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1974-05-07 第72回国会 衆議院 商工委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月七日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 武藤 嘉文君    理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    稲村 利幸君       浦野 幸男君    小川 平二君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       田中 榮一君    丹羽喬四郎君       橋口  隆君    八田 貞義君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    佐野  進君       渡辺 三郎君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君  委員外出席者         参  考  人         (日本衣料縫製         品協会会長) 青田 竜世君         参  考  人         (全国繊維産業         労働組合同盟副         書記長)    井上  甫君         参  考  人         (日本繊維産業         労働組合連合会         委員長)    小口 賢三君         参  考  人         (日本メリヤス         工業組合連合会         理事長)    外海 忠吉君         参  考  人         (日本綿スフ織         物工業組合連合         会会長)    寺田 忠次君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 四月三十日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案多賀谷真稔君外三  十五名提出衆法第三六号)  中小企業者事業分野確保に関する法律案  (中村重光君外九名提出衆法第三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第三二号)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根通産大臣
  3. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般、宇都宮市で演説を行ないました際には、閣僚の身もわきまえずに社会党、共産党に対して不穏当、不謹慎なことばを用いまして、ここにつつしんでおわび申し上げる次第でございます。以後このようなことを再び繰り返さないようにみずからを戒め、慎重に対処するつもりでございます。  いろいろ皆さま方に御迷惑をおかけいたしましたことを重ねておわび申し上げる次第でございます。      ――――◇―――――
  4. 濱野清吾

    濱野委員長 内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として、日本衣料縫製品協会会長青田竜世君、全国繊維産業労働組合同盟書記長井上甫君、日本繊維産業労働組合連合会委員長小口賢三君、日本メリヤス工業組合連合会理事長外海忠吉君、日本綿スフ織物工業組合連合会会長寺田忠次君、以上五名の方に御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。  本委員会におきましては、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について審査を行なっておりますが、本日は、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考といたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに御意見をそれぞれ十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  初めに、日本綿スフ織物工業組合連合会会長寺田参考人お願いいたします。
  5. 寺田忠次

    寺田参考人 私は、日本綿スフ織物工業組合連合会会長寺田忠次でございます。  諸先生方には、綿スフ織物業の振興に関しまして平素格別な御高配を賜わりまして、まことにありがとうございます。また本日は、このような席にお呼びくださいまして意見を述べる機会を与えてくださったことにつきまして心から厚く御礼申し上げます。  さて本日は、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について意見を述べるようにとのことでございますので、同改正法案につきまして私の考えを申し上げるとともに、業界現状を御報告申し上げて、業界窮状打開に関して適切な御配慮お願いいたしたい、かように考えるわけであります。  まず、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案でございますが、これはぜひとも原案どおりで一日も早く国会を通過させ、成立させてくださいますようにお願い申し上げます。  御高承のとおり、私ども綿スフ織布業界は、現行の特繊法に基づきまして、昭和四十二年度から構造改善事業実施してまいりました。この間に設備ビルドは総額で六百五十五億円余でありますが、大体当初の目標を達成し得た、かように考えておるわけであります。特に織機ビルドにつきましては、当初普通織機自動織機が大部分を占めるものと考えておったわけでありますが、構造改善事業実施に伴いましてきわめて優秀な超自動織機が紹介されました結果、構革ビルド織機の七〇%の台数まで超自動織機が導入されまして、大きな効果をあげておるわけであります。また準備機その他の設備につきましてもきわめて優秀なものが開発されまして、織物生産形態を一変させるようになったわけであります。このことは私ども布業界に大きな効果を及ぼしたばかりではなくて、わが国繊維機械メーカーにも大きな影響を与えまして、先進諸国に比べましても決して劣らない機械開発が行なわれるようになったわけであります。これもまた見のがすことのでき得ない構造改善の大きな効果であると考えるわけであります。  このようにして構造改善実施した企業の機能は、世界の先進国のレベルに達しまして、優秀な従業員の能力と相まって労働生産性を向上させ、賃金、諸物価上昇にもかかわらず、製造コスト上昇を最低限に押えることができて、国民に良質で比較的安価な製品を供給し得たものと喜んでいるわけであります。これはひとえに諸先生方の格別な御配慮によるものと心から感謝を申し上げている次第であります。  しかしながら、従来の構造改善設備自動化あるいは高速化を通じて労働生産性を高め、省力化を推進して国際競争力を強化することが主要な目的とされていた関係上、設備近代化を進めるとともに規模のメリットを追求する方針がとられまして、商品開発とか技術開発等需要高級化多様化に対応する面におきまして若干欠けた点があったわけであります。  また、従来は織機自動化高速化によりまして供給過剰になることを防止するために、織機ビルドにあたりましては上のせ廃棄と申しまして一対一の旧織機廃棄することのほかに一定比率の旧織機を上のせして廃棄することが義務づけられておったわけであります。これが小規模あるいは零細企業者設備ビルドに大きな障害となっていたことは事実でございます。今回の改正法におきましては、知識集約化によりまして消費動向を的確に把握して、消費者が希望する多種多様な高付加価値製品開発していくとともに、生産加工、販売各部門の有機的な結合をはかりまして流通近代化をはかっていくという方針をとっております。このために知識集約化グループの結成を前提といたしまして助成することになっておりますが、上のせ廃棄条件がなくなりましたので、小規模企業の方々にも利用しやすくなったわけであります。また零細企業に対しましては、第九条におきまして特別の配慮をする旨の一条が設けられております。本年度は特別な融資技術指導が行なわれることになっておりますので、零細企業の多い織布業界といたしましてはまことにありがたいことと存じているわけであります。  なお、改正法案は、第三条におきまして取引改善に関する事項基本指針として通商産業大臣が示すことになっておりまして、また第八条におきましては「基本指針に定める事項について指導及び助言を行なう」ことになっておりますが、われわれ織布業者は、紡績会社化繊会社商社等の大企業の中間にありまして、常に上下から押しつけられてサンドイッチの形になっているわけであります。そして長い間きわめて不合理な取引条件をしいられているわけでありますが、今後この法律の規定によりまして適切な指導助言を得まして合理的な取引関係が確立されることができ得ますならば、われわれの経営の安定に大きな効果が得られるものと期待している次第であります。  以上のような事情で、われわれ織布業者は、本法の成立に大きな期待をかけておりますので、どうぞ一日も早く本法案成立させてくださいますようにお願いする次第であります。  次に、私ども業界の最近の状況を御説明いたしますとともに、緊急対策につきましてお願いを申し上げたい、かように考えます。  御高承のこととは存じますが、当業界は現在未曽有不況に直面しております。すでに操業停止状態にある工場も出てきております。今回の不況は、昨年来の膨大な綿布輸入による異常滞貨をかかえた状態にありまして、総需要抑制政策が進められたために生じたものでありまして、相場が大幅に下がりましたにもかかわりませず、需要が出てまいりませず、発注が全く途絶してしまったわけであります。われわれの仕事の性質上、注文は納期の二、三カ月前にいただかないと製織準備等の段取りができないわけであります。現在四-六月の受注状況は大体五〇%程度しかない状況であります。このような状況で織布業者の採算も極度に悪化いたしまして、織り工賃は昨年秋ごろに比べまして半分というのはいいほうでありまして、一般の場合は三分の一くらいにまで低下して、織物を織るごとに赤字が増大していくというのが現状でございます。このような状況で各産地では大幅な操業短縮を余儀なくされておりまして、われわれ織布業者の資金繰りは破綻寸前にあります。何とか至急に抜本的な特別融資措置を講じていただくとともに、既往の融資につきましても償還猶予措置をお認めいただきたい、かように考えるわけであります。どうかよろしくお願いいたします。  次に、現在の織布業界不況の最大なと申しますか要因でございます無秩序な綿布輸入についてであります。  昨年の綿布輸入数量は約七億平方メートルに達しております。一昨年に比べまして二倍半にもなります。この数量は、わが国綿布の総生産高の約三〇%でございます。対米輸出規制問題が生じたときのアメリカ輸入量は、アメリカの総生産高の五、六%であったと聞いておりますが、これと比較いたしてみましても、昨年のわが国輸入はたいへんな数量であったということが御理解いただけるのではないか、かように考えます。われわれは無秩序な輸入がわれわれ織布業界に及ぼす影響重大性にかんがみまして、昨年来輸入業界に対し秩序ある輸入実施を呼びかけ、協力を要請してまいりました。われわれは、加工貿易国でありますわが国実情から見まして、輸入禁止とか、あるいは輸入制限というようなことはたいへんむずかしいことであるということもよく承知しておりますが、せめて秩序ある輸入を行なって国内市況混乱を来たさないような措置をとっていただきたい、かように考えるわけであります。  以上、私の意見並びに御要望を申し上げた次第でありますが、最後に、本日このような機会を与えてくださいましたことに対しまして重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手
  6. 濱野清吾

  7. 青田竜世

    青田参考人 日本衣料縫製品協会の副会長をいたしております青田でございます。  本日、この委員会の席に出さしていただきまして、衣料縫製品業界立場から意見を申し述べることができますことをたいへんうれしく喜んでおる次第でございます。  今回の審議されております特繊法改正案でございますが、これにつきましての日本衣料縫製品業界全体からいたします感触といたしまして、ぜひ一日も早くこの法律仕上げをしていただきたい、上げていただきたいということでございます。特に、紡績あるいは織布のように、在来の特繊法では対象の外にありましたわれわれの衣料縫製品業界に対して、初めて政府施策助成措置が受けられ得ることになったというふうなこともございまして、業界の持ちますこれに対する期待はたいへんに大きいわけでございます。さらにまた、数次にわたりまして繊維に関しましてとられました幾つかの救済措置融資とか、あるいはその他買い上げ等救済措置につきましても、衣料縫製品業界の大部分を占めます国内衣料生産に携わってきました業者につきましては、大体においてそのらち外対象外に置かれてまいりましたような関係もございまして、初めて政府施策に基づくいろいろな助成あるいは指導措置にあずかれる最初にして最後機会ではなかろうかということでございますので、これに何とか力を得て、長い目で見た自力更生、いわゆる自助努力をやりまして、そうして長期にわたった繊維産業のビジョンの中で新しく生き残るための体質改善、こういったものに取り組みたいという意欲を持っておる次第でございます。  もちろん、法律ができ上がりましても、その助成を受けるためには幾つかの要件を備えなければなりません。また、それに伴うところの企業自体自助努力がぜひ必要だということもよく認識いたしておるわけでございまして、われわれ業界団体といたしましても、そういった問題につきましては、数次にわたりまして、これから先もPRなして、そしてうまくいくように努力したい、こういうふうに考えておる次第でございます。  ただ、これから先、細部の点につきましては省令によってきめられると思いますが、何ぶんにも衣料縫製品関係につきましては構造改善は初めてでございます。経験を得ておらないわけでございます。また同時に、業界実情からいたしまして、取引形態あるいは業態、スケールというふうなものが非常に種々雑多でございます。また、零細性が非常に大きく九九・七%までが従業員十人以下の零細な企業だというふうなこともございます。企業の数もたいへんに多い。全国的に見まして、事業所数だけで、アウトサイダーも含めましたら三万をこえるというふうな数字になっておりますような関係もございまして、いろいろとむずかしい問題も起こってくるかと思いますが、ぜひともひとつ法律範囲におきまして弾力的な運用をしていただきまして、そして業界の生き残る意欲のあるものだけは何とかそれに乗っかれるような方向に御指導を賜わりたいと考える次第でございます。  それから、この特繊法改正、新しい構造改善によりまして、長期的に繊維産業の新しい意味の位置づけ、あるいは体質改善によりまして、そうして結果的には国際競争力をつけていくということも当然でございまして、これを非常に念願しておる次第でございますが、それに至りますまでの間の当面しております現在の問題につきまして、ぜひ補完的に御考慮をお願いしたいという問題がございます。  先ほど寺田参考人からも申しましたように、われわれの衣料縫製業界におきましてもらち外ではございません。昨年、一昨年来からの異常な輸入ラッシュ、それに基づきますところのたいへんな国内での衣料製品滞貨、こういったものの被害を身に直接に受けて矢面に立たされておる衣料縫製品業界といたしましては、何とかこの辺で何らかの手を打っていただかなければならない時期に来たのではなかろうか、もちろん日本の置かれておる国際的な経済的な立場から見ていって、そうそう輸入規制とかいったことはむずかしかろうということもよく認識はいたしております。ただしかし、現在のような無秩序な輸入が今後行なわれるといたしますと、しかも輸入をしてきました衣料品は、輸入価格の七掛けとか六掛けとかいうふうな価格ダンピングをしておる、換金をしておるというのが現状でございまして、しかも、これまでたいへんな形で開発途上国発注をしてきた人たちが、ここのところへ来て、こんなやけどをしたのではどうにもならないということで発注を見合わしておる、こういうふうなことが起こりますと、はたしてこれがほんとう意味国際協業になるのだろうかということが考えられます。  海外の生産業者の側に立ちましても、はたして日本注文というものをまともに受け入れていっていいのだろうかというふうな気持ちもあろうかと思いますし、また同時に、そういった輸入価格の何割かを値引きをして流通段階に流さなければならないというふうなことは、これ自体非常なドルの浪費だと考えます。また、それによりまして国内のわれわれ零細な生産業者を非常な混乱におとしいれるというふうなこともまことに困ったことだと考えるわけでございます。  また同時に、国民生活から見ましても、一時的にそういった大量の滞貨をはかすためにダンピングをする、いわゆる投げ売りをするということで消費者価格が幾らか下がることがあっても、これはほんとう意味の安定した国民衣料の廉価な供給にはつながらないと私は考えます。  こういう意味で、ぜひひとつこの辺で、日本立場上許される範囲において何らかの措置をとるべき時期に来ておるように考えるわけでございまして、その点、特に御配慮を願いたい。  それから、先ほど寺田参考人からも申しましたように、現在の非常な総需要抑制に基づきますところのいろいろな金融引き締め等によりまする資金問題についてもこれまた同様でございまして、こういうふうな点につきまして、ぜひひとつわれわれ中小企業に対する資金援助ということにつきまして特別の御配慮をいただく、そういうことにいたしまして、この法案成立しましたあとの長期的な体質改善に持ち込むまでのつなぎをぜひお願いを申し上げたい、こういうふうに考えるわけでございます。  いろいろとありがとうございました。(拍手
  8. 濱野清吾

  9. 井上甫

    井上参考人 全繊同盟井上でございます。  本日の委員会参考人として意見を述べる機会を得ましたことを光栄に存じます。  この法案について意見を申し上げる前に、私は、現在吹き荒れております繊維不況について一言触れてみたいと思います。  なぜならば、常に市況に左右されるわが国繊維産業体質と今次の構造改善具体化とは決して無関係とはいえないからであります。私どもの組織である全繊同盟組合員数五十六万名、組合数にして約千七百、事業場数で約四千を数えております。そして傘下には化合繊綿紡、羊毛、麻、生糸などの原料素材部門並びに紡績段階から織布、撚糸、染色整理縫製メリヤスなどの二次加工及び最終仕上げ工程までの労働者と、さらに繊維流通を含む労働者が多数おります。その中でも今次の繊維不況影響を強く受けている中小零細企業労働者を多数擁しているわけであります。御存じのように、今日の不況を招いた原因は、昨年の好況時に際して需給関係を無視した過剰生産輸入の急増にあることは言うまでもありません。さらに、インフレ抑制のためにとられた金融引き締め政策によりまして仮需要が低下し、また今日の狂乱物価から生活を守ろうとする消費者買い控え傾向から実需要が減退したことによるものであります。また基本的には、宿命的な繊維業界過当競争政府金融政策の結果でありまして、特に過剰流動性の問題が引き金となって豊富な資金力を活用し、過当輸入を行なった総合商社の無秩序な行動にあることはこれまた言うまでもないと思う次第であります。このため繊維の各業種は軒並み操業短縮に追い込まれておりまして、特に中小零細企業受注の減少と加工賃の低下、さらに金融引き締めによる経営内容悪化、さらにまた満足な賃金も払えないような企業も山積しておりまして、深刻な雇用不安を生じているのが現状でございます。  そこで私どもは、政府当局に対し、いままで再三にわたりまして雇用安定策並びに中小零細企業に対する特別金融措置などを要請してまいりましたが、特にこの機会に再度次の点を要請いたしたいと思います。  第一は、労働者に雇用不安を与えないような万全の措置を講ずることであります。  第二は、中小零細企業操業短縮を余儀なくされるような場合の資金的なてこ入れ、在庫投資の充実、緊急融資ワクの拡大であります。  第三は、これらの企業に対し政府関係金融機関からの借り入れ金返済繰り延べを行なうことであります。  それから第四には取引条件、特に大企業中小企業間の取引条件悪化防止改善のために行政指導を行なうことなどであります。  以上は当面の緊急対策として私どもが考えている点でありますけれども、これによっては繊維産業が必ずしも安定的な発展が望み得ませんし、より抜本的な問題の解決に当たるためには今次のこの法案意味するところがきわめて重大でありますし、私どもといたしましても、このような繊維の苦境の繰り返しがされないようなこの法律早期成立期待しているものであります。  もちろん今次の法改正は昨年十一月の繊維工業審議会及び産業構造審議会答申によるものでありまして、この答申の出るまでの検討過程におきまして全繊同盟からも宇佐美会長が参加し、それぞれ意見を述べてまいりました。そして私どもはこの趣旨に従いまして、今後日本繊維産業知識集約化方向に進むことについてはもちろん異論がありませんが、しかしこの問題は法の具体的な運用について、いかにすべきかということについていろいろ私ども考えている点がございますので、特にこの点を参考として申し上げ、ぜひ今後の法の運用にあたってしんしゃくしていただきたいと存ずる次第でございます。  その第一は、繊維工業改善事業を行なうに際し、いわゆるこれに藉口する意味合いで労働者へ犠牲を及ぼすというようなことは絶対に排除していただきたいということであります。また、構造改善を推進する過程当該企業の中から転廃業者が出るような場合におきましては、労働者に雇用不安を与えないよう、さらにその救済策につきましてもきめのこまかい対策配慮していただきたいということであります。もちろん繊維政策実施する根底にあるものは、ひとり繊維産業体質改善やいわゆる構造改善だけではないのでありまして、基本的には繊維労働者生活が守られるということが絶対的な条件であることを強く強調したいと思う次第であります。  第二は、いわゆる付加価値の高い商品生産あるいは知識集約化といいましても、はたしていまの中小零細企業現状からこれを具体的にどう実行できるのかということにつきまして幾多の危惧がございます。特に人材の育成、技術開発情報の収集とその迅速な処理、といいましても、もちろんそのための実効性のある対策を立てることが肝要でございます。したがいまして、従来からいわれておりますように、単にスケールメリットを追求するとか、あるいは一般的な合理化問題では問題の解決にならないわけでありまして、こういうような点から、たとえばこの情報の問題につきましても産地主要都市情報ネットシステム化をはかるとか、あるいは消費者動向を具体的に把握し、でき得ればアフターケアもできるような体制を整えるなど、特にきめのこまかい対策を考える必要があろうかと思います。  第三に、取引条件改善についてであります。従前から繊維品の取引の実例といたしまして、見込み受注生産が多いところから返品率が高く、また季節的にはダンピング、いわゆるバーゲンセールというものが繰り返されてきていることは先刻御案内のとおりでございます。もちろん私ども、良質にして廉価な品物が消費者に渡ることは生産労働者といたしましてももとより喜びでございますけれども、しかし汗の結晶である製品がちまたで投げ売りされているというような事実を見るにつけ、非常な憤りすら覚えるわけであります。特に中小零細企業は大企業や大商社の圧力によりまして現在取引条件がきわめて不利な立場に追いやられている事実を直視し、このようなことを改善するためにいろいろ配慮されることを切にお願いする次第でございます。  第四は、繊維商品取引所のあり方についてであります。現在の取引所のあり方につきましては、いままで各方面から問題点が指摘され、論議を呼んでまいりましたし、このほど定期市場問題小委員会答申が出され、一応改革の方向が明らかにされました。しかしながら、今日の取引所のあり方を見ますと、それが物価対策の面、企業経営の面、さらに労働者の労働の価値とその意識の面からいたしましても、多くの弊害を招いていることは否定できません。諸外国の例を見ましても、天然繊維原料は定期市場に上場されておりますが、繊維品そのものが上場されている例はきわめて少ないわけであります。ところが、わが国の場合は繊維製品が中心でありまして、これはわが国繊維産業の構造自体の問題であり、市況産業としての位置づけをしてきた政策上の欠陥にもあるわけでございますので、今後とも取引所のあり方につきまして、抜本的な検討をあわせてお願いしたいと思います。  第五は、繊維工業構造改善にあたりましては、それは単に従来のように繊維工業だけの問題として限定するのではなくて、流通機構、流通構造の問題にまでメスを入れなければ、それは結局はしり抜けになってしまうのじゃなかろうかということを危惧しております。いままで私どもいろいろな体験から、たびたび繊維構造改善が行なわれてまいりました。そして十分とはいえないまでも生産段階における合理化は進みましたし、最終製品として消費者の手に渡る流通経路というものもいろいろな対策がとられておりますけれども、必ずしも万全でありません。結局われわれが生産段階において労使が協力して生産性向上のために努力してきているわけでありますけれども、その結果は十分報われておりませんし、結果として消費者も満足をしていないのが現状であります。こういうような意味合いにおきまして、取引所の問題、そして流通構造の問題をセットにいたしまして、ぜひこの構造改善にあわせて引き続き検討を進められることを強くお願いしたいと思います。  最後に、今後の企業の海外進出のあり方についてでございます。御存じのように、わが国繊維産業は急速にここ二、三年来進んでまいっております。しかしながら、利潤追求だけをモットーとする無秩序な海外進出は、いわゆる進出先国のナショナリズムから総スカンを受けていることも事実であります。私ども企業の海外進出に対して、それが単に安い労働力を求めて進出するということでなくて、これに対しても厳重に規制する対策を講ずる必要があろうかと思いますし、また進出先国の経済発展、そして福祉の増進を優先するような、そういう経営姿勢こそが大事だというふうに考えます。  またこの反面、現在進出企業が増大している中から安い品物が国内に逆に入ってきておることも、先ほどからの参考人の説明にございました。そしてこのことが国内における中小企業を圧迫していることもこれは事実でございます。もちろん私ども労働組合の立場から国際分業の原則というものは踏襲いたしますけれども、国際公正労働基準の確立ということがその大前提であるということを特に強調していかなければいかぬと思う次第でございます。  終わりに、この法案提出にあたりまして、いろいろ諸先生方の御努力に感謝するとともに、今後とも繊維労働者ほんとうに安心して働けるようなりっぱな法の運営をはかられることを心から祈念いたしまして、私の参考人としての意見を終わる次第でございます。ありがとうございました。(拍手
  10. 濱野清吾

  11. 小口賢三

    小口参考人 御紹介いただきました総評・繊維労連の委員長小口でございます。  中小加工企業に働いている労働者立場を代表して、この法律に対する意見を述べたいと思います。要旨はお手元の印刷物にありますので、読みながら意見を述べたいと思います。  現在の法律が一九六七年に制定され、今回特定繊維工業繊維工業構造改善臨時措置法という名前に変わろうとしていますが、やはり法律にはそれぞれの歴史がありまして、今後の運営についてこの歴史的な変化をどのようにとらえるかという点が運用の上で非常に重要な点ではないかと思うわけです。この前の段階では、国際競争力の強化というものを基本政策として制定して、省力化高速化を中心とした機械設備の投資が中心でございました。ところが、その後この法律ができました以降に事態は根本的に変わりまして、ニクソン・ショック、為替レートの変更、変動相場制への移行あるいは日米繊維貿易の覚書協定の調印、これらの条件日本繊維産業を取り巻く国際的、国内条件を歴史的に大きく転換しました。当時、政策目標に全然欠けておりまして、とりわけ七二年に外貨準備高が百九十億ドルに達したのを機会に、東レ、帝人、東洋紡、鐘紡等の海外への資本輸出が一そう拡大しましたし、また極東三国を中心に繊維製品輸入の急増が目立ちました。国内の盛んな消費需要にささえられて二次加工製品のニットー化、既製服化が進みました。これらの問題は、あげて当時の構造改善措置法が常に状況に立ちおくれておった問題でございます。加えて、先ほど業界の方々からはたいへんに有効であったという御意見がありましたけれども、私ども立場から見ますと必ずしもそう礼讃ができない幾つかの問題をかかえております。  第一は、最初に過剰設備廃棄省力化を軸として構造改善政策が進められましたが、ちょうど法律の議論がされておる段階では構造的な不況がかなり進みましたが、おりから一九六七年以降に高度成長が進んだために国内消費の需要が拡大したことと、輸出が増加したために、過剰設備廃棄は遅々として進まず、かえって合繊紡機、編み立て機、レース編み機、仮撚り機等の設備投資が進行しました。そして結果的にスクラップ・アンド・ビルドではなくて、ビルド・アンド・ビルド政策に変わったのが実態でございます。  加えて、国際通貨の変動によって有利な交易条件を得た極東三国、パキスタン等の繊維製品は、日本市場になだれ込んできまして、総合商社もこれを利用しました。こうした過剰投資と急激な繊維製品輸入が今日の過剰生産の原因となっているのは御承知のとおりであります。このことについて政府は有効な措置をとったかといいますと、私たちは公正に見てどうもそうとは思っておりません。  また二番目として、日米繊維協定の調印、為替レートの変更が日本繊維輸出環境をすっかり変えました。変えたことが、従来続いておりましたビルド・アンド・ビルド政策に一定の冷や水を浴びせる作用をしまして、それがまた今日緊急対策等のいろいろな問題をかかえておるわけです。しかも、国の政策として行ないました国際競争力の強化を目ざしたスケールメリット政策というのは、その後、国際的な原糸価格の値上がりで帳消しになって、これによって消費者製品を非常に安く買えたというようなことはあまりないと思います。  綿糸、綿製品輸入が増大となっておりますし、スクラップ政策はやみ織機の増大となりました。中には廃棄された設備開発途上国に売られたのです。そして国内織物産地は、確かに織機機械織機に変わったことは事実です。しかし同時に、中小零細企業織物業者の手元には一台当たり三十万から四十万の借金が残り、景気変動のたびにこの商工委員会繊維問題で救済融資を議論しなければならないということが慢性化する状態にまでなっておるのです。したがって、前法律繊維産業体質を非常に強化し、将来に向かって国際競争力の上で一定の歴史的な条件を果たしたというには少し実態が違うんではないかというのが率直な私たちとしての批判でございます。  それでは、そういう現在の情勢に立って提案されています新構造改善政策に対して、私たちは以下述べますような疑義を率直にいって持っております。  私たちは前法律、現在の特定繊維工業法律が出されましたときに、次の二点を強調したわけです。  第一は、政府の言うようにスケールメリット政策、省力化政策ではなくて、日本繊維産業を取り巻く国際的条件から考えて、原糸コストの切り下げよりむしろ付加価値生産性の向上と高級二次製品の輸出を基本方針とすべきではないか。それからそのためには染色整理業、織布業、縫製業、メリヤス業に対して資本装備と技術を飛躍的に高める近代化投資に体制金融措置を講ずべきである。そして自動織機の導入にあたっても織機と編み機の設備比率を十分いまから検討すべきである。また、繊維製品流通機構の合理化を進めて流通コストの切り下げ措置指導してほしいということを要望しました。これに対して政府が、その後特定紡績業と特定織布業のほかメリヤス製造業、特定染色業に適用を拡大したことはたいへんよいことだったと思います。しかし、今回そのような情勢の変化に対応して、さらに縫製業、撚糸加工、サイジング、流通部門に適用を拡大して、特に中小、零細企業構造改善施策の力点を置くことになりましたことはおそきに失した感はありますが、一歩前進と評価したいと思います。  しかし、この構造改善政策の基本的な考え方は、昨年十月二十五日繊維工業審議会産業構造審議会体制部会による答申にあらわれておりますが、この答申の基本的な考え方が二つありまして、国際分業の確立、知識集約産業化、こういう点がございますが、これについても、実は私たちは、そのことばはいろいろありますけれども、今回の法律に関してその実施過程における具体的な政策に非常に欠けておるという感じを率直に持っております。  一つは、この法律の制定後、施策のいかんによって次の点を危惧するのでございます。  第一は、今日、国内市場において原料及び繊維製品の無秩序な輸入繊維市況混乱滞貨の原因になっていながら、輸入秩序確立についての政策が明示されていないことでございます。  第二は、知識集約型産業への転換ということばが各所で述べられていますけれども、それは具体的にどういうことなのか、生産流通過程で何をどのようにやろうとしているのかということがきわめてあいまいな点がございます。私ども現状の原糸大手メーカーあるいは総合商社繊維加工業、アパレル産業の中小零細企業の力関係では、異業種間の協業とか新製品開発が、かえって原糸メーカー、商社の側の系列支配論理を強め、付加価値の所得配分に中小零細企業があずからないのではないか。また、国と地方自治体による構造改善資金の融資保証は、本来ならば原糸メーカー、総合商社がみずから賃加工系列企業の育成のため当然払うべき資本負担の肩がわりになっておるのではないかという危惧を持ちます。  以下、この法律の運営について、次の四点について私どもは御配慮を願いたいと思っておるわけでございます。  繊維産業は、化学繊維製造業、繊維加工業、服飾産業に従事する労働者と事業主は、それぞれの分野において国民の衣食住の要求に応ずるための生産活動に従事しています。また、その誇りを私たちも持っているわけです。繊維原料資源と衣服の嗜好にはそれぞれの民族性があります。このことはその国の産業構造政策として繊維産業をどう考えるかという基本だと思うのです。そのために政府は、繊維原料の安定供給と消費者需要にこたえる繊維産業の振興強化をはかる義務があると思っています。  また、先ほども述べましたように、慢性的な体制金融なり緊急融資が行なわれるというような状況下にあって、私たちは本来、資本主義経済体制下にあっては、企業経営の責任は各事業主にあり、国は誘導すべき基本政策を示すことが基本ではないか。そういう意味で全体的にこの体制金融問題が少し無秩序といいますか無節操といいますか、いずれにしましてもこれは国民の税金でございますので、そういうものが慢性化しているという点について、率直にいって労働者としては少し不安になります。  具体的にどういうことを実施してほしいかという点について四点にわたって申し述べたいと思います。  まず第一は、加工賃の適正化と取引契約の近代化でございます。私ども賃金交渉その他で下請加工業者に会いますと、小口さん、製品の値段をきめるのはメーカーとデパート、スーパーだけだ、私たちにとっては織り工賃、染色仕上げ加工賃、編み工賃がただ配分されるだけで、われわれにとって加工原価などというものは最初から問題にされないということをよく言っております。現に流通部門での返品、止め柄制度とか派遣店員とか機械のあっせんに対する商社の歩引き問題というような非常に不当な商習慣がこの業界ではまかり通っておるわけです。こういう状況の中で、政策が掲げるように、繊維加工業とアパレル産業の下請企業商品開発やファッション性商品をかりに生産し、付加価値を高めていながらも、原糸供給と商品の展示販売部門だけが独占利潤をあげているという、こういう現状を改めない限り、知識集約化グループ育成対策は結果的に絵にかいたもちになるのではないか。そういう意味で、私どもは下請企業が人並みの賃金、労働時間を基礎とする加工賃原価が保証されて、みずからの経営活動を通じて消費者需要の変化に対応できるような加工賃決定の適正化措置取引契約の近代化を求めたいと思います。その点で取引改善委員会においては加工費の調査とその公開、不当な加工賃取引についての調査機能を強化することを要求したいと思います。  二番目は、最低賃金法、家内労働法の強化改善により公正競争の社会的、経済的基盤を整備することです。上のほうが加工賃を買いたたけば、また繊維加工業、アパレル産業の事業主はそのしわ寄せを外注分として再下請、再々下請あるいは家内工業に対してこれを生産の組織化によって収奪し、そのことによってカバーしておるのが実態でございます。こういうような方法では商品規格とか品質の統一化はもとより、織物、染色、縫製技術の向上とか新商品の開拓などは期待できないのが実態ではないかと思うのです。そういう意味で、私たちは当面一時間一ドルの法定最低賃金制の制定あるいは法定最低工賃制の制定、週休二日週四十時間の普及と労働基準法の完全実施が通産行政としても指導方針の基礎となることを求めたいと思います。  次に、国民の衣料需要に対し、繊維原料並びに繊維製品の秩序ある輸入規制措置の基準を設定することを求めたいと思います。  国際分業政策というものが、安い商品はどこからでも買う方式をとれば、日本繊維産業はやがて日本の農業の二の舞いにならないとは言えないと思います。私たちは開発途上国の経済自立のために繊維軽工業を育成するとか、あるいは鉄鋼、自動車、化学肥料、農業機械等の輸出を伸ばすための見返り輸入、さらには日本の海外進出企業製品の引き取り契約などの必要から安易に国際分業の確立を急ぐことは、結果的に角をためて牛を殺すことになることをおそれます。私たちはガット体制を守りながらセーフガードの基準を設定することが繊維産業全般の構造政策を進める上で前提条件であり、本法律にいうところの基本方針の中心課題だと思うのです。  最後に、業種、産業転換の実施産地全体を対象にして、国、地方自治体の協力指導のもとで計画的かつ長期対策として行なうことをあげたいと思います。  産地は地域社会の経済共同体的な生産組織をなしています。しかし、労働力の不足、開発途上国の追い上げ、賃金水準の上昇等によって経済活動がこれに対応できなくなる産地も将来的に予想されます。このとき、メーカー、総合商社の系列化政策の貫徹により産地内個別企業にねらい打ちをつけていく政策が貫徹していけば、やがて産地は経済共同体機能が分解して、地域経済は衰退していくと思います。したがって、生産商品の代替性とか国際競争力国内需要などから見て長期に転換を必要とすると認めた産地については、国と地方自治体の責任において行政指導し、業種の選択、技術再訓練、設備転換資金の融資保証、休業または待期期間の労働者、零細事業主の所得保障措置などについて計画的かつ長期対策として進行することを求めたいと思います。  また、責任を持つ産業別労働組合との間に地方自治体、産地工業協同組合は事前協議協定を結ぶことを求めたいと思います。  長くなりましたが、以上で私の意見を終わります。(拍手
  12. 濱野清吾

  13. 外海忠吉

    外海参考人 私は、日本メリヤス工業組合連合会理事長外海でございます。  先生方には平素からメリヤスの製造業の振興につきまして格別の御高配をいただいております。この席をかりまして厚くお礼申し上げたいと思います。  なお、本日はただいま審議が進んでおります特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことについて厚く御礼を申し上げたいと思います。  私どもメリヤスの製造業界は、昭和四十四年から、現在すでに施行されております構造改善事業実施してまいりました。この期間中約六十四の新規グループを結成して発足いたしております。この数につきましては、必ずしも当初私ども計画いたしました目標には達しておりませんが、これらのグループのその後の推移あるいは業況等は、メリヤス業界の全般に対して設備近代化あるいは集約化あるいは技術の高度化、そういうことについて多くの示唆を与えておりますし、その波及的な効果はたいへん大きかったと思います。この六十四のグループ以外にも、直接法の対象とならなかった企業も含めますと、業界としては約半数ぐらいの人がここの企画に参加しておることになっておることから見ましても、十分御理解いただけると思います。しかし、そういうことで進んでまいりましたけれども、御高承のごとく、私どもメリヤス業界を取り巻く内外の環境の変化はまことにきびしいものがございます。消費者の嗜好も非常に多種多様化してまいりまして、俗にいうファッショナブルになってまいりました。この消費者の要求にこたえる生産供給体制の強化は、われわれの業界にとりましてはまことに急務であろうかと存ずる次第でございます。  現在までのメリヤスの製造業は、どちらかと申しますと、物の生産に力点が置かれておったように思います。一方、消費者の要求は、国内需要、輸出ともに年々高度化し、かつファッション化してまいっておりますだけに、いまのままでわれわれのメリヤスの製造の業界がおりますと、ますます取り残されていくことになろうかと考えられます。  今回のこの法案改正の要点にも明らかにされておりますように、新商品開発、新しい技術開発、それから設備近代化及び経営規模の適正化の促進等々、要約いたしますと知識集約化をはかるということになろうかと存じます。このことは、われわれの業界のいままで非常に弱点でございました情報の収集でありますとか、あるいは開発でありますとか、あるいは流通の合理化でありますとかいうような問題とわれわれの生産力を有機的に結合していく、そして安定した供給体制を確立される大きな助けになろうかと存ずる次第でございます。  また、本法案は、零細、小企業者に対しても特段の配慮をされていること等もあわせて考えてみますと、今後のわれわれメリヤスの製造業界にとってはまことに時宜を得た法案であろうかと考える次第でございます。そういうことでございますので、業界はあげて一日も早くこの法案成立期待し、かつ希望しておる次第でございます。どうぞひとつ先生方皆さんの特段の御配慮お願いいたしたいと思います。  この機会に、特にわれわれの業界の当面しております二、三の問題について御理解と御援助をいただきたいと思う次第でございます。  先ほど来るる皆さんが述べておられますように、昨年当初来、われわれの業界も、原料あるいは副資材等は目に見えて高騰いたしております。また、製品の形で輸入されましたものの激増ぶり、その上に国の要求いたします総需要の抑制、これに伴う需要の減退、ひいては金融の極度な引き締め等があり、いろいろの物価は非常に高騰いたしておりますが、われわれの繊維製品メリヤス製品等々は非常に下落をいたしております。まことに惨たんたるありさまでございます。輸入の点をとりましても、その前の年と比べますと約三倍強、金額にしまして約千億円程度の金額に達しております。ほとんどが私どものつくっております製品とほぼ同じ形のものが入ってきております。この点なども、われわれといたしましては、こういうふうなあまりにも秩序のない輸入のしかたについて、その影響をまことにもろにかぶる業界でございます。関係業界の方々にもかねてから、もう少し秩序のある輸入をしていただきたいとお願いをいたしておりますが、なかなか実効があがっておりません。われわれも決して輸入ストップとか、そういうことは考えておりません。秩序のある輸入ということをお願いいたしておるのでございます。その辺についてもひとつ先生方特段の御配慮をいただきたいと思う次第でございます。国内の一般の市況の低迷は、われわれのメリヤス業界も別にらち外ではございません。全般的に操業率ということになりますと、三〇%あるいは四〇%ぐらいの操業短縮をせざるを得ないような状態に追い込まれております。採算性につきましても、加工費ベースで考えますと、昨年の一-二月と比較しまして約半値ぐらいに下がっているものも多々見受けられるような現状でございます。需要はそういうことで下落の一路をたどり、かつ、加工費に属する、われわれのいわゆるめしの種でございますが、これも非常に圧迫を受けておるというようなことで、もともと非常に体質的に弱いわれわれの中小企業のグループでございます。そういうことで非常に大きな影響を受けておるというのが現状でございます。一部新聞等にも伝えられておりますように、四-六の緊急融資等につきましてもかなり御配慮お願いいたしておるようでございますが、これとても、やはり注射は生きている間にひとつ打っていただかないと、死んでしまってからでは注射も高価なだけで役に立たないというような、非常に苦しい立場のところまで追い込まれて、まことに進退これきわまりつつあるというような現状でございます。そういうことで、ただお願いばかりで申しわけないのですが、業界もそれなりの努力はいたすつもりでおります。どうぞひとつこの辺の御配慮もいただき、かつ、新しい法案成立に対して一段の御配慮お願いいたしたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。(拍手
  14. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  15. 濱野清吾

    濱野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。田中六助君。
  16. 田中六助

    田中(六)委員 ただいま参考人の方々からいろいろ御説明を聞きましたが、まさしく現在、私は皆さまの御意見をちょっとメモしたわけでございますが、非常な繊維産業の危機だということで、私どもも正直いって頭を痛めているわけでございます。特に大正九年以来の大不況だというふうにいわれておりますし、丹後の産地でも非常な大問題になっておりまして、丹後織物工業組合が四月二十八日から向こう一カ月間実際休業したというようなことも非常に私どもショックを受けているわけでございます。休業しなくても、それに似たようなことがあちらこちらで起こっているんじゃないかと思いますが、ただ私は、こういう原因が政府金融引き締めとか、その他いろんな発展途上国の輸入過剰だとか、あるいは皆さんの過当競争だというようなことが理由だとするならば、それはもう過去の理由と少しも変わらないことでございます。やはりここで大きく反省をするならば、一部の参考人意見にも述べられておりますように、過去のパターンとは多少どころか大きく違う、つまり、あなたたちの関連しておる企業の持つ体質の中に反省の材料こそあれ、他をいろいろ責めたてていくということじゃないんじゃないか、そうしないとこの繊維の問題は解決しないというような気がするわけでございます。したがって、緊急融資を求める、あるいは発展途上国の秩序ある輸入を求めるというようなこと、相手を責める、あるいはカンフル注射的なことをやることは、一時のしのぎにはなっても抜本的な改革にはならない。この法案の趣旨もほんとうにそこにあるわけで、知識集約型という一音に集約されておりますが、そういう知識集約型の産業に切りかえるという意味、内容を皆さんがここでこそ反省していかなくちゃいかぬというふうに思うのです。  私は、日米繊維交渉に二度ほど政府あるいは党の代表で参りましたが、そのときは日本は全く違う。そのときはアメリカ輸入をストップするからこちらがたいへんだということで不況になっていたわけですが、今度は全く違う。逆に発展途上国からの輸入をストップしよう――皆さんは非常に私に言わせればごまかしたようなことばで、秩序ある輸入というふうに言っております。私どもも実はアメリカに行って、輸入をストップするんじゃないんだ、日本は貿易立国だから自由貿易を標榜しておるたてまえ上、輸入をストップするんじゃありません、秩序ある輸入こそほしいというふうに言ったんですけれども、それはことばの表現であって、輸入をストップせぬでも、できるだけ規制するのはやめてほしいということなんだ。これは自由貿易こそ日本の使命であるのを発展途上国に対して今度は逆にそういうことを私どもが要求していることになりかねないのですが、私は何度も言いますように、ここで皆さんが根性を入れかえなければ繊維産業はもう――こういう発展途上国が今度は追い上げてくるのですから、しかもそれと引きかえといっては何ですが、日本は自由貿易でしかうまくいかないんです。全体の国の一つの方針として、日本はそれ以外に生命はないのですから。そこで皆さんに十分考えてもらいたいのですが、そういう点の反省と申しますか、心がまえについて寺田さん、それから組合の二人の方にお聞きしたいわけです。
  17. 寺田忠次

    寺田参考人 ただいま田中先生からお話ございましたことについてお答え申し上げますと、私どもが秩序ある輸入ということは、先ほど来先生のおっしゃるとおりでありまして、でき得ればとめていただきたいんだ、ところがそれができないから秩序ある輸入お願いしたい、しかも状況はこういったような状況でございますので、そういうことをお願いしたいというふうに申し上げておるわけでございます。  それからなお、昨年来輸入になりましたのは、普通、輸入でございますれば安いものを日本へ入れて、加工して売ってそのものが利益が生ずるというようなことであればあるいはいいかもわかりません。ところが、そういったようなことの原因よりも、多くありましたことは、大体私ども仄聞いたしますのに、為替の変動によりまして、それによっての利益を得るというようなことでございまして、輸入さえすればもうかるというような時代になっておったということを承っております。そういうことでございますので、ぜひともそういうことであってはいけない。もっと秩序ある輸入ということは、そういうことの含まれない、ほんとうの国のためにもなる輸入であってほしいということを申し上げているわけでございます。
  18. 井上甫

    井上参考人 ただいま御指摘がございました現在の繊維不況とこれからの構造改善の問題に関連いたしまして、企業体質自体に問題がありゃしないかという鋭い先生の御指摘、私もこれは非常に深い感銘を受けているわけでございますが、ただ問題点、後段にございますいわゆる発展途上国からの輸入が非常に増大しているという問題につきまして、私ども繊同盟の考え方を申し上げてみたいと思うのですが、これは私どもがかつてアメリカとの繊維交渉に対して強力に反対の主張を展開してきたことを思い浮かべてみますと、やはり日本からの輸出というものがアメリカ繊維労働者にどのような実害があるのか、つまり具体的にどういう被害、いわゆる失業という問題が起こっているのかどうかということについてはっきりさせるべきである、こういうことを強力に主張してまいったわけであります。したがいまして、もちろん私どもが考えておりますいわゆるオーダリーマーケッティングという問題は、そのような実際繊維で働いている労働者の置かれている現状ということを非常に中心にして考えているわけでございます。したがいまして、ただその場合に、いわゆる安売りあるいはダンピングというような事態があれば、これに対しましては労働組合の立場からも厳重に相手に対して申し入れをする必要がございますし、基本的には、私どもは、いわゆる先進国と発展途上国との関係におきまして、特に繊維の場合にはいわゆる国際分業の原則、つまりそういう歴史的な、あるいは今後のそういう産業の展開の事実ということは率直に認めますけれども、その前提にあるものは国際公正労働基準というものが守られるということである。つまり、いわゆる現在発展途上国からいろいろな品物が入ってくる場合に、そこでつくられてくる品物が、たとえば労働運動の自由も認めていない、しかもスウェッティングレーバーに依存していわゆる安いコストのものを売り込んでくる、こういうような形での輸入というものについては、これは私どもとしてもやはり敢然としてき然とした態度をとるべきである。そういう意味合いにおきまして、私どもは、労働組合の立場から国際公正労働基準というものが確立されていく、そういうようなことを前提とした政府ベースの話し合い、あるいは業者の話し合い、あるいは労働組合同士の話し合いということが特にこれからは重要である、こういう考え方のもとに対処していきたい、かように考えていることをこの際申し上げてみたいと思うわけであります。
  19. 小口賢三

    小口参考人 田中先生にお答えいたします。  反省の材料として私たちは、意見に述べましたように、まずどのような構造改善を進行しようとしても、第一点として、加工賃を適正にしない限り、繊維加工業、アパレル産業自体がみずから商品開発をするという力がない。そういう面ではメーカー、商社対繊維加工業及びアパレル産業との間の取引条件改善がこの法律の前提であるという考え方を一つとっております。  それからもう一つは、構造改善を進める過程で、低賃金構造を容赦なく利用して次々と再下請さらには家内工業へという形で実際流れておりますけれども、こういうような条件がそのまま放置されたのでは、融資対象そのものをとらえにくくなってしまう、こういうようなものをきちんとしなければいけないという点を述べたつもりでございます。  それから長期的な問題について、私たちは産業転換を繊維産業についてはある程度必要とするということは前提として認めております。これが反省の点でございます。  それから、秩序ある輸入というのはことばでごまかしておるのではないかという御説でございますけれども意見の中に述べましたように、やはりその国にはその国の国民の嗜好に合った衣装というものがあろうかと思います。生活様式もあります。そういう意味で、一定の国民の衣料をまかなうためにその国に必要な繊維産業というものは当然なくちゃならない。一方で構造改善政策を進めながら、構造改善政策全体が意味がなくなるような輸入の自由化というものは、それは自由貿易原則でも、現在のヨーロッパの資本主義国でも認められていないと思うのです。私たちが言うのは、自由貿易原則を何から何までいかぬと言っているのではなくて、私たち自身はそのような国内産業の破壊ということではなくて、現在の輸入があまりにも無秩序であるので、構造改善政策を進める上のタイムラグにおいて適正な輸入基準は設定する必要がある、こういう意見を持っておるわけでございます。
  20. 田中六助

    田中(六)委員 小口さんにもう一点ちょっとお聞きしたいのです。つまり産業転換の実施、こういうようなこととちょっと関連してなんですが、私ももちろん日本中小企業ほんとうに中堅企業になる――西ドイツあたりは戦争に負けたとたんに中小企業者が中堅企業に転換したが、御承知のように、日本中小企業者というのは世界で一番多い。これは輸出ということの関連でいろいろな問題があるのですけれども、それをできるだけ中堅企業にしたいとわれわれも思うわけです。そうすると、皆さんに非常に過酷なのですが、家族労働を中心とした生産構造だけでは自然と無理がきいて、自分の家でオールナイトで仕事をするとかいうことになりますと過剰生産になるという原因が一つあると私は思う。  それからもう一つは、不況時に、政府はもちろんそうですが、地方公共団体も一生懸命融資をしていくというようなことでかえって転廃業の促進ということを逆にチェックしていく、むしろ温存する。先ほども申しましたようにカンフル注射的になってぴんと立てるだけで、その後しばらくするとまただめになるというようなことですね。そういうところの配慮をどういうふうにして打ち破っていくかということがいつも頭に去来するのですが、そういう点について何か御意見がございますか。
  21. 小口賢三

    小口参考人 非常に大きい問題ですので、先生方のお知恵で十分に活用していただきたいところですが、ただ私が考えておりますのは、いずれにしましても、長期的に見て現在の繊維産業に関連している事業所数、雇用労働者数というのは、特に開発途上国との長期的な貿易関係を考えた場合に、ある時期を歴史的にとれば相対的に事業所数も雇用労働者数も減るだろう、減らざるを得ないんじゃないかというふうに歴史的には考えています。  ただ、ここで意見を述べましたように、それではこれだけの繊維産業の全体的な構造改善政策を提起しながら、実は先生が御指摘になっているような転換政策について非常に抽象的に逃げているわけです。私どもは日米繊維協定問題について産地の視察をしたときも、だめならだめで早くおまえはやめなさい、こういうことに変えなさいということを言ってください、生かさず殺さず、めしを食う時間もないほどやっても加工賃はたたかれっぱなし、これでは生きているということだけにすぎない、こういう状態については、国の先生方は政治の名において何とか方向を与えてくださいということを言われました。そういう意味では、今後この法律がきまった後に、中心的にはそれらの問題も、私が四項で述べましたように、国と地方自治体の責任でこれは考えるべきだ。そのときに異種間結合あるいはメーカーの系列支配がどんどんと入ってきますと、それ自身の有機的な結合体としての産地を崩壊することになって、結果的に農業が出かせぎ農民をどんどん都市に流出させたと同じように、崩壊した産地の労働力は、また家族は家ごとどこかの土地へ出なければ暮らしていけない、こういうことになる危険性というものをたいへん持っているわけです。  一方では自民党も国土開発計画を立てています。そういう面では、現実に持っている産地自身の機能というものを生かしながら、それ自身を相対的に国の産業構造全体の中で位置づける政策というのは、これは繊維政策だけではなしにもつと観点を変えた、国際的なそれこそ分業的に有効な業種に転換する。これらの問題が総合的に考えられなければならないというふうに思っております。
  22. 田中六助

    田中(六)委員 小口さんの説、非常にごもっともだと思います。政府が審議会という隠れみののもとでいろいろなことをやっていくんですが、この審議会が非常にくせものであって、もう少しこの審議会のメンバーとか審議会のあり方についてメスを入れなければ、繊維問題も解決しない点もあるというふうに私どもも反省しております。時間がございませんので、私はあと一点お聞きします。  これは寺田さんと外海さんと青田さんにお聞きしたいのですが、いま小口さんが言われたように加工賃の問題にからむのですけれども、つくっておるところから、たとえばデパートとかあるいはスーパーが入れるので、そういう店頭に売っているものは、出すときのもう数倍の品物になっているわけですね。これにメスを入れないと、つまり流通機構の整備というふうなことばにはなるでしょうが、それだけではこの問題は解決しないというふうに思うのです。この解決のしかたについての知恵を、まあ一部でいいですが、皆さんのほうは専門家ですから、この点を三人の方それぞれお答え願いたいと思います。
  23. 寺田忠次

    寺田参考人 ただいま御指摘いただきましたものをたとえばワイシャツにとってみますと、ワイシャツの生地が現在で、さらしまで入れまして一ヤード大体百五十円見当だろう。それが二ヤード半ないし三ヤード、大きな人では三ヤードなきゃならぬ。そうすると四百五十円。縫製賃が幾らかかりますか、大体六、七百円のものだろうと思います。六百円かかりましても千五十円ということになりまして、これがデパートで売っておりますのは三千円見当ということになります。これはポプリンのものでございますが、そういったようなことの御指摘だろう、こう考えます。  それで、私どもはつとにこれは考えておりまして、私どもの織るもの、織りの工賃はわずかに一ヤード三十円か幾らのものであって、その間に実際に元手のかかりましたのは千五十円見当、それを三千円以上に売るということのそのあとの二千円はどこがもうけるの、だろうかというふうに考えているわけでございますが、これは何としても今後私どもとしては――私どもの力だけではいきません。どうか国のお力によりましてもこういったことをよく検討していただきまして、適正な利潤を私どもにも与えていただくというようなことにお願いしなきゃいかぬじゃないかということを寄り寄り話をし合っているところでございます。どうかよろしくお願いします。
  24. 青田竜世

    青田参考人 ただいま寺田参考人がワイシャツの例をとられましたが、現実に業界の中でワイシャツをつくっておる者が非常に多いわれわれの業界でございますが、ちょっと数字が間違っておるかと思います。現在、百貨店の店頭で売られておりまする一般の定番品というのが大体二千五百円です。これは例の価格凍結の指示もございまして、それで全国どこの百貨店でも一応二千五百円だと思います。これは八OT/Cの六五%ポリエステル・綿三五%という分でございますが、これの原料生地が一着当たり大体六百円ぐらい、それから加工賃とその包装費あるいは付属のボタン代等を含めまして約六百円、千二百円から千二百五十円ぐらいが適正ないわゆる生産コストだと思います。それが大体二千五百円ということで約倍になるわけなんですが、その中にメーカーサイドの適正なマージン等がございますが、百貨店への納入価格が大体千六百円というふうなことでございまして、いわゆる上代価格の六六ないし七〇%というのが大体の現状でございます。それで問題は、ワイシャツの場合も含めまして衣料全般にわたりまして最近特に過剰包装も一つの大きな問題があると思います。  それからもう一つは、百貨店等での販売をも通しました流通段階でのコストが比較的多くかかり過ぎるのじゃなかろうか。この辺のところを全体的なムードとして国民の考え方としてもう少し簡素化していく。それと同時に、今度の新しい構造改善の中に盛られておりますいわゆる取引改善資金というのがございますが、これを活用することによって生産から消費までの時間的なギャップを何とか安い、比較的リーズナブルな金利による資金で運用していくというふうなことの問題をある程度やりますと、非常に理想的な形にまでこれを圧縮することはできないまでも、現在よりは相当程度改善されるのではなかろうかというようなことも含めまして、新しい構造改善期待をしておるわけでございます。
  25. 外海忠吉

    外海参考人 お答えいたします。  いまの御提案の問題は、私どもは実は長い間その問題で悩みを持っておりますし、かつ、どういうふうな切り抜け対策あるいは改善策をとったらいいかということを長らく考えてまいりました。今日までそれについての具体的な効果があらわれてないという、事ほどさように非常にむずかしいことなんでございますが、御承知のように、いまの取引状態と申しますのは、大体先ほどのお話のようにデパートで百円で売られているものならば、われわれ製造の立場から離れていく値段は四十とか四十五とか、あるいはひどいものは三十八とかいうふうなことが一般の通例の観念でございます。したがって、製造が受け渡たす値段というのは、いわゆることばとしては四掛けとかあるいは四・五掛けとかいうふうなことばがあるところから見ましても、大体そのくらいな配分の比率になっておるように思います。したがって、この四掛けとか四・五掛けとかということは、四十五の一〇%ということになりますと四・五ということになりますし、それから六十の一〇%でありますと六%ということであります。その辺にも、そのあとの流通段階での、いわゆることばは悪いですが搾取と申しますか、そういうことのために長らくの間われわれの業界はそういう立場に立たされておったような次第でございます。  それでは改善策はどんなことが考えられるかということでございますが、これは非常にむずかしいのですが、いま新しい法案で出てまいりました新しい特繊法の一部改正等の中にも、自己の力で商売していけるような形、つまり商品開発でありますとかあるいは技術開発、そういうことがいままで資金的な面でも非常に弱かった。それが新しい法案では、そのことについての少なくともチャンスがあるという意味では私どもは非常に大きな期待をかけております。  業界としましては、純粋の加工賃ベースでやっている方、あるいは製品を売っていくという形でやっておられる方、これは二通りございますが、特に加工賃ベースでやっておるという立場の場合には、非常により一そう弱い立場に立たされている。これについての強化等も、やはり業者の、企業体の体質自身が改善されないとこのことは非常にむずかしいことかと思います。そういう点で、いまの新しい法律が出て、われわれもそのことについてよく勉強し、かつそれに向かって最もいい方法を考えて、この法案の吸収あるいは利用、そういうことについて考えていくことが現在考えられる一番望ましい解決案ではなかろうかと思います。
  26. 田中六助

    田中(六)委員 以上で質問を終わりますが、結局繊維品をつくるときは安くて、それが店頭にあらわれたら数倍になっておるというこの矛盾、これは私どもももちろん責任がありますが、いま物価高のおりからこういう点をぜひ直すということ、それからそれだけの金が外に出るなら内で賃金を払うのに足したらいいというきわめて単純な論理が成り立つわけでございますので、この法案にはそういうことを一応盛り込んでおりますけれども、しかし要は自立するという精神がすべてを解決すると思います。したがって、そういう点、たよるということよりもまず自立するということ、それからこういう法案が外側からコンクリートになっていくという方法が一番いいのじゃないかと思いますので、それは私がここで言うように簡単なものではないでしょうけれども、そういう点、しっかりした気持ちでいかれることを望んで、私の質問を終わります。
  27. 濱野清吾

    濱野委員長 加藤清二君。
  28. 加藤清二

    加藤(清二)委員 物みなすべてが値上がりというときに、事繊維加工段階だけは工賃が半分に減ったり三分の一になったり、ひどいところは四分の一に削られている。まことにふかしぎきわまる状況でございます。そのしわ寄せをもろにかぶって、何とか緊急カンフル注射をしていただかないと立ち行かないという業界の代表の皆さん方ばかりでございます。ほんとうに御苦労を感謝いたしておると同時に、われわれ政治家の力の弱さをしみじみ感じているきのうきょうでございます。わけても寺田さんは、自分の仕事を放棄して織布業界のために六十有余年の御努力をいただきました。国士的風格でもって業界指導していただきました。感謝にたえないところでございまするが、そのお方たちに報いるに工賃の切り下げのみならず、操短、倒産、これでは死んでも死に切れない、泣いても泣き切れないという心境ではないかと存じ上げます。ほんとうにこの窮境を一日も早く打開しなければならぬと存じております。  いまもワイシャツが二倍、三倍という話ですが、二倍、三倍は序の口ですね。糸値は二十年前と同じ値段ですから、ちっとも上がっていないのですから。もう私の調べたところによりますと、白のあのおむつ、これは幾ら総需要を抑制したって必要なものですが、おむつは五倍になっておるのですね。途中にあまり流通段階を通らないところのダルマじるしの縫い糸、これは三十四倍にたっているのです。それから皆さんがお使いになりますミシン糸、これはちょっと詳しく申し上げてみましょう。東洋紡の綿で、綿一〇〇%、⑧じるし、これは二百メートル一個になっておりますね。これが大体二百五、六円いたしております。これは一メートル一円でございます。これは六十番の双でございますけれども、一ポンドの長さは二千三百メートル。そこでこれをポンド換算をいたしますと、一ポンドで二万三千五百七十五円になる。これは一コリ四百ポンドにしますと九百四十三万円になります。そういう計算です。間違いがあったら御指摘願いたい。これは私は自分だけではいけないからというんで業界の方々にもお助け願い、学者グループの方々にも計算をしていただいてつくり上げたデータでございますが、これでいきますと糸値の四十七倍になりますね。これは一体どういうことだろうか。どこがそんなにもうけるだろうか。片や工賃が切り下げられて出血生産だというならば、消費者がそれだけ安いものを入手しておるというならまだ慰められる。付加価値をつけた、お客さんが安くてよいものだといって喜んでいただければ、まだ慰められる。しかし、小売り市場へ出たとたんに何倍となれば、これは消費者は恩恵に浴していない、加工者も恩恵に浴していないということになる。一番ひどいのは小学校の子供をいじめていることです。練習用運針布、これは何と七十五倍になっています。糸値換算からいきますと。ひどいものです。子供をいじめるのですから、罪もない子供を。こういうことが行なわれていては、これは構造改善を何度したって、消費者も得しませんし、加工業者も潤うということにはならない。まさに諸悪の根源は商社だと名言を吐いた通産省の方がいらっしゃいますが、事繊維関係につきましても諸悪の根源がそこにある。内地の小売り市場でたいへん高く売れればこそ、輸入輸入で、輸入がオール消費の三割もふえてくる。コリ数にして総需要が四百万コリ、去年の輸入は一年間で百万コリなんです。まさに先ほど寺田さんが三〇%輸入とおっしゃられましたが、どんぴしゃりです。三〇%の余を輸入しているという国は、事衣料に関する限り、日本が最たるものではないかと思われます。アメリカは三%でインジュリーありとして制限をしたのです。三%です。一週間分から十日分で制限をしたのです。当然それを受け入れた日本は、返す刀でそれを行なってしかるべきだと思うのです。  ところで、それはまた別の機会に譲るとしまして、寺田さんに承りたいのです。金融の関係についてお述べになりました。そこでお尋ねいたしますが、手形サイトは、コットンの場合は四十五日というのが常識でございます。取引関係は。しかし、皆さんが糸を買いなさるときの支払い手形は幾日で、今度、織り加工をして売るときいただくもらい手形は一体何日になっていますか。
  29. 寺田忠次

    寺田参考人 お答えいたします。  ただいま加藤先生から言われました四十五日ということは、綿糸代金を支払うサイトが通常きめられておりますのは四十五日です。それから製品を売りました場合には、従来は大体六十日ということでございましたが、それが八十日になり、九十日になり、長いものは百二十日ぐらいになってきたというのが現状でございます。しかも、その四十五日の綿糸代の支払いには、金利を支払うということが要望せられております。この金利におきましても、たいへんな高い金利でございまして、そういったようなことの要望をせられております。私どもは、綿布を売りました時分には、いま金利をいただくということができない状態であります。そういったようなことにつきましても、いろいろいま取引改善問題で話し合いはしておりますが、遅々として進まないというのが現状でございます。
  30. 加藤清二

    加藤(清二)委員 六十日であったものが九十日になり百二十日になったとおっしゃられますが、わが党の手元へ陳情なさっていらっしゃる方がたくさんございます。百五十日をこえちゃっている。そうなりますと、支払い手形は六十日である、もらい手形がかりに百五十日であるとすると、七十日の差がある。二カ月余の差がある。その分をてまえでまかなわなければならない、しかも割引料は自分持ちであるとなりますと、ここに問題は、二カ月の余の資金繰りをこの際自分でつけなければならないという問題と、いわゆる下請代金支払遅延等防止法、これは六十日と制限がございます。それ以上の分は振り出し人で割引料を払わなければならぬということになっておる。ここに法律違反の疑いがある。それは一体だれがやっているかといったら、皆さんが好んでやっていらっしゃるのではない。商社が強要をしておるのです。泣く泣く、たたかれながらもその手にすがっていかなければ生きていかれないという、それが現状です。  そこで、もしそういうサイトのあやまちを加工業者の中でみずから好んでやっているというお方があったらお答え願いたい。商社が強要しているという私の言い分が間違いでなければお答えいただく必要はありません。間違いであるとおっしゃる人があったらお答え願いたい。――委員長、ないようでございます。  もう一つ商社の横暴を申し上げます。  韓国糸がずいぶんたくさん入ります。パキスタン糸も入ります。皆さんは、よい製品をつくろうと思って内地の高級糸を御注文になる。商社はそれを約定した。しかし、いよいよ品物を渡す段階になったら、韓国糸とかえてくれという要求なんです。例をあげます。年明けて、丸紅、大阪豊島など、松、櫻井約定を紫亀、金鳥などに振りかえを要求してきた。櫻井約定を韓国糸に五千円ざやで交換してくれとのことで云々とあります。この機屋さんは二百七十四台を持った中堅でございます。江戸のかたきを長崎でとられますから、あえて名前は差し控えます。しかし、これは発表してもよろしいという許可を得て私は申し上げているのでございます。昨年十二月ごろより、これは名前は控えてくれということですから商社の名前は控えます。松、櫻井約定を、やはり紫亀、大鳥などに振りかえ、緯糸分は韓国糸に振りかえてくれとの話があったが、以前、糸質で問題が多かったため、これだけはごめんしてくれと断わった。そうしたら江戸のかたきを長崎でとられた。そのとられ方が、手形サイトでたいへんな長期なものを要求されたと、こういうのです。例をいま私はこれだけ持っている。ここだけで六十八件そういうものがございます。全部陳情でございます。これも商社の横暴だと思います。こういうことが、ほかの例を聞こうとは思いませんが、織布部門、第二次布帛加工部門メリヤス部門でありますかありませんか、それだけでけっこうです。
  31. 寺田忠次

    寺田参考人 織布部門におきましては間々あるわけでございます。
  32. 青田竜世

    青田参考人 縫製関係におきましてもそれに似たようなことはございます。
  33. 外海忠吉

    外海参考人 同様でございます。
  34. 加藤清二

    加藤(清二)委員 この対策についてはあとでするといたしまして、次に、労働関係のほうでお尋ねしたいと思います。  加工賃問題で適正化を主張されました。加工賃の実態についてわれわれは調査不十分でわからない点がございます。したがって、加工賃の実態について知っていらっしゃることをピックアップして一、二お教え願いたいと存じます。これは小口さんと井上さんにお願いいたします。
  35. 小口賢三

    小口参考人 ことしの春闘で具体的にある産地と折衝したときに聞いた実例を申し上げますが、ナイロンのタフタが原価計算しますと二千三百十五円を要する原価計算の結果が出たのに対して、実際に取引されています内容を見ますと、昨年十二月度が千三百円、四-六月が九百円、七月から九月は七百五十円という状態です。これは四十四インチ幅五十ヤードのナイロンタフタです。それから同じくあや織りで見ますと三十六インチ五十三メートルの製品について原価計算は三千四百四十五円という実態に対して、十二月度が二千二百円から二千九百円、四-六月は何と千六百円です。しかも原価計算の基礎になっております賃金が――ほとんど加工賃の大半は賃金でございますので、賃金を紹介いたしますと社長さんの賃金が十六万円、専務さんが十二万円、保全工を中心とする男子の賃金が約八万円から八万五千円、織り工さんの賃金が六万円という状態で、検反は五万円、こういう水準を基礎にしてなおかついま申し上げたような数字になっておるわけです。ここ下は最低賃金はすでにことしの春闘で私どもは五万三千円という賃金になっておる実態に対して、現在まだ三万七千円という数字でございます。こういう実態を見ますと、これはもうお金をこの法律によって融資をしてくれる、確かに二分六厘という融資で、考えてみればたいへんに安いお金を貸しているわけですが、現在すでに織機で構革織機を入れておってこの借金がある、もう担保に出すものはない、こういう状態でございます。したがって、先ほど申し上げましたように、加工賃が適正でない限り、また寺田さんが先ほどお述べになりましたように、せめて自分たちの自主的努力に対して適正利潤を保証する条件をつくってほしい。こういう条件が用意されない限り、私は構造改善政策というのは、単に金を貸せるといっても、それは言ってみれば、単に国の善意だけあっても事業主としては借りることはむずかしいのではないかというふうに考えます。
  36. 井上甫

    井上参考人 いまの加藤先生の御質問に対して、いま手元に資料がございませんので的確にお答えできませんけれども、大体私どもが聞いているところによりますと、北陸三県の絹人繊あるいは染色関係につきましては、昨年度より四割減ぐらいになっているのじゃなかろうかという程度でございます。
  37. 加藤清二

    加藤(清二)委員 突然でございますからそれは御無理だと思いますから、あとで資料がございましたら書類にしてお教え願いたいと存じます。  もう一点だけ最後に、付加価値生産の向上の問題と異種間結合、このことについて小口さんはこの書類を提出していただきましたし、それから先ほどの参考公述にもございましたが、この付加価値生産の向上について、あなたは昭和四十二年ごろから何度も本委員会で公述なさっていらっしゃいます。それと今度の異種間結合についての関係を御説明願えればしあわせでございます。
  38. 小口賢三

    小口参考人 業者の方々は平生長いこと御商売をやっていらっしゃるので、どういう製品をつくったらもうかるかということは業者自身が知っていらっしゃると私たちは思っています。しかし実態は、ここの構造改善対策では、従来、糸屋は糸屋で糸をつくっておるきりで自分の製品がどこへ行っているかわからない、染め屋は染め屋でそれぞれ工程が分断して別々の企業になっているから、お互いにある程度連絡をとり合いながら異種間で結合して付加価値生産性に努力したらどうか、こうおっしゃっていますけれども、私ども繊維産業ほど、ある面で系列支配が徹底している産業は少ないと思っておるわけです。  それで、最初に申し上げましたように、この法律がとられています歴史的条件というのは、何といいましても、かつて戦前戦後輸出産業の花形であった繊維産業が、国内の消費を中心にしながら消費者指向型の知識集約産業に転換をしたらどうかというのが前提になっています。ことばはそういうことになっていますが、別のことばでいえば、大企業はもうじゃんじゃんともうかるところで、繊維加工業とアパレル産業にどんどんと系列支配をして、徹底的にコストを下げて競争せよ――せよとはいわないまでも、そういうことになるのではないかと思っておるわけです。そういう意味で、本来業者自身がどういう製品をおつくりになったら、またどこからどういう糸をお仕入れになったら、どういう生地を使ったらもうかるか、またコストは安く下げられるかというようなことは、行政指導でおとられにならなくても業者自身は私は知っていると思うのです。そういう面では異種間結合といわなくても、それ自身は日常の営業活動でとられているわけです。私たちが一貫して労働組合の立場で主張したいのは、あまりにも原糸メーカーと商社及びデパートが不当利潤をもうけ過ぎておって、しかも日本繊維産業の構造は原糸のメーカーが独占で、それから消費者のほうのデパート、スーパーがまたたいへんな資本力を持っておって、中間の加工業とアパレル産業は零細の資本で、市場について自分たちが自分たちのラベルでものを売る機能を持っていないわけです。こういう状態で異種間結合が行なわれればどういうことになるか、私は経済学については専門でありませんけれども、そういう立場から考えて、これは系列支配の論理が貫徹するのではないか、こうおそれているわけでございます。ですから、何よりも私たちはいろいろなお金を貸します、異種間結合します、めんどう見ます、こう言う前に、人並みの努力をして一生懸命自分たちが自分たちの糸をどのくらいのよりにして、どういう味の織物をやったらいいかというのは寺田さんが一番、繊維局長さんよりか知っていらっしゃる、またどういう編み立ての製品を編んだらどういう風合いのメリヤスができるかというのは、外海さんたちその他業界の方が知っていらっしゃるわけです。問題は、これらの業界の方々がほんとうに自分たちの長年の努力によって積み上げた技術製品が、正当な価格でこの市場で取引されることこそが構造改善の一番中心の課題ではないか。また、そのような努力をする前提として輸入製品の規制についてはある程度チェックしながらそういう時間をかす。そして極東三国と日本繊維産業との間の一定の時間的な、また製品間競合を避けるというようなことは必要かと思いますが、現状のような状態ですでにこの法案提出され、審議されております過程で、昭和五十三年の目標である輸入数量がすでに昨年度で達成されてしまった、こういう実態では何を議論しても、おそらく加工業者やアパレル産業の人たちは生かさず殺さずで仕事をやめるわけにもいかないという状態での営業を続けておられる実情が直らない限りはいけないのではないかということを特に強く感じて、先ほど意見を述べたような次第です。
  39. 濱野清吾

    濱野委員長 佐野進君。
  40. 佐野進

    ○佐野(進)委員 参考人の皆さんにはたいへん御苦労さまです。私どもこの法案が提案されましてから、すでに長時間にわたって審議を続けてきておりまするし、私自身も二回にわたって一時間以上質問をし、政府当局の考え方について明らかにしてきた次第であります。したがって、私どもはこの法案の持つ欠陥、そして必要性、そしてまたこの法案と同時に審議しなければならない当面の緊急対策等々については、十分とまではいきませんけれども、大体の審議を続けてきているつもりであります。したがって、そういうような経過の中できょう皆さん方においでを願い、御意見をお伺いしておるわけでございまして、その意見の中から幾つかの点について質問をしてみたいと思うのでありますが、与えられた時間が十五分間でございますので、幾つかの点を質問するというだけの余裕もございませんので、重点的にしぼりまして各参考人から御見解を承りたいと思うのであります。  まず第一に、当面の緊急対策であります。これまた何回にもわたりまして当面の緊急対策について各方面から検討を続けまして、何をなすべきかということについていろいろな確約も政府側からとっておるわけであります。しかし、私ども皆さま方業界の内情を調査すればするほど、お話を聞けば聞くほど、深刻な状況にあるわけであります。したがって、その深刻な状況にある中で、一体何をなすべきかということについてわれわれ考えたとき、結局金融であり、償還の繰り延べであるということ以外にないような気がするわけであります。それでは困るわけでありまして、今日の状況の中において何をなすべきかということについて、金融と金融の償還だけでこれが乗り切れるというほどなまやさしい状況ではない、何かそこにプラスしなければならぬものがあるのではないか、こういうように考えるわけでございまするが、この点につきましては青田さん、それから外海さん、それから寺田さんにあとでひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。時間がございませんから質問点を一括して申し上げます。  次に、私は当面する繊維業界緊急対策とともに、長期的にわたって繊維業界が、特に中小企業が生き残るために目下構造改善の審議もいたしておるわけでございまするが、これについては、法案の中で明らかにされていないけれども、どうしてもこの問題を克服しなければならない重要な問題があると審議を通じてはっきりいたしたわけであります。それは要すれば、皆さん方の表現をもってすれば、輸入制限ということばをいとも気弱に表現されておるわけでありまするが、このことに対する具体的な対策を立てざる限り、繊維業界がたとえ構造改善を完遂したとしても、業界自体の存立の基盤は守り切れないと思う気がするわけであります。したがって、この面につきまして私は幾つかの点について指摘を続けてきたわけでありまするが、一つには、商社活動、大企業活動の利益追求のために他を顧みないその海外進出と海外政策、この問題について参考人各位は、特に産業界の方々は、これに対して積極的なる対策をお考えになる必要があるのじゃないか。もう少し勇気を持って、もう少しきびしい態度で、これらいわゆる無方針な資本力、技術力、そして経済力といいますか、政治力といいますか、そういうものを背景にして海外に進出し、その進出したプラントでありますとか、あるいはその他のものを利用して逆輸入させる、こういう国内業界における競合する部面に対してきびしい対策をとらなければならないと思うのでありまするが、お考えをお伺いしたいと思うのです。  特に私はこの面については事業分野、いわゆる大企業の持つ事業の分野と皆さま方の中における小規模中小企業の持つ事業分野とを明確にした中において対応すべきだ、考える余地があると思うのでございまするが、これはひとつ御見解をお示しいただいてお教えを願いたいと思うのであります。  第三点目は、私は、今日の業界の置かれている立場繊維業界全体の置かれている立場をつぶさに検討する上に、いま申し上げましたような一定の範囲の中において皆さまの業界が存立し得る条件確保するために政府の力を最大限に利用されることが必要ではないか。その一つとして構造改善事業もあるのでありまするけれども構造改善事業の持つ幅は限定されておるわけです。これは審議を通じて明らかになったわけです。したがって、限定されておる範囲の幅を広げるために、政府の持つ権限の政省令の決定ないし行政指導皆さま方立場において一〇〇%活用する措置を講ずべきではないか。いわゆる大企業偏重といわれるような政治姿勢でなくして、大企業中小企業もともに存立をはかることのできるような条件確保するその行政指導を強力に政府に要請する必要があると思うのでありまするが、これは青田さん、外海さん、寺田さんにお伺いをいたしたいと思うのであります。  時間がございませんからもう一点、これは井上さんと小口さんにお尋ねをしたいと思うのであります。  いま最後加藤さんから質問がなされたわけでありまするけれども、私どもがこの法案を審議する中で最も心配をいたしました問題は、いわゆる異業種間におけるところの問題、さらにそれの発展した形の中においての系列化、さらに系列化から導き出されるところの小規模零細企業の切り捨て、ないしはそれに対する一つの側面としての事業転換、それが発展して労働者に対して、あるいは小規模零細企業経営者を含む労働者に対して、きわめてきびしい条件がこの構造改善事業をそのまま遂行する場合においては発生してくる危険性を私どもは指摘してきたわけでございまするけれども、この点に関しましての歯どめをどのようにつけたらよいとお考えになっておられるか。  以上の点について御質問を申し上げます。
  41. 寺田忠次

    寺田参考人 お答えを申し上げます。  第一番目の金融問題でございますが、この問題につきましては、実は金融にも操短の金融がございます。先ほど申し上げた操短の金融がございますし、それからそのためにいま労務者に対して操短の資金を払わなければならない。それからもう製品が出ていきませんので、既往の手形に対する支払い、これも当然支払わなければなりませんしいたしますので、そういったことのためにぜひ緊急にお願いいたしたい。しかも、いままで政府からお借りしたものにつきましては御猶予をお願いしたいということでございます。  次の第二番目の輸入の問題でございます。大企業の海外進出でございますが、こういったようなことにつきまして、あるいは逆輸入の心配はないか、あるいは事業分野中小企業もその中へ入れていただく必要があるのじゃないかというようなお話でございまして、当然そういったことはあり得ることでございまして、やってもらわなければならないというように考えております。  ことにこの輸入の問題につきましては、実はこれは輸入契約がありました時分に、これを必ず契約したときにチェックするというようなことにしていただきますれば、先ほど申し上げましたような計画的な輸入と申しますか、そういったようなこともでき得る可能性があるではないか、かように考えるわけです。  次に、三番目の大企業中小企業がともに繁栄するようなことにするための行政指導はどうしてもらえばいいかということでございますが、とにかくこういったようなことにつきまして、ともに繁栄のでき得るような、おのおの生産分野を確立するとか、いろんなことがございましょうと思います。そういったことにつきまして行政の御指導お願いするということが最も大切なことであろう、かように考えます。
  42. 青田竜世

    青田参考人 第一点の金融以外に何かいい方法があろうかという御質問だと思います。さしあたりいろんな問題があると思いますが、現在の困っておる状態を即効的に何らかの形で救済するということになれば、やはり金融でなかろうか。ただしかし、在来の方式だけの、中小企業金融を年度間の予算を先取りするというふうな形だけではもの足らないのではなかろうか。もう少し方法を、特に今回の場合はたいへん大きな滞貨をかかえているということも事実でございますが、全般的な金融の引き締めによりましてノーマルな資金需要をも圧縮されているというふうなことも考え合わせまして、商品流通のための短期融資というふうなものについても特別の御配慮を願うことも一案ではなかろうかと考えます。  それからもう一つは税制面でございますが、各企業とも一応本年度分の利潤に対する法人税等の予定納税の時期に差しかかっておると思いますが、こういったものを一時繰り延べしていただくというふうな税制措置もあるいは幾らかの効果があるのではなかろうかというふうに考えます。  第二点の適正な輸入秩序を確立するために海外協業、海外進出について規制をすべきではなかろうかという佐野先生の御意見につきましては、まことに御説ごもっともと考える次第でございまして、ぜひそういった形をとっていただくことをお願いしたいと思います。  第三点は、この法案に基づく省政令の問題、細部の諸点につきまして適切な行政指導があるように政府当局に要請すべきではなかろうかということでございまして、われわれ業界団体といたしましても、特に衣料縫製につきましては今回が構造改善の初めてのケースでございますので、政府原局に対しまして緊密に連携をとりまして、われわれの意図するところも十分にひとつお願い申し上げるというふうな体制をとっております。法案ができ上がりまするならば、ぜひそういった形でお説のように行動したいということでやっておりますので、御報告申し上げます。
  43. 外海忠吉

    外海参考人 お答え申し上げます。  第一点の融資関係でございますが、四-六の緊急融資については、特に私ども業界としてはカンフル的な意味での役目を期待いたしております。決してこれは抜本的な意味での解決策ではなかろうと思いますが、しかし、先ほど申しましたように、死んでからでは実は企業体はなくなってしまいますので、そういう意味での緊急対策をひとつぜひこの際お願いいたしたいと思いますし、また業界から希望しておりますような、伝え聞くところによりますと、金額もあまり期待できないようなうわさも間々聞きますので、その辺のところもひとつ業界実情に合わせて特別な御配慮お願いいたしたいと思います。  それから大きな企業体の海外進出の問題、これは非常にむずかしい問題でございますが、私ども国内から見ますと、これははね返ってくる形が困りますので、そういう意味ではこの輸入の問題について全般的に、大きな企業体の海外進出部隊からのはね返りも含めて、一般的な輸入も考え合わせて――例のわれわれが対米繊維の規制のときに相手方に非常に強く要望しましたインジュリーの条件等、最近のジュネーブの会議等にも反映しておりますが、すべてやはり話し合いということが前提になるように思います。そういう意味では、私たちの一方的な輸入ストップとか、そういうことは考えておりませんので、先ほどの秩序あるということばの範囲でございますが、これは常識的に考えてやはり七、八%から一〇%ぐらいが第一段階ではなかろうかと思います。各企業別で非常に差はございますが、平均してその程度のところでしばらくやって、だんだん国際分業の進展に伴ってその数字が品目によって伸びていく、これはいたし方ないと思いますが、業界のほうもそれについては多少の時間があればやはり対応していけますし、また、現在御審議中の法案等の力によってこれも切り抜けていくのじゃなかろうか。要は、むちゃな輸入ということさえなければわれわれの業界としてはそう困らないでやっていけるのではないかと思います。  それから、政府にもう少しいろいろな政策、対策を要望したほうがいいのじゃないか、すべきじゃないかという御意見、これも非常にごもっともな御意見で、私ども実はいままで多少遠慮がちであったのかもしれぬとみずから反省いたしておりますが、要は、やはり私ども商売しておるわけでございますから、何が困るかということになりますと、取引が不当である、取引が正常でない、先ほど小口さんからのお話の中にもございましたが、取引が正常でないということが困るわけでございます。ということは、加工賃にしましても正常な加工賃であればそれでいいわけであります。それが正常でなかったり、あるいは取引条件が非常に長期な手形である、先ほどの下請代金の支払いの原則から考えましても、六十日以上のものは、かりに定められた金利は絶対に必要なのだと支払い者側に義務づけられておりましたら、おそらくこういうふうなむちゃくちゃなことはなかったかと思います。綿紡績は依然として四十五日利息付という条件で売りさばいておりますが、このことがわれわれにどうしてもできない、前からやろうと思ってもできなかった、この辺のところをひとつささえていただくようなことがもしお考え願えれば、われわれの業界としてはそのことだけでも大いに取引改善に役に立つのじゃなかろうかと思います。
  44. 井上甫

    井上参考人 私は御質問の第二番目と四番目の問題につきまして、具体的にごく簡略に申し上げたいと思うわけでありますが、先生御指摘のございました特に輸入制限と海外進出企業との関係でございますけれども、先ほど申し上げましたように、やはりこの海外進出企業につきましては、現実に投資は自由であるけれども、単なる安い労働力を求めて進出するという安易な態度は絶対規制すべきでありますので、はっきりチェックする機能を持たした機関の設置ということを特に提言したいと思うわけでございます。  それから、もちろん労働組合の立場から、お互いに国際連帯ということが非常に重要でございます。幸い、私ども現在全繊同盟を中心といたしまして、アジアの繊維の組織がございます。韓国、台湾、香港、フィリピン、インドネシア、シンガポール、インド、パキスタン、バングラデシュ、それぞれ繊維の組織がございますので、いままでもやっておるわけでございますけれども、十分情報を交換しつつ、現在何が一番問題なのか、また同時にわれわれ労働者として一体何をなすべきなのか、こういうことも、過般の日米繊維交渉等の体験を十分考えながら、今後とも連帯を強める中で問題を解決していきたい、こういう具体的な方針を現在展開しつつございます。  それから最後の御質問は非常に重要な問題でございますし、私ども労働組合といたしましてもこれは一番問題になる点でございます。これもただ審議会を活用するとか、あるいは労使の話し合いというような従前のような考え方では、これはどうにもならない。もう私ども何べんも構造改善とか、あるいは構造改革とか、いろいろな体験をしてきておるのですけれども、いつも同じような繰り返しに終わっている。今度こそは今度こそはというような、みんな労使ともに気がまえを持っているのですが、結果的にはそれが非常にあいまいな形になってしまう、竜頭蛇尾になってしまう危険性がございます。したがいまして、私ども特に労働組合の立場からは、現在私ども中央におきましては、日本繊維産業会議というのがございます。これはいわゆる大手と中小とに分けて会議が開催されておりますし、地方段階におきましては、各県支部を中心といたしました労使の懇談会がございますので、こういうような場を活用しつつ、具体的に経営参加という問題についてもっとこの際明確にしていきたい。そしてこのような事態を二度と起こさぬような意味合いで、労働者の発言を文字どおり強める、こういう強い参加体制というものをとることによりまして、できるだけそのような波及して起こってくる、あるいは懸念される弊害を除去したい、こういう決意で対処したいというように考えておりますので、私ども現在の考え方について一端を申し上げる次第でございます。
  45. 小口賢三

    小口参考人 佐野先生の最後の御質問にお答えいたします。  系列化の問題と零細企業切り捨てと業種転換問題についての御質問ですが、系列化の問題は、現在の日本繊維産業のように各工程間でそれぞれ独立企業として存在しているのを一つの企業で関連的に幾つかの点を一貫生産するということはむずかしいと思います。また国自身から考えてみて、各工程間でやっていることが、国全体として、各設備の稼働率を高めて投資効率を高めているというような点もあります。また、製品の変化に対して対応するという適応力を持っているという点も、これは長所だと思うわけであります。問題は、そういう面での系列化を全部なくせというふうに私どもは考えないで、業者の方々も御指摘になり、私どもも主張しておりますように、加工賃を適正化するという点が系列化政策に対する一番重要な柱だと考えておるわけです。先ほどそのための具体的な施策として、文書には書いてありませんでしたけれども、ここで述べました中で強調しましたように、第一に取引改善委員会の中で、私ども加工賃の調査を政府の行政を通してやってもらいたい。同時にこれを公表してもらいたい。なぜかといいますと、実際に加工賃がこれだけだから何ぼ値上げしてもらいたいといっても、業者の方々はそれを押し通す力がないわけです。業界も弱いし、また過当競争もありまして、その力がない。したがって、これをカバーする方法は、農産物の生産費調査と同じように、私どもは、通産省がその行政機関を通して代表的な商品について各工程間で加工賃調査をしてほしい。それを公表する。それから協同組合法による団体交渉機能というようなものも、それを基礎にした形でもう少し位置づけてほしい。さらには、これらの問題がととのわなかった場合に、私は、取引改善委員会というものが調整機能を持って、これについて適正な加工利潤の保障をするような措置をとるようなことを行政指導で強化したらどうか、これが系列化に対する一つの提案でございます。  それから零細企業切り捨て問題というのは、実は今後とも多品種少量生産になってまいりますと、むしろむずかしいのは、中堅企業で一定の大量生産をやっているところ自体がなかなか経営がむずかしくて、非常に量産品種と多品種少量生産をやるところと二極分解をしてくるのではないかという点をおそれておるわけです。そういう意味で私どもは、その二極分解する仕組みは、低賃金構造というものを利用することでは結局構造改善の趣旨に沿わないので、法定最低賃金制なり、法定最低工賃制なり、あるいは労働基準法の完全実施というものを強化する、その中で実は二極分解を防ぐ、こういうことにしないと、特に加工業の構造改善はむずかしいのではないかということを述べたつもりでございます。  それから業種転換問題については、先ほど自民党の田中さんの御質問にもお答えしましたように、長期の点で見て、日本の産業構造がこれだけ重化学工業化して特化しました。その中で、とりわけ東南アジア市場との関係がますます深まる日本の資本主義自体として、繊維産業あるいは農業、これらの問題が問われておるわけです。そうしますと、全然業種転換を必要としないというふうな立場でものを考えるのはむずかしいのではないか。だから私たちは、一定の業種転換というものは前提にされながら、これを系列による、ないしは個別企業自身でほっておいたんではいけないので、国と地方自治体の責任において措置してほしい、その場合の具体的な対策としては、業種の選択とか技術の再訓練、設備転換資金の融資保証、その期間中の休業または待期期間の労働者、零細事業主の所得保障、これらの問題を産業政策、金融政策、雇用政策を全体的にセットした施策がとられなければいけないのではないかというふうに考えておるところです。
  46. 濱野清吾

    濱野委員長 野間友一君。
  47. 野間友一

    ○野間委員 皆さん御苦労さまです。共産党の野間友一と申します。時間の関係で、いろいろお聞きしたいわけですけれども、しぼって、重複を避けて二、三お教えを願いたいと思います。  最初に労働組合の方に少しお伺いしたいと思うのですが、現行の特繊法では、十八条に「関連労働者の職業の安定につき配慮するものとする。」という規定があったわけですが、今度の改正によりましてこれがなくなってしまう、こういうことになるわけですね。そこで、繊維労連の去年の九月の二十七大会、このいろいろな文書によりますと、この構造改善については反対という決議をされておるわけですが、そこでお伺いしたいのは、現行法規の「関連労働者の職業の安定につき配慮する」というこの規定が、今日まで効果があったのかなかったのかということ、さらに、今度これが削除されることによって、これは繊維業界についてはその過多性、それから零細性ということが問題になりまして、そこで異工程間、異業種間の共同化、合理化、近代化ということが今度の構造改善の柱だと思うのですね。そうすると、いまの工賃の適正化という問題と同時に、人減らしの合理化ということは当然前提になってくるんじゃないかというふうに私は考えるわけです。そこで、これらについて、労働者の権利あるいは生活を保障するというような観点からして、何らかの人減らし合理化に対する歯どめが必要となるんじゃないか、このように私は考えるわけですけれども、お二方について御見解を最初に賜わりたいと思います。
  48. 井上甫

    井上参考人 ただいまの問題の指摘でございますけれども、その点は労働組合として当然のことでございますし、そういう意味合いで、私どもは、先ほど参考人として御説明申し上げる際に、まずこの考え方を申し上げたわけでございます。特にいろんな構造改善事業を行なうに際しまして、言うならば、構造改善という名目に藉口して、いろんな形で犠牲をしいてくる。その形は、いわば直接間接に労働者の雇用あるいは労働条件に対するしわ寄せということになろうかと思います。     〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 私ども、こういう点におきまして、現在法文の中には内容的には明示されていないけれども、今後とも審議会なり、あるいはまた現実に労使の段階におきまして、この問題を中心としたいろんな団体交渉なり、あるいは話し合いが行なわれるわけでありますけれども、やはり私どもは、いわば事前協議体制を確立する中から絶対に労働者に雇用不安を与えない、そしてまた具体的な内容が提起されることにつきましても事前に十分話し合った中からその具体的な解決方策を講ずる、こういう基本方針というものを今後とも強力に貫いていきたい、そこに労働組合の基本的な運動の柱がある、こういう認識のもとに対処していきたい、こういうような所存でいることを申し上げたいと思います。
  49. 小口賢三

    小口参考人 雇用問題についてお答えいたします。  私たちは、この政府の新繊維産業対策についても一貫して独占自体の論理がその生産流通構造を通して徹底的に貫かれている傾向に対して反対をきめたわけです。  それで、雇用問題に限って申し上げますと、現在の繊維労働者の雇用構造を歴史的に見ますと、中学卒業者の婦人労働者を中心として採用しておった雇用構造がまだ現在でも維持されておるというのは大企業だけです。中小企業の場合は、産地に入りますと、ほとんど地域の主婦労働者を中心とした経験工の労働力によって維持されておる。それから、縫製業などが新しく地方の工場に進出する場合は、かつて農家で内職に従事しておった主婦労働者に払われたような金額での最低賃金を今度は業者間協定によって工場労働者の初任給にして採用するというような低賃金を利用してやっておるわけです。新しく進出する過疎地帯のところはそういう形の構造をとっています。  それから、現在私たちの組合員のところの実態を言いますと、会社側のほうは、やめていった人を補充しないという形で、私たちに労働強化を押しつけておるのが大半であって、会社のほうとしても何とか人を採用したいといっても、現在の加工賃の実態では人並みの賃金を保障することができない、こういう状態にあるわけです。したがって、雇用対策をとる場合でも、それぞれの企業あるいは業態、また工場の立地条件等によっていろいろあります。私たちはその場合に、長期の政策で一番これは考えなければならぬ。特にこの構造改善政策で考えなければならぬという点は、先ほどから強調しておりますように、大企業が海外に進出する、そうして海外の低賃金労働力を活用する、片や輸入でまたもうける、こういう形の利潤構造を続けておるわけですが、一方において国内では、東京、大阪の産地問屋が農村の過疎地帯の主婦労働力を低賃金で活用する、こういう形で次から次へと工場進出をしておる、こういう状態があるわけです。ですから、こういう分をカバーするためには、どうしても最低賃金制の強化、家内労働法制の強化、労働基準法の完全実施、こういうふうなものが前提にならない限り、特にこの縫製業などはミシン一台あればどこでもいいのですから、賃金を上げるとなれば、そのミシンを縫製をやっている奥さんに貸すから、あなたはうちにいて仕事をやってください、品物を出します、こう言えば、ただ車でもってぐるぐると生地を持っていき、製品を集めてくる、これでもう一定の事業主は生産雇用ができる、こういう点があるわけです。したがって、その部分を地ならしして公正競争の基盤をつくらない限りは、これはどういう機械を考える、どういうアイデアをやるといっても、もともと利潤を目的として営業活動をやっている業者にしてみれば、低賃金のほうを組織化したほうが早い、こういうことになって、それ自身が構造改善にならない、こういう問題がございます。したがって、私たちは先ほど述べたような点を今後先生方の努力によって補強し、監視していただきたいと思っておるところです。
  50. 野間友一

    ○野間委員 ありがとうございました。  次にお聞きしたいのは、先ほど来いろいろ懸念をされておるわけですが、大手商社とか大手紡績会社、これらの系列支配の強化をどう歯どめしていくかということが非常に大きな問題になってくると思うのです。現に、この法案があるなしにかかわらず、それが進行しておるというのが実態だと思う。そういう中で、残念ながらこの法案の中にはこれらを歯どめする保障がどこにもない、だから力の論理でもってそういう支配の強化がさわるということになりますと、これは中小の繊維海業そのものを近代化構造改善していくというたてまえからしても、これは逆のそういう被害を受けるということも一十分考えられると思うのです。  そこで、それについてどのようにこのような歯どめをしたらいいのかというふうにお考えになるのか。これは綿スフあるいはメリヤス業者の方方、それから青田さんですか、時間の関係がございますので、ひとつ簡単に見解をお述べいただきたいと思います。
  51. 寺田忠次

    寺田参考人 お答え申し上げます。  むしろ現在におきましては、系列ということよりも、それをはずれました、要するにわれわれのほうが親機といいますか、あるいは産元といいますか、それを選択するような状況になっているわけでございます。そういったことで、なお技術におきましても私どものほうが比較的大企業よりも現在としては進んでいるものがなかなか多うございますので、そういったような意味合いから自分たちの個性、特性を発揮いたしていきたい、こう考えております。
  52. 外海忠吉

    外海参考人 お答えいたします。  われわれの場合には、大きな企業体との関係というのは非常にむずかしい問題が包蔵されております。現在すでに行なわれております中小企業団体法に基づく設備制限規則だとか、そういうことで多少の網はかかっておるわけでございますが、大きな企業体と比べて私どもの場合には非常に特殊な仕事である、つまり特殊というのは、量産のきかないというものと量産のきくというものと大きく分けました場合、量産のきくようなものについての大きな企業体の進出が一番こわい、おそろしいといいますか、影響が大きいであろうと思います。したがって、量産がきく、あるいは見込み生産がきく、そういうふうな企業体の体質なり商売の内容を持っております場合に非常に大きな影響を受けるだろうと思います。私、法律がよくわかりませんので、そういう点でどんな形の歯どめが考えられるのか。われわれしろうとは、それはできないようにしてもらったらいいんだというふうな簡単な答えぐらいしかまだ頭に浮かびませんのですが、その辺のところはひとつ先生方にも御配慮いただいて、いま申し上げているような点で、安心してやれるようなグラウンドが整備されておれば私どもはあまり心配ないというふうに考えております。
  53. 青田竜世

    青田参考人 御指摘のございましたように、この法案成立しました暁にはむしろ大手商社あるいはメーカーの系列化を促進さすことにならないかという御危惧ごもっともだと思いますが、ただこの法案を最初に私たちが聞きました説明の範囲では、どこまでも中小企業対策を打ち出すものである、したがって、これに参加する縦系列といえども資本金等で大企業の参加は許さない、また中堅企業についても、中小企業等の場合には金利その他の面でいろいろな格差があるのだというふうに聞き及んでおります。この法律があるなしにかかわりませず、現在われわれ縫製業界におきましても、ある程度の大手メーカーあるいは商社の系列化というのが進んでおりますが、この法律ができ上がりまして構造改善体制というものがある程度緒につきますならば、これを契機にむしろそういったことに対する歯どめになるのではなかろうか。もちろんその間においての省政令の制定のぐあい、先ほど佐野先生からもおっしゃいましたようなその辺のところで、われわれ業界中小企業立場を十分に生かしてもらえるように政府御当局にお願いを申し上げなければいかぬと思いますが、運用さえよろしければかえってこれ自体が歯どめになるのではなかろうかというふうに私自身は考えます。
  54. 野間友一

    ○野間委員 実はこれは政府が基本方針をきめまして、それから具体的な構造改善の計画を立てられて、それを通産大臣が承認する、こういう手続を経るわけですが、その場合に異業種間、異工程間の共同化の中で必ずしも大企業が参加することを拒まない。これは政府答弁で、当委員会においても局長は言っておるわけですね。ですから私も、商社とかあるいはメーカーとの共同協力の関係、こういう意味でのメリットを決して否定するものじゃないのですが、構造改善そのものの中にやはり大企業というものが入っていって、そして自分の系列支配を強化していくところに非常に危惧を感ずるわけなんですね。しかも、いま申し上げた政府答弁からしても、この構造改善に大企業が入るのを必ずしも拒むものじゃない。そこに私は何らかの歯どめが必要ではないかというふうに指摘を申し上げたわけなんです。その点についてさらにまた業界の皆さんも御検討をいただいて、ぜひしかるべき要望をお出しいただきたいと思うのです。  時間の関係で次に進みますけれども、この種の構造改善の中で、これは国が七〇%特利で融資をする、ところが三〇%についてはそれぞれの参加された構成員がそれぞれ金を負担しなければならない、こういうことになるわけですね。しかもその場合に、先ほど申し上げたように、繊維業界の特性は過多性と零細性、すそ野が非常に広く広がっている。ところがその場合に、この構造改善に参加された業者の皆さんが乗っかっていきたい。しかしながら、とりわけ現在のこの繊維不況の中でその三〇%、これは自分の企業設備なり運転資金とはまた別に、新商品開発とか情報センター、こういうところへ出資と申しますか金を出すわけでありますから、これだけのものを一般の金利以上のもので負担しなければならないというふうになりますと、実質的に考えてはたして小零細業者の皆さんがこの構造改善に乗っかっていけるかどうか、この点について私は非常に危惧を感ずるわけです。  結局九条によって、この構造改善とは別個に特利でそれなりの配慮を受けるということになりかねないと思うのですね。そうしますと、乗っかりたいけれども金がないから乗っかっていくことができない、こういう方々がそれぞれの業界組織の中で出てくる場合どうするか。確かに一定の、その業界の大部分が賛成しなければこれは認可しないという方向はとっておりますけれども、しかしながら大部分ということからして、逆に一定部分が反対しても業界そのものが構造改善をきめていった場合、しかしここで乗っかっていけないから、そうすると組合脱退というか、落ちこぼれするしか方法がない、こういう状態が私は出てくると思うのですけれども、こういう点について、小零細企業がはたしてこれだけの金を出して乗っかっていけるというふうに業界の代表の皆さんがお考えになるのかどうか。この点について、それぞれ業界の代表の皆さんにひとつ御見解を承りたいと思います。
  55. 寺田忠次

    寺田参考人 たいへん御心配になっておられますことはほんとうにけっこうなことでございますが、従来七年間、そういったようなことにつきましては組合の力によって転貸しをするなり何なりいたしましてやってまいりましたので、いま国で特別の安い金利でお貸しをいただくことができますればたいへんけっこうでございますけれども、そういったことは困難ではなかろうか、こう思いますし、それからまた零細なものにつきましても、私どもとしては今後も従来どおりの方法によりまして転貸しなり何なりをしてやっていこう、特にこれは特別高い金利でなくてやっていこうという腹でおりますので、従来どおりの方法をとりたい、かように考えております。
  56. 青田竜世

    青田参考人 ただいまわれわれ中小企業の自己負担分の資金について、それ自体が重圧にならないかというたいへん親心のある御配慮をいただきましてありがとうございました。われわれのほうといたしましても、その辺の問題は業界内部で非常に真剣に取り組んでおるわけでございます。ただ救いは、今度の新繊維産業構造改善対策法の中にはいわゆる零細企業者に対する融資というものも別個にございます。われわれ縫製業界は非常に種々雑多でございまして、スケールの大きいものから三人、五人そこそこのまことに零細なものまでございますので、その中でいわゆるそういった範疇に入る方々については、零細対策資金とい片ふうなものを利用して何とかそういった方向指導をしていく。そしてそれ以上のスケールがあり、幾らかの資金調達が可能な範囲のところで何とか自己負担分の資金を負担していけるような上向に指導していく。また、それに対して補完的に業界団体あたりがあっせんをいたしまするなり、あるいは転貸しをいたしまするなりいたしまして、政府資金その他市中銀行資金等の活用を考えていくというふうなことで考えております。今後ともよろしく御指導を願いたいと思います。
  57. 外海忠吉

    外海参考人 お答えいたします。  非常に零細な企業体のためにも御配慮、御心配をいただきましたが、私どもは、実はそういう点では、この法案が現実に進んでまいりました場合にどういうふうな形が出てくるかということについて心配はいたしております。しかし、業界自身もやはり自己の努力と申しますか、国のお金を拝借するわけでございますから、それなりの努力はいたさねばならないという基本的な考えもございます。そういうことで事業団のほうから借りるなり、あるいは地方の都道府県の力をかりるなり、そういうことと相まって、いまの法案の十分な目的達成のために努力していきたいというふうに考えております。
  58. 野間友一

    ○野間委員 もう時間が来ましたので、私はまだあと輸入の規制とか、あるいは資本の輸出の規制、これは貿管令とかガット、UNCTADの関係でいろいろ御意見をお伺いしたいと思っておりましたけれども、これで終わります。  私は、やはり七〇%でなくて低利で一〇〇%、これを国がめんどう見ろ、こういうことを一貫して主張してきたわけでありますけれども、皆さんどうぞ御遠慮なさらずに強く政府に要求していただきたいということを最後につけ加えまして、私の質問を終わりたいと思います。
  59. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 松尾信人君。
  60. 松尾信人

    ○松尾委員 きょうは参考人の皆さまにはまことに御苦労でありました。お礼申し上げます。  この特繊法改正の問題で私もいろいろ質疑を重ねてまいっております。そしてその質疑で、大体皆さまのきょうの意見の開陳、その中からのまたいろいろな要望というものは私もほとんどここで質疑をしておるということをまず申し上げておきたい。  当面の問題であります金融、税制の問題、これも政府のほうがしっかり早急に手を打ってまいります、このようなお答えもありました。それで時間もありませんので、いろいろ要点をつまんで、また若干重複するところもありますけれども、ちょっとお尋ねするわけであります。  この繊維貿易は昨年初めて日本が赤字になった。そしていろいろきょうも皆さま方のそれぞれ御意見を承りましても、この無秩序な輸入ですね、この為替差益の問題も提出をされましたし、また見込み的な商社の思惑輸入もある。この点についても質疑を重ねたわけでありますが、まあそういうことで手痛く見込み、思惑輸入も――いま彼らは困っておる、値段は安くなる、手持ちがふえておる、こういうことで困っておるから、今後はそういうことはあまりなかろうというような問答もしたわけでありますが、何といっても私は日本繊維貿易というものを伸ばしていきたい、そのためには輸入というものもある程度規制を要するであろう、このような考え方であります。  小口さんのほうの意見でありますが、これはガットの場における日本のセーフガードを確立していったほうがいいんじゃないかというような御意見の開陳がありまして、私もそのとおりだと思います。そうなりますと、これはあくまでも皆さま方の強い要望というものをどんどん政府に体当たりでぶつけてもらうということと、それを政府がすみやかに取り上げて作業に入る、こういうことが必要だと思うのでありますが、これはどなたでもけっこうでありますから、代表してお一方でそのような考え方についてお答え願いたい。寺田さん、いかがですか。――どなたでもけっこうですよ。
  61. 寺田忠次

    寺田参考人 たいへん御心配いただきましてありがとうございます。できることなら、いま先生が言われますようなことにしていただけますれば非常にけっこうでございますけれども、私どもといたしましては過去そういったことでいろいろお願いしておりましたが、なかなかできておりません。ことに日本は貿易によってすべてのまかないをしておるのでございますから、どうも非常にむずかしいような気もいたしまして、いままでは逡巡しておったわけでございますが、今後ともひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  適切な方法といいましても、やはり私どもとしては、いまとりあえず輸入商社に向かいましてこういったことはひとつ節度あるものにしていただきたいということは数回にわたりまして申し上げておりますし、また、いままで両三回にわたりまして向こうとも折衝しておりまして、今後はよく話し合いをして進もうということになっておりますので、どうかひとつよろしくお願いいたしたいと思います。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 松尾信人

    ○松尾委員 いまの点、小口さん、いかがでございましょう。
  63. 小口賢三

    小口参考人 お答えいたします。  現在、直接繊維加工業者及びアパレル産業の生産活動をやっていらっしゃる方自身、自分たちが輸入にタッチしていないわけですね。商社が輸出入を扱っておる。それで、また自分たちは商社と直接間接の下請系列にある、こういう関係なものですから、おそらく寺田さんでも直接にはなかなか言いにくいのじゃないかと思うのです。ですから、これは取引改善委員会でもつくっていただいたり、むしろ公的な機関にして、基本方針の中では需給計画についても設定することに法律上なっております。そういうものとあわせて、その年度間の主要な商品ごとのある程度の輸入計画というようなものを、これは誘導政策でもいいと思うのですがそのようなものを立てて、それが一定の条件であれしたらその分については適当にカットする。現に日本政府アメリカにさんざん苦しめられましたから、それらのこまかいことなんかについても、またガットの点について通産省には専門家がたくさんいらっしゃると思うのです。やる気になれば、私は方法は何ぼでもあると思います。ただ、この法律を生かすには、加工業者言ってらっしゃい、アパレル業者どうぞ政府に陳情しなさいでは、これは私は力関係で働かないと思うので、法律自体の運営でそのような力を持たせるということ以外にないと思います。
  64. 松尾信人

    ○松尾委員 次は、発展途上国の繊維産業の実態でございますが、これは日本企業も進出しておる、また先進諸国のほうも途上国へ進出しておる、こういうことでありまして、途上国の繊維産業というものは非常に近代的な設備になっておるし、おまけにそれに低労賃で太刀打ちできないような力を持っておる。一言に発展途上国と申しまして特恵関税等がありますけれども、事繊維に関する限りは、この点は認識を改めなければいけないというような感じを私は持つわけです。でありますから、そういう点におきまして、この途上国の繊維産業の実態、そしてそういうものと日本の近代的な設備を持っておる皆さま方との競争力の問題、なおなおそういうところで特恵関税を設け、そしてやっていかなければできないのかどうか。これはひとつ忌憚のないところを皆さまおわかりの程度でけっこうでありますから、途上国における繊維産業の実態からこのように政府に対して要望したいということをあらためて業界の皆さまから要領よくお答え願いたいと思うのです。
  65. 青田竜世

    青田参考人 ただいま先生おっしゃったとおりでございまして、事繊維に関する限り、織物段階を見ましても、あるいはわれわれの縫製関係を見ましても、近隣の開発途上国生産設備国内生産設備とを比べてみまして、決して向こうのほうが劣っているというわけではございません。ある意味では、新しい機械を導入しているだけに、むしろ向こうの開発途上国のほうが優秀な設備々持っているというふうな状況でございます。しかも、たいへんな低賃金でございますので、問題は、事繊維に関する限り、特恵関税は、でき得るなれば排除するような方向にありたいというのがわれわれの願望でございます。
  66. 松尾信人

    ○松尾委員 もう時間もありませんので、ほかの参考人の御意見青田さんが代表しておっしゃった、このように了解したいと思います。  次は、非常に適正なる加工賃、そういう問題が非常にきょうは叫ばれておるわけでありますが、まことに基本的な問題がそこにあるだろう、こう私は認識いたします。でありますから、いろいろ小口さんのほうもお話が出ましたが、どうしていったらそのような適正なるものが皆さま方の手元に残るかということでありますが、業界としてのこの交渉の限界、それから組合としてのそのような限界、そういうものが、ここにこういう壁があるから、われわれのところではこのくらいの程度しかできないんだ、だから、あとあとはこのような法律、このような問題、または、先ほどはこの審議会の改善の問題にも小口さんは触れておられたようでありますが、そういう問題につきまして適正なる利潤の確保という点についてどのようにしていくのか、この点をひとつ明確にしていきたいと思うのでありますが、お答え願いたいと思います。業界代表から一人と小口さんからお答え願いたいと思います。
  67. 寺田忠次

    寺田参考人 ただいま松尾先生からお話しいただきましたわけですが、適正工賃を決定するのはわけはないのです。いまの最低工賃も最低賃金法によりましてきめられておるものもございますが、これを守るということは非常にむずかしいことでございます。かりに景気がいいことになりますと守ることはやさしい、悪くなってきますと、一方からいって、私のところはこれだけ安くしますから、いまの適正加工賃はこれだけでございますが、これだけ安くしますからやらしてくださいというわけで裏からいく、そういったようなことができますとたいへん困るわけなんです。そういうことをなくなすためにはどうしたらいいだろうということをわれわれは寄り寄り協議をしているわけでございますが、なかなかむずかしい問題でございまして、やはりそういったようなことは非常にガンになっておりますので、一応そういうことのないような方法を考えなければならぬ、こう思っております。
  68. 小口賢三

    小口参考人 寺田さんが、守るのはむずかしいというのは率直な御表明だと思います。しかし、私はこの問題について提案しておりますように、まずやはり加工賃自体を通産省が調査する、そこの中で一応原価主義をとにかく爼上にのせる、先ほど申し上げましたように、原価があってないような状態になるわけです。そしてまた、産地に入れば、産地の親企業は自分で採算の合わないものは必ず孫請か家内工業に出す、下請もまた採算が合わなければ今度は家内工業に出す、家内工業のほうは、自分がこの原価では採算が合わぬというと労働時間でカバーする、こういう形で、守れないような社会的、経済的基盤がそのままあるわけです。ですから、一方では、加工賃調査をして、公に通産省が、たとえばワイシャツの綿のTCのポプリンものは現在の織り工賃では何ぼかというものを公表していく。現在では公表もしないし、また産地間でばらばらに出しておる。福島などへ行けば、やみ織機を全部なくしたら、北陸筋ではやみ織機ができて、そのことがまた加工賃ダンピングについての弊害になったということを述べています。  このようにして、加工賃問題は、単に加工賃ばかりではなくて、一つは力関係で適正利潤が守られないというばかりでなくて、行政的にもそれをカバーし補強するというシステムがないわけです。しかし、先生御承知のように、仕事をするためには繊維産業は糸も相手から買わなければならぬ、また製品も系列を通して売らなければならぬ、自分自身が工程間分断の中で独立した企業主としての存在価値を持っていない、こういうことですから、適正利潤を保障するというのなら、原価主義について政府がある程度保障してやるメカニズムを機構的に用意しない限り、私はこれは談合だけではむずかしい、こう思っているところです。
  69. 松尾信人

    ○松尾委員 これで最後にいたしますが、中小企業へ大企業の進出がある、これは非常に広範な問題でありますけれども、事繊維に限りまして、われわれもいろいろこの点については、総体的に中小企業、大企業の分野の調整ということを考えまして、公明党も法案をつくりまして、もう速急にこれは提案いたすわけでありますが、事メリヤス関係または縫製関係、そういうところでもいろいろ皆さま方でも悩んでおられる点があるのではなかろうかと思うのでありますが、これはひっくるめて、そういうことがあるのかどうか。あるとすれば、やはりしっかりそういう点を考えてもらいたいとおっしゃるかどうか。この点はひとつメリヤス外海さんにお答え願いたいと思います。
  70. 外海忠吉

    外海参考人 お答え申し上げます。  いま先生御心配いただいているようなことは、われわれの業界でも業者が寄りますと常にそういう話は出るのでございます。  先ほど申しましたように、非常に量産がきくような形の品物、あるいはいつもきまって見込み的に生産できるようなものとそうでないものと、われわれの業界には二通りあると思いますが、いわゆるわれわれの業態の実際の強みというものは、やはり小回りがきくということが強みではなかろうかと思います。そういう意味では、量産のきくようなもの、あるいは見込みのきくようなものについての大きな企業体の金の力をバックにした無謀な進出といいますか、制圧といいますか、そういうことが防がれるようなことがまずあってほしい。いまは設備制限規則等、中小企業団体法に基づくものがあって、私どももそういうことによって多少のささえを持たされておりますが、しかしこれとても時限立法でございますからどんな形をとるかわかりません。そういうふうな点では、例はまずいのですが、非常に弱い体質の者がグラウンドにおるときに、強いやつが来て、そこのけというようなことがないような形、それをひとつ御勘案願って、私どもは弱い者は弱い者同士で一生懸命競い合うということは別にこれは差しつかえない、競争原理に合っていると思いますが、大きな力が来たときにのみ困る。そういう点での御配慮を特段にお考えいただきたいと思います。
  71. 松尾信人

    ○松尾委員 以上で質問を終わります。
  72. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で参考人に対する質疑は終了  いたしました。  参考人各位には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十九分散会