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1974-05-21 第72回国会 衆議院 商工委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十一日(火曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 武藤 嘉文君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       愛野興一郎君    天野 公義君       稲村 利幸君    浦野 幸男君       小川 平二君    越智 通雄君       粕谷  茂君    片岡 清一君       木部 佳昭君    木村武千代君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       島村 一郎君    田中 榮一君       楢橋  進君    丹羽喬四郎君       野田  毅君    橋口  隆君       八田 貞義君    前田治一郎君       松永  光君    宮崎 茂一君       山崎  拓君    石野 久男君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    上坂  昇君       佐野  進君    原   茂君       細谷 治嘉君    渡辺 三郎君       瀬崎 博義君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         自治大臣官房審         議官      近藤 隆之君  委員外出席者         工業技術院総務         部総括研究開発         官       佐藤 真住君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     小野 雅文君         建設省計画局首         席計画官    広瀬  優君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   天野 公義君     山崎  拓君   稲村 利幸君     宮崎 茂一君   越智 通雄君     野田  毅君   小山 省二君     楢橋  進君   近藤 鉄雄君     木村武千代君   島村 一郎君     片岡 清一君   田中 榮一君     愛野興一郎君   上坂  昇君     石野 久男君   竹村 幸雄君     原   茂君   山崎 始男君     細谷 治嘉君   米原  昶君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     田中 榮一君   片岡 清一君     島村 一郎君   木村武千代君     近藤 鉄雄君   楢橋  進君     小山 省二君   野田  毅君     越智 通雄君   宮崎 茂一君     稲村 利幸君   山崎  拓君     天野 公義君   石野 久男君     上坂  昇君   原   茂君     竹村 幸雄君   細谷 治嘉君     山崎 始男君   瀬崎 博義君     米原  昶君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  発電用施設周辺地域整備法案内閣提出、第七  十一回国会閣法第一一七号)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  第七十一回国会内閣提出発電用施設周辺地域整備法案を議題といたします。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。宮田早苗君。
  3. 宮田早苗

    宮田委員 本法律案は、電源開発促進ということが目的ということになろうかと思っております。その目的を完遂するために今日のあらゆる問題を解決していかなければならぬということと思いますので、そういう問題について本日は質問をいたします。  まず交付金の問題についてでございますが、交付金をつける発電所出力基準でございますが、これまでにも質問が出ておりましたように、石炭を見直そうという昨今の情勢からしますと、火力の三十五万キロワットで線を引くのは適切でないと思います。したがって、これは改めるべきだと思うのでございますが、この点、通産省はどう考えておられますか、まずお聞きいたします。
  4. 山形栄治

    山形政府委員 交付金対象となります施設の問題でございますが、われわれのいま考えておりますのは、原子力火力につきましては三十五万キロワット以上ということでございます。  なお、水力、地熱等につきましては一万ということにしまして、全体の考え方といたしましては、現在のこれらについての技術水準の進歩の度合い等考えておるわけでございます。  火力につきまして三十五万以上といたしましたのは、いま申し上げましたように、現在の新鋭火力はもう大体三十五万が最低のような技術水準に達しておりますし、一方日本国土は、先生御存じのとおり国土上の限界が一応ございますし、それからやはり三十五万以下と三十五万以上では熱効率がえらく違う。熱効率といいますか、エネルギー使用効率が非常に違いますので、むしろこれから国民のために電源を拡充するにあたりましては、やはり一番効率のいい、それから国土有効利用に資するような形でこれを進めるのがむしろ政策のねらいにつながるのじゃないかということで、いまのところ三十五万以下ということにしませんで、つくるなら三十五万以上という形でこれをつかんでまいりたいと思うわけでございます。
  5. 宮田早苗

    宮田委員 既設発電所に対しましても交付金をつけるべきではないかと思います。と申しますのは、これから増設される分は公害防止技術も相当進んでおりましょうが、古い発電所には問題が多いのが現実と思います。固定資産税の面で優遇されるということですが、思い切ってこの法律適用できるようにしたらどうかというふうに思いますが、その点についてはどのようにお考えか、お聞きします。
  6. 山形栄治

    山形政府委員 今回この法案を出しまして御審議願っております趣旨は、これからの国民生活の向上及び経済活動の運営におきまして、緊急に発電施設設置を円滑化しなければいかぬというのが趣旨でございまして、やはりその緊急度というのが一つのねらいであるわけでございまして、そういう観点からいいますと、新しくつくるものを促進するというのが筋ではなかろうかと思います。しかし、いまお話のとおり、既設のものと新設のものとのバランスがあまりにも著しくくずれますと、これまた問題でございますので、既設発電所につきましては、その所在市町村につきまして、今回地方税法の改正を行ないまして、発電所にかかわる固定資産税課税標準軽減措置の廃止または縮小を行ないますとともに、大規模な償却資産にかかわります課税限度額の引き上げを行なうことによりまして、既設発電所所在市町村固定資産税の収入の増加をはかるような措置をいたしまして、そういう観点で実質的にバランスをとってまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  7. 宮田早苗

    宮田委員 ただいまの質問に対してお答え願ったわけでございますが、元来、今日の状況を招きました最大原因というのは既設発電所影響ということが根本だというふうに思います。そうなりますと、当然のことでございますが、原因をつくったその発電所に対しまする適用ということまでさかのぼっていかないと、新しい施設よりは古い施設周辺地域のほうから問題提起が非常にたくさん出てくるのじゃないかというふうに懸念をするわけでございますので、そういう面についての対策として、固定資産税の面でということでございますが、それでは片手落ちだということよりは若干不足をするという気持ちが強いものですから、もしそういう問題が惹起をいたしました場合に、はたしてこの適用というものが全然考えられないものかどうか、その点もう一度お答え願いたいと思います。
  8. 山形栄治

    山形政府委員 本法の目的といいますか、趣旨が、やはりこれからの新しい発電所建設にかかわるのが主たる目的に相なっておりまして、先生御存じのとおり、最近の電源地点促進状況でございますと、四十六年度は、電調審計画に対しまして八七%の高率で達成ができたわけでございますが、四十七年度が三三%、四十八年度がたしか四四%程度というようなことでございまして、むしろ新しいものをどうやって促進するか、いやしくも国民生活に御迷惑のかからないようにどうしたらいいかということでございます。しかしながら、先生お話のとおり、既設のところでまたいろいろと問題があろうかと思いますが、これにつきましては、従来にも増しまして安全環境問題等、国といたしましても企業指導いたしまして、なお環境基準適正達成につきまして監督を厳重にしまして、既設地点におきます円滑なる業務の運用がはかられるように今後とも気をつけてまいる所存でございます。
  9. 宮田早苗

    宮田委員 次に、発電所立地をする隣接市町村への交付金配分について、かなり弾力的な運用を意図しているようですが、二つの都府県にかかるような場合の調整はどのようになさいますか、お聞きします。
  10. 山形栄治

    山形政府委員 周辺市町村にかかわります交付金配分方法等につきましては、現在検討中であるわけでございます。いずれにいたしましても、都道府県知事整備計画を策定いたします段階関係市町村と相談の上きめることになると考えるわけでございますが、いま御質問の二県にまたがる場合の交付金配分につきましては、たとえば両県の周辺市町村の数に応じましてこれを配分する等の措置をいたしたい、したがいまして、二県にまたがらない場合と二県にまたがる場合とで、実質的に不均衡が生じないように実質的に配慮してまいりたいと考えておるわけでございます。
  11. 宮田早苗

    宮田委員 この法律案公害対策でないということを政府側から説明を受ける際よく耳にしたのですが、火力発電所の場合、大気や水の汚染がゼロになる技術は望めないと思うのであります。通常気象潮流調査を事前にやるわけですが、発電所ができた場合の煙、温排水影響を受ける度合いの高い市町村隣接に当然出てくることがあり得ると思います。その場合、交付金配分を手厚くしろという要求が当然出てくると思うのでございますが、これにどう対処されますか、その点をお聞きします。
  12. 山形栄治

    山形政府委員 交付金の額の決定及びこの配分につきましていま検討中でございますが、先生のおっしゃいますように濃淡の差が若干出る可能性があると思うわけでございます。問題は、いわゆる環境保持のあり方の問題だと思うわけでございまして、われわれといたしましては、新設のものにつきましては、特に公害防除施設及び規制につきまして万全を期すように、これは許可の段階科学技術庁とも御相談いたしまして原子炉規制法及び電気事業法、それから運用におきましては、通産省におきましても環境審査顧問会活用等をはかりましてアンバランスが生じないように、集積の拡散をできる限りはかれるように、モニタリングの活用等も含めまして、事後チェックを通じましてこういうことを防除するようにいたしたいと思います。
  13. 宮田早苗

    宮田委員 この法律案に関連をして目前に迫っております夏期対策をひとつ示していただきたいと思います。  この際承っておきたいのでございますが、昨年末以来の石油危機一般家庭電気消費量にどうあらわれておるかということと、また政府が認めようとしております料金値上げ一般家庭消費電力にどの程度響くと見ておられますか。その点お聞きします。
  14. 山形栄治

    山形政府委員 この夏の電力需給見通しにつきましては、これはなかなかむずかしい問題でございますが、最近の生産活動の若干の低下、総需要抑制策浸透等考えますと、いまの私のほうの感じでは約八%の供給予備力は保持できるのではないかという見通しを持っております。ただ、ここで非常に問題でございますのは、いわゆる光化学スモッグの発生の問題でございまして、ことしもすでに四月に光化学スモッグが発生いたしております。光化学スモッグといいますのは、昨年の例から見ましても夏のまつ盛りに一番多く発生するわけでございまして、この場合には、都道府県知事から緊急的な操業の中止といいますか、そういう命令が出るわけでございまして、この辺の見通しが今後どういうふうになるのかということでございますが、実は電力大口需要家に対しまして、昨年もやりましたように休日のウイークデーの振りかえ、特約需要ピークカット等電力需要平均化をいまから実は指導をいたしておるわけでございまして、そういう盛夏対策夏対策ということにつきましては、いまの見通しでは去年よりも大体うまくいくのじゃないかという感じがいたしております。  なお電力料金等、これはもし値上げ等が認められることになりますれば、その辺から、いわゆるエネルギー消費産業生産活動にもそういう意味ではいい影響が出ることも期待できるのではないかと考えるわけでございます。
  15. 宮田早苗

    宮田委員 もう一つ冬場の問題についてでございますが、石油値上げによりまして相当電気の依存の度合いというのが強くなってくるんじゃないかというふうに思いますが、これに対するお考えがありましたらお聞きいたします。
  16. 山形栄治

    山形政府委員 冬場対策といいますか、冬場需給見通しにつきましてはいまからなかなか想定もむずかしいわけでございますが、御存じのとおり、三月の十八日から実施されました石油大幅値上げでございますが、これは特殊な企業、業種を除きましてどうにか合理化等で切り抜けておるのが現状だと思うわけでございます。石油類大幅値上げの率が非常に大きかったわけでございますが、また反面、産業面におきまして従来非常にむだに使っておった面もどうもあったようでございまして、われわれのほうの集計によりますと一〇%くらいの節約効果というのはそう著しく生産を落とさないで切り抜けておるやに推測されるわけでございます。全体の経済の動向、総需要抑制浸透度合い等にもかかわるわけでございますけれども、われわれといたしましては、エネルギーをむだにうんと使うということは、石油であれ電力であれ絶対に避けるべきだと思っておるわけでございます。そういう指導監督も含めまして、冬の対策も、いま御説のとおり、これから検討を早めにやっていきたい、今後の需要消費対策につきまして検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  17. 宮田早苗

    宮田委員 次に、地熱発電開発について二、三質問をいたします。  地熱発電所についても電源立地促進対策交付金対象とするという案でございますが、開発に向けての調査と今後の立地計画見通しをまずお尋ねいたします。
  18. 井上力

    井上説明員 地熱開発のための調査でございますが、御指摘のように、石油危機に際しまして国産エネルギーである地熱開発を大いに促進すべきであるということで、その開発促進策に取り組んでおるわけでございますが、その調査につきましては、通産省といたしましては、四十八年度から地熱資源に関する調査を開始いたしまして、四十八年度におきましては、通産省工業技術院地質調査所におきまして、北海道の駒ケ岳北部、秋田県の栗駒北部、福島県の吾妻山北部、静岡県の伊豆南部、鹿児島県の薩南につきまして基礎的な調査を実施しておるところでございます。四十九年度につきましては、さらにこの調査あとを受けまして有望な地点ボーリング等精密調査を実施するということにしております。また、地質調査所におきまして、四十八年度以降実施しております調査につきましては、四十九年度においてさらに十五地点基礎調査を実施する予定でございます。基礎調査につきましては、三カ年計画でございますので五十年度には終わる、そのあとさらに精密調査を続行していくというふうに考えております。  今後の見通しでございますけれども、御承知のように、現在動いておりますのは二カ地点、わずかに三万三千キロしかないわけでございますが、現在工事中あるいは建設中のものが五カ地点、十八万五千キロございます。これらの工事中の地点につきましては、本年度から五十二年度ぐらいにかけまして完成をしていくというふうに考えられますが、その後の計画につきましては、最初に申し上げました調査の進展とにらみ合わせつつ今後計画が進展するということで、いまのところ、数字的にはっきりした計画はないのが現状でございます。ただ、昭和四十四年度におきまして経済企画庁で調査をいたしましたところによりますと、その当時におきまして経済的に開発が可能であろうという調査でございますが、図上調査が主体でございますけれども、約二千万キロ程度開発可能であろうというふうに想定されておるわけでございます。
  19. 宮田早苗

    宮田委員 地熱利用は新しい資源開発として注目をされているわけですが、これに反対する意見もございます。ある団体から反対陳情書をいただいておりますが、反対する理由は、まず一つに、砒素による河川飲料水汚染問題があります。二つに、地熱発電技術初歩的段階企業化は時期尚早である、こういう考えであります。環境庁はお呼びしておりませんので、開発にあたって砒素公害対策通産省のほうでどう推進をしようとされておりますか。お答えを願いたいと思います。
  20. 井上力

    井上説明員 御指摘地熱発電開発に伴います公害の問題でございますが、これにつきましては、やはり開発する大前提として公害防止には十分意を用い、対策を講じていかなければならないというふうに考えております。  御指摘砒素の問題でございますが、地熱発電をやるに際しましては、地中から出てまいります熱水を含んだ蒸気を分離いたしまして、蒸気だけを発電に使う、熱水通常地下に戻すということにしております。砒素はこの熱水中に含まれておるわけでありますので、地下に戻すということで運転を行なえば砒素の問題は生じないというふうに考えております。しかしながら、地熱発電に伴いまして熱水をたとえば温泉等地元で使わしてもらいたいというような場合もございますので、こういった場合には、使用したあと川に流す水につきましては環境基準値の〇・〇五PPMというのがございますが、それをこえないようにして流すということで指導しているところでございます。  それから具体的に計画中の八丁原地熱地点というのが九州にございます。ここにおきましては、やはり地元の要望にこたえまして熱水を利用していただいておるわけでございますが、熱交換機を使いまして河川水を間接的にあたためて使うというようなことで温水を地元に供給しておりますので、そういう問題は全くないということでございます。  それからもう一つは、地熱発電企業化が時期尚早ではないか、こういうお尋ねでございますが、従来地熱開発技術につきましてはボーリング技術あるいは低温、低圧の蒸気を使いますので、その機械をどうするか、あるいは地中から出てまいります蒸気をそのまま使いますので、それに対する腐食の問題をどうするかというようないろいろな問題がございまして、先ほど申し上げました三万三千キロの地熱発電所というのは、いわば地熱開発を兼ねながら開発を進めてきた、かように申し上げていいのではないかと思います。  世界的に申し上げますと、アメリカ、ニュージーランド、イタリアあたりが中心でございますが、大体全世界で合計約百万キロの地熱発電所が稼働しております。こういったいままでの開発実績によりまして技術的にはかなり進んでまいりまして、ボーリングをして蒸気を探り当てる技術、あるいは出てまいりました蒸気を利用する技術、あるいはいろいろな公害問題に対応する技術といったようなものは相当進んできております。従来地熱につきましては、一カ地点で取れます出力がちょっと小さ過ぎるのじゃないか、そんな小さいものではあまり足しにならぬのじゃないか、こういう御批判があったわけでございますが、機械につきましても現在最大機械は十万キロ級のものがすでにできるということになっておりまして、機械製作技術におきましても相当程度進歩してまいり、実用に供せられる段階に達しておるというふうにわれわれは判断している次第でございます。
  21. 宮田早苗

    宮田委員 次に、原子力発電の問題について、特に安全性について質問をいたします。  昨年の石油危機以来、政府原子力発電積極的推進をはかるという施策を掲げておりますことは、わが党の方針とも一致するところであります。しかし、その安全性については、学者の中でも危険視する意見が非常にたくさんあります。また、アメリカにおきましても、危険性放射能のおそろしさを警告する学者専門家も多いわけであります。原子力発電所積極的開発の前提となります安全性は十分に確保されているのか、まずお尋ねをいたします。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原子力発電は新しい技術でございますから、慎重の上にも慎重を期し、安全の上にも安全を確かめて実施しなければならないと思い、そのようにやっておる次第でございます。問題点はいま世界的にもいろいろ研究課題として指摘されております。緊急冷却装置の問題であるとか、あるいはローレベルのエネルギーの問題であるとか、いろいろ問題点もあげられており、これに対する技術的対応もいろいろ検討され、進められております。わが国におきましては、まず基準外国基準以上にやっているということ、それから審査段階においてその基準に基づいて厳重に審査をする。特に地震国であるということ、そういう情勢、条件にもかんがみまして特に念を入れてやる必要があると思うのでございます。  それから今度は通産省のほうへ参りまして、工事認可、設計の認可、各段階においてやります。そのほか工事の施行中におきましても、通産局等が立ち会いましてそれぞれの監督をやっておるところでございます。  そのほか廃棄物の問題も重要でございます。なお、再処理の問題等関係住民影響するところも大きいと思っております。  これらの諸般の問題につきまして外国以上の念を入れたやり方をもって私たちは国民皆さま方に安心していただくように、・責任を持って政府監督し、実行していくつもりでやっておる次第でございます。
  23. 宮田早苗

    宮田委員 放射能の安全については、周辺住民はもちろんですが、発電所で働く労働者の安全を確保することがまずもつ七必要なことであります。労働者の安全についてはどのように確保されているか。また、従来の障害事例というものがありましたらお答え願いたいと思います。
  24. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 お答えいたします。  原子力発電所の中で働く労働者の安全につきましては、まず原子炉等規制法に基づきまして、設置者がその作業場へ入る出入りのところとか、そういうところで厳重にチェックするという制度をとっておりまして、管理区域とか、汚染管理区域の設定とその区域への立ち入りのときには被曝線量の監視をいたしておるわけでございます。それから放射線作業従業者被曝線量管理区域における外部放射線量率、それから空気中及び水中放射性物質濃度等管理につきましては、一定の記録を保持させまして定期的に報告させるというシステムをとっておるわけでございます。  なお、労働安全衛生法におきましても、労働者のほうの立場から労働省が十分な規制を行なっている次第でございます。
  25. 宮田早苗

    宮田委員 従来の事例がありましたらひとつあげていただきたいと思います。
  26. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 過去の事例といたしましては、日本原子力発電所におけるものといたしましては、従業者の許容被曝線量三カ月につき三レムという一応の基準がございまするが、それをこえたものといたしましては、昭和四十六年七月十五日の日本原子力発電株式会社東海発電所の場合が一件あるだけでございます。
  27. 宮田早苗

    宮田委員 わが国の現在の原子力発電は導入技術にたよっているために、故障や事故のたびにアメリカ調査団を派遣する始末でございまして、安全面で国民に不安を与えることにもなっております。原子力発電の安全確保のためのわが国独自の安全研究体制はどうなっておるのか、また今後の長期的計画についてもお聞かせを願いたいと思います。  もう一つは、安全問題とも関連いたしますが、原子力機器の標準化について、通産省はどのような施策をお持ちなのか、これもお伺いいたします。
  28. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 まず導入技術にばかりたよっているのではなかろうかという御指摘に対しましては、いままでわが国の原子力発電は御承知の軽水炉を主といたしておりまするから、その開発されましたアメリカの導入技術をよくフォローしておくという必要としては当然そういう方向でまいったわけでありまするけれども、その審査の経験を重ねる段階、過程を経まして、またふだんの研究開発を通じまして、自主的にそれらも処理していけるように進んでおりまするのと、また御承知のように、国産技術による原子炉の開発ということに向かっておりまするので、そういう点につきましては、今後外国技術にのみたよるというようなことには相ならぬという方向に進んでおるわけでございます。  なお、今後のそういうような方向にもかんがみまして、原子力にかかわる安全研究には特に重点を置きまして、たとえば本年は安全関係研究といたしましては、現金ベースで百億、昨年が五十一億でございますが、現金ベースにして百一億、百億をこえる金額を非常に大幅に増額いたしまして、それらについて特に重点を置いていこう、今後もそういう方向で考えてまいりたいということでございます。
  29. 山形栄治

    山形政府委員 原子力発電機器の標準化の問題でございますが、この原子力発電安全性の問題、特にこの機器の信頼性の向上というのは、現実問題として非常に大きな問題でございます。これがため、お示しのように最終的には標準化をきちりと国際的にもするというのが一番いいことだと思うわけでございますが、現在の段階におきましては、通産省といたしまして発電原子力設備に関します技術基準を改正いたしておるわけでございます。この改正の中身はほぼ標準化の前段階に当たる作業でございまして、この技術基準の改正を進めるとともに、部分的にもまず標準化に入りたい、・最終的には全般的な標準化規格化に進みたいという段階で、いま鋭意努力しているところでございます。
  30. 宮田早苗

    宮田委員 最後に大臣にお伺いいたすわけであります。  総体的なこととして、電源開発促進のためにいろいろな法案が用意されておるわけでございますが、今日の情勢に対しまする解決がこれで全部果たせるかどうか、こういう点について大臣の御見解をお伺いをいたしまして、質問を終わります。
  31. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一番大事なことはやはり安全性に対する国民の信頼と期待にこたえることであるだろうと思います。そういう意味におきまして、いやが上にもわれわれは原子力委員会等とも連絡をとりまして、この安全性の確保について充実させていくように努力をしてまいりたいと思います。  なお、いままで住民の皆さま方から非常に御不満があった地元住民に対する恩恵が何らないという、そういう欠けていた点についてこれで補って、将来住民の皆さま方にその点については理解していただくという措置が今回の措置でもございます。そういう意味において、当然行なわなければならなかったことを行なうという要素もございまして、御納得をいただけるのではないかと思っております。  しかし、やはり一番基本的なことは、安全性の問題とか、温排水の問題とか、そういう問題について万全を期した対策をとっていくということが大切であると思っております。
  32. 濱野清吾

  33. 石野久男

    石野委員 本法の第一条の目的は、電気の安定供給のために地域住民の福祉向上をはかることが重要だということがはっきりうたわれております。いままで各委員からいろいろとそういう点に対する質問もしていただきましたが、なかなか理解できないものがございますので、お尋ねしたいのです。  発電過程で地域住民が安全性のことで大きな危惧を持っているけれども、この法案目的なり規定の中には、安全性の問題については何らの記載がございません。そういう点についての政府考え方について、先ほど宮田委員に対する通産大臣からの御見解もありましたけれども、いま一度本法と安全性の確保という問題についての関連をどのようにお考えになっていらっしゃるか、それを最初にお聞かせいただきたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点につきましてはすでに御答弁申し上げましたが、安全性の確保ということは、原子力政策一般としてわれわれ最も重大に考えなければならぬ問題でありまして、この点については、原子力委員会等とも連絡をとり、また内閣、政府一体となってその政策を充実させていこうとも思い、また、いきつつあるところでございます。本法は、電源開発促進という面から、従来から欠陥を指摘されて、地方団体等からも御要望のあったラインに沿ってその政策を進めていくという意味でございまして、もちろん安全性一ついてわれわれが重大な関心を持って本法を運用していかなければならぬということは当然のことでございます。
  35. 石野久男

    石野委員 電気の安定供給ということと安全性のかかわり合いの問題については、一月二十日の首相演説の中でも、また二月二十日の科学術庁長官の所信表明の中でも、あるいはまた四月一日に発表されております四十九年度原子力開発利用基本計画の中においても、これは明確にうたわれております。本法ではそれには触れないで、地域住民の福祉向上をはかれば円滑に建設が進むのだというたてまえで立法する、こういうふうに見られますが、大体そういうふうに見て差しつかえございませんか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 地域住民の福祉というものはいままで欠けていた政策を補うというところでございまして、安全性という積極面の政策は、これは内閣全般としてわれわれがおのおの分担して実行していくべきものであり、われわれとしては、そのように実行しておるものでございます。本法は、先ほど申し上げましたように、地方団体等から特に長い間御要望がございました案件でございまして、これは茨城県にいらっしゃる石野さんもよく御存じの点でございます。そういう要望に沿っていままでの政策の足らざるところを補っていくという意味でございまして、安全性原子力政策全般の大前提であり、最も重要なポイントで、内閣全体の政策として進めておるところでございます。
  37. 石野久男

    石野委員 安全性の問題は、電力全般の問題として政府がその責任の地位に立つんだ、こういうお話ですが、ただ、この整備法案そのものを見ますと、安全性の問題にはほとんど触れておるところはございませんし、いま中曽根大臣の御説明によれば、地方の要望にこたえて、いままで足りなかったものを補うんだということでありますが、しかし、本法第一条が規定しておりますところを見ますると、「地域住民の福祉の向上を図り、もって発電施設設置の円滑化に資することを目的とする。」こういうふうになっておりまして、この  「発電施設設置の円滑化に資する」ということのためにこの法案があるというふうに見られます。そこで、これで十分に施設設置が円滑化するかどうかということが問題なんです。われわれはこれを立法するにあたって、この法案がほんとうに施設設置を円滑化するかどうかということがもし達せられなければ、本法をつくっても何の意味もありません。だから、ほんとうに施設設置が円滑にいくかどうかということをしっかりと見詰めることが立法のやはり一番大事な点だろうと私は思います。そういう点では、大臣は、これをやればもう十分に円滑に発電施設設置が進む、こういうようにお考えになっていらっしゃるかどうか、もう一度お聞かせ願いたい。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これで十分とは申しませんが、いままで欠けていて、関係市町村、団体等から長い間要望されていた欠陥を補うという意味においては前進する力を持っていると考えております。
  39. 石野久男

    石野委員 趣旨説明によります、「ここ数年電力会社が発電所立地計画しても、地元の同意が得られないため、国の電源開発計画に組み入れることのできないものが増加しており、また、これに組み入れた後においても地元住民の反対にあって建設に着工できない」というようにいっておりますが、その反対されているのは全国でどのくらいあるんでしょうか。まずそれをひとつ最初に聞かせてください。     〔委員長退席、稻村(佐)委員長代理着席〕
  40. 山形栄治

    山形政府委員 電源開発調整審議会で決定されておりますにもかかわりませず、地元との調整ができないでいまだ着工できないのは、火力原子力を含めまして五カ地点でございます。具体的に申し上げますと、新宮津、尾鷲三田、渥美、金沢、女川の五カ地点でございまして、その規模は三百五十万キロワットでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 そのうち火力と水力はどういうふうに分かれていますか。それから原子力はどうなっていますか。
  42. 山形栄治

    山形政府委員 原子力は女川一号でございまして、あとの四カ地点は全部火力でございます。
  43. 石野久男

    石野委員 その発電出力はどういうふうになりますか。
  44. 山形栄治

    山形政府委員 新宮津は、これは一号、二号両方でございますので、両方合計で九十万キロワットでございます。それから尾鷲三田は、これも三号、四号でございまして、百万キロワットでございます。渥美火力は七十万でございます。金沢火力は三十七万五千でございます。それから女川の原子力は五十二万四千でございます。
  45. 石野久男

    石野委員 この法案のねらうところは、現在進んでないその部分だけがねらいにあるのか、それともやはり電気の安定供給の全体を見ますと、長期計画によりますと、相当発電規模についての火力、水力、原子力に期待するところの類別が違ってくると思いますが、電力の長期計画の中でこれから大きく期待する面、そうして特にこの整備法によって期待する発電量というものはどういうふうに予測されておりますか。
  46. 山形栄治

    山形政府委員 電力需要の推移を見ますと、四十七、八年は大体一〇ないし一一%の対前年伸び率で推移しておったわけでございますが、四十九年度は、御存じのとおり、総需要抑制等で現在の推定では五・一%ぐらいの対前年伸び率に終わるのではないかという見込みでございます。  五十年以降の電力需要の伸びにつきましては、いまいろんなむずかしい要素が多いわけでございまして、政府全体といたしましても、基本計画の見直し等もいま計画中でございます。いろいろとむずかしい点があるわけでございますが、われわれのほうで一応非公式に推定いたしましたところ、四十七年度から五十三年度まで大体八・九%ぐらいの伸びが考えられるのではないかという見方もあるわけでございます。その場合、部門別でございますが、これまた非常にむずかしい問題でございますが、やはり原子力が相当程度の主力で考えられるわけでございまして、現在大体原子力の比率が非常に低いわけでございますけれども、五十二、三年の段階におきましては、全体の需要及び供給の中におきますウエートも相当の高さに上がらざるを得ないとわれわれは見ておるわけでございます。
  47. 石野久男

    石野委員 相当の程度ということじゃちょっとわかりませんので、大体どういうような比率になるのか、そこをはっきりしてもらわないとちょっと論が進まないのです。
  48. 井上力

    井上説明員 電源別の今後の開発の問題でございますが、電源の中には水力、火力原子力とありまして、火力の中には地熱発電といったようなものも含まれます。水力、地熱発電につきましては、これは国内資源でございますので、その開発を極力促進したいということでいろいろな対策を講じておるところでございますが、現在のところ、水力は既設が約二千万キロ、工事中が一千万キロということでございます。  今後の開発でございますが、現在水力の中で大きなものは揚水発電が非常に大きいわけでございます。揚水発電は、これは深夜の火力原子力による揚水によりまして昼間に発電をするということでございますが、これにつきましては、いわゆるエネルギーといたしますと、効率は落としてしまうわけでございます。上げたり下げたりいたしますので、それによる効率は非常に悪くなります。しかしながら、昼間のピーク用に必要だということで、ある一定の揚水式発電所開発計画されております。それから一般のエネルギーを生じます水力でございますが、これはいろいろ地点をいま再検討中でございますけれども、さしあたって四十九年度、本年度でございますが、計画されておりますものは九電力で約二十カ地点、五十三万キロという程度でございまして、一地点当たりが非常に規模が小さくなってきておる。それで、足しましてもなかなか大きな規模にならないということでございます。  それから地熱につきましては現在三万三千キロ、二カ地点ございますが、工事中のものが十八万五千キロ、そのあと開発計画されておりますものは現在調査中でございまして、具体的にまだはっきりしておりません。  国内資源につきましては、このほかに石炭があるわけでございますが、石炭につきましてはなかなか増産がむずかしい情勢でございます。したがいまして、先ほど長官から御説明いたしましたような将来の伸びを想定いたしますと、重油火力あるいは原子力ということがどうしても主体にならざるを得ません。  今後の需要の伸びにつきましては、先ほどございましたように、本年度五・一%、来年度以降平均八・九%程度と想定されているわけでございますが、そのうち火力原子力がどの程度の比率を占めていくかという点につきましては、従前、原子力発電につきましては昭和六十年度、六千万キロという目標で現在計画を進めているわけでございますけれども、その辺の詳細につきましては、通産省の総合エネルギー調査会におきまして六月ごろをめどに現在検討中、こういうことでございます。
  49. 石野久男

    石野委員 火力原子力との伸びについての見通しをいまのところは政府では明確には持っていないということですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前に、六十年、原子力六千万キロワットと一応の目算を立てましたときに、大体の方向として考えたものが、私の記憶によりますと、原子力が二五%ぐらい、それから火力が五〇%ぐらい、残りを水力そのほかという大体のめどであったように記憶しております。それで大体六千万キロワットという数字ができておったと思います。それを今度の新しい石油の問題とか公害問題とか、そのほかの問題等も考慮して、いま総合エネルギー調査会におきまして、どういうような関連にしていくか検討してもらっているところでございます。近く答申が、六月ごろ出ると思いますから、それによりまして正確な方向をきめてまいりたいと思っております。
  51. 石野久男

    石野委員 こまかい数字はわからないそうですが、一般に六千万キロワットというのは、従来、昭和六十年度、六千万キロワット、原子力、こういうことをわれわれは一般に言っておったと思います。いま中曽根大臣の言われる六千万キロワットの中には火力、水力、何々が全部こういろいろあるのだというようなことで、ちょっと食い違いがあるのじゃないかというような聞き方をしたのですが、これはさておきまして、本法が期待しておる発電効果、特に地域住民の反対が非常に強いからということとかね合いで、将来発電を大きく期待するのは水力でもない、地熱でもない、主として原子力である。火力原子力との比率はどういうふうに見て、どれだけの発電量が期待されるかということが明確にされることと本法を規定することとは非常に重要な関係があると思うのです。それがほとんどわからないままで、この法案をつくっても、私は法の成果はあがってこないだろう、こう思いますので、そういう意味で私は聞いておりますが、やはり原子力火力――重油ですね、重油と原子力との関係、特に本法が必要とされる発電個所の問題点の多いところというのは原子力のほうにあるのか、火力にあるのか、水力にあるのか、そういう点について政府考え方、見方をひとつ聞かしていただきたい。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の省エネルギー、省資源政策の方向から見ますと、あのばく大な原油を積んでタンカーが要るとか、水陸連絡設備が要るとか、そういうようなロス等を考えてみますと、原子力の方向に進む必然性を持っていると思います。  それから原価の問題にいたしましても、原油の値段が非常に高くなってまいりまして、発電効率を見ますと原子力のほうが安くついてきている。われわれが最近得た試算でも、原子力では四円ぐらい、それから火力で七円台ぐらいになるのではないか、こういわれております。そういうような面からいたしまして、やはり原子力の方向に発展するというのが歴史の趨勢であると思っており、われわれもそういう趨勢のほうへいかざるを得ないであろうと考えております。  それと同時に、やはり無公害エネルギーという面から見ますと、水力というものも重要視しなければならぬ段階にもなってまいっております。日本の包蔵している水力の可能性について、われわれとしては、次第に奥地になってまいると思いますけれども、やはりこれを開発するということは公害対策の面からも非常に重要な面であるだろうと思います。  それから石炭火力の問題が登場してまいりまして、これは石炭政策の充実という面から見ましても非常に重要な部分でありまして、量的に非常に拡大するというところまで、いまのところは期待し得ませんけれども、しかしいまの二千二百五十万トンを下らざるという最低ラインを上昇せしめていくという面においては石炭火力も非常に重要視すべきである、そういうふうに考えております。
  53. 石野久男

    石野委員 将来の発電は、主としてコストの面からも、あるいは資源問題等を見ても原子力にたよらざるを得ないだろうということでございますが、そういう政府の発想とこの整備法との関係からいたしまして、現在、電調審を通っているものの中で、原子力関係は女川の問題があるというお話でございました。女川の電調審を通ったのはいつでしたでしょうか。
  54. 山形栄治

    山形政府委員 女川は第五十二回の電調審でございまして、四十五年の五月の決定でございます。
  55. 石野久男

    石野委員 四十五年の五月ということですが、いま四十九年の五月です。もう四年です。四年間、これが電調審を通ってから工事着工ができなかった理由はどこにあるのでしょうか。
  56. 山形栄治

    山形政府委員 一番大きな理由は、この原子力発電建設に伴います温排水及び放射能不安に対します、主として漁民側の皆さまの不安の表明でございまして、四十五年以来、県の協力によりまして地元と話し合いが進められておるわけでございます。
  57. 石野久男

    石野委員 女川の問題に対して、この法案は何らかの効果をあらわすと思っておられるかどうか、その点を聞かしていただきたい。
  58. 山形栄治

    山形政府委員 発電所建設が難航しておりますのは、先ほど大臣からもお話ございましたように、一番大きなのは安全、公害、環境の問題でございます。もう一つは、やはり地元に、発電県にメリットがないということにつきましての地元住民の皆さんの不満といいますか、その二つの要素であるわけでございまして、やはりポイントは、一番大事なことは安全、公害対策推進と、これに関連します地元との完全な意見の調整ということであろうかと思いますが、いま申し上げました二つの要素というのは両方お互いに関連し合っておりまして、片っ方だけの要件が充足されましても、もう一つの要件が充足されませんと、やはり電源推進しないという要素があるわけでございまして、この法案が成立いたしまして、その施策が整備されますならば、それともちろん前提としての安全、公害対策推進と両方相まちまして、こういういま非常に問題になっております地点につきましてもその前進が期待されるのではないかとわれわれは考えておるわけでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 あまり回りくどくお話ししなくても簡単にやってもらえばけっこうです。  いずれにしても、やはり女川の温排水問題あるいは放射能の問題についての漁民なり、あるいは地元民との話し合いがつかなければ、この法案が期待するような福祉問題には入っていけないのですね。私は、女川の問題がもう四年間も膠着した状態で、電調審を通っても工事に全然着工できないというような問題こそ、いわゆる電力の安定供給を確保するために考えなければならぬ問題だろうと思いますが、その問題に対しての対策はいま立っていないのですね。あとでまたもう一ぺんその点については聞きますけれども、電力の安定供給を長期にわたって期待するおもな焦点が合わされるものは原子力だということには間違いないと思うのです。  そこで、現在原子力発電計画を持っている、計画中のもので、反対運動にあっていないところ、あっているところはどういうふうな状態であろうか、私はこの問題を十分に見詰めないと本法をつくってもやはり効果が出てこないと思いますから、この際ひとつ北海道から九州までの原子力発電所設置個所における住民の協力体制あるいは反対運動の情勢というものをここでお知らせいただきたいと思います。北海道の岩内のほうからずっとやってください。
  60. 山形栄治

    山形政府委員 現在計画されておりまして、またはいまの女川のようにすでに認可されておりまして地元で調整が難航しておりますのを順次申し上げますと、一つは北海道電力の泊地点。これは漁業関係者や地元住民の一部に温排水影響で現在反対運動が行なわれておるわけでございます。  それから二番目が東北電力の女川でございます。これは省略いたします。  それから三番目が東京電力の福島第二発電所でございますが、これはすでに四十九年四月、地元住民の一部が公有水面埋め立て免許の取り消しの行政訴訟を起こしているわけですが、この理由といたしましては、原子炉の安全性審査のずさんなことと、海岸浸食によります環境破壊などがその理由になっております。  それから四番目が日本原子力発電株式会社東海第二発電所でございますが、これにつきましても四十八年十月、原子炉設置許可の取り消しの行政訴訟が起こされておるわけでございまして、その理由は原子炉の安全性審査のずさん性でございます。  それから五番目が北陸電力計画いたしております能登発電所でございまして、これに対しましては、地元住民の一部から安全性温排水影響及び農地の大幅な喪失というのが反対理由で現在反対運動が行なわれております。  それから六番目が四国電力計画いたしております伊方発電所でございまして、これに対しましては四十八年八月、地元住民の一部が総理大臣に対しまして原子炉設置許可の取り消しの行政訴訟を起こしたわけでございます。その理由は、原子炉の安全性審査がずさんなことと、審査にあたり原子力三原則に違反しているのではないかということを理由にいま訴訟が行なわれておるわけでございます。
  61. 石野久男

    石野委員 いま出されたもののほかに各地にまだ原子力発電予定地での反対運動は相当ありますが、いま長官からお話のあったものだけを見ましても、そのいずれもがやはり福祉向上に対しての施設が足りないからとかなんとかいうことの反対は、いまのところ一つもあらわれてないんです。ほとんどこれは原子力発電炉に対する安全性の問題あるいは温排水の問題、まあ能登の赤柱では農地喪失の問題が一つございますが、ほとんどはみな原子力の三原則に基づく問題点なり、あるいは安全性、環境保全の問題を理由として反対運動が続けられております。  私は本法ができましても、一番大きな期待をかけております原子力発電所の反対運動にはまずほとんどメリットが出てこないだろうと思います。先ほど長官は、一つだけではだめなので、両々相まってということで趣旨説明段階で申し述べておられる、いわゆる地域住民の福祉の向上という要望がある、それにこたえなければならぬと言っておりますが、地域住民の要望だといわれる福祉向上のための要望を掲げて皆さまのところに来ておられる地域はどういう地域なんでしょうか。そしてまたそれはどういうような団体なのか、その点をひとつここで明確にしてください。
  62. 山形栄治

    山形政府委員 この法案につきましては、発電を予定しております、またこれから計画可能性がございます市町村は、従来から非常に強い関心をお持ちでございまして、市町村会といたしましてぜひこの法案を通していただきたいということをわれわれに表明しておりますと同時に、たとえば敦賀地区におきましての市長からわれわれのところに個別にそういう促進方の御要請もあったわけでございます。私のところではございませんで担当の部長のところ等には、そういう個々の地点の市長及び村長さんからも強い要望が出されておるわけであります。
  63. 石野久男

    石野委員 この法案を強く要望しておるのは、各発電を予定されている地域の市町村会あるいは市長さんなり町長さんなり、あるいは大体政府権力ときわめて密接な関係がある方々であって、地域住民――もちろん市長さんは住民によって選出されておりますから、そういう意味では関係はありますけれども、しかし大体推進方というのは政府の意向を組んでいるという方々であり、あるいは電力会社の御意向を十分にくんでいる方だということが言えると思うのです。ただいま敦賀では特に皆さんのところへ推進方の要望があったと言っておられますけれども、しかし敦賀の市長さんは、関西電力の美浜発電炉の三十四万キロワットの発電をやめてくれと言っているのとは違いますか。美浜発電所の三十四万キロワットの発電炉は、御承知のように、いわゆる熱交換器の細管が故障を起こして、八千八百五十二本のうち二千九本、あとまた四本加わって二千十三本めくらせん工事をしておる。現在三十四万キロワットの発電が二十万キロワットおそらく出てない、十五万キロワットも出てないのだろうと思いますよ。先ほど中曽根大臣からは、原子力のコストは非常に安いものにつくと言っておられますけれども、少なくとも美浜第一号炉の発電炉は、キロワット四円くらいではとてもできるものではないと思うのですよ。設計上の三十四万キロワットの半分も発電できないで、どうしてそんな安くつきますか。敦賀の市長はもうやめてくれ、市会のほうでもそういうような要望が強く出ているのと違いますか。
  64. 井上力

    井上説明員 関西電力の美浜発電所でございますが、敦賀市ではなくて美浜町にあるわけでございますけれども、美浜町長のほうからは、現在のところ、そういうお話はわれわれのほうにはございません。
  65. 石野久男

    石野委員 地元ではもうこの美浜の発電はやめてくれという意向が非常に強く出ております。おそらくあの発電所は、もうあと一年もたたないうちに発電はできなくなるだろうと私は思いますよ。このことは、発電炉が実用炉ではないということなんです。実験過程なら三十四万キロワットのものが十五万キロワットになっておっても、実験だからいろいろ調査すればいいのだけれども、実用炉でそんなことでコストが合っていくはずはないし、電力会社は維持できるはずはないのですよ。ほかでもうけているからうまくやっているだけなのであって、このこと自体ではそうはいかないでしょう。私は原子力については、先ほど中曽根さんもおっしゃられたように、やはり推進すべき性格のものであるということについて、その前提としてはやはり安全性の確保、環境保全というものに十分な体制がなければ、それを進めることは非常に危険であると私は思うのですよ。そういう点についてまず私は中曽根大臣に所見だけを簡単に聞かせてもらいたいのです。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、政府全体として安全性の確保、公害問題に取り組みまして、原子力委員会、通産省あるいはそのほか環境庁が手を分け合って充実さしていくべく努力しておるところでございます。
  67. 石野久男

    石野委員 政府全体として考えておるということはしばしば聞くのですけれども、この法案ができますと、たとえば女川なら女川へ持っていけば――女川の場合は、電調審を四年前に通ってまだそれがうまくいかない。ところが、この法案を持っていきますと、道路をつくります、港湾をつくりますというようなことで、これは非常にありがたい法案だということになるわけです。中曽根大臣が言われたように、私は茨城県で東海村のすぐ隣の村です。東海村の村長さんと議長が私のところへ来ました。この法案ができたらこれだけの金が村へ入るのです、こういう計算までして持ってきました。石野さん反対しているけれども、これだけのものが町へ入るのをあなたは入れないようにするのですか、こういうようなことまで言われたんだ。この法案のねらいはそういうところにあるのだろうと私は思うのです。やはり原子力についての考え方、特に原子力の平和三原則のたてまえからする原子力の見方というものを非常に軽く見ていると思うのです。  森山長官にお尋ねしますが、長官は、原子力発電について、電力供給については原子力発電というものは非常にメリットがあるものだという見方からいつもお話は聞いております。私は、やはり原子力発電安全性の問題というのは、火力だとか水力とは違うのだ、火力の場合は、あるいは重油の場合でもそうですけれども、脱硫あるいは脱硝の技術的工作をやれば、一定程度の環境公害を防ぐことはできる、ところが原子力については、放射能についても廃液についても、まだ技術的にそれを克服できないものがあるために、この問題は重油を使う場合の発電とは非常に違ったものだというたてまえもあって、原子力基本法というものが特にこのことについて重大な関心を持っておる、こう思っております。本法ができるについて、長官は、本法の第十条第二項によりますと、「この法律に規定する内閣総理大臣の権限は、科学技術庁長官に委任することができる。」ということになっておりまして、総理大臣の権限をほとんどあなたが、具体的には行政上の処置をなさる。原子力問題についての安全性確保、環境保全についての問題の解明について、もうそれは十分できているといま確信をお持ちになっておられるのかどうか、この点をひとつ聞かせてください。
  68. 森山欽司

    ○森山国務大臣 ただいまお話がございましたが、先ほど中曽根通産大臣からお話がありましたように、石油危機以後におけるわが国のエネルギー問題、特に電力の問題に関連をいたしまして、いろいろな方面から多角的にエネルギーを求めるということの必要がございますから、そのことは否定いたしません。水力も見直す必要があろうと思いますし、また石炭についても従来の方式ばかりでなく、新しい方式で、できるならばそういうやり方も考えていかなければならないことはもとよりでございます。しかし、そういうエネルギーの多角的利用を考えましても、本命は原子力ということでやっていかなければならないわが国の情勢であるということについては十分御理解を願えることと私は確信をいたしております。日本は、アメリカのように石炭は三百年分で、露天掘りみたいなところで入っていくとやたらに掘れるというわけには、数量的にも品質的にもまいらない状況でございますし、またアメリカのように油を持っておりません。一九六〇年代までアメリカは油は全部自給自足、七〇年代に入って輸入したわけでありますが、アメリカ消費量が非常に大きいために、わが国の輸入量全体をオーバーするくらいの量になっておるわけでございます。また天然ガスを非常に大量に産出する。これらの国、たとえばアメリカなんかに比べてみますと、わが国の場合は、石炭につきましても、また石油につきましても、天然かるにつきましても、さらにまた水力資源につきましても、従来の電調審計画によりまして、昭和四十八年から五十三年ぐらいの計画であったと思いますが、新規の水力資源開発というのは百万キロワット程度でありまして、あとは大部分が揚水発電というようなことでございますから、どうしてもこの際はエネルギーの多角的利用ということを考慮しながらも、しかし現実的には当分の間、少なくも今世紀一ぱい近くは原子力によらざるを得ないという状態につきましては、石野委員もその情勢については十分御認識であろうかというふうに考えておる次第でございまして、そういう意味で、原子力というものにたよらなければ日本エネルギー、特に電力需要にこれから対応することが大局的にもできませんし、また来年の七月、八月の電力の最需要期につきましては、すでに電力需要に対する供給予備率は安全度八ないし一〇%を割って、来年の夏の電力需要期は非常に窮屈な情勢になってくる、なかなかやりくりがつかぬという情勢になりつつあるわけでございまして、局地的、局部的にいろいろ問題になります。  それから、いまの状態からまいりますれば、昭和五十三年には供給が需要を下回るというような状態になってまいりまして、ゆゆしき事態に相なると思うのであります。電力会社は電力の供給責任がございますけれども、われわれ政治家もそういう点を考えていかなければならぬと思います。そういう前提に立ちまして安全性の問題について私の所見を申し上げたいと思いますが、原子力の利用というものは、御案内のとおり、軍事利用から出発して平和利用に入り、実用段階に入ってまだ二十年足らずでございまして、きわめて新しい科学であり技術であり産業であるわけでありますが、それだけに未熟な面があるという面が一方においてあるかもしれませんが、反面におきまして、新しいだけに新しい技術の手法を用いて進んでおる、すなわち技術の発展段階として産業革命とか、あるいは技術革新とか、あるいはテクノロジーアセスメントというような段階考えられるわけでありますが、その中で原子力の平和利用はテクノロジーアセスメントの段階を実現しているほとんど唯一の産業、ほとんど唯一の技術あるいは科学であると考えて差しつかえないと思うのであります。でありますから、たとえば原子炉一つとりましても、機械でありますから、局部的な故障があります。人間が操作するわけでございますから、ミス操作はあるわけでございますが、そういう機械であるから故障があるとかミス操作がございましても、とにかくかわりの機械が動くとか、最悪の場合機械がとまるのであります。機械がとまるから安全のしるしなのでございまして、とまってから一々たいへんだというふうにテクノロジーアセスメントの技術段階においては考えるべきでないというふうに私どもは考えておるわけでございますし、また先ほど美浜の炉の燃料棒の問題等についてお話がございました。それにいたしましても一年十二カ月のうち、二カ月半くらい国が監督して行ないます定期検査があるから、そういう問題の問題点がわかってきたわけでございまして、もちろんたとえば燃料棒にふぐあいがあり、それにせんを詰めるとか、燃料棒の鼻の先が曲がっておったとか、そういうことにつきましてどう処理するかという問題は残りますけれども、そういうものがわかったのは現在のシステムでもって国が監督してやる定期検査があるからそういうことがわかるのであって、ある意味においては、これは問題点であると同時に、それだけ安全度を証明しているというふうに考えて差しつかえはないと私は思っておるわけでございます。  そんなことを考えまして、毎々いつもお話をいたしますように、技術段階において念には念を入れる、そういう仕組みにはなっておりますが、しかもなお先ほどから申し上げましたように、実用化に入りまして二十年足らずということでございますから、念には念を入れてその安全性の確保のために努力しなければならない、そういう角度から昭和四十九年度の予算につきましては、皆さまのいろいろな御批判、御叱正あるいは御賛同を得まして、昭和四十八年度の安全性の予算は七十億円でございましたが、四十九年度はこれが百五十億円に、倍以上増加になりました。御案内のとおり、公共事業費は四十九年度は四十八年度の額で内容は四十七年度並みといわれるこの時期に、額において倍以上の増加をしておりますし、これは私どもの心づもりでは三年計画の中の一年目でございまして、二年目、三年目というふうにこの方面を充実してまいりたいと考えております。
  69. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員長代理 長官、時間の関係で簡単にお願いします。
  70. 森山欽司

    ○森山国務大臣 どうぞその意味において、安全性の問題については政府が責任をもって対応して努力をしております点につきまして、すでに十分御承知のところでございますが、御理解賜わらんことをお願いいたします。
  71. 石野久男

    石野委員 長官からいろいろ御説明を伺いました。たびたび同じ説明は聞いているのですが、私のいま聞いているのは、本法案を審議するにあたって、目的がやはり発電施設の円滑化に資するためにこの法案をつくっておるわけですから、その点で福祉の向上を盛んに言うけれども、その前に、安全性の問題あるいは環境保全の問題等について、前提としてそれが確立していないとだめなんじゃないですかということをぼくは言っておるわけですよ。それについて政府は十分の対応策がとれているかどうかということをお聞きしたわけなんです。  もう一度聞きますけれども、長官、ほんとうにその地域住民は、先ほどから言っておるように、原子力に大きな期待をかけておる政府の希望があるにもかかわらず、各地では反対運動が起きておる、その反対運動がほとんどみな安全性の問題と環境保全についての問題、たとえば温排水の問題だとか、何かそういうものなんです。特に東海村なんかに入りますと、今度は使用済み燃料を処理する再処理工場、廃棄物の処理をする問題、そういうような問題についてほんとうに住民が安心できるような何か政府の施策にめどが出ているのかどうかという心配をしているわけなんですよ。  お聞きしますけれども、いま、たとえば美浜の一号炉、二号炉の事故が大きくならなかったのは、定期検査なんかがあって、モニターが進んでいるからだという御意見がありますけれども、モニターで安全性を押えるということは、率直にいいますと、いま私たちが原子力に持っている危惧からいうとおそいのですよ。事故はモニターに反映する前に出てくるものなんですからね。だから、私たちは炉の安全性、環境保全の問題については、モニターには一定程度のものがありますけれども、事故等についてはモニターではおそいのですよ。そういうものについての配慮なり危惧というものについて政府はどういうふうな手を打っているかということが非常に大事だということを言っておる。だから、たとえば放射能問題についてモニター、モニターといいますけれども、放射能の問題について目安線量は出ておるけれども、規制線量というものは出ていないでしょう。それはできているんですか。あるいはまた、温排水の問題についてもそういう規制処置がちゃんと法規的には出ておるのですか。あるいはまた廃棄物処理についての規制は十分に立法的に処理されておるかどうか。そういう点について政府一つの見解を聞かしてもらいたい。
  72. 森山欽司

    ○森山国務大臣 最初にこの法律の第十条第二項に「内閣総理大臣の権限は、科学技術庁長官に委任することができる。」ということで、この法律に対する所見として、特に環境の安全性お話しになりましたが、私は、先ほど来通産大臣が話しておりますように、やはりこれは電源開発という開発利益を地元に還元するという考え方に徹しておる法律であるというように考えております。したがって、安全性問題等の問題には直接関係のない法律であるというように、要するに、電力をせっかくつくったはいいが、そのつくられた電力は町場の工場に行く、町場の店用に使用されて、地元には格別ありがたみがないということに対する不満というものはあるわけでございますから、そのための開発利益を地元に還元するということがこの法律のねらいであるというふうに考えております。したがって、この法律がいろいろ交付金その他を出しますことと安全性の問題とは関係がないというように私は考えておるわけでございまして、その点は先ほど通産大臣のお話しのとおりでございます。  それから安全性の問題について石野委員から、この委員会だけではなくて、科技特等でしばしば御教示を得ておるわけでございまして、必ずしも意見が同じでない場合がございますけれども、われわれは一生懸命そういう方向の御批判というものにこたえるべく努力をする、それはまた前進のために相なるだろうということはいつも申し上げておるわけでございます。いろいろな御批判につきましては十分拳拳服膺してこれらの事態に対処をいたしております。  ただしかし、世界的に見ましても、たとえばアメリカの場合を考えましても、ことしの初めにワシントンのエネルギー会議に出ましたが、そのときレイ原子力委員長に会いました。それで、いまアメリカでは四十三基二千五百万キロワットが現に動いておる。現在の日本の総電力需要量のおよそ三分の一がアメリカでは現に稼働しておるわけでありますし、五十三基が現在建設中であるわけです。またフランスは、あの会議でジョベールとキッシンジャーさんが大いにやり合ったわけでございまするけれども、この原子力問題に非常に御熱心でございまして、いろいろ御批判の意見を出され、フランスとしてはこれからつくる発電所は全部原子力にするということを明言をしておられたわけでございますし、ドイツも力こぶを入れている。世界の趨勢がそういう状態になっておるのでありまして、おっしゃるごとく非常に安全性に致命的な問題がございまするならば、世界各国がこういう問題をそれだけ大きなものとして取り上げるわけがないと私は考えます。  わが国におきましても、昭和三十七年か八年から四十七年の約十二年間、原子炉規制法に基づいて故障の通知が全部で三十七件あります。それはいずれも小さな故障でございまして、人命に障害を与えるような事故は一件もございません。正確にいえば、実は三件あったわけでございますが、その三件はい、ずれもオペレーターの過失によるものであり、しかも受けました放射能基準量以下というようなことでございまして、わが国の実績からいいましても、そういう心配になる事故というものはないわけであります。  これはわが国だけではありません。世界を見ましても、実用段階に入る前の軍事利用とか平和利用のための実験段階は別でございまするけれども、もう実用段階に入ってから以後、この傾向はわが国にとどまらず、世界じゅうそういうような状態になっております。でありますから、私は原子力安全性については全く心配をいたしておりません。先ほど来申し上げますように、テクノロジーアセスメントという新しい技術方法を持っているとは申せ、いろいろ問題はございますから、その御指摘を受けて一つ一つ真剣に取り組んでいくところに安全性確保の最良の道があると思いまして、こういう委員会の席で恐縮でございますが、いつも石野委員の御指摘に真摯に取り組んでおることは御案内のとおりでございます。
  73. 石野久男

    石野委員 長官からいろいろとお話がありますが、本法はやはり趣旨説明のところにもありますように、地元住民の反対があって建設に着工できない例も多々あります。それを何とかするためにということですが、いま長官のお話を聞くと、本法は安全性とは関係ありません、ただ地域住民の福祉向上の面を考える、そのオンリーの法律であるという御説明がございました。こういう法案の立て方であるとすると、私は問題が大きくなってくると思うのですよ。商工で審議されている委員の皆さんもそうだと思いますが、本法をつくるにあたって、その前提になるところの安全性の問題、あるいは環境保全の問題がどうなっておるか、それが十分でなければ、第二の地元住民の福祉の問題に入っていけないじゃないかというのがむしろ論の焦点になっているのじゃないだろうかと思うのですよ。ところがいみじくも長官からは、この法案安全性の問題とは関係ない、こういうおっしゃり方でございまするから、これはまた同僚議員や何かからいろいろ論議してもらいます。こういうような形でこの法律をつくるということになったら、おそらく地元の住民は、それこそあめ玉配布法案だということになってくる。地元におけるところの反対運動の焦点に全然触れてないのですよ。そんなものの考え方でこの法律をつくるとするならば、原子力基本法はやはり議員立法ですよ。原子力基本法に基づいて発電する原子力発電というものについてのものの考え方、それとこの法案との組み合わせの問題を私は議運でもう一ぺん考えてもらわなければいかぬと思う。この法案については、中曽根大臣からも先ほど安全性の問題については大前提だというふうに言われた。だから私は、その大前提だということをこの法案はどういうふうに受けとめておるかというと、それは全然受けとめてないじゃないかということを指摘しているわけなんですよ。  長官にちょっともう一ぺん聞きますが、この法案はほんとうに安全性の問題とは無関係なんですか。
  74. 森山欽司

    ○森山国務大臣 この法律は第一条の目的に書いてありますように「電気の安定供給の確保が国民生活経済活動にとってきわめて重要であることにかんがみ、発電施設の周辺の地域における公共用の施設の整備を促進することにより、地域住民の福祉の向上を図り、もって発電施設設置の円滑化に資することを目的とする。」簡単にいえば、開発利益の地方還元ということをいっておるわけであります。町場の工場や町場の人たちの利益というためではなくて、地元の連中に対してそれだけの開発利益があれば戻すのが当然じゃないか、そういう均衡論の上に立ってこの法律はできているものだと私は理解をいたしております。  しかし、先生のおっしゃいました安全性の問題につきましては、これはもうさらにその大前提になるものでございまして、すでに予算委員会等で総理をはじめ関係閣僚からもお話がありますように、政府が責任を持って取り組まなければならない重要問題である、この法律以前の重要問題であるというふうに私どもは考えております。しかしながら、この法律自体の意味するものは開発利益の地元還元という考え方でございます。でございますから、石野委員も御案内のとおり、先般石野委員と御同道なされました方々ともいろいろ意見交換いたしました際に、安全性にいろいろ問題があるからそういうものを黙らせるために札びらでほっぺたをたたく、そういう趣旨ではないかというような趣旨の御質問がございましたから、いや決してこの法律はそういう意味ではないのである、開発利益の地元還元の問題である、安全性確保の問題とはこれは別個のたてまえのものである、それから、申すまでもなく、私がこの際あらためて申し上げますことは、安全性の確保はこの法律の大前提、大前段になる問題であるというふうに御理解いただきたい、直接この法律対象とするものではない、こういうことであります。
  75. 石野久男

    石野委員 その問題についてはまた論議をいろいろあとでしなくちゃいけないと思いますが、まずそれに関連しまして、四十七年の八月に原産会議のほうから科学技術庁のほうに「安全・環境確保のための体制整備に関する要望」というのが出ておりますね。出ているでしょう。
  76. 森山欽司

    ○森山国務大臣 私の着任以前のことでございますので、私自身はまだそれについて十分わかりませんが、科学技術庁としてはそういうものがあったというふうに事務当局はいっております。
  77. 石野久男

    石野委員 それからそのあとで昨年の一月に原子力産業会議から「原子力開発地域整備促進法(仮称)の制定等の要望について」というのが出ておりますね。
  78. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 提出されております。
  79. 石野久男

    石野委員 これらの要望の中で法案設定についてのいろいろな所見があります。そのあと一昨年の六月に原子力開発利用長期計画というものを科学技術庁では出しておりますね。その長期計画によりますと、今後の大規模開発にあたって一段と安全性の確保と環境の保全に万全の配慮を払わなければならない、こう書いてあります。ですから、原子力発電については、安全性の確保というものはもう大前提だというふうなことはおのずからわかるだろうと思うのですよ。そしてそういう中で原子力産業会議は、「原子力開発地域整備の促進を効果的に実現する上では、その前提として、先に日本原子力産業会議が要望を行った安全・環境上の問題に関する国の体制・対策等が不可欠である」というふうに言っているわけですよ。ですからいま皆さんが、政府が提案しておりまするこの法案を進めるにあたって一番大事なのは、先に四十七年八月に体制整備に関する要望書を出している、その要望書が一番大前提でございますよ、こういうふうに言っているわけです。それでその大前提になるところで何が書かれておるか。その要望書の第三点にいきますと、ここではもう完全に「原子力開発地域整備の促進を効果的に実現する上では、その大前提として、」「安全・環境上の問題に関する国の体制・対策等が不可決である」と言っているのですよ。ですから、私が先ほどから聞いているのは、国の体制、対策ができているかどうかということを聞いておるのですから、そして先ほど具体的には私はその規制措置が十分できているかどうかということを聞いているが、それにちっとも答えていないのだ。ですから、その点を明確に原子力局長からでもいいですから答えてください。
  80. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 安全体制につきましては、まず規制法上の体制につきましては、先生御承知のとおり、審査から設計工事認可、それから運営、運転をいたしました際の管理、それから排出、廃棄の管理等、厳重な管理を行なっておりまするから、これはたとえば廃棄にいたしましても、最近は一・数ミリレムという実際にはその程度の廃棄が行なわれるという状態に相なっております。  それから安全研究ということは、先ほども御答弁申し上げましたとおり特に今後とも力を入れてまいりたいと考えておりまするが、先生指摘審査体制ということにつきましては、まず四十九年度には人員の増加を要求いたしまして、これが従来の行政官庁の例としては非常に大幅であると思われますけれども、十名程度の人員増を認められまして、それからさっき申し上げました安全研究の予算としては非常に大幅な予算が認められまして、今後に処してまいりたいと考えます。  なお、御承知のように、原子力委員会では安全会議というものを設けまして、この方面に知識経験を有する者を集めまして、原子力委員会としてもこの問題については重点を置いていくということで、先般第一回会議が開かれました次第でございます。
  81. 石野久男

    石野委員 安全体制の問題について規制措置が立法的にも十分にできていないじゃないかということをぼくは聞いているのですよ。たとえば放射能の問題について、放射線量について立法的な規制措置が全然できていないでしょう。目安線量というものは出ておりますけれども、規制措置はできていないじゃないかということを私は言っているのですよ。あるいはまた温排水についても規制措置もできていないじゃありませんか、廃棄物の処理についての規制措置も明確に出ていないじゃありませんか、こういうことを私は言っているのです。たとえば原子力の長期計画に基づいてもしその計画どおりに進んでいるとすれば、あちらでもこちらでも廃棄物は数多く出てまいります。使用済み燃料もたくさん出てまいります。五十二年度までは、どうにか各発電所での出た使用済み燃料の処理を東海の再処理工場でもし予定どおりいけば処理できるかもしれません。だけれども、五十三年になるとできないでしょう。そういうものについても全然やはり対策が立っていないじゃないですかということを私は聞いているのですから、その問題について答えてくださいと言ったのです。
  82. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 まず再処理体制についてでございますが、再処理工場は、現在御承知のとおり動燃事業団で建設中でございまして、昭和五十年度後半に操業を開始するという予定に相なっております。この再処理工場の稼働をもちまして日本のこれからの再処理をすべて行なうということは十分でないと考えまするが、その分につきましては外国にこれを再処理させるということで、そういうことで、両方の方法によりましてこれは処理できるもの、こういうぐあいに考えております。  それから廃棄物の処理、処分ということにつきましては、かねがね検討は続けておるわけでございまするが、現在といたしましては、非常に低いレベルの廃棄物と、それから低いレベルの廃棄物と、それから中程度廃棄物と、それから高い廃棄物と分けまして、そのごく低いほうは、たとえば適当な措置をして放出する。低いレベルのものはその固形化等をしてこれを処分する。その処分の方法につきましては、陸地、海洋等の処分の研究と見通しを目下検討中でございまして、中程度及び高いレベルにつきましては、なおそういうことで昭和五十年度後半ぐらいまでに処理方針を決定するように検討中でございます。その間におきましては、いまのような処理によって貯蔵庫に貯蔵するということで十分処理できるものと考えております。  なお、長期的には今年度の予算でそれについての長期的な体制も含めてどうするかということの調査費がつきましたので、これに基づきまして検討を続けていくという所存でございます。
  83. 石野久男

    石野委員 予算措置をどうするこうするという問題もさることながら、安全性の問題や環境保全の問題についてみんなが心配しているのだから、そういう問題についての規制措置が十分できていないと地元での不安というものが排除されないでしょう。かりに皆さんから言えば、何だか左がかった者が扇動してどうだこうだというようなことを言うけれども、そういうことを言わないためにも一規制措置についての立法措置が必要なんじゃないか。放射線の問題についても、線量規制についてはまだ明確にそういう線量規制の問題も出てないじゃないか。温排水の問題についても、何度までどうだということの規制措置もないじゃないか。いま再処理の問題について外国に依存すると言うけれども、この四十九年度原子力開発利用基本計画の中には、「使用済燃料再処理施設については、昭和五十年操業開始を目標に主要な施設建設を完了し、試運転を行うとともに、第二再処理工場に関する調査検討を」すすめていって、第二再処理工場の設置のことをちゃんとうたっているじゃありませんか。だから外国に依存するのではなくて、むしろ第二再処理工場をつくってやるということなんでしょう。その構想はいまどういうところまで進んでいるかということもこの機会にちょっと答弁してください。
  84. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 第二再処理工場につきましては民間のほうで、第一は国で、これはわが国で初めての技術でもありますし、動燃事業団といたしましたが、第二再処理工場につきましては民間にこれを期待するということで、民間のほうもそれを進めるべく、先般の原産会議でもその態度を固めたようでございまして、その第二再処理工場は民間が進めるということで検討中でございます。
  85. 石野久男

    石野委員 いつごろから民間がやるのかわかりませんが、それまでの間は外国にお願いするんだということをたびたび言っておるわけですが、その外国というのはほとんどアメリカでございますか、どこですか。
  86. 森山欽司

    ○森山国務大臣 再処理工場の問題は、先ほどお話がありましたように、ことしから始運転を開始して来年から供用する動燃事業団の関係のものがございます。しかし、これは原子力発電所にいたしまして八百万キロワットぐらいのところで能力一ぱいになりますから、あと二、三年くらいたちますと満員になりますから、それをどうするのだというのは確かに問題点でございます。それにつきましては、一番最初のやつは国がやったけれども、第二回目以降は民間でやろうというかけ声がだいぶ前からかかっておって、原子力委員会でもそういうのを進めるという文書も出ておるわけでございますが、この問題は単に構想にとどまらず、いま電力業界の間でいろいろ御相談はしておるようでございます。しかし、これをつくるために相当の手間ひまがかかることはもう事実でございますから、その間に若干のあきが出てきた際にそれをどうするかという問題がございまして、これは現在も英国とかアメリカ等に一部お願いしているような線で当面を処理するということも必要でございましょうし、それから将来の問題といたしましては、たとえば豪州とかそれから南アとか、要するにウラン資源を買っておるところの国のほうにそういう施設をお願いしていくという考え方もあるわけでございますし、そういうことを関係者の中でいろいろ御相談したという経過もございます。しかし、それは少し遠過ぎますから、少しアジア地区でもそういうことを考えたらどうだという考え方もあるわけでございまして、現にこの間、日韓科学技術閣僚会議で、私も参りました際に、韓国も原子力発電は始めるようでございまして、どうしても再処理を考えなければならぬ、日本にやってくれという話もございましたが、日本のほうはこのとおり満員でございますから、御自分のほうで考えられて、一緒にそういう意味でこういう問題考えたらどうかという話もあった。これから検討しようというようなこともいっておりまして、日韓科学技術閣僚会議の共同声明にはこのことも触れております。こういうようなことで、多角的にこの問題を処理してまいりたいというふうに考えております点を御了解を願いたいと思います。  それから先ほど来お話にありました目安線量と規制線量の話についてちょっと見解を申し上げたいと思います。  原子力施設安全性というのは、最終的には周辺公衆に被害を及ぼさないということによって確保される、これはもう申すまでもないことでございますが、この軽水炉の問題の平常運転時における規制線量は、これは一般と同じように五百ミリレムということになるわけでございますが、現在は目安として五ミリレムまでいっておるということでございます。自然放射能が百ミリレムでございますし、その自然放射能が一〇%ぐらいずつ上下いたしますから、軽水炉付近における線量五ミリレムというのは事実上はほとんどないにひとしいような状態になっているわけでございます。それを規制する必要があるかどうか。法定規制は、依然としてICRP、国際放射線防護委員会の基本線でけっこうだと私思っておりますが、現実的に五ミリレムというのは、自然放射能は百ミリレムで一〇%前後の増減があるとするならば、事実上なきにひとしいようなことが今日目安になっておる、そこまで軽水炉発電というものは現在進んでいっておるのだということをどうか御理解を願いたいと思いますし、運用はこれでよろしいんじゃないか、こういうふうに思っております。この点はかねがね石野委員にも申し上げているところでございますが、どうか御理解賜わらんことをお願いいたします。
  87. 石野久男

    石野委員 問題が分かれてきますからなんですが、まず目安線量を五ミリレムまで持っていって、一般に対してはもうこれ以上規制せぬでもいいじゃないかというようなお話でございますが、こまかい論議はまたあとでしますけれども、低レベルの放射能について、どんなに私たちは注意しなくちゃならないかということは、これはICRPの中のいろいろの規定もありますが、特にアメリカなんかでは、最近やはりプルトニウムだとかトリチウムだとかいうようなものの微線量の被害というものに非常に関心が高まって、特にプルトニウムなんかになりますと、ものすごい低線量であっても、ピコキュリーの段階にあってもたいへんなことになりますよという、こういう注意まで出てきておるわけなんですよ。私は、大臣がこういうようなものはもう規制しないでもいいんじゃないかというような発想からものを言っておることに非常に大きな問題があると思うのですよ。これはこういうところで論議はいたしませんけれども、そういうたてまえであるからこそ現地におけるところの反対運動がいずれにありやということを無視して法律をつくろうとする。それで何か金をばらまけば地元の人たちは賛成してくれるように考えておるというのはたいへんな見当違いになるのじゃないかと思います。  前提条件としてのいわゆる安全性の問題、環境保全の問題について、特に再処理の問題について言うなれば、五十三年の段階になれば、もう満ぱいになってしまうのですよ。満ぱいになったものに対しての処置方法が全然ない。いま長官は、日本で出たこの使用済み燃料の処理等についてアメリカとかイギリスに頼むとかいうことを言っておりますが、これはほんとうにアメリカに頼むつもりですか。アメリカで、これを日本が頼むということを聞いたらたいへんな騒ぎになると私は思うのだが、そういう点について長官にもう一ぺんその使用済み燃料の依頼先をどこにするつもりか、それだけでいいですから、時間がありませんので、あまり長ったらしい答弁はいいですから伺いたい。
  88. 森山欽司

    ○森山国務大臣 それでは一つだけ先ほどの五ミリレムの問題で……。もちろんICRPのアズ・ロー・アズ・レディリー・アチーバブルという、できるだけ低くという考え方の線に立っていることはどうかひとつ御理解願いたいと思います。  それから再処理の問題についての当面の措置を私が申しますと、何か政治的にうまいこと言いくるめるようにお受け取りになってもいけませんから、いま伊原次長に事務当局がどういう検討をしておるかということをちょっと御説明させます。
  89. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 日本の再処理能力が欠けた場合にどうするかという点につきましては、諸外国の再処理能力に十分余裕がございます。     〔稻村(佐)委員長代理退席、委員長着席〕この点は、本年一月に原子力産業会議が中心となりまして海外調査をいたしまして、その結果明白になっておりますとおり、現時点においては主としてヨーロッパ諸国、イギリス、フランスに十分再処理余力があり、将来はアメリカにおきましても新しい再処理工場の大規模なものができますので、そこにおいて十分再処理余力がある。したがって、日本から委託すれば再処理を十分引き受ける、こういう調査結果になっております。
  90. 石野久男

    石野委員 そうすると、アメリカでも受けるということですね。それまでの間というのはみな外国に依存する、日本で第二の再処理工場は国はつくらないのですね。これは民間がつくるのですね。その点もう一ぺんちょっと聞いておきます。
  91. 森山欽司

    ○森山国務大臣 原子力委員会の従来の考え方は、そういう考え方で臨んでおったわけであります。
  92. 石野久男

    石野委員 いまのところは国が第二工場はつくらないという考え方ですね。
  93. 森山欽司

    ○森山国務大臣 第二の再処理工場は民間がやるという考え方でございます。
  94. 石野久男

    石野委員 再処理工場の第二工場が民間でやられるのだということになりますと、どこでやるかということが具体的にまた問題になってきます。予定されるところは、政府ですからわからないでしょうが、これはまたたいへん問題が大きくなるだろう、こう私は思いますが、もう一ぺんもとへ戻りまして、目安線量の問題については五ミリレムということが出ておりますけれども、法的に規制されるべきものがまだ出ていないということ、出ているか出ていないかということについてのはっきりした答弁、それからもう一つ温排水についての規制措置ができているのかどうなのか、それから第三には、いわゆる廃棄物等について、これについての処置方法、たとえば放射性廃棄物の固体廃棄物はどういうふうに処置するのだということについて、いまどういうところまで確実に政府の方針がきまっているのかどうかということをここではっきりと、簡単でいいですから、結論だけでいいですから、ひとつ伺いたい。
  95. 森山欽司

    ○森山国務大臣 政府委員をして答弁いたさせます。
  96. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生指摘の幾つかの点のうち、まず規制値につきましては、原子炉等規制法によりまして周辺公衆に対して年間五百ミリレムという規制値がございます。これに対しまして目安量がこの百分の一ということで、さらにそれを実際の運転は下回る、こういうことで努力をいたしておる次第でございます。  温排水につきましては、これは原子力発電特有の問題ではございません関係もございまして、電気事業法の守備範囲になるわけでございますが、この環境審査につきましては、通産省で環境の御専門の方の御審査をいただきましたのを原子力委員会がさらに環境担当の御専門の方の御意見を聞いて検討した上で十分にその問題点を理解し、総合判断をした上で原子炉設置の許可をする次第でございます。  なお、温排水規制につきましては、環境庁が中心となりまして目下関係省庁と連絡をとって規制検討をいたしております。  さらに放射性廃棄物の処理処分につきましては、本年度予算におきまして放射性廃棄物処理処分センターの調査費をいただきましたので、それをもとに、主として固体低レベル放射性廃棄物の処理処分のセンターを設立すべく目下鋭意検討調査中でございます。
  97. 石野久男

    石野委員 通産省のほうで、関係するところのお答えがいただければ伺いたい。
  98. 井上力

    井上説明員 お尋ね温排水基準の問題でございますが、水質汚濁防止法という法律の中に環境庁が基準を設けるべく現在検討中でございまして、この結論が出次第、電気事業法のほうにおきましても、水力、原子力温排水規制にその基準適用していく、こういうふうに考えております。したがいまして、現時点におきましては法的な基準はございませんので、魚とかあるいは海水の拡散とか、そういう問題に関します専門家先生方に顧問をお願いいたしまして、私どもの内部におきまして実態的にケース・バイ・ケースに判断をして環境のアセスメントをやっておる、こういうことでございます。
  99. 石野久男

    石野委員 いまの御答弁からいたしますと、放射線量については五百ミリレムという規制措置はあるけれども、目安線量がもう五ミリまできているということでございますけれども、それだって五百ミリレムでは、今日的な世界的な常識から言いましても、もう五百ミリは問題にならないと思うのです。温排水の問題はまだ検討中だ、それから廃棄物の問題についてもこれはやはり全然見通しはついていない、こういうことでございますが、こういうように全然、検討中でございます、まだ結論は出ていませんということをこの前に置いておいて、それでこの法案はもともとやはり安全確保、環境保全確保というものが前提とならなければこの法案の効果がないということが大臣の説明の中からも出ているわけですよ。片方の前提になるものが全く、検討中でございます、暗中模索でございます、これだけは税金を取って、来年はもうこれだけの税金は町へ配付になります、こういうことになるんですよ。これはどういうことなんだ。結局地元でとにかく安全性の問題や環境保全の問題で大騒ぎをしている諸君に対しては何の答えもしないで、とにかく黄金の金をばらまく、こういうことだけがこの法案の、いままではっきりわかった所在なんですよね。だから一般には、この法案はいわゆるあめ玉配布法案だ、こういうわけなんですよ。私は、こういうことではまずいと思うんだ。特に、私は先ほどから言っておりますが、やはり廃棄物の処理計画というものをはっきりしなければいけないと思います。私はまたあと委員会でも聞こうと思っておりますけれども、少なくともやはりこの廃棄物処理の計画について、これは国内的あるいは諸外国のそういういろいろなものがありましょうから、こういうものは本委員会に対してもまず資料として出してもらって、その出してもらったものを各委員検討の上でやはり審議をしていきませんと、この法案はできたけれども、前提になるものは何一つとして対策が出てこないのではどうにもなりません。とにかく原子力発電計画については、一応四十九年度の利用基本計画というものがありますから、これはやはり本委員会に対しても資料として出してください。そしてこの計画に基づいてどういうような状態で廃棄物は蓄積されていくのか、それをどういうふうに処理しようとしているのかということについての計画も資料として出してください。そういうようなことを十分検討しない上に本法をつくるということになると、やはり原子炉だけはじゃんじゃんできてしまう。しかし地元では、どんなことがあってもやはり理解ができたいという状態で反対運動が残っていく。これではどうにもならないんじゃないかと思います。  中曽根大臣にお尋ねしますけれども、やはりいま科学技術庁の皆さんからいろいろのお話がありましたように、前提となる安全性の問題、あるいはまた環境保全の問題等についての国の体制がまだ十分できていない。そういう状態のもとで地域住民は納得しないと私は思うんですよ。そういう問題を無視してこの法案をつくっても、逆効果だけが出てくるのではないだろうかと私は心配しますが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 必ずしもできていないとは思いません。現にやっておるし、またさらに改善を加えてやろうとしておるわけでございます。温排水の問題にいたしましても、私は前に科学技術庁長官をしている時代から先生といろいろ問答を取りかわして御質問をいただいて、そうしていろいろなデータをそのころからもう収集してきておるわけです。これは火力発電についても温排水は出ておるわけであって、その火力発電に関するデータもすでに若干はあるわけです。蓄積もあります。だがしかし、五十万キロとか百万キロとかいう大型になったものについては、プルーブンデータというものはまだ世界的にはない、証明されたデータというものはまだ日が浅いからないわけであります。それはある意味においては類推あるいは小さな規模における実験等をもって想定しながら進んでやっているわけであります。何キロならば一度の範囲、一度の範囲の場合にどういうことが起こり得るか、これは尾鷲でどういうことが過去において起こっているか、火力発電について、温排水についていろいろ検討も加えて、これならばだいじょうぶである、そういう反応を確かめつつ進んでおるところであります。  それから廃棄物にいたしましても、大体ローレベルの使い捨ての紙とか、そういうようなものはドラムカンに入れておる、これが何千個くらいになるであろうか、こういう計算も一応はしておるようであります。それが重いレベルのものになった場合には貯蔵庫にたくわえておく、それがある一定限度以上になった場合にはコンクリート詰めにして海中投棄をせざるを得ぬだろう、そういうような外国もある程度やっておることを日本もまねをしつつ一応の資料を得つつ、そういう準備はしておるわけであります。  そういうわけで、世界的レベルに合ったいろいろな温排水やあるいは廃棄物に関する対策は講じておるのでありまして、その考えていることを全部いま実行しているというわけではございません。それはいま言ったように、世界的にまだ新しく出てきたものでありますから、完全なものをやるについてはデータが不足しておるという意味においてはないのであります。しかし、毎日毎日新しいデータを見比べつつ改善を加えて処理をしているということはあるのであります。それは世界的レベルの基準においてやっておるわけであります。進行速度に応じて日本もおくれないように確かめつつやっておるわけであります。やはり新しく出てきた科学の産物については、そういうやり方で進むことがやむを得ないやり方であると思うのであります。  そういう観点からして、いま御指摘のように、一方において危険性があり、一方においてニンジンを与えて進めさせようという矛盾ではないかという御指摘がございますけれども、そういう乖離した情勢ではないとわれわれは考えております。全然片っ方をやらないで、それで片っ方だけやるというのではなくして、確かめつつ一歩一歩改善を加え、新しい方向へ安定するように、安全性を増すように一歩一歩進んでいるのだ、それは世界的に新しい科学の場合にはやむを得ない措置であるのだということを御理解願いたいと思うのであります。
  101. 石野久男

    石野委員 新しい科学だからやむを得ないものがある、それはやはり実験段階におけるところの問題の処理としては一応うなずけるのです。しかし、こういうふうに実用炉というような形で、しかも国がエネルギー対策をすべてそれに依存しなくちゃならないというような考え方からいきますと、その考え方は地域住民に対して非常な危険負担を前提としなくちゃならなくなってくるだろう、私たちはこういう考え方をしておるわけでおります。こういう点は確かに中曽根さんと私たちとの違いになるのかもしれない。たとえば温排水の問題について、通産省はまだ環境庁との間の話し合いができていない、こう言うのです。しかし、その温排水の問題は、地域住民の反対運動と非常に関係があることは言うまでもない。たとえば先ほどお話がありました北海道の岩内の問題ですね、泊の問題なんかでございますが、ここらに行きますと温排水問題が最も大きな反対理由なんですね。あそこはもう中曽根さんも御承知だと思いますけれども、スケソウダラの一番ものすごくとれる場所です。そしてスケソウダラというのは温度八度までのところではとれるんだそうです。しかし九度になるともうスケソウダラは一匹もいない。だからはえなわをする船は温度計を入れておって、海中の温度が八度までのところははえなわを持っていく、だけれども九度になるとスタンバイで方向転換して、はえなわを一もう九度のところは、はえなわをやったって一匹だって食らいついてくれないんだ。そういうところなんですね。だから、温排水問題等についての処置ができなければ漁民が反対するのは当然なんですよ。そういうように、現地における地元で反対している諸君に対する基本的に解決してやらなくちゃならない問題が解決されないでいて、そして片方で税金をあなたがたのところに配付してあげますよというようなことで、私はあめ玉だと言うし、中曽根さんはニンジンだと、こう言いました。まあニンジンでもあめ玉でもどっちでもいいですが、とにかくそんなものをやったってこれは聞きませんよ。だからこの法案は、そういう問題をもう少ししっかりと考え直さないと、中曽根さんは発展段階だからしかたないんだと言うのは、それは実験という立場ではいいけれども、科学技術庁長官のごときは実験なんて一言も言わない、これはもう実用段階だ、もうそんなことを心配する必要はないと言い切っているわけなんですよ。だから中曽根さんの言い分と森山さんの言い分とでは、一つの炉に対しての見方も全然違うのですよ。まだ中曽根さんのほうは、新しい科学だからと、こういうことで謙虚でいいと思うのです。森山さんは全然そういうようなことを考えなしに、だいじょうぶだ、だいじょうぶだと言うのです。だから、そうなると原子力基本法の守り番をしなくちゃならない科学技術庁長官の問題点が出てくると思うのですよ。私は原子力基本法の立場に立って原子力発電というものを見ますと、こういう法案とはそごを来たしますよ。矛盾をしてきますよ。やはり安全性の問題、環境保全の問題についての原子力基本法が期待しているもの――しかもお尋ねしますが、公害基本法によりますと原子力発電というものはどういう扱いをされておりますか。これは科学技術庁にちょっとお聞きしますが、どういうような扱いをされているんですか。
  102. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 基本法八条によって原子力基本法及びその関係の法令に基づくものは除かれております。
  103. 石野久男

    石野委員 これは法案審議の過程で公害基本法はその八条で放射能の大気汚染については排除しております。同時にまた、原子力基本法にゆだねられている面で規制措置をつくるべきことが期待されております。そういうものはまだ実際問題としてできていないんですね。だから、そういうように不備なものがたくさんあるからこそ、原子力については現地住民が不安感を持ち反対運動が起きるのですよ。これは法案提出者の政府とわれわれとの間に考え方の違いがあるだけではなくて、いわゆるこの施設者であるところの電気事業をやる人たちは開発、増設というようなことだけを考えて、地域住民に対する安全性の問題、環境保全の問題については全く顧慮してない、そういう立場でこの法案が立案されているという結果になってしまっているのです。率直に言えば、原産会議はそのことを大きく期待しているわけなんです。国にその体制をつくらなければいけないということの要請をしているのだけれども、国はその体制を整備もしてなければ対策も立ててないという中でこの法案をつくるということについては現地住民は納得しない、私はそう思うのですよ。この点について通産大臣と科学技術庁長官とから、現地住民はその点について納得するかどうか、そしていま反対している諸君にこたえられるかどうか、その点についての所見を聞かしていただきます。
  104. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 環境並びに公害の面からの管理というものは、それぞれの基本法なりあるいは法律がございまして、その面からのいろいろな制約を関係各省並びに企業者が実行し守っていくという形でそちらの部面からの注意を実行していく、それから安全に関しては原子炉規制法そのほかの諸般の法体系がございます。それによって、ICRPを基準にしてつくっておる日本のそれらの諸基準を厳格に守っていく。これは基準自体を厳格にすると同時に、それに基づく審査を厳格にし、かつ着工その他の段階においても政府が責任を持って監督していくという形において安全性が確立されておるのであります。こういう新しい科学技術の産物につきましては、すべてオールマイティで全部検証済みというわけにはまいりません。実験段階から次第次第に成長させて、そして試行錯誤的に安全率をとって進めてきておるわけでございます。初めは五万キロ、それが十五万キロ、それが三十六万キロ、それが五十万キロ、最近は百万キロ、それは実験を重ね、経験を重ねて安全率をとりながら次第次第にそういうふうに成長してきておるのでありまして、これは火力発電の場合においても、ほかの科学の場合においても同じような歩みをたどってきたのだろうと私は思います。ただ、原子力の場合は影響が非常に大きいものでございますから、ほかの場合よりもさらに深い注意をして安全率をとって進まなければならぬと思っております。そういう点については、政府の現在の諸基準法律等はそういうものに対応するものになっているものと確信しております。われわれといたしましては、発電あるいは工事地点の実行というようなものについては、いまのような原子力がほかのものと違うぞという観点に立って、扱いを慎重の上にも慎重にしていくというかまえを第一義にやるべきであると思います。そういう観点に立ってわれわれは進めてまいりたいと思います。  もう一つは、やはり住民の皆さんに納得をいただく合理的な説明、理性的な処置ということが非常に重要であると思います。そういうことがないと、長期的に見て発展性を有するものではございません。そういう点については、われわれが持っておる科学的知識、われわれがやっておる安全に対する確信を詳細にお知り願って、理知的な理解の上にこれを進めるように努力してまいりたいと思っております。
  105. 森山欽司

    ○森山国務大臣 先ほど公害対策基本法第八条によりまして「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法その他の関係法律で定めるところによる。」原子力を抜いておりますが、これは原子力のほうがしっかりした規制ができておるから抜いておるので、だらしないから抜いておるのではございませんで、どうかその点は御理解願いたいと思います。  それから先ほどの規制線量の問題でございますが、いま原子炉の周辺地区におきましての放射能は五ミリレムでございまして、先ほども申し上げましたように、自然放射能は百ミリレム、ICRP、日本原子炉規制法においては五百ミリレムです。およそ百分の一になっており、それから、自然放射能の二十分の一になっておるわけでありますから、もうそういう意味の心配はあまりないのであります。それから再処理工場の場合につきましても三十二ミリレムくらいでございますから、これも自然放射能が百ミリレム以下であり、またICRP、わが国の原子炉規制法に基づく五百ミリレムのおよそ十五分の一くらい、自然放射能の三分の一くらいでございますから、私はそういう意味において安全度とはいえ、帰するところ周辺住民に対してそういう放射能がどこまで影響を与えるかということでございますから、低いは低いにこしたことはないことはもうICRPの基本方針に書いてあるとおり、私どももそういうふうに思います。しかしながら、そういう目安線量があって、しかもそれは規制線量よりはるかに低い、安全率について全く心配のないくらいの線まで現在行っておるわけです。軽水炉発電は今日そこまで進化、発展をいたしたわけでございますから、その際、規制線量を法律上引き下げなければおかしいという御議論には私は納得できない。むしろ法律できまっておる限度の百分の一程度になっておるならば、自然放射能の二十分の一程度になっておればそれが安全のしるしではないか、私はそういうふうに考えたいと思っておるわけでございます。何か私が科学技術庁長官なのにきわめて安易な考え方を持っているようにおっしゃられるわけでございますが、私は、中曽根通産大臣とそういう意味においてそう意見の差はないというふうに考えておる次第でございます。  そこで最後に、この法律の問題につきましてどう思うかというお話でございますが、私は、先ほど来申し上げましたとおり、この問題は原子力発電所の開設という一つ開発利益、できた電力が町場の工場や一般の民生用に使われて、地元に何のありがたみもない。やはり開発利益の地元還元という公平の思想で始まったことでございまして、その法律の前提になって真剣に取り組んでいかなければならない安全性の問題について、何かそれを糊塗するためにこういう法律考えたのでは全くございませんので、私は、その意味におきまして、どうか石野委員のような有力な方々から、この法律の本旨につきましてそういうふうな見方を持たれることはよくわかりますが、しかしながら、この本旨につきまして先生からもひとつ関係の方々によくお話も願い、ぜひ皆さまにわかっていただけるように、私は御協力をお願いしたい。先生が一番よくこういう問題を知っておられるのですから、ぜひひとつお力添えを願いたい、そのように思っておる次第でございます。
  106. 石野久男

    石野委員 私がよく知っているから納得するように一生懸命ちょうちん持ちしろということだけれども、それはなかなか簡単にいかない。中曽根大臣からお話がありまして、新規の産業だから、これは試行錯誤を重ねていかなければいかぬということを言われた。新規産業で実験段階ではしようがないけれども、これだけ大きな施設を試行錯誤を重ねていくよりしかたがないのだということになると、施設周辺地域の住民は全く完全なモルモット化されてしまうのですよ。そんなことはちょっと聞けないということだけ一言申し上げておきたい。  それから、いま森山さんからもお話しの、再処理工場の問題で、三十二ミリレムでございます云云というようなことを言っておるけれども、しかしあなた方が出しているたとえば再処理工場の審査書類の中で見てごらんなさい。一〇二ページの八千キュリー、これはクリプトン85、それに全身被曝の三十二ミリレム、それから廃液によるところのトリチウムの問題からいけば〇・七、そして全身被曝の外部照射、内部照射、ずっと計算してくると、皆さんから出ている書類だけでも年間四十三・七ミリレムになるのですよ。これはまたあとでこまかく言いますが、そのほかにやはり危険物の貯蔵で行くえ不明になってくるプルトニウムはどうなるのだ、高レベルの放射性液はどうなるのだというような問題になったらますます問題が大きくなってきます。それだけじゃない、今度は事故における被曝評価の問題なんかでも、これはほんとうにでたらめだといっていいくらいなんです。いま私たちは、ウラン燃料だとかプルトニウムなんかについての放出量の問題がどんなふうに人体に影響してくるかということを考えていきますと、ICRPの勧告線量をもとにした値だけでも、これは大体千六百ピコキュリーになるのです。非常に重要な問題になってきますが、タンプリンさんの説によりますと、これは〇・〇一四ピコキュリーの段階で肺ガンを起こすということがいわれているのですよ。ですから皆さんが言うように、ピコキュリーなんてどうでもないということではなくなってくるのです。これは時間がありませんから多く申しませんけれども、私は、放射能の問題についての線量規定問題は非常に重要だと思っておるのです。そういうようなことで法案を進めようとする皆さんは試行錯誤を重ねる中で進まざるを得ないのだ、こういうことを言うけれども、試行錯誤の対象になるところの周辺地域住民というものはたまったものじゃありませんよ。だからそこでは必ず問題が起きてきて、反対運動が起きる。この法案はそういう問題については全くこたえていない。この法案では、そういう地域住民は納得しませんよ。それにこたえていませんからね。そうして政府はそういうところでニンジンをばらまこうとしても馬はそこへ寄ってこないと思う。そういう点を私はもう一ぺん再検討していただきとう存じますし、先ほど申しました原子力発電計画書の問題は、これはひとつ委員に出してもらいたい。委員長にお願いしますが、廃棄物の蓄積見通し廃棄物の処理計画等について国内あるいは外国のものを資料として出してくださるように、委員長よろしゅうございますね。
  107. 森山欽司

    ○森山国務大臣 数字の問題についてお答えいたします。  先ほど八千ピコキュリーというのがございましたが、これはミリレムに直しますと三十二ミリレムでございますし、その他のものを合わせて四十幾つという計算も可能でございますが、御案内のとおり、自然放射能百ミリレム、それの半分以下ということでございまして、許容規制域五百ミリレムに対しまして十分の一以下でございますから、そういう意味の安全性については心配はございません。しかし、少しでも低くなるように私どもは努力してまいる、そういうつもりでございます。
  108. 濱野清吾

    濱野委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十一分開議
  109. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原茂君。
  110. 原茂

    ○原(茂)委員 本法案の逐条二、三条お伺いをしながら、それに関連いたしまして少しく現在の開発技術の進展状況などもあわせてお伺いをしてみたいと思う。  最初に、第三条の三号にありますような住民の福祉向上に必要な公共用の施設の整備という条項があるわけですが、これは地域住民専用の施設も含まれていると考えていいかどうか。
  111. 井上力

    井上説明員 その地域社会におきます公共的な施設、つまりその地域におきます専用の公共施設は含まれるというふうに考えております。
  112. 原茂

    ○原(茂)委員 その範囲には何か限定がございますか。いろいろありますね。公民館から病院、学校、上下水道あるいは堤防もあれば岸壁、護岸もある。ことによると防波堤もあるでしょうし、あるいはまた冷凍倉庫みたいなものも市場としては必要になる。何かこういう公共の施設の中で、われわれが考えている広範な、大体いま目の前にありますものは全部入るんだ、いやこういうものは入らないという制限がございますか。
  113. 井上力

    井上説明員 「住民の福祉の向上に必要な公共用の施設」と申しますのは、ただいま先生指摘の道路、港湾、漁港、都市公園、水道等、地元住民の福祉向上に必要な公共の施設をいっているわけでございまして、そういったような性格のものはすべて入る、かように考えております。
  114. 原茂

    ○原(茂)委員 特に流域下水道みたいなものも入ると思ってよろしゅうございますか。
  115. 井上力

    井上説明員 入ることになろうかと思います。
  116. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題は非常に大きく将来取り上げられるので、なろうかと思いますというのは、なるというふうなお答えだと見てよろしゅうございますか。
  117. 井上力

    井上説明員 具体的にまだどの範囲までということを明確にしておりませんが、入るということで検討させていただきたいと思います。
  118. 原茂

    ○原(茂)委員 第四条の整備計画のほうへ今度は入りますが、「発電施設設置の円滑化に資するため」というふうに条文はうたっているわけです。この「円滑化に資するため」というのに二つのサイドがあると思うのです。一つは、先ほど石野委員が言ったあめ玉法案ではありませんが、いろいろと住民が納得するような条件を備えて、発電所の側にとって有利になるような円滑化という解釈と、もう一つは、やはり地域住民のための円滑化というのが主体になるという施設設置、住民サイドで円滑化が考えられるのと、電気事業者である設置者のサイドの円滑化というのと、おそらく進展していくうちに二つに分かれると思うのですが、これはどのように解釈したらよろしいのでしょうか。
  119. 井上力

    井上説明員 発電施設設置の円滑化ということでございますので、電気事業者のつくります発電施設設置の円滑化でございまして、先生の御指摘になりますもう一つの面でございますが、これはその目的のために当然住民の生活の円滑化をはかるという公共施設の整備をする、こういうことの関係になろうかと思います。
  120. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのように御答弁になった解釈だと少し問題が残るのじゃないかと思うのですよ。発電所サイドの発電をする施設をつくることを円滑に進めるためのというきわめて明瞭な解釈がまず前段にあって、そのあと、そのために住民サイドの公共福祉等の施設考える、どっちでも同じようなものですが、本法の精神がそういう二段がまえの精神、発電が主、住民が従だ、こういう御答弁になるのですが、それでよろしゅうございますか。
  121. 井上力

    井上説明員 答弁のしかたに若干問題があった、こういうことでございますが、住民の福祉を考えるということが第一でございまして、発電施設設置の円滑化をそういうことをすることによってはかる、こういうことでございます。
  122. 原茂

    ○原(茂)委員 そうでなければいけないと思いますので、わざわざ確認をしておいたわけであります。  それから四条の二項にある「指定された地点の二以上が近接している場合」とは、たとえば私のほうからお伺いしてみますが、原発でいうと、福島の場合、これはたしか双葉と大熊の二自治体にまたがっている。それからたとえば敦賀の場合だと、これは今度は、御存じのように、美浜、高浜に若狭湾を両方でにらむように設置されている。しかし行政区域は全然別ですが、その一カ地点施設をする企業体が違ったものが二つある、三つある、こういう敦賀の場合は例示になるだろうと思うのです。この両方いずれも同じようにこの条文で解釈できるように考えているのでしょうか。行政区域二つにまたがっている場合、同じ行政区域の中に企業主体が二つも三つもある場合、どちらにも解釈できるようなんですが、これはどう解釈するのが正しいのでしょうか。
  123. 井上力

    井上説明員 御指摘の点は両方のケースがこの場合に入っていると考えられます。
  124. 原茂

    ○原(茂)委員 そうですね。じゃ両方入るんだということが明瞭になったわけです。  その場合、その該当する周辺地域について一つ整備計画を作成することができる、こういうことになっています。そこで考えられる一つの課題は、公害対策などは一体どうなるんでしょうか。具体的に環境公害が非常に大きな問題になっているときに、いまの二つの例示された場合の公害対策のあり方はどうなるのか、問題になると思いますが……。
  125. 井上力

    井上説明員 公害対策の点につきましては、これは関係諸法令の基準に適合しているかいなかという見地から、この法律とは別途に十分審査をされまして設置をするかいなかをきめていく、こういうことでございまして、近接して二つあるということによって公害対策上遺漏があるということは万々ないようにするということでございます。
  126. 原茂

    ○原(茂)委員 隣接している場合には一つ整備計画で云々ということが前提になっているわけですから、たとえば敦賀のような場合に一行政区域の中に企業二つも三つもあるときには、別途の法律によって各企業が守るはずだ、その法律に従うべきだという前提、それをたよりにやっていくよりはもっとアクチブに、やはり一行政区域の中に企業体が二つ、三つあるときには、その二つ、三つの企業体を統合した公害対策を別途考慮してつくらせる、こういうことにしたほうが、公害対策の力も実際に運営される面からも住民の安心感がいく。企業の力関係でその公害対策法律の解釈でいろいろとやり方が出てくる。それがちょっとでも違いのないようにするというようなことをしてあげたほうがいいんではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  127. 井上力

    井上説明員 近接して幾つかの公害を発生する可能性がある施設がある場合には、御指摘のように全体を足しまして極力公害を減らすようにするということで進むのが至当だというふうに考えます。
  128. 原茂

    ○原(茂)委員 だから企業体が二つ、三つあったときには、その二つ、三つを一緒にした公害対策を行なうということが強力に指導される、こう解釈してよろしゅうございますか。
  129. 井上力

    井上説明員 そのとおりでございます。
  130. 原茂

    ○原(茂)委員 次いで第八条、整備計画の事業の用に供するために国有財産、普通国有財産ですが、これを譲渡することができる、こうなっているわけです。これは自治体あるいは受益の側からいいますと譲渡、譲与ということのほうが望ましいと思うのですが、やはり場所によっては、状況によっては、いわゆる無償貸与の方式も法律が定めているのですから、無償貸与あるいは賃料を半分にまけるというような場合だってあっていいんじゃないか。なぜ一足飛びに譲渡、譲与というところへすぽっと飛んでいったのか。無償貸与なり所有権だけは国が持っているということだって考えられていいんじゃないかと思うのですが、どんな検討の経過で一足飛びに譲与、譲渡にいったのかという経過を伺いたい。ケース・バイ・ケースで無償貸与があってしかるべきだ、あるいはまた貸与料の減額措置を講ずるというケースもあっていいんじゃないだろうか。何でもかんでもこれから起きる発電施設の円滑化をはかるために全部普通財産をやってしまうんだという一足飛びの考え方はちょっと乱暴じゃないかという感じがするのです。
  131. 山形栄治

    山形政府委員 この八条の規定が置かれました趣旨は、整備計画に基づきます事業を円滑に推進するための国の援助でございます。この同種の趣旨が首都圏整備法、工業整備特別地域整備促進法、琵琶湖総合開発特別措置法等にそれぞれあるわけでございます。  この条文の譲渡といいますのは、一応有償ということを前提にいたしておりまして、贈与というようなことばの法律上の使い方は無償ということを意味するわけでございます。この法律趣旨は、先ほど申し上げましたほかの法体系とのバランスから見ましても、大体国の普通財産の譲渡を受けるに際しまして、その事業の公共性にかんがみて優先的に考慮すべきであるということを明確にうたうことで十分であるんじゃないかと考えます。  ちなみに、本条において考えております普通財産と考えられますものは大体国有地が主たるものとなると思いますが、一部には国有林もその対象に入るんじゃないかと思うわけでございます。
  132. 原茂

    ○原(茂)委員 私のお伺いしている焦点がきっと理解できなかったものと思うのですが、なぜ一足飛びに飛んだんだ。その前に無償貸与という方法をなぜ考えないのか。円滑化をはかるため、公共の施設だから、したがってただ譲与、譲渡、これはもちろん無償だ。譲渡、譲与ですから、与えるほうですから当然のことですが、そういうことに一足飛びにいった経過は、一体論議をされましたかという質問に対して、いままでのようにきっぱりと理解できるような答弁がなかった。たとえば、先ほどお聞きしました第三条三号のいわゆる公共用の施設とは、先ほど確認したように公民館、病院、学校、冷凍倉庫、護岸、岸壁、堤防、防波堤あるいは上下水道、流域下水道、汚水処理、公園というようなものが、いま長官の御説明にあったように、一足飛びに、こういう用に供するものだから国有の普通財産を与える、無償でやるんだということにいく対象でしょうか、どうでしょうか。
  133. 山形栄治

    山形政府委員 本条が発動いたしますのは、おそらく整備計画に基づきまして各都道府県が市町村長の意見を聞きまして、当該市町村及び周辺市町村に公共施設を整備することに相なると思うわけでございますが、その場合に、やはり地元の各地方の実態に応じた福祉の増進、国民生活の向上というものをはかる、非常に大きな公共性があると思いますので、先ほど私がちょっと申し述べました首都圏整備法、琵琶湖総合開発法等の例にもならいまして、その必要に応じて譲渡という規定を法律上置いておきませんとそのことができませんので、そういう規定を置いたと思うわけでございますが、別途、私若干不確かなところがあるかもしれませんが、国有財産法の運用が一般的にこれは可能でございますので、その目的と、その重要性に応じまして国有財産法の一般的な規定の適用活用等もはかってまいることに相なると存ずるわけでございます。
  134. 原茂

    ○原(茂)委員 国有財産法の三条あるいはまた二十条までいろいろ読んでみますと、何も一足飛びに無償であげますよというところへ――いま例示しましたような公共用の施設として確認をされたこういった普通国有財産を無償で譲与した前例がございますか。  私の言うのは、国の財産の扱い方が少し甘過ぎやしませんかということです。こういうものの円滑化をはかることは必要ですが、少し甘過ぎないか。一足飛びにただであげますよ、しかもその公共用の施設とは冷凍倉庫まで入る、流域下水道の地域まで入る、こんな前例がありますか。
  135. 山形栄治

    山形政府委員 私の先ほどの答弁が非常に不明確で誤解を生じましたことをおわび申し上げますが、この八条の譲渡といいますのは有償でございまして、無償譲渡ではございません。財政法第九条の一項の規定との関係で、無償の場合には法律上無償で譲渡するとか、または譲与するとかいうことばを用いますのが慣例でございまして、単純に譲渡と書いてありますときには、当然これは財政法の規定に基づく適正な対価を取ってこれを譲り渡すということでございますので、私の答弁がちょっと不十分でございましたので訂正いたします。
  136. 原茂

    ○原(茂)委員 そうですか。なるほど私が読み違いをしていたことになるので、これはまたあとで別途問題になるでしょう。ここにある譲渡というのは、これは無償の譲与ではない、第九条によるんだ、こういう解釈になるわけですね。この問題は別途また各委員から問題にするだろうと思いますが、私は、もしそういう解釈ならば一歩進めて、無償貸与というような第三条の解釈を幅を広げていってもいいような公共用の施設がずいぶんあるじゃないかというふうに今度は申し上げたいわけです。無償貸与をやっていいじゃないか。有償で譲渡をするという解釈だというなら、逆に無償貸与をしてしかるべき公共用の施設があるじゃないか。  法案の要綱なりそれから参考資料なりを読みましても、その点が不明確でしたからそういう解釈をしたわけですが、いまおっしゃるような明確な、これは第九条による有償の譲渡なんだということになりますと、おそらくこの周辺整備の法律を期待している全国の自治体の関係者はがっかりする面があるんじゃないかと私は思う。この点いままで非常に俗に解釈されて、これが一番大きなあめ玉だと言われていたものが有償なんだ、無償じゃないんだよということになったことはたいへんな問題だろうと思いますが、同時に私は、この公共用の施設の前段に確認をしました内容等からいくなら当然無償貸与でしかるべきものがあるんじゃないかと思うのですが、大臣いかがでしょう。これは有償で譲渡なんだということに全部押し切りますか。私はやはり公民館なり学校なりというようなもの、あるいは護岸、堤防というような案件に関しては無償貸与までいってしかるべきではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  137. 山形栄治

    山形政府委員 この法律電源周辺地帯の公共施設の整備でございますが、全体の財政当局との御意見の調整等もはかりまして、同種の法体系、たとえば首都圏整備法または琵琶湖総合開発特別措置法等、同種の法律がいまの条文と同じようなところでバランスがとれておりますので、一応われわれとしましては、その範囲内におきましてできる限りの整備計画の充実をはかってまいりたいと考えておるわけでございます。
  138. 原茂

    ○原(茂)委員 いま私の質問したことに答えてないのですが、どうですか。私は公共用の施設の中で、特に病院、学校、公民館、護岸、岸壁というようなものは普通国有財産の無償貸与でいいんじゃないかと思うのです。これはこの条文にはどこにも書いてないのですが、明瞭にわかってないのですが、大臣どうでしょうね。私はこれは内容によっては区別していいんじゃないかと思うのですいかがですか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはいろいろな態様があると思われるのです。無償で譲渡する場合もあるいは情勢によってあるかもしれませんし、あるいは先生おっしゃったように安くしてやるという場合もありましょうし、あるいは所有権が移転しないで貸してやるという場合もありましょう。私はそういう意味で、第九条でございますか、御指摘になりましたように財政上等の援助を与える、そういうような包括的な概念の中に含めて、その中の内容をいろいろ検討したらいいのではないか、そういうような気がいたします。
  140. 原茂

    ○原(茂)委員 さすが大臣の御答弁で満足です。そういう解釈でそのように運用さるべきだと思う。幅狭く有償の譲渡でございます、こう言ったら、この円滑化というのは非常に期待に反する結果になる。いま大臣の答弁されたように運営をされるもの、こういうふうにあらたに確認をしておきたいと思います。  それから私はずばり大胆にものを言い過ぎるかもしれませんが、今日以後の発電について、国民生活との関係、特に重油の輸入の現況、将来性というのを考えますと、やはり全国家的な見地から言うならどうしても国有化が必要だろうと思う。発電に関する国有化というものを考えていったほうがいいんじゃないかというように思います。現在すぐにできるできないじゃなくて、やはり方向として国有化を考えるということが、国民生活を基底から左右する電気、電力、こういった問題に関しては、政治体制のいかんを問わず方針として国有化が指向されるべきだと思うのですが、この点は大臣いかがでしょうか。
  141. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御主張は理解されないこともございませんが、われわれのやはり自由経済を信奉する側からいたしますと、能率の点とかあるいは開発の進行とか、そういういろいろな面から見まして国有化はいかがという気もいたします。まあしかし、御主張は御主張として拝聴いたす次第であります。
  142. 原茂

    ○原(茂)委員 重ねてこの点だけ大臣にもう一度お伺いしたいのですが、たとえば電信電話のごときは公社制度による運営がされているのであります。確かに国家の動脈に匹敵するようなこういう電信電話のごときはそうあってしかるべきだという前提で今日まで運営がされてきた。鉄道しかりであります。明治何年か知りませんが、とにかく十七年か二十年ごろかに民営の鉄道を幾つか統合して現在の国有鉄道になっている。これも国民生活との関連において国家が主体的に責任を負うというたてまえで鉄道の今日があると思う。電気、電力というようなものはこれに匹敵して絶対に劣るものではない。そういう論理を展開すると、だから今日、郵政事業全体に対して民有化が考えられる。鉄道そのものも民有化というものの方向がいま検討をされているという論理も逆に展開されるだろうと思うのですが、そうであっても私はいいと思うのであります。そのことが国民のコンセンサスを得られて、そうあってしかるべきだということになるなら、後刻いかようの検討がされてどういう結果が来るかは別にして、検討することはいいと思う。私はいまのような電力事情にある限り、これはかつて鉄道、電信電話のありようから考えても、当然国が責任を持って運営をするという何らかの形態に移行する方向があってしかるべきだ。そして国民に対して国が責任を負うという明瞭な立場、態度が、この間のように、いろいろ石油、重油の問題を通じて今日調査がされたり、あるいはいろいろな法的な問題が起きているというようなことも避ける、それらを通じて国民への安心感を与えていくというような意味からいっても、国有化ないしこれに準ずる公社方式なり何らかで電力の一元化があっていいのではないかと思うのですが、もう一度、こういう観点から大臣の御所見をお伺いしたい。
  143. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本でも永井逓相のもとに電力国家管理をやった歴史がございます。あれは戦時経済ということで強行したわけでございますが、その前でも、明治制下、国民国家のいわゆる絶対制と申しますか、そういうものが成立する過程におきましては、国民的統一というような関係から鉄道が国有化されたり、あるいはいまの郵政事業等々、みんな出てきたわけでございます。それらが封建的な社会から民主主義的社会に移行する過程において、かなり効率を発揮した要素も私はあると思います。しかし、民主主義が成熟してきて自由主義経済が旺盛に発展してきた今日まで、はたしてそれを維持していることが国民のためになるかどうかという国民の側から見た場合に、これはまたあらためて検討し直す必要があるのではないか。日本国有鉄道というものが公社組織になりましたのも、一歩ゆるめようという考えであったのじゃないか。だから、巷間におきまして、いろいろな官営事業を民営に移せ、たとえば塩とかわれわれがやっているアルコールとか、あるいはたばこのようなものは、もう民営にやったらいいじゃないかという議論も、また一面においてございます。まあいまはそういうようにいろいろ議論が交錯しておる時代でございますけれども、私の感じでは、やはりこれだけ資本主義が発達して、そして経営能力があがってきたという時代になりますと、むしろ民間に移譲して自由競争をやらせるほうが能率がいいのではないかという気がいたすのであります。おそらく原先生電力をお考えの前に、あるいは銀行とか、あるいは保険をお考えになっていらっしゃるかもしれません。むしろそういう金融機関のほうが先行すべきものであると社会党の先生方はお考えになっておるかもしれませんが、私らはやはり、たとえばソ連という国を見ておりまして、シベリアへ行ってみまして、もしこの国が自由経済の国であったらシベリアはもっと開発されていたろう、また人間もずいぶん大ぜいあそこへ来ていたろう、ちょうどテキサスを開発したように、アメリカ人が西へ西へと流れていったように、チャンスを求めて、ある場合には欲にまかせて行ったのではないかという気が、実は私シベリアを見て感じたわけでございます。そういう考えからして、今日の事態から見ると、電力を国有化するということは、われわれの考えからするとちょっと逆のような感じがいたす次第であります。
  144. 原茂

    ○原(茂)委員 それだけお伺いしておけばけっこうです。いまこれに結論を出そうとしてもなかなかむずかしい問題であります。  ただ、いろいろお話のあった中で、たとえばソ連のシベリア開発の例が出ました。一つの見識だと私はお聞きいたしました。私は現在のソ連の体制が、まあ全体的には国民生活のおくれているソ連というものを考えたときに、非常に国家的な力が住民の福祉というものに向かって出そうと思えば思い切った力が出せるような体制という意味では評価している一人でございますので、開発だけを例にとらえてソ連の体制をいま大臣がおっしゃったようには見ていないというふうに考えているものですが、ただ、国有鉄道が公社に少しゆるんできたというお話がありましたとおり、私の考えも、ですから国有の方向ではあっても、国鉄が公社化されたと同じところまで逆にペースを合わして、電力問題だけは国家的な責任の場で問題の解決をはからなければいけない問題が対外的に対内的に、先ほどの石野委員とのやりとりをお聞きしておりましても、たいへん大きな公害対策だけでも問題を含んでいるというような状況考えると、民間企業にこれをまかせる、かつて電発があって一元化したときの戦時下、戦後における状況等を勘案いたしましても、電力は何かの方式による国が一元的に責任を負う形で問題の解決に当たらないと、私企業中心の問題の解決にゆだねておいたのでは、電力事情は外部からの影響でほんろうをされる、国内のいろいろな状況によって住民パワー等も起きて、それによってまたほんろうをされるということで、この電力問題の一元的な行政というのは、中曽根大臣がずっとおやりになっていればこれは確かにいいかもしれませんが、やがて総理にでもなって、そのあとずっとおやりになるというのならいいのですが、現在のような状況考えると、遺憾ながら、どうも電力というこの問題に関する限りは、何かを考えなければ、現在のような自由主義経済下における態様がいいのだ、公式論で割り切っただけではいけないというように考えていますが、その点は見解の相違として、きょうはおいておきたいと思います。  ここでこまかい問題を少しお伺いしてみたいのですが、通産省が中心で開発いたしてまいりましたMHD、電磁流体発電機、これの開発の現況とその将来性、新聞に一部出たことがございましたが、その容量、見通し、ある種の大出力の限界を一応設定して、一体それがいつ完成の予定なのか、どこが中心でこれをいま実際の施策をやっているのかというようなことについて、一々聞かないで済むように、ひとつこれだけはじっくりとお聞かせをいただきたい。
  145. 山形栄治

    山形政府委員 いわゆるMHD発電でございますが、これは非常に先端的な技術ということで、通産省昭和四十一年からこれを大型プロジェクト制度に乗せまして、工業技術院電子技術総合研究所が中心となりまして、民間の協力を得て推進して現在に至っておるわけでございます。  現在までに超伝導マグネットの開発というようなことで、これは世界的にも相当の成果ということに相なっておるわけでございます。この辺につきましては、同じくMHDを推進しておりますアメリカ及びソ連からも非常に高く評価されておる現状でございます。進捗状況を申し上げますと、現在までに発電機のコンポーネント開発を終了いたしまして、現在は約千キロワットの容量の短時間実験機及び小出力長時間実験機という二つの実験機によります運転を現在行なっておる段階でございます。今後の予定といたしましては、昭和五十年度でいま行なっております実験的な段階を終わりまして、その成果を取りまとめまして、今度は大容量長時間実験機の開発に取り組みたいという現段階でございます。現在までといいますか、四十一年度から五十年度の計画でございますが、総資金量が六十四億円。それから一番中心になっておりますのが、先ほど申し上げましたように電子技術総合研究所、これに協力いたしております民間会社は三菱重工業、日立製作所、石川島播磨重工業及び日本酸素株式会社でございます。
  146. 原茂

    ○原(茂)委員 長時間発電用という長時間は、目標はいま何時間にしているのですか、五十年にできる目標です。
  147. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 現在の実験におきます運転時間でございますけれども、先ほどの御説明のように、現在二種類の実験をやっておりまして、非常に長時間やるものと、出力は大きいのですが短時間やるものとやってございます。短時間のものは、現在まで連続で二時間、累積で六十時間実績がございます。長時間のほうは、百時間をこすような実績を持っております。この運転時間の実績は、現在アメリカの水準とほぼ同じレベルでございまして、実用機になりますとこれが数千時間ということになりまして、私ども千キロワットの実験機で大体十時間連続やれば一つの壁を越える。その次に百時間くらいのところをねらいまして徐々にスケールアップしていく、こういうことを考えているわけでございます。
  148. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでにもう一つ。高出力発電機の場合には、現段階では何キロワットくらいできているのですか。
  149. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 現段階では一千キロワットでございます。なお、アメリカも大体五百キロワットとか、その辺でございます。ソ連が非常に大きいものを現在やっております。二万五千くらいのものを考えておりますが、実際は六千キロワットくらいの出力しかございません。これは実験のやり方でございまして、いきなり最初から大きなものをつくりましていろいろ特性を調べていくやり方と、ステップ・バイ・ステップにやっていくアメリカ日本のやり方の両方ございますものですから、私どもはいわゆる二軸接近法、二方式で開発していく、こういうやり方を現在やっておるわけでございます。最終的には二万キロとかあるいは三万キロくらいのプロトタイプの大型機をある時期に建設いたしまして、これで実証しないと本物のMHD発電はできなかろうということでございます。  なお、参考のために申し上げますと、現在の技術予測では、大体一九八五年ごろに実用化のめどがつくのではないかというのが世界的な専門家意見をまとめました技術予測の結果になっているような状況でございます。
  150. 原茂

    ○原(茂)委員 これの特徴はしろうとでよくわかりませんが、結局熱の効率をよくする、高温ガスを発生させて、それによってその速度で直接発電ができる。片方は重油を燃やして蒸気が煮え立ってタービンが動いて発電をするということを通じて、結局熱の効率という点でいくと、このMHDの場合には約五割の効率がある。よくいってほかのものは大体四割以下だというので、熱の効率からいうとたいへんなメリットがあるのだというようなことになるのだろう、こう思うのですが、その点はどうかが一つです。  いまのお話ですと、現在すでに千キロワットというものができている。千キロなら実用段階がすでに来たのだということになりますと、この熱効率の高いMHD発電というものを今後のわが国の発電業界全体に取り入れられるところは思い切って取り入れたほうがコストの面でもいいのか、やってはいるのだけれども、コスト的にどうも近い将来にはこれを実用化段階に取り入れることがむずかしいというのか、コスト的にも取り入れることが可能だという計算はもうできていると思うので、もし可能だというなら、今後六千万キロあるいは一億五千万キロという六十年、七十年の所要電力考えたとき、いつごろ、どの程度の容量までこの電磁流体発電で担当できそうなのか、三つに分けてお答えを願います。
  151. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  最初のMHD発電機の経済性でございますけれども、先生指摘のとおり、MHD発電は、私どもの見通しでは熱効率最低五割、うまくいけば六割、理論的には七割ということが可能でございます。現在の通常タイプの蒸気タービン方式ですと三五%ちょっとということになりますので、この間のエネルギーの節約、化石燃料の節約という意味ではたいへんな効果を持つ技術でございます。しかしながら、現在技術開発上の問題といたしましては、二千度前後の非常に高温ガスを利用するために、その耐熱材料あるいは電極の材料というようなことで非常に技術的にはむずかしい問題をかかえておりまして、この辺の開発を今後進めないとほんとうの実用化にはなかなかいかないという状況でございます。私どもいま千キロワットで実験しておりますけれども、千キロワット程度では付属装置の設備が非常に割高になりまして、とうてい経済性はございません。と申しますのは、非常に強力な磁場をつくるために絶対零度に近いヘリウムガスを利用いたしまして、これで冷却して伝導性を非常に上げて、それで磁場を強くするという、いわゆる超伝導マグネットを使っておりますが、こういう設備が非常に巨大なものになりまして、付属設備のほうが金がかかるというような現状でございます。したがいまして、これの経済性を上げるには、全体を大きくいたしまして付属装置の相対的な設備費に占める比重を下げる、下げないと設備費が非常に高いものになるということで、全体を大きくすることがこれからの問題でございます。しかしながら、全体を大きくするには、先ほど申し上げましたように、耐熱材料その他の非常にむずかしい問題がございまして、この辺のめどを今後徐々に立てていくということが私どものねらっているところでございます。したがいまして、数万キロワットのものができませんと、一応実用機ということで現在の発電システムに対抗できるようなコストにはなりませんので、私どもはその数万キロの実用機を技術的にまず完成させるというところに重点を置いているわけでございます。その段階で設備の経済性なりあるいは運転コストなり等、十分なデータが把握できるだろうということで、現在では千キロワットをベースにある程度の推定はしておりますが、ここで御説明できるような状況にはなっておりません。将来計画といたしましては、したがいまして技術開発されるのが、基礎的な大型化のめどが立つのが昭和五十五年とかあるいは六年とか、その前後になりまして、実際に導入されるのがおそらく昭和六十年、一九八五年以降になろうというふうに考えております。こういう技術でございますので、一度めどが立てば相当急速に普及するというふうに期待されるわけでございます。  なお、この発電機は通常のボイラータービン型の発電機と組み合わせて使うことになっておりますので、これだけですべての化石燃料を使った発電システムを構成するというわけではございません。ある何割かのものをこれで運転するというような形になろうかと思います。  なお、公害問題等につきまして、この発電機はNOx、SO2につきましても非常に特徴のある中身を持っておりまして、公害対策はきわめて容易であるという技術的なめどを現在得ておる次第でございます。
  152. 原茂

    ○原(茂)委員 これは国際的にも高く評価されている日本開発技術ですから、非常に大きく期待されていると思うので、思い切って力を入れて、いま五十五年度という一応の目安があるようですが、五十五年にしても六年、七年にしても、日本電力需要を救う意味では画期的な技術だと思うので、思い切って努力をしていただきたいと思うのです。  最後に、もう一つだけその問題で勉強のためにお聞きしておきたいのは、ガスに伝導性を持たせるために水酸化カリウムを入れてやっているわけです。水酸化カリウムは、結局いろいろとこびり着くといいますか、そういう現象を起こすという問題を一つの難問として取り組んでこられたはずなんですが、これは解決できたのですか。
  153. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 いまの水酸化カリウムの問題でございますが、これは高温の二千度のガス体がいわば電線のように電流を通す性質を持たせるためにはある種のイオンをその中につくらなければいけないわけでございますが、その種といたしまして、通常シードと称しておりますが、水酸化カリウムを入れておるわけでございます。これが実際排ガス中に出てきまして、これが付属の熱交換機であるとか、そういうものに非常にたまりまして、運転を中断する非常に大きな原因になってまいっております。私どもある程度この水酸化カリウムの沈でんする現象について基礎的な知見を得ましたので、これをできるだけ防止するような、そういう運転条件を現在検討中でございます。  なお、最終的にはそれだけでは十分でございませんので、電気集じん機その他でこれを回収するということが必要になるわけでございますが、これについては機器の開発は大体終了した段階でございます。
  154. 原茂

    ○原(茂)委員 その次に、これも将来のためにお聞きしたいのですが、地下発電という実験が日本ではいま検討されはじめたようです。特におたくのどなたでしたか、児玉原子力発電課長さんかだれかが提唱をして、通産省がこれを取り上げて、これは有望だ、とにかく原子力発電でいろいろな問題の相当部分が解決できる、特に炉を格納器にかえて岩の中へ穴を掘ってすっぱり入れてしまう、現在三十メートルから七十メートルくらいの大きなものの格納器に入れているわけですけれども、そいつを穴を掘って岩の中へ突っ込んでしまおう、北欧を中心に十一カ国ぐらいがすでにもうやっている。世界では十二カ所ですか、やられているはずですが、これをいま及ばずながら日本も取り入れるべきではないかというようなことで検討していると思うのですが、現段階どうなっているのですか。
  155. 井上力

    井上説明員 お尋ね地下原子力発電所の問題でございますが、原子力発電所立地問題は、御承知のように、いろいろな問題で行き詰まっているのが現状でございますが、こういったような時点におきまして地下立地方式を検討いたしまして、立地の可能地点を拡大しておくということはたいへん有意義なのではないかというふうに考えておるわけであります。通産省といたしましては、こういった観点に立ちまして地下原子力発電所技術的な問題点あるいは経済性等を調べまして、わが国での開発可能性検討しておるところでございます。御指摘のように、外国には幾つかの地下原子力発電所がすでにあるわけでございまして、たとえばフランスのSENAとか、あるいはノルウェーのハルデンとか、あるいはスウェーデンのオゲスタとかいうような発電所地下式でつくられております。日本の場合は、水力発電所におきましては地下式のものがかなりあるわけでございますが、原子力発電に関しましては、現在技術的あるいは経済的に当省内部におきましていろいろ事務的に検討しておるという段階でございます。
  156. 原茂

    ○原(茂)委員 この機会に地下発電、特に原子力発電というものを地下の中へ入れてしまうというようなことが考えられ始めたということと、それがどういう特徴を持っているのだというようなことについて考えている全体をお答えになるほうがいいのではないか。原子力発電というものは、われわれのいま心配しておりますような安全性というものが完全に確立できない限り進めてはいけないという立場をとっていますけれども、これは現実に合わないかもしれません。したがって、万が一安全性というものを確保するために地下原子力発電というものがかくかくの利点があるのだというようなことを具体的に検討したというなら、その利点なるものを五つなり六つくらいに分けてあげることができると思うので、それをあげていただきたい。もちろんまだ実際の実験をやっていませんので、何か通産相の諮問機関の調査会にその検討を依頼したはずなんですが、その依頼した内容、依頼をするからにはいつまでにどのようなものをというような目標が設定されているなら、それもこの際お聞かせをいただきたい。
  157. 井上力

    井上説明員 地下立地式の原子力発電所の利点でございますが、まず安全性向上への期待ということで、事故時に岩盤による放射性物質の格納効果が期待できる。それから原子炉が地下に埋設されておるために、外部飛来物による災害の可能性が低くなるというような利点が期待できると思います。それから立地条件の緩和という点でございますが、日本のような非常に狭い国土の国あるいは山岳地帯が非常に多いというような国におきましては、立地条件の緩和あるいは立地の拡大と申したらいいかもしれませんが、期待できる。こういうことでございまして、原子炉の地下埋設と安全性向上によりまして敷地面積が狭くできる可能性がある。それから建物その他構築物が外から見えないということで、美観をそこなわないで済むのではないかというような点がございます。それからもう一つは、従来平地でないとできなかったわけですが、山地でも、冷却水が得られれば場合によれば立地が可能だ。地形上の制約が比較的少ない。それから冷却水が十分得られれば海岸でなくても内陸立地も可能ではないか。それから美観をそこなわないということのために、国立公園等の中でも立地考えられるのではないかというようなことが考えられます。それから立地する場所によりましては送電線を非常に短くできる、あるいは送電の信頼性の向上がはかれる、あるいは人家に非常に近くできるということになりますと、地域暖房等の多目的利用が期待できる、あわせて土地の有効利用がはかれるというような利点があろうかと思います。  ただ問題点といたしましては、これは安全性というような点に関して一番検討しなくてはいけないわけですが、放射性物質地下水への漏洩だとか、あるいは浸透後の挙動というような点に問題がないか。それから事故時の放射性物質の格納効果を期待できると先ほど申しましたが、どういうふうに期待ができるか。それから地震に対しても岩盤が安定であるということが十分確認できるかというような点、それから技術上の問題点といたしましては、空洞形式の場合は良好な岩盤がなくてはいけないわけですが、日本の場合、岩盤が非常に複雑であるというような点がありますので、十分良好な岩盤が得られるかどうかというような点、それから掘さく工事が非常に多いということで、発電所の面積自体は小さくなりましても経済性が低下するんじゃないかというような点、それから施設を拡張する場合に、要するに何基も増設していくというような場合に拡張が非常にむずかしいんじゃないかというような点、いろいろまだ検討すべき点も残っているんではないかというふうに考えております。
  158. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほど質問してなかったのかどうか知りませんが、大体の見通しとしては、やはり総合的に考え日本原子力発電の方式としてはこれに相当のウエートを置いてしかるべきだというような考えになるのですか。それが一つと、現在地上、平地に建設されておりますようなああいう原子力発電と比べてコスト的には一体概算的にどうなるのでしょうか、こういう点について伺いたい。
  159. 井上力

    井上説明員 お尋ねの点でございますが、先ほど申し上げましたように、立地の制約といいますか、それを緩和できるというような点からいきますと、十分検討するに値する問題ということで内部の検討課題として現在取り上げているところでございます。  立地のやり方といたしましては、現在通常とられております平地に立地するということのほかに、この地下立地の方式、あるいはオフショア方式と申しまして、海の中につくる。これは島をつくったり、あるいは極端にいいますといかだを浮かせてその上につくるというようなフローティングの方式もあるわけですが、そのフローティングの方式等につきましても、外国ではすでに工事中あるいは発注されている発電所もあるわけですけれども、立地の制約が多いわが国といたしましては、こういった特殊な立地技術開発していくということは十分検討に値する問題だというふうに考えております。われわれのほうでは、現在部内的に検討課題として取り上げて今後検討を続ける、こういう段階でございまして、将来一応問題点の整理等が十分終わりましたら具体的に検討計一画を立てて進めたいというふうに考えております。  経済性の点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、どんな種類の岩盤が得られるかというようなことでかなりケース・バイ・ケースによって違ってくるというふうに考えられます。まだ具体的にそれぞれ候補地点におきます現地の岩盤その他を調査しているわけではありませんので経済計算がまだできないわけでございますが、いろいろな調査と並行いたしまして経済的な検討も進めていきたい、かように考えております。
  160. 原茂

    ○原(茂)委員 次に進みます。  この法案全体の今後の開発状況を見ていきますと、考えられる大きな問題としては、現に火力なら火力の例をとりますと、重油専焼の火力あるいは石炭専焼の火力というものがある。重油の危機問題以来いよいよ重油だけというわけにいかない。石炭のガス化等も考え、その施設をつくり、石炭の貯蔵の場所もつくりながらだんだん重油専焼を兼焼にしていかなければいけないという事態にすでになっている。いま火力の例をとらえているのですが、現在のままの火力発電だけでずっといってよろしいか、そういう状況ではない。そういうことになりますと、どうなんでしょう、現在の火力発電所の周辺の状況公害問題あるいは現に行なわれている増設等を見ただけでも敷地の問題がある。まあおもに敷地の問題です。その他いろいろな問題があるというときに、どうも重油だけじゃ困るというので、平たく言うなら石炭のガス化等を考えるという兼焼のための増設をするときに、現火力発電所にその兼焼をするための総合的な敷地の拡大ができる状況にあるかないか。もし御存じならどっかの例をあげていただいて、ここはこれだけあるからだいじょうぶです、あるいは基本的には重油専焼の火力をもう兼焼にはしな  い、現状のままでずっとやっていくんだ、こういう方針であるならずばりそれでもけっこうですが、そうはいかないと私は思う。こういうときに、一体現在の火力発電所を兼焼にするための総合的な敷地の拡大という、敷地だけに例をとっても大きな問題として残っておりますが、現状に合わせるために一体どのような行政的な考慮をされているかをお伺いしたい。
  161. 井上力

    井上説明員 現在の電力会社の火力発電所でございますが、御承知のようにほとんど石油だきの発電所になっておりまして、石炭をたける発電所というのはきわめて少ないわけであります。今後石炭を多くたいていこうかというムードにいまなっているわけでございますが、石炭をよけいにたこうといたしますと、やはり公害施設その他あるいは発電所の環境に与える影響等十分考えなくてはなりませんので、いろいろの制約要因を考え、設備の状況考えますと、大体現状よりは百万トン程度の石炭を現在の設備でたける、こんなような状況になっているわけでございます。
  162. 原茂

    ○原(茂)委員 私の質問したことに一つずつ答えていただくようにお願いしたい。
  163. 井上力

    井上説明員 既設発電所では、ほとんど石炭だきに改良できる余地を持ったものはございません。
  164. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣にお伺いしますが、私もそうだろうと思う。余力がない、貯炭場をつくる、それだけでも大問題です。公害問題がある、拡張できない。新たに重油に石炭を加えるというようなことは非常に大きな問題をはらんでいる。しかし私は、現状からいうなら、火力発電所に対していま考えられているような何らかの方法か、新しい方法を考えない限り、石油だけにたよっている現在の日本の大部分の火力施設というものだけに依存をすることは非常にむずかしい状況にある。いやもう石油は金さえ出せば安心なんだという状況にあるとは思えない。金さえ幾らでも出すというような状況でもないというようなことを考えますと、ここに何らかの政治的な配慮がなされないと、現在の国外における石油状況を勘案したときに、しかも政治的な動きのもとにおけるわが国の電力事情を考えたときには、現在の火力に対して特別の政治的な配慮がなされないとほんとうの意味の先取りした手当てはできないという状況にあるんじゃないかと思うのであります。そんなことも含めて先ほどいわゆる公社国有化論を申し上げたわけですが、それはおくといたしましても、現在の火力発電というものに対する措置を政治的に何らか配慮をする段階にある、こう思いますが、いかがでしょう。
  165. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 したいと思います。六月に総合エネルギー調査会の答申がありますから、その答申を見て石炭審議会にはかって火力の問題を前進させていきたいと思います。  最近の情勢を見ますと、エネルギーのセキュリティーという問題から見まして、またコスト計算の問題から見まして、また日本の炭鉱労働者現状等も見まして、石炭火力ないしは石炭混焼火力という方向に国策を進めていく大きな時期が来つつあるように思います。そういうラインに立ちまして、いま総合エネルギー調査会でいろいろエネルギーバランスの問題について検討していただいておりまして、いずれ答申が出てまいりますが、そういう方向に沿った答申が出てくることを私個人としては期待しております。その結果を見まして推進していきたいと思っております。
  166. 原茂

    ○原(茂)委員 六月の報告の内容を見てからまた機会がありましたらお伺いをいたしますが、ぜひそのことが真剣に考えられ、取り上げられるようにこの機会にお願いをしておきたいと思うのです。  それから次に、廃棄物処理の問題に移りたいのでありますが、たとえば原発でいうと、福島などにいまだいろんな意味で、廃棄物をドラムかんに入れるか、別途の格納器をつくって積むにしても、多少の余力はあるというふうに私は思う。しかし、片方の敦賀ですか、敦賀のほうはもう一ぱいで、おそらく現在だって満タンになっちゃって、廃棄物を保存するのにも困っているんじゃないかと思うのですが、先ほども石野委員廃棄物の問題でいろいろとお話がありました。ありましたが、私は現に住民にいろんな不安を与えているこれらの問題の大きな一つとして、現に廃棄物を保存するという問題だけ考えても、例を敦賀と福島にとっただけでも、片方には余裕があるけれども片方はもう全然余裕がないという状況にあると思うので、これをどう処理なさろうとするのか。廃棄物はどんどん出ているわけです。一ぱいになってしまったときにどうなさるのかということを含めて、この廃棄物全体をどう処理するかの基本的な方針がまだ出ない。海洋投棄をやる、アメリカのように岩塩を掘ったあとの中にみんな突っ込む、日本にはそんな場所はないというようなことになると、これは確かに大問題として近い将来に答えを出すべきだろうと思う。出さなければ大問題だ。しかしその間、現在の廃棄物の処理というものは場所によってはもう全然余裕がない、場所によっては余裕があるという、その廃棄物の余裕のないところを一体どうなさろうとするのか。
  167. 井上力

    井上説明員 原子力発電所の放射性廃棄物の問題でございますが、廃棄物は大分けいたしまして三つございまして、気体と液体と固体に分かれます。  気体廃棄物は主として炉心冷却用の水に含まれるガス分でございまして、これは現実には減衰タンクとか、あるいはフィルターを通しまして放射性物質の濃度を十分低くした上で濃度を測定し、安全を確認して放出しております。周辺監視区域外における被曝線量は四十七年度実績では年間約二ミリ以下になっておりまして、基準の五百ミリレムは十分下回りている、こういう状況でございます。  それから液体廃棄物でございますが、液体廃棄物につきましては、蒸発濃縮器とかあるいはフィルター等の廃棄物処理設備におきまして処理されまして、処理済み液は放出せずに再使用いたします。処理設備によって処理された一部の低放射性の廃液と作業衣等の洗たく廃液等は多量の復水器冷却水にまぜまして希釈して放出いたします。この際の放出濃度は許容濃度を十分下回っているということを確認いたしまして放出しております。  それから、お尋ねの固体廃棄物の問題でございますが、これにつきましては主として気体及び液体廃棄物処理に使用されましたフィルターとか、あるいはイオン交換樹脂等の固形分でございますが、これはドラムかんに入れましてセメント等による固化を行なうという処理を行なったあと発電所の敷地内の固体廃棄物置き場に保管され厳重に管理されております。これらのための保管管理のスペースにつきましては、現在使っておりますのは敷地の中のごく一部をもって足りているわけでございまして、敷地の中で場所に困るということは問題にならないというふうに考えております。
  168. 原茂

    ○原(茂)委員 その問題はまた他の委員会でもう少しお伺いしなければいけませんので、譲ります。  そこで、また本条に少し返るのですが、先ほどの公共用の施設というものをつくる、これは金額的にいって何か限界があるのかが一つです。申請があれば全部やるというわけじゃないだろうと思う。限界があるのかどうか、それが一つであります。  それからもう一つは、その財源について一応書いてございますが、交付金の問題、あるいはこれは交付金を出すほうですが、従量税として電気事業者から千キロで八十五円だか幾らだか取ろうというようなものだけではとうてい足りませんから、財源措置をどうするのか、その二つに分けてまずお聞きしたい。
  169. 山形栄治

    山形政府委員 整備計画でいろいろな整備計画が出るわけでございますが、これは市町村の御意見も聞いて出るわけでございますが、これは道路、港湾、その他、それぞれ関係大臣がおるわけでございます。この整備計画につきましては、関係大臣が全部これをいわゆる精査いたしまして、かつ国の一般的な事業との調整もはかりましてこれをきめるわけでございます。要は、その地域全体の公共施設が調整されながら整備されていくということがポイントであろうかと思うわけでございます。  それから財源の問題につきましては、現在御審議願っておりますように、電源開発促進税を電気事業者から徴収いたしまして、これをいまの各地から出ました整備計画に照らして配分をいたすわけでございます。
  170. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、やはり公共用施設何何、こうあげましても、整備計画の中に盛られてくる要求に対して金額的な制限というものは一応出てくる、こう見ていいわけですね。
  171. 山形栄治

    山形政府委員 これは一応限られた財源でございますので、当然に各地から出ますものが全部これに適合するということではないわけだと思います。しかしながら、いま申し上げましたように、できる限りその地方の一番地についたいわゆる地元の声というものが一番適切に反映するような配慮はいたしたいと考えておるわけでございます。
  172. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでお伺いしたいのですが、この法案が通ったといたしまして、来年度あるいは再来年度以降順次これが適用されていく、一番早い時期に現に計画されている四十七年度あるいは四十八年度には、二回にわたって、三回にわたって基本計画のつくり直しをやって現在に至っているのですが、一体いまのお見通しでいくと、一番早い時期に電気事業者からどの程度のお金が――あのいまの基本計画ですよ、いま発電所をつくっていこうとなさっている基本計画がおありになるが、その基本計画でいって、一番早い時期に幾ら、次の年には幾ら入るという計算がされているのですか。
  173. 小野雅文

    ○小野説明員 いま電力会社のほうで計画しております電源開発は、今年度分は、今度の交付金は継続分にも出されるようなかっこうになっておりますので、その分が大体三千万キロワット相当分くらいあろうかと思います。それから今年度に新規に工事を始めようとしている電力会社の工事量というのは大体二千万キロワット分くらいあります。したがって、その二千万キロワットというのがいつから着工できるかどうか、またそれが地元の賛成を得られるかどうかという問題があろうかと思いますが、一応両方合わせまして約五千万キロワット分ぐらい今年度交付金が出るのではないかと考えております。金額では大体今回の予算で八十億ぐらいを見込んでおります。これは十月以降ということになっておりますので、約半年分の支出額でございます。
  174. 原茂

    ○原(茂)委員 まあそうなるでしょう。大体私も推定して、そんなものであろうという計算をしてまいりました。  先ほど第三条の問題でお伺いしたような公民館だ、病院だ、学校だ、冷凍倉庫だというようなものに、やはり周辺地域整備という形でたいへん地方自治体のこの発電所建設に該当する地域における人々は大きな期待をしているのですが、これは金額的にいまのように見ていくとたいしたことはありませんね。たいした金額になりませんね。いまのような金額で公民館、病院、学校、冷凍倉庫、護岸、岸壁、堤防、これは一カ所に全部あるわけではないでしょうが、上下水道だ、流域下水道だ、汚水処理だ、公園だというようなことに使おうというのにたいへん大きな期待をしているのですが、金額でこう出してみるとたいした金額じゃないというふうに思うのですが、そうではないのだ、こんな大きな金額になるのだということになるのでしょうか。
  175. 小野雅文

    ○小野説明員 たとえば原子力発電所の場合ですと、百万キロワットの原子力発電所を一応建てますときに、私どもが予定しております交付金の額といいますのは、発電所が建つ市町村に大体十五億ぐらい、それからその周辺にやはり同額の十五億ぐらいということで大体三十億ぐらいの金額がいくのではないかというふうに考えております。これは大体五年間ぐらいにわたって支出したい、こんなふうに考えております。
  176. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、五年ぐらいの間に十五億から三十億――三十億にしても年六億です。しかも、百万キロの原子力発電はいままでの経過から見ても今後ますます建設が困難になっていく。非常に状況というものはきびしくて、そうたやすくできるものではないということになると、あなた方が持っているこの基本計画を年度別にずっと見ていったところで、そんなに地方自治体が期待するような大きな金額がいくなんということにはならないじゃないかというふうに私は考えております。何か先ほど石野委員があめ玉法案だと言ったけれども、なるほどうまいことを言ったな――これはだれかが、大ぜいの人が言っているのかどうか知りませんが、これはほんとうに何か打ち出されているばく然たる期待に比べますと、金額的に計算をしていくと、年度別のこれが順調にいったとしてもたいした金額にはならないなということが実は考えられておりますので、いまのようなことをあえてお聞きをしたわけであります。  私は将来のことを考え一つお聞きをしたいのですが、それは現在電力料金の値上げを行ないつつある。これはまあたいへんな問題で、さなきだに狂乱物価にもう一度拍車をかける、とどめをさすような状況になるだろうという。公共料金が相次いで値上げをされてくる、十月までにいろいろなものが値上げになる、そのはしりを電力料金でやる、たいへんなことに火つけ役をやるというように思うわけですが、いまお話を伺っているような状況で、電気事業者からの財源でこの周辺整備法を実施していく過程で、やはり地方の要求が非常に強いというので、ついにその入ってくる財源以上にどうしても出さざるを得ない、どうしても学校も建て、公民館も建ててやらざるを得ない、予算が余分になるといったようなときには、どうでしょう、あす以後の問題なんですが、従来の経過からいうと、ややもすると政府は安易に電気料金の値上げによってそれをまかなうということにもう一度なる危険があると思うのであります。そういうことがあってはいけないと思いますが、今後この公共用の施設がいかに各地からの要望が強かったからといって、それにこたえるために電気事業者からの財源ではまかないきれないといった分を必ず出すようになると思います。陳情がある、請願がある、それ何があるというので、いろいろな団体の要請につい応じなければいけない立場で、余分に出すようにきっとなる、この種の問題は。その余分に出したときに、余分に出したものを安易に電気料金の値上げという形で再び三たびそれをまかなおうとするようなことがあってはたいへんだと思うのですが、この点は、大臣からそういうことがあるかないかをお伺いして、その決意をお伺いして、時間が来ましたので終わりたいと思います。
  177. 山形栄治

    山形政府委員 私からちょっと申し上げたいと思いますが、いまの先生お話のとおり、いろいろと各地方におきましては整備計画以外に整備をすべき問題があろうかと思いますが、本法案におきましては、第九条によりまして、財政上、補助金運営上の優先条項的な規定もございます。また、金融上の特別配慮ということで、地方債の特別配慮の規定も置いておるわけでございまして、そういう観点から福祉施設の整備をはかるべきが本筋でございまして、そういう観点からの再度の電気料金の値上げとか、そういうことは全然考えておらないわけでございます。
  178. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣、そういうことで絶対に値上げはないのだというふうに、この問題からする値上げはしないというふうにお答えがあったのですが、それを確認していただきます。
  179. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりでございます。
  180. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。
  181. 濱野清吾

  182. 細谷治嘉

    細谷委員 最初にお尋ねしたいのでありますけれども、いただきました資源エネルギー庁からの「発電用施設周辺地域整備法案について」という説明書の中で、二番目に、「近年発電所立地は、地元住民の反対により難航することが多く、電気の供給力は、計画を大幅に下回っています。」とあり、これに対する資源エネルギー庁のお答えは、理由の第一として、「地元住民が発電所立地に伴う環境保全に対し不安感を持っていること」「第二は、発電所建設されても他の工場の場合と異なり雇用効果等が小さく、必ずしも地元住民の福祉向上に役立たないことです。」こう書いてあります。そして、その対策として七番目に「発電施設周辺地域における公共用施設の整備に必要な費用」云々、と書いて、立地問題については、公共施設を充実して、そのために交付金をやりさえすればすべて片づく、こういうふうに説明されておるのでありますが、こういうことですか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は、石野委員に御説明申し上げましたが、一番大事なことは安全の確保それから環境公害問題の解決等がやはり大前提として先行すべきものでありまして、この法案のねらわんとしておるところは、いままで当然関係住民に還元すべき福利というような問題をややもすれば等閑に付しておった、発電する地域の皆さんには何ら恩典はなく、ある場合には土地を移転させられる、商売もなくなってしまう、ある場合には公害の飛沫を受ける、しかし電気は中央でみんな使ってしまう、そういう不満が非常に強くあったために、地元に還元しようという考えに立っていままで足らざるところをこれで補うという意味も非常に多いのでございます。
  184. 細谷治嘉

    細谷委員 ちょっと、いま私は七を申し上げましたけれども、先ほどの設問に対する五番目に、「今後の発電所立地にあたっては、地元住民の福祉の向上と地元経済の発展に資する発電所建設を行なう必要があります。」その答えは「発電所建設される地点周辺地域において道路、港湾、診療所、公民館等の公共用施設を整備し、地元住民の福祉の向上と地元経済の発展を実現していくことが必要」であります。そうなれば「発電所立地地元住民の生活を豊かにする」と、すべてこれで片づくように書いてありますね。これは問題があります。そこで私は、今日立地問題というのは、公害問題もさることながら、あまりにも政府の施策というのが発電所所在住民あるいは自治体に対する冷遇からきておる、こういうことをまず指摘したいのです。  そこで、質問いたしますが、自治省いらっしゃっていますね。地方税法の三百五十条に「固定資産税の税率」というのがありますね。この三百五十条の二項、三項はいつ加わったのですか。
  185. 近藤隆之

    近藤政府委員 税の担当でございませんので、調べましてさっそく御返事いたします。
  186. 細谷治嘉

    細谷委員 近藤議官、税はいいです。大蔵でゆっくりやるから。この三百五十条というのは四十一年ごろにできたものなんです。三百五十条の二項と三項というのは何をねらっているか御存じですか、お答えいただきたい。当時あなたは税務課長で税務におったでしょう。答えなさいよ。
  187. 近藤隆之

    近藤政府委員 取り寄せておりますので、ちょっと御猶予いただきたいと思います。
  188. 細谷治嘉

    細谷委員 官房におるから答えられないかもしらぬけれども、この三百五十条の二項、三項というのは、発電所所在市町村固定資産税を減らす、こういう目的で設けられたんですよ。読んでみましょうか。「市町村は、百分の一・七をこえる税率で当該年度分の固定資産税を課するときは、あらかじめ、文書で、その旨を自治大臣に届け出なければならない。ただし、その所有する固定資産に対して課すべき固定資産税課税標準の額が当該市町村固定資産税課税標準の総額の三令の二をこえる納税義務者がいない場合その他政令で定める場合は、この限りでない。」一つの町村に大きな発電所がありますと、その納税義務者が圧倒的な課税標準のウエートを持つ、そういう場合には一・七をこえて課税をすることはまかりなりませんよと、こういう規定なんですよ。発電所所在市町村をいじめるという意味でこれはつけ加えられたんです。そうでしょう。その政令というのはどういうことかといいますと、ひどいものです。読んでみましょう。政令の五十二条の十二「法第三百五十条第二項ただし書に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。」激甚災でにっちもさっちもいかなくなった場合はけっこうであります、市町村が財政再建促進特別措置法の規定によって財政再建計画に基づいて自治省の許可を得て固定資産税の税率を定める場合はけっこうであります、その他の場合は一・七以上だめですよと、こういうことなんですよ。通産大臣、これで発電所所在市町村の冷遇でなくて何ですか。メリット、メリットといいますけれども、こういう発電所に有利、所在市町村には全くメリットのない、他の市町村は二・一の制限税率までかけているのをかけさせないようにしたところにも大きな原因があるでしょう。いかがでしょう。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その条文に該当するかあるいは他の条文によるか、今回は、既設発電所等の固定資産税がそういうわけで削減されているのを解除しようと、いままでよりもふやしてやると、そういう条文を配慮いたしまして、既設発電所市町村に対する政策を打ち出してきておる次第でございます。
  190. 細谷治嘉

    細谷委員 それはあと質問したいと思っているんです。いまは、三百五十条の二項、三項は、発電所所在市町村をいじめるため以外の何ものでもなかった。しかもそれが、たしか四十一年と思いますけれども、こういう条項がつけ加わったということであります。  その次に、三百四十九条の三は、いま大臣がおっしゃったように、発電所ができますと、最初の五年間は課税標準は三分の一なんですよ。固定資産評価額の三分の一しか課税できない。五年過ぎまして次の五年間は三分の二しか課税できないんです。十年目からやっと一〇〇%課税できるということになっております。ところが、償却は進んでいきますからね、ちょうど五年目になりますと大体六割ぐらいになるわけです。十年しますとまた同じように三分の一ぐらいになるわけですか、常に発電所をつくりましても家屋等の固定資産については、大体まあ半分ぐらいしか取れない。これも冷遇でしょう。いま大臣は、そういうことで今度は改めたと言っております。改めはいたしましたけれども、四十九年の一月一日現在までにでき上がっている発電所は、いままでの三分の一が三分の二になる、いままでの三分の二が六分の五になる、それだけですよ。依然として発電所所在市町村、しかも既設のものについては冷遇が続いておるじゃないですか。これはどうなんですか。
  191. 近藤隆之

    近藤政府委員 先ほどの件でございますが、四十三年の改正で入っておるようでございます。  それから、いま御質問の件でございますけれども、大臣からお話ございましたように、本年の税改正によりまして、地元市町村に対しまして固定資産税がより多く入るようにという配慮で従来の三分の一を三分の二にする、あるいは三分の二を六分の五とするというような改正を行ないまして、これによりまして単年度で約六十九億ばかりの増税と申しますか、地元市町村に金がいくという形の改正を行なったわけでございます。
  192. 細谷治嘉

    細谷委員 それは通産大臣の所管じゃありませんで、自治大臣の所管であります。四十九年一月一日以降新しくできる発電所については特例措置を講じないんですよ。なぜ今日まで、四十九年一月一日まで、いままで不当な扱いをされておった人に依然として軽課措置をつなぐんですか。それはもう既得権だからいかんともしがたいというならば、公平の原則で何らかの措置をしなければいかぬでしょう。おやりになる意思がありますか。
  193. 近藤隆之

    近藤政府委員 お話のように、四十九年度から着工する分については、もちろんこれは全部課税するという形になっております。過去の分につきましては、いままでああいった軽減措置を講じておりましたのでその激変緩和というような趣旨も兼ねましてああいう形で落ちついたと記憶しております。
  194. 細谷治嘉

    細谷委員 これからつくるのは全く特例措置はゼロだ、いままでさんざん特例措置をやられておった。圧倒的な発電能力を持っているところに対しては依然として冷遇を続けるのなら、発電所建設について地元の自治体住民が協力しない重要な原因になることはあたりまえでしょう。大臣、そうじゃないですか。通産大臣いかがですか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いろいろ先生がおっしゃるような事情もあると思いますが、一面において税のバランスとか、いろんな面で自治省のほうでも苦労なさっていらっしゃるだろうと思うのであります。ある程度時間をかげながら、漸次バランスを回復するということが適切ではないかと思います。
  196. 細谷治嘉

    細谷委員 問題点であるということは、これから本論に入る前の前提として指摘しているわけです。  その次に三百四十九条の四と五があるんですよ。この三百四十九条の四というのは、一つの町に、たとえば五千人未満の町村に発電所ができますと、五億円までしか税金は取れないんですよ。発電所ができた場合に、何百億という金をかけても五千人未満の市町村ならたった五億円しか税金対象にならないんですよ。こんなことでは発電所をつくった町の住民が協力できないというのもあたりまえでしょう。それでは少し気がねしたんでしょう。三百四十九条の五で基準財政需要額で救います。どういうことかというと、百分の二百、基準財政需要額の二倍までのところまでは税金を取ってもいいのです。けれども、五千人以下のこの町の人は、この救助の方法でもおそらく五億円が十億円か十五億円になるだけですよ。二百億円の発電所ができたとしますと、圧倒的な九割というのは自分のところの税金にならないのです。これでは協力できないでしょう。大臣、少しは手直ししているのですよ。少しは手直ししているけれども、これはめちゃくちゃです。しかも、これは既得権じゃありませんよ。電力会社が県のほうに残りの分を納めるだけでありますから、電力会社が納める税金は変わりません。でありますから、市町村と県のほうに分けて出すだけであって、電力会社が出す税金は償却資産の場合変わらないのです。こういう措置を残しておいて、そうして新しい税金を起こして公共施設を充実するなんてもってのほかだと思いませんか。お答えいただきたい。
  197. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 従来から関係市町村長さんの皆さん方からはわれわれも陳情を受け、ごもっともであると考えて、固定資産税の問題は何とか前進しなければならぬと強く考えておったところでございます。しかし、地方税関係の議員さんや当局にはまたしかるべきバランスの観念というようなものはあるのでございましょうか、私らにはちょっと解せないところもありますが、ともかく一歩でも二歩でも前進させるという意味では、今回はあの人たちにしてみればかなり思い切って前進してくれたと思うのです。国政全体の斉合性という面から見まして、われわれが期待しておるとおり二歩、三歩と飛躍できなかったことは残念でございますけれども、今後とも努力してまいるつもりでおります。
  198. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの通産大臣の答弁は、これはいまの内閣の中軸にある通産大臣ともあろうものが自治省に責任を負わせるなんてけしからぬですよ。本来こういう特例を設けたことは、通産大臣、あなたの時代じゃありませんけれども、通産省が言うことをきかぬので、こういう特例になったのですよ。自治省の責任じゃないですよ。通産大臣の中曽根さんの責任だとは申し上げておりませんけれども、それにしても、内閣の中軸にある、将来あるいは内閣をつくるだろうとうわされておる人が他の人に責任を転嫁するなんてもってのほかです。そうお思いなら、変に思うなら、直ちに直していただきたい。いかがですか。
  199. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 未熟にして力足らざるをうらむのみでございますが、しかし皆さま方の御協力を得て、機会を見て二歩、三歩と前進するようにしてまいりたいと思います。
  200. 細谷治嘉

    細谷委員 自治省、きょうは財政局長は来てないけれども、通産大臣は直すというのですよ。直しますか。
  201. 近藤隆之

    近藤政府委員 いまのお話の中で二つの問題があると思いますが、一つは、大規模償却資産という関係におきまして都道府県と市町村との間の配分の問題が一つございます。そちらは御承知のように本年度の改正によりまして、若干市町村のほうに有利に直したということでございます。  もう一つの点につきまして、本来満度までかけるべきものをかけてない部分がございました。それは自治省といたしましては、当然満度までかけたいわけでございますが、いろいろな事情がございまして現在のような状況になっておりまして、話がまとまった段階におきまして今回の地方税法の改正等を行なったような状況でございまして、今後とも通産省等と折衝いたしてまいりたいと思います。
  202. 細谷治嘉

    細谷委員 いろいろの事情というが、通産大臣に聞くと自治省が悪いのだと言っておるのだよ。いろいろの事情というと、どこだ。財政局と税務局が争っているのか。他省との関係でしょう。そうでしょう。あなたは最後のほうで通産省と相談してと言っているから、私の承知している範囲でも、通産省がやはり断固としてこの特例をはずさなかったのですよ。そこに問題があるんです。  そこで大臣、ひとつ私は、もうきょうは電気料金の値上げ問題についての本論からは触れませんけれども、そうすると電気税がふえますね。どれぐらいふえるのですか、見積もりはどうですか。
  203. 山形栄治

    山形政府委員 これはまだ認可の水準がきまっておりませんけれども、約五百億円増加になる予定でございます。
  204. 細谷治嘉

    細谷委員 五百億円か、六百億円といわれているわけですね。自治省はどうなさるのですか。通産省にいわせると、従来の電気ガス税、本年度から電気税とガス税に分離しました。これは悪税ということになっているのですけれども、政府はこれは減税いたしますか。
  205. 近藤隆之

    近藤政府委員 先ほど申しましたように、税担当の責任者をいま呼んでおりますので、非常に重要な問題でございますので、担当しておりません私が答えるのもいかがかと思いますので、若干御猶予いただきたいと思います。
  206. 細谷治嘉

    細谷委員 通産大臣、この電源開発促進税が新設されるにあたりまして、電気ガス税のうちの電気税を百分の六というのを百分の三か、四くらいに下げて、その分を電源開発促進税に回せ、こういうことがあったと仄聞しているのでありますが、いかがでしょうか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自民党の中にはいろいろ知恵者がおり、政策マンがおりまして、電気ガス税を分離せよ、あるいはそのうち、電気税は全額電源開発に回せ、あるいは電気ガス税は全廃せよ、いろんな議論が税調におきましてもございました。党全体のコンセンサスとして今回の案に落ちついたのでございますが、私らといたしましては、電気ガス税という税金はあまりいい税金じゃありませんから、できるだけ早期にこれを廃止する、そういう方向にぜひ進んでいきたいと思っております。
  208. 細谷治嘉

    細谷委員 なぜ、電気税、従来の電気ガス税、今年度から電気税になりましたが、悪税とお考えになっているんですか。その理由をお尋ねいたしたい。
  209. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはしろうと考えかもしれませんが、政治的センスにおきまして、やはり電気やガスというようなものは、空気や水みたいなもので、いま必需品になってきておる。それから税金を取ることはいかがであろうか。たとえば水道のようなものは、手数料として水道料を取っております。しかし、水道税というようなものはない。やはり電気も同じようなものではないか、国民の生活必需物資といたしましてはそういうような気がいたすのであります。
  210. 細谷治嘉

    細谷委員 電気税というものは、そういうように消費税的なもので、国民大衆に課税されるものだから悪税である、だからやめるというわけですね。漸進的にやめるべきであるという御議論ですね。いかがですか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのように思います。やめたいと思っております。
  212. 細谷治嘉

    細谷委員 今度、電源開発促進税を新設したいという法律が出ているわけです。その電源開発促進税相当分は、電気料金に織り込まれておりませんか。
  213. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれといたしましては、法律を通していただくということを前提にして料金というものも考えざるを得ないのでございます。もし料金というものをそういうふうなものを前提にしないで考えると法律は要らないのだというふうに、逆に政府が無責任な立場をとるようにもとられます。  そこで、もし法律が通らない場合どうするかというときの措置といたしましては、電源開発促進税法成立までの間は、電気料金がかりに改定になっても、同税相当分を差し引いて電気料金を徴収することにいたします、こういう措置をいたしたいと思っております。
  214. 細谷治嘉

    細谷委員 私の聞く先のことまで答えておられる。大臣、私が聞きたいのは、あなたは、消費者大衆に及ぼす電気税は悪税である、だから漸進的にこれをゼロにすべきである、こういう議論であります。そこで私は、それでは電源開発促進税というのは大衆に及ぼさない、言ってみれば、電気料金の中にぴしゃっと織り込むものでないという――これは転嫁ですよ。そうでしょう。ただ名前が変わって、コストの中へ織り込まれた。電気料金の場合でありますと、電気料金に六%加えて電力会社が集金するわけで、電力会社がまとめて納めるわけでございます。実質は変わらぬですよ。  お尋ねしますが、四十九年度には百一億円の電源開発促進税が予定されておるわけでありますけれども、今度の料金値上げの中に幾ら織り込んであるのですか。
  215. 山形栄治

    山形政府委員 今回の電源開発促進税はキロワットアワー当たり八銭五厘でございますが、いま御審議願っております電源開発促進税の今後の運用といたしましては、十月一日からこれを徴収できるという形のものでございますので、年度のちょうど半分ということで、キロワットアワー換算でいたしますと、八銭五厘のちょうど半分分が料金の中に組み込まれたかっこうに相なっておるわけでございます。
  216. 細谷治嘉

    細谷委員 四銭二厘五毛織り込んでいるというわけですね。全体の申請の中で、通産省からいただいた資料によりますと、各電力会社、九電力からの要求は百七十二億円ですね。百七十二億円のうちに五十一億円程度織り込んだということですか。どうなんですか、半分というならそうでしょう。ことし百一億円ですから、その半分。どうですか。
  217. 山形栄治

    山形政府委員 いまの電源開発促進税は平年度ベースで約二百億でございまして、これが先ほど申し上げましたように十月からということでございますので、百一億円分が料金に組み込まれておるわけでございます。
  218. 細谷治嘉

    細谷委員 電源開発促進税は総ワク二百億ですか。ほんとうですか、あなた、二百億って。二百億なら二百億でいいですよ、そう受け取って議事録にぴたっと書いておく。
  219. 山形栄治

    山形政府委員 ちょっと私、間違えまして恐縮でございました。  平年度ベースは三百億円でございます。ただ、税収の、いわゆる実務発生主義といいますか、四カ月相当ということになっておりますので百億ということに相なるわけでございます。恐縮でございました。
  220. 細谷治嘉

    細谷委員 念を押しますけれども、先ほどあなたは二百億のちょうど半分、百億分を今度の料金に織り込んだというのですが、これは何ですか、平年度分として織り込んだというのですか。三百億ですよ。あなた、二百億の半分は百億ですけれども、三百億の半分は百五十億になるんですよ。どっちですか。
  221. 山形栄治

    山形政府委員 平年度は三百億でございますが、今回は初年度でございまして、実際の徴収の問題からいいますと、四カ月計算で四十九年度は、もし法案が通過いたしますれば、その三分の一ということで百一億円という計算になるわけでございます。平年度は三百億でございます。
  222. 細谷治嘉

    細谷委員 ちょっとはっきりしておきます。四十九年度分の料金の中には百億円織り込んであるのでしょう。電力会社に入ってくるその料金値上げの中には百億も織り込んであるのでしょう。平年度は三百億円入っているんでしょう。そうじゃないんですか。どうですか。
  223. 山形栄治

    山形政府委員 今回の電気料金につきましては、電気料金審議会の答申にも基づきまして一応原価計算期間を一カ年ということにいたしております。したがいまして、当面は四十九年度ということでございまして、四十九年度におきましては、その促進税は百一億円分がそういうかっこうで、今回の申請の原価計算、査定の原価計算上は百一億円でございます。平年度ベースは三百億でございます。
  224. 細谷治嘉

    細谷委員 ですから、時間がもったいないんだ。あなた半分と言ったけれども、それはうそではないですか。電源開発促進税は料金の中に一〇〇%織り込んであります、こういうふうにお答えいただけばすっきりするんですよ。そうでしょう。ことしは百一億円、四カ月分しか入らぬですから。来年度を見ますと十二カ月分入るわけでありますから、キロワット時当たり幾らとくるわけですから、三百億円入るということになるでしょう。ですから、電源開発促進税は一〇〇%コストの中に織り込みました、こういうふうに答えればはっきりしているんですよ。
  225. 山形栄治

    山形政府委員 先生のおっしゃいましたとおりでございまして、本年度は三分の一でございますが、その意味において全額入っておるわけでございます。ただ、原価計算期間が一年でございますので、来年度以降三百億見込むというようなことの計算はいたしておりませんけれども、なるたけ長期にこの電気料金というものは安定すべきだと思いますが、そういう意味を含めまして先生のおっしゃるとおりでございます。
  226. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、いろいろやりとりいたしましたけれども、遺憾ながら電源開発促進税というものは消費者からは取らないような表面上のかっこうで、キロワット時当たり八銭五厘ということになっておりますけれども、料金を通じて一〇〇%消費者に転嫁されております。これは悪税でしょう。あなたが言った悪税と同じじゃないですか。電気税と性質は一つも変わらぬでしょう。問題があります。いかがですか。
  227. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 電気税の場合はいわゆる消費税的性格でありまして、それでこれは一般会計に織り込まれてしまう。本税は電源開発という特別の目的のために特別会計を設けて設置されたものでございまして、そういう点においては若干性格は異なる目的税でございます。しかし、こういうものがダブっていることは感心しませんので、私らは電気税を廃止する方向に努力していきたいと思っております。
  228. 細谷治嘉

    細谷委員 電気税は悪税だから廃止する、かっこうが違いますけれども、姿はちょっと変えておりますけれども、もう間違いなく消費者に一〇〇%転嫁されておるものでありますから、それに全部転嫁するということになりますと、これはつじつまが合わないですよ。賢明な通産大臣の御答弁と聞こえませんがね。実質、同じ性格、それを国の目的税として取ります――目的税であるからには、納入する住民が直接に利益を受けるというのが目的税でございます。ところが、税の議論はいたしませんけれども、この場合は全国の消費者から取り上げておいて、そうして特定の電源開発立地地点に配るわけでありますから、税体系を乱すということがいえます。しかしそれはきょうはもう議論いたしません。こんな目的税はありません。ありませんけれども、同じような性格のものを、電気ガス税は廃止して、全く同じ性格の、消費者にすりかえておる課税である電源開発促進税はまさしく悪税の最たるものだ、そういうふうに申し上げなければならぬじゃないですか。いかがですか。
  229. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 確かに税の専門家から見られますと、そういう御指摘なさるような一面もなきにしもあらずでございますが、しかしまた一面において電力不足という状態を考えてみますと、国民全般に電力の安定供給を確保するために電源を確保しなければならない。そういう大目的のために全国民の皆さんに御協力を願って、そして将来ともに安定供給を保障する措置を講じておくというこの目的を御理解いただいて、あまりりっぱな税とは私申しませんが、これはやむを得ず御協力いただいてお願いいたしたいと思うものでございます。
  230. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、私は税の専門家でも何でもないんですよ。ところが税の専門家が言うからほんとうだろうなんて言ってすりかえちゃ困るんですよ。私は税の常識論、原則論から申し上げているのであって、こういう誤った目的税なり、そして電気税は悪税だから今度のやつも悪税に近いけれどもと言うけれども、同じ内容でありますから、この種の税はやはりやるべきじゃない。私は先ほど申し上げましたように、電源立地地点というのはいままできわめて冷遇されたわけでありますから、それに対して冷遇されないように電源開発をやって、発生した電気は全部消費地に送ってしまっている、何もメリットがない、残るものは公害だけだ、こういうような今日の税のあり方あるいは国の政治姿勢、こういうものから改めるべきですよ。発電所固定資産税の一・四というのが基準であって、制限税率は二・一でありますから、発電所所在市町村にだけ特別な条項をやって、税の自治権というものを侵害する必要はないですよ。この姿勢から改めなければ周辺整備は全くその根底がはかないものだ、間違っている、こういうふうに申し上げざるを得ません。どうですか。
  231. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく電源開発ということは非常に重要な段階になってまいりまして、これは全国民の御協力で推進する以外には推進できないのであります。いろいろ精神的な御協力も大事ですけれども、物質的な御協力もまたその一つとしてわれわれは考えてみたわけでございます。そういう意味で、電気税の場合は消費税として取られっぱなしで、ほかの一般会計やその他で消化されてしまう。しかし、この税金の場合は電源開発電力の供給安定、そういうようなことが出て、電気に関係していずれ時間を経て還元してくるものでございます。そういう意味においては、何といいますか、悪質性というものは少し減殺されるんじゃないか、その還元力というものが多少ある、そういう点でぜひとも国民の皆さんの御理解をいただいて、いま目下の大事である電源開発について御協力願いたいと政府としてはお願い申し上げるものでございます。
  232. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの通産大臣のことばの中にちょっと聞き捨てならぬことがあるのです。一般財源としての税収というのは取られっきり、目的税ならば返ってくる、こういう税の議論では困るのですよ。それなら国税も同じでしょう。十数兆円を国民が納めておりますよ。いまの電気税にいたしましても、地方公共団体には四十九年度で千五十億円入るのですよ。一般財源です。それを地方公共団体の税として住民の福祉に還元されているわけですよ。取られっぱなしで損のしつばなしなんということばは、これは改めていただかぬと、一国の大臣としての認識不足が疑われますね。いかがですか。
  233. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 取られっぱなしという表現は雑な表現でありまして恐縮でございましたので、これは取り消させていただきますが、私が言わんとしたところは、電気税の場合には、それが徴収されて都会やそのほかに相当使われてしまっておる、しかし今度の場合には、国民から御協力をいただいて、御協力をいただいたもとである電気についてこれが安定供給の方向に使われる、そういう意味においてよりファミリアな性格を持っている、そういうことを申し上げられると思います。
  234. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題はあす大蔵で具体的にやりますけれども、これ以上はもう、大臣どうも税についてあまりにも認識不足のようでありますから、ひとつ国税はむろんのこと、地方税のことも少し関心を持っていただきたい。  次に、具体的にこの法案の内容に入っていくわけでありますけれども、大臣、前回の七十一国会に出された法律案と、それから新しく手直しをして出された法律案の中で第二条「この法律において「発電施設」とは、火力発電施設又は原子力発電施設で政令で定める」というのが旧条文の書き方ですよ。新しい条文になりますと「原子力発電」というのがトップに出てきているわけですよ。何か理由がありますか。
  235. 山形栄治

    山形政府委員 特別な理由があるわけではございません。火力、水力ということを変えたこと、特別に逆転しまして原子力を重視した、そういうような意味はございません。
  236. 細谷治嘉

    細谷委員 まあそうおっしゃるでしょうけれども、先ほど来もいろいろ議論されておったように、しかも最近稲葉私案とかいろいろ出てきておりまして、そうしてこれからのエネルギーの中心というのは原子力だ、こういうようなムードがある中において、先ほど来お二人の委員質問を通じて明らかなことは、単に従来の法案では「火力発電施設又は原子力発電施設」となっておったのを今度は「原子力発電施設火力発電施設又は水力発電施設」となってきている。水力が加わったことはけっこうでありますけれども、原子力をトップに出した。ウエートからいって、トップに出るあれじゃないでしょう、電力のいまのウエートからいっても。これは何かやはり意識的なものがある。大臣、そうじゃないですか。あっさりおっしゃったほうがいいですよ。
  237. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 別に他意はございません。
  238. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ別に他意ないと言うけれども、私はやはり十分意識的にこの文が書き変えられておる、こういうことを指摘しておきたいと思います。  そこでひとつお尋ねしたいんでありますけれども、一体全体この周辺整備によりまして交付金対象になる発電施設というのは、全体の発電施設発電能力、そういうものに対してどの程度になりますか。四十九年度は全発電施設に対してどのくらいになるか、年次別にひとつお答えいただきたい。
  239. 小野雅文

    ○小野説明員 今度の交付金対象となりますのは新しくつくる発電所でございますので、新しく建設しようとする発電所の正確な数字はちょっと私わかりませんが、九〇%以上が対象になると思います。対象からはずれますのは小さな発電所だけでございます。
  240. 細谷治嘉

    細谷委員 私がお聞きしているのは、既設発電所対象にならないわけでしょう。それに新しいものが加わるわけですね。これはまだ稼働しておりませんよ。しかし、その発電容量というのはきまってくるわけだ、五十万とか百万とか。そういうもので全体として何%ぐらい対象になっていくのか、それを聞いているんですよ。これから新規に着工するもの、あるいは現に着工するもので、それが完成した場合には、現在のたとえば能力というのが八千万キロワットあったとしますと、そのうちのどのくらいがこういう対象になってくるのか、これを聞いている。言ってみますと、ここでわからないならば、年次別にこれから六十年くらいまでどういう対象になるかという表をあとでいただけますか。
  241. 山形栄治

    山形政府委員 まことに恐縮でございますが、いま手元に数字がございませんので、御趣旨のことを調査いたしまして書面で出したいと思います。
  242. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、この電調審計画決定あるいは最近発表されました稲葉私案のケーススリー、こういうものに基づいて一体全体それが完成した暁に全体の中でそういう促進交付金立地交付金をもらうものはどのくらいかといいますと、大体において一割から二割の間です。そうして期限が来ると落ちていくわけですから一割から二割、残りの日本エネルギーの、電気エネルギーを持っておる八割か九割というのはこういう恩恵にあずからないんですよ、既設のものは。既設のものからできる電気と新設のものからできる電気は、住民にとっては変わらないでしょう。名札をつけているわけじゃないでしょう。ここにも不公平拡大の大きな問題がある。しかし委員長、時間がありませんから、ここには資料を持っておらぬというのですから、年次別に、全体の発電容量に対してどのくらいのウエートでこういう交付金がもらえるようになっていくか、ひとつその表を出していただきたいと思いますが、委員長、よろしゅうございましょうか。
  243. 濱野清吾

    濱野委員長 出してください。
  244. 山形栄治

    山形政府委員 先ほども答弁しましたように、提出をいたしたいと思います。
  245. 細谷治嘉

    細谷委員 それではそういうことにお願いいたします。  次に、地点の指定の問題について質問いたすわけでありますけれども、この第三条の第一項一号は、発電施設設置に関する計画が確実である、でありますから、発電所所在市町村ということですね。それから一項第二号は、これは工業再配置促進法に基づく移転促進地域あるいは受け入れ地域あるいは白地、こういうことになるわけでありますね。それから三番目は周辺ということでありますが、特に周辺ではいろいろ問題があります。この辺を具体的簡明にお答えいただきたいと思います。
  246. 山形栄治

    山形政府委員 周辺地域がどういう範囲に相なるかということでございますが、原子力施設及び火力発電施設につきましては、その施設設置予定地点が属します当該市町村は当然でございますが、その当該市町村に行政区域隣接しております市町村までを含む予定でございます。  ただ水力発電施設につきましては、これは水域の関係等もございまして、相当幅広く、しかもバランスがとれますので、隣接ということでございませんで、その水域が関係します当該市町村のみをいま予定しておるわけでございます。  なお、隣接ということばは、法律的にはその行政区域と行政区域の間に他の行政区域が介在しないという意味で隣接という、くっついておるというかっこうで考えておるわけでございます。
  247. 細谷治嘉

    細谷委員 そういたしますと、いわゆる境界線ということですね。所在市町村と境界を接しておるところはよろしい、こういうことですね。周辺市町村というのはそれだけでいいんですか。海はどうなりますか。それから対岸、たとえば川崎の対岸である木更津、こういうような場合はどうなりますか。これは海を通じて境界を接していると理解するのですか。
  248. 小野雅文

    ○小野説明員 海につきましても一応行政区画があるというふうに解釈されております。したがいまして、海で境を接している場合にも、これは隣接ということで読むことにしております。
  249. 細谷治嘉

    細谷委員 これはこの程度にいたしまして、その次に移りたいと思います。  お尋ねいたしますが、旧条文の第六条の問題でありますけれども、これはどうして今度削除したのですか。「発電施設設置する者は、整備計画に基づく事業が円滑に実施されるように協力しなければならない。」と書いてあります。旧条文でありますと、「整備計画に基づく事業でその事業に係る経費の全部又は一部を地方公共団体が負担するものについては、当該地方公共団体は、発電施設設置する者と協議し、その協議によりその負担する経費の一部をその者に負担させることができる。」「主務大臣は、前項の規定による経費の負担に関し、関係当事者のうち一以上の申出に基づき、あっせんをすることができる。」この重要な二項、三項はなくなっておりますね。なぜでしょうか。
  250. 山形栄治

    山形政府委員 今回整備計画に基づきます事業に対します助成措置として、交付金の交付の規定を設けたわけでございますが、発電施設設置する者がこの交付金の納付をいたすわけでございまして、今回このような交付税の規定を設けましたことによりまして、地方公共団体の行ないます公共用施設の整備事業に対する助成が、その額と確実性において従来に比べまして非常にはっきりと明確なものに相なるということになったわけでございます。  なお、このような旧条文にありましたような電気事業者の負担金の規定を削除したからといいまして、当然のことでございますけれども、電気会社が負担すべき補償事業とか工事用の道路の建設とかは、従来どおり電力会社が負担すべきでありますことは当然のことでございまして、今回の法文の整理上交付金の規定の条文を置きましたことに関連して修正をいたしたわけでございます。
  251. 細谷治嘉

    細谷委員 補償金などは出すのはあたりまえですよ。何も関係ないでしょう。補償金など電力会社が出すことは、原因者負担でこれはあたりまえです。二項、三項を削ったということは、これでもまだ第六条で電力会社に話はできるのだ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、二項、三項がないということは、電力会社はたいへんな免責ですよ。  そこでお尋ねいたしますが、一体全体、国民の税金、血税である国の補助金等をもらってやる公共事業と名のつくものが、半島の突先に発電所ができた、道も何もない、そこに道をつくる、そういう場合に補助金を出すということは、公共事業として妥当ですか。私はかつて私の住んでおる海の埋め立て地、炭鉱でありますから、そこに会社が空気の抜け穴をつくった。ずっと海を干拓したわけでありますから、道路はありませんでした。その道路を公共事業でつくったんです。会計検査院からこっぴどくやられた。そういう一企業のための専用的な道路を公共事業にするとは何事かというので、補助金の返還命令があったんですよ。そういう場合に、この整備計画の公共事業として大体採用できるのですか、できないのですか。これは建設省あたりの関係もあるでしょうけれども、あるいは運輸省の港とも関係があるでしょうけれども、これをひとつはっきりしていただきたいと思います。
  252. 山形栄治

    山形政府委員 いまの先生の設例でございますが、みさきの突端のところに発電所をつくる、そこには全然道路がない、こういう場合の道路は公共事業に絶対にならないと私は思います。これはいわゆる工事用道路でございますので、それは建設者の自己負担でやるのが筋であり、これを整備計画対象の中に入れて交付金なり補助金の対象にするようなことはおかしいと思います。
  253. 細谷治嘉

    細谷委員 そういうものは公共事業として採用しない、はっきりしていますね。  それではお尋ねいたしますけれども、いままで電力会社が島の突先等に発電所をつくるために所在市町村、所在都道府県――所在県ですね、県が公共事業をやりました、そういうものの裏負担という名目で各自治体に電力会社が寄付をしております。たとえば若狭湾一体の関西電力原子力発電でありますけれども、その関西電力が各自治体に寄付しておる額はどのくらいなのかおわかりでしょうか。私はある町に行って予算書を拝見しました。ちゃんとその寄付採納というのがあるのです。二億五千万。どこから来たかというと、これは電力会社でございます。何に使うのです、裏負担や単独事業の経費でございます、こういうふうに答えておりました。どういうことなんだいと言ったら、いややはり発電所に行く道路がありませんからその道路を整備するのです、その裏負担も入っております、こう言っております。これはどうなんですか。
  254. 山形栄治

    山形政府委員 先ほどの設例のとおり、みさきの突端につくるような場合、これはほかの省の関係もございますが、これが公共事業になっているという例は聞いておらないわけでございます。電力会社が従来発電所建設に伴いまして地元に寄付金とか協力金というようなかっこうでいろいろと行為を行なっておることは聞いておるわけでございますけれども、詳略は私はっきりここにつかんでおるわけではございません。ただ、主として地元住民の意向に沿って、いろいろとお話を伺いまして可能な限り地域開発に役立たせるという観点から、道路の舗装、環境の監視などの地域開発計画につきまして協力を行なっておるやに聞いております。その額は、いまちょっと先生お話にもございましたように一地点、これは平均でございますが二、三億程度ではないかと聞いておるわけでございます。いまお話に出ました関西電力に聞きましたところによりましても、原子力発電所立地に際しまして、道路の舗装、環境監視装置の設置、公民館の建設、防犯灯の設置等のため大体二、三億程度、いわゆる協力をいたしておるというお話でございました。
  255. 細谷治嘉

    細谷委員 私もせんだって見に行った。去年の秋深く、もう紅葉が済んだころ、町の中心から島に移るのに、ずっと湾がありますからだいぶ距離は遠いのです。そこに大きな橋をかけました。橋は会社がやっているのです。橋から半島の山のところに道をつくるのは、これは公共事業でやっているのですよ。橋は全部電力会社が持ちました。それから橋をつくって発電所までの道路の整備は間違いなく公共事業でやっているのですよ。こういうことでありますから、整備計画といっても何が一体会社のものであって何が一体公共事業なのか、これはなかなか問題があります。  私はお尋ねしたいのでありますが、旧条文の二項、三項がなくなったのでありますから、これはもう訓示規定といえば訓示規定かもしれませんけれども、第六条は新条文では第一項しか残っておらぬわけでありますから、まさしく形骸化していると思うのであります。そうなってまいりますと、いままで裏負担分として二億とか三億、電力会社から自治体に寄付しておった金というのは入らなくなる。それはひとつ交付金でやってください、その交付金は全部一〇〇%消費者が負担する、電力会社は二重のもうけじゃないですか。そうなりませんか。いかがですか。
  256. 山形栄治

    山形政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、交付金の規定を設けましたことで、これは電気事業者が納付するわけでございます。旧条文にございます一部の経費の負担といいますのは、その当時は、旧条文によりますと補助金の補助率のかさ上げ等が法律一つのたてまえでございましたので、電力会社が当然に負担いたしますコストに入ります要素を法律上明確にいたしたわけでございますが、今回は交付金の規定もございましたので、これをはずしたわけでございます。しかしながら、先ほど来出ておりましたように、電力会社というのはその地方におきます代表的な企業でございます。かつ大きな施設をつくる行為をいたすわけでございまして、当然のことながら自分の工事に関係することにとどまらず、適正なる防犯灯の設置等の地元との協力関係というものは今後とも当然に行なうべきであろうかと考えるわけでございまして、その線に沿いまして行政の運営をはかってまいりたいと思うわけでございます。
  257. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣いかがですか。この第六条の二項、三項を除いたということは、電力会社にとってはまことに好都合であります。いずれにしても協議するわけでありますから、場合によっては通産大臣があっせんをするわけでありますから、強制義務規定じゃないわけでありますから、これを削除する必要はないでしょう。大臣いかがですか。これはそうでないと、いよいよ交付金国民大衆、消費者から取って、そして電力会社に二重三重のメリットを与えているのがこの法律だという誤解が生まれますよ、いかがですか。
  258. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回は交付金という制度を新しく設置いたしまして、それでその前提としては整備計画というものがあり、整備計画につきましては、関係各省がみんな目を通して、これが住民のためになるというふうに確証を得て初めて整備計画は実施される、そういう関係になって、非常にオフィシャルな性格を持ってきているのであって、きちんと折り目筋目を正したということが言えると思います。それで寄付金というような場合はややもするとルーズで恣意的な性格があります。そういう面から見まして、私は交付金というような折り目筋目を正したやり方でやるほうが筋としてはいいんじゃないか。ただしかし、電力会社も地域の会社でございますから、地域の住民や市町村と融和していくということが大事であって、その辺は、地域の要望に応じて妥当と思うような協力はやはり条文の有無にかかわらずやる必要がある、そういう意味もありまして第六条の中に追加した。念のために入れたようなところがあるわけです、協力的規定というようなものは。そういうようなことで地域との調和、融和ということも若干考慮しておりますけれども、整備計画というようなことに関するようなものにつきましてやはりきちんとしておく、そういうことが大事ではないかと思います。
  259. 細谷治嘉

    細谷委員 第六条、旧条文はきちんとしておらぬ、今度は交付金をやるからきちんとしたんだ。整備計画に基づく事業で、全部または一部を地方公共団体が負担する場合には、協議によってその一部を原因者に負担させてもよろしいという協力規定ですから、わざわざこれを削除するという必要はないということを私はもう一度申し上げておきたいと思います。この問題は、実はこれから質問します私の質問の中心である第七条に関係があるわけです。  そこで、第七条について御質問に入るわけでありますけれども、この第七条の二項、三項はどうして除いたんですか。それでは、旧条文の二項、三項で別表がついておりますけれども、この別表については、昨年この法案を出す際にどの程度の国の一般会計からの財政支出を見込んでおったのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  260. 山形栄治

    山形政府委員 旧条文といいますか、旧条文の場合には、いま先生お話のとおりでございますが、国が補助率のかさ上げを行ない、また一般会計からの補助金の交付をするというようなことであったわけでございます。したがいまして、旧条文の七条は、見出しも「国の負担又は補助の割合の特例等」ということに相なっておったわけでございます。今回、新条文におきましては、これを全部「交付金」ということに統一いたしまして、先ほど大臣のお話にもございましたように、これを明確に整備計画に基づいて交付をするということにいたしたわけでございますので、その関係で、七条の旧二項、三項は補助金にからんだ条文でございますので、それを整理いたしたということでございます。  なお、その旧条文の時代の補助率のかさ上げ、それからその他施設につきまして一般会計からの補助ということでございますが、当時といたしましては、一般会計予算要求といたしまして、発電施設周辺地域整備促進費補助金といたしまして六億五千万円を当初要求いたしておったわけでございます。
  261. 細谷治嘉

    細谷委員 別表に漁港法、港湾法、道路法、都市公園法、水道法とあるわけですが、たった六億五千万円。それは初年度ですか、平年度ですか。
  262. 山形栄治

    山形政府委員 先ほど申し上げましたように、二つの問題がございまして、いま先生お話の道路とか港湾とかいうのは、ちょっと補助率のかさ上げの率を忘れまして恐縮でございますが、これは一般的な補助率のかさ上げでございます。いま私が申し上げました六億五千万円というのは、その他の、たとえば公民館の建設のための一般会計からの補助金というようなものに即応いたします分が六億五千万円であったわけでございます。
  263. 細谷治嘉

    細谷委員 出たり入ったりせぬで、私が聞いておるのは別表の五つについてどのくらいの補助金を予定しておったのか、それを初年度、平年度についてお答えいただきたい。いまは別表以外のものについて一年間に六億五千万見込んでおったというのでしょう。出たり入ったりせぬでいいですよ、一ぺんに答えてもらえば。
  264. 山形栄治

    山形政府委員 別表の「事業の区分」でございますが、これは漁港法、港湾法、道路法、都市公園法、水道法とあるわけでございます。これがそれぞれ補助率のかさ上げが当時予定されておったわけでございますが、これは全体の公共事業といいますか、それぞれの各省の大きな中の問題でございまして、このそれぞれが何億であるかというようなことは、積算が当時もなかったわけでございます。当然に目的に適合した行為につきましては、それぞれの各省各つかさつかさでそれを法律の規定に基づいてかさ上げする、こういうことであったわけでございます。したがいまして、平年度であるかどうかということにつきましても、それはその補助率のかさ上げを行なうということをきめただけでございまして、金額がはっきりいたしておりません。年度の最初からか、途中から実施されるか、それに基づきましてそれぞれそういうかさ上げを行なうということであったわけでございます。
  265. 細谷治嘉

    細谷委員 冗談じゃないですよ、あなた。こういう重要な法案を出して、そうして別表まで設けて、五つの事業について指定して、その補助率まできめておいて、そうして主管省である通産省の担当者が、各省の予算でありますから、漁港は農林省でございます、港湾は運輸省でございます、道路は建設省でございます、都市公園は建設省でございます、水道は厚生省でございます、私は存じません。こんなばかなことはありませんよ。冗談じゃありませんよ。これを推進するにあたってどの程度の予算を要求したのか、これをはっきりしていただかなければ、そんな無責任な法案の提案じゃ困るですよ。審議できませんよ。
  266. 山形栄治

    山形政府委員 従来この補助率のかさ上げを行ないます場合の取り扱いでございますが、これは財政当局が中心になりまして、関係省とも打ち合わせいたしまして、その自主的なるあり方といいますか、対処のしかたを自主的にきめるわけでございまして、その金額が具体的に幾らであるかということは、従来の慣例からいいましても積算を行なわないで行なうというのが従来の慣例であるわけでございます。
  267. 細谷治嘉

    細谷委員 そんなばかなことはありませんよ。それはあなた、かさ上げかさ上げと言うけれども、これははっきりと補助率の特例なんですよ。たとえば産炭地域振興等における場合には、地域開発方式による補助率のかさ上げが行なわれているわけだ。事業をやればやるほど補助率が上がっていくという方式をとっておりますけれども、これは補助率の特例でありますから「以内」と書いてありますように、ぴしゃっとしております。この金額がどのくらいあるかわからぬで法案を審議しろなんて、そんなばかなことはありませんよ。  それで、私はあなたのほうの人に一応聞きましたら、大体六十五億円ぐらいだったろうって言うんですよ。これはうそですか。
  268. 小野雅文

    ○小野説明員 先生の御指摘の六十五億というのはちょっとはっきりわからないのでございますが、従来私どものほうでは道路等について具体的に整備計画ができ上がった段階ではある程度の金額はつかめると思っておりましたけれども、まだ整備計画作成のところまでいきませんでしたので、具体的な数字はつかんでおりません。先生おっしゃった数字というのは、ちょっとはっきりわからないのですが、先ほど長官のほうからお答えいたしました公民館ですとか、診療所とか何かに出す補助金の六億五千万、これの十年分といったような数字ではないかというふうに思います。
  269. 細谷治嘉

    細谷委員 私がお聞きしたところが、きちんとした数字でありませんけれどもこういうことだったのじゃないか、こういうふうなお答えでありましたから、この数字を私は深く追及するつもりはありません。けれども、租税法定主義である問題については、法律が通らぬのに法律が通るだろうという形できめてしまって、租税法定主義を無視してやっておきながら、こういう法律を出すのなら予算の裏づけがあるわけでしょう。その場合に、補助率の特例によってこの五つの事業について四十八年度、九年度、どのくらいになるのか、そのくらいの概算がなければどうにもなりませんよ。予算要求もしたのでしょう。どうなんですか。あなた、とぼけるのにもほどがあるよ。要求したはずですよ。予算要求しないでこんな法律案を出しているはずはないわけだから。お答えできますか。
  270. 小野雅文

    ○小野説明員 予算要求をいたしましたのは、先ほどの病院等に対する補助金の六億五千万円だけでございます。その他の道路等につきましては、それぞれ事業所管省のほうにはお願いしてございますが、予算要求という形では要求しておりません。
  271. 細谷治嘉

    細谷委員 それは去年の法律で新しい法律には書いてないのだから、きれいに忘れ去ったのでしよう。だから善意に解釈して次に進みます。  そこでお尋ねしたいのですけれども、一体第七条の交付金というのはどういうふうにきめるのですか。エネルギー庁から出たこの資料によりますと、水力発電所についてはキロワット当たり百二十円、五年間。火力発電所第一種地域については三百円、第二種地域については二百円、三年間。原子力発電所については三百円、五年間。原子力発電関連原子力施設三百円、五年間。これはどういう根拠ですか。どうしてこれは差がついているのですか。火力発電所の第一種地域、第二種地域についてはわかりますけれども、おそらく交付期間というのが、このくらい建設期間がかかるというその期間でしょう。どうしてこう差をつけたのですか。キロワットとかキロワット時というのは、電気に変わりはないのですよ。これが原子力発電所の電気でございます、これは水力発電所のキロワットアワーでございますといったって電気は区別はないのですよ。どうしてこんな差をつけたのですか。エネルギーにしたら同じでしょう。
  272. 小野雅文

    ○小野説明員 ただいまの計算につきましては、たとえば同じ百万キロワットでございましても、原子力発電所の場合ですと一年間べたに運転しているわけでございます。それから、水力のうち、特に揚水発電所のような場合には稼働率が非常に低いということで、発生する電力量が非常に少ないわけでございます。したがいまして、同じ百万キロワットの設備能力でありましても、そこでつくられる電気の量がかなり違うといったようなことで、そういった年間稼働率といったような問題ですとか、それから各地域でどの程度きらわれているといいましょうか、電源立地が非常に困難であったその度合いですとか、そういうようなものを勘案してきめたわけでございます。
  273. 細谷治嘉

    細谷委員 水力発電百二十円、火力発電の第一種地域というのは過疎地域、第二種地域というのはその他の地域、そして追い出し地域にはやらないのですか、はっきりしていただきたい。追い出し地域はどうなんですか。
  274. 山形栄治

    山形政府委員 追い出し地域には当然のことながらやりません。
  275. 細谷治嘉

    細谷委員 「原子力発電関連原子力施設三百円(ただし、原則として同等の建設費を要する軽水型原子炉の電気出力に換算して算定)」これはどうやるのですか。御説明いただきたい。
  276. 小野雅文

    ○小野説明員 これはたとえば動燃事業団が現在実験用の原子炉等を開発しておりますが、こういう実験用の原子炉等は、発電出力が非常に低いわけでございますが、建設費は非常に高い金額になっております。したがいまして、そういうふうな発電所等につきましては、実際の出力ではなくて、その建設単価といったようなもの、それと同じ金額で商業用の炉が建設をされたとすれば、このぐらいの出力の原子炉ができたであろうといったような原子炉の出力に応じて金を出す、こういうことでございます。
  277. 細谷治嘉

    細谷委員 さらにお尋ねいたしますが、いまの単価でキロワット当たりで計算をしまして、その次に、「それぞれの施設の完成時における固定資産税の四分の一」、「マルロ所在市町村の(基準財政需要額×二・二-基準財政収入額)の三分の一」、これで少ないほうを頭打ちの額とする。これはどういうことですか。
  278. 小野雅文

    ○小野説明員 この頭打ちの額につきましては、市町村に対して非常に多額の金額がいくということは、その地方にとりまして財政上混乱を来たすのではないかというふうなことで、ちょうど固定資産税の場合でございましても、そういったような考え方から固定資産税に対して頭打ちがつくられているわけでございます。先生先ほど御指摘になっておられましたように、課税権が市町村から都道府県のほうに移るといったような大規模償却資産の特例措置などが講ぜられているわけでございます。私ども考えておりますのは、今度の交付金が終わりましてからあとでは固定資産税にそのまま引き継ぎたいというふうに考えております。したがいまして、固定資産税に引き継ぐときに、その市町村に入るであろう固定資産税の額、それをもって頭打ちとすればちょうどその交付金から固定資産税への移行がスムーズに行くのではないか、こんなふうに考えたわけでございます。
  279. 細谷治嘉

    細谷委員 何を言っているかわからない。五年過ぎて固定資産税をもらえるから、だから四分の一だ、それは何ですか。その次にマルロのところで、「所在市町村の(基準財政需要額×二・二-基準財政収入額)の三分の一」、これは何ですか。そんな説明では納得できませんよ。自治省説明できますか。
  280. 近藤隆之

    近藤政府委員 これはおそらく交付税は御承知のように市町村段階におきましては七五%方式をとっておりますので、税金がかけられる段階になりますと、この発電所からの税がまるまる入るわけでございます。その間もそれだけの額を保障するということになりますと、交付税のいわゆる遊び分と申しますか、二五%相当額、四分の一でございます。それを限度として加算するという形をとろうということではないかと思います。
  281. 細谷治嘉

    細谷委員 通産省どういうことですか。自治省は、ないかと思います、こんな公式の場でないかと思いますでは進めないですよ。どういうことなんですか。いま自治省が言ったことでいいですか。
  282. 小野雅文

    ○小野説明員 ただいまのとおりでございます。
  283. 細谷治嘉

    細谷委員 ただいまのとおりなら、自治省の助けを得ぬですぐ答えたらいいじゃないの。そういうことになると、おっしゃるように五年間して発電所が稼働してきますと、固定資産税が入ってまいります。固定資産税が十億入ったといたしますと、そのうちの七五%というのは基準財政収入額として見られるわけですから、交付税の対象になるのは二五%だけでしょう。その次、所在市町村基準財政需要額かける二・二というのは、さっきの三百四十九条の四と五の規定だ。百分の二百二十というものでこれは頭打ちだ。それ以上は県が取りますよとやったんだ。その二・二をかけて基準財政収入額を引いているのでしょう。交付税そのものじゃないですか。地方交付税そのものの性格を取り入れているのですよ。それで頭打ちさしているのです。交付税以上はやりませんよ、そこで頭打ちしますよ、こう言っているのです。そうでしょう。ここではっきり言いなさいよ。
  284. 小野雅文

    ○小野説明員 先生のおっしゃっているとおりでございます。
  285. 細谷治嘉

    細谷委員 交付税の性格は、発電所周辺が発電所建設のときからいろいろな金が要るので、交付税にのっとって二五%を補償するということでできているということはいま確認されました。そうだといたしますと、新聞等によりますと、こう書いてある。この「交付金を受ける市町村整備計画を策定しなければならないが、対象となる事実は国の補助金がつかない市町村単独の保育所、廃棄物処理施設」その他単独事業だけしかこの交付金は使っちゃなりませんよというのですよ。そうでしょう。国の補助金がつく、補助裏のやつはこの交付金を使っちゃならぬですよと、こういうことです。この新聞は読売の一月十八日の記事ですが、エジプト時代とは申しませんけれども、ずいぶん古い話が出ておるのです。こういうことなんですか。交付金の使途はひもつきですか。
  286. 小野雅文

    ○小野説明員 いま先生おっしゃいましたように、補助裏には使えないようにしたいと思っております。
  287. 細谷治嘉

    細谷委員 自治省にお尋ねいたしますが、四十九年度の地方財政計画の中で、電源開発促進対策交付金九十一億円と出ております。これはひもつきですか。単独事業しか使えない、基本整備計画に基づく補助裏については使えない、こういうことですか。それならば、この地方財政計画でもっとはっきりしておいていただきたい。
  288. 近藤隆之

    近藤政府委員 この交付金の使途につきましては、今後政令あるいは交付要綱によって固まってくるんだと思います。われわれといたしましては、この交付金の性格からいたしまして地方団体が弾力的に使えるようにしたい、そういう基本線を持っております。そういった線で今後通産省あるいは大蔵当局とも折衝してまいりたいと思っております。
  289. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、通産省と自治省は違うのですよ。一方は補助裏に使えない制限された財源であります。一方は自主財源だ、交付税的なものに乗っかっていくのですから、その間の財政需要に対応する意味において周辺整備の交付金をやるのだから、これはやはり自主的財源、交付税的な性格を持たせる、こういう意見で対立しております。どっちですか、大臣。
  290. 山形栄治

    山形政府委員 通産省といたしましては、今回のこの交付金は、発電所等の設置促進に資しますため、本法で交付されるものでございます。各個別事業の施設別に負担または補助をしております国庫補助の体系とは別個の助成措置だと考えておりますので、一応補助裏には使わないでこれを運営しているほうが妥当ではないかと考えておるわけでございます。
  291. 細谷治嘉

    細谷委員 補助金の特例、補助率の特例は、従来あったのはぶった切っておいて、別表であったものは切っておいて、そして今度は、交付金はやりますけれどもこれは単独事業で補助裏には使えませんよと……。過疎地の町村で、公共事業をどんどんやられて、その裏負担ができますか。しかも、先ほど私が確認したように、交付税の基本的性格にのっとって頭打ちまでさせているでしょう。それなのにこれが補助裏には使えない、使途が制限されています、そんなばかげたことありませんよ。大臣、どうですか、これは。それはもう部下がそうおっしゃっていますけれども、補助率の特例もぶった切っておいて、そしてわずかに九十一億円を配るのに、これはひもつきでございますよと、補助事業のほうは幾らうんとあってもあなたのほうでひとつ別に金をつくり上げなさい、こんなことでこれは促進できますか。周辺整備ができますか。地方財政は今日そんな甘いものじゃありません。大臣、これはあなたの部下、思い直していただきたい。いかがです。
  292. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 こういう特別の法律をつくった趣旨からいたしますと、やはり本法の目的である電源開発促進に合うように使っていただくということが本旨であろうとは思います。しかし、市町村にはまた市町村のいろいろな都合もあるでしょうから、その辺は財政当局ともよく相談をして、調整するように検討してみます。
  293. 細谷治嘉

    細谷委員 それはここでやりますね。当初行なうのは、これはもう補助事業へ重点が置かれる、これはあたりまえです。こういうことでは、これはどうにもならぬです。ですから、大臣は、かなり前向き――いま自治省ははっきり、地方財政の現状から、これにひもをつけられては困る、こういうことを言っているわけです。何か聞きますと、大蔵は、補助金の裏金としてはだめだ、こういうことを言っているそうでありますが、これはきょうおいでいただいていますけれども、あす詳しくやります。しかし、交付税的な手法をとりながら、それで頭打ちさせておきながら、二五%あるいは三分の一というのは――三分の一というのを具体的にいいますと七十五分の二十五ということです。基準財政収入額に織り込まれる七五、織り込まれない二五、七十五分の二十五というのが三分の一でしょう。それで基準財政需要額かける二・二マイナス基準財政収入額の三分の一というのは、三分の一というのではなくて、七十五分の二十五なんですよ。そういう基本性格からいって、これはもう裏負担はまかりならぬ、こういうことではいかぬので、それはやはり周辺整備ができるように、市町村はむだづかいするわけではありませんから、合理的にこの金を生かしていただく、重点的に生かしていく、こういう必要があると私は確信します。大臣は、そういう点で、前向きにやるということでありますが、通産大臣、大蔵大臣の一言で参っちゃだめですよ。あなたはそういうことはないと思うのだけれども、せっかくやるのならば、やはり市町村が福祉に貢献できるように金を使わせる。その金は整備計画全体で明らかになってくるわけで、めちゃくちゃに使うわけじゃないのですから、アトランダムに使うわけじゃありませんから、これはひとつ大臣、もう一度その線で実現するように努力する、そうしますと言っていただけばいいわけですよ。いかがです。
  294. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この電源開発促進法を設けた法案趣旨に合うように市町村考え方も尊重して適当に調整をするようにいたしたいと思います。
  295. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題についてはさらにあるのですけれども、もう時間が来ましたから、あと九条についてちょっとお聞きしておきたいと思いますが、「財政上及び金融上の援助を与える」というのはどういう内容ですか。その内容について準備がございますか。お答えいただきたい。
  296. 山形栄治

    山形政府委員 九条の財政上及び金融上の問題でございますが、財政上の援助として考えられますのは、整備計画に基づきます事業につきまして、一般会計または他の道路特別会計等によります、すなわち補助制度のあるものにつきまして当該事業、本事業を優先的に採択していただくということでございまして、この辺は政府内部の思想の統一が行なわれておるわけでございます。  それから金融上の援助として考えられますのは、特に地方債のいわゆるワクの確保の問題でございまして、この辺につきましては、本法の重要性に基づきまして、これを適切に配慮するというのが一番大きな優先的配慮の内容でございまして、ともに各省及び財政当局とも話し合いの進んでおるものでございます。
  297. 細谷治嘉

    細谷委員 自治省、九条は準備はありますか。
  298. 近藤隆之

    近藤政府委員 ただいまお話のございましたように、整備計画が出てまいりますと事業が特定いたしまして、地方債等必要な場合が出てまいると思います。その場合におきましては、所要の地方債を確保したいと思っております。
  299. 細谷治嘉

    細谷委員 その適当な地方債を確保するというのは、地方債計画のどこに載っておりますか。
  300. 近藤隆之

    近藤政府委員 これから整備計画ができてまいるわけでありますので、計画が出まして、事業が特定し、その後の問題になろうかと思います。したがいまして、具体的には明年度以降の問題になろうかと思います。
  301. 細谷治嘉

    細谷委員 明年度以降って、税金は四カ月分取られるのですよ。まさしくこれだけの法律を出しておきながら、全く準備してないじゃないですか。地方債計画のワク外でですか。
  302. 近藤隆之

    近藤政府委員 本年度の場合、法律が通りまして、これがすべり出して事業が特定されてまいりますならば、ことしの地方債計画のワク内で、必要に応じまして処置をいたします。
  303. 細谷治嘉

    細谷委員 ワク内でやるというので、あらかじめこのワク内でどこへ、どんなところに準備してあったのですか。
  304. 近藤隆之

    近藤政府委員 事業の内容によると思います。学校ならば義務教育債、その他いろいろな施設でございますと一般単独債等々、地方債計画全体の中で操作してまいりたいと思っております。
  305. 細谷治嘉

    細谷委員 四十九年度はどのくらい見込んでおるのですか。
  306. 近藤隆之

    近藤政府委員 これは主管省のほうでもわかりませんので、われわれのほうでは、まだいまのところ見当がつきません。しかし、まだ初年度でございますので、それほど膨大な額になるということは予想されないと思います。したがいまして、いまの地方債計画のワクの中でできるのではないかと思います。
  307. 細谷治嘉

    細谷委員 私はいままで地方財政というサイドから主としてこの問題を質問したわけでありますけれども、遺憾ながらこの法案に対する準備というのはきわめて粗雑である、こういうふうに申し上げざるを得ません。しかも、その内容も、まさしく電力会社と国は、その負担をすべて消費者にかぶせて、交付税という名において、税体系を乱すような形で、しかも交付金の体系を乱すような形で、ことばをかえて言いますと、地方財政を混乱させるという形でこの法律が出たことをまことに遺憾とします。残念ながら私は、この法律はひとつ出直していただきたい。周辺整備について、私は冒頭申し上げたように、電源所在市町村及びその周辺に対してやるべきことは、現在の体系の中において特例なんてはずしてやれば、数億の金は出る。固定資産の問題にいたしましても、あるいは電気の税にいたしましても、特例措置だけでも数百億ですよ。やるべきものから先にやるべきである。そういう形で、私はこの法律はひとつ出直していただきたい。私はそういう意味において強く反対の意を表明して、きょうの質問を終わっておきます。
  308. 濱野清吾

  309. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は原子力発電所をおもに対象にいたしまして質問をいたしたいのでありますが、先立って、基本的な問題について大臣にお伺いをしておきたいと思います。  今日、電源開発計画でつくられている目標に対して、実際の発電所建設状況は芳しいものではありません。これは御承知と思います。われわれが受けております説明でも、目標に対する達成率は、四十七年が三二%、四十八年が四四%と聞いております。そこで、高度成長に見合ってつくられた電源開発計画そのものについて、無理があると考えておられるのかおられないのかということが一つと、また、いま審議されております法案が通ると、このおくれは取り戻せると考えていらっしゃるのかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  310. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本エネルギー需給計画にのっとりまして、ある程度計画性をもって進めておるわけでございますが、最近の情勢を見ますと、お答え申し上げましたように、電調審の答申を経たものの中で、すでに許可済みで着工できないものというのが三百五十万キロワットばかりある。そういうような情勢から見まして、需給関係を想像いたしますときわめて苦しい状態にあります。たしか昭和五十三年に予備率がマイナス二・八になるという計算になっていると思います。そのとおり電力の伸びがあるいは少なくなる、それほどいかないにしても大同小異そういう線に近いところにいくんではないかということをおそれるものであります。
  311. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では、あとのほうで質問申し上げました、いま御提案になっているこの法案が通るとそういうギャップというものは解消するというお考えなのですか。
  312. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一挙に解消するとは思いません。やはり原子力発電に関する御理解を深めて、安全性の問題であるとか、あるいは公害問題であるとか、そういう住民の皆さんの心配していらっしゃる問題についてわれわれは強力に政策を推進しつつ、またこういう住民に利益を還元するという方策も推進していかなければならぬと思っております。
  313. 瀬崎博義

    瀬崎委員 無理はあるけれども、結局電力需給関係を考えればやらなければならないというお答えのように受け取るわけなんですが、エネルギー庁も発電所立地地元住民の反対で難航しているということを認めておりまして、その理由として、第一には発電所立地に伴う環境保全に住民が不安感を持っていること、第二に発電所建設されても雇用効果等が少なく、必ずしも地元住民の福祉向上に役立たないことをあげているわけなんですが、これらに対処しようとする場合、第一義的に解決しなければならない問題は二つあげているうちのどちらの問題だと考えていらっしゃるのか、これをお答えいただきたいと思います。
  314. 山形栄治

    山形政府委員 いま電源開発が進んでおりませんのは、いま御指摘二つだと思いますが、まず何よりも大事なことは地元の不安、いわゆる公害安全上の不安を解消する、ここに全力を傾けるということであろうと私は存ずるものでございます。これは政府の一部局でなく、政府全体の問題、国民全体の問題としてそれに取り組むべき大問題であろうかと思うわけでございますが、一方本法案で提案しております地元の不満を解消するということも大事なことでございますので、両方の効果、相互相まってこれを進めるべきだと思いますが、やはり住民の不安の解消、これがまず何よりも配慮すべき問題であろうと考えるわけでございます。
  315. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そういたしますと、二つあげられました困難な理由のあとのほうに対処する法案がいま出ておる。当然それに優先すべき第一の問題解決のための対処は政府としてとられておるという前提があるわけですか。
  316. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は、原子力発電にいたしましても、原子力委員会を拡充強化して安全性審査あるいは審査基準等について国際的基準を比較して日本の場合はさらに厳格な基準を設けておりますし、審査にいたしましても最近は非常に厳重になってきております。そのほか、いわゆる廃棄物の処理あるいは何といいますかウエーストディスポーザル、それからもう一つは再生のためのいろいろな処理等につきましての国産技術を進めつつ、外国技術を導入しつつ、いま最善の環境問題を考えながらの技術開発をまたやらしておるところでもあります。     〔委員長退席、稻村(佐)委員長代理着席〕 特に大事なことは、ウエーストディスポーザルの問題でありまして、ドラムかん等に詰めてあるものの処理あるいは将来出てくるであろう海中投棄とか、そういうものに対する準備、そういうようないろいろな問題につきましてもいろいろ検討を進めておるわけでございます。
  317. 瀬崎博義

    瀬崎委員 万全を尽くすべく努力をしておるというお話のようでありますが、現在ここに出ております法案については、公共施設を整備してやるから発電所立地させろ、言いかえますと、幾らかの公共施設に対する財政援助で原子力発電所等の立地の取引を住民に迫るものとの批判が出ていることは政府側も十分御承知だと思うのです。そこで、いま大臣が言われましたような内容は当座しのぎで、住民を納得させるような内容のものなのか、ほんとうに根本的な問題解決で誠意をもって民主的に住民の納得を取りつけようとしておる中身のあるものなのか、一体そのどちらなのか、お答えをいただきたいのです。
  318. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはりわれわれの努力の中心は安全問題や環境問題に関する住民の皆さんの立地的な理解を深めて協力していただくということが第一でありまして、いま出しておる法案は、どちらかといえば、住民に還元すべき福祉を還元しなかった、そのおくれを取り戻すという意味も多分にあると私たちは考えております。
  319. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それでは、その根本的な問題である原子力発電所に対する住民の不安がほんとうに解消できるような実のある施策がとられているかどうかという点に移るわけでありますけれども、その第一といたしまして、原子炉の工学的な安全性についてお尋ねをしたいと思います。  現在運転中の原子力発電所については、原電の東海第一及び敦賀それから東電の福島第一の一号機、関電の美浜一号機、二号機、そして中電の島根のたしか六基、二百二十八万キロワットだと思います。そうですね。この運転中の原子力発電所六基のうち、今日まで事故を起こしたことのある発電所はどこどこですか。
  320. 井上力

    井上説明員 御指摘の東海、敦賀、福島一号、美浜一号、美浜二号、島根でございますが、東海から美浜二号につきましてはいずれも事故を起こしております。島根につきましては、まだ運転開始後事故を起こしておりません。
  321. 瀬崎博義

    瀬崎委員 六基の原子力発電所が運転されておって、いずれもまだ日は浅いわけでありますが、そのうち五基までは事故を起こしておる、こういう事実があるわけですね。さらに現在この定格出力を下回って運転せざるを得なくなっている発電所は幾つありますか。
  322. 井上力

    井上説明員 東海発電所一号機と美浜発電所一号機の二つでございます。
  323. 瀬崎博義

    瀬崎委員 定格出力に対して現在の運転出力はそれぞれ幾らになっていますか。
  324. 井上力

    井上説明員 東海発電所が定格出力十五万六千キロに対しまして約十四万キロでございます。それから美浜発電所一号機が定格出力三十四万キロに対しまして二十万キロでございます。
  325. 瀬崎博義

    瀬崎委員 原電東海は、定格出力は十六万六千キロワットのはずですよ。
  326. 井上力

    井上説明員 東海一号炉はちょっと間違いました。十六万六千キロでございます。
  327. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この出力ダウンは一時的なものですか、それとも長期的に及ぶものなのですか。
  328. 井上力

    井上説明員 東海一号炉につきましては、これは長期にわたるものだというふうに考えております。  美浜一号機につきましても、目下のところ当分の間は出力アップは望めないというふうに考えております。
  329. 瀬崎博義

    瀬崎委員 もうこれ以上私説明する必要はないと思うのです。現在とにもかくにも運転中の原子力発電所原子炉は六基であります。そのうちごく最近に運転を開始した島根を除いて、すべて事故を起こしております。かつ六基のうち二基はいずれも長期にわたって出力ダウンをせざるを得ない。むしろ定格出力に戻す見込みはほとんどない、こういうふうな状態なのであります。  今度いろいろ問題をはらみながらも原子力委員会並びに総理大臣は、東電の福島第二原子力発電所設置許可をいたしました。これに先立ちまして、まことに不十分な公聴会ではありますけれども、初めて政府が主宰して公聴会を福島で開きました。そこで述べられました意見に対する検討結果の説明書が、これまた出し方も非常に非民主的で、原子力委員会の答申と同時にこの検討結果の一説明書を出し、これに対してはもう反論の機会を許さないという形で出されておりますが、その中でたとえばアメリカにおけるLOFT計画一つであるアイダホにおける小規模ブローダウン実験について、「このアイダホ実験の結果については、加圧水型の実用炉に適用すべきか否かについても、議論のあるところ」と述べております。また、ピンホールとかクラックなどの燃料棒の損傷についても「多数の被覆管の中のごく一部のものが損傷に至ることがある。」と認めております。そして前者につきましては「加圧水型原子炉の安全審査における評価においては、この実験結果を織り込み、」と述べ、後者につきましては「これらの損傷によりある程度放射性物質が燃料棒から漏洩することを前提とし、平常運転中に放出される放射能量として従来の先行炉の運転実績に比べてかなり高い値を仮定して、」云々と述べているのであります。つまり、新しい実験だとか、新しい事故等の事実から新しい評価を必要としたことをこれは認めておるものであり、日本で現在使用されております原子炉が、安全性についていえば完全な科学的評価の上に立って建設されたものでないこと、しばしば政府は実証炉だといわれますけれども、実験炉的な状態にあることを示していると私は考えるのですが、いかがですか。
  330. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原子力発電の場合は、新しい科学であり技術でありますから、ある安全圏内においてある意味における事故と思われるようなものが起こることはやむを得ないと思うのです。これはディーゼルエンジンの場合でも、あるいはほかの火力発電の場合でも、当初においては起きてきておる。ただし、それはある安全係数の範囲内において起こることでなければ、これは科学的に安全とはいえない。それがその許容量の中で起こることであるならば安全と一応みなしていいのではないかと思うのです。いまの場合でも、たとえばピンホールが出て一次冷却水と二次冷却水の間に混淆が起こったかもしれぬというような場合は、検知機によって検知が出てくる、それで直ちにとめて手当てをする、そういう検知が行なわれるということが大事なことなのでありまして、検知が行なわれるということが出たからといって危険であるというふうには断定できない。それはちょうどヒューズがあって、ヒューズが飛んだから電気が危険だというのではないので、安全装置が作動するということ自体が非常に大事な意味を持っておる、そういうように思うのであります。ECCSの問題にいたしましても、そのほかの問題にいたしましても、大体同じであるだろうと思うのであります。  それで、最近いろいろ起こっている従業員の事故といわれるものを見ておりますと、わりあいに不注意によるようなものがあります。たとえばバルブの問題にせよ、そのほかの扱いにいたしましても。しかし、それらはいずれもその一定の安全圏の中に、予想される事故率の中において起こっておるという問題でありまして、それがために一定の安全率を越えた危険のある事故であるというところまで至っているものではない。もとよりわれわれとしては、そういうことも起こさないように細心の注意を払って安全の確度を高めていく必要があるとは思いますけれども、それがゆえに科学的に危険であると断定することは早いと思います。
  331. 瀬崎博義

    瀬崎委員 安全か危険かということを論ずる場合に、やはり私は一つは事実を見る必要があると思う。だから現在日本で運転中の原子炉の状態をまずお尋ねしたわけであります。これが、長期的にわたって運転した結果先ほどのようなことになっているとか、あるいはいずれ近く出力は回復できるんだというふうな話なら別ですが、もう約半分に出力を低下せざるを得ないし、回復の見込みが非常に薄い、こういうふうな事実は、何と説明されても、国民の側から見てこれで安全性の立証された原子炉と思えといわれても、これは無理な話だと思います。  それといま一つ、ヒューズという安全装置とECCSなるものとの比較を出されましたけれども、化学物質による人体への影響ですらやはりわれわれの予測のし得ないような重大な結果が生まれてきているのであります。こっちは放射性物質であります。大臣は、この化学性物質と放射性物質の人体に与える被害を同列に置いて論じられるつもりですか。
  332. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もとよりおのおのその特性があって、われわれとしては細心の注意をもって当たっていかなければならぬと思っております。
  333. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は、そういう放射性物質を科学的な物質と同列に置いて安全性を論じておられるような大臣のお話については、誠意をもって国民の誤解を解くんではなしに、何といいますか、むしろ国民にごまかしを注入するような論議ではないかと思うのです。そこはやはりもう少し科学的に厳密な区分が必要ではないかと思います。  もしも先ほど大臣が言われたように、政府に確信があるとおっしゃるならば、私はこういうことを取り上げるべきだと思うのです。といいますのは、公聴会のときに相当専門的な意見が出ているわけであります。ですから、これを普通一般の住民や国民が聞いても、なかなか討議の仲間に入りにくいという問題がある。こういうことについては専門科学者間で公聴会を開くようにしてほしい、こういう希望が出たわけであります。ところが、この公聴会に対する検討結果の説明書では、「今後とも原子力安全性に関し、必要に応じ、広く専門家の意味を聞くこととしている。」その必要性は述べながら、しかし専門家間の公聴会については拒否をしていらっしゃるわけなんです。私たちはここらが理解をできないのであります。ほんとうにいま中曽根大臣の言われたように安全圏内だと言われるならば、大いに専門学者間の公開の論争の場をつくって、そのことによって科学者間の意見の一致も促進し、そして国民の安心が得られるようにすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  334. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それも一つのお考えであると思いますが、公聴会という場合にはやはりパブリックでありますから、民衆に、主権者である国民にわかりやすいような形で行なわれることが望ましいと思うのであります。学者間のことは学会その他で専門家で論争していただくとか、論文の応酬をやるとか、そういうことによって広く客観的に冷静に科学的にものを処理するほうが好ましいのではないかと思います。
  335. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は、きょうは担当大臣がおられませんから、あえて深い論議は避けますけれども、せんだって科学技術委員会に実は原子力潜水艦の放射能監視の問題について学者をお呼びしたしところが、その参考人であるある学者の御意見に対して、本来ならば直接大臣があれこれ干渉すべき立場にないのでありますが、俗なことばでいえば、学者づらをして政治論を吐いている、森山大臣のいわくによれば、技術論をもって政治論にすりかえている、こういう話があったのですね。こんな態度で、いま大臣のおっしゃっているような、ほんとうに真理を求めるという科学者の態度、冷静な論争ということになるでしょうか。もしそういうのがほんとうに政府の態度であるとするならば、われわれにとって不愉快な場面がこの間あったことについては一度閣議等で御注意もいただきたいし、検討もいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  336. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 参考人や公聴会における意見の聴取というものは静かにわれわれは聞くべきでありまして、その内容がわれわれの意見に合うか合わないかということによって感情を出すことはまずい、そういうように思います。
  337. 瀬崎博義

    瀬崎委員 第二は、環境に対する放射能影響であります。またこの検討結果説明書を引用いたしますが、「陸水、土壌、農畜産物、海水、海産物、海底上等の環境試料を定期的に採取し、放射性物質の濃度を調査することとしている。これらの値は公表され、周辺住民原子力発電に対する理解と協力とを得るための一助となっている。」現在運転中の原子力発電所についてこれらの調査を行なった機関はどこですか。
  338. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力発電所周辺の環境調査につきましては、第一義的には原子力施設設置者がその義務を持っております。しかしながら、周辺住民、地域住民の安全、環境保持の責任を持つ機関としての地方公共団体、地方自治体がさらにその立場におきまして環境調査をいたすというのが通例でございます。なお、原子力施設者と地方自治体との間で一般の場合は話し合いをいたしまして、協定を結ぶというようなことをいたしまして相互に協力をして実施をいたしております。
  339. 瀬崎博義

    瀬崎委員 なるべく簡単に答弁をさせるように努力するから短く終わってほしいという要望を受けているのですが、伊原次長、私の質問に答えてください。私が引用しておりますのは、この検討結果説明書のⅡの二五ページに当たるわけであります。もう一ぺん読みますと、「陸水、土壌、農畜産物、海水、海産物、海底上等の環境試料を定期的に採取し、放射性物質の濃度を調査することとしている。」この分析調査は一体どこがやっていたのか、こう聞いているわけなんであります。端的に答えてください。
  340. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生指摘の点につきましては、従来原子炉設置者としての東京電力、それがみずからある程度分析を行ないますとともに、これを外に委託ということで、日本分析化学研究所にその業務の一部を委託しております。
  341. 瀬崎博義

    瀬崎委員 これはおかしいですね。この前お聞きしたのでは、九電力会社中七電力会社のいま申し上げました環境の試料調査は、分析研で行なったと聞いたわけなんです。一部とおっしゃいましたね。大多数なのですか、一部なのですか、どちらですか。
  342. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 その一部を委託いたしております。
  343. 瀬崎博義

    瀬崎委員 その一部というそのとは何をさすのですか。
  344. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 試料の分析でございます。
  345. 瀬崎博義

    瀬崎委員 具体的に申し上げますが、東電福島の場合、結局これらの追跡調査というのは運転前の濃度と比較検討することになりますね。この福島の場合、それからもう一つあげましょう、島根の場合、日本分析化学研究所以外のどこかで核種分析をやった実績がありますか。
  346. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 環境分析の方法は幾つかございますが、その中で特に先生指摘の核種分析につきましては日本分析化学研究所に委託しております。
  347. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この検討結果説明書では、周辺住民の理解と協力を得る助けになっている、こう述べているわけなんです。わが党の不破議員及び一連の共産党の追及で明らかになりました日本分析化学研究所のでたらめぶりを知っております国民が、はたしてこういった値によって安心するでしょうか。これでもなお理解や協力が得られると思うのですか。
  348. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 環境試料の分析は、先生御高承のとおり、原子力施設の運転開始前と運転開始後に有意の差が出てくるかどうか、すなわち環境に影響を及ぼしたかどうかということを知るのが目的であります。そのための調査でございます。しかしながら基本的には、原子力施設から排出される放射性物質につきましては、排出口、排気口において厳正なるチェックが行なわれておるわけでもございます。したがいまして、環境への影響というものは、実際問題といたしまして十分施設側で制御をいたしております。  なお、環境調査につきましてのいろいろの数値につきまして、多少の計算違いなどがあったことははなはだ遺憾でございますが、それをもちまして直ちに原子力施設安全性がそこなわれたということではないと理解いたしております。
  349. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は、安全性がそこなわれたのかどうかを聞いているのじゃないのです。あなたたちが発表いたしました検討結果の説明書によれば、あれこれを言っているのではなくて、先ほど申し上げましたような陸水、土壌等のサンプリング調査についてこの値が公表され、住民の理解と協力を得る一助になっている、こう書いているから、こういうものを日本分析研ですべて分析調査しておって理解や協力が得られることになるかということを反問しておるわけなんですよ。  なお、一部の訂正と言われましたけれども、東電福島に関して、いま言われた運転後のそのときどきの測定結果と常に比較されるはずの運転前のバックグラウンドの放射能測定値については、二十二カ所の書きかえがあった。むしろ理解を得るどころか疑惑を得るような事実が出てきているわけであります。科学技術庁はこれについて、転記ミスとか、小数点以下の四捨五入の誤りとか、プラスとマイナスの見誤りとか、平均値の見誤りなど、これ自体許されるものではないけれども、単純ミスに見せかけようと努力はされておった。しかし、関係の少ない委員の方には、細部にわたって恐縮ですが、細谷川が二・九ピコキュリー・パー・リットルが四・三ピコキュリー・パー・リットルに、竹田宅井戸水が〇・四ピコキュリー・パー・リットルが一・七ピコキュリー・パー・リットルに、橋本宅井戸水が二・四ピコキュリー・パー・リットルが七・六ピコキュリー・パー・リットルに訂正されたことについては、明らかにこれは分析研における分析か、または計算過程に誤りがあったために起こったことじゃないのですか。
  350. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいま先生指摘のような間違いがありましたことは事実でございます。この点につきましてはまことに遺憾なことであると思っております。
  351. 瀬崎博義

    瀬崎委員 しかもこれについて原票を出してほしいと言ったら、もう四十六年度は焼き捨ててない、結局推測で計算過程あるいは分析過程に誤りがあったんだろうというふうな資料が出されているわけなんです。つけ加えておきます。しかもあなた自身が私の質問にこう答えられたでしょう。「分析研が行なっております放射能分析に関しますデータについては、信頼性が失われたというのは事実でございます。」これは原子力発電所についてですよ。そのほとんどが、分析研で調査されてきた陸水、土壌、農畜産物、海産物、海底土等の放射性物質の濃度の値は結果だけが公表されたにしたところで、住民の原発に対する理解と協力を得る助けになるはずがないことは明確だろうと思うのです。ですから、少なくともこういうことを書いた以上は――私たちは間違いは間違いと、そのこと自身も公表することが政府としては信頼を得る唯一の道だと思うのです。ところが逆に、電力会社と分析研の関係は私契約だということにして、がんとしてその資料提出を拒否していらっしゃるのがいまの事実でしょう。これはひとつ私は大臣に答弁を求めたいのです。先ほどは、非常にフェアな科学者間の論争が望ましいとおっしゃった。今日このように政府自身も疑いがかけられてあたりまえだといい、かつまた誤りのめる事実は認められ、そしてわれわれが国民にこりいう形で間違いが起こっているんだということを示そうとしても、原票等証拠になるものは出さない、こういうことでほんとうにまじめに国民の女心を考えているということになるのでしょうか。
  352. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいま先生指摘の点につきましては、科学技術振興対策特別委員会におきましての御説明にもございますように、電力会社と分析化学研究所との間の私契約であるという観点もございまして、資料の提出につきまして累次先生に御説明申し上げたとおりでございます。なお、私どもといたしましては、分析化学研究所に立ち入り調査もいたしまして十分チェックをいたしまして、その誤りなども十分確認いたしておりますが、ごく単純な誤りということでございまして、発電所関係につきましての資料の信頼性は一応あると考えております。なお、電力会社相互間におきましてこの関係の総点検もいたしております。
  353. 瀬崎博義

    瀬崎委員 くどいようですが、私、これは大臣にぜひ見解を求めたいのです。伊原次長自身が、信頼性が失なわれた、こう国会でも言い切っているわけなんです。現に結果だけが公表されて、その結果には間違いも起こっているのです。なるほど科学技術庁が立ち入り調査もされたでしょう。しかし、その科学技術庁のやること自身が今日信頼されていないわけですね。これは昨年九月に山原議員が指摘されて、それ以後のやってきたことを考えられれば信頼しろというほうが無理だろうと思うのです。だから、ほんとうに国民の理解と協力を得ようと思うならば、この際、そのもとになっている原票だとか、あるいは波高分析チャート等を示すことによって間違いは間違い、こういうことでむしろ理解と協力を得られるのじゃないかと思うのです。ぜひひとつこれは大臣の御助言もいただいて、資料の提出に従うように御尽力いただきたいわけであります。
  354. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 科学技術庁所管の研究所でありますから、通産省の私がとやかく申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、ともかく一般の皆さんの御理解を得るのに最善の努力を尽くすようにお互いに努力していきたいと思っております。
  355. 瀬崎博義

    瀬崎委員 念のために申し上げますが、われわれが求めている原子力発電所関係の資料というのは、予算委員会で不破委員並びに金子委員が要求された資料なのですから、当然大臣も関係していらっしゃるわけであります。ひとつ遠慮なさら、ずに資料の提出のために尽力いただきたいと思うのです。  第三に温排水影響の問題であります。  再び検討結果説明書に戻りますが、「環境庁においては、温排水に対して、排水基準の設定等による何らかの規制措置を可及的速やかに実施すべく、中央公害対策審議会に温排水分科会を設置して、目下検討が進められているところ」としております。この「可及的速やかに」とは一体いつをめどにしているのですか。
  356. 井上力

    井上説明員 現在、先生指摘のように、環境庁におきましては水質汚濁防止法によります基準検討をしておるわけでございますが、環境庁の目標としては四十九年度内ということを目標にやっておるように聞いております。
  357. 瀬崎博義

    瀬崎委員 これは答申の基礎になった検討結果の説明書なのです。ですから、少なくとも審査をパスさす条件として可及的すみやかに実施するということを前提にしているわけです。そのことについて、この説明書を出した原子力委員会がめどが言えないというふうなことでは、結局住民をだましたことになるじゃないですか。これはひとつ科学技術庁のほうからも答えてください。もう少し責任のある答弁を……。
  358. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 温排水の問題につきましては、環境庁におきまして可及的すみやかに基準を作成するということで御検討いただいておると理解いたしております。なお、基準が作成されていない段階におきましては、個々の事案につきまして専門家によります十分の討議をいたしまして、安全性の確保に万遺漏なきを期しておる次第でございます。
  359. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いまいろいろな専門家意見を聞いているというお話でありますが、実際の調査などを含めた意見でこの答申は出されているのですか。
  360. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 温排水影響につきましては関係各機関におきまして各種の調査が行なわれております。その調査の結果をもとといたしまして、たとえば原子力発電所におきましては、通商産業省におきまして専門家によります御検討が行なわれ、その御意見原子力委員会がいただきまして、さらに原子力委員会といたしまして環境関係の御専門の方も加えまして十分検討をいたしました結果、安全上支障がないということで施設設置の許可をいたしておるわけでございます。
  361. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうすると、原子力委員会での温排水問題に関する審査のもとは通産省にある、こういうことなんですね。その通産省の場合は、どうもこの文書によりますと環境審査顧問というのがいらっしゃって、その御意見が基礎になっているようなんです。この温排水に関する環境審査顧問というのはどういう方で、また実際どういうふうな調査をした上に立って意見を述べられておるのか、私お聞きしたいのです。
  362. 井上力

    井上説明員 御質問の点でございますが、私ども通商産業省におきましては、電気事業法に基づきまして、かねてから火力発電所原子力発電所規制をやっておるわけでございますが、この許認可に際しまして、環境に対する影響を十分検討しなくてはいけない、こういうことでございまして、私どもだけでは知識が非常に不十分でございますので、昨年十月だったと思いますが、環境に関しまする顧問をそれぞれ専門の先生方にお願いをいたしまして、実際の環境に関しまする電力会社から出てまいりました調査資料に基づく調査並びに現地におきます調査等に基づきまして御意見を伺い、それに基づいて環境のアセスメントをやっておる、こういうことでございます。
  363. 瀬崎博義

    瀬崎委員 通産省のおっしゃることは信じたいのでありますが、こういう新聞記事もあるわけなんです。「温度差めぐりホットな争い」という見出しの最近の新聞記事であります。ここでは「環境庁が、新たな熱汚染源として取り組んでいる温排水環境基準づくりは、思うように進んでいない。」これは排水口での話でありますが、「「摂氏七度に抑えるのが限度」という電力側と、「冷却塔など設備をつければ、もっと下げられるはず」という水産側の主張が大きく隔たっているためだ。」そして、この中の記事を読めば、この電力側の主張をエネルギー庁が主張していらっしゃる、そういうふうに書いてあるわけであります。こういうのを聞いておりますと、「可及的速やかに」ということをよく聞いておかないと、非常にこれは先になるのではないかという心配が起こるのであります。同時に通産省としては、こういう対立が実際あるときに、電力会社側の言い分に従おうとする姿勢なのか、それとも水産資源と環境を守る側の意見に味方しようと考えていらっしゃるのか、どちらなんですか。これは通産のほうにお聞きします。
  364. 井上力

    井上説明員 環境問題に関しましては、なるべく環境に対する影響を少なくしながら発電所建設を進めていくという方針でやっておる次第でございます。
  365. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうしますと、水産側の主張等は十分に聞き入れる、こういうことですか。
  366. 井上力

    井上説明員 先ほどの、私どものほうでお願いしております環境顧問の中には水産関係の方も大ぜいいらっしゃるわけでございまして、当然水産側の意見も聞きながら審査を進める、こういうことでございます。
  367. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局この温排水の問題にいたしましても未解決のままであるというのが実情であります。  第四に、これは時間の関係で一括して申し上げます。  原子力発電所の全体システムを考えるならば、まず燃料であるウランは日本はなきにひとしい。いまなおウラン濃縮は日本ではできない。運転中及び建設中の軽水炉はすべてGEまたはウエスチングハウス製である。使用済み核燃料の、つまり燃えがらの再処理工場については、大臣のお話がいろいろありましたが、現在日本に運転中のものはなくて、外国へ持ち出して処理をしてもらってておる。東海に建設中の再処理工場は原子力発電所に換算すると五十基分以上のクリプトン、トリチウム等の放射性物質を排出する状況のまま運転強行のかまえになっている。低レベルの固体廃棄物の処理方法等もまだ確定しないまま発電所の構内に積み上げたままである。また、これらの未解決の重要な問題について研究開発の体制はどうか、こういうことになりますと、森山長官が二言目に自慢されるのでありますが、百億円の安全性研究費をつけたと言われるのですが、その中心的な役割りを果たさなければならない日本原子力研究所は、人員がわずか四名しかふえていない。それも政府の安全審査協力に十二名もとられるので、実質は八名の減員になるというありさまだ。ですから、この原子力発電所システム全体のどの部分をとってみても、これまたほんとうに誠意を持って安全性の確立のために努力が払われているとは言いがたい。結局直接電気を起こす部分だけ最も手軽な方法で推進して、まああとは何といいますか、たれ流しにひとしいような状態になっている、こういうふうな点もわれわれは指摘をせざるを得ないのであります。  次の第五番目に、通産省で編集されております「電気事業の現状」を見ますと、「発電所といえども今後は地域社会との共存共栄を図らなければ円滑な立地はあり得ないという認識のもとに、国としてもその建設にあたっては地域開発地元住民の生活福祉の向上、地域産業の振興等に貢献するものとして地元から歓迎されるよう電気事業者の指導を図っているところである」と書いているのです。これは四十七年版ですから、もちろん現在審議中の法案とは全く無関係であります。地域開発地元住民の生活福祉に貢献するよう、具体的にはどんな指導通産省は行なってこられたのですか。おもな点だけ言ってください。
  368. 井上力

    井上説明員 発電所建設いたします場合には、発電所に関連いたしますいろいろな工事があるわけでございますから、これらの工事あるいは地元とのいろいろなお話し合いにおきましていろいろな公共施設についての建設に御協力をするというような点、あるいはこれは現在あまりございませんが、温排水を利用して魚の養殖を行なうとか、あるいは蒸気あるいは温排水その他を利用して野菜の栽培その他のことをやるとかいうような、まあ地元の福祉を増進する方向の協力というようなことをいろいろ指導して考えておるわけでございます。
  369. 瀬崎博義

    瀬崎委員 たったそれだけのことで「地域開発地元住民の生活福祉の向上、地域産業の振興等」と言えるような内容なんですか。
  370. 井上力

    井上説明員 従来のところでは御指摘のように十分だとは考えておりませんので、本法案等によりましてそういった面の強化を大いにはかっていきたい、かように考えております。
  371. 瀬崎博義

    瀬崎委員 たとえば関西電力と福井県及び大飯町が四十七年七月に締結しております「健康で豊かなうるおいのある大飯町を建設するための振興計画ならびに大飯原子力発電所建設に関する協力協定」というものがありますね。名前はたいへんけっこうなんでありますが、こういうものも多少やはり先ほどおっしゃった精神にのっとって通産省指導にあたった結果生まれたのでしょうか。
  372. 井上力

    井上説明員 大飯町におきます福祉のいろいろな計画につきましても、われわれのほうから大いにやるようにということで電力会社を指導しているところでございます。
  373. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうしますと、その情報等についてはとっていらっしゃると思うのですが、あの中に幾つか盛られている計画はどの程度進捗いたしておりますか。
  374. 井上力

    井上説明員 協定に基づく振興計画事業の内容でございますが、交通通信施設、それから保健衛生施設、教育文化施設。保健衛生施設といたしましては診療所でございますか、教育文化施設といたしまして総合体育館、テニスコート、バレーコート、それから防犯施設といたしまして防犯灯の施設というようなものがございます。それから交通通信施設の中の町道大島一、二号線がまだかかったばかりでございますが、その他の計画につきましてはそれぞれ九〇ないし一〇〇%の進捗率を示しているように聞いております。
  375. 瀬崎博義

    瀬崎委員 こういう協定形式でいままで一われわれはこれがいいと思っているのではないですけれども、電力会社が自治体に協力するという形態は、いま提案されている法案がもし成立した場合にはどういう関係になるのか。また、こういう法案ができ上がった後の、電力会社と自治体が住民に関係ある施設等の建設をこういう協定方式でやることについては一体どういうことになるのか、お聞きしたいのです。
  376. 井上力

    井上説明員 従来電力会社が、先ほど御説明しました例にも見ますように、いろいろ地元開発に対しまして協力を行なっているケースがあるわけでありますが、これらは多くの場合、本来は電力会社が設置する工事用道路等について地域住民の意向を尊重し、可能な限り地域開発に役立ち得るものとする観点からの協力がそもそもの起こりということになっているわけでございます。これに対しましては、この法案では電源周辺地域の福祉向上をはかるため特に必要があると認められる公共用施設交付金対象とするということでございまして、国や地方自治体が積極的にそういった施設の整備を行なうということでございます。したがいまして、今後は電源立地に伴う地元住民の福祉向上のための公共用施設の整備は主として本法案による交付金により整備されることになりますが、電力会社も先ほど申し上げました工事用道路等の建設にあたっては地元住民の意向を十分反映させる等いたしまして可能的な限り協力をすべきものであるというふうに考えております。
  377. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いままでの話だけでいきますと、電力会社がたいへん地域住民に協力しているような受け取り方がされるのでありますが、しかし実は全くまた逆の面もあるわけなんですね。特に問題が起こるのは一次冷却水等に必要になってくる淡水の取水でむしろ住民に犠牲を強いるというふうなケースがあります。  中電の島根原子力発電所の原子炉設置許可申請書では、敷地内漢流水の集水日量六百トンに加えまして松江鹿島広域水道から日量三百トンの受け入れをすることにしていたわけでございます。ところが、中電は四十四年の十一月に文書で生活用水を除いてはその供給を断わったわけです。設置許可申請内容の変更について原子力委員会は承知していたのか、また、その理由はどうなっていますか。
  378. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 島根の発電所につきまして当初計画先生指摘のようなことでございましたが、その後地域住民に御迷惑をかけないという趣旨でもちまして渓流水から淡水を採取するという計画を追加いたしております。
  379. 瀬崎博義

    瀬崎委員 地域住民に御迷惑をかけないというのはどういうことですか。
  380. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 当初予定の水量に対しまして市からもらう分を減らしまして、それで周辺の水道用水に対して過大の負担をかけない、こういうことにいたしている次第でございます。
  381. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それでは、事前にもっと十分な調査をしておれば、わざわざ上水道から三百トン送ってくれといわなくて済んだものを、いいかげんな調査といいますか、最も安易な方法ということで安全審査の申請にあたっては外部供給を受けるということにしていたわけなんですか。
  382. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 当初の予定取水の計画につきまして多少余裕を見て計画をしたということはあるいはあるかもしれませんが、実際の計画の実施といたしまして十分合理的な調整を行なったということでございます。
  383. 瀬崎博義

    瀬崎委員 松江鹿島水道議会の議事録によりますと、設置許可申請者による日量三百トンの供給につき、これは正式に文書で供給願いが出ているわけです。地元改良区、県当局とずいぶんと労力を費やして検討した結果、柿原水源地の堰堤一メートルかさ上げ必要との結論に達しました。その概略設計まで行なって、その工事費約一億円とはじき出たものですから、その経費負担について中電側の意向を打診したところ、中電側は断わったという経過が記録されているわけです。これは地域住民に対してまことに無責任といいますか、電力会社のてまえがってな態度ではないかと思うのですね。いまいわれるように、合理的な計算の上に立って地域住民に決して迷惑をかけないという趣旨ではなしに、一億円余分な金がかかる、この費用負担を中電はどうするのかといわれて、そんなに金がかかるのだったらやめます、こういう形になった。それまでの松江鹿島水道組合の労力というものは、こういう意味では全くむだになっている、こういうわけですね。  そこで、この問題は問わないといたしまして、島根原発では二号機の建設を予定しております。さらに三号、四号の建設予定が全くないかというと、そうではないようであります。さて、そうなった場合、必要な淡水量は日量幾らくらいになりますか。
  384. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 一般的に申しまして、原子力発電所におきます淡水の使用はいわゆるボイラー水と申しますか、原子炉の冷却水のほかに雑用水が相当量あるわけでございます。なお、その使用量につきましては数百トンと推定されますが、これは施設の規模等によって当然変わってくるわけでございます。その必要な水量が供給できるかどうかということも十分検討をした上、全体の計画が進められる次第でございます。
  385. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この敷地内の渓流水を集めるといいますけれども、この周辺の山というのはきわめて奥行きの浅い山で、その山合いの谷筋の水を集めて三カ所のプールにためておくというだけのことなんです。私が現地へ行きましたのは四月の初めでありましたが、プールは確かに満水になっていました。というのは、試運転しかやっていなかったからです。ところが、谷筋の水は全然なかったのであります。しかも島根地域は昨年の夏長期にわたって異常干ばつが続き大被害を出したことは御存じのとおりであります。ああいう事態になっても、敷地内の渓流水の集水だけで一号機や、二号機は十分回せるのだろうか。二号機の段階になって、一たんはお金がかかるということで断わった鹿島水道の水をもう一ぺんくれというふうなことにならないか。結局、そのことで水に困る住民に再度しわ寄せすることはないのだろうか、こういう点についてお答えいただきたい。
  386. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力発電施設設置者は地域住民との十分な協力、調和のもとに施設建設、運営するわけでございますので、そのような御迷惑をかけるようなことはないと考えております。
  387. 瀬崎博義

    瀬崎委員 伊原次長の答弁いかんにかかわらず、私が議事録で紹介いたしましたようないきさつが現に島根の原子力発電所についてはあったわけであります。また、現状から推して、将来起こらないという保証はないような状態なんであります。それにもかかわらず、いまのような答弁でありますから、これではほんとうに住民の立場に立って問題を考えているのかどうか、私はたいへん疑わしくなると思うのです。  次に、国土計画協会という協会があるので、これについてお尋ねをしたいのです。  建設省の所管だということでありますし、ここには私の出身県である琵琶湖のことやら滋賀県のことやらが一ぱい事業実績として載っておりますから、あえてこの協会そのものについてちょっと聞いておきたいのです。いつ、何を目的につくられた協会ですか。
  388. 広瀬優

    ○広瀬説明員 国土計画協会は、国土計画並びに地方計画に関します調査研究あるいは計画策定の受託、指導などを行なっております民法上の公益法人でありまして、そのうちの財団法人でございます。昭和二十一年に、当時内務大臣のもとですけれども、許可されて設立されております。
  389. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この協会の事業と政府の行政との関係はどのようになっておりますか。
  390. 広瀬優

    ○広瀬説明員 政府の行政あるいは地方公共団体あるいは民間その他広く調査研究等の委託を受けまして、それに協力しておるという関係でございます。
  391. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そういたしますと、何らかの形で政府や自治体の政策とか意思とかいうものがこの協会に伝わって、それに沿った計画策定等の研究調査が行なわれている、こういう関係にあるわけですか。
  392. 広瀬優

    ○広瀬説明員 いま申し上げましたようなもろもろの調査項目につきまして委託者のほうから御相談を受け、その内容を相談しながら、どのようなメンバーでもって研究を進めていくのがいいかも含めまして相談して持っていくということであります。
  393. 瀬崎博義

    瀬崎委員 その出されました計画等とか、あるいは研究の成果なるものは、再びまた政府とか地方自治体に取り入れられて政策策定等の要因になるということですか。
  394. 広瀬優

    ○広瀬説明員 委託者からの委託の内意を受けまして、学術的な面も含めまして十分なる調査をし、結果をまとめて報告するということでありまして、おそらくその結果は行政その他の面に反映されると思いますけれども、すべての面にそのとおりになるということではないかと存じます。
  395. 瀬崎博義

    瀬崎委員 福島県の企画開発部の依頼により四十三年の三月に原子力地区としての双葉地区の将来の開発ビジョンというものが国土計画協会でつくられているわけですが、この文書の中で、「原子力地区としての立地条件」として次のように述べております。「一般に、火力発電所電力消費の中心地に近く立地することが希望され、原子力発電所に於ても、この面からは明らかに都市立地が要望される。しかし、」「原爆被災国としてのわが国の特殊な国民感情等を考慮すれば、現状に於ては、どうしても僻遠地立地を中心に考えざるを得ない。つまり、」「送電コストを含めた発電原価の許す範囲で、人口密度、産業水準の低い地域を求めて立地するということである。」  これはひとつ大臣にお聞きしたいのでありますが、原爆被災国としての国民感情は、大都市住民については考慮し、僻地の住民については考慮しなくていいというようなものでしょうか。
  396. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全国民同じようにわれわれは扱わなければならぬと思っております。だた、原子力発電立地の問題については、科学技術庁におきましても、あるいは原子力委員会におきましても、そういう基準、望ましき基準というものがありまして、人口稠密の地帯という場合は、公害やら安全保障やら、そういうようなことを考えて万一の場合も考えてみて、万々一の安全保障としてできるだけ避けるというのが世界の趨勢で、その世界の趨勢に日本も従っていると思います。
  397. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それは中曽根大臣の御見解であって、私がいま申し上げましたこの福島県の双葉地区の開発ビジョンに述べているような、国民感情を大都市とそれから僻地とで差別して考えるということ自体が間違いだということなんですね。ひとしくそれは考慮しなければならぬということなんでしょう。  続きまして、こういうことも書いてあるのです。「県をはじめ地元一般が原子力発電所に対して極めて協力的であり、これが他の自然的、社会的条件にまさる最大の条件である。」  これは科学技術庁にお聞きしましょう。原子力発電所立地の条件の考え方の基本は一体こんなことでよいのか、また、そういう立場を政府はとっているのかということです。つまり地盤とか気象条件、こういうものは二の次、三の次で、最大の条件は住民が反対しないことだ。いかがでしょうか。
  398. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 科学技術庁は、先ほど先生指摘国土計画協会の報告書なるものを拝見いたしておりません。そういう御意見があるかもしれませんが、科学技術庁といたしましては、あるいは原子力委員会といたしましては、原子炉等規制法の精神にのっとりまして原子炉施設設置に対しての審査その他の所要の措置をとっておる次第でございます。
  399. 瀬崎博義

    瀬崎委員 科学技術庁にはもう一度あとお尋ねするとして、このビジョンづくりには、建設省から渡部与四郎という人、それから磯中綜一、首藤和正、この三人の方が調査委員として参加していらっしゃるのです。これは一体どういう立場からこの原子力地区の開発ビジョンづくりに参加されたんですか。
  400. 広瀬優

    ○広瀬説明員 協会が調査委託を受けまして選びましたリーダーは、松井達夫早大教授でございます。この先生のもとに、都立大学の左合先生、それから原子力研究所の村上先生に御参画いただきました上で、いま先生お話のございましたようなメンバーがお手伝いというかっこうで入ったやに聞いております。
  401. 瀬崎博義

    瀬崎委員 一番建設省のメンバーが多いわけなんです。どうして建設省がこの双葉原子力地区の開発ビジョンにかくもたくさん参画しなければならないのか、そこが私には理解できないのであります。どういう立場で建設省はこういうのに参加されているのですか。
  402. 広瀬優

    ○広瀬説明員 当時の経緯はつまびらかではございませんけれども、察しますに、原子力発電所立地いたしました場合に、そこのところの地域開発というものをどのように持っていくかという場合には、先ほど御答弁の中にもありましたように、公共施設その他の面が大きく浮かび上がっております関係でおそらく加えられたものであろうというふうに存じます。
  403. 瀬崎博義

    瀬崎委員 建設省は、原子力そのものには関係がないようなお話でありますが、この調査員の中には通産省からも参加しておられます。三輪公夫という方です。通産省は、当然電気事業の主管官庁であります。こういう主管官庁から公式に調査員が参加しておって、先ほど申し上げましたような見地を原子力発電所立地条件としてあげられるに至っては、これは一体どういうことかと言いたいのであります。もしこういう立場が誤りであるというならば、一度公式にこれは否定していただく必要があろうかと思うのですが、いかがですか。
  404. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 おそらく建設省も通産省も、その人たちは個人として、大学の先生等々の関係もあって参加したので、それは純技術的に自分の意見を述べる、地域開発ということは国の一つの政策でもございますし、地方の強い要望もありますから、それに対して専門家としての意見を述べる、採用するかしないかは地方のかってである、そういう技術を買われて、そういう意味で参加したのだろうと私は思います。したがって、そういう純専門家としての意見を客観的に述べるという考えに立つならば、あながち否定すべきことでないと思いますけれども、しかし、通産省の昔の公益事業局系統の所管の関係に属する人がそういうところへ入ってやるということは、個人でやることでもあまり適当ではないと思います。
  405. 瀬崎博義

    瀬崎委員 一つには、このメンバーにはちゃんとどこの省庁に属する人かという省庁名がついているわけであります。私たちが見た限りでは、決して個人というふうな資格にはなっていない。それからもう一つ、なるほど、純技術的に自分の見解をここへ反映されたというならば、先ほど申し上げました、むしろ第一次的にならなければならない自然的条件が二の次であって、住民が協力的であるか反対しているか、このほうが条件としては大事だなどというようなことを述べるのは、全くおかしいと思うのですね。ですから、そういう意味では、いま大臣の御趣旨からするならば、どこから見ても、この開発ビジョンなるものは非常に地域住民を無視した文書であるといわなければならないので、だから私は、さっき申し上げましたように、一応こういうものが出ている以上は、原子力開発はこういうものが基礎になってはならないというなら否定をしていただきたい、こういうわけなんですが、いかがでしょう。
  406. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 諮問がどういう諮問であるか、私よく存じませんのでお答えしにくいんですが、やはり原子力発電設置とか、原子力適地であるかどうかとか、開発とかいうようなものは、社会経済上の観点とか、あるいは科学技術上の観点とか、そういうものがコンバインされて出てくるもので、そういう一つの要件として地元の住民の協力があるということは、原子力開発という面から見ればそれは好ましき条件の中に入るだろうと、反対しているよりは賛成しているほうがやりいいと、そういう意味においては好ましき条件の一つに、社会条件としては入ると思います。しかし、その岩盤であるとか気象、風象あるいは海流、そのほか科学技術的な面からもまたシビアに所見が述べられておらなければならない。したがって、あくまでそういう条件の提示、エバリュエーションというようなものは客観的に、公平に、冷静に行なわるべきであると、そう思います。
  407. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員長代理 瀬崎君に申し上げます。  たいへん恐縮ですが、申し合わせの時間が参りましたので、よろしく御協力をお願いします。
  408. 瀬崎博義

    瀬崎委員 先ほど伊原次長は、科学技術庁はこの文書を知らない、参画していないというお話でありますが、しかし原子力研究所の村上昌俊氏がやはりこの調査員として参加をしております。     〔稻村(佐)委員長代理退席、委員長着席〕 こういう方が参加しておって、特に原子力発電所安全性の問題などについては全然触れていないこういう文書ができ上がっている。むしろ先ほど言いましたように、安全性の問題よりも住民の態度のほうが優先するんだというふうな、こういう結論づくりに参加している。一体これで科学技術庁の責任は済みますか。
  409. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力研究所の職員も、個人として参加したものと思っております。
  410. 瀬崎博義

    瀬崎委員 冒頭に大臣から、住民の不安をなくするように安全性を高めることが第一だ、こういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、いま限られた時間でありますので十分は言い尽くせませんでしたが、現在運転中の原子力発電所の実情とか、あるいはまた政府が今日まで原子力発電所立地計画等に出してまいりました文書あるいはその手法等々を見れば、むしろその逆である、少々住民に不安を与えても要はつくることが優先なんだというふうな事態ではないかと思われるのです。そこへまた現在審議されているような法案が、しかもその財源については結局国民にツケを回すような形でつくられつつあるということについて、たいへん私は遺憾だと思います。遺憾の意を表して、質問を終わります。
  411. 濱野清吾

    濱野委員長 次回は、明二十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十七分散会