運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-02-08 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月八日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    金子 一平君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君      小宮山重四郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       坊  秀男君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       松浦 利尚君    武藤 山治君       山中 吾郎君    荒木  宏君       田中 昭二君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  横田  郁君         参  考  人         (全国相互銀行         協会会長)   尾川 武夫君         参  考  人         (全国信用金庫         協会会長)   小原鐵五郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月六日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     田代 文久君 同月七日  辞任         補欠選任   田代 文久君     荒木  宏君   正木 良明君     岡本 富夫君 同月八日  辞任         補欠選任   岡本 富夫君     正木 良明君     ————————————— 二月七日  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号) 同月二日  中小業者に対する税制改正等に関する請願(有  島重武紹介)(第一四〇三号)  体幹障害者の使用するカークーラーに対する物  品税免除に関する請願金丸徳重紹介)(第  一四〇四号)  昭和四十九年産葉たばこ収納価格の引上げに関  する請願鈴木善幸紹介)(第一五五六号) 同月四日  体幹障害者の使用するカークーラーに対する物  品税免除に関する請願矢野絢也君紹介)(第  一六五三号)  企業過剰宣伝広告費に対する課税等に関する  請願田中榮一紹介)(第一七三四号)  中小業者に対する税制改正等に関する請願(村  上弘紹介)(第一八一四号)  都市近郊農業後継者に対する相続税特例措置  に関する請願荒木宏君外一名紹介)(第一八  一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  割増金付貯蓄に関する臨時措置法案内閣提出  第一一号)  金融に関する件      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、最近の金融事情等について参考人から意見を聴取することといたしております。  本日午前に御出席いただきました参考人は、全国銀行協会連合会会長横田郁君、全国相互銀行協会会長尾川武夫君、全国信用金庫協会会長小原鐵五郎君の各位であります。  参考人各位には、御多用のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。最近の金融事情等について、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度におまとめいただき、そのあと委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず最初に、横田参考人よりお願い申し上げます。
  3. 横田郁

    横田参考人 ただいま御紹介をいただきました横田でございます。  本日は、当面の金融事情につきまして御報告申し上げたいと存じますが、初めに財政金融政策推移につきまして申し上げます。  御高承のとおり、わが国経済昭和四十七年秋以来、物価の急激な上昇に直面しているわけでございますが、政策当局におかれましては、物価抑制のため、財政金融政策中心とする総需要管理政策を強化してこられました。  まず、財政面では、昭和四十八年度において公共事業関係費支出繰り延べが行なわれたのに続きまして、四十九年度緊縮予算案が編成され、特に公共事業関係費については、前年度以下の規模に押えられております。  一方、金融政策につきましても、預金準備率は昨年一月以来、また公定歩合は昨年四月以来、それぞれ五回にわたって引き上げられております。公定歩合水準は、昨年三月までの四・二五%からただいまの九%まで、四・七五%という大幅な上昇を見ておりますが、量的な面でも、昨年一−三月以来日本銀行窓口規制が期を追うごとに強化されてまいりまして、この一−三月について申しますと、都市銀行貸し出し増加額は、昨年同期の三五%減に押えられております。  次に、預貸金金利について申し上げたいと存じます。  まず、貸し出し金利につきましては、私どもは、公定歩合引き上げに見合いまして自主規制金利最高限度引き上げ引き締め政策に協力してまいったのでございますが、いわゆるプライムレートにつきましては、昨年三月の四・五%から今日の九・二五%に上昇いたしております。ただ住宅ローンにつきましては、国民福祉観点から特に配慮すべきものと考えまして、各銀行が自主的に金利の据え置きにつとめているところでございます。その結果、これらすべての貸し出しを含めました全国銀行貸し出し約定平均金利は、昨年三月末の六・七一二%から十二月末の七・九二九%へと、一・二%余りの上昇となっております。  一方、預金金利につきましては、当局の御指導に従いまして、昨年四月以来四回にわたって引き上げを実施いたしております。その結果、普通預金金利は二%から三%へ、また一年定期預金金利は五・二五%から七・二五%へと上昇したのでございます。また昨年七月には、特に長期預金を優遇するため二年もの定期預金が創設され、この金利は今日七・五%となっておりますが、さらに昨年十二月中旬から約一カ月間にわたりまして、消費購買力吸収の一助といたしましてボーナス特別預金の取り扱いを行ないました。  次に、当面の貸し出し方針につき申し上げます。  私どもといたしましては、窓口規制を順守し、引き締め政策に協力するため、貸し出し抑制を当面の基本方針といたしておりますが、当局からの御指示もございまして、大手商社不動産業に対する融資は昨年初めから、また住宅ローン以外の消費者ローンにつきましては昨年秋から、それぞれ特に慎重に取り扱っております。  さらに、昨年十二月以来、石油危機に対処するため当局より選別融資の御指導を受けているわけでございますが、私どもも、不要不急融資は極力これを抑制し、国民経済並びに国民生活安定確保のために真に必要な融資を優先的に行なってまいりたいと考えております。  こうした観点から、住宅ローン中小企業金融には格段の努力をいたしているところでございます。特に住宅ローンにつきましては、広く国民一般の御要望におこたえできるように、きびしい融資ワクの中から最優先的に資金確保努力いたしておるところでございます。現に四十八年度上期におきましては、全国銀行の総貸し出し増加額が前年同期の一七%減に落ち込んだ中で、住宅ローンは七六%増という高い伸びを示しておるわけでございます。  こうした点は中小企業融資につきましても同様でございまして、引き締めのしわが中小企業に寄ることのないよう、必要な資金については弾力的にその疎通をはかる態勢で臨んでおります。このことは全国銀行貸し出し残高に占める中小企業向け貸し出し残高比率にもあらわれておりまして、昭和四十六年末の三二%から、四十七年末には三四・九%四十八年九月末には三五・二%へと、引き締め下においても引き続き上昇いたしております。  次に、企業金融状況でございますが、昨年初めには、いわゆる過剰流動性が問題となりましたが、その後の相次ぐ引き締め強化によりまして、企業手元流動性は急減いたしまして、今日ではむしろ過少流動性が憂慮されるような状態になっております。このような手元流動性低下幅は、大企業のほうが中小企業よりもやや大きいようでございます。  すなわち、日本銀行調査によりますと、資本金十億円以上の主要製造企業の現預金残高は、昨年三月末には売り上げ高の一・六四カ月であったのに対しまして、九月末には一・四八カ月に低下し、さらにこの三月末には、前回引き締め期における最低水準を下回る一・三二カ月へと下がる見込みでございます。一方、中小製造業の場合は、昨年三月末の一・五九カ月から九月末には一・五六カ月に下がっております。  もっとも、大企業の場合、一部には値上げその他によりなお資金繰りかなりの余裕を残しているところもないわけではございませんが、鳥瞰的に見ますと、このところ企業金融は著しく引き締まってきていると考えられます。  最後に、今後の問題につきまして若干申し上げたいと存じます。  ただいま申し上げましたように、総じてみますと、金融引き締めはすでに企業金融かなり圧迫するところまできていると見られますので、その影響は遠からず物資の需給関係、ひいては物価動向にもあらわれてくるものと予想されます。  ただ、金融調整浸透過程では、不渡り、倒産増加といった事態の発生も懸念されますので、私どもといたしましては、きびしい窓口規制ワクの中で、中小企業には特別の救済融資を準備するなど、できるかぎりきめこまかな配慮をいたす所存でございます。  やや長期的な問題といたしましては、エネルギー問題、公害問題などとも関連しまして、省資源型、生活優先型の経済構造への転換に取り組むべきであると存じますが、当面はまず金融引き締め政策定着化と、派生的に生じ得べき混乱の回避に全力をあげたいと考えております。  先生方におかれましても、何ぶんの御教示、御高配を賜わりますようお願い申し上げまして、私の御報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  4. 安倍晋太郎

  5. 尾川武夫

    尾川参考人 私は、全国相互銀行協会尾川でございます。  平素は先生方皆さまにいろいろ御高配を賜わりまして、まことにありがとうございます。特に、先般の議会で相互銀行法の一部改正の御審議を願ったのでございますが、このことにつきましても特段の御配慮を賜わりましたことを、この席上をかりまして厚くお礼を申し上げます。  さて、本日は、最近の金融経済情勢について御報告申し上げる機会をおつくりいただき、まことにありがとうございます。せっかくの機会でございますから、若干の時間をちょうだいいたしまして、私ども相互銀行窓口から見ました中小企業の最近の動向を申し上げ、あわせて二、三の希望意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  最初に、相互銀行窓口から見た最近の中小企業動向について御報告申し上げたいと思います。私どもでは毎月一回全国各地相互銀行融資担当役員を招きまして、地域経済情勢懇談会を開催いたしておりますが、ここでは去る一月十八日の懇談会における各地報告中心に、ごくかいつまんで御報告申し上げたいと思います。  御高承のとおり、昨年来の総需要抑制政策は、公定歩合の大幅引き上げ預金準備率引き上げ窓口規制強化等、主として金融政策中心に強力に推し進められているわけでございますが、最近に至ってようやくその影響が各方面に浸透し、次第にその効果があらわれつつあるように見受けられます。  まず、石油電力制限に伴う中小企業動向につきましては、地域業種により必ずしも一様ではございませんが、ただいまのところ思ったほど深刻な事態は発生しておらない模様でございます。石油電力制限に対応して個別企業段階では、たとえば、非生産部門石油電力削減、休日操業の取りやめ、操業時間の短縮などの対応策を講じておりますが、電力制限石油制限は主として大企業中心に実施されていることもあり、中小企業段階では、石油電力制限により直接的に操業停止とか倒産等非常事態に追い込まれたというようなことは、ただいまのところほとんど報告されておりません。  もちろん業種的に見ますと、売れ行き不振で在庫増を招いている繊維関係原材料不足建設資材関係紙不足影響の強い印刷関係燃料不足による運送関係融資規制の対象となっている不動産業土木建設業関係及びレジャー関連業種等には、不振、不調なものが出てきておることはいなめません。  しかしながら、中小企業資金繰り等の実態を見ますと、現金支払い比率上昇支払い手形サイト短期化等支払い条件の悪化と、他方大手企業資金繰り難による下請企業受け取り手形サイト長期化等事態も生じております。  このため企業資金需要は、勢い短期運転資金資材等の高騰、入手難に伴う増加運転資金等、もっぱら運転資金に集中しております。一方、設備資金需要につきましては、質量両面にわたる融資規制と、先行き景況の見通し不安もあり、設備投資意欲は鎮静化しております。  次に、こうした環境下における最近の相互銀行融資動向について御報告申し上げたいと存じます。  まず、相互銀行貸し出し平均約定金利動きでございますが、御高承のとおり、公定歩合は昨年四月以降十二月までの九カ月間に都合五回にわたり四・七五%引き上げられましたが、この間の相互銀行約定金利上昇幅は〇・五四六%と、公定歩合の上げ幅の一一・五%にすぎません。この結果、昨年十二月末の相互銀行全体の貸し出し金平均約定金利は八・二三%で、普通銀行をわずかに上回る水準となっております。これは一つには、相互銀行貸し出しが比較的長期融資にウエートがかかっていること等から公定歩合動きに敏感に反応しがたいということもございますが、他方中小企業専門金融機関としての立場上、金利引き上げについては、ある程度抑制的に対応しているという点も御理解いただきたいと存じます。  次に、融資の量的な問題でございますが、四十八年四月から十二月期中の相互銀行融資量純増額は一兆二千九百十六億円、伸び率は一五・七%となっております。これを四十七年の同期と比較いたしますと、金額で約二千億円の減少伸び率では約一四%の大幅減少となっております。  これは、御高承のとおり、昨年四月以来日本銀行窓口規制を受けておるためでございますが、本年一−三月期も引き続き同様な規制を受けておりますので、年度間通算ではかなり実績低下になる見込みでございます。したがいまして、このまま事態推移いたしますと、決算期を迎える本年三月ころには、中小企業金融面かなりの窮屈な現象が出てくるのではないかと懸念をいたしております。  つきましては、このことに関連いたしまして、諸先生方をはじめ関係当局に対し、一、二御要望を申し上げたいのでございます。  現下の異常な物価騰貴抑制のためとられておる金融引き締め政策趣旨は、十分に認識しております。しかしながら、中小企業専門金融機関立場から申し上げますと、今後年度末に向かって次第に中小企業資金繰りが困難の度を加え、取引先中小企業の経営に不測の事態を招来することも懸念されますので、情勢推移に応じて、特に関係当局の弾力的な御配慮をお願いいたしたいと存じます。  次は、個人向け住宅金融についてでございます。  私ども大衆金融機関である相互銀行といたしましては、広く国民大衆住宅に対するニーズにこたえ、国の福祉政策に沿い、住宅金融を積極的に推進いたしております。相互銀行各行住宅金融への取り組みはもちろんでございますが、一昨年九月に相互銀行七十二行が共同で設立いたしました株式会社相銀住宅ローンセンターも、設立以来積極的に一般大衆住宅資金需要にこたえるべく努力をしております。  もちろん、この種資金は、低廉かつ豊富に供給されることが理想でございますが、最近のような金融情勢下では調達コスト上昇し、勢い貸し出し金利引き上げざるを得ないというような状況になっております。私どもは、より低廉な資金の供給をはかるべく極力努力しておるのでございますが、この際、住宅金融について、財政面からの格別な御配慮をお願い申し上げたいと思うのでございます。  この点につきましては、先般の金融制度調査会における民間住宅金融のあり方についての御審議の際にも、私どもの業界の意見としてその旨を申し述べたところでございますが、重ねて御高配をお願い申し上げる次第でございます。  最後に、現在のような情勢下における金融機関社会的責任の問題については、私ども相互銀行としては、制度本来の使命に徹することが、即社会的責任を果たすこととなるのであるということを十分自覚いたしまして、現在の困難な局面を乗り切ってまいりたいと存ずる次第でございます。何とぞ格別の御指導を賜わりたくお願い申し上げまして、私の所見を終わらせていただきます。
  6. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ありがとうございました。  次に、小原鐵五郎君にお願いいたします。
  7. 小原鐵五郎

    小原参考人 ただいま御紹介をいただきました全国信用金庫協会全国信用金庫連合会会長を兼務いたしておりまする城南信用金庫理事長小原でございます。  平素私たち信用金庫は、諸先生方にいろいろお世話に相なっておりますることを、この機会を拝借いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  本日は、最近の金融情勢について意見を申し述べるようにということでございまするが、第一番に信用金庫の現状につきまして、一応御説明を申し上げたいと存じます。  現在、信用金庫の数は、北は北海道の北端から南は鹿児島、沖繩に至る全国に散在し、四百八十四金庫で、本支店を含めた店舗の数は四千三百カ店を数え、その預金量は昨年十二月末で十四兆六千百五十五億円を突破し、貸し出し額も十一兆九千八百六十七億円をこえ、政府系金融機関及び民間金融機関を含めた全金融機関中小企業向け貸し出し額の二一%を占めております。  また、その会員の数は四百万人に達し、信用金庫との取引関係にあるものは五千百二十一万口座に達する実情でありまして、わが国中小企業及び国民大衆金融機関として重要な役割りを果たしておるものでありまするが、さらに中小企業の健全な発展国民生活の安定をはかるため、現在、躍進第二次三カ年計画を実施し、業界あげてその実現に努力を続けているところであります。  次に、最近における預金状況でございまするが、信用金庫国民大衆貯蓄機関として余剰資金貯蓄化につとめてまいりました結果、昭和四十八年中の資金量増加は、前年同期に比べやや増勢は鈍化していますものの、金額で二兆七千九百三十億円、また増加率でも二四・一%増と、金融機関の中では最も高い伸びを見せています。  一方、貸し出し状況でございまするが、御案内のように、信用金庫は一会員に対する貸し出し限度が定められておりまする関係上、思惑や投機的資金貸し出しはなく、経済金融情勢変化による中小企業及び国民生活への影響をできるだけ緩和することを基本的な態度としております。このようにきめこまかい貸し出し態度をとってきました結果、四十八年中の増加額昭和四十七年の二八%増に比べますとやや鈍化しておりまするが、二兆四千六百五十億円でございまして、年間二五・九%の伸びを示しております。  それから第三・四半期、すなわち昨年十月から十二月までの年末金融状況でございますが、信用金庫は七月以降の預貸率が八四%台と高水準を保ってきたのであります。しかしながら、金融引き締めしわ寄せあるいは石油危機影響が憂慮される実情にありましたので、中小企業専門金融機関立場から、その影響を回避し中小企業を守るという考えで、目標額を前年度目標に比べ二千億円増加の九千億円と設定し、各信用金庫は九月末貸し出し残高の八%増を目途に努力してまいったのでありまするが、ほぼ目標額に近い八千三百四十六億円の実績をあげ、達成率は九三・七%となりました。  また、最近の貸し出し金利動きでございまするが、昨年十二月の全国信用金庫貸し出し約定平均金利は八・三二一%と、同年三月末に比較して〇・三五七%上昇しております。しかし、他の金融機関と比べますと、信用金庫は一番上昇幅が少なく、預金金利引き上げ等によるコスト上昇のはね返りを必要最小限度にとめるようつとめている次第でございます。  次に、本委員会で近く審議されまする割増金付貯蓄についての問題でございます。信用金庫は、国民大衆貯蓄機関として貯蓄資金吸収につとめる立場にあり、預金者へのサービスの向上に心がけるとともに、過剰流動性資金吸収にはできるだけ協力してまいりたいと存じております。この点、割増金付貯蓄は、射幸心をそそるという一面はありまするが、最近のような経済実情考えますと、預金に幾分でも魅力を与える意味で、臨時措置として割増金付貯蓄法案については賛成するものであります。  また、現在三月危機とかあるいは六月危機とかいうふうなことをいわれております。私はときどき、日本銀行も大企業に御心配になることもけっこうでございまするが、中小企業の面にもひとつ御配慮願いたいとお願いしておるわけでございまして、もし憂慮されるような事態が現実化するならば、時を失せず、たとえば信用金庫ならば信用金庫連合会を通じて中小企業資金を流すなど、弾力的な金融政策をお願いする次第であります。信用金庫といたしましても、できるだけ大蔵省日本銀行当局趣旨を体して協力する考えでございますので、そのときには十分注文をつけてくださってけっこうですが、中小企業育成のため、資金貸し出し方について特にお願いいたす次第であります。  これと同時に、まじめな中小企業者経済金融情勢変化から守り、その健全な発展を助けるため、民間中小企業専門金融機関活用をはかる意味において、資金運用部資金全国信用金庫連合会への預託など財政資金活用施策を御配慮願いたく、そのための必要な措置をお願いするものであります。  最後に、金融引き締め政策に対処する信用金庫の基本的な態度であります。  現在、一部信用金庫では日本銀行窓口規制を受けるなど、各信用金庫とも引き締め政策趣旨を体し、それに協力しております。しかし、現在、建設業不動産業など一部の中小企業倒産増加傾向が見られ、今後引き締め政策が浸透するにつれ、さらにそれが他の業種にまで増大することも憂慮される情勢にあります。信用金庫といたしましては、まじめで健全な中小企業引き締めしわ寄せを受け、破産、倒産に追い込まれないよう、きめこまかい配慮をいたしてまいらなければならないと存じている次第でありまして、今後ともその社会的使命考え、その取引先である中小企業の健全な発展に資するよう、一そう努力してまいる所存でございます。  以上申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  8. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。佐藤観樹君。
  10. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 参考人皆さん方に御質問を申し上げたいと思います。  いまおのおの現在の金融情勢についての御意見があったわけでありますけれども、まず私がお聞きしたいのは、五度にわたる公定歩合引き上げという、近来にないきわめてきびしい金融引き締めをやっておるわけであります。もっともこれは底が四・二五%と低過ぎたことがあって、五度というとたいへんびっくりするわけでありますけれども、一体、この金融引き締めというのがどの程度実際にはきいているのだろうか。これは実は皆さん方のお答えは、大体私はわかっておるわけです、まあずいぶんきいておりますと。ただ、きょう午後には日銀の総裁にも来ていただきまして、さらに詰めるわけでありますけれども、日銀筋ではまだまだ金融は締まってない、その効果が十分あらわれてない、再度引き上げが必要であるという見解のように新聞等では聞いているわけであります。その辺のところを金融に携わっている皆さん方の御意見をお伺いをしたいわけでありますが、特にこれは業種業種によってきわめて跛行性が強くて、私が聞いているところでも、ものによってきわめてきびしいところもあれば、片や手形のサイトがこなくても手形を割り引く、また使ってもらいたいというような業種も実は聞いているわけであります。  その辺のところで、一体、金融引き締めというのは現実にはどのくらいきいているのだろうか、あるいは伝えられるところによります六度目の公定歩合引き上げ、こういうものについて皆さん方はどういうふうにお考えになっているか、お三方にまずお伺いをしたいと思います。
  11. 横田郁

    横田参考人 いまの佐藤先生の御質問でございますが、金融引き締めは、われわれの窓口から見ますと、相当さいてきでおるわけでございます。都市銀行の場合は、先ほどもちょっと触れましたように、窓口規制ワクが非常にきびしいわけでございまして、今年度の第三・四半期、四十八年の十月から十二月までは、前年同期に比べまして貸し出し増加額がマイナス四一%ということになっておりますし、またことしのこの第四・四半期、一−三月はマイナス三四・六%というふうに引き締められてきておるわけでございます。これは最近の異常な物価上昇、原材料の値段の上昇というような経済規模の拡大と申しますか、価格の拡大と申しますか、そういう点に比べますと、非常に引き締められているということが言えるのではないかと思います。  それで、先ほど申し上げましたように、企業手元流動性の低下にまず第一にその現象があらわれているわけでございまして、全産業の手元流動性で申し上げますと、四十八年の三月には、売り上げ高に対しましての現預金比率でございますけれども、これは一・三二カ月分あったわけでございますが、九月には一・〇四カ月に下がり、ことしの三月の見通しでは、これは〇・九三カ月分に下がるというふうに見込まれております。従来の引き締め期の最低の水準が大体いま申し上げましたことしの三月の水準ということで、一番低い水準にことしの三月は落ち込むだろうというふうに見受けられるわけであります。  そういうぐあいに、大体引き締めは浸透しているというふうに考えられますが、そのほかに日銀券の発行、増発ペースがだんだんと最近落ちてまいりまして、一月は二三%台まで落ち込んだということが言える、これが一つの証左ではないかと思います。  それと同時に、設備投資意欲が相当鎮静してまいりまして、設備投資動向を端的にあらわす一つの指標としましての機械の受注が、四十八年十二月の機械受注、これは船舶を除く民需でございますが、三六・七%減、また一−三月の見通しは前期に比べて四一・五%の減というふうに、企業の設備発注が非常に衰退している。企業設備投資意欲が非常に冷えてきているということが言えると思います。  それからもう一つ、一部商品について価格の低下ということが現象的にはあらわれております。たとえば鉄鋼とか繊維とかあるいは木材とかいうものにつきまして、価格の低下があらわれてきている。それで、たとえば棒鋼トン当たり十万五千円というのが最近では八万円になり、薄板が十一万五千円が九万円に下がっているというような現実の姿がございます。これはやはり何といいましても、引き締めが浸透してきているという一つのあらわれではなかろうかと思います。これは金融引き締めばかりではなく、財政の抑制ということももちろん響いてきていると私は考えます。  それから、先ほど先生のおっしゃいました版行的ということなんでございますが、これは最近統計がございませんので、ちょっとはっきり申し上げかねますけれども、感じで申し上げますと、先ほど申し上げましたように、若干大企業手元流動性の落ち込みが多くて、中小企業のほうが若干それよりも少ないということが統計的には言えるわけでございますけれども、しかしこれは一般的な統計でございますので、業種によってはいろいろ差があろうかと思いますが、ことに大企業の中では、最近の値上がりによりまして手元流動性が急に高まっているところもあるわけでございます。一例をあげますと、石油精製などの場合には、もちろん手元流動性が一時的に急速に高まっているということが言えるのではないかと思いますが、これも、ことしの一月からの原油の値上がりによりまして、四月以降は急速にその手元流動性が落ち込むということは言えると思うわけでございます。そのほかいろいろ業種によって多少跛行的に金の詰まっておるところ、詰まっていないところと、これは金融引き締めということよりも、その企業の取り扱っている物資に対する需給関係からおもに生じているのではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。金融面で詰まっているというよりも、需給関係で詰まっているということが言えるのではないかと思います。  それからもう一つ、収益的にいろいろ格差が出ているということもございますけれども、これは金融の問題とかけ離れた一つの物資の需給関係、先ほど小原さんのおっしゃいましたたとえば建設業、中小建設業というのは、非常に収益も低下している、金繰りも苦しいというようなことがいわれておりますけれども、現実には原材料の値上がりあるいは入手難、それによって受注ができないというような、いわゆる見積もりができないというようなことで受注がしにくいというような面、そういうようなことがありまして、いろいろ収益的にも困っており、また原材料が入らないために金繰りもつかないというような事態が起きているのではないかと考えられるわけでございます。  御質問の趣旨にかなっているかどうかわかりませんけれども、大体そういうふうな感じを持っております。
  12. 尾川武夫

    尾川参考人 相互銀行立場から申しますと、先生の御質問のように、敢行性があるというようなことは全然ございません。全部困っておるところばかりでございまして、そこを御了承願いたいと存じます。  私どもは、窓口規制というものはほんとうはしてもらっては困るということを関係当局にもいろいろお願いしておるのは、当初から今日まで一貫して引き続いておるのでございます。と申しますのは、やはり何と申しましても、わが国の産業は、中小企業のウエートが非常に重いのであります。中小企業の中にも大きいのも小さいのもございますが、それは地方銀行のほう、都市銀行のほうにお願いをしておられる方もおられるでしょうが、しかし、そういう都市銀行はおもに大企業のほうを中心に御融資になっておるので、今日までの例を見ますと、資金の余裕があれば中小企業に行こう、ただし預金はもらうよ、貸し付けばしないぞ、こういうような御方針でございますから、窮屈になりますと、金を貸してくれといってもなかなか貸してもらえない。結局、われわれのところへ流れてこられる。ところが、われわれのところでも長い間育っておるお客さんがみんなもう窮屈になっておられるのですから、そういうことをお受け入れするというわけにはまいらない。  そこで、それじゃ私ども使命がはたして達成できるのか。おまえたちは中小企業の専門金融機関じゃないか、困っておるときによりどころにするのは相互銀行とか信用金庫じゃないか。それをワクがないから金を貸せぬというようなことじゃ、そんならもう専門金融機関というような名前を取っちまえというような感触を与えるということを非常に心配しておるのでございます。  引き締めは、これはもう一−三期は一二・六%で約二千億のワクが前年の同期に比べまして縮まっておるわけでございまして、なかなかやりにくい。そこで、私どもは、常に日本銀行にお願いをいたしまして、何とかこのワクを広げてもらえないか。理論的に申しますと、やはり日本銀行さんのおっしゃることは、これはわからぬことはない、それはよくわかる、わかるが、窓口を締めておかないと他の金融機関からの締め出しがそっちへみんな流れていくじゃないか、それじゃしり抜けじゃないかという御意見ですが、しかし、私どもは、流れてくるもの全部を受け入れられるだけの、そんな大きな資金は持っておりませんから、実際はそんな御心配は必要ないのでございますが、しかし、理屈からいえばそれはおっしゃるとおりだ、こういうふうに思っております。  それで、この引き締めの政策にはやっぱりついていかなきゃならぬという固い決意をもって耐え忍んできておるのでございますが、どうもこれで何とかやっていけるということは、やっぱり各相互銀行の経営のあり方で、いままで重点的に貸しておったものを減してもらって、そうしてほかの困っておられるところへ回すとか、あるいは抑制されておるものには、これはもうやむを得ないというようなことでお断わりを申し上げるというようなことでございますが、幸いにして、先ほど申し上げましたように、電力とかあるいは石油影響をこうむっておるところは、中小企業者には比較的少ない。  それで非常に私助かっておると思うのでございますが、しかし三月の決算期になりますと、これはもうベースアップも出てまいりましょうし、それから金の支払いもしなきゃならぬ。銀行決算期にはなるべく回収をしたいというのは、これはもう本筋でございますので、そういうこと等で三月期あたりに非常にお困りになるだろうということを考えまして、実際に内容はいいんだ、つぶれやしないんだ、しかしながら資金繰りでつぶれるんだ、手形は持っておってもこれを割ってもらえない、品物をさばこうと思ってもなかなかさばけない、黒字であっても倒産するという企業をどうするかということを私は一番心配いたしまして、これは何としても——これは御承知のように、中小企業は一度落ち込んだら、立ち上がることがなかなか容易ではございません。これは私どもお客さんの様子を見ておりまして、非常に苦しい立場に置かれておるものが、これは信用度とか資金の面とかいうようなことで立ち上がりがむずかしいということは当然のことでございますが、りっぱな企業で生産に寄与しておるものは、これは私はそういう意味でどうしてもつぶしちゃいかぬ、黒字倒産をさしてはいかぬということを考えておりますので、しばしば日本銀行のほうへ参りまして、どうしてもワク内ではまかなえない、しかし、ここにいい中小企業者のお客さんがあって、これはこういう事情で何としてもやっていけぬ、もうこれでは手を上げなきゃならぬというお客に、それでもワクがございませんからやむを得ませんとお断わり申し上げるわけには、中小企業金融機関としてはどうしてもできない、何とかしてめんどうを見ていただきたいということを、私はしばしば日本銀行当局にお願いいたしておるのでありますが、趣旨はよくわかった、そういう場合には個々の事例を持ってきてくれ、そうすればよくそれを検討して、個々のそういう場合には配慮しなきゃなるまいというようなおことばをいただいておりますので、私はそういうことをたよりにいたしまして努力してまいりたいと、こう思っております。  また、そういうふうなことで金融が詰まっておりますので、常に社会福祉の関係から住宅ローンのほうにも力を入れておるのでございますが、このほうになかなか金が回りにくい。御高承のとおり、私どものほうは一昨年の九月に相銀住宅ローンセンターという七十二行全行出資の住宅会社を設立いたしましたが、これはやっぱり各相互銀行では……(佐藤(観)委員「それはあとでお伺いしますので。時間があれば、住宅ローンの問題はあとでお伺いします。」と呼ぶ)そういうふうなローンの問題も、金がなかなか回りきらないということで非常に苦痛を感じておるのでございますが、私が一番心配いたしますのは、やっぱり三月の決算期です。決算期をどうして切り抜けようかということに一番心配しておる次第でございます。
  13. 安倍晋太郎

    安倍委員長 参考人各位に申し上げますが、時間が限られておりますから、答弁のほうは簡潔にお願いをしたいと思います。
  14. 小原鐵五郎

    小原参考人 御両人からいろいろとお話がございましたので、私はいまお話もございましたので、簡単な答弁をさせていただきます。  昨年の十二月ごろまでは中小企業もたいして資金的にも影響はなかったと思いますが、最近になりまして、金融引き締めというものがだいぶきいてきたような感じがするのでございます。それは、親企業からの支払いと申しますか、それがいままでは現金でもらったものが、今度は手形になったとか、手形の六十日のものが九十日になったとか、あるいは九十日が百二十日になったというふうに、支払われるほうが長期化してきたということ。それから、一方、今度中小企業の経営者の人が支払わなければならない支払いの面が、現金でなければ原材料が買えないというふうな実情がだいぶ出てきたというふうな点に、非常に私は変化が出ておるというふうに考えております。  それから、われわれの窓口から見ました中小企業、私どもはむしろ中小企業の中の中・零細企業ですけれども、その面から見ましても、相当資金需要が多いということを申し上げまして、はなはだ簡単ですが、答弁にさせていただきます。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大体、相互、信用金庫の場合には、私も感じとしてわかるわけでありますが、全国銀行の場合に、実は横田会長からお話がございましたように、その辺の数字のことは私も実は納得がいくわけなんです、いくのですが、どうも業界によっては、まだまだかなり在庫投資をしているのではないか、それが現在のインフレの大きな要因になっているんじゃないか。その辺で、まさに先ほど横田会長からお話がありましたように、鳥瞰的に見ますと、これは全体的に平均してみますと、かなり引き締まったという感じは確かにあると思うのでありますけれども、これが個々の業種なり業界なりをとってみますと、まだまだかなり余裕があるところがあるんじゃないか。確かに手元流動性は、大企業のほうが中小企業よりも詰まっているかもしれない、これは額が大企業のほうが多うございますから。  その辺で若干私がお伺いをしたいのは、先ほど申し上げましたように、第六次の公定歩合引き上げということがかなり日銀当局ではいわれていると新聞には出ているわけであります。これはきょうの午後でかなりはっきりすると思うのでありますが、銀行さんが、公定歩合は上げてけっこうです、うちは余裕がありますと言うわけはないのでありますけれども、率直なところ、いまが限度だ、これ以上上げられたらという感じなのか。これはしかたがないといえば、これはある程度強制力がありますからしかたがないということになりましょうけれども、端的にいって、第六次公定歩合引き上げがささやかれている現在、それをどういうふうに受けとめられているか、その辺についてお伺いをしたいわけであります。
  16. 横田郁

    横田参考人 第六次公定歩合が実際に行なわれるかどうか、私どももまだ見当は全くついておりませんけれども公定歩合引き上げということは、結局貸し出し抑制を明示的にするものだという評価があるわけでございますけれども、現実の金融引き締めということは、どちらかと申しますと、われわれには日銀の窓口規制のほうが強く響くわけでございます。これだけしか貸しちゃいけないというワクを守らなきゃならないということが一番強く響くわけで、金利引き上げ自体は、われわれ銀行にとってはさほどの問題ではない。ただ借り手側から申しますと、金利負担がそれだけふえるわけでございますから、非常に苦痛になるということが言えるわけでございますけれども、われわれとしては、金融引き締め窓口規制というものが、もう相当先ほど申し上げましたように限界に来ておるという感じがいたします。  ことに、先ほど来、中小企業のほうのお話もございました。われわれのほうの銀行が金の余っておるときに中小企業融資して、余ってないときは引き締めるというようなお話もございましたけれども、事実この引き締め下において、都市銀行においても中小企業に対する融資比率は、先ほど申し上げたように上がっております。そういうふうに中小企業に対してはきめのこまかい配慮をしているわけでございますから、その点は御了解いただきたいと思うのでございます。  いずれにいたしましても、窓口規制というものは、最近の物価の高騰、原材料の入手難、それによる値段の高騰ということによりまして、相当運転資金の需要が強くなっております。総体的にはだんだんとこれからきいてまいる。いまもうすでにきいてはきておりますけれども、三月期ごろまでには一段ときいてまいるのではなかろうかというふうに考えております。  ことに、十二月の納税資金等の繰り延べをみな大企業がやっておりまして、その納税資金の需要が今月、二月に出てまいります。これらのものがさらに圧迫要因となりまして、三月あたりは相当苦しい事態が来るのではなかろうか。公定歩合を上げるというのもけっこうでございますけれども、別に上げなくても引き締めはきく、こういうことではなかろうかと思います。  ただ、公定歩合を上げることによりまして、預金金利引き上げというような、貯蓄増進という意味での預金金利引き上げに対する一つのアプローチのしかたとして公定歩合を上げるということは考えられないわけではなかろうと思うわけであります。それは過剰流動性、もしそういうものがあるならば、まあ私はいまないと思いますけれども、その吸収に役立つのではなかろうかというふうに思うわけであります。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、現実に私たちのところに言ってくる問題は、例の歩積み両建ての問題なんであります。大蔵省から資料を取ってみますと、ほとんどこれは消えたことになっているわけであります。私などもいわゆる中小企業のおやじさんなんかと話をしていると、わざわざ電話がかかってきて、歩積み両建てやめました。じゃあそこに預金したやつをくずしていいかと言うと、それはいけません。つまり、表向きは拘束性預金になっていないけれども、現実には拘束性預金になっている。これがほとんど現実ではないか。そして、これは大蔵省のデータにもそういった意味では上がってこないという、これが私は現実じゃないかと思うわけですね。私は前々から大蔵委員会で、この歩積み両建ての問題はかなりうるさく言っているのでありますけれども、その辺のところについてのお考えを、簡単でけっこうでございますので、お三方にお願いしたいと思います。
  18. 安倍晋太郎

    安倍委員長 簡潔にお願いいたします。
  19. 横田郁

    横田参考人 歩積み両建ての問題につきましては、佐藤先生の御先代からもだいぶしかられたことがございます。  お答えいたしますが、実際には不当な歩積み両建ては確かに全部なくなっているはずなんでございます。しかし、いま先生のおっしゃったような、出しちゃ困るというのは営業上の問題でございまして、おそらくその窓口の担当者が、それは出さないでくださいよ、もう少し置いておいてくださいよというようなことを言うと思うのでございます。これは商売でございますから。そうしますと、客のほうはやはりこれは出せないなあという感じをお持ちになると思うので、これはいわゆるにらみ預金とか称するものでございますが、そういうことのないように、このごろ全国銀行協会では、歩積み両建てに関する、拘束預金に関する通知書を新たに改正いたしまして、預金者のお手元へ送るようにいたしております。それが普通のダイレクトメールや何かと間違えられて紙くずかごに捨てられるといけませんので、重要という赤い判を押しまして、それでお送りをする。それで、拘束のないものにつきましても御通知を申し上げております。ひな形がございますけれども、おたくの貸し出しに関してお預かりしておる預金は次のとおりでございます、と書いて、拘束してない方には、次のとおりと欄に全部棒を引っぱって送っておりますので、今度はそういう書面がもう行っておりますから間違いはないと思うわけでございますけれども、中にはそういうことがたまたま出るかもしれません。今後もそういうことのないように、いまのような措置を講じたわけでございますが、できるだけまた厳重に指導していきたいと思っております。
  20. 尾川武夫

    尾川参考人 歩積み両建てにつきましては、私ども全部整理するという段階にいままできておりません。わずか残っておりましたのは、これは鋭意絶無にするということを努力しておりましたさ中に、こういう非常にむずかしい金融情勢が出てまいりましたので、今後この点を懸念いたしまして、資金繰り関係上歩積みをよけいしてもらわなければならぬというようなことがあっては非常に中小企業者がお困りになると思いまして、先般全七十二相互銀行に、そういうことは絶対に慎んでもらいたいということで通知を出したような次第でございますが、今後もそういうことのないように鋭意努力いたしたいと思います。
  21. 小原鐵五郎

    小原参考人 信用金庫といたしましても、歩積み両建てにつきましてはできるだけ自粛ということでやってまいりまして、拘束比率というのと、それから金利処置というのがございまするけれども金利処置や何かの面はほとんどもうわずかということになっております。それから、拘束率も毎年毎年自粛してまいりました結果、もう非常に減っておるということを申し上げまして、お答えにさしていただきます。
  22. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その次に、いまたいへん問題になっている、おもに都市銀行でありますけれども、それの貸し出し先の問題、いわゆる大口融資の問題について横田会長に見解をお伺いしたいわけであります。  まず第一点でありますけれども、きょうの新聞によりますと、大蔵省のほうは、大体、自己資本の二〇%までに一社については貸し出しの限度を設けるべきであるということの方向だというふうに、これは新聞でありますので若干わかりませんが、それにしても、電力とか商社とか鉄鋼なんかには自己資本の二〇%をこえるものが大体五十件くらい、一応大蔵省でわかっているものがあるのだそうです。こういったものにかなり銀行が大口に貸して、それがやはり過剰流動性なりあるいは在庫投資のほうに向けられているんじゃないか、そういうことが今度の物価問題の一つの要因になっているということも考えられているわけであります。その辺のところで、確かに一行が二〇%にしぼっても、また他行から借りてくれば同じようなものでございまして、その辺のところもないわけでありませんが、まず横田会長に、この大口融資の問題について基本的にどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  23. 横田郁

    横田参考人 お答え申し上げます。  大口融資規制の問題は常に古くして新しい問題でございまして、実はこの間、私ども銀行協会の理事会のあとで記者会見がございましたときに、その質問が出ましたので、大口融資規制については筋道としてはけっこうであるけれども、なかなか現実にはむずかしい問題があるということをそのとき話しましたところ、たまたま全銀協、大口融資規制に反対というようなことを書かれた新聞もあったわけでございますが、それは決して反対ということではないのであって、筋道としてはそうあるべきだと私も考えております。常に金融というものは、公共性からいっても、大企業中小企業、個人を問わず、幅広く、まんべんなく融資することが本来の目的でございますから、それと同時に、また過度の貸し出し集中ということに伴う危険ということも考えて、危険分散の意味からも貸し出し集中はできるだけ避けていかなければならないというふうに考えておりますので、大口融資規制については、私は基本的にはそういう方向でいくべきだろうというふうに考えているわけでございます。  ただ日本の場合は、これはアメリカとかイギリスとか、そういうところでは大口融資規制をやっておるわけでございますが、日本の場合なぜやれなかったかということになりますと、御承知のように、敗戦によってゼロから日本経済は出発しておるわけで、日本の企業は外部負債依存率が海外に比べて非常に高い、間接金融にたよるところが非常に高いという点で、どうしても大口融資というものが自然発生的に出てきたということと、同時に、アメリカのように、そういった企業がコマーシャルペーパーとかそういうものを発行しまして市場から資本を調達することが比較的自由にできるというような、ストックの高い資本市場というものがあるところではそういう規制が簡単にできるわけでございますけれども、日本はまだそこまで資本市場が発展しておりません。そういうような背景がありまして、なかなかいますぐこれを厳格に実施するということは非常にむずかしい。したがって、方向としてそういう方向へ持っていくことは賛成でございますが、実施にあたりましてはできるだけ漸進的に、弾力的にやっていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。  それから、ちょっとおっしゃいましたが、方々で借りてくれば同じだという、この大口融資規制は、結局、金融機関の公共性とか預金者保護とかいう意味金融機関に与えられる規制でございまして、企業側にはそういう規制はないわけであります。したがって、企業としては、Aの銀行でAの銀行の自己資本の二〇%以内ということであればそれだけしか借りられない、しかしほかの銀行へ行けばまた借りられるということで、大口、まあさっきおっしゃった鉄鋼とか電力とかいうものについては、シンジケート、協調融資というものが行なわれているのはそのためでございます。  大体そういうことでございます。
  24. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は特に問題にしたいのは、商社への金融の問題だと思うのです。この前一月二十一日に公正取引委員会から大手の商社六社に対する調査書が出ておりますけれども、商社というのは自己資本率が合計しても三・四%、全企業平均が一七・八でありますから、それに比べきわめて自己資本率というのは低いわけでありますね。したがって、外部から資金調達をしなければいかぬわけでありますけれども、特に都銀による商社への融資規模というものは非常に高い。しかも、それが一般の企業よりも金利がきわめて低いということで、この商社への融資ということがたいへん問題になっておる。特にいまの場合、この経済情勢の中で商社が行なっている企業活動というものが物価引き上げに対してきわめて大きな要因を持っているというふうにいわれている昨今、それに融資をしている全国銀行というのはやはり大きな責任が生じてくるだろうと私は思うわけであります。その辺のところで、商社の六社だけの、いろいろな意味での売り掛け債権とか貸し付け金とか前渡し金とか、そういった意味での信用供与なんかを含めますと七兆四千億円、これは四十七年の末でありますが、七兆四千億円の融資を商社は他の企業にやっているわけでありますね。これはたまたま横田さんは第一勧銀の頭取でありますが、この貸し出しが四兆七千億ですから、はるかに商社の六社のほうが上回っているわけですね。そういうことになると、いまは銀行が商社に融資をしているというかっこうになっておりますけれども、いずれは逆に商社が銀行に——商社系の銀行ということになってくる時代にもなるのじゃないか。これは、私は金融の状態からしてきわめて異常ではないかと思うわけであります。  そういった意味で、私たちはいずれ商社法というようなことで商社の行動について規制をしなければいけないと思いますし、いま金融機関でなくいわゆるこういった金融をやっているのは、大きな問題は商社と生命保険会社、この二つはきわめて大きな問題があると私は思っておるわけでありますけれども、その辺のところで、商社に対してやはり全国銀行としても何らかのことを考えなければいかぬのじゃないか。資本主義の世の中でありますから、とにかくもうかるところに資金が流れるというのは、これは常でありますが、少なくとも社会的責任のある全国銀行として、ほかのところはないというわけではありませんが、特に大きなウエートを持っておる全国銀行としては、この商社への融資というものについて、いわゆる自己規制というとおかしいかもしれませんが、これは私たちのほうで何らかのことをまた考えはしますけれども銀行側としても、やはりこれだけ大きな商社の経済活動ということが問題になっておる昨今、やはりそれに融資する立場としてお考えがあってもいいんじゃないか、こう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  25. 横田郁

    横田参考人 商社金融につきましていまお話がございましたが、日本の商社、いま御指摘のあった商社というのは、総合商社と称しまして、ちょっと世界に類例のない形の商社で、非常に大きなスケールで、国際的にも国内的にも大きな活動をしておる。したがって、そのスケールも大きくなり資金量も大きくなるというので、外部負債に依存する度合いがどうしても非常に高くなってくる。貿易面におきましても、商社の活動というものはまあそうゆるがせにはできない。ことに海外の資源開発とか、そういうようなことにも手を染めておるわけでございますし、また国内的にも流通機構の整備とか、あるいはデベロッパー的な仕事とか、そういうありとあらゆることをやっておるのが日本の商社でございまして、まあやはりこれは確かにデメリットもあろうかと思いますが、メリットも国民経済的にはないわけではございません。大いにある面もあるわけでございますので、銀行としましてはそういう面を重視しまして、特に取引をしているわけでございます。  商社に対する融資態度といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、商社の活動が多面にわたっておりますので、一々その資金繰りなり財務内容なりを把握することは非常にむずかしいわけでございますけれども、借り入れの申し込みがあるつど厳正に調査いたしまして、それは決して投機資金とかあるいは買いだめ資金とかいうものに回らないということを確認した上で銀行としては融資をしている、きわめて厳正な態度でやっているわけでございますけれども、何しろ金に顔がないものでございますからどういうことになるか、その辺がなかなかむずかしいところでございます。したがって、御指摘のような点につきましては、私は、商社としましてもやはりえりを正して世間の誤解を受けないように行動すべきだと思いますし、私どもとしましてもそういうアドバイスは常に商社に対してはいたしております。  なお、商社に対する融資につきましては、昨年来、日本銀行規制がございまして、都市銀行融資額の中に占める商社融資のシェアはだんだん低下いたしておるわけでございます。四十六年には一〇%ぐらい、一割ぐらい商社に対する融資があったわけでありますけれども、昨年の九月では八%に下がっておるような状態で、商社に対する融資についてはできるだけ慎重に取り扱っていく、今後も慎重に取り扱ってまいりたいというふうに思っております。  なお、正確に申し上げますと、四十六年の三月末で商社に対する都銀の融資はシェアで九・五%、四十八年九月末では八・一%に下がっております。大体、今後もできるだけ慎重に対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
  26. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この問題というのは、今後もまた論議をしなければいけませんし、またこれは金融機関だけの問題ではなくして、先ほど私もちょっと触れましたように、商社の活動というものは、いわゆる商社というイメージから離れているものもありますし、それからいわゆる独禁法の改正という問題も含めてこれは考えていかなければいかぬ問題だと思うのであります。私は全銀協としては非常に大きな責任があると思いますので、今後ともひとつ話し合いをしていただきたい、こうお願いをしたいわけであります。  それから、だいぶ時間がなくなってしまったので、いろいろなことがお聞きできないのですけれども、ちょっともう一つは、この前の大蔵委員会でも若干国金局長にわが党の委員が質問したわけでありますけれども横田会長のところでいわゆるドル買いが、例のフランスのECの共同変動相場制離脱ということの際に行なわれたということで、当初はかなり日銀からきびしい制裁があったという書き方が新聞等でしてあったわけであります。国金局のほうで為替検査官が調べているということでありますけれども、これがいわゆるドル買いということになりますと、東京銀行あるいは住友銀行、それに横田さんのところということで、特に横田さんのところは全銀協の会長という責務を負われているわけでありますからきわめて大きな問題だと思うわけでありますけれども、この辺は一体どうだったのですか。まあいろいろ聞くところによると、いや単なる、あしたドルにかえて払うべきところを一日早めただけだということのようでありますが、事情を聞くと、どうもあの日の午前中にはある程度とまったんだけれども、引けぎわに合計二億ドル以上買いが来たというようなことも言われているので、そうじゃないのかなという気もするわけでありますが、その辺のところはどうだったのでございますか。
  27. 横田郁

    横田参考人 この一月二十三日の為替市場再開のときのドルの問題でございますけれども、直物出来高七億四千万ドルというようなことで、非常に大量のほうでございます。しかし、どうも私どものほうでは、私どものほうの銀行の資料しかございませんので、全般的なことはちょっと申し上げかねますけれども、その大部分は通常の輸入決済のための買い取りであったようであります。  私どものほうの例で申しますと、輸入手形の期日決済分が大体四五%ぐらい。ということは、それを決済しませんと不渡りになるわけであります。それからもう一つは、一覧払いの取り立て手形あるいは送金というようなものが四五%ぐらいでございます。大体九〇%がそういうものでございます。残りの一〇%が大体ユーザンスの期日到来前の決済、つまり、まだ先で決済していいものを早く送ったというものが一〇%ぐらいでございます。そういうことで、それも別に為替管理法で認められている決済でございますので、銀行としましてはそれに対しましては非常に消極的には対応したわけでございます。まだ期日が来ないじゃないかということで消極的に対応したわけでございますけれども、やはり顧客がどうしても送りたい、あるいはまた預金を出してこれで送ってくれと言われますと、送らないわけにまいりませんので、やむを得ず対応したという面があるわけでございます。  そういうわけで、今度の場合は、まあ為替管理法等から見ましても、特にスペキュレーションでいろいろやった、ドルを買ったということはないと思います。私どものほうが市場から買いましたドルは、二十三日が三千三百万ドル、二十四日が三千万ドル、合計六千三百万ドルを市場で手当てしたわけでございますが、これは大体実需に見合いまして、それは全部それでバランスがとれたということになっておるわけでございます。ただ、東京銀行さんが大きかったと申しますのは、これは当然でございまして、為替専門銀行でございますから大きかったわけでございますし、私どもと住友さんのほうが大きかったのも、これはやはり銀行窓口がほかの銀行に比べて広かったということで、どうしても量が多くなるということはやむを得なかったのではなかろうか。正直に申し上げますと、私のほうの六千三百万ドルというものは、私どもの普通の外国為替のシェアに比べて、お恥ずかしい次第でございますが、ちょっと少ないわけでございます。  実情はそういったことでございまして、たいへん世間の誤解を招きましたことにつきましては、まことに不徳のいたすところで申しわけないと思っておりますが、銀行が特に自分の勘定でドルを買い、スペキュレーションをしたという事実は全くないわけでございます。これはどこの銀行も同じだろうと存じておるわけでございます。
  28. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この件につきましては、この前、武藤委員でしたか、国金局長に調査書を大蔵委員会に出すようにということになっておりますので、またそのおりにでもさらにこまかく検討したいと思うのであります。  時間もありませんので、横田会長最後にお伺いをしたいわけでありますけれども、国民はもうインフレ、インフレで、たいへん生活難で困っている。預けておいた貯金もあまり利子は上げてくれないし、とても物価には利子もついていかれないという状態の中で、全銀協、都銀、地方銀行あわせて、自民党の台所といわれる国民協会へ献金をなさる。しかもその献金が、今度都銀の場合が四・二倍——失礼いたしました、都銀の場合は二・五倍です。証券が四・二倍でした。地銀の場合が二・五倍に会費がふえるということで、都市銀行としては、まだこれはどういうふうになっているのだか知りませんけれども、国民協会に毎月二千万献金をなさるというふうに新聞では報じられているわけでありますけれども、どうもこれは、国民感情としては納得がいかぬわけであります。いま「華麗なる一族」という映画がたいへんはやっておりますけれども、大衆の金を集めて、しかもこういうふうに大衆がインフレで困っているときに、商社なり銀行なり鉄鋼なりというものがたいへん大もうけをしている中で、こういった自民党への献金がさらにふえていく。献金すること自体が私は問題だと思うのですが、さらに二・五倍というふうにふえていくということは、どうも国民感情としてやはり問題があるんじゃないかと思うわけでありますが、二・五倍というのはもう話し合いがついたのですか。このことについていかがお考えですか。
  29. 横田郁

    横田参考人 いまの御質問は、ちょっと二・五倍というお話はまだ正式に何も承っておりませんので、これを銀行協会でどう対処するか、まだきめておらないわけでございます。まことに政治資金——これは規正が何かあるのでございましょうが、届け出のできる寄付というものは一応認められているわけではございますけれども、われわれとしてはできるだけ少ないほうが望ましい……(「やらないほうがいいですよ」と呼ぶ者あり)そういうふうに思います。単に自民党だけではございませんけれども、ほんとうにそれはないほうがいいと思います。
  30. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まだまだ、われわれ国民にとって重大な住宅ローンの問題とか、あるいはこれから論議しなければいかぬ割増金付預金の問題、いろいろ質問したいことがあったのでありますけれども、時間がなくなりましたので、きょうはこれぐらいにさせていただきます。どうもありがとうございました。
  31. 安倍晋太郎

    安倍委員長 増本一彦君。
  32. 増本一彦

    ○増本委員 きょうは皆さんにはお忙しいところありがとうございます。  いまの深刻になっている金融問題にきょうは特に限って、問題になっています割増金付貯蓄の問題につきましては、別途お伺いする機会もあると思いますし、この点は委員長にも十分配態していただきたいと思いますので、私の持ち時間が二十五分しかありませんので、簡潔に答えていただきたいと思うのです。  初めに横田さんにお伺いしたいのですが、一月末の都市銀行銀行勘定がせんだって発表になりまして、その中で法人預金の取りくずしが多くなっている反面、石油関連業種や一部鉄鋼業種の取りくずしは依然として鈍い、こういうようなこともあって、先ほどの御意見でもそういうことに言及されました。実態がどういう状況なのか、特に石油関連業種や一部鉄鋼業種では一体どういう実態になっているのか、この辺のところをまずお伺いしたいと思います。
  33. 横田郁

    横田参考人 最近のことでありますので、いまその実態は私どもも、はなはだ不明でございますが、よくわかりません。ただ、考えられますことは、石油関連につきましては、御承知のように、販売におきまして相当有利な条件で販売をしていると察せられます。一方、輸入のほうはユーザンスで泳いでおるというようなこともございますので、その間、手元流動性は一時的に高まっているというふうに私は考えるわけでございます。正確に調べませんと、はっきり責任をもって申し上げかねますけれども、そういう意味では、いま手元流動性は高いが、しかし、御承知のように一月から原油の値段が倍以上になっておりますので、ユーザンスの期日到来の四月以降は、この手元流動性は急速に低下していくというふうに考えられます。  鉄鋼のほうは、やはり原材料輸入につきましてユーザンスというようなこともございますし、販売のほうも同じように若干手形サイトの短縮化とか、あるいは現金売りとかいうようなこともあろうかと存じますので、やはり同じような事情で手元流動性が高いのではないかというふうに思います。しかし、これもフレートの上昇とか、あるいは輸入材料の値上がり、あるいは円安というようなことで、逐次手元流動性は低下していくのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。実態についてこまかく分析をしておりません、私の感じで申し上げているわけでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  34. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、一つお願いがあるのですけれども、元売りを中心にした石油業、それから石油精製業、石油化学、それから高炉メーカーを中心にした鉄鋼、これの、石油危機を境にしまして、その前、ですから少なくとも六−九とそれから十−十二の業種別、しかも各月別に、預金高とそれから皆さんの都市銀行貸し出し高、これを一表にして私どものほうに資料として提出をしていただきたいと思うのですが、この点はいかがですか。
  35. 横田郁

    横田参考人 いまの資料につきましては、個々の企業につきまして一々御報告を申し上げることは、正直に申し上げまして、銀行業務の根幹をなす信用という問題で、企業の秘密性、個人の預金秘密というようなものは、これはあくまでも守らなければならないというのが銀行経営の鉄則でございますので、個々に申し上げることはちょっとかんべんしていただきたいというふうに私は考えております。  ただ、業種別にどうかというようなことであれば、これは日本銀行さんなり大蔵省さんなりには資料が出ておりますので、そちらのほうを利用していただけるとありがたいと思うのですが。
  36. 増本一彦

    ○増本委員 統計のタイムラグが非常にあって、いま私どもが手に入れられるというのも十二月ぐらいまでのところで、しかもかなり大きなワクになってしまってはっきりしない。特に市中銀行は、いま言った大手の企業と直接最も太いパイプでつながっていますし、一月の段階で、皆さんのほうで銀行勘定全体として都市銀行でおまとめになっているわけですから、業種別でけっこうですからひとつそれをつくって、この委員会に出していただけませんか。
  37. 横田郁

    横田参考人 全部の融資預金、証券投資、そういったものの計表はできておりますけれども全国銀行協会連合会では業種別にはやっていないはずです。業種別統計は大体三カ月ほどおくれるようでございますし、銀行協会では業種別統計はやってないので、私のほうの銀行のことでなく他の銀行預金貸し出しが私どものほうではわかりませんので、ちょっとこれはむずかしいかと思います。ただ、日銀さんのほうでも統計をやっていらっしゃるかどうかわかりませんが、個々の問題については、日銀さんにはどこの銀行が幾ら貸したということはわかっているわけでございます。
  38. 増本一彦

    ○増本委員 いま石油とか鉄鋼とかあるいは家電、こういうのはずっと石油危機以降便乗値上げをしたということで公取の問題も出たり、それから在庫の積み出しがふえている。だから、大謀網としては金融引き締めとかいうことがやられても、個々の問題のところまで一つ一つきめこまかく当たっていかないと、実際には手元流動性を押え込むとかいうわけにいかぬという問題があるわけですね。だから、大口の融資規制という問題も、そういうこともからめて一つは出てきているわけでしょう。実際に金融引き締めの方針を出しましても、皆さん方のところでかじとりをしっかりやるかやらないかで、きき口がやはりきまってくるわけですね。その実態を正確に私たちもつかんでおくということが、これは皆さん方と私たちとの一つの役目であると思うのですよ。ひとつそういう趣旨で、その辺のところを統計上御努力いただいて、ぜひこの点はお願いしたいと思うのですが、御検討ください。
  39. 横田郁

    横田参考人 御趣旨に沿って検討させていただきます。  ただ、私どものほうの銀行だけのことでございますが、今度の非常にきびしい引き締めワクの中において資金配分をどういうふうに適正に持っていくかということに日夜非常に悩んでいるわけでございますけれども、その中で、私どもとしましては、中小企業消費者ローンのうちの住宅ローンを重点的に取り上げておりまして、余裕のある、おっしゃるような手元流動性がもし商いとすれば、そういったような企業につきましては、できるだけ融資を押えていって、手元流動性を縮小するような融資方針でやっておるわけでございます。先ほどおっしゃいました、私どものほうのかじとりというところがそういう点にあるのではなかろうかと思いますので、それは厳にそういうふうに心がけている次第でございます。  それから、鉄鋼業、石油精製業という分類があればという点は、現在預金業種別の統計がないわけでございますね。法人預金と個人預金という統計はあるわけでございます。個人預金の中には営業性の個人の預金も入っておりますけれども、そういう統計はあるわけでございます。それから、しいて申しますならば、大企業預金中小企業預金中小企業といいますと中小企業基本法による範疇に入るものが中小企業ということになるわけで、そういう区別はあるのですけれども、鉄鋼が幾ら、電力が幾らというような統計が、業種別にはまだできていないわけでございます。
  40. 増本一彦

    ○増本委員 従来の金融の手だてをとる上では、それは法人預金と個人預金、あるいは大企業中小企業というような大ざっぱな分け方でよかったのかもしれません。しかし、いまのように、この石油危機以降、特に皆さん方も指摘しているように、いろいろ跛行性が出てきた。業界、業種によっても、びっこ、ちぐはぐが出ているわけですね。一部の企業あるいは一部の業種だけが手元流動性がまだ潤沢であって、他がぴいぴい言っている。そういう中で、もっと大きくすれば、大企業中小企業との間でも違いがある。しかし、こまかく分けると、また業種的にもそういう問題が出てくる。そういう中で、たとえば石油とかあるいは商社とかまた鉄鋼とかいうところの手元が潤沢で、これがあばれ回って在庫の積み増しをやって価格をつり上げるというようなことになると、これは幾ら引き締めだ、引き締めだといったって、しりが抜けちゃっているわけですね。だから、そういうところに目っこを入れてやっていく上では、統計的な作業もそういうところも目ざしながら、ひとつ現状を把握していただきたい。そういうことでやらぬと、ほんとうに金融引き締めといい、あるいは大企業の在庫の積み増しをはじめ、いまの諸悪の根源をぎゅっと押えるということができないのじゃないか。そういう趣旨を含めて申し上げているので、その趣旨をひとつ体して御検討いただけるかどうか、もう一度お願いしたいと思うのです。
  41. 横田郁

    横田参考人 御趣旨はよくわかりました。できるだけそういう御趣旨に沿って統計をとっていく方向で検討したいと思います。これはなかなかむずかしいとは思いますが、検討はさせていただきます。  ただ、いま申し上げましたように、そういった手元流動性が高い企業というのは、金融を幾ら引き締めても手元流動性がありますので、どうにもならない。金融引き締めが及ばない面があるわけで、われわれ金融機関としては、預金を持っていて預金を出される分にはどうにもならぬということがございますので、まことにその点は遺憾でございますけれども金融引き締めの及ばない面があるということは御了承いただきたいと思います。
  42. 増本一彦

    ○増本委員 ですから、貸し出しだけじゃなくて、預金もきっちりつかんでほしい、こういうことなんですよ。だから、そういうことで、預金は預けたものを出す、これはかってかもしれないけれども、しかし預金をだんだんと積んできているぞという実態自身が一つわかれば、それはまたそれで、もう一つこれは別の面からの手の打ちようもある。いまの経済のこういう動態的な状況を正確に把握するのには、流れているものが入ってくるダムでやはりどういうような数字になっているのかということを押える必要があるわけで、貸し出しだけじゃなくて預金の額についてもひとつ検討していただきたい、言ったのはそういう趣旨なんです。  そこで、もう一つ大口の融資規制との関連で、いままでいろいろ買い占め資金などについての貸し出しがやられていた、土地関連融資があった、あるいは商社に対する融資も非常に伸びてきていた。それがやはり手形の書きかえなどで順繰りにいっているわけですね。いまこういう貸しちゃっている分がそのままで、あとそれに対してさらに貸し出すのかどうするのか、そういう面がいまの窓口規制引き締めの上では非常に強い。しかし、もう一方で、たくさんかかえている在庫を放出させたりするには、ここでそういういま国民の批判を浴びている商社とかあるいは石油企業とかというものに対する、昔貸していまずっと手形の書きかえをやってそのままになっているものについて、ひとつもうそういう書きかえは一定の限度はやめるとかいうようなことで、資金の還流をはかっていくという手だてがもっとやられていいのじゃないか。融資規制だけじゃなくて、そういう面での大企業向けの、手元資金の潤沢なところ、預金高が上がっているような大企業、こういうようなところに対するそういう意味での規制ということを考えるべきときじゃないだろうかと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  43. 横田郁

    横田参考人 最初預金の問題でございますけれども、これは前から申し上げているように、預金の秘密性の保持という問題は非常に銀行業務の根幹をなす問題でございますので、なかなか公開することはむずかしい。しかし先生の御意見でございますので、それを参考にいたしまして、監督当局ともよく相談いたしまして善処したいと思っております。  それから、いまの商社なりあるいは手元流動性の高い企業に対しては、単に貸し出しを締めるということじゃなくて、従来の融資を引き揚げたらいいじゃないかという御意見でございますが、ごもっともでございます。  われわれは、御承知のように、先ほど申し上げましたように、窓口規制ワクが第三・四半期は四五%、今四半期は三五%くらいに削られておりますので、とても普通の状態ではこのワクのやりくりができないわけでございます。と申しますのは、やはり原材料価格の高騰等によって、生産活動がそう大きくならないにしても、運転資金の需要が相当ふえておりますので、ワクのやりくりには四苦八苦しているわけでございますので、そういった余裕のある企業に対しましては、現実に従来の貸し付け金の返済を要求して、その返済であいたワクを苦しいところへ使うというような方法は、現実に各銀行が苦心して講じておるわけでございますが、なお先生の御意見を体しまして、今後とも一そうそういう方向に向かって努力をしてまいりたいと思うわけでございます。
  44. 増本一彦

    ○増本委員 それから、先ほど統計資料を出してくれと申し上げたときに商社を落としちゃったので、商社もひとつ加えておいてくださいね。  そこで、いま一つは、商社に対する貸し出しの実態がどうなっているか。この点では、銀行の皆さんがいわば商社との関係では大体筆頭株主になっていますね。横田さんのところも伊藤忠商事では八・七%、銀行関係では四千六百六十四万株を十二月現在でお持ちになっている。これは私は苦労して会社四季報で調べてみたのです。日商岩井も同じですね。これは二番目になっている。ですから、商社の在庫の積み増しが非常にふえて、ここも一つ大きな問題になっているというときに、そして去年の一月以降、商社に対する融資について大蔵省や日銀を通じて指示が出ている、それでもやっぱり融資伸びていっているわけですね。去年の九月段階で十九兆ぐらいの残高になっていますね。こういういまの状態で、商社に対する特に買い占め資金融資を押えなくちゃいかぬという手だてが、口でおっしゃっているほどに、ほんとうに実際におやりになっておられるのかどうか。国民としてもこれは一番大きな問題だと思うのですね。一体実態はどうなのか。これをほんとうに銀行社会的責任という立場で健全に指導していこうとしているのだとおっしゃりながら、ほんとうにやれる保証というものはあるのかどうかという、ここの基本的な問題についていかがお考えでしょうか。
  45. 横田郁

    横田参考人 先ほど佐藤先生からの御質問のときにも申し上げましたけれども貸し出し額がふえているということは、これは経済規模が漸次拡大していっておりますので、また貨幣価値も低落しておりますので、貸し付け金額がノミナルでふえていることは確かでございます。これは何も商社だけでなく、総貸し出しがふえている。  その総貸し出しがふえている中で、商社に対する融資の割合がどうかということを申し上げますと、先ほど申し上げましたように、四十六年三月末では九・五%あったものが、四十八年九月末では八・一%に低下している。相対的に商社金融の比重は、都市銀行においては低下しているということが言えるわけでございます。急激に融資をストップするということは、これはできかねますので、徐々に低下をさせていく。これはもちろん銀行の自主的な方針もございますけれども、また当局の御指導によるところも多いわけでございます。  大体そういうことでございますが、あと何でございましたでしょうか。
  46. 増本一彦

    ○増本委員 もう時間がありませんので、最後に立て続けに二つ伺います。  一つは、先ほどお話に出た一月二十三日のいわゆるドル買いの問題ですね。これで横田さんの第一勧銀がからんでいるのは、結局、伊藤忠商事と日商岩井ですよ。ここにどれだけの融資をしたか。そして幾らドル買いをしてやったのか。そしてまた、それの中でユーザンスの来ていなかったものはどれぐらいなのか。これは外為法上は認められていることであっても、しかし世間を騒がせたというその点は遺憾に思うとおっしゃったわけですが、この実態は天下に公表してしかるべきだと思うのです。これを明らかにされるかどうか、これが一点。  それからもう一つは、あと中小企業関係についてもお伺いしたがったのですが、時間がないので相銀さんにだけお伺いしますけれども相互銀行は金詰まりだ、金詰まりだという実態、苦しい状態というのはいまお話がありましたけれども、一件当たりの貸し出し額は非常に多くなってきている。都銀と肩を並べるくらいにまでなっているわけですね。四十八年の三月の資料しか私は持っていないのですが、これで見ても、都市銀行が一件当たり千百八十四万円、相互銀行は一千二十八万円、全国銀行の中の地銀が六百七十二万円ですから、かなり高いのです。ですから、もっと困っている人たちに均てんするようなそういう貸し出しの方法ということもあるんじゃないだろうか。この辺のところの実態を含めたお考え、この二点だけお伺いしたいと思います。
  47. 横田郁

    横田参考人 ドルの問題でございますね。これは先ほど申し上げましたように、大体四五%が期日決済、残りの四五%が一覧払いの取り立て手形、その他送金、それで残りの一〇%が期日前決済というようなものでございますが、期日前決済の中には、ただいまおっしゃいましたところは入っておらないのでございます。ちょっと個別に申し上げることは、やはり銀行としては差し控えたいと思いますけれども、その資料につきましては関係当局に提出してございますが、公開の席で申し上げることは、やはり銀行の信用保持上いろいろ差しつかえがあると思いますので、個々に申し上げることはできないと思いますけれども大蔵省のほうには資料は提出してあるわけでございます。  それから、それについてどのぐらい金を貸したかというお話でございますけれども、金が出ているものは先ほどおっしゃいました銘柄ということではなくて、輸出金融制度に乗ったハネ金融というものが約九億ドルぐらいは出ていると思います。
  48. 安倍晋太郎

    安倍委員長 時間が超過しましたから、簡単でけっこうです。
  49. 横田郁

    横田参考人 九億円です。三百万ドルぐらい、これはハネ金融で出ております。それ以外には特に金を貸してドルを買ったということはございません。
  50. 尾川武夫

    尾川参考人 ただいま先生から一件当たりの融資額が都銀に近いものじゃないかというようなお話がございましたが、私どもはそういうふうに考えておりませんで、一件当たりが四十八年九月で七百十二万円ということになっております。これは件数で資金量を割り込んだものの平均でございますが、私どもはどういうふうな傾向で融資金額を整理しているかということは、これは先生の御質問に直接当たらないかもしれませんが、増加件数の五百万円以下の融資比率を御報告申し上げます。  これは、四十四年三月末の総融資先数が百七万件でありましたものが、四年半後の四十八年九月末には百五十六万件と伸びております。これは四十九万件の増加でありますが、このうち一件五百万円以下の比較的小口貸し出しの部分の件数は、同期間に九十五万件から百三十一万件へと、三十六万件増加しております。その増加件数は総増加額のちょうど七四%でございまして、ふえたものの七四%は五百万円以下に貸しておるということ。これは適確なお答えじゃないと思いますが、大口を重点に置いておるということではないという一つのしるしになると思いますので、御報告申し上げます。
  51. 安倍晋太郎

    安倍委員長 田中昭二君。
  52. 田中昭二

    田中(昭)委員 きょうは大蔵委員会にお忙しい三方に来ていただきまして御意見を聞かしていただきますことを、たいへんありがたく思います。ただ、いままでの質問と重複する点もあるかと思いますが、ひとつなるたけその点しんしゃくされまして、御意見を聞かしていただきたいと思います。  わが国の経済運営の目標は、従来の経済の量的拡大から、国民生活の質的充実に重点を置く方向に転換を遂げつつあるわけであります。その中にあって、金融面におきましては、このような経済運営の転換に即応して、産業に重点を置いた金融の中で形成されてきました慣行を、今後は福祉を優先した社会に適合するものへとっくり変えていくことが要請されておるところでございます。特に、国民所得水準の向上を背景としまして、その生活の意識も変化してきてきておりますし、国民は、金融機関住宅融資をはじめとしまして生活の向上に結びつくような金融サービスを十分に提供することを期待しておるのであります。  私は、金融機関がこのような時代の要請に応じまして十分にその機能を発揮し縛るような環境の整備に特に意を用いていくべきであると思いますが、現在、金融制度調査会においては、住宅金融のあり方、金利機能の活用などを検討いたしまして、その答申もあったようでございます。金融機関において特に留意すべきことは、最近の活動分野が広く社会の注目を集めておることでございます。  このような情勢の中で、ただいまも金融機関の代表の皆さま方から金融の現況について説明があったのでございますが、金融機関の高い公共性と社会的責任に思いをいたしますと、今後の経済社会の要請にこたえていくことが肝要であると考えるものでございます。  そこで、当面の経済情勢に対処するための金融機関融資のあり方については、昨年末からの石油の供給削減によります政府の緊急対策に即応して、金融面においても総需要抑制を一段と強化するとともに、民間金融機関に対して選別融資の実施についての通達が出されたようでございます。以上の内容を勘案いたしますと、今後のわが国金融市場は、四十年代最高の逼迫状態へ突入し、産業経済界に与える影響は深刻なものとなるのではなかろうか。特に、中小企業の実体面が困難に直面しておりますと同時に、企業金融面においても大きな問題があると思います。  そこで、まず全銀の横田会長さんにお尋ねいたしますが、都市銀行をはじめとする民間金融機関は、日銀のきびしい窓口規制をはじめとする資金規制を受け、貸し出し余力が限られており、おもな取引先企業資金需要に応ずるのに手一ぱいである、このように見受けられます。中小企業のうしろ向き資金需要に十分貸し出すことは、事実上困難ではないでしょうか。資金供給に対する方針をひとつお聞きしたいと思います。
  53. 横田郁

    横田参考人 確かに窓口規制ワクは、先ほど来申し上げておりますように非常に窮屈で、これをどういうふうに適正に配分するかということについては、日夜われわれは苦慮しているところでございますけれども、先ほどもお話ししましたように、中小企業に対する融資比率というものは、これは融資シェアというものですが、逐年上がってきておりまして、今後もこういう方向に向かってわれわれは融資を続けていきたいというふうにもちろん考えているわけでございます。  おっしゃるように、大企業資金需要というものは相当大きいと思いますが、大企業というものは、やはり資金調達力が何も間接金融にたよるだけではなくて、いろいろ調達手段を持っておると私は思うわけでございます。また、あるいは過剰流動性のいわれた時代にいろいろ公社債その他を持ったりして、これを処分するとか、いろいろのやり方があろうかと思うのですが、中小企業については、資金調達の方法が非常に限られておりますし、体質も弱いわけでございますから、大企業のほうはできるだけ圧縮をいたしまして、中小企業のほうに私どもは回していきたい。  それから、住宅ローンの問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、全体の貸し出しが二二%減っておるときに住宅ローンは七八%増加しているというようなことでございまして、これも将来、国民福祉観点から、われわれとしてはできるだけその資金確保してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  銀行経営者のビヘービアと申しますか、そういうものがこの七〇年代を境といたしまして非常に変わってきた。これは何も銀行だけではなくて、社会、国民の価値観というものが非常に変わってきたということで、銀行の経営者のビヘービアも非常に変わってきていることを御認識いただきたいと思うわけでございます。
  54. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に、尾川会長さんにお尋ねしますが、相互銀行は、本来地域金融中小企業専門の金融機関としての業務が本旨であるということでございますが、最近は為替業務の開始、さらには住宅金融へと業務の分野が広範囲にわたっておりますが、今後は福祉金融へと移行することも十分配慮する必要があるわけでございまして、従来の業務の本旨であるその業務分野における資金供給とどのようにバランスをとっていかれる方針なのか。現在は、相互銀行中小企業に対する金融上重要な使命分野にあると思われますから、その立場におきます御意見と御方針をお聞かせいただきたいと思います。
  55. 尾川武夫

    尾川参考人 相互銀行は、いまお話しのとおり、中小企業の専門金融機関でございますから、資金の供給はやはり大口に偏しないように、たくさんのお客さんにできるだけ御満足いただけるような金融政策をとっております。  ただいま外国為替業務を開始するからというようなことがございましたが、これもやはり中小企業の中で外国貿易をやっておるお客さんがたくさんございます。これがいままでは都市銀行さんとか東京銀行さんにお願いするというようなことになっておったのでございますが、そういうものも直接私どもがお取り扱いをさしていただくほうがより便利である、お客さんもそういうことを歓迎せられる向きもございますので、やはり外国為替業務を取り扱わしていただきたいということで、実績のある数行を第一回にお認めを願いまして、これも十分な勉強をしなければということで、またあらためていま勉強中でございますが、実施に踏み切るか踏みきらぬかは、その結果によってまたさらに認可をいただくということになっておるような次第でございまして、ただいま関係当局でも、お認め願いました数行はそういうふうな実績を持っておるところだからそれはけっこうだというような御意向でございますので、これが大口につながるとか、あるいは偏重した資金供給をするのではないかというようなことは絶対にございませんことを、御報告申し上げておきます。
  56. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に、小原会長さんにお願いしますが、信用金庫は大体相互銀行と同様ですので、同じように今後の方針、さらにまた信用金庫などの合併問題、それから経営の近代化の傾向、これがどのようになっていくものか、お聞かせ願いたいと思います。
  57. 小原鐵五郎

    小原参考人 お答え申し上げます。  信用金庫は、御案内のように、中小企業の中でも大、中、小とございまして、その中の中・零細企業というものと一般国民大衆というものを対象とした金融機関でございます。そういう関係から、現在預金も十四兆円ばかりございますが、貸し出しかなり上がってきております。これはあげて——私のほうは大企業は一件もなく、いま申し上げましたような中小企業国民大衆金融機関である。それから特に、私のほうの信用金庫地域金融機関というふうな関係で、私どもしょっちゅう信用金庫の目的を言っておりますが、信用金庫中小企業を健全に育成することと、それからまた二番目には国民大衆の家庭経済を豊かにすることと、それから地域金融機関として地域住民に奉仕する、この三つを私ども信用金庫の目的としてやっておるわけでございます。  そこで、信用金庫はどこまでもそういったような人たちが対象ですから、私どもいつも業界の人に言ってございますが、上のほうは大きな銀行さんにお願いするとして、富士山にたとえるならば富士山のすそ野ですね、すそ野のいわゆる中小企業と一般国民大衆、そういう面に主力を注いでくれということを言っておりまして、すそ野金融ということも、私が最初申し上げたことが最近世間でそういうことになったわけですが、そういう方針で進んでおるわけでございます。  それから、最近の非常な状態、昨年秋以来いろんな問題が起きてきておりまして、中小企業金融にもかなりむずかしい場面が出ております。いろいろ窓口規制というものもございますが、信用金庫に対しましては、千億円以上の信用金庫には窓口規制はあるのでございますが、それ以下の信用金庫には窓口規制というものはございません。しかし現在の引き締めというような趣旨を体してやっておりますけれども、とこで引き締めがだんだんときいてまいりますと、先ほども申し上げましたように、中小企業の中で経営があまり感心しないようなものはめんどう見るわけにはいきませんけれども、まじめな中小企業であるというふうな面に対してはできるだけこまかい配慮をしたいということ、それから二面不要不急ということかもしれませんが、業種によりまして、いろいろと貸し出しなんかの面についても、一般のサービス業といったようなものはできるだけ御遠慮申し上げて、ほんとうの中小企業というような面のめんどうを見ていきたい、こういうふうに思っております。  それから、合併の問題がございましたけれども信用金庫は四百八十からございまして、非常に数が多いのでございますが、最近のような情勢になりますと、地方で、関西方面でも最近三つばかり合併が出ております。それは、ここに大蔵省の方、銀行局長さんもいらっしゃいますが、どうも役所のほうから合併しろというようなことを言いますと、やはりやっております人は何か反発が多いので、私はできるだけ自主的合併をやれということを言っております。ただ、地域の住民なり、中小企業なり、国民大衆の困らないような合併でなければならない。金額が大体経済の原則ですから、大きな金庫はいいのだ、あと小さい、これ以下のものはいけないのだというふうな一律的なものでなく、北は北海道から沖繩までございますけれども、やはりその地域地域経済力というものもございますから、その地域の住民に十分こたえられるようなものならば、たとえ私は規模は小さくともそれは合併する必要はないんで、かえって合併したために地域住民が困る、こういうように考えておりますので、できるだけそういう合併については慎重なかまえで、自主的な合併をひとつ要望しておる、こういうような実態でございます。  以上お答え申し上げました。
  58. 田中昭二

    田中(昭)委員 経営の近代化につきましてはまたお聞きする機会があるかと思いますが、時間がもうあと五分ぐらいしかございませんから、これはまたちょっと質問が重複して申しわけないのですが、今国会でもたいへん売り惜しみ、買い占め、それから品不足、便乗値上げ、商社の脱税、やみカルテル、過剰流動性の問題、こういう数々の、商社、メーカーの大企業の不当な商行為といいますか行動が国民の前に明らかになってきたわけでございますが、この企業社会的責任が追及されればされるほど、特に大衆にとってがまんできない面は、先ほどからもお話があったわけですけれども、この狂乱の物価情勢は、これらの商社、大企業の手によってつくられたものであるということでありまして、これは周知の事実になってきたわけでございます。これら大企業が自由に活動できたおもな原因は、そこに資金を供給したいわゆる銀行さんにも責任があるのではないか。銀行は、一方では日銀また政府の政策によって金融引き締めという名目を立てながら、まあ私のことばが適当であるかどうか知りませんが、そういう規制を受けておるというたてまえをとりながら、大口の系列企業資金が流れていっておる。これはもう現実の事実だろうと思います。それがまたさらに買い占めや物価値上げの操作に使われていくという、こういう国民の疑惑といいますか、疑問といいますか、こういうものもある一面から考えますと、銀行にもその結果を招いた社会的責任が多分にある、こういうふうに言う人がおりますが、この点につきまして、特に全銀の会長さんのほうに、ひとつもう一回変わった面での決意なり方向なりをお聞かせ願えれば幸いだと思いますが、いかがでございましょうか。
  59. 横田郁

    横田参考人 ただいまのお話、非常にいろいろ世上批判のあるところでございますが、まあ私どものほうといたしましては、買いだめあるいは売り惜しみの資金として供給したということはないわけでございまして、これはまた別個の問題だと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、金に顔がないものですから、どういうことに使われているかということになりますと、なかなかこれはむずかしい問題になってまいります。しかし、借り入れの申し込みに際しましては、どういう用途で、どういう量で、どういう金額をいついかなるときに要るかということは、金融機関としては当然審査いたしまして、それが適正だと認めた場合に融資を実行しているわけでございます。でございますから、そういうことは万々あるまいとは思いますが、万一そういう方向に流用されていたし、流用されているといたしますれば、まことにわれわれの、不明のいたすところでございますので、今後もより一そうきびしく資金の使途、それから企業の金繰り状態の把握、そういうものを厳重にいたしまして、そういうことのないように善処してまいりたいと思います。  ただ、企業手元流動性の問題でございますが、先ほど佐藤先生からも御指摘がございましたが、確かに微行的な面があろうかと思います。そういう手元流動性の豊かなところは、銀行借り入れに依存しないでも資金の繰り回しができる、そういうようなものも一時的には散見されるわけでございますので、そういうものについては、金融引き締めがなかなか及びにくいということは否定できない事実だと思うわけでございます。しかし、いずれにしましても、そういうところも勘案しまして、できるだけ適正に今後融資をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  60. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後に、もう時間がなくなりましたが、先ほどから聞いておりまして、かりに商社をあげれば、商社にはメリット、デメリットがある、メリット分を考えれば、資金の供給もやむを得ない、こういうお話でございますけれども、その結果が、私はいまの会長さんの御回答では、国民のいまのこの感情からいきまして、たいへん足らないといいますか、もう少ししっかりやってもらわなければ困るといいますか、経済のメカニズムから考えればいたし方ないということもあるかと思いますけれども、もう少し庶民に開かれた、庶民にわかるような今後の方針をとられますように、これはお願いすると同時に、私まだ十分でございませんですから、また別な機会にひとつお願いするとしまして、委員長最後に時間がございませんから、割増金付貯蓄の問題が政府でいま提案されておりますが、この問題はまた別の機会に御意見をお伺いできればお伺いしたいと私も思っております。しかし、私はこの割増金付貯蓄金融機関がやられるということにつきまして、国民の射幸心といいますか、そういうものをいずれにしろ満足させるという意味も含まれておりますし、もしもこの臨時措置法ができます場合に、取り扱いの金融機関としてこれだけはひとつやめてもらいたいというものがございますれば、それぞれの立場から簡単にひとつお聞かせ願いたいと思います。いかがでしょうか。
  61. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御意見がありましたら簡単に……。
  62. 横田郁

    横田参考人 いまの御質問は割増金付定期でございますか。
  63. 田中昭二

    田中(昭)委員 ええ。
  64. 横田郁

    横田参考人 割増金付定期につきましては、終戦後しばらくの間行なわれたところでございますが、これは射幸心をあおるという意味でいろいろ批判もございましたし、また同時に、三十年代後半に入りましてやや国民生活が安定してまいりましたので、こういうものに対する需要が非常に少なくなりまして、自然に売れ行きが悪くなりまして廃止したわけでございますけれども、今回は特別緊急の場合として、貯蓄手段の多様化をはかるという意味当局でもお考えになったことだろうと思うわけでございまして、もちろんそういう射幸心をあおるとかいろいろ批判はございましょうけれども、多様化をはかるという意味では、こういう緊急の場合には、ある程度役に立つのではないかと私は考えております。  したがって、一般定期、普通の健全な貯蓄マインドで貯蓄をするという方は、これをお買いにならないんじゃないか。しかし、銀行の定期は、御承知のように、非常に金利が安いという非難を浴びております。こういうものはやらないで、ちょっとこういうものはおもしろいからやってみようというような方もあるわけでございます。宝くじとは違いますけれども、そういう方もあるわけでございますから、そういう層に対して売り込んでいくというふうに考えて、当局の御方針に協力をいたしてまいりたいというふうには考えております。
  65. 田中昭二

    田中(昭)委員 簡単に一言だけ。
  66. 安倍晋太郎

    安倍委員長 簡単にお願いします。
  67. 尾川武夫

    尾川参考人 先生のおっしゃるとおり、これは正常な預金吸収策ではないということははっきりしておりますが、しかし、こういうふうなことは、何としても物価を下げなければならぬ、資金吸収しなければならぬという意味におきましては、一つの方法であろうということで、私どもも協力していきたい、こういうふうに考えております。
  68. 小原鐵五郎

    小原参考人 現在のこの物価騰貴、インフレ抑制というふうな意味で、結局、手段としましては若干射幸心をそそるというような考え方もございますけれども、ひとつお互いが物価を下げるというふうな考え方で、やはりこういったようなものも必要ではないかというふうに私ども考えておる次第でございます。
  69. 田中昭二

    田中(昭)委員 ありがとうございました。
  70. 安倍晋太郎

    安倍委員長 竹本孫一君。
  71. 竹本孫一

    ○竹本委員 参考人には本日は御苦労さまでございます。  きわめて簡単に二、三の問題を御質問いたしたいと思いますが、まず横田参考人にお伺いいたしたいのでありますが、問題は預金金利の問題であります。  わが国の金利というものは、最近の動きを見ておりますと、不当に低い。たとえば、英国は三カ月ものの定期で一二・三%、フランスも大体それに近い、西ドイツはむしろ一五%に近い。こういうような高い金利を出しておる。それに比べまして日本の金利は少し低過ぎると思いますが、それについての参考人の感想を伺いたい。  時間がありませんから、まとめて申し上げます。  それから次には、今日のような激しいインフレ段階におきまして、建設省は、公共事業の工事については、インフレ条項みたいなことで実質的にはインフレに弾力的に対応できる措置を講じておるようでありますが、預金金利というものは、一応くぎづけになっておる。これはいま申しましたように、水準が低い上に動かさないんだ。結局は、わが国の低金利政策というものが支配的であるためであろうと思いますけれども、いま、御承知のように、高度成長の考え方は改めて福祉国家の建設というところへ方向転換をしよう、こういうような段階になってまいりましたので、金利水準そのものも、英、仏あるいは、ドイツ等の水準にまで、日本はそれ以上にインフレがひどいのでありますから、上げるべきであるし、またもう一つは、インフレに弾力的に対応できることを考えるべきではないか。なるほどインフレ条項というものは、いま規定の中には入っていないと思いますけれども、別に禁止しておるわけでもないので、これはひとつ銀行協会あたりでも、まじめに前向きに取り組んでいただいたらどうだろうというふうに私は思うわけであります。  けさの新聞で御承知いただいておると思いますけれども、全繊同盟が今度、インフレで郵便貯金の目減りが激しいということについて、国家賠償法並びに民法に根拠を置きまして、国に損害賠償を裁判で要求するという法廷闘争を行なうということになりました。これは全繊同盟だけではなくて、日本の預金者の全部の気持ちを代弁しておると私は思うのです。そういう意味で、判決がどうなりますか、まだ先のことでございますけれども、とにかく、インフレ条項というものがあるかのごとくもう少し弾力的に、インフレの段階においては預金金利をスライドさせるべきではないか。現に四つばかりの国で例がありますし、できないことでもない、やっているところもあるんだということで、これは大蔵省に、あるいは日銀にもいろいろ申し上げたいと思っておるのでございますが、横田参考人として、金利水準について、それからインフレにインフレ条項があるかのごとくに対応できる弾力的な考え方はお持ちにならないか、その点だけお伺いをいたしたい。
  72. 横田郁

    横田参考人 確かに、現在の消費者物価なり卸売り物価上昇率に比べまして、わが国の預金金利が非常に低い点にあることは実際でございますし、西独あるいは御指摘のイギリス、フランス等は非常に高い金利をつけておることも事実でございます。ただ、預金金利というものは単独で動くものではなくて、やはり金利体系の一つの要素として、これがかなめになって全体の金利体系が動くということになりますので、その影響するところが非常に広範にわたってくると思うわけで、これをどの辺に位置づけるかということは非常にむずかしい問題であろうかと思います。現に西独あたりでは、おっしゃるように預金金利一五%ということになりますと、プライムレートが一六%とかそういうようなことになりまして、中小企業の、借り入れ側でございますが、借り入れ側の金利負担はもう限界にきているということさえいわれております。  それから、ほかの国での対応のしかたでございますけれども、インフレ条項でございますが、たとえば、あれはフィンランドでございましたかどこかは、一〇〇%のインフレ補償をしておったわけでございますけれども、これはやはり悟り入れ者の負担のほうがたえられなくなって中止をされたというようなこともありますので、どの辺のところへ目安を置いたらいいかということは、非常にむずかしいと私は思うわけでございます。ことにインフレが、ブラジルのように——ブラジルも、いまはインフレがだんだんおさまってきておりまして、預金金利も一〇%台に下がっておるそうでございますけれども、いずれにしましても、ブラジルのように長期的にインフレなり異常な物価上昇が続くとすれば、そういう考え方も必要かと思いますが、もしそういうような状態が異常に長く続くということであれば、これはまさに日本経済にとってゆゆしい問題でありますので、結局、やはり総需要抑制政策による物価抑制、そうして安定した貯蓄ができるというような環境をつくることが先決でございます。したがって、いまの異常な、そう長期にはわたらないと思われるインフレに対しましてインフレ条項を挿入しますことは、若干問題があるのじゃないか。物価が上がるときは確かによろしゅうございますけれども、下がってきたときには金利が急速に下がるというような問題が出てまいりまして、預金者としては非常に混乱することになるのではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。  現在の金利の決定機構と申しますのは、もう私から申し上げるまでもなく、金利調整審議会でいろいろ討論されて決定されておりますので、やはりその方法がいま一番妥当なのではなかろうか。これは銀行が恣意的にきめているわけでは決してないわけでございまして、そういう会議の場できめられたものを銀行が順守しているということでございますので、その点はちょっと御了承をいただきたいと思うわけであります。
  73. 竹本孫一

    ○竹本委員 調整審議会の問題もわかりますし、金利体系全一体に影響があるということもよくわかりますが、しかしながら、これだけのインフレで金利はいまで、二年ものでも七・五%ということは低過ぎるとお考えになりますか、なりませんかという、その点をひとつお答えいただきたい。
  74. 横田郁

    横田参考人 これは何とも申し上げかねますが、これは個人的な意見で、全銀協の意見とお聞き取りいただいては困りますが、私は個人的には、一年定期に比べまして若干幅が少ないように思います。その程度でごかんべん願いたいのであります。
  75. 竹本孫一

    ○竹本委員 上がるときはスライドで上げたらいいが、下がるとき困るじゃないかというお話もありましたけれども田中内閣の続く限り、ちょっと下がる心配はないですよ。これも念のために申し上げておきます。  時間がありませんから次へ参りますが、大蔵省がいままで四回通達を出しまして、いろいろの理由をあげて、とにかく集中的に大口信用供与に偏することがないようにという通達が出ております。四回ともこれはきわめて抽象的で、あまり役に立つと私は思いませんが、とにかく出ておる。  先ほど来、商社に対する集中融資みたいなことについてもいろいろ御意見がございましたので、二つだけ簡単にお伺いするのですが、一つは、商社その他の大口融資に対する回収の努力が、この金融引き締めの段階になっても少し足らないのじゃないか、その回収の努力はどの程度にやられておるのかということが一つ。  それからもう一つは、今度は中小企業金融の問題に関連するのですけれども中小企業への融資のシェアを見ると、昔は——昔というとおかしいが、前は二五%前後でありましたものが、最近御努力によってだんだんふえておる、確かに四〇%をこしておるものもあります。しかし、三井銀行その他まだ二七%前後でうろうろしているのもある。こういうことで、やはりわれわれの考えからいえば、これは将来銀行法も改正をして、中小企業金融のためにはこれくらいのことはやるべきだ、シェアについても、場合によっては法律で明定すべきではないか。大体五〇%ぐらいの生産あるいは貿易のシェアを中小企業は受け持っておるのですから、それに対して二七%前後のシェアでは、中小企業金融が苦しいのはあたりまえだ。わが国の一番大きな欠点は金融の二重構造だと思いますが、そういうことも前提にして、中小企業金融のシェアをもう少しふやすべきではないか。いろいろ御努力いただいて多いところで四三、四%のところですが、やはりこれは五十%前後まで伸ばしていくべきではないかと思います。その二つの点についてお伺いしたい。
  76. 横田郁

    横田参考人 商社金融につきましては、先ほども申し上げましたように、全体の都市銀行融資の中に占める商社金融のシェアはダウンをいたしております。できるだけそういう方向へ持っていきたい。これは当局の御指導もあるわけでございますけれども、そういう方向に持っていきたいと努力しておりますし、また最近は、御承知のようなワクの事情でございますので、できるだけそういう方向から資金を回収して他へ回すということを心がけて実行しておりますけれども、なお今後、先生の御意見どおり、一段と努力をさせていただきたいと思います。  それから、中小企業の問題につきましては、御指摘のとおり、最近中小企業金融のシェアが上がっております。上がっておりますけれども、まあしかし、限界の貸し出し増加額と申しますか、最近の中小企業に対する対応のしかたといたしましては、大体三十何%という全銀協の平均シェアよりもっと高いものを中小企業には回しているわけでございます。  それから、まあこれは大企業中小企業という概念規定が一応ございますけれども、やはり産業界というものは一体となって動いているものでございまして、大企業に対する融資というものが必ずしもそういう買いだめとか売り惜しみとかいう方向に回っているとは私は考えておりませんで、むしろ下請賃金の支払いとかそういうような方向に回っているものもあるわけでございますから、大企業融資の中にも中小企業に流れていく資金が相当量出ていることは御理解をいただきたいというふうに思うわけでございますが、先生の御忠告に従いまして、今後も中小企業に対するシェアのシェアアップについては一段と努力してまいりたい、こういうふうにはもちろん各行とも考えておるわけでございます。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、二つだけ相互銀行尾川さんのほうにお伺いをいたしたいと思います。  一つは、昨年相互のほうでお考えになって設立をされた住宅ローンセンターの問題でございますが、先ほどもいろいろ事情はお話がありましたけれども、その後の状況はどうなっておるか。特にいま一番悩んでおられる問題は何であるかということが一つ。  それからもう一つは、いまもお話が出ました割増金付の貯蓄の問題でございますが、これはたいへんとぼけた考えで、私ども反対でありますが、その問題は一応別にして、きわめて技術的にお伺いするのですけれども、たとえば百億円の預金を集める。かりに七億五千万円の利子を払う。その全部あるいは半分、とにかく割増金として宝くじで当てるということになりまして最高一千万円、これもまあけっこうでしょう、やるとなればですね。そこで、私がただ心配するのは、相互とかその他の中小金融機関の場合を考えますと、そんなものを消化するだけの力があるのかということが問題なんですね。たとえば、百億の場合には七億五千万円、三%の金利を払って三億円でも残りは四億五千万円ありますから、一等、二等、三等とやっていけますが、その十分の一しかない十億の預金を集めるという場合になれば、四億五千万円は四千五百万円になってしまう。そういう場合に、一等、二等、三等とずっといって、一千万円一つ出したらあとはなくなってしまうという場合だってあり得るわけだ。そこで、相互の場合には、各相互銀行が協力して一つのセンターをつくってやるということになるかもしれませんが、そうなれば、Aの地域相互銀行で売ったやつ、そしてAはたくさん売ったとしても、少なくしか売らなかったどこかの相互銀行のところへくじが当たってしまって、たくさん売った、たくさん預金をもらったところにはだれにも当たらなかったという、きわめて地域的にも不公平が出てくる。そういう問題があるが、これは大蔵省の案をまだこれからわれわれも検討するわけですけれども、相互の立っている立場からいって、貯蓄奨励の本筋でないとかあるとかという問題を別にしても、宝くじそのものに非常に乗り越えがたい困難があると思いますが、感想、お考えはどうであるか、この二つだけ伺って終わりにします。
  78. 尾川武夫

    尾川参考人 先生の御質問の住宅ローンの問題でございますが、これは私どもは、各行とも住宅ローンを福祉に沿うために非常に力を入れてやっております。また長期にわたる資金供給は、各行ではなかなかむずかしいということで、一昨年の九月に七十二行の出資によって、大体最高二十五年という長期の分割支払いというようなことが一番いいのじゃないかということでこの会社をつくったのでございますが、その当時は資金に非常にゆとりがあったので、外部の生保とかあるいは火保の資金も供給していただいておったのでございますが、その後金融引き締めによりまして非常に逼迫いたしまして、非常に苦労しております。ほとんどいま大体半分くらいずつのような資金供給で、当初は七十二行の余剰資金とそれから外部のもの、三分の二くらいを外部で、三分の一くらいを相互銀行お互いが出し合ってというような構想を持っておりましたが、金が詰まりまして、現在では逆になりまして、無理をしてでも、これは相互銀行の業務の一環でございますから、三分の二くらいを相互銀行で無理に貸してもらって、そして三分の一をやっと外部から供給を受けているような次第でございます。しかし、そういうふうに長期なものでございますために、申し込みが非常に殺到いたしますにかかわらず、資金のほうは手当てがつかないということで非常に困りまして、金利の問題で、金利さえ高ければ集まるのでありますが、御承知のような高金利のときでございますから。それで、貸し付けの金利が高くてはこれはもう意味はないということのために、やはり貸し付け金利中心にして借り入れ金利を割り出すものですから、どうしても金が集まらぬというようなことで非常に苦慮いたしております。現存、住宅ローンの会社のほうで例をとってみますと、約半分貸しまして、半分は審議中というようなことで、これは資金がなかなか集まってこないというような状況でございますので、この点につきましては、何とかして低金利をもって住宅ローンをやりたいということで、金融制度調査会にもお願いをしておるような次第でございますが、まだ結論が出ておりません。そういう状況でございます。  それから、もう一つの割増金付定期の募集でございますが、これは先生のおっしゃるとおりですが、正常のものではなくてもどうしても金を吸い上げるためにはこれはやらなければいかぬというようなことで、私どももそういう対症的な意味では賛成しておりまして、他の金融機関と一緒にやろうと思っております。しかし、先生のおっしゃいますように、資金的に力が弱いから困るじゃないか、これもそのとおりでございますから、他の金融機関都市銀行さんあたりは単独でおやりになるかもしれませんが、私どもは七十二行が全部一緒になりまして一つの組を組んでいこう。そうなりますと、今度は配分の問題でございますが、これは先生が、くじの当たり方が偏しやしないかということでございますが、これはロットの組み方によりまして、公平に各地区に三十億円のロットとかというような組で、それで一等が一本とか二本とかいうようなことで、それを関西地区、九州地区、北海道地区で引き受けてもらってロット別にやるから、その点はあまり不公平なことは起きないのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  79. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  80. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時十二分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  81. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人として、日本銀行総裁佐々木直君が出席しております。  佐々木参考人には、御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。最近の金融事情等について、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度にお取りまとめいただき、そのあと委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。佐々木参考人
  82. 佐々木直

    ○佐々木参考人 それでは最初に、最近日本銀行がとりました金融政策並びにその日本の経済状態との関連、それから現状、こういうことについて御説明を申し上げたいと思います。  御承知のように、日本銀行は昨年の初め以来相次いで金融引き締めを強化し、総需要の抑制につとめてまいったのでありますが、その結果昨年の秋ごろには、夏にありました物不足も緩和に向かいまして、鉄鋼、繊維等一部商品の市況も反落を示すなど、金融引き締めの効果が、金融面だけでなくて物価面にも、徐々にではありましたが、あらわれてくるように思われたのであります。  しかしながら、その後石油問題の発生を機会に、経済情勢は大きな変化が生じました。先行きの物不足やコスト上昇を見越した価格引き上げ動きが広まりましたため、卸売り物価は、十一月以降、全く異常ともいうべき高騰を示すに至っております。  日本銀行は、昨年の十二月に二%という大幅な公定歩合引き上げを行ないますとともに、預金準備率引き上げを実施いたしましたが、これはこのような石油の問題が起こりました以後の状態に対処するために、特に金利機能をできるだけ活用するとともに、その他の手段も動員することによって、総需要を一段と抑制していくことが必要と考えたからであります。  政府におきましても、ほぼ同時に、四十九年度予算の編成につききびしい緊縮方針を打ち出すなど、財政面で明確な抑制の姿勢を示されておりまして、このようにして、金融、財政相一致した引き締め態勢が一段と強化されたのであります。  最近の金融面の動向を見ますと、昨年の初め以来の引き締めや十二月の強い追加措置等に伴いまして、たとえば都市銀行貸し出しは、前年同月比の伸び率で見ましても、一昨年末の二五%から、現在では一二、三%のところまで落ちてきております。これを背景に、企業の流動性も急速な低下を示しておりまして、マネーサプライの増勢鈍化も非常に目立っております。また日本銀行券の発行高も、一ころの前年同月比二六、七%増というところから、この一月には、月末の発行高で二一・七%、月中平均発行高で二三%というふうに伸び率が落ちてきております。こういうマネーサプライの増勢といい、銀行券の伸びといい、金融市場には金融面の引き締めの効果が相当はっきり出てきておるのであります。  また、石油問題発生後しばらくは、各種商品に対しまして仮需要が目立ちましたけれども、最近では鉄鋼、繊維等の商品市況の反落のほか、機械受注高の減退など、設備投資関連指標の不振や自動車売り上げの不調といったような動きが見られまして、引き締め政策を背景に、このところ需要面に次第に変化が生じつつあるように感ぜられるのであります。  現在はまだ二度にわたります石油価格の大幅引き上げの各種商品コストに対する影響が出つつありまして、それが今後の物価への影響が懸念されますけれども他方では、今回の引き締め効果の浸透に伴いまして、すでに部分的ではありますが見られております需給の緩和が、いずれは全般に広がりまして、ひいては物価面にも好影響を及ぼすものと確信しておりまして、当面は何よりもまず、腰を据えて現在の強い引き締めを続けていくことが肝要であるというふうに考えております。  もちろん、そうした中でありましても、こういう物不足というようなことの影響を受けやすい中小企業などに十分配慮してまいる必要があることは申し上げるまでもありませんが、現在のような異常な状態を乗り切るためには、やはりいまの強い引き締めをずっと続けていくということが必要であると考えております。  最近、石油の量的な面での制約が幾ぶんやわらいだことから、これが先行き企業マインドの引きゆるみをもたらすことも考えられますけれども、万一そういうようなことから、現在鎮静しております投資意欲が再び上向くような気配が出てきた場合には、引き続き機動的に金融政策を運営すべきはもちろんでございます。  なお、最近金融面で注目される一つの問題は、総体としての企業金融の引き締まりにもかかわらず、昨年十一月以降に見られた各種商品の大幅な価格引き上げの過程で、一部の企業に流動性が片寄るという現象が生じているようであります。私どもといたしましても、こうした状況の是正にはできるだけの努力を払っておりまして、金融機関に対しましては、余裕のある企業への資金の供給を抑制することはもちろんでありますが、さらに進んで極力貸し出しの回収に努力するように指導しております。しかし、このように個別企業資金繰りまで立ち入るのにはやはり限界がございまして、この点いろいろなほかの施策と相応じて進む必要があるように思います。  当面の情勢に対処いたしますためには、以上申し上げましたような総需要の抑制策とともに、貯蓄の増強をはかっていくことがきわめて重要であります。先般、預金金利引き上げましたのもこうした貯蓄の増強に資するものと考えられるのでありますが、さらに新しい貯蓄手段の導入などがいま具体的に検討されておりまして、私どもといたしましても、これらを踏まえまして、引き続き貯蓄の増強に前向きに取り組んでまいりたいと考えております。  最後に、国際収支の問題でありますが、わが国の国際収支は、貿易収支の黒字縮小と資本収支の大幅な赤字を中心といたしまして、昨年の春以降かなりの赤字を持続しております。今後国内需給が全体として緩和していけば、ある程度輸出がふえる可能性があります。最近の輸出信用状などの先行指標にはそのきざしもうかがわれておりますけれども他方、輸入面での石油価格高騰の影響も非常に大きいのでありまして、当面貿易収支がどのような姿になるかはなかなか見通しがむずかしい状況であります。したがって、さしあたり資本収支の大幅赤字をなるべく縮小していく必要があります。こうした観点から、先般来、資本流入の促進、流出の抑制のために、いままでと逆の措置をだんだん続けてきておるわけであります。  石油問題の国際収支に及ぼす影響は、ひとりわが国だけでなくて、諸外国にとっても大きな問題でありまして、特に非産油国から産油国への大量の資金の流れをどうファイナンスするかということは、当面解決を急ぐ必要のある国際的な課題と考えられますが、このような問題の解決のためには、何よりも各国間の協調が必要なことは申し上げるまでもありません。現在懸案となっております国際通貨制度の改革も、各国の現実の国際収支の姿と遊離したものではあり得ないだけに、当面の石油問題は国際通貨制度の改革にも大きな問題を投げかけておりますが、私どもといたしましては、引き続き各国と協調を保ちながら、安定した通貨体制の確立のために努力を払っていくことが大切と存じております。  以上、内外の諸情勢を当面の政策運営とともに申し上げましたが、私どもといたしましては、金融引き締めが総需要の抑制を通じまして物価安定の実効をおさめ、一日も早く現在の異常な状態の是正に役立ちますよう一そうの努力を傾けてまいる所存でございます。     —————————————
  83. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。松本十郎君。
  84. 松本十郎

    ○松本(十)委員 佐々木総裁はただいま、当面の経済情勢を前にして、国内経済では財政の緊縮、金融引き締め、これを推進しながら総需要の抑制をはかって物価の安定をはかる、他方、国際収支については、適切な方策を確立しつつ、国際協調のもとに新しい情勢に適応するような方向に持っていく、こういうことでございましたが、特に金融政策の進め方あるいは今後の問題点等につきましては、おそらくあとに立たれる委員の諸先生方からいろいろと質問があるだろうと思うのでございまして、私はそういった対内的側面と申すよりはむしろ対外的側面、しかも目先の為替市場とかそういった当面の為替政策というよりは、長期的な展望に立った通貨戦略と申しましょうか、通貨外交といったものについて、長年日銀におられまして、内はもとより外の国際会議等を通していろいろの経験並びに識見豊かであられます総裁にひとつ御見識を伺ってみたい、こう考えるわけでございます。  そこで、まず第一の質問でありますが、このたびの石油危機、量的には、年末のあのような形によりまして、ただいまお話しになりましたように何とか明るい見通しがつきつつあるやに見えるのでございますが、産油国の価格の引き上げというものが予想をはるかに越えたものでありまして、この引き上げというものが石油消費国、主として先進諸国の国際収支に当面どのような影響を与えそうであるか、そのインパクトの見通し等について、数字がわかっておればそれをもとにひとつお答え願いたいと思うわけであります。
  85. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先月中旬ローマにおきましてC20の会議がございまして、そこで石油問題についてのいろいろな意見がかわされました。そのときに、どれぐらいの具体的な国際収支面での変化が起こるかということにつきまして、関係している人たちでいろいろ議論がございまして、IMFでもOECDでもそういう問題についての検討をいたしておりましたが、あの段階では、どうも具体的にこの数字が一番正しいというような結論が出ておりません。当面しかし、おそらく一九七四年における産油国に対する消費国の支払いの額の増加は、六百億ドルないし七百億ドルというようなことの意見が一番多かったように思います。そういたしまして、その中でいわゆる先進工業国と石油が出ない後進国との割合、これがどういうふうになるかということでございましたが、まあ半々ぐらいかあるいはまた先進工業国のほうがやや多いかという感じでございました。  そこで、ローマで問題になりましたのは、先進国の負担増も大きいけれども、現実には石油を出さない後進国の負担が、これらの国々の現在の外貨準備、国際収支の状況から見て、一番打撃が大きいのではなかろうかということで、こういう後進国の国際収支の困難さをどうやって解決してあげられるかということで、IMFの専務理事のウィッテフェーン氏がIMFを使って決済する方法を示唆されたのであります。しかしながら、これとても現実に相当大きくなる赤字をそれのみによってファイナンスできるとも思えません。したがって、いろいろな方法を併用しないとこういう問題の解決はできない。そうしますと、やはり国際的な協調によりまして、国際機関を中心に今後検討を続けていかなければならないということに落ちついたわけでありまして、現在もそういう問題が検討中でございまして、日を追うに従いまして具体的なものが今後出てまいるように考えられます。
  86. 松本十郎

    ○松本(十)委員 産油国の受け取るドルがおそらく六百億ドルから七百億ドルになるだろう、その先進国に与える収支じりのマイナス要因というものは半ばをあるいはこすのではないか、こういうふうなお話でございますが、私の聞いておる数字を見ましても、日本では九十億ドル、フランスで五十、西ドイツで五十八、英国で四十一、あるいは米国で九十、こういうものが石油の値上げだけによって先進諸国の貿易じりに赤字要因として入ってくるわけでございまして、この三百数十億ドルというものを考えれば、現在先進諸国の持っております外貨準備というものはたしか千八百億から二千億ドル程度だと思うのでございまして、かりに産油国に入ったこれらのドルというものがそのまま産油国にたまったとすれば、世界じゅうの持っております金・外貨準備というものは、三年そこそこで底をつくわけでございます。そうなれば、世界の金の流れというものはたいへんなことになる。必ずや産油国は、これまでもオイル、ダラーとして金額百五十億といったり二百億ドルといったようでありますが、マネーマーケットとしてのユーロダラー市場に出してくる。あるいはニューヨーク、チューリヒ、ロンドン等の資本市場を通して、先進諸国の支払い能力のある国々の借金のファイナンスに向かうということでございましょうが、しかし、それにしましても、今度の異常な値上げによる巨大な額がとりあえず産油国に流れ込むということはたいへんなことでありまして、IMFがこれのりフローというか、還流するようなシステムをつくるということで、二十カ国会議のローマ会議では出たようでございますが、その程度ではなかなかうまくいくとは思えないわけでございます。  それやこれやを考えますと、やはり全体として先進諸国の間で話し合いをしながら、このドルというものをうまく金融市場なり資本市場なりに還流させて、そして世界の金の流れというものを現状からあまり大きく混乱したようなところに持っていかない、こういう配慮が特に必要だろうと思うわけでございます。  OECDの第三作業部会におきましても、二月の会合を期して、石油価格の引き上げの国際収支への影響、赤字ファイナンスの問題、通貨市場、ユーロダラー市場への影響、さらには国内金融への影響、この四つの項目を選んでいま勉強しておるようでありまして、二月の会議では相当突っ込んだディスカッションが行なわれるだろうと思うのでありますが、そういったものを踏まえて、総裁の立場で、先ほども言われましたが、さらに日本としては、長期的にどういうふうに、通貨外交と申しましょうか、戦略を立てて、各国に働きかけるべきであるかという点について、お考えがあれば伺いたいわけであります。
  87. 佐々木直

    ○佐々木参考人 当面の姿といたしましては、ただいまお話もございましたように、ユーロダラー・マーケットに出る金がだんだんふえてくる。それを国際収支の赤字になってくる国が資本の受け入れとして受け入れていって、均衡を回復する、こういう形が当面は起こるのであろうと思います。現にフランスがそういう方向でユーロダラー・マーケットにいま出ておりまして、相当な額をまとめて流入をはかることを始めております。前からイギリス、イタリア、こういうところは国際収支がもともと問題でございましたので、シンジケートローンというような形で、銀行を通じユーロダラー・マーケットの資金を入れておりました。そこへ今度はフランスが加わり、おそらく今後、国際収支の赤字が増大する国々がユーロダラー・マーケットの需要者として出てくることは明らかだろうと思います。  当面はこういうことでしばらくまいると思いますが、ただいま御指摘がございましたように、金額が非常に大きくなってまいりますと、それではなかなか片がつかないということにもなろうかと思います。そういう場合に、一つの方法、単一の方法で問題を解決することができるとは私は思いません。したがいまして、ある程度時間がかかることではございますけれども、こういう産油国の資本をその他の国に直接投資をするとか、あるいはまたジョイントベンチャーでいろいろ工業設備を開発するとか、それからさらには、これは現にもう始まっておりますけれども、たとえば世界銀行というようなところに相当まとめて産油国の資金を入れて、これを後進国援助に使うというような方法も並行して行なわれるべきであろうと考えます。  一番最初に申し上げましたユーロダラー・マーケットによる調節と申しますか、こういうものは当面は便利でございますけれども、ユーロダラー・マーケットというような非常に流動性の強い市場があまりに規模が大きくなりますことは、世界の通貨制度の上にも必ずしもプラスでございません。したがって、ここにはおのずから限界があり、ほかの方法の開発というものを並行して急速に進めていく必要がある、こういうふうに考えております。
  88. 松本十郎

    ○松本(十)委員 ただいま総裁が言われましたように、いろいろな方策を講じて、このたびの値上げによるドルの偏在というものをうまく還流させるということが大事でありまして、その際に、おっしゃるように、コマーシャルベースに基づいて金融市場を通していくものには、おのずから先進国間という限界もありましょう。それから、世銀なり第二世銀なりIMFを通ずる場合には、幾ら低利であろうとも、借りるほうの発展途上国に、将来長い期間にわたって、ある時期にはやはり返済する可能性があるということがなければなかなかいかないわけでございまして、現在のような情勢で、はたしてそこをどこまで期待できるかということからすれば、国際機関を通ずる発展途上国へのファイナンスにもおのずから限度があるだろう、こう考えるわけであります。  そこで、何としましても、最後に、われわれが日本を離れてむしろ世界の経済を安定した姿で発展させるというか動かしていくという角度から、産油国に対しまして、石油の価格というものは本来リーズナブルでなければならぬのじゃないか、いまの値上げは従来が安過ぎたから当然上がるべきところに上げたとはいっておっても、これは世界経済のためにもやはり値下げをすべきだ、こういう主張をいろいろな場でやるべきではないであろうか、こういう感じがするわけであります。  言いかえますならば、産油国がもっとドルを金融市場を通して貸す場合には、返ってくる可能性はありましょう。しかし、ほかのところを通して出たものは、返ってこない可能性もないではないわけであります。言うなれば、幾らドルを持っておっても、その一部は宝の持ちぐされになるぞ、そういうことを考えれば、やはり世界の経済全体がうまくいくような限度において、あるいはまたその角度から石油の価格というものは国際的に定めらるべきものであって、そのために、消費国の最たる日本としても、各消費諸国と連携を密にしながら、さらにはまた二次産品、三次産品を買ういわゆる発展途上国の意向も糾合して、そういう立場で、数カ国にすぎない石油を産する国に対して働きかける必要があるのではなかろうか、こういうふうに感ずるわけでございます。  そういう意味で、今度ワシントンで行なわれます来週からの消費国会議、ECのああいう決議によりましてなかなか突っ込んだ議論も出ないでありましょう。日本の対米あるいは対アラビア諸国との関係考えても、思い切ったことは言えないのではありましょうが、しかし、ECのオルトリ委員長あたりは、やはり値下げ問題についても議論せぬといかぬと言っておりますし、アメリカのシュルツ財務長官は、やはりこの際、石油の価格はいいところに戻さなければならぬと言っておるようでありますので、そういう意味では、日本も気がねをするということがあるかもしれませんが、遠慮せずにものを言うべきだと私は考えるのでありますが、総裁の御感触はいかがでありますか。
  89. 佐々木直

    ○佐々木参考人 今度のワシントンの会議は、外務大臣が出席されて御意見をお述べになると思います。したがって、私いまこの会議での日本の態度というようなことについて申し上げる資格を持っておりません。ただ、物の値段というものが急速に上がりますと、どうしてもそれに対して需要側で反応が起きて、ある程度調節が起こるというようなことが、普通マーケットにおいては見られることであります。今後において、いまの石油価格を前提として、いろいろほかのエネルギー源というものが開発されますときに、それが現在の石油の価格にどういう影響を及ぼすか、そういうことにつきましてはいろいろ資料もあることでありますし、そういう立場から価格の問題の将来についての検討をするということは必要ではないか、こう考えております。
  90. 松本十郎

    ○松本(十)委員 今回の会議はまず第一回の消費国会議であって、行く行くは、次に発展途上国の消費国も入れたい、そうして産油国も次に入れて、順序を経た上で、国際協調の中で油の需給関係あるいは価格問題を処理したいというのが願いでありましょうが、きょうあたりアメリカの国際経済白書等を見ておりましても、かなりアメリカというのは強い立場をとりそうでありますし、まあ事石油については、産油国、アラビアの諸国はいまのところああいう強いことを言ってはおりますが、最後石油について決定権を持つものは、私はアメリカだろうと思うのであります。値段についても、メジャーという国をこえた多国籍企業があって、なかなかアメリカ政府では手が及ぶ限界もありましょうが、しかし、アメリカというものが最後に腹をきめれば、そこに落ちつくというふうな感じを持つわけでありまして、これは総裁に申すべき筋ではありませんが、石油問題については、やはり長期的な展望に立って、日本が相当目先のきいた政策をここから考えていかなければならないと感ずるわけであります。  元来、日本というのは、二、三年前はドル・ショックといって驚き過ぎて、過ぎてしまえばそれほどの——かなりのフリクションはありましたが、それほどでもなかったではないか。あるいは石油ショックでも、去年の暮れあたりは、もうどうなるかお先まっ暗、またそれに便乗して値上げをして、物価は狂乱状態を示すということでたいへんだったわけでありますが、これもまた三年、五年たってみれば、何をあんなにあわてたのであろうかというふうな感じもしなくはない。  ドル・ショックのあと田中内閣ができましてから、日本の経済のかじとり一つとりましても、対内均衡を犠牲にしても対外均衡を守るんだということで、金融を締めるときにゆるめてみたり、財政を緊縮すべきときに大型の予算を組んでみたりして、そのとがめが現在の物価高にきていると思うわけでございますが、事石油につきましても、やはりないものはほしいのは当然でありまして、一度、二度アラブ諸国を訪問したりいろいろやるのはいいのでありましょうが、しかし、いたずらなる二国間取引で、ただものほしさに経済協力のふろしき包みを下げて歩き回るということは、国際的な感覚とすればいかにも愚であり、しかも割り高な石油を直接取引で買うということは、長い目で見て日本の石油政策としていいかどうかというふうな感じもするわけでございまして、これにつきましては、当面政府なりあるいは関係各省の所管ではありましょうが、通貨あるいは為替の面から、ひとつ日銀総裁とされましても、常日ごろのうんちくを吐露されまして、政策そのものが誤りないように、また御助言を願いたいと思うわけでございます。  最後に、そういうふうなことを踏まえましてBISの会議とか、あるいはOECDの会議とか、あるいはIMFの会議等に出られるわけでありましょうが、機会をとらえて日本の立場を発言願いたいと思います。  同時に、最近の円、ドルの関係を見ましても、かつては日米間のスワップ協定は、むしろ日本の外貨準備の政策の一助としてやるとか、ドルをささえるというような形でスタートしたものが、最近では逆に、円の立場を守るために、あるいは欧州通貨を守るために、米連銀が買いに出ているような情勢でございまして、この十数年間のアメリカの国際収支の動きというものを振り返ってみると、その時の流れというものを感慨深く思い起こすわけであります。しかし、現在の時点に立てば、私の感じでは、ドルはすでにかつてのヘゲモニーを取り返した。世界の各国からドルのたれ流しについて、あれだけ節度を守れ、節度を守れといわれながら流していったドルが、最後は多国籍企業となって、利益、利子等を木国に送金できるような、リターンができるようなドルのとりでになっておって、世界の要所要所はある意味においてアメリカのドルが押えておるという感じでございまして、そういったことから考えましても、今後の為替政策、長期的には円とドルの関係その他でありましょうが、これまた特に目先のことを離れて、長期的な視野と展望から政策をとっていただけると思うわけでございますが、その点について最後に総裁の御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  91. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいまお話がございましたように、最近のドルに対する信頼というものは、急速に回復してまいりました。これは七三年の半ばぐらいからはっきりしてまいりましたアメリカの国際収支の好転という事実がうしろのささえになっておると思います。確かにお話しのように、去年の三月、拡大十カ国会議がパリでございまして、そこで二回も会議を重ねて、最後にきまりましたのは、非常に動揺するドルをささえるための大幅なスワップ協定であったわけでございます。最近は、ドルが上がり、ほかの通貨が下がる、その勢いを調整するためにそのスワップが使われるというふうに変わってきておるわけでございます。  ただ、いまのような石油の問題が起こってまいりましたので、それがない時期に予想されました七四年のアメリカの国際収支は、ある程度予想を修正する必要があろうかと思いますが、ほかの工業国がみな油の関係では影響を受けるわけでございますから、工業国相互間におけるバランスから申しますと、やはりドルは強くなるのであろうと思います。  国際通貨制度につきまして非常に多くの関心が寄せられましたのも、決済通貨としてのドルの地位がゆらいだ、そのかわり、穴を埋めるものとして何が適当であるかという考え方が強かったわけでありますが、ここでドルが信頼を回復してきますと、いままでの決済通貨としての役割りが十分果たせるということになるわけであります。そういう意味で、国際通貨制度についての論議がこのところ少しテンポがゆるんでおるということ、これはそういうドルの信頼回復の影響もあるように思われます。日本はドル建ての取引が非常に多うございまして、全体の八〇%をこすという姿でございますので、ドルが決済通貨として安定してくれることは、日本の貿易にとっては便利がよろしいわけであります。  一時ちょっとごたついておりました円の相場も、先月の末からずっと安定してまいっておりまして、円安傾向について反省の空気が非常に出ております。したがって、われわれとしては、いまのドルの状況、円の状況、こういうものがいままでの経過を経てこういう段階にきておることを頭に置きまして、こういう姿で当分安定した取引が行なわれることをできるだけ進めてまいりたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  92. 松本十郎

    ○松本(十)委員 最後に、日本の官庁、民間を問わず、エコノミストといわれる方々、あるいはまたマスコミその他は、ともすれば目先の近視眼的なことばかりを誇大祝して、そこに議論が集中し過ぎて、遠いところを見るいわゆる展望に欠ける。政治家もまたその議論に巻き込まれまして、なかなか長期的な視野と展望に立った政策が進めていかれない。これが過去二十年といいますか、少なくともここ五年、六年の日本の一番大きな悲劇のもとだったろうと思うわけでございまして、せめて日銀という中央銀行立場におられる方々は、目先もさることながら、長い目で先を見つつ、国の経済、そしてまた中枢的なあれであります金融というものをリードしていかれますことを特に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  93. 安倍晋太郎

    安倍委員長 阿部助哉君。
  94. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 総裁にはたいへんお忙しいところお越し願いまして、ありがとうございます。  政策問題、私もお伺いしたいことは多々あるのでありますが、それはまた私のあとに続きます武藤委員のほうからお伺いすると思います。  私、きょうは、日銀のあり方について少しお伺いしたいのでありますが、まずその第一点は、日本銀行からは、たいへん大ぜいの方々がやめられてから金融機関に行かれる。いわゆる天下りというのがたいへん多いように思うのでありますが、いま大体どれぐらいの人数が地方金融機関に行っておられるのですか。
  95. 佐々木直

    ○佐々木参考人 大体五十人ぐらいになっております。
  96. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私がいただいたのも大体五十人ぐらいなんですが、これは五十五名ですが、これは地方銀行で、相互銀行やそういうのは入ってないですね。私は銀行だけ言ったのではなしに、それは金融機関といえば、普通、地方銀行相互銀行信用金庫ぐらいは当然入るのではないですか。それ全部でどれくらいの人数ですか。
  97. 佐々木直

    ○佐々木参考人 いま私、正確に、資料持っておりませんが、相互銀行信用金庫まで入れますと、これに三十人ぐらいが加わるのではないかというふうな感じを持っております。
  98. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、地方にも人材は少なからずおられると思うのですが、それでもやはり日銀からいわゆる天下りをさせなければならないという、何か理由がおありなのでございますか。
  99. 佐々木直

    ○佐々木参考人 特別に理由は、申し上げるべきものはございません。私の記憶では、地方銀行などに日本銀行の人間が参るようになりましたのは、戦争中に地方銀行の合併がずいぶん進められました。その合併されましたときに、結局、たとえば三つの銀行が合併しますが、どの銀行の人を中心に据えてもバランスがとれないというようなことから、まあ中立的な日本銀行の人間が地方銀行へ参るという、こういうことが地方銀行日本銀行の者が参るようになりましたきっかけであったように記憶しております。  したがいまして、現在でもたとえば十人おられる中で一人、二人というような程度がせいぜいでございまして、一般的に、特に日本銀行の人間が非常に大きな力をそこで持つというようなことではないのではないかと思いますが、ただ長くなってまいりますと、そういう点について、多少地元における議論もいろいろあろうかと思います。特別に、日本銀行の者が地方の金融機関に出向くという特殊な理由があるわけではございません。
  100. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 往々にして、日銀から行かれた会長さんであるとか頭取さんのところで、いろいろな問題がある。  幾つか例をあげればありますけれども、たとえば福岡銀行にいたしましても、これはまたこの人たいへん勇ましい人らしいんで、行くときには頭取で行く予定だったが、なかなか地方の銀行のほうの、福岡のほうでの抵抗もあった。そこで会長に行かれた。そのうちに、会長をやっておるけれども会長制を廃止して頭取になられた。自分で会長制を廃止しながら、また今度、ある程度年配になってくると、会長制を復活して会長になられる。その間、いろいろと地域にもトラブルを起こしておる。まだほかに例をあげれば数々あるのでありますが、そういうようなことが、何かしらやはり地方に融和をしないものがあるのではないだろうか。  そういう点で、なぜ一体それならばそういうことになるのかということになりますと、地方銀行が皆さんのところから天下りをお願いしていただくのでありましょうけれども、私、ここにやはりいろいろな力関係というものが働いておるのではないだろうか。そして、そのことがはたして一体——戦争中あるいは戦前の日銀のあり方ならいざ知らず、今日の民主主義の中で、一体、そのことがいいことなんだろうかどうかということを考えざるを得ないのであります。  そこでお伺いをしますけれども、日銀では考査というものをおやりになって、銀行のいろいろな内容を調べられるのだけれども、私、日本銀行関係法令を拝見いたしましても、どこを見ても考査というものについての定めというものが見当たらぬのでありますが、この考査というものは何のためにやり、それでやる内容はどんなことをお調べになるのか、ちょっとそれをお聞かせ願いたいのです。
  101. 佐々木直

    ○佐々木参考人 考査と申しますのは、日本銀行が取引をいたします相手の金融機関、その金融機関と契約を結びまして、その取引先の財産及び営業状態等について、いろいろ資料をもらったり調査をしたりすることができるという契約上の話でございます。したがいまして、法的な権限によって行なっておるものではございません。  そして、この考査の一番大きな重点は、相手の経営状態、財産状態が健全であるかどうかという、日本銀行としては預金を受け取ったりあるいは貸し出しをしたり、いろいろなことをやるわけでございますから、その相手方としての健全性を確認するというためにやっております。したがって、一番の重点は、貸し出し並びに有価証券、そういう銀行の資産の内容がどうであるかということに重点を置いております。したがって、大蔵省の検査と違いまして、現金の、正確さというようなことを調べるのではございませんし、あらかじめ参りますことを予告し、資料などもあらかじめ出してもらって、それを十分勉強してから伺う、そしていろいろその内容の調査をしていく、こういうものになっております。
  102. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 一番大事なのは、経営状態の安全ということだろうと私も思うのでありますが、一番大事なのは貸し出し何とかとおっしゃったのだが、もう一ぺんお調べになる項目を教えてくれませんか。
  103. 佐々木直

    ○佐々木参考人 資産内容の健全さということが一番大事な目標でございますので、運用しております資産、有価証券、特に問題が起こりやすい貸し出し、この二つに重点が置かれます。いまは有価証券のほうは、大体銘柄がはっきりいたしておりますから、結局は、一番の重点は貸し出し先が確実であるかどうか、そういうような点に重点が置かれるのであります。
  104. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 契約上のあれで、皆さん約定書というのを提出をさせましておやりになっておる。私、これにも問題があると思うのでありますが、一体これが契約なんだろうかどうかという点で、私は、契約というたらやはり自由で、ある程度対等の立場に立っておやりになるのが契約なんだと思うけれども、これは取引をしてもらわなかったら銀行のほうはたいへんなんでして、取引してもらわなければいかぬという弱い立場に立ってこれを提出させられるわけですね。そうすると、これが一体ほんとうに民主主義下における契約ということに相なるんだろうかどうかという点で、問題があると思うんです。  だけれども、それはあとにいたしまして、お調べになるのは資産内容、いまおっしゃたようなことであって、これは人事だとかそういうものには関与しないだろうと思うのですが、いかがですか。
  105. 佐々木直

    ○佐々木参考人 関与いたしません。
  106. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすれば、労使関係なんというものにはやはり関与されないわけですか。
  107. 佐々木直

    ○佐々木参考人 関与いたしません。
  108. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その点をはっきりとお認めいただければ、私の質問の大半は終わってしまうのですけれども、実は皆さんの考査官が所見を述べられますね。皆さんの説明された方々のお話によりますと、原則は口頭でおやりになるのが普通のあり方のようでございます。だけれども、メモをとったり速記を相手がやったりいたしまして、それで相手方の頭取さんや重役さんは、それを下の支店に流したりしておるところが多々あるわけですね。私のところに幾つかありますけれども、この中には、明らかに労使関係に介入する所見を述べておられるんですが、そうすると、これはやはり間違いでございますね。
  109. 佐々木直

    ○佐々木参考人 だいぶ前になりますけれども、一時労使関係の問題について意見を求められ、こちらも言った時期がございました。それが最近いろいろ状況が変わってまいりまして、われわれとしてもそういう事態を反省いたしまして、労使関係について口をはさむべきでないということで、最近は取りやめておりますし、今後もやる考えはございません。
  110. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 今後はそういうあれをやらないとおっしゃるんですから、それ以上私はお伺いしませんけれども、むしろこういうことがありますとますます労使関係が混乱をし、解決が長引いてきておるという実例が多々あるわけであります。しかも、その所見たるや、私に言わせれば、労使というものはある程度対立するものなんだ、対立しておる姿がある意味では正しいあり方だ、こう思っておるのが、それがゆがんでおると言ってみたり、第二組合をつくって分裂したものをたいへん高く評価されて、第二組合育成に力をかしたりみたいな所見を述べられたときがあったわけです。そのことがかえって労使関係を混乱してきたんでして、いま総裁はこれをおやりにならないということでありますので、それを確認し、もう少しお伺いいたします。  考査というのが必要だという前提で私もお伺いしてきたんでありますけれども、日銀にとって考査というのはたいへん便利なものであるかもわからぬけれども、私たちのいまの日本国憲法のもとにおいて、民主主義を守るという観点からすれば、こんなものはやめるべきだという考えが成り立つと思うのであります。一般の金融機関も日銀も同じように、日銀は特別の権限は与えられておりますけれども、私法人だという点からいけば、約定書そのものがどうもたいへん力で押しつけて約定書を取り上げておる。ある意味でいえば、暗黒街の高利貸しが力で押しつけてやっておるような向きもないではないんじゃないか。大蔵省が大体監査というものをやっておるんだけれども大蔵省の監査だけでは心もとないので日銀はこの考査というものをおやりになるのですか。
  111. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほども申し上げましたように、大蔵省の検査は、たとえば現金が何億あるという帳簿上に記載がある。それに対して、間違いなく現金がそれだけあるかどうか、そういうようなところに重点を置いてお調べになっております。それから、私どものほうは、経営のしかた、あるいは営業のしかた、それから資産の内容、これは大蔵省もお調べになりますが、そういうような営業中心考え方で考査をやっております。したがって、一種のコンサルタント的な話も相当しておるというような実情でございまして、大蔵省の検査と日本銀行の考査が、両方相補って一つのものになっておるという考え方でおります。
  112. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私、この考査というのはいろいろ考えてみますと、明治憲法の時代、戦時統制の時代から慣行のようなかっこうでおやりになってきたのでありましょうけれども、やはり日銀は私法人であるから、各種の権限は与えられておるけれども——こういうことを、しかも大きな実力をもってやっておる日銀は、一般の金融機関に対しては、ある意味では生殺与奪の権を持っておられるわけであります。この考査は民法上の契約でおやりになっておる、実際は大蔵省の検査とこういう点で違うと、いま日銀総裁はこうおっしゃるけれども、この大体の調べるあり方等は似たもんじゃないんだろうかということを考えると、こういう考査をいろいろとやられるから、銀行金融機関はこわい。こわいから、結局、日銀から人をいただかないとうまくやっていけないというようなことで、結局はこれは一つは人を押しつけるための手段になっていやせぬだろうか、こういう疑惑も持たざるを得ないのであります。この契約は、先ほど冒頭に申し上げたように、民法上、また対等の立場での、厳密な意味での契約とは言えないんではないか。総裁、いかが思われますか。
  113. 佐々木直

    ○佐々木参考人 いま御指摘がありましたように、資金を供給する可能性を持っておる者がそういうような契約書を相手方との間に取りかわす、それは力関係の差があるから平等な契約ではないんじゃないかというようなお話でございますけれども、しかし、自分のほうで金を貸す可能性のあるところの内容をある程度知っておくということも、これは常識からいって必要なことであります。  それで、日本銀行の場合には、そういう向こうの内容を聞くことを法律によって裏づけられておりませんので、そういう場合にはどうすればいいかということになりますと、相手の納得を得てやっていくということよりほかにはない。そういうことで、いまのような姿になってきておると思います。
  114. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それはいろいろな取引をやる場合、いろいろな金を貸す場合、そういうことを十分知っておるにこしたことはないのでありますけれども、さらばというて、この約定書の文面を見ましても、あまりにも何か一方的な——ここで続み上げてもようございますけれども、総裁御存じだろうから続み上げませんが、何をやってもけっこうです、ぶんなぐってもけっこうです、裸にしてもけっこうですみたいな文面では、これはあまりにも力で押えつけてこれをやっていくというような感じを免れないし、現実に各銀行にとってはやはり日銀というのはたいへんなこわい存在でありますので、それだけにむしろ日銀考査と銀行局の調査とをやり、その上で、なるたけ公平に日銀はその政策を行なっていくというほうが好ましいと思うので、私は、ほんとうはこの考査そのものをもう一ぺん、再検討していただきたいと思うのですが、再検討をされる御用意はございますか。
  115. 佐々木直

    ○佐々木参考人 私どもといたしましては、そういう非常に相手に無理をお願いしておるという考え方でございませんので、いまのところ、私どものほうで再検討をするというふうには考えておりません。しかし、先生がいまおっしゃいましたことは、私といたしましても十分心に銘じて、今後のやり方等について注意をしてまいりたいと思います。
  116. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもありがとうございました。
  117. 安倍晋太郎

    安倍委員長 武藤山治君。
  118. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 午前中も銀行会長や相銀、信金の会長にもお出かけをいただきまして、いろいろ金融情勢万般にわたって各委員から質問がありました。私はその午前中の質疑をも考え合わせてみますと、どうも理解に苦しむのは、一月二十三日に外為銀行で七億四千二百万ドルのドルの買いがあった。突然日本銀行は、新聞報道によれば、東京銀行、住友銀行、第一勧銀、この三行に対しておのおの二百億円ずつ、合わせて六、百億円の日銀貸し付け金を回収する。突然こういう措置をとられたという報道でもあり、さらにまた雑誌などにも出ておるのでありますが、これは一体なぜ六百億円を返させたのか、その理由。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 それから、どういう契約で貸し出したのか知らぬが、予告なしに突然そういう貸し出し金をばあんと六百億も返せと言う根拠ですね。この二つの点をまず教えていただきたいのであります。
  119. 佐々木直

    ○佐々木参考人 あの二十三日には、実は相当なドルの買い需要があろうということは予想しておりました。その前に市場もだいぶ閉鎖いたしておりましたから、そういうことで考えておりましたが、実際の取引額が予想以上に大きくなりました。しかも、その取引額が、数行の取引額がほかに比べまして特に大きくなっておったのでございます。  したがいまして、われわれとしては、どうしてそういうことが起こったのかということにつきまして、向こうの事情も聞きました。結局は、われわれの判断では、それだけのドルを買う円があったということになるわけであります。その円があるということは、その銀行取引先が円を持っておるということでございますから、それだけの余裕のある取引先に対しては貸し出しも回収ができるはずだし、あるいは預金でカバーしてもらうこともできるはずだ、そういうようなことで、われわれが貸しております貸し出しは、もうしょっちゅう期日がどんどん次々に来ておりますから、その期日の来たものについて返済を求める。取引先から資金を回収してこちらに返済してほしいということを申した次第でございます。  なお、念のために申し上げますけれども、あのときのドルの代金は、日本銀行の勘定では全部預金の引き出しで行なわれております。
  120. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 顧客が要求をしてき、正確に適格のものをすべてそろえていれば、為銀としてはめんどうを見ないわけにいかない。したがって、銀行として何ら投機的な心理がなかった、あるいはそういうものを手伝おうという気持ちもなかった、そういうようなことを各銀行の幹部が言っておるのです。「投機に手を貸した事実はない。顧客から出た合法的な注文を市場に出しただけだ。専門銀行だからこそ全国中小企業などから注文が殺到した。客への責任を果たしただけだ」。  にもかかわらず、いまの六百億円の返済を迫ったというのは、何か懲罰の意味が含まれているような気がするわけですね。何もなければ返せとは言わないのですから、これは懲罰ですか。
  121. 佐々木直

    ○佐々木参考人 私どもはいま非常に金融を締めておりまして、そういう円の余裕というものがあれば、貸し出しは返してもらいたいというふうに申しておるわけでございます。これが引き締め状況でなければ、また事情は違ってくると思いますけれども、われわれとしては、先ほども申し上げましたけれども、去年の初めからずっと一年間引き締めを続けてまいりまして、ことに最近は、都市銀行に対する窓口規制は相当きつくやっておる。その中でこれだけの資金が円からドルへ移る余裕があったということは、われわれに理解できない。もしそれだけの余裕があるならば、その円資金を引き揚げて、日銀の貸し出しの返済にも充ててほしい、そういうことはふだんのときにいろいろ言っておるわけでございますから、そういうことのバックにおいていまのような事態が起こりましたので、そういう貸し出しの返済を求めた、こういうことでございます。
  122. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、外為銀行を通じて投機行為があったから、銀行に懲罰的な意味でこういう措置をとったんではない、それには全く関係ないんだ。いま金融引き締めているから、それだけの余裕資金がぽこっと出てきたということで、そういう特別な個々の銀行は余裕資金があると日銀が判断すれば、直ちに日銀の貸し出し金を返済しなさい、こういう処置はどの銀行に対してもやるんですね、そうなると。
  123. 佐々木直

    ○佐々木参考人 いまの窓口規制のたてまえから申しますと、そのとおりでございます。
  124. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、この当日買いに来たのは、ユーザーや、ライセンス、ちゃんとそういうものがそろっていて何ら投機的のものでない。ただ少々は、輸入代金の決済の少々先にあるものを払うというものも含まれていたかもしらぬが、大部分は成規のそういう手続をちゃんと経てきているお客だ。そういう場合だと、当然そのお客は自分の取引銀行にある預金を下げて決済をしなければならぬ。そういう場合がぼくはこの場合は大部分だと思うのですね。しかも、そういうような日銀が発行しているライセンスをちゃんとそろえて為銀に来た。発行しているのは日銀だ、その許可をしているのは。ライセンスの場合そうでしょう。そういうようなものを、事情がきちっとわからぬうちに、ただ資金が余っていただろうからということでこういう処置をするとなると、今後非常に不安定になりますね。日銀と銀行との関係というものも非常に不安定になるし、不信感をお互いが持たざるを得なくなる。こういうことが平然と行なわれているところに私はちょっと疑問を持ったわけなんですね。  先ほど横田会長は、私たちは何ら投機を手伝った覚えはありません。みなそれぞれ適格なお客であります。ほんのわずかは、期限の来ないものを決済しようとしたのもあります、こう答えているんですね。そうすると、そういう決済をどうしてもしなければならぬということになれば、当然これは為銀とすれば——十九、二十、二十一、二十二日と四日間休んだわけですから、日曜日を含めて。そうなると、この四日間の通常のベースで殺到されるであろう金額というものと七億四千二百万ドルとの差というのが日本銀行としてあまりにも多過ぎた、こう判断したんですか。この四日間の分をもならして、もしノーマルな状態だったらどのくらいでおさまると思ったんですか、予想していたのは。
  125. 佐々木直

    ○佐々木参考人 正確に記憶しておりませんが、大体あの日四億ドル前後ではないかと予想しておったのでございます。一月は季節的に申しまして貿易の決済の多い月でございますので、赤字が出ることはもう予想しておりました。それで、大体一日に一億ドルぐらいの見当ではないかということで、四億を設定いたしました。それで、大体営業時間の終わりごろまで四億だったわけでございますが、その締めますまでのごくわずかの間に、あとがどかどかと出てきたということで非常に驚いた。  ですから、今度のそういう措置を私のほうでとりましたことの背景には、先ほど申し上げました、いま都市銀行には金融引き締めを非常に強くやっておる、窓口規制をやっておるということと、それからいまのあの日のドルの売却が予想を相当大きく上回ったということがあるわけでございます。そうして今度内容を各銀行別に調べてみますと、幾つかの銀行が他とまるでレベルが違って多かったということで、いまの資金の量で調節をそういう金融引き締めのバックグラウンドにおいて行なったということでございまして、私ども銀行が不正なドルの取引をやったという意味での、何といいますか、処罰とかいうことは全然考えておりません。それはもうちゃんと書類がそろっておるわけでございますから、私どもはあくまでも資金の量の面でああいうふうに考えたのでございます。
  126. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、投機的な形跡は全くない、こういう判断をしていいんですね。全部適格な、とにかく買いに殺到した顧客は書類はきちっともうそろっておった、そう見ていいんですね。
  127. 佐々木直

    ○佐々木参考人 さっきちょっと午前中のお話にあったというふうにお話がございました、少し繰り上げて払ったというようなものはやや投機的な性格を持っておったのではないかと思いますけれども……(武藤(山)委員「それはどのくらいですか」と呼ぶ)それは金額は私もちょっと把握できませんけれども、もちろん一部でございましょう。大部分は正常な取引だったと思います。
  128. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 正常な取引なのに、全く別な角度のほうから急に貸し金を返せという処置は妥当な処置でしょうかね、日本銀行として。どうも私はそこが、しかも三行だけがやり玉に上がって——その当日取引をした為替銀行というのは幾つあるのですか。
  129. 佐々木直

    ○佐々木参考人 主要為替銀行十四行ございます。そのほかに旧乙銀といったような小さい銀行もございます。それから外銀なんかもございますけれども、しかし、いまの少数の銀行だけが飛び離れておったということも事実でございます。
  130. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 飛び離れて多いというのはもうわかっているんですよ、銀行も大きい銀行ですし。第一銀行、東京銀行、住友銀行というのはもう都市銀行でも非常に大きい銀行ですからね。そういう銀行が多くのお客を持っているということも当然なことですから、取引額が多くなるということも当然なことなんですから、ただ単に量が多いからということで、不当でもない、不妥当でもないものを、何か制裁的に、そのことが起こったら直ちにばちっとやるということは、懲罰に聞こえるでしょう。何か罰則に見えますよ、国民から見れば。あの三つの銀行は悪いやつだと思いますよ。私もそう思っていた。けさの答弁聞くまでそう思っていた。  ところが、今度は、いまの総裁の言によると、全く適格のもので悪いものはないと言うんだから、そうするとこれは投機でも何でもない。ドルの上がり下がり、円の上がり下がりで外為を通じて金もうけをするためにはいろいろな方法があるそうですが、売り持ちというのと買い持ちというのがある。今度の場合には、売り持ちとか買い持ちとかという概念は全く日銀は導入しないで判断をした問題ですか。この三行は売り持ちだったのですか、買い持ちだったのですか。
  131. 佐々木直

    ○佐々木参考人 為替の持ちには総体のバランスとキャッシュのバランスと二つございますが、いまのような円の状態でございますと、大体各銀行ともドルは買い越しでございます。
  132. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、この三行が買い越し、買い持ちしているという額は相当なものがあるのですか。
  133. 佐々木直

    ○佐々木参考人 銀行が特にそういう持ちを大きくいたしますと、為替のリスクがございますので、残高としての持ち高というものはそれほど大きくはございません。それでもいまの状態だと、ドルの買い持ちになっております。それから、前にドルが弱くて円が強いときにはその逆の姿がございました。したがいまして、銀行自身が為替のリスクを考えて売買する問題と、自分の取引先からのものを市場へ出すものとは、やはりちょっと性質からいって違っておるわけでございます。  それから、先ほどの私の説明で、みな合法的なものだというふうに申し上げましたけれども、あれには、為替のといいますか輸入の決済もございますし、送金などもございます。送金などは、時期の選択というのは合法的なものでも相当自由にできるわけです。それをずっとまとめてやるというようなことは、それは合法ではありますけれども、為替取引の金額を非常に大きくすることになるわけです。そういう大きな取引ができるということは、送金する円の余裕があるということになってまいるかと思います。そういう点が私どもとして、資金の量的な規制のもとでこういうことが起こったということについての判断の材料になった次第でございます。
  134. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この日銀の態度について、いろんな人たちが「金融財政事情」でしゃべっておるのですね。「日銀の制裁を免れた某有力為銀の担当者は、「トップのモラルにも関係するが決定的だったのは情報分析の力だ。三行のやったことは営業としては正しかったが、やり方がへただ」」、まあ同情の声もある。今度は、「大蔵省や日銀は「ドル買いの真犯人は、やはり為銀だ」」ときめつけている幹部もいる。しかも最後にいくと、大蔵省の次官すら、「まだ金融引き締めを強化しなければ」という声をあげた。  そこで、ちょうどこれが起こった直後、予算委員会に総裁が出頭されて、わが党の中澤茂一代議士の質問に答えていますね。そのときに、公定歩合中心とする金利水準が現行の状態でいいとは考えていない。物価動向中心とする今後の情勢推移によっては再引き上げ考えねばならないだろう、こうあなたが答えた。そこで、公定歩合中心とする金利水準が現行の状態でいいとは考えない、いいとは考えないということは悪いということだね。さもなければ、悪くもないがよくもないが不満だということですね。どういうことですか、現在の水準
  135. 佐々木直

    ○佐々木参考人 現在のレベルでいいとは思わないということ、これははなはだ舌足らずでございます。私が申し上げたかったのは、もうこれで絶対にここで動かさないというつもりではないんだ、必要に応じたらいつでも動かすんだ、こういうことを申し上げたかったのでございます。
  136. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで第二段に、その必要とするという必要の程度は何かというと、物価動向中心とする今後の情勢推移によっては再引き上げもあり得る、こういう示唆をしたわけです。あなたの考え物価動向中心とする今後の情勢推移とは、おぼろげながらどういうことだか、ひとつ教えてください。
  137. 佐々木直

    ○佐々木参考人 現在まだ卸売り物価は上がっております。その上がっております原因につきましては、だんだん到着してまいります原油の価格が、もうこの一月、二月の分につきましては新しい高い相場で入ってまいりますので、これが輸入商品の価格上昇として卸売り物価を上げておる、こういう状態がございます。したがって、そういう石油価格から来るような影響は、これはやむを得ないのでございますけれども、国内における需要の面が非常に大きくなって、それが物価をつり上げておるという判断を持つようになりました場合には、さらに金融を一段と引き締めていかなければならないと思っております。  いまの状態は、幸いにいわゆる仮需要がだんだん減退してきておりまして、いわゆる市況商品の市場相場というものはだいぶ下がっております。ですから、そういう状態は、いまのような原油価格の上昇はありますものの、物価の姿としては、まあまあ金融政策がいまさいてきでおるかという感じで見ておる次第でございます。
  138. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、当面第六次公定歩合引き上げということは、全く目下は考えられない、さように受け取っていいですか。
  139. 佐々木直

    ○佐々木参考人 当面のところ、その意思は持っておりません。
  140. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから、日銀の窓口規制で結局六百億円は三行から返済をさせた。そうすると、日銀はまだ二兆二、三千億円の金を貸し出ししておると思うのですが——この表でいくと日銀貸し出しは幾らぐらいになりますかね。たぶん二兆二、三千億円になると思いますが、ほかにもそういう窓口規制を強化して金融情勢のあり方というものを適正化しなきゃならぬ。たとえば十大商社への融資状況などを見ても、四十七年九月末現在で、都銀だけで一兆七千四百八十八億円を融資している。十二月になると二兆七千五百七十七億円と、商社の融資かなりの額を占めている。こういうようなのをやはりねらいを定めて——こういう商社などは相当自己資金預金、債券、そういうものをたくさん持っていて、資金繰りは案外楽なんじゃないかと思うのですが、こういうものに対してどういう銀行が幾らぐらい貸しているか、そういう調査ども日銀はちゃんとやっていると思うのですね。そういうものに対しては、さきの三行以外に、特別にここのところをぎゅっと締めていこうというようなことで手段を講じないのですか。
  141. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先般来、商社あるいはまた不動産業者、そういうものに対する貸し出しについては具体的な指導をしておりますが、それは商社全体としてやっておりまして、個々の商社について、あそこはこれぐらいにしろ、ここはこれぐらいにしろという言い方はいたしておりません。したがいまして、現実に銀行の商社に対する貸し出しは、そういう指導を行ないましてからは、その指導の範囲内に商社全体としては入っておるのでございます。
  142. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 銀行局長、ごく最近の一番近いところで、十大商社の金融機関からの借り入れ額ですね、ちょっと数字を発表してください。
  143. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 いま一、二分で調べましてから御報告いたします。
  144. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから日銀総裁ですが、日本の全体の預金量を見ますと、これは去年の九月の日銀発表で、預金総額が百三十五兆一千三百三十六億ですか、その中で個人と法人と、一般法人、金融機関と分けてみますと、個人の預金総額が九十二兆七千七百四十九億ですか——これは信用金庫だけか、単位が違ったですな。個人と法人との差を見ると、個人の預金かなりの部分をやはり占めていますね。  したがって、いまのような卸売り物価が年間三〇%も上がり、あるいは消費者物価が二〇%以上も上がっているという事態のときに、この個人預金の部分を見ると、私はたいへんな被害だと思うのですよ。金融機関というものは債権者はだれなんですか。金融機関というものをめぐって預金を出す人、それから金を借りる人、その場合を考えると、債権者は預金者ですね。その債権者の預金者がたいへんな損をしている。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 これはやはり、先ほど竹本さんも言われたように、いまの預金というものの金利を、物価動向から見た場合には十分手直しして考える必要がある。しかし、総裁の立場から言えば、そうすれば今度は中小企業貸し出し金利が上がって中小企業が困る、こういうようなことをおっしゃるのでありますが、どうですか、この辺でひとつ預金金利を七・二五じゃなくて、物価にある程度、なるほどと思うような個人預金に対する金利優遇を考えたらいかがでしょうか。
  145. 佐々木直

    ○佐々木参考人 おっしゃいます御趣旨は非常によく私もわかりますし、いまのような状態で預金者の利益を守るために、われわれとしてできるだけのことをしなければならないと考えております。したがいまして、先ほど冒頭で申し上げましたように、貯蓄増強のため預金者に報いる新しい手だてをぜひ考えていかなければならないというふうに思っております。  ただ、全体の金利水準の中で、預金金利を動かすということになりますと、いまお話がございましたような貸し出し金利はどうするかといったような問題にも及んでまいりますので、その点は全体の金利水準が動かせるような機会をとらえるということで、時期を待たざるを得ない。したがいまして、当面としては預金優遇、貯蓄優遇のための具体的な特殊な手ということを考えてまいるのが適当である、こう考えております。
  146. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 先ほどの御質問に対しましてお答えいたします。  正確な数字は、四十八年九月末で十大商社に対しまして二兆九千二百八十七億円でございました。その後、十二月末を推計いたしますと、日本銀行指導で、それに対しまして大体二兆九千八百億台になっておるのではないか、かように考えます。
  147. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、商社の融資は、絶対額では減ってないわけですな。商社はとにかく資金かなり豊富にあり、今回の値上げでさらに現金収入はふえておって、手元流動性は十分ある。こう見ていいのではないかと思うのですね。  三行のことにこだわるようでありますが、先ほどの六百億円吸い上げた場合も、顧客はその三行から借りたのじゃなくて、自分の預金を下げた資金なのですか。それとも住友銀行、東京銀行、第一勧銀がドルを買うための金を貸したのですか。
  148. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ドルを買うための金を借りたかどうかということはなかなかっかみにくいのでございますが、銀行によりましては、貸し出しがふえている銀行もございます。
  149. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、その辺までを調べないで、とにかくお前のところだけはばちっと返済しろということは尋常の手段ではないですね。従来、いまだかつてそういうことは戦後ありましたか、突然何も予告なしに、わずか一日か二日後に、おまえのところはばちっと二百億ずつ返しなさいという措置をしたことは、戦後ありますか。
  150. 佐々木直

    ○佐々木参考人 貸し出しの返済を求めたことはございますけれども、こういういきさつで求めたことは初めてでございます。
  151. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 さらにコールレートの取り入れも一時ストップだ、制限をされた、こういうような報道もあるのですが、事実ですか。
  152. 佐々木直

    ○佐々木参考人 その点は事実でございませんで、いまの貸し出しを返しますのはコールをとって返しておりますから……。
  153. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日本銀行は、全く手落ちのない正規の手続を踏んできたそういう行為について、懲罰的な、罰則的な措置をとるというその緊急性が今回の場合にあったのか、緊急やむを得ざるそういう措置をせざるを得なかったという事態があったのか、なぜそんなにあわててそういう措置をするのか、もし過剰流動性なり手元流動資金なり余裕資金が一ぱいあるから返せというのならば、すべての都市銀行に向かって、日銀の二兆二、三千億円の貸し付け金はこの際回収をして引き締めたいのだ、洗いざらいとにかく返せ、公平に全部やるべきじゃないですか。
  154. 佐々木直

    ○佐々木参考人 私どもとしては、同じことの繰り返しになりますけれども、ああいう多量なドル買いが起こったということは、それはそれだけの円を調達し得たからできたのだということを考えてああいう措置をとったのでありますが、実は前にドルを非常に買いましたときには、そのドルを海外で調達してこちらへ送ってまいりまして円に変えたわけでございます。したがって、あのときには、海外における日本の——現地貸しと申しておりますが、現地でのドルの借り入れの増加をストップいたしました。  ですから、こういうふうに大きく外貨と円と動きますときには、必ず一方の源を断つということが非常に大事な点でございまして、そこで、先ほど申し上げましたように、窓口規制もやり量的な制限をやっておるさなかに特に大きく円を払ったところに対して資金の返済を求めた、こういう筋合いでございます。
  155. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、それは個々の銀行が自分で自分の金を出して買うわけじゃないのでしょう。全部顧客がいるわけでしょう。顧客の金じゃないのですか。顧客がそれぞれ自分の預金を下げたり、自分のところで何か換金をして金をつくって、たまたまその為替銀行を通じて買ってもらうわけでしょう。にもかかわらず、銀行に対して、おまえのところは金が余っているのだろうから日本銀行に返せと言うのは、筋が違うのじゃないですか。こういうやり方は少々日銀の勇み足じゃないですか。
  156. 佐々木直

    ○佐々木参考人 銀行はその為替の取引先についてはおそらく貸し出しもしておりますでしょうし、預金も預っておると思います。それで、現実にその顧客がドルを買いますときには、預金を下げるか、あるいは貸し出しを受けるか、どちらかやっておるわけでございますから、それだけの余裕があるところならば、預金貸し出しの返済に充ててもらうなり、あるいは貸し出し増加させるのはやめるということで、資金の総量、円の総量を押えることができたじゃないか、それだけのドルを買う余裕があるのだから。そういう意味で、銀行にもお話をしたわけです。
  157. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、そのドルは輸入代金の決済に払わなきゃならぬ、海外の支店とか海外の事業に払わなきゃならぬというドルなんでしょう。必要があるから払う金で、予定されている支払い金なんでしょう。不正がなかった、みんなとにかく条件にかなっていたのだというなら、払わざるを得ない金なんだから、それについてとやかく指摘できるのですか。ぼくは、あの中に投機のものがあって、全く、そういう条件にかなわないものが二億ドルあったのだというなら、しかるべき措置だとわかるのですよ。ところが、総裁、先ほどから全部それはライセンスなりユーザーなりそろっていて、そういう投機的な要素は為替の売買そのものにはなかったのだ、ただ資金が余っていただろうからとっちめたということなんですね。それはおかしい。これはどうも筋違いで、全く理論が合わない。だから、これは日銀のちょっと勇み足でしょう。どうですか。
  158. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほども申し上げましたように、前に為替市場を休んでおりましたから、その休んでおったことを考慮に入れると、大体あの日四億ドルくらい正常な決済はあるはずだと、それはもう用意しておりました。それをさらに相当の部分上回った。それはいま申し上げましたように、それぞれ正当な決済ではありましょうが、当然あさって、しあさって、もっと先でもいいことを繰り上げてやったという事実はあろうと思います。ですから、そういう意味で、そんなに先までやれるということは金に余裕があるのだ、そういう余裕のある取引先を持っておれば、もっと資金を吸い上げていいじゃないかという考え方はございます。
  159. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、顧客から依頼をされて、条件にかなっておるものなら、ドルを買うのは銀行として当たりまえじゃないですか。ただ三日や四日、期限の早いものまで買ったのが何ぼかある、数字は言わないのだけれども、何ぼかある。だから、この議論をすっきりさせるためには、どういう顧客から注文があったのか、全部顧客の名前と金額を明らかにして委員会に出してください。それでないと、どうも議論が雲に包まれてよくわからない。条件にかなった各顧客の名前を全部出す。どの銀行を通じて幾らずつ買いが出たか、それを明らかにしてくださいよ。  同時に、その三つの金融機関だけは、銀行が不当に顧客に、金融引き締め指導方針に従わないで金を貸したのだ、だから懲罰的な意味も含めて直ちに返済を要求したのだ、われわれにもわかるように今度数字を出してください。いいですか。
  160. 佐々木直

    ○佐々木参考人 いまのお話の点で、貸し出しをしたと申しておるわけではございません。
  161. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だから、貸し出ししないならしないでいいから、どこからその金が来たかも追及したらいいでしょう。  貸し出しをしない、それじゃ、顧客が自分で金を持ってきたのかも、日銀としてはわからない。ドルを買いたいと顧客が自分で全部そっくり円を持ってきたかもわからないのですね、銀行が全然貸していないかもしらぬとなると。それすらも、表なんか持ってこないと、議論だけではこれはわからぬじゃないですか。どういう顧客かという顧客の名前と金額と、どの為銀を通じてドル買いが出たのか、それを明らかにして全部資料で、参考人、大蔵委員会に今度出してくれませんか。
  162. 佐々木直

    ○佐々木参考人 その点につきましては、いま大蔵省調査中でございます。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日銀総裁と議論していても、土台になるものをわれわれきちっとつかんでそれで議論をしないと、どうも話が為替の問題と金融引き締めの問題が混同されて処置をされた。そういう処置というのは、ぼくに言わせれば、これは日銀の勇み足だ、こう感じる。もし金融引き締めという態度できちっとやるなら、もっとやるべきことが一ぱいある。ほかの銀行に対しても一ぱいある。そういうことを公正公平にやるのが、公、平と連帯の社会なんだ、福田さんの言う。そこらがどうも日銀の今回の処置はすっきりしないし、納得しないのですよ。だから、もう一回、そういう資料、大蔵省がいま調べているそうですから、きちっと調べ終わって、その数字に基づいて、委員長、もう一回総裁にお出かけをいただいて、この問題については話を詰めたいと思います。  それから、総裁、これから不況が来るぞという学者の議論と、まあ不況にはならないで、このインフレという状況がだあっと続いて、不況というよりはインフレ社会という規定のほうが当たるかもしらぬとか、いろいろ議論があるわけですね、あるいは不況の中の物価高という経済情勢が続くとか。まずここで、通貨安定の大番人である、日本の国民がすべてあなたにもう託しているのですね。日本の金融政策で、物価問題安定がほんとうにできるのかどうか、日銀総裁しっかりせんけりゃだめだという期待を、国民はいまあなたに寄せている。しかし、一年間ずっと引き締めをやってきたけれども金融政策では物価問題が処理できないほど複雑なものが内包しちゃって、さっきあなたもおっしゃったような、石油の問題やら、便乗値上げやら、買い占め売り惜しみやら、日銀総裁が意図した金融引き締めだけでおさまらぬような物価の個別の上昇要因がある。したがって、あなたは先ほど、何か別な手段でということをちょっとおっしゃいました。総合対策をやらぬことには、とてもこれは通貨の面からだけではおさまりがつかぬほど、日本の物価問題というのは混乱をしてしまっているのだ。  そこで、通貨量の推移をちょっとこう見ますと、日銀券の状況は、なるほどさっきおっしゃいましたように、一月が二三、二月が二二ぐらいになるだろう。Mのほうの状況についても、最高二六・四ぐらいだったところからだんだんとおりて、二〇・二が十一月、その後もこれよりも下がっているだろうと思うのでありますが、さらにM2のほうも、最高二三・五のところから順次おりて、一九・二が十一月。十二月、一月はさらにこの率が落ちているに違いないだろう。この状態が何カ月ぐらい続くと金融上からかなりの不況的要因が出てくる、ほんとうに不況に入るかもわからぬ、こういう不安を持つ論者もたくさんいるわけですね。  日銀総裁として、そういう論者の見解なり見通しというのは当たらないぞ、わしは日本経済推移をこう見ておる、そういうこれからの展望ですね、三、四、五月、六月まででもけっこうです。短期的な見通しについて、ひとつあなたの御見解を国民の前に明らかにしてください。
  164. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいまお話しのように、金融指標の面では非常にはっきり金融引き締めの効果が出ております。したがいまして、こういう事実はやがては取引の決済を通じて効果を物価その他に及ぼしていくものだ、そう考えております。  ただ、その時期がいつごろになりますか。まあわれわれとしては、いまからやはり二、三カ月先ではないか。早くて二カ月、おそければ三カ月かくらいかかるのではないかというふうに考えております。  それからもう一つ、やはり先ほどもお話がございましたけれども、いまのように物の値段が上がっておりますと、値段の上がっていることによって信用がふえ、やりくりがつくという現象がございますので、最初考えておりましたよりも、少し出かたがおそいような感じを持っております。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その二、三カ月たつとどういうことになるのですか。二、三カ月たつと、日銀総裁が意図したような経済状態になる、こういうことですか。それとも二、三カ月たつと不況が来るというのですか。あなたが期待するような経済状態が二、三カ月後になると到来する、こういう意味ならば、そのあなたが予想する二、三カ月後の経済というのはどういうことになりますか。失業は全然起こらない、中小企業倒産も千件前後でふえない、そういう状態で、物価というものは昨年の十月並みぐらいに卸売り物価は鎮静するというのか、それとも上がったものはもう下がらない、そのままいくというのか、あなたの描く二、三カ月後の経済状態とはどういう状況なんですか。
  166. 佐々木直

    ○佐々木参考人 需要が沈滞いたしまして、需要の増大からくる物価の値上がりはおさまる。それで、経済活動はいまの生産の水準がやや増加する。十二月は生産が二%落ちました。しかしながら、おそらく一月から油の関係もあって少しふえてくるのではないか。したがって、そういう点から、非常に失業がふえるといったような姿ではなくて、生産は微増という姿ではないか。しかしながら、国内需要の増大からくる物価上昇というものはそこでおさまる、そういうふうに考えております。
  167. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、国内要因からくる物価上昇はそこでおさまるというと、二、三カ月後には卸売り物価はどの水準に戻りますか。去年の石油危機以前ぐらいに戻りますか、それとも一月末現在ぐらいの高さで高値定着をしてしまいますか。まず卸売り物価についてはどうですか。消費者物価は、まだぼくは一年間ずっと上がり続けると思うのです。ここでいま議論しているのは卸売り物価の問題なんですが、卸売り物価についてはどうですか、どういう水準になりますか。
  168. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほどもちょっと触れましたけれども、最近着いております石油が、もうすでに一番最後の値上げの油が着いておりますので、この分がみんな卸売り物価石油の価格の上昇になってまいります。そうしますと、たとえば十月のレベルまで下がるということは不可能で、いまのような特殊な情勢を除いたほかの、国内需要に伴う物価上昇がとまるということであろうかと思っております。
  169. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一応約束の時間が到来しましたので、質問をやめますが、あとで理事会で、先ほどの資料をめぐっての処理については処置を願いたいと思います。私の質問は終わります。
  170. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ただいまの武藤君の御発言中の御要請につきましては、いずれ理事会で御協議を申し上げたいと思いますので、御了承を願います。  増本一彦君。
  171. 増本一彦

    ○増本委員 どうも御苦労さまです。  先ほどからお話がありました、一月二十二日のいわゆるドル買いの問題ですけれども、日銀としては考査なり調査を、特に先ほどから問題になっている三つの都市銀行に対しておやりになったのかどうか、その調査ないし考査の結果はどういう実態だったのか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  172. 佐々木直

    ○佐々木参考人 一月二十三日以後においてはまだやっておりません。
  173. 増本一彦

    ○増本委員 一月二十三日のあと何にも調査をしていらっしゃらないわけですか。どういう手だてをおとりになったのですか。
  174. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま考査ということばをお使いになりましたものですから、先ほど御質問のあった考査というふうにとりまして、それでそういうことはいたしておらないと申し上げたので、為替銀行から事情の聴取はいろいろいたしました。
  175. 増本一彦

    ○増本委員 その事情聴取の結果を、ひとつここで明らかにしていただけますか。
  176. 佐々木直

    ○佐々木参考人 その点につきましては、先ほど申し上げましたように、具体的な調査につきましては大蔵省のほうでいま検討しておられますので、そちらにお願をしたいと思います。
  177. 増本一彦

    ○増本委員 いまの武藤委員意見と重なり合うように受け取られるかもしれませんけれども、事情聴取をされて、そしてドル買いの資金中心に、資金都市銀行についてだぶついている。ある。だから、総計六百億円を引き揚げたわけですね。そういうことで、いま一つは、金融引き締めをやっている時期に、やはりそれだけの円があるというこの事態に着目されたわけでしょう。ですから、事情聴取をした結果、どういう実態だったのか、そこのところをもう少し詳しく、その引き締めとの関係でどうだったのかという実態は明らかにされてもよろしいのじゃないでしょうか。
  178. 佐々木直

    ○佐々木参考人 実は、各商社あるいは各メーカーその他、為替銀行と取引しますそういう企業は、取引銀行との間に実に複雑な、外国為替だけの仕事をしておるわけじゃございませんから、日常のいろいろな決済その他の取引をいたしております。したがって、この金がどこにどういうふうに使われたかというふうにひもを一本一本つけての説明は、なかなかこれはできないわけでございます。したがって、私どもとしては、最後のしりとして、結局これだけの外貨が買える金があった以上は、その外貨の買いが普通のレベルで計算したものよりもだいぶ多い、その多い部分については、いまの支払い急ぎとか何とかいう、普通に考えられたものよりもテンポを早くしている、それは金に余裕があった証拠ではないか、したがって、その部分については、引き締めの精神から考えて返済してほしい、こういうふうに考えた次第でございます。
  179. 増本一彦

    ○増本委員 今日まで引き締めでやってこられて、引き締めがききつつある、こういうお話も先ほどあったわけですけれども、しかし、実際には大手の銀行の中でも、こういう一月二十三日のような事態が起き、日銀に還流させるというようなことまで考えますと、全体として網を打った引き締め自身も、個々の都市銀行の中では、特に大手では、やはりまだ資金余力が相当にある、そういう事実を今度の事件は一つは証明しているというようにも思うのですが、その辺のところ、特に都市銀行でのこういう資金の余裕ですね、こういう点についてはどういう御認識なんでしょうか。
  180. 佐々木直

    ○佐々木参考人 都市銀行につきましては、窓口指導都市銀行中心に行なっております。しかも、いまは貸し出しにつきましては、都市銀行に対しては貸し出しワク最高限度をつくっておるわけでございます。もうその最高限度に、貸し出しはほとんどそれに近くくっついておりまして、これ以上貸し出しをふやす余地ももうあまり残っておりません。しかも、いまは預金準備率をだんだん引き上げてまいりましたので、いま全国で、預金準備率制度を適用しております金融機関日本銀行預金しなければならない準備預金は、一カ月を平均いたしまして二兆円になっております。  それで、この前の二十三日の分の決済は二十四日に行なわれたわけでございますが、二十四日におきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、その預金から二千億引っぱり出してやっと決済しておるわけでございます。したがって、それだけ月平均の準備預金は落ちてきておりますから、これは本月の十五日までに回復していかなきゃならぬ。そういう意味で、都市銀行の金繰りは、一応二十四日には預金の引き落としで決済しましたけれども、相当ぎりぎりきついところへ来ておりまして、私どもとしては、いま都市銀行がそれほど余裕を持っているとは考えておりません。
  181. 増本一彦

    ○増本委員 だから、六百億円還流をさせたわけですね。それにやはり応ずるということになるわけでして、だから、ここいらのところでの引き締めの実態がどうなのかということは、もっときめこまかにひとつ検討をしなければならない問題だというように私たちは考えているわけです。  そこでもう一つは、今度は日銀と都市銀行との取引の問題なんですが、いま預金準備率引き上げられて二兆円ぐらいになっている。しかし、その一方で日銀では、十二月までだけで、あとの数字はよく私わかりませんけれども、長期国債だけで二兆円以上の買い超になっていたと思うんですね。一方で締めていても、多方で金を出していくということになると、これは結局、そういう面で一つ引き締めのしり抜けが行なわれることになるんじゃないだろうか。ましてや、国債の買いきりのオペがそういう点でふえていくという事態になると、なお表口では押えていても裏から抜けていくという、こういう関係になる。その辺のところの実態と、それから今後の総裁のお考えをひとつお聞かせいただきたい。
  182. 佐々木直

    ○佐々木参考人 十二月には、御承知のように、年末の決済のための日銀券が相当たくさん出てまいります。そういう季節的な資金の需要をカバーしますために手形のオペレーションとか、あるいは債券のオペレーションとかいうものをやります。そういうものは、今度、年を越しまして年末決済資金が還流してまいりますと、それによっていまの手形のオペレーションなんかで買った分が決済されていく、こういうふうになりますので、やはり季節的な事情による資金の需要の増減というものを調整するためのいろいろな資金操作というものは、これは総体の引き締めの中でも必要であると考えます。
  183. 増本一彦

    ○増本委員 長期国債の日銀の売り買いの一月末での実績はどういう状態でしょうか。ちょっと数字がありましたら教えてください。
  184. 佐々木直

    ○佐々木参考人 一月三十一日現在の日本銀行が所有しております国債は、九千四百五十七億でございます。それから政府保証債、これが二千八百五十二億ございます。
  185. 増本一彦

    ○増本委員 それから、昨年の十−十二の四半期を見ますと、貸し出し金の伸びはそうないのですが、買い入れ手形の残高が非常にふえているんですね。これだけでも四兆円をこしているわけです。残高で四兆円をこしている、十二月で。それで、一月ではどういう実態になっているんでしょう。
  186. 佐々木直

    ○佐々木参考人 一月三十一日が三兆九千億でございます。
  187. 増本一彦

    ○増本委員 若干戻ったけれども、まだ余波がある、こういう状況ですね、年末から一月にかけて見ますと。  それで、ここで一つは、貸し出すだけじゃなくて、買い入れ手形の問題なんですが、この買い入れ手形についても、私は一つは日銀として、いま商社とか鉄とか石油とか、こういうところは依然として便乗値上げやいろいろ価格の問題もあって手元資金が豊富で、在庫投資も非常に多い。これが総裁も気にしておられる物価の値上げのやっぱり推進力になっているわけですね。こういうところの手形の買い入れなどを、この際、日銀の窓口規制していく、そして金が出ていくのをそういう面からひとつ押えていくという手だてが考えられないか。そういうものをもっときびしくやっていく必要があるんじゃないかと私は思うんです。これが一つ。  それから、都市銀行で手形の書きかえをずっとやっていますね。前に金を貸して、あともう手形の書きかえでずっとやっている。いまもずっと続いている。この手形の書きかえを見ますと、ここへ来て新規に貸し出したものは別にしまして、前に貸した金は土地を買うための金であったり、それから在庫投資にも使っている金だ、いろいろある。そういう都市銀行、市中銀行での窓口でも、そういう使い道いかんによって、もうすでに土地を保有している、もう使っちゃった借り入れ金についても、こういう手形の書きかえについては一定の規制をして、やはり還流をさせていくという手だてをとって、その面から特に大企業の手元資金を押えつけていくということも、いま必要なのではないか。その辺については、いかがお考えなんでしょうか。
  188. 佐々木直

    ○佐々木参考人 大企業、特に商社につきましては、実は資金繰りは、全体がどんぶり勘定といいますと非常に乱暴になりますが、総体として、その日に幾ら受け取りがあった、それから幾ら払いがあった、そのしりできょうは一億円不足だ、きょうは二億円余ったということで、一億円足りないときに預金をおろして使うかもしれませんが、あるいはまたそのときに一億円の手形を切って、それで借りて穴を埋めておく。しかしながら、その日のその企業の受けは十五億あった、支払いが十六億あった、そういうふうになっております場合には、その支払いが、ただいま御指摘のように、土地を買ったりいろいろなことをやっておりますが、最後の一億円の手形はどの支払いに充てられたかということは、実は筋がつながらないのでございます。  したがって、われわれとして、これは取引銀行自身がそうでございますけれども、結局、貸し出し自身をふやさないとか、ふやすにしても、このパーセント以上はふやさないという総量規制で調整するよりほかにないというのが、金融のなかなか質的な規制がやりにくい実情の裏にあるわけでございます。
  189. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、総量規制もけっこうですけれども、あと渡した金の使い道を窮屈にして、そしてそこできめさせる。しかし、いまのように、いままで貸した分についてはこれを返せとは言わぬで、手形の書きかえはそのまま認めてころがさしていく。ただ新規の追加の融資だけ押えていくということですと、ふくらむところを押えて、そして手元資金をさらに窮屈にさせ、在庫を吐き出させていくという、ここのところになかなかつながっていかないのじゃないでしょうか。ですから、そういう面での窓口規制をやっていく指導というものを、私はこの際はっきりと考えていく必要があるのではないかというように思いますので、もう一度その辺まで含めた御見解をいただきたいのです。
  190. 佐々木直

    ○佐々木参考人 確かに日本の企業というものは銀行からの借り入れに非常に強く依存しておりますので、日本のいままでの戦後における金融引き締めがわりあいに効果を発揮し得たのは、そういうルートを通じてやることができたからであります。ただ、戦後における実情は、大体増加することをとめるということで非常に効果がありまして、貸し出しをマイナスにするというところまでは、実は見込んでおりません。それで、現実に少しずつみんな取引は増大しておりますので、増加をとめるということによりまして、企業手元流動性は落ちてきておるのが現状でございます。  したがいまして、いまの御指摘の点は、今後さらにまた商社その他の手元が非常に今度の物価値上がり等によって豊かになる実情がありますれば、さらにそこでもう一ぺんやり方について再考慮をする必要があろうかと思います。
  191. 増本一彦

    ○増本委員 時間がありませんので、最後の質問と、これはひとつお願いにもなるのですが、いま手元資金がいろいろの業種でびっこになっている、もうかっているところはいいけれども、そうでないところは非常にきつくなっている。もうかっているところの中心に、せんだっての全銀協の連合会が出しました銀行勘定を見ましても、コメントで、石油関連の企業と一部鉄鋼、それから家電とか商社とか、こういうのがあがっているわけですね。日本銀行では、こういうところのそれぞれの業種別の預金高とか、それからそれに対する貸し付け額、こういうものは統計としておとりになっているのでしょうか。また、とれるものなんでしょうか。もしとれましたら、そういう資料を整理して当委員会に出していただくとたいへん幸いなんですが、その点いかがですか。
  192. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいまの点は、いま私どもがとっております資料ではできません。しかしながら、今後新しいそれに関する統計をとってそういう調査ができるかどうか、ひとつ調べさしていただきたいと思います。
  193. 増本一彦

    ○増本委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。  時間ですので終わります。
  194. 安倍晋太郎

    安倍委員長 田中昭二君。
  195. 田中昭二

    田中(昭)委員 私、最初に、物価金融引き締め措置、これに関係しまして……。  当面しておりますわが国の経済の最大の問題は、何といいましても景気の過熱と物価の高騰でありますし、これに対処しまして、金融引き締め措置の強化を行ない、また、総需要の調整を通じまして物価の上界を抑制する、そういうことになっておりますが、すでに金融面におきましても、長短金利水準引き上げとか、金融機関貸し出し規制や外貨準備の減少を背景としまして、マネーサプライの増勢が鈍化するなどの引き締め影響がたいへんあらわれております。そのように思っておりますが、しかし、物価の安定は、現在の景気の性格から見ましても、実際の経済の上に引き締めの効果が浸透して、そして物価に好ましい影響が生ずるまでにはかなりの時間を要するものと考えるのであります。  また、さきに政府においては、四十九年度経済見通しの中でも、経済成長率を二・五%、卸売り物価指数で上昇率一一・九%、消費者物価指数の上昇率で九・六%としてありますが、この金融引き締め措置が、いま申し上げました経済見通しに大体適合するようになると思われましょうか、どうでしょうか。その辺の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  196. 佐々木直

    ○佐々木参考人 いまの見通しは四十九年度の政府の見通しでございますが、四十九年度経済情勢に対応して今後の金融政策をどういうふうにすべきか、その点につきましては、さらに今後の事態推移を見ながら決定していかなければならないと思います。  私どもといたしましては、いまやっております金融引き締めがここ二、三カ月のうちにある程度効果が出てまいりまして、それが四十九年度のスタートに穏やかな地盤をつくっていくということを考えておるわけでございまして、四十九年度経済がそう経済の落ち込みにもならず、実質経済成長率が二・五ということができますためには、年度の始まりにおいて非常に事態が動揺いたしておりますとなかなかできない。そういう意味では、現在の金融引き締めは四十九年度のスタートのため、その辺に効果が出てくるという考え方で現在運用しております。  したがって、四十九年度全体の金融政策をどうするかということは、金融政策の性格上、四十九年度に入りましてからの経済の実態の推移を見ながら決定していくべき性質のものである、こう考えております。
  197. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、そういう方向でいったとした場合には、大体政府のいまの見通しと同じになりますか。
  198. 佐々木直

    ○佐々木参考人 そうでございます。
  199. 田中昭二

    田中(昭)委員 先ほどのお話をもう一ぺん、私、間違うといけませんから確認の意味でお聞きするのです。  先ほど総裁のお話の中で卸売り物価の問題が出ましたが、お話の中には、いまの金融引き締め等が大体効果をあらわしてきて、そして卸売り物価につきましては昨年の十月の水準か、それよりもちょっと高い水準でいくだろう、そしてその反面に、国内需要が予想以上に増大をすればまた別な問題だというように、私、承ったわけでございますが、そうしますと、もしも国内需要が予想以上に増大しました場合には、次の手としまして、さらにまた公定歩合引き上げということが予想されましょうか、どうでしょうか。
  200. 佐々木直

    ○佐々木参考人 物価水準の問題につきましては、十月の水準まで戻ることはむずかしい。要するに、その後における原油価格の非常に大幅の上昇がございます。ですから、その点は国内要因から上がるのはだんだん落ちついてくるであろう、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。  それからもう一つ、国内の需要がふえてきたときにどうするかということでございますが、その場合には、また金融引き締めを一段と強化する必要があろうと思います。その場合には公定歩合考えられますし、預金準備率考えられますし、また窓口指導の強化も考えられますし、具体的にどの手段にどういうふうによるかということはその段階で決定しなければならぬことだ、こう考えておりますが、そういう需要の増大がありますれば、金融引き締めは実行せざるを得ない、しなければならない、そう考えます。
  201. 田中昭二

    田中(昭)委員 昨年一年間ずっと金融引き締めが行なわれてきまして、その浸透状況といいますか、その結果はよかったのでしょうか、悪かったのでしょうか。引き締めの効果というものが出たのだろうか。それともまた、去年一年間たいへん過剰流動性の問題でいろいろな問題が起こってきましたから、どうもその辺、確かに過剰流動性が大きくあるところは、かりに一〇あるところは五に減ったのでしょうか。そういうような点、何か感覚的なものでもようございますから、おわかりになっておればお教えいただきたいと思います。
  202. 佐々木直

    ○佐々木参考人 冒頭に申し上げましたように、去年の初めからの金融引き締めによりまして、大体四月ごろ、それから九月ごろ、二回にわたって卸売り物価がやや落ちついたわけでございます。ところが、第一回目の落ちつきは、七月、八月の水不足その他工場の災害等によります供給力の減少によりまして、またすぐ物価の高騰にあいました。それから秋、九月、十月にかけての落ちつきは、すぐそのあとに参りました石油価格の上昇、供給減ということでまたくつがえされてしまいました。そういう意味からいいますと、一年間続けました金融引き締めというものが、物価の落ちつきに具体的な効果が出たということを申し上げられないのはきわめて残念だと思います。ただしかし、金融指標におきましては、先ほども申し上げましたように、マネーサプライの増加率もだいぶ落ちましたし、日本銀行券の増発率もだいぶ落ちてまいりました。それで、そういうことがやがて、いまのような石油価格の影響などが一巡しましたあとでは物価の落ちつきとなって効果をあらわしてくるもの、こういうふうに期待しておるのでございます。  それから、次に御質問のございました手元流動性の問題でございますけれども、これは昨年の金融引き締めが進むに従いまして、大企業中小企業とも、毎月の商いの量で手元の現預金を割りました手元流動性比率は、目に見えて落ちてきおります。そして大体去年の暮れには、いままでのほとんどボトムに近寄っておるわけでございまして、そういう意味では、手元流動性の切り詰めというものは相当具体的に効果をあげておると思います。ただ、こう申し上げますのは、これはマクロの数字でございまして、これはもう全体の企業の平均でございますから、その平均の中で企業別に見ますと相当でこぼこがあるのは、これは事実でございます。
  203. 田中昭二

    田中(昭)委員 先ほどからのお話の中に商社の問題がいろいろ出ましたが、何か数字的に言えば、商社の貸し出し金融なんかというのはあまり変わっていないというような数字をおっしゃったわけでございますが、それと同じようなことが考えられるわけですが、石油や紙、化学部門での手元資金がたいへん余裕が出てきた。そうしてくると、さらにまた設備投資というようなことがいろいろ云々されておるようでございますが、こういうものに対してはどういうふうな対処をすべきでしょうか。また選別融資の手直しというようなことも具体的に聞いておりますが、その辺はどういうふうなお考えでございましょうか。
  204. 佐々木直

    ○佐々木参考人 実は油の供給が非常に落ちるという話が出ておりました昨年の十二月ごろは、設備投資なんかとてもこの際手がつけられない、設備をしても電気も来ない、それから燃料もないというようなことで、非常に落ちておりました。現に十二月の機械の発注高、受けるほうからいえば機械の受注高でございますが、それなんか大幅に落ちておるわけであります。ただ、私どもの心配しましたのは、石油の入り方の減り方が予想よりも小さい、そういうことで、それならばやれるということで設備投資がまた大きく出てまいりますと、それは総需要の抑制をはね返してまた需要が増大し、物価の高騰につながるわけでございますから、ただいまお話がございましたような、もし設備投資が復活するようなきざしがございますれば、さっきも申し上げましたような意味で、金融引き締めをさらにもう一段とやっていかなければならぬ、こういうふうに考えるのでございます。
  205. 田中昭二

    田中(昭)委員 石油のショックでまた国際通貨の情勢がたいへんな激変をしておりますが、わが国の国際収支が赤字基調に落ち込んで、いわゆる一ドル三百円の円相場を維持することがたいへんむずかしいという情勢も聞いておりますが、この一ドル三百円の相場の護持、運営というのはどうやっていかれるおつもりでしょうか。
  206. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほどからお話が出ておりましたように一月二十三日まではドルの買いが非常に強うございまして、その後は、今度はドルの買い入れが非常に低調になりまして、ほとんどこちらから売る必要がない状態がこの十日間以上も続いておるわけでございます。  そういうことで、結局、あのときのドルの需要というものは相当急いで、実際に支払わなければならぬものを急いで繰り上げてやったのだという感じがいたします。現にきょうなどはやはり二百九十五、六円のところまで円は上がっておるわけでございます。したがいまして、いまの情勢では三百円というのは余裕を持って維持ができるというふうに思います。  しかしながら、四十八年中の国際収支は総合で百億ドルの赤になっておるわけでございます。しかしながら、貿易自身は黒字でございます。それから貿易外の赤字があり、さらに資本勘定の非常な大きな赤字で、総合の百億ドルという赤が出ておるわけでございます。そういう点を考えまして、先般来、先ほども申し上げましたけれども、いままでは、ドルがあまり入ってくるというのでドルを出そう、入ってくるものはできるだけとめようというふうにしておりましたが、今度はそれを逆にいたしまして、入るほうはいままでのような制限を緩和して、入るものは入ってもよろしい、それから新しく外へ投資するほうはできるだけ選択して、あまりたくさん出さないようにする、そういう資本勘定の点につきまして、いままでと全く逆の方向で操作をすることにいたしました。  問題は、これからの貿易がどうなるか。輸出につきまして、たとえば一月の輸出信用状が前年同期に比べまして四〇%増というのが出ておりまして、輸出もある程度は伸びるのではないかと思いますが、何ぶん油代金の支払いの額の増加がございますので、貿易のほうではやはりいままでよりも黒字が減るというふうに考えておかざるを得ない。そうなりますと、資本勘定の赤の減少と貿易のほうの黒の減少、これがどういうふうに結果としてつり合うかという問題になってまいると思います。  しかし、先ほどからもお話がございましたように、やはり産油国のドル資金というのは相当たっぷり出てまいりますから、いろいろ資本勘定で取り入れる余地は相当ございます。したがって、われわれとしては、今後の為替相場の安定の維持は、いろいろ手を使ってやってまいりますれば可能である、こういうふうに考えております。ただ為替市場の相場でございますから、絶対にくぎづけということではございません。できるだけ安定した姿を維持するということは大体可能であろうか、こういうふうに思います。
  207. 田中昭二

    田中(昭)委員 もう時間がきましたからあれですが、先ほどドル買いのことでいろいろ聞いておりまして、私もたいへん理解できない点があったのですけれども、そのことにつきまして、総裁の最後のお答えの中に、何か大蔵省銀行局のほうで調べをやっているというふうなお話もありましたが、銀行局にお尋ねしますが、いつごろからそういう調査をやっておられまして、いつ終わりますか。
  208. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 あれは私のほうの銀行検査官でございませんで、国際金融局の為替検査官がやっております。ちょっとその正確なことを承知いたしておりませんので、調べまして後ほど……。
  209. 田中昭二

    田中(昭)委員 委員長、これも理事会に報告していただいてお聞きしたいと思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  210. 安倍晋太郎

    安倍委員長 竹本孫一君。
  211. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、ただ一つの点にしぼって総裁の御意見を伺いたいと思いますが、問題は、預金金利のスライド制をもう一度検討してみるべきではないかということであります。  大体、わが国の金利政策は、いまだに低金利政策というものが強く支配しておるのではないか。御承知のように、日本の経済の高度成長というのは、もう間接金融の絶対的な優位性と低金利政策が大きな柱になってやってきました。これを発想の転換で、これから福祉国家へ切りかえようということになれば、金利のあり方についても考えなければならぬという段階にきておるのではないかというふうに私は思います。しかるに、総裁御承知のように、日本の金利は、二年ものでも七・五%程度ですけれども、イギリス、フランス、西ドイツそれぞれの国は、三カ月ものの定期でも大体一〇%から一五%近くの高い金利をつけておる。したがって、日本の金利は、インフレが一番進んでおる日本において、比較的にというよりも、一番金利が低過ぎるというような感じを私は一つ持っておるわけであります。  そこで一つお伺いしたい点は、日本の金利というものは、そういう意味で、低金利至上主義的な考え方を変えるべきではないか。したがって、またいまの金利水準というものは、よその国と比較しても低過ぎはしないかという点が一つであります。あとでまとめて御返事いただければけっこうですから……。  それから二番目は、低い水準という問題と続いて、この金利というものは、日本のようなインフレの激しい国においては、やはりスライド制を考えなければならぬのではないかということであります。  けさの新聞を総裁もごらんいただいておると思うのですけれども、全繊同盟が今度裁判で国家賠償法の一条、四条等によりまして預貯金の減価の補償をしろ、とりあえず郵便貯金ということで訴えを起こすということになりました。だんだん聞いてみると、田中内閣ができる前に三十万円ぐらい貯金しておる。いまだにずっとしておるわけです。これは、三十万円あれば嫁入り支度ができるというのが一つの目標で三十万円やっておるわけですね。ところが、いまのように物価が上がると、嫁入り支度は半分しかできないということになるわけです。それから、もう一つの大きな動機は、子供を大学その他へひとつ入学をさせるというときの資金にということでためてきた。これもいまは授業料も上がりましたし、さっぱり役に立たない、全く期待はずれ、裏切られたような感じで、その怒りを法廷闘争でひとつ決着をつけてみようということが動機のように聞いております。  この問題も、論ずればまたいろいろ長くなりますが、そういうものが出てくる。結局これは、日本国民の大部分が、御承知のように、いま貯金をしておりますけれども、その貯金をした人が、これだけ物価が上がって、しかも金利は一向スライドもしないということでございますので、国民の怒りというものを代弁してこの法廷で争われるということになるだろう。したがって、金融当局としては、裁判で負けるまではがんばってみるというようなばかな態度でなくて、しかもよその国でもいろいろ例があるのですから、できる限り親切に、嫁入り支度がだめになる、入学資金がふいになるということについて、ひとつ救いの手を差し伸べるだけの親切があってしかるべきではないかというふうに私は思うわけです。  そこで、時間もありませんから、私が考えておる考えがまだまとまったわけでもありませんが、ついでに申し上げまして、御批判をいただきたいと思うのです。  それは、たとえば、一世帯で百五十万円以下のものについて、あるいは個人でいうならば一個人五十万円、いま見てみると平均二十万円ぐらいですね、一口ですけれども。したがって、個人で五十万、世帯でいうならば百五十万以下の金について考える。そして物価が一〇%以上上がった場合には、そのスライドを考える。一年間の年度間の物価が一四%も一五%も上がっておりますから、一〇%以上上がった場合について考える。三番目には、その一〇%以上上がった場合には、プラスアルファを考える。そこで、最低の金利というものを一〇%ぐらいに考える。いま二年もので七・五を一〇%に上げる。そのかわりに一〇%まではそのまま。一〇%をこえた場合のスライドのしかたは、かりに一五%というような場合には、一〇%をこえたものの半分、したがって、二・五%を最低の一〇%につける、プラスをする。そうすると一二・五%になります。ブラジルでは二一%とかなんとかいうようなこともあるようですが、いずれにいたしましても、一〇%をこえて消費者物価が上がった場合には、そのこえた部分の半分ぐらいはひとつ補償してやる。ただし、これも日本のようにインフレが激しいと、無制限にはできませんから、ある程度頭打ちは考えてもいいだろう。それから同時に、これは国の名誉のためにも時限立法的なもので考えたらどうか。こういうふうに私は思って、何とかして最小限度の嫁入り支度とか子供の教育費等についての貯蓄層に、思わざる損害を加えないようにすべきではないか。憲法の財産権の規定ということ等から考えてみても、これはなるほどインフレ条項というものはいまの規定の中に入っていないですけれども、しかしながら、政治の親切という問題から見ても、当然そういうことは考えるべきではないか。  まず、そういう意味で、以上の点について総裁のお考えを承っておきたい。特に私が申し上げるのは、私の考えもまだアイデアにすぎませんけれども、そういう形で一ぺん、このインフレ下の預金者の利益を保護するという立場で検討してみるべきではないか、あるいは少なくともまじめに取り組むべきではないかという点についての総裁のお考えを承りたいということです。
  212. 佐々木直

    ○佐々木参考人 最初に御指摘にありました、日本の金利水準が国際的に見て低過ぎるのではないかという点でございますが、確かに日本の金利というものはいろんな面で非常に統制的になっておりまして、これはまあ臨時金利調整法その他いろんな関係もございますけれども、戦前からの一つの流れがそのまま続いておる面が少なくないわけであります。したがって、上がりますときも下がりますときも、いつもそれが小幅にとまっておるという点はございます。したがって、いまの国際的な水準が非常に上がっている点から考えますと、いまの日本の水準が低過ぎるという感じは当然かと思います。  ただ、金融市場における金利はもう相当上がっておりまして、コールレートその他も大体一二%ぐらいになっておる。そういう意味では、そういう統制のない部面では、やはり現実に相当資金の需給の苦しさがあらわれているのではないかと思います。  それから、もう一つの御指摘の預金金利のスライド制の問題でございますが、だいぶ前になりますけれども、実は私、国会で御質問を受けましたときに、スライド制についても研究してみたいというふうに申し上げまして、その後研究したことがございます。そのときの私の申し上げた気持ちは、物価上昇する中で勤労者の預金についてできるだけいい条件を差し上げたい、そういう気持ちで申し上げたわけであります。ところが、はなはだ残念でございますけれども、フィンランドとかあるいはフランスなど、そういうほかの国でスライド制をとった例がございますが、それはいずれもある程度の期間やってやめております。やはり預金金利だけスライドするということにも無理があるのと、それからもう一つは、スライド制というものを認めますと、それがいま申し上げたような理由からだんだんほかのものに広がっていって、結局はインフレーションというものに、まあ何といいますか、許容的になると申しますか、そういうことで、総体としてみると思わしくない結果になった、こういうことのようであります。  したがいまして、現在、私どもといたしましては、預金に対してどういうふうな優遇の手があるか。スライド制というところはむずかしいのですけれども、どうすればこういう非常な物価高の中で預金者に報いることができるか、その手当てをそこにしぼって考えるということが現実的ではないか、こういうふうに考えておるのでございます。
  213. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの御答弁の中で、ちょっとわれわれ納得ができない点が二つあります。  一つは、この制度がインフレ許容的になるんだということですけれども、実際がもうインフレなんですから。私はこの前の予算委員会ではスカイロケッティング・インフレーションと言ったけれども、もう現実がインフレでしょう。許容するも許容しないもないでしょう、現実がそうなんだから。だから、そのインフレの被害を守ってやるんだということですから、インフレ許容的になるというようなことはあんまり理由にならぬ、現実がインフレなんだから。  それから次に、諸外国の例も、いまいろいろおっしゃるように、長く続かなかったということについては、私もいろいろ問題点があると思うのです。そういう意味で、いま私のアイデア、構想を申し上げたときには、遠慮の上にも遠慮をして、最小限度のことを言っているわけです。  第二に、いま御答弁の中に優遇ということばを使われたけれども、ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、これは優遇ではないんですよ。最小限度の損害賠償なんだから。損害を補償するというんだから優遇ではないです。優遇というようなことは初めからとらえ方が間違っておる。  そういう意味で、最後にもう一度お伺いをいたしますが、いまお話しのありましたように、ブラジルの方式もあれば、アメリカの方式もあれば、フィンランドの方式もあれば、中国のやり方もあるわけですね。それぞれ長所、短所いろいろありますね。で、あなたが予算委員会で初め検討してみようと言われ、後にはなはだ困難であると言われた、その困難であるというのは、大体そのどの方式を前提にして、あるいはその四つ以外の日銀方式というものを一つ考えられて、それでやろうと思ったけれどもやっぱりだめだったということであるかどうかですね。その辺の検討の過程について、もうちょっと詳しく承りたいということでございます。
  214. 佐々木直

    ○佐々木参考人 実はいま御指摘のありましたいろいろな方式、全部検討いたしたわけでございます。しかしながら、いずれも先ほど申し上げましたように現実に適応いたしますのに難点がございまして、そういう四つでございますか、それを検討した上で、新しい日本に適応できる方式というものを編み出すことができなかったのでございます。
  215. 竹本孫一

    ○竹本委員 一番むずかしい問題は、銀行でやる場合には、最後のしりぬぐいを銀行がやるか国がやるかというような問題になるのではないかと思うのですね。そういう意味からいえば、ブラジルは特別なインフレですけれども、しかしあそこは、御承知のように、債務者利益を過大に与え過ぎているというもの、大口に貸し付けているものに対しては、貸し付け金利を上げているのでしょう、そういう形で、一方で支出がふえるものを、一方で収入増をはかっていると思うのですね。日本も、先ほども申しました高度成長経済のささえの柱の低金利政策、それから間接金融の優位性、この問題を新しい段階に即応して再検討するということになれば、借金経営ということを少し直させなければだめなんですね。だから、私はいまの大企業が、先ほど来、けさからも、いろいろ商社の問題等の御指摘がありましたが、とにかく安い金利で金を借りて、そして一種のスペキュレーションみたいなことをやって大もうけをする、こういうことになっておりますが、これに対して、一方で預金者を保護する意味である程度のスライドを考えると同じように、大口の貸し付け先については金利をスライドするというぐらいのことをやって、債務者利益を不当に得ている過大資本に、やはりこの際、適当にえりを正さしめるということも必要だろうと思うのですが、どうですか。
  216. 佐々木直

    ○佐々木参考人 去年の十二月二十一日に、公定歩合は二%上げました。あのときのものの考え方といたしましては、やはりインフレーションによって利益を得る、こういう産業関係につきまして貸し出し金利を上げていく。同時に全体の水準を上げて、預金金利も上げて、預金者に報いたいということの考え方でございました。基礎といたしましては、いま先生のおっしゃったのとそう変わらない。ただ違いますところは、大口と普通のところとを変えないということでございまして、あのときとしては、できるだけ大幅にかけたつもりでございました。
  217. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから要望にとどめますが、とにかく公定歩合を、いまお話も出ましたけれども、二%ぐらい上げても、これだけ物価がインフレで上がっておるときには、やはりいわゆる大口の債務者、大資本の借金経営のほうは、得た利益というものが不当に大きいと思うのですね。二%の引き上げぐらいでは間に合わない。そういうことも含めて、とにかく総合的に——マル優なんかでは、実際問題として間に合いませんよ。だから、いま言った三十万や五十万預けている気の毒な人たちのインフレの犠牲に対して、むしろもう少し親切に、どうすればよいかということを、また機会をあらためて本格的にひとつ論議したいと思うのです。十分検討しておいていただきたい。要望いたしておきます。
  218. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  佐々木参考人には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————
  219. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次に、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案を議題といたします。
  220. 安倍晋太郎

    安倍委員長 まず、政府より提案理由の説明を求めます。中川大蔵政務次官
  221. 中川一郎

    ○中川政府委員 ただいま議題となりました割増金付貯蓄に関する臨時措置法案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  最近の経済情勢に即応し、国民の堅実な消費生活の実現をはかるためには、貯蓄の奨励をはかることが重要であります。  政府はすでに、各般の貯蓄増強措置を講じてきたところでありますが、さらに貯蓄手段の多様化を通じて貯蓄の増強に資するため、このたび臨時措置として、割増金付貯蓄の取り扱いを認めることが適当であると考えます。  以下、この法律案の内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。  第一に、割増金がつけられる貯蓄といたしましては、預貯金、金融債、合同運用指定金銭信託及び生命保険等としております。  第二に、割増金付貯蓄の取り扱いを行なうことができる金融機関といたしましては、預金を受け入れる金融機関、債券を発行する金融機関、信託銀行及び生命保険会社等としております。  第三に、割増金付貯蓄の条件といたしましては、割増金付貯蓄につけられる割増金及び利子または配当の合計額は、割増金をつけない場合の利子または配当の総額の範囲内とするとともに、最高位の割増金の金額は、割増金付貯蓄一口の金額の一千倍以下とすることとしております。  また、割増金をつける当せんの数は、総くじ数の三分の一以下とすることとしております。  なお、このほか、割増金付貯蓄の期間等の種類及び一口の金額その他の割増金付貯蓄の取り扱いに関する具体的な細目は、大蔵省令で定めることとしております。  第四に、課税上の特例といたしまして、割増金については、所得税を課さないこととしております。  第五に、この法律の規定に違反して取り扱いを行なった場合における両罰規定等の罰則規定を定めることとしております。  第六に、この法律は、時限立法といたしまして、二年間に限り、効力を有するものとしております。  以上、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し述べました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  222. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、来たる十二日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会