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田口参考人 ただいま御
指名を受けました
海外原料炭開発株式会社の
田口でございます。本日は、
石炭対策につきまして
意見の発表を許されまして、ここに立つことができましたことに対しまして、厚くお礼を申し上げたいと思います。
先般来の
石油危機に直面いたしまして、内外の
関心はエネルギー問題に集中いたしました。
前途多難を思わせましたけれ
ども、
わが国への
供給が緩和されるに至りまして、全般的に
安堵感が流れ始め、
価格の問題を除いては世論の退潮が見え始めてまいりましたことは、まことに憂慮すべき状態であると思われます。
資源を持っていない
わが国といたしまして、エネルギー問題を基底として、今後の進むべき道をこの際国策として確立する必要が、いまほど切実であることはないと信じます。
すなわち、申し上げるまでもなく、まず第一に、
唯一の
国内資源としての
石炭を見直すとともに、確固たる位置づけを行なう必要があると信じます。
第二には、
世界の
石炭埋蔵量は六兆七千億トンという膨大なものであることにあらためて着目いたしまして、
わが国の
エネルギー対策の将来に思いをいたしますと、
石油資源から原子力へ、さらには
サンシャイン計画へと
軌道修正をするまでの
過渡対策として、
石炭が全
燃料の中に占める絶対量を定着させることが、この際絶対に必要であると信じます。
わが国の
製鉄用原料炭は、その大
部分を
海外に依存しておりまするが、
電力用をはじめ
一般燃料につきましても、その
多様化と
セキュリティーの
観点から、
海外からの
一般炭の
輸入につきまして、
国内炭保護の前提の上に立った秩序ある合理的な
規制を行ないながら、前向きに考慮するべきであると信じます。
以下、対
国内、対
海外の
石炭対策につきまして私見を申し述べまして、御
参考に供したいと存じます。
まず
国内の
石炭確保についてでございますが、先ほ
ども申し述べましたように、将来の
エネルギー源の大
部分を
海外に依存しなければならない
わが国にとりまして、
国内の
唯一の
資源である
石炭を、今後どのような形で国益に寄与させていくことが適当であるか、このようなことにつきましておよそ
二つのことを考えてみたいと思います。
その
一つは、極端な
考え方かもしれませんが、どうせ大
部分を
海外に求めなければならないとするならば、
国内炭はむしろともしびの消えない
程度に細く、長く、無理をしないで稼行を続けていくべきであるという
考え方であります。
二つには、国家的強力な
施策の
裏づけをもちまして、積極的にすみやかに、かつ可能な限りの
最大の規模で増産に
努力すべきであるという考えであります。
私といたしましては、前者はとらず、後者の
積極策を選ぶべきであると確信するものであります。
なぜかと申しまするならば、御
承知のとおり、特にここ数年間に
わが国の
炭鉱技術は、きわめて劣悪な
自然条件のもとで営々
努力を続けてまいりました結果、その成果はまことに目ざましいものがありまして、
坑内掘り採炭技術におきましては、
世界に冠たる
能率にまで伸展してきておるのでありまして、何とかしてこの優秀な
技術をさらに育成、助長しまして、
後継者に受け継いでもらわなければならないと思うからであります。
わが国の
炭鉱界が
現状のような足取りで推移していくといたしますると、せっかくつちかわれた
技術の
向上はおろか、その維持すら非常にむずかしく、また
後継者も育たないというようになりましょう。この優秀な
技術を生かして、
国内炭の
生産に前向きに取り組むべきだと考えるのであります。
ひるがえって、
国内の
石炭業界の衰退を招いた
原因はいろいろ考えられまするけれ
ども、おもに次の三つであると思います。一が炭価問題、二が
労働力の不足、三が
自然条件の
悪化。
この三の
自然条件の
悪化につきましては、限りある
地下資源であるため、これは避けられない宿命でありまして、ここでは論じないことにいたしたいと思います。
二の
労働力につきましては、
地下労働であるというハンディキャップはあるといたしましても、今後明るい
ビジョンがあり、
企業の安定が
確保され、その上に他
産業を上回る適正な
賃金が支払われるということになりますれば、必ずしも解決のできない問題ではないのであります。
一の
価格の問題でありまするが、
昭和三十四年以降五年の間に千二百円の大幅な
コストダウンをしいられました。
一般物価の
高騰や
賃金の
上昇に逆行しながら、
幾多の困難と戦いまして、その
経営に苦しみながらこの
石炭鉱業を続けてまいったことは、案外世間には知られていない事実でございます。
いま、
石油資源の大幅な
値上げに伴いまして、
石炭の
価格もまた大幅に見直されるべきであると思うのでありますが、ここに私はあえて次のことを提唱申し上げたいと思います。
国内炭の
価格については、国家の
セキュリティーの
観点から、
石油その他の
燃料の値段にかかわりなく、その
企業安定の保障を含めた適正な
価格を決定してもらうことが必要であります。
もちろん
ユーザー側におきまして、可能な限りの
負担を願わなければなりません。また、ただいま
稲山会長からもお話がありましたように、第五次
政策におきまして
石炭価格の他
資源との
スライド制の問題がございましたとおり、
ユーザー側におきまして多大のお骨折りをいただいておるのでありますが、その限度以上につきましては、国の
支払いてよる
補てん等を期待いたしたいと存ずる次第でございます。
国内の
石炭埋蔵量につきましては、すでに
幾多議論が出ておる次第でございまして、
理論炭量で二百二億トン
程度といわれておりまするが、
昭和三十年に
合理化事業団の前身である
整備事業団が発足して以来今日まで、約十八年間の間に閉山いたしました
炭鉱のいわゆる
炭量、
消滅炭量、これが約六十二億トン余りといわれております。この
炭量の中には、当時の
経営者の
都合により閉山したものもございまして、今日になってみればまことに貴重なものもあるわけでありまして、今後の
国内炭確保のために、何とかしてここに適切な措置がとられるべきであると思うのであります。
石炭の
埋蔵炭量は、
実収炭量になりますると、この
当該石炭資源の
需要の
変化によって、すなわち
経済性に応じて変わってまいりますとともに、
採炭技術の
向上でたいへんに
実収炭量というものはまた変わってくることは当然でございます。
国内炭が
わが国唯一の
国産資源であることは言うまでもございませんが、私は、この
国内炭につきまして、これはきわめて
海外炭と相性のよい炭質を有しておるということを特に強調したいのでございます。
国内炭のこの高い
流動性あるいは低い
反射率、こういうものが有無相通じて
コークス用その他に欠かすことができないという特性を持っておること、また
揮発分が高い
関係上、将来の
ガス化、液化にも好適であることはもちろんであります。また、灰の
溶融点が低いということとかあるいは高
サルファ炭であるというようなことは、
海外の
大陸産出の
石炭と混炭することによって容易に改善され得る非常にすなおな性質を持っておるということでございます。私は、かかる良質な
国内炭をこよなく愛する者の一人でございますが、と同時に、ぜひこの貴重な
国内炭を
貴重品として大事に
開発し、さらにこれを大切に使っていただきたいと思うものであります。
さて、今後の
国内炭確保のための
施策でございまするが、まずその第一に、現在休眠中の
鉱区や、
炭量は十分ありながら過去の
累積赤字のためにやむなく閉山いたしまた
鉱区における
炭量につきましては、これは十分に
調査検討の上に、たとえば
特殊法人のような機構によってすみやかに再
開発する等の積極的な
施策を推進することが必要であるわけであります。
その第二は、現在稼行中並びに
開発中の
既存炭鉱につきましては、可
採炭量枯渇という
原因以外では、これに対してあらゆる
手段を尽くして閉山しないよう確固たる
積極対策の確立が望ましいわけであります。このことは、先ほど申し述べました
価格問題の
裏づけと相まって
日本の
石炭企業の安定につながり、さらには
ビジョンの盛り上がりの基礎となるからでございます。
次は
海外炭の
確保についてでございます。
諸
外国におきましても、
石炭に対する
関心は異常に高まっておりまして、数年前から特に
アメリカあたりの
石油業界が炭田の買い占めに狂奔しておりますことは、御
承知のとおりであります。また、特に
総合エネルギー対策上、
石炭資源の
確保、
開発について
緊急施策が打ち立てられております。このことが
資源ナショナリズムに拍車をかけまして、従来のような野放しの
輸出に対しての牽制となってあらわれつつありまして、一部の国におきましては、
輸出制限、さらに進んで
輸出禁止すら辞さないという趨勢にあることも聞いております。
しかしながら、
アメリカ、
カナダ、
オーストラリア等のように、従来
採炭の主体を露天掘りに依存しておる先進産
炭国におきましては、好むと好まざるとにかかわらず、その
自然条件の帰趨は次第に
坑内採掘に転化してまいるのでございまして、現在はその
過渡期に立ち至っておるのであります。この転換期におきまして、
わが国の
坑内掘りに対する優秀な
技術と
資金の
投融資をもって、さらに
相互扶助の
友好的施策を加えますならば、
海外への進出もまた道が開かれると考えるのであります。私
どもも一昨年以来、
日本の
炭鉱技術の優秀さにつきまして、まず
オーストラリアのニューサウズウエールズ州の
炭鉱への積極的なPRをいたしました結果、
炭鉱視察に来日することに始まり、ただいま
有力炭鉱からの引き合いで
採炭切り羽の
プラント一式の
輸出商談を取りまとめつつあるのでありまして、なおこのほかにも、
豪州の二、三の
炭鉱も非常にこれに注目し、積極的に
関心を示すようになってまいったのであります。
いままで
国内炭保護の
見地から
一般炭の
輸入は許可されておりませんが、
石油対策から見ても、
火力発電への
石炭の復元が真剣に検討され始めまして、すでに最近ある
程度の
石炭が不足するのではないかということも聞いております。いずれは
相当量の
一般炭の
輸入もこれまたやむを得ないことと存ずるのであります。
原料炭の
輸入につきましては、各商社が
ユーザーの
需要に応じて
コマーシャルベースで行なってまいりましたが、
一般炭の
輸入の場合には、前にも述べましたように、
国内炭保護の
見地から適正な機関による厳重な
規制を行ない、絶対に
国内炭を圧迫しないような適切な歯どめの
手段を講ずる必要があります。今後は
原料炭、
一般炭を問わず、従来の
単純輸入の時代はもう去ったのであります。これからは新たに
海外に
開発の手を伸ばし、
技術と
資金と
相互扶助の精神をもって
開発輸入をしなければなりませんが、
海外の
巨大資本に立ち向かって勝ち抜くためには、どうしても一業一社ではとうてい無理でありまして、国家的な強力なバックのもと、十分な
投融資のできるような
特殊法人を通じまして、
民間企業のすぐれたる
技術を結集することが必要であると思うのであります。
海外の
資源開発に対しまして、
石油には
石油開発公団があり、また
非鉄金属には
金属鉱業事業団がありまして、それぞれ公的な
開発機関の
裏づけを持っておりますが、
石炭に関しましてはただいまをもってまだ皆無でございます。今後
海外炭開発を推進するためには、ぜひともさきに申し上げましたように、強力な国家的バックを持つような
特殊法人的な機構を設置いたしまして、積極的な
開発に当たることが先決であると存じます。
なお、この際に
海外原料炭開発
会社の事業活動につきまして申し上げたいと存じましたが、時間もございませんので、もし御質問でもございましたら、その節お答えいたすことにいたしまして、最後に、今後
わが国が
海外の
石炭資源の
開発輸入を推進する場合の
見通しにつきまして、御
参考までに簡単に申し述べてみたいと存じます。
特に本件につきましては、ただいま
稲山会長からのお話がございましたように、現時点において
わが国の
鉄鋼業界は歴史始まって以来の
原料炭不足に見舞われておるのであります。これが回復に一両年を要する、あるいはもっとかかるかもしれぬというお話がございましたが、まことにこういうお話を聞くにつけましても、私といたしましては内心じっとしておれないような思いがするわけでございます。非力を嘆くと申しますか、何とかして——まだ創立以来四年とちょっとしかたっておりませんけれ
ども、ただいまの
日本の
原料炭不足を見るに全く忍びない思いがしているわけであります。
さて、
海外の
石炭資源の今後の
見通しについてでございますが、まず
関係各国の
状況につきまして、かけ足でこの問題に移りたいと思うのであります。
まず
オーストラリアでありますが、クィーンスランド州、これは先ほ
どもお話がございましたように非常な台風、ハリケーンと申しますか、このために露天掘り
炭鉱が水浸しになってしまっておるというのが
現状でございます。
一般炭につきましては、ボーエン、ブリスベーン、ブレアゾール等の地区をはじめ、そのソースは広大なものであります。ブレアゾールの西部地区に、最近州
政府が
ガス化、液化の対象プロジェクトとしまして新しく
鉱区の開放を企図していると聞いております。
原料炭につきましては、この州でも次第に
坑内掘りに転換いたしまして、
わが国の
技術進出とそれに伴う
開発協力の余地は十分あると考えられます。
次は、ニューサウズウェールズ州でありますが、
一般炭についてでありますけれ
ども、ニューキャッスル地区のウェストウォルセンドなどの
炭鉱が
一般炭の
開発を計画しておりまして、
米国への
輸出機運が高まっております。
リスゴウ地区にも広大なソースがありまして、コーレックス社その他の
会社が
開発輸出を企図しております。
また、現在
坑内掘りで
採炭中のハントレイ
炭鉱、これは出
炭量の約半分は
一般炭であるというように聞いておりますが、そのソースはきわめて膨大であります。
次に、この州の
原料炭でありますが、
坑内掘りは次第に深度を増してまいりまして、従来のルーム・アンド・ピラー方式では
技術の限界に近づいておりまして、最近
わが国のロングウォール・システムの
技術に深い
関心を示すに至っておりまして、前に申し上げましたように、
わが国からの
技術輸出の
可能性もまた高いのでありまして、ここに
開発への
協力が生まれてくるものと確信いたしております。
次は、
カナダでございますが、
一般炭はアルバータ州がおもでありまして、カルガリーとエドモントンとを結ぶ線の東側に露頭が見られまして、中小
炭鉱の所有
鉱区をメジャーが大きく囲んで買い占めたと聞いております。
私
どもといたしましては、この国に注目するのはむしろ
原料炭でございまして、現在はその大規模なものはバルマー
炭鉱をはじめ大
部分が露天掘りであり、一部に
坑内掘りが見られる
程度であります。しかしながら、今後は当社が
調査いたしましたスクンカプロジェクトをはじめ、目下三井鉱山が
調査中のクインテットプロジェクトなど数多くの未
開発の
坑内掘りの対象
鉱区がありまして、
わが国の進出の余地は十分あると考えられます。
三がニュージーランドでありますが、これは当社が
調査いたしました南鳥のグレイマウス炭田、これ以外に、他の国からの進出は全く見られません。
四がインドネシアであります。当社が、
海外技術協力事業団の委託を受けまして、オンピリン、ブキットアサムの両
炭鉱を
調査いたしましたのは約三年ほど前でございますが、最近シェルの小
会社が南スマトラ島のこの二
炭鉱を除いた大規模区域約七万平方キロに探鉱権を得ておりまして、
海外からの注目は急なものがあります。
私
どもはオンピリン
炭鉱を
技術協力によって増産拡大することに興味を持っておりまして、この計画は
調査の後すでに提出済みであります。
そのほかに五といたしまして、
アメリカ合衆国においても、その西部区域にメジャーの進出がありまして、距離の点から見ましても、
わが国として注目する必要が多々あると思われます。
さらにまた、ここでは申し上げませんが、ソ連、中国、中南米等につきましても十分な
可能性があると考えられております。
以上、きわめてかけ足で申し上げましたが、
わが国の優秀な
技術と国のバックアップによる
資金の
裏づけと、
相互扶助の精神を持つとしますと、いろんな困難はもちろんあると思いますが、特に
労働力確保の問題などございますけれ
ども、必ずや
海外進出の道は開けるものと信じて疑いません。
長時間にわたりまして御清聴を感謝申し上げます。(拍手)