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1974-03-13 第72回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十三日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 金子 岩三君 理事 田中 六助君    理事 地崎宇三郎君 理事 山崎平八郎君    理事 山下 徳夫君 理事 多賀谷真稔君    理事 渡辺 惣蔵君 理事 多田 光雄君       三枝 三郎君    篠田 弘作君       山崎  拓君    岡田 春夫君       上坂  昇君    中村 重光君       細谷 治嘉君    鬼木 勝利君       松尾 信人君    小宮 武喜君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森下 元晴君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         中小企業庁計画         部長      吉川 佐吉君  委員外出席者         厚生省年金局年         金課長     坂本 龍彦君         通商産業省立地         公害局石炭課長 原木 雄介君         資源エネルギー         庁石炭部炭業課         長       広瀬 幾男君         資源エネルギー         庁石炭部炭地         域振興課長  安河内健吉郎君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     小野 雅文君         参  考  人         (熊本大学教         授)      兼重  修君         参  考  人         (九州大学教         授)      正田 誠一君     ————————————— 委員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   渡辺 紘三君     山崎  拓君     ————————————— 本日の会議に付した案件  電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法  律案内閣提出第六一号)  石炭対策に関する件      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として熊本大学教授兼重修君、九州大学教授正田誠一君の御出席をいただいております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本件につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対し質疑をいただきたいと存じます。  まず、兼重参考人にお願いいたします。
  3. 兼重修

    兼重参考人 兼重でございます。  本日、私、こちらに参考人として出席させていただきましたが、実は石炭関係のことで何か申し上げることがあればということで伺いました。  昨年の十月からの石油ショックで、確かに石炭見直し論というのが、エネルギー多様化の一環として私ども非常にかねがね強く望んでいたことでもありますし、このたび石炭増産計画というものも出まして、まことにけっこうなことだと思っております。  それで、ただ私、本日申し上げたいと思っておりますのは、昨年の十二月に円城寺石炭鉱業審議会総合部会長から通産大臣中間報告で、昭和五十一年度二千二百五十万トン程度の増産という答申がなされまして、今年の国会でも再三大臣がこの増産を実施いたしますということを述べておられます。しかしながら、私、炭鉱業界のほうにしょっちゅう顔を出しておるわけでございますけれども、いまの現状のままではこの二千二百五十万トンの増産というのが非常に困難であるということを申し上げたいと思っておるわけでございます。  私自身も、実は昔、昭和十一年に大学生のときに撫順炭鉱で一カ月ほど炭鉱坑内実習をいたしましたのが石炭との結びつきで、自後三十八年ばかり石炭問題の研究をさせていただきまして、現在でも、終戦後も夏休みは必ず一回北海道の炭鉱を回りまして、昔は一カ月かかっておりましたが、いまはもう十日そこそこで済むということでございますけれども、そのほか常磐、宇部、九州の各炭鉱を機会あるごとに調査研究をさしていただいております。それで各現場の方々、あるいはまたいろいろな会合で経営者の方々ともお目にかかる機会が多うございますので、そういった感触から、これは全く私の個人的見解ではございますけれども、石炭業界の現在の操業状態及び会社経営状態から見まして、この二千二百五十万トンの増産が不能に近いという感じを持っておるわけでございます。それでは、この不能を可能にするためにはどういうことを、各会社も、われわれとしましても、どういうことが望まれるかということを、本日時間を拝借いたしまして二、三十分間ほど意見を述べさしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  まず現状からでございますけれども、最初に申し上げたいのは、各社の経営内容、これはもう皆さま方御存じのとおりでございますけれども、赤字経営ということでございます。本年度トン当たり千円内外、あるいはまた、ある会社によりましては二千円近いというような赤字経営を行なっております。もちろん、来年度石炭特別会計予算からの補助は出ます。ですが、現状のままで各炭鉱出炭増ということを行なったならばはたしてどうなるであろうか。これは増産すればするほど雪だるまのようにふくれ上がる赤字をかかえまして、たとえ増産は達成しても、これは経営会社としては赤字倒産を覚悟しなければならぬじゃないかというような感じがするわけでございます。  それで、こういった山の状態を見ましても、それでは、炭鉱が立ち直りまして増産計画を遂行するということのためにはどういうことが必要とされるかという問題でございますけれども、まず第一に考えられますことが、やはり今回の石炭見直し論というものが、われわれいつも感じるわけでございますけれども、一時的なものでなくて絶対に恒久的なものである、国家としての石炭産業位置づけの確立ということがまず第一に必要なことでございましょうが、当面の問題としまして、さっそく次年度からでございますけれども、まっ先に取り上げていただかなければならないということは、一番必要なことと思いますけれども、資金面の金繰りというのが、私ども、会社を回りまして一番痛切に感じられる。それと同時に、必要でかつ真剣な問題というのは、やはり労務者の問題でございます。この労務者の確保というのが非常にこれから先も——これがうっかりしますと、九州でも考えられますのは、労務者倒産という会社が出てきやしないか。そういうところまではないかもしれませんけれども、そこまで非常に追い詰められておるという感じがするわけでございます。で、昭和五十一年度のこの二千二百五十万トン増産計画というものに対しまして、さっそくこの四十九年度からは、新規の坑道掘進というのはもちろんでございますけれども、当然設備投資とかあるいは人員補充というものが必要になってまいります。ところがいまは、各会社内容を見ましても、自己資金というものは非常に乏しい。まあ言うならばお手上げ状態都市銀行というものにはそっぽを向かれております。重油関税からの例の特別対策費というものがたよりになっておるというような現状でございます。  ところが、私ども、いつも新聞でも気をつけておるわけでございますけれども、昭和五十一年度以降の重油関税からきますこの特別会計というものが、五十一年度以降に必ず実施、継続されるかということの実態というものがまだはっきり私どもにのみ込めない。また、石炭位置づけというものの具体的な——これは通産大臣が言っておられますのも、総合エネルギー調査会の六月の中間答申を待ってというような抽象的なものしかまだ伺えない。こういうことでは、おそらく経営者としても、こんな状態のままで設備を拡充し、人員を集めて技術者を養成しても、かけ声だけの石炭見直し論ということで、中身が何もない、かけ声倒れになるようなものであったならば、これは死に急ぎをするような、そういう出炭増計画にはとても乗っていくことができないだろうと、第三者の立場で見ましてもそういうふうに感じられるわけでございます。  ただ、いま申し上げましたいわゆる重油関税からきます石炭特別会計、これが毎年千億をこえる対策費が計上されております。ですが、来年度は前年度比五%増、千百三十九億というものが出ておりますが、この対策費内容でございますけれども、よく世間の人から言われたり、また問われることは、石炭産業が年間いま二千万トン程度でございますけれども、それに一千億円ちょっとのそういった補助金をもらう。これは石炭トン当たり五千円の補助をもらっているのじゃないか。それでどうして赤字を出すのだというような、これは著名な経済評論家もそういうことをおっしゃったのを聞きました。具体的な内容というものがよくおわかりにならないでそういう質問が出るのだろうと思いますけれども、確かにこの千億円というのは、石炭産業関係のある内容のものだけということで消費されております。が、これをよく検討しますと、われわれのほうじゃなかなか納得がいかない。  実は明年度の千百三十九億円というものの項目も、私ちょっと自分で整理してピックアップしてみたのでございますが、表に書いてまいりましたのですけれども、石炭生産に直結しないものというものを実はピックアップいたしました。これは、中身は石炭整理促進補助金が七十四億とか、おも立ったものでございますけれども、鉱害対策費は百九十九億円とか、産炭地振興対策四十六億、それから、これは労働省関係のような気がしますのですけれども、炭鉱離職者援護対策あるいは産炭地雇用対策、こういうものに百二十億も出しております。ボタ山災害防止工事なども入りますけれども、これが六百四十二億円、五六%を占めておる。これはわれわれのほうに言わせますと、あと向きじゃないかということをよく言うわけでございますが、それではこの前向きのほう、石炭生産に寄与する予算というのが来年度どれだけこの中から拾い上げられるかと申しますと、これも実は私二つに分けましたのです。石炭生産に直接寄与する補助金以外のもの、たとえば銀行から借りておりました元利補給金、直接銀行にまいりますが、これが九十三億円。それからまた石炭鉱業再建交付金の百十六億円、あるいはガス化技術開発とかございますけれども、こういうものが二百十四億円、一八%ございます。これはもちろん石炭生産にも間接的には大いに関係しておりますが、たとえば来年度から増産計画をやるというような直接の生産というものに関係したものは、実はわずかに四件、いわゆる坑道補給金といわれます六十億と、それから安定補給金といわれております百十一億、それから保安補給金といわれております二十二億、それから合理化事業団からの融資の九十億、二百八十三億円、わずか二五%です。千百三十九億のうちの二五%が、増産をしなさいと言われたときに生産に直結する補助金対策費と申しますか、前向きの対策費ということになるという、これは私の個人的な考えでございますけれども、そういうことが言われると思います。  それで、こういった対策費の中で、実はこんなことを申し上げますと、お役所関係のなわ張りの仕事の内容も知らないしろうとが何を言うかと、そのほうからおしかりを受けるかもしれませんが、これは中にあります、たとえば炭鉱離職者あるいは産炭地開発、こういった労働省関係のものが百二十億ございますが、こういったものとか、産炭地関係振興対策費の四十六億、こういうものを所轄のほうに、全部とは申しませんけれども、どれだけかでも皆さま方、諸先生方に御検討いただきまして、そちらのほうで引き取っていただいて、これを前向きのほうに回してもらうというようなことはできないものだろうかということでございます。  たとえば、さっそくでございますけれども、来年度からもそういった増産にかかるならば、坑道掘進というものは始めなければならぬ。そうしますと、やはり設備も投資しなければならないし、また、人員も募集しなければならない。いま掘進を九州でやっておりましても、たとえば組夫を雇いますにしましても、昔は一人十万円か十五万円の手当をやれば何とか一人集められた。ところが現在では二十万円以上、うっかりすると一人三十万円の手当を出さなければ人間が来ない。そういった状態でございますので、人集めが非常に苦しいということでございます。そういう予算繰りというものも、何かそういう対策が考えられれば、ぜひそういったことでお願いしたい。  それから、実は坑道掘進の補助費というのが出ておるのですが、これも七〇%ですか七五%、全工事費のうちそれだけの補助金を出すということになっております。ところが、現場に参りまして実際に伺ってみますと、この内容は、九州に大きなおも立った炭鉱が三つございますが、これの実態を調べましても、一番低いところでは二〇%そこそこ、大きいところで五〇%、補助金が全額こないのです。これは頭打ちとかワクとかございまして、非常にシビアに取り上げられている。全額坑道補助金もこない。こういったワクというものも、これらも通産のほうと合理化にお願いしたのですけれども、とっぱずすことはできないものだろうか。全額補助金というものは出してほしい、こういったこともございます。  もう一つ労務者集めでございますけれども、これは定年退職とか自然減耗、特に離島関係では人員の確保というものが非常に困難である。これは現在の増産計画のみならず、将来炭鉱が生きていくためにも労務者というものが非常に必要欠くべからざるものでございますが、実は私も昨日福岡の通産局の鉱区調整委員会調査で、筑豊地区の直方、飯塚露天掘りの対象になるものを調査いたしてまいりまして、夕方の飛行機でこっちに参ったわけでございます。炭鉱地帯が非常にうらぶれて、炭住長屋というものはわびしいかっこうをいたしております。労務者が住みつくような環境、まず一番大事なのは石炭が魅力あるということが一番望ましい。そういったところに身を投じても一生この仕事を続けられるということが必要でございましょうが、まず環境というもの。それからもう一つは待遇でございますが、やはりベースアップというようなものは労使交渉で、われわれのほうじゃとやかく言えませんし、また、税金免除というようなこともございましたけれども、これは他産業との関係でなかなかむずかしいということを伺っておりますが、きのう飛行機の中で考えましたのは、何かいい方法はなかろうかということでふと思いつきまして、けさほど試算いたしてみました。四十八年度の大手九社で労務者が二万三千七百八十四人、約二万四千人います。これをかりに二万八千人ということを考えまして、いま月に一人三万円の手当を出す。ですから、年間に一人三十六万円の手当が出るということを考えます。そうしますと、これは全国を合わせまして、大手九社では二万四千人で約千九百五十二万トン出ております。これを二万八千人としまして、三十六万円を二万八千にかけますと百億八千万円という金が出ます。これに対しまして、そういったベースアップ労使交渉の問題あるいは国税庁の関係税金免除というものがむずかしいということであれば、石炭が国として欠くべからざるほんとうに必要なものであるということの意見が出ますならば、石炭を出すということは国に非常に寄与する特別な——名前はどういう名前にしたらいいかわかりませんけれども、いまここにいろいろ補助金というワクが掲げてありますが、たとえば出炭奨励補助金というような名目でもけっこうでございますが、これを一トン出すごとにかりに百円としますと、二千万トンで二十億円。ですから、いまトン当たり五百円の出炭奨励補助金というものが出たならば、これは二千万トンで百億円でございます。この百億円の金が、この中から、どこからでもいいのですが、捻出できれば、労務者に月三万円の手当というものが、これはベースアップと別でございますが、出炭奨励金か何か知りませんけれども、何とか補助金というような名目で出していただければ、この分だけでも——いま日本の炭鉱業界鉱員の給料というのはメタルマイン金属鉱山よりも低いわけでございます。非常に安いです。一番苦しい、地下深いところの作業をやっておるにもかかわらず賃金が一番安い。私、アメリカに参りまして賃金を調べましたときも、これは鉄鋼業界とか土建業界というものに比べましても一番ずば抜けて、群を抜いて高い賃金をもらっているのが自動車の工場に働いている者と炭鉱業者です。これがいつもせり合っております。そういった高い給料をもらっておる。日本がこんな不当——不当というわけではございませんけれども、こんな苦しい一番ほかのところの環境じゃ考えられないような作業をしておるにもかかわらず賃金が安いというのは、どうしても、坑内に入りましても私は納得できませんです。ですから、そういったほんとう石炭が要るということで炭鉱をつぶすなということであれば、労務者獲得のためにもこういった手当増というものをどこからか出していただきたい。百億円で一人月三万円の手当が出ます。ひとつぜひこういうものをお考え願いたいということでございます。  次に、それでは出炭増のための方法としてはどういうことが考えられるかということになりますと、これは既存の炭鉱増産計画というものが一つもちろんあります。それから露天掘り開発、これはすぐ炭が出てくるであろうということになります。それから新鉱開発あるいはまた終閉山の再開発というものが出てくると思います。これらに関しましては、もう通産省の当局から皆さま方お聞きのとおりと思います。が、こういった出炭増をはかりますときに、非常に参考になりますのが、実はお隣の韓国石炭業界がどういうことをやっておるかということでございます。  私、昨年の十月初旬、中東戦争勃発直前でございますけれども、韓国が十周年記念の鉱山学会をやりましたので、招聘されて私講演に参りました。このときに、あとおも立った炭鉱を回ってまいりました。初めて韓国炭鉱の実情というものを私も知りまして、帰ってきて報告会をやりましたのですが、皆さん方はほとんど、通産省の方もあまりよく御存じない、まあ皆さん方御存じかもしれませんけれども、これが非常に今後の新しい出炭増をやりますための計画としましても参考になるということで、ちょっと時間をさいてお聞き願いたいと思いますが、いま韓国は第三次の経済開発の五カ年計画の三年目でございます。一次、二次は済んでおる。この一次の経済開発五カ年計画で、これは経済成長率だけ見ましても七%のやつが八・三%、二次の計画では、同じく八一%のやつが一二%の成長率でやっておる。しかも昭和四十四年には一九・九%の成長率という世界最高の記録までつくっております。  現在、いま第三次の計画実行中でございますが、この中で石炭増産政策というものを大きく取り上げております。昭和四十四年に石炭鉱業保護臨時法律というものを公布いたしております。これは石油の入荷の負担を軽減して自国資源を活用するというのが大きな目標になっておりますが、もう一九七〇年から石油に対抗しまして金融上の面から非常に支持効果があがっております。いろいろな優遇策、ちょうど終戦直後に日本が石炭優遇政策をとったと同じような形と思っていただければけっこうでございますが、それで韓国というものは私はせいぜい二、三百万トンの出炭だと思って行ったわけでございます。ところが、埋蔵量わずか十五億トンしかない。で、可採確定炭量というものは六億トン前後しかないのです。これを四、五十年で全部掘り尽くしてもいいから掘るのだ、いわゆる石油の使用をできるだけ押えて持てる資源を最大有効的に活用するということなんです。四、五十年もすればこれはそういった資源じゃなくて海水からとります重水素による核融合あるいは太陽熱といったようなものが当然出てくるであろう。それまでには韓国は経済的に発展しなければいけない。いまは中進国ということを目標にして進んでおりますが、おそらくそういうことを達成するでしょうが、そういった考え方で持てる石炭は全部掘り尽くしてもよろしいというような考え方でいま増産をやっております。それで、韓国のいまの第三次の五カ年計画では、毎年百万トン増産計画です。十数年前にはわずか五百万トンそこそこであったものが、もうすでに昨年は千三百万トン予定に対しまして、私が参りましたとき二十万トンオーバー年度末には百五十万トンオーバーの千三百五十万トンという目標を達成しております。また、今年度も百万トン増産計画をもちろんやっております。  では、それではどうしてこんなに増産計画が順調に、より以上に、順調以上にいっておるんだろうかということの内容でございますが、これが非常に参考になると思いますけれども、これは韓国には大韓鉱業振興公社というものがございます。これは、振興公社というのは鉱業をふるい起こす公社でございますが、これが、言うならばわが国の合理化事業団通産省石炭部の一部ちゃんぽんになったものだと思います。この総裁といいますか、社長が、実は私、一晩ごちそうになって一緒に二人で飲んだのですが、前の京城師団長でございます。朴といって、朴大統領と同じ名前でございますが、腹心の部下であったと思われます。これは陸軍少将中将閣下でございます。まだ四十六、七歳と非常に若いです。非常にしっかりしています。これが社長になりまして、公社の社長ですか、総裁といいますか、この人が思う存分腕をふるってやっている。  韓国炭鉱の炭層というものは非常に傾斜が急でございます。六十度以上立っておる。これは立て坑が必要になります。私が行きました三階炭田におきましても、これは現在千二百メートルの立て坑を掘りかけておりましたし、まだ数本、三本以上の六百メートルの立て坑計画をいま立てておりました。こういう新鉱開発をどんどんやっておるという内容でございますが、この振興公社というものが新しい鉱山開発する場合には、立て坑でございますと、そういった立て坑開発資金の七五%を、これは返さないでいいのです。補助金をくれっぱなしです、そういうことをやっております。  それから施設関係選炭場とか貯炭場あるいは福利施設あるいは運営費というものもございますが、こういったものを一〇%ないし一五%、二年据え置きです。ものによっては十年あるいは二十年の還付でよろしいというような優遇政策をとっておる。  それからまたもう一つ公社が機械を買いまして、さく岩機とか、ポンプとか、ゼネレーター、コンプレッサー、ブルドーザー、トラック、こういうものはもちろんですが、レールまで、これを自分のところで買って貸し賃を取って貸してやる。だから、鉱山開発するという場合に資本金というものはあまり、あまりというか、ほとんど要らないのじゃないか。非常に少ない元手で鉱山をどんどん開発できるというような実態になっておるということでございます。  そういった韓国炭鉱鉱山のいわゆる経営組織というものはどういうものかという内容でございますが、この公社自身技術屋鉱員をかかえてやっておりますところのいわゆる国営でございますが、公社経営炭鉱が二〇%ございます。そしてもう一つ、非常におもしろいのですが、炭座株式会社というのがある。これが約三〇%。これはどういうものかと申しますと、たとえば九州飯塚にいま住友忠隈、日鉄二瀬、麻生飯塚三菱飯塚鉱業所と四つの会社炭鉱がある。これが錯綜している、鉱区調整がなかなかむずかしい、そういった炭鉱地帯がございますと、この振興公社が介入しまして、この四つの会社が一緒になって飯塚炭座株式会社というものをつくれということを指示するわけでございます。そうしますというと、この四つの会社のうちの一つ、たとえば住友なら住友でけっこうですが、おれのところに炭層状況が非常にいいからおれはいやだ、こういうことを申しますと、この公社は、政府名で時価評価しまして、一番安い値段でその住友の鉱区を買い上げまして、それを残りの三つに割り当てまして、これで飯塚炭座株式会社というものをこしらえるということでございます。非常に徹底したやり方をやっております。そういう炭座株式会社というものが三〇%、これが少しふえつつあるような傾向だと私は見ております。それから残り五〇%が民営である。そういったいわゆる炭鉱経営のあり方というもので、非常に徹底した、われわれから見ますと思い切ったやり方をやっております。  それから、炭鉱の魅力というものが非常に強い。働いております平均年齢が、私が行きました一番大きな炭田だけを取り上げてみましても、平均年齢が三十二歳でございます。非常に若い。たとえば飯塚市みたいな町でございますが、そういった町の中で、炭鉱で働くといいですねというような町の人の声が聞かれる。こういう炭鉱につとめておる従業員に対する感情が出ておるということは、この炭鉱が非常に魅力があるんじゃないか。民間会社経営の五〇%も、黒字経営をやっております。賃金表とかその他の資料ももらってまいりましたが、きょうは省略させていただきます。  そういった韓国のあり方。これを、わが国でいま出炭増計画で、露天掘り開発とかあるいは新鉱開発というものを——終閉山の、もう没収されて鉱業合理化事業団のものになっておるかもしれませんが、そういうものを開発する場合に、これを前の持ち主にやらせるということは非常に抵抗感がございます。ここで考えられますのが、日本でもこの石炭開発公社というものが考えられないか。実はいま現実に、これは皆さんも御存じのとおりでございますけれども、原料炭開発会社というものがございます。あそこに各炭鉱会社からの優秀な技術屋も集めておられますが、こういったものを発展的に解消しまして、これはもう形が整っておりますからもう少し大きくしまして、石炭開発公社というようなものができないものだろうか。いまの原料炭開発会社というのはおもだったスポンサーが鉄鋼会社です。これじゃどうにもなりませんです。やはり、いまの石炭の見直し論の中で見ましても、国として必要であるということであれば、新しい開発とか露天掘り、そういったものは、技術屋も十分かかえておられるということであれば、石炭開発会社が見るがいいんじゃなかろうかという感じがするわけでございます。  この石炭開発公社というものの取り上げ方は、もう一つ海外炭の開発にも結びつくと思います。こういった海外炭の開発は、一般炭の輸入の問題もございますが、とにかく海外炭というものは、たとえばアメリカにしましても輸出規制の問題がまた再燃するかもしれません。豪州にしましても、やはり自国産のものに対してはある程度ワクが出てくるであろうと思われます。将来日本人の手で開発が必要になってくる、そういう場合の開発調査とか技術提携、あるいはまた契約の取りつけ、そういったものを一切含めまして、現在の原料炭開発会社石炭開発公社として新発足して、これがそれも見てやるというようなことでいってもらえればどうであろうかという感じがするわけでございます。  これに関連しまして、一般炭の輸入というものが新聞でも取り上げられておりますが、私、調査の資料を見ましても、確かに一般炭というものは日本の炭鉱の——炭鉱経営会社の方々にも伺いました。一般炭が海外から輸入された場合、あなた方、どう思うかということなんです。非常に苦しくなるか、どうだということなんです。私の考え方もほぼ似たようなものでございましたけれども、非粘結性のいわゆる一般炭というもの、これは私、カナダに二度ほど参りましたが、カナダの原料炭がどんどん日本に輸入されております。ところが一般炭の、バルモア炭鉱に参りましたときもそうでしたが、七千何百カロリーの、硫黄分が〇・幾つというやつが、出れば出るほど野積みにされておるわけです、引き取り手がないということで。日本に輸入されるのは、そんな高級な一般炭でなくてもよろしいわけです。二級炭でけっこうです。いまそういった非粘結性の一般炭がカナダに五十五億トン埋蔵されておる、採掘できるものが。豪州には二十九億トン、ソ連では十五億トン、中国には百二十億トン以上ございましょう。そういった埋蔵量が一応言われております。こういった一般炭というものをやはりわが国としては輸入しなければならない。これは需給関係とも関連してくると思いますが、電力会社——私どもの友人も、九州でございますので、九電の常務なんかやっておるのが同級とか後輩におりますが、これによく話をするのです。何でおまえ石炭を使わぬかということを言うのですが、これは、発電所をつくった場合には償却するのに十五年かかる、おまえその石炭の補給に自信持つか、絶対に十五年間間違いなく安定補給するかということを言われるわけです。こういった発電所をつくりました場合にも、安定補給というものが非常に必要になってまいります。これは、日本の石炭というものは、まだまだそういった一般炭の供給というものは十分でございますが、ただこれが一般炭の輸入ということは——そういう混炭用のものの必要性というものは会社としては認めておりますが、そのほかに最近出ておりますところのガス化とか液化、この問題を考えますと、特に液化などを考えますと、かなり均質な、まとまった石炭の量というのが必要になってくる。そういうことを思います場合にも、一般炭の輸入というものはやはり考えなければならないのじゃないか。これは各会社経営者としては一応同調をいただいたというふうに私は受け取っておりますが、そういうことが非常に必要になってくるのだろうと思っております。  それで、特に私、一番ねらっておりますのはカナダでございます。アメリカというのは、ああいった最近出ておりますように、一般炭にしましても、自国で石炭の活用ということを非常に金をかけて、これは五カ年間に百億ドルと申しますから、日本の三十カ年か二十カ年に一兆何千億というのとけたが違いますが、非常に大きな予算措置をとってそういったものをやって、実際にもう実用化が近づいておるようでございますので、期待できないかもしれませんが、カナダというのは非常に日本人に感触がよろしいわけです。私、カナダに行きましたときもそうなんですが、カナダの通産次官と私懇意にいたしまして、行くたびその話が出るのですが、商社に入ってくれるなということなんです。カナダでは非常に商社をきらっております。というのが、これは具体的な例を申し上げるのはちょっとぐあいが悪いかもしれませんのではばかりますが、日本の商社が非常にベニスの商人的なことをやっておる。だからおれは、商社はきらいだ。まあカナダというのは、あんな広い国でありますから、大西洋側に行くと時差が二度も変わっている。日本のほうがよほど近い。アメリカはきらいだ。ドイツ人もどうもちょっとはだが合わぬ。日本人が来て掘ってくれ。これくらいの資料を見せまして、いまこんなに有望な炭田があるんだぞ、これをおまえの国でなぜ開発しないのか。一番よさそうな見本を一部持って帰ったのです。すぐこれを原料炭開発会社の社長に見せまして、どうだろうか、商社の介在は認めない、はっきりこういうことを言っておるが、あなたのところでやれぬか。それじゃバンクーバーに事務所をつくろうかということで、日鉄鉱業のビルの隣につくるという計画が出ましたが、こうなりますと、スポンサーの鉄鋼会社がもう一ぺんでこれは御破算です。そういったしょうもない原料炭開発会社はだめだ。ですから、思い切った公社というものを、国のものをつくってほしい。海外のそういった開発におきましても、ドイツは調査費から探鉱費、石油のみならず鉱山でもですけれども、七〇%、七五%金を国が出して、これは成功払いです。もし失敗したら返さなくてよろしい。そういった海外の開発促進費というものを出しております。イタリアもフランスも国営国策でやっておる。日本だけが非常に貧しいやり方。ですから、ちょうどバンクーバーにおりますときも、ウラン鉱の開発で三井金属が出てきましたけれども、あれの融資はわずか千五百万円です。こんな金じゃとても手が打てません。これはもうアメリカにとられましたけれども、そういった情けない国の開発政策じゃどうにもしようがないわけでございます。  要するに、カナダにおきましてもそういった日本人もろ手をあげて歓迎するといったような実態。これで五十五億の一般炭を——これはちょっと鉄道の運搬費が、原料炭と違って補助金が政府から出ないかもしれませんが、それにしましても、まだ船賃、汽車賃かけても、いまの石油の値段からいいますと十分採算が合うと、私はそう思っております。ですから、そういった一般炭というものはやはり必要じゃなかろうかというふうに思っております。  それから、時間がちょっと超過いたしましたが、需給関係でございます。  もう御存じのとおり、石炭と石油の価格の比較が非常に逆転してまいっております。それで、発電所のことでございますけれども、石炭火力発電所というものは、今度出かけます前も、実は九電からちょっと、いままではそっぽを向いて、火力発電、石炭の話をするとすぐもうそれはいいという顔をしておりましたのが、考えようかというようなことでちょっかいが出てまいりました。それで、石炭火力発電所というものは、今後皆さん方のお力ででもふやしていただきたい。これは電力会社だけの力ではやはり弱いのじゃなかろうかというふうに考えられます。その場合の排煙脱硫装置でございますが、たとえば三池アルミが、すでに御存じのように三池製作所の排脱装置をつけて、非常に効果をあげております。今後も増設計画を出しまして、これをふやしますと三十何万キロになりますが、三池のハイサルファの石炭を年間百二十万トン使う。これはむずかしい福岡県の、あるいは荒尾市の、大牟田市の公害基準をゆうゆうとパスしております、この排脱装置をつけますと。そういった実績を持つ排脱装置というものがもうすでにでき上がっておる。まあ値段は少し上がりまして四十億ぐらいになるかもしれませんが、これがすでにあるのです。つくればいつでもつくれる。こういうものを入れて試算しましても、やはり石油に対して石炭の火力発電のほうが値段が安いということがもう一応出てきておりますならば、これはどんどん発電所というものはふやしていただきたい。それに対する供給、補給の石炭というものを、いま申しますように、ただ国産だけじゃなくて、そういったものもあるんだ、一般炭の輸入というものも考えられると、これが恒久的に——いまだったら恒久的な長期契約というのがまだ結べる時期でございます、チャンスでございます。あまりおくれますと、これがだんだん遠のいていきます。こういった契約というのはやはり一日も早くやるべきだと思っております。そういうチャンスでございますから、そういったことを含めまして、これは需給関係からもぜひ、そういう発電所の排脱装置がもうでき上がっておるならば、優秀な三池の三作のやつもございますから、どんどん使ってほしいということです。実績はもう出ております。  それからまた需給で、セメントのほうでございますけれども、いま日本では田川の三井セメント工場だけが石炭を主体にしてやっております。ところがいまの石油の値上がりで、三菱セメント、宇部興産、東洋曹達というものがすでに石炭の購入をもう名ざしてきております。これは実際値段を見ましてもはるかに安くなる。しかもメリットとしましては、ハイサルファの石炭をたきました場合にSO2、硫黄が吸収されまして石こうをつくるわけです、製造過程の中で。これはセメントの中にわざわざ石こうをぶち込んで品質をよくしようというのが、もう石炭をたきますとサルファがそのまま石こうに化けてその中に入っちゃう。しかも、灰分は灰捨て場に捨てなくて、灰分も製品の中にまざってセメントとして使える。非常にメリットは大きいわけであります。セメント工場としてもこれを使える。ただ、これがスポット的じゃなくて、恒久的に使えるというような形のものに、やはり政府のほうから何かそこにワクをつくって、おまえのところは石炭をどんどん入れてやるが、これは今後恒久的に使うということの、一つの何かワクができると、炭鉱のほうも非常に安堵感を持って生産に励めるということだと思います。  最後に一言だけ申し上げたいと思っておりますが、非常に人員不足だ。特に技術者の養成というのは年月がかかります。私ども大学につとめておりまして鉱山技術者を養成しなければならない立場にありますけれども、いままでは炭鉱に就職したらどうであろうかという学生からの質問がありました場合には、そうだな、ううん、行ってこいよということを心から言うわけにいかないわけです。おまえが行ったって定年まで炭鉱はだいじょうぶだから行きなさい、ということを安心して言えるような気持ちになれませんです。ですから、炭鉱は、そうだなやっぱり、ううんと、こう頭をひねって、これは消極的にならざるを得ません。そういうことじゃ非常に困ります。ですから、やはり炭鉱というものを、将来ともに行って安心して働ける——現実に日本の坑内の長壁式切り羽の能率というものは世界最高のトップレベルです。坑内切り羽の機械化というものは、いまはもう豪州でも自走ワクの導入がほぼきまりかけておりますけれども、アフリカにしましてもアメリカにしましても、いよいよ坑内が深くなってきますと——日本で太平洋炭砿が開発しまして、いま三池でも非常に好成績をあげております。ですから最高一日に七千トン、昔は考えられもしなかった一切り羽から一日に七千トンの石炭を出す。ですから、能率も一人当たり一日に二百三十トンです。こんな高能率を出した記録もございます。そういった非常にすぐれた技術というものをもう日本人はつくり上げております。皆さん方御存じのように、十数年前には月一人当たりわずか十二、三トン、これが今日では七十トン。いま申しますように、こういった炭鉱ではもっと大きな能率があがっておると思います。そういったような技術の進歩が技術者によってやられておるというこのときに、あとに続く技術者が養成できないということはわれわれとしても非常に残念です。それができるような石炭というものの位置づけの確立、これはぜひ皆さん方の御尽力で一日も早く出していただきたいということを考えております。  時間ということで非常に早口で申し上げましたが、私申し上げたいことはそういうことでございますので、何とか石炭産業は——ドイツで言っておりますように、石炭というものは商品でない、あの民間企業のドイツの炭鉱、あれは政府はもちろんですが、従業員も一般国民も、石炭というものは商品じゃないのだ、国家に有用なエネルギー資源であるということを言っております。ですから、一般市民のだれに聞いても、ドイツが戦争に負けたり勝ったりしたのもみんな自分のところに石炭があったからだということで、石炭に対して非常に理解と同情というものがあるわけです  日本の場合にも、石炭はもう商品じゃない。いまの炭鉱会社経営者が利潤追求して、石炭でいまの商社とかあるいは時流に乗った他産業みたいにがっぽがっぽもうけて株の配当するなんということを考えておる経営者は一人もございません。何でおまえそんなつまらぬ炭鉱をいつまでも経営しているのだと言われるくらいです。だから、これはもう商品じゃないのです。国が必要とする石炭を出すのだということで、みんながその気持ちでやるならば、当然石炭というものに対してやる気が——いま生き残ってしがみついてやっている炭鉱の従業員から事務職員も含めまして、経営者もみんな石炭に対して非常に愛着があるわけなんです。私ども抗内に入りましても、坑内に入った者はだれだってそうですが、石炭に対する愛着というものは他産業のものと違うわけです。ほんとう石炭というものを捨てがたい、何とか——これは石炭炭鉱をやめた者でも、まだそう言います。ですから、そういった含みもありますし、石炭産業というものにこれからもぜひ皆さん方の御尽力をお願いしたいということで一言申し上げました。  どうもはなはだ失礼いたしました。(拍手)
  4. 田代文久

  5. 正田誠一

    正田参考人 九州大学の正田でございます。  私、経済学部で工業政策、社会政策を専攻しておりますので、経済政策の観点から若干の意見を述べさしていただきます。  九州という土地柄がございまして、戦後四分の一世紀以上、九州あるいは北海道の炭鉱と接触してまいっておるのでございますが、今日の石炭問題を考えます場合に、私どもこれまでいろいろ苦労してきましたいきさつからしますと、どうしてもやはり基本的に問題をはっきりさせておく必要があるというふうに考えております。それは先ほどのお話にもございましたけれども、実は今日では、石炭の問題を石炭だけ切り離して、そしてこれをいろいろつついてみても、これでは決して問題ははっきりしないし、また新しい道は開けてこないと考えられます。  特に重要なのは石油との関係でございます。皆さんも御記憶のように一九五二年、アメリカの連邦取引委員会が膨大な調査をやりまして正式の報告を出しております。これは「世界石油カルテル」という名前でたいへん膨大なもので、日本語訳も出ておりますけれども、そこで、当時としては七つの大きな石油会社がどういう支配力を持っているかというので、六つの点をあげております。  第一は、世界の埋蔵原油を支配する。二番目は、世界の原油生産を支配する。三番目は、世界の原油精製能力を支配する。四番目は、やや技術的ですが、世界のクラッキング能力、これは油種別の生産のことでございますが、そういう支配。五番目が、石油輸送と諸施設に対する支配。六番目が、市場に対する支配、といったようなことを指摘して、るる当時までの情勢を明らかにしております。  その後十年、大体一九六〇年ぐらいのところが一つの境目でございますけれども一御承知のように、産油国の反撃と申しますか、産油国の戦後の独立とそれから経済建設という要求が強く出てまいりまして、いわゆる産油国の取り分というものが増加してまいります。もちろんこれは、産油量の増大に伴う取り分の増加ということもございますが、やはり若干の国では産油量の増加以上に取り分が増大しておるというのは、取り分の率が産油国のほうがうんと強く要求するし、また、それが実現するという事態がその後十年にわたって出てきております。それは今日に至るまでの——さらにあと十年ないし十二年の間に非常な勢いで広がってきておることは皆さんも御存じのとおりであります。  ところで、先ほど報告にありましたような七大石油会社の世界支配の六つの条件、この中で、第一のいわゆる石油の埋蔵資源の支配という点では、これはいまもお話しましたように、この二十年間にずいぶん情勢が変わってきております。けれども、そのあとの原油生産あるいは精製能力あるいは輸送その他といった、いわば精製関係とそれから市場支配という点では、その後さらに新しいさまざまな戦略と申しますか政策が行なわれまして、今日では、この点では非常にきびしい政策がとられております。日本石炭問題が、この石油とまっこうからぶつかって、そして決定的な転換といいますか、衰退の道をたどるようになったのは、御承知のように大体一九六〇年からでございますが、これは、実はいま申しましたようなメジャーズの世界の市場支配、この戦略が変わってきたこと、これと非常に深くつながっております。  それからいま一つ、第二の問題といたしましては、メジャーズはただ単に石油についての六つの支配力、あと半分に特に力点を置くだけでなくて、むしろ世界のエネルギー資源に対して次から次に手を伸ばしておるというのが、これが特に一九六〇年以降今日まで展開してきておる注目すべき新しい事態であります。それは石炭に対して手を伸ばし、電力、さらにオイルシェールあるいはタールサンド、さらに原子力、ここまでそれは精粗の差はあれ、力の差はございますけれども、メジャーズはここまで手を伸ばしております。したがって、今日ではメジャーズをただ単に石油に関する世界カルテル、国際カルテルというふうにとらえるのは十分でないと考えます。石炭をはじめとするエネルギー、エネルギー全体をつかんで、そしてここで国際的なカルテル、国際的な独占支配ということを目ざしているんだということが、これが今日特にわれわれが考えておく必要のある点だと考えます。  先ほど来の問題に返りまして、その意味で、今日のエネルギーの状態というのは非常に混乱しております。人はこれをエネルギー危機だというふうに言います。あるいはエネルギーの有限性を忘れておった、これからは有限なエネルギーをいかに活用するかが大切なんだというふうなことを言いますけれども、実はそれは、ただ物としての石炭資源あるいは物としてのエネルギー資源だけをとらえるからそういう観点になるのであって、今日のエネルギー危機というのは実は二つの面があるように思いますが、一つは、先ほど来申し上げましたように、メジャーズを中心とする世界のエネルギーカルテルといってもいいし、エネルギー独占、これが特に産油国の自立政策、国有化そして取り分の増大ということでもって、いわば生産の一番根元から掘りくずされておる。その意味での危機がございます。反面では、メジャーズが、いまも申しましたように、エネルギーの各領域についてきわめて強力な、しかしまた、いろいろ難点を持った政策をとり行なっておりますことから、これとのつながりの関係でもって幾つも幾つも今度はまた別の危機があらわれてまいります。その危機に対応するやり方として、昨今の新聞に出ておりますように、インドのような国ですら、石油関係会社を二つ国有化した。これはもっともゆるい国有化ですが、すでに先月までにフィリピンも石油関係会社を二つ国有化した。これもゆるい国有化です。というふうに、石油資源を持たない無資源国がやはりこれらの危機に対して、いわば国有化という方法でもって対抗する、対応するというようなやり方があります。あるいはイギリスをはじめ西ドイツあるいはフランス等々を取り上げますと、ここではおよそ先ほど来の一九六〇年以来、一方では石炭産業のスクラップ政策を進めましたけれども、しかし、それは六〇年代の後半にかけて状況が違ってまいりまして、たとえばイギリスでは、この新しい石炭政策の中ではっきりと限界炭鉱の保護、維持ということを取り上げております。これは先ほど申し上げましたような限界炭鉱、非能率炭鉱をスクラップするという政策とかなり基本的な変化があるということです。それはどういうことかといいますと、石炭価格を、価格面だけでもって石油価格、しかもメジャーズの支配する世界石油市場価格、これと対抗するという政策だけやっていると、石炭の本来の国民資源としての開発なり維持なりということは不可能だ。したがって、一方ではスクラップをやるけれども、他方でやはりこれに対する維持政策として限界炭鉱を維持するという、そういう政策が出てきております。  で、エネルギー危機という場合に、各国の状況に従って、あるいは各国の政策の展開に従って、そのあらわれ方はかなりに模様が違うわけであります。日本のことを考えてみますと、日本ではその意味では非常に深く広くメジャーズの政策の中に包み込まれてしまっておる。そうしてこれは、アメリカと日本との政治的な経済的なさまざまなつながりということを背景に持って、日本ほどメジャーズの政策に完全に包み込まれてきたエネルギー政策というのはなかったというふうに私は考えております。もちろんそれは、それによって一番安いときは一ドル五十あるいは大体二ドルくらいの石油価格、これをもとにして日本産業が、あるいは鉄鋼にしてもあるいは電力にしてもあるいはその他の基礎資材、さらに加工工業もこの二ドル石油を基盤にして、そうして日本の製品価格が比較的に安いということになり、いわゆる高度成長政策というものは二ドル石油によって可能であったのだという議論も一方で行なわれております。けれども、そのようなメジャーズの石油市場政策に完全に包み込まれた政策というのが、大体において一昨年くらいすでに明らかに逆転してまいったのであります。  これは電力関係が一番この点での利害が深いので、しょっちゅうその点での試算が出ておりますが、一昨年七二年、四十七年の秋の電気事業連合会の報告でも、すでに産炭地ではそれぞれに石油価格に対してかなり石炭価格が安くなっている、これは火力発電の場合です、ということが報告され、そして日本でも、これはメジャーズの市場価格政策が変わってきて、そしてこれに対応する日本のエネルギー価格について基本的な変化が起こったのだというような指摘をしております。その後、その幅はさらに大きくなってきているわけです。その意味で、エネルギー価格はお互いに関連しますので、この点をもっといろいろな角度から明らかにする必要がございますが、私ども資料の制約もございまして正直申し上げて、決して十分に全部がはっきりなっておるというわけにはまいりません。けれども、基本的な転換が七〇年代になって起こってきているということ、このことをわれわれはよくつかんでおく必要があるように思うのです。  それで、そのような問題からして出てまいります問題はどういうことかといいますと、カルテルの問題というのは、今日でも日本の物価問題のみならず、経済政策をどう立て直すかというときに、最大のガンであり、最も大きな問題であります。しかし、国内にはカルテルに対するさまざまな規制法あるいは反独占法の体系がございますけれども、国際的なカルテルに対する対応のしかたというか、これを規制する方策、政策というものは、これは決してなまやさしくない。相手が世界企業でございますからへしかも、ただ単に石油だけではなくて、エネルギーの各般の領域、さらにさまざまな製造工業まで含め、あるいは銀行資金まで含めておるような、そういう国際的な独占組織でございますから、これに対して一国でもって有効に対応するということは、これは決してなまやさしいことではございません。その意味で、実はこれからの日本のエネルギー政策というのは、かなりに困難な条件、困難な情勢を持っておるのだということは、これは否定できないというふうに考えるのであります。  それに対する対応のしかたというのが幾つか取り上げられますけれども、実は、これはあまりいい対応のしかたが十分に見つかっていないというのが実情ではないかと考えます。一つは、EEC、今日のヨーロッパ共同体の前身は、御承知のように石炭鉄鋼共同体というので、そういう形での一種の国際統合、経済統合の方式というのは、確かに一つ方法であります。しかし、これはヨーロッパの諸国のように、大体幾つかの国が集まって、そしてある程度経済水準、工業化の水準も似通っているという場合に可能なわけでございまして、日本はその点でも必ずしも十分なそれを持っていない。あるいは地理的にいって、イタリアからオランダまでパイプラインを引くというような計画が、日本を中心としては必ずしも十分にできないというような問題があります。もちろん、これは全然解決の方法がないのではなくて、今後も日本で自主的な政策が展開されることが期待されるのでございますけれども、それはそれとしまして、そういうふうな行き方が一つございます。  それからもう一つの問題は、国有化ないし国家管理という方法があります。これは産油国の国有化の問題はさておきまして、先ほども触れましたように、ノー資源国、資源を持たない国にとっては、これはかなり焦眉の急だ。そしてそれが、一つ二つの石油会社を国営にする、あるいはゆるい形で五一%の株式を取得するという程度でどこまで規制できるかというのは、これは決して一〇〇%規制できるというわけにはまいりませんけれども、しかし少なくともそういう方法をいま各国とも模索しておるというのが大体の状況ではないかというふうに考えております。  先ほど来のエネルギー危機の本質といいますか、ほんとうのところはどういう点かということにつきまして、いわばメジャーズを中心とする世界エネルギー独占網というか、これに対する日本の経済政策の対応ということをもっと詰める必要があるというのが、私の第一に申し上げたい点でございます。  次に、それの国内的な要因といたしまして、先ほど来触れておりますように、一方では高度成長政策がとられて、そしてこれは二ドル石油ということを基盤にして展開され、石炭に対しては、御承知のように一九六二年以来五次にわたる調査団が組織され、そして答申が出ております。この間の石炭政策の基本的な特徴をどういうところに求めるかというのがいつも問題になることでございますが、今日では、私は二つの点が他の国々の石炭政策に比べて日本のかなり特徴をなしておるというふうに考えております。一つは、先ほど来触れておりますように、エネルギーの低価格ということ、これを第一の命題にする。したがって、そこではその低価格の水準に、あるいはメリットを勘案して、競争にならないところはどんどん切り捨ててしまうという、そういうことが内容になっております。もう一つは、これらの低価格を追求する場合に、生産能率ということをほとんど唯一の尺度にするという、この二つが基本的な特徴であるように思います。  低価格の問題はすでに触れましたから、生産能率について触れますと、先ほど兼重参考人からもお話がございましたように、一九六八年現在でもって、アメリカを除きますと、日本は自由諸国の中で最高の、飛び抜けた高能率を発揮しております。それから五、六年たった今日では、さらにその幅は大きくなっております。日本のような比較的に炭層が薄くて、したがって、能率をあげますと切り羽の進行速度が非常に早くなる、こういうところで七十トン以上というのは、他の国々の技術屋に言わせるとむしろ想像外だと言われるような、そういう能率を発揮しております。したがって、この低価格エネルギーという指標と、生産能率指標と、この二つの指標からする政策としては、五次にわたる石炭政策というのは一定の成果をあげたと考えます。  しかし、先ほど兼重参考人もおっしゃいましたように、実はその成果の陰には、石炭企業ももう自立的な企業としては全然力がなくなっておる。石炭労働者もすっかりもうへとへとになっている。こういう犠牲の上に、いま言った二つの指標が達成されているのでございます。  そこで、ひるがえって、いまエネルギー政策について各国が取り上げようとしておる、あるいは取り上げてすでにやってきておる政策は、いまの二つの指標に対してかなり対照的な性格を持っております。一つは、第一の低価格エネルギーに対して、国産エネルギーを維持するような、そういう価格水準はどの点にあるかということ、これが第一の指標になっております。これはもちろん競争エネルギーとの関係がございますから、むやみやたらに上げるわけにいかない。しかし、少なくとも安ければ幾ら安くてもいいという日本での指標とは、この点はかなり違ってきている。したがって、今日の危機のあらわれ方が、日本では特に破局的な姿をとっておるという原因であろうかと思います。  それから二番目の生産能率に対しては、たとえば石炭を取り上げますと、石炭の総資源を活用する、あるいは総資源を採取するという考え方、これは伝統的に、ドイツの場合にもフランスの場合にもこの点は強いのでございますが、日本炭鉱は、よく炭鉱経営者が言う、たいへん古めかしい言い方ですが、まんじゅうのあんこだけを掘るのだ、皮のほうは捨てるのだという、そういう伝統的な政策がございますけれども、そしてそれがさらには斜坑方式とも関連しまして、三〇年代の初めにフランスからソフレミンの調査団を呼びましたときに、あの調査団がどうしてもふに落ちないことがある、それは、日本では石炭埋蔵量をいろいろ調べているけれども、深度別、レベル別の埋蔵量、あるいはレベル別の可採炭量、実収炭量というものが全然出てこない、だいぶ注文してやってみたけれども出てこないというような指摘があって、それは今日でもあまり大きな変化がございません。それはなぜかといいますと、石炭資源の総量を全部とる、全部利用するというたてまえからすれば、深度別は不可欠です。けれども、まんじゅうのあんこのところだけ掘るという行き方からしますと、実はレベル別というのはたいして重要な問題じゃないというようなことになろうかと思います。そういう意味で、総資源の利用あるいは石炭資源の総量の利用という点は、これはかなりむずかしいけれども、今日でもひとつ真剣に取り上げなければならない問題ではないかというふうに考えております。  それから、先ほど来の限界炭鉱の問題につきまして、もう一つ意見を申し述べておきますと、なるほど七十トンあるいは百トン、あるいはひどい場合には二百トンというような能率があがっておりますが、この能率があがるというのは、これは製造工業でのいわゆる生産性の向上とは若干質が違います。あるいは農業での生産性の向上とも質が違います。どういうことかといいますと、どんなにりっぱな機械を入れ、掘進を機械化してやりましても、それは石炭の賦存しておる資源の状況の豊かさと申しますか、豊度なり何なり、これを少しも豊かにするものじゃない。資源は前からあるとおりなんです。ただ、それを引き出してくるその方法をいかに機械化するか、あるいはいかに能率をあげるかという点です。それは、たとえば農業で土地を改良する、土地の豊度を改善する、それによって再生産が続けられるといったような、そういう産業の体制と全然違う。工業での製品の質の向上ということとも違う。そういう意味で、石炭産業合理化政策あるいは石炭産業をさらに発展させるというときに、われわれはこういう抽出産業の持っておる限界というものをいつもきちんとつかまえておきませんと、製造工業としょっちゅうごっちゃにしてしまう。そこからかなり大きな浪費も出てくるという問題がございます。そしてその意味では、限界炭鉱を維持するという政策をとりますとどういうことになりますかといいますと、私どものほうのことばでいいますと、限界炭鉱よりも有利な条件にある炭鉱はそれだけもうけが大きいわけです。まあ地代といってもいいわけです。あるいは差額地代といってもいいわけです。さらに機械化を進めますと、その差額地代は一そう拡大するでしょう。だから、その差額地代分を全部プールして、そしてこれが限界炭鉱の維持費用に向けられるということになりますと、産出される総エネルギーの価格あるいは総エネルギーの資源としての価値の総量というものはかなりに増大するという性格を持っておろうかと思います。これは火力発電についても、たとえば低カロリー、高温、高圧発電というようなことをかつて言いましたけれども、今日でも一そうこれは重要な意味を持つのではないかというふうに考えております。  以上のような考え方でございますので、今日のこのようなエネルギー危機に際会して、日本はどの国に比べても最も深刻な危機を経験しておりますけれども、これを切り開いていくためには、もちろん産業構造といった問題にも触れてまいります。二ドル石油ではなくて、いわば総エネルギーの活用政策ということをもとにした産業政策ということも問題になってまいります。けれども、それはただエネルギーを省く省エネルギー、省資源といったようなことばでもって解決するほど簡単ではないと思います。それは日本がこの十数年来とり来たってきました産業構造、その上に成り立っております政治、経済体制、これをやはり根本からゆるがす問題にもなってくる。特にこれはエネルギー産業の企業の形態についてどうしても触れなければならないという問題を含んでいると考えます。  そこで、そういう意味で、このエネルギー危機への対応策という問題は、先ほど来かなりむずかしいのだというふうに申し上げましたけれども、やはりそこから出てくる基本的な問題としましては、石炭産業だけの国家規制、これは、石炭産業はもう事実上、先ほど兼重さんからもお話がありましたように、一千億か一千二百億ぐらいの水揚げに対して一千億以上の国家資金というのが現状でありますし、ここ十数年来の石炭財源を累計いたしまして、そして出炭で割りますと、先ほど来のお話のようなことになるわけでございます。それで今日では、たとえば四十九年度予算をとってみても、直接に石炭生産力を増強する部分が二五%だというふうにおっしゃいましたし、事実それにほぼ近い数字になって、まことに心寒いものがございます。これは私に言わせれば、実は年来、限界炭鉱まで含めた石炭資源の活用、そしてその総価格をできるだけ適正に維持していくという政策をとらないで、限界炭鉱を切り捨てるその速度を年々早めてい。たということから起こってくる閉山あとの問題、あるいは鉱害処理の問題、あるいは労務者対策の問題それが累積して、四十九年度では大部分をこちらへ持っていかなければならないということになっているわけであります。したがって、いま政策を転換したからといって、すぐにこのようなアフターケアがなくなるわけではございません。これは累年の限界炭鉱切り捨て政策、そこから起こってくる問題が堆積しておりますからして、急に前向きになるわけではございませんけれども、しかし長期的に、五年ないし六年の間にこの点での転換ということを通じて、この点はもっとまともなことになるということが考えられると思います。  それから、エネルギーの開発については、長期、短期いろいろな計画がございますけれども、やはり経済政策としては、あまり特別耳寄りないい話ばかりを取り上げるわけにはまいりませんので、やはりかなり長期的な問題を考えなければならない。しかし、そのためには中期というか、それにつなぐ政策を考えなければならないでありましょう。その意味で、昨年末来の石油価格の暴騰に対応して、オーストラリアの石炭が値上げだ、カナダの石炭が値上げだ、さらにイギリスでは炭鉱ストライキでもって二九%の賃上げを認めた、そして石炭価格を三〇%以上引き上げるといったようなことが起こってまいります。これは当然でございまして、エネルギー各資源が相互に連関しておりますから、石油価格が暴騰いたしますと、関連エネルギーは当然に上がってきます。しかし、それがどこまでということになりますと、実はこの石油の世界市場価格というのは、これはメジャーズが今日最も力を注ぎ、得意としている領域でございますからして、これは石油価格が上がったから、そこまで全部を突き上げてしまって、そしてそれでうまくいくというような性格のものでないことは、もう皆さまよく御存じだと思います。その意味で、実は先ほどもお話がございましたけれども、石炭をとりましても、これが私企業、私的な企業としてやれる余地がどこまであるか、あるいは合理的に展開できる余地がどこまであるかということを、今日の市場事情、それから財政事情といったようなことを勘案しながら詰められるところまで詰めていく必要があろうかと考えます。そして結論としては、おそらくこれは、名前は私企業で何々株式会社だけれども、事実その中身は私企業とはいえないのだ、特に今後はこれは私企業ではやっていけないのだという結論になろうかと考えます。それから先の形はいろいろな形がございますから、今日、時間の関係もございましてあまりごたごた申し上げるのをやめますけれども、そのような行き方が対応のしかたとして当然に出てくるであろうと考えられます。  それから、最後に財源問題でございますが、これはたいへん困った問題でございまして、これまではとにもかくにも重油の低価格、そしてこれに関税をおっかぶせたというので、一千億ないし一千五百億というのはそう無理しないで出てきておったのでございますが、石油価格がこんなに暴騰いたしますと、これはおそらく関税政策としても、あるいはアラブ諸国からも、あるいは国際的な環境からしてもこのような方式はとれないだろうと考えます。したがって、国民経済の中で、あるいは国の財政規模の中で、国産資源を維持し、培養するためにどれだけの財源を振り向けるか、そして一般会計からどれだけのものを恒久的にさいて、そしてこれでもって特別会計なり何なりでもっていわばコンスタントな形でやれるかというのは、これはおそらくこれからの議会を通じて、あるいは国の行政を通じて最もむずかしい点であろうかと考えますけれども、しかし、この点で特段の勇気というか、特段の努力、そして特段のくふうが必要であり、そしてこのくふうが実るか実らないかが、今後の日本のエネルギー政策の中で状況をかなりに左右する問題ではないかというふうに考えます。  もう時間が過ぎましたのでおしまいにしますが、最後に、労働力対策につきまして一言だけ申し上げておきますと、これも緊急な課題と、それから長期的な課題とがございますけれども、第一の緊急な課題としましては、石炭賃金の低いところへ固定化する、これは炭価の状況が御承知のとおりでございますから、固定化されて、いま日本の製造工業賃金の中ではだいぶん低いところに位置しております。しかし、これは地下労働で、そして危険な労働で、しかも労働力の消耗が激しいということからして、どの国でも、たとえばアメリカは先ほどのお話にございましたが、ヨーロッパの国々をとってみても、これは製造工業の中の基幹産業、比較的に賃金の高い、われわれはAクラスと言っておりますが、Aクラスの中に政策的に位置づけるということは、これは国情のいかんにかかわらず、最低限の必要であろうかと考えます。それは、先ほどお話しになったような三万円の上積みというよりも、おそらく五万円ないし六万円の格差というふうに賃金統計のほうからは出てまいるのでございますが、この点がまず第一だろうし、それから労働条件については、労働時間の短縮あるいは休日制、あるいは安全、あるいは健康職場といったような問題ももちろんございますけれども、やはり一番重要なのは雇用の安定。雇用安定と言われておりますけれども、これまでの十数年来の石炭政策が限界炭鉱を切り捨てるというところに置かれておりましたから、雇用の不安定は目に余るものがございます。したがって、この雇用の安定、あるいは解雇規制及びその後のアフターケアということ、これが非常に重要であろうかと思います。  もちろん雇用促進事業団もございますし、さまざまな方法がとられておりますけれども、一たんある産業に落ちつけたら、そこでもってアフターケアは打ち切りでありますが、それからあとの炭鉱労働者のこの十数年来の運命というものは、まことに過酷なものがありました。あるいは石炭移住者というので、中南米に移住した農業移民ですけれども、この人たちの運命というものについて、かつて日本の在外公館からその点でのアフターケアの報告があったということを、私どもは寡聞にして知らないのであります。そういう意味での労務対策についての雇用の安定ないしはその後のアフターケアの問題という点、これを明らかにする必要がある。  それからもう一つは、この石炭関係については、老後の年金制度というのがどの国でも不可欠の要素になっております。日本の場合にはその点きわめて貧しい、むしろ寒心にたえないというような問題があります。  特に最後に、青年技術者及び技能者の養成ということについて、ほとんど絶望的な状況になっております。これはやはりこれまでのように、三井鉱山が大牟田でやっておりました鉱山学校というような私企業のワクではとうていできないでありましょう。おそらく国家的な規模で、しかも国際的な展望を持ったそういう技術者、技能者の養成と、それから定着といったようなことが、ぜひ必要になってくるのではないかと考えます。  これらの結語としまして、実は炭鉱の労働者に接触し、あるいは経営者に接触し、あるいは産炭地の住民あるいは産炭地の市長といいますか、責任者に接触しますと、これまでの十数年来の石炭政策に対する不信というのは、きわめて根強いものがございます。この不信をこのままにして、おそらく国がどのような法律やあるいは財源をつけても、なかなかその点での問題の解決というものは困難であろうと考えます。その意味で、この不信、これは単に労働者だけではなくて、産炭地住民、産炭地行政当局というか、地方自治体まで含めての不信ということ、これをぬぐい去ることが必要であり、事実によってこれを改めていくことが必要なのでありますけれども、その意味では、あるいは石炭鉱業審議会であれ、あるいはそこでのいろいろな分科会であれ、やはりこの十数年来の政策について、どの点が間違っていなかったか、どの点が国際的に見るとずれていたのかというような点について、きびしい反省があってしかるべきであろうと思います。先ほど来一、二の点を申し述べましたけれども、はたしてその点でどれが正しい方法であったか、特にここ数年来の基本的な状況の転換に対してどこまで対応し得たかという点について、これはきびしい反省が必要ではないかと考えます。  たいへん長い時間、まとまりませんでしたけれども、以上で私の意見を終わります。(拍手)
  6. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  7. 田代文久

    田代委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、時間の制限がありますし、同時に、多数の質疑者の申し出がございますので、要点を中心として簡潔にお願いいたします。田中六助君。
  8. 田中六助

    ○田中(六)委員 兼重正田教授にはいろいろ御苦労さまでした。時間の制約がございますので、できるだけ私も簡単に質問いたしますから、簡単にお答え願います。  まず第一は、いろいろお話を承りまして、先ほど正田教授が申されましたように、いままでの答申にかなりの問題があるようでございます。したがって私は、この五次答申に至る間、ほとんど石炭鉱業審議会のメンバーが変わっていない。少しも責任を感じていない。しかも、これは非常に失礼ですが、頭がだんだん古くなって、新しい時代に即応しているのかどうか疑問でございますし、やはり新しい皮袋には新しい酒を、新しい酒を盛るためには新しい皮袋というものが必要だと思うのですが、官僚機構、通産省がこれを隠れみのにして使っておる点もあるのでしょうけれども、私は、まず委員というものが実は見通しが悪い。客観情勢が狂っているといえば別ですけれども、やはりこれは見通しの問題が大きくウエートがございますし、こういう委員のメンバーというものを一日も早く変えるように三次答申の末期ごろから私は主張しているのですが、そういう点についての御見解を簡単に伺いたいと思います。
  9. 兼重修

    兼重参考人 ただいま御質問がございましたが、確かにいま田中先生おっしゃったとおりに、私どもも、実は管理委員会というものが今度できております。で、せんだって九州に管理委員の五人の先生方がお見えになりました。これは私いつも感じるのですけれども、ああいった管理委員の先生たちが、坑内実態というものをほんとう御存じであろうかという感じなんです。確かに石炭政策というものを論ずるには、ああいったいまおっしゃったような古い、経済とかそういったいろいろな面の経験の豊富な方々が必要でありましょうけれども、やはり石炭産業というものに直接結びつく政策を論じられるには、石炭実態というものをもっとよく、坑内のいわゆる実態から知っておられる方に入っていただきたい。というのは、通産のほうの立場からいいますと、民間の人というのはなかなか入れにくいということをおっしゃいますけれども、どうしても入れられないならば、たとえばあの中にも鉱山技術者として田口とおっしゃる方が一人おられますけれども、この中に、専門研究会でも何でもいいのですが、現場のいわゆる実態をやっておられる方、そういったものの委員会でもつくって、その声をこの管理委員会に出していただきたい。そうでなければ、おっしゃるとおり旧態依然たる、中身だけのごろごろ回しの政策案というものしか私は期待できないのではないかという気がいたします。ですから、やはりおっしゃるとおりに、新しい清新の気の盛られるような方々を、どうしても入れられないと通産で言われるならば、そういった中にもう一つそういう方のものをつくってほしいということでございます。
  10. 正田誠一

    正田参考人 私も同感でございますけれども、先ほどの話に返りますと、第一次の調査団が参りましたとき、北海道にしましても、九州にいたしましても、労働者、経営者ともに非常な期待を持ちました。これはいまから考えますと、どうも少しどうかしておったのでございますが、何とかし  てもらえるだろうというふうなことがございました。したがって、もしも委員会の方式なりあるいは何なりが変えられて、そして新しく出発するということでございましたら、過大な期待ということを持たない、そしてあくまで問題をリアルに詰めていくという性格と、それからもう一つは、石炭だけを狭く取り上げるのでなくて、エネルギー全体の中での石炭位置づけということについて最大限の努力を払う、この二点を要望したいと考えます。
  11. 田中六助

    ○田中(六)委員 次でございますが、兼重教授が、予算の配分が石炭プロパーのが二五%程度で、あとはいろいろの問題が——つまりうしろ向きというか、五六%だという御意見でございますが、私も石炭予算関係内容配分については十分熟知しているつもりでございますが、石炭の見直し論があればあるほど、やはり売り掛け金の問題とか鉱害の問題とか、いろいろの問題を加味したものの予算でなければ、日本現状といたしまして、たとえば産炭地は非常に限られておりますし、石炭の見直し論があればあるほど、こういう面についての考えを克服しておかなくちゃいかぬのじゃないかということが第一点。  それから二点は、正田教授が指摘しておりますが、石炭特別会計の原資といいますか、予算の大もとが重油と原油の関税からでございますが、これはOPEC並びにOAPEC諸国は、日本は重油とか石油に対して非常にたくさん税金をかけ過ぎている。これは実に四つか五つあるわけですが、そうなりますと、それだけ余裕があるならば、自分たちのもとの原油を上げてもいいではないかということの理由の一つになっている。実は、私も今度アラブに二十日間くらい行って回ってきたのですが、こういう問題が一方ではある。また他方では国内の産炭地の問題、これは日本全国に散らばっているというならば問題は別でございますが、もう限られておる。そこの住民の感情、鉱害問題について、私どもは非常に頭を悩ましておるのですが、そういうところの配分関係について御意見がございましたら、兼重先生から……。
  12. 兼重修

    兼重参考人 私も実は地表沈下の鉱害の通産関係委員を幾つかやらしてもらっております。鉱害問題に関しましては、ああいった費用があの中から出ておりますが、これは言うならばいま残っております鉱害を調査いたしましても、もう会社というものじゃなくて、全部国が見なければならないのじゃないかという気もするくらいでございますが、これはおきまして、いまおっしゃいました内容でございますが、たとえば今度の工業再配置・産炭地域振興公団ですか、あるいは公団という形に大きくなっております。こういった、いま限られた局部的な産炭地ということであれば、当然大きくふくれ上がりました公団の中で、私はできるだけ見てほしい。いまおっしゃいますように、もう重油関係のあれを五十一年度以降、はたして見てもらえるかどうかということを、われわれ非常に懸念しておりますので、といって、一般会計のほうからもなかなかとりにくい。通産大臣は簡単に何とかその時点で考えるとおっしゃっておられるけれども、これはなかなかむずかしいと思います。であれば、そういった中でのやりくりというものを、当面当然やっていただかなければならないということであれば、やはりそういうところに持っていけるものは持っていってほしいということで先ほど申し上げたわけです。  質問にちょっとはずれたかもしれませんが、またあとで補足して申し上げます。
  13. 田中六助

    ○田中(六)委員 カナダあたりの一般炭を輸入する、これは私は資源の配分という点からでも、各国に早く手をつけておかなければならぬという見解だと思いますが、その点では私もそう思いますが、アングロサクソン系統の移民は、カナダはある程度歓迎しておるのですが、日本人の移民ということについて、行きたくても非常に行けない点があると思いますが、そういう点はどういうぐあいに考えておられますか。
  14. 兼重修

    兼重参考人 カナダに私も一度ならず参りまして、実は炭田地帯を見て回ったわけでございますが、向こうの政府のほうの関係者、あそこは州が全部各州ごとにやっておりまして、これは私も最初行ったときは気がつかなかったのですけれども、あそこの一番えらい人はエリザベス女王で、カナダの首相じゃないわけでございますね。各州がそういう意味で、ケベック州の独立なんていうのも起こるわけでございましょうが、州が独立採算ということでやっております。この中にはきめられたことがありまして、日本人の移民というのが一応法律でとめられておりまして、いわゆる技能者というものしか入れられないということになっております。ただ、向こうでやります場合に、そういうことで限られた員数の日本人技能者というものは入れると思います、技術開発にしましても。ただ感情的に申しますと、私は、いま回りましても、ドイツ人は非常によろしい。イギリス人はいま言われるように、こういう関係にありましたけれども、表面的にはいんぎんだけれどもやっぱり無礼だ。アメリカ人は非常に親しいのですけれども、個人的にはよろしいが、中身は……。私らの両数回の経験でございますけれども、やはりイエローというのが、黄色人種というのが残っておりますが、カナダというのは、行ってみまして感じるのですけれども、非常に有色人種に対する差別感というものがないわけでございます。私自身もあちらに行って、ここなら女房連れていって永住してもいいなという気が起こりまして、実は帰ってきまして三井鉱山社長に、冗談にあそこに鉱業所をつくるなら技術顧問に雇ってくれぬかと言ったくらいでございますが、とにかく感情的には非常によろしいということでございます。ただ人間を入れますのが、そういうことで制約がございますが、これは工員というものは向こうでも非常にとりにくい。人員が少なくて、炭鉱なんかやらなくても非常にいい仕事がたくさんあるということで、これは行ってみますと、ちょっと話がそれますけれども、いま電力飢謹になっておりますが、カナダというのはいまでもおそらくそうではないかと思いますが、大都市に行きますと、一晩じゅうとにかく一年間電灯つけっぱなしです。水も豊富です。バンクーバーなんか水道代ただでございました、電灯、水道というのは。非常に暮らしやすい。それだけに生活が豊かで、炭鉱なんかでわざわざというようなことがございますが、そういった人員——日本から工員を連れていってやるというのは非常にむずかしゅうございますが、限られた人員でやるというのはこれからの採炭技術でございます。いまカナダに三井鉱山が水力採炭の技術、ノーハウで技術料をとってやっておりますが、本来はこれは三井鉱山でやるべきであったかもしれません。これはわずか五、六人で何千トンという石炭が出るような採炭技術でございます。私、行きましたときも、ちょうどたまたま鉱山から、工員を含めまして、技術員、まかない入れて十三人来ておりまして、それだけの出炭を実際に出してみせて、向こうがそれを買ったわけでございますが、そういった少人数でやれるというような、機械化、合理化採炭というものでこれから日本人は技術開発で出ていく。大ぜい何百人も工員を向こうに持っていかなければいけないということでは、将来の技術開発ということはむずかしいのではないかというふうに感じております。
  15. 田中六助

    ○田中(六)委員 これを最後にしますが、正田先生がおっしゃっておりましたが、エネルギー問題で日本ほどメジャーズの政策に包み込まれた国はなかったし、今後も用心しなくてはいかぬということで、その対応策といたしましてはユーラトムと、それから欧州石炭鉄鋼のその二つを骨子といたしましたEEC、いまはECですが、そういうようなことが対応策として考えられなくちゃいかぬ。日本の場合は、まさしく周辺が経済レベルも違うし、いろいろな点でそういうものを統合するということは非常に困難ですが、ただカナダやアメリカ——中共も含めるかどうか疑問ですが、オーストラリア、日本、そういうものを入れれば非常に資源国でございますし、何とかそういう似たものの構想を打ち出した人もいますし、私もそういう点はもう少し努力をしたらどうかと思うのですが、それに対する御見解。もう一つの対応策として、もう先生ははっきり断言されましたように、石炭企業というものは私企業では不可能なんだ、ぎりぎりのところ国有あるいは国営、いずれにしても一本化しなくてはいかぬという御見解で、私も数年前からそういうようなことにならざるを得ないのじゃないかという気持ちでございますが、鉱区の調整の問題とか、労務管理とかいろいろなものがすべてそういう点に波及するわけです。したがって、そういうことで収拾する予算、財源の問題、そういうことでございますが、それの方法ですがぱっぱっとすぐ右から左になかなかいかないところに問題があるのですが、そのプロセスとして何かお考えがございましたら、兼重先生と正田先生に。二問目のことは兼重先生もお答えを願いたい。第一問は正田先生に。
  16. 正田誠一

    正田参考人 経済統合につきましては、日本の地理的な状況と、それから周辺諸国の工業化なりあるいは産業構造との関連で、ヨーロッパ諸国のような経済統合という条件にないということは、これは事実でございますからいたし方ございません。しかし、お話のようにカナダ、オーストラリア、これは日本石炭資源だけではなくて、それ以外の地下資源につきましても非常に大きなつながりを持っているところでございます。そのほかに中国あるいはソビエトロシアといったような近くの国々もございますけれども、この点につきましてやはりもう一つ考えておく必要がありますのは、東南アジア諸国だけでなくて、世界に対して日本は非常にたくさんの資源開発計画を持っております。特に過剰流動性の話がやかましいわけなんですが、ここ三年くらい前からの状況の中で、雨後のタケノコのごとくごたごたと資源開発関係公社なり、それからまた各種の企業集団ができております。しかも、これに対する批判、これはまた非常に急速にきびしい形でもって出ております。その意味で、やはり企業集団の形でやりますやり方や、あるいは国が一枚かんで公社のやり方でやりますにしましても、よほどこの点ではお互いの平等なり、互恵なり、相互の経済発展、特に相手国の経済発展についての真摯な検討がないと、ただ資源だけをどうこうしましょうというのでは、これは各国の国民がいま最も希望しておるところとかなりにずれてくるのじゃないか、その意味で、これはむしろ日本の国の姿勢の問題であり、さらには中国あるいはソ連等との関係となりますと、これは日本でもよほど恒久的な姿勢を確立していく必要があるのじゃないか。国が責任を持つことは大切でございますが、その国がやはりその点での非難を受けない、むしろ日本の姿勢が変わってきたということを事実でもって示すような方式が必要なんじゃないか。それで、いまの資源提携、あるいはそれがさらに統合に近いところまでいきますれば、それにこしたことはございませんけれども、しかし、貨幣制度をとりましても、あるいは農業問題を取り上げましても、カナダと日本とはもう全然違っている。その意味でヨーロッパで幾つかの共同政策をつくって進めるあの行き方とはどうしても違ってくる、どうしても資源中心になってくる。そうすると、非難なり、批判なり、あるいはいろいろな摩擦なりがやはり強くなってくる。この点でどうも知恵のない話でございますが、かなりに難点があるということをむしろ初めから十分に認識して、努力を続けるということが必要でないかと考えます。
  17. 兼重修

    兼重参考人 第二点の御質問でございますが、まあ私企業の限界であるということから、どういうふうに経営状態はあるべきかということでございますけれども、私ドイツから——ドイツは民間企業でやっておりますが、イギリスに参りましたときに、イギリスの坑内に入りますと、これは国営でございますが、非常に坑内がのんびりしておる。金はドイツよりもはるかにかけて、完全機械化というものを坑内でやっております。ドイツよりも進んだ機械をどんどん多額の経費をかけて投入しで、機械設備、いわゆる自走ワクという、または採炭機械というものを入れておるわけでございますが、全般の能率というのが落ちております。坑内に入りましてそうなんですが、聞いてみますと、一応鉱業所を単位にノルマというものがありまして、ずっと年間通して非常にノルマを上げたならば、鉱業所長だけは栄転する。ところが、それに功績のあった技術職員あるいは鉱員に対しては何ら報われるところがない。これではノルマだけやればいいじゃないかということで、切り羽でもゆうゆうと休んでおるという実態でございます。ところがフランスに参りますと、同じ会社でございますけれども、これは各鉱業所が独立採算の形でやっておる。出炭が非常に伸びれば、これは鉱業所全体にボーナスが来る。功績のあった技術職員は上に上がります。鉱員にはボーナスが来る。そういった形をやっております。日本の場合、もし国営というものを考えた場合、日本の現在の、私ども坑内に入りました感じでございますけれども、これはやはり、働かぬで国家公務員で給料をもらえるならばというようなことが、ちょっと懸念されるわけでございます。ただドイツで、将来の構想でございましょうか、最初はあまりうまくいかなかったようでございますけれども、ラインシュタールですか、中央何とか統制何とかかんとか会社と、各炭鉱一緒になりまして一つの大きな会社をつくるというようなことで、これが大部分の炭鉱を吸収して一本化して、そこで指令を出し、いろいろな何をやりまして、石炭政策の経営ですか、方針を統一してやっていくというようなものをやっておりますが、将来の日本としまして、もう限られた炭鉱しか残っておりませんですから、これをすぐいまどうのこうのというのは、これはなかなか組合の問題も私自身感じられるわけでございますが、そのことはちょっと専門外でございますけれども、そういったことを思いますと、ちょっと急にはそういう変革というのは——先ほど正田先生もおっしゃったけれども、これはやはり私企業というもののあり方を、そういう国家的な見地から、当然私企業の限界を越えておりますけれども、いわゆるフランスの公社が独立採算で各鉱業所にやらせておる、私企業であるけれどもそういったものだというふうに私は解釈していいんじゃないか。そういう形でやっていって、このエネルギー資源である、商品でない石炭を、ただ使命感で、国のために出すんだという使命感というものを鉱員に植えつけて、そうして出させるといった、そういった鉱業所一体となって国のために石炭を出すのだという感じがあれば、これはやっていけるんじゃないかというふうに考えております。
  18. 正田誠一

    正田参考人 先ほども申し上げましたように、実はこの国有化というのは、決して単純な、そして単一な筋道や形でもってすぐにというわけにはまいりません。この場合にもう一つ、これは言いにくいことですが、ぜひはっきりさしておく必要があるのは、極端な言い方をいたしますと、石炭鉱業には妙な習慣がございまして、国から金が出る、あるいは国の裏書きでもって開銀なり何なりから金が出る。そうすると、これをあまりまともに返すということを考えないでやるという、きわめて前期的な習慣がついこの間まで残っておりましたし、(「一番近代的な考えじゃないですか、前期的じゃなしに」と呼ぶ者あり)そしてそれが今日では積もり積もって、どの炭鉱をとりましても、直接生産費ではけっこうやれているのですが、全部もう資本費の方にいかれてしまいますというような状況がございます。あるいはこれはもう古い話でございますが、昭和三十年代に六千二百トン体制というのをやりました。さあ掘れというので、しかも立て坑方式だというので、北海道もそうだし、九州でいえば三井田川あるいは山野、みんなそれぞれに立て坑を掘ったわけです。六百メートルの立て坑を掘ったわけですが、掘ってみたらば、田川では小断層に全部ぶつかってしまって全然ことにならない。山野では大焼層に当てたんですが、これが火山作用を受けておってほとんどものにならないというようなことがございます。こんなのは、私どもしろうとでございますが、もう少しまじめにボーリングをしておればこういうことはないと思うのです。その意味で、やはり今日の石炭経営というものは非常に困難でございますが、同時に、先ほどから言っているように、私企業としての責任で、私企業として金を借りて、私企業として採算をとっていくというところからはもうほとんど行き詰まってしまっている。そういう意味の、この私企業がおんぶする性格というのはやっぱりございますので、そういう意味でも経営の責任という点はこれは明らかにする必要がある。特に国民の貴重な財源でやるということになりますと、その点での責任体制だけは明確にしておく必要があるだろう、その方向で努力を重ねるということが必要じゃないかというふうに考えます。
  19. 田代文久

  20. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 両先生のお話を聞いておりますと、昭和三十年ぐらいからの、われわれの論議をした、論議そのままな提案がなされておるという感じがするわけです。それだけに、今日の状態を顧みますると、政治家として非常にむなしい感じを受けるわけですが、そこでまず、兼重先生に具体的な問題を一、二点お聞きしますが、九州で、いわば未開発炭田といいますか、あるいはまだ開発されていない鉱区、あるいはすでにこの事業団等で買い上げあるいは封鎖をした鉱区、こういう鉱区で、今後再開発の余地のある地域がどの程度あるのか、個所をお聞かせ願いたいと思います。  それから、筑豊に最近露天掘りの話が出ておりますが、いわば二十五億トンの埋蔵量が水没して眠っておる筑豊をまた掘り返すということは、これは住民の感情からいっても、あるいはまた地域経済の発展からいっても、鉱害の復旧からいっても、非常に無理ではないかという感じを受けるわけです。筑豊といいましても響灘等もありますけれども、これらを含めてこの二点、技術的にお聞かせ願いたい、こういうように思います。
  21. 兼重修

    兼重参考人 ただいま御質問ございましたが、確かに水没いたしました山というものの再開というのは非常に困難でございます。イギリス、ドイツあたりでもどんどん切っていきましたけれども、これはふたをしまして、というのは、向こうはわりあいに水が少ないのです。ですから、坑道の維持もやっておったという山も実は一つ二つ見ております。そういったところは再開発できますが、日本のように水没させますとちょっともう再開は不能だと思います。巨額な金が要る。また技術的にも困難である。ただいまの新鉱開発というのは、九州で考えますと、私ども九州通産局の石炭部でよく話し合いをするわけでありますが、いまおっしゃいました響灘の元日炭の鉱区、あるいはこれは三百五十くらいのところのものがございましたのですが、断層を抜ければよろしいということでやれるのではないだろうかというようなことを、いままだ論議しているところでございます。  そのほかに、たとえば北松などでも、栗山という人がやったのですが、原料炭の日鉄の鉱区を再開しまして、原料炭でございますのでこれも昨年黒字でまだやればやれたのでしょうけれども、一応見通しがということでやめましたけれども、そういった非常に浅いところの残りの鉱区を開発というものもあるいはあるかもしれませんが、そうよけいは望まれない。結局露天掘りを入れましても、やはりこの筑豊地区ではかなり家が立て込んでおりますので、その他のそういった鉱害問題を考えますと、この間もちょっと話し合いをしましたのですけれども、大体千万トンというくらいの単位がこれから望まれる一番確実なところじゃなかろうか。こういったものの開発ということで非常にさびしいわけでございます。新規の開発というのはそんなにさびしいということであれば、何度も申しますが、一般炭輸入というのが必要になってくるのではないかということが出てきたわけでございます。  以上でございましたけれども、まだ何か足らなかったら御質問を……。
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 離島の関係はどうですか。
  23. 兼重修

    兼重参考人 実はあそこの長崎県のほうに古河鉱業が持っておった大きな鉱区もございます。これは開発しますのに相当な金がかかるわけです。非常に多額の経費を——いまの石油の価格が下がってきましても、やはりそれと比較した場合に、それだけ金をかけてどうだろうかというのがちょっと疑問視されるというような鉱区はございます。ですから、そういったところをはずしますと、やはりそういうところしか残らないのじゃないかという気がいたします。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は両先生から政策の提言がございましたけれども、政策の画期的な変革をするのが現在逆にむずかしくなっているのじゃないかという感じを私は受ける。というのは、炭価が相当上がるだろうという期待、ですからいままでの状態で、ここで資源不足からひとつ国として新しい政策を見出すというならばできたでしょうけれども、炭価が著しく上がっていくことが予想される場合、なかなか私企業としてははずされないのじゃないかという感じがする。それから、海外開発も私のほうでやりますというそういう意欲、これで政策の前進というのはかえってむずかしくなっているんじゃないか、実は私自身そういう感じを持つわけです、いまからの見通し、過去におけるいろいろな傾向から見て。しかし、これは国全体の今後の問題ですから、企業間のいろいろな問題がございましてもやり抜かなければならぬと思いますが、そこでさっき兼重先生がおっしゃいました海外炭の輸入問題、それからおそらく北海道等を予想しての石炭開発会社構想といいますか、私ども新鉱開発はひとつ特殊法人でやったらどうかという提案をしたこともございますが、この海外開発等、あるいは鉱区統合における新しい再開発公社といいますかそういうもの、これはどうしても必要ではないかと思うのです。  もう一つ、先生のお話の中に私どもがちょっと問題を感じましたのは、先生は全体的におっしゃいましたけれども、電力会社との関連というのがどうしても現実問題としてぶつかるわけです。  一つは、九州及び北海道が主として石炭専焼火力を持ちますと、いわば買ってくれる購入先になるだろう。そうすると九州と北海道は電気料金がすでに高いわけですね。それでそういう状態を見ますると、東京とか関西とか中部に比べて送電費に非常にかかるわけですから、現在でも高いのに、それにさらに石炭をたかすということになりますと、石炭石油に比べて常に安いという状態ならばそれはともかくとして、今後そこに負担が起こるという状態になれば、やはりかつての水火力調整金のような、いわば電力会社内の融通制度というものが必要ではないか。ですから電力のいわば再編成といいますか、再編成といえばちょっと問題が大き過ぎますが、少なくとも電力料金の中のプール制とかあるいは石油石炭とのプール制とかいうものを考えないと、現実問題としてはむずかしい問題が起こるのではないかというのが一点です。  それから第二点の問題は、海外の石炭と国内の石炭のプール制を行なう必要があるのではないか。これはいま現実において海外の石炭が安いとは必ずしも言えないと思いますけれども、しかし、やがてどういう経済事情の変動があるかわかりませんから、とにかくそこにはプール制という制度をしかないとむずかしいのではないか。その中において、逆にまた国内における限界炭鉱を維持するためには、国内におけるプール制というもの、あるいは個別的な安定補給金の支給ということを考えることも必要ではないだろうか、こういうように考えるのですが、この点はどういうようにお考えであるか、両先生からひとつお聞かせ願いたい、こういうように思います。
  25. 正田誠一

    正田参考人 おっしゃるとおりであると思います。現在電力料金をくぎづけしておりますが、これの値上げ問題というのが当面の急務になっております。これは本委員会の所管事項ではないと思いますけれども、しかし、おそらくこれの値上げという問題を処理する場合に、各社別の計算でもってこれだけの値上げが必要というようなことを繰り返したのでは、これは物価対策にもならないし、産業政策にもならないと思います。だから、当面緊急に、いまの電力料金についてのいわば総価格をどのように安定させるかという問題と、それからもう一つは、九つの企業形態というのは、みんなそれぞれ二十年以上の歴史を持っておりますから、あたりまえみたいに考えますが、しかし日本程度の規模と日本のような非常に集中された工業規模ということを前提といたしますと、必ずしも九つの会社がそれぞれ全然別個の計算をして、そして九州と北海道が一番高いというような状況は、これは地域経済との関係もあって、電力価格の問題として決して健全な状況ではないというふうに私ども考えております。したがって、石炭と電力との間の関係につきましても、電力会社について、電力料金についてのプール制というものは緊急に必要ではないかというふうに考えます。  それから二番目の、海外炭との関係は、先ほども申しますように、石炭価格が上がるといいますけれども、これはメジャーズのほうの政策が非常に強く働くわけでして、特にアメリカの炭価なりあるいはガス価格なりというのは非常に強くメジャーズの政策との関係で動きます。したがって、上がるんだからどこまで上げてもというようなことにはならない。むしろ日本のエネルギー政策としては、エネルギーの総価格をそれぞれの輸入炭なりあるいは国内炭なりに割り振る形でのプール制ということがぜひ必要だと思うのです。したがって石炭資源についても、これの輸入、そしてそれの価格決定、そしてそれの流通経路という問題については、いまのままで手放しでやりますと、混乱をさらに大きくして危機をさらに激化させるという危険を痛感いたします。  以上です。
  26. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 兼重先生は、やはり輸入は政府の協力のもとの何らかの特殊法人といいますか、というものがどうしても必要だ。というのは、さっき商社では困るという話がありました。ですから、やはり何か公的な機関において開発及び輸入をする必要がある、こういうふうにお考えでありますか。その点をお聞かせ願いたい。  それからもう一つ正田先生がおっしゃいました、やはり一番問題は雇用の安定、すなわち労働者の場合は終身雇用の場でなくなるという心配、これを一体どういうように打開をしていくか。  この二点、お聞かせ願いたいと思います。
  27. 兼重修

    兼重参考人 ただいまの御質問でございますが、特にカナダの場合に限りまして感じましたのが、商社を第一線に出すのが非常に好ましくない。商社というものはもう御存じのとおりで、世界各国にあれだけのフィールドを持っておりますので、やはり商社を利用したメリットというのは非常に大きいと思います。ですが、カナダに関する限りは、特にカナダの石炭鉱業というものに関する限りは、非常に具体的な例が、私ここでは申し上げませんけれども、向こうでは具体例が出ておるわけなんです。それで、こういった例が二つも三つもあるじゃないか、だからだめなんだ、こういうことなんです。私が申しておりますのは、石炭開発公社というようなものがありましたなら、これは海外の調査とかそういった契約というところまで実は行ってほしい。それから、技術者が行きますと、調査そういったものも含めてですが、契約もできないことはないだろう。公社というものが大きな一つの組織、形態になれば、当然そこまで行けるというふうに感じておるわけでございます。
  28. 正田誠一

    正田参考人 雇用の安定につきましては、先ほどのところで若干触れましたけれども、私は地元を回りまして、基本的にはさっきも申しました不信感、決定的な不信感、これがやはり何といっても一番大きな障害であろうと思います。政策としましては、たとえば雇用安定のためのもっと強力な法の制定あるいは年金について本格的な抜本的な改善といったようなことはやれますけれども、それをやりましてもなおかつ不信感はなくならないという点があるんだと思うのです。それはどうしても国産資源と申しますか、石炭資源についての、少なくとも三十年についての恒久的な政策というものが国の基本政策として宣明される必要がある。ただ去年の秋から出ているように、若干の手直しが必要だ、足りなくなったからちょっとがんばれということでは、これは労務対策のほうから瓦解していくというふうに考えます。どうもあまりいい知恵がございませんが……。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ありがとうございました。
  30. 田代文久

    田代委員長 細谷治嘉君。
  31. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一、二点お伺いしたいわけでありますけれども、石炭は商品でない、こういう原則で限界炭鉱というのを維持、保護していかなければならぬ、こういうことになった場合に、現在の技術あるいは現在の状況のもとで、一体日本石炭資源というのは大体どのくらいあるとお考えになっているのか、ちょっとむずかしい抽象的な質問になりますけれども、お聞きしたいと思うのです。
  32. 兼重修

    兼重参考人 石炭の可採量と申しますか、炭量でございますが、通産省調べによりますと二百二億トン埋蔵量ということになっておりますが、どんどん水没いたしましたし、それから、いま現在の経済的な稼行でき得る可採炭量というのは非常に少ないと思います。私どもは数十億トンということばをよく使っておりましたけれども、現実にはいまのままの現状状態で掘れと言われれば、これは十億トン台かどうかわかりませんです。これをほんとうに必要だということで、採算を度外視してでもやれということであれば、まだまだかなりの量、二十億トンぐらいいけるかもしれませんですが、あまり多くはもうそう望めないのじゃないかという気がいたします。  それからもう一つ石炭は商品でないということでございますが、もういまは、これはドイツのほうで言われておりましたことばではっきり記憶して、これは私どもが全然炭鉱関係のないハイデルベルヒ、あんなところに行きましても、一般国民それから兵隊さん、学生が、どうだおまえ、炭鉱を見にきたなら、ドイツの炭鉱はよくやっているだろうというようなそういうことを言うくらいで、石炭というものは国のエネルギー資源だということが非常に強く一般国民にしみ渡っている。民間企業でやっておりますけれども、そういう感じでございます。それをいまの日本に当てはめましても、もういま石炭を掘りましても、これでもうける、がっぽがっぽもうけるということは不可能という実態でございますので、これはやはり、そういった働く者が使命感を持つということ、国のために必要な、商品でない石炭をまっ暗な深いところから掘り出して、そしてこれが日の目を見て国家の有用資源として活用されるということを望みたいという気持ちで申し上げたということでございます。
  33. 細谷治嘉

    ○細谷委員 通産省のお話を聞きますと、古い調査のようでありますが、二百二億トン、しかし、大体掘れるのは五億トンぐらいしかないだろう。いま十億トンくらいあるいはあるかもしらぬ、こういうことです。これからのエネルギーというものの中に石炭位置づけていく場合に、この辺は非常に重要な一つのポイントではないか、こう思うのです。  そこで、先ほど正田先生と思いますけれども、大体五、六年というものをある程度展望しながら国内エネルギーを確保していく、こういうことでありますけれども、むろん投資の問題もあるわけですけれども、先ほどおっしゃいました限界炭鉱という形で、五、六年先に一体努力すればどの程度の国内炭を確保できるというふうにお考えになっているのか、率直にひとつお答えいただきたいと思います。
  34. 正田誠一

    正田参考人 私は経済屋でございますから、技術のことについては聞きかじりでお許し願いたいと思うのですが、先年来炭鉱の閉山にあたりまして、例の理論可採埋蔵炭量、安全炭量、実収炭量、そして実際におのおのの山が掘れる炭量というのについて、これががたんと落ちるのを幾つかの山で何度も経験いたしました。これには二つの問題があって、一つは、これは会社筋で炭量をきめて、あるいは銀行に出す、あるいは所轄官庁に出すというときには景気のいいほうを出したいわけです。なるべく大きく出す。そしていよいよ行き詰まってまいりますと、炭量はある、けれどもあんこがないというので、あんこの部分というのはほんのわずかですからがたんと落ちてしまうわけです。それで、いま通産省でまとめておりますのは、二百二億トンのうちで実収炭量というものの三十一億トンというのが、これは基礎数字になっております。だけれども、これには、たとえば常磐、宇部を含めた東部が五億トンあるいは九州でいくと筑豊が七億八千万トンというような数字があるし、あるいは唐津、佐世保といったようなものもございます。ですから、その意味では、これは今後の情勢によってさらに石炭を大切にしなければならぬということになると、再開発の地点をきめなければならないのですが、先ほど兼重さんのお話にもありましたように、再開発の地点をどこまで設定できるのかというのは、もちろんこれまでのような細分された鉱区ではだめで、統合したところでやはり相当に精度の高いボーリングなり再調査をやる必要がある。あるいはレベル別の炭量も確定する必要がある。それからもう一つは、あるいは先ほどから言っておりますように、私は、全炭量を採掘するという基本的な考え方がないと、同じことになる、ほとんど可能性のある地点はなくなるんじゃないかというふうに考えております。そういう全炭量を採掘するというのは、これまでの炭鉱企業の常識に反するわけであります。反するけれども、それでいくのだということにしていってどの程度にいけるかというのが問題じゃないかというふうに考えます。  それで、その意味では全くの経済屋の大まかなとらえ方でございますが、北海道天北から始まって九州の高島までとらえて、これを欲ばってやってみても、十億トンを上回るか下回るかというところじゃないか。これには御承知のように調査、探鉱に五年かかります。このごろはもう技術が発達しておりますからそんなにはかからないと兼重さんおっしゃいますれば、短縮してけっこうですが、そして開発に、やはりがっちり開発するには五年かかります。したがって、それに再開発の困難ということを加えますと、やはりこれはさっき御指摘のありましたような、ここ四、五年ということには当てはまらないわけです。転換いたしまして、そして恒久的にやってやはり十年、一九八〇年代に間に合わせるというようなことではないか、こういうふうに考えております。そうすると、当面のところとしては、かなりに限られた問題じゃないかと思います。
  35. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、一番の問題点というのは、一次エネルギーの中に占める石炭のウエート、シェア、こういうことだと思う。とにかく現状において、いま先生は、石炭があるのは総資源として把握しろ、掘っていけ、こういうことなんですけれども、そういう積極的な考えで一次エネルギーの中に位置づけなければ、これはもうエネルギーの安全保障なんということばは日本では全く通らないと思うのです。エネルギーの安全保障ということを踏まえて、そして総合エネルギーの中に石炭位置づけていかなければならぬと思うのです。そういう観点でありますけれども、残念ながら、この間原子力産業会議を東京で開いたのですけれども、やはり原子力発電、こういうものにいよいよウエートを置いてきておる。石炭を見直さなければならぬと言っておりますけれども、事実はやはり原子力のほうにウエートが置かれておる。その原子力には今日安全性というのが幾多の問題点がある。そこへ持ってきて、いま電源開発促進税なんというあめでつっていこう、こういうこと。しかも、現実に稼働しておる原子力発電の稼働率なんというものは五〇%割っている、こういう状況の中でありますから、先ほどおっしゃったように、排煙脱硫等、技術的に公害問題も投資さえすれば解決しておる石炭というものを、安全保障ということも踏まえて、かなり総合エネルギーの中で積極的に位置づけていかなければならぬ、こう私は思っておるんです。そういう場合には、やはり金の問題が当然付き添ってくるわけですが、重油に対する関税を原資としておりますのでは、これはおそらく足らぬだろうと思うのです。先生方も、これは財政問題になりますと、その金はなかなか必要だけれども出ないだろうということで消極的になってしまうようでありますけれども、やはり金に糸目はつけないというぐらいの、限界炭鉱を掘っていくんだ、守っていくんだ、こういう観点で総合エネルギー政策の中で位置づけていかなければならぬと私は思っております。この点について、ひとつ基本的な石炭位置づけにあたっての態度はどうあるべきか、これをひとつ両先生からお聞かせいただきたい、こう思うのです。
  36. 正田誠一

    正田参考人 石炭産業が限界炭鉱を維持することによって五千万トン程度維持されておりますと、いま大体石炭換算三億トン前後ですし、今後この伸びはこれまでほど高くないといたしますと、大体六分の一ぐらいということなんですが、それは言うべくして、現実には二千万トンとなりますと、これは一〇%を割っているわけです。一〇%を割りますといわゆるバーゲニングパワーとしてはほとんど機能はしません。その点はこの十数年の政策について私どもは強く批判せざるを得ない点なんですが、しかし、幾ら批判しても事実は事実という意味で、今後の日本のエネルギーの総体についてのこれを確保し、いかにセキュリティーを確保するかという点については、きわめて困難な問題が大きいことは、これはもうお互いが十分に認識してかかる必要があると思います。しかも、この二千万トンを、たとえば先ほどの総量採掘という方式にすれば、おそらく三千万トンないし四千万トンにすることは可能でありましょうけれども、しかし、これには非常にたくさんのお金も要るし、それから努力が要る。そういう意味で、どの点まで石炭供給とそれから全体のエネルギー供給の中での一次エネルギーとしての比重を確保することができるかというのは、これからの政策がどれだけ成功するか、あるいは単に一時的に見直しという程度でいくかということによって非常に大きく変わってくるんじゃないかと考えます。  その意味で、実は問題は主として財源及びエネルギー全体についてどういうかまえでいくかということにかかわってくるわけなんですが、実は先ほど財源について御遠慮申し上げましたのは、財源をいろいろされるのは実は当委員会のお仕事でございまして、私どもがあまりかってなことを申しましても、いろいろ技術的な問題もあろうかと思いますので御遠慮申し上げたのですが、基本的には私は、これはこれまでのように石油関税におんぶするという方式では、もう国際的な状況からいってもそんなふうにはできないし、それから石油関税におんぶして石炭を保護するというと、いかにも論理的には簡単でわかりいいようですが、これは非常にまずい考え方であります。というのは、いまの世界の石炭市場に対する支配の仕組みというものの中に完全にまるめ込まれ、包み込まれた中でそれを置いていかれるというのですから、積極的な意味を持たないわけです。したがって今後の問題としては、たとえば産業連関表を使ってもある程度のことは出ますけれども、日本の工業、農業を含めて、日本の国民経済の中での総エネルギーがどれだけのものである必要があるかというのは、これは連関表によってある程度のものは出ます。そしてそれに対して、いわば日本の国民経済の中から、あるいは財政構造の中からよほど思い切った措置をとらないと、エネルギー面での破局から日本経済は常に動揺し、常に困難にぶつかるという点を明確に示すべきだ。そして、そうなればどうしても必要なだけは振り向けなければいけないじゃないかということになるのではないかというふうに、私個人としては考えております。したがって、エネルギー全体の中でのこの石炭の地位というものについては、現状がきわめて劣悪なというか、ここ十数年の政策の結果、きわめてまずい事態になっておるということを十分に認識した上で、どこまで確保できるかということをこれから詰めていくのが課題ではないかというふうに考えます。
  37. 兼重修

    兼重参考人 ただいまの御質問でございますけれども、これは第一次エネルギーのうちの一七%ですか、この中で原料炭の輸入炭というものが半分以上ございまして、実質的には国内産の石炭のエネルギーのうちに占める位置というのは非常に少ないわけでございます。これはここで皆さま方おっしゃるとおりに、政策の誤りと申しますか、これはヨーロッパのほうではEC共同体のほうでございましょうけれども、あれは十年間ずうっと石炭を減産しまして、年間一億六千万トン、十年間で十六億トン減らしておりますが、これは三年前か四年前ですか、石油が安価でいつまでも多量に入るという政策は誤りであるということを打ち出しまして、現在これは国産の石炭を主体にいたしておりますが、天然ガスとか水力とか、そういったものを含めまして三分の二、六十何%というものは自国産のもので供給圏内をまかなうということを実際に現在そのまま達成しております。  火力発電にしましても、イギリスはあんなにやかましくなりましたが七十何%、ドイツにしましても五一%、フランスでもまた五〇%、そういった石炭火力発電というものを持っております。日本の場合には石炭火力発電は非常に少ない。実はいま先生おっしゃいましたけれども、たとえ一〇%台にならなくても、これが七%か六%、五%になりましても、常に恒久的に五%の電力エネルギーというものは国内産の石炭でやれるのだということが持続できれば、私はそれでもいいんじゃないかという気がするわけでございます。これはいま多くを望むということは不可能でございますが、これを維持するということは可能である。であれば、たとえ五%でも常に国内産——石油がはたととまっても、石炭だけで五%は確実に二次エネルギーである電力が補給できるということがやはり必要じゃないかという感じを持っておるわけでございます。
  38. 細谷治嘉

    ○細谷委員 五%論というのが出ちゃったんで、これはお願いですけれども、先生方現状ということについて、それから政策のあるべき方向らしいものは示されるわけですけれども、財源の問題になると遠慮してものを申しませんということですが、やはり今日石炭を見直すその方向はどういうことなのかということについて、具体的にひとつ学者としての持っていらっしゃる方向というものを積極的に遠慮なく出していただいて、そして日本のエネルギー国内資源というものをいまおっしゃったような態度で活用できるような方向で私どもを指導していただきたい、積極的な姿勢を心からお願いしたい、これを申し上げて私の質問を終わります。
  39. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  40. 多田光雄

    ○多田委員 時間もありませんので、何点かお伺いしたいと思います。  石炭産業は十数年で非常にドラスティックというかドラマティックというか、こんな激しい変貌を遂げた産業はあまりないであろう。農業もそれに近いと思いますが、それが共通しているところは、日本の国内の自立性といいましょうか、それが非常に減って、海外の資源に対する依存度が高くなってきているというところが一つの特徴だろうというように思うのです。この点で先ほど正田先生がメジャーの規制の問題をおっしゃっておりました。今日、日本石炭問題を考える場合、そして石炭を含めてエネルギー問題を考える場合、このメジャーの支配をどう規制するかということを抜きにしてはちょっと現実的ではないんじゃないか、こういうふうに私も思っているわけです。そういう意味で一つはメジャーをどのように規制するのか、たとえば国内的に言えば独禁法の改正の問題であるとかあるいはまたメジャーズと日本企業とのいろいろな協定、契約を公開させる問題だとかいろいろございますけれども、どうやって規制するかという問題、これが一つございます。いま一つは、石油中心の産業構造になってしまっているわけですね。この中で石炭なりあるいはまたエネルギーの自立性をもっと高めていくということなんですが、その場合一つ問題になりますのは、こういう意見があるわけです。過去の高度経済成長は非常に生活水準を上げた、したがって、いまのエネルギー問題はいわばひずみであるというような意見をよく聞くわけなんです。しかし私は、エネルギー問題は単なるひずみでなくて、重大な内容を今日はらんでいる、こういうように思うのですが、そういう意味で、国内の施策としてメジャーに対する規制をどうするかという問題と、それからいま一つはこういう産業構造、これをどのようにもっと自立性のあるものに変えていくのかという点について正田先生の御意見を伺いたいと思います。
  41. 正田誠一

    正田参考人 先ほども申しましたように、メジャーズは単なる石油独占ではございません。やはり今日では、エネルギーのそれぞれの重要な地点について非常な強力な政策をとっておるエネルギー国際独占という点が一つの特質だと考えます。したがって、メジャーズの戦術なり戦略なりというものについてできるだけリアルに取り上げる必要があるわけなんですけれども、お話のようにこれが国内で子会社、いわゆる元売り会社を持ちます、あるいは関連会社に重役を出すあるいは出資するというようなそういうつながりがございますが、これについては、独禁法を改正することによってある程度の規制はできるのだと思うのです。ただ、先ほど最初の報告で私が申し上げましたのは、そのような国内的な独占禁止法強化による規制を若干いたしましても、一番もとが国際独占として支配しておる。いますでにやっておりますように、日本石油価格を上げるのがおくれたら困るというのは、これは国際独占としては当然にそういう政策をとるでありましょう。そういう意味で、国際独占が国際的な独占機構でもってやります場合に、これを一国の内部だけでもってどこまで規制するかというところで押え切れない点があるわけです。それで、その押え切れない点について先ほど田中委員の御質問にお答えしましたが、いわゆる経済統合あるいは資源連携といいますか、このことは先ほど触れたとおりでございますが、これに対してエネルギー消費国としましては、これを国有にするということはある意味では苦しまぎれなのですが、先ほどから申しましたように幾つかの国が、この半年の間でも相当強引にやっております。そういう意味でのインパクトと、そしてこれに対応するいわば日本のエネルギー産業の企業形態、そしてこれに対する国の監督あるいは議会の監督といったようなそういうやり方がやはり一つ出てくるのではないか。そういう意味で、メジャーズの政策というものは非常に強力でもあり、また律し切れない点がありますが、半面では日本の国内の資源とそれから輸入資源との関係を調整するためにかなり思い切った企業形態ということも必要になってくる、そういう方法でいく以外にないのではないかというのが私のいまの考えでございます。  それから、二番目の産業構造の問題につきましては、さっきちょっと触れたところでございますが、高度成長の結果GNPが世界で二番目になり、そして消費水準あるいは生産力水準が未曽有に向上したということは、これは物量的な数字に関する限りある意味では事実でございましょう。けれども、産業構造というのはどのような産業構造が一国にとって最も望ましいか。特に世界情勢が次から次に変わっていくし、科学技術革命も進行してまいります。そういう事態の中で、一国の産業構造が、どのような産業構造が最もつり合いがとれ、そしてまた、国民生活とそれから国民経済活動というバランスをとりながら進めることになるのかという点については、私は若干意見を異にしております。日本の高度成長政策の結果つくり上げられている現在の日本産業構造というのは、七〇年代後半の世界の情勢に対してはきわめて適応力が少ない、かなりに難点を持っておるものだと思います。なぜかと申しますと、二ドル石油をもとにしましてやりましたいわゆる重化学工業型というのが、この限られた地域とそして非常にコンパクトな工業立地の中で、公害問題を持ち出すまでもなく、ある意味では最もアンバランスな構造になっているわけです。その意味で、私はこれはただ単に高度成長政策の成功、そして一部分にひずみが出てくるのはやむを得ぬのだ、だからそのひずみを直すのだという問題ではなくて、高度成長政策が国民経済と国民生活にとって何をもたらしているかという点についての反省がこの際非常に大切なのではないか。しかも、それがメジャーズが支配しておる石油を根底にして、よくこのごろマスコミで油上の楼閣と言いますけれども、油の上にただよっておるようなそういう性格、この点については十分に反省しなければいけないのじゃないか。その意味では、成長率が早ければすべてベストなんだという考え方、これは七〇年代後半の世界情勢の中では一番適応力が弱いものだというふうに考えております。  そのことに関連しましていま一つ申し上げたいのは、先ほどちょっと触れましたが、産業構造がこういうことになったら変えていかなければいかないという意見がございますし、これはだれが考えてもそういう方向にいくわけなんですが、その点は経済政策の点からいきますと、産業構造と申しますか、生産力の組み合わせ、そして経済機構の組み合わせというものがそんなに簡単に変わるものではないと思います。よく言われますように、戦前の日本と違って今日の日本の工業、日本の経済、これの中核をつくっておるのはある意味では株式会社だ、しかも巨大株式会社であり、そして巨大企業群だ、企業集団だというふうな指摘がされております。実は今日の産業構造というのは、ただ産業がこのように組み合わされているという問題だけではなくて、そのような企業集団、企業集団の支配の構造としてこのような産業構造と表裏密着しているのだ、その意味で、この産業構造が破局に瀕する、そして変えていかなければいけないということは、日本のこのような企業集団の、巨大な企業集団の連携によって支配されておる産業構造というのについて、このような支配構造と申しますか、このような企業集団の非常に巨大な、しかしまたきわめて暴力的な点も否定できないような、そういう点を改めていくということを内容としながらでないと、ただ資源関係から産業構造が変わらざるを得ないのだというふうにはこれはならないんだと考えます。その意味で、実は日本産業構造の問題というのは、ただ産業構造の問題でなくて、日本の経済構造の問題としてきわめて大きな根本的な難点にぶつかっている。これを打開するその一翼としての国産資源あるいは国民資源の再開発なりあるいは国内経済における国民資源の位置、その重要性とその可能性とその制約ということを明確にすることが必要な段階になっておるのじゃないか、こんな考えでございます。
  42. 多田光雄

    ○多田委員 いまの問題に関連して正田先生にもう一つお伺いしたいのですが、今後の日本のエネルギー政策を確立していく上で、たとえば私企業の形態もありますし、それからまた国有化ということも言われています。私はやはり国有化せざるを得ないだろう、こう思っております。それをちょっと申し上げますと、たとえばいま石炭の見直しは、石油の価格が上がったから、石炭が経済性が出てきたからという、非常にこういう限度の石炭の見直しがやはり横行していると思うのですが、この限りでは、根本的に日本のエネルギー政策の自立はないだろう、こう思うわけです。そういう意味で、これから日本のエネルギー政策を考えていく上で、過去の日本のエネルギー政策の反省の上に踏まえて、どういう点に力点を、基本的な点を置いて考えていったらいいのかということです。たとえば、私の申し上げたいことをもう少しリアルに申し上げますと、一つは冒頭に申し上げました非常にエネルギーの依存度が高くなったという問題がございます。それから非常にアンバランスになってきた、たとえば電力やその他は伸びるけれども石炭は崩壊していくという、そういう点でどういう点が基本的な視点なのか、その辺ひとつお伺いしたいと思います。
  43. 正田誠一

    正田参考人 ただいまの点につきましては、私が戦後の経済政策の推移の中ではどうしても否定できない、そしてこれは私どもも不勉強を恥じたければなりませんし、日本の行政あるいは立法の点でも反省しなければならない点だと思うのですが、やはりメジャーズの支配、そしてその変質、それから産油国を中心とする新興発展途上国の勃興といった国際的な情勢の変化というものについて、われわれはあまりにも無感覚であったのじゃないか。というのは、結局メジャーズないしはアメリカとの共同、協力の中で安い石油が入ればもうそれだけでいいじゃないか、変な理屈を言うなというのでやってきました結果が今日のような事態を生んでおるのでございますから、その点についての反省というか、その点をいかに改めていくかという点がやはり第一に重要な点じゃないかと考えます。  それから第二に、これは今日の経済の機構の中ではいろいろな難点が出てくることでございますけれども、国民経済の再生産あるいは国民経済が繰り返し繰り返し将来に向かって展開していくというその構造の中で、国産の資源及び国産の産業がどれだけの大きさを持っているかというのは、経済成長率という点からいくと制約条件になる場合もあります。これは事実、農業をとってみても石炭をとってみても、GNP、経済成長率という率という点だけからいえば、これは制約条件になるでありましょう。しかし、再生産の基本的な条件を維持するという点からいきますと、これは不可欠の条件であります。ただ、難点は価格の競争という点、あるいは経済成長率への寄与率というような点からいきますと、どうもあまりメリットがないじゃないかというので、あまり評判がよくないのでございますが、しかしこれは、やはり今日のこのような危機的な情勢の中でわれわれが事実によって教えられておる最も大きな教訓ではないかと考えます。それはやはり、国内の産業あるいは国産産業といってもいいし、それから国内資源というものについての全面的な活用、そしてその可能性を、たとえば石炭価格なら石炭価格あるいは農業の新しい展開なら展開といったような、その可能条件と実現条件とをもっと追求していくということが、今日の経済政策の中でやはり一番大切な点じゃないか。  以上の二点を私の意見として申し上げておきたいと思います。
  44. 多田光雄

    ○多田委員 兼重先生にお伺いしたいと思いますが、先ほど外炭の輸入の問題に一言触れておられまして、カナダの開発という問題に触れておりましたですけれども、実はちょっと心配もあるわけなんです。やはりエネルギーの自立性といいますか、国内の資源を最大限に利用していく、それをフルに利用していくという点からいえば、先生もさっきおっしゃった、石炭は商品ではないというドイツの例をあげて非常に積極的に述べておられたのですが、いまの日本あるいはいまの日本の企業の状態からいって、たとえばカナダに石炭開発を進めていくという場合に、国内の資源を掘る上にはいろいろな困難がございます。そういう困難を回避して、やはり企業は安いコストということでカナダに資本が行くということで、日本のこの貴重な資源開発するということがやはり経済性が先に出て忘れられていく。つまり石油と同じまた二の舞いを繰り返すのじゃないかという不安も持つわけです。もちろん、ないものはこれはどうしても入れなくちゃなりませんけれども、そういう点でやはり日本の国内資源を活用するという意味で、先生がごらんになりまして、非常にこれは前途有望なのかどうなのか。それからもう一つは、外炭、特に一般炭の問題ですが、これがはたしてそういうエネルギー政策の上からいって得策なのかどうなのかということをもう一度ひとつお伺いしたいと思います。
  45. 兼重修

    兼重参考人 外炭の輸入でございますけれども、これは、原料炭はどうしても入れなければならないということでございますけれども、一般炭の外炭輸入ということになりますと、国内でもいま非常に一般炭を出しております炭鉱は苦しんでおります。これにもし外炭が入ってきて、これが非常に国内炭よりも安いということになるともっと苦しくなるのじゃないかという、一般的に考えますとそういう感じが出るわけでございますが、私は将来というものを考えた場合に、これはやはり一般炭というものを入れなければならないということを申し上げたつもりでございますけれども。これは、現在日本炭鉱で一般炭を出しております山が、これは九州で申しますと、非常にサルファの高いところが多いわけでございます。北海道のほうではそうまでないということでございます。で、これは九州でやはり一般炭を出しまして、発電所用というようなことを考え、またほかのほうの工場用というものもございましょうが、そういう場合には、混炭用の低サルファの石炭というものが当然必要である。これはまぜなければやはり有効に使えないのじゃないか、そういう意味で、低サルファの石炭というものが大量に九州にあるかと申しますと、もうそうないわけであります。露天掘りでも非常に限られた、あまり大量の出炭というものは望めないということであるならば、これはやはり一般炭の輸入というものは今後将来とも必要である。これは共存という意味でも、やはり一般炭というものも必要じゃなかろうか。  それで、一般炭の中でも、いろいろ外国の一般炭にしましても、非常に品質のよろしいものもあれば一級品それから二級品、三級品というものもあるわけでございます。日本に入れますのは、これは混炭用の場合なんかにはわりあいに低カロリーのものでも、これは低サルファであれば非常に有効に効果があがるということでございますので、必ずしも一級品の一般炭を入れるという必要もないかと思います。これはよければよいほどけっこうなことでございますけれども。  こういうことで、この一般炭の輸入を確保するということは、そういう混焼用だけでなくて、実は会社によりましてはこの一般炭によるガス化とかあるいは液化というものも考える。そうしますと、日本の国内産炭だけでは、これはやはり将来ともこういった工場を建設しまして永続性を持たせるためには、やはりそういう外国の一般炭の輸入というのは非常にメリットが出てくるということが私どものほうでも感じられます。  そういうことも含めまして、これはやはり外国炭を導入して、輸入しまして、そして——そういった一応の試算がちょっと出ましたのです。これは科学技術庁だったと思いますが、いまちょっとよく覚えませんけれども、外炭、一般炭を輸入して、国内でガス化した場合のコストと、それから石油の場合とのコストというものの比較も出ておりますが、とにかくもう半分の値段でいける。たとえばアメリカの場合を申し上げましても、あそこでガス化をやりまして、太平洋岸でございますが、これをまた液化をやりましたものを輸入しましても、液化の輸入の単価にしましてもこれは非常に安いのだ。私は、これははなはだとっぴな考えでございますけれども、これはどうなのだろうかと思って、実は私自身も迷っておるのでありますが、いま重油の輸入に対して関税がかかっておるのですが、これは、そういった外炭が輸入されます場合に、外炭に対して関税というものがかけられるのだろうかどうだろうか。こういったものに関税がかけられるならば、これはこれをそのまま日本の国内炭のそういった対策費に充てるということも可能性があるのだろうかどうだろうかという感じ、これはまあ私のほうではよくわかりませんです。そういった気もちょっとしますのですが、将来も外国の石炭を輸入するということを恒久的にやるならば、何らかそういった考え方もあるいは必要になるのじゃないかという気もいたしますが、とにかく将来ともそういうメリットというのは十分考えられるので、一般炭の輸入というものはやるべきだということを主張したわけであります。
  46. 多田光雄

    ○多田委員 あと正田先生に二つお伺いいたしたいと思います。  一つは労働力の問題でございますが、最大のネックの一つになっているわけです。今日、炭鉱労働者にこの炭鉱にいてもらうような条件にするとすれば、何はさておき、政府がはっきりと炭鉱見直しの計画なり展望というものを持つことが前提でございますが、少なくとも、賃金をどれくらいにするならば労働者が幾らかでも炭鉱に魅力を持つようになるのか、これを一つお伺いいたしたいと思います。先ほど四万、五万というお話もございましたけれども。  いま一つは、私ども実は石炭の復興公社案というのをすでに発表しておりますし、エネルギー問題はやはり日本の国内資源というものを非常に活用していくというたてまえと、いま一つ石油、原子力その他総合的な立場でエネルギー問題を考えていかなくちゃならないということで、将来国有化という展望を持ちながら、このエネルギーの総合公社というようなものも実は考えているわけですが、そういう国有化に至る道筋で最大のネックは何なのか。それからまたいま一つは、それをつくっていく上でどういうふうな段階的な措置が必要ならばとられなければならないのか。この二点をお伺いいたしたいと思います。
  47. 正田誠一

    正田参考人 第一の点につきましては、たとえばことしの春のベースアップというようなことがございますので、金額をすぐに固定的に申し上げるのはどうかと思いますが、先ほども申しましたように、製造工業の中の基幹産業のいわゆるAクラスと申しますと、大体賃金統計でいきますと十万から十二万ぐらいのところになります。で、石炭産業につきましては、御承知のように坑外夫は非常に安いのでありまして、この点ももちろん問題がございますけれども、やはり基本的には坑内賃金——坑内賃金について、正常な作業でもって、いまのAクラスの賃金が保障されるということが一つのミニマムな基準線ではないかというふうに考えております。  というのは、炭鉱賃金制度、これは御承知のようにいろいろな制度がございまして特に標準作業量システムでまいりますと、能率があがり、機械化が進みますと、これをぐんぐん上げていきます。そうしますと、へとへとになってやっとこれだけというふうになりまして、かつてはそれほどではなかったのですが、今日では機械化のほうが標準作業量よりも優先するという形になりまして、この賃金について、賃金の実収をあげるという点が非常に困難になっております。これはいろいろ難点はございますけれども、その点についてもっと正常なバランスの関係をということと、それからAクラスの賃金水準というのを無条件に保障する。以下、今度は間接夫、坑外夫というふうになりますと若干これは下がってまいりますけれども、これもしかしあまりひどいのではどうにもならないので、それぞれの地場賃金なりあるいは産業賃金なりの一応の対応関係というものが出てまいると思います。  現状は、十数年前に石炭合理化政策が本格化しますまでは若干そういうふうな配慮はあったわけでありますけれども、その間コストの低減ということを境にしまして、いまのような保障するという政策がどこかに吹っ飛んでしまっております。この点が一番難点だと思います。  でも、そのほか、賃金は金額だけではだめなんでして、先ほど申し上げたように、労働条件あるいは休日制といったような、労働力の消粍と損粍、そういうことが特に激しい労働でございますから、この点についての保障、特に雇用の安定と老後の保障というところまでを含めた、よく申します生涯賃金という考え方をやはりこの際もう少し保障的な考え方でやっていく必要があるのじゃないかと思います。  それから、二番目の問題につきましては、先ほどから国有化の形態についての御意見が双方から出ているわけですけれども、これについてはいろいろな類型があることは皆さんもよく御存じだと思います。資本主義諸国の国有化について申しますと、やはり一つは衰退産業に対する補助的なというか、衰退産業を助ける意味の国有化政策というものがございます。そうしてこれには、妙なことばでございますが、コストが非常にかかる国有化、あるいは中くらいの国有化、あるいはあまりコストをかけない国有化というのがございます。この点で、コストをかけまして、そして石炭企業が持っておる鉱業権も何もかも全部、たっぷり一二〇%、一五〇%評価しますれば、これはへたに苦労するよりも移行したほうがいいから、比較的に簡単かもしれません。しかし、このコストバールな、非常にコストのかかる国有化をいたしますと、あとの国有化企業というのは最初から借金をしょい込んでしまって非常にやりにくいという問題がございます。したがって、合理化事業団なりなんなりがやっております方式をさらにもう一度洗い直してみて、一体補償されるべきはどの部分なんだ。たとえば鉱業権がございます。鉱業権は、あるほかの会社からこれこれの金額で買い取って、そして時価は幾らだといり計算をすれば計算ができないことはありません。そしてその方式について炭量が何年分というので、ホスコルド方式だ何だといういろいろな方式を使いましてやりますが、もっと基本的に鉱業権についての補償が必要であるかどうかという点についてやはり国民的な合意ができるところまで詰めるべきじゃないか。それから坑内施設その他につきましてもこれをどのように評価するかという点については、これはずいぶん幅のある問題でございます。ですから望ましい将来の国有企業でもって、国有形態でもってやる場合に、望ましいのは荷を軽くしておくことです。しかし現状の企業との妥協のためにはやはりコストがかかる。これがどの辺にかかるだろうかというような点がいわゆる衰退産業補助的な意味での国有化の場合に論点になる点じゃないかと思います。  それからもう一つは、当初から機密性が強く、そして国家的な規模でなければできないような原子力開発だとかあるいは宇宙開発というようなときには、これはもう当初から全部国有形態になりますから、いわゆる戦略的な産業の問題は省略しておきます。  その次に、いまの衰退産業を助けるというだけでなしに、先ほどから問題になっておりますように、国産資源、特にエネルギーを総合的にやっていく。しかも、これは私企業としてやっていける余地がどんどん少なくなってきている。そして実際の資金、資本の動きからすると、事実上国家資金で動いているのだという事態、しかもそれは単なる衰退産業補助というのじゃなくて、むしろこれからの日本の基本的な国産資源、国産産業という角度でもって問題を展開していくという場合の方式というのが問題になるわけで、これはいま申しました二つの方式とは若干別個に、少なくともこれには働いておる労働者の意見あるいは技術者意見、そして要求というのができるだけ率直な形で反映できるような方式が一つと、それから消費者の側が——これは産業による消費もありますし、あるいは国民、民生用の消費もありますけれども、消費者の意見ができるだけ系統的に反映するような組織という点があろうかと思います。  それからもう一つ重要な点は、これは最近の国会論議などでもやかましい点でございますけれども、大企業の場合でも経営責任者というのは、配当に対して責任を持たなければいけない、あるいは株式の時価に対してやはり責任を感じるというような点がございます。それで、そのために特にいま取り上げておりますような領域について、そういう心配というとおかしいのですが、そういうのに引きずられるような企業の形態であっては、おそらくこれは国民産業それから国民資源というものの名に値しないであろう。いわば国民に対して責任を持つ体制がどのようなものであるかという点が問題になろうかと思います。  それでその意味では、石炭だけを考えますと、たとえば幾つかの地域的な組織ということがあったり、あるいは全国組織というのがあったり、あるいは東日本と西日本というような地域的な考え方もございますが、今日ではそれはあまり有効ではないように思います。やはり石油、なかんずく石油の国際独占資本との関係にできるだけ強力に対応できるような、強力にこれに対して政策が展開できるような方式、特に一次エネルギーと二次エネルギーの関係で、電力との関係についてこれを総合的にという、一種の総合形態というのが必要になってきているんだというふうに考えます。  それから、新しい開発としてあるいは液化もありあるいはガス化もありあるいは天然ガスもございますけれども、そういう面の問題、これをどう開発していくかという問題、さらに原子力の問題がございますが、原子力について安全性の問題がいつになったら決着がつくか。私ども学術会議関係で、専門家ともしょっちゅう情報を交換しておりますけれども、やはり現状のような状況で、ましてやハイ・スピード・フィーダー、高速増殖炉がまだ日本では実用化していないような段階で、ただエネルギーが足りないからというのでやみくもにやるというのは、おそらく政策的に破綻するであろうと思います。そうすると、これは将来エネルギーの問題としてもう一つのセクションが必要になってくるわけです。したがって、いますぐエネルギー生産になるもの、それから開発すべきもの、それから一次、エネルギーと二次エネルギーの連関を明らかにすべきもの、それから将来エネルギーの問題といったようなことが一つの総合的な、石炭エネルギー関係の行政とそれから企業形態ということが必要になってくるのじゃないかというふうに考えております。
  48. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  49. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  50. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 両先生の卓越した御高見を承りましてまことにありがたく存じます。時間がおそくなりまして恐縮千万でございますが、両先生に一、二問お尋ねいたしますので、しばらく御迷惑でございますけれども、お願い申し上げます。  先ほど兼重先生からお話があっておりましたが、私も全く同感でございますが、九州は、先ほどお話しのとおり石炭が非常に高サルファで、そこで混炭用に低サルファの一般炭を輸入するんだ、九州には、露天掘りなんかやっているけれども、わずかで、輸入に待たなければならぬ、まことにそのとおりで私も同感でございます。ところが御承知のとおり、中東の石油問題に端を発しまして、世界各国全部中東に似存しておった。ところがああいう危機に面して、にわかにこれはいけないというので、差こそあれ、その危機に対して国内資源開発促進ということに、それぞれ各国みなそういう傾向に向かっていった。いわゆる自給体制の強化ということにみな考えをいたすようになってきた。そこで、米国の主要産炭州でございますとかあるいはイギリスの北海石油、こういうものがみな輸出禁止法を制定する、輸出禁止をやるんだというような傾向があるようでございます。  そこで、正田先生にお尋ねしたいのですが、こうした社会、経済情勢から、わが国と最も関係の深い豪州だとかあるいはカナダ等の炭がはたしていままでのように安く来るか、あるいは市場化して高くなるのじゃないか。そうしますと、これはたいへんなことになってくる。簡単に、一般炭は輸入すればいいじゃないか、そしてあるいは液化、ガス化をやる、あるいは混炭用にする、これはまたあとで兼重先生にお尋ねしたいと思いますが、そういう意味からも、二千二百五十万トンなんというようなことはもうたいへんだ。これは将来先行きは非常に不安だと私も思うのでございますが、正田先生どうでしょうか、世界の経済情勢からこれをにらみ合わせて、そういう危機がまた来るのじゃないかというような危惧を私は持っておるのですが、先生のお見通しと申しますか、どのようにお考えでございましょうか、何か……。
  51. 正田誠一

    正田参考人 ただいまの御意見につきましては、実は来るのじゃなくて、もうすでに来ているように考えます。  二つ問題がございまして、それは工業化が発展している国々では、将来三十年、四十年先までの資源ということを考えますと、資源は温存しておけばなくなりませんから、だからなるべく命を延ばす。たとえばアメリカにしてもそういう政策をとる。ただしアメリカの政策は、これは一筋なわではいきませんので、メジャーズが世界戦略の中でもっと有利にやれるということになれば、これは変わってまいります。けれども、アメリカの国民資源をなるべく命を長らえさせるということもありましょう。あるいはイギリスだけじゃございませんが、北海の天然ガスと石油にいたしましても、これはイギリスあるいはオランダ、各国がみんなそれぞれの領域を主張いたしまして、そしてそれぞれの自給度を高めるという方式で行っております。したがってこれは、こういう資源でいえば出てこない、そっちのほうでふたをしてしまうという場合は、今後の情勢の中では十分にあり得ると思うのです。  そこで残りますのが、お話のように、人口の数からいってもそれから工業化の程度からいっても、石炭が過剰である、しかも新しく開いたものだから非常にたくさんの余力があるという国々があるわけです。そして、事実日本もそれに一番期待しているわけですが、すでに両国とも、程度はまだそれほどじゃございませんけれども、ことしになって石炭価格を上げております。これは石油価格が実勢がきまってまいりましたら、さらにおそらくフレートを含めてこれに対応し、メリットを勘案して市場性を持つところまでは上げてくると思うのです。そういう意味では、実は石油が上がった、石炭は安い、だから石炭を掘ろうといっても、いわばエネルギーはお互いに連関しておりますから、一次エネルギーが二次エネルギーなりあるいは最終消費なりに移っていく、そこでのメリットの換算でもって関連した価格水準というものがあると思うのです。その意味で、石炭もまた高価格の時代を迎えると思うのです。  そこで、私企業の観点だけに立ちますと、日本でも同様にやったらいいということになる。そうすると、日本産業としては、石油が高くなったのだから石炭を掘るのだ、けれども、エネルギーの総コストとしては、これが別に節約の意味を持たないのだ、やはり高いのだということになりますと、いろいろ苦労しまして、石炭政策を立ててどうこうと言いますけれども、どうもたいしてメリットがないということになる危険は多分にございます。したがってその意味では、たとえばカナダあるいはオーストラリアの石炭に対しても、日本石炭供給力、この場合原料炭は別にしまして、一般炭の供給力がどこまであるか、しかもその価格が若干割り安であるかということがこれを規制する条件になる。オーストラリア炭やカナダ炭のそれを規制する、いわゆるバーゲニングパワーになる。その意味でも二千二百五十万トンじゃなくて、もう少し出して、そうしてこれの利用方法について、消費方法について、いわゆる排煙脱硫を、宣伝ではたいへんうまくいっているというけれども、実際に使っているところではどうも効率がまだあまりたいしたことないようですけれども、こういう点について格段の努力をすることによって、いわばこれらの国内炭の消費というものが、もっと弾力性を持ってぐんぐん消費が可能であるような、そういう方式をやる。あるいはもし混炭が必要であるならば、たとえば有名なのは三池の高サルファですが、これは田川の低サルファあるいは日炭高松のそれと混炭しておったわけですが、御承知のようにこれがなくなってしまったものでございますから、相棒がなくなって、いまいたずらに非難を受けておりますけれども、そういった混炭の方法が国内でもまだ決して不可能ではない。だから戦術的に、重点的にそういうことをやる余地もまだあるのじゃないかというふうに考えます。
  52. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 たいへんありがとうございました。まだもっとお聞きしたいのでございますが、時間がございませんので、兼重先生にちょっとお尋ねしたいのでございます。  先ほどから先生の御高見を承りまして、非常に私敬服しましたが、二千二百五十万トンを完全に果たすためにはどうすればいいか、はたしてこれができるかどうか自分は非常に心配だという先生のお話で、私も先般もそういう話を委員会でしたのでございますが、ことに的確に予算の問題で、前向きの予算はわずかに二五%ぐらいしかない、この点も、私どももこの委員会では先生のおっしゃるとおりのことを言っておるわけなんです。あるいは先生のおっしゃった、はたして労働力の確保ができるかどうか、労務倒産をするのじゃないかというようなことでございますが、あるいはまた安定補給金トン当たり五百円出せというようなお話もあっておりました。そうすると二千万トンで百億の金ができるじゃないかというようなお話もあっておったようでございます。これははなはだ失礼なことでございますが、そういう批判的なことは先生ずっとおっしゃっていただきまして、私どもも大いにそのとおりだと思いますが、では二千二百五十万トンを完全に出炭目標を達成するためには、具体的にこのようにすれば可能になるのじゃないかというような、先生何か的確なお話がございましたら一、二——二でも三でも四でもかまいませんが、何か先生のあれがございましたら教えていただくとたいへん助かりますが、どうぞ……。
  53. 兼重修

    兼重参考人 どうもおそれ入ります。実は私申し上げました二千二百五十万トンが達成できないというのは、結局大きく分けて申し上げましたのが、当面の問題としては金がないということなんです。これはやはり掘進をやらなければいけません。そうしてまた設備投資というものをやらなければいけない、その金がほしいのだ。これは人間を集めなければいけない。やはり金がほしい、金が要るのだということでございます。もうどうしてもやはり金につながってくる。資金面、この金繰りというものが、やはり第一に鉱業所としては一番必要じゃないかということを言ったつもりでございました。これは、ほかの技術的の方法としましても、これからますます増産体制にこたえていくためには、やはり完全機械化というのをやらなければならない。そうすると、自走ワクとかああいった新しい掘進の機械というものを入れるにはやはり金が要るわけです。だからどうしても金がほしい。その金をどこから出していただけるかということで、実は私この委員会に大いに期待して、何かこういうところから金が出るから、ひとつ炭鉱に行ったら話してくれとおっしゃれば非常にうれしいと思うのですけれども、まだなかなかそこまで望めないかもしれませんが。  それからもう一つは、ちょっと話は違いますが、先ほど正田先生に御質問がありました一般炭の輸入のことでございますけれども、一般炭というのは、カナダ、私は特にカナダを強調しておりますけれども、あそこは一般炭の必要性が非常に薄いということです。アメリカなんかは一般炭の必要性を大いに感じてきております、そういったガス化、液化ということからも。ところがカナダは、三年前の話ですけれども、非常に豊かな国で、そういった資源を、石油にしましても自分のところではアメリカに売るぐらいなんです。タールサンド、いわゆるオイルサンドというものも膨大な量をかかえて、ひとつ日本人は来てこれをやらぬかということをもう十数年前から呼びかけております。非常に余っておる。一般炭にしましても、そういうわけで必要性が非常に薄いということで、われわれは今後、将来ともカナダにおきましては——アメリカが出ていって、これをわっと買い占めるということをやられれば困りますけれども、その前に、ですからタイミングを急ぐんだということを申し上げましたのは、アメリカはもうすでに豪州にも手を出し始めております。ですからそういう意味でも、早く日本が手を打って、カナダの一般炭、カナダ自身は必要性がないというものを……(鬼木委員日本も三井が行っていますね」と呼ぶ)はい、三井がわずかに今度一つ炭鉱入りましたけれども、こういうものは、私企業では資金の限界がございますから、いわゆる国の事業として行ってほしいということを申し上げます。  炭価は確かに上がっております。御存じのとおりアメリカではもう原料炭四十ドルという声が聞こえておりますが、豪州にしましても、輸出規制というものはアメリカに続いて何らかの形で、そのうちに鉄鋼業を自分のところでやり始めれば、何か言ってくるだろうと思います。ですから、一番私らがねらっておりますのは、カナダじゃないかということでございます。一番必要性が少ないカナダということでございます。
  54. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ありがとうございました。お話を聞けば滋味しんしんとして尽くるところがないのでございますが、時間がございませんので最後にもう一つ、これも兼重先生にお尋ねしたいのです。  実はきょうまた午後、電力用炭の販売株式会社の法案、結局三年間延長しようということの法案を審議することになっております。これについても先生の御高見を承ったのでございますが、私も全く同感で、単に三年間そのまま延長するというだけでは——今日石炭の見直しが非常に大きな問題になってきておるときに、延長することは大いに賛成、ぜひそうしたい、私もそういうことを思っておるのですが、先生はちらっと、これをもっと拡張して開発会社というようなものにしたらどうか。単なる価格の安定とか供給の円滑化とか流通機構をどうだこうだということではなくして、もっと幅の広い電力用炭の開発公社というようなものに大きく発展をすべきだ、こういうふうな意味に私は了解したのです。そのところをもう少し詳しくというと語弊がありますが、もうちょっと先生のお話を承りたいと思います。なぜかならば、先ほど申しますように、きょうまた昼から審議しますので、私も電力用炭の販売会社に対しては大いに将来発展してもらいたいという考えを持っておりますので、できますれば先生のお知恵を拝借し、先生の高道なるお考えを承れば幸いだと思いまして、お願いいたします。
  55. 兼重修

    兼重参考人 ちょっと私の説明がまずかったかもしれませんけれども、石炭開発公社というものを申し上げましたのは、増産計画にこたえるために新鉱開発とかあるいは露天掘りをやるという場合に、また旧炭鉱の再開発というものもあるかもしれませんが、そういうものをやるときに、事業団が買い上げておるというケースがかなり多いと思います、新鉱開発以外に関しましては。それもある程度含まれておると思いますが、そういった場合にもとの持ち主の鉱業権者がやるということは非常に抵抗が感じられるし、また特に新鉱開発なんというものは非常に金がかかります。それで、鉱業権者は合理化事業団かもしれませんが、石炭開発公社がその責任者になって開発を担当してやっていくのだということを当初申し上げました。  あと実は、いま電力用炭という御質問が出ましたのですが、将来の考え方としまして、石炭火力の発電所を増設していくべきではなかろうかといった場合に、必要な石炭開発するのは、やはりこの石炭開発公社というものが担当する。現在既存の炭鉱がございますけれども、これは非常にサルファは高いし、一般炭の炭量がずっと継続的に原料炭と一緒に出てまいります。ですが、電力会社の連中が言いますのは、いつも発電所をつくった、さあつくったわ、十五年間設備償却というものがある。十五年間石炭の供給が安定的にできるかどうか。日本のいまの炭鉱で、いつやめるか、つぶれるかわからぬような炭鉱を当てにして大金をかけて発電所をつくって、それでいいと思うかということを彼らは言うわけです。その場合に、こういった既存の炭鉱もございますが、同時に、海外からの一般炭の輸入というものも、いまから早目にそういった長期契約というものができれば——これは十年、十五年という契約はやれぬことはないと思います、いまでもカナダに持っていきますと。そうしますと、そういったものが入ってくるから心配要らぬじゃないかというような含みで申し上げたと思いますが、そういうことでございます。
  56. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いろいろお聞きしたいことがありますけれども、時間がおそうございますので、これで私終わります。たいへん先生ありがとうございました。
  57. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  法案の審議につきましては午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  58. 田代文久

    田代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電力用炭販売株式会社法の延長に関する法案について質問いたしたいと思います。  これは電力用炭精算株式会社から電力用炭販売株式会社に移ったわけですが、実際上の変化というのはどういうようにあったのでしょうか。事実上、事務扱い上はどういうように変化したか。
  60. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 電力用炭販売株式会社の前の精算会社でございますけれども、精算会社のときは代金の支払いを主体にしたものでございまして、その後電力用炭販売株式会社になりましてからは、石炭に比べての石油の価格が安いというものに対しまして、石炭を維持するという見地から、縮少の中でも電力用炭を堅持するという考えのもとで、いわゆる量と価格との両面から、量につきましては、これは合理化法に基づきまして需給部会で生産に基づく需要計画を年々立てているわけでございますけれども、その量をいわゆる電力用炭として引き取ってもらうということで、これにはまた価格が、これは合理化法のほうでいわゆる基準炭価というのを定めまして、それに基づきまして電力用炭法のもとで十五条炭価を定めまして、量と価格を安定させるという二つの要素を入れたのが改正になりました電力用炭法でございます。
  61. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私がなぜ初歩的な質問をするかといいますと、実は私ども期待したのは、この電力用炭販売株式会社はかなり貯炭機能を持つだろうということを考えたわけですよ。要するに需給調整に非常に役立つ、一時的に電力用炭販売株式会社が貯炭機能を果たすことになるだろう、こういう期待を持ったわけですが、現実は貯炭機能というものは全然果たさなかったわけでしょう。
  62. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 貯炭機能は果たしておりません。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 精算株式会社でもあまり大差がないわけですよ。私は貯炭機能を持つと、かなり効果があるとも考えたわけです。現実はやはり事務処理だけに終わって、そしていま需給の調整をしたのだとおっしゃるけれども、需給の調整はむしろ合理化審議会やその他のところでおやりになって、会社側自体はただその帳簿の整理だけにとどまったのじゃないか、こういうように思うわけです。いま新政策を行なおうとするときですから、私はこの会社について過去のことをとやかく言いませんけれども、やはり貯炭機能というものが、電力用炭株式会社にするかあるいは将来何にするかは別にして、どうしても必要ではないかという感じを持つわけですね。ことに、日本のように海外からエネルギー資源を仰いでいるところは、どこか調整的な弾力的な供給機能を果たす場所が必要じゃないか、こういうように考えるわけですが、将来展望に基づいて、電力用炭販売株式会社に限らないで、全体的な今後の石炭政策を考えてどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  64. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 実は第五次政策のときにも、いわゆる昔の配炭公団的な考えから、政策面として貯炭機能を持たす機構をということをいろいろ御審議いただいたわけでございますけれども、当時は需要の点からいきまして、掘ったものをすべて国が引き受けるということがはたしてどうなのかといろいろ議論のあったところでございます。  しかし、いま先生御指摘のように、今後いわゆるエネルギーの多様化という点からいきまして、火力発電所の建設というようなことからいきますと、相当量の一般炭の需要というものが必要になってくると思います。おそらく国内炭の供給のみでは不可能という点になってまいりますと、当然いま先生のおっしゃったようなことも加味しまして、今回は電力用炭につきましては、ただ三カ年の延長ということでお願いいたしておりますけれども、今後の機能といたしましては、輸入炭あるいは海外開発というような点も合わせて、法の改正を考えなくちゃならぬのではなかろうかというふうに考えております。
  65. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電力用炭に関しまして申し上げますと、重油の値段がどうなるかわかりませんけれども、一応九ドルなら九ドルの原油と考えて、C重油——これは全く試算でけっこうです。C重油をどのぐらいに考えられ、そのときに見合う石炭の値段はどのくらい上がるものであるか、こういうような試算がありましたらお聞かせ願いたい。
  66. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 将来の重油の価格というのを現時点において想定するというのはいろいろむずかしい問題もございますけれども、本年の一月の価格は一万一千円ではなかったかと思っております。そのときの石炭の価格とカロリー当たりで両者を比較してみますと、たとえば一万一千円のときの油でございますと、カロリー当たりに直しましてたしか一円十何銭というような数字になるのじゃなかろうかと思います。そのときの一般炭のカロリー当たりの価格でございますけれども、北海道の電力用炭に一例をとってみますと、六十六銭前後ではなかったかと記憶しております。これに例の石炭関係の水分の問題あるいはハンドリング、貯炭場というようないろいろなデメリットの点を計算いたしまして、油との比較ということでいきますと、現在時点においても、石炭のほうが約三十銭くらい安いのではなかろうかというふうに私どもは考えております。今後一万一千円の油が幾らになるかは別としまして、現在でも電力用炭で比べますと、石炭に直しましても千数百円も安いという点からいきまして、今後の油の値上がりということが期待できるならば、相当の石炭の価格アップということはお願いしていいのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  67. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石油の値段については、私ども、どうも奥歯に物がはさまったような言い方しかなかなかできぬわけで、非常に的確性を欠くわけですけれども、大体これは試算として、ものの計算として、何もこれが政治的にそうきまるとかどうかということは別として、九ドルなら九ドルの原油を入れた場合に、従来の得率あるいは従来のような灯油とかガソリンとか軽油とか、あるいはA、B、C重油というような値段の配分をした場合に、それを政治的に考慮しなかった場合に、一体どのくらいの重油価格になって、そうしてカロリー当たりどのくらいになるのか、こういう計算がありましたらお知らせ願いたい。
  68. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 直接手元に計算資料という、そういうものはございませんけれども、新聞紙上で一応出ておりました点からいきますと、おそらく九ドル原油ということになった場合二万円前後——前のほうに近いと思いますけれども、一万七、八千円から二万円というくらいのところになるのではなかろうかと思います。カロリー当たりに直しまして一円九十銭前後というぐらいのところになるのじゃなかろうかというふうに推定しております。
  69. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、いまあなたのほうの情報で、海外の石炭というのはスポットものでどのくらいの一般炭の値段であるのかあるいはまた石炭はやはりエネルギーですから、原油が上がれば当然また上がっていくわけですけれども、現状状態で海外の長期的契約でどのくらいで入るものであるのか、こういう点の調べがありましたらお聞かせ願いたい。
  70. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 現在は一般炭の輸入というのは実施いたしておりませんので、はっきりした価格というのはつかんでおりませんけれども、聞くところによりますと、スポットものであるならばおそらく八千円から一万円ぐらいというような話も私は聞いております。  長期契約の点でございますけれども、これはある社の社長からお聞きしたわけでございますけれども、現時点でできるだけ早い機会に長期契約をやるならば、二十三ドル前後で一般炭の契約ができるのだというような話は聞いております。ただし、まだ実際的にそれを契約されたとかそういうことは全然ございませんし、なお、うちとしましても、一般炭の長期契約というものに対しましては、将来のエネルギー政策というものが確立化してからやっていただきたいということで、会社のほうはとめておるような次第でございます。しかし会社としましては、直ちにやらなくちゃこれはなかなか、値段も上がっていくので、早いところやりたいのですというような要望はございましたけれども、そのときの話では、ただいま申し上げましたように、二十三ドルならばいま長期契約はできるという話は聞いております。
  71. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭部のほうで、セメントそれから電力業界の国内石炭に対する需要あるいは一般炭の全体の、すなわち海外を含めてですが、需要の要望がどういうようにあるのか、これをあなたのほうでキャッチされておる点がありましたらお聞かせ願いたい。
  72. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 まだ四十九年度のはっきりした見通しというのは、需要業界にいまヒヤリング中でございますし、各供給のほうもあわせまして調べている最中でございますので、四十九年度のはっきりした見通しは手元にございませんけれども、一応四十八年度の需要見通し、これは上期も過ぎましたし、大体これぐらいに落ちつくのではなかろうかという数字も押えておりますし、そういう点から四十九年度を推定いたしますと、セメント、窯業関係につきましては、四十八年度の当初は二十万トンということで計画していたのでございますけれども、途上におきまして利用がふえ需要がふえ、二十二万四千トンという数字に落ちつくだろうというようなことでございます。そうしますと、四十九年度につきましては、なおセメント業界のほうの要望その他をいま聞いておる最中でございますけれども、大体四十四万トンぐらいは需要として成り立つのではなかろうかというように考えております。  なお紙パルプ関係につきましても、四十八年度当初十万トンという数字で需給計画を立てていたのでございますけれども、四十八年度の見通しとしましては四万八千トンふえた十四万八千トンということでございます。なおまたこれらにつきましても、製紙会社のほうの要望をいま聞いておる最中でございますけれども、大体二十六万トンぐらいまで伸びるのではなかろうかということでございます。  全部で、一般需要につきまして申し上げますと、当初、運輸以下山元消費まで、暖房炭その他を入れてでございますけれども、三百二十八万トンという一般需要に対しまして、三百四十一万トンという数字に今年度落ちつくのじゃなかろうかと思うのでございます。これに対しまして来年度は三百六十万から七十万ぐらいの需要が一般部門について発生してくるのじゃなかろうかというふうに推定しております。  電気関係でございますけれども、電気関係は、当初九電力に四百七十一万トンという数字を計画いたしておりまして、修正として、見通しでは四百五十八万トンでございます。これは減ということでございますけれども、これはむしろ供給のほうが不足ということでの減でございまして、供給さえあれば当初の予定を引き取っていただけるものでございます。なお電発につきましても、同じように、当初二百八十万トンでございましたのが、二百六十九万トン、供給の面からの減でございます。その他の発電もございまして、四十八年度の当初見込みとしましては八百四十四万トンというものを予定していたわけでございますけれども、二十万トン減で八百二十四万トンが四十八年度に供給できる数字ではなかろうかというふうに考えております。共同火力は、これはその他と申し上げましたところへ入っておりまして、九十三万トンが九十七万トンにふえております。  四十九年度につきましては、これはただいま公益を通じまして各電力会社に当たっていただいている最中でございますけれども、本年度の見通しの四百五十八万トンというものに対しまして、おそらく五十万トン近い増ということで引き取っていただけるのじゃなかろうかというふうに考えます。ただし、ここに問題ございまして、これはいま申し上げましたのは九電力でございますが、まあ、電発のほうは大体横ばい、その他の発電のほうも横ばいということでございますけれども、四十九年度の供給のほうを片一方見てみますと、おそらく四十八年度の当初の生産が二千三百五十万トンということを想定いたしまして需給計画を立てたわけでございますけれども、生産の落ちつきとしましては、おそらく二千百五十万トンを少し割るぐらいの数字じゃなかろうかというふうに思われます。なお、来年度生産見通しでございますけれども、一応二千二百万トンはぜひ出炭していただきたいというふうに考えております。  なお、四十八年度の当初の貯炭が四百二十三万トンございましたのが、おそらく四十八年度末の落ちつきとしましては二百六十万トンを割る貯炭量というふうになってくるのではなかろうか。そういう点なんかを考えますと、来年度の供給のほうが相当苦しいという点が出てくるのではなかろうかというふうに考えております。  先ほども申し上げましたように、まだ国内の供給面及び需要面のはっきりした数字をつかんでおりませんので、需給計画というふうの数字はつくっておりませんけれども、ただいまの時点における見通しを申し上げたような次第でございます。  なお、需給計画につきましては、当然価格というものも入ってまいります。まだ価格も全然想定していない、一応四十八年度から推定し、なおいま開ける範囲の企業からのヒヤリングに基づく推定の数字でございますので、その点お含みおきいただきたいと思います。
  73. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 不確定要因があまりにも多いものですから、質問もしにくいわけです。  次に私は、石炭鉱業経理規制臨時措置法について質問いたしたいと思います。この適用を受けている炭鉱は幾つですか。
  74. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 四十八年度は十二、三炭鉱あったのでございますけれども、不幸にしまして閉山、あるいはこれと類似いたしております再建整備法というほうと、両方の法律によりまして経・理規制をかけているような状態でございます。それで、経理規制法だけにかかります四十九年度炭鉱数は三炭鉱でございます。
  75. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三炭鉱を、ちょっと炭鉱名がわかりましたらお知らせいただきたい。
  76. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 万字炭鉱、三美炭鉱、芦別鉱業でございます。これは露天掘りでございまして、年間十五万トン以上の生産をしている山でございます。
  77. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはり石炭鉱業再建整備臨時措置法ができましてから、かなり経理規制法の適用から再建整備法の適用に移った炭鉱が多いわけですが、そこで私は、この再建整備法によって第一次肩がわり、第二次肩がわり、第三次肩がわり、こういうように、いわば三回肩がわり政策が行なわれたわけですが、その第一次の肩がわり分がいつ償還が終わるか。これはまあ市中銀行の場合と公の金融機関の場合は違いますね。それから第二次がいつ終わり、第三次がいつ終わるのか。そうして、その間で特別閉山をした炭鉱とかあるいは破産をした炭鉱等によって一応いわば債務といいますか、炭鉱が持っておりました債務をいわば半分しか返済できなかったような炭鉱、こういういろいろなケースがあると思いますが、その概略をお聞かせ願いたいと思います。
  78. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 先生御存じのとおり、第一次の肩がわりでございますけれども、これは昭和五十一年度に終了する予定でございます。当初一千億の肩がわりということで、これは金利まで入れますと千四百一億五千九百万円という金額になります。これは金利込みでございます。それから二次肩がわりは、五十三年に終了ということで八百五十億の肩がわりをやったわけでございます。これは金利を含みまして千四十八億七千万でございます。それから三次肩がわりが昨年度から始めまして、これが六百四十四億七千五百万で、金利を入れまして六百八十五億一千六百万になっております。トータルいたしますと、一、二、三次の肩がわりの元本が二千四百九十四億七千五百万という金額になりまして、金利まで入れますと三千百三十五億四千五百万ということになります。  これに対しまして、いままでに支払った金額でございますけれども、一次の分につきましては、元利両方入れまして七百三十五億八千四百万という金額がもうすでに支払い済みでございます。それから二次の分につきましては、金利含みで二百九十三億四千六百万の支払い済みでございます。それから第三次は四十八年度からでございますけれども、元利入れまして二十億二千四百万円を支払い済みでございます。合計で申し上げますと、元本では六百七十二億八千八百万円でございまして、金利を入れまして千四十九億五千四百万円という金額を払っております。  なお、先ほど五十一年と申しましたのは、これは訂正させていただきます。一次につきましては、市中銀行が五十四年でございます。それから財政関係が五十二年でございます。それから二次につきましては五十九年でございます。市中につきましては短縮いたしまして五十三年でございます。それから三次につきましては昭和六十三年度を目途にしております。  なお、いま申し上げましたような既交付額がございますけれども、これに対しまして、すでに閉山した鉱山の支払い額がこの中に一部含まっております。それは九十八億三千四百万円はすでに閉山した会社の支払い額でございます。そういう点からいきまして、未交付額といたしましては、全部で今後千六百七十七億八千四百万円を支払うということになろうかと思います。  なお、特閉の問題を先生おっしゃったんじゃなかろうかと思いますけれども、特閉——特別閉山の債務処理でございますけれども、御存じのように四十四年から発生いたしました特別閉山方式による閉山炭鉱は八炭鉱ございまして、賃金債務、鉱害債務、一般債務、特定金融債務、これにつきましては、ほとんど支払い済みでございます。ただし、いわゆる一般金融債務と銀行関係の債務につきましては、これは御存じのように資産処分あるいは担保の追求、そういうものが全部済みましてから最後に二分の一を金融機関に支払うという制度になっておりまして、現在そういう制度でやっておりますのは、四十八年度からでございますけれども、北星炭鉱の一炭鉱だけでございまして、残りの炭鉱につきましてはまだ資産の処分、担保の追求をやっておるというのが現状でございます。
  79. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体概略わかりました。  そこで、従来石炭鉱業経理規制法で、この利益処分なんという場合に配当等についてチェックをした、制限をしたような場合があるわけですか。従来大体配当は何ぼというようにきめてあるわけですか。これはどうですか。
  80. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 特に配当を幾らということで基準はつくっておりませんけれども、利益金の処分の認可を受けた会社でございますけれども、昭和四十六年度には四社、四十七年度に五社、四十八年度に四社ございます。これは石炭鉱業経理規制臨時措置法のほうの利益処分の認可でございます。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置に関する法律、これをお聞かせ願いたいと思いますが、これはこの法律ができましてから今日まで、これに基づいて融資をした額、これを県別にひとつお知らせ願いたい。
  82. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 お答え申し上げます。  この法律ができました三十八年の八月以降、昭和四十七年度末までの数字でございますが、合計で八百四十一件、約二十一億四千万円の付保実績がございます。それでこれを道県別に申し上げますと、北海道につきましては十一億三千四百万円、それから福島県につきましては八百万円、茨城県は五千六百万円、山口県は三千七百万円、福岡県は六億五千八百万円、佐賀県は九千万円、長崎県は一億五千八百万円、それで計二十一億四千万円、こういうことになっております。
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最近、すなわち四十六年、四十七年、四十八年、ここ三年ぐらいにこの法律を適用して融資をした中小企業はありますか。あったらその金額をトータルでけっこうですからお答えいただきたい。
  84. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 お答え申し上げます。  四十六年におきましては、件数で五十一件、金額で二億二千八百万円、四十七年度におきましては百二十三件で五億八千四百万円、それから四十八年度はまだ九月末までの数字しかございませんが、十七件で一億二千四百万円でございます。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 返済をしなくて信用保証協会等が迷惑をこうむって、いわゆる中小企業信用保険から補てんをした例がどのくらいあるかお答えいただきたい。
  86. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 お答え申し上げます。  保険金の支払いベースで申し上げますと、昭和四十六年度は件数は五件で二千三百万円、それから四十七年度は三件で四百万円、こういうことになっております。
  87. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは一般例から考えて支払い不能になったのは少ないのですか。経験上一般の中小企業の場合に比べて大体どうなんでしょう。
  88. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 お答え申し上げます。  概して申しまして、産炭地域の特例分は一般よりかなり支払い率が高い、こういうことになっております。ときには約十倍近くの事故率になっている例もございます。
  89. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 返済率がいいというのはどういうことでしょうかね。貸すほうで、貸し付けるほうで厳選するのですか。
  90. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 返済率じゃありません。事故率でございます。事故率が高いわけでございます。結果的には公庫からの保険金の支払いがたくさん出ておるということでございます。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わかりました。事故率が高いというので、おそらくそうではないかと思って聞いたわけです。  それで、補てん率を高くしたわけでしょう。これは、この前産炭地における中小企業の信用保険に関する特別措置法を出して、後に中小企業保険法そのものが改正になりましたね、率が。それであまり大差がなくなったんじゃないですかね。もうわずかしか差がなくなった。ですから、産炭地の場合の特例というのが比較的価値が少なくなったように思うのですけれども、一般に比べて。従来はかなりこの法律の価値があったわけですが、残念ながら料率の改正が一般のほうでございましたので、それだけこの法案の特例の価値が少なくなったと思うのですが、その点についてより改正をされる気持ちはないか。より改正といいますのは、いま延長になろうとする法案をさらに改正の必要はないか、こういうように思うのですが、どうでしょう。
  92. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 このメリットでございますが、結論的に申し上げますと、依然としてメリットはあるというふうに考えるわけでございます。その理由は、一つは、保険料率は一般料率の三分の二程度になっております。すなわち三分の一ぐらい安いということでございます。もう一つは、てん補率でございますが、普通七〇%がてん補率となっておりますが、この特例につきましては八〇%になっております。したがいまして、そういう点からも有利であるということでございます。それからもう一つは、一般の保険ワク、これにはそれぞれ普通無担保、特別小口と付保限度額のワクがございますが、この特例措置を受ける場合には、それと同額のものが別ワクとして保証を受けられることになりますので、そういう点でもメリットがあるということでございます。  それから第二点の、今後さらに改正する必要があるかというお話でございますが、一つは保険料率につきましては、これは全般的に保険料率の——四十八年度も約八%の引き下げをやりましたが、四十九年度におきましても同程度の保険料率の引き下げを検討しておりまして、この特例措置についても同様のことをいま検討しております。  それから、てん補率の八〇%につきましては、大体保険公庫のてん補率は原則として七〇%ということでございますが、こういう危険率の多いものにつきましては特に八〇%を補てんするということで、八〇%ということ自体が特例措置になっておるわけでございまして、これは単に産炭地のみならず、災害とかあるいは倒産関連ですとかその他の特例措置との横並びの問題もございますので、一応八〇%で今後ともいきたい、こう思っております。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は中小企業信用保険公庫法の改正の際に、てん補率が変わったわけですね。むしろ産炭地のほうに近づけたわけだ。それで差がなくなったということを私は言っておったわけですよ。全体的なレベルアップをこの法案がいわば導火線になってやれることはけっこうですから、それ以上申し上げませんが、実は差がその点においてはなくなったじゃないかということを指摘したかったわけであります。  そこで、この産炭地振興に関連して、実は最近産炭地における大型団地が計画をされておるわけですけれども、この大型団地における土地造成の請負の問題です。これはやはり地元の業者にぜひひとつ請け負わしてもらいたいという声が非常に強いですね。大型団地になればなるほど大手企業が出てきて、そうして大手企業がほとんどとってしまう。それで、わずかその下請あるいは孫請をせざるを得ない状態になる、こういうことを言っておるわけです。ですから、直接ひとつ請け負わしてもらいたいという要望が非常に強い。  私は実は、産炭地域振興法を最初つくりますときに各国の事例をいろいろ見ました。すなわち、英国における工場配置法、後の地方雇用法ですね、それからアメリカ等の慢性不況地域再開発法案、こういうような法律いろいろ調べてみたのですけれども、その際に、ことにアメリカにおいて多いわけですけれども、そういう疲弊した地域における企業に対して官公需の需品の発注をする場合に、コストが同じであれば優先的にその疲弊した地域の企業に注文をする、こういうような制度がかなり確立しておる。一般的にいえば、例の官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律という形ですね。これはアメリカの防衛庁やその他のいろいろな規則の中に書いてある。それと一方同じような考え方が、その疲弊地域、いわば再開発地域の企業に優先的に発注さすという考え方があり、それが実施をされておるわけです。そこで、土木事業のようなその地域の業者がやることが比較的適切な場合、これは優先的に方針としてあるいは内規としておやりになってもおかしくないのじゃないか。むしろそれは、公入札をする場合に若干手心を加えるというような程度ではなくて、ひとつものの考え方、制度として確立をしたらどうか、こういうように考えるわけですが、これをひとつ部長なりあるいは産炭地域振興課長から御答弁を願いたい。
  94. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 団地造成の大型化につきまして、当然政府機関としましては公平な入札ということによらざるを得ぬと思います。しかし、いま先生の御指摘の点等考慮いたしますと、むしろ大型化の団地を幾つかに小さく切って入札するというのも一つの手じゃなかろうかと思います。まず、地元のそういう方々を指定業者に入れるということは問題ないと思いますので、まずそういう点は指導し、指定業者になった場合、大型団地を幾つかにこま切りにし、なお入札しやすいような状態で持っていくことが、むしろいま先生の御指摘の地元工事者の工事への参加という道が開けるのじゃなかろうかというふうに考えます。  しかし、いろいろ問題はあろうと思いますので、いま御指摘の点は、十分地域経済の振興とかあるいは雇用の拡大という観点からも、産炭地公団のほうに積極的に働きかけまして、御指摘の点をできるだけ取り入れることができるように指導したいというように考えております。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府の企業のあるいは発注の場合、これは公入札を原則とするわけです。しかし、私は政策をそこに入れてもいいのじゃないかという感じがするわけですよ。というのは、産炭地振興そのものが一つの政策ですから、ですからある程度の政策を入れてもいいのじゃないか。それが国が著しく負担になるというような場合は別としても、何らか内規としてあるいは方針として、ある程度そういうものを加味するんだ、それは一つの政策を入れるんだ、産炭地振興という政策を入れるんだということを当然導入してもいいのではないか、こういうように思います。そこで、この問題につきましては、ひとつ積極的に御努力を願いたい。  以上で質問を終わります。
  96. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  97. 多田光雄

    ○多田委員 きょうは大臣がおりませんので、事務当局に少し需給関係の問題を中心に伺いたいと思います。  その前に、保安の事故が最近北炭系で相次いでおりますので、ちょっと最近の事故の状況、特に清水沢とそれから北炭新鉱、万字について簡単にひとつ事故の状況を知らせてください。
  98. 原木雄介

    ○原木説明員 お尋ねの件についてお答え申し上げます。  昨年は石炭鉱山における死亡者数が六十三名、石炭鉱山始まって以来の一番少ない年でございます。この成績が続くかと思いましたが、ことしに入りましてから一月において三名、それから二月におきまして五名、それから三月において二名という死亡者を出すに至っておるわけでございます。そのうち九州で起きた二件、二名の方がなくなっておられますが、それを除きますと、いずれも北海道炭硬汽船株式会社もしくはその系列会社ということになっております。  具体的に申し上げますと、最近から発生いたしました順番に逆へ戻ってお答え申し上げますと、三月九日に起きました清水沢炭鉱の事故でございますが、これは第三ベルト斜坑というところで、坑道が相当いたんでおりましたので、これを修復する作業中におきまして、これを行なっておりましたのが請負の組夫でございますが、四人のうち二人がなくなりました。この事故の状況その他については、いま操業をとめて検討中でございまして、どういった作業手順あるいは違反があったかということについてはまだ明らかになっておりません。  それから、北海道関係でございますと、二月の二十四日に夕張新炭鉱でやはり落盤事故が発生いたしてございます。これも同じく夕張新炭鉱の斜坑の途中で、相当悪くなっておるところを改修中に落盤で一人なくなっております。その前に、二月二十一日にやはり同じく夕張新炭鉱で運搬事故が一件発生いたしました。  それから、二月の九日に空知炭鉱の落盤、それから、さかのぼりまして二月の一日に万字炭鉱で運搬事故でございますが、この万字炭鉱の運搬事故は、御存じかと思いますが、死亡二名、重傷十八名、軽傷二名という災害になっておりまして、これはちょうど一番方の昇降時に人車を巻いております最中に脱線いたしまして、その人車が鋼ワクをひっかけましたまま巻き上がりましたものですから、全部で七両つないでおりました最初の四両程度が相当破損いたしました。したがいまして、乗っておりました方がだいぶ罹災されたわけでございます。で、死亡二名、それから重傷十八名、軽傷二名ということでございますが、原因といたしましては、非常に遺憾でございますが、運転をいたしておりました鉱員が、保安規則上定められました資格を持っておりません。それで、もちろん見習い運転中でございますので、ほかの係員が付き添っておりましたかと申しますと、いまの段階の調査では付き添っていなかったという点が明らかになっております。  それから、脱線いたしました原因といたしましては、見習い運転中のために巻き方が非常に悪いということが一つございます。ほかに軌道が悪かった、坑道の幅が狭かった等、会社側の管理責任が非常に問われるような現象がいま見つかっておりまして、これについては、いま検察庁とも連絡をとりながら司法捜査を進め、今後の処分を決定するという段階になっております。  そのほかに、一月におきましては空知炭鉱で二件二名、真谷地炭鉱で一件一名といったような災害が起きております。  これらの事故に対しまして、私どもといたしまして、こういった北海道の事故が全部北炭もしくはその系列会社で占められるという現象にかんがみまして、私ども万字炭鉱のときにも社長以下に警告をいたしてございますが、相当きびしい処置を考えるということで、いま具体的な処置については局内において検討中ということでございますので、一応これだけ御報告申し上げておきます。
  99. 多田光雄

    ○多田委員 万字のほうの主要の責任は会社側にあった、そして、いま、免許を持っていない巻き上げの係の人がやっておったということ、これは早くから、事故の当日から私は行って、あなたにも話していたことなんだけれども、やはりこういう明確な会社責任というものは、ごまかすことなくはっきりさせる必要がある。  それからいま一つ、罹災者の数、当初の発表では重傷者が七名であったのがいつの間にか十八名ということになっているのですよ。もちろん事故直後には重傷であった者が軽傷と誤診したり、あるいは軽傷を重傷と誤診したりすることもあるだろうと思うが、あまりにもこれは食い違いが大きいのです。これも私は現場で何度も確認したのですけれども、たいしたことありませんでした、こういうことなんですよ。ですから、こういう食い違いが何で起きたのかということをひとつ、いま答弁はよろしいですから、十分調べてあとで報告していただきたい、こう思います。  それからいま一つ、北炭夕張の清水沢炭鉱の三月の九日の災害なんだけれども、これは私の聞いているところでは、二月に北炭全体の保安の総点検をやりましたね。これは事故が出ているということで監督署のほうでやったようですね。やったのはいいことなんだけれども、さらに三月四日に、今回の事故現場でいま報告のあったように崩落があった。そこでこの事故があって、そしてこの事故のあとに夕張の監督署がまた点検に入った。そして会社の坑道維持についての計画書、これは当局にも報告されているものだそうですが、これがそのとおり実施されていなかった。そこで監督署のほうでは生産を中止してもやれ、こういうふうに指導しているのですね。これは私どもの市会議員が監督署に行って確認したことなんです。そういう直後にこの事故が起きておるのですよ。  そこで問題点としては、一つは総点検の直後であるということ、監督署から、生産を中止してもやれと言われていた、その直後に事故が起きておるということ、それからこの事故が起きた現場というのは第三ベルト仕繰現場で非常に大事な現場なんですね。従来、聞きますと、この現場では、こういう大事な現場で事故が起きたあとの復旧作業については直轄労働者がやっておった。ところが組夫がやっている。こういう点がどうしてこうなっていくのか、これをひとつ十分調べてもらいたいというふうに思うのですよ。この組夫を何でここで使ったのか。それから、なぜこういう総点検直後あるいはそのあとの事故直後指導しておりながら事故が起きたのか。北炭の場合は相当問題があるように思うのですね。その辺どんなふうに考えていますか。
  100. 原木雄介

    ○原木説明員 清水沢炭鉱の事故につきましては、いま御指摘がございましたが、三月四日に一ぺん崩落いたしておりまして、そのときに何日か、二日間作業を停止して仮修理をいたしました。その後、その仮修理というのは、坑道が小さいものですから大加背にするということをやっておるわけでありますがその段階で、私どもも作業自体がまだ具体的にどういった——大体見当はつきますけれども、はっきりした作業状態をつかんでおりませんので、いま調査をいたしておりまして、まだ報告をもらっておりませんが、御指摘のように生産を中止してもやれと言ったにもかかわらず——そういった事実があるかどうかということについてもう一度確認させていただきますけれども、作業の形態自体といたしましては非常に危険なかっこうでの作業をやっておったということがわかるかと思います。  それから、従前から組夫を使っておったかどうかということでございますけれども、当時は組夫でございましたが、従前どういった形態であったかというのは、私そこまでまだ報告をもらっておりませんので、それについても調べて何らかの方法で御連絡したいと思っております。こういった幹線坑道の災害でございますので、たいへんな作業でございます。そういったところで、非常に慎重にやるべき場所で、こういったかっこうで災害ということになってしまったことを私どもとしても非常に重く見ておりますので、もう少し時間をかしていただきまして、調査後いろいろな指導方法に欠陥があったかいなかということを含めて検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
  101. 多田光雄

    ○多田委員 北炭は、昔から事故が各社の中で一番多いところなんですよ。おまけに北炭は新鉱もつくっている。平和鉱についていえば、ことしじゅうに閉山して新鉱のほうに持っていくと、こういうふうになってきますと、いろいろ保安上の手抜かりだとかその他が出てくる。そしてまた人員の配置だとか、あるいは出炭を維持するというような問題で相当無理がかかっているというふうに私どもは見ているのですよ。ですから北炭に対しては十分指導を強化してもらいたい。  そこで、私どもで要求したいのですが、総点検で指摘された各山元ごとの保安の問題点、これを資料としてひとつ出していただきたいということです。  それから平和鉱、これがまた心配なんです。事故が起きなければいいと思うけれども、平和鉱に対してはこれまた特段の注意を払ってもらいたい。保安の問題について言いますと、物理的な原因を今度はっきりさせるということは基礎条件だと思うのです。同時に政治的な責任をはっきりさせる。いつも保安は会社に責任があると言いながら、政府側の答弁を見ていますと、どっちつかずで、原因を究明します、究明しますと言っては、何かいつも事故の原因がはっきりしないままに過ごされてきている。こういうことをひとつ改めてもらって、いま言った資料はきちんと提出してもらいたい。そしてこの次までには原因がわかるように明確にして報告をしてもらいたいと思います。
  102. 田代文久

    田代委員長 ちょっと私からも聞きたいのですけれども、石炭増産しなければならないし、また、見直さなければならないというときに、依然としてこういう炭鉱労働者の生命が奪われているということはもってのほかだと思うのですね。いまの御答弁にありましたけれども、いままでの段階で、政府としてはこういう問題についてどういう責任を大体感じておられるか、一応答弁していただきたいと思うのです。
  103. 原木雄介

    ○原木説明員 いま委員長から御指摘がございましたが、ことしに入りましてもうすでに十件、十二名という死亡災害がございました。私どもも再三にわたっていろいろ会社側に注意し、あるいは監督官についてのいろいろな指導を行なっておりますが、結果として出てまいりましたのがこういった災害ということで、私どものほうにも指導面において何らかの欠陥があったかということを考えております。私どももいま、大臣の御指示もございまして、総点検を実施中でございますが、その面におきましては、特に気になりますのが、物理的な面もさることながら、会社側の管理面と申しますか、今度起きております万字炭鉱のような災害は特に別といたしまして、一般的に起きております災害が、瀕発災害と申しますか、作業手順の違い、あるいはそういった常時の作業における手抜かりと申しますか、そういったような管理面の不安定さというものがあるのではないかというように考えておりますので、こういった面の教育をどういうような方向へもっていくかということに関連して私ども考えている次第でありますし、私どもとしても、今後の指導面における欠陥といいますか、そういったものの足りなさというものを痛感しておりますので、この辺もう少し補ってまいりたい、このように思っております。
  104. 田代文久

    田代委員長 これはもう少しきびしくやっていただがないとかなわぬですよ。これはひとつ頼みますよ。
  105. 多田光雄

    ○多田委員 これもあとで大臣に聞いたほうがいいのかと思いますけれども、いま政府のほうで石炭のこれからの計画についてはエネルギー調査会に諮問最中であるということをよく言われているわけなんだけれども、きょうで二回参考人先生方に来ていただいて話を聞いたわけです。政府側もよく聞いておられるとおりだと思うのだが、やはり参考人方々の御意見を聞いてみますと、日本石炭エネルギーは、量についてはいろいろ意見もあるけれども、やはり比較的安定した資源であるというふうに思うのです。それからまた、公害だとかあるいはその他の問題についても、三池の参考人が来て、かなりりっぱな成果をあげている、しかもコストもそれほど多くかかっていない、こういう発言もありました。さらにまた石炭研究についていえば、政府さえ長期計画を立ててくれれば情熱をもってやれる、こういう発言もあったのです。きょうもまたお二人の先生方が、石炭は見直していかなくちゃならない、あるいは石炭は商品でない。商品でないということばは別問題にして、それほど大事にしていかなくちゃならない、こういう発言もしておられたわけです。問題は、これにどう政府がこたえていくのか、われわれがどうこたえていくのかということがいま大事な問題だ、こう思うのです。エネルギー調査会に政府がいま諮問しているわけだけれども、事務当局を担当する皆さん方石炭の短期あるいは中期、長期の計画を立てるにあたってどういう基本的な立場答申を求めておるのか。これは繰り返し申し上げますけれども、事務当局にお聞きするのはちょっと不向きかと思うけれども、そこで一番苦労されている皆さん方のまず率直な意見をひとつ聞かせてもらいたいと思う。基本的な立場ですよ。
  106. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 総合エネルギー調査会のほうにいま諮問しておりますのは先生御存じのとおりでございまして、実は二月十九日にエネルギー調査会のほうに、将来のエネルギーのあり方ということで諮問しておるわけでございます。大きくはエネルギーの供給をめぐる内外情勢の変化ということで、国内問題と国際問題と両方に分け、なお、各エネルギーの位置づけというものにつきましては、昭和五十五年度と六十年度における一次エネルギーの供給というものについての位置づけでございます。  なお、各エネルギーの位置づけのほか、これは当然それぞれの分野におけるいろいろな問題点がございますので、水力においては水力の開発の可能性と再評価、あるいは地熱についても同じようでございます。あるいは石油、天然ガス、原子力、太陽エネルギー。石炭をとって申し上げますと、石炭の評価ということで、これは国内炭と輸入炭、それから一般炭、原料炭というふうに分けまして、将来五十五年、六十年度をどういうふうに位置づけするか。それからなお、石炭火力というものにつきまして、今後エネルギーの多様化という点から見ましてどういうような位置づけをやるか。なお、技術関係といたしましては石炭のガス化、液化、なおこれらを全うするための石炭対策の方向というようなことで、一応一年以内に結論を得ることをめどとして作業を進めますけれども、必要な事項につきましては、六月をめどに中間報告を出してもらうというのがエネルギー調査会のほうの予定でございます。  これに基づきまして、うちのほうの石炭関係といたしましては当然パラに作業をやっていかなければならぬ問題がございます。ここに位置づけされる石炭の五十五年度あるいは六十年度における国内においての供給可能量というものは、当然やらなくてはなりません。供給可能量と、片一方五十五年あるいは六十年における石炭火力における需要量というものの結びつき、そういう点を、総合エネルギー調査会の下部機構といたしまして、石油であれば石油部会、あるいは原子力であれば原子力部会、あるいは石炭鉱業審議会におきましては総合部会において、こういう点をパラに作業しながら、こちらのほうの総合エネルギー調査会のほうと連絡をとりつつそういう作業をやっていくつもりでございます。そうしまして、六月に中間報告を得ましたら、その時点におきまして、それを受ける石炭鉱業の将来の進むべき方向ということで諮問をいたす考えでございます。それにつきましては先生方にもいままでに何回か御説明しておると思いますけれども、いわゆる消滅鉱区の管理をどうするか、あるいは輸入一般炭についての歯どめ策をどうするか、それぞれいろいろの問題が発生してくると思います。こういうものは新政策としまして、六月に中間報告をいただき、諮問をした上ではっきりした将来の、五十五年あるいは六十年度における石炭位置づけをしたいというのが事務当局の考えでございます。
  107. 多田光雄

    ○多田委員 先ほどの参考人意見もありましたけれども、政府のいままでの何次かの計画がみんな二年、三年でくずれてしまっておるという苦い経験があるわけですよ。そしてその陰には非常に多くの人々が泣いているわけだ。だから政府の石炭政策はもう信用しない、こういう発言もありましたけれども、私はこれは偽らざる国民の声だろうと思うのです。そういう意味で、これから石炭政策を立てる上で、いままでの石炭政策あるいはエネルギー政策の反省の上に立ってこれは立てなくてはならないのだけれども、これもひとつ伺っておきたいのだけれども、どういう点で反省しておりますか。反省することがないのか、あるのか、あるいはあるとすればどういう点で反省しているのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  108. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 一次から五次対策までいろいろ対策を立ててきたわけでございますけれども、不幸にして石炭鉱業のほうは縮小の一途をたどったというのは、これは実態でございます。しかし基本になりましたのは、けさほどもお話がございましたけれども、当時安いエネルギーと申しますか、石油を基礎にした将来へのエネルギー需要ということですべてを見てきたことが、一つ石炭鉱業を縮小せざるを得なかったというのが実態であろうと思います。しかし、石炭政策といたしましては、その当時当時においては縮小のほうに向かいながらも、労働対策にせよあるいは閉山対策にせよ、いろいろな対策をとりつつ二千万トンの方向へ持ってきたというのが実態でございます。ただし今後は、昨年度のいわゆる石油危機というものを契機にいたしまして、エネルギーの見方というのがひとつ変わってきたと思います。これは当然石油だけにたよるわけにいかぬというようなことで、先ほど申し上げましたようなエネルギー調査会の仕事も発足したようなことでございますので、今後石炭を見直す場合、ただ単に価格という点だけにとらわれる必要もないのではなかろうかというふうに考えます。  なお、再開発という問題につきましては、これはいろいろむずかしい点があろうと思います。鉱害問題もございますし保安の問題もございます。そういう点を加味し、十分配慮し、なおある程度の経済的な競争力というものは必要であろうとも思います。その辺を幾らの幅をとるかというのは、今後審議会なり何なりにいろいろ御相談しつつ、将来への石炭位置づけというものを、はっきりした形で政策も立てていただき、位置づけもしたいというふうに事務当局としては考えております。
  109. 多田光雄

    ○多田委員 それでは次に伺いますけれども、四十八年度の需要計画が、前に報告があった二千四百五十万トン、それから生産計画が二千三百五十万トン、それから実績は先ほど部長が言っていた二千百五十万トン、二百万トン不足ということになって、これは貯炭のはき出しその他で補ってきたということなんだが、そこで伺いたいのは、五十一年までに二百五十万トンか、これを掘るということで、これの中身として、いつか委員会でも報告があった露天百三十万トンですか、それから現有炭鉱で九十万トン、それからあとで聞いたのだが、なお三十万トン新鉱その他である、こういうことなんだけれども、現有炭鉱の九十万トン、これは一体可能ですか。可能だとすれば、どういう山でこれを掘るのか、現在の炭鉱で。それをひとつ言ってください。
  110. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 前の石特のときにもお答えしたと思いますけれども、現有炭鉱の九十万トンの増、それに新鉱三十、露天掘り百三十、計二百五十ということで二千二百五十ということを説明したと思います。ただしこれは、五十一年度の時点を見たときの増産ということでの余力は十分あるというふうにこの前も申し上げたと思いますけれども、では、はたして鉱山側が五十一年度時点だけでそれだけ掘るかということは、これは長期展望に立たなくては鉱山としてはおそらく出さぬだろうと思います。五十五年なり六十年なりというものの石炭位置づけができるならば、必ずやいま申し上げたような二百五十万トンという生産の増というものについては間違いなく確保できるというふうに自信を持っております。  なお、その山々につきましては、この前も申し上げましたけれども、太平洋炭砿あるいは赤平の累層採炭についての、いま選別採炭と申しますか、層をえり分けて掘っておりますので、これは一般炭の需要がついてきた、あるいは五十五年、六十年の目標がはっきりいたしますと、これは一緒に掘る。骨格構造も十分できますし、そういう点で可能である。なお九州の三池における増産という点により、現有炭鉱での九十万トンの増ということは十分可能であろうと思います。  なお、本年度の実績は二千百五十万トン程度でございますけれども、来年度は現有鉱においても二千二百万トンへの増をぜひやっていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  111. 多田光雄

    ○多田委員 現有鉱の二千百五十万トン、これも数字で見ればいとも簡単のように見えるけれども、実際はその中身としては、さっき言ったようにたいへんな犠牲の上に成り立っている。しかも世界で一番高い生産能率なんです。さらにこの労働力は平均四十数歳、これはまた一歳ふえていくわけです。人もまた減耗していく、こういう中で二千二百万トンというのは私は簡単なものじゃないと思っております。簡単なものじゃないということは、数の上で掘ることがあったとしても、それがどれだけ労働者や地場の働いておる人たちに大きな負担をかけているか、このことをひとつ十分考えてみる必要があるだろう、こう思うのですね。  その意味で、いま五十一年までに二千二百五十万トン掘るということなんだけれども、これは、長期展望があればその中に位置づけて掘るという、一体そういう数字なのか、それとも見直しの第一歩として、二千二百五十万トン掘るからこれこれの手当てをしなければならないという数字なのか、一体これはどうなんですか、たいへん私は疑問に思う。
  112. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 昨年の十二月七日に総合部会から中間報告としていただいたわけでございますけれども、昨年のいわゆる石油危機という点から見まして、ぜひとも石炭で、掘れる炭ということで幾ら増産してもらえるかというのが一つの課題になったわけでございます。そのときは、五十一年度以降という問題ではなくして、いわゆる単年度的な、近い年度としての五十年度二千二百万トン、五十一年度二千二百五十万トンという数字を出したのでございまして、長期的な展望に立った数字ではございません。いわゆる五十一年度以降は——現在のところ合理化法でも規制されておりますのは五十一年度まででございまして、それ以降の法的な根拠はございませんので、気持ちとしましては当然五十一年度以降というものを内部的には持っていたとしましても、外面的に外に出しました目標としましては、五十一年度の二千二百五十しか出せなかったというのが実態でございます。
  113. 多田光雄

    ○多田委員 それではもう少し聞きましょう。昨年の暮れのいわゆる石油危機以後、鉄鋼、電力、セメント、ガスその他からどういうふうな需要の要求がありましたか。まず鉄鋼のほうからひとつ伺っておきたいと思います。
  114. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 昨年の石油危機以降の引き取り増という点につきましては、鉄鋼のほうにおきましては特に要望は来ておりません。電気関係につきましては、できるならば五十万トン本年度余分にくれないか、あるいは五十一年度につきましては、現在の利用率を向上しながら、百万トンの引き取り増というようなことで要望があったわけでございます。  なお、それぞれの業種における要望という点ではございませんけれども、実際の引き取り数量の実績見込みとしましては、先ほど多賀谷先生のときの御質問にもお答えしましたように、紙パルプにおいては四万八千トンの増に落ちつくのではなかろうか、あるいはセメント関係につきましては本年度二万四千トンの増に落ちつくのではなかろうかというようなことでございます。そういう点を見通しまして、四十九年度も、紙パルプにおいては本年度よりも約十一万二千トンでございますけれども、増という形、あるいはセメント関係におきましては二十万トンの引き取り増というのが期待されるのではなかろうかと考えております。
  115. 多田光雄

    ○多田委員 鉄鋼のほうから要求がないというのは、それはどうなんですか、炭分が違うということですか。
  116. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 原料炭でございますので、油との競合という点でございませんので、特に国内原料炭の引き取り増ということで要望があったわけではございません。
  117. 多田光雄

    ○多田委員 通産省の基礎産業局鉄鋼業務課の話を聞きますと、四十八年度で一億一千九百万トン、これは鉄の場合ですよ。それから四十九年度目標が一億二千万トン。そして原料炭はことしは国内、外炭含めて六千四百万トンから六千五百万トン、来年は七千万トンぐらい必要だろう、ごう言っているのですね。ですから鉄鋼のほうでも、これは直接皆さんのほうへ話があったかは別にして、原料炭の要求が強まっていっているということははっきりするんじゃないか、こう思うのですね。しかも私の試算によりますと、五十二年はもっと飛躍的に粗鋼の伸びが予想されるわけなんです。そうすると原料炭はさらに大きく輸入していかなければならない。あるいは国内炭で幾らかでもそれを食っていかなくちゃならない、こういうふうになるわけです。だから、鉄鋼のほうでも原料炭に対する要求が強くなってきている。鉄鋼がこういうように急速に伸びることの是非は別にして、要求が強まってきている。しかも一方では外炭は値段が上がってきている。こういう要求にいまぶつかっているわけなんです。問題は電力炭のほうなんだけれども、電力のほうの要求、来年五十万トン、五十一年に百万トン、この要求にこたえていくためにはどうしたらいいのか。つまりいま言ったように五十一年までに二千二百五十万トン、これは長期展望を持てば掘れるけれども、長期展望を持たないとなかなかむずかしい面もあるような話だったけれども、おそらくセメントも要求が強くなってくるでしょう、なぜなら、石油は上がってくるから。そういう需要に対して供給が十分こたえられなくなっていくという段階で、外国の一般炭を輸入する予定でいるのかどうなのか、これをひとつ伺いたいと思う。
  118. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 ただいまの原料炭の点につきましては、鉄鋼のほうからは、できるだけ四十九年度につきましても大量に引き取らしてもらいたいという話は聞いております。ただし原料炭の生産のうち、ガス用あるいはコークス用分にも向けなければならぬ量がございますので、まずその辺を充当いたしまして、残りを鉄鋼のほうに引き取っていただくというのがうちの姿勢でございます。  なお、一般炭の輸入問題でございますけれども、国内のほうの供給が増産を見てもどうしても不可能であるという場合は、国内の一般炭に圧迫を加えないという歯どめ政策のもとで入れざるを得ぬのじゃないかというふうに事務当局としては考えております。
  119. 多田光雄

    ○多田委員 そこで、鉄鋼のほうでちょっと聞きたいのだけれども、この間新聞を見ますと、ソ連からの原料炭の買い入れをふやすというようなことも出ていました。それからまたアメリカのほうで、原料炭について三社で五〇%方の値段を上げる、こういうことも出ていた。原料炭の国内生産について長期あるいは中期の展望をいま持たないと、やはり原料炭は入れざるを得ないけれども、外国の炭価に引き回されてしまう、こういうことになるわけですね。それからいま一つは、一般炭の問題にしても、たとえばきのうの新聞を見ると、電発でもって何か五百万キロワット、二百万二基、百万一基という膨大な発電計画を立てているようだけれども、こういうものも皆さんの計画の中に入っているのかどうか、ちょっと述べてください。
  120. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 きのう新聞に出ましたいわゆる電発における五百万キロワットの発電所というものでございますけれども、まだ具体的にはうちのほうで電発からの話も聞いておりませんし、正式に申し込みがあったわけでもございません。ただし先ほど申し上げますように、国内の一般炭を引き取ってもらうということが第一の前提でございまして、国内炭の供給で十分まかなえるならば別でございますけれども、五百万キロというのがかりにできたといたしますと、一般炭としてはおそらく八百万から九百万くらいの量が必要になってくると思います。現在の国内の一般炭の生産は二千二百万トンにしましても、約半分の一千百万トン、なお一般向けの需要その他を引きまして、電力向けには八百数十万トンしか回らぬ。しかもこれは現在ある発電所のほうで引き取ってもらうということになりまして、かりに五百万キロの発電所ができたとした場合は、とても現在の国内の生産量では不可能という数字になってまいります。そうした場合は当然海外からの一般炭の輸入というものが必要になってくると思います。その場合、先ほどからも申し上げますように、国内の一般炭に圧迫を加えぬような形での輸入ということは十分考えてやらなくてはならぬということは私ども十分承知いたしておりますので、今後、六月の中間報告をいただき、諮問しましたあと、どういう歯どめ策をどういう機関でやらすかということ等について十分な審議をしていただく予定にしておる次第でございます。  なお、原料炭につきましては、国内の原料炭はいま六千九百二十四円というのが四十八年上期の国産原料炭の価格でございまして、国産の原料炭は弱粘でございますので、弱粘という点から輸入の原料炭の弱粘に比較いたしますと、輸入原料炭の弱粘は五千二百四十八円ということになっておりまして、国内の平均が、これは弱粘でございますけれども、六千九百二十四円ということで、千六百七十六円国内のほうが高いというのが現状でございます。強粘は、これは国内に産しておりませんのでちょっと比較になりませんけれども、国内の弱粘と輸入原料炭の弱粘につきましては、いま申し上げたような価格の相違がございます。
  121. 多田光雄

    ○多田委員 ちょっと私の聞いたのとかみ合わないのだけれども……。  それからもう一つ伺うのだけれども、新たに火力発電をつくる構想がありますね。北海道で二基ぐらいつくるという計画もある。それから、いま皆さんのほうには石炭の話がないというけれども、電発がああいうのろしをあげる、しかも新聞を見るというと、もう大体政府の承認を得たような書き方をしているんだね。それからそのほかに新しく発電計画——これは公益事業部のほうですかね、ありますか、ちょっと言ってください、電発のものも含めて。
  122. 小野雅文

    ○小野説明員 いま先生御指摘のように、北海道における石炭火力については一応三十五万キロワットのものを専焼火力でつくりたいということで、四十九年度くらいから着工したいということで考えております。これは大体つくるということで決定でございます。場所等についてはまだ未定でございます。それから事業主体等についても、まだ未検討でございます。  それから、電発の話につきましては、新聞では政府の了承を得たように書いてございましたけれども、私どものほうでは、まだいまのところは聞いておりません。
  123. 多田光雄

    ○多田委員 いま、北海道で三十五万キロワット一基という話がありましたね。これは、そのほかに北電として十五万キロワットぐらいのをつくる予定という話も聞いているのですが、これはどうなんですか。
  124. 小野雅文

    ○小野説明員 いまの十五万というお話は、何か小さい発電所、十五万かあるいはそれをやや下回るような火力発電所を場合によっては内陸部につくるといったような話は、これは新聞等では聞いて見ておりますけれども、北電としてもまだ正式に決定したというふうには私ども聞いておりません。
  125. 多田光雄

    ○多田委員 私の聞いているのでは、その十五万キロワット、これを砂川につくる、三十五万キロワットについては、これは通産大臣まだ明らかにしていないけれども、話に聞くというと、臨海地帯ということで苫小牧という話も私聞いているのですよ。  そこで申し上げたいことは、いま言ったような石炭を使うあるいは混焼のそういう計画が再びいま活発に出されてきているわけです。そうすると、これだけでも相当の量になると思うのです。新聞によりますと、電発のは一千万トンくらいの石炭を必要とするというふうに書いているのですね。そうしますと、いま石炭の需要が再び活発になってくる、それに対して石炭の供給のほうはなかなか見合っていかない、逆に一般炭を外から入れていかなければならない、いま部長が言ったように。こういう状況になってきているわけだ。私は、問題は単なる需給の問題だけじゃなくて、こういう事態を一体どう見るのか。さっき部長がこう言いましたね、価格にとらわれないでエネルギーの問題を考えなくちゃいかぬ、こう言っていた。その言やよしなんですよ。しかし実際は、事態を見ていると、やはりユーザーのほうからどんどん計画出されているんだな。それに追われているようなものです。おそらくエネ調にこれ諮問してみても、やはり経済性を抜きにしては考えないのではないか。もちろん経済性を考えなくちゃいかぬ。それだけに、いま大事なことは、さっき私が前段に、契約の基本は一体何だと聞いたのは、エネルギーで石炭を見直していくという意味で、中期、長期の計画を早目につくっていかなくちゃいけない。しかも価格、これも重要だ、考えなくちゃならないけれども、価格にとらわれないで新しいエネルギー政策というのを考えていかなくちゃならない。これがいままでなかったから今日こういう時代をつくっていっているわけですよ。この辺のところを十分ひとつ考えて、エネルギー調査会で検討する場合でも、皆さんがこれから計画を立てる場合でも、そこに思いをいたさないというと、また同じことを繰り返してしまうのですよ。  そこでもう一つ聞きたいのは、価格の問題なんだけれども、おそらく、今度石油がこれだけ上がってしまったら、これは原料炭にしてもそれから電力にしても相当上げなくちゃならぬ。これで幾ら上げるということを皆さんに聞いても言いはしないだろうと思うし、目下検討中の面もあるだろうと思う。しかしながら、先ほどの話を聞いて、政府側のいろいろ話を聞きますと、少なくとも電力の場合に、カロリー当たりにして三十銭くらいの差がついていますね。そうしますと、四千五百カロリーとして、三十銭かけて千三百五十円か、少なくともこれは上げる上で下限だろうと思うのだけれども、つまりかなり大幅のものを上げないと、これは石炭産業を幾ら見直すと言ったって、いま私企業のときであるし、しかもより根本的な問題は、大事な労働者の命と暮らしがかかっているわけだから、これをかなり大幅に上げていかなければならない。たとえば大臣の言によりますと、メタル並みには二、三年くらいでやらなければならないような話もしている。炭労はいま五万七千円ですか賃上げを要求してきている。そうすると、二年は別として、三、四年でいまのメタル並みにしていくとすれば、メタルも上がっていくわけだから、最低労働賃金はどれだけ上げなくちゃならないかということば見当がつくわけだ。そうすると、そういう条件をつくる意味でも、私は炭価アップというものはこれは当然常識だと思うけれども、その辺はどういうふうにお考えになっていますか。
  126. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、一般炭につきましては、カロリーで計算いたしますと現在でも千三百五十円、これは一例でございますけれども、電気向けの一般炭についてはそういう差があるわけでございます。先ほども御説明いたしましたように、油の値段が幾らにセットされるかにもよるわけでございますけれども、一応新聞紙上その他によりますと相当なアップがあるのではなかろうかというふうに考えますと、石炭サイドから見ましては、それをベースにし、いろいろなデメリットという点は当然引かなければなりませんけれども、いままでみたいな百五十円とか三百円というようなオーダーではなくして、相当大幅な値上げを需要業界のほうに御期待するというのが現在の心境でございます。なおそれをもちますと、いま御指摘のございました労務費へのはね返りというようなことも出てまいりまして、賃金のアップにも当然つながる原資にもなりますし、なお、相当の値上げをしていただきますと、いままでの千六百五十円というような赤字の解消のほうにも役立ちますし、そういうことで健全な石炭鉱業経営というほうに向かえるのじゃなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  127. 多田光雄

    ○多田委員 そこで、炭価アップを適正な値段にすることは、当然急がなくちゃならないことだと私は思うのだが、この間阪神のほうで聞いてみたら、普通小口で使っている石炭がトン三万円くらいで売られているのですね。山元でもって五千円くらいのものが、何段階の流通を経ていって一般の家庭だとか小口の場合は三万−二万五千円、これは産地の札幌でもそうです。ですから私は、炭価アップの場合、これは電力、鉄鋼、セメント、こういう大企業にはそれ相応の金を吐き出してもらうことが必要だと思う、もうけているのだから、どんなにもうけて、どういう商売をやっているかは、このたびの国会で明らかになったとおりです。  しかし、やはりここで大事なことは、そういう小口の消費その他については十分な配慮を払う必要があるのじゃないか。たとえばフランスで今度いろいろ価格の改定をやって、資料を見ますと、小口の場合と大口の場合はかなり大きな開きをもってやっているのです。そういう指導をなさるかどうか。炭価をアップしたから、一般の家庭用だとかあるいは零細企業だとか、これもアップだということになりますと、これはひとたまりもありませんよ。一番大事なことはアップしてもらうこと。同時に、繰り返し言うようですけれども、鉄鋼とか電力に対しては思い切って大幅に上げたほうがよろしい。こういう処置を考えておられるかどうか、伺いたいと思います。
  128. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 一般民生用の石炭価格につきまして、ただいま先生御指摘のように、二万円、三万円というような数字が出ておるというのも承知いたしております。この前の予算の分科会でも御質問になったわけでございますけれども、民生用については行政指導をもってできるだけ低い点で押えていきたいというふうに、通産局その他を通じまして今後指導してまいりたいというふうに考えております。
  129. 多田光雄

    ○多田委員 時間がきましたので、あと二、三問。さっきの公益事業部のほう、北海道に三十五万キロワットつくるというのは、はっきりするのはいつごろになるのですか。
  130. 小野雅文

    ○小野説明員 一応、私どもの通産大臣のほうとそれから知事との間で、三月一ぱいにどこの場所につくったらいいかという点で、知事のほうで場所を選定していただくというような約束になっております。それで、場所がきまりましたならば、至急建設する主体等もきめまして、そのあとで電調審等にかけるかっこうになると思いますので、着工等は早くても秋以降ということになろうかと思います。
  131. 多田光雄

    ○多田委員 北海道では発電所をつくるので大騒ぎした経験を幾つも持っておる。この間も苫小牧のわきの伊達でしたかね。つくる場所によるんですよ。だれが見たって、窒素やその他が出たとしてもあまりそんなに被害のないようなところもあるし、バックグラウンドがすでにもう飽和状態というところもある。私どもも石炭は大いに使ってもらいたいと思うけれども、そのことは公害その他を無視してくれということじゃないのです。ですから、こういう立地をする場合に、十分地元の意見を聞く、これをやらないと、また大きな問題になると思う。いつも上から持ってきて大問題を起こしてしまう、こうなるんですね。そういう意味で、私は、どこを選ぶかはわからないけれども、いずれにしても公害の問題について、あるいは事前の調査、アセスメントをよくやるとか、あるいは地元住民の——この場合、住民というのはえてして市長だとか町長だとかいうことになるんだが、それもそうだ。それもそうだけれども、もっと大事なのはほんとうに公害その他に密接な関係を持っておる地元の住民の意向を聞いていく。公聴会だとか聴聞会だとか、そういうことをやらないというと、これはまた大きな問題を起こしてしまう。ですから、その点どこにつくるかの問題も含めて、私は道議会なり地元で十分検討する必要があるだろうということをひとつ申し上げておきます。  最後に研究の問題を聞こうと思ったのですが、もう時間がきました。この間参考人研究者を呼んだときも、言っておられるのは、非常に少なくなった。これから五年、十年、昭和六十年を目ざして皆さんも計画を立てられるわけです。昭和六十年に何十人という研究者が一ぺんに生まれるわけじゃないわけです。そうすると、いまから少ない研究者に展望を持たせる。ほんとう研究所なり大学なりあるいは企業なりに情熱をもって残ってもらうような展望を与えなくてはいかぬ。それから研究者の養成もそうなんです。ですから、研究の面からも相当長期の計画を持たなくちゃいかぬ。それからこの間来た山村先生に伺いましたら、たとえば液化の問題にしても、これがほんとうに軌道に乗るのは早くて一九八五年だ。大体十年後ですね。そのときでも実際に工業用化されるかどうか疑問ですが、少なくとも十年単位で問題を見ておる。そうすると、研究の分野を見ても、われわれは相当長期の計画を立てて、ことしは何名研究者を育てていく、来年は何名研究者を育てていく、こういう問題が具体的に出されないというと、たとえば一九八五年にさらに出炭増をやってみたけれども、研究者がいない、こういうことになってくると私は思う。これもひとつ計画の中にきちんと入れる必要があるだろう、こう思うのです。  それから、たとえば石炭の需給問題を見ても、たとえばセメントは、この間私はセメント協会に行って聞いてみたら、もしいまのセメントの各企業が、メリットもあるので、石炭を全部使うと、一千万トン以上使わなければならないと言っておるのですね。一番の不安は何だと言ったら、石炭生産の不安定さだ、こう言っておるのです。そうしますと、いま電力の場合でも、油と石炭の混焼のところもあります。これもこの間聞きました。こういうところは思い切って石炭に切りかえていく。そうすると、幾らになるのか。これは釈迦に説法みたいで恐縮なんだけれども、そういうかなり長期的な展望で積極的に需要をふやしていく。あるいは重油をたいている発電についていえば、これは思い切って変えてもらう。これはもういまさら重油のなまだきなんてもったいない話です。そういう積極的な需要と供給の関係を含めた長期計画というものをいま出さないと、ほんとうに国民は政府のエネルギー政策が変わったというふうに感じないだろう。繰り返し言うけれども、エネ調にかけた場合、またユーザーの意見が大きく反映して、そろばんをはじいて石炭は幾ら幾らだ、それに見合って幾ら必要だ、こうなってきて、また同じことを繰り返すことを私はおそれるからなんです。そういう意味で、ぜひひとついままでの苦い経験を生かして、先ほど部長はたいへんりっぱなことをおっしゃいましたが、そういう立場に立って、事務当局としても長期の計画を立てていく。積極的な需要の道を開いていく。そういう長期計画を立ててもらいたい。このことを最後に申し上げて、私の発言を終わります。
  132. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  133. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先般中曽根通産大臣に質問しまして、まだたくさん質問するのが残っておるのですが、きょうは時間もないから、労働大臣にもたくさんありますけれども、またあとで質問いたすことにしまして、一、二石炭部長とそれから産炭地域振興課長にちょっとお尋ねしたい。  まずその第一点は、私九州ですからね、サルファが高くて、きょう午前中もそういう話もあったのですが、硫黄酸化物の排出基準ですが、環境庁のほうの基準はどういうふうになっておるか。この点、わからなければだれか公害局の課長でもいいわ。
  134. 広瀬幾男

    ○広瀬説明員 お答えいたします。  現行の排出基準でございますが、石炭につきましては低品位炭の場合は七五〇PPM、普通のカロリーの石炭をたきます場合が六〇〇PPMというふうな規制になってございます。
  135. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それで間違いないかな。環境庁の基準ですよ。新環境基準として四十八年の五月に改定になっておらぬかな。ちょっといまの、もう一度……。
  136. 広瀬幾男

    ○広瀬説明員 失礼いたしました。  いま申し上げましたのはNOxでございまして、硫黄の規制値につきましては地域によって異なってございまして、たとえば札幌の場合はK値につきましては九・三四、大牟田の場合は九・三四というふうに、地域によって違ってございます。  それから粉じんでございますが、たとえば北海道におきましては、五千キロカロリーの炭種の石炭を使用いたします場合につきましては一ノルマル立方メートルにつきまして〇・四グラム以下というような規制値になってございます。
  137. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この硫黄酸化物の排出基準に対しては、各地域ごとによく指導しておりますか。
  138. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 たとえば炭鉱関係のふろ、そういうところでたきますばい煙というものにつきましては、鉱山保安監督局のほうで十分ばい煙の調査をやり、あるいはSOxの調査をやっておるというのが実態でございまして、地方にございます保安監督局・部を通じて規制をいたしております。
  139. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 地方の鉱山保安監督局といえば、通産局の鉱山保安監督局でしょう。
  140. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 そうでございます。
  141. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 じゃ、あなたたち関係があるじゃないか。ここにだれかおるだろう。まるでよそごとのようなことを言うなよ。地方の通産局ならばこっちにもあるはずじゃないか。大体われわれの話を聞いとらぬのじゃね、君たちは。そこへすわっとるのはみなお客さんか。ここで質問しておるのはみんな聞いとけよ。だれにぱんとやるかわからぬぞ。
  142. 原木雄介

    ○原木説明員 失礼いたしました。ただいま速記が入っておりましたものですから、速記のほうを見ておりまして、失礼いたしました。  私どもといたしましては、石炭鉱山施設関係から出てまいります排煙についての監督というものは、八監督局・部の監督官によって行なっております。もちろん、御指摘にありましたが、ただいま炭業課長から申しましたように、各炭鉱にございます煙突からのSOx酸化物等の排出というものにつきましては、K値の規制を行なっておりまして、同じK値を使って監督いたしております。
  143. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 公害の問題が今日非常にやかましいんですよ。だから、私どもはそれに対してどうだこうだ言っているんじゃありませんけれども、やはり地域住民の方々が納得するようにやらないと、そのために今日見直された石炭にまた支障を来たすようなことになると困ったことになるんだから、そういう点には十分ひとつ留意してもらいたい。石炭関係のことについてはいま非常に国民は注視の的なんですからね。それから産炭地域振興課長、あなたにちっとお尋ねしたいが、これは先日もちょっとあなたと内々に——内々というか、あなたとだけお話し合いをしたんだが、全国炭鉱関係の市町村の議長会議がありまして、そのときにいろいろな要望がありましたが、産炭地域の振興、事業の推進という意味で、団地の造成ということが非常に叫ばれておるのですが、これは工業再配置の促進という意味からしてもどういうふうに積極的に本年はされるのか、予算面を通じてあなたに説明を願った。ことに炭鉱閉山等によって著しく地域が疲弊したというようなところには優先的に工業団地の造成をしなければならぬと思いますが、今度新年度、四十九年度にはどういう計画がありますか、その点ちょっと……。この前あなたに聞いた予算面ではあまりたいしたことはないようでしたが……。
  144. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 お答えいたします。  炭鉱終閉山等によります地域社会の疲弊というのは、たとえば失業者の発生とかあるいは生活保護者の増大とか地方財政の収入減とか、あるいは関連いたします地元の商工業者の問題とか、非常に大きな問題がございます。これらの問題を早急に解消をいたしまして、その地域の再建をするということで、団地の造成並びにそこに対します中核企業の誘致というのは、産炭地域振興対策の一番大きな基本的な対策であろうかと思います。そういうことから、私どもは団地の造成、中核企業の誘致に努力をしておるわけでございますが、団地の造成につきましては、工業再配置・産炭地域振興公団の事業といたしまして過去十年余推進してまいった次第でございます。四十九年度予算につきましては、前年度対比約二〇%増の土地造成予算を組んでおりまして、これは総需要抑制という全体的な政策の中で、産炭地域振興が重要であるという認識のもとに、金額といたしましては二〇%増を組ましていただいたというわけでございます。
  145. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 どうもすこぶる抽象的で、それは産炭地域振興だから振興するということはわかったことで、それを具体的にもう少し、予算も二〇%増、その二〇%増にしたのは一体どこにやるんだ。何年度に閉山したどの地域、どの方面、そういうところにどれだけの団地造成をやるのだというような——何か産炭地を振興するのがわれわれの任務でございます。それは当然のことで、そういうことを聞いているのじゃないですよ、私が聞いているのは。だから、予算面を通じてこの方面にこれだけやります。この方面にこういうことをいたします。それは私はまだあとから具体的に聞きたいのですよ。というのは、あなたのおっしゃるようなことはちゃんと陳情しているんだ。あなた方もこの間行ったじゃないか。市町村の議長会議で私も祝辞を述べた。あなたたちも来て、私はあなたたちをほんとうにかばってやった。ぞろぞろとおそくやってきたんだ。だけどぼくはそういうときはちゃんと、いま予算審議で忙しいのだから、もう命は幾らあっても、からだは幾らあっても足らぬように忙しいのだから、おくれてきたけれども、どうぞ諸君御了承を願いたいとかばってやったじゃないか。  だから、これは地域振興のためには企業誘致をする。その企業に対しては資金ワクの融資を広げるとか、ではどういうふうに広げるか、そういう具体的なことをぼくは聞きたいのですよ。炭鉱を閉山した。そういう地域の中小企業の方が非常にお困りになっておる。だから、固定資産税を免除するとか軽減するとか、では来年はどのようにやるのだ、何%ぐらいことしはやるのだ、どうなるのだ、それを具体的にぼくは聞いているのですよ。まだ聞けば何ぼでもある。際限なくある。あるいは「閉山地区の中小商工業者対策調整額交付要領による」と書いてある。融資条件について貸付限度の引き上げ、金利の引き下げ、期間の廷長、そういうことをあなた方に陳情しているのですよ。それに対して、ただ聞きっぱなしでは——、全国から市町村の議長さんたちがたくさんの人たちの期待を背負ってやってきているのだ。それであなたたちは、皆さま方の御意思に沿って十分努力をいたしますと言っておる。だから、具体的にどうするのか。産炭地域振興課長はどういうふうにこれはやっているのだ。部長やあるいは大臣とどういう話し合いをしておるのか、どういう計画であるのか、どういうビジョンであるか、それを聞いている。産炭地域振興はいわゆる産炭地の地域を振興させます、皆さんが困っているのを困らないようにいたします。そんなことはわかっているのだ、あたりまえのことだ。子供でもわかる。しからば一体、どうしているのだ。このようにやるつもりでございます、このように予算処置もいたしております、ですから二〇%今度はふえております。私はそういうふうの説明を聞きたい、こう言っているのですよ。どうですか、産炭地域振興課長
  146. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 工場用地の造成でございますが、産炭地域振興事業団発足当時から、昭和四十八年十二月末までに九十一の団地、面積にいたしますと千五百六十万平方メートルを完成させておりまして、現在なお十九団地、面積にいたしますと千八百四十二万メートルを造成中でございます。予算に関連いたします四十九年度の実行計画でございますが、現在公団当局で実行計画を検討中でございまして、前年度から継続中の団地もございますし、新規の団地ももちろんあるわけでございます。そいうことで団地の造成に私どもも非常に力を入れてやっておるつもりでございます。  それから、御指摘のありました産炭地域振興臨時交付金に関します地元の方々の御要望でございますが、四十九年度予算におきましては、たとえば炭住改良事業につきましては二戸当たりの調整額の単価アップをいたしました。加えて一市町村当たりの限度額の引き上げというものもいたしたわけでございます。それからまた、基準額の交付の終わります市町村に対しましては、五年度目二百万円、六年度目百万円の特別調整額というものを設けまして臨交金の実質的鶴間の延長というものをはかったわけでございます。なお、中小商工業者対策の調整金につきましては、一企業当たりの限度額を一千万円から千二百万円に引き上げたという対策をとらしていただいたわけでございます。
  147. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体いまのお話で私がお尋ねしていること、おおむね了解をしましだが、団地造成もそれじゃ四十九年度、新年度には全部完成いたしますか。いまあなたの御発表どおりに完成いたしますか。
  148. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 お答えいたします。  団地の造成につきましては、用地の買収から始まりまして、造成設計を行ないます。それから業者の入札等行ないまして造成にかかるわけでございます。最近団地の規模が次第に大型化してきております関係上、用地買収から始まりまして、完成して譲渡に至るまで相当な年数を要するのが通例でございます。そういうことで完成までの期間も次第に延びておりまして、たとえば五年とか八年とかかかる大型団地も出てまいっておるわけでございます。
  149. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だんだん工事が長引いておるということは、これは諸般の事情で、経済界のいろんなあれもありましょうし、やむを得ぬこともあるかと思いますけれども、その一面、またそんなに工事が長引きますと、結局経済界の変動によってすべて物価は、ことに資材は上がっておりますから、木材はむろんのことセメント、団地をつくるのにはやはりセメントも要りますよね。だから単価がだんだん上がるのですよ。そうすると、やはり請負業者が非常に困ると私は思うのですよ。不都合なことはいままでになかったですかね。途中でやめるとか、ほっぽり出すとか、契約不履行のものが出てきたとかというような、団地造成上支障を来たしたというようなことはいままでにはなかったですか。非常にスムーズに行っておりますか、八年も九年もかかっても。どうですか、その辺は。
  150. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 お答えいたします。  昨年来の資材費、物価の高騰等もありまして、これは公団が造成しております団地に限らない問題だと思いますが、工事の実質的な費用がかさむという点が随所に見られるわけでございます。公団といたしましては、そういう点を踏まえまして、先般建設省のほうからの御指導もあったようでございますが、一部単価の積み上げと申しますか、修正をする方向で業者の方といろいろ協議をしておるやに聞いております。
  151. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 業者といろいろ話し合いをしている、それはむろんしなければ、業者を泣かせるようなことをやってはやはり業者もかわいそうですよ。ところが、結局これはほかのほうも同じようなことがあるとおっしゃっている。それはそうでしょう。そうでしょうが、少なくともこれは、やはり公団といえども政府の仕事なんですからね。五年も六年も先を走れぬから、団地をつくるのにそんなに長くかかって、その間の経理の問題そうして収益の上がってきた一部は今度は融資でまた貸し付けをやるのでしょう。そういうところの経理面なんかがずさんじゃないかと私は思うのですが、これは一ぺんよく経理面、これは会計検査はやっていると思うけれども、よくできておりますかね、はっきり。八年も九年も続いておる、そうして収入の入ってきたものは貸し付けていく。そこのところはどうも、決して私は人を疑うのじゃありませんよ。疑うのじゃないが、そんなに団地造成をするのに土地を買収して、それからつくり上げるまで七年も八年もかかる。そして今度またそれから家を建てようというなら、それはとてもじゃないが一体どうするのですか、それは。今度はひとつ部長に明快な答弁を期待しよう。
  152. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 いまだいぶおしかりを受けて申しわけございませんけれども、土地造成につきましては本年度は、四十九年度でございますけれども、四十八年度に比べまして五十六億から六十八億へ二〇%増ということで、石炭部といたしましても十分力を入れてやっているつもりでおります。  なお、いま土地造成の期間が長いということにつきましては、うちからも公団のほうに連絡いたしまして、できるだけ早く造成を完了するように指示したいと思います。  なお、産炭地域における土地造成のみならず、商工業者等に対しましての助成でございますけれども、四十九年度は国から市町村へ交付いたします特別調整交付金をもちまして、いわゆる商工業者の融資を、限度額の引き上げということで一千万から千二百万へ、なお、炭住の改良資金としまして、単価を十万円から十五万円に引き上げ、一市町村に対する限度額を一千万から千二百万へ引き上げたというような措置もとっております。  なお、普通ならば、公団からの融資に対しましては、七・五%に融資の金利がなるというところを、これは特別に配慮いたしまして、七・一%で押えたというような実績もございまして、こういうことを通じまして産炭地における土地造成あるいは商工業者あるいは炭住改良という点につきまして、力を入れておる次第でございます。
  153. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 どうもやはりそういうふうなところが話が食い違ってくるのだな。産炭地域振興課長は、団地造成はもう例年だんだん事業がおくれてきます、それが今日の傾向でございます。今度は部長は、御意思に沿ってなるべく早く可及的すみやかにできるようにいたします。それは一体どっちがほんとうなんで、どっちを聞いたらいいのか。部長のほうが上だから、やっぱりえらいほうかな。どうですか課長、部長の言うとおりに聞いていいの。
  154. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 説明が足らずに失礼いたしましたが、特に閉山対策として早急に団地を造成し企業を誘致しなければならないものにつきましては、団地の規模も比較的小さいものが多い関係もございまして、一年ないし二年で完成をするといううものもたくさんあるわけでございます。先ほど長年月を要すると申しましたのは、最近におきます百万坪級の大きな団地の場合でございます。
  155. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 どんなに大きい団地であろうが、そのだんだんできてきたところから、これは初年度でこれだけはでき上がった、二年度はこれだけでき上がった、一番最後まででき上がったときが七年かかったとか八年かかったというようなことは、あってはならぬけれどもあるかもしれない。狭いところ広いところいろいろあります。それはそうでしょう。何ぼ広いところでも、団地ができ上がっておるところが、終わりのほうが八年ぐらいかかってでき上がるまで、ここはほったらかして待っておくというわけにいかぬでしょう。どうもあなた方の説明は隔靴掻痒だ。実にどうもおかしな説明だ。いずれにしても、団地造成なんというのをそんなにだらだらやられては困る。もともと産炭地の疲弊した、閉山のあとなんかの疲弊したところをつくるのですから、そんなに五年も十年も二十年も待っちゃおれぬのだ。  それから、入ってきたお金を今度は融資する、そういう話を聞いたが、事業団の融資というのが、入ってくる金が全然わからないというこの間の説明だった。そういうところはどうなっているのですかね。会計検査はむろんあっていると思うが、非常に正確にきちっとやってあるでしょうね。いいかげんな貸し付けをしたり融資をしたりするようなことは、過去になかったようでもあるし、あったようでもある。あなたですから、文句言われぬように言うておこう。インタロゲーションマークを三つぐらいつけておこう。あったようでも、あるようでも、なかったようでもある。どうです。
  156. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 公団の事業につきましては、大きく分けまして、融資事業、土地造成事業、工場、建物の貸与、出資事業並びに工業用水の開発事業の四つがあるわけでございますが、このうち御指摘の土地造成、それから融資事業につきましては、石特会計からの出資金、それから財役からの借り入れ金を主体にいたしまして、一部自己資金を組み込みまして毎年の事業予算を立て、事業を推進しているわけでございます。  融資事業につきましては、設備資金につきまして金利七・一%、据え置き期間三年を含みまして償還期間十年ということで融資事業を行なっておるわけでございますが、償還してまいりました金のうち、大体六〇%相当分、これは事業計画が借り入れ金六〇%、出資金四〇%という比率で成り立っておりますので、償還してきた金の分につきましても、そのうちの六〇%を国に返済をするという形で運営されておるわけでございます。  なお、経理面につきましては、二重、三重にチェックしておりますので、絶対に疑いを持たれるようなことはないと思います。
  157. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私は経理そのものを疑っているのじゃありませんよ。自己資金というものが最初からわからない、こういうことをこの前言っておられたですね。融資するところの石特から出る金、それから自己資金、財投から出る金。財投から出る金あるいは石特から出る金はわかるが、自己資金はわからない、こういうことでした。じゃ、毎年毎年入ってくる金は、入ってきたのが自己資金で、結局どんぶり勘定みたいなことじゃないかというようなお話をしたことがあるように記憶しているが、自己資金というものの性格をはっきり私はお尋ねしておるわけなんですよ。どうですか。
  158. 安河内健吉郎

    ○安河内説明員 自己資金についてのお尋ねでございますが、毎年の予算書に明記してございまして、たとえば四十八年度の事業につきましては出資金五十四億、財投からの借り入れ金百二十七億、自己資金約三十三億、その他工業用水関係補助金一億八千万というような形で予算書に明記されてございまして、こういう金を全部活用いたしまして、産炭地域振興の事業を推進しているところでございます。  なお、自己資金の出所でございますが、先ほど申し上げましたように、返ってまいります金の約六〇%相当分を財投に返済いたしまして、残りの四〇%につきましてはいろいろな事務費あるいは積み立て金等に計上いたしまして、その残りの分を自己資金としてまた翌年度の事業に繰り込んでいくという形で事業を推進しているところでございます。
  159. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そのパーセントは大体わかったようです。六〇%を財投に戻す、あとの四〇%が自己資金になる、こういうようなお話ですが、そういうワクだけあって、実際の金額はわからないわけですね、毎年それが幾ら入ってくるかということが明瞭にならぬ限りはですね。それは的確な融資をしてあるかということを私はお尋ねしているのです。過去にもそういうことはないでもなかったでしょう、問題になったのは。ですから、これはまたひとつゆっくり、もうちょっとしんみり話そう。そうせぬと、どうもあなたたちも、統一見解があまり出ておらぬようだ、きょろきょろしたような風で。だから、もう一ぺんゆっくりこの問題は話し合いましょう、まだたくさん問題があるから。  その次に、ちょっと時間がないから、委員長がまだやめぬかと言われるからあれですが、電力用炭の販売株式会社の三カ年延長の問題です。私はこれは賛成で、ぜひひとつそうしてもらわにゃならぬ。これには異論のある人はおそらくないと思いますが、これは三法がみな一緒になっておるようですからね。全部同じだ。五十一年度末、五十二年の三月三十一日まで延期する、これは三法ともみな一緒にしてあるようですが、きょう午前中兼重先生からもお話が出ておったように、電力用炭の販売株式会社開発公社のようにやったらどうか、もう少し強力にやるべきじゃないか、これは全く同感です。私らもそう思う。諸君並んでおられるのに、また苦言を呈してはなはだ相すまぬけれども、これは三月一ぱいでやってもらわぬと、という話で、それはそうだろう、この法改正はぜひやりましょうと言って、先ほど言ったように私は賛意を表している。ところが、あなたたちからいただいた資料はこれだけなんだよ。いいか、これだけだ。これは何でもない、ただ三カ年延長しますというだけだ。これで審議してくれというんだが、一体どこで審議するんだ。石炭部長はじめ、そっちのほうにおるのがえらい人じゃろうが、審議してくれといったって、一体これは何で審議するんだ。委員長、はっきりしてくれよ。これはただ三カ年延長してくれということだけなんだ。だから、先ほど社会党の細谷議員も立腹して帰ってしまった。審議しろ、質問しろといったって、しょうがないじゃないか。この二つで、どこでどう質問するんだ。忍者部隊じゃあるまいし、これからなにをどろんと出すわけにはいかない。非常に不親切きわまる。  そこで、私は先ほど電力用炭販売株式会社の組織、機構の一覧表を出せ。そうしたらあたふたとここにゼロックスか何かとって、あっちこっち墨だらけで、墨の中に字があるような、そんなのを周章ろうばい、あわてふためいてつくってきた。それから営業報告書、予算書を出せ。それまたうろたえてつくって持ってきた。電力用炭販売株式会社法というのがあるはずだ。会社には会社の定款というものがあるはずだ。ないわけはない。そんな会社があるわけはない。それを持ってこい。それまたうろたえて持ってきた。それから事業概要というのがあるはずだ。どういう仕事をやっておるか。概要、要覧があるはずだ。それはまだ来ておらぬ。それで、それがいまここへようやくそろうだけそろった。それを集めますとこんなにたくさんあるのですよ。これを差し上げて、どうぞひとつよろしく御審議願いたい、委細はこの中にありますので、ひとつよくごらんいただいて、十分ひとつ練っていただいて、よろしく御審議の上御可決くださるようにお願いします、これはあたりまえじゃないか。国会は審議の場だもの、これはあたりまえだ。それに、たった紙切れを二枚ほどやって、そしてこれで審議してくれ。たった紙切れ二枚で審議できるわけがないですよ、委員長。こういうことをやるのですよ。苦言を呈してはなはだ恐縮だけれども。だからほかの委員先生方もそうだと思うが、細谷先生も言っていた。全部資料を出すように言ってください。私は、もう資料をいまつくらせているから。では、全部、ほかの委員、先生にもひとつ頼むと細谷先生は言っていた。いらっしゃる先生方もおそらく御入用だろうと思う。これだけの資料があるのですよ。不肖にして私は、資料を要求したのがまだこぼれておるかもしれぬ。もっといい資料がたくさんあるかもしれぬ。こういうのはあまり議員にやると詳しく調べ過ぎて困るというので出さぬのか。まことに姿勢がよろしくない。最もよろしくない。石炭部長なんかは、もう日ごろから個人的には私は非常に親しくしておって、たいへんりっぱな人で尊敬しているけれども、公私混合してもらっては困る。何か文句があったら反発してください。私もまたやるから。
  160. 田代文久

    田代委員長 ただいま鬼木委員の御発言につきましては、法案の審議の上に資料が不足しているというような御意見でございますので、これは理事会にはかりまして、今後の審議の必要上こういう資料を出すべきであるというような点につきましては御意見をまとめて、今後のこともありますから十分それは御満足のいくように結論を出したい。  それからなお、政府当局としましては、ただいまの中で鬼木委員がこの点をなおはっきり知りたいというような御意見が個人としても非常におありのようですから、これはひとつ直接に会館なり何なりに行っていただいて御納得のいくように十分御説明申し上げていただきたい。ここだけでしましてもこれは時間に制限がありますから、あまりこまかいことはできませんから、その点はひとつ時間の節約を配慮してほしいということを私から言います。
  161. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの委員長のお話、まことにけっこうです。理事会でまたそういうことを検討する、まことにけっこう。けっこうですが、われわれがこういう資料が必要だから出せということもあり得ると思うのです。それは委員長のおっしゃるとおり。しかしながら、かりにわれわれがそういう資料を要求しなくても、いやしくも法案を審議してもらうならば、こうこういうものが必要だと思われるようなものは、私は自発的に当然出すべきだと思う。委員長もそういうお考えだと思います。  それで、部長は何か発言せんとしておりますので、私は部長の答弁をちょっと聞きたいから、ようございますか。
  162. 田代文久

    田代委員長 けっこうです。
  163. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 法案を御審議していただくのに資料を提供せずということで、まことに申しわけなく思っております。実は内容がただ単なる三年の延長ということでございましたので、特にうちのほうで資料をいろいろ用意しなかったものですから、そういう落ち度になりまして、むしろ各課長連中に先生方のところへ説明に行けというようなことも言っていたのでございますけれども、資料の点につきましては今後十分気をつけて御審議に差しつかえのないようにいたすつもりでございます。今回の件につきましては申しわけなく思っております。
  164. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体部長も非常に温情家ですなおな方ですから、これから改めると言っておられますので、私はそれより以上のことをどうということはない。でございますから、きょうは一応本法案についての質疑は、私は次回にまたいたしたいと思う。これによって勉強したいと思う。内容はまことに簡単だ。三年延期するということです。でございますけれども、決して私は簡単ではないと思う。大事なことだと思いますね。石炭の運用ということに対しては、私は販売会社は実に大事な会社だと思いますので、よく検討いたしますから、次回に質問は譲ります。それで資料を提供してもらいます。  では、これで終わります。ありがとうございました。
  165. 田代文久

    田代委員長 小宮武喜君。
  166. 小宮武喜

    ○小宮委員 最近、石油事情の悪化のために電力、鉄鋼をはじめ、一般企業において石炭の需要がふえておると聞いておりますが、大体どれぐらい需要がふえておりますか。
  167. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 当初の計画に対しまして、たとえば原料炭でございますけれども、四十八年度の当初には、千二百四十六万という生産の見込みでございます。それに対しまして、生産のほうは千百二十五万トンというようなことで、いわゆる二千三百五十万トンの当初の生産計画に対しまして二千百五十万トンというようなことで、二百万トンの減になったわけでございます。あとしばらくございますけれども、見込みとしては減の予定でございます。  これに対しまして原料炭におきましては千二十万トン引き取る。鉄鋼関係で千二十万トンあるいはガスで八十四万トン、それぞれございまして、一般炭関係におきましては電力で八百四十四万トンというような計画を立てていたわけでございますけれども、いわゆる供給減という点からきまして需要に全部充当できなかった。ただし、当初の貯炭が四百二十三万トンございましたものが、おそらく本年度の末には二百六十万トンぐらいに落ちつくのではなかろうかというのが見通しでございます。  なお、先ほども御説明いたしましたように、いわゆるセメント関係で二十万トンの増とか紙パルプ関係の増というのは、現在話があるという程度でございまして、まだ四十九年度の需給見通しというのを結合させた資料は、手持ちとしてはございません。
  168. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、結局いままでの計画に比べて最近の石炭の需要がふえてきたということで、どれくらい需要がふえておるのかということを聞いておるのです。いまの答弁は私の質問には答えておりません。しかしながら、そんなことを言っておったら時間がございませんから先に進みますが、それでは、石炭鉱業審議会の需給部会が昨年の七月二十四日にきめた四十八年度の需給見通しとの関係はどうなりますか。
  169. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、四十八年度の需給見通しにつきましては、当初きめましたものは、供給が二千三百五十万トン、これに需要のほうが二千三百九十四万トンということで、年度当初にございました四百二十三万トンの貯炭を三百七十九万トンに減らすという計画でございまして、これに対しまして供給減と需要の増というもので、まだ最終的な押えはしておりませんけれども、四百二十三万トンの貯炭がおそらく二百六十万トン前後になるのだろうということと、供給のほうは二千三百五十万トンに対しまして二千百五十万トンぐらいしか出ないというのが現在の見通しでございます。
  170. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、第五次石炭政策の路線に沿って四十八年度合理化実施計画はきめられているのですが、その合理化実施計画は達成できないというようないまの話ですね。それじゃ、その原因は何ですか。
  171. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 ただいま先生御指摘の、四十八年度の実施計画でございますけれども、先ほどから申し上げますように、いわゆる生産面を二千三百五十万トンということをベースにいたしまして需給計画をつくったわけでございますけれども、いわゆる閉山関係の問題、それから各山の減産というようなことがございまして、実質的な生産量としては二千百五十万トン前後に落ちつくというのが実態でございます。で、いわゆる昨年度つくりました実施計画のそのとおりの数字上の達成はできなかったというのが実態でございます。
  172. 小宮武喜

    ○小宮委員 その問題についてはまたあとでゆっくりやりますけれども、それでは次は、きょうの参考人意見にもありましたように、各企業ではトン当たり千円から二千円の赤字を出している。したがって、石炭を掘れば掘るほど赤字が出るということがきょうの参考人の話でもありましたけれども、それでは四十八年度における石炭企業の損益の見込みはどうなんですか。
  173. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 現在当方で把握しております四十八年度春の見込みといたしましては、いわゆる対策後の経常損益でございますけれども、対策後としましては千六百五十円の赤字というふうに一応見ております。なお、これに特別損益と申しますと、いわゆる閉山関係の問題あるいは元本補給金もございますし、それに閉山等によります特別損益というものがございますので、それを差し引きいたしますと千三百十円というのが赤字として見込まれるんじゃなかろうかというふうに考えております。
  174. 小宮武喜

    ○小宮委員 これまで石炭企業の赤字に対してはその債務の肩がわりをやってきたわけですが、この石炭企業の赤字は現在どれくらいになっておるのか。いままで第三次まで肩がわりをやっておりますけれども、第四次の肩がわりをするのかどうか、その点いかがですか。
  175. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 累積欠損でございますけれども、四十八年度の上期末で約四百八十億でございます。これにつきまして、いま次の肩がわりをやるかというような御質問がございましたけれども、現在のところは考えておりません。
  176. 小宮武喜

    ○小宮委員 肩がわりを考えていないとすれば、その累積赤字はどういうふうにして処理をさせるというふうに考えておられますか。
  177. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 ただいま申し上げました上期末の四百八十億という累積欠損でございますけれども、これは今後の肩がわりによって、現在契約しておる肩がわりによってこれは解消するという見込みでございます。
  178. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま一番各企業が困っているのは、資金の調達に一番困っておるんです。したがって、この四十九年度予算案を見ましても、経営改善資金として事業団のほうに三十億出資するようになっておりますが、この合理化事業団の各企業に貸し付ける経営改善資金のワクは大体どれだけになりますか。
  179. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 経営改善資金の制度でございますけれども、これは四十八年度から五次策として発足したものでございまして、一応当初考えましたのは、貯炭二カ月分というようなことで考えを起こしたわけでございます。それに見合う金額ということでございまして、四十八年度は三十億の出資を事業団にいたしまして、事業団が七十億借りまして、百億の貸し付けを四十八年度は実施する。それから四十九年度でございますけれども、これは本年度予算で計上しております三十億円というものに、昨年度の借り入れの事業団からの出資の三十億円、計六十億でございます。それに百十億を借りまして、一応百七十億円で運転していこうというのが現在の考えでございまして、当初五十一年度までに二百億にこれを引き上げるという考えを持っておりましたけれども、現在いわゆる原資の調達が困難であるということで、さしあたっての四十九年度は百七十億で運転したいというふうに考えております。
  180. 小宮武喜

    ○小宮委員 貯炭の二カ月分というのは、どういうふうな根拠でその二カ月分でいいかということをお聞きしたいのです。私に言わしめれば、この貸し付けワクというのはやはり少ないのではないか。と申しますのは、特に今次春闘でやはりかなりの賃金の増額が出てくるわけです。それだけではありません。これは先に申し上げますけれども、そうした場合に、やはりわれわれがいま現在考えておるのは、いままでの炭鉱労働者というのは昭和三十四、五年以来石炭危機の中にあって非常に低い賃金で甘んじてきたわけだ。だから、それだけ非常に一般の民間企業との間に格差が出ているわけです。だから、少なくともいままでそういった甘んじてきた炭鉱の労働者に対して、やはりわれわれはこれに報いるべき時期にきたと私は思うのです。そういうような意味では、そういったたとえば労使交渉の中で賃上げがきまるとしても、やはりその金そのものの調達が非常にむずかしくなってくる。したがって、こういったせっかくの経営改善資金でございますから、そういうような意味では、やはり経営改善資金をもっとふやして、そういった労働者の賃上げに経営者は応ずる。それに対してのやはり何らかの国としての——石炭見直しが起きておる現在でもあるし、また今後石炭を安定したエネルギー源の一つとして供給していくためには、やはりそこまで政府としても考えるべきではないのかという気持ちが私ありますから、そういうような意味で、いまの経営合理化事業団の融資のワクというのは少ないのではないかというふうに考えるのです。そういうような意味で、このワクをふやす考え方はないのか、また、そういった労働者の今回の賃上げによって生ずる原資の負担をどうするのかという問題について、ひとつ御説明を願いたい。
  181. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 ただいま申し上げましたように、四十九年度百七十億の原資をもちまして貸し付けを実施したいというふうに考えております。ただし、四十八年度の貸し付け実績から見ますと、必ずしも各企業ともいわゆる貯炭見合い二カ月分という必要がございません。そういう点で、いま百七十億と申しますのは、これは全社に対する考えといたしますと、そういう点で不要のところもございますし、なお二カ月分では足らぬというところも出てくるのではなかろうかというふうに考えております。そういう点に対する今後のいわゆる経営改善資金の貸し付けという点でございますけれども、いまは規則的には二カ月ということで当初この点を発足いたしておりますので、直ちにそれをくずすという考えはございませんけれども、いま先生の御指摘のような点につきましては、特別な運用をせざるを得ぬのではないかということで、内部的にはいま検討しておる最中でございます。  なお、幸いにしまして本年度の炭価が相当上がってくれるとするならば、それをもってこっちのほうの経営改善資金のほうは、借りるところもあるいは少なくなり、相当なワクが出てくるのではなかろうかというふうに考えております。
  182. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの説明では、経営改善資金の貸し付けにあたっては個別対策を行なう、したがって、資金繰りが悪いところに対しては厚く、資金繰りがいいところに対しては薄くというような方法で貸し付けるというように理解していいですね。
  183. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 国の金でございますので、全然歯どめなく幾らでもというわけにはまいりませんけれども、いままでの貸し付け基準である二カ月分という点をある程度の弾力性を持たして運用したいというのが考えでございまして、金がないから幾らでも経営改善資金を対象にするというわけにはまいらぬと思います。ある程度ワクをはめた中での貸し付けということにならざるを得ないというふうに考えております。
  184. 小宮武喜

    ○小宮委員 個別対策の場合、その辺は十二分に考えて、やはり少なくとも現在の現存する企業は絶対つぶさないというたてまえに立って、十分の資金が入るようにやってもらいたい、十分お願いします。  それから私、今日の石炭企業の赤字の最大の原因はやはり炭価にあると思うのです。炭価が低過ぎるということで——これは従来はそれでもやむを得なかったと思うのです。しかしながら、そういった意味では、炭価の見直しをすることは、石炭部長も言われたように全く同感だと思うのです。  そこでまず御参考までに、昭和三十三年、いわゆる石炭産業の斜陽化が始まった時点から昭和四十八年までの炭価の推移について、原料炭、一般炭別にひとつ説明を願いたい。一々金額をあげなくてもいいですから、三十三年の時点を一〇〇なら一〇〇としてどうなっているということをおっしゃってください。
  185. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 原料炭について見ますと、三十三年度の六千六百円、これは一トンでございますけれども、六千六百円が四十八年度には七千三百八十円というふうになっております。これは炭価でございます。それからなお一般炭につきましては、積み地の北海道を一例にとりますと、三十三年度三千三百四十五円でございましたものが四十八年度には三千九十五円というふうにむしろ落ちているというのが実態でございます。  これの理由でございますけれども、理由は、御存じのように、三十四年に引き下げということがございまして、一般炭につきましてはおおむね千二百円、原料炭につきましては千四百円程度引き下げております。その後でございますけれども、四十年度以降四十八年度までにわたりまして数次にわたる炭価引き上げ、これは御存じのように二百円とか五百円とかわずかな金額ではございますけれども、原料炭におきましては四十年度から四十八年度までに二千円のアップがございます。なお、一般炭につきましては九百五十円のアップがございます。そういうことで、先ほど申し上げました千二百円引き下げあるいは千四百円引き下げと対比いたしまして、原料炭については六千六百円から七千三百八十円、一般炭につきましては三千二百四十五円が三千九十五円と、まだそのまま低い状態にあるというのが実態でございます。
  186. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま説明されたように昭和三十三年から四十八年までの炭価の推移を見ても、やはり横ばいか、まだもとには戻っておらないという状態の中で、一方労務費、賃金というのは、三十三年から四十八年を比べてみた場合四・三倍上がっている。これは、いまの賃金の上がり方も少ないのですよ。いまから先に申し上げますけれども、そういった低賃金に甘んじてきた賃上げでも四・三倍になっている。そうしますと、これはもう赤字が出るのがあたりまえなんです。  そこで、現在電力向け重油価格と電力用炭との価格差はどうなっておるか。私の調査によれば、電力向け重油価格を電力炭価格に換算しますと、四十九年の四月以降で、東京電力で一万四千百七十三円、中国電力で一万一千六百六十円、九州電力で九千五百円に見合うものになっているわけですね。一方電力炭の基準価格というのは、現在東京電力で五千五百五十円、中国電力で四千五百八十円、九州電力で三千百八十円と私、聞いておる。したがって現在ではそういった発熱量、カロリーを換算すると重油のほうが非常に割り高になっておるということになります。そうしますと、先ほど石炭部長も触れましたように、やはりこの際炭価の問題をどうするのか、どこまで上げるのか別として、大体炭価を上げる意思があるのかどうかということと、これは当然石炭鉱業審議会にはかると思うのですが、はかる場合は諮問形式でしょうから、いずれ石炭局か通産省のほうで一つの案をつくって諮問する形になるわけですね。だから、いまそれを幾らと言えといっても無理でしょうけれども、石炭労働者が十何年間も非常に低い賃金で甘んじてきた。いまこそこの人たちに報いてやるというのが、こういった石炭産業が見直しをされてきている今日、労働力確保のためにも当然やらなければならぬ課題だと思うのです。そういうような意味で、石炭労働者の賃金アップに見合う炭価アップということを考えていただきたいというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  187. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 石炭の値段が幾らになるかというのはいま直ちに申し上げられないような状態でございますけれども、先ほどから御説明いたしますように、油が相当上がるということは否定できない事実だろうと思います。こういう点から見ますと、石炭におきましても昔みたいな二百円だ、五百円だというような炭価アップではなくて、相当のアップを期待せざるを得ない。また、そういうつもりで私なんかは電力業界のほうにもお願いし、その上がったものが炭鉱経営を安定さすと同時に、労働者の賃金へのはね返りにできるだけ持っていきたいということで努力している最中でございます。
  188. 小宮武喜

    ○小宮委員 石炭局のいまの答弁にわれわれも期待をしますけれども、大体鉱業審議会はいつごろ開いて、いつごろきまるようになりますか。
  189. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 いわゆる審議会の中の需給部会でございますけれども、先ほどから申し上げますように、生産と需要との結合あるいはそれに基づきます炭価というものが入った上での需給部会ということになろうと思います。私どもは、できるだけ早くということで、石油のほうの値上がりがいつ発表になるかというのを待っているような状態でございますけれども、少なくとも四月の末あるいは五月の初めには需給部会を開きたいということで、いろいろ作業を進めている段階でございます。
  190. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほどからるる申し上げておりますように、石炭労働者と他産業労働者の賃金格差があることは明白なんです。そこで念のために聞きますけれども、特に関係の深い鉄鋼産業の労働者の賃金とはどれだけの格差があるか。また、同じ地下資源に働く金属鉱業の労働者とどれぐらい賃金格差がありますか。
  191. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 石炭鉱業坑内労働者と一番環境の類似しております金属鉱業坑内労働者ということで対比いたしますと、二万七千円の差額がございます。私どもは、この二万七千円をできるだけ金属鉱山並みに炭鉱労働者の賃金を上げたいということで努力いたしておりますし、またこれが何年で金属鉱山労働者並みになるかは別といたしましても、少なくとも姿勢といたしましては、できるだけ早い機会に金属鉱山並みに持っていきたいというのが念願でございます。
  192. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も、今回のベースアップといままでの賃金格差を一挙に持っていくのも非常にむずかしい点があると思うのです。しかしながら、できるだけ早くそういう方向に持っていくように努力してもらいたい。私に言わしめれば、大体二年ぐらいでもいいのじゃないか。だからその意味で、世間に理解と納得ができるような線で、今回のベアと、それからいままでの賃金格差の補てんをするような姿勢で炭価の問題も考えていただきたいと思います。  それからもう一つは、石炭企業が保安を確保しながら安定的生産を維持していくためには、従来の対策費の問題、坑道掘進補助金だとかあるいは安定補給金とか保安補助金、いろいろありますけれども、こういうような補助金をさらに増額すべきだ。それは四十九年度予算では、いまさら言ってみても予算措置が済んだわけですから、これはできぬ相談ですが、五十年度では十分考えるべきじゃないか。さらに石炭増産という面から見ても、新しい区域の開発とか新鉱開発とかいう問題も控えておりますから、そういう意味で、いまの対策費の問題についても現行の補助金制度も十分考え合わせて、先ほどの参考人意見にもありましたように、たとえば坑道掘進費、これだって、どこの炭鉱に行っても採炭より掘進がおくれておるから、いまの生産が落ちておるわけです。いま言われる国から補助する金は、いまの制度では七〇%になっておりますけれども、実際は五〇%、低いところは二〇%ということで掘進がおくれておる。そういうようなことも考えた場合、これはまたあとで詳しくやりますけれども、少なくとも対策費全体について五十年度では増強してもらいたいということを特に要請したいと思いますが、所見があれば伺いたいと思います。
  193. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 各種補助金なりいろいろな対策費でございますけれども、今回の炭価アップというものが出てきたときにどういう影響を与えるかということも、当然政府としては十分検討しなければならぬと思います。そういう点を加味しながら、できるだけ前向きの将来の安定ということに向かっての対策費としては十分な努力を払い、確保したいというふうに考えております。
  194. 小宮武喜

    ○小宮委員 これも先ほど出ましたけれども、アメリカの大手石炭会社から、強粘結炭を五〇%以上値上げをしたい、もし日本が値上げを認めなければ、これを欧州に回すという通告が鉄鋼業になされておりますね。ソ連からも大幅な値上げ要求が出ている。日本には強粘結炭はないわけですから、輸入にたよらざるを得ません。しかし、いま日本と競合する問題は弱粘結炭ですね。この弱粘結炭と強粘結炭の輸入状況はどうなっておりますか。
  195. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 原料炭の輸入でございますけれども、四十七年度で見ますと、国内が一千万トン、輸入が、これは強粘、弱粘を入れてでございますけれども四千六百七十万トン。なお四十八年度は九百五十万トンに対しまして輸入が三千四百六十万トンという数字になろうかと思います。国内炭は全部弱粘でございまして、輸入炭の中には強粘と弱粘があるわけでございますけれども、いまその比率の手持ちはちょっとございませんけれども、アメリカから入ってくるのは大半が強粘だったと思います。豪州から入ってくるのは弱粘を主体にしておる。なお、カナダのほうは弱粘のほうが多かったんじゃなかろうかと思いますけれども、手持ちの資料がございませんので申しわけございませんけれども……。
  196. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは石炭部長に聞いてわかるかどうかは知りませんが、それでは、先ほどから国内の埋蔵量が幾らかとか、可採炭量は幾らといろいろありました。そのような詳しい資料は別にして、国内における原料炭と一般炭の埋蔵量の比率はどうなっておりますか。数字はいいですから、大体、比率。今後の問題でこれは非常に大事ですから……
  197. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 しっかりとした数字を申し上げられないので申しわけございませんけれども、二百二億トンといういわゆる埋蔵炭量という数字のときの原料炭は、約三分の一ではなかったかと記憶しております。
  198. 小宮武喜

    ○小宮委員 最近炭鉱生産用、保安用の特殊機械機材がメーカーの製造中止とかないしは製造手控えから非常に支障を来たしておるのです。特にセメント、坑ワク、坑木等が入手困難になっているわけですが、何か対策を考えておられますか。何かというより、早く対策を立てないと保安上も非常に大事な問題ですから……。
  199. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 資材の確保につきましては、原則としましては当事者間の交渉にまかしておるわけでございますけれども、実は札幌通産局におきましては、資材関係のあっせん苦情処理機関を設けまして、炭鉱機材につきましても資材のあっせんをしているというのが実態でございます。  なおこれは別途でございますけれども、約一週間ぐらい前でございますけれども、いわゆる自走支保用の鉄柱が、これは住金でつくっておる、一社しかつくってないわけでございますけれども、なかなか鉄柱用の資材が入らないということで、あるメーカーのほうから何かあっせんしてくれぬかと、これは直接は生産でございますけれども、当然保安にも影響することだということで、私のほうから基礎産業局のほうにお願いいたしまして、無事当初の希望どおりの数量が入ったということで連絡を受けております。  そういうことで、できるだけ保安あるいは生産に影響を及ぼすような資材につきましては私どもといたしましてあっせんしておるというのが実態でございます。
  200. 小宮武喜

    ○小宮委員 そこで、労働力確保のために、よく魅力ある炭鉱ということがことばでは言われるんですが、それでは具体的に魅力ある炭鉱にするためにはどうしたらいいと思うのですか。
  201. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 第一は、申すまでもなく高賃金であるということであり、あるいは第二は、坑内あるいは坑外での作業環境の完備、いわゆる安心して仕事ができる環境にするということが第二だと思います。しかし、根本的な問題といたしましては、将来に対する展望というものがなかったらこれは幾ら高賃金であろうが若い労働者は集まらないと思います。また、保安が確保されてなくては幾ら高賃金であっても労働者は集まらないと考えております。
  202. 小宮武喜

    ○小宮委員 魅力ある炭鉱にするための一つとして、炭鉱労働者の週休二日制についてはどういうふうに考えておられますか。
  203. 高木俊介

    ○高木(俊)政府委員 週休二日制につきましては、相当むずかしい問題があるのではなかろうかと思います。一つは、炭鉱坑内設備につきまして、他産業と違いまして相当高額な設備投資をしているという点からいきますと、設備につきましてはこれをフル稼働しなくちゃならぬという点が償却面からは出てくるのではなかろうかと思います。そういう点も加味し、なお労働者への、週休二日ということになりますと、現在の三交代制がいいのかどうかというのも一つの問題だろうと思います。そういう点いろいろむずかしい点がございますので、この点につきましては、経営者、労働者のほうで十分お話し合いいただき、今後の週休二日というものに対してできるだけ可能の方向で御検討いただくのがいいのではなかろうかと考えまして、実は、昨年もそういう問題を業界のほうに投げかけておりまして、むずかしいということで一回解散になったという話も聞いておりますけれども、引き続き今後検討していただくテーマとして業界のほうに指示したいというふうに考えております。
  204. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、炭鉱年金がありますね。この炭鉱年金を、今日のような物価狂乱の時代にやはり何らかの措置をすべきじゃないのか。炭鉱年金の物価スライドの問題とそれから受給資格取得年齢の引き下げについてどう考えておられるか。これも私はやはり魅力ある炭鉱にするための一つの施策だとも考えるわけですが、それはいかがでございますか。
  205. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 石炭鉱業年金という年金がございまして、これは厚生年金に入っておる方のうちで石炭鉱業の事業所に勤務している方を対象にして、厚生年金の年金給付にさらに年金を上のせして給付する、こういう仕組みでございます。そこで、この石炭鉱業年金につきましては、その財源として基金をつくっておりまして、この基金に加入しております石炭鉱業の事業主から出炭量に応じた拠出金を徴収いたしまして、それでまかなっておるわけでございます。こういうような制度でございまして、年金の財政方式といたしましては、いわゆる完全積み立て方式と申しまして、将来に向かいまして必要な保険料をそのときにあらかじめとっていく、そしてできるだけその額は将来に向かってあまり変動がないようにというたてまえでございます。したがいまして、これに物価スライドを導入するということにつきましては、年金の数理上の問題として非常に財源の面でむずかしい問題がございます。特に事業主全額負担でございまして、現在の事業主の経営状況等から考えまして、なかなかこの負担についても大きな問題があるというわけでございます。したがいまして、現在のところでは、この石炭年金そのものに物価スライドを導入するということについて私どもはちょっと困難じゃないかと考えておるわけでございますけれども、この石炭年金のもとにあります厚生年金につきましては、昨年大幅な制度改正によりまして年金額の引き上げ、物価スライドの導入というものが実現することになったわけでございまして、これに合わせて今後ともこの石炭の年金の給付改善ということには努力をいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから第二点の、この石炭年金の年金の支給年齢の引き下げの問題でございますが、この石炭年金は厚生年金の老齢年金に乗っけて給付するという性格のものでございますので、厚生年金の老齢年金がどういうふうに支給されるかということと密接に関連をしておるわけでございます。したがいまして、厚生年金の老齢年金の支給開始年齢に合わせて制度ができておりますので、これは石炭年金独自の年齢の引き下げということについては、やはり私どもとしては現在のところ考えておらないわけでございます。いずれにしましても、今後石炭年金については、少なくとも五年ごとに財政の再計算を行なうという規定もございますし、こうういう時代でございますから、給付の内容改善ということについて最大限の努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  206. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、炭鉱年金はいまのままだということの答弁のようですが、この問題はまたあとで別にやります。  時間の関係もありますから、最後に、先ほども質問が出ておりましたように、炭鉱労働者の災害の現状についてひとつお伺いしたい。もう一度に言いますから。それから災害の傾向ですね。たとえば昭和三十三年ごろからの傾向が今日までどうなっておる、ふえているのか減っておるのか、そういうような傾向と、そしてまたこれまでとってきた対策、また今後の対策についてもあわせてひとつ御答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  207. 原木雄介

    ○原木説明員 災害全般について申し上げますと、百万人当たりで働かれますと何人くらいけがをされるかという率がございますが、その率で申しますと、昨年、ことしと非常によくなっておりまして、実を申しますと、百万人当たり働かれますと約七百人の方のけがが出ておったわけでございますが、それは四十七年でございますが、四十八年はこれが五百人程度に落ちております。この一月、二月というのは、率としては下がって、三百人程度に下がっております。ただし、死亡者につきましては、先ほど多田委員のほうからも御指摘もございましたように、必ずしも減っておりません。四十七年に百十八名、これは三十年前後に比べますと、六百名あるいはそういったような数字から見れば大幅に減っておりますが、炭鉱が減っておる、それから稼働人員も減っておるということから見ました場合に、必ずしも率としては——特に出炭ということではなくて、稼働しておられる数のほうの上からいえば下がっておりますけれども、負傷されるほうの率の低下ということから見れば、大幅な低下とは申し上げかねると思います。ことに昨年、ことしと、ことしはまだ二カ月でございますが、傾向を見た場合には、完全に横ばいになってしまっておるということでございます。  それから、重大災害と申しますが、特に炭鉱に多うございましたガス爆発と申しますのは、幸いにして昨年は一件も起きていなかったわけでございますが、これはやはり設備的なものが相当大きなウエートがありますし、技術的な面の開発も進んだからだと思いますけれども、実態を申しますと、決して油断できない状態にあるということは事実でございます。したがいまして、私どもとしては、災害の防止について今後どうするかという問題につきましては、非常に大きな災害については、設備面あるいは技術面の開発といったものでこれを防止すると同時に、頻発災害と申しますか、ことし起きておりますような災害について、これは人の問題でございますので、管理面を特に主体にしまして、徹底した保安教育というものを通じて、これの改善をはかっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  208. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、これで質問を終わります。
  209. 田代文久

    田代委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十四分散会