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1973-12-16 第72回国会 衆議院 商工委員会物価問題等に関する特別委員会地方行政委員会外務委員会大蔵委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会科学技術振興対策特別委員会石炭対策特別委員会公害対策並びに環境保全特別委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十六日(日曜日)     午前十時二分開議  出席委員   商工委員会    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 武藤 嘉文君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       浦野 幸男君    越智 通雄君       小林 正巳君    近藤 鉄雄君       八田 貞義君    保岡 興治君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    佐野  進君       渡辺 三郎君    米原  昶君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君    宮田 早苗君  物価問題等に関する特別委員会    委員長 平林  剛君    理事 稲村 利幸君 理事 木部 佳昭君    理事 倉成  正君 理事 井岡 大治君    理事 松浦 利尚君 理事 野間 友一君       加藤 紘一君    片岡 清一君       粟山 ひで君    金子 みつ君       山中 吾郎君    増本 一彦君       有島 重武君    石田幸四郎君       和田 耕作君  地方行政委員会    委員長 伊能繁次郎君    理事 村田敬次郎君       片岡 清一君    武藤 嘉文君       保岡 興治君    井岡 大治君       多田 光雄君    三谷 秀治君  外務委員会    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君       加藤 紘一君    小林 正巳君       深谷 隆司君    土井たか子君  大蔵委員会    理事 浜田 幸一君 理事 森  美秀君    理事 阿部 助哉君       宇野 宗佑君    鴨田 宗一君       塩谷 一夫君    広瀬 秀吉君       松浦 利尚君    村山 喜一君       山中 吾郎君    増本 一彦君  社会労働委員会    理事 大野  明君       稲村 利幸君    加藤 紘一君       木部 佳昭君    粟山 ひで君       金子 みつ君    島本 虎三君       田邊  誠君    石母田 達君       田中美智子君    和田 耕作君  農林水産委員会    委員長 仮谷 忠男君       染谷  誠君    粟山 ひで君       角屋堅次郎君    中川利三郎君  運輸委員会    理事 兒玉 末男君      小此木彦三郎君    神門至馬夫君       石田幸四郎君    河村  勝君  建設委員会       浜田 幸一君    三原 朝雄君       村田敬次郎君  科学技術振興対策特別委員会       稲村 利幸君    粟山 ひで君       河上 民雄君    堂森 芳夫君       近江巳記夫君  石炭対策特別委員会    委員長 田代 文久君    理事 田中 六助君 理事 多田 光雄君       加藤 紘一君    倉成  正君       三原 朝雄君    岡田 春夫君       中村 重光君    松尾 信人君  公害対策並びに環境保全特別委員会    委員長 角屋堅次郎君    理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君       八田 貞義君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)         (環境庁長官事         務代理)    保利  茂君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         北海道開発庁総         務監理官    秋吉 良雄君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省銀行局長 吉田太一郎君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         通商産業政務次         官       森下 元晴君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         工業技術院長  松本 敬信君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁石炭部長   佐伯 博蔵君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁長官 外山  弘君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         労働政務次官  菅波  茂君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      藤仲 貞一君         資源エネルギー         庁石油部精製流         通課長     松村 克之君         日本国有鉄道常         務理事     伊江 朝雄君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石油需給適正化法案内閣提出第四号)  国民生活安定緊急措置法案内閣提出第三号)      ――――◇―――――   〔平林物価問題等に関する特別委員長委員   長席に着く〕
  2. 平林剛

    平林委員長 これより商工委員会物価問題等に関する特別委員会地方行政委員会外務委員会大蔵委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会科学技術振興対策特別委員会石炭対策特別委員会公害対策並びに環境保全特別委員会連合審査会を開会いたします。  商工委員長との協議により、本日は、まず私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出石油需給適正化法案及び国民生活安定緊急措置法案の両案を議題といたします。  この際、御質疑される各委員に申し上げます。質疑は、申し合わせの時間内で御協力お願いいたします。  なお、政府当局におきましても、答弁は簡潔にお願いをいたします。  質疑伸し出がありますので、順次これを許します。河和勝君。
  3. 河村勝

    河村委員 初めに経済企画庁長官にお伺いしたいことは、明年一月から三月の経済情勢、特に卸売り物価並びに消費者物価が一-三月の間にどういうふうに推移するかということについて、どういう認識を持っておられるかということであります。十一月の卸売り物価はついに対前月比三%をこえ、三%以上の上昇という状態になってまいりました。おそらく十二月に入ると対前月比五彩をこえるという状態になるのではないかということが予想されるわけで、そうなればこれは戦後の朝鮮事変当時の最悪の状態をさらに越える形勢すらあるのですね。非常に異常な状態であります。だから、ここまできて、もう単に、きわめて憂慮すべき物価高騰などということではなくて、非常なおそるべき悪性インフレに突入しつつあるというほうがより正確なんですね。そこで、これから短期間の間にいまの需給バランスを回復して、そして物価を安定させようと思えば、当然国民の側の協力がなくてできるわけはないですね。いままでの例のトイレットペーパーあるいは砂糖、洗剤の買い占めというようなことは、これは確かに客観的に見ればずいぶんばかばかしい話であります。しかし、その原因というものはやはり根本的な政治の不信があるわけであって、一体政府ほんとう実態をどう把握してどうしてくれるのかさっぱりわからぬ。だから、みんな争ってああいう買いだめをやったということなんであって、ほんとう国民協力を得ようと思うならば、この際こういう段階まできているのですから、政府はこの一-三月が一番大事な時期ですから、この時期をのがしたらほんとう物価の安定というのは望み得ない、そういう時期だと思うのです。そこで、この一-三月は一体どういうふうに物価が動いていくのか、ほうっておけば一体どういうことになるのか、そういう実態をはっきりさせ、政府は、政府認識を明らかにして、その上で、政府はこういう段階まできたらこういうことをやるんだといろ具体的なことをはっきり言って、それで国民の理解と協力を求める、そういろ立場でなければならぬと私は思うのです。  それで、この一-二月の物価の動向を政府として一体どういうふうに見ておられるのか、それをまず先に伺います。
  4. 内田常雄

    内田国務大臣 明年一-三月の物価の措移につきましては、私どもも厳にこれを警戒しながら見守らなければならないと思っております。御指摘がございましたとおり、十一月分卸売り物価が非常な高騰を見ましたので、その影響が今後の消費者物価等にあらわれますことを私どもはたいへん心配をいたしております。そのためには、いわゆる総需要抑制対策といたしましては、明年度予算編成に臨む態度はもちろんのこと、財政金融の施策をさらに一そう綿密なものにいたしますとともに、ただいまお願いをいたしております本法案につきましても一日も早く御可決をいただかんことをお願いをいたすのでございます。
  5. 河村勝

    河村委員 私は、そういう抽象的な答弁を聞きたいと思って質問したのではございません。あるかなり信用度の高い研究機関予測によれば、この一-三月の段階卸売り物価は対前年同月比三〇%以上上がる、消費者物価も二三%以上上がる、こういう予測が出ておりますね。これは十一月の段階で、対前月比卸売り物価が三%以上上がるなんという事態の発生する前の予測です。ですから、おそらくはっておけばこれ以上のことになるだろうと思うのです。卸売り物価で対前年同月比三〇%以上、消費者物価において二三%以上、こういろ予測がございます。こういう認識について一体政府はどういうお考えを持っていますか。
  6. 小島英敏

    小島政府委員 基本的にやはり一-三月における石油供給がどうなるかということがキーポイントでございますけれども、どうもその辺に明確な見通しが立ちにくいものでございますから、私どもも一-三月の物価見通しがどうなるかということの明確なお答えができかねる状況でございます。ただ、申し上げられることは、十一月のあのような卸売り物価値上がりというものは十二月においてもある程度続いておると思いますけれども、かなり先取り的な、要するに一-三月に石油需給逼迫に伴って物資需給がかなり逼迫するであろうという見通しに基づいた先取り的なものがかなりございます。われわれはそういう動きを非常に好ましくないものとして、昨日大臣の談話を発表していただいたわけでございますけれども、これはある意味では、一-二月に本来石油その他の原価の値上がりあるいは操業度の低下に伴って必然的に上がらざるを得ない分を、いまの段階で先取りしているという面があるわけでございますので、研究機関のパーセントの数字等につきましては、私どもこれはいろいろな計算ができるとは思いますけれども、ある程度一-二月の事情が現在先取りされているという事情はあるというふうに思います。したがいまして、やはり総需要調整を厳正に行なって、供給力の減少にいかに需要をマッチさせるかということが基本でございますし、同時に、こういう現在お願い申し上げております法律によって、個別的な対策をできるだけ強力に行なってまいりたい。そういうのが私どもの現在の気持ちでございます。
  7. 河村勝

    河村委員 石油見通しがはっきりつかないということは、これは私どもよくわかります。しかし大体一月にさらに五%以上カットされて、その後もややそれより上回るカットがあるというふうに考えれば大体予測がつくはずなんで、むしろそうしたおそるべき実態をはっきり政府としては明らかにして、その上で政府はこれだけのことをやらなければならないのだ、国民の側にもこういう協力をしてほしいと私はこの際言うべきものだと思うのです。しかし、どうもそれ以上のことを言えそうもありませんので、中身に入りましてから、またあとから戻って伺うことにします。  通産大臣、いろんな法律もいまつくられつつあるところですけれども、根本的には総需要抑制、これだけ供給が減って、しかも需要がいまだに大きい、この需給ギャップを早く押え込むことにあることは当然ですね。それで、公共事業費を圧縮するのは、これは政府でできることですから、これは当然やられることとして、もう一つ、一番大きなものは、やはり民間設備投資抑制ですね。先ごろ新聞等で一部伝えられておりますが、当面、今年度、この年度内の設備投資抑制について、通産大臣はどういう方針で臨むつもりですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 物価騰貴を押えるために総需要抑制することはもう不可避であります。それで、通産省としては率先してやる必要があるということを感じまして、産業構造審議会にいまはかっておりまして、あした、十七日、その答申が出ます。その答申を実行しようと思っていますが、通産省で大体考えておりますことは、二、三千億円の民間設備投資を三月までにさらに抑制しよう、そのために、民間設備投資関係新規事業は認めない。それから、いままで継続している事業でも、これは業態によるけれども、五〇%ぐらいとか、あるいはもう長い間継続している仕事で、できる、できつつある、竣工が近い、そういうようなものについては一〇%ぐらい少し延ばしたらどうかとか、それから生産部門管理部門、おのおの性格も違いますから、そういうところも分けてやる。特に石油電力を多消費する産業については削減率を多くする。そういう考えに立って通産省としてはいろいろ検討しておりますが、審議会がどういう答申を出しますものか、審議会の結論を見て実行いたしたいと思います。
  9. 河村勝

    河村委員 いま審議をされております国民生活安定法二十二条に、設備投資抑制に関する条項があります。この設備投資計画の削限計画ができた場合、この二十二条を発動をして、これでやる意思があるのかどうか。
  10. 内田常雄

    内田国務大臣 河村さんも御存じのように、現在でも建築規制等閣議決定によります行政基準をもって行なっておりますけれども、この法律ができました後におきましては、この法律のたてまえによってきちんと、やはり行政措置を、法律上の措置に乗せてやってまいるのが有効であろうと考えております。
  11. 河村勝

    河村委員 通産大臣はいま、削減方針のときに、石油電力をよけい使う産業はよけい削減をする、そういう説明でありましたね。それも一つの角度からの規制基準だろうと思います。しかし同時に、いま需給バランスを合わせるといっても、供給力不足をさらにふやすような主要物資についてすれば、そうすればまた需給バランスというものはなかなか安定をしないということになるわけですね。ですから、ただ電力石油をよけい使うからというだけでなしに、質的な設備投資計画削減計画、どうしてもこの際供給力をふやしておかなければならぬものは比較的資金をそっちに振り向けて、それで不要不急のものを押える、要するに選別的な設備投資計画削減調整をやる考えがあるかどうか、その点を伺います。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油消費型ということを申し上げましたのは、来年の上半期がわれわれ正念場だろうと思っておるわけです。そこに戦列に参加して生産に出てくればいいですけれども、そうでないようなものについてはしばらくがまんしてもらう、そういう意味で申し上げたのであります。いま申されましたような御趣旨に沿ってやるつもりであります。
  13. 河村勝

    河村委員 この国民生活安定法案の二十二条を適用しましても、これも別段強制力というものはありませんね。ですから、単に設備投資縮小指示をすることができるけれども、しかしこれは単なる訓示規定であって、指示に従わなかったときには公表するだけだということですね。これから通産省としては、どういろ法的な強制力を持たないで、どのようにしてこれを押え込んでいこうという考えですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは春日委員長が言われました民主的調整という考え方と同じでありまして、やはり戦時中のような官僚統制を回避するためには官庁、業界、消費者、これが総ぐるみ協力し合うという体系がとられることが望ましい、いまのところ、考えてみるとそういう方法以外にちょっとないのであります。そこで行政指導を中心にしまして、一定の基準をきめて、その基準に対して合意を求めて、そうしてそれをみんなで守っていくように励行する、守らぬものについては、消費者の苦情やその他にも基づいて官庁が発動して公表するとか、そういろ社会的制裁を加えていく、そういう形で新しいやり方に挑戦しているわけであります。
  15. 河村勝

    河村委員 民主的統制もけっこうですけれども、実際は企業エゴというものは相当なもので、なかなかそう押え込めるわけのものではないと私は思うのです。  そこで、資金の面から押えていく以外に私はやはり実際の効果のある手段はないと思う。大蔵省として今後、戦争中の臨時資金調整法というようなものがいいかどうか、こういうものは別としましても、とにかくこの辺でもってほんとう不要不急なものを押え込んで、大事なものは削減計画の中でも残していく、そういう合理的な資源配分をやっていかなければならぬ時期ですね。一般的に言われる選別融資、そうしたような方法をとる意思がいま大蔵省にあるかどうか。
  16. 中川一郎

    中川政府委員 物価問題から、どうしても民間設備投資抑制しなければならぬということでございますので、ただいま通産大臣から御答弁がありましたように、通産省においても真剣に取り組んでおりまして、産業構造審議会でございますかで慎重に検討していただいておるようでございまして、結果を待ちまして大蔵省としても全面的に協力をしたい。その中身選別融資というような形にもなっていくのではないかというふうに思っております。
  17. 河村勝

    河村委員 なっていくのではないかというのは人ごとみたいな返事ですね。主体性がまるきりない。一体ほんとうはどういうことなんですか。
  18. 中川一郎

    中川政府委員 やはり専門的には通産省が第一次的に責任を持っておりますから、通産省意見を十分聞いて大蔵省としては全面的に協力していく立場が妥当ではないかと思っております。通産省を先越えして大蔵省がやるという考え方もあるいはあるかと思いますが、まずまず通産省意見を尊重していきたい。ただ、姿勢としては、不要不急のもの、たとえば土地商社あるいは娯楽施設、こういったものについては押える方向で積極的にやってまいりましたし、これからもやってまいる所存でございます。
  19. 河村勝

    河村委員 それを法律的な措置でやっていこうという意思がありますか。
  20. 吉田太一郎

    吉田(太)政府委員 法律的な裏づけで資金統制をするということは、かつての戦争中の経験もございますし、金融ということについてはなかなかなじみがたいものであろうかと思います。したがいまして、私どもは現在研究いたしておりますのは、やはり金融的な手法になじむやり方、たとえば土地融資やり方でございますとか、あるいは商社について日本銀行の窓口指導の中でこれをやっていったというような方法をやはりとらざるを得ないのではないか。したがいまして、先ほど政務次官からもお答え申し上げましたように、特に現在の時点において緊急を要しないものについての融資が異常に伸びていくというようなことを押えていくということのためには、やはり金融機関が自主的にある何らかの基準に基づいて融資を押えていくという形が一番いいのではないか、かように考えております。法律に基づいて統制をしていくということは、現実的にもなかなか問題もございますし、金融というものについてはなじみがたいものではなかろうか、かように考えております。
  21. 河村勝

    河村委員 企画庁長官、いままでの審議の中で、あなたと政府委員との間の意見が必ずしも合ってない問題があるので、それをちょっとお聞きしますが、この国民生活安定法特定標準価格制度を発動する場合の第七条の、第一段階標準価格をきめて、それでまず物価の安定をはかる。その第七条には、「前条までに規定する措置を講じてもなお指定物資価格の安定を図ることが困難であると認められる場合において、当該指定物資を特に価格の安定を確保すべき物資として指定することができる。」とありますが、これで、従来政府委員説明では、標準価格をまずきめてやってみて、その上でなくとも直接にこの条項を発動することができる、そういう解釈のように聞いておりましたが、長官のほうの答弁はどうもはっきりしないようですが、その点はどうなんですか。
  22. 内田常雄

    内田国務大臣 第七条は、河村さんがただいまお読みくださったような仕組みになっておりまして、一般的にはどうしてもその指導的な価格をきめなければならない、きめたほうがいい物資をまず選びます。その物資を選びまして、その物資の中から標準品目、たとえばトイレットペーパーにいたしましても品目数は二百ぐらいあるそうでございますから、その中の標準的な品目を幾つか選びまして、それについて標準価格をつくりますが、その標準価格はあくまでも先導的な価格と申しましょうか、ソフトの価格でございまして、したがって、その前後左右には品目によりましては標準価格が設定されない似たような品目が幾つかあるわけでございます。しかし、そのうちの標準的な品目につきまして標準価格をつくることが、その指定物資全体の価格のあり方を指導していく上に役に立つと考えまして、その第三条の一般的な標準価格があるわけでありますが、しかしそれだけでは、価格を取り巻く情勢等がきびしくなりまして、もっときっちりして、それに違反した場合には課徴金を取らなければならないような事態の場合を七条は一般的には想定をいたしておるわけであります。その場合には、特定品目というものを標準品目の中からなお厳密に選びまして、そして特定標準価格のきめ方なども、ソフトよりももう少しハードにきめていくことになると思います。これはしかし一般論でございまして、政府委員答弁をいたしましたように、必ずしもその標準価格を先にきめないと次の特定標準価格がきめられないということではございませんで、一般の価格情勢等によりまして標準価格でソフトのものをきめてまいるよりも、いきなり課徴金の対象になるようなきちんとした特定標準価格をきめたほうがよろしいというようなことが「認められる場合」には――それには「認められる」と書いてございます。「認められる場合」には、お尋ねのように、また政府委員から答弁いたしましたように、私は一般的には例外として取り上げたいと思いますが、たてまえとしては、そういう場合にいきなり特定標準価格をつくることもあり得る、こういう趣旨でございます。
  23. 河村勝

    河村委員 たいへんくどい答弁でありましたけれども、要は、何も一段階経ずとも、直接この第七条を発動する場合もある、そういうことなんですね。
  24. 内田常雄

    内田国務大臣 さようなわけでございます。
  25. 河村勝

    河村委員 それで、この標準価格の場合と特定標準価格の場合について、片一方では標準的な利潤ということばを使っておって、特定標準価格の場合には「適正な利潤」ということばを使っておりますね。この意味は、標準的な利潤というのは大体わかるような気がしますが、「適正な利潤」というのは一体どういうことですか。
  26. 小島英敏

    小島政府委員 実は第一段階標準価格を設定いたします場合には、その事前に役所のほうでも生産費の統計等を厳密に実はとっていないわけでございます。行政事務上の普通のベースで、ある程度の推計資料等はあると思いますけれども、とうてい第一段階の場合にはそういう厳密なデータがないわけでございますから、実際のやり方としては、過去における販売価格の状況それから原材料その他のコストを推計させるようないろいろな統計があるわけでございますから、そういうものを中心にいろいろな要素を勘案して定めるわけでございまして、ですから、結局あまりそのものの価格が変動していない普通の状態における利潤を大体そのまま認めるという形で、現下の原価事情等の変化を積み増して計算するというようなことで実際は第一段階はやらざるを得ないと思うわけでございます。そういう意味で、標準的な生産費及び利潤というようなことばを使っているわけでございますけれども、第二段階の特定標準価格段階になりますと、これは標準価格、先ほど大臣のお答えにもございましたように、普通の場合は第一段階を通してから第二段階に参るわけでございますから、その過程でいろいろやはりもっと詳細なデータもとり得るわけでございまして、企業のほうもその品目について分離計算をして整理いたしているわけでございますから、かなり第一段階よりもデータがとりやすくなっていると思います。そういう意味で、第二段階は業種別の「適正な利潤」と、これは必ずしも一律に売り上げ高利益率何%ということは申せないと思います。やはりマージンというものは業種、品目によって、マージン率の高いものもあれば安いものもございますから、一律ではございませんで、やはり業種別に一つの線が出てまいると思いますが、そういうものをこの場合適正利潤といっているわけでございます。
  27. 河村勝

    河村委員 大臣、いま物価局長の話を聞いておりますと、いわゆる平時の適正利潤というような考え方のようですね。ただ、いまここでこの法案は、時限立法ではないけれども短期間に物価を安定させる目的でつくられているものですね。いまのインフレというのは、ごく簡単にいって需要超過インフレですね。供給力が不足をして需要がまだ大きい。だから普通の条件での適正利潤というようなことを考えておれば、いま不足する物資を扱っているところはどんどん価格転嫁ができるのですね。価格転嫁をさせて、そしていわゆる適正利潤を認めておったら、とてもいまの異常事態を乗り切れるはずはないでしょう。ですから適正利潤という考え方も、普通のときの適正利潤と、こういう異常であり、急速に物価を安定させ需給バランスをとらなければならぬ時期とは考えを変えるべきであって、もう利潤は思い切って押え込んでしまうんだというくらいのところがなければいかぬと思うのですがね。その点はどう思いますか。
  28. 内田常雄

    内田国務大臣 たてまえは政府委員から答弁をさせたとおりでございますが、ここで河村さんのおっしゃるように、非常の事態の場合においては非常の事態に沿う利潤、たとえばゼロの利潤というのはございませんでしょうが、そういうところまで入っていくたてまえではございません。と申しますのは、この法律のたてまえは、利潤のみならずその間に支払われる賃金等につきましても、非常事態のもとにおける非常賃金をきめていくというような所得政策にこの段階で踏み込む考え方に立っておらないところから、そういうふうな考え方をとっておる次第でございます。
  29. 河村勝

    河村委員 いわゆる所得政策というのがいいとも有効だとも思わないけれども、自主的にそういう方向に持っていかれるならば決して悪いことじゃないと私は思うのです。つい先ごろいろいろな新聞に出て、一紙だけでないからほんとうだと思うのですが、中曽根さん、新日鉄の稲山社長が石油電力規制がきびしくなって操業度が落ちてコストが上がる、だからそのコスト増に見合う分をトン当たり三千円だか何だか価格は忘れましたが、値上げをするんだというような宣言をしましたね。新日鉄はこの三月も九月も非常にもうけております。国の中でも企業の中でも一番社会的責任の重い企業ですね。そういうところの経営者がいまの時期にそういう価格転嫁を簡単にやるというような姿勢、それでよろしいと思いますか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 稲山さんがどういう話をしたか私よく存じませんが、おそらく稲山さんの真意が正直に正確に伝えられていないのではないかと想像されます。やはり鉄のような産業の基幹物資はできるだけ長期的に安定することが望ましいので、少しくらいの変動によって高下するということは適切でない、そういうふうに考えます。
  31. 河村勝

    河村委員 企画庁長官通産大臣も所得政策といわれることを非常におそれているようですけれども、いまこの状況で、先ほどから言っていますように、業種別の格差はずいぶん開いてきますから、業種によっては非常に苦しくなるところもあるでしょうけれども供給力不足、需要超過という条件がある限り、まだまだこの三月くらいまでの間は、大部分の大きな企業がみんな操業短縮によるコスト増加を価格転嫁できる状態が続くのですね。そうするとインフレ利潤というものはみんな相当がっぽり入る。ほっておけば、そういう状態で三月の時期を迎える可能性が非常に強いと思う。そういう時期にちょうどベースアップの時期がきますね。働く者の側からいえば、これは完全な被害者なんだから生活防衛のために、そういう状態であってしかも企業はがっぽりもうけているということになれば、二〇%でも二五%でも賃金要求をするのはあたりまえですね。しかし、実際そういうことが実現した場合には、これは単なる需要超過インフレではなくて、ほんとうにコスト・プッシュ・インフレの悪循環の時期に入ってしまう。私はこれを非常におそれているわけです。  だから、政府としてはこの際、企業エゴにまかせないで、まず財界はじめ大企業の人たちと話し合って、この際はとにかく価格転嫁によっていままでどおり利潤を確保するというのではなくて、さっき企画庁長官は利潤ゼロということばを使われたが、極端に言えばゼロまで覚悟して、それでこの危機を切り抜ける、そういう合意を遂げて、その上でそれができ上がったら、そこでほんとうに労働組合のナショナルセンターと政府、財界と隔意のない相談をして、企業も利潤は完全に切ってしまうんだ、だからこの危機を押えるためにベースアップのほうも極力押えていく、そういうような合意が私はやってできないことはないと思う。それは自主的な所得政策かもしれないけれども、これは中曽根さんのようなことばを使えば民主的所得政策、私はそういうものをやり得る可能性がないとは言えないと思う。そういうことをおやりになる意思があるかどうか、通産大臣経済企画庁長官の両方からお答えいただきたい。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 所得政策をやる考えはございません。しかし、前段でお話しになりました産業界に協力を求めるというやり方は、この法案が通りましたら、法案の運用等にも関しましてわれわれの考え方産業界にも伝えて、そして価格抑制等について協力を求める必要があると思っておりました。したがって、適当な時期にそれを実行したいと思います。
  33. 内田常雄

    内田国務大臣 通産大臣が言われたのと私の考えと同じでございますが、別のことばで言いますと、所得政策というのは各国の例を見ましても、国民的合意が成熟しないとやっても失敗をする。しかし私は河村さんのお説を傾聴いたすものでございまして、河村さんのようなお考え方国民的合意の出発点になるような事態が来ました場合には、それは私ども考えてまいるべきであると思います。
  34. 河村勝

    河村委員 何か自然にそんな合意ができてきたらやりましょうというようなことで、そんな黙っていてできるわけがないでしょう。通産大臣のお答えも、ただ財界と話してみましょうというだけで、私の言ったことに対する答弁には全然なっていないですね。だから、所得政策が非難されるのは、それは賃金、価格物価、利潤凍結みたいに機械的にやって押え込んでしまう。そういうところに非難があるのであって、ほんとうに企業のサイドもこの際は利潤ゼロでもいいから、とにかくこの危機を乗り切っていこうという覚悟があって、政府と合意ができたら、その段階で労働団体のナショナルセンターと話をしていく。できるかできないかわかりませんよ。少なくともそのくらいの努力をすべき時期だと私は思うのだけれども、あなたの返事は全然それがなかったけれども全然それはやる意思なしと、こういうことですか。
  35. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経済政策は有機的でありますから、なかなかむずかしい要素がありまして、ある一点を固定してそれだけを強調いたしますと、それに関連するものが全部氷づけのような形にいく情勢が出てくる。そういうことが出てきた場合には、なかなか機能的な活動を果たすことができないような情勢があると思うのです。たとえば戦時中の経験を見ますと、マル公、価格を公定するという形になると、物価、配当、利子、それから賃金、そういうようなものを全部同じようにくぎづけにしなければできない。しかしそういうふうにした場合に、じゃ生産性が上がるかというと全然上がらぬで増産もできなくなる。やみがかえってまた横行する。そういう悪循環を繰り返したのが戦時中の経済の経験でありまして、いまの日本の状態から見れば、やはり国民の活力を培養していきながら生産に結びつけていくということが私らは大事だと思うのです。  しかし、現在の国民経済の情勢を見ますと、何といっても企業者の責任というのは非常に重大であって、企業者が自分の生産品の値を上げるということをできるだけ抑制するようにしなければいけないと思うのです。原油の価格が上がってくれば原料が上がりますから、必然的に生産費が上がってくる。そして最終製品の値も上がるというところに論理的にはつながっていきますけれども、しかし、それを放置しておいてよいというものではありません。したがって、物価抑制の見地から、そういう経済界の指導者に対して、この法案の運用等もありますから、私はよく話してみよう、そういうことを申し上げたのであります。
  36. 河村勝

    河村委員 まるっきり答弁になっていない。私は別段マル公をつくれとか、機械的な官僚統制をやれという質問をしているんじゃないのですよ、一つも。もっと自発的に財界も労働団体も協力をして、危機を乗り切れるような合意が大筋でできないのか、そういうことを言っているので、大臣ともあろうものが、何か非常に事務的な問題にすりかえてしまって、答弁にならないようなことをおっしゃっているのですね。
  37. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう趣旨でございますならば、これは国民全体、官庁消費者生産者、みんなが総ぐるみでこの危機を突破しようというかまえが正しいと、私、最初から申し上げたとおりでございまして、そのことは官庁においても、あるいは産業界におきましても、あるいは労働界におきましても、あるいは消費者団体におきましても、政府が主導して、そういう方向をよく御理解願って、協力を求める、これは当然やるべきことであると思います。
  38. 河村勝

    河村委員 そういうきれいごとにすりかえてしまうと、ほんとうは問題は解決しないのですよ。やはりスタートはこの際企業が、それはコストを割ることはできないかもしらぬけれども、一時期、半年ぐらいの間利潤がなくたっていいんだというところまではっきり踏み切らせて、それを政府がやってみて、その上で労働団体に話しかけろというのが私の言っていることなんですよ。私の言っているポイントを全然ぼかしちゃって、ただ修身の教科書みたいな返事をされたって、私どもはちっとも政府の意欲というものを感じられないのです。まあしかし、これはほんとうに真剣に考えてください。きれいごとでほんとうに済む時期でも私はないと思う。  それから次に、公正取引委員長かおみえになっておりますので、公正取引委員長に伺いますが、先般、予算委員会だと思いますが、やみ価格協定を摘発をして、協定をやめさせた場合に、公取に価格引き下げ命令を出す権限を与えよというような意見を述べられたというふうに聞いておりますが、それはどういう意味であるか。それが実効性があるものかどうか、その点ちょっと意見を聞かしていただきたい。
  39. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私ども意見は、現行の法律のままではどうも協定の破棄を命ずることはできましても、価格をもとに戻せという命令ができない。これは昭和二十二年に独禁法ができて以来、今日まで一貫してそうなっておりまして、引き下げ命令を出した事例は一ぺんもないわけでございます。  そこで、そういう破棄だけではほんとうに独禁法の有効性といいますか、効果が不徹底じゃないか、協定前の価格に戻すということはどこまでの限界であるか、非常にむずかしいことでございますけれども、しかしいずれにしても、協定を破棄いたしました、自主的にこれからきめますと、これはたいていの場合に新聞発表等その他会社の責任において行なわせておるわけでございます。しかし、そういいましても、その結果の価格を見ると、価格が上昇の機運にあるときには下がらないのです。これが平静の場合あるいは不況に向かっている場合には、確かに価格協定を破棄いたしますと、自動的に下がっているわけです。そういう問題がありますが、今日のような時期には、ちょっとすぐには価格の面において有効性が発揮されない。この点はちょっといかぬじゃないか。  少なくとも違法な行為を行なって、その行為の破棄を命ぜられたのですから、筋から申せばもとの価格に戻せばいいじゃないか、こういうふうに私も思いますし、世間の方もそうおっしゃいます。しかし、これは簡単には――いまの法律をやはり変更しなければできないし、どこまでの限界で、公取が五人の委員会でここまで戻せという――ずっともとへ戻すといいますと、事件によりましては非常に長い事件になっているのがございます。非常に早い解決を見るものと、それから審判などに持ち込みまして、一年も二年も経過してしまうものもございますから、それらを同列に扱うことはできない。  しからば、いかなる範囲で公取は裁量権を持ち得るか、こういうような点、いろいろ損害賠償請求権の問題ともからみまして、たいへんむずかしい問題でございますが、なるべく早急に、ただいま独占禁止法研究会を始めまして、そういうところで十分吟味していただきまして、ほかの問題と一緒にある程度めどが立ったら、私どもとしては法律の改正に取り組んでまいりたい、こういう考えでございます。
  40. 河村勝

    河村委員 ちょっと足が悪いようですから、こっち側にいてください。  考えはわかりますが、ただ公取の性格からいって、もとの価格に戻せまでは、法律を改正すればできると思うけれども、しかしその価格で、そこで凍結効果、下げたらあと上げちゃいかぬというところまでは公取の性格としてはできないのでしょうね。いかに法律改正をするといっても、公取の性格上そこまではできないように思うが、それではあまり実効性がないんじゃないかと思いますが、どうですか。
  41. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまおっしゃいました点はまさに問題点の一つでございます。しかし私どもは、現在でもすでに破棄を命じまして、そしてその命ぜられた会社は、毎月少なくとも六カ月間公取に対して、それぞれが自分の取引先と取引したその価格を報告するように、もし協定がそのまま続いておりますと、同一価格になってしまうわけです。それぞれがやるのでしたら、当然私は価格に若干の差が出てくるのはあたりまえだと思いますが、そういう報告を求める。ですから、順守しなければならないというところまで強制し得るかどうか、それは法律的な問題でございますが、報告を求めるということで相当な圧力にはなるのではないかと思って、その範囲では可能だと思っております。
  42. 河村勝

    河村委員 そこで企画庁長官、この特別標準価格にいきなり適用することができるということはさっきでわかりました。だけれども、実際特別標準価格をつくる作業というのはたいへんですね。そう簡単にできるものだとは実は思わないのですよ。それで、たまたまいま公取委員長から、価格協定を破棄させたら物価はもとに戻せという権限を与えよという話があったのですが、それを下げさせても、押え込んでしまう効果はどうも怪しいのですね。ですから、むしろ公取の摘発能力を拡大して、それでこの前もだいぶベアリングとか特殊鋼とか七項目ぐらい摘発をされたようであるけれども、公取がそれを発動した場合に、その品目を対象にして特別標準価格をつくってしまうということにすれば、これは一番実際的なやり方として有効ではないか。私は、公取の摘発能力がいまどのくらいあるのかよく知りません。だけれども、もしそれがやれるものなら一番すぐに実行可能じゃないか、そう思うのですが、いかがですか。
  43. 内田常雄

    内田国務大臣 公取が価格協定の破棄を命じたその品目と、またこの法律によります生活関連物資あるいは国民経済基礎物資として取り上げるものと違う場合もあり得るわけでございまして、公取が破棄する場合には、さらにもう一つ上というのはおかしゅうございますけれども、生活関連物資あるいは国民経済基礎物資のさらに基礎になるような物資の場合も多かろうと思いますので、そのものをすぐに基礎物資として取り上げるかどうかという問題は一つございます。  それからもう一つは、河村さんの御所論のとおりでございまして、公取がカルテル破棄を命じましたその瞬間に、カルテルででき上がった価格をわれわれが特定標準価格として認めるということになりますと何もなりませんので、下げさせるような機能を公取が持つかどうかという問題にもこれはかかるわけでございます。いずれにいたしましても、私どもは、公取がカルテル破棄等を命じました際には、その前後の事情ども十分公取当局から聴取をして、そして特定標準価格をきめるとすれば、これは公取が価格破棄をする作用と全く違いまして、この法律によって与えられる権限でございますから、政府の作用でございますから、その辺の事情は、河村さんのおっしゃるような意味のことも頭に置きながら特定標準価格をつくるいろいろな資料にしたい、すべきである、かように考えます。
  44. 河村勝

    河村委員 運輸大臣、近ごろようやくマイカー規制の問題がちらほら新聞などに出るようになりました。いままでタクシーのLPGがないために非常な混乱を起こしたのであって、そういうものについての手当ては、一生懸命やっておられるようであるけれども、一方で運輸大臣としてほんとう考えるならば、まずマイカー――ガソリンとLPGが、種類が違っても、しかし得率をいろいろ変更したりすることによってガソリンを節約して、それで結果的にLPGや灯油をふやすということも可能なわけですね。ですから、これはちょっとことばを省略したから非科学的みたいな言い方かもしらぬけれども、あとで疑問があれば通産省の各係のほうに聞きますが、だからまずマイカー、ああいう不要不急なものに手をつけてそれでガソリンを節約する。だから非常に公共的に大事たLPGのほうを確保しろ、そういう姿勢でなければほんとうに問題は解決しないと思う。それにもかかわらず、いままでマイカーの規制について全然手おくれの観があるようですが、一体それは今後どうするつもりなのか。やるとすれば、やり方はどういう方法でやるつもりでいるのか、それをちょっと説明してください。
  45. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 ガソリンとLPGの関係は、私はつまびらかにしておりませんけれども、ガソリンを倹約してすぐLPGにこれが切りかわるというようなものでもないかと思いますが、それにいたしましても、御指摘のようにマイカーをこのまま置いておくという方法はないと思います。したがいまして、いま自粛を呼びかけておりますことは御承知のとおりでございますが、ずいぶん乱暴な意見もあります。乱暴な意見もございますけれども、これは私のところだけでなかなか全部手が回るわけでもございませんので、いま総務長官のところで中心になってもらいまして、私のところも十分運輸行政でやれる範囲の力を出しまして、自治省あるいは警察等あるいは農林、いろいろな多面にわたった問題がございますから、近く結論を出して自粛を呼びかけるばかりでなくて、もう一歩踏み込んだお願いをしたい、こういうふうに考えております。
  46. 河村勝

    河村委員 時間がなくなってしまいましたので、では最後に、いまのガソリン節約によってLPGその他が救済できるかということについて通産省、これは大臣じゃ無理でしょうから、ちょっと伺っておきたいのだが、こういうことは可能なんでしょうね。ガソリンの得率を減らして、ナフサをふやして、ナフサをガス会社なんかに回して、ガス会社で使っているLPGを浮かして、それをタクシーなり家庭用に回す、そういう方法は可能なんでしょう。どうもガソリンを幾ら節約しても、ほかに得にならないというような、そういう議論があるようだから、念のために聞いておきたい。
  47. 山形栄治

    ○山形政府委員 いま先生のおっしゃいましたとおりでございまして、ガソリンを減らしてナフサをふやす、そのナフサをガスに回して、ガスで使っているブタンをタクシーに回す、こういう関係は当然にあるわけでございます。ただ一つ申し上げたいのは、ガソリンとナフサとの間において融通むげでございませんで、おのずから得率上の制約がございます点は、念のため申し上げておきます。
  48. 河村勝

    河村委員 最後に一問だけ大蔵省に聞きたいのですが、公定歩合の引き上げ、預金金利の引き上げがいろいろ報道されております。公定歩合が一%か二%、預金金利が一%というような非常に微温的な案が行なわれているようであるけれども、預金金利を考えれば、この状態のもとで預金の実質的な減価というのはたいへんなものですね、値打ちの下がっているのは。同時に、卸売り物価が毎月三%も五%も対前月比で上がるようになれば、貸し出しのほうだって完全に債務者利潤が発生してしまって、借り得という状態でしょう。ですから、貸し出し金利のほうも預金金利ももっと大幅に上げていいはずですね。この際、公定歩合も一〇%以上にする、預金金利も一〇%以上に上げる、そのかわり物価が安定したら預金金利もすぐ下げるというぐらいの機動的なことをやるべきだと思うが、その答弁を伺って私の質問を終わります。
  49. 吉田太一郎

    吉田(太)政府委員 預金金利の問題につきまして、御承知のように、昭和三十年代の高度成長の過程において、低金利政策の関係から、いま御指摘のように、金融利益の配分の問題として、預金者に不利になっているのではないかということは、確かに事実ではないかと思います。今後の問題として、預金金利のあり方ということは、そういう角度からも検討を加えていく必要があろうかと思います。  ただ御承知のように、預金金利はおよそ金利体系という網の目の一環でございまして、預金金利を動かすことが、いろいろな面で波及する問題もございます。したがいまして、そういう問題を考慮しながら、やはりこの問題を研究しておるというのが現状でございます。
  50. 河村勝

    河村委員 終わります。
  51. 平林剛

  52. 河上民雄

    河上委員 いまの当面の二法案につきまして、外交の側面から質問をさせていただきたいと思います。田中総理大臣は耳が痛くて入院というようなことでございますので、私の質問を聞いていただけないのは残念でございますが、大平外務大臣と中曽根通産大臣のお二人を中心に伺ってまいりたいと思います。  今回の石油危機で非常に明らかになったことが一つあると思うのです。日本政府は、いままで石油がほしい、札束でたたけば石油はもらえるものだというふうに考えてきたと思うのでありますけれども、それは今回の事態で間違いであるということが非常にはっきりしたと思います。今日、アラブ諸国は、札束は十分あるわけでありまして、アラブ諸国としては、いま求めているのは、口先のアラブ寄りというような態度表明ではなくて、実際の行動を示せということだと思います。ことばだけではなくてあかしを立てろ、こういうのがいまアラブの態度であろうと思うのです。今日、石油を確保するということは、非常に経済的な問題でありますけれども、実はこの問題が解決しない限り、石油需給関係というものは正常にならないのじゃないか、こういうふうに私は思うのでございますので、外交の側面から二、三お尋ねをいたしたいと思います。  私は、まず、いま申しましたようにあかしを立てることが大事だと思うのでありますが、その一つとして、あの十月の中東戦争のときに、シリアに停泊中でありました日本郵船の貨物船山城丸の事件について、その後外務省はどのような態度をとられたか、それを伺いたいと思うのです。十月の十九日の外務委員会におきまして、私はこの問題を質問いたしました。例のテルアビブの事件のときに、日本は必ずしも因果関係から見てそういうことをする必要はなかったけれども、あえてあのような措置をとられた。それとの対比上も、これは当然また国際法上も要求し得る可能性があることでありますから、賠償、少なくとも補償を日本政府として要求すべきではないかということを申し上げたわけでございます。ここに私は議事録を持っておりますけれども、当時大平外務大臣は、事情を聴取中であるので、この事情を踏まえた上で、とるべき措置は遅滞なくとりたいと考えている、このようにお答えになりました。その後、この問題は、かなりの日時がたっておるわけでありますので、山城丸事件について日本政府として賠償あるいは補償を要求せられておるかどうか、そのことを伺いたいと思います。
  53. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お尋ねの山城丸は、ラタキア港から十二月六日ギリシアのピレエフス港に移っておりまして、ただいま日本郵船の社員の立ち会いのもとでロンドン・サルベージ・アソシエーションが船体の損害、貨物の損害等につき調査を行なっております。現在までのところ、船体は全損ということのようでございますけれども、積載貨物についてはなお調査中でございます。この調査は、少なくとも本年一ぱいはかかるということでございます。  なお、被弾破片の発見は、被害の状況から困難が予想されるという情報でございます。  一方、シリア政府に対してでございますけれども、十月の十日の夜海戦が始まりましたが、十月十一日、山城丸は左舷の沖合いより飛来したミサイルらしきもの二発が命中いたしまして、火災を発生したといわれておりまして、その際、シリア当局から、すでに出港許可を求めておりましたが、それが拒否されておった問に遭遇した事件でございまして、なぜ当方の出港要請に対して許可がなかったかということに対して、大使館を通じまして回答を求めておりますが、いまだ回答に接していないのでございます。私どもといたしましては、この種の調査を完了いたしました上、所要の措置を講じなければならぬと考えております。
  54. 河上民雄

    河上委員 いまのお答えは、十月十九日の私の質問に対するお答えとあまり変わっておらないのであります。もうあれからかなり、二カ月もたっておるわけです。この問題は、一日本の船があの中東戦争のさなか、シリアにおいてイスラエルの攻撃を受けたという事件でありますけれども、外交というのは、外務大臣御承知のとおり、一つのしるしといいますか、サインというのが非常に重要だと思うのですね。アラブ寄りというのは、声明でするのではなくて、一つ一つの処理を通じてそれを表明することが大事だと思うのです。  私は、いまここに「諸君」という雑誌を持っておりますけれども、その中で最首というある新聞記者の方が、こんなふうに書いております。「こんどの戦争で日本郵船の山城丸がイスラエルの攻撃をうけて沈没したといわれている。真相はわからないが、日本政府が民間人の行為に対してイスラエルに謝罪特使を送ったのに、山城丸沈没についてはイスラエルに対する抗議もせず、事実調査の要求もしていない。アラブはこの日本政府の態度を不審に思っている。」こういうふうに書いてあります。もちろん、ここに記載している事実は、若干その時点ではまだ不正確な点もございますけれども、基本的に一体抗議をされたのかどうか、また今後抗議をするつもりがあるのかどうかを重ねて伺いたい。
  55. 大平正芳

    ○大平国務大臣 正確な事実を踏まえてやらなければならぬわけでございまして、それをいま調査中でございまして、あいまいな事実をもとにわれわれはいたすべきでないと考えておるわけでございまして、あなたの言う趣旨はよくわかるわけでございますが、やる以上きちっとした事実を踏まえてやるべきであると承知いたしております。
  56. 河上民雄

    河上委員 それは一つの態度だと思いますけれども、テルアビブの事件につきましては、まだ裁判続行中でありまして、そういう正確な結論というのは出ていない時点で謝罪特使を派遣された。それとの対比において、いまのお答えは必ずしもアラブ側を納得させるものではないと私は思います。  これ以上伺ってもいかがかと思いますけれども、そういう点を考えて、こういう一つ一つの問題をちゃんと処理することが、実はアラブ寄りの声明を出すことよりもはるかに大事であるということを肝に銘じていただかないと、いまのこの石油危機というのは解決しないと私は思うのです。  第二は、次に同じようなことでありますけれども、先般の二階堂官房長官の声明の中で「パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され、尊重されること。」ということをうたっておられるのでありますけれども、今回の石油危機にあたってアラブ側の一貫した主張というのは、パレスチナ人の正当なる権利の回復ということの要求であります。したがって、ここでうたわれていることが具体的に何を意味するかということが非常に重要であり、また関心事だろうと思うのです。ここで「正当な権利」とは何を意味するのか。それからパレスチナ人民の独立と国家主権を認めることになるのかどうか、その点を外務大臣にお伺いしたいと思います。
  57. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 パレスチナ人の正当な権利、これは実は、このパレスチナ問題が発生しました背景と関係がございます。御存じのように、一九四八年イスラエルが国家を建設しましたときに、イスラエルによって占領されました地域から、パレスチナの避難民が近隣諸国に集まったわけでございます。生活の本拠から追われました関係上、かつこれらの人たちが財産なり教育なり、あるいはしかるべき技術を持っていないために非常に生活が困ったわけでございます。これに対しまして、国連が一九四九年以降この問題を取り上げまして、これらの困難な状況にあるパレスチナ人の権利、つまり正当な権利と申しますのは、そういう生活権を含めました権利について、これをひとつ確認してやろうじゃないかということで、特に一九七〇年の二十五総会以後、パレスチナ人の自決権の確認という決議が出まして、大体これが採択されて今日に至っているわけでございます。
  58. 河上民雄

    河上委員 時間があまりないので、そういうお互いにわかっていることをくどくどここで説明されても困るのです。  大平外務大臣に伺いますけれども、ここで二階堂官房長官が言われたことは、おそらく現在の中東会議、これから行なわれる中東会議その他で当然出てくると思う、パレスチナ国家の建設を認めるかどうかという問題と非常に関連があると思うのです。日本政府は、こういうことを言う以上、その行く先として、パレスチナ国家建設をはっきりと認めるつもりがあるんだろうと思うのですが、そういう決意なくして、ただことばづらだけ言うということは、かえっていたずらにアラブ諸国の不信を買うにすぎないと思うのです。大平外務大臣はこういうことを言われる以上、この点についてどういう見通しと態度を持っておられるのか、この場ではっきり言っていただきたい。
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 官房長官談話に示されておりますように、国連憲章に基づくパレスチナ人の正当な権利を尊重するという原則のもとに、それを踏まえて中東紛争は解決されねばならないということは、七一年以来たびたびの国連決議におきまして、わがほうが賛成してまいりました原則でございます。それをそこにもうたったわけでございます。  しからば、その内容はどうかということのお尋ねでございますが、わが国の態度といたしましては、これから持たれる中東和平会談におきまして、この原則を踏まえた上で、当事者間におきまして妥当な結論が出ることを期待いたしておるわけでございまして、具体的内容にわたって、こうでなければならないという立場をいまとっておるわけではございません。
  60. 河上民雄

    河上委員 いまおっしゃったことは、パレスチナ人が民族自決の原則に基づいて国家を持つということは当然である、そういうお考えは持っておられるわけですか。
  61. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その問題が、まさに中東和平会談におきまして、当事者の間で取りきめられるべき問題であると承知いたしておるわけでございまして、私どもに関する限り、今度の中東和平会談におきまして紛争が解決される原則として、こういう原則を踏まえてやるべきであるという原則を宣明いたしたというのがわれわれの立場でございまして、具体的内容にわたっておるものではございません。
  62. 河上民雄

    河上委員 いま大臣が言われた当事者間、その当事者というのは、だれとだれをさすのですか。
  63. 大平正芳

    ○大平外務大臣 イスラエルと紛争状態にありまするアラブ関係国でございます。これは国連が主宰になりますのか米ソが主宰になりますのか、まださだかにきまっていないようでございますけれども、この両紛争当事者がテーブルに着きまして、取り上げて解決すべき課題であると私は思います。
  64. 河上民雄

    河上委員 その場合、パレスチナ人民の自主的な組織が当事者の中に入るとお考えですか。
  65. 大平正芳

    ○大平外務大臣 その点につきましては、アラブ関係国の間におきましても問題があるようでございまして、いま私どもはそれに介入いたそうとは思っていないのでありまして、日本政府立場は、中東紛争解決の原則はこういう原則であるべきであるという立場を申し上げておるわけでございます。
  66. 河上民雄

    河上委員 この前からアラブ寄りという声明を出されたわけですけれども、その場合には二四二号国連決議、これに依拠して言われたわけです。これは何か二つの言い方があるわけでして、今度特にアラブ寄りになったんだという言い方と、いや、実は日本は、あの決議に賛成して以来一貫してアラブの主張に理解があったんだ、その証拠に二四二号決議に賛成しているじゃないかという言い方と、ニュアンスとして二つの言い方があるわけです。もし二四二号決議にずっと賛成していたということがアラブ寄りということであるならば、アラブがいまここで急に日本に対してアンフレンドリーな、友好国でない、非友好国だというような判定を下した根拠というのはなくなってくるわけです。  そこで、この二四二号国連決議に賛成しているという点については、確かに一貫しているかもしれないけれども、その解釈が、実は国際的に非常に問題になっているわけです。したがって、どこでどう解釈が変わったのか、それを明らかにしなければ、今回二四二号決議を取り出して、日本はアラブ寄りなんだと言う理由というのははっきりしなくなると思うのです。外務大臣は、この二四二号決議の解釈で、今回どこが変わったのか、どのように変わったのかを明らかにしていただきたい。
  67. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 中東問題につきましては、日本は国連その他の場で、六七年の二四二決議ができまして以来、中東問題の解決は、この二四二という決議に基本的に従うべきである、この精神でやるべきであるということを繰り返してまいりました。たまたまこの二四二の決議は、六七年の安全保障理事会で、当事者を含み全会一致で採択された決議でありますだけに、これ以外の解決方法はないという考え方をとっておったわけでございます。  いま御質問の点でございますが、二四二の決議の内容につきまして、日本は特にどの点あるいはどの点についてということで、日本側の考え方を明らかにしたことは必ずしもございませんでした。このたび官房長官談話で、この決議の内容中、特に日本が中東和平解決のために重要と考える点についての立場を明確にしたわけでございます。それに該当します点といたしましては、官房長官談話にございますように、第一に、「武力による領土の獲得及び占領の許されざること。」第二に、「一九六七年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行なわれること。」第三に、「域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されねばならず、このための保障措置がとられるべきこと。」これが一番重要な点であると思います。
  68. 河上民雄

    河上委員 大平外務大臣、いまの御説明では、いままではどういう解釈をとっておって、今度はどういうふうに変わったかということは必ずしもまだはっきりしないのですけれども、最高責任者としてどうお感じになっておったのか。いまのお話ですと、今回あらためてこういう点を強調したということになりますが、そうすると、いままでは、一応賛成はしておったけれども、たなに置いておったということになるのか、たなから取り出してきてポイントをはっきりしたというのか、それとも解釈がこうであったのがこうなったというのか、そういう点はっきりしなければ、今回声明を出した外交的な意義というのはほとんどないのじゃないか、そういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
  69. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまの説明の中で、いま特に力点を置いて外交的な意味合いで強調さるべき点という点を申し上げますと、第一は、いままで占領地から撤退すべきであるという表現を用いておりましたのを、全占領地からということを明確にいたしたことが第一でございます。それから第二は、いままでイスラエルを特定いたしまして非難いたしたことはなかったのでございまするけれども、イスラエルが依然として占領を継続しておることに対して、その声明の名において遺憾の意を表明したことが第二でございます。第三は、今後の事態の経過を注視いたしまして、場合によりましてはイスラエルに対するポリシーを再検討せざるを得ないであろうということつけ加えた点、外交的な見地から、日本政府としてはぎりぎりの態度表明を行なった次第でございます。
  70. 河上民雄

    河上委員 それでは大臣は、例の二四二決議の中で、一の第一項になりますが、「最近の紛争において占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退」この「占領された領土からイスラエル軍隊の撤退」ということばが、国際的に解釈の点で非常に問題になっていたことは十分御承知だったわけだと思うのですが、従来は、「占領された領土から」ということばの、占領された領土の全地域からというアラブ側の解釈と、部分的な撤退をこの決議から引き出そうとするイスラエル側の解釈との点につきまして、「占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退」というこの文句について、今回の声明のように必ずしも特定をしなかった、してなかったということを認められるわけでございますか。
  71. 大平正芳

    ○大平国務大臣 占領地からの撤退ということを、全占領地からの撤退というように明確にいたしたことは、解釈論といたしましてアラブ寄りであるということは成り立つと思います。
  72. 河上民雄

    河上委員 もう一度重ねて伺いますが、あの声明以前においては、そのように特定をしなかったというふうに解釈していいわけですか。
  73. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そうでございまして、十一月二十二日の声明が初めてでございます。
  74. 河上民雄

    河上委員 きょうの新聞によりますと、リビアの原油を引き取るという通産省方針が大きく報道されております。この点について中曽根通産大臣にお伺いいたしたいのでありますけれども通産大臣、これはおやりになるおつもりですか。
  75. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは、菅野議員が民間経済使節団を率いてリビアへ参りましたときに、あそこの石油担当大臣に会いましたときに、日本国民が非常に石油に困っている、そういう話をしましたら、向こうから積極的に、それなら考えましょう、日本のほうから申し込めば考えてけっこうですと、そういう話があった。そこで、引き取ったほうがよろしいということを、私のところへ帰国して早々に言ってこられたものであります。  私のほうでもいろいろ検討いたしまして、国際関係もあるけれども、いまの情勢では一滴でも油がほしい、マージナルな、限界部分になると、一万キロリットルでも二万キロリットルでもほしいという情勢にも立ち至るということも考えてみて、できるだけ国際関係の理解を得つつその油も取得していきたい。リビアの油は、あそこの外国企業を国有化しまして、一部いわゆるホットオイルといわれておる、紛争油になっておるのもありますし、そうでないのもまたあるわけであります。でありまするから、そういう辺を適当に調整してもらって、一滴でもこの際手に入るということが望ましいと考えまして、そういう考えをもって、それを外務省のほうには連絡をして、御検討願いたいということにしておるわけであります。
  76. 河上民雄

    河上委員 いまの通産大臣のお答えによりますると、リビア原油の中にはいわゆるホットオイルというものとそうでないものとがあると言いますが、今回のリビア原油の引き取りに関しては、問題のホットオイルであってもこれを買い取りたい、こういうお考えだと伺ってよろしいわけですか。
  77. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その辺の作用、反作用については、外務当局がよく検討もし、現地の大使の情報も得ておるわけでありますから、その辺は、外務当局にも御検討願っておるところであります。
  78. 河上民雄

    河上委員 外務当局の検討をまつということでありますけれども通産大臣としては、ぜひともそうしたいというお考えですか。
  79. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産大臣としては、一滴でも油がほしいというところでございます。
  80. 河上民雄

    河上委員 それじゃ大平外務大臣にお尋ねいたしますけれども、このリビアのホットオイルにつきましては、いま英国との間にいろいろ紛争があるわけであります。ことしの夏、エネルギー資源確保のためにヨーロッパ旅行されました田中総理大臣は、ロンドンで英国のヒース首相から、日本はホットオイルを買わないでほしいと言われまして、わかったわかった、こう言われたというふうに伝えられておるのです。田中さんはだれにでもわかったわかったということですので、これがどれだけ外交的な比重を持つのかわかりませんけれども、しかし、少なくとも英国の首相に対して日本の首相の立場で言われたのだろうと思うのです。この問題につきまして、大平外務大臣は、いまの通産大臣の要請があるわけですけれども、現在の石油危機を国民的見地から解決するために、この田中総理のわかったわかったを修正されるおつもりがあるかどうか。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 田中・ヒース会談で、ホットオイルの話が出たということは、私は承知いたしておりません。しかし、それはともかくといたしまして、通産省から御相談を受けておることは事実でございまして、中曽根さんも御指摘になりましたようないろいろな問題がございますので、いま鋭意検討いたしておるわけでございます。
  82. 河上民雄

    河上委員 大平外務大臣に重ねて申し上げたいのですけれども、いまアラブとの交渉において一番重要なことは、単にいついつどういう声明を出したということじゃなくて、具体的な問題の処理をめぐって、日本政府がどういう態度をとったかということが一つ一つテストされていくのだと思うのであります。そういう意味からいいまして、いま言ったようなリビアの問題もきわめて重要な意味を私は持ってくると思うのです。したがって、山城丸事件につきましても、きょうはそういうはっきりとしたお答えをいただけなかったのは残念でありますけれども、こういう一つ一つの事件の解決が、実は処理のしかたが問われているのだということを十分銘記していただかないと困ると思います。  中曽根通産大臣にお伺いいたしますけれども、いまイランのDDオイルにつきまして一バーレル十七ドルで入札というようなことがあったというふうに新聞などで伝えられております。そのほかナイジェリアでも十三ドル幾らというようなことも週刊誌などには伝えられているわけですけれども、こういうような、いま行なわれております石油価格からいたしますと非常に法外な値が日本商社が主導になって、日本商社が先頭に立って入札、そして落札が行なわれているというような報道があるわけですが、通産大臣としてはこういうふうな事態がほかのオイルの価格にも波及するという心配を持っていないかどうか。すでにインドネシアでは、中東がそれだけ高値で売るなら私のほうも考えましょうということで、中東に調査員を派遣しているというような報道もあるわけです。通産大臣、どうお考えになりますか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本商社が主導になってということはありません。むしろ日本商社は受け身の立場で、外国の企業がかなり高値をつけて、特にアメリカあたりの企業は相当高い値をつけているようです。そういうのに引きずられて泣く泣くやっているのが現状ではないか、そういうふうに私は聞いております。
  84. 河上民雄

    河上委員 それでは、もし十七ドル石油というような時代が来たら、日本経済の活動に、またあるいは国民生活にどういう影響があるかとお考えですか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 イラニアン・ライトとかイラニアン・ヘビーとかいうイランの石油はわりあいに上質油でありますから、大体値はいままでもいいほうではあったわけです。しかし、大体いままでの情勢ではバーレル五ドルぐらい、四ドルないし五ドルという相場であったのが、一挙に十七ドルというような、三・五倍ぐらい上がるということになれば、これはほかの物価に影響するところもかなり出てきますし、日本経済としてはかなり苦しい立場に追い込まれる。何しろ石油に依存していたところが大きい経済でございますから。これがアメリカとかイギリスの場合は、自国の石炭あるいは天然ガスに依存するところが非常に大きいのですから、そういう意味においては価格に響くところが日本よりは少ないわけです。そういう面から、日本の産業及び生活には非常に響いてまいりまして、ひいては輸出力が非常な打撃を受けることになるだろうと思います。
  86. 河上民雄

    河上委員 そういう場合に、いまわれわれ審議いたしております石油法案で、たとえば標準価格をきめるとかいろいろ問題があるわけですけれども、当然そういうことにも響いてくるわけですね。
  87. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そうです。
  88. 河上民雄

    河上委員 そういう場合に、先ほど一万リットルでもほしいというようなお話がありましたけれども、たとえ高くても、ともかく泣く泣くでもやれ、入札に参加せよというお考えですか。それとも全体に石油価格を上げるのは好ましくないということで、日本としてはそういうものに参加しないほうがいいというふうにお考えですか。あるいはそういうことにつきまして通産省として何らかの行政指導をおやりになるお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 世界経済の中で日本経済は生きているのでありまして、やはり世界経済の諸要素というものを横に見ながら日本経済もやっていかなければならぬわけです。しかし、日本の民生及びこれだけは必要だという生産活動をやっていただくために必要な油はやはり確保しなければならぬと思います。ですから、外国がある程度の値段で入札するという場合に、日本だけが差し控えて油の入手を怠るということは、ひいては国民生活その他にも影響してくるので、そういうことをあまりちゅうちょして日本の国民生活や産業を不安におとしいれるということは政策当局としてはできないことだろうと思います。
  90. 河上民雄

    河上委員 外務大臣にお伺いいたしますけれども、いま三木特使がアラブ諸国を歴訪されておるわけですけれども、当然いろいろな問題があると思うのです。いま私が御質問したようなことを含めて、あるいは経済協力を含めていろいろの問題が話題になっていると思うのですけれども、三木特使はそういう経済援助あるいは外交政策についてどの程度のフリーハンドを持っていかれたのかどうか。ただいたずらにあちこちで約束をして帰ってきたけれども田中さんが一喝したらだめになったというようなことでは、かえって中東諸国の不信を深めるばかりだと思うのです。この点は、きょう田中総理大臣は耳が痛くて来られないということでございますので非常に残念でございますけれども、二人の実力大臣がおられるので、その点を伺いたいと思うのです。
  91. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま河上さんが御指摘の点、三木副総理が一番御心配になっておられる点でございまして、約束したことは果たさなければならない、できない約束はしてはならない、これが政治の基本でなければならないということが三木副総理の御信念であると承知いたしております。したがいまして、アラブへの旅に立つにあたりましても、その点に細心な、周到な配慮をされまして、まずわが国の中東政策の真意なるものを先方に説明し、理解を求めるということにまず徹しなければならぬ。それから第二は、先方のわが国に対する要望、中東紛争解決に対する希望というものは十分聴取してくるということが第二でございます。第三に、それらの国々とわが国の間におきまして民間レベルあるいは政府レベルにおきまして数々の話し合いが行なわれておるわけでございまして、一応それを整理いたしまして、もしこういうものが話題になった場合にどこまで日本といたしまして検討を約することができるか、そういう点につきましても一応のめどを持たれて旅立たれたわけでございまして、仰せのような点につきましてはたいへん細心な配慮をされておると確信いたします。
  92. 河上民雄

    河上委員 今度の石油危機でアラブ諸国とのコミュニケーションというものはたいへん悪いということは非常にはっきりしたと思うのです。それは単に札束だけで解決するものではなくて、やはりアラブの心を理解しない限り現在の経済問題さえ見通しが立たないということははっきりしたと思うのですが、三木特使もそういう点は心がけて行かれていると思いますけれども、大平外務大臣、この際、新しい事態に対処するための新しい観点に立って中近東大使会議というものを開くおつもりはございませんか。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのこと、ごもっともでございまして、開きたいのはやまやまでございますけれども、いま中近東駐在大使は、現地におきまして繁忙をきわめておりますので、先般当方から外務審議官を派遣いたしまして、現地に関係大使を集めまして会議を開いたわけでございます。私自身も飛んでも行きたい気持ちでございまするけれども、アラブ外交というのは、いわばいま世界の問題になっておるわけでございまして、これをめぐりまして、関係各国並びに在京アラブ大使その他との折衝等の関係もございまして、東京に滞在いたしておるわけでございまするけれども、御趣旨のような線に沿いまして、外務省としてはできるだけのことはいたしておるつもりでございます。
  94. 河上民雄

    河上委員 ことしの七月、中近東大使会議が開かれましたね。そのときの結論というのは御存じですか、大臣。そのときに「中近東大使会議終わる」というので、当時の新聞に報道されましたことはどういうことかというと「石油安定供給不安見当たらぬ」そう書いてあるのです。そしてイスラエル問題については、「石油の安定供給を確保するためにも日本は中立の立場を続けるべきだ」というような結論が出ているのですね。それからまだ半年もたっていないのです。そして今日これだけ国民に大きな不安を与えているわけですね。中近東大使というか、大使館の情報判断能力というのは一体どういうことになっておるのですか。これで国民に御心配をかけませんと胸を張って言うことができるのでしょうか。中近東大使会議、まだ七月からそうだっていない事態でこんなに変わっているわけでして、野球でも、ピッチャーとキャッチャーの間にサインが食い違ってうまく合わない場合には、お互いに歩み寄ってもう一度確認したりなんかすることもやるわけですけれども、外務省として、こういうような情報判断能力では非常に困ると思うので、やはり中近東大使会議というか、中近東対策を外務省としてもう一度洗い直す必要がどうしてもあると思いますけれども大臣いかがでございますか。ことしの七月、「石油安定供給不安見当たらぬ」なんという報告をそろいもそろってやるというこの感覚というのは一体どういうことなんですか。大平外務大臣としてこれはどうお考えになりますか。
  95. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ひとつ御考慮いただきたい点は、政府石油危機は焦眉の急であるというのろしを上げますと、これはたいへんなことでございまして、問題は、当時すでに直売石油なんかにつきましても、わずかの直売石油をめぐりまして価格のつり上げが云々されておったようなときでございまして、いまの産油国の生産計画が順調に行なわれますならば、石油の安定供給に不安はないんだということにおいて、そういった買い急ぎのないようにすることによって鎮静化をはからなければならぬという政府立場も御了解いただきたいと思うのでございます。ただ、その当時、中東紛争がああいう姿において突如として開始されるというようなことは、神ならぬ身で予想がつかなかったことは不明のいたすところでございますけれども、そういう事情がありましたことも、あわせて御了解いただきたいと思うのでございます。  それから、第二のこれからの中東政策について十分考え直さなければならぬじゃないかという点は、ごもっともでございます。ただ、今日こういう事態が起こったからすぐ衣がえをいたしましてこうする、ああするということもまたたいへん日本の外交としてはいかがかと思うのでございまして、一番根本は、末長い信頼関係をたんねんに築いていくことが根本でなければならぬと思うのでございまして、そういう基本を踏まえた上で、やるべきことを着実にやってまいる、やってならぬことはやらないということは、私どもそのペースを踏まえた上で着実にやっていくべきではないかと私は考えております。
  96. 河上民雄

    河上委員 中近東大使会議の結論というのも、結局は経済的な側面だけで中近東問題を解釈しているから、こういうまさに不明をわびねばならぬような事態になってきたと思うのです。やはりもっと総合的に外交というものは判断しなければならぬ、私はそう思うのでありまして、この十月でしたか、大臣と私は外務委員会でお話をいたしましたときにも、例の田中総理の提唱したスワップ方式について申し上げたのでありますが、ああいう、相手国のことも考えないで、シベリアの石油のパイプラインを日本側に引くのをヨーロッパ側に引いてもいい、そして西ドイツがそれをもらえばいいじゃないか、西ドイツが中東からもらう分を日本が回してもらえばいいじゃないか、こういうようなとんでもない提唱を総理大臣が外国でやる。よく考えてみると、シベリアのどちらにパイプを引くかということはソ連のかってですし、西ドイツが自分がもらうはずのものを日本へ回すわけもないし、第一中東が日本に石油を出すか出さぬかということもわからないわけです。そういうことを全然無視して、自己中心的に世界的に資源外交を展開するという、いわば思い上がった態度というものが今日の事態を引き起こしたのじゃないかと私は思うのです。私はそのときにその問題を大平さんに質問いたしましたら、これからはグローバルにやらなければいかぬ、こういうことでした。しかし、いかにグローバルといいながらも、実は日本中心の資源対策にすぎない。もっと世界のそれぞれの国の、それぞれの地域の独自な利害関係、主張というものを十分に勘案しながら、それとの相互理解の中で、初めて資源対策というものは打ち出せるのじゃないか、そのように私は申し上げまして、もしそういう点を無視して一方的にあっちの石油はこっちへよこせ、こっちの石油を日本へよこせというようなことを総理大臣みずから言っておったら、とんでもないしっぺ返しを食いますよということを私は申し上げたはずなんです。現にその後、いまのような、中東は日本に石油輸出を削減するというような事態を生んでいるわけです。私はここで、大平さん、あるいは中曽根さんにも申し上げたいのですけれども、生存のために、ある意味では、なりふりかまわずやるということも許されるかもしれないですけれども、こういう場当たりではかえって諸外国の不信を買うという点は私も同感であります。しかし、それにはそれで、やはり一定の論理に立って外交というものを展開しておかないと、えらいことになるのじゃないかと思うのです。さっき不明をわびるというようなお話がありました。これは神ならぬ身であるから予想はできなかったということでありますけれども、日本社会党も民社党も参加しております社会主義インターというものがございます。そこで、社会主義インターの大会というのはよくあるわけですけれども、一九六九年の大会の中東問題に関する決議というのは、それまでどちらかというとアラブ寄りではなくてイスラエル寄りだったのをその年からはっきりとアラブ寄りに切りかえているという事実があるわけです。つまり西欧の諸国ではもう四年前から今日の事態を予想して、そういういわば軌道修正をやっておる。私は、その場合にもはっきりとした論理がなきゃいかぬと思いますけれども、そういう先の見通しがないということは、やはり外交をあずかっている責任者としてはあまり弁解にならないのじゃないかと私は思うのですが、大平外務大臣あるいは中曽根通産大臣、どうお考えですか。
  97. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外交は将来の展望に立ちましてきょうの手を打ってまいるということであってしかるべきものということは、河上さん御指摘のとおりでございまして、私どももそういう方向に努力をしてまいっておるわけいでございますけれども、能力が足りませんで、そこまでまいっていないことはたいへんざんきにたえないわけでございます。仰せのようなことはあなたから御指摘をまつまでもなく、やはりといたしましても、常に念頭に置いて考えてまいらなければならぬことと思っております。
  98. 河上民雄

    河上委員 過去のことは過去でしようがないかもしれないのですけれども、これから先どうするつもりか。よその国は四年ぐらい前からそういう点を見越してやっているわけです。それでもやはり困る事態が生まれることは幾らでもあるわけですけれども、これから将来石油の問題に関連してだけでもけっこうですけれども、将来どういう見通しになるか、国民にはっきりと不安のないように大体の見通しというものを両大臣からこの機会をかりて表明していただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  99. 大平正芳

    ○大平国務大臣 将来の展望ということになりますと、全くたいへんむずかしい課題でございます。まず第一の中東和平がどういう手順で、いつごろ、どういう形で収拾を見るかということは、全くいま逆賭はできない状態であることでございますけれども、少なくとも両当事者が同じテーブルに初めて着こうとしておることは私どもを勇気づけてくれることであると思っておるわけでございまして、まず早期にこれが解決されることを希求いたしておるというのが精一ぱいのことでございます。しかしながら、それがかりに片づいたといたしましても、資源保有国の有限な資源をこの通貨危機の状況におきましてどのように使ってまいるかということにつきましては、ただいままでのように商業的手段のみをもって確保できると考えるのは早計ではないかと思うわけでございまして、これにはいろいろなくふうをこらしてまいって、必要最小限度はあらゆる手段を講じて確保してまいる努力を重ねてまいらなければならぬと思うのであります。しかし、それは内政の面におきましてどういう経済計画が盛られるか、財政計画が策定されるか、産業構造がどのような改良を見るか、そういうことにかかってくるわけでございまして、政府も目下そういう点につきまして鋭意検討いたしておるところでございます。しかし、それにいたしましても、先ほどあなたが言われましたように、価格がどういう状況になるかということもまた重大な問題でございまして、幾ら高くても欲しいということになるのか、そういうことでいいのかという問題もまた問われなければならぬ問題であると思うのでございまして、私はいま来年度以降どういう程度が安定輸入されるかという具体的な数字的なことにつきましては自信を持って申し上げるすべを持たないわけでございますが、問題点はそういうところにあるのではないかということを中心にせっかく苦慮いたしておるということだけを御答弁として申し上げさせていただきたいと思います。
  100. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今次中東紛争の原因を見ますと、これは経済問題ではなくして政治原則の問題である。特に長い間続いていたイスラエルとアラブの間における宗教的なものを伴った政治原則の問題であって、これを経済問題と混淆してはいけない。したがって、日本がこの中東紛争を早く解決するために協力するという場合には、そういう認識をまず的確に持つということが大事であります。そういう意味において、過般、十一月二十二日に政府が声明を出しまして、政府のはっきりとした認識を明らかにいたしました。あの認識をできるだけ具体化し現実化する方向に私たちは積極的に努力していかなければならぬと思っております。やはりアラブの大義という、久しい間アラブの諸民族が不満に思っておったパレスチナやあるいはイスラエルとの関係については、われわれは十分理解を持つと同時に、その正義を正義として受けとめて、そうしてアラブの人たちが長い間考えていたそれらのことごとをこの国連決議の名においてすみやかに回復してあげる、そういうことが私たちとして努力すべきことであると思います。  それから第二は、この中東紛争の仕上がりがどういうぐあいで仕上がっていくかということはまた非常に大事なところであります。自由世界各国の分布の状態、その利害関係、アラブの内部におけるその配置の情勢、そういうようなものは次の段階に非常に大きな影響を与えるものでありまして、この仕上がりぐあいが将来どういうふうに動いていくかということを深甚の注意をもって見守っていかないと、われわれの資源政策を誤るものであるだろうと思います。  第三番目は、やはり経済協力というものをここでもう一回検討すべきであって、確かに御指摘のように資源外交というものは手薄であったと思うのです。そういう面から、単にアラブのみならず、全世界にかけて、日本の経済協力というものをいままでのものでよろしいか。そういう点をここに根本的に再検討すべきときではないかと思うのであります。ややもすれば日本の経済協力というものは商業主義に堕して、金もうけのために行なわれているという非難があったわけです。そういう面について、はたしてわれわれとして点検すべきものはありやなしや、先般企業の行動基準というものを出しましたけれども、あの程度のものでいいと私は思っておりません。そういう意味において、通産省としては相当な学識経験者に集まってもらいまして、これからの経済協力のあり方について私は諮問をして、その回答を得て、これをやはり内閣全体の課題として提出していきたいと思っておるわけであります。  そのほか、油の値段が今度は十七ドルとかなんとかなってきますと、オイルシェールとかオイルサンドが脚光を浴びて出てまいりまして、対抗力となって出てくる可能性は十分ございます。そういう面から新しいエネルギー源の開発、それから日本の偏したいままでの資源政策というものを世界的にセキュリティーも考えながら多面化し、質的にも多面化していくという積極的な努力をしていかなければならぬと思っております。
  101. 河上民雄

    河上委員 両大臣から御答弁がありましたが、なお資源についてもう少し、たとえば中国とかソ連についてお尋ねしたいと思いましたけれどもへ許された時間が参りまして非常に残念でございますが、これで私の質問を終わりたいと思います。
  102. 平林剛

  103. 神門至馬夫

    ○神門委員 私は、いま審議されております二法について、特に陸上における交通輸送問題を中心にして時間一ぱい質問をいたします。  特に、昨日の新聞が報道いたしておりますように、十一月の物価高騰は目をみはるようなものがありまして、対前月比は三・二%という暴騰であります。三・二%という暴騰は、年率に直すと四割という、昭和二十六年以来まさに二十二年ぶりの急騰になっておるのでありますが、それが十一月の下旬から加速を速めまして十二月に入る、この速度から申しますと、十二月の物価高騰はその倍、複利計算でいくと一割にも相当するという、こういう状況下にあります。まさにこの第七十二国会は、石油危機のもとで極端な物不足あるいは悪性インフレ下に、国民の総不安の中で開かれた非常事態のもとにおける国会であると国民認識し、私たちもそう考えておるのでありますが、このような情勢になったことは、今日まで議論をされ、先ほど来外交上の視点からもいろいろと議論をされましたように、まさに、田中内閣はもちろんのこと、歴代保守政権の政治責任であることは明確であります。特にこういう混乱の中に年の瀬を迎えました国民の不安といらいら、これはまさに極限に近づきつつある、こう言っても過言ではないと思います。こういう状況下の中にあってよくいわれる人間の本能である移動への欲求をどう処理していかに解決をするか、これはまさに、いま申しましたように、物不足のもとで乏しさの中にいかに平等化をはかるか、こういうことと合わしていわゆる交通と物流との観点から、まさに緊急な解決しなければならない政治課題であります。いまもすでに混乱が始まっておりますが、これが一たび基本的な方向を誤るならばたいへんな混乱を招きまして、破局への危機を内包している。まさに交通は国民の足であって、運輸は社会生活の動脈である、即交通運輸は国民生活そのものである、こういうふうに考えるわけであります。今日の石油ショックの中にあって、多面的な社会問題あるいは精神的な混乱、こういうものが起きております中にあって、交通運輸政策を当面の緊急課題としてどう対処するか、これはまさに最大の政治手段として急がねばならないことだ、こういうふうに考えます。  特に私はここで、そういうような状況にありますがゆえに、鉄道、路線バスあるいはタクシーなど、公共交通手段と、陸上物資の七五%を運んでおりますトラック輸送を中心として、当面する緊急措置あるいは長期にわたるであろう石油危機の中にあって、どう交通運輸政策を確立をしていくのか、こういう観点からひとつ質問をしていきたいと思うのであります。  まず最初に、中曽根通産大臣がこの月の四日の本会議において質問に対する答弁をなさっておるのでありますが、この石油法案が成立をすると、産業別の配分に備えて目下優先順位、序列を検討している、策定を急いでいる、こういうふうにおっしゃっておりますし、その後、商工委員会等におきましても、山形資源エネルギー庁長官も、四段階規制論、四段階の序列論と申しますか、そういうものを言明して緊急度をきめていきたい、こういうふうにおっしゃっておりますが、産業別配分の順位が、その後の作業過程からどういうふうなところまできているのか、あるいはそれの大体の方向が明確にされたのか、こういう点をお尋ねしたいと思います。
  104. 山形栄治

    ○山形政府委員 お答え申し上げます。  石油法案の実施に際しまして、最も適正な必要量が各部門に配分されまして、乏しい石油を公平にみんなで使わなければいかぬことは当然でございます。したがいまして、現在各省とも御連絡をとりながら検討を進めておるわけでございますが、現時点におきましては成案を得ておりません。しかしながら、当面非常に緊急を要します十二月分の配分等につきまして、農林当局、運輸当局等々と具体的なる数量の大ワクの決定、それに基づく農林省内部、運輸省内部の部門別の責任ある配分等につきまして、ほとんど成案ができているような状態でございますが、今後全般的に各省と御連絡をとりまして、そういうかっこうで全体の姿を仕上げていきたい、現在はまだ成案を得ておりません。
  105. 神門至馬夫

    ○神門委員 きょうの新聞を見ますと、この石油関係二法が成立いたしましても、年内には役に立たない、来年に持ち越すというふうな記事が出ておりますが、いま山形長官答弁を聞きますと、そのような状況であっては、これは法律がいかに早く成立いたしても何ら緊急事態に対処することができないのではないか。この配分の問題については、いわゆる精製段階からいかにしてこの石油製品の得率を決定するのか、需要供給バランスをどういうふうにそこでとっていくのかという、きわめて早期に着手しなければならない作業があるはずであります。それができないと、今度配分段階に移すことができない。いわゆる二段階をもって今日対処しなければならないこの石油の緊急対策供給対策、これが今日もなおかつ成案を見てないということは、そのことに対する誠意というものが、ここまで日曜審議もやっている国会審議に対して非常に怠慢ではないか、通産省自体も主管省として怠慢ではないか、こういうように考えるが、いかがですか。
  106. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油に関しましては、この法案によりまして、たとえば第十条のあっせん、指導、そういうようなことは、私はある程度できると思うのです。また、この法案全体が成立したということによりまして、そういうことが発動できるということは、通産省行政指導を裏づけるもので、そういう意味ではいままで以上に的確にやれる立場ができると思うのであります。
  107. 神門至馬夫

    ○神門委員 この法律が成立をすれば、そのときにそのような行政権の発動をして適切な指導ができる、こういうことですが、今日自体、すでにこの法律を発動しなければならないような経済社会状況にある。そうしますと、その法律の成立いかんにかかわらず、通産省としては、適切な行政措置、指導を直ちに今日行なわれておらなければならないはずであります。それがいわゆる需要供給の関係における優先配分、それらのものがまだ把握されてない、あるいは決定されてない、こういうことになると、今日の基本的な通産省としての石油危機に対する指導に大きな欠陥がある、こういうように考えるのですが、どうですか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 灯油の価格とか、あるいはプロパンガスの価格を指導価格をもって凍結したというようなことは、もうすでに行政指導が先行してやっておることであります。しかし、これも法律の根拠がない場合にはどうも弱くなります。持続力がどうしてもだんだん弱くなってまいります。法律が裏づけされてできるということになれば、その行政指導でやった指導価格がさらに標準価格とかなんとか法律に裏づけされるものになる可能性もあるわけであります。  それからさらに、中小企業あるいは農林漁業あるいは運輸関係につきましては、関係各省間におきまして十二月分についての確保はもうできております。これはやはり行政指導が先行して行なわれておるのでありまして、一種のあっせん、指導を先行してやっておりまして、この業界に対して、農林漁業に何ぼ、あるいは運輸関係に何ぼ、そういうふうに事実上そちらの供給を確保しておるわけであります。でありますから、そういうことができるというのも、やはり法律がもう国会で議論されておりますから、いずれこれはできるものだという予想もあるでしょうから、業界もわれわれが強く指導することに対して協力してくれておるわけであります。そしてこれができ次第、関係政令及び省令を整備いたしまして、できるだけ早く発動体制を準備だけは早くしなければいかぬと思っております。これがおくれればおくれるだけそういう体制の整備がおくれるわけでございますから、そういう意味で、できるだけ早く成立を期しておるわけであります
  109. 神門至馬夫

    ○神門委員 そういうような価格面あるいは需要面での措置はしているということなんですが、私の言うのは、原油の精製段階からそれは適切に需要に合ったような得率等の配分をしなかったら、これは今日の状況に合った、いわゆる不足の中の需要に平等に配分する、あるいは大臣がおっしゃったように、民生優先の配分をどうするかということになってきますと、それぞれの製品が違うわけですね。いわゆる製造業に回す場合あるいは運輸業に回す場合あるいは農林業に回す場合には、それぞれの得率が違って、製品が違うわけであります。ガソリンに集中する、こういうようなことになったときには、あるいは輸送業そのものというものはお手あげになってくる。いわゆる精製段階からその対処というものが必要であって、今日の状況に対処する第一歩は、その精製段階においての把握なり序列なり優位性というものをどういうふうにきめるかということから出発すべきではないか。それができてないと、この二法の発動準備というものはまず第一歩においてできないということになるわけです。そういう意味において、それらの把握が今日なおかつされてないということはけしからぬことではないか、こういうことなんです。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 把握はいま努力してやっているところでありまして、十日ごとに各事業者について輸入、生産、販売、貯蔵、その数量の報告を求めてやっております。
  111. 神門至馬夫

    ○神門委員 それでは具体的に、大臣のおっしゃいましたような民生優先、民生に優先してやっていこうという考え方でその得率等の精製段階で具体的にはどういうふうに指示をしておいでになりますか。
  112. 山形栄治

    ○山形政府委員 先生御存じのとおり、原油が入りまして、それを毎月精製計画というのを各社がつくるわけでございますが、まだ法律は通っておりませんけれども、われわれ行政指導段階で民生用、農業用、漁業用、それから運輸関係等、非常に公共性の高い分野の確保をはからなければいかぬ要請が強いわけでございます。特に十二月は年末で、いろいろなそういう普通の月と違った問題も出ておりますので、農林当局、運輸当局その他関係省と具体的に当面十二月の需要量等につきまして御相談をいたしまして、十二月の精製計画はそれらを織り込んで、いま先生の御指摘のとおり油種別に、できる限りそういうものが確保できますような十二月の精製計画をつくって、これは作成が済んでおるわけでございます。
  113. 神門至馬夫

    ○神門委員 たとえば、この石油危機の状況下になりますと、特に公共交通の重要性というものは重要になってまいります。ところが、実際問題として全国的に見ましても、部分的に若干のアンバランスはありますけれども、一〇%ないし二〇%軽油の販売業者からカットを通告されている、こういう事実が今日まであるわけですね。そのような指導とこの辺の実態とのギャップ、それはどういう今日の状況に通産省はあるのか、把握をされているのか、あるいはこの公共交通、特に国鉄、鉄道あるいはバス、タクシー、こういう点については少なくとも一〇〇%の燃料を確保しなければならないというふうに考えて今日対処しておいでになるのか、この点のお考えをお聞きします。
  114. 山形栄治

    ○山形政府委員 公共輸送機関は優先度の非常に高い事業であると考えております。軽油の話が出ましたわけでございますが、灯油と軽油とA重油というのは非常に、いわゆる中間留分といいまして、それぞれの間で若干得率の変更ができ得る油種でございます。われわれといたしましては、たとえば四十七年度上期のこの三つの得率を全部合計しましたものが一九・九であったわけでございますが、現時点では約二二・五ぐらいまでこれを高めております。これ以上これを高めるということはなかなか精製技術上無理かとも思いますが、そういうかっこうでこの辺の得率の上昇をはかっておるわけでございますが、何ぶんにも輸入量が非常に少なくなってきておりまして、昨日発表になりました通関で出ました数字も、詳細は省略いたしますが、対前年では五%くらいアップでございますが、われわれが当初想定しておりました下期の十一月の輸入計画から見ますと、実に一四・四の減少であります。かつわれわれがごく最近まで、大体このぐらいだろう、十一月は入着もそう落ちないのじゃないかと思って七%減というふうに計画に対して考えておりましたのですが、それが約二倍の一四・四の減に立っておるような状態でございます。この辺の減少を前提に精製計画は組まれておりますので、得率のできる限りの上昇をはかることは当然でございますが、どうしても若干カットを生ずることはやむを得ないのではないか。したがいまして、運輸省とよく御相談いたしまして、運輸省の中で軽油を――軽油というのはバス、トラックでございますが、この軽油を使用する輸送部門の中のこまかい優先度といいますか、必要量の算定、それの配分ということをやっていただきませんと、われわれとしては、通産省では何ともわかりませんでございますので、いま検討中でございまして、ほとんどごく最近にその成案が得られるのではないか、こう考える次第でございます。
  115. 神門至馬夫

    ○神門委員 努力はなさっておるんでしょうが、実際問題として、公共交通あるいは物流の主体である営業トラックの四十万台が渋滞をしてたいへんな物流のアンバランスをつくっているというのが事実であります。私が申しますのは、この四十七年度産業別エネルギーの消費実績等を調べてみますと、諸外国に比べて日本の場合非常にいびつな点は、高度経済成長政策の象徴である製造業に対する消費量がきわめて大きい。そうしてその他の運輸業、鉄道を合わせまして一二・八%、こういう数字になっておるわけであります。これをアメリカ等に比べますと、アメリカ等は交通運輸関係で五割も消費している。その中で乗用車が二割を占めるということで、マイカーの規制というものが非常に先行的に重要視されているわけであります。ところが日本の場合には、そういう消費構造が違う。でありますから、いま申しまするように、輸入の若干の現象はあったとしましても、それを直ちにこのような民生部分にしわ寄せをしなければならないということにはならない。今日までいわれましたように、いわゆる高度経済成長政策のゆがみを直すというたてまえからも、このように、諸外国に比べてきわめて集中的な鉱工業に対する使用というものを供給面でカットして、そうしてこういう民生に回していく、公共交通に回していけば、いま御答弁になったように、全体の減少が交通関係にも影響してもやむを得ぬというようなことにはならなくて済むのではないか、こういうように考えるが、いかがですか。
  116. 山形栄治

    ○山形政府委員 お説のとおり、ガソリンのカット、ガソリンを節約しまして――ナフサがそうしますとふえるわけでございますので、そのナフサをまたLPGと交代したり、灯油と関係がございますので、その辺の転換というのは今後も大いにやっていかなければいかぬと思うわけでございます。その方向で努力したいと思います。  なお、アメリカの例は、私詳細に存じ上げませんが、一つは、アメリカではベネズエラからの輸入が非常に多いわけでございまして、あそこの油というのは非常に軽質分の油でございます。したがいまして、精製したときの得率の出方が、非常に軽いものが出やすいということが一つと、それからもう一つは、アメリカは製品輸入の比率が非常に高いわけでございまして、ある一定の油種につきましてはヨーロッパを主にしておりますが、ヨーロッパからの製品輸入でまかなっておる。日本のほうはそういうことは理論的にはできるわけでございますけれども、いま世界じゅうさがしても、なかなか製品のものがございませんので、先ほど申し上げましたように油種間の融通といいますか、そういうことによりまして民生の確保につとめたいと思うわけでございます。
  117. 神門至馬夫

    ○神門委員 そういう困難性が内外的にあるということはわかるのですが、いま申しますように、少なくとも公共交通の、陸上旅客の輸送中核であるこのバスに対しては一〇〇%の燃料を確保する、こういう基本的な方針について、通産省はいかがですか。大臣、これはいかがでございますか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大衆交通手段であるバスは、われわれとしては最も重点を入れるところでございまして、その点については運輸省とともに協力して遺憾なきを期しております。
  119. 神門至馬夫

    ○神門委員 タクシーの件について、先ほど、質問に対する運輸大臣答弁がありましたが、自粛によるところの今日的石油危機対策は限界にあるので、もう一歩突っ込んだ対策をとりたい、こういうふうにおっしゃっておりますが、十七日ごろをめどに実質的な配分体制に入る、これはLPGでありますが、LPGガスの自主的な配給体制に入る、こういうことで十一万五千キロリットルのものが準備をされておるようでありますが、もうちょっと突っ込んだということは、この配給制を意味するものですか。運輸大臣、お伺いします。
  120. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 もう一歩突っ込んだと先ほどお答えいたしましたのは、自家用車のいわゆる規制で、マイカーの規制の問題でございまして、タクシーの問題は、先生御指摘のように、いろいろ業者間とも話し合いまして、運輸省といたしましてはみんなの御意見を総合し尊重し、特に弱い立場の方々に不利のないようにということで十分な配慮をして話し合いを進めてまいったつもりでございます。  マイカー規制の問題につきましては、いま日曜日にスタンド閉鎖、休むとか、いろいろ通産省のほうでも御配慮いただいておりますが、私どもとしましても関係業界あるいは官庁等にいままでも呼びかけてまいりましたが、これではいけないと思います。ガソリンのほとんど九十数%が、先生御承知のように自家用車、まあトラックも含めてでございますけれども使用しているような状況でございますし、また、いわゆる乗用車というのがそのガソリンの五十何%を占めておるという状況でございます。だんだん自粛もしていただいている現状でございますけども、このままではいけないと思います。先ほどお答え申し上げましたように、これはなかなか一省だけですぐきめ手の出る問題でもございません。したがいまして、総理府総務長官を中心にしまして、いま各省がいろいろ持ち寄りましていろいろな検討を進めておりますが、自粛を呼びかけるだけでなくて、もう少し、一歩進んだ行政措置と申しますか、それをひとつやりたい、こういうことでございます。
  121. 神門至馬夫

    ○神門委員 時間がないので、ちょっとなにしますが、タクシーに対するLPガスの配給制はもう当面やっていくつもりですか。
  122. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 さしあたりこの十二月分ほどは通産省と合意いたしましたし、また、通産省から石油連盟に対しても確約をとっていただいたわけでございますが、これから先の一月以降の問題につきましては、さにらどういう絶対量になってまいりますか、そういうものを勘案して、この上に乗っけて検討してまいらなければならぬと思っております。
  123. 神門至馬夫

    ○神門委員 先ほど申しますように十二月分の手当てがなされた、これはしかし需要に対して昨年の一割減ですから、希望需要からいえば昨年末よりか三割方の増しがある。すると四割くらいの増でありますが、相当タクシーの利用制限をなされる。そうなってくると、どうしても国民の希望は公共交通にたよらざるを得なくなってくる。そうなってくると、マイカーもタクシーも、いま申しますようにあらゆる方法で自粛なり規制措置が行政的に指導される、その上に公共交通がまたいろいろと相談をされているけれども、カットされるということになりますとたいへんなことになる。特にバスの問題については、都市政策の問題あるいは都市交通の問題あるいは過疎バス等の問題は、それぞれ違った意味合いはあったといたしましても、決定的な重要性を持っておるわけであります。いま通産大臣は、運輸省と相談しながらこの問題については善処していくということでありますが、運輸大臣は、少なくともこの路線バスに対しては一〇〇%燃料の確保をしなければならないというふうに考えておいでになりますか。
  124. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 お説のように路線バスは、これはもう国民の大衆の欠かせざる足でございますから、鉄道とともにこの路線バスの油の確保ということについては、一〇〇%確保してまいりたいということでいま通産省にもお願いし、また所要の向きにこの要望を運輸省としては強く要望しておる次第でございます。
  125. 神門至馬夫

    ○神門委員 運輸大臣、先ほどの産業別優先順位をきめるということでありますが、今度は交通運輸関係にいきますと、その中に、先ほどあったように、マイカーについてはよりきびしい方法をもって――ガソリンですね、この場合は。ガソリンの使用等をカットして、そして全体の石油危機に対処していく、こういうことであります。たとえばトラックにいたしましても営業用、自家用というもの、あるいは乗用車にいたしましてもいまのようなマイカーもあり営業用もある、バスにいたしましても営業用あるいは自家用がある、こういういろいろ多種類がありますが、この自動車に対する優先順位をきめる、いわゆる燃料の配給優先序列をきめるというふうな策定をするつもりがありますか。
  126. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 もちろん、私どもの運輸行政の範疇には貨物自動車、営業用、自家用車、それからバスにいたしましても営業用、自家用、乗用車にいたしましても同じでございますが、そのほか航空、海運、鉄道というようなものがございます。鉄道あるいは路線バス等については、これはもう一〇〇%確保してまいりませんと、交通体系というものが根本的にくずれてまいると思いますので、こういうものをまず第一に優先をしてまいらなければならぬと思います。  そのほか、いろいろな年末の緊急輸送の問題でございますとか、あるいは民生に直接関係しておりますトラックの油の問題でございますとか、それぞれに多岐にわたっておるわけでございますが、先ほど来基本計画で通産大臣がお述べになりましたように、民生安定ともうしますか、生活に直結した部門はこれはもう大優先的に処理してまいらなければならぬと思っております。
  127. 神門至馬夫

    ○神門委員 その場合、いま当面の正月の帰省バスが、この間、東京陸運局から発表いたしておりますように、主として燃料の関係で、昨年末の三割滅を認可した。年末年始の帰省あるいは復帰ということは、日本国民の大きな慣習であり、生活の一部なんですね。そのためにこそ働いているというような家族なり考え方もある。それを、いまお話しになっているように、バス優先の考え方をひとつやっていこうというお考えの中で、実は三割も具体的にカットされている。運転できない状態にある。これに対して、少なくとも年末の帰省バス、そして来年復帰する場合のバスの燃料、これをひとつ一〇〇%確保する、こういうことをここで確約してもらいたいと思います。
  128. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 お説のように、私どもも全く同感でございます。それで帰省バスというのは、もう長い間の国民の慣習の中に定着しているものでございますから、私が路線バス、鉄道と申しましたのは、そのほかいろいろな特定のものももちろんこの中に入ると申しましたのはそういう範疇に入るわけでございますが、いま帰省バスの問題を聞いてみますと、いろいろ三〇%カットを背景に、会社と業者と申しますか、バス会社がいろいろな手配をして、今度はバスを何台仕立てるとかいうような契約方式になっているようでございます。その間に、油がどうも少ないからというようなことで、その契約を少し減らしておるとかいうようなこともあるようでございます。  それからまた、いままで、去年までやっておりましたのは、何か東京でバスを仕立てて、遠くのほうまで行って、それですぐ同じ燃料――多少は違いますが、同じ燃料をたいて、からバスで帰ってくる。そういうようなことも、今度は、運輸省としましては、これは業者も、向こうに運転手とバスを十日も待ませておくというようなことはなかなかむずかしい問題もあるようでありまして、そのむずかしさをこえて、今度帰るときには現地のバスが運んでくるようでございますから、そういうバスをチャーターするとか、そういうようなことはできぬものだろうかということで、せっかくいま自動車局、陸運局を通じまして指導をさせておるところでございます。  詳しいことは自動車局長からお答えいたさせます。
  129. 神門至馬夫

    ○神門委員 この燃料は確保しますか。
  130. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 燃料は十分確保するように、ただいまやっておる最中でございます。
  131. 神門至馬夫

    ○神門委員 さらに、この公共交通の問題から見直すべきは鉄道の任務だと思います。最近の交通新聞を読んでみましても、貨物等が鉄道に集中化する傾向にある、こういうことであります。そこで、第七十一国会におきましても、紆余曲折の末国鉄二法が通りました。そうして再建十カ年計画が決定をされたわけであります。いまこの方針、いわゆる四十五年に決定された経済計画及びことしの二月にそれを実情に応じたように修正され、閣議で決定を見ました経済社会基本計画、これに基づいて国鉄の再建十カ年計画というものがなされて、具体的にはいま並行道路のあるところ、並行して走っておる道路のトラックに貨物あるいは小荷物をゆだねるとか、あるいは無人化によって、並行して走るバス路線にお客をゆだねるとか、こういう考え方でなされておるのであります。ところが、いまのようにトラックなりバスそのものが、エネルギーの観点から制約をされて、そのような状況に、いわゆる国民の要求にこたえる状況にない。少なくとも一口にいわれております営業近代化は、国会できまったものの基本方針に基づいてなされておる措置でありますから、そのような状況が、いわゆる今日の石油危機の状況が何とか見通しがついたり、若干の明るい見通しがつくまで延ばすべきである。これは住民もこぞって反対している問題でありますから、その点について運輸大臣及び国鉄総裁の答弁お願いします。
  132. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 お答えする前に、先ほどの帰省バスのことでございますが、これはバスも多少事実減っているようでございます。それから国鉄におきましては、特に列車を昨年よりも七百十二本増発している。さらに帰省列車の「わこうど号」を三十四本増発するということで、両々相まって帰省の皆さんには御迷惑をかけないようにということで全力をあげておる次第でございます。  それから、いま総合交通政策を一ぺん見直す時期じゃないか、こういう御質問かと存じますが、いろいろな急変した事態に対処しまして、いわゆるエネルギー消費の比較的効率のいい国鉄に重点を置いて総合的に考えていかなければならぬということは、これはもう当面の問題だと思います。今度の国鉄の再建計画の中にもございますように、三本の柱と申しますか、中長距離の貨物、都市間……(神門委員「簡単でいいです」と呼ぶ)そういうものにつきまして、貨物輸送の近代化のために、在来線の電化とか複線化とかいうようなことにいま重点を置いて強力に進めておりますけれども、いまここで交通政策そのものを再検討するということは現時点で――まあ検討はずっと続けてまいらなければならないと思いますけれども、多少時間をおかしいただきたいと思っております。
  133. 伊江朝雄

    ○伊江説明員 お答え申し上げます。  お話は二点あると思います。第一点は貨物の集約化の問題、第二点は旅客の駅の無人化によって並行路線のバスに転嫁するんじゃなかろうか、こういう御質問かと思います。  第一点の貨物輸送でございますが、先生御承知のとおり、いま全国に貨物駅がほとんど網羅的に、扱い量の多い少ないにかかわりませず配置されております。それを私どもの計画といたしましてはできるだけ拠点に荷を集中いたしまして、拠点間の大量高速の効率輸送をやる一その着発地、それは小運送によりましてそして集約をする、こういうことでございますので、現段階において、先生から先ほど御指摘のとおりのエネルギー問題からいたしましても、通運に力をつけていただくならば、全体的に見ますならばかえって非常に効率的な輸送になるということでございまして、先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、中長距離の大量輸送という鉄道の本来の機能を発揮するためにも、いま申しました扱い量の非常に少ない駅はできるだけ拠点駅に集約して、それでなるべく速達をする、こういう方針でございます。  それから旅客の輸送につきましては、基本的には、私ども旅客の輸送力は、いかなる線区におきましても需要に見合った輸送力を確保いたしております。たとえそれが並行路線のバスが頻発されようとも、やはり通勤通学、その他基本的な輸送力は確保をいたしておりまして、それと、乗降をなさるお客さまの数の多い少ないによりますところの駅の職員を配置するか配置しないかという問題と一応別かと考えております。したがいまして、貨物、旅客両方の輸送につきましても、いま申し上げましたような基本的な輸送力は今後とも確保してまいりたい、かように存じております。
  134. 神門至馬夫

    ○神門委員 その問題についてはまた該当委員会の運輸委員会等でもう少し詰めていきたいと存じます。  大蔵省に最後に一点お尋ねしますが、公共料金の問題は部分凍結の形になる。大半のものは、もうすでに公共料金は決定されました。特に石油に関連した交通運輸関係のいわゆる料金、運賃というものが残っております。これを押えると業者が倒れる、あるいは個人タクシーなんかは自殺者も出だす、こういう問題が出ておりますが、大蔵省が十三日に発表いたしております四十九年度関税改正に対して、関税率審議会に八十品目の関税引き下げを出しておいでになる。これは生活物資高騰というものに影響するという観点からです。いま申しますように、時間がないから多く申されませんが、この原油の輸入についても、この関税を適用すべきではないか。あるいは国内における地方税あるいは国税の面においても、これらのものの措置をして、いわゆる公共料金を上げることを抑制するような措置を税制面からもとるべきではないか、このことについてのお考えはいかがですか。
  135. 中川一郎

    中川政府委員 確かにそういう議論もございます。そこで関税率審議会でいま議論いただいておるところでございますが、御承知のように、この関税は、石炭及び石油対策特別会計の財源となっておりまして、にわかにこれを廃止するということにも非常に問題がありますので、にわかにこれを廃止するということはちょっとできかねるのではないか。しかし、今後十分に検討してまいりたいと思います。  ただ、灯油につきましてはそういった制約がありませんので、物価問題上から関税は廃止をしたいという方向でやってまいりたいと考えております。
  136. 神門至馬夫

    ○神門委員 時間が来ましたから、その他十分ではありませんけれども、以上をもって終わりますが、何ぶんにも今日の石油危機の中で公共交通の確保についてひとつ最善をはかってもらいたい。これは都市においても過疎地域においても重大な問題で、過疎バス等はいま石油を理由に一ぺん廃止しますと復活しない。ゆえに各自治体なり国が助成をして、昨年からこの確保、生活路線を守ろうという、大きな政治的な方向に向いているわけであります。それで社会的な要求を果たしておるわけでありますから、この点を強く要求して質問を終わります。
  137. 中川一郎

    中川政府委員 いまの答弁でちょっと補足をさせていただきます。  灯油について廃止と言いましたが、廃止じゃなくて引き下げの方向で検討しているということでございますので、訂正をさせていただきます。
  138. 平林剛

    平林委員長 午後一時三十分から連合審査会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十九分開議    〔濱野商工委員長委員長席に着く〕
  139. 濱野清吾

    ○濱野委員長 休憩前に引き続き、連合審査会を開きます。  経済企画庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。内田国務大臣
  140. 内田常雄

    内田国務大臣 先般来、国民生活安定緊急措置法における標準価格の決定のしかたについて、阿部さんほか委員の方々に応待をいたしてまいりましたが、その発言について補足をさせていただきたいと存じます。  取りまとめたものがございますので、お許しを得て、そのまま読ませていただきます。   標準価格の決定方法について   一、標準価格は、生活関連物資等の価格高騰し、または高騰するおそれがある場合において、指定物資価格の標準として迅速に設定することによって、物資全体の値上げを防止し、価格を安定する方向へ誘導しようとするものである。   二、したがって、その設定にあたっては、短期間に設定を要することから、通常の行政を通じて得られる資料や各種統計資料をその時点で可能な限り使用し、これらの資料による標準品目の過去の販売価格、原材料の価格、その他のコスト事情指定物資生産量及び将来見通し消費者物価指数におけるウエート及び他の物資価格に与える影響等、国民生活に与える影響等から判断して求めるものである。   この場合、過去の妥当と考えられる時期の販売価格と比べ、標準価格設定時の価格のうち、海外原材料の価格の大幅な変動等、必然的に生ずる部分以外の便乗値上げ等による過当な利得部分をチェックして、公正な価格をきめる考えである。   三、しかしながら、急速な価格上昇を初期の段階で迅速に防止するために標準価格をきめるのであり、生産費、利潤等について、厳密さを求めるあまりに迅速さを欠くようなことは、本制度の趣旨に反する。具体的には、過去の妥当と考えられる時期の販売価格をベースに、その後の生産費等の諸変動を考慮したものを加えて得た額を総合的に勘案する一要素とすることもあるものと考える。   四、いずれにしても、標準価格は、値上がりを防止し、過当な利得を生じないようにすることが目的であり、かつ、早期に設定する必要があることからも、上記のような取り扱いによることを考えている。 以上でございます。
  141. 濱野清吾

    ○濱野委員長 阿部助哉君。
  142. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまお読みになったこの点については、私はこまごまといま反論する時間がございませんが、簡単に言えば、これは不満足であります。  私の質問は、五十七分という時間の制約がありましたので、この一点にしぼってお伺いしただけでありますが、この安定法の法形式は、私が指摘したように、国家総動員法と同じような大幅な委任立法であります。したがって、実体はすべて政令、省令に委任しておることがけしからぬのだ、もし物資に関するこれだけのものを委任したならば、国会は形骸化するであろう、そうしたら議会制民主主義が滅んでしまうのではないか、こういう点を指摘したのでありまして、皆さんが出せないものはとにかくとして、政令、省令というものをここに国会に提示をして、少なくともその審議をすべきだというその一例として、時間がないからこの三条、八条の問題にしぼっただけであります。もう一度大臣、末川さんのこの意見をひとつ聞いていただきたい。末川さんは、「この国家総動員法の条文は、極めて抽象的また普遍的に基本原則を定めているのにとどまって、実際直接に国民生活を規制することに関する細目の規定は、議会の審議を経ないで政府が決める勅令に委任されていたのであるから、一応形の上だけでは法治主義の建て前をもっているように見せかけても、実質的には政府官僚の思うままに統制を行うことができる仕組みになっていたのである。そこで、この国家総動員法は、治安維持法などのひどい弾圧法と相まって、独占資本の財閥と結びついた官僚および軍部を主力とする独裁政治――すなわち戦前から戦時中へかけての日本ファッシズム体制――を推し進めるカクレミノとしての法律的根拠を与えていたといってよいのである。」こうおっしゃっているのであります。  このとおり、これだけ大幅な授権立法をやることは、議会制民主主義の崩壊につながるのではないかといろ点で私は指摘したのでありますから、ただこれのみならず、皆さんがいまこれをやろうとするならば、これだけ議会に白紙委任状を求めるならば、その政令、省令を出してこの国会の審議にかけるべきであるということを指摘したのでありまして、ただ一片の、この内容にも問題があるけれども、これだけで私は満足できるものではないのであります。  どうか、議会制民主主義を皆さんも一緒に守るために、ひとつ政府は政令、省令を準備してこの議会にかけられんことをお願いを申し上げまして、私は時間がありませんので意見を終わります。
  143. 濱野清吾

    ○濱野委員長 質疑を続行いたします。石母田達君。
  144. 石母田達

    ○石母田委員 私は初めに、今回LPGのいわゆる品不足と、価格高騰が引き起こした深刻な事態に対する政府の責任について、お伺いしたいと思います。  御承知のように、十一月二十日ごろから自動車用のLPGが不足いたしまして、スタンドなどで行列をつくって数時間待っても入らない、あるいはまた、ひどいところでは、夫婦で寝袋を持って待って、しかも二十五ないし三十五リットルしか配給されない、それでは運行できない。このために減収を来たして、年末年始を控えて、多くの運転手が生活の問題で非常に打撃を受けたわけであります。また、家庭用のプロ。ハンにいたしましても、埼玉県などにおける団地などへの都市ガスの時間供給制限というような通告があったり、あるいま十二月から価格が一斉に四割ないし五割り上がっているとか、こういう千六百万世帯をこえる大きな影響を持つこのLPGが、深刻な影響を国民生活に与えているわけであります。特に十二月十日、埼玉県の鳩ケ谷市におきまして、高橋鶴雄さんという個人タクシー運転手が、来年一月八日に個人タクシーの開業を目前にいたしまして、ガソリンスタンドの給油証明がなければ営業が認可されないのではないか、こういう悩みを漏らしていた高橋さんが自殺をされまして、小学校四年をかしらに子供と妻を残して、正月を目前になくなられた。  こうした深刻な事態を引き起こしたことについて、私は、通産大臣並びに運輸大臣が一体どういう責任を感じられているのか、お伺いしたいと思います。
  145. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまの御指摘の問題につきましては、まことに遺憾なことでございまして、行政運営の責めにあるものとして、つつしんで哀悼の意を表する次第でございます。  われわれとしては、こういう混乱を一日も早く終息させて、タクシーの運転手の皆さんが安心して業務につけるように一生懸命努力してまいりたいと思います。
  146. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 御指摘のように、十一月暮れから御指摘のような問題が起こってまいりました。また、おなくなりになった運転手さんが、いろんな将来の営業を考えて、そして、ついに思い詰めて悲痛な結果を見られたということについては、私はほんとうに申しわけないと思っております。私どもの運輸行政の責任の一端も私は感じております。  そこで、通産省と御相談いたしまして、とにかく安心をしてもらえるような手はどういう手があるかというので、通産省と協議の結果、両政務次官の間に十一万五千トンのLPガスの確保の話し合いが合意に達したわけでございます。それは八日でございますが、それから今度は配分ということで、現在、御承知のような配分計画ができてきたわけでございます。  私どもも、先生御指摘のように、一生懸命になってこの問題解決に今後も当たらなければなりませんし、努力してまいりたいと思っております。
  147. 石母田達

    ○石母田委員 もともと、このLPGというのは、沸点がマイナス四十一度という特殊なものでございますから、普通、消費者やその他が買い置きするというようなものではなくて、そうした貯蔵能力を持つ、設備を持つ者が持っておるものであり、しかも、今回の価格高騰を見ましても、売り惜しみ、価格つり上げということは明らかでありますけれども、現にこういう中で次のような事実が起きておりますので、この問題について、一体いまの示された態度で通産大臣はどういう対処をするのか、お聞きしたいと思います。  それは神奈川県の大和市に大判屋――大判、小判の大判屋というプロパン業者がありますけれども、これは横須賀と横浜と大和に数千世帯を持っている業者であります。これが最近、家庭に対して、プロパンガスを確保するための資金として一戸当たり一万円の保証金を出してほしい、出した人にはいままでどおり、出さない人には三分の一、こういうことを言ってきたために、住民の中で大きな問題になりました。  わが党の市会議員や、あるいは県や市の調べによりますと、これはこれまで月間二百トンの供給を受けていたけれども八十トンになった、だからあとのLPGはやみで買わなければならぬ、そのためには、現金で値段も高く、資金も乏しいので、品物を正常に供給するために各家庭に協力してもらわなければならぬ、こういうことで、保証金を出してもらうということを業者は考えついたというのであります。  これは、明らかにいまのLPGに対する政府の家庭用の優先確保という問題、あるいはまた、この使っている家庭の中には生活困難な方、生活保護者もおられるわけでございますけれども、この取引先は伊藤忠燃料、シェル石油、共石プロパンとなっておりますけれども、これらの事実に対して、通産大臣は一体どういうふうに対処されるつもりであるか、お考えを聞きたいと思います。
  148. 山形栄治

    ○山形政府委員 LPGの需給についてちょっと簡単に最初申し上げますと、LPGの下期の供給は、当列われわれは五百二十七万トンと考えておったわけでございますが、その後原油の量のカット、それから不幸なことに石油精製段階での事故が起こりまして、その両者の合計で、下期通期では一一%くらいの減の四百六十七万トンくらいにならざるを得ないとわれわれは推定いたしております。しかし、これは一-三に非常に多くこれが影響が出るわけでございまして、一月-三月だけでございますと、いまの一一%というのは一七、八%になる可能性があるわけでございます。  先生御指摘のとおり、家庭プロパンは、もう民生上最優先されるべきものでございまして、値段も非常に高騰してまいりましたので、先般価格凍結を行ないまして、その価格凍結を行ないましたときに、関係者のメーカー団体、卸団体、小売り団体が合計十回程度の会合を開きまして、価格の凍結と同時に、家庭用に対する量の確保もあわせて全面的な了解になっておるわけでございます。ただし、家庭用といいましても、いま申し上げましたように全体的な量のカットがございますので、できる限り使用上の合理化といいますか節約を呼びかけて、大臣からも呼びかけたわけでございまして、そういう体制で、この三月までのプロパンにつきましては、若干の使用の合理化を前提にいたしまして、私たちとしては絶対これをやりたいと思います。  いま御指摘の大和市の問題につきましては、もしそういうことがございましたら、これはわれわれのほうといたしましては、これは法律に基づく免許制に小売り業がなっておりますので、至急調べまして、もしそういう事実がございましたら、適切なる措置をいたしたいと思います。
  149. 石母田達

    ○石母田委員 さて、十二月九日の日経新聞によりますと、「プロパンガスの大手メーカーである日本石油瓦斯、出光興産、三菱液化瓦斯、共同石油ブリヂストン液化ガス、興亜石油瓦斯の六社は十日から家庭用プロパンの出荷価格を一トンあたり七千-八千円値上げし、二万六千円とすることを決め「八日までに系列店に通知した、」こういうふうに載っておりますけれども通産省としてはこれを承知しておりますか。
  150. 山形栄治

    ○山形政府委員 そういう事実は承知しておりません。もし事実としましたら、これは独禁法違反だと思います。
  151. 石母田達

    ○石母田委員 その次のあとの記事に、「これは先にメーカー各社が決めていた「十二月一日から一万五千円値上げ」という方針通産省から「便乗値上げである」と指摘されたため、値上げ幅を八四%から四四%に縮小、実施時期を延期したもの。」こういうふうに書かれてあります。  私はここでお伺いしたいのは、通産省がこうした業者と会って、こういう値段の問題について話し合った事実が最近あるかどうか、これについてお伺いしたいと思います。事実だけ答えてください。
  152. 山形栄治

    ○山形政府委員 LPGの家庭用の問題につきましては、先ほど申し上げましたように非常に値上がりの傾向が出てまいりまして、十二月で実勢が千三百円から千五百円ぐらいになっておりましたところ、業者側といたしましては、これを千六百円または千八百円、場合によっては二千円というような高値の通告を消費者にしておる動きが顕著になってまいりましたので、先般、関係者を呼びまして、先ほど言いましたように十回ぐらいの会合を開きまして、これを千三百円に凍結いたしたわけでございます。その意味におきましては、最近時におきまして、業界団体と会合を持ったことは事実でございます。
  153. 石母田達

    ○石母田委員 十一月三十日に精製流通課が中心になりまして、LPGのメーカーや元売り業者、そういう人たちと会って、いま言ったような問題を話し合ったことがありますか。
  154. 山形栄治

    ○山形政府委員 ちょっと具体的な日にちははっきりいたしませんですけれども、十回ぐらいやりましたうちの一つにそれはあったかと思います。
  155. 石母田達

    ○石母田委員 委員長、ここに松村課長おられますか。松村克之課長おられますか。――松村課長おられましたら「松村課長にお伺いをしたいのですが、十一月三十日、あなたはいま言ったような業者をお呼びになって話し合ったことがありますか。
  156. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  私の手帳には十一月三十日のところにメモはしてございませんけれども、その数日の間にこれらの業界を価格指導いたしたことは事実でございます。
  157. 石母田達

    ○石母田委員 その話し合いの中で、先ほど話に出た数社のメーカーで値上げが予定されており、その問題について話し合った、あるいは通産省といいますか、あなたの考えを述べて、引き上げの幅があまり大幅であるから、その点についてよく調査して、そして値上げについては一週間ないし十日くらい待ってほしいというような意味の話し合いが行なわれたか、その話し合いの内容についてお答え願いたいと思います。
  158. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  先ほど長官から御説明いたしましたように、あまり大幅な便乗値上げはしないようにということは、再三にわたって生産メーカー及び小売り団体、それから卸売り業者に対して警告を発しております。
  159. 石母田達

    ○石母田委員 その中で、先ほど私がこの日経新聞で読みました六社、あるいはまたそういう大手メーカーの元売り価格の値上げがあまりに大幅であるということについても、いまと同じような話し合いがなされましたか。
  160. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  話し合いと申しますよりは、私のほうから、この際、便乗的な値上げは一切慎むように、これはプロパン業界の消費者に対する一つの責任でございますので、そういった値上げは慎むようにという一方的といいますか、ことばはちょっとおかしゅうございますが、私のほうからの警告というものを出しておるわけでございます。
  161. 石母田達

    ○石母田委員 通産省にもう一度お伺いしますが、こういうことが日経新聞に出て、そうしたことについて調査をなさったことかあるのですか。それとも調査をしてそういう事実はないというふうにおっしゃるのですか。もう一回はっきりお答え願いたいと思います。
  162. 山形栄治

    ○山形政府委員 価格の談合ということは絶対にいかぬことでございまして、われわれといたしまして団体から聞きましたのは、談合して均一の値上げ幅というので聞いたのではございませんで、四囲の状況から品がすれになる、需要期に入るということで、各小売り段階で非常に大幅な値上げがある、その幅も、先ほど言いましたように千六百円、千八百円、二千円というような動きがあるということを聞いたわけでございまして、念のために談合したかどうかということについて確かめましたところ、そういう事実は絶対ない、また、われわれといたしましても、その表明を通じまして、一定の値上げ幅ということの表明ではなかったものですから、それは談合でないと確認いたしております。
  163. 石母田達

    ○石母田委員 私が聞いておるのは元売り価格、つまり出荷価格なんですね。蔵出し価格です。それが最近大幅といいますか、トン当たり一万八、九千円のものから二万数千円に上がっておるということについてはどうか、つまりそれが談合できめたとかなんとかということの前に、こういう事実については調査したことがあるのか、それともその調査した結果事実でないというふうに言い切るのか、お答え願いたいと思います。
  164. 山形栄治

    ○山形政府委員 いわゆるメーカーというのは大きくいいまして二つに分かれておりまして、一つは御存じのとおりLPガスの国産、いわゆる精製から出てきます国産に多く依存しておるもの、それから非常に輸入に依存しておるものと、大きくいいますと二つに分かれるわけでございます。この中間は当然あるわけでございます。国産のものは、原油価格値上がりで、そこから出てくる製品価格値上がりがあるわけでございますが、輸入というのは、最近時非常に上がっておりまして、元売り間におきましても、その依存のしかたによっていわゆる蔵出し価格というのは非常に違うわけでございます。これは同一ということはあり得ませんので、当然に値上げ幅の大きさの違いはございますけれども、その両者間においては性格が全然違うわけでございます。
  165. 石母田達

    ○石母田委員 質問に答えてないじゃないですか。私の聞いているのは、最近、そういう元売り価格が十日から上がる、こういう新聞の報道についてあなたたちはそれを調査したのか。調査してそういう大幅の元売り価格、出荷価格が上がってないというのか、その事実を聞いているのですから、イエスかノーかだけ話してください。
  166. 山形栄治

    ○山形政府委員 十二月一日から上げたいという申し入れがございましたのに対しまして、それを上げさせることをわれわれは行政指導でストップいたしまして、約十日の間に新しい対応のしかたを考えるということで十日間とめておったわけでございます。
  167. 石母田達

    ○石母田委員 その上げ幅というのは一万五千円ということじゃないですか。
  168. 山形栄治

    ○山形政府委員 その上げ幅は、最初の要求のときは七、八千から一万五千円くらいの間にばらついておったわけでございます。
  169. 石母田達

    ○石母田委員 いまの話によってもおわかりのように、現実に元売り価格が最近上げられようとしておる。それに対して通産省のほうから、それは上げ幅があまりに大き過ぎるからということでこのような最近の元売り価格の値上げにおさまった、こういうことはいま話されたとおりで、ちょうど十日ストップということになりますと、十一月三十日の談合あるいはその付近の談合ということになれば、通産省の指導といいますか、そういうものによって、意見によって業者がそうした大幅の引き上げをある一定の引き上げに押えた、こういうことになるわけですね。その点はどうでしょうか。
  170. 山形栄治

    ○山形政府委員 われわれは家庭用のプロパンというのは最も大事なものだと思いまして、元売り段階よりは問題は小売り段階でございますので、相当強い姿勢で、何晩もかかりましてこれを納得さしたわけでございます。業界には相当の不満があったことは事実でございます。
  171. 石母田達

    ○石母田委員 そういう行為をあなたたちがやるということは、実際に業者を呼んでそうしたことを話し合うということ自体は、明らかにこれはメーカーのそうした共同行為によるカルテル行為、あるいはやみであるかしらぬけれども、そういう行為に対して通産省が関与して指導する、こういう行為は、あなたは通産省とそれから公取の間に取りかわされた覚書にある協力行為だというふうに解釈してやられたのですか。
  172. 山形栄治

    ○山形政府委員 われわれは覚書云々より先に、民生の、このまま暮れを控えますとたいへんだということでございますので、強い指導を行なったわけでございまして、大臣の御指示に従いまして、暮れから正月にかけて、三月までにかけての相当長い間の価格凍結を行ないましたのは、われわれの一方的なる、主体的なる指示でございます。
  173. 石母田達

    ○石母田委員 いま御承知のように、通産省は、政府は十七日から小売り価格を十キロ千三百円、つまりトン当たりにしますと約十三万円、こういうふうに示したわけです。この日経新聞あるいは先ほどのお話でも、業者はその前に元売り価格をトンについて七、八千円上げたい、上げている、こういうことから、卸売りのほうでもまた二、三万ぐらいの大幅な値上げがいろいろうわさされております。こういうふうに元売り価格を引き上げる、それについて通産省が指導している、こういうことになりますと、この七、八千円の値上がりだけでも、いま在庫が七十万トンあるといわれておりますけれども、算術計算を単純に行なうとしても数十億円のもうけになるわけです。こういう大幅の小売り価格の値上げ、そうして元売り価格の大幅な値上げ、それを通産省が直接指導している、こういうことになりますと、いまのLPGの価格の引き上げを通産省と業者が一緒になってやっているのじゃないか、こういうことになると思いますけれども、これについての通産大臣の責任ある答弁お願いしたいと思います。
  174. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 業者とぐるになってやるようなことは断じていたしません。通産省は目下価格抑制について全力をふるっており、先般来の三百八十円、千三百円の灯油並びにプロパンガスの価格の凍結については、業者の反対を押し切って、むしろこちらのほうから強く押し切るような形であの価格をきめたのであります。
  175. 石母田達

    ○石母田委員 それでは小売り指導価格トン当たり千三百円の元売り価格は、一体幾らになっているのですか。
  176. 山形栄治

    ○山形政府委員 まず元売り価格でございますが、一月から徐々に原油価格が上がってまいりまして、特にLPGは製品で半分入れておりますが、これは不幸なことに中近東地域が七割でございます。サウジアラビアとクウェートでございますが、これの値上げ通告が一般の原油よりは考えも及ばないほど高くて、十月現在トン当たり二十五ドルといわれたものが七十ドルという、二・八倍の通告がなされておるわけでございます。したがいまして、元売り価格が、FOBがそれだけ上がりますので、これは上がりますことは私はやむを得ないのではないかと思います。今回の措置は、問題は小売り価格の凍結でございまして、本来でございますれば、自由にまかしておきますと、いま申し上げましたような元売り価格の上昇がございますと、相当大幅な値上げの攻勢、これが小売りに響くことと相なるのを非常におそれまして、先ほど大臣も言いましたように、相当強い姿勢で小売りについての凍結を行なったわけでございます。おそらく元売り価格は、小売りの、私の感じるところでは、従来の価格の二・八倍ないし三倍ぐらいのFOB価格の上昇を反映したものに相なると思います。
  177. 石母田達

    ○石母田委員 そのFOBの問題は一月一日からの引き上げ通告でしょう。私の聞いているのは、そういう元売り価格が、あなたはいま言われないけれども、輸入価格あるいは生産、精製のメーカーの中での元売り価格を明らかにしてほしいということに対しての質問の答えになってないと思います。そういう元売り価格が上昇し、それにつれて小売り価格も上がっている。これに通産省が直接指導している、こういう重大な事態について公取としては一体どういうふうに考えているのか。この日経新聞によりますと、公正取引委員会がこれを察知して「ヤミ価格協定の疑いで調査に乗り出そうとしたところメーカー側から「これは価格協定ではなく、通産省の指導で決めた安定価格である。通産省からは独禁法には抵触しないから、系列店や小売業者をよく指導するように」」ということで、いわゆる覚書にある問題の解釈が、通産省の解釈は、こういう法律施行前でも同じようなことがやれるのだという答えがあったということを小松産業政策局長は述べたということが書いてあります。  こういうような問題について、公取として一体どういうふうに見ておられるのか。こういう問題について調査をされたのか、あるいはこの新聞に書いてあるような事実がほんとうなのか。時間がありませんので一簡潔に公取のほうから答えていただきたいと思います。
  178. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その新聞記事が出ました当時私が確めたところでは、私の部下もそうでございますが、そのような事実はないという――まあこれは通産省から確かめたものでございますが、そういう事実は全くないからという連絡がございまして、したがいまして、その時点において調査を始めようとしたという事実はありません。私どもは実は知らなかったわけでございまして、またその事実が実際ではない、実情と違っているということでございましたので、あえてそれを追及することはいたしませんでした。ただいま話を伺っておりましても、ある程度問題になる点はありましたけれども、末端価格を千三百円にきめるというようなことば覚書の線ですでに認めていることでございますので、これはもう当然のことだと思います。強力な行政指導が行なわれるということそれ自体、何ら独禁法上は問題にならない。
  179. 石母田達

    ○石母田委員 その指示価格が発表される十三日以前にこういうことが行なわれているということについては、いまの答弁によってもあなた明らかでしょう。いまのこの質疑応答の中で、当然公正取引委員会がこの問題について再び調査をされるように私は要求したいと思います。
  180. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 事実関係につきましては私のほうが調査をいたします。ただし一言申しますが、独禁法上それに何ら抵触しない場合もある。ただし事実は事実として、特に問題になるのはメーカーの段階でございまして、元売りがはたしてその協定を行なっておったか。それぞれがそれぞれのコストの変動に基づいて、自分かってに値上げ通告をしたという事実だけでは協定にはなりませんが、お互いに共謀の事実があったかどうかという点だけは、事実関係は調査いたします。
  181. 石母田達

    ○石母田委員 以上の点から私は、今回通産省と公取が取りかわされた覚書、こうした高値を通産省が一緒になってきめていくというような点、ルチルを追認する、脱法行為を独禁法から除外させる、こういう問題については直ちに破棄するように、そうしてLPGの今回きめられた指導価格千三百円の問題が業者の元売り価格の引き上げを前提にして行なわれている以上、これを再検討して引き下げるということについて、通産大臣答弁を願いたいと思います。
  182. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど来申し上げましたように、われわれは消費者価格を守るために精一ぱいの努力をしておるのでありまして、今後とも公正な行政を持続していくつもりであります。
  183. 石母田達

    ○石母田委員 そうした点から私どもは、今度の四党案の適正化法案の中にも、このLPGを含む石油の問題での価格をきちんと指定価格をつくって、そうして元売り価格、卸売り価格、小売り価格を指定できるようにするとともに、業者に対して輸入原価、製造原価、卸売り原価、価格の決定方法を届け出ることを義務付づけ、必要な規制ができるようにしてあります。こういう点で、ぜひとも四党の修正提案、こういうものについて、今回の法案を改めるように要求したいと思います。  最後に私は、現在の紙不足が言論、出版の自由に大きな障害を与えている点について質問したいと思います。  憲法第二十一条によって、言論、出版の自由が保障されておりますけれども、いまの石油危機からきている政府の緊急対策に基づきますと、いわゆる石油電力削減に伴って新聞用紙の大幅な減産が実施されようとしております。現に十一月二十七日、新聞用紙の十二月度の生産を暫定的に二〇%ないし二五%程度減らすという削減量を日本製紙連合会は日本新聞協会に提示したというふうにいわれております。もともとこの削減量は、電力需要の一〇%削減ということになっておりますけれども、実質的には、三〇%の削減あるいはそれ以上の削減になるといわれております。  もともと新聞というものは、民主主義の根幹である言論、表現のきわめて重要な手段であります。新聞用紙をはじめ、新聞の発行に必要な資料が保障されることなしには、言論、表現の自由もあり得ないことは言うまでもありません。国の進路、国民の運命を選択する上で、国民が判断を下す、なくてはならない条件である言論自由の物質的な保障を実質的に制約することになる新聞用紙の大幅削減などの措置が、国民全体の利益から見てゆゆしい問題であることを私たちはきびしく指摘しなければならないと思います。特に戦前の経験から申しましても、いわゆる用紙不足という経済的な措置が言論統制の道具に用いられる、こういう危険性を現状において非常に感ずることであります。  ここにその当時の政府部内資料がございますけれども、この中にこういうことばがあります。「幸いここに新聞用紙の国家管理制度が存在する。もしこれを内閣に引きとり政府の言論対策を重心とする「政務」として処理するならば、つまり政府がこれによって新聞に「睨み」をきかせるならば、新聞指導上の効果は相当の実績を期待しうる」と、当時の政府部内資料はいっております。こういう問題から申しましても、われわれは、政府が、また通産省が、この言論の自由を保障する、それに足る紙の問題をきちんとやるということをはっきりと通産大臣から御答弁願いたいというふうに思います。
  184. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 言論の自由を尊重するということは、かねがね私申し上げておるところであり、先般共産党の方が通産省にお見えになりまして、一般の市中の新聞は強大な力を利用して紙を独占しておる、政党の機関紙の紙の割り当てが少ないから、そちらのほうを多くしろ、通産省は乗り出して割り当てをやれ、そういうような趣の話がありました。私はそれに対して、それは共産党さん、間違いじゃありませんか、戦時統制経済、言論の自由の弾圧というのは、用紙の割り当てから始まったんですよ、あなた方がそういうことを通産省に言っておいでになるのは、言論の自由抑圧のもとになるじゃありませんか、私はこういう点からあなた方の割り当てをやれというようなお考えには、そう簡単に賛成できませんよ、そう申し上げた。そのとき私の回答をお聞きになった人は、この会議場の中にもおります。私は、そういうような考えに立って、言論統制をやるまいという考えで一貫してきておるのであります。  それで、石油削減あるいは電力削減によりまして、用紙の生産が減りまして、一般の新聞協会からも申し入れがありましたから、できるだけ御趣旨に沿うようにやってまいりますと言いまして、紙の団体にも話しまして、そういう点については緩和されてきておったと思うのでございます。
  185. 石母田達

    ○石母田委員 質問を終わります。
  186. 濱野清吾

    ○濱野委員長 田中美智子君。
  187. 田中美智子

    田中(美)委員 私は二法案について、社会福祉の現状から質問いたします。  いま社会福祉施設や生活保護家庭の人たちや障害者の全く余裕のないぎりぎりの生活費で生活している人々、この人たちにとって物不足特に石油不足、異常な物価高は、生活を根底からくつかえしています。十一月、十二月は特にこれがひどく、このままいくと生命の維持さえ危ぶまれる状態になっています。これらの人たちに対して、政府はどのような緊急措置をすぐにとられるおつもりか、厚生大臣通産大臣にお尋ねいたします。
  188. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 お答えいたします。  生活保護の生活扶助基準につきましては、本年四月前年度対比一四%引き上げ、さらにその後におきまする物価の上昇の動向等を勘案いたしまして五%、合わせて対前年度一九%引き上げておるところでございます。これによりまして、一級地の標準四人世帯について申し上げますと、現行の生活扶助基準は五万二千七百九十六円、これは前年度対比八千四百三十二円の増額でございます。  なお、この歳末につきましては、新年を控えた生活需要の増大に対処するために期末一時扶助の制度がございますが、一級地におきましては、被保護者一人当たり四千七十円、これも昨年対比一九%の増額でございます。したがいまして、四人世帯でございますれば、その四倍の一万六千二百八十円、こういった金額が期末の一時扶助として十二月に支給されております。  なお、社会福祉施設につきましても、年初前年対比一〇%以上の生活費の増額をはかったところでございますが、生活扶助基準が十月一日から引き上げられましたと同じ時期に五%引き上げております。また、冬季の生活被保護者に対する期末一時扶助と同じように、施設の収容者に対しましても期末一時扶助を支給しているところでございます。
  189. 山形栄治

    ○山形政府委員 社会福祉施設に必要な油の問題につきましては、これは最優先で確保する方針で現在厚生省と具体的に数量の詰め等を行なっておる段階でございます。
  190. 田中美智子

    田中(美)委員 いまの厚生省のお答えに対しては、国民はたいへん怒りを持ってお聞きしているというふうに思います。というのは、なぜかといいますと、一九%上がったということは、これは初め一四%上げて、それでとても物価が上がってだめだからと――その物価は四月から上がった物価ですね。――だめだからということで、五%上積みをした。これは九月にきめたことじゃありませんか。いま私が質問していますことは、これは十一月、十二月のこの物価高をどうするのかと聞いているわけなんです。十一月には、前年度対比で三・二%上がっている。この十二月になってからは、新聞などでは六%になるとか一〇%になるとかいまいわれているわけですね。こうした状態に対してどうするのかということを聞いているわけです。ばかの一つ覚えのように、一九%、一九%。これを上げたのは、去年のあれの一九%でしょう。そんなものが、いまのこの十一月、十二月、これから三月まで、何の役に立っているかということを聞いているわけです。簡潔にはっきりお答えいただきたい。どうしたいかということを、どうするのかということを答えていただきたいと思います。
  191. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 十月以降、先ほど申しましたように、対前年一九%生活扶助基準を上げたのでございまして、この一九%という率は、それなりに評価できる比率だと私ども思っております。そして、この十月一日からの五%の引き上げに必要な財政措置につきましては、先般補正予算で御審議いただいたばかりでございます。したがいまして、現段階におきましては、生活扶助基準をさらに引き上げるということは考えておりません。  しかしながら、先生おっしゃるとおり、石油危機以来のいろいろな情勢というものを勘案いたしました場合に、この基準引き上げ以外の他の方法で何らかこれらの方々の年越しを援助できる適当な方策はないかどうか、ただいませっかく検討中でございます。
  192. 田中美智子

    田中(美)委員 先ほどから一九%というこを言われているわけですけれども、上がっても一食八十五円です。それで何が食べられるか、いま、議員会館の食堂へ行ってみてください。カレーライスだって百七十円しています。卵どんぶりだって二百円しているのです。千百三十万人の生活保護家庭の人たちは、一食八十三円の食事をしているわけです。特に一人暮らしの老人などは、電気もつけずに暖房も入れずに、ほとんど寝て暮らしている。そして、朝起きてお湯を飲んでいるという現状が満ち満ちているわけですね。これに対して、いま検討中ですなんというようなことでは間に合わないではないですか。これを早急に、いつごろまでにその検討の回答が出るのか、どういう検討をいましているのか、もっと具体的に。もう間に合わないわけですから。いま困っているわけです。
  193. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいま、先ほど御答弁いたしましたように検討中でございますけれども、もう十二月の半ばでございまして、早急にこれは結論を出したいということで、来週、きょう日曜日でございますので、来週早々にも結論を出したいと考えております。
  194. 田中美智子

    田中(美)委員 来週早々に結論を出すというのは、どこを重点にいま検討して結論を出すことか、その中身をお聞かせしていただきたいと思います。
  195. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいま私ども部内で検討中でございまして、まだ成案を得ておりません。そして、成案を得たならば、早急に財政当局とも相談いたしまして、来週早々にも何らかの措置を講ずるようにしたい、かように考えているところでございます。
  196. 田中美智子

    田中(美)委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、それに対して必ず金を出すということを確約していただきたいと思います。
  197. 中川一郎

    中川政府委員 大蔵省としても、目下研究中でございます。
  198. 田中美智子

    田中(美)委員 そういう政治姿勢だからね。研究中ですということはないでしょう。厚生省が出す、何とか検討をして、来週早々にそれを出すという返答をするというのですからね。それに対しては受けて立つという、そのことばを待っているわけじゃないですか。どこまでいったって、検討中、検討中。その間に国民は死んでしまうのですよ。栄養失調になるのですよ。もう少し政治姿勢をきっちりしていただきたいと思うのです。  何かといえば、一九%上げたと、こう言いますけれども、養護施設の子供たちに一体幾ら上げている。十三円しか食費を上げてないではありませんか。そういうことが、いま、その上げた段階でも、これは名古屋にあります玉葉会という乳児院の例です。これはここの特殊の状態ではなくて、日本の福祉施設というのは、いま全部これと同じ状態になっているので、この例を一つあげたいと思いますけれども、ことでは一人一日五十円の食事の赤字が出ている。これは十一月、十二月の話です。そして、そういうことですから、毎月三万円の赤字が十一月から出始めているわけですね。そういう中で、じゃ、栄養はいままでどおりにとれているかといいますと、これはヨーグルトを十一月からやめております。乳児院ですよ。それから牛乳を二回飲むのを一回しか飲まぜないという状態が出ています。それからおやつに食べさせるプリン、いままでプリンは牛乳で固めていた。それを水で固めている。こういうふうにして栄養が低下しても五十円の赤字が出ているわけですね。ですから、これをただ検討するというのではなくて、大幅に予算を組んで、緊急対策としていますぐ出さなければだめだということだというふうに思うわけです。  この乳児院では、こうした栄養不足で子供たちが非常にかぜを引きやすくなっているわけです。大人でも栄養が悪ければ二、三カ月でかぜを引きやすいからだになるわけですけれども、子供たちはもう一カ月で出てくるわけですね、三歳未満の子供ですから。十一月から灯油が入らないということで、昨年は部屋の温度を二十度以上に保つということをずっとやっていたわけです。ことしはこれができないということで、十度以下にならなければ暖房を入れないという状態になっているわけですね。そういうことで、十一月は太陽が当たっている日にはなるたけ外に出して走らせたりして暖をとるというようなことをしていたわけです。それが十二月に入りましてから急にかぜ引きの子供たちがふえてきたわけですね。いまここの乳児院では、職員が十四名いるうち四名がかぜを引いて寝ている。子供たちが二十人のうち、非常にわんぱくだった、飛び回っていた子供たちが一四、五人発熱している。そして一約十人がいわゆるかぜを引いている。ほんの二十人しかいないわけですけれども、あと残りの子供たちのほとんどが鼻をぐずぐずさせている状態になっているわけです。この状態に対して、一体いまどういうふうに政府はやっていただけるのか、緊急にどういうふうにこれをやろうとしているのか、どうお考えになるか、簡単にお答え願いたいと思います。
  199. 翁久次郎

    ○翁政府委員 お答えいたします。  児童福祉施設、特に乳児院等の採暖費につきましては、先ほど社会局長がお答え申し上げましたように、ただいまわれわれのほうで検討しておりまして、来週早々にでも結論を得次第、大蔵当局と相談いたしたい、かように考えております。
  200. 田中美智子

    田中(美)委員 早急に、これはもうあしたでも待ちきれない。もし、この子供たちが肺炎になれば命を失うわけですからね。すぐに石油を送るということはできるはずだというふうに思うのです。それをすぐにやっていただきたいと思います。  十一月十九日に社会保障制度審議会が総理大臣に建議をしています。この中に、インフレは「少数の豊かな人々をいちだんと豊かにし、貧しい人々をいちだんと貧しくする」と書いてあります。そして、インフレは「社会保障の大敵である。」というふうに書いてあるわけです。政府はことしを福祉元年と言ったわけです。それを恥ずかしいと思わないでしょうか、こんな状態になっているということに対して。いまこそほんとうに福祉優先にするならば――検討、検討とだいぶ前から言われているのに、いまなお検討の結果が来週早々でなければ出ない。それなら必ず出して、このかぜを引いている子供たちがすぐかぜがなおるように、すぐ四月の段階の栄養がとれるようにやっていただきたいというふうに思うわけです。  そして、この二法案によってそれがすぐできるのかということをお聞きしたいわけですけれども、この二法案というものが、安定というのは高値安定ではないかという不安を国民は非常に持っているわけです。もし、高値で安定されれば、こうした福祉施設や生活保護家庭、障害者たちにとっては、きめられた措置費の中でやっているわけですから、高値で安定すればそれだけ生活のレベルが落ちるわけですね。これは、先ほど言いました社会保障制度審議会の建議の中にこういうことが書いてあります。インフレによって貨幣価値が低下しても、生活保護や年金生活者、社会福祉などの生活費については、実質価値を維持するように――実質価値を維持するということですね。ですから、プリンを固めるのが水になるということは、実質価値を維持していないんですね。ヨーグルトを飲まぜられないということは、実質価値を維持していないんですね。「予定された生活水準を確保する措置が最低限度必要である。」ということは、社会保険制度審議会がちゃんと建議をしているわけです。一体それを読んでいらっしゃるのか、私は非常に疑問に思うわけです。現在もうこの実質価値というものは維持されないでいるわけです。特に生活保護家庭の方たちというのは、厚生省が一日必要カロリーといわれている二千五百カロリーの半分しかとれていないという現状です。これに対して、検討する、検討するということですけれども、私はほんとう価格が安定するまで――安定ということはもとの値段、もとというのはいつかということは四月の段階の値段に引き下げて安定する。安定するまでは実質価値を下げないために現物で支給していただきたいというふうに思うわけです。石油にしてもミルクにしても何にしても、すべての日用品、そういうものを現物で、値下げするまで支給していただきたい。それを検討する用意があるか、それをすぐする用意があるか、お聞きしたいと思います。
  201. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 先ほど申し上げましたように、物価上昇による給付の実質価値の減を埋める、そういった趣旨からも、ことしの十月一日から、物価の上昇の動向等を勘案いたしまして、機動的に対処して五%基準を引き上げたわけでございます。一九%という比率は、国家公務員のベースアップが一五・三九%でございますから、決して低い率ではないと思います。そしてまた、その五%引き上げたに必要な財政措置というのは、先般の補正予算で御審議いただいたばかりの段階でございまして、先ほど申し上げましたように、石油危機以来の諸般の情勢にかんがみて、何とかこれらの方々の年越しを援助する適切な方策がないかどうか早急に検討して、来週早々にも結論を出すようにしたい、かように申し上げている次第でございます。
  202. 田中美智子

    田中(美)委員 公務員と比べて低くないというお答えはずいぶん無責任なお答えだと思います。一日八十五円で食べられるかということを聞いているのですからね。子供たちに牛乳を飲ませられなくなっている状態でも低くないという姿勢は、これは全く政府の代表した姿勢なんだと思う以外にはないような感じがするわけです。  もう一つ質問したいわけですけれども、これも緊急な問題として出てきていることは、労災などで脊損になられた方や肢体不自由の方たち、そして自動車で動いていらっしゃる方たちが、石油の制限をされたり指定されたりすることは非常に困るわけですね。この方たちが病院に毎日通うというときに、いまバスも電車も一切使えないわけですね。自分の小さな自動車で行っている。そのガソリンを制限するというようなことは、死につながることです。それは病院に通うだけでなく、福祉工場のようなところに自動車に乗って通っていらっしゃる。その通勤ができなくなってきているわけですね。買いものに行くこともできなくなっている。これはまさに生命にかかわることなので、これに対しての石油というものをどこも制限なしに、そして指定もなしに緊急に必要なだけ回していただきたい。これについて通産大臣のお答えをいただきたいと思います。
  203. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最優先的に配当いたします。
  204. 田中美智子

    田中(美)委員 私はいままでの政府の回答をお聞きしまして、非常に不満な点が多いわけです。それはなぜかといいますと、石油危機にかんがみましてというようなおことばがいまありましたけれども石油危機というのは一体だれが起こしたのか。まるで天災地変が降って湧いたような言い方をして、先ほどの他の議員の質問に中曽根さんが答えていらっしゃいましたけれども国民もみんなも一緒になってこの危機を乗り越えよう――国民は一体何をしたのでしょうか。国民は、イスラエルに何をしたか、アラブに何をしたかと言っています。アメリカべったりの政治をしてきて、その飛ばっちりでこういうことになったということは政府の責任ではないかと思うのです。その政治の失敗というもの、それに対する自覚がないということをいま強く感じたわけです。自覚がないから反省がない。降って湧いたこの天災に向かって皆さんで努力しましょうなんという話は、きれいどころか、国民を愚弄するにもほどがあるというように思うわけです。反省がないから、国民生活をよくする方策がちっとも出てこない。いつも検討しておる、検討しておる、子供たちに牛乳を飲ませなくとも低い基準とはいえない、そういうことばが出てくるということを見まして、非常に憤慨にたえないわけです。国民生活の安定をはかるために、いままで国民生活の安定をほんとうに軽んじてきた政府は、政治姿勢を反省し、そして根本的にその姿勢を改めて、国民生活最重点の政策に切りかえていただきたい。そして物価を引き下げる、高いところで安定するのではなくて、物価を引き下げるということをこの生活法案の中に必ず入れていただきたい。そうすることによって、緊急に強力に国民生活を最重点にした政治を推し進められますことを希望して、質問を終わります。
  205. 濱野清吾

    ○濱野委員長 近江巳記夫君。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 去る十四日、山下通産事務次官が経団連会館におきまして、石油危機とその対策につきまして所見を明らかにしておられるわけであります。その中で、日本経済の崩壊的危機のおそれ、このように警告をされておるわけであります。今日のこのすさまじいインフレの状態の中で、さらにまたこの石油危機がかぶさってきたということで、まさに壊滅寸前という日本経済の状態でありますが、こういう現状を黙視することができないということで、事務レベルとしての立場での山下さんでありますが、そうした発言になったのじゃないかと思うわけです。いままで田中総理の発言等を見ておりますと、物価においても憂慮すべき状態であるとか、国民のそういう感情とは非常にすれ違う姿勢があるわけでありますが、政府としては、この発言をどのように受けとめておられますか。中曽根大臣、それから経企庁長官お願いしたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 山下事務次官の発言は勇気ある発言でありまして、多分に真理も含んでおると思います。非常に頼もしい発言であると評価しております。
  208. 内田常雄

    内田国務大臣 山下君の発言を聞いておりませんけれども、私は私なりに、今日最も政府物価の安定等を通じて国民生活のことを考えなければならない重大な事態にあるときだと考えております。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした発言、また今日私たちの身近に品不足、異常な高騰、こういう状況が日一日と迫ってきておるわけでございます。この間、デマであったとはいえ、豊川信用金庫に発生した取りつけ騒ぎ、これはまさに国民の不安と動揺というものを象徴的に私は示しておる、このように思うわけです。政府として、事務レベルからこういう警告ということではなく、こういうわが国経済の破局を突破する内閣の強力な姿勢を私は明確に打ち出すべきではないか、このように思うわけです。この点、両大臣、どう思われますか。
  210. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まことに同感であります。この二法案成立の上は、田中総理を中心にして、強力な生活安定のための本部をつくりまして、万全を期する所存であります。
  211. 内田常雄

    内田国務大臣 同じ内閣に連なるものといたしまして、通産大臣と全く同じ考えを持つものでございます。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 二法案ができれば鎮静化するというような、そういう非常に安易な考え方のように私は受け取るわけですが、それまでに総需要抑制であるとか、物価対策等におきましても、政府がとってきたそういう対策というものは、私は非常に手ぬるいと思うわけです。そういう点において、今後二法案だけでいける、そういうことではなくして、やはり私は政府自身がほんとうに反省をしなければいかぬと思うのです。ところが、田中総理以下その発言を聞いておりましても、非常に反省が足らぬと思うのです。いままでやってきましたことについて、いいと思っていらっしゃるのですか。
  213. 内田常雄

    内田国務大臣 詳しいことは申し述べませんけれども、昨年から本年にかけまして経済を取り巻く諸情勢が全く変わってきておると思いますので、私は、こういう変わった事態のもとにおきましては、政府がやはり思いを新たにいたしまして、近江さんが言われますように、物価対策については、これは総需要抑制を構成するところの財政金融の政策はもちろんのこと、したがってまた、来年度の予算の編成等につきましても、思いを新たにしてこの事態を乗り切るような施策を講ずべきであると、力を尽くしてまいりたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 内田長官と同じ考え方であります。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 内田長官は異例のこういう談話を出しておられるわけです。かけ込みは断固排除する、企業は値上げに自粛せよ、こういうような談話を発表されておられるわけでありますが、それでは政府はどういう姿勢でおるかということです。これは非常にいいことですよ。いいことだけれども政府としてできることは私は幾らでもあると思うのです。あなたは、これだけの談話を出して、そして企業に対してもそうした自覚を求めておられるわけでありますが、それでは公共料金の凍結というようなことについて、政府自身がやはり姿勢を示すべきじゃありませんか。この点についてはどうですか。
  216. 内田常雄

    内田国務大臣 経済企画庁は、経済政策の指導的地位にあるべきだというような私の良心から、昨晩ああいう談話を出しました。ぜひひとつ御支援をいただきたいと思います。  公共料金のことにつきましては、もうたびたび申しておりますように、一言で申せば、抑制的な態度をもって慎重に処理する、こういうことを述べておりますが、しかし、この機会に述べさせていただきますならば、公共料金には二つの面があると思います。一つは、公共料金は物価を構成する重要な要素でありますから、これは押えるべきであると考えることが一つでありますが、もう一つは、これは需要が旺盛である、総需要によって公共料金が上がってくる、いわゆるデマンドプルというものではなしに、コストが上がってくるために公共料金を上げざるを得ない。それをもし押え込んでおくということになりますと、公共料金によってささえられる公益事業というものに資源配分がなくなりまして、公益事業の崩壊につながる面がありますので、私はこの二つの問題の間にはさまって苦労をいたしておりますが、しかし考え方は冒頭に申したとおりであります。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたは公共料金は世論に聞くということもおっしゃっているわけですが、世論に聞かなくても、公共料金の問題については、これだけの物価の異常な高騰が続いておる、こういう中において、一つ一つ中身で、これはこうだから、こうだからという理由を言っていけば、企業だってまた同じようなことを言ってくるわけですよ。だからここは政府の姿勢のいかんにかかっておるわけです。あなたはそれを食いとめることのできる最高の立場にいらっしゃるわけでしょう、経企庁長官として。そういういままでと同じような、そういう変わらない答弁では納得できませんよ。具体的に米はこうするとか、国鉄はこうするとか、郵便料金はこうするとか、あなた自身が腹をきめた問題があるはずですよ。そういう言いわけを聞くために私は聞いておるのじゃない。その点もう一度……。
  218. 内田常雄

    内田国務大臣 おことばを返して恐縮でございますが、決して言いわけを申し述べているわけではなしに、私の責任と良心においてただいまのようなお答えをいたしておるわけでございます。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、先ほど私個別に申し上げたわけですが、当面公共料金の値上げがメジロ押しに予定されておるわけですが、その一つ一つについてあなた自身どう思うのですか。
  220. 内田常雄

    内田国務大臣 国鉄料金につきましては、長い間の国会の論議を経まして国鉄料金法が改正をされておるわけでございますが、その間の論議の過程におきまして、これも直ちに引き上げることをせずに、明年の三月三十一日までは現状で参る、こういうことになっておるわけでございますので、いま私がこれを自分の力でくつがえすというわけにいくものではないと考えます。  また米につきましては、昨年生産者米価の大幅な引き上げ、それに対する財政の補給等をも考えまして、消費者米価の措置が先般決定せられたわけでありますが、これにつきましても直ちに引き上げることはしない。明年の四月一日から引き上げるということで財政措置が講じてあるわけであります。  その他、これとはやや趣を異にいたします交通関係などの公共料金の問題が起こっておりますことは御承知のとおりでございますが、私が述べましたような態度で私は善処してまいりたいと思います。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 とにかくいまの公共料金はほとんど軒並みにそういう状態になってきておるわけです。こういう点、経企庁長官としては、これだけの談話も出しておられるわけでありますし、全力をあげてこの公共料金の引き上げについては阻止をしてもらいたいと思うのです。  それから、最近の石油の問題はあらゆる点に非常にその影響が出てきておるわけですが、最近のわが国の外貨準備高も、大蔵省の予想を相当上回って、急激な減少を示しておるということを聞いておるわけですが、その間の実態についてお聞きしたいと思います。
  222. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいま御指摘がございましたように、最近の国際収支は一ころとだいぶ趣が変わってまいりまして、毎月赤字を示してきております。それから、特に十一月におきましては、総合収支におきまして約十七億ドルという大きな赤字が出ましたために、特にこれからの先行きを各般の方々から御注意も受け、また御心配もいただいておる次第でございます。しかしながら、この内訳をつぶさに点検いたしますと、まず一つは、長期資本収支で約十億八千万ドルという大きい赤字が出ております。それから誤差、脱漏であるとか短期資本収支であるとか、この内訳はまだ分類されておりませんが、約五億九千万ドルという大きい赤字が出ております。こういったことで、本来の国際収支の柱である貿易収支並びに貿易外収支を足しましたいわゆる経常収支におきましては、まださほど心配する段階には立ち至っておらないと思いますけれども、このような資本収支あるいは誤差、脱漏であるとか、そういった投機的な動きを反映する項目に赤字が出てまいりましたので、私どもといたしましては、去る十一月の当初から順次為替管理の見直しを行なってまいりまして、これはけさほどの新聞で発表されておりますので御案内のこととは存じますが、土曜日にも五つの新たな為替管理を発表いたしまして、これを来週の月曜、すなわち明日から適用することといたしたい、このように考えております。  ただし、この内容でございますが、従来わが国が国際収支の黒字を重ねてまいりましたときには、わが国に不当に外貨が流れ込んでくることのないように、入ってくるほうにはきびし過ぎるほどきびしい為替管理をいたしておりました。それがだんだん事情がこうなってまいりましたので、適正なところまで順次ゆるめてもいいのではなかろうか、このような考えでやっておりますし、また、国内から国外へ出てまいりますほうについては、あるいは投機的な目的を持った金の出方があるかもしれないということで、そのような可能性のあるところにつきましてはこれをチェックするような制度をとる、このようにして為替管理をもう一回見直しておるところでございます。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 外貨準備も来年は大体百億ドルの大台割れを予想されるということをよく聞くわけでありますが、このまま落ち込んでいきますと、対外政策におきましても非常に影響を及ぼすことになるわけであります。国際収支の政策を考える上で、この外貨準備の適正水準というのはどのぐらいであるとお考えなんですか。
  224. 松川道哉

    ○松川政府委員 外貨準備の額というのは、いろいろな意味でその国の対外的な経済の力を示す一つのものさしとして見られております。したがいまして、私どもとしてもこれが急激に減るのは好ましくないという基本的な考えを持っております。  ところで、御質問の点でございますが、外貨準備が幾らでいいのかというのは、いろいろ議論の分かれるところでございます。たとえば、ただいま二十カ国蔵相委員会で、世界じゅうの外貨準備というのがどれだけあったらいいのか、こういうことも議論されておりますが、ある人は現在の外貨準備、専門用語で流動性と呼んでおりますが、世界じゅうの流動性が過剰であると言い、ある者は適正なんだと言っております。また、これは先生御案内と思いますが、かつて、外貨準備というのは御婦人方の洋服の数と同じように、あればあるほどいいのだということもいわれております。私ども考えますのに、この外貨準備というのは、わが国の貿易その他の対外活動が適正に運営される、それの妨げにならないほどの大きさがどうしてもなければならない、このように考えております。しかし、この適正な大きさというのも、二十年前、三十年前のころと現在と比べますと、あるいは世界じゅうの信用供与の手段が多様化されてまいりましたし、そのようなこともございまして、実額的に前と同じほどどうしてもなければいけない、こういうことでもなくなってきております。そのような意味で、私ども外貨準備が幾らがいいのか、これは不当に減るようなことがあって国民に不安感を与えてはいけないとは思っておりますが、ただ、これにあまりとらわれて、これが幾らでなければいけない、そういうことは考えておらないのでございます。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんから次へ進みたいと思いますが、この石油供給の問題でありますが、アラブ諸国のこうしたカット、それからメジャーによる原油の供給削減というものが非常にきびしいものになってきておる。この供給実態ということにつきまして中曽根大臣はどのようにいま判断されておりますか。
  226. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 きのうの新聞でありましたか、十一月の着荷は通関ベースがたしか二千三百万キロリットルであって、対前年五・四%増という記事であって、それほど減ってないじゃないかという記事の趣であったように思いますが、昨年度は大体日本の経済が不況期であって、一月から十月ぐらいまでは非常に経済が低迷しておったときです。したがって、輸入量もわりあいに少なかったのです。ことしわれわれが期待していた数量に対して、じゃ十一月はどの程度であるかといいますと、たしか期待していた数量が二千六百万キロリットルぐらいでありまして、一四・四%減ということになるのであります。そういう点から見ますと、その新聞記事自体が甘い観測を持っておるといわざるを得ません。  そこで、この下期について全般を見通しますと、先般来申し上げましたように、初めは二八%減程度であると思っておりましたが、二〇%減程度を覚悟しなければならぬという状態になりまして、一億三千四百万キロリットル程度であると思ったのが、入荷が一億二千八百万キロリットル程度になる、そういうような計算をもとにしていろいろな政策を立てております。
  227. 近江巳記夫

    ○近江委員 イランであるとかインドネシアから出るそういう原油を、従来日本に入っておった分をオランダなりアメリカへ回しておるというようなことがいわれておるわけですが、ミシガン大学のサクソンハウス教授という人も、両院の合同経済委員会の聴聞会でそういうメジャーのあり方について非常に批判をしておるわけでありますが、いままで民間だけにまかしておるわけでありますけれども、今後供給というこの問題が最大の問題になってきておるわけでありますし、政府としては、メジャー等に対する態度といろものは今後従来と同じ姿勢でいかれるわけですか。
  228. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本が入れている油の中で約五一%がイランとインドネシアから来ております。APECから来ているのが約四〇%。でありますから、イラン、インドネシアというものはいかに貢献してくれているかということがわかるわけであります。それらは大部分はメジャーズを経由して来ているわけであります。  それで、私、先般東京におりまするメジャーの社長ないし支店長を呼びまして、一面において協力を感謝するとともに、また一面において日本に対する配当を不当に減らさないよろに、インドネシアやイランから来ている分をほかへ回さないように、そういうことを強く要請いたしました。また、先般キッシンジャー国務長官が見えられましたときに、これは総理大臣、外務大臣、私、三人とも同じようにメジャーズに対してアメリカ政府としても注意を喚起してほしい、そういう要請をいたしまして、キッシンジャー国務長官は帰ってからメジャーズを集めてそういう趣旨のことをやられたという報告を受けております。
  229. 近江巳記夫

    ○近江委員 このメジャーズの大半はアメリカであるわけですが、御承知のように、ユダヤ系が握っておるということもあるわけであります。非常なそういう影響もあるわけでありますし、今後アメリカ等との摩擦ということもいろいろな点で日本の中東政策等から派生してくることも考えられるわけでありますが、こういうことにつきまして、外務大臣としてはどのようにお考えでございますか。
  230. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカとの間には、わが国がいま当面しておりまする状況につきまして十分な理解を求めておかなければならぬわけでございまして、そういう努力をいたしてまいりまして、アメリカ側は、日本側の事情について相当深い理解を持っておると私は思います。ただ、わが国の中東政策につきましては、アメリカといたしまして賛成いたしかねるという態度を表明いたしておりますことは御案内のとおりでございますけれども、だからといって、わが国と資源問題につきましての協力あるいは情報の交換等につきまして支障を来たすようなことはないと考えております。
  231. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 メジャーズがユダヤ系であるという御発言でございましたが、そういう事実はないのであります。この点は非常に大きな誤解が日本にございますが、八大メジャーズというのがございます。この入大メジャーズの中で、われわれが調べたところでは、ユダヤ人が重役をやっておるのは二人だけでございます。そのうちの一人はユダヤ人ではあるけれども、そういう宗教的こだわりのほとんどない人である。もう一人は、ソ連なんかへ行って勇敢な商売をやっているので、これもまた宗教とはほとんど関係ない、そういう状態で、むしろメジャーズたちはアラブへ行って石油を掘っているわけですから、アラブの感情を非常に重要視して、そういうような誤解を受けないように非常に注意をしておるわけです。これが国有化されるとか、あるいは資本保有率を変化させられることを非常におそれておりますから、むしろメジャーズは親アラブの立場をとっております。アメリカ政府立場とメジャーズの立場は別の立場である、こういう認識をしておく必要があると思います。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 中曽根さんおっしゃったからなんですけれども、直接重役が入っているからどうだ、しかしいずれにしても、経済界における根強いそれだけの力があるわけですから、影響力という点でそこは考えてもらいたい。  それから時間の関係で進みますが、今後このように石油がカットされていく、当分もとに戻るような、そういう楽観できない状態にあることはもう御承知のとおりでありますが、総合エネルギーから考えまして、今後そういうカットされていく面におきまして、エネルギーのバランスという点において、石炭であるとか水力であるとか原子力であるとか、いろいろあるわけでございますが、大臣としては、そのバランスについてどのようにお考えですか。
  233. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油にやや偏しておりますこの状態をほかのエネルギーに逐次転換していく必要があると思います。たとえば電気にいたしましても石油火力に非常にたより過ぎておりましたが、これは水力をもう一回見直す、水力の潜在力がまだかなりあるようであります。あるいはさらに原子力を思い切ってここで長足に前進させる、あるいはそのほかのエネルギー開発、地熱であるとか太陽熱であるとか、そういう面について格段の力をいたす必要があると思いますし、石炭についても見直す必要があるように思います。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままで第一次緊急対策を実施されたわけでありますが、これの反省と、それから第二次の緊急対策についてどういうように考えておられるか。この点についてお伺いしたいと思います。
  235. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第一次とおっしゃる意味は十一月十六日以来の対策であると思いますが、これは目下進行中でありまして、まだ総需要抑制において努力が足りないし、成果を見ていない。通産省はあした産業構造審議会答申が得られる予定で、これで二千億から三千億円程度の削減をやろうと思って期待をしておるところであります。公共事業あるいはそのほかの一般消費需要削減等についても、たとえば年末ボーナスがどの程度どういうふうに吸収されたかという点についてもまだトレースはできておりませんが、そういう点がまだ非常に至らない部面であると思います。それら石油を中心にする諸般の対策もわれわれは全力を尽くしてやりましたけれども、タクシーの皆さんやその他に御迷惑をおかけいたしまして混乱が起きましたことは汗顔の至りであります。しかし、最近ようやく農林漁業及び運輸関係とは調整がうまくとれまして、次第に落ちつきを見せております。  それで第二次となりますと、この法案が成立いたしまして法律的根拠を背景に持ちましてやる段階になりますし、それから石油削減はさらにきびしくなるということは当然予想されます。そうなりますと、石油削減から、企業によりましては操業短縮ということが出てまいります。操業短縮から生産減が出てくる。そして需要がもとのままであるならば物価騰貴が連発してくる。それをいかにして防ぐかということが第二期の一番大きな仕事で、これはもう通産省のみならず、全内閣が打って一丸となって取り組まなければならぬ問題であるように思います。そういう中にあって、中小企業、農漁業及び一般大衆の生活をいかに見るか、そういう点において内閣の信が問われる重大な場面であると覚悟しております。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから一月からさらに電力のカットをするということになっておるわけですが、この具体的な構想については、どのようにお考えですか。
  237. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油需給状況を見まして、また電気の節減等もいままでの経験を見まして、いまの情勢でまいりますとやはり一月以降二〇%程度節減していただかなければならないのではないかとおそれております。そこで、いまいろいろ事務的にどの部面にどういうペースでやっていただくか、目下検討させておりまして、至急成案を得るようにしておるところでございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 一般家庭の使用規制等については非常にこれは影響が大きいわけでありますが、こういう問題についてはどのようにお考えですか。
  239. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の石油の使用量を見ますと、電気の使用量も大体同じようなものでございますけれども産業が非常に多い。七対三ぐらいの比率になっておる。したがって、石油を節減するという場合には産業カットをやるほうが有効であるわけです。外国は逆でありまして、民間消費のほうが多くて産業が少ない。したがって、民間消費削減になたをふるうという形で外国は出てきております。日本はまだそう表には出ておりませんが、われわれがやりました大口に対する一〇%の電力規制、三千キロワット以上の約二千七百の工場、事業場に対してやっておりますけれども、これは始めました十日間ぐらいの集計が来ていますが、かなり成績がよくて、一八%ぐらいのカットをやってもらっておるところもあります。そういう点からいたしまして、一月以降も産業カットを中心にしてやっていく、そしていままでは三千キロ以上の事業体でありましたが、この基準をもっと下げざるを得ないであろう、しかし零細企業とか中小企業については配慮しなければならぬであろう、それでも間に合わぬという場合には、家庭の電力も若干がまんしていただかなければならぬことも出てくる、しかし病院であるとかあるいは公共事業、輸送であるとか、そういうような部面については、これは絶対確保していかなければならぬ、こう思っておるわけであります。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、一般家庭に影響も出てくる。これは線も全部つながっておるわけですし、そうしますと結局停電する、こういうことですか。
  241. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 非常に配線のぐあいは複雑でございまして、たとえば交通信号であるとか、病院の赤ちゃんの保育器であるとか、あるいは運転中のエレベーターであるとか、あるいは自動開閉ドアーであるとか、あるいはスーパーの金銭登録機、金銭計算機、ああいうものみんな電気で動いているのが多いわけです。また、冷蔵庫その他の電気使用もあります。そういうところもよく考えて、そしてそういう確保しなければならぬところは確保しなければならぬ。別の配線で独立に配線されていない部門についてはそういう手配をしなければならない。そういう点はいましさいに調べておりまして、一部若干手配を始めさせておるのもあるわけであります。そういうふうにしながら、一般の消費需要と必要欠くべからざる需要とを分けて、必要欠くべからざるものは絶対確保していく、そういう方針で進みたいと思います。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう大幅な制限ということになってきますと、当然いままでも産業構造の転換ということがいわれておるわけでありますが、こういう時期においていまこそ大胆にやらなければならぬときじゃないかと思います。非常に抽象的な答弁ばかりが出ておるわけですが、産業構造の転換につきまして、大臣として具体的な構想をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  243. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは前にも申し上げましたように、省資源、知識集約型という方向に転換していかなければならぬと思っております。ただ、やはり一億の人間を食わしていくためには、重化学工業の基礎なくしては食わしていけないのでありまして、自動車も要り、電気冷蔵庫も要り、テレビも要る。それには鉄鋼もやはり要る。その基礎である油もまた要る。そういうわけでありますから、重化学工業というものを全然無視するわけにはいかない。そういうような部面の上に立ちながら、いまのような産業構造の転換を一歩一歩促進していく。私が先般申し上げましたように、経済成長率を前よりも落として、安定成長にしながら省資源型にしていくという点について、石油の輸入量を限定するということは非常に有効ではないかと思うわけです。いままでは一九六〇年代の延長で、安い石油が無限大に中近東から入ってまいりましたために、石油乱費の上に日本の経済構造ができておりましたけれども、これが年間二億五千万トンとか三億トンとか、そういうふうに限定されますと、それで知恵がわいてきて、省資源ということを自動的に行なわざるを得ない。また、経済成長も八%とか八・五%とかで安定していくということがあるわけです。そういう点でこれからの経済運営については、来年から始めますけれども石油の輸入量をどの程度にするかということを基礎にして、そういう政策的意図を加えた予算編成なり経済構造の転換をやっていきたい、こう思うわけであります。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 この両法案で、今後政府としてはそうした政府の意図するところがかなり実現できるということをいっているわけですが、しかし実際に両法案が通った場合、たとえば機構なり体制というものが一体どうなっていくかということです。たとえば標準価格のきめ方一つにしても、特定標準価格にしても原価計算ということが入ってくるわけですね。そうしますと、これは公認会計士なりがやはり要るわけです。通産省に一人でもいますか。経企庁はどうですか。
  245. 内田常雄

    内田国務大臣 これは政府全体の機構にかかわることでございますが、やたらに部局をふやしたり人間をふやすということはしない方向にございますので、政府全体としてまとまってこれに対応できますように、先ほども中曽根通産大臣から申されましたように、国民生活安定緊急対策本部というようなものを設けまして、おそらく私どもは副本部長を仰せつけられることになると思いますけれども、そういうこの目的遂行のための体制を、現在の各省が分かれ分かれになったままということではなしに、集約的につくってまいります。  それから職員なんかも、いままでの縦割りのままの職員の仕組みにしないで、これも集約的に勤務を仰せつけるとか、あるいはこれの企画室に集めるとかいうようなこともいたしまして、定員を特にふやすということはいたしません。それで何とかやっていかなければならないと思います。  また、企業会計原則とか財務諸表準則とかいうものに対する知識が当然必要になってまいりますが、経済企画庁には一人もそういう公認会計士を職員にしたものはございませんけれども、これは大蔵省通産省もあるいは農林省も、いろいろな経済関係の官庁におけるそういう知識のある者を集めましたり、必要によりましては、それらの民間の公認会計士というような人にも私どものほうのお手伝いをさせしして標準価格をつくる。まあ標準価格をつくるそのことについては必ずしも公認会計士は要りませんけれども、事態がだんだん進みまして、特定標準価格というようなものをやりますときになりますと、おっしゃるような特殊の専門家も必要になりましょうから、そういうことに対応をいたしてまいりたいと思います。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 各省からそのように応援を仰ぐということも言っておりますが、それが一番集中していくのは通産省であると思うのですが、これは通産省にもおるのですか。
  247. 山形栄治

    ○山形政府委員 現在、公認会計士を役所として職種として雇用していることはございません。ただ、職員の中に若干名公認会計士の資格を持っておる者もございますので、今後それらの人間は極力活用いたしたいと思うと同時に、いま企画庁長官からのお話もございましたように、民間のそれらの機能も必要に応じましてわれわれとしては活用して、事態に対応をいたしたいと思っておるわけでございます。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは専門家に言わせますと、一種類でも十名の公認会計士が要るというのですね。そうしますと、結局企業から出てきた原価計算というものは、そのままうのみということになるわけですよ。だから、そういうような体制におきましても、実際に国民立場に立ったそういう設定ができるかということです。結局は企業の言うがままに高い価格で一応設定していく、これであれば私は何にもならぬと思うのです。こういう点、実際に法律ができてもこれが施行できるかという問題です。また、たとえば石油需給適正化法案も、資源エネルギー庁では二十四名でやっておるわけでありますが、石油パイプライン事業法、こういう業務だけで実際上もう手一ぱいなんですね。その上にまたこういう法律がかかってくる。こうなってきますと、本省では最低六十名はなければ、とてもそんなものはできない。一つ法案でもこれだけの人員が要るわけです。現実に第一次削減、第二次削減あるいは総定員法という問題もあるわけです。こういう体制も整えずして法律ばかりを通そうというのは問題があると思うのです。行管庁長官はどう思いますか。
  249. 山形栄治

    ○山形政府委員 通産省の実情をちょっと申し上げますと、御指摘のとおり、ただいま石油部関係が定員で、特別会計も入れまして三十七名でございますが、事態の深刻化に即応いたしまして、明日からこれをさしあたり五十五名に増員をいたすわけでございます。これは庁内各部より十八名、それから省内各局から十一名、合計二十九名動員いたしまして、エネルギー庁の中に一室を設けまして、そこでさしあたりの体制を整えておりますが、今後必要に応じまして省内でより一そうの充実をはかる予定でございます。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは地方通産局なりあるいはまた地方自治体への委任ということにもなってくるわけですが、ただ単なる通産省だけの問題じゃないわけですね。特にこの両法案の施行ということになってきますと、これはやはり膨大な機構の改革ということになってくるわけです。そういう点、政府の対応策というものが非常に足らないように私は思うわけです。そういう点は十分今後考える必要があると思います。  それから特定石油販売業者、これは石油法案のほうでありますが、最近商社が非常に入り込んできておるわけでありますけれども、いままで十三社ということになっておるわけでありますが、こういう問題についてはどのように考えておりますか。
  251. 山形栄治

    ○山形政府委員 いわゆる元売りと申しますのは十三社でございますが、その他精製業者で、元売り以外で直販しておるものが八社あるわけであります。それから商社で輸入を行なっておるものが十四社あるわけでございますが、この商社のうち四社が元売りと直結しておりませんで、別途精製業者等に販売いたしておるものでございます。以上、合計しますと二十五社に相なるわけでございますが、今回の法案の対象といたしましては、元売りだけでございませんで、全部の二十五社を対象にして、日本に入ってくる油は全量正確に把握する予定にいたしております。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんから終わりますが、商社の買い占めなり売り惜しみ、そういう行為が非常に社会的にも問題になってきたわけでありますし、十三社という点に通産省は重点を置いておるわけでありますが、その点、通産省としても今後十分な監督をいただきたいと思うのです。この点、大臣から最後に……。
  253. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御趣旨に沿って適正な監督をいたします。
  254. 濱野清吾

    ○濱野委員長 島本虎三君。
  255. 島本虎三

    島本委員 田中内閣では、石油危機に直面した十一月の十六日でありますが、石油緊急対策要綱を閣議決定した、そしてその中には総需要抑制、公共投資抑制、これらの政府方針を出した、こういうようなことを聞き及んでいるのであります。その後何か態度の変更がありましたら、またこれに加えて何か決定がございましたならば、この際お伺いいたしておきたいと思います。これは経済企画庁長官にお伺いいたします。
  256. 内田常雄

    内田国務大臣 先月十六日の決定以後、私どもはあの姿勢に沿いまして具体的な措置を講じてまいる段階にございます。たとえば総需要抑制にいたしましても、いままでやってまったことのほかに、当面、明年の予算編成のあり方につきまして、この閣議決定の方向を具体化するような作業を進めておりますことは御承知のとおりでございますし、金融政策などにつきましても、質的、量的両方面から思い切った総需要対策をいたすことになっておりますことは、おおむね島本さん御承知のとおりでございます。  また、通産省などにおきましても、具体化の一歩として、灯油でありますとか、あるいはまたLPガスなどにつきまして、法律実施に先立って一つ標準価格、指導価格のようなものを先につくっていただいて、そして現実の対策に踏み出しておるというようなことを申し上げ得ると思います。  公共投資につきましては、従来御承知のとおり、政府決定で届け出をさせてまいっております建築などのほかに、契約の繰り延べの問題、これはなかなか微妙な問題がございますが、契約の繰り延べの分を全部切ってしまったというわけのものではございませんけれども、これまでやってまいりましたものを一そう実効あらしめるための具体的な措置をとっておりますことも、島本さんおおむね御承知のとおりでございます。
  257. 島本虎三

    島本委員 そういうようにして、石油危機に直面していわば石油緊急対策要綱はきまりました。いわゆる石油法案政府もいよいよこれを提案していま審議中であります。電力石油消費規制考えておられるようであります。通産大臣も午前中の答弁で、石油電力消費民間設備投資抑制する方針であるというように発表されたようでございます。公共投資、これも伸び率をゼロにしてはどうかと政府も自民党の首脳も考えられておるということも伺っております。  しかるに、この石油をばく大に使う資源多消費型の苫小牧東部開発計画、いまこれを強引に推し進めようとしていることは、何か行政の一貫性を欠くのじゃないか、こういうように思うわけであります。どうもおかしい。他面これを抑制しようとする方針を出しながら、他面またこれを推し進めようとするこのやり方、行政に一貫性がないではありませんか。  環境庁長官、苫小牧東部開発の関係十一省庁会議で、十二月の十日に、昭和五十三年次の工業開発規模での環境アセスメントレポート、これを審議して、環境庁も条件つきで同意をいたしました。では、これは国のマスタープランの工業開発最終規模について環境アセスメントをしましたか。この点、簡潔にお答え願いたいと思います。
  258. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは島本さんよく御案内のように、何か北海道開発庁で苫小牧の東部の工業開発地区の開発大構想をもってしたものですから、それが非常に大きな関心になっておるようでございますが、まあそれはそれとして、とにかく苫小牧の東部工業開発の計画は計画として立てる必要があるということで、五十三年度を目標に工業開発の基本計画を立てておる。それによりますと、六十年構想で打ち出されておるようなものは、それはそれとして、とにかく当面五十三年までの開発はこういう程度でいいじゃないか。そのことで、環境汚染の点から環境庁としてもしさいに検討して、出されておる環境アセスメントを承認した。しかし、今後もさらに引き続きその調査をして、補完、充実の方途を講じて、そしてこの事態の成り行きを見て五十年時点でもう一ぺん見直してみて、大きなものが開発余地ができるかどうか、そういうことになにしておるようでございますから、五十三年の開発計画は、それは総需要抑制のこういうふうな事態の前におりますから、どういうふうに進展してまいりますかわかりませんけれども、かりに許されてそれが順調に進みましても、環境上著しい御心配になるようなことは絶対にさせてはならぬというのが環境庁の考えでございます。
  259. 島本虎三

    島本委員 大臣、それはそれとしてひとまずやるというこの姿勢が、いままでの公害列島日本をつくり上げてしまった原動力なんです。それはそれとしてまず着工する、これがだめだったんです。これは三十九年、この新産都市のそれによって、水島、大分、これがコンビナートとして発足いたしました。同じ年次に工業整備特別地域として今度指定された鹿島。過去の臨海工業地帯は、工業開発の最終規模をはっきりさせないで港湾に着工した。そしてなしくずしに生産規模を拡大していったんです。そしてこれが公害の発生という結果を招いているというのが現状なんです。いま、それはそれとしてます着工するということは、過去のことを再びここで繰り返すことになるから、これはまことに重大なことであります。  環境アセスメントというのは、本来最終規模の段階でしなければならないのが原則なんです。苫小牧の場合は、六十年代の最終規模の計画がある。それなのに五十三年次でアセスメントを出してしまってある。最終は六十年代だ。五十三年次にもうすでにアセスメントを出している。五十四年以後については全く公害防止の見通しがないということでしょう。この点はどのような観点でございますか。
  260. 保利茂

    ○保利国務大臣 六十年構想の開発構想というのを実現しようという具体的ななにはないんでございましょう。ただそういう絵をかかれておった。それはとても取り上げられるものではなかろう。そこで、五十三年までの中期計画を立てて、そしてさらに開発の余地が出てくるか出てこないか。  それからもう一点は、私が島本さんにぜひお考えいただきたいと思いますのは、先ほどあげられました水島その他の環境、そういう事例が公害諸立法を生んだもとでございましょう。そして環境庁という行政機関もできたもとでございましょう。そういう状態を繰り返していったんでは列島の汚染は著しくなるから、ここでぎゅっと歯どめを締めなければならぬというので、国会の皆さん方で環境問題、公害問題を取り上げていただいて今日の状態になっておりますから、したがって、これまでがそうであったから、これからも野放しでどんどん開発あるいは発展をさしていくというようなものでは、私は環境庁の使命は達せられない、そういうふうに思っております。
  261. 島本虎三

    島本委員 ちょっと聞きますと、過去のこの大分や水島、鹿島、こういうような例によって環境庁はできた、環境庁ができたというのは、過去の公害に対する免罪符である、こういうふうに受け取られるような発言ではないでしょうね、これは。そうだったらとんでもない。逆行です。じゃ結局六十年のその計画はないということになりますね。
  262. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは環境庁で開発計画を立てているものじゃございません。したがって、港湾であるとか、あるいは通商産業省の方々がどういう考えを持っておられるか別でございますけれども、環境庁の姿勢を問われますと、右申しましたようなことでお答えせざるを得ないということでございます。
  263. 島本虎三

    島本委員 開発庁長官、いまの答弁と関連して、六十年代までの計画はできておらない、こういうようなことに承りましたが、そのように受け取ってよろしいですか。
  264. 町村金五

    ○町村国務大臣 島本議員も御承知のとおり、いろいろ案がございます。六十年までの一応の案というものは、これはございます。やはりあの地域全体の発展を考えてまいります場合に、そういうものはございますけれども、しかし当面、現実に政府が今度取り上げることにいたしましたのは、五十三年度までのものである、かように御承知をいただきたいのでございます。
  265. 島本虎三

    島本委員 そうなりますと、六十年までの案は一応ある、アセスメントは五十三年までだ。そうするならば、五十三年以降はアセスメントはどうしてつけるんですか。環境庁でしょうけれども、これをきちっとやらないから過去のような例になったということは、皆さん御存じのとおりでしょう。いまできているのは五十三年度までの環境アセスメントレポートでしょう。そうなると、それまでできている、しかし六十年までの計画はあるんだ、これだったら、過去と同じようなことをまた北海道は繰り返すということになるじゃありませんか。これは少しおかしいと思います。
  266. 町村金五

    ○町村国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、やはりこれからの開発を進めていきまする場合には、ただいま御指摘もございましたように、完全な環境アセスメントというものを実施をいたしまして、そして将来にわたってのしっかりした展望の上に立ってこれからの開発を進めていかなければならぬ、かような考えに立っておるわけでございますので、したがって、御指摘になりまするような、たとえば五十四年以降は一体どうなるんだという問題につきましては、私どもは当然そういった段階においてさらに環境アセスメントを行ないまして、その結果に基づいて、今後の開発をいかに進めてまいるかということは、その段階で十分検討してしかるべきものである。したがって、ただいま御指摘にございましたように、五十四年以降は同じような従来の形式の開発がそのまま行なわれるというふうにはひとつ御理解をいただきたくないのでございます。
  267. 島本虎三

    島本委員 具体的には、苫小牧の東部開発予定地と現在の苫小牧臨海工業地帯、この間には人口五千四百人を擁する勇払という町がございます。これは、前の知事をなすっておられましたから、町村長官は一番よく御存じだと思います。これは鉄鋼予定地のすぐ西側にある町であります。この勇払の町は二つの臨海工業地帯に完全にはさまれてしまっているわけでしょう。これは当然いままでと同じような状態では公害の町になることは必然的なんです。したがって、住民も巨大開発に反対しているというのが現状であります。集団移転の計画を初め持ったでしょう、皆さんが考えられた当時。ところが今度の場合は、勇払の町はそのまま残すという計画に変更されたわけです。五千四百人の町の隣に粗鋼年産二千万トンの大製鉄所が立地できるかどうか、これはもうすでにはっきりわかっていることであります。これに対してはっきりどういう態度をお持ちなのか。これは重大なんです。  と申しますのは、依然としてこういうような鉄鋼立地を考えるということになりますと、大分市では、三佐、家島地区、ちょうど両方のコンビナートにはさまれて、もう公害でどうにも住めなくなって裁判ざたにまでなっていましょう。四日市の塩浜、磯津地区、これも同様でしょう。同じようなことにまたこの町がなるじゃありませんか。そういうようなことで、いまの鉄鋼の立地に対しましてはどういうふうにお考えなのか。これについて長官にお伺いいたします。
  268. 保利茂

    ○保利国務大臣 現在の苫小牧工業地帯、そこから来ます汚染でございますか、一体どこまで汚染源を削減していくことができるか。御案内のように、すみやかに公害防止の策定案をつくっていただいて、そしてこれを五十二、三年までに実施をして、そして現在の勇払であるとか沼ノ端の今後残っていくべき市街地の環境保全をどう守っていくかということを第一に考えなければならぬ。それへ持ってきて、今度は東部工業開発地区からもし環境汚染の状態が出てまいりますと、はさみ打ちになって、勇払、沼ノ端の両市街地はたいへんなことになる。そこで、五十三年までにおきましても、両市街地と東部工業開発地区の間には広い緑地帯もつくる、そして東部からの汚染を免れるようにする。同時に、現在の苫小牧地区の汚染削減については、防止計画を来年の夏ぐらいまでにはどうしても策定をして、そして住民の生活不安をなからしめるような措置をしなければならぬ。そういう時点に立って、さらにお話のように鉄鋼その他の開発余地が生ずるのか生じないのか。   〔濱野委員長退席、塩川委員長代理着席〕 それは要するに、六十年構想というものにとらわれますと、既定のこととお考えになられるのはごもっともだと思いますけれども、そうでなしに、その時点でそういうことをやってみて、そして環境状況を見合わしてもう一ぺんその時点で見直してみよう。そういうふうになりますためにはたいへんだと思うのですけれどもね。
  269. 島本虎三

    島本委員 事務の人、来ていると思いますが、鉄鋼の立地は物理的に無理だ、こういうようなことをいわれております。環境アセスメントも、そのために六十年度までは出せない、五十三年度で打ち切った。これは鉄鋼を除外してある。これは物理的に不可能に近いんだ、こういうようなことがいわれているのですが、そういうようなことなんですか。そうじゃないのですか。どうもこの点をはっきりさせたほうがいい。
  270. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 御答弁申し上げます。  ただいま先生御指摘の中で、六十年代を全然アセスメントをやっていないじゃないかということでございますが、この点、私どもアセスメントにはいろいろな段階があると思っております。この六月までは、どちらかと申しますと六十年代構想ということで進んでおりましたので、六十年代のいわば荒い骨組みにつきましてのアセスメントはいたしております。これは先生御承知のように、二酸化硫黄とかあるいは二酸化窒素につきまして、それぞれ許容される総量を推定いたしておるわけでございます。いま何にもやっていない、こういうわけではございません。ただ、具体的なアセスメントとしましては、五十三年を目標とするのが具体的な開発計画でございますので、それに全力をあげてアセスメントの審査をやってまいったわけでございます。五十四年以後どうかということは、実はこれは全く白紙のところでしたらできるわけでございますが、特に現苫小牧地区からの影響がございますので、その点も考慮してその後考えていきたい。  鉄鋼の点でございますが、鉄鋼につきましては、私どもは前の段階では、特に六十年代を目標にしておりましたので留保いたしておりますが、今回は五十三年でございまして、全く入っておりませんから、留保とかなんとかということは言っておりません。ただ、具体的に勇払、沼ノ端というところは立ちのきをしないということでございますれば、現在の防止技術の水準等からいたしますと非常に困難であると思っております。
  271. 島本虎三

    島本委員 手続上にも問題があるのです。なぜ、こういうような時世の中で、総需要抑制とか公共投資抑制政府方針としているこの中で、また、今後石油電力、こういうものの多消費型の民間設備投資抑制するんだというような方針の中で、この巨大コンビナートだけ急ぐのか。まことに手続も無視をしてやっている。これはちょっとおかしい。苫小牧市は、市長の諮問機関として北海道大学の井上力太教授を会長とする公害対策審議会を持っている。北海道にも公害対策審議会があるわけです。十二月十日の国の十一省庁連絡会議の前に、苫小牧東部の環境アセスメント、この審議会答申を得ていますか、いませんか。この点をお答え願います。
  272. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いまの審議会答申は、その前には受けておりません。私ども聞いている範囲では受けておりません。
  273. 島本虎三

    島本委員 どうもこれはおかしいじゃありませんか。審議会答申もないのにきめちまって、これはもうだんだんと中央のほうに持ってきている。これは完全にアセスメントをやるといいながら無視されているのですよ、長官。なぜこういうふうにこの時代に急がなければならないのですか。これこそ逆行ですよ。とんでもないことです。地元の公害対策審議会、これを素通りして国のほうに出てしまう。順序はまさにあべこべですよ。市の議会の議決が十一月十七日、それから苫小牧の地方港湾審議会の東部開発計画の決定が十一月二十一日、北海道の生活環境部が環境庁ヘアセスメントレポート、案を持ってきたのは十一月三十日、どうなんですか、これは。こういうふうにしてまでも巨大開発を急ぐ。これはやり方がおかしいんです。アセスメントの報告書もない、公害防止の見通しもないときに、地元は計画をきめて、そしてもうすでにこっちに持ってきている。環境庁、これはおかしいと思いませんか。長官、思うか思わないかだけでいいですよ。どうせ、私はおかしいと思うんだから、あなたもおかしいと思うでしょう。
  274. 保利茂

    ○保利国務大臣 三木長官が出かけられる前にやられているようですから……。私は、いまの行政内部が欠陥がある手続を踏んだとは思いませんけれども、あなたのお話のようであれば、ちょっとおかしいなという感じがしないではない。だからと申しまして、環境庁が手落ちある処置をしておるとは私は思いません。
  275. 島本虎三

    島本委員 きめてないのにそのまま決定してしまうようなこの行き方はおかしいのです、長官。ですから、いろいろ言ったのは、他の法案等をおもんぱかってそういうふうに言っていますけれども、これはおかしい。  ついでに、すぐ通産省のほろにお伺いしたいのですが、この石油危機が表面化してきた十一月の十三日、通産省石油審議会は、十四社十六製油所、日産百十三・三万バーレルの石油精製設備を許可している。これは昭和五十二年度末までの操業開始分として許可されていると思うのです。そうすると、昭和五十二年度末までの操業開始分ですから、原油の輸入量が現在のような状態であり、見通しも十分立たない状態のもとでこれを許可したわけですから、当然これはもう五十二年までには終わらない。終わらないどころか、そのつもりが五十四年、五十五年まで延びるのじゃないか、こういうふうに思われるわけです。操業開始がおくれるといろことはもう当然考えられます。そうすると、まだ許可がおりていない苫小牧東部計画では、五十三年に三十万バーレルを建設するというわけであります。そういう計画なんでありますから、五十三年操業分として苫小牧の三十万バーレル、この許可の見通しについてお伺いしたいのであります。
  276. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般、石油審議会から答申がありまして、百十三万バーレル・パーデーの石油関係の施設の設置を認めてくれ、そういうことでありました。大体、日本経済の安定成長路線を考えてみましても、その程度の需要量はあるんです。それは五十一年、五十二年、これから三年後ぐらいの経済数量も考えてみて、超高度成長というような関係でなくして、現在考えている安定成長路線においてもその程度のものは要るわけです。特に発展途上国において石油化学等の輸出に対する要望はかなり強く出てきておりまして、そういう意味でその程度の数量は妥当であろうとわれわれも考えているところであります。  なお、苫小牧につきましては、油についてたしか三十万バーレル・パーデー、それからエチレンについて四十万キロリットルのものが計画としてあるようでありますが、これはまだ許可したものでも何でもございません。そういう計画であるということを認識しているということでございます。(島本委員「簡単ですか、むずかしいですか」と呼ぶ)これは、北海道開発庁あるいは環境庁、そういう関係及び地元の市等の意見をよく聞いてわれわれは考えたいと思います。
  277. 島本虎三

    島本委員 いろいろ考えられて答えられておるようでありますけれども、現在の状態の中では、決定した分でも先へ延びる見込みがある。まだ決定もしていないような、こういうような五十三年に三十万バーレル、これを建設することはむずかしいのか容易なのかということなんです。これはいろいろ含みのあるような答弁でありますから、私はむずかしいと思っているんですが、これは簡単でしょうか。
  278. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 問題は、そういう政治的な決定がいつ行なわれるか。地元の了承とか環境庁とかあるいは北海道開発庁とか、そういうようなものによって可能か不可能かはきまるので、施設をつくるということは、日本の力をもってすれば簡単に行なわれます。
  279. 島本虎三

    島本委員 いよいよむずかしいような状態になってきているときに、これは、石油精製の三十万バーレルをまず計画している。それと同時に、石油化学のエチレン換算で年間四十万トンという計画、これもそうすると当然暗礁に上がる。そうすると苫小牧東部の港湾計画は、五十三年に石油コンビナートをつくるから早くこれを決定する必要があるということで急いでいるわけでしょう。いろいろな情勢が動いているのに、またそれと反対のほうに動いているのに、この計画の決定だけを先に急ぐ、こういうようなことは、この原油不足のときに、新しい石油コンビナートをつくる必要が、続々とこういう巨大なものをつくる必要があるのか。それだけの原油は十分入ってくる確信があるのですかどうか。もっとも苫小牧東部の最終規模は、石油精製百万バーレル、石油化学百六十万トン、日本最大のものになっているわけです。こういうような点ではまことに現在の情勢にそぐわないのじゃないか、私どものほうとしてはこういうふうに思っているわけです。大臣、この点少し意見を聞かしていただきたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 北海道にはそういう石油関係あるいは石油化学関係の施設がないために、北海道の住民は非常に不便している部面があるわけです。たとえば今般、LPガスの値段につきましても、北海道は最高値段千五百円としました。内地は千三百円です。なぜ二百円高いかというと、あそこに石油関係の施設がないから、結局輸送費が非常に高くつく。そういう面で、やはりそういうような精製施設があるかないかということは、将来北海道の開発自体を考えてみると、また住民の生活の利便等を考えてみると、多少のものは持っておらぬというと北海道開発自体がむずかしい、私はそう思います。また、生活のためにも不便ではないかと思うのです。いままではがまんしておられたと思うのですけれども、こういうような時代になりますと、やはりある程度のワンセットのものは持っておって、そうして内地並みの生活水準に上がっていくように施設をつくっていくということも行政や政治としては必要ではないかと私は思います。
  281. 島本虎三

    島本委員 いわば多少ということばで、三十万バーレルくらいならば多少のうちに入るのでしょうかどうか。しかしながら、これは最終規模は、石油精製が百万バーレルですよ。石油化学が百六十万トンですよ。こういう巨大なものですよ。いままでなかったから、今度お返しする意味でこんなにたくさんやるのがいいというお考えですか。こんな巨大なものが何のために必要なんですか。こういう計画だということです。
  282. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 百万とか百六十万トンとかというのは、まだ未定の数字で、きまったものではありません。
  283. 島本虎三

    島本委員 じゃ、次から次と聞いてまいります。きまってないというならば、時間がありませんから進みますが、ちょっとそれは違いますよ。  運輸大臣、十三日の参議院の予算委員会で、あなたは、昭和五十三年の工業開発規模を基礎として苫小牧東部の港湾計画を立てますというふうに答弁していますが、そのとおりですか。
  284. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 そのとおりでございます。
  285. 島本虎三

    島本委員 では、これは非常に素朴な質問ですが、五十三年の石油精製は三十万バーレル、お聞きのとおりです。石油化学四十万トン、年間の生産規模で、世界のどこに苫小牧東部のようなばかでかい港湾を持っている例があるでしょうか。どこの国にありましょう。
  286. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 ちょっと技術的なことでもございますので、港湾局長からお答えさせます。
  287. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 港湾は港湾管理者が一応つくることになっておりまして、それを運輸大臣が審査をするという形になっております。苫小牧の場合には、現在三十万バーレルの工場に対しまして、いまの管理者の計画では二十万トンの船を入れるという形でございます。この二十万トンの船を入れるためには、現在のある地形上この船を安全に入れていくという点が一つ。それから実は鹿島のようなところにはいわゆる待避泊地といろのがございませんで、そういう点非常に不便をしている面がございますが、その待避泊地をやはり確保しなければいけないという点が一つ。また、荷役に支障のない静穏を求めていくという点を考えてまいりますと、あのような形の面が出てくる点があると思います。これにはいろいろな議論があると思いますけれども、船舶のほうの安全論等から申し上げますと、そのような御意見が出てまいりまして、港湾管理者の形はそのような線に沿ってきているのではないかというように考えております。
  288. 島本虎三

    島本委員 じゃ、いまある港は全部もう不安定な港だということになってしまうじゃありませんか。
  289. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 いまある日本の港は、全部そういうわけではございません。ただ、いままでつくってまいりました港、ややもしますと、どちらかといいますと経済的に非常に片寄ったといいますと語弊がありますけれども、エコノミックなものが多かったと思います。  それからもう一つは、やはり東京湾とか大阪湾あるいは瀬戸内海、こういうところは地形的に非常に何といいますか世界的にも珍らしい、海のほうから申し上げますとよいところでございまして、こういうところにつくる港というのは、比較的防波堤とかなんか少なくて済むわけでございます。湾外につくりました港では、たとえば鹿島湾であるとかあるいは前の苫小牧港、そういう点から考えまして……
  290. 島本虎三

    島本委員 そういうようなことを私どもの前であまり言わぬでくださいよ。それほど二十万トン台の船を入れるからあぶないというならば、何もそういうような巨大な防波堤もないシーバースをつくって、出光が現在の苫小牧の沖合いでちゃんとやっているじゃありませんか。それはあぶなくなくて、そして新しい東部開発のほうだけあぶない、どこにそんな根拠があるのですか。ばかを言うのも休み休み言ってください。二十万トン台の船だってもう着いてやっているじゃありませんか。冗談じゃないです。ここであまり時間をかけるのは欲しませんから、あとでこの答弁をしてもらいます。だめだよ。
  291. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 答弁いいですか。
  292. 島本虎三

    島本委員 あとでやらせますから。時間が惜しいのだ。  あわせて聞くのです。これも本年六月の港湾審議会にかげたときの苫小牧東部の港湾計画、マスタープランの昭和六十年代の工業開発の最終規模、つまり鉄鋼二千万トン立地を前提として世界に前例のないような巨大な掘り込み港を描いておったわけでしょう。これはあなたは認める。ところが、古い港湾計画といま出られてきた港湾計画を比較してみましたか。防波堤の大きさも掘り込み水路の位置も同じじゃありませんか。これは鉄鋼を前提としているのです。ただ三本の掘り込み水路を一本消しただけです。「……」としてあるだけです。それで昭和五十年以降の工事分、これは点線にしてあるから表面上は小さくしか見えない。  それでは具体的に聞きますけれども、防波堤計画は、六月当時の計画と比べて大きさとこの位置は同じじゃないですか。東防波堤、中防波堤、この位置と長さについて答弁してください。これは鉄鋼を中心としてのバースですよ。
  293. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 六月時点の計画のこまかい点は、私ちょっとといまここで申し上げられませんが、先生のおっしゃいました今回の五十三年のものと、それからその六月のときのものとの点線の差でございますが、これは確かに先生のおっしゃるように比較的少ないという面がいえると思います。しかしながら、先ほど申し上げましたように、いま二十万トンの船を入れるということになりますと、その船の安全性の問題あるいは泊地、待避の問題、そういう点からあのような形の考え方が出てくる、こういうふうに申し上げているわけでございまして、そこら辺のところの技術的な審査をこれからしなくちゃいけない、こういうふうに思っているわけでございます。
  294. 島本虎三

    島本委員 冗談じゃない。だめですよ、そんなことを言っても。防波堤の計画、これは当初の古い六月当時の計画と全く同じですよ。もうそれはわかっている。  苫小牧の地方港湾審議会、この資料はついに私に出してくれなかったのです。聞いてもらったところが、東防波堤のこの長さが四千三百五十メートルです。建設費は二百八十億八千万円です。中防波堤は長さが四千六百五十メートルです。そして建設費は三百三十六億です。この防波堤関係の長さは約十キロ、総計六百五十二億、東部港全体の建設費は千五百三十億。すでにこれは五十三年までの事業費だといま大臣答弁されたが、これはどういうようなことになるのですか。石油コンビナートの数社と自動車の数企業のために国費を千五百三十億投入することになるわけです。そういうようなでたらめなこと、これは総需要抑制、公共投資抑制、これと全然逆なことを計画してやらせることになるじゃありませんか。とんでもないです。  こういうようなことだけじゃないのです。私どものほうとしては十分調査してあります。五十三年までの工業の開発規模を基礎にしたこの港湾計画、これははっきり大臣が言ったから私は間違いないと思う。運輸省のほうでも、北海道開発庁のほうでも、ついにこの苫小牧港の東港地区港湾計画資料というようなものを私に提示してくれなかった。なぜ提示してくれないのですか。ないのですか、これは。あるのですよ。  その中で、私は提示してくれなかったからわかりませんから聞きますが、昭和五十三年の取り扱い貨物量は年間何トンですか。これは簡単に言ってください。数字だけ。
  295. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 昭和五十三年の取り扱い貨物量を総計二千八百万トンと予定しております。
  296. 島本虎三

    島本委員 では、昭和六十年の取り扱い貨物量は総計何トンになりますか。
  297. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 北海道開発庁の計算に基づきまして、港湾管理者が一応計算しました昭和六十年の取り扱い貨物量は、現在はございませんが、当時計算しましたのは一億五千七百十三万トン、こういうことでございます。
  298. 島本虎三

    島本委員 現在ありませんが――何ですか。この数字の中にちゃんと書いてあるじゃないですか。書いてあるが、現在ないのですか、これ。  ちょっと待ってください。あなた、そこに立っていてください。どういうわけでこういうような数字を出したのですか。企業の立地計画があるはずですから、それを言ってみてください。
  299. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 港湾管理者から聞いておるところによりますと、今回の計画は、昭和五十三年をもとにいたしまして五十三年の計画をつくった。ここに出ておりますのは以前につくりました際のものでございまして、それが参考に出ているわけでございます。
  300. 島本虎三

    島本委員 昭和六十年の取り扱い貨物量、これは参考ですか。これに載っておるのが参考ですか。計画ですよ、これ。うそ言っちゃいけません。こういうようなことがあるから、あなたはわれわれに見せなかったのでしょう。  では、聞きますが、この中に鉄鋼と非鉄金属、アルミ、これはもう何万トンの予定になっておりますか。
  301. 竹内良夫

    竹内(良)政府委員 どこまでも昭和六十年の計画は現在の計画ではございません。以前に、昭和六十年を目標として計画をつくっておりましたが、最終的には五十三年の計画に変えているわけでございます。それで地元の港湾審議会等に説明して管理者がつくってきているのが現在の計画でございます。
  302. 島本虎三

    島本委員 この資料のどこにそういうような説明が付されていますか。どこに、何ページに。見てください。ちゃんとこれは計画書として出されているじゃありませんか。その中に鉄鋼が入っている。非鉄金属、アルミも入っている。鉄鋼立地をしてはだめだ、これでは環境が破壊されるといっていながら、ちゃんと六十年のものには鉄鋼が予定されているじゃありませんか。そのためにこそこの膨大な港湾計画が必要だということになっているじゃありませんか。一体これはどういうことなんですか。鉄鋼立地をさせてはならない。それでは環境アセスメントがくずれる。したがって、六十年のものは困る。五十三年までだ。六十年のほうには鉄鋼を入れて計画書を出している。一体こういうようなことで環境が守れるのですか。運輸省、北海道開発庁はそういうような点なんか十分考えてやっているのですか。環境アセスメント、こういうものをやらないで何のために鉄鍋というようなものを入れて計算しているのですか。こういうようなものは大いに問題である。  まだ答弁は要りません。大臣は十二月六日に苫小牧東部開発に反対する人たちとお会いになりました。その際に、大臣のそばに鮫島計画課長がおりました。鮫島計画課長は、五十三年で工業開発がストップしたとしても苫小牧東部港は大き過ぎると思わない、安全率を見て適当な港湾計画だ、こうおっしゃいましたね。私もそばにいて実はあ然としたのです。これ本気でこう言っているのですか。安全だというならば、具体的にその根拠を説明してみてください。大臣、何が安全なんですか。
  303. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 五十三年を目標に港湾計画を立てて提出してまいっていることは事実でございます。したがいまして、この問題については、各方面から先ほども御指摘のございましたように、過剰投資ではないか、あるいはまた六十年計画を一応想定して、それを二期に分けて、第一期的な計画じゃないかというようないろいろ御指摘もございます。しかし、私どもは、出てまいっておりますのは、五十三年を目標にやるのだということで、五十三年の計画としてでございまして、六十年計画ということをいま頭の中に描いて構想をしているものではございません。  なお、港湾のもろもろの御指摘の問題等につきましては、せっかく技術の皆さん方がお集まりになっておる港湾審議会におはかりいたしまして、いろいろまたここでも御意見があろうと思いますが、慎重に御審議をいただきたいと思っております。
  304. 島本虎三

    島本委員 大臣もそういう考えでは困るのです。五十三年のこの取り扱い貨物量は二千八百十万トンである、六十年の取り扱い貨物量が一億五千七百十三万トンである、まさに五倍以上になっているわけです。そしてその中には、鉄鋼とアルミも全部入って計画が出されているのです。そして、この港の計画は、鉄鋼を入れたときと同じような構想でいま出してあるのは西防波堤を点々で囲んでおるだけなんです。あとは全部黒くして、予定の計画として出されているのです。鉄鋼を入れたらだめだといっているのが鉄鋼を入れての計画。だから、これはおかしいというのです。こういうばかなことはありません。アセスメントもないのにやったならば、過去の水島、鹿島、大分のようになるということも十分御存じでしょう。いまその引き金をあなたが引こうとしているんですよ。とんでもない。こういうような膨大な計画、これは間違いなく昭和六十年代の最終の規模を見越した設計ですから、世界最大の巨大掘り込み港。ところが、環境アセスメントは五十三年までしかしていない。五十四年以降の工業立地の見通しは白紙である。公害防止の見通しがないから、工業立地は五十三年時点でやはりストップするかもしれない。そうしたならば、これは税金のむだ使いの象徴になってしまうじゃありませんか。巨大港湾が残るだけじゃありませんか。大蔵省、この港湾計画についてどうお考えですか。
  305. 中川一郎

    中川政府委員 苫小牧の計画につきましては、賛否両論いろいろあるところでございます。私も北海道でございまして、私なりにも考えはありますけれども、財政当局としては、御承知のように今日の経済情勢、そして特に最近の石油事情からいって、物価の安定、総需要抑制ということが最大使命でございます。その一環として、明年度の予算においては公共事業費の大幅圧縮、中でも、いま議論のありましたような大型のものにつきましては、その進度を大いに調整していきたい、こういう観点から苫小牧をとらえてまいりたいと考えております。
  306. 島本虎三

    島本委員 六月十五日の衆議院の公害環境特別委員会の議事録によって見ますと、大蔵省の主計局の藤仲主計官の答弁にいわく「鉄鋼の立地が困難であるということに相なりました場合には、港湾計画全体として再検討を要するものと考えております。」こういう答弁をしておるのです。ところが、鉄鋼の立地は勇払の町を残すということになっておりますから、物理的にはこれはもう不可能に近いような状態になっている。しかしながら、この計画書にはそういうようなものもまた入れて出してきている。しかし、五十三年までの計画だ、これは運輸大臣が言っている。そうすると、その中には鉄鋼が含まれる余地はもうない。将来もない。あったならば環境アセスメントがくずれる。そうだった場合には当然これは再検討を要する、こういうふうに藤仲主計官が答弁しているのです。そうなった場合には、当然この六月の発言に対しては、はっきりした態度をとるべきだと思うのですが、副大臣にこの点を伺います。
  307. 中川一郎

    中川政府委員 確かに苫小牧は、いままでの日本の経済からいくならば、過疎過密の解消のためにも、北海道のような、しかも苫小牧地域は、土地の問題、水の問題、電気の問題、そして公害においても、他の地域に設置するよりは非常に条件のいい地帯であるというところから、大きな計画を持っておったことは事実であろうと存じます。そこで、こういった情勢をとらえていかにするべきか。もう一切あきらめてしまうのか。いま言ったような鉄の問題、大型のコンビナートの問題をあきらめてしまうのか。しかしまた、長期的な日本の問題を考えるならば、日本列島全体を考えるならば、未来の夢として、いま言ったようないろいろな問題は、もちろん公害の問題等は処理しなければなりませんけれども、夢として残しておかなければならない問題なのか。この点は十分慎重に検討して、もう一切だめだ、伸ばさないという結論を下すのも、日本の将来を考えるときにいかがか、そういう判断を持ちます。  そこで、いま御指摘のあった点については、今後各省庁とも十分検討いたしまして、いかにあるべきか。その上で実際予算上の措置は講じていくべきである、このように考えます。
  308. 島本虎三

    島本委員 はっきりと申し上げますが、この藤仲主計官の発言、これあたりは重大なポイントでありますから、それをお忘れにならないように、十分対処しておいてもらわなければなりません。  それと同時に、田中内閣が、石油危機に直面した十一月の十六日でありますけれども、緊急対策要綱を決定して、先ほど申し上げましたように、総需要抑制、公共投資抑制政府方針を打ち出した。この苫小牧東部の計画と政府方針との関連で、十二月十四日号の「朝日ジャーナル」に、この問題としてはなかなかはっきりしたことが書いてあるのです。これを読ましてもらいますが、こういっています。「田中内閣は、国民の生活に対して深刻なモノ不足と、とどまるところを知らぬ物価高騰の現実をおしつけ、掌をかえしたように節約を要請している。その一方で政府は、大量生産・資源多消費型の苫小牧東部の港湾計画を決定しようとしている。」「完全に公共投資抑制方針に逆行する大規模開発計画である。」「しかも、苫小牧東部開発は、港湾規模の点で税金ムダ使いのおそれが強く、工業開発の最終規模をあいまいにし、公害未然防止の見通しも怪しげな状態で、勇払地区集団移転問題を棚上げしたまま、しゃにむに港湾計画を決定して突っ走ろうとしている。」「およそ一九七〇年代の工業開発らしからぬ前時代的な開発優先方式である。こうして一つの巨大開発が既成事実をつくりあげようとしている。「こういうようにしるされてあるわけです。私はこれを見てはっと思ったのです。こういうような状態は、過去われわれが繰り返したあやまちを再び繰り返そうとしている、こういうことになるからであります。したがって、ずさんなこういうような港湾計画の決定に同意しようものなら、これはとんでもないことになる。このことを大蔵省に強く私として申し上げておきたいのです。  最後に、運輸大臣、これはもう十二月十九日の港湾審議会から苫小牧東部の湾港計画を取り下げるようにすべきじゃないかと思います。したがって、港湾計画を一たん地元へ戻して、白紙再検討をさせるべきだ。そうでなければ、現在の閣議の方針にも合わないということになりますが、御高見を承ります。
  309. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 御指摘の点は、いろいろ議論のあるところだと思います。しかし、港湾計画は、先ほど来議論にもなっておりますように、港湾管理者が立案いたしまして、その案を、重要港湾でございますから、提出を求めて、審議会意見を聞いて、そうして審査を行なうということに港湾法は定めておるわけでございますが、苫小牧の計画につきましては、管理者が計画、立案いたしまして、地元の港湾審議会、さらに苫小牧港管理組合の議会の議決を得まして提出してまいったものでございまして、政府といたしましても、北海道開発庁が中心となりまして各省庁間の慎重な連絡を行ない、環境問題につきましても、先ほど来環境庁長官のお話のようなことを繰り返してここまで持ってきたわけでございまして、私どもといたしましては、港湾法の定めるところの手続に従いまして港湾審議会に十分審議していただきまして、その審議の結果いろいろな御意見があろうと思いますが、経過並びに結果を尊重いたしまして結論を見たいと思っております。  なお、実施にあたりましては、当然、先生がいまおっしゃったようなことは十二分に慎重に考えなければならぬことでございまして、その点につきましては十分慎重な配慮のもとに進めていきたいと思っております。
  310. 島本虎三

    島本委員 これで私の時間はなくなったわけです。しかしながら、満足な答弁は何一つないわけであります。この際、環境庁長官はじめ閣僚の皆さんに、この点だけははっきり訴えさしてもらいます。  工業開発の最終規模をあいまいにしての港湾計画設計、こういうようなものができるはずがない。それをあえてやろうとしております。そしてこれは、世界に類例がないような大規模な港、こういうようなものをいま着々やろうとしている計画なんです。したがって、これはもう過大投資であり、血税浪費であるという結果を招くわけであります。こんな計画をもし認めるなら、大蔵省自身も、せっかくいままで示した前例がほごになってしまう。おそらくは開発庁長官も、北海道の真の開発はもういままでのような開発であってはならないということは、十分御存じのとおりなんであります。しかし、それ以上の規模の、世界一の規模のこういうようなものをつくらなければならない理由はいまやない。そういうような中でありますから、私は、特に十二月十九日の港湾審議会からこの苫小牧東部の計画を取り下げるように強く要請しておきたい。そして港湾計画を地元へ戻して、白紙撤回して再検討させなさい。もしこれを強引に通すようなことがあったならば、醜を世界にさらすだけじゃなくて、またしても、油の問題をはじめとして、日本よ何するのだと、こういうさげすみの目で見られるおそれがある。ことに重要な段階であります。私はこのことを心から訴えます。そうして白紙撤回して再検討するように心から要請して、私の質問を終わらせてもらいます。(拍手)
  311. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 多田光雄君。
  312. 多田光雄

    多田委員 通産大臣に冒頭にちょっとお伺いしたいと思います。  きのう、十二月十五日の各紙に報道されたわけですが、通産省の山下事務次官が読売の国際経済懇談会、ここで講演をしまして、次のようなこと、これはある新聞の記事ですが、こういうことを言っております。「石油電力などの規制措置はアラブ産油国の供給削減が今後一年は続くという見通し対策を実施する」、その次に「電力二〇%削減となれば家庭用も強制停電せざるを得ない」、こういう講演をしておられるわけです。この講演の内容、趣旨について、事前に通産大臣と相談があったのか、あるいは報告があったのか、その点を伺いたいと思います。
  313. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事前に相談はございません。私は石油対策と国会で忙しくて、会うひまもなかったわけです。
  314. 多田光雄

    多田委員 通産大臣は、さきに、今度の石油危機に際して国民に迷惑をかけないということをテレビでも報道しておられました。その見通しの甘さもさることながら、われわれ国民として非常に憤慨にたえないことは、以前は、大企業、政府が輸入石油中心の高度経済成長を進めていく、そう一して消費は美徳、こういうことで家庭電気器具や自動車を売りまくる、そして政府も石炭産業を取りつぶして、家庭暖房までが石油中心に切りかえざるを得なくしておきながら、いまになって、田中総理のことばではないが、節約は美徳なり、こういう宣伝で、この政府のエネルギー政策の失敗を国民にしわ寄せする。これは国民にとってたまらない怒りだろう、こう思うのです。今回の石油法案についても、共産党はじめ各野党が追及しているのはまさにそこにあるのではないか、こう思うわけです。この失政に対する基本的な反省、これをわれわれは聞くことはできませんでした。そして一般家庭の強制停電もやるというこの次官発言、これは自民党政府のその本質、これを端的にあらわしたものだ、こういうふうに私は思っています。いまこの石油二法の審議の中で、どういう規制をするのか、国民に迷惑をかけないようにするのかということが、きょうも連合審査が開かれて真剣に討議されているそのさ中に、次官が大臣と連絡なくして、そして家庭電力までを強制停電し得る、こういう発言をしていること、これを一体大臣、どうお考えでしょう。
  315. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中東紛争によりまして石油削減という思いがけない事態が起きて、そのために国民の皆さんにも御迷惑をおかけするようになったことは、まことに遺憾でございます。しかし、こういう思いがけない事態が起きたのでございますから、これはそれなりに対応して、できるだけ公平に犠牲を負担し合いながら、この危機を国民一致して切り抜けようというのが私たちの考え方であります。それで、できるだけ民生に対する影響を少なくしようという緊急対策要綱に基づきまして、そういう措置をいままでやってまいりました。ですから、電力削減にいたしましても、十一月二十日から三千キロワット以上の工場はもう一〇%カットをやって、その十日間の集計が最近出ていますが、かなり成績がよくて、一〇%以上のカットが実現されておるのであります。そのほか石油の節減につきましても、大体資本金一億以上、従業員三百人以上の中堅企業以上のものに、これが約八千社ぐらいありますけれども石油の節減協力を要請して、また、やってもらっておるところでございます。  そういうふうにいろいろやってきておりますが、OAPECの削減が、われわれが考えている以上にきびしくなってまいりまして、やはりある程度産業規模を維持していきませんと、生産が少なくなって、また、丸棒だ、セメントだ、あるいは塩ビが足りなくなる、結局国民全体が迷惑を受けるという状態にもなるものでございますから、最低必要量の生産はやはり産業においても維持していかなければいけない。そういう意味で、今度の法案も、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営、そういう二つを目標にしてできているわけで、国民経済の円滑な運営というのは、大企業に奉仕するためではありません。これは結局国民生活の安定のためにも必要なことであり、それに必要な物資生産するために国民経済の円滑な運営ということをうたってやっておるわけでありまして、そういう方針でいままでやり、今後もやるつもりであります。  しかし、いまのように産業に対する石油や電気のカットがあまりひどくなり過ぎますと、国民経済ないしは国民生活にも響いてくるという状態でもありますから、その辺では多少国民にも御協力願う。マイカーにつきましても、日曜日に、いまのように大ぜいわんさわんさと押しかけていくという現状は、外国と比べてどうであろうか。イギリスあたりでは、日本以上の大きな削減をすでにやっておる。アメリカでもそうです。あれだけ資源を持っているアメリカでも、大統領の緊急事態の政策においてやっておる。フランスやイギリスのような、いわゆる友好国でもやっておる。そういう点を見ると、この際国民の皆さまにもやはりがまんするところは多少がまんしていただいて、国全体として公平に行き渡るようにこれを実行していこうというので、電力につきましても、まことに残念でございますけれども、多少の御協力を願わざるを得ぬというので、研究と準備をさしておるわけです。  そういうことは私もエネルギー庁から聞いて知っておりますし、やむを得ない、そういう断定を下しておるわけです。山下次官も同じようにそういう報告を受けておるわけです。そういうことで大臣、次官が大体やむを得ないという判定をもって、エネルギー庁はそういう政策を進めておるのでありまして、私と山下次官の間に政策的にそごがある問題ではありません。山下次官の責任は私の責任でもあります。
  316. 多田光雄

    多田委員 それでは、家庭電力の強制停電もあり得るということですね。
  317. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それが一月になるか二月になるかはわかりませんが、石油状態によってはあり得ると考えていただかなくてはならない事態になりました。
  318. 多田光雄

    多田委員 冷蔵庫が一時間とまったら、この冷庫蔵は全然役目を果たさぬのです。家庭の電力削減というのは、大企業の一〇%の削減とはわけが違うのです。さっき大臣が言ったように、生産国民の生活のためだ、そういうふうにおっしゃいましたけれども、一〇%削減が、実際の生活面では、あるいはまた農民や漁民の営業、営農面では、それが三〇%にも四〇%にもなって響いているのです。先ほど、公平に犠牲を負担してもらわなければならぬと言った。公平に犠牲の負担、これを掲げて国民に一そう大きな負担をかけておるわけでしょう。現実はそうなっているのです。昨日もわが党の庄司議員の農業あるいは漁業、この重要な油の問題についてもそうなのです。公平では絶対ありませんですよ。だから私どもは、今度の二法の中でも、国民生活を優先させるようにしてもらいたい。したがって、この重化学工業に代表されるようなエネルギーの大量消費産業、あるいはまた不要不急の分野を重点的に規制する方向でやってもらいたい。また、直すべきであるということを主張しているのはそういう意味なのです。  ですから、私、この中でもう一つ伺いたいことは、この石油不足にかわってほんとう国民電力その他を補給していくために、どういう積極的な石炭の利用をお考えになっているのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  319. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石炭の利用につきましては、審議会から中間答申がありまして、石炭専焼火力の増強とか、そのほかの石炭政策の見直しの提言がございまして、われわれはこれを誠実に検討して実行していきたいと思います。
  320. 多田光雄

    多田委員 その事実は承知しております。  そこで、その不足分にかわって電力を少しでも多く補うために、いま九十万トン、百万トン、そういう石炭の需要があるということも聞いております。しかし、ここで大事なことは、ほんとう国民生活を優先させるという立場から、なお二百万トンからの一般炭の貯炭があるわけですが、この貯炭をほんとう電力会社に使わせる、場合によってはバーナーあるいはボイラー、これはもちろん一日、二日でできるものではありませんが、こういうものを取りかえさせても石炭を使って国民に不便をかけない、こういう行政指導あるいは積極的なエネルギーの確保、そういう措置をとられたでしょうか。
  321. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 排煙脱硫の装置がまだ完全にできていないのですから、そうやたらたいたら住民が公害で困るのです。そういうことも考えなければならぬのです。
  322. 多田光雄

    多田委員 公害の問題です。私は、政府に公害でそうやって逆襲してくるあれがないと思います。それほど公害のことが心配ならば、何で四日市や鹿島の問題で、もっと適切な処置をとらないのですか。たとえば脱硫装置でいえば、すでに三井三池のアルミの工場でかなりこれは前進しているのです。それからばい煙の問題、これも発電所では、一〇〇%までいかなくても、かなり防御できる今日の技術を持っておるのです。問題は窒素です。これも最近は東電でソ連からプラントを輸入して、試験テストをやっておるわけです。  そういう積極的な措置政府みずからがあまりとらないでいて、石炭を見直せと言えば、いま言った公害の問題を押し出してくる。そこに私は、これだけのエネルギー危機を迎えて、そして大方が言っているように、これから一年、二年、この先一体石油需給がどうなるのか、かりに中東戦争の問題が解決したとしても、はたしていままでのように石油需給が円滑に進むのかどうなのか、これが大きな問題になっているときに、ほんとう国民生活を安定さして一いままで政府や大企業が消費は美徳であるといって、すべての家庭に電気製品を持たせて、そしていま二割、三割の削減をしていく。場合によっては強制停電もしていく。ここに私は、いまの政府やり方が、よくいわれる大企業本位である、その姿を端的に示していると思います。  そういう意味でもう一度お伺いしますが、政府として、こういう大事なエネルギー問題のときに、日本の大事な資源である石炭産業を見直す、こういう姿勢をどのように立てられるのか、これを伺いたいと思います。
  323. 山形栄治

    ○山形政府委員 石炭は日本のほとんど唯一の国内資源でございます。かつて最盛期には五千万トンの出炭を数えたわけでございますが、その後石油との関係での採算の問題がございまして、現時点においては二千百万トンぐらいの段階でございます。いま大臣からもお話しございましたように、十二月七日に、緊急時におきまして石炭をどうするかということで、結局、混焼火力にたきます分をさしあたり百万トン、それから大型石炭火力の新設、これは北海道地区が主になると思いますが、それが一つと、それから既存の発電所の利用率の向上等を含めまして、さしあたり、先般五次答申で行ないました五十一年度の二千万トン程度という表現を二千二百五十万トン、一割以上の増加にいたしたわけでございますが、いまエネルギー調査会石炭部会は引き続いて、石炭のより一そうの活用、生産規模の引き上げ等について検討いたしております。これは今後における石油価格との相関が相当の大きな問題になると思いますが、一番最初に申し上げましたような石炭の国内資源としての重要性にかんがみまして、今後ガス化の研究の推進等も含めて、より一そうの出炭規模の上昇等にもっとめてまいりたいと思うわけでございます。
  324. 多田光雄

    多田委員 田中総理が所信表明の演説で、このエネルギー問題について、原子力の開発、水力発電の見直し、それから石炭その他国内資源の活用、これを述べておられました。だれでも常識ある者なら、アメリカを中心とする外国石油資本に依存した石油どっぶりのこの政策、これが行き詰まった今日、この苦い経験から、石炭であるとか水力などの豊富な国内資源を最大限に活用する、これは日本人ならばだれでも考えることです。  そこで、いま伺いましたら二千二百五十万トン、こういうお話でございました。この二千二百五十万トン、ほんとうに確保できる条件があるのでしょうか。たとえば、この石油危機が叫ばれている中で、十一月には九州の大之浦炭鉱が閉山しました。しかも今度の石油問題は、きのうきょうの問題じゃないのです。少なくともことしの春からは、かなり深刻な問題であった。私は六月の石炭特別委員会で中曽根通産大臣に、もし中東で問題が起きたらどうするのだ、国内資源をもっと開発する必要があるということを述べました。私は満足する回答を得られませんでした。不幸にしてそれが的中したわけです。  そこで伺いたいことは、いま必要なことは、国内資源を見直しますとか、そういうきれいごとのことばじゃないのです。また、そんな甘いときではないのです。問題は、先ほど言ったように、ほんとう国民生活を安定させていく、農業、漁業を安定させていく、そのためにどうやってエネルギーを確保していくのか。しかも石油見通しは、必ずしも明るくありませんよ。そうすれば、だれでも、石炭、水力を見直していかなくてはならない。あたりまえのことなんです。その二千二百五十万トン、ほんとうに確保できるその見通しと条件はあるのでしょうか。
  325. 山形栄治

    ○山形政府委員 最大の問題は労働力だと私は思うわけでございます。若干北海道地区に労働力の余裕もございますし、今後安定補給金の増額及びその傾斜配分等を行なうことによりまして生産のベースを確立し、かつ労働者の労働条件の改善のための経理の改善を行なう予定でございます。これらに関連する所要の補正予算といいますか予算、これは八月末に要求をいたしたわけでございますけれども、それの内容の変更につきまして、現在財政当局とも相談中の段階でございます。
  326. 多田光雄

    多田委員 いまの回答は満足しません。これは単に数字の問題じゃないはずなんです。  私はここで皆さんに注目してもらわなければならないことは、石油不足が起きている今日の瞬間でも、日本では山がつぶれていっているということです。アメリカは一九八五年、昭和六十年までに石炭生産量を現在の二倍半に引き上げる、そしてエネルギー需要の半分を補う計画を立てているのです。それから欧米諸国が相次いで石炭見直しが始まっていて、昨年までゆるいカーブであったイギリス、フランス、西ドイツでも、急速に石炭の増産計画を立てていっているのです。ところが日本では、逆にそのカーブが下がっていっているのですよ、少なくともこの半年を見ても。これが私はきわめて対照的だと思う。  どこにこの原因があるのでしょうか。資源がないといいながら、しかもなお二百億トンあって、最盛期の五千万トンずつ掘っても数十年あるいはもっと以上それがあるという石炭がありながら、それを見捨てて、なおメジャーその他から鼻っ先を引き回される。石油にどっぶりつかって、その先もまだはっきりわからない。三木特使も派遣する。外交も急に急いで、アラブよりアプラだといわれるような転換のしかたをする。それほどの努力をしながら、なぜ石炭を掘るという計画、こういうものをお立てにならないのでしょうか。どこに一体問題があるのでしょうか。時間がたいへん短いので、私は、なぜ石炭をほんとうに見直しをなさらないのか、何が障害になっているのか、それを伺いたいと思います。
  327. 山形栄治

    ○山形政府委員 先ほども申し上げましたように、石油とのいわゆる競争の結果石炭が現状まで来たわけでございますが、この間、これが国内のほとんど唯一の資源ということで非常にばく大な財政資金も没入して、どんなことをしても最低二千万トンは保持しなければいかぬというのが石炭政策の根幹であったわけでございます。先ほど申し上げましたように、この二千万トンの規模を緊急時におきまして見直したのが二千二百五十万トンでございますが、当然考え方といたしましては、この石炭をより一そうこれを機会に、二千二百五十万トンにとどまらずに、全エネルギーの中でどう定着さしていくか、どうそれを増量さしていくか、そのための現行の体制をどうするのか、そういうことにつきましては、現在石炭部会におきまして引き続いて検討いたしておりますので、その辺の意見も参酌して、財政当局等とも相談しながら今後前向きに取り組んでいきたいと思っておるわけでございます。
  328. 多田光雄

    多田委員 その前向きの内容を私は具体的に伺いたいのです。伺う前に私のほうからちょっと聞きたいのですが、真剣に前向きであるならば、どういう対策をとるのがいま望まれているのかということです。  そこで、労働省、来ておられましょうかな。昭和四十八年の炭鉱離職者、それから四十九年予想される炭鉱離職者、それはどういうふうになっていますか。
  329. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 四十八年度の炭鉱離職者の再就職計画でございますが、四十七年度、前年度からの炭鉱離職者の繰り越しが約六千名ございます。本年度新規に閉山によりまして発生いたします離職者が一万百名、この中で今年度中に就職等によって……(多田委員「いや、離職者の数だけ言ってください、予定されている炭鉱離職者」と呼ぶ)本年度一万百名でございます。(多田委員「四十九年度の予算は」と呼ぶ)四十九年度はいま詰めておりまして、まだ正確な数字は確定いたしておりません。
  330. 多田光雄

    多田委員 そうじゃないでしょう。概算要求されて、その中にどういう計画を立てていますか。それをちょっと答えてください。
  331. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 来年度は、いまのところ一応九千六百名程度を予定いたしております。
  332. 多田光雄

    多田委員 石炭の見直しで一番最大のネックになっていると言っているこの労働力、政府自身がさらに来年――かつては数十万いた炭鉱労働者、いまそれが三万前後に減ってしまっている。一年間一万前後ずつ減っていっているのです。来年もそういう九千名減らす予算を立てているじゃありませんか。それで石炭見直しだとか位置づけ、これは何の裏づけもないことです。  そこで、これは通産大臣に伺いたいのですが、私は、最盛期の五千万トンいますぐ掘れということは無理だということは十分承知しています。労働力もない、坑内もつぶして水浸し、技術者はもうほとんどいない。そこで、どうでしょう、来年も幾つかの山の閉山の計画、見込みが立てられているのですが、政府として閉山のストップ令、これを国民的な立場から出すようなお考え、こういうのをお持ちでしょうか。  それからいま一つ、先ほどコストのことを話されたのですが、北海道、九州の発電所では、カロリー当たりの単価は石炭のほうが油より安いのですよ。これは政府発表の資料によっても、ここ数年そうなんです。ましてこの油が重要な油、こういうようにいわれているさなか、しかも外貨もいま重大な問題になっているという中で、少なくとも北海道、九州、こういう産炭地においては思い切って石炭を電力用に使っていく、こういう指導をされるお考えがあるかどうか、この二点、大臣に伺いたいと思います。
  333. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石炭審議会の中間答申が出ましたものですから、その線に沿って来年のことは考えていきたいと思います。  それから、火力に石炭を使えということはその石炭答申の中にも書いてありまして、私たちはできるだけそういう方向へ持っていきたいと思いますが、何せ排煙脱硫がまだできておりませんので、公害問題とのかね合いも考えなければなりません。
  334. 多田光雄

    多田委員 また排煙脱硫の問題が出たのですが、北海道の札幌に工業試験場があります。これは主として石炭、寒冷地の問題でつくった工業試験場なんです。十年前から、石炭産業の研究その他がほとんど放棄されているのですよ。そういうエネルギー政策の中で公害の対策もおくれていることは当然なことなんです。したがって、それをやる以上は公害その他の研究をやらなければならないことは当然なことです。それを前提にして、しかもその公害を除去するためにも、まず基本姿勢として最低――われわれは五次答申には反対はいたしますけれども、少なくともいま言っている二千数百万トン、これを維持するためには閉山をやめさせる、こういう思い切った処置はとれるかどうか、このことを私は聞いているのです。答申を尊重してやります、そういうことの繰り返しで山がつぶれているじゃありませんか。どうなんでしょう。
  335. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げたとおりであります。
  336. 多田光雄

    多田委員 大臣、ばかにしないでくださいよ。そういうストップ令を出すくらいな思い切った、炭鉱の閉山を食いとめる措置をとられるかどうかということを聞いているのです。なぜなら、ほんとうにエネルギー政策を過去のあやまち――われわれはあやまちと考えていますが、それをほんとうに克服していこうとすれば、この石炭あるいは水力、これをどう見直すかということが一つはかぎになっているのです。だから私は真剣に聞いているのです。聞くだけじゃないのですよ。何十万という炭鉱労働者が、殺され、職場を奪われ、産炭地のいまの状況はどうですか。日本の産業をささえてきたのは、かつては石炭産業だったのです。こういう地下労働者の怒り、苦しみ、私は告発する意味でもそれを訴えたいのです。そういう思い切った措置をとれるかどうかということを聞いているのです。
  337. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ことしの春、たしか北海道の三菱美唄でありましたか、鉱量が枯渇してきて、やむを得ず閉山するという事態もありました。閉山の中にはいろいろな理由もあります。したがって、先ほど申し上げましたように、この間の中間答申を尊重して、その事態に対応する措置をやっていきたい。石炭を活用するというのがその中間答申の趣旨でありますから、そういう考えに立ってやるという意味であります。   〔塩川委員長代理退席、濱野委員長着席〕
  338. 多田光雄

    多田委員 その鉱量枯渇の問題、これはもういま立ち入って申し上げる時間もありませんが、これは前回も申し上げましたけれども、研究者に言わせれば、この鉱区をもっと調整するならば、炭量の問題あるいはまたコストの問題――コストについては千円安くなるといわれているのです。これはそういう思い切った措置も講じなければなりません。これはあとで申し上げます。  そうすると、大臣は、石炭を位置づけしたいというお考えを持ちながら、来年に続く閉山、これをとめる御意思もないということですか。
  339. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今度の石油の問題が起こるといなとにかかわらず閉山をできるだけ阻止したいというのは、あなたにも委員会で屡次申し上げておるところであります。
  340. 多田光雄

    多田委員 私がさっきは数字の問題じゃないと言っているのは、そう言いながら山がつぶれていっているじゃありませんか。そうして年間千億からの金をぶち込んでいるのです。一次から五次まで、いままで約八千億の金ですよ。これは何に使ったのですか。その六六%がこれは企業です。つまり、安楽死をさせるために膨大な国民の血税をぶち込んできたのです。肥え太ったのは銀行ですよ。  次に、ほんとうに石炭を見直すというお考えがあるなら、こういうことはどうでしょうか。いま研究者が少なくなり、そしてまた労働力が足りなくなっていく、こういう中で、少なくとも石炭特別会計において石炭問題の研究、そういう方面に思い切ってお金を使っていく。たとえていえば北海道、九州、こういう地区の公立の高等学校、工業高校あるいは大学に、かつてあったように石炭をテーマとする教科課程、研究室を設ける、将来にわたる技術者、研究者の養成を系統的に進める、こういうことは私は最低のことだろうと思うんだが、そういうお考えがあるかどうか。もちろん、公的研究機関を充実していってその成果を公開していくということは、前から私どもが主張していたことです。  それから次に、これも石炭特別会計と関係することですが、一番の問題は労働者の確保の問題です。ところが、いまの労働条件のもとでは増産に応じられないと炭労もいっているのです。当然なことです。世界一の能率です。しかも他産業に類を見ない事故が相次いでいるのです。しかも賃金は、地下労働者として、おかの労働者に比べてはるかに低いのです。こういう条件の中で、肝心の働き手がいなくなってきているのです。しかも首切って、全国に散らばっているのです。そうすれば、いま大事なことは、この法案をきちんとさしていく、あるいは坑道をもっと近代化、機械化していく、そういう措置を講じなければ、やがて炭鉱労働者はいなくなる。しかも年齢は、これまた他産業に比を見ない、四十歳をこえているのです。  そこで私は、こういうために、特別会計について重点的に石炭を見直していくために提案したいと思うのですが、この一千億の特別会計の中でいま四分の一を占める石炭鉱業経理改善対策費、いわゆる債務の肩がわりです。これを思い切って凍結する。そういうお金をいま言った研究、炭鉱の労働条件の改善あるいは技術の改善、こういうことに思い切ってお使いになる。そういうお考えはないかどうか。
  341. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう考えはありません。むしろ工業技術院に集中して、いまやっておる研究を精力的にやらせるほうが能率的だと思います。
  342. 多田光雄

    多田委員 聞くところによれば、通産局の中でも石炭関係は冷やめし食いだという話も聞いています。工業技術院の幾名かの研究者にも私は来てもらいました。いまの政府の姿勢では石炭問題をやる気は起きてこない、こう言っているのです。そこらわずかの金を投じて一体どれだけの見直し政策ができるのでしょうか。根本的に政治姿勢が違うからだと思うのです。その政治姿勢を改めていくためにも、銀行やその他へ行ってしまう金をいっとき凍結して、思い切って石炭増産のほうに金を投ずる。これくらいのことをやらないで、日本のエネルギー政策を変えるとかエネルギーを確保しますとか――大臣も週刊誌で言っている。石油どっぶりの肥満児になってしまったと言っておる。そしてまた先ほど、石油の輸入も規制しなければならないということを言っている。総需要抑制しなければならないと言っている。困るのは国民なんです。テレビや電気冷蔵庫、掃除機を買わされて、それがなければ生活できないような仕組みになっている。そこのところにあなたの談がついていない。それをほんとうに守るためには、少々の不便や技術的な改善をしてでも日本の石炭や水力を開発するというのは、これは民族の百年の大計からいって、いま手をつけなければいつやるのですか。その一環として言っているのです。それもやる気がない。私は質問する気もなくなってきますよ。  それから次に伺いたい。この石炭特別会計の唯一最大の財源というのは、輸入原重油の一キロリットル当たり六百八十円、この関税の十二分の十を財源として石炭特別会計を組んでいるわけです。そしてこの油の輸入が今後かなり不安定要素を強めてきている。また、国内では油を安くしてもらいたいという声もある。そういう点を考えるならば、私は、ほんとうに石炭政策を見直すという立場であるならば、一般会計からも繰り入れてこういう思い切った処置を講ずる必要があるのじゃないかと思うのですが、こういうこともお考えになっているのかなっていないのか、それを伺いたいと思います。
  343. 山形栄治

    ○山形政府委員 御趣旨のとおり、現在の石炭対策は原重油関税によって、その十二分の十で運営されておるわけでございます。われわれといたしましては、相当膨大な特別会計を目的的に使っておるわけでございまして、今後この財政の内容の充実をはかっていくのが筋だと思いますが、大蔵当局とも相談いたしまして今後の取り運びを進めたいと思いますが、一応現段階で一般会計にこれを振りかえる、切りかえるという考えは私のほうはございません。
  344. 多田光雄

    多田委員 時間が来ましたので、最後に私は、さっき石炭の見直し、これが欧米と食い違っているということを言いました。そこに顕著な違いがあるのです。私は、それは一つ、二つ理由があるのじゃないかと思うのです。同じ資本主義国でありながら、同じように石油がないからと入れておりながら、一方では石炭を見直している。一方は石炭に対する安全弁すらもない。閉山の安全弁すらもない。その違いはどこから生まれるのでしょう。一つは今回の石油危機、これは確かに直接にはアラブ問題から出発しております。しかし、これは自民党政府のいままでの国際、国内、この全政策の必然的な結果だと思うのです。たとえば日本の国内エネルギー資源、この石炭、水、これをかつてアメリカの占領軍のもとで、水を中心とするあれから火を中心とするものに変わって、石油がどんどん入ってくる、そして主としてアメリカを中心とするメジャーの石油供給に依存してしまったのです。入るだけじゃありませんですよ。国内のこの大きな石油規模を見てください。大なり小なりその資本が入ってしまっているじゃありませんか。こういうアメリカ一辺倒というか追随というか、このエネルギー政策が一つ大きな理由になっていると私は思うのです。  それからもう一つある。それは大臣自身が週刊誌で言っているように、石油をどんどん入れる、そして臨海工業地帯をつくった、それを大きな船でもって入れて、また輸出する、二百億ドルの金をかせいだ、その結果はこれなんです。そしていま国民は、強制停電というつんぼさじきにあげられているのです。九月期決算では大企業はかってない利益をあげているという。こういう国内政策ですよ。それをまた列島改造で進めようというのです。
  345. 濱野清吾

    ○濱野委員長 多田さん、時間です。
  346. 多田光雄

    多田委員 もうすぐ終わります。  それから外交問題、これはもう言うに及ばずです。ですから私どもは、こういう政策の根本というものは、やはり日本のエネルギー源はまず国産のエネルギーに足を置くということ――足りないものは入れていかなくてはなりません。そういう本来の姿勢にならなければ、かりに中東問題が解決しても、依然としてこれは引き回されていく。これは手のひらを見るようにはっきりしていることです。  第二番目は、フランスそれから西ドイツ、イギリス、ここでは石油、石炭それから天然ガス、電力、これは国有もしくは公団なのです。そしてやはり全一的な総合的なエネルギー政策をとろうとしている。そういうものをとってないアメリカですらも、石炭を五〇%に上げていくといっているのです。私は、そういう意味で、ぜひ今回のエネルギー問題、ここからほんとうにエネルギーを総合的に考えていく、そして日本の資源も均衡のある発展をしていくという、そういう施策のほうに思い切って転換する、これなくして、幾ら言っても石炭は落ちつかない、そう思います。  私ども共産党は、そういう意味で総合エネルギー政策を出し、公社案というものを発表しております。ぜひひとつ大臣、共産党の政策も研究していただいて、そして為政者として真剣に今日の日本のエネルギー政策を考えていただきたいと思います。  以上です。
  347. 濱野清吾

    ○濱野委員長 これにて本連合審査会は終了いたしました。  散会いたします。    午後五時十七分散会