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1974-03-25 第72回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十五日(月曜日)     午後零時二十九分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 田中 六助君 理事 地崎宇三郎君    理事 山崎平八郎君 理事 多賀谷真稔君    理事 渡辺 惣蔵君 理事 多田 光雄君       愛野興一郎君    倉成  正君       河野 洋平君    篠田 弘作君       戸井田三郎君    三原 朝雄君       安田 貴六君    岡田 春夫君       中村 重光君    松尾 信人君       小宮 武喜君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森下 元晴君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君  委員外出席者         通商産業大臣官         房参事官    下河辺 孝君         通省産業省立地         公害局石炭課長 原木 雄介君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     愛野興一郎君   三枝 三郎君     河野 洋平君   山崎  拓君     安田 貴六君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     上田 茂行君   河野 洋平君     三枝 三郎君   安田 貴六君     山崎  拓君     ――――――――――――― 三月十八日  炭鉱離職者緊急就労対策事業及び産炭地域開発  就労事業改善に関する請願嶋崎譲紹介)  (第二九四八号)  同(藤田高敏紹介)(第二九四九号)  同(三浦久紹介)(第二九五〇号) 同月二十日  炭鉱離職者緊急就労対策事業及び産炭地域開発  就労事業改善に関する請願田代文久君紹  介)(第三〇一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  新石炭政策樹立に関する陳情書外一件  (第三三九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法  律案内閣提出第六一号)      ――――◇―――――
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、中曽根通商産業大臣に申し上げます。  ただいま審議中の電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案について理事会で協議しましたところ、本法律案は別個の三法律案を一括して提出しております点に問題があるように思われますので、この際その説明を求めます。
  3. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本改正法案は三本の法案を一本にまとめて提出しておりますが、これはいずれも石炭関係法律でございまして、今後の石炭政策を強力に実施するために三本が一体となって成立することが望ましいものであるということ。  第二に、いずれも昭和四十九年三月三十一日と定められている廃止期限を、現在実施中の第五次石炭対策の終期である昭和五十二年三月三十一日まで延長するものである等からして、三法案を一本にまとめて提出いたしたものでもあり、従来もこのような場合に二以上の法案を一本にまとめた例も多いようでございます。  ただ、いま述べられた委員長の御意見、各委員がお述べになりました御意見につきましては、今後の法案国会提出にあたって十分考慮させていただきたいと思います。
  4. 田代文久

    田代委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺惣蔵君。
  5. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 参議院の予算委員会で非常に多忙なところ、大臣、御苦労さまでございます。しかし、きょうは法案をあげる予定をしている委員会でありますので、大臣もひとつ格段の御勉強をお願いしたいことを冒頭に求めておきます。  いま委員長発言があり、特に大臣から釈明の発言がありました法案取り扱い方についての問題でありますが、これは特に法制局出席を願って取り扱いについての従来の措置その他について究明した一わけでありますが、法案一つ一つ石炭関係であるとはいいながら、また日切れ法案である共通の問題をかかえておるという点からも、そういう法案提出のしかたも便法上あり得るという解釈の上に立っておるようでありますが、議会制民主主義の上からも、審議を尽くす上からも、また各個の法律それ自身の内包しておる問題からも、また、石炭見直しの問題が目下エネルギー調査会に答申を求めており、それに基づいて石炭鉱業審議会もやがて新しい方針を打ち出そうということになりますと、したがいまして、合理化法をはじめとして、関連法律の当然の大修正が行なわれなければならない時期が迫っておるわけであります。したがいまして、この三法のみが三年間期限を延長するというようなことに一体どれだけの意味があるのか、どれだけの石炭政策に寄与する面があるのかという点も、あらためて問われなければならない問題であります。そういう意味におきましても、われわれは、特に法案取り扱いにつきまして、このような一括提案というような、個々の法案を慎重審議するという審議拘束力を持つような提案のしかたにつきましては、今後改めてもらいたいと思います。これは同僚議員からもこれから発言があることと存じますが、特に冒頭に、大臣発言に対して希望を申し述べておく次第であります。  ここで質問申し上げたいのは、昨日大臣徳島に遊説に行かれて、講演をされ、記者会見をしておる模様でありますが、この席で特に電力料金値上げの展望について発言をしていらっしゃると思いますが、電力料金値上げの問題につきましては、石炭政策とも非常に大きな関連を持ってまいりますので、したがいまして、徳島談話というものがどういうことを意味するのか、千三百億円の九電力赤字解消のためにいつどういう理由電力料金値上げをされようとしておるのか、あの談話の内容では明らかでないので、石炭政策関連いたしておりますので、この際、徳島談話につきましての真意をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 衆議院の委員会で申し述べましたように、石油価格をこの間上げまして、この反応がどういうふうに出てくるか、経済の均衡についてどういうような条件設定をこれが行なうかという見通しをつけて、その上に立って電力問題に取り組む考えであるとここで申し述べましたが、それと同じことを申し述べまして、しかし、できるだけ電力の値段は抑制する方針で臨みたい。もし将来上げるという場合には、これは全国一律というようなことはできるだけ避けて、緊急性の強いものから逐次緊急度に応じてやっていくという考え方がいいと思う、そういう趣旨のことを述べたものでございます。
  7. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 最近の電力料金値上げの根源をなすものは、重油値上げに誘発されておることは当然のことであります。しかし同時に、重油の急速な値上げ価格に影響されて、石炭よりも重油が高くなってきておるという状況に置かれております。したがいまして、石炭に対する需要が非常に高まってきておる。同時にまた石炭も、供給する側から見れば、当然炭価値上げの問題がしたがって随行してまいると思いますが、電力料金値上げを決定する時期には当然炭価値上げの問題が同時並行的にいくのですか、それとも全然別な問題として受けとめておられるのか、この点について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  8. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 今回の重油値上がりと申しますか、それによりまして、石炭と競合いたしますC重油で一万九千四百円というような価格になるのではなかろうかと思います。ただし、これは硫黄分の問題、そういう点によりまして、だいぶカロリー別にはC重油でも質によりまして価格は相違してまいりますけれども、一応一万九千円前後というものになるのではなかろうかと思います。  今回の値上がりに対します石炭価格でございますけれども、現在一般炭電力向けカロリー当たり価格という点からいきますと、大体六十八銭九厘というのが現状でございます。これを油のただいまのカロリー当たりで見ますと約二円ということになりますので、相当な隔たりがあると言えるのではないかと思います。そういう点から言いまして、私どもといたしましては、石炭のこういう苦しい現状にございますことは重々先生方御存じのとおりでございまして、賃金問題にいたしましても、一応理想といたします金属鉱山坑内労働者並みということになりますと、二万数千円の差額があるというのが現状でございますし、なおいろいろ対策費を突っ込んではおりますけれども、現在なお石炭鉱業では千六百五十円の赤字であるという点から考えましても、片一方電気料金値上げとかいろいろ大きな問題があろうとは思いますけれども石炭サイドから見ますと、できるだけ価格値上げを実施していただきたいというのが、石炭に従事する私どもの気持ちでございます。
  9. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 重油キロ当たり一万九千円になれば、石炭価格は産地で三倍になり、揚げ地で二倍になるという価格の差が出てまいります。そこで、いま法律審議しようとする電力用炭販売株式会社法の法規に基づけば、電力用炭販売株式会社法の第十五条「通商産業大臣は、毎年、電力用炭の品位に応じ、石炭鉱業合理化臨時措置法第五十八条第一項の規定による石炭販売価格基準額に準拠して、会社電力用炭購入価格及び販売価格を定めなければならない。」と、こういう規定合理化法第五十八条から受けて規定いたしておるわけです。ここで問題になりますのは、両法とも、合理化法の五十八条も、「通商産業大臣は、毎年」と、一年に一ぺん基準価格について見直し法律規定しております。同時に電力用炭販売株式会社法の十五条でも、この五十八条を受けて同文の「毎年」ということを書いていますが、一体四十八年の四月一日以降今年三月三十一日まで、「毎年」に該当する一年間に基準価格見直しをしたのかどうか。したとすれば、それはどういうふうな見直しのしかたをしたのか。法律事項でありますから、特にやったのかやらないのか、それが何であるのかということを明らかにしてもらいたいと思います。
  10. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 いま先生の御指摘の十五条炭価の問題でございますけれども、十五条炭価のほうは、合理化法に基づきまして、合理化法基準炭価というのをきめるようになっております。基準炭価は各地区別に、カロリーを中心にいたしまして、かりに北海道の炭であるならば四千五百カロリーが何千円、中部地区であるならば五千五百カロリーが何千円というような一つの線としてきめてございます。この標準基準炭価を受けまして、電力用炭法の第十五条に基づきまして、各電力会社別カロリー別に詳細な購入価格及び販売価格をきめているのが実情でございます。  年々上げているかといういま御指摘でございましたけれども、一応合理化法に基づきます基準炭価は毎年修正さしていただきまして、たしか百五十円から二百五十円ぐらいの間であったと思いますけれども、毎年基準炭価を改定し、それに基づきます十五条炭価修正しておるというのが実態でございます。
  11. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 私が質問しているのは、「毎年」という、ことしに基準炭価修正をしたのかどうか。いつやったかわからない話を聞いているのじゃないのです。法律に基づく措置をしたのかどうか、それともこの法律の「毎年」というのは空文なのかどうか、この年度の措置を聞いているのです。
  12. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 四十八年度の分につきましては、十二月に、四月にさかのぼっての炭価改定ということで、二百五十円及び五百円ということで修正をいたしております。
  13. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 その修正した炭価というものは、今日の状況重油との関連で、現段階で再修正をする必要があるのかないのかという点について伺います。
  14. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 十二月に修正いたしました点でいきますと、電力向け石炭は、カロリー当たりで六十八銭九厘というのが四十八年の数字でございます。四十八年度の上期の石油は八十九銭八厘という平均になっておりますけれども、これは先ほど申し上げましたように二円前後ということになろうと思いますので、当然四十九年度の炭価におきましては、合理化法に基づきます基準炭価をできるだけ早い機会に制定したいというふうに考えております。また、これを受けまして十五条炭価見直しというのも早急にやりたいというふうに考えております。
  15. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 いま火力発電に使用される電力用炭一般炭はどれくらい出ておりますか。それから、三池の混焼用の石炭をどれくらいに踏んでいますか。
  16. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 電力用炭向け石炭総量でございますけれども、年間通じまして約八百万トン近い数字になっておると思います。そのうちのおもなものは、北電関係が三百十万トン前後、それに電発が三百万トン、なお共同火力あるいは先ほど先生から御指摘ありました三池アルミ用に使う自家発の約七十万トン、そういうものを入れまして総量約八百万トン近い数量電力用炭向け販売されておるというのが実態でございます。
  17. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 そうしますと、電力用炭販売株式会社の取り扱っております直接の石炭は幾らになりますか。
  18. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 四十八年度の計画でございますけれども、七百八十四万トンというのが取り扱い数量になっております。なお、御存じのようにこのうちにトラック輸送するものもあるのですから、電力向けとしましては、先ほど申し上げました計画としては八百四十四万トン——いまの七百八十四万トンは電力用炭が取り扱う計画数字でございます。当初の電力用炭需要量としましては八百四十四万トンでございまして、おそらく供給面のほうからこの需要量というものと取り扱い数量が少々落ちているのではなかろうかと思いますけれども、このうちにはトラック輸送するものもございますし、そういう点で実際専用船を使って取り扱う数量は六百十万トン前後になっておるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  19. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 そうすると、トラック輸送する分は専用船を使用しないわけですが、専用船はどこに使用されているのですか。北海道の約三百万トンという電力用炭はほとんど内陸関係で海上輸送してないはずですが、これがトラック輸送にかわられておる。そうすると、専用船二十四隻という大量の船がどこへ使用されているのか、明らかにしてもらいたい。
  20. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 ただいまの電力用炭専用船での輸送数量の中には原料炭も入っておりますので、原料炭も入れまして先ほど申し上げました六百十万トン前後ということになるのではなかろうかと思います。
  21. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 そうすると、電力用炭販売株式会社は、電力用炭のみならず原料炭も取り扱っているということになるんですか。
  22. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 そのとおりでございます。
  23. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 それは、石炭政策の上から専用船を使用するということは関連していますが、電力用炭販売株式会社法律で規制している石炭専用船を他の目的に使用するということについては、法解釈ではどういうことになるんです。
  24. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 電力用炭販売株式会社目的でございますけれども、「電力用炭販売株式会社は、電力用炭価格の安定に資するためその購入及び販売に関する事業を行ない、あわせて石炭供給円滑化及び流通合理化に資する事業を行なうことを目的とする株式会社とする。」ということで、「流通合理化」という点で原料炭輸送電力用炭のほうにお願いしておるというのが実態でございます。  なお、電力用炭販売株式会社のほうで持っております船の所属はそれぞれの船会社でございますけれども、当初三十隻持っておりました船、そういうものの有効利用という点もございますし、現在は船も取り扱い量が減った関係上、二十四隻というふうに船舶数も減ってはおりますけれども、そういう点も考えまして、電力用炭のほうに流通合理化の点から原料炭取り扱いをやっていただいておるというのが実態でございます。
  25. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 この電力用炭販売株式会社法に基づく主要な業務は、電力用炭一括購入と、それから石炭専用船を運航管理することと、それから第三点は石炭代金の一カ月前払いの融資を行なうという三点にしぼられているはずでありますが、そうすると、いまのような石炭政策一般に関する部分、たとえば原料炭をも含めてというそういう解釈のしかたについては、業務の中身でそれだけですか、ほかにありますか。
  26. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 電力用炭がそのほかに仕事としてやっておりますのは、一手購入一手販売付帯事業としまして、市中銀行から金を借り、それを協調融資を受けまして電力用炭代金の一カ月分につきまして繰り上げ支払いをやっておるというのが一つございます。これが約三十五億円以内の支出関係をもちまして、石炭業界の苦しい財政の中に協力しているというのが一つございます。
  27. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 私は、その三つの指摘した業務のうちでどうも納得できないのは、石炭専用船管理運営取り扱いに関する事項で、趣旨はいいアイデアである、けっこうな政策だと思っていますが、その管理運営についてどうも私なりにのみ込めない問題があるわけです。かつて石炭専用船は最高三十一隻かあったはずですね。現在は二十四隻になっておる。前年度は二十七隻であった。三隻廃船になっておる。一体、これは石炭専用船に使用するということで、会社自身が直接管理してないで、船会社管理さして、会社がしているのはその石炭輸送だけについてチェックしているのか、また極端に言えば、帰り船がセメントを輸送したりあるいは砂利を輸送したりするようなことはないのか。石炭専用船、船の使用の効率から見ると当然のことだと思うのですが、そういう石炭専用船の名に隠れて他の物資の輸送運搬業務等関連輸送させていないのかどうか。  それから直接会社自身運営管理を実際上していない。たとえば三十四名の職員しかいない会社北海道で札幌に三人在勤している、九州でも三人在勤しているというのは、船積み現場に出ておるわけじゃないのですから、そういう船積みをしたという伝票操作をしているだけの業務ですね。現場指揮監督、チェックを直接してない。それが全部国の低利資金船舶資金を借りて船を建造し購入して、それをそのまま特定会社、飯野海運であるとか三井海運であるとかという特定会社に委託をしている。何社にどういう契約で、あれしているのか、その運営管理がどういうように日常行なわれておるのか、合理的な管理が行なわれておるのかどうか、それともそういう管理が及ばないのか、業務の主管について承りたい。
  28. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 石炭専用船でございますけれども、現在手持ちは二十四隻でございまして、先ほど先生指摘のように、たとえば三井室町海運あるいは三井近海汽船あるいは泉汽船北星海運等々、全部で十一社でございます。十一社で二十四隻を持っているというのが実態でございます。  当初三十隻ございましたのを二十四隻にしましたというのは、先ほど申し上げましたように、いわゆる電力用炭取り扱い数量が減ってきているということが一つ。それから船がだいぶ古くなったという点がございまして、その古い船舶につきましては六隻を処分しております。その処分の三隻はこれは廃棄処分でございまして、なお三隻は韓国国内へ一隻、転売と申しますか転進と申しますか、そういう形で処分いたしております。  なお電力用炭仕事でございますけれども、いわゆる配船調整という一つ仕事がございまして、これはたとえば港にマル近船を含みその他の船が同時入港するようなときの調整というようなことを、当初の各社から出てきました計画をもとにいたしまして、電力用炭のほうでその調整をやっておるというのが実態でございまして、そういう点によりましてスムーズに船を運航するというようなことで、いわゆる輸送費の点におきましてもトン当たり百数十円のコストダウンということに寄与しておるというのが実態でございます。  なお、いろいろ各社がそれぞれやっておるのでということでの疑問の点もおありのようでございますけれども、この点につきましては、電力用炭販売株式会社石炭専用船の船主とそれから石炭販売業者との間におきましてそれぞれの計画を出させ、あるいは配船の割当あるいは配船通知、こういうことを十分監視のもとでやっておりまして、むだな配船その他はないというふうにうちのほうでは確信を持っている次第でございます。
  29. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 私が聞いているのは、その電力用炭専用船であると思ったのが原料炭まで輸送している、その輸送は全部電力炭原料炭だけを輸送しているのか、その他の目的に船が利用されていることがないのかどうか、その管理が行なわれておるのかどうかということを聞いているのです。その点について。
  30. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 石炭以外の品物は輸送いたしておりません。
  31. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 先ほどの部長の答弁で、六隻のうち三船は廃船処分だ。しかし、わずか五、六年のうちで、老朽だからという理由廃船ということはどうも原因が納得できないのですね。一体初めからセコハンの船を買ったのですか。船というものは五年か六年で廃船するような、そういう程度の老朽化される船を初めから承知で買い取ったのかどうかということと、もう一つは、廃船した三隻の船のうち、部長韓国という話だったのですが、たしかパナマ国籍を持っているはずです。一体どうして韓国に船を譲って他国籍を名のらざるを得ないのか、何でそういうややこしい管理の方式を電力用炭販売株式会社がやり、もしくは通産省がそれを承認しているのか。その経過について、第三国の国籍にして、そして特定の国に船舶を譲っているという事情が、どうしても何かあるんではないかという疑惑がぬぐえないのです。その点も含めて答弁願いたいと思います。
  32. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 六隻の処分でございますけれども、本専用船は三十五年から建造にかかっておりまして、いわゆる合理化事業団近代化資金を一部投入し、なお船舶関係融資ということでそういうものをつくりましてできた船でございます。  しかし、先ほどから申しますように、取り扱い量の減という点と、三十五年からの一番古いものにつきましては、ただいま申し上げましたように処分したというのが実態でございまして、先ほど韓国のほうに二隻ということを申し上げましたけれども、これは船籍パナマになっております。  なぜかと申しますと、これは税金パナマのほうが安いということで、船籍だけはパナマ籍にいたしまして、実際の売り先は韓国ということになっておるようでございます。
  33. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 どうも扱いが私にはわからないのですが、そういうことは電力用炭販売株式会社専決事項でやったことなんですか。外国籍に、税金心配までしてやっている、国内石炭の問題を心配しないで、外国への船の払い下げの税金心配までやって、わざわざパナマ国籍を移して韓国に使用させる、そういうすきっとしてない点で、どうも何をしている会社だろうかという疑問を持たざるを得ない。それをまた通産省も、きちっとさせないで、そういうことを了解してそういうテクニックをやらせてるのですか。
  34. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 船の処分につきましての許可というものは、通産のほうに一々許可の申請をするとかというような手続はございませんけれども、一応韓国のほうに二隻売り渡したいということは、事前に話があったというふうに考えております。  なお、韓国のほうに売る場合、船籍パナマにあるということは、これは船会社のほうと韓国で、あるいはパナマ船籍ということでいかに税金を安くするかということの別途な意味ではなかろうかというふうに考えておりまして、うちのほうとしましては、あくまでも韓国のほうに売るということで一応御相談を受け了承した、ただし正式の許可とか、そういうことは出しておりません。
  35. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 どうも高木部長さん在任以前の問題で、部長自身を追及するわけでも何でもないんだが、一体問題は、そういう措置電力用炭販売株式会社が法に基づく行為として専決しているのか、それとも処分権がまるっきり船会社に置かれているのか、船会社一体低利資金の借り入れ金の決済等をどこでやったのか、国の金、税金を使って船をつくって、六隻を廃船したり第三国の国籍で売り渡したりするようなことをしながら、片一方で船舶資金を、低利の金を借りたその決済はどこでやっているのか、一体どこの責任でそういう措置が行なわれているのか、明らかにしてほしいと思うのです。
  36. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 船の所有はあくまでも先ほど申し上げました船主でございますけれども、その船をつくるときに、先ほど申し上げましたように、合理化事業団近代化資金及び船舶整備公団の金が入っているということでございますので、その処分につきましては、船舶公団及び合理化事業団あるいは通産のほうとの話し合いということで、一応協議の形はとっておるということでございます。  なお、近代化資金の問題につきましては、現在船会社のほうから事業団のほうには返済中でございます。
  37. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 いよいよわからなくなってきたのです。パナマ国籍韓国に売り渡しているが、そうすると韓国側も金を払ってないのですか。全部決済済んでないままで、国の税金をしょったままでパナマとか韓国に船を売り渡しちゃったのですか。その売り渡した金はどこへ入ってくるのですか。
  38. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 先ほどの答弁の中で間違いましたけれども韓国に売りましたときに全額返しておるということでございます。近代化資金は返しておるというのが実態でございます。
  39. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 そうすると、近代化資金は幾ら返されたのですか、残った金は。
  40. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 二隻で約二億八千万だったということでございます。それは韓国のほうに譲りましたときに一回で返ってきておる、返済していただいておるというのが実態でございます。
  41. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 この二億八千万で売り渡した船は原価幾らかかっているのですか。
  42. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 一隻大体四億円程度だということでございまして、合理化事業団近代化資金が四〇%、それから船舶整備公団から三〇%、自己資金が三〇%ということで、一隻約四億の船を建造しておるわけでございます。先ほど申し上げました二億八千万の返済というのは二隻分の残りの金としまして一ぺんに二億八千万を事業団のほうに返したということでございまして、国といたしましては、この自己資金の三〇%の問題はこっちのほうで関与いたしておりませんけれども事業団から貸し付けました四〇%については完全回収しているというのが実態でございます。
  43. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 これは一体いつつくった船なんですか。耐用年数から見て払い下げ価格が安過ぎないですか。その払い下げ価格の決定も船会社が全部やって、こちらは追認の形ですか。それから電力用炭販売株式会社が追認して政府がそれを追認するという形をとっているのですか。一体、総ぐるみ幾らの、一隻四億円というと、韓国に二隻行っているのですが、八億円の品物が二億八千万で取引されている、こういうことになりますね。その老朽の度合いですが、廃船処分をしたというならわかるけれども、売り渡した。向こうも十分使用価値があるから買ったんでしょう。
  44. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 韓国との売買の金額でございますけれども、一隻、一億八千、二隻で三億六千で韓国との間に取引されたようでございます。  なお、この船でございますけれども、耐用年数は十八年ございまして、建造にかかりましたのは、先ほども申し上げましたように三十五年からで、つくっておる古いほうの船ということで、実際は新しくできて三十七年、八年から就航していた船で、売りましてから、まだ耐用年数としては十年ぐらいあったというのが実態でございますけれども、ただいま申し上げましたように、その二隻は韓国のほうに売却したというのが実態でございます。
  45. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 そうすると、この石炭政策見直しになって、電発三カ所で千二百万トンも石炭を新しく使用するという計画が出てきますし、あちこちでそういう石炭見直しが起こっておるおりから、この会社はそういう新情勢が来た場合は、また新造船をこの法律に基づく行為によって、合理化事業団やなんかに金を借りてまた船を建造する時期が来ないとも限らない。そういう場合があり得ると思う。もし専用船制度をとっていくということであれば、もう一ぺんそういうことも再検討されなければならぬ。そうすると、この電力用炭販売株式会社というのは、船を売ったり、買ったり、払い下げたりする仕事が主になっちゃって、また新しい船をつくらなければいかぬという場合もあり得るのではないですか。そういう場合はどうするのです。そういう場合は、また合理化事業団船舶公団から低利で金を借りて、三〇%だけ船会社は持ったという理由で、膨大な低利資金を提供して、また新しい船を建造するつもりがあるのですか。そうしなければ石炭見直しの情勢に対応していけないでしょう、石炭の必要量がどんどんふえると予想されているのですから。その場合は、予想される条件に対応するのに、またその専用船を建造するのですか、しないのですか。
  46. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 電力用炭販売株式会社が、この船を所有していたということではございませんで、先ほども申し上げましたように、それぞれの海運会社が、たとえばさっき申し上げましたように、三井室町海運が四隻とか、こういうそれぞれの船会社が、いわゆる石炭専用船、マル近船をつくりますときに、整備公団のほうと合理化事業団のほうで融資をし、船をつくったというのが実態でございまして、いわゆる電力用炭販売株式会社は、その船を利用さしてもらい、なお配船調整し、それによって石炭の円滑な流通過程を築こうというのが目的でございまして、今後ふえた場合、直接電力用炭販売株式会社が船をつくるとか買うとかというようなことは、現在のところは考えておりません。
  47. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 私は、電力用炭販売株式会社が直接船を建造するとか、船を直接運航する、積み荷会社に化けてしまうということを言っているのではないのです。石炭政策が変わって、前向きになって、火力発電所用の石炭が、需要がうんとふえてきた場合を仮定して、その場合はまた同じ手段で、この法に基づいて、船舶運営会からとか、あるいは合理化事業団から、金の貸し付けの口をきいてやって、また七〇%以上の金額をそちらから低利資金で国の金を出して、そしてまた船会社を援助することになるのでしょう。そういう方法を考えているのかどうか、それとももう専用船はこれで要らないのだ、これは打ちとめです、こういうことをおっしゃっているのか、そこが明らかでない。これは会社の三つの柱のうちの一つ仕事ですからね。そういう専用船を必要としないというならば別ですよ。そうすれば、なぜ払い下げたのかという疑問が出てまいります。一体、将来にわたって石炭専用船を増加する必要がないのかあるのか。ある場合はどうするのかということを念のため聞いておきたいのです。
  48. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 その船を処分するなり譲渡したということは、当時の状態から見ますと、いわゆる石炭需要減という一つの大きな点がございましたので、むだな船を持っておるよりも、むしろ使えるものはほかの国ででも使ってもらえばいいのではないかというようなことでおそらく処分したことだろうと思います。  しかし、この電力用炭販売株式会社は、輸送業務だけではございませんで、いわゆる石炭一手購入一手販売ということも行ないますし、なお、先ほど申し上げましたように、いわゆる代金の一カ月の繰り上げ払いというようなこともやっておりますし、それぞれ大きな使命を果たしてくれているものというふうに期待しておりますが、なお、今後石炭見直しがありました場合、おそらくいま先生指摘のように、このままの電力用炭販売株式会社の姿でいいのかどうかというのは、一つ大きな問題があろうと思います。  なお、エネルギーの多様化という点からいたしまして、いわゆる発電関係に、一般炭目的としました発電所が建設されるということがかりにあるといたしますと、国内一般炭だけではたして供給が可能であるかどうかというのも十分検討しなくてはなりませんし、あるいは国内炭だけで不足する場合は、おそらく一般炭の輸入ということも必要になってくるのではなかろうかという点を考えますと、今回は電力用炭は一応期間延長ということで御承認いただき、近いうちに、いわゆる石炭の新政策という問題といま取り組んでおる最中でございますので、その新政策の中で、いわゆる輸入炭との関係あるいはいま先生の御指摘輸送船、いわゆる専用船というものの問題、あるいはこれは船だけではなくて陸地輸送という点もあろうかと思いますけれども、すべての点を考えましての新しい政策というものが必要になってくるのではなかろうかというふうに考えております。
  49. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 そうしますと、新しい政策見直しから外国からの一般炭の輸入等が出てくる場合は、従来継続的に行なわれてきている石炭専用船、われわれがいま考えている、通産省がいま考えている石炭専用船ではなくなってくるわけですね。相当量の外国一般炭というものは、別個な船舶が、あるいは別個な船会社が一般的な商行為でやるとか、あるいは商社が担当するとか、別な形で行なわれるので、その外国一般炭が入ってきたものを国内炭とミックスして処理するかどうかという方法は別として、石炭専用船にかかわる部分については、国内に来た以後の石炭については電力用炭販売株式会社が所管するかもしれないが、入ってくるまではこの会社は全然関係ないのだ、こういう考え方でありますか。  そうすると、石炭専用船に対する限界というものは、この二十四隻が限界である、あるいは、国内で増産された場合、さらにふやす場合もあり得るが、外国炭の場合は違う。専用船に関する部分は三つに区分けして考えなければいかぬということになってきましたね。この会社の三つの柱のうちの一つなんですから、はっきりのみ込めるように御答弁願います。
  50. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 現在の、使用いたしております専用船でございますけれども、トン数は五千トン前後の船でございますので、おそらく将来海外から一般炭の輸入という問題になりますと、三万トンあるいは五万トンというような大型船での輸入ということになろうと思います。ただし、一般炭が輸入されました場合、現在国内で生産いたしております一般炭の炭鉱というものも、これは重要な位置を占めておりますし、今後輸入することによりまして国内一般炭に圧力を加えることのないような一つのシステム、というのも十分考えた上での輸入ということで踏み切らざるを得ぬのではなかろうかと思いますけれども、現在一般炭につきましては、輸入も認めておりませんし、石炭の輸入につきましては、現在行なわれておりますのは、原料炭及び強粘及び一部無煙煽石というのが入っておりまして、一般炭につきましては、全然輸入を認めておるような状態ではございませんので、今後そういう需要の拡大というものに伴いまして、必要な場合は歯どめということを十分法的にも規制した上で、輸入のほうも認めたいというふうに考えております。
  51. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 それで、石炭政策について若干触れてみたいと思うのですが、この間の委員会でも、たとえば二千二百五十万トンの石炭見直し中間答申の目標の中で、そのうちの百三十万トンは露頭炭でまかなうのだというお話がありました。これは北海道に関する事情でありますが、大体大まかな数字ですが、現に北海道で大量の露頭炭が出ておるのです。たとえば、一つの例をあげますが、空知炭鉱で明円工業、空知建設、北星企業、赤平建設等の四つの下請企業が採炭しております露頭炭の数量は、七十万トンといわれております。赤平の茂尻鉱業のあと地、あるいは芦別等で十八万五千トンクラスが出ておる。まだもっと多いと思います。それから、留萌の地区の達布で六万トン、穂別で赤平建設が三万トン、美唄、三笠の三美建設が十万トン、天北炭鉱で六万トン、合わすと私はもっとふえると思いますが、すでに百万トンオーバーしている露頭炭が出ているのです。この露頭炭は、現実に石炭専焼に使われていると思います、一般家庭燃料炭ですね。これはこの間政策見直し発言があったが、亘一千万トンの露頭炭とどういうつながりになるのか、現に百二、三十万トンの露頭炭が出ているのに、そのほかに新しく露頭炭に依存しようとするのかという現状と次の展望の問題、これを意味しておるのか、これは違うですね。現実に出しているのですからね。それ以外になお露頭炭を亘一千万トンも見込む、合わすと二百何十万トンという露頭炭が年間出てくることになるわけです。そういう受けとめ方でよろしいですか。
  52. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 現在北海道には露頭炭鉱が十三炭鉱ございまして、約九十三万トン生産しておるのが実態でございます。なおそのほか本州に三炭鉱、九州に七炭鉱ございまして、全国で二十三炭鉱、この全部の生産が百七十万トン近い数字になっております。これにこの前御説明いたしましたように、今後の、五十一年度の緊急対策といたしまして、百三十万トンの露頭炭の生産は可能ではないかということで、二百五十万トンの上乗せということで御説明したような次第でございます。
  53. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 露頭炭の発掘で、計画は九十三万トンですね。しかし、実勢は百二十万トン以上現実に出ている、こういわれている。そこでその上に百三十万トンの新しい計画に基づく一般炭の露頭炭を採掘する、その大部分は北海道であれすることになりますが、その場合問題が起こってきていますのは、現に露頭炭が鉱害を伴う、山をくずしたり田をくずしたり、木を切り倒したり、あとの整備をしていないという問題ですね、各所から問題が起こっております。現実にこのままでいきますと、国有林、道有林の伐採や、木を切り倒して土壌をめくってあとの手当てをしないということから、当然このままでいきますと、国有林を所管している営林署も道有林も、露頭炭生産を拡大することに拒否反応が出てくるのではないかという心配が伴ってくると思います。この点について、いまのうちに、石炭政策見直しの機会に根本的に、抜本的に石炭政策の軌道にそれがどうしても必要な分量として乗るなら乗るで、国策として軌道に乗せる対策が必要になってくると思います。たとえば、現実には現地の通産局や国有林を所管している営林署等の個別の話し合いは行なわれておるようでありますが、それをもっと一歩進めて、基本的に国の石炭政策の一環としてそれが必要だというなら、国の責任を明らかにして、通産省及び林野庁ときちんとした話し合いをしなければ、現地を調整できなくなってくるのではないか。もう一つは、鉱害反対の住民運動、市民運動が各所に起こって、農民からまで起こりかけておりますが、そうすると、その鉱害のあと始末をするのは地方自治体ですね。露頭炭専門の組を使ってやっている中小企業ですから、炭価がたたかれます。上納する会社にピンをはねられますから、勢い安上がりの乱掘をやる。したがって、一体どこで鉱害の始末をつけるのかということになりますと、それは地方自治体に必ずかぶっていきますし、住民の反対運動が起こる。ですから私は、この問題に関しては、露頭炭に関する分については、現地の通産局あるいは通産局と営林署、それから地元市町村、三者の露頭炭に関する調整委員会のような調整機能を持って、そして露頭炭採掘の後遺症のあと始末をきちんとやらせる政策がまず必要になってきているのではあるまいかと思いますが、この点について、それが石炭政策需要供給の中の重要な、一割以上を占める部分になってきて、これからも石炭見直しでどんどん露頭炭が必要になってくるという避けがたい問題が出てくる。同時に発生してくる鉱害問題等について統一的な、指導的な見解を明らかにしてもらわなければ、非常に現地で混乱が起こる。もう現に起こりつつあるという状況でありますから、この点については石炭部長並びに大臣の答弁をひとつわずらわしたいと思います。
  54. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 露天掘りにつきましては、これは露天掘りのみではございませんけれども、いわゆる施業いたしますときに、施業案の申請ということを通産局のほうに鉱業権者のほうから、授掘者のほうからいたします。このときに、いわゆる露天掘りのあと始末ということで、埋め戻しあるいは保安上の問題というような点も十分施業案の中に規制しておるというような次第でございまして、この規制をベースにいたし、なお、鉱業権者は、施業案の認可が出ますと、この認可をもちまして別途営林署のほうと契約を結ばれまして、いわゆる国有林内の立木の伐採とか、そういうものの許可を受けた上で、いわゆる露天掘りを開始されるわけでございます。いま先生指摘のようにいわゆる山が閉山したあと、採掘作業が済んだあとの始末という点につきましては、通産省のほうにおきましても、採掘途上におきましては、いわゆる監督指導というようなことで現地も指導しており、なお、保安面におきましては、立地公害局のほうで十分な指導をしておるわけでございますけれども、やめたあとの始末という点につきましては、一応営林署との間の契約が完全に権利者との間で結ばれたことを実施しておるかどうかというのが問題になるのじゃなかろうかと思います。そういう話も聞いておりましたので、うちといたしましては、営林署のほうと協議いたしまして、正式の文書のやりとりをするような機関を設けたらどうかということでいままで指導していたわけでございますけれども、いま先生の御指摘の地方自治体というのもここにひとつ入ってもらいまして、三者委員会というようなことでその協議機関を設けることも一つの有力なる案だということに理解いたしておりますので、今後そういう点につきまして、地方通産局のほうと十分打ち合わせをいたし、できるだけ御趣旨に沿うような方向でこの機関を設け、今後採掘あとのいわゆる鉱害問題の発生しないようにつとめたいというふうに考えております。
  55. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま石炭部長が御回答いたしましたように、三者協議については前向きに検討いたします。
  56. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 質問を終わります。
  57. 田代文久

    田代委員長 松尾信人君。
  58. 松尾信人

    ○松尾委員 電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案、これにつきまして質疑をいたすわけでありますが、本日は幸い通産大臣もお見えでありますので、この石炭の基本的な問題、このような法案のその根元に立ちふさがっておる問題の二、三につきまして大臣に逐次質問していきたいと思います。時間がありませんので私も非常に簡略に申し上げますので、大臣もすぱっとお答え願いたいと思います。  いままでの石炭対策、これは非能率炭鉱を淘汰する、そして優良鉱区に生産を集中する、スクラップ・アンド・ビルドというようなことでまいったわけであります。そして政府が買い上げ措置をやる、非能率炭鉱は閉山していく。また続いて政策的には原料炭への傾斜がございまして、一般炭というものは公害規制と価格の面から減少してきた。おまけにそういうところに安い油の進出で、体質の弱い中小炭鉱、中堅炭鉱が瓦解する、閉山が相次いできた、生産量がどんどん減った、四十三年ごろからは大手炭鉱の大型の閉山も続出してきた、そして労働者が減少、賃金の低水準であります。  そういう中で、四十八年上期の石炭大手八社の損益見込みでありますけれども、これは、五次政策による政策効果を見込んでも、なおトン当たり千六百五十円の赤字であるというようなお答えもありました。四十七年度に比べましても約九百円余の悪化になるわけであります。そういうことから、結局第一次の肩がわり、第二次というようにやってこられて、四十八年度より第三次の肩がわりというものが始まっております。そういう中でも新たな債務が累積されておる、こういうことでは、要するに石炭産業というものの健全な経営ができない、発展も望むことができないわけであります。  それで、どうしてもいま大臣にきちっとお考え願いたいと思いますことは、この石炭価格体系というものをもう一回よくお考えにならぬといかぬのじゃないか、こういう問題であります。要するに石炭会社というものをどういうふうにしていくのか、経営のできるような、また、政府の考えておるこの新しい石炭政策見直しというものにマッチするようなそういうものが、まず炭価からお考えにならぬとできないのじゃないか、こう思うのでありますが、大臣のお考えはいかがですか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は事務当局から御答弁申し上げましたように、最近のC重油の値段が上昇した、そういう面から見ましても、炭価値上げにつきましてはチャンスが訪れつつあると思います。そういう情勢をよく踏まえまして適当な炭価値上げするように、われわれも側面的に努力してまいりたいと思います。
  60. 松尾信人

    ○松尾委員 そのような機会が訪れておると思うとおっしゃいますけれども、実際問題としましては、訪れておるのじゃなくて、もうぴしっとした対策を立てなければいけないときに来ておるわけであります。もう政策炭価というものもお考えにならぬといかぬのじゃないか。特に労働条件の改善の問題から申しましても、これは金属鉱山に比べて石炭のほうは二万七千円も賃金が安い、これは早急に埋めなければできません。そういうことで計算しますと、炭価トン当たり一カ月約四百円ぐらい上げなければできない。これは年間でありますと約五千円になります。ほかに春闘の目標が七万一千六十三円というような大きな目標も炭労は掲げておるわけであります。でありますから、結局いままでのこの会社の経営の悪化、そうして肩がわりしてあげる、そのような政策の矛盾もあるわけでありますから、会社としては、もう当面何としても炭価を改めてもらわないといかない。これは会社のことではありませず、石炭のことを思えば私は当然だと思うのであります。また大臣いま、新しい石油価格が非常に炭価見直しの好機会と思うとおっしゃいました。なるほどそのとおりです。これは四十八年の上期だけでありますけれども石炭カロリー当たり価格が六十三銭五厘、重油のほうがカロリー当たり価格八十九銭八厘、このようにすでに四十八年の上期でも大きく開いてきました。これは四ドル弱の原油からの重油価格であります。これが十ドル原油とすれば、これが二円ぐらいにもう重油のほうはなっていくわけです。石炭のほうは六十三銭五厘、このように低く押えられているわけであります。ですから、そこに何かお考えをきちっとしなくちゃいけない。炭価のきめ方も、需要供給関係によるといままできておりますけれども、要するに政策炭価というのはもう考えなくちゃいかぬということになりますと、炭価のきめ方も何かここで発想を改めて、きちっとしたものがなくちゃいかぬのじゃないか、こう思うのですが、重ねて大臣いかがですか。
  61. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近の試算によりますと、約七十銭弱と二円との差のように私は聞いております。でありますから、大体御指摘のような格差はいまあるわけで、一円二、三十銭の開きが出てきておる。それはいいチャンスが訪れつつあると私も思っておるわけです。したがって、適正な価格に引き上げるように努力させていきたいと思っております。
  62. 松尾信人

    ○松尾委員 炭価のほうはいまおっしゃいましたとおりに、これは速急にきちっとしたものをお出しになる必要がある。何もこれは会社を単に喜ばせるというのじゃなくて、いまから新しい石炭政策をとっていこうとなさるならば、そういうことが当然前提として決定をされなくちゃいけないであろう、こういうことであります。  次に問題となりますのが、需要供給関係になるわけでありますが、需要面におきまして政府もいろいろ考えられていらっしゃいますけれども、伺ったところだけでは、一般炭についてでありますけれども、百万トンぐらいは混焼率の引き上げ等でふえるであろう。また、石炭の専焼火力発電で、北海道分だけでも八十五万トンは要る。三井アルミの第二期の工事、これがやがて六十万トンの石炭需要がある。このようなことがありますし、さらに石炭専焼火力発電所を設けていきたい。それには約五十万トンなり百万トンぐらいの一般炭というものが必要になるわけであります。  次にまた、大臣の構想でありますサンシャイン計画。その中にあります石炭のガス化、液化、こういうようなものは早目に実現しなくちゃできませんし、大いに時期的に急がれる必要があると思うのでありますが、それはそれとして、やはりそういうものに反応する需要をきちっと、今後何年あとでありましょうともお立てになっていませんと、次に言う供給の体制が確立されぬであろう、こう思うのであります。でありますから、今後数年間にわたって新たな需給の面をひとつ考えられて、その需給の策定が必要であろう、こう思うのでありますが、いかがですか。
  63. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 同感であります。でありますから、第五次政策を基礎にいたしまして、これに再検討を加えて新しい政策をつくるように、いずれ適当なときに審議会にはかろうと思っております。
  64. 松尾信人

    ○松尾委員 そのとき、一言でありますけれども、現在の山で九十万トン増産する。北海道六十万トン、三池、池島で三十万トンというようなお答えであります。また露天掘りで百六十万トン、計二百五十万という計画しかございません。それで、需要というものが——やはりどんどんつくっていくのだ、油にかわるものをつくっていくのだ。幸い日本にある資源からそういうものをやっていくのだという考えに立つならば、いま大臣のおっしゃったとおり、これはそういう観点から石炭需要供給というものをがっちりお立て願いたい、このようにこれは強く要望するものであります。  そういう点にからみまして、次は石炭の輸入問題でございますけれども、これは四十九年度において百万トンというような話が出ております。これがやがてうんとふえてくるのじゃなかろうか。日本の増産というものがなかなか思ったとおりできません。そうして需要というものは、ある程度政府の施策によりましてついてまいりますし、高い油というものもどんどん買うわけにまいりません。そういう点からいえば、石炭の輸入問題というものは避けて通ることができない問題であります。そういうときに、だれに一般炭の輸入を取り扱わせていくか、こういうことが一つ問題になるわけでありますけれども、この電力用炭販売株式会社、そういうものに担当さしたらどうかというような意見もございます。そういうところで、大臣が今後輸入というものをどのように考えておるか、それをどういうところに取り扱わせるか、この点、いかがですか。
  65. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 一般炭の輸入につきましては、石炭の位置づけにつきまして現在総合エネルギー調査会及び石炭鉱業審議会審議をやっていただいておりますので、この審議を踏まえまして、国内炭の引き取りに悪影響を及ぼさないというような方式につきまして結論を出したいというふうに考えております。  しかしながら、それまでの間国内炭の供給増につとめましても、なお石炭需要を十分まかなうことが不可能というような場合も出てくるのではなかろうかというふうに考えております。これにつきましては、国内の高硫黄炭との混炭ということをまず第一に考えまして、緊急輸入する場合もあろうかというふうに考えておりますけれども、これも、単なる制度も何もなくして輸入するというのではなくして、一応方式なりそういうことを十分検討いたしまして、緊急輸入であっても審議会の場を経まして輸入するように考えたらどうかというふうに考えております。  いま申し上げますように、今後一般炭の輸入がふえるという前提に立ちました場合は、いわゆる国内の引き取りに悪影響を及ぼさないということを第一条件にしまして、いわゆる輸入の窓口を一本に行なうとか、あるいは国内の一定量を引き取ったところに輸入炭を割り当てるとか、何かそういうような一つの方式というものを確立した上で実施したいというふうに考えております。
  66. 松尾信人

    ○松尾委員 まだどういうふうに取り扱わせるかということはきまっていないわけですね。今後きめたい、こういうことでありますか。
  67. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 そのとおりでございます。
  68. 松尾信人

    ○松尾委員 次の問題は、来年度からの石油関税の引き下げの問題であります。これはどうなることかわかりませんけれども、大体大蔵省がそのことを考えておる。かりにこれが実現されますと、石炭特別会計というものに大きな影響があるわけでございます。大蔵省が考えておる石油関税の引き下げ、これもいろいろ理由が確かにあります。これは大臣相互のいろいろな折衝に残るわけでありますけれども、こういう面における大臣の腹がまえ、かりに大蔵省の意見が通った場合に、関税の引き下げが行なわれる、そういうことになった場合に、ではこの石炭の特別会計というものはどのように持っていかれようとするか、この二点お答え願いたい。
  69. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油の関税は石炭政策の重要な財源になっておるものでありまして、それがなくなるということは石炭政策の上に非常に支障を来たすわけでございます。したがいまして、この財源がどういうふうに大蔵省等によって別個に見られるか、そういう見きわめをつけないうちはそう簡単に賛成をすべきものでない、そう思います。  それから先ほど御答弁申し上げました輸入炭の問題は、これは多賀谷委員からも前御質問がありまして、取り扱いを非常に慎重にせよという各党からの御要望もあって、そういう意味でこの取り扱いは非常に慎重にやらなければいかぬと思います。まだ方途をきめたわけではございません。
  70. 松尾信人

    ○松尾委員 輸入炭の問題並びに石油関税の問題は、ただいまの大臣のお答えを了といたします。これは非常に重大な問題でありますので、次のかわるべき財源その他につきましては、おっしゃったとおりしっかり大臣もひとつがんばっていただきたい。そして石炭というものをあらためて日本が見直すんだという方向でこれはきめるようにしていかなければいけない、このように思うのであります。  それから、これで私の質問が大臣に対しては最後になりますが、先般ここへ参考人を呼びましていろいろ意見を聞いた中に、これは参考人のことばでありますが、幸い日本は石炭のほうは大手数社になった、私企業のメリットを生かして新たな石炭政策の強力な実行機関として再編成をしていく必要があるのではないか、いわば石炭開発公社というような考え方を示したわけであります、私もその点についていろいろ考えるわけでありますけれども、いまの石炭会社自体は、先ほど申し上げましたとおりにいろいろ力が弱っておる。ですから閉山炭鉱の再開発もできない。ましてや新鉱の開発等になりますと、これはもういまの石炭企業では手の及ぶべき範囲でもなかろう。ところが政府の答えは、やはり何としても閉山炭鉱の再開発をやりたい、そして新鉱の開発もやっていくんだというようなお答えも確かにありました。そういう面から強力な石炭の今後の見直しによる新しい対策を立てていこうとするならば、いまの現状石炭の企業でいいのか。何かきちっとしたものをつくっていってそしてその体質をつかみ、強めて、そして政府の期待する方向へ実現のできるものをつくっていくべき方向にあるんじゃないかともまた考えられるわけであります。非常にむずかしい将来にわたることでありまして、これははっきりとは言えない点があるかもしれませんけれども、やはり方向としてはお考えになっておらなければぐあいが悪い。そして、一つの大きな日本の新しいエネルギー政策、その中の石炭の位置づけ、その中から一つの力強い実現力のある公社の設定というようなことについて、どのように大臣がお考えであるか承っておきたい。
  71. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題は、自民党と各党の間にかなり考えの違う基本点でございまして、一つはやはり資源的安全保障の問題、それからもう一つは経済的採算性の問題、そういうような問題がからんできておる問題であります。  われわれとしては、自由企業というものを基本にして、それに対してある程度国家的な規制を加えていく、あるいは助成を加えていく、そういう考えに立って、いわゆる管理委員会というところまで前進してきておるところでありますが、今後どういう形態にするかということは、これらの経済性とかあるいは公共性とか、そういうエネルギー関係の需給関係をよく見通しながら慎重に検討してまいりたいと思います。
  72. 松尾信人

    ○松尾委員 これは一つの党としての考え方とか、一つのあるイデオロギー的な考え方というような問題じゃなくて、この石油危機、石油ショックから新しく石炭見直していこう、そういうときに来ておって、いまのままでこの自由経済主義の前提の、そしてまた石炭というものがだんだん切り捨てられてきたという現状から、これは大きくそれを変えていかなければできませんし、また、国の一つの大きな新しい意味のエネルギー政策の中の石炭、そういうものを今度は実現するという段階に来て、私企業のこのエネルギーを最大限に活用しただけではたして国の希望するものができるかどうか。今後ともにこの石炭というものは、いろいろ政府の施策のもとに、ガス化、液化等の問題、そして排煙脱硫の問題もあわせて出てまいりますけれども、そういう中から考えてみますと、これは私企業だけにまかしていって、はたして日本国民が納得できる資源エネルギー政策ができるのであろうか。石炭について特にその感が強い。こんな感じを私は持ちます。  それから、石油開発公団にいたしましても、だんだんと権限を拡張いたしまして、今回また改正の法案もお出しになるわけであります。そういう点からいきましても、やはり資源とか食糧という問題につきましては、私企業というものではたしていいのかどうか。特にこの資源エネルギーの問題につきましては、ぼくはここは発想の転換というものが必要じゃないか。これは基本的に資本主義をいただき、またはいろいろの社会主義の考えを持っているという問題を離れまして、私は言っておるわけであります。そういう方向に行くのじゃなかろうか、そしてどのようにしたら政府の施策というものが十分に実現できるのか、このことから私は言っているのでありまして、その主義、主張の基本的な問題じゃなくて、中曽根通産大臣が今後こうしていきたい、そういうものがはたしてできるかできぬかということに関連して言っておるわけでありますから、あなたもそのつもりでお答え願いたい。もう一回、これで終わりでありますから。
  73. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 フランクに考えまして、この問題はセキュリティーの問題とか、あるいは経済性の問題とか、そういうような国民経済の基本に関する部面に触れる問題でありますから、非常に慎重に検討してみたいと思います。
  74. 松尾信人

    ○松尾委員 おっしゃるとおり、これは簡単にお答えは出ませんでしょう。ですから、慎重に決定なさることと思いますけれども、こういう考え方があるのだということは、やはり何党かに党でなくて、私は当然大臣としては自分の腹ちもりとか、腹がまえというものをおつくりになって、あらゆる施策の基本になさるべきであろう、こう思うのであります。  それから関連でありますけれども、やはり何といいましても海外の石炭の開発の問題であります。これは現在、日本の私企業等にまかせてありまして、どのようになっているのか、この実情を簡単に知りたいということと、そして今後、そのような非常な海外からの原料炭値上げもどんどん出ております。また一般炭の輸入もしなくちゃできません。そういう中から、やはり石炭というものを供給していく面で輸入も必要だ、その中の開発輸入ということになりますから、そういう面に対してどのようにお考えであるか。それを今後は、いままでのような形でいいのか、石油開発公団みたいにある程度はそういう公団等で力強く開発輸入する必要があるのじゃなかろうか、鉱区の設定等も積極的にいまから考えていないと、これは後手後手でやはりうまくいかぬのじゃないか、このように思うのでありますけれども大臣、いかがですか。
  75. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は確かにおっしゃる要素がございまして、海外関係につきましては、片っ方では石油開発公団があり、片っ方では動力炉・核燃料開発事業団というものがエネルギー、原子力についてはございます。それらの点も考えまして、海外活動がどういうふうに今後日本経済に影響していくか、よく検討の上研究してみたいと思います。
  76. 松尾信人

    ○松尾委員 きょうは問題が、簡単にお答えできないような問題であったと思います。それで、そういう問題については慎重に考えるとか検討するとおっしゃいますけれども、私はすべてが、形式的な、前向きにいたしますというような答えでなくて、これは大臣としては真剣に受けとめて、そして重大な問題も含んでおるから慎重に考えさせてくれ、そういうものを十分そしゃくした上で今後施策の基本にしていきたい、このようなお考えと思うのでありますけれども、くどいようでございますが、一言その点を聞いておきたい。
  77. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御答弁申し上げましたように、この問題は重大な問題を内蔵しておりまして、非常に弾力的な考えで、あまり有職故実にとらわれないで、フリーに検討してみたいと思います。
  78. 松尾信人

    ○松尾委員 じゃ、質問を終わります。
  79. 田代文久

    田代委員長 午後五時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時一分休憩      ————◇—————    午後五時二分開議
  80. 田代文久

    田代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多田光雄君。
  81. 多田光雄

    ○多田委員 通産大臣にちょっとお伺いしたいと思います。  二月二十五日の当委員会において、私が、今回の石油危機の教訓から、国内エネルギー資源、特に石炭、水力ですが、こういう自給度を高めるべきであるということを大臣にもお話したわけですが、それに対し大臣が、いわゆるセキュリティー、経済的安全保障ということばを使われましたが、それについてこういうふうにお述べになっているわけです。「国産資源を使って、外国資源ばかりに依存して外国側の事情によって国内的変動があまりひどくなるようなことをできるだけ防ごうという、そして国内的な政策によって安定性を持続していこうという政策だろうと思います。」こういうふうに述べられたわけです。私どもはこのことばの限りでは賛成したいというふうに考えております。ただ、大臣も強調されたこの安定性を持続していくという意味で、先ほどの御答弁でも、セキュリティーの問題といま一つは経済性の問題だというふうに言われたわけです。私は、一つ需要供給関係だろうというふうにも思うのですが、特に最近電力やその他から需要が大きくなってきた。供給がこれに見合わない。それで、年内にも外炭も入れなくちゃならないだろう、こういう計画や話も出ていることは当委員会でもはっきりしているわけですけれども、ここにもいわば需給の一つのバランスというものが、つまり外国炭にやはり依存しなければならない、こういう傾向が出てきていると思うのです。これは政府の施策の結果だろうと思うし、同時にまた、これが石油の二の舞いにならなければいいがというふうに危惧するわけです。  いま一つ大事な問題は、この安定性の問題で、実は石炭を掘る労働者、これが一体どうなのかということです。これについては、政府側もこれから石炭見直していく場合の一つの大きなネックとして、労働力の確保ということは再三言われているわけです。私は、この労働力の確保、あるいは労働者の保安をほんとうに大事にして、そして労働条件をよくしていくということを抜きにして、さらにまた、この労働者がいま四十数歳という非常に高年齢です。これはもう数年たつと五十歳になってしまうわけです。ある山ではもう平均年齢四十七歳というところがあるそうです。そうしてみると、数少ない労働者が減って、この先どうやって労働対策を立てていくのかという問題を抜きにして、これからの石炭見直しもなければ、そしてまたエネ調にかけておられる石炭を含めた長期の総合的なエネルギー政策というものも、砂上の楼閣というか、あるいはまた実質的に企業本位のエネルギー政策になっていくのじゃないかというふうに考えております。  そういう意味から、きょうは保安の問題を中心にして、これは単に労働者の命の問題に限らず、日本のエネルギー政策の根幹にかかわってくる問題として質問をしたい、こう思っております。  そこで、まず労働省に伺いたいのですが、産業別の労働災害の発生状況を、度数率、強度率、これに分けて、全産業の平均と石炭産業の割合はどうなっておるか、これを数字だけでよろしいから答えてください。
  82. 山口全

    ○山口説明員 鉱山労働者にかかわる災害発生状況については、他の産業と違いまして、事業主から報告される死傷病報告というものがございませんので、労働省が行なっております労働災害動向調査、この結果によりましてお答えしたいと思います。  四十七年度における労働災害の発生状況は、度数率で申し上げますと全産業は七・二五になっております。これに対しまして石炭鉱業は一二六・五六になっておりますので、全産業に比較して約十七・五倍の度数率となっております。  同様に強度率について申し上げますと、全産業については〇・七二でございます。石炭鉱業については九・四七となっておりますので、全産業平均の十三・二倍、このようになっております。
  83. 多田光雄

    ○多田委員 それから、引き続いて労働省に伺いますが、産業別の労働時間で残業などを含めた所定外時間、これは全産業と炭鉱の比較はどうなっておりますか。  それからいま一つ、これも労働省に伺いますが、昭和四十七年度の石炭労働者の数と、それから労災保険の同年度における新規受給者はどうなっておるか。これも数字だけでよろしいから答えてもらいたい。
  84. 山口全

    ○山口説明員 石炭産業の従事労働者数は、労災適用の労働者数について申し上げますと五万四千二百三十となっております。  労災の支払い状況について申し上げますと、四十七年度中に支払った総額は七十八億七千百五十万となっております。  それから、新規の受給者数は、労災統計の場合に不休災害も含みますので、一日も休まない者、療養だけの者も含めて申し上げますと、その数は三万四千九百九十八となっております。
  85. 多田光雄

    ○多田委員 私は、数字をあげてもらったのは大臣に聞いてもらいたいと思ったからなんですが、たとえば労働災害の発生状況は、いま言ったようにその度数率において全産業平均の十七倍です。最高であります。それから災害の強度率についても十三倍なんです。それからさらに労働時間、残業、これまた全産業で一位です。さらにその中身を見ますと、労働災害と労災保険との関係を見ても、さらにそれがひどいわけですね。  たとえば北海道の例を申し上げますとこういうことなんです。全産業では百二十万人、そこで新規受給者が七万二千人。それに対して石炭産業は、全労働者が三万三千七百七人に対して二万四百二十四人、六〇%です。ですから、いろいろな角度から、炭鉱労働者の災害というのは依然として全国一位である。しかも、ここの中に死者が大量に含まれているわけなんですね。ですから大臣、私こう思うのです。いま、石油危機以後石炭が見直された。そして電力、鉄鋼がある程度の需要が出てきて、石炭企業にとっては再び日の目を見た。われわれも、日本の自国のエネルギーをもっと消費させて、大臣の言われるセキュリティーを高めていきたい、こういうように考えていて、何となく日の目を見たように思うけれども、正直に言って、石炭産業の崩壊というのは依然としてとどまっていない。  その一つは、その石炭産業をささえていく一番大事な労働者の実態、この保安の面から見てもこのとおりであって、労働者の老齢化とその労働力の崩壊は、これは一刻も休まず進んでいっているのです。ですから私は、この間大臣のおられない委員会で言ったのです。エネ調に答申されるのはけっこうだ。その場合に需要が幾ら、供給が幾らというだけではなくして、十年後にはどれだけの労働者を養成していくんだ、あるいは研究者をどれだけ養成していくんだ、研究機関をどうつくっていくんだ、こういうことを含めた総合的なエネルギー政策をやらなければ、また何年後に、石炭幾ら足りないから外国に依存する、こういうことになってしまって、石炭産業は百万トンか二百万トン掘れて、それで手一ぱいだ。なぜなら、二百五十万トン増産されると言いますけれども、政府の答弁によっても、新規の山をつくるとすれば、これに三千人必要だと言われているのです。ですから、そういう意味で私は、この労働力の問題をいま真剣にあわせて考えていかないというと、単に長期プランをつくっても、それは砂上の楼閣になってしまうんだということを強調しておきたい、こう思うのです。  そこで通産大臣、お伺いしますが、大臣は二月二十五日、三月に炭鉱災害を総点検するというふうに言って、その指示もされたというふうに聞いておりますが、その結果はどういうふうになったか。つまり、大臣が御報告を受けた限りにおいて満足すべきものであったか、不満足であったか、どこに原因があったか、その程度のことをひとつ、おつかみになっておると思いますので、御回答願いたいと思います。
  86. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 炭鉱災害は、一昨年がたしか百十数名の死者を出しまして、昨年が六十三名に減って喜んでおったところです。ことしも三月ぐらいまでに十七名の死者ぐらいで——十一、二名でしたか、ともかく昨年の十七名に対して少し減っておったと喜んでおりましたが、遺憾ながら、北海道炭砿汽船に事故が頻発いたしまして、組夫等を含めて十名に及ぶ死者の災害を出しました。非常に残念に思ったところでございます。  そこで、責任者を呼び出しまして、われわれが進めておる総点検とともに、この会社自体についても厳重な点検をみずから行なうとともに、われわれのほうも監督して行なわしておる、そういうことでございます。詳細は部長から御答弁申し上げます。
  87. 多田光雄

    ○多田委員 確かにこの北炭の事故は多くて、これもこの間、石炭部長は、死者は非常に多い。先ほど大臣は、死者は減ったと言われます。数字は減っていますけれども、大企業の死者は比率からいうと横ばいなんです。で、検査結果として私の伺ったのでは、十一件の作業禁止件数、それから二百二十三件の改善指示件数が出された。この資料も私はいただいております。同時に、立地公害局長の名前で北炭社長に対する警告が出されたということも聞いているし、北炭では、あわてて各社の幹部の人事異動をやったということも聞いています。それなりの反応をされて、保安当局も、言ったように努力をされたということは私も認めたいと思います。しかし大事なことは、この数年来、全炭鉱で一番災害の多い北炭について、ほんとに現場の実情、そしてその原因がつかめているのかどうなのか、これをひとつ伺いたいと思います。これは保安関係で……。
  88. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 北炭につきましては、この二月に総点検を実施いたしまして、ただいま先生から御指摘のございましたように、十一項目の作業禁止、それから八十数項目にわたります法規違反を指摘いたしまして、二百件に及びます改善指示を実は実施してきた次第でございます。しかしながら、北海道炭砿汽船につきまして災害を見てまいりますと、四十八年度の災害につきましては、他社と比べましてそう大きな災害率ということではなかったわけでございますが、この一月以降死亡者が急増しております。  その多発しております原因につきまして、災害急報その他調査いたしましたことから現在分析を進めておるわけでございますが、その中の問題点といたしましては、基本的にはやはり保安意識の問題があろうかというふうに考えておりまして、なお全般的な保安の管理面、保安教育面などの保安確保体制にも、やや欠く点があったのではないかというように考えております。  なお、現在までに、ガス関係の事故を含めまして、九件のやや大きな事故の発生を見ておるわけでございますが、その大ざっぱな分析といたしましては、会社と申しますか、保安統括者あるいは保安技術職員等の責任が認められるものが約七件、この中にはしかし、数件につきましては、やはり作業実施者当人の不注意と申しますか、不安全行為というようなものが重複しているような例も見られるわけでございますが、約七件というものが、どちらかといえばそういう管理面に問題があったのではないか。それから残りの二件でございますが、これについては、やはり作業者本人の不安全な行為あるいはごく単純な不注意あるいはミスというようなものが原因ではないだろうか。このように考えている次第でございます。
  89. 多田光雄

    ○多田委員 いま言ったのは北炭全体ですね。
  90. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 はい。
  91. 多田光雄

    ○多田委員 それじゃ、北炭がいわば全力投球して開発している例の北炭夕張沼ノ沢新鉱、これは政府から百数十億の金が出ていて、いまだにこれは操業開始になってない、つまり出炭してない。そして、ここの山は、ある専門家に言わせると、あれは山師の山だとさえ言われている山なんですね。しかも、最初から六百レベルという一番低いところから始めていく山なんです。ここで、この一月から三月の中旬までに何回事故が起きているか、そしてそのうちどれだけ報告になっているか、それをひとつ言ってください。
  92. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 お答えいたします。二月二十一日、運搬事故で罹災者一名発生した災害がございます。同じく二月の二十四日、落盤で一名死亡、一名軽傷の事故が発生しております。それからまた三月十四日、ガス爆発がございまして、軽傷者二名の事故が発生しております。この三件について報告が参っております。
  93. 多田光雄

    ○多田委員 ところで聞きますけれども、北炭新鉱で保安上一番注意すべきこと、これは前々から皆さんも言っておられたけれども、ああいう深いところでガスの問題が一番大きい問題だ、その次崩落だ、こう言われていましたけれども、これはそのように理解していてよろしいですか。
  94. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 先生指摘のとおりだと思います。
  95. 多田光雄

    ○多田委員 それじゃ、次に聞くような日程と事故について、聞いてなかったら聞いてないと言ってください。  まず一月十一日。これは現場は中央ナンバー一、立て入れ坑で何が起きたのか、これは全然報告を受けていませんか。
  96. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 お答えいたします。  死亡者を発生したような事故あるいはガス爆発というような大災害につながるおそれのある事故につきましては、直ちに監督局から当方に報告がございます。それからそれ以外の小さな、と言いますとちょっと穏当じゃないかもしれませんが、それ以外の事故につきましては、月報という形で月々まとめたものとして報告が監督局のほうになされているというふうに聞いております。
  97. 多田光雄

    ○多田委員 その大災害につながると判断するのは、会社からの連絡があって、そして現地の保安監督官が行って判断するのだろうと思うんだが、もし客観的に大災害につながるという事故であって会社がそれを報告しなかった場合は、それは当然見のがされますね。そうですね。それも簡単に答えてください。
  98. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 大体そういうことじゃないかと思われます。
  99. 多田光雄

    ○多田委員 時間の関係で……。私ずっとこれを調べ、労働者、現場の係その他に聞いた、これから申し上げる八件の問題について私は日程を追って話しますから。  一月十一日、先ほど言った場所です。ここでは御承知のとおり沼ノ沢新鉱で最初のロングを準備しているところです。ハッパをかけたと同時に約六十立方メートルのズリが出てきて、ガス量は七ないし八%出た。それメモしておいてくださいよ。その圧力で下四番層に岩粉が張りついた。これはガス突出の疑いを持たれる一つの現象なんです。そして現場は即時全員退避した。しかし会社は、これをガス突出と認めないでガス流出といっている。これが一つ。  それから第二回目、これは同じく新鉱の第二立て坑ナンバー一連絡坑道、これは先ほどおっしゃった三月十四日のガス事故で五名のやけどの出たところです。ここではやはりガスが出て、一月二十九日ですよ、ガス量は七ないし八%が確認された。ズリの噴出状況は二十二立方メートルのズリ。これがここでも下四番層に張りついておる。会社は突出として認めてない。死傷者はもちろんない。これは報告になっていない、いまの第一回も第二回も。  それから第三回目、二月五日、場所はマイナス六百レベルの第二立て入れ坑です。事故の概況を言うと、ガス抜きボーリングのロッドが異常熱でもって折損の事故が起きている。そしてここでは即時関係者を退避させているのです。そしてこの事態の中で、係員が酸素ボンベをつけて消火作業に当たっている。ガス量は二%といわれております。  それから第四回目、二月六日です。場所は第二立て坑ナンバー一連絡坑道。現象はハッパをかけたあとにガスが出てきた。そして二十五立方メートルのズリが出て、上四尺層に突き当たっている。ガス量は三ないし四%台といわれているのですね。しかし会社は、突出と認めてない。  それから第五回目、二月十三日です。場所は同じく新鉱の第二立て坑連絡坑道です。これは直接ガスではないが、天盤が高く抜けているのでカラコを組んで押えていた。ところが岩粉の異常くずれがあった。ガスの検定の結果、五ないし六%あったといわれています。これは死傷者はありませんでした。たまたまこのとき夕張の保安監督官が定期検診で入っていたのです。そしてその現象を見て即座に全員を退避させた。同時に全面的なガス測定の指示をしたわけです。そして掘進の切り羽の禁さくを行なっている。労働者はこれを見て非常に痛快だったと言っているそうです。  それから六回目が先ほど報告のあった二月二十一日ですね。これは下請の労働者一人死亡した。これは炭車と打柱の間にはさまれて死んだのです。ただついでに言っておきますと、これは私が聞いたことだが、この下請の三井建設の組の幹部は労働者にこう言っている。この事故はあまり大げさに公表しないでほしい、あまり大げさに騒ぐと北炭から仕事をもらえないから。  さて第七回目、それも先ほどおっしゃった二月二十四日、これは一名死亡です。  それから第八回目、三月十四日、これも皆さんお認めになっている。ガス事故でやけど五名が出ておるわけです。  つまり、少なくともガスに関係するもので、あなた方が認めておるようにのっけから六百メートルというところを掘っていって、多くの技術者までが疑義を持ち、皆さんが北海道の札幌の保安監督局に学者、技術者を含めた保安を中心とする小委員会まで設けているこの炭鉱です。しかも、へたをすると大事故につながっていくかもしれないという中で、ガス関係が四回ないし五回起きている。これを重大事故の前兆か、あるいはつながるというふうに判断はだれがするのですか。私が述べたことがうそだと思うならば、現場の労働者に全部会ってごらんなさい。こういうことが皆さんのところに報告来ていますか。  その報告を聞く前に私は皆さんに申し上げたいのだが、先ほどから言っているように、こういう技術的に困難な深部採炭の山で、ガスや崩落のおそれがあり、しかも政府が国民の血税から百数十億円の金を投じている、そして炭鉱関係者は全体が注目しているこの山で、かりに保安法規にあるガス突出でなかったとしても、ガスが出たというので退避までさせている、その事故の報告やあるいは届け出や連絡さえしてないのかどうなのか、ここに問題があるのです。そういう問題まであなた方がほんとうにメスを入れたのかどうなのか。上つらの数字だけ見て、これから研究します——だから私は言っているでしょう。物理的な研究はいつまでたってもよろしい、問題の本質を明らかにしなさいということを毎回言っているのだけれども、いつも絹のハンケチで岩をなでるような原因究明しかやっていない。これらの事故についてあなた方に報告がありますか。こういうのはしなくてもいいと思っていますか。
  100. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 ただいま先生の御指摘の中で、第五回二月十三日の災害につきましては、報告が本省にも上がっておったようでございます。ただいままで私が聞いております範囲につきましては、一回から四回、すなわち一月十一日、一月二十九日、二月五日、二月六日の災害につきましては報告が参っておりません。しかしながら、このようなガス突出のような事故につきましては、これを直ちに監督局部長に報告するようになっております。これは規則の六十八条であります。したがいまして、直ちに実態を調査いたしましてしかるべく処置をとりたい、このように考えます。
  101. 多田光雄

    ○多田委員 会社は、人が死んだとか腕を折ったとかいう事故あるいは落盤というような問題はすぐ報告するんですよ。しかしこの山にとって致命的ともいえるガスの問題についてはひた隠しにしている。  それは、私のところにこの新鉱について第二回目の投書がきている。第一回目はいつか皆さんにお話しした。ちょっとその投書の一節を読んでみます。これは長い間先山をやっている人で新鉱に行っている人ですよ。「「保安は万全と鳴ものいり」で宣伝してきた新鉱開発が保安状況が“一触即発”いつ災害が発生するかわからないハダ寒いなかで作業されていることが」今回の二月二十一日の事故ではっきりしまして、「労働者家族はいかりをふるわせています。」そして、この事故の内容をくどくどと述べて、こう言っています。「今平和鉱より新鉱え出向している坑内員五十名の労働者は、会社、係長、主任が「新鉱先のりは名誉なことだ」 「君達は先にやるのだ」 「開拓者精神で頑張ってくれ」とうまいこと言っておだててつれていった。」「ことわると仲間に悪く泣く泣く行ったのだ。会社の術策にひっかかった。年令やバス通勤、入学期の子供のことを考えると心配だ。新鉱では時々ガス突出があるので、仕事に行くにも特攻隊「片道切符」で災害と背中あわせで作業している。」それからまだある。「あの発破の時六十M先は「真赤な火の海だ。逃げる方え火が追っかけてきてもう駄目かと思った」と悲痛な感想をのべています。」これはこの人が聞いたことなんです。そして「Kさんは」——ここへ「Kさん」と書いてあります。「会社の保安サボとてっていして斗わないと命がない。石炭出る前に」——まだ石炭が出ていませんから、「石炭出る前に消される。」そしてこう言っていますね。「保安団交に俺達も入れるべきだ」 「保安監督署はどこにあるのだ」 「通産省や労働省の所在はどこだ。ゼニコがなくて行けないが、手紙で会社の保安無視を訴えてやる。」こういう痛切な投書が、数日前私のところに来ているんです。  つまり、私が数字をあげたのは、皆さんの保安の調査、やられたことはけっこうですよ、大臣の命令でやられたことはけっこうですが、ほんとうの原因を皆さんがまだおつかみになっていない。  そこで、私は大臣にお伺いするのですが、こういう大災害につながるおそれのあるこの種の事故については、これは山によっていろいろ性格が違うでしょう。しかし、これは監督署は知っているはずなんです。法改正をまつまでもなく、たとえば行政指導で、報告、届け出、このワクを拡大して義務づけるべきだと思いますが、これはどうでしょうか、大臣
  102. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 北炭の新鉱につきましては、私が冒頭に申し上げましたように、ことし以来、事故があまりにも多過ぎるものですから、通産省は事態を非常に重視いたしまして、この山を中心に特に強い監査を行なっておるところでございます。いままでの法規あるいは行政指導、基準等を厳格に守って、いやしくも人命をそこなうようなことがないように、今後ともこの北炭新鉱を中心に、重点を入れて監督を強化するつもりであります。
  103. 多田光雄

    ○多田委員 いや、大臣、私の伺っているのは、いろいろ重視もされていると思いますが、保安法規で届け出の内容があるわけですよ。しかし、重大事故につながるようなものは、会社が判断するわけですから、だから、特に北炭新鉱については、ガスの出た問題だとか崩落のおそれあるような問題については、これは法規に縛られないで逐一これを監督署に報告させる、こういうことをひとつ行政指導でできないのか、またやっていただきたいということをお願いしているんです。
  104. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 お答えいたします。  どうも私の答弁が舌足らずで申しわけなかったと思いますが、現在の石炭鉱山保安規則第六十八条に、災害報告につきましての規定がございまして、それが「ガスもしくは炭じんの爆発、ガス突出、自然発火」と続きまして、云々が起こったときには、直ちに監督局部長に、電信その他適当な方法により報告しなければならないということになっておりまして、当然ガス突出が起きましたときには直ちに報告をしなければならないというふうに、すでに法律的にも義務づけが行なわれているわけでございます。
  105. 多田光雄

    ○多田委員 会社はガス突出であるということを絶対言わないんです。ガス突出なら、これはもう当然報告の義務があるから、労働者にもそれはガス突出とは言わないんです。ガス流出だ、こう言っている。  ですから、どうですか、これはひとつ私が述べたことを調べて、やはり会社に厳重忠告して、いささかのものであってもあの北炭新鉱については報告しろ——これはちょっと石ころでつまずいたなんということを報告しろと言っているんじゃないんです。重大災害につながるおそれがあるから、こういう問題については逐一報告しろ、こういうことを再三あなたのほうから言うかどうか、そのことを伺っているんです。
  106. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 ただいま御指摘のございましたように、ガス流出というように会社が言っているようなものであっても直ちに報告するように厳重に指導いたします。
  107. 多田光雄

    ○多田委員 いま大臣は、北炭新鉱が特にひどいとおっしゃいましたが、そのとおりなんです。しかし、これは北炭新鉱に象徴的に出ている。なぜ北炭がこうなるかということはあとでもう少し究明したいのですが、たとえば、これももう時間もあまりありませんので、私は一方的にしゃべらなければなりませんが、住友赤平、これは原料炭を出している優良鉱ですね、ここでは、こういうことがあったんですよ。  一月二十一日、住友赤平鉱の六二〇水平中央北一一号八番払いで、火薬に雷管を装てんしたままで、五本を火薬袋に入れたまま流出紛失したんです。三本は選炭機のブレーカーで、残りの二本は水洗機で見つかった。事故発生も問題なんだけれども、さらに重大なことは、このような危険な状態で安全も確認しないで炭車を運行し、選炭機も作業を続行させた会社の責任なんです。これはそこが問題なんですよ。そうしてこの事故を、保安にも参画している労働組合にも連絡しないで隠蔽した。これは翌日わかったんです。もしこれが五本も爆発したらどういうことになりますか。  もう一件、同じ住友赤平で同じ日の一月二十一日に、一一号立て入れのベルト坑道で、ベルトの摩擦により炭じんに火がついて、あやうく坑内火災を起こし重大事故となるところであったが、幸い労働者が早期に発見してこれを消しとめた。この場合も、会社は完全な点検、原因の究明、対策もとらないでベルトを運行させたけれども、これは労働組合が指摘して運行をとめさせたんです。ちょうど翌日は保安日であって、労働組合は点検班を編成して、ベルト坑道の不完全な個所に応急措置をとらせた。そうして労働者はどう言っているのか。これは、会社のこの姿勢を、生産第一主義である、生産生産を叫んで、そうして保安を第二にしていく、ここを言っているのです。  だから、北炭だけではないのです。炭鉱には全体にこれがあるから、これほど大きな問題ながら、依然として事故が横ばい、こういうことになるので、私は、大臣が特に北炭の場合はひどいと言われたが、それはそのとおりですが、炭鉱全体に根本的にあるこの保安無視、生産第一のためにはそこを無視していくという、これがあるんだ、それが条件の悪い暗いところで一そう大きくなっていくんだということを申し上げたいと思うのです。  そこでもう一つ聞くんだが、この保安確保の立場から見て、ガス抜きボーリングの作業について規制上の基準はあるのかないのか、また、何人くらいで作業をするのが適正と思うのか、これをちょっとお聞きしたいと思う。
  108. 原木雄介

    ○原木説明員 ガス抜きボーリングについてお答え申し上げますが、ガス抜きボーリングにつきましては、たとえばガス突出の危険ゾーンというものをあらかじめ監督局部長が指定いたしましたときには、相当厳重なボーリングをやるということになっておりまして、そのボーリングについても、掘進の炭壁面から五メートルは確実に残すようにして掘進をするということでございまして、五メートル以上の先までボーリングをしろという規定がございます。もっとも、場所によりましてガス抜き量その他いろいろ変わってまいりますので、ボーリングの本数その他についてははっきりした規定というものはございませんが、一応内規として各炭鉱においてそういうものをきめさせるというような指導もいたしております。
  109. 多田光雄

    ○多田委員 ところで聞きますが、下請組夫は坑内作業を限定されていますね。この下請組夫がガス抜きのボーリングを日常的にやることを許されていますか。
  110. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 現在特に禁止をしているということはない、やらせている例があるというようなことであります。
  111. 多田光雄

    ○多田委員 実は、先ほどこのガス抜きボーリングの事故を言いましたけれども、北炭ではこの保安上重要な作業まで請負になっているんですよ。そして一人分よりの金が出ないから、これを一人でやっているんです。  さらに、いま下請をやっているところがあると言った。これはどこでやっているか私は伺いたいのだが、私はこう思うのです。合理化法に基づく規則二十一条、二十二条の二項や、それから昭和三十七年七月四日付の保安監督局の通達七百三十三号、これは皆さんが出されたものです。昭和三十八年八月三十一日通達七百八十一号、昭和三十九年九月八日の通達六百一号、昭和四十年二月十二日付通達五十七号、どれを見ても、下請組夫はガス抜きボーリング作業に従事してよいなんという規定の指導はどこにも見当たらない。それは当然のことだと思う。なぜなら、この法令や通達の精神というのは、保安上重要な作業については組夫にやらせてはいけない、こういう中身のものなんです。それを、ときどきやらせていますというようなあいまいな態度というのは一体保安監督官の資格があるのか、私はこうさえも思う。  そこで、私は実態を言いますと、北炭の夕張新鉱はこうなんです。少なくとも従来は直轄夫にさせていたんだ。ところが、ここでは下請組夫にガス抜きボーリングをさせているんです。この傾向は北炭全体にいま強まっているといわれている。しかも、この作業は一人現場になっているのです。そしてなぜ一人現場になったかということを詳しく聞いてみると、問題は請負単価です。一メートルで四百七十円。だから一方のボーリングで平均八メートルが限度だという。そうすると一方で三千七百六十円ですよ、大の男が働いて。これでは二人でやることもできません。結局一人でやってしまうのです。幾ら会社が口で保安を大事にする、保安優先と言ってみても、先ほど言ったように、重大事故につながるような事故があっても監督局にも報告しない。そして労働者はガス突出ではないかと言っても、流出だと言ってそれを押えていく。それから住友赤平の場合もそうです。それからいま言ったこのガス抜きボーリングにしてもそうなんです。つまり、低賃金と請負給というこの本質の中から、いやでも応でも労働者はあぶなくても働かざるを得ないし、他の者と競争しても成績をあげようとするし、そういうところに追い込まれているのです。そこまで問題の根本を突いていかないと、なぜ炭鉱に事故が多いのかということがわからないのです。  そこで私は、北炭がなぜとりわけこういう事故が多いのかという問題についてもう少し突っ込んで伺いたいと思う。これは通産省に伺いたいのですが、北炭が昭和四十七年三月一日から実施している経営の基本方針である全鉱標作という制度について知っていますか。知っているとすれば、簡単にその中身を言ってください。問題はきわめて具体的で、リアルな問題なんです。
  112. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 お答えいたします。  そういう制度を採用したということは、かつて聞いたような記憶もございますが、私いまここでどういうものであるかということを明快にお答えするだけのものを持っておりません。
  113. 多田光雄

    ○多田委員 一つの企業の中身に立ち入って言うというのは、私もあまり好ましいものとは思っていないのです。皆さんもそうだろうと思う。しかし、大臣も言われているように、北炭に事故が非常に多発している、人の生命の問題である、しかも国から百数十億の金が投下されているということになれば、どうしても一つの企業のかなり内部に立ち入って考えてみなければならない、そういうことで私は申し上げるわけです。  私は全鉱標作制度、これをよく読ませてもらいまして言えば、これはおそるべき新しい奴隷労働、タコ部屋労働、こう言ってもいいと思うのです。これはどういう内容かといいますと、こういう制度になっているのです。生産第一ですからね。たとえば北炭の場合は日産一万五千トンというワクをきめる。ワクをきめるのはいいです、生産計画はやはり立てなければならぬから。それを各山、それから切り羽まで、それから各職種まで割り当ててくる。そしてどんなことがあってもそれを強行させるんです。そしてその賃金の中身はどうかというと、最低本人給は非常に少ない。炭鉱の場合は賃金の八〇%は本人の請負給になっている。あとの二〇%は全山の請負の達成率から出すんです。だから八〇%はわかるけれども、あとの二〇%は全山が達成しなかったら与えられないということになる。全仕事を請負出来高払いというものにしてきている。しかもここで見ますと、機械が故障が起きるでしょう。そしてガスが出て待避するでしょう。一時間なら一時間とまるでしょう。そうすると、会社は何を言うかというと、これは機械の責任であって賃金が補償されないといって、賃金は補償されないのです。べらぼうな話ですよ、つまりこの全鉱標作というのは。先ほど私が言った新しい装いをした奴隷労働というのはそれなんです。そして、本来生産目標というのは上からも立てるが、同時に切り羽の実情、これはさまざまです。特に保安を前提にして立てなければならないものなんだ。ところが生産第一で北炭がやってくるから、そして上から、あとで言うけれども、必携なんというものをつくって労務対策で押しつけてくるから、結局保安を無視されていく、これが制度的に仕組まれてきているのです。  ここにこういうのがある。「請負給の形態並びに標準作業量に関する係員必携」というのを出している。とらの巻です。労務管理です。ちょっと読んでみましょうか。こういうことを書いているのです。「当社創業以来最大の危機を、克服するための最後の手段、方法であり、これによって保安を基盤として計画出炭の達成をはかろうとしたものである。」少しも「保安を基盤」になってないのです。そして全鉱標作の設定という一つの柱、それから全請負給制の採用、まことに前近代的なものが全面的に北炭で採用されている。それから第三は、全従業員が運命共同体である。労使協調ですよ。増炭のためには命を投げ出してもこの共同体として働け、これなんです。使い古されたことばなんです。しかも、こういうことが書いてある。「新標作といえども、所詮は人間が作ったものであり、抜けて通るつもりならば、必ず穴があるだろう。」これは係員に対する注意なんですよ。「一人の係員の一時逃がれの妥協や誤った温情が蟻の穴となり、やがては堤防を決潰させる結果を招くことにもなりかねない。このことを三思四省して、過去のあやまち(協定の拡大解釈など)を繰り返さないよう心がけることが肝要である。」以下、そういう内容のものなんです。これはみごとな奴隷労働の労務管理ですよ。ここに、北炭が何で同じ炭鉱の中でも事故が多発するかという最も根源的なものがある。大臣はお疑いになるでしょうから、この資料をあとで必要ならばどうぞ見てください。こういう前近代的な労働が北炭にいま押しつけられてきている。しかも、新鉱でああいう事故があってもひた隠しにする。ここに労働者が強い怒りをいま企業に持ち、そしてまた、そうなればいよいよ企業はひた隠しにしていく、こういう悪循環があるから、とりわけ北炭がいま事故が多くなってきているいわば経済的な土台があるわけです。  私は大臣にお伺いしたいのですが、たいへん一方的にいま申し上げましたけれども、この全鉱標作制度を「創業以来最大の危機を、克服するための最後の手段、方法」と述べているのですが、どうでしょうか。一体こういうやり方を大臣どういうふうにお考えでしょうか。  もちろん、一つの企業の経営方針ですから、立ち入って大臣としていろいろ論評することには差しつかえもあると思いますが、一般的に保安の問題と聞かれてみた場合、どういうふうにお思いになりますか。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あなたの申されたように、企業の内部の経営方針でございますから、われわれのほうが立ち入ってとやかく言うべき内容ではないと思いますが、事保安に関することに触れるようなところがありますれば、これは監督を厳重にして災害を起こさないようにわれわれは事前において規制しなければならぬと思います。しかし、業務の内容というものは、いろいろ会社によって伝統もありますし、また炭鉱の性格にもよりますし、また炭鉱自体というものが一種の運命共同体のようなもので、私ら軍艦に乗っていましたけれども、やはり上から下まで一緒になってやるという気合いと呼吸が入ってなければ、安全の確保だってなかなかできるものではない、あまりとげとげしい環境ではなかなか安全も確保できないんではないか、やはりお互いが人間的に友情をもっていたわり合うというところに、私はそういう安全も確保されるんではないか、そう思います。ですから、事保安に関する部分については、われわれとしては監督を厳重にしていきたいと思っております。
  115. 多田光雄

    ○多田委員 運命共同体ということばはそれ自身美しく聞こえますけれども、先ほど来言っておるように、保安は、政府も言っている企業の責任だという、その企業はこういう実態なんです。労働者の責任に転嫁できませんです。それは労働者の中には、たくさんいますから、不注意で事故を起こすときもあります。しかし、労働者は指一本だって折りたくないのです。しかし、それが何十人という事故が起き、大きな災害につながっていく最大の責任は会社だということを私は申し上げていきたい。その会社が、どこからそういう事故が起きるかというと、先ほど言ったまさに生産第一主義で、新しい奴隷労働のような形態が進行していっている。だから北炭でこれが起きるんだ、問題のあり方は企業にあるんだということを私はっきり申し上げておる。それが保安にかかわってきている問題なんです。  そこでもう一つ伺いたいのですが、ところで私の手元の資料によりますと、北炭だけで十二月二十三日、一月九日、二月七日それから三月五日の四回にわたって札幌鉱山保安監督局から監督指示書が出ているのです。この山の名前は私は申し上げません。山の名前は申し上げませんが、この山は去る三月九日に一名の死亡事故を出しておるところです。この山に四回の監督指示書が出されているのだが、これは皆さん知っていますか。
  116. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 巡回検査に参りますと、そのつど大体何らかの形で改善指示等をやっております。したがいまして、四回にわたりましてそのような文書が出ているであろうということは考えられるわけでございますが、それらの内容につきまして逐一実は本省に報告が参っておりませんので、どういうものが出ておるのかどうかにつきましてはここでお答えできないという次第でございます。
  117. 多田光雄

    ○多田委員 山の数も少なくなったんだから、命にかかわる問題は逐一ひとつ点検してくださいよ。忙しければ大臣に言って人を回してください。そうすればわれわれもそれは支持しますよ。  実際どうなっているかというと、最初の十二月二十三日にこの山に改善を指示した件数は十七件なんです。そのうち以前からの再注意が六件ある。第二回目の一月九日の指示件数十七件のうち再注意が九件です。それから第三回目はさすがに減ってきた。二月七日は二十二件中再注意は一件です。その一件は中身は非常に重要な中身なんです、これを見ると。それから三月五日には指示件数十八件中再注意が六件なんです。もうけることならばどんなことでもやるけれども、こういうことでは保安当局をなめているのです、これは。ですから、命の問題で当局の指摘さえまじめに聞こうとしない会社が、真剣に労働者の命を守ると思っていますか。私は中小企業だとかそんなことを言っているのではないのですよ。さっき大臣は私企業の内容であるからと言っていました。しかしいま炭鉱には、炭価まで政府がきめているのですよ。一次から五次まで一兆円近い金が投下されているのです。電力と同じようなものです。半ば国管みたいなものです。しかも、人間の命の問題です。それすら私企業でやれないというならば、炭鉱は文字どおり私企業の限界にきているのです。だから、私どもは前から、少なくとも炭鉱や電力その他というものはもうこれは国有化しなければ、公営化しなければならないのだということを言っておるわけですけれども、それができない、人間の命がこういう状態でも企業の中身に立ち入っていけないというのだったら、これは文字どおり私企業の限界です。  そこでいま特に、こういう保安行政の上に、やはり政府の真剣さ——私は第一線現場によく行くと、監督官は気の毒に老齢化しております。それがもう寝ずで事故が起きると坑に入っているのです。ところが監督官は補強されない。老齢化している。石炭産業の衰退をそのとおりこれはもろに示しておるのです。だから、私が総合的な政策を立てろと言うのは、ユーザーその他を入れて、需給のバランスをとるだけではなくして、保安監督官も何年後にはどうするのだ、技術者もどうするのだ、労働者をどうやって育成していくのだという総合的なエネルギー政策というものを立てなかったならば、口で石炭見直しますと幾ら言って、百万トンや二百万トン増産したとしても、ほんとうの石炭見直しにはならないし、大臣が前から言われている、日本の国内資源を大事にすると幾ら言われてみても、メジャーの圧力やその他でもってどんどん石油に席巻されていく、こういうことになるのですね。ですから私どもは、本来的にいえば、エネルギーは全面的にこれは国有化なり公有化して、総合エネルギー政策を立てるべきだと思う。しかし、そこへ行かない前でも、私は、石炭問題についてさしあたりこういう問題は真剣に対処することが大事な問題だろうというふうに思っております。  そこで、私は保安監督官をふやしたほうがよろしい、人間の命の問題ですから。炭鉱は減ったから、ふえたと言っておるのですけれども、夕張のようなところで歩く監督官四名ですよ、十人はいても。これでどうしてあれだけの山を見れるでしょうか。私は、大臣がそういう意味で、定員法その他もあるでしょうけれども、監督官をふやす、こういう面からも石炭見直しの希望の光を労働者や産炭地住民に与えていくということが大事だし、そしてまたほんとうに命を守ることになると思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず第一に、いまお話を聞いておりますと、会社を何か鬼かジャみたいに憎悪と恨みの対象として取り上げておられますが、私らそういう考えには同調できません。やはり労使協調で、お互いの職場で、お互いが助け合いながら共存共栄していくというのがやはり会社の姿であるべきで、一方的にただ憎悪と恨みばかりで会社というものをやっておったら、これは人生も楽しくないし、家族も楽しくはないのではないか。やはり地域社会における仲間同士の、お互いが人生を暮らしていく場所として、いたわり合っていくということが人間の筋じゃないでしょうか。そういう基本的な考えにおいてちょっと私考えが違うように思います。  それから第二に、保安監督を厳重にするということは、前から申し上げておることで、やりたいと思います。石炭についてはいま総合エネルギー調査会へいろいろ諮問しておりまして、その答申が出ましたら、本格的にその内容によってどういうかまえで乗り出していくか考えてみたいと思っております。
  119. 多田光雄

    ○多田委員 私は、大臣やはりほんとうに働く者の血と涙というものをあなたは忘れるか知っていないと思いますよ。これだけ述べて、そして責任が会社にあるということがわかりながら、労使一体だ。労働者もまじめに働きたいと思っております。働けないような現場にされ、そして命さえあぶないような仕組みにされていて——それは労働者がやっているのではないのですよ。だから、その点は大臣のおっしゃることは私は納得できないし、反対だし、そういう立場でこの保安の問題に幾らアプローチしても問題の抜本的な解決はできないということを申し添えておきます。  そこでちょっと問題を変えて、緊就、開就の問題で労働省に伺いたいと思います。  福岡県の筑豊地区では、四十九年度の緊就、開就、特開事業で、昨今来の資材高騰のあおりで、地方自治体と業者の工事契約の不成立が相次いで起きておるわけです。  たとえば田川市では就労事業の入札を三月二十日に行なったが、一件も落札できないという異例の事態が起きている。そして市の敷き札価格と業者の入札価格との差が実に二〇%もあったといわれているのです。そこでことしの一月から二月にかけて仕事がなくなって、現在失業保険を受給しておって、その保険も三月二十八日から二十九日に期限が切れる、こういうことになっているわけですね。こういう産炭地の異常な事態を労働省のほうで認識しておられるのかどうなのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  120. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の事実につきましては、具体的な地名があがりましたが、田川市におきまして、三月二十日八工区の入札をいたしまして、落札に至ってないという事情は承知をいたしております。ただいま御指摘のございましたような問題もあろうと思いますが、詳細目下調査中でございまして、県を通じまして事業主体等を指導し、事業の円滑な執行ができるように鋭意努力をいたしておるところでございます。  田川でそのような状況でございましたが、きょうは鞍手で特開、緊就、産炭地開就事業等もいずれも落札をしたという報告に接しておりますので、田川でいろいろな問題はあろうと思いますが、事情詳細調べまして、いやしくも事業が継続実施できないために就労者の生活保障ができないというような事態は、全力をあげて回避いたしてまいりたいと思っております。
  121. 多田光雄

    ○多田委員 鞍手で入札したというのは、業者の話を聞きますと、やはり赤字を出しても入札をしないとどうにもならぬ。やはりこれからのことを考えるとそういうこともやらなければならないというので、泣く泣く入札しているというのですね。田川でも市長、議会、商工会議所、それから区長会、労働組合、農民、婦人、この代表が二十七日あさって、それから二十八日上京して陳情をする。これはたいへんなことです。なぜなら、あそこはこの問題の一番集中しているところですから。  そこで、この事態打開のため緊急措置をとるべきだというふうに私は考えているのですが、どうでしょうか。たとえていえば生活保護法の適用だとかあるいはまた見舞い金の支給、さらにまた長期無利子の貸し付け金、こういうようなものをお考えになっていただけるかどうか、ひとつ伺いたいと思います。
  122. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 二十七日に陳情に来られるというようなことは福岡県からまだ報告を聞いておりませんが、お越しになりました際は、実情をよく聞きまして、私ども労働省で対処できることがございますれば、十分お話し合いに応じてまいりたい、かように考えております。  なお、現状におきましていろいろな問題が過渡的にございますけれども、現段階で、いわゆる事業主体と業者との入札をめぐる問題でございます。その結果どうなりますかの問題でございますので、私どもといたしましては、先ほどお答え申しましたように、就労できる事態を実現することが第一でございますので、先ほど先生からお話のありましたような事態につきましては、現段階では考えておりません。むしろ先生の御指摘の点は、その事業が落札しないことに伴っての生活に困る労働者の皆さん方のことについての御指摘だと思いますが、施工主体である建設業者の方と労働者の関係、いろいろな問題がございますが、そういう事態は事態に応じまして考えてまいりますが、現段階ではそういう考え方でございます。
  123. 多田光雄

    ○多田委員 そこで落札が可能になるように、たとえば業者とのギャップである事業費単価ですね、これを最低二〇%引き上げる、こういうような予算措置を再検討することができないかどうか。これはいま文字どおり九州へ行ったらたいへんなことなんです。そういうことをひとつお考えになってみたらどうか。  それからいま一つは、設計見積もりで四十八年の男子一〇〇%、女子八二%、平均して九一%ですね。こういう基準を設けていますけれども、予算ワクの縮小に伴う賃金の引き下げで、業者の負担にどうしてもならざるを得ない。そこから業者にいまいろいろ問題が起きているわけですが、むしろ諸物価の上昇で労働賃金の引き上げをしなければならないときに、こういう問題は逆行するものだというように思うわけです。  そこで、いわゆるこの九一%条項、これをきめた課長通達がありますね。これを即時やはりやめたほうがいいんじゃないか、また撤回すべきだ、こう思いますけれども、これはどうでしょう。
  124. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 第一点の問題でございますが、事業費単価につきましては、現在国会で御審議をわずらわしておる段階でございます。私どもといたしましては、予算編成にあたりまして、適正な事業ができる、特に就労者を吸収いたしております就労事業でございますので、事業実施が不可能になってはというようなことを憂慮いたしまして努力をいたしたっもりでございます。そういった観点でございますので、現段階では予算審議の段階でございますし、事業費単価云々ということについてのお答えは差し控えたい、かように考えておりますが、実態につきましては、それぞれ御相談に応じながら事業実施が円滑にいくように、特に事業費単価のワク内での事業の実施ということにつきましては、事業主体等を十分指導して円滑な事業運営につとめてまいりたい、かように考えております。  それから第二の問題でございますが、〇・八二の課長内簡を出していることは御指摘のとおり事実でございます。これは緊就事業の就労者の実態にかんがみまして、現在の情勢にかんがみまして、そういうふうな積算上の単価として私どもはお示しをいたしたわけでございます。現実に、御案内のとおり、これら失対三事業につきましては、緊就、特開、開就、同じでございますが、いわゆる建設業者と労働者の方々のお話し合いで個別の賃金はきまっておるわけでございます。  なお、現実に現在入札をめぐりまして問題になっておりますのは、いわゆる就労事業でございますので、四月早々から何とか着工しなければならぬということでございます。公共事業におきます発注単価でございます三省協定等に基づきます具体的な取りきめも、まだの段階でございます。それのきまるまで工事は待てないわけでございます。したがいまして、とりあえずは暫定の四十八年度の一応の事業費単価を基準にしというような形での通達を出して、いわゆる早期着工という観点から、いずれも手直しし、三省協定等を参考にされまして業者と労働者との間で賃金がきまりますれば、当然改定になるわけでございますけれども、そのつなぎの場としての措置をいたしておるわけでございまして、私どもは緊就事業の就労者の実態等にかんがみまして、そういった難関をいわゆる設計上の発注単価として考えておるわけでございまして、現段階でこれを撤回する考えはございません。
  125. 多田光雄

    ○多田委員 なおかつ入札しないというのが続出した場合どうしますか。
  126. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 私どもその事態を一番憂えておるわけでございますが、具体的には福岡で一番問題が多いわけでございますので、福岡県の労働部のみならず、土木、企画開発部とも緊密な連携をとりまして、最善の努力をいたしてまいりたいと思っております。
  127. 多田光雄

    ○多田委員 緊密な連絡と最善の努力ということは、やはり金をやらなかったらこれは解決しないんですよ。そうでなければ、あと自治体を泣かせるか、業者を泣かせるか、そして労働者を泣かせるか、それ以外にないのです。  時間が来ましたので、それはひとつぜひさらに検討して、あさってですか、地元から来ますから、十分地元の実情も聞いて、ひとつ積極的に措置するようにしていただきたいと思います。  私の持ち時間はもう終わりですが、大臣、これからのエネルギー政策をエネ調にかけておられる、私はそれ自体を否定するものじゃございません。しかし、先ほど来言っているように、大臣もおっしゃるように、石炭を含めて総合的なエネルギー政策を立てられると言っておられますけれども、いま少なくなったこの労働者をやはり安心させ、守っていかなければ、次代の労働者もできてきません。炭鉱に入ってこないのです。技術者もそうです。極度に減った技術者、これをどうやってふやして、大臣が前に言った需要拡大をするという面の問題ですが、十年後にどうするのか、五年後にどうするのかという、そういう意味で、研究所の問題や、あるいは大学に研究機関をつくっていく、そういう研究の展望というものが需給関係とあわせて総合的に立てられていかなければ、やはり石油をどう、石炭をどうという数字の需給のバランスになってしまって、私は基本的に従来のエネルギー政策のワクを出ないのじゃないかということをおそれるわけです。ですから、きょうは保安の問題一点にしぼってお伺いしたのですが、ぜひ労働者の命を守っていくということ、そしてほんとうに労働力を確保し、さらにこれを大きくしていくという観点で、大臣の御意見をひとつ伺っておきたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 保安を重視して炭鉱災害絶滅を期するという点においては、私も非常な決意を持ってやりたいと思います。この点については、自由主義者であろうが、社会主義者であろうが、共産主義者であろうが、人間の命を尊重する点においては変わらないと思います。いまいろいろお話を承っておりまして、何かマルクス・レーニン主義をオウム返しにおっしゃっているような感じがいたしますが、われわれ自体はわれわれ自体の独自の生命尊重論を持って、企業を大事にし、労働者を大事にし、社会を大事にして進んでいきたいと思っております。  それからもう一つ石炭の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、エネルギー調査会の答申を待ってその結論を得て、われわれが本格的に取り組む必要があらば、いろいろな段取りをしながら本格的に取り組んでいく用意をしていきたいと思います。
  129. 多田光雄

    ○多田委員 何かマルクス・レーニン主義ということばを出していましたが、私はイデオロギーで話をしているのじゃないですよ。会社が保安事項にこういうサボタージュや問題を起こしているという事実をあげているのじゃないですか。マルクス主義者であろうが、自由主義者であろうが、事実を否定できないじゃありませんか。そういうおかしな挑戦的な回答はやめてください。  さて、最後に私申し上げます。実は電力用炭の今度の法案の改正についてですが、これで意見を申し上げておきたいと思います。  私どもは、産炭地の中小企業信用保険の特例と電力用炭販売株式会社法については、不十分なものであってもこの存続を認めることとして、石炭鉱業経理規制法については、いわゆる合理化という名の石炭産業取りつぶし政策の一環をなすものとして反対せざるを得ないわけであります。  本法案は、本来ならば個別に採択されるべきであるにもかかわらず、いわゆる期限切れ法案として一括されたため、私どもの党としては、本案については留保、すなわち棄権の態度を表明せざるを得ないわけです。  政府は、これまでの一連の石炭放棄政策に伴う法令を廃止し、石炭鉱業の復興に積極的に取り組み、新立法の策定を急ぐべきであることを特に強調して、私の発言を終わりたいと思います。
  130. 田代文久

  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 多田委員の質問に続いて、ちょっと労働省にお聞かせ願いたいと思います。  いま単価の問題をめぐって受け入れの落札ができないという事態になっている。そこで、あなたのほうはいま予算の審議中ですから、予算単価を変えるわけにいかない。ところが業者のほうはそれを落札するわけにいかない。労働者のほうは四月一日からめしを食わしてもらわなければならぬ。こういう状態になっているわけですね。  そこで、きわめて暫定的な話ですが、設計を変えて、とにかくなるべく資材費の要らない仕事を早くする以外に方法がないのじゃないか。ですから、なるほど事業効果はそう期待できなくても、人間を食わしていかなければならぬわけですから、従来これはとても開就には認められぬとか、緊就の対象にならぬとかいわれて却下された例もあるわけですから、これはひとつ早急に設計変更をして、そしてとにかく資材費のあまりかからぬもので、とにかく労働者が生活できる場を確保するということが私は緊要ではないかと思いますが、それに対して御意見を承りたい。
  132. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 先生かねてからの御主張でございますし、私ども全く同感でございます。そのような面で実は事業設計にあたって留意するよう、内簡も出しましたし、指導いたしておる段階でございます。ただ、具体的な工事によりましては、継続事業関係があるとか、いろいろな問題がございますが、先生の御発言趣旨を体しまして、さらに努力をいたしたいと思います。
  133. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さらに、この物価高騰の中で〇・八二という男女の賃金の差が出るわけです。まさか額においてこれは四十八年度よりも下がることはないのでしょう。
  134. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 四十八年度より下げるというような意図をもってやっているわけではございません。当然上昇になるというふうに期待をいたしております。
  135. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは当然上昇になるように指導するわけでしょう。それをはっきりしなければ……。この物価高に賃金が下がるなんということができますか。
  136. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 お答えいたします。  賃金は業者と労働者の間でお話し合いになる事柄でございますので、これにとやかく介入することは差し控えたいと思います。当然、現在の実勢から見まして、現状のまま据え置きというような事態が出ないことは常識の問題でございますし、その辺を私どもといたしまして、発注単価でございます、私ども男子の場合にはいわゆる三省協定の発注単価等を設計上用いているわけでございます。そういう原資もございますので、その範囲内で自主的に御協議になる。その数字は最近出ておりますが、当然かなりの上昇が見込まれると私どもは期待をいたしております。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間もありませんから、これは別の機会に譲りたいと思います。  そこで、大臣、この石炭価格の基準ですね、販売価格基準額。これは当然政府がこの五十八条の規定に基づいて決定するわけでしょう。なぜ私が聞いておるかといいますと、これはいま、政府の行政指導が独禁法の関係で非常に問題になっている。そこで私は、この五十八条というのは独禁法とは別個の問題である、しかも毎年これは通産大臣石炭鉱業審議会意見を聞いて基準炭価を定めなければならないということになっておる。でありますから、これはいわば独禁法、公取の問題ではなくて、政府独自が法律によってきめることができる問題だと思うので、これは当然そういう趣旨で決定をされるわけでしょう。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 独禁法の範囲外の別の法域の問題だろうと思います。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題は現在石油等に起こっておる問題とは異なるわけですから、その点ははっきり政府が態度を示しておかなければならない、こういうように思います。と申しますのは、この石炭鉱業合理化臨時措置法の中には、やはり共同行為の規定があります。業者の共同行為について規定があり、その共同行為については独禁法の除外規定になっておるわけです。ですから、この点も石油業法とは違うわけであります。ところが、その共同行為をやるについては条件があるわけであります。でありますから、へたをすると、政府が販売価格の基準をきめるについて共同行為の中に巻き込まれると、やはり独禁法違反の疑いが出てくるわけです。その点は私は、きわめて問題を区別をして取り扱われないと、これはたいへんなことになると思うのです。そこで御注意を申し上げたいのですが、石炭部長はどういうふうにお考えですか。
  140. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、合理化法に基づきまして、五十八条によりまして、販売価格基準額を毎年通産大臣石炭鉱業審議会意見を聞いて定めるようになっております。  それから共同行為の届け出でございますけれども、これが六十六条にございまして、鉱業権者もしくは租鉱権者あるいは石炭販売業者は、ただいまの六十二条、これは生産数量の制限に関する事項でございますけれども、生産数量の制限に関する事項と六十三条の販売価格の制限に関する事項につきましては、共同行為をしたときは、遅滞なく、通商産業省令で定める事項通商産業大臣に届け出なければならないというように規定してございます。なお、六十七条につきましては、これが独禁法との関係で、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外という除外規定がございまして、ただいまの六十二条及び六十三条につきましては、共同行為については、適用しないということを明記しております。  いま先生から御指摘の油の価格石炭価格という問題だろうと思いますけれども、けさほど、昼ほども御説明いたしましたように、油の価格が相当アップしておるというのは事実でございますし、なお石炭価格のほうはそれに比べまして相当な格差があるというのも事実でございます。そういうことをいろいろ加味いたしますと、なお石炭鉱業におきましてはいろいろな対策を、たとえば肩がわりあるいは補助金も出しておりますし、なお元本の肩がわりあるいは元利補給金、一次、二次、三次というような肩がわりもやっておりまして、こういう対策を入れましてもなお千六百五十円の赤字であるというのも事実でございますし、なお炭鉱労働者の賃金が低いという点から見ましても、今回の石油のアップということも一応考慮いたしまして、相当額の石炭価格の上昇というのを期待している次第でございまして、また、そういう業界のある程度の動きについてこちらは何ら関与してはございませんけれども、たとえものすごく高いところで価格を設定し、それがただ文章化されたのみで全然実用化されないということがあっても、これはまた意味がございませんので、その辺は慎重に今後石炭鉱業審議会の場をかりまして、いわゆる五十八条の基準炭価をできるだけ早い機会に定めたいというふうに考えております。
  141. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が注意したいのは、業者に折衝をさしておきますと共同行為になるわけです。業者が集まって電気業者と話をする、それは事実上共同行為になるわけですよ。ところが共同行為が許されているのは、今度のような値を著しく上げるような状態では許されていないのです。すなわち共同行為が許されているのは、基準炭価が下がって相当部分の事業の継続が困難になるおそれがある、こういう場合について共同行為が許されておるわけです。ですから、油が上がったから今度石炭も上げようということについて、業者が一緒になって話し合うとこれは独禁法違反になるわけです。ですから、政府みずからが基準価格を示すということが今度の場合には必要なんだ、私はこう言っているのです。業者が打診をして電力会社等と話し合うということは、合理化法の精神から見ると、今度の場合、すなわち値上げを油に均衡を保つためにする場合には共同行為が許されていない。ですから、私はそういう危険のないように、政府みずからの責任において販売価格の基準をきめるべきである、こういうように考えるのですが、どうですか。
  142. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 当然ただいま先生の御指摘のとおりな姿勢でできるだけ早い機会に基準炭価をきめたいというふうに考えております。
  143. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 従来のように十二月ぐらいにきめて四月から遡及するというようなばかげたことはもうおやめになったらいいですよ。従来は、十月や十二月にきめて四月から遡及して行なうのだ、こういうことがいままで行なわれておったわけです。それだけ炭価の交渉がむずかしかったと見ていいわけですが、これは政府の責任で販売価格基準額は決定すべきである、私はこういうように思いますが、大臣どうでしょうか。
  144. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ早くきめていきたいと思います。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 きめていきたいといっても、私は政府の責任で販売価格基準炭価を……。
  146. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 基準炭価をきめるということは、政府の責任において早くきめていきたいと思います。
  147. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は社会党から通産大臣に対して石炭政策に関する緊急対策についての申し入れをいたしたわけですが、回答をいただきましたが一、二点質問しておきたいと思います。  私どもは今後閉山については従来の労使だけの問題として扱わないで国全体の問題として扱ってもらいたい、こういうように質問をいたしたのですが、それについて「自然条件の悪化、可採炭量の枯渇によるものであって労使の間で了解されている一、二の事例を除き、」この「一、二の事例」というのはちょっと引っかかるわけですが、具体的に通産省としてはどの炭鉱が了解に達しておりこの条件に合っておるか、これをお聞かせ願いたい。  次に、第二点は一般炭の輸入についてでありますけれども、私どもは、やはり今後の一般炭の輸入に対する方式がはっきりしない以上は一般炭の輸入は認めません、こういうように態度を明らかにしておるわけですが、これについては一応基本的な態度は決定します、しかしながら、国内炭の供給増につとめても十分まかなうことができなくなったような場合、あるいは高硫黄の石炭との混炭用ということで緊急輸入をすることを検討する場合が生ずると考えられます、こういうことでございますが、これはやはりぴちっとした方式が確立されないとわれわれとしては了承をするわけにいかないわけですが、これについてその方式が決定をすれば、その方式どおりとは言いませんが、その方式に見合う方式を考えて、輸入をする場合にはぜひ方式どおりに従ってもらいたい、こういうように思いますが、その点はどうか。  次に石炭政策の確立についてですが、政府のほうは総合エネルギー調査会へ諮問をして検討をしておる、そうして六月ぐらいに中間報告が出る、そうしてその中間報告が出た段階において必要があれば石炭鉱業審議会に新政策を諮問したい、こういうことですが、それは必要があればじゃなくて、当然諮問すべきであると思いますが、その点どうか。  それから今後の作業の日程として、少なくとも五十年度の予算に間に合うように行なうべきではないか、こういうように思うのですが、それについてどういうようにお考えであるか。  以上、諸点についてお聞かせ願いたい。
  148. 高木俊介

    高木(俊)政府委員 第一番目の今後の閉山問題でございますけれども、確かに字句の中には、一、二の炭鉱をというような表現でしてございますけれども、これは少ないという表現を一、二というようなあらわし方でいたしまして、現在通産省のほうで、そういう労使間で話し合いがきまったという山は、一つしか聞いておりません。一、二とつけましたのは、まだ露天掘りもございますし、あるいは露天掘りというのは時期が来ますと季節的な問題でやめるところもございますし、これもまだ一炭鉱として数としては入っておりますので、そういう意味から一、二の閉山ということで少ないということを表現したものでございます。  二番目の輸入炭の問題でございますけれども、これは長期的な問題と短期的な問題の二つに分けざるを得ぬのじゃなかろうかというふうに考えております。といいますのは、四十九年度の需要の見通しと国内炭の供給関係というものによりまして、もし需要のほうが幸いにしまして量が多いというような場合は、貯炭を食いつぶしましてもなお供給不足というような事態が発生するのではなかろうかと思います。こういう場合は、第一にはいわゆる高硫黄炭の混炭用ということでの輸入が第一番目でございますけれども、なおそれ以上の輸入量が必要というような場合も出てくるのではなかろうかと思いますけれども、この短期的なものにつきましては、当然一定のルールを設けまして、次年度あるいは翌々年度にまたがらないような形で、何らかの制約をした上で審議会におはかりし、審議会で御承認いただいて、緊急のものは輸入すべきではないか。ただし、これもいま申し上げますように、混炭を主体としたものでございます。ただし、長期的にはおそらく今後の発電所の建設、そういうものによりまして石炭一般炭需要というものが大きく拡大されるということになりますと、国内炭が幾ら供給できるかということとの相関関係にもなりますけれども、もし国内炭の供給が不可能ということでの需要量の拡大に見合う輸入炭が必要になってきた場合は、これは昼も御説明いたしましたけれども、たとえば電力用炭販売株式会社を手直しするとか、そういうこと等によりまして、国内炭に圧迫を加えないということを前提にし、はっきりした歯どめ政策のもとで輸入炭を実施したいというふうに考えております。  なお、第三番目の総合エネルギー調査会の問題でございますけれども、ただいま二月の十九日に諮問いたしまして、その後二回いろいろ専門部会を開いております。なおそのほかに、各石油部会あるいは他の部会でもそれぞれの問題について御議論いただいているところだろうと思いますけれども、一応六月の中旬に中間報告ということで報告をいただくようになっておりまして、当然それまでには、四番目の作業日程とも関連いたしますけれども石炭鉱業審議会の総合部会を、第一は四月の一日に開くように現在各委員先生方には御連絡しておるところでございまして、こういう総合エネルギー調査会と並行いたしまして、審議会の合理化部会、総合部会を開催さしていただきまして、両方お互いにボールのやりとりをやりながら、六月の中間報告をいただこう。そういたしまして、六月の中間報告をいただきました時点におきまして、一応報告の中には「必要があれば」というふうにお書きはしてございましたけれども、当然新政策として石炭を見直さなくちゃならないという認識に立っておりますので、いわゆる六月の中間報告を受けました時点において、石炭鉱業審議会のほうに諮問し、その諮問に基づきましていままでの五次政策というもの以上のいわゆる石炭の新政策ということでの新たな答申をいただこうというふうに考えております。  なお、作業日程との関係でございますけれども、その間におきまして当然予算的に措置しなくちゃならぬものは、あるいは答申が出る前であろうとも、六月の中間報告後八月までには来年度の予算も一応編成しなくちゃならぬという段階にもなっておりますので、そういう点予算的には問題のないように処置していきたいというふうに考えております。
  149. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 きわめて早い機会に方向を出すということが非常に必要である。実は先般筑豊炭田の露天という話がありました。約一千万トンぐらい、比較的地上物件もない、それから鉱害についてもあまり摩擦のない地域ということでありました。ところが、もう鉄道の石炭貨車はないと、こういうのです。私は、ずいぶん石炭貨車が余っているだろうから、いまそれでなくても国鉄の筑豊線というのは間引き運転をしたり非常に困っておるので、それならちょうどいいなと思いましたら、いやもう国鉄のほうは台車だけを残して、石炭貨車は全部改造してほかの貨車に回しておるので、いま貨車繰りなんかつきませんよとこういう話です。そうすると、道路はトラック輸送になるとたいへんいたむわけですね。ですから、これは方向を早く出さないと、いままでのように継続して行なわれるといいけれども、もう石炭はだめだというので全部姿を変えてしまって、そしてあれだけ多くあった石炭の貨車も全部ほかに転用してしまったあとに、もう一回石炭輸送するんだといったときには、またあらためてやらなければならぬ問題が起こる。もう最近は筑豊線なんかは間引き運転はもちろんのこと、駅も無人化にする。それから貨物の操車場もなくする、こういう状態になっておるわけです。ですから、やるならやるで早く言わないと、あるいは国鉄のほうに連絡をして、こういう方向で行きますよということを通知しておかないと、国鉄のほうは永遠に石炭輸送はもうどっと少なくなるんだ、ですから石炭貨車も、あれだけあった石炭貨車を、台車だけは残して、あとは全部改装してしまう、こういう状態にきておりますから、政策は早くつくっておかないと、あと戻りをするとかえって迷惑になるという点がございますので、ことに方向性を早く出してもらいたい、こういうことを要望して質問を終わりたいと思います。
  150. 田代文久

    田代委員長 ほかに質疑の申し出もありませんので、これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  151. 田代文久

    田代委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  152. 田代文久

    田代委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  153. 田代文久

    田代委員長 この際、本案に対し、田中六助君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。多賀谷真稔君。
  154. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ただいま議題になりました法案につきまして、附帯決議を説明いたしたいと思います。  自由民主党、日本社会党、日本共産党革新共同、公明党及び民社党を代表して行ないます。  案文は、お手元に配付したとおりでございます。  この電力用炭販売株式会社法は、実はそのほかに石炭鉱業経理規制臨時措置法、産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律、この三つの法案が併記されておるのでありまして、各党におきましては、おのおのこの法案についてそれぞれ別個の意見があるわけであります。これらの法案は、石炭関係するということについては同じでございますけれども、実は法律提案をされた趣旨がおのおの違うのであります。その時期的にも違うのであります。こういうような法案を一本で出されますと、賛否に各党とも非常に苦悩する状態でございますので、十分留意されるよう決議を提案をいたしたい、かように思います。     —————————————    電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法案のような、それぞれ別個の意味をもつ三法律を一本として提出するが如き形式をとることは、審査の万全を期する上で妥当を欠く面も生ずるおそれがあるので、十分留意せられたい。     —————————————
  155. 田代文久

    田代委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言もありませんので、直ちに採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  156. 田代文久

    田代委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。中曽根通商産業大臣
  157. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘の点につきましては、今後十分慎重に対処してまいりたいと思います。     —————————————
  158. 田代文久

    田代委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 田代文久

    田代委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  160. 田代文久

    田代委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十二分散会