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1974-05-08 第72回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月八日(水曜日)    午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 武藤 嘉文君    理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    稲村 利幸君       浦野 幸男君    小川 平二君       越智 通雄君    加藤 六月君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       小山 省二君    近藤 鉄雄君       塩崎  潤君    島村 一郎君       田中 榮一君    丹羽喬四郎君       橋口  隆君    前田 正男君       松永  光君    加藤 清政君       加藤 清二君    佐野  進君       山崎 始男君    渡辺 三郎君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         中小企業庁次長 小山  実君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      平井 龍明君         大蔵省関税局国         際課長     松尾 直良君         大蔵省銀行局総         務課長     米山 武政君         大蔵省国際金融         局投資第三課長 松室武仁夫君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   天野 公義君     加藤 六月君   前田治一郎君     前田 正男君 同日  辞任         補欠選任   加藤 六月君     天野 公義君   前田 正男君     前田治一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第三二号)  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第二七号)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑申し出がございますので、これを許します。玉置一徳君。
  3. 玉置一徳

    玉置委員 目下審議の過程にあります特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案、これにつきまして、昨日各界から参考人を招致いたしまして、その意見を承ったわけでありますが、この法案そのものよりも、むしろ現在の繊維工業の非常な危機というものについての関心が非常に強うございまして、それに対するいろいろな施策を緊急に講じてもらいたいという意見が多うございましたので、一、二それについての政府見解をただしながら、この法案につきまして質疑を行ないたいと思います。  そこで、現今の繊維産業不況原因は一体何と何とであるか、これについてひとつ局長から御答弁をいただきたいと思います。
  4. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維産業が現在不況に当面いたしておるわけでございますが、この原因についてはいろいろいわれておりますが、まず概括的に申し上げますと、昨年来の総需要抑制のための金融引き締め措置に基づきまして、いわゆる消費者の買い控えと申しますか、最終消費段階における需要減退、それから金融引き締めの浸透に伴いまして中間段階、いわゆる流通段階における仮需が減退してきていること、こういった繊維に対する需要減退に加えまして、昨年上期好況下におきまして輸入成約をいたしました産品が続々と通関をしてくる、こういった輸入品による在庫圧迫、こういった要因が重なりまして現在の繊維不況を来たしているものと考えております。
  5. 玉置一徳

    玉置委員 昨年の操業の異常な増加、つまり仮需要増加、これがいまお話しのように総需要抑制による実需の非常な低下——私たちも、あの当時もそういうことが行なわれるのじゃないだろうか、現象として出るのじゃないだろうかということを実際は心配をいたしておったのです。  そこで、これについて緊急に対策を講ずべきものはどういうふうに講じられるかということを一つずつこの際お伺いしておきたいと思うのです。  総需要抑制による実需低下というやつは、こいつはやむを得ぬと思います。そこで滞貨でありますが、いま丹後におきましても約二十八日間の一斉操短をやっております。実際問題として、実情を見てみましたところが六、七割の操短になっておるのじゃないか、こう思いますが、この機会に滞貨をある程度凍結するような方法を講じなければならないのじゃないだろうか。政府買い上げというようなことは非常に困難でありましょうけれども、一点目として、政府買い上げができ得るのかどうか。  二点目は、業界がある程度買い上げなり凍結なりしますものについて、資金手当て等ができ得るかどうか。その資金手当てをするとしたらどのぐらいの資金が要るのか。将来そいつを実際問題として海外援助等に差し向けられるようなことができ得るか。でき得るのならばその品種はどのようなものであって、どうような量であるか。こういうことにつきまして当局の御見解を聴取したいと思います。
  6. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 過剰在庫品政府による買い上げにつきましては、一般的にはむずかしゅうございます。ただ、かつて四十七年だったかと思いますが、バングラデシュに対しまして難民救済のために三十億円の衣料品を中心として繊維品を援助したことがございます。かような場合を除いては、政府による過剰在庫買い上げというのは現行の組織のもとではむずかしいかと思います。  ただ、民間のほうでみずから在庫凍結をすると申しますか、在庫手当てをするための資金手当てにつきましては、政府といたしましても格段の努力をいたしておるわけでございます。去る年度末、三月末の金融におきましては、全体として五百五億のうち百五十億を繊維産業に向けたわけでございますが、現在この四−六の資金手当てをどうするかということでいろいろと検討いたしておるわけでございますが、特に民間在庫手当てをいたす場合には、いわゆる民間金融機関が三千二百億のワク中小企業融資ワクとして確保しておりますので、この民間資金活用いたしまして、たとえば商工組合だとか、あるいは事業協同組合等在庫凍結をする、そういった場合にこの資金を充当し得るように、関係当局と現在話し合いを進めておるわけでございます。ただ、それが幾ばく金額になるかということにつきましては、それぞれの業界からの申し出に応じてこれに対処していくということになるかと思いますので、現在時点でどの程度の額が必要かということにつきましては申しかねる段階でございます。
  7. 玉置一徳

    玉置委員 そうすれば、在庫は、大ざっぱに見積もって、金額にいたしまして一体幾らであるのか。その金額に対してまあ三分の一なり四分の一なり二分の一なり凍結することが望ましいというようなことになれば、一体それはどのぐらいの金額を必要とするのか。
  8. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 それぞれの業種に応じまして、あるいは産地によりまして在庫額トータルがどの程度になるかということは、数量的にしか現在出ておらないわけでございますが、伝えられる各産地におきましては、ものによって二カ月前後、少ないものでも一カ月前後の在庫をかかえておる、かように承知いたしております。かたがた輸入在庫につきまして統計がございませんが、おもな商品につきまして関係商社に現在調査を実施いたしております。どの程度になるか把握につとめておる、こういう段階でございます。
  9. 玉置一徳

    玉置委員 通産大臣にお伺いしたいのですが、現在の危機を乗り切るのには、一つ生産調整と、それから在庫のある程度の重荷を——脳内出血みたいなものですから、これに若干の手当てをしてやらないと不可能じゃないだろうか、こう思うのですが、ただいま答弁がありましたが、在庫政府買い上げてどこかへ回すというようなことの手だてができ得るとお思いになるかどうか。それから業界自体がある程度自主的にやることに政府としてもお手伝いをするようなお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のように、在庫をどういうふうに処理していくかということは、非常に大事な問題であると思います。それで、まあこの際不況カルテルという構想も出ないことはありませんが、まだ不況カルテルということをやる段階ではないのではないか。ただ、組合等におきまして中小企業団体法に基づく制限措置というようなものを申請してくる場合には、これはわれわれは検討してみたいと思っております。  それから在庫をさばく一つ方法として、海外商品援助その他の中に繰り込むということもございますけれども、これは原則として当該国から要求があった品物についてわれわれがやるというのが筋でございまして、こちらから押しつけるというようなことはやるべきではございません。いままでバングラデシュに対して行なったり、ちょうど向こうのニーズとこっちの要望が合致いたしまして、かなりのものを出した例がございます。商品援助につきましては、いまエジプトであるとか、あるいは南ベトナムであるとか、そのほか若干ございます。われわれといたしましても、先方の要望に合うようにこちらのほうも話し合いを進めていまして、可能な限り現在の滞貨をそういう方向に回して活用をはかる、そういうことに積極的に努力していきたいと思っております。
  11. 玉置一徳

    玉置委員 輸出輸入その他を見れば大体潜在的な可能性ということもわかり得るわけでありますので、十分の御配意をいただきたい、こう思うのです。  そこで局長にもお願いをしておきたいのですが、全般を把握できないかもわかりませんけれども、やはり生産調整ということになりましても、総需要の喚起などということは事実上なかなかむずかしいことでありますので、やはり在庫生産というものでもって自主的な努力を払うような方向にある程度持っていかざるを得ないのじゃないだろうか、こう思いますので、もう少し実情を把握されまして、民間資金等活用にも何らかのてこを入れ得るような措置をお考えいただければありがたいのじゃないか、こういう感じがいたします。そこで、あるいは信用保証協会のあれを優先的に回すというようなこともあり得ると思うのです。  その次に、きのういろいろと御意見がございました中で、秩序ある輸入、こういうことを盛んに申されました。輸入製品の実態は、昨年三倍になったというような話がありますし、三〇%にのぼるといわれますが、ほんとうはどの程度一挙に増加したのか。それからアメリカとの繊維交渉をやっていたときに、実際問題として日本が出ましたときに、どの程度の前年度対比輸入輸出増があったからああいう問題が起こったのか。この二点について局長からお答えいただきたいと思います。
  12. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維製品の昨年一年間の輸入額は、大体平均いたしまして前年同期の三倍くらいになっております。ものによりましては四倍程度のものもございますが、金額ベースで大体三倍程度、かようなことになっております。  それから日米交渉当時の問題でございますが、当時アメリカといたしましては一九七〇年、昭和四十五年におきまして綿製品輸入消費率が一一・七%、毛製品が二四・三%、化合繊製品が五・八%、繊維トータルといたしまして八・八%になった時点から日米交渉問題を議論し始めた、かように記憶いたしております。(玉置委員「前半の三〇%というのは」と呼ぶ)綿織物は大体前年に比べまして三倍近くなっておりますが、輸入消費比率は二七・八%になるかと思います。
  13. 玉置一徳

    玉置委員 そうしますと、もう一つ伺っておきたいのですが、海外進出合弁企業からの逆輸入は、一体そのうちどの程度と思われるか。それからこちらの専門商事会社商社等委託加工を依頼いたしまして輸入したやつがそのうちのどの程度だと思われるか。その他は結局追い上げてまいりました開発途上国向こう会社なり企業からの輸入だと思うのですが、その割合がどの程度になっておるか。
  14. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 海外投資によるところの逆輸入額というのは、なかなか算定がむずかしいわけでございます。その間に流通問題もからんでまいりますので。ただ、一つ調査によりますと、これは日本海外に進出した企業についてのアンケート調査の結果でございますが、繊維品につきましては全生産額のうち二・五%が日本のほうに逆輸入されておるという数字が出ております。  かたがた企業進出の問題に関連いたしまして、たとえば隣の韓国との関係で申し上げますと、日本側投資によるところの生産ウエートというのはまだ非常に低うございまして、そういったところからも海外投資によるところの逆輸入というのはさほど高くないかと思います。ただ、委託加工につきましては、特定の品目につきましては、たとえばしぼりなどにつきましては、ほとんど大半が委託加工によるものによりまして供給されておる、かように承知いたしております。
  15. 玉置一徳

    玉置委員 そうしますと、輸入秩序としましては、三倍に一挙に対前年度比なった、約三〇%近くなっておることも事実である。日米繊維交渉であのくらい大問題を引き起こしたときには、平均としては八%ぐらいであった。そこで秩序あろ輸入ということも考えてあげなければいかぬと思うのですが、しからばどういう具体的な方法があるのか。関税を引き上げるということは、特恵関税じゃなくて、国際協定によります南北問題のあれでやり得る方法があり得るのかどうか。関税を引き上げるということはでき得るのかどうか。それができないとすれば、自主規制をしていただくような方法があり得るのかどうか。つまりこちらからいえば、割り当て方式という交渉というものが現下の国際情勢、特に東南アジアのこういう開発途上国との間でやり得るかどうか、こういう問題につきまして大臣からお答えをいただきたいと思います。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 関税法によりますと、緊急措置という条項はございます。これは国内産業を保護する必要がある、あるいは非常に大量の輸入が行なわれたために、そういう国民経済上の非常な支障が出てくる、そういうようないろいろな条件がございます。しかし、これを発動いたしますと、やはり報復相手に受けるという危険性もございます。昨年からの輸入状況を見ておりますと、これはやはりややインフレぎみ情勢に基づく先を見通した輸入先行輸入というようなものがありまして、それに一つ円高というところから輸入がかなりふえたという要素がございます。現在の状態で、しからば輸入がふえる条件が出てきておるかというと、そういう条件はいま消えつつあると思うわけでございます。でありますから、この際、国際的摩擦を起こしてまでも関税措置をやるということは適当でない、そのように考えます。しからば、いかなる措置があるか。輸入貿管令を発動するということも、これは貿管令上はできますけれども、このこともまた相手報復措置を受ける。日本としては、ガットでわれわれが主張しておりますように、自由貿易という原則をあくまで最大限貫くという努力をしていかなければならないと思います。  そういう面から、やはり秩序ある輸入ということが最後に出てまいります。秩序ある輸入を行なうについては、輸入業者等国内市況もよく見てもらい、滞貨状況もよく見てもらい、そういうことから自発的に考えていただくということが好ましいし、それからわが国内におきます生産につきましても、近隣諸国生産状況銘柄等をよく把握して、そうして日本製品というものがそれらと競合しない、より多様化した、より個性化した、より高級化した方向に変化していくということで逃げ延びていくということは中期的に見て正しいやり方である。そこで、当面の問題としては、国内をそういう方向に指導すると同時に、一面においては秩序ある輸入ということを業者筋に対してもわれわれは要請して、市況バランスの安定につとめるようにしていきたいと思います。
  17. 玉置一徳

    玉置委員 いまのお話では関税の引き上げということも行ない得るけれども、実情に適さない。そこで最後秩序ある輸入である。しかも、輸入が諸般の事情でかけ込み等がありまして、異常に膨張を遂げたけれども、そこまでは今後はいくような感じはしないというようなことを見まして、結局秩序ある輸入にたよらざるを得ないということになりますと、秩序ある輸入というのは、自主的にそういうことを判断してやっていただこう、こういうことでありますが、それを政府のほうから何らか民間主導性をとられまして、そういうことをおやりになるようなぐあいに進めていくというところまでお行きになるかどうか、自然にそういうことになることを期待するというのか、どちらであるかということを大臣から御答弁いただきたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点はデリケートな点がございますが、やはり業界に対しまして、日本滞貨状況等をよく認識してもらって、そして国民経済を円満に、円滑に運営すると同時に需給バランスをとるということがやはり大事なことでございますから、そういうような必要性について、やはり滞貨の多い品物等につきましては業界あるいは業者に対してわれわれのほうからある意味において要請といいますか懇談をする、そういう形で需給バランスをとるような方向に誘導していきたい、そのように思います。
  19. 玉置一徳

    玉置委員 総需要抑制によります実需減退というものには若干の時日を要する。もう一度これが上向いてくるのには若干の時日を要しますし、これについて政府そのものがいらう方法はない。そうすると、いまのお話のように滞貨と、そして秩序ある輸入というような方向にのみこれができるわけでありますが、その次は業界みずからがそのことを考え操短その他を自主的に考えていかなければならないと思うわけですが、これについて不況カルテル申請が出てきた場合は政府はどのようにされるのか、もう一度重ねてお伺いしておきたいのと、それから団体法によりましていろいろな手をいま自主的におやりになっておりますが、それについての融資について二つ、三つお伺いしていきたい。  まず、もう一度済みませんが、不況カルテルをみずから自主的に政府に願い出てきた場合はどのように対処されますか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 不況カルテルにつきましては独禁法においていろいろな条件がございますが、その条件等考えてみますと、まだ不況カルテルというものを適用する適当な時期にきているとは思いません。したがいまして、不況カルテル申請に対してはわれわれは消極的であります。しかし、団体法に基づく操短やそのほかの措置組合がやりたい、そういう場合につきましては、これは検討すべき問題ではないか、そういうふうにしていきたいと思います。
  21. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、現に操短が各地で行なわれつつあるわけでありますが、それにつきまして緊急融資をとりあえずの当面の対策として考えざるを得ないのではないか、その要望が非常に高まっておるわけであります。局長にお伺いいたしますが、緊急融資はいつ、何に対してどのくらいというような大体の見込みをおつけになっておるかどうか、御説明いただきたいと思います。
  22. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 四−六月の金融対策につきましては、現在、関係当局と鋭意詰めを行なっておる段階でございます。とりあえず四−六につきましては中小機関資金ワクが五千五百億ございますが、このうち、少なくとも千五百億は繊維企業に向けられるかと思っております。ただ、これでは不足いたしますので、七月以降のものの繰り上げについて、これも現在折衝を続けておるわけでございますが、近々のうちにその結論が得られるものと考えております。  そういった政府金融機関のほかに、先ほども少し触れましたように、民間金融機関におきまして三千二百億の中小企業向け資金ワクを準備いたしております。このうちの幾ばくかを重点的に繊維産業に持っていきたい、かような段階でございまして、トータルしてどこまで持ってこれるか、また業種別にどのように配分できるかということは、いま少しく時間、少なくともあと一週間ぐらいの時間を要するものではないかと思っております。ただ、問題が緊急を要する問題でございますので、われわれとしてはできるだけ早く結論が得られるように、またそれとあわせまして繊維産業に重点的に資金配分がなし得るように関係当局折衝を進めておる、こういう段階でございます。
  23. 玉置一徳

    玉置委員 緊急融資と同時に必要なのは、いままでの政府機関、もしくは政府機関じゃなくても一般市中銀行からの借り入れ、こういうものにつきまして、あるいは制度金融借り入れ猶予というものを考えざるを得ないと思うのですが、それをどのようにお考えになっておるか、一般市中銀行猶予というようなものは考え得られないかどうか、この二点について局長からお伺いしたいと思います。
  24. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 政府関係の三機関につきましては、すでに通達をもちまして、実情に応じて返済猶予するように指導いたしております。市中銀行に対しましては、直接文書でもってということにもまいりませんので、当方から通産局あるいは都道府県に対しまして、中小繊維産業に対する当面の金融対策ということで指導通達を発しておるわけでございますが、その中で、市中銀行等にもよく話を詰めて、必要な場合、返済猶予がはかり得るようにあっせんをする指示を出しておるわけでございます。
  25. 玉置一徳

    玉置委員 一斉操短もしくはかなり長期の操短等がございますと、それについての資金も要るわけでありますが、労働者の一時帰休というようなところへ踏み切った場合に、政府としてはどのように対処すべきかということについてお考えになっておるかどうか。どなたでもけっこうですから……。
  26. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一時帰休制についても検討はいたしております。ただ、経営者の責任によって一時帰休をいたす場合には、たしか賃金の六〇%までを給付しなければならないといったような問題もあったかと思います。さようなところから、中小企業サイドにおいて一時帰休をとるということは、事実上なかなかむずかしい問題があるかと考えておりますが、具体的なケースが出てくれば、それに応じて当方といたしましても、いろいろと協力できる範囲内において相談にあずかりたい、かように考えております。
  27. 玉置一徳

    玉置委員 倒産があった場合、こういう場合の労働者に対する諸手当、諸給与、この支払いについての対策はどういうふうに考えておいでになるか。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 転廃業等に伴いまして失業者が発生した場合、どういうふうに対処するかということにつきましては、労働省当局ともいろいろ協議いたしまして、失業保険制度あるいは職業転換給付金制度等活用してまいりたい、かように考えておるわけでございますが、具体的には、まず機動的な職業紹介あるいは職業訓練を実施する。第二点は、就職困難な、たとえば四十歳以上の従業者につきましての再就職を促進するために雇用奨励金を支給する。第三番目に、事業転換訓練を受ける労働者に対しましては事業転換訓練手当を支給する。第四番目には、事業転換のための訓練を実施する中小企業主に対しましては事業転換訓練奨励金を支給する。こういった既存の制度を随時適切に活用してまいりたいと考えております。
  29. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、昨日、るる参考人から意見の開陳のございました問題につきまして、とりあえず政府施策をお伺いしたわけでありますが、一週間といわず、なるべくすみやかに必要な資金を十分回し得るよう御手配をお願いしたい、こう思います。  そこで、今度のポスト構造改善のこの法案の骨子というのは、一体前とどこが違って、どういうようにしようと思っておるのか。そのことは、日本繊維産業の将来の分野と申しますか、そういうようなものをどこに位置づけようと思っておるのか、この法案と関連してこのことをわかりやすく御説明いただきたいと思うのです。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 端的に申し上げますと、いままでの法は、大体製造規制法といいますか、製造過程を中心にした法であったように思います。しかし、今日の時点なりますと、発展途上国からの追い上げその他の関係もあって、もっと広い分野、広い視野に立って日本繊維対策考えなければならない、そういう意味から縦の線、横の線との連携を密にしながら日本繊維製品をLDC諸国と競合しない、より高級な、より多様化した、より個性化した付加価値の高い水準に持ち上げていこう、そういう考えに立って、いままでの製造工程に関する処理法という、一言で言えばそういうような性格のものから、より視野の広い、より国民経済全般的な考え方の上に立った新しい繊維の位置づけという考えに立って新しい法案として提出したものでございます。
  31. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、高級化、ファッション化、それで異業種も一緒になって縦の線で流通も含めていいんだ、こういうように考えられるわけでありますが、そのうち私は、その高級化、ファッション化、そして日本繊維産業の位置づけ、これはわかるわけでありますけれども、ここに意図するようなことが簡単にでき得るかどうかということになりますと、非常にむずかしい問題をはらんでおるような感じがいたします。と申しますのは、それぞれが自分で直接消費者に結びついた、つまり販売のルートも持っていないもの、もしくはそれだけの、商売でありますから、だめな場合そいつを引き受けるような仕組みになっていないものが協同してやった場合に、そのことは非常に困難な問題があるんじゃないだろうか。したがって、在来のやり方でもって商品の委託を受けながら染色なり縫製をやる、そしてそのことを七割、八割やりながら二割、三割徐々に自分の特別な商品の分野を開拓していくというような形でないと、全部自分のところでファッション化なり一つ商品の開拓をやるということは事実上なかなか困難な問題があるんじゃないだろうか、それをどのように持っていこうとお思いになっているのか、ひとつ当局からお伺いしたいのです。
  32. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のように、今回の知識集約化を目ざす構造改善は、従来のハードを中心とした構造改善とまた異なったむずかしさがあると思います。ただ、先生も御承知のように、繊維産業をめぐる内外の情勢変化からいたしますと、どうしてもこの方向に持っていかざるを得ないということは事実かと思います。ただ、その場合にあまり拙速的にやるということもいかがかと思います。むしろある場合にはモデル的なものを育成強化して、それをサンプル的に皆さんが見られた上で自分の持っていくべき方向をきめていくといったようなやり方も一つ方法かと思いますが、また反面、ただ非常に事態が切迫してまいっておりますので、その緊要性ということも頭に置いてやらなくちゃいけないといったような問題点があると思います。  いずれにいたしましても、具体的にはそれぞれの事業者から出てまいりますところの構造改善事業計画をどのような判断のもとにこれを承認していくか、あるいは助成措置の対象にしていくかということになるかと思いますが、その場合には、やはり御指摘のような事情も勘案いたしまして、弾力的に大臣承認をおろしていくべきである、かような判断のもとに対処していきたいと思っております。
  33. 玉置一徳

    玉置委員 たとえば前の構造改善に入ってなかった毛織物業者もしくは一部もしくは大部分の縫製業者等々は、この法案に非常に喜んで前向きに取り組んでおいでになりますが、染色等はどういうように扱っていいのかなかなかわからないというのが現状だと思います。そこで、この法案にぴったりのところはそれはそれで直ちに食いついてきていただけるんだと思いますけれども、いまのお話のような高級化、ファッション化というそれは知識集約型で、日本の産業としては相当高度化された繊維産業の分野に将来進むんだというところまではお互いにわかるんですが、さあどれから取り組んでどの連中と一緒に縦と横とを合わしていったらいいのか、ものすごい数のあります中でなかなか実態としてはむずかしいんだ、こういうように思います。いま局長の御説明のとおり、モデルというものが進んでいけばみんながついてくるんじゃないだろうか。そのモデルとして進まれるものに政府の助成なり手厚い金融措置等を講じるのである、それが将来生き残る道だということが皆さんにわかってくれば全部がそういう方向に向いていくんじゃないだろうか。それで行政のあり方として私はそれも一つのあり方でけっこうだと思うのですが、そうなれば、ことしの十一月ごろから事実問題としていろいろな問題を練って通産省へ持ってくる、相談してくる、それで手直しをしながら始まるのは十一月ごろじゃないか。その実績が事実上あがっていくというのは来年のまた十一月ごろじゃないか。だから来年の方は、ことしの一選抜というんですかね、昔の軍隊のことばでは一選抜の上等兵さんですが、その様子を見ながら、しかもそれが具体的にどのようにうまくいくかどうかということを見るのには、来年の十一月ごろまで実際問題としては考え方としてはその模様を見ながら来年度模索をされますが、その結果のよし悪しまで見ようと思えば一年かかるんじゃないだろうか。したがって、来年の十一月ごろから次のものがくふうをこらして出てくるんだというようなことになりますと、ほんとうに自信を持ってある程度の数が食いついていくというのは三年目になるような感じがいたします。五年間の構造改善事業ということになりますが、実際にうんと予算的に使って自信を持ってやりだすのは三年目の十一月ごろからになるというように想定するのがまず間違いのないところじゃないだろうか、こういう感じがするんです。  そこで、対大蔵省の予算のあり方を五年間でばあっと分割するようなことのないように、たとえば金を借りまして五年間に返す場合でも、二年間据え置き五年間分割払いというものが多うございますが、二年間に、最初から、当初から同じような分割払いということは無理だ、こういうような考え方でそういうようなやり方になっているものが間々あるわけであります。そういうことも考えて予算の配分をしていかないと、私は実態に合いにくいんじゃないだろうか、こういう感じがするんですが、いかがお考えなりますか。
  34. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど私モデル的な育成と申し上げましたのは、すべてについてということでございませんで、むしろ拙速を戒めるという意味合いにおいて申し上げたわけでございます。非常に緊迫いたしておりますから、私たちとして、やはりできるだけ多くの知識集約化グループの育成ということが必要だということは本旨として考えておるわけでございます。  それから三年目云々の問題でございますが、まさに御指摘のようなことが実態かとも思います。ただ、予算につきましては、御承知のように、初年度分として事業団融資三百二十億の予算を計上いたしておりますが、これは今後の進捗状況あるいは実施状況等を勘案いたしましてより多くのものを確保していきたい。とりあえず初年度として三百二十億の予算をお願いいたしておる、こういうことでございまして、山場としてやはり三年度目以降がさらに多くの資金を必要とする時期になるのではなかろうかと考えております。
  35. 玉置一徳

    玉置委員 この構造改善の法案も一そうでございますが、わが国における繊維業界のあり方としては、大臣お話がありましたように、どうしても開発途上国がまず手がけるのは軽工業であり繊維産業だと思います。したがって、相当な部分が急激に追い込まれることはございませんけれども、徐々にはそういう分野だけは低賃金の開発途上国に移っていくのは自然のやむを得ない現象かと思われるわけであります。そういうような意味でも、繊維産業日本のあるべき姿として将来とも発展をし得るのはこういう分野だというPRも徹底的に並行してしていかなければならないじゃないだろうか。こういう意味で、その間、秩序ある輸入をしてもらうようにしながら、そうしてこちらの業界がすみやかに将来とも繁栄する自分の分野に定着をしていくように、こういうような二つの行政の指導をやりながらやっていかなければならないと私は思うのです。全部がそのまま将来とも現在の地位で残り得るということは世界の歴史の過程を見ましてもあり得ないわけでありまして、そういう意味でひとつ御指導をいただきたいと同時に、きのうも問題になりましたし、同僚の議員からも非常に大きく注意や質問をされておりました流通過程の分野の近代化と申しますか、ここれをどのように今後手をつけておいきになろうとお思いになりますか、ひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  36. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維部門におきます流通につきましては、常に複雑であるとか、あるいは多岐であるとかいわれておるわけでございますが、これはもうくどくどしたことを申し上げるまでもなく、繊維産業というのは非常にピラミッド型の構造を持っておる。しかもその中で縦、横と申しますか、工程間における素材の流通、製品になってからの流通、こういう問題がございまして、言われるところの複雑多岐性あるいは迂回性という問題が出ておるかと思いますが、しかしいずれにいたしましても、この流通部門というのは、生産者に対してはもとより消費者にとっても非常に重要な問題でございますので、一つには物的流通面での近代化を進めていく、いわゆる配送センターをつくるとか、あるいはパレット輸送を導入するとか、あるいは伝票の統一をはかるといった面での近代化も必要かと思います。  いま一つは、やはり取引上の問題点と申しますか、いわゆる一方的な経済的優位性を持ちまして不当なあるいは不公平な取り扱いといったような問題も間々見られるところでございます。これにつきましては取引改善協議会というものをつくりまして、その場で実態を調査すると同時に、解決すべき方向というものを見出していきたい、かように考えておりまして、いずれにいたしましても、今後知識集約化を進めていく過程におきまして、流通網、消費者情報を生産段階にフィードバックするという点でも非常に大きなメリットも持っておる反面、また持っていき方によってはデメリットも出てくるということでございます。そういった面から流通の近代化というものを特に一段と進めていきたい、かように考えております。
  37. 玉置一徳

    玉置委員 きのうも参考人からお話がございましたが、適正な加工賃をもらっていないんだ、こういう話がございました。私ももっともなことだと思いますし、取引条件もだんだんと悪化の一途をたどっておる、弱者と強者の力関係が如実にそこへ出てきておる、こういうことでありますが、そのかわりこれをきちっとやろうと思いますと、やはり後進国というと語弊がありますが、開発途上国と違う分野の仕事になり切ってこないと、そのことが言うべくして行なわれない関係になってくるんじゃない、だろうか。  それと流通の過程が中小企業の問題に間々入るわけでありますので、国会等もみな避けて通っておるという形になるわけでありますが、たとえばワイシャツ等とか、あまり色好み、ファッション等のなにがないやつはもう少し流通過程が簡単に、階段が少なくなるような形でないとこのことが行なわれないんじゃないか。一般の生産に従事しておる労働者諸君にしてみれば、自分らの工場から出ておる仕切り値段の二倍ないし三倍に売られているような実態は、ほんとうに横から見ておって苦々しく感じるのだろうと思いますけれども、そういう単品のもので案外ファッションの多様化ということにつながってないようなものは、もう少し流通過程を短縮することによって日本繊維産業海外との対抗力をつけていくという方法があり得るんじゃないだろうかというようなことも考えるのですが、今度の構造改善の中で流通部門をどのように、この法案のどの条文によってどのようなところへ持っていこうとお考えになっているのか、局長からお答えをいただきたいと思います。
  38. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 率直に申し上げまして、この法案の中では、繊維の製造工業との関連において流通部門を取り上げるという形にいたしております。したがいまして、本法案では、第四条で構造改善事業計画を策定して通産大臣の承認を受けるわけでございまして、その場合に異業種、異工程との連携を前提といたしておるわけでございますが、そういった場合には流通業者も参加していただくということでございますし、また、かたがた大臣の指導助言の対象としまして八条の規定がございます。そういった場合でも流通業者に対して繊維工業との関連において指導助言をする、こういう立て方をとっておるわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、御指摘のように、さらに流通過程というものを短絡化いたしませんとどうしても生産面での効果というものが消費者段階にまではね返ってこないといったようなうらみもございます。短絡化と一言で申し上げるのもなかなかむずかしいわけでございますが、一部市況性からくるリスクに対するかまえ方、あるいはどちらかといいますと流通段階というのは近代化が立ちおくれておるために経費の増高がそのまま最終価格に上のせされるという面もございますので、先ほど申し上げたような近代化措置もあわせて流通段階の合理化をはかっていく必要があり、かつは、それによってLDC諸国からの輸入産品との競争力をつけていくということも必要かと考えております。
  39. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、最後に二点大臣にお伺いをしておきたいのですが、一点は、問題はきのうもたくさんの参考人の方々が御意見を開陳されておりましたが、これは大企業の系列化を進めるおそれが半ばあるんじゃないだろうか、こういうお話がございました。私は、各部門の方々が集まって卸品の高級化もしくはファッション化を考えるためのいろんな情報の収集等に助成をするようにこの法案そのものがなっておりますけれども、実態としてはやはり専門商社もしくは百貨店もしくは紡績会社等の大会社、こういうものが直接ファッション化してまいりまして、だんだんと自分の下請的な染色、縫製、加工というようなところへ協力を願っていく機会のほうが実態としては多いんじゃないだろうかという感じがします。そういう方向にものが進んでおるような感じがします。その中で実際販売する、売り買いをする、見込み生産でありますから、その販売をする能力と申しますか、それから損失に対する補償というよりは損をしたときの、それを引き受けるところ、そういうところを見ますと、在来のやり方を見ておりましても、将来とも同じだと思いますが、総合商社というよりは専門商社が実態としては一番多いのじゃないだろうか。したがって、私の言わんとするところは、そういう実態の中で大企業の系列化に入り込んでいくようなおそれのある法案である二律背反的なものをどのように措置しておいきになるのか、この一点お聞きしておきたいのと、もう一点は、ただいまも質問をしました問題でありますが、近代化何とかという形でものを進めてまいりますが、日本企業はいまの分野のままでは残りにくい性格のものもかなりあるのじゃないだろうか、零細な労働集約型の企業がいやというほどあります現状において、将来は開発途上国に追いやられていく部門が少なからずある。したがって、それは大臣お話のように、高級化か何かになっていかなければこのまま残り得ないのだ、こういう問題にわれわれはどのように対処していかなければならないのか、この二点につきまして大臣の所見を聞いておきたいと思うのです。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず第一に流通過程の問題でございますが、確かに繊維の流通過程は非常に複雑で、今度の不況等を見ましても、たとえば商社というものがいままであって、不況になると自分の金融で抱いてくれておった、そのために不況の衝撃がすぐ末端にはいかなかったが、今度はこの問うちの商社問題等もあって、また商社は金融が非常に詰まってきておるという関係もあったりしてそういうことができなくなったということで、かなり亀裂が直接いくという情勢もいま生まれております。ですから、過渡期的な対策考えなければならぬので、理論だけでは動かないという非常に複雑な有機的な関係があるわけであります。それで結局、好みというようなものは、デパートとかあるいは主として末端消費をやるほうの要望からいろいろ注文を受けて変わっていく、そういう傾向があり、またそれが続くという可能性は十分あると思います。しかし、われわれはいつまでもそういう関係でおることは健全ではありません。そういう意味において商品センターというものが協同組合にございます。この商品センターというようなものを育成していきまして、できるだけ共同の力によってそういう新しいファッションや価値を生み出していくという方向にこれから時間をかけても努力していかなければならぬ、そういうふうに思います。  それから第二の問題で、繊維は御存じのように、手機をやっているような非常に零細な労働集約的な分野がございます。しかし、これを一ぺんに近代化せよといっても、これは一日にしてなるものではありません。しかし、それをあきらめてはいかぬのでありまして、われわれはこの法案に盛られましたような理想に基づきまして、いまのような末端における家内工業的要素を共同化の力によって近代化し合理化していく、そういう営々たる努力を積極的にしていかなければならぬし、その過程において大資本と中小資本との調整、流通過程の合理化というような問題についても取り組んでいかなければならぬと思うのです。そういうことを積極的に合理的に近代化していかない限り、われわれはLDC諸国に対抗できない日本繊維構造で終わってしまう、そういうことでもあると思いまして、いまのような観点に立った努力を続けていきたいと思います。
  41. 玉置一徳

    玉置委員 最後に、私のほうから注文を出しておきたいと思うのですが、この法案に対して、考え方並びに日本繊維産業の今後のあり方としてはこういう考え方が将来とも残り得る、そして繁栄し得る分野だ、こういうことでありまして、知識集約型の高度なファッション化された分野に入らなければならないわけでありますけれども、現状はなかなかそうはいっておりませんし、将来とも非常に苦労しなければいかぬ、こう思います。そこで、こちらが思っておる具体化されて出てくる問題には多種多様があるのではないだろうか、なるほどなというような形のものが出てくると思いますので、せっかくこういう考え方に基づいておやりになるいろいろなグループ化されてきたやつの実態をくみ取って、その考え方を伸ばしていくというような形で、押しつけるのじゃなしに、自発的に、自主的にみんなが考えながら日本繊維産業の構造を改めていくのだ、こういう意味で、弾力的な運営をその間やっていただきたい、こう思いますのと、今度の不況についてみなが心配しておりますのは、金融であり、あれでありますけれども、目先の問題にとりあえず忙殺されておりますけれども、今度の不況だけは一体われわれの将来はどうなるのだという頭の痛い問題を一応それぞれがお考えになっておるというのが特徴じゃないだろうか、こういう点から見ましても、将来はこういう形に進んでいかなければというような意味で、社会主義的に一ぺんにくくって必要なものだけをぴしっと配給していくというのと違うのでありまして、見込み生産の多種多様なファッションに対して対応していくわけでありますから、なかなかむずかしい問題を包蔵しておる、こう思います。  その辺につきましても、ただいま申し上げましたとおり、業界それから業者各位の創意をうまく引き出すことによりまして、それに弾力的な法の適用をしてやっていただくということが一番肝心なところじゃないか、こういう感じがしますので、ぜひともそういうような方向に持っていっていただくことをお願いをいたしまして、質問を終わりたい、こう思います。ありがとうございました。
  42. 濱野清吾

    濱野委員長 加藤清二君。
  43. 加藤清二

    加藤(清二)委員 きょうは法案を通してくれという切なる要望でございます。その要望にこたえて私も短い時間に簡潔に質問をいたしますから、答弁なさる側も簡潔に要点をびしびしと答えていただきたいと思います。与えられた時間は四十分だそうでございます。  きょう法案を通すというのに何でこう自民党の人はいらっしゃらないのでしょうね。どういうことでしょうね。  過剰在庫の問題、輸入制限の問題、輸出振興の問題、こういうふうに要点をかいつまんでお尋ねいたします。  第一番、繊維業界不況を示す一つのデータに倒産がございます。きょう私がこうやって質問している間にも倒産が続いております。そこで、政府のほうでも御調査でございましょうが、去年の十二月からことしの三月にかけまして倒産が前年度比二倍から三倍にふえておるのですね。製造業の倒産が十二月で二十五、一月で二十三、二月で十四、三月で三十七、それから流通部門、販売のところでもって十二月で二十八、一月三十二、二月二十七、三月はぐんとふえまして四十六、四、五月ではこの数がもっとウナギ登りにのぼることが想定されます。それほど不況なんです。カンフル注射が必要だといわれるゆえんでございます。なぜそうなるだろうか。なぜ繊維業だけがそんなに倒産をしなければならないだろうか。倒産するはずはないはずなんです。なぜかならば、政府の構革が的中しておれば——構革とは設備と生産の制限をしたことなんです。これならば適量である、この設備ならば適当であると政府が指示をしてきめた数なんです。にもかかわりませず倒産が続出していくということは、政府の見誤りであったのか、それとも業界がなまけていたのか。そうではないのです。なまけていたわけでもなければ、政府の見通しが誤ったわけでもないのです。原因は商社の横暴なんであります。商社が買い過ぎたのであります。内にあるものをよそから買い過ぎやのです。ここに原因があるのです。どのくらい去年買われたかを調べてみますと、何と繊維輸入が、これも政府がお調べになっていらっしゃるでしょう。三十八億六千六百四十六万五千ドルです。これは日本金に直しますと一兆二千億余になります。一体どうしてそんなに要るのですか。これを原料面を抜いたとしましても、加工品でもって十七億ドル余買い込んでおる。それは五千一百億円余なんです。日本で加工品がどうしてそんなに必要なんですか。売れもしないものをドルが余ったからというのでどんどん買い過ぎた。ドルを与えた政府と、そのドルでかってに手っとり早く買える繊維を買った商社の思惑、為替の利ざやをかせごうとした商社のどん欲、これが原因になっていま中小企業がどんどんと倒れておる。罪と罰が逆転しておるのです。したがって、ここに政府が指導性を発揮して、倒れていく業界を救わなければならぬという任務があると思います。まず大臣にお尋ねする。一体このままでいったならば倒産は四月、五月ふえるかふえないか、とめることができるかできないか、これをまず承りたい。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維不況につきましては、加藤先生御指摘のように、過剰輸入という要素が非常に大きく作用しておると思います。  それで、倒産の情勢につきましては、この六月にかけましてこのままでほっておけばさらに急増する危険性があるように考えております。そこで先般来先生から、金融そのほかの対策を至急講じて連休明けに報告せいという御指摘がございまして、われわれも倒産を防止するためにできるだけ大蔵省と数字の詰めをやりまして、その対策が公表されればそれで心理的効果もあり、そちらの面からも銀行の融資の道がつくという可能性も十分出てまいりますから、いま先生の御指示に従って鋭意やっておるところでございます。  先ほどちょっと局長が申し上げましたように、この四−六において五千五百億円の政府系三機関融資を行なうワクを持っておりますが、その中で千五百億円を下らざるものを繊維に向ける考え方でいまこれは決着しております。  そのほか三千二百億円の民間融資考えておるわけでございますけれども、その中の相当部分を繊維のほうに向けるように、これは民間融資でございますから、大蔵省の銀行局等とも連携をとりましていろいろ内面的に協議をし、銀行側に協力してもらうように、これもいま詰めをやって、大体目標のゴールというか、そういうものをいま努力をしておる最中でございます。  そのほか今次の不況にかんがみまして、政府系三機関の五千五百億円のワクをさらにふやしてもらおう、こういうわけで、これもかなりワクについていま大蔵省と折衝しておりまして、その一般不況対策の中でこれまた繊維に向ける部分をかなりふやす、そういう考えに立って五千五百億円プラスアルファの追加分について、これもいま折衝しておりまして、一週間くらいの間にこれは公表できるようにしたいと思っております。  そのほか梳毛とか染色等でいわゆる中堅企業中小企業ワクには入らないが、しかしかなり在庫滞貨があってそれが結局末端のほうに響いてきているというものがございます。そういうものにつきましては、これは個々の銀行取引でやっておるわけでございますから、個々の銀行との間で融資話し合いをしてもらいまして、それについてわれわれのほうで積極的に協力して銀行のほうにも要請していく、そういうような形で金融の道を開いてそちらの面からも不況対策を講じていくということもやりつつあります。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕  そのほか、御指摘がありました借金の返済の問題、これについてはすでに通達を出しまして、個別的にそういう該当するものについては返済猶予を行なう、あるいは税金につきましても同じように大蔵省と連絡をとりまして、個別的なケースについて繊維の場合には特に考えてもらって、税金の延納、猶予等について措置をするように、これも先般すでに通達を出しておりまして、やってもらうことにしております。  そういうような形で、とりあえず現在の危機を乗り切るように行ないつつ、一般的な消化に基づく市況の回復、バランスの回復ということをはかっていく、こういう考えに立っておるところでございます。
  45. 加藤清二

    加藤(清二)委員 ただいま大臣から倒産対策繊維不況対策についての四つの項目にわたっての対策を御開陳いただいたわけであります。大蔵省銀行局長、呼んでおきましたが、いらっしゃいますか。——よく聞いてくださいよ。大蔵省としては、この不況の一半を負担してもらわないといけません。なぜかならば、いま大臣も認めましたように、繊維がどうしてこんなに不況であるか。それは繊維業界自体がなまけていたわけではない。思惑をやったわけでもない。まじめに働いている。にもかかわらず仕事がなくなった。資金繰りがむずかしゅうなった。工賃は切り下げられる。物みなすべてが上がっているやさきに、繊維業界だけは工賃までが下がっているのですよ。首切りが行なわれている。倒産といえば当然首切りですね。労働者までが犠牲をしょわされている。どうしてそうなったかといえば、それは商社が買い過ぎたからなんだ。商社がどうして外国からそんなに買うことができたかといったら外貨を与えたからだ。外貨が余り過ぎたからさあ使え、さあ使えで商社に与えて、商社にかってに買わせたからなんだ。したがって、原因の一端は大蔵省の外貨の放漫政策にあるというても過言ではない。したがって、大蔵省がまいた種は刈り取ってもらわなければならぬ。その思惑をやった大きな商社が倒れていくというなら、これは自業自得だ。しかし、そのおかげで罪のない繊維業界や零細企業がどんどん倒れつつあるということは、これは見過ごすわけにはいかぬでしょう。ただいま通産大臣中曽根さんがおっしゃられました四つの問題について、これは通産省だけではできることではありません。大蔵省がその気にならなければできません。やる気があるかないか。だから私は銀行局長を頼んでおいたんだ。吉田太郎一君のかわりなんでしょう、あなた。答えてもらいたい。
  46. 米山武政

    ○米山説明員 先生御指摘のように、繊維業界がいま非常な苦境に立ち至っているという点につきましては、監督官庁であります通産省からも十分事情を聞き、また業界等の陳情もございます。それから取引銀行等からもその事情については十分聞いておりまして、その実情というのは私も十分認識しております。したがいまして、これに対しまして、健全な企業金融面から倒産するということのないように十分配意するという点につきましては、ただいま大臣がお答えになった点と私ども全く同意見でございます。同じ気持ちでおります。  そこで、いま大臣のお答えになりました点、もう少し大蔵省サイドから詳しくお話しいたしますと、政府系の中小機関の四−六の現在の貸し出しのワクというのは五千五百億ございます。これは去年に比べても相当の増額になっているわけでございますが、この点につきましては、通産省からのお話もございまして、年間の中から四−六のほうへ相当額を繰り上げるべくいま検討しておるわけでございます。  それから第二番目でございますが、中小企業が異常な事態に立ち至りまして非常な苦境におちいった場合には、通常のコマーシャルベースを離れても、金融機関が社会的責任に基づきましてこわを救済していくという制度が昨年の暮れでき上がっているわけでございます。これは都市銀行が二千億、地方銀行が千億、それから信託銀行二百億、まあ三千二百億あるわけでございますが、これは異常な事態ということで、監督官庁等のいろいろな証明というふうなものをとる手続等がこまかくきまっておりますが、そういう事態になった場合はこれを活用していくということで、現在これも活用するという方向で検討を進めております。  それから、いまの場合は中小企業でございますが、今度の問題は中小企業だけでなくて、中堅企業でも著しく苦境におちいっているものもあると聞いております。先ほど大臣からもお答えいただきましたように、これは中小金融のようにまとめてやるというものでなくて、個々の取引銀行が事情を十分聞いてこれに対処するということになっております。  なお、地域的に相当かたまっておりますので、特定の銀行に相当負担がかかるという問題があると思います。現在きびしい窓口規制がとられているわけでございますが、そうした範囲内でできるだけそうしたものについて要請を受けていくように指導してまいるつもりでおります。  以上でございます。
  47. 加藤清二

    加藤(清二)委員 この繊維不況実情はよく認識している、したがって、通産大臣のお答えになりました件については全面的に賛成である、その立場から三公庫の問題、市中銀行の問題、特殊関係の問題とお答えになりましたが、政府三公庫から貸している金の返済期限が来ているものの延期、それから税金の延納の問題、これが大臣の答えとあなたの答えとを比較すると、あなたの答えが漏れていますが、これはどうなんですか。
  48. 米山武政

    ○米山説明員 中小企業等で政府機関から借りた金がいろいろの事情でなかなか返せないという問題につきましては、これはやはりその事情をよく聞きまして、ケース・バイ・ケースで、必要な場合には延納を認めていくという方向で処理してまいりたいと思っております。
  49. 加藤清二

    加藤(清二)委員 つまり政府公庫へ返済する時期が来ているものもケース・バイ・ケースで延期を認める、それから税もまたケース・バイ・ケースで延納を認める、こういうことですね。もう一度確認しておかぬと、あのときはああ言ったけれども今度はそうでございませんということがときどきありますからね。どうなんです。もう一度言いましょうか。わかりますか。
  50. 米山武政

    ○米山説明員 私、金融の問題で、税の問題は国税庁なり主税局の問題でございますので答える権限がございませんので、ごかんべんいただきたいと思います。
  51. 加藤清二

    加藤(清二)委員 じゃ税の問題で答えられる人は、大蔵省関係はここにいらっしゃいますか、いらっしゃいませんか。——いらっしゃらない。それじゃ、あなたからよく伝えておいてください。なんでしたらこの委員会へ出ていただきます、国税庁長官に。いまから呼んで、いらっしゃればなおけっこうですが、それは時間がなくてだめだとおっしゃるならば、後ほどこの委員会へ国税庁長官に出ていただきます。ただし、いま大臣答弁なさったとおりに意見が一致してそれが実行に移されるというのだったら、何もわざわざここへ出ていただかぬでもけっこうです。しかし、通産大臣とは意見が違う、それは聞こえませんというのでございましたら、これは閣内不統一でございますから、ぜひ出ていただかぬと事が済まぬわけです。じゃ、あなた責任を持って国税庁の長官に伝えるということは可能ですね。伝えるということが可能であるかないか、それだけ……。
  52. 米山武政

    ○米山説明員 この委員会の席上で大臣がお答えになったおことばと、それから先生からいまお伝えするようにということでございますので、私、国税庁のほうへお伝えしておきます。
  53. 加藤清二

    加藤(清二)委員 もう一点。あなたは実情をよく認識しているとおっしゃられました。しかし、異常であるかないかは、まだそこまでは認識していらっしゃらぬような口ぶりでございます。  そこで、私がこれから具体的事実を申し上げますが、輸入が三十八億六千六百四十六万五千ドル、これは平常ですか異常ですか。これは前年度比二倍余ですよ。しかも、韓国からだけで五億三千三百万何がし、中国からは四億何がし、これはみんなドルですよ。それから台湾からは二億ドル余、英国からは一億ドル。アメリカからも何と三億四千三百九十八万四千ドル買っておる。歴史上こういうことがありますか。日本の貿易史始まって以来こういうことがございますか。  そこで、銘柄別にこれを読み上げてみますと、まあ原料の生糸とか綿花とか羊毛、これが輸入されてくるということは、これはもうやむを得ざるの仕儀でしょう。ところが問題は、去年度に比べますと、去年を一〇〇として綿糸が何と一九四%、毛糸は何とこれこそ九二一%入っておる。合繊糸まで——日本は合繊の生産国だ。にもかかわらずこれが何と前年度比五一五%入っておる。もっとひどいのは何か。綿織物。ここに機屋のつぶれる原因がある。綿織物は金額にして三億ドル余人っておるのです。これは前年度比三一四・一%。合繊織物に至っては七二二%入っておる。メリヤス、これが三一一%。むちゃくちゃでしょう。これを異常と言わずして何と言うのです。布帛衣類、これが金額にして何と二億ドル余人っている。これは前年度比五〇四%だ。これじゃあなた、縫製加工もいかれるはずですよ。綿織物からメリヤスからすべて三倍、五倍と買っておる。原料がふえたというのならいざ知らず、糸から織物からメリヤスからみんな三倍、五倍だ。これを異常と言わずして何と言うのです。  生活産業局長に聞く。これは平常ですか。
  54. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 昨年は特殊要因も働いておるかと思いますが、きわめて異常な状態であると判断いたしております。
  55. 加藤清二

    加藤(清二)委員 大蔵省にお尋ねする。これは異常ですか、異常でありませんか。平常ですか。
  56. 松尾直良

    松尾説明員 私どもも昨年の輸入増加はきわめて急激であり、非常な伸びであると考えております。
  57. 加藤清二

    加藤(清二)委員 輸入が伸びました。異常に伸びました。そうしたら繊維業界は、内地は不況なりました。そうして倒産が続出して、倒産も二倍、三倍とふえました。まさに異常です。その原因は、もう一度申し上げます。大蔵省、よく聞いてください。なぜそんなに買えたか。ドルがあったからです。だれがそのドルを与えたか。大蔵省が与えたからです。だれが買ったか。機屋が買ったわけではありません。縫製加工業が買ったわけでもありません。紡績が買ったわけでもありません。買ったものは全部商社です。だから買った商社、特に二社五綿、この商社と、それにドルを与えた大蔵省が責任を負うべきだと思う。責任ある答弁を……。
  58. 松尾直良

    松尾説明員 私どもは関税局でございますが、繊維産業——まあ関税というものを考えます場合に、当然のことでございますけれども、国内産業というものに配慮をして関税というものを考えてまいる。繊維関税というものは、現在の日本ではいろいろな関税体系の中で比較的高い部類に属しております。それから繊維産業に対する従来私どもが行なってまいりました配慮といたしまして、たとえば開発途上国に対する特恵関税の供与という際にも、繊維産業につきましては、いろいろほかの商品、産業とは違った配慮をいたしてきております。今後ともこの関税政策を考えます場合に、個々の産業の実情、それから当然のことながら、その産業を主管しておられます産業主管省と十分協議をしてまいりまして、関税政策の運用をしてまいりたい、かように考えております。
  59. 加藤清二

    加藤(清二)委員 将来のことはいざ知らず、いまカンフル注射が必要なんです。死んでしまってからでは手おくれなんです。いまばたばたと死につつある。死んでしまってからどんなにいい薬を盛ったって死人に口なし、飲むことも、注射を打ってもどうにもならない。いまの問題なんです。  じゃ特別扱いをしているとおっしゃられますからお尋ねいたします。しぼりはどうなっていますか。つむぎはどうなっていますか。西陣はどうなっていますか。よく認識していらっしゃるはずです。特に大蔵省、これはどうなっている。——それはお困りでしょうから私が解説します。しぼりは、日本の総需要の八割は韓国ものですよ。つむぎもまたそれに似通ってきた。したがって村山大島は倒れましたよ。倒れるとどういうことになるか。先ほどどなたかもおっしゃった。地域産業ですからその地域全体がやられるのですから、地方財政に及ぼす影響が非常に大きいですよ。学校の運営ができなくなるのですよ。ただ倒産だけじゃない。子供の教育ができなくなるのですよ。しぼり、しかりです。いまそれが西陣に及んできている。隣と仲ようすることは必要かもしれません。しかし、うちにあるものをなぜ買わなければならぬ。隣と仲ようすることは必要かもしれません。しかし、どうしてうちを殺してまでも隣と仲ようしなければならぬか。うちの女房、子供をいじめてなお隣と仲よくしておったら、そんなものは道楽おやじだ。そうでしょう。女房がそういうことをやれば、これはよろめきだ。それをいま政府はやっておるんだ。行なって平然としておる。特別に配慮をしているとおっしゃったが、しぼりについてどれだけ特別な配慮が行なわれたのですか。大島についてどれだけの配慮が行なわれたのですか。承りたい。
  60. 松尾直良

    松尾説明員 関税というものの機能といたしまして産業保護の機能を持っておるという点を申し上げたわけでありますが、産業の保護というのは関税がすべてではございませんで、関税政策ももちろんその産業保護という役割りを果たすべきでございますけれども、より広い意味からいろいろ産業保護の政策もあろうかと存じます。どういう政策を個々の商品についてとったらいいかということを私どもそれぞれの産業主管官庁とも協議をしてまいっておりまして、その一環として関税政策も考えておるということでございます。  私、実は申しわけございませんが対外関係の仕事をしておりますので、個々のしぼりその他の産業の実情につきまして必ずしも十分承知をいたしておりませんが、つむぎにつきましては、当委員会あるいは大蔵委員会等におきましても、今国会におきましてしばしば御質問、御指摘がございまして、その際、当局からいろいろ御説明をいたしましたように、主たる問題といたしまして原産地表示の問題がございまして、これにつきましては、現行関税法のたてまえのもと、厳正に税関としてはやっておるということでございます。しぼりその他につきましては詳細を存じませんので、申しわけございませんが例として大島つむぎの例をお答えいたしました。
  61. 加藤清二

    加藤(清二)委員 大蔵省、いいですか。よく聞いてくださいよ。しばしばどころじゃないんです。本委員会でも何度指摘され、何度注意があったかわからないんです。にもかかわらず一向にみこしを上げないというんだ。いまさら関税の解説をあなたに聞こうとは思っていない。ただやるかやらないか、いつ実行に移すか、これだけのことなんだ。  御参考に申し上げておきます。国際関係、国際関係とおっしゃられますが、アメリカ日本に対してどういう制限をしたか。繊維の制限をどうしたか。アメリカは八〇%じゃありませんよ。オール消費のわずか五%しか諸外国からは買いません、ウールに例をとると。その五%の中の日本の占めるシェアが二四%をこえたことはないんですよ。そうするとどうなる。二、五の十で百分の一なんです。日本からアメリカへ輸出されるウールはアメリカのオール消費の百分の一、これは三日分ですよ、一年間にすると。それで制限ときておるんだ。コットンしかり。ワンダラーブラウス以来もう二十年の余にもなる。アメリカ日本との関係は、事繊維に関する限りはアメリカの制限の歴史なんです。わずか三%か五%ですよ。最高でもって五%です。しぼりはさっき言いました八〇%ですよ。大島も五〇%余ですよ。なぜアメリカ日本に対してやったことが韓国に対してできないんです。できないはずはない。やらぬだけです。だからつけ込まれてくるのですよ。どのくらい韓国から買っているか。五億ドル余ですよ。これだけ買っていてなお学生事件や金大中事件、これは外務省の仕事でしょうけれども、これはなめられているのですよ。なぜこんなに買わなければならぬのですか、うちにあるものを。生活産業局長に承りたい。なぜ韓国からそんなに買わなければならぬのです。
  62. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 なぜ韓国から買わなくちゃいけないかという御質問でございますが、わが国は一応貿易立国と申しますか、自由貿易主義をとっておるということで、韓国にかかわらず一応自由活動に原則として輸出入をゆだねておるというところでございまして、たまたま韓国から結果として多く入ってきておるということかと思います。
  63. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私があなたに聞きたいのは、これでは構革を何回やってもさいの川原の石積みだということです。構革は設備制限であり、生産制限なんです。それはなぜそうしたかといえば、需給バランスをはかるためなんです。しかし、どれだけ製造部門において需給バランスをはかったとしても、輸入が野放しで内地がぶっ倒れてもなお平気で輸入されておったら、これは切りがないということです。なぜそうなるかといえば、それはもうかるからです。韓国から安いものを持ってきて、そうしてこれを韓国ものといわずにデパートではみんな内地ものとして売っている。消費者こそいい迷惑なんです。したがって、構革を完全に行なう立場からいっても、そのための法律なんです。その立場からいっても消費者を守る、消費者にこれはにせものであるということをよく認識させて買わせるところの方途を講じなければならぬ。だから私は、いままでせめて百歩を譲ったとしても原産国表示ぐらいはすべきであると何ども言うてきた。公取にお尋ねする。五月一日から新しい方途が開かれると聞いておるが、どういうことになっていますか。
  64. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 先生仰せのとおり、商品の原産国に関する不当な表示、これは景品表示法四条三項に基づきます告示でございますが、昨年の十月十六日に公布しまして、四十九年の五月一日から施行されております。この内容としましては、国産品について外国製品とまぎらわしいような表示がある場合、それから外国製品について、その原産国とまぎらわしいような表示がある場合に、そういうまぎらわしい表示をしてはいけないという内容でございまして、これにつきましては、公布後業界諸団体に対して説明をいたしております。メーカー、卸、小売りの団体に対してこの趣旨等を徹底さしてきたつもりでございますが、まだどうも十分に周知徹底させられていないうらみがございます。しかし、特に外国で生産されました商品について、それが表示がなければ——これは全然表示がない場合に表示を義務づけるということは現在の規定ではできません。現行法ではできませんけれども、何らかの表示がある場合に、それがどこの国でつくられたのかきわめてまぎらわしいという場合には、この告示によりまして規制をするということになっております。この告示の運用につきましては今後周知徹底を一そうはかるとともに、これによってきびしく規制をしてまいりたいというふうに考えております。
  65. 加藤清二

    加藤(清二)委員 なぜ、これは平等に扱えないですか。アメリカでは、日本繊維製品に対しては、生産者のマークだけでなくてJISマークまでつけろといわれている。日本の山梨県でいわゆる朝鮮ニンジンというものができる。それを内地で販売する場合でも、韓国から朝鮮ニンジンといってはいけないといわれておる。どうして日本も、韓国にかかわらず諸外国から輸入されて、まぎらわしいどころか消費者はごまかされて日本ものとして買わされる、そういう消費者の不利を守ることができないのですか。まあ公取としては一歩前進です。ですから、これはけっこうなことで、いまの御答弁は額面どおりいただいておきますが、しかしなお足りないから、私は今後一そう消費者を守る立場において努力していただきたい。そのことがやがて一つ輸入秩序を守ることにたる。  もう与えられた時間が参りましたから最後に、まだ質問したいことがたくさんにございまするけれども、輸入秩序を守るというお答えがいままで何度も、大臣からもありましたので、大臣にお尋ねする。  輸入秩序を守るという内容は何でございますか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは秩序ある輸入を行なうように指導する、そういう意味でございますが、先ほども申し上げましたように、日本滞貨の漸増している品物等につきましては、やはり近隣の産地生産状況等もよく情報を取得して、そして滞貨がさらに累積するようなことがないように、できるだけ現在の滞貨を消化して、そして需給バランスを回復させていく。そういう意味で、輸入商社等につきまして、政府としては内面的にいろいろ懇談をして、そしていまのような方向に誘導していこう、こういうことで、これを秩序ある輸入、そういう考えに立脚してやりたいと思っておるわけであります。
  67. 加藤清二

    加藤(清二)委員 質問はまだたくさん残っておりますが、約束の時間が参りましたので、本日はこの程度にいたします。
  68. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時十二分開議
  69. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君
  70. 野間友一

    ○野間委員 前回のときには本構造改善、これに関連して零細企業者に対する保護の問題並びにこの構造改善事業と大企業、商社との関係について中心に質問したわけですけれども、きょうは開発途上国からの輸入の問題並びに日本の産業の海外投資の問題、これらを中心に政府繊維産業に対する施策について質問をしたいと思います。  最初にお伺いしたいのは、先ほどからもずいぶん論議がされておりましたし、またきのうの参考人意見の中でも出ておったわけでありますけれども、開発途上国からの繊維製品輸入の増大、しかもこれ自体が本法案を提出する一つの理由にしもあげられておりますが、ここで私は、個別的に別珍とコールテン、これらを例にとってまず実情を見て、みたいと思うのです。  お聞きしたいのは、その別珍、コールテン、これらの生産から輸出、輸入、この推移についてであります。便宜こちらのほうから数字を申し上げるわけでありますが、総じて生産は減少しておる、輸出も減っておる、輸入はずっとふえておるというのが大きな特徴ではなかろうか、このように思います。そこで、四十八年度の生産、輸出、輸入、対前年比、どうなっておるのか、ひとつお示しを願いたいと思います。
  71. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず別珍の輸出状況でございますが、四十七年の輸出実績は八百五十九万平米、四十八年は三百十八万六千平米と非常に激減いたしております。うち、対米だけを取り上げて申し上げますと、四十七年は二百五十五万平米、四十八年は八十四万七千平米になっております。  それから次にコールテンの輸出でございますが、四十七年が四千百七十九万平米、四十八年が二千四百四十二万一千平米と、これも半減いたしております。  次に輸入状況でございますが、これは統計が細分されておりませんので、パイル織物及びセミール織物の輸入状況としてとらえますと、四十七年が七百八十万平米に対しまして四十八年は千二百万平米と増加いたしております。
  72. 野間友一

    ○野間委員 私のもらった資料によると、そういう結果が出ております。これはパーセントにいたしますと、まず輸出については、別珍が四十七年対比で約三七%ですね。六三%の減になっておる。コールテンが同じく四十七年対比で四十八年が五八・四%で四一・六%減、こういう結果ですね。  それからいまの輸入状況については、四十七年対比で四十八年が一五四・五%増、非常に激しい勢いでこれらの輸入がふえている。これが特徴であろうかと思います。  それからなお生産についても、輸入が非常にふえておるけれども、生産が、四十七年が一千三百八十万平米ですか、それが四十八年が一千六百万平米、コールテンは五千九十万平米から四千四百七十万平米ですか、減っておる。四十九年になりますと、これは月別の統計をもらっておりますけれども、これもとりわけそのコールテンの生産減が非常に特徴的に出ておる。この前のときに、私は別珍、コールテンの産地、いわゆる天龍社産地、これを中心にいろいろと申し上げたわけであります。すなわち、この不況対策として、みずからが生産調整をやらなければならない。これは重複はするわけですけれども、四月から操短をやりまして週休二日制をとっておる。登録制をとりまして、そして三カ月ごとに組合員から申請を受け、検査証を発行して、これがないと出荷させない、こういう実情ですね。しかも工賃、これらについては、別珍のごときは約三分の一、雑綿が三八%、このような中でとうとい命まで奪われたということは、先日私が申し上げたとおりであります。このように、一方では輸出が減り、そして一方では輸入がふえてくる。こういう中でこの輸入はやはり野放しにしておるという限り、どんなに業者の皆さんが努力をしても、はたしてこれらの努力に報いることができるかどうか。この点について、私は非常に疑問だといわざるを得ないと思うのです。  そこで、これまた先ほどから論議されておりますけれども、関税の問題、この関税率を上げるなりなり、こういう措置をとって輸入についての——これは適正な輸入ということばが再三論じられておりますけれども、この関税率を上げるというようなことなどを含めまして、適切な措置をとらなければならない。同僚の加藤委員のほうからも話がありましたけれども、国内のものを殺してまで輸入を野放しにするということは、これはもう論外である、私も同感であります。  大蔵省にお聞きしたいのは、このような関税率の引き上げですね、これについて、いま早急にカンフルを打たなければならないという現状にある中でどのように考えておるのか、まず答弁を求めます。来てないかな。——それじゃ来てないとすれば、局長からでもどうですか。
  73. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 輸入制限の問題につきましては、先日来の審議の過程でもいろいろ御意見を拝聴いたしておるわけでございます。現在、たとえば緊急関税といった関税制度あるいは輸入数量の制限措置といったようなものにつきまして、現行法制の中に規定は置かれておるわけでございます。しかし、これを発動するかどうかということにつきましてはきわめて慎重に判断する必要がある、かように考えておるわけでございます。輸入数量制限あるいは緊急関税の引き上げ等によりまして対処するということはきわめて直接的な効果があるというところからの御指摘かと思うわけでございますが、ただ、これの発動につきましては、貿易全体の立場でどう判断するか、あるいは開発途上国からするところの政治的、経済的フリクションをどう判断するか、あるいは先刻御承知かと思いますが、昨年の暮れジュネーブで合意を見ました繊維の多国間協定に基づきまして、近くわが国はアメリカその他の国と交渉に入る、いわゆる国際的な場でそういった先進諸国を相手にいたしまして二国間協定の改善方についていろいろと交渉を開始しなければならないといったような事態にも差し当たっておるわけでございます。したがいまして、輸入制限の御指摘ではございますが、むしろ金融面でこれに対処していくべきではなかろうかというのがただいまの心境でございます。と申しますのは、なるほど昨年一年間は特殊な事情もございまして、非常にたくさんの輸入架物が入ってきたわけでございますが、昨今と申しますか、三月以降輸入の動向というものがだんだんと落ちつきを見せてきております。問題は、むしろいままでに通関した過剰在庫をどう処理するかという面で対処をすべきではなかろうかという判断から金融対策に重点を置いてこの不況を乗り切りたい、かように考えておるわけでございます。
  74. 野間友一

    ○野間委員 その関税率の問題ですけれども、これも通産省の資料ですが、アメリカ、イギリス、これらについては、アメリカのごときは綿製のもので、これは課税価格はFOB、別珍は二五%から三〇%、コールテンが二八・五から三八%、このようになっておるようですね。イギリスの場合には、これはCIF価格で、別珍、コールテンは一七・五%、こういうことになっておると思うのです。これに比べまして日本輸入関税率、これは繊維については五・六%、特に特恵供与国、これに対しては二・八%というのが現実なんです。このようにアメリカとかあるいはイギリス、これらと比べて一般の関税率が五・六%というような非常に低い率になっておる。とりわけいま申し上げた特恵供与国、これらについてこれの半分ということになっておるわけですね。こういうようなことではたしていいのかどうか。私も決して輸入の全部をストップしろということを申し上げておるわけじゃない。適宜適切に輸入を規制するということは、先ほど来申し上げておるように、国内のこの繊維産業不況をどう打開していくか。確かに金融面が一つ方法であります。と同時に、このような関税率から考えても、やはりしかるべく手直しをする必要があるのじゃないか、こういう点からアメリカ、イギリスに比べて日本関税率、これらをどのように考えているのか、ひとりお聞かせを願いたいと思うのです。
  75. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維品につきましてはいろいろ種類がございますので、関税の比較というのは非常にむずかしいわけでございますが、ただいま先生が御指摘になりましたような架物につきましては、確かに日本に比べましてアメリカ等の関税が高いということは承知いたしておるわけでございます。ただ問題は、自由貿易を前提として、たてまえとして考える場合に、相手国が高いからこちらが上げるということではなくて、むしろ相手国の関税率を引き下げさせる、いわゆる新しい国際ラウンドの場で関税率の低減をはかっていくという方向がわが国としてとるべき立場ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  76. 野間友一

    ○野間委員 いまの法律制度のもとでもこれらについては適切なる措置がとれる、このように私は考えるわけです。この経済協力の現状と問題点という資料、これは通産省のものですけれども、これについて一つはセーフガード、これはきのうの繊維労連からの資料の中にもセーフガードの基準をきめろ、はっきりしろという要請がありましたけれども、これはイギリスあたりはこのエスケープクローズ方式をとっておる。適宜適切に行政措置によってこれらを規制する。これはアメリカはまだのようですけれども、一応方式としてはやはり同じようにエスケープクローズ方式をとるという方向のようですね。ところが日本の場合には、このセーフガードについて一定のシーリングワクというものを設けておるのでありますけれども、これについても、昨年の六月ですか、以降については、これを越えても停止の措置をとらない、こういうことで結局野放しに今日まできておるのが現状ではなかろうか、このように私は思うのです。ですから、一般的な問題はともかくとして、個々具体的な特別ないまの別珍、コールテン等々に関して言いましても、このような点でエスケープクローズ方式をとるなり、あるいはシーリングワクを厳重にして、そしてこれらの規制をするのがやはり必要じゃないか、こういうように私は考えるのです。やろうと思えばいまでもできると思うのです。局長は、いまの時点ではまだこれをやる方法考えていないというような答弁のようですけれども、いまのこの現状を踏まえても、なおかついまの別珍、コールテンにこのような措置をとる意思はないのかどうか、さらに答弁を求めます。
  77. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 若干お答えが一般的になるかと思いますが、御承知のように、特恵につきましては、四十六年から貿易面からする経済協力の一環ということで実施いたしておるわけでございます。その際にも、繊維産業というのはきわめて中小企業が多いということと、それから発展途上国からの追い上げに直面しておるといったような事態から、供与品目あるいは税率あるいは管理制度等につきまして特段の措置を講じておるというのが現状でございます。  ただいま御指摘の点につきましては、たとえば特恵供与を停止するとか、あるいは撤回するということにつきましては、現行の関税暫定措置法の規定で、手続としては、あるいは要件としては定められておるわけでございます。問題は、これを発動するかどうかという判断の問題、かように考えるわけでございますが、いずれにいたしましても、こういったことを発動いたしますと、やはり開発途上国との間における政治的、経済的摩擦、反発というものが非常に強く出てくる。しかもこの特恵の供与は経済協力といった長期的な観点に立って実施いたしておりますので、御指摘のように別珍、コールテンの輸出が非常に激減し、輸入がふえておるということで困っておる実情はよくわかるわけでございますが、特恵供与の停止あるいは撤回ということについては非常に慎重にはからうべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  それから特恵適用によるところの輸入額が全体でどの程度になっておるかということを資料的に申し上げますと、人繊長織物につきましては、特恵適用の輸入額が全体の輸入額の四%でございます。同様にして見てまいりますと、綿織物が二%、人繊の短織物が〇・九%、細幅織物が三%、メリヤス生地が〇・六%、メリヤスのくつ下が四%、同じく下着が一%、メリヤス外衣が三%、一応こういった特恵適用の輸入額の比率になっております。総じて申し上げますと、その数字自体はあまり大きくはなっておらないという面もございます。  ただ、これを個別具体的に考えてまいりますと、さらに慎重な対策が必要かと思いますが、先ほど来申し上げましたような特恵の趣旨論からいたしましても、軽々にこれを撤回するということは非常にむずかしい情勢にあるということを御理解いただきたいと思います。
  78. 野間友一

    ○野間委員 どうも中小零細の業者を保護するといいながら、国際協調ということに名をかりて具体的にできる手だてをしていない、そこに大きな政府の姿勢の問題がある、このように思うのです。  そこで、質問を若干変えて聞きたいと思いますが、海外投資の問題であります。繊維関係海外投資状況についてまずお聞きしたいのは、この中で全世界向け、それから東南アジア向け——東南アジア向けは繊維については非常に多いわけでありますけれども、このうち国内中小企業製品型、これらの業種に当たるものの海外投資の件数はどういうふうになっておるのか、中小企業製品といいますと、織布から川下をさして染色あるいは撚糸、サイジングそれからアパレル、こういうものをさしていうわけでありますけれども、どういう状況になっておるのか、最初にお聞かせを願いたいと思います。
  79. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず繊維関係海外投資は、本年一月末で全体で六億ドル強でございました。全体の海外融資額の二割強に達しておるわけでございます。地域別に見ますと、東南アジアが六五%、中南米が二五%。最近は、どちらかと申しますと中南米向けに投資増加しておるというのが現状でございます。  それから東南アジアという御指摘でございましたが、ただいまここに手持ちの資料といたしまして韓国の分がございますので、それについてお答え申し上げたいと思います。  ただいま申し上げました全体の投資の中で、韓国への投資額は八十件、一億四千万ドルになっております。このうち、綿紡関係が三件、九千八百万ドル、約一億ドル近い金額になっておるわけでございます。この内訳は、中小零細との競合という線では必ずしも的確なお答えにならないかもしれませんが、商社のみで投資いたしておりますのは三件で八十三万ドル、紡績のみの投資が四件で九千八百三十二万七千ドル、合繊のみの投資が四件で九百九十八万九千ドル、その他ということになっておるわけでございます。
  80. 野間友一

    ○野間委員 いまの韓国向けの八十件というのは現在の投資件数だと思います。これは化繊ハンドブックによる資料ですが、去年の三月現在では四十三件ですね。四十三件から一気に八十件にふえておる。韓国についてはまたあとでいろいろお聞きするわけでありますけれども、このような非常に激しい勢いですね。一年間に投資件数が約倍にふえておるというのが特徴だと思うのですね。化繊のハンドブック、この資料から私はいろいろと整理をしてみたわけです。それによりますと、繊維関係海外投資、これは昨年の三月現在でありますが、全投資件数二百九十九件、そのうち東南アジア向け二百二十一件となります。しかも、この東南アジア向けの二百二十一件のうち、合繊を大企業製品とすれば、あとは中小企業製品、これらの投資が二百八件を占めておる。率でいいますと九四%なんですね。もちろん合繊紡織あるいは綿紡織、この中には大企業型と見られるものも若干含まれるのじゃないかとは思います。そこで、それらもいろいろと検討して、かなり配慮した結果においても、この中小企業製品向けというものは八〇%を下るものはない。おそらく政府もこれは認めると思うのです。こういう点から考えましても、いわゆる海外投資について、繊維についていえば全投資件数のうちで東南アジア向けが圧倒している。しかも、この中で大企業製品ではなしに中小企業製品、これらに関する海外投資が非常に多く、しかも最近これが激増しておるというのが今日の海外投資の現状ではなかろうかと思うのです。このような事実を認められるのかどうか、ひとつ答弁を求めます。
  81. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 海外投資件数としては、大体御指摘のような線になっているかと思います。
  82. 野間友一

    ○野間委員 いま認められたわけでありますが、こういう状況にあるわけですね。しかも海外投資によって現地でこれらが製造されて日本に逆輸入される、こういうことによってわが国の繊維関係の、とりわけ中小企業、これらが非常に大きな勢いで圧迫されておる。このことは最初に申し上げたように、本改正法を出す一つの大きな理由になっておることから、これは明らかではなかろうかと思うのです。これらについて数字が如実に物語っておるわけでありますが、国内の資本が日本国内中小企業を圧迫するようなものに集中して海外投資がなされている。これらについてはやはり関税の問題と関連もするわけでありますが、海外投資そのものをこの面から規制しなければ、とにかく自分の手で自分の首を締める、こういう施策政府はとっておる、こういうことになると思うのです。政府は、はたしてこのような具体的な事実を踏まえて、このような海外投資を規制する意思があるのかないのか、このあたりをまずお聞かせ願いたいと思います。
  83. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 海外投資につきましては、御承知のようにOECDの資本自由化コードに基づいて、一部銀行業等を除きましてその他のものは自由化されておるというのが現状でございます。ただ、わが国経済に重大な影響を及ぼす場合、この中に中小企業の問題も含めていいかと思いますが、さような場合に政府としてもこれに対して事前にチェックをいたしておるというのが現状でございまして、今後ともこの事前チェックの段階におきましてより慎重に実施してまいりたい、かように考えております。
  84. 野間友一

    ○野間委員 チェックの問題は、貿管令の問題になります。またあとで関連してお聞きするわけでありますが、先ほども局長が言っておりましたが、東南アジアのうちで特に韓国についての問題が一番大きいというふうに私は考えるわけです。そこでまずお伺いしたいのは、先ほども答弁がありましたけれども、韓国からの繊維製品輸入の推移、これは私、一九六五年から若干調べてきたわけでありますが、年度と繊維製品輸入金額、これらをひとつここでお答え願いたいと思うのです。
  85. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 韓国からの繊維製品輸入は、昨年の一−十二月におきまして五億三千三百万ドルでございまして、一年前の七二年に比べまして約三倍近い増加になっております。
  86. 野間友一

    ○野間委員 これは大体年度別にずっと数字を調べてみたわけですが、年々歳々ものすごい勢いで韓国からの輸入が伸びておる。これは各同僚委員のほうからもるる指摘があったとおりです。しかも、この中でも非常に特徴的な伸びを数字の中から迫ってみますと、一九六七年、この年の対前年度比が二二四%増、金額にいたしますとドルですが千二十八万一千ドル増。これが七〇年になりますと七一・三%、対前年比です。一九七二年、これは四九・二%増。七三年が二七四・六%増。このように六七年、七〇年、七二年あるいは七三年、これらの年がとりわけ特徴的に前年対比で急速に伸びておる、こういうのが数字の上で物語っておるのです。これらは一体何を意味するのか。これらのそれぞれの年がなぜこのように特徴的に伸びておるのか。これらを政府はどのように把握しておるのか。ひとつお聞かせを願います。
  87. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 韓国からの輸入実績につきましては、ただいま御指摘になったように年ごとに非常にふえておるわけでございます。ただ、これを一言で申し上げますと、当方海外投資による影響もあるかと思いますが、第一次的にやはり韓国内部における生産体制の整備と申しますか、開発途上国における急速な追い上げと申しますか、それが原因として一番大きいと考えておるわけでございます。  一、二数字的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、本年の一月末現在で韓国への投資額が八十件、一億四千百万ドルになっておるわけでございますが、これを韓国における全生産高に占める海外進出企業、いわゆる合弁会社とのシェアで申し上げますと、綿糸が全体の二六%、綿布が一・二%、絹織物が三・四%、こういったような数字になっておるわけでございます。かたがた、韓国からの輸出とわが国の生産高とを比較いたしますと、代表的な事例で申し上げますと、綿織物につきましては三・七%、絹織物につきましては四・六%、合繊織物は二・二%、メリヤスの外衣は一二・七%、このメリヤスの外衣は比較的高いかと思いますが、さような数字からいたしまして、本邦からの進出企業の影響は全くないと申し上げるわけではございませんが、韓国自体が繊維設備を増強しておる、それの影響が多大である、かように考えております。
  88. 野間友一

    ○野間委員 やはり韓国におきまして、確かに海外投資だけで韓国の繊維産業そのものがこんなに規模を大きくし、また輸入のすべてであるということを私も申し上げるつもりはないわけです。しかしながら、少なくともこのような中小企業型の製品、これらに対する海外投資が年々膨大になり、しかも年々逆輸入がふえておるという事実もまた明らかであります。しかも、このような民間投資、これだけではなしに、これはやはり政府のいわゆる経済協力という名のもとにおける韓国に対する経済援助、これは経済侵略というふうにわれわれは考えますけれども、これが非常に特徴的にこのような国内中小企業の圧迫にも大きな影響を与えておる、このように私は考えるわけです。先ほど特徴的にある年度に急速に伸びておるという数字を示しましたけれども、この一九六七年から七一年にかけて韓国では第二次の五カ年計画が行なわれた。その中で特に輸出産業の育成というものがはかられたわけであります。この育成対象の輸出の産業の中には、当然繊維が含まれておることは言うまでもありません。  ところで政府は、一九六七年の前の年、一九六六年から五億ドルを対韓経済協力で供与をしておるわけですね。これはいろいろものの本で調べてみますと、無償供与が三億ドル、それから有償が二億ドル、こういうふうになっておるわけです。こういうふうにして日本政府はこのような形での経済協力という名のもとに海外にドルを、特に韓国に持ち出す。そしてそこで有償、無償の援助をすることによって輸出産業を振興する。それが日本の中に全部はね返ってきておる。そのことが私がいま申し上げた六七年から七一年にかけての繊維についての輸入の増大、これと直接結びついておる、このように私は考えておるわけでありますけれども、第二次五カ年計画についての経済協力、これらについて私が申し上げておるのは誤りがあるのかどうか、お答え願います。
  89. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました有償二億ドル、無償三億ドルというのは事実でございます。ただ、それによりまして、第一次五カ年計画の間に輸入が増大したということとの因果関係については、実はまだ十分その関係を分析いたしておりません。
  90. 野間友一

    ○野間委員 こういう経済供与が事実であることは、これまた政府は認めたわけです。  さらに加えて、七一年と七二年、これについても韓国の繊維工業を含む輸出産業育成ということで円借款の供与がなされておる、このように私は理解しておるわけでありますが、この七一年、それから七二年の円借款、この内容は一体どういうものであるのか、ひとつここで聞かしていただきたいと思います。
  91. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘の円借款でございますが、項目はいろいろございますが、繊維関係あるものといたしましては、輸出産業育成、中小企業振興という項目で、協定額が百八億円、それから緊急商品援助が百五十四億円になっております。
  92. 野間友一

    ○野間委員 七一年の金額はそれですね。七二年にさらに第六回日韓定期閣僚会議できめたわけですが、六十二億円というふうに私は理解しておるわけです。これは経済協力の現状と問題点の中にも指摘がありますけれども、このようにして繊維産業を含んだ輸出産業育成ということで、こんなに膨大な円借款がなされ、しかもこれが韓国内繊維産業、これらの振興につながり、そしてこれが日本国内中小企業繊維産業を圧迫する、こういう悪循環が今日まで展開されてきたわけです。  こういうふうに考えてみますと、民間投資に対する野放しと同時に、私はやはり日本中小繊維産業、これらを結果的にはつぶす役割りをになう、そういうドルなり円借款によって、そしていま現にこの不況の中でみずからの首を締める、こういう現状を考えた場合には、野放しの資本の輸出、そしてこの経済協力、これらについてやはり政府は現在の繊維産業をこんなにひどい状態にした責任がある、責任を当然感じなければならぬ、私はこのように思うわけです。     〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕 また一九六八年の十二月に、政府は韓国に対して商標権、これについても口上書を交換して、そしてここで商標権の確保というものを前提にさらに海外投資進出が顕著になっておるというふうに私はまた理解しておるわけですが、これらについてその商標権についての口上書、これは一体どういう内容を持っておるのか、お答え願います。
  93. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては私承知いたしておりませんので、後刻調査の上お答えいたしたいと思います。
  94. 野間友一

    ○野間委員 これはこの間いただいた一九七三年の経済協力の現状と問題点、この中にちゃんと指摘してありますからこれをひとつ……。これは三一二ページのところに書いてあります。これは海外投資の促進につながるものであることは明らかであります。  こういうふうに考えてみますと、日韓関係を背景にして日本の大企業が韓国への進出を非常に活発になされて、こういうことの中で、先ほどからるる申し上げておるように、繊維関係の対韓投資実績というものも顕著にふえておるということになるわけです。先ほど話がありましたけれども、ことしの一月の時点海外投資八十件、これが七三年の三月にはわずか四十数件ですね。これが急速にこんなに伸びておる。こういうことになるわけですね。こういう点からいろいろ考えてみますと、一九六七年に韓国からの繊維製品輸入が急速に増大した。この背景には、その前の年から始まった対韓供与、これがあるということです。七〇年の増大について言いますと、これは六八年の口上書の交換、このあと六九年から七〇年にかけて繊維企業が進出を始めた。それから七二年、この増大については、繊維企業の進出が急増した。それから七一年の借款供与、これが七二年の増大の原因である。それから七三年の増大については、これは借款供与及び飛躍的に増加した企業の進出。こういうことが特徴的に出ておると私は思うのです。ですから、いみじくも政府が主導的にこのような国内繊維中小企業を圧迫する形で、経済協力という名前で海外侵略を行なった。と同時に、国内民間投資がこれと符節を合わせて韓国に対してどんどん進出を行なう、こういうことが相まって今日の日本繊維産業を圧迫した。短絡的に申し上げますと、こういうことがいまのいろいろな数字から明らかになったと私は思う。しかも、輸入される製品の大部分が中小企業型の製品である。これでは政府が大企業のあと押しをして、経済協力という名のもとに海外、東南アジア、とりわけ韓国に進出をする、そして何のことはない、中小企業を圧迫している、こういうことでは、先ほども同僚の加藤委員のほうからも指摘がありましたけれども、どんなに構革を進めてみても、業者がどんなに努力をしても何の役にも立たないのじゃないか。やはりこういう点から考えますと、この輸入の問題について関税率を上げるということと同時に海外投資の規制、これをどうしてもやらなければならぬ、こういうふうに私は思うのです。どういうふうに考えておられるのか、ひとつこの点についての答弁を求めます。
  95. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 政府ベースによる経済協力につきましては、これはひとり韓国に限らず、やはり援助対象国の自助努力を助けまして、その国の経済発展をはかっていくという点におきまして、先進国としての日本の立場からいたしましても当然の責務かと思います。  ただ、御指摘のように、それが反転して日本側中小企業に著しい影響を及ぼすというようなことがある場合は、これは非常に問題でございます。これは民間ベースにおける海外投資についても全く同じ問題があるかと思います。したがいまして、そういった経済協力あるいは民間海外進出につきましても、慎重にその影響等をチェックすると同時に、必要に応じてはその計画の縮小等についても指導してまいりたいということでございます。
  96. 野間友一

    ○野間委員 通産大臣、いま局長のほうから海外投資の問題について事務当局としての答弁があったわけでありますが、いまの問題についてどのようにお考えになっているのか、ひとつ答弁を求めます。
  97. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 海外投資をやった結果、それが反転してきてわが国の中小企業を圧迫するという問題は、これは非常に慎重に考える必要があると思います。海外投資が経済協力という意味で行なわれる場合には、これはもとよりOECDの原則等もありまして、積極的に経済協力を進めていくべきものであると思います。  しかし、それが反転して日本中小企業を圧迫するというような方向に向かってくるという場合には、これは国内政策としても中小企業の擁護ということをやっておる政策上の関係もあって、調整をしなければならぬと私らは思います。それにはやはりその業種の内容、またそれから出てくる生産物が日本に対してどういう影響を持つであろうかというようなことも考えながら海外投資自体を検討する、そういう態度が、これは業種別によってケース・バイ・ケースに必要ではないか、そういうように思います。  しかし、そのことは一般的に言って海外投資抑制するとか制限を加えるとか、そういうことを意味するものではなくして、中小企業擁護というわれわれの政策から見て、ケース・バイ・ケースで検討する、そういう意味であります。
  98. 野間友一

    ○野間委員 大蔵省にお聞きしますが、この海外投資の規制、これについては現在どのようになっておるのか、ひとつお答え願います。
  99. 松尾直良

    松尾説明員 現在日本海外直接投資につきましては、原則論として全面的に自由化されております。自由化されておりますという意味は、外国為替管理法の許可は必要といたしますが、その許可を得ます場合に日本銀行限りで自動的に許可をする、これによって自由化の形をとっているわけでございます。  ただ、先ほどからお話がございましたように、その場合に例外の措置がございまして、わが国の経済に重大な悪影響を及ぼすおそれがあると認められる投資につきましては、自由、自動許可の例外ということになっております。したがいまして、企業進出によりまして、中小企業その他の日本の経済に重大な影響があるという場合につきましては事前にチェックができる、こういうたてまえになっております。
  100. 野間友一

    ○野間委員 それでは先ほどから申し上げておるように、七二年に比べて七三年でしたか、四十三件から八十件に韓国向けの海外投資がこんなに急激にふえているというようなことを一体どう見ておるのかということと同時に、例外的な個別審査の対象として、わが国経済に重大な悪影響を及ぼすおそれがあると認める場合というのをいま指摘されましたけれども、こういうことをいままで具体的に繊維についてチェック、規制をしたことがあるのかないのか、この点もあわせてひとつお答えを願います。
  101. 松尾直良

    松尾説明員 ただいま御指摘のありました韓国に対する投資の数字がふえているということでございますが、これは事実だと思います。これは韓国に対する投資だけではございませんで、グローバルに見ましてこの二、三年の間、その他の国に対しても日本企業海外進出が非常に増加しているということの一環であると思います。その原因をなしておりますのは、やはり全体的な企業の国際化というような動きの一環である、こういうふうに考えております。  それから、二番目に御指摘のありましたわが国経済に重大な悪影響があるおそれのある投資ということについて具体的なチェックがされた例があるか、こういう御質問だと思いますが、これは四十七年のときに大島つむぎの企業が外国に進出するということがございまして、そのときに奄美大島のほうの地元の陳情その他がございまして、通産省のほうで行政指導してチェックされた、こういう例がございます。
  102. 野間友一

    ○野間委員 私の聞いておるのは、不許可にされた例があるのかないのかということです。
  103. 松尾直良

    松尾説明員 許可をしなかった例はございません。実際には、許可の前に行政指導が行なわれております。
  104. 野間友一

    ○野間委員 窓口で行政指導をどのようにされておるのか、われわれはこれを知る由もないわけでありますが、先ほどの答弁でもいままで不許可の事例がない、こういう答弁があったわけです。そういう点から考えますと、やはり海外投資、これらがほとんど野放しにされ、また東南アジア、とりわけ韓国の日本中小零細企業繊維産業業者を破壊するようなこういう輸入が野放しにされておるという実態は、私は早急に改めなければならぬと思うわけです。前に伝統産業の振興法、これを私たちが提案したときにも、この東南アジアからの輸入の規制、これをどうするかということについて真剣に討議もし、また附帯決議の中でもこういうものを前向きに検討しなければならないというような趣旨の決議をなしたわけでありますが、これらについて、いまのこのほんとうに深刻な生きるか死ぬかの繊維産業の実態、これは、化合繊もそれから天然も同じだと思うのです。天然のほうが特にひどいかもわかりませんが、いまの大島つむぎではありませんが、西陣あるいは丹後ちりめん等々を含めて、ほんとうにいま国内の伝統的なもの、あるいはそうでないものを含めて、海外投資の規制それから輸入の規制、こういうものを真剣に考えなければ、これは同僚の発言ではありませんけれども、死んだ人間に幾らカンフル注射を打ったって、墓石にふとんをかぶせたって何にもならないということから明らかであろうと思うのです。こういうような点を踏まえて、政府としてはこれらについて真剣に検討し、そして国内中小零細企業、これらを保護するというたてまえで、ひとつ前向きに検討されることを強く私は要求するわけでありますけれども、最後にこれらの点についての大臣の御所見を承っておきます。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一般的にやはり海外投資自体を政府が規制するということは、自由化のたてまえ上できないと思います。しかし、いま申し上げましたように、中小企業の保護という重大な面に関する限り、日本に対するはね返りも考慮すべき点もあります。そういう意味におきまして、将来におきましてそのはね返りも考慮しつつ海外投資を検討する、そういう政策を進めてまいりたいと思います。
  106. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  107. 左藤恵

    左藤委員長代理 松尾信人君。
  108. 松尾信人

    松尾委員 先般、私は大臣にいろいろ質疑を重ねたわけでありますけれども、本日は三つの問題について政府当局考えを聞いていきたい。  まず繊維輸入規制の問題であります。昨日、参考人の方々にもいろいろ御意見を承ったわけでありまするが、発展途上国と一口に申しますけれども、そのような発展途上国における繊維産業の現状、この点は一言私も触れておったのでありますけれども、参考人の方々の御意見は、非常に優秀な機械が入っておる、そして現地の低い労賃を利用してつくっておる、これではとても日本繊維産業としては太刀打ちできないというような、含みのある意見の開陳がありました。発展途上国、そこにはいろいろ経済援助の問題、特恵関税の問題等がございますけれども、事繊維に関する限りはこの発展途上国というのはもう後進国ではない。もうアメリカ日本の優秀な機械、そういうものが入っておって、そしてあらゆるデザインをこらした製品がそこでつくられておる、そして工賃は安い、こういう認識を持つわけでありますけれども、政府としては、どのようにそのような発展途上国の繊維製品繊維産業というものに対しての認識があるのか、局長、ひとつお答え願いたい。
  109. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のように、開発途上国における繊維産業の成長というのは、このところ非常に著しいものがございます。御指摘のように賃金も安いし、あるいは新しい近代化設備を導入しておるということで、将来ともにわれわれといたしましてもきわめて注意をすべき繊維産業国ということになるかと思います。  ただ、特恵の供与につきましては、経済協力の一環として長期的な観点に立って実施いたしておるわけでございますが、繊維産業というものがきわめて零細な企業産地を形成して生産に従事しておるということ、それから、いま申し上げましたような、後進国の追い上げがきわめて急であるといったようなことからいたしまして、特恵供与にあたりましても、繊維産業につきましては、供与品目あるいは通関ベースにおけるこれに対する管理制度等につきましても十分に意を用いてきておるわけでございます。今後とも、さような慎重な態度を保持することによって、特恵によるところの不測の損害をわが国の繊維産業、特に中小零細企業に及ぼさないように配慮いたしたいと考えております。
  110. 松尾信人

    松尾委員 優秀なる機械、それから低い賃金、それから優秀なるデザイン、そういうものを持っておる途上国の繊維産業という認識があるならば、これはもう国際競争力としては日本を上回るような力がある、このように私は思うわけであります。ですから、一がいに特恵関税というものを撤廃しろというようなことは申し上げませんけれども、国内でできる同じような品物がそのような発展途上国から日本に入れられる、そして同種の日本繊維産業不況に立つ、特に零細な企業が倒産をするというようなことになりますると、これはほんとうの意味の特恵制度ではない、このように思うわけであります。ですから、いま局長のお答えがございましたけれども、この点はひとつ十分検討されて、そして国内における同種の製品というものが特に入ってきている。それには優秀なる外国資本が経営しておる。途上国において外国資本が投下されておる。そして低賃金というものを利用しておる。途上国の大きな工業発展というものにつながっておるかどうか、非常に疑問もそこにあるわけでありまして、労働力というものを利用する。特に日本から進出した繊維産業は、途上国へ出ていってそこで製品をつくる、それを日本へ再輸入する、これはどのくらいあるかわかっておりますか、局長。——わかっていますね。じゃお答え願っておきます。  そういうことがございますると、海外に進出した企業は、低賃金を利用して優秀な品物を入れる、取り残された国内企業というものは太刀打ちできない、これは理の当然であります。どのくらい再輸入されておるのか。日本企業が進出して、そうして製品をつくって国内へどのくらい再輸入しておるのか、わかっておればお答え願うと同時に、そのようなものにはとうてい日本における繊維産業としては太刀打ちできぬであろう、特に中小零細企業にとってはこれはたいへんな問題である、こう思うのでありますが、あわせてお答え願いたい。
  111. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 本邦の海外進出した企業生産による逆輸入額につきましてはいろいろな制約がございまして、特にその間に流通段階が入ってまいりますと、どの製品がどのようになっておるか、なかなかつかみづらいわけでございますが、本邦の海外進出企業につきましてアンケート調査を実施した結果について申し上げますと、繊維関係海外進出企業につきましては一応二・五%という数字が出てまいっております。したがいまして、昨今と申しますか、特に昨年の大幅な輸入増というのは、そういった海外進出企業生産によるものというよりは、それぞれの発展途上国における需給体制と申しますか、生産設備の拡充によるところが大きい、かように考えておるわけでございます。  それから特恵の問題につきましては、先ほど先生御指摘になっておりますように、非常に発展途上国では新鋭設備を入れてどんどん成長を見せておるわけでございますが、幸か不幸か、いまのところ、品質的にはなおまだ日本のほうがはるかによろしいという点と、それからわが国の総輸入額に占める特恵輸入額は、ものによって違いますが、大体一ないし四%程度という段階でございます。したがいまして、この段階で直ちに特恵について手直しをする必要はまずまずない、かように考えておるわけでございますが、御指摘のように、これからますますそういった発展途上国の繊維産業というのは伸びていくわけでございますから、国内への影響というものを十分注意しながらウォッチしてまいりたい、かように考えますし、かたがた、現在御審議いただいております法案自体が、本来的にそういった開発途上国の追い上げに対して拮抗力をつけていくというところの基本的な姿勢でもございますので、ひとつよろしく御審議いただきたいと思います。
  112. 松尾信人

    松尾委員 単に日本企業海外に出たというだけの問題じゃありませんね。これはやはりアメリカの流通業界でナンバーワンといわれるシアーズローバック、こういうものは、かつては日本にも工場をつくっておったわけでありますけれども、それが日本の賃金が非常に上がってきた、これではもうからぬというので日本の工場をほかの発展途上国に移した、こういうことでありまして、単に日本の進出企業だけでなくて、やはり海外における発展途上国の繊維産業、その中で外国資本というものについてよく目を光らせておいて、そこから入ってくるもの——それが特恵関税という一つ制度を利用して入ってくる。本来これはおかしいんじゃないか。特恵関税制度日本で採用するというときにも、非常に国際競争力の強い商品、工業製品については、いろいろ国内の同種産業の観点から十分配慮がされたわけでありますが、それが現在のように、もう繊維がこのように前古未曾有というような不況になっている。そういうときに安易に同じ態度で進めていくならばやはりいけないと思うのです。繊維につきましては、特恵関税でもシーリングワクがありまして、一カ月か二カ月のうちに頭打ちになって、そうして転業または廃業の問題で予算も組まれたんですけれども、それは使わぬで済んだ。特恵関税ワクが非常に少なかったということはわかっておりますけれども、そのような配慮をさらに今度はきめこまかくつくっていくべきである、このように思うわけであります。そのような配慮をされていくのかどうかということが一つと、それからアメリカのほうの特恵関税制度というものはどうなっておるのか、これを一言聞いておきたい。なぜアメリカ特恵関税制度をいま実施するに至っていないのか、その大きな原因はどこにあるのか、あわせてお答え願いたいと思います。
  113. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 前段の御指摘に対しましては御趣旨を体して慎重に対処してまいりたいと思います。  それからアメリカにおける特恵関税制度についての御質問でございますが、現在アメリカの国会で一九七三年通商改革法案というものを審議いたしておりまして、アメリカにおける特恵関税制度はこの法案の中に盛り込まれておるということでございまして、この法案がまだ成立しないために特恵供与をいたしていないということでございます。それからその内容につきましては、この法案の中にたとえば特恵対象品目だとか、例外品目等について細部の規定が入っておりませんので、いずれにいたしましても、この通商法案が可決成立した後にアメリカとしては特恵に踏み切るのではなかろうか、かように考えております。
  114. 松尾信人

    松尾委員 では、発展途上国における繊維産業の現状、あわせてそれに伴う日本特恵関税の供与の問題については、ひとついまお答えのとおりにきちっと対処していくべきであるということでありますね。  次に、いろいろの問題の中からきょう特に取り上げたいと思いまするのは、取引契約の近代化の問題であります。下請加工業者というのが非常に多いわけでございます。その織り工賃または染色仕上げの加工賃、編み立てとか縫製の工賃、このような加工原価というものがどこで一体きめられておるかということであります。これは原糸メーカーとデパートとか大型スーパーでこのような価格というものは決定されておる。そうして加工賃というものは一方的に配分されておる実情である。このように指摘されておるわけでありますが、何としてもいま適正な加工賃、加工原価、こういうものを確立しなければならないという要望が非常に強いわけであります。これがいろいろ繊維産業の中における取引契約の近代化というものにつながっていくわけであります。いまいろいろ不合理な取引条件というものを押しつけられておる。おまけに不況なりますると発注というものを減らしてくる。織布で申しますれば、いま五〇%の受注であります。したがって、工賃というものも約半分に落とされておる、赤字もふえる、資金繰りも困る、悪循環のもとに倒産していく、このようなことであります。     〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕 縫製業界におきましても九九・七%が十人以下の工場である。おまけにその工場は三万をこえておる。そうして三〇%から四〇%程度操短しておる、このような問題がございます。これが実情であります。でありますから、このようなものを基本的にきちっとするためにはまず取引契約というものがりっぱになされるようなものがなくちゃいけないと思うのでありますが、このような点に対する政府考え方並びにそれをどのようにして実現していこうとするか、具体策ですね、これについて局長から答えていただきたいと思います。
  115. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま先生から工賃決定のあり方について御指摘があったわけでございますが、繊維業界におきましては、ひとり工賃のみならず、いろいろな不合理な取引条件が存在しているということは、残念ながら否定できない事由かと思います。  これに対しまして、私たちといたしましてもいろいろ是正の対策を講じてまいりたいと思いますが、本法案の関連におきまして、まず二つの手段を準備いたしたいと思っております。  一つは、取引改善金融制度でございまして、商工中金の中に百六十九億の資金ワクを設定いたしまして、この資金活用することによりまして、糸買い品売りといったような下請形態からの脱却をはかるような方に対して資金融通をはかってまいりたいというのが第一点でございます。  第二点は、繊維につきましての取引改善協議へというものを学識経験者等をまじえて設定いたしまして、ここで現在の取引条件等についての実態の調査をいたしますとともに、この是正の方向あるいはこれの現実へのアプライのしかた等につきまして検討いたしたい。非常に長い歴史のある産業、したがって取引条件につきましてもいろいろと複雑な、あるいは不合理なものもございますが、これを機会に是正の努力を尽くしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  116. 松尾信人

    松尾委員 いま具体的なお答えがあったわけでありますけれども、この取引改善協議会ですか、そういうものは、どこに、どのようにつくって、いつごろからそれは発動して、どんなことやらせようと思っているのですか。
  117. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在考えておりますのは、本法の施行の過程におきまして、局長の諮問機関といったような形で委員会を設置いたしたいと思います。人選等については、いまのところまだそこまで詰めておりませんが、学識経験者等を中心にいたしまして、また現場の事情等が十分反映されるように、これは委員にいたしますか、あるいは専門委員ないしは参考人といったようなことで意見をお聞きすることになるか、いずれにせよ、現実の声というものを十分反映させるような形で検討してまいりたいと考えております。
  118. 松尾信人

    松尾委員 検討する内容についてのお答えがなかったわけでありますけれども、それは取引契約の全般的なものにわたってのことですか、または加工賃等を中心としたものをまずやっていくわけですか。
  119. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 取引関係全般についてでございまして、ただいま御指摘の工賃の問題も含みますし、あるいは返品、キャンセルといったような問題あるいは文書による契約の履行といったような問題も含めまして、オーバーオールに取引改善のための委員会といたしたいと思っております。
  120. 松尾信人

    松尾委員 最後の質問に移りますが、この構造改善を始めてもう七年、八年、そして結果について生産設備というもので政府から資料をいただいたわけでありますけれども、どうもスクラップ・アンド・ビルド、このようなスタートが、やはりビルド・アンド・ビルドというようなかっこうに終わっておる。残念ながら、生産力というものは、各業界をながめてみますと、年々とふえておるというのが実績でございます。生産力というものが増強された、こういうことで一対一の廃棄はされた、おまけにその上に上のせの廃棄もされたわけでありますけれども、そのようなスクラップ・アンド・ビルドといういままでの政策というものが、残念ながら答えが出ていないというような感じを私は強く持ちます。結局は、このような構造改善というもので大量生産というところに目が向けられまして一生懸命やっていった。それが結果的にいま反省をされておるのではなかろうか、このように思うのでありますが、はたして私のそのような考えが当たっておるのかどうか、これが一つ。ですから、要するに、うんとつくっていこう、そのメリットをねらおうということでございまして、残念ながら消費者の嗜好の多様性とか高級性というものに対応できる体質というものがその間なおざりにされてきたのではなかろうかという反省もあるわけであります。  この二点については、現状はどうかということを局長いかがですか。
  121. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の過剰設備の処理につきましては、現行の構造改善事業のもとにおきまして、またいわゆる臨繊特の助成のもとにおきまして、かなり過剰設備の処理は進展したと一応考えておるわけでございますが、御指摘のように、現在一部の業界におきましてはまだ過剰設備が残っておる、あるいは将来の問題としても過剰設備を来たさないように十分配慮する必要がある、かように考えておるわけでございまして、今度の法案に基づきます構造改善計画を通産大臣が承認するにあたりまして、これをチェックする場合に、十分そういった過剰設備を来たさないように、老朽設備につきましては廃棄させるように指導いたしたいと思います。かたがた法案の三条にいうところの基本指針の中にもそういった趣旨のことを十分明らかにしておきたい、かように考えております。
  122. 松尾信人

    松尾委員 これは私が現実にこの目で見たことでありますけれども、岐阜県でございます。そこで中小のある企業が構造改善の適用をしてもらって新しい機械を入れたのでありますけれども、いままで一カ月かかって生産しておったものが、新しい機械を入れたら一週間でできてしまう、ですからせっかく機械を入れたけれども、注文は余分にありませんし、販売も余分にありませんので、あとは三週間はその機械は遊んでいる、このようなこともあるわけですよ。だから、何でも入れればいいというわけではありません。入れた機械が三週間遊んでいるというのは確かにこの目で見てきたわけでありますが、これはだれが悪いかということでありますけれども、これは大いに業者も反省しておりました。でありますから、ひとつそういう点もあわせて、今度はりっぱに繊維産業というものが土台ができるようにがっちりやってもらいたい。今度は新たに構造改善というものが新しい法律にのるわけでありまして、今後は非常に角度が変わってくると思うのです。その角度を変えていく問題と、それから、今度は大量生産のメリットから、むしろ消費者の嗜好の多様化、高級化、こういう問題に対応できるような新しい日本繊維産業、成長していく日本繊維産業、こういうところに目を向けていきませんとぐあいが悪いのではないか、従来の構革をそのまま踏襲するということではいけない。どこに重点を移すかといえば、やはりファッション産業に向かってしっかりこれを定着させていくようにする、この点が大事だと思うのですが、見解をまず聞くということが一つ。  それから、現在繊維業界の中でこのような多様化、高級化に対応しておる中心勢力は、大企業にあるのか中小企業にあるのか、どこにあるのか。いまこのようなファッション産業へ向かって芽ばえていこうとしている、スタートしておるという、その中心の勢力はどこにあるのかということをお答え願いたいと思います。
  123. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちが考えております知識集約化の方向というのは、まさに先生が御指摘になりました消費者嗜好型の製品を安定的に供給していくということになりますので、御指摘のような方向で対処してまいりたいと思います。  それから二番目の問題でございますが、これは業種、業態によりましていろいろ考えがあるようでございます。たとえば綿スフ織物業、こういったものにつきましては、従来の産地組合と申しますか、商工組合を中心といたしまして商品の開発センターを共同事業としてやっていこう、こういう動きがございます。それから縫製とかメリヤス、こういった部分につきましては、むしろ事業協同組合をつくって、事業協同組合として他の事業協同組合と提携の上、共同施設としての商品開発センターをつくっていこう、こういったことで、すでに縫製業界では四、五百のグループが体制固めと申しますか準備を急いでおる、こういう状況でございまして、一がいにどの分野が一番熱心であるかということはなかなか答えづらいわけでございますが、各工程と申しますか、各業種ごとに自分の実情に合った方向で知識集約化の方向を指向しておる、こういったことが現実かと思っております。
  124. 松尾信人

    松尾委員 そのような芽ばえがあるというお答えでありますが、これはそれぞれが事業協同組合等のやはり中小企業の方々です。アメリカのシアーズローバックのほうは、二百人くらいのデザイン専門と申しますか、博士号をとったような人がおります。それがファッション産業に乗り出しまして、世界のあらゆるところに向けて新製品を出しておるわけでありますが、このような事業協同組合だとか、そのような比較的力の弱いところで芽ばえがあるとおっしゃいますけれども、これは非常にけっこうなことでありますけれども、これを育成強化していくというのが今回の法改正一つの大きな柱になっていかなくてはいけないと思うのです。この業界の中に技術開発センターですか、そういうものをつくっていくのだというお話もありましたけれども、そういうものでいいのかどうか。大臣は、政府の役人も民間の人々も、どんどん助成して、そして海外に出張させて新しいそのようなファッション産業を勉強して、日本の新しい成長産業として繊維を見直していきたい、このようなお答えが先般あったわけです。それをやはり具体化して、それを軌道に乗せて、発動させなくてはいけないわけでありますが、この点に対して、事務当局である局長がどのような腹がまえで、どのような構想で、そしてそれを着実に実行していくか、これは大事な問題でありますので、念を入れて聞いておきたいと思うのです。
  125. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回の構造改善で一番問題になってくるのはやはりアパレル産業部門ではなかろうかと思います。先ほど先生御指摘の消費者嗜好ということになってまいりますと、アパレル産業を最も育成しなければいけないわけでございますが、現実は繊維産業の中で一番労働集約的な部門であるということでございますので、アパレル産業の育成のためにアパレル産業システム化技術調査委員会、かような委員会をつくりまして、アパレル産業技術というものをいかに開発していくかということを検討していきたいと思っております。たとえて申し上げますと、原反仕入れから裁断、最終縫製から仕上げまで、こういった工程はどちらかと申しますと、中小企業の協業化でやったほうがいいんではなかろうか、その反面、そでだとかえりだとか、こういった半製品工程につきましては、それぞれの個別中小企業が分業化体制で従事していったらどうであろうか、かような考え方を前提といたしまして、これに必要なハード面の開発とソフト面の開発を進めていきたい。特にハード面につきましては、自動制御式のミシンだとか、あるいはターンテーブル装置だとかマニピュレーターとか、こういった設備を導入することによりまして、一番立ちおくれておりますアパレル部門の主として技術面からの開発に入りたい、さように考えておるわけでございます。
  126. 松尾信人

    松尾委員 助成は……。
  127. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 そういった方向で助成をいたしますし、また突き放した形ではなくて、相談を受ければ当方といたしましても積極的に当方考えを申し述べ協力してまいりたいという考えでございます。
  128. 濱野清吾

    濱野委員長 稻村左近四郎君。
  129. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員 日本繊維産業発展という、こういう共通の立場からたいへん長時間審議がなされてまいったわけであります。私は一、二質問を申し上げたいと思いますが、時間の関係もござい・ますので、私のほうで申し上げて、まとめてひとつ御答弁をちょうだいいたしたいと思います。  昭和四十二年、特定繊維工業臨時措置法が審議をされたわけです。そのときの通産大臣は菅野さんでありました。あるいはきょうお見えになっておりますところの橋本局長は原紡課長であったと思います。この審議の中で、この政府施策を講ずるならば、必ず五年後には一人歩きができるような、すなわち繊維産業の基盤が強化をされるという、きわめて的確なお答えをされてまいったわけであります。ところが現状は、もちろん内外情勢の変化の激動、激変と申しましょうか、そういう事情はあるにせよ、いま繊維はいまだかってないほどの不況に見舞われておるわけであります。過去の不況でございますと、これがよければこれが悪いという、こういうでこぼこがあったわけでございますけれども、今度の不況は、繊維という名前のつくものがほとんど地盤沈下をしてしまっておる。これはどこに原因があるか。こういう問題は、先ほど来から同僚議員が質問されたのにほとんど尽きておりますけれども、私は、何としてもやはり金融、この不況を切り抜けるには金融対策が当面の適切な処置であろうと思いますが、金融だけでは解決できるものではない、そういう意味から、現在の輸入超過というのは二千億——ちょうど政府間協定時代にはやはりアメリカに二千億という繊維日本から輸出をされておりました。そういう関係からアメリカ業界はたいへんに被害が大きい、こういうような形から自主規制から政府間協定というものに迫ってまいったわけであります。いまちょうど思い起こしてみますれば、二千億で縁があるようでございますが、いま日本も二千億の輸入超過というこの現状をここで正しく直視しなければならぬというように私は考えておるわけであります。  そこで、まず私がここで申し上げたいと思いますのは、わが自由民主党の繊維対策特別委員会でも明日輸入制限小委員会というものが発足いたします。そして真剣にこの輸入問題について取り組んでみたいと思います。そういう意味でひとつ大臣にお伺いいたしたいと思いますが、先ほど来の答弁で納得できるところもあると思いますが、私はガットの精神に抵触しないというとなかなかむずかしいと思いますが、どの程度までにガットに抵触しないままに輸入制限をチェックできるのか。先ほど来から海外投資問題がたくさん出ております。海外投資が逆輸入されておるという事実は、これは事実としてあるのですよ。そこで、輸入制限をしなくして日本繊維業界は立つあたわざるものだと私は判断をいたしております。日本繊維産業が大事なのか、それとも近隣諸国繊維産業が大事なのか、たいへん重要な場所に来ておると私は思います。そういう意味から、ばく大な国費を構造改善につぎ込んでおります。また六月に切れる、こういう意味から新たに五カ年を延長いたしまして、膨大な国費をつぎ込もうといたしておりますから、通産大臣としても、陣頭に立ってこの問題に積極的に取り組んでいただかなければならぬと思います。  金融の問題でございますが、先ほど来からいろいろな御意見をお伺いいたしておりますと、大体二千五百億、こういったものが繊維に振り向けられると私は確信をいたしております。しかしながら、いかに金融措置がされたといたしましても、いま繊維業界は身一ぱいの担保であります。たとえば二千五百億が繊維融資をされたといたしましても、担保問題には一つも触れなかったのでございますが、政府三行においては担保を見直すというところにひとつ大臣は積極的に取り組んでいただかなければならぬと思います。いかに金融が張りつけされたといたしましても、担保問題で過去においてほとんど消化ができなかったのでございますから担保問題の見直しをする、こういうところに大臣に積極的に取り組んでいただきたい、こういったことをひとつお願いをしなければならぬと思います。  最後に、特に私はお願いをいたしたいと思いますのは、この輸入超過によるところの滞貨物資というものはきわめて数量がつかみ切れないといわれております。これが日本の市場にはんらんをしつつあります。これはたいへんなことだと私は思います。それからまた、これが海外にダンピングで流れようとしております。私はやはりこれが海外にダンピングをされ、国内にダンピングをされた——海外にダンピングをされたという場合におけるところの国際信用、こういったことを考えますときに、これは政府施策の誤りのあることもここで追及しなければならぬと私は思います。なぜならば、外貨減らしというような関係から輸入を促進したというこの事実はきわめて多いわけであります。そういう意味から、いま滞貨されておるところの物資に対して凍結をしなければならぬと私は思います。そういう意味で、滞貨買い上げというようなことは申し上げませんが、凍結資金をここで特に特ワクで出す考え方があるかどうか。これを出さなければ、おそらく繊維業界はどのような施策を講じても、これは決して立ち向かうことはできないと私は思います。そういう意味で、今度の繊維構造改善臨時措置法は前の特定繊維と違いまして、四業種にとらわれず、繊維業種を全体のワクの中に大幅に広げていった、しかもまた、小規模零細に対してもたいへんな、税制面においても金融面においても、また振興事業団から二分六厘という低利長期という一つの貸し付け等を考えた場合、今度の法案業界にとっても、また繊維業界全体にとってもたいへんよい法律であると私は思います。しかしながら、何ぼ法律がよくても五カ年後にどういうバラ色の展望に立つことができるかということを私はたいへんこの法案の審議の過程の中で痛切に感じてまいったわけであります。そういう意味から、先ほど来申し上げたところの諸政策なくしてこの法案をかりに通過させたといたしましても、五年後のバラ色の展望ということが約束できるかどうか。私はいま申し上げたところの政策をきめこまかく実現をしなければ、せっかくのこの構造改善の臨時措置法案も、第一次の特定繊維工業の臨時措置法案と同じことになるのではないかという心配をいたしておるわけであります。  そういう意味から、時間の問題がありますので、大臣にいま三つの点をお伺いしたわけでありますが、たとえばガットの問題に抵触しないという範囲内でどの程度まで——あなたが勇断をもって陣頭に立ってもらわなければならぬと思います。勇断をもってどの程度まであなたが行政指導できるかどうかという問題であります。  また、金融の問題でございますが、金融はり張つけをされたといたしましても、繊維業者には担保がありません。その担保を政府三行に限ってけっこうでございますが、担保をどういうふうにして見直しをさせていくのかというこの問題であります。  それからもう一つは、最後に申し上げたところの凍結資金の問題であります。これは大事であります。この物資がいま町にダンピングで出されております。また海外にも出されております。海外の場合は国際信用の問題、また国内においては繊維のたいへんな不況に輪をかけるということになりますので、この凍結資金の低利長期の問題についてどう考えるか、もちろんこれは業者がある一定の期間に責任をもって販売をする、こういう責任はとらせなければならぬと思いますが、この三つの点について特にひとつ簡単に明快に御答弁を願いたいと思います。  それからもう一つは、時間がありますとたいへんいいのでございますけれども、時間が制約されておりますので、今度の大手三社の問題でございますが、たいへんな利益を計上しております九月決算、それから三月決算において九十億、もちろん世間受けを考えまして内部保留を相当額とっておるわけです。特に全繊同盟との交渉においては三二・六%、日本の花型産業であるところの自動車産業よりも早く妥結をしているこの事実は、私は中小企業に与える影響はきわめて大きいと思います。こういった問題については、これはお答えは要りませんが、参考までに御意見をお伺いしておきたいと思います。  以上三つの点について御答弁を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  130. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまの最後のベースアップの問題は、これは労使間の交渉できまる問題でございますから、私らがここでことばを差しはさむことは差し控えさせていただきたいと思います。  まず第一に輸入制限の問題でございますが、これはガットの精神及び日本の国家の構造と申しますか、貿易立国という面から見ましても、日本輸入制限に入ったということは必ず報復措置を受けて世界的な保護主義を台頭させる危険性がございます。そういう意味において、日本輸入制限をやるというようなことはできるだけ差し控えて、自由貿易の精神を貫き、その先頭に立つという姿勢をわれわれはくずしたくないと思っております。  しかし、繊維のようなこういうものにつきましては、先ほど来申し上げましたように、秩序ある輸入ということを行政指導によって行ないたいと思います。今回のように異常な滞貨があるというような場合には、輸入すべき物件、対象というものを国内滞貨の数量やあるいは品質とよく見比べて、そして国内に圧力を与えないような措置を講ずることは当然のことでありまして、そういう意味において、通産省としては業者に対していろいろ行政指導をして、それによって国内滞貨バランスをとれるように、回復するようにいたしたいと思います。  第二に、担保の見直しの問題は、これは最近の物価の変動もあり、見直すべきものも多々あると私は思います。したがいまして、そういう方向でこれは指導してまいりたいと思います。  また、今回中小企業信用保険法の一部改正が国会で成立いたしまして、五月四日から公布いたしました。この中に、倒産関連保証の対象として繊維業を指定することを考えたいと思います。これによって通常の付保限度額と別ワクで同額の保証が受けられるようになります。これは非常に有効ではないかと思います。  第三番目に、輸入滞貨凍結の問題でございますが、この点につきましては、けさほど来お答えしておりますように、第一・四半期において五千五百億円の三機関ワクを持っておりますが、その中で千五百億以上を繊維に向ける。それからさらにワクの増ワクをいま大蔵省と交渉して、その中の相当部分も繊維に向ける。それからさらに市中銀行に要請いたしまして、約三千二百億円の金を今回の不況対策に充てておりますが、その中の相当部分もまた繊維に向ける。こういうような三つの方法によりましていろいろ金融措置を講じておりますが、それらの執行によりまして滞貨問題というものが事実上処理されるようにわれわれは努力してまいりたいと思います。  凍結といいますと何か特別措置をもってやるように思われますが、やはりこれは協同組合なりあるいは会社なり個々の業者組合業界というものを指導いたしまして、それに対して金融をつけてあげるということによって、いわゆる滞貨金融という形によってある一定の期間これを保持してもらう。それをやっている間は、これは凍結という結果を生むだろうと思います。そういうような形によりまして徐々に需要の回復を待ち、減少させていく。そういう関係によって、これは要するに金融ワク、大きざ、それから金融の期間等とも関連してくる問題であると思いまして、そういう点に気をつけて実行いたしたいと思います。
  131. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  132. 濱野清吾

    濱野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 濱野清吾

    濱野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  134. 濱野清吾

    濱野委員長 本法律案に対し、稻村左近四郎君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。稻村左近四郎君。
  135. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 附帯決議案につきまして、提出者を代表して私からその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   わが国繊維工業は、国内需要の伸び悩みと輸入の急増等により、企業倒産の増加、操業低下等きわめて深刻な事態に立ち至っている。   よって政府は、かかる事態を打開するため、緊急な融資の拡充、秩序ある輸入体制の確立等に努めるとともに、本法施行にあたり、次の諸点につき特段の措置を講ずべきである。  一 構造改善事業の成果が消費者等に反映するよう、繊維製品の流通過程の合理化、不適切な商慣習の排除等取引条件の改善に努めること。  二 小規模繊維業者が経済環境の変化によるしわよせを特に受けている実態にかんがみ、その経営の安定に資するため、資金の確保、下請条件の改善等諸般の措置につき万全を期すること。  三 構造改善事業計画の承認にあたっては、事実上大規模企業による支配力が強化されないよう厳重に監督・指導すること。  四 秩序ある海外投資企業進出を期するため、関係業界に対し、適切な指導を行ない、必要な場合には規制等適切な措置を講ずること。 以上であります。  附帯決議の各項目の内容につきましては、審査の過程及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  委員各位の御賛同をお願いいたします。
  136. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 濱野清吾

    濱野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根通商産業大臣
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、法の施行に万遺憾なきを期する次第であります。     —————————————
  139. 濱野清吾

    濱野委員長 おはかりいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきまして  は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異  議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  141. 濱野清吾

    濱野委員長 内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。佐野進君。
  142. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、輸出保険法の一部を改正する法律案について、大臣並びに関係局長に質問をいたします。  まず最初に、大臣に全般的な問題として質問をしてみたいと思います。  今回の輸出保険法改正に関しまして、われわれはこれに原則的に賛成する立場で検討を続けてきておるわけであります。したがって、この法案の持つ意味並びに今日の事態における必要性、そういうことについて理解ある立場において審議をしてみたいと思うわけであります。したがって、大臣におかれても、その点をひとつ踏まえての答弁をお願いいたしたいと思います。  しかし私は、この法案を審議するに際していろいろ検討をしてみたのでありまするが、やはり幾つかの点に克服しなければならない問題点の存在することに気がついたわけであります。特に一番大きな問題は、この法案によって中小企業関係がどの程度その恩恵を受けることができるのかという点についていろいろな角度から検討してみたわけであります。なるほど配慮等は十分なされておるように見受けられるわけでありまするが、現実的な問題からいたしますると、ほとんど大企業にその対象が向けられている、こういうような点が強く印象づけられるわけであります。特に現在の環境は、大臣御承知のとおり、中小企業を含めて輸出産業ないし輸入関係等々におきましては非常にきびしい情勢下に置かれておるわけでありまするが、こういうようなきびしい情勢下においてこの法案が審議されるということについて、多くの人たちから期待もまた大きいと思うのであります。しかし、その期待に十分こたえ得るような条件がこの法案の審議を通じて打ち出されていかなければならぬ、こういう面からいいますると、中小企業面においてはこの点についての期待が当てはずれになっていくのではないか、いわゆる当てがはずれたという形になって失望が生まれてくるのではないか、こういうような考えが出てくるわけでございます。  そこで、この問題について、幾つかの点について大臣に聞いてみたいと思います。  まず、現在のような情勢下において、輸出関連中小企業の基盤強化が必要である、基盤強化と関連してこの法律の運用がはかられていかなければならない、こういうような点について痛感するわけでありまするが、この点についてどうようにお考えになっているか、まず最初にお聞きしたいと思うのです。
  143. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の為替変動保険の新設につきましては、プラント類の長期輸出に伴う為替リスクの問題でございますので、主としてこれは大企業が取引の当事者であろうと思われます。しかし、プラント類については、下請、原材料の供給等、かなり膨大な中小企業がその体系下にあるものでございますから、実質的には中小企業もそれによってかなりの安定性を受け、またその利益のはね返りも受ける、そういう結果が出てくるであろうと思います。大体、今日のプラント輸出というようなものは、総合的な企業で、親請企業と下請企業とが一体になってやっておるという性格でございますから、そういう意味において中小企業に対しても非常にいい影響があると思います。
  144. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま大臣は私が次の質問をしようと思っていたことに関連して答弁なされたわけですが、いわゆるプラント類の輸出がその対象になるということは提案理由の説明の中に書かれてあるわけでございまするけれども、そうなりますると、結果的に大企業がこれを行ない、関連する中小企業がこれの恩恵を受ける、こういうような形の中で中小企業にもメリットがあるであろう、こういうような説明になっていると思うのであります。しかし、この間、長い間繊維の問題に対して審議が続けられてきたわけでありますが、プラント類の輸出によって繊維産業に関連する工場が設置せられる、生産設備が設置せられるという形の中で、その製品がわが国に逆輸入され、結果的にわが国産業の中小企業界の持つそのシェアに対して大きな影響を与え、いわゆる首を締める結果になっている、こういうことになるわけでありまするから、そういうような問題が結果的にはいわゆる無原則なるプラント類の輸出、それに関連するいわゆる保険、こういうような形の中においてのわが国中小企業にはね返るその悪影響は、関連して受ける恩恵ということ以上にむしろ大きいのではないか。したがって、これらの点については、プラント輸出であるから無原則的にこれに対して保険を適用する、こういうことでなく、実態に即した形の中でわが産業の将来の発展の方向中小企業の置かれている現況等を十分分析した上でそれらについての適用をはかっていく、こういう点についての配慮も必要ではないか。もちろん保険でありまするからそのようなことはこまかく考えられないと言われるかもしれませんけれども、一つの欠点としてそのような点が考えられるのでありまするが、そういう点について、大臣は、どのようにこの危険を回避していかれるお考えを持っておられるか、御答弁を願いたいと思う。
  145. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この保険の場合は、やはり保険の安定性、確実性というような面から考慮されなければならぬ問題であると思います。しかし、今度は投資という面から、別の観点からこれを取り上げてみますと、先ほど繊維の問題で御答弁申し上げましたように、これが日本の経済に大きな影響を持ってはね返ってくる、そういうような場合にはこれに対して適当な措置をとることもまた必要ではないかと思っております。そういう意味におきまして、中小企業に対する影響等も考慮してケース・バイ・ケースでわれわれは措置していきたいと思います。
  146. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は大臣に先ほど冒頭申し上げましたとおり、この法案に賛成の立場で質問をしておるわけです。しかし、この法案が実施された際起こり得るであろうという危険ないしこの法案の効果がより多くあらわれてもらいたいという立場に立って質問をしておりますので、その点ひとつ繰り返し申し上げて質問を続けてみたいと思うわけであります。  まだ中小企業問題はたくさんございますが、これはあとの質問でさらに出てまいりますので、この程度にいたします。  いまの質問は、主として輸出保険法改正をする法律の提案理由の説明を中心にしていたしております。  そこで第二番目の点といたしまして、私はこの法律案をずっと見ますと、輸出保険でありますから、先ほど大臣答弁にもありましたとおり、保険をかけてもらいたい、保険にかかりたいという要請があった企業に対して結果的に保険が適用されていく、こういうことになっていくと思うのでありまするけれども、現実として対象地域が無原則的にこれが行なわれるのかどうかという点についていろいろな問題が発生してくるであろうと思うのであります。たとえば一口に共産圏といわれるいわゆる中華人民共和国あるいはソビエト連邦というような国々もあるでありましょう。さらにはまた、未承認国といわれる朝鮮民主主義人民共和国あるいはまたいわゆる中国承認によって現在国交が断絶している台湾問題というように、国際的な問題がこれに関連してくるわけであります。しかも、これらについては今回民間ベースだという形の中における表現が大臣政府関係から相当多く行なわれておるわけでございますので、これらについては承認国、未承認国あるいは自由主義圏あるいは東南アジア、そういうことに関係なくこれに対する適用行為を行なうのかどうか、その点について原則的な御答弁をお願いしたいと思う。
  147. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 輸出保険は、これは原則的に全世界に対する輸出全体に適用されるものと考えます。したがって、政治的に特別の考慮をこれによって払うということは考えません。ただ、外貨事情が異常に悪化している等、特に保険運営上リスクの多い地域についてはこれは制限するということはあると思います。これは従来やってきたところでございます。
  148. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この点を少し突っ込んでみたいと思っているんですが、時間がありませんのでこの程度でやめるのはたいへん残念ですが、あとでまたいろいろ機会を見てこの点についてお話をしてみたいと思います。  そこで、総括的な立場から質問する第三の問題といたしましては、今回提案されました趣旨に、いわゆる輸出保険制度の拡充、そしてこの中におきましても、拡充の必要性として海外一次産品の安定的な輸入の確保をはかる、こういうことが説明されておるわけであります。そこで、海外の一次産品の安定的輸入の確保をはかるということにつきましては、一次産品だけでなく、いろいろな物資について今日きわめて変動する諸情勢の中でむずかしい条件がいろいろ発生しておるわけであります。特に先ほど来繊維のごとくいわゆる逆輸入という形の中でわが国産業に非常に大きな悪影響を与えるという点もあるわけであります。あるいは石油等のように石油製品、いわゆる原油の輸入が、単に輸入が回復したというだけでなく、その価格の上昇が今日わが国の産業界にあるいは国民生活の上に非常に大きな影響を与えておるわけでございまするが、この保険制度の拡充によって、この場合には拡充でありまするが、拡充によってどの程度これら一次産品の輸入を確保するめどが立てられるのか。これは石油を含む広範な物資があるわけでございまするけれども、重点的な面、国民生活に最も関係の深い面についてこの制度を拡充——たとえばこの提案説明には「木材その他」というような形の中で提案されておるわけでありまするが、この点についてのひとつ御見解をお示し願いたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一次産品の安定的確保につきましては、これは経済協力や海外投資等種々の対策を講じておるところでございますが、特に今回の保険法の改正におきましては、融資買鉱制度を一般資源に拡大することになっておりまして、木材等という例示で書いてありますが、一般資源にこれは拡大されておるわけでございます。そこで、低開発国の資源ナショナリズムの動きに対してもある程度弾力的機動的に対処し得ることを期待して改正をいたした次第でございます。
  150. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この点についてはまたあとで具体的な質問の中でひとつお答えを願うことになろうと思いますので、前に進みたいと思います。  そこで私は、この制度のいわゆる保険法の改正関係する為替変動保険制度創設関係と、さらに拡充の問題、この二つに分けまして質問をしてみたいと思うのであります。  まず第一に、為替変動保険制度創設に関連する問題につきまして、大臣、さらに貿易局長、大蔵省の審議官に質問をいたしたいと思います。  その第一は、円の変動為替相場制の評価と今後の展望の問題についてであります。変動為替相場制は昨年の二月十四日これに移行してすでに一年三カ月を経過しているわけであります。この変動為替相場制に移行する際、われわれもこの委員会において真剣にこれらの問題について討議をいたしたのでありまするが、この変動為替相場制は早期に固定制度に切りかえるのだ、こういうような答弁が確かに行なわれておったと私どもは考えておるわけであります。しかし、この間すでに一年三カ月を経過しておるわけでございまするが、さらにこの間においていわゆる経済の一大激変がわが国をおとずれ、秋の石油危機等において大きな情勢の変化もあったわけであります。しかし、その間において変動相場制は幾つかの波をつくったのでございまするが、現在におきましては、五月一日一ドル二百七十九円四十銭、いわゆる三百八円中心のレートにいたしますると一〇・二四%高となっているわけであります。この間、政府の為替政策あるいは為替管理政策についてはいろいろの批判がありまするけれども、この制度がわが国経済に定着しつつあるということはいなめない事実であります。早期というようなことばに反して一年三カ月たった今日、なおこの制度を固定制に戻そうとする動きのないことによってもそのようなことが考えられるわけでありまするが、これについて大臣としてはどのような評価をしておるのか、またこの間におけるところの為替政策、為替管理政策についてどう考えておるのか、見解をお伺いいたしたいと思うのであります。
  151. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 変動相場制は一年三カ月を経過いたしておりまして、当時、やむを得ざる事態からあのように変動相場制に移行したわけでございますが、わりあいに機能していると思います。もちろん国際環境が安定しますれば固定相場制に復帰することをわれわれは理想としており、そういう努力を継続していきたいと思っておりますけれども、いまのような石油の危機の問題あるいはそのほか諸般にわたる国際経済の不安定状況が続くという情勢におきましては、国際通貨改革もうまく進行しておらぬという状態で世界的に変動相場制が当分続くということはやむを得ない事情であるだろうと思います。日本もこれに相応してこれに対応する対策を立てていくべきであると考えておりまして、すなわち変動相場制は当分やむを得ざる通貨制度である、そういうふうに考えまして、われわれはこれに対応する諸般の施策を実行していきたいと思っております。
  152. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大蔵省。
  153. 平井龍明

    ○平井説明員 お答えいたします。  ただいま中曽根大臣からお答えになったとおりでございまして、現在の国際通貨情勢、国際金融情勢から勘案いたしますと、いま直ちに固定相場制に戻るということは事実上不可能である、かように考えておりますが、わが国といたしましては、かねてから申し上げておりますとおり、そういうふうな事情が熟しますれば、国際通貨制度というものが動くにあたりまして、それによるべき原則と申しますか、やはりそういうものがないといけないというのが基本的な考え方でございまして、将来の姿といたしましては、やはり固定為替相場に機が熟すれば復したい、かように考えているわけでございます。
  154. 佐野進

    ○佐野(進)委員 機が熟すれば固定為替制度に戻したいという考えだ、しかし現在はなお変動為替相場制を続けていきたいんだ、こういうような御見解であるわけでありますが、それでは、現在の為替相場が円高で推移しておるわけでございますが、この状況政府はどのように分析し、評価しておられるか。一時的にはいわゆる三百円あるいは先物については三百円をこえる時期もあったやに私どもも見ておるわけでございますが、これだけ、今日二百七十九円という形の中で、円高で推移しておるわけでございますが、これらの問題は、これからの、この法案を審議し、さらに実施する際においての非常に重要な要点になってまいろうと思いますので質問をするわけでありますが、この円高相場がどのような展開を続けていくのか、その展望と見通しということについて若干説明をいただきたいと思います。
  155. 平井龍明

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  この変動相場制のもとにおきましては、為替相場、円・ドル相場の動きは、御承知のとおり、基本的には国際収支の流れに伴って変動するわけでございます。ただいま御指摘がございましたように、一時、比較的円安の状態にあった時期がございますが、これはやはり昨年後半以来の国際収支のかなり大幅な赤字というものを反映した姿であったかと考えております。その後、国際収支面、特にいわゆる資本勘定等の面におきまして従来からの政策をかなり大幅に転換いたしまして、適宜外貨も取り入れるということにいたしておりますので、本年に入りましてより漸次国際収支の姿はよくなってまいってはおります。そういう姿を反映いたしまして、ただいま御指摘のように、最近に至りまして比較的その円高という形になってまいったわけでございますが、今後これがどうなりますか。この国際収支の見通しは非常にむずかしいわけでございますが、当面はおおむね現在のような姿で推移するのではないか、かように考えております。
  156. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは次の質問に移ります。  次は、国際通貨制度の改革問題とわが国の立場でありますが、これは大蔵省に質問をいたしたいと思います。  先ほど質問申し上げました点から関連いたしまして、結果的に固定為替相場制に復帰すべきである、そういう展望を持ちながらも現在なお変動為替相場制でいかざるを得ない、こういうのが政府のお考えであるようであります。これはかかって国際通貨不安が原因になっておるわけでございますけれども、この国際通貨制度の改革が達成されない限り真の解決がないとお考えになっておるのかどうか。これまで数次にわたる各レベルでの国際会議において、これらの問題についての協議はまだ十分なる成果をあげていないというのが現状であろうと思うのであります。しかし、昨年の九月、IMFナイロビ総会におけるところの国際通貨制度改革交渉の実質的合意は、最終目標期限を本年の七月末としておるわけでありまして、その最終案の作成によって、九月に予定されておるワシントン総会でこれらのことについての討議がなされ、決定が出されることになっておるというぐあいにわれわれ聞いておるわけでございますが、すでに七月末まであと数カ月を残す、そういうような状況になっておるわけでございますけれども、これらの国際通貨制度改革問題の経過がどうなっておるのか、その問題点、そして今後の見通し、これがわが国に対してどのような問題点を提起することになるのか、そういうような点についてお考えを承りたいと思います。
  157. 平井龍明

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  為替相場制度の問題を含みましたいわゆる国際通貨制度改革の問題でありますが、ただいま佐野先生からお話ございましたように、昨年の九月、ナイロビで行なわれましたIMFの総会におきまして、ことしの七月までに全体の作業を終えたいという日程ができまして、その線に従いまして鋭意作業を進めてまいったわけでございます。  ところが御承知のように、昨年末以来石油問題というのが起こりまして、これを契機にいたしまして国際通貨情勢は、非常に大きな変動と申しますか、変革を迎えたわけでございます。この点を織り込みまして、さらにいろいろ検討を続けてまいったわけでございますけれども、現在の状況では、当初予定されましたように、ことしの七月一ぱいに国際通貨制度改革の作業を終えてそれを実施に移すというのはどうも無理であるということになってまいっております。実は今週もその関係会議を現在やっておるわけでございますけれども、現在考えられておりますのは、なるほど、いますぐに国際通貨制度の改革を実施に移すのは無理でございますけれども、せっかく作業を進めてまいりましたので、ひとつ理想像と申しますか、将来あるべき姿は一応作業として完結したほうがよかろう、ただ、それをすぐ全面的に実施に移すのは無理でございますので、とりあえず当面やれること、これを選び出しまして、その点については実施の細目というものも詰めようではないかということになってまいっておるわけでございます。したがいまして、ただいまお話のございましたように、ことしの七月末——実はその後ちょっと変わりまして六月中ということになったのでございますが、その六月中をデッドラインといたしまして一応の作業を終える、その中では将来の姿を描くと同時に、当面できるものもこれを固める、二段がまえでやろう、こういうことに相なっております。
  158. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この問題も大きな問題ですから、この短い時間での質問で満足のいく答弁を引き出そうとしても無理だと思うのでありますが、それでは審議官、いま作業が行なわれつつある、この会議を目標にしてのその討議の中で、政府は、これから国際通貨体制の中においていわゆるわが国の変動為替相場がどのように位置づけられていくというように考えておられるか、その点だけでけっこうですから将来の展望ですね、そこをちょっと説明してください。
  159. 平井龍明

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、戦後ずっと機能してまいりましたいわゆるブレトンウッズ・システムと申しますか、IMF、国際通貨制度のもとにおきましては固定平価制度というのが基本になってまいったわけでございますが、御案内のとおり、ここ数年来のいろいろな変動によりまして、現在合意と申しますか、一応話がついておりますのは、将来も制度の基本としては固定平価制度がいいと思うけれども、同時に特定の場合にはやはり変動相場制というものも非常に有用であるということになっております。換言いたしますと、戦後のいわゆるブレトンウッズ・システムのもとでは、変動相場制というものはあくまでも日陰者であったわけでございますが、今後は、特定状況のもとにおきましては、IMFを中心といたします国際的な監視と申しますか、監督のもとに変動相場制もやむを得ないのだ、むしろある場合には有用なんだというふうに考え方が変わってきておるわけでございます。この点は、現在すでに御承知のように事実上全面的な変動相場制に各国ともなっておりますので、先ほど申し上げました当面の作業におきましても、何か変動相場制のやはり一種のルールのようなものを当面つくるのが必要じゃないかということになってまいっておるわけでございまして、基本的にはわれわれもそうであろうと思いますが、同時にまた、そうぎくしゃくしたルールができても困るということで、その辺は国益を踏まえながら、同時に国際的に相いれられるような、そういうふうな形のルールというものをつくりたいというのが実は当面の作業になっておるわけでございます。
  160. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次に、貿易と国際収支の動向と今後の見通しについて局長、そして大臣答弁々をいただきたいと思うわけであります。  四十八年度の貿易動向は、輸出が三百九十六億九千五百万ドル、輸入が四百四十九億三千三百万ドル、差し引き五十二億三千八百万ドルの入超となっており、これは四十二年度以来六年ぶりの入超で、入超幅は史上最高といわれているわけでありまするが、これは原油等の輸入価格の上昇によるものと思われるわけでありますが、政府は、このような貿易動向についてどのように分析し、評価しておられるか。これはどのように今年度なっていくというお見通しであるか。これはまず大臣、そして局長から答弁をいただきます。
  161. 濃野滋

    ○濃野政府委員 四十八年度の貿易の動向でございますが、ただいま先生の御指摘のございましたように、輸出は約三百九十七億ドル、輸入が約四百四十九億ドルということでございます。伸び率で見てみますと、輸出は前年四十七年度に比べまして三二%程度伸びておりまして、決して低い伸び率ではございませんが、輸入が前年対比七七%という非常に大幅な伸びを示しました。その結果、いわゆる通関ベースの輸出入の収支じりというのは非常に赤字になったわけでございます。  なぜこういうことになったかということでございますが、その第一の原因は、輸入増加の中で、ただいま御指摘のありましたように石油の値上がり、そのほか、石油ばかりではございませんで食糧その他原材料の値上がりということが金額を大きくした第一の原因ではないかと思います。  第二の原因は、昨年国内需要が非常に旺盛でございましたので、数量的にもかなりの伸びを示したということでございまして、ただいま申し上げました七七%の輸入の伸びの中でいわゆる価格の要素はどのくらいあったかということでございますが、価格要素が前年に比べまして約四割以上上がっておるということから見ましても、これが輸入金額を引き上げた非常に大きなウエートじゃないかと思います。  四十九年度の見通しにつきましては、政府見通しでは、輸出は四百八十億ドル、輸入は五百二十六億ドル、いずれも通関ベースでございますが、こういうのが政府の公式の見通しでございます。ただ最近の情勢から見まして、輸出の伸び等は相変わらず旺盛でございますし、私どもは輸出、輸入とも商品別に若干時間をかけまして積み上げをいたしまして、ことしの見通しをつくりたいということで目下作業中でございます。
  162. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、次に国際収支について質問をしてみたいと思います。  貿易収支が十二月、一月、二月と赤字が続き、経常収支は、四十八年の四月及び七月を除き毎月赤字が続いて、結局二月の総合収支では約十二億ドルの大幅赤字となっているわけでありまするが、政府は四十八年度実績としてどういう形になるということを見込んでおられるのか、またこれらの経過の中で四十九年度はどういうことになるのか、これについて大蔵省審議官からひとつ答弁願います。
  163. 平井龍明

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの点でございますが、四十八年度の実績がどういう形になるのかという点につきましては、実は貿易の黒字が約八億ドルという非常に小幅の黒字にとどまりまして、貿易外の支払いを加味いたしますと、経常収支では約三十九億ドルの赤字になったわけでございます。そのほか、実はこの点が問題であったわけでございますけれども、いわゆる長期の資本収支というのがございまして、これは海外に対します投資あるいは貸し付け等でございますが、これが約九十億ドルという大幅な赤字になりました。四十八年度全体といたしましては、経常、資本合わせまして百三十億ドルという大きな赤字になったわけでございます。  四十九年度の見通しにつきましては、先ほど通産省の濃野局長からお話しございましたように、目下のところ輸出、輸入とも政府の見通しよりはやや上回った水準で推移いたしておりますけれども、結局これはどういう形になるか、まだ四月に入ったばかりでございまして非常にむずかしいのでございますが、特に昨年度大幅な赤字を出しました資本収支、これにつきましてはいろいろな面で資本の流出を極力押える。同時に外資につきましても必要な部門には適当な範囲でこれを導入いたしまして、資本収支のほうでの改善につとめたいというふうに考えております。その結果といたしましては、おそらく一挙に黒字というわけにはまいりませんけれども、少なくとも昨年度の赤字の半分ぐらいの赤字には持ってまいりたいというのが私どもの考え方でございます。
  164. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いままで質疑の中で明らかになってきておりますように、国際収支あるいは輸出入の動向ということについては、結果的に、わが国の場合は来年度も相当大幅な——輸出が伸びても輸入も伸びる、さらにまた油代の値上がり等々から見て今年度の半額程度に赤字幅を押えたい、しかし赤字が発生することは間違いない、こういうような状況であることが明らかになったわけでありまするが、結果的にこのような状況下からくる危険性、いわゆる輸出についての危険性というものがいろいろの面において予測されるということも考えられるわけであります。  そこで、四番目の問題といたしまして、私は今後の輸出政策と為替変動危険の担保の問題について貿易局長にひとつ質問してみたいと思うのであります。  国際通貨の為替変動の問題、特にわが国が輸出入する問題等については国際収支の実情、さらに世界の産業経済の動向等考慮すれば、今後のわが国の輸出は高度の技術水準を生かした付加価値の高い分野に重点を置くということにならざるを得ない、こういうような状況になっておると思うのでありまするが、円滑な輸出の発展が行なわれる、そういうようなことが必要になってくるわけであります。したがって、そういう面について、政府は今後の輸出政策のあり方をどういうぐあいに考え、どのような施策を講じようとしておるのか、これは今後の輸出問題について、これから審議する内容について非常に必要でありますので、あまり長くなくてけっこうでありますから、概括的な答弁をひとつお願いしたいと思うのであります。
  165. 濃野滋

    ○濃野政府委員 今後の輸出政策をどういうふうに考えていくかという点でございますが、何と申しましても日本はいわゆる貿易立国ということを国是にしていかなければならぬということは、そのときどきの情勢によりまして輸出に対する考え方のウエートの置き方等は違いはあるにいたしましても、常に輸出というものには非常に重点を置かなければならないと私考えております。  そこで、まず輸出につきましていろいろな問題がございますが、日本の輸出も、先ほど先生からの御指摘にありましたように、本年度は、非常に乱暴に申しますれば五百億ドルに近い非常に大きな規模になるわけでありまして、いわゆる波打ちぎわでの輸出を伸ばしていく政策というのが国際的な協調という立場からもなかなかとりにくい。そこで私どもがただいま考えておりますのは、まず先進国向けに対しましては、従来からもやっておりますいわゆる秩序ある輸出ということをますます今後も続けていくように配慮をしていくということがまず第一でございます。  第二に、いわゆる発展途上国に対しましては、発展途上国からの要請等を踏まえまして、いわゆる経済協力を通じ日本の技術、日本の物を出していく、そして発展途上国の経済発展に寄与していく、それがまた日本の輸出にもつながるということになるのではないかという考え方を持っております。  第三に、世界の貿易動向、日本の輸出を取り巻きます貿易動向はなかなかきびしいものがございまして、特に先ほどからお話のございましたような為替相場の変動制のもとで中小企業等は輸出についてはなかなかいろいろなむずかしい不安定な要素がございます。これにつきましては、その問題問題に応じまして、特に中小企業の輸出等については必要な配慮をしていくということが必要ではないか、かように考えております。
  166. 佐野進

    ○佐野(進)委員 結果的に輸出をふやしていかざる限り赤字の解消はあり得ないわけでありますから、半額と見込んでも相当大きな金額になるわけでありますので、結果的に輸出振興が非常に大きな政策の柱になってくることは当然でありまするが、この輸出振興の中におけるプラント類の輸出は、この今回の法律の提案の中にも具体的に説明されておるわけでありまするが、これが欧米先進国と称せられる他の国々、先進工業国との間において、実際的に競争にうちかっていかなければならないわけでありまするが、これらの点についてどのような対策を立てられておるのか、この点について御質問をしてみたいと思うのであります。  さらにまた、これに関連いたしまして、為替変動危険の担保として円建て輸出の推進が必要なことになっておるわけでありますけれども、現在の長期輸出取引における円建ての比率はどのようになっておるのか、このこともまたこの際明らかにしておいていただくと同時に、政府の基本的な考え方、いわゆる円の国際化の問題に関連して考え方をこの際ひとつお示しを願いたいと思うのであります。  さらにまた、為替変動危険の担保として自社レートの設定という方式があるといわれておりまするが、これらの事例が実際にあるのかどうか、そういうことについての実例についてこれまたお示し願いたいと思うのであります。なお、この点につきましては、全体的な輸出振興、わが国の輸出の動向と関連いたしまして基本的な問題でありますので、輸出振興問題に対する大臣見解もこの際あわせてお聞きしておきたいと思うのであります。
  167. 濃野滋

    ○濃野政府委員 まずプラント輸出というのが日本の輸出の中でどういうウェートを占めているかという点を第一にお答え申し上げます。  日本のプラント輸出は、総輸出の中で、年によりまして若干の変動はございますが、まるめて申し上げまして五、六%程度というウエートでございまして、これは先進諸国に比べますと非常に低い数字になっております。  第二に、ブラント輸出の中で最近いわゆる円建て比率がどうなっているかという点でございます。この円建て比率につきましては、私どもの調査によりますと、四十八年の数字でございますが、五一%というのが円建ての輸出になっております。ただ、これはプラント類だけでございまして、全体の円建ての輸出がどのぐらいになっておるか、つまり円為替をどのぐらい使っているかということになると、これは非常に低い比率でございまして数%という程度でございます。  いわゆる円の国際化というものを進めていくということは、日本の貿易の健全な発展をはかる、あわせて一国の通貨だけに依存するということでなくて、非常に安定的な輸出をしていくというためにはぜひ必要だと思いますが、しかし円を国際化するための条件というのはなかなかいろいろな条件がございまして、現在率直に申し上げまして十分整っているとは言いにくいのではないかと思います。  また、円を国際化いたしますと、これは国内のほかの政策面でもいろいろな関係がございますので、そういう点も考えた上でこの円の国際化を方向としては進めていくということが必要ではないか、かように考えております。
  168. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 輸出政策につきましては、積極的に輸出にドライブを政府がかけるというようなことはやりたくないと思っております。これはやはり世界的に同じような連鎖反応を起こしまして、結果としてはあまり適当な結果が生まれないという判断からであります。やはり自然体ということが適当であると思います。  それで、いまの状況を見ますと、わりあいに国内不況でございますから次第に外に向かって外貨を獲得しよう、そういう努力が自然現象として行なわれておるので、こういう状態で推移することはまあいいのではないか、政府が積極的に作為を加えることは差し控えていきたい、そう考えております。
  169. 濃野滋

    ○濃野政府委員 先生の御質問の中で一つ答弁漏れがございましたので、追加してお答え申し上げます。  自社レートというのはどうなっているかという御質問がございました。自社レートは各民間の商社の問題でございまして、私ども率直に申し上げましてこまかい把握はいたしておりませんが、いわゆるスミソニアン体制というものが始まりまして、円が三百八円というベースできまりました直後、確かにかなり多くの商社の中で円の先を二百四十円とか、あるいはそれ以下ということで、長期ものの取引をかなり広い範囲でやったことは事実だと思います。  ただその後、先生御案内のように、昨年の初め、特にフロート移行後いわば円高の傾向になりまして、フロート制のもとでは前に比べて自社レートというものの取引は若干少なくなっているのではないかと思いますが、現在におきましても、長期の輸出につきまして自社レートを設定して採算をはじいているというケースが若干あるというふうに私どもは存じております。
  170. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、為替変動保険制度の内容について若干質問してみたいと思います。  いままで質問申し上げてまいりましたようなその内容を前提といたしまして、この保険制度のことに対しては私ども今日の状況の中で賛成していくべきだ、私どももいまの答弁とほぼ同じような見解という形に立って、そういうような結論に至っておるわけでございまするが、そこでさらにこれを補強する意味において以下何点かについて質問してみたいと思うわけであります。  まず第一に、為替変動保険の対象となる輸出契約または技術提供契約はどのような範囲、内容のものとされるのかということであります。「政令で定める外国通貨」は、具体的にどう定める方針になるのか。また、輸出代金等の決済期限が「政令で定める期間を経過するまでに満了するもの」あるいは「政令で定める期間を経過した後に満了するもの」こういうものは除外されることになっているのでありますが、この趣旨及びそのそれぞれの政令で定める期間は、具体的にどのように定める方針になっておるのか、この点について質問してみたいと思うのであります。
  171. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、今回の為替変動保険の対象となる輸出契約、それから技術提供契約というのをどういうふうにするかという範囲でございますが、これは今回の改正法案の五条の六の二の政令でそれぞれ指定をしたいと思います。  まず「政令で定める貨物」の範囲でございますが、これは現在輸出代金保険というのがございまして、いわゆるプラント類、船舶、航空機等を中心にいわゆるプラント類の輸出を対象にいたしておりますが、今回の為替変動保険の対象も、ただいま申し上げました代金保険の対象貨物の中から二年間、二年以下に決済が終わるもの、これを除いたものにいたしたいというふうに現在考えております。それが第一でございます。それから第二に、技術提供契約と申しますのは、いわゆる海外でのコンサルティング契約に基づきまして、海外で技術指導、技術提供をやる契約を対象にしたいというふうに考えております。  第二の御質問の外国通貨でございますが、この外国通貨は、いわゆる国際性のある通貨を政令で指定したい。具体的に申し上げますと、ただいま考えておりますのは、米国のドル、それから英ポンド、それからドイツマルク、フランスフラン、スイスフラン、これはいわゆる国際性のある通貨でございますが、そのほかに、日本の貿易の特徴からいたしまして、中国の元、これも含めまして、この六つ程度をここにいう外国通貨というふうにしたらいかがかというふうな考え方を現在持っております。  それから第三に、輸出代金等の決済期限がまず「政令で定める期間を経過するまでに満了するもの」それからもう一つは「経過した後に満了するものを除く。」というその趣旨は何かという御質問でございますが、まず、私どもといたしましては、第一に「政令で定める期間を経過するまでに満了するもの」この期間は先ほどちょっと触れましたが、二年としたらいかがかという考え方を持っております。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕 これは一つには、二年以下の短期のものでございますと、この輸出保険と申しますものは、為替の動きというのがある程度実際上把握ができます。そういたしますと、いわゆる逆選択と申しますように、あぶないときだけ保険にかけるということになりますと保険としての運用が非常にむずかしくなるというのが第一点でございます。それから第二には、先物契約でいわゆる短期ものの取引はほとんどのものがカバーできる、つまり、現在六カ月まで先物の為替予約ができますが、これによりまして短期のものは実態的にはほとんどカバーできるということが第二点でございます。それから第三点には、諸外国にこの為替変動保険同様の制度がそれぞれございますが、これにおきましても、二年あるいは一年というようないわゆるすそ切りをやっておりますので、私どもとしてはそれも一つの参考といたしました。  それから次に「政令で定める期間を経過した後に満了するもの」というのは、私ども、ただいまのところでは十五年程度考えております。これはあまりに長期のものはやはり保険の観点から見まして非常に大きな危険があるということが一つと、それから現実に、現在商業ベースの信用供与は相当長いものでも十二年程度でございまして、十五年ということにしておけば、ほぼ通常の商業信用はカバーできるのではないか、以上のようなことから、これは十五年ということで切ったらいかがかというような考え方を持っております。
  172. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次に、為替変動保険は輸出契約、技術提供契約に限られているわけでありまするけれども、海外融資契約も対象として為替変動の危険を担保する方法を講ずることも一つ考え方として必要ではないか、こう考えられるわけですが、この点についての考えを明らかにしていただきたいと思います。  さらに、わが国の為替変動保険制度は、諸外国の制度に比較するといろいろの点で劣っている。この点が非常にあるということでわれわれも賛成する立場に立っておるわけでございますが、政府はこのことについてどのように認識しているか。為替変動保険制度の創設は、輸出保険制度の国際的平準化の意味もあるといわれておりまするが、今後為替変動保険制度の内容改善についてどう対処していかれるお考えか。この点について局長大臣から御答弁をお願いしたいと思います。
  173. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  第一に、輸出契約あるいは技術の提供契約のみであって、いわゆる海外に対する融資契約を含んでいないのではないか、こういうお話でございます。確かに海外融資契約は今回の為替変動保険の対象にはいたしておりません。その理由は、まあ幾つかございますが、現在プラント等の輸出は原則といたしましてサプライヤーズクレジットでございまして、向こうにお金を貸してそれで買うというケースはほとんどございません。これが一つでございます。  それから第二に、海外にいわゆる金を貸すというケースは、現在いわゆるユーロダラーの取り入れ等が大部分で、非常に多いのではないか、したがって、この場合には為替リスクの問題というのはなくなりますので、本保険の対象にする必要性というのは非常に少ないのではないかというのが第二点でございます。  それから第三点には、これは確かに、為替リスクと申しますものは輸出ばかりではなしに、輸入その他の海外との取引は全部かかるわけでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、この為替変動保険は西欧諸国幾つかの国が持っておりますが、いずれの国におきましても、主としてプラント類を中心としましたいわゆる輸出契約に限定をしておりまして、国際的にも大体同じような制度をつくるのがさしあたっては一番いいのではないかというのが私どもの考えでございまして、今回の対象にはいわゆる海外に対する融資契約一般は対象にいたさなかった、かような次第でございます。
  174. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 貿易局長答弁申し上げましたように、今回初めてこういう制度を創設するということでございまして、大体西欧の制度を基準にして日本としてこれを取り上げてみたわけでありますが、これを運用してみまして、その結果によって将来手直しを考えてみたいと思います。
  175. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次に私は、海外投資保険制度の拡充の関係の問題について質問してみたいと思うわけであります。  その第一は、海外投資のあり方と、海外投資保険の引き受けの問題についてであります。海外投資のあり方については、金属鉱業事業団法改正案、特定繊維工業構造改善臨時措置法改正案等の審議を通じてたいへん問題になったところでありますが、この問題について、政府としても、単に民間の自粛にまかせ、あるいは恣意的な行政指導によるだけでなく、何らかの制度措置を考慮すべきである、こういうふうな点がたびたび強く指摘されておるわけでございまするが、この保制険度の拡充の問題と関連して、政府はこの面についてどう処置する方針か、このことについて質問してみたいと思うのであります。  海外投資保険の引き受けにあたっても、海外投資が正常に行なわれるよう保険制度の運用の範囲内で配慮をすることが必要であろうとも考えるわけであります。これは冒頭質問を大臣にいたしておりますので、貿易局長から具体的にこの点についての見解をひとつお示し願いたいと思います。
  176. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  海外投資につきましては、先生御案内のように、OECDの場におきましていわゆる資本自由化コードというのがございまして、わが国もこのコードに沿いましてずっと自由化を進めてまいりました。現段階では、一部の業種を除きまして、いわゆる自動許可制に海外投資はたてまえ上なっております。  ただ、そういうたてまえになっておりますが、いろいろな外交上の問題があったり、あるいは先ほどから御指摘のございますような、日本の経済あるいは産業にとって重大な影響があるというふうなケースにつきましては、事前に投資計画をチェックいたしまして、そして許可するかどうかということの判断を政府ベースとしてする、こういうたてまえにいたしておりまして、今後ともこのチェックの制度活用いたしまして十分いろいろな影響等の配慮をしていきたいというのが基本的な考え方でございます。  ただ、これと同時に、いわゆる日本海外投資につきましては、東南アジアその他の諸国でいろいろな批判が出るようになりまして、しかも海外投資は、日本は現在民間のいわゆる自主的なベースで行なわれておるたてまえ上、民間の自主的な努力ということ、あるいは民間の出ていく人の心がまえということが第一必要なわけでございまして、民間団体では発展途上国に対するいわゆる投資行動の基準というものをつくっておるのは御案内だと思いますが、こういう動きを私どもとしては非常に評価をいたしておりまして、むしろ実際に効果があがっているかどうか、実施状況はどうかというようなことについても十分徹底をしていくように私どもとしてはとり進めていきたい、こういうふうに考えております。  それから第二の御質問に関係いたしますが、海外投資保険、これは海外投資をいたします企業が全部海外投資保険をかけておりません。やはり出ていきます国あるいは自分の事業等を判断いたしまして保険の申し入れをしてくるわけでありまして、保険プロパーの立場から申しますと、むしろこれをかけることに——危険があるかどうかという判断が一番もとではございますが、私どもはやはりそういう単なる危険的な立場ばかりではございませんで、この投資保険の運用を通じまして日本の対外投資の健全化に少しでも役立てばいいというたてまえから、海外投資保険の引き受け、要するに、申し込みがございましたときに、一体向こう海外投資を受け入れる国がどういう基準でこの投資考えているか、それに一体この投資は合っているのかどうかというような点、あるいはたとえば日本の公害輸出というような心配がいわれておりますが、これを出すことによってそういうおそれがあるかどうか、もし問題があるときにはその保険の引き受けのときに必要な指導をするというようなことで、なるべくこの投資保険の運用を通じまして海外投資の健全化に少しでも役に立つという方向で私ども考えております。
  177. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次に、開発輸入融資の対象物資についてであります。従来、鉱物の開発輸入融資のみが海外投資保険の対象になっていたのでありますが、今回、木材その他の貨物が追加されるということに法律が改正されるわけでありますが、具体的にどういう貨物を政令で定める方針であるのか、まだきまっていない点もあろうと思いますが、この際明らかにすることができる貨物があるならば、その内容をひとつ説明していただきたいと思います。
  178. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正にあたりまして、従来のようないわゆる鉱物資源のみならず一般的ないわゆる資源に拡大をいたしたいと考えて今回の改正法の審議をお願いしたわけでございますが、一言で申し上げますれば、国民生活にいわば不可欠な物資につきましてはできるだけこれを広く取り上げていきたい。現在具体的に考えておりますのは木材あるいは綿花、羊毛というような繊維原料、さらに食肉あるいは漁業等によってとります魚介類というようなものにつきましても、いわゆる開発輸入方式をとるものはこの制度の対象にいたしたい、かように考えております。
  179. 佐野進

    ○佐野(進)委員 最後の項目になりましたが、時間がきょうは五時までだということであと七分しかありませんので、この点の質問をいたして終わりたいと思います。  輸出保険制度の運用状況について質問をしたいと思います。  まず第一に、輸出保険制度の運用の実績であります。各種輸出保険制度の運用実績はどのような状況になっているのか、これを簡単でよろしいですから御説明を願いたいと思います。  さらに、輸出保険特別会計の支払い準備の状況であります。今日この保険金額が相当多額になっているにもかかわらず、準備がきわめて少ない、そのような状況下にあると私どもは聞いておるわけでございますけれども、この制度が発足する、こういうような形の中において契約者が増加するということになってまいりますれば、必然的に支払い準備の充実ということが当然の課題になってこようと思うのでありますが、この点については、大臣見解をひとつお示し願いたいと思うのであります。
  180. 濃野滋

    ○濃野政府委員 大臣への御指名でございますが、若干数字的な問題でございますので、先に私から御説明いたします。  まず輸出保険の運営実績でございますが、過去まだ四十八年度、昨年度のは出ておりませんので、四十七年度から五、六年前までをさかのぼって御説明申し上げますと、四十二年度、四十三年度あたりは、ちょうど四十年度と四十一年度にかなりの事故がございまして、保険特別会計といたしましては若干の赤字を出しておりましたが、その後四十四年度程度からこれが黒字に転じました。四十七年度の数字を申し上げますと、保険料の収入が五十七億円、それに対しまして支払い保険金が四十五億円ということで黒字になっております。  次に、どの程度の引き受けをやっておるかということでございまして、これは先生御案内のように七つの保険がございますが、これを合計いたしますと、昭和四十二年度は一兆六千八百億程度の保険金額でございました。それが昭和四十七年度には四兆七千六百億とかなりの伸びを示しております。全輸出の中でこの保険にかかっておる率が一体どのくらいかということでございますが、これは計算にいろいろむずかしい問題がございますが、大ざっぱに申し上げまして全輸出の四割程度がこの保険にかかっているのではないかと思います。保険金額の引き受けの規模では現在世界で一番大きい規模になっております。
  181. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまの御説明のようにやや黒字の傾向がございまして、との動向を見まして準備率について検討を加える必要もあるのではないかと思います。ともかく均衡ある保険数理を維持できるように、われわれとしても常時これを見直しながら進んでいきたいと思っております。
  182. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま中小企業庁からも次長がお見えになっており、いろいろな面でなお質問したい点もありますが、きょうは約束の時間が五時ということでありますので、質問を保留してこれで終わりたいと思います。
  183. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次回は、明後十日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十八分散会