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1974-02-28 第72回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十八日(木曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 田中 六助君 理事 山崎平八郎君    理事 山下 徳夫君 理事 多賀谷真稔君    理事 渡辺 惣蔵君 理事 多田 光雄君       篠田 弘作君    岡田 春夫君       上坂  昇君    中村 重光君       鬼木 勝利君    松尾 信人君       小宮 武喜君  出席政府委員         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君  委員外出席者         参  考  人         (北海道大学教         授)      磯部 俊郎君         参  考  人         (三井アルミニ         ウム工業株式会         社技術部副部         長)      坂西  順君         参  考  人         (石炭技術研究         所企画部長)  山村礼次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として北海道大学教授磯部俊郎君、三井アルミニウム工業株式会社技術部部長坂西順君、石炭技術研究所企画部長山村礼次郎君の御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。参考人各位には、本件につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から、参考人の御意見に対して質疑をいただきたいと存じます。  まず、磯部参考人にお願いいたします。
  3. 磯部俊郎

    磯部参考人 磯部でございます。  それでは私から皮切りに、石炭の将来それから現在、そういったようなことにつきまして、私なりの考えを申し上げたいと思います。何しろこういった場所でお話し申し上げるというのはふなれでございますので、いろいろお聞き苦しいところもあるかと存じますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  私の申し上げることは大体六つの点に分かれております。第一は、いわゆる国産エネルギーをどうして位置づけたらいいだろうかという問題、これは日ごろの考えでございます。第二は、日本の埋炭量をどう考えるべきか。三番目は、石炭価格炭価の問題を若干申し上げたいと思います。四番目は、いま炭鉱界で非常に問題になっております労働力確保にどういう考え方をすべきであろうかということ。それから五番目は、これから新しい炭鉱あるいは古い炭鉱がだんだん条件の悪いところへ入ってくる、そういうようなことで、新技術開発はいかなる形であるべきか。それから最後に、当面の石炭対策、それがどんな形で考えられるべきであろうか、そういった六つの点についてお話し申し上げたいと思います。  最初の、国産エネルギーというような問題でございますけれども、私ども国産エネルギーというものをどういうふうに位置づけをするか、こういう問題については、私なりにはこう考えております。  つまりいろいろな海外事情、そういうようなことがありまして、日本に一滴の石油も一かけらの石炭も入ってこなくなった。それから原子力というようなものも、今後の問題で、現在急に大きくなる見込みはそう強くない。そんなようなことを総合いたしますと、結局私どもは、国産エネルギーで、一体一億の国民が、どれだけあれば最低の、まあしかしかつかつの生活が営めるかどうか、そういう問題についてまず考えてみたわけでございます。  これは多少資料が古いと思いますけれども、大体戦前でございます。一九三七年の国民一人当たり一年間の消費量石炭一トンでございます。それから一九五〇年、これは多少ぐあいの悪い年なんですが、〇・七七トンになっております。それから一九五六年、これが一・一五トン、大体国民一人当たり石炭換算で一年間に約一トンの石炭があれば、非常に不自由であるけれども、何とか一年間切り抜け得る、それだけのエネルギー量である、こういうふうに私自身は思っております。ある本によりますと、一・五トン以上であれば先進国だ。それ以下であればいわゆる後進国であるというようなことを書いた本もございますけれども、かりに後進国程度であったとしても、まず一トンを国産エネルギーとして確保すべきである、こういうことが前提になると私は思います。  それで、一トンと申しますと、日本一億の人口に対して一億トン、こういうざっと大づかみな数が出てまいります。その一億トンに対して、一体何によって国産エネルギーをまかなうか、そういうことになりますと、それはもう私が申し上げるまでもないのですけれども、いわゆる水力発電水力と、それから石炭と、この二つに集約されるのじゃないか、そう思います。水力のほうは、それは豊水期渇水期というような、年によって若干の違いはあると思いますけれども、一応昭和四十六年、これは若干豊水期ということもございましたけれども、約九百億キロワットアワー、そのぐらいの電力を発生しております。水力開発が進められたとしたら、これは九百億ないし一千億キロワットアワー水力発電電力はまかなえるのじゃないかというような、私は水力の専門でございませんが、そんなような考えを持ったわけでございます。  そうしますと、大体一キロワットアワーの電気を発生するのに、石炭で換算しますと約〇・五キロ、ですから九百億ないし一千億キロワットアワー電力に対して、石炭に換算しますと大体四千五百万トンから五千万トンというような数字が出てまいります。その最低限一億のうちの約半分、五千万トンは水力をもってこれに充てることができる。  そうすると、残りは石炭でございます。石炭は、やはり国内炭としては五千万トンというのを一つめど考えるべきではないか。石炭産業をそこまで育成していくことが、これはあらゆるリスクに耐える、いわゆる国内のエネルギー考え方ではないか、こういうふうに私ば思っております。  現状、それでは五千万トン出るかという問題は、これは別問題といたしまして、われわれは過去において五千万トン掘ったこともございます。したがって、可能性という点はこれはゼロではない。したがって、そういう方向に向かって、石炭というものは今後日本最低の必要なエネルギー源としてやはり育成していくべきであろう、こういうふうに思っております。  それから、第二点の埋炭量、いわゆる炭田能力というものについて申し上げたいと思います。  埋炭量というのは、これは非常にむずかしい問題でございます。昭和三十年ごろにずいぶん通産省がいろいろな方にコンサルトいたしまして、非常に長期間をかけて鋭意努力をして、日本の埋炭量は、いろいろな点、つまり技術水準あるいは炭層の可採度、そういったようなものを全部調査をしまして、約二百億トンという数字をはじき出しております。これはいわゆる理論可採埋蔵炭量と申しますか、いわば架空の炭量といっても差しつかえないような数字でございますが、一つめどとしてとられる数字でございます。  その理論可採埋蔵炭量の中で一体どれだけ掘れるか、これは純技術的にのみ申し上げます。その経費とかあるいは設備投資とか炭価とかいう問題を抜きにして申し上げますと、まず一応そこに安全率というようなものをひとつ考えなければいけないわけであります。かりに二百億トンあっても、その中でだいじょうぶこれだけあるだろうというような点、あるいはかりにあっても、それはいろいろな条件で掘れないだろうと考えられる点、そういうものを差し引くために、安全率というのを考慮いたします。これには、その場所、そのところ、それから時期、そういうものによっていろいろ安全率のとり方が変わっておりまして、一定の方式はございません。大体七、八〇%から四、五〇%の間をふらついている数字、こういうふうにお思いになればけっこうでございます。そこで私は、この数字を一応話半分ととりまして、まず安全炭量は百億トンというふうに考えてみる。ところが、この安全炭量百億トンと申しましても、これが全部掘れるわけではございません。やはり採掘していく途中において断層が出たり、あるいはその他の事情で放棄しなければならない炭量もございます。それから、あるだろうと思って行ってみてもやはりなかったという場合もございます。それから、完全に採掘するということも、これは実は不可能な話でございます。技術的に不可能でございます。そういう点を見ますと、実収炭量、実際にどれだけとれるかという実収率というものをかけなければならない。  そうすると、百億トンに対して一体どれだけの実収率をかけるかという問題が出てくるわけでございます。その実収率も、やはり採掘方法それから自然条件、そういったようなものによってずいぶん変わってまいります。ある山では、うちでは八十何%の実収率がありますといい、ある山では、いや私のところは四〇%ぐらいしかありませんと、こういう。そういうように非常に大きな差がございます。そこで、一応私は、この実収率を六〇%、五〇%、四〇%と三種類に分けて考えてみました。それ以上の実収率は実技上はなかなかむずかしかろうということで、六〇%と見ますと約六十億トン、五〇%と見ると五十億トン、四〇%と見ると四十億トンという炭量考えられる。  それで、これは昭和三十年ぐらいの調査でございますので、その後現在まで約二十年、約十億トンぐらい掘っていると思います。それでその分を差し引きますと、現在は大体五十億トンないし三十億トンぐらい、そのぐらいの炭量が残存している可能性が強い、これは確実にそれだけあるかということは行ってみなければわからないわけで、掘ってみなければわかりませんけれども、その可能性は強いというふうに考えられます。そうしますと、一応年産五千万トンベースで維持するとすれば、約百年から六十年、そのぐらいの炭量が残存しているというふうに考えられます。百年にしても六十年にしても、これはきわめてロングランの、長い数字でございます。  それで、一応日本炭田能力としては、現在、これから掘っていくのに一体どのぐらいの可採年数を考えたらいいだろうかという問題を次に考えてみたわけです。それは、大体人間の一世代、いわゆる働き盛りという期間というのは普通約三十年、これをワンゼネレーション、こういうわけであります。その三十年にプラス十五年、いわゆる一・五世代、四十五年間ぐらい掘れれば、かりに今後原子力が相当出てくる、あるいはほかのエネルギー開発されるとしても、そのつなぎとしては、四十五年ぐらいのロングラン、一・五世代を見たらよろしいのじゃないか。そうなれば、炭田能力から考え十分——これは経費とか労働力とか、あるいは開発資金とか、そういうものを論外にして、大体一・五世代は掘れる炭量を現存しているであろうということの確率が大きい、こういうふうに申し上げてもよろしいのではないかと思います。  それから三番目は、先ほど申し上げました炭価でございます。  現在石炭産業というのが、石油、そういうものに押されまして非常に苦境に立っております。そういう苦境の最大の原因は低炭価石炭価格が安いのと、それから一定価格に押えられている。若干は上昇しておりますけれども、ほぼ一定価格に押えられているというところに問題点があるわけでございます。これは、この価格がきめられた時点ではそう安い価格ではなかったかもしれません。しかし、その後累年のベースアップ、それから物価の上昇、そういうものによってその差額はどんどん食われてしまって、それでしばらく前からはそれが逆転してしまって、炭鉱慢性赤字累積というような状況になってしまったわけでございます。これは経済状態その他でやむを得ない点も若干はあると思いますけれども、いわゆる国産エネルギーの育成という点から考えてみますと、とにかく炭鉱が食える炭価をはじき出してみる。労務費物品費あるいは償却費、そういったようなものをすべて積算いたしまして、それで一山一山に対して食える炭価を査定していく、それによって初めて現有炭鉱が生きられるのではないかと考えております。自然条件その他によって、一つ一つの山の炭価というのは全然一定されるわけではございません。やはり一山一山に対して適切な施策、いわゆる炭価のはじき方というものがなければいけないと思います。それで総合炭価はどう考えるかという問題になりますと、これはむしろ経済ベースの問題で、私ども技術屋の申し上げることではないので、それは省かせていただきます。そういったことで、今後ベースアップもあると思います。あるいは物価も猛烈に上昇しております。したがって、炭価赤字幅累積はきわめて大きくなって、これだけでも炭鉱はたぶんやっていけなくなるだろう。この問題をまず個々の山について手当てをしなければいけないだろう、こういうふうに考えております。  次は、四番目の労働力の問題でございます。  炭鉱労働力というのは、日本ばかりではございません、世界的に非常に払底しております。日本もその例に漏れずきわめて払底しておって、それでこれから石炭が必要だから増産しよう、あるいは閉山炭鉱復活しよう、あるいは新炭田開発しようかという問題になりましても、労働力の壁に突き当たって、現状ではとうてい不可能という線を出さざるを得ない状況でございます。  そういった労働力をいかにして確保するかという問題で、私はこう考えております。これは若干遠回しの方法かもしれませんけれども公国立、いわゆる公立の鉱員養成所というものを全国各地に設置したらよろしいのではないか。幸いに現在、保安センターというのが北海道、常磐、九州にございます。こういうところでは、保安に関する教育、訓練というものを主体にずいぶん活躍をしております。こういったものを拡充強化して、それで鉱員養成所をつくる。鉱員養成所は、具体的に申し上げますと、私の私案でございますけれども、三つの段階で考えたらよろしい。最初中学卒もしくはそれ以上の人を入所させて、二、三年の教育で後山をつくる。なぜかと申しますと、炭鉱労働者というのは、ぽっと入ってそれでつとまるかというと、決してそれはできないわけであります。石炭産業というのはいまでもなお人力産業でありまして、かなり高度の熟練としかも知識が必要な労働力でございます。これは昔からいわれていたことなんですが、非常に質のいい労働力というのは、時間をかけて養成しなければできない種類のものでございます。それで質の悪い労働力であるならば、保安上非常に問題点が出てくるわけでございます。そんなことで、いわゆる後山養成所後山ということばが悪ければ、初級鉱員養成所というようなものをつくりまして、そこで教育した人を山に配置する。その教育された人が山で二、三年あるいは数年経験を積んだ後に、その中から優秀者を選抜して、今度は上級鉱員養成所というものに入れる。これは一ないし二年くらいの修業期間で、これを終業した人は先山として母山に帰す。もちろんこの上級鉱員養成所職種別養成方式をとる必要があるだろうと思います。そういった母山に帰った人々の中から、数年もしくは十年くらい、非常に働きも優秀である、人物も識見も卓越している人をさらに選抜いたしまして、いわゆる特級鉱員養成所というようなものに入所させる。これはいかなる困難な仕事にも耐え、あるいは鉱員の亀鑑と仰がれるだけの人物養成、いわゆる大先山あるいは特選鉱員というような方々の養成をはかり、一部それらの方々は養成所の教員としても採用する、こういう方法で技能の温存それから展開というものをはかるべきだ。そういったところを卒業した人々というのは、国がオーソライズして、それである資格を与える。賃金、待遇すべてその組織のもとに行なうというような方法をとるべきではないか。それで鉱員の身分のままでも、その山の万人の信用を集め、尊敬を受けて、最大の待遇を受ける人が山に何人かいても決して私はふしぎじゃない、そういうふうに考えております。そんなようなことを考えることが労働力——これはあるいは遠い方法かもしれませんが、急がば回れ、回り道をしないでまっすぐ行くよりも、かえってそういった方法をとったほうがいいのじゃないかというふうに考えております。  それから、第五の問題の新技術開発でございます。  日本炭鉱というのは、いま申し上げたように炭量が諸外国に比べるときわめて少ない。その炭量に向かっていどむわけでございますので、どんどん深部に入ってまいります。そういった深部に入ってまいりますと、未知の領域に入る。そのほかに自然条件の悪化が加わるというようなことで、各種の技術的な問題が出てまいります。主としてこれは保安的な問題でございます。これが解決できなければ、結局深部採掘深部展開炭鉱の延命というものは不可能でございます。そんなことを考えますと、この深部対策技術、これを確立すること、それからもう一つは、日本の場合は非常に傾斜の強い炭層、急傾斜炭層が多いわけでございます。これは九州はあまりございませんが、北海道には非常に急傾斜が多うございます。こういった急傾斜技術開発というのはまだまだ不十分でございます。これを何とかしなければ、いわゆる関係者と肩を並べて石炭技術を推進するということはできません。この二点に関して新技術開発を十分推進すべきだと思います。  これにつきましては、役所のほうでも前々から深部対策委員会とかあるいはガス突出対策委員会とかいろいろな委員会を設けて、現場の方あるいは私どものような学校の研究者といった者で討議を重ねてきております。ただ私は、それだけではまだ不十分だ。やはりこういった問題は片手間にできるものじゃない。通産省内部とかあるいはほかにそういった組織を設けたなら、一年とか二年とか適当な人物を出向させて、それに専念させる。それで初めてこれが具体化してくるのじゃないかというふうに思っております。そういったことが新技術開発の私の考えております要点でございます。個々の突出はどうするとか、あるいは山はねはどうするとか、ガス爆発はどうするかというような問題は、これは非常にこまかになりますので、一応割愛させていただきます。  最後に、当面の石炭対策として一体何を考えるべきかということでございますが、その第一は、私は、政府が、いわゆる国が方針として、石炭は見捨てないぞ、石炭日本基幹エネルギー産業として非常に重要なものであるということを内外にまず公言していただく、これだけでも私はずいぶん違ってくると思います。  それから二番目の問題は、石炭を将来どうだとか五千万トンとかといっても、何といっても、現在の炭鉱をいかにして生かしていくか、育成強化していくかという問題が最大の問題でございます。現有炭鉱というのは非常に疲弊しておりますし、累積赤字をかかえて困っております。こういった問題をさしあたってどう解決して、炭鉱を健全な形に戻してやるかという問題をまず第一に取り上げるべきではないか、こういうふうに思います。  それから三番目は、いわゆる閉山した炭鉱復活可能性のあるもの、こういったものを調査して、一体どのぐらいの資金をかけてどのぐらいの労働力をかければどの程度の生産力まで回復するかというようなことを立案し、さらにそれを実行に移すことだと思います。これで私はおそらく、二、三百万トン、あるいは場合によっては五百万トンぐらいの復活が可能でないかというふうに考えております。  それから四番目は、いわゆる処女炭田北海道でいえば天北あるいは釧路というような処女炭田に大きな炭鉱開発していく。これをいわゆるプラスアルファとする。ただし、そのプラスアルファ分では、現有炭鉱もだんだん老齢化して、それで採掘区域が縮小してついにはなくなってしまうというようなところもございます。そういったようなものに対する代替鉱にもなります。そういうことで、その処女炭田開発を推進すべきである。これについては、その処女炭田地質調査あるいは炭量調査開発方針調査、そういったものを、そのボーリングを含めまして、その他の気候条件あるいは消費構造、そういったものも全部勘案して、そういったような進め方をやる。この閉山炭鉱復活と新炭田開発については、これはいわゆる民間企業ベースでは現在ではどうにもならないだろう。やはりある程度民間の会社が幾つか集まってのジョイント、それにユーザーが集まってのジョイント、それにいわゆる政府出資によって、それで政府がその上に乗っかって、いわゆる準公営もしくは公営の形でスタートすべきでないか、こういうふうに考えております。  最後に申し上げたいのは、いかに日本の内部を調査いたしましても、やはりどうしてもこれ以上の生産量は望めないといった場合には、今後、エネルギー対策として、やはり海外炭田開発考えなければいけない。その海外炭田開発に対していかなる方針をとるべきか。いわゆる海外技術屋日本での養成、あるいは日本技術屋海外派遣、それから国際交流というようなものを中心にして、それで海外開発にひとつ重点を持っていくべきじゃないか。  こういった五つの点を、第六番目の当面の対策として申し上げたいと思っております。  以上でございます。どうもありがとうございました。
  4. 田代文久

  5. 坂西順

    坂西参考人 三井アルミ坂西でございます。  いま先生から非常に次元の高いお話がありましたのですが、私はつい先般転勤になりまして、それまではずっと現場で、三井アルミ三池火力発電所建設計画を全部やってまいりましたので、そういう意味で、ただいまからお話しいたします内容は、多少我田引水で、この場でお話するようなことかどうか存じませんが、実績をもとにした石炭火力の運営をいかにしてやってきたかという点を主にお話いたしたいと思います。  実は、四十二年ごろ三井鉱山で、百万トンほどの貯炭がありまして、将来の石炭対策としてどう考えるかということで、何とか石炭を消費して電力を使う企業ができないかということで、アルミ精錬ということを計画したわけでございますが、実はその当時、石炭というのは御存じのとおり衰微の一途をたどっておりまして、いまごろ石炭火力を計画するというのは非常にあぶないんじゃないかというようなことを個人的に言われたり、いろいろいたしました。しかし、考えてみますと、当時のころから石炭鉱業界でいろいろと原料炭の増産という方向に逐次問題が向いていく。そうしますと、当然原料炭の水洗ということによって多量の微粉が出てくる。それをいかにして需要を求めるかということは、鉱山自体の問題として非常に重要な課題だったと思うのです。実は、石炭を使うといいましても、アルミ自身が採算に合わなければいかぬ。そうすれば当然安い電力を得たい。それで、安い電力を得ようとすれば、人の使わない石炭を活用する以外に方法がないというようなことから、基本的には、鉱山のそういう問題とアルミの安い電力を得たいという問題がくしくも微粉炭という問題に集中いたしまして、これを何とか消化することで双方の目的を達成できるんじゃないかというところに基本的な考え方があったと思います。  そのような発想から実は四十六年に、日本では一番大きな自家発十五万六千キロの発電所をつくりまして、現在、年間七万九千トンほどのアルミ地金を生産しておるわけでございますが、たまたまこういう情勢もありまして、現在は二号機、十七万五千キロの同じく石炭専焼火力建設中でありまして、来年の七月には完成いたします。そうしますと、十六万トン何がしのアルミの地金の生産が可能になります。実は、この体制ができ上がりますと、御存じのとおり、百二十万トンほどの三池炭を使うことになるわけでございます。  それで実は、石炭火力で、しかも微粉炭をたくということは、当時は、非常に無理なんじゃないかという意見がありまして、したがって、まずその沈澱微粉といわれるものの乾燥設備をやらにゃいかぬとか、御存じのとおり、三池炭は非常に粘る石炭でございますので、そういうものをうまくたくボイラーを設計し直さなければいかぬ。それからさらに、一番問題であります硫黄分が高いという問題をどうするかということで、御存じのとおり、排煙脱硫を業界に先がけて石炭専焼火力に採用するという、大体そういう特殊のことを裏づけにして、実は今日の状態を迎えることができておる次第でございます。  それで、実は、過去のことを思いますと、発電所で微粉分が二〇%とかそういう抑制とされて、微粉が少なくないとたけないということを言っておられたんですが、実は現在八〇%以上は微粉炭でございます、もちろん二号機ができますと、そんなに微粉が無限にあるわけじゃないものですから、多少率は減りますけれども、微粉の多い石炭をたくために、もちろん乾燥にも問題もありますけれども、実際いろいろなくふうをしてみますと使用上支障がないということは、われわれの二年半の運転実績で実証されていると思います。  さらに、三池炭のクリーンカーは、非常に粘る炭と申し上げましたけれども、これなども、実は三池炭専焼の火力は当時なかったわけで、大体三、四〇%が限度であるといわれておりましたけれども、設計に意を注ぎまして、現実には一〇〇%三池炭で問題なくたけておるということも、非常に努力を要したことでありますけれども、無事操業しております。  さらに、実は一番大きな高硫黄分の問題でございますが、四十二年から三年にかけて計画いたしましたころ、石炭火力をいまからつくるのならばダストと硫黄分がたいへんだなということは直感的にわかるわけですけれども通産省の御指導を得ましていろいろやりましたのですが、建設の途中ですでにK値の問題が出てまいりまして、このままではたけないというような問題から排煙脱硫を手がけた。ところが当時は、乾式の排煙脱硫しか国家的なプロジェクトでは研究されていなかったものですから、やむを得ず諸外国等を調べまして、一番適するだろう——これは机上の検討だけでございますけれども、輸入技術を取り入れまして、いま非常に盛んになっております石灰法の排煙脱硫、これに取り組むことに決心いたしました。おかげさまで、現実にはこれが非常にうまくいきまして、無事K値を満足するだけでなくて、将来のK値強化に対しても対処できるというような現実を迎えることができております。  もちろんばいじんのほうもありますけれども、ばいじんは電気集じん機を使うだけでなくて、湿式の排煙脱硫を使うことで楽にとれますので、問題ございません。  もちろん硫黄分のほうに関しましては、高煙突も並用はしておりますけれども、二百メートルグラスというようなものをつくるには、狭い場所でありますので、百八十メートル程度でがまんをして排煙脱硫の効果をあげることに期待をかけざるを得ないというような実情でございます。  では、その排煙脱硫について問題ないのかとよく聞かれます。非常にお客さまも多くて、世界じゅうからも見に来られるわけですけれども、まず安定操業という問題に関しましては、事実二年半トラブルなしで、定期修理以外はとめたことはございませんので、操業上は非常に苦労しておりますけれども、運転管理をよくするということで問題ございません。  それから排煙脱硫をやれば、コストの問題が当然問題になりますけれども、これはわれわれが早くやりましたおかげで設備費が安くできた。いまならば相当高くなると思いますけれども、現実には石炭トン当たり五、六百円というのが、われわれの排煙脱硫コストでございます。これは去年までの実績でございますので、その後まだ諸物価その他で上がるかとは思いますが、また建設費も上がれば大きく上がるかと思いますが、現実にはそれほどこたえずに操業できる状態でございます。  ただ一つ問題点としましては、われわれは非常に早くやりましたために、副生品の利用という面でまだ完全でございません。すでに試験を済ませまして現在建設中の石こうをつくるということで、この問題を解決したいと思っております。ことしの夏にはその第一期の分ができまして、将来二号機まで合わせますと、年間十四万トンばかりの石こうができる予定でございます。これは灰捨て場その他の問題を解決するためにも早急に実現したいと考えております。  最後に、実は石炭火力で非常に問題は、窒素酸化物がございます。これは重油等の場合は燃焼法の改善あるいは排煙脱硝ということで将来は期待できると思いますけれども、われわれさしあたっては燃焼法の改善でやらなければいけないわけですけれども、実はこの燃焼法の改善といいましても、非常に粘る石炭には多少問題が出てまいりますそういう意味で、われわれが今後石炭火力を問題なく運営していく上では、窒素酸化物の問題というのは一つの残された問題だと思います。さしあたっての規制値には十分合格できると思いますけれども、将来の考え方としては、できればそういう問題を早く、よりいい成績にできるような設備を期待したいと考えております。  多少自慢めいたことばかり申し上げましたけれども、実はこの石炭専焼を維持するにあたりましては、私たち自身一種の執念があったのじゃないかというような気がいたします。しゃにむにでも石炭火力を完成させるというのが、現時点、こういう石炭見直しという時期で、われわれ自身も時代がよく変わるものだなと感心しております。今後も微力ながら石炭火力の推進に努力していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
  6. 田代文久

    田代委員長 次に、山村参考人
  7. 山村礼次郎

    ○山村参考人 石炭技術研究所の山村でございます。  この委員会におきまして、石炭のガス化、液化など、石炭の新利用技術につきまして所見を述べさせていただく機会を得ましたことを、まことにありがたく存じております。  石炭は、今世紀の初頭以来非常に世界的に産業が発達いたしましたが、発電とかスチーム供給とか、そういったような関係で燃料として石炭を非常に大量に使うというばかりじゃなくて、コークスを製造しまして高炉製鉄を非常に大量生産化していくといったようなやり方、あるいは乾留タールを原料にしまして染料とか火薬とかあるいは各種の化学製品とか医薬品といったものを製造しますいわゆるタール化学工業というのがございますが、こういった分野、あるいはガス化によりましてガス合成化学工業、こういった分野にまで進みました。またその後、さらに液化いたしまして内燃機関用燃料をつくるといったようないろいろな分野に、石炭は産業の発達に大きく貢献してきた、こういったような過去の事実は、これは皆さんよく御承知のことだと存じます。  この間に、石炭のガス化とか液化の技術は目ざましい発達を遂げておりまして、一番中心になりましたのはドイツでございますが、ヨーロッパの各国あるいはわが国におきましても、戦前はガス化とか液化はすでに企業化はされております。しかし、そういったようなことは別にしまして、近年再び注目され出しました石炭のガス化、液化、こういったような利用技術につきましては、戦前とやや異なった背景、それからそれに基づく技術的な内容を持っているのだといったふうに私は考えております。  これを、そういった背景関係をちょっと概括して述べてみたいと思いますが、第一は、世界の最近、あるいは今後のエネルギー需要が非常に大きく伸びてまいりますが、その中で石炭をもう一度大きく取り上げていかなければならぬといった必要性がある、これが第一の点でございます。それから第二は、将来のエネルギー市場の要求は大きく流体燃料に傾いてきたという事実でございます。それから第三としましては、さらに今後のエネルギー供給にあたりまして、環境保全対策といった点を考慮して、無公害性が大前提になってきたということであります。この三つの重要な条件を満たすといったところから、石炭を原料としたガス化とか液化が注目され出したのだというふうに考えてまず間違いないのじゃないかと存じております。  いま申し上げました三点について、もう少し御説明申し上げますと、第一のエネルギー需要の伸びにつきましては、これはすでに皆さん御承知のことだと思いますが、ヨーロッパにおけるECとかあるいはOECDとか、あるいは国連の経済社会理事会の活動とかといったようなところで、いままでも何回となく調査とか検討が行なわれております。ところが、それで過去十数年の様子を見ておりますと、いずれもその当時の見通しが実際は予想を上回って非常に消費が伸びてきたというのが実情でございます。  その理由といたしまして、以前と非常に違っておりますのは、先進工業国の産業活動が非常に活発に拡大してきたといったようなことだけじゃございませんで、いわゆる開発途上国とかあるいは計画経済圏の各諸国を含めて、世界的に経済活動が非常に伸びてきた、これが一つ大きなところでございます。  さらにもう一つの問題としましては、世界的に人類の生活水準が非常に高まってきた。その向上が非常に目ざましいので、これに基づいて民生用のエネルギーの消費が非常に伸びてきたといった点があるのだと存じております。  したがいまして、昨年の二月ニューデリーで国連の経済社会理事会の天然資源委員会がございまして、そのときの発表をちょっと見ましたのですが、これあたりでも今後一九八〇年とか一九九〇年といった年次にかけましては、エネルギー消費の伸びは大体年間伸び率で四・八から五・一%といったようなところで、それを下回るようなことはないだろうといったような予想をしております。ところが、こういったような非常に大きなエネルギー需要の伸びをどうして充足するかというところがやはり非常に問題になってくるわけです。  ここ十数年の様子を見ますと、これも皆さんよく御存じのことでございますが、もっぱら非常に安い石油の大量供給と、それからもう一つは、各地域、ヨーロッパとかアフリカとかそれぞれで天然ガスの炭田開発、供給といった面が非常に伸びてまいりました。そういったところで大体まかなわれてきたということができるのでございますが、しかし、こういった石油とか天然ガスの流体の化石燃料で今後まかない得るかといいますと、実際問題としては非常にむずかしいわけであります。十数年前からそういった面がいろいろ指摘されております。  たとえば、アメリカが一九六〇年に石炭研究法という法律を制定いたしまして、それに基づいて、同年でございますが、内務省に石炭研究局を創設した。そして、その目的が石炭のガス化とか液化の研究を最大限に促進しようといったようなことで動き出しているのですが、これもいま申し上げたような理由に基づくのだと考えています。  すなわち、化石燃料資源としましては、やはり石炭が世界的に埋蔵量が非常に大きい。いままでの発表では大体六・七兆トンなどといわれておりますが、ほかの化石燃料資源に比べますと、最大の埋蔵量を持っております。  それからもう一つ石炭資源の賦存状況が地球上でも比較的広く散在している。そして、それの潜在供給力が非常に大きいということが、それに対する評価が非常に高いのだというふうに見ていいのじゃないかと思います。  それから第二番目としまして、天然ガスとかあるいは石油が非常に大きく伸びましたように、今後のエネルギー市場としましては、取り扱いが非常に容易で、しかも今後の消費が大量化するに伴って、自動化処理が非常にやりやすいという、そういう流体燃料への要求がとにかく非常に強いんだ。したがって、いま申し上げました固体燃料の石炭も、今後は流体化して市場に供給することがどうしても必要だということを認めざるを得ないのではないかと考えております。  それから第三に、最初に第三に申し上げました、近年は全地球的な問題としていろいろ論じられておりますように、いわゆる環境保全対策の立場から、大量使用する燃料につきましては、どうしてもまず無公害にしなければいかぬという要素がございます。これにつきましては、いま坂西参考人からお話のございましたような、排煙脱硫とかいったような対策は当然今後も開発もするし、また、普及をさせなければいかぬことはもちろんでございますが、それ以上に、燃料自体を無公害化していく、いわゆるクリーン化していくといったような面で、ガス化技術とか液化技術開発が非常に必要だということになっているのではないかと思います。  以上申し上げましたように、新しく注目されました液化とかガス化という問題につきましては、その開発目標が、主として今後のエネルギー需給の大きなギャップを何とかして埋めようというところにあるということがいえるのでございます。その点、最初に申し上げましたような戦前に開発企業化されてまいりました、いわゆる合成化学工業の原料としての石炭のガス化とかあるいは航空機とか自動車などの内燃機関用の燃料をおもな目的とした石炭液化技術といったものとは、もちろん根本原理は別に変わるわけではございませんが、性質をやや異にしているんだということが、今後の問題として十分注目しなければいかぬところじゃないかと思っております。  それからもう一つ、こういった大量使用を目的としたいわゆる汎用燃料として開発するという面からいいますと、過去の合成化学工業原料とかあるいは内燃機関燃料と違って、それ以上に経済性の追求が非常に必要だということがいえるのは当然だろうと思います。  わが国でも、昨年来いわめるサンシャイン計画といった名前で、いろんな新エネルギーの問題について長期的な目標が立てられました。その中で石炭の利用技術を取り上げておられますが、これもいま申し上げたような意味から、高カロリーな天然ガスにかわるようないわゆる合成天然ガスあるいは石油にかわる合成原油をつくるんだという、この二つの面でガス化とか液化を長期計画に結びつけて開発しようというところにあるのではないかと考えております。  もちろん、エネルギー需給の今後の安定化をはかるためには、こういった非常に長期的な問題だけじゃございませんで、いわゆる短期とか中期とか長期とか、全部総合的に実施されていかなければいけないことは当然でございます。  その意味で、サンシャイン計画におきましても、ハイカロリーの合成天然ガス製造の研究開発の課題と同時に、いわゆる低カロリーのガスをつくりまして、これでたとえばガスタービンとスチームタービンの複合サイクルの発電をねらうというようなガス化発電システムの開発も取り上げられております。この場合でも、将来の原料事情を考慮いたしまして、使用できる炭種の範囲を最大限に広げ得るように、そういうふうにプロセスとかあるいは装置技術の研究開発を進めていくということが非常に大事なところになるんだと存じます。  最後に、今後ますます重大化すると考えられますエネルギー事情の中で、こういった石炭のガス化、液化技術開発を完成させるために必要な問題はどんな点があるかといったことを、二、三私の気づいた点を申し上げてみたいと思います。  第一番目は、こういった開発には非常に長期にわたって研究者とか技術者の人的戦力を集中する、そしてしかも、これに意欲的に活動してもらうということが必要なんでございます。まずこのためには、総合的なエネルギー対策の中でこういった研究開発が長期一貫して促進されるんだという確信を彼らに与えることが非常に大事でございます。  それから第二番目として、これはちょっと遠い話になりますが、石炭のガス化、液化、こういったような利用技術企業化するに際しましては、その石炭の基本構造とか基本的な特性といったものを正確にとらえて、それにそれぞれに適したプロセスとか装置を開発していくといったことが必要でもあるし、また、それが最も効果的になってくるわけでございます。このためには、非常に基礎的な学術研究の分野でも石炭の研究というものを非常に推進するといった零囲気をつくることが必要だと思います。そういったためには、こういった通産行政的な面だけではございませんで、産業行政の問題だけではなしに、文部行政といいますか、そういう学術研究の分野でも石炭研究の必要性を高めていくということが必要だろうと思います。  それから、第三に申し上げたいことは、これは最近十数年を考えて見ましても、日本の産業というのは非常に発展いたして目ざましいものがございますがその基盤としての産業技術の水準というのは非常に高いところまで来ていることは事実でございます。したがいまして、これから開発を必要としております石炭利用技術の分野につきましても、十数年の空白はあったとは思いますが、その以前にいろいろやられております石炭の利用技術と、それに最近十数年の非常に高い水準の新技術を結びつける、それを結集して仕上げていくということが必要だろう。そしてまた、そうすれば十分石炭の利用技術開発企業化が可能だというふうに私は考えております。  それから第四の点を申し上げますと、こういったような利用技術開発という問題は、これを仕上げてわが国の産業界がその技術を持つということで、これはエネルギー問題だけではございませんが、いわゆる資源政策ということが今後わが国にとって非常に重要な問題になりますが、それの遂行が容易になるという点がございます。それからまた、それによってこれは日本だけではございませんで世界の資源政策にも貢献するといったような、非常に大きな効果を来たすんじゃないかというふうに私は考えております。  以上で、どうも荒っぽい話でございますが私のお話を終わりたいと思いますが、こういったような研究開発を完成させるためには、最初にちょっと申し上げましたが、若い研究者とか技術者が、自分の将来のライフワークなんだといったような気持ちで情熱を持って取っ組めるようなことが必要なわけです。ところが、それには、こういうエネルギー技術対策は非常に長期的な目標のもとにちゃんとやれるんだといったような雰囲気を、これは最初磯部先生もちょっとおっしゃっておられたようですが、こういったような長期目標の確立を皆さんのほうでわが国の中に立てていただくということを最後にもう一度申し上げて、話を終わりたいと思います。
  8. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  9. 田代文久

    田代委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  10. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三先生には、日ごろ私どもが疑問に思っておりましたことをかなり解明をしていただきまして、たいへんありがとうございました。  まず磯部先生からお尋ねいたしたいと思います。実は、私ども国産エネルギー一定確保ということについて、国民のコンセンサスを得られるような水準あるいは目標、そういう基準をどこに見出すべきかということでいろいろ模索をしておるところです。たとえば電力のうちで民生用なら民生用はひとつ水力石炭で行なうとか、まあいろいろ考えておったわけですが、きょう先生のほうから大体一九三七年の国民一人当たりの一トンという数字を出していただきました。そして、その一億トンの基準というのが大体国内エネルギー最低限度のセキュリティーではないかというお話をいただいたわけですが、これも一つの目標になるのかなという感じをいま深めたわけであります。そこでエネルギーの関係は、地熱等を含めて、あるいは国内の天然ガスとかわずかですが石油あるいは日本の大陸だなにある石油を含めて、一体水力石炭のほかにどのくらい期待されるものであろうか。これは必ずしも専門でないかもしれませんけれども、お聞かせ願えれば幸いだと思うのです。
  11. 磯部俊郎

    磯部参考人 いまの御質問、私も専門でございませんのではっきりお答えすることはできません。地熱に関しては、現在サンシャイン計画というようなことで鋭意開発を進めようという段階になっておりますけれども、急速に大きく伸びるというようなことはいまのところは考えられない。それから石油に対しましても、大陸だなその他の石油資源は現在探鉱中で、しかも目ぼしいものは一つもまだ当たっていないというような状況になっていまして、これもあまり期待ができないのじゃないか。天然ガスも大体同じでございます。とにかく外国から入るエネルギーが八〇%以上になっているという現状、将来は九〇%をこえるのじゃないかといったようなときに、最小のリスクとして一応石炭水力だけを取り上げて考えてみたわけでございます。その点についてはっきり申し上げられないのは残念でございます。
  12. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働力の確保が最大の問題ですが、先生からさっき初級、上級、特級という工員養成所ですか、そういうお話があったのですが、こういう技能養成のしかたというのがいまの日本教育のあり方あるいはシステムに合うものかどうか。率直にいいますと、たとえば北海道においても九州においても、炭鉱自体が、名前は高等学校という名前をつけておりましたが、工員養成所を持っておりました。しかし日本の場合は、やはり高等学校の免状がないと肩身が狭いような思いをして、どうも通用しないというきらいがあるのです。どうもそういう職業訓練というものと学校教育がマッチしないわけですね。そこで、炭鉱では通用するけれども社会では通用しない資格だという気持ちを持っておるし、また事実そうなんですね。ですから、そういうところをどういうようにマッチさせてやったらいいのか。前にも言いましたように、何とかかんとか言いましてもやはり日本は学歴偏重の制度ですよ。ですからドイツのように技能の何級というのを一つ一つとっていくという、パン屋さんまでそういう資格のある制度とは、日本のはどうも違うわけですね。そこで、学校教育というものと職業訓練とをどこでマッチをさせたらいいのか、こういう点に実は私ども悩んでいるわけです。  それともう一つは、八幡製鉄あたりは宿老というのがありましたね。いまでもあるのだと思うのです。そしてそれだけの待遇をしておるわけですけれども、さっきは先生は、特殊鉱員養成所は国がオーソライズをして身分、待遇を見てやれ、こういうことですが、私も非常にけっこうと思うのですが、どうもこういう制度が日本の制度の中にとけ込まないのじゃないかという感じがするわけですけれども、外国あたりはどういうようにしておるか、わかりましたらお知らせ願いたいと思います。  時間もありませんから続いて磯部先生にお聞かせ願いたいと思います。  そこで先生が考えられて、鉱区の整理統合をすれば、すでに封鎖をした閉山をした山で、どういうようなブロックで大体考えられるのか、企業形態は別にしまして。かつて北海道では、いろいろなブロックをして開発計画を御存じのように立てたわけです。それで私は、あるいはその中で閉山をし、あるいは封鎖になった炭鉱もあると思いますが、まだ全体的に総合開発をすればこれらの炭量が掘れるのではないか、そういう感じを持つわけですけれども、これが一つポイントではないかと私は思う。ですから、率直に私見でけっこうですから、まだこの地域は掘れるとか、あるいはいまの出炭量の倍ぐらいになるとかいうような地域がありましたら、ひとつお知らせを願いたい、こういうように考えるわけであります。  それから、海外炭田開発の話をされましたけれども、実は率直に言いますと、私ども、アラビア石油がこのたび、日本の資本で投資をしておったが、しかし、クウェートやサウジアラビアからチェックを受けたのは、メジャーと同じようにチェックを受けておる、いな、むしろ事実問題としてはアラビア石油のほうが輸入量が少なかったという問題に遭遇したわけです。そこで、ただ海外炭田開発をしても、そういうセキュリティーの問題をいうときには必ずしも安全ではないぞという感じを今度持ったわけですけれども、それかといって、今日日本炭鉱が、将来の海外開発を含めても、この技術労働力を温存するためにもひとつやはり必要だという面もありますしね。そこで当面、海外炭田開発をした石炭を入れる仕組みはどういうようにしたらいいか。これは再び石油と同じようになって、外国からの安い石炭日本国内炭を圧迫をするのではないかというのが、実は私ども大体一致した心配なんです。ですから、石炭石油という関係でこの前は圧迫を受けたわけです。今度は石炭石炭という関係で圧迫を受けないとも限らないという心配を持っておるのですが、この受け入れ体制をどういうようにお考えであるか。  それからもう一つ、一・五世代ということをおっしゃいましたけれども、これは私は埋蔵量の面からいっても、あるいはまた将来二十一世紀になって、世界のエネルギー事情からいっても、これはどうしても必要だと思いますが、労働者の面からいいましても、一生の職場でない職場に若い者に来いと言いましても無理だろうと思うのですね。ですから、若い諸君が入ってくるのにはそれが一生の職場であるということが必要ではないか。ところが、炭鉱の場合は、個別的な炭鉱ですとやっぱり寿命があるわけです。トータルで平均をしたのでは、その労働者にとって必ずしも生涯を見てやるというわけにいかないわけですから、労働力の面は、何か個別炭鉱に雇用でなくて、全体的な雇用の方法がとれないものかどうか、そういう点についてお聞かせ願えれば幸いだ、こういうように思うのです。  以上です。
  13. 磯部俊郎

    磯部参考人 ではお答えいたします。  最初の国立の養成所というようなものに対する資格の問題、それから諸外国に例があるかという御質問でございますが、諸外国に例があるかというものについては、私寡聞にして知っておりません。これは一つの私見でございます。各炭鉱で鉱業高等学校というのをつくりまして、それによって人員の充足をはかろうというような計画を進めてかつてやったことがございますけれども、いまほとんど全部閉校してしまっております。それはなぜかと申しますと、一つ石炭の非常に大きな斜陽ムード、これに大きな原因があると思います。それで若い者が魅力を感じなくなってしまった。そのために入学者が極端に減り、おそらくゼロというような状況になって、いわゆる閉校せざるを得ない状態に追い込まれてしまった。これらの方々にはもちろん高等学校卒業の資格を与えるシステムがございます。ある高等学校と契約いたしまして、それでそこの授業も受けるというようなことで、高等学校卒業程度の資格を付与するということもございました。それでもやはり来る人がいなかったというのは、結局斜陽ムード、それが最大の原因じゃないか、こういうふうに思っております。ただ、そういった炭鉱業務専一に訓練され教育されていった人が、いわゆる他産業と対比して一体そこに活路というものを見出し得るかどうか、それから国でそれだけの資格をオーソライズしてくれるかどうかという問題は、これから具体的な計画がもし立てられるとしたら、それは十分その時点で詰めなければいけない。こういう業種はこういう業種にもアプリケーションがある、それからこういう職種はこんな業種には向く、それに対してこれだけの資格があればこれはアプリケーションできるのだというようなことを、具体的な問題として一つ一つ詰めていって、それでその資格の取得、それからほかの職場に行ったときの待遇の問題、こういったことも考えなければいけないと思うのです。他産業にはそういった養成機関とかそういうものがございませんから、石炭がもし始めるとすればこれは初めての試みでございます。労働省あるいは通産省あるいは文部省というような関係のところで相当いろいろ問題が起こって、その辺は事務手続あるいは資格の認定ということでかなり具体的な詰めがなければいけないと思います。ですから、これは一つの私案でございます。アイデアを申し上げただけでございます。  第二の問題ですが、いわゆる鉱区問題、これは前々から鉱区ということは炭鉱界にわだかまっている一つのガンである、こういうふうに私自身は思っております。と申しますのは、地質条件あるいは自然条件というものに対して合理的に鉱区線は引かれておりません。やはり何のつもりで引いたかわからないけれども、かなりでたらめに鉱区線が引かれている。それで、一つ炭田にたくさんの鉱区が入り乱れて入っておりまして、そのために開発を阻害したりあるいは鉱区境の炭量を放棄しなければならなくなる。あるいは重複の投資があったり、それから、自然条件は隣接していても違うという観念を与えてみたりというようなことが出てまいります。そういう意味では、私は、全国一社案とかあるいは北海道一社案とかあるいは九州北海道の二社案とかというようなことよりも、むしろ炭田別に一つ開発の機構、これは会社であろうと公社であろうと何でもけっこうでございますが、炭田別に開発の機構を設けて、そしてその炭田内部は、鉱区境界線を撤廃して、それで総合的な、合理的な開発を行なう。それで、人事の交流、技術の交流、坑道の連結、それから廃水処理の統一、名柄の統一、混炭工場の設置管理機構の単一化というようなことを炭田別に推し進めるべきじゃないか。炭田炭田でこれはもちろん特徴が違いますので、炭田別にそういうものを進めてみることによって、初めて統合、合理化というものの一歩を踏み出すんじゃないか。  そういう具体的な例ということを申し上げますと、北海道なんかでしたら——私は北海道のことしか申し上げられませんけれども、北空知炭田とかあるいは夕張炭田あるいは釧路炭田——釧路は現在一社だけでございます。それから、もし天北なんというものを総合開発をするという段階では、そういったものを全部統合した上に、いわゆる国家的資本が投入されて、そして合理的な開発をするというような方針を行なえば、現在よりも少ない投資で、現在よりも合理的な採堀法ができる可能性を内蔵しているというふうに思います。それによって出炭がどれだけふえるかとか、それから生産能率がどれだけ上がるかとか、経費がどれだけ節減されるかという問題は、個々の場合に考えて試算してみなければ出てまいらないことだと思います。その点に関しては、私、まだ試算その他はしたことがございませんので、申し上げられないと思います。  それから次は、海外開発の場合の受け入れ体制というようなことについてのお話でございました。  現在、資源ナショナリズムというようなものが世界にほうはいとして興っておりまして、それで自分のところの資源は自分の国で使うんだ、よそのまでめんどうは見切れないというようなことがだんだん出てくる。したがって、日本海外炭田開発しても、そういうリスクにぶつかったときには一体どうするんだというようなことがあるだろうと、それは私は想像されます。ただしかし、もし絶対量が不足したというような事態になったとしたら、その中のどれか一つでも、半分でも三分の一でも使えるような炭田開発方式、たとえばアラビアがだめならインドネシア、インドネシアがだめなら中国、中国がだめならソ連というような、その国情、政情の違いによってリスクを分散していく、そういうようなことが一つ。  それから、日本は現在、石炭開発技術というのは非常に高いものを持っております。そういう高い技術を使って、それで諸外国に進出をいたしまして、それによって日本技術的な信用を博するというような考え方を持ちますと、これだけお世話になったんだからそうそう冷たいこともできないんじゃないかというようなことも出てくるんじゃないかと、これは個人的に考えております。  それから、石炭の受け入れ体制ですが、これは、海外石炭は確かに安く出てきて、日本国内炭価を圧迫するだろう、こういうふうに考えられます。それで、この開発は、やはり石炭専業のものに移管すべきだ。つまり、現在の海外開発というのは商社ベースで行なわれておる。その利潤というのは商社に吸い取られている。その利潤を石炭専業のものに還元して、それで国内炭の育成に使う。そうしてその海外炭と国内炭をまぜ合わせて炭価の決定を行なうというようなことをすれば、そういった問題は避けられるんじゃないか、こういうふうに思っております。  もう一つございましたが……。
  14. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働者の永遠の職場でない場合が多いけれども、個別炭鉱雇用ではちょっとむずかしいのじゃないか……。
  15. 磯部俊郎

    磯部参考人 それは結局、鉱区の統合とかそういうことで、山が老朽化したような場合には新鉱に移るわけでございますが、そういったことで、労働者の区域内移動、そういうようなことが行なわれる体制を持たせるべきだろう、そう思います。
  16. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 たいへんありがとうございました。先生のお話の中で、一山一山が食える炭価という話を先ほどお話しになりましたし、それがまた鉱区統合で、いわばかなり広範囲な適正規模の炭鉱の造成ということにもつながりまして、われわれとしても非常に参考になりました。これからわれわれがどう政策を出すかという問題が続いて出てくると思うのです。  次に、坂西先生にお尋ねしますが、窒素酸化物の問題ですね、これは今後どういうようになるのか。それから、排煙脱硫はいま新しい設備、ことに二号機の場合はどのぐらいトン当たりで費用がかかるのか、この二点をお知らせを願いたいと思うのです。  それから、山村先生のお話は、われわれも全く同感でありまして、不安定な状態ではきわめて長期な研究というものはできないわけです。これは今後、大きな反省の上に立って政府もまた国会でも、やはり長期的な、一喜一憂することなく安定的な研究体制の確立が必要ではないか、こういうように考えています。  そこで、現在、率直にいいますと、三池でも進んでおるのですが、最近はまた、鳥栖の九州工業技術試験所でも、これはアスファルトですか、から液化の方向を見出した、こういうことが言われておりますが、この二点、ちょっとわかりましたらお知らせ願いたい、こういうように思います。  以上です。
  17. 坂西順

    坂西参考人 窒素酸化物の問題ですけれども、実は新聞でも、非常に新技術開発が盛んに出ておりますが、いずれもパイロットプラントの状態で、それでわれわれとして非常に困る問題は、排煙脱硫にあれだけの大きな設備をした上にまた窒素酸化物の設備をしなければいかぬ。それで、場所的な問題もありますし、また、技術的にもできれば一番望ましいのは、排煙脱硫のその設備で、ちょっとした追加設備で排煙脱硝ができればというようなことを希望しております。それは、排煙脱硫の開発の経過から見ても、あと一、二年はかかるのじゃないかという気がいたしますので、さしあたっては燃焼改善の方法でございますね、二つ、三つありますけれども、これでいま電力会社さんがやっておられるような方法をやはり取り入れていこうというのが現状でございます。これは窒素酸化物の規制が今後どのような方向に向かうかというような場合に、一番不利な状態にある石炭火力をどういうふうに処置していくか、これがわれわれの非常に関心のあるところでございます。  それから次に、設備費のほうで二号機の排煙脱硫でどういうふうなコストになるだろうかということは、実は先ほどちょっと御説明いたしましたように、石こうをつくらなければ排出場に困る。石油ショックの問題で設備費が非常に上がる。幾らでできるのか、いましきりにメーカーと話しておるところであります。実は、予想よりも倍ぐらいに上がってしまうというようなことになりますと、石こうが幾らで売れるか、それから設備費が幾らでおさまるかということがきまらないとちょっとわかりませんけれども、少なくとも先ほど申し上げたようなコストではむずかしいと思います。もっと——悪くすれば倍近くまで上がるんじゃないかという気はいたしております。
  18. 山村礼次郎

    ○山村参考人 お答え申し上げます。  先ほど御質問ございました三池の——三池といいますか、三井グループの研究状況あるいは鳥栖の研究状況でございますが、私自身もあまり詳細には存じてはおりません。ただ、三井グループでちょっとお話し申し上げますと、戦前すでにフィッシャートロプシュ合成というものを三池炭を中心にして非常に盛んにやりまして、現実に大東亜戦争が終わるまでには石炭の液化というものが完全に企業化していたという事実がございます。それから、戦後も石炭の液化という問題については絶えずやっておられたことは存じております。それから最近では、おそらく私が知っておる限りでは、いわゆる溶剤精製法あたりについても相当三池炭、あるいは国内炭あるいは外国炭といったものまで非常に幅広く調査とかあるいはある程度の規模の試験研究をやっていらっしゃるといったような状況をうわさに聞いておりますので、こういったような企業の目標としていろいろ遂行されていることは非常にりっぱな態度じゃないかという感じをしております。それから、鳥栖の九工試だと思いますが、あそこでいろいろ、最近ちょっと新聞あたりへ出ました様子は、全く新しいものといいますよりは、これもある程度戦前から川口の燃料研究所で、膨潤炭というような名前で最近伝わっておりますが、ああいった溶剤で分離していきます無灰炭製造というのは、いろいろ政府の機関としてもやっておられたわけです。その分野が、一部発展の形で九工試でも新技術につなごうといったような研究をなさっていらっしゃるのじゃないかという解釈を私はしております。  ちょうどいまのお話で、いわば三井グループのような企業のいろいろな研究開発とかあるいは企業化の問題がございますが、最近、私、今月の四日ですか、アメリカの予算教書が発表されておりますが、あれを見ておりまして、ちょっと私なりで気がついたことがございます。それは、先ほどの陳述でも申し上げましたように、いわゆるOCRあたりが中心で、国が本格的に研究開発をして将来の企業化を推進するんだといった動きは、すでに相当前、十数年前から動いておるのでございますが、ことしの予算教書にちょっと入っておりますのは、そういったもの以外に、さらに既存の技術での企業化を国の資本を投じてでも促進するのだということを、ことし、つまり七五年の予算教書で五カ年計画の中に非常に強く主張しておるようでございます。つまりアメリカとしましては、おそらくは今後五年間でアメリカの経済が必要とするエネルギー需給を完全に自給化体制をとるのだ、そのために、研究開発はもちろん従来どおり活発に、それ以上に促進はするけれども、それ以外に、いろいろな既存の技術についても経済性や何かでとだえていたものも取り上げて、それの企業化を促進しよう、それに必要な資金は国も出すのだといったようなところに、つまり研究開発企業化促進というのを並行的に活発に進めるといったようなことがアメリカのことし発表した予算教書には強く出ているような感じがいたします。  そういった面で、わが国でも、いまのサンシャイン計画のような形で長期的な研究開発はもちろん活発に促進していただきたいのでございますが、それ以外に、各企業グループがいろいろ短期的といいますか、早い企業化をねらっていろいろやられるという計画についても、これは内容は評価しなければいかぬわけですが、国も積極的に取り上げて、それを促進なり推進するといったことはぜひ必要だ。別に研究開発企業化は矛盾するものではございませんで、エネルギー問題の面では両者とも必要だといったふうに私は判断しております。  以上でございます。
  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ありがとうございました。
  20. 田代文久

    田代委員長 篠田弘作君。
  21. 篠田弘作

    ○篠田委員 北大の磯部先生に質問したいのですが、第一の問題で、国産エネルギーのところでちょっとはっきりしないところがありましたが、大体国民一人当たり石炭は一トン、すなわち一億トンあればよろしい、水力を五千万トンとすれば、石炭五千万トン、水力五千万トンで自給できるというお話でしたが、何の自給ができるのですか。それをまず聞きたい。
  22. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答えいたします。  水力に関しては、先ほど申し上げましたように私の専門でございませんので、詳しくはわかりませんが、数字だけを申し上げますと昭和四十六年……。
  23. 篠田弘作

    ○篠田委員 数字はいいです。自給できるという意味は、外国から入れなくても自給できるという意味ですか。
  24. 磯部俊郎

    磯部参考人 そういうわけでございます。
  25. 篠田弘作

    ○篠田委員 それは電力に関してですか。
  26. 磯部俊郎

    磯部参考人 電力が、石炭換算分で水力が約五千万トンございます。
  27. 篠田弘作

    ○篠田委員 それじゃもう一つ。それでは、石炭一億トンあれば外国からのエネルギーを入れなくても自給できるとおっしゃるのですね。
  28. 磯部俊郎

    磯部参考人 その自給と申しますのはかつかつ暮らせる程度で、現在のようなこういう発展した形態ではとうていだめでございます。
  29. 篠田弘作

    ○篠田委員 ちょっとその点、非常に現実と違っている点があるんじゃないかと思うのですけれども、現在日本では石油を年間二億七千万トン入れています。それでも足りない。石炭石油の能力は、石炭は大体石油の二分の一……。
  30. 磯部俊郎

    磯部参考人 ほぼ六〇%。
  31. 篠田弘作

    ○篠田委員 同じトン当たり二分の一ですね。そうしますと、少なくとも現在二億七千万トンの石油を入れているということは、そのほかに石炭もあり、水力もあり、いろいろあるわけでございますが、現在の日本エネルギーをまかなうだけでも、石油の分を肩がわりするだけでも五億四千万トンの石炭がなければ肩がわりできないんじゃないですか。
  32. 磯部俊郎

    磯部参考人 はい、そのとおりでございます。
  33. 篠田弘作

    ○篠田委員 それがどういうわけで一億トンで間に合うのですか。
  34. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  現在、おっしゃるとおり、おそらく国民一人当たり一年間に石炭換算で六ないし七トンぐらいのエネルギー日本が使っていると思います。
  35. 篠田弘作

    ○篠田委員 それは何に換算してですか。
  36. 磯部俊郎

    磯部参考人 石炭に換算いたしまして。石油が大体二億七千万キロリットル、いまおっしゃった数字は、石油の輸入量が二億七千万キロリットル、それから石炭も数千万トンは輸入しております。国内炭も……。
  37. 篠田弘作

    ○篠田委員 いや、そういうことを聞いているのではないのです。先生のおっしゃった、国民一人当たり一トンとして一億トンの石炭、もしくは五千万トンの石炭と五千万トンの水力があれば、国産エネルギーがそれだけのものがあればよそから輸入しなくてもいいというふうに言われたんじゃないですか。自給自足できるとおっしゃったんじゃないですか。
  38. 磯部俊郎

    磯部参考人 それは条件がございます。
  39. 篠田弘作

    ○篠田委員 条件も何も、現在石油だけでもって石炭換算五億四千万トンのものを輸入しておるのに、石炭一億トンだけあれば国内エネルギーは自給できるという数字は、ちょっと合わないのじゃないですか。どういうことかしろうとにはわからないです。
  40. 磯部俊郎

    磯部参考人 現在の日本生産力、それから現在の状態、それをそのまま維持するのにはとてもそれは一億トンや二億トンじゃ足りません。ただ、もし海外からエネルギーが一滴も来なくなった状態を想定したならば、現在の状態はとうてい維持することはできないわけです。しかし、それでも、とにかく非常にたいへんでしょうけれども、何とかかんとかやっていけるベースというものを国産エネルギーに求めなければいけない。それに上積みされた分は工業発展であり文化の向上に使う、そういうようなことで、原始生活に戻るまではもちろんいきませんけれども、それからあまり、あまりというかかなり離れておりますが、一応昭和十二年、その程度の生活状態、その辺まで引き戻したと考えていきますと、一年一人当たり一トンというのが統計で出ております。
  41. 篠田弘作

    ○篠田委員 それではお伺いしますが……。
  42. 田代文久

    田代委員長 発言を求めてから発言してください。
  43. 篠田弘作

    ○篠田委員 いえ、もうこれだけです。  先生のおっしゃるのは、現在二億七千万トンの石油を輸入しておる。石炭エネルギーにかえれば五億四千万トンである。そのほかに水力もある。また石炭もある。しかし、外国から一つエネルギーが入ってこなかった場合には、非常に困難ではあろうが、石炭一億トンがあれば、すなわち石油換算五千万トンあれば何とかやっていける、こうおっしゃるのですか。ずいぶんむちゃな話じゃないですか。
  44. 磯部俊郎

    磯部参考人 それは確かに現状から考えればむちゃでございます。それで石炭の、たとえば国産エネルギーの位置づけというものをその辺のところに持っていくべきじゃないか。それで、それにプラスされた海外輸入エネルギー日本の総体の活動になっているわけでございます。ですから、その中にもちろん国産エネルギーが入っております。もしそういう——これは仮定でございます。そういうことは絶対に起こり得ないというような仮定であるならばその仮定は否定されるべきでありましょうけれども、もしそれが一%でも〇・一%でも確率があるということになりますれば、その辺をめどにして国産エネルギーの位置づけをすべきじゃないかということを私は申し上げているわけです。
  45. 篠田弘作

    ○篠田委員 それでは実は参考にならないのですよ。そういうことを申し上げては失礼ですけれども、現在これこれのエネルギーを使って、石炭換算石油だけでも五億四千万トンの石油を使って、それでもまだ石油のショックがあればたいへんなことになる。生産もとまるし暖房もとまるしすべてのものがとまるとい、ときに、そういうものがなくなったときに一億トンの石炭があればどうにかやっていけるということでは、石炭特別委員会の——それはまず先生の想像という以外にわれわれは受け取ることができませんね、一億トンの石炭でどうにかやっていけるということは。だから何と申しますか、全然議論がかけ離れていると私は思うのです。  先生のところにもう一ぺん、私も北海道ですからお伺いして伺ってもいいのですが、これじゃ石炭特別委員会参考人として何を言われたのかということがちょっと私わからない。それだけ申し上げておきます。またあとでお伺いします。
  46. 田代文久

    田代委員長 篠田弘作君に申し上げますが、ちょっと参考人とあなたの御意見がすれ違いになっている点があるような気がいたしますから、その点は何らかの形で御納得のいくように処置をするということにして、一応時間の制限がございますので……。
  47. 篠田弘作

    ○篠田委員 はい、わかりました。  先生、それでは私が伺うか先生に手紙でももらうか、どっちかひとつお願いします。ありがとうございました。
  48. 田代文久

    田代委員長 渡辺惣蔵君。
  49. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 時間がありませんので、きわめて簡潔に具体的な問題を二、三お伺いしたいと思います。私は磯部先生に質問いたしたいと思います。  磯部先生の御発言は、いま篠田君がいろいろ意見を述べられましたが、どうも質問の要旨とお答えとがかみ合っていない点があったと思うのです。お二人とも石炭政策を非常に重要視するという点では一致しておるのですが、総体のエネルギーの資源のワクの中でどれが中心になるかという、次元的な問題がかみ合わなかったと思います。  私は、実は磯部先生のお話を承っていまして、どうも篠田君とかみ合わないのではなくて、通産省考え方とかみ合わなくなってきていると思うわけです。磯部先生の意見は、むしろ資料その他の点からいきますと、科学技術庁の資源調査会の意見に非常に近いのではないか。通産省はもうお話にならないぐらい後退しているのです、そういう認識からいきますと。  そこで具体的な例の一、二をお尋ねしたいと思いますが、日本の現在の石炭の埋蔵量を二百億トンと見積もられている。これはほぼ科学技術庁の見解と同一です。そのうちの安全炭量が五〇%と見て、五十億トンの可採炭量、この意味は、可採炭量というものはずいぶんしぼってきていますから、自然条件や坑内条件やその他鉱区の条件等しぼり上げて五〇%を見ておりますから、五十億トンというのは可採炭量というよりも経済炭量、現在の機構の中で採算の見合う炭量だと受けとめたいと思うのですが、一体こういう試算の中に、いままで九州及び北海道で閉山をした鉱区ですね。いわゆる政府の買い上げ鉱区、封鎖鉱区というものが六十二億トンと推定されて発表されておりますね。その買い上げ鉱区、封鎖鉱区、先生御自身もたぶん私と受けとめ方も同じでないかと思うのですが、ずいぶん乱暴な取りつぶしや買い上げをしてきたと思うのです。その中では、たとえば鉱区の調整が不可能なために、当然隣合って経済炭量があるにもかかわらず、鉱区の資本が違うために、そこで壁を破ることができなくて、また意図的に、資本別の対立から、鉱区の譲渡の話があっても譲渡しない。相手の鉱山が栄えることは反対だ、こういう資本の、企業のエゴイズムからそれができなかった。  たとえば、具体的に申しますれば、先生に非常にお世話になったのですが、たとえば明治鉱業の昭和炭鉱ですね。その閉山のときに、隣合った九州炭鉱との間に三井の鉱区があって、その壁を一つ破ればそこに十分、当時先生は十年から二十五年間生き延びる可能性があると証言されたはずです。先生にはあのとき参考人としておいで願って、委員会を開くに至らずして、衆議院の常任委員長室で先生の特別の御意見を非公式に秘密会で発表していただいた経過があるわけですが、そういう状況の中で、実は事業団の買い上げた、いままで閉山した鉱区の中においても、なお鉱区の問題を除けば、壁を突き破れば、いわゆる経済炭量が相当数ある、こうわれわれは考えるのですが、しろうと流の考え方なのかどうか。この五十億トンというものの中には、そういう買い上げ鉱区、封鎖鉱区の中で経済炭量、なお開発の余地がある、やればやれるのだという余地のあるものをどういう見積もりをされているか。それは全然事業団の買い上げた買い上げ鉱区や封鎖鉱区は除外しているのか。除外しているとすれば、そのほうの除外した鉱区の中におけるいわゆる可採炭量、特に経済炭量というものはどれくらい見積もったらしかるべきなのか。そのことは同時に、われわれが言う新鉱開発あるいは再開発の問題、石炭政策の前向きの問題に決定的につながる要素と条件を持ちますので、その点の先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  50. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  ただいま私が申しました五十億トンあるいは四十億トンというような残存炭量につきましては、買い上げ鉱区もすべて含めての考え方でございます。経済性とかあるいは設備投資とか労働力とか、そういったようなものを別途に考えまして、それを抜きに考え技術的に掘れる量と考えられるのが四、五十億トン。ですから、石炭の場合は炭価の問題それから労働力の問題、そういったようなことがございまして、それで実際にその出来上がり炭価によって赤字になるか黒字になるかという限界線で、さらに経済炭量というものは減ってくるわけでございます。これにつきましては、私自身は自分で試算したことがございませんけれども通産省のほうの試算があると思います。たとえばトン当たり八千円ならこのくらい、九千円ならこのくらい、一万円ならこのくらい。あるいは、一万一千円なんということはちょっといまでは考えられないかもしれませんが、一万一千円ならこのくらいまでふえるというような経済ベースに基づく炭量というのは、通産省で試算されておると思います。そういうことになりますと、やはりいまの五十億トンなり四十億トンなりから相当量減ってくるだろうというふうに考えられます。  要は、私ども考えておりますのは、石炭はこれだけぜひ必要なんだ、何万円でもいいからそれだけはぜひ掘ってくれという国の姿勢があったら、私どもはそれを経済的に安く掘り上げる方法を皆さんのために努力するわけでございます。そういうことで、山自身炭価引き下げの努力をする、そういうようなことをやることができるだろうと思います。要は、これだけの炭価でやれと押しつけられるのではなくて、とにかく幾らかかってもいいからこれだけはぜひ国の基本エネルギーとして必要なんだから掘れということのほうを先行させていただくとまことに幸いだ、そう思っております。
  51. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そうしますと、先生御自身も買収鉱区、買い上げ鉱区の中にもたくさんの炭量が含まれておる、それも開発すべきだという御見解でありますね。
  52. 磯部俊郎

    磯部参考人 はい、そのとおりでございます。
  53. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 先生のところに、三笠の住友奔別の閉山の人たちがその後いろいろ山を再開発したいという熱意を持って独自の調査をやっておりますが、たぶん先生のところにも御教示を仰ぎに行っていると思います。私はそういうように聞き及んでおるわけですが、この山が一つの例としてしばしば問題になってきておりますので、住友奔別の再開発可能性の問題について、先生のお知りになられる範囲でお話いただきたいと思います。
  54. 磯部俊郎

    磯部参考人 奔別再開発について若干申し上げます。  閉山炭鉱の再開発につきましては、奔別が一つの扇のかなめになると思います。その理由は、坑内骨格構造が全部完成し、あらゆる機械設備とかそういうものも完成して、さあ掘り出そうというようなときに閉山という運命に出会ったわけです。理由は幾つかございましょうが、最大の理由はやはり経済問題、こういうふうに考えております。したがってそのとき、いわゆる閉山の法律上から坑口は閉鎖しなければいけないというようなことで、立て坑坑口を閉鎖して、そして閉鎖を非常に急いだために、ケージといいまして、人間が上がりおりしたり、資材を上げ下げするようなものでさえロープを切って下にたたき落として閉山してしまった。内部の機械とかあるいは電気機関車とかその他のものは全部埋め込んで閉山したというような、大あわて閉山をやった炭鉱でございます。炭量としては、現在私が聞き及んでおりますところでは八千万トンないし一億トンくらいは可採である。ただし、深度は地表から約千百から千二百メートル、地熱は非常に高いという自然条件の悪さはございますけれども、岩盤は比較的じょうぶで、坑道はりっぱな坑道が走っていた。そんなわけで、いろいろ諸山がございますけれども、最終的に閉山復活の扇のかなめは奔別ではないか。奔別の復活に対していまおっしゃったような御相談は、私のところにはまだきておりません。私が自主的に閉山復活のかなめは奔別じゃないかということをおりに触れてお話申し上げているだけでございます。  復活方法としては、具体的にはいろいろあると思います。たとえば幌内鉱から坑道を掘って奔別の下を突き破って水を抜いてしまうという方法、立て坑からそのまま水を揚げて坑道をもう一回あけてみるという方法、あるいは弥生側から坑道を取り分けて入ってきて中に入っていく、いろいろな方法があると思います。そのほかに新たに立て坑を打つということも考えの中に含めていろいろな案を検討して、その中で最も妥当なのはどれであるか。それから、具体的にするとすれば労働者はどのくらい必要か、技術者はどのくらい必要か、資金はどのくらいかけなければならないか、資材はどう集めなければいけないかというようなことも計画しなければいけないだろう、こう思っております。いまはただ構想の段階であります。
  55. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 最近、通産省の札幌通産局では、北海道における県北地帯とか釧路あるいは空知、夕張等の再開発可能の鉱区の調査をしておるようですが、先生は御相談を受けたりしていらっしゃいますか。
  56. 磯部俊郎

    磯部参考人 それについては相談という程度のものまで深くはございません。こういう調査をいまいろいろ考えておりますが、そのうちに何らかのことで意見を聞くこともありますというような程度のことでございます。まだそれも構想を立てる一つ前くらいの段階じゃないかというふうな感触でございます。
  57. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 時間がないために、残念ですが、もう一つ、二つ質問をさせてもらいたいと思います。  実は、四、五日前のここの石特委員会で、これは通産省側の意見なんですが、私の質問の趣旨は、五十一年度に二千二百五十万トンを、少なくとも閉山を一切ストップして増産をする、このささやかな要求は、あなたの構想から見てもはるかに下で、問題にならない構想だと思っているのですが、私は石炭見直しの時期にあたって、この機会しかないと実は考えています。ところが、ここで発表したのは驚くべき数字が出てきているのです。参考までに申し上げますが、休眠鉱区の中で、たとえば赤平とか夕張とかの鉱区で、従来原料炭オンリーでやっていた、一般炭を放棄して原料炭だけをとったわけですね、だから、一般炭がたくさん残存しておる。それをそれぞれの原料炭の山で出炭するものが九十万トンだ、あとの分百六十万トンは、これは露天掘りに依存するんだという驚くべき通産省側の見解が出ておるのですが、一体露天掘りというものが私は石炭政策なのかどうかというのを実は疑っているのです。骨格坑道をつくったり金をかけたり政府資金を投入したりして、ことにこの露天掘りに依存するという思想のために、深部開発、研究技術開発等をやる意思がないのですね。そういう点、露天掘りに対する北海道状況は、先生のお考えではどんなふうになっているのですか、承りたいと思います。
  58. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  いまのように、確かに原料炭鉱が一般炭の炭層を放棄しながら深部展開していったという事実がございます。それでその山の技術屋さんは、一般炭さえペイするように掘れればまだまだ炭量があるんだがというようなお話はしょっちゅう伺っております。こういったことが、いまおっしゃったように、赤平その他の一般炭炭層を掘ることによって、現有設備のままかあるいは若干増強することによってそのくらいの生産量を見込めるというのは、これは非常にけっこうな話だと思います。  そのほかのものにつきましては、これはさしあたって——露天掘りというのは、決して恒久の策ではない。ただ、あす食べる米がなければ、どっからか都合して、隣の家からでももらってこなければいけないだろうというような、せっぱ詰まった状態においての露天採掘の問題というふうに考えております。  それから、露天採掘を、私も何回もそちらこちらで見てまいりました。それで、まあたぶん、ここでそういうことを申し上げると語弊があるかもしれませんが、露天採掘のところを環境庁長官あたりに見せたら卒倒するだろうということを申し上げておきます。
  59. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 ありがとうございました。  御苦労さまでした。
  60. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  61. 多田光雄

    ○多田委員 初めに、三人の先生方にお礼を申し上げたいと思います。  今度の石油危機を中心にしまして、エネルギー問題が非常に大きな国民的な問題となってきて、その中で石炭問題がさらにまた大きな問題として取り上げられるようになったわけでありますが、私どもとしては、このエネルギー問題が一般論として論議されているのではなくして、先ほど申し上げましたエネルギー危機を契機にして、どうして日本エネルギーの長期的な安定的な、しかも日本国民の生活と切り離されないで解決できるかという問題として考えているわけでございます。そういう立場から二、主語先生方にお伺いしたいと思うのですが、まず第一に磯部先生にお伺いしたいと思います。  昭和三十年の初めに、日本の埋蔵炭が二百二債トンという数字が出て、一応これは動かぬものとして私どもも論議を進めてまいったのですが、その後の技術開発あるいは海底の探査の問題その他を含めまして、まだ総合的にやられておりませんけれども、これは変更し得る可能性があるのかどうなのか、ここをまずお伺いしたいと思います。
  62. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  これは日本で、石炭に限らず、鉱産資源一切のものを含めて、国産資源というものが一体どれだけあるのか、現在の技術最大限に使って調査をしたならばどれだけあるかということを、じみちに積み上げていくという努力は常にやっておかなければいけないことだろうと思います。そういう意味で、海底炭田あるいは地質調査の不十分なところ、ボーリングの不足なところ、これは開発のためのボーリング——いままでは構造ボーリングなんかが非常に多かったのですが、開発を前提としてのボーリング、そういったようなものをたくさん続けていきまして、それで炭田の様相というものをはっきりつかんでいく。それで、はたして二百億トンが正しいのか、もっとあるのか、あるいは思ったより少ないのかというようなことをはっきりいえる調査を——もう昭和三十年から約二十年たっております。ですから、再調査すべき段階だろうというふうに私は考えております。
  63. 多田光雄

    ○多田委員 エネルギー日本の産業の骨格的なものでございます。しかも今日、また公害のたれ流しの元凶となっているわけですね。さらにまた、先ほど来お話もございましたけれども、今日の日本の一次エネルギーの八割以上が外国の資源に依存している、ここにまさに問題があるわけでございます。それだけに、それをやる上でも、やはり科学的な調査、科学的な根拠というものが必要だろうというふうに思っています。  それからいま一つは、いろいろ、石油もないのですから買わなくちゃならないと思いますが、やはり一国の百年の大計という立場から見れば、日本国内にある国民的な財産である資源を一〇〇%活用していく、そしてなおかつ足りないから、また、全くないものは外国から買っていく、そういうところに日本の経済のほんとうの自立性、また日本の国土に密着した科学の発展、技術の発展があると考えています。そういう意味で、先生のおっしゃいました、いま日本のこの炭量調査というのをもう一度真剣にやってみなくちゃならないときに来ているというふうに私は考えております。  それから二番目にお伺いしたいと思いますが、先ほど、六十二億トンの買い上げ炭鉱があるというふうに言われておりますが、それも含めて、先生は、実収率それから安全率、これらを勘案して、大体平均五十億トン前後というふうにおっしゃっておられますが、これは相当の確度のものであるかどうかということでございます。これは諸外国でどういうふうな算定方法をしているかわかりませんけれども、この点、念のためにもう一度お伺いしたいと思います。
  64. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答えいたします。  ただいま申し上げた五十億トン前後という数字は、二百億トンというものがはっきりした数字であれば相当の確度を持っております。元数字いかんによるわけでございます。その意味で、元数字の信頼性というのがこれは一番問題点になると思います。これはもう、二十年も前で、私自身調査したわけでもございませんし、いろいろな書類とか文献によって調べた、あるいは人に聞いたというものが基礎になっておりますので、どの程度の信頼性があるかということは、むしろその調査、そういった計算にタッチされた当該者にお聞きになるのが最も正しいかと思います。
  65. 多田光雄

    ○多田委員 それから次に、先ほど来出ておりますけれども、閉山、休山した山でございますね、これを再開発するということが、これから石炭を見直していく上で非常に大事な仕事だろう、こういうふうに思うのでございますが、先ほど奔別の話が出ました。  そこで、北海道九州その他を先生がごらんになられまして、いま石炭を見直していくという段階でどういう山々がさしあたり対象になるのか。それからまた、それをやるとすれば、専門家でいらっしゃる先生の立場から見て、大体いまの物価その他から見て、おおよそ、これはほんとうにおおよそでございますが、どれぐらいの金がかかるものか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  66. 磯部俊郎

    磯部参考人 ではお答え申し上げます。  私は、九州のことは閉山その他にタッチしておりませんので、はっきり申し上げることはできませんが、多分九州でも、これは間違っていたら九州の先生がおいでになるそうでございますから御訂正していただければ幸いだと思うのですが、日炭あたりは残っているのではないかというような感じを持っております。それから本州では常磐炭礦、これがいわゆる高硫黄炭のために掘れなくなったというような事実がございますので、常磐炭礦もサルファのことさえ考えに入れなければ残っているのじゃないか、こう思います。しかし、大部分復活可能な閉山炭鉱というのは北海道にございます。  北海道の私なりの順序を申し上げますと、ごく最近閉山いたしました釧路の米町炭鉱、これは太平洋炭鉱と坑道が続いております。ですから、取り明けるとすぐにでも若干の、数カ月の期間をかければ生産が回復する状態になっております。それから同じく釧路の上茶路炭鉱、これは新鉱のまま閉山した山でございます。まだほとんど採掘が進んでおりません。斜坑ができております。ですから、これを取り明けると多分再開はできるでありましょう。岩盤も非常にいい岩盤でございます。それから奔別炭鉱、これは先ほど申し上げた扇のかなめになる存在。奔別の再開発というものはおそらく炭鉱人の持つ一つの夢を実現するものになるかもしれない、私はそう思っております。それから美唄炭鉱、これも炭質はあまりいいところではございませんけれども、かなりの炭量を残したまま閉山しております。それから北のほうの羽幌炭鉱、これは大体奔別と同等ぐらいの炭量を残して閉山をしております。その他、先ほど留萌地区のことが出てまいりましたけれども、留萌地区というのは、ちょうど石狩炭田のはずれのような形態で、地質構造が非常に錯綜しておりまして、相当量の可採炭量があるとは考えられない区域でございます。したがって、留萌地区に関しては今後少し遠距離でながめてみるというような考え方になるのじゃないかと思います。  そんなようなことを考えますと、閉山を再開発するには一体どのぐらいの資金が要るかという最後の御質問でございますけれども、私は、現在の物価とかそういうものを考えまして、これはごく大づかみに推量いたしますと、一年間に生産炭一トン当たり一万円から二万円の間である、こういうふうに申し上げたいと思います。
  67. 多田光雄

    ○多田委員 私どもとしては、日本エネルギーをほんとうに自活したもの、これはもちろんすべてがそうなるものじゃございませんが、できるだけ日本の自給度を高めていくということで、できれば七〇年代の終わりごろまでには石炭をもう一度四千万トン台に上げてみたいということを言いもし、また政策としても実は訴えているわけですが、いま日本石炭の自給度を高めるという方向で進めていくとすれば、これは非常にステップ・バイ・ステップでいかなければならないと思います。金の問題もございますし、それから有効需要等の拡大という問題もございますし、コストの問題もございますが、先生ごらんになっておりまして、まず既存の炭鉱の活用、それから閉山鉱の再開発、それから新鉱の開発、こういうようなものが、炭鉱自体として見れば考えられるわけですが、大体どういうステップでいくのがよろしいとお考えになるでしょうか。ちょっと政治的なものも入ってくると思いますが、ひとつ……。
  68. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  私は、現在の、まず二千三百万トン体制をしっかり堅持するような石炭政策を立てるべきだ。つまり、いわゆる食える炭価、やっていける炭鉱資金状態というものをつくり出しまして、二千三百万トンはぜひこの時点で確保するというのが第一段階。それから第二段階は、いまの閉山炭鉱のうちで、いま申し上げた順序に従ってやりやすいものから逐次開発をしていく。それでまずさしあたって二百万トン、もしくは、うまくいけば五百万トンぐらいのプラスが可能になるのではないか。と同時に、先ほど一般炭の炭層を捨ててきた、そういうところに若干設備投資を加えまして一般炭の炭層を掘るということになりますと、まずその辺が三年ないし四年ぐらいで三千万トンの線は出てくる。それと同時並行的に新鉱開発約一千万トンを考える。これは夢のような話かもしれませんが、天北、釧路あるいはその他の区域を含めまして一千万トンを目標に新鉱開発考えていく。そうすると、それで四千万トンという答えが出てまいります。残りの一千万トンに対しては、これは調査、選鉱、そしてそれによって開発計画を再度立てられるかどうかという問題を再検討する必要があると思います。しかし、目標は大きく掲げて五千万トンであるべきだと私は思っております。
  69. 多田光雄

    ○多田委員 炭鉱開発していく場合、もちろんコストの問題もございますが、何といってもやはり施策の問題だろうと思いますが、もし政府がほんとうに石炭を見直していくという姿勢に立った場合に、先生のいまおっしゃった四千万トン、五千万トンをやっていく場合に、大体見通しとしてこれは何年くらいかかるものでございましょうか、今日の技術水準その他を見て。
  70. 磯部俊郎

    磯部参考人 私は十年はかかると思います。
  71. 多田光雄

    ○多田委員 それからコストの問題ですが、実はこの間、つい数日前ですが、ここで質問いたしまして、どうも政府の立てている炭量というのがコストに左右された炭量昭和四十六年、九千円という炭価で五億九千万トンというのをはじいた。国民の多くは五億九千万トン、六億トン弱しか掘れないのではないかと思っておるのですが、実はいま専門家である先生のお話を聞いて、やはり掘る気になればまだ相当の埋蔵量を持っているということを伺いまして、私もたいへん勇気づけられたわけでございますが、コストの問題で非常に大きな比重を占める労働費の問題でございます。私は、いま日本石炭を掘っていく場合で一番の問題は労働力の確保という問題だと思います。この責任は、やはりいままでの石炭を取りつぶしてきて労働者を山から追い出すような結果になった、ここに問題の根本があるわけですが、いま労働者最低どれだけの賃金を保障するなら、少なくとも労働者は山に残って石炭を掘ろうという気持ちになるのか、この辺は先生どうでございましょうか。
  72. 磯部俊郎

    磯部参考人 その点に関しては、私自身が自分が生活しているレベル、そういうものから考えまして、現在一般の企業の方、それから坑内労働というような落差、と申しますか、辛さというものを勘案して考えましたときには、今度出ております春闘の要求、おそらくそういうものが労働者自身としてはまことに妥当な数字でないかと考えているだろうと思います。その辺経営者のほうあるいはその他はどう判定するか、その折り合いの線が出たときにやはり必要な賃金が生まれてくるだろう。それについて、むしろこれは国会の先生方がいろいろアドバイスをするなり批判をするなりして、公正妥当な結論を出すべきじゃないか。私がいまここで何十万とか何万とかのベースアップが妥当であるかということを申し上げるには、ちょっとその資料が不足しておりまして、コストその他はじいてございませんので、ただ、労働賃金が五〇%ぐらいであるならば炭鉱は暮らせると申しますか、食える炭鉱になるということだけは申し上げて、炭価はそれにスライドしなければいけない、こう思っております。
  73. 多田光雄

    ○多田委員 それから開発技術の問題ですが、先ほど先生がおっしゃった、日本はやはり自然条件からどうしても深部に入っていく、それから斜坑が多いというお話がございましたが、今日の日本技術水準としてこれらの深部採炭、斜坑、それにつきまとう非常に大事な保安の問題、これは技術問題としては解決可能でございましょうか。
  74. 磯部俊郎

    磯部参考人 私ども技術屋というのは、解決しなければならないと考えております。つまりこれは非常に個人的な見解になりますけれども、たとえばある一つの問題にぶち当たって、非常に大きな壁にぶつかります。そのときに、こんなに自分が一生懸命考えて、こんなに努力をしているのだから、たぶん解決できるかもしれないというばく然たる希望のもとに営々と努力を重ねる。そうするといつの日かに何かこつ然と解決が出てくるというようなことが多かった。そういうものを一つの信条のように考えて、ぜひそれは解決していかなければならない。そうでなければ日本石炭鉱業は滅びるというふうに考えて、これは私どもの責任においてぜひ解決しなければならない問題だと覚悟しております。
  75. 多田光雄

    ○多田委員 石炭には年間一千億からの金をぶち込んでいるわけですね。これがどちらかというと山を閉山する葬式の金みたいな形に使われている。むしろこれを前向きの方向に使っていくということがいま非常に大事な問題だろうと考えています。そういう意味で、政府の採鉱関係の研究あるいはまた大学にそういう研究機関を設けていくという点で、今日の現状は、諸外国と比べてどうでございましょうか。特に石炭を掘っているイギリスとかフランスあるいはアメリカ、西ドイツはどうでございましょう。
  76. 磯部俊郎

    磯部参考人 これは大学のほうにも研究所方面にも、現在いろいろ問題点がある。それは一つは、炭鉱自身の持っていた従来までの斜陽ムード、そういうものによって研究者の層が非常に薄くなっております。こういった層をこれから掘り起こして、層を厚くしてみるということが一番大事なことじゃないかと思います。たとえば、かつては資源技術試験所といったものが現在は公害資源研究所ということになりまして、むしろ公害部門のほうが大きくなる。資源関係の部門は横ばいもしくは若干縮小ぎみというようなことになっております。こういった問題をもう一回考え合わせてみて、フランスのように、日本とほとんど同等の生産力しか持っていなかった、いまでは若干向こうのほうが上かもしれませんが、それでもパリの郊外に膨大な研究所を持っている。相当の、おそらく日本の何倍もの国費の投入がございます。そういったことを日本も大いにやるべきじゃないか。ただ、ほかのほうとのバランスがございます。そのバランスを考え石炭一体どれだけの力を注ぐべきかということは、これは石炭ばかりが国の産業じゃございませんので、その辺のバランスシートの中で、石炭の位置づけと一緒に研究の位置づけもやらなければいけない、こう思います。ただ現在の石炭特別会計の中の研究予算というものは、これはむしろ委員会程度のもので、大きなものは望めない状況になっていることは事実でございます。ただ公害資源研究所あたりの研究費その他がどの程度使われているか、どんなふうになっているかということは、これは私いまデータをもっておりません。それから大学に関しては、どこの大学もどこの科もみな同じように研究費が均等配分されておる。したがって、大学の研究所費が貧しいということは、各大学の先生そのほかすべての方が言っておられるとおり、われわれも研究費は不足を感じているわけでございます。
  77. 多田光雄

    ○多田委員 もう時間も来ましたのですが、あとちょっと簡単に。  今日、閉山する場合に、事業団その他がいろいろこれを調査したり何かするわけですが、耳にしている限りにおいては、いろいろの話も聞いているわけです。閉山にあたってもっと科学的に炭層その他を調べていく、コストも調べていく、労働者状況も調べていく、こういうことが、これからも見直すとすれば非常に大事になってくるのですが、そういう意味で、政府の管理体制、つまり今日は事業団があり管理委員会があり、いろいろあるわけでございます。こういう体制について、先生の御意見をひとつお伺いしたいというふうに思うわけですが、いかがでございましょうか。
  78. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  管理体制というと、中枢機関のような存在で、現在石炭では管理委員会というのがございます。これに関しては私自身も若干ふに落ちない点というのがございます。というのは、管理委員会の構成メンバーというのは、全部いわゆるエコノミストででき上がっている。その方々はもちろん御経験も豊富で、知識もりっぱな方ばかりなんですけれども、とにかく坑内の岩石を自分のはだで感じている方はおそらく一人もおらない。ただバランスシートの上からだけで、この山はだめ、この山は浮かび上がるというような考え方を持っている方ばかりだろうと思います。お年もかなりでございますから、坑内に入ってつぶさに見ろといっても、いや、おれはわからないよ、適当にその辺は技術屋がやったのだからいいだろうということで、そういう判断をされていると思います。ですから、ああいった委員会のメンバーの中に、少なくとも三分の一もしくは半分くらいはいわゆる炭鉱経験の豊富な技術屋、そういう方が入られて、そしてそういった感触のもとに考えるということが必要じゃないか。その点はどうも歴代の委員その他の先生方については、まことに申しわけがないのですが、ふに落ちない点でございます。
  79. 多田光雄

    ○多田委員 時間が参りましたので、実はこのあとに需要の問題としまして山村先生や坂西先生にるるお伺いしたいと思いましたけれども、あとにまだ二人残っておりまして、一時までに終わらなければならない、こういう状況でございますので、たいへん失礼いたしますけれども、質問はまたあとで個人的にひとつお伺いしたいと思います。どうもありがとうございました。
  80. 田代文久

    田代委員長 松尾信人君。
  81. 松尾信人

    ○松尾委員 だいぶいろいろいままで質疑がかわされましたので、ちょっと重複する点があるかもしれませんけれども磯部先生にお尋ねしたいと思います。  この中で現在の炭鉱をどうして維持するかという先生のお話、これは疑問点を投げかけられたお話でありました。また、二千三百万トンの堅持をしていかなければいけないという中から、いわゆる閉山というのが順次出ておるわけです。ですから、現在の炭鉱を維持する、二千三百万トンの出炭を堅持する、こういう観点からまいりますると、やはりそこには具体的な措置が必要であろう。それは炭価の引き上げを基本にすべきじゃないかと私は思いますけれども、その具体的な措置について先生の御意見を聞いておきたい、こう思うのです。
  82. 磯部俊郎

    磯部参考人 いまおっしゃったとおりの炭価の引き上げを含む具体的な措置ということになりますが、まず、最後に私は当面の対策ということで申し上げたのですが、いわゆる政府関係者とかその責任者が、石炭は必要である、絶対に石炭日本の基幹産業として見捨てるはずはないんだということを中外に宣明していただく、これが第一である。  それで、そういうことができれば、一体どれくらいの費用をかけ、どのくらいの助成をしたら現状炭鉱が育成できるかというのが、個々の山について査定ができるだろう。そういったものを集計いたしまして、それで当面の助成策を立てるというのが第二の点じゃないかと思います。  そんなことで、現有勢力約二千三百万トンの力を持っておりますので、これはそういう意味で落とさない。そうすると、現在ある炭鉱も今後何かの理由で閉山しなければならぬということになれば、せっかくの石炭見直しも根本からくずれていく。それの歯どめとして現有二千三百万トンは何とかしなければならぬ。そうすると、炭価のアップと同時に、やはり助成という問題が一緒に出てくるんじゃないか、そう思います。
  83. 松尾信人

    ○松尾委員 ともに政府としての基本的な姿勢に触れておるわけであります。ですから、われわれも、そういう面において、石炭というものをいかに政府がしっかり今後守っていくか、助成するか、開発するか、こういう点をしっかり押していきたいと思います。  それから、応急的にはどうしても増産を何らかの形で実現しなければできないわけでありますが、いろいろこの問題で、一般炭を掘るんだとか、また先ほどは、環境庁はどう思うかという露天掘りの問題も出ましたけれども閉山炭鉱の問題であります。  私は長崎県でありまして、長崎県は全部島なんです。海底炭田でありまして、先月も日本一の非常に優秀な原料炭を掘っております端島炭鉱が閉山になりました。これはもともと海底で、深いところでありますので、掘るときに沖のほうから掘ったわけです。一千メートルとかなんとか、日本技術はここまでだというようなところからまずやりまして、島のほうにずっと掘ってきたわけです。それで、島のほうに来ましたから、これでもうラストだというわけで、結局閉山になった、こういうわけであります。  そういうような石炭炭鉱事情、先生もおっしゃったのでありますけれども、要するに技術開発深部をどうして掘っていくか、この問題。ここは数十年掘っておるところでありまして、閉山は非常に新しい。先月です。こういうところをもう一回いまの技術でやろうと思えばできるかどうか。いまはまだ坑道なんかはきちっと残っておるわけであります。一番奥から掘ったわけですから、先に行けばどんどん行けるわけです。それは深くなるでしょう。そういう問題で、深部技術開発の問題等がおわかりであれば承っておきたいし、またそういうところに当然力を入れてやっていかなければ相ならぬ、こう思うのです。  それからもう一つは、もう数十年前に閉山したところがあります。それは海底炭田であります。これは非常にむずかしい条件が、坑道内陥没とか、それから、深いところの海底ですから、おかと違いまして、あちこちから掘っていくとかなんとかというわけにまいらぬ。これはむずかしいのじゃないか。何かそこに新しい技術でまたやるようなことができるかどうか、これとあわせまして、先生の御意見を聞いておきたいと思います。
  84. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  いま、はからずも端島炭鉱の例が出たわけでございますが、ちょうど閉山のしばらく前に、もう二度と再び見られなくなるからというので端島炭鉱の坑内を拝見させていただきました。端島炭鉱の場合は、むしろ深部採掘というよりも浅部採掘技術、海底から浅いところをどうして掘るかということが完成したらもっと延命策がとれたわけです。しかも、高いところのほうに炭量がむしろ集中していて、浅くなるごとに炭量がふえてくるという状況でございます。もちろん、深部にもあると思います。ただ、炭鉱というのは、閉山をしてしまって坑道を放棄してしまうと、二度と再び立ち上がれない山と、もう一回立ち上がってこれる山と二通りございます。二度と再び立ち上がれない山は、まず水がすっかりつかってしまうとか、あるいは海底とつながってしまう、そういったようなことになりますと、これは二度と再び立ち上がれない。しかし、そうでない山もあるわけです。たとえば同じ長崎県の高島炭鉱は、飛島方面に採掘区域展開しておりますが、旧区域は非常に深くなりまして地熱が非常に高くなる。そのために各所に自然発火を起こして放棄せざるを得なかった。こういった技術的問題が解決できると、高島炭鉱深部もまだ掘れる可能性が出てくるというようなことはあるだろうと思います。そういったものを拾い集めて深部対策、生産拡大というものに結びつけられるかどうかというものは、今後の問題であります。しかし、完全に同じ状態にするということはたぶん非常にむずかしい、若干条件が悪くなる。そういったところに労働者がはたして入ってくれるだろうかという問題も次に起こってまいります。  そんなことで、現在生きている炭鉱が年々深部化しいく、そしてそのためにいろいろな問題が発生してくる。これを次々と解決して、いままでがまんしていたんだからもう一がまんというようなところに考えをまず合わせて、さらにその状況がもっと改善されればなおいいというようなふうに深部対策考えていかなくてはならない。具体的に申し上げると、地熱の問題、それから盤圧といいまして、岩盤が落ちてきて坑道を押しつぶす問題、それからいま申し上げた自然発火の問題、それからガスの湧出量の増加とかガス突出とか、そういうことの問題、こういうものが、一つ一つでもたいへんなものが組み合わさって出てまいります。そういった問題で、現象はどうなんだ、原因はどうなんだということもわからないことのほうが現在多いわけです。そういうことを解決していくことが深部対策の焦点になりますので、これは私どものほんとうの責任だろう、こう考えております。
  85. 松尾信人

    ○松尾委員 高島のほうはだんだん深くなっていっている。飛島のほうは浅いのです。高島のほうもだんだん浅くなってきた。こういう問題でありますが、向こうは奥のほうは深いわけですね。  いずれにしても、一つ企業がいろいろの問題または採算の問題、それで行き詰まってやめてきたというところをもう一回やってみよう、こういうわけでありますから、それは一カ月前にやめたのですから、一企業にまかせておっては、やめたところはもう一回よおしという元気はない。これは資金的にもそうだろうと私は思うのです。そうしますと、結局、このような閉山炭鉱を再開発するという問題は、一企業の問題じゃなくて、やはり国の政策として何としても力を入れていくんだ、当面にはそういうところをもう一回やる以外にないじゃないかというようなところにつなげておいて、きちっと助成していく、この方向が固まらないといけないのじゃないか、こう思うのですけれども、いかがでしょう。
  86. 磯部俊郎

    磯部参考人 まことに、全く同意見でございます。
  87. 松尾信人

    ○松尾委員 わかりました。  これは非常にしろうとの意見で、しろうとの質問になると思うのでありますけれども、ガス化、液化の問題であります。これはその点でお尋ねするわけでありますけれども、山村さんにお尋ねしますけれども、アメリカ等の炭鉱日本炭鉱とは違う。日本のほうは相当深いところで掘っています。ですから、これをいよいよ事業化する場合には、山元とそのガス化、液化のそのような工場というもののつながりはどのようになっていくのでしょうか。現場でいいのか、またはガス化、液化するところは離れたところになるのか、外国の実例はどうなんだ、こういうことをあわせてお知らせ願いたい、こう思っています。
  88. 山村礼次郎

    ○山村参考人 お答え申し上げます。  いま研究開発が一番行なわれておりますのはアメリカでございますので、それの例をちょっと申し上げたほうがいいかと思いますが、アメリカの場合には、御承知のように、石炭の埋蔵重というものが各国の中で最も多いぐらいに存在しておりまして、それが未開発のままで現在も相当豊富にあるといった面と、それからアメリカのエネルギー供給の体制につなぐといった意味で、たとえばアメリカの中西部あたりの非常に豊富な、しかも浅いところにあります石炭を対象にして山元でガス化とか液化とかいったようなことをいたしまして、たとえばガス化にしましても、非常にハイカロリーな合成天然ガスにして、従来の天然ガスのパイプラインにつないで遠距離供給を行なうといったようなことで、主体は、やはり主として山元といいますか、産炭地での加工利用といったことが主体になっておるように判断しております。  じゃ、日本の場合どうなのかということでございますが、採掘方法がいまの非常に深部化するとかいった問題は、コストには影響いたしますが、それ自身は、加工利用の基地の問題とは直接考える必要はないかと思います。ただ問題は、地上での工場設置の条件としまして、一番山元でありますと、原料の価格はいわば輸送費が伴いませんから最も安くできるといった面で、理想はやはり産炭地域が最も望ましいと思います。ただ、アメリカとか外国と違って、日本の場合に、地上条件も非常に開けておりますから、そういった大型の工場投資のための水の供給条件はどうだとか、あるいはいまの公害対策の問題はどうだといった面から、ある程度の制限を受けざるを得ないといったことで、従来いろいろいわれております産炭地域という狭い山元という考えよりは、もう少し幅を広げて、産炭地に最も近い地域の中で適地を求めていく、あるいはいまのこういう水の問題とか動力の問題とかあるいは社宅の問題とか、いろいろな問題があると思いますが、そういったところまで含めて工場条件を求めていくという形がまず考えられる状態じゃないかと思っております。
  89. 松尾信人

    ○松尾委員 日本のガス化、液化の技術は相当レベルが高い、このようなことを聞いておるわけであります。先ほども山村さんは、これを総合的にまず集めて、そしていろいろこれを盛り上げてやっていくべきである、このようなことであったろうと聞いておったのでありますけれども、当然そのようになっていくと思いますが、いまの四十九年度の政府予算これが石特と通産のほうの両方についておりますけれども、こういうものでは、そういうあなたのお考えと現実の政府が助成していこうという態度と何かズレがあるじゃないか。もしもあれば、われわれはそう思っているのだけれども、予算がそういう面が少なくていまやれずに困っておるとか、来年、この次にまたうんとやってもらうんだとかということがあれば、参考のために聞いておけば、われわれも今後ともうんとこれを伸ばしていきたい、早くこれを現実化したい、こう思っておるわけでありますから、予算の一面、そういう点について早く結集して総合力をつけて早くやるというあなたのお考え現状とはどうか、特に予算的な面における不満はないのか、こういうことを聞いておきたい。
  90. 山村礼次郎

    ○山村参考人 お答え申し上げます。  開発体制としてどうあるべきかということになるかと思いますが、その点では、非常に長期で非常に幅の広い技術の組み合わせで完成しなければならないという、非常に大きなプロジェクトになると思いますので、必ずしも、資金が一時にたくさん出ればそれで非常にスピードアップするかといいますと、そうはいかないと思います。と申しますのは、先ほどちょっと申し上げたところにつながりますが、いわゆる人的戦力としても、石炭をガス化します場合にも、そのガス化装置技術についてのいろいろな研究者もいなければいかぬ、あるいはそれの反応についての非常に基礎的な研究に従事する者、あるいはそれの条件を装置につないでいくプロセスエンジニアも必要だといった面で、非常に幅の広い人的戦力を必要といたします。それが、現在のところは、石炭問題かここ十数年非常に空白化しまして戦力がなくなっている。それからもう一つは、石炭はもう無用だということで、たとえば大学の応用化学とかあるいは資源開発の学生でも、いまのガス化とか液化に真剣に、これに一生の問題として取っ組むような雰囲気がいままでずっとなかったわけでございます。したがいまして、そういった連中がこれはひとつ大いにやろうじゃないかという雰囲気をつくる、そしてそういう研究者技術者を集めるということが必要です。それにはやはり全体の雰囲気をつくることが大事だということを先ほど申し上げたわけです。  それからもう一つは、産業技術としましては、いろいろなパーツ、パーツについては非常に高いものがございますが、たとえば石油の精製とかあるいは石油化学の業界というのは非常に伸びてきている。その人たちは石油というものを現状に置いた形での研究なり技術のレベルアップをやっておりますが、その人たちが、固体である石炭というのは相当やっかいな要素もございますが、それに真剣に取っ組むのだということで集まってきますと、戦力というのは一度に増強できるわけです。その点で、研究開発あるいは事業化に関する通産のエネルギー行政といいますか、そういった面が一本化されていくことが非常に必要だろうと思います。  それからもう一つ、別の観点で申し上げますと、たとえばガス化発電のことを一つ例に申し上げますと、ガス化発電を仕上げます場合には、まずガス化のプロセスなり装置を発展させることが必要でございますが、これはただガス化すればそれですぐ発電につながるわけじゃございませんで、その場合には、発電のシステム開発として、ガスタービンの開発とかあるいは過給ボイラーの開発とか、あるいはそれをさらに結びつけた全体のシステムとしての開発といったものが幾つかあるわけでございます。その点が、これは私の感じで申し上げますと、サンシャイン計画あたりでいろいろ議論されましたときに、新エネルギー開発計画といった面で、エネルギーだけに非常にしぼった形で議論されておりまして、そのエネルギーに総合的な効果を発揮させるための、たとえばガスタービンとか過給ボイラーの開発とかいったものは、従来、技術としてよそで開発するのだという単発的な形で期待しているような要素がございます。その点では、エネルギー開発といいましても、それの最終目標までの総合的な観点を全部まとめた形の開発計画を、今後詰めていくということはわれわれもやらなければいけませんし、また行政といいますか、それの体制をつくっていく側でも、そういった観点からの見直しをしていただきたいという気持ちを持っております。
  91. 松尾信人

    ○松尾委員 じゃ、終わります。
  92. 田代文久

    田代委員長 田中六助君。
  93. 田中六助

    ○田中(六)委員 磯部参考人はじめ三人の方、非常にお忙しいのにたいへんありがとうございました。  磯部先生に二点だけお尋ねしたいのですが、まず第一点は、先生の構想の五千万トンをキープするにはやはりいまから十年かかろうというふうにおっしゃっておるのですが、いま炭鉱労務者というのは約三万人前後だと思いますが、五千万トンを十年間にキープするには大体どの程度の労務者が必要なのかというそのお考えと 閉山炭鉱復活するにはとうていもう民間ではだめだ、準公営かあるいは公営にしなくちゃいくまいというお考えですが、一方石炭を、コストは別にして、まず政府が基幹産業であるということを内外に声明しなければいかぬ。そうしますと、それは一つ政府の責任といたしましても、私企業にまかしているわけにはいかぬと私は思うのです。それで、それは復活する炭鉱だけを準公営あるいは公営にするのか、全体をもう公営あるいは国管とか、そういうものにするのか、そこら辺の点をもう少し先生のお考えを聞かしていただければ幸いだと思います。
  94. 磯部俊郎

    磯部参考人 第一点の五千万トンに対しての労働者数の問題ですが、私は、一応現在が二万五千人ぐらい、そうすると五万人という数が出てくるわけでございますけれども、それよりは若干多いというふうに考えております。と申しますのは、やはり深部に入りますと現状の能率をそのまま維持できるか、これは技術開発によって維持できる可能性はございます、けれども、そういった問題を考えますと、それを一、二万上回る人数が必要じゃないか、これは人員的には非常にたいへんな問題になるだろう、そう思います。そのためにこそいわゆる石炭は基幹産業であるという声明が必要である、こういうふうに思っております。  それから第二の点ですが、閉山炭鉱あるいは新鉱開発についてのみ公営もしくは準公営でなければならないというのは、これはさしあたっての対策ということで、一番最後に、六番目に申し上げたことでございます。さしあたってはまずそれをスタートラインにして、将来はそれが健全に発達していって、それでその一つ炭田が完全に公営炭田として成長していく、それから、閉山炭鉱公営炭鉱として成長していくというようなことになれば、その周辺の炭鉱を併合して、やはりそういった管理形態というものを各炭田別に最後には推し進めていくべきだろう、そういうふうに思っております。
  95. 田中六助

    ○田中(六)委員 終わります。
  96. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して、厚く御礼申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十三分散会