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1974-04-03 第72回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月三日(水曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 武藤 嘉文君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    浦野 幸男君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       島村 一郎君    田中 榮一君       丹羽喬四郎君    橋口  隆君       八田 貞義君    前田治一郎君       松永  光君    保岡 興治君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    上坂  昇君       佐野  進君    渡辺 三郎君       米原  昶君    近江巳記夫君       松尾 信人君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         中小企業庁長官 外山  弘君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     保岡 興治君 同日  辞任         補欠選任   保岡 興治君     越智 通雄君     ————————————— 四月二日  中小企業の経営安定に関する請願外一件(瀬野  栄次郎君紹介)(第三二四八号)  同外一件(林孝矩紹介)(第三四五一号)  京葉ガス料金値上げ反対に関する請願(井岡  大治君紹介)(第三四五二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第三二号)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。佐野進君。
  3. 佐野進

    佐野(進)委員 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について質問いたしたいと思います。  まず第一に、繊維問題は今日非常に大きな政治的、経済的問題になっておるわけでございますが、この情勢下において通産当局が積極的に取り組んでおられることに対して、私も一応敬意を表しながら質問をしてまいりたいと思うわけであります。しかしながら、私はこの法案内容等につき、しさいに検討し、さらにまた、大臣提案説明を分析いたしますると、表現的には国内外環境変化に対応してこの法律案を通すと言いながら、実質的には、国内的な問題に焦点を当て——まあ法律案ていさいとしては当然であろうと思うのでありますが、国際的な問題についてはきわめて弱い姿勢で対処している、こういうように考えざるを得ないわけでありまするが、まず第一に、大臣は、本法案を提案するにあたっての国際的な情勢についてどのような認識を持っておられるか、お聞きしておきたいと思うのであります。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維関係につきましては、ガットを中心にいたしまして多国間の協定を締結しようということで、一応協定締結というところまでこぎつけました。これは成功であったと思います。今後は二国間協定の問題が出てまいりまして、対EC及び対米というような問題についてわれわれの国益を大いに守って、しかも国際協調の実をあげるような成果を生むように努力していかなければならぬと思っています。  一方、繊維品輸入は、日本の場合は非常に激増しておりまして、昨年の統計によりますと、たしか輸入のほうが多いくらいに、製品によってなってきつつあります。そういう面から、日本としては、発展途上国に追い上げられながら、独特のさらに高級の品物に転換しつつ日本の独自の地位をつくっていかなければならぬという、非常に苦しい立場に次第次第にまた日本は行きつつあるように思います。この国際関係国内関係をいかに調和させるかというところにわれわれの苦心も存するところでございまして、今度の法律改正案もそういう趣旨をもって提出している次第でございます。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、いま大臣が御答弁になられた問題と関連いたしまして、国際的な情勢変化国内情勢に非常に大きな影響を与える、特に繊維の問題はその大きな一つの具体的なあらわれである、こういうぐあいに認識をするわけでございますが、特に今日の、まず法案審議に入る前に、現段階における繊維産業現状と今後の見通しについて質問をしてみたいと思うのであります。  今日の繊維産業の置かれている環境はきわめてきびしいものがございまして、これは繊維産業全般にわたっておると思うのであります。きびしい情勢を迎えておる大きな条件幾つかあるわけでありますが、その一つに、今日いわゆる商社の無原則的な活動によって引き起こされた繊維輸入の増大、こういう問題が繊維産業全体にきわめて悪い影響を与えていると思うのであります。  綿布だけの輸入実績を見ましても、これは各般全体にわたって共通しておる問題でございますけれども昭和三十九年を一〇〇といたしますと、四十八年度だけで七六二・五というようなきわめて膨大な輸入量増加が見られておりますし、特に四十六年度までは平均しておった輸入量が、四十八年度までのわずか二年間で七倍にも達するほどの輸入量の急激な増加を来たしているわけであります。しかも輸入量増加が、単に綿布だけでなくあらゆる繊維製品に及んでおる。その及んでおる原因がどこに求められるかといえば、過剰流動性に基づく資金で、繊維の無差別的な買い占めという形で世界各国に対して買い占め活動を展開した。その結果、国内繊維製品がだぶつき、そのだぶついた繊維製品が今日市況に非常に悪い影響を与えていると思うのでありますが、この点につきまして通産当局はどのように把握しておられるか、ひとつ御説明をいただきたいと思うのであります。
  6. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました綿織物をはじめといたしまして繊維各種製品輸入量が非常に増大いたしております。特にこの原因を考えてみますと、ただいま先生が御指摘になりました過剰流動性の問題もございますが、一つには昨年の上期、特に三、四月ごろに景気上昇過程にあって需要が非常に強く出てきておったということ、それから二月から為替の変動制に入りまして円高基調が続いたために、輸入サイドからは有利なポジションに立った、かようなことが直接の原因となりまして、基本的には開発途上国、特に韓国、中国、台湾といった極東三国における繊維産業の興隆と申しますか発展がベースになりまして、御指摘のように非常に高い輸出を現出したものと考えております。ただ、昨年来、金融引き締めと申しますか総需要抑制効果が出てまいりまして、それが繊維については非常な不況要因ともなっております。かたがた、昨年の輸入貨物が到着するにつれまして、必ずしも品質的に満足すべきものでないといったような反省もございまして、このところ輸入につきましては若干落ちつきの傾向を見せてきておる状況にございます。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 いわゆる商社活動繊維産業を含むあらゆる活動に及んでおるわけでありますが、この活動がこのまま行なわれるということになれば、構造改善をはじめ国内産業の立て直しをどのようにはかろうとも、現実的な問題としてこれが処理でき得ない状況に落ち込むことは当然課題になってこようと思うのであります。さらに加えて、衣料品国内に対する輸入等々の問題等が出てくるわけでございますが、これはあと質問をいたすといたしまして、私は、この繊維問題に対する商社の無原則的なる活動に対して、この構造改善法律審議する経過の中で、あるいは通過した後においても、一定の規制を加えて国内産業育成発展に資する必要があろうと思うのでありますが、商社活動規制について大臣見解をお伺いしておきたいと思うのであります。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年春の国際競争買い付け競争等におきまして日本商社がめたらやたら羊毛その他を買い付けたということで、国際的非難が一時起こりましたが、国際的に調子を乱すようなことは長い目で見て国益にはつながらないので、そういうような行為についてはわれわれも商社に対して適切な行政指導をやろうと思っております。  それから、昨年は円高相場という理由もあって輸入が相当大きく伸びましたけれども、過度の輸入国内産業を圧迫することになるということもまた考えなければならぬところであります。われわれはそれを人為的に制限しようという気持ちはございませんけれども、その辺はやはり国内市況との見合いというものも考えなければならぬところであって、そういうような情勢判断を誤らないように、われわれは商社の自重を促していかなければならぬと思います。  第三番目には、国内流通過程におきまして、強いものが弱いものに対して、その強い立場を利用して取引条件その他で劣悪なことをしていることがないようにする、これは繊維関係では非常に重要なポイントになっております。こういう点について、メーカーはもとより、商社においても金融その他のつなぎをやっている場面が多いわけでございますから、そういうような点についてもわれわれは特に注意してまいりたいと思います。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 次の条件一つといたしまして、商社の無制限な活動抑制すると同時に、いわゆる発展途上国製品国内に対する輸入量急増をいたしておるわけでありますが、その急増をしている原因は、わが国海外投資が低開発国に対してきわめて積極的に行なわれ、その行なわれている海外投資が結果的に繊維製品を作成するプロジェクトに対して向けられる。したがって、現地の安い労賃資本力とをもってでき上がった繊維製品が逆輸入される、こういうような形の中で今日国内産業に対して非常に悪い影響を与えているということは見のがし得ない事実だと思うのでございます。ドルの過剰が問題になりましたとき、海外投資を積極的に育成する政策通産当局もおとりになっておられるようでございますが、今日のこの状況下におきましてどのような措置をとられようとするのか。海外投資抑制に対する見解と、これら低開発国製品国内に対する輸入に対してどのような措置をもって対処せられんとするのか、その見解大臣からお伺いしておきたいと思います。
  10. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大臣からお答えいたす前に、私から事実関係を申し上げたいと思います。  わが国繊維産業で海外進出しております実績を申し上げますと、ことしの一月末で六億六千万ドルでございまして、全製造業海外投資額のほぼ二割強という率に達しております。これを地域別に見ますと、東南アジアに対して六六%、中南米に対して二五%、この両地域に集中しておりますが、昨今の情勢といたしましてはむしろ中南米のほうに重点が移行しておるということでございますが、いずれにせよ七割近い繊維産業海外投資東南ア諸国に向けられておるというところから、先生がただいま御指摘になりました、そういった開発途上国からの逆輸入、本土への逆上陸というような問題があるかと思います。  ただ、御承知のように、海外投資につきましては、現在、銀行業と一部の業種を除きまして日銀で自動許可制をとっておる、いわゆる自由化をいたしておる段階ではございますが、国内には中小企業がきわめて多く存在する繊維産業あるいは地場産業という関係もございますので、自由化されておる中におきましても、関係当局と連絡をとりながら特に配慮を加えておる、こういう状況でございます。  それから開発途上国からの輸入につきましては、一つにはやはり秩序ある輸入を心がける必要があるということで関係業界指導いたしております。かたがた、いままでの貿易統計がどちらからかといいますと、繊維産業輸出産業として位置づけておったがために、輸入につきましては必ずしも十分な統計が整備されておらなかったといったような状態でもございますので、新年度からはインボイス統計を改定いたしまして、地域別品目別輸入実態をきめこまかく把握できるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから直接輸入制限をかけるということにつきましていろいろ問題がございます。特に貿易全体の問題あるいは相手国との関係あるいは他の業種への波及効果といったようなことも総合的に判断する必要があると思います。したがいまして、輸入制限につきましてはきわめて慎重な態度で臨むべきではなかろうかと考えております。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 慎重に対処するということでありますから、その点については慎重に対処してはいかぬというわけではありませんが、しかしいずれにせよ、わが国海外投資をした、その投資をした国の商品がわが国へどんどん入ってくる、同時にわが国の大手のお得意であったアメリカ市場へこれらの国の品物相当程度進出をし、結果的にわが国アメリカ市場への進出がますます狭められていく、こういうことになりますと、わが国の金でそれぞれの国に工場をつくり機械を設置してでき上がった品物わが国のあらゆる方面に対して悪影響を与える、しかもドルが過剰であるという形の中でそれを育成したという経過の中で今日の状況を迎えておるわけでありますが、政策的にこれらの面について大臣は、育成をするという形から、むしろこの際、国内外情勢を踏まえた形の中で節度ある対策を立てる、むしろ輸入制限ということが今日の状況の中でむずかしいと考えられるといたしましても、何らかの対策をとらざる限り、いかに構造改善したとしても、このことは単なる一つの行政的な措置を行なったというだけにすぎない、より大きな波をかぶって埋没してしまう、こういう危険性があると思うのでありますが、この点についての見解をこの際お聞きしておきたいと思う。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはなかなかむずかしいデリケートな問題がございまして、やはり発展途上国に関して、特に東南アジア諸国に対して日本投資を行なっていくという場合には、日本が略奪的なことをやらないで、現地発展のために、また現地輸出増進のために協力、貢献するという趣旨でないとなかなか発展途上国も対日感情の面でむずかしいことが出てくるということで、そういう御注意も国会からはしばしばあるわけであります。そういう意味で、日本自分たち国益だけを考えて保護主義的な色彩で政策をやるということは、長い目で見て、また広い目で見て、世界的スケール日本貿易を促進していくという面から見ると、マイナスにもなってまいります。だがしかし、国内における繊維業者苦境ということもまたわれわれは考えなければなりません。だんだんかつてアメリカがたどったような道を日本はたどりつつあるような運命にもありますけれども、そういうことをわれわれが繰り返さないように、ここで適切な政策を緩急に応じて行政指導等を通じてやるということが必要であると思います。国内苦境をやはりわれわれは何といっても政治家として第一に考えなければなりませんから、その情勢に応じまして対外政策の問題、分野等についても適切に調整していくということが必要であるように思います。なお、今回の法律改正はそういう意味におきましてもかなり役立つのではないか、そういう気がいたします。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、なお聞きたいことがたくさんあるわけでありますが、時間の関係もありますので、次の問題へ移ります。  次の問題は、それらの国際的な情勢に対応いたしまして、この法律が施行されるまでの間における現状における繊維産業に対してどのような措置をとるかという問題について質問してみたいと思うのであります。今日の業界の置かれている立場は、いわゆる金融引き締め、石油、電力の節減、原材料の不足、それらの価格の高騰、需要減退取引条件の悪化等々悪い条件のみ山積をいたしておるわけであります。そしてこれらの悪条件は、昨年のいまごろ若干の好況の中にあった時期以外は一貫してこれらの条件下にあえいでいるのが繊維業界の実情だと思うのであります。そして当面最も必要なことは、これらの状況下において、構造改善の事業が実施されるまでの間に当面の対策としていかなる対策を行なうべきかということが緊急の課題になってこようと思うのであります。その緊急の課題の第一は金融対策であります。さらにまた、金融対策に関連いたしまして大企業のこれら系列あるいは下請あるいはその他の企業に対するところの影響をどのように、行政的な指導あるいは法律の要件を適用する中で防ぎとめていくかということになるわけでありますが、以下、大蔵省中小企業庁生活産業局長質問をしてみたいと思うのであります。  大蔵省は、現在の繊維産業を取り巻く金融情勢に対してどのように把握せられ、その対策をとられているか、この点についてまずお伺いをしたいと思うのであります。
  14. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 お答えいたします。  繊維業界を取り巻いております環境は非常にきびしいものがあるということは先生指摘のとおりでございます。実態につきましては通産省にいま業界のいろんな実態調査をやってもらっておりますので、その調査の結果を私どももよく相談しながら検討していきたいというふうに考えております。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業庁は今日の状況の中で——私も各般にわたって調べていったわけでありますけれども、結局、当面する状況の中で、一−三月は比較的悪い条件下におきながら破局的な局面を迎えずに済んだということは、いわゆる昨年の一時の好況利益を食いつぶしてきたという形の中でそのような条件もあったようでございますが、このままの状況で推移するならば、四−六においては極度に悪化した情勢になるであろうということが予測されるわけでありまして、各方面意見等を総合いたしましても、特に繊維産業界に対するこれらの金融需給は逼迫し、さらにまた需要減退と関連いたしましてきわめて悪い条件を迎える、いわゆる構造改善の対象になる前に倒産という立場に追い込まれていく、こういうような点が幾つ指摘されておるわけでありますが、これらについてどのような対策を立てておられるか、長官にその見解をお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
  16. 外山弘

    外山政府委員 昨年の秋以来の中小企業をめぐる環境のきびしさがだんだんと深くなってまいりまして、本年に入りましてからもその状況を見ながら適時適切な対策をとらなければいけないという角度からいろいろな状況判断をしてまいったわけでございます。その際にやはり問題が一番早く起こっているということの認識を持ったのが、その一つ繊維産業でございまして、実際問題として在庫率も早くもふえてきているし、それからまた金融への要請が非常に強くなってきている。二月の初めごろから、そういうふうな傾向を私どももしきりに感じておりました。今回、三月の初めに政府系機関ワク増加ということをいたしました動機にも、繊維産業実態に対する懸念というものが大きく占めていたということは事実でございます。その点は同時に、今後の四−六への展望にも同じよう懸念を表明しながら、私どもとしては慎重に状況判断をしていかなければいけない、こう思っておるわけでございます。特に総需要抑制、そのことが効果をだんだんとはっきりあらわせばあらわすほど需要の停滞ということになりまして、繊維産業はその大きな影響を受ける一つの大きな分野だろうと思います。そういう意味でいきますと、四−六についての状況判断は一そう慎重に見守りながら対策を打ち出していかなければいけない。その際に私どもは、繊維関係中小企業者がどういうふうな状態になるかということについてしっかりした展望を持ちながら対策を打っていきたい。その場合には、新年度になりましたので、政府系機関の新しい年度融資ワクがきまりますが、そのきまったワクを、あるいは足りなければ繰り上げ使用するということも考えなければいけないかもしれない。あるいは追加のワクの決定ということも必要かもしれない。いずれにしましても、四月、五月、六月と私どもは気をゆるめずに今後も慎重に、また適時適切な対策が打てるようによく状況判断をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、中小企業庁長官生活産業局長にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、今日の繊維産業、特に小規模零細企業におけるところの生産過程における、いわゆる原料を入手し、生産をし、これを製品として販売をする、この過程の中におけるメリットが一体どの程度あるのかというぐあいに認識になっておられるのか。私は、ある業者一つの例を調べてまいったのでありますけれども、昨年の実績ないし本年の実績を比較いたしましても、現在の状況、いわゆる中小規模零細企業が、春闘を控えて労働力を確保する、こういうような形の中において支払わなければならない労賃をはじめとする原料費その他管理費等を含めますると、ほとんど利益が出ていない現況下にあるわけであります。このような現況下に置かれていながら、なおかつこの四−六月を迎えておるわけでありますので、結局増大する倒産ということは不可避の状況になってきているわけであります。いま、その数字を具体的に申し上げる時間的な余裕がございませんので、たいへん残念でありますが、これはもう大蔵省当局を含めて御認識になっておられると思うのであります。あとで資料をお手渡しいたしますから、ひとつよく検討願いたいと思うのであります。  こういうような状況下において、生活産業局は、企業倒産のこの四−六月実績というか見通しをどのように把握しておられるのか、この点をお伺いします。そして、この企業倒産状況下に対して、大蔵省あるいはまた中小企業庁はどのように取り組まれようとするのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  18. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維産業、特に零細企業につきましてこの四−六月の景況がどうなるかということにつきましては、主要な業種あるいは主要な産地ごとに現在鋭意調査を進めておるわけでございますが、大体を申し上げますと、受注関係は昨年同期に比べまして四割から五割ぐらい減少するのではなかろうか、反面、在庫のほうは二、三割から、特に綿スフ織物業になりますと数十%、昨年同期よりも在庫がふえるのではなかろうか、かように見ておるわけでございます。さようなところから、ただいま御指摘になりましたように、工賃が大幅に低下してきております。さようなところから、原料費あるいは労務費上昇に対してどう対処していくかということは非常にむずかしい問題でありますし、あるいはこの四−六月ごろにどの程度倒産が出るかということについては非常に判定が困難でございまして、人によりましていろいろ御意見もあるようでございます。  ただ、私どもといたしましては、倒産がどの程度出るかということよりも、当面の不況をいかに乗り切るかといった積極面に全力を傾注いたしたい、さような観点から、中小企業庁あるいは大蔵省当局にもいろいろお願いいたしまして、金融面からこれを積極的に助成してさような事態を極力少ない方向におさめたいということでつとめておる段階でございます。
  19. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 あれだけ強い金融引き締めをやっております際でありますから、相当いろいろな方面にそろそろきしみが出てきておるということはもう事実でございます。したがいまして、倒産につきましても、従来の倒産傾向はどちらかというと放漫経営によるものというようなもの、あるいは思惑的なものの失敗というような系統が多かったのでございますが、最近に至りまして、やはり原材料の関係とか、あるいは金融引き締めの度合いの強さというものから来ているものがだんだんふえておるということは確かでございます。したがいまして、私どもは総需要抑制という見地から、金融引き締め状況をさらに続けていくということは、その態度は変わりませんけれども、その間におきますところの倒産につきましては、やはり思惑等で倒産に追い込まれたというものは別といたしまして、健全な企業運営をやっておる産業に対しましては、その倒産に至るまでの間に金融的にもいろいろめんどうを見ていくというつもりでおります。
  20. 外山弘

    外山政府委員 倒産状況は、この一月と二月は八百件台で済んでおりますけれども、だんだんとふえる傾向がございます。この点、先ほども申しましたように、私どもとしては一つの重要な要素として、今後も倒産状況についての判断は的確にしていかなければいけない、見通しも持たなければいけない、こう思います。ただ、よく見ますと、従来建設業等がわりあいに高かったわけでございますが、だんだんと繊維産業業種に属する人たちの件数もふえる傾向がございます。さらには、今後は機械工業等にもだんだんと及んでくるのではないかというふうな感じがするわけでございまして、いままでもそうでございましたが、繊維産業は、とりわけ製造業の中では重点を置いて私どもも見てまいったわけでございます。今後も、どういうふうな影響を一番受けていくのかということをよく見、かつ重点的に対策も考えなければいけない。金融上の配慮にしましても、繊維産業というものを重点に置いて運用するということが、この一−三月についてもそうでございましたけれども、今後もますますその重要性がありはしないか、こういうふうな感じでいるわけでございます。
  21. 佐野進

    佐野(進)委員 いままで申し上げました質問は、主として全般的な、法律に入る前の質問でございますが、大臣に、この締めくくりとしての質問を申し上げてみたいと思います。  構造改善の本法改正案を提出したその背景における諸条件の中で、今日置かれている繊維業界立場は、国際的、国内的に非常に緊急を要する課題のみであり、大いなる政治力を必要とする問題が多いと思うのであります。したがって、これらの問題につきまして、先ほど来質問を続けておるわけでありまするが、商社活動規制輸入の制限あるいは海外投資の問題あるいは先進国の輸入制限に対する対策等、積極的に政府として取り組まなければならないと思うのでありまするが、当面、緊急対策としての金融対策措置を含めて、総括的に大臣の御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維産業は非常に複雑な流通過程がある上に、また企業形態も、非常に零細なものからさまざまなものが包含されており、しかもその製品というものは、発展途上国からも追い上げられ、あるいは先進工業国からは保護主義的な色彩をもって、またこれも阻害を受けているという危険性がいま出てきております。その上に、昨年来の諸般の情勢によって非常な不況にいま見舞われつつあるという一番重大な段階に逢着しておるように思います。この間にあって、当面といたしましては、この不況対策というものについてわれわれは的確な手を打つと同時に、第二には、この構造改善を通じまして、将来長続きのする未来の開ける構造改善の端緒を開く、特に零細企業その他について開いていくということが非常に重要であると同時に、この国際関係を打開して多国間協定及び二国間協定において適切な処理をするように全力を尽くしていくつもりであります。
  23. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは法律案の内容に入ってまいりたいと思います。  今次改正は単なる改正というよりも、いわゆる題名の改正として「特定」の文字を削り、さらに目的を改正する等、新法というにふさわしいほどの改正であろうと思うのであります。しかも範囲におきましては、縫製をはじめ流通段階にまでその範囲を拡大いたして、全繊維産業を対象とする構造改善事業を進めようというわけでありまするから、この内容をしさいに検討いたしますると、何時間質問しても質問が終わらないほど多くの問題点があるわけであります。  そこで、私は、その中で要点をしぼりながら、時間がございませんので質問をしてみたいと思いますので、御答弁もひとつ要点をしぼってお願いしたいと思うのであります。  まず第一に「目的」であります。この「目的」の中で最も重要な項は、先ほど来大臣が御答弁になっておられるわけでございまするけれども、結果的にわが国繊維産業業界の力を強める形の中で国際的な影響力にうちかち、かつまた国内産業として健全に発展さしていく、こういうことになってきていると思うのでございまするが、この目的の中から「国際競争力を急速に強化するため」というその文章を削除したということの持つ意味が非常に重要であろうと思うのでありまするけれども、この「国際競争力」を削除したほうがいいと考えたその根拠について、この際まず質問をしてみたいと思うのであります。
  24. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お答えいたします。  現行法の主たるねらいは、いわゆる輸出競争力を強化いたしますために設備の近代化、過剰設備の処理あるいは規模の適正化といったいわゆるスケールメリットの追求を前提として構成されておるわけでございますが、その後数年を経まして、昨今の内外情勢は非常に変化してきておりまして、特に東南アジアを中心といたしました発展途上国での追い上げが急になっておりまして、輸出はどちらかといいますと伸び悩みの傾向がございますが、輸入は、先ほど来のお話もございますように著しい増加を見せておる、こういう状況になってきておるわけでございまして、さような観点からいたしますと、スケールメリットからするところの単純なコスト競争では事態を克服できない内外情勢変化があるんじゃなかろうかという認識を前提といたしまして、またかたがた一方におきまして、国内における消費者需要というものが非常に高級化し、多様化してまいっておりますので、さような観点から「国際競争力を急速に強化する」といった概念よりも、より広い「健全な発展を図るため」といった用語に改めまして、今後過度に輸出に依存することなく、かつは国内需要に十分こたえ得るよう、安定供給が確保できるように繊維産業のあり方というものを考えていく必要があるんではなかろうか、かような意識から「目的」の条を改正いたしたわけでございます。
  25. 佐野進

    佐野(進)委員 しかし、わが国繊維産業が、その歴史的発展経過を見たとき、なお、今回わが国の経済の中に占める地位を分析したとき、輸出産業としての位置づけをしないで、いわゆる国際競争力にうちかつという定義をはずす中で、繊維産業の存立について、単なるスケールメリットの問題は解消したという形の中においてこれを位置づけるということはきわめて危険があるのではないか。いわゆる品種の転換、付加価値を高める等々ということばの意味の中においても、結局国際的なそれぞれの間におけるところの競争にうちかっていく、別の表現は使ったとしても、一定の国際競争力をやはり高めるという形の中における意味合い、位置づけ、そういうものはきわめて重要であろうと私は認識するわけですが、そう考えたほうがすなおだと思うのですが、大臣でもいいし局長でもいいが、それはどうですか。
  26. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、輸出競争力の強化ということはもう不必要になったということではございませんで、その輸出競争力のつけ方につきまして、やはり従来、設備面と申しますか、ハード面に重点を置いた対策を講じておったわけでございますが、こういったハード面での強化にプラスいたしまして、ソフト面と申しますか、知識集約化の方向にこれをいざないまして、さらに競争力をつけていきたい。ということは、一面からいたしますと輸出競争力であり、輸入競争力をあわせて持たしていく。それから、先ほども指摘のありましたように、やはり繊維産業が持つ輸出ウエートというものも、往時に比べますとだいぶ減ってまいりましたが、それでもまだ全輸出量の八、九%も占めておるわけでございます。そういった意味合いにおきまして、量産的なあるいは付加価値の低いもので国際競争力をつけるんではなくて、付加価値の高いもので競争力をつけていこう、こういう意図でございます。
  27. 佐野進

    佐野(進)委員 同じ「目的」の中で「設備の処理」というのを削除いたしたわけであります。いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの形の中において前の構造改革が進められたことは私もよく知っておるわけでありまするが、もうそれが終わったという認識となりますると、またほかの問題とも関連をいたしてくるわけでありまするけれども、結果的にいわゆる無籍織機の登録の特例等に関する法律が出されまして、その登録がいま行なわれつつあるわけでございまするけれども、これとの関係等も考えますと、「設備の処理」の削除というものが将来過剰設備問題を生ずるおそれにつながっていくのではないか。結局「目的」を現況に合わしてきわめてきれいにしようといたしましたけれども、問題の痕跡というか、そういうものは当然、旧法を新法に変える改正案という形の中においては残っていくのではないか。そういう点において、この「設備の処理」の削除というものはそういう点を全然考える必要がないと考えてやったのか、あるいはそうといたしますならば、中小企業団体の組織に関する法律に基づく命令の規定による織機の登録の特例等に関する法律関係する、これとの関連がどうなっていくのか。私は、法律改正を特に目的改正という形の中において行なったその経過の中で、少しく情勢分析を誤っているのではないか、こう考えるのでありまするけれども、この点についての見解をひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維産業におきましては、過剰設備問題というのは非常に重要ないままでウエートを占めておったわけでございます。特に人によりますと、紡績の歴史というのは生産調整の歴史だといって極論する方もおるわけでございます。さような観点から、過剰設備問題というものを軽視いたしておるわけではございませんが、過去四十二年から始めました現在の構造改善事業の一環といたしまして、またいわゆる臨繊特の買い上げによりましてかなり過剰設備問題は解決しつつある。ただ、この場合に、政府が助成する形でなお続ける必要があるかどうかといったような観点からいたしまして、過剰設備の処理という文言を削除いたしたわけでございまするが、ただいまも申し上げましたように、過剰設備の発生あるいはこれの未然防止ということにつきましては、決してゆるがせにはわれわれとしても考えておらないということでございまして、新しい構造改善計画を通産大臣が承認いたします際にも、老朽設備はスクラップさしていく、あるいは増設計画がある場合には需給状況あるいは当該事業者の過去における企業力等も慎重に検討しながら、そういった増設計画に対して調整をつけていきたい、かように考えておるわけでございますし、かたがた中小企業団体法に基づいてやっておりますいわゆる一対一の廃棄計画というものは、これは従来どおりに続けてまいりたい。一言で申し上げますと、政府が助成する形での過剰設備の処理というのは、いまの段階では一応見送っていいのじゃなかろうかというような観点に立って処理したわけでございます。
  29. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、この改正案によりますると、通産大臣は基本方針を定めて、いわゆる構造改善計画を繊維工業審議会の意見を聞いて基本的な指針を定めることができる、こういうような形になっているわけでありまするが、その内容は具体的にどのようなものであるのか。特に私が問題にするのは、時間がございませんからこの点だけにしぼってお聞きしてみたいと思うのでございまするが、流通問題であります。基本指針をつくるといたしましても、流通問題は全く新しい課題になってくるわけであります。この流通問題と、流通関係業者がこの基本指針がつくられる際において、あるいはつくられたあとにおいても果たしていかなければならぬ役割りというものは非常に多くの問題点をはらんでいると思うのであります。たとえば、けさの新聞にも出ておりましたけれども、いわゆるアメリカの流通の大手といわれるペニーが三越、ダイエーを通じて日本進出しようとしている。これは大手流通業者としてのシアーズローバックがすでに西武と提携してカタログ販売をしていることとの対抗上でもこれをぜひ実現するのだというようなこともいわれておるわけであります。こういうような問題が発生してきた場合、いわゆる通産大臣の定める基本方針がどのようにこれらの業種進出に対して対応していくのか、新しい問題であるだけに非常に大きな内容を含んでいると思うのであります。これらについて起き得べき条件を想定した通産当局のこの基本指針をつくるに際しての方針をひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  30. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 通産大臣が定める基本指針といたしましては、繊維業者の経営の合理化あるいは近代化を誘導する目標、どちらかといえばガイドライン的性格を持つものとして意識いたしております。また、繊維業界全体を網羅いたしましての指針でございますので、その中身は勢い一般的、抽象的、定性的にならざるを得ないかと考えておりますが、ただいま直接御質問の取引関係の点について申し上げますと、私たちがいま予定いたしておりますその内容は、一つは賃加工形態からの脱却をはかること、二番目に商品の仕入れ、管理、販売等に関する諸契約の文書化、三番目は価格の決定の方法、納品の検査の方法、返品の方法、その他の取引条件についての改善、四番目が共同購入、共同販売による取引条件の改善、かような事項になるかと思います。と申しますのは、この基本指針は繊維業者に対する指針でございますので、直接御指摘の流通担当者はその限りにおいては繊維業者というみなし方をいたしておりません。したがいまして、ただいま申し上げたような繊維業者に対する取引改善についての基本指針の反射的効果といたしまして、流通担当者に対する指導、助言というものを実施いたしたい。  なお、海外からの大手筋流通担当者の進出等にあたりましては、これは基本指針のいかんにかかわらず個別の問題として、その内外と申しますか、あるいは繊維業者あるいは消費者等に対するプラス、マイナス、こういったものも十分勘案して対処していくべき問題かと考えております。
  31. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、この法律改正の中で基本指針が作成せられ、具体的な構造改善に対するところの事業計画が承認せられ、それぞれ事業は進行していくわけでありますけれども改正案によりますれば、構造改善の事業についての条件が、各それぞれの条項を見る中において、現行法よりきびしくなるのではないかと思われる条項が幾つか見られるわけであります。たとえば新商品、新技術の開発、設備の近代化、生産または経営の規模または方式の適正化云々とありまするけれども、この構造改善事業に指定される場合、これらがすべて条件として盛り込まれなければならない、当てはまらなければならない、こういうようなことになりますると、相当きびしい条件が予定されます。さらに対象団体がそれぞれ特定組合、企業組合あるいはその他限定をされてくるわけでございまして、これらの限定の中において、結果的にいうならば力の弱い者、特に賃加工者等はこれらの対象にならない、こういうような形になっていくのではないかという危惧を持つわけでありまするが、この点について見解をお示し願いたいと思うのであります。
  32. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今度の構造改善事業については要件がシビアになるのじゃなかろうかというお尋ねでございますが、従来の構造改善と申しますか、現在実施いたしております構造改善事業では、同一業種の連携と申しますか結びつきでよかったのに対して、今回の構造改善では、異業種と申しますか、工程の異なる事業者同士の提携という点につきましては、御指摘のとおり従来よりもきびしくなっておるという点があるかと思います。ただ、現行の構造改善におきましても、たとえば織布業の場合上のせ廃棄を条件にするとか、あるいはメリヤス染色の場合のように合併等のかたい結びつきを要求する、こういった点からいたしますと必ずしも要件はシビアになっていないのではなかろうかというふうにも考えるわけでございます。いろいろとこの構造改善計画の中に書くことになっておりますが、そういった場合賃加工業者は対象にならないのかというお尋ねでございますが、今回の構造改善におきましてはやはり新商品、新技術の開発というのが中核的なテーマになっております。さような観点から、小規模零細と申しますか、あるいは賃加工業者も積極的にこういったテーマを取り上げて構造改善に努力していただきたいという気持ちはございますし、またそうでなければ内外情勢変化に対処し得ないのじゃなかろうかと考えております。ただ、現実問題といたしまして、賃加工業者あるいは小規模零細事業者におきましては、やはり人的面、資金的な面から直ちにそういった本来的な構造改善事業には参加し得ないという点もあるかと思います。さようなところから、できる方については構造改善に直に参加していただきますが、しからざる場合におきましては、構造改善計画をつくらない場合にも、その設備の近代化を助成いたしますために中小企業振興事業団から二分六厘の特利の資金を供給し得る道を開いてございます。
  33. 佐野進

    佐野(進)委員 いま局長が答弁されましたけれども、私はその中で感ずることは、この構造改善新法の施行が結果的に零細規模企業に対する特別の配慮をする云々といわれながら、現実面でそれらの層に対する切り捨て政策につながるのではないかという点について非常におそれるわけであります。この点につきましては大臣から明確にこの際答弁をいただいておきたいと思うのでありまするが、いわゆる改正案によりますると、知識集約グループをつくる、こういうことになっておるわけでありまするが、結果的にこのグループは中小企業の系列化をもたらす。特にこの系列化をもたらすという形の中において、異業種間にわたってこの構造改善を行なうことができるという形の中において、結果的に大企業の系列化を促進する。大企業によって小規模零細、中小企業を含める企業に対してその系列化を促進させるための役割りを果たす、こういうようなことになる可能性を非常に大きく秘めておるわけでありまするけれども、この点について各業種は一体どのような反応を示しているのか。むしろ大いなるおそれというようなものも感じておられるのではないかという気がいたすのでありまするが、それらについて大臣見解をこの際お聞きしておきたいと思うのであります。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の法改正趣旨が、多様性に対する配慮、それから高級品と申しますか、知識集約的に製品の質を改革していくというような面、それから零細企業者に対する配慮、これは条文にも特に明記してあるところでございます。そういうところも考えまして、そしてこれが大企業の一列的な系列支配にならないようにという趣旨も含めて、助成やら指導やらいろいろな面においても特別の配慮をしておるところでございます。しかし、われわれとして一番心配しているところはやはりその点でございまして、このような構造改善事業というものをやった場合に、ダミーであるとかあるいは重役派遣であるとかあるいは資本参加であるとか、そういうことを通じて個々の繊維零細企業者の独立性が失われないようにわれわれとしては適切な指導をしていかなければならないと考えております。
  35. 佐野進

    佐野(進)委員 この点についてはひとつ厳重なる注意を喚起しておきたいと思うのであります。  そしてこの法律の中で、それらの点についての配慮の一つであろうと思うのでありますが、小規模事業者に対する特別の配慮についてこのようなことが盛り込まれておるわけでございますし、さらにまた通産大臣指導助言等々があるわけでございますけれども、私は、この小規模事業者に対する特別の配慮という形の中で、その範囲が一体どの程度なのかということについてこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。紡績、綿糸、織布、毛織物、メリヤス、縫製、染色整理等のそれぞれの段階において一定の目安があろうと思うのでありますが、私はこれはできるだけその範囲を拡大して考えてやるべきではないかと思います。特に家族労働者は、聞くところによれば、この中に含まれないということでありますけれども、今日の零細規模企業はほとんど家族労働者をその労働対象にいたしておるわけでございますので、この点についての見解をこの際明らかにしていただきたいと思うわけであります。そして特別の配慮というものが具体的にどの程度になるのかということであります。たとえば技術指導についての予算措置あるいは指導体制というものがその裏づけがなくて単なる特別の配慮ということは、大企業の持つ資金力、技術力に対して何ら意味のないものになってくる場合がありますので、この点についての見解をお聞かせ願いたいと思うのであります。  さらにまた、これらの事業を推進する際、この法律の中にもうたわれておりますけれども、結果的に繊維工業以外の事業転換という問題も出てくるわけであります。結果的に事業転換という問題が出てくるということは、これらの対象にならない規模の企業あるいは状態企業等については、これらを転換させるための必要な対策を行なうんだということになってくるわけでありますが、事業転換にかかる事業の従事者の範囲を前の法律からその対策として労働者対策については狭めているわけです。範囲を狭めてきたわけです。事業を転換するために資金対策はとる、しかし労働対策についてはその事業の従事者というぐあいに範囲を狭めて、その対象におけるところの運営を行なおうといたしておるわけでございます。したがって、私どもはこれらの小規模企業者に対する配慮という文字の中にあらわれているその文言をそのまま認識したといたしましても、小規模零細企業に対するきわめて冷たい処置というように——文章の上では配慮というようなことばを使っていながら、現実的な面においてはきわめて冷たい措置を想定させるような状況にあるように考えられるわけでありますが、これについては大臣中小企業庁長官については資金面の問題、生活産業局長からはこれらの特別の対策の問題について、それぞれ簡単でよろしゅうございますから、見解をこの際聞いておきたいと思うのであります。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 零細あるいは小規模企業者に対する配慮については条文でも明記してあるところでありますが、大体零細という場合は五人以下、それから特に技術指導という場合には二十人以下の企業スケールを頭に置いてやっておるということでございます。それらについては、助成とかあるいは技術指導とかそのほかの面で特別に関心をもって実行するようにいたしております。資金その他の面につきまして、具体的には局長から御答弁申し上げます。
  37. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 小規模事業者の対象範囲はただいま大臣からお答えしたとおりでございますが、従業員五人以下の場合大体全体の七〇%くらい、それから従業員二十人以下の場合には全体の九〇%程度を占めると考えておりますが、範囲は大体こんなところでいかがと思っております。  それから特別の配慮事項として三点ございまして、一つは、小規模企業の設備近代化助成、これは先ほどもちょっと触れましたように、構造改善計画をつくらない場合にも中小企業振興事業団からの特別融資を実施するということで、事業規模としては七十五億を予定いたしております。  それから二つ目は、小規模企業に対する技術指導でございまして、これは主として特定組合が中心として行なう技術指導を事業協会を通じて助成いたすという考え方に立っております。  それから三つ目は、取引改善資金制度というものを創設いたしたいと考えておりまして、商工中金の中に百六十九億の資金を準備いたしまして、これによりまして取引改善をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから転換の問題につきましては、資金面あるいは労働者に対する配慮ということが必要かと思いますが、資金面につきましては、現在、一般中小企業対策といたしまして、中小企業振興事業団、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等に資金ワクがございますので、これを活用してまいりたい。それから事業転換にかかわる従事者の再就職につきましては、これは労働省とも密接な連携を保ちながら配慮いたしたいと思いますが、一つは機動的に職業紹介なり職業訓練を実施いたしたい。それから就職困難な者、四十歳以上の方でございますが、こういう方につきましては事業主に雇用奨励金を支給する。あるいは事業転換訓練を受ける労働者に対しましては、事業転換訓練手当を支給する。それから事業転換訓練を実施する中小企業主に対しては事業転換訓練奨励金を支給する。かような方向で転換には対処してまいりたいと考えております。
  38. 外山弘

    外山政府委員 小規模繊維業者への配慮というのが今回の法律の中にもうたわれておりまして、二つの面、すなわち一つは、この法律を施行するにあたって、構造改善計画の中身に取り入れた中でこれが育成されていくという面もありましょう。あるいは御指摘のように、そのらち外にあって、そしてその人たちに対する手厚い育成をあわせてやらなければ全体のバランスがとれないという問題もありましょう。それぞれにおいて、いま橋本局長が答えられたような配慮が行なわれておるわけでございまして、一般論としまして、繊維のこの立法が施行されるにあたってのそういう運用上の中身での配慮、それから外に出ている小企業者に対する配慮は、中小企業の一般対策を強化するということで、両々相まって繊維の小規模事業者が健全な行き方ができるように私どもも努力してまいりたいと思います。
  39. 佐野進

    佐野(進)委員 時間が参りましたが、いま了解を得まして、最後の一つだけ質問して終わりたいと思います。  最後の問題は、繊維工業構造改善事業協会の問題でございます。この問題につきましては、前国会における附帯決議等いろいろ注文が出されておるようでございますが、今回の法律改正におきましても、この内容の改正が行なわれておるわけであります。時間がございませんので、この内容についてこまかく質問することはできませんので、要点だけ二点について質問してみたいと思うわけであります。  一点は、技術指導について、特定組合が行なうのと協会みずからが行なうのと二つがあるわけでございますが、この関係は、一体どのように理解したらいいのかということであります。いわゆる特定組合に対して技術指導を行なわせることに重点がかかるのか、協会みずからが行なうことに対して重点がかかるのかということでございます。  さらに次の問題といたしましては、情報センターの問題であります。情報センターを設置し、新しい情勢に対応して、それぞれの情報を各事業者に伝達するということになるわけでありますが、伺うところによりますれば、この情報センターに対して業界からも出資金を出させるということになっているやに聞いておるわけでございますが、この情報センターというものはそのようなものであるのか。いわゆる協会の事業費というものはそのような形の中において運営され得べきものであるのかどうなのかということについて、この際明確にしていただきたいと思うのであります。  そして情報センターを設けることになるわけでございますけれども、その中で国、地方自治体、業界、消費者団体、中小企業振興事業団、商工会議所、商工会等々がこの情報センターに対して持つ役割りがどのような形になるのかということは、重要な意味合いを情報センターが持っておりますので、この際時間がないので具体的に質問できないのはたいへん残念でございますけれども、原則的にひとつお聞きしておきたいと思うのであります。  そして締めくくりに大臣質問申し上げますが、先ほど来この法案に対する提案の背景あるいは運営されるべき条件に対する幾つかの問題点を指摘し続けてまいったわけでございますが、冒頭申し上げましたとおり、繊維業界のこういうような状況の中で通産当局の果たされてこられた努力に対しては敬意を表するものでありますが、いわゆる国際的には非常に弱腰の面が多い、国内的には配慮がまだ十分でない、こういう点を痛感いたすわけでございますので、この点について締めくくりの御見解をひとつ述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維工業に対する改革は今度で四次目に実質的にはなると思います。そのたびごとにその時代の要請に従った構造改革等を推進してまいりましたが、今度の四次目の改革というものはいままでとかなり性格が変わってきていると思います。いままではどちらかというと国内にこもって既存の利益を守ろうというような体系のにおいがしておりました。それはスクラップ・アンド・ビルドというような面にも出てきておるところであります。しかし、今回はかなり国際性を持って、そしてさらに大きく発展していこう、そのためには製品の高級化であるとか、あるいは異種業種間における連携であるとか、あるいはいろいろな研究開発等に対する助成であるとか、そういうような面に新しい視野を広げて繊維工業に未来を与えようという色彩で構造改革が法案として盛られておる、これは特色であるだろうと思います。これはやはり現時点に置かれておる日本の地位からかんがみて適切な方向であると思うわけでございます。しかし、一面においては国際環境はきびしく、かつこれから二国間協定という重大なネゴシエーションをわれわれは控えておりまして、この法律を基礎に国内体制を固めて日本の質的上昇をはかると同時に、対外競争力も事実上これで強めて、日本が大手を振って、できるだけ自由無差別の原則のもとに国際競争に臨んでいこう、そういう体系をつくるつもりでがんばっていくつもりであります。
  41. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 小規模企業者に対する技術指導でございますが、これは一言で申し上げますと、特定組合が原則として主体になると申しますか、特定組合中心主義で実施いたしたいと考えております。事業協会におきましても技術指導を行ない得ることにいたしましたのは、将来の問題といたしまして特定組合だけでは不十分であるといったような問題が出た場合に補完的に事業協会にもさような指導をやらせるということで掲げたわけでございます。  それから情報センターにつきましては、ただいま御指摘のように、国からの出指金一億円に対しまして民間からの出指金一億を期待しているわけでございますが、御承知のとおり、繊維業界団体におきましてはかなり情報も蓄積されておるわけでございますが、これの流通が不円滑である、あるいは重複がある、あるいは脱落があるといったような問題もございますので、こういうセンターをつくることによりましてお互いに相互補完の関係に立って情報活動をやりたい、こういう趣旨でございます。
  42. 佐野進

    佐野(進)委員 質問を終わります。
  43. 濱野清吾

    濱野委員長 岡田哲児君。
  44. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 三月の二十八日に織布業不況突破陳情業者大会が開かれ、私も出席したのでありますが、繊維の置かれている現状というのは非常にたいへんな状態だというふうにいまさらのように深く認識をしているわけでありますが、特にこの四−六月の受注などを見ますと五〇%だというふうに聞いているわけであります。こういう現状の中でまず先に聞いておきたいと思うのでありますが、総需要抑制あるいは金融引き締め、石油、電力などの影響、それから原材料が非常に不足している、価格が上がってきている、需給の動向がどういうふうになっているか、また相当な企業倒産というものがいま起こってきている、こういうようなことを心配するわけでありますが、全体的な現状と今後どういうふうに考えられているのか、見通しについてまず簡単でよろしゅうございますが、お伺いしておきたいと思うわけです。
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、当面はかなり繊維関係苦境にあると思います政府はこの三月末に五百五億円の三機関の融資のワクをきめましたが、そのうち約百五十億円は繊維関係に充当される見込みである、そういう考えをもって特別の手当てをしておるわけであります。四−六という月をかなり私たちは心配をしております。  それからもう一つは、秋以降どういうことになるかということは、総需要カットあるいはいままでの荷もたれの商品がどういうふうにさばけていくか、あるいは五−六月の手形の決済危機をどうするかというようなものにもかかっていると思いますが、ともかくこの時期を政府としても全面的に協力して切り抜けてそして次の段階を迎えるようにわれわれは努力していきたいと思っております。  問題はやはり一つは、長い目で見るとLDCの追い上げ、特に韓国や台湾やそのほかとの関係がございますし、そしてやはりもう一つは日米間の問題やECとの関係の問題が前途に横たわっておるのでありまして、その間において零細企業あるいは小規模企業がその地位を侵されないようにわれわれとしては懸命の努力をしていかなければならぬ、そう考えております。
  46. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 いまお話に出てきたわけでありますが、昨年の十二月にガットで繊維製品の国際貿易に関する取りきめというものが合意されたわけでありますが、この内容を御説明いただきたいということと、それから本年九月で切れる日米繊維協定、この関係とこの取りきめとの関係が一体どういうように今後なってくるのであろうか。言うならば、一番聞きたいのは今後の日米間における繊維状況がどういうふうになっていくかということを一番聞きたいわけでありますが、いま申し上げたように、この取りきめの内容、九月で切れる日米繊維協定、これとの関係をめぐって一応考えておられることをお伺いしたいわけであります。
  47. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のガットの繊維取りきめにつきましては、昨年の十月からジュネーブで交渉が行なわれまして、十二月の二十日に実質的に妥結を見ました。本年の一月一日から発効いたしております。ただいま参加国を求めておる、こういう段階でございます。わが国も三月十五日に受諾の閣議決定をいたしまして、直ちに通報いたしております。  その内容は、長くなりますので要点だけ申し上げますと、一つは対象範囲といたしましては、綿、毛、化合繊製品、ただし化合繊の綿等は特定の場合に適用除外されます。それから二つ目は、既存制限の取り扱いでございますが、残存輸入制限につきましては期限内に撤廃するか、または取りきめで認められる二国間取りきめに置きかえる。既存の取りきめにつきましては、この取りきめの基準に照らして修正または撤廃する。第三番目にセーフガードでございますが、被害の存在を必須条件といたしまして市場撹乱の原則を満たす場合には、この取りきめの基準に従ってセーフガード措置をとることができるということになっております。それから二国間取りきめにつきましては、セーフガード措置よりもより自由な内容を条件といたしまして、この協定のもとにおきましても二国間取りきめを締結することができる。それから五つ目は、国際監視機構でございまして、取りきめ参加国の中から監視機構に委員を出しまして、既存の輸入制限の撤廃、セーフガードの運用等について審査一勧告を行なう、かようなことになっておりまして、有効期間は四年間、発効日は、先ほど申し上げましたように四十九年一月一日。ただし、第二条関係につきましては本年四月一日からであります。大ざっぱに申し上げまして、かような内容になっております。立て方はLTAと類似いたしておりますが、きわめて改善された方向で協定の妥結を見ております。  それから二番目のお尋ねのLTAに基づく日米協定の問題でございますが、これはただいま申し上げました協定の線にのっとりましてアメリカと交渉に入るということになるかと思います。これは九月末で切れるわけでございますから、それまでの間に妥結する方向で交渉する必要があるかと思いますが、基本的には対米輸出の安定的発展をはかるということにいたしまして、関係業界等の意見を徴しながら交渉の日取りあるいは交渉方針等をきめていきたい、かように考えております。
  48. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 少しゆるやかになったような感じでいま聞いておるわけでありますが、先進国といいますか、EC諸国の動きは一体どんなふうになってくると見ておられるのか。それから先ほどからも話がありますように、発展途上国からの追い上げがたいへんなものだということはよく承知しているわけでありますが、この発展途上国の追い上げの問題とこの取りきめとの関係、いまお話しのありました国際貿易に関するこの取りきめが発展途上国からの追い上げと一体どういうように関係するか。この辺の考え方をちょっとお伺いしたいわけです。
  49. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まずECでございますが、ECの域内各国の事情等もございまして参加の決定がおくれておったようでございますが、最近入手いたしました情報では、ECとしてもこの取りきめに参加することを決定いたしたようでございまして、近くジュネーブに通報するものと考えております。その場合、わが国もEC諸国との関係で交渉に臨むことになると思いますが、御承知のとおり、EC諸国につきましては製品輸入制限を一方的にやっておる、特に対日差別的な取り扱いをやっておるといったような事態があるわけでございますが、この取りきめに参加する以上、先ほど申し上げたようなところからEC各国も前向きに自由化措置をとらざるを得ない立場になるのではなかろうかということでございまして、わが国といたしましても、ECとの関係において実質的に自由化を実現する方向で対処いたしたいと考えております。  それからLDCとこの取りきめの関係でございますが、これは二点あるかと思います。  一つは、この取りきめの中に、LDCに対しまして特別の配慮を加えるという規定がございます。この点につきましては、やはり国際協調という線からこの規定を尊重していくということになるかと思いますが、先ほど来お話が出ておりますように、日本国内における繊維産業の窮状という問題もございますので、このLDCに対する特別の配慮につきましては慎重に対処していく必要があるのではなかろうかと考えておるわけでございます。  それからいま一つはLDCからの輸入制限と申しますか、あるいはこれとのバイラテラル、二国間取りきめをやるかやらないかという問題があるかと思いますが、これにつきましては、やはりこの取りきめ自体が繊維品の世界貿易の制限的状況をできるだけ改善していこう、繊維貿易の健全な発展をはかっていこうというところに基本的なスタンドポイントを置いて国際間で合意を見たものでございますので、そういった意味合いにおきまして、この協定が発効いたしたから直ちにLDCに対して輸入制限云々という問題、これにつきましてはやはり慎重にかまえる必要があるのではなかろうか。と申しますのは、一方ではそういった国際協調の問題もございますが、先ほど申し上げておりますように、アメリカあるいはECとの間にわが国といたしましても既存の取りきめについて改善の交渉をこれからやらなくてはいけないという段階におきましてみずから制限的なアクションをとるということは、いろんな面でマイナス面も出てくるということもございますので、さような要素を総合的に判断して対処していく必要があるかと考えております。
  50. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 私は後進国の追い上げという問題を考えたときに、日米における繊維協定との関係を考えてみますと、やはり日本という立場で考えた場合に、抜本的な対策ということが一体どういう形で出てくるかということを思うのです。そうすると、やはりこの輸入に関する点についてある程度の規制ということも出てくるのじゃないかと思うのでありますが、いま激しい状況下に置かれている中で、一体これに対する抜本的な対策といいますか措置といいますか、こういうものを——いま何か非常にぬるま湯につかっているような政府の考え方じゃないか、こんな気持ちがするのでありますが、この点についてもう一度お伺いをしたいわけであります。
  51. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 開発途上国からの輸入につきましては、やはり第一義的な対処のしかたは、日本繊維産業の体質というものを改善していく、国内需要動向に即応した体制を固めていく、あるいは付加価値の高い製品をつくることによりまして競合的な競争を避けていくということが本来的なあり方かと思います。しかし、先生指摘輸入制限という問題は、ある意味においてはきわめて直接的あるいは効果的という面もございますが、反面やはり貿易全体としてどう考えていくか、あるいはその状態によって相手方と協調ととのわざる場合には報復措置といったような問題も出てまいりますし、あるいはその他の業種に対する波及ということも考えなくてはいけないといったようないろんな問題があるかと思います。もちろん現在の繊維が置かれている不況一つ原因としてやはり輸入品の在庫圧迫という問題もあるかと思いますが、かたがた一面からいたしますと、先ほどもちょっと触れましたように、昨今は輸入の成約がどちらかといえば落ちついてきておる。昨年成約した貨物が現在通関してきておるという状況でもございます。その意味からしますと、むしろ現在入ってきて滞貨しておる品物をどうするかということも一つ対策として考える必要があるのじゃなかろうか、個別に在庫融資をやるということも必要でございますが、かたがた品物によっては過剰在庫を凍結し、そのための融資を行なうといったような方途も、一つの方法として考えていいのじゃなかろうかということでございまして、輸入制限という問題は、直接的であり効果的であるだけに、また反面、その他に及ぼす影響というものも総合的に判断し、慎重に対処しなければならない問題ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  52. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 問題はかわるわけでありますが、先ほどもちょっと触れました、非常に不況であるというので業界が大会を開いて、その決議がされているわけでありますが、この中で、やはりいま緊急にしなければならぬと思いますのは、資金繰りの資金確保が非常に困難だ、そこで長期低利の緊急融資や構革の資金、その他特別融資の償還期限の猶予をしてもらいたいというのが第一番の要求になっているわけでありますが、この点については緊急に何か措置をされるようにしているかどうか、この点についてお伺いをしたいわけであります。
  53. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 初めの不況対策資金につきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、年度金融五百五億のうち繊維産業に対しまして百五十億確保いたしております。その資力につきましては、やはり年度末以上に逼迫してくるのではなかろうかということで現地調査をつぶさに実施すると同時に、金融当局と話をつけつつございまして、できるだけ早急に機動的に資金の確保をはかりたいと考えております。  それから、既往貸し付けの返済猶予につきましては、特に経営状況が悪化している中小企業につきまして返済猶予を行なうよう中小関係機関指導しておりまして、事実さような形において、ケース・バイ・ケースではございますが、返済猶予を認めておるということでございます。
  54. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 次に、法律案の中にやや入るわけでありますが、特に九条の関係についてお伺いをしたいと思うわけであります。「小規模の繊維業者」というこの「小規模」、これは大体聞くところによりますと二十名以下というふうに定義を下しているようでありますが、私の判断でいきますと、この二十名以下が九〇%であると聞いています。この業界は二十名以下がいかに多いかということがここではっきりするわけでありますが、この九条でいっております「必要な資金の確保」、それから二つ目には「技術指導」という、この二つが実は配慮としてうたわれていると思うのであります。しかも、この「必要な資金の確保」と「技術指導」というのが二つに分かれまして、資金の確保のほうは財政的な措置で五名以下のものについて、あるいは二十名以下は技術指導、こういうふうに二つに分かれているというふうに聞いておるわけであります。  そこで、特にこの零細ワク関係についてお伺いをしたいわけでありますが、この零細ワクを設けたのは五名以下というふうにいわれているわけでありますが、これをつくった言うならば発想といいますか、根拠をお伺いしたいわけであります。
  55. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、小規模対策といたしまして、特別に配慮事項といたしまして、設備の近代化助成と技術指導があるわけでございます。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕 この設備近代化助成制度につきまして、中小企業振興事業団の中に七十五億の事業ワクベースで資金を確保いたしておりますが、これを設けた趣旨は、実は四十二年から実施いたしております現行構造改善事業の進捗過程の中におきましても、どちらかといえば、中小企業の中でも比較的規模の大きい企業が融資を受ける対象になっておったのじゃなかろうかという批判も一部にございますし、かたがた、先ほど先生もおっしゃいましたように、五人以下でも全体の七〇%と非常にすそ野の広がりの広い繊維産業の基底部分と申しますか、そういった部門を構成しておる事業者でございます。こういったところも十分育成していかないと、繊維全体としてバランスのとれた発展というのは期待しがたい。また、特に知識集約化といったようなことばも使っておりますが、ある場合においては、むしろ小回りのきく事業者のほうが情勢変化に即応しやすいという場合もあるかと思います。どちらかというと、量産ものよりも多品種少量生産のものになってまいりますと、むしろ小規模事業者のほうが有利と言い得る場合もございます。そういった消極、積極両面からいたしまして、おおむね従業員五人以下の小規模企業者に対しまして近代化助成制度を創設することにいたしたわけでございます。
  56. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 私の言っておりますのは、こういうワクをつくったということは非常に前向きで賛成である、こういう立場に立っているわけなんです。しかし考えてみますと、まあ七五%ぐらいまで占めるこういう業界で、しかも構革とかなんとかりっぱなことを言いましても、それに乗り切れない、落ちこぼれてきておるというのが言うならば現状ではないか。ですから、本法が非常にりっぱな、私も頭の中で考えれば非常にりっぱだと思うのでありますが、これにまず乗るための第一段階といいますか、一段階、二段階というふうに分けますと、第一段階目とすれば、この五人以下の乗り切れない者にここで力をつける必要があるのではないか、こういうように実は考えるわけであります。そうしますと、いまお話がありましたように、せっかくこの零細ワクをつけたのだが、この第一段階の本年度の財政上の措置というものは一体これでいけるのかどうかというような点を考えるわけであります。ですから、いまお答えのあった点とはちょっと立場が違うのですが、私は、もうつくってくれて、これこそまさにこの法案の中で一番生きている問題だという立場でとらえながら、せっかくつくりながらこれでいいのか、そこら辺の、従来の関係やら、おそらくいろいろ腹案があろうと思うのでありますが、これでいいのかという点についてお伺いしたいわけです。
  57. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 おおむね従業員五人以下の小規模企業者に対して近代化助成制度をつくった趣旨というのは、まさに先生指摘のとおりでございまして、いきなり知識集約化事業に参加しろと言ってもむずかしかろう、だから構造改善計画をつくらなくとも、とりあえず設備を近代化するための資金を他の事業者構造改善計画をつくらないと融資しないような条件でやろう、こういう趣旨でございまして、その点では全く同じ趣旨でございます。ただ、七十五億が多いか少ないかという点でございますが、これにつきましては、私たちといたしましては、一応初年度である、これを幸い法律として通していただいた暁からこれは実施に移るわけでございますが、初年度ということを考えますと、まず九カ月か十カ月かというようなこともございますし、とりあえずはこの七十五億でやれるんじゃなかろうかと思っております。ただ、それ以上にまた資金需要が出てくるといったような事態においては、その時点において前向きに考えてみたいと思います。
  58. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 私もいまのお答えのとおりにしていただきたいという立場なんでありますが、七十五億が一応きめられているわけであります。これが多く出てくるのか、あるいはせっかく用意したにもかかわらず、これに申し込みがないというようなことになるのか、私自身はよくわからぬのでありますが、こういう現状のような困難な中で、しかも五人以下の小規模事業者立場で、おそらくもっと数がどんどんふえて、これだけでは足らなくなってくるんじゃないかというふうに実は考えるわけです。そのときに、七十五億を突破したという場合、どういうような運用をされようとしておるのか。いまの話だと、相当程度幅を持たして考えているような気持ちがするわけでありますが、私はこういう予算でそういうことがはたしてできるかどうかという心配をするものですから、たくさん出てきた場合には、現状の中で判断をしてこの七十五億のワクを広げることができるか、こういう点について一応確認をさしていただきたいと思うのです。
  59. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 率直に申し上げまして、ほんとうに七十五億で足りるのか足りないのか、非常にむずかしい問題でございます。かたがた先生御承知のとおり、中小企業振興事業団で二分六厘の特利で貸し付けるということになりますと、これは通常の運用部資金からの借り入れだけではとうてい間尺に合わないわけでございまして、いわゆる一般会計からの出資という問題も必要になってくるかと思います。さようでなければ振興事業団の経理が立たなくなるという問題もあると思います。ただ、私どもといたしましては、こういう内外情勢の非常にきびしい変化の中にある小規模零細企業でございますので、かりに七十五億で足りない場合にはできるだけの努力をいたしたい、一般会計から出資をいただくということになるとまた補正といったような問題になってきわめてむずかしい問題もあるかと思いますが、そういった場合にもできるだけ努力をいたしたいという決意を申し述べるにとどめさしていただきたいと思います。
  60. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 あなたの決意は決意として、担当でございますから当然わかると思うのでありますが、政府として一体そういうようにいけるかどうかという問題になってくるわけです。答弁をあなたに求めるのは無理かもしれません。  こんな問題で大臣に言うのはおかしいかもしれませんが、大臣、そういうような場合には、絶対できる、いまお答えのあったようなことでいい、私こういうふうに確認をさしていただいてよろしゅうございますか。
  61. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 初年度でありますから、七十五億で一応出発してみますが、情勢変化に応じまして、その時点において適切な処理を行なうように努力していきたいと思います。
  62. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 いまのお答えで、中曽根大臣が責任をもって事態に適切に対処するというふうに理解をいたしておきます。  次に、一定基準のグルーピングという説明のしかたがあるわけでありますが、非常にわかりにくいのであります。この一定基準のグルーピングということはどういうふうに聞いたらいいのか、この定義といいますか、考え方を御説明願いたいと思うのです。
  63. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 小規模企業融資の具体的要件をどうするかということは現在なお検討中でございますが、現在の段階における考え方は、一つは、グループの参加事業者の三分の二以上が従業員数五人以下の事業者であるということと、いま一つは、グループの形態としましては、合併会社とか出資会社その他事業協同組合、こういった結合と申しますか、連携動作をしていただくということを内容として考えております。と申しますのは、本来中小企業振興事業団の融資は中小企業の協同化を目的にいたしておるわけでございますので、さような点から、小規模事業者については、構造改善事業計画は別といたしましても、一部の施設を共有するとかといった少なくとも事業協同組合形態はとっていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 いまの御説明では非常に具体的な点がわからぬのであります。たとえば五人以下の事業者が、この法の中にもありますが、「四以上」とか——グループということばでいいますと、一体グループというのは、一人ではグループといいませんが、二人以上ならばグループというのか、このグループというのは何人であるのかという点なんであります。ですから、いま質問をいたしておりますのは、この一定基準のグルーピングというのを具体的に数の点まで触れて御説明しておいていただきたいと思うのです。
  65. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生がいま触れられました「四以上の繊維業者」というのは、第四条第一項第六号のことをさしておっしゃっておるのじゃないかと思いますが、この規定は、実は構造改善事業計画そのものについての要件規定でございますので、いま御指摘になっております小規模事業者につきましては、この規定はそのまま働かない。これがなくても小規模事業者を対象として考えようということでございますが、ただ、現実論といたしまして、中小企業関係の団体につきましては、最低の単位がやはり四人ということになっております。そういった意味合いにおきまして、一般的には四人でグループを組んでいただくということになるかと思いますし、先ほど触れました合併会社だとか出資会社につきましては、四人以下でも、二人あるいは三人ということであってもいいということでございます。
  66. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 そこで、この一定基準というふうにうたわれて、しかもグループを組ませる発想はいまわかるのでありますが、四人とかそういうふうにきちんと厳格に考えられていくものかどうか。私はあまり精通しているわけではないのでありますが、聞くところによりますと、業種の中でも、あるいは地域的にも非常に大きな差がありまして、同一条件ではいけないというような部面があるように思うのであります。そうしますと、いま言われたような何人とかいうようなワクできちっとしてしまうことが適切かどうか。あるいは業種的に、あるいは地域的に、ほんとうに実情から見てこれはその精神に沿っているというように思われるものはやったらどうか、こういう立場に実はあるものですから、この辺の数を聞いているわけでありますが、一体その一定基準のグルーピングというのはきちっとしているのかどうか、そこら辺の運用の幅というものが行政上あるのかどうか、また置くことがいいのか、あるいはこういう委員会の議論の中で、こういうもののきちっとしたものをきめることがいいのかどうか、こういう点についてのお考え方を実は聞きたいわけであります。
  67. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生指摘の御趣旨はよくわかるのでございますが、実は事業協同組合法によりましては、設立の際、最低四人いなくては構成要件を満たさないということでもございますので、事業協同組合でいく場合にはやはり四人ということになってくるかと思います。  ただ、業種なり地域によっていろいろ差があるとおっしゃる趣旨につきましては、おおむね五人以下と考えておる従業員規模、これをどの程度弾力的に考えるか、あるいはその従業員規模で適当でない場合には、一年間の生産高と申しますか、売り上げ高で考えるとか、あるいは保有する設備の台数で考えるとか、そういった小規模企業とはどの程度の範囲のものをいうかという段階において運用上弾力的に対処すべきかと思いますが、前段の四人云々という場合には、事業協同組合である限りにおいては、これは最低の要件になっておりますので、これは運用の問題としては処理できないということになるかと思います。ただ、二人、三人でなさる場合には、合弁するとか新会社をつくるということであれば、これは可能であるわけでございます。
  68. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 いまのお話でありますと、四人というのは当然侵すべからずの問題だ、しかし、そのほかの問題については、相当いろいろ実情に応じてやっていくことがいいのではないか、こういうふうに承知してよろしゅうございますか。
  69. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 そのとおりでございます。
  70. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 次に、転換の問題なんですが、おそらく佐野さんからもいろいろあって、お答えもあったわけでありますが、この不況下の中で、相当倒産あるいはもうこの際やめてしまおうというのが出てくるのではないかと私は思うのであります。  そこで、この第十条を見てみますと、そういうこともあってと思うのでありますが、「事業の転換を円滑に行うことができるようにするため必要な指導を行う」、こういうのでありますが、二項で、この内容を見ますと、特別に非常に円滑にいけるというようなことにはならぬ、これは一般の中小企業対策と何にも変わらない状態に置かれているというふうに思うわけでありますが、そこまで言ってしまうと失礼でありますから、この転換を円滑に行なうことができるような指導というのは、一体具体的にどういうようなことを考えておるのか、これをお伺いしたいわけであります。
  71. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一つは、各種情報を提供するということ、それから、転換資金のあっせん、中小企業の診断指導制度を活用する、かようなことを考えております。  ただ、その転換の場合に、繊維の中でかわる場合と、脱繊維と申しますか、繊維業界から出ていく場合と二つあるかと思いますが、特に前者の繊維の内部での転換の場合には、現在御審議いただいておりますこの新しい構造改善の中で、より積極的にめんどうを見ていけるんじゃなかろうかと思います。ただ、脱繊維の場合には、ここに申し上げましたような情報の提供、あるいは資金なり労務者の再就職についてのいままでの一般化されておる制度を活用していくということになるかと思います。
  72. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 私の言っているのは、わざわざ第十条を設けなくても、一般と何も変わらぬのではないか、こういう比較でいまものを申しておるわけであります。特別にこういうことがないとして見ても、円滑に行なうと言いながら、中を見ますと、資金の確保、融通、あっせん、それから就職の点、こういう点は別にわざわざせぬでも、これは現在当然に行なわれている問題だと思うのです。この「円滑に行う」、「必要な指導を行う」というふうにうたわれている内容がちょっとお粗末じゃないか、特にいま繊維が置かれている状況の中でたくさん出てくるんじゃないか、まあ実はそういう想定をいたしますと、いまの中でも特別に一つ措置というものが必要じゃないか、こういうふうに考えるものですから、いま言われたようなことでなしに、もっと特別に考えられるものがあるのかどうか、またしなければならぬのじゃないか、こういうような立場でいま聞いているわけなんです。
  73. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のように、新しい転換対策と申しますか、措置を現在予定いたしておりません。御指摘の第十条はまさに訓示規定ではございますが、政府に対する義務づけを行なっているということ、必要ある場合には既存の各制度につきまして優先的に早急に対策がとれるという限りにおいても意味があるかと思いますが、ただもう一つは、どの程度転換が発生するかという問題でございますが、繊維産業の場合には、繊維産業全体がどうのこうのという問題としてよりも、むしろ従来の量的な拡大から質的な方向にその発展の路線を見つけ出していこうということでもございますし、その間、景況の不振等によって転換する人も出てくるということでございますが、やはりそれも部分的な発生という立場でとらえた場合に、現行制度で不十分であるならば、その段階においてどう対処するかということを考えてもいいんじゃなかろうか、かように思っておるわけでございます。
  74. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 そうすると、いまのお答えでいきますと、先ほどと同じように、いまどれだけ転換が起こってくるかわからない、しかし起こってきた、これはたくさんあったというときに、特にいま言った資金的な面になってくると思うのでありますが、そのときに十分運用でいける、こういうふうにお考えになっているのですか。
  75. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 融資と申しますか、資金ワクの点について若干具体的に申し上げますと、現在、中小企業振興事業団におきましては、事業転換合同事業、それから設備共同廃棄事業、こういった制度を持っておりまして、それぞれ一般高度化ワクの八百三十六億、特定高度化ワクの百五億の内数として処理するということでございまして、資金ワク的にはまずまず問題ないのじゃなかろうか。それから、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫につきましても、事業の転換のための資金といたしまして、前者につきましては構造改善ワクの五百十五億の内数、後者につきましては同じく構造改善ワクの九十億の内数ということで資金ワクが設定されておるわけでございます。
  76. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 そうすると、どのぐらい出てくるかわからないが、大体それでいけるというふうにお考えになっていると思うのですが、それでもいかないというような場合には、これまたある程度の運用の幅というのは出てくるのですか。
  77. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま申し上げましたこのワクは、すべて転換事業に対してひもつきになっておるというわけのものではございません。内数として申し上げたわけでございますが、どの程度転換が出てくるか別といたしましても、量的にこの程度の金があればまずまず問題ない、またそれ以上あっては困るということでございます。
  78. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 あまりこんなことで架空のような感じでありますが、率直に言わしていただくと、いまの倒産状況あるいは今後の転換の状況というような点について、私は通産省で相当きちっと見通し的なものを持つべきではないか、あるはずなんだと思うのでありますが、これはもう冒頭にもちょっと触れたのでありますが、全然わからぬのですか。一体、どの程度起こるであろうかという点については、いままでの状況から判断して、全然判断がつかぬのですか。判断がありましたら、お伺いしておきたいと思うのです。
  79. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 これが今後の問題に当てはまるかどうか別といたしまして、最近の例といたしましては、対米自主規制とそれから臨繊特による転廃業の実施企業数の数字が出ております。これは四十八年度につきましては一部見込み数字も入りますが、転廃企業数は四千九百九十一、全体に対しまして五・五%という数字がございます。
  80. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 この問題はとにかく相当数が出てくるのではないかという立場に立ちながら、実は私はお伺いをしておるわけでありますが、大体十分やっていけそうだというふうにお考えになっておるようでありますから、そういうふうに理解をしながら次に移りたいと思うのであります。  最後は、流通の問題なんであります。この間もちょっと話を聞きますと、あるデパートで売っておりますワイシャツが四千円という定価である。これが生産者から見ますと、千二百円ですから、ちょっと数字をあれしましたが、非常に安い。こういう法律をつくっていこうとしているのだが、問題はあまりにも流通過程で付加価値を繊維業界の連中はたたかれている、実はこういうふうに思うわけであります。ですから、私の言いたいのは、百貨店なら百貨店の定価というものをもう少したたいて、それでその工賃をもっと上げるというこういう作業をしない以上、金融やその他のこういう措置をしただけでは救われないというふうに実は思うわけであります。ですから、せっかくこういう法案をつくろうとする場合には、いま申し上げたような流通段階における中で、これがほんとうに立っていけるという形を基本的につくる必要があるのじゃないか、こういうふうに実は考えるわけであります。特に業界が圧迫されていると思いますのは、百貨店の場合には返品が多いということが大きな原因であるようでありますが、問題はそういう流通段階における手当てをしない以上いかぬのではないか。さらに、こういう繊維業界の、いまだに工賃といわれているような、こういうものを上げていく。それから流通段階の値段を下げていく。消費者の立場に立って下げていく。こういう上と下との、定価をたたいて工賃を上げるということがされなければ、この法の精神というのは生かされないのではないか、こういう立場でいま流通段階についての考え方をお伺いしたいわけです。
  81. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 生産者の出荷価格とそれから最終小売り価格との間に、御指摘のようにかなりの差があるということは遺憾ながら事実でございます。繊維製品というものは市況性が強い。それからくるリスクの負担という問題もございましょうし、かたがた製造段階に比べまして近代化が立ちおくれておるといったような問題もあるかと思いますが、いずれにいたしましても、かようにメーカー出し値あるいは原材料価格と最終製品との間に非常な差があるという実態は、できるだけ早く解決していかなくちゃならないと思っております。それは物価対策としても必要でございますし、あるいは価値の分配と申しますか、そういった観点からも早急に是正すべき問題かと考えております。  私たちといたしましては、そういった観点に立ちまして、新年度から取引改善協議会といった研究会をつくりまして、この場で、いま先生もおっしゃっておりました返品問題等も含めまして、取引のルールあるいはそのルールを実行に移すための手段、こういったものもあわせて検討していきたいと思いますが、たとえば慣習的にマージン率と申しますか流通経費率といいますか、そういったものがきまっている商品もあるわけでございまして、メーカー出し値が上がりますとそのままイージーにパーセンテージで最終小売り価格も上がっていくといったような問題は、やはり一番目に検討し是正していくべき問題かと考えておるわけでございます。
  82. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 きのうも話に聞きますと、ワイシャツが大体一枚三百円で、七枚か八枚つくるというのですね。そのワイシャツとしてつくられたものが、いま言ったような値段になっていくわけでありまして、工賃というものがあまりにも安いというふうに私は思うのです。問題は、これは当然上げなければならぬ。しかしいま言った百貨店の四千円というようなものについては非常にべらぼうでありまして、これを直して、これをたたいていかなければならぬ。この両方に立ちますと、どう考えてみても、いまお答えのようなことでなしに、繊維業界のもう少し付加価値というものを——それは知識集約で高めていくというふうにあなた方は言われるんだが、もう現実に繊維の人たちの工賃というのは安いということが昔からいわれている。だからこれを上げながら、しかも消費者の立場から安いというふうにいくためには一体何があるのかといいますと、いま例に取り上げましたように、ばく大なものが途中で取られちゃっている。ですから、いうならば百貨店などでやられている返品制度というようなものに徹底的にメスを入れて、そういうことのできないようにしながら販売価格を押えていく。こういうような工賃を上げながら上をたたいていくということをこの際きちっとしない以上、こういうりっぱな新たな法律ができたというふうに自負されても、中身はやはりないんじゃないか、こういう気持ちがするわけであります。その辺、これは非常に複雑なそれぞれの状態というものがあると思うのですが、基本的に考えて、いま申し上げたような立場を私はとるべきだということなんでありますが、どうでしょうか。
  83. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になっておりますような取引上の問題点は、どちらかといいますと、取引当事者間の力のバランスがくずれておると申しますか、経済力の強弱というものが背景にあって、御指摘のような事態が発生しておるかと思います。そういったバランスの回復をはかるために、新年度から商工中金に取引改善資金制度というものを準備いたしまして、資金ワクとして百六十九億を用意いたします。この資金をもちまして、賃加工から糸買い製品売りに転換するための資金を貸し付ける、あるいは製品等が在庫を持ち切れなくなって、またたたかれるということもございますので、製品等の在庫資金、それから共同出資で共販機関を設立する場合にその運営に要する資金といったものをただいま申し上げました商工中金融資によってめんどうを見ることで経済力の差というものを埋めていきたい、また、その金を借りるにあたりましては、構造改善事業協会の債務保証をつけまして資金の融通が円滑に行なわれるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  84. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 いま加藤先生から資料をいただいたのですが、ワイシャツなど十五倍だというのですね。私もいまその四千円というのを、あるいは出すのが千二百円だ、この差にびっくりしたわけですが、問題は、聞いてみますと、どうも返品だとかなんとかという、そういう百貨店の点からこの価格が上がっているというふうにも思うので、この際十分やはり価格を下げながらこの工賃を上げていく。あまりにもひどいのではないか。こういう点に十分われわれは目を向けないと、繊維業界の置かれておる状況というのは、これはもう救えない、こういうふうに思うのです。ですから、そこら辺にわれわれの政治的な手をどういうふうに入れていかなければならぬかという点を強く考えるわけでありまして、時間も来ましたのでこれで終わりますが、最後に、大臣、その辺の流通段階にまでこれは触れないと、せっかく法ができてもいかぬのではないかという気持ちを強く申し上げながら、大臣の実は今後の対処の考え方というものをお聞きして、終わりたいと思います。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のとおりであると思います。繊維関係は流通段階が非常に複雑で長い迂回的な要素が非常にある。また、産地によっても非常に性格を異にするし、業種によっても違う、そういう複雑な関係がございますから、われわれといたしましては、できるだけの構造改革を流通段階までも及ぼしていく、そしてその間にあって零細業者取引条件が劣悪にならないように、むしろこれを機会に発展拡大していくような形をわれわれとしては行政指導してまいりたいと思います。
  86. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  87. 田中六助

    田中(六)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤清二君。
  88. 加藤清二

    加藤(清二)委員 お許しを得まして、ただいま審議に入っております繊維関係法案についてお尋ねしたいと存じますが、与えられた時間が一時間でございます。もし答弁できないことがございましたならば、ひとつ後日質問の機会をぜひ与えていただきたいと存じます。なぜかならば、納得できない法律には賛成できないからでございます。委員長にまずお願いを申し上げておきます。お許しを得ておきながらこんな注文をつけましてまことにすみませんが、そういう予測が立つからでございます。  次に、大臣にお尋ねしますが、政府官僚はここの委員会を何と心得ていらっしゃるか、第一にそれを承りたいのです。委員会に対する考え方を承りたいのです。ここは法案を通すための場所でございましょうか。どうもけさから聞いておりますと、この間うち静かに聞いておりますと、答弁は当たらずさわらずで逃げまくる。重要な新しい案件、電気、ガス、油の値上げの問題は記者会見で発表なさる。ここでは、そのことが論議されても一向に核心に触れる答弁はない。したがって、新聞記者は興味がないから一人も来ない。もう一つ委員諸君も興味がなくなってくるからどうなるか、出席が非常に悪い。これはひとつわれわれ委員側も考えなければならぬけれども、政府の答弁、政府の姿勢もひとつ御反省願いたい。物価値上げのおりからここを国民が注目しているのです。にもかかわりませず、ここがこういうかっこうであるということが世間へ知れたなら、一体国民はこの商工委員会を何と心得るでございましょうか。これではいけないとしみじみ思うきのうきょうでございます。したがって、この委員会をほんとうに国民の命と暮らしを守ってしあわせにするための委員会にしようとなさっているのか、それとも政府提案の法律だけを早く通すために、食い逃げするために、ここでは逃げて逃げて逃げまくって、都合のいい前進したところは記者会見で発表すればいい、そういうふうに考えてみえるのか、そこらをはっきりしていただかないと審議に入ってちっともおもしろくない。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 商工委員会は国会のわれわれにとっては一番大事な委員会一つでございまして、国会自体が国権の最高機関でございますから、できるだけわれわれの考えも申し上げ、また委員の皆さんの御議論にも耳を傾けてよりよい法案をつくり上げ、よりよい政策を生み出す討論の場所、対話の場所、また国民の皆さんに聞いていただく場所にいたしたいと思っております。  商工委員会におきましては、野党の皆さんや与党の皆さん専門家がおそろいで、われわれ勉強が足りぬものですから、どうも答弁が憶病がちになりまして、鋭い御質問に対してどうしても防御型になっていくというくせがなきにしもあらずでありまして、この点われわれも反省しなければならぬと思います。われわれの未熟なところはひとつお許しをいただきまして、われわれのほうもできるだけ懇切に誠意のある御答弁を申し上げていきたいと思います。
  90. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私は中曽根大臣が未熟などとはつゆさら思っておりません。やがて総理候補になられる——いますでに候補であらせられるが、やがて総理になられる大物大臣だと思っておる。同時にまた、通産官僚、大蔵官僚というのは官僚中の官僚、エリート中のエリートであって、この団結のかたさとこの実力は、私、二十何年議員をやってしみじみ思うことを一言にして言えとおっしゃるならば、通産官僚の組織は強い、通産官僚の組織はこわい、これでございます。決して不勉強だの何だのとはつゆさら考えておりません。ただ、この場を逃げていけばよろしいという考え方、都合のいいことだけは記者会見でかってに自分のてまえみそを発表する、こういうくせですね、これはひとつ直していただかないと、この委員会に対する信頼度も薄れ、やがてそれが国会に対する不信感となっていく。記者席を見てごらんなさい。興味のない証拠ですよ。こういうことなんです。見てごらんなさい。もちろんここの委員会でやったことが新聞に出るなどとは思っておりません。出るためしがほとんどないのですから、それはそれでいいのです。しかし、委員諸公がもっと喜んで出られるように、この委員会に興味を持たせるということが必要ではないかと思っている。  次に申し上げます。繊維の問題。新しくて古く、古くて新しいのが繊維でございます。その繊維の歴史をかいつまんでながめてみますると、大臣、どうお答えいただけるか知らぬが、私の感覚を先に申し上げます。外交的には、少なくとも終戦後の繊維外交は先進国からの輸出制限の歴史です。ここしばらくになってから輸出でなくて輸入奨励の歴史です。具体的事実が物語っております。なぜそうなるか。それは軟弱外交だからです。国内的にはどうなっていたか。戦前はいざ知らず、戦後だけを見ますると、これは設備制限の歴史なんです。設備が制限されてきた。調整という名前、構革という名前で制限を余儀なくされてきた。それはアメリカの要求によっておったのです。アメリカ政府の要求であった。その結果どうなったか。零細企業は切り捨てられていった。労働者の数は減っていった。金融面でながめてみると、これは繊維業者は歩積み両建て——十年間もそれを予算委員会で言ったら歩積み両建て先生といわれるようになりました。歩積み両建の歴史であり、引き締め政策のときは常にしわを寄せられる対象になっている。常にしわ寄せの対象にさせられて大企業の風よけの防波堤に使われてきた。その結果どうなったか。通産省がどれだけ自主独立、自主独立と——先ほどいみじくも大臣はおっしゃられました。原料買いの製品売りを指導したい、知識集約型で付加価値をつけたい、こうおっしゃった。ところが、全部それは御破算にされて縦割り系列、紡績系列か商社系列にさせられてしまって、いま系列からはずれておったら仕事ができません。系列からはずれたものは全部倒産していきました。そしてそこに働く労働者はどうなったか。首切りでございます。称して今様女工哀史といわれておる。これが繊維実態であります。先ほどここで岡田君が質問しましたそのエキスが、この間の大会の朝に出た。課長さん、あなた来てみえたから御存じでしょう。あの空気を見ておってごらんなさい。これが現実なんです。そういう政策が行なわれてきたんです。にもかかわらず、その政策をまともに受けてやった者は正直者とほめられた。その正直者がばかをみている。大臣はさきの国会で、事繊維に関してこの質問をしましたときに、正直者がばかをみないようにすると三度お答えをいただきました。ありがたいことです。そこでお尋ねする。構造改善で一番正直であった綿部門のコールテン、別珍部門の天龍社はどうなりましたか。
  91. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維一般の景気不振の中でも特に別珍、コールテンについては工賃の低下、受注の減少に悩んでおります。
  92. 加藤清二

    加藤(清二)委員 そのとおりでしょう。正直者がばかをみないようにするとおっしゃった。これは前の法律のときなのです。それを救いもせずにまた次の法律、こうきたわけなのです。それじゃ機屋は言うことを聞くはずはありませんよ。大阪ではこう言う人がある。時の政府の言うことの逆をやらなければ食っていけないと言っている。言い得て妙だと思います。これではいけないと思うのです。私はそういう方に会ったときに、いやそうじゃない、一度だまされたらもう一度だまされてごらんなさい、右のほっぺたをたたかれたら左のほっぺたを出せとまではよう言わぬ、キリストでないから。しかし、やはりきき目が、きょう注射打ってあしたというわけにはいかぬだろうから、まあ、かすにもって半年か一年くらいの時間はあげなさいよ、私は中曽根さんを信頼しているから、こう言っておるのです。この正直者に対する具体策が何も行なわれていない。いないということは、政府が怠慢であるとは言いませんよ。ところが、どんなにしてあげようと思っても、どんぴしゃりその対策でないので、合う対策がないので、せっかく薬を盛ってもらっても飲む気になれない。こういうことなのです。やはり病人に合うように薬は盛らなければいけない。これはなぜ薬が飲めないかということを具体的に質問いたしますが、引き続いてお尋ねします。  ここだけじゃありません。ことしになってから、一月以降繊維関係倒産が非常に多いのです。この三月もぐんとふえました。きょう私がここでしゃべっているうちに——会社の名前は言いません。あえて場所だけ言います。関西です。関西と申し上げておく。ここの大手が不渡りを出さざるを得ぬ状況に追い込まれております。その影響は関西だけではありません。中部地区から北陸路にまで及びます。倒産。岐阜にも及びます。恩恵がじゃなくて倒産がですよ。あえて名前は言いません。言ったらたいへんなことになりますから。  そこでお尋ねしたい。一−三の倒産件数、四−六、七−九の倒産予想、このままでいったらどのように想定していらっしゃいますか。
  93. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維製造業について申し上げますと、一月が二十三件で負債総額が二十六億一千九百万、二月が十四件で負債総額が十億九千九百万、それから販売業につきましては、一月が三十二件、三十三億一千六百万、二月が二十七件、百十億三千二百万、三月はまだ数字が出ておりませんが、御指摘のように一、二月よりもさらに件数はふえておるのじゃなかろうかと思います。四−六につきましては的確なる判断はなしがたいわけでございますが、むしろ一−三月よりは四−六のほうが、景気不振と申しますか、先行き不安といったような状態から、遺憾なことではございますが、倒産件数はさらにふえるのではなかろうかと懸念いたしております。
  94. 加藤清二

    加藤(清二)委員 さすが専門家だけあってよくお見通しのようでございます。私はその見通しがむしろ当たらないことを希望しますが、私の見通しでいきますと、わが社会党の政審での調査によれば、もっともっとふえます。いま局長のお答えになりましたのは、下に制限があるでしょう。そこから以下は抹殺でしょう。それ以上、つまりあなたの発表によると、倒産時点における赤字は大体一億程度、平均一億になっております。それ以上の会社だけの数量を承ったわけです。しかし、先ほど大臣がおっしゃられましたように、日本繊維産業は文鎮型なんです。大きいのはほんの一つまみしかありません。あと全部、文鎮の底辺と一緒で、非常に数多い零細企業で行なわれておる。負債一億とか資本金一千万円以上という数よりは下のほうが多いのです。その数はどうなっていますか。
  95. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、ただいまお答えいたしました件数は、負債総額一千万円以上のものでございます。したがいまして、一千万円以下のものについては、はなはだ申しわけございませんが、現在把握いたしておりません。今後通産局あるいは地方公共団体等にお願いいたしまして、早急に実態を把握いたしたいと存じます。
  96. 加藤清二

    加藤(清二)委員 記録を調べておいてください。この件は、わが党の永井勝次郎商工委員が本委員会においてそれを追及して、人頼みではいけない、自分のところで調査できるようにすべきであると言われて、そのために員数もふやしましょう、それに賛成しましょう、つまり事務官をふやしましょう、そして調査をわが手で行ないましょう、やります、こういうふうに答えている。幸いここにいま田中委員も見えました。ちゃんとわが党の要求で、それが自分の手で調べられるように予算の裏づけもしましょう、員数ふやしも賛成しましょう、さあやってくださいといってお願いして、さあやりますと答えてみえる。それが全然行なわれていない。そういうことだから、どうかというと零細企業は切り捨ての歴史である。災害にあっても、補助金ももらえなければ見舞い金ももらえない。構造改善で、どんなに政府が融資で二分六厘の低金利をつけてくれてもお恵みが当たらない、こういううらみがあるのです。現在の数がわからず、倒産してもなお、死んでいってもなおその籍がわからないということで、どうして助けることができますか。齋藤君が繊維局長時代に、籍をつけますと約束されたのです。その籍は、綿工連、毛工連にまかせておかずに、通産省の中で籍をつくりますと言われた、私の質問に対して。どういうことなんです、これは。籍はやはり無籍で、機の籍だけは有籍にしてあげたけれども企業は無籍で、死んでも倒れても全然われ関せずえん、これでよろしいですか。まず中小企業庁長官に承る。
  97. 外山弘

    外山政府委員 いま先生の御指摘のような点にそのまま当てはまるようなかっこうにはなっておりませんが、実は数年前から、中小企業庁では、小口倒産状況というものを予算をちょうだいしてやってはおります。ただ内容が非常につかみにくい、つまり倒産の内容自体がたいへんつかみにくいというふうなこともありまして、まだ東京の二十三区、大阪と広島、その三地区に限った調査をやっているところでございまして、それも実際の把握がおくれてみたり、あるいは倒産の定義の内容から見て、実際の数字上の表現をするのに時間がかかってみたり、いろいろな問題もあるようでございます。これは繊維だけではございませんので、その三地区に限って繊維だけを抽出するというふうなことは可能でございますが、これでは繊維の小口倒産状況全体をつかむというわけにはいかないと思います。この小口倒産状況をどうつかむか、これのためにどういうふうな準備が要るかということも含めまして、私どもとしては、企業庁としては前向きに小口倒産状態をつかんでいく、繊維に限らず全体についてできるだけ実情に近い把握ができるような体制を準備するということについて前向きな努力をしてみたい、こう考えております。
  98. 加藤清二

    加藤(清二)委員 こういう世話を非常によくやっていらっしゃるグループに民商というのがございます。非常によくめんどうを見てみえて、近ごろその加盟者の数がどんどんふえておるようでございます。それに対して自民党のほうでも、もっとその零細企業のめんどうを親切に見てやらなければならぬというので、何か具体策があるやにかつて新聞に出たようでございます。私は、これは当然やってしかるべきだ。わが党は何をやっているか。抜き取り検査をやっております。全国一斉にやれといったって、それは長官のおっしゃるように、それは急にはできないでしょう。そんな無理をやれとは言いません。せめてモデルケースをつくって、モデル地区をつくって、そこだけなと調べて、そしてそれをとってもって全国に押し及ぼしていくということは、知恵のある人でなくてもできるはずでございます。それすらもできずに、零細企業のために努力します、努力しますと口で言ったって、零細企業ば殺されても倒されても、何にも、はがき一枚の見舞いもなかったということで、どうしてついてこれますか。私はとことこ歩きます。歩いて回ります。一軒一軒回ります。一人の議員でも、これはできる量というものがある。おのずから制限されますけれども、物理的現象の障壁はあるけれども、やろうと思えばやってやれぬことはないんです。大臣、これに対して、ほんとうに正直者がばかを見ないようにするということと、零細者を保護し、これのめんどうを見る、将来に対して希望と夢を持たせるんだと先ほどおっしゃった。私はそれを疑いたくないんです。具体的にしからばどういうことをお考えになってみえますか。せめて倒産していく人の数ぐらいは、仏の数ぐらいは見てやるべきだと思う。外地へ行って死んでごらんなさいよ。せめて骨など拾うんです。骨が拾えなかったら、その土地の砂など拾ってきて何とかするでしょう。これが日本人の心というものじゃないですか。大臣、先ほどの、将来に希望を持たせる前にやるべきこと、私の尋ねに対してお答え願いたい。
  99. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維関係のみならず、ほかの中小企業でもそうでございますが、特に繊維においては景気の波を受ける、そしてしわ寄せを受ける機会が一番多いということを私らも知っております。今回の法律をつくるに際しても、そういう点を若干考えまして、条文の上においてもそういうことも明記してあるわけでございますが、いま御指摘のように、一千万円以下の負債の倒産件数を的確に把握し得ていないということは、まことに遺憾しごくであります。これは通産局単位で、金融機関とかあるいは農協とか、そういういろいろな面と連絡をとりながら、的確に把握するように、今後ひとつしっかり努力してみたいと思います。
  100. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私は、さきの委員会において、今日の糸相場、これは二十年前と同じ糸相場である、すなわち、紡績の出し値は、コットンにかかわらず、ウールにかかわらず、スフ人絹にかかわらず、二十年前とほとんど同じ値である、しかも、ここには売り惜しみ買いだめを疑う人はあっても事実はない、にもかかわらず、デパートで売られている繊維製品は、糸値換算すると数倍から数十倍に売られているということを証拠をもって御説明申し上げました。きょうも持ってきております。きのう買わせた商品でございます。一々ここにありますが、それをやっているひまがありません。きょうは時間が短うございますから、そこで次へいきます。なぜそうなるでしょうかということであります。復習のつもりで聞いてください。  紳士もののはだ着は糸値の大体七倍から十倍、特価品売り場のものでもなお四倍。先ほどワイシャツの話が出ましたが、これは十五倍、日用品のタオル、これも五倍から七倍、手ふきタオルは十倍、くつ下は二十九倍から三十五倍、ガーゼは十二倍から十五倍、脱脂綿は三十倍から五十倍、こういうことです。一番ひどいのは小学校、中学校の女子の生徒の使う練習用の運針布というもの、これは何と七十五倍になっているのであります。糸メーカーが二十年前と同じ値できのうも三品市場で売られております。私の言うことが間違うといけませんから、繊維関係のお方で答えていただきたい。きのうの大阪、東京、名古屋の三品市場のコットン四十番、ウール一キロ、合繊、その他、きのうの相場をそこで発表していただきたい。
  101. 森口八郎

    ○森口政府委員 昨日の綿糸四十番手相場は、大阪におきまして、四月限二百九十四円であります。東京におきましては二百九十円、名古屋におきましては二百九十二円九十銭というのが相場であります。
  102. 加藤清二

    加藤(清二)委員 さすがよく調べていらっしゃいましてけっこうであります。  先回、コットンでいたしましたから今回はウールでいたしますが、きのうのウール相場、当月限一キロ千三百円、先物で約千五百円、これは順ざやになっておりまするからそれはいいとして、これで市場へもしメーカーが出しますると、メーカーの建て値というのはそれより安い勘定になりますね。当然です。かりに千三百円のものを千三百円では売れませんから、千円とか千百円とか千二百円ということになるわけです。それでいきますと、生産コスト割れば何ぼになりますか。
  103. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在四八双糸に使っておる羊毛の原価を三百五十セントないし四百セントと前提いたしますと、かれこれ千二、三百円の赤字になるかと思います。
  104. 加藤清二

    加藤(清二)委員 よく調べてみえる。感心した。さすが私がさっき言ったとおり、通産官僚はエリートばっかりで頭のいい人ばっかりですね。りっぱなものです。さすが勇将のもとに弱卒なしでりっぱなものですよ。そのとおりです。一キロについて千円から千二百円の出血生産、普通だったらそんなばかげたことはやれない。にもかかわらず、それをしなければならぬというのが、自転車操業の悲しさですね。それを行なわなかったら、とたんに不渡りを食らわなければならないから、出血出血、過去の蓄積を全部吐き出しておる。  そこで大臣にお尋ねしたい。油の関係は先物まで上げて、先取り値上げまでして、それでも足らぬでカルテル行為までやって、まあやったかやらぬか、まだ裁判中ですからそれは触れずにおきますが、そういうことまでして値上げをして、またぞろ今度、諸物価を押えておきながら油だけ上げるという。そうしたら今度、電気もガスもまた上げるという。通産省の値上げの基準を承りたい。繊維の出血は、去年の十一、十二はいざ知らず、正月以降全部そうなっておる。すべてのものが上がっておるときに、繊維だけは下がっておる。機屋の工賃は下がっておる。染色整理屋も下がっておる。にもかかわらず、デパートの値だけは上がっている。その下がって出血——ほかのものは、油のように先取り値上げをしたものはもっと追い打ちをかけてめんどうを見てやるが、正直に黙って、過去の慣習法に従ってやるその業界に対して、いわば正直者に対しては一体どういうことをしていただけるのですか。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油のような場合は、OAPECの国際紛争が原因でいろいろな影響が出てまいりましたものですから、法律も通していただいて、それによって政府がある程度管理を行なってそして行政指導で物資の基礎として安定させようという考えで凍結もしてきたところでございます。これは、十二月に対して一月以降は凍結しましたから、まあ石油会社自体はかなり赤字をそれで背負いまして、暮れにもうけたものは全部吐き出したというところまで余議なくさせられておるわけであります。  繊維関係は、これは自由経済にまだ領置しておくべき世界で、あまり統制や行政指導というものをやらぬほうが適切であるとみなされる領域でございまして、構造改善その他のことは法律をおきめいただいてやっておりますけれども、需給関係によって値がきまるという市場機能を認めてやらしておるところでございます。そういう面から需給関係が非常に響いてまいりまして、そのために、いま荷もたれがし、値が下がってきておるという現象であります。  これに対して、何か政府が特別行政的な措置で値段を維持するとか高くするということをやるべきかどうかということがございますが、私らはやはり需給関係の自由相場できめてもらっていくということが長い目で見て適切ではないか、緊急事態が出てくればまた別でありますが、当面はそういうことでいいのではないかというふうに考えております。
  106. 加藤清二

    加藤(清二)委員 大臣のおっしゃっるとおりであればまことにめでたしめでたしで、資本主義の総本山もまことにけっこうでございましたということになる。しかし、去年一年の間に、政府は繊維政策でどれだけの強制をなさったかは、よもやお忘れではないでしょう。去年の三月九日から一カ年間、三品市場はストップですよ。政府の指示です。指導です。引き続いて大阪綿糸、今度の十一月から十二月、コットンの四十番手が三品市場で二十万円近くなった。そのときに何をおやりになったか。またストップ令を出された。そうしてその期間たるや二カ月も三カ月も続いた。その影響がいま四月から六月にかけて糸がないというところへ出てきておるのです。機場に糸がないというのです。あなたがたくさんある、たくさんあるとおっしゃるのは、それは商社の倉庫にあるということであって、機屋にはないのです。仕事をやるところにはないのです。買う金もないのです。なぜないのかはあとで解説します。現に高値を呼ぶときだけは押えてみえる。森口さんがいらっしゃるからお尋ねしたい。なぜあんなに長くカンフル注射を打たれたのですか。カンフル注射というものは副作用が出ますよ。あれはせいぜい一週間、長くても次の納会、お手打ち式のときにちょんとやるものなんです。なぜそう何カ月もやられたのですか。それがいま悪影響が出てきておる。
  107. 森口八郎

    ○森口政府委員 おっしゃいますとおり、綿糸につきまして、昨年の十二月に高値を抑制したことは事実でございます。また高値抑制につきまして、確かに先生指摘のとおりカンフル注射的でございますので、できるだけ早くやめるべきであるという点については全くお説のとおりであります。若干時期を失しまして、本件につきましては三月の十八日付で解除をいたしております。  現在の繊維市況、特に毛糸の市況につきましては、私どもも、先ほど御指摘のように非常に値が下落をしておるというような点で実は憂慮をいたしております。谷が深ければまた山が高いというようなこともありますので、たとえば証拠金について何か対策を講じて正常な相場に戻す方法はないかというようなことをいろいろ考えておりますが、現在のところでは、環境悪と申しますかそういうような点で、はたして正常に戻りますかどうか、やはり本来の市況にまかせるしかやむを得ないのではないかというのがただいまのところの結論であります。
  108. 加藤清二

    加藤(清二)委員 病あつうして名医なく、投薬することができない。医者に見放され、さじを投げられたのが今日の業界です。そう受け取らざるを得ない。熱の高いときに冷やしまくっておいて、冷え過ぎて今度下痢、下痢で毎日下痢しておっても、それに対する対策はとれないというのだ。全くさじを投げられた患者といわざるを得ない。私は今度のこの法案が悪いと言っているんじゃありません。けっこうです。しかし足りません。たとえればこの法案は二階から目薬なんです。ところが、二階から目薬のうちに風が吹いてきて吹き飛んで行っちゃうんです。目の中に入らぬうちによそへ行っちゃうんです。それでよそでも迷惑をかける。それが今度のこの時期におけるこの法案なんです。だけれども、ないよりましです。あったほうがいいにきまっておる。そこで、そういう吹いてくる風に防波堤をつくってやらなければならない。防波堤をつくる前に、砂上楼閣ではいかぬから土台をつくらなければいかぬ。いま私はその土台の話をしておるのです。  さて、しからばなぜこんなになったかといえば、大臣もお見通しのとおりストック、在庫が非常に多いということなんです。それじゃ去年の時点においてメーカーがつくり過ぎたでしょうか、機屋がつくり過ぎたでしょうか、一体何がゆえに在庫がふえたんでしょうか、お尋ねしたいところです。私は一言にして言えば商社の横暴、その内容は先高を見込んでかってに買い過ぎた。ウールでいえば、原毛だけでもって前年度比四割の余を豪州で買っておる。これは去年の三月の時点において、これでは秋の暴落が来ますといって指摘した。なお性こりもなく歴史にないようなウール糸をアメリカから買っておる。前代未聞なんです。それでなお足りぬで糸を二万トンも買い越し、トップを六千トンも買っておる。しかもそれはどれだけで買っておるか。糸時点で申し上げたほうがいいでしょう。糸時点では三千円の余を上回って買っておる。世界一高く買ったのだ。それは流動資金があり過ぎたからだ。その名前は伊藤忠、江商、丸紅、岩井産業、二社五綿全部です。これが買い過ぎたんです。売れるはずがないじゃないですか。輸出がきかないのですからね。内需にそんな高いものが売れるはずがないじゃないですか。海へ捨てるわけにはいかぬ。それが在庫である。したがって、前車がくつがえっているから、うしろの車は行けないにきまっておる、前がストをやっているんだから。この罪は商社にある。商社の思惑買い、横暴買いにあるが、しかしそのおかげで、罪のない機屋や紡績が倒れなければならぬという理由にはならぬわけなんです。政策として救いの手を伸ばすべきだと思う。手がないとおっしゃるから申し上げる。凍結したらどうです。第一、凍結してそれに対する融資をなさったらどうか。第二案、一括寄付したらどうです。過去にそういう例はたくさんあります。バングラデシュにも、あるいはイスラエルから、パレスチナからのがれた避難民も手を受けて待っているんです。そのことがやがて石油産油国、OPEC、OAPECとの友好関係を生むというならば、これは一石二鳥といわざるを得ない。かつてインドネシアにそれを行ない、日本とインドネシアとの国交回復並びに友好関係に非常に貢献したことがございます。あえて素案を提出してみました。大臣のこれに対する感懐を承りたい。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 凍結融資のほうは検討してみたいと思っていまやらしております。  それから国際的な関係影響を及ぼす部面については、外国との協定問題等がありまして、慎重な態度でいま情勢の推移を見ておるという情勢でございます。
  110. 加藤清二

    加藤(清二)委員 長期策でなくて短期策、カンフル注射の二点を申し上げました。幸い検討するとおっしゃられました。ぜひこれを検討の上、具体化していただきたい。その声があっただけで直ちに四月、五月の倒産は半減どころか八割方減ると思います。それなくしてこのままずるずるといけば、銀行は容赦なくここをつぶすでございましょう。そのときの責任は重大でございます。いまから警告を発しておきます。  今度は長期対策について提案をいたします。去年糸へん、繊維がどの程度輸入されたでしょうか、お答え願いたい。
  111. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 昨年一−十二月の繊維輸入額は三十八億六千六百万ドルでございます。このうち、原料は二十一億八千七百万ドル製品は十六億七千九百万ドルでございます。
  112. 加藤清二

    加藤(清二)委員 そのとおりです。しかし、そういうふうにおっしゃられると、ぼくみたいなしろうとにはわからない。ですから、国民にわかるように私のほうから申し上げます。もし、それに間違いがあれば指摘してください。  去年の、というより四十七年の輸入は、綿製品だけの輸入でもって前年度比一八三・七%でございます。輸入が一八三・七%、需要供給の伸びは一一一・二%。その基礎数が全部ここにありますけれども、時間の関係上走りますが、四十八年一月から十二月までの輸入は前年度比一七九・一%、需要の伸びは一一一・七%でございます。間違いがあったら言ってくださいよ。これを簡潔にするためにコリ数で申し上げます。四十七年の日本需要をコリに換算した計は三百五十五万四千三百五十五コリでございます。これもやはり一一〇・一%の前年度比伸びでございます。ところで、四十八年になりますると、四百万三千五百九十コリでございまして、伸びは一一二・六%でございます。その場合の輸入は一体どれだけであるかといえば、これは四十七年が総需要三百五十万何がしに対して輸入は五十四万コリでございます。六分の一でございました。ところが、四十八年になりますと、四百万何がしコリに対して輸入のコリは約百万でございます。これは二割五分でございます。間違いがあったら指摘してください。間違いありませんか。——そうでしょう。当然間違いはないはずでございます。  さて、アメリカ日本繊維を制限した時点における日本輸出パーセンテージ、アメリカの総需要に対する輸入量は何ぼでございましたか。
  113. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 アメリカの総需要に対しては九%弱と記憶いたしております。
  114. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それは銘柄は何の話ですか。
  115. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維全体でございます。
  116. 加藤清二

    加藤(清二)委員 どこかに計算のとり誤りがあるようでございます。アメリカは何をしていたか。総需要の三%の時点において制限を始めました。それはウールでございます。コットンの場合は五%で制限を始めました。これは日米繊維協定の歴史を読んでいただければ、だれだってこれは暗唱している数字でございます。後においてこういうことが言える。あなたの数字は、アメリカが外国から輸入するものを一〇〇として、日本の占めるシェアは何ぽかというと、コットンで最高が二二%、下がり下がっていっていまでは九%前後、こういうことになっておる。私は総需要を言っておる。ところで、アメリカのような大国で、お金持ちで世界一の国でありながら、日本からの輸出に対しては三%か五%で頭打ちのみならず二国間協定規制をかけてまいりました。この規制の歴史はすでに始まって今日二十年、それが去年の秋結ばれたまた世界協定、コットンのLTAが包括規制になってしまった。これを私は聞きたいのだ、ほんとうは。田中という通産大臣、絶対それはやりませんと答えておる。中曽根という通産大臣が見えたとたんに私はそれを聞いた。それはやらないとおっしゃった。だけれども、いま包括規制に入れられてしまった、コットンのみならずウールから合繊に至るまで。軟弱外交といわれるゆえんです。入れられてしまった。  ところで問題は、日本輸入はどうなっているか。繊維輸入は、総需要に対していまやコットンは二割五分以上でございます。銘柄によっては、先回、自民党のほうからも声あり、大島がつぶれます、村山大島はおかげでつぶれました。しぼりは総需要の八割以上でございます。西陣までが五割以上が韓国から入ります。  大臣にそこでお尋ねする。アメリカのような先進国でお金持ちの国でありながら、日本からの輸出が三%、五%でカットするの挙に出てまいりました。それをのんだ。それを是とするならば、なぜ返す刀で発展途上国からの日本への輸入を制限なさらないのでございましょうか。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカは国会関係の勢力やら国際収支の関係等考えて、いろいろ繊維に対して保護主義的傾向がありますが、これは国際的にも非常に非難されたところであります。  日本発展途上国に対してそういう措置をやる場合には、発展途上国はもとより、わが国が目ざしておる自由貿易、自由無差別の原則に対するこれはみずからの侵犯であるというふうに非難も出てきて、全般的な輸出輸入政策に支障を来たす危険性があります。そういう面から、わが国としてはこの問題では慎重であったと思います。
  118. 加藤清二

    加藤(清二)委員 日本の内地の繊維に携わる人たちがばたばたと倒れたり、あるいはこれを育てなければならないと言って本委員会で伝統産業を守る法律をつくっておきながら、貿易政策の面においてはいらっしゃい、いらっしゃいでどんどん輸入されたら、日本の零細な繊維企業は倒れるのが当然でございます。倒れるようにしむけておいて、将来夢を持たせるの何のと言ったって、これはどうにもならないほど、焼け石に水といわざるを得ない。少なくとも日本産業あっての日本なんです。繊維は基幹産業、敵前上陸はすみやかにこれを処置すべきであり、アメリカのこの筆法がよろしいというならば、返す刀で敵前上陸してくるものを切るのが、これが当然の祖国愛というものだと思います。そこで、具体的にそれを実行していただきたいと強く要望して次へ行きます。もう与えられた時間がだんだん迫ってまいりましたから、次へ行きますが、大蔵省から関税の方が来ておられますからお尋ねします。  日本からアメリカ輸出するときの繊維の関税は何ほどになっているか。アメリカから日本輸出される数量がここ両三年膨大にふえてまいりました。そのおかげで、コールテン、別珍の天龍社は、政府が金を貸してあげますといったって、もう借りる余力がなくなってしまった。アメリカからこちらへ輸入してくるときの輸入関税は幾らになっていますか。  もう一つ、ガット三十五条第二項の運用でもって、EC諸国はいまだに日本繊維を制限いたしております。日本からフランス、イタリアへ輸出するときはどうなっておりますか。イギリスのウーステッドが輸入されるときの輸入関税はいかが相なっておりますか。韓国、台湾、香港、パキスタン、インドから原料糸が入るときの輸入関税はどうなっておりますか。これは与えられた時間を守るために、お答えはあとで資料として御提出願えればけっこうでございます。  私の言わんと欲するところは、輸出するときにはたくさんの税金をひっかけられて、輸入するときはいらっしゃい、いらっしゃいで、ただの隣の関税で行なわれておる、こういうことでございます。発表なさればそういうことが数字で明らかになります。これではたまったものじゃないのです。  そこで最後に秘中の秘を出します。これは生活産業局長にお尋ねします。USテックスとはどういうものですか。アメリカの会社でございます。USテックスとはどういうものでございますか。
  119. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 残念でございますが、承知いたしておりません。
  120. 加藤清二

    加藤(清二)委員 アメリカン・テキスタイル合同企業という意味でございます。十五社でできております。Aバーンズ、リーガル、有名な会社が全部入っております。主要紡績会社十五社で組織し、宣伝売り込み機関、もっぱらプロモーションを行なう会社でございます。商品内容はテキスタイル、ミールプロダクト、ドメスチック、ベッドカバー等々、糸から製品にまで至っております。これが日本へ敵前上陸をしてまいったことは、すでに御承知のとおりでございます。その代表者はN・シーカル、トンプソン、W・クローゼの三者で非常に努力してつくられたのですが、バーリントン、スティーブンスは抜けました。理由があってです。しかし、これはどういう方かというと、アメリカ最大の別珍、コールテンの大手でございます。これが敵前上陸をしてまいりまして、大阪で大きなデモンストレーションをやりました。そして、日本業界にプロモーションをアクチブしました。その結果、日本のコールテン、別珍はアメリカ輸出されるどころか、逆にどんどん輸入される結果になったのです。いまや宣伝のセンターのために大きなビルまで買い取って、アメリカ商品の日本根拠地となっておる。  きょうの新聞をごらんになりましたか。朝日です。もうこれだけ詳しく出ますと、もはやこれは私が言う必要がないでしょう。アメリカの流通大手のペニーが三越とダイエーと組むということなんです。これはイタリアでは失敗をしておるのです。しかし三越の取締役は「ペニーの衣料品はファッションが優れているうえ、大量生産でコストダウンされているので、物価高騰に悩む日本の消費者に喜ばれるはず」と言っておる。したがって、朝日はこれに対して追い打ち記事で批評して、「足元みられた三越・ダイエー」と書いて解説をしている。あたりまえですよ。大体、失礼なことを言いますが、三越の専務ごときや常務ごときが繊維の商品学を知っておりますか。今日の繊維苦境を知っておりますか。日本繊維産業が出血生産をしておるということを知っておりますか。自分のところは安く買いたたいて、買いたたいてそれを三倍、五倍、ひどいものは十倍に売っておきながら、なお荒利益は二二%ですとしゃあしゃあと言っておる。  具体的に言いましょう。ここの共済組合で買いますと二百円です。これは百十円です。これが二百円です。ところが、これを三越で買いますと、柄ものでなくて、染めでなくて白でもって二百五十円です。ここの共済組合は幾らかけておるのです。ただじゃありません。やっぱりここだって二割ぐらいかけているのです。私は仕入れが何ぼであるか知っております。百五十円以下です。百五十円以下で仕入れた、三越は大量仕入れですからもっともっと安いのです。ずんと安い。それを二百五十円で売って、それで利幅が二二%とは一体何ごとですか。私は物価委員会に行ってそれをやったら、お客さんだから突っ込まずにおいてくれ、ここは予算委員会と違うから、突っ込んでくれては困るという某党の意見がありましたので、私は突っ込みませんでしたが、二割二分というのは明らかにうそ八百なんです、純利益ですかといったら荒利益ですとこういう。冗談じゃない。百五十円で仕入れたものを二百五十円に売れば、六割余の荒利益があるじゃありませんか。そういうむちゃをやっておきながら、あたかも物価高騰が他人のことのように言っている。日本繊維産業は、こんなものが敵前上陸してどんどんやられたらますますいかれてくる。舶来品なら品物が悪くてもええじゃろうという観念がまだ残っているのですからね。しかし繊維日本が世界最高なんです。にもかかわらず、日本在庫があり余るほどあり過ぎて生産が回らないという時期に、なぜ外国からこんなものを買わなければならぬのですか。内にあり余って掃き捨てなければならぬ、凍結しなければならぬほどあるものをなぜ輸入しなければならぬのですか。ひとつ委員長にお願いしたい。ぜひ三越の社長を証人に呼んでもらいたい。あなた、祖国愛あるのか、もうかりさえすればだれと組んでもいいのか。祖国愛はインドネシア、マレーシアの学生だって持っている。ユダヤ以上なんです。こんなことは許されることではない。逆に日本商社アメリカに行ってやったらどうなる、インドネシアでやったらどうなる、マレーシアでやったらどうなるのですか。こういうばかげたことを許しておって、それで繊維が助かるなんて思ったら大間違い。  私は、きょうは今度の繊維法の背景だけをお尋ねしました。具体的な問題、法案の逐条についてはあと質問したいと思いますが、具体的な事実として、USテックスはすでに大阪で仕事を始めております。三越とダイエーが足元を見られているペニー、これは試験販売をやろうとしております。さすがの伊藤忠の越後さんも、あまりにも条件が、なめていて常識に合わないから断わったのです。それをやろうとしている。それについてお答え願いたい。
  121. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になった二つのケースにつきましては、十分実態なり影響調査いたしまして、関係の部局とあわせて検討いたしたいと考えます。
  122. 加藤清二

    加藤(清二)委員 大臣、いかがですか。
  123. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の零細繊維産業は非常に苦境にあるおりからでございますから、これは市況にもかなり響くと思いますし、その点はよく調べまして、できる限りの処理をいたしたいと思います。     〔田中(六)委員長代理退席、稻村(左)委員長代理着席〕
  124. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 神崎敏雄君。
  125. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私は本法案についての骨子的なものをきょうは聞いておきたいと思うのですが、政府は本法案の目的について、第一に、企業規模が小さいこと、それから企業数が多過ぎること、第二に、製造工程が長過ぎて消費者の要求が反映しにくいこと、第三に、発展途上国の追い上げで国際競争力が低下しているなどの点をあげて、そうして繊維産業の構造上の問題点の解消をあげていますが、なぜこのような問題点が出てきたのか、まず初めにこれを明らかにしていただきたいと思います。
  126. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま先生指摘になりましたうちの企業の過多過小性あるいは繊維の工程分断と申しますか独立性ということにつきましては、これはやはり繊維の長い歴史の間にかような形になったのではなかろうかと思います。  第三番目の開発途上国の問題につきましては、特にここ数年の間に、韓国、台湾、中国その他極東に所在いたします開発途上国におきまして繊維産業に対する投資意欲が非常に盛んになりまして、そういった製品輸出市場では本邦製品と競合いたしますし、あるいは中には日本の内需の用に充てるために輸入されてきておるといったことで、その間に本邦製品とそういった開発途上国製品との間に競合関係が発生してきておるという事情の変化があるかと思います。
  127. 神崎敏雄

    ○神崎委員 その今日的な現象面については、いま言われていることも全部当たってないとは思いません。しかし、今日の大手企業零細企業の格差の増大は、一九七一年のドル・ショック、それから円の切り上げ、さらに翌年の日米繊維協定による対米輸出抑制措置、そして一方、円高を背景にした大手商社による大規模の輸入の拡大によって、国内繊維業界の、とりわけ中小零細業者は深刻な打撃を受けることになりました。これが基本的な実態といいますか、主因といいますかね、こういうふうになって、そうしていまあげられたようなことが現象として起こってきておる。そういうようなことは、政府が今日までとってきたいわゆる繊維政策ではなかったのか。そうでなかったら、基本点、視点がやはりがっちりと定められない。こういうふうに思うのですが、私があげたほかにおもな原因があるならひとつ聞かしていただきたい。
  128. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生の御指摘は、今回繊維構造改善法の改正案を提案したその背景についての御質問と解釈して申し上げてよろしゅうございますか。——一つは、やはり繊維をめぐります内外の環境が非常に変化しておるということと、二つ目には、繊維におきます労働力需給の逼迫という問題があります。三つ目には、国内におきますところの需要動向、消費者の嗜好の動向というものに変化がある。あるいは綿花、羊毛等の天然繊維原料について需給が逼迫している、かような内外情勢変化があるかと思います。  まず第一番目の問題でございますが、これにつきましては、先ほども話が出ておりましたように、繊維の先進国におきましては、どちらかというと保守的な、輸入制限的な動きが出ておるのに対しまして、いわゆる開発途上国におきましては日本繊維産業に対する追い上げと申しますか、非常な勢いで生産が伸びてきておる。こういった状況からいたしまして、従来のように単純なコスト切り下げ競争では克服できない状態が出てきておる。これに対していかに対処するかという問題かと思います。  二つ目の労働力需給につきましては、特に若年労務者の確保が困難になってきておる。また賃金について比較いたしましても、一般の製造業は過去数年の間に二・一倍の上昇になっておりますが、繊維工業につきましては二・三倍になっておる。こういったところからも、コストだけでの競争では開発途上国に立ち向かえなくなるという状態があるわけでございます。  一方、国内需要につきましても、だんだん高級化し多様化して個性化していっておる。これに対していかに対処するかという問題でございますが、いわゆる二次製品部門と申しますかアパレル部門が、わが国繊維産業の中におきましては特に弱い。また、御承知のように、中小零細の企業が特に多い分野である。したがいまして、この分野を育てないと国内需要に対しても安定的な供給がなし得ないという問題が出てまいるわけでございます。  それから綿花につきましても、昨年の上期はせいぜい三十セント程度であったわけでございますが、その後、昨年の秋以降は、ものによりましては七十セントあるいは八十セントというような高値をつけておる。羊毛につきましては、一昨年の秋から昨年の初めにかけまして五百セントを上回るような値段をつけてきておる。さような原料面での問題提起ということも出てまいっておるわけでございます。  こういう繊維産業をめぐりますところの内外情勢変化に対応いたしまして、従来のようなどちらかと申しますと設備面に、ハード部門に重点を置いた構造改善を実施しておっては、零細中小企業はもちろんのこと、日本繊維産業全体が停滞の一途をたどるだけであるといったような問題意識からいたしまして、いわゆる知識集約化グループと申しますか、付加価値の高い製品生産し得る体制、そのことによりまして内需を充足すると同時に、各国との間の競合を回避しながら国際分業を確立していきたい。さような観点からこの改正法案を御審議いただいておるわけでございます。
  129. 神崎敏雄

    ○神崎委員 懇切な内容説明で非常にけっこうなんですが、私の言っているのは、昭和四十二年にいわゆる法律第八十二号として特定繊維工業構造改善臨時措置法が出ましたが、きょうまた新しくこの法案が出てきて、文字どおり一部改正、こういうよって来たるべき根幹といいますか、主因は、私がさきにあげたものが基本的な背景ではないのか。だから、こういう形の一部改正をしなければならないというような諸現象あるいは諸事実が出てきたと違うのか。これが主因だというのがいまあげました一九七一年のドル・ショック以降の問題ですね。そういうことによって、そして今度いま一度改正をしなければならないところにきたのではないか、こういうふうに思うのです。そのほかの原因はというと、いまあげられたようなことなんですが、基本的な主因というのは、いま私が指摘したようなことでいいのじゃありませんか。これは否定されますか。
  130. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 直接的な契機と、それから背景的なと申しますか基本的な契機と両方あるかと思います。先生が御指摘になりました四十二年の法律に基づきまして、いわゆる国際競争力といいますか、輸出競争力をつくるためにいろいろ構造改善を実施してきたわけでございますが、その際には、いわゆる設備の近代化あるいは過剰設備の廃棄といった点におきましてはかなりの効果があった。言ってみれば、ぜい肉を落として筋骨を鍛えたという効果はあったわけでございますが、特に先ほども先生が触れられました企業の過多過小性と申しますか、いわゆる中小零細対策が十分に行なわれなかった、あるいは取引の改善という重大なテーマにつきましても、現行法のもとでは十分目的を達成し得なかった、要するに、四十二年に制定をお願いいたしました法律に基づく構造改善では十分解決し得なかった問題も残っておるということは事実でございます。今回改正法案を御審議いただくようになりましたのは、そういった取り残した問題の解決とあわせまして、先ほどるる申し上げました内外情勢変化に対応していかなくては、日本繊維産業全体が停滞していかざるを得ないという問題意識からスタートしておるわけでございます。
  131. 神崎敏雄

    ○神崎委員 できるだけその根幹に触れないで、回りとか上つらをずっと言われているような気がするのですが、先ほどもお話があったように、軟弱外交というような表現をされておりますが、私たちはそうではなしに、いわゆる対米従属の経済政策、こういうような形からきたいわゆる繊維協定、こういうような問題をも、やはり最も大きな原因から二転、三転し、少し時間は経過はしておりますけれども、朝令暮改的な改正を繰り返さなければならない、こういうようなことが基本的な問題であって、そういう中で国内繊維企業というもの、中でも中小零細企業が非常に深刻な打撃を受ける。ある面ではAの側面が出たらAの側面で受け、Bの側面が出たらBの側面で受ける、常にそういうような形になって、一般的にいういわゆるしわ寄せが出てきている。そのつどあと追い的な改正を繰り返していく、こういうようなことになっておるということが主因である、こういう形の指摘をした、あるいはそういうふうに考えた意見を申し上げたのであります。  そこで、この問題は非常に重要な問題でございますので、慎重にこれから法案を基礎としてただしていき、また将来のためにもよりよき法律に改善していかなければならない。これは各党間で後日相談もする予定でございますけれども、今日は法案の柱といいますか、骨組みについてだけ質問をしておいて、あとの話し合いの素材にもしたい、こういうふうに思っております。  そこで、法案の内容について伺いますが、まず本改正案の目ざすいわゆる構造改善の基本方針についてお伺いするのですが、通産大臣の定める基本指針ば第三条二項に五点にわたってあげておられますが、これはそれぞれ基準をどのように設定するのか、この点を具体的に説明をしていただきたいと思います。
  132. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 通産大臣が定めます基本指針でございますが、これは繊維産業全体を対象といたしましての基本指針として考えております。そういったところから、この性格はどちらかと申しますとガイドライン的な内容になる。また、ただいま申し上げましたように、繊維産業全体を対象といたします関係上、その内容は一般的、抽象的にならざるを得ないものと考えております。具体的に基本指針として現在考えておる項目を簡単に申し上げたいと思いますが、まず前文といったようなものを掲げまして、その中でわが国繊維工業が現在当面しております構造上の問題を列記してみたい。たとえば零細性、工程間分断あるいは流通経路の迂回性、市況性、こういった事項をその内容といたしまして問題を提起いたしたいと思います。それに対しましてわが国繊維工業が、その製品の品質、数量、価格あるいは安全性等におきまして国民的要請に十分対応するためには、従来の繊維工業の資本集約化といったような現行法のもとにおける構造改善に加えまして、さらに知識集約化を進める必要がある、かような内容をその前文に織り込むことになるかと思います。  それから第二番目は、新商品または新技術の開発でございますが、これは消費者情報を的確に収集、処理する機能の強化をはかること、高品質の製品を開発する機能、あるいは技術を開発する機能、こういったものを強化する必要がある。この場合、高品質と申し上げますのは、デザイン、色彩、着ごこち、取り扱いの難易度、こういった点についての品質の改善という意味で高品質ということばを使っておるわけでございます。  それから三番目に、設備の近代化でございますが、省力化、合理化、公害防止型機械設備の導入を積極的に行なうということと、機械設備の導入にあたりましては、それにかえて老朽設備の廃棄をすること、これが三番目の設備の近代化の内容でございます。  四番目に、生産または経営の規模または方式の適正化でございますが、事業の共同化等を推進することによりまして、生産規模の適正化をはかるということとあわせまして、販売力、原材料の購買力、市場開拓力、技術開発力、こういった総合的な企業力の強化をはかる必要があるということ、共同事業を行なう場合に、異なった工程の事業者とその生産設備の種類、能力等の間にバランスを維持する必要があるということ、共同商品開発研究所の設立、計算事務の共同化、ブランドの統一といった経営の方式についても、その適正化をはかる必要があるということを記載するつもりでおります。  第五番目に、取引関係の改善に関する事項でございますが、これは四点でございまして、賃加工形態からの脱却、商品の仕入れ、管理、販売等に関する諸契約の文書化、価格の決定の方法、納品の検査の方法、返品の方法、その他の取引条件についての改善、共同購入、共同販売による取引条件の改善、この四項目が取引関係の改善に関する事項でございます。  最後に六番目といたしまして、その他繊維工業の構造改善に関する重要事項といたしまして、従業員に対する福利厚生施設の充実、給与体系の合理化、雇用条件の改善等労働者に関する事項、産業公害の防止、一般消費者の利益の保護等に関する事項をこの事項として掲げるつもりで検討を進めております。
  133. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま一から六まで御説明いただいたのですが、これは一から五までの中へ含まれておるわけですね、順番は。一つ多いようになっておったのですが、補足されたわけですか。
  134. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 失礼いたしました。  前書きと申しますか、前文を一項目として計算いたしましたので、御質問にあったように、実際は法案のとおりでございます。
  135. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それでは順番を引き上げて理解することにします。  そこでこの改正案は、中小企業を対象にしたものであるかのようにいわれておりますが、この構造改善事業計画への参加は、中堅企業、資本金一億円から十億円ですね。この中堅企業で、大企業も参加できるようになっておりますね。それは第四条一項一号の商工組合とか、第四号、第五号の繊維業者とは、大企業及び中堅企業も含んでいるのかどうか。この点を明らかにしていただきたい。
  136. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 この法案の立て方といたしましては、繊維工業の構造改善事業を推進するという体系をとっておりますので、法案自体では、大企業あるいは中堅企業中小企業という特段の区別はないわけでございます。特にただいま先生指摘になりました第四条の関係でございますが、繊維業者ということばの中には、観念的には、大企業も中堅企業もみな入るわけでございます。ただし、この第四条をごらんいただければおわかりいただけるかと思いますが、構造改善事業計画を作成し、これを通産大臣に提出し、その承認を求め得る資格要件といたしまして、一号からずっと書いてございますように、いわゆる事業協同組合、事業協同小組合あるいは企業組合——どちらかと申しますと、中小企業者団体を中心といたしまして問題意識を持っておることも事実でございます。これは法案の上では、特に大企業中小企業の区別はつけておりませんが、一応助成の対象といたしましては、大企業ははずしておる、むしろ中堅中小企業というものを考えていきたい、こういう思想でございます。したがいまして、繊維業者ということばの中には大企業も入るわけでございますが、これに対しては、助成という点においては除外いたしたいと考えております。
  137. 神崎敏雄

    ○神崎委員 大企業は除外して、中堅からいわゆる中小零細を対象にする、こういうふうに理解していいのですね。——そこで続いていきますが、構造改善事業計画を作成して承認を受ける、これについて通産省令できめる、その要件に該当することがまず第一、いわゆる計画を作成して承認を受ける、それがまず第一の条件となる。その条件というものについては省令できめる、こういうことになっておるのですね。したがって、省令なるものがものさしになりますので、私は、きわめて重要なことになると思うのですが、いま省令の中身といいますか、性格、これは発表できますか。
  138. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まだ省令原案はつくっておりませんが、現在時点においての考えをお答え申し上げたいと思います。  この省令の中には、一つには事業区分とそれから事業の関連性、この二つのことを規定することになるかと思います。ここに書いてございますように、「事業相互の関連性」という以上、その前提として事業区分と申しますか、あるいは工程区分と申しますか、そういった区分をつける必要がございます。現在、その事業区分につきましては、たとえば紡績、撚糸、整経及びたて糸のりづけ業、織布業、メリヤス業、染色整理業、縫製業あるいは販売業、かような形で事業区分をつけまして、この事業区分の中で連関性が密着しておる、その工程が連続しておるといったことを要件にいたしたいと考えております。
  139. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま原案はまだできておらない、骨格だけを聞いたのですが、この原案はできましたら、資料としてわれわれにこの法案が承認されるまでにいただけますか。
  140. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 法案法律として成立する前に、政省令等を出すということは、ある意味において国会無視になるそしりもあるかと思いますが、ただ成立した場合の段階における省令案という形で骨子はお出しできるかと思います。
  141. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そのとおりですから、骨子でけっこうですから、骨子をいただきたい。  次に、中小企業構造改善事業について重要なことは、事業計画の承認が通産省の権限に、一方的に一元化されておる、こういうところに、非常に大切な問題点があると思うのです。特に繊維産業の場合は地場産業が圧倒的に多い。したがって、事業計画の承認は、密接な関連を持つ地方自治体にもその権限を持たせるべきであると私は思うのですが、この点について大臣はそういうお考えがあるのかないのか、ひとつ聞きたいと思います。
  142. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大臣がお答えいたします前に事務方から先に申し上げますが、御指摘のとおり、確かに繊維産業というのは、産地産業としての特殊性を持っておるわけでございます。そういった地方の特殊事情を生かすと同時に、また反面、全体のバランスをとっていくということも必要があると思います。特に、すでに御承知おき願っておるかと思いますが、金融、税制面できわめて手厚い助成を与えるということもございますので、企業の特殊事情を生かしながら全体のバランスをとっていきたいということでございます。現在の構造改善法のもとにおきましても、各県に指導援助委員会というものをつくっていただきまして、ここと十分連携をとりながら構造改善を進めておるわけでございますが、今度の新しい構造改善のもとにおきましても、構造改善事業協会といったものを各地域につくりまして、当該府県の商工部長に主宰していただきまして、地域関係業界団体あるいはもよりの通産局、中小企業振興事業団、こういった人たちで構成いたしまして、地方の実情というものを十分反映さしていくように考えておるわけでございます。
  143. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 繊維関係は業態が非常に千差万別であり、かつまた流通過程がかなり長い特殊の産業でもあり、かつまた零細企業等が末端で非常に蝟集しているという産業形態であります。その上に非常に地域性が強い、こういうことがございました。したがいまして、計画をつくるにあたりましては、よほど現地に即した具体的な計画である必要がありますし、かつまたそれらの諸般の点についてよく目張りをした周到な計画である必要があると思います。通産省といたしましては、都道府県等ともよく連絡をいたしまして、現地に即した適切な計画をつくるように指導してまいりたいと思います。
  144. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ぜひ、その連絡あるいは相談、そういうことではなく、いわゆる具体的な権限あるいは指導、行政的ないい意味での干渉といいますか、そういうものを地方自治体に非常に持たさなければならない、こういうふうに思います。  これについて一、二の例を申しますが、たとえば四十五年度の大阪府の、いま商工部とも相談という話も出ましたが、この商工部の資料を見ますと、大阪府には和泉市というのがございますが、ここに綿スフの織物製造業、ここのいわゆる産地診断報告書によりますと、同市における工業の総事業所数の八三・二%を占めているんですね。それから従業員数の場合は七一・九%を占めている。出荷額は六一・八%になっている。このように産地を形成している繊維業は、こういう小さな都市でも地方自治体の利害影響がきわめて大きい。  さらに、これを全国的に見ましても、次のような結果になっておるんですね。たとえばこの品目別の産地の実態ですけれども、羽二重の場合、これは五県をあげますが、福井と福島、石川、新潟、京都、これだけで九二・八%を占めている。それからちりめんの場合、これも京都、滋賀、それから兵庫、福井、石川、これで九七・二%のシェアを占めている。     〔稻村(左)委員長代理退席、左藤委員長代理着席〕 それからポリエステルの織物ですね、これは福井、石川、新潟、愛知、富山、これで九〇・二%のシェアですね。その次がじゅうたん、あるいはだんつう、これも大阪、徳島、京都、和歌山、愛知、これが九二・七%のシェアを占めている。そういう形で、タオルにいたしましても、またいわゆる毛糸にいたしましても、また金糸にいたしましても、大体五つの府県で、代表しているのは愛知県が一番多いですね、六品目。それから大阪が五、福井が三、石川が三、新潟が三、京都、東京が二、三重も二、滋賀、岐阜も二。主として地場産業として九県に全国的に見ても片寄っている。非常に高い出荷数量とそれからシェアを占めている。こういうものでございますので、これを中央集権的に通産省だけですべての問題を掌握するということだけでは、きめのこまかい措置もやはり立ちおくれてくるんじゃないか。したがって、こういうものについては、いわゆるその特定地の府県に相当な権限を持たして、そうしてこの法律ができましたら生きた対処ができるような形にならなければならないと思うのですが、いま一度その点について見解を聞いておきたいと思います。
  145. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘のように、繊維産業一つの大きな特色といたしまして、さような産地性というのも注目される事象でございます。  ただ、私考えますのに、繊維産業というのは、そういったローカルインダストリーとしての性格と、それから国の産業と申しますか、やはり現在でも全体の生産量の一割程度が繊維産業ということになっております。そういったナショナルインダストリーとしての性格もございますし、かたがた、先ほど来お話がでておりますように、繊維の先進国、後進国と申しますか、特に天然繊維につきましては世界各国生産をしておる、そういう輸出入といった貿易面も踏まえまして、インターナショナルインダストリーとしての性格も持っておる。かように複雑な性格を持っておる産業でございますので、おっしゃるように、産地性というものも十分その利用計画、改善計画に反映し、生かしていく必要もあるかと思いますが、全体的のバランスという問題もございますので、権限問題にこだわらず、先ほども申し上げましたように、地方公共団体ともあるいは地元の組合とも十分連携をとり、その意見も十分取り入れながら運営してまいりたいと考えております。
  146. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そのことを認めていただいたら、この点はけっこうです。  そこで、もう一ぺん法案へ返りますが、第四条第五項について聞きます。  ここでは構造改善事業計画の承認要件が述べられているのですが、この第三号に説明されている、つまり、なぜ特定組合に関してのみこれが必要なのか、また「構成員の大部分」とは、一体どの程度あるいは何%ぐらいをこの「構成員の大部分」と見るのか、この場合はどういう比重になっておりますか。  なぜこれを聞くかと申しますと、つけ加えて申しますが、拠出金とか資金とか基金とかの関連があるからです。
  147. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 この第三号で「繊維業者たる構成員の大部分が」と書いておりますのは、三分の二程度に考えておりまして、こういった第三号を置きましたのは、組合の中で一人でも反対した場合に、構造改善事業ができないということになっては困る、おおよそ大半の人が参加するならばけっこうである、こういう趣旨でございます。
  148. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで私の心配する、三分の一が残された——構成員になれば資金も出さなければならぬでしょう、いろいろ条件に当てはまっていかなければならぬですが、残りの三分の一の、そういう資金等を出せないいわゆる零細企業は一体どうなるのか。これは置き去りにされていくのか。これはあとの三分の一についてはきわめて重大な問題ですから聞いておきたい。
  149. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 この点につきましては、かりに三分の一の人が参加しないという場合には、その三分の一の人だけでまた別途協同組合と申しますか、特定組合をつくってやっていくということも可能でございますし、また反面、そういった構造改善事業に参加しない人から出指金をとるということはないわけでございます。ただ、そういうことではございますが、本来、協同組合というのは中小企業者の力の弱さというものを団結して守っていこうということでございますので、できる限り、やはり一つの特定組合におきましてはそれなりに意見を十分調整し合ってやっていただくことのほうが好ましいとは考えております。
  150. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうすると、いまのお話では、残された三分の一はまた別にそういう組織をつくればいいんだ、そういう組織をつくれば認めていただいて、前者の三分の二と同じような、恩恵というのはおかしな表現ですが、そういうような保護的な措置は全部同じように受けられるのですか。
  151. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 事業協同組合の設立要件に合致しておりましたならば、と申しますのは、最低人員としては四名以上ということになっておりますが、そういった場合にはまた別途協同組合をつくるということも可能でございます。
  152. 神崎敏雄

    ○神崎委員 続いて第九条に関して伺いたいのですが、ここではいわゆる小規模企業への特別の配慮、こういう配慮ということを先ほども説明があったのですが、小企業に対する特別の配慮というものの中身ですね。配慮の中身を具体的にひとつ聞いておきたいのです。
  153. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 本法案の第九条における配慮の内容といたしましては二つございます。  一つは設備の近代化助成制度、いま一つは技術指導でございます。いずれも小規模事業者を対象として行なうことになっております。今度の構造改善事業によりますと、いわゆる知識集約化グループと申しますか、第四条でいうところの構造改善事業計画というものを作成して、これの通産大臣の承認を受けたものに対しまして中小企業振興事業団から特段の融資をするという立て方になっておるわけでございますが、小規模企業者につきましては、本来ならばやはりそういった第四条にいうところの構造改善事業計画をつくっていただきまして、積極的に構造改善を進めていただきたいわけでございますが、反面、現実問題としてやはり資金面、人的面等で直ちにそういった構造改善に取り組み得ない、参加し得ない方もあろうかと思うわけでございます。そういった小規模事業者に対しましては、まず第一段の措置として構造改善事業計画をつくらなくとも、中小企業振興事業団を通じまして構造改善事業計画をやる事業者と同じく二分六厘の資金融通をいたすことによりまして設備の近代化をまずやる。将来みずからも構造改善事業に参画し得るような措置をつくっていきたいというのがこのねらいでございます。  それから二つ目の技術指導のほうは、単純な機械の操作ミスによりまして、いわゆる織りむらだとか染めむらといったような、どちらからいえばいたみのある製品をつくってしまうことがしばしばあるわけでございます。そういったものに対しましては、やはり技術指導を行なうことによりまして製品の品質の向上をはかる、あるいは小規模事業者にとりましてはそれだけのロスをカバーするようにするという趣旨で考えたわけでございますが、対象といたしましていま考えておりますのは、初めのほうの近代化資金の助成の対象といたしましては、おおむね従業人五人以下、ただしこれもおおむねでございまして、地域なりあるいはその業種によりましては、たとえば年間の生産高あるいは売り上げ高等で線を引くとか、あるいは保有する設備台数等で考えるということも可能かと思います。  それから技術指導の対象といたしましては、大体従業員二十人以下の規模のものを考えております。それぞれ、五人以下であれば大体全体の七割、二十人以下であれは全体の九割までの事業所をカバーすることができるかと思っておりますので、小規模企業対策といたしましてかなりの効果をあげ得る措置ではなかろうかと考えております。
  154. 神崎敏雄

    ○神崎委員 中身は非常に詰まったような御説明でございますが、配慮ということになりますと非常に抽象的表現になって、これはまあやってもやらないでも罰則があるわけじゃないし、配慮したのだけれども及ばなかった、こういうことにもなりかねないのですね。いま局長のおっしゃったような中身は、これは何か法文の中にうたうか、何かの中にそういうような中身は保証されるのですか。ただやはり配慮だけでいくのですか。
  155. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 設備の近代化のほうにつきましては、財投計画と申しますか、中小企業振興事業団の資金計画の中に掲記されておるわけでございますし、それから技術指導につきましては一般会計の予算書に出ておりまして、法文上はそれなりの規定はございません。ただ、構造改善事業協会の業務といたしまして、技術指導という事項を今度の改正法案で追加いたしております。
  156. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それでは最後に、繊維産業構造改善事業の上で、とりわけ小零細繊維業者の経営を守るために、第一に貿易メーカーや大商社などの大企業が中小零細業者を圧迫しないように、その利益と自主性を保証すること、これが第一。第二に、繊維業について、大資本が海外投資を行なうことについて規制し、また繊維製品輸入規制し、国内繊維産業の保護を行なうことが私はきわめて重要だと思うのであります。これらについて法案上その保証があるのかないのか、またなければどこかでこのことを充実さすべきである、こういうように思うのですが、いまあげたこの二点について、通産省の基本的な姿勢を大臣から伺っておきたいと思います。
  157. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大臣がお答えする前に事務的な御答弁をいたします。  まず初めの取引改善につきましては、本法案の第八条に指導、助言という規定がございます。これに基づきまして大臣指導していくことになるかと思いますが、特に取引改善につきましては取引改善の協議会というものを設置いたしまして、繊維につきましてはいろいろと取引上の問題点、流通上の問題点がございますので、そういったものにつきまして標準的なルールの作成あるいはこれを実行するための手段といったものについての検討をいたしたいと考えております。  それから第二点の海外投資でございますが、これにつきましては、一部銀行業を除きまして現在自由化されておるわけでございますが、反面、中小零細企業をたくさんかかえます日本繊維産業あるいは産地産業としての問題意識もございますので、自由化されている中で十分に配慮いたしておる、また配慮し得るように関係省庁と連携をとっておるわけでございます。
  158. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま局長が述べたとおりでございますが、関係方面とよく連絡をとって善処する次第であります。
  159. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いましばしば問題になっている貿易自由化の問題にも関連がありますが、入るときと出るときとの問題とも関連をして、非常に重要な、繊維だけではありませんが、わが国のいわゆる経済政策の基本点からいっても、あらゆる面でいま重要なところへ来ていると思うのです。だからこの点でも私は、こういう構造改善をやる中でも非常に大きな比重をそこに占める、こういうふうにも思いますので、きょう伺った幾つかの点についての基本的な答弁は大体いただきましたが、これをよくまた見直しまして、あらためてそれを補足するような質問をさせていただくということを申し上げて、きょうの質問は終わります。
  160. 左藤恵

  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 私も、きょうは繊維関係します諸問題それから法律の問題点について基本的な点を質問いたします。そして後日また残された問題について質問したい、このように考えております。  まず初めにお伺いしたいのは、特に昨年の後半から非常に不況になってきておるわけでありますが、金融引き締めであるとか石油、電力の節減、原材料費の高騰、原材料不足問題等々があるわけでございますが、こういう問題が繊維産業としてどういうような事態になっておるか、これは政府としてどのように認識されておられるか。需要の問題在庫、工賃あるいは手形サイト、倒産等の状況等いろいろあろうかと思うのですが、政府が最も問題として把握されておられるそういう諸問題について、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  162. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近は、金融引き締めあるいは資材の値上がり等の問題がありまして、繊維産業はかなり苦境に追い込まれておりますことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。最近の仮需の減退、消費者の買い控えの傾向、昨年好況時に輸入契約の行なわれた輸入品の入着等によって、その受注が昨年同期に比して大幅に減少しており、生産の低下、在庫の増大、それとともに工賃の低下、受け取り手形のサイトの長期化等によって、資金繰り、採算ともに悪化している現状であります。  関係業者から聞き取った繊維関係の四−六月の景況の予想をちょっと申し上げてみますと、綿スフにおいては、受注が織機能力の五〇%ないし六〇%程度、絹、人絹織物においては、これは期近にならないと発注がもらえない。毛織物は、織機能力の六〇ないし七〇%程度、染色は、四月は前年同期に対して三〇ないし四〇%減、五、六月はさらに減るであろう。メリヤスは、織機能力の四 ○ないし五〇%程度、縫製は、前年同期に対して六〇ないし八〇%、こういう状況から見ると、先行きはかなり暗いということがこれでも予想されるわけであります。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういうきびしい事態になっておるわけでございますが、政府として、いままでこういう問題に対してどういう措置をおとりになってこられたか、その主要なとってこられたことの中身ですね。  それから、いま大臣からもお話がございましたが、今後非常に見通しは暗い、こういうことでございますので、今後さらにどういう対策を講じようとなさっておられるのか。そういう問題につきましてお答えいただきたいと思います。
  164. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたように、非常に繊維業界各産地とも不況色を強めてきておりますので、いわゆる年度金融といたしまして産業全体で五百五億のワクが決定になったわけでございますが、そのうちの百五十億を重点的に繊維産業に振り向けたわけでございます。それから四−六月につきましては、この二−三月よりさらに問題が深刻になるのではなかろうかという心配もございますので、さらに各産地ごとに精緻な調査を進めておりますが、これに基づきまして、新しい財投計画のもとでできるだけ早く機動的に資金融通をなし得るように、関係の部局と連絡をとりながら作業を進めておるというのが実情でございます。かたがた、ものによりましては、非常に在庫圧迫がきついということもございますので、凍結融資の道も検討しておる段階でございます。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常にこういうきびしい情勢になってきておるわけでございますが、最近発展途上国からの繊維製品輸入増の問題というものが非常に大きく浮かび上がってきておるわけでございますが、こういう問題については、政府としてはどういうようにお考えですか。
  166. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 昨年一−十二月の繊維製品輸入額は十六億八千万ドル、前年の約三倍と非常に高い伸び率を示しておるわけでございます。こういった事態と申しますか、輸入急増しました理由は、昨年のいまごろ国内市況が非常に好況に推移しておったということと、二月に変動相場制に移行したわけでございますが、その後円高基調が続いておりまして、輸入が相対的に有利なポジションにあった、かようなところから輸入急増を来たしたものと考えておりますが、昨今こういった思惑輸入に対する反省の動きも出ております。かたがた、総需要抑制の浸透によりまして、景況が非常に冷えてきておるといったようなところから輸入のほうはだんだんと落ちつきのある動きを示してきておるわけでございます。ただ、こういった輸入急増に対していかに対処するかということは、本質的と申しますか、本来的な措置といたしましては、今回御審議をお願いいたしております新しい構造改善法のもとにおいて知識集約化を進めていくということが大切かと思いますが、これはある意味においては長期的な対策でございまして、当面的な対策といたしましては、何よりも無秩序な輸入、需給動向というものを顧みない輸入といったことは厳に戒めるべきであるということで、秩序のある輸入ということで関係業界指導をいたしておるわけでございます。かたがた輸入実態を精細に把握いたしますために、インボイス統計を新年度から改定いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 この海外進出の問題と、それから発展途上国からの輸入増との関係というものにつきましては、どのように政府としてはごらんになっておられますか。
  168. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 繊維産業海外投資というのは、大体六億ドルぐらいにのぼっておりまして、全産業の約二割ぐらいになるかと思います。こういった海外投資につきましては、すでに自由化されておるわけでございまして、特に積極的にこれに制限をかけるというわけにはまいりませんが、先ほども申し上げましたように、そういった自由化されておる中におきましてもいろいろと配慮を加えておるというのが実情でございます。そういった海外投資をしたものが日本に逆上陸と申しますか、輸入としてどの程度つながってくるかということにつきましては、これは先生御承知のとおり、原料段階でもあるいは生産加工工程におきましてもいろいろ流通が介在いたすわけでございまして、どれがどの商品であるかということはなかなか的確につかみずらいという状況にあるわけでございまして、明確なことは申し上げかねますが、やはり根本的には開発途上国における繊維産業の急速な伸長というところが一つ原因になっておるのではなかろうかと考えております。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 この原綿の問題あるいは羊毛等の繊維原料価格の動向等についてはいまどのようになっておるかということと、今後この天然繊維原料の安定確保についてどういう措置をお講じになるのか、お伺いしたいのですが、御承知のように、大手商社等がこういうような天然繊維原料を買いまくった、これがさらに国際的な相場を上げ、そしてわが国にたいへんな高価格の輸入ということになったのですが、ここらは全くけしからぬと思うのですね。こういうような規制等についてはどう考えておるかということをあわせてお伺いいたします。
  170. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一昨年から昨年にかけまして、いわゆる天然繊維に対する見直し需要といったような問題もございまして、御指摘の羊毛、綿花等のいわゆる天然繊維原料が世界的にも需給逼迫いたしまして価格の急騰を来たしたということでございます。その結果、繊維産業のみならず、消費者対策、物価対策としても遺憾な事態を引き起こしたわけでございますが、羊毛につきましては、いわゆる平均買いあるいはインデント買いを指導いたしまして、安定買い付けを行なうように関係業界指導いたすと同時に、実はつい先日、ブラジル、アルゼンチンに向けまして海外調査団を派遣いたしまして、開発輸入の可能性を調査いたしております。それから綿花につきましても、昨年の秋以来高値での輸出をいってきておりますので、国際綿花諮問委員会といったような国際会議の場で、需給ないしは価格の安定を確保するために国際協力を呼びかけておるというのが現状でございまして、また綿花につきましても開発輸入の検討を行なうと同時に、秩序ある輸入を実現するように今後ともに関係業界指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 その関係業界指導しても、抜けがけをする、そういうあれは出てくるわけですよ。これがまた一つの競争を招くということになりまして、これはもう国民にたいへんな影響を与えている。こういうことをさせたのは全く政府の怠慢ですよ。昨年のああいう物価狂乱の大きい一つ原因なんです。二度とこういうことをさせちゃいかぬと思う。これはもう許すことができないことですよ、こういう企業のあり方というのは。もうきびしく今後は監視する必要があると思うのですが、これについては、ひとつ大臣からお伺いしたいと思います。
  172. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 こういった天然繊維原料の安定輸入という点につきましては、一つには消費者対策一つにはそれを使用いたします紡績サイドへの対策と、両面にまたがるかと思いますが、消費者につきましても、もちろん厳重に注意すると同時に、紡績サイドで安定的に買い付けるように常々指導しているところでもございますので、今後とも一そうその方向で指導してまいりたいと考えております。
  173. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま局長が答弁申し上げましたが、やはり何といっても大事なことは、国際市況を把握するということ、そして日本のそれに対する影響を敏活に把握して、政府として機宜の措置をとられるように弾力的な行政措置を行なっていくということが非常に重要であると思います。それには、そういう情勢を見て適時調査団を派遣する等、そういうことも必要ではないかと思っています。先般は、ブラジルやアルゼンチンにも調査団を派遣したことがございます。そういうふうに、今後も活発に動かしていきたいと思っております。  なお、先ほど加藤委員から当委員会にいろいろ報告せいという御質問がございましたが、先ほど電力値上げの申請があったと私のところに報告が参りましたので、ちょっと御報告申し上げます。  東京電力及び中部電力の料金改定の申請でございますが、東京電力が平均アップ、電灯は三六・三二%、電力が九〇・七〇%、合計平均して六八・一六%、平均単価は、電灯が現行が十一円七十一銭に対して十五円九十七銭、電力が五円五十三銭に対して十円五十五銭、合計して七円八銭が十一円九十一銭に、電灯と電力の料金の格差が、現行が二・一二倍でございますが、それを一・五二倍にする、そういうような改正案で、五月十五日実施を希望しております。  それから大体これらは、いずれも電灯についてはシビルミニマム的思想で、百キロまでは安目にしておりまして、これは一キロワットアワー十二円二十銭、それが百キロから二百キロワットまでは十五円四十五銭、これが二百キロワット以上をこすと十六円九十五銭、こういうふうにしてあります。  それから中部電力は、電灯が三四・七四%アップ、電力が九八・五〇%アップ、平均して七七・七四%アップであります。平均単価が、電灯が現行十一円九十七銭が十六円十三銭、電力が五円三十三銭が十円五十九銭、平均して六円五十一銭が十一円五十七銭、電灯と電力の格差が現行二・二五倍が改定によって一・五二倍に変わります。  それで、料金につきましても先ほど申し上げました大体同じような趨勢で、百キロワットアワーまでが一キロワットアワー当たり、いま十二円二十五銭、それが二百キロワットアワーまでの間が十五円六十銭、さらにそれをこして上へいくと十七円二十銭になる、こういうふうにして一般平均家庭料金というものをわりあい安く据え置く、こういう形でやっております。  通産省といたしましては、できるだけ物価に対する影響も考慮して低目に押えるように努力をして、厳重に審査をいたすつもりであります。  以上でございます。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 次は、局長大臣もそういう点で安定買い付けということで指導していくということをおっしゃっておられますし、今後のそういう商社等の行動について私たちもきびしく見ていきたいと思っております。それがまた野放しで行なわれるようであれば、買い付けの状況等を提出してもらって、また参考人で呼んできびしくやりたいと思っております。これを申し上げておきます。  それから次の問題は、繊維製品は工賃等が非常に低く押えられておるわけです。ところが、消費者に渡る段階では非常に高くなっております。これは流通段階で非常に不当にもうけておるのではないかと思うのですが、その辺については、政府としてはどのようにごらんになっておられるか、また、これらの問題に対する改善あるいはそういう規制措置等についてお考えであるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  175. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、メーカーの工賃に比べまして末端の繊維価格が相対的に見てかなり高いということも事実でございます。これにつきましては、繊維製品市況性ということからくるリスク負担の問題とか、あるいは製造工程に比べまして流通段階が近代化がおくれておるとかいったような問題もあるかと思いますが、いずれにいたしましても、さように流通経費が高くつくということは国民経済的にも必ずしも好ましいことではないといったことからいたしまして、私たちといたしましても、流通実態の把握と問題点の解明に極力つとめてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  その対策といたしまして、一つは取引改善協議会というものをつくりまして、ここに学識経験者あるいはこういった流通についての権威を集めまして、標準的なルールの策定あるいはそれの実行の方法といったものについて検討していただきたいということで準備を進めております。  それからいま一つは、こういった流通経費が高くつく、あるいは流通マージンの幅が広いということは、やはり当事者間の経済力と申しますか、力の関係においてバランスを失っておるというところに大きな原因があるかと思いますので、実は新年度から、商工中金の中に取引改善資金制度なるものをつくりまして、一応現在百六十億の財源を用意いたしておりますが、この資金をもちまして、たとえば糸買い製品売りに転換する場合の資金だとか、あるいは在庫保有のための資金だとか、あるいは共販機関を設置するための資金だとか、そういった取引の改善に役立つような事業計画に対しまして資金融通をはかって、力関係のバランスを回復することによって、こういったマージン率の低下ということを実現していきたいと考えておるわけでございます。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから今度は法律改正の問題でありますが、一つは、この改正案が成立することによりましてどういう効果を期待されておられるか。特に五年後の繊維産業というものはどういう姿になるか。私は先ほどいろいろ指摘したわけでありますが、現在問題になっております問題は、この法律でみな解決するわけですか。その効果をどのように考えておられますか。
  177. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回御審議いただいております法案のねらいといたしましては、内外環境変化に対処いたしまして、繊維産業の知識集約化を進めてまいりたいということと、小規模零細企業に対して特段の措置を講ずることによって繊維全体が均衡ある発展を遂げるようにということを骨子といたしましていろいろ対策を立てておるわけでございます。この計画期間は一応五年ということにいたしておりますが、ただいま申し上げたような目的を達成いたしますためにも、従来四業種であったものを繊維業種に拡大する、あるいは現行法のもとでは、同一工程内での連携の強化を意図しておったわけでございますが、二つ以上の工程にまたがっての連携ということで、現行法とはまた違ったむずかしさを持っておることも事実でござます。しかし、内外環境変化に対処していくというたてまえからいたしましても、答申の趣旨に沿いまして、この五年間に目的を達成すべく最大限の努力を払いたい、かように考えておるわけでございます。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは繊維の問題だけではないわけでありますが、中小企業近代化施策の柱というものは、国際競争力の強化ということをうたっておられたように思うわけでありますが、今回の法改正につきまして国際競争力の強化というところを削除するということは、これまでの中小企業施策の方向を転換することを意味しておるのかどうか。この辺についてのお考えをお聞きしたい。  それからもう一つは、設備の処理というのもまた削除されておられるわけでありますが、現在の設備について適正なものであるとお考えになっておられるのか。特に織機の登録の特例との関係についてお伺いしたいと思うわけです。さらに、将来において過剰設備の問題が出てくることはないと見てよいのかどうか、この二点につきましてお伺いしたいと思います。
  179. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現行の構造改善法のねらいは、設備の近代化、過剰設備の処理、規模の適正化、こういったことによりましてスケールメリットを追求していく、コストを引き下げていく、さような方策を講ずることによりまして国際競争力をつけていくということであったわけでございますが、その後の内外情勢変化、特に東南アジア諸国を中心にいたしまして繊維産業が急速に成長してきておるわけでございまして、その結果、わが国輸出は伸び悩み、輸入はむしろ急激に増大するといったような現状にあるわけでございまして、従来のように単純にコスト競争で対処するには事態が急変いたしておるということと、いま一つは、国内における消費者の動向というものが、高級化、多様化あるいは個性化してまいっておる、こういう事情の変化がございます。さようなところから、これからわが国繊維産業といたしましては、輸出に過度に依存するということは非常に危険であるということと、あるいは高級化、多様化を通じまして国内需要に対して安定供給を確保していくといったような対策が必要でなかろうかというふうに考えまして、「国際競争力を急速に強化するため」という文言にかえまして、「健全な発展を図るため」と、より広い規定といたしたわけでございます。  次に、過剰設備の処理の問題でございますが、これにつきましては、四十二年から実施しております現行の構造改善事業計画、あるいはいわゆる臨繊特による買い上げによりまして、かなり過剰設備問題は解決しておりまして、この段階で政府が助成するという形における過剰設備の処理というのは必要がなくなったのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。ただ、先生も御指摘のように、過剰設備問題というのは繊維産業にとっては非常に従来も問題を残してきておるわけでございますので、新しい法律のもとにおきましても、通産大臣構造改善計画を承認いたします場合には、必ず設備の近代化に見合いまして老朽設備をスクラップするとか、あるいは増設計画につきましても、需給状況あるいは当該事業者の過去の実績といったような諸般のファクターを比較考量いたしまして、再び過剰設備を招来いたさないように、慎重に判断してまいりたいと考えておるわけでございます。  また一方、中小企業団体法によりまして設備制限をやっている業種は、繊維業種の中にはかなり多うございます。いわゆる一対一の廃棄につきましては、従来どおり団体法に基づいて処理してまいりたいと考えております。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、これまでの構造改善でどういうような効果があったか。また、何が一番ネックであったとお考えになっておられるわけですか。
  181. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現行法に基づく構造改善のねらいは、別の表現をとりますと、労働集約的な繊維産業を資本集約型産業に脱皮させるというところにねらいがあったわけでございます。そういった意味合いにおきまして、設備の近代化あるいは過剰設備の処理という面においては、かなりの成果をあげ得たかと考えておりますが、企業の過多性あるいは企業規模の過小性あるいは繊維の各工程間の分断性、あるいは消費者情報の各製造工程への反映、こういった点につきましては、現在の構造改善事業では必ずしも十分に実効をあげ得なかった、かように考えておるわけでございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、これまでの経験からしまして、新しい構造改善という問題につきましては、どういう点について今後一番留意なさっていかれるわけですか。
  183. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 新しい構造改善事業を現行の構造改善事業と比較いたしまして、改善した点は幾つかございますが、三点ほど申し上げたいと思います。一つは、国民の需要動向の変化に即応いたしまして、繊維工業の知識集約化を推進いたしたい。そのためには、従来のように特定の四業種にとどまらず、繊維産業全般を対象として構造改善を進めてまいりたいというのが第一点でございます。  それから第二点は、小規模企業者に対する対策が十全でなかったという反省のもとに、新しい構造改善のもとでは特に第九条の規定を置きまして、設備の近代化あるいは技術指導について特段の措置を講ずることといたしたいと考えておるわけでございます。     〔左藤委員長代理退席、塩川委員長代理着席〕  第三番目は、取引条件の改善につきまして現在の構造改善でもいろいろと努力いたしたわけでございますが、必ずしも十分な成果をあげ得なかったということで、先ほど申し上げましたような取引改善協議会をつくるとか、あるいは商工中金に取引改善資金制度をつくる等の措置を講じまして取引条件の改善をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 この基本指針を定めるにあたりまして、当然繊維産業の長期ビジョンというものが絶対必要だと思うのです。本法の有効期限であります五年後のビジョンについては、どういうようにお考えでありますか。
  185. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど来何度も申し上げておりますように、環境変化が非常に激しい、その中で五年後の繊維産業の全体像を描くということはなかなかむずかしい問題でございますが、一応五十四年を前提といたしましてマクロ的に想定した数字を申し上げたいと思いますが、内需につきましては五十四年で二百八万トン、四十七年に比べまして伸び率は一四九%、輸出は六十三万トンで伸び率は八八%。ということはマイナス一二%ということになるわけでございます。それから輸入につきましては四十三万トン、三〇七%、国内生産は二百二十八万トン、伸び率一〇七%、これが需給見通しでございます。  それから輸出入の比率は、輸出比率は、四十七年の三四%から五十四年には二八%、輸入比率は九%から一九%に変化するものと見ております。  それから業種別構成につきましては、その変化を数量的に想定することはなかなかむずかしいわけでございますが、どちらかと申し上げますと紡績業あるいは織物業等の比重がやや減少してまいりまして、衣服製造業を中心とするいわゆるアパレル部門の比重が高くなっていくのではなかろうか、一応のマクロ的試算でございますが、現状においてさように推定いたしております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 やはりこういう見通しは非常にむずかしい問題であるわけでありますけれども、こういう問題に真剣に取り組むということが全体を大きく開けさせていくことになると思うのですね。いままでどうも政府は長期ビジョンというものが非常に弱いように思うわけです。ですから、こういう点について非常にむずかしい問題でありますが、真剣に考えていただきたいということをもう一度申し上げておきたいと思います。  それから、基本指針の具体的内容についてお伺いしたいと思うわけですが、特に福利厚生あるいは給与体系の合理化、雇用条件の改善、公害問題、一般消費者の問題についても基本指針に盛り込まれるものかどうか、こういう点についてもお伺いしたいと思います。
  187. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 本法案に基づきまして通産大臣の定める基本指針といたしましては、繊維産業全体を対象といたしますので、その内容は勢い一般的、抽象的、定性的にならざるを得ないわけでありますが、その基本指針の内容といたしましては、ただいま先生が御指摘になりました点、まず福利厚生施設等の関係につきましては、五番目の項目といたしまして「その他繊維工業の構造改善に関する重要事項」という項目の中に福利厚生施設の充実、給与体系の合理化、雇用条件の改善等の労働者に関する事項、産業公害防止、一般消費者の利益の保護等に関する事項、こういった事項をこの項目で表現をいたしたいと考えております。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは非常に重大な問題でありますし、いま御答弁になりましたからいいと思いますが、特にこういう点につきましては、政府としてもよく頭に置いて指導していただきたいと思います。  それから、構造改善事業計画におきましては、「新商品又は新技術の開発、設備の近代化、生産又は経営の規模又は方式の適正化その他の構造改善に関する事業」のすべてについて計画を立てないと承認されないものであるのか、新技術の開発だけとか設備の近代化だけの計画ではだめなものか、この辺についてひとつ確認しておきたいと思います。
  189. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまお話しの記載事項の中で、「新商品又は新技術の開発に関する事項」、この事項はやはり今回の構造改善事業の中の最も中核的な事項でございますので、これはやはりどうしても記載すべき事項というふうに考えておりますが、その他の設備の近代化あるいは規模または方式の適正化につきましては、それぞれの事業者によって異なるかと思いますが、過去四十二年から始めております構造改善事業の中で済んでおるという向きについては、これは記載していただく必要がない、現在かような状態にあるということだけを記載していただければよかろうかと考えております。  それから、取引関係の改善につきましては、これも先ほど来からお話しございますように、必ずしも改善されていないほうが大半であるという認識は私たち持っておりますが、例外的にある繊維業者にとってはもう済んでおるというような場合には、これは改善されておる状態を記載していただくだけで足りるかと思います。  ただいま私が申し上げましたのは、これは一般論でございまして、かような構造改善事業計画自体を作成し、あるいはこれを推進していくということについて、人的あるいは資金的面からなかなか容易でないといった、いわゆる小規模零細企業者につきましては、こういった計画をつくらなくとも、別途助成措置を講じていきたいと考えておるわけでございます。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 異業種間の連携というのは具体的にどういうようなケースのことをいうのかという問題と、それから消費需要の多様化に対処しまして異業種連携という考えが出てきたようであるわけでありますが、たとえば撚糸と織布だけの連携だけで、はたして消費者のニーズというものにこたえられるのかどうか疑問に思うわけです。理想としましては、紡績から縫製あるいは流通までの連携が必要であろうかと思うわけでありますが、現実の問題として紡績から流通まで連携が可能であるかどうかという問題もまたあるわけです。また二業種の連携でも、多様化している消費者のニーズにこたえられると考えておられるのかどうか、こういう問題についてお伺いしたいと思います。
  191. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大きく分類いたしまして、異業種間連携の体系は三つあるかと思います。  一つは、単一事業を行なっている商工組合、事業協同組合等が当該事業と異なる種類の事業を行なっている他の商工組合あるいは事業協同組合等と共同して構造改善事業を行なう場合でございます。たとえば、織布業の事業協同組合と縫製業の事業協同組合が連携するというケースに当たるかと思います。  それから二つ目のタイプは、すでに異なる種類の事業をあわせて行なっている商工組合等が構造改善事業を行なう場合でございまして、これは織布業と、あるいはたて糸のりづけ業、こういったものを一つの事業協同組合の中でやっておる場合には、この例に当たるかと思います。  それから三つ目の型といたしましては、出資して新会社をつくるとか、あるいは合併によりまして知識集約化機能を具備しようという場合でございまして、これはより糸業者であるとか織布業者であるとかあるいは染色業者等がこういう新しい会社をつくるとか、あるいは合併をしていくという場合に該当するわけでございます。大きく分けてこの三つになるかと思います。  それから二つ目の御質問の、理想的には紡績から製縫段階までやるのが適当だが、二工程だけの連携でむしろ効果があがるのかどうかという御意見でございます。まさにおっしゃるとおり、理想論といたしましては、やはり素材と申しますか原糸生産段階から縫製流通まで通じて一貫してグループ化が行なわれるということは最も好ましいことではございますが、現実問題としてはなかかかそうはいかない。ただ、それにいたしましても二つの工程、たとえばより糸と織物屋さんが提携するだけでもお互いに情報交換ができる。あるいは新しいより糸あるいは新しい織物に応じた撚糸のあり方といったような問題もその二つの工程を通じて実施できるわけでございますから、従来に比べるとやはりそれだけの効果は確認できるものと考えておるわけでございます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新しい構造改善事業というものは、異業種だけに非常にこの連携というものはむずかしいと思うわけでありますが、これに対してどういう指導が行なわれるのか。それから本法が成立しましたならすぐにやりたいというような業界の動きが具体的にあるのかどうか、その辺の事情についてお伺いしたいと思っております。
  193. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちも、法案段階からあるいは法案が幸い成立した暁には、十分各関係業界指導してまいりたいと考えております。  それから、具体的に各業界の動きを申し上げますと、たとえば織布業界では、むしろ現在の産地組合を中心にしてやっていきたいという考え方のようでございます。それからまたメリヤス業あるいは縫製業といったようなところは事業協同組合を中心にしてやっていきたい。いま聞くところによりますと、縫製業界では、これは全国ベースでございますが、四、五百のグループをつくっていきたいということでそれぞれ業界ごとに構造改善委員会といったようなものをつくって前向きにいろいろ検討しているというふうに承知いたしております。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新構造改善の中で流通関係の事業者というものはどういう役割りを果たすわけですか。また、流通関係の事業者の範囲をどのようにお考えでありますか。
  195. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 流通業界繊維業界というのは非常にかかわりが深いと申しますか、たとえば原料から始まりまして糸あるいは生産加工工程段階あるいは製品になってからの流通段階と非常にかかわりが多い。それだけにまた、いろいろ流通業者につきまして是正すべき点あるいは従来どおりに促進すべき点等いろいろな面を持っておるかと思います。ただ、この法律の直接の対象といたしておりますのは繊維工業でございますので、この流通業者につきましては、そういった繊維工業の構造改善の目標を達成するために流通業者をまじえたほうが有効であるといったような場合を想定いたしまして、その段階では流通業者をこの構造改善の対象に加えていくというようなかっこうで構造改善計画を考えておるわけでございます。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この新構造改善の実施ということになってきますと、結果として力の強いところに系列化される危険性があるのではないか、こういう点を心配しておるわけでありますが、その点についてはどのようにお考えですか。
  197. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 何度も申し上げるようでございますが、繊維産業を取り巻く内外の環境変化に対処いたすためには、やはり知識集約化を進めるというのが必然の方向ではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、事実一部の大企業におきましては、そういった知識集約化を自力で進めておるというのも出てきておるわけでございます。さようなところから、この法案で考えておりますのは、中堅中小企業を中心といたします知識集約化を進めると同時に、それによりまして、そういった大企業独自のグループに対して拮抗力をつけていくというようなこともねらいとして考えておるわけでございます。したがいまして、この構造改善を進めるにあたりまして、結果としてでも大企業による系列化が進むといったようなことは極力排除すべきである。これは法の運用上でもさように考えておるわけでございまして、たとえば事業計画を通産大臣が認可いたします場合に、大企業の系列あるいは支配力がどうなるかといったようなところも慎重に判断いたしたいと考えておりますし、また、かたがた取引改善のための措置というものもあわせ行なうことによりまして大企業との力関係のアンバランスを是正して、系列化あるいは隷属化といったような事態を未然に防止したい、かように考えておるわけでございます。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、知識集約化が進んでいきますと、その結果として今度は消費者が高いものを買わされるということになる心配はないのですか。この辺についてはどのようにお考えですか。
  199. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 今回の新しい繊維工業の構造改善と申しますのは、一面からいたしますと、多様化、高級化する消費構造に適応していく、そうして消費者ニーズに即応していくということでございますので、良質で安価な製品を供給する体制をつくっていくということも一つのねらいでございますし、そのためにも新商品、新技術の開発といった従来の設備面よりもむしろソフト面に重点を置いた知識集約化ということを進めていこうといたしておるわけでございますので、さようなところから、異工程間の有機的連携を進めることによりまして、その価格にふさわしい価値のある商品を消費者に供給していくということをねらいといたしております。かたがた、かように異工程間の有機的連携を進めることによりまして、その分だけ流通機構が簡素化されるわけでございますので、物価高騰の一因となっております流通コストについてもその範囲内において引き下げが実現するというふうに期待いたしておるわけでございます。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは期待だけでありまして、実際はなかなかそうはいかぬわけですよ。ですから、そういうことで消費者が結局ばかをみないように十分こういう消費者サイドにも立って監督をしてもらいたい。これを特に要望しておきます。  それから中小企業近代化促進法と本法との関係は今後どのように変わるわけですか。
  201. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 近促法との関係でございますが、いわゆる第一近促は、政府がガイドラインとして基本計画をつくりました。このガイドラインに従って個々の業者は近代化対策を進めていくということで、これはいわゆる業種の構造を抜本的に改める構造改善事業ということにば当たらないかと思います。それから第二近促は、業種ごとに商工組合またはその連合会が一本で構造改善を行ないまして適正規模の実現を目標といたしておる。それから第三近促はこの第二近促に加えまして知識集約化の推進ということをいっておるわけでございますが、これは産地ごと構造改善を行なう、こういうふうに現行近促はなっておるわけでございますが、今回御審議いただいております繊維工業の構造改善は、業種の壁と申しますか、繊維工業全般を対象といたしまして、業種の壁を取りはずして異なる事業分野との提携によりまして知識集約化事業を進めていこうということでございまして、ただいま申し上げました第一、第二、第三近促のあり方とはまた違った形で進めていこう、こういうことでございます。  ただ、この近促法に指定されております繊維関係業種につきましては、今後次のように整理して考えていきたいと思っております。一つは、基本計画が四十八年度を目標としておる業種につきましては延長せずにそのまま打ち切る。この例といたしましては、特定織布、メリヤス、特定染色、毛織物染色、糸染色、ひも、漁網、こういった業種がございます。第二のグループは、四十八年度以降を目標としておるものでございましても近促法による構造改善を打ち切りまして、新しい繊維構造改善のほうにシフトするものといたしまして、撚糸、輸出製品、細幅織物、織物用糸染色、こういった業種がございます。それからいま一つは、四十八年度以降を目標としているもので、従来どおり近促法に基づいて構造改善を行なっていくということで、裏返しで申し上げますと、新しい繊維法律の対象から除くものといたしましてロープと毛布がございます。  以上のような形で近促法との関係を調整してまいりたいと考えております。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 第九条の小規模繊維業者の範囲というものにつきましてはどのようにお考えになっておられるか。業種によってまた範囲を変えられるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  203. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 第九条にいいますところの小規模事業者に対する特別の配慮といたしましては、項目が二つございまして、一つは小規模企業設備近代化助成の対象として設備近代化をはかるということでございます。これにつきましてはおおむね従業員五人以下の企業を対象として考えております。ただし、業種あるいはその特殊性を考慮いたしまして必ずしもこれにこだわらない、ある場合には年間の売り上げ高、ある場合には保有する設備台数等によってこの小規模事業者の範囲を考えていくということも可能かと思っております。  それから小規模企業に対する技術指導につきましては、おおむね従業員二十人以下ということで考えておりまして、大体繊維工業の企業の九〇%程度までを対象として助成できるかと考えております。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 小規模繊維業者への配慮というのは具体的に何をお考えになっておるわけですか。何回も局長は特段にということをおっしゃっておるわけですが、どういうように特段に配慮するのですか。
  205. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず設備の近代化助成でございますが、これは今度の構造改善計画におきましては、いわゆる第四条の構造改善事業計画を通産大臣に提出いたしまして、その承認を受けた計画に限りまして中小企業振興事業団の資金融通をはかることにいたしておるわけでございます。それに対しまして小規模事業者構造改善事業計画を策定し、あるいはこれを実行するということはなかなかむずかしい現実にある人が多いんじゃなかろうか、かようなところから、おおむね従業員五人以下の企業につきましては、構造改善事業計画をつくらなくとも中小企業振興事業団の融資対象にする、こういうことでございまして、予定いたしております事業規模は七十五億円でございます。それから金利は年二分六厘というふうに考えております。  それから二つ目の技術指導でございますが、これは一般会計予算で八千五百万程度計上いたしておりまして、二分の一補助でございますから、事業規模にいたしますと一億七千万くらいになるかと思います。これは特定組合と申しますか、事業協同組合あるいは事業協同小組合等が中心になりまして、従業員おおむね二十人以下の小規模事業者の技術指導をやる、それに対して構造改善事業協会から二分の一の助成金を出す、こういうことをさしておるわけでございます。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつ、特段の配慮ということでございますので、でき得る限り今後そういう中身を一そう厚くしてもらいたい、このよう思にいます。  大臣はじめ皆さんもだいぶ長時間にわたっておりますので、あともうわずかで終わりたいと思います。  それから事業転換につきましての指導、資金の確保の内容について簡潔にお答えいただきたいと思います。
  207. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 事業転換に必要といたします資金につきましては、中小企業振興事業団に事業転換合同事業、設備共同廃棄事業といったような形で資金ワクが設定されております。それから中小企業金融公庫、国民金融公庫それぞれにも事業転換のための融通ワクが設定されておるわけでございます。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは最後にあと二点だけお伺いいたしますが、一つは情報センターを設けられるようでございますが、この内容につきまして簡潔にお伺いしたい、これが一つであります。  それからもう一つは、信用基金と振興基金の運用状況と、どのような成果をあげておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  209. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず情報センターでございますが、先生御承知のように、繊維の各業界団体はいろいろと情報の蓄積を持っておるわけでございますが、その情報の流通の円滑性を欠いておるとか、あるいは重複しておるとか脱落しておるとかいうことがございますので、中央情報センターで、こういった散在している情報を収集、整理いたしまして、それを各業界に提供する、いってみれば相互補完の形で情報活動をやりたい、かように考えておるわけでございます。  それから四十九年度の事業規模としては約五千九百万円程度計上いたしておりますが、いかなる事業をやるかということにつきましては、情報化推進委員会で検討することになっております。とりあえず四十九年度といたしましては、衣料品等の最終製品の流通調査あるいは衣料品生産実態あるいは海外、特に主要な後進国と申しますか開発途上国の動向等、そういった情報収集をやりたい、かように考えておるわけでございます。  それから振興基金の問題でございますが、これは臨繊特対策の一環として四十七年度から設けられておるわけでございます。現在までの実績を申し上げますと、新商品の開発が件数にいたしまして六件、約七百万でございます。それから新技術が九件で二千四百万、調査活動が七十七件で一億六千三百万であります。  以上でございます。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう終わりますが、信用基金、この協会の中にあるでしょう。これを言っているのに答えが出ていませんよ。
  211. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 信用基金によります債務保証、現在まで九百九十三件で六百三十億円になっております。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 私はなぜこれを言っているかというと、やはりこういう制度があるわけですから、運用の問題につきましてひとつもっと効果の出るように——時間があればもっとこまかいことを言いますけれども、きょうはもうこれでやめますけれども、そういう点についてはよく適正に運用していただきたい、これを申し上げておきます。  それで、きょうは時間がありませんし、非常に残念でありますが、一応これで終えまして、また次の機会にあと続行したいと思っております。それではこれで終わります。
  213. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 次回は、明後五日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時散会