりも安い、せいぜいいっても七・二五%程度の金利ということ自体に、非常に政治の大きなアンバランスがあると思うのです。  そういう意味で、大臣にお伺いいたしたいのは、日本物価上昇も考慮しながら、また諸外国における金利水準が非常に引き上げられておるということも考慮しながら、さらに言うならば、貸し出し金利についても、これは少し考えなければならぬと思うのです。と申しますのは、日本預金の金利を下げる、それから貸し出し金利も下げるというのは、大臣が批判をされておる高度経済成長政策の亡霊が残っておると思うのです。やはり金利は下げて、そして間接金融を大いに増強して、これで設備投資主導型高度経済成長をやろうといってやってきたわけだ。そこで、高度経済成長政策を批判して福祉国家を建設しようということになれば、金利政策のあり方も従来とは変わらなければならぬ。それが何も変わっていないじゃないか。そういう意味で、政策の大きな転換からいっても、よその国の物価水準との比較からいっても、金利水準、貸し出し金利の水準からいっても、この辺で日本の金利水準について再検討を加えて、預金についてはたとえば一〇%の預金の金利を認めるというようなことになれば、へたな富くじをやって刑法違反みたいなことをやらなくても、堂々たる貯蓄奨励ができると思いますが、金利水準について再検討をされる御意思はありませんか。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 金利水準という問題は、これはなかなかむずかしい問題でございまして、預金だけの見地からいいますれば、もとより預金金利の高いほうがいいに違いありませんけれども、しかし、それの与える広範な影響ということを考えますと、そう無条件預金の金利の引き上げが妥当であるという結論にならないのです。預金の金利を引き上げるということになりますれば、どうしてもこれは国債の金利なんかにも影響をしてくるわけです。金利体系全体に影響する問題です。そういう際に、財政上の立場というものも考えなければならぬ。財政上金利引き上げの影響をすなおに受け入れてしまうということになりますれば、今度はそっちからのインフレ対策問題をどうするのだ、こういう問題にもなる。またわが国では郵便貯金という問題もあるわけです。郵便貯金は御承知のように集まった金を資金運用部を通じまして、これは政策金融に使っておる。そっちの金利、これを一体どうするのだ、こういうような問題もあります。これもまた財政に大きくかぶってくる。  そういうようなことで、どうも簡単に結論を下すわけにはいかないのですが、いまアメリカだとか西ドイツだとかそういうほかの国の話もありましたが、ほかの国でも預金の金利につきましては、たとえばアメリカにおきましては、なるほど法人の大口金利は非常に高うございます。しかし、小口の貯蓄預金になりますと、五%とか六%とか、そういう非常に低利のものであります。西ドイツにおきましても、やはり法人の大口預金金利は高うございますけれども個人の一年もの貯蓄、そういうものは七%である。そういうような状態でありまして、決してわが国貯蓄性定期預金の金利が低い、こういう状態ではないのです。  しかし、わが国におきましては異常な物価状態でありますので、そういう状態下において預金者の気持ちを考えなければならぬということは、常に私も考えておりまして、何か他の施策との斉合性、こういうものが貫けるならば、何とか考えなければならぬかなとしょっちゅう考えているところでありまして、そういうことでいい着想がありますれば、私はこれをどしどし実施していく、そういう考えでございます。
  212. 竹本孫一

    ○竹本委員 金利水準あるいは金利体系全体に影響のある問題だというのは、大臣のおっしゃるとおりだと思うのですね。しかし、それならば、たとえば年末、ボーナス預金を集めたのを一%上げたということでもわかるように、とにかくいまは過剰流動性吸収するという至上命令があるんですから、若干ある意味においては無理をして少しプラスを出さないと、それだけの政策効果をあげることができない。一%上げたのもそういう意味でありましょうから、その点は検討される場合に考慮に入れていただきたい。  それから第二に、アメリカはいまお話がありましたように一六%、これはイギリスにしても一六%のものもあれば六%のものもあります。これは小口のほうは、小口の貯蓄預金ということで押えておる。しかしながら、その他の大口のほうは、大体自由金利みたいなものでしょう。それで、アメリカの自由主義経済の原則からいえば、自由にして、自由にしたから競争もあるし、いろいろな条件があって高い金利が出た。これは私はむしろアメリカ、ドイツの立場のほうが筋が通っていると思うのです。ところが、日本のように、一方では自由経済という、一方では発想の転換という、一方ではまた押えてみたり押えなかったりする。一体どれが本筋かよくわからない。だから私は、いまは発想の転換、福祉社会の建設ということが日本政策の大きな目標になっているわけですから、それに合ったように再検討してもらうべきではないか。これは卑見を述べて御検討をひとつわずらわしたいと思います。  最後に、もう一つだけでございますが、いま私は預金のスライド制ということも考えているわけですが、そういう点に関連しながら一言だけ大臣伺いたいのは、政策の一番大きなねらいというものは、大臣も言っておられると思うのですけれども、やはり物価の安定ではないかと思うのですね。総需要抑制短期決戦、大体大臣の言っておられること私も賛成ですが、その根本は物価の安定である。したがって、大蔵省財政金融政策、それらは物価の安定ということが至上命令だと私は思いますが、大臣の御答弁でこれを確認してもらいたいと思うのです。いかがですか。
  213. 福田赳夫

    福田国務大臣 全くそのとおりでございます。
  214. 竹本孫一

    ○竹本委員 しからば、それに関連して一つだけ御質問をして終わりたいと思いますが、日銀法の改正ということがよくここでも問題になっておりますけれども日本銀行法を読んでみると、国家目的の達成とかなんとか、いろいろ制定当時の社会的な事情で書いてある。国家目的の達成ということをどう理解するかということもそれ自体問題でありますが、やはり日銀法も、時代に合ったように、もう条文も書き直さなければならぬだろうと思います。  そういう場合に、日銀法が改正されるべきであるということについてもいろいろ意見はあるかもしれませんが、少なくとも改正する場合において、また改正しない場合においても、日銀の政策目標が第一条あるいは第二条に書いてありますが、第二条に書くべきことは、物価の安定であり通貨価値の維持であるということが、もう少し明確に出されなければわけがわからぬですね。だから、日銀法において、あるいはこれからの銀行のあり方においてわれわれが一番考えなければならぬことは、一方で言えば物価の安定であり、日本銀行に即して言うならば通貨価値の安定である。このことをもう少し明確に打ち出すべきであると思いますが、大臣の考えを承りたいと思います。
  215. 福田赳夫

    福田国務大臣 法改正をするかどうか、それは非常にむずかしい問題でありますから別といたしましても、その法の改正をするかいなかにかかわらず、日銀の使命は通貨価値の維持安定にある、こういうふうに考えております。
  216. 竹本孫一

    ○竹本委員 その趣旨でひとつがんばっていただくことを希望いたしまして、終わります。
  217. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、来たる十五日金曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十五分散会