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1974-04-10 第72回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 田中 六助君 理事 山下 徳夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 渡辺 惣蔵君    理事 多田 光雄君       上田 茂行君    三枝 三郎君       篠田 弘作君    野田  毅君       山崎  拓君    中村 重光君       細谷 治嘉君    鬼木 勝利君       松尾 信人君    小宮 武喜君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君  委員外出席者         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     有吉 新吾君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     里谷 和夫君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合中央執         行委員長)   早立 栄司君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         議長)     木崎 順二君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     野田  毅君     ――――――――――――― 四月二日  炭鉱離職者緊急就労対策事業及び産炭地域開発  就労事業改善に関する請願瀬長亀次郎君紹  介)(第三三〇七号)  同(細谷治嘉紹介)(第三四五八号)  同(村山喜一紹介)(第三四五九号)  同(湯山勇紹介)(第三四六〇号)  同(吉田法晴紹介)(第三四六一号) 同月五日  炭鉱離職者緊急就労対策事業及び産炭地域開発  就労事業改善に関する請願小宮武喜君紹  介)  (第三五三八号)  同(松尾信人紹介)(第三六三三号)  同外一件(阿部未喜男君紹介)(第三八六二  号) 同月十日  炭鉱離職者緊急就労対策事業及び産炭地域開発  就労事業改善に関する請願庄司幸助君紹  介)(第四二八四号)  同(寺前巖紹介)(第四二八五号)  同(中川利三郎紹介)(第四二八六号)  同(三浦久紹介)(第四二八七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月三日  新石炭対策確立並びに産炭地域振興に関する陳  情書  (第四四三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に印刷配付してございますとおり、午前中及び午後にそれぞれ参考人の御出席をお願いいたしてあります。  ただいま日本石炭協会会長有吉新吾君の御出席をいただいております。  参考人には御多用中にもかかわらず御出席をいただきましてまことにありがとうございました。本件につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますが、時間等の都合もございますので、御意見開陳の時間は二十分程度でお願いしたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対して質疑をいただきたいと存じます。  それでは有吉参考人にお願いいたします。
  3. 有吉新吾

    有吉参考人 私、日本石炭協会会長をいたしております有吉新吾でございます。先に意見開陳さしていただきまして御質問にお答えを申し上げたい、こう思います。  石炭対策につきましては、かねてから本委員会の諸先生には格別の御配慮をいただき、また本日はお忙しい日程をさいて石炭業界立場から発言する機会を与えてくださいまして、心からお礼を申し上げる次第でございます。  御高承のとおり、昨四十八年度より第五次石炭政策が実施されておりますが、中東紛争に端を発した昨年秋来の石油危機は、わが国の経済はもちろん、国民生活に大きなショックを与え、わが国エネルギー政策について関心が集中されております。これを受けまして、本年二月から総合エネルギー調査会におきまして、石炭を含めたわが国総合エネルギー政策について見直されることになり、またこれに並行いたしまして石炭鉱業審議会総合部会においても検討されることになりましたことは、まことに時宜を得た御措置であり、私ども絶大な期待をいたしておる次第でございます。  石炭業界は過去十有余年間にわたり、石油の低価格輸入攻勢のもとに、昭和三十四年のトン当たり千二百円の大幅な炭価の引き下げをはじめといたしましてスクラップ・アンド・ビルドというきわめてきびしい合理化に次ぐ合理化の中で、各社とも総力をあげて経営の維持、立て直しに全精力を注いでまいりました。その間、政府におかれましては、五次にわたり石炭政策を立てられ、石炭産業の育成に手厚い保護助成を講じていただき、また鉄鋼電力等大口需要者からは、いわゆる政策需要の名のもとに大口引き取りのほかに炭価値上げについて御協力をいただきましたこと、この間諸先生方の親身の御指導をいただきましたことにつきまして、まことにありがたく存じておる次第でございます。しかしながら、以上の手厚い御援助並びに御協力にもかかわりませず、採炭条件悪化、コストの増大、公害規制進展等による需要動向の変化に伴い、経理状況は遺憾ながら好転せず、あとに述べますとおり、依然として大幅な赤字から毎年脱却し切れずに現在に至っておるのが実情でございます。  さて、このたびエネルギー多様化とセキュリティーの立場からわが国長期総合エネルギー政策が見直されるにあたりまして、私ども石炭業界として最も希望し期待いたします事項につきまして、若干申し述べさしていただきたいと存じます。  まず第一に石炭位置づけについてであります。国内資源確保エネルギー多様化の観点から、長期にわたる石炭位置づけを要請するものでございます。  一般炭について見ますと、現在日本火力発電燃料の中で、石炭は五ないし六%程度にすぎませんが、一挙にこれを欧米並み引き上げることはできないとしても、今後石炭火力発電所の建設を推し進め、このウエートを高める方向で検討する必要があると存じております。これに必要な石炭は、国内炭優先使用を基本といたしまして、不足分一般炭輸入に依存することにしなければなりませんが、かかる措置がとられることにより国内炭需要確保され、私どもも安心して長期生産計画を立てることができます。  一方、原料炭につきましては、鉄鋼増産に伴い、わが国原料炭消費量年間六千五百万トンに達しており、国内炭は比率こそ一七%にすぎませんが、海外からの輸入に問題が多く、また質的に見ても、海外各国からの性質の異なる多種の原料炭を使いますために、わが国原料炭の高い流動性が高く評価されておりまして、量、質、両面から国内原料炭安定生産が要望されておる次第であります。  昨年十二月の石炭鉱業審議会中間答申の中で、当面の目標といたしまして四十九年度二千二百万トン、五十一年度二千二百五十万トンの規模が示されておりますが、今回の見直しの中で、さらに将来の国内炭生産目標が与えられるものと存じておりますので、以下申し述べますいろいろな困難な問題をかかえておりますが、何とかこれが打開をはかり、供給責任を果たすべく最大の努力を傾注いたす所存であります。  石炭位置づけに関連する諸問題といたしまして、一つ国内炭生産でございますが、御承知のとおり、炭鉱地下産業でありますために、坑内骨格構造設備能力の制約より、直ちに翌日から増産とはまいらず、生産規模を拡大し、継続的かつ安定した出炭をいたしますためには、それ相当準備期間と多大の投資を必要といたします。加えまして、年ごと採掘個所は深部に移行いたしますため、保安面において、また採掘面におきまして、高度の技術と前広の準備がますます必要となってまいります。以上の理由によりまして、現在の炭鉱につきましては、近視的な増産は避け、長期的な安定供給を基調といたしました拡大生産への準備がまず肝要ではなかろうか、こういうふうに存じております。  二つといたしまして、労働力確保でございます。現在、炭鉱労働者平均年齢は約四十二歳と高齢化しておりまして、定年退職者の数も年々増加し、これが新規補充並びに若返り対策が急務となっております。労働者定着及び若手労働者確保するために最も大切なことは、石炭産業自分の生涯を託することができる職業であるというビジョンを与えることがまず必要でございまして、これと並行いたしまして、労働条件向上保安を第一義とした明るい職場づくり居住環境の整備をはからねばなりません。労働者定着及び新規雇い入れにつきましては、各社とも各山に適したきめのこまかい対策をそれぞれ創意くふうし、進めておりますが、何ぶんにも一般的な求人難に加えて石炭への暗いイメージが災いされ、容易ではありませんので、国といたされましても、炭鉱求人炭鉱に働く者に対する優遇措置を講じていただきたいと存ずる次第であります。  労働条件改善についてでありますが、私どもは、いままで大幅な赤字操業の中で、企業支払い能力を越えて精一ぱい努力を払ってまいったつもりでありますが、現在の労働条件で十分であるとは考えておりません。労働条件向上につきましては、今後一そうの努力を注ぎ、需要者側の理解ある炭価値上げと当局の助成等の原資を期待いたしまして、可及的すみやかに改善につとめる所存でございます。  三つといたしまして、輸入炭についてでございます。前述いたしましたとおり、今後わが国エネルギー全体の中で石炭位置づけがはかられねばなりませんが、その際は、国内炭の最大限の利用をはかると同時に、不足分につきましては海外からの一般炭輸入に依存しなければなりません。これには、できる限り長期契約によって数量の確保価格の安定をはからなければなりませんが、また開発輸入について検討することが必要ではなかろうかと考えております。いずれにいたしましても、輸入に際しましては、国内炭需要に悪影響を与えないよう総合的な調整を行なう統一機構を設け、窓口を一本化することが必要でございますが、開発輸入につきましては、さらに機構その他諸種の問題を検討することが必要であろう、こういうふうに考えております。  以上で位置づけを終わりまして、今度は経理資金面改善についてでございます。  第五次政策において、第三次肩がわり経営改善資金の新設及び坑道さく費補助金引き上げなど、政府助成が強化されたのでありますが、賃金、物価の高騰、その他経営条件悪化によりまして、石炭企業の四十八年度の経常損失の見込みは、大手八社平均トン当たり千六百五十円でございまして、依然として大幅な赤字経営から脱却しきれない実情にございます。また、四十九年度はさらに大幅な赤字増となることは避けられない見通しでありますので、生産確保のためにも、労働条件改善のためにも、企業経営改善して収支相償うよう、炭価引き上げ政府助成の強化を期待し、お願いいたす次第でございます。  以上いろいろ申し上げましたが、要約いたしますと、このたび総合エネルギー政策が見直されるにあたりまして、私ども石炭業界といたしましては、労使相協力し一体となってその使命と責任を果たすべく決意を新たにいたしておりますので、第一に、長期的な石炭位置づけをお願いしたい。第二に、企業が永続して供給責任を果たし得ますように、安定した経営が成り立つのに必要な財政上の措置と将来にわたって経営を維持するに足る炭価の設定につきまして、今後とも諸先生方の格別な御配慮と御協力を重ねてお願い申し上げまして、私の陳述を終わりたいと存じます。ありがとうございました。
  4. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人意見開陳は終わりました。     —————————————
  5. 田代文久

    田代委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  6. 田中六助

    田中(六)委員 有吉社長には、今回石炭協会会長になられて、エネルギー問題が日本において大きなターニングポイントに立たせられておるさなかに非常に重要な地位に就任いたしまして、私は御苦労に思いますと同時に、その責任を十分果たす意味でも、一そうの御努力をお願いしたいと思います。  先ほどから会長の御説明をお聞きいたしましたが、先だっての参考人の中に北大の磯部教授がおられまして、そのときに石炭位置づけと関連いたしまして、政府幾ら金がかかってもいいからこれだけ掘れということを言ってくれることが一番いいということをおっしゃっていました。私はまことにそのとおりだと思いますが、御承知のように国の予算には制限もあるし、いろいろな点でそうはいかない面がございます。しかしその心持ちで取り組まなければ、エネルギー問題というのは解決しないのじゃないか。特に石炭問題もそうだというふうに考えておりますが、最近アメリカなどの情報を見ますと、一九八〇年にはもうアメリカは油は要らないのだ、どこからも輸入しなくても自分でできるということ。逆に日本はそのままいまの現状を伸ばしますと、石油が二億七千万キロが六億トンくらい一九八〇年で要るというふうに計算されておりますし、これはどこからそういう差が出てくるかというと、国内におけるエネルギーをどうするかという態度からそういうふうな差が出ておると思いますが、私ども唯一資源である石炭を見直すということではなくて、ただ単にそういう口だけではなくて、ほんとうにこれに対処していかなければいかぬ。官民こぞってこの問題に集中するという意味で、私は非常に大事な時期だと思いますが、その際、磯部教授が一人一トンぐらい要るだろう。そうすると、一トンにしますとちょうど一億トンで、その半分は水力と原子力その他でまかない切れる。あとの五千万トンを石炭でやったらどうか。過去においてわが国も五千万トンの時代もあったわけでございますので、そういうことは可能だという見解であったわけでございますが、現在日本現状で五千万トンいつの日にか石炭を掘ることができるかどうか、その点はどうでしょう。
  7. 有吉新吾

    有吉参考人 お答え申し上げます。  五千万トンどうか、こういうことでございますが、私先ほど陳述にもちょっと申し上げましたように、私はちょっとむずかしいと思います。すでに閉山をいたしました炭鉱が再開発可能であるかということにつきましては、合理化事業団のほうで主として再調査をやっておられるようでございまして、三つ四つ炭鉱が対象になっておるようでございますけれども、そういうのが可能になりますれば、多少はプラスになると思うのでございます。それから新鉱開発としましては、北炭新鉱さんと有明とやっておりますけれども、そのほかの新鉱として非常に目ぼしいものが考えられるかということになりますと、現状におきましては非常にむずかしいのじゃないかと思います。  私は、二千万トンオーダーというものを長期に安定をして供給するということがわれわれに課せられた任務ではないかと思っておりますし、そういう考え方のもとに石炭というものをどう位置づけするか、こういうふうなお考えをしていただきたい、こういう希望を持っております。したがいまして、これは位置づけといいますか、そういうものに関連をするわけでございますので、あわせてお答えしたいと思います。よろしゅうございますか。  二千万トンの供給、大体そういうものだという、そのかわり相当十五年とか長く供給が可能であろうと思うのでございます。まず第一にいまの炭鉱で、現在ある炭鉱増産ができないのか、これが一番最初の御疑問であろうと思うのでありますが、陳述の中に申しましたように、膨大な設備投資をひとつやらなければいかぬとか時間がよけいかかるとか、こういったような問題もございます。現存する炭鉱というものの出炭規模というものは、これは炭鉱によって多少違いがあると思いますが、私、三井鉱山でございますけれども、に関します限り、現在の各炭鉱出炭規模はおそらく精一ぱい伸び上がった出炭規模になっているのじゃないかと思うのです。と申しますのは、いままでスクラップ・アンド・ビルドでやってまいりましたので、どんどんスクラップして炭鉱の数は半分ぐらいになってしまったけれども出炭量は大体同じである。ということは、残った炭鉱でつぶれた炭鉱生産量を負担をしておる。そうしなければまた経営が成り立たぬわけでございます。したがいまして、たとえば北海道の立て層の山のごときは一年間に三十メートルぐらい深く入っていくわけでございます。それで私の言わんとするところは、炭鉱採炭というのは必ず坑道を前に掘りまして、採掘準備をしなければ掘れない。そうして出炭量がふえますと、どんどん炭をとっていくわけですから、それに応じた次の採掘場所用意をしなければならぬわけです。その用意が、ここまで出炭量が大きくなってまいりますと間に合わない。掘進が間に合わない。掘進技術というものが何か飛躍的に改善されるとか、そういうことになりますれば別でありますが、いまのところ現在の出炭と次の段階を用意するのがぎりぎりであるというのが、おそらくは実情だと思います。したがいまして、現存する炭鉱からということは大部分の山について非常にむずかしいのじゃなかろうか、こういう感じを持っております。  しからばその二千万トンというものがどういう意味を持つのか、こういう問題になってくるのでありますが、これは先ほど陳述でも申し上げましたように、私どもはやはりエネルギーソース多様化というものを考えるべきじゃないかと考えておりまして、油にしましても日本にはほとんどない、大部分外国から輸入している。ウランにしてもしかり。こういうことでございますので、石炭におきましても、エネルギー源というものを国内国外を合わせまして石炭というものをその一つに考える、こういう一つ考え方でないと意味がないのではなかろうかと思うのであります。私は、現在六千万キロワットくらいの火力発電設備かと思うのでありますが、昭和五十五年あたりには一億キロくらいにふえるというような話でありますけれども、その二五%、四分の一くらいは石炭でひとつやる、こういうふうな一つ考え方に立って、国内の二千万トン、そのうちの約半分は一般炭でありますけれども、それと国外から三千万トンくらいのものを輸入いたしまして、そして全火力の四分の一くらいは石炭でやる、こういうふうな意味において国内石炭というものは位置づけるべきではなかろうか、こう思っております。それが結局は、外貨の問題にも関係いたしますけれども国内採炭技術というものはいま世界的水準にあると私は思っておりますので、技術を温存していくということにもつながるわけでございまして、外国石炭はやはり非常にナショナルになっているわけでありますが、これをひもをつけてこっちに持ってくるにはやはり金と技術が要る、こういうふうに考えております。外国ではいま露天掘りをやっておりますが、だんだん坑内採炭に移っていかざるを得ない趨勢にありますので、日本技術というものはその点で非常に重要ではないか、こう考えております。したがいまして、ある程度金を出してそれから技術もやる。そういうことによりまして、石油と同じように国外石炭というものと国内石炭と合わせましてエネルギーの中に石炭というものを一つ位置づけする、こういうことが必要じゃなかろうか、こう考えております。  したがいまして、ついでに申し上げますが、先ほどちょっと触れましたように、そういう開発輸入というような問題になるわけでございまして、これにつきましては国内炭に圧迫を及ぼさない、これは当然の前提といたしまして、さらに国外開発につきまして、私はやはりバックアップする機関というものがほしい、こういうふうに考えております。石油につきましては石油公団というものがございます。それから非鉄金属につきましては金属鉱業事業団というものがありまして、探鉱の金とか、あるいは開発資金につきましての保証、こういうことをやっておりますが、石炭につきましては国内外合わせてそういうようなものの考え方をするという考え方がいままでないものですから、そういうバックアップ開発の金を保証するとか、こういう機構というものが全然ないわけであります。この際輸入についての統一窓口を設ける、こういうことと同時にそういうバックアップの機能を持たせるような機構というものをひとつつくったらどうであろうか、こういうふうに考えております。返事がたいへんそれてしまいましたけれども……。
  8. 田中六助

    田中(六)委員 そうすると、有吉会長の御意見は、せいぜい二千万トンから、中間答申にありますように二千二百五十万トン程度で、あと輸入炭に仰ぐ以外にないというような御見解のようですが、私はまさしく有吉会長のおっしゃるように、石油には石油公団金属事業には金属事業団というものがある。石炭にそういうものがなかったというのは、スクラップ・アンド・ビルドのうちビルドというのに焦点があるのじゃなくて、スクラップにあったからだというふうに考えますし、それから国内の、つまり保護が非常に手厚いから外向けのことに非常に頭が回らなかったということもあると思いますが、これからそういう点もおいおい検討すべく、しかも非常に急ぐ問題だというふうに考えております。  それから経理面のことでございますが、炭価引き上げ等政府助成をもう少しやってくれという御見解ですが、御承知のように、四十九年度予算でもすでに千百三十九億円が特別会計で、このうち政府助成している金といいますか、見ますと、坑道補助金、それから保安補助金安定補給金元利補給金再建交付金合理化事業団出資金、こういうふうに見ましても、トン当たり約二千二百三十六円ぐらいですね、これでもちょっと私はいまの石炭事業から足りないし、四十八年度のトン当たり赤字を見ましても、先ほどもお述べになりましたように、千六百五十円という赤字だということで、これをまず解決しなければ、やはり次のステップに渡れない大きな要素だというふうに思いますが、四十八年度はわかりますが、四十九年度はあらゆる与件といいますか、条件が一定としまして、赤字はどうせふえるのでしょうが、どの程度トン当たり見込んでいますか。
  9. 有吉新吾

    有吉参考人 現在の赤字は千六百五十円ぐらいでございますと陳述で申し上げました。それから四十九年度にいまわれわれが見込んでおります赤字増加額でございますが、これは千八百五十円見当ではないか、こういうように考えて、合わせまして三千五百円、こういうことでございます。これで私どもはいま、ひとつ三千五百円炭価を上げてほしいということを鉄鋼業界電力業界にお願いをしてまわっておる次第でございます。  もう少しこれをふえんして申し上げますが、この数次の肩がわりに至りましたその原因、あるいは労働者が集まらない、こういったものは、結局はやはり炭鉱の実態が非常に赤字でございましてどうにもやっていけない、こういうところに原因があるわけでございます。実際に公表をいたしておりますいわゆる決算面におきましては、千六百幾らというような、そういう膨大な赤字を出しておりませんけれども炭鉱が回っていくための、平たくいいますと、ほんとう損益計算といいますか、これをやってみますると千六百五十円、こういうふうなことになるのでございます。  もうちょっと申し上げますと、政府の御助成によりまして、三次にわたる肩がわりというものが実施されております。これはトン当たりにいたしますと、八百五十円ぐらいになるかと思うのでございますが、これは過去の赤字の償却に充てられる性質のものでございまして、その金は会社には入らずに、通り抜けて銀行の返済にいってしまうわけです。したがいまして、これをもって収入とみなすということは、ランニングに炭鉱を維持していくという立場からいきますと、これは収入として見るべきではないわけでございます。これが八百幾ら、これをはずして考えないと炭鉱は回っていかない、こういうことでございます。  それから、年々の減価償却と設備投資という問題が企業におきまして一番の重大な問題であります。普通の企業におきましては、最初に設備投資をやりまして、減価償却によってそれを回収をして、そうしてこれを銀行に返済をする、こういうことになるわけであります。  ところで、現在の炭鉱の減価償却と設備投資の関係がどうなっておるかと申し上げますというと、年々の減価償却を一〇〇といたしますと、設備投資は毎年毎年一五〇くらいあるのです。したがいまして、減価償却で留保したもの、それに上のせしてあと五〇というものを継ぎ足さないと炭鉱生産を維持するだけの維持企業というものができない、こうなっておるわけであります。したがって、およそ借金の返済なんかできない、そこのところに肩がわりになっていったそれがあるわけでございますけれども、毎年毎年減価償却の一・五倍もの設備投資をやっている、そういう企業というものはあるはずはないわけでございまして、これはどういうことかと申しますと、一五〇の約半分くらいは年々の生産を維持するためにさっき申しました掘進をやっておるわけです。その掘進費を営業費で落とすだけの余裕がないものですから、企業勘定にとっておる、こういうふうなことでございます。したがいまして、炭鉱が損益的に、あるいは資金的に回っていく、こういうふうな計算のたてまえから申しますというと、坑道掘進費のごときは全部営業費で処理しなければ、そういう姿でペイしなければ炭鉱は回らない、こういうことなんであります。大きな内容はそういうことでございまして、それに表向きに出ております赤字、こういうものを加えますと、千六百五十円あたりをひとつ補完をしてもらいます、そうすると、ようやく炭鉱というものは回っていく、こういう状況になるというのが実情でございます。  したがいまして、私どもは昨年の暮れの石炭鉱業審議会におきましても、石炭の見直しはまず第一に現在の赤字の正確な認識からひとつ出発してほしい、こういうことを申してきたわけでございます。それでまずひとつ回していただくというのが一つと、それから四十九年にいま御質問の千八百五十円くらい上がるのじゃないか、こういうことでございます。正確には二千百円くらいのコストアップになるのじゃないか、そのうちに今度の四十九年度石特予算におきましてトン二百五十円くらいの安定補給金の増加をしていただくことになっておりますので、これを差し引きまして千八百五十円、こういうふうなことでございます。  この内容を申し上げますと、そのうちの約六百円というものは物品費が上がる、金利が上がる、それから電力料が上がる、修繕費が上がる、償却が上がる、こういったもので約六百五十円くらいを占めておりますが、残りは大体労務費アップとして一応見込んでおるわけでございます。ただいま組合と賃金交渉を開始、きょう初めて回答するわけでありますが、そういうふうな段階でございますが、きょう十時半に一応組合に回答することになって、向こうの、御承知のように炭労、全炭鉱の賃上げ要求は、ベースといたしまして基準内三万円というのを一つ要求をされております。そのほかにメタルマイン、金属鉱山との給与の差額を、これをひとつ縮めてほしい、一緒にしてほしい、こういう希望で、プラス二万七千四百円、こういうふうなものが出ておるわけであります。石炭斜陽化になります前におきましては、炭鉱坑内労働者というのは全産業のほぼトップの賃金をもらっておったのでありますが、現在はおもな十七業種をとりますと、ビリか下から二番目、こういうふうなかっこうになっております。同じ地下産業でありますメタルマインとの間に相当の格差がありますので、これをぜひこの際直してもらいたい、こういうふうなことでございまして、それをあわせますと五万七千四百円、そういうふうなことになっております。これをそのままトン当たりに反映させますと、上がる分がトン三千円ぐらい上がるのではないか、こういう気がいたします。これはとても私は不可能だ、こう思うのでございますが、それできょう回答いたします金額は一方、本方七百三十円という金額を回答するのであります。向こうの要望はいま申しました五万七千幾ら、というのはいまの本方に直しますと二千五百五十円、こういうことであります。これに対しまして、七百三十円というような回答をするわけでありますが、この七百三十円でもこれをトン当たりに直しますと九百三十円になるのであります。この考え方は、金属鉱山の第一次回答というのがすでに出ておりますので、多少金属鉱山との格差を縮めるという意味でそれに多少の上乗せをいたしました数字がこの七百三十円でございまして、金属鉱山の第一次回答は一九%でございますので、全般的なアップ率から申しますとそれではとても済まないのじゃないか、こういう気がいたします。おそらく二五、六%というようなところにいくのじゃないかと思いますが、そういたしますと、いまかりにそういうものに歩調をそろえるといたしますと、いまの九百三十円と申しましたのはトン当たり千三百円か千四百円見当に上がるのではなかろうかと思うのであります。したがいまして、そういうことを考えますと、これは労務者の確保とかそういう面からいいまして、やはりある程度そういう方向をとらなければ石炭としては生産を維持するのがむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、したがいまして、私どもはいまお願いをいたしております三千五百円の値上げというものをぜひひとつ受け入れてほしい、こういう希望でおります。  鉄鋼、電力さんに私ども手分けしていろいろお願いしておるのでありますが、鉄鋼方面は大体まああまり反発はないのじゃないか、私はこういう感じを持っておりますし、電力さんは、いま電力料金値上げの申請中でございますけれども、役所のほうできめてくださればそれに大体従います、こういうふうな態度でございます。でございますが、だんだん三千五百円が少し下がってまいりまして、どうも三千円というようなオーダーの線がちらちらされております。いわんやそれに加えまして、海上運賃とかこういったものが上がってくるのは当然でございまして、その運賃の上がった分はさらにその三千円が減るのだ、こういうふうな考え方が私どもの耳にちらちら入ってくるのでありますが、それでございますと、もうとてもそういった賃金上げの余地などもございませんし、再びまた炭鉱というものは赤字だ、こういうふうなことになるわけでございますので、私はぜひこの三千五百円はお願いしたい。運賃が、海上運賃、下期からは鉄道運賃が上がりますが、これは当然それに上乗せしてひとつお願いをしたい、こういうふうにお役所のほうにもお願いしておるわけでございます。  それに関連いたしまして、基本的にどういう考えを値上げというものについて石炭業界は持っておるか、これはやはり大事な問題だと思いますので申し上げますが、いま油が上がりまして、油とのバランスを考えますと、石炭の値段を大体五千円か六千円上げたところで油の値段とバランスをする、こういう状態であります。しかし、私どもは三千五百円上げてください、こういうお願いをしているわけであります。その基本的な考え方はどういうことかと申しますと、私どもは、これだけ国の補助を受けて成り立っておる事業でございますが、要するに石炭というものを末長くひとつ温存さしてほしいということが中心でございまして、油が上がったからそれに関連をして値上げをしまして利益を出そうなんてそういう考え方は持っておりません。数年たちますと、端的に言いまして、現在の油というものが一定だといたしますと、油の値段よりも石炭のコストは高くなるという可能性は私は多分に出てくると思います。私どもは、現在その三千五百円というのは油よりずっと安いのですけれども、とにかく石炭が成り立つようにしてください、だから五千円上げてくれ、そんなことは言いません、こういうふうな立場でものを言っておりますし、かりに石炭が油より高くなりましても、先ほど申しますように、大きなエネルギー多様化という見地からぜひこの石炭が残っていくような、そういう考え方にひとつ立っていただきたい、つまり成り立つようにしてほしい、こういう基本的な姿勢でございますので、御了承願いたいと思います。
  10. 田中六助

    田中(六)委員 お説よくわかると思います。というのは、先ほどちょっと政府のほうに聞きましても、カロリー上から計算しても、石油が一カロリー二円、石炭が八十銭、それから最近のいろんな統計を見ましても、中共から十四ドル八十セントで買っていますし、インドネシアが安いといっても十一ドル台、それから高いDDオイルで二十何ドルとかいうようなやみ値があるくらいですから、石炭を温存する、見直すという点から考えましても、労務者のいまちょうど春闘の問題もありますし、特に海上運賃や国鉄運賃が含まれていないとすれば問題ですし、いずれにしても、油とのバランスを見ましても、これほど政府が狂奔している石油についての差額を見ましても、十分今回の石炭値上げ幅というものは考慮に値するというふうに私も考えますが、この点、私もこれからも政府に同じやるならちびちびやるなということを言おうと思っておりますが、いずれにしても、炭価引き上げ政府助成の期待ということについて、与野党あげて、労務者の確保という点もありますので、努力はしたいと思いますが、経営者、つまり大手八社といいますかのほうで、今度合理化するという面からライトを浴びせた場合に、そういう点の余地というものはあるのでしょうか。あるならばどういう点があるのか。そういう点もやっぱり皆さんお考えになっていないと、引き上げあるいはまた政府助成ということだけを強調しますと、やはりそこに私は私企業の限界があるということをいつも頭に置くのですが、その点はどうでしょう。
  11. 有吉新吾

    有吉参考人 コストばかりどんどん上がっていく、そのコストを保障してくれ、そういうサイドばかりの話ではこれはなかなか御納得をいただけない、こう思うのであります。私どもといたしましても、極力技術の革新とか合理化とかそういうことをやってまいりまして、三十四年の当時におきましては十四、五トンの能率があったものが現在六十五トンというところまで来ているわけです。引き続きそういう合理化というものに取り組んでおるわけでありますが、既存の炭鉱におきましては、一つ骨格構造ができておりますので、全般的な構造改変というものは非常にむずかしいのでございます。したがいまして、やはり中心というものは切り羽能率をどうするか、この辺が一つの大きな問題だと思っております。そういうことでございますので、したがいまして、四十九年度の実計におきましても五トン幾らの能率アップ、こういうふうなことになっているわけであります。  ただ、今後ともそういうふうに能率がどんどん上がっていくかと申しますと、これは実のところそうは期待できないのではないかと思います。と申しますのは、御承知のように炭鉱というのは炭量をどんどんとっていく事業でございますので、大体平均しますと一年間に二百メートルくらい先へ進んでいく。それから立て層でございますと、さっきは三十メートルと申しましたが、平均から申しますと二十メートルくらいはどんどん下へ下がっていくわけです。それだけやっぱり条件というものが悪化していくわけでありますが、これを克服してさらにというそういうふうな問題でございます。その辺をひとつ御認識をお願いしたいと思いますが、しかし、その辺をいかに保安確保しながら能率をあげていくか、これは十分ひとつ考えなければならない、こう考えております。
  12. 田中六助

    田中(六)委員 終わります。
  13. 田代文久

  14. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず第一に位置づけをぜひ明確にしてもらいたい、こういう話です。  この位置づけというのは、一体何を具体的に考えられておるか。よく石炭位置づけをしてくれ、こうおっしゃるわけです。またわれわれも位置づけをすべきだと、こう言う。しからば、位置づけというのは一体どういうことなのか。と申しますのは、いままで出炭については第一次答申以来、管理出炭規模というのを示しておる。第四次答申だけが、その出炭規模について触れなかった。しかし、第一次から出炭規模については一応触れておるわけです。ことに第一次答申でくずれたのは、四十二年に五千五百万トン、そして実トン数で五千七百万トン、そうして四十二年の在籍の労働者が十二万人である、こういうように出ましたのですが、ところがこれが位置づけでなかったということになるわけですが、一体位置づけというものは具体的にどういうものであるのか、どういうことを望んでおられるのか、協会が言う位置づけとは。これをひとつお聞かせ願いたい。
  15. 有吉新吾

    有吉参考人 位置づけとはどういうことかというお話でございます。端的に申しますと、現在の二千万トンというもの、大体そういう見当だろうと思うのでありますが、これをひとつ長期にわたって維持さしてほしい、こういうことが結論でございます。  先ほども申しましたように、ここしばらくは石炭のほうが安いでしょう。しかし、将来高くなる可能性があると私は思います。しかし私どもは、十年、十五年にわたりまして二千万トンというものを維持さしていただきたい。それだけの意義と申しますか、石炭の役割りと申しますか、そういったものがあるのではないか。その役割りというものをこの際——位置づけというのは、出炭はそういうのが出ておりますが、その役割りというものをひとつ再確認をしてほしいという意味でございます。  従来の考え方というものは社会政策的であり、地域経済的であり、雇用対策的であったと私は思うのでありますが、いまや私は、エネルギー多様化という意味技術の温存という意味、それからぎりぎりのセキュリティーという意味、それから外貨という問題も一部はございましょうが、そういうふうな意味から、国内炭だけに限ってものを考えずに、やはり石炭というものをエネルギーの中で位置づけして、その中で日本の二千万トンを維持することがどういう意義があるのか、こういう視野を広げた、産業として要るんだという、そういうものの考え方をひとつ確認をお願いしたい。それでなければ、二千万トンずっと続けていくというような考え方にならないのじゃないか、こういうことなんでございます。
  16. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は第一次答申の際も、当時労働者が十七万九千人いた。それを四十二年までに十二万人にする。こういう計画でしたが、それはもう三十八年度に実際十二万人台になった。ですから、答申としては五年間の計画が、閉山については一挙に一年間で終わった。それだけに出炭規模の維持もできなかった、こういうことなんですね。  ですから私は、位置づけというのは単に出炭規模だけでなくて、二千万トンについては、あるいは二千二百五十万トンあるいは三千万トンにしても、まず需要確保ということがあるでしょう。しかし需要確保だけでは、いままで電力も、かつて一次、二次、三次は買ってやると、こういったわけです。しかし供給する石炭がなくなった。そして専焼火力発電所も御存じのようにつくった。西日本火力もつくった。あるいは唐津の発電所もつくった。しかし多くの石炭はなくなった。こういうことですから、やはりそこには、需要確保だけで価格をどうするか、価格の保障というものがなきゃならぬ、コストに合う価格保障というものがなきゃならぬ、そういう幾多の要因があると私は思うのです、位置づけという問題は。  ですから、その点を明確にしないと、いままでの日本政策は、五千万とかなんとかは言ってくれるわけです。しかし、それを維持する条件というものについてはあまり保障がないというところにやはり問題があったのではないか。ですから私も、今度もそういうおそれが非常に多いと思うんです。エネルギー調査会でこの程度は必要ですと、こう言う。必要ですと言うけれどもほんとうにそれが掘れる保障があるのかどうか、永続的な保障があるのかどうかということがはっきりしない数字の羅列は、位置づけではないというように私は思うのですが、その点はどうですか。ですから、具体的に何と何と何の保障が必要であるか、こういう点をお考えになっておったらお聞かせ願いたい。
  17. 有吉新吾

    有吉参考人 供給というものが責任を持って長期に保障できるのかというのが一つの問題だと思うのでございますが、二千万トンというようなオーダーでございますれば、これは長期供給できるんじゃないか、私はこういうふうに考えております。それから値段というものも一つ条件、まあ高けりゃ買わない、従来のお情けで買ってやるんだというような、こういう電力を中心にいたしましては考え方でございました。それから鉄鋼につきましても、現在におきましては非常に石炭がないかないかという状況になっておりますが、私どもはカナダあたりで原料炭の山を開こうというようなことをやりましたときに、それはいまから六、七年ぐらい前になりますけれども、その当時の鉄鋼さんのお気持ちというものは、そんなよけいなことをしてくれるな、商社が一ぱい持ってくるので、それをたたいて買えばいいんだ、こういうふうな空気でございました。しかし、いまやそうでなくなっておりますし、このなくなっておる事態というものは一時的な現象じゃないだろう、私はこういう気がするのでございます。  それから発電のエネルギーとしましても、電力さんがほんとうにそういう気持ちになっておるのかどうか、やはり原子力を中心に考えるとか、そういうのが非常に強いと思うのでございますけれども、しかし従来のお情けで買うんだというようなところからは、相当の方向転換がなされているんじゃないか、こういう気がいたします。したがいまして、繰り返して申しますけれども、やはり石炭が必要なんだということを、いろいろな角度から確認をする必要が私はあると思うのでございますね。  それともう一つは、国内石炭というものを切り離してそれだけを考えるのでなしに、総合的に、たとえば経済性の問題であればどういう仕組みにするかというのは別ですけれども日本一般炭というのは八百万トンかそこらなんです。将来二千万トン、三千万トンというのを海外から持ってくるなら、それと一緒の形において価格というものを考えていくとか、もう一つは経済性の、どっちが高いか安いかの問題でなしに、絶対量を分散してソースを持たなきゃならぬというものに私はエネルギーというのはなっていくんじゃないかという気がいたしますので、その意味で原子力とか油とかそういうもの等を抱きかかえてひとつ考えていくという、そういう考え方が私は必要じゃないかと思うんです。そういうものこそ、総合エネルギー調査会とかそういうようなところで、私はぜひそういう筋道を通してつくっていただきたい、こういうことでございます。  それで、現実問題としてそういう一つ考え方に立って、石炭専焼の発電所をどういうスケジュールでつくっていくんだ、こういうふうなことを策定をしていただきますと——私ともいま海外石炭開発輸入にもう現実に取り組んでおるわけでございまして、電発さんをはじめとして、少なくも三百万キロワットぐらいのものをひとつ早くつくってください、こういう交渉も現に始めておるわけでございますが、それにはやはり石炭というものにある一つのパートをになわせるんだ、こういう考え方がきまりませんと、なかなかそういうふうな動きになっていかないわけでございます。そういうことの位置づけと申しますか、そういうことを再確認する、あるいは新たに認識し直すと申しますか、そういうことじゃないか、こう思っております。
  18. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全体的な、総合的なお話がありましたけれども、どうもその程度ではほんとう意味位置づけにならないんじゃないかという感じがするのです。位置づけというのはもう少しぴしっとした保障がなければ、たとえば石炭専焼の火力発電所を設けても——設けたわけですよ、かつて西日本火力だって唐津の発電所だって。しかし、現実には石炭がなくなってたけなかったわけです。ですから、石炭専焼火力というのは受け入れ体制からいえば絶対必要条件であるけれども、専焼火力があったからといって油がたけないわけじゃありませんからね。ただ、専焼火力がなければたけませんけれども、それがあるからといって、じゃ石炭のほうは安定しておるかといえばそういうわけでもない。ですから、そういう点はやはり今日の状態においてははっきり位置づけをしてもらいたいというのは、こうこうこういう条件において明確に保障してもらいたいということが必要ではないだろうか、こういうように思うわけです。  そこで、ちょっとお尋ねしますが、まず今日石炭からいうと、いままで苦難な時代から、必ずしも明るいとは言えませんけれども、とにかく油が高くなったという事実に接しておるわけです。  そこで、今日労賃の問題でも、メタルマインならメタルマインの労働者と同じようにするということが実現できなければ、将来徐々にそれは回復していくんですよというわけにいかないんじゃないかと私は思うのです。ですから、労働者確保の面からいいますと、この時点に条件をメタルマインならメタルマインに合わしていかないで、いつの日にかそういう条件がそろうときがあると思うのですけれども、それはどういうようにお考えであるかということ。  それから、時間がありませんから、大体炭価の点については希望がわかりました。私も、油が高いからそれに合わすというだけでは、将来油が安くなったときにどうするかという問題がありますから、とにかく永続的に石炭供給ができるような仕組みにしてもらいたいというのが一番大きい問題ではないか、こういうように思うわけです。  そこで、その一つの安定の問題ですが、先ほどちょっと触れられましたけれども国内炭海外炭の値差といいますか、それは私は海外も必ずしも安くはないと思います。しかし、やがて石炭も国際相場になる可能性もあるわけですから、そういう場合に、やはり条件の悪い日本国内炭というのはどうしても割り高になる時期がある。そういう場合には一体それをどういうように防止するつもりであるか。もう少し言うならば、価格調整をどういうようにお考えであるかということ。  それから、油と石炭全体との価格調整をどういうように考えるべきであるか。それは価格調整でなく、当然石炭安定、永続供給のために制度を設ける、あくまでそういう主張であるかどうか、こういう点。  それから、海外開発について先ほどから石油開発公団なり金属鉱業事業団のお話がありました。これはむしろ逆でして、石炭の場合は国内保護にわれわれは重点を置いておったわけですから、海外原料炭の場合にすべきではなかったという議論もあるでしょうけれども、むしろ政策が離反するということで、そこまではわれわれは手をつけなかったんです。しかし、海外開発をいよいよ本格的に石炭においてするというならば、それは当然行なうべき処置であると思いますが、その際、単なる金のバックアップでいいのかどうか。今後の状態を見ると、あらゆる国において政府借款といいますか、あるいは政府の援助、あるいは政府が援助をする方式、あるいはそれを求める国、こういう形が非常に多くなると思いますけれども、単なる金のバックアップだけでいいのかどうか、非常に権利関係がふくそうすると思いますので、政府が乗り出して石炭開発公団のようなものをつくって、融資でなくて政府みずからがやる必要があるのかどうか、それはどういうようにお考えであるか。以上、諸点をお聞かせ願いたいと思います。
  19. 有吉新吾

    有吉参考人 位置づけの問題に関連いたしまして、発電所をつくったんだけれども石炭が出なくなったんじゃないか、こういうことでございますが、これは私はなはだ言いにくいのでございますけれども政策に総合性がない、この結果だと思います。片一方につくっておきながら、片一方でどんどんこれでいかなければ死んでいけという政策、そこのところをもう一ぺん総合的に考える必要があるんじゃないかということを申し上げておるのでありまして、私どもは極力供給する努力を払ってきたけれども、成り立たないのです。だから、石炭業者がつぶれていったというのが事実でございます。つくってやったのにつぶしたじゃないか、こう言われますが、今度も同じように、外国炭を入れて石炭専焼をつくれというからには、やはりその辺の考え方をぴしゃっとしていかないと、高くったって使うんだという考え方をしていかないとまた同じようなことになるんじゃないか、私はこういう気がいたします。そこで私は、国内炭だけを相手として、それだけを考えるというような考え方では問題は解決しません、こういう話を申し上げておるわけでございます。  それから賃金の問題につきましては、おっしゃいますように、できればそういう格差是正というものをやりたいわけでございますが、石炭を包みます客観情勢というものは、あまりむちゃくちゃなことを申しましても、これはいまでも三千円というようなところに下がってきているような傾向があるわけでございますし、皆さんの需要家各位の認識と協力と、そういうふうなもとに徐々にこれは近づけていくべきじゃないか、こういうふうな考え方をいたしております。  それから海外炭との値差でございますが、国内石炭のほうが海外炭よりもコストが高くなるんじゃないか、そのときにどう調整するのか、こういう御質問かと思うのでございますが、それこそそういう可能性がありますれば、窓口機関を設けまして、そこで国内石炭海外石炭というものを、平たくいえばこれをプールにして考えるとか、そういうことが実現するならば、そういう方法だろうと私は思うのです。それで、経済原則からいいますと、油が高くなりますと、外国石炭も油の値段でしか入ってこないというのが常識でございます。これはよそを見ればみんなそうなっています。そこで、私はさっきから開発機構バックアップ機関と申しますのは、海外のものはコストが安いのですから、したがって、それを安く入れるということがまず大事な問題じゃないかと思うのです。そうすると、それには出資をし融資をし、こういう技術はこっちが持っていく、そういうことでなければ、ひももつけないし、安く持ってくることは不可能であります。安く持ってくることが実現しますならば、国内炭とプール的な考え方において、価格問題についてもある程度プラスの措置ができるんじゃないか、こういうような考えを持っておるわけでございます。  それから油との価格調整をどうするか、これは私もちょっとよい名案がございませんけれども、これこそもうちょっと広い立場におきまして、エネルギーというものは経済性の問題でなしに絶対量の問題である、こういう考え方に立って初めて調整できる問題じゃなかろうか、私はこう考えております。  それから事業団の問題でございますが、東南アジアとか、あの辺は政府借款でないといかないと思います。しかし、先進国につきましては、私企業ベースでやったほうがむしろいいんじゃないか、それをバックアップする、こういうことのほうが——カナダとかアメリカとかオーストラリアになりますと、そうであります。政府が直接の窓口に入るということを非常にきらうのです。そういうかっこうであります。ただ、インドネシアとか、そういうふうな後進国になりますと政府借款、そういう考え方が強いようでございます。したがいましてその辺はそういう幅の広い機構と申しますか、それのほうがあるいはベターかと思っております。  それから実動部隊でございますけれども、そういうバックアップ機関というものは、政府にやはり入ってもらった機関でないとだめだと私は思うのでございますけれども開発をやるのは、これは民間にやらしたらいいと思うのです。これは政府各社から人間を集めて混成部隊でやるというのは非能率きわまりない。それはやはり各社にやらして、一社でできないならば数社合同でひとつやったらどうか、こういうふうなことのほうがより効率的で、能率的である、こういうふうに考えております。
  20. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、労働者労働条件というのは、この際賃金だけでもいまの金属鉱業なら金属鉱業の水準にするということをやっておかないと、時間をかけて説得するといっても、どうも事実上むずかしいのではないかと思いますね。それはもちろん炭価の問題にかかるわけです。この際をおいてはそうチャンスもないし、では石炭における環境がだんだんよくなるかといいますと、労働条件についてはそうよくならないのじゃないか、こういうことを考えておるわけです。これは本委員会でも非常に重要視をしておるわけでありまして、今後政府なりあるいはまた業界の動向を見ながら委員会でも対処していきたい、こういうように思います。  それから、従来、原料炭輸入について石炭業界というのは比較的ものを言わなかった。それで鉄鋼業界と商社がおやりになる。この間稲山さんに鉄鋼連盟の会長として来ていただいたときに、鉄鋼自身も開発は資金がなくてできない、商社のほうが資金があるものですから商社におまかせしておるのです、こういうような話ですよ、話っぷりが。銀行のほうは、製鉄がやると言ったら金を貸さないけれども、商社がやると言ったら金を貸すんだ、こういう話で、鉄鋼業界でもそういう状態なら、石炭業界ではますます不可能であったなという感じを受けたのですが、そこでいまからの開発輸入というのは、やはり一般炭石炭業界としては考えられておるのですか、一般炭並びに原料炭込みで大体考えられておるのですか、どうなんですか。
  21. 有吉新吾

    有吉参考人 一般炭ということに限定いたしませずに、原料炭一般炭を含めまして海外開発ということを考えておるわけでございます。原料炭につきましては、先ほど申しました七、八年前は全くの買い手市場でございまして、商社がどんどん持ってきましてこれを買いたたけばいい、こういうふうなかっこうでございましたので、一つのルールができてしまっているわけでございますね。したがいまして、鉄鋼としましては、鉄鋼各社がばらばらに買いますと外国石炭をつり上げてしまうわけです。したがいまして、一括購入である。たとえばカナダに関しては日本鋼管が窓口である。オーストラリアは新日本製鐵が共同購入をやっておるわけです。そこで、石炭会社が海外開発をやりまして、私どもの基本的な考えは、国内石炭を掘っておる、それは石炭会社が鉄に売っておるわけですから、海外でジョイントでやって三〇%株を持っておるなら、その三〇%は国内でやったと同じように海外石炭会社が掘ったのだ、石炭会社がその三〇%の権利を持って、これを鉄に売るというようなこと、これはきわめて自然じゃないか、こういう主張を最初からやってきているわけですね。それが認められないのですね。要するにアウトサイダーみたいなことをやってもらっては困るということなんですね。それで全部こっちで一括して買いますからというような、そういうことなんですね。そうなりますと、海外石炭会社が掘りましても何のことはない、多少の技術援助のロイアルティーか何かをもらうくらいのことに終わってしまいまして、あんまり妙味がないわけですね。したがって、これは鉄鋼さんにとって非常な懸案なんです。現在では鉄鋼さんは、従来外国開発の場合に、シェアに参加して株を持とうという考え方は全然なかった。買えばいいんだ、買いたたけばいいんだ。現在では鉄鋼さん自身がエクイティーに参加する、こういうような方向になってきております。したがいまして、おっしゃいますように、鉄鋼でもやれないのに石炭会社は金がないのにやれぬじゃないか、こういうことなんですけれども鉄鋼会社は技術を持たないわけです。炭鉱会社は技術を持っているわけですから、金さえつきますれば炭鉱会社で、国内の新たな開発というのは残されているところはあまりないわけですから、外国でやる。それが大きくは原料炭にしましても一般炭にしましても、大きな意味一つ石炭政策じゃないか、こう思うんですね。したがってバックアップ機構と申しますか、金を出してくれるあるいは保障してくれる、そういうふうななにかができますれば、石炭会社としては従来の輸入機構でございますか、これに対する一つの大きな発言権を持ち得るのではないか、こう思うのでございます。ただ、私ども石炭を鉄さんに買ってもらっている立場のものでございますから、あまり露骨にそういうことを言うても、弱い立場にあるもんですから結局はなにでございますけれども、しかし石炭自身が自主開発をどんどん進めていくということになれば、おのずから状況には変化が起きてくるのではないか、こういうふうに思っております。
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、石炭業界としては、一体、国内石炭をどの程度出せる自信があるのか。それは何年、年度でもいいのですが、一体どのぐらい供給する自信があるのか。
  23. 有吉新吾

    有吉参考人 国内ですか。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国内。いま石炭業界としてはどの程度規模であってしかるべきだ、その供給責任はその程度なら持てますというのは、一体どのぐらいですか。
  25. 有吉新吾

    有吉参考人 これは先ほども申し上げましたように、大体二千万トンというようなところではないかと思います。スクラップされたなにがございますが、北炭夕張新鉱と有明というようなものも近く出炭開始になりますもんですから、そういうものを合わせますと、やっぱり二千万トンからまあ二千二百万トンという、そういうオーダーではないか、こういうように考えております。  それから、先ほどの金属との格差を一挙に縮めるべきじゃないか、こうおっしゃるその御趣旨はよくわかるのでございますが、いま現実に三千円というような線がちらちらしておりますと、これは格差を縮めるどころではない。金属の上がった分と同じ分くらいをなにするというのがようやくじゃないか。現実問題はそういうふうなかっこうになっております。
  26. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  27. 多田光雄

    ○多田委員 どうも御苦労さまです。時間もありませんので、たいへん失礼ですけれども、ひとつ簡潔にお答え願いたいと思います。  昨年の暮れの石油危機以来、エネルギー問題が非常に深刻な問題になり、エネルギー危難と、これは国内立場からですが、そういうこともいわれているわけですね。  そこで私はまず第一にお伺いしたいことは、今日いわれているエネルギー危機という中で、石炭産業界としてエネルギーの重要な一翼をになってきた立場会長さんとして、どういうふうな反省をされているのか。なければ、ない。あれば、ある。あればどういう中身のことを反省されておるか、それをまず伺いたいと思います。
  28. 有吉新吾

    有吉参考人 私どもとしましては、十数年にわたります石炭の斜陽化の段階におきまして、石炭位置づけをやってくれとか再認識をしてくれ、そういう主張を繰り返してやってきたわけでございますけれども、そういう努力におきまして、多分に、従業員もそうですけれども、みずからがやはり敗戦思想と申しますか、そういう一つの空気におちいっておったということは反省すべき点だろう、こういうふうに考えております。
  29. 多田光雄

    ○多田委員 それから、先ほど有吉参考人エネルギー多様化とセキュリティーということをおっしゃいましたけれども、あなたのおっしゃるセキュリティーということはどういうことでございましょうか。
  30. 有吉新吾

    有吉参考人 これは一般にいわれておりますセキュリティーでございまして、国内石炭というものは八百万トンかそこらでございますけれども海外石炭のソースを一カ所にまとめるということは非常に危険だと思うのでございます。これを分散をしてソースを確保しておく、こういうふうなことによりまして、いわゆる最後の保安電力と申しますか、こういったものぐらいは最悪の場合確保する、こういう意味でセキュリティー、こう申しております。
  31. 多田光雄

    ○多田委員 この委員会でも、石炭問題が中心ですからずいぶん論議され、実は見直しということばも石油危機の起きる前からいわれてきているのですね。この見直しの中身は人によって理解がさまざまだろうと思いますけれども、特に石油危機以後はっきりしてきたことは、日本エネルギー源の大宗を海外に依存している。一たん事があったらどうなるんだろうか、問題はここなんですね。価格も上がってくる、量も思わしく入ってこない。そこからくるものは、日本資源を大事にしていかなくちゃいけない。できるだけ日本資源を活用していく。これはこの間、鉄鋼連盟の稲山さんも、一つの反省として資源をもっと大事にしていかなくちゃならないということを言われていたし、そのとき来た参考人の方も、炭鉱労働者はいまとなっては国の戦士である、こうまで言っておられるわけですね。そういう意味からいうならば、いま有吉さんがおっしゃるセキュリティーというのは一体どういうことなのか。いま国民一般が常識で考えている石炭の見直しということから、失礼ですけれども、ちょっとずれているのじゃないかというふうな感じが私はするわけなんですね。  実は私は、いまの日本石炭業界石炭産業復興をにない得るだろうか、これを考えているのです。先ほどいろいろ日本石炭位置づけという御意見を述べられてきたと言ったわけですけれども、たとえば三池の争議前後にしても、炭鉱労働者あるいは私どもが言ったのは、一つは、日本石炭を守れ、これだったのですね。同時に、自分の生活権を守ってくれということだった。ところがこの十数年のうちに二十万近い炭鉱労働者が首を切られている。それから五千数百万トンの山が閉山していく。これだけのスピードで一つの重要産業が崩壊していったのはおそらく海外にもないだろう。海外だったらおそらく百年、百五十年かかったことじゃないかと思う。外から見てまことにむごい山の取りつぶしだ、こう思うのですね。ところが、会長さんたちは、先ほど石炭産業見直しと言われたけれども、実際は政府と並んで炭鉱をつぶした張本人であった、率直にいって私はそう見ざるを得ない。  それからいま一つ。これは時間が長くなりますけれども、その後の撤退のしかたがまたたいへん問題があると私どもは思っている。たとえば先ほどから会長さんは赤字赤字と主張しておられます。なるほど今日の炭鉱経営赤字でしょう。しかしどういうふうにして赤字になったのか。たとえていえば、三菱にしても常磐にしても太平洋にしても、あるいはおたくの三井にしても、炭鉱部門の分離独立をやりましたね。残ったものは、炭鉱経営には長期の借金、それなんです。そしていままでの膨大な資産というのは、どこかの不動産会社か別の資本のほうに逃避してしまっている。そして炭鉱赤字だから政府は金を出せ。局面だけ見れば確かに赤字なんです。  それからもう一つの典型は北炭です。北炭観光というのをつくって、含み資産を含めてそっちへ約一千億といわれるものをやってしまって、そして炭鉱赤字だ、新鉱も開発するから何百億の金を出せ、撤退のしかたまで国庫に依存して、商法を非常に巧みに利用して資本の逃避をやってきた。そしていま赤字だからという。確かにいまの帳簿を見れば赤字でしょう。私はこういうやり方をやってきた資本にほんとう石炭見直しがあるかどうかという疑問を持っていたけれども、いま有吉参考人の御意見を伺っていると、これほど、日本の大事な資源をもっと掘れ、この委員会の中でも与野党含めてもっと石炭を掘らなくちゃならないといっているときに、二千万トン台だ、そしてこれを残してほしい——残してほしいというのは、石炭は掘らないんだ、大手六社だけを残してほしい、こうしか私どもには聞こえない。つまり一般炭外国から入れなくちゃいかぬ。足りないものは入れなくちゃならぬでしょう。こういう中で、なぜ過去を反省されて石炭ほんとうに国民の期待に向かって掘っていくという立場にならないのか。依然として明治以来の炭鉱資本の根性がそのまま出ているというふうに私声を大きくして言わざるを得ない。いまの段階でも、五千円から六千円の油との差があるけれども、三千五百円のアップしか要求しない。これは何でしょうか。どこに遠慮をされてそれを言われるのでしょうか。しかも炭鉱労働者は、おっしゃるとおり、最もひどい地下産業でありながら最低の労働賃金をもらっている。いま賃金を上げなかったらどうにもならないのです。  そこで、私は二つお伺いしたい。  何に遠慮をされて、五千円、六千円の油との差があるのに三千五百円しか要求されないのか、これが第一点。  それからもう一つ炭鉱労働者平均年齢は四十二歳です。これは三、四年したらどうしますか。あなた方の言われる二千万トンすらもあぶないでしょう。一体これに対してどういう具体的な対策を持っておられるのか、ここが試金石なんです。ほんとう石炭を見直すという国民や社会の要望に石炭産業自身が先頭に立ってこたえるかどうか。  その二つをお伺いしたいと思います。
  32. 有吉新吾

    有吉参考人 先ほどセキュリティー問題で、私いささかことばが足りなかったと思うのでございますが、おっしゃるとおり国内石炭というものをまず根幹にいたしまして、しかしもう少し範囲を広げてものを考えていくべきじゃないか、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから、御質問の前に、分離に関する問題が出たのでございますが、これは、時間もございませんが、役所のほうの御指導もいただきまして、分離に関しましては、石炭部門とその他部門の資産の分割というものはきわめて厳正に行なわれておることだけを私は申し上げておきます。片方にどうこうしてというような、そういうことじゃ絶対ございません。  それから、御質問の第一の、五千円も油との差があるのにどうして三千五百円しか要求しないのか、こういうことでございますが、これは簡単に言いますとごく一般的な、飛び離れたそういうことでなく、需要家さんというものを控えましてやはりほどほどのところが妥当じゃないか、平たく言うとそういうことでございます。それと同時に、先ほどから申しますように、われわれは値段を上げてもうけようとか、そういう考えでなしに、とにかく長く石炭というものを維持していきたい、そういう考え方からせめてこのくらいはひとつ認めていただきたい、こういう姿勢であるということをお答え申し上げたいと思います。  それから老齢化の問題でございますが、確かにいま平均四十二歳でございまして、このままいったらどうなるのかというのが一番の問題でございます。したがいまして、私どもとしましては、何とか若年労働力確保するということで、当面は再雇用とか、そういうような方向をとりまして労働力の充足をはかってきておるのでありますが、これではやはりおっしゃるように先々問題がございますので、石炭というものに対する考え方を、国をあげて、私どもはもちろん先頭に立ってお願いするわけでございますが、はっきりさせていただきまして、それから労働条件、福利条件も一応整えまして労働力の勧誘にひとつつとめるしがなかろう、こういうふうに考えております。  なお、当面の具体策としましては、北海道で一部行なわれておるのでありますが、炭鉱就職の奨励金制度とか、あるいはいま年金制度があるのでありますが、この辺をもう少しほんとうに役に立つ程度まで引き上げるようなことを考えなければならぬのじゃなかろうか、こう思っておりますのと、さらには、昔各会社でやっておったのでありますが、鉱山学校というのをやっておったのであります。こういったものを国の力によりまして九州、北海道あたりに一つ設けていただいて、後継者を養成をしていただく、そういうふうなことを考えておる次第でございます。
  33. 多田光雄

    ○多田委員 十年前千二百円ダウンしたときも、これは電力、鉄鋼その他のユーザーに屈服してしまっているのです。もちろん石油が入ってきたという基盤を背景にしてですよ。今度もそうじゃないのですか。ほんとう石炭を見直してあなたのおっしゃる日本エネルギーのセキュリティーを守っていくというのであれば、石炭産業として長期の計画を立てて労働賃金をこう上げなくてはいけない、したがって炭価もこうすべきである、この積極性が伺っていても見えないのですよ。さっき多賀谷さんが何度もお聞きになっているのはそのことなんです。石炭産業としての自主的な態度が見えない。国が何とかやってくれるでしょう、これなんです。私が奇異に思ったのは、利益を考えていない。こんな企業がいまあるでしょうか。それでは一体どこからやるのですか。国からですか。結局、三井の資本のグループの場合は、石炭産業を生かさず殺さず、そうしておいたほうが国から資本をもらえるから。足らないものは外国からどんどん入れていく。これでございましょう。あなたははしなくも、利益も要らない、こう言っている。そんな企業の姿だから、ほんとう労働者の賃金を上げて石炭を掘っていくという前向きの姿勢が生まれてこないのだ。私は初めてです、利益を考えないという企業は。利益をどれだけあげるかはあなたの苦労ですけれどもほんとう石炭産業を見直していくという国民の期待にこたえる姿勢に石炭業界がなっていない。だからいま四十二歳の平均年齢。もう四、五年したら五十歳ですよ。これがどうして二千万トン掘れますか。いまですらあなたがおっしゃったようにぎりぎりの最高の能率で働いているわけでしょう。そしていまの賃金でかりに一万、二万上がったって、炭鉱労働者が来ますか。経営者はリアリストだ。それから見たって、一体炭鉱労働者が来るでしょうか。来ませんよ。それをどうなさるのでしょう。いま大事なことは、あなたのおっしゃるセキュリティーという立場、それから日本エネルギーほんとうに守っていくという国の百年の大計。そこから言うならば、もっと長期の計画を自主的に立てられる、炭鉱労働者の賃金を上げていく、保安も守っていく。これだけの金をどうするのだ。鉄鋼もあれだけもうけているのだから出しなさい、電力も出しなさい。もちろんこれは常識のあることですけれども、そういうことがいま必要だ。参考人の方に声を大にして言うのは私ははばかりたいところですけれども、あまりにも炭鉱の崩壊が激しかったし、政府と一体となって炭鉱の取りつぶしをやって今日のエネルギー危機を招いた責任の一端を持っていると私は思うからなんです。  それから月刊雑誌の「経済人」というのを見ましたら、住友石炭鉱業株式会社管理部で、かなり長文の石炭の問題を出しているのです。これを私ちょっと読んでみます。こういう考えは業界の中にあるのでしょうかね。こう書いてあります。「現在の石炭各社の内、大手といわれる九社が年産二、〇〇〇万トンの内一、八〇〇万トンを出炭しているが、実態は殆ど石炭採掘部門を分離して採掘のみの子会社をもって操業している。」これが赤字なんです。うまく資本は逃げちゃった。「政府はこれらの生産会社に対し、種々の名目でトン当り約三、〇〇〇円程度助成を行ない、出炭規模の維持を図っているが、親会社は独自に業績の回復を狙って脱石炭の方向を模索してきた。」そのとおりなんです。「即ち石炭生産部門についてはすでに私企業ベースでは操業が不可能であり、今後生産の維持、又は増強を図る場合も強力な政策による助成がなければ達成は困難である。」ここでまた助成を求めているのであります。こういうものの考え方について有吉参考人はどうお思いでしょうか。賛成でございましょうか、それとも意見がおありでしょうか。
  34. 有吉新吾

    有吉参考人 大部分の会社は石炭を分離いたしておりますが、分離いたしたいといいましても、これは一〇〇%の持ち株でございますので、実態的には何ら変わりはない、私はこういうふうに考えております。それと石炭以外の分野の拡充を考えるということは、大きく考えまして決して石炭にとってもマイナスではない、私はこういうふうに考えております。石炭から逃げていくのだとか、そういうふうなことではございませんで、やはり石炭以外を拡充していくことによりまして、石炭の人間もそこに将来はどんどん吸収していける、こういうことにもなる。直接の労働のなにでございませんけれども、そういう意味で多角化していくのは決してマイナスではない、こういうふうに考えております。
  35. 多田光雄

    ○多田委員 私も多角化は反対しているのではないのです。いまの段階はむずかしいけれども、将来おそらくこれは原子力をもっと充実しなくてはならないでしょう、だから石炭石油も、なければ入れなくてはいけません。しかし大事なことを言っているのは、会長さん、セキュリティーということばですよ。ほんとうに国の経済、将来を考えれば、日本資源を大事にしなかったら、また再びこの危機はこないという保障は一つもありませんよ。私はくると思う。中東は何にも解決しておりませんからね。それからほかの国もエネルギー危機ですから、自国の資源を大事にするでしょう。炭価はどんどん上がっていましょう。だから私ども石炭をもっと大事にして掘らなくてはいかぬ。掘るといったってあした一千万トン掘れるわけじゃありません。あなたのおっしゃる長期の計画を立てなくてはなりません。長期の計画の中に労働力やその他をきちんと置かないと、幾ら口で長期長期といったってそれはくずれてしまうからです。  そこでお伺いしたいのですが、今度の賃上げが、先ほど来も質問ありましたけれども、私は一つの試金石だと思います。ここでほんとうに賃上げをして、労働者炭鉱にいるという希望を持たせることなくして二千万トンもあぶないだろう、こう思います。そこで炭鉱労働者の賃上げに対してどういうお考えでいるのか、これが一点であります。  それから保安の問題です。これが依然として大きいのです。これに対してどういうふうな対策を立てられて、ほんとうに最大のネックになっている労働力確保されようとしているのか、それをひとつ会長から伺いたいと思います。
  36. 有吉新吾

    有吉参考人 今度の賃上げに関しましては、基本的には、やはり坑内産業に働く人の賃金を同じようなメタルマインの賃金に近づけていく必要があろう、こういうのが基本姿勢であります。
  37. 多田光雄

    ○多田委員 そのメタルマイン並みにされるのは何年くらいの計画ですか。
  38. 有吉新吾

    有吉参考人 それは、いまの石炭の値段のアップ等とも関連をする問題でございますが、それとメタルマインそのもののベースの賃金がどのくらいにきまっていきますか、それから炭価がどのくらい上がるか、こういう問題に関連をしておるわけでございます。基本的にはしかしそういうことを考えなければならぬ、こういうふうに考えております。  それから保安に関しましては、趨勢といたしましては、災害率にいたしましても、死亡事故にいたしましても、非常に減ってきておるのが現実でございますけれども、私どもといたしまして死亡事故ゼロを目ざしまして努力しなければならぬ、こういうふうに考えております。この前から、某会社におきまして引き続き相当の事故もありましたので、私どもといたしましては、いま九州、北海道に、大学の先生等の御助力を得まして巡察団を派遣をしてやっておりますし、なお保安というものは責任者の考え方いかんというものが非常に大きいと思いますので、業界の会合におきましてもその点を重々みな話し合いまして、事故の絶滅に向かって努力をいたしております。災害率そのものは、非常に少なくなってきておるのは事実でございますが、これに満足しておるわけではございません。
  39. 多田光雄

    ○多田委員 最後に、前回石炭協会会長さんに聞きましたら、私企業としては問題だ、そして、公社か何か、そういう公的なものにしなければならないというお話があったし、いま労働力確保する上でも、ほんとうにこれは私企業の限界だな、私はそう思います。ですから、私どもとしては、いま石炭ほんとうに復興させていくためには、閉山した山もある意味では公的な手でやらなければならない、一時は私企業も併存するとしても。そういう考えでおりますけれども、協会の内部として今後の経営についてどういうふうにお考えになっておるのか。特に公的な機関で経営をやったほうがいいのか。それとも、いままでの大手の何社かでやっていったほうがいいのか。そういう点御検討になっているかどうか。  それからもう一つ、この際、電力、鉄鋼に対して堂々と論拠を述べられまして、炭鉱労働者の賃金を上げるということもあるし、石炭産業の安定的な発展というためにも、堂々とおやりになれるかどうか、これは同じグループの中でもたいへんだろうと思うけれども、私は資本に大きな責任があると思うのです。  その二点を伺って終わりたいと思います。
  40. 有吉新吾

    有吉参考人 第一点は体制に関する問題でございますが、確かに現在の石炭事業は、私企業とはいいましても、実際にはトン二千円見当の国の補助のもとに成り立っておるわけでございますので、業界の意見としまして、何らかの一つの体制問題というものは前向きに検討する必要がある、こういうことで意見が一致をいたしております。いかなる機構、体制がいいかというのは、具体的に詰めるわけでございますけれども、一番の問題は各企業間に非常な格差があるということでございまして、たとえば三千五百円上げる、こういうふうになった場合でも、それで足りないところもある、あるいは余るところもある、こういうことかもしれません。そういう一つのなにがあります。二千万トンをみんなが残って維持していくということになりますと、全部の炭鉱が残るようなかっこうも考えなければならぬわけでございます。したがいまして、格差をどうやってプールしていくかというところが、一つのどういう方法がいいかという焦点の問題になるのではなかろうかと考えております。ただ、完全な一つの国有とか、実際はそれは不可能でございましょうが、機械的に一本化するというようなことで問題が解決するとは私は思っておりませんけれども、私企業としてということは、さいぜんから申し上げておりますように、将来コストが高くなっても大きなエネルギーの中に包摂して考えてほしいという意見の中にも、やはり体制問題には前向きに業界として取り組まざるを得ないし、ひとつこれから検討を始めようじゃないか、こういう姿勢でおります。  それから、あと鉄鋼、電力に堂々と話をするのかということでございますが、従来のなにに比べまして、私ども今度ほど、電力さん、鉄鋼さんに堂々と話を持ち込んでやっているときはないわけでございまして、もうちょっと堂々と胸を張ってやれ、こういう御意見だろうと思うのでございますが、石炭というものをもう一度見直した基本的な存立意義と申しますか、そういうものに立ち返りまして、私どもも、従来の気持ちから脱却いたしまして、鉄鋼、電力さんに接触を持ちたい、こういうふうに考えております。
  41. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  42. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  43. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 有吉会長さん、たいへん御苦労でございました。時間もおそくなりましてたいへん御迷惑と思いますが、一、二お尋ねいたしたいと思います。  先ほどいろいろ御説明の中に、炭価引き上げの問題も出ておるようでございましたが、四十八年度も原料炭が五百円、それから電力用炭が二百五十円、このように引き上げて、なおかつ国の助成をやって、そして赤字である。非常に困っておる。まことにごもっともなことでございますが、この赤字経営現状を打破するには、今日石炭が見直されて、皆さんが一生懸命やろう、五十一年度の出炭目標は二千二百五十万トンで行こう。ところが、「石炭時報」でございますか、あれで私、拝見しまして、協会の皆さま方の御意見として、企業の体力回復をはかることが最も肝要である、こういうことでございましたが、それはどういうことを意味しておるのか。時間もございませんので若干でよろしゅうございますが、承りたいと思います。
  44. 有吉新吾

    有吉参考人 一番ポイントは、先ほどから申しました千六百五十円という現在の赤字でございます。まずその実態がこういうふうに赤字であるということを認識してもらって、それを正常に回っていくような姿にしてもらうということ、これがまず先決だと思うのでございます。従来は、そういう赤字の上に年々のコストアップ分を、炭価アップとかそういうもので、不十分であったのでありますがやってきて、現在千六百五十円というのはそういう実質赤字があるということでございますので、その辺がとにかくほかの事業と同じように正常に回っていく、こういう姿にまず置いていただくことが根本であろうと思うのであります。  それからもう一つは、労働力確保がさっきからありますが、これが何としましても大きな問題点だろう、私はこういうふうに考えております。
  45. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまのお話でよくわかりますが、そうだろうと思います。  労働力確保ということをおっしゃっておるようですが、これも先ほどから御説明があっておりましたので、私、了承いたしておりますが、これはたいへん申し上げにくいことですが、有吉さんが御関係なさっておるから申し上げるのですが、三井関係が、手っとり早く申し上げて大牟田でございますが、地場賃金が非常に安くて、一般の労働者も困っておられるのですよね。というのは、その中心をなしておる大牟田のつまり三池炭鉱のおたくの賃金が安いから、それが基準となって地場賃金が非常に安い。まあ、大牟田の三井か三井の大牟田かというように、もう一木一草に至るまで全部三井の息がかかっておるものですからね。でございますから、三井の賃金体制が非常に安いから地場賃金が安いんだ、非常に困る、何とかしてその三井がいま少し賃金を上げて気ばってもらわぬと困る、こういう声が非常にいま大牟田ではほうはいとして起こっておるわけなのですね。口をついて出るのは、もうすぐに、三井がもう少しやってくれぬと困る。したがって、三井関係もみなそうなのですが、あそこに関連企業もございますが、そういう点からいたしまして、いまおっしゃるように、企業自体が赤字で非常にお困りで、賃金を上げるということもなかなかむずかしいということはまあ常識としてわかりますけれども、やはり何らかの方法によって、先ほどからお話があっておりましたように、労務者を確保するという点からも、現在の賃金体制では非常に不満であるということは事実でございます。で、この点を何とかお考えがございますならば、まあ、石炭協会会長としてきょうはお見えになっておるので、三井の社長を相手にお話しするようなことじゃはなはだ相済みませんけれども、しかし、これは何といいましても、三池鉱業所といえば日本でも大手の最たるものでございますので、その点をちょっとお尋ねいたしたいのですがね。
  46. 有吉新吾

    有吉参考人 おっしゃいますように三池、坑内は別でございますが、坑外の賃金というのはやはりレベルが低うございまして、これはまあ、この十数年にわたる石炭斜陽の中でそういうふうな位置になっているわけでございますが、最近あの地区に日立造船だとかいろいろ企業が進出いたしまして、その辺と坑外労働者の賃金との格差というのが相当目立ってきておりますので、いずれの時期かやはりこれはその辺の調整をやらなければならぬ、こう考えておったのでございますが、今度のベースアップによって基本的にはメタルよりも多少上乗せする、こういうふうな基本姿勢をとっておりますので、坑外関係につきましても相当改善が行なわれるのではなかろうか、その結果としましては、ほぼバランスのとれた姿になるのじゃなかろうか、こういうふうに私は考えております。
  47. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 おたくの「石炭時報」でございましたか、あれにも、今日の石炭産業の再建、また将来の前進を続けるというためには、まず国内炭の明確な位置づけが最も大事だというようなことを私拝読したことがありますが、三池のおたくの炭は、これはもう国内炭の最も大きな役割りをしておられる一番大事なところだと思うのですよね。そこでこれを、いわゆる国内炭の明確な位置づけをするという意味からいたしましても、三池炭鉱に働いている皆さんの労働条件をよくしてそして成績をあげていただく。それはむろん、サルファが高いから非常に貯炭が多かったというようなこともかつてあったし、いまも幾らかあるかと思いますけれども、それはまた輸入炭によって混炭ということもありましょうし、まあ北海道のほうからでも何とかできると思うのですが、とにかく要するに二千二百五十万トンの位置づけをするためには、やはり有力な出炭の片棒をになってもらわなければならぬ三池炭鉱だ。そうしますと、やはりどうしても労働者の住みよい、明るい職場にしてもらわなければならぬ。そうなると、労働条件としてはまず第一に賃金の問題だ、それから福祉施設の問題も——これははなはだ恐縮でございますけれども、私地元だものですから、大牟田にはしょっちゅう朝晩参りますが、やはり福祉施設、環境も非常に悪いですね。社宅なんかも非常に悪い。これはむろん新興炭鉱ではなくて、もう一番古い昔からの炭鉱でございますから、自然そういうことも考えられると思いますが、私は、社宅なんかももう少しきれいにしていただいて、福祉施設なんかももっとよくしていただいて、そして賃金を上げていただきたいと思うのですがね。また、そういうことが大牟田全体が救われることになると私は思うのです。  御承知かと思いますが、大牟田はかつて人口が二十二万あったのですね。いまはもう十七万を切っているのです。いま毎月、月に五百名ずつぐらい人口が減っております。毎月です。これは社長さんにたいへん相済まぬが、炭鉱を見限って出ていく人が多いのですね。私は大牟田に行くたびごとに、炭鉱はやめぬぞ、まだまだこれからうんとやるぞ、今度はもう油がのうなったから、炭鉱の炭ばかりでこれからはやるぞ——少しくオーバーに言わぬとね。だから見限ってはいかぬぞ、離れるな、炭鉱が一番ようなるぞと言うて、行くたびにみんなを励ましておるのでございますが、まあ私がそう言ったからというわけではございませんけれども、なるほど賃金もこんなに上がってきた、今度はちょっとはようなってきたということを少しやってもらわぬと、どうも調子が悪いのですよね。でございますので、石炭協会会長さんに大牟田のことばかり申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、私、まあ有吉会長さんと心やすきがままにこういうことを申し上げたわけでございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  48. 有吉新吾

    有吉参考人 今度は賃金と並びまして、いまおっしゃいましたような環境福祉関係の改善、これをひとつぜひやりたい、こういうふうに考えております、九州、北海道を通じまして。ことに三池は非常に坑内外ともの合理化をやってまいりましたので、人の数も相当減っておりまして、あちこちあき家と住んでいるものが混在しているというようなかっこうでございますので、何とかひとつ社宅の集約をやりまして、その機会に、新しいアパートももう現にありますが、新しい住宅をひとつつくりまして、その辺の集約をしたらどうか、こういうふうな考え方をいたしております。古いなにでございますので、ちょっと印象がグルーミーなところもありますので、ひとつ明るい職場というか、環境にと申しますか、こういうものにできるだけひとつ切りかえていきたい、こういうふうに思います。
  49. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まことにどうもありがとうございました。ぜひそのようにお願いをいたしたいと思います、もうあき家が一ぱいありまして、よからぬこともあるようで、環境が悪くて私どもも実は困っておるのです。どうぞひとつそういう点をすきっとしていただいて、さすがに三池炭鉱健在だというところを皆さんに見せていただきたい。私どももできる限り応援は申し上げたいと思いますので、よろしくどうぞ。  ではこれで終わります。
  50. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  51. 田代文久

    田代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を続けます。  ただいま参考人として、日本炭鉱労働組合中央執行委員長里谷和夫君、全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長早立栄司君及び全国炭鉱職員労働組合協議会議長木崎順二君の御出席をいただいております。  参考人の各位には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本件につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますが、時間等の都合もございますので、御意見開陳の時間はお一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対して質疑をいただきたいと存じます。  まず里谷参考人にお願いいたします。
  52. 里谷和夫

    ○里谷参考人 炭労の里谷であります。  石炭対策特別委員会では石炭産業安定のためにたいへん真摯な御議論をいただいておりますことを、この席をおかりいたしまして厚く御礼申し上げる次第であります。  私は、参考人といたしまして四点の問題について意見を申し述べさせていただきたいと思います。  第一でありますが、石炭政策ができ上がりましたのは昭和三十六年でございますが、私どもは、石炭産業政策設置の内容につきまして、自来十数年間国内資源の愛用をはかるべきであるという前提と、石炭は唯一の国内資源であるということで、石炭を広く活用する、そういうことを主張し続けてまいりました。その中で、いろいろ非難も批判もございましたが、やがて日本エネルギー事情は輸入にだけたよっていたのでは必ず困難な時期がくるであろう、こういうように指摘をしてまいりました。石油にいたしましてもあるいは輸入炭にいたしましても必ず高価格の時代がくる、この点も指摘をしてまいったところであります。昨年の八月でございますけれども、私ども昨年暮れの深刻なエネルギー事情等を推察をいたしまして、資源エネルギー石炭部にも石炭政策を見直す必要があるということでいろいろ申し入れを行ない、話し合いを進めてまいりましたが、五次政策の途上であるということで、石炭を新しく見直すという問題についての具体的な回答はございませんでした。  しかしながら、昨年の十月以降の変動によりまして、ついに石炭を見直しをしなければならぬという意味で、十二月七日石炭鉱業審議会が開催をされまして中間報告ということになったのであります。報告にはなっていますけれども、炭労的な見方であの報告の内容を申し上げますと、石炭の見直しあるいは位置づけの問題について、この報告の内容を有するものについて確固たる基礎がないのではないかという指摘をいたしました。通産省の答弁といたしましては、石油輸入の問題についても、あるいは輸入炭の問題についても、当時の分析では確固たる確信がないという前提で、きわめて不明確な内容の議論にしかならなかったのであります。しかしながら、石炭がどうしても必要であるという事態にはなった、こういうことで一般炭の百万トン程度輸入あるいは四十九年度の石炭特別会計を前向きに見直す等々の内容で、実は報告がされたのでありますけれども、このとき炭労が主張いたしましたのは、可及的すみやかに、しかも報告そのものは抽象的でなくて具体的な位置づけを行なう必要がある、しかも、それはきわめて早期に立てなければならぬ、こういう意見を申し上げまして、鉱業審議会の席上ではそのように対処する旨の議論があって、中間報告がされたのであります。  それ以来、石油の問題について、あるいは輸入石炭の問題について、あるいは国内炭開発の問題についてずいぶん議論はされているのでございますけれども、当面まだ具体的に石炭の見直しはかくあるべきだということについて私どもは何らの提起も受けていないのであります。当面の石油事情をわれわれなりに判断をいたしましても、早期に石炭政策をつくらなければならぬという意見を持っています。そういう意味で本委員会でも十二分に石炭見直しについての具体的な政策立案について御協力をいただければ幸いだと思う次第であります。  二つ目の問題でありますが、このエネルギー事情の変革に基づきまして、私どもは通産省と数次にわたりまして炭労の要求に基づいて話し合いを続けてまいりました。なお、会社に対しましても、当面の石炭情勢を見直すにあたって会社自体がどう対処するのか、これらの問題について交渉を続けてまいりました。  政府の答弁を一言で御披露いたしますと、いまの石炭産業政府が見た場合は頻死の重病人である、このように断定をされているのであります。ですから国内炭増産の問題にしても、はたしてすぐできるのか、結論は重病人でありますから、直ちに対応ができないということであります。たとえば労働者労働条件を見ましても、トン当たり千六百円程度赤字がある。したがって、賃金を上昇するということはきわめて困難である。その理由は重病人である。労働者がきわめて少ないのであります。いま三万九百人程度の人員でございますが、これでは、いまの体制で二千三百五十万トンというのは四十八年度の出炭計画でありましたが、これをすら割らざるを得ない。実態はやはり労働人口にあると思います。これらを見ましても、いまの産業実態から労働者が集まらぬということになります。これらの事情についても重病人である、こういう問題が指摘をされているのであります。  坑内骨格構造でありますが、今年の一月からすでに重大災害が十四件を数えるという実態になっています。これらの事情の問題につきまして、私どもは危険な職場は作業をやめて命を大事にする、そういう補強をしてから作業にかかることが一番大事ではないかという提案をいたしていますが、政府もこの考え方については認めています。認めていますが、重病人であるがゆえにそういう処置はとれない、ここが政府石炭産業を判断をしている基礎になっているのではないのか。石炭産業をまさに重病人の域からどういうように脱するのか、ここが問題であろうと思うのであります。  次に、会社のほうでありますが、この新情勢に対応すべく会社として具体的な対策を提案せよという意味で、昨年の暮れから私ども交渉を続けてまいりましたが、その内容になじむ、なじまないという議論から出発をいたしまして、ようやく昨年の暮れに団体交渉には応じましょうという態度で私どもの交渉が終了いたしまして、本年の三月の初めに保安の問題あるいは骨格構造の問題、労働条件、なかんずく労働者確保の問題等を重点において会社回答に接したのでありますけれども、早急に対策を立てなければならぬ会社がこういう実態でございますので、私どもの要求がひとり相撲になるような実態があるのであります。  過日、三井、三菱、北炭、住友、太平洋の五社の社長といろいろ政策の問題について協議をいたしましたが、ある社の社長は、すでに一般炭炭鉱においては四次政策あるいは五次政策の中で死亡診断書を提起されたのである。したがって、その中で、企業が新体制にいかに対応するかということについては、政策をどう立てるかという問題も必要だけれども、この処置をどう変化させるのか、ここに問題がある。端的に言いますと、炭を掘りたいのだが買ってくれるところがない、あるいは価格の問題について考慮してくれるところがない、そういう意味一般炭を掘っている炭鉱は死亡診断書のとおり死んでいかなければならぬ、こういう討論をしなければならぬ実態にあるのであります。  三点目の問題でありますが、これらの情勢変化に対応いたしまして、炭労は何を基礎としてこれからの石炭産業の安定をはかるか、ここに問題が帰結すると思います。十二月の七日の石炭鉱業審議会の報告を受けまして、私どもは十二月九日大会を開催をいたしまして、真剣に今後の石炭情勢の分析をいたしました。なお、この大会の意思統一に基づきまして、今年の一月一ぱい組合員と家族が石炭産業をどうすれば安定できるのか、こういうことで職場であるいは家族の会議を開催をさせまして、石炭産業にいかに対処するかという点につきまして次の結論を見たのであります。私ども当時四十八年度二千三百五十万トンの出炭をどういうように具現化するかということで協議をいたしましたが、四十八年度上期実績を見まして、予算より百五十万トンも減産をするという実情の上に立って、職場であるいは家庭で労働者をふやすという意味で協議をいたしてまいりましたが、何としても政策で縛られている炭鉱労働者労働条件を大幅に変える必要があるのではないか、こういうように第一として考えました。第二は、炭鉱労働者の年齢が、逐年でございますと一年ずつしか上がっていかないのでありますが、きわめて珍現象を出しまして、一年のうちに一・七歳も上がるというような実情になります。これは端的に言いますと、若年労働者が減っていきまして、残るのは高年齢者である、こういう意味平均年齢が上がっていくのであります。第三に、先ほども申し上げましたが、大災害が非常に多いのであります。御承知のように、直轄、組夫、こういうふうに分かれてはいますけれども、その災害が最近では組夫に非常に多いのでありますけれども、職場で大災害が起こっていることについては、直轄も組夫もないのであります。この三つの問題を提起をしています。  数字を申し上げますまでもないと思いますけれども、労働省の調べによります賃金の当面十年間の内容について申し上げますと、石炭産業はこの三十八年−四十八年までで賃上げは四万二千六百九円であります。金属鉱業がこれに比べまして六万九千百九十一円であります。鉄鋼産業が六万六百一円であります。実に民間産業の平均は七万一千五百七十八円であります。こういう意味で、炭鉱労働者が一〇〇といたしますと、金属鉱山の労働者は一六二・三八%になり、民間の平均は一六七・九八%上昇するということになるのであります。  次に年齢の面でありますが、常用労務者の年齢調べを四十八年三月の実績に基づいて申し上げますと、三万人でありますから、二十歳から五歳を基準としてはじき出してみました。二十歳未満が二百十三人で〇・七%であります。二十五歳未満が千二百四十八名であります。四・〇%であります。三十歳未満が千五百九十七名であります。五・二%であります。三十五歳未満が三千三十四名、九・八%。四十歳未満が五千九十人、 二八・五%であります。四十五歳未満が六千七百三十六名、二一・八%であります。五十歳未満が六千七百三十六名、二一・八%。五十五歳未満が五千三百九十二名であります。一七・四%であります。炭労は坑内外を問わず定年が五十五歳でありますが、労働者不足という意味で、いろいろ労使の協定をいたしまして、特殊労働者、特殊技能者あるいはそれらに家庭の事情その他も勘案をいたしまして、五十五歳になりましても再雇用するという道をとっていますが、六十歳未満が六百九十六名、二・三%であります。これが炭鉱労務者の年齢の実際であります。したがって、いまの石炭産業ほんとうにしょい込んでいるのは、四十歳から五十五歳までのこの二万二千名の高齢者が石炭産業坑内でささえている、こういうことが実態であります。  したがって、私どもはこれらの賃金あるいは年齢等を判断した場合に、結論として天下にも表明をしていますが、今年の春闘では五万七千四百円という日本労働者の中で一番高い要求をしてまいりましたが、この日本労働者の中で一番高い要求を出さざるを得ない炭鉱労働者実情について御理解をいただきたいと思うのであります。  時間がございませんので四点目といたしまして簡単に申し上げたいと思います。  私どもは衆議院のいろいろの委員会石炭の問題について議論をいただいていることについてほんとうに感謝をいたしております。しかし、その論議の過程から申し上げますと、第六次政策をつくったらどうだという意見等も出されているのでありますが、炭鉱労働者の率直な希望として申し上げますと、新第一次政策をつくっていただきたい、こういうことでございます。  いま石炭の問題あるいは総合エネルギー位置づけを協議、決定をするために総合エネルギー部会が発足をし、四月一日には石炭鉱業審議会石炭の具体的対策について協議するということで発足をいたしました。本年の六月にはそれぞれの会議が中間報告、中間答申を持ち寄って石炭位置づけを決定しよう、こういうようにいわれているのではございますけれども、いろいろこれらの会議を通じて政府あるいは審議会の意見等を判断をいたしますと、どうしても新政策の発足は五十一年度になるやに私どもは印象として受け取っているのであります。第一次から第五次までの石炭政策を根本的に見直すということが新政策の前提だといたしますれば、たいへん困難な作業が横たわっていることについては否定はいたしません。しかし、円城寺石炭鉱業審議会総合部会長は炭労のこの発言に対しまして、いろいろ困難はあるだろうけれども石炭鉱業審議会としては五十年度に新政策を間に合わせたい、こういう発言を四月一日の鉱業審議会でいただいているのであります。そういう面でどうぞひとつ、新政策作成と設定は昭和五十年度から、このように御決定をいただきたいと思っているのであります。また、五十年度から新政策ができるために私ども政府にも会社にもいろいろ審議会の場を通しても炭労の意見を申し述べてまいる所存でございます。  限られた時間でございますので、以上申し述べまして、石炭産業安定のための炭労の意見開陳にする次第であります。
  53. 田代文久

    田代委員長 次に、早立参考人にお願いいたします。
  54. 早立栄司

    ○早立参考人 私、全国石炭鉱業労働組合の委員長の早立でございます。  諸先生方には日ごろから石炭対策につきまして格段の御尽力を賜わっておりますこと、私どもたいへんありがたいことだと存じております。この機会に心から御礼を申し上げたいと存じます。  私たちは、現在の石炭を取り巻く情勢について、これは石炭産業が失われた信頼を取り戻すべき絶好の機会である、こういうように受けとめておるのでございます。そしてそのためには、これから申し上げる三つの要素を実現しなければならないと考えております。その一つは、石炭産業が社会的な要請にこたえて安定供給の役割りを拡大をしていくということであります。第二は、そのためにも炭鉱労働者の賃金をはじめとする労働諸条件を大幅に改善をしていくということであると思います。そして第三には、石炭企業が従来までのこの慢性的な赤字状態を一日も早く脱却をして、経営基盤を健全化するということであると思います。私たちは、この三つの要素が三位一体となって実現するときに、初めて石炭産業が内外ともに信頼を取り戻し、私たちがかねてから望んでおる魅力ある石炭産業といえる状態になってくると考えるわけでありまして、私たちはこれらのことをこの両三年内に実現することによって、石炭産業をりっぱに安定化さしていきたいものだと強く希望いたしておる次第でございます。  これが私たちの石炭問題に対する基本的な態度でございますが、私は、この基本的態度の上に立って、以下、二、三の問題点について私たちの考え方を申し上げてみたいと存じます。  一つは、この新しい情勢の上に立った石炭位置づけという問題でありますが、率直に申し上げまして、石炭を今後総合エネルギーの中においてどの程度位置づけるかという点について、具体的にその数字を申し上げられるほどの能力は私どもまだ持っておりません。したがいまして、石炭位置づけそのものについては現在エネ調で検討されておりますから、その中において、とにかく石炭を最大限活用するという立場でしっかりした位置づけを行なっていただきたいと思っておりますし、同時に、その石炭位置づけの中で特にわれわれが関心を持つのは、言うまでもなく国内炭位置づけであります。これらは希望を言えば何千万トンとこう簡単に言えるでしょうが、それだけのものをりっぱに供給をしていける体制がこれから具体的につくられるかどうかという問題の検討ともあわせて、目標を的確に設定しなければならないと思いますので、いま私どもは数字的にこれも何千万トンというように申し上げる能力はございませんが、この国内炭位置づけについては、その供給確保対策等を含めて、石炭鉱業審議会の中で十分検討の上、いずれにしましても国内炭を最大限活用していくんだという立場での、しっかりした位置づけを行なってもらいたいと考えておる次第です。  それから、同じくそれに関連しまして、今後の国内炭供給力を確保するためには、現在ある、やっておる炭鉱一つといえども掘るところがある限りは閉山をしない、させないということが重要であると思いますが、よりさらに加えて、新しい鉱区あるいはすでに閉山消滅した鉱区等について、有望なところについてはこれを開発するということに取り組むべきであると考えますが、私たちの組合関係で今日までの閉山経験を通じて承知しておる地点について、今後の関発上関心を持つ点を申し上げますと、一つは北海道の留萌地区にある羽幌炭鉱でありますが、御承知のごとく数年前、低硫黄炭を豊富にかかえておる鉱区を持ちながら、資金、経理上の問題から万歳し、閉山をしてしまいました。あの鉱区は非常に今日の情勢ではもったいない鉱区である、開発できないものかと考えます。さらにもう一つは、御承知のごとくこれも一昨年開発を行なって、いよいよ着炭、出炭という段階で、不慮の出水によって水没してしまいました茨城県の常磐茨城中郷炭鉱でございますが、これもその後いろいろ技術陣の話を聞いてみますと、いま水没されておりますが、水をはく、揚げる方法はあるそうでありまして、全然新しいところをやるよりも比較的少ない経費で短期間に開発できるというような技術的な見解も聞いておりますので、これらもぜひこの新しい石炭情勢の上に立って検討の上開発に取り組むべきではなかろうか、こういうふうに考えられます。  さらに、その他の地区にも、私ども承知しておりませんが、新たに開発すべき有望な鉱区があると思いますが、ただ問題は、いずれにしましても、そういう鉱区を開発していく場合に、資金の問題もありますけれども、同時に、そこで生産をするための必要な労働力をはたして確保できるかどうかということが重大な問題になってくると思います。したがいまして、現在やっておる炭鉱生産を維持し、さらに拡大していくという観点からも、さらにまた、国内炭安定供給力を拡大するために新しいところを開発するという、そういう観点から考えましても、一にも二にも、必要な労働力確保できるかどうかという問題に直面してくると思うわけでありまして、そういう意味から、炭鉱労働者労働条件等につきまして、ただいま里谷さんが申し上げたごとく、賃金をはじめとしてその他もろもろの労働条件について大幅に改善していくということが、どうしても今後の新しい石炭対策上絶対的に必要な措置ではなかろうかと考えておるわけであります。  私は今月の初めに、私どもが加盟しておる国際組織である国際鉱山労働者連盟のアジア地域の会議が開かれまして、それに出席をしてまいりましたが、ニュージーランド、インド、インドネシア、フィリピンあるいは韓国というような、いわゆる開発途上国の炭鉱あるいは鉱山労働組合の代表が一堂に集まりまして、それぞれの国の事情等の報告を私聞いたのでありますが、これら開発途上国における炭鉱あるいは鉱山等におきましても、日本炭鉱労働者の賃金と比較した場合には、それぞれ国の経済水準に大きな格差がございますから、賃金の絶対値そのものでは日本のほうがそういう開発途上国よりは高い状態にありますけれども、その国における全体の産業の中でどの程度の位置に、炭鉱あるいは鉱山労働者の賃金が位置づけられておるのかという点で考えますと、ニュージーランドをはじめ開発途上国いずれの国においても一位、二位あるいはそこまでいかなくても非常に上位に位置しておるということであります。それに比較しまして日本の場合には、日本炭鉱労働賃金は、いまも里谷さんから言われましたように非常に低い状況でありまして、全産業の中でももう中以下という状況にあるわけでありますから、私は、これからの炭鉱を安定させていくための大きな原動力として、炭鉱労働条件を大幅に改善するその一番の中心として、炭鉱労働者の賃金等については、少なくとも坑内労働者の賃金についてはこの二、三年のうちに全産業で最上位、トップの水準まで引き上げていくということがどうしても必要だろうと考えます。そのことを強く労働組合の立場から念願をし、そういう立場でいろいろ要求等を行ない、取り組んでおる次第でございます。  それから、いろいろ問題になってきております一般炭輸入の問題につきまして、もちろんこれを行なう場合には国内炭の取引上に悪影響を及ぼさないようにしっかりした歯どめを行なってなされるものと思いますが、そのようなしっかりした歯どめを行なってなされる限り、日本国内炭供給不足の面については、可能な限りこれを輸入をするということについて私どもは賛成をいたしたいと思います。そして同時に、私どもの関係しておる炭鉱である三池とかあるいは松島炭鉱等において現在産出されます高硫黄炭、これを活用するためにはその硫黄分を薄めるための低硫黄炭がどうしても必要であるが、国内現状において国内炭鉱からその供給を求めることは非常に困難な状態がございますから、こういう高硫黄炭を活用する意味での低硫黄炭を輸入をするということは、これまた絶対必要な措置であろうと考えておるわけであります。  さらに、先ほど基本的態度の中の三つの要素の一つとして申し上げました企業対策、すなわち石炭企業の慢性的赤字状態を一日も早く脱却をして経営を健全化するという問題に関連いたしまして、私どもの見るところ、すでに公表されておるようでありますが、炭鉱の大手八社の平均の経常損益面で千六百五十円の赤字が計上されておるという状況であります。私たちがかなり控え目でありますけれども、今回、二、三年のうちに炭鉱労働者の賃金を全産業でトップにするという方向のもとに、今年度の要求として出しております四万五千円の賃金要求でありますが、あるいはそれらと関連しまして今後要求を行ないます期末手当、そういうものを含めて、四十九年度のそれら労務費の措置が具体的にコストの面にどのくらいはね返るかということを、きわめて乏しい資料を土台としながらも私たちなりに試算をしてみますと、トン当たり二千二、三百円程度になってくるように考えられます。先ほど申し上げましたように、現在赤字が肝六百五十円あるということを含めて考えれば、とにかく今年度において三千五百円ないし四千円程度従来の対策に上積みした対策を強化してもらわないと、なかなか炭鉱はやっていけないということになるのではなかろうかと判断をいたしております。しかも、第一番に私たちがその面で求める政府石炭対策予算については、もうすでに四十九年度予算は実際上決定されておりますので、この中で措置されております従来政策より前進しておる面というのはトン当たり二百円程度であろうと考えますから、残りの三千五、六百円程度というものは、どうしてもこれはユーザー側の御協力をいただいて、炭価引き上げという面で措置を求めざるを得ない状態に現在はなってきておると思います。したがいまして、私たちはこういう事実の上に立って、炭鉱をつぶさずにやっていくならば、どうしても今年度の措置としては、炭価引き上げという面でそういうことを措置をされ、りっぱに炭鉱がやっていけるような措置を実現していただきたいものだと、心から強く望んでおる次第でございます。  さらに、かりにそういう意味での炭価引き上げが近く実現したとしましても、それらは炭鉱全体に対する平均対策の域を出ないと考えます。御承知のごとく、現在炭鉱全体苦しいけれども、その苦しい中において各社ごとに大きな企業格差があるわけでございますから、私たち従来からこの政策面では、平均対策ではなくて個別対策を行なって、平均ライン以下の炭鉱といえどもつぶれないようにするような措置が必要であるということを各方面に訴えてまいりましたが、今日の状態ではそのことがより以上必要になっており、しかも今年度に対する措置として考える限りは、もはや炭価対策しかない。しかもその炭価対策はおそらく平均対策としての域を出ないはずであるから、そうなればそれに加えて政府政策面での個別対策がどうしても今年度の措置として必要になってくる。これについては、すでに予算がきまっておるとすれば、あの中におけるいわゆる経営改善資金によって、運転資金によってともかく一年間つながせるという措置が必要ではなかろうかと考えます。そして同時に、予算化されておる経営改善資金をもってなおかつ足りないという面が出てくるのではなかろうかとも懸念されますので、そういう面につきましては、来年度の予算ということでは間に合わないので、この秋ぐらいに必要な面については補正予算をぜひとも組んでいただいて、一方における平均対策としての炭価対策とあわせて、片面における政府対策の個別対策という面を強化することによって、現在ある炭鉱一つもつぶさずにりっぱにやっていく、そして同時に、その中において炭鉱労働者を中心とする労働条件等を大幅に引き上げる、こういうような措置をぜひとも行なっていただきたいと考えておる次第でございます。  最後に、いつでも問題になります石炭産業の体制問題についてでありますが、もう先生方十分御承知のごとく、何年も前から石炭産業の体制がこのままではどうか、どうすればいいかということで、いろいろな体制論が具体的に提起をされて検討されてきております。私たちもいろいろずっと検討を重ねて今日に至っておりますが、とにかく現在の炭鉱の状態を考え、国からもたいへんなる助成を受けてやっと生き残っておる状態でありますから、そういう面から考えて、もはや石炭産業を現在の体制のままでなく何か思い切った新しい体制につくり変えるべきではなかろうかという感じがいたしますが、さて、具体的に、しからば国有国営がいいのか、国管がいいのか、全国一社がいいのか、何がいいのかというように具体的に考えますと、はなはだ申しわけないのですが、私ども労働組合の能力としましては、みずからこうすれば絶対に炭鉱がもう心配なくなると言えるほど自信を持って提起できるほどのものをどうしても具体的につかむことができませんので、この面についても具体的には私どもいまだ提起をできない状態にございます。  しかしいずれにしましても、少なくとも閉山消滅鉱区あるいは新しい鉱区等を開発していく場合に、相当の費用を必要としてくる問題でありますから、少なくともそういう新しい開発面等につきましては、炭鉱会社とユーザーあるいは政府というような三者共同出資による開発会社とか、あるいはまた特殊法人の開発公団的なものをつくって、そういうところで開発をしていただく以外に、いまの炭鉱の力をもって膨大な費用を要するこれからの開発に取り組むことは困難であろうと考えられます。  それからもう一つの点としては、体制問題について国際的にも、外国の先進国の炭鉱の状態というものを十分学びつつ、これらとの比較において考えなければならないと思っております。その場合、私どもとしましては、国有国営であるところのイギリスの炭鉱と、ルール地方統一会社という大部分が統一会社になった西ドイツの炭鉱と、この両方の状態を比較してみますと、技術的な面においても生産性の面においても労使関係においてもまた労働条件においても、イギリスよりも西ドイツの炭鉱の状態のほうが上である、こういうふうにとらえられますので、そういう点も重大な関心を持ちながらこれから大いに学んで、新しい体制というものについてどうあるべきか、これから検討したいと考えておる次第でございます。  たいへん簡単でございましたが、以上基本的な態度と二、三の問題点等について、私ども見解を申し上げた次第でございます。
  55. 田代文久

    田代委員長 次に、木崎参考人にお願いいたします。
  56. 木崎順二

    ○木崎参考人 本日、私に意見を述べる機会を与えていただきましたことを、お礼申し上げます。  私の本日の陳述の主眼というものは、いわゆる第六次石炭政策の検討に早急に入るべきであると主張するところにあります。石油ショック以来、中曽根通産大臣はしばしば公式的にも非公式的にも石炭について積極的な発言をされており、現在諮問しておりますエネルギー調査会の六月に予定されている報告が出ましたならば、場合によっては石炭の根本的な見直しも必要になるであろうというようなことを申されておりますけれども、この激変したエネルギー事情の中にありましてわれわれの山はどうなるのだろうか、日本石炭はどうなるのだろうかということで、息をひそめ目をみはって見詰めている組合員の心情を考えますならば、私としては第六次石炭政策の検討には早急に入るべきであると主張せざるを得ないのであります。  なお、政策の細部につきましては、その見解の表明あるいは要請の機会は後日またあるものと考えますので、本日は、私なりに根本的な問題というふうに思われるものについて、若干の意見を申し述べたいと思います。  今回の石油危機によって、事実としてわれわれが知らされたことは、持定のエネルギーを特定の供給先に依存していてはきわめて危険であるということと、エネルギーはもはや高価格時代に入ったということであります。しかもこの傾向というものは、一次エネルギーの大宗を占めますところの石油の埋蔵量と今後の世界的なエネルギー需要の伸びとの関係から考えてみますと、今後ますますこうした傾向は強まりこそすれ、弱まることはないであろうということであります。この事実というものは、従来のエネルギーにおける経済性重視の時代は終えんを告げまして、量の安定確保に重点を移行すべき時代に入ったということを意味していると考えます。そのためには、エネルギー多様化供給先の分散が今後のエネルギー政策の基本とならなければならないし、そのように転換せざるを得ないというところに追い込まれているというふうに私は考えます。  それでは、多様化するであろうエネルギーの一環としての石炭をどう見なければならないかという問題でありますけれども、一次エネルギーの大宗を占める石油は、確認埋蔵量において、需要が横ばいと考えましても三十年強、需要の伸びを従来の実績より少な目に見積もりましても十五年ないし二十年の寿命であります。一方、原子力発電は安全性の問題で発電所建設のテンポが非常におくれており、今後もおくれる可能性があります。のみならず原子力による発電の燃料の確保という点においてもいろいろ問題があるやに聞いておりまして、これに全面的に依存するというような方向は石油同様危険ではないかというふうに考えます。また高速増殖炉による開発や、あるいは究極のエネルギーといわれている重水素の利用は、二十一世紀の問題であるというふうに私は聞いております。  こうしたことを考えますと、可採確定埋蔵量で石油の二倍、可採埋蔵量で実に石油の九倍の石炭が、液化またはガス化の技術開発も伴いまして一次エネルギー相当部分をになわねばならないことはもはやまぎれもない事実であると私は考えます。  これは大きなお話でありまして、世界的な規模の話でありますが、では国内炭についてでありますけれども、一次エネルギー相当部分石炭がになわねばならないとするならば、水力を除いてただ一つの国産エネルギーであるところの国内炭を放棄するということは、世界的にエネルギーの枯渇が懸念される現在におきましては、時代に逆行することもはなはだしいといわねばなりません。石油ショック以来、原子力がどうの、地熱がどうの、太陽熱がどうのといろいろと新聞に盛んに書かれておりますけれども、遺憾ながら、石炭も若干見直されたようなかっこうで書かれておりますけれども、いわゆる原子力とか地熱、太陽熱ほどは見直されたというかっこうで新聞に出ていない。また世の中で騒がれていない。再認識をまだされていないということははなはだ遺憾なことでありまして、次に述べるような理由からして、国内炭を大胆に見直して、そして輸入炭等も加えまして総合的に、大胆に石炭を活用すべきである、そのように私は考えます。  理由の第一点といたしましては、これは四十六年十一月の調査がそうでありますけれども生産コストを約九千円がらみといたしまして、五億八千九百万トンの実収可採炭量を国内炭は有しております。このことは供給先分散の一端として最も安定した供給源でありまして、かつ外貨流出の防止に何ほどかの効果をもたらすであろうというふうに考えられます。  二番目の問題といたしましては、国内原料炭は非常に高い流動性を有しておりまして、今後とも外国原料炭輸入先が分散されるのではないかというふうに考えられますが、その際のつなぎ、いわゆるのりとしての大きな役割りを果たす貴重な資源であります。  それから国内炭を堅持することによって、一般にエネルギーは高価格時代に入ったわけでありますけれども輸入エネルギー価格抑止力というような面でも何ほどの貢献があろうか、そのように考えます。  四番目といたしまして、外国炭の開発輸入のためには石炭技術を温存しなければならないし、そのためにまた石炭化学のいろいろな研究とか発達というようなことにつきましても、国内炭を有していないということは最大の弱点になるであろうというふうに考えられます。  五番目といたしまして、石油の高騰と外国炭の値上げ攻勢によりまして、経済的にも国内炭は引き合うものになりつつあるのではないかということが考えられます。  次に、国内炭位置づけでありますけれども、従来のエネルギー政策というものは、経済性の追求に貫かれておりまして、このために日本経済は高度成長を達成できたわけでありますけれども、そのおかげで、石炭にとってははなはだ迷惑な話でありまして、現在石炭産業は崩壊の寸前にあります。これまでの五次にわたる石炭政策を私は何もかも否定しようとは考えておりませんけれども、やはりその基調とするところは経済性の追求にあったというふうに私は考えます。そのためにエネルギー政策ではなくて、社会政策だ、すなわち産炭地域対策だ、離職者対策だというふうに一部の者が言うゆえんであります。したがいまして、経済性を完全に無視するという意味合いではございませんけれども、激変したエネルギー事情を踏まえまして、新たな観点から国内炭の積極的な活用を前提とした、総合エネルギー政策の中における国内炭位置づけ、また外国炭を加えたところの位置づけというものを明確にする必要があるのではないかと思います。問題になるのは、その際の経済性の問題でありますが、この点につきまして、日本経済全体の問題として多様化する各種エネルギー価格のプール値から考察してしかるべきものであるというふうに考えます。ただ単に高いからといって使うのをやめるということはもはや間違いであるというふうに考えます。  では、現在石炭にはどういう問題があるのかということをことばをかえて言いますと、石炭政策を見直すときのポイントは何なのかという問題でありますが、一番目といたしましては技術者及び労働者の不足であります。若年技術者、労働者確保はほとんど現在絶望的であります。四十八年の常用労務者の実績を見ますと、いわゆる新卒者、学校卒業者はわずかに〇・五%、他産業から入ってきたものは〇・五%であります。ほとんど絶望的でありまして、また従来閉山炭鉱からの採用が主体でありましたけれども、これも今後は望めない。なお、昨年の実績では炭鉱の経験者が八八%採用されております。このほとんどすべてが閉山やまからというふうに考えてよかろうか思います。  しかもそれに加えまして現在技術者と労働者が北海道なんかは、春になると特に激しいのでありますけれども、どんどん流出しておりますが、その流出の防止すら困難なのが現状であります。このことは石炭産業の将来の展望が欠けている、すなわち閉山の続出、一生を石炭に託するに値しないというビジョンの欠除、それから低賃金、先ほど里谷さんは金属鉱山と比較して五〇%と言われましたけれども、労働省の資料によりますと、四〇%安い。いずれにしても抗内労働にふさわしくないはなはだ低い低賃金であり、かつ長時間労働であるということ、それから何といいましても地下労働という特殊性や災害が多いということが労務者不足の主たる原因であろうというふうに私は考えますけれども、では現状のまま放置しておいていいのかということになりますと、現状のまま推移するならば、労務倒産は必至であります。したがって技術者、労務者の確保対策石炭政策の最重点の一つでありまして、その対策としては以下のものが考えられるのではないかというふうに思います。  一番目といたしまして、何といいましても国内炭位置づけを明確にいたしまして、石炭産業に将来展望を与えること、すなわちビジョンの確立であります。  二番目といたしまして、早急に地下労働にふさわしい賃金に引き上げることをはじめ、週休二日制、三番方の縮小等世間並みの労働条件とすることであります。  三番目に、作業環境の改善、すなわち保安確保と機械化の推進であります。  四番目に、生活環境の改善、すなわち住宅や病院その他の福利施設を逐次都市型に変えていくということであります。  五番目の問題といたしましては、たとえば抗内に働く者の税金の免除だとか、年金を大幅に改定するとかいうことによりまして、国内炭は必要なんだ、しかもその必要な石炭に働いている労働者は貴重なんだということを国が事実として示し、そのことによって炭鉱労働者に誇りを持たせることが肝要かと思います。  次に、企業収支の赤字と資金不足についてでありますけれども、慢性的な炭鉱ないしは石炭企業赤字は相次ぐ閉山の最大の原因でありました。またこのことは生産設備に対する投資を消極的なものといたしまして、保安に対しましても何ほどかの影響があったと推定されます。すなわち、健全な企業でなければ安定供給確保は不可能であるとともに、さらに究極的には技術者、労働者確保問題の大半も企業収支に帰着するといえると思います。したがいまして、今後の政策助成炭価の決定というものは、前に私が申し述べましたエネルギー価格プールの思想に立ちまして、輸入エネルギー価格と関係なく収支を満足させることを前提とすべきであると考えます。この収支を満足させるという意味は、必ずしももうけようという意味ではございません。その際、石炭企業には表面にあらわれない不健全な財務内容がいろいろとあるようでございますので、これらを思い切ってえぐり出し、これを根本的に直すというような対策を講じなければまた近い将来再び行き詰まるであろうというふうに思われます。また、言わずもがなのことでありますけれども、資金繰りについても十分配慮がなされなければ、安定供給の体制を維持し得ないということは言うまでもありません。  なお、収支、資金に関連しまして次の諸点を特に指摘しておきたいと思います。  まず、格差助成でありますけれども政策助成が平均的であるということは、平均以下の炭鉱が没落するということを意味します。したがいまして、炭鉱ごとの格差助成は必要であります。しかし、その格差助成の基準の設定が非常に困難であるということもまた事実でありますけれども、困難ということに名をかりて平均的な助成に走るということは、先ほど申しましたように、平均以下の炭鉱が没落し、また位置づけもめちゃくちゃになるということを意味しているわけでありますから、大担に格差助成は実施されるべきであるというふうに考えます。しかしながら、政策助成の範囲内において十分な格差を設けるということは実際問題として不可能に近いと私は考えます。したがいまして、たとえばトン当たりX円を各炭鉱から徴収しまして、それを格差助成の財源に充てるというようなことも一つの方法ではなかろうかというふうに考えます。  次に元本補給、いわゆる肩がわりでありますけれども、いわゆる肩がわりは過去の負債の返済に充てられているために、現在の企業収支にはいわゆる決算書の形では寄与しておりますけれども、資金面には完全に寄与しておりません、元本分につきまして。このため石炭企業は収支面の赤字以上に資金繰りが苦しいのだということが案外忘れられているのではないかと考えます。  三番目に財源でありますけれども石油の値上がりを契機といたしまして石炭石油特別会計を云々する人もあるやに聞いておりますが、これはもう論外でありまして、今後とも政策助成に依存しなければならないのでありますけれども、国の助成にもおのずから限度があると考えなければなりません。したがいまして、今後は需要家の協力がきわめて大きな側面になるのではないか、すなわち、炭価のアップが重要な石炭対策の財源になるのではないかというふうに予測されます。  六番目に、体制問題でありますけれども、私企業のバイタリティーを理由に体制問題を回避する論もあります。私はこの論を一〇〇%否定するつもりはございませんけれども、しかし、石炭問題に関する限りはこのような論議にはくみする意思はございません。炭職協といたしましては石炭理事業団構想を持っておりますけれども、何せ経営やそれから法律、行政、そういうことに暗い私たちが考えたものでありますから、これが最善の策だというふうにはもちろんうぬぼれておりません。要するに石炭を積極的に活用するための方策を現実のものとするために必要な体制であるならば、いかなる体制にも私は賛成するつもりであります。  次に、一般炭輸入でありますが、電力につきまして石炭に依存しておるのが、英国、西独が七〇%、米国五〇%、フランスでさえも四五%、ところが日本の現在では六%であります。多様化する多様化するといいましても、こういうことでは石炭多様化の一環として使うということにはならないのでありまして、一挙に四五%だというようなことにならないにしても、相当部分やはり電力のエネルギー源としては石炭を使う必要があるのではないかというふうに考えられます。その際その全量を国内炭でまかなえればこれは一番いいのでありますけれども、実際問題といたしましてまかない得ないように私は思います。したがいまして、その面からも輸入が必要であると同時に、高硫黄炭の国内炭、これの対策といたしましても一般炭輸入は必要であると私は考えます。ただし、輸入に際しましては、輸入機構を含めて国内炭を圧迫しないような措置、たとえば輸入一般炭は必ず石炭業界を通すとか、価格については内外炭のプールを行なうというような方法でもって国内炭を圧迫しないということが前提でございます。  最後に、第六次石炭政策の検討についてでありますが、現在わが国炭鉱または石炭企業は慢性的な赤字技術者、労働者の不足に悩んでおりまして、激変したエネルギー事情に的確に対応し日本経済に寄与し得るような状態にはありません。こうした状態は第五次石炭政策ではもはや解決されないのではないかというふうに断言してよいかと思います。加えまして、石炭政策の検討には長時間を要しますし、また対応策の実施がおくれますと問題の解決は幾何級数的に困難なものに変形いたします。したがいまして、五十年度実施を目標といたしまして早急に第六次政策の検討に入るべきであると私は考えますし、私の本日の陳述の柱は実にここにあるのであります。  終わりに、われわれは、それぞれの炭鉱におきまして保安確保し、生産性の向上につとめ、供給の安定をはかることがその責務と考えておりまして、この面につきましては今後とも最大限の努力を傾注いたしますから、田代委員長をはじめといたします諸先生方の今後の御指導と御援助をお願いするとともに、国及び需要家の国内炭に対する正当な理解とあたたかい御配慮並びに最大限の御協力を期待するものであります。  私の陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。
  57. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人意見開陳は終わりました。     —————————————
  58. 田代文久

    田代委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  59. 田中六助

    田中(六)委員 里谷、早立、木崎各参考人お忙しいところ私どものために出席いただきましてまことにありがとうございます。  三人の参考人ともども、いまのエネルギー危機、ひいては石炭位置づけ、そういうことから早急に第六次の石炭鉱業審議会の答申が必要である、あるいは新第一次という表現を里谷さんはお使いになったのでありますが、そういうことを要望して、しかもそれは早急にやらなければならないという御見解、私どももごもっともだと思います。ただ、私が非常に気になるのは、いままでの答申をつくった人々が同じようなメンバーで、しかも里谷さんは円城寺さんが近くそういうようにするということを言っておったから自分はそれを期待しているんだということをおっしゃっておりましたが、私は円城寺さん個人のことを言っているわけじゃなくて、こういう方々が再び三たび新しい答申を出そうということについて疑問を持つわけです。責任の所在はどこにあるだろうか。いままで答申をたびたび出しておって、それがくるくる変わる。世界のエネルギー情勢が変わるということからこうなったのだといえばおしまいですが、人間には洞察力、見通しというものがあり、そのための審議会でございますし、私はこの審議会は膨大な金をいままでにかけていると思うのです。それにもかかわらず第六次答申も自分たちの手でやろうというようなことをもしも考えておるならば、責任というものはどこにあるのだという気がするわけでございますが、こういうようなことにつきましてそれぞれの参考人はどういうふうにお考えか私は非常に聞きたいところでございますが、お答え願いたいと思います。
  60. 里谷和夫

    ○里谷参考人 私どもも、先ほど申し上げたとおりでありますが、この十数年間石炭産業安定ということで私ども考え方政府、会社にも突きつけてまいりましたが、結果は現在三十炭鉱労働者三万人、こういう炭鉱になったわけです。ですからそこの責任はどこにあるか。端的に言いますと、政府責任であり、政府の方針に無条件で従った経営者である、こういうように思っています。そういう面で政策をどうするのだという問題について、私ども、実は先生、いろいろ審議には参加をしていますけれども、昨年の暮れの十二月七日にも申し上げたのですが、いかに労働者の真実な意見を言っても、報告なら報告という文書が出てくると、一行一句直らないではないか。ところが、石炭を買う鉄鋼業界あるいは電力業界が、そういう審議やあるいはこういう表現が悪いと発言をしますと、その中間方針の文書が変更される、こういうことでは、運営にも協議にもならぬのではないか。こういう議論をしたことを実は感じています。そういう面で私どもは、いま審議会の責任であるという面でほんとうに血の叫びを主張したいのでありますけれども、そのことの是非については悩んでいます。しかし新しい政策を出すという前提であれば、われわれの意見も十二分に聞いてもらって新政策をつくってもらう。そのことに前向きであったほうがいいのではないか、こういうように実は考えています。ですから私どもは、日本エネルギーアメリカ従属型であるということで指摘をしてまいりましたが、石油ショック以降はアメリカに学べということで、逆に石炭のガス化あるいは液化の問題等について、最近のマスコミはたいへんなページをさいて主張しています。その結語の中に、先生がいまおっしゃいましたように、それでは日本石炭を見直してきた責任はどこにいくんだろうか、この責任を明らかにする必要があるという結語がございましたが、私ども考え方を率直にマスコミが伝えたものと賛意を表明しているところであります。  もう一つは、いろいろ私どもも議論をいたしますけれども、審議会の運営の中にあっては、ほんとう炭鉱実情を知った技術屋、炭鉱労働者の生活を知った審議会の先生方が入っていただけることを心から希望している、そういうことであります。
  61. 早立栄司

    ○早立参考人 私どもは、従来までの私どもの主張が十分満たされない状態で今日の事態になってしまったということについて、強い不満を持っておりますけれども、しかし、さてそれでは、こうなってしまったことについての責任はどこにあるかという問題については、端的に言えば、いま里谷さんが言われたように、政府政策面における責任問題とこれを変えることのできなかった石炭経営者というところに責任の焦点はあるかもしれませんが、同時にまた、私ども労働組合自体としても、かくあるべきだということを考え、主張はしましたものの、それらを効果的に生かせなかったという意味において、私どもみずからも、今日の事態になってしまったことについての責任を感じなければならないと思います。そういう意味において、石炭に関係した者、労使、政府あるいは審議会の各員すべての者がそれぞれ感じなければならない問題点だと考えます。  ただ、これからの問題としては、いままでのことがどうであった、その責任がどうだということよりも、この新しいエネルギー情勢の中で、それぞれの方々が石炭を見直し、石炭の必要性というものを強く受けとめた立場で、新しい政策づくりに取り組んでくれるものと期待いたしますので、そういうようにこれから受けとめて、われわれみずからも従来のことを大いに反省しながら取り組んでいきたいと考えております。
  62. 木崎順二

    ○木崎参考人 審議会の構成というものは、いわゆる利益代表とそれから中立からなっておりまして、利益代表がおのおのの自分立場を主張し利益を主張するというのは当然でございますので、先生の御質問は、当然そういたしますと、中立委員責任ということにポイントがあるんじゃないかというふうに理解いたしましてお答えいたします。  一つ政策を行なう場合に、石炭なら石炭、中立委員なら中立委員なりが独走できないわけでありまして、それにはいろいろな制約がございます。まして審議会の中には利害の相反する代表が全部おります。それから政府エネルギー政策がどうであるかという問題もあります。そのワクの中でどれだけの努力をしたかということになるわけでありまして、確かに失敗した政策を立案した者がまた第六次政策の審議に当たるということは、論理的には矛盾しているかもしれませんけれども、要は、そういう制約された環境の中にあってどれだけ努力していただけたかという問題だろうと思います。  私は、第五次政策から審議会の一メンバーとして論議に参加させていただいておりますけれども、少なくとも私がぶつかりました場面では、中立委員先生方は非常に積極的であった。ただいろいろな制約がありまして、その制約のワク内では非常に努力された。その点で私は非常に感謝しております。したがいましてそういう意味からは、感謝こそすれ責任があるというような感じは私は持っておりません。
  63. 田中六助

    田中(六)委員 私が皆さんにちょっとお尋ねしたのは、やはりいろいろ考えますと非常に腹が立つわけですね。たとえば石炭を千二百円ダウンさせて石油に合わせる、そういうようなことをやったかと思うと、現在は御承知のようにカロリーで計算しますと、石油が二円、石炭が八十銭、そういうようになってまた変わってくるわけですね。非常に逆転しているわけですね。これがまたいつの日かどうなるかわかりませんが、少なくとも日本の唯一のエネルギー資源であるものをずたずたにしているという印象を持つわけです。したがって、これはあなたたちにもほんとう責任が——私どももあるかもしれませんが、やはりこの答申が出るまでにはあなたたちの意見も聞いておるわけで、あなたたちは、自分たちの意見は言ったけれどもいれられなかったというような表現でございますが、少なくとも同じようなメンバーがまた第六次新政策に取り組むのに、ぬけぬけと私は言いたいんですが、それにタッチして、そしてまた入れるというようなことじゃなくて、やはり新しい感覚で新しいビジョンでというのは、これは大脳生理学をちょっと言って悪いんですが、まあ五十過ぎた人がほとんどで恐縮ですが、人間というのは五十過ぎると、日本人の男性の場合はだんだん脳が退化してくるんです。普通の人間ですよ。女は六歳ぐらいあとから来るわけですが、少なくとも新しいフレッシュな感覚を持った人を入れて、ちょうど雲を外から見れば、あれは四角とかまるいとか雲の形がわかる。中に入っておると、この雲の形がわからない。だからそういう点を勘案して、こういう重大なときだから少し委員でもかわって、まあ、全部かわれとは、経験者も必要なんですから言いませんが、そういうことをなぜ皆さん要望しないのか、なぜそういうことを無視するんだろうかという気がするわけですね。だから、そういうところをどういうように考えておるのかということを聞いてみたかったわけです。  それから二番目は、賃金のアップの問題ですが、一トン当たり二千二百円か二千三百円、まあ早立さんは四万五千円の要求で、金属との差があって五万七千円ということをおっしゃっておったんですが、これのつまり原資というか、ひねり出す金ですね、そういうものはどこから来るように考えておられるのか。ただ炭価引き上げてもらいたい、御承知のように、千六百五十円、三十八年のトン当たり赤字で、午前中三井鉱山の有吉さんは三千五百円はどうしても上げてもらいたいというようなことを言っておったんですが、私ももうこうなったら油の値段でも同じですが、この前八千九百六十円を上げて、それでも非常にあれされたんですが、また追かけてメジャーは上げているし、民族資本系統の石油業者も非常に困っている。同じ上げるならば、同じそういう思いをするならば、もうけちけちせずに、いろいろな批判があっても火の粉をかぶるつもりでうんとやったらどうかという気持ちがあるのですが、この皆さんのおっしゃる金額の内容というものは、炭価引き上げだけしかないという早立さんの見解でもあったんですが、まだほかに何かいろいろなことがあるかどうかよくわからないのですが、そういう点はどうでしょうか、早立さん。
  64. 早立栄司

    ○早立参考人 まず私どもの賃金要求ですが、四万五千円で、これは里谷さんのほうと同じように、いままで炭鉱賃金がぐっと押えられておった分を、この機会にほんとう炭鉱をやっていくために必要な労働力確保するためには、まずとりあえずほか並みにしなければいかぬという意味で、そういう従来の格差を埋める。ただ、そうはいっても、ことし一年では実際的に無理だろうという考えを持ちまして、来年四月までによその水準と同じにし、その次の段階でトップにするというような計画性の上に立って控え目な四万五千円という要求をしたわけですが、それが原資的には先ほどトン当たり二千二、三百円と申し上げましたが、この賃金だけじゃなくて、鉱員賃金はもちろん、職員給与、雑費いろんなものに影響しますし、加えて、まだ要求しておりませんが、当然近く要求することになる夏冬のボーナス、これも世間並みにしてもらう、退職手当も引き上げるというような一連の私どもが考えておる要求等、それはことし一年のものを全体見ると、その原資として二千二、三百円が必要になるという考え方です。さらに、いまの赤字を補てんするとすればそれに千六百五十円と言われますが、政府予算で二百円くらい前進していますし、生産性も少し上がりますから、そうすると千二、三百円と私たち見ております。したがって、二千二、三百円の千二、三百円で三千五、六百円とこうなってくるわけなんです。  しからば、その原資をどこから求めるかといえば、本来は私は国の石炭政策の中でいろいろ措置されるべきだと思いますが、四十九年度石炭対策予算はすでにきまってしまって、その中で従来対策よりも前進しておるのは二百円程度である。三千五、六百円対策強化を必要とする中で二百円程度であるから、残りの面は、今年度に限っていえばどうしても炭価に求めざるを得ない、こう考えておるわけです。そして、来年五十年度になれば、それはまた予算の面でいろいろ御検討願うということになろうかと思います。  そして、同時にもう一つ付言いたしたいと思うのですが、言うまでもないのですが、じゃ三千円も三千五百円も炭価を上げてくれというのはちょっと不当じゃないかという声があるいは一部からあるかもしれませんが、私どもは、今日の情勢の中で、昨年の十月以来のあのエネルギー危機の中で、国内にある唯一のエネルギー資源である石炭は絶体に一定量どうしても確保しておかなければいかぬという気持ちに国全体がなってくれたと思っております。そのことは、ことばをかえれば、本来貴重な国内唯一のエネルギー資源については経済性を度外視して一定量はどうしても確保していくということが、エネルギー供給安全性確立の立場から当然必要だということになってくると思います。しかも、経済性を度外視しても一定量どうしても確保する国家的な必要性があることに加えて、経済性の面でもいま先生が言われましたように、油との比較でもそういうふうにいまは逆転して石炭のほうがずっと優位になっておるわけですから、そうであるならば、三千円や四千円くらいの炭価引き上げることによっていまある炭鉱がりっぱにやっていけるようにしていただくということは、決して不当な主張ではなかろうと考えておる次第です。
  65. 田中六助

    田中(六)委員 まさしく石炭位置づけで実は午前中もいろいろ問題があったのですが、結局エネルギーをどのように確保するんだ、経済性を無視してこれだけだということが実は位置づけになるのです。ことばで言えば簡単ですが、いざ実行するとなるとなかなか困難な点が予算上もあって、仕置づけといっても一口に言えない点があるのです。この石炭特別会計というものは、御承知のように重油石油関税の十二分の十をもとにしているわけですが、借り入れ金が多少あって、千百三十九億円に四十九年度はなっておるのです。前から、私がいまから言おうとする論があったのですが、この石炭特別会計ほんとう石炭プロパーにしてくれないかと先ほどもどなたかおっしゃいましたように、社会政策とか離職者対策とか、その他いろいろな項目があるわけですね。だから、そういうものを全部抜いて一般会計とかあるいはよその特別会計に移せば、石炭の重油関税の十二分の十というものがフルに生かされるという論があったので、私はそれはあまりに虫がよすぎるのじゃないか。というのは、やはり産炭地振興とかそういうものを考えてやらないと、それから売り掛け金やそれらの問題、鉱害の問題もあるから、そういうことをしなければ石炭産業というものは維持できないという考えだったのですが、このごろはいろいろ考えると、この考えも変えなくちゃいかぬのじゃないかという気になりつつあるのです。皆さんは、この特別会計について、そういう点に対する御見解はどういうふうに思っておりますか。三人とも簡単でいいです、私も持ち時間がこれ以上ないので……。
  66. 里谷和夫

    ○里谷参考人 私どもは、石炭産業を安定させるのは国有しかない、こういうふうに思っていますから、私企業形態では石炭産業の安定はない、これは終始一貫申し上げてまいっております。そういう中で石炭対策特別会計を設置になっているわけです。たとえばこれの運営を見ましても、スクラップには前借りをしてきても払う。しかし、石炭を掘るということ、あるいは産炭地の疲弊をどう救うのかということについては、これはさっきからみな意見が一致しているのですが、平均値対策でやられているような特別会計は前向きにならないんではないか、こう思っております。  それから、最近の例でありますが、私どもは、先ほど申し上げましたように、新第一次政策がなければ石炭産業に愛着を持たない、放棄してもいい、こういう決意を実は持っています。そういう前提ですから、石油情勢の中で特別会計を切られるんじゃないかといういろんな圧力についても十二分に勉強しているつもりであります。したがって、特別会計がなくなれば石炭産業はどうなるのか、こういう問題については、冒頭申し上げましたように、国有、公社化をすることによって石炭産業の安定がある、こういうわれわれの態度を決定していますから、そういうことを思い込んでいますから、そういう面から判断をしますと、そういう石炭産業安定の国有、公社化を実現をしていただければ、特別会計そのものの存置の問題について、われわれはその運営や是非について議論すべきではないんではないか。しかし、現実はどうしてもその政策の中で縛られますから、法律的な効用をはかっていく、こういう点では努力をしているつもりであります。
  67. 早立栄司

    ○早立参考人 端的に申し上げますが、昨年までは、いろいろな制約の中でやむを得ませんから、私たちは石炭対策財源のあり方として、石油関税収入十二分の十の石特会計の中の使い方として、うしろ向き対策は一般会計のほうに回していただいて、全額石炭の前向き対策にしてもらいたいという主張をしてまいりました。しかし、いまは新しい情勢の上に立って、そういう主張ではなくて、対策の財源は石油関税による石特会計であろうとなかろうと何でもいい。とにかくどこからでもいいから国が十分必要なものをやっていただきたい、こういう気持ちになっております。
  68. 木崎順二

    ○木崎参考人 早立参考人の言うとおりでありまして、要は必要な金が入ればいいのでありますけれども、必要な金が十分入らぬものだから、そういう石特会計についてうしろ向きのものはどうだとかこうだとかという論議が出るわけであります。  現在のやり方をそのまま続行していくという仮定のもとに申し上げますが、そういう場合に、産炭地振興につきましても離職者対策につきましても、これを全部否定するというようなことは実際問題としてできないんじゃないか。ただ、その使い方がはたして有効に使われているか、過去の惰性で使われていないかという問題が別にあるんじゃないか、そのことによって何がしかの金を浮かせるんじゃないか、それをやはり前向きのほうに回せるんではないかというふうには私は思います。
  69. 田代文久

  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 具体的な問題から入りますが、いま早立参考人から若干の賃金アップの原資についてのお話がありました。炭労の要求、五万七千四百円ですか、これを実行すればトン当たり幾らアップになるのか、いろいろな条件は別にしてそれだけひとつ……。  それから、職員組合のほうでも調査がありましたら、賃金に関していえば一体幾らのアップになるのか。  早立さんからも、さらに詳しい説明があればなおけっこうだと思います。
  71. 里谷和夫

    ○里谷参考人 私ども先ほど申し上げました五万七千四百円の賃金の考え方は、大体人並みに三万円いただきたい。そこで、いままで鉄鋼労働者に匹敵をするということでやってまいりましたが、メタルの労働者との差をはじきますと、二万七千四百円であります。ですから、これを一方に直しますと二千五百円程度になると思います。したがって、トン当たりのコストをどうするのかという試算は炭労はいたしたことがございません。二千五百円の要求が実現したときにどうなるんだろうかという計算はしますけれども、いまのところは二千五百円が与えるトン当たりコストはどうなんだ、こういう問題については私ども実は試算をしていません。  ただし、例といたしまして、昨年三百四十円の一方当たりの基準内賃金のアップがございました。これのトン当たりのコストが大体五百円内外でないか、正確な数字は押えておりませんが、そういうことになっています。そういうことでひとつ御賢察をいただきたいと思うわけであります。
  72. 早立栄司

    ○早立参考人 私どもの不十分な資料を土台に検討した試算でございますが、基準賃金四万五千円引き上げは鉱員賃金分で——ちょっとその前に、資料のとらえ方として四十八年上期の大手八社平均の収支内容、そういうものを土台にして推定をいたしました。そして同時に能率、生産性の面につきましては、たしか四十八年度六十五トンだと思いますが、それが四十九年度において大手八社平均で七十トンになる、こういうふうに推定しまして、これを基礎にしまして計算しますと、鉱員賃金引き上げ分で千四十二円、それから職員給与——臨時夫、請負組夫の一部が入りますが、それを含めた雑給ですね、職員給与と雑給両方で五百十一円、それから、まだ要求していませんが、夏と冬の期末手当を要求しますが、これは少し大きく年間二期で六十万円というものを要求したいと思います。その分が三百円、それから法定福利費が百五十五円、それから退職手当が賃金引き上げによって基礎が上がる分と、新たに今度支給条件改善要求していますので、その要求を含めまして退職手当が二百十八円、それから先般出されました一時金四万円、これが六十円くらいになっております。それを合計しまして二千二百八十七円です。そしてそのほかに炭鉱年金の改善、休日増加、それから炭鉱住宅の環境改善、そういうものをいろいろやっていただくためにことし一年で二百円ぐらい必要だろう、こういうふうに見ております。それが労務費関係になると思います。あと企業赤字補てんということ。  それからなお、本日の団体交渉で、われわれの要求に対して、炭労も同じだと思いますが、一方七百三十円引き上げという回答が出ました。要求から見ればきわめて低い回答ですが、その際質問して、コストへのはね返りは幾らになるか聞きましたところ、経営者流の計算では、七百三十円が能率給のはね返りや何か入れましてトン当たり九百三十円になるという答えでした。私どものこういう試算のしかたとだいぶ数字的な開きがありますので、その点だけは申し上げておきたいと思います。
  73. 木崎順二

    ○木崎参考人 怠け者の言いわけをいたしますが、先生よく御存じのように、職員給与というのは、いろいろ理屈はありますけれども、実際問題といたしまして、炭労さんと全炭鉱さんがきめた額から自動的に大半がきまります。したがいまして、そのことがコストにどうはね返るのかという問題ではなしに、自動的に大半がきまってしまうというのが過去の慣例でございますので、先生におしかりを受けると思いますけれども、そういう試算はいたしておりません。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いま全体的には金属鉱業の労働者と同一賃金ということですが、私は実は段階的に格差が縮まるというようには思っていない。やるならばこの際。情勢がいつも有利とは考えていないのです。ですから、いま炭価引き上げ交渉の行なわれている時期に、労働者確保ということが今後の石炭政策の最大のウイークポイントであれば、賃金というものを人並みにとるというのが、いまの労働者だけではなくて今後にもやはり影響があるのではないか。ついては、炭価にどのくらい影響があるかというのをちょっとお聞きしたかったわけであります。  そこで、木崎さんには失礼ですけれども、職員組合としては珍しく意欲的な発言がなされておる。今回、非常に敬意を表する次第です。  そこで、一つの問題点として、これは全般的には経済性を追求するのではなくて、むしろ経済性をネグレクトしても一定量の石炭確保するという面においては三者一致しているわけですから、問題はないのですが、企業格差の問題についてもおそらく同じだろうと思うのですけれども、問題は平均政策ではなくて、いわば限界政策といいますか、全炭鉱をつぶさないというならば、やはり企業格差をどうするかというのが一つの大きな今後の問題点ではないか。そうすると、これを一体どういうようにするか。これは職員組合のほうからきわめて具体的に、トン当たり幾らというのを一般からとってそれに回すべきではないか、それは国の助成を当然含めてのお話ですけれども、そういう具体的な提案がありましたが、石炭政策位置づけというのは、これが一つやはり具体化のポイントではないかと思うのですね。ですから、需要確保の面は、いまの状態からいえば長期的に見て当分需要はあると見なければいかぬでしょう。問題は価格である。価格の中でも、平均価格ではなくて、問題は採算のとれなくなる企業価格をどうするかというのがやはりポイントではないかと思う。そこには当然政府の介入というのですか、政府の特別助成というものが必要である、それがまた体制問題として出てくる、こういうように見なければならないと思うのです。  そこで、早立参考人も、こちらからはどうせよという提起はしないけれども石炭政策が永続的に生き残るための体制を考えてもらいたいというお話がありましたし、それから職員組合のほうからも、いかなる体制にも賛成するという話がありましたね。実はドイツの話も出ましたが、四次政策のときからどうもドイツやフランスと日本とが政策に差が出てきたという感じを私は持っている。ですから、四次政策の再編成——ドイツでは御存じのように、先ほどお話がありましたように、ルール炭田株式会社をつくった、日本では私企業のままいきなさい、こういう助成をします、この助成の中に生きていけないものはみずからその進退を決すべきである、こう来たわけですね。ここが非常に違った。そこで今日のような差がついたという感じを私は持つ。それまでの政策は個別的にはわりあいに差がない、四次政策から非常に差が出たという感じを私は持っているわけです。そこで、どうしても体制問題を論じないで逃げるわけにいかないという問題を感じておる。  そこで、私は一つ海外開発というもの、細部にわたってどうなるかは問題として、とにかく海外開発、それから輸入炭を入れるというのは、これは公的機関でなければいかぬ。新しい再開発、もしあるとするならばこれからの新鉱開発、それも私企業ではいかないだろう、何らかの公的な機関が必要である。そうすると、現存の炭鉱をどうするか。  そこでいま、政策を今後検討しなければならぬのですけれども、大きな一つの管理体制の中において、いわば三つぐらいのカテゴリーの形態が中に入ってくる、そういうこともいま考えられる一つの方法、ドラスチックにやらないで一番漸進的にやるとすればそういう方法が考えられるのじゃないか、こういうように思うのです。従来職員組合は、われわれ一社化ということを唱えたときに、一社化はだめだといって反対されたのですけれども、いまの心境はどうなんですか。
  75. 木崎順二

    ○木崎参考人 先ほど私も申し上げましたように、経営その他に非常にしろうとでございますから、何が一番いいのかというのは実はわからないわけです。ただ、わからないなりに一社化ということについてお答えいたしますと、やはり生産点では一銭でも安いコストで安全に能率をあげてくふうをしてということが、私はやはり依然として必要だろうと思うのです。そういうものがはたして一社化の場合にそういうことになるのかどうかということに、私は若干の疑点を有します。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 要するに、自由競争のメリットはいまやなくなったというのがかなりの意見だったのですね。自由競争のメリットがないというならば、やはり企業競争というものはあまり意味がないのじゃないかというところにいろいろな体制問題というのが起こるわけです。そこでこれは今後論議をしていきたいと思います。  そこで、ひとつお聞きしたいのですけれども、生涯の職場、魅力のある職場というようにするには——やはり資源産業ですから、炭鉱別に見ると有限でしょう。ですから雇用形態の問題で、若い人が来るについて、自分は生涯の職場に雇用されたと思うにはどういう方法が考えられるのか、これを三者からちょっとお聞かせを願いたい。自分の人生で一番いいときに山がなくなって首を切られはしないだろうかという不安、日本の場合には大体終身雇用制ですから、労働条件をよくしても生涯雇用の場でないという資源産業の宿命、これをどういうように解決するか。従来親子三代でみな生涯職場と思って入ってきた、今日は幾ら弁解してみても、炭鉱は生涯の職場であるという認識を持て持てと言っても、それは無理じゃないかと思うのですね。ですから、生涯の職場として魅力ある炭鉱にするためにはどういう雇用形態が必要であるか、何か考えられるところがありましたらお聞かせ願いたい。
  77. 里谷和夫

    ○里谷参考人 常日ごろ多賀谷先生の御意見あるいは書物等を拝見いたしまして勉強させていただいておりますので、いろいろ質問ありましたが簡単にお答えいたしましたので、この際、炭労の考え方を明らかにしておきたいと思います。  まず雇用の問題についてどういう展望を開くかということになりますと、私は、政府企業も含めてでございますけれども、第一には産業展望の明確化をすべきだ、こういうように思います。二つ目は労働条件についての具体的向上をはかる、抽象論ではなくて具体的にはかる、こういうことでないかと思います。第三の問題は保安確保について、ほんとうに安心して働ける職場をつくるということが基本ではないか。この三点の問題について、新しい政策の中でほんとう位置づけをしていく、こういうことをやっていただかなければならぬと思うのであります。  そういう点から申してまいりますと、たとえば炭労は、炭価値上げの問題について、炭価を上げるべきだという要求はいたしたことがございません。しかしながら賃金の原資は、いまの政策の中でどう判断をすべきなのかということを若干申し上げますと、昭和三十三年に——影響かございますので、責任を持った数字を使わしていただきたいと思いますが、夕張の特粉という銘柄があります。これは京浜渡しで昭和三十三年に七千七百円でありました。ところが千二百円のダウンから始まりまして、昭和四十五年度からの炭価アップ等を判断をいたしましても、四十八年の夕張特粉京浜渡しは現在のところ二百六十円アップだけであります。総括して申し上げますと、昭和三十三年に七千七百円の夕張特粉は四十八年に七千九百六十円になっている、こういう状態であります。それから一般炭でございますけれども、三十三年の五千二百円をベースにいたしますと、四十八年はマイナス二百五十円という実態になっておるわけであります。ですから、私どもが主張していますように、石炭の値段は油と競合するという前提で決定をされれば石炭産業の安定はない、こういう見方をするのであります。  それから、私どもの作業努力の貢献度であります。これは北炭の実績を申し上げたいと思いますが、昭和三十四年の実働能率といたしまして十六トン二分であります。四十八年度は五十八トンであります。実に三六〇%になっているのであります。しかしながら、会社の説明等によりますと、物価の値上げ、運賃の値上げあるいは会社の償却、金利等を判断をいたしまして、永久的な赤字がある、こういうことになっていますが、私どもは当然だと思っております。というのは、第四次政策は自決の方式を採用したのでありますから、企業の独自の判断で閉山をしてまいりました。第五次の政策は、私どもは安楽死と申しているのであります。こういう政策の中からまいりますと、抜本的に改正をしない限り労働者の原資をどこから持ってくるというような議論に発展をすることはかえってマイナスではないのか、こういうのが炭労の考え方であります。  次に、企業格差その他の問題が出されていますが、そうは申し上げましても、どうしても炭労の今度の春の決定から申し上げますと、労働条件を大幅に向上させなければならぬと思っています。しかし、政府に要求を出しまして、この具体的解決を早急にはかってもらいたいという要求をいたしましたところ、政府の回答で初めて炭価アップによってこの原資を求めたいという回答が出てまいったのであります。したがって、私ども仄聞するところ、炭価交渉その他のことが行なわれているようでありますし、あるいは競合エネルギー等の問題から判断いたしますと、石油が一バーレル十一・二六ドル、こういう公示価格がある。あるいは輸入炭のうち、原料炭だけでございますけれども原料炭がトン四十ドルをこえるという実態等を判断をしているのであります。そうなってまいりますと、今日まで石炭産業を衰退をさせてきた直接原因は、一面では競合エネルギーによる値段でありますから、私は、いまの時点では、こういう競合エネルギーの値段に合わせるというのは政策として当然ではないか、こういうように考えます。しかしながら、炭価の判断をいたしますと、原料炭一般炭生産をしてまいりますが、炭価値上げそのものは、私は、一般炭に重点があるのではないか、こういうように判断をしています。すると、私どもが、いま関連をします大手五社の中で、炭価値上げによる企業の収益差というものが非常に出てくるのではないか、こういうように思っています。したがって、原料炭炭価値上げがどうなるかという問題は別にいたしまして、一般炭を、当時、十二月七日の時点では百万程度輸入するということになっていますが、いろいろ炭労のつたない調査で集約をいたしますと、当面、一千万トンというような膨大な数字が実は浮かび上がってきているわけであります。そうなりますと、どうしても現存炭鉱を強化拡大をするという意味投資をすべきだ、なおかつ新鉱開発あるいはすでに政府が買い上げています封鎖鉱区を再開発を毒する、こういう国内炭位置づけを明確にしていかなければ、輸入炭を入れるという問題についてはたいへんな混乱が今後も続くであろう、こういうように判断をしています。そういう面で、私どもが主張をしています平均値配分でなくて、傾斜配分あるいは価格差配分と申し上げていますのは、五次政策を改廃するにあたっての一つの考察でありまして、いま私どもが新政策を要求している時点から判断をすれば、それらの失点やあるいは効果の面を十分盛り入れた体制、政策をつくっていかざるを得ないであろう、こういうように実は考えているのでございます。  それから、第二次政策でございますが、炭鉱労働者に年金を支給せよ、こういう私どもの要求に対しまして、実は年金をつくっていただきまして交付をされていますが、いまの事態でこの年金受領者からいいますと、きわめて金額が少額でありますので、前向きの対策になるというものではない。政府のほうからは、答申その他の内容を含めまして、年金を上げろ、あるいは休日増加をしなさい、いろいろの指摘はございますが、いずれにせよ、この協議は労使の交渉が原則になりますので、現状の会社の経営実態からいけば、これらが私どもの要求するものとほど遠い、あるいは要求が入れられない、こういう現実だと思うのであります。  非常に長くなりましたが、お答えといたしましては、先ほど冒頭に申し上げました第三点の制度化を明確にすることによって、現状炭鉱労働者定着をはかり、若年労働者の採用をはかっていって活路を見出す、これ以外ないのではないか、こういうように思っている次第であります。
  78. 早立栄司

    ○早立参考人 御質問の点について端的に考えを申し上げますと、堀ればなくなる炭鉱の宿命の上に立って、働く者の生涯雇用という立場からの魅力をどうとらえるかという問題になれば、私は、これという決定的きめ手の対策はないと思いますが、その中で比較的その面から考えて望ましいと思われますのは、全国一社なり国有化なり、いずれにしても雇用関係を含めた企業形態が一つのものになるということによって、働いておる炭鉱が終堀しても雇用そのものは切れないという関係が生じてまいりますから、それも一つのことだと思います。しかし御承知のように、三菱の端島の閉山で、すぐ隣の高島にできるだけ多くと言ったけれども、行く者は百何十人かということだったことから見て、やはり同じ企業体か何かで雇用関係は切れないとしても、一つの雇用関係の中での配置転換であるとしても、職場が別な炭鉱に変わるということについては抵抗がありますので、どこまでそれが効果があるかということは疑問です。  それからもう一つの点は、これも決定的きめ手ではないが、いま里谷さんがちょっと触れました、炭鉱年金の給付額を大幅に引き上げると同時に、支給年令を引き下げるということによって、若い人たちが炭鉱に入って四十四、五まで働けば炭鉱年金を受ける資格が出る。そこで炭鉱はつぶれても、あるいは何かの理由でほかの産業に行っても、ほかで働きながら炭鉱年金のほうはもらえる。だから若いうちに炭鉱に行って炭鉱年金の資格をとって、それからほかへ行くなら行くということも一つの方法じゃないかという感じがします。
  79. 木崎順二

    ○木崎参考人 里谷参考人並びに早立参考人意見のほかに、思いつきのようなことでありますけれども、この問題は体制問題がどうなるかということでも非常に大きく変わっていくと思うのでありますけれども、現在のまま移行すると仮定いたしますと、やはり企業自体が自分の持っている炭鉱の寿命はわかっているわけでありますから、そうするなら経営の多角化をはかって、そのほうに人間を回すというようなことを積極的になされてしかるべきだというふうに私は考えます。しかしそれで全部が解決するかという問題になりますと、実際問題として私は解決はなかなか困難だと思いますが、これは私が耳学問で聞いたことでありますから、間違っておったら撤回いたしますけれども、フランスでは、おまえのところの山はあと三年半で閉山なんだということが全従業者に知らされているというのです。それで平然として働いておる。三年後どうするのだ、こう言ったところが、いや、おれは三年後にはどこどこの会社のどこどこへ、どういう形で何ぼの賃金で行くことにきまっているのだ、そのことについて会社も国も非常にめんどうを見てくれて、三年後の私の行くところはちゃんときまっておるのだ、三年後に行くところがきまっているのだから、いま一生懸命ここで金もうけをやっているのだということのようなんですが、そういうようなことも一つの方法として考えられるのではないかというふうに思われます。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 けっこうです。
  81. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  82. 多田光雄

    ○多田委員 どうも御苦労さんです。  最初御三人にそれぞれ伺いたいのですが、石炭を見直す上でも、新しいエネルギー政策をつくるという上でも、過去のエネルギー政策のやはり厳密な反省あるいは教訓というものを引き出さないとまた同じ轍を歩む、こういう結果になるのじゃないかと思うのです。そういう意味で今日のいわゆるエネルギー危機、この根本的な原因ですね、これは政策的な原因はどこにあったのかということについて、労働組合の皆さんはどうお考えになっているか、これをひとつ里谷さんはじめ、皆さんから伺いたいと思います。
  83. 里谷和夫

    ○里谷参考人 根本的な原因は、先ほども申し上げたのでありますが、国内資源を愛護するという精神に欠けておった、そういう具体化をする政策が欠けておった、こういうことに尽きるのではないかと思うのであります。
  84. 早立栄司

    ○早立参考人 端的に申し上げれば、いま里谷参考人のおっしゃったことに尽きると思いますが、一点つけ加えれば、戦後ある時期から、昭和三十年ぐらいからですか、安くて豊富な石油が怒濤のように進出をしてきたということが決定的な理由であると思います。そして特に石炭を使っておった電力さん等が安くて便利で豊富な石油のほうに切りかえるということになってしまったわけで、先ほど責任論がありましたが、石炭政策の検討にいろいろ携わった諸先生方もそういう勢いにはどうしても勝てなかった、かなわなかったという状態ではなかったかと私は思います。  そして同時に、ちょっと石炭を離れてもっと広い角度からいえば、そのことは日本経済にとってよかったのかどうかということは、日本全体として見れば一がいに悪かったとはいえない。そういうことも含めていまいろいろ批判が出ておりますが、今日までの非常な、戦後荒廃の中から日本経済が大きく復興したという一面があることはやはりそれなりに評価しなければいかぬと思います。しかしそういうことの上に立って、結論的にはいま里谷さんが言われたと同じように、その中でも国内資源の一定量は、これは絶対必要だという立場が貫かれておればこうはならなかったと考えています。
  85. 木崎順二

    ○木崎参考人 安いエネルギーを求めた結果、先ほど申し上げましたように特定のエネルギー、特定の供給先、それに無定見にたより過ぎたということが昨年の石油ショックを契機としての大きな混乱ということを招いたものと思いますが、より根本的なことを私はこのように考えております。  日本という国は、食糧においても、いわゆる一般資源においても、一億の国民を養うにははなはだ貧弱でありまして、その意味におきましては日本は本来的に貧乏であります。貧乏人がいつまでも豊かにならなくてもいい、貧乏人は貧乏人で過ごせということはないわけでありまして、豊かになるのはけっこうなんでありますけれども、本来貧乏である日本の国が豊かさを急速に求めるあまりに、高度成長政策をあまりに追求し過ぎたというところに根本的な原因があると考えます。
  86. 多田光雄

    ○多田委員 なお、これに関連してですが、いま里谷さんからは国内資源の愛護に欠けていたというお話がありました。それから早立さんから同様の意見のほかに、安い石油の流入があったということ、それからまた木崎さんからも石油にたより過ぎたこと、日本は貧しい国であること、というお話があったわけですが、同じ非常に工業の発達をした国として、たとえばイギリスとかフランスとか西ドイツを見ますと、同じエネルギー革命といわれる中で、なお依然として石炭がそれぞれの国において大きな一次エネルギー源としての比重を持っているわけですね。なぜ日本アメリカあるいはイギリス、フランス、西ドイツなんかとこういう食い違いが起きたのだろうか、問題はやはりここに一つあると思うのですね。これは経営形態やそれから歴史的なものがあると思いますけれども、この辺もう少し突っ込んでお伺いしたいと思います。  なぜなら、私もこの石炭特別委員会でこの問題でこれから一そう政策点を深めていく上で、やはり日本として産業政策上も一体どこに問題があったのか、あるいはこれは場合によっては政治、経済政策も含めて、それがはっきりしないと、かりにこれから、代替エネルギーがないという問題もあるでしょうし、石油もないから、やはり一定限度入れていかなくちゃならない、さらにまた新しいエネルギー政策をつくっていくという上で、十分ないわば資料というか政策的な土台ができませんので、もう一度ひとつ立ち入ってお伺いしたいと思います。
  87. 里谷和夫

    ○里谷参考人 項目的にまず申し上げてまいりますと、石炭産業がどういうようにして現状になったかということの歴史的経過をやはり知ることではないのか、こういうふうに第一点、思うのであります。  そこで、項目的に申し上げてまいりますと、輸入エネルギー現状と今後について分析をすべきだ、こういうように思います。  その第一は、石油についてでありますが、各国の情勢についてどう対処するのか。問題になりますアラブ、アメリカ、ソビエト、その他の輸入エネルギー国についての分析を徹底的にすべきである、こういうように思います。  それから、石炭についてでありますが、先ほど申し上げましたように、国内資源を愛護するという前提であれば、私は石炭を黒いままたくというこでありますが、先ほど申し上げましたように、国内資源を愛護するという前提であれば、私は石炭を黒いままたくということでは活用性はないと思うのです。しかしながら、昭和三十年代には石炭の化学化が進められていましたが、やはり資源枯渇という意味でそういう前向きの勉強が一切ストップされてしまった、こういう問題があろうと思います。  ですから、総括的にいいますと、輸入エネルギー現状と今後について政府は明確な態度を出すべきではないか、会社はそういうことを出すべきではないのか、こういうように思います。  それから三つ目は、外国エネルギーの対応策についてであります。したがって、諸外国はその自国のエネルギー対応策をどのように立てているのか、こういう点について学ぶべきだと思うのであります。二番目の問題と若干関連をしてまいりますので省略をいたしますけれども、やはりたいへんな技術革新は、買ってくるということではなくて、自国みずからが開発をするという前向きの姿勢がなければならぬ、こういうように思うのであります。  ですから、第五次石炭政策をつくるにあたりまして体制委員会を開催したときに一つのエピソードがあります。御紹介申し上げますと、ヨーロッパはどういうことになっているのだろうかということで通産省のお役人が調査をしてまいったのでありますが、その報告を聞きますと、たまたまイギリスの例の報告がございまして、結語として、いまイギリスの炭鉱労働者はたいへんなストライキを打っている、ストライキをたくさん打っていくからコストが高くなる、したがって、イギリスはいま国有化で安定しているかのように見えるけれども炭鉱労働者があまりストライキをやると日本石炭産業のような衰退をするであろう、こういうような報告が結語につけ加えられたことがあるのであります。これらを判断をいたしましても、私どもはほかのまねをするという意味ではなくて、真剣に外国エネルギー対応策を日本も積極的に取り入れる必要がある、こういうように思うのであります。  四点目として申し上げてまいりますのは、炭労の政策提言について政府や会社はもっと真剣にこれを取り入れる必要があったのではないか、こういうように私どもは自信と確信を、石炭産業現状の見直しの議論の中から実は見出しているのであります。そういう点から見ますと、端的に申し上げますが、労働者意見を聞かない政策やあるいは実行政策というのは実際に実が入っていかない、こういうように思うのであります。  ですから、炭労の政策提言を繰り返して申し上げさせていただきますと、まずエネルギー安定供給についてであります。当然輸入炭の不安定や見通しについても議論をすべきである。二点目は、国際収支と高度経済成長の問題でほんとうに産業の安定がはかられたのか、あるいは地域経済の維持ができたのか、こういう問題について考察をする必要があると思うのです。三番目は完全雇用と労働条件向上であります。四番目は保安確保を前提とした生産拡大あるいは坑内の近代化をはかる、このことが今後の政策として最も必要な項目ではないのか、こういうように思うのであります。  大きい項目の五番目でありますが、政府並びに会社の政策動向の問題についてやはり徹底的にメスを入れる必要がある、こういうように思います。これは三点目で申し上げました外国エネルギーの対応策の問題と関連をしてまいりますが、まず具体的にエネルギー政策の樹立であります。二つは、石炭政策を作成するにあたって審議会はどういう協議を行なってきたかということについて、やはりもう一度メスを入れる必要があるのではないか。三番目は、石炭の評価に関する具体的な調査報告をすべきである、こういうように思っているわけであります。  したがって私どもは、これらの点の解明をしていけば、十数年間スクラップに続くスクラップを続けてきた石炭産業は、敢然として安定した産業の方向へ展望を見出し得るのではないのか、こういう確信を炭労として持っている次第であります。
  88. 早立栄司

    ○早立参考人 端的にお答えしますが、先ほど来言われておりますように、国策として国内エネルギー資源を絶対的に保護するという面に弱さがあったことが今日の事態を招いてしまったという反省の上に立って、これから先は国策として国内エネルギー資源を絶対的に保護していくという立場に立つべきだと思います。そしてそういう立場から、いかに自由主義経済体制下とはいえども、この国内エネルギー資源に悪影響を及ぼす面については法的、国家的な制約を行なっていく、こういうことを通じて国内エネルギー資源の絶対的な保護をはかっていくということが一番の基本だと考えます。そしてその上に立って、具体的な対策は、石炭の利用拡大の面についてはすでにいろいろ問題になっております液化、ガス化等の問題を含めてこの実用化を早急に進めるということと、開発の面については先ほど来論議のありました開発体制の問題がありますし、それから深部移行に伴う生産保安技術開発の問題がありますし、資金の問題がありますし、さらに私先ほど申し上げました必要な労働力確保という問題がございますので、これら一つ一つについての具体的対策を検討し実施をすることといたしておりますが、要はその場合の国内エネルギー資源を絶対的に保護するといっても、それに要する対策費が相当に大きなものになるという問題が出てくるかと思いますが、経済性をある程度度外視しても、国策として国内エネルギー資源を絶対的に今後は保護していくということにしていただきたいと思っております。
  89. 木崎順二

    ○木崎参考人 先ほども申し上げましたように、高度経済成長政策の行き過ぎということが根本的な問題であろうと思いますけれども、やはり貧乏国は貧乏国なりに自分の持っている資源を最大限に活用するという姿勢に欠けているというのがまず第一点の誤り。  それから第二点の誤りといたしましては、エネルギーというものは経済性の追求だけではなくて多様化をはかり、供給先の多様化をはかるということが大切なんじゃないか。現在でも、第二次大戦以後地球上で大砲の音がしなかった年はないわけでありますし、また低開発国が自分の国を豊かにするためにナショナリズムに走るということも当然の姿でありまして、そういう不測の事態といいますか、そういう要素を勘案し、経済政策を立て、エネルギー政策を立てるという視点に欠けておったのではないのかというふうに私は考えます。  多様化をはかり、自国の資源を大切に使う、有効に使うという代表的な例は英国であり西独であろうと思いますし、多様化をはかるという意味で鋭意努力している代表的な例はフランスではなかろうかというふうに私は考えます。備蓄不足の事態を考えまして、備蓄量一つにいたしましても、これは七二年のOECDの調査でありますけれども、その当時英国は八十七日、フランスは百十日、ベルギーは百六日分、西独は七十三日分、イタリアは六十五日分、日本は実に五十五日分という貧弱さであったということは、不測の事態に対する計画性といいますか、そういうような配慮というものが全く欠けておると言って過言ではないと思います。
  90. 多田光雄

    ○多田委員 いまお三人からそれぞれたいへん積極的な御意見を伺ったわけですが、実は参考人の方々に来てもらうのはきょうで四回目なんです。午前中は石炭協会有吉さんに来ていただきました。その前は鉄鋼関係や電力関係にも来ていただきました。鉄鋼関係や電力関係の方は、いま皆さんがおっしゃったように、これから日本資源をもっと活用していかなくてはならぬとおっしゃったし、それから炭鉱労働者はいま国の戦士である、こういうようにおっしゃったのです。十年前に炭鉱労働者日本の戦士であるということを言ってくれればこういうこともなかったのだろうと思いますけれども、いま石炭がないということになってくると、今度はまた炭鉱を持ち上げてくるという状況なんですね。  それから、午前中有吉さんのお話を聞いたんだけれども炭鉱経営者、お一人ですから全部の声を代表したというふうにはならないかもわかりませんけれども、協会の会長さんの意見を聞いていますと、どうもいままでの石炭の方針と根本的に変わっていないんじゃないかというふうな印象を受けたのは私一人だけではなかったと思うのです。  そこで、いま皆さんのおっしゃった自国資源を大事にしていくという積極的な点を一そう伸ばす上で、いまの政府、それからいまの石炭資本あるいはもっといえば石炭資本を含めた日本経営人ですね、これが本気に皆さんがお考えになっているような方向にいっているというふうな確信をお持ちになるのか、あるいは現場で働いている労働者の皆さんが、うん、これならば炭鉱に残って一ふんばりしようというようなお気持ちになるような政策あるいは方向を打ち出しつつあるとお思いになるかどうか、これをまたお三人に伺いたいと思います。
  91. 里谷和夫

    ○里谷参考人 第五次石炭政策をつくる前に、体制委員会でいろいろ議論をいたしました。体制についてどうあるべきかということについては、私ども炭労の意見は変わりませんけれども、その当時石炭協会でまとめましたものは、石炭産業の安定のためには体制を新しくすることもやむを得ないというところまで、実は悲壮な決意で体制委員会で発言があったことがございます。ところが結果的に、五次政策の答申を見ていただければおわかりいただけると思いますが、いろいろ議論の経過を重ねてまいりますと、私企業のバイタリティーを尊重しなければならぬ、したがって次の諸策を行なう、こういうことが根本であります。ですから私どもは、そういう面で労働運動の幹部だけでなくて、そういう企業の姿勢について政府ほんとうにバイタリティーが出せると判断したのかどうか、こういうことについて非常に憤りを持っていますし、失望を感じているのではないかと思います。  先ほども申しておりますように、悪口でも何でもないのでありますが、変にとっていただきたくないと思うのですが、たとえば炭労の五万七千四百円の要求と、全炭鉱の要求が四万何がしということで違ってまいります。これはどちらが正しいのか、どちらが悪いのかという意味ではなくて、できれば、多賀谷先生の指摘もありましたように、労働条件改善をするには段階的な解消をはかるのではなくて、根本的にしかも一気に改善をはかれ、そういう御意見等を出されてまいりましたが、私どももそういうように押えています。ですから、そういう企業の体質や体制は、職場の労働者はほとんどいま幹部、組合員の差はなく認識をしているのではないか、こういうように思います。ですから、新政策を炭労が主張していますものは、そういう欠陥を克服して新しい政策と体制をつくる、こういうことになれば、炭鉱労働者石炭を掘り出す正義に燃えてがんばるのではないのか、こういうように思っています。個々の議論に時間をかけないで、新政策は英断を持ってきめるべきである、こういうように思うのです。
  92. 早立栄司

    ○早立参考人 私どもがいままで接してきた限りにおいては、政府関係もそれから石炭経営者も従来の石炭に対する考え方を切りかえて、新しい情勢に対応し、新しい観点から石炭を重要視するという考え方になってきておるように私は受けとめております。しかしそれは、あくまでもいわゆる総論的な段階でそのような立場が伝えられておるだけであって、具体的に各論といいますか、これからつくられる対策面では、どこまで期待できるかという点について非常に疑問がございます。  それから、関連しまして、それではいまの政府与党をはじめ政治体制という問題に発展するのかと思いますが、私自身も一つの政党の党員でございますから、今日の日本の政治体制について一つ見解を持っておりますが、いまここでそこまで申し上げることはどうかと思いますので、差し控えたいと思います。
  93. 木崎順二

    ○木崎参考人 当局にいたしましても、経営者にいたしましても、早立参考人が言いましたように、従来よりは非常に前向きにものを考えているというふうに私も考えます。しかし、いずれにいたしましても、経営者にいたしましても、当局にいたしましても、非常に大きな責任を有しているわけでありますから、当然発言が慎重にならざるを得ないという側面は考えなければならないのではないかと思います。はたしてこれから炭鉱労働者が、うん、これなら炭鉱におっていいわいというような政策転換ができるかどうかという問題につきましては、できるかどうかという以前に、われわれはそうしてもらわねばならぬ、またそのように努力をせねばならぬということを申し上げて、答えにならぬ答えでありますけれども答えにかえたいと思います。
  94. 多田光雄

    ○多田委員 わかりました。  それから、会社はいま赤字を盛んに言っておられて、そしてこれから石炭を見直ししていく上でも、最大のネックの一つといわれる労働者の問題、これにしてもなかなか赤字が——ということで思うように上げてくれない、あるいは保安その他にしても、もう企業赤字だ、国から金をもらっている状況だ、こういうように言っているわけですが、先ほど炭労も五万円以上、それから全炭鉱のほうも四万円以上というかなりいままでにない大幅の賃上げをかちとるために奮闘しておるわけです。こういう大幅の賃上げが労働者のどういうところから生まれてきたのか、これは生活をよくしたいといえばその限りだし、物価が上がっているからといえばそうなんだけれども、この大幅賃上げがこの赤字論と一体どう戦っていかれるのか、ここをひとつお話し願いたいと思うのです。つまりどのように労働者の皆さんが訴えておられるのか、これをひとつ伺いたいと思うのです。これは炭労さんと全炭鉱さんとでよろしゅうございます。
  95. 里谷和夫

    ○里谷参考人 率直に申し上げますと、第一次政策から炭鉱労働者が縛られてきているものは賃金でありますし、賃金をはじめとするその他の諸条件が非常に政策に縛られるわけであります。賃金は当時七%が限度である、こういうことで進んでまいりました。これは五年間七%で押えられてまいりました。その過程で、中労委その他の問題がありまして、七%の壁が一二%になる、こういうこともございました。年々炭労はストライキをかけても自分の生活を守る、命を守るという意味で戦ってまいりましたが、この政策的な壁は非常に厚かった。このことだけは端的に言い得ると思うのです。ですから、炭労は閉山をおそれないで労働条件を高めようじゃないかという戦いを推進してまいりましたが、毎年の戦いのあと自己批判をいたしますように、政策の壁あるいは企業の体質等から判断をして、経済的体質から判断してとれなかった。しかし、一番炭鉱労働者労働条件が悪いのに安い賃金である、これをどうしても改善をしなければならぬという意味で、昨年のエネルギー危機から、おれたちの生活やおれたちの条件をどう見てくれるんだ、それをしてさえくれればがんばろうではないか、こういうようになってきたんではないかと思います。ですから、私どもが五万七千四百円の要求をいたしましたのもあるいは特別一時金の要求をいたしましたのも、この十数年間政策企業の体質だけでとどまってはならない、こういう結集から今度の要求が生まれてきたものである、こういうように思っています。ですから、先ほども基本条項で申し上げましたように、私どもこの条項が入れられないとすれば、石炭産業労働者として産業を放棄するという問題について真剣に協議しなければならぬ、こういうふうに思っているわけであります。
  96. 早立栄司

    ○早立参考人 里谷参考人のいま言われましたことと大体半分程度共通すると思いますが、十数年間ずうっと苦しい中で石炭産業の斜陽化する中で賃金等労働条件がぐっと押えられてまいりましたから、それに対する不満がうっせきしておりました。そして昨年までの状況では、賃金が低い、その他の条件も悪いので、本来ならばよその高いところに行ってしまうという面がありますが、しかしそうはいっても新しいところにまたかわるということもなかなか困難だという面で、不満を持ちつつも何とか炭鉱にとどまっておったという状況ですから、そういう意味で一定の人は確保されておりましても、内部的要因としては非常に不安定な、不安な面が宿されておったと思うのです。その状況の中で昨年十月以来の石油危機以来、さあ石炭が必要だという情勢になってまいりましたから、私どもはこの情勢をそのまま率直に受けとめて、いま申し上げたような、非常に問題をかかえておる炭鉱労働者のほうに、元気を出す意味でもって、こういう情勢になったんだからいままでとは違う、いけるぞということを話しました。職場の大衆も、われわれが言う以前からすでにそういうようにエネルギー情勢というものを受けとめて、いままでとは違ってくるぞというふうに感じ取っておりましたから、そこでわれわれの言うところと、職場の組合員大衆が考えておるところとが一致して、元気を出してさあいこう、それには、そうよくなったのならいままでぐっと押えられていた面について人並みな賃金にしてもらおうじゃないかという気持ちが一ぺんにずうっと強くかたまってきたということになると思います。
  97. 多田光雄

    ○多田委員 私個人としてもぜひ大幅な賃金をかちとっていただきたいと思うのです。先ほど有吉さんに申し上げたんですけれども、四十二歳の平均年齢という中で、かりに二千万トンというものを掘るにしても、もうあと四、五年すれば労働力の面から不可能になってくるわけです。ほんとうに自国資源を大事に石炭を掘っていくとすれば、政策的なものの中で特に炭鉱労働者労働条件、賃金、保安、これを優遇するかどうかということが、経営者としてほんとうに真剣に石炭を掘っていくかどうかという一つのポイントだろうと私は思います。もしそれがないとすれば、やはりもうけのための企業で、いまある既存の山だけが政府から金をもらって残っていくのだ、そういう企業の腹であってあまり変わってないな、こう思うのです。ぜひひとつそれは皆さん御奮闘願いたいと思うのです。  そこで、なおあと一、二ですが、いま残業をどれくらいしておりましょうか。それともう一つ保安確保する上で、労働組合の対応を含めて、いま何が一番緊急な問題なのか、この二点をお伺いしたいと思います。  これもお二人でよろしゅうございます。
  98. 里谷和夫

    ○里谷参考人 正確な数字を持ち合わせておりませんけれども、私どものふだん使いなれていることば、実態から申し上げますと、十時間働いているのではないか、こういうように私ども言っています。ですから、労働省その他の調べでは一時間二十分程度、いわゆる八十分とか九十分的な数字は出されてはいますけれども、私どもの一般的な判断では、基準法ぎりぎりまで残業をしているだろう、こういうふうに思っています。  それから二つ目の問題でありますが、私ども労働条件的にいうと、ついに社会から取り離されたそういう労働条件にいるのではないか、こういうように思っていますから、賃金のことはもちろんでありますけれども、労働時間あるいは休日増加の問題その他についても、人並みのものをどうしてもかちとりたい、こういうように思っています。
  99. 早立栄司

    ○早立参考人 超過労働時間等につきましてはちょっといま資料を持っておりませんが、大体私ども承知しておるのでは、一日二時間ぐらいの残業が普通行なわれておる、こう考えますから、里谷さんが言われたように、十時間くらいになっておる、こういう関係になると思います。  保安対策の面では、いろいろとございますが、御質問のように端的にいま当面一番必要なものということになれば、私はやはり坑内保安対策を含めた骨格構造改善等を十分に行なうための費用につきまして、現在も国から補助がございますけれども、それでもなおかつ進行しない状況にありますから、一〇〇%こういうものを補助をして、完ぺきに坑内骨格構造改善並びに環境の改善を進めるということが一番必要なのではないか、こう考えております。
  100. 多田光雄

    ○多田委員 里谷さん、ちょっといま保安の問題でこういう話を聞くのですけれども、やはりいまの労働者、労働組合を持っていても、企業主義的なものの考えがまだ残っているということで、たとえば保安があぶないなと思っても、それを労働者サイドからきちんと詰めていくという点で抜けるところもあるという話も聞いているのですが、まあそういうのはおそらくごく少数ではないかと思いますけれども、そういうことを含めて、これは組合サイドを含めて、ほんとう保安でいま一番大事なものは何だろうかということで、ひとつ里谷さんの御意見を伺いたい。
  101. 里谷和夫

    ○里谷参考人 先ほど二点目の質問、ちょっと聞き間違ったきらいもありますのでおわびいたします。  私ども保安の問題につきましては、一度先生にもお答えをしたと思いますが、とにかく災害率が非常に多いものですから、どのように改善をはかるかという意味でいろいろ英知を集めているわけです。そういう面で、危険な職場に入らないというような元気のいい方針を出してやったこともあるのですけれども、現実的にそれがどこまで守られているかという点については、労働時間その他の実績等から申し上げましても非常に悩みのところだと思っています。  そこで、保安点検を徹底的にやる、その個所の改修については妥協をしない、こういう意味で進んでいこう、こういうことで、たとえば本年の今月の一日から保安点検を緊急に指示をする、こういうこともやっています。あるいは最近の例といたしましては、深部化をいたしていますので、深部化の対応策について調査団を編成をして、全炭鉱いまの実情の中で回れないものですから、夕張新炭鉱調査をいたしまして、われわれの要求をいままとめつつあります。そういう問題をきっかけにして私どもの要求をまとめて会社と協議をしてまいりたいと思いますし、先ほど、経済的な制約があるものについては通産省のほうにも実情を申し上げまして改善をはかる、こういうための努力をしているというのが現実であります。
  102. 多田光雄

    ○多田委員 時間が来ましたので、最後にこれは里谷さんにちょっとお伺いしたいと思いますが、私どもは先般エネルギー問題の緊急政策を出したのですけれども、あるいは読んでいただいたかとも思いますけれども、今日のエネルギー問題というのは小手先ではもうだめだろうというように思います。というのは、先ほどもお話がありましたように、国内資源を放棄していくという根本は、これは政治、外交、日本の政治姿勢の根本にまでさかのぼっていくような問題でもあるし、あるいはメジャーの支配にしましても、これはメジャーは石油だけでなくて石炭からその他のエネルギー全般にわたって扱う国際資本になってきている、これががっちりとまた押えているという問題がありますね。それから日本の高度経済成長でも体制的なものもあるということでは、相当石油問題を含めて総合的なエネルギー政策というものが必要になってくると思います。そういう意味で炭労さんも総合的なエネルギー政策ということをお立てになっているわけですが、そのエネルギー政策の中で国有化ということをおっしゃっていますね。私どもは国有化というのは、単に石炭だけではなくして、今日ではもう電力から石炭からあるいは石油、原子力、こういう総合的なものをやっていかないと、外国からの干渉もこれは防いでいけないというふうに思うわけですよ。そういう点で、総合性の問題について一言お伺いしたいと思います。  それからもう一つ、これはここまで来ると相当国民的な運動を起こさなくちゃいかぬ。そういう意味で、たとえば鉱山関係が、労働組合が、石炭を見直すとかいう意味では、手を結んで大きな世論を起こしていくというようなことなんかもお考えになっているかどうか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  103. 里谷和夫

    ○里谷参考人 いろいろ革新政党から、総合エネルギー立場に立ってどうあるべきかという意見等については、炭労では十二分に資料をいただきまして検討いたしている次第であります。しかしその過程として、先ほど言いましたように、国有公社化の方針は変えないという意味では、ある面では側面から見ますと一方的過ぎるのではないか、あるいは石炭だけが国有化可能なのかという議論等も確かにあろうと思うのです。しかし、私どもいま置かれている立場からいえば、炭鉱の国有公社化をはかる、ここが必要だろう、こう思っています。というのは、いまの私企業体制で拡大生産をするにしても、近代化をはかるにしても可能でなかろう、こう思っています。ですから、政府資金を投入するのであれば、政府の資金が大きければ大きいほど政府がその権限を拡大強化すべきではないのか、こういうふうに実は私ども原則として考えているわけです。そういう面でたくさんの資金投資があれば、そこが責任を持つのは当然である、こういう意味で私どもは実現化をはかってまいりたいと思いますし、各政党間から出されている問題についても是非についていま勉強を進めています。  一つの例として申し上げたいのでありますが、昨年の暮れのエネルギー問題がございましてから、総評を中心にいたしまして、いわゆるエネルギー消費組合とあるいはエネルギー生産組合と協議をいたしまして、どう総合的エネルギー判断をするのかという問題について協議を続けていますし、現在もなおその協議をじみちに続けてまいっています。そういう意味で、石炭の国有化の問題あるいは石炭だけでなくて電力その他のエネルギーとどう体制的に固めていくのかというのは、もう少し時間がかかるのでなかろうか、こういうように思っています。  もう一つは二つ目の問題でありますが、この問題については先ほど来申し上げましたように、十数年来の炭労的な運動の中で活動してまいりましたので、諸外国の問題等についてまだまだ学ばなければならない面が非常に多いのでございます。しかしながら、五月に入りますと、イギリス炭鉱労働組合の方々も招聘をして、その闘争の体験やあるいは石炭産業の実態等について協議をし、私どもも血にし肉にしようと思っています。国際的にはそのように判断をしています。  もう一つは、三万の炭鉱労働者がいるのでありますが、炭労、炭職協あるいは全炭鉱ということで、いろいろの経緯はありますが、組織が分かれています。何とかひとつ炭鉱労働者の行く道は一本だということで、私ども具体的な呼びかけをいまいたしていませんけれども、やはり新政策実現の際にはそういう国内的な運動を高めていこうではないか、こういうように思っていますし、あるいはメタルの労働者とは兄弟という愛称を使いながら、いまお互いの苦労を分かち合って運動を進めている、こういう現実でありますので、私どもすでにそういう体制をつくり上げておかなければならないことをしみじみ痛感するのでございます。これが炭労の持つ弱点でもあろうと思っておりますが、今後努力をしてまいりたいと思っております。
  104. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  105. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  106. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 お三人の方からたいへん御熱心に御説明いただきまして大いに敬意を表します。お疲れでございましょうが、もうちょっとおつき合いを願って私引き下がりますのでどうぞよろしく。  先ほどから非常にていねいに御説明をいただいたのでございますが、その中でこれは木崎さんからいただいたのだと思いますが、しかしお三人御同様に御説明をいただいたのでありますが、国内資源保護ということにつきまして、これはいかなることがあっても保護しなければいけない、経済問題は度外視してでもあらゆる考えを集中して、そして国内資源保護しなければいけない、国策としてやるべきだ、それには資金の問題あるいは労働力の問題とかいろいろあると思うけれども、そういう困難なことをぜひ克服して国策としてこれを十分達成しなければいけない。まことに御卓見で私敬意を表します。そのとおりだと思いますが、さしあたって国内炭といたしますと、生ほどもお話があったように、百万トンぐらい一般炭輸入をしなければならぬ。国内炭として日本は非常に乏しい一般炭でございますが、これに対して皆さん方のお考えを私ちょっと承りたいのです。一般炭値上げということに対して、これは外国炭を輸入いたしましても、外国炭もそれから油ももう十分上がっております。どんどん上がっておりますから国内炭もむろんこれは上げなければ——油は二倍も三倍も上がっているのですから、だから国内炭を少々上げても私はそう問題ないと思います。これはむろんまた需要家側からの協力もなければならぬと思いますが、これまたほかにもいろいろあると思います。皆さん方みなベテランですし、私のほうはしろうとだからいろいろ申し上げませんけれども、それも安定補給金とかいろいろあります。ありますが、大体一般炭炭価値上げはどの程度——昨年は二百五十円ですか、原料炭が五百円。本年はどの程度上げたならば皆さん方の御満足——御満足というてもそうはいかぬと思いますけれども、どの程度をお考えになっておるのか。それを最初にどなたでもいいですから、ちょっとお尋ねしたい。
  107. 木崎順二

    ○木崎参考人 私たちは企業の収支とかそれからその他いろいろ計数的なことについては確実な資料を有しておりませんし、またそれをもらっても、それを整理し、考えをまとめるという能力も残念ながらいささか欠いております。したがいまして、午前中の協会長の話を私傍聴しておりましたが、三千五百円は必要である、いわゆるコスト主義で。石油が上がったからそれだけ上げるというのではなくてコスト主義で三千五百円必要だということを言っております。ただし、その中に今回のベースアップが何%含まれているのかというようなことは必ずしも明らかにされておりませんので、協会の言を信用すれば三千五百円ということになりましょうし、そのベースアップの率をどれだけ見込んでいるかということによっては四千円にもなり四千五百円にもなるのではないかというように考えます。
  108. 早立栄司

    ○早立参考人 先ほど御質問があって申し上げましたように、私どもがいろいろ要求をし、あるいはこれから要求しようという立場で考えておる面を含めて、労務費関係だけで私たちの要求するもの全体を満たしていった場合に、私たちの試算では二千三百円でありますので、さらにそれに企業赤字経営損千六百五十円とかいま言われておりますが、そういうものやら、これから資材費等まだ上がる面があるでしょうし、電力料金申請の状況を見ますと、もしああいうことになってまいりますと、炭鉱もかなり電力を使っておりますので、そういう面のコストに及ぼす影響も出てまいりますから、そういうものを含めての今年度の措置としては炭価ということになってくると思いますので、最低三千五百円、むしろそれ以上必要という状況になるのじゃないか、こう感じられます。
  109. 里谷和夫

    ○里谷参考人 私ども今回の石油事情から出発をいたしましたエネルギー危機の問題で、政府といろいろ協議をしていますが、通産省から言われていますのは、炭労の要求書に炭価の問題が落ちているのではないか、こういう実は指摘を受けています。これは私どもは、炭価を要求すべきでない、こういうように思っていますから、要求書から実ははずしておるのであります。  そこで国内炭輸入の問題につきましては、いろいろ検討はいたしていますが、一切認めないという立場ではございませんけれども一般炭における国内炭の切り捨てというものはたいへんなものがあるわけでございますから、一般炭国内位置づけを明確にするまでは輸入炭を入れてはならぬ、こういうような考え方をあらためて申し上げておきたいと思うのであります。  そこで炭価値上げの問題でありますが、政策によって千二百円引きが行なわれたり、あるいは競合エネルギーとの対比から、若干の石炭価格のアップが現実に行なわれているわけでありますから、そういう歴史的な政策経過を判断すれば、炭価ダウンをした、あるいは炭価アップをした審議会そのものが、この事態に対処して適当な価格を設定すべきである、こういうように私どもは思うわけであります。
  110. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 石炭鉱業審議会から出た御承知中間答申にも、いまおっしゃったように、国内炭に影響があってはならない、その点を輸入炭は十分配慮すべきである。いまおっしゃるとおりのことが出ておるようであります。大体御意見はわかりました。  そこで皆さん方からいただいたプリントでございますが、国内炭確保する、そのためには労働力が大事だ、技術者及び労働者が不足しておる、このままの状態でいけば労務倒産は必至である、このように書いてあります。  そこで、地下労働にふさわしいところの賃金引き上げをやらなければいけない、そして週休二日制あるいは三番方の縮小等をはかって世間並みの労働条件とすべきである。まことにごもっともでございます。私もそうなければならぬと思っております。思っておりますが、この「地下労働にふさわしい賃金」ということは、ことばじりをとるんじゃありませんが、どういうことを意味するのか。結局ああいう不便なところで、環境の悪いところでお仕事をなさっておる気の毒なお仕事の方々という意味と私は解釈しておりますが、何か地下労働ということに対する皆さん方のお考え、基準があるのかですね。  それから週休二日制、三番方の縮小緩和、そして世間並みの労働条件にしたい、こういうこと、これも私、まことにけっこうだと思うのですが、週休二日制を現在全炭鉱でどの程度おやりになっておるのか、全部おやりになっておるのかあるいはこれからなさるのか。それから週休二日制をやられて生産が低下しないように、それにはどういう手を打っていらっしゃるのか。あるいは三番方の問題もそうでございますが、それに対してどういう手を打っておられるのか。実施はしていらっしゃるけれども炭鉱の操業条件とでもいいますか、その操業条件に適したような対策をおとりになっておるのか。その辺のことをちょっと承りたいと思います。
  111. 木崎順二

    ○木崎参考人 まず御質問の「ふさわしい」ということでありますが、これは文字どおり「ふさわしい」ということなんで、はかりではかったような何%でなければいかぬとかいう基準はないと思います。これはおのずと社会的な合意の上で、まあ炭鉱にはそのぐらいがいいであろうなということできまっていくことだと思いますが、いずれにいたしましても、坑内労働という特殊な条件であり、しかも金属鉱山に比べれば残念ながら災害率の多いことも事実であります。そういう環境の悪いところで重労働に従事しているわけでありますから、いわゆるあらゆる産業の最高レベルでなければならないということは言って差しつかえないというふうに思います。  それから週休二日制でありますけれども年間を通じての若干の休日の増加ということは現在なされておりますが、週休二日制をとっているところは一つもございません。  それから三番方の縮小ということにつきましても、これを積極的にやっている炭鉱は現在ございませんで、私がそのことを主張いたしますのは、私も炭鉱にはずっともう二十年来働いておりまして、働いておる実感からいきますと、三番方というのは非常につろうございます。したがって、これはもう実績ではっきり出ておりますが、三番方が一番欠勤率が多いのです。というのは、いかに眠らないで、しかも重労働をやるということがからだにも悪いし、つらいことであるか。そのことが、おれは炭鉱に行きたくないということの大きな理由の一つになっていることも事実じゃないかと思うのです。したがいまして、三番方を縮小する。  それから週休二日制というのは現在の日本でもまだあまり、どこでもここでもやっておるという問題じゃありませんけれども、完全週休二日制は逐次そういうふうな方向にいきつつありますから、炭鉱もやはりその一般的な方向に沿ってやらなければいけない、やはり世間並みじゃないじゃないか。世間並みの扱いをしないで炭鉱に人をよこせ、炭鉱に来なさい、高賃金だから来なさいとだけ言っても問題の解決にはならない。では、そのことによってもし実施された場合の減産ということについて何か対策を考えておるかという御質問でありますけれども、現在それが実施されておりませんので、対策それ自体は具体的に私は考えておりません、現在の時点では。しかし、いずれ考えなければいかぬと思いますけれども、減産は免れません。減産は免れませんからコストは上がります。コストは上がることは明らかでありますけれども、それを避けて通ったんでは人の確保ができない。人の確保ができないということは、これまた減産につながるということでございますから、人の確保ができないよりはその減産のほうがはるかに少なくて済むというふうに、感じの問題でございますが、私はそのように考えております。
  112. 里谷和夫

    ○里谷参考人 私の立場から賃金を申し上げますと、金額で具体的に示せということについては非常に困難だと思います。  そこで、一つの例としてあるいは説得をするという意味で申し上げてまいっておりますのは、世界の各国の炭鉱労働者がどういう賃金順位にあるか、こういう点を私ども主張するのであります。そういう面から判断をしますと、やはり民間産業の第一位にいるではないか、したがってそれを保障をすべきである、こういう意見であります。  ちなみに、たとえば本年イギリス炭鉱労働者のストライキがございますが、私どもも学びますと、確かに数年前はイギリス炭鉱労働者が民間産業の一番高い賃金アップにあったのですけれども、これがどんどん落ちてきた、したがって民間産業の賃金順位が六位に下がってしまった、これではがまんできないではないかということであの大闘争が出発しているのであります。  こういう点から判断をいたしましても、炭鉱労働者労働条件、賃金については、政策で縛るんではなしに、やはり好条件を与えるべきである、こういうように申し上げておきたいと思うのであります。  週休二日は、実施をしているところはございません。  三番方の問題について若干の歴史的経緯を申し上げますと、スクラップがどんどん始まりますころに、やはりコストを安くするという意味あるいは少ない労働者でたくさんの出炭をする、こういう意味を含めまして、坑内に機械を持ち込みまして近代化生産が過渡的に推進をされました。そのときは外国の例が逆に日本に持ち込まれまして、外国では二十四時間じゅう出炭作業をしているではないか、日本炭鉱労働者は二番方までしか出炭作業をしていないんではないか、拘束時間でいいますと十六時間しか出炭作業をしていないんではないか、これでは日本石炭産業が発展をし安定をすることはない。したがって、二十四時間じゅう炭を掘ろうじゃないかという提案が幾度もございました。実現した炭鉱もありますし、それを阻止した炭鉱もございます。ところがいまの現状から判断をいたしますと、三番方というのは夜十一時に入坑をいたしまして、拘束時間八時間でありますから七時までであります。ところが先ほどの残業時間で申し上げましたように、ほぼ二時間の残業をしていますから、三番方が出坑をするということになりますと、午前九時ということになるのであります。そういう条件の中では炭鉱労働者定着をするだろうか、ここに問題があって三番方の問題が議論をされているのだ、こういうようにお含みおきを願いたいと思います。したがって、その過程では、三番方を六時間にするとかいろいろの方策は行なわれていますけれども、いま実現をされていない、こういうのが現状でございます。  なお、特殊休日の問題につきましては、一昨年から会社と交渉いたしまして、四十八年度中の特別休暇といたしまして二日間取得をしているというのが現状でございます。
  113. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 よくわかりました。私、週休二日制をどこかやっているところがあればそれを参考にお聞きしたいと思いましたが、いまの御説明でよくわかりました。  そこで、まだいろいろお尋ねしたいことがたくさんございますが、一点にしぼってお願いしたいと思うのですが、この「石炭政策のポイントについて」おたくからいただいたのでございますが、現状のような状態では、この石炭産業はとうていおぼつかない、先ほども申しましたように、労務倒産は必至だ。ところが次のようなことを完全に実施してもらえば労務者を確保することはまずだいじょうぶだ、このように私逆から考えて、そういうように理解していいと思うのですが、労務者確保のためには次のような対策をしてもらいたい。だから次のような対策をすれば、まず労務者はだいじょうぶだ、かように私解釈するのですが。そこで作業環境の改善をはかる、つまり保安確保と機械化だと思いますが、それから生活環境の改善をはかる、まだたくさんございますが、いま申し上げたような、直接賃金につながる問題、いわゆる労働条件ということは、これはもうお互い十分考えておるのですが、その次の、いま申しました保安確保と機械化ということに対して、全国の、皆さん方全国労働組合の委員長さんだから、また職員組合の委員長さんもお見えになっておるから、どういうところの企業が、山が保安に手落ちがある、あるいは不満足だ、どういう山に近代化が進んでいないというようなことを御調査いただいて、もう少し遠慮なく、先ほど堂々ととどなたかおっしゃっておったが、皆さん方がひとつ堂々とそういうところを指摘して私どもに教えていただきたいと思う。当石特委員会においてそういうのは徹底的に私どもやりますから。三万の炭鉱労務者の方々をお守りするということは私どもの責務です。十分やります。  それから生活環境の改善をはかること、実は私けさ参考人の方をお呼びして、意見開陳しておきました。また私ども炭鉱を回りまして、まことに不熱心で、すみからすみまで全部見てまわらなければならぬのですけれども、申しわけないことでございますが、たまたま私どもが視察しますと、実に言語に絶するような悪い社宅や環境の悪いところがございますね。そういうところを、これは皆さま方に責任を負わせかけてまことに申しわけないのですが、あなた方にばかり申し上げて相すみませんが、きょうはわざわざ委員長みずからお見えいただいたから申し上げるのですけれども、徹底的にこれは洗っていただいて、十分ひとつどこがいけない、どこどこがどうだというようなことを企業に徹底的に追及していただいて、言うことを聞かなければこちらのほうに通知していただきたいと思うのですよ。これは私どもは何も企業をいじめるために皆さま方にそういうことを言っているのじゃありません。労使協調して、互いに資本家、労働者相ともに国策に沿っていくべきである。だから、いずれをどうだということはありませんけれども、人間尊重、まず人を尊重するということが一番大事なので、私どもは労務者の方をまずお守りしなければならぬ。だからほんとうに楽しく愉快な、炭鉱に行ってみよ、何でもそろっておるぞ、社宅もりっぱな社宅があるよ、働くならあんなところで働きたいな。これは非常に誇張した言い方かもしれませんが、そういう点を、まことにこれは出過ぎた言い方かもしれませんけれども、やはり労働組合の委員長たる方々は、そうして労務者の方々を十分守っていくということがあなた方のまた私は大事な責任の一半ではないか。はなはだ僣越で、まことに出過ぎた言い方でなまいきなやつだとお思いになるかもしれませんが、私はそう考える。だから、どしどしそういう点を指摘して、私どもに教えていただきたい、このように考えるわけでございます。皆さま方にこれは別に答弁しろと申し上げるのじゃありませんが、皆さん方の御高見を承りたいと思います。
  114. 里谷和夫

    ○里谷参考人 過日衆議院でいろいろ石炭の問題のお話をしていただきました際にも、中曽根通産大臣が国会が終われば炭鉱を視察に行くと、こういうお約束をいただいた事実等もございます。そういう意味坑内あるいは生活環境等についても諸先生方にごらんをいただければ非常に幸いだと思いますが、ただいま御指摘をいただきました保安あるいは生活環境の問題について、私どももそれを整備することが私どもの任務でございますので、そういう作業を日ごろいたしておりますから、そういう結果を先生のところに御連絡をするという点について欠陥もあったやに考えられますので、そういう御報告を持ってあがりまして、実情について御協議をいただければ非常にありがたい、こういうふうに思う次第であります。
  115. 早立栄司

    ○早立参考人 先生からたいへん力強い激励をいただきましてありがたく存じます。  いままでは率直に申し上げまして、石炭産業の縮小過程でいろいろな制約がございましたから、それでそれ以上進めばもっていかない、つぶれちまうかもしらぬという、そういうせとぎわの中での対策であったために、私どもも十分な先生御指摘のような面でもって活動できなかった面がありました。今度は新しい立場から大いにそういう方向でがんばっていきたいと存じます。  なお、先生が言われました炭鉱ほんとうにすばらしい、こうよそのほうからも言われるような炭鉱ということは、私どもほんとうにその実現を願うところでありまして、同時に世界にはそういう炭鉱がすでにあると思います。私、十何年前か西ドイツの炭鉱に行って実際に見学したときに聞いた話でございますが、ハイスクールを出た女の子が一番嫁に行きたがる先は炭鉱労働者のところだ、こういう話も聞きました。そのくらいに非常に他からもうらやまれるほどりっぱな状態になっておるということでありまして、私どももぜひそういうふうに実現するべく私ども立場から努力をしていきたいと考えております。
  116. 木崎順二

    ○木崎参考人 先生から力強い御配慮をいただきまして非常にありがたく思っております。と同時に、先生の御希望につきましても先生の意に沿うようにこれから努力していきたい、そのように考えます。  私どもの組合の技術者の大半は坑内技術職員でございます。したがいまして、保安に関しての直接の責任を有する者の集まりであります。ところが石炭の災害率というものは、鉱山の災害率と比べましてもけたはずれに高い比率になっておりまして、この点われわれ非常に恥ずかしく思うと同時に、私たち組合員が一番責任を感じなければいかぬというふうに日ごろ思っております。  何といいましても、永年坑内で係員として保安業務に携わっているだけに、どうしてもあやまりがちなのは、炭鉱というところは災害がつきものである、ある程度の災害というものはやむを得ないんだというイージーな考えになりがちだということであります。これをまず、技術職員であるわれわれ自体が払拭してかかって、そういうことは、あり得ない、災害はゼロにできるんだという観点からものを進めるということこそが、保安確保する第一歩であるということで、組合員を指導していきたい、そういうように考えております。
  117. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 お三人の御高見を承ってまことにありがとうございました。  全くそのとおりで、私も微力ではありますけれども、参議院から通じて十年間石炭対策特別委員をつとめてまいっております。何もわからぬ者でございますけれども、労務者の皆さんが喜んで、安心してお仕事のできるようにということは、常に私の頭から離れたことはございません。実績をあげ得ないことはまことに残念でございますが、これからも責任者の皆さま方と相ともに、相呼応して、あくまで炭鉱労務者の皆さん方をお守りしていく、そして楽しい御家庭をみんなで築いていく、かようにつとめていきたいと思っています。私は、それが結局終局の目的だと思うのです。それは石炭を掘ることも大事ですけれども、従事している人そのものがほんとうに楽しい家庭を築いていくということが大事なことだと思うのです。  今後ますます皆さま方の御自愛、御検討をお祈り申し上げます。きょうはたいへんありがとうございました。
  118. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  なお、石炭見直しのため、去る二月十三日議決いたしました石炭対策に関する件について各方面からの一連の参考人意見聴取は、本日をもって一応終了いたしました。  これらの貴重な御意見は、今後の当委員会における審査、調査に際し十分に参考としてまいりたいと存じます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十三分散会