○
兼重参考人 兼重でございます。
本日、私、こちらに
参考人として出席させていただきましたが、実は
石炭関係のことで何か申し上げることがあればということで伺いました。
昨年の十月からの
石油ショックで、確かに
石炭見直し論というのが、
エネルギー多様化の一環として私ども非常にかねがね強く望んでいたことでもありますし、このたび
石炭増産計画というものも出まして、まことにけっこうなことだと思っております。
それで、ただ私、本日申し上げたいと思っておりますのは、昨年の十二月に
円城寺石炭鉱業審議会総合部会長から
通産大臣へ
中間報告で、
昭和五十一
年度二千二百五十万トン程度の
増産という答申がなされまして、今年の国会でも再三大臣がこの
増産を実施いたしますということを述べておられます。しかしながら、私、
炭鉱業界のほうにしょっちゅう顔を出しておるわけでございますけれども、いまの現状のままではこの二千二百五十万トンの
増産というのが非常に困難であるということを申し上げたいと思っておるわけでございます。
私自身も、実は昔、
昭和十一年に大学生のときに
撫順炭鉱で一カ月ほど
炭鉱の
坑内実習をいたしましたのが
石炭との
結びつきで、自後三十八年ばかり
石炭問題の研究をさせていただきまして、現在でも、終戦後も夏休みは必ず一回北海道の
炭鉱を回りまして、昔は一カ月かかっておりましたが、いまはもう十日
そこそこで済むということでございますけれども、そのほか常磐、宇部、
九州の各
炭鉱を機会あるごとに
調査研究をさしていただいております。それで各現場の方々、あるいはまたいろいろな会合で
経営者の方々ともお目にかかる機会が多うございますので、そういった感触から、これは全く私の
個人的見解ではございますけれども、
石炭業界の現在の
操業状態及び
会社の
経営状態から見まして、この二千二百五十万トンの
増産が不能に近いという感じを持っておるわけでございます。それでは、この不能を可能にするためにはどういうことを、各
会社も、われわれとしましても、どういうことが望まれるかということを、本日時間を拝借いたしまして二、三十分間ほど
意見を述べさしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
まず現状からでございますけれども、最初に申し上げたいのは、各社の
経営内容、これはもう
皆さま方御存じのとおりでございますけれども、
赤字経営ということでございます。本
年度も
トン当たり千円内外、あるいはまた、ある
会社によりましては二千円近いというような
赤字の
経営を行なっております。もちろん、来
年度も
石炭特別会計予算からの
補助は出ます。ですが、現状のままで各
炭鉱が
出炭増ということを行なったならばはたしてどうなるであろうか。これは
増産すればするほど雪だるまのようにふくれ上がる
赤字をかかえまして、たとえ
増産は達成しても、これは
経営会社としては
赤字倒産を覚悟しなければならぬじゃないかというような感じがするわけでございます。
それで、こういった山の
状態を見ましても、それでは、
炭鉱が立ち直りまして
増産計画を遂行するということのためにはどういうことが必要とされるかという問題でございますけれども、まず第一に考えられますことが、やはり今回の
石炭見直し論というものが、われわれいつも感じるわけでございますけれども、一時的なものでなくて絶対に恒久的なものである、国家としての
石炭産業の
位置づけの確立ということがまず第一に必要なことでございましょうが、当面の問題としまして、さっそく次
年度からでございますけれども、まっ先に取り上げていただかなければならないということは、一番必要なことと思いますけれども、
資金面の金繰りというのが、私ども、
会社を回りまして一番痛切に感じられる。それと同時に、必要でかつ真剣な問題というのは、やはり
労務者の問題でございます。この
労務者の確保というのが非常にこれから先も——これがうっかりしますと、
九州でも考えられますのは、
労務者倒産という
会社が出てきやしないか。そういうところまではないかもしれませんけれども、そこまで非常に追い詰められておるという感じがするわけでございます。で、
昭和五十一
年度のこの二千二百五十万トン
増産計画というものに対しまして、さっそくこの四十九
年度からは、新規の坑道掘進というのはもちろんでございますけれども、当然
設備投資とかあるいは
人員補充というものが必要になってまいります。ところがいまは、各
会社の
内容を見ましても、
自己資金というものは非常に乏しい。まあ言うならば
お手上げ状態。
都市銀行というものにはそっぽを向かれております。
重油関税からの例の
特別対策費というものがたよりになっておるというような現状でございます。
ところが、私ども、いつも新聞でも気をつけておるわけでございますけれども、
昭和五十一
年度以降の
重油関税からきますこの
特別会計というものが、五十一
年度以降に必ず実施、継続されるかということの実態というものがまだはっきり私どもにのみ込めない。また、
石炭の
位置づけというものの具体的な——これは
通産大臣が言っておられますのも、
総合エネルギー調査会の六月の
中間答申を待ってというような抽象的なものしかまだ伺えない。こういうことでは、おそらく
経営者としても、こんな
状態のままで設備を拡充し、人員を集めて
技術者を養成しても、かけ声だけの
石炭見直し論ということで、中身が何もない、かけ声倒れになるようなものであったならば、これは死に急ぎをするような、そういう
出炭増の
計画にはとても乗っていくことができないだろうと、第三者の立場で見ましてもそういうふうに感じられるわけでございます。
ただ、いま申し上げましたいわゆる
重油関税からきます
石炭特別会計、これが毎年千億をこえる
対策費が計上されております。ですが、来
年度は前
年度比五%増、千百三十九億というものが出ておりますが、この
対策費の
内容でございますけれども、よく世間の人から言われたり、また問われることは、
石炭産業が年間いま二千万トン程度でございますけれども、それに一千億円ちょっとのそういった
補助金をもらう。これは
石炭一
トン当たり五千円の
補助をもらっているのじゃないか。それでどうして
赤字を出すのだというような、これは著名な
経済評論家もそういうことをおっしゃったのを聞きました。具体的な
内容というものがよくおわかりにならないでそういう質問が出るのだろうと思いますけれども、確かにこの千億円というのは、
石炭産業に
関係のある
内容のものだけということで消費されております。が、これをよく検討しますと、われわれのほうじゃなかなか納得がいかない。
実は
明年度の千百三十九億円というものの項目も、私ちょっと自分で整理してピックアップしてみたのでございますが、表に書いてまいりましたのですけれども、
石炭生産に直結しないものというものを実はピックアップいたしました。これは、中身は
石炭整理促進補助金が七十四億とか、おも立ったものでございますけれども、
鉱害対策費は百九十九億円とか、
産炭地振興対策四十六億、それから、これは
労働省関係のような気がしますのですけれども、
炭鉱離職者援護対策あるいは
産炭地雇用対策、こういうものに百二十億も出しております。
ボタ山災害防止工事なども入りますけれども、これが六百四十二億円、五六%を占めておる。これはわれわれのほうに言わせますと、
あと向きじゃないかということをよく言うわけでございますが、それではこの前向きのほう、
石炭生産に寄与する予算というのが来
年度どれだけこの中から拾い上げられるかと申しますと、これも実は私二つに分けましたのです。
石炭生産に直接寄与する
補助金以外のもの、たとえば銀行から借りておりました
元利補給金、直接銀行にまいりますが、これが九十三億円。それからまた
石炭鉱業再建交付金の百十六億円、あるいは
ガス化技術開発とかございますけれども、こういうものが二百十四億円、一八%ございます。これはもちろん
石炭の
生産にも間接的には大いに
関係しておりますが、たとえば来
年度から
増産計画をやるというような直接の
生産というものに
関係したものは、実はわずかに四件、いわゆる
坑道補給金といわれます六十億と、それから
安定補給金といわれております百十一億、それから
保安補給金といわれております二十二億、それから
合理化事業団からの融資の九十億、二百八十三億円、わずか二五%です。千百三十九億のうちの二五%が、
増産をしなさいと言われたときに
生産に直結する
補助金、
対策費と申しますか、前向きの
対策費ということになるという、これは私の個人的な考えでございますけれども、そういうことが言われると思います。
それで、こういった
対策費の中で、実はこんなことを申し上げますと、お
役所関係のなわ張りの仕事の
内容も知らないしろうとが何を言うかと、そのほうからおしかりを受けるかもしれませんが、これは中にあります、たとえば
炭鉱離職者あるいは
産炭地開発、こういった
労働省関係のものが百二十億ございますが、こういったものとか、
産炭地関係振興対策費の四十六億、こういうものを所轄のほうに、全部とは申しませんけれども、どれだけかでも
皆さま方、諸
先生方に御検討いただきまして、そちらのほうで引き取っていただいて、これを前向きのほうに回してもらうというようなことはできないものだろうかということでございます。
たとえば、さっそくでございますけれども、来
年度からもそういった
増産にかかるならば、坑道掘進というものは始めなければならぬ。そうしますと、やはり設備も投資しなければならないし、また、人員も募集しなければならない。いま掘進を
九州でやっておりましても、たとえば組夫を雇いますにしましても、昔は一人十万円か十五万円の
手当をやれば何とか一
人集められた。ところが現在では二十万円以上、うっかりすると一人三十万円の
手当を出さなければ人間が来ない。そういった
状態でございますので、
人集めが非常に苦しいということでございます。そういう予算繰りというものも、何かそういう
対策が考えられれば、ぜひそういったことでお願いしたい。
それから、実は坑道掘進の
補助費というのが出ておるのですが、これも七〇%ですか七五%、全
工事費のうちそれだけの
補助金を出すということになっております。ところが、現場に参りまして実際に伺ってみますと、この
内容は、
九州に大きなおも立った
炭鉱が三つございますが、これの実態を調べましても、一番低いところでは二〇%
そこそこ、大きいところで五〇%、
補助金が全額こないのです。これは頭打ちとかワクとかございまして、非常にシビアに取り上げられている。
全額坑道補助金もこない。こういったワクというものも、これらも通産のほうと
合理化にお願いしたのですけれども、とっぱずすことはできないものだろうか。
全額補助金というものは出してほしい、こういったこともございます。
もう
一つ、
労務者集めでございますけれども、これは
定年退職とか
自然減耗、特に
離島関係では人員の確保というものが非常に困難である。これは現在の
増産計画のみならず、将来
炭鉱が生きていくためにも
労務者というものが非常に必要欠くべからざるものでございますが、実は私も昨日福岡の通産局の
鉱区調整委員会の
調査で、
筑豊地区の直方、
飯塚の
露天掘りの対象になるものを
調査いたしてまいりまして、夕方の
飛行機でこっちに参ったわけでございます。
炭鉱地帯が非常にうらぶれて、
炭住長屋というものはわびしいかっこうをいたしております。
労務者が住みつくような環境、まず一番大事なのは
石炭が魅力あるということが一番望ましい。そういったところに身を投じても一生この仕事を続けられるということが必要でございましょうが、まず環境というもの。それからもう
一つは待遇でございますが、やはり
ベースアップというようなものは
労使交渉で、われわれのほうじゃとやかく言えませんし、また、
税金免除というようなこともございましたけれども、これは他産業との
関係でなかなかむずかしいということを伺っておりますが、きのう
飛行機の中で考えましたのは、何かいい方法はなかろうかということでふと思いつきまして、けさほど試算いたしてみました。四十八
年度の大手九社で
労務者が二万三千七百八十四人、約二万四千人います。これをかりに二万八千人ということを考えまして、いま月に一人三万円の
手当を出す。ですから、年間に一人三十六万円の
手当が出るということを考えます。そうしますと、これは全国を合わせまして、大手九社では二万四千人で約千九百五十二万トン出ております。これを二万八千人としまして、三十六万円を二万八千にかけますと百億八千万円という金が出ます。これに対しまして、そういった
ベースアップ、
労使交渉の問題あるいは国税庁の
関係の
税金免除というものがむずかしいということであれば、
石炭が国として欠くべからざる
ほんとうに必要なものであるということの
意見が出ますならば、
石炭を出すということは国に非常に寄与する特別な
——名前はどういう名前にしたらいいかわかりませんけれども、いまここにいろいろ
補助金というワクが掲げてありますが、たとえば
出炭奨励補助金というような名目でもけっこうでございますが、これを一トン出すごとにかりに百円としますと、二千万トンで二十億円。ですから、いま
トン当たり五百円の
出炭奨励補助金というものが出たならば、これは二千万トンで百億円でございます。この百億円の金が、この中から、どこからでもいいのですが、捻出できれば、
労務者に月三万円の
手当というものが、これは
ベースアップと別でございますが、
出炭奨励金か何か知りませんけれども、何とか
補助金というような名目で出していただければ、この分だけでも——いま日本の
炭鉱業界の
鉱員の給料というのは
メタルマイン、
金属鉱山よりも低いわけでございます。非常に安いです。一番苦しい、地下深いところの作業をやっておるにもかかわらず賃金が一番安い。私、アメリカに参りまして賃金を調べましたときも、これは
鉄鋼業界とか
土建業界というものに比べましても一番ずば抜けて、群を抜いて高い賃金をもらっているのが自動車の工場に働いている者と
炭鉱業者です。これがいつもせり合っております。そういった高い給料をもらっておる。日本がこんな不当——不当というわけではございませんけれども、こんな苦しい一番ほかのところの環境じゃ考えられないような作業をしておるにもかかわらず賃金が安いというのは、どうしても、坑内に入りましても私は納得できませんです。ですから、そういった
ほんとうに
石炭が要るということで
炭鉱をつぶすなということであれば、
労務者獲得のためにもこういった
手当増というものをどこからか出していただきたい。百億円で一人月三万円の
手当が出ます。ひとつぜひこういうものをお考え願いたいということでございます。
次に、それでは
出炭増のための方法としてはどういうことが考えられるかということになりますと、これは既存の
炭鉱の
増産計画というものが
一つもちろんあります。それから
露天掘りの
開発、これはすぐ炭が出てくるであろうということになります。それから新
鉱開発あるいはまた
終閉山の再
開発というものが出てくると思います。これらに関しましては、もう
通産省の当局から
皆さま方お聞きのとおりと思います。が、こういった
出炭増をはかりますときに、非常に
参考になりますのが、実はお隣の
韓国の
石炭業界がどういうことをやっておるかということでございます。
私、昨年の十月初旬、
中東戦争勃発直前でございますけれども、
韓国が十周年記念の
鉱山学会をやりましたので、招聘されて私講演に参りました。このときに、あとおも立った
炭鉱を回ってまいりました。初めて
韓国の
炭鉱の実情というものを私も知りまして、帰ってきて
報告会をやりましたのですが、
皆さん方はほとんど、
通産省の方もあまりよく
御存じない、まあ
皆さん方御存じかもしれませんけれども、これが非常に今後の新しい
出炭増をやりますための
計画としましても
参考になるということで、ちょっと時間をさいてお聞き願いたいと思いますが、いま
韓国は第三次の
経済開発の五カ年
計画の三年目でございます。一次、二次は済んでおる。この一次の
経済開発五カ年
計画で、これは
経済成長率だけ見ましても七%のやつが八・三%、二次の
計画では、同じく八一%のやつが一二%の
成長率でやっておる。しかも
昭和四十四年には一九・九%の
成長率という
世界最高の記録までつくっております。
現在、いま第三次の
計画実行中でございますが、この中で
石炭の
増産政策というものを大きく取り上げております。
昭和四十四年に
石炭鉱業の
保護臨時法律というものを公布いたしております。これは石油の入荷の負担を軽減して
自国資源を活用するというのが大きな目標になっておりますが、もう一九七〇年から石油に対抗しまして金融上の面から非常に
支持効果があがっております。いろいろな
優遇策、ちょうど終戦直後に日本が
石炭の
優遇政策をとったと同じような形と思っていただければけっこうでございますが、それで
韓国というものは私はせいぜい二、三百万トンの出炭だと思って行ったわけでございます。ところが、
埋蔵量わずか十五億トンしかない。で、可採
確定炭量というものは六億トン前後しかないのです。これを四、五十年で全部掘り尽くしてもいいから掘るのだ、いわゆる石油の使用をできるだけ押えて持てる
資源を最大有効的に活用するということなんです。四、五十年もすればこれはそういった
資源じゃなくて海水からとります重水素による
核融合あるいは太陽熱といったようなものが当然出てくるであろう。それまでには
韓国は経済的に発展しなければいけない。いまは
中進国ということを目標にして進んでおりますが、おそらくそういうことを達成するでしょうが、そういった
考え方で持てる
石炭は全部掘り尽くしてもよろしいというような
考え方でいま
増産をやっております。それで、
韓国のいまの第三次の五カ年
計画では、毎年百万トン
増産計画です。十数年前にはわずか五百万トン
そこそこであったものが、もうすでに昨年は千三百万トン予定に対しまして、私が参りましたとき二十万トン
オーバー、
年度末には百五十万トン
オーバーの千三百五十万トンという目標を達成しております。また、今
年度も百万トン
増産計画をもちろんやっております。
では、それではどうしてこんなに
増産計画が順調に、より以上に、順調以上にいっておるんだろうかということの
内容でございますが、これが非常に
参考になると思いますけれども、これは
韓国には
大韓鉱業振興公社というものがございます。これは、
振興公社というのは
鉱業をふるい起こす
公社でございますが、これが、言うならばわが国の
合理化事業団と
通産省の
石炭部の一部ちゃんぽんになったものだと思います。この総裁といいますか、社長が、実は私、一晩ごちそうになって一緒に二人で飲んだのですが、前の
京城師団長でございます。朴といって、
朴大統領と同じ名前でございますが、腹心の部下であったと思われます。これは
陸軍少将か
中将閣下でございます。まだ四十六、七歳と非常に若いです。非常にしっかりしています。これが社長になりまして、
公社の社長ですか、総裁といいますか、この人が思う存分腕をふるってやっている。
韓国の
炭鉱の炭層というものは非常に傾斜が急でございます。六十度以上立っておる。これは
立て坑が必要になります。私が行きました三階炭田におきましても、これは現在千二百メートルの
立て坑を掘りかけておりましたし、まだ数本、三本以上の六百メートルの
立て坑の
計画をいま立てておりました。こういう新
鉱開発をどんどんやっておるという
内容でございますが、この
振興公社というものが新しい
鉱山を
開発する場合には、
立て坑でございますと、そういった
立て坑の
開発資金の七五%を、これは返さないでいいのです。
補助金をくれっぱなしです、そういうことをやっております。
それから
施設関係、
選炭場とか
貯炭場あるいは
福利施設あるいは
運営費というものもございますが、こういったものを一〇%ないし一五%、二年据え置きです。ものによっては十年あるいは二十年の還付でよろしいというような
優遇政策をとっておる。
それからまたもう
一つ、
公社が機械を買いまして、
さく岩機とか、ポンプとか、ゼネレーター、コンプレッサー、ブルドーザー、トラック、こういうものはもちろんですが、レールまで、これを自分のところで買って貸し賃を取って貸してやる。だから、
鉱山を
開発するという場合に
資本金というものはあまり、あまりというか、ほとんど要らないのじゃないか。非常に少ない元手で
鉱山をどんどん
開発できるというような実態になっておるということでございます。
そういった
韓国の
炭鉱の
鉱山のいわゆる
経営組織というものはどういうものかという
内容でございますが、この
公社自身が
技術屋、
鉱員をかかえてやっておりますところのいわゆる国営でございますが、
公社経営の
炭鉱が二〇%ございます。そしてもう
一つ、非常におもしろいのですが、
炭座株式会社というのがある。これが約三〇%。これはどういうものかと申しますと、たとえば
九州で
飯塚にいま
住友忠隈、日鉄二瀬、
麻生飯塚、
三菱飯塚鉱業所と四つの
会社の
炭鉱がある。これが錯綜している、
鉱区調整がなかなかむずかしい、そういった
炭鉱地帯がございますと、この
振興公社が介入しまして、この四つの
会社が一緒になって
飯塚炭座株式会社というものをつくれということを指示するわけでございます。そうしますというと、この四つの
会社のうちの
一つ、たとえば住友なら住友でけっこうですが、おれのところに炭層状況が非常にいいからおれはいやだ、こういうことを申しますと、この
公社は、政府名で時価評価しまして、一番安い値段でその住友の鉱区を買い上げまして、それを残りの三つに割り当てまして、これで
飯塚炭座株式会社というものをこしらえるということでございます。非常に徹底したやり方をやっております。そういう
炭座株式会社というものが三〇%、これが少しふえつつあるような傾向だと私は見ております。それから残り五〇%が民営である。そういったいわゆる
炭鉱経営のあり方というもので、非常に徹底した、われわれから見ますと思い切ったやり方をやっております。
それから、
炭鉱の魅力というものが非常に強い。働いております平均年齢が、私が行きました一番大きな炭田だけを取り上げてみましても、平均年齢が三十二歳でございます。非常に若い。たとえば
飯塚市みたいな町でございますが、そういった町の中で、
炭鉱で働くといいですねというような町の人の声が聞かれる。こういう
炭鉱につとめておる従業員に対する感情が出ておるということは、この
炭鉱が非常に魅力があるんじゃないか。民間
会社経営の五〇%も、黒字
経営をやっております。賃金表とかその他の資料ももらってまいりましたが、きょうは省略させていただきます。
そういった
韓国のあり方。これを、わが国でいま
出炭増の
計画で、
露天掘り開発とかあるいは新
鉱開発というものを——
終閉山の、もう没収されて
鉱業合理化事業団のものになっておるかもしれませんが、そういうものを
開発する場合に、これを前の持ち主にやらせるということは非常に抵抗感がございます。ここで考えられますのが、日本でもこの
石炭開発公社というものが考えられないか。実はいま現実に、これは皆さんも
御存じのとおりでございますけれども、原料炭
開発会社というものがございます。あそこに各
炭鉱会社からの優秀な
技術屋も集めておられますが、こういったものを発展的に解消しまして、これはもう形が整っておりますからもう少し大きくしまして、
石炭開発公社というようなものができないものだろうか。いまの原料炭
開発会社というのはおもだったスポンサーが鉄鋼
会社です。これじゃどうにもなりませんです。やはり、いまの
石炭の見直し論の中で見ましても、国として必要であるということであれば、新しい
開発とか
露天掘り、そういったものは、
技術屋も十分かかえておられるということであれば、
石炭開発会社が見るがいいんじゃなかろうかという感じがするわけでございます。
この
石炭開発公社というものの取り上げ方は、もう
一つ海外炭の
開発にも結びつくと思います。こういった海外炭の
開発は、一般炭の輸入の問題もございますが、とにかく海外炭というものは、たとえばアメリカにしましても輸出規制の問題がまた再燃するかもしれません。豪州にしましても、やはり自国産のものに対してはある程度ワクが出てくるであろうと思われます。将来日本人の手で
開発が必要になってくる、そういう場合の
開発の
調査とか技術提携、あるいはまた契約の取りつけ、そういったものを一切含めまして、現在の原料炭
開発会社が
石炭開発公社として新発足して、これがそれも見てやるというようなことでいってもらえればどうであろうかという感じがするわけでございます。
これに関連しまして、一般炭の輸入というものが新聞でも取り上げられておりますが、私、
調査の資料を見ましても、確かに一般炭というものは日本の
炭鉱の——
炭鉱の
経営会社の方々にも伺いました。一般炭が海外から輸入された場合、あなた方、どう思うかということなんです。非常に苦しくなるか、どうだということなんです。私の
考え方もほぼ似たようなものでございましたけれども、非粘結性のいわゆる一般炭というもの、これは私、カナダに二度ほど参りましたが、カナダの原料炭がどんどん日本に輸入されております。ところが一般炭の、バルモア
炭鉱に参りましたときもそうでしたが、七千何百カロリーの、硫黄分が〇・幾つというやつが、出れば出るほど野積みにされておるわけです、引き取り手がないということで。日本に輸入されるのは、そんな高級な一般炭でなくてもよろしいわけです。二級炭でけっこうです。いまそういった非粘結性の一般炭がカナダに五十五億トン埋蔵されておる、採掘できるものが。豪州には二十九億トン、ソ連では十五億トン、中国には百二十億トン以上ございましょう。そういった
埋蔵量が一応言われております。こういった一般炭というものをやはりわが国としては輸入しなければならない。これは需給
関係とも関連してくると思いますが、電力
会社——私どもの友人も、
九州でございますので、九電の常務なんかやっておるのが同級とか後輩におりますが、これによく話をするのです。何でおまえ
石炭を使わぬかということを言うのですが、これは、発電所をつくった場合には償却するのに十五年かかる、おまえその
石炭の補給に自信持つか、絶対に十五年間間違いなく安定補給するかということを言われるわけです。こういった発電所をつくりました場合にも、安定補給というものが非常に必要になってまいります。これは、日本の
石炭というものは、まだまだそういった一般炭の供給というものは十分でございますが、ただこれが一般炭の輸入ということは——そういう混炭用のものの必要性というものは
会社としては認めておりますが、そのほかに最近出ておりますところのガス化とか液化、この問題を考えますと、特に液化などを考えますと、かなり均質な、まとまった
石炭の量というのが必要になってくる。そういうことを思います場合にも、一般炭の輸入というものはやはり考えなければならないのじゃないか。これは各
会社の
経営者としては一応同調をいただいたというふうに私は受け取っておりますが、そういうことが非常に必要になってくるのだろうと思っております。
それで、特に私、一番ねらっておりますのはカナダでございます。アメリカというのは、ああいった最近出ておりますように、一般炭にしましても、自国で
石炭の活用ということを非常に金をかけて、これは五カ年間に百億ドルと申しますから、日本の三十カ年か二十カ年に一兆何千億というのとけたが違いますが、非常に大きな予算措置をとってそういったものをやって、実際にもう実用化が近づいておるようでございますので、期待できないかもしれませんが、カナダというのは非常に日本人に感触がよろしいわけです。私、カナダに行きましたときもそうなんですが、カナダの通産次官と私懇意にいたしまして、行くたびその話が出るのですが、商社に入ってくれるなということなんです。カナダでは非常に商社をきらっております。というのが、これは具体的な例を申し上げるのはちょっとぐあいが悪いかもしれませんのではばかりますが、日本の商社が非常にベニスの商人的なことをやっておる。だからおれは、商社はきらいだ。まあカナダというのは、あんな広い国でありますから、大西洋側に行くと時差が二度も変わっている。日本のほうがよほど近い。アメリカはきらいだ。ドイツ人もどうもちょっとはだが合わぬ。日本人が来て掘ってくれ。これくらいの資料を見せまして、いまこんなに有望な炭田があるんだぞ、これをおまえの国でなぜ
開発しないのか。一番よさそうな見本を一部持って帰ったのです。すぐこれを原料炭
開発会社の社長に見せまして、どうだろうか、商社の介在は認めない、はっきりこういうことを言っておるが、あなたのところでやれぬか。それじゃバンクーバーに事務所をつくろうかということで、日鉄
鉱業のビルの隣につくるという
計画が出ましたが、こうなりますと、スポンサーの鉄鋼
会社がもう一ぺんでこれは御破算です。そういったしょうもない原料炭
開発会社はだめだ。ですから、思い切った
公社というものを、国のものをつくってほしい。海外のそういった
開発におきましても、ドイツは
調査費から探鉱費、石油のみならず
鉱山でもですけれども、七〇%、七五%金を国が出して、これは成功払いです。もし失敗したら返さなくてよろしい。そういった海外の
開発促進費というものを出しております。イタリアもフランスも国営国策でやっておる。日本だけが非常に貧しいやり方。ですから、ちょうどバンクーバーにおりますときも、ウラン鉱の
開発で三井金属が出てきましたけれども、あれの融資はわずか千五百万円です。こんな金じゃとても手が打てません。これはもうアメリカにとられましたけれども、そういった情けない国の
開発政策じゃどうにもしようがないわけでございます。
要するに、カナダにおきましてもそういった日本人もろ手をあげて歓迎するといったような実態。これで五十五億の一般炭を——これはちょっと鉄道の運搬費が、原料炭と違って
補助金が政府から出ないかもしれませんが、それにしましても、まだ船賃、汽車賃かけても、いまの石油の値段からいいますと十分採算が合うと、私はそう思っております。ですから、そういった一般炭というものはやはり必要じゃなかろうかというふうに思っております。
それから、時間がちょっと超過いたしましたが、需給
関係でございます。
もう
御存じのとおり、
石炭と石油の価格の比較が非常に逆転してまいっております。それで、発電所のことでございますけれども、
石炭火力発電所というものは、今度出かけます前も、実は九電からちょっと、いままではそっぽを向いて、火力発電、
石炭の話をするとすぐもうそれはいいという顔をしておりましたのが、考えようかというようなことでちょっかいが出てまいりました。それで、
石炭火力発電所というものは、今後
皆さん方のお力ででもふやしていただきたい。これは電力
会社だけの力ではやはり弱いのじゃなかろうかというふうに考えられます。その場合の排煙脱硫装置でございますが、たとえば三池アルミが、すでに
御存じのように三池製作所の排脱装置をつけて、非常に効果をあげております。今後も増設
計画を出しまして、これをふやしますと三十何万キロになりますが、三池のハイサルファの
石炭を年間百二十万トン使う。これはむずかしい福岡県の、あるいは荒尾市の、大牟田市の公害基準をゆうゆうとパスしております、この排脱装置をつけますと。そういった実績を持つ排脱装置というものがもうすでにでき上がっておる。まあ値段は少し上がりまして四十億ぐらいになるかもしれませんが、これがすでにあるのです。つくればいつでもつくれる。こういうものを入れて試算しましても、やはり石油に対して
石炭の火力発電のほうが値段が安いということがもう一応出てきておりますならば、これはどんどん発電所というものはふやしていただきたい。それに対する供給、補給の
石炭というものを、いま申しますように、ただ国産だけじゃなくて、そういったものもあるんだ、一般炭の輸入というものも考えられると、これが恒久的に——いまだったら恒久的な長期契約というのがまだ結べる時期でございます、チャンスでございます。あまりおくれますと、これがだんだん遠のいていきます。こういった契約というのはやはり一日も早くやるべきだと思っております。そういうチャンスでございますから、そういったことを含めまして、これは需給
関係からもぜひ、そういう発電所の排脱装置がもうでき上がっておるならば、優秀な三池の三作のやつもございますから、どんどん使ってほしいということです。実績はもう出ております。
それからまた需給で、セメントのほうでございますけれども、いま日本では田川の三井セメント工場だけが
石炭を主体にしてやっております。ところがいまの石油の値上がりで、三菱セメント、宇部興産、東洋曹達というものがすでに
石炭の購入をもう名ざしてきております。これは実際値段を見ましてもはるかに安くなる。しかもメリットとしましては、ハイサルファの
石炭をたきました場合にSO2、硫黄が吸収されまして石こうをつくるわけです、製造過程の中で。これはセメントの中にわざわざ石こうをぶち込んで品質をよくしようというのが、もう
石炭をたきますとサルファがそのまま石こうに化けてその中に入っちゃう。しかも、灰分は灰捨て場に捨てなくて、灰分も製品の中にまざってセメントとして使える。非常にメリットは大きいわけであります。セメント工場としてもこれを使える。ただ、これがスポット的じゃなくて、恒久的に使えるというような形のものに、やはり政府のほうから何かそこにワクをつくって、おまえのところは
石炭をどんどん入れてやるが、これは今後恒久的に使うということの、
一つの何かワクができると、
炭鉱のほうも非常に安堵感を持って
生産に励めるということだと思います。
最後に一言だけ申し上げたいと思っておりますが、非常に人員不足だ。特に
技術者の養成というのは年月がかかります。私ども大学につとめておりまして
鉱山技術者を養成しなければならない立場にありますけれども、いままでは
炭鉱に就職したらどうであろうかという学生からの質問がありました場合には、そうだな、ううん、行ってこいよということを心から言うわけにいかないわけです。おまえが行ったって定年まで
炭鉱はだいじょうぶだから行きなさい、ということを安心して言えるような気持ちになれませんです。ですから、
炭鉱は、そうだなやっぱり、ううんと、こう頭をひねって、これは消極的にならざるを得ません。そういうことじゃ非常に困ります。ですから、やはり
炭鉱というものを、将来ともに行って安心して働ける——現実に日本の坑内の長壁式切り羽の能率というものは
世界最高のトップレベルです。坑内切り羽の機械化というものは、いまはもう豪州でも自走ワクの導入がほぼきまりかけておりますけれども、アフリカにしましてもアメリカにしましても、いよいよ坑内が深くなってきますと——日本で太平洋炭砿が
開発しまして、いま三池でも非常に好成績をあげております。ですから最高一日に七千トン、昔は考えられもしなかった一切り羽から一日に七千トンの
石炭を出す。ですから、能率も一人
当たり一日に二百三十トンです。こんな高能率を出した記録もございます。そういった非常にすぐれた技術というものをもう日本人はつくり上げております。
皆さん方も
御存じのように、十数年前には月一人
当たりわずか十二、三トン、これが今日では七十トン。いま申しますように、こういった
炭鉱ではもっと大きな能率があがっておると思います。そういったような技術の進歩が
技術者によってやられておるというこのときに、あとに続く
技術者が養成できないということはわれわれとしても非常に残念です。それができるような
石炭というものの
位置づけの確立、これはぜひ
皆さん方の御尽力で一日も早く出していただきたいということを考えております。
時間ということで非常に早口で申し上げましたが、私申し上げたいことはそういうことでございますので、何とか
石炭産業は——ドイツで言っておりますように、
石炭というものは商品でない、あの民間企業のドイツの
炭鉱、あれは政府はもちろんですが、従業員も一般国民も、
石炭というものは商品じゃないのだ、国家に有用なエネルギー
資源であるということを言っております。ですから、一般市民のだれに聞いても、ドイツが戦争に負けたり勝ったりしたのもみんな自分のところに
石炭があったからだということで、
石炭に対して非常に理解と同情というものがあるわけです
日本の場合にも、
石炭はもう商品じゃない。いまの
炭鉱会社の
経営者が利潤追求して、
石炭でいまの商社とかあるいは時流に乗った他産業みたいにがっぽがっぽもうけて株の配当するなんということを考えておる
経営者は一人もございません。何でおまえそんなつまらぬ
炭鉱をいつまでも
経営しているのだと言われるくらいです。だから、これはもう商品じゃないのです。国が必要とする
石炭を出すのだということで、みんながその気持ちでやるならば、当然
石炭というものに対してやる気が——いま生き残ってしがみついてやっている
炭鉱の従業員から事務職員も含めまして、
経営者もみんな
石炭に対して非常に愛着があるわけなんです。私ども抗内に入りましても、坑内に入った者はだれだってそうですが、
石炭に対する愛着というものは他産業のものと違うわけです。
ほんとうに
石炭というものを捨てがたい、何とか——これは
石炭炭鉱をやめた者でも、まだそう言います。ですから、そういった含みもありますし、
石炭産業というものにこれからもぜひ
皆さん方の御尽力をお願いしたいということで一言申し上げました。
どうもはなはだ失礼いたしました。(拍手)