○高田
説明員 御
質問の基本単位の
内容について御
説明申し上げます。
いずれも最も基本的な
計量単位であるということは局長からお答え申したとおりであります。したがって、六個の基本単位は
計量法の中の核心となる
計量単位でございますが、それだけにその
内容はきわめて緻密に構成されておりまして、先ほどもお答えいたしましたように、国際的な研究、討論の場から出てまいりました成果を国際的な討論を経て決議し、それを各国の
法律に取り入れていくという形態をとっておりますので、その学問的
内容は、近代の科学技術にふさわしい非常に高度かつ緻密なものになっております。それを
法律の文面に書きますと、
計量法第三条に示されておりますような形になるわけでございますが、御
質問の趣旨がそれを平明に
説明せよということでございますので、できるだけ御趣旨に沿って御
説明いたしたいと思います。
第一に、長さの単位はメートルとするということになっておりますが、長さの単位というものは幾通りでも考えられまして、たとえば人間のからだの寸法を基本にして長さの単位をきめるというような古来からの考えもあり得るわけでありますし、また、つい先年までは
メートル原器と申しまして、世界じゅうただ
一つの基準のものさし、尺度がメートルの単位をきめるのに利用されていた時代もございますが、それも今日の緻密な科学技術の要請にこたえるには
精度が不十分であるという認識が生まれまして、一九六〇年以後は現行の
計量法に示されておりますような「クリプトン八六の原子の準位」云々という、たいへん科学的な
内容を盛り込んだものになっているわけでございます。これの
内容は、クリプトンと申します特別な原子を選びまして、それに刺激を与えますと、そこから光が出る。これは
一般の螢光灯などに使用されております光源の原理と通ずるところがあるわけでございますが、クリプトン八六という元素を持ってまいりますと、これが発するある光、これは目に見える感覚としては、だいだい色をした光でございますが、そのような波長を選びますと、波長と申しますものはきわめて
一定でありまして、あらゆる精密な計測の
目的に対して適当な
精度を与え得るということが十数年前に確認されております。そのことを古来の
メートル原器と結びつけるために、たいへん複雑な換算係数を
計量法の中にも盛り込んでおりますが、その数字は古来から広く用いられてきた
メートル原器によるメートルという単位と合わせるために協定した数字でございまして、
内容的には古来の
メートル原器と現今のクリプトン八六云々という定義とは少しも変わっておりませんが、ただ、その精密度が従来よりもはるかに向上しているというふうに御理解いただきたいと存じます。
次に、質量の単位、キログラム、これは比較的わかりやすいものだと存じますが、先ほど話が出ましたメートル条約
関係の国際
機構の中に、国際
度量衡局という国際中立の研究機関がございまして、そこに保存されております
キログラム原器と申しますものが全世界のキログラムという単位を現示する役目をしておりまして、これは平たく申しますと分銅でございますが、その分銅の持つ質量が一キログラムであるというふうに定めておりまして、それを基本にしまして各国には各国の
キログラム原器というものが配られ、各国の国内法においては、各国のキログラム原価を基準にして、国の内部の質量の
計量を
規定しているということになっております。
次に、第三番が時間の単位、秒でございますが、時間の単位と申しますのは、御案内のように、古くから天文学的な現象をもとにしてきめられてきておりまして、かつてわが国でも一刻というような時間の単位のきめ方も採用されておりましたが、そのような素朴な考え方では、今日の精密な
計量の
目的には不十分であるということで、これにもさまざまな変遷がございましたけれども、現今では第三条に示されておりますように、セシウムという原子を利用した時間の単位を
規定する仕組みが採用されておるわけでございます。これも先ほどのメートルの単位と同様に、
内容的には現代物理学の知見を採用した非常に高度なものでございますけれども、それの
意味するところは、セシウムの
特定な原子が発する電磁波の周期、振動数、周波数というものが
一定の
状態をきわめて長時間保つということが研究の結果として知られておりますので、それをもとにして、古来の天文学的な秒という単位と合わせるための換算係数を導入しまして、きわめて緻密な形で時間の単位、秒というものをきめているわけでございます。その成果として、お気づきと存じますが、天文学的な時間のほうの狂いを修正するために、うるう秒というようなものが近年何回か導入されておりまして、これはいま御
説明いたしました原子物理学的な単位から割り出した場合に、地球や太陽の運行のほうに多少の狂いがあるということを修正するために導入されているものでございます。
次に、第四番目の電流の単位、アンペア、これは
電気を利用する科学技術において基本的な単位として採用されているわけでございますが、これは電流が流れる場合に、それが及ぼす力の作用をもとにしてきめるという仕組みになっておりまして、
計量法の中に書かれております
内容を簡単に申しますならば、ある
一定の条件で平行に置いた針金にある電流を流したときに、そこにどれだけの力が作用するかということの法則をもとにしまして、一アンペアという電流の単位を
規定しているわけでございます。
次に、第五番の温度の単位、これにもさまざまな議論がございますけれども、現在の考え方といたしましては、温度の
計量の基本は熱力学温度という考えによるべきものであるとしておりまして、その単位をケルビンと称しているわけでございます。それをきめますためには、
一定の温度の
状態を基準にする必要がありますので、そのために水の三重点という
状態を採用いたします。これはわれわれが日常水を利用するわけでございますが、水にもさまざまな
状態がございまして、固体の氷、液体の水、気体の水蒸気という三つの
状態がございますが、そのような
状態が同時に同じ場所に存在しているという
状態を考えますと、これはきわめて安定した
一定温度を現示するということに役立つわけでございます。その温度を基本にいたしまして、それの二百七十三・一六分の一という大きさを考えまして、これを熱力学温度の単位ケルビンと称することにしているわけでございます。この場合にも、二百七十三・一六分の一というはんぱな数が出てまいりますが、これはやはり古来から広く利用されておりましたセルシウス温度というものとの
関係をつけるために採用されている数値でございます。
最後に、光度、光の明るさの単位がカンデラでございますが、これは照明光学その他においてきわめて重要な基本単位でございますが、その光の明るさの単位をきめます場合には、やはり
一定の明るさを持った光源というものを考える必要がございます。そのためにも多年の研究がございましたが、その結果として黒体放射という考えを採用いたしまして、しかもある
一定の温度において光を発する黒体放射というものを考えの基本にとりまして、それの出す光をもとにしてカンデラという単位を現示するわけでございます。その詳細は法文にも書いてございますように、ある圧力をきめまして、その圧力のもとで純粋な白金という金属が凝固する温度というものを採用いたしまして、その温度において黒体というある特別な条件に置かれた物体が発する光の六十万分の一平方メートル当たりの表面の垂直方向の光度というふうに明細な
規定を設けまして、その明るさを基準にしてカンデラという光度の単位を現示するという仕組みになっております。
以上、法文に書かれておりますことを御
説明申し上げたわけでございますが、これらはすべて先ほどお答え申し上げました国際的な
度量衡総会の決議をほぼそのまま採用いたしまして、わが国の
法律にふさわしい法文の形に整えたものであるというふうに御理解いただきたいと存じます。