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1974-04-24 第72回国会 衆議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十四日(水曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 武藤 嘉文君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       稲村 利幸君    浦野 幸男君       越智 通雄君    近藤 鉄雄君       塩崎  潤君    丹羽喬四郎君       八田 貞義君    前田治一郎君       松永  光君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       佐野  進君    渡辺 三郎君       荒木  宏君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         中小企業庁計画         部長      吉川 佐吉君  委員外出席者         通商産業省生活         産業局原料紡績         課長      堺   司君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   米原  昶君     荒木  宏君 同日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     米原  昶君     ――――――――――――― 四月二十三日  中小企業の経営安定に関する請願坂口力君紹  介)(第六四〇六号)  同(大久保直彦紹介)(第六九三六号)  同(岡本富夫紹介)(第六九三七号)  同(矢野絢也君紹介)(第六九三八号)  横須賀市舟倉町にガスタンク設置反対に関する  請願岩垂寿喜男紹介)(第六六六八号)  関東ガス料金値上げ反対に関する請願(平田  藤吉君紹介)(第六六六九号)  同(野中英二紹介)(第六六七〇号)  同(板川正吾紹介)(第六九三九号)  同(小川新一郎紹介)(第六九四〇号)  同(和田耕作紹介)(第六九四一号)  鹿児島県枝手久島石油精製企業進出反対に関  する請願木下元二紹介)(第六九三五号)  京葉ガス料金値上げ反対に関する請願岡本  富夫紹介)(第六九四二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十三日  電気料金値上げ反対に関する陳情書  (第五一九号)  発電用施設周辺地域整備法案に関する陳情書  (第  五二〇号)  紙類再生利用のため備蓄機関設置に関する陳情  書  (第  五二一号)  生活用紙等安定供給等に関する陳情書  (第五二二号)  資源有効活用促進等に関する陳情書  (第五二三号)  播州繊維産業の救済及び民生安定に関する陳情  書外三件  (第五二四号)  中小企業対策に関する陳情書  (第五二五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第三二号)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤清政君。
  3. 加藤清政

    加藤清政委員 私は特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして御質問をしたいと思いますが、業種によりまして若干質問も重複する面もあろうと思いますので、そういう点も勘案してひとつ御答弁を明快にお願いしたいと思います。  最初に、中曽根通産相に対しまして二点ほどお尋ねしたいと思いますが、まず第一に、発展途上国追い上げ先進諸国輸入規制、逆輸入などの国際環境変化の中で、今後さらに国際分業体制が進むことが考えられますが、こうした状況の中で、わが国繊維産業が今後中心的に開発していかなければならない製品分野はどういうものになるとお考えですか、その点お尋ねしたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近のLDC諸国の追いつきの情勢を見ますと、やはり付加価値の高いもの、いわゆる高級品といわれる方向日本繊維産業を展開していく必要が非常に痛感されております。
  5. 加藤清政

    加藤清政委員 ここ二年ほどの間に原毛が三倍強、原綿が二倍強の値上がりというように、繊維原材料の大幅な値上がりをし、そのことがまた製品価格引き上げ国際競争力をさらに弱める要因ともなっていると考えられますが、政府としては、そのすべてを輸入にたよらざるを得ない繊維原材料安定供給を確保するためにどのような施策を講じなければならないか、この点ひとつ大臣から御答弁願いたいと思います。
  6. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、繊維原料対策といたしましては、国民生活の向上のためにも、あるいは繊維産業生々発展のためにも非常に重要な問題でございまして、私たちといたしましても、いままでもその価格だとか供給の安定のためにいろいろな施策を講じてまいっておるわけでございます。  特に羊毛につきましては、わが国商社の買い付けが特に一昨年の後半から昨年の初めにかけまして一時的に集中いたしまして、羊毛価格をつり上げたといったような批判もございました。そういった面からも、羊毛につきましては平均買い、あるいはインデント買いといったことをしばしば関係商社に通達指導いたしまして、安定的に輸入し得るように配慮いたしております。また、最近海外に調査団派遣いたしまして、開発輸入可能性等についても検討いたしておるわけでございます。  また、綿花につきましては、たとえば国際綿花諮問委員会といった国際会議の場を通じまして、需給の安定を確保するために鋭意国際的な協力を呼びかけておる次第でございます。  また一方、開発輸入等を進めていく過程におきましても、繊維原料貿易につきまして無用の混乱を引き起こすことのないように、秩序のある輸入をはかるように対策を立てつつあるわけでございます。
  7. 加藤清政

    加藤清政委員 国際分業体制が進みまして、わが国繊維産業のとるべき道が確定してくることと相まって、当然に繊維産業総体としての再編成が考えられると思いますが、今回の法改正に伴って構造改善を推進した場合、繊維産業全体がどの程度整理統合されると見通されているのか、あるいはどの程度になることが望ましいと考えているのか、この点をお尋ねしたいと思います。
  8. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生承知のとおり、近年に至りまして繊維産業をめぐります内外環境が非常に変化してきております。そういった環境の激変に伴いまして、単純に資本集約化による大量生産体制ということでは、もう国際競争力確保につきましても限界がある。一方、国内需要多様化、高級化してまいっておりますので、これに対する生産販売体制を確立する必要がある。かような状況におきまして、多くの中小企業をかかえておりますわが国繊維工業といたしましては、従来の加工工場的な存在から企画力あるいは販売力を持った近代的産業に脱皮する必要があるかと考えております。そういった観点におきまして、異業種と申しますか、異工程間における連携、協業化、共同化等を進めることによりまして、いわゆる知識集約化を推進してまいりたい、かような観点に立ちまして改正法案を御審議いただいておるわけでございます。さような意味でございますので、いわゆる整理統合といった形ではなくて、企業間の連携を強めていくという形において今後の繊維産業のあり方というものを考えていきたいと思っておるわけでございます。
  9. 加藤清政

    加藤清政委員 これまで特繊法のもとで行なわれてきました構造改善事業進捗状態を見ますると、必ずしも満足すべき結果にはなっておらないのでありまして、特繊法下での構造改善事業が不十分な結果しか出なかったのは一体どこに原因があるのかということに疑問を持たざるを得ないわけであります。  また、同業種間の構造改善事業以上に、今回提案されている異業種間の構造改善は困難さが多いと思いますが、異業種間の構造改善を推進していくことの主眼は一体どこにあるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  10. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現行の特繊法に基づきまして特定布業特定紡績業特定メリヤス業並び染色業につきまして、四十二年から今日まで数年間構造改善を進めてきておったわけでございます。この構造改善につきましては、一部まだ問題の解決し得ない点もございますが、過剰設備の処理あるいは設備近代化という点においてはかなりの成果をおさめたと考えておるわけでございまして、たとえば紡績業について設備近代化状況を申し上げますと、量産品種、非量産品種を通じまして、基本計画に対しまして大体一〇〇%の近代化を達成いたしておるわけでございます。また、織布業につきましては約八〇%、染色業につきましては九四、五%近代化目標を達成いたしておる、かような状況でございます。その限りにおきまして国際競争力も格段に強化されておる、かように考えておるわけでございますが、ただ、従来の構造改善で十分なし得なかった点は、いわゆる繊維業における工程間の分断といった構造的な問題点については、十分の解明がはかられなかったという点にあるかと思います。  次に、従来の同業種間の構造改善を異業種間の構造改善に改めるに至った主眼はどこにあるかという御指摘でございますが、これは一言で申し上げますと、内外情勢変化に対処いたしまして、従来のような単純なコスト切り下げ競争では国際競争を克服できないといったことにあるかと思います。と申しますのは、御承知のとおり、紡績から始まりまして撚糸、加工糸、織布あるいは編みたて、染色縫製業繊維業におきましては非常に工程分断され、それぞれがまた独立機能を持っておる、なおこの間に流通が介在しておるということと、それから、そういったところから各工程が主として賃加工あるいは下請関係で結ばれておるといったような問題点があるわけでございまして、こういったような工程分断の結果いろいろな問題点が出てくるわけでございますが、一番大きな問題は消費者情報というものがスムーズに流れない、いわゆる繊維産業における商品開発力を低下させる大きな原因になっているということ、また、中間工程をになっております中小企業等弱体性というものは固定化していっている、あるいは過大な流通コストの負担から物価高騰の一因となっている、こういった問題点がございます。そういったところから、環境変化の中で新しい繊維産業というものを考えていく場合には、やはりどうしてもこの工程間の分断といった構造上の問題を克服いたしまして、二つ以上の異なる工程間におきまして連携動作をとって構造改善を進めていくということがやはり国際分業に適応し、かつは国内需要を充足し得る体制を確立する方向である、かように確信いたしまして改正法案の御審議をいただいているということでございます。
  11. 加藤清政

    加藤清政委員 いま一つ大きな問題として流通機構の問題があるわけでありますが、繊維産業界問題点一つとして、流通機構がたいへん複雑であること、取引の前近代性といったことがあげられると思いますが、構造改善を推進するにあたって、この流通機構の問題は一体どのように考えておられるか、この点、お伺いしたいと思います。
  12. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまも御指摘ございましたように、繊維産業における流通機構につきましては、よく複雑多岐にわたっておるということがいわれるわけでございます。また、事実さようなことかと承知いたしております。こういった事情にございますのは、繊維産業におきましては、最終製品流通段階のみならず、分断された各工程間においても流通業者が介在しているということ、それからまた中小企業が多いということによって、さらに一そうの拍車がかけられておる。あるいは繊維産業自体が古い歴史を持っておりますので、勢いその取引形態が前近代的なものが多い。かような点が複雑多岐にわたるといわれるゆえんかと考えておるわけでございます。このような流通構造につきまして、すべてを一がいにこれは非合理であるときめつけるわけにはまいらないと思いますが、少なくとも最終需要動向を的確に把握して生産をやるという点においては、やはりマイナスではなかろうか。いわゆる繊維産業市況性を高めている結果になっておるのではなかろうかと思います。先ほど申し上げましたように、中小企業弱体性を固定化させる、こういう問題を含んでおるかと思います。さような観点に立ちまして、最終消費動向に即応した生産が行なわれる体制を整備するという必要性を痛感いたしておりまして、学識経験者関係業界代表者あるいは関係官庁の職員をまじえまして、繊維取引改善協議会といったような協議会を設置いたしまして ここで流通問題をきわめていきたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 加藤清政

    加藤清政委員 また、この流通機構構造改善を行なっていく場合に、デパートスーパーなどの大量流通システム独立卸売り業とのバランスはどうなっていくと予測されるか、この点もお尋ねしたいと思いますが、同時に、業界内の取引慣行改善も大きなウエートを占めていると思われるわけでありますが、買手側の一方的な事情による取引の延期あるいは返品、歩引き、止め柄あるいは派遣店員制度などの改善についても、通産省はこれまでにどのような指導をしてきたか、この点あわせてお伺いしたいと思います。  さらに派遣店員手伝い店員の問題については公取委見解を次にお尋ねしたいと思いますが、この二点について最初にお尋ねしたいと思います。
  14. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維製品というものは概して市況性が高い商品でございますし、またかたがた加工工程も高度に分業化されている、こういった実態を持っておるわけでございますが、そういった製品末端消費者に渡るまでには、たとえば一次問屋、二次問屋あるいは小売り店と、何段階かの経路を経て最終消費者製品が渡る、こういうことになっておるわけでございますが、たとえばはだ着など日用必需品あるいは比較的流行や個人の嗜好に影響されない商品、こういったものにつきましては、いわゆるスーパー等大量流通システムが、流通経路を短絡しまして大量仕入れによって利潤追求を目ざしていく、こういう一つのタイプがあるわけでございまして、実用品を消費者により安く提供するという点において、それなりのと申しますか、重要なファンクションを持っておる、かように考えておるわけでございますが、しかし一方、繊維製品というのは、各個人の好みの相違やあるいはファッション性のあるもの、こういった製品につきましては、販売ロットは勢い小口にならざるを得ない。そういった分野につきましては、幾つかの流通業者を経由しながら、リスク分担を期待していく、こういったところに独立卸売り業者分野というものも確固たる地位を占めておるというのが現状ではなかろうかと考えます。さようなところから、両者の間のバランスも、その取り扱い品目の推移あるいは取引環境変化によりましておのずからきまっていくのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  それから二つ目取引慣行の問題でございますが、繊維産業における取引慣行につきましては、本来当事者間の自由な合意によって決定されるべきものではございますが、ただ、現実にはそういった当事者経済力の差と申しますか、力の差を背景にいたしまして、かなり不当不利な取引条件が強制されておるというのが現状ではなかろうかと思います。こういった事態に対しまして、当方といたしまして、たとえば綿化合繊織物あるいは小幅織物メリヤスはだ着等につきまして「取引条件適正化指針」、こういったものを策定いたしまして、一種のガイドラインとして、この線に即応して指導してまいっておるわけでございますが、なおたくさんの問題を残しておりますので、先ほど申し上げました取引改善協議会といった協議会の場で、学識経験者等を集めまして改善の方途を検討してまいりたいと考えております。
  15. 加藤清政

    加藤清政委員 先ほどお尋ねした派遣店員手伝い店員の問題について公取委にもお尋ねしたいと思いますが、たてまえ上デパート側は、自社製品販売を望む納入業者が自主的に派遣しているという言い方をしているわけでありますけれども、納入業者の側からの派遣の動機を調べてみると、多くの業者百貨店からの要求に応じて派遣していると答えておるわけでありますが、この点については、独禁法上の問題が介在しておるのではなかろうか、そのように思いますが、この点ひとつ公取委見解をお尋ねしたいと思います。と同時に、デパート側人減らしだとか合理化という労務政策上の問題としても看過できない問題があるわけでありますが、通産省指導現状について、この点通産省にお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席稻村(佐)委員長代理着席
  16. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  百貨店のいわゆる手伝い店員の問題につきましては、百貨店業における特定の不公正な取引方法特殊指定に基づきまして、従来から指導監督あるいは警告を行なってまいっておりますが、なかなか減ってこない。こちらが警告したようには、思うようには、いわゆる不当と見られる手伝い店員の数が減ってきておりません。現在におきましても実態調査をいたしておりますが、これは昭和五十年までには違法ないわゆる不当な手伝い店員をなくそう、なくするという方向で考えております。  それから先生おっしゃいましたように、問屋さんのほうから希望して行っているように見えても、実際は百貨店から要求されて来ておるというようなものにつきましてはやはり違法の疑いがございますので、そういう点もあわせてきびしく指導してきているわけでございますが、現在行なっております実態調査の結果を見まして、法に照らして処置すべきものがあれば処置してまいりたいというふうに考えております。
  17. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 派遣店員につきましては、ただいま公取からも御答弁ございましたような方向で、われわれとしてもいろいろやっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたガイドラインの中にも、販売促進に関する取引条件という項目の中に、派遣店員の廃止という問題を流通業界全般近代化の一環として取り上げるべきである、かような方向指導いたしておるわけでございます。
  18. 加藤清政

    加藤清政委員 昨年来の一連の金融引き締め政策は、繊維業界に限らず幅広い産業影響を与えていますが、繊維産業に限って見ますると、たとえば紳士服婦人子供服などの既製服業者に特に影響が多く出ておると考えられるわけであります。この業種は、いわゆる国際分業体制の中で発展途上国追い上げの激しい分野で、東南アジアだとか、あるいは韓国だとか台湾だとか、どんどん安い商品輸入されてまいったわけでありまして、通関統計で見ましても、縫製品輸入は、昭和四十八年には対前年度比で約三倍の輸入量となり、とりわけ男子用外衣類では約四・四倍の伸び率を示しているというようにいわれております。安い製品がどんどん輸入されるということは、それだけをとってみると、消費者にとってはうなづかれるわけでありますけれども、他面大きな問題がそこにあるわけであります。そう単純に割り切れないところにいわゆる問題があるわけでありまして、たとえば、私はいまここに紳士用スラックスを一本持ってきております。これは韓国から輸入された製品でありまして、たぶん通関の際にはこのスラックスのどこかに原産国名表示するタックがついていたと思うのですが、いまは見つからないわけであります。これを見ますると、確かにこのかどのところに製品表示はあったと思うのですが、これはとれているわけですね。こう見ますると、きわめて粗悪な生地であるわけでありますが、一体輸入業者がこのタックをとったのか、卸売り業者あるいは問屋でとったのか、それはわかりませんが、とにかくいまはもうこのようについていないわけであります。表示責任を示すものはついていなくて、ただ品質表示についても、英語でウール五〇%、ポリエステル五〇%と書いてあるだけで、しかも「品質」という字だけがここに漢字で書かれておるわけであります。「品質」と書いてあって、その下にウール五〇%、ポリエステル五〇%ということであるわけであります。このまま小売り店なりスーパーに並べたら、買う人はおそらく国産品だろうと思って買ってしまうであろうと思うわけでありますが、これは商社輸入したものが、聞くところによりますると、問屋相場で現在一本七百円前後で取引されているということでありますが、こんなように、しろうとの人から見ましてもきわめて粗悪であります。そしてこんなのが大量に市場に出されるということになりますると、国内縫製業者を著しく圧迫することになって、ただでさえ需要減退による売れ行き不振に悩んでいる衣料縫製業者をますます苦境におとしいれるということになるわけでありますが、通産当局として、輸入商社に対し、このような無秩序な輸入を警告するか、あるいは市場が安定するまでに何らかの方策が立てられないかどうか、この点もひとつ重大な問題でありますので、お尋ねしたいと思います。  たとえばいわゆる日米繊維問題のときでありましたが、そのときに、アメリカでは五%ぐらいで締め出しをしたということで、たいへんおかしいじゃないかというようなことが盛んにいわれたわけでありますけれども、日本では、四十七年度は約九%、四十八年度では一五%ないし二〇%に近い輸入をされておって、輸入制限をしないわけであって、ほうっておかれることがむしろおかしいんじゃないかということがいわれるわけでありまして、したがって、輸入制限について一体どのように考えておられるか。また反面、かりに日本輸入制限に踏み切った場合は、報復手段として食糧品制限だとか、あるいは資源小国としての悲しさはわかるわけでありますけれども、しかし、このままほうっておいてはたしていいのかどうか。せっかくの法を改正して、今度はすべての流通機構まで含めた改正をしようとするさなかにおいて、この業界を混乱させるような問題に対して、抜本的な何らかの安定施策というものを考える必要があるのではなかろうか、そのように思うわけでありますので、具体的な指導方針行政指導について、ひとつこの際、大臣から御答弁願いたいと思います。
  19. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大臣がお答えいたします前に、事務的な御答弁を申し上げたいと思います。  ただいまも御指摘になりましたように、布帛製衣類輸入につきましては、四十八年度では数量で六百九十二万ダース、金額では約五百五十六億円でございまして、前年に比較いたしまして、数量で三倍、金額で約四倍になっております。内需額に占めるかような輸入品の割合は、金額ベースで見ますと四十七年で一%、四十八年で三・三%という増大を見せておるわけでございます。     〔稻村(佐)委員長代理退席左藤委員長代理着   席〕 かような韓国、香港、台湾、いわゆる豊富低廉な労働力背景といたしましての製品輸入というものがきわめて増加してきておるわけでございますが、そういった面から、国内縫製業者におきましても、賃金をはじめとして種々コストが上昇いたしておりますので、かようなLDC諸国と同様な、あるいは競合性のある産品をつくっておった縫製業者といたしましては非常な影響を受けておるということで、われわれといたしましてもできるだけの対策を現在考えておるわけでございます。先ほど先生から御指摘のありました輸入商社に対して警告するかどうか、あるいはこういった商品を凍結するかどうかという点につきましては、かように国内の需給動向というものを無視いたしまして、大量輸入あるいは粗悪品の輸入というところの無秩序な輸入が行なわれるということは、国内関連業界だけではなく、ひいては消費者全体に対しても悪影響を及ぼす、かような観点に立ちまして、従前からも、いろいろと問題のある品目につきましては、輸入業者等を中心に機会のあるごとに指導を続けてきておるわけでございますが、今後ともさらに適切な対応策をとっていきたい、かように考えておるわけでございます。また、凍結の問題につきましては、一つ輸入商社等に対しまして、国内への押し込み販売あるいは投げ売り、かようなことのないように自粛を求めておるわけでございますが、また一方、すでに過剰在庫に到達しておるような商品につきましては、凍結融資を必要とするのではなかろうかということで業種ごとに現在詰めに入っておる、こういう段階でございます。  それから、先ほど原産地表示が切り取られてしまっておるという御指摘があったわけでございますが、先生承知のとおり、輸入品の原産地表示につきましては、虚偽表示もしくは消費者に誤認させやすいような表示がある場合には、関税法七十一条によりまして通関時にチェックするということになっております。かたがた、通関後の問題としてどうかという点につきましても、いろいろいままで検討が重ねられたわけでございますが、この五月一日から景表法の第四条に基く告示によりまして、国内流通段階におきましても、虚偽または誤りやすい原産地表示につきましては規制を加えるということになっておりますので、通関後の段階におきましても、そういった不当表示についてのチェックが可能な段階になってきておるわけでございます。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は数年前、韓国へ経済閣僚会議で行きまして、そのときにホテルの地下で洋服をつくってくれる、一体どんなものか自分も実験してみよう、朝、寸法をはかると夕方飛行機が出るまでにできている、そういう話ですから、じゃつくってみよう、そういうので呼びまして、朝、寸法をはかったら十一時ごろ仮縫いをやって、それで夕方五時の飛行機に間に合うようにちゃんと飛行場へ持ってきていた。それをうちへ持ってきて開いて着てみましたが、品物はそんなにいいものじゃありません。しかしこれを見まして、これでは日本業者はたまったもんじゃないな、おそらく賃金が安いものですから五人か十人がかりでやるんじゃないかと思うのですね。私一人じゃなくて、行っていた日本人がかなりそれを注文して、実際実験して持って帰っておりました。これを見ても、典型的に非常に労働集約的な、そして手間をかけて早くやって、日本にない一つの特徴を選んでやっておるようであります。そういうようなものに対して、日本のいまの賃金あるいはそのほかの条件を見たら、これはとても太刀打ちできないと思うのです。いまお示しになったその品物も、おそらく相手国においてはそういう条件下につくられたものであると思われるので、これらがもし思惑輸入のような形で乱雑に入荷すると、日本業者はかなり苦しい目にあうおそれもある。しかし一面において、近ごろは日本人の目も肥えてきて、わりあいに高級品、それから個性的な品物、それから多様性ということをお客さん自体が要求してきております。それで初めは飛びつくけれども、二度とはもう買わない、そういう現象も出てきておる。そういう選好性が非常に高まってきているという条件も考えてみて、いま局長が御答弁申し上げましたように、日本業界販売秩序を乱さないように、できるだけわれわれとしては、思惑輸入とかそういうようなものを自重してもらうように業界に対して指導して、秩序ある輸入を行なってもらうようにしたほうがいいと思っております。それに対抗するためにも、今回のように法改正をやりまして、異工程あるいは異業種間においても、いまのような高度な、選好性に合うような、付加価値の高い、個別性のある、また普遍性のある、また国際的にも対抗できるようなものへ、織る技術から、染色から、すべての点において日本の技術を上昇させなければならぬ、そういう考えに立って今回の法律も提出したゆえんであり、それ相応の財政援助もこれでやろうとしておるわけであります。いまお示しになった品物を見まして、私は数年前の経験を思い出したものですから、そういう点は非常に大事な点であると考えております。     〔左藤委員長代理退席委員長着席〕
  21. 加藤清政

    加藤清政委員 いま中曽根通産相から、例をあげましてお話をされましたが、ことほどさように、日本業界においても付加価値の高い、そうして単に東南アジアその他の発展途上国が追従できない、そういう製品をつくっていく必要があるというお話でありまして、この点は私も全くそのように考えます。  特にいま販売秩序を保つための輸入に対して今後考えていかなければならないというお話がありましたのでお尋ねしたいと思うのですが、こういう発展途上国から入ってまいりました品物その他について、繊維製品については、原産国名だとか、輸入業者の名前などの表示責任を明確にするために法改正をする必要があると思うのですが、この点ひとつお尋ねしたいと思います。
  22. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、原産地表示につきましては、関税法の七十一条あるいは景表法の第四条に基づきまして、それぞれチェックし得る体制になっておるわけでございます。これはただし、みずから表示しておる場合の問題でございまして、先生指摘のように原産地表示を義務づけるという問題につきましては、現在の法制上では全然まだ規定されておらないわけでございます。さような観点から、この原産地表示を義務づけろという御指摘でございますが、実はわが国も参加いたしておりますガットの第九条によりまして、原産地表示につきましてはいろいろシビアな制約がついております。たとえば原産地表示をつける場合には無差別原則でやりなさい、あるいはねらいとしては輸入国の消費者保護ということが目的でございまして、その限りにおいて、輸出国にとっても必要最小限の制約、こういう観点に立ってやるようにということでございまして、かたがた原産地表示をあえて義務づけて実施した場合にも、罰則の適用はまかりならぬ、こういった規定がガットの九条にあるわけでございまして、そういった点からも、なかなか原産地表示を法律に基づいて規制するということは、現実問題として困難かと思います。  一方、これも先生承知の家庭用品品質表示法に基づきまして、いろいろと一般消費者の利益の保護のために、繊維製品の成分、性能、用途等について、表示にあたって順守すべき事項を定めておるわけでございますが、これにおきましても、やはり産業保護的な改正をするということは、この法律の性格上無理ではなかろうか、かように考えておりますので、法制上原産地表示を義務づけるということはなかなかむずかしい問題かと思いますが、先ほど申し上げました関税法あるいは景表法の運用によって十分その効果をあげていくようにしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  23. 加藤清政

    加藤清政委員 いま局長から御答弁がありましたが、不当景品類及び不当表示防止法の第四条三号の中に、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの」ということがあるわけでありますけれども、この点について公取委にお尋ねしたいと思うのですが、不当に顧客を誘引し、公正な競争を乱すおそれがあるという点に関連して、原産地名を除いているということに対して公取の見解をお尋ねしたいと思うのであります。
  24. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 確かに先生がおっしゃいましたように、景品表示法第四条の第三号には「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示」とございますが、これはいわゆる一号、二号の「著しく優良である」とか、あるいは「著しく有利である」というのとは違いまして、単に誤認をされるおそれがある表示ということでございまして、いずれにしましても、表示も何もない場合にはこの景品表示法の適用はむずかしいと思われますが、いまお示しになりましたズボンの場合、これは輸入のときには韓国製という表示があったのを、流通段階でございますか、そこで除きまして、残っている表示としましては、漢字で「品質」でございますか、そういうのが残っておる、あとは英文で書いてある。しかしいずれにしましても、漢字の表示が残っていて、それが消費者が見て、これは日本製であるというふうに誤認をさせるおそれがあるというふうに考えられますので、これは昨年の十月に告示で指定をいたしました「原産国に関する不当な表示」、これの第二項の第三号「文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」であって、一般消費者が、日本で、原産国、つまり韓国生産されたものであることを識別することが困難であると認められるもの、これに該当するのではなかろうかと思われます。これは五月一日から施行でございますので、施行になりますればこの条項に該当してくるということでございます。  それから、この機会でなんでございますが、先ほど百貨店手伝い店員の問題につきまして、昭和五十年までになくするようにと申し上げましたが、あれは五十三年の三月末日まででございますので、訂正をさせていただきます。そういうふうに指導しておるわけでございます。
  25. 加藤清政

    加藤清政委員 たいへん金融が引き締めになりまして、いわゆる公定歩合が五たび上がり、預金準備率が上がり、そして総需要を押えて過剰流動性を吸収するということで、金融引き締めがかなりきびしく行なわれておるわけでありますけれども、昨年来の金融引き締め、オイルショックの影響は、最近になってますます深刻となって、中小企業、なかんずく繊維業界の中でも衣料縫製業界に与えている影響はきわめて大きいわけであります。倒産の数もかなり新聞紙上でも明らかにされておるわけでありますが、繊維業界の信用調査機関である東京信用交換所の調べによりますると、負債額が一千万円以上のものだけでも、昭和四十八年十二月には四十一件、負債総額が六十二億五千一百万円であったものが、四十九年の一月には六十四件にのぼり、六十九億三千七百万円とウナギ登りになり、そして二月には四十六件、百八億七千四百万円という、件数は若干減りましたけれども、その反面金額が大幅にふえておるということであります。さらに三月には七十五件で、百六億七千八百万円と、倒産件数が大幅にふえております。繊維業界の中で、特に紳士服とかあるいは婦人子供服、被服を含めたいわゆる既製服業者の倒産が一番多いわけでありまして、常にトップを占めている。このような状況から、最近大阪の紳士服業者のしにせの社長夫妻が、経営の行き詰まりと金融難のために自殺をして、業界に大きなショックを与えたということが新聞にも大きく出ております。しかも、このような金融引き締めの影響は、四月から六月にさらに一そう拍車をかけて、中小企業は最もそのしわ寄せを受けて、もはやオーバーキルの状態にあるといっても過言ではないと思うわけでありまして、政府はインフレを抑制するために、総需要抑制策あるいは生活関連物資の価格凍結策をとっていることは、緊急やむを得ない措置とはいいながら、弱者である中小零細企業にのみそのしわ寄せが来ておるということで、特別の配慮をして融資をすべきではなかろうか、そのように思うわけでありますが、ちなみに年度末三月におけるこの融資状況を見ますると、五百億全般の業界に融資いたしましたが、繊維についてはその三〇%の百五十億出していると聞いております。百五十億出したけれども、いま申し上げたように、倒産が加速度的に相次いでおって、しかも自殺者まで出ておるという現況であるわけでありまして、まさにスズメの涙ほどであるわけでありますが、そこでこの融資について、商工中金だとか、あるいは国金だとか、中小企業金融公庫だとか、政府系の金融機関の融資を特別に繰り上げて、この緊急事態に対処する、その繰り上げ融資についてのお考えをひとつお尋ねしたいと思います。
  26. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 御指摘のとおり、金融引き締め及び原材料の不足など、中小企業を取り巻くきびしい経営環境の中にございまして、業種、業態によっては資金繰りに非常に困っておるところがふえてきておるわけでございます。こうした状況にかんがみまして、お話にありましたとおり、三月に五百億の融資を行なったわけでございますが、その後いろいろ業種、業態の実情を調査しておりますが、四月に入りまして急速に総需要抑制の影響が浸透してきておるきざしも強くあらわれておるわけでござます。こうした事態にかんがみまして、中小企業庁といたしましても、特に四−六の、あるいは中小企業の危機になるかもしれないこの時期におきまして、政府系三機関の貸し出しワクを一応第一・四半期五千五百億円というふうに平年よりもやや多目にきめたわけでございますが、その後の状況等にかんがみまして、また現在調査しております各業種の実情を見まして、さらに必要がある場合には、お話のような繰り上げとか、あるいは新規追加といったような方法によりまして、第一・四半期の資金の追加を考えてまいりたい、こう考えております。
  27. 加藤清政

    加藤清政委員 最後にお尋ねしたいと思うのですが、この特繊法改正について、いわゆる特定繊維工業構造改善臨時措置法といわれるのは、すでに七年間実施されてきて、本年六月にいよいよ廃止されることになっているのでありますが、今回の改正案は、法律の題名と内容を一部修正して、さらに五年間延長しようというのであります。そして縫製業者流通機構を含めての改正であるわけでありますが、この特繊法はすでに七年間も実施してきたのでありますけれども、従来この法律の対象となった指定業種は、設備の買い上げだとか、あるいは長期低利の融資だとか、あるいは設備の割り増し償却等の特典を受けてきたことは事実であります。しかし反面、同じ繊維業界において、これまでの特繊法の対象とならないで、政府施策の特典を受けないで、日の当たらない場所を歩いてきた衣料縫製業者の方々は、非常に大きな繊維業界におけるウエートを占め、繊維業界の発展を今日までささえてきたわけでありますけれども、この業種は、企業数、従業員数が非常に多くて、たしか件数にしても三万三千四百五十五事業所あると聞いております。関連する家内労働者を入れますると、たいへん大きなウエートを占めておるわけでありまして、繊維産業の中でも最もすそ野の広い産業である。それにもかかわらず力が弱いということと、企業数が多くて、かえってそれが災いして、いままで全く国の施策の特典の外に置かれたということがいわれておるわけでありますが、今回のこの法改正によって、これらの衣料縫製業界にも、自助努力する者に対してはそれなりの道が開かれたことは、むしろおそきに失したのではなかろうかと思うわけでありますけれども、一歩前進したことは事実であろうと思うわけであります。しかしながら、衣料縫製業界の大部分が中小零細企業であり、これまで日の当たらない場所に置かれてきた関係もあって、体質もまたひよわなものがたいへん多いのじゃなかろうか、そのように危惧するわけであります。したがって、改正の原案では、異業種、異工程間の知識集約グループの推進というようなことが大きな施策一つとなっておるのでありますが、一つ業界あるいは一つ業種だけに焦点をしぼるということはむずかしいと思われますが、少くともこれまでの国の施策の特典からはずれていたこれだけ多くの業種について構造改善事業計画の承認その他についても、行政上のあたたかい配慮が必要であろうと考えられるわけでありますが、こういう点も含めて、通産当局のお考えをお尋ねしたいと思います。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回考えております構造改善は、いわゆる国内需要の動向に即応する、あるいは反面、適正な国際分業の確立に資するといったような観点に立ちまして、ただいま先生も御指摘になりましたように、異なる事業分野間で連携動作をとる、いわゆる知識集約化を進めていこう、こういう考えに立脚いたしておるわけでございます。そういったところから従来の特定業種繊維産業全体に広げまして、構造改善を拡大していきたい、こういうことでございますが、こういった新しい構造改善との関連におきましても、いわゆる衣料縫製業というものは、販売業者と隣接いたしまして、最終消費者に一番近い段階にある、そういった意味合いにおきまして、非常に重要な役割りをになっておるわけでございますので、今回の新しい構造改善に対しましても、縫製業界が打って一丸となって積極的に参加していただきたい、かように考えておるわけでございますが、特に縫製品につきましては、他の部門に比べまして生産性が低い、あるいは典型的な労働集約型産業であるといったようなところから、生産技術の革新といった点に一つのポイントを置いていくべきじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。幸い縫製業界におきましては、この問題に積極的に取り組むということで、昨年社団法人日本衣料縫製品協会といった全国一本の団体を組織化されまして、これによって構造改善の実施体制を固めていこうとなさっておるわけでございます。また聞くところによりますと、すでに数百のダルーピングの話も進めておられる、かように承知いたしておりますので、幸いこの法案が成立した暁には、縫製業界におきましても、積極的にこの構造改善に取り組んでいただく、われわれといたしましても、極力これに御協力申し上げるという立場に立って知識集約化を促進してまいりたいと考えております。
  29. 加藤清政

    加藤清政委員 時間が参りましたので、質問を終わりたいと思いますが、繊維業界につきましては、明治以来わが国産業構造をになってきたわけでありまして、とりわけ戦後におきましても、繊維業界を通じての日本産業の振興ということに大きな寄与を果たしてきたわけであります。  しかし、発展途上国追い上げということが大きくあらわれておりますけれども、先ほど中曽根通産大臣からお話をお聞きいたしますると、どうしても業界自体においても、付加価値の高いファッション化あるいは技術の高い対抗し得るものに構造改善をしていかなければならない、そのように痛感するわけでありますが、いままで申し上げましたように、こんなにわが国の大きな産業構造をになってきた繊維業界の不況に対して、金融引き締め、あるいはそれによる倒産が相次いでおるという現況にかんがみて、金融の問題についても、税制の問題についても、もっともっと充実したてこ入れをしていただいて、繊維業界に息を吹き返す活力をひとつ与えていただきたい、そのように思います。  そこで、本法が成立するにあたって、やはり法律ができたということだけではなくして、いろいろの問題について、行政指導においてあたたかい配慮をして、さらに充実させたものにするような配慮をひとつお願いしたい、そのように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま加藤委員からいろいろお話がございましたが、当面する問題は、この総需要抑制に対して、繊維業者が非常ないま苦境にあるという緊急の問題がございます。それからいま構造改善その他によって、LDC諸国からのキャッチアップに対してどう対抗していくかという問題もあるわけです。当面の問題としましては、いま大蔵当局とも金融的措置を検討しておりまして、できるだけ早期に情勢を勘案しつつ、連休前後ぐらいまでには、大蔵との関係の話をまとめて、政府系三機関等を通じて、情勢に応じて思い切った措置を講ずるように進めたいと思っていま努力をしております。  それから構造改善その他の問題につきましては、いろいろ御指摘の点も考え、特にLDC諸国からの品物の輸入については、日本業界に激しい影響が与えられないように、行政的にできる限りの努力をしていくつもりでございます。
  31. 濱野清吾

    濱野委員長 佐野進君。
  32. 佐野進

    ○佐野(進)委員 繊維構造改善に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきましては私、過日も質問をいたしておりまして、きょう上坂君が質問する予定になっておりましたが、都合がありましたので、緊急ピンチヒッターとして質問をするようになりました。したがって、前回の質問に重複しないよう、またいままでの質問にできる限り重複しないよう配慮いたしながら質問をしてまいりたいと思いますが、あるいは重複する面に及ぶかもわかりませんが、これをやむを得ざるものとしてひとつ御了承いただきたいと思うわけであります。  そこで私は、冒頭に大臣にひとつ質問をしてみたいと思うのでありますが、この法案が国会に提案されて以来、繊維関係業者のこの法案に寄せる期待というものはきわめて大きいものがあるわけであります。そしてこの法案の持つ幾多の欠陥というものに対しても目をおおって、ともかく早期にこの法律を成立させてもらえないかという、言うなれば、血の叫びといってもいいような必死の願いを法案成立に向けておる多くの人たちが存在するわけであります。また、今日置かれている状況に対して、通産当局が生活産業局を中心にして積極的に取り組みつつあることについても、私どもその努力に対しては大いに敬意を表するものであります。しかしながら、この法案全体についても、前回の審議の際にも申し上げましたし、またその後における検討を続けてまいりました経過の中で、たいへん多くの幾多の欠陥をこれまた明らかに出されてきておるわけであります。そしてまた、その欠陥を克服するに足る通産当局の姿勢というものに多くの不備のあることも、私ども審議を通ずる経過の中で明らかになってきておるわけでありまして、以下それらの点について、大臣質問をしてみたいと思うのであります。  そこで、まず第一に質問を申し上げたいことは、この法律案が提案された主たる理由は、国際競争力に対して、国内産業としての繊維産業をどう維持し、発展させていくかということに対してこの問題が提起されておるわけでありますけれども、現実の面におきましては、提案理由の説明の中でも明らかにされておるとおり、国際競争力という面についてはこれに目をおおい、いわゆる国内産業としての繊維産業を強化、発展させるということのみに力点を置いておるわけであります。私は、このことはこの前も指摘を申し上げたのでございますが、今日の置かれている状況下においてはまさに誤りといってもいいほどの認識不足ではないか、こういうように判断するわけでございます。と申し上げますことは、今日置かれている繊維産業状況は、国内問題より発したというよりも国際的な情勢の中に国内勢力がそれに便乗するという形の中で危機をみずからつくり出した、つくり出す条件をつくり上げてきた、こういうように指摘しても言い過ぎではないと思うのであります。  そこで、私は、第一に御質問申し上げたいことは、国際競争力にうちかつという条件をどのようにしてつくり上げていくべきであると大臣はお考えになるのか。いやそうではないんだ、いまこの提案をしておるように、国際競争力というものは今日の状況の中でいたずらに他国を刺激することになり、国際協調を破壊することになるからその文言をわざと削除し、国際的な協調の中に繊維産業を自立させていくんだ、こういうように考えているんだ、こういうように理解していいのかという点についてまず冒頭質問してみたいと思うのであります。
  33. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国際競争力を増して繊維産業というものが国際的にも十分太刀打ちできるものにしていくということは、われわれのほうの根本的な考え方でもあります。国際競争力を全然無視してこれを考えておるわけではございません。  ただ、ここで考えなければなりませんのは、では輸入に関して保護政策的な色彩のことを日本政府がやれるかというと、これはかなりむずかしい要素があります。かつてわれわれがアメリカに繊維製品を非常に輸出して、アメリカが保護主義的な政策をとってこれをぶったたいていろいろ繊維問題というものが起こったわけです。あのときにわれわれは無差別、自由というガットの精神を振りかざしてアメリカに肉迫してアメリカの保護貿易のからを突き破って努力したわけでございますけれども、いま攻守ところを変えてLDC諸国から、われわれがいまそういう立場になってきておる。その場合に、アメリカがかつてやったような保護政策的なことを日本がやっていいかといえば、私はやれる立場にないと思います。日本という国自体の構造を考えてみると、やはり貿易で生きていく国であって、輸出と輸入によってそれは保たれているという国でありますから、われわれが保護政策的なことをやれば直ちに外国にその報復を受けて、ほかの輸出品にも響いてき、繊維の輸出にも響いてくる、そういうことになるわけであります。ですから、長い目で見ればその国際的競争力を育成して正々堂々と秩序的に外国に発展できるという立場をつくることが正しい立場であります。  日本のいままでの法律体系、特定繊維構造改善法というような形は、ややもすればその加工過程の問題を中心にして構造改善ということを考えておったように思います。しかし、もはやそういう段階ではないのであって、デザインとかあるいは国民の選好度合い嗜好あるいは流通過程、そういうような全繊維の総合体系の格上げ、質的向上ということをやって、繊維全体を一格国際的にも上げていかなければ長続きしない。それには構造改善ももちろん必要でありましょうし、流通過程の取引条件改善も必要でありましょうし、システム化も必要でありましょうし、あるいはデザインやその他の面においても日本独特のものをやる必要があります。かつてわれわれはアメリカにあれだけ輸出する力を持っておったのでありますから、われわれが努力して新しい面を開拓すればできないことはない民族の力を持っておると私らは思います。そういう方面を目ざして今回の法律の提案をしたのであって、いわば繊維関係の総合力を引き上げていこう、新しいもっと高度の段階に引き上げていこう、そういう考えに基づいて提案申し上げているということを御了承願いたいと思います。
  34. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、法律の中におけるところの「国際競争力を急速に強化するため、」というのを削除した理由は、そのことを含めながら新しい状態に即して国際競争力を全体的に高めていくことのできる条件をつくり出すために、あえてこの文章を削除したんだ、こういうような理解のしかたになってくると思うのですが、それでいいわけですね。
  35. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それでけっこうであります。
  36. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私がなぜこのことを御質問申し上げたかと申し上げますると、今日繊維産業界全体に関して一番大きな課題は、いわゆる先進国からの輸入制限と、さらに低開発国、後進国からの輸入の増加、これに対してどのように日本政府業界指導し、対抗して、日本繊維産業の基盤を確立し、発展する道を見出していくかということが今日の緊急の課題であるからであります。したがって私、この問題を討議するに際して、各方面の御意見を実は聞いてみたわけでありまするけれども、いま当面する繊維関係業者の一貫して言っていることは、この法律案によってわれわれがいま困りつつある現況を即効薬的に解決する何ものもないんだ、期待することは不可能である、しかしこの法律が存在することによって先行きわれわれの生活が幾らかでもよくなり、向上していくであろうという希望の灯を見出すことができる、したがってわれわれはこの希望の灯をたよりながらこの法律の成立に期待しているんだ、いま置かれている現況はもっともっときびしい状況下にあるんだ、こういうようなことを中心にして幾つかの声を聞いておるわけでございまするけれども、その点を中心にして、それではそういう苦しい状況は何によってもたらされたかということについて質問をしてみたいと思うのであります。  それは先ほど申し上げましたとおり、先進諸国輸入制限の問題があるわけであります。そこで私は、大臣に、この点は政治的な問題にも関連いたしますのでお伺いをいたしておきたいと思うのでありまするが、昨年の十二月ガットの場において合意されました国際繊維貿易取りきめは、繊維製品の貿易をどのような方向に持っていこうとするように御理解になっておられるのか。また、わが国繊維製品の輸出はこれによって拡大する方向に向かうのか、あるいはそうでなくて停滞、縮小の方向に向かうように御理解になっておられるのか。この点、昨年十二月のガットにおけるところの取りきめというものは、今後の繊維産業にきわめて重要な意味を持っておりますので、ひとつ見解をお知らせ願いたいと思うのです。
  37. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大臣のお答えに先立ちまして事務的に御答弁いたします。  ただいま御指摘の昨年十二月に合意を見ました繊維の多国間協定につきましては、どういう方向に持っていくかということが第一番のお尋ねでございますが、これにつきましては、日米の繊維規制問題というのはまだ耳新しい問題でございますし、かたがたEC各国におきましては対日差別輸入制限をやっておる、そういったきわめてガットの原則から遊離した先進国の体制というのが現実かと思います。そういった先進国におきます輸入規制を排除しながら、繊維の国際間貿易を安定的に拡大の方向に持っていくという意味合いにおきまして、この協定の交渉段階におきましても積極的に参加し、またこれが一月一日から発効するにあたりまして、去る三月十五日、弊国もこれに参加を表明いたした、こういうことでございます。  これによりまして、今後わが国繊維製品の輸出は拡大するのかどうかという点でございますが、若干これは事務的なことを申し上げますと、今回の協定の中で二国間取りきめの締結というのは認められておるわけでございますが、その前提といたしまして、セーフガードの規制よりもより緩和された、より自由な形でなければならない、かような規定があるわけでございます。そのセーフガードにつきましては、たとえば年間の伸び率が基準年度に対して六%、過去におきましては大体五%以下というのが多かったわけでございますが、今回のセーフガード条項では、伸び率は六%以上、いわゆるキャリーインにつきましては七%、キャリーオーバーにつきましては一〇%、これを従来の規制との関連で申し上げますと、かなり緩和されておるわけでございます。こういったセーフガードよりさらに緩和された形でないと二国間取りきめを結んではいけない、かような規定になっておりますので、そういった意味合いからいたしますと、輸出拡大の可能性というものはこの協定によって確保されていく。ただ、その輸出ワクを、あるいは輸出可能性を顕在化するためには、やはり現在御審議いただいておりますような、いわゆる知識集約化方向繊維産業体制というものを立て直していく必要があるかと思いますが、一応われわれとしては、さようにこの多国間協定というものを理解いたしておるわけでございます。
  38. 佐野進

    ○佐野(進)委員 できれば、冒頭の質問ですから、大臣から見解を聞きながら、次の具体的な問題で局長の答弁を求めたかったわけであります。
  39. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維の多国間協定を昨年一年かかって締結努力したわけでありますが、その中で、われわれが一番苦心をしてアメリカ及びEC諸国に働きかけた点は、セーフガードの問題であります。この問題に関しては、大体においてわれわれの要望が、まず八、九割認められたと思うのです。  なぜセーフガードをそんなに重要視したかといえば、アメリカその他によってこれが必要以上に制限をされ、保護的に取り扱われることをわれわれは避けたいと思ったからです。現に、アメリカにおいて拡大通商法等においてそういう条項もございます。そういうものを国際的制約で払いのけておこう、そういう考えもありまして、EC諸国ともいろいろ連携もとりつつ、まあまあという段階のセーフガード条項まで確保できたと思うのです。これを基準にして、今度はEC及びアメリカとの二国間協定に入っていくわけでございますから、非常に大事なポイントにおいて日本の主張はある程度認められたとわれわれ思いますから、そのラインを踏襲して二国間協定に今度ははっきり入っていこうと思うわけでございます。そういう点からいたしまして、日本の輸出力を伸ばしていくという点については国際的なワクはかなり好転してきたと思っております。問題は、日本のそういう総合力が培養されるかどうかというポイントにかかってきています。そういう意味もありまして、今回の法案の提出ということになったわけであります。
  40. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、大臣答弁のような形に私も実は理解をしておるわけでありますが、そういたしますと、結果的にことしの九月に日米間の繊維協定は切れるわけであります。三年間の時限的な協定でありますから。したがって、この日米間における繊維協定が切れるという時期が今後あらゆる方面にわたるところの交渉のきわめて重要なポイントになってくると思うのでありますが、この取りきめによって、この切れた後におけるところの日米間の交渉はどのように扱われるのか。それらについての具体的なスケジュール、そしていままでの協定内容に有利になると目される点はどういうことか、この点について局長から、簡単でけっこうでございますからポイントだけを御説明願いたいと思います。
  41. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 日米の繊維協定につきましては、九月末に期限が来るということと、それから今回の協定の規定によりまして一年以内に見直しの義務がございます。さような観点から、九月までにこれの問題の片をつける必要があるかと思います。そのタイミング、スケジュール等につきましては、アメリカがやはり三十数カ国と本件についての交渉を持っておる、先にやったほうがいいのか、あとでやったほうがいいのかといったタイミングのはかり方もございます。かたがた関係業界の意見も十分徴さなくちゃいけないということでございますので、具体的なスケジュールはいまのところまだ決定いたしておりません。  ただ、先ほど申し上げましたように、今回のバイラテラル交渉におきましては、従前より少なくとも有利になる可能性があり、われわれとしては有利に結論づけられるように交渉してまいりたいと考えております。
  42. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この点については、冒頭、私は大臣質問申し上げたとおり、いわゆる国際競争力にうちかつその力をたくわえるという、そのことが表現上においては削除されているが、実質的にはそのことを内包しながら、この繊維構造改善の法律の成立をはかっている、こういう形の中においては、いわゆる日米繊維協定というものが、あの三年前の状況の中において取りきめが行なわれたわけでありますが、その後における情勢は大きく変化しているわけであります。わが国繊維産業並びにアメリカの繊維産業その他諸外国の状況が大きく変化している状況の中でこの取りきめが行なわれるわけでありますので、今後の交渉にあたっては、もはやスケジュールがきまっておらなければならないと思いましたので局長に質問いたしたのでございますが、すみやかにその時期等々に対するところの認識を詰めて、条件を詰めて、この対応についていまから積極的な対策を立てておいてもらいたいと思うのです。そのことが将来のポイントになるわけです。この法律を通しても、そのようなことについての裏づけがなければ、まさに意味のない法律になっていく、こういうことを冒頭から申し上げているわけでございますが、これについて大臣見解をお伺いしておきたいと思うのです。
  43. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感でございますから、われわれのほうも綿密なスケジュールを立てて戦略を展開していきたいと思います。
  44. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、アメリカの問題はわかりましたが、いわゆる先進国と称せられるカナダ、ECとの貿易は、今後これらの関連の中で、現状よりどのように変化しておると見通されるか。これは局長でけっこうですから御答弁願います。
  45. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 カナダ、EC等に対しましても、先ほどお答えしたような方向で交渉いたしたいと考えております。     〔委員長退席稻村(佐)委員長代理着席〕 バイラテラルにつきましては、より緩和された形において改定していくということであるかと思います。特にEC諸国につきましては、対日差別輸入制限などをやっております。これにつきましては、今回の協定によりまして、三年以内に撤廃するか、バイラテラルに切りかわるかを規定いたしておりまして、その間は毎年増ワクをしていく必要性もあわせて規定いたしております。そういったところから、特にEC諸国に対しましては、対日差別輸入制限の撤廃を強く迫ってまいりたいと考えております。
  46. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あとで触れますが、低開発国の問題につきましては、特恵関税の供与等いろいろないわゆる協調性を保つという意味におけるところの対策を立てておるわけでございますが、先進諸国の立場をわが国に対比するならば、先ほど申し上げましたとおり逆な立場であります。今日置かれている状況の中において、私はこれらの国々に対して積極的な強力な、国際協調をぶちこわしてしまえとまでは言いませんけれども、ぶちこわさぬ限度内において積極的な対策を立てていただくようこの際お願いをしたいと思うのでありますが、大臣見解、一言でけっこうです。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維問題、特に輸出問題は非常に重要でありますからこそ、昨年来この協定締結については非常にわれわれも努力したところであり、今度はバイラテラルの問題についても、業界とも連絡をとって最大限に努力する考え方でおります。今後もそういう考えに立ちまして内外の政策を展開いたします。
  48. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、大臣に御質問をしてみたいと思うのであります。  過日私も質問しましたし、加藤清二委員質問をいたしておりますが、今日そのような状況下において、わが国産業に非常に大きな悪い影響を与える先進国からの進出問題も、これまた目をふさいで通り過ぎることのできない重要な課題になってきているわけでございます。アメリカの流通大手のペニーが三越、ダイエーを通じて日本進出の瀬踏みをしているということであります。先ほど加藤委員質問の中にもありましたように、縫製業界あるいはそれらの関連する業界は今日非常に深刻な状況の中に置かれている。その深刻な状況の中に置かれている上に、このようないわゆる既製服あるいはその既製服による流通経路等の大手によるところの掌握、いわゆる既製服の輸入あるいはそれらに関係する繊維製品輸入、それの販売等々について、日本における既存の産業の中における超大手と称せられる人たちと提携する中でそれらの進出がもくろまれているということは、今日の繊維業界にとっては見のがすことのでき得ない重要な問題になってきていると思うのでありますが、これらにつきまして、私どもも先般も強く要求をいたしておきましたが、大臣は、この前の御答弁の意を含め、さらに十数日たった現在においてどのようにお考えになっておられるか、御見解をお示し願いたいと思うのであります。
  49. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 いま御指摘の三越とJ・C・ペニーの提携問題につきましては、やはりこういった大量販売店と申しますか中小小売り商業者と非常に関係の強い問題もございますので、今後とも十分にチェックしてまいりたいと考えておりますが、いままでに当方で調査いたしましたところでは、三越といたしましては、仕入れ先の多様化の一環として、秋冬もの衣料品をスポット買いする仕入れ先ソースの一つとして考えておる、かようなことでございまして、とりあえずテスト販売する考えで今後もスポット買いを継続するかどうかきめておらないといったようなことを申しておりますし、かたがた契約書といったものはなくて口頭の話し合いになっておる、かように聞いております。
  50. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その点は私も理解しておるわけです。したがって、大臣にお伺いしたことは、このようないわゆる先進諸国と称する国々がみずからの国に対して輸入制限し、その制限をしている国に対して進出をしようとしている。もちろん品目は違いますけれども。このようなことに対して積極的に対処していかなければならないという現状下において大臣はどのように考えているかというその考えを聞いているわけですから、局長の話はもう何回も聞いておりますから……。
  51. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはりわれわれは自由貿易ということを旗に仕立てて世界に対して輸出輸入を進めておる国柄でございますから、自由化された品物について日本側が制限をするということはできにくい事情にあります。いま三越とペニーの関係がそれに該当するかどうか、まあ該当しない範囲内で進めているのだろうと思います。そういう面から、これは自由競争の世界におけることであって、政府があまり干渉するということは、これは自由主義原則に反すると指摘される危険性も非常にあります。しかし、先ほどから申し上げましたように、秩序ある輸入ということは大事なんです。これは長い間考えてみて、日本全体の繊維業界を整然として発展させるためには必要なことである。でありますから一少なくとも大資本といわれるものは、そういう点についてやはり全体的考慮を行ないつつやるべきものが妥当であると考えておる。そういう面から見まして、これは関係の向きに、いろいろこちらに対しての考え方ややり方、品物、そういうものも報告してもらって、こちらも適当な助言を与える、そういう形で進めていったらいいと思います。
  52. 佐野進

    ○佐野(進)委員 何だか大臣、アメリカの問題になるととたんに腰が弱くなるようなぐあいに私の印象としては受けるわけですが、自由主義経済がいま行なわれていることを私は否定するものではないのです。ただ、近ごろ通産省お得意の行政指導というものもたくさんあるわけでありますから、それらの面における指導によって国益を守り、関係業界並びに消費者の利益も関連して守るということは必要でございますので、この点はひとつしゃんとした形においていま言われたようなことについて対処していただきたいと思うのであります。  次に私は、低開発国の追い上げの問題について質問をしてみたいと思うのであります。  低開発国からの輸入増と、この輸入増をもたらした海外投資の現状、いわゆる海外投資という名のもとに、援助という名のもとにプラント輸出を行ない、そのプラント輸出によって製造された製品わが国輸入される、結果的にいうならば、海外援助するという形の中においてわが国産業を圧迫している、こういうような形になり、結果的にこれらの国々の製品が、先ほど質問にありましたとおり、きわめて程度の低いものとなってわが国に逆輸入されてきているというような形になってきているわけでございますけれども、この輸入増と海外投資が関係があると私は思うのでありまするが、大臣、どのように御認識でありますか。
  53. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 関係は必ずしもないとはいえないと思います。ただ、日本は先進工業国家の一つとしまして、海外経済協力というものは、OECDの原則とか国連の精神等からわれわれやはり当然やっていくべきことであります。そういうLDC諸国が経済協力の結果、繊維生産をふやしたり質を向上したり、そうしてさらに外国にそれを輸出して生活水準を高めていこうということは当然考えられることで、そういうことまで日本がこれを圧迫するということは適当ではないと思います。ですから、適切な先方の輸出政策に対してはこちらも対応して輸入で受ける、そのかわりほかの品物も向こうからは買ってもらう、原料も日本に売ってもらう、そういうような円滑な輸出輸入ということが適当であると思うのです。繊維で、じゃそれで打撃を受けるじゃないか、そう言われればそういう面がなきにしもあらずですけれども、その点は今度の法律等によりまして底力をつけて、LDCの品物と質の違う、またマーケットの分野の違う、もう少し高級品のほうへ日本は転換しながら逃げ延びていく、そういうような考え方に立って進んでいくのが正しいと思います。
  54. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そのことは私どもも理解しているわけです。理解しているが、現実があまりにもきびしいがゆえに、そのことについての政策を行なう際における配慮を当然のこととしてこの際求めておかなければならぬ立場で質問しているわけです。ですから、抽象的なことではなくして具体的な問題として、この問題に対する指導を少なくとも通産当局は行なうべきではないか、こういう判断に立っているわけです。  そこで、海外投資を行なう場合において、いま構造改善を行なっている繊維産業について大臣がお答えになりましたけれども、そういうことについて、この際における影響の度合いをどのように認識しておられるか。この場合、それぞれ海外援助をする、海外投資をする場合においては個別審査を行なう形の中で実際上の問題としては認めているわけでありまするが、個別審査をする際に、どのような影響を及ぼすという考え方の中でその審査をパスさせておるのか。実際上の問題として、これは海外援助である、海外投資である、これはプラント輸出である、したがってただこれに判こを押す、結果的にわが国にはね返ってきて産業全体、特に繊維産業等のいま置かれている困難な状況に対してきわめてむずかしいという情勢が明らかになった際、これらに対して当然チェックする作用が行なわれてしかるべきではないか、こういうように考えられるわけでありまするが、通産当局として、これらのプラント輸出に対して海外投資が行なわれる際における審査をいままでどうやってしたのか、これからはどうするのか、これは局長でけっこうでございますから、その点について明快な答弁をお願いしたいと思っております。
  55. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまもお話ございましたように、OECDの資本自由化コードに基づきまして銀行業以外のものは一応投資が自由になっておるわけでございますが、そういった意味合いにおきまして、事実上事前にチェックしておるという関係でございまして、いわゆる非公式ベースでの審査ということになるかと思いますが、やはりその際の審査のポイントといたしましては、本邦に逆輸入されてくるかどうか、その可能性を一番ポイントとして考えておりまして、現地における生産なり販売計画といったようなものもチェックいたしまして、極力当方に逆上陸してこない、逆上陸するようなことがあっても影響は軽微であるといったような判断のつくものについて指導しておる、こういうことでございまして、今後ともやはりこういった方向で非公式ながら事前のチェック、指導というものを続けていく必要があるかと思います。  それから影響がどの程度あるかということは、これは非常にむずかしいわけでございますが、一つの調査によりますと、これは日本企業で海外投資した千数百社についてアンケート調査した結果のものでございます。この数字によりますと、繊維業だけについて申し上げますと、全体の売り上げの中で日本に入ってきておるものは二・五%、これは百五社についての調査結果がさようにまとまっております。したがいまして、明確なことは言いがたいかと思いますが、現時点におきましては海外投資企業によるところの逆輸入というものはさほど大きくない、むしろ糸あるいは織物といったようなものが輸入されて、現地で加工されてこちらに戻ってくるといったような場合のほうが影響としては大きいのではなかろうか、かように考えております。
  56. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで大臣、いまの局長の答弁でも、お話しのように実際上の問題として個別審査がなされておるわけでありますが、この個別審査によって海外投資を抑制する形の中で、もちろん大臣が御答弁になられたような、何でも抑制しろ、私どもの言っておることはこういうことではないわけであります。したがって、その点についてのいま行なわれつつある国内産業にはね返ってくる、しかもそのことが直接零細小規模企業の存立を脅かす分野におけるところの競合物品についてはでき得る限りチェックするということが最も望ましいと考えるわけでありますが、この点について、先ほど大臣の原則的な面と違った意味においてまだいろいろあるわけです。たとえばプラント輸出する、輸出したらそこは三分の一の賃金だ、四分の一の賃金だ、安い賃金でそこで糸をつくる、つくったものを加工する、こういうことになればその製品がさらに安くなる、これは当然のことであるわけでございますので、そのことがただ単にこちらの力を強めることによって競争にうちかつということだけでは言い切れない面がたくさんあるわけでございますが、いまの局長の答弁に加えて、ひとつ大臣見解を簡単でけっこうですからお示し願いたいと思います。
  57. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん日本国内産業の競争力も考え、個別的にケース・バイ・ケースによって競合性も考えまして、そういう点は慎重に計らっていかなければいけないと思います。
  58. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、私は低開発国問題についてもう一つの問題を提起したいと思うのであります。  いわゆるこれらの国々に対しては特恵関税を供与しておるわけであります。もちろんわが国の経済的ないわゆる高度成長が続く形の中における強大になった力をもって、それら低開発国との関係を調整するために幾多の政策をとりつつあることについて、私どももこれを認めておるわけでございますけれども、しかしながら、この特恵関税供与の問題に関しましては、でき得る限りわが国産業に悪い影響を与えないということの配慮が当然としてその前にあろうと思うのであります。ところが今日の問題の中で、いわゆるメリヤス関係の輸入に対しましては、これらの国々から輸入する際において、一国に対する限度額二分の一については今日それを認めるが、二分の一以上についてはそれを認めない、このような措置がとり続けられてきておったわけでございますけれども、今日、四十九年度ないしは五十年度に至ってこの限度額を撤廃し、一〇〇%にまでこの限度額を広げる、いわゆる限度額なしということで、これら製品については特恵関税を供与するという形になったと聞くわけでございますが、今日のきびしい情勢下において、それでなくても輸入問題で悩む関係業界に対して血も涙もないような一撃を加えたと言っても言い過ぎでないように感ずる措置をなぜおとりになったのか。これは局長からひとつ答弁していただきたいと思います。
  59. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維に対する特恵供与につきましては、問題が問題でございますので、きわめて慎重に対処いたしております。一部適用除外するとか、あるいは事前割り当て制をとるとかの制度を採用いたしておるわけでございますが、ただいま御指摘メリヤスにつきましては、四十八年の実績を見ますと、メリヤス生地が一六%、くつ下が四五%、下着が四七%、実績ベースでいきましても二分の一の頭打ち以前の段階にあるといったところから今回特恵改善要請の一環といたしまして踏み切ったわけでございますが、現状におきましては、さようなことからまず心配はなかろうかと思います。ただ、今後の動きを十分注意しながら見守っていきたい、かように考えております。
  60. 佐野進

    ○佐野(進)委員 局長、その見守るということの意味はどういうことなんですか。それは復活するということの意味にとってもいいのですか。
  61. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 情勢のいかんによりましては、旧に復することもその中の一つとして考えております。
  62. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、私は次の問題に入りたいと思うのでありまするが、低開発国問題に関連いたしまして、昨年の三月ごろ、繊維の好況時に商社が大量輸入を行なっておるわけであります。これまで、これらの輸入についていわゆる過剰流動性問題等々の時期にちょうど適合するわけでありまするが、無制限にこれを当時の通産行政として受け入れておるように思われるわけでありまするが、当時の情勢としてこれに対してどのような指導を行なったか、局長の答弁を求めます。
  63. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維製品輸入が非常に増大いたしました理由は幾つかあるかと思いますが、特に昨年は上期におきまして景気が好況下にある、輸入意欲を高揚させておったということもございますし、かたがた為替相場の変動制を採用するにあたりまして円高基調が続いておった、そういったふうに輸入を増進する環境にあった。特に昨年前半におきましては物資不足、価格問題といったようなものがございましたので、当時といたしましては、当方は積極的にこれを抑制する措置をとらなかったわけでございますが、昨年の秋以降金融引き締めとともに市況が一般に冷えてまいっておりますし、あるいは繊維産業に対しまして在庫圧迫要因となってまいっておりますので、特に関係輸入商社に対しましては、大量にあるいは粗悪品を無秩序に輸入しないように、機会のあるつどこれを指導してまいっておる、こういうことでございます。
  64. 佐野進

    ○佐野(進)委員 実際上の問題としてその指導が効果をあらわさないで、そのような繊維製品輸入が行なわれたことは現実の事実であろうと思うのです。これらの大量に輸入された繊維製品は、現在商社の在庫となっておるといわれておるのでありまするが、そういうような在庫量における調査を行なったことがあるのかどうか。もしこれらの在庫量かその保有期間を過ぎて——保有期間というか一定の状況を過ぎた場合、どのような状況下において放出が行なわれるのかということは今日きわめて心配されている問題であります。したがって、これらについてもしダンピングが行なわれるというようなことになったとするならば、繊維産業全体が崩壊の危機におちいる、これほどまでのことがうわさされておるわけでありまするが、そのような場合においてどのような措置をとる考えがあるのか。並びに、今後これらの問題についてはなおさらに指導——今日の状況の中においては秩序ある輸入が行なわれておるといわれておるのでありまするけれども、実際上商社活動を規制せずしてこのような秩序ある輸入の制度というものは守られない、こういうぐあいに私ども考えるわけでございまするけれども、この活動を規制する、いわゆるもうければ何をやってもいい、こういうような考え方の中におけるところの行為に対して、今日の繊維産業の置かれている状況の中において規制をすることが必要である。この前もそういうぐあいの質問をしたと覚えておるわけでございまするが、この点については大臣見解をお伺いしておきたいと思うのであります。
  65. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自由主義経済をやっていて、先ほどから申し上げましたが、やはり商社その他が自分たちの思惑で大量に輸入して、それが荷もたれになり、総需要力カットの結果売れなくて金融的に非常に詰まっておる、こういうことはある程度自分の責任でやっておることでありますから、政府が全部そのしりを見るというわけにもいきません。やはりそこは資本主義、自由主義のいいところで、慎重に的確に判断をしてやらなければいつまでももうかっておるというようなことではないということであると思うのです。損をすることもあればもうけることもあるというのが商売であって、そこに一生懸命やろうという気持ちが起こると思うのです。何でもやって、しりは政府に持っていけばいいのだということになったら、これは全く国民の税金が浪費されるという結果になると思います。だから、これはもうそういう原則を貫くというのが政府としての立場でありますが、しかし、それが中小企業とか末端零細企業に至って不当な圧迫とか苦しみを与えているという場合には、われわれは乗り出していって中小企業その他のためという立場から考えてみる、そういう態度でやってみたいと思います。
  66. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この点についてはさらに局長の答弁を求めたいのでありますが、時間も経過いたしてまいりますので、要望として、ひとつ局長のほうで具体的なチェックというか行政指導というか、そういう形の中でこれらダンピングが行なわれないよう、行なわれる際において、大臣がいま言われたように、いわゆるもうけ過ぎを吐き出させる形の中で適切な指導をするように、そしてもしダンピングを行なうという形の中で、あるいはまたそれらに関連する一連の行動の中で小規模企業に対して悪影響が発生すると考えられる場合においては適切なる処置を講ずるよう強く要求をしておきたいと思います。  そこで、次の問題に入ります。  それらのいわゆる国内外における問題の中で国際的な影響が今日繊維産業に与えているものが非常に大きいということは、いままでの質疑の中で明らかにされたわけでありまするが、現実の問題として、これらの状況下においていま法律を審議しておるわけでございまするが、その前に、たとえば私どもきのうもある業界の人たちと話したのでありまするが、結果的にこの法律を通してもらってもわれわれはそれまで生きているか生きていないかわからぬじゃないか、あるいは生きていたとしてもこの法律の恩恵がわれわれに来るまでの時間が一体いつまでになるのかわからぬじゃないか、それよりもいまの問題をどうしてくれるのだ、いまどうしたらわれわれは生きるのだということについての指針を与えてくれるのか、こういうようなことがきわめて強い要求となっているわけであります。その一つの大きな問題は、総需要抑制によるところの仕事量の減少であります。仕事がなくて困っているということであります。三割、四割の削限はもはや日常の問題となりつつあるということであります。総需要抑制政策が今日のインフレ抑制のために必要だということを私ども認めておるわけでございまするけれども、しかしながら、この小規模零細企業に与える、繊維業界全体に与える影響に対して、総需要抑制の及ぼしている政策上におけるところの欠陥をどのように打開することが必要かということについて、大臣見解をこの際ひとつお聞きしておきたいと思います。
  67. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 当面の不況を克服いたすためにいろいろと金融対策を考えておるわけでございます。すでに三月末、いわゆる年度末金融につきましては、五百億のうち繊維に重点的に百五十億を活用したわけでございます。  今後の問題といたしまして、主力の金融をどうするかという問題がございます。これにつきましては一・四半期の政府三機関の融資ワクが五千五百億と聞いております。この中から繊維産業、特に中小零細企業に対しまして優先的に資金が貸し付けられるように現在関係の部局と詰めを急いでおる段階でございます。かたがた、先ほど先生も御指摘になりました輸入品を含んで在庫圧迫も相当きつくなってきておりますので、こういった過剰在庫につきましても資金手当てを急ぐべく現在検討を進めておる段階でございます。
  68. 佐野進

    ○佐野(進)委員 二つの問題があるわけであります。一つは緊急資金対策を行なう中でいわゆる需要を喚起する、こういうような方向があろうと思うのであります。そこで、いま五千五百億と言われているのですが、私どもは七千億くらいだというぐあいにも解釈をしておるのですが、七千億程度のものということに解釈しておるにもかかわらず、五千五百億ということはきわめて少ないのではないか。特に先ほど申し上げました在庫されている繊維製品のダンピングの問題と関連いたしますると、これでは危機が乗り切れないのではないかと考えるわけでありますが、それすら大蔵省当局はなかなか渋るであろう、こういうように見込まれるわけであります。  そこで大臣、これは大臣答弁してくださいよ、いいですか。大臣質問をしますが、結局緊急融資対策は大蔵省との折衝になるわけです。ワクはあるわけです。しかし、それは政治力によって決定するわけです。だから福田さんと中曽根さんのどっちの力が強かった弱かったなんて私は言いませんが、口へ出すことは、どこへ行っても同じことを言っている。だからあなたが七千億にしろということでひざ詰め談判すれば、今日中小業者のためにやるのだとがんばっているわけですから不可能でないと思うのですが、ひとつこれについてがんばってくれる気持ちがあるかどうか、この際ひとつ……。
  69. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大いにがんばる気持ちがあります。
  70. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それがうそでないようにひとつ大いに期待をしております。  そこで、このような形の中で融資が行なわれたとしても、いわゆる仕事が出なければ——繊維産業は、この構造改善を進める中において、同時に現況下において、仕事がなければなかなか成り立っていかないわけであります。そこで、零細規模企業が存立するために、中間企業に対してある程度融資を見てやらなければいかぬ、そうすると総需要抑制とのからみ合いでたいへんむずかしくなってくる、こういうようなことになるわけでございます。総需要抑制も何月ごろから緩和するというようなこともいろいろ言われておりますが、この小規模零細企業存立のために、総需要抑制緩和に対して、この繊維産業に対してどの程度の位置づけをしているか、大臣見解をちょっと聞かせてください。
  71. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 総需要抑制は緩和しないと思います。当分はやはり現状のような抑制策を続けていく。しかし、繊維等については、中小企業対策として別個にこれはプラスアルファとしての対策をとりたい、そういうことであります。
  72. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの大臣答弁、こんなに簡単に出ると思わなかったので、もう一つ質問する予定でありましたが、別個にするということでありますから、私はその点については質問をいたしません。  ただ、いずれにせよ、置かれている状況の中で、構造改善事業ということだけではなかなか解消し得ないきびしい状況に置かれている層が現実に存在しているという事実を認識していただきたいと思うのであります。  そこで局長、いまの大臣答弁に関連いたしまして、いわゆる中間と目される層——零細な二人か三人ぐらいで働いておる人たちに仕事を出してやる層ですね、これは非常に層がむずかしいわけでありまするけれども、中小から中堅ということになるのかどうかわかりませんけれども、これらの層に対する対策は、いまどのようにお考えになっているのか。やるとかやらないとかいうことは別にしまして、考えだけを聞かせておいていただきたいと思うのです。
  73. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま大臣答弁いたしましたように、やはり当面物価抑制ということが大きな政策課題でもございますので、総需要抑制政策を緩和するということは、これは繊維についてもなかなかむずかしいかと思います。いろいろ先ほど来金融の問題が出ておりますが、それ以上に一番効率的な方法は、繊維についての有効需要の喚起ということになるかと思いますが、いまの段階はまだそれが許されない段階ではなかろうかといったようなところから、先ほどもちょっと触れましたように、政府三機関の資金ワクをできるだけ繊維産業、その中でも中小零細の企業に振り向けられるように準備いたしておるわけでございますし、かたがた、これも先生承知かと思いますが、民間の金融機関におきましても合計三千二百億の資金を準備いたしまして、これによって中小企業の救済資金といたしたいといったようなことも発表いたしておりますので、こういった民間金融につきましても、政府三機関の金融とあわせまして、できるだけ繊維産業中小企業対策として活用いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  74. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、不況対策についてもう一つこの際御質問をしておきたいと思うわけであります。  先ほど来質問を続けてまいりましたが、国内外の情勢の中で、今日の状況は、法律改正以前の問題としてたいへん苦しい状況下に置かれているわけでございますが、この状況の中で在庫がだぶついている。いつダンピングがあるかわからない。低開発国からはどんどんどんどん輸入がふえてきている。先進国はなかなか輸入を増大さしてくれない。もう八方ふさがりである。こういうような形の中に置かれているわけでありまするが、いわゆる多国間協定、特に日米繊維協定の取りきめ等の中でその道を突破していくわけでありまするが、しかし現在の状況の中で、具体的に日本製品、高度な日本繊維製品を輸出していくためのその振興策というものは、今日忘れてはならない政策の一つではないか。いまの状態の中で、いわゆる輸入されてきたものがだぶついているのに、そのものをまた輸出するなんていうことはできませんが、日本製品そのものを輸出するとか、あるいはいまあるダンピングされようとしている滞貨の中において、逆に外国等におけるところの不足の声のあるところへそれらの品物を輸出するということも必要な方法ではないかと考えるわけでありますが、この点についての措置等を検討されたことがあるかどうか、これは局長でけっこうですから答弁してください。
  75. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在の段階で輸出の振興策をどういうふうに実現化していくかということは非常にまだ微妙な問題があるかと思いますが、ただ繊維について申し上げますと、実は本年度の開発途上国との商品の供与借款の話し合いなどを通じてみますと、幾つかの国におきまして、やはり糸、綿あるいは綿織物、絹織物といったような織物あるいは衣類といったような製品につきましても供与を要請してきておる国もございますので、そういった商品の供与借款の一環として事実上海外にそういった製品がしむけられるように措置してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  76. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、不況対策の最後の問題でございますが、私はいままでの質問に関連いたしまして、次の点を締めくくりとしてみたいと思うのであります。  今日の状況の中において借り入れ金返済の繰り延べ等の措置をする、この困難な状況の中ですでに借り入れた金の返済のために四苦八苦している状況があるわけでありますが、その四苦八苦している返済金についての取り扱いについて、この際やはり措置する必要があるのではないか。資金面の負担をできるだけ軽くする、こういうようなことについてその対策を講ずる必要があると思うのですが、これについての見解、さらにそれに加えまして、現実の問題として仕事が三割も四割も減っておるわけですから、実際上働かせたくとも働かすことができ得ない従業者を多数かかえておるそれぞれの企業があるわけでありまするが、これらの企業の従業者について適切なる対策を立てる必要があると思うのでありまするが、この点については局長から答弁をひとつお願いします。
  77. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 既往債務と申しますか、旧債返済の猶予につきましては、一部ではやはり一律に返済猶予を求める声もあるわけでありますが、御承知のとおり、やはりこういった中にも企業によりましてやはり経理の内容が異なっておるわけでありますし、かたがた回収金のあるものは新しい投資の財源にもなってくるわけで、そういった意味合いにおきましてなかなか一律の償還猶予ということはむずかしい問題かと思います。個別的に必要に応じて従来からも返済の猶予を認めておりますので、今後ともそういった方向指導してまいりたいと思います。
  78. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 既往債務の償還猶予につきましては従来とも努力しておるところでございますが、最近におきましても中小企業庁長官から政府系三機関に対しまして、この点について配慮するように指示をしております。
  79. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは午前中ということでありますので、あと若干の時間がございますので、法律の内容について、この前の質問の際、ほぼ質問をいたしたのでありまするが、この際二、三重要な点について御質問をしてみたいと思うのであります。  今回の法律改正につきましては、いろいろの方面において幾多の配慮がなされておるわけでありますが、この中で私どもが最も心配をすることは、この系列化の防止対策がこの法律によってどのようにはかられているかということであります。すなわち、異業種間における構造改善事業の実施であります。いままでは異業種間でなくして同業種間におけるところの構造改善でありましたが、異業種間における構造改善事業ということになりますと、どうしても異業種におけるところの優位企業がそのイニシアを握り、優位企業によるところの系列化が結果的にはかられる、こういうようなことになるわけでありますが、これらの問題につきましては、再三再四追及もいたしておるわけでございまするけれども、さらにこの点についての歯どめということについて具体的にどのような考えがあるか、この際明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  80. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 いわゆる知識集約型産業への脱皮ということは、大企業中小企業を問わず、繊維産業全体として指向すべき方向かと考えております。さようなところから、一部の大手企業筋におきましては、自力でそういった方向にグルーピングを進めておるというのが現実かと思います。したがいまして、本法案におきますところの構造改善対策のねらいは、そういった方向に自力で進み得ない中堅企業あるいは中小企業、こういったものを助成することによりまして、そういった知識集約化方向に進ませると同時に、大企業グループに対して対抗力をつけていこう、こういうところをねらいにいたしておるわけでございます。     〔稻村(佐)委員長代理退席委員長着席〕 したがいまして、本法案の第四条にございます構造改善計画の作成あるいは大臣に承認を求める資格といたしましては、主として、中小企業関係団体を中心として考えておる、かようなことでございますし、資金助成策につきましても、そういった中小企業を中心として進めていきたい、かように考えておるわけでございます。  具体的にその大企業の系列あるいは支配を排除する方法といたしましては、大企業がその優越性をもちまして、取引条件等におきまして不当な条件を中小企業に課してくるというのが現実のあらわれ方かと思います。さような観点から、この法案といたしましては、構造改善事業計画を提出する際に、その内容の一部といたしまして取引関係についても記載させる。その取引関係を取引改善方向に従いましてチェックいたしまして、基本方針の方向に沿わないものについてはこれを承認しないことにいたしたいと考えておるわけでございますし、また、一度承認してしまったあとどうなるかという点についても注視する必要がありまして、その段階において不当な取引条件を課しておるような場合には、本法案の第八条に大臣指導、助言の規定がございますので、これに基づきまして助成をはかる。さらに、それをきかないような場合には、同じく本法案第五条第二項の規定によりまして、承認した計画の取り消しをはかる。かような措置を講ずることによりまして、大企業の支配の強化というものを排除いたしたいと考えております。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 具体的な答弁があったわけでありまするが、結果的に大企業という形の中で商社とか紡績とかその他いろいろあるわけでありまするが、こういうものによるところの系列化を阻止するという方向が明らかにされるということが何といってもこの法律案の中において最も重要な一つの課題であろう、こう思うわけでございますので、この点について局長答弁がございましたが、くどいようですが、大臣答弁をひとついただきたいと思うのです。
  82. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経済は生きているものですから、なかなかむずかしいところがあると思います。現に私らのところにきている話では、商社がいままで中小企業のめんどうを見ておった、それで商社が今度は冷たくなったので、中小企業の先のほうはあぶなくなってぶっ倒れそうだ、それで商社のところに泣きついていって、何とか金融その他で持ちこたえてくれと言ってきておる、しかし商社は、こういう御時勢ですから、わが系列下なんといわれるのはいやですから、どうぞやってくださいというような形になって、それがつぶれると、またばたばたとほかのほうにも響く、そういう生きた現実が実はあるわけです。そういう中にあって、取引条件というものは、その企業企業間の自由意思できめられておるものでありますから、力関係によって不当または著しく劣勢な地位に出てくるというものもなきにしもあらずである。それを生かしながら、段階的にこれを一歩一歩改善していくということが、結局毎日生活している人たちに失業の苦労や倒産の苦労をかけないで持っていくというところに問題のむずかしさがあるわけです。そういう意味で、取引条件改善の協会をつくって、そしてチェックしつつ一歩一歩前進していこう、そういう考えに立ってやっておるので、これこそまさに生きた、まあ大岡裁判的なことも状況によっては必要ですし、状況によっては、悪質なものについては、これは断固やらなければならぬ、そういう問題もあると思うのです。ですから、この取り扱いについては、そういう深甚な配慮をしながら事態を改善する方向に進ませていきたいと思っております。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その次に心配になることは、この法律案全体について、この前、条文ごとに質問しましたが、全体的に質問をしてみますると、結果的にこのグルーピングをする、そして構造改善事業を推進する、それも異業種間にわたってその事業を遂行する、こういうことになりますると、いまの大臣のお話ではございませんが、今日の状況でも切り捨てられては困るんだ、何とかおれはその系列の中に入れてくれというせっぱ詰まった形の中における企業も存在してくる。いわんや、これからこの事業が推進される過程の中で、だれしも優良と称せられる企業をそのグループの中に入れて事業を進めたいと思うのは当然のことであります。したがって、このグループの中に入り得ない多数の小規模零細企業が存在するような状況が生まれてくることは避け得られない現実の問題として、これの実施の過程の中であらわれてくると思うのです。この歯どめ、この対策を立てざる限り、この法案が通ったとしても意味が非常に小さくなり、むしろうらみを残す、こういうようなことにもなってくるような心配がされるわけでありまするが、それらの層が存在したと仮定した場合、この層に対する対策をこの法律成立による構造改善事業の進行と同時に考えておかなければならない重大な課題だと思うのでありますが、局長、この点についての対策をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  84. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました点は、本法案第九条にいうところの中小零細企業に対する特別の配慮という条項に相当するかと考えます。私たちといたしましても、できるだけ多くの人が構造改善事業知識集約化事業に参加してくれることが望ましいわけでございますが、御指摘のような小規模零細企業にとりましては、人的、資金的な面からいたしまして、直ちにそういった知識集約化グループに参加し得ないという方も多かろうと思います。さような点から、第九条の規定に基づきまして二つの小規模零細企業対策を考えておるわけでございまして、一つ近代化助成制度、それからいま一つは技術指導制度でございます。  前者につきましては、今回の構造改善におきましては、いわゆる二工程間以上の連携動作をとり、かつは第四条にいうところの構造改善事業計画を通産大臣の承認を受けた後、これを実行するものに限り、中小企業振興事業団を通じまして二分六厘の資金を供給することになっておるわけでございますが、ただいま申し上げました小規模事業者にとりましては、これは原則は従業員五人以下と考えておりますが、こういった小規模零細事業者に対しましては、さような構造改善事業計画を持ち合わさなくとも、中小企業振興事業団の低利融資を実施したい。一応現在、事業規模におきまして七十五億程度を考えておるわけでございます。  それから、いま一つの技術指導につきましては、ささいな機械設備の操作ミスによりまして織りむらができたりするといったようなことで、品質管理上きわめて遺憾な点も多うございますので、これにつきましては従業員規模大体二十人以下の事業者に対しまして技術指導をやる。その場合に構造改善事業協会を通じまして二分の一の経費補助をする、予算といたしましては八千五百万計上いたしておりますので、事業ベースにすると、一億七千万ぐらいになるかと思いますが、さような、特に小規模零細企業者に対する特殊な配慮を加えることによりまして、漸進的に体質改善をはかっていただいて、できるだけ早い機会に積極的に知識集約化グループに参加していただくように指導いたしたいと考えておるわけでございます。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、いま私の質問をしていることは、いわゆる構造改善事業によって行なうことに対する、参加でき得ない、いわゆる落ちこぼれと称せらるる層が多数存在していく可能性があるということを前提として質問しているわけです。したがって、それについて、いま局長の答弁があったわけでございますが、大臣は、いまの局長答弁にふえんいたしまして、これらの層の救済について万全を期すということについて、この席上で言明できますかどうか。
  86. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまのように独立でグルーピングの中に入らない、そういうような層が十分あるということを意識してこの法案はまたつくられ、それに伴う条文が整備されているわけであり、予算的にもいま申し上げましたように、七十五億というものを一応用意しておるわけでございます。ここは、やはり一番大事なところだろうと思いまして、粗漏のないように実行いたします。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは最後の質問をいたしたいと思います。  私は、これらの質問を続けてきたわけでありまするが、この法案全体を見まして、いわゆる業者構造改善事業である。しかし、その業者の方々は、その構造改善事業を通じて競争力を強化し、よい商品をつくって消費者に提供する、そして国際競争力にもうちかっていく、こういうようなことになってくるわけでございまして、結果的には消費者の利益をこの構造改善の事業を行なうことによってはかっていく、こういうことに帰着すると思うのであります。消費者は王さまであるということわざもございまするけれども、今日のあらゆる産業、業態にわたってそのようなことが強調されておるわけでございまするけれども、今回のこの法律の中で、その消費者の利益を守るため、そういう形の中におけるところの表現がきわめて——きわめてどころかほとんどないというような形の中でこの法律全体を見渡すことができるわけであります。となりますると、構造改善を行なった、いい品物をつくった、定価が安くてそれを納めることができた、納めてもらったデパートなり大手スーパーなり、いわゆるそれぞれの機関が、先ほど加藤議員の質問にもございましたが、その持つ特殊的な取引条件の中においてすべての利益を吸収し——すべてとまでは言いませんか、相当の利益を吸収し、消費者に迷惑をかける、こういうようなことも当然のこととして予測されるわけであります。常に法律の条文の中においてそのことが強調されておるわけでございまするが、今回の法律の中においては、その点がきわめて薄弱であるということの持つ意味は一体何なのか、局長の見解を聞いておきたいと思います。
  88. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、この法律案の中では、消費者対策あるいは消費者の利益の保護ということには直接触れてはおりませんが、気持ちといたしましては、先ほど先生もおっしゃったように、海外はもとより国内多様化する、あるいは個性化する需要に即応していこうという方向生産販売体制を立てていこう、こういうことでございますので、そういった意味合いにおきましては、しいて言うならば第一条「目的」の中に繊維工業の健全な発展をはかるためという中で事実上読み込まれておるというふうに解釈していいかと思いますが、ただ具体的な問題といたしましては、別の面から申し上げると、取引条件改善の問題ということにもつながってくるかと思います。そういった意味合いにおきまして、生産者はもとより消費者にもその利益還元をするといったようなことを考えてまいりますと、よくいわれる前近代的な取引条件というものの改善が必要かと思いますので、これにつきましてはいろいろむずかしい問題もございますが、取引改善協議会といったようなものをつくりまして、そこで十分ルールづくりを検討いたしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 最後に、大臣に要望を兼ねた質問を申し上げまして、質問を終わりたいと思うわけです。  一時間以上、この前の質問を加えますと二時間以上繊維問題について質問を続けてまいったわけでありますが、私どもは、この法案が持つ緊急性ないし冒頭申し上げましたとおり、この法律案を早期に成立してもらいたいという多くの方々の要望というものは、身をもってそれらの方々の声を聞く中で知っておるわけであります。しかしながら、先ほど来質疑を続けてきた形の中においてまだまだそれ以上の問題等があるわけでありまして、今日の繊維産業の持つわが国産業に対するその割りから比較いたしますならば、はたしてこれで十分であるかどうかということについて多大な疑問を持つわけであります。しかし、それはそれといたしまして、われわれはこの法案を通じて少しでもよくしたいという願いのもとに審議を続けてきているわけでございまするが、最後に大臣見解をお伺いしたいことは、結局国際競争力をどうやって強化するか、先進国の妨害をどうやってはねのけるか、低開発国の追い上げに対してどう対処するか、今日の不況状況に対してどう取り組むのか、そうして法案の不備をどう妨いでいくのかという形で質問を続けてきたわけであります。そこで、これらの質問の中で大臣の考え方も明らかにされたわけでございまするけれども、今日一番緊急の課題は当面する不況対策であります。総需要抑制という名のもとに引き起こされている今日の不況はやむを得ざる政策としても、繊維産業をはじめ一連の中小企業にとっては重大な悪影響を及ぼしておるわけでございますので、これに対しては、先ほど答弁もございましたけれども、積極的にこれらの層に対して大臣は責任ある、いわゆる有力者ですから、実力通産大臣でございますから、実力大臣という名のもとに閣内にあってそれらの政策転換にどのように取り組まれる決意であるかということをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  90. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業の倒産の計数を調べてみますと、三月になりまして一千件をこしてまいりました。これは過去における不況の中でも深刻な不況に近づいてきつつある証拠であります。四月、五月、六月もその数がふえていくのではないかと心配しておるところであります。この五月、六月ぐらいにかけて谷が来るという危険性がございます。したがいまして、この危機を乗り切れるように十分金融上の対策をしなければならぬ、そういう考えに立って、いま大蔵省と中小企業金融緊急対策という考え方に立って折衝を進めております。先ほど来申し上げましたように、私としては、できるだけ多額の資金を準備しまして、中小企業の皆さんに御心配かけないように、特に一番苦しんでおる繊維関係の皆さんに御心配かけないように努力したいと思います。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 終わります。
  92. 濱野清吾

    濱野委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後二時十二分開議
  93. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  94. 野間友一

    ○野間委員 特繊法の一部改正について質問をいたします。  まず、提案理由によりますと「繊維工業について、その内包している構造上の問題点を早急に解消するとともに、合理的な国際分業を推進し得る十分な競争力を持った発展性のある産業として育成することは国民経済的な要請である」こういうふうに法案を出した理由について述べておるわけですが、ここでまずお伺いしたいのは、ここでいう「構造上の問題点」とはどういうものをさしていっておるのか、お答えをお願いします。
  95. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 構造上の問題は幾つかございますが、代表的なものといたしましては、企業数の過多、企業規模の過小性といった問題がございます。それから川上偏重、量産偏重、輸出偏重といった問題、あるいは特にこの構造改善でねらいといたしております工程分断、したがいまして消費者情報のフィードバックが弱いという点がございます。それから次に、流通段階がきわめて複雑多岐にわたっている。大体代表的な問題点はさようなところにあるかと思います。
  96. 野間友一

    ○野間委員 そこで、いまの指摘があったわけですけれども、企業の過多性あるいは零細性——過多性というのは零細性とは切り離すことはできないものであると思いますけれども、こういうものを解消するためグループ化を進めよう、こういうことになると思うのですね。  それから昨年の十月に出された繊維工業審議会の答申によりますと、これらに加えて加工段階では賃加工の形態が一般的にとられている、こういう指摘があるわけですね。私もそのとおりだと思うのです。この実情に照らして見て考えるならば、繊維構造改善を進める以上、賃加工の圧倒的な部分を占める小零細企業、これらが自主的に経営を安定される、こういうための施策をまず第一に考えなければならない。助成とかあるいは金融上の優遇措置、こういうことを中心として、いま申し上げた零細企業、このものを中心にして考えるべきである、このように私は考えるわけです。  そういう観点からこの法案を見ますと、必ずしもそういうふうにはなっていない、こういわざるを得ないと思うのですけれども、この点について政府はどのように考えておられるのか、お聞かせをお願いします。
  97. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回の構造改善事業計画といたしましては、従来の設備近代化に加えまして、新商品または新技術の開発、いわゆる知識集約化を進めていこう、こういう趣旨でございますが、こういった知識集約化グループにはできるだけ多くの事業者が参加していただくことが最も望ましいわけでございますが、ただいま先生が御指摘になりました小規模零細企業につきましては、その人的あるいは技術的能力に限界がございまして、直ちに構造改善計画を作成いたしまして、これに基づいて知識集約化を進めていくということは、現実問題としてなかなか困難な点もあるかと考えます。さような観点から本法案の第九条に、小規模零細事業に対する特別の配慮を加えることを規定いたしておるわけでございます。  具体的には二つ対策を考えておるわけでございまして、一つは、小規模零細企業設備近代化助成制度でございまして、二つ目は、小規模零細企業に対する技術指導、この二つを柱といたしまして小規模零細企業に対して特段の措置を加えたい、かように考えておるわけでございます。  まず小規模企業に対する設備近代化助成制度でございますが、これは原則的には第四条にいうところの構造改善事業計画を策定いたしまして通産大臣の承認を得たものについてのみ中小企業振興事業団から特別融資を行なうことにいたしておるわけでございますが、現在考えておりますところでは、従業員五人以下の小規模零細企業につきましては、必ずしもさような構造改善事業計画を策定いたさなくても、設備近代化のために必要とする資金を中小企業振興事業団から貸し付けたい、その内容といたしましては、事業規模にいたしまして貸し付け額は七十五億を予定いたしておりまして、金利は二分六厘、貸し付け率は七〇%、さように考えておるわけでございます。  二つ目の技術指導制度でございますが、これはささいな機械の操作ミスかち織りむらができるというふうに、品質管理面からいたしましても必ずしも適切でない点がございますので、たとえば事業協同組合などでそういった小規模事業者に対しまして技術指導をやるという場合に、事業協力を通じまして二分の一の経費補助を行なうということを予定いたしておりまして、予算額としては八千五百万の計上を見ておりますが、二分の一の補助でございますから事業量といたしましてはかれこれ一億七千万くらいになるかと思います。ただ、技術指導の対象事業者といたしましては、いまのところ従業員規模にいたしまして二十人以下という事業者を対象にして技術指導を行ないたい、かように考えておるわけでございます。
  98. 野間友一

    ○野間委員 いまの答弁はたしか九条を中心にやったと思います。  そこで順次、具体的にいろいろ聞いていくわけですが、この特定組合等が構造事業計画をつくる、そして承認を受けるわけですが、このときにつくる計画、これは「基本指針」のいわゆる四項目ですか、三条の二項には「新商品又は新技術の開発に関する事項」云々とあり、これ以降四項目があります。それから五項に「その他」というのがありますけれども、これらすべてを網羅しておらなければ承認を受ける対象にならない、こういうふうになっておるのか。つまりこの三条二項は、ここに定めたものについては必要的な記載事項になっておるのか、あるいはそのうちの一項目でも、たとえば設備近代化等がありますけれども、これらについて充足しておれば、それだけでも承認を受けられる、こういうようなことが前提になっておるのかどうなのか、お聞きをいたします。
  99. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一般的には、構造改善事業計画の中身といたしましては、ただいま御指摘の基本指針の各項目について書くことになるかと思いますが、かりに当該協同組合等におきまして、設備近代化がもう完了しておる、計画のスタート時点において、もう設備はこれ以上近代化する必要がないといったような場合には、その事項について計画を策定する必要はございません。
  100. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、そこでお聞きするわけですが、これは必ずしも必要的な記載事項でないということになるわけですか。これの一つでも充足しておればそれでいいというふうに理解していいのですか。
  101. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 原則といたしましては必要記載事項になるわけでございますが、現実の問題として、ただいま申し上げましたように設備近代化等について完了しておる場合は、その旨付記していただければ、その計画を承認する際にこちらとして確認いたしたい、そういう考え方をとっております。
  102. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、いまの答弁の中では、たとえば設備近代化がすでに済んでおる場合にはこれはやらなくてもいい、しかし原則としては、これらのものを充足しておらなければならない、こういうような趣旨の答弁だと思いますけれども、そこでお伺いしますが、そういうことを前提にした場合に、政府はこの構造改善によって一体どのような計画のイメージと申しますか、そういうものを描いておるのか、具体的に、この構造改善事業によってどのような具体的な計画のイメージを持っておるのか、その点についてひとつお伺いをいたします。
  103. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生の御質問の趣旨は、通産大臣の定める基本指針の内容はいかようなものになるかという御質問かと考えますので、現在考えております基本指針の内容案について申し上げたいと思います。  ただ、その前にお断わりいたしておかなくてはいけないことでございますが、今度の新しい構造改善事業は、繊維工業全体を対象といたしておりますので、この基本指針の内容自体が、ガイドライン的な、あるいは定性的な、抽象的な表現になるかと思います。  基本指針の内容といたしましては、前文といったようなものを置きまして、先ほども話が出ましたように、零細性、工程分断賃加工生産形態、上流偏重、量産偏重、流通経路の迂回性、こういったわが国繊維工業が持っております構造上の問題点をまず示しまして、こういった問題点を解決するためには、現在実施いたしております構造改善では十分問題の解決にならないといったようなことを述べまして、そういった問題点を解決することによりまして、内外需に適応していく体制を確立する必要があるというようなことが書き出しになるかと思います。こういったことを前提といたしまして、「新商品又は新技術の開発」の事項につきましては、消費者情報を適確に収集処理する機能の強化をはかる。高品質製品を開発する機能、技術を開発する機能等を強化する。そのために異業種間で事業者連携をはかること。こういったことが新商品または新技術の開発事項になるかと思います。  それから「設備近代化」につきましては、省力化、合理化、公害防止型機械設備の導入を積極的に行なうと同時に、かような設備の導入にあたりましては、老朽設備の廃棄につとめることとする。  次に「生産又は経営の規模又は方式の適正化」につきましては、事業の共同化等を推進することにより、それぞれの生産品種に応じた生産規模の適正化をはかるとともに、販売力、原材料の購買力、市場開拓力、技術開発力を含めた統合的な企業力の強化、すなわち経営全体の規模の適正化を進める。あるいは、共同事業を行なおうとする異業種の事業者の有する生産設備の種類、能力等との間にバランスがとれている等、生産設備の組み合わせが適切なものであるとともに、共同商品開発研究所の設立、計算事務の共同化、ブランドの統一といった経営の方式についてもその適正化をはかること。  次に「取引関係の改善」につきましては、賃加工形態からの脱却。商品の仕入れ、管理、販売等に関する諸契約の文書化。価格の次定の方法、納品の検査の方法、返品の方法その他の取引条件についての改善。共同購入、共同販売による取引条件改善。  最後に「その他繊維工業構造改善に関する重要事項」といたしましては、労務者の福利厚生施設の充実、給与体系の合理化、雇用条件の改善等の労働者に関する事項、産業公害防止、一般消費者の利益の保護等に関する事項を記載することになるかと思います。
  104. 野間友一

    ○野間委員 いまの一番最後の労働者の問題についてまずお伺いしますけれども、現行法によりますと、十八条の第二項で、「関連労働者の職業の安定につき配慮するものとする。」こういうのがあるわけですが、今度の新法というか、改正法案にはないわけですね。おそらくこれは構造改善ということで、しかも異業種工程間の構造改善ということになりますと、これは企業の合併等々、合理化が出てくるのですね。そうすると、当然にそこから首切りとか人員の縮小、そういうことが問題になってくると思う。いま労働者に関して、三条の二項の五号について何か話がありましたけれども、現行法のこの十八条の二項、これにたぐいするようなものがこの五号の中に入っておるのかどうか、まずその点お聞きしたいと思います。
  105. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在における繊維産業といたしましては、労働者の人員整理といったような問題よりも、むしろ求人難をどう克服していくか、あるいはそういった労働者が、繊維の職場を魅力ある職場として長く定着してくれるかどうかという方向にこそ問題意識がございまして、いわゆる構造改善によって、あるいは工程間の連携をはかるにあたって、人員整理をやるといったようにことは毛頭考えておらないわけでございます。  さようなところから、今回の法案におきましては、労働者の問題につきましては、先ほど申し上げました基本指針の中で、福利厚生施設の充実だとか、あるいは給与体系の合理化あるいは雇用条件の改善といった労働福祉に主として着目をした指導をやっていきたい、かように考えておるわけでございまして、一言で申し上げますと、人員整理といったような問題は全く考えておらない、こういうことでございます。
  106. 野間友一

    ○野間委員 その点についてはまた後ほど質問しますが、いずれにしても、この基本指針を見ますと、これはかなり金のかかる設備が多いと思うのですね。通産省が出しておる生活産業局の新繊維産業構造改善対策、これによりましても、情報センターの設置とか、あるいは開発センター、こういうものが一応想定されておると思うのです。そうだといたしますと、かなり金がかかる。ところで、このような金のかかる大がかりなものをつくる場合に、先ほどの局長の話もありましたけれども、必要資金の三〇%、これについては当然自己資金でまかなわなければならぬ、こういうふうになるわけですね。しかも、これらは当然にその事業に参画した構成員、組合の場合には組合員、これらがそれぞれ負担しなければならない。そういうことになりますと、はたして、いま特に不況もあるわけですけれども、自分のいまの工場の設備資金あるいは運転資金にも非常に事を欠く、こういう小零細というような方々が、このような共同設備の資金負担をして事業の計画に参加するということが可能であるかどうか。これはやはり構造改善ですから、この三条の二項にいうこれらのものをほんとうに充足しようと思えば、かなり金がかかる。これはまねごとであれば全く意味をなさない、こういうことになると思うのですね。それを前提にした場合に三〇%、しかもそこに参画する者は全部自己負担しなければならぬ、こういうことになるわけでしょう。これに対して、おそらく九条の関係でも、参画する者については個別の必要な資金についての融資がない、こういうことになっておりますから、私は非常にこの点について問題だと思うのです。  そこで、そのような構造改善について、いまの小零細企業実態から考えて、三〇%の自己資金を出して、ほんとうに喜んで全員がこのような構造改善に参加するというふうに考えておるのかどうか、もしそうでないとすれば、これらについての資金手当てを十分私は考えていかなければならぬ、このように思いますが、いかがですか。
  107. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 小規模事業者に対しては、金融にかかわらず、できるだけあらゆる面で助成措置を講じていく必要性があるということはわれわれも認識いたしておるわけでございますが、また一方からいたしますと、やはり事業者自身と申しますか、業界自身が自助努力と申しますか、自分の力でやれるだけのことはやるといったような気持ちを持たないと、やはり結果良ということになかなかならないのじゃなかろうか。あらゆる部分につきまして国でまるがかえということであれば、企業家精神というものが全くなくなってしまうおそれもある、かように考えておりまして、ただいまの七〇%の貸し付け比率というのはまだ少ないではないかという御指摘ではございますが、現在までいろいろとられております中小企業業種別振興措置の中でも貸し付け比率が七〇%、あるいは金利が二分六厘といった優遇されたものはないわけでございまして、現在時点では最も優遇度の高い貸し付け措置をとっておるというふうに御理解いただきたいと思います。あとの三〇%の自己資金と申しますか、三〇%は自己調達をしてください、こういう趣旨でございまして、その自己調達を容易ならしめるためには、いろいろな信用保証制度等もあるわけでございますが、さらに本法を施行するにあたりましては、繊維工業構造改善事業協会におきまして債務保証をやることにいたしておりますので、そういった三〇%の自己調達分についても、そういった債務保証を通ずることによって調達も円滑にいくものだと考えております。
  108. 野間友一

    ○野間委員 通産省の資料にもありましたが、この繊維は、ピラミッド形式にずっと下にいくほどすそ野が広がっておるわけでしょう。ここには小規模がずっと密集しておる。今度の構造改善を見ますと、大体末端までとにかく何らかの光を与えるというような趣旨のことがいわれておるわけですね。ところが、いま申し上げたようにすそ野が広がっておって、しかもこの基本指針に基づいてやる場合にはかなりの資金が必要だ。この構造改善について七〇%の融資がある。しかし、これは構造改善そのものに対する融資でありまして、各個別企業に対する融資ではないわけでしょう。しかも三〇%について、参加する組合員が自分で調達しなければならぬ。ですから、いま自分の企業の運転資金やあるいは設備資金にも事を欠いておるという方々が、はたしてそのような構造改善の中で、ほんとうに喜んで三〇%についてこれを出して——これはつまりは自分の運転資金あるいは設備資金のほかに、この構造改善を出すわけでしょう。そういうものをみな出してこの構造改善事業に乗っていける、こういうことを前提として考えておるのかどうか。確かに自助努力とかあるいは自主性とか、それぞれの企業者がそういうような気持ちにならなければならぬというのは、私は当然だと思うのですね。それはそれとしても、いまの七〇%と同じように、安い金利で小規模については貸していく、こういうようなことを私はとってしかるべきだと思うのです。最初に申し上げたように、この構造改善事業は、企業の零細性あるいは過多性あるいは加工工程における賃機、賃加工、こういうような繊維の特性から見たら、私は当然そうしてしかるべきではないか、こういう立場から質問申し上げておるのですけれども、再度答弁を求めたいと思います。
  109. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 いわゆる第九条にいうところの小規模零細事業者に限って申し上げますと、これは先ほど申し上げましたように、直ちに本格的な構造改善と申しますか、知識集約化グループの形成が困難である人ということからいたしまして、一般の中小企業と違いまして構造改善事業計画をつくらなくてもよろしい、ただ現実問題として、二、三の人と語らって共同施設を持つ、あるいは共同販売事業をやるといったようなグルーピングヘのワンステップというものは踏み出していただきたいとは考えておりますが、本格的な構造改善事業計画を持って、本格的に知識集約化に取り組んでくださいというには、現実論としてなかなかむずかしいものでございますから、そういった過程に至る前段階として設備近代化のための資金を助成しよう、こういうことでございますので、基本指針あるいは構造改善事業計画に一般に羅列されるような事業を同時並行的に進めるということにはならないのではなかろうかと思います。そういった意味合いにおきまして、御指摘の趣旨もわかるわけでございますが、少なくとも三割は債務保証を背景にして自己調達をしていただくということで、漸進的に企業の体質を改善して、将来みずからも知識集約化グループを形成し得るように持っていきたいという、漸進的措置として考えておるわけでございます。
  110. 野間友一

    ○野間委員 確かに九条は、この法律でいう構造改善事業に乗っかれない人たちに対する配慮ということなんですね。ところが私が申し上げておるのは、これはこれで当然こういう措置をしなければならぬ。同時に、それぞれが構造改善をやる組織の、組合の構成員がずいぶんあるわけでしょう。一つの組織の中で、末端までずっと零細なすそ野が広がっておる。そういう組織が、これは組織ですから、多数決でもってそういう構造改善事業をやっていこうと、こうきめるわけでしょう。きめた場合には、それについていけない者は組合を脱退する以外にないわけですよ。組合を脱退せずに、これはいいものだから一緒にやっていこうとした場合に、しかもなおかつ自分の企業の零細性からして、なかなか自分で資金の調達ができない、こういう者がずいぶん出てくるわけですね。そういう場合には、それじゃ九条があるから、組合から脱退してお前らこれでやっていけ、ここでひとつ基盤を築いて、それから構造改善に乗っていけるようなそういう情勢がかもし出されれば、そこでひとつ今度はその段階でやったらいいのではないかということになるのは、私は乱暴だと思うのです。やはりあくまで一つの組織がそういうことをやっていくとした場合には、末端の全員が喜んでやっていくというようなことを考えた場合に、その九条によって、構造改善事業に乗っていく者も乗っていかない者も一これは乗っていかない者に対する配慮ですが、乗っていく者に対しても当然配慮をして、そして喜んでみんなが構造改善事業をやっていく、そういうような方向にやはりするべきではないか。そういう意味において、私は、その乗っていく場合の小零細に対する手当て、自己資金の三 〇%を特利で、七〇%と同じような金利で貸して、そして乗っかれるようにするべきではないか。ですから、九条はそれによって区別する必要はないのだ、むしろ区別すべきではない、これが私の意見なんですが、いかがですか。
  111. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 本来、先ほど来申し上げております小規模企業設備近代化融資制度というのは、新しい構造改善に直ちに入り得ないようなものについて考えておるわけでございますが、そういった組合に入っておりまして、構造改善事業に直接参加できる事業者であれば、その中で設備近代化事業の一環として中小企業振興事業団の融資を受ければいいわけでございますが、ただ問題なのは、形式的に組合に入っておるわけですが、たとえば非常に広域性のために、組合には参加いたしておりますが、組合としての構革事業に現実には参加し得てないような小規模零細企業もあるかと思います。そういった場合には、組合に入っておっても、九条にいうところの小規模事業者に対する近代化資金助成制度の対象にして、資金の借り入れができるように弾力的に運用してまいりたいと考えております。
  112. 野間友一

    ○野間委員 ちょっとその意味がわかりかねるのですけれどもね。組織全体で構造改善をやっていこう、そうしますと、これはそれぞれの資金について、それぞれの各個の構成員に対して負担があるわけでしょう。全体で七〇%確かに出ますね。ところが三〇%どう調達するか、これは事業の規模とかいろいろなものによってそれぞれの傘下の組合員に割り当てるわけでしょう。その場合に、組合そのものが多数決できめたわけですから、それに乗っかっていかなければならない。しかし金がない。そうしますと、組合から離脱する以外にないわけでしょう。離脱せずにやはり一緒にやっていきたい、しかも政府はこういう法律で構造改善事業をやって、そうして異業種工程構造改善をやっていこう、なるほどそれは趣旨はいい、じゃそれに乗っかっていきたい、しかし金がない、こういう場合に、全部が乗っていけるように、一つの組合の構成員全部が乗っていけるように、そういう手当てをするのが政治じゃないか、こう私は思うわけですね。ですから、九条でそういう乗っかっていくかどうかという区別をせずに、やはり特別の手当てを零細企業にはするべきではないか、こういうことなんです。そうでなかったら、要するに組合から離脱する以外にないじゃないでしょうか。離脱して九条で配慮を求めていく、こういう以外にないじゃないかと思うのですが、どうですか。
  113. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 組合等におきまして、三割の自己調達分につきましては、借り入れによる場合あるいは一部を組合員の拠出金に仰ぐ場合、いろいろなケースがあるかと思います。そういった場合、御指摘のような小規模零細企業につきまして、拠出金をなかなか出し得ないといったようなものにつきましては、あるいは国民金融公庫等によってその拠出金についてもお手伝いする必要があるかと考えます。組合全体として借り受ける場合には、これは直接その問題は出てこないかと思います。
  114. 野間友一

    ○野間委員 非常につっけんどんな御答弁なのですが、明らかに各個別の組合員、つまり事業者が賦課金を納めるということがこの法案の中でも前提になるわけでしょう。四条ですね。四条の四項の四号に「必要な試験研究費に充てるため組合員に対し負担金の賦課」「その賦課の基準」それからその前三号ですね。「必要な資金の額及びその調達方法」これは確かに組合全体として借りる場合ももちろんありますね。その場合でも、各個の組合員がその一定部分を負担しなければならぬ。同時に各個に対して、それぞれの資金の必要量について割り当てをして、それを調達をさせていくということだって組合の中できめるわけですから、これは法律できめるものじゃないわけですね。ですからそういう場合、いま国公の話がありましたけれども、言ってみれば、高い金利でも、とにかくそれに乗っかっていきたければ、どこでも借りてとにかく乗っかっていけということに私はなると思うのですね。ですから、特段にこういう方々に対しては、七〇%といわずに一定の基準をきめてもいいと思うのです。事業規模によって、やはり特利でこれに乗っかっていく、そういうふうにすべきじゃないか。具体的にその法制上の問題としては、九条で、構造改善に乗っていくの有無を問わず、特別の配慮をするというかっこうでやはり救済していくというのが筋じゃないか、こういう質問なんです。
  115. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、金利が二分六厘で貸し付け比率が七〇%というのは、全く従来の中小企業対策といたしましても前例のないきわめて優遇された資金融通でございますので、御趣旨のほどわからないわけではございませんが、現にこの七〇%の貸し付け、二分六厘の金利を維持するためにも非常にむずかしい交渉を重ねてきておるわけでございまして、御指摘のように、一〇〇%までということになりますと、なかなか実現の可能性という点においてむずかしい点が多々あるわけでございます。さようなところから、振興事業団の融資といたしましては七割で、あとの三割の調達について、こちらが側面的に、あるいは債務保証を通じてお手伝いをするというのが現在時点における限界ではなかろうか、かように考えておるわけであります。
  116. 野間友一

    ○野間委員 だから限界と言われるならわかるのですよ。趣旨はわかるけれども限界がある。だからその限界をやっぱり取っ払うべきである。だから大蔵省と折衝して当然そういう手当てをするべきだと思うのです。  そこで九条について聞きますけれども、この「資金の確保又はその融通のあっせん」云々「繊維業者に対し特別の配慮をするものとする。」この「特別の配慮」について具体的にいま考えておられるのはどういうことですか。
  117. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず資金融通について申し上げますと、先ほどもお答えしたことでございますが、原則としては、第四条の構造改善事業計画を策定し、これを通産大臣の承認を受けたものに限り、中小企業振興事業団から特別融資をすることにいたしておるわけでございますが、小規模零細事業者に対しましては、さような構造改善事業計画を策定いたさなくとも振興事業団の融資対象にするということでございますし、かたがた技術指導につきましては、これは従業員規模二十人以下のものを予定いたしておりますが、事業協会を通じまして、そういった技術指導に要する経費の二分の一を助成するというところに特段の配慮ということを具体化いたしておるわけでございます。
  118. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、この場合の金利は二・六%でいいんでしょうか。その点が第一点。  それから次は、いまがんとして三〇%についてはぐあい悪いという話ですけれども、その場合には国公なり政府系の金融機関、ここから特別にそういう構造改善に乗っかっていく特別零細企業、これに対する融資、金融については行政指導で特別に配慮する、そういう方向行政指導するかどうか、その二点についてお答え願いたいと思います。
  119. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 金利につきましては、御指摘のとおり二・六%でございます。  それから三〇%の調達につきましては、必ずしも政府金融機関にかかわらず債務保証をつけておるわけでございますから、民間金融機関からも調達できるわけでございますから、いずれにいたしましても、そういった三〇%の自己調達分につきましては、当方としても前向きに協力するつもりでございます。
  120. 野間友一

    ○野間委員 それから九条の関係でもう一つお聞きしたいのは、この必要な資金の確保あるいは融通のあっせん、これについては、具体的にどの程度の事業者当たりのワクを考えておられるのか、その点について、もしいま前提として考えておればひとつお答え願いたいと思うのです。
  121. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 個別業種ごとのワクというものは考えておりませんが、トータルといたしまして事業規模は七十五億ということになっております。
  122. 野間友一

    ○野間委員 えらいこだわるようですけれども、その七十五億の算定の基礎ですね、たとえばいま業者が幾らあって、乗っかっていけるものは何ぼで、乗っかっていけないものは何ぼと、そういう想定でこういう金額をはじき出しておるのか、あるいは大蔵省と折衝して、そうして大根切りで、まあこの程度でやむを得ないだろうというようなことでこの金額をはじき出しておられるのか、どうですか。
  123. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 必ずしも明確な算定根拠の結果、七十五億をはじき出したわけでございませんで、初年度といたしまして、事業団による融資規模が事業ベースで三百二十二億になっておりますので、その内数として七十五億をイヤマークしたということでございます。
  124. 野間友一

    ○野間委員 それではまた別の質問を続けますけれども、いまの小規模事業者実態、これは先ほどからも話があったわけですけれども、たいへんな深刻な事態でしょう。私は別珍とか、コールテン、これらについてその業者からも聞いていろいろ調査もしたわけですけれども、これは田口さんのところにもおじやましたのですけれども、大体静岡で約一〇〇%、天龍社産地といわれておりますけれども、ここで生産されておる。この業界が現在一体どのような状態にあるのか、特に四月に入ってから、その生産状況あるいは工賃、こういうような実態について知っておるかどうか。つまりこのような零細ですね、こういういま置かれた業者実態を踏まえて、ほんとうに構造改善に全部乗っかっていける、こういうようなことで、自信を持ってやっておるのかどうかということの前提として、いまどのような実情にあるのか、ひとつ知っておるとすればここで答弁を願いたいと思います。
  125. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず別珍、コールテンの生産数量でございますが、別珍は、四十八年におきまして千六百万平米、コールテンは四千四百七十二万平米でございます。年間を通じてはかような数字でございますが、特に昨年の秋以降、生産量が二、三割方ずつ減少してきております。輸出状況について申し上げますと、別珍につきましては、四十八年の輸出量は三百十八万六千平米、四十七年が約八百六十万平米でございますからかなりの減少になっております。コールテンにつきましては、四十八年の輸出量が二千四百四十万平米、四十七年の四千百八十万平米に比べまして四割方減少いたしておる、かような状況でございます。  別珍、コールテンについて御指摘がございましたので、天龍社の事情について申し述べたわけでございますが、やはり新しい構造改善に取り組むためには、どうしても当面の不況を克服する必要がある。その不況を克服しないと新しい構造改善に取り組めないということで、私たちといたしましても、先日の年度末融資につきましても、繊維産業に対して重点的に緊急融資をお願いしたわけでございますが、当面この主力の金融につきましても、関係の省庁と現在詰めを行なっておるわけでございます。  いずれにいたしましても、政府三機関あるいはその他の民間金融機関の資金をできるだけ繊維産業、特に中小零細企業に確保できるようにいたしまして、この新しい構造改善事業を十分に進め得るような素地をやはりつくっていくべきだと認識いたしております。
  126. 野間友一

    ○野間委員 いま実質的に生産調整をやっておるでしょう。これは四月から操短して週休二日、しかも別珍、コールテンを織る場合、これは登録制を自主的にしきまして、三カ月ごとに組合員から申請を受け、それから検査証を発行しておる、これがないと出荷ができない、こういうことで、ほんとうに天龍社の産地の皆さんは苦境におちいっておる。しかも工賃を調べてみますと、別珍について、去年の七月には工賃が反当たり二千六百円から三千円、これがことしの三月では同じく反当たり千円から千百円、つまり約三分の一に減っておるわけですね。雑綿についても同様で、昨年の七月にメートル当たり七十八円、がこれがいまでは三十円なんですね。これは三八%になっておるわけです。このようにして、みずから織ることによって喜びを感ずる業者が、みずから生産調整をして、そうしてこの生産を減らしていく。しかも、いま申し上げたように、工賃がもうべらぼうに下がっておる、こういう実態なんですね。こういう実情について十分に知っておられるかどうか。私どもが調査を依頼した磐田というところに民主商工会があるのですが、ここのアンケートの調査によりますと一機械の保散歩口数が十台から十五台、この賃機の三月の状況を見てみますと、一業者当たり工賃収入が十万から三十万、そこで赤字が十二万から二十万、毎月これだけこれからかさんでいく、こういうのが実態なんですね。いま融資の話がありましたけれども、その融資の前提として、こういう苦境に立っておる。しかも、これはまじめ産地なんですよ。通産省、口を聞けば言うわけですけれども。ここでこのようなひどい実態の中で暮らしておるという事実は知っておられるのかどうか、ひとつ答えてください。
  127. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のような事実についても十分承知いたしております。
  128. 野間友一

    ○野間委員 しかも、この中で休業届けが約数十件この産地で出されておるというのが実態なんです。こういう中で、三月二十日には磐田郡の福田で、ここの賃機業者、堀内正行さんという三十九歳の方が自殺をされた。とうとい命をみずから断った、こういう不幸な事態を招くに至っておるわけです。これについて地元の新聞等で報道されておりますけれども、これは皆さん御承知だと思うのですが、天龍社はいま申し上げたように、四十二年に特繊法の適用をまっ先に受けた組合ですね。こういうまじめ産地、特繊法に基づいて、一生懸命構造改善の実をあげるために奮闘してきたこの産地の中で、とうとい命まで断たなければならない、これが実態なんですね。しかも、これらについて新聞等の報道によりますと、これは不況のためだ、こういうようなことが原因として報道されておるわけです。このことから考えて、今日まで現行の特繊法に基いて構造改善を進めてきた、またこれが実があがっていたんだ、これはりっぱなものなんだ、こういうようにいままで言ってきたわけですけれども、こういうとうとい命を断つ、しかも数十件がこのまじめ産地において体業におとしいれられておる、しかもいま申し上げたような生産調整をやり、また工賃が三分の一に切り下げられておる、こういう実態、これについて政府は一体どういうふうにお考えになるのか、これは通産大臣からひとつ御答弁を求めます。
  129. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 天龍社の状況は私もよく知っております。あなたもおっしゃっるとおりまじめ産地で、非常に政府の仕事に対して協力をしてくだすったところであり、われわれもその代表者にも会いまして感謝をしておるところであります。そういうところで、そういうようなことが起きておるということはまことに痛わしいことでありますが、政府としても、そういうようなまじめ産地が、正直者がばかをみないようにということを言ってきたことでもあり、今回の法律の適用、あるいは中小企業に対する不況対策等については、金融そのほかの面において特に考えさせていただかなければならない、そう思っております。
  130. 野間友一

    ○野間委員 ここでの要求は、操業短縮、これの補償、それから最低工賃の確立、それからすでに借りておる融資の返済の一時たな上げ、それから大企業——メーカー、商社ですね、これらの在庫の一時凍結、こういうことを強く要求しておるわけですね。この間も、通産省に参りまして田口課長に会いまして、その点について強く要求をしたのです。  さらにもう一つは、またあとで触れますけれども、輸出関税の引き下げですね、こういうものを強く求めておる。しかもこれは、くどいようですけれども、ほんとうに、いま大臣も言われましたが、まじめ産地として一生懸命政府施策に協力してきた産地の中で、こういう苦境の中で暮らしているということで、これはいままでの繊維産業がどういう結果をもたらしたかということについての一つの回答が出た、こういうふうに私は考えざるを得ないわけです。  そこで、もとに戻るわけですけれども、こういうようなのが小規模零細の実態であるとすれば、先ほども指摘申し上げたように赤字が毎月十二万から二十万出ておるというのが現状なんです。そういうものを踏まえた場合に、先ほど局長は三〇%、これはみずから努力して国金でもどこでも借りてこい、借りてきて乗ればいいじゃないか、こういうふうに口では簡単に言われるけれども、ほんとうに大がかりな構造改善をやる場合に、これに実際に乗っかっていくという場合に、血のにじむような金なんですよ。ですから、私はやはりこういう実態を踏まえて考えた場合には、当然に安い金利で、いま二・六%という話がありましたけれども、それで貸しても決してばちが当たらない。しかも、これは私は当然のことだと思うのです。それでもなおかつそういうことについてはもう聞く耳を持たないということなのか、あるいはほんとうに積極的にそういう実態を踏まえて、何とか立っていけるように積極的に努力していきたい、こういうことを考えておられるのか、再度ひとつこの実態を踏まえた上で答弁を求めます。
  131. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘の天龍社の問題につきましては、いわゆる総需要抑制策あるいは金融引き締めの影響といった一般繊維産業が受けている影響に加えまして、アメリカにおけるコールテン、別珍等の需要が非常に減退してきたということも、先ほど御指摘のありましたような原因を来たしておるのではなかろうかと思います。したがいまして、いわゆるまじめ産地としてやってまいりました天龍社の実情に即しまして対策を別途検討いたしたいと思いますが、先ほど来お話が出ております三〇%の自己調達の問題につきましては、できるものなら、私たちの立場といたしましても貸し付け比率を上げていきたいという気持ちももちろんあるわけでございますが、何せ二分六厘の特利で十二年ないし十五年の長期にわたって資金融通を行なうといったようなことから、なかなかその財源等との見合いもございまして、御趣旨ではございますが、七〇%の壁を破るということは非常にむずかしいかと思います。私といたしましても努力はいたしてはみますが、なかなか容易に達成できる問題ではないと考えております。したがいまして、個別の問題につきましては、その立場に立ってわれわれといたしましてもできるだけのお手伝いをさせていただきたい、かように考えております。
  132. 野間友一

    ○野間委員 関連してもう一つお聞きするのは、この四条の第五項「承認の申請があった場合において、その構造改善事業計画が次の各号に該当するものであると認めるときは、その承認をするものとする。」一、二、三、こうあるわけですけれども、先ほどから申し上げておるように、構造改善によってかなりの金がかかる。そして小規模零細に乗っていく、そういう方々が非常に負担がかかり過ぎる、そういうようなことが当然予測されるわけですけれども、そういう場合に、小規模企業の経営者の経営を圧迫しないような具体的な計画、先ほど申し上げたように資金の額、調達方法あるいは試験研究費のための負担金の賦課、こういうものは当然前提になっておるわけですから、当然かかってくる。しかも、これらは具体的にこの計画書の中に書いて出すわけですね。その場合に、いま申し上げたように、この小規模企業者の経営を圧迫しない、そういうような計画が組まれておるかどうかですね。これをひとつ、縛りをかけると申しますか、ここでひとつ歯どめをして、そのような計画であればこれを承認しない、こういうふうにやはり一項目加えるべき必要があるのではないか、こういうふうに思うのです。特にこの五項の三号でるる申し上げておるように、組合の構成員の大部分が参加すれば、これはいいわけですね。ですから、大部分といいますとこれはどの程度か、これもひとつお聞きするわけですが、三分の二程度を考えておるのか。いずれにしたって、そうであれば三分の一が残るわけですね。こういうものについて、実際、経営を圧迫しない、そういうような計画でなければ承認しない、こういう縛りがやはり国がいま抜本的にこの構造改善を進めていくというような立場に立った限り必要なのではないか、そういう一項目を設けて縛りをかける必要があるのではないか、このように私は考えるわけです。いかがですか。
  133. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点は、五項の第一号に「基本指針に照らして適切なものであること。」という表現をとっております。したがいまして、基本指針の中にそういった零細企業の圧迫にならないようにといったような条項を入れることによりまして、具体的な計画を審査する段階において十分チェックできるかと考えます。
  134. 野間友一

    ○野間委員 しかし、基本指針の中にはそれはないのでしょう。小規模企業者の出資なり賦課の負担についての規定は何にもないわけでしょう。これは必要な記載事項じゃないでしょう。これは何を根拠にしてそういうふうに言われるのですか、どうなんですか。
  135. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど、現在段階における案文としては、基本指針の内容について概括申し上げたわけでございますが、第三条の第二項第五号に「その他繊維工業構造改善に関する重要事項」という事項がございますので、この第五号として書き加えたいと思います。
  136. 野間友一

    ○野間委員 その点については、特にここで答弁されたわけですから、それを基本指針の中に加えるということを確認して、それで次に質問を進めたいと思います。  今度は、その零細企業の計画参加、これとは逆に大企業あるいは中堅企業、これらの参加についてお伺いをしたいと思うのです。  大企業とかあるいは中堅企業、インテグレーションの問題をこれからまた少し申し上げたいと思うのですが、これらの参加ですね、参加した事業計画、これは一体承認するのかしないのか、いかがですかね。もし承認しないとすれば、それではどの条文に基づいてチェックしていくのか、この点について答弁を求めます。
  137. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回の構造改善事業法のねらいといたしましては、いわゆる知識集約化グループなるものを大企業はみずから進めておるケースがある。それに対しまして、中小企業を主といたしまして、一部中堅企業知識集約化を推進していきたいというのがねらいでございまして、したがいまして、御指摘の大企業等につきましては、これは実質大企業のダミー的なものも含みまして助成の対象とする考えは持っておりません。ただ、そういった大企業知識集約化グループに参加するかどうかという点につきましては、参加がすべて悪いということは言い切れないのではなかろうかと思います。問題は、大企業が入ることによりまして系列支配が強化される、あるいは自分のグループという形で運用される点に問題があるわけでございまして、ある場合には大企業の持つメリットをたとえば新商品の開発といったような面におきまして大きくメリットをもたらすこともあり得るわけでございます。したがいまして、一がいに大企業の参加は否定するという立場はとっておらないわけでございます。むしろそういった大企業が参加することによってマイナス面、特に現象的には取引条件が不当化される、不当な取引条件中小企業者に強制するといったようなことになると、これは問題でございますので、そういった点については十二分に注意していきたいと思います。その場合、どこの段階でチェックするかというお話でございますが、構造改善事業計画の内容として、さような大企業との資本関係、人的関係といったようなものを記載させまして、その内容によってチェックしてまいりたいと考えております。
  138. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、大企業が計画に参加することについて、これは一切認めないというのじゃなくて、大企業そのものが参加することによって一定のメリットはあるんだ、だから参加したものについてもそれは認める、そういう方向なんでしょうか。
  139. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 必ず認めるということを申し上げておるわけでございませんで、ケース・バイ・ケースに内容を判断していきたい、こういうことでございます。
  140. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ具体的にその判断をする基準ですね、これは判断基準が法律にはないわけでしょう。どのようにしばりをかけていくのか。もしそういうように適正にしばりをかけるとすれば、その一定の基準を法律で設けるべき必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのです。なぜ基準を設けないのか、これはたいへん問題だと思うのです。  それから特に大企業と同時に、系列会社あるいはダミー、こういうものを使って入った場合に、これは実際外からなかなかわかりにくい、こういう場合がずいぶんあると思うのです。大企業がそのダミーを使ってこういう計画に参加するという場合には一体どうするのか、これについても法律では全く触れられていない。先ほど大企業を判断するという話がありましたけれども、こういうような場合にはどういうように考えておるのか、お答えを求めます。
  141. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 基準についてお答えいたします前に、先ほど構造改善事業計画の内容としてまず把握すると申し上げたわけでございますが、その内容の一つといたしまして参加事業者に関する事項、この中で参加事業者の資本金の出資先、役員について大企業からの派遣状況、大企業からの融資割合、その他参加事業者数あるいは参加事業者生産量または生産額、あるいは参加事業者の現在の保有設備状況、こういったものを計画の内容として書かせることにいたしておるわけでございます。その場合に、いわゆる判断基準でございますが、大企業との関係となりますと、人的面、資本面あるいは資金面、いろいろな面がございまして、一律的にどこまでが是、どこまでが不可という判断は非常にむずかしいかと思いますが、われわれとしては、本法が施行される段階におきましていわゆる実施要領といったようなものを策定いたす準備を進めておるわけでございます。そういった実施要領の中に、大企業あるいはその大企業の実質的ダミーと目されるものにつきましては助成の対象といたさないといった抽象度の高い表現になるかと思いますが、そういった条項を実施要領の中に盛り込みまして、現実問題としてチェックしていきたい、かように考えておるわけでございます。  かたがた、先ほど申し上げましたような計画の内容をチェックする段階におきまして、大企業の支配力の強化、現象的には取引条件の悪化といったようなことで出てくるかと思いますが、そういった点を十分チェックいたしますと同時に、一たん承認されたあと不当な取引条件になるようなこともあり得るかと思います。そういった場合にも、その後の状況を注視いたしまして、本法案の第八条に基づきます大臣指導、助言を行なう。それにあえて従わない場合には、第五条第二項の規定に基づきまして計画の承認も取り消すというような形で大企業支配なるものをチェックしていきたいと考えております。
  142. 野間友一

    ○野間委員 私は、やはりそれは非常に甘いと思うのですが、いずれにしてもやはり法律で基準を明確にする、こういうことでなければ、いま言われるように大企業あるいはそのダミーを使って、そして企業が系列支配をしていくことを歯どめすることはできない。とりわけ、いまの身がわり、系列会社あるいはダミー等についてはなかなか外からわからない、こういう実態から考えても、やはり具体的にその基準を設けて、そしてそこでチェックしていく、そういう方法をとらなければ、いまの運用上の問題でまかしていい問題では決してない、このように私は考えるわけです。  時間の関係で次に進みますけれども、特に答申の中でも系列支配の問題については触れておるわけですね。九五ページですね。「一部の原糸メーカーや総合商社は、ファッション産業など川下への指向を強め、」これは「一部」と書いてありますが、大部分だと思いますね。「自ら情報収集、分析、商品企画および宣伝を行なうとともに、」云々、ここでもうちゃんと答申の中でも「川下への指向を強め、」そういう指摘がしてあるわけです。さらにこれは繊維月報に日本大学の藤井先生が「日本繊維産業の軌跡と現状」というのを書いておられます。これは「七〇年代の繊維産業政策のあり方をめぐって」という特集の中で書いておられるわけですけれども、この答申と同じような指摘がしてあるわけです。「「ダウンストリーム」(川下作戦)と称する方法によって、こうした繊維業種の垂直的支配に乗り出してきた。」これは繊維独占各メーカーですね。ここでは具体的に帝人の例とか、川下委員会までつくって垂直的支配に乗り出しているという具体的な事例の指摘があるわけです。あと三井物産とかありますけれども、こういうようにしてかなり大がかりに、この法律の有無にかかわらず、すでにこの系列支配がいま始まっており、これはしかも一そう川下に向かって強化されておるというのが現状なんですね。このことはいま申し上げた答申の中でも一部指摘がしてある。そういう点から考えて、私はやはりこれらに対してほんとうにきびしい縛りをかけなければ、結局国の費用によって異業種工程間の近代化構造改善、これがなされても、これは独占メーカーあるいは商社のえじきにされるということを歯どめする何の保障もない、こう考えざるを得ないと思うのです。これらについて、それじゃこういう保障があるんだということがあればひとつここでお聞かせ願いたいと思います。
  143. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 やはり基本指針に照らして提出された構造改善事業計画の適否を判断する場合に、通産大臣が判断することになるかと思います。あわせまして、第八条で指導、助言の規定もございますし、先ほど申し上げましたように、五条第二項の規定によって、いかがわしいものについては承認を取り消すといったような規定もございますので、そういった点から御指摘のような事態に立ち至らないように慎重に取り扱ってまいりたいと考えます。
  144. 野間友一

    ○野間委員 すでに立ち至っておるのですけれども、現状を踏まえていまのままならいいとお考えなのか、いまの状態なら大企業あるいは商社が入っても差しつかえないという判断に立っておるのか、あるいはいまの実態の中で、今度のこの法律を適用する場合には、これらは当然チェックしていくのがたくさんある、そういう判断をしておるのか、現状認識の点についてひとつお聞かせください。
  145. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になっておりますように、現在一部の大手企業等につきましては、グルーピングと申しますか、系列化を進めておるわけでございますが、これについては、いまのところは、われわれとしては手の打ちようがないわけでございます。ただ、現在考えております知識集約化の育成ということは、そういった大企業方向に対応いたしまして、と申しますか、これに対抗力をつける意味合いにおきまして中小企業グループというものを育てていきたいという趣旨に立っておるわけでございますから、たとえ結果的にせよ、構造改善事業計画の推進の過程におきまして大企業支配的なものが実現するといったようなことは、厳にわれわれとしてもとるべきところではございませんし、もともとそういった自然発生的と申しますか、自力でやっておる大企業グループに対する対抗力をつけ、あわせて知識集約化方向づけをしていくという立場に立っておるわけでございますから、さようなことのないように、法の厳正な運用につとめてまいりたい、こういうことでございます。
  146. 野間友一

    ○野間委員 何度も言っておりますように、運用でなくて、これは中小企業繊維業者を育成強化するというものであれば、なぜそういうふうに法律で歯どめ、基準を設けないのか、その点、行政上のいろんな運用上の問題でいわれるわけですけれども、それでは不十分である、こう私はいわざるを得ないと思うのです。  そこで、質問を続けるわけですが、この答申の中で、さらに「加工工程間に、商社および問屋が介在し、各工程が主として賃加工ないしは下請関係で結ばれている」こういう指摘、これは八〇ページです。あるいは「加工工程間にも多くの商社や卸売商が介在している点は繊維産業流通構造の大きな特徴である。」八二ページ、こういうふうにいっておる。大手商社繊維流通のあらゆる段階に介在しておることはもはや常識なんですね。法案では、縦のグループ化をはかる場合に、流通業も決して排除はしていないで、これも一緒にやっていく。そうなりますと、商社も参加できることになるわけですね。先ほどもるる言っておりますように、この大商社あるいは系列会社、ダミー、これらがそれぞれのグルーピングの中心になるおそれが十分ある。  そこで、その関係でここで聞きたいのは、原料面でのシェアが、この羊毛あるいは綿花、この輸入の点について、十大商社輸入量の総輸入量に占める割合あるいは合繊原料、いわゆる合繊七社、これは東レ、帝人等々ですね、これらの全生産量に占める割合は一体どのくらいなのか、これは時間の関係でこちらから申し上げたいと思います。これは通産省の調べでも、四十七年度羊毛綿花等の輸入について、十大商社羊毛の約九〇%、綿花の約八〇%、それから合繊原料ですね。合繊七社、長繊維が約七五%、フィラメントですね。短いのが約七〇%を占めておる。これは通産省の調べですから間違いはないと思うのです。まずその点についての確認を求めます。
  147. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 四十七年一−十二月については、ただいま御指摘のとおりでございます。
  148. 野間友一

    ○野間委員 結局、そういう点から考えますと、合繊あるいは天然原料、こういう原料については、大手の合繊メーカーあるいは大商社、これらの独占下にあるわけですね。そして一方では、先ほど申し上げたように、これは答申にも指摘がありますけれども、大手繊維メーカーとか、あるいは大きな商社の系列化が現に進行しておるという実態、さらにこれも先ほどから申し上げておるように、この法案にはこれらの合繊あるいは商社が参加をするということについて、これを規制する保障が全くない、運用にまかされておる、これが実態だと思うのです。こう並べて考えた場合に、その大商社あるいは大企業、これらがわが意を得たりとばかりに、この法律に基づいてつくられた、せっかく政府は主観的にいろいろ中小零細企業繊維の経営の安定ということを考えておる、こういうふうに言われるわけですけれども、そうであっても、これはまるごと支配するということが当然出てくると私は思うのです。そういうようなことを考えた場合に、先ほど局長の答弁の中ではケース・バイ・ケースと申しますか、これはグルーピング化の中で中小企業を育てるために、大企業が入ってもいい場合がある、こういう話もあったわけですね。これは、実際通産省からのヒヤリングで聞いた場合には、そういうものは参加させません。認めません。そういうヒヤリングを受けたわけですが、先ほどの局長の答弁は決してそうじゃなかった。それが突破口になりまして、いま申し上げたようなわれわれが抱く疑念、疑惑ですね。こういうところが突破口になって、そしてまるごと支配するということをどこでどう歯どめするのか、これは私は歯どめをする保障がないと思うのです。この法案の中でやはりこれらの歯どめをかけなければ、政府がかりに意図しておっても、これは中小零細の繊維業者の利益には決してなり得ない、こう私は考えざるを得ないと思う。  さらに続けますけれども、化繊協会というのがありますね。これが去年の六月に、「繊維産業のビジョンと施策に対する基本的考え方」という文書を出しております。この内容を見てみますと、その後十月に出された、先ほどから指摘しておる答申、これと内容についてほとんど同じなんですね。つまり、化繊協会が出した基本的な考え方を受けて繊維工業審議会の答申が出された。これは時期的にはそうなるわけです。しかも内容が全く同一である。しかも、この化繊協会は、大手の繊維企業の協議機関であることは御承知のとおりなんです。そうしますと、この化繊協会のビジョンとこの答申の内容が全く同じである、しかもこの法案そのものは答申を受けてやって、答申の内容はこの法案の中に出ておるわけですが、そういうことから考えますと、これは大手の繊維企業、これらのねらい、あるいは目的、方針、これらがそのまま法案の中に取り入れられておる、こう言っても過言ではなかろうと思うのです。  そこで最初にお聞きするわけですが、この化繊協会のいま指摘した文書ですね、これについてはすでに御承知だと思いますけれども、いかがでしょう。
  149. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま手元にございませんが、担当の課のほうには提出されておるようでございます。
  150. 野間友一

    ○野間委員 いま指摘した「十年後の繊維産業」と題するこの文書、いま申し上げたように大企業の希望あるいはこれからとろうとする行動、これが正直に述べられておるわけです。少し引用してみますと、おもしろいのは、一つは、今日まで政府がとってきた繊維構造改善事業に対してこれは批判しているわけですね。こういうのがあります。「現在中小企業の安定対策として施策の基本となっている設備登録制」、これは無籍の問題ですね。「無籍設備の存在など制度的にも破綻をみせる一方、海外加工能力の活用が活発化して実質的にはその安定効果が薄れつつあり、反面大型供給システム確立のための資本集約化にとって阻害要因ともなっている現状にあるので、かかる制度に基礎を置いた行政施策は早い機会に転換されるべきである。」こういうふうにちゃんと今日までの政府がとってきた構造改善、現行の特繊法に基づく繊維施策、これについて早い機会に転換されるべきである。御丁寧にもここまで指摘がされているわけです。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕 そして、「繊維加工業の資本集約化と専門化を進めるためには、企業の自主責任体制のもとに業界が再編成されることが必要であり、政府は金融、税制等側面からの支援に施策の重点を移すべきである。」、それから「産地の垂直的再編成と生産機能、流通機能の有機的統合が促進される必要がある。」これが指摘した一、二の例ですけれども、それから、いみじくもこういうことが書いてあるのです。これは六十五ページのところですが、早くこの法案をつくれ、あとはわしらにまかせと言わんばかりのことが書いてあるのです。こうです。「化繊業界としては、高次加工分野における企業資本集約化近代化を期待しこれを支援するとともに、自力でコンバーター機能の強化を図る企業に対し側面から協力する。また、物的流通合理化のためには、産地の垂直的再編成、加工団地、物流センターなどの発展が望ましく、化繊業界としてもこれらに対し側面的な支援に努める。」、こういうふうに書いてあるわけですね。つまり現況の繊維産業実態の中で、すでに大手の合繊メーカーあるいは商社が入って系列化している。さらに今後の進むべき方向としてもいままでの繊維行政を根本的に転換して、そしてこういうことをやれということが答申の内容と同じように書かれているわけです。そうやれば合繊メーカーの場合にはこれは支援するのだ——これは露骨にこれを支配強化するとは書いてない。しかし、全体の文章の流れ、あるいはこの文書の意図からしたら、この中へ強力にやはり出ていくということがこの文書から私はうかがわれたわけです。そういう点から考えましても、やはり私はこの法案が、一つには、先ほど来指摘申し上げておるように、中小、とりわけ零細企業者、これらに対し、しかも構造改善に乗っかっていきたい、しかし金がない、こういう実態の中でなかなか乗れないという側面がある一方、これらの商社とかあるいは化繊、合繊、これらの大手メーカーが、いま申し上げたような文書を出して、答申あるいは法案と同じような内容の文書を一番先に出しておる。そしてこの中で、このような、いま申し上げたような意図を表現しておる。こういう実態を考えた場合に、一方では、小規模のものについての救済が不十分であり、なおかつ一方では、大企業商社が系列支配を強化していく、いまの実態を押え、さらにこの法案に基づいてこれらをチェックしていって、ほんとうに中小零細企業者を救済して、日本繊維産業を抜本的に構造改善をはかっていくということから考えた場合に、私は、現在の法案ではやはり不十分である、こういうふうに指摘せざるを得ないと思うのです。これらの点についてどういうようにお考えになるのか、ひとつ答弁を求めます。
  151. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました化繊協会の十年後のビジョンの問題でございますが、これは私も十分読んでおるわけではございませんが、実は一昨年の秋から審議会の場におきまして関係業界の代表も入って議論をしておったというようなこともございます。かたがた、先生承知かと思いますが、化合繊業界が新しく成長する過程におきまして、いわゆるプロダクションチームといったようなものを編成して関係企業を育成してきておるわけでございまして、すでに実態としてこの法案で考えているようなものを持っておるといったようなところもその一つの裏づけになっておるかと思います。審議会の過程におきましても、どちらかと言えば、この構造改善事業は焦点が中小企業、あるいは助成は大企業排除といったようなことになっておりますので、必ずしもおっしゃる化繊協会はさほど積極的な態度を見せなかったといったふうにも私理解しております。かたがた、大企業の問題に戻るわけでございますが、いま御指摘になりましたような東レ、帝人あるいは九大紡といったようないわゆる大企業といったようなものは、自分でもこの線に乗って構造改善をやろうと思っておらないようでございますし、かりにそういったものが申請を出してきた場合にもこれはやはり排除すべきだろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、ケースによりましては、事業協同組合の組合員と申しますか、中小企業者の中にやはりそういった、ただいま排除すると申し上げたような以外の企業、比較的規模の大きな企業の参加によって商品開発力等もつけやすくなるといったような希望を持つものもなきにしもあらずといったようなこともございますので、初めから原始的にもう大企業を排除するというたてまえをとらずに、むしろ現実の問題としては、支配強化につながるような問題点については、先ほど申し上げましたような事業計画の内容のチェックの段階、あるいは大臣指導助言の段階、あるいはそれでもまだ問題が解決しないような場合には第五条によるところの承認の取り消し、こういった幾段階かのチェックポイントを設けることによりまして、いい点だけはとるが悪い点は排除していくという態度は堅持していくつもりでございます。
  152. 野間友一

    ○野間委員 私はそれを保障するために金融を具体的に法案の中に盛り込め、こういうことを重ねて指摘しておるわけです。  次に、産地性の問題についてお伺いします。  これはわが党の神崎委員が和泉の実例をあげて指摘をしたわけですが、答申でも、繊維産業の産地性の問題について取り上げて、こういうふうに言っております。「繊維産業の動向は狭くはその産地の経済社会全体の消長を左右するといって過言ではなく、また広くは産地をかかえる経済圏全般にも多大の影響を与えている。」これは八十六ページです。  ところが、この法案によると、地方自治体にとって重大な関係のあるこの構造改善事業計画の承認に関して、全くこれらが関与する権限はないわけですね。すべてこれ通産大臣に集中しておる。たしか伝統産業の場合には、あれをわれわれがつくったときに、これは地方自治体を経由して意見書を添えて、そして通産大臣にこれを出す、こういうふうにしたわけです。ところが、この法案の中には地方自治体が全く無視をされておる。すべていま申し上げたように通産大臣に集中しておる、こういうことなんです。これはやはりその産地をかかえる地方自治体に対してどのような姿勢をとっておるのかということがこの法案の中で私はうかがわれると思うのです。  そこで、地方自治体を尊重するというような立場に立った場合には、最低限度この経由庁を地方自治体にする、そしていまほんとうに地方自治体に密着した産地性ですね、繊維産業が経済圏に与える影響、そういうものを十分踏まえた上で意見書をつけて出す、そして地方自治体のこの意見を尊重するという方向に持っていかなければこれはだめだ、地方自治体を尊重するという姿勢に欠けておるのではないか、このように私は考えられてしょうがないのです。どうでしょうか、大臣。地方自治体を経由して、産地性あるいは経済に影響を与えている自治体の意見を十分くみ上げて意見書を出させて、伝統産業のように、これは通産大臣に出させる、こういうことをしてはじめて具体的に、この産地的な特徴を持ったものが通産省に全体が掌握できる、こういう仕組みになると私は思うのです。こういうものを入れるべきだ、このように私は思うのですけれども、いかがですか。
  153. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維構造改革の場合は、伝統産業の育成の場合とは違って、伝統産業の場合にはわりあいに地場性、特殊性、それからいわゆる伝統性、歴史性が強いのでございますけれども、繊維の場合には、むしろ非常な国際性とそれから市場性というものが重要視されます。したがいまして、今回の構造改革も流通段階やあるいはいろいろなファッション的な方向へ進めようという、むしろそういう方面にプッシュしようという考え方が強くひらめいて、そのためのいろいろな資金援助その他やろうとしておるわけであります。しかし、と言っても、やはり地場的に育っているものは、福井にもその他にもずいぶんございますし、また、地域的にいろいろ密接な関係を持って、産業は連関して成り立っているという要素もございます。したがいまして、これは地方自治体、特に府県とよく連絡をとって、われわれのほうの通産局と府県の商工部が一体になってその地場のめんどうを見つつ、その要望を取り入れつつ、政策を進めていく、そういう考え方で適当ではないか、目下のところ、そう考えております。
  154. 野間友一

    ○野間委員 確かにそういう広い視野からの側面と同時に、この答申の中にも指摘され、私がいま申し上げたように、産地産業の動向は産地の経済社会全体の消長を左右する、また広くは産地をかかえる経済圏全般にも多大な影響を与えるという側面は、私は否定できないと思うのです。ですから私は、地方自治体にこういう承認権限を与えてもいいんじゃないか、こういうふうに私見としては思うのですけれども、それはそれとしても、最低限度少なくともこれを経由して地方自治体のそれに対する意見、こういうものを十分尊重し、それをつけて上へ上げていく、こういうことにしたほうがいいんじゃないか、このように私は思うわけですが、これについて法案には自治体の関与は全く規定がない、こういうことなんです。私は、そういうふうに修正すべきである、こういうふうに考えるのですけれども、重ねて大臣の御見解をお伺いします。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままでいろいろ御議論を拝聴いたしましたが、地場的な性格も確かにありますけれども、何といっても国家的なワイドスケールでこれは考えていかぬと、これからの国際競争になかなか太刀打ちできませんし、新しい水平線に向かって日本繊維産業を進めようという考えでありますから、業界団体等、通産省、府県が一体になって進めなければならぬだろうと思っております。  繊維の場合にはわりあいにそういう地場性、地域性が強うございまして、各府県ともいろいろ織物の試験所をつくったり、いろいろいままでめんどうを見てもらっておるところもあります。したがって、それらの性格を無視することはできません。しかしながら、いままで通産局が府県と連絡をとっていろいろめんどうを見さしていただいたその経験を生かして、そういう連携を緊密にしながら進めば事足りるのではないか、むしろ国際的な水平線に目を見張って、日本繊維の全体的な総合的な力を強めていくということが今日要請されているのではないか、そう考えられます。
  156. 野間友一

    ○野間委員 私は、国際性があるから自治体を経由しなくてもいいという理屈は成り立たないと思うのですね。別に百歩譲って通産大臣が承認権限を持つとしても、その地場性、産地性という特性から考えて、そこを経由して意見書をつけて上に上げていく、これは決して矛盾しないばかりか、いま大臣の御指摘にもありましたけれども、二つの側面があるわけですから、その側面を充足する、こういうふうに私は考えるわけですね。  それでは局長、それらについて実務的にこの法案の運用についてどのような構想を持っておるのか、お伺いします。
  157. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 若干実態的な面もふえんいたしましてお答えいたしたいと思いますが、確かに御指摘のように、北海道などの一部の地域を除きまして、いわゆる繊維の産地というものは全国各地に存在しておるわけでございますが、そういった産地形成をやっております繊維産業の消長というものが地域経済にとって非常に深い関係にあるということもまた事実かと思いますが、半面、それぞれの産地間におきまして深い関連性を持っておることも事実かと思います。産地を形成している場合でございましても、他の産地との関係で影響を受けてくる。たとえば知多と泉州といったように、離れた産地におきましても製品に互換性のある場合には互いに影響を与える、あるいは影響を受けるという関係もございますし、あるいは衣料縫製業だとか、あるいは一部のメリヤス業のように、実際問題として産地を形成していないものもあるかと思います。それから工程間の連携動作ということになってまいりますと、複数の都府県にまたがってグルーピングがなされるといったようなケースも出てくるかと思います。かような点から、私たちといたしましては、通産大臣が承認をする、あるいは申請書と申しますか、構造改善事業計画を受理するといったような立て方をとっておるわけでございます。  ただ、御指摘のような地元企業の動向につきましては、地元がまた一番よく知っておるといったような実態もございます。そういった意味合いから、各都道府県ごとに、本法施行にあたりましては関係官庁の職員等からなる協議会をつくりまして、府県の商工部長にその協議会の座長をつとめていただきまして、実態を討議し、あるいは詰めていただいて意見を出していただくといったようなことを実際上の処理として考えておるわけでございます。
  158. 野間友一

    ○野間委員 次に、労働者の問題について、先ほども若干お伺いしたわけですけれども、今日までの構造改善の中で、これは構造そのものは近代化合理化するわけですから当然そこでは労働者の合理化、人員整理が出てくる。今日まで繊維産業企業の中に出てきたわけですね。だからこそ、先ほども私、指摘しましたけれども、現行法規の中では、労働者の対策についてそういう規定がある。十八条二項ですね。ところが今日それは切ってなくなっておる。いまは確かに不況です。ですから、いまこの時点においては、局長が先ほど答弁されたように、懸念がないかもわかりません。しかしながら、この繊維産業というものは非常に好不況が強い。しかも、これは異業種間、異工程間のやはりこれから近代化合理化を進めていく場合に、たとえばこれは機械を近代化合理化すれば人が少なくて済むということは当然出てくると思うのです。繊維労連の二十七回の定期大会の中でも、これらの繊維構造改善事業改正については反対という決議を去年の九月十日、十一日の大会でやっておるわけですね。私は、少なくともこのような労働者の保全、そして解雇等の脅威に労働者をさらさない、そういう保証を当然とるべきじゃないか。前にあって、いま抜けておる。私は問題だと思うのです。これはぜひ私は一つ追加すべきである。生活とかあるいは労働条件の改善、あるいは権利の保障というものに、これから構造改善事業を進める場合には十分留意しなければならない、これは当然だと思うのですよ。私はこれを修正として一つ入れるべきである、こういう強い要求を持っております。重ねて答弁を求めます。
  159. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回の新しい構造改善事業のねらいといたしましては、対外的には、何度もお話が出ておりますように、発展途上国の急速な追い上げにどう対処するかという問題かと思いますが、国内的には、消費動向の変化にいかに対応するかという問題と並びまして、労働力の不足にどのように対処していくかということも一つの大きなねらいになっております。ことばをかえますと、今回の構造改善対策では、人員整理といったような問題ではなく、むしろ不足ぎみの労働力の中で限られた人的資源というものをいかに活用していくか、いかに有効に確保していくかというところにポイントがあるわけでございまして、そういった意味合いにおきまして積極的に労働者に対する規定を入れなかったわけでございますが、ただ、やはり経過的には事業の転換あるいはただいま御指摘のありましたような倒産といったようなことによりまして離職者が出る可能性がなきにしもあらず、まずはそういった状態をやはり予測しておく必要もあるであろうといったようなところから、本法案の第十条に一時的に離職者が発生する際に離職者対策を規定いたしておるわけでございまして、その内容といたしましては、失業保険制度あるいは職業転換給付金制度等、労働省でいろいろ労働者対策、離職者対策としてとっております現行制度がございます。こういった制度を活用していくことによって、かりに離職者が出た場合にも容易なる再就職ということを実現するように措置いたしたいと考えております。
  160. 野間友一

    ○野間委員 いや、その再就職、これは事業の転換に伴う措置の問題についての答えなんですが、そうじゃなくて、私は、合理化の中で出てくるこういう人減らしをどう歯どめをかけて守っていくかという観点かち質問をしたわけです。おそらくいま局長も言われたけれども、むしろ人減らしどころか人が足りなくて困るんだ、こういうふうに言われました。これは現在の時点では確かにそういうことがあるいは言えるかもわかりません。しかしながら私は、これがいまのような不況から脱した場合には、しかもこういう構造改善をやっていくときに当然出てくると思うのです。ですから、そういう意味において私は、やはり政府のその認識というのは誤っておる、こう指摘せざるを得ないと思うのです。ただ、きょうは時間が参りましたので、海外投資、それから逆輸入の問題、それからさらに関税率の引き下げ等の問題についてあと半分ばかり質問が残りましたけれども、これは留保して金曜日にでもいたしたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  161. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 松尾信人君。
  162. 松尾信人

    ○松尾委員 今回の改正法案に関連いたしまして質疑を続けたいと思うのであります。  この繊維産業というものは非常に好況、不況の波がある。好況あり、不況あり、このようなものの連続でありまして、いわば常に景気の波にもまれておるという状況でありますが、今回、総需要の抑制また金融の引き締めということで非常に苦しんで、不況にあえいでおるのが現在の繊維産業実態でございます。それで、いろいろ考えた上にこのような法案も出たと思うのでありますけれども、その中でスクラップ・アンド・ビルド、このようなことで紡機では四十三年から、織機では四十二年、このように特定織機になっておるわけでありますけれども、このような構造改善、スクラップ・アンド・ビルドということによりまして、紡機なり織機というものが現在どのような生産力になったか。そしてそれは現在、四十八年のそれぞれの生産というものに比べまして生産力というものはどのようになっておるのかということを最初に聞いておきたいと思うのであります。局長からでけっこうです。
  163. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 紡績、織布につきましての現有設備については担当課長からお答えさせたいと思います。
  164. 堺司

    ○堺説明員 特定紡績業の四十八年度末の設備能力でございますけれども、量産品種と非量産品種に分けまして、量産品種については七百十六万錘、非量産品種につきまして三百十四万錘程度を保持しているというふうに考えております。
  165. 松尾信人

    ○松尾委員 どのくらいあるかということもそうでありましょうが一私が特に聞いておきたいと思いまするのは、四十八年綿糸の生産高五十五万五千トン、合繊の紡績糸五十七万七千トン、綿糸のほうは前年並み、合繊の紡績糸は八%増、それから綿織物が四十八年二百三十八万平方メートル、前年比で五・一%の増、合成繊維の織物が二百九十二万平方メートル、これが前年比七・五%増、このように生産のほうはそれぞれ発表されておるわけでありますが、このスクラップ・アンド・ビルドによってこのような紡機なり織機なりというものが、生産力というものとこのような現実の生産それはどうなっているのかと聞いているわけです。何か過剰設備をだんだん整理してまいったわけでありますけれども、やはりその中で紡績だとか大きなところでこの構造改善が取り進められていって、そして大いにりっぱな機械を入れた、省力化もできました、非常に能率もあがってます、近代化になりましたと、こういう傾向がそういう大きな段階にこの構造改善、スクラップ・アンド・ビルドというものがなされていったんじゃなかろうか。そうして生産力というものは異常に伸びたんじゃなかろうか。それで現実にはこのような生産高でありまするが、それが生産力と現実の生産というものとはたしてマッチしておるのであろうかどうであろうかということの疑問があるものですからこういうことを聞いておるわけでありますが、結局この構造改善の総ひっくるめとしてスクラップ・アンド・ビルドがうまくいったかどうか、うまくいったとおっしゃるならば、そういう大企業のほうの構造改善が進んだのではなかろうか、そこでその他の中小企業、零細企業というものはこの構造改善事業で取り残された部門であるんじゃなかろうか、こういうことを頭に、前提に置きながら私は聞いておるわけでありますが、もう一回その点をはっきりおっしゃってもらいたいと思うのです。
  166. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現行の構造改善事業によりまして、繊維工業全体といたしまして設備近代化あるいは過剰設備の処理につきましてはかなりの成果をおさめておるとわれわれは認識しておるわけでございますが、具体的に労働生産性をとって申し上げますと、紡績につきましては四十二年一コリ当たり四・二人であったものが、四十八年におきましては二・六人、それから綿スフ織物につきましては一人一年間に二万八千平米であったものが四万平米、絹人絹織物につきましては一人一年間に八千平米であったものが一万三千平米と、労働生産性の面からいきましてもかなり効果が出ておるわけでございます。  それから、こういった点で国際競争力はどうかという点になるかと思いますが、国際競争力につきましては、相手方の賃金水準あるいは為替相場等の動きもございますので、一がいには申し上げづらいわけでございますが、ただいま申し上げましたような生産性の向上によりましてかなり国際競争力も強化されておると理解していいかと思います。  それから若干業種別に生産数量等について申し上げますと、特定布業につきましては、生産数量は四十二年、六十二億平米であったわけでございますが、四十八年におきましては六十七億平米と一割程度の上昇でございます。付加価値額について見ますと、当時二千億であったものが四千四百億と二倍強に上がっております。あとメリヤス紡績業あるいは染色業等につきましても、加工数量あるいは付加価値額等につきましてもかなりの上昇を見せておるわけでございます。
  167. 松尾信人

    ○松尾委員 そういう生産性といいますか、省力化であり近代化というものは非常に進んできたことには間違いない、私もその点は認識いたしておりますが、そのような構造改善のいままでの成果というものは大企業のほうにあったんじゃなかろうか。そして非常に生産力のすぐれた機械が入ってきて、現在はどのくらいの設備であるか。現実に四十八年の生産というものは、私がいま申し上げたとおりでありますが、その生産というものと生産設備というものを比べてみてどうなんだ、まだ過剰設備じゃなかろうかということを私は頭に描いて聞いておるわけです。その点簡単に、うまくマッチしておるとか、やはり生産設備が非常に構造改善で進んで、現在でいえば設備のほうが先に行っているんだ。力が多いんだ。現実は四十八年の生産は、その生産力に比べて何%あるんだ、こういうことをお答え願いたいと思うのですが、ぼくの聞いていることと局長の答えは全部違っているわけです。
  168. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま手元に大企業中小企業生産シェアについて数字を持ち合わせておりませんので、調査の上お示し申し上げたいと思います。ただ、どちらに有利であったか、あるいはスクラップあるいはビルドが、大企業中小企業の区分でどうであったかというのは数字としてなかなかとらまえづらいわけでございますが、かりにビルド面に限りまして、それに対してどの程度の国家資金を投入したかという点で申し上げますと、織布、メリヤス染色、こういった中小企業につきましては、中小企業振興事業団を通じまして千百三十億の金を投入しておりますが、一方、紡績あるいは染色の大企業につきましては、開発銀行を通じまして二百九十億と、金額的にも非常に差がございます。かたがた金利につきましても振興事業団につきましては二分六厘の金利を適用いたしておりますが、開発銀行におきましては、時によって違うのですが、七・二%から九・四%、こういったところから、必ずしも大企業助成的にやったというわけではございません。
  169. 松尾信人

    ○松尾委員 それで、要するに、過剰設備の廃棄だというような問題からこのようなことをいろいろ過去においてやってきたわけであります。四十二年、四十三年というところからスタートしてきて、メリヤス等も来たわけでありまするが、私が聞いておるのは、それが大企業がどのくらいか、中小企業がどのくらいかということも、いまそれはあとで資料を出すということで納得いたします。ただ、この生産力というものが、そこで非常についてきたであろう。現実の生産というものは、四十八年の各種の繊維製品生産は発表されておる、ですからその生産力というものと生産実績、こういうものを比べてみてどのようになっておるかということが私の質問の焦点であります。それはいまない、こうおっしゃるならば、あわせてこの資料というものをお出しになるように、これは委員長に求めておきますが、いかがですか。
  170. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 資料がいまなければ、あとで十分取りそろえて、あればいま……
  171. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 手元に持っておりませんので、あらためてお示しいたしたいと思います。
  172. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 あらためて資料は提出するようにいたします。
  173. 松尾信人

    ○松尾委員 私がいま聞いております点は、結局いままで力を注いで構造改善をやってきた、そうして過剰設備の廃棄、そして新しいもののビルド、それでスクラップ・アンド・ビルドということがねらいでありますが、それがどのようになっておるかということを明らかにしたいというので聞いておるわけであります。ほかに他意はないわけであります。  以上、要するにこの構革の成果、それがどうであったかという点を私は聞いたわけでありますけれども、今後の繊維産業の問題について若干質問を続けていきたいと思います。  これは繊維工業審議会並びに産業構造審議会繊維部会、その答申を見、ましても、七〇年代の繊維産業政策のあり方、これはわが国繊維産業というものが知識集約的な産業へ向いていく、二番目が生産、加工、流通構造合理化近代化、三番目が国際協調型の産業への指向、このような三つの大きなビジョンを掲げておるわけでありまして、種々の提言を行なっておるわけであります。ですから、そういうことからいって、従来の構造改善政策というものからむしろ構造転換政策へ移行する、私はこのように思うのでありますが、まずその点はどうかということであります。  そして、さらに聞いておきたいと思いますのは、わが国繊維産業は、紡績、紡織中心の輸出指向型色彩を今後は薄めながら、この衣料中心の内需指向型の色彩をだんだん濃厚にしていく、このようにいわれている点もあるのですけれども、この点ははたしてどうか。この二点についてお答え願いたい。
  174. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず、構造改善方向でございますが、従来、設備近代化過剰設備の廃棄あるいは企業規模の適正化といったような、主としてハード面からの構造改善を推進してきたわけでございまして、先ほども申し上げましたように、過剰設備の廃棄あるいは設備近代化という点につきましては、かなりの成果をおさめ得たというふうに確信いたしておるわけでございますが、一つ大きな問題点は、従来の構造改善というものが、同一工程と申しますか、同一業種の中での構造改善をとってきた。そのために、繊維産業における構造上の大きな問題の一つとなっております工程間の分断という問題の解決を見ておらない。これがなぜ問題かと申しますと、工程分断しておる上に、その間に流通業者が介在いたしておりますために、なかなか消費者情報というものをフィードバックし、これを生産に結びつけていく、反映していくということが十分なされないうらみがあったわけでございます。そういったところから、今回の構造改善では、従来の設備近代化過剰設備の廃棄を主たる柱としてまいりました現行構造改善法の構造改善事業の成果を踏まえまして、横の連携と申しますか、少なくとも異なる工程二つ以上の連携によりまして知識集約化を進めていこうということでございまして、この点は、一つには国内における消費者需要動向の変化に対処いたしますとともに、二番目に、先生が御指摘になりました国際貿易と申しますか、あるいは先進国あるいは発展途上国との関係における繊維のあり方を考えていく一つの大きな方向ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  いままで考えておりました構造改善というのは、どちらかといいますと、国際競争力を物的生産面でつけていくといったようなところに着眼点があったわけでございますが、御承知のように、海外の情勢等を考えますと、特に労働賃金を比較いたしますと、お隣の韓国は一万二、三千円だといわれておるわけでございますが、わが国ではやはり初任給でも数万円になるのじゃなかろうか。そういった一つの点を比較いたしましても単純なコストの切り下げ競争ではもう克服できない事態に立ち至っているのではなかろうか。そういった問題意識からいたしまして、極力低開発国と申しますか、開発途上国の産品と競合しないような方向繊維産業というものを立て直していく必要があるのではなかろうか、こういう考えに立ちまして、ただいま御審議いただいているような法案を準備させていただいたわけでございます。
  175. 松尾信人

    ○松尾委員 念のためでありますけれども、この点はお答えがなかったのでありますが、わが国繊維産業というものは紡織中心の輸出指向型色彩をだんだん薄めながら、衣料中心の内需指向型の色彩をだんだん濃厚にしていく、このようなことがいわれておるが、どうか。今後の方向、これを聞いているわけです。
  176. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まさに御指摘のように、川下と申しますか、最終製品わが国繊維産業の総力を結集していくということになろうかと思います。  若干数字的に申し上げますと、わが国における素材と製品との付加価値ウエートを見ますと、大体五〇対五〇になっているようでございますが、アメリカといったような国におきましては、製品関係が大体八〇から八五%、素材関係が一五%程度というふうに承知いたしておりますので、まだまだわが国におきましても最終製品と申しますか付加価値の高い製品をつくり得る余地もあるし、またそれが一つには消費者嗜好の動向に即応することにもなるわけでございますし、あるいは開発途上国との競合を回避をしながら適正な輸出を確保していくということにもつながってくるかと考えております。
  177. 松尾信人

    ○松尾委員 これは大臣にもよく聞いていただいて御回答願いたい点もあるわけでありますけれども、日本繊維産業というものを何としても成長産業へ持っていかなくてはいけない。この成長産業へ持っていくのはどういう方向か、こういうことであります。そこで、先ほども大臣がお答えになっておったようでありまするが、繊維産業のファッション化の問題ですね。日本繊維産業というものを成長産業へ持っていくならば、何としてもファッション化というものをここできちっとやり上げていかなくてはいけない、私はこのように考えておるから聞くわけでありますが、成長産業へ再生させるためにはどのような考えがあるのか、まずこれを聞いておきたいと思うのです。
  178. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維につきましては長い歴史がございまして、先生御存じのように、昭和二十七年のころから操短であるとか、あるいは相次ぐ繊維特別立法等をつくって——最初は何といっても操業短縮、それによる不況の克服、その次の段階になりますと、スクラップ・アンド・ビルド、そういうような考えに立ち、それが四十二年から行なわれてきたわけでございます。しかし、最近になって議員立法で登録特例法をつくっていただきまして、無籍織機の整理ということが行なわれて、大体これで国内的なスクラップ・アンド・ビルドを中心にする足腰固めというのは次第に緒につきつつあるようなことであると思います。ところが一面において、外においては先進国の保護主義的傾向、それから発展途上国の押し上げに日本は押されてきつつあるという状況になってまいりまして、ここでもう一回新しい方向繊維産業というものを改革しながらふんばっていかなければならぬ。そういう段階になって今回の法律の提出ということになったわけです。それにはやはり繊維産業を全体としてとらえる。むしろいままでの考えというのは、ややもすれば家内工業的な織場加工過程というものが中心になった政策であったように思いますけれども、今度はさらに知識集約的な、あるいは世界的マーケットを考えた近代化という方向にものを進めようという考えに立ってきておるわけであります。これもこの法案でこれからスタートを開始しようというのであって、それが成功するかどうかということはわれわれの努力にかかっております。ところが、繊維の場合は非常に市況性がありまして、御存じのようにちょっとした好みによって売れるものがいろいろ変わってきたり、それから外国との関係において思惑輸入なんかが行なわれる。昨年のような場合は、円高を背景にして相当な輸入が行なわれた。そういう相場性がまたあるわけでございます。そういう面を次第に克服しつつ、流通段階も整理して、高額マージンが各あらゆる段階に取られるというようなことも合理化して、そうして生産者本位の力強い体系に順次改革していかなければならない。それと同時に、いろいろな型であるとか、模様であるとか、趣味であるとか、染色であるとか、織り方であるとか、そういう面についても、より高級な、より付加価値の強いものへという方向に一段と飛躍さしていく必要があると思うのであります。そういうあらゆる方面で手を入れて助長していく、われわれはこういう考えに立ってやりたいと思っています。
  179. 松尾信人

    ○松尾委員 いままでの構造改革のほうが、いま大臣のおっしゃったような家庭工業的なそういうものを目当てにしたということであれば、私はそれでいいと思うのですけれども、むしろ私が心配しますのは、大企業がこの構造改善事業というものに乗ってどんどん生産力を上げていったのではなかろうか、そして現在は相当の施設を特っておるのじゃなかろうか、取り残されたのは、いま大臣がおっしゃったこの家庭工業、家内工業的な部面が取り残されておるのじゃなかろうかということが心配になっておるわけであります。いろいろ大臣繊維産業を成長産業へ、その再生の道ということについてお答えになったわけでありますけれども、そこで私は、何としてもこのファッション化というものをここで確定しなければいけない、このように思うわけであります。  最近は若年層、婦人労働者が非常に増加いたしまして、既製服の需要が増大しております。また所得もふえておりまするので、衣料費の支出の増加もあります。単なる実用性というものから装飾性へ、個人の趣味の重視、非常に広い需要というものがありまするので、すばやくこういう需要に対応できねばなりません。そして、いま大臣も言われましたが、輸入品というものを相当減らしていこう、糸から加工、最終製品に至るまでに複雑な流通過程もありますが、何としても需要者の多様なこの需要に対応できる、そしてそのファッション化、いろいろの面における成長産業への転換というものをやらなくちゃいけないと思うのでありますけれども、このファッション化というものをいま定着させる、これをがっちり固めるという方向について、大臣はどのようにお考えですか。結論だけでいいのです。
  180. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはやはり情報を豊かに供給して、海外の嗜好及び国内における青年子女等の趣味の変化、ディザイア、そういうようなものを的確に把握しながら、織り方とか、色彩とか、型であるとか、そういう面について指導していく、そういうことが大事であると思います。
  181. 松尾信人

    ○松尾委員 いま大臣は、大事なことは、消費者の欲求というものをちゃんとあらかじめ知る、そのために情報の収集、分析機能、こういうものを発揮させる、こういうことでございます。そうすると、この中ではファッション化というものを定着させていきたい、こう思っていらっしゃると思うのでありますけれども、やはり何としてもこれは構造改善にもつながっていく問題でございますから、今後の構造改善というものは単なるスクラップ・アンド・ビルドでなくて、そういう面においてひとつ先取りをして、そして世界の先進国に負けない日本繊維産業を育て上げていこう、こういうねらいをはっきりさせたらどうかというわけでありますが、もう一回、くどいようでありますけれども、いかがでしょう。
  182. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私より先生のほうがよく御存じのようで、先生のおっしゃること以上そう出ないと思いますが、やはり非常に技術的な要素が多うございまして、そういうような専門的な指導者と申しますか、そういうものを海外からも入れるとか、国内からも養成するとか、そういうような積極的な努力が大いに必要ではないかと思います。
  183. 松尾信人

    ○松尾委員 今回は新商品または新技術の開発ということがあるわけでありますが、これにはやはり何としてもファッション産業というものが当然この中の主力を占めるのじゃなかろうかと私は考えるのです。ですから、単なる異業種間の連携、そういうことに終わってはならないわけでありまして、この法にうたう新商品または新技術の開発という、それは独得の分野で常時やはり研究開発をする、そして世界におけるファッション産業というものの動き、その傾向、わが国民の嗜好、動き、それに対する適応性、また実用性と趣味性の調和、こういうものがなくてはいけないと思うのでありますが、これは単に業界内部に開発部門があればよいというだけでも私はいけないと思うのです。いまいろいろおっしゃいましたけれども、私も言いましたけれども、そういうものをやはり育成して助成する政府体制というものが必要であろう、政府指導というものがそこに大きく力を発揮する原動力じゃなかろうか、こう思うわけでありますが、こういう点について政府の今後の力の入れ方ということを聞いておきたいと思うのです。
  184. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、異工程間の連携ということは、まさにそれ自体が目的ではなくて、あくまで御指摘のファッション化の定着化と申しますか、新商品の開発あるいは新技術の開発のための手段として意識しておるわけでございますので、そういった方向で促進していきたいと思います。かように異工程間の連携を強めるということは、一つには、大きくは消費者情報というものを把握いたしまして、これを分析した上で生産段階に及ぼしていきたいということでもあるわけでございますが、そういった個々の企業段階、事業者段階における情報の確保のほかに、新しく事業協会の中に情報センターといったようなものを設置いたしまして、御承知のとおり、各業種ごとにいろいろな団体がございまして、そこでいろいろな情報も持っておるわけでございますが、これはラップしておるものがあったり、あるいは逆に不足しておるものがあったり、そういった情報の交流というものが十分に行なわれておらないといったようなうらみもございますし、かたがた対外的な、海外における情勢の判断あるいは情報の把握といったことになりますと、私企業段階では十分なし得ない点もあろう、そういった判断から情報センターというものを創設いたしまして、これに基づきまして情報活動をそれぞれの生産段階に反映さしていきたい、かように考えております。
  185. 松尾信人

    ○松尾委員 しっかりこれは力を入れてもらいたいと思うのであります。  次は繊維貿易の関係でございますが、四十八年に初めて日本繊維貿易において赤字になった、こういうことであります。この赤字の原因、それから発展途上国から輸入されるその品物の特徴は何か、また先進国から輸入される品物の特徴は何か、こういうことを最初に聞いておきたいと思うのでありますが、局長いかがですか。
  186. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 四十八年におきましては、御指摘のように繊維貿易が輸出三十二億ドル、輸入三十九億ドルということで、収支バランスが逆転いたしたわけでございます。これの直接的な原因といたしましては、輸出が前年対比で一三%程度の増加にとどまったに対しまして、輸入が前年比二倍と最近にない著しい伸びを示した結果かと見ておるわけでございますが、ただ、かように輸入を促進した理由といたしましては、やはり開発途上国の追い上げというような問題もございますが、昨年の春以降、国内市況が好況であったというようなところから輸入意欲を高揚させたということ、それから昨年の二月に為替が変動相場制に移行して以来円高基調が続いておったために、輸入にとってはむしろ有利なポジションになっておったこと、それからいま一つは、国際的に供給不足が表面化いたしまして価格の上昇があった、かような原因が加わっておるかと思います。いずれもこれは一時的な原因という点もございますので、だんだん輸入の動向も落ちついてくるかと考えております。それから輸入繊維の特徴でございますが、やはり先進国からはどちらかといえば高級品あるいはハイファッションと弥せられるような品物が入ってきておると思いますが、低開発国からは、織物、糸等も含めまして、どちらかといえば低級品あるいはせいぜい中級品といったようなものが入ってきておるようでございます。
  187. 松尾信人

    ○松尾委員 途上国の繊維産業でございますけれども、これは台湾韓国、香港等、すべて日本と同じような高性能の機械で生産しておるといわれております。そして労賃は安い。それから商品流通経路も一貫体制ができておる。このようにいわれておるわけでありますが、私はそういうところから、発展途上国といいますけれども、繊維に関する限りは、りっぱな機械を入れて、そして流通経路日本のように複雑ではない、一貫体制ができておる、おまけに労賃が安いというようなことで、製品は、入ってくる品物は低級、中級とおっしゃいますけれども、だんだんこれが高級化していくことも間違いないような気がいたします。それで、途上国というけれども、繊維についてはもう手ごわい競争相手である、このように感ずるわけであります。ですから、競合しないように日本のほうが高度化していくんだということは、何としても知識集約の問題が出てくるわけでありまして、これをどうしていくか、大きな課題であろうと思うのです。また、先進国からの輸入というものは高級品だ、その高級品というものが、ほんとうに日本が太刀打ちできない高級品であるならばしょうがない。しかしもう一つ知識集約化ということをこのように打ち出しておるならば、対抗できる日本体制というものをつくっていかなおちゃならない。この繊維産業日本の貿易の中心でありまして、そして中小企業の基本でもありました。日本が発展したというその土台は中小企業であり、その中小企業の基本というものが繊維の皆さまにあったわけでありますから、やはり何としてもこの貿易の逆調というものはなくしていかなくちゃならない。途上国から入ってくる品物の検討、そして将来どういうふうになっていくかという、それのまたさらに検討ですね、先進国から入ってくる品物に対する、どうして日本がそういうものを追っ払っていくような力をつけていくかという問題が、私は貿易面を通じて見て一番大きく日本繊維産業に課された課題ではなかろうか、このように思うわけであります。そういう認識が誤っておるかどうか、それが一つと、それから四十九年の貿易収支を考えてみましても、石油価格の高騰等がございますので見通しは非常に暗いわけであります。そういう中でせめて繊維貿易を伸ばしていきたい、本来の日本の力ある産業に育てていきたい、このように思うわけでありますけれども、考え方はいかがですか。
  188. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 第一の点につきましては、まさに先生指摘になったとおりだと思います。私たちもその方向で対処してまいりたいと考えておるわけでございます。  それから四十九年の貿易収支につきましてはなかなか判断がむずかしいわけでございますが、繊維産業について申し上げますと、やはり輸入はだんだん落ちていくのではなかろうか。と申しますのは、一つには、昨年来の好況時に成約いたしました品物が随時入着してくる。その時点におきまして、市況一般が非常に冷えてきておるというようなこともございまして、むしろ輸入された在庫品をどう処理するかといったようなこともございまして、輸入動向というものはだんだん鎮静化していくというふうに見ております。かたがた、この三月時点におきます成約は昨年の二分の一程度に落ちておりますので、まずまず輸入の著増動向というものはさほど強くないのではなかろうか。一方、輸出につきましては、国内は金融引き締め、総需要抑制等によりまして在庫等も非常にふえております。さような観点から輸出意欲が非常に強くなってきておりますので、そういった面からいたしまして、繊維に関する限りの賢易収支は四十八年のように大幅な赤字を記録するということはないのではなかろうか、かように見ておるわけでございます。
  189. 松尾信人

    ○松尾委員 繊維製品の輸出の増進の問題でありますけれども、どのような考え方があるか。日米繊維協定も、やがて期限が切れますけれども、あります。また、多国間協定のワクがきめられておりまして、輸出増もあまり期待が持てないということがいえると思うのでありますけれども、繊維の貿易を伸ばすという観点から、輸出に関連してこれをどのように考えていらっしゃいますか。
  190. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在時点におきまして積極的に輸出振興策をとるかどうかということにつきましては、まだ非常に微妙な段階にあるかと思いますが、昨年末に妥結を見ました繊維の多国間取りきめに基づきまして少なくとも二国間取りきめについての見直しを必要とすることになるわけでございます。これにつきましては、多国間協定におきましてもバイラテラルの協定は認めておりますが、セーフガードよりもむしろ緩和した方向でないと認められないということになっておりまして、セーフガード自体が伸び率、基準年次に対して六%、あるいはキャリーインが一〇%、キャリーオーバーが七%といったふうに、従来に比べまして非常に緩和されたと申しますか、セーフガードを発動する立場からいいますと非常にシビアな要件が規定されておるわけでございます。それよりももっと緩和された形でないと二国間取りきめを結んではいけない、こういうことでございますので、その限りにおいて今後の二国間交渉におきましてもっと輸出ワクを拡大し得るような方向に持っていける、また持っていくべきであると考えております。いずれにいたしましても、そういった場合にもそれだけの競争力を質量ともに持つ必要がございますので、新しい構造改善事業計画に従いましてさような力、健全な国際競争力と申しますか、そういったものをつけていきたい、かように考えております。
  191. 松尾信人

    ○松尾委員 これはもう御承知と思うのでありますけれども、念のため申し上げるわけでありますが、西武インターナショナルとシアーズローバック社の販売提携の問題であります。このシアーズローバックというのは、年間売り上げが三兆三千億円、アメリカ一の大流通業者でございます。そして本社はアメリカのイリノイ州のシカゴですね。アメリカ国内で約八百五十の店舗、二千六百四十八のカタログ・セールス・カウンターを持っている。その他メキシコ、中南米、スペイン等にも店舗がありますし、発展途上国に工場を設けまして、そこでいろいろつくらせておる。大きな力がその途上国にいろいろのりっぱな機械を置き、低賃金で品物をつくらせておる。これが西武インターナショナルを通じて日本に売っておるわけでありますけれども、非常に成果がいいわけですね。いろいろな品物を売っております。これは単に繊維製品だけではございませんけれども、カタログ販売でございまして、西武の池袋店だけ見ますと、一日の契約件数が約百人、一人平均、金額で約二万円でございますから、一日約二百万円、二十五日の働きとして五千万円、年に約六億。これは西武の池袋店だけでそのような成果をあげております。西武のほうでもたくさんの店舗が加わっておりますので、全体の売り上げというものは非常にばく大なものであろう、このように思うわけであります。  それから、けさほども問題が出ておりましたけれども、三越、ダイエーを通じて日本進出かという、米国の流通大手のペニーの問題であります。これはやはり来たるべき五十年の流通部門の自由化というものを見越して繊維専門で販売を考えておる。その一つのテストとして、三越等と提携してテスト販売をする、このようなことがいわれておるわけでありますが、大臣は、何といっても自由経済であるから、入ってくるものは入ってくるんだ、買うものは買うんだ、こういうことであります。そこには歯どめどいうものは何も必要はないと思うのですけれども、考え方としては、そういうものを敵に回して——敵というと語弊がありますが、相手にしておいて、そして日本繊維産業というものは勝ち抜かなくちゃいけない。これはよくよく腹をきめてかかりませんと、流通機構も握るでありましょうし、強い力で安いものを入れてくる。ファッションだけでも二百人の専門家がおる、このようにいわれております。そういう強い陣容を持っておりますし、カタログだけでも、春夏で二千万部、秋冬で二千万部出しておる。このようなものを相手にして、今度はいよいよ流通部門の自由化ということもやがて開かれていくわけでありますが、日本繊維産業はますます苦しくなっていくんじゃなかろうか。規制ということはいわれませんけれども、何か考えておいて対抗する措置がなければじり貧になっていく。構造改善、また新たな今回の法律改正、そういうことによって日本繊維産業を強くしていこうという考えでありますけれども、表面考えると太刀打ちできないようなものが日本のマーケットをねらっておる。何か考えていかなくちゃじり貧になっていく部門が多いだろう。高級品についてはやられていくんじゃなかろうか、こういうことで先ほどからファッション産業の定着ということを申し上げておるわけでありますが、そういう問題にどのように対処していこうとされるのか。大臣、いかがですか。
  192. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は、貿易自由化の現況下では、実力をもって対抗できる力を培養していくということが長期的に見て最もステディなやり方であると私は思います。昔、河合良成さんが生きておるときに、三菱キャタピラーが上陸してくる、それで小松は、これではブルドーザーが壊滅する、そういうときに河合良成さんが言うには、要撃作戦をやろうと全社に指令を出して、それでまず始めたのがクオリティコントロールである。QCといっておりましたが、品質管理、それで彼らに負けないだけの材質をつくり上げて、そうしてこわれないブルドーザーをつくり上げた。それから始めていろいろな要所要所に日本的くふうを入れて、日本のようなこういう小さい国で使いやすい便利なブルドーザーを独特につくり上げた。それでいまや小松は、日本だけでなくてソ連や中国その他にも輸出するに至っておる。やはり企業家や指導者の決心、決断、勇気、目のつけどころ、そういうところで非常に違うと思うのです。一時ワコールの女の子の下着が日本中の女の子の下着を席巻したことがありました。これもやはりそういうディザイア、女の子たちの時代の要望を事前にキャッチして、それに合うような感触のものをつくり上げた、そういう力によるのではないかと思うのです。それでこれは世界を相手にしてそういうふうな配慮をもって、何といってもやはりデザインとか、あるいはかっこうとか、感触とか、そういうものが非常に大事なので、だから染料についてはイタリアやドイツのいいのを日本はまねしてそれ以上のものにするとか、あるいはデザインについてはフランスやイタリアに負けない新しい斬新なものをやるとか、その企業企業がおのおのの長所としているところを発揮してやっていく、それを政府ができるだけ情報を供給し、また外国にも人を派遣し、あるいは外国人を招聘し、そういうようなことで世界に負けない足腰の強いものをつくっていく、そういうことが大事ではないかと思います。
  193. 松尾信人

    ○松尾委員 方向としましてはそのようなことであろうかと思うのでありますが、結局、企業自体ではやはり力も限界がありますし、知恵の出しようもまだ足らぬだろう。ですから、政府がみずからある程度開拓していく、そしてそれを大いに助成していく、そういう繊維産業のファッション化に対してうんと予算をとって——単なる事業団の中でやらせるとかなんとかいうことでなく、何とかセンターもけっこうでありますけれども、それ自体をうんと強めていくという方向、こういうものを今度は予算的にがっちり固められたらどうかと思うのですけれども、もう一言大臣お答え願いたい。
  194. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今度はそういう意味で情報センターをつくりますけれども、これは情報センターだけにまかしておかないで、われわれのほうの生活産業局が海外のジェトロやそのほかの機関も動員しまして協力していけるようにしていきたいと思っております。
  195. 松尾信人

    ○松尾委員 現状繊維産業をながめてみますと、非常に苦しいわけでございます。さきにも繊維の方々の大会がございまして、非常に苦しい、非常に熱気あふれる大会でございまして、前古未曽有の不況である、従来はドル・ショックだとか日米繊維協定等たびたび危機がありましたけれども、それは大きく影響を受ける部門、大きく影響を受ける地域というようなものが比較的多うございましたけれども、やはり大きく影響を受けない部門とか地域もあったのであります。今回はあらゆる部門があらゆる地域で深くこの影響を受けておる、不況である、だから前古未曽有だ、こういうことでありました。いろいろのことが論議されたわけでありますけれども、項目的に申し上げますから、これは時間がなくなりましたので簡単にお答え願いたい。  まず中小企業の方々を中心に話すわけでありますけれども、いろいろ長期の金を借りております。またそういう償還の猶予の問題。まず第一点は償還の実態中小企業は毎月どのくらい払っていかなくてはいけないか、これは簡単でけっこうでありますが、そういうものの償還の猶予の問題。これは先ほどは個別に判断する、こういうことでございましたが、個別に判断していく場合に具体的にどこでどのように判断をしていくのかということ、それから緊急融資が非常に大事なことと思うのでありますが、これについてはどのように考えておるか、まず二点について聞いていきたいと思います。
  196. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 月々どの程度の返済額になるかということは、現在資料を手持ちしておりませんので、後刻申し上げたいと思います。  個別に返済猶予の必要性をだれが判断するかということは金融機関の窓口になるかと思いますが、当方といたしましては、政府関係金融機関等に対しまして、そういった場合において繊維産業の置かれている現状というものを十分判断して慎重に扱っていただきたい、かように申し入れをいたしておるわけでございます。  それから緊急融資につきましては、四−六の対策について申し上げますと、第一次的にはいわゆる政府関係の三機関についてでございますが、四—六分として一応全体で五千五百億のワクがあるわけでございますが、これをできるだけ繊維産業、特にその中小零細企業に対して貸し出しをするように現在話を進めつつあります。  それから二つ目には、民間金融機関におきまして合計三千二百億の資金をもって中小企業の救済資金に充てたいといったようなことをいっておりますので、いわゆる個別企業に対する減産資金等の融通もそれからお願いすると同時に、あわせまして過剰在庫の凍結についても現在いろいろ検討いたしておるわけでございますが、そういった必要資金を民間金融機関にお願いする、かようなことで現在対策を進めておるわけでございます。
  197. 松尾信人

    ○松尾委員 次は、安定操業の問題でございますが、不況だといって直ちに発注量を削減する、または工賃を削る、こういうことが続きまして非常に苦しい中で苦しんでおるわけでございますが、すでに福井県また播州の操短、これは非常に致命的なものがあります。でありますから、この最低工賃というものを確保しなければいけないと思うのでありますが、このように、不況だということでかってに発注量を減らす、また工賃を削る、こういうことについてやはりきちっとした対策というものがなくてはたまったものじゃない。この安定操業ということについてどういうようにお考えになっているか、局長、これは要領よく答えてください。
  198. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維企業におきまして安定操業を阻害している一番大きな原因は、やはり発注量が著しく増減するということにあるかと思います。その原因はまたいわゆる繊維産業の市況産業性というところに大きな原因があるかと考えておるわけでございます。さようなところから、今回の構造改善事業におきまして、それぞれ分断されております製造工程、これを連携共同させることによりまして消費者需要の動向に即応した生産体制につくり直していこうといったことでございますので、この方向でかなり繊維産業市況性というものは脱却できるかと思います。ただ、先ほど大臣も申し上げましたように、消費嗜好の変化ということもございますし、あるいは綿花羊毛のように天然原材料に依存している面もございますので、完全に市況性を脱却するわけにはまいらないと思いますが、今回の構造改善事業によりましてかなりの成果をおさめられるもの、市況性を脱却できるものと期待しておるわけでございます。
  199. 松尾信人

    ○松尾委員 公平な付加価値の確保という問題でございますけれども、生産原価、それに加工賃を加えた価格、それから販売価格、こういうものを比べてみますと、いつもここで論じられておりますように、両者の価格に五倍から十倍という大きな開きがあります。流通段階における経費というものはある程度は当然必要でございますけれども、不当な高い価格販売するということは認められないわけでございます。国民生活物資について価格の凍結が行政指導で行なわれておりますけれども、これもいつまで守られていくか、期間的な保証もありません。本格的には、何としてもいろいろ価格の構成を追及しておって、適正な価格指導して守らせる、こういうことが本筋だろうと思うのでありますが、この繊維関係がいま非常に苦しい、特にそういう品物がスーパーだとかデパートで高く売られておる、これをどのようにチェックしていくか、どのようにこれを適正な価格というものに持っていくかということでありますけれども、いろいろこれは外国でも商習慣等があろうと思うのです。でありますから、何%というような商習慣というものを早く立てられまして、そうして消費者が納得のできるような販売価格にするということについての考えを局長から聞いておきたいと思います。
  200. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 生産原価に比較いたしまして販売価格が高いということは、現実の問題かと思います。これにつきましては、流通段階が非常に複雑である、あるいは市況性から来るリスクの負担をしなければいけないといった問題もあるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、物流の近代化も含めまして流通コストの低減につとめていくべきかと思います。  それから工賃だとか下請代金等については、結局はこれは取引改善の問題かと思いますので、一つには取引改善協議会をつくりまして、その場でルールづくりをやり、かつは一方で、たとえば糸買い布売りというように賃加工形態から脱却していこうという中小事業者に対しまして、商工中金の融資を百六十九億、本年度分として予定いたしておりますが、そういった資金を投入することによりまして加工下請形態から脱却させる、そういったことも一つ取引改善の方途かとも考えておるわけでございます。
  201. 松尾信人

    ○松尾委員 以上で質問を終わります。
  202. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 荒木宏君。
  203. 荒木宏

    荒木委員 御案内のように、繊維業界はたいへんな不況であります。私は、本年の二月の予算委員会でありましたが、大臣に、まず業界実態をしっかりとつかんでいただきたい、このことを要求いたしまして、お約束をいただきました。その後、調査がなされたと思いますが、業界の在庫がどのようになっているか、受注はどういうふうな動向であるか、そして工賃はどのような指数を示しているか、これは品目がたくさんございますから、たとえば綿スフ織物について、この予算委員会以後の実情を簡潔に報告いただきたいと思います。
  204. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 綿スフ織物業についての調査結果をお答えいたします。  まず、四−六の見通しでございますが、受注は、織機のスペースベースで五〇ないし六〇%程度しか埋まっていません。  それから生産と在庫でございますが、二月末現在で、前年同期比生産は二%の増でございましたが、在庫は七千九百万平米で、六八%の増加になっております。  それから工賃につきましては、百八十本ブロードを例にとりますと、昨年の一−三月がヤード当たり三十三円であったものが本年一−三月では二十五円に低下いたしております。
  205. 荒木宏

    荒木委員 つまりありていに言えば、在庫は率にして半分以上ふえておる。それから受注のほうは半分近くしかない。工賃はどんどん下がっておる。この不況の状態にどういうふうに対処するか。他の同僚委員から質疑がございました。私は、今回の法案提出の中に見られる政府の皆さんの考え方、これはいろいろと説明を伺いました。皆さんの考えはわかりましたが、将来この繊維業界をどういうふうなものにしていくか、この点については大いに論議をしなければならぬところだと思います。私どもは、あの法案に示されておる皆さんの考え方には問題が多いと思っておりますが、それはさておいて、いまのこの事態をどう解決していくか。緊急にこれの対策が必要だというふうに思うのでありますけれども、いまのこの法案で、現在の緊急状態、たとえばこの四−六について業者の皆さんの窮状が救えるか、その点についてはどうお考えかということをまず承っておきたいと思います。
  206. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在御審議いただいております構造改善法の改正案は、長期的な構造対策として繊維産業全体を対象として考えておるわけでございまして、当面の問題といたしましては、むしろ緊急的な対策を講ずる必要があるのじゃなかろうか、したがいまして、新しい構造改善を今後とも順調に軌道に乗せていくためにも、先ほど御指摘の深刻な不況というものを克服してでないと軌道に乗らないわけでございます。さような関係に立っておるものでございますから、私たちといたしましては、三月末と申しますか、年度末金融に引き続きまして四−六月の金融対策について現在いろいろと準備を進めておるわけでございます。  具体的には、政府三機関の四−六分としての五千五百億、それから民間金融機関におきますところの三千二百億、こういった資金を極力繊維産業、特に経営内容の悪化いたしております中小零細企業に対しまして確保できるように関係の部局と詰めに入っておる段階でございます。
  207. 荒木宏

    荒木委員 いま答弁のあるました金額の中で、繊維業界には幾らほど来る見通しですか。中小企業全体として、施策必要性は大いにありましょう。ここでいま審議しておるのは繊維の問題でありますから、その点について、すでに四月も終わりに近づいておる現在で、いまの指摘金額のうちどのくらいを回せるか、見通しをはっきりしていただきたい。
  208. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま申し上げました金額のうち幾ばくのものが繊維産業に向けられるかということについてはまだ確定いたしておりません。また一面、繊維産業に対して幾らということをきめることが事実上関係部局と話がつくかどうかという問題もございますが、われわれといたしましては、昨年が、繊維に対して大体千五百億程度の融資が三機関から行なわれておりますので、当然のことながらこれを上回る金額を確保いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  209. 荒木宏

    荒木委員 それでは業界の四−六の資金需要ですね、在庫の増加に対する手当て、受注の減少に対する手当て、こういった面での資金需要はどのくらいだと見ておられますか。
  210. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私のほうで一応調査いたしました結果、これは業界からの調査の結果でございますが、大体数千億という希望を申し出てきております。
  211. 荒木宏

    荒木委員 業界の希望が四−六で数千億、皆さんのほうの御用意なさっておるのが中小企業全体で五千五百億、これで一体そろばんが合いますでしょうかね。年度末の五百億といわれたあの金額の中から繊維に回った実績はどのぐらいですか。その点から皆さんの見通しの問題についてお尋ねしたいと思いますが、あの年度末のうち、率にして大体どのくらい回りましたか。
  212. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 年度末の緊急融資五百五億のうち繊維に向けられましたのは、百五十億でございます。
  213. 荒木宏

    荒木委員 そういたしますと、かりに同じ率で計算をしますと、今度は政府系の五千五百億のうちで三分の一弱とすれば千五、六百億、どっちに計算しても二千億足らない。業界の皆さんの言っておる数字にははるかに及ばないことになりますね。政府の皆さんからいただいた資料によって私が計算したところによりますと、昭和四十八年で、一日当たり従業員三百人以下の繊維の中小業者の皆さん方の生産量は百十九億であります。そのうち在庫の増加によってかりに在庫率が七割と計算すれば、これは約八十億でありますから、その計算で売った品物の代金回収とそれから仕入れた原料の支払いの期間の差を四十五日として計算いたしますと四千億足らずになる。ですから、業者の皆さんが言っておられる数千億というのも、政府の皆さんからいただいた資料によって試算をしたところによる約四千億弱という数字も、いずれも、皆さんのいまのこの昨年度末の実績による計算からいえば半分にも足りない。このまま放置されるおつもりですか。
  214. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 通常の場合におきましては、大体平均残高からいたしましてのシェアというものがあるかもしれませんが、ただいまは非常な緊急事態と申しますか、特に繊維産業におきましては、他の産業と比較いたしましてきわめて深刻な不況を呈しておるわけでございます。さようなところから、私たちといたしましては、まだ幾らの額というところまで申し上げられないわけでございますが、できるだけ多額の資金を繊維産業に振り向けられるように努力いたしたいと思います。
  215. 荒木宏

    荒木委員 努力は大いにやっていただかなければならぬと思います。だってそういう立場に皆さんおられるんだから。しかし私が言っていますのは、客観的な事実をもとにそれに対する的確な対策が必要である。皆さんのほうじゃ、資金需要についての見通しの数字はないとおっしゃるんでしょう。もしないとすれば、業界の皆さんが言っている数字、これはやはり一つの資料でしょう。もし皆さんのお手元に資金需要の見通しの数字がないとすれば、皆さんからいただいた資料によって計算をした、私の提案した半分にも足りないという数字、これも一つの資料でしょう。これは局長、どうなさるおつもりですか。努力はしていただく必要はありますよ。私は客観的なその事実を前提にして皆さんの努力をどういうふうに具体的になさるか、その行政の内容を伺いたいのです。はっきり御答弁願います。
  216. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点はごもっともでございますが、私自身がそういった資金の分配ということに直接携わっておるわけでもございませんので、当方といたしましては、確かに業界調査によりますと数千億、それに対して一・四半期における政府三機関の総貸し出し予定額は五千五百億、その間に返りがあるわけでございます。ただ、その五千五百億の中で、極力繊維産業に振り向け得るよう関係の部局と折衝を続けるということ以上に私としてはお答えができ得ない立場にございます。いずれにいたしましても、できるだけの努力はしてみたい、かように考えておるわけでございます。
  217. 荒木宏

    荒木委員 いま答弁された局長が財政当局の責任者のお立場でないことはよく承知しているのです。しかし、皆さんは、一方この繊維業界の不況に対して最も適切な対策をいま直ちに立てられる責任を負っておられるわけですね。私が申しておるのは、努力をしていただくのは当然でありますけれども、その努力の内容と方向を明らかにして、私どもは私どもの立場でそれが実現できるように、この国会の審議を通じて明らかにしていく、これが国会審議というものだろうと思うのです。そうだとしますと、五千五百億というワクがきまっておる。その中で取り合いをしてみたって、これは八割方かりに繊維のほうへ来たとしても、業界の皆さんの要望にようやく沿うか沿わないか。だとすれば、いま局長がおっしゃった関係方面と努力をする、折衝を重ねる、問題の一つはここにありましょう。ですから、どういう関係方面にいかなる努力を続けられるおつもりか。局長、ひとつまずこれをはっきりおっしゃってください。
  218. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 第一次的には政府三機関の五千五百億、それから第二次的には民間金融機関の三千二百億というのが当面予定されておる資金ワクでございますから、私のほうといたしましては、そういった政府関係機関及び民間金融機関からの資金の確保にできるだけの努力をいたすわけでございますが、さらにさようなことによって一・四半期の五千五百億のワクで繊維産業その他のものも含めまして不足するような場合には、一・四半期に繰り上げてでもワクの拡大をはかるように要請を続けたいと思います。
  219. 荒木宏

    荒木委員 いま大臣がお戻りになりましたから、一言御不在の間の論議を要約して申しておきますけれども、いまの繊維不況に対する行政の対応策として五千五百億というワクが四−六できまっている。これは中小企業全体であります。一方、業界の要求は数千億でありますし、私どもの政府資料をもとにした試算によってもほぼそれに近い数字が出ております。ですから、この五千五百億を繊維にかりにうんととってくればほかの業界が困ります。しかし、いまの窮迫の度合いからしてそういう方面の努力も必要でしょう。それで足りなければ、今度は下期のワクを繰り上げて確保したいとおっしゃる。私は、局長のお立場としての努力の方向一つはそういうものであり、それがある意味でいうならば限度かと思うのでありますが、しかし大臣のお立場は違います。政治的な解決ということをなし得る立場におられるわけですから、いまこの不況状態にある繊維について将来の構造の変革の問題とあわせて、いやそれよりもまずやるべきことの一つとして緊急の融資対策、この五千五百億という量が足りないということははっきりしているわけですから、いま数字を申し上げたとおりですから、これをふやすために努力をしていただくべきだと思いますが、大臣の御所見はいかがですか。
  220. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 実情に即しまして必要不可欠な資金は回るように、十分手当てをいたしたいと思います。
  221. 荒木宏

    荒木委員 それは、現在の五千五百億というワクにはかかわらない——足らないという数字の根拠は申し上げたわけですし、いまの実情というのもはっきり申し上げました。この実情に応じてこのワクはさらに広げる方向で努力する、こういうふうに伺ってもよろしゅうございますか。
  222. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 三機関の年間の資金計画というものはございますから、それによって一応はやっていくということになりましょう。情勢によればそれを繰り上げるということもありますし、あるいは情勢によればさらに追加投資をするということもあり得ましょうし、それはそのときの情勢によって、大蔵当局の国庫の情勢や預金部資金の集まりぐあいとか、そういういろんな情勢を見ながら必要な手当てをしてまいります。
  223. 荒木宏

    荒木委員 いま大臣の御答弁で、情勢によっては繰り上げあるいはそのワクの追加、こういう御答弁をいただきました。そこで私は、情勢といいますものは、確かに財政面の事情は無視できませんでしょう。しかし同時に、その中で一番大きな要素の一つ業界の実情だろうと思うのです。大臣にひとつ業界の代表の皆さんと直接お会いいただいて実態を十分につかんでいただく、そういう機会を早急に確保していただきたいと思いますが、いかがですか。
  224. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 陳情に来ていただければ、私は会うことはいといません。それよりも実際は、各産地、産地の情勢について、地方通産局の局長がみずから係員等を派遣してこまかく把握するというほうが的確な普遍的な情報が出てくるだろうと思います。
  225. 荒木宏

    荒木委員 いま直接会って陳情も聞きましょう、同時に一般的に地方局を通して実情も十分つかむ、こういったお約束をいただきましたので、これはぜひ実行していただきたい、こう思います。問題は、資金の量とあわせてその質であります。先ほど返済猶予というお話も出ておりましたが、本年の二月の予算委員会で、私は、前のたとえばドル・ショック金融のときの返済の時期が来ておる、これについて適切な返済猶予の措置を講じていただきたいということを申し上げました。その後たとえば三月の五日に中小企業庁の長官名でそういった趣旨の通達がすでになされましたし、先日政府の皆さんから伺ったところでは、各通産局、各地方自治体、政府系三金融機関、それぞれ返済猶予についての通達を出していただいたようであります。しかし問題は、借りた金が返せない、少し先に延ばしましょう、これはこれ以上悪くなるのを押える一つの手だてであります。問題は、これ以上悪くなるのを押えるということも一つでありますが、さらにいまの現状を救済するという積極策が要ります。その内容としては、言うまでもなく特利であり、特別の助成措置だ、こういうことになると思います。前に借りた金の利子も支払いが困難なら、元本の返済もできにくいというのでありますから。そこで、そういった実情のもとに特利融資ということもひとつ検討していただきたいと思いますが、政府のほうのお考えはいかがですか。
  226. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 こういった時期でございますので特利融資ということも非常に重要な問題かと思いますが、当面、先ほど来お話が出ておりますように、量をいかに確保するかという方向に追い込まれておりまして、まだ十分特利という問題について折衝を続けてはおりません。努力はいたしてはみますが、ただこれは非常にむずかしい問題かと思います。一方で金融引き締めと申しますか、総需要抑制政策をとっておる中におきましての不況対策ということで、置かれている事情が従来と異なって非常にやりづらいと申しますか、むずかしい段階にございますので、せっかく努力はしてみますが、とりあえずはまず量の確保ということを第一義的に検討すべきことではなかろうかと考えております。
  227. 荒木宏

    荒木委員 見通しの問題とあわせて努力をするということをおっしゃっていただきました。私は、皆さんのほうでそういう御答弁もあろうかと思いまして、いま所管が大蔵委員会でありますから、大蔵省銀行局の関係者それから官房長、さらに日銀の関係者の皆さんにも、いまの窓口規制の選別について、繊維をはじめ非常に困っておる業界はこれをはずすようにしたらどうですか、そういう具体的な実情に応じた選別規制こそほんとうに実態に即したものじゃありませんか、こういうことを申し上げて、その方向で検討するということも確かに道理であるというふうな御意見も伺っておるわけです。ですから、先の見通しは確かに一般状況としては局長のおっしゃったような点があります。しかし、まず努力をしていただく、そしてその努力について関係者がいろいろと協力すべき面があれば、これはその方向で一致してがんばるということであります。前に借りた分がなかなか返せぬということで、高い利子を払って、また幾ら量を確保してみたってなかなかものの役には立ちません。いろいろ同僚委員のほうから出ておりますように、自殺をされた方も出る、あるいは私の地元の泉州では反物を焼却するというふうな新聞報道でごらんのような事実も出ておるわけです。私どもは非常に心を痛めておるわけです。ですから、この特利の融資を量の確保とあわせて、ぜひいま局長がおっしゃった努力を今後とも一そう続けていただきたい、大臣にこの点について、ひとつ検討するということを含めて御所見を伺いたいと思います。
  228. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、実情に応じて適切な対策を講じていきたいと思っております。
  229. 荒木宏

    荒木委員 今度の法案では税の減免でありますとか、あるいは融資の問題でありますとか、商品開発や技術改善ということに関していろいろ品数が並べられております。しかしそういった、たとえばものにたとえれば浅瀬で水泳ぎを手ほどきをするということも必要かもしれません。いま深みにはまっておぼれかかっておるのを助けることは、これは緊急の問題です。ですから、そういう点で質と量をあわせて大臣のいまおっしゃった点を一そう行政当局でも努力を続けていただくことを重ねて要望して、次の質問に移らしていただきたいと思います。  第二の質問は、この業者の皆さんと大商社との関係であります。たとえば糸を買って製品を売る、この場合の代金の支払い、取引条件については実情はどのようになっておりましょうか、政府委員のほうから伺いたいと思います。
  230. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 綿糸について申し上げますと、糸代金につきましては四十五日以内の手形ということになっておりますが、反面、織物の購入に対する手形につきましては漸次長期化していっておるというのが実情かと思います。中には百二十日あるいは百五十日といったようなものも出てきておるかと考えております。
  231. 荒木宏

    荒木委員 手形サイトに伴う金利のほうはいかがでございますか。
  232. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 機屋サイドの負担になっておると承知いたしております。
  233. 荒木宏

    荒木委員 私が伺いましたところでは、本年の一月以降一一・九八%ということを聞いておりますが、いまの局長の御答弁では、繊維業者の皆さんの立場から見れば、払うほうについては四十五日以内ということで縮められて、しかも一〇%をこえる金利を上のせをされる。一方もらうほうについてはどんどんどんどん長くなっていって、先の話になって、しかもなおかつ金利がつかない。これは政府の皆さんのお立場からごらんになって、不公平な関係といいましょうか、あるいは言うなれば片手落ちな関係といいましょうか、やはりその間に不平等があるということはお認めになりますか。
  234. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 かような実態になっておるということについてはいろいろな経緯なり理由があるかと思いますが、いずれにいたしましてもアンバランスであるということは否定できない事実かと思います。
  235. 荒木宏

    荒木委員 アンバランスな関係について、現状がそうであるとおっしゃるなら、よって来たる原因の解明、そうしてそれに対する対応策、これをひとつ調査をしていただきたいと思いますが、政府のお考えはいかがですか。
  236. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 経緯等について実態を調査いたしたいと思います。
  237. 荒木宏

    荒木委員 せっかく御質問申し上げておるわけでありますから、早急に調査をしていただいて、調査結果をひとつ国会に、委員会に御報告をいただきたい、こう思いますが、いかがでございますか。
  238. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 調査が終わった段階でさよういたしたいと存じます。
  239. 荒木宏

    荒木委員 この一方の当事者であります綿糸商業組合、これは中小企業団体法による組合で、しかしながらその中に世間でいう大商社がかなり入っておるということですけれども、その実態はどのようになっておりますでしょうか。
  240. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま手元に数字を持ち合わせておりませんが、メンバー構成は中小企業関係が五一%、大手商社筋が四九%と記憶いたしております。
  241. 荒木宏

    荒木委員 これは法律上の要件もございますから、御指摘のような結果も出ようかと思います。しかし、私どものほうで政府の皆さんからいただいた資料も含めて検討いたしますと、理事長さん、副理事長さんを含めた役員の三人の方は、全部本来の中小企業団体の組合員資格のない法人の方であります。たとえば伊藤忠商事。そして二十三人の役員の皆さん方の中で、中小企業者としての資格のない、つまり大きい規模の業者の皆さんが十五組合員あります。つまり半分以上です。ですから、トップの役員は一人占め、そして幹部のほうは二十三分の十五ですから、それが半分以上占めておるわけです。全体の数字といたしましては百五十三業者の中で四十九業者でありますから、あるいは比率のほうではいまおっしゃったような比率が出るかもしれません。しかし、一番勘どころの意思決定をしていく、リードをしていく、そういう立場の人が本来の中小業者の立場にないわけであります。そうしておいて、先ほど局長が言われたような、いわば一方通行のような形の条件を、しかも一方的に通知がある、こういう状態であります。  これは政府の皆さんに伺いますが、是正をしていくというのが筋道ではないでしょうか。経過はいろいろありましょう。また、やり方はいろいろありましょうけれども、方向としてはこれを正していく、アンバランスな関係だということをおっしゃったわけですから、アンバランスなものはバランスをとるようにしていくのが行政の筋道であろうと思います。将来の方向についてのお考えはいかがでしょうか。
  242. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お答えする前に一言訂正させていただきたいと思います。  先ほど構成メンバーの比率で申し上げましたが、あれは取り扱い数量の比率でございますので、訂正させていただきます。  それからいまの問題につきましては、私は当然改善していくべきだと思います。ただ、問題が非常に複雑でもありますので、それから糸商の中にも先生いま御指摘のような大商社のほかに中小の糸商もおりますので、そういった問題もかみ合わせて考える必要がございます。そういったところから、私たちといたしましては、取引改善協議会をつくりまして、そこでそういった問題も含めて検討いたしたいと考えております。
  243. 荒木宏

    荒木委員 改善委員会もある意味ではけっこうかと思います。  ただ、私が先ほど指摘をいたしました条件は、糸商組合の調整規程の中に規定があります。そしてまた、その調整規程のほかの条項では、糸商組合の皆さんが今度はメーカーのほうに支払う支払い条件の規定もありますが、これはどのようになっておりますか。
  244. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 調整規程によりますと四十五日以内の手形ということになっておると思います。
  245. 荒木宏

    荒木委員 それは反対でしょう。四十五日以内に払いなさいというので、私が言っているのはメーカーに対してどうか、こう言っているのです。
  246. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 四十五日以内ではいけないということでございますが、現実には大体四十五日になっておるようでございます。
  247. 荒木宏

    荒木委員 調整規程で見る限りでは、この大商社を幹部とする糸商組合の皆さんは繊維業者の皆さんに対して、先ほど言いましたように非常にアンバランスな関係でもって、取るほうは早く取って、しかも金利は乗せる、払うほうはうんと延ばして金利なし、そればかりか、今度はメーカーのほうに対しては、これは自分が支払う日にちに食い込んではならない。つまり上は天井なしなんです。ですから、対繊維業者の皆さんとの関係だけではなくて、メーカーとの関係においてもそういったような傾向が見られる。つまりアンバランスをさらに加重しておるわけであります。問題は、将来の方向として是正するということをお約束いただいた。そしてまた、改善委員会をつくって検討するということもお約束いただきました。こういったことが調整規程に規定されておる。これをひとつ御意見をお尋ねしたいのですけれども、調整規程については、申すまでもなく主務大臣の認可であります。こういった関係の事項について認可をなさるときの条件は法律上どのようになっておりますか。
  248. 堺司

    ○堺説明員 中小企業団体の組織に関する法律の十二条におきまして、商工組合の設立要件が出ておりますけれども、組合員たる資格を有する者の二分の一……
  249. 荒木宏

    荒木委員 調整規程ですよ、いま聞いているのは。
  250. 堺司

    ○堺説明員 どうも失礼いたしました。十八条において調整規程の認可がございます。その場合にまず三点の条件がございまして、第一には、十七条一項第四号または第五号、これは例の商工組合の調整事業でございますけれども、「第四号又は第五号に掲げる制限の種類及び方法並びにその制限を行う期間」、第二点といたしまして「前号の制限を実施するための検査の方法」、それから第三に「手数料又は制裁に関する事項」、これにつきまして商工組合をつくる場合に主務大臣の認可を受けなければならないという規定になっております。
  251. 荒木宏

    荒木委員 私がお尋ねしましたのは、一般的な認可状況ではないのです。いま現実にアンバランスがある。この問題を提起をして、局長もお認めになったわけですね。これに関連する条項は一体どうか。これは十九条の一項四号でしょう。つまり内容を申し上げると、この調整規程を認可するにあたっては「関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」つまりこの調整規程に関係をする業者の皆さん方の利益を不当に害するという場合は認可をしてはならない、こうなっておるわけです。先ほど申し上げた調整規程の内容が、はたしてしからば繊維業者の皆さん方の利益を不当に害しているかどうか、この事実認定と判断にはいろいろな見方がありましょう。しかし、局長自身がアンバランスだとお認めになって、将来の方向として改善をしていくということをおっしゃり、委員会もつくってやりましょうとおっしゃっておる。つまりこれには問題があるんですよ。ですから、糸商組合のこの調整規程の認可にあたっては、いま私が指摘をしました条項の精神にのっとって十分慎重に繊維業者の皆さん方の利益を害しないようにやる、こういうふうにされるべきだと思いますが、この点について、これは所管は主務大臣でありますから、通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 業界の実情、契約の情勢、そういうものをよく踏まえまして、適切にやりたいと思います。
  253. 荒木宏

    荒木委員 いまの大臣の御答弁を踏まえて、事務当局ではこれについていままでの態度とは違って、糸商組合の調整規程の認可にあたり、特にこの条項について細心の留意を払って慎重に利益を害しないように検討する、このことをお約束いただけますか。
  254. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 従来からも慎重な態度でチェックいたしておるわけでございます。ただ、四十五日と申しますか、いわゆる手形のサイトというのはむしろ短いほうがいいわけでございまして、四十五日自体の問題としては特に問題がないわけでございますが、それに関連して百二十日、百五十日といったような問題もあるわけでございます。そういった両面からやはり慎重に審議する必要があるかと思います。今後とも十分にそういった配慮を加えながらチェックしてまいりたいと考えます。
  255. 荒木宏

    荒木委員 こういった大商社の皆さん方のビヘービアについて、私は関連して糸の相場の問題を少し触れて申し上げたいと思うのです。  御承知のように、綿糸相場の問題は取引所の建て値もあり、また仲間うちの値段もあり、いろいろでありますけれども、たとえば人絹しゅすについて申しますと、たとえば昨年の一−三月はその前年の十−十二月に比べて単位当たり千円から千四百円というふうに、あるいはまたナイロンタフタについて申し上げますと千四百円くらいから二千円というふうに、その時期に値段が急激に上昇しておるわけです。もちろんこれは相場のことであり、物の値段でありますから、いろいろな経済条件が作用することは当然であります。しかし、たとえば株式におけるさまざまな思惑売買による値段の乱高下、あるいは土地に対する思惑の投機的な取引、このことが正常な経済の運営を害したことはもう天下周知の事実でありまして、国会でも再三論議が続けられてきたところであります。したがって、私はこの機会に、たとえば仮需要によるこの糸の相場の値動きの問題、このことによって業者の皆さんの経営は非常に大きな影響を受けるのですから、それに対して行政当局として注意深くあと追いをして監視を続けられる必要がある。それは値段はもう相対のことだからということで全く放置をしないで、慎重に実態を見きわめて事実をまずつかむ必要がある、こう思いますが、政府のお考えはいかがでしょうか。
  256. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 取引所はヘッジ機能と公正な価格形成機能を持っておるわけでございます。これが適正に行なわれるように取引所につきましては日常からも深甚の注意を払っておるところでございます。
  257. 荒木宏

    荒木委員 あらためて申すまでもなく、商品取引所法の九十条によりますと、一定の場合に取引の停止ということが規定をされておりますし、また百十九条によりますと、それに対する監督調査の権限を通産当局は行使できる、実情はどうなっているか報告しなさい、実態をつかんでそれに対する指導ができるというたてまえになっております。ですから、行政当局のほうで、たとえば昨年の初期に起こりましたようなああいう事態になったときには実情をよく把握をして、適切な指導対策をとる、このことをひとつはっきり押していただきたいと思います。
  258. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 取引所のいろいろな規制につきましては、実は私のほうの省の産業政策局のほうで所管いたしておるわけでございますが、そういった動向を注視いたしておりまして、御指摘のような状況によっては取引停止をかけるようなときもございますし、あるいは臨増しを増徴するとか、あるいは建玉制限を行なうといったようなことによりまして、できるだけ取引所機能が公正に適正に運用されるように指導監督しておるわけでございますし、今後もさような態度で対処いたしたいと考えております。
  259. 荒木宏

    荒木委員 大商社の問題について伺ってきたわけですけれども、お約束いただいたことはひとつ必ず誠実に実行していただきたい。  ついては、現行の構造改善臨時措置法が期限が来るということであります。私はこの機会に、過去四年間、五年間のこれがどうであったか、つまりもっとありていに言えば、大規模法人とそれから小規模零細業者の関係がどういうふうになったか、格差は拡大をしたのか、あるいは構造改善でメリットがありたのか、目標に対する達成率はどうであったか、このことについてひとつ簡潔に伺いたいと思います。
  260. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現行と申しますか従来の構造改善事業によりましては、設備近代化あるいは過剰設備の廃棄といった点におきましてかなりの効果をおさめたと思っております。特に過剰設備の処理につきましては、構造改善事業のほかに、いわゆる臨繊特によりまして買い上げを実施したといったようなところでかなりの効果をおさめたと思っております。ただ、その場合に、特定の四業種特定紡績業、織布業メリヤス業、染色業、こういった特定業種について構造改善の対象といたしておったわけでございますから、それ以外の分野につきましてはもちろんこの助成の対象になっておらなかったということになるかと思います。かたがた、いまにおいて反省いたしますのに、小規模零細企業者というのはどちらかといえば取り残されておったきらいがなきにしもあらずというのが実感でございます。今回の構造改善を新しく始めるにあたりましては、そういった反省をベースにいたしまして、さらに従来の構造改善による効果を踏まえまして前向きに対処していきたいと考えておるわけでございます。
  261. 荒木宏

    荒木委員 効果をあげたというお話がありました。買い上げの問題についてはいろいろな見方がありましょう。しかし皆さんのほうが出された資料によりますと、目標額に対して昨年の統計では設備で五八%、土地建物で六二%、全部合わせて五八%ですから、やっと半分そこそこしかいってないじゃないですか、もうおおかた終わろうという時期に。しかも、その間におけるいわゆる三百人以上の規模の皆さんと、それからそれ以下の小規模零細業者の皆さん方、一人当たりの生産額を見ますと、大きいほうはこれは昭和四十五年が三十九億円で四十八年が四十四億円です。この間に一業種当たり五億円生産額がふえておるのに対して、下のほうは二千六百万円から二千九百万円で三百万円しか動きがない。率にしますと片や五〇%足らず、片や五二%ということで格差は開いておるわけです。もう終わろうかというときに目標の達成率は半分そこそこで、そして大きいほうと小さいほうとの格差が開いておるということになれば、先ほど来問題にしております大商社その他のいろいろなかってなやり方に対する規制という問題については、構造改善は全然役に立たなかったばかりか、逆に業界の内部にそういった開きを持ち込んでおる、このことは私は指摘できると思うのです。ほかにいろいろと検討しなければならない要素はありましょう。しかし、いま申し上げたいのは、この業界の皆さんがいろいろと問題にされている取引条件の問題、こういったことを含めて調査して報告するという約束をいただきました。委員会でさっそく改善をはかろうということも言っていただきました。相場の問題についてもおさおさ監視怠りなく適切な措置をとるということも約束をいただいた。  そこで、それにさらにつけ加えて、私は実態が明らかになれば大商社のほうに対して、あるいは糸商組合に対して政府のほうから申し入れ、通達を出していただきたい。そして今度の新しく出発しようというこの改正案について、わが党としてはいろいろな問題点を提起をして、その実現のために努力しておるわけですけれども、ひとつ運用面も含めて、先ほど来申しております大きいところがかってなことをしないような具体的な手だて、これはぜひ検討していただきたい。この二つのことについて、この問題についてはまとめにさしていただきたいと思いますので、ひとつ大臣から政治的な御所見を含めて御意見を伺いたいと思います。
  262. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御趣旨を体しましてできるだけ努力をいたします。
  263. 荒木宏

    荒木委員 お尋ねしました趣旨は御了解いただきましたので、確かにお約束をいただいたということを確認をさしていただいて、時間があまりなくなりましたので、あと一、二お尋ねをしたいと思うのですが、先ほど来同僚委員からも指摘をされました開発途上国の輸入急増の問題であります。これは実態の数字についてはもう申し上げません。政府からいただいた数字によってすでに明らかでありますし、たとえば人造繊糸などについていいますと、実に前年に比べて四十一倍という数字です。二倍、三倍、五倍、十倍というのではないのです。四十一倍をこえる輸入があったということが皆さんからいただいた数字によっても明らかです。私は、この実態についてどうすべきか、いろいろガットの問題だとか、あるいは全体としてのこういう輸出入貿易政策の問題だとか、これらのことは伺いました。しかし一方、海外に対する投融資、これが一つ原因になっているということも事実であります。これも一昨年に比べて昨年、昨年に比べて本年と、数字は追ってずっと伸び率が高くなってきています。一方、また米国市場における競合率も、すでにこの数年の間にシェアは半分以下に落ちました。  私は思うのでありますけれども、これは個別業界の問題としてだけではなかなか処理をしにくい面がある、再三皆さんから伺ったとおりであります。しかし、一面からいいますと、それじゃ一体ほかの国はどうなんだ。アメリカはすでに五%をこえたというだけで大騒ぎをしていろいろな措置をとった。その結果が、皆さんの代表が行かれた政府間協定になりました。そしてまた一方、輸入の関税のほうは、わが国と違ってうんと率が高くて、壁が厚い。ですから、アメリカにおける競合が一そうひどくなってシェアが下がり、入ってくるほうはどんどんふえて、品目によっては四十倍というようなものにまでなっている。そして、当の相手であるアメリカは、もっと状況が数字の上から見れば低いにかかわらず、自国の繊維産業業者を保護するために手だてをとっている。ですから私は、この際、従来とり続けてこられたいわゆる経済開放体制資源問題だとか、あるいは貿易自由化の問題だとか、そういった中に、基本的にまず国内業者の保護という点を入れ、ことに、いま当面しておる繊維業者の皆さんの窮状を打開するためにも、その大きな原因であるこの輸入急増問題についての対策を真剣に考えられるべきである。中をいじって構造改善流通過程を縮めましょうとか、そういったことではなくて、外向けの対策をとる必要がある、こういうふうに思いますが、大臣のお考えはいかがですか。
  264. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は午前中お答えをいたしましたが、やはり保護政策をとるということは、自由貿易のたてまえ上、できるだけ抑制したほうが適当であると思います。日本は輸出、輸入貿易で生きている国で、片っ方でそれをやると片っ方で報復を受ける、そういう危険性が出てまいります。しかしながら、やはり国内産業のことも大事でありますから、それはそのときの情勢によって、しかるべき手を打っていくということが大事であり、LDCの諸国あるいは先進諸国それぞれについて、おのおの適切な対策を講じていく必要がある、そういうふうに考えます。
  265. 荒木宏

    荒木委員 国内産業の保護、業者の皆さんの保護も大事である、そのときどきの情勢で適切な手を打っていく、こういうおことばでした。  そこで私は、その適切な手だてをいまとられる幾つかの方法の一つとして、たとえば商社筋が輸入をしていまかかえておる商品を緊急事態のときに一定の時期を限ってしばらく凍結をする、これは一つの方法だと思うのです。これはいかがでしょうか。
  266. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 凍結ということばが妥当するかどうか別といたしまして、そういった輸入品の在庫につきまして、いわゆる押し込み販売だとか、あるいは投げ売りを来たさないように、輸入商社各社に対しまして強く自粛を求めておる段階でございます。
  267. 荒木宏

    荒木委員 先ほどキャタピラー三菱と小松の話がありましたが、私が言っておるのは、小松のような大企業の話をしておるのではありません。繊維業界の八割以上を占めるという、ほんとうに零細な小規模業者の皆さんのいまの窮状を打開するためには、局長、どうでしょうか、いまおっしゃったような、要望しておるという程度しかできないのでしょうか。商社に対して、実情を報告さして、そうしてそこへ政府として申し入れをする、そうしてそれに対する返事を聞いて適切な対応策をとる。つまり、他の人たちが、国民の多くが、業者の多くの人が迷惑を受けている、その原因行為について、これが故意であるとか過失であるとか、やれどうであるとか、そういうことは問いません。客観的にずいぶん被害を受けているわけです。どっと入ってきますからね。それを救済するがための措置として、実態を明らかにして政府として申し入れして、そうしてそれが聞かれればよろしい、もし聞かれないときの手だてとしては、これもまた今度の国会ではいろいろな論議があったところです。ですから、まず政府として正式にびしっと申し入れをするべきだと思いますが、局長いかがですか。
  268. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御承知のように、今回の金融引き締めにあたりましては、商社もその引き締めの中心的な対象ということで引き締めを受けておりますので、その資金繰り等とも勘案する必要があるかと思いますが、いずれにいたしましても、国内繊維産業に及ぼす影響ということの重大性にかんがみまして、私たちといたしましても常にその商社の手持ち在庫等に注視いたしまして、値くずれ的な販売が行なわれないようにいたしたいと思いますが、一方、各メーカーが持っております過剰在庫につきましては、市中金融等を通じまして凍結資金を融通いたしたいということで、現在いろいろと準備を進めておる段階でございます。かたがた、輸入商社等に対しましては、できるだけ秩序ある輸入を行なうように、これも数次にわたって注意を喚起しておるところでございます。
  269. 荒木宏

    荒木委員 皆さんのお気持ちはそれなりにわかりました。だから、その気持ちを表現する手だてです。政府として正式な措置として申し入れをするべきではありませんか、私はこのことを言っているのです。願望を聞いているのではなくて、施策を聞いているのです。局長いかがですか。
  270. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 申し入れということに該当するかどうかという問題もございますが、私たちといたしましては、そういった押し込み販売的な、ダンピング的な販売といったものを極力やらないようにということで自粛を求めておるということが実態でございます。
  271. 荒木宏

    荒木委員 これはもう昨年のあの石油危機といわれた国民生活の危機以来いろいろな形でやられたじゃありませんか。昨年の十二月二十四日には、大臣は、これは別の問題ですが、原油の価格高騰による石油製品価格の値上げはやめてくれと大臣談話を発表された、これも一つの形でしょう。通産省への関係者が見えたときに、それとなしの世間話みたいなことでおっしゃるのも一つの方法かもしれません。この際、まず姿勢を正して、政府としては正式の意向はこうだぞと、形を整えてはっきりなさるということがまず第一だ。あといろいろありますけれども、それをまだやられてないでしょう。国民の目から見て、業者の皆さんの目から見て、政府のこの点の姿勢がはっきりした——これはまずそのことたけは金は要りませんからね。だから、局長いかがですか。あなたがおっしゃった願望を実現するために、昨年来とられてきたそういった方法をこの際おとりになったらいかがですか。
  272. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 商社が持っております輸入品の在庫状況あるいはその在庫をどの程度、どのような形で販売しておるかといったようなことの実態をまずよく見きわめる必要があるかと思います。一般的に輸入がふえておるから商社の在庫が多いだろうというような感触から、それの押し込み販売というものに自粛を求めてきたわけでございますが、先生の御指摘もございますので、そういった在庫の実情というものを調べた上で、必要とあらば申し入れいたしたいと思います。
  273. 荒木宏

    荒木委員 まだ御調査ないようでありますけれども、そのことの当否は時間の関係もありますからおきますが、いまとるべき手だてとして早急に調査をしていただく、そして委員会に直ちに報告をしていただく。いま局長が言われたように、局長の名前なりあるいは責任者の名前で、商社筋にこの問題を解決するような形で、輸入急増による業者の皆さんの圧迫を食いとめる形で、直ちに正式な申し入れをしていただく。これは局長よろしゅうございますね。
  274. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 そのような方向で対処いたしたいと考えます。
  275. 荒木宏

    荒木委員 無籍の処理の問題についてはいろいろな経過があったところであります。この問題について納付金が納付をされました。納付をめぐって産地ではいろいろな問題がありました。しかし、納付金は大体全額買い入れ、買い上げ代金に充当されるというふうに承知をされておる向きも少なくないようであります。そこで、政府のほうの指導方針として、一方業界の自主的な意思決定、これはこれで尊重されなければならない面もありましょう。しかし、政府のほうの方針として、いま私が言いましたような方向指導をされるということをひとつ確認をしておきたいと思いますが、いかがですか。
  276. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまの御質問の趣旨は、いわゆる納付金の中でどの程度政府金融機関から融資をしたかということでございますか。そういう意味でございましたら十一億程度納付金に充当するための融資を実行いたしております。
  277. 荒木宏

    荒木委員 そうではなくて、納付金の運用、管理について、これが買い上げ代金に充当されるように指導をなさるべきではないか、こういう趣旨であります。
  278. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 納付金は、今後五年間に設備を廃棄しようとする人に対する買い上げ資金として運用されるわけでございます。その単価につきましてはいろいろ問題がございまして、あるいは織機の種類によって、綿織機が人絹織機にもなるといったようなこともあったりいたしまして、あるいはそれぞれの工連における納付金の額等によりまして、必ずしも一律的にやるということもむずかしいかと思います。かといって、値段の差をつけるということもむずかしいかと思いますが、いずれにいたしましても、それぞれがそれぞれの工連におきまして意思決定をしたものについて、当方においてはその適否を判断いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  279. 荒木宏

    荒木委員 答弁が要領を得ませんから、その点について、それじゃ処理状況委員会に報告していただけますね。時間がありませんから、これはその報告をいただいてからということにしますが、処理状況の報告は局長、してもらえますね。
  280. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在の段階ではまだ廃棄処理が行なわれておりませんが、今度廃棄処理が行なわれる段階におきましては御報告いたしたいと思います。
  281. 荒木宏

    荒木委員 これはその段階でお尋ねすることにして、最後に、繊維工業審議会の答申がありました。今度の法案もその答申を踏まえてなされておるように伺いましたが、この審議会の構成メンバーを見ますと、繊維業界の中の八割を占める零細業者の皆さんの直の代表と思われる方々がないようであります。もちろん関係業界の工連の代表の方は何人か参加をしておられます。その方々の御意見によって業界の実情が反映される部分はありましょう。ただ、私は、それにもかかわらず、今度の法案の中でも指摘をされておりますような小規模業者の救済、その保護というふうな点から見て、この審議会委員の構成について、小規模零細業者の直の声が代表できるような立場の構成に向けて検討がなさるべきである、かように思います。局長の答弁を簡潔にお願いいたします。
  282. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 審議会の委員につきましては、業界代表としては工連の理事長が原則として代表いたしておるわけでございますが、そういった零細企業者も当然そういった理事長がそれぞれ代弁するということになっております。しかし、委員のいかんにかかわらず、そういった零細企業の意見が反映し得るように善処いたしたいと思います。
  283. 荒木宏

    荒木委員 幾つかの質問をいたしました。幾つかのお約束をいただきました。最後に大臣に、政府委員のほうから約束をされました件については、大臣のお立場として責任をもって実行するというお約束を一言いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 局長が申しましたことは実行いたします。ただ、先ほどの凍結の問題というのは、凍結によって商社がこれで利得をするとか、あるいは政府が金融上のめんどうを見てやらなくちゃいかぬのだとか、そういうことが出ると、これまた考えなければならぬ部分もあります。したがって、そういう点については、やはり穏健、公正妥当な考え方に立って処理していきたい、そう考えます。
  285. 荒木宏

    荒木委員 いまの御答弁を伺いましたので、責任をもって実行していただく、それから近く大臣に直接そういった関係業界の声を聞いていただくような段取りをいたしますから、その節はひとつよろしくお願いをして、私の質問を終わります。
  286. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 次回は、明後二十六日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十八分散会