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1974-03-27 第72回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十七日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 金子 岩三君 理事 田中 六助君    理事 山崎平八郎君 理事 山下 徳夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 渡辺 惣蔵君    理事 多田 光雄君       上田 茂行君    三枝 三郎君       篠田 弘作君    戸井田三郎君       三原 朝雄君    山崎  拓君       上坂  昇君    中村 重光君       細谷 治嘉君    鬼木 勝利君       松尾 信人君    小宮 武喜君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君  委員外出席者         参  考  人         (日本鉄鋼連盟         会長)     稲山 嘉寛君         参  考  人         (海外原料炭開         発株式会社社         長)      田口 良明君         参  考  人         (電源開発株式         会社総裁)   大堀  弘君         参  考  人         (電気事業連合         会会長)    加藤乙三郎君         参  考  人         (セメント協会         専務理事)   黒沢  肇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に印刷配付しておりますとおり、午前中及び午後にそれぞれ参考人の御出席をお願いいたしております。  ただいま、日本鉄鋼連盟会長稲山嘉寛君及び海外原料炭開発株式会社社長田口良明君の御出席をいただいております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本件につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますけれども、時間等の都合もございますので、御意見開陳の時間はお一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対して質疑をいただきたいと存じます。  まず稲山参考人にお願いいたします。
  3. 稲山嘉寛

    稲山参考人 私、御指名をいただきました日本鉄鋼連盟会長稲山でございます。  本日は、石炭対策につきまして鉄鋼業界としての意見を述べよということでございますので、国内原料炭需要家立場といたしまして意見を述べさせていただきます。  御承知のとおり、鉄鋼業石炭業相互依存関係にございまして、長年にわたって緊密な関係を続けてまいったわけでございますが、特に、いわゆる第一次石炭対策昭和三十八年に実施されて以来、原料炭を重点といたしましたいわゆる石炭傾斜生産の方針に即応し、また政府要請もございまして、年々引き取り数量を増加してまいりました。また、価格につきましても、国内炭原価高からくる再三の値上げ要請を受け入れまして、輸入炭割り安なことを犠牲にいたしまして、四十五年以降各年トン当たり五百円、およそ四カ年間にわたりまして二千円の値上げを了承してまいったわけでございます。  特に現在の第五次答申では、四十八年度以降の国内原料炭価格改定ルールが通産省の指導によりまして取りきめられ、今後の国内原料炭価格は、品質的に見てほぼ同等の豪州弱結炭価格変動額にスライドして値上げすることとなりましたが、四十八年度におきましては、国内石炭会社経営が非常に困難な事情に相なりましたのを勘案いたしまして、特別に変動額をはるかに上回ります五百円の値上げを行なったわけでございまして、国内資源保全立場に立ちまして、鉄鋼業界といたしましてはでき得る限りの協力をいたしてまいったつもりでございます。  また、個別の山の資金繰りの事情に応じまして、石炭代金支払い条件を緩和するなど、資金面での融資協力も個々の会社につきまして行なっている実情にございます。  しかしながら、昨今の客観情勢変化、特にOPEC諸国原油価格の大幅な引き上げに象徴されますように、輸入燃料価格の急激かつこれまでに経験したことのないような著しい上昇は、鉄鋼業のあり方を根本的に考え直す段階に立ち至ったと考えるのでございます。  御承知のように、鉄鋼業といたしましては、コストの切り下げにいろいろ努力をいたしておりますが、特に鋼材コストに占めます原燃料費のウエートが非常に高いために、原燃料の購入及びその使用につきましては、格段努力を傾注して、その低減につとめてまいっております。  この結果、いままでのところ、日本におけるわれわれ主要メーカー鋼材販売価格は、諸外国に比べまして、国により、また鋼材の品種によりまして一がいには申せませんが、二割から四割は安いのではないか。したがいまして、海上運賃支払い、また関税障壁を突破いたしまして、なおかつ私ども生産している鋼材の二七、八%に及ぶ輸出が可能になっておるわけでありますが、今回の石油ショックを契機にいたしまして、海外鉄鉱石石炭等原燃料への依存度が非常に高いわが国鉄鋼業は、格段のくふうと努力が払われねば、今日までのこの優位性を失うのではないかと憂慮いたしておる次第でございます。  さて、国内原料炭引き取りに関する問題に触れたいと存じます。  鉄鋼業で使用する石炭は、主として高炉に装入するコークス原料なので、装入原料の非常な重圧に耐えるために特に粘結性を必要とするものでありまして、いわゆる製鉄用原料炭といわれて、一般炭すなわち電力炭と区別されておりまして、その粘結度程度によりまして、強粘結炭あるいは準強粘結炭あるいは弱粘結炭というように格づけされております。わが国では、昔は多少ございましたが、現在では強粘結炭は全く産出されておりません。一般炭と弱粘結炭のみが産出されておる次第でございますことは、御承知のとおりであろうと存じます。残念ながら現在の技術では、弱粘結炭だけでは高炉用コークスはつくれませんので、主として米国また豪州カナダ等から輸入されます強粘炭を、国産及び外国から輸入します弱粘結炭に適宜配合いたしまして、大型高炉に適した一定の強度を持ったコークスを製造いたしておるのが実情でございます。現在こうした配合に使われます国内弱結炭は、鉄鋼生産が年々急激に増大しておりますわが国におきましては、原料炭需要量飛躍的増加によりまして、国内弱結炭配合比率は漸次減少しております。三十八年当時の四五%から十年後の今日ではわずかに一五%に低下しておるのが実情でございまして、現在約一千万トンの国内炭を使っておるわけでございます。  いま少しく掘り下げまして御説明申し上げたいと存じますが、原料炭需要量を決定いたします要素は、御存じのとおり第一にはコークス比でございます。第二に鉄鋼生産量であるわけでございます。コークス比と申しますのは、銑鉄一トンをつくるために必要といたしますコークスの量のことでございますが、これまで鉄鋼業は、原料費低減をはかりますためにコークス比の引き下げにあらゆる角度からの技術改良を行なってまいりまして、現在では全国の溶鉱炉平均で四百四十キロ、中には四百キロを切るような高能率高炉もあらわれておりまして、世界第一位の効率性経済性を誇っておるわけでございます。  将来コークス比がどの程度まで引き下げられる可能性があるかという点が、原料炭需給にきわめて大きな影響があるわけでございます。  たとえば、四百四十キロが四百キロに下がるということは、一〇%近い低下でございまして、これは原料炭所要量が一〇%減るということになりまして、現在年間六千五百万トンの原料炭を使用しておるわけでございますので、六百五十万トンぐらいの所要量が減るということでございまして、たいへんな数量でございます。もっとも現状におきましては、理論的には可能でありましても、三百八十キロになるということは実際問題として困難でございまして、私ども、いまのところ四百二十キロ程度を一応の目標と考えまして努力を続けておるわけでございます。  原料炭所要量をきめるもう一つ要素であります鉄鋼生産見通しにつきましては、昨年産業構造審議会鉄鋼部会中間答申が策定されました当時、昭和五十年度の粗鋼生産見通しは一億三千万トン程度昭和五十二年度には一億五千万トン程度と考えられておりましたのでございますが、労働事情あるいは環境の問題からいたしましても、またことには最近突発いたしました石油危機以来の日本経済構造変化によりまして、鉄鋼需要、特に内需の伸びは、種々の制約を受けまして次第に鈍化するものと考えられますので、以上の見通しは相当下回る可能性が出てきていると存ずる次第でございます。  ちなみに、四十八年、昨年の粗鋼生産は、わが国は一億一千九百万トン強でございまして、全世界生産が約七億トン弱でございます。米国は一億三千六百万トンをつくり、ソ連は一億三千百万トンをつくりましたので、それにほぼ近寄りました日本は第三位に位しておるわけでございまして、第四位の西独は五千万トン弱という、大きく日本は引き離したことに相なっておるわけでございます。  一方、原料炭供給確保現状につきまして申しますと、短期的にはきわめて憂慮すべき事態に至っていると申し上げざるを得ない状況でございます。  原料炭需給は、昭和四十四年、四十五年と鉄鋼生産が急速な伸長を示しました時点におきまして、一時的に海外原料炭マーケットが過熱いたしまして、価格も異常に高騰を示しました。これに対処する意味におきまして、わが国鉄鋼業界は、海外原料炭長期輸入契約を促進するとか、あるいは資本技術協力によりまして海外新規炭鉱及び既存の鉱山の開発などの安定確保対策を積極的に進めてまいったのでございます。しかしながら、これらの努力にもかかわりませず、現状におきましては、開発計画のおくれがありますし、また予期せざる事態、たとえば豪州のクィーンスランド州に四十三年ぶりに発生した集中豪雨等によりまして、昨年末から今年の二月下旬ごろまで出荷がほとんどなかった、そういうような事情もあり、また、その他米国カナダ等供給国各地におきまして、さまざまな理由から契約どおりの入荷が見られない山がふえている事態が起きておるのでございます。  私たちといたしましては、このような事態を一日も早く解決するため、政府の御指導、御協力も得まして、短期、長期対策を立てまして、懸命の努力をしているところでございますが、ここ一両年の間に効果のある即効薬はなかなかに見出し得ないというのが実情でございます。  以上、るる申し述べましたところによりまして、ほぼ御理解いただけたと存じますが、国内炭引き取り量につきましては、現状の品質が確保されるものであるならば、第五次対策では五十年度鉄鋼向け八百万トンとなっておりますが、ある程度の増量引き取りはもちろん可能であるという状況にあるといえますが、しかしそれも、経済的な負担を無視した引き取りにはおのずから限界があるのでございます。  鉄鋼業といたしましても、国際競争場裏に置かれている以上、特に最近における輸入鉄鉱石石炭重油等の爆発的な原料の値上がりによりまして、将来の国際競争力につきましてさえ危惧を抱かざるを得ない現状におきましては、なおさら国内炭引き取りにつきましても、経済的合理性が要求されることは当然であろうと存ずるのでございます。  しかしながら、また一面、さなきだに資源の乏しい日本といたしましては、国内資源を有効に活用することを必要とすること、これまた当然のことと存じますので、私ども鉄鋼業界といたしましては、第五次対策の趣旨にのっとりまして、国内炭価格を、輸入弱結炭価格変動額にスライドして設定することを約束しておりますので、原則として、今後もこのルールに従いまして、その範囲内におきまして国内炭価格引き上げに応じてまいる所存でございます。  いずれにいたしましても、当業界としては、今後とも政府政策に沿いまして、石炭業界との協力を続けることにやぶさかではございません。その協力が円滑に促進されますよう、財政、金融面を含めまして、石炭政策全般について諸先生方格段の御協力を切にお願い申し上げる次第でございます。  戦後最大とも言えるエネルギー事情激変期におけるわが国石炭業界のため、思い切った対策を講じていただきたいことを私ども鉄鋼業界からも重ねてお願い申し上げ、私の陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  4. 田代文久

    田代委員長 次に、田口参考人にお願いいたします。
  5. 田口良明

    田口参考人 ただいま御指名を受けました海外原料炭開発株式会社田口でございます。本日は、石炭対策につきまして意見の発表を許されまして、ここに立つことができましたことに対しまして、厚くお礼を申し上げたいと思います。  先般来の石油危機に直面いたしまして、内外の関心はエネルギー問題に集中いたしました。前途多難を思わせましたけれどもわが国への供給が緩和されるに至りまして、全般的に安堵感が流れ始め、価格の問題を除いては世論の退潮が見え始めてまいりましたことは、まことに憂慮すべき状態であると思われます。  資源を持っていないわが国といたしまして、エネルギー問題を基底として、今後の進むべき道をこの際国策として確立する必要が、いまほど切実であることはないと信じます。  すなわち、申し上げるまでもなく、まず第一に、唯一国内資源としての石炭を見直すとともに、確固たる位置づけを行なう必要があると信じます。  第二には、世界石炭埋蔵量は六兆七千億トンという膨大なものであることにあらためて着目いたしまして、わが国エネルギー対策の将来に思いをいたしますと、石油資源から原子力へ、さらにはサンシャイン計画へと軌道修正をするまでの過渡対策として、石炭が全燃料の中に占める絶対量を定着させることが、この際絶対に必要であると信じます。  わが国製鉄用原料炭は、その大部分海外に依存しておりまするが、電力用をはじめ一般燃料につきましても、その多様化セキュリティー観点から、海外からの一般炭輸入につきまして、国内炭保護の前提の上に立った秩序ある合理的な規制を行ないながら、前向きに考慮するべきであると信じます。  以下、対国内、対海外石炭対策につきまして私見を申し述べまして、御参考に供したいと存じます。  まず国内石炭確保についてでございますが、先ほども申し述べましたように、将来のエネルギー源の大部分海外に依存しなければならないわが国にとりまして、国内唯一資源である石炭を、今後どのような形で国益に寄与させていくことが適当であるか、このようなことにつきましておよそ二つのことを考えてみたいと思います。  その一つは、極端な考え方かもしれませんが、どうせ大部分海外に求めなければならないとするならば、国内炭はむしろともしびの消えない程度に細く、長く、無理をしないで稼行を続けていくべきであるという考え方であります。  二つには、国家的強力な施策裏づけをもちまして、積極的にすみやかに、かつ可能な限りの最大の規模で増産に努力すべきであるという考えであります。  私といたしましては、前者はとらず、後者の積極策を選ぶべきであると確信するものであります。  なぜかと申しまするならば、御承知のとおり、特にここ数年間にわが国炭鉱技術は、きわめて劣悪な自然条件のもとで営々努力を続けてまいりました結果、その成果はまことに目ざましいものがありまして、坑内掘り採炭技術におきましては、世界に冠たる能率にまで伸展してきておるのでありまして、何とかしてこの優秀な技術をさらに育成、助長しまして、後継者に受け継いでもらわなければならないと思うからであります。わが国炭鉱界現状のような足取りで推移していくといたしますると、せっかくつちかわれた技術向上はおろか、その維持すら非常にむずかしく、また後継者も育たないというようになりましょう。この優秀な技術を生かして、国内炭生産に前向きに取り組むべきだと考えるのであります。  ひるがえって、国内石炭業界の衰退を招いた原因はいろいろ考えられまするけれども、おもに次の三つであると思います。一が炭価問題、二が労働力の不足、三が自然条件悪化。  この三の自然条件悪化につきましては、限りある地下資源であるため、これは避けられない宿命でありまして、ここでは論じないことにいたしたいと思います。  二の労働力につきましては、地下労働であるというハンディキャップはあるといたしましても、今後明るいビジョンがあり、企業の安定が確保され、その上に他産業を上回る適正な賃金が支払われるということになりますれば、必ずしも解決のできない問題ではないのであります。  一の価格の問題でありまするが、昭和三十四年以降五年の間に千二百円の大幅なコストダウンをしいられました。一般物価高騰賃金上昇に逆行しながら、幾多の困難と戦いまして、その経営に苦しみながらこの石炭鉱業を続けてまいったことは、案外世間には知られていない事実でございます。  いま、石油資源の大幅な値上げに伴いまして、石炭価格もまた大幅に見直されるべきであると思うのでありますが、ここに私はあえて次のことを提唱申し上げたいと思います。  国内炭価格については、国家のセキュリティー観点から、石油その他の燃料の値段にかかわりなく、その企業安定の保障を含めた適正な価格を決定してもらうことが必要であります。  もちろんユーザー側におきまして、可能な限りの負担を願わなければなりません。また、ただいま稲山会長からもお話がありましたように、第五次政策におきまして石炭価格の他資源とのスライド制の問題がございましたとおり、ユーザー側におきまして多大のお骨折りをいただいておるのでありますが、その限度以上につきましては、国の支払いてよる補てん等を期待いたしたいと存ずる次第でございます。  国内石炭埋蔵量につきましては、すでに幾多議論が出ておる次第でございまして、理論炭量で二百二億トン程度といわれておりまするが、昭和三十年に合理化事業団の前身である整備事業団が発足して以来今日まで、約十八年間の間に閉山いたしました炭鉱のいわゆる炭量消滅炭量、これが約六十二億トン余りといわれております。この炭量の中には、当時の経営者都合により閉山したものもございまして、今日になってみればまことに貴重なものもあるわけでありまして、今後の国内炭確保のために、何とかしてここに適切な措置がとられるべきであると思うのであります。  石炭埋蔵炭量は、実収炭量になりますると、この当該石炭資源需要変化によって、すなわち経済性に応じて変わってまいりますとともに、採炭技術向上でたいへんに実収炭量というものはまた変わってくることは当然でございます。国内炭わが国唯一国産資源であることは言うまでもございませんが、私は、この国内炭につきまして、これはきわめて海外炭と相性のよい炭質を有しておるということを特に強調したいのでございます。国内炭のこの高い流動性あるいは低い反射率、こういうものが有無相通じてコークス用その他に欠かすことができないという特性を持っておること、また揮発分が高い関係上、将来のガス化、液化にも好適であることはもちろんであります。また、灰の溶融点が低いということとかあるいは高サルファ炭であるというようなことは、海外大陸産出石炭と混炭することによって容易に改善され得る非常にすなおな性質を持っておるということでございます。私は、かかる良質な国内炭をこよなく愛する者の一人でございますが、と同時に、ぜひこの貴重な国内炭貴重品として大事に開発し、さらにこれを大切に使っていただきたいと思うものであります。  さて、今後の国内炭確保のための施策でございまするが、まずその第一に、現在休眠中の鉱区や、炭量は十分ありながら過去の累積赤字のためにやむなく閉山いたしまた鉱区における炭量につきましては、これは十分に調査検討の上に、たとえば特殊法人のような機構によってすみやかに再開発する等の積極的な施策を推進することが必要であるわけであります。  その第二は、現在稼行中並びに開発中の既存炭鉱につきましては、可採炭量枯渇という原因以外では、これに対してあらゆる手段を尽くして閉山しないよう確固たる積極対策の確立が望ましいわけであります。このことは、先ほど申し述べました価格問題の裏づけと相まって日本石炭企業の安定につながり、さらにはビジョンの盛り上がりの基礎となるからでございます。  次は海外炭確保についてでございます。  諸外国におきましても、石炭に対する関心は異常に高まっておりまして、数年前から特にアメリカあたり石油業界が炭田の買い占めに狂奔しておりますことは、御承知のとおりであります。また、特に総合エネルギー対策上、石炭資源確保開発について緊急施策が打ち立てられております。このことが資源ナショナリズムに拍車をかけまして、従来のような野放しの輸出に対しての牽制となってあらわれつつありまして、一部の国におきましては、輸出制限、さらに進んで輸出禁止すら辞さないという趨勢にあることも聞いております。  しかしながら、アメリカカナダオーストラリア等のように、従来採炭の主体を露天掘りに依存しておる先進産炭国におきましては、好むと好まざるとにかかわらず、その自然条件の帰趨は次第に坑内採掘に転化してまいるのでございまして、現在はその過渡期に立ち至っておるのであります。この転換期におきまして、わが国坑内掘りに対する優秀な技術資金投融資をもって、さらに相互扶助友好的施策を加えますならば、海外への進出もまた道が開かれると考えるのであります。私どもも一昨年以来、日本炭鉱技術の優秀さにつきまして、まずオーストラリアのニューサウズウエールズ州の炭鉱への積極的なPRをいたしました結果、炭鉱視察に来日することに始まり、ただいま有力炭鉱からの引き合いで採炭切り羽プラント一式輸出商談を取りまとめつつあるのでありまして、なおこのほかにも、豪州の二、三の炭鉱も非常にこれに注目し、積極的に関心を示すようになってまいったのであります。  いままで国内炭保護見地から一般炭輸入は許可されておりませんが、石油対策から見ても、火力発電への石炭の復元が真剣に検討され始めまして、すでに最近ある程度石炭が不足するのではないかということも聞いております。いずれは相当量一般炭輸入もこれまたやむを得ないことと存ずるのであります。  原料炭輸入につきましては、各商社がユーザー需要に応じてコマーシャルベースで行なってまいりましたが、一般炭輸入の場合には、前にも述べましたように、国内炭保護見地から適正な機関による厳重な規制を行ない、絶対に国内炭を圧迫しないような適切な歯どめの手段を講ずる必要があります。今後は原料炭一般炭を問わず、従来の単純輸入の時代はもう去ったのであります。これからは新たに海外開発の手を伸ばし、技術資金相互扶助の精神をもって開発輸入をしなければなりませんが、海外巨大資本に立ち向かって勝ち抜くためには、どうしても一業一社ではとうてい無理でありまして、国家的な強力なバックのもと、十分な投融資のできるような特殊法人を通じまして、民間企業のすぐれたる技術を結集することが必要であると思うのであります。  海外資源開発に対しまして、石油には石油開発公団があり、また非鉄金属には金属鉱業事業団がありまして、それぞれ公的な開発機関裏づけを持っておりますが、石炭に関しましてはただいまをもってまだ皆無でございます。今後海外炭開発を推進するためには、ぜひともさきに申し上げましたように、強力な国家的バックを持つような特殊法人的な機構を設置いたしまして、積極的な開発に当たることが先決であると存じます。  なお、この際に海外原料炭開会社の事業活動につきまして申し上げたいと存じましたが、時間もございませんので、もし御質問でもございましたら、その節お答えいたすことにいたしまして、最後に、今後わが国海外石炭資源開発輸入を推進する場合の見通しにつきまして、御参考までに簡単に申し述べてみたいと存じます。  特に本件につきましては、ただいま稲山会長からのお話がございましたように、現時点においてわが国鉄鋼業界は歴史始まって以来の原料炭不足に見舞われておるのであります。これが回復に一両年を要する、あるいはもっとかかるかもしれぬというお話がございましたが、まことにこういうお話を聞くにつけましても、私といたしましては内心じっとしておれないような思いがするわけでございます。非力を嘆くと申しますか、何とかして——まだ創立以来四年とちょっとしかたっておりませんけれども、ただいまの日本原料炭不足を見るに全く忍びない思いがしているわけであります。  さて、海外石炭資源の今後の見通しについてでございますが、まず関係各国の状況につきまして、かけ足でこの問題に移りたいと思うのであります。  まずオーストラリアでありますが、クィーンスランド州、これは先ほどもお話がございましたように非常な台風、ハリケーンと申しますか、このために露天掘り炭鉱が水浸しになってしまっておるというのが現状でございます。  一般炭につきましては、ボーエン、ブリスベーン、ブレアゾール等の地区をはじめ、そのソースは広大なものであります。ブレアゾールの西部地区に、最近州政府ガス化、液化の対象プロジェクトとしまして新しく鉱区の開放を企図していると聞いております。  原料炭につきましては、この州でも次第に坑内掘りに転換いたしまして、わが国技術進出とそれに伴う開発協力の余地は十分あると考えられます。  次は、ニューサウズウェールズ州でありますが、一般炭についてでありますけれども、ニューキャッスル地区のウェストウォルセンドなどの炭鉱一般炭開発を計画しておりまして、米国への輸出機運が高まっております。  リスゴウ地区にも広大なソースがありまして、コーレックス社その他の会社開発輸出を企図しております。  また、現在坑内掘り採炭中のハントレイ炭鉱、これは出炭量の約半分は一般炭であるというように聞いておりますが、そのソースはきわめて膨大であります。  次に、この州の原料炭でありますが、坑内掘りは次第に深度を増してまいりまして、従来のルーム・アンド・ピラー方式では技術の限界に近づいておりまして、最近わが国のロングウォール・システムの技術に深い関心を示すに至っておりまして、前に申し上げましたように、わが国からの技術輸出可能性もまた高いのでありまして、ここに開発への協力が生まれてくるものと確信いたしております。  次は、カナダでございますが、一般炭はアルバータ州がおもでありまして、カルガリーとエドモントンとを結ぶ線の東側に露頭が見られまして、中小炭鉱の所有鉱区をメジャーが大きく囲んで買い占めたと聞いております。  私どもといたしましては、この国に注目するのはむしろ原料炭でございまして、現在はその大規模なものはバルマー炭鉱をはじめ大部分が露天掘りであり、一部に坑内掘りが見られる程度であります。しかしながら、今後は当社が調査いたしましたスクンカプロジェクトをはじめ、目下三井鉱山が調査中のクインテットプロジェクトなど数多くの未開発坑内掘りの対象鉱区がありまして、わが国の進出の余地は十分あると考えられます。  三がニュージーランドでありますが、これは当社が調査いたしました南鳥のグレイマウス炭田、これ以外に、他の国からの進出は全く見られません。  四がインドネシアであります。当社が、海外技術協力事業団の委託を受けまして、オンピリン、ブキットアサムの両炭鉱調査いたしましたのは約三年ほど前でございますが、最近シェルの小会社が南スマトラ島のこの二炭鉱を除いた大規模区域約七万平方キロに探鉱権を得ておりまして、海外からの注目は急なものがあります。  私どもはオンピリン炭鉱技術協力によって増産拡大することに興味を持っておりまして、この計画は調査の後すでに提出済みであります。  そのほかに五といたしまして、アメリカ合衆国においても、その西部区域にメジャーの進出がありまして、距離の点から見ましても、わが国として注目する必要が多々あると思われます。  さらにまた、ここでは申し上げませんが、ソ連、中国、中南米等につきましても十分な可能性があると考えられております。  以上、きわめてかけ足で申し上げましたが、わが国の優秀な技術と国のバックアップによる資金裏づけと、相互扶助の精神を持つとしますと、いろんな困難はもちろんあると思いますが、特に労働力確保の問題などございますけれども、必ずや海外進出の道は開けるものと信じて疑いません。  長時間にわたりまして御清聴を感謝申し上げます。(拍手)
  6. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人意見の開陳は終わりました。
  7. 田代文久

    田代委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  8. 田中六助

    ○田中(六)委員 稲山田口両氏には、非常に多忙のところ、われわれのために時間をさいていだだきまして、まことにありがとうございます。いまエネルギー問題で、私にいわせれば、わが国は有史以来の画期的な、どうしたらいいかという大きな立場に立たされているのではないというふうに思っております。  まず稲山会長にお尋ねしたいのでございますが、昭和五十年度で八百万トンの取引量、第五次答申ではそういうようなことになっておりますが、ユーザー引き取り価格経済性を無視してやられてはもちろん困りますが、マキシマムどの程度のところが考えられるのでしょうか、ちょっとその点をお聞きしたいのでございます。
  9. 稲山嘉寛

    稲山参考人 結局、今後の需要量の問題だと思うのでございますが、われわれ、現状におきましては、八百万トンなんという考えでなく、一千万トンあるいは一千万トン以上でもいいのではないかと思うのであります。しかし将来にわたりますと、需要の伸びとの関係もあり、それから、投融資をしていま海外とどんどん開発をやっております。それが二年後ぐらいから着々ととのってくる予定にはなっておるわけでございます。そういう意味からいうと、千万トンから千二百万トンぐらいまでを考えられるのではないかとわれわれ考えております。もっと鉄鋼需要が伸びれば、あるいはもっと考えなければいけないのではないかというような海外状況だろうと思っております。
  10. 田中六助

    ○田中(六)委員 ユーザー引き取り量、それから引き取り価格につきましても限界があると思いますが、先ほど稲山会長の御意見を拝聴しておりますと、最後に、いずれにしても思い切った石炭対策をやってもらいたいということでございましたが、私どもいろいろ頭にはあるのですが、具体的に稲山会長の考えておられます思い切った石炭対策ということはどういうことなんでしょうか、それをちょっとお聞きしたいのでございます。
  11. 稲山嘉寛

    稲山参考人 第五次の石炭答申が行なわれました際に、私どもは、外国の弱粘結炭と比べ、日本国内炭がトン当たり千四百五十円までは高くてもお引き取りいたしますというお約束になっているように了解いたしておるわけでございます。  ところが、今回のエネルギー問題、外国燃料が非常に高くなりましたわけで、まだこれがわかりませんが、相当値上げを要求してきておりまして、目下交渉中でございます。したがって、それがどのぐらいあれするかわからないのでありますが、それよりも千四百五十円高い値段で私どもが買うことは、これはお約束どおりだと考えておるわけでございますが、それが非常に上がりますと、国内炭の原価との関係でございますが、国内炭がどういう程度コストになりますか、われわれわかりませんが、もうかるんだから、やっていかれるんだから、また少し努力すればいいじゃないかということで、石炭の保護がもし取り除かれるようなことになりますと——私どもの見方からすると、石炭業コストは相当上がっておるはずだし、また労働賃金その他につきましても相当な格差を持っておるように承知しております。したがって、今回豪州炭が値が上がりましても、おそらく政府の保護を薄くしていいほどの状態ではないんじゃないかと実は推測しておるわけでございまして、むしろ私どもの聞いておりますのは、石炭業のその後の諸資材、いろいろなコスト高という見込みは、あるいはさらに保護を厚くしていただかなければいけない程度の状態ではないかなと、実はまだわかりませんので考えておりますが、いずれにしましても、少なくとも従来石炭に与えております保護政策は、これはこういう資源の乏しい国でございますのでぜひ続けていただいて、さらにもしどうしてもそれでもやっていかれないというなら、さらにいろいろな意味において保護を加えていかなければ、この資源のない国ではそのほうがとるべき政策じゃないか、かように考えておるわけであります。はなはだ抽象的で申しわけありません。
  12. 田中六助

    ○田中(六)委員 田口参考人にお尋ねしたいんでございますが、私ども第五次答申まで非常に石炭政策というのがふらふらしてきているから、したがって逆をいえば、一次から五次、それに中間答申もありまして、しかもその答申した時間の切れないうちにまたやらなくちゃいかぬ。非常に腰のふらふらしたことで石炭の位置づけというものがはっきりしてない、これに問題があるわけでございますが、石炭の位置づけを定着させる必要がある。まさしく参考人がおっしゃるとおりでございますが、位置づけを定着させるという、具体的にいろいろな方法で位置づけさせなければいけませんが、それにつきましてもう少し具体的にお考えがあったら、しかもどの程度の量で位置づけができるのか、それからユーザーとの関係海外との関係、そういうものを含めましてエネルギー資源、特に石油の問題がこういうふうになっておりますので、私は位置づけというものもちょっと見方を変えてみなければいけないのじゃないかと思いますが、そういう点どういうお考えでしょうか。
  13. 田口良明

    田口参考人 お答えいたします。  ただいま位置づけについてのお尋ねでございますが、石炭に対する位置づけというものはそう簡単ではございませんけれども、いままで石炭対策、御指摘のように一次から第五次まで、しかも最近は中間答申というものが出されたわけでありますが、実はこの石炭の位置づけということがはっきり出されたのは第五次政策でございます。なお、ただいまのように、どういうふうに考えたらよろしいかということでございますが、今回のような石油ショックと申しますか石油危機と申しますか、これによっていままでの日本のエネルギー政策というものはすっかりここで変えなければいかぬ。その場合に、石炭はどれだけそのエネルギーの中に位置づけするのが最も適当であろうかということが決定されることが望ましいと思うのであります。そのときに幾ら幾らという位置づけ、石炭の必要量というものがきまってまいりますと、これを国内炭でどれだけ出せるか、そしてその不足分を海外炭で補うという方策をとらなければならぬと思うのであります。いままでこの石炭が位置づけがなかったということは、いままでの第五次政策までの政策の歩みというものを振り返ってみますると、第四次対策あたりまでは結局石炭はなだらかな閉山ということにしなければどうにもしようがないんだというような思想が流れておったことは事実でございます。そういうような中で、石炭が一体生きていくためにはどうすればよろしいのか。私はここでいつも思い出すのは、九州の親しい木曽さんでありますが、この木曽さんが石炭で非常に苦労されて今日までこられましたが、いつも申すことは、一体国なりあるいは国民は石炭が必要なのかどうか、必要ならばわれわれは出すけれども、必要でないというものを出すわけにいかぬ、努力のしがいがない、努力のしようがない、こういうことをおっしゃっておりました。私はまさにそのとおりであると思うのでありますが、やはり石炭というものはどれだけ絶対に必要なんだ、だからその必要量を確保するためには、かなりドラスティックな方法を講じてでもその数量確保するんだ、あるいは炭質を維持するんだ、供給するんだというようなことでないと、この石炭というものは年々他の産業とかわりまして、特にコストの中で労務費が半分を占めておるわけでありますが、賃金がどんどん上がってまいりますので、やはり能率向上技術の進歩ということに非常な努力はしておりますけれども、これだけではとても吸収できないのが事実であります。そういうような関係上、位置づけというものがいままでなかなかむずかしかったのでありますが、ここにまいりましては、今度はエネルギー資源多様化というような見地から、石炭はいままでどちらかというと見放されておった、それが、先ほど一般陳述の中で申し上げましたように、今後原子力の問題あるいはサンシャイン計画、そういうものが経済ベースに乗るまでにはかなりな時間もかかりますし、また膨大な埋蔵炭量を有しておる石炭資源というものをここでおろそかにしてはいかぬ、やはり今後のエネルギーの中に占める石炭の重要性というものは、これからますます加わってきたんだということに対しましての位置づけということが必要じゃないか、というふうに考えるわけであります。
  14. 田中六助

    ○田中(六)委員 位置づけを具体的に説明することは非常に困難だと思います。それほど石炭対策というものはむずかしいところでございますが、結論といたしまして、この石炭技術あるいは労務者の雇用、日本のエネルギー全体のことから考えて、一業一山というようなものじゃだめだ、特殊法人にしてでも何とかしなければいかぬということ、これは私どもの抱いている考えで、いまのようにすでに一千億前後の金が、つまり石油関税の十二分の十、これは今年度からその数字も消されているわけです。というのは、それほど石炭にばかりということがありましたけれども、エネルギー問題で石炭を見直そうということで、これは将来どうなるかわかりませんが、国の予算を一千億も私企業にかけるということに対する世間の目、特に最近は超過利得税というようなことまで云々されているのに、私企業との結びつきで、これはもうほとんど国がめんどうを見ているような形になっているのですが、といって企業のよさ、つまり技術が非常に優秀だというのも、これが国家管理であったらはたしてこうなったかどうか疑問でありますし、そこら辺の矛盾を感ずるわけでありますが、といって国益にほんとうに結びつけてこの石炭をはっきりどうするかということになりますと、やはり私ども自由民主党が抱いておるようないままでのような考えが妥当かどうかも疑問でございますし、事エネルギーでございますので、根本的に考え直さなければいかぬわけでございますが、そういう点につきまして、一業一山じゃない特殊法人、そういうものをもう少し具体的に田口さんの頭にあることを説明願えたら幸いでございますが、その点、どうでしょうか。
  15. 田口良明

    田口参考人 ただいまの御質問、これは非常に古くから唱えられてまいりまして、なかなか実現しない。やはりそれにはそれぞれの理由があったと思うであります。しかし、最近におきましてはかなり石炭業界経営構造というものが変わってきたということが言えるかと思うのであります。それは、いままで三井鉱山にいたしましても三菱鉱業にいたしましても、その他石炭産業会社は、石炭以外にもいろいろなことをやっておりましたが、石炭を分離してしまった。そしてこれを子会社にして、その親会社と子会社が分離したということをおおむね完了したのが現実の姿でございます。  さて、これの統合の可否ということでございまするが、確かに、ただいま政府からこれだけの保護を受けておるというのでありまして、やはりこれは実質的には国営あるいは国家管理というようなものだと思うのでありますけれども、いま先生御指摘のように、民間企業においてはそれぞれのメリットがあるのだ、そこにそのよさがあるのだ、それは何かと申しますと、いま御指摘のとおり、技術の進歩、向上というようなこと、その他あらゆる問題につきまして、いわゆる民間企業のバイタリティーを生かして、大いに切磋琢磨、努力するんだということのよさが民間企業にあると私は思うのであります。  しかし、実際問題としては、もうここまで追い詰められてまいりますると、そのよさというものはもっと大きな力のために非常な圧迫を受けてしまって、そのバイタリティーの発揮の余地がきわめて少なくなってきておるのじゃないかというような気もいたすわけであります。もうすでに大手八社の炭鉱数も十数炭鉱ですか、それから中小にしましても六炭鉱くらい、合わせても二十炭鉱くらいの数に減ってまいりました日本石炭鉱業というものは、最近はきわめて整理された形になっておるわけであります。こういうような状態のもとに、これを地域別もしくはもう少し企業別に整理統合する余地はないか、あるいはそれのメリットはないかということも考えられないことはないと思います。しかし私は、先ほども般陳述に申し上げましたように、今度国内炭の非常増産というような見地から、合理化事業団が保有しておる消滅鉱区、こういうものを再開発というような場合に、これは特殊法人か何かで国のバックアップによって、まあみなバックアップはされておるわけでありますが、特に特殊法人でそれの経営をやってみたらどうか、これが一つの試金石になると私は思うのです。したがいまして、できるだけ早くこの特殊法人による休廃止鉱区の再開発というものに全力を尽くしてもらうということが、一つのバロメーターになりはせぬか。その上でなお並行的に、いま先生御指摘の問題についても十分研究すべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  16. 田中六助

    ○田中(六)委員 終わります。
  17. 田代文久

  18. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は稲山参考人石炭鉱業審議会の会長であるわけですが、きょうは需要業界の代表として来ていただきましたので、またいずれ本委員会と懇談する機会もあるかと思います。  しかし一言お尋ねいたしたいのは、先ほどから質問が出て、田口参考人がお答えになっておりますが、ちょうど昭和四十三年くらいに、ドイツではラインシュタール案という案を中心にして、その後石炭の分離、さらに一社への統合と進んだわけであります。しかもこの発想は、主として鉄鋼業界から出ておったわけであります。そのことは御存じのとおりであります。そのときにすでに、なだらかな閉山はするけれども、増産体制、いわば基盤強化にドイツのほうは移っておるわけです。  ところが、日本のほうの第四次答申というのは、その後いろいろ御意見はありましたけれども、結局企業の肩がわり、第二次肩がわり、それから稲山さんが会長のときに出された第五次答申も、位置づけは若干しましたけれども、これも第三次肩がわり、結局企業の債務肩がわりということにずっと一貫して終始してきたというように考えるわけです。そこに今日のような悲劇を生んだのではないかというように私どもは反省しておるわけです。  そういう面において、何と申しましても、原料炭は、ガスといいましてもガスはごく少なくて、ほとんど鉄鋼に行っておるわけです。需要者として石炭はどうあるべきかという点がお話しできれば所見を承りたいというのが一つ。  それから第二の問題は、海外開発でございますが、先ほどの田口参考人は、海外開発は、主として一般炭を中心にお話があったが、特殊法人で行なうべきだ、やはり国家のバックアップがなければむずかしい、こういうことでしたが、原料炭も若干その面はありますけれども、従来鉄鋼があるいは商社と連携しながら独自で開発されておる海外開発については、今後資源ナショナリズム等の関係で、海外原料炭もやはり国家資金を導入するとか、あるいは国の何らかの特殊法人のような機構で開発するとか、その必要はないかどうか、この二点お聞かせ願いたいと思います。
  19. 稲山嘉寛

    稲山参考人 第一の御質問でございますが、これはやはり世界的なエネルギー革命によって日本石炭業が縮小せざるを得ないような態勢に追い込まれたのではないかと思うのであります。そのときにいろいろな立場がございます。自由主義経済なんだから、安ければ海外から買うのがあたりまえなんだという考え方もまた当然あってしかるべきだと思う。しかしまた、それだけでいいのだろうか、やはり国際収支の面その他の面から、国にある資源というものは温存していったほうが終局的には何か利益につながるのじゃないだろうか、まあ私ども鉄鋼業界は比較的そういう考え方を持っておったわけでございます。ということは、先ほど田口さんのお話にもありましたように、日本石炭は弱粘ではございますが、また何ともいえない味のある石炭でございまして、流動性と申しておるわけで流れがいい。外国炭の強粘結炭配合いたしますと、非常にいい特色を発揮するわけでございます。そういうことから、また鉄にとっては、電力の石炭と違いまして、私どもにはなくちゃならない溶鉱炉は石油ではできない、どうにもならないわけでございます。いまの溶鉱炉では、石炭燃料として使うだけじゃなく還元剤として使うわけでございますから、石炭でなければどうしてもいまのところぐあいが悪いわけでございます。それだけに、石炭に対する関心がわれわれ非常に強いせいもございましょうと思いますが、われわれは今後とも、とにかく国にあるものなんだ、それには貯蔵したりあるいはいろいろな貯蔵設備をしなくても自然に貯炭ができておるんだということでございますから、そういう費用を換算すれば、必ずしも石炭に保護を与えた金は、緊急時に備えて石油を貯油するとかいろいろな費用を加算すれば、そのくらいの保護をしてもいいんじゃないだろうかという考え方もできるというのが私ども考え方でございます。  したがいまして、今後ももちろん、日本のエネルギーが非常にいままで世界的に安かったものですから立ち行かないわけでございますので、いままでまあとかく消極的になりがちであったということはいなめないと思いますが、今後は石炭コストが、まだ外国のエネルギーが高くなったのに追いつかないかもしれませんが、しかし非常に接近してきつつあるわけでございます。したがいまして、石炭国内炭の必要性というものは今後ますますふえるわけだと存じますので、ぜひそういう観点から石炭の位置づけをしていただきたい。ことに電力の方々のお話を聞いてみましても、こう重油が上がってくるというと、やはり一般炭をできるだけ利用しなきゃならぬのじゃないかというお考えが起きてきておると思います。また、三井鉱山その他を中心にしていま非常に研究をしております石炭の液化の問題も、思ったより進んでおるように思えます。それからまた三池炭の硫黄分の多いのも、脱硫の設備の技術発展とともに非常に活用の範囲が明るくなってくるんじゃないかと思うわけでございます。そういう観点も考慮いたしまして、ぜひ位置づけしていただきたい、かように考えます。  それから、海外への投融資につきましては、われわれ非常な努力をいたしておりまして、もちろん外国資源でございますから、われわれがかってに行って金を出したいような顔をすることは、これは侵略とかいろいろな嫌疑を受けます。そうでなく、向こうの山元が開発をしたいんだ、してあげたいんだ、だけれども資金が足りないから金を出して貸してくれないか、あるいは資本投資してくれないかという向こうからの御依頼があったものに限って、われわれは積極的に御相談に応ずるという観点に立っております。  現在、山の開発につきまして投融資しておりますのがいま一億二千万ドルばかりになっておりまして、それによりまして年間千八百万トンの原料炭輸入可能なような、そういう目的をもちまして投資が行なわれております。そのうち半分がオーストラリア、三千万ドルが米国、あとの二千万ドル強がカナダということで、いま盛んに投融資を行なっておるわけでございますが、幸いに日本じゃ商社が非常な金融力を持っておるわけでございます。私どもメーカーは、これは日本の金融状態が違うので、われわれは設備投資をしなければならぬ、それからまた生産をしなければならぬ、それからつくったものの仕掛かり品を貯蔵しなければならぬ、その運転資金が非常にかかるわけでございます。私ども設備投資をどんどんするときに、銀行へお金を借りに行っても設備投資は貸してくださるにしても、その運転資金の増加までなかなか金融のめんどうを見てくれないので、商社金融だとめんどうを見てくれるというような、日本はそういうのが長年信用で来ておるわけでございます。そこで、われわれどうしても金融上商社の助けを借りる場合が非常に多かったわけで、これは率直にそういう状態でございました。われわれ増資をしようと思っても増資はいけないという時代が幾らもあったわけでございまして、資金事情が非常にできません。ところが、海外へも投資しなければならない。そういう場合に、われわれの自由にはなかなかならない。そこで、商社の協力を得ましていま半分以上、一億二千万ドルは商社の力を借りておるわけでございます。したがいまして、その意味においては、特別な方法による海外援助の融資というのはまだ考えられておりませんが、今後あるいは巨額な投資を必要とする場合には、そういうこともお願いしなければならぬのかと存じますが、現状ではまあどうやらやっておるわけでございます。
  20. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど田中委員からの質問で、価格の問題、ことに鉄鋼業界としては千四百五十円いわば海外炭よりも高く買っておる、あるいは今後海外原料が若干上がったとしてもその線はくずさないつもりだ、また、政府の保護についても、値段が上がったからといって保護を打ち切ったり薄めたりすべきでないという御意見を伺って、非常に理解ある御意見を伺ったわけです。  そこで、今度は田口さんにお伺いいたしますが、先ほど国内炭と外炭との関係について、国内石炭を圧迫しないように歯どめをする方法を考えるべきである、こういう発言がございました。具体的にはどういうようになるでしょうか、その構想がありましたらお聞かせ願いたいと思います。  それから、これは海外について、主として一般炭を中心でありますが、原料炭も一部入っておりますが、特殊法人、それから国内の再開発特殊法人、こういう話でございました。そういたしますと、これは別会社にするのか、それとも開発ですから一本でおやりになるつもりですか、そういう点もお聞かせ願いたい。この二点ですね。
  21. 田口良明

    田口参考人 お答え申し上げます。  第一の御質問は、輸入炭についての国内炭との調整と申しますか、歯どめをどういうように具体的に考えるかというお話、まことにごもっともな御質問でございます。ただいま四十九年あたりといたしましては国内炭がかなり逼迫しておる、一般炭需要もかなり伸びておるというようなことも聞いておりますが、いずれにいたしましても今後、将来にわたって一般炭輸入は避けられないと思うということを一般陳述において申し上げました。そういう場合に、国内炭を絶対に圧迫しないという具体的な方法、この御質問であろうと思うのであります。これは非常に重要な問題でございまして、これほどまでに国の保護を受け、いままで育成されてきた国内石炭産業を、えてかってに輸入炭によってじゅうりん、圧迫されて、国内炭が崩壊してしまうというようなことがあっては全く残念なことでございまして、先ほども申しましたように、国内炭というものが非常に貴重な資源、宝である、それだけに国内炭はあくまでも守り抜かなければならぬという考えにおいては、私も人後に落ちないつもりであるわけです。したがいまして、輸入炭によって国内炭が圧迫されないための歯どめ、これはまず第一に、輸入炭を秩序ある一元的輸入をするということによって、あっちでも輸入しこっちでも輸入するというようなことを避けるということでございます。そういうためにはやはり輸入の業務の主体を明らかにしておく必要がある、私は、特殊法人的な機構を一つつくっておかなければいかぬというような考えであるわけであります。そういうふうなことで、取り扱いは一般炭に関して、一手買い取りの特殊法人に限定する、こういうことでございます。  それから第二は、輸入炭については、ただ必要だからというようなことでなしに、炭種、炭質あるいは数量価格、そういう方面をこの特殊機関によって調整するということが必要であろうと思う。それで当面は、特に炭種について、これは一般電力用炭が主たる対象でございますので、国内のハイサルファの炭を薄めるために低サルファの炭をこれとブレンドして使うんだということの保証がなければいかぬ。その保証、要するに消費の保証という、国内炭とのだき合わせの保証というものがなければいかぬということが第二点でございます。  それで、いま炭種、炭質、価格というようなことを申しましたが、これはやはり国内炭とプールするということに、まあリンクという形でいくのかプールでほんとうにあれするのか、ここにはまだもう少し研究する余地があると思いますけれども、非常に高い石炭を持ってくるというようなことでは困る。原則として割り高な国内炭よりも安い石炭を持ってくるということが今後はたしてできるかどうか。これは先ほども申しましたように、技術あるいは資金の導入その他有効的なあれによって海外石炭開発する、いままでのような単なる単純輸入じゃないんだということにひっかけまして、やはりこれも国の援助、補助を得てのことでございますから、そういうことはないと思いますが、やはり国内炭と炭価の面においてもブレンドによって炭価の引き下げに役立つのだということが一つ。それから炭質の面につきましては、先ほど私は国内炭をこよなく愛する一人であるということを申し上げましたが、先ほども稲山会長からも、鉄則としても、貴重な日本国内石炭、こういう特質を持っておる石炭、そういうものを海外からの輸入炭とまぜることによって炭質の面において非常に改善される、それは良質なコークスができるということはもちろんのこと、たとえば灰のメルティングポイントが日本石炭で非常に低いようなものがあるという場合には、大陸産の古い時代にできた石炭が非常に灰のメルティングポイントが高いというようなことによってのクリンカーの発生防止に役立つのだというようなこと、ハイサルファの炭を低サルファのあれに、公害問題に寄与するのだ。コークスの問題についてのあれは、もう稲山会長からもお話がございましたように唇歯輔車の関係にある国内炭との炭質の調整、これに非常に寄与する。それから数量の面につきましては、これは総合エネルギー調査会もしくは石炭鉱業審議会でいずれ近いうちにこの位置づけが出てくると思いますけれども、私はこれをもう一月でも二月でも早めることが絶対に必要だ。石炭というものは、そんなにここできまったから明日から増産ができるんだというような期待はできないのでありまして、これにはやはりいろいろな面で相当な日月を要する、準備が要るということがございます。そういう点で、数量、炭質、価格というようなものの調整をするというようなことによってのプール、抱き合わせ配炭による歯どめの第二の点。  第三は、輸入炭を持ってくる場合に考えなければならぬのは、やはり揚げ地においてのいろいろな障害があるということ。ということは、外国から持ってくるためにはどうしてもフレートを安くしなければならぬ。そうなりますと、やはり大型船によって持ってこないとフレートが高くなる。さてそうかといって、いますぐに各所の発電所その他に持っていくにしましても、これはやはりワク取りしなければならないというようなハンドリングに非常なコストがかかるというようなこともあわせ考えますと、やはり混炭設備あるいは貯炭設備あるいは専用船、そういうものも必要だと思うのでありますが、そういうものをやはり準備し、それによってのコストダウン、流通機構のコストダウンをはかるためにもやはり特殊機関が要ると同時に、そういうものによって国内炭との調整を、やはり数量的にこれがチェックできるというようなことは一応考えられる点でございまして、いろいろな面でまだ歯どめは考慮すべき余地が大いにあるとは思います。  一応以上三点を申し上げたわけでございます。  なお、その次に特殊法人の問題でございますが、これはいろいろと特殊法人がいかにもあっちこっちにだいぶできるようにお考えだと思うのでありますけれども、とりあえずやはり輸入機関というもののいまの配炭を共販的なものにするというような意味で、これを共販する機構として特殊法人が必要であるということは、ただいま歯どめの必要性を説いた中にございますとおりでございますが、やはり海外炭開発輸入は、先ほどもるる申し上げましたように、国の強力なバックがないと世界巨大資本に対抗して勝ち目がないということで、これから資源ナショナリズムの荒海の中に航していくためには、一業一社あたりがいかにさか立ちしようともとても歯が立つものではないということを申しましたので、海外炭開発輸入、それから輸入炭をまず初めに一手に買い取り、そして売り戻しをする、そしてそのときに国内炭と抱き合わせ、プールするということもします。そこで結局は、海外炭開発輸入をする特殊法人と、それから国内炭輸入炭との抱き合わせの歯どめに使う特殊法人、これを一括して海外及び国内石炭——国内については特殊なもの、それの開発海外は全部、それの開発輸入特殊法人がする、そしてこれを共販に持っていくということにしますので、これを石炭開発輸入販売株式会社という特殊法人の一本にまとめるということがどうかということでございます。  それで、なお既存合理化事業団という特殊法人がございますが、これとの関連はどうかというような場合は、合理化事業団はやはり融資機関である、しかしこちらは融資機関ではない、事業は融資機関でございますが、海外にわたる実施機関であるというふうな考え方で整理をしてみたらどうかという考え方でございます。  まだ十分じゃないと思いますが、引き続いて御質問がございましたらお答えいたします。
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう時間がありませんから一言だけ。  労務者確保の問題が今後の非常に大きな悩みだろうと思います。ですから、国内の再開発をいたしますにも、はたして労務瀞が集まるだろうかというのが最大の悩み、しかも現在おります労務者もすでにかなり年齢が高い。いままでは何とか労務者の確保ができましたのは、次から次と閉山をしますから、閉山をした山の労働者が次の炭鉱に来て働いておるというので補充ができたわけです。しかし、いまから閉山というのはほとんど考えられない。資源が枯渇する場合以外には考えられない。そうするとどうしても若い労働力を入れざるを得ないということになる。私は、これは今後の石炭問題の最大の問題ではないかと思います。  そこで、長い間業界におられました稲山参考人とそれから炭鉱の問題にずっと生涯をささげられました田口さんから、ごく簡単でいいですけれども、一体労務者確保はどうしたらいいだろうかという示唆がありましたら参考にしたいと思っております。
  23. 稲山嘉寛

    稲山参考人 これはなかなかむずかしい問題だと思いますが、やはりいまの世の中では、ふさわしい賃金を支払わないと、これからますます労働不足の状態になると思いますので、賃金についてやはり適当な考慮は払わなければならぬと思うわけでございます。ただ、事業として考えた場合には、事業の性質上外国とかりに競争していかなければならないという場合には、事業そのものも犠牲をある程度はがまんもしなければならぬと同時に、そこに従事している従業員もある程度がまんをともどもして、何らかの共同の協力によって解決していくという熱意はほしいと私は思うわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう観点から考慮をしていかなければならない。そうすると、私ども千四百五十円は外国よりは高く買ってもいいというお約束になっているわけでありますが、そういうのが、外国は相当値が上がってくると思いますが、それでもなおかつ労働賃金を高くしなければ石炭の維持または増産ができないという場合に、コスト外国の値上がり以上に上がってくるのだということになるのかならないのか、まだ私どもよく存じませんので、これからやはりそういうことを具体的に詰めながら、新しいエネルギー時代が参ったわけでございますから、そういう観点からあるいは詰め直す必要があるのじゃないか、あるいは国の保護ももう少し手厚くしなければいけない状態になるのか、これはまだ今後の問題であろうかと思います。  それから、先ほど御質問を私ちょっと勘違いしまして、何か海外投資について格別の組織が必要かというお尋ねに思いましたので、口が足らなかったのでございますか、現在できるだけの努力はいたし、また海外経済協力基金あるいは輸出入銀行その他の非常な御協力を得まして幸いに今日までやっておるわけでございますが、今後ますます海外投資は必要でございますので、資源確保の意味からも活発に行なわれるだろうと思います。そこで、私は、従来の組織を格別のもにするという必要はございませんが、資源確保観点から、いままでよりももっと一そう積極的に御協力をいただかねばならない、かように考えておりますので、そういう意味合いにおいて皆さま方の御支援が得られればしあわせだと存じます。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと田口参考人が陳述される前に一言意見を述べたいと思いますが、実は賃金だけでなくて、生涯の雇用の場でないというのがやはり炭鉱の場合問題なんです。自分が一番人生の盛りのときにやめていかなければならない職場ではないかという不安が賃金、待遇が悪い、さらに保安が悪化しておるということのほかに、他の産業と違う点があるわけです。その不安が労働者に非常にあるから、炭鉱に行ってもいずれ閉山になれば首になるという不安がつきまとっておると思います。それで、そういう点は一体どういうように考えたらいいのか。そこで一つ雇用のプール的な発想とかいうものが出てこざるを得ないわけですけれども、そういう点もあわせて御答弁願いたい。
  25. 田代文久

    田代委員長 簡潔にお願いします。
  26. 田口良明

    田口参考人 御指摘のように、炭鉱の仕事は坑内作業であるというハンディキャップがあることは申し上げるまでもないところであります。そういう特殊な業種であるだけに、ここに労務者確保ということは非常にむずかしいということでございまして、これは当然宿命でございまするので避けることはできない。しかし一方石炭需要はどうしてもある。そこでいかにすべきかということでございます。先ほど稲山会長が申されたように、やはり賃金を少なくとも他産業並み、それ以上にするということはこれは絶対に必要な条件でございます。  それから、この炭鉱の仕事、作業の内容について環境をよくするということでございます。今度、オーストラリア日本炭鉱技術輸出するということで、かなり進んでまいり、まとまりつつあるのでございますが、このコールカッターにはラジオ・コントロール・システムと申しまして、坑口とは申しませんが、坑道のところから坑内で動かすラジオに電波を通じて、このカッターを起動させ、あるいはカッティングの仕事あるいはそれを進ませる仕事、いろいろな仕事を電波によってやるというような試験設備を持ったものを輸出することにしまして、昨日そのテストをやったのでありますが、四十メートルの遠隔操作が非常によく坑内の湿度の多いところでできたということでございます。これは一例でございますが、今後やはり坑内外の機械化、環境の整備、これを非常によくするということは第二の問題だと思います。  それから、やはり先ほど申しましたように、位置づけと申しますけれども、国が絶対に石炭は必要なんだ、われわれはこれをもって大いに国益に寄与をしておるのだという一つのプライド、ビジョン——明るいビジョンを持つということ、これは私は非常に重要なことだと思うのでありますが、これはポーランドの例を見ましてもあるいは韓国の例を見ましても、いま非常な勢いで石炭の増産が行なわれておるというところの国々においては、国民の中でこの石炭産業に従事しておる人たちに対しては特別な待遇をしておる、こういうようないわば国の戦士であるというような非常な栄誉を持たしておるというようなことは、非常に大きな問題だと思うのであります。したがいまして、やはり特殊機関でやるんだというようなことは、一つの安定感を与えると同時に、また非常なプライドを持たせるということに寄与するかと思います。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ありがとうございました。
  28. 田代文久

    田代委員長 細谷治嘉君。  一言申し上げます。  まだ質問を希望される委員の方が四人おられます。そういう点で、時間が非常に切迫いたしておりますので、非常に貴重な御意見を伺っておりますが、質問者並びに参考人とも簡潔にお願いいたします。
  29. 細谷治嘉

    ○細谷委員 簡単に御質問いたしたいと思うのです。  稲山さんと田口さんの御意見聞きまして、外国炭と比べまして千四百五十円高までは引き取る、こういう稲山さんのおことばであります。田口さんの、やはり国内資源を活用していく、もっとひとつ積極的に石炭に取り組んでいく、そのためには何といっても炭価というものは、外国炭の値段と関係なしに独自に、やはりエネルギーのセキュリティーという観点からあるいは国内資源確保という点から決定すべきである、こういう御意見であります。その辺の接点がどういうことなのか、お二人の御意見の、いまも多賀谷委員から質問ありましたけれども、その辺の接点、炭価についての接点は一体どうなるのか。主として稲山さんのおことばははっきりしているのですけれども田口さんのは一体外国炭と比べてどのくらいの差までいいのか。その場合はもちろん保護政策の強化、こういう問題も起こってくるわけでありますけれども、それにちょっと接点がはっきりいたしませんので、この点についてひとつお考えを率直にお聞かせいただきたい、こう思います。  それから第二点は、消滅炭量六十二億トンということばがございました。閉山鉱区の再開発ということを御主張なさっておるわけでありますけれども、専門的にこれに一生をささげてまいりました田口さんとして、この六十二億トンといいますと大体日本の埋蔵量の三分の一でありますので、かなり貴重な資源でありますけれども、炭価なり労働条件なりあるいは自然条件、こういう問題も踏まえて、閉山鉱区の再開発ということは可能なのか、可能とすればどの程度炭量確保できるとお考えになっているのか、この点であります。  それから第三点は、お二人とも開発輸入ということを強く主張をされておるわけでありますけれども、エネルギーの多極化ということでありますけれども、たとえばメジャーがあらゆるエネルギーを独占しようともっぱら努力をしておる今日、しかもエネルギーナショナリズムというのは強まりこそすれ弱まるということはないのじゃないか、こう思うのです。そういう意味において、エネルギーの多様化というものは、ある意味ではナショナリズムを考えた、たとえば中国炭、ソ連炭あるいは資本主義国、こういうような意味の中国炭についても積極的に取り組んでいく、ソ連炭についても積極的に取り組んでいく、こういう考え方をエネルギー多様化の中に織り込んでいく必要があるのではないか、こういうような感じがいたします。これはナショナリズムの関係もありますから、その点で御意見をお聞きいたしたい。  以上であります。
  30. 田口良明

    田口参考人 炭価の問題についての御質問でございました。稲山さんと違うような点があるというようなお話でございましたが、実は私の言い回しが十分でなかったかもしれませんが、これは稲山会長からお話がありましたように、第五次政策の中で炭価についての外国炭とのルールがきめられておるわけです。それは、国内原料炭につきましては、豪州の弱粘結炭がスタンダードでございますから、それとの比較において協議して決定するということについては、稲山参考人のお話と変わりはないわけでございます。  ただ、それではいまどのくらいの差があるのか。トン当たり国内炭輸入炭との差は千四百五十円とかあるいは千八百円とかいうような数字もございますが、現段階においてはきわめて流動的でございまして、一般炭ほどではございませんが、原料炭もいろいろな取りきめはございますけれども、かなりこのごろ上がってきておるというのが現実の姿でございます。そこで、国内炭炭価をどうしてもやはり適正な炭価まで持ってきてもらわないと、赤字経営ばかりではこれはどうにもならないということでございますが、やはり国内炭の炭価もトン当たり千六百、七百円の赤字をいま四十八年度あたりにおいても計上しておるわけであります。四十九年度にどのくらい労務費あるいは物品費が上がるかというようなことも私としてはまだはっきりいたしておりませんが、しかし、そういうようなものを考えて、ここにやはり原料炭についてはユーザーである鉄のほうの皆さんと協議をしなければならぬ、しかし、それの原則は第五次政策の炭価アップのルールに従ってやるということで、稲山参考人と私の陳述は変わりはないわけでございます。  それから第二点の再開発の問題でございますが、六十二億トンの閉山炭鉱の再開発、こういうことを申しましたけれども、この六十二億トンは、あくまでも閉山炭鉱の閉山時における計算された炭量でございます。これが必ずしも全部期待できるというものではございません。ただいま、それぞれの部門と申しますか、政府のほうにおきましても、あるいは合理化事業団のほうにおきましても、この再開発の適当な個所並びに開発に値するかどうか、それの経費の算定、そしてそれによる期待額というようなものを算定しておるようでございまするから、それの結果を待たないと、いまこれによってどのくらいの数量が期待できるかということは申し上げられないというのが実情でございます。  以上、二点でございます。
  31. 稲山嘉寛

    稲山参考人 いまお尋ねの開発輸入の問題でございますが、御指摘のありましたように、日本は各国の協力を求めてきたものに対してはできるだけ手広く開発協力する姿勢をとりませんと、なかなか日本の必要とするものを確保することができないという状態だろうと思っております一そういう意味合いにおきまして、石炭につきましては、私ども、昔から中国の開らん炭を中心にして今日の鉄鋼業があったわけでございます。そういう意味におきまして、中国の原料炭を期待する気持ちは変わらないのでございますが、今日のところは、中国からの石炭輸入はございません。最近中国の考え方をだんだんお聞きしてみますというと、今年はちょっとむずかしい、来年度ぐらいになればあるいは少しずつ計画として織り込むことができるのじゃないだろうかという積極的な姿勢のように私ども感じております。そういう意味で、鉄鋼業界としてはお互いに接近を続けていくつもりでございます。しかし、中国は自分で掘って自分が輸出するという形でございます。他国の協力を得て経営をどうしようとかいうことは考えておられないわけでございまして、ただ開発に必要な設備を日本から協力せぬかというような形での協力関係になっておりますが、今後積極的に進めていく必要があると思っております。  また一方、ソ連につきましては、新聞で御存じかと存じますが、南ヤクート炭の開発協力しろ、これはわれわれからのバンクローンで開発しようということでございます。目下着々進めておりまして、数量とか、あるいは出炭の時期とか、どの山を開発するとか、そういうことはすべてまとまりました。ただ、値段の問題につきまして、これは相互に相当な開きがございますので、これが詰まればわれわれのほうはこの開発協力していくつもりでおりますが、一年間五百五十万トンでございますが、それが参りますのは一九八三年からということなんでございまして、非常に長い先のことでございます。時間の関係上簡単にお答え申し上げます。
  32. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一言。お答え要りませんけれども田口さん、稲山さんのお答えと田口さんのお答えで、やはり使うほうは第五次答申ということを基礎にしておっしゃっておるわけでありますけれども、とにかく石炭プロパーのサイドから石炭を見直すということになりますと、やはり第五次答申を一歩踏み出さなければ、もっと積極的な形でなければ、第五次答申のラインでいくということでは石炭の見直しということにならぬだろう、エネルギーの中の位置づけということにならぬだろう、そういう意味で、私は、田口さんの積極的ということばを理解したわけであります。でありますから、国内資源によるエネルギーのセキュリティーということを確立していくという場合には、千四百五十円よりももっと一歩踏み込んだ形で保護政策もとっていかなければならぬのじゃないか。第五次政策答申どおりのラインを守るということでは石炭見通しにならない、こういうふうに私は考えておるものですから、そういう点で御質問して、やはりそういう点では、どうもお二人の意見は、使うほうと掘るほうというあれでありますから、若干違うのじゃないか、こういうふうに理解しておりまして、ぜひひとつそういう点で、田口さんに、第五次答申から一歩出て積極的に取り組むんだ、こういう姿勢で取り組んでいただきたい、こういう点を御要望申し上げたい、こう思うのです。
  33. 田口良明

    田口参考人 ただいまの御意見に対しまして、私も、いまの先生の御意見どおりで申し上げたわけでありますけれども、ただ、ここに一つのギャップがあるわけなんです。現実まだこれから政府としても、六月なり何なり今度の対策が出るまでは、いまの段階では一応五次答申が生きておりますので、それを申し上げたわけです。ですけれども、私といたしましては、ただいまの先生の御指摘と同じように、これではだめなんで、これからの見直しは大胆にひとつ画期的にやらなければならぬ、そういうことになりますと、価格については石油その他の価格とは関係なしに、これはもう独立して定める必要がある。そうしないと、とても石炭の位置づけはできないというので、これは時間的に、ただいまは三月の末でございますが、六月ころになりますとこれを実現しなければならぬという私の考え方には変わりはございません。その点は先生の御指摘どおり私も同じでございますから……。
  34. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  35. 多田光雄

    ○多田委員 両参考人どうも御苦労さまでございます。質問に入ります前にお二人にちょっと私の意見を申し上げて、そのあとに二、三お伺いしたいと思います。  先ほど稲山参考人が、今度の石油危機、これが、鉄鋼業界のあり方についても根本的に考え直さなくちゃならないところに来た、こういうお話でございましたが、そのとおり、今度の石油危機というのが産業界だけじゃなくて日本の一億国民の生活に非常に深刻な影響を与えているわけです。そこから資源エネルギー問題というものが非常にまた大きなテーマになり、これが国会でもいろいろ論議されているわけですが、ひるがえって考えてみました場合、昭和三十五年ごろをはさんで石炭が斜陽になってきますね。特に、昭和三十七年に石油業法が国会を通過したわけです。私どもの党としてはこれには実は賛成しかねたわけですね。反対の態度をとったわけです。それは、当時低廉で豊富な石油ということをうたっていたわけですが、実は私どもとしては、これは日本産業発展の均衡を欠いていくのじゃないか、やはり日本国内資源を大事にして、当然ないものは入れていかなければなりませんけれども、特にエネルギーというものは絶えずコンスタントに確保していかなくてはならないものですね。そういう意味で、石炭の取りつぶしというものについて反対して、できるだけ各エネルギー源というものがバランスのとれた発展をしていくという立場であったのですが、残念ながら今日こういう事態を迎えたわけです。  先般来、国会で質問の中で、政府側は、通産大臣も、資源問題、エネルギー問題については、一つセキュリティーの問題、つまり経済安全性の問題ということと、それからいま一つ経済性という、この二つをお述べになったのです。従来はどうも安ければよければということで非常に経済性が先行していた。ところが、今度のエネルギー危機を契機として今度はセキュリティーという問題が論議されてきたということは、やはりいまお二人のおっしゃったように、日本資源を大事にするということが反省されてきたものとして、この限りにおいては私どもはぜひそうあっていただきたい、こう思うわけです。  実は、一次から五次までの石炭政策を考えてみますと、石炭は文字どおりいま二千万トンそこそこという状況になりました。一方では、稲山さんの鉄鋼それから石油その他は、これはさっきおっしゃったように文字どおり国際的にも第一位、二位というくらいな発展をしてきたわけで、こういう点からいいまして、私は稲山さんにもこのエネルギー政策についてはやはり一端の責任をひとつ御自覚になっていただきたいということをまず冒頭に申し上げておきたいと思うのです。  そこで、ちょっと順不同になりますが、いま鉄鋼業界として外国原料炭輸入についていろいろお話し合いされているということでございますが、私の聞くところによりますと、大体原料炭四十ドルないし四十一ドルというようなことでお話し合いをされているということも伺っておりますけれども、支障なければ、その辺もひとつ簡単でけっこうでございますが、お答えいただきたいと思います。
  36. 稲山嘉寛

    稲山参考人 いまちょうど年度の始まりを控えておるわけでありますので、各国の山元から申し込み値段のあれが出ておるわけでございます。いま各国とも非常な値上げを要求しておりますが、それではとうていわれわれ応じられないということで、われわれこれから強力な折衝をするわけでございます。いま米炭が、もちろんこれは品質もよろしいし、非常に強粘結炭でございます、それから運賃も遠いわけでございますから高いわけでございますが、それが大体四十ドルがらみの要求をしてきておるわけでございまして、その他はもう少し低い三十ドル台、もちろん強粘結と弱粘によって違いますが、米炭よりは十ドルぐらい低い感じでございます。しかし、いずれにしてもまだこれはきまりませんものですから、それがきまってから、今度われわれ国内炭のあれが第五次のお約束どおりでいいのか悪いのか。われわれのほうとしてはお約束してあるのですから、そのとおりでいければ一番いいわけでございますが、しかし、資源を考える場合に、これはまたこれで約束じゃないかと言い切れるのかどうか、これはまだこれからの鉄鋼業界の話になるだろうと思いますのですが、お答えといたします。
  37. 多田光雄

    ○多田委員 従来外炭が五千二百円あるいは五千三百円と十数ドルで入ってきたのが四十ドルの高値を呼ぶようになってきている。それから、私どもの調べたのによりますと、アメリカでは原料炭価格統制をしているということで一般炭のほうに流れている。その一般炭もスポット買いで三十ドルという声も聞いております。そういう意味で、おそらく四十ドルというのは今日のアメリカ実情を見ても決してこれは高過ぎるというものではないし、おそらくこの辺が一つの大きな問題になるのじゃないかというように思うわけです。  そこで、実は先ほどちょっと稲山参考人のお話を聞きまして、日本国内炭が、千四百五十円でございますか、この程度高ければ何とかがまんしていけるというような限度ということだと思いますが、それで試算してみますと、かりに四十ドルとしますと、相場が三百円と一応して、外炭が一万二千円。そうするといま国内石炭が大体七千五百円から七千八百円、この前後とかりにいたします。そうしますと、かりに千四百五十円ですか、これを加えますと、外炭の場合に一万三千五百円程度であっても国内炭と比較して場合によっては買わざるを得ない。そうしますと、一万三千五百円としますと、かりに七千五百円の国内炭との差は六千円くらいになるわけでございます。そうすると、どうでございましょうか、いま日本国内石炭はある意味では六千円くらい大幅にアップしても、内外の原料炭の逼迫からいって、そしてまたここ一、二年たいへんだという状況から見ても、これは鉄鋼業界としてはお買い上げにならざるを得なくなるということにもなるのじゃないかと思うのです。炭価の大幅値上げは避けられないとして、その程度値上げというものをひとつお考えになっておられるのかどうなのか。これは業界として安ければ安いほどよろしいということになるわけですが、どういうものでございましょうか。
  38. 稲山嘉寛

    稲山参考人 いまお話がございましたほどの値上げにはならないと私どもは思っております。いまオーストラリアの弱粘炭、それが八千七百円か八千五百円以下の状態でございます、申し込みもあれして考えまして。それで、私が千四百五十円まではよろしいのだと言うのは、そういう意味じゃございませんで、第五次の石炭対策としまして千四百五十円高くまでは買いましょうというお約束ができておるわけでございますので、そのお約束を無視することはわれわれとしてはできません、だからそれまでは続けましょうということだけでございます。われわれは、たとえば八千七百円に千四百五十円加えますと一万百五十円くらいになる。ところが石炭がいままで六千円で補助金をいろいろもらっておるにしても、一万百五十円になれば今度はもうかり過ぎるんじゃないかという状態なのか、あるいはそれでもだめなのか、そこのところはこれからでないと、豪州の弱粘炭がきまらないと御相談できないわけでございますので、それは申し上げられませんが、お約束だと千四百五十円は高くてもわれわれのほうは引き受けなければならないのですと、こう申し上げておるわけです。
  39. 多田光雄

    ○多田委員 実は十数年前、石炭産業が、むざんということばが当てはまると思うのですが、つぶれていきますときに、ほとんどの方が日本資源を愛するとか、それから労働者は国の戦士だということばは一言も聞かれなかった。聞かれないどころか、逆に五次の間でほんとうになま木を裂くように炭鉱がつぶれ、労働者が職場から追われていったわけです。そして今日、このエネルギー危機を迎えて、やれ自国資源石油割り当て制だとか、あるいは安全性だということの中で、再び石炭は宝だ、それから労働者は宝だ、こういうようにいわれてきているわけです。ですから、私はほんとうにいまエネルギーの問題を考える場合に、先ほど両参考人が言われましたように、エネルギーの見直し、石炭の見直しといっても、これはことばではなくして具体的な措置だろう、こういうように思うのです。わけて、これから石炭を掘るといってもいま掘る労働者が来っこないのです。そうすると、賃金も上げていかなければならない、その条件もつくっていかなければならないということになりますと、これは国だけがめんどう見るのじゃなくて、鉄鋼その他たいへん大きく発展してきた業界の皆さんとして、ひとつ思い切ったごめんどうを見ていただかなければならないというふうに私ども考えているわけです。  そこで、具体的に、これは私の提案も含めてですけれども、御検討願いたい。稲山参考人石炭鉱業審議会の会長さんもつとめておられるのですが、いま原料炭の入手が非常に困難になってきている、高値になってきているという中で、たとえば北海道の奔別という炭鉱があります。これは掘れるばかりに坑内をつくって、廃鉱にしてしまったわけです、二年前に。どうでしょうか。これはひとつ力を持っておられる稲山参考人として、こういう原料炭を出す山を早急にまた再開していくというふうな具体的な措置なんかも御提案、御検討もいただきたいと思うのですが、こういうことも含めてこれは御検討になっていただけましょうか。
  40. 稲山嘉寛

    稲山参考人 どうもただいまの御質問、われわれよくこまかくは存じません。ただ、奔別はあれは原料炭ではないように記憶しておりますが……。
  41. 多田光雄

    ○多田委員 政府側どうですか。
  42. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 一般炭の山でございます。
  43. 稲山嘉寛

    稲山参考人 しかし、一般炭といえども使えないわけじゃないのでございます。こういうものもやはり考えなければいけないと思いますけれども、そういう具体的な問題については、皆さんの衆知を集めないと、私個人ではお答えしにくいのです。
  44. 多田光雄

    ○多田委員 それから、一般炭コークス化の問題ですが、これは私の伺っているところによりますと、住友とか日本鋼管、こういうところでも企業化の段階に入ったとかまたは入りそうだという話も聞いておりますが、こういう意味では、国内炭を見直す上で、一般炭の活用というのは非常に大事なことで、私の知っている石炭技研なんかでもかなりこれが国内で進んでいるという話も聞いております。そういう意味で、この見通しといいますか、これはどういうものでございましょうか。
  45. 稲山嘉寛

    稲山参考人 これは私どものほうも非常に関係しておりまして、一般炭を粉にいたしましてそれを固めるわけです。そうすると、それは豆炭みたいなあれで非常によくできますので、私のほうも一緒にパテントをとりましていまやっておるわけでございます。こういうのは相当有望じゃないかと思います。元来、強粘結とか弱粘とか一般炭とかいいましても、これは灰分がある一定量非常に多いとか、あるいは硫黄分が非常に多い、そのために溶鉱炉の操業上非常にマイナスがあるという比較論の問題でございまして、だんだんせんじ詰めてみますと、経済性を無視すれば絶対に使えないものではないようでございます。ですから、技術が進歩してまいりまして、硫黄を取ってしまうとか、できるだけ取るとか、それからあるいはそういう粉炭にして灰分を減らしてしまうとかいう技術が発達すれば、日本国内炭でも非常に範囲が広くなると思いますが、その可能性は十分あると思っております。
  46. 多田光雄

    ○多田委員 それから、先ほどのエネルギー政策の問題、資源エネルギーの問題で、ちょっと政策的な問題になるわけでございますが、石炭が崩壊して、いま石炭を見直していかなくちゃならないということになってきているわけですが、これもなまやさしいものではないだろう、こう思うのです。しかし、それは政府が本腰を入れる、あるいは鉄鋼をはじめ業界の皆さんが先ほどおっしゃったような方向でかなり本腰を入れていただかないと、この石炭の見直しということも、から念仏に終わって、結局掘れないから外炭依存という、油の繰り返しをまたやってしまう。そしてまた、何年かたって同じような悔いを残してしまうということになりかねないわけです。そういう意味で、どうでしょうか、日本のエネルギー資源政策の問題について、業界の最も代表的な稲山参考人として、どういう点で御反省をされているのか、そしてまた、もし教訓を引き出すとすれば、どういうことをこれから具体的にやっていかなくちゃならないのかという問題について、やや一般的な話でございますが、短時間でけっこうでございますからお話しいただきたいと思います。
  47. 稲山嘉寛

    稲山参考人 私も御答弁、即座にはできない非常にむずかしい問題だと思いますが、結局エネルギー問題は、国内のエネルギーの問題、ある資源の問題、あるいは日本で消費するエネルギー、世界的にエネルギーをどうしていくかという問題、これは非常に重要な問題で、やはり世界はエネルギー革命によって変化してきたくらいのものでございます。したがいましてわれわれは、石炭時代から石油時代になってきた、この石油も有限であるということになれば、どうしてもこれにかわるべき核の問題とかあるいは太陽熱の問題とか、いろいろ考えられておるわけでございますが、一番近いのはやはり原子力の利用だと思います。これに対する国家の力の入れ方は相当努力を傾注されておるようでございますが、これは残念なことに、地域社会の問題あるいは公害の問題、こういう問題から相当進展がはばまれておるようでございます。しかし、これはどうしても将来のことを考えますと、十年あるいは二十年後には確かに石油資源も枯渇することでございますので、つまり人類の経済生活にまで重大な影響を及ぼす問題でございますので、こういう問題に対しての積極的な——公害をなくなすような技術的な面はもとよりであります。そういう面で積極的に努力をしていかなければいけない。それには多額の研究費が要るわけでございますから、ぜひ国家もこういう方面については思い切った研究をさせていただきたい、かように考えるわけでございます。  その他いろいろあるだろうと思いますけれども、ただいまお答えできませんのははなはだ残念でございます。
  48. 多田光雄

    ○多田委員 実は国内の水力、それから石炭、これにどういうアプローチのしかたをするかというのは、私はやはり、一つは過去のエネルギー政策資源政策、これをとってきた反省なり教訓というものが一つの大きなバロメーターだというふうに考えておるわけです。いま原子力の問題の話も出ましたが、原子力の問題も非常に大きな問題をかかえているという状況ですね。そういう意味では、ぜひひとつ石炭国内の水力、こういうまだまだ使えるものを、それこそ経済性に若干負担があったとしても、掘り出していくということが大事だろう。現実に同じエネルギー革命の中で、イギリス、西ドイツその他については、石炭の比重というのは依然として高いわけですね。そういう点も非常に大事な問題だと思います。  そこで、これはもう一つ政策的なものなんですが、私どもとしては、労働力確保の問題を見ましても、それから炭鉱の保安の問題を見ましても、それからほんとうに各エネルギーが均衡あるつり合いのとれた発展をしていく、これは産業構造にまでかかる問題でございますけれども、そういうふうにやっていく場合、何といってもエネルギーをやはり総合的に、しかもバランスのとれたしっかりしたものにしなくちゃいかぬ。そういう意味で、私どもとしては、これはやはり産業の動脈ですから、国有化なり公社にして総合的に国が見ていく、そういう考えを持っております。そして現実にイギリスにしてもフランスにしても、油を除いて国有、公有ということになってきております。また石炭業界の代表の石炭協会の会長さんも、昨年の参考人としていらっしゃったとき、なるべく一社化という話をされたり、あるいは私企業に対して一定の制約を加えていくというようなことをおっしゃっておりましたけれども、国有化、公有化という問題について稲山参考人はどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  49. 稲山嘉寛

    稲山参考人 原則としては、やはり自由競争の原理に立ちまして、そしてお互いにコストの引き下げに対する努力をし、あるいはくふうをこらしていくということが本筋だと存じます。しかし、今日のような石炭の状態になりますと、もうすでに私企業でやっていかれない状態なんだということを、企業の代表の方もすでに発言されている面が私どもにも十分聞こえてまいりまして、相当努力しても国際的な経済性を維持できない悩みを抱いておられたようでございます。しかし、今度また外国のエネルギーが上がってくるというようなことになりますと、あるいは多少の努力、多少の犠牲を払えば何とかまたやっていかれる状態なのか、あるいはそうでない、やはりこれだけ外国のエネルギーが上がっても、二千万トン程度石炭の維持さえもできない運命なのか、そこのところはこれからもう少し見きわめて、そしてもうどうしてもだめだということであれば、やはり国家的な、国有というような議論がまた起きてくるのではないか。客観的な御答弁でまことに申しわけありませんが……。
  50. 多田光雄

    ○多田委員 先ほどの奔別ですね、私、非常に優良炭なものですから、原料炭と申しましたが、これは奔別を含めまして、まだ掘れるところが六十二億トンということで、もちろんそれはいろいろ困難な状況もあると思いますが、できるだけ国内資源を活用していく、そしてできるだけ掘っていくという姿勢が、私は今度のエネルギー政策の中で一つの大きな、むしろ最大のこれは教訓ではなかったのかというように考えております。  そういう意味でひとつ、石炭鉱業審議会の会長さんでもございますし、そしてまた最大ユーザーの一人でもございますから、ぜひひとつ国内炭活用のほうにもつと大きく政府を向けるような御発言なり何かもしていただきたい、こう思うわけです。  それから、田口参考人にひとつお伺いしたいと思いますが、やはりエネルギーなどの原燃料は、大事なことは、やはり産業の動脈でございますから、何といってもコンスタントに安定供給ということが大事だろうと思います。それからいま一つは、資源主権という立場から、先ほど来いわれているナショナリズム、こういう立場で各国がまた臨んできている。これはまた一つの歴史の流れだろう、こう思うのですね。  そういう意味で、これからの原料炭海外開発というものが、たとえば中近東の例を見るまでもなく、ほんとうに安定的な供給ができるのか、そしてまたそういうおそれがないのか。これは田中総理の東南アジア訪問にも見られますように、この根は決してまだ消えていないし、むしろこれが強くなるような傾向さえ出ているわけです。そういう中でどういうふうなお考えでおられますか、これをひとつ伺いたいと思います。
  51. 田口良明

    田口参考人 海外原料炭の今後の見通しはどうかというようなお尋ねかと思います。  きょうの当初の陳述でお話し申し上げましたように、やはり原料炭のソースとしては、オーストラリアカナダ、ニュージーランド、それから中国、ソ連というような、太平洋を取り巻く各地区の石炭資源を対象にしなければならぬと思います。そして先ほど申し上げましたように、オーストラリアにおきましては、かなり外国資本の投資ということに対しまして神経質になっておるのが最近の事実でございます。と申しますのは、ウランとか天然ガスとか石油とか石炭、こういうようなエネルギー資源に対しての外国資本の投資、そういうことに対して非常に警戒的であるということは事実でございますが、一方あの膨大なクイーンスランド州並びにニューサウズウェールズ州にある炭田地帯は、原料炭はもとより一般炭についても膨大なソースがあるわけであります。そういうふうな一般的な鎖国的な風潮は若干ございますけれども、やはり何と申しましても、米英関係からも盛んに最近調査団が参りまして、これに対しまして、日本は今後いかにしてこれを確保するかということは重大な問題でございまするが、先ほど申しましたように、やはりいままでのような単なる単純輸入ではなしに、日本技術、殊に私は技術を強調したいと思うのでありますが、技術の導入によって、あるいはコンサルタント関係によって、向こうの炭鉱がいままでの露天掘りから坑内掘りに転換しつつあるということに着目して、日本の優秀な坑内掘り技術を導入するのには絶好の機会であるというふうに考えるわけであります。  次にカナダでありますが、カナダ方面はやはりロッキー山脈の東の山ろく方面に分布しておりまする原料炭並びに一般炭がございますが、いま年産五百万トン程度原料炭日本輸出しておりますバルマー炭、これなんかもやはり非常なソースでありますが、いま私のほうでいろいろと長いこと調査その他をやっておりますスクンカプロジェクト、こういうものは三井鉱山が調査中のクインテットプロジェクトと並んで非常に有望な坑内掘り炭鉱であるということでございます。その他、カナダ労働力は不足しておりますけれども、それだけに日本の進出の余地は十分にあり、それだけにまた有望なところでございます。  ニュージランドにつきましては、当社におきまして二年半前からボーリングその他を、商社と一緒になりましていままでに八本のボーリングを打って、炭質が非常によろしいということで、実地調査の段階もいま終わって、向こうとの折衝待ちの状態にございます。  なお、オンピリン炭鉱のようなインドネシア方面の炭田、いわゆる東南アジアの炭田、これは一般炭でございますけれども、こういう方面も今後のあれによっては地域経済に及ぼす恩恵を蓄えてやるという見地から、これも一つの有望な地域であると考えております。  あとはソ連、中国の関係は、先ほど稲山参考人からお話がありましたようなことでございますけれども、私どもはやはり日本技術と友好的な関係を持ち、さらにこれに資本を導入するということが可能ならば、この三位一体によって、今後のやり方いかんによっては、しかもそれが強力な国家的バックがありさえすれば、かなり明るい見通しを持っておると信じておるわけでございます。  以上でございます。
  52. 多田光雄

    ○多田委員 どうもありがとうございました。
  53. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  54. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 稲山さんと田口さんのお二人の非常なうんちくを傾けた御高見、ありがとうございました。時間も迫っておりますので、簡単に一、二問お尋ねをして御教示にあずかりたいと思います。  先ほど稲山さんのほうからお話がありましたが、海外原料炭長期輸入計画、それはむろんそういう長期輸入計画はおありだと思いますが、その内容について少しお話もあったようでございますが、現状どの程度輸入計画を立てておられるのか、その点をちょっと承りたいと思います。
  55. 稲山嘉寛

    稲山参考人 私のほうの輸入計画は、どのくらい鉄鋼需要があるか、それに対して生産はどのくらいするかということを土台にいたしまして、国内炭の必要量は一千万トンなら一千万トン、そうすると石炭全体の不足が幾らあるか、それを外国から買うという形できめていくわけでございます。それが先の見通しの問題になるわけでございますが、現在は、昨年が一億二千万トンの生産、これが五百万トンずつぐらいふえて、昭和五十年には一億三千万トン、それからだんだんふえて五百万トンぐらいずつというのがせいぜいの実情だと私は思います。いま政府が考えておる中期計画はそれ以上でございますが、政府考え方の計画から逆算いたしてみますと、今年と来年が石炭がちょっと足りない。それから先の石炭の計画は、いま海外投資も全部しておりますし、協力もしておりますので、大体間に合っていくというのが実情だろうと思います。今年は石炭から生産が制約されるほうが、油で制約を受けるよりはあるいは大きくなるのではないかという心配をいま一生懸命しておるような状態でございます。
  56. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 油で制約されるということも考えられると言えると思いますが、原料炭が現在の輸入価格よりも将来どの程度上がっていくのか。先ほどのお話のように、豪州にいたしましても非常に集中豪雨等で足らない。なお油の関係で、各国ともわれわれと同様に国内資源確保というようなことからしまして、これは先般も私はどなたにかお尋ねしたのですが、すでに輸出禁止だというような規制もしておるようでございます。イギリスあたりでも、北海石油なんかを輸出禁止するんだというようなこともありますし、したがって、炭価もずっと上がってくる。もうすでに上がっておるのですが、そういうことからお考えになって、長期輸入計画をお立てになるのに非常に御困難があるんじゃないか。結局いまおっしゃるように、国内でどれだけ出す、だから足らぬ分は輸入するのだ、それは当然そうでございましょうが、それに対して、現時点において、そういう情勢を踏まえてどういうふうに御計画をお立てになっておるか、そういう点もひとつ……。
  57. 稲山嘉寛

    稲山参考人 私どもは、石炭供給地が主として米国豪州カナダという、私どもから見ると安定した国からの供給でございます。したがいまして、今日までのところは、各国とも、そういうとおかしいんだが、日本と違いまして商業道徳からいいますと、コストプラス適正利潤で物を売るという姿勢になっております。したがいまして、足元を見て値段を上げてくるようなことの交渉はわりあいに少ないわけでございまして、たとえば向こうの鉱害の費用がふえてきた、あるいは労働賃金が増してきたというような点がこれだけあるから一ドル上げてくれというような交渉で今日まできておりますので、今後もそういう意味では安定した供給だと存じております。  一部米国石炭輸出禁止があるのじゃないかということで、巷間非常に伝えられて心配しておりました。この間米国の商務次官が来られまして、その点を率直にお聞きしてみました。そういうことは絶対にないということでございます。幸いに国務次官がピッツバーグの出身の方で、非常に鉄鋼業をよく理解している方でございまして、したがって、私ども原料炭米国から買うのであって、米国がいま悩んでおる電力の油にかわるべき石炭一般炭が非常に不足しておるというのとは競合しないんだ、われわれはアメリカから原料炭を買うんで、一般炭を買おうなんて絶対に思っていないんだから、その点はひとつ誤解ないようにしていただきたいということをるる申し上げましたら、その点は理解しております、ただ非常にいまアメリカとしてあれなのは、原料炭は製鉄所が買う場合には価格を統制しておる、ところが電力が、油が足りない、一般炭が足りないというので、原料炭をがまんして高いけれども買うのだそうであります。そこでアメリカのシッパーは、国内に高く売れるものですから、どうしても日本へも比較的高く要求してくるというような点が見られるのではないかなと実は思っておるわけでございますが、アメリカ石炭業者も、もちろん日本は非常なお得意さん、また長年の得意でありますから、絶対に輸出禁止なんかがないようにわれわれも努力いたしますと言ってくださっておりますから、そういう心配はないと存じます。
  58. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 さすがに斯界のオーソリティー、まことに御明快なお答えをいただきまして、私ら杞憂いたしておりましたことが解消しまして、安心いたしました。まことにありがとうございました。  次に、田口さんにお尋ねをいたしますが、まだたくさんお尋ねしたいことはございますけれども、簡単にお尋ねしたいと思います。  先ほど多賀谷先生からもお尋ねがあっておったようにも思いますが、海外炭開発ということでちらちらお話を聞いたのでございますが、オーストラリアあるいはカナダ、東南アジア、いろいろこういうお話を聞いたのでございますが、東南アジアはいまからだと思いますが、オーストラリアは、いまそういうお話もちらっとされておったようですが、国外の投資を非常に拒んでおるというようなお話を私は聞きましたのでね。カナダはこれは私も承知いたしております。三井なんかも向こうへ技術輸出しております。でございますが、海外開発、これは今後どういうふうにやっていくべきか、そういうところを具体的にもうちょっと教えていただきたいと思うのですがね。抽象的でなくして、たとえば東南アジアはどの方面にこれだけの有望な埋蔵量があるのだ、だからこれは開発するならばできるのだ、見込みがあるとか、カナダは現在三井がこうしてやっている。この程度やっている、豪州はシャットアウトされているというようなことを簡単に、ありましたらちょっと教えていただきたいのでございますがね。
  59. 田口良明

    田口参考人 ただいまの海外炭についての対象国の動静と申しますか、そういうことについてごく簡単にお答え申し上げます。  まず豪州でございますが、豪州は確かに、先ほども申しましたが、エネルギー関係の四資源について投資や何かを極力回避するような態度をとっておる、これは事実でございます。エネルギー資源と申しますと、ウラン、天然ガス、石油石炭、こういう四品目でございます。したがいまして、いままで、これは特に米国あたりを対象としておると思うのでありますけれども日本でも多少の投資がございます。そういうことをあまり政府としては好まないというような状態にある今日においては、やはり真正面から投資、出資、投融資というようなことをひっさげていっても、これはあまり効果がないと思います。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、日本としては、この膨大なる豪州原料炭並びに一般炭の今後の開発については、できるだけ技術協力技術提携、技術輸出というようなことに重点を注いでやったらこれが非常に可能になるのじゃないかということを踏まえて、それで二年ほど前からニューサウズウェールズ州の坑内掘り炭鉱に私のほうが太平洋のWSD方式というロングウォール・システムをPRいたしまして、ようやく最近これの輸出がまとまりつつある。これは従来西独のウエストファリアの技術が入っておったのを日本技術が駆逐することになるわけでございます。いままで抽象的に日本技術世界のトップレベルだ、あるいは最高のレベルに達したということを申し上げておりましたが、今度これが一つの具体的例になると私どもは確信しております。  それからカナダでございますが、カナダにつきましては、先ほども申しましたように、労働力がやはり不足でございます。また現にバルマー炭鉱に対しましては、年産五百万トン程度原料炭日本供給しておりますけれども、この中の約百万トン程度は三井鉱山の水力採炭技術、これが向こうにエンジニアリング、技術輸出と申しますか、こういうようなことで、これの採掘を技術のノーハウをもちましてノーハウ料を取っていまやって、成績をあげておるのが現実の姿でございます。あとは露天掘りでこのバルマー炭鉱は採掘をしておるわけであります。  なお、先ほど申しましたように、当社が三年半前からアプローチしておりますスクンカのプロジェクト、これもこれから向こうの州政府状況いかんによっては、私どもが積極的に開発に乗り出せる機運になるかと私どもは期待しております。  最後に、東南アジアはオンピリン炭鉱がございますけれども、これは一般炭でございまして、私のほうは調査をいたしてはございますけれども、これはまた今後の問題として、一般炭の問題でございますので、一応省略さしていただきたいと思います。
  60. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 最後にもう一問ちょっとお尋ねしたいのですが、これも田口さんにお尋ねしたいのです。  今度は、国内炭確保ということにつきまして、これはいろいろずっと御説明を聞きました。なるほどごもっとも、そのとおりでございますが、その中に、すでに閉山した炭鉱を再開発すべきだというようなお説があったと思いますが、再開発するということがそう簡単にできるものであるかどうか。これは資金関係、設備の関係労働力確保というような点もありましょうし、いろいろあると思いますが、これは石特委員会の先生方の御協力で九州の有明炭鉱が昨年再開発いたしまして、昨年の五月から操業をいたしております。これは御承知のとおり、もう四年ぐらいやめておりましたけれども、保坑しておりました。でございますから、操業することにはスムーズにさっとできたのでございますが、それまでにはいろいろな資金の問題とか設備の問題、機械化の問題、たくさんの問題はむろんありました。皆さんの鉄鋼業界ユーザーのほうの関係とかいろいろな関係、そういうことは第二としまして、操業は、保坑中でございましたので、スムーズにさっとできましたが、閉山をした山を再開発をする。むろんこれは掘り尽くしたのはできないと思いますけれども、また埋蔵量は残っている。だからこれは再開発すべきだ、掘れ。そうすると出るじゃないか。そのようにスムーズにいくべきものかどうかというような点をちょっとお尋ねしたいのです。
  61. 田口良明

    田口参考人 ただいまの御質問は、閉山炭鉱から再開発は可能かどうか、またその方法はいかんというような御質問と思いますが、閉山炭鉱に埋蔵されておりまするいままでの買い上げ炭鉱、閉山炭鉱、先ほども申し上げました六十二億トン、これの生産規模は六千三百万トンに相当するわけです。この六十二億トンというものは一応そういうふうな炭量として買い上げたわけでございますが、これは実際問題として稼行に値するものがはたしてどのくらいであるかということは、そうたいした期待が持てるかどうかは具体的に当たってみないとわからないわけです。  ただそのことを申し上げる前に申し上げたいことは、この六十二億トンがかなり期待が持てるという、あまり大きな数量を期待されることは非常に危険じゃないかということが一つございます。ただ、この再開発の区域をただいま政府並びに合理化事業団で当たっているようでございますが、その中のおもだった対象区域というものを一応拾い出して、そしてこれを厳重に調査しまして、そしてはたしてどのくらい出るかということを考えなければならぬわけでありますが、そのときに一応の法律的な改正問題があるわけであります。これは消滅した鉱区でありますので、一応事業団が保有しておりまする鉱区並びにその後消滅させた鉱区というものがございまするので、鉱業法の改正あるいは合理化法の改正ということがやはり必要になると思います。そういうことによって、いよいよその地域がこれは再開発に値するということがほぼきまったといたしますと、今度それをどういうような相手にこれを開発させるのが最も適当であるかということが次に起こってくる問題だと思うのであります。したがいまして、これを適当な開発担当のものに担当させるということになるかと思いますが、そのときに最も注意をしなければならぬ点は、その地域を再開発をするがためて生ずる鉱害の処理をどうするかということについて、十分な配慮がなされなければならぬことはもちろんでありますが、さらにその再開発にあたっては、中には旧坑、古洞なんかの開発も必要でありましょう。そういうような場合に、そういうことについての保安関係がどうであるか、保安についての調査が非常に必要でありますと同時に、それに対する万全の対策が必要でございます。さらにやはりこれを開発して経済性に合うかどうかということがやはり一番先決の問題であると思いますけれども、そういうような諸要件が満たされて初めて再開発の問題が実現されるということでございます。  がしかし、私は最後に申し上げておきたいのは、そういうような閉山した炭鉱炭量開発までやるのだということに対する国の姿勢というものが、いかに石炭が必要であるか、また日本国内唯一資源に対する愛情と申しますか、資源受護の精神が、今後の日本石炭産業人に与える影響がはかり知れないと考えるわけでございます。
  62. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 終わります。どうもありがとうございました。
  63. 田代文久

    田代委員長 小宮武喜君。
  64. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は両参考人が述べられた意見に的をしぼって質問したいと思います。それがまた今日の質疑の目的でもあろうかと思います。  まず稲山参考人にお尋ねしますが、最近アメリカからの原料炭輸入について、石炭価格を二倍に上げてほしい、もしこれに応じなければヨーロッパのほうに回すというような申し入れがあったというようにお伺いしておるわけですが、これに対して鉄鋼連盟としてどういう方針で臨んでおられるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  65. 稲山嘉寛

    稲山参考人 そういう露骨な具体的な話は私まだ聞いておらないのでございますが、確かに、今度は上げてほしいということでこの間アメリカの非常に有力な会社会長、社長が来られまして、私もお会いしました。しかし具体的に私には幾らにしてくれとかいうことは申しませんでしたが、係の者には話がございました。それによりますと、十ドルばかり上げてくれという御要求のようにわれわれは考えております。十ドル強でございます。いままで二十八ドルくらいだったものを、二十八ドルを四十一ドルぐらいにしてもらえぬかということでございます。これはFOBでございます。運賃は、これはやむを得ず、最近上がっておりますから、われわれの手元は非常に高くなるわけでございますが、これから見ると相当な値上げでございまして、われわれはこれから交渉をいたしますので、これからが腕のふるいどころになるわけでございまして、どこいらで落ちつくか、これはわかりませんが、やはりアメリカ国内価格が上がっておりますと、それ以下にあれするということはなかなか困難だと思いますが、せいぜい努力して、安くするつもりでございます。ただ、アメリカのあれは運賃が——遠いのですが、これは千八百万トンくらい全部のうちで輸入しておるわけでございます。六千五百万トンのうち千八百万トン、まあ豪州は何といっても距離が近うございますから、平均いたしますというと、全体の値上がりはそれほどではない。アメリカ炭はほかの炭に比べまして十ドルくらいいつも高いわけでございます。まあこれからがわれわれの努力のあれだと思いますが……。   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほどアメリカ国内においての石炭輸出規制の問題に触れられまして、稲山参考人からはそういうような事実はないというふうに断定されたわけでございますが、いま価格交渉の問題ですね、これの問題と関連して輸出規制というようなおそれが、心配がないかどうかということを念のためにひとつお聞きしておきたいと思います。
  67. 稲山嘉寛

    稲山参考人 これは相手のある仕事ですから、私は確言するというわけにまいりませんが、そういうことは絶対にないと信じております。  いままでも輸出制限の問題、禁止ということはほとんどないと思いますが、制限のことでございますが、実はくず鉄なんかも、この間非常に禁止になるんじゃないかとかあるいは制限になるんじゃないかというお話が出ました。私どもさっそくアメリカへ飛んでまいりまして、そんなむちゃな買い方はしない、自主的にわれわれのほうはアメリカから何トンしかスクラップは買わないということをきめるから、制限したりあるいは禁止したりするようなことはないようにということを事前に御相談しましたところ、非常に喜んでくれました。いまはスクラップの、われわれ自主的な制限を行なっておるわけでございます。いまそれを基準にいたしまして、スクラップについてアメリカ輸出の各国向けの割り当てをやっております。  石炭もそのころからぼちぼちそういう危険があるという話が出ましたわけでありまして、われわれのほうは——向こうの石炭業者は輸出業者が非常に多いわけでございまして、それで、それが日本と長年取引しておりまして、それは非常に大きな買い手でございますので、石炭業者も政府に非常に有力な勢力を持った石炭業者でありますから、この間も参りまして、政府がそういう輸出制限とか禁止とかをやらないようにわれわれも協力すると言って帰られましたわけでございます。そこへこの間商務次官が来られたので、私から質問を具体的にいたしました結果、そういうことは問題ではないということを言っておられたので、これはあり得ないと思います。
  68. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど参考人から非常に原料炭が逼迫しておるということを強調されましたけれども、大体いま原料炭の備蓄か、在庫といおうか、どれくらいありますか。
  69. 稲山嘉寛

    稲山参考人 一番窮屈だと思いますのは、今年でございますと思います。私ども非常に心配しておるわけでございますが、政府の計画からいきますと、一億二千万トン近い生産をしなければいけないことに一応現在はなっておるわけでございます。しかし、石炭事情から言うというと、ちょっと一億二千万トンは無理ではないかと思います。じゃどのくらいだろうか、私どもいまいろいろ心配しておりますが、一億一千万トンから一千五百万トン、これをつくるということは、相当石炭の面から——初めは油の面から非常に心配いたしました。ところが、油が、これは値段は高くなりましたが、量的にはまあまあ心配ないようでございます。むしろ石炭のほうがと思っております。備蓄が大体私どものほうとしては一カ月半くらいほんとうはほしいわけでございます。何といっても遠隔の地から来るわけでございますが、ただいまのところ一・二カ月から三・四半期には一カ月分に減り、四・四半期には〇・八カ月分くらいになっておるというのが実情でございます。
  70. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど国内原料炭価格の問題について、海外原料炭価格に千四百五十円までを限度として土積みして引き取るということを言われましたですね。千四百五十円というこの数字はどういうふうにしてはじき出したのか。それでまた、従来は国内原料炭より海外原料炭が安かったわけですね。そこで大体二千円くらい差があったわけです。いま海外原料炭が安いから国内原料炭に千四百五十円上積みしても、それでもまあまあとんとんか、それ以下になるということで考えられたのではなかろうかというふうに私考えるのですが、しかし、いまいろいろ話がありましたように、いずれにしても海外からの輸入炭もこれが上がっていくというような場合に、逆転して国内原料炭より海外原料炭が上がっても、それでもなおかつ従来どおり海外原料炭に千四百五十円を上積みして買い取るというふうに理解してよろしいか、確認してよろしいか、その点ひとつ明らかにしてください。
  71. 稲山嘉寛

    稲山参考人 千四百五十円というのは、通産省あるいは石炭審議会その他いろいろ検討をいたしまして、当時石炭コストをはじき出しました。それでわれわれが買えれば、それは問題ないわけでございますが、それでは買えないということでございます。それでわれわれは、やはり合理性を追求する立場上、外国の品物と同じでないと困るというのが普通の主張でございますが、しかしそれでは、国内資源の保護という立場に立つわれわれどもから見るとそうはいかない。そこで、どういう程度までならわれわれはがまんしていかなければいけないだろうかということを、通産省の方々とみな、石炭業界の原価から、それから政府の補助がどのくらい来るだろうかということをはじき出した結果、私のほうに千四百五十円、その当時の豪州炭の弱粘よりも、それぐらいの値段までがまんして買ってくれぬかという計算がそこでできたわけでございまして、そのときの状況を今後続けましょうという約束をいたしたわけでございます。その計算が千四百五十円になっておるわけで、私どもはそれを約束しておりますから、その約束は守らなければいけないと考えておるわけでございます。  ところが、いま御指摘がありましたように、非常に値が上がってきた。それで国内炭は、コストはそれほど上がらない。そうすると、国内炭を非常に保護し過ぎるじゃないかというような事態がかりに起きる場合も想像しておかなければいけないと思いまして、先ほどその範囲内においてと申し上げたわけなんでございます。ところが、石炭業界実情をちらちらお聞きしてみますと、それではまだだめだ、もっとコストを上げなきゃならぬ状態になるんだという感触であちらのほうはおられるようでございます。そこの間はこれから話し合ってみないとわかりませんし、また豪州炭が一体どのくらいにきまるかということが問題でございますので、その点はお互いに固執することなく、業界助け合って、約束は約束だということだけではこれまた私どもとしてもいけないんじゃないかとは考えておりますけれども、これは業界全体の問題でございますので、御答弁はいたしかねますので、あしからず御了承願います。
  72. 小宮武喜

    ○小宮委員 きょうの参考人意見は、われわれが政府にいろいろな質問をし、政府の姿勢を追及する場合のあくまで参考意見でございますから、これ以上は質問やめますけれども、特に稲山参考人石炭鉱業審議会の会長さんでもあるということで、いずれこういった問題については、当委員会にまた参考人として来ていただいていろいろ論議を深めるときがあろうかと思いますので、これくらいにしますけれども、もう一つ先ほどの意見の中で、これはちょっと私の理解が間違っておるかどうか知りませんが、国内原料炭確保立場から、石炭企業に対し融資をしておられるというふうに私お聞きしたんですが、これは事実ですか。事実であれば、どれくらい融資しておられるのか。それで、どういうふうな性格のもとに融資しておられるのか。あくまで運転資金か。またいろいろあると思いますけれども、その点ひとつ御参考までに聞いておきたいと思います。
  73. 稲山嘉寛

    稲山参考人 炭鉱は、いままで非常に困難な金融状態になっておりますので、私どもへ、とにかく将来の石炭の前貸しとしまして前代金でくれないか、そして金をやらないと暮れが越せないというお話がありますので、先渡し金融ということでやっております。
  74. 小宮武喜

    ○小宮委員 それならわかります。  それから、田口参考人にちょっとお聞きしますが、先ほどから一般炭輸入の問題について田口参考人も、一般炭輸入はやむを得ないとか相当量一般炭輸入しなければいかぬとか言っておられたんですが、その一般炭輸入の問題について、需要の拡大に伴って、国内生産量が追いつかないから、一般炭海外から輸入しようと言われる意味か。一般炭は絶対輸入しちゃいかぬという声も一部にはあるようですけれども、先ほどから参考人が言われたように、ハイサルファを使う場合に、どうしても海外から輸入をしてそして薄めていくという、その分については私はやはり必要だと思うんですよ。そういうような意味で、いま相当量海外炭輸入しなければいかぬというのは、需要の拡大とそういったサルファを薄めるための両方を含めて、輸入をしなければいかぬというように考えておられるのか。そういうようなことを言っておられるのか。  それからもう一つは、そのサルファを薄める場合に、海外炭を入れる場合の薄める率の問題、国内炭海外炭とまぜてやるわけでしょうけれども、そんな場合に薄める比率はどういうようになるのか。たとえば、こちらのほうの五に対しては向こうを一とか二とか、いろいろ率はあると思うんですが、そういうような比率の問題はどうなるのか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  75. 田口良明

    田口参考人 海外一般炭輸入することにつきまして、国内炭のハイサルファの炭を薄めるために輸入するんだということは、これがやはり本来のあれでございます。なお、国内炭をもってしては需要に追いつかない、国内炭は極力増産するがどうしても足りない、いわゆる安定供給見地から、足りない分に限って足りない量を入れるという、二つの理由であることには間違いございません。  さて、それならば、ハイサルファの炭に混炭する場合に、どういう比率で入れるんだというお話でございます。これは相手のある、ハイサルファの炭のサルファの含有量のいかんによってきまるわけでございまして、たとえて申しますると、三池の炭がハイサルファの炭であるということで、サルファの含有が二・五だというようなことだといたしますると、二・五の三池の炭にたとえば〇・五の低サルファの石炭輸入した場合、それとのまぜ方は決して半々じゃなしに、そのときの含有が混炭によって一%になるかあるいは平均して一・二%になるか、それは今度その受ける発電所の公害規制立場から、特に公害規制はその当該府県の条例や何かでまちまちでございますけれども、まあその発電所の受ける石炭はこの程度、このサルファの含有程度以下にすべきであるというような通達がありますと、それに合わせて輸入炭をもって混炭しなければならない、こういうことになります。それで、なおそれについては揚げ地混炭がいいのか積み地混炭がいいのか、そういうこともございましょうけれども、大体のところ申し上げますと、以上のとおりでございます。
  76. 小宮武喜

    ○小宮委員 これで終わります。
  77. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  午後一時五十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後一時五十六分開議
  78. 田代文久

    田代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を続けます。  ただいま参考人として電源開発株式会社総裁大堀弘君、電気事業連合会会長加藤乙三郎君及びセメント協会専務理事黒沢肇君の御出席をいただいております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本件につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますけれども、時間等の都合もございますので、御意見開陳の時間はお一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対して質疑をいただきたいと存じます。  まず大堀参考人にお願いいたします。
  79. 大堀弘

    ○大堀参考人 御指名をいただきました電源開発株式会社総裁の大堀でございます。  かねて電力用炭の問題等につきましては、当委員会の諸先生方には格別の御理解、御支援を賜わっておりまして、この席をおかりしまして厚くお礼を申し上げます。  本席には電気事業連合会の加藤会長も御出席になっておりますので、私からは、私ども会社が建設をし運営いたしております石炭火力発電所の現状と今後の石炭引き取り量の見通しにつきまして簡単に御報告申し上げまして、引き続きましてエネルギー問題の観点から、石炭のより積極的な利用策についての私見の一端を申し上げさせていただきたいと存じます。  御高承のとおり、当社の揚げ地石炭火力は、石炭政策の一環といたしまして建設したものでございまして、ちょうど十年前に着工いたしましたが、昭和四十二年から四十四年にかけまして合計で百二十八万キロワットの設備の運転を開始いたしました。それ以来、受電電力会社協力を得まして順調に稼働いたしております。私どもの電気は全部それぞれの地域の電力会社に売電をいたしておりますので、各電力会社の御協力を得まして順調に稼働いたしております。  また、これより先に、昭和三十八年以来低品位炭活用の火力といたしまして運転してまいりました若松火力発電所がございます。二台で十五万キロワットで小さいものでございますが、この揚げ地火力と若松火力を合わせまして本年三月までに累計約五百八十億キロワットアワーを今日まで発電してまいりまして、石炭の消費量としても累計約二千二百万トンに達しております。その間、公害規制との関係もございまして、若干の変動はございますが、年間約三百万トン程度石炭を消化して、わが国石炭の安定需要確保のため多少ともお役に立ってきたのではないかと存じております。  またさらに、今後の環境問題に対処いたしまして、昨年兵庫県の高砂の一号機に石炭対策特別会計よりの一部補助をいただきまして、排煙脱硫装置の設置に着手いたしましたが、他の発電所におきましても同様の対策を講じて、できるだけ国策に基づく石炭消費の確保につとめる所存でございます。  以上、当社の石炭火力の現状について申し上げましたが、さて、昨今のエネルギー事情からいたしまして、石炭の見直しということが取り上げられているわけでございますが、この際、石炭を増産して、燃料多様化をはかることはたいへん必要なことと考えます。  また、私どもの事業の性格からいっても、少しでも多く石炭の使用量をふやすためにこれまで以上に努力を傾注していきたいと考えております。しかしながら、実際には、石炭がより大量にかつスムーズに使われますためには、解決していかなければならない幾つかの問題点がございます。  このことで日ごろ私ども関心を持ち、かねてから関係の方々に申し上げております主要な点について二、三申し上げさせていただきたいと思います。  一つは、やはり石炭石油燃料に比べまして扱うのに手間のかかる燃料であるという点でございます。まず公害問題に関連しましてばいじんの問題、窒素酸化物それから硫黄酸化物、灰捨ての問題等につきまして、発電所の運転の上で日々たいへんな苦労が要るということでございます。もちろん、そのために地元の方々に御迷惑をかけないように十分の設備と対策を講じております。また、国の政策によるものとはいいましても、長期にわたって石炭を大量に使用することにつきましては、地元の御理解と御協力を得て初めて可能なことでございます。幸いに今日まで、私どもと地元との関係では、常に誠心誠意をもって意思疎通をはかってまいっておりまして、おかげさまで支障なく進んでまいっておる次第でございます。しかしその間、地元の行政担当機関の御苦労もさることながら、私どもの事業上の苦心もかなりたいへんなものでございます。この点は御理解をいただきたいと存じます。  この間、設備改良の点とかあるいは環境条件、供給炭の性状等の変化に対応して、たとえば煙突の立てかえでありますとか、排煙脱硫装置の設置でありますとか、いろいろ改善をはかってまいりましたのは御承知のとおりでございます。  次の第二の問題としまして、いま述べました公害対策上のプラントの設備と石炭の受け入れ、さらには燃焼、灰捨てのために、ユーザー側石油燃料に比して相当割り高な設備費がかかり、これが資本費として発電コストに影響する度合いは相当大きなものとなっております。したがいまして、昨今石油燃料価格高騰いたしましたために、いわゆるカロリー当たりの価格ベースで石炭価格優位性が論議されておりますが、仕上がりの電気のコストに関連しまして、資本費の影響もあわせて総合的に把握していかないと、発電用燃料としての評価が定まりにくい点がございます。したがいまして、この点から燃料としての経済性がやはり長期安定的に確保されることが望ましい。また、このことが石炭長期にわたって安定的に使用する結果にもなるのじゃないか、私はかように考えております。  以上が石炭の性状に由来する問題でございますが、次に、供給量の安定確保をどうするかということでございます。  生産側としては、炭層の条件とかあるいは労働力確保の点でなかなかむずかしい点がおありだと存じますが、現実に供給量が不安定でございますと、日々の運転に差しつかえますし、まして新規の発電所を建設しようというための開発投資につきましては、なかなかコンセンサスが得がたい実情にございます。何よりも電気事業者側としては、建設の時期、規模を決断するのにたいへんに苦労いたしておるわけでございます。幸いに今日まで、冒頭に御報告申し上げましたとおり、私ども関係につきましては、ほぼ当初の目標どおり石炭をたくことができておりますが、今日の石炭見直しに関連いたしまして、価格とともに今後一そうこの量の問題が重要な問題となると考えますので、よろしく対策についてお願い申し上げたいと思います。  ちょっとここで、これからの石炭を発電所に使う問題につきましての私見と申しますか、私が関係方面に意見を具申しておる段階でございまして、そういう意味でまだ具体的な方向が出ておるわけではございませんが、その考え方を率直に申し上げまして御批判をいただきたいと思う次第でございます。  昨今の石油問題に端を発しまして、エネルギー事情がこういうふうな状態になっておりますので、何か石油にかわるエネルギー資源はないか、それも比較的手近に求められて、かつかなり量的にまとまったものが得られないかということを私は考えたのでございますが、もちろん今後の問題としては原子力発電が発電の本命になると私は思っておりますが、ここ十年なり十五年なり、少なくとも当面の対策としてある程度この石炭資源を活用していく必要があるんじゃないかというふうに考えるわけでございます。その場合に、石炭資源世界的な賦存状況は何といっても石油に比べてはるかに大きい、また、地域的にも非常に広いということがあるんじゃなかろうか。ただ、国内炭の増産をはかることはもちろん第一でございますけれども、諸般の事情から見て大幅な増産ということは必ずしも容易ではないというふうに伺っておりますし、私もそうではなかろうかと思うのでございます。日本の場合は、アメリカのような恵まれた石炭資源国内にあるわけではございませんので、そこはどうしても行き方が違ってくると思うのでございますが、エネルギー資源という見地から石炭を考える場合は、やはり輸入炭をも含めて広く石炭の見直しをする必要があるんじゃなかろうか。これは私の考えでございますから、総論といいますか、そこで私が具体的に多少考えた点は、まず石炭の受け入れ体制をつくる意味で、石炭専焼火力発電所を建設する、ここで、まず国内炭は優先的に引き受ける、その上に立って、外国炭の条件のよいものを思い切って輸入をしていく、混炭をしてたいていくという考え方でございます。このことは、低硫黄の、硫黄分の低い外国炭を混炭いたしますと、たとえば九州地方のような硫黄分の非常に高い石炭につきましては、結果において国内炭も混炭をしますから、よけいたき得る結果になるというふうに考えます。  第三点といいますか、そのあとで私どもユーザー立場からといいますか、発電所を運営する立場からいいますと、やはり人員の関係もございますし、発電コスト関係——これは電気料金にも影響する問題でございますから、発電コスト関係から見ましても、やはり建設する場合は、ある程度の規模のものをやらしていただきたい。あまり小さいものですと、非常にコストが上がったり、また人員がよけいかかって、非常に不経済なことになります。そういう意味で、ある程度やるからには、大規模なものをやらしていただきたいということが希望でございます。  輸入炭というものを考えました場合は、その辺のものをスポット買いすることは、はなはだ不適当であると私は思っております。ソースはいろいろございますけれども、いわば開発輸入といいますか、長期安定した調達方法をとるべきじゃないか。このためからいいましても、ある程度まとまった量のものを計画していかなければいけないのじゃないか、かように考えております。これらの外国炭導入ということにつきましては、あるいは国内炭に与える影響ということを御心配される向きもあるかと思いますが、この問題は、私どもは、今日まで揚げ地石炭火力で極力石炭をたくという方針で、あらゆる努力をしてまいっておりますが、この点は、当事者間の信頼感の問題であると同時に、また国の政策で保障する方法があるのじゃなかろうかというふうに私は考えておる次第でございます。これはたいへんかってな私見でございますが、ひとつ御批判をいただきたいと思うのでございます。  以上、述べましたほかに、今後石炭をより多く、クリーンな、しかも効率のよい燃料として長く使っていきますために、ガス化、液化の技術開発もぜひ軌道に乗せたいと考えております。ガス化につきましては、昭和四十九年度石炭政策に基づく予算にも計上されておりまして、私どももこれから実証炉の開発に、工業技術院等と協力をいたしまして、全力を傾注いたすつもりでございます。また液化につきましても、早い機会に実用化を目的として研究開発を進めたいと考えております。よろしく御協力、御指導をお願い申し上げます。  以上、私ども石炭に対して強い関心を持っておりますことから、忌憚のない意見を申し上げましたが、いろいろ御助言を賜わればしあわせでございます。  最後に、当社は国策会社といたしまして、その組織をあげて、国のエネルギー政策の一端をになってまいりたい所存でございますが、国におかれましても、今後のエネルギー政策における石炭の位置づけについて明確にしていただきますとともに、石炭需給長期的に安定させていただきますことにつきまして、格段の御配慮を賜わりたくお願い申し上げる次第でございます。  以上、種々申し上げましたが、私の陳述はこれで終わります。ありがとうございました。(拍手)
  80. 田代文久

    田代委員長 次に、加藤参考人にお願いいたします。
  81. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 ただいま御指名いただきました電気事業連合会会長加藤乙三郎でございます。まずもって、電力用炭の問題につきましては、かねがね本委員会の諸先生方に格別の御理解を賜わっておりますことに対しまして、厚くお礼を申し上げたいと存じます。  本日は、電気事業者の代表といたしまして、ただいま電源開発株式会社の大堀総裁も出席され、お話がございましたので、私からは、電気事業におきます石炭問題につきまして、九電力会社を代表いたしまして、考えを述べさしていただきたいと思います。  御高承のとおり、戦後わが国経済の驚異的な成長は、エネルギー需要の増大をもたらし、これに伴いまして、電力需要も飛躍的に伸びてまいりました。このため、電力業界といたしましては、電源の明暗にあらゆる努力を傾注してまいりましたが、電力需要の増加のテンポがきわめて早いため、比較的短期間に大容量の発電所の建設が必要となり、火力発電による電源開発を急ピッチで進めてまいりました結果、これらの発電所で使用いたします発電用の燃料も年々急増をいたしました。この間、エネルギーの流体化、すなわち固体燃料から液体燃料への転換が世界的な傾向として急速に進行するという大きな環境の変化に遭遇いたしましたが、われわれ電力業界といたしましては、このような情勢の中におきまして、公益事業の立場から、国の石炭政策に全面的に協力して、引き取りを続けてまいったのでございます。このことは、昭和四十年度以降、約十カ地点、容量にいたしまして百七十万キロワットにも及ぶ石炭火力発電所を建設し、一般炭炭量の約四〇%から六〇%程度引き取り、さらに数次にわたる価格値上げ要請に対しましても、業界といたしましては、でき得る限りの協力をさしていただいたかと存ずるのでございます。  しかしながら、ここ数年来、公害が大きい社会問題と相なりまして、硫黄酸化物、ばいじん、窒素酸化物等に関する規制が相次いで制定、強化されますとともに、地元の住民の方々の公害に対する意識も年々高まりまして、国で定められました以上のきびしい規制要請される場合が多くなり、石炭を引き取る上での環境も大きく変化してまいったのでございます。特に川崎であるとか、四日市であるとか、多奈川等で見られまするように、過密地域に立地いたします石炭火力発電所におきましては、石炭の使用を全く忌避する地元の要請も出てまいりまして、この結果、これまでのような政策協力による石炭引き取りには遺憾ながら限界が生じ、最近では、年々その引き取り量を減少せざるを得ないような実情に相なっておるのであります。  このように石炭が忌避せられます理由といたしましては、九州炭のように硫黄分の高いことによる硫黄酸化物の問題と、あるいは九州炭、北海道炭とを問わずばいじんの問題があげられまするが、最近ではこれに加えまして窒素酸化物の問題も出てまいりました。このために、電力業界といたしましては、これらの対策につきましてあらゆる角度から鋭意検討を重ねてまいりましたが、硫黄酸化物対策としましての大規模排煙脱硫装置につきましては、現在二百二十万キロワット相当の湿式排煙脱硫装置をはじめとし、六基七百三十万キロワット相当のものが稼動中でございまするが、さらに昭和五十二年ごろまでには、約一千万キロ相当の設備を計画中でございます。またこれら原重油用排煙脱硫装置の技術は、これは石炭火力用にも適用可能という見通しを徐々につけてまいりましたので、今後の新設石炭火力につきましては、必要があれば積極的にこれを取り入れてまいりたいと考えておるわけでございます。しかしながら、過密地域に立地いたしますこの既設の発電所につきましては、その設置スペースといいますか、余裕場所がない場合がございまして、この面からネックもありまして、結局石炭に低硫黄重油を混焼することによりまして、排出硫黄分を引き下げるというような対策にたよらざるを得ない状態でもございます。  一方ばいじんの問題につきましては、現段階におきます高能率の集じん機を設置いたしましても、一〇〇%の集じんは困難でございまして、どうしてもその幾分かが煙突から排出されます。もちろんその排出量は規制値を相当下回っておりまするが、このほんのわずかなばいじんが石炭の場合には白い煙となって見えると同時に、比重の高いばいじんの一部は発電所周辺に落下いたしますので、住民の方々からきらわれ、結局、硫黄分の低い石炭でも、過密地域におきましては、その引き取りを減少せざるを得なかったというのが実情でございます。  また、最近問題になってまいりました窒素酸化物につきましては、石炭の場合は、固体であるため燃焼性が劣り、多量の燃焼用空気を必要とすることに加えまして、石炭中の窒素分より転換し発生するものもございまして、若干原重油に比較しまして窒素酸化物の発生が多いというのが特徴でございます。このため、電気事業といたしましては、二段燃焼法等の技術開発を進める一方、排脱と同時に脱硝も行なえる新方式の技術開発を進めており、四十九年度よりパイロットプラントの建設を開始することにいたしておりますが、これらの技術が完成した暁には、石炭石油燃料に比較して遜色のない燃料になると申すことができるかと考えておるのでございます。  以上、これまでのわれわれ電力業界石炭引き取りに関します経緯と実情につきまして御説明いたしましたが、次に、電力業界といたしましての今後の石炭に関する考え方を若干申し述べさせていただきたいと思います。  御高承のように、今回のアラブ産油国による石油の量及び価格両面にわたる攻勢は、世界各国とりわけわが国のように一次エネルギーの七三%強を石油でまかない、かつ石油の九九%以上を海外からの輸入に依存いたしております国にとりまして、まことに深刻な打撃を与えましたが、発電電力量の七〇%以上を石油燃料に依存しております電力業界といたしましても、非常に苦しい立場に置かれております。このため、電力の安定供給につとめなければならない電力事業といたしましては、今後この石油危機の教訓を生かしまして、燃料のクリーン化を前提とした上で、これまで以上に燃料源の多様化を強力に推進することが急務と考えております。  したがいまして、石炭につきましても、この観点から見直す所存でございますが、わが国における唯一の貴重な国産エネルギーであることを十分に認識いたしまして、今後積極的にその活用をはかっていかなければならないものと考えております。  しかしながらその場合でも、先に申し述べましたとおり、揚げ地の過密地域におきましては石炭が忌避されておる現状でありまするので、当面は北海道等積み地におきまして石炭火力発電所を新設するなどの方策が中心になろうかと考えられますが、過密地域以外での揚げ地におきましても、できる限り低硫黄重油との混焼によりまして、石炭火力発電所の利用率を高めていきたいと考えております。  もちろん、以上の計画を実施するにつきましては、発電用燃料のもう一つ要請でありますクリーン化についても満足させるものでなくてはなりませんので、排煙脱硫装置をはじめといたしまして、最高の公害防除技術を駆使いたしまして、地元の方々の十分な御理解を得るよう、われわれとしましてはでき得る限りの努力を払う所存でございます。  また、これは若干将来の計画になりますが、現在世界的に技術開発努力がなされており、またいま総裁からお話ございましたように、石炭の液化、ガス化が完成いたしますれば、これは完全なクリーンエネルギーでありますから、全国いずれの地域においても発電所の建設が可能に相なろうかと考えております。  最後に、政府に対しての電力業界の要望を若干申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、電力業界といたしまして今後の燃料計画を立案いたします場合、長期にわたる燃料確保見通しが絶対に必要であろうかと存ずるのでございます。特に発電所の新設計画には、発電所というものの長い将来を考えまして、それに必要な燃料確保が重大な問題と相なるのでございます。したがいまして、わが国における石炭産業長期的な位置づけを明確にしていただくとともに、それに対する政府の御助成策等も早期に確立していただきたいことでございます。  第二に、今後とも電力各社に対します石炭供給確保につきましてよろしくお願いをいたしたいと存ずるのでございます。特に、石炭のウエートの高い北海道電力とかあるいは電源開発株式会社につきましては、特段の御配慮を賜わりたく存じます。  第三に、今後国内炭供給に不足がもし生じた場合、海外炭輸入がスムーズに行なえるような施策をとっていただきたいことでございます。  次に、第四番としまして、短期的に石炭供給力を補う意味で効果が期待できまする露頭炭の確保につきまして、国有鉱区の開放とか道有林、国有林の払い下げが容易になりますよう、これまた早急に関係方面の御調整をしていただきたいのでございます。  以上、種々申し述べましたが、電力業界が直面しております現状を十分御賢察の上、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
  82. 田代文久

    田代委員長 次に黒沢参考人にお願いいたします。
  83. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 私、セメント協会の黒沢でございます。本日、実は会長が出ましてじきじき申し上げる予定でございましたが、よんどころない事情がございまして、私がかわって申し上げますので、御無礼あしからずお許しを願いたいと存ずる次第でございます。  セメント工業は御案内のように、いわゆるエネルギー多消費型産業でございまして、一次エネルギーといたしましては、燃料といたしまして現在はほとんど重油でございます。二次エネルギーといたしまして電力を相当規模で消費する産業でございます。石油危機にあたりまして、この際、省エネルギー——省エネルギーは私ども業界といたしましてはいまに始まったことではございませんが、特に代替燃料の問題について、石炭というものを重油のかわりに代替する余地があるかどうかという点が御関心の的であるようでございますので、その点に焦点を合わせまして業界実情を率直に申し上げまして、御参考に供せればと存ずる次第でございます。  セメント工業もかつて、これは十年ぐらい前まででございますが、御承知の方もあろうかと思いますが、燃料といたしましてはほとんど石炭によっておったことは事実でございます。お手元に御参考までに資料も差し上げてございますが、この表‐1というものでございますが、セメントの生産高は非常に最近伸びておりまして たとえば昭和三十年度のセメント年生産高は一千百万トン程度でございましたが、四十八年に至りますとこれが七千八百万トンということに、実に七倍以上の伸びでございます。それに対しまして、燃料といたしましては、昭和三十年度は石炭が二百九十万トン程度のものを使用いたしておりました。このほうは非常に落ちまして、最近の四十八年ではわずか二十一万トンということで十分の一に落ちてございます。それに比べまして重油のほうは、三十年が十一万キロリットルであったわけでございますが、四十八年では八百十八万ということに非常にこれはふえてございます。ほとんどが燃料といたしましては重油を用いてございます。ごく一部の例外の工場、これは産炭地に立地いたします工場でございますが、わずかに石炭焼成を行なっておるのが現状でございます。  しかし、いろいろ石油危機もございますし、先ほどもお話が出てございましたように国策に沿うというふうな意味におきましても、この際石炭の見直しという余地があるかという点でございますが、業界といたしましてもさような趣旨におきましてこの問題につきましてはいろいろ前向きに検討はいたしてございます。一部の会社ではある程度具体的な計画も持っておるようでございますが、一般的に申し上げますと、やはりこれは非常に問題が多うございまして、なかなか簡単にはまいらないというのが実情でございます。  その理由につきまして申し上げますと、まず第一に生産設備の問題でございますが、現在はほとんど石炭焼成の設備がなくなってございます。あるいはほかのほうに転用してしまったというものが多いわけでございます。石炭焼成のためには石炭を砕きます石炭ミルが必要でございます。また、乾燥いたしますために石炭乾燥器というようなものも要ります。そういうものはすでに撤去されたりあるいは他へ転用済みのものが多いわけでございます。また、貯炭場と申しますのも非常にスペースが要るものでございます。そういうものも現在はすでになくなっているところが多いわけでございます。また、セメントを焼成いたします心臓部とも申します装置が、キルン、回転がまでございますが、その様式が非常に変わってきてございます。大型化しまして、また様式も違ってきてございます。最近の様式はSP式と申しまして、Sはサスペンション、Pはプレヒーターでございますが、その様式によりますと、非常に構造が複雑化してございまして、石炭によりますと、熱効率からまいりまして、特にサルファの問題がございまして、コーチンが非常にできてハンドリングがうまくいかないというふうな技術的な問題も出てきてございます。これは昔はやったではないかとおっしゃられる方もおありかと存じますが、昔といまとは設備が全く違ってきておるわけでございます。また、生産規模が先ほど申しましたように非常にこれはけたはずれで、けた違いに大きくなってございます。したがいまして、かりにその全燃料石炭に再転換いたしますと、物量的にもこれは一千何百万トンというふうなものになってしまいまして、貯蔵の問題あるいは輸送の問題、当然それに伴います貯蔵場のクレーンその他重機類の整備ということもございます。また、次にその労務面がございます。労働面でございますが、この点からまいりましても、やはり早い話がクレーン関係で三直交代要員がほかに必要になるというふなデメリットが出てまいります。また、電力の問題につきましても、先ほ申しましたように、石炭ミルのためには別途にまた電力が消費されるというふうなことが出てまいるわけでございます。  そのようなデメリットと申しますか、別のデメリットがございますので、確かに最近重油が値上がりをいたしまして、現在は大体、現在と申しますか、在来価格が、これは平均でございますが、実勢価格、これは十二月ごろの実勢価格でございますが、C重油一万一千八百円くらいのものは大体七千六百円というのが引き上げ限度になってございます。六五%でございますが。そういたしますと、それを足しますと一万九千四百円、約二万円というキロリットルの単価が出てまいります。これは確かに非常に大きな値上がりでございますが、単価の面では、カロリー計算をいたしまして、それに見合うものであれば石炭も採算がとれるのではないかというふうなお考えもおありかと存じますが、まあカロリー二円というふうな単価を想定いたしまして、重油が一万カロリーでございます、まあ二万円のところが、石炭がかりに七千カロリーであれば二、七の一万四千円で合うかというふうな考えも一部は出てまいるかと存じますが、実情といたしましては、先ほど申しましたような非常に新たな設備投資あるいは労務面、輸送面、いろいろなデメリットが出てまいりますので、いまのような採算ではとうていまいらないというのが実情でございまして、一万四千円はおろか一万円以下、場合によりましては一万四千円のその二分の一でございますか、七千円程度でなくてはだめか、まあこの辺はだいぶ大ざっぱな話でございますが、さようなことを申す専門家もおりますが、専門家と申しますか担当者もおりますが、さようなのがいつわらざる実情でございます。  さらに、カロリーの問題にいたしましても、一般炭の低品位でございますと、先ほど申しましたように非常に物量的にも問題でございますし、また、灰分という点からまいりましても、これはセメントの品質、強度の問題に影響を及ぼしまして、強度が出ないというふうな問題も起こってまいります。確かに戦時中は非常に低品位のものでセメントをつくった経験もございます。戦時中あるいは戦後ございますが、しかし現在は非常に品質がよくなっております。いろいろ建築関係も進んでございますので、強度を落とすというふうにはまいらないのが実情でございますが、さような品質の面からまいりましても、なかなかこれはむずかしいというふうな問題点が非常にあるわけでございます。  さようなことで、これはいろいろ前向きに検討はいたしておるわけでございますが、非常に問題が多いということを御報告申し上げまして、これは御参考と申しまするよりも、いろいろ御配慮にあずかれば幸いと考える次第でございます。  簡単でございますが、実情の一端を申し上げまして、御参考に供する次第でございます。(拍手)
  84. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  85. 田代文久

    田代委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  86. 中村重光

    ○中村(重)委員 大堀参考人にお尋ねいたしますが、あなたのほうは当然とは申しながら、石炭の使用に創意くふうをこらして努力をしておられるということについては敬意を表するものであります。  先般新聞で読んだのですが、長崎県の松島に火力発電所の建設を行なうということで現地におもむかれる、あるいはまた地元の長崎県知事と話し合いをするといったようなことがなされております。環境調査をしなければはっきりしたことはわからないでしょうが、地質、地形といったような点から、その可能性についてはどのようにお考えになっておられるか、またどの程度石炭をお使いになるのか、地元との話し合いを進めておる内容を含めてお聞かせをいただきたい。
  87. 大堀弘

    ○大堀参考人 中村先生からの御質問の長崎県の松島地点につきましてお答え申し上げますが、先ほどちょっと申し上げました、新しく石炭専焼火力発電所をつくって国内炭を優先引き取りをし、あわせて輸入炭も加えまして、今日の石油対策といいますか、石油不足に対する対策として私ども考えております地点の一つとして、実は長崎県の松島炭鉱あとの地点が諸般の事情から見て適当な地点じゃなかろうかというふうに考えまして、先般長崎県知事に私はお目にかかりました。  それで、やはり環境調査をまずやらしていただくことが先決でございますので、環境調査をぜひやらしていただきたいというお願いを申し上げてございます。それに対して快くお引き受けいただいたわけでございますが、その際、いろいろ話し合いございましたが、私といたしましては、地元の御支援がいただけるならば積極的に前向きに進めていきたいということは申し上げました。地点としましては、これから調査をさせていただくわけでございますので、いま概略の見当しかついておりません。あまり責任のある点まで申し上げかねるのでございますが、港湾の状況、灰捨て場のことあるいは揚水の問題、その他大きな当面の問題から考えまして、やれば百万キロ程度のものはやれるのじゃなかろうか。もう少しできればけっこうでございますが、まず百万キロくらいのところが適当じゃなかろうかというふうな感じをいたしております。まだこれはこれから調べる問題でありますが……。
  88. 中村重光

    ○中村(重)委員 加藤参考人に希望として申し上げて御見解を伺いたいのですが、北海道で石炭専焼の火力発電所を建設をする、当初電発が調査等を進めておった。あとで北海道電力が乗り出して、結局落ちつくところ北海道電力になった。長崎県の場合でも、いま大堀参考人のお答えによっても明らかのように、電発が調査をやって、そこでこれはおもしろいなということになって、九州電力がまた乗り出すということになってくると、いたずらに競争みたいになって混乱をするということになる。そのことがひいては建設そのものをおくらせるということになっては私はいけないと思う。したがって、あなたは連合会の会長でいらっしゃるわけだから、そうした混乱が起こらないように十分配慮をされる必要があるのじゃないかと思いますが、御見解いかがでしょう。
  89. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 お答え申し上げます。  実はその批判がないでもないというふうに考えまして、先般てまえども、電源開発さんを入れまして、九電力におきまして中央電力協議会というものをつくりまして、少なくとも起こした電力の融通については世間の批判にこたえたい、かように考えております。また今度は開発につきましても、より一そう電発さんを入れまして十電力におきましてその批判のないようにいたしたい、かように存じまして、ここ二月ほど前かと存じますが、電源開発推進本部というものをつくりまして、そこでいま国の要請もございます、あるいは国策として取り上げております発電の多様化、すなわち火力発電あるいは地熱発電あるいは水力発電等々、電源開発さえも一緒になりまして、国としてわれわれとしまして、最終的にはお客さまに最も便利な、御期待に沿うような発電方式をとりたい、かように存じましてそういう会合を持ちました。その会合の場で私どもはいまの問題は解決をいたさなければならないし、またいたすつもりでつくりましたから、その御心配は私はないように努力いたしたい、かように存じます。
  90. 中村重光

    ○中村(重)委員 よく理解できます。  次に、大堀参考人。あなたのほうは石炭専焼火力発電、大体五台だろうと思うのですが、別に一割から一割五分程度石油だろうと思うのですが、混焼分があるわけですね。これをこうした石油事情でもあるわけです、あなたのほうは石炭について精力的に取り組んでおられるわけですから、機械を動かすのに石油を一滴も使わないということになりません、若干の石油は使わなければならないのでしょうが、できるだけ石炭専焼に持っていく、こういうことにする必要があるのではないかと思いますが、考え方はいかがでしょう。
  91. 大堀弘

    ○大堀参考人 ただいま中村先生御指摘のとおり、私ども専焼でございますので本来大体五%ぐらいスタート、ストップのときに油を使うという程度で最初やったわけでございますが、やはり公害問題上、一つは横浜の磯子の地点、一つは兵庫県の高砂市、それからもう一基は広島県の竹原でございます、竹原を除きましてはかなり町の中に発電所がございますので、やはり公害問題がたいへんむずかしい問題でございまして、市当局と数次にわたってお話し合いをしまして、一割五分程度まででございますけれども 多少上質の油をまぜましてたいております。現在排煙脱硫装置を先ほど申し上げましたように高砂においては着工いたしておりますし、その他の地点も逐次やるつもりでおります。これができますと約一割ぐらい石炭をふやしてたくことができる、かように考えます。現在正確に申しますと、大体三百万トンと申し上げましたが、四十八年度、四十九年度は二百八十万トンぐらいまで石炭が下がっております、前は三百万トン以上たいておったのですが。排煙脱硫装置をつけますと二百八十万トンが三百十五万トンぐらいまで石炭をたくことができると思います。いまより一割くらいよけい石炭がたけるだろう、かように考えております。
  92. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの公害の問題ですが、石炭石油と比較すると、公害対策という面について不利な面がある。しかし、ばいじんであるとかあるいは炭じんというものは排煙脱硫装置でもってこれを克服することが可能なんです。それからNOxですね、これも技術が非常に進歩いたしておりますから克服することは私は不可能ではないと思う。この点の見通しについてはいかがでしょう。
  93. 大堀弘

    ○大堀参考人 排煙脱硫のほうは先ほど申し上げましたように、もう具体的に技術が完成していますから間違いなくできるわけでございますが、NOx窒素酸化物につきましては、率直に申し上げまして、現段階では実用的につけるものはございません。私どもまだ完全にこれはできてないと思っておりますが、やはり日本技術進歩といいますか、これをやるとなれば、かなり速い速度で進歩しておりますから、私は近い将来技術ができると思います。できるようになりますれば、私どもはもちろんこれを対策として加えていきたいと思っておりますが、現状では、率直に申し上げますと、まだ技術がございませんので、この点は、たいへんきびしく対策の基準をきめられますと、実は石炭を非常にたきづらくなるのが現状でございます。  それからちょっと、排煙脱硫をつけましてさらに二百八十万トンを三百十五万トンくらいたき増しできると申し上げましたが、かりにつけないという場合をとりますと、やはり現在の硫黄酸化物の基準が数年後にかなりきつくなる、いまの四分の一ぐらいに強化されるのじゃないかといわれておりますが、そういったことになりますと、石炭はやはり相当たき量を減らさざるを得ないことになりますので、私どもはそうならぬように排脱を取りつけまして、むしろたき増しをするようにしたいという考え方でございます。つけ加えて申し上げます。
  94. 中村重光

    ○中村(重)委員 加藤参考人と黒沢参考人にお伺いをいたしますが、先ほど大堀参考人がお述べになりました、燃料長期安定的に使われるようにしなければならない、そのためには供給の安定というものが重要である、まさにそのとおりであると思います。したがって供給の安定をはかるというために、供給体制をいまのような体制ではなくて、いろいろと先ほど来御意見も出たのですが、午前中の参考人からも体制の問題含めて御意見を伺ったわけですが、その体制はどうあるべきかという点ですね、それから価格の問題、公害の問題等を含めていろいろお考え方もございましょうから、それぞれお聞かせをいただきたいと思います。
  95. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 御案内のとおり、てまえども供給の安定というところが私ども事業の生命、使命でございます。したがって何が何でも需要に応ぜなければならないというのが私どもの一大使命でございます。したがいまして、発電所の燃料につきましても、先ほど申しましたように、安定供給ということをぜひ私たちといたしましては念願するのでございます。ただ燃料につきまして、これも先ほど申しましたように、多様化日本としては絶対に必要である、その意味においても石炭をもう一度見直さなければならない、その見直す場合に長期な安定供給ということを前提にいたしたい。長期の安定を見る限りにおきまして、私はいわゆる燃料多様化、いわゆる石炭というものも大きく取り上げていかなければならない、かように存ずるのであります。  それからもう一つ、実は先ほど排煙脱硫装置を七百三十万と私申し上げたかと思いますが、これは七十三万キロでございまして、五十二年ごろにはそれを一千万キロぐらいにいたしたい、かように存じます。その点、私の言い間違いを訂正させていただきます。
  96. 中村重光

    ○中村(重)委員 供給体制の問題についてどうあるべきか、私の意見を含めていろいろ御意見を伺いたいのですが、時間がございませんから省略をさせていただきます。  最後に、加藤参考人に伺いますが、電力用炭販売株式会社というのが御承知のとおりあるわけです。これは趣旨に沿うような運営がなされているか。現実には売るほうと買うほうの直接取引、単にこの会社は形式的な機関になっているのではないかというような感じもいたします。ですから、この会社のあるべき姿、どうあるべきかという問題を含めて御見解をひとつ伺いたい。
  97. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 石炭といえども一つの商品かと私思います。やはり商品である以上は、買い手と売り手それぞれの談合といいますか、話し合いの上できめさせていただくのが筋かと私は思いますが、しかし、いましばらくは電力用炭の会社が存在をするのもやむを得ないと思います。  それから、われわれは将来石炭火力を建設する上であくまで国内産炭を中心といたしたいとは思いまするが、しかし外国産炭も購入しなければならないというような場合、いまの石炭株式会社等の問題があるいは話題に出るかと思います。私は、その場合は、われわれ使用者あるいはまた学識経験者あるいはその他の権威あるお方々にこの点十分御検討いただいた上におきまして、外国産炭の購入方法は御検討をいただきたい、かように存じます。
  98. 田代文久

  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電力用炭の関係でまず電気事業庫合会の加藤さんに質問いたしたいと思います。  何と申しましても石炭需要の大宗は鉄鋼と電力であります。今日のようなエネルギー危機、なかんずく急激な石炭の危機状態を招いたのは、私は率直に言いますと、電力業界にも大半の責任があるんじゃないかと実は思うわけです。ことしの正月の日経新聞には、少なくとも五千万トンの石炭があったら今日の電力業界はあんなにあわてなくともよかったのにという財界の長老の意見が出ておりました。私どもはかつて、五千五百万トンか五千万トンかずいぶん議論をしたことをいま覚えております。ことに私は、最初の段階、すなわち第一次答申から第二次、第三次、第四次という段階においては、急激に終閉山が行なわれたのはやはり価格の問題ではなかったかと思うのであります。そうして第五次答申に至りますと、公害の問題もありましたでしょうが、電力業界ことに八電力から昭和五十年度における需要見込みがたった二百二十万トンだというのが出されました。そして全体の需要は千五百五十一万トンという数字が出ております。これはもう石炭業界にとっては決定的な問題であったわけです。率直に言いますと、北電以外はもうほとんど使わないんだというのですね。そこで、これからはもうだめだ、とても見込みがない、電気さんに見放されてどうするんだというので、さらに一そう終閉山を強めたと私は思うのです。そして今日、また石炭の見直しというお話ですが、そこで私は、電力業界はどういう反省をいままでのエネルギー政策について考えられておるか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
  100. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 ただいままで私どもがとってまいりました燃料の変転でございますが、これはいろいろの御批判は甘んじて受けますが、私としましては、いましばらく、ここ五年とか十年たって初めて間違っておったかどうかという正しい判断ができるかと思います。  それから、ただいまお話がございました五十年度、あの少量でございます。これはわれわれ業界としましては十分反省をいたしまして、いまの四百四十万トンは少なくとももう少し、四十九年度からでも物理的にはあるいは九十万トンとかふえるだろうというお話でございますが、ただいまの規制が出るであろうということを想像いたしますと、これは四十万トンぐらいしかたけないかと思うのでございます。したがいまして、その事態におきまして、先ほど来のお話は、私ども業界としましてはもう一度考えさしていただきたい、かように思うのでございます。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 英国においても、一九七〇年ですが、七千六百万トンの電力用炭を使ってる。西ドイツも三千三百五十万トン使っておる。そして電力用燃料の中で大体七〇%は石炭を使っておるわけです。日本だけがなぜ九%であるのか、私はその点は理解に苦しむのです。公害問題も各国にあるはずです。じゃコストが高いかと見ますると、七二年において一ドル三百円で計算しますと、一般炭が、カロリーも若干違いますけれども、西ドイツで八千八百四十円、フランスで、カレーとローレンとで若干違いますけれども、それでも七千二百円から三百円、ところが日本では、御存じのように、まあ平均ですが、七二年度の場合は三千三百二十円で、揚げ地のほうは五千六百三十四円、積み地のほうが二千六百六十五円、こうなっておる。能率からいいましても、労働者の能率は各国に劣っていない。そういう中で、なぜ日本だけが電力用炭に九%しか使われていないか。これは私は国のエネルギー政策全体を見ましても非常に問題だと思うのです。ですから私は、電力の側がもう少し総合エネルギーの上に立って、ことに先ほどおっしゃいました国内の貴重な唯一のエネルギーであるとするならば、もう少しあたたかく扱ってもらいたかった、こういうように思うのです。  たとえば具体的な例でおそれ入りますけれども、関西電力の昭和二十九年度の料金の決定を見ましたときに、これは四千六百五十円で決定されております。もちろん油もぐっと下がりました。油が八千八百三十五円が五千九百円から五千八百円になりました。そして石炭も三千九百円ぐらいなんです。そのときに私どもは、少なくとも電気料金の算定に計算されてある程度は買ってもらいたい、こう言ったわけですけれども、それは全然無視されてきた。そういうところで、最初の時代には価格の面で倒産をした。そうして電力にも迷惑をかけたのは、各地に専焼の石炭火力発電所をつくっていただいたけれども供給ができなくて全部油に切りかえられた、これは石炭側の反省ですけれども、その根本はやはり炭価が安いから閉山をせざるを得なかった、こういう状態なんです。  ですから私は、こういう外国事情を見るときに、日本だけがなぜ石炭がかように電力において使用が少ないのか、こういう点で非常に疑問を持っているのですが、これをどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  102. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先生もすでに御高承かと思いますけれども、遺憾ながら日本の産炭地と消費地が離れておった。諸外国は産炭地、即そこで電力が消費せられておったということであるかと思います。遺憾ながら、日本は炭を出すところが、即それが電力の消費につながらなくて、私、名古屋の中部電力の者でございますが、四日市あたり、あの位置では、中部電力では炭をたくのか、船賃をたくのかわからないというようなことを言い合ったこともある時代もございます。一番の問題はそれです。  それから一方、逆にいまの油が、要するにタンカーレートが非常に下がった、そして日本は全部が海岸地で火力発電所、特に大容量の火力発電所ができた。これが日本をして、諸外国に比較しまして重油火力、いわゆる燃料火力に大きく転換せしめた要因ではないかと思うのでございます。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が申しました価格は、運賃を含めてお話をしているわけであります。でありますから、外国の場合も運賃を含めてお話をしておるわけですから、それは国全体として見ますると、あまりいい理由にならないと思う。ただ九電力の格差の問題からいいますと、お話のような問題点が出るのではないか、こういうように思うのです。  それから九電力の問題について、かつて水火力調整金というのがございました。そこで、油と石炭の調整金というものを創設しないと、今後日本国内エネルギーの石炭確保、あるいは外炭の場合もそうですが、なかなか困難ではないかと私は思うのです。幾らエネルギー供給源の多様性を言われても、これは率直に言いますと、中部や東京に石炭を使えと言っても、まず非常に無理じゃないか。そうするならば、産炭地に近い北海道や北九州に主として使えということになる。そうすると、現実に電気料金を見ますると、配電線の非常に足の長い北海道や九州は、現在でも電気料金が非常に高いわけです。そして、いまは油がぐっと上がりましたから、現時点においてはそういうことは比較的ないでしょうけれども、将来に向かってエネルギーを確保するということになると、どうしても産炭地のほうが電力料金が高くならざるを得ない。そうすると、油と石炭というと、いろいろな面においては、労務費の上昇もありましょうし、そうすると、ほんとうの意味で需要確保するということになると、石炭を使いやすい産炭地は石炭を使いなさい、そのかわり、その分の油はひとついわば過密化した地域、あるいは石炭から遠い地域が使いましょう。そうすると、何らかそこで調整をしてやらないと、私は不公平になるのじゃないかと思うのですね。もちろん国内炭と外炭の調整問題もありましょう。そういう制度を考えざるを得ないのではないか、こういうように思うのですが、その点はどういうようにお考えであるか。
  104. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 各社で実は石炭を使っておりましたときには、いま先生がおっしゃったような、何がしかの調整金を使って、何らか石炭火力のところにメリットのあるようにいたしましたが、つい最近になりまして、全然使わない会社も出ましたものですから、廃止をいたしました。しかし現段階におきましては、油と石油が全く逆になりまして、石炭火力のほうが、原価的には、いまの石炭価格でいけば、相当な開きが逆に出てきたかと思います。しかし、これは一時的の現象である。将来となれば、私どもとしましても、石炭と油というのは、やはりそれぞれのところにおきましてそれぞれの会社の独立採算制という線は守らなければなりませんが、ぎりぎりのところでその点は配慮していきたい、かように存じております。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 エネルギーがわが国に無限に入るという時代は過ぎたわけですから、一定量のエネルギーが輸入されるということになると、どうしても効率よく使うということが必要ではないか、こういうように思って、やはり油と石炭というものの将来における調整問題というものが考えられやしないか、こう思ったわけです。  そこで、現時点において、既存の発電所でどのぐらい石炭がたけるかということですね、これをお聞かせ願いたい。
  106. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 四十八年度では、四百五十万トンたいております。もちろんおもなものは北海道でございます。昭和四十九年度は、少なくとも四百九十万トン、一割増しは何らか地元の御了解も得ましてたきたい、かように存じております。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が、油と石炭の調整金の話をしたのは、実は電発に関係をするわけです。あなたのところは、やはり九電力に売らなければならぬわけですから、そうすると、石炭野焼の火力発電所をつくられても、要するに電気料金が、買い手側がそれでは買うことができないとおっしゃると、なかなかむずかしい。そこで私は、その意見を述べたのですが、電発総裁はどういうようにお考えであるか。これをあとからお聞かせ願いたい。  そこで、時間もございませんから、ひとつ電気事業連合会のほうは、石炭価格についていまどういうようなお気持ちであるか、これをお聞かせ願いたい。
  108. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 これはあらゆる物価が上がっております際でございまして、決して従来の据え置きというようなことは考えておりませんが、しかし、できるだけ、手前どもといたしましても、お話を聞きまして、そしていろいろの方の御意見もお聞きしました上で、妥当なところできめさしていただきたい、かように思っております。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはり政府石炭販売価格の基準額の算定のファクターがございます。他のエネルギーとの価格の比較、あるいはまた生産費の問題もあると思います。そういう状態で、これは早急にきめられるつもりですか、どうでしょうか、加藤参考人
  110. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 実はまだ正式に業界からのお話も聞いておりません。しかし、従来の石炭問題というのは、石炭需給審議会でございましたか、ちょっと私、はっきりした会の名称を失念いたしましたが、そういう方面でも十分御審議いただき、われわれとしましても、それに御意見も申し上げてきめさしていただきたい、かように思っております。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電発のほうは、さっき私が申しました石炭専焼火力について、九社にあなたのほうから供給する場合の調整問題は、どういうふうにお考えになっておりますか。
  112. 大堀弘

    ○大堀参考人 過去にやりました揚げ地火力の例を先に申し上げますと、先ほど申し上げた磯子と高砂と竹原でございますが、それぞれ発電所の原価で、その地域の——たとえば高砂ですと関西電力、中部電力、北陸電力の三社にそれぞれの量を分けております。東京の場合は、東京と東北の二社に売っております。原価からいいますと、建設当時が、高砂がキロワットアワー当たり大体二円九十銭台です、三円弱でございます。竹原がやはり二円九十銭程度でございます。磯子は三円十何銭といったところでございます。これはやはり石炭の炭価の開きでございます。そこまでしますのに、実は政府から出資をいただきまして、また安い金利の金をいただきまして、金利は五分一厘という安い金利にして計算をしております。五分一厘という非常に安い金利でございます。それから炭価につきましても、現在八百円の補助をいただいております。それで現在はもう少し上がっておりますけれども、スタートのときは大体こういった形になっております。  それで、今後の問題としまして、これからやります場合は、油が相対的に上がっておりますので、私としましては、油火力以下でやはり石炭火力を建設しなければいかぬだろうと思っておるわけでございます。そうしますと、石炭の単価も先ほどちょっと申し上げましたが、まあ油が上がったから石炭も上げるんだという、非常にことばは悪いですが、多少イージーに値を上げられますと、これはまた石炭のほうが油より高いからそれじゃ電力さんでは引き取れないという話になってきまして、非常に石炭専焼火力の建設がまた骨が折れると思うのでございますが、そういう意味で、その辺も御協力いただいて、私としては、やはり今日の段階では、油火力と競争できる原価でひとつ石炭火力をつくっていくべきじゃなかろうかと思っておるのでございますけれども……。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 灰捨て、それから公害いろいろありましょうが、それでカロリー当たり大体どのくらい高くなる、こういうようにお考えですか。大体同じカロリーとすると、石炭と油の場合には費用がどの程度石炭の場合はよけい要る、こういうふうにお考えですか。トン当たりでもいいですよ、カロリー当たりがむずかしければ。——電力用炭の場合、油との関係でカロリー当たりの単価同じですと、石炭のほうが何%か実際はコストが高くなる、こういうことですから、カロリー当たり油と石炭を同じようにいたしますと、どの程度にデメリットがあるのか、こういうことを聞いておるわけです。
  114. 大堀弘

    ○大堀参考人 非常に、ちょっとむずかしいのでございますが、大体資本費で三割ぐらい石炭のほうが高くなります。これは石炭のためにいろいろ貯炭場をつくったり、灰捨て場をつくったり、あるいは揚炭設備をつくったり、いろいろやりますので、大体三割見当設備費が高い。運転の経費もやはり人件費その他、人の数が多くなりますし、そういった面がございまして、実は私ども新しい油の値段が出ておりますので、それとの比較においていま検討さしておるのでございますけれども、今後やります場合ひとつこれは政府サイドでも十分御検討いただきたいと思っております。  ちょっといま数字的に申し上げると、先ほどちょっとセメント業界の方がおっしゃいましたが、キロリットル二万円の油に対してという話がございましたが、私どもはまあ大ざっぱに言って、いま私どもの使っているのは六千カロリーぐらいの炭でございますが、これはもうお聞き流しいただく程度にしないと、検討しなければいかぬと思いますからなんですが、まあ七千円程度であればいけるかと——しかし世間ではたいへん高いことを言っておられますが、そうなってくると非常に問題だな、こう思っておるのでございます、率直に申し上げまして。
  115. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは、きょうはまだ検討中と言いますので、聞き流しておきたいと思います。  そこでセメント協会専務理事の方にお聞かせ願いたいと思いますが、ちょっとお話を聞いておりますと、えらく石炭に冷たいという感じを率直に持っておる。ことにセメントは、石炭鉱業と非常に関係のある資本が多いのですよ。それなのにえらく石炭に冷たいな、こう思っておる。そしてその根底に、やはり油というのは自由に入るんだという根底においての議論がなされておるのじゃないかと思うのです。電気のほうはそうでなくて、やはりエネルギー源は購入先を多元化しなければいかぬ。多様化しなければいかぬという前提でお話があっておるわけです。それがセキュリティーの問題。ところがあなたのほうは、このお話をいろいろ聞いてみますると、どちらかといえばめんどうだから、石炭はたかないほうがいいのだという前提でお話が進められておる。ちょっと私は遺憾だと思う。と申しますのは、われわれが皆さんの前に各学識経験者の意見をいろいろ聞きましたときに、セメントというのは比較的石炭を使うに適しておる。第一、高サルファの石炭だって本来セメントの中に入っていくのであって、電気の場合のように亜流酸ガスになって出るという点は少ないのだ、そうしてむしろ増量に役立つのだ、むしろセメントは非常に石炭を使うに適した産業だと、こういうように承ったわけです。ところが、いまの専務理事のお話を聞きますと、まさに逆でして、どこもここも石炭を使うと都合が悪いのだという話をされておる。  そうすると、セメント業界のほうは一体重油というのはどんどん思うように入ってくるという見込みを持っておるのかどうか、これが一点。  それから第二点は、私ども石炭の将来における輸入を含めて、やはりエネルギー源として石炭が必要ではないか、こう考えておるのですが、その点については輸入炭というものがあっても、それはひとつ電力に使っていただきたい、セメントは要りませんと、こういう話であるのかどうか。  それから現実に私ども承知をしているたとえば三菱の黒崎工場でも一号機、二号機、三号機、四号機は全部石炭でやることになって、かつては事実上稼働しておった。五号機は重油の乾式のキルンになっておる。現在五号機しか動いておりませんけれども、しかし、エネルギーが足らないというならば、一号機、二号機、三号機、四号機がすぐ使えるような設備になっておるわけです。ですから、なぜそういうような設備があるのに使おうとされていないのか、また使おうとする気持ちがないのかどうか、こういう点をお聞かせ願いたいと思う。
  116. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 それではお答え申し上げますが、まず石炭に冷たいかどうかという点でございますが、これは決してさようなことではございませんで、技術革新の結果どうしても重油焼成でないとうまくまいらぬということは先ほど申し上げたつもりでございますが、詳しく申し上げますと、お手元の資料の表−3というのがございますが、そこにセメントのキルンの様式別の表がございます。その乾式という欄のSP、これは先ほど申しましたのでございますが、表−3の、ちょっとこまかいことになりまして恐縮でございますが、SPというのは、昭和三十五年と四十七年と両方の欄がございますが、三十五年には全然SPというものがございません。生産比率が棒が引っぱってございましてゼロでございます。ところが四十七年度になりますと、これが四四・二という非常に大きなパーセントにふえてきてございます。これはどうしても技術革新の結果、かような形にならざるを得ない。と申しますのは、これは結局省エネルギーの問題でございまして、石油か重油か石炭かという問題もございますが、さらにもう一つの次元に立ちまして、省エネルギーという点からまいりますと、このSPというのは、サスペンション・プレヒーターという略でございますが、非常に熱量の消費が節約できる、こういうような意味におきまして、結局これは国策にも沿うというわけのものでございます。そのSPの比率が非常に高まってございます。ところが、このSPと申しますのは、非常に熱効率をよくしますその点が構造的に非常に複雑化してございまして、重油でないとこれがうまくたけない、こういうことでございます。先ほどの諸先生のお話というのもおありだったかと存じますが、それはおそらく前の乾式、旧型のかまで、これは確かに石炭焼成に十分適しておったものでございまして、その証拠には、私も先ほど申しましたように、昔は全部石炭焼成であったわけでございます。それが、技術革新の結果そのSPがまというものが出てまいりますと、今度は技術的にどうしても重油焼成でないとうまくたけないという、技術上の、これはあるいはデメリットかと思いますけれども、そういうむずかしさが出てきておるわけでございます。それが一つでござまいす。  それからサルファの問題でございます。これは確かにセメント、正確に申しますと半製品のクリンカーというのを焼くわけでございますが、その工程におきましてサルファ分はその場合に吸収されますので、煙突から出ます硫黄酸化物というのは確かにほかの産業に比べまして少のうございます。ですから、その意味におきましては、セメント工場の硫黄酸化物の公害というのは比較的少ないわけでございます。しかしそのハンドリングと申しますか、このSP式でまいりますと、サルファ分が高くなりますと、コーティングと申しまして、わかりやすく申し上げますと煙道やその他に鍾乳石のようなものがぶら下がる、石こうでございますが、そういうものができてしまって、目詰まりその他で焼成を途中で中止せざるを得ない、かような非常に重大な結果になるわけでございます。  それからあわせて申しますと、石炭焼成の場合は、これは前からそのとおりでございますが、粉炭にいたしまして焼成するわけでございますが、そうなりますと、爆発という問題、これは石炭ミルその他で爆発事故というのが前には決してなかったわけではございません。さような面におきましても、これは安全管理上も重油のほうが望ましいというところもあるわけでございます。  さようなデメリットと申しますか、技術革新あるいは量産、つまり今日的と申しますか、現在におきますセメント工業にはどうしても重油のほうが非常に適しておるというのが偽らざる実情であるわけでございます。さような次第でございます。
  117. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかしあなたのほうの、これは通産省調べですか、石炭使用見込み、これはむしろ四十八年度は一般炭が十六万七千トン、四十九年度は四十八万一千トン。そうして宇部興産の場合は、輸入炭の二十万トンまで予定をされておるのですね。この資料はおたくが出された資料でしょう。
  118. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 そうでございます。
  119. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それですから、おっしゃることと……。
  120. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 これはいまのいわば例外的な措置でございまして、一つ考え方といたしましては、やはり国策のためと申しますか、最近の石油危機もございますもので、できれば代替燃料として石炭を使ってまいりたいという姿勢は一応あるわけでございます。それで、その場合に立地の問題もございますので、やはり産炭地の工場で、あるいは三井セメントさんのように、三井鉱山を前に御経営されておったというふうな産炭地の、しかも石炭の御経験の深い会社などは、宇部さんもそうでございますけれども、そういうところは、さらにこの際石炭燃焼を見直きれるという動きはあるわけでございますが、これはおしなべて申しますと、こういう傾向を一般的な傾向として御認識願いますと非常に誤解を招くということで、前申しましたようなことを申し上げたわけでございます。前のが一般的な傾向でございますが、例外的に、できますところはさような姿勢もとりまして、セメント業界といたしまして前向きで検討しておるところもあるというわけでございます。その資料にこれは出してございますので、一応この資料といたしましては、四十九年度の石炭の使用見込みは四十八年度よりもふえまして五十六万トン、四十八年が二十一万四千トンでございますが、四十九年は宇部社のような石炭を見直して切りかえていこうというような企業もございますので、そういう意味において四十九年度の石炭の使用量がふえておる、こういうところでございます。できるところはそういうふうに部分的には転換を講じておる、こういうところでございます。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 われわれは、国内炭だけでなくて輸入炭をいま入れろという要求がかなり強い、一体輸入炭まで一般炭において入れることが是か非かという議論をかなりしているわけです。それなのに宇部興産のほうは二十万トンを四十九年度に入れることを期待をしておる。それならそれらしく、私はもう少し参考人として発言の方法があったろうと思うのですね。しかしこれを全体的に見ると、SP方式でいくからそのほうが熱効率が非常にいい、そしてエネルギーを使わなくて済むということになるならば、石炭輸入して、あるいは国内を無理をして開発してまで石炭を使う必要がなくて、熱効率からいえばむしろ重油を使ったほうがぐっと効率がよく、エネルギー消費の軽減に役立つ、こういう方向であれば、またそういうように理解をして、今後セメントのほうには割り当てなんかしないようにするかどうか、こういう検討もしなければならぬわけであります。  おっしゃることが的確に把握できないのですが、おそれいりますが、セメント業界としては将来ここ五年ぐらいの間の重油の使用見込み、あるいは石炭の見込み、こういうことを後ほど出していただきますと幸いである、かように思います。  以上で終わります。
  122. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  123. 多田光雄

    ○多田委員 参考人の皆さん、御苦労さまでございます。  冒頭、大堀参考人にちょっと伺いますが、以前ちょっと新聞で、このエネルギー危機の中で電発のほうでかなり大がかりな石炭専焼の火力をつくっていく、五百万キロなんという数字が出ていましたけれども、もしあるとすれば、こういう計画をいつからお持ちになったのか。またそういう計画をどの程度具体化されているのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  124. 大堀弘

    ○大堀参考人 冒頭に申し上げましたように、現在のところは私の個人的、というといけないかもしれませんが、私が提案をいたしまして政府方面あるいは電力業界の皆さんに、こういう考え方で進んだらどうだろうかという案として申し上げております。先ほど申し上げたように国内炭は優先的に引き取る。その上に立って輸入炭をかなり大幅に入れる考え方をとったらどうだろうか。かりに一千万トン程度輸入炭が入れられれば四、五百万キロの発電所ができる。海外の手当てとしましては、地域的にも豪州あるいはアメリカカナダ、ソ連、中国ということが考えられます。そのほかにもございます。かなり地域的にも広いわけでございますが、かなり長期にわたって相当大量のものを安定して供給してくれる相手がありますれば、この考え方ができるのじゃなかろうか。これは私はあくまで石油依存度を減らす対策として提案をいたしておるわけでございまして、具体的には数年前から多少私は研究しておりましたので、海外資源につきましても多少の連絡はございます。これは話が固まりますれば具体的に進められるのでございますけれども、現段階ではまだそこまでいっておりません。私の構想程度のところとお聞きいただきたいと思います。
  125. 多田光雄

    ○多田委員 石炭にとってはたいへん明るい希望を与えるような構想でございますけれども、新聞によりますと、かなり政府筋にもこの話が通っているというふうなことが出ていたものですから、一つ伺ったわけです。  それから次に、加藤参考人にお伺いしたいと思いますが、いまの電力料金の値上げでたいへん大きな問題になっているわけですが、しかもその上げ幅が六〇%、七〇%というかつてない大幅になっているわけです。電力業界としてかりに六〇%、七〇%の値上げが特に諸物価にどの程度の影響を与えていくのか、これは電力会社として当然試算をされていると思いますが、伺いたいと思います。
  126. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 電力料金問題につきましては、かねてからあくまで会社の自主的判断において算定をするということに相なっておりまして、連合会全体としてそれを話したことはございません。したがって、大体六割とかといわれるのは、それぞれの方々が回られた上の数字ではないかと思うのでございます。しかし、四割ないし七割、平均六割、こういうことでございますが、大体それでございますから、それぞれの会社で試算してあると思いますが、ただ、ただいまの現行料金におきましての数字は、四十五年度の通商産業省の統計の数字によりますと、アルミであるとか電気炉であるとか、非常な大きな多消費産業を入れまして一・五くらいかと想像しております。その後の数字はまだはっきりいたしておりません。したがって、いずれお願いをいたすと思います。その場合には、各社でそれぞれの値上げ倍率を基礎にいたしまして影響度を参考資料として出さしていただく、かように思っております。
  127. 多田光雄

    ○多田委員 先ほども大堀参考人のお話がありました。一千万トンの一般炭をお使いになるということ。先ほど多賀谷委員も言っておりましたけれども、これからもろに国内産の石炭を使うということになると、非常に明るい展望を与えるわけですし、これがもう少し早ければという一つの感慨も浮かばぬわけではないわけです。しかし、私も外炭を入れるということについては疑義があるのです。と申し上げますのは、実は今度のエネルギー危機で、あとでもお伺いしようと思ったのですが、やはり日本産業の動脈ですね、この動脈を、いかにないからといって、国内資源を半ば放棄したような形で経済性を優先させて、そして石油に依存していった、これが今日、石油危機、エネルギー危機という事態を招いている一つの大きな原因だろう、こう思うわけです。それだけに、石炭の面でもこれは油の轍を踏んではならぬというように思います。ただし、一千万トン来年、再来年で掘るなんというわけには今日とうていいきません。過渡的にはそういうこともあり得るかもわかりませんけれども、問題は、その点でどうでしょうか。これは両参考人の方にお伺いするのですが、いままでのエネルギー政策をごらんになって、どういう点で業界としていろいろ御反省なさっているか。先ほど加藤参考人の場合は、あと五年、十年見てくれという、これは今日のエネルギー政策に御確信を持ってのお話かとも思いますけれども、両参考人からそれを伺いたいと思います。
  128. 大堀弘

    ○大堀参考人 私は経済性だけでやるということは、やはりエネルギーの基本でございますから、適当でないと思っております。ただ、そうだからといってやはり経済性を無視してはいかぬと思うのでございますが、そういう意味で、私ども石炭火力をある意味では今日までやってきましたのは、非常に経済性をはずした形でやってきたと思うのでございますけれども日本は何といっも、石炭の場合でも、国内で掘れれば掘ったほうがよろしいのでございますが、おそらく先生方御専門家でいらっしゃって、増産といってもいまの段階では非常にむずかしいのではないか。落ちてきたことに対する御批判が先ほどございまして、私もよく理解できますが、これからの問題としては、できるだけ増産をしますが、それはそう大きな期待は持てないのじゃないか。やはり日本のエネルギーとしては、結局残念ながら相当程度外のエネルギー資源にたよらざるを得ないと思いますので、それをいかにして安定確保していくかという方法論になるので、私は実は多様性ということを前から言っておりますのは、やはりバラエティーにおいても各種のエネルギー源を使っていく、原子力から石炭石油も、あるいは水力はもちろん地熱も使う、多様性を持っていく、地域的にも一カ所に依存しない方法を考えるべきじゃないか。一カ所に依存すると、やはり場合によって非常に影響を受ける。そういう意味で、石炭輸入炭の場合も地域的にも比較的広く選択ができると思いますので、そういう意味でこの際考えてみてはどうかと私は考えておる次第でございます。
  129. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 若干私見を述べさせていただきます。  電気を供給する者としてまことに申しわけがないことでございますが、わが国におきますただいまのエネルギー資源といたしましては、国内のエネルギーを少しでも利用するということ、これがまず第一番であります。それには、輸入炭というのも、私は国内炭をまず第一番にいたしまして、それから最小限のエネルギーの所要量からまいりましてどれだけの石炭火力をつくらなければならないか、その上に立っての輸入炭数量ということがはじかれるべき問題ではないかと思います。  もう一つは、これも使っていただく者といたしまして恐縮でございますが、いましばらくは省エネルギー、逆にいえば節電といいますか、節約をぜひともお願いいたしたいと存ずるのでございます。その意味におきまして、先般電気料金制度部会で出されましたあの料金制度は、私はおおむねただいまの日本におけるエネルギー政策を遂行する上の料金面からいく一つの方法ではないかと思っておるのでございます。
  130. 多田光雄

    ○多田委員 さらに、加藤参考人にちょっと伺いたいと思うのですが、重油と石炭のカロリー当たりの差でございますね。先般政府に聞きましたら、いま一カロリー当たり約三十銭ぐらいの差がある。これは北海道の四千五百カロリーの石炭を使った場合と、それから重油が九千七百カロリーぐらいのものですね。重油の場合にしますと一万一千円、それから北海道のこの四千五百カロリーにしますと二千九百五十九円。この場合、カロリー当たりでいきますと、重油が一円十三銭、石炭のほうが大体八十三銭くらいで、まあ三十銭くらいの差ということなんです。そうしますと、これを四千五百カロリーにかけますと約千三百五十円ということになるわけです。これはごく単純な計算なんですが、千三百五十円くらいはどうしても電力としては上げてもらわなくちゃいかぬ最低でございますね。それに重油が上がってきている。そうなりますと、三千円ぐらい石炭を上げないことには、ちょっといまの常識からいってまずいのじゃないか。  それから、いま参考人のおっしゃった、国内資源を大いに活用していくという意味で、御存じのように石炭の場合はたいへん苦況にあるわけなんですが、いま幾らの金額ということは、いろいろ主張もございましょうが、かなりのものというふうに、私ども考えておりますが、いかがでございましょうか。
  131. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先ほど多賀谷先生に御回答申し上げたと思いますが、この点につきましては、国のエネルギー政策のうちで決定さるべきもので、ただ一つの商品としてなかなかきめ得られない問題かと思います。従来からもやはり何がしか、政策料金というものは加味せられておったと思います。この際、やはり代替燃料、特に国内エネルギーの開発をするという意味におきましては、それぞれの機関で十分御検討をいただいた上での値段でおきめいただければ幸いと存じます。
  132. 多田光雄

    ○多田委員 原子力の問題をちょっと伺いたいと思いますが、昭和六十年で原子力は六千万キロワットでございますね。そういう目標を立てられたわけですけれども、いまは五基。五基で幾らでございましたか、百八十二万キロワットくらいですね。十七カ所千三百六十五万キロワットほど建設しているという話を聞いていますが、六十年に六千万キロワットというのはなかなか困難だろう、こう思いますが、そういう意味で、その不足分を、かなりの長期計画を立てるわけですが、どういう代替発電をお考えになっておられるのか。  それからいま一つは、原子力発電の非常に困難な点からいって、今後の見通しでございますね。これもひとつ両参考人に伺いたいと思います。
  133. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 一応昭和六十年六千万キロというのがここ両三年ほど前に出しました計画でございます。が、このごろでは、いまの重油あるいはその他の問題でなお一千万キロぐらいふやさなければならないというような意見のお方もございます。しかし、一面におきまして、いまの総需要抑制というような点からいきますと、これまた見直さなければならないのじゃないかというのでございまして、一応六千万キロといたしておりまするが、これはもう一ぺん、いまの新しい見方に立っての長期計画を立てたい、かように存じております。
  134. 大堀弘

    ○大堀参考人 ただいまの点は、いま加藤会長からお話がございましたが、先ほどの電力十社の中央協議会で長期計画をつくっておりますが、いま加藤会長からお話がございましたように、この時点においてさらに検討をしようということで、目下検討中でございますので、先ほど会長がお述べになったのと大体同じ考え方でございます。
  135. 多田光雄

    ○多田委員 それから、先ほど北海道に石炭専焼の電力会社云々というお話がありましたが、私の聞いているところでは、二カ所ほどつくるという話を聞いております。この場所、それからその他もうすでにおきめになったでしょうか。おきめになっておればお話し願いたいと思います。なお出力も一緒に……。
  136. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 大体二十五万キロぐらいの容量を計画されているように聞いておりまして、地点につきましては、いまそれぞれの地方庁のお方の御意見も聞きながら、そうして地方のお方の御了承を得たところできめたい、かように聞いております。
  137. 多田光雄

    ○多田委員 この際お願いしておきたいのですが、実は伊達の火力発電所のような問題がございます。私どもも、これはいろいろな立地条件によって違ってくると思いますね。公害のバックグラウンドの非常にきびしいところ、そうでないところ、そういう意味で、いま会長さんがおっしゃった、十分ひとつ地元の住民の意向なども聞いて処置していただきたいというふうに思います。特に臨海地帯の場合は、これはたいへん大きな影響がございますので、これは要望にかえておきたいと思います。  それからセメントのほうに伺いたいのですが、キルンのつけかえによって石炭利用拡大の見通しといいますか、こういう点を少し、これは技術的な面が入ってくると思いますが、どうでございましょうか。
  138. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 結局、民間企業でございますので、そういう設備投資をいたしましたものが採算的に見合うかどうかということと、技術の問題と、両方あろうかと思います。それに立地、相当の条件等がからんでまいります。セメント工場は、電力等と違いまして、各地にいろいろあるわけでございますので、おしなべて申し上げるのはなかなかむずかしいわけでございますが、むしろ先ほど申しましたような意味合いにおきまして、旧型のかまと申しますか、そういうところで前の石炭焼成設備を現有しておるようなところ、しかも産炭地に立地しているというところは、この際石炭に転換することが比較的容易ではないかということが言えると思います。  現に具体的に、お手元の資料にございますような二、三の会社はそのような計画を持っております。でございますから、御質問のように、設備をもう一ぺんかけてどうかということにつきましては、単に設備の費用以外にもいろいろ条件がございますので、なかなか一がいに申し上げにくいと思いますが、姿勢としましては、石炭の見直しということをセメント業界も持っておりますので、冷淡と申しますか、そういうことに決して無関心ではない、ネグっておるわけではないということを申し上げたいと思っております。
  139. 多田光雄

    ○多田委員 なお重油に比べてコスト当たり大体どの程度の比率であれば、これは工場着地でよろしいのですが、採算は合うものでございますか。もちろん場所にもよりますが……。
  140. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 それがいま申しましたように、工場ごとにどういう設備をどの程度つけるかという問題がございますので、一がいに申し上げにくいのですが、たとえばという程度で気軽にお聞き願えれば、金額は先ほども申しましたように、カロリー計算からいきまして、重油が二万円のときに、七千カロリーでございますと一万四千円くらいの勘定が出てまいりますが、その半分くらいであればどうかなというふうなことを申す者もおるという程度でございまして、なかなかはっきりしたことは、工場ごとに調べませんと申し上げかねると思います。
  141. 多田光雄

    ○多田委員 加藤参考人にちょっと伺いますが、電力料金の中で、石炭それから油、これらの燃料費というのは、コストで大体どれくらい占めるものですか。
  142. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 大体従来二〇から二五%でございましたのが、今度の一月の値上がりを見込みますと四五%から五〇%あるいは五五%、これまた会社によって違いますのですが、それぐらいになるかと思います。
  143. 多田光雄

    ○多田委員 もう一度最後に、沖繩の電力問題、これは現状とこれからの見通しの問題をちょっとお話しください。
  144. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 この点私不勉強でございまして、間違っているかと思いますが、現在五つの配電会社がございますが、将来は沖繩もなるべく早くこれを統一したいというのが政府のお考えであるように聞いております。やはりそれぞれの会社におきまして歴史もありいろいろな事情もありまして、返還と同時に一本にしたいというような期待を政府もお持ちでございましたし、われわれ業界の一人としましても一定の区域を持ったほうが効率的であるのじゃないか、かように思っておるのですが、ただいまはそれぞれ独立しております。しかし私どもは、近い将来にあれが統一されるのを期待いたしております。
  145. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  146. 田代文久

    田代委員長 松尾信人君。
  147. 松尾信人

    ○松尾委員 きょうはこのような雪の降っているさなかにお見えいただいて御苦労でありますけれども、そういうお三方を前にいたしまして、あまり皆さんの気に入らないようなことを少し私は言いたい、こう思うのです。  いままで油が非常に豊富で日本に低廉に入ってきた、そういうことで、石炭は掘れば掘るほど赤字になったわけでございます。でありますから、第五次までの石炭対策の期間をながめてみましても、閉山に次ぐ閉山というわけで、政府もそのような方向づけでありますけれども、やはり皆さま方もそういう豊富低廉な油がいつまでも入るのだというようなかっこうでやられてきて、両々相まって今日の石炭産業になってしまったのではないか、こう私は思うのです。先ほど加藤会長は、その評価はあと五年、十年の先に出るであろうというようなことをおっしゃっているようでありました。これは私の聞き間違いかもしれませんけれども、そのようにおっしゃったのではないかと思いますが、やはりそれは何といってもいま大いに反省すべきときにあることは間違いない。  それからなお、今回の石油危機から新しい資源エネルギー政策というものがいま大いに論議されております。これは御承知のとおりであります。まことに資源の面からと環境の面から、むやみやたらに油を入れてたくというようなことも考えなくちゃいけない。ですから、どのようにしてこの油の輸入を押えていこうか、どこに押える余地があるかということをわれわれは一生懸命になっていま論議しておるわけです。電力の部門につきましても、やはり同じでありまして、多消費型、こういうものを抑制していかなくちゃいけない、そして国民生活に有用な、また環境をきれいにしていく少消費型、そういう方向に持っていかなくちゃ相ならぬというのがきまった意見だと思うのです。この辺は皆さん方も反対はない、こう思うのであります。皆さん方は供給の責任者でありますから、ですから政府が一〇%だ、一五%だ、毎年毎年消費がふえていく、それであなたのほうは、つくれ、つくれ、こう言われてきまして、一生懸命になって、電源立地の問題も新たに今度は法案として出ようとしておるわけです。先ほどの環境面とのお話から、なかなか電源立地も進まない、これが現状でありましょう。そういうことからいいましても、やはり今後の省資源、省電力というものは頭に入れて、特に電力の関係会長さんはそういったことを頭に入れられていって、そして今度は新しい政策、国策というものに協力されていかなくてはいけない立場じゃなかろうか、こう思うのですけれども、この点についてまず一言加藤さんに聞いておきたい。
  148. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 全くお説のとおりでございまして、遺憾ながら日本の電力に対する付加価値というのは世界で一番低いのです。逆にいうとそれだけ多消費産業が多いということでございます。したがいまして、今度の料金制度の答申を見ましても、やはりその点を料金面からでも押えていきたいという答申が出ているようでございます。私もその意見を求められるときに、たいへんけっこうでございます、私はかように申し上げたことでございます。  それから、いまの油に依存し過ぎた、この点については反省をいたしております。ただ私、昔燃料問題をやりましたときに、名古屋というところは、石炭がなくなりますと全然ないのです、両方から遠いものですから。あらゆる銀行から私、金を借りまして、持てるだけの金を持って産炭地へ買いに行った覚えがありましたものですからつい申し上げたことでございまして、いまのあまりに重油に依存していたことについては十分反省をいたしております。
  149. 松尾信人

    ○松尾委員 非常にけっこうな反省でありますが、先ほどからも炭価の問題が出ましていろいろお話がかわされておるのでありますけれども、これは炭鉱が非常に赤字だ、赤字だ、そういうことで、働く人に対しましても金が出せないのですよ。報酬が悪い。ですから、同じ職種といわれるような金属鉱業に比べて二万七千円くらい低い。今度は新しく石炭を見直そうじゃないかということになりましても、そういう環境並びに待遇をよくしませんと、働いても希望がない、プライドが持てない、こういうところに落ち込んでしまったのが要するに炭鉱現状なんですね。ですから、せめて他産業の、同じ兄弟分の金属鉱業くらいまでは上げてくれなくては困るというのが炭労の意見なんです。われわれもこれはもっともだ、新しく石炭を見直そうとするならば、まずそういうところからやりませんと、需要がふえてきた場合に今度は供給が伴わないような状態であります。ですから、まず炭価というものはそういう面からいっても、これはあなたのほうは需要者の親玉ですから、需給関係できまってまいりますけれども、そういう腹がまえがまずあなたのほうになくてはいけないというのが一点です。  そして先ほどあなたのおことばで、油と石炭の値段がいま逆転してきた、こういうお話でありました。幸い石炭の見直しが非常にやりやすくなってきた。あなたのほうにもあまり迷惑をかけぬでもやりやすくなってきたわけであります。ところが、現状の炭価というものはどうしても変えていかなくてはいけない。そういうことから、先般もいろいろ重油と石炭の比較論、一キロワットアワーの消費量に対する炭価の比較等から、約一円三十銭くらい現在すでに油のほうが高い、このようなことも試算はされております。ですから両々相まって、やはり炭価というものは、この際きちっと需要者の親玉であるあなたのほうが腹をきめてやっていかれる必要があるのじゃないか、こう利は思うのですけれども、一応こまごまとした話は抜きにしまして、基本的な点についてはいかがですか、加藤さん。
  150. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 率直に申しまして、このごろ私どもの電力エネルギーといいましても、完全に二次加工業者に相なってしまっているのでございます。と申しますのは、石炭が九〇%、これはもう石炭加工業者になりました。したがって、せっかくエネルギー庁ができまして、いわゆるエネルギーというものをどうするか、その中で日本の将来のエネルギーを、価格も入れまして、長期的な観点のもとに御検討いただきたい、かように思います。
  151. 松尾信人

    ○松尾委員 長期的な観点でひとつ納得のいけるようにね。  もう一つ、先ほどそういう意味において、今度新しく審議会の三月二十日の中間答申が出ました、電力料金に関しましてね。その方向は基本的に了解できます。方向は納得できますけれども、より具体的に電力というものと電灯というものの料金をどうきめていくかということになると、非常にそこには問題があると思うのですね。大体電灯、電力、これが一対二の開きであります。あなたのほうも先般改定されたわけでありますけれども、やっと幅が少し縮まってきているだけでありますね。ですから、そういうことを考えまして、いろいろ福祉型の電力料金をきめていきたい、これは非常にけっこうな発想であります。それを徹底させなくてはいけないと思うのですよ。特に今後、要するに発電所が新しくできる、建設しなくちゃいけないということの一番の理由は、やはり産業用にうんと供給しなくちゃいけない。需要はそっちからきたものでありまして、家庭用の電力が足らないから新しい発電所が必要だといって建設するのじゃないわけですよ。そうすると、だれがそういう建設費用だとかなんとかいうものの負担の主体かと言えば、当然これは言わぬでもきまっているわけでありますけれども、できてしまいますと、その発電所から電力が流れていきますと、家庭用はどうしてもいつも末端の流通過程から入ってまいりますものですから、いろいろ諸経費が高いのだ。今度電発で新しく火力発電所をつくるにいたしましても、これが何のために必要かといえば、これはやはり産業用の需要に大口電力を満たしていこうというのが基本だと思うのです。そうして、そこに今度はたくさんの金を入れて、発電施設をつくる、送電していく、こういうことになった場合、流れていけば、家庭のほうが結局一対二の高い家庭電灯料金で負担していかなくちゃいけない、こういう大きな矛盾というか、電力の流れによる家庭電灯の料金が高くなっていくという一つの宿命的なものがありますけれども、これは矛盾も大きくある。そういうことで、家庭料金は今度割り引きますというような考え方は私はおかしいと思うのです。何のためにその発電所を建設しなくちゃいけなかったのか。家庭用のためじゃない。そして電力料金は今度は使えば使うほど高くなっていくという逓増の方式になっております。けっこうだと思う。そういう点は非常にけっこう。ですけれども、結局それは家庭のほうの電灯料金として消費者の家庭のほうがかぶっていく。それも一対二の比率ぐらいで、大きくその比率を動かそうとしていないという考え方が私どうも残るものですから、疑義があるのですね。方向はけっこうですけれども、内容的には非常に疑義がある、こう思うのですけれども、いかがです。加藤さん。
  152. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 答申の案を拝見いたしますと、まず家庭電灯は、ある水準以下なのは、平均を一〇〇としますと、若干水準以下、まあ百キロワットアワーといわれておりますが、は少し低減したらどうだ、そして平均のところで——二百なり三百のところが平均値、それ以上は逆に少し高くしたらどうだ、産業用は、将来たくさんこれから高い発電所になるのだから、新設並びに増設の分はいわゆる原価費用といいますか、少し高くしたらどうだ、それから従来たくさん使った場合には負荷率割引という適用制度がありましたが、そういうのはやはり多消費産業の抑制というところからいって撤廃したらどうか、こういうような答申でございます。これを政府はその答申をどこまでのみ込んで決定せられますか、私どもとしましては、なるべく答申の線に沿って政府は料金認可基準を早急につくっていただきたい、かように考えております。
  153. 松尾信人

    ○松尾委員 申し上げておるとおりに、方向はよくわかるというのです。いままた会長もそのような御説明で、よくわかります。具体的にそれが料金となってきまった場合には、私が申し上げたような傾向になってきまっていくのだ、結論はそのようになるものですから、そういうことがあるのだな、いまおっしゃった新増設、これに対してはそういうことは当然おっしゃったとおりでありますけれども、なおそこには家庭電灯というものが、大きいあるいは建設費だとかそういうものを負担しておるのだなということを十分御理解をされた上で、やはりいろいろと自分のやることをしっかりお考えになっていったらどうか、こう言っているわけですが、いかがです、その点。
  154. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 御趣旨の点、私ども政府にも訴えまして、そのようなふうに少しでも御期待に沿うような料金認可基準をつくっていただきたい、かように思います。
  155. 松尾信人

    ○松尾委員 もう一つの点は、これは総裁もお話しになったわけでありますけれども、排煙脱硫等の公害防除の施設の問題であります。この現況として、兵庫県の高砂に排煙脱硫装置をつけた、ほかのほうも逐次やっていきたい、こういうことであります。また、加藤さんのほうからは最初、これは二百二十万キロワット相当を始めるとおっしゃったのですよ、排煙脱硫のところでは。そして六基で七百三十万というのを——七十三万だったですかね、このように御訂正なすったが、この二百二十万というのは間違いないのかどうか。  それから加藤さん、五十年度までに一千万キロワット相当を計画する、新設はもちろん積極的にやる、こういうお話でありました。当然でありますが、どうもいままで公害の防除、特に排煙脱硫の問題、粉じんの問題ありますけれども、そういう問題について少し無責任じゃないか——なかったか、こう思うのですよ。ですから、あなたのほうで増設したいとか、新しくつくりたいと言われましても、どうも納得できがたい。また公害がふえるのだというようなかっこうで、これはまた事故も起こったらたいへんというかっこうで——どうもわれわれも、この電源立地の問題については、あなたたちが基本的なそういう点を改めて、そしてつけるものはつける、それでコストが高くなるといっても、できるだけ自分の企業の中でがんばるというような姿勢、それを見せるということがなければ、電力はこのようにふえていくのだ、足らなくなったからつくっていくのだというようなお話だけでは納得できない。ですから、その排煙脱硫の問題は、電源開発も両方、合計十社積極的に取り組んで、きちっと今回速急にこれは手をつけてやりませんと、また思ったとおりの開発ができません、こう私は思うのです。その点にとどめておきましょう。両方で……。
  156. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先ほど二百二十万と申しましたが、これまた私の間違いで、二十二万でございまして、実は諸外国にも排煙脱硫のこれほど大きなものはあまりございません。この排煙脱硫装置は、みんなそれぞれアイデアは諸外国から買ってまいりましたが、実際のプラントは全部日本でつくっている。したがいまして、一歩一歩これをつくってまいりませんと、われわれのほうとしましては、排煙脱硫装置が事故を起こしたから電気をとめますというわけにはまいらないのでございます。したがって、大事に大事をとるという意味において、若干スローであるという御批判を受けたかと思いますが、しかし年々、いまの二十二万キロも、実はようやく十万キロから二十二万キロにいたしました。それから、二十二万キロをつくりましてようやくそこで実用化のめどがつきましたものですから、今度は三十七万キロまでやろうということで、いま着実に全電力会社こぞってやっております。ただ、くどく申しまして恐縮でございますが、事故があったときに発電所をとめることができない。したがって、大事の上に大事をとるという意味においてスローであるという御批判が出たかと思いますが、その点はひとつ御了承いただきたい。熱意だけは十分持っております。事実、これでいかなければ立地ができないのです。
  157. 大堀弘

    ○大堀参考人 ただいま加藤会長からお述べになりましたことと同様でございますが、私ども石炭火力をやりました四十年当時でございますと、排脱の設備もございませんで、最近ようやく石炭火力について排脱の設備が完成いたしましたので、私どもとしてはさっそくにこれをつけていくという考えでございます。たとえば磯子火力等やりましたとき、これはもう七、八年前でございますけれども、公害防止協定の非常にこまかい協定を私ども最初にやりまして、したがいまして、そういった意味で現在でも市当局の御了解を得て進めておる次第でございます。
  158. 松尾信人

    ○松尾委員 先ほども多賀谷委員から発言がありましたが、私もあなたのセメントの説明を聞いておって、石炭の新しい見直しのときにセメント業界はどういうふうに取り組んで協力しようとしているのか、疑問に思ったわけです。そうしたら、一般炭も使うのですというようなことでお話があったわけでありますけれども、四十八年度の一般炭でありますけれども、その中で輸入の計画はない。ですから、今回は、四十九年度には輸入しよう、こういうことでしょう。四十八年度に輸入はないわけでしょう。四十九年度に輸入したい。そしてこの数字をお示しでありますけれども、これは努力目標ですか、これはきめた以上はやるというのですか。
  159. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 計画でございます。
  160. 松尾信人

    ○松尾委員 計画でしょう。これは努力目標だね。ほんとうにそれでいけるのかどうか、私は非常に疑問があるのです。あなたのいろいろここでの御説明の中から感じたことでありますけれども、セメントというのはやはり燃料の多消費型であります。うんと食う。ですから、どうとかして節約していこうという、それは国策というか、国の方針にやはりあなたのほうも協力していかなくちゃできない立場なんです。そういう意味において、今度は外国のものを減らして日本石炭を見直すのだから、協力していこうというような基本的な態度が必要だと思う。ですから、かりにこれが努力目標であるとすれば、はたしてこれは実現できるのかどうかという問題ですね。それはここでははっきり言えぬとしても、もううんと協力していくという態度だけははっきりしてもらいたい、いかがですか。一言でいい。
  161. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 これは計画でございますし、各社の方針をこういうふうに計画として協会として聞いておるということでございますので、確かに実行するかどうかということはちょっと私からは申し上げかねますが、一応努力目標といたしまして御趣旨を体するように伝えたいと思っております。
  162. 田代文久

    田代委員長 小宮武喜君。
  163. 小宮武喜

    ○小宮委員 石炭の大口需要家としては鉄鋼と電力があるわけですけれども、したがって、鉄鋼のほうは午前中参考人にいろいろ質問しましたのですが、今度は大堀参考人と加藤参考人に質問しますが、そういった意味で、電力業界として石炭需要を拡大していくという意味から見れば、北海道に四十九年度の予算で火力発電所をつくるようにしておりますね。これが、いろいろ反対運動がなければ大体いつごろまでに完成をして、そしてその時点でどれだけの石炭需要拡大ができるのか、その点と、先ほど質問が出ましたけれども、今度長崎県の松島に電源開発のほうで、五十万キロか百万キロかあとではっきりしてもらいたいと思いますが、大体環境調査もやっておるし、それに地元の協力態勢があればという積極的な発言も見られておるわけですが、何万キロの発電所を建設するのか、それによって石炭需要がどれだけ拡大されるのか、いわゆる北海道と九州でつくった場合に、いまの石炭需要が両方合わせてどれだけふえるのかという点について、ひとつ加藤参考人と大堀参考人からお願いします。
  164. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 私の聞いておりますところによりますと、地域の方々の御了解を得、用地の買収ができれば直ちに着工したい。大体、いま普通火力といたしますと、二年半かと思います。容量は三十五万キロ前後と承知しております。三十五万キロといたしますと、年間の石炭所要量は約八十五、六万トンかと存じます。
  165. 大堀弘

    ○大堀参考人 松島の火力の計画につきましては、規模の点まだきまっておりませんが、先ほど申しましたように百万キロぐらいつくるならやりたいということで申し上げましたが、百万キロワットをかりにやりますと、石炭の消費量は一年に約二百四十万トンになります。そこまでは十分に使える計画になると思います。
  166. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは電力業界需要拡大の問題については、いま新規の火力発電所の問題についてはわかりましたから、次は、またさらに電力の石炭需要拡大をはかるために、結局既設の重油と石炭の混焼火力発電所の石炭の利用率をどこまで高めていくかということにやはりかかってくると思うのですね。いま混焼火力発電所においては石炭の利用率大体四〇%というように伺っているわけですが、その混焼火力発電所の中で石炭の利用率を高めていき、そして石炭需要拡大をはかるとすれば、大体現在の生産設備の中で、いまのボイラーの中で、大体何%まで利用率を上げることが可能でありますかどうか。それで、それによってたとえば全国に混焼火力発電所が三十何カ所かありますから、それによってどれだけの石炭需要を拡大されていきますか、その点をお伺いします。
  167. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先ほど来申しますとおり、燃料の待遇からいきましても、業界としましては少しでもたくさんだきたい、これはもう基本的な考え方でございます。ただ、卸案内のとおり、非煙脱硫装置というのは非常に場所をとるのでございます。ですから、まずスペースがあるかどうか、それから地域の方々の御了解が得られるかどうか、その二点が一番大きな問題かと存じます。われわれとしましては、先ほど来申しましたように、四十九年度はとりあえずこれならば地域の方々の御了解を得、現在の設備でたき増しができるという数字を出しました。これから少し時間をいただきまして、その点を検討させていただきたい、かように考えております。
  168. 小宮武喜

    ○小宮委員 火力発電所としては、ほかにも重油専焼とかナフサを燃料としている発電所がありますが、これはなかなか、石炭に変えるといっても数億の資金が要るし、また長期間を要するから非常にむずかしいと思うのですが、いまの混焼火力発電所の中で、やはりできるだけ石炭の利用率を高めていくということをひとつぜひとも検討してもらいたいと思うのです。
  169. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 それは電力業界一様にさように考えております。
  170. 小宮武喜

    ○小宮委員 そこで、その排煙脱硫の問題なんか、いろいろありますけれども、いままでの経験から、私はいろいろな公害反対運動を見ておりますと、やはり火力発露所から排出される温排水の問題で、いつも漁業団体からの反対運動で行き詰まっているわけです。だから、排煙脱硫装置もこれはもう当然のことながら、問題は、発電所を設置しようということになれば、そういうような漁業団体がほとんど反対しているわけですが、その温排水の問題についてどういうような防止施設が行なわれるのか、また技術的にこの問題は、どう可能なのかということですが、その点いかがですか。
  171. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 この点、アメリカのように河川でありますと、直ちに海に捨てないものでございますから、日本ほど大きな問題ではございません。しかし、この温排水の問題は、石炭火力であろうが重油火力であろうが原子力発電であろうが、全く同じでございまして、石炭火力として一つ困りますのは、燃えがらですか、アッシュをなかなか付近に捨てるところがないのです。だんだん海から離れた遠隔地へ持っていって捨てる、それが私は心配なんです。温排水が問題になるのはもうどの火力でも同じでございます。ただ灰がら、アッシュは、この捨て場が一つのネックになるかと思うのです。しかしネック、ネックといっていてはだめですから、一つ一つ解決していきたい、かように存じます。
  172. 小宮武喜

    ○小宮委員 その温排水の問題にしても、現実には反対運動が起きておるのがほとんどなんです。だから、新しくできる火力発電所に対しても、もうほとんどといっていいぐらいに反対運動が起きておる。それどころか、既存の設備に対してすらも、ややもすれば反対運動がまた起きつつあるという状態の中で、特にこれは加藤参考人に聞いておきたいのですが、そういうような温排水を利用して、何か電力会社ではエビの養殖をやって、それでエビを市場に売りに出すということをやっておるとか、もうすでにそういうような時期に来ておるとかいう話を聞くのですが、エビの養殖を電力業界がやるというのはおかしな話で、これこそ漁業組合あたりにやらすべきであって、むしろ発電所周辺のそういうような近海の魚よりもエビのほうが高級魚で値段がいいわけですから、そういうような意味では何か公害反対運動とそういうようなものとの関係で話し合いができないものかどうか、そういったものでひざをつき合わしていろいろな話し合いを持ったことがあるのかどうか、その点いかがですか。
  173. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 実はそこまでいっておればたいへんしあわせなんですけれども、それが何かに利用ができないかというので、実はてまえどももハマチの養殖を、これは全国でも初めて尾鷲でやりまして、一応これは成功いたしました。成功いたしましたものを各漁業組合が——少なくとも温排水によってハマチには害がないということだけはわかったのです。それからこのエビもできるというので、これはとてもまだ営業用というところまでいってないように聞いております。四国さんでおやりになっている。ただ温排水でできるのだ、そこまででございまして、これがいまの漁業組合の問題になるということになればたいへんしあわせだと思っておりますが、まだそこまでいっておりません。
  174. 小宮武喜

    ○小宮委員 黒沢参考人に申しますが、先ほどからいろいろと、セメント業界石炭の利用について非常に冷たいという話も起きておりましたけれども、私は冷たいかどうか別として、今後の問題について若干お聞きしたいと思います。  資料を見ても、確かに昭和三十四、五年ごろの石炭が斜陽化されてから、急激に減ってきておるわけですね。それはそれなりの原因があったろうと思います。そのことは私はいまさら責任を追及するとかなんとかしてみたってしようがないのですが、それよりは、いまお話がありましたように、結局四十八年度の二十一万四千七百八十九トンが、五十六万五千二百八十トンに四十九年度ふえていますね、二・六倍ぐらい。そうしますと、四十九年度はこれでわかるとしても、ただ石炭が見直されてきたというムード的なものでこう考えたのか、さしあたり重油が高くなったので石炭をひとつ使おうかということで四十九年度にこれが二・六倍にふえておるのか。将来にわたってこの石炭をひとつ使おう、石炭需要をひとつふやしていこうということでセメント業界として考えられておるのかどうか。四十九年まではありますが、五十年以降のものが全然資料にも出ておりませんし、そういうような意味で、セメント業界としてどういうふうに考えておられるのか、その点だけお尋ねいたしておきます。
  175. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 いまお尋ねの点でございますが、現段階におきましては、石炭の再使用の問題は、各社個々に検討しておる段階でございまして、業界一本で特にまとまって対策委員会というふうなことで共通の結論を出すというまでにはまだ進んでおりません。しかし、ムードと申しますよりも、いろいろ事情変化石油危機以来ございますので、業界といたしまして真剣に取り組んでまいろう。国策に沿うという意味もございますので、省エネルギーあるいは代替燃料の問題として取り組むべき課題だということにつきましては、みなそのつもりでおりますが、体制といたしましてはいま一つのところでございます。今後の課題といたしまして御趣旨に沿うように努力をしたいと考えておる次第でございます。
  176. 小宮武喜

    ○小宮委員 特にその意味でも、資料によっても、先ほどもいろいろ出ておりましたが、一般炭の内訳として、四十八年度は輸入がゼロだったのが、二十万トンふえたということですね。そうすると、いまの二十一万四千七百八十九に二十万を加えると四十一万四千で、結局国内産を利用するという度合いが非常に少ない。したがって、四十八年では実績がないものを、二十万トン四十九年度輸入のほうでまかなうということになれば、私が心配するのは、だから一時的なそういうようなムードの中で、先はまたどうなるかわからないから、一応さしあたり四十九年度だけ石炭輸入で買っておこうじゃないか、そして状況を見た上で将来はまたもとに戻すという考えがあるのではなかろうかという、私はちょっと懸念をしたものだから質問しているわけですが、そういうような考えでなくて、やはり将来ともにわたって石炭需要を大きく広げていくというお考えだと、各企業企業でばらばらでしょうけれども、一応業界考え方としてはそういうような方針で進んでいるというふうに理解してよろしいですか。
  177. 黒沢肇

    ○黒沢参考人 それはいまのおことばのとおりでございまして、とりあえずということではございません。この輸入炭は、おそらくこれはサルファ分か何かの関係でまぜるという意味で、国内炭が手に入らぬものだからという趣旨だろうと考えております。  なお今後も、先ほどちょっと私申しましたことをふえんいたしますが、新しい様式のSP型というものも、現在はなかなか技術的に石炭専焼むずかしいわけでございますが、そういうものも、産炭地と立地に恵まれております工場では石炭専焼できないかということも検討中でございますので、さような面も含めまして前向きにこれは検討いたすわけでございます。
  178. 小宮武喜

    ○小宮委員 これで質問を終わります。
  179. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十二分散会