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1974-05-22 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十二日(水曜日)     午前十一時四十四分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    加藤 紘一君       瓦   力君    小林 正巳君       田川 誠一君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    羽生田 進君       橋本龍太郎君    粟山 ひで君       大原  亨君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    土井たか子君       村山 富市君    森井 忠良君       田中美智子君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    柳瀬 孝吉君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君  委員外出席者         法務大臣官房審         議官      鈴木 義男君         厚生大臣官房企         画室長     中野 徹雄君         厚生省公衆衛生         局精神衛生課長 山本 二郎君         厚生省児童家庭         局母子衛生課長 本田  正君         人口問題研究所         長       上田 正夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     竹村 幸雄君   森井 忠良君     米田 東吾君   山本 政弘君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   竹村 幸雄君     島本 虎三君   土井たか子君     山本 政弘君   米田 東吾君     森井 忠良君     ————————————— 本日の会議に付した案件  優生保護法の一部を改正する法律案内閣提出、  第七十一回国会閣法第一二二号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号)  結核予防法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  優生保護法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案結核予防法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  3. 村山富市

    村山(富)委員 日雇健康保険法改正案の主要な問題点については、先般の委員会でわが党の八木委員からそれぞれ指摘されておりますが、その問題点についてなお若干掘り下げをしていろいろ質問を申し上げたいと思います。  まず、この点は大臣にお伺いしますが、今度の改正案は、給付とそれから保険料政府管掌健康保険に準じて改正をする、こういうことが前提になっていると思うのです。ところが、健康保険加入者日雇い健保加入者とでは本質がうんと違うわけです。言うならば、日雇い健保のほうは非常に体質が弱い。こういう意味で、そういう前提に立ってものを考えていくことは無理ではないかというふうに思うのですが、その点は大臣、どういうふうにお考えですか。
  4. 北川力夫

    北川(力)政府委員 ただいまお話しのとおり、今回の改正は、昨年改正をいたしました健康保険制度並み給付を一挙に大幅に上げるということでございます。したがいまして、やはり保険でございますので、収支それぞれいろいろな考慮を加えるということになりますと、健康保険とのバランスということを考えますと、やはり給付引き上げによる健康保険とのバランス、と同時に、やはり負担の面におきましても健康保険とのバランスということを考えざるを得ないと思うのであります。ただ、おっしゃったとおり、極端に歳入が少ない、保険料負担能力が低いということで、この面は、従来から国庫負担も他の法律には例を見ない三五%という非常に高率なものを行なっておりまするし、そういった点を彼此勘案をいたしますと、体質という面に着目をいたしましても、総合的には一〇%の国庫負担を入れました政管健保というものと大体バランスのとれたものではなかろうかと私ども考えております。  しかし、このような改正をいたしましても、なお財政が非常に安定をするということはございませんで、現に、御承知のとおり、今年度におきましても、このような改正をかりに御承認を得られましても、結果的には百五億円の赤字が出る、こういうことでございますので、体質の弱いことを前提にいたしました上で、収支のアンバランスというようなこともなお残ることを前提にいたしまして、精一ぱいバランスをとった、こういうことが実情でございます。
  5. 村山富市

    村山(富)委員 これは私は、一貫をして健康保険日雇い保険とを区別をした、分けたということは、やはりそういう体質の弱さを前提にして、そして昭和三十六年に国庫補助政管健保よりも若干多くしているということから考えて、今度の改正案に見る限り、日雇い健保に関して、もっと補助金をふやすなり何なりしてもよかったのではないかということがいわれると思いますから、その点はひとつ指摘をしておいてあと質問に移りたいと思うのです。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕  昨年、日雇い労働者実態調査をやっていますね。その実態調査はどういう範囲でどういう対象調査されたのか、その点。
  6. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 昭和四十七年の四月から五月にかけまして、日雇い労働者健康保険の被保険者実態調査実施したわけでございますが、この調査方法は、昭和四十七年の四月三十日現在におきまして、有効な被保険者手帳を所有する被保険者の方の原票により、五十分の一の抽出で調査をしたわけでございます。  おもな結果の内容につきましては、まず、年齢階級別にいたしまして、平均年齢が四十七・六歳というようなことで、これは健保の被保険者より相当年齢が高年齢になっているということになっております。  それから業態別の構成でございますが、これは一番多いのが建設業で約七二%、二番目がサービス業で一〇・六%、それから三番目が運輸通信業で七・四%、あと製造業その他これより数が少ないわけでございます。  それから賃金でございますが、平均賃金が二千七百七十四円というようなことになっておりまして、これは業種によっていろいろと違っておるわけでございます。  それから年間の就労の事業所が一カ所におるか、あるいは転々としておるかというような状況につきましては、大体一事業所だけにずっと働いておるというのが約七八%、二事業所が一二%、三事業所三・五%、四事業所一・五%というようなことで、だんだんと少なくなっておるわけでございます。  そんなようなことが調べられております。
  7. 村山富市

    村山(富)委員 この日雇い健保適用対象範囲ですけれども、主としていままで問題になっておったのは五人未満事業所をどうするかという問題が一つと、それから当然日雇い健保対象になるであろうと思われる雇用関係があるにもかかわらず、国民健保に入っているというようなものもあると思うし、特に出かせぎ労働者なんかについては、出かせぎをする以前には国民健康保険に入っていて、たまたま出かせぎに行っていた職場が強制適用事業所だというので日雇い健保に入っている、二重に入っておるというのもあるのじゃないかと思う。そういう問題についての実態調査はやっていないわけですか。
  8. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 二重加入がやられておるかどうかということについてはちょっと調査がされておらないわけでございますが、現在日雇い労働者関係方々がどういうような保険に入っているかということにつきましては、大体日雇い労働者方々が総理府の就業構造基本調査によりますと、約百七十万人おるわけでございますが、そのうち五人未満事業所とか、あるいは五人以上でも日雇い労働者健康保険適用されないような事業所に従事する方々が三十万人、これは保険としては国民健康保険に入っているというわけでございます。  それから日雇い労働者でございますが、全国土木建築国民健康保険組合というものが設立されておりまして、それに加入している日雇労働者方々が約二十万人、それから学生アルバイトとかあるいは主婦のパートタイマーとかそういうふうな方々で、日雇い健保で要求しているような所定の保険料納付要件、二カ月で二十八日とか、そういうふうな納付要件を満たしていないために適用除外になっている方々、これも申し出によって国民健康保険に入ることが承認される方々でございますが、それが約七十万人で、全体で約百二十万人というふうなことになっておるわけでございます。
  9. 村山富市

    村山(富)委員 国民健康保険日雇い健保とがある。そうすると国民健康保険加入しておる者は雇用関係にないということが前提ですね。い健保の場合には雇用関係があるということが前提ですね。そうしますと、雇用関係にある日雇い労働者と思われる者が百七十万人あると言われておりましたね。そこでその百七十万人のうちにいま日雇い健保に入っている人は何人ぐらいありますか。
  10. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 約五十万人でございます。
  11. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると百二十万人の人が国民健康保険に入るが妥当か、あるいは日雇い健保に入るが妥当かということになるわけです。そうしますと、主として雇用関係にあり、労働契約がある、しかもその日雇い健康保険法に該当すると思われるようなもので、実際には国保に入っておるという者もあるのではないかと思うのですね。  それともう一つは、五人未満事業所に対して適用を拡大していくという問題がいままでも問題になっているわけです。これは前回の国会でも問題になりましたけれども労働省の場合には適用をどんどん拡大しているわけです。厚生省の場合には依然として五人未満は未適用になっているわけですね。七十一国会大臣はこういう答弁をしている。前段にいろいろ問答がありましたけれども、第一に、雇用関係にある労働者健康保険ないしは日雇い健康保険適用することが筋だということが前段ですね。そうして五人未満事業所についても、こういうふうに言っております。「御指摘のとおり、あるいは熱意が足りなかったかもしれませんが、四十八年度において調査費をもって実態調査をやるという段階まで来ておるわけでございますから、」こういう答弁があるわけですね。予算も組んで調査することになっているのだけれども、それはどういうふうになっていますか。
  12. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 先生おっしゃられるように、五人未満事業所というのは、考え方といたしましては健康保険あるいは日雇い健康保険というものの対象にしていくべきであるということはごもっともでございまして、私どももその関係実態調査のための予算も組み、調査をいま実施しておりまして、現在結果を分析中でございまして、近いうちにその結果が出る予定でございます。
  13. 村山富市

    村山(富)委員 それは大体いつごろ出るか、見通しですね。調査はしたわけですね。調査をしていま分析をして整理をしている、整理がいつごろ済むのか、あるいは整理の上で、把握できれば当然適用を拡大するという考えがあるのか。
  14. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 いまの調査の結果は速報的なものが大体六月の終わりごろまでには出る予定でおります。それからその後の問題につきましては、これは五人未満事業所被用者保険への適用ということはなかなか制度上あるいは財政上、いろいろ解決をはかるべき問題があるわけでございまして、非常にむずかしい困難を伴うことがあるわけでございますが、しかしながらこのまま放置すべき問題じゃないという認識を私どもも持っておりまして、現在そういう実態調査だけでなく、法制的あるいは事務処理のいろいろな問題につきまして調査研究実施し進めておるわけでございまして、その結果を受けまして前向きに適用をはかるように検討していきたい、こういうふうに考えております。
  15. 村山富市

    村山(富)委員 これは前段に申し上げましたように、雇用関係にある日雇い労働者対象日雇い健保というものができておるわけですから、したがって、五人未満であろうとも当然適用さるべきである、こういう考え方に立って、調査の結果が明確になって把握できれば、積極的に拡大していく、そうして適用していく、こういう考え方をはっきり大臣から聞きたいと思います。
  16. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題はこの前の国会でも御答弁申し上げたと思いますが、五人未満事業所労働者につきましては、できるだけ早い機会に健保日雇い健保の中に適用を拡大していくということが私は筋であると思います。そういう考えはいまでも私は捨ててはいないわけでございます。  そこで、昨年御承知のように、実態調査をいたしておるわけでございますから、その実態調査の結果を十分分析をし、調査を進めてまいりまして、私としてはできるだけ早くこの問題に決着をつけるようにしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございまして、今後とも、多少時間はかかるかもしれませんが、そういう方向に努力をいたしてまいる考えでございます。
  17. 村山富市

    村山(富)委員 ひとつ積極的に推進方を要望しておきます。  それから次に保険料負担の問題についてですね。今度は最高限を、上限を九千五百円にして八等級に刻んでいるわけですね。そこで八等級に刻まれた各等級分布はどういうふうになりますか。
  18. 北川力夫

    北川(力)政府委員 四十九年度におきまして推計をいたしますと、第一級が六%、第二級が二四%、第三級が二八%、第四級が二五%、第五級が一〇%、第六級が四%、第七級が二%、第八級が一%というふうに見込まれるわけでございます。ただ、実際問題は改正案でもお願いをしておりますように、一挙にここまでのことは実施はいたしませんで、四十九年の十月からは三級までが動くわけでございますから、あとの四級、五級は五十年四月から、六級から八級までは五十一年の四月からでございますので、実際上の改正法実施上はこういうパーセンテージにはなりませんで、上のほうは累積をすると思います。それから最近のいろいろ平均賃金上昇のぐあいを考えてみましても、こういうような一応の推計をいたしておりますけれども、そういったものを加味をいたしますと、いま申し上げました分布もまたかなり変わったものになるのではなかろうか、このような予測もいたしておるわけでございます。
  19. 村山富市

    村山(富)委員 いずれにいたしましても、いま説明のありました分布一つ前提にして、八等級刻みをつくったわけですね。  そうしますと、先般の委員会でもちょっと八木委員から問題が出ておりましたけれども政管健保の場合の三十五等級刻み最上限をきめるものさしといいますか根拠、これは大体その分布が二十万円のところに二%から三%までのたまりがある、これが大体いままでのきめてきたものさしだ、こういう説明がありますね。その説明を、もしこの日雇い健保最上限をきめるときの分布と比較してみますと、これは一方は八等級刻みですね、一方は三十五等級刻みですから、もっと上の層は分布が違ってくるわけです。だから政管健保に準じて日雇い健保給付保険料改正をした、こういうことから判断をしていきますと、ちょっと無理があるんじゃないかというふうに思いますが、その点はどうですか。
  20. 北川力夫

    北川(力)政府委員 確かに等級刻みから申しまして政管健保の場合には三十五でございますし、それからこちらのほうは最終的には八等級でございますので、単純に計算をいたしますと八等級のところには一二、三%ぐらいというようなことの御指摘でなかろうかと思うのでございます。ただ、いまも申し上げましたように、現実に法律改正が動き出します今年度の場合を考えますと、三等級までしか実際上は保険料引き上げは動かないわけでございますから、そういう時点考えますと一級が六%、二級が二四%、三級が七〇%と、最上限は七〇%ということになるわけでございます。それが五十年の四月になりますと五等級まで動きまして、五等級まで動きました段階でそれじゃ最高の五等級のところが大体どのくらいの推定になるかということを、先ほども申し上げましたような推計でごく大ざっぱに見込んでみますと、これがいまのところでは大体一五、六%ぐらいまでいくんじゃなかろうかと思うのでございますが、しかし、これは最近における賃金上昇というふうなものは一応ごく最近のものはカウントしておりませんので、もっとこれは上がるかもしらぬという予測もあるわけでございます。  そういうことで、五十一年度までなかなか推計がむずかしいのでございますが、第八級のところを計算してみますと、これもかなり賃金上昇に見合って、最上級のところが大きくなっていくんじゃなかろうかというのが私どもの現在のごく大ざっぱな見通しでございます。  したがって、先生の御指摘のように、健康保険の場合に三十五等級前提にいたしまして、最上級のところに二ないし三%ということと完全にバランスがとれたような状態になるかどうか、この点、私もいまの段階では何とも申し上げかねますけれども、少なくとも、この保険料負担がフルに動きます五十一年の四月という段階予測してみますと、かなりそれに近い線に近づくという可能性は多分にあるのではなかろうかと思いますので、この問題は法律完全実施ということのかね合いで、そんなにバランスのこわれたものにはならないというふうな感じがいたしております。  ただ一言つけ加えて申し上げておきますが、八等級という区分は、やはり本来もうちょっと分けたほうが、負担の公平という面から見ますといいと思いますけれども、やはり印紙貼布という特殊なテクニックを使っておりますので、そういう面で事務的に細分すればするほどたいへんな作業になりまして問題がございますので、そこのところは八等級がせいぜいじゃなかろうかということで、全体のバランスと、二年半後のバランスということで御指摘がございましたけれども、そんなにおかしなものではない、まあまあのものじゃなかろうか、こういう予測と感じておるわけでございます。
  21. 村山富市

    村山(富)委員 刻みを多くすれば事務量が多くなってたいへんだということはよくわかりますけれども、ですから、刻みを多くすることをぼくらは主張するわけじゃないのです。最上限政管健保にならって九千五百円にきめたことに無理があるのじゃないかという意味で聞いているのですからね。  いま説明があったような考え方からしても、昨年の政管健保を二十万円に上限をきめた、そのときの説明が大体二%から三%、こういうお話ですね。今度の日雇い健保改正案で見ますと、さっき最上限は一%という話がありましたね。そうすると実施はなるほど五十一年の四月ですね、五十一年の四月になりますと、政管健保がもっと多くなりますよ上限は、賃金は上がっていきますから。そういう意味からしますと、やはり相当無理があるということが言えるのじゃないか。
  22. 北川力夫

    北川(力)政府委員 そういうような御主張もあろうかと思います。ただ私どもは、給付を一挙に健保並みにするわけでございますから、そういう意味合いでは、保険料のほうも一挙に健保並みにするということのほうがいいと思うのでございますけれども、やはり負担のほうの急増ということは日雇い労働者方々負担増があまりにも激し過ぎるということで、なだらかに寝かしておくということでございますので、そういう面から考えまして施行をずらしておるわけでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、やはり法律が実際に動く段階での各等級別分布状況、特にいま御指摘のような最上等級分布状況というものを予測をして、そして健康保険とのバランス考えたほうが私どもはいいと思うのでございまして、健保の場合には、昨年の十月から直ちに給付負担も両方とも動いたわけでございますから、その時点のことを申し上げたわけでございます。その場合には負担のほうが二年以上ずれ込みますから、ずれ込んだ段階での負担の均衡ということを考えておかしくないじゃないか。ただその時点における健保の場合を考えると、さらに多くのものは最上級に滞留するのではなかろうかというお話がございましたけれども、それはそれとして、全体のバランス考えますと、全体を八等級に分けるということで五十一年の場合の最上等級バランス考えますと、そういう面から見てもかなりのものは八等級のところにくるというような私ども見通しなのであります。
  23. 村山富市

    村山(富)委員 そういう考え方もあるというのではなくて、私のほうはあなたのほうから説明があったことをすなおに受け入れて、この説明があったことを理論づけの根拠にしていまお尋ねしているわけですからね。政管健保に準じて給付保険料日雇い健保改正をやったということが前提でしょう。そして政管健保最上限をきめたものさしは、最上限の二十万円は二%から三%、これがいままでの改正根拠です、ものさしです、こう言うから、その論拠に立って無理があるのではないか、こう言って聞いているわけですよ。だからそういう考え方ではなくて、あなたのほうの考え方前提にして質問しているわけです。しかもいまの答弁の中に、給付一緒にするならば、本来ならば保険料一緒にしたい。だけれどもできるだけゆるやかに。こういうお話がありましたけれども前提としてそういう考え方があるのなら、これは私は違うと思うのです。ですから一番最初に、日雇い健保の場合は体質が弱いんだ、だから発足以来国庫補助も多い、それだけめんどう見ているんだ、こういう違いがあることを前提にしているわけですから、その前提に立っていまのような質問をしているわけです。局長が言うように、本来ならば、給付一緒だから、保険料一緒に取りたいんだ、こういうお考え方に立っているのならこれは問題ですよ。どうですか。
  24. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いまおっしゃったように、日雇い健保の持っております体質の弱さ、特に被保険者である方々負担能力の度合いを勘案をいたしまして、保険料負担はなだらかにするということでございますので、その点はあるいは私の申し上げ方が多少正確じゃなかったかもしれませんけれども先生のおっしゃるような気持ちで保険料負担の経過的な軽減をはかっておるわけでございます。
  25. 村山富市

    村山(富)委員 まず八等級上限を九千五百円の刻みにしたことは、健康保険改正案をしたときのものさしから判断して無理があるのではないかということが一点、指摘をしておきます。  それからもう一つは、保険料政管健保の場合は千分の七十二、日雇い健保の場合は千分の六十四ですね。ところが先般もお話がありましたように、政管健保の場合にはボーナスや手当やそうした標準報酬以外のものは全部除かれているわけでしょう。そうすると、日雇い健保の場合には総収入ですね。そういうことを前提にして、七十二と六十四という差を設けてあると思うのです。しかし、その差だけではやはり少し無理があるのではないかというふうに思うのです。その点はどういうふうに判断していますか。
  26. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いま日雇い健保の場合に六十四というお話がございましたけれども、これもいまおっしゃいましたように、日雇い健保適用のある日雇い労働者方々につきましては、ボーナスというものが非常に浮動的なものでございます。ただ御承知のように、いろいろ失対関係方々でございますとかあるいは競輪等の方々でございますとか、相当程度の方々、大体七〇%程度というふうに見ているわけでございますけれども、そういう方々につきましては、やはり年間を通じて同じ事業所に勤務をしているというふうな方々もございまして、そういうところから賞与が出ている、一時金が支給されている場合がかなりあるというのが実情でございます。そういう意味合いで、私ども日雇い労働者健康保険対象になる方々のすべてについて、総体的にこれをつかまえまして、大体そのボーナスの半分程度を賃金に加味をして、その上でこの六十四程度のものになる、そういう計算をしたわけでございまして、おっしゃったように、総報酬ということではございますけれども、実情を考えますと、この程度を加味をいたしますことによって、健康保険とのバランスがとれてくるのではなかろうか、こういうような考え方でございます。
  27. 村山富市

    村山(富)委員 こまかく計算はしていませんけれども、いま大体年間を通じて一般労働者の場合には五カ月から六カ月、多い人は九カ月くらい手当がある人がありますね。そして労働者の場合には、そういう手当も含んで生活をささえているわけです。そういう性格のものですね。そうすると日雇いの場合には、それは三カ月くらいもらっておる者もあるかもしれない。しかし中には一銭も手当をもらっていない者もあるわけです。そういうものをならしていく場合に、やはりこれくらいの保険料の差では無理があるのではないか、もっと軽減をしてもいいのではないか。そうでないと、生活に見合う保険料という前提に立てば均衡が保たれぬじゃないかというふうに思うのですね。  しかも、さっき申し上げましたように、八等級に刻んだ最上限の九千五百円というのも相当無理がある。両々かね合わせて見た場合に、そういう意味からしますと、均衡が保たれておらぬのではないかと思うのだけれども、その点、どうですか。
  28. 北川力

    北川(力)政府委員 確かに均衡論というのは非常に大切な問題だと思います。そういう意味合いで私どもは、いまのお話の中でも、改正案でお願いをしておりますとおり、低い賃金方々、したがって低い等級に格づけをされておられます方々につきましては、労使負担の中で被保険者負担額の軽減措置を講じております。このことによって、かなり私どもはそういう面の配慮をしたつもりでございます。また、先ほども申し上げましたけれども、上位等級との関連で申し上げますと、給付の面で健保と同様な給付が直ちにスタートする反面、上位等級等級以上はそれぞれ一年、二年というふうに施行を延期をいたすことによりまして、負担の増を緩和をして、いま言われたような日雇い労働者方々の生活の低さ、むずかしさというふうなものに見合った措置を講じたつもりでございますので、両々相まって、その辺のところは、かなりな考慮を加えたつもりであることを御理解願いたいと思います。
  29. 村山富市

    村山(富)委員 そういう意味で、たとえば保険料負担する負担能力から考えて、ちょっとやはり無理があるのではないか、均衡が保たれぬのではないかということが一つと、もう一つは、八等級刻み上限をつくった、九千五百円にしたということについても、相当無理が出てくるのではないかという、両面から私、言えると思うのです。  そこで、申し上げたいことは、やはり先般も八木委員から話がありましたように、六等級以上はこの際除くとか、あるいはもっと実施時期を延期するとかなんとかいう考慮を払ってしかるべきではないかということを強く要望して申し上げておきます。  時間がございませんので、次の質問に移りますが、この答申の中にも、たとえば、「港湾労働等、特に特殊な就業条件にある者については、何らかの措置を検討すべきである。」こういう意見が述べられておりますが、その特殊な就業条件なるものについて、どういう検討をされておるか。
  30. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いまお話しのとおり、関係審議会、特に制度審議会からも、そのような趣旨の御答申をいただいております。これは前回も申し上げましたが、御答申をいただきましたあと、私ども、どういうような措置を講じたらいいか、すでにこれは関係審議会でも議論された問題でございますし、また関係方々からもいろいろお話も承っておった問題でございますので、いろいろその処理について実は苦慮いたした面があるのが実情であります。ただ、この制度の本来の仕組みから申しまして、前回もこれは大臣からも申し上げましたが、やはり受給要件というものを設定をして、しかもその受給要件というものが、日雇い労働者の場合には少なくとも月半ば以上は就労しているという実態、そういうものを一つのスタンダードにしてきめておりまして、その上に立って給付をするという特殊な仕組みのことを考えますと、特別な関係にある方々だけについて、またその方々がコンスタントではなくて、そのときどきのいろいろな事情の変動によって、あるいは摩擦的に、あるいはそのときどきと申しますか、そういう形でこの受給要件の欠缺を来たすというふうな状態を制度上手当てをするということは、なかなかこれはむずかしい問題ではなかろうかというのが、私どものいろいろ検討いたしました結論でございます。したがいまして、そういう意味でこの問題はなかなかむずかしい問題でございますので、将来、この制度全体について、どのような見直しをするか、どうするかということの場合は別といたしまして、現在のような段階で、とにかく給付健康保険並みに直ちに上げる、そういう段階で、そういう特別な方々をつけ加えて拾ってくるということは、現在の仕組みを維持する限り、あるいは逆選択的なものにもなりかねませんし、あるいはまた、従来から非常に問題になっておりました、また一応いま始末がつきました擬制適用問題というものを再発するようなおそれもございますし、そういった点を彼此勘案をいたしまして、制度の現在の仕組みにおける健全な維持、運営ということを前提にして、お願いいたしました原案でもって改正をお願いを申し上げたい、こういうようなことでございます。
  31. 村山富市

    村山(富)委員 制度上どうこうするという扱いについては、いまお話もあったようにむずかしい点があると思うのです。ただ、港湾労働者なんかの場合には、自分の意思で就労しないのじゃないのですよ。これは労働協約であるいは法律でその職場に出頭しなければならなくなっているわけです。そして向こう側の条件で就労できないということですからね。そのためにいまは調整制度もとられている。こういう扱いなものですから、こういう特殊な関係のあるものについては、運用上なりにもつと検討を加える必要があるのではないかと思うのです。これは審議会がそういう答申の中に意見を付したのも、そういう特殊な条件があるということを前提にして、そしてかけ捨てにならないように、給付が受けられるように、何らかの考慮を払え、こういう意味のものだと思うのです。  そこで、これはやはり私は労働省あたりの意見も十分聞きながら、両省で十分検討を加えた上で、何らかの運用措置を講ずるとかいうことができるのではないかと思いますから、その点はひとつそういう方向で今後検討を加えてもらう、そして何らかの措置をしていただくというふうにお願いしたいと思うのですがね。
  32. 北川力夫

    北川(力)政府委員 だだいまお話に出ました登録日雇い港湾労働者の件でございますけれども、おっしゃるとおり、これは自己の意思ではなくて、そういう就労のチャンスをなくするというふうな方々でございます。そういった場合に雇用調整手当というものが支給されまするので、雇用調整手当から保険料を徴収したらどうか、そのことによって日雇い健保適用したらどうか、こういう御意見があったことも事実でございます。  ただ、この問題をいろいろ検討してみますと、それでは受給要件を満たしている方々についての雇用調整手当からも保険料を納付させることになるのかというような問題でございますとか、あるいはまた雇用調整手当は、御承知のとおり、法律の定めるところによって、社会保障給付として公租公課が法律上禁止をされておりますから、そういうものから保険料を徴収することがどうなのかというような種々むずかしい問題がございまして、いま両省間の調整をやるべきであるという御意見がございましたが、なかなかそういう問題については時間をかけてやりませんと調整がつきかねますので、そういう意味合いで、港湾関係の景気変動ということは別にいたしまして、実態関係は一応承知をいたしておりますが、今回の改正からはとにかくこの問題を入れることはできなかったというのが実情でございます。どういうふうにするかは今後の検討課題で、ただこういうものを運用上やるということはなかなかむずかしい問題でございますから、そういうむずかしい問題をどう処理するかにはなお時間をかしてもらいたい、こういうことでございます。
  33. 村山富市

    村山(富)委員 事情は十分わかっていると思いますから、運用上やるかあるいは制度上何らかの措置をするかともかくとして、いずれにしても、やはりその中の検討を加えて、十分こういう人たちの給付が受けられるような何らかの措置を講ずる、そういう方向で検討を加えて努力するということぐらいはきちっとしてもらいたいと私は思うのです。うしろのほうで盛んに首を振ったり何かしている者もあるけれども、そんなことじゃなくて、私はきちっとしてもらわなければいかぬ。これはさっきから申し上げておりますが、答申にもちゃんと意見が出ているわけですから、そういう意見も十分くみ上げて——そういう特殊な条件にあるわけですからね。本来から言いますと調整手当なんかを支給することは間違いだ、これは事業主の責任で就労できないわけだから、事業主が払うべきものだということが私は本質だと思うのです。外国の場合なんか例を見ますとそうなっていますからね。したがって、そういうものであるならば、その中から保険料を取ることはちっともおかしくないわけです。ただ、調整手当なんというもので出てくるものだから、その中から保険を取るのはどうのこうの、こういう問題になるわけだ。性格としてはそういうものであるということも言えるわけですからね。そういう点をひとつ十分踏まえた上で、何らかの措置が講じられるように強く要望しておきます。  そこで、いろいろ申し上げたけれども、今度の改正案給付の改善も健保並みになり、前進しているということについては、評価することについてやぶさかでありませんけれども、しかし問題は、こういうふうに保険制度が完備されつつある、よくなりつつある。しかし幾ら健保があるいは日雇い健保がよくなってみても、保険給付が全然受けられぬというような実態があるとするならばこれはやはり問題ではないか。そこでお尋ねをしたいのだけれども、いま無医地区といわれるのは全国に大体どのくらいありますか。
  34. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 昨年の五月調査いたしまして取りまとめた数字が、従来の主たる中心地より半径四キロということで、定義は同じでございまして、二千四十四という数字、二千四百台が二千四十四に減少しております。この内容につきましては増減いろいろございまして、交通事情の改善によるところの減と、それから医師が診療所にいなくなるということによるような増、年々増減はございますけれども、総体的には二千四十四ということ、沖繩の四十四を入れますと二千八十八ということになります。
  35. 村山富市

    村山(富)委員 いまいみじくも説明がありましたように、交通事情がよくなった、そして医療が受けやすくなったということもあるかもしれません。しかし、増のほうは診療所に医者がいなくなって廃院になったということでふえた。ですから無医地区が昨年よりも、昨年が二千四百ですか、今度は沖繩を入れれば二千八十八というふうに減ってきておるのは、私は二つの理由があると思うのです。いまお話がありました交通事情、それからもう一つは、過疎がどんどん急激に進んでいって、半径四キロの範囲内に五十人というのがかりに四十八人にいまなった、こうすれば無医地区でなくなるわけです。そういう事情で無医地区の数が減っているということがいえるのじゃないか、どうですか。
  36. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のおっしゃる五十人というのを私たちのほうで確かに基準に使っておるものですから、それ以下であれば、たてまえからいったら対象にならなくなるという御指摘でございますけれども、これは結論を申しますと数字を明らかにいたしておりません。五十名以下のところを無医地区でなくしたということは数字はつかんでおりませんが、実態としては、その市町村ごとに計画を出さした中で、たとえ五十人以下になりましても具体的な無医地区対策の対象にはしておるということでございまして、いわゆる地区数の定義を厳密にいえば、先生おっしゃるように五十人以上としてあれば四十八人のところは落としてあるじゃないか、これは確信をもって何カ所が落としてあるという数字をいま申し上げるだけのこまかい資料を分析してないということでございます。
  37. 村山富市

    村山(富)委員 ですから、医療機関が漸次整備されていって無医地区が解消をしていくというのではなくて、逆に医療機関は後退するけれども、しかしこの基準から落ちる過疎が進んでいくから、無医地区は減っていく、言うなればこういう現象になっているのですよ。だから過疎が進めば進むほど無医地区はなくなっていくのです。そういうきめ方に無理があるということが一つ。  もう一つは、私は、無医地区に医療機関を整備をしていく、その整備を促進をする上に立って障害になっているものがあると思うのです。  これはいまさら申し上げるまでもありませんけれども、医療法の五条の二には、「国及び地方公共団体は、病院又は診療所が不足している地域について、計画的に病院又は診療所を整備するように努めなければならない。」こういう規定があります。この規定に基づいて補助もなされることになっているわけです。その補助の基準が一万人当たり二十五床でしょうが。いつか補助金二千万円ですか、計上してあるけれどもあまり利用されないというのは、やはり二十五床以下が壁になっていると思うのです。これを五十床にするか、ベッド規制の五十七床にするかぐらいの改正をする必要があるのではないか。そうでないとこれが壁になって補助金をもらえないというので障害になっているということが一つですね。  それからもう一つは、病院を新築したりあるいは改築したり増築したりする場合に、補助金の単価がやはり低過ぎるのではないか。国立病院の場合には、ブロックの場合と鉄筋コンクリートの場合と違うし、地域によって違うかもしれませんけれども、その単価は大体どうなっておりますか。
  38. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 補助金の単価につきましては、実は四十八年度、社会情勢に対応いたしまして改定をいたしておるわけでございます。病棟につきましては、当初の決定が平米五万三千八百円というのを、二次、三次と改定いたしまして、第三次改定では六万五千四百円。これは一つの例でございますが、四十九年度の単価についても当然社会情勢に見合った単価改定をする必要があろうと思います。この補助金の単価の低い点につきましては、直轄の国立病院等を実施する場合にもかなりぎりぎりの査定を受けた単価でございまして、ただいま、業者と入札等のことに当たりましてもなかなか入札が成立しないというような実態も否定できませんけれども、一応、努力をいたしまして逐次その実態に見合うような工事量の調整その他を加えまして、国立の場合は実施しつつございますけれども、一般的に医療施設の補助単価につきましては、社会情勢に応じた配慮はいたしておりますが、金額そのものが実態と比較したらどうかということになりますと、私は必ずしも十分なものでないというふうに思っております。  二十五床問題につきましては、先般の御質問のときにも検討をお約束したわけでございますが、ただいま関係方面とこの問題を、五十七にするかあるいは理論づけができれば途中の数値を用意するか、しかし私としては例の病床規制の基準である五十七という最低限を適用する方向で努力いたしたいと検討中でございます。
  39. 村山富市

    村山(富)委員 よく保険あって医療なしということばが言われますけれども保険料負担をしておって医療は受けられない、給付は受けられない、これではあまりにも不公平ですから、したがってこういう五条の二もあると思うのです。国民皆保険ですから、その規定に立てば国は積極的に医療機関を整備する責任がある。その責任に当たって推進をしていく。その場合に二十五床以下というのが一つの壁になる。  もう一つは、かりに市町村が、市立病院があって僻地に診療所をこしらえるという場合に、補助金が非常に低い、だから超過負担が出る、しかも経営は赤字になるというんじゃやれませんよ。  私が調べた範囲では国立病院の場合は——公的医療機関施設整備費補助金にかかわる、建築費地区別一平米当たり単価表というのがありますね。この単価表を見ますと、たとえばA地区でブロックの場合に五万四千百円、それから鉄筋コンクリートの場合には六万二千円、こうなっております。ところが国の場合には私が調べた範囲では十一万八千円です。ですから、国の場合にはこれだけ高い単価を見て、地方自治体が公的病院をつくる場合に非常に単価が低い。そして超過負担が出る。こんなかっこうでは、やろうといったってやれませんよ。ですから、正当な単価を見てやるというぐらいの腰まえで積極的に推進をしていくということでなければ、医療機関の整備はできないのではないかというように思いますから、さっき二十五床以下の問題については答弁がありましたから、そういう問題も含めて早急に解決をはかって、もっと医療機関が整備されて、どこに住んでおったって医療を受けられる、保険料納めなさいと言えるようにしてもらいたいということを私は強く要望しておきます。  それからもう一つは、これは特に大臣にちょっとお尋ねしたいと思うのですけれども、ことしの二月に診療報酬の改定がありました。大臣がどこかのあいさつかで言われたのかどうか知りませんけれども、最近の新聞報道等を見ましても、年内に再び診療報酬の改定をしたいというふうなことが報道されております。一体いつごろ諮問をされるつもりなのか、どれくらいの範囲上げる、改定をするつもりなのか、おわかりになれば御答弁願いたいと思うのです。
  40. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 診療報酬の改定については、年度内に経済状況の変化に応じてやらなければならぬであろう、こう考えておったわけでございますが、最近の春闘において賃金水準も相当上がってきたという事実もございます。さらにまた、国立病院等の看護婦さんについては、この四月一日からさらに給与の改善をはかるべきであるという二次勧告も出たということでございます。さらにまた、この春の闘争によって、それの影響を受けまして国家公務員に対する給与の勧告も八月——普通は八月でございますが、これが少し繰り上がるのではないかといったふうな話も出ておるわけでございます。そういうふうな最近における経済状況の推移、物価の動向、そういったふうな経済状況の推移さらにまた賃金給与の情勢の変化、そういうことを考えてみれば、やはり診療報酬の改定もあるいは少し早まったのではないだろうか、こういう印象を持っておるということを私は率直に申し上げたわけでございまして、いつどういう形で診療報酬の再改定を行なうということを全然きめておりません。七月か八月に一応の人事院勧告も出ますから、そこで本年度内におけるいろいろな状況というものがここで出そろうわけでございますので、そういうふうな資料が出そろったところで、この問題をどういうふうに解決したらいいだろうかということが、具体的にそのころから動き始めてくるのではないか、こういうふうなことを考えておるわけでございまして、いつどういうふうに、幾ら上げるなんというようなことをきめてもおりませんし、考えてもいないということを率直に私、申し上げておきます。
  41. 村山富市

    村山(富)委員 そうしますと、このうち参議院の社労委員会で——社労委員会か何か知りませんけれども答弁をされたのは間違いですか。
  42. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は参議院の社労において申し上げたとおりのことをまたきょう申し上げているわけで、一つも違ったことを申し上げておりません。
  43. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃ確認しますけれども、人事院勧告等が出た時点で、諸般の情勢を判断をして考えなければならぬとすれば考えられるのであって、いまのところ何ら考えていないということは確認していいですか。
  44. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 年度内において診療報酬の再改定の必要は十分考えておるわけでございます。そこで、いつごろから動き始めるかと言えば、春季闘争も済み、本年度内における物価の動向も相当はっきりしてきましょうし、さらに人事院の勧告というものも七月、八月には出てまいりましょう。そこで初めて本年度内そういう再改定を考えるとすれば、必要な材料はそこで出そろうではないか、その辺からこういう問題は動き始めてくるのではないだろうか、こういうことを申し上げているのです。これは私は衆議院と参議院と違ったことばは言うておりません。新聞はそれを聞いていろいろお書きになるでしょうが、その中には推測もありましょうし、私の言うたことは速記録をごらんいただけばわかります。あなたにお答えしたとおりのことを申し上げております。
  45. 村山富市

    村山(富)委員 それはこれから先の話ですから、一応考え方だけ聞いておきます。  それからもう一つは、これは日雇い健保ももちろん関係がありますけれども、特に関係が強いのは私は国保だと思うのです。老人医療が無料化されて相当財政的な負担増になっていることは、もう否定できない事実です。この老人医療の無料化に伴って特に国保財政等は赤字が累増する、あるいは一般会計からの繰り入れが多くなる、負担が多くなる。こういうことから、同じ県内で各町村で保険料が違っていく、差がだんだん大きくなっていくのです。財政が非常に豊かなところは一般会計で補てんができますから、したがって保険料は据え置いてもいい。ところが貧しい市町村はもう保険料上げるよりありませんから、保険料を上げていく。しかも貧しいだけに、医療機関も整備されずに、医療給付はあまりうまく受けられない、こういう状態が生まれてくるのではないかと思うのです。こういう問題については、やはり受ける給付は同じですから——受けやすいか受けにくいかという違いはありますよ。しかし受けられるとすれば同じですから、同じ県内に住んでおって、町村の違いによって保険料が違う、掛け金が違うということについてはやはり何らかの検討をする必要があるのではないか。そのために、国庫補助の中に財政調整交付金というものがつくられておりますね。しかしそれはわずかに五%だという。この五%くらいの調整ではその差は解消されないのではないかと思うのですが、その点は今後検討する考えはありませんか。
  46. 北川力夫

    北川(力)政府委員 国民健康保険保険者相互、つまり各市町村の間で負担について相当な格差があることは、これは老人医療の実施以前からそういう状況があることは事実でございます。特に昨年の一月から老人医療が全国一斉に施行されまして、しかもその対象になる老人人口が目に見えて急増してくる、そういう方々が国保のグループに非常に多いということもまた事実でございましょう。そういう意味合いで申しますと、また保険の論理から申しましても、できるだけ負担の公平をはかるということは先生の御指摘のとおりでございます。そういう意味合いにおきまして、私どもは各地の事情というものをいろいろ把握をしているわけでございますけれども、これもその地方によって、市町村によって医療費が非常に高いところがございます。それから医療費が高くても、たとえば過疎地域で保険料負担は非常にわずかしかできないというふうなものもございます。ですから老人医療という非常に大きな負担面のプレッシャーがかかっておる現状でございますから、いまの御指摘のとおり、できるだけ調整的な機能を発揮できる財源というものをふやしまして、同時に、そのふやした財源をバランスがとれるようにという意味で公平に配分をするという、要するに増額と配分という二つのことを今後は十分に配慮してまいらなければならぬと思っております。  現に、そういう意味合いにおきましては、五%という御指摘がございましたけれども、四十九年度予算におきましては、これ以外に全体として三百五十億円の定額の上のせ分がございますから——これは大体料率に換算をして二・四、五%になるわけでございますけれども、こういうものもございますから、五%の配分プラスこの定額の三百五十億円というものを、当面四十九年度の予算執行といたしましては、できるだけいま仰せられましたとおり、その趣旨に合うように均衡のとれた配分をしたいと思っております。  なおかつ、また今後の老人医療による給付の増高とか、あるいはまは高額医療という問題もございますので、そういった新しくつけ加わってまいります医療費の増高要因等の推移も十分見きわめまして、調整交付金等の取り扱い、今後のこの問題についての対処のしかた、こういう問題も十分にひとつ検討してまいりたいというのが実情でございます。
  47. 村山富市

    村山(富)委員 最後に大臣にちょっと見解を聞いておきたいのですが、私は老人医療無料化なんというものは保険制度で扱うべきものでなくて、国のために一生懸命に働いて年とった老人の健康については、国が責任を持ちましょうという意味で、老人医療無料化というものが生まれておると思うのです。そういう意味からしますと、それを保険財政におっかぶせて扱っていくということにも無理がある。そうかといって、それからはずして全部国費で見る、こうなったのではまた財政もたいへんでしょうからね。しかし、その前提になる基本的な考え方からすれば、やはり何らかの検討が加えられていいのではないか。そうでないと、これはもう特に国保なんかの町村の保険財政負担というのはたいへん大きくなっていくということが一つあると思うのです。ですから、それに対する大臣考え方。  それからもう一つ。最近特に各地方自治体で乳幼児の医療無料化がどんどん進められておりますね。これもやはり各市町村にまかせきりでなくて、国が何らかの形でやる必要があるのではないかと思うけれども、乳幼児の医療無料化についての大臣考え方をお尋ねしたいと思うのです。
  48. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 乳幼児のほうからお答え申し上げますが、乳幼児の医療費を無料にするということについては、国の制度としてそれを行なうということは私はいま全然考えておりません。と申します理由はいろいろありますが、こういう際ですからあまり長いことは申しません。考えていないということだけは明らかに申し上げておきます。  それから老人医療の無料化の問題なんですが、これは私はあなたとは多少意見が違う。やはりそれは国民全体の連帯の上において、日本は社会保障は——いい悪いは別ですよ。保険制度であるならば保険で処理するのが適当だと私は思います。しかし現在の実態を見ますと、国民健康保険のほうに老人医療が非常にしわ寄せされているという事実は考えてみなければならぬ。そこでこれはひとつ将来の問題として先生にもお考えいただきたいのですが、老人保険というのは、ほんとういうと、私は独立してつくるべきじゃないかと思っているのです。政管健保のほうには老人は少ないのです。会社、工場に働いている方々がやめていなかに帰る、みんな国保に入る、財政の苦しい国保にばかりしわ寄せされている、こういうことが問題なのじゃないでしょうか。でございますから、やはり全国民が老人の医療はみんなで見ましょうということならば、保険はそれぞれ七つも八つにも分立しておりますが、お互いいつの日か老人になるのですから、老人の医療だけは全国民の連帯の上に立ってこれをめんどう見ましょう、こういう老人保険というものを、全国民の拠出による保険によって——ある意味からいうと、保険が乱立しておりますと、これは保険のエゴですよ。大会社のほうは健康保険組合、労働者のほうは政管健保、日雇いは日雇い、国保は国保、こういうのではおかしいので、やはり老人保険というものを国民の連帯のもとにつくり上げていく、私はこれが将来の方向だと思うのです。これはそういうても、むずかしい問題がありますから、いますぐというわけにはなかなかいきますまいが、方向としては老人保険の創設ということをいつの日かやるべきである、こういうふうに私は考えておることを御参考に申し上げまして答弁にかえます。
  49. 村山富市

    村山(富)委員 いままで日雇い健保改正案の中における問題点、あるいは医療の機関の整備等について申し上げましたが、言うならば国民皆保険で、だれがどこにおったって、負担も同じ、受けられる医療も同じということを公平化するのが原則ですから、そういう問題点についてはひとつ誠意をもって今後も検討していただくということを強く要望して私の質問を終わります。(拍手)
  50. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 島本虎三君。
  51. 島本虎三

    島本委員 ちょっと大臣に、質問に入る前にぜひ伺っておきたいことがあります。  ただいま村山委員質問に対して、診療報酬の改定の時期に対しての考え方を申し述べられました。診療報酬は公共料金のうちに含まれるものでしょうか、含まれないものでしょうか。大臣のお考えをちょっと聞かしていただきたいと思います。
  52. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 公共料金には含まれないというのがいままでの解釈でございます。
  53. 島本虎三

    島本委員 そうすると、電力料金の値上げに対しては、きのう認可が通産大臣から出たようであります。   〔斎藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕  やはりこれはあくまでも公共料金である。しかし診療報酬の面を考えると、これによって——大臣が認可しなければ現行どおり、認可するとすれば、これが大衆に直接影響を与えないものであるならば、それはいいと思うのです。ところがやはり重大な影響あるものだとするならば、公共料金に準ずるものじゃございませんか。あるいはまたそれと同等のものではないでしょうか。こういうような考えになるのです。いかがですか。
  54. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 それは解釈によりましては公共料金という人もおりましょう。しかし、私どもの言うているのは公共料金というものではない。まあそれに準ずるというのでしょうか、まあ準ずるというわけにもいきますまいが、公共料金ではない、こういう解釈をとっております。
  55. 島本虎三

    島本委員 先ほど村山委員質問にもはっきり言っていましたが、やはり医療の診療報酬についての考え方は、再改定は年度内に考えたい、こういうようなことでいままでずっと答弁してまいったようであります。そしてそれも、大体物価の動向もそろそろわかる時期、それと同時に、七月か八月ころが適当ではないかと思う、こういうようなことであります。大臣としては、この診療報酬、これに対しては参院選挙後にこれは手をつけるのだ、こういうように私どもは理解してよろしゅうございますか。
  56. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、参議院選後に手をつけるとかそういうことを言っているのじゃないのですよ。診療報酬改定をやるとすれば、それに必要なもろもろの材料が、人事院勧告が出たときにそろってくるのではないでしょうか、そのいろんな資料が出そろったところで、社会経済の諸般の情勢をながめながら、そこからぼつぼつと動いていくのではないでしょうか、こう申し上げているので、私はいつからとか、八月からであるとか、そんなことを言うておりません。
  57. 島本虎三

    島本委員 もろもろのそれは資料がととのってきてからこれを考えてやるのだ、その時期は七月か八月なんだ、こういうようなことですね。ですからそうなると、七月の七日は参議院の選挙日ですね。そうしたら、それが済んでからこの改定を行なうのだ、このことは明瞭じゃございませんか。したがって私は、それを具体的にこの際ですからはっきりしておいたほうがいいんじゃないか。ことに大臣は、公共料金に当たらない、準ずるという考え方もおかしい、こういうようにはっきり言っているのですから、それであるならば、資料を整えてきちっとした体系で臨むべきだ。七月か八月かあるいは九月かというと、やはり参議院議員の選挙が終わってからだ、こういうように思うのはこれまた当然じゃなかろうかと思いますが、私、そういうように聞いたから、いまそれを確認しているわけなんです。
  58. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 七、八月というのは、資料が出そろう月を申し上げておるのであって、改定に着手するのが七、八月だということは言うておりません、それは。要するに七、八月になりますと、参議院は済んでいます、間違いなく。それは間違いなく済んでおります。それは選挙後すぐに着手する、こう言うから、あなたのほうはせっかちにおっしゃるので、私のほうは、七、八月には資料は出そろうでございましょう、その出そろったところに、そろそろ諸般の情勢をながめましょう、こう申し上げているのです。
  59. 島本虎三

    島本委員 何かしら口頭弁舌によってさわやかに逃げ切ったようであります。しかし私どもとしては、この問題はやはりきちっとしておいたほうがいい。その一つは、やはり大臣としては、これは公共料金ではない、こういうように言った点が一つ、それともう一つは、資料が整うのは七、八月ころであって、参議院議員の選挙後にこれを行なうという意味ではない、この二つは私は重要だと思いますので、この点は二つはっきり確認しておきたい、こう思うのであります。  それで本来の質問に入ります。  これは去年の九月に改正と、今回の改正案、この改正案を見て、日雇い健康保険の問題ですけれども政管健保に準じた給付と費用の負担制度に何か合わせてきたことからして、当然日雇い労働者の労働と生活の実態にそぐわない面が出てきているのじゃないか、こういうように思われるのです。この日雇い健康保険について、一体どのような性格なんでしょうか、これは。  それから、政府としては今後抜本的な考え方を示すとすると、どのような方向と位置づけがこの日雇い健康保険に与えられるものでしょうか。この点ひとつ高邁な大臣の意見を聞いておきたいのであります。
  60. 北川力夫

    北川(力)政府委員 日雇い労働者健康保険は、やはり昨年の当院当委員会において改正の際にいただきました附帯決議もございますように、適用対象方々が非常に低賃金で就労不同、また高齢者も多いというふうなことで、そういう点を十分に配慮をすべきだということがございます。  私どもはそういう意味合いで、医療保障、日雇い労働者方々の医療保障を社会保険という形でやっていくのがこの制度でございますけれども、そういった歳入面の弱さあるいは歳出面の費用の増高というようなことをいろいろ考えまして、できるだけ負担の面におきましても、国庫負担も含めて十分な配慮をして今回の改正に臨んだつもりでございます。  でございますから、日雇い健保の基本的な性格は、やはり一口で申しますと、きわめて社会保険としては弱い体質にある、こういうことを勘案をしながら、しかも給付の面においては、この制度だけがへこんでいるのでありますから、すみやかに健康保険並みに引き上げるという両面のことを考えて今回の改正をお願いをしているわけでございまして、そういう意味合いから、この性格については、いま申し上げたように昨年の附帯決議を踏まえて十分に私どもも理解をしているつもりでございます。
  61. 島本虎三

    島本委員 やはりこれは、いま言ったそのことばの中に、日雇いすなわち不安定労働者である、それから出かせぎ農村からの労働者を含めてまさに特殊なものである、就労の意思、これがあってもそういうような現在のような状態にがえんじなければならないというものであるということからして、この日雇いという存在の意義を、独自の体系を労働者実態と合わせなければならない、この一つの傾向があるわけであります。政管一本にするというようなつもりではなかろうと思いますが、それが何か前提にあるのじゃございませんか。恵まれない者という、こういうような一つの観点を、一般的な者というふうな観点に置きかえるということは、これはやはり現在の状態に最もそぐわない、こういうふうに思うのであります。将来は、恵まれない者でもこれは政管一本にそろえるつもりでいるのかどうか。また、現在の不案定労働者であるその特殊性からして、やはりこのまま、現行のままで改善をしていこうとする考えなのか、この点をひとつつまびらかにしておいてもらいたいと思います。
  62. 北川力夫

    北川(力)政府委員 政管に一元化するのじゃないかというお尋ねでございますが、現在のところそのようなことは全く考えておりません。  それから不安定労働、不安定就労形態というものでございますので、そういう点は十分に加味をして制度を現在も仕組んでおりますし、将来もそういう点はいろいろ勘案してまいらなければならぬ点があるならば、やはりやっていかなければならぬと思っております。  それからいろいろこの制度につきましては、まさに御指摘のとおり、不安定就労者の方々対象にしておりますので、そういう面から考えますと、制度の仕組みそのものにもやはり特殊性がございますと同時に、相当社会保険としては無理な制度である面もないことはないわけでございます。でございますから、根本的にこういうような方々について将来どういうようなスタンスで、長い目で見た改善をなすべきかというようなことは、これは社会保障制度審議会等でも議論をされましたし、御指摘を受けておりますが、今後、先ほどからも御議論ございましたように、実態の把握ということが先決でございますし、また事務的な処理のしかたということも非常に大きな問題でございますから、いろいろな面から改善の方向については十分に検討を続けてまいりたいと考えております。
  63. 島本虎三

    島本委員 その改善の方向に対して努力していく、このことは確かにそのとおりであります。  それで、去年の五月三十一日に七十一国会でいろいろ質問をし、答弁があり、検討事項として、適用事業所であっても印紙を張らないケースがあるし、どのように指導したかというこのケースに対して、十分検討していきたい、総合的に今年度中に調べてできるだけそういうことのないように厳重に督励したい、安定所とも緊密な連絡をとり、労働、厚生両省一体となって恩恵を受けない人のないようにする、こういうような答弁があるわけです。それは四十八年五月三十一日です。その社労委員会の二十二号、一一ページにあります。具体的に、いまのように努力するというようなこと、これは前からの懸案です。具体的にどのような努力をしてまいりましたか。
  64. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 日雇い健康保険適用している事業所でありまして、たとえば土建国保のような場合に、そういう事業所でたまたま日雇い労働者が印紙を張ってもらいたいという場合に、それが思うようにいかないというような事例が前にあったというふうに聞いておりますので、この点につきましては、そういう事業所につきまして、そういう申し出があれば印紙を購入しそれを貼付できるようにするように指導してきております。
  65. 島本虎三

    島本委員 それであるならば、通達は出しましたか。出した様子がないのであります。両省で何を相談されましたか。どのような具体的な措置をそれによってとりましたか。この二つの問題。
  66. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 全国土建健康保険組合の事業計画の提出の際にも、そういう土建国保の適用事業所につきまして、印紙の購入とかそういうことをしてないような事態のないように強力な指導をし、また国保組合のほうもそういうことで努力をいたしますというふうになっております。
  67. 島本虎三

    島本委員 だから、なっているということは先ほど答弁でいいのです。わかっているのです。それはもうやらなければならないことなんです。具体的に何をどうしたか、それに対しての通達を出したということを私は聞いていないのです。また聞いても、そんなのはありません、こういうようにことばが返ってまいりました。したがって、両省で何を相談して、どんな具体的な措置をとったんだ、それを知らせろと言うのです。こういうふうにしました、それは通達じゃない。どなたにそう言ったのか。何かその団体の人にでも陳情に来たおりに言ってやった、この程度じゃなかろうか。それではまことにこの答弁はおざなりだ。少なくとも責任を持ってこの場所で答弁をし、それが議事録として残り——ちゃんとページ数まで言ったのですから、それに対する措置、こういうようなものに対して、やはり行政機関として的確にやっておかないとだめなんだ、それが誠意というものなんだということです。それがないで、ただ人に会ったからそういうようにしてもらいたいというような要請だけした、これが誠意だ、こういうようなことに私は考えたくないのです。少なくとも、厚生省はそういうような国会を無視するような態度をとらないと思うからなんです。ですから、通達を出したのか出さないのか、両省で相談したというのはどんな相談をしたのか、こういうことなんです。しないのでしょう。しないならしないでいいのです。
  68. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 通達という形では出しておりませんけれども、国保組合の責任者に来ていただきまして、そういう点について十分お話を申し上げまして、そういう適用漏れのようなことのないように、所管の事業所について取り扱いをするような指導をいたしました。またそういうふうに努力をするということでございますので、具体的にもしそういうようなことに反するような事例が出てまいりましたら、またもちろん十分に注意いたしますが、いまのところ、そういうあれは出ておらないようであります。
  69. 島本虎三

    島本委員 出ておらないというのはどういうことですか。点検した結果そういうようなことがわかったのですか。それとも、出ておらないということは、そういうような事件が行政管理庁やそのほかから指摘されないからわからない、わからないからないのだ、こういうようなことなんですか。
  70. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 出ておらないというのは、そういうようなことについての苦情なり申し立てというようなものが社会保険事務所等に出てきておらない、こういうことでございます。
  71. 島本虎三

    島本委員 じゃ、やはり点検はしてないのですね。報告待ちなんですね。まして両省協議というものは、これは口では言ってもさっぱりしてないということですね。遺憾です。  五人未満適用問題について、これは再三指摘をされているところでありますけれども、それに対しては、今回の改正成立の上で次のステップを考えたい、これが四十八年五月三十一日の答弁であります。これに対して、次のステップとはどういうようなことですか。
  72. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 四十八年度におきまして、五人未満事業所につきましての実態調査をするための予算を組みまして、その調査をいま実施しておるわけでございます。その結果もいろいろと参考にいたしまして、今後の検討を早急に進めていきたい、こういうことでございます。
  73. 島本虎三

    島本委員 これも五人未満適用問題については、これは四十八年五月三十一日の七十一国会の議事録の二十二号の一〇ページにきちっと載っていますよ。今回の改正成立の上で次のステップを考えたい。私はそれを期待していたのです。次のステップというのは今回のこの改正案じゃないですか。今回のが次のステップに該当するわけでしょう。私はそう思っていたのですよ。したがって、これはもうどういうふうにしたのですか。問題はここなんです。局長、これは当時の局長答弁ですよ。北川局長答弁ですよ。北川局長はどなたですか。
  74. 北川力夫

    北川(力)政府委員 五人未満問題は、いま先生指摘のとおり、また先ほどからも大臣も申し上げましたが、早く手をつけて処理をつける問題だと思っております。昨年の改正の際に次のステップと申し上げましたのは、もちろん健保改正を仕上げていただいた段階、その後において考えるということで申し上げたつもりでございます。  ただ、こういうことは、もう専門の先生にいまさら申し上げるまでもないことでございますけれども、何ぶんにも事業所が百二十万近いものでございますし、現在の適用事業所の二倍に当たっておる。被保険者数も非常に零細、就労浮動というふうな非常にむずかしい条件にございますので、そういう意味合いで、先ほど医療保険部長から申し上げましたように、昨年度において非常に詳細な調査をいたしまして、調査の結果を詳細に分析をして、実際上どういう形で適用に入るかということを検討中の段階でございますので、私は、そういう意味合いでは、先生のおっしゃっております次のステップとして、いまこの問題に取り組む前段階としての詳細な詰めをしておる、こういうことが申し上げられるかと思うのでございます。遺憾ながら、いまの段階で具体的な改正案、具体的なこの問題についての措置を法制化してお願いをするということはできませんでしたけれども、実情把握等において万全を期する、こういう段階が現在のステップであろうかと考えております。
  75. 島本虎三

    島本委員 これ、なるほどそういうふうにしているともっともらしく聞こえるのですよ。右足を出して一歩踏み出した。次のステップは左足でしょう。右足ばかりで何歩もこうやって歩けますか。右足を出したら左足を出すのが次のステップですよ。左足を出したらまた次に右足を出すのが次のステップですよ。右足ばかりでとんとんとんとん飛んで歩いて六方を踏んで、これは歌舞伎のやることでしょう。どうもあなたの答弁合わないですよ。次のステップで考える——左足の段階考えればいいのですよ。それが今岡の提案ですよ。これは、あと永久に考えるかもしれないという意味ですか。
  76. 北川力夫

    北川(力)政府委員 右とか左とかというむずかしいお話でございますけれども、そういう意味でなくて、私がいま申し上げましたのは、非常にむずかしい問題の処理でございますので、法制化するまでには万全の調査並びに準備体制をすべきであるという意味で、次のステップを踏み出す段階である、そういう意味でステップ・バイ・ステップでやりたいと思っております。
  77. 島本虎三

    島本委員 そういうことばを使うからわからなくなる。左足の次は右足だ。それがステップですよ。どうもあなた、歩いたことないのですか。次の国会に出すと言ったら今回の国会ですよ。次のステップで考えると言ったら今回の国会ですよ。調査するまでの間出さない、それが次のステップだ、こういうような考え方はあまりにも飛躍し過ぎる。齋藤厚生大臣の公共料金に対する考え方も飛躍だと思ったら、さすがにあなたのステップの考え方も飛躍だ。  特に今回、賃金日額を等級別にして出してありますが、特級を含めて九段階になっている。これはどういう考えでこういうふうにしたのですか。
  78. 北川力夫

    北川(力)政府委員 今回の改正におきましては、日雇い健保給付内容を政管健保並みの水準に上げるということと同時に、やはりそれに見合った負担をお願いする、こういう基盤に立っております。そういう意味合いで、現行の健保標準報酬等級がございますが、それの最上等級が二十万円でありますので、これを日雇い労働者平均就労日数の二十一日で除して得た日額、すなわち九千五百円を最上等級といたしまして、現行の賃金日額の三千五百円以上までの四段階に加えまして、千五百円刻みで、五千円、六千五百円、八千円及び九千五百円というような段階で、四段階を設けたものでございます。段階の分け方につきましては、被保険者方々負担をより公平にするという意味合いから、さらにこまかく分けたほうがいいではないかというような御意見もあろうと思いますけれども、何ぶんにもこの制度保険料納付が印紙貼付というふうな特別な仕組みでございますから、そういった面での事務的な制約もございますので、そういう意味合いで八段階として健保とのバランスをとったわけでございます。
  79. 島本虎三

    島本委員 なるほどこれは弱い体質である不安定就労者を対象にしているのですから、給付の面ではその点を十分カバーできるように考えたい、この点では間違いないのです。その点はもう私は何ら別に異議をはさまない。給付の面でそれを考えるという点はいいのです。称賛してもいいのです。ところがこういうふうにして分けた中に——五千円から六千五百円、六千五百円から八千円、八千円から九千五百円、九千五百円以上、こうなっていますが、九千五百円以上の分布率は何%になりますか。
  80. 北川力夫

    北川(力)政府委員 四十九年度における分布率を推計いたしますと、一・〇八%というふうに見込まれております。これは最近二年間の平均賃金日額の伸び率をもとにして計算をいたしましたので、実際問題は多少変わってくるかもしれませんが、推計では以上のような数字でございます。
  81. 島本虎三

    島本委員 そうしたら、八千円から九千四百九十九円までの分布率はどれほどになりますか。
  82. 北川力夫

    北川(力)政府委員 約一・六%でございます。
  83. 島本虎三

    島本委員 六千五百円から七千九百九十九円までの分布率はどれほどになりますか。
  84. 北川力夫

    北川(力)政府委員 約四%と見込んでおります。
  85. 島本虎三

    島本委員 問題はやはり五級までの間、五千円から六千四百九十九円までが本筋じゃありませんか。このパーセンテージはどれほどになりますか。
  86. 北川力夫

    北川(力)政府委員 四十九年度のいままでの推計によりますと、累積で大体九三、四ぐらいだと思います。
  87. 島本虎三

    島本委員 五千円から六千四百九十九円までの分の分布率です。
  88. 北川力夫

    北川(力)政府委員 約一〇・五%というふうに見込んでおります。
  89. 島本虎三

    島本委員 これは一〇・四三%です。それから今度は、三千五百円から四千九百九十九円までが二五・〇九%でしょう。そして二千五百円から三千四百九十九円までの間が二七・五六%でしょう。問題はこの辺に集中しているのでしょう。八級の九千五百円以上なんか一・〇八%。もう百人のうち一人あるなし。こういうようなものに対して、これをきちっと体系づけるというやり方、これは将来上がるであろうと思って、その分からの取り分を先行させようとする一つ考え方じゃありませんか。ほんの一%ぐらいの人のために八級をつくっておく、ほんの一・五九%のために八千円から九千四百九十九円までの分をつくってやる、ほんの三・九九%、百人のうち三人か四人、この程度の人のために六級をつくってやる。これあたりほとんどもうないにひとしいようなものをはっきり体系づける。そして、その見返りといおうか、今度特一級というものを置いて——特一というのは〇・〇一%ですね。いまごろ四百七十九円以下なんというようなほとんど該当しないようなものをおまけにつけておいて、上と下の見合いをさせておる、こういうようなやり方です。問題はやはり五階級あたりにきちっとするのが実質的な考え方で、これが合うのじゃありませんか。すなわち一級から五級までにしてやるとぴたっとするじゃありませんか。ほとんどないようなものまで入れて八級までつくる、おまけに特一級というのを少ないほうにつくってやって、それで高いほうと安いほう両方入れましたという、ていさいだけは整えたようなやり方は、これは決して妥当でもないし、適当でもないんじゃないか。これはもう八木委員なんかも、他の人も全部言うとおりに、やはり一級から五級までが実質的なやり方です。賃金の上がるのを待って、上がったならば苛斂誅求にこれを取り立てるというこのやり方、先行しているんじゃありませんか。先行していいのは公害行政だけですよ。将来上がるのを見通してちゃんとつくっておく、こういうようなのは給付のほうを先行させることにならない、これは取り立てるほうを先行させることになる。したがって私は、一級から五級くらいまでにして、他は凍結させてもいいという考え方が当然出るんじゃないかというように思うのであります。実際、こういうようなたいしたことない、一%を割るような、また一%程度のものをなぜ載せなければならないのですか。この辺の考え方がちょっと違ってきますね。なぜ一%ぐらいのためにこれを載せなければならないのか、この点を聞かしてください。
  90. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これは最初に先生からも御指摘がございましたし、また私からもお答え申し上げましたように、ベーシックな考え方として、健康保険最上等級の二十万円というものについて、これを日雇い労働者の就労日数というもので除しまして、九千五百円というものを設定をして、トータルな、一つのものの考え方整理をしたわけでございます。ただ、いまおっしゃったように、現実の負担面、現実の分布状況は、確かに上位等級は少ないわけでございますが、ただ実際上法律の施行の段階におきましては、五十一年の四月まで三段階に分けて、上位等級実施はいたしますので、そういう面で、負担の緩和については相当大きな配慮を払ったつもりでございます。  そういう意味合いで、トータルなものの考え方と、それから経過的にできるだけの配慮を加えさしてもらったという点については、どうかひとつ御理解をいただきたいと思います。
  91. 島本虎三

    島本委員 いまの答弁は、まことに現実にそぐわない。そしていまの答弁では、絶対これは容認することはできない。したがって、答弁をもう一回考えて、後ほど答弁してもらいたいことをここに要求して、私は質問を留保して、これで終わります。
  92. 野原正勝

    野原委員長 小宮武喜君。
  93. 小宮武喜

    ○小宮委員 この日雇い保険対象者は、日々雇い入れられる者、二カ月以内に短期雇用される者、季節労働者となっておりますけれども、それぞれの加入者数は幾らになっておりますか。
  94. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 いま御質問のございました、日々雇い入れられる者、あるいは二カ月以内の期間を限った臨時の雇用者、これ別の人数というのはなかなか適用状況が明らかでないので、つかまえておりませんけれども、産業別の従事している人数あるいは職業別に従事している人数、これは実態をいろいろと調べた結果がございますが、業態別で、たとえば建設業に就労しておる者は約七二%、それからサービス業に従事しておる者、これが一〇・六%、運輸通信業に就労しておる者が七・四%、製造業に就労しておる者が五・六%というようなことになっております。また職種別に申し上げますと、土工とか大工、左官というような技能工が大体六九%、それからウエートレス等のサービス業の従事者が一六・三%、それから臨時の運転手等のあれが九・三%、こんなようになっております。
  95. 小宮武喜

    ○小宮委員 では、日雇い健保財政収支がどうなっておるのか、累積赤字は幾らか。
  96. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 昭和四十八年度の日雇い健康保険財政収支につきましては、制度改正の原案で、単年度で九十一億円の収支不足を生ずるものと見込んでおったわけでございますが、法律案の成立のおくれとか、あるいは制度改正実施が十月一日になったとか、医療費の改定が二月に行なわれたというようなことで、四十八年度の単年度の収支不足の見込みは百四十三億円程度にのぼるものというふうに考えております。
  97. 小宮武喜

    ○小宮委員 今回の保険料の値上げによって、現在の累積赤字はどれだけなくなるのか、その点いかがですか。
  98. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 四十九年度の財政収支につきましては、大体赤字がなくなると申しますより、やはり赤字基調でございまして、四十九年度で百五億円の収支不足を生ずるというふうな見込みでございます。
  99. 小宮武喜

    ○小宮委員 今度保険料改正によって、保険料について、収入に見合ってこの上限を広げる方針ということになっておりますが、具体的にはどういうふうな方針でやるのか。収入に見合って上限を広げる方針だということが出されておるわけですが、具体的にどうするのか。
  100. 北川力夫

    北川(力)政府委員 今回の改正におきましては、日雇い健保給付内容を政管健保並みの水準に上げるというのでございますので、負担の面におきましても、すなわち保険料の面におきましても、健康保険とのつり合いのとれたものにしたい、こういう考えでございます。  そういう意味合いで健康保険の一群上の等級標準報酬等級月額の二十万円というものにつきまして、日雇い労働者の実際の就労日数というものでこれを日額に割り返しますと九千五百円になりますので、これを最上等級といたしまして、現行の賃金日額の三千五百円以上までの四段階に加えて、千五百円刻みでさらにその上に四段階を積んで八段階、こういう形にしたわけでございます。
  101. 小宮武喜

    ○小宮委員 社会保障制度審議会では、日雇い健保について、将来も構造的な赤字が予想されるとして、制度の性格について抜本的な検討を加えるよう要望しておりますが、この点については、所見はどうですか。
  102. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いま仰せのとおり、制度審議会におきましてはこういう面について非常に御熱心な討議がございまして、特に制度審議会の会長から、この問題はいろいろなファクターをつかまえて御質問がございました。ただ、非常にむずかしい問題でございますので、今回の改正におきましては、いろいろな被用者保険の中で、日雇い健保だけが家族五割給付というふうなことでへこんでおりますから、そういう点を是正をして一般の医療保険並みにするということで、現在の日雇い健保の仕組み、こういうものを維持しながら、いままで申し上げたような諸般の改正健康保険に準じてやる、こういうことにしたわけでございます。  なおまた、保険料につきましてもいま申し上げたとおり、段階的に改正をしていくということでございます。したがって、根本的ないろいろな問題点、これは先ほどからもいろいろ御議論がございましたけれども適用範囲の問題でございますとかいろいろ問題点があるわけでございますが、そういった根本的な問題は、今度の改正問題が御承認をいただきましたあと制度の推移ということもございますから、そういう点も見ながら引き続いて検討をしてまいりたい、このように考えております。
  103. 小宮武喜

    ○小宮委員 日雇い保険は比較的収入の少ない人たちを対象にしているために、世帯主とか家族が長期療養を要する疾病にかかった場合に、たちどころに収入の道が断たれて、生活保護世帯に転落する世帯が多いということを聞いておりますが、年間どれくらいの方が保護世帯に転落していますか。
  104. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 生活保護の実施にあたりまして、毎年九月に一カ月間の保護の動態の調査をいたしておりますが、四十八年九月の調査によりますと、この九月一カ月間に新たに保護を開始いたしました世帯は、全国で一万四千四百二世帯でございまして、このうち世帯主が日雇い労働者であります世帯は六百八十五世帯、これの全体の四・八%に該当いたします。
  105. 小宮武喜

    ○小宮委員 日雇い健保の被保険者に高額医療費制度が導入されたことは非常に朗報でありますけれども、しかし、昨年政管健保実施された以降、いろいろな問題が出ているわけです。  その点について若干質問しますと、昨年十月一日から現在までに、これは政管健保の場合ですね、高額医療費制度適用を受けられた人が何名おるのか。
  106. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 高額医療費の支給件数は四十九年の三月末で四万八千四百六十六件、一件当たりの支給金額が平均しまして二万五千二百五十四円というふうになっております。抽出で調査をいたしておりますが、金額階級別に見ますと、一万円未満が約三〇%、一万円から二万円までが約二三%というふうになっておりまして、二万円未満が全体の半数以上を占めておるというふうになっております。
  107. 小宮武喜

    ○小宮委員 この高額医療費制度対象となる患者は、自己負担分が三万円以上で、同一人が同一月内で、しかも同一医療機関にかかった場合にのみ適用されるようになっているわけですが、しからば、同一人であって、同一月内でありながら、複数の医療機関にかかったために高額医療費制度適用されなかった人がどれくらいおりますか。
  108. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 いまの先生のおっしゃったようなケースについては、なかなか事務的に把握しにくいわけでございまして、まだその数字がわかっておりません。
  109. 小宮武喜

    ○小宮委員 制度が発足してから長くないので、それは無理からぬこともあろうと思いますが、私が言わんとするところは、たとえば同一人で、同一医療機関にかかっても、同一月内でなければ適用されないということで、かなりの人が適用を受けていないのです。月初めに病気して、月の終わりにうまいぐあいに病気がなおればいいけれども、二月にまたがった場合は適用しないというような矛盾を私は指摘したいから言っておるわけです。したがって、同一人で、同一月内で、しかも同一の医療機関にかからなければ高額医療費の適用を受けられないといった制度は私はおかしいと思うのです。同一人であれば、同一月内でなくても、二つ以上の複数の医療機関にかかろうと、当然この制度適用すべきだというふうに考えるのですが、これは大臣どうですか。
  110. 北川力夫

    北川(力)政府委員 高額療養費制度につきましては、いまおっしゃいましたような問題点でございますとか、あるいはそれ以外の、家族が多くあった場合にどうするとか、先生もおっしゃいましたとおり、いろいろな問題点があるわけでございます。  実は、昨年の健保改正の際にも、当委員会におきましていろいろ御指摘を受けました。その後、この制度実施するにあたりまして、私どもの社会保険審議会に現在の仕組みを諮問をいたしました際にも、いろいろ問題点がありますので、その答えとしては、さしあたり政府のこういう案を了承する、しかし今後も引き続いて、この制度のよりよき改善については検討をしなさい、こういうような話も聞いておるわけでございます。ただ、何ぶんにも、いまのようなケースをすべてこなしてまいりますためには、現在の診療報酬の請求、支払い、それから社会保険事務所における事務処理、あるいは支払い基金における整理等、いろいろ問題点が多いものでございますから、そういう点を整理しながら、今後どのようにしていくか、先生もおっしゃったとおり、施行後日なお浅いわけでございますので、依然として問題点として残っておるわけでございます。そういうことで、現在はいわゆる家族の七割給付に上のせするということでやっておりますから、今後この制度をどういうふうに改めていくか、社会保険審議会という専門の審議会もございますので、そういうところで関係者の方々の意見も十分に聞きながら、十分に慎重な検討を続けてまいりたいと考えております。
  111. 小宮武喜

    ○小宮委員 また、この制度は、同一家族内において高額医療費の対象となる患者が二人以上の場合も、一人しか適用しないようになるのですね。しかし、そこの世帯主の負担は結局同じなんです。同じふところから金は出るわけですよ。その意味では、せっかく高額医療費制度ができて、われわれもこれは高く評価をしておりますけれども、そういったことは画竜点睛を欠くというようなことで、もっと改良すべきだ。その点については、改善に向かって検討をされておるやにも聞いておりますけれども、やはり早急にこの点については改善をすべきだと思いますが、改善する意思がありますか。
  112. 北川力夫

    北川(力)政府委員 実は、いま申し上げました専門審議会、すなわち厚生省の社会保険審議会の中に、健康保険制度全般について絶えず問題点を取り上げて、改善のための検討を続けようではないかということで、昨年の秋に健康保険問題等懇談会というものができたわけでございます。そういうところにおきまして、この問題も検討がされるのでございまして、つい先週も健康保険問題等懇談会が開かれまして、その中における今後の検討項目の一つの重要な事項として、この高額療養費制度があがっておりますから、そういうところを中心にして十分に問題の改善には努力をいたしてまいりたいと考えております。
  113. 小宮武喜

    ○小宮委員 この前の答弁では、私が言いましたように、高額医療費の適用の問題について、社会保険基金の体制が整っていないとか、人手が不足だとか、こういうようなことを理由にあげられていたのですが、それではその問題が解決すれば、私がいま指摘したような問題について改正するお気持ちがありますかどうか。いまの問題は、同一人であって同一月内でなくても、複数の医療機関にかかろうと、高額医療費の適用をするためには、その体制がないのだということを前国会では答弁があっておるわけですが、そういった問題が解決されれば、この問題については前向きに取り組むというお考え厚生省としておありかどうか。
  114. 北川力夫

    北川(力)政府委員 この問題は、先ほども少し申し上げましたが、そういった実際上の事務体制の問題、また事務体制についての関係者の合意という問題と、それから制度上の問題もあると思います。  前段の事務体制の処理につきましては、確かにおっしゃったとおり、支払い基金とかあるいは社会保険事務所とか、そういったところの体制が十分に整備されれば、前進すると思います。ただ、そういったこと以外に、医療機関の問題もございますので、そういう意味合いで、実施体制の問題については、やはり関係者の十分な合意が必要ではないか、こう申し上げておるわけでございます。  それからもう一つ制度上の問題になりますと、家族の七割給付というものは、あくまでも家族一人について七割給付する、その七割給付の上にのっけて三万円以上になった場合には償還をするということでございますから、そういった家族一人一人についての給付という現行の仕組み、それに、かりにその世帯単位でものを考えるという考えが入ってまいりますと、これは全く制度としては新しい考えでございますので、経済負担の軽減ということのほかに、あるいは事務体制の整備ということのほかに、関係者の合意ということのほかに、制度の基本にわたる問題も実はあるわけでございます。でございますから、将来の検討の方向といたしましては、そういった実際上の事務体制の処理についての関係者の合意が一つと、それからいまの制度上の、そういう現在の医療保険の仕組みをどういうふうに割り切っていくか、この両面から考えてまいらなければならないと思っております。
  115. 小宮武喜

    ○小宮委員 また別の問題があるわけですが、これは、制度実施されてからもまだいろいろ問題が出てきております。というのは、高額医療費制に現物給付制をひとつ取り入れたらどうかということです。たとえば、いま言われておるように、この高額医療費制は償還制になっているために、いま言われたように、たとえば医療費が月に三十万だったとした場合に、その三十万円の七割、二十一万円は保険負担されるとしても、残りの九万円はいずれにしてもその患者が、償還制であるために一時的にやはり金策をしなければならないわけです。これは三十万の場合は別として、もしかりに百万の医療費がかかる場合もあるわけですから、そういうような意味で、七割として七十万が保険負担をされ、あとの三十万は各患者が負担しなければならないという問題があるわけです。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕  それは一カ月か一カ月半先には償還制で返ってきたとしても、一時的にはやはり九万円なり三十万円なりを患者が負担しなければならないという問題なんです。この問題は、特に日雇い保険加入者の場合は、先ほどからも言っておりますように、所得の低い人が入っておるという場合に、簡単に三十万円とか五十万円とか、かりに十万円にしても、右から左に調達ができるかどうかということです。したがって、この問題は前国会でも指摘しましたけれども、やはり現実に実施をしてみて、この問題が現実の問題として出てきておるのです。だから、この点について現物給付制に改めるべきだと考えますが、その点いかがですか。
  116. 北川力夫

    北川(力)政府委員 現物給付で高額療養費制度を運営すべきではないかという御意見は、実はいまお話しのとおり、昨年からもございました。現在もこの問題は一つ問題点であろうかと思っておりますが、何ぶんにも先ほどから御指摘のございましたとおり、またいまお答えもいろいろ申し上げましたけれども制度実施後まだ十分な日も経ておりませんし、体制の整備も十分でございませんし、現物給付に切りかえるというようなことにつきましては、現在ただいまの段階では非常にむずかしい状況でございます。私どもはより基本的には、いま日雇い健保についてもお話がございましたけれども、各制度を通じてこの問題をどう考えるか、今後とも相当時間をかけて十分に慎重にこれは検討を加えてまいりたいと思います。
  117. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、国民保険の高額医療費制度は五十年の十月から実施となっておりますが、各保険制度では高額医療費が適用されておるのに、国民保険の高額医療費制度の問題は繰り上げて実施するお考えはないかどうか。
  118. 北川力夫

    北川(力)政府委員 確かに法律上は先生おっしゃったとおりであります。ただ、昨年この問題が審議をされました際にも、非常に強い御意見、御要望もございましたので、私どもはこの制度実施に伴う予算的な助成の面におきまして、できるだけ早くやるような手当てをしたいということで、実は本年度中に、四十九年度中に全市町村が実施をできるように、予算上の手当てを四十九年度の予算においてやっております。したがって、少なくとも今年度中には全部が実施できるようなかまえでございます。
  119. 小宮武喜

    ○小宮委員 さらに、この日雇い健保加入しておられる方々の問題として、いま現在いろいろ問題にされておるのは、差額ベッドの問題です。この差額ベッドの問題については、自分の希望で個室に入るならともかくとして、どうしてもやはり病院の都合で多額の差額ベッド料を払って入らなければならぬという実情が現在出てまいっております。これは物価高に苦しむ国民にとって切実な問題でありまして、この差額ベッドの廃止とかあるいは規制の強化という声が非常に高まっているわけでございますが、むしろこういった声に逆行して、差額ベッド制はますます増加する傾向にある。したがいまして、この問題について大臣がさきの医療費値上げを中医協に諮問した際に、近く公的病院を中心に通達を出して、差額ベッドを全病床の一五%に押えたいということを言明されておりますが、この大臣の言明は通達として出されましたかどうか。
  120. 北川力夫

    北川(力)政府委員 差額ベッド問題は、患者さんの必要な医療が妨げられるということを生じますので、非常に大きな問題で、ここ一両年社会問題になっておることも事実でございます。そういう意味合いで、昨年もいろいろ議論をされましたので、また大臣お話もございましたように、去る三月、三十九年に出しました通牒以来、新しく差額ベッド、いわゆる特別室の基準というふうなものをどういうふうにやるか、こういうことについて新しい基準、あるいは差額徴収の要件等について都道府県知事あてに通達を出しまして、厳重な指導に当たっておるような実情でございます。  なお、その中でいろいろ申しておりますが、今回の措置の特徴は、特に差額徴収ができるものについては、個室か二人部屋である、しかも差額を取るにふさわしいようなものに限る、しかもまた患者さんが希望をすることが前提条件である、また実際に差額を徴収される部屋に収容されるときには、事前に十分な合意を文書で確認し合うことが必要だというようなことをいっております。  また、病床数の割合につきましては、一五%というお話がございましたけれども、これは込みにした話でございまして、私どもは現在の実情から見て、一般的には大体二〇%以下に押えてもらいたい、しかし国立病院その他公的な医療機関等においてはさらに配慮を加える、特に国立病院は一〇%以下で凍結をする、そういうことで病床割合につきましても十分な規制をやり、またその線に沿って現在指導をしているような実情でございます。  差額徴収についてこれだけの指導は今後やるわけでございますけれども、そういったことになかなかそぐわないというふうな施設につきましては、相当強い措置をとりたい、こういうことも考えておりますので、現在都道府県段階において、そういう問題の具体的な地方の実情に合った詰めをやっておる段階でございますから、必ずや効果を発揮するとわれわれは信じております。  またこの病床の把握につきましても、いままで毎年これを調査するということができなかったものでございますから、今後は毎年七月一日現在でそういった問題について調査をする。特に本年は時期を早めまして、六月一日現在で全調査をして、厳格に確実に現状を把握する、そして一そう改善に努力をする、現在こういうような段階であることを申し上げておきたいと思います。
  121. 小宮武喜

    ○小宮委員 厚生省は三十九年に、この差額ベッドの規制について二〇%から二五%程度に押えるよう、これは通達を出しておりますけれども、それが守られていない。今回も一五%程度に押えるという通達は出したけれども、はたしてこれが守られるかどうかということは、非常に私は疑問だと思うのです。しかしながら、いま言われたように、今後差額ベッドの規制については、厚生省としてもひとつきびしい姿勢で臨んでもらいたいということを希望します。  現在それでは差額ベッド制を行なっている病院は全体の何%あるのか、それで国立、公立、私立、その他の公的病院別にはそれぞれどれぐらいになっておるか、ひとつ御説明を願いたい。
  122. 北川力夫

    北川(力)政府委員 最近の全国的な調査といたしましては、四十七年の六月に行なったものがございますけれども、この場合には実はいろいろな事情がありまして、私立の病院については調査ができなかったわけであります。公的な病院についてだけ行なったのでございますが、この結果、差額徴収ベッドの割合は全体で二〇%となっております。これを設置主体別に見ますと、国立が約一〇%、公立が一七%、その他の公的医療機関が二八%、その他の法人が四二%というふうな数字が出ております。昨年十二月に実は四つほどの県をつかまえまして、わずかな県でございますけれども、サンプリング調査をやったのでございますが、大体傾向としてはこのときとほぼ同様な傾向でございます。ただ内容で違っておりますのは、高いものが若干ふえておる、こういう状況でございまして、総体的な傾向としてはいま申し上げたような実情でございます。
  123. 小宮武喜

    ○小宮委員 国立病院で一〇%も差額ベッドを設けているというのはどういうようなことですか。
  124. 北川力夫

    北川(力)政府委員 私は、ちょっと補足して申し上げておきますが、国立の中には実は厚生省所管の国立病院もございますし、それからいわゆる国立大学の付属病院というようなものがございますし、そういったもろもろのものがございますので、いわゆる国立病院となりますと、医務局から申し上げますけれども、非常に少ない数になっております。
  125. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 基本的に、先生の御質問の趣旨は、国立病院だから特別室は持たないでいいんじゃないかということでございます。差額というのは、保険で入院料をきめているからその差をいただくという意味で差額というのですけれども、われわれとしては特別室という概念で、国立病院といえども一般名階層の方々が御利用いただいておりますので、したがって中には入院の際に家族あるいは会社の仕事、その他いろいろで社会的にどうしても特別室を希望する方あるいは必要とする方が若干ございますので、われわれの概念としては特別室というものは最小限は用意しておく必要がある。これは当然差額を徴収するというよりも、特別室の料金として妥当な料金はいただくべきだ、こういう概念でございます。したがって、千円以下の特別室料金をいただいているような実態がいままで残っておりましたけれども、これは廃止することにいたしまして、その千円以下の約一千ベッドを入れまして現在約九・七%でございます。三万二千ぐらいの全国の国立病院のうち三千百ぐらいの特別室がございます。また千円以下がそのうちの千二百ぐらいございますので、この千円以下というのは特別室に値するほどの機能と設備を用意してない実態もございますので、これはやめるようにいたしたい。そうしますと七%台に落ちるのじゃないか。そしてほんとうに特別室として社会的に必要な方、御希望のある方にだけ、ただし病状によって個室その他特別室に収容することの必要な患者が生じた場合は料金は取ってはならぬ、そしてその部屋をお使いなさいというふうに国立病院には指示してございます。そういう考え方に立って国立病院でも特別室は最小限必要な運営をいたしておる、こういう考え方でございます。
  126. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは差額料金の現状について、国立、公立、私立、公的病院別にはどうなっておりますか。
  127. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 国立だけ先に申し上げますと、最高が六千円まででございまして、一千円未満の五百円程度のものもただいまはございますが、それは廃止する方向でございます。全体の収入に占める割合というものは二%前後でございます。
  128. 小宮武喜

    ○小宮委員 当初は、健康保険で差額ベッドは本来は大体個人だけを対象にしていたんじゃないですか。それが最近では二人部屋、三人部屋、四人部屋、五人部屋でも差額ベッドを設けて、それだけの料金を取っておるということを聞いておるのですが、それは事実ですか。
  129. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これはいまおっしゃったとおりのような実情がありますので、基本的な特別室の概念が非常に乱に走っておると思うわけです。そういった意味合いで、先ほどお答え申し上げましたとおり、新しい基準といたしましては、特別室の基準というものは個室または二人部屋であって、しかも差額を徴収するにふさわしい部屋、こういうような規定をしたわけでございます。したがって、ただカーテンで間仕切りをしたり、そんなようなことで便宜的に個室の形態を整えて差額を取るようなものはこれは絶対やめてもらいたい。あるいはまた、各ベッドからまんべんなく何百円かを取る、これもやめてもらいたい。それから病院によっては日当たりのいいところは差額を取る、これもやめてもらいたいということで、要するに、特別室について特別な料金を徴収するという原点に返って、この問題の秩序ある、節度のある規制をしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  130. 小宮武喜

    ○小宮委員 この差額ベッドがふえればふえるほど普通ベッドが滅ってしまって、それでいやがおうでもこの差額ベッド制を利用しなければならないということで、それがいろいろ非常に負担の増加につながっているわけです。そこで、こういうような差額ベット制がだんだん、だんだんふえていくということについては、これは看護婦さんの不足の問題もあるようでありますが、この看護婦さんの不足問題についてはまた別の機会にやりたいと思います。  やはり問題は、病院経営がどうしても赤字になるので、したがって差額ベッドをますますふやしていくという傾向にあることはもういなめない事実だと思うのです。だから、こういった問題について、ただ差額ベッド一五%に押えなさいというようなことだけで、この問題は解決されるかどうかは私は疑わしいと思うのです。したがって、根本的にはそういうようないまの公立病院にしても私的病院にしても、個々の病院財政の問題をどう考えるのか、また看護婦不足をどうするのかという問題が並行して施策として行なわれなければ、ただ減らしなさいというただけでは、私は根本的には解消できる問題ではないと思うのですが、その点あわせて国として施策を施してもらわなければならないと思うのですが、その点に対する所見、どうですか。
  131. 北川力夫

    北川(力)政府委員 人的な問題はあるいは医務局長からお答えがあると思いますけれども、もう少しふえんして申し上げておきたいと思います。  私どもは、今度の新しい差額ベッドに対するかまえとして、先ほど申し上げたような内容でございますけれども、仰せのとおり一片の通達でこの問題が解消するということはさらさら考えておりません。したがいまして、一つはお互いの合意ということを文書で確認し合った上でないとだめだというようなことも運用上はやろうとしているわけでございます。  さらにまた、常時実情把握をして、新しい基準ないし運用の方針に背反するものがないかどうかについても十分なチェックをする。チェックをしても聞かない場合には、特別な措置をとるというようなきびしい態度も持っておるわけでございます。さらにまたこういう問題は、こういう行政当局のサイド、あるいは医療機関のサイドで措置をするなり指導をいたしましても、実際は入られる患者さんあるいは被保険者方々、そういう方々が一番問題でございますから、そういう意味合いで、今度の措置につきましては事業所等を通じまして被保険者、被扶養者の方々につきましてもこういうような形で今後は特別室問題は処理をしていく、こういうような運用でやっていくということが周知徹底をしますように、現在第一線までその趣旨を徹底している段階でございます。  なおまた、医療機関の窓口ではいろいろトラブルもあろうかと思いますから、こういうトラブルについても苦情処理のための窓口もつくってできるだけのことはやっていきたい、これが今度の措置の全体的な考え方、全体的な内容でございまして、決してこの通牒だけで問題が解決しないことは、三十九年の通牒がこのことを明確に物語っておるわけでございますから、過去のそういったことを十分反省をいたしまして総合的に、多角的に、各方面から、いろいろなサイドからこの問題に対してアプローチをしていく、こういうような考えでございます。
  132. 小宮武喜

    ○小宮委員 急ぎますけれども……。現実に入院をした、差額ベッドしかない、そういうふうな場合に、本人の了解を得るとか契約書をとるとかいうような形式的なものはあったにしても、とにかく入院をしなければならぬ、命があぶない、差額ベッドしかないという場合は差額ベッドに入らざるを得ないのが当然なんです。だからそういった現実的な問題が多く発生しておるということを厚生省は認識していただかないと、ただ机の上で考えておるだけではそういうような現実処理ができないわけです。部屋がないという場合に、命がもうあぶないという場合に、金は幾ら取られても、差額ベッドでも何でもよろしいということになるのは当然でしょう。したがって患者としては二月一日からの一七・五%の医療費の値上がりによって非常に負担も多くなっておる。しかも差額ベッドが非常に値上がりしておるということで、非常に財政負担が加重されているわけです。そういう中で、ここでかりに差額ベッドは一五%に押えても、差額料金のほうはますますエスカレートするのではないかという心配を私はしておるのです。だから、いままで二〇%、二五%のものが一五%で押えられたということによって、今度は料金のほうでその分をカバーするという傾向がますます盛んになってくるのではないかというふうに考えます。そこで、厚生省はその差額ベッド数については、一五%という一応の方針を打ち出しているわけですから、ここで差額料金についても一定の基準を設けて、たとえばこれ以上はだめだというような基準を設けて、それ以上の基準を取る病院は認可を取り消すとかいうような強硬な手段で臨むべきではないかというふうに私は思いますが、どうですか。
  133. 北川力夫

    北川(力)政府委員 差額徴収、特別室問題は最初にも申し上げましたとおり、患者さん本人の希望ということがベースでございます。したがいまして、希望がないのに入っては困る、とっては困るということでございまして、いま先生が言われたケースから申しますと、差額ベッドしかない、しかし、来た患者さんはどうしてもいま収容しなければならない、こういう場合には差額を取っちゃいけない。こういうことは今度ははっきりしておるわけです。ですから、要するに患者さんの希望がベースである問題でございますので、私どもは今度の問題についてはそれに問題をしぼっております。料金の問題はいろいろ問題点もあろうかと思いますけれども、またおのずからそこには先生も御指摘のとおり、一つの節度と申しますかけじめがあると思いますけれども、そこについてまで現在の段階において明確な基準を示すということはまだちょっとできない段階でございますから、この点は患者さんと医療機関との話し合いにゆだねるということが現在の偽らざる現状でございまして、標準的なものを設定するということはなかなか困難ではなかろうか。しかしおのずからその辺には何かのけじめ、限度はあるのじゃなかろうかと思っておりますが、今後の一つの検討課題として十分慎重に扱ってまいりたいと思っております。
  134. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後に、先ほども私が触れましたように、差額ベッドの問題は、病院の人件費だとか物件費だとかが非常に上昇したために経営が苦しくなったということで、その経営の悪化を幾らかでも緩和しようということで、こういった差額ベッド制の問題がますますふえてきたわけですが、そこで公的病院については、自治省が四十九年度から病院事業経営健全化対策に乗り出しているわけです。したがってこの公的病院以外の私的病院に対しても、厚生省として個別的に何らかの赤字対策を考えるべきではないのか。特にそうした赤字を出して困っておるところ、そういった問題について赤字対策ということも考えていただかないと、ただ規制だけやりなさい、やりなさいといってみてもこれは非常にむずかしいのではないかというふうに考えますが、この点いかがですか。
  135. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 公私を問わず、病院の赤字問題が確かに社会的な問題になっております。この点については、率直に申しましてやはり公私を問わず病院なり診療所、特に病院の赤字の問題が、基本的には診療報酬の問題との兼ね合いは否定できないと思います。したがいまして、医療が適正に評価されることによりまして病院の経営というものが円滑になされることが基本だと思うのでございます。しかしながら、すべての医療の中でも、特に高度の医療あるいは救急医療というように、基本的に考えまして不採算的な医療もございます。そういうような問題も含めまして、病院機能の中のどういう機能は診療報酬だけではカバーすることが無理であるというようなことが明確になるならば、それに対応した一つの対応のしかたは考える必要があろう。  その一つの例として、四十八年度日赤済生会等に対する特殊な診療部門に対する若干の補助金を用意いたしました。自治体病院のうち、不採算地区の病院に対しまして、四十九年度二億四千万円の若干の補助を用意いたしました。これらの問題は、今後きわめてわが国の医療機関運営に重要な問題でございます。しかしながら、基本には診療報酬の適正な評価というものがどういうふうになされるかということが基本にございまして、その中から特に抜き出して必要な特殊な医療、不採算医療あるいは先駆的に先に進めていかなければならぬ医療、あるいは研究教育機関的な機能、こういうようなものも含めまして、医療機関を総合的にながめたときに国の助成が必要であろうということはいえるのではなかろうか、そういう観点から、この問題は慎重に対処していきたい、私はこういうふうに考えております。
  136. 小宮武喜

    ○小宮委員 医療費の問題とか看護婦の問題こういうふうな問題についてはまだ次の機会にやるといたしまして、きょうは時間が参りましたのでこれで私の質問を終わります。
  137. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 この際二時三十分まで休憩いたします。    午後二時七分休憩      ————◇—————    午後三時二十七分開議
  138. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。金子みつ君。
  139. 金子みつ

    ○金子(み)委員 優生保護法の一部改正に関してお尋ねをしたいと思います。  実はけさ、時間指定電報というのを私、受け取ったのです。午前六時三十五分。ずいぶん早い時間でした。何だろうと思って見てみましたら、「優生保護法の一部改正に絶対反対する、日本医師会長武見太郎」。もう一ぺん読みます。「優生保護法の一部改正に絶対反対する、日本医師会長武見太郎」こういう電報をいただきまして、びっくりしたのです。婦人団体とかそのほか「青い芝の会」だとか、そのほか従来からこの法案に反対をしていらっしゃる多くの方たちがいらっしゃいますが、その方々からの反対意見という電報ですとかあるいはおはがきというのは従来からいただいておりました。しかし、けさのこの日本医師会長武見太郎というのには全くびっくりしたのですけれども、これは厚生省では御承知でございましたでしょうか、医師会長武見太郎さんがこの法律案改正に反対していらっしゃるということを。
  140. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 この法律昭和四十七年に最初に提案さしてもらいましたものでございまして、いまのような電信のことは存じておりません。
  141. 金子みつ

    ○金子(み)委員 けさもらった電報は今回の改正に対する反対で、昭和四十七年のときのだとは思っていないわけです。私は、びっくりすると同時にふしぎだと思いましたのは、大体何事によらず、医療関係に関する法律——法律とは限りませんけれども厚生省の政策に関して、いろいろな問題では、まず日本医師会長の御意見を伺うなりあるいは話をなさるなり何なり御連絡があっているというふうに理解しています、いろいろな面でそういうことがあっておりますから。しかしこの問題については、全然そのことには関係なくお進めになったというふうに理解してよろしいでしょうか。
  142. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先ほど申し上げましたとおり、この法律を最初に御提案さしてもらったのが昭和四十七年でございます。一度廃案になりまして、あらためて同じ内容のものを昨年提案させていただいておるわけでございまして、最初の提案のときの経緯はあまりよく存じませんが、いずれにいたしましても、こういう際に優生保護法改正したほうが適当だという判断で、改正案を御審議をお願いするようになった次第でございます。
  143. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは、中身が同じでしたならば、四十七年に最初御提案なさったときに、日本医師会長武見太郎の名において反対を受けていらしたでしょうか。
  144. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 二年前のことでございますのでよく存じませんが、当時はあまりそういうことはなかったように聞いております。
  145. 金子みつ

    ○金子(み)委員 三浦審議官は御存じなかったのかもしれませんが、御担当の方がいらっしゃると思いますが、その辺ははっきりわからせていただけるでしょうか。
  146. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 この優生保護対策の問題につきましては、昭和四十四、五年ごろから日本医師会におかれましてもいろいろ御検討があったようでございますが、いずれにいたしましても、当時の担当者がここにおりませんので、その点につきましては御寛容いただければと思う次第でございます。
  147. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまここにいらしてないかもしれませんけれども、どなたか四十七年に法案をお出しになったときの責任者の方がいらっしゃるはずですね。その方は御存じだと思いますので、聞いていただけますか。私は、日本医師会長が反対している法案を、厚生省は日本医師会が反対でもかまわないんだ、あえてやるんだという御方針でお進めになるのかどうか、その自信と御決心とを伺ってみたいわけです。
  148. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先ほど申し上げましたとおり、昭和四十七年に最初に閣議決定で提案さしていただいて、その後引き続いて昨年の五月から、すでに閣議決定で提出させていただいておりまして、ずっと継続審議になっていた次第でございます。
  149. 金子みつ

    ○金子(み)委員 何か話がかみ合わないみたいなんですけれども厚生省の中の御事情は、いま審議官おっしゃったような御事情だと思います。そういうふうにして進めていらしたんだと思いますけれども、私がお尋ねしているのは、日本医師会長が反対しているという事実についてなんでございます。それをお聞かせいただきたいとお願いしているわけなんですけれども、閣議決定のことではなくて。
  150. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 くどいようで恐縮でございますけれども、電信の件はいま先生から聞かせていただいて初めて知ったような状態でございまして、いずれにいたしましても、四十七年、引き続いて四十八年に閣議決定を行なわれた当時は、さして反対というか、そういう特段の動きがなかったように聞いておる次第でございます。
  151. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは質問を変えます。いまの件につきましては、御存じの方があるはずですから、お調べになって私に教えていただきたいと思います。  そこで、関連でございますけれども、はっきりわからせていただきたいのは、そのことがあってもなくても、今回の電報がまたあってもなくても、厚生省としてはこの優生保護法の一部改正、今度改正をするという考え方は変わりはないわけでしょうか。医師会が反対していてもかまわない……。
  152. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生承知のとおり、この優生保護法が最初に制定されましたのは昭和二十三年でございます。かれこれ二十四、五年を経た今日におきまして、昭和四十七年当時から、従来のままだから改正をしたいという政府の考え方がありまして、そのままを現在踏襲さしていただいて御審議をお願いをしている次第でございまして、その当時と現在との政府としての気持ちは変わってない次第でございます。
  153. 金子みつ

    ○金子(み)委員 政府のお気持ちは先ほど来伺っていますからわかりますのですが、私が質問しているのは、日本医師会の会長の反対があってもなさるんですかということをお尋ねしているわけなんです。それをはっきり言っていただきたい。
  154. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 いずれにいたしましても、優生保護法が制定されてからかなり年月を経過いたしておりまして、問題点があったのを改めたいという点につきましては、昭和四十七年からそういうことを考えておった次第でございまして、現在におきましても、厚生省としては同じ考え方でおるような次第でございます。
  155. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それじゃ、日本医師会の会員である全国都道府県医師会のメンバー、約十万になるお医者さんだと思いますけれども、その方々が日本医師会長武見太郎の名において、この法改正には絶対反対すると書いてある。ごらんいただいてもいいと思いますが、間違いじゃありません。ということになっている法案を進めていって、全国のお医者さんたちがこの法案に反対で、ボイコットをするというようなことが起こらないとも限らないと思いますが、そういう事態が想像されますでしょうか。そのような場合にはどうなさるおつもりでございますか。
  156. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 確かにこの優生保護法改正をめぐりまして、いろいろな御意見のあることは、私ども承知はしております。しかしそれはそれといたしまして、今回お願いしている内容は、むしろこういうように改めたほうが適当だという判断のもとにやらせてもらっているわけでございまして、もし法律が成立した場合には、関係者の方々とも運用につきましては十分粗漏のないような相談をして、実施をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  157. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういうのは二度手間ですね。どうして最初に、いつものように日本医師会に一声お声をおかけにならなかったのでしょうか。
  158. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 この優生保護法の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、日本医師会におかれましてもその問題点につきましてはずっといろいろ御検討はなさっておったようでございますが、私ども厚生省の側におきましても、いろいろ問題点がありましたので、その改正につきましては検討を加えてきておるような次第でございます。したがいまして、運用にあたりましては、十分関係団体との間とも摩擦のないような運用をはかっていきたいと思っておる次第でございます。
  159. 金子みつ

    ○金子(み)委員 医師会がいろいろ検討していたようだといま審議官おっしゃいましたが、それだけ検討しておられたからこそ今度の改正案に反対をしているのだと私は思うのですね。ですから、いろいろと話し合いをして支障のないように進めたいとおっしゃっておりますけれども、どうもそのようにいかないのじゃないかというような気がいたしますが、その辺はいかがでございますか。
  160. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 日本医師会におかれましても、先ほど申し上げましたようにかねてからこの問題については検討されておったようでございまして、その点、当時の検討事項と私ども厚生省の検討事項につきましては内容がほぼ一致というか、ある程度お互いの共通点が見出されているような認識のもとにあったような次第でございます。
  161. 金子みつ

    ○金子(み)委員 だんだんおかしくなってきた。共通点が見出されているのだったら、何で反対だということを私のところに——私は日本医師会長武見太郎さんと別に何のおつき合いしたこともないわけですけれども、わざわざけさ時間指定電報を届けてよこされたんだろうかということが疑問です。私も電話で伺いたいと思っておりましたけれども、時間的に伺えなかったものですから、内容を伺っておりませんし理由も伺っておりませんけれども、とにかく絶対反対だという強い意思表示をしていらっしゃるわけですね。おかしいですね。共通点があると厚生省では思っていらっしゃるけれども、医師会長は絶対反対と言っておられるのですけれども、これ、このまま審議していいでしょうか。
  162. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私ども厚生省におきましても、かねてからこの優生保護法に関する問題点につきましては検討を重ねてきた結果が、昭和四十七年以来御審議をお願いしておるところでございまして、ぜひ御審議していただくようにお願いしたい次第でございます。
  163. 金子みつ

    ○金子(み)委員 大臣と医師会長とはたいへん仲がいいと伺っておりますから、大臣、どのようにお考えですか、この電報。いかがですか。
  164. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私も実はその電報というのはただいま初めて承ったわけでございまして、存じておりません。
  165. 金子みつ

    ○金子(み)委員 どうぞごらんください。——大臣、どういたしましょう。
  166. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 医師会長が反対だという電報を金子先生のところに打たれたということはいま初めて承知をいたしたわけでございます。厚生省としては優生保護法改正が必要である、こういう考え方国会に提案をしたわけでございますから、たとえば内容につきましても、先般自民党の先生方にもお答えいたしましたが、身体障害者の問題、条項ございましたね、こういう問題については私はこだわりませんから、国会の審議におまかせいたします、こう言っておるのです。政府は提案をいたしたわけですから、ひとつ皆さん方において慎重に御審議を願いたい、こう申し上げておるわけで、御審議をお願いしたい、こういうわけでございます。でございますから、国会の審議を私は尊重する、こう申し上げておるのです。こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  167. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それじゃこの電報の問題とは関係なく審議を進めていこう、こういうふうにしていらっしゃると理解してよろしいですか。
  168. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、電報の話はいま初めて聞いたわけでございまして、政府の提案いたしましたのはだいぶ前でございますから、その意味において皆さん方の御審議は十分尊重いたします、こう言っているのですから、どうか御審議をいただきたい、こういうわけでございます。
  169. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は審議することはやぶさかではございません。そのために質問の通告もしたわけでございますから。ですから、それはするつもりでおりますけれども、非常にこれ疑問を持つわけなんですね。これを何とか明快な形で結論を得ないで審議をしていいのかどうかということが私自身の疑問なんでございますけれども、これは何かの方法ででも調べていただくことはできないものでしょうか。
  170. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 電報の点は後ほどよく調べてみます。  ただ、私ども厚生省といたしましては、昭和四十七年以来検討に検討を重ねてきた内容でございますので、ぜひとも御審議をお願いいたしたいと思います。
  171. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは、三浦審議官が調べてくださるそうですから、この問題は預かりにしておきます。事と次第によってはまた取り扱いを変えてみたい、こういうふうに考えますので、よろしくお調べいただきたいと思います。いいですね。
  172. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 調べてみますと申しましても、きょうあすということではなしに、また一度医師会長をおたずねするなり何なりして、その機会によく聞いてみたいと思います。
  173. 金子みつ

    ○金子(み)委員 きょうあすというわけにいかないとおっしゃると、審議できなくなってしまうんですね。そうおっしゃらないで、審議官御自身お出ましにならなくてもけっこうでございますから、どなたか信頼のおける係官をおつかわしになって様子を聞かしていただきたいと思います。
  174. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 実は、この法律昭和四十七年から、私ども厚生省あるいは政府で検討に検討を重ねてきた内容でございます。そういう点でございますので、私ども厚生省としては何とか御審議をこの際お願いしたい次第でございます。
  175. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それはもうよくわかっております。私も審議をする用意をしているわけなんです。ところが、こういうことが起こりまして、四十七年からやっていらっしゃるもので、医師会でも内容は知っているはずです。医師会でもまた検討を加えていると審議官先ほどおっしゃったのですから、それなのになぜ絶対反対という強い意思表示をけさなさったのかということについて知りたいわけなんですよ。それを調べていただきたいとお願いしたわけなんでございます。審議中にやっていただけませんでしょうか。
  176. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 金子先生のおことばを返して恐縮でございますが、政府として御審議をお願いしておることと、医師会が御反対なすっておることはそれぞれ別だと思いますので、医師会の関係につきましては、また後ほどということにさせていただきまして、数年来検討を重ねてきた内容でございますので、ぜひとも御審議をお願いしたい次第でございます。
  177. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは、いまの問題はペンディング、保留させていただきます。  実質的な審議に入る前に一つ伺いたいことがあります。よくわからないものですから聞かしていただきたいのですが、その一つは、優生保護法というものの中身を見てみますと、この法律の所管がなぜ精神衛生課にあるのか、ふしぎでしょうがないのです。これは母子保健の問題ですから、どっちかといえば児童家庭局の所管になるほうが正しいのじゃないかという気がいたしますが、これがなぜ公衆衛生局の精神衛生課にあるのでございましょうか。
  178. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 昭和二十三年当時はたしか予防局という名前ではなかったかと思いますが、その当時、制定当初から公衆衛生局というか、予防局の所管であったようでございます。最初は、先生承知のとおり、国会のほうでおつくりいただいてできた法律で、そのときに予防局でございますか、そこの所管ということにきめられたようでございます。なお、現在受胎調節の関係の部分は児童家庭局の所管で行なわれておりますので、優生保護の相当部分は公衆衛生局、一部は児童局ということで、二局にまたがる形で所管をさせてもらっているような次第でございます。
  179. 金子みつ

    ○金子(み)委員 一つ法律が二つの局にまたがって所管されているということになりますね。そうすると、責任はどこがお持ちになるのですか。
  180. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 最終的な責任は私ども公衆衛生局でございます。ただ、受胎調節に関する部分だけ児童局の所管で行なわれておりますが、こういう例はほかにもございまして、伝染病予防法で大部分は公衆衛生局の所管でございますけれども、一部に鼠族、昆虫の駆除という部分がございます。その部分は環境衛生局の所管ということになっておりまして、他にもそういうように法律を二つの局で所管している例は間々あるような次第でございます。
  181. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そうすると、非常にやりにくくありませんか。これを一つになさるお考えはないのですか。
  182. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 現在のような方法が最も適当で合理的だという判断でやっているような次第でございます。したがいまして、現在のところ、どちらかをどうというような気持ちは持ち合わせてないような次第でございます。
  183. 金子みつ

    ○金子(み)委員 一つの法案を二つの局で半分ずつなのか、三分の一と三分の二ということなのか、知りませんが、受胎調節のところだけということになりますとごく一部ですね。それを児童家庭局に預けて、あとは公衆衛生局が持っている、そのほうが合理的でやりやすい、どうも納得できないんです。厚生省がそうおっしゃるならそういうものかなと思いますが、どうも私どもしろうとにはちょっとわかりかねる。外の人はたいへん不便します。両方へ行かなければならなかったりというようなことがあると思います。  これはどちらで所管するかというと、私はいま申し上げましたように、児童家庭局で所管するのが適当じゃないかと考えるわけですけれども厚生省はいまのままがいいとおっしゃるので平行線ですから、どうにもなりませんが、これはどちらに移管させるかは別といたしましても、適当な機会にもう少し考えてみるなんというつもりはおありはないわけですね、いまの御返事でございますと。最後までこれでいくんだということになるわけでございましょうかね。
  184. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 昭和二十三年制定以来、こういう伝統でやっておりますので、やはり行政というのは慣行と伝統の上にやったほうがむしろ合理的な感じがいたしますので、現在のところ私どもの局、児童家庭局におきましても、それぞれの責任分野でやっていく体制で仕事をやっておる次第でございます。したがいまして、いまのところ、これを私どもの局あるいは児童家庭局におきましても変更するような考えは持ち合わせてないような次第でございます。
  185. 金子みつ

    ○金子(み)委員 厚生省のお考えはわかりました。伝統と慣行に従ったほうがいいというお話でございます。いいものは伝統と慣行に従うことはいいと思いますが、新しく合理的に変えたほうがいいと考えられるものでも、やはり伝統と慣行ということになりますと、いつまでたっても役所の行き方というのは古いなというのが残っていくような気がいたしますけれども、この問題にそういつまでもかかれませんので、釈然としないままこの問題は終わらせることにいたします。  次にお尋ねしたいと思いますことは、この法律の名称でございますね。優生保護法という名称なんですけれども、どうもこの意味がはっきりしないのですけれども優生保護法ということばで表現するこの法律の内容と意味とをお知らせくださいませんか。
  186. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 御承知のとおり、この優生保護法の第一条の目的は、法律にございますとおり、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」こういうことでございまして、最初にできましたときは、優生上の見地から、不良な子孫の出生を防止するということが第一義の目的であったわけでございますが、その後、この中に、母性保護ということから、昭和二十四年の改正等で人工妊娠中絶等の関係の規定が特に整備をされてきたわけでございます。したがいまして、いわば優生保護という中に人工中絶と母性保護の内容が一緒に加わっておる法律の内容になっておるような次第であります。
  187. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そうしますと、この法律の英語の訳は何ですか。英語でいいましたら、何になるのでしょう。どういう名前になっておりますか。
  188. 山本二郎

    山本説明員 ただいま先生指摘優生保護法は、英語ではユージェニック・プロテクション・ローと訳しております。
  189. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ユージェニック・プロテクション・ローとおっしゃいましたね。それは優生保護法の直訳ですよ。中身は全然そうなりませんわね。そういう訳でWHOあたりに報告していらっしゃるとすれば、日本のこの法律の中身は優性を保護するという意味ですね。優性を保護する法律だ、こういうふうにしか解釈できませんね。優生保護法の直訳だから、そうなるのだろうと思いますけれども、しかしそういうふうにほんとうに正式に名前をつけていらっしゃるのですか。
  190. 山本二郎

    山本説明員 先ほど議官が御説明を申し上げましたように、この法律の第一条の目的に書いてございますように、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護する」という、この相互に関連します二つの目的からなっておるということでございます。法律の名称といたしましては、優生保護というふうに一括して載せてあるということでございます。
  191. 金子みつ

    ○金子(み)委員 何かひどく日本の場合はことばのまやかしみたいな——ことばの国は中国でしょうけれども、日本もそれに準ずるということで、ことばのまやかしがあるような感じがいたしますね。なぜもっとはっきり人工妊娠中絶法となさらないのでしょう。というのは、優性を保護するという法律ですから、劣性はどうなるのですか。それがわからないですね。
  192. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 優生保護法というのができましたのは、先ほど申しましたとおり、昭和二十三年に国会で制定されてできたわけでございますが、そのときから優生保護法という名前で出発したわけでございます。なお、人工妊娠中絶にかかる部分はむしろ付帯的であったのが、昭和二十四年の改正のときにかなり具体化されて、内容になってきたような次第でございます。したがいまして、あとから母性保護が入ったような関係で、ちょっと優生保護だけということはどうかと思いますが、いずれにいたしましても、題名は昭和二十三年に国会で制定されたときからでき上がっているわけでございます。かなり熟した内容の法律の題名になっておりますので、むしろこのままの題名のほうで行政運用をやっていくほうが適当だ、こういうことで、題名は今回は改正をしないで、従来のままで御審議をお願いしている次第でございます。
  193. 金子みつ

    ○金子(み)委員 その辺が私の考えとはだいぶ違うわけなんですね。外国のこれと同じ内容と申しますか、これに該当する法律を見ますと、イギリスでもアボーションアクトと呼んでいますね。それからアメリカでもセラピューティックアボーション、こういうふうに呼んでおります。ですから、どういうものを規定している法律であるか非常にはっきりしているわけですね。日本の場合は何となくわかったようなわからないような気がします。優性だけは守られて、何が優性かもわからない、劣性は切り捨てられるというようなことが、ことばには書いてありませんけれども、優性を保護するという意味からいえば劣性は淘汰される、こういうふうに解釈されるのが裏のことばだと思います。そういうような意味合いが含まれているのではないかということを私は非常に懸念するのですけれども、それは入っていないのでしょうか。
  194. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 劣性を淘汰する、そういうような意味合いではございません。非常に重度のというか、重い遺伝の病気等がありました場合には、その遺伝が子孫に行くのを防ぐというようなことがこの法律の中にはございますが、劣性をどうだこうだというような法律精神は一切ないという確信というか、また行政運用におきましてもそういう態度でやっている次第でございます。
  195. 金子みつ

    ○金子(み)委員 あとでその問題は触れたいと思って考えていますけれども、とにかく日本国民として出生してくる子供たち、将来日本の国民として社会活動をする人たちだと解釈いたしますけれども、それに区別をつける。憲法で規定されている平等、人権などというものは全然顧みられていないということがはっきりこの法律の名前からしてもわかるというのは、非常に遺憾だと思うのです。ですから、この名前をもっと正確に、だれが見てもわかるような名称に変えようというおつもりはございませんでしょうか。
  196. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 二十数年たちますと、優生保護法というのもかなり熟したといいますか、それなりのことばになりまして国民の間に使われておりますので、いまのところ優生保護法という題名を改正するような意思は持っていないような次第でございます。
  197. 金子みつ

    ○金子(み)委員 三浦審議官は、先ほどの基本的なお考えで変わらないようですね。伝統と慣行、これをやはり踏襲なさるんだと私はいま理解できました。これは厚生省はそうおっしゃっていらっしゃいますけれども、世界的な趨勢をごらんになって、日本の国も立ちおくれないように、名は体をあらわすと申しますから、優性だけを守り劣性は淘汰されてもいいような疑いを持たれるような名称の法律はお改めになったほうがいいと思いますから、近い将来このことは御検討いただきたいと思います。  続いてお尋ね申し上げますが、先ほどこの法案は四十七年に一度提案されたとおっしゃっていらっしゃいましたが、それ以前にはなかったのでございますか。
  198. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 過去小部分の改正というか、多少の改正はときどき行なわれておったようでございますが、現在御審議をお願いしております原案の内容の改正につきましては、昭和四十七年に提案さしていただいたのが最初でございます。
  199. 金子みつ

    ○金子(み)委員 その法案はどうして廃案になったのでございますか。私は実は今回初めてなので、よくわからないのですが……。
  200. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 国会の御都合だろうと思いますが、いずれにいたしましても、昭和四十七年の暮れには国会の解散がありましたから、解散がありますと、国会に継続中の審査の法律が自動的に廃案になるようでございます。
  201. 金子みつ

    ○金子(み)委員 たいへん物理的な理由で廃案になったというふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、やろうと思えばおできになったわけですね、どうしても通したかったら。だからどうしても通したいというのではなかったのではないでしょうか。だから、まあまあ国会の審議の情勢に従って、物理的に廃案になったのはしかたがないというふうにお考えになったのではないのですか。
  202. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 一たん法律国会に出して御審議をお願いいたしました場合、あと国会のほうでおきめいただけることになっておりますから、したがって第六十九国会、第七十国会は継続審査になりまして、そして昭和四十七年の十一月十三日に国会の解散が行なわれまして、そのときに法律上廃案になったような次第でございます。
  203. 金子みつ

    ○金子(み)委員 厚生省はそのようにお考えになっていらっしゃるようでございます。私が別のほうから伺いましたのでは、多くの方々がこの法案に対して反対であった、その反対の声が非常に強く大きくございましたために、国会の審議もそのような形で運ばれまして、廃案になったと承っておりますけれども、それは事実に間違いがあるわけでしょうか。厚生省はそのように理解していらっしゃらないのでしょうか。
  204. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 一たん国会に御審議をお願いしたものでございますから、あとのお取り扱いは国会のほうでおきめになることでございまして、継続審査、そのまま廃案になったと思います。
  205. 金子みつ

    ○金子(み)委員 初めて出てきた法案を審議する場合でございましたら、すっきりと初めからできると思うのですけれども、廃案になった法案でございますので、廃案になったときの事情や、あるいは問題が確かにあったのだと考えるわけなんです。三浦審議官はそのようにおっしゃっていらっしゃいますけれども、当時は御担当でなかったのかもしれません。厚生大臣は当時大臣でいらっしゃいましたでしょうか。
  206. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は一昨年の暮れ大臣になったばかりでございまして、国会に政府が提案いたしました以上は、国会、特に社会労働委員会の御審議をまつ、これは政府としては当然のことでございます。
  207. 金子みつ

    ○金子(み)委員 では、どなたにお尋ねしてもその当時のことがはっきりわからないようでございますから、それでは私は新しい法案として考えることにいたします。  私は、この法案を拝見して考えてみたのですけれども、なぜ一部改正だけをなさるのかということの疑問があるわけなんですね。なぜかと申しますと、この種の法律をもし手がけるのでございますならば、もっと幅広く考えていかなければならないのじゃないかと思いますのに、ごく一部だけ、たいへんに近視眼的に狭い部分だけに限局して改正をしよう、改正になりますか改悪になりますかわかりませんが、改めようとなさる方針で提案していらっしゃるわけなんですが、そこはどういう理由があったのでしょう。
  208. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生承知のとおり、三点の改正になっておりますが、いろいろ厚生省の中でこの問題について積み重ねた結果、最小必要限度と申しますか、ぜひとも改正したい重点の部分を御審議をお願いしようと思いまして、三点だけをお願いしたような次第でございます。
  209. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は初めてでございましたので、産婦人科のこの法案に関連が深いと思われる先生方からも御意見をいただいてみたわけです。それからいろいろなものに書かれております声明等も読ませていただきました。たとえば日本母性保護医協会の会長森山豊博士、これは産婦人科の方ですね。その方のおっしゃっていらっしゃることは、「本会におきましては」——というのは日本母性保護医協会。日本母性保護医協会というのは産婦人科のお医者さんの集まりですね。「本会におきましては、優生保護法は一部改正ではなく、内外の世論、動向を参考にしつつ十分な時間をかけ、人工中絶のみならず、優生手術、家族計画などを総括して、慎重に検討すべきであり、早急な一部改正等はむしろ混乱を招くおそれもあり、現時点ではその必要はないと考えております。」こういう御意見がございます。  それからもう一つございます。藤婦人科医の団体である日本母性保護医協会では次のような見解を表明しております。  「(一)性急な改正は禍根を残すことになる。(二)世界の動向にも注目すべきである。(三)法改正のみでは中絶は減少せず、むしろヤミ中絶を増加させる。(四)中絶減少のためには法改正よりは抜本対策が必要。イ未婚、既婚者に対し、受胎調節法をふくめた性教育を徹底させる。ロ福祉対策の強化、充実」こういうふうになっておりますね。私は確かにそのとおりだと思うわけです。ですから今回ごく一部だけを、狭い改正だけをなさることについて、私はやはり適当ではないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。家族計画の普及指導というのはこの法律の中にもうたわれております。そのことについても考えるべきであると思いますし、それから問題になっております性教育ですけれども、これは末婚、既婚の婦人だけでなく、性教育というのは男性にもやらなければならないことです。婦人だけを対象にして性教育をしているから、いままで日本では成功していない。性教育というのは両性の問題でございますから、当然男子にもしなければならないのに、日本の場合はそれを一つもやっていない、こういう欠点がございます。小中あるいは高校生、子供たちですけれども、この子供たちに対する性教育についても、学校保健の場合きちっと行なわれておりません。  たとえば学校保健の性教育に関する部分の教科書を拝見いたしますと、よく書けています。むずかしく書けています。高校生のものなんてたいへんむずかしく書いてある。これ読んでわかるのかなと思うくらいにむずかしいのです。解説を加えてやらなければ無理だと思うようなものですね。ところが、私も経験をいたしましたけれども、この時間になりますと、男の先生は、ここからここまでは宿題だと言って家に持って帰らせる。学校で教えないのです。宿題にしてしまっているというような粗末な性教育のしかたをしている。こんなことでは、子供の時代にきちっと教えておくべきはずの重要な問題を興味本位に子供だけに預けてしまって、あの本読んでも理解できないです。理解できないから、手っとり早い週刊誌のようなものを読んでしまうということで、間違った概念や間違った知識を持ってしまうということになっているんじゃないかと思うのです。そういうことは一つも行なわれていない。  あるいは避妊技術の研究でありますとかあるいはまた避妊薬の開発の問題などにつきましても、特に避妊薬の場合は外国ではすでに利用されておりますのに、日本ではまだ避妊薬は許可されていない。この理由もわからないわけでございますけれども、日本では避妊薬が使われていないという理由がわかりたいことが一つと、それからこれらのいま申し上げましたような幅広い事項について、国はどのような具体的な政策をお持ちになっていらっしゃいますでしょうか、あるいは予算措置はどのように行なっていらっしゃるでしょうか、聞かせていただきたいと思います。
  210. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 まず避妊薬の件でございますけれども、これは実は薬務局の所管でございまして、薬務局長すぐ参ると思いますので、御答弁しばらく御猶予いただければと思う次第でございます。
  211. 金子みつ

    ○金子(み)委員 はいけっこうです。薬の問題は薬務局長がいらっしゃるまでお待ちいたしますけれども、幅広くいま申し上げましたような事項、みんな法律に含まれているのです。法律に入っておる問題ですけれども、今回お触れにならなかった問題です。改正点としては触れていらっしゃらないのですけれども、そういうものも含めて抜本的な改正をするべきだと思うわけですが、今度はしていらっしゃらない。  そこで、将来抜本的な改正をなさる意思がおありになるかどうかということは後ほど伺いますけれども、今回改正の内容には触れてはいらっしゃらないけれども、従来から法律に書いてあることですから、政策としては動かしていらっしゃるはずだと思います。そこで具体的な改策はどのようなものがおありになるか、そしてそれに対する予算措置はどうなっておるでしょうか、それをお尋ねしたい。
  212. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 やはり一番基本は、家族計画の普及ということだろうと思います。具体的に受胎調節ということになってくるわけでございますが、各都道府県に優生保護相談所というのが、先生承知のとおり、保健所に併設をして設けられております。厚生省といたしましては、その優生保護相談所というか、受胎調節の関係につきまして特に予算措置を講じまして普及をはかっていくということでございますが、もしこの法律が制定されたような暁には、その点はまた一段と強化をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  213. 金子みつ

    ○金子(み)委員 落ちました。予算措置はどうなっていますか。
  214. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 家族計画の関係予算措置は、実は児童家庭局のほうで組まれておるわけでございますが、私どものほうで承知しておりますのは、保健所系統に、これは非常に少ないことで八百万ぐらいでございますが、別に受胎調節の関係として一億二千万円ほど予算昭和四十九年度は計上されていると聞いているところでございます。
  215. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それで十分なのかどうかという問題が残りますので、あとではっきりした数字を教えていただきたいと思います。  そこで、取りまとめた質問になりますが、ペンディングのものが幾つか間に入っておりますのでまとめにくいわけですけれども考え方として、今回の改正のような部分的な改正でなくて、もっと時間をかけて抜本的に改正をするというお考えはございませんでしょうか。
  216. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 もちろん所管の法律でございますので、必要な改正の検討、改善の検討というのは常に行なっているところでございます。ただ今回御審議をお願いしておりますところは、最近の医学の発達とかあるいはその他の社会事情とか、そういう関係でぜひともこの部分だけは早急に改正をお願いしたいと思いまして御提案さしていただいたような次第でございます。ただ、いずれにいたしましても、優生保護法につきましての基本的な今後どうあるべきかということにつきましては、私ども、やはり行政運用と相まちまして、必要な問題点の検討は常に続けていくつもりにしている次第でございます。
  217. 野原正勝

    野原委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  218. 野原正勝

    野原委員長 速記を始めて。
  219. 金子みつ

    ○金子(み)委員 お尋ねでございますが、今回の改正をなさるにあたりまして世界的な趨勢というものをお調べになったでございましょうか。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席
  220. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生承知のとおり、本来堕胎罪というのは——世界各国の刑法で堕胎は原則として禁じられているところでございますが、その堕胎の例外といたしまして人工妊娠中絶を認められているところがございます。ただ先生承知のとおり、この人工妊娠中絶の認められ方につきましては、世界非常にばらばらになっております。たとえば、極端なところは、母体の生命に危険がある場合に限って人工妊娠中絶を認められるところから、あるいはわが国のように母体の健康を著しくそこなうおそれがあるというようなところもありますし、あるいはまた国によってはもう少し広くなっているところもございますが、さらにそれに加えて、その背後として、わが国のように母体の健康、こういう医学というか衛生というか、そういう観点からばかりではなくて、一方倫理的なものとか宗教的なものとかが加わったような要素がございまして、国によりましてかなり差異があるようでございます。まあ乏しい知識ながら、WHO等の資料をとりまして、私どもなりに勉強はしておるような次第でございます。
  221. 金子みつ

    ○金子(み)委員 趨勢を伺いたかったわけでございますが、私は手元に、WHOが一九七一年にまとめました人工妊娠中絶に関する世界の法律というものがございます。一つ一つを申し上げるわけではもちろんございませんけれども、日本の立場、日本の位置づけというものをわかるために、これはたいへんに役に立つと思うわけです。合法的な人工中絶の適用例というのがいろいろな分類で報告されておりますけれども、その適用例は、大きく分ければ、医学的適用、それからその次は優生保護的適用、それから次は人道的適用、これは倫理的というふうな意味合いになります。それから、たとえば強姦とかあるいは近親相姦などによる妊娠の場合に人道的適用というのが使われております。それからその次に医学的及び社会的適用、そして最後に純粋に社会的適用、こういうふうに分類されているということが報告されております。  医学的適用という分類は、非常に厳格な法律で、中絶が女性の生命を救うのに必要と認められた場合にのみ許可するというので、最近ではこれだけの法律を使っている国というのは非常に少なくなっている。  次の優生保護的適用、これは遺伝的疾患が世代的に遺伝するのを防ぐというのと、精神あるいは肉体的疾患にかかりやすい子供の出産を避けるというのを中心につくられている法律でございます。日本はこの中に位置づけが一つされております。  それから倫理的適用というのは、先ほど申し上げましたように、強姦とか近親相姦あるいは未成年、精神薄弱者との関係による妊娠、この問題を合法的に中絶する場合の合法的な適用、日本はこれは入っておりません。それから、医学及び社会的適用、日本はここにも入っております。ここは非常にたくさんの国が、一番この適用例を活用して法律をつくっているようでございます。特に文明国といいますか先進国と申しますか、発達しておりますスカンジナビアの国々あるいはヨーロッパ、アメリカ等の国々におきましてはこれを使っておりますが、これは当該妊娠以前に、数回にわたって短年月の間に出産があったかどうかというようなことですとか、あるいは子供が多いために家事が困難かどうか、あるいは家庭経済が困難かどうか、家庭の中に病人はいるかいないかというようなことまで考慮に入れて考えられておりまして、女性が営むべき日常生活の条件を含む環境のすべてが評価されている。妊婦の生活に何か特別の困難があるのかどうか、また健康を阻害するような他の環境についても考慮に入れる、あるいは身体的、精神的破綻を来たすと思われる生活条件及び環境、こういうものを考慮に入れる、そして妊婦の現実的あるいは合理的に推測され得る将来の環境までも考慮に入れて、中絶を合法的に考えられているのが医学的及び社会的適用例でございまして、これが最も多い。  それで、最後の純粋に社会的適用だけを利用する者、これは中絶を合理化する根拠として取り入れているわけでございますが、おもに内容といたしましては子供の数が多いか少ないかという問題、子供が三人以上ある婦人の場合とかあるいは四人以上であるとかいうふうなぐあいに、子供の数が基本に考えられているようでございます。あるいはそのほか、夫が死亡したあるいは不具である、あるいは家庭が破壊されたというふうな問題、妊娠のために困窮した、困った女性というようなものが考えられているわけでございますけれども、これはそんなにたくさんの国が適用されてはいないわけです。  これらの五つの糖類の適用例にそれぞれ該当しておりますが、日本の場合は医学的及び社会的適用というのと、優生保護的適用というのに位置づけされているわけでございまして、世界的な趨勢からいきますと、大体世界の動きが中絶を緩和するという方向に向かっているわけでございまして、現在の日本の優生保護法の現状でまいりますれば、まさしくその世界の趨勢に一致しているということができると思うわけです。ところが、今回改正をするということになりますと、日本の位置づけはだいぶ変わってくるのではないかと思います。  現状では日本の場合は、これは厚生省からいただいた資料でございますが、優生保護実態調査に基づいた数字で拝見いたしますと、いまの適用例の場合の例で日本の場合をとってみますと、医学的及び社会的適用、それから純粋に健康上の訴えというのがございますから、これはたぶん医学的適用というところに該当させればいいと考えますが、これ等を合わせますと八一・三%になるわけでございまして、日本における中絶の八一・三%までが今日医学的並びに社会的適用によって行なわれているということで、これは世界の趨勢とほぼ同じような歩き方をしているということで、現状では私は問題はないと思うわけです。それが今回改正されるということになりますと、だいぶ様子が変わってまいります。  たとえば、WHOが人工妊娠中絶に関して法律適用事由というものを定義しておりますが、六棟類のことを定義しております。その一つは母親の生命を救うため、二つ目は母親の肉体的、精神的な健康のため、三つ目は先天性奇形などの防止、四つ目は暴力による妊娠、五つ目は子供の数などによる医学的、社会的理由、六つ目が本人が希望するだけでできる人工妊娠中絶、こういうのがあるわけです。これだけ、これはWHOがきめた、定義している適用事例でございます。日本の場合に、世界の趨勢と同じような歩みをいたしておりますのにもかかわりませず、今回改正をいたしますと、WHOがいっておりますこの中で、医学的、社会的理由というところに位置づけされていた日本の分を、今度はいわゆる医学的事由だけの位置づけに戻すことになる、逆行する形になるわけなのでありますが、こういうふうなことになると、世界の国々が緩和する方向に進んでいるときに、ひとり日本だけが逆行するという結果になると思うのでございますが、それはいかがお考えでございますか。
  222. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生承知のとおり、現行の優生保護法の第十四条によりまして、現行でもその中絶の理由といたしまして「身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある」場合ということになっております。したがいまして経済的理由だけではやはり中絶理由になりませんで、経済的理由によって「母体の健康を著しく害するおそれのある」場合、こういうことになっておるわけでございますが、今回の改正で御審議をお願いしておりますのは、身体的理由または経済的理由という理由をとって、母体の「精神又は身体の健康」を著しく害するおそれがある場合というようにいたしまして、むしろ医学的に純化させようというのがねらいでございます。ということになりますと、別に従来の法律から比べまして、人工妊娠中絶を広げようとかあるいは狭めよう、そういうような意図から改正を行なっているわけではなくて、むしろ医学的なものに、指定医師の判断になりますので、純化をしていこうというねらいでございますので、その点につきまして世界の傾向に逆行するとかあるいは進行するというような意図的なもので行なっているような次第ではないわけでございます。
  223. 金子みつ

    ○金子(み)委員 医学的な問題に純化させるということを目的にするとおっしゃっていらっしゃいました。たぶんそうだと思うのです。医学的なものに問題を整理することになるわけだと、ことばをかえたらなりますが、純化してしまう。そうすればたぶん確かにすっきりいたしますね。すっきりするということはわかりますけれども、取り残された部分はどうなるのかということが問題だと思うのです。その取り残された部分についてはそのまま放置されていて、たいへん無責任だというふうに考えるわけです。ですから、取り残された部分、すなわち経済的現実に直面している若い人たちの妊娠、出産、育児に関しては何も特別な援助が払われていない、これは取り残されてそのままになっている、こういうことになるわけなんでして、ですから、私は日本の趨勢は諸外国の趨勢に逆行していくんじゃないかというふうにお尋ねをしたわけでございますが、この辺はどうなるわけでございましょう。
  224. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 確かに先生指摘のとおり、世界の趨勢としてはむしろ人工妊娠中絶がゆるやかになってくる、こういうことだろうと思いますが、現在改正をお願いしていることにつきましても、中絶をゆるやかにしようとかきつくしようというような意図から出たものでなくて、先ほど申し上げましたとおり、医学的なものに純化をしていこう、と申しますのは、従来の理由といたしまして身体的理由と経済的理由と二つしか理由があげられなかったわけでございますが、場合によれば他の理由でも母体の健康を著しく害するおそれがある場合には中絶ができる場合も出てくるわけでございます。したがいまして広げるとか狭めるというよりは、むしろ医学的なものに純化いたしまして改正をしようというのがねらいでございますので、したがいまして世界の傾向に逆行するとかどうこうということにはならないという考えておる次第でございます。
  225. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは、なぜ今回の規定の中から経済的理由というのをおはずしになったのでしょうか。
  226. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 ただいま申し上げましたとおり、従来は身体的理由と経済的理由と理由は二つしがなかったわけでございますが、むしろ逆に身体的理由とか経済的理由以外にも母体の健康を害するおそれがある場合というのは理由としてあるだろうと思います。ですから二つの理由に限定するよりは、むしろ医学的なものに純化をいたしまして、身体的、経済的以外の理由でもやはり母体の健康を害するおそれがある場合には中絶ができるようにしようというのが改正のねらいでございまして、したがいまして広げるとか狭めるというのではなしに、むしろ経済的理由だけにしておくほうがおかしいという考えでやったような次第でございます。
  227. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それだったら、なぜ精神的をお入れになったのですか、何にも入れないで母体の健康というのが一つだけあれば、それでいいんじゃないですか。母体の健康を侵害するものだったら、何でも理由になると思うのですね。いろいろな理由があると思いますね。それを何も精神的理由だけを入れるというのは理屈にはならないと思いますけれども
  228. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 確かに従来も母体の健康という中には精神も含まれるという解釈、運用では成り立ったと思いますけれども、ただ精神的な問題がいろいろ起こってきましたのは、特に最近の社会の近代化に伴って起こってきたわけでございます。むしろ母体というだけでございますと、場合によれば精神ということが落ちるおそれもあるという考えがありまして、むしろ母体の健康というのは精神と身体と両方のほうが合理的だということで、場合によれば精神上の健康を害する場合もあるだろうということで、今回の改正で新たに精神上ということを入れさしてもらったような次第でございます。
  229. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ちょっとおかしいですね。  それでは別のお尋ねをいたします。  WHOが定義しております健康の定義、何でございましょう。母体の健康とおっしゃいましたが……。
  230. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 WHOの定義は、健康の概念は、現代においてはWHOの定義が精神的、身体的な良好な状態にあることであり、単に疾病や障害のないことだけではないという、いわゆる消極的な病気や障害ということでなくて、むしろ精神的、身体的に良好な状態にあるということを健康だと、こういうように定義づけが行なわれておるようでございます。
  231. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私の理解とちょっと違いますね。精神的、身体的、社会的健康じゃないでしょうか。社会的をおはずしになりましたね。
  232. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 良好な状態ということで、社会的という意味は包含されているのだろうと思う次第でございます。
  233. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そんなことはありません。はっきりごらんになってください。そんなことはないはずです。はっきり出ています。社会的——メンタリー、フィジカリー、ソーシャリーと出ているはずですけれども、お調べください。
  234. 山本二郎

    山本説明員 ただいま御指摘になりましたソーシャルウエルビーイングということばがあるのでございますが、これは日本語に訳しましても非常に訳がむずかしゅうございまして、単に福祉あるいは社会的ということでも非常にむずかしい訳で、いろいろな方々がいろいろなふうに訳されておるのでございますけれども、私はここではやはり精神的、身体的に良好な状態にあるという中にそういう概念も包括するものであるというふうに考えまして、ただいま審議官が申し上げましたように理解をしている次第でございます。
  235. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私初めて伺いました。私どもは初めて伺ったわけです。身体的、精神的、社会的健康ということがはっきりと打ち出されているということ。社会的ということばはあとから入ったわけです。初めはそれは入っていなかったはずです。そうして社会的健康というのが、ウエルビーイングというのはよく生活できているという意味なんでありまして、ここで言ういわゆる社会的ウエルフェアというのは、社会福祉がよい状態にあって、そうして精神的にも身体的にも社会的にもよい生活ができる、こういう意味なんで、ここにウエルフェアというのが出てくるわけですから、これが入らなかったら、私は健康の意味がないというふうに考えるわけです。そういう意味からいきますと、一番大事なものを落としていらっしゃるわけなんでございますけれども、いまの日本の社会のウエルフェア、いわゆる社会福祉、社会保障の現状がはたしてこのままで満足できるのかどうかということが考えられるわけでございますが、厚生省となさいましても、憲法二十五条にうたっておりますような最低生活を保障するという立場から考えても、いまの社会保障や社会福祉がこれでいいとは考えていらっしゃらないと思いますが、いかがでございますか。
  236. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 なかなかむずかしい問題でございますが、社会保障なり社会福祉というのは今後とも努力をして、さらに水準を引き上げていくものかと思っている次第でございます。
  237. 金子みつ

    ○金子(み)委員 十分でないということの意味合いに私は理解いたしました。  そういたしますと、私はこういうふうに考えられるのですが、今回の経済的理由をおはずしになったということは、裏を返せば、経済的理由による中絶を行なわなくてもよいというような社会状況を保障されているんだというふうに考えられるわけですが、国はそれを保障なさるのでございましょうか、あるいは国に課せられた課題としてお引き受けになるおつもりでございますでしょうか。そうでなかったら、とても無理だと思います。
  238. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 昭和二十四年の改正のときにこの条文が入ったわけでございますが、その当時からの経済的理由ということについての行政運用といたしましては、生活保護世帯とか、あるいは生活保護世帯に準ずるような方で、当時の国民栄養とかあるいは国民生活の状況というのが、当時バックにあったわけでございましょうが、そういう方々はともすれば妊娠の継続が母体の健康を著しく害するおそれがある、こういうことで、経済的理由というのを一応そういうところに判断を置きましょうというような行政運用で参りまして、今日に至っておるわけでございます。もちろん、当時の国民栄養とかあるいは国民の生活状態とかから比べますと、かなり国民生活とか栄養は向上しておりますが、その点に関しましては、かりに経済的理由という条項がなくても、従来と同じような行政運用というのはかなりとられていくんではないかと思っておる次第でございます。
  239. 金子みつ

    ○金子(み)委員 経済的理由をはずした場合に、国が責任をもってその面はめんどうを見てくれるのだからはずしてもいいということがはっきりすれば、はずしてもいいと思います。経済的理由による中絶を、いま若い人たちがやっているわけですね。これをしなくてもいいような状態に国が責任を持ってくださるのなら、私は問題はないと思うのですが、それに対してはっきりしたお答えがいただけないと、私は、この字句をはずすということは非常に大きな危険があるというふうに考えるわけなんですが、その点がまだはっきりわかりませんので、もう一ぺんお願いいたします。
  240. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 昭和二十四年にこの条項が入ったわけでございますが、その当時からこの経済的理由の運用の態度といたしましては、生活保護世帯であるとかあるいは生活保護世帯に準ずるような方々の場合にはこの経済的理由に該当するであろう、したがってこういう方々の場合には母体の健康を害するおそれが非常に多いであろう、こういう行政運用で今日まで来たような次第でございます。したがいまして、当時からの経済的理由というのは、抽象的な経済的理由ではなくて、そういう比較的所得に恵まれないような階層の方々につきまして経済的理由という−生活保証とかあるいはそれに準ずるような家庭の方ということで運用を今日までしてきたわけであります。したがいまして、その意味におきましては、この経済的理由という条項がなくなっても、今後におきましても、そういう比較的所得の低い方々につきましては、妊娠の継続が母体の健康を著しく害するおそれが多い場合に該当する場合が多いだろうと思うような次第でございます。
  241. 金子みつ

    ○金子(み)委員 生活保護、生活保護とおっしゃっておりますけれども、人工中絶に関する世論ですが、生活保護を受けているために中絶をしたんだということを言っておられる方は、厚生省でいただいた資料を見てもわずかに七%しかないのですね。そうすると生活保護というのは、あまり問題になっていないですね。それよりも、日本のいまの悪性インフレあるいは狂乱物価といわれているような時代に、消費者物価指数が三〇%もこえるような時期には、生活保護世帯ならずとも、ほとんどの家庭がいま非常に生活に困っているということは、私がここで申し上げなくたって十分御承知のはずでございます。ですから、そういうような人たちが多いわけでございますから、生活保護のためだけだったんだから、いまもう経済的理由は必要ないとおっしゃるのは、あまりにも実際問題を御存じないというふうに申し上げてもいいんじゃないかと思うわけです。いま中絶の一番大きな理由は、経済的理由になっているわけです。あるいはまた、この間うちからコインロッカーに赤ちゃんを捨てたり、いろいろと忌まわしい事件が起こっておりますけれども、ああいうことをした人たちの理由というのがやはり食べていかれない——まあ無知もあるかもしれません。産んではみたものの育てていくことができない、食べていけないからというので、あのような始末をしているわけなんですけれども、これはけしからぬといって一がいにしかりつけてしまうようなことではなくて、そのような社会情勢が問題なんであって、そこに国が責任をとるべきではないかというふうに考えるわけなんでして、個人個人の生活状態、経済状態が多少よくなったからこれははずしてもいいというのは、私は非常に大きな問題になるだろうというふうに考えます。  これは、どうしてもそういうふうにおっしゃっていらっしゃるんですけれども、私は、こういう一つの声明書を皆さんにお聞かせ申し上げたいと思います。これは日本家族計画連盟、会長古屋芳雄博士、この方はせんだっておなくなりになりましたけれども、「今国会に提出される改正案を見ると「経済的理由」を削除することにより、人工妊娠中絶の適用を圧縮することが、改正の主点となっている。人工妊娠中絶はもちろん歓迎すべきものではない。しかし、国民が中絶手術におちこむ最大の動機が「経済的理由」であることを考えるならば、この削除はまさに国民生活を無視する暴挙であると考える。」こういうふうに言っていらっしゃるわけですね。日本家族計画連盟というのは、御承知のように家族計画普及のために一生懸命にがんばっている団体です。この団体は直接各家庭の家族計画指導をしているわけですから、実情はよくわかっているわけですね。そこでこのように言っておられます。あるいは、文書ではもらっておりますけれども、家庭生活研究会という財団法人がございます。ここも、やはり家族計画普及の指導のために一生懸命にやっている団体でございますが、この団体の人たちもそれを言っております。だから、もし、経済的な理由というのをおはずしになるというのであるならば、これに見合った別の形で彼らを援助する方法、たとえば児童手当であるとかあるいは年金であるとか、そういうものをもっと高額に増額をさせるのでなければ、絶対に反対だとそこの団体では言っております。しかし、私は、児童手当や年金が増額されれば、それでよろしいというふうには考えておりません。その問題とすりかえるということは危険だと考えますので、そうではなくて、基本的に国民だれでもが、自分で産む自由も産まない自由も、そうして自分たちの基本的な権利として行使するということが自由にできるような社会経済情勢にならなければいけないので、このことを国が責任をもっておできになるという自信があるまでは、経済的理由ははずすべきではないというふうに考えるものでございますが、それを厚生省ではどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  242. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生承知のとおり、現行法でも、経済的理由だけで人工妊娠中絶ができるのではございませんで、「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」に限られてくるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたような生活保護世帯の方であるとか、あるいはこれに準ずるような所得の比較的低い方々につきましては、この理由が今度法律によって医学的に純化されましても、当然医学的なものの中に包含されてくるような運用になるかと思う次第でございまして、したがいまして、先ほどから申し上げますように、人工妊娠中絶を広げるとか狭めるとかというような意図から改正を御審議をお願いしているわけではなくて、医学的なものに純化をしていきたい、こういう意図からやっているような次第でございます。
  243. 金子みつ

    ○金子(み)委員 話が先ほどに戻りました。医学的問題に純化させてとおっしゃると、医学的な問題からだけものを見るという考え方になっているわけですね。ですけれども、私たち人間は、一人一人は、医学的規定の中でだけ生きているわけじゃないですね。みんな社会的な問題を抜きにしては生活できないはずだと思います。ことに出産とかあるいはその反対の中絶とかあるいは育児のこととか、これはみんな社会的な問題抜きには考えられない。医学的な問題だけで解決しようというところに私は無理があるというふうに考えるわけでございます。ですから、この問題はやはり社会的な理由というのが原因であって、そして母体の健康に影響を及ぼすというふうに結びついてくるのは当然なことでございます。だから、社会的な問題の中でも一番密接的な、直接的な問題としての経済的な問題、これをはずすということは非常に危険なんだということを申し上げているわけでございます。  私はそういう意味で申し上げているわけでありまして、その意味から申しますと、もし経済的な理由が省かれるといたしますと、どうしても暮らせない人たちは、子供を産んでしまうと暮らせなくなる人たちは、産まないでしょうね。そうしますと中絶が、今度は、いま審議官おっしゃるように、医学的な理由だけに集約しますと、中絶決定権は医師の手に握られるということになるわけです。医師が絶対権限を持つということになりますから、そうしますと、産みたくても産めない社会的な状態にいる人たちは、産むわけにいかないから、中絶を選ぶと思います。その場合に、その中絶はこの法律改正になりますと、経済的に苦しくて産めない人は該当しませんからできないわけですね、この法律によっては。そうするとこれはやみで中絶するということに必ずなる。  ですから、私たちが心配するのは、今日でも、いただきました資料で見ますと、中絶の数が出ておりますが、この数字としてあらわれております七十三万九千何がしですか、これだけの中絶の数よりも、ほとんど同数くらい、やみがあるのじゃないかと、これはわかりませんが、推計されていると私は厚生省の方から伺ったことがございますが、そういたしますと、今日でもやみが皆無ではないというところへ持ってきて、いまのような改正をおやりになりますと、いま私が御説明申し上げましたような状態にある人たちは、やみの中絶をせざるを得なくなる。それをやるだろうと思います。そうすると、非常に危険が伴うと思います。そしてまた、同時に今度は経済的な負担が、やみでございますからよけいかかるだろうと、これも想像ですけれども、いたしますから、よけい苦しくなってくるというようなことが起こって、経済的負担も多くなるし、第一非常に危険が伴って、むずかしい、あぶないということが言えると思いますし、やみで中絶をいたしますということは、直ちにそのままそれが刑法の堕胎罪に結びつくんじゃないかということも考えられます。今日刑法の改正案が計画されておりますようで、私どももその案を拝見いたしておりますけれども、非常に問題になるだろうと思います。  こういうようなことを考えますと、私はこれは未然に防がなければならないというふうに思いますから、やはり経済的な理由というのを削ることは、厚生省考えていらっしゃるように、決して人工妊娠中絶の数が減るものではないと思います。むしろふえるんじゃないかというふうにすら思うわけでございまして、結果的には母体の健康はむしろ阻害されるということを非常に懸念いたしますけれども、その心配はございませんでしょうか。
  244. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 今度の改正案では、従来でございますと、すぐ母体の健康というか、身体の健康を害するおそれがあるものに続くわけですが、今度の場合は、「母体の精神又は身体の健康を著しく害するおそれのあるもの」——精神の健康を害する場合も人工妊娠中絶の理由にあげておるわけでございます。  なお、従来の理由としましては、身体的理由と経済的理由に限られておったわけでございますが、理由としては、たとえば先生指摘のように、精神の場合には社会的な理由も、精神の健康を害するような場合も起こってくるだろうと思いますので、むしろ従来よりも、いわば広くしようとか狭くしようとかいう意図で改正、審議をお願いしているわけではございませんが、結果として社会的理由によってそれが母体の精神の健康を害するおそれがある場合には、人工妊娠中絶の理由になってくることもあるかと思う次第でございます。したがいまして、むしろ経済的理由だけに限定するよりは、ほかの理由も当然総合的な母体の健康の中に理由としてあげられるというようなことに考えられるのではないかと思う次第でございます。
  245. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は非常にむずかしい問題だと思うのです。母体の健康を阻害する理由が何だなんて聞かれても、端的に、単純に、理由は出てこないと思うのですね。精神的理由もある、経済的理由もある、そのほかの社会的、家族的な理由もある。そういうようなのが全部総合されて、母体の健康を害するという終局的なところにいくのだと思うのです。ですから、それを何もわざわざ経済をやめて、精神的理由というのを入れるということについての理由が全然成立しないと考えられます。ですから私は、無理にいまここでこれを変える必要はないのじゃないでしょうか。日本の場合は、先ほどから、世界的な趨勢の位置づけというのから見ましても、日本は世界の趨勢と足並みがそろっているということがよくわかるわけでございます。ですから、言うなれば日本のいまの優生保護法実態というのは、理想的とはもちろん申しませんけれども、一応満足すべき状態にあるのであって、これをわざわざ変える必要はないのじゃないかと思うのです。無理に変えようとすると、非常にむずかしくなってくるし、無理が出てくるというふうに考えられます。ですから、いっそのこと変えないでこのままに置かれたほうが、私は、無理がなく、すなおにいけて、そして社会的な問題を引き起こさないで済むのではないかというふうに考えるわけでございますが、その点はいかがでしょう。
  246. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生指摘のとおり、母体の健康というものは、まさに総合的あるいは個々の母体というかおかあさんに即して判断さるべきものかと思います。したがいまして、そういうことからこそ、従来のように身体的理由、経済的理由というような、二つの理由だけに限って、母体の健康をそこなうとするよりは、総合的に「母体の精神又は身体の健康を署しく害する」ということに改めたほうが、より社会的に適応できる、こういう判断から改正をお願いしたような次第でございます。
  247. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ことばには書いてありませんけれども、経済的理由が精神的理由を引き起こすわけです。そして母体の健康を阻害するということも起こり縛るわけでございます。だから、そんなに精神的理由というのを重要にお考えになるのであるならば、精神的理由をプラスなすったらいかがですか、はっきりと書いておいたほうがはっきりするというのならば。これは精神障害者のことをいっているのではないと思います。そうじゃありませんね。   〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕
  248. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 まさに先生指摘のとおりで、むしろ「母体の精神」というのは、WHOの定義にあるような健康という意味の精神でございます。ただ、その母体の精神または身体と、精神上だけのこともあるし身体上のこともある、あるいは身体と精神と総合された健康上の害するおそれもある場合もあるということで、「母体の精神又は身体の健康」というように表現させていただいたほうが、より適当であり、具体的な個々の事例に即して中絶理由になるというようなことで、こういうように改正をお願いしている次第でございます。
  249. 金子みつ

    ○金子(み)委員 貧困と疾病との悪循環というのは、GNPが二位か三位になった日本においても、依然として厳然と存在しているものです。ですから、経済的な理由というのが母体の健康を阻害するということは、一番直接的な理由としてあらわれてくる問題だと思うわけです。ですから、経済的理由というのをおはずしになる理由が、精神的理由にすりかえられる、あるいは、すりかえということばが悪ければ、入れかえをなさったということになりますが、入れかえられただけの意味が出てこないと思うのです。その点は私ども非常に不安に感じているところなんでございます。そのことが不安なく、経済的な理由も落としたけれども、経済的な理由は必要ないということがはっきりとわかるという状態でなければやはりむずかしいということは、私は考えなければならないと思っております。
  250. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 おことばを返して恐縮でございますが、理由が経済的理由、身体的理由だけでなくて、他にも社会的理由、その他理由がかなりたくさんございますので、むしろ個別に理由をあげるよりは、先ほどから申し上げさせていただいておりますように、医学的のみに純化をいたしまして、母体の精神または身体の健康を著しく害すると、総合的な判断から中絶理由にしたほうがいいのじゃないかと思って、こういう内容にさしてもらっている次第でございます。
  251. 金子みつ

    ○金子(み)委員 あと一つだけにしていまの問題はやめにしようと思います。  一つお尋ねします。それならその精神的理由というのは、何の基準でおはかりになりますか、どうやっておきめになりますか。
  252. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 これはまさに母体の個々具体的な、総合的な判断でなさるべきものだと思いますが、幸いにして人工妊娠中絶をできる指定医師というのは、特別に優生保護の中で指定医師として位置づけられております。全国に一万二千人ぐらいの特段の資格というか指定された医師がおられますので、医学的な常識に基づいて、当然の判断がなされると思っておる次第でございます。
  253. 金子みつ

    ○金子(み)委員 産婦人科の医師は、全部指定医じゃないですか。
  254. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 よく数字がはっきりいたしませんが、産婦人科の御専門のお医者さんは一万五千人ぐらいあると聞いておりますが、現在指定医になっておられる方は、一万二千人ぐらいでございます。
  255. 金子みつ

    ○金子(み)委員 数字のことは特に議論するつもりはございませんけれども優生保護法の一部改正が何年だかにございましたですね。産婦人科の先生方がお一人で結論をくだすことができるという改正をなさったことがありますが、あのときに産婦人科の先生方はみんな指定医になられたのだと私は理解していますが、間違っているでしょうか。
  256. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 たしか昭和二十七年かの改正かと記憶しておりますが、これは指定医になるためには当然医師御本人から指定医としての手続をおとりになるはずの仕組みになっておりますから、産婦人科のお医者さんの中でも手続をおとりにならないとかあるいはその他の理由で、今日では産婦人科のお医者さんが全部なっているようではないようでございます。
  257. 金子みつ

    ○金子(み)委員 産婦人科の先生が適当であるとか適当でないとかいうことを申し上げようとは思っておりませんけれども、しかし精神的理由というのをはかる尺度も基準も標準も何もなくて、その先生の主観でその先生がそうだとお考えになれば、そうなっていくということが結論として出てくると思いますね。ですけれども、それは非常にあいまいだと思いますし、非常に危険だと思います。どの先生もりっぱな先生なんだと思いますから、おそらくお間違えになるようなことはないとは思いますけれども、しかしそれは、厚生省としてはそのようなあいまいなきめ方で法律をおつくりになるというのは、危険ではないでしょうか。
  258. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 こういう指定医の方々というのは、やはり社会的にかなり豊富な経験もお持ちになっておりますし、また日ごろ学会等で常に研さんも研修もやられております。また私どもとしても都道府県を通じて指定医師とも連絡して指導等にも当たっておりますので、したがいまして医学的な常識に基づいての御判断については、万遺漏ないものと確信しておる次第でございます。
  259. 金子みつ

    ○金子(み)委員 まあ医者の常識ということで片づけられると思いますので、その点は非常に不安でございます。私は、そういうものを法律でおきめになるということは少し軽率だと思うのですね。むしろ決定をするのならば、たった一人の医師がきめるのではなくて、医師群でおきめになる——よその国の法律を見ますと、最低二人以上ですね。二人以上の医師が診察をして、話し合いをした上で決定するという線が出ています。日本の優生保護法も、初めは審査会か何かがございましたはずです。それをはずして、医師単独でできるというふうに改正が行なわれたと承知いたしておりますけれども、そのこと自体非常に疑問があったわけですから、それをさらに精神的という、医学的とはいいながら、つかみどころのない非常にむずかしい問題をたった一人で決定させるということは、たとえそれが医師であるからとはいっても、私ども国民としてはやはり不安であると思います。ですからこの点はもう少しはっきりしたものが定められなければ、私は了解できないというふうに考えるわけでございます。
  260. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生におことばを返すようでございますけれども、従来から指定医の方々につきましては、関係の医師会あるいは都道府県等で研修等が行なわれておりますし、そもそも医師は医学的な判断というのは、常に自己の責任においてなされるわけでございますから、こういう方々の医学的常識においてまず間違いなく行なわれるものと確信を持っておる次第でございます。
  261. 金子みつ

    ○金子(み)委員 医師が一〇〇%問題なく、間違いなく国民の健康を守り得るということを前提になさっているんだというふうに伺いましたけれども、人間ですから——私は医師を信用しておりますし、医師に信頼をしたいと思います。しかしそうではあっても、医師にも誤診がないわけではありません。それはあってもしかたがないと思います。それが許せないというわけではありませんけれども、ほかのものとは違って、精神的理由という非常にあいまいな、きめ手のない理由をお持ちになっていらっしゃったところに非常に問題があるというふうに考えておりますが、この問題は最後まで私は賛成できないということを申し上げて、時間の関係もございますので、次の問題に移っていきたいと思います。  同じような意味で、非常にはっきりしないものを法律できめようとなさっているものに、胎児が重度の身体または精神の障害の原因となる疾病または欠陥を有しているおそれがあるかないか、この問題ですね。これを検査する方法、こういうものが今度の法案にも出てまいりますね。それによってきめて、そして将来障害がある子供として生まれてくるであろうと推定した場合には中絶をすることができる、してよろしいということになっているわけなんですけれども、この点について少し伺いたい。  この問題は、いわゆる羊水検査ということになるわけだそうでございますが、その羊水検査に関する医学的根拠というのを少し教えていただきたい。
  262. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 あまり医学的根拠ということになりますと、私しろうとでございますが、ただ最近の医学の発達によりまして、特定の疾病とかにつきましては、レントゲン検査なりあるいは羊水検査等によりまして、かなりのものが、たとえば重度の身体障害であるとかあるいは重度の精神薄弱であるというような原因となる疾病等を発見できるようなことになっているように、最近の医学界の常識と申しますか、聞いておるような次第でございます。したがいまして、そういうような場合にたって両親が希望すれば人工妊娠中絶の理由にすることができるということに、規定として改正案に入れさしてもらったような次第でございます。
  263. 金子みつ

    ○金子(み)委員 非常に危険です。はっきりしたお答えがいただけませんでした。あるように聞いておりますというふうなお答え、そんなことでこんな法律をつくっていいのでしょうか。全く安全、全く信頼できる、絶対的なものであるかどうかということが確かめられないでいて、何で法律なんかになさるのでしょうか。
  264. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 ちょっと医学的な技術問題になりますので、母子衛生課長から御答弁させたいと思います。
  265. 本田正

    ○本田説明員 疾病にもいろいろございますが、まず大きく分けまして、染色体の異常ということがございます。これは、たとえば蒙古症といわれますダウン症候群、これが染色体異常に入ります。それからもう一つ、先天性代謝異常という疾病群がございます。こういったものの中で、現在技術的に胎児の羊水を取りまして細胞を見ることによりまして、事前に非常な高い確率をもって診断ができるということが一般的に知られております。
  266. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、日本赤十字中央医療センター長、東大名誉教授小林隆先生から伺いました。先生はこうおっしゃっています。この問題は目下学会の専門部会で話題になっているトピックスであることは事実だ。しかし、これは検討中である。学会としては結論を出していない。従来百数例に近い経験例が北田教授によって出されているということを知ってはいる。しかし、非常に専門医が少ない。将来は検査センターのようなものができるのかもしれないけれども、今日ではその状態ではない。兵庫県において一部行なわれているにすぎない。羊水を摂取すること自体、子宮内圧の変化を来たすこと、胎児に傷つけることなどの障害を与えないとも限らないので、はなはだ危険である、こういうふうにお答えをいただきました。それでも一般論でございましょうか。
  267. 本田正

    ○本田説明員 現在こういった羊水診断ができる技術を有しているところは、たいていの大学病院でできるわけでございます。たとえば東北大学とかあるいは東京大学あるいは日本大学、そういったところでもすでに実施がされております。  診断ができる病気といたしましては、先ほどは疾病群で申してみましたけれども、たとえばティザックス病とか、あるいはニーマンピック病、そういった病気もこの中に含まれております。
  268. 金子みつ

    ○金子(み)委員 こまかいことを伺ってもどうかと思いますので差し控えますけれども、大学はほとんど全部の大学ではない。いまおあげになったごく少数の大学くらいしかないと思いますし、私が小林先生に伺ったのは、昨年の四月のことでございますから、大学でやっていることがわかっていらっしゃれば、私にはちゃんと話をしてくださったと思います。しかし、そのことはおっしゃいませんでした。そして、非常に数が少ない、何人それができる医師がいるかということも非常に疑問だとおっしゃっていらっしゃいました。ですから私は、誠実にと申しますか、真摯な態度で仕事をしていこうとする医師の場合は、小林先生のような回答になるのだろうと思います。まだその程度にしかわかっていない、その程度にしか行なわれていないような、しかも学会ではまだ結論も出していないような技術を、それを法律によってきめて、そしてできるようにするというのは、私は言語道断だと思います。このような不確実なものを、法律によって実施できるような形にしてしまって、もし万一の問題が起こった場合に、国はその人に対して責任をお持ちになるわけでしょうか。
  269. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 ですから、これは御両親の方がたって御希望される場合にできる仕組みでございまして、別に国のほうでなるべくこうしなさいというような干渉するような意図は、全く持っていないような次第でございます。
  270. 金子みつ

    ○金子(み)委員 国は必ずそういうふうに御返事をなさるわけですね。国には責任はないのだ、両親が、本人が希望したのだから責任は本人にあるのだ、こういうふうにおっしゃってしまうわけなんですけれども、できるということを法律で決定なすったのは、国じゃないのですか。
  271. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 したがいまして、先ほど母子衛生課長が申しておりましたように、こういうことがかなりの確率で発見できるというのが、現在の医学界の定説というか、学会の域まで達しておりますので、したがいまして、法律改正案をお願いした次第でございます。
  272. 金子みつ

    ○金子(み)委員 定説になっていないはずです。お調べいただきたいと思います。
  273. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 かなりの高い確率で発見できるということに、定説になっているというふうに私どもは聞いておる次第でございます。
  274. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私はこの問題は非常に大きな問題があると思います。定説になっていると聞いておるとおっしゃいますけれども、もっとはっきりとお調べいただきたいと思います。定説になっているのだったならば、私は小林教授からこのような返事をいただく必要はないと思います。ですから、私はこれはやはり定説になっているとは考えられません。部分的にはそういう話をしている人がある、一部話は出ていると、もちろん思います。話題にのぼっていることでございますから。しかし、それが学会が認めた定説だということにはなっていないはずです。そういうようなものを法律にして、法律の規定として実施するということは、私は非常に国民の健康を冒=するものじゃないかということすら考えたいと思いますが、この問題は絶対に許せない問題だと思います。  両親が希望したのだからいいのだということは、私は言いのがれにすぎないと思います。これはやはり国として自己満足を持っていらっしゃるからそんなことがおっしゃれると思いますけれども、国はそれでいいかもしれません。厚生省の立場はそれでいいのかもしれませんけれども、しかし、それでは国民はどうするのだ、国民は非常に危険にさらされると思います。やっていいということになるならば、やりたいとおかあさんたちは思うと思うのです。心配ですから、非常にやりたいと思うだろうと思います。しかし、非常に危険が伴っているということも同時によくわからせなければならないし、はっきりしていないものをやってもいいと国がきめるということは、私は非常に国民を無視していると申しますか、国民の生命を非常に軽んじている考え方だろうというふうにしか考えられないわけです。  基本的な人権を無視している、あるいはもっと悪いことは、このことによって何が結果的に出てくるかと、考え方根拠にあるのではないかとすら私どもは疑いを持ちますのは、これによって生まれてくる子供を選別、差別するわけですね。健康な子供の場合には、それは中絶はさせられない。しかし障害を持って生まれてくるであろうという子供に対しては中絶してよろしい、こういうことになっているわけでございますから、非常に大きな問題だろうと思います。ここに同じ国民に対して差別思想というものが非常にはっきりあらわれているということは、おそろしいことだと思うのです。昔だったならば、戦時中だったならばナチスばりだといわなければならないくらい、私は非常におそろしい問題だと思いますが、そういう思想があったかなかったかなんということを伺っても、お返事なさるはずがないからそういう御質問は申し上げませんけれども、この取り扱いの陰にはその問題がひそんでいるというふうに、だれもが感じるだろうと私は思います。私一人ではないと思います。むしろこれは、学会の定説になっていればそれではいいのかという問題がその次に起こりますが、私は学会の定説になっていようとなかろうと、関係はないと思うのです。そんなものは全然関係ありません。こういうような方法でもって人間を差別するということは絶対許せないと思います。障害者はありのままの姿で解放されて、自由で、障害が障害と感じられないような社会をつくることのほうに努力をすべきではないでしょうか。それが私は国の責任だと思うのです。その責任を全うしないでいて、障害者の人たちだけは中絶してもいいなどということは言語道断だと思います。私は優生保護思想というのがここにはっきり出ていると思うのです。だから優生保護法という名前をつけていらっしゃるというふうにしか考えられない。この点は非常におそろしいことだと思います。このことはさらに、いま改正されようとしております刑法の中で、非常に重点を置いて保安処分の問題を強化しようとしておりますね。ここへ結びつくということも考えられますので、私はとてもこの問題は許すことができない非常におそろしいことを国は考え出したものだというふうにしか考えられないのでございますが、いかがでございましょう。
  275. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題につきまして私からお答えを申し上げておきますが、羊水検査の結果重度の身体障害を有するということが非常に高い確率で証明される、こういうのが医学的な観点でありましたので、こういう規定を挿入することにいたしたわけでございますが、十分承ってまいりますと、こういうふうな検査をなし得る専門の機関もまだ十分ではない、また医学的にもいまお述べになりましたような御意見を持っておられる方もあるということも承知いたしております。さらにまた、差別観がその根底にあるではないか、こういういま御指摘のような御意見のあることも私は十分承知をいたしております。そういうふうなもろもろの要因を勘案いたしまして、この条項につきましては国会の場において削ったらどうかという御意見があることも承知いたしておりますので、国会の場においてひとつこの問題については善処をしていただく、私はこれをあくまでも尊重をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、皆さま方の審議の結果削れということであるならば、私どもは異存はないということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  276. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私はその問題にだけこだわって削ってくれとかということは一言も申し上げておりません。こういう問題を取り上げられたこと自体に問題があるということを申し上げているわけでございます。  時間も参りますので次に移りますけれども、いま一つ、たいへんに奇妙な規定をなさろうとしていらっしゃる。ほんとうにびっくりいたしておりますけれども、優生保護相談所の機能の問題ですが、優生保護相談所の業務として「適正な年齢において初回分べんが行なわれるようにするための助言及び指導」を加える。これ、法律なんです。ずいぶんおもしろいものを法律でおきめになったと、私は実にびっくりしているわけでございます。だれだって適正な年齢で一番いいときに産みたいと思うのはあたりまえだと思うのですよ。だれだってそうなんです。ただ、産む条件にないとき、あるいは産めないからそうでない時期に産まざるを得ないというかっこうになっているのが実情なわけなんです。それを、何もわざわざこんなふうなことを法律の中におうたいになることあるでしょうか。これは自由ですよ。アメリカだって、産むか産まないかは親の権利だということを最高裁が判決しているわけでございますね。これはほんとうに笑いものになるのじゃないか、と申し上げては失礼ですけれども、これはきっと医学的問題に集約をして医学的希望の表現でこういうふうになったんじゃないかなと思います。それならそれでもいいですけれども、これは法律できめるような問題じゃなくて、衛生教育として指導するべき問題ではないでしょうか。これはまさしく衛生教育の役割りだと思うのです。もしこれを法律でこのようになさろうということでございますと、たいへんに奇妙なことが起こってくると思います。たとえば出産の国家管理ということばを使ってもいいほどになるわけですね。出産の国家管理は少しさかのぼりましたら夫婦生活の国家管理ということになるし、さらにそれはもう一つ前に戻っていけば結婚の国家管理ということにならざるを得ないので、まことに奇妙でして、こんなところで議論するのもおかしいぐらいだと思うのです。これはプライバシーを侵害することだとか、あるいは国家管理をして個人の自由を奪うことであるなんというようなことをここで議論をするまでもなく、全くおかしな問題だと思います。おかしいおかしいと言っていても困るわけでございますけれども、非常にファッショ的な、弾圧と言っては少し言い方が強いかもしれませんけれども、非常に非民主的な行き過ぎた考え方の法制化でございまして、世界にもおよそ類はないと思いますし、まことにおろかしい政策と申しますか、おろかしい政策だけだったらいいんですが、これは軍国主義につながっていくおそろしい考えになるのじゃないかなというぐらい、それすら私は考えるのですけれども、そんなことはおまえは杞憂である、そんなことはないのだ、安心しておれとおっしゃっていただけるのでしょうか。
  277. 翁久次郎

    ○翁政府委員 この優生保護相談所は全国に保健所に主として設置されておる機関でございまして、現に結婚の相談あるいは優生保護上必要な知識の普及、衛生教育というようなことについて主として相談を行なう業務をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘のような御意見もあろうかと存じますけれども、この改正をいたそうとする趣旨は、むしろこういうところで相談を受ける場合に、母性保護という点に着目いたしますと、高年齢で出産をなさる場合に母体が安全でない確率が非常に高いということに着目いたしまして、相談業務の一つとしてそういう相談に応じて、そして衛生教育あるいはその他結婚相談等についてよりよい適切な助言をしようということが、この改正の趣旨またはねらいになっているわけでございます。
  278. 金子みつ

    ○金子(み)委員 御説明はそうだと思いますけれども、この規定はやはりおかしいと思います。私は、今度のこの法案の改正全体を通して考えてみますと、いろいろと申し上げてみましたけれども、結局は中絶天国というような汚名を返上したいとか、あるいは人工中絶はきびしくしようというようなことを内在させているということがわかります。そしてこれは人命尊重である、あるいは堕胎天国を追放するというふうな一見モラル的な考え方を表に出して、そして結局は、結論としては、国民生活が非常に圧迫されていってしまうということになる改正だと思います。先ほど来申し上げましたように、中絶手術料はきっと上がる。やみで中絶するようになるでございましょうから、やみの中絶はふえるし、手術料は高くなるし、そして手術自体も非常に危険になるということは間違いないと思います。あるいはまたさらに両親が望まない子供、逆の立場から申しますと親に望まれない子供が生まれる、あるいは未婚の母などのような母子家庭がふえていくであろう、これはみんな社会問題としてこれから厚生省がお引き受けにならなければならない問題がふえてくるというふうに考えられます。  それだけでなくて、この法律の背景には、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、人口増強問題というものがひそんでいるのじゃないかというふうな気もいたします。若年労働者の労働力を増強するというようなことだって考えられているのじゃないかと思われる節もないではございません。現在でも年々百二十万も増加しております日本の人口が、資源もない日本でございますのに、これ以上国民がふえていったならば、国民を生活の危機におとしいれるということにもなりかねない。それは一つも触れてはおりませんけれども、陰にひそんでいる背景にある問題だと考えられると思います。ですから、日本が高度経済成長をずっと続けてまいりまして、どんな国になって、どんなことになるだろうかと世界の国々が注目をして見ておりますその点、そしてさらに、日本は軍国主義の復活をするんじゃないだろうかということをおそれながら見ている外国の人たちの目には、この問題は非常に問題になると思います。このような法律改正が行なわれることにつきましては世界的な嘲笑を買うと同時に、また世界から非常に憎悪の目で見られるのじゃないだろうかというふうなことも考えざるを得ないと思うわけでございまして、この法案の改正につきましてはどのようなお手入れがなされようとも、全面的に反対をするものでございます。そのような意図が背景に全くないとおっしゃれるでしょうか。
  279. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先ほども申し上げましたとおり、この改正は医学的な観点からの改正でございます。したがいまして先生おっしゃるような、たとえば人口政策につながるとかそういう意図は全くなく、まさに医学的な見地から、衛生的な見地から母体の保護、健康という観点からの改正になっておるような次第でございます。  なお、厚生省の付属機関の人口問題審議会でも、過般の四月十五日でございますか、答申がありますが、その中にも人口妊娠中絶はさらに減少させるようにというようなのもございます。いずれにいたしましても、全く医学的、公衆衛生的な観点からの改正をお願いしておる次第でございます。
  280. 金子みつ

    ○金子(み)委員 時間でございますのでやめますが、医学的問題に集約するということを盛んに強調なさいますが、それだからこそ、取り残された社会的な問題はどうなるのだということを私は先ほど来申し上げていたわけでございます。時間でございますから、ここでやめることにいたしますが、最後に大臣に申し上げておきたいと思います。  先ほど大臣は羊水チェックの問題について、修正があればしてもやぶさかではないというふうにおっしゃっておりましたけれども、あの一点だけをお考えになっていらっしゃるのであって、その他の改正の部分についても改正することについてやぶさかでないとお考えなのでございましょうか、どうでございましょうか。その点を最後に伺わせていただいて私は質問を終わりたいと思います。
  281. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 その身体障害者条項については、私はこだわってないということをはっきり申し上げましたが、そのほかの経済的事由を削るという問題につきましては、これはすらっと読んでいただければ非常にわかりいいと思うのです。いままではむしろ狭められたような——広い狭いということをいうといけないようでございますが、狭められたような経済的理由それ以外にはもう絶対——堕胎罪のこれは免責法規ですからね。そういう規定でありますから、経済的理由、身体的理由二つだけに限定して母体の保護をはかるということよりも、むしろ母体の精神、健康をはかる、こういう考え方から、私はこのほうが適切であるのではないか、こういうふうに考えておるのです。私は広いとか狭いとかといいませんが、ある意味からいうと、これは相当広くなっております。私はそう思います。だがしかし、広いとか狭いとかいうことは私どもの意図するところではございませんが、要するに、母体の精神と健康を著しく害するおそれのあるときは中絶をいたしましても、それは堕胎罪にはなりませんよ、私はこのほうがすらっとしてわかりいいのではないか、こう思います。
  282. 金子みつ

    ○金子(み)委員 終わります。
  283. 野原正勝

    野原委員長 大原亨君。
  284. 大原亨

    ○大原委員 私の質問に入る前に、いままで金子委員との質疑応答でありましたことで、答弁で非常にわからない、言うなれば独断的な答弁が私はあったと思います。というのは法律の十四条を見て今回の改正案考えてみますと、いまの「重度の精神又は身体の障害の原因となる疾病又は欠陥を有しているおそれが著しいと認められるもの」こういう文章があるわけですね。その「重度の精神」という中に社会的な背景、その中にさらに経済的な条項、こういうものが含まれておるというふうなそういう解釈が、いまの議論聞いていまして、この法律からどこから一体出てきますか。もう少し主観的でなしに法律的に明快に答弁してください。そんな法律がいままでどこにありますか。もし答弁ができなかったら法制局長官を呼ぶ。そんな解釈がどこにありますか。それを何回もオウム返しに繰り返しておれば政府のつとめが終わるというのだったら、国会の審議は要らないですよ。いかがですか。
  285. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先生の御指摘のところは、十四条の今度挿入をさしていただこうとしている四号のことかと思いますが、その四号の「その胎児が重度の精神又は身体の障害の原因となる疾病」ここの「重度の精神」はまさに医学的な条文でございます。したがいまして、医学的な意味における重度の精神障害としか考えていないような次第でございます。
  286. 大原亨

    ○大原委員 そこで、その場合に精神という解釈をそのようにしておいて、そして人工中絶の理由として経済条項を削除して精神条項を入れて、範囲が狭くなっていないという強弁ができますか、母体保護の面において。法律的に答弁してください。
  287. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 五号のほうは確かに先生指摘のとおり「母体の精神又は身体の健康」としております。従来の規定は「母体の健康」でございますから、母体といたしますとただおかあさんのからだということですから、いかにも肉体的な関係としか考えられませんが、それを同じように身体の健康といたしますと、内臓の病気だとかあるいは外傷だとかいうようないわゆる外見的な病気としかとられませんので、ともすれば精神の健康を害するという精神面のことが、法律のそのままの文理解釈では出てこないおそれがあるわけでございます。したがって入念的な意味で、精神の健康ということをはっきり入れておいたほうが、より明確になるということで、この際、単に身体の健康でなくて、精神の健康ということも入れさしてもらったわけでございます。精神の健康という意味は、いわゆるWHOの定義にあるような積極的な意味合いにおける精神の健康ということを考えておる次第でございます。
  288. 大原亨

    ○大原委員 健康の中にたとえば肢体不自由児、精薄児童、こういうふうな障害者がいるわけです。だから普通の常識からいうなれば、WHOにおいて、非常に広い意味において、法律的でなしに文章的に解釈しているそういう問題をこの法律の中に入れて、狭い範囲とか広い範囲というふうに主観的に解釈できるようにするならば、これは非常に問題ではないですか。一番問題となる経済条項をなぜカットしたかという理由になりますよ。なぜ精神条項をわざわざ入れたかということになりますよ。社会的な背景といってまだ広い背景があるのだというふうなことは、この法律のどこにもないじゃないですか。法律というものは国民が見て権利義務の関係を書いておるのだし、医師にとっては自分がやる仕事の範囲については明確でなければいかぬわけですよ。いかがですか。
  289. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 母体の健康ということだけになりますと、精神ということは含まれないのではないかというおそれから、先ほど申し上げましたように、入念的な意味で精神ということを入れてきたわけでございまして、むしろ精神の健康を害するということを入れることによって、逆に医師としては母体の健康ということを個々総合的に判断できるという認識に立ったような次第でございます。
  290. 大原亨

    ○大原委員 それではちょっと念のために聞いてみましょう。この精神という範囲は政令できめるのですか。列挙するのですか。
  291. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 これにつきましては医学的な常識に基づきまして医師の判断にゆだねるつもりでございます。したがいまして、政令等で規定する考えはございせん。
  292. 大原亨

    ○大原委員 この保護法は国民の法律なんですよ。国民がきちっとわかるような中身を明示しないで、かってな解釈ができるような、そういう解釈をするということはおかしいじゃないか。なぜ経済条項をカットしたか、こういう質問に対して答えてごらんなさい。
  293. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 先ほども申し上げましたけれども、従来は母体の健康を害するおそれのある理由といたしまして、身体的理由と経済的理由の二つしがなかったわけでございます。むしろ今日におきましては、そういう二つだけの理由というよりは、そのほかの、たとえば社会的理由等もございますので、そういうものを個別に理由をあげるよりは、むしろ理由の列挙をやめて、医師の医学的な判断から、最終的には医学的な判断に帰結するわけでございますが、よって来たる原因はいろいろのケースがございますので、そのよって来たる原因を列挙をしないで、総合的に母体の精神または身体の健康を害するおそれがあるものとさせてもらったような次第でございます。
  294. 大原亨

    ○大原委員 経済的な理由も精神や身体の健康に影響を及ぼすということで社会的だとあなたは前から言っているのだけれども、そんな法律の書き方はないですよ。経済条項をカットする必要はないじゃないですか、いままでずうっと国民が熟知してきたわけですから。これは医者だけの法律じゃないのですよ。国民の法律です。あとで議論するけれども、日本の人口の量と質をどうするかという議論でしょう。人口をどうするかという問題とも関連しておるわけです。そういうときにこんな議論で、経済条項をカットした理由といたしましては、これは全然理由にならぬと私は思います。そこで、この文章についていままでの質疑応答を繰り返してもだめですから、いままでの質疑応答をぴしっともう少しこまかに文書で出してください。よろしいですか。
  295. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 文書で出せという仰せでございますけれども、いままで御答弁させてもらったような内容でございますので、速記録に残っておるという——文書に書きましても同じことでございますけれども……
  296. 大原亨

    ○大原委員 そんな精神条項の解釈ではそれは全然納得できないですよ。国民のだれが見たってこの中へ経済的な、社会的な背景が入っておるということはないですよ。どこにそんな法律がありますか。なぜ経済条項をカットしたかという理由には絶対にならぬですよ。  それで、いま金子委員から話がありました医師会が反対をしておる。日医の会長が社会労働委員に全部反対の打電をしております。羽生田君がきょう質問になるというので私も期待しておったわけです。あの人は丸茂君と一緒に医師会出身の政治家ですから、どういう質問をされるかということで期待しておったわけです。  ここで第十四条に「社団法人たる医師会の指定する医師(以下指定医師という。)」というふうに書いてあるわけですが、社団法人医師会の条文がこの法律に入っているわけです。私は医師会が反対をされる理由がいろいろあると思う。あると思うけれども一つは今回の刑法改正との関係ではないかと思う。きょうは法務省が見えておるはずですから、法務省の刑法改正の堕胎罪についての部分につきまして、お答えをいただきたい。
  297. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 刑法改正につきましては、ただいま法制審議会で刑法の全面改正をすることが適当かどうか、それからその個々の内容について審議が行なわれておるところでございまして、近く答申が得られるものと思っております。この刑法改正段階で堕胎罪についてもいろいろ議論がございまして、堕胎罪に関する規定は削除したほうがいいのではないかというような意見もあったわけでございますが、法制審議会の多数の意見は堕胎罪は残しておくべきである、現在直ちに堕胎罪に関する規定を削ってしまうのは時期尚早である、こういうことでほぼ現行法と同じような規定が残ることになったわけでございます。
  298. 大原亨

    ○大原委員 刑法と優生保護法との法律関係はどういうことですか。
  299. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 優生保護法におきまして人工妊娠中絶が許される場合、すなわち優生保護法の手続によりまして適法に行なわれます人工妊娠中絶については、刑法の規定は適用されないことになっております。
  300. 大原亨

    ○大原委員 だから特別法優先の原則で優生保護法は堕胎罪の部分については、優生保護法適用する、こういうことだと思います。そこで問題は、いまのように経済条項のような、今日だって経済条項の問題はあとで議論するけれども一つも変わっておらぬけれども、経済条項という国民が選択する余地のあるそういう材料がいままであったわけです。明確にあったわけです。そういうときに、その経済条項をカットいたしまして、いま質疑応答を母体保護の問題について「妊娠の継続又は分娩が母体の精神又は身体の健康を著しく害するおそれのあるもの」というふうに変わったわけですね。そういたしますと、医師の判断をする範囲というものが全責任を負うことになって人工中絶を希望する国民の立場というのが、法律的には全面的に否定されるわけですから、そういうことになると範囲が狭くなって、医師がこの刑法の堕胎罪にひっかかる場合が多い。そういうことを日本医師会は最終段階で配慮したのではないか、こういうふうに私は思います。その点について法律的な見解をあなたのほうからお聞かせいただきたい。
  301. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 優生保護法の第十四条の改正によりまして、人工妊娠中絶の許される範囲が広くなるのか狭くなるのかという問題につきましては、私どもは、先ほど厚生省のほうでお答えになっておるように聞いておるわけでございますが、その点は別といたしまして、人工妊娠中絶の許される範囲が広くなれば堕胎罪として処罰される範囲は狭くなりますし、人工妊娠中絶の許される場合が狭くなれば堕胎罪として処罰される範囲は広くなる、そういう関係でございます。
  302. 大原亨

    ○大原委員 法律の見解としては非常に明確です。だから後者の問題を私ども指摘をしているわけです。審議官がどんなへ理屈を言いましても、法律解釈でそんな解釈はないです。いままでの法律解釈で経済条項をカットして、精神条項で、社会的な問題を含めて範囲が実情に即して広くなるというような解釈で、いままでそういうような法律があるかどうか。私が調べた限りではないですよ。それを、言うなればへ理屈で押し通そうということは私は絶対に納得できない。この点は第一点として指摘しておきます。  もう一回聞きますが、優生保護法の立法の趣旨、目的というのをもう一回簡潔に言ってください。
  303. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 この優生保護法ができましたのは昭和二十三年でございますが、その法律の目的といたしますところは、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに母性の生命、健康を保持することを目的とする、つまり二本の柱になっておりまして、一本は優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する、もう一点は人工妊娠中絶にあるような母性保護という二つの柱が目的になっておる次第でございます。
  304. 大原亨

    ○大原委員 優生の保護と母性の……。
  305. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 第一点は「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という、いわゆる悪質なというか、重い遺伝の方を見つけて、病気等の遺伝の防止ということが第一点でごいます。
  306. 大原亨

    ○大原委員 悪質なというのは、何ということですか。
  307. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 悪質と申しますか、重い遺伝性の疾病等の場合でございます。その場合に優生手術ができることになっております。それが第一点の、法律の目的とするところでございます。  第二点は、母性保護の見地からの人工妊娠中絶でございます。
  308. 大原亨

    ○大原委員 いままで長い間、金子委員とずっと質疑応答があったわけですが、昭和二十三年に制定された優生保護法が今日までずっと時間がたっておるから、情勢が変わってきた、そういうことについてくどくど話がありました。  簡潔に言って、どういう情勢の変化があったのか。
  309. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 まず第一点は、医学、医術の発達によりまして、たとえば胎児のときにおいて悪い場合、特定の疾病につきましては重度の身体障害者、あるいは精神障害者の原因となる疾病を発見できるようになった。これは医学の発達から来たことだと思います。  それから第二点といたしましては、経済的理由によって「母体の健康を著しく害する」、こういう条文が入りましたのが昭和二十四年であったわけであります。当時の時代背景といたしましては、国民栄養の不足とか、国民生活の状況等を勘案されて、こういう条文が入ったわけでございますが、今日の状況になってまいりました場合には、むしろ経済的な理由だけというよりは、他の理由によっても母体の健康をそこなう場合があるという判断から、経済的理由と身体的理由だけにとどめずに、総合的な医学上の判断からなすべきという社会的背景の推移が第二点だったと思っております。  第三点といたしましては、優生保護相談所の問題につきまして、特に高年齢層の分べんというのが母体の健康上、種々問題があるということが最近指摘されておりますので、医学的な観点から、優生保護相談所につきまして、新たな機能を付与させていただきたいということでございまして、いずれにいたしましても、医学的な進歩と、それから社会的背景、それから時代の趨勢の推移、こういう観点からの改正ということでございます。
  310. 大原亨

    ○大原委員 いままで優生保護法改正が議員立法や政府提案で社会的に議論になりまして、じゃ、なぜこれを改正するのかということで議論をされた問題は、あなたが言ったことだけじゃないわけです。知っていますか。
  311. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私、実は、寡聞にして、不勉強で、その点よく存じませんが、ただ、十二回にわたって、優生保護法というのが議員立法で、あるいは政府立法で改正が行なわれてきたことにつきましては、承知しておる次第でございます。
  312. 大原亨

    ○大原委員 経済条項をカットした理由として第一にあげられておる、世間でいわれてきた問題、これは私が順次指摘いたしてみますから、その見解を言ってください。  第一は、出生率の低下と国力の低下、これに対応して優生保護法改正すべし、こういうことがいわれましたが、承知をしておりますか。これに対しては、どういうふうな理解をしておりますか。
  313. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 世間では、人口問題をからめた議論があったかもわかりませんが、私どもとしては、こういう人口問題との関連におきます改正ではございませんで、あくまでも医学的、公衆衛生的見地からの改正で提出させていただいている次第でございます。
  314. 大原亨

    ○大原委員 これは野原委員長も言われたことがあるのです、私=議事録を調べてみましたら。前の佐藤総理も言われたことがあるのです。これは参議院でしたけれども、やはり労働力人口の不足、これでは日本の経済がささえられない、こういう意味のことを——これは労働大臣野原さんのやつは少し円滑でしたけれども、佐藤総理のほうは非常に露骨で、程度の低いものであったように私は理解しております。この解釈についてはどうなんですか。国会で政府が見解を述べている、与党側の質問に対しまして答弁したのですから、本音が出たことになりますが、野党だったら少し警戒して、どこからかしっぽをつかまれやせぬかと思って用心するのですが、与党ですから、腹の中を言うわけですね。その見解についてはあなたはどう思いますか。——これは齋藤厚生大臣だな。あなたに聞いてもしようがない。
  315. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、そういうことを言うたこともございませんし、厚生行政の公衆衛生の観点からだけだと私は考えておりますが、私は言うたことはありません。
  316. 大原亨

    ○大原委員 それから第二は、性道徳が低下する。——あなたに対して質問はなかったことは事実だが、そのことについて、政府がいままで答弁したら、時の厚生大臣にしろ労働大臣にしろ、総理大臣にしろ、これは政府を代表して答弁しておるのだから、政府の見解ではないか。その政府の見解を変えたのかどうか、政府の見解を隠したのかどうか。こういうことを私は聞いているのです。あなたは行政大臣でもあるし、国務大臣ですから、わしは知らぬというわけにはいかぬですよ。当時の議事録を調べましょうか。——だから、政府の見解としてそういうことを言われたけれども政府委員ではそれは答弁できぬだろうから、大臣はどう思いますか、こういうことであります。その中に、性道徳の低下ということばもあります。厚生大臣は、どう思っていますか。
  317. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、優生保護法については、人口問題をからめるという考えはあってはならないものである、さように考えております。  それから性道徳の退廃ということについては、世間でそういわれておりますが、私も、そういう面は相当あるように感ぜられます。しかしそれは、この優生保護法とは何の関係もない問題だ、私はさように考えております。
  318. 大原亨

    ○大原委員 かなり世論やマスコミやその他で議論が進んだからあなたの頭の中が変わったのか、都合が悪いから当時の政府の見解を変えられたのか。しかしそれであるならば、当時、総理大臣が参議院の予算委員会で言った答弁などというふうなものは、政府として取り消してもらわなければならない。そのことは当時とほとんど変わらない。法律は同じです、四十七年と。そういうことが法律の解釈の基礎になったりいたします。そういうことのけじめをつける必要があるのではないか、これが第二の問題点であります。  第三の理由として、人工中絶をやると、母体の障害になる。まあそういう理由があげられております。人工中絶によりまして、優生保護法の、届け出されました中絶によって、あるいはやみ中絶等によりまして、事故が発生しておる実態というものはどういうふうに把握をいたしておりますか。これは答弁できるだろう。これが答弁できなければしょうがない。やる気がないのだったら、やめよう。そのくらいのことはできるだろう。
  319. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 具体的に、人工妊娠中絶の事故等につきましての統計的な把握はしておりません。ただ、医学的な常識といたしまして、人工妊娠中絶というのは、非常に母体の健康上よくない、こういうことは通説のようでございます。
  320. 大原亨

    ○大原委員 私は、外国の文献のコピーを見たけれども、やはり日本人の医師の特殊な技能ということもあるかもしれませんが、堕胎天国だと日本がいわれているのは、日本の医師のこまかな技術が非常に進んでいるということもあるわけですよ。それから外国では、母体の保護ということになると、アメリカ等では手術をしないで、何ですか、三カ月以内でしたら三センチ以下ですか、小さい。そうすると、それを吸引式でやるという問題もあるわけですよ、吸引式で。アメリカでも最高裁で論争になって、三カ月以下の胎児の堕胎、中絶についてはこれは刑法違反ではない、法律に違反をしない、合法である、自由である、こういう判決を下しているわけですね。日本において中絶をしている中絶の実態と、それによって受けておる母体の障害の実態、こういうものの資料を出しなさい。いま答弁しなさい。
  321. 本田正

    ○本田説明員 妊娠中絶によりまして起こる事故といたしまして、二つあろうかと思います。その一つは、個々の事例によりまして、中絶の首尾によりましてその場で事故が起こる場合、たとえば子宮のせん孔等がございます。このケースについては残念ながら私どもでキャッチしようがございませんのでわかりません。が、一方妊娠中絶を何回も繰り返しますことによって、非常に流産が多くなるとかあるいは母体がだんだん弱っていく、そういった発表は学会でたくさんなされております。
  322. 大原亨

    ○大原委員 じゃあそういう資料を出してごらんなさい。この法律は、初回妊娠の問題ですよ。若いときに産みなさい、こういうことを言っているけれども、そういう経済的、社会的条件については全然触れていない。そういう人工中絶による障害の実態ですよ、母体保護だと言っているのだから、あなたのほうは、追い込んでいったらそれだけ言っているのだから。その実態を知らないで、私もそのことを医者に聞きましたら、そんな問題はほとんど起きません、こう言っているよ、私の聞き方が悪かったのかもしれぬけれども。  この間、重度心身障害児の施設に行きましたら、四分の一が先天性で、あとの四分の三は出産のときにあやまちで障害者になったという例はありますよ。妊娠中絶で問題があったという議論、この問題だけに関して言うならば、私どもあまり聞かない。医者は逆のことを言っている。その実態を明らかに出してごらんなさい。
  323. 本田正

    ○本田説明員 先ほど申し上げました中で、個々のケースについてはとらえようがございませんが、後者の、たとえば一年間に二度も三度も中絶をやるとかあるいは中絶がそういうふうに重なりますと、次第に母体に害を及ぼしてくるということがいわれておりますので、それに関する資料は求められるだろうと思います。
  324. 大原亨

    ○大原委員 この間の人口白書の中にも、この優生保護法の中にある受胎調節、人工中絶、それから優生手術、三つの問題について触れておるようです。受胎調節について、日本ではほとんど手をかけていない状況だというふうなこともいわれて、野放しの状況だというふうなこともいわれておるわけですね。ぼくは、初回妊娠の問題を含めて、この中へ政策として盛ろうとした問題を含めて考えた場合に、受胎調節その他について国民としてどのような選択の道を選ぶかという、個人の生活やあるいは国際的な人口問題をふまえてやることの方向を示すことが、この政策の背景だと思うわけですよ。   〔委員長退席、斎藤(滋)委員長代理着席〕 それは、何回も何回も連続に妊娠中絶をやれば、母体を破壊しますよ。それならばアメリカのように吸引式でやれ。だから、手先だけの器用にたよってやるとあぶない。あるいはやるということになればいろいろな方法があるのです。だからそういう点からも、私は大臣に言った受胎調節の問題について、これはまた話が少し広がるけれども、しかしここの中に、法律にあるから、政府はどういう考えでやっているのですか。どういう中身で、どういう方針でやっているのですか。
  325. 翁久次郎

    ○翁政府委員 受胎調節の問題は、もっぱら母体の保護ということで児童家庭局が所管をいたしておりまして、児童家庭局を通じまして、各都道府県の保健所並びに優生保護相談所、母子健康センター等を活用して、この普及につとめておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、受胎調節実地指導員という方が全国に約四万六千名おられます。その方々を通じて受胎調節の個別指導、あるいは集団的に新婚学級であるとかあるいは母親学級であるとか、そういうことを通じて受胎調節の具体的な指導をしております。また別途、被保護世帯であるとかあるいは低所得階層の方々に対しては、器具、薬品というものを無償で給付するということによりまして、受胎調節をもっぱら母体の保護、母性の保護という立場で行なっているわけでございます。
  326. 大原亨

    ○大原委員 人工中絶と受胎調節と優生手術、これは一応の項目だけはあるわけですが、しかし、これを国民が、いまの家族計画の中で、母性自体がどのように判断をし夫婦がどのように合意をするか、こういう問題を含めて、これはやはり民主的に決定をしていくことを通じて政府の施策の浸透があるのだと思うのですよ。たとえば受胎調節は、実際には何でやっているのが一番多いのですか、二番目は何で三番目は何ですか、どういうように把握しておるのですか。
  327. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私、実際の専門家でございませんのでなんでございますけれども、受胎調節の中身としてはいろいろな方式、たとえば荻野式もその一つでございましょう。それからまた、ただいま器具として無償給付しておりますのはコンドームでございます。それから薬品としてはゼリー、それからペッサリーというものを給付しております。そして受胎調節の方法については、いろいろな現にある方法を健康をそこなわないように、母体を保護する立場において具体的に指導している、こういう実情であると承知しております。
  328. 大原亨

    ○大原委員 たとえば荻野式の確率は幾らですか、それからコンドームの値段は幾らですか。
  329. 翁久次郎

    ○翁政府委員 荻野式の確率については私はよく承知しておりませんが、コンドームの値段については、これは私も買ったことございませんので……。予算上の額を申し上げます。——具体的にここに資料として持ち合わせてございませんので、後ほど資料としてお届けしたいと思います。
  330. 大原亨

    ○大原委員 コンドームはゴムの値段が非常に上がったわけだ。これは三倍以上ですよ、私が聞いた範囲では。三倍、四倍だ。これはすごいものですよ。団地へ行って座談会開いてみますと、団地なんかをずっとセールスしている人があるのです。これは薬剤師が売らぬでもいいし、医者がやらぬでもいいですからね。ものすごい高いものです。まあ私はその一つだけをどうこう言うわけじゃないですけれども、参議院ではピルの問題が非常に議論になったわけです。一部には、ピルの問題について話があるわけです。私は、いままで医薬品については、医薬品の管理と使用方法については慎重の上にも慎重に配慮しなければ、日本はでたらめなそういう国である、行政である、こういうことで慎重論ですけれども、これはかなり議論があるわけです。これをやる場合には、どのような副作用があるかということが問題でしょう。副作用を防止することができるかということが問題でしょう。あるいは中国等や社会主義国でもどんどんこれをやっているわけですね。だから、とにかく選択をする。これは値段からいえば大衆化していないからいま高いわけだ。これを医師の健康管理のもとにぴしっとできる方法をやるならば、血栓の問題その他にいたしましても回避できる道があるのではないか。世界全国を調査してみたらいい。いまの点いかがですか。
  331. 翁久次郎

    ○翁政府委員 これは実は薬務局の所管でございますが、便宜私からお答えを申し上げますと……。
  332. 大原亨

    ○大原委員 医務局長知っているか……。
  333. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ピルの問題につきましては、現在わが国では、これを受胎調節の関係では認めておらないわけでございますが、先生指摘のように副作用としては血栓症等が指摘されておりますけれども、外国人の体重と日本人の体重との関係、そういう問題に対するこまかい調整等が行なわれれば血栓症をゼロにすることは——薬理作用からいって副作用がゼロということはほとんど不可能な問題だと思いますけれども、諸外国においても、けさの新聞等でもイギリスの例が出ておりますけれども、副作用はゼロということではないが、この副作用と実際に活用する、要するにメリットとデメリットとをどう考えてこれを社会的に適用していくかという判断の問題だろうと思うのでございます。そういう点でわが国の現状では、それらの問題に対する不安を大きく考えて、副作用面を大きく考えて、他の方法による受胎調節の方法をもってこれに対応しておるという判断を日本はしておるということでございまして、この問題については積極的に各方面からの意見を徴してこれは検討していく必要があろうと思っております。
  334. 大原亨

    ○大原委員 経済条項をカットした理由の六、七といたしまして、母体の精神障害、妊産婦死亡率の上昇、堕胎天国日本の汚名、こういうふうなのがある統計の資料の中に出ておりまして、順序にずっとやってきて、政府がいったことをずっと資料に集約いたしまして出ておりましたね。たとえば堕胎天国云々の問題は金子委員質問になりました。妊産婦死亡率の上昇ということがあるのですか。
  335. 本田正

    ○本田説明員 中絶を行なうことによりまして、中絶を頻回、何回か行なっていくうちに、先ほど申し上げましたように、中には妊婦のからだがだんだん弱まってくることが考えられます。そういった方々が妊娠した場合に、ケースとしては無事出産を迎えられる人が、妊婦あるいは産婦のときに死亡するというケースは考えられますが、そういったケースが何%あるかというような数字については私どもはわかりません。
  336. 大原亨

    ○大原委員 肝心の資料がないなんて何やっているのだ。日本は出生率が低下しておりますね。これは人口問題。どの程度低下しておりますか。
  337. 中野徹雄

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  出生率の問題につきましては、先生承知のとおりに、たとえばいわゆる妊孕可能年齢の人口が、ある段階でベビーブームの結果ふえるということがありまして、正確に判断をいたします際には、先生承知のように、純再生産率という数字を計算いたしまして判断をいたすわけでございます。その純再生産率の計算をいたしますと。大体昭和三十一年ごろからそれがいわゆる一を下回りまして、大体十年ほど一を割った状態にあったわけでございますが、昭和四十二年ごろ、丙午の年は除きまして、最近の数字を申しますと、大体一・〇一とか一・〇二というふうな数字を示しておりまして、純再生産率で判断いたします限りにおいては、やや出生率は上昇ぎみという傾向にございます。ただし、一・〇一とか一・〇二というふうな数字は非常に微細な動きでございまして、大局的な判断は、なお時をかさないと最終的には見出せないのじゃないか、かように考えております。
  338. 大原亨

    ○大原委員 そうじゃないんですよ。この人口白書の原簿にはあるんですね。昭和二十二年の出生率が千人について三十四・三人、昭和三十六年をとってみると、千人について十六・九人になって急速に減っているわけです。出生率は減っているわけだ。平均余命率はこれからどのくらい伸びていきますか。人口問題研究所の所長さん、ひとつあなた……。
  339. 上田正夫

    ○上田説明員 ただいまお尋ねの平均余命でございますけれども、われわれ平均余命と申しますと、各年齢にあるわけでございますが、普通申しますのは、出生時の生まれたとたんから計算して、あと何年生き延びるかというその年数でございますけれども昭和四十七年の実際の調べで申しますと、男子の場合は七十・五年、それから女子の場合は七十五・九年でございますけれども、私どもの研究所で将来の推計人口の仮定を設けますときには、それよりも若干男女とも二、三年延長するというふうに、死亡率の改善がその程度行なわれるというふうに考えております。
  340. 大原亨

    ○大原委員 一部の学者やWHO等では、必ずしもそれは、たとえば平和が続くとか経済的なあるいは社会的な与件、そういうものが一定しておるということでしょう。経済もある程度順調に成長するとか公害が発生しないとか、だからこれは逆の、三十年すれば健康な人間は半分になる、こういう議論もあるわけです。余命率ですから、いまの零歳の者が何年生きるかということですね。普通一般に誤解されていますが、零歳の者が何年生きるかということ。だから、おたくの資料の中で、出生率が低下する原因としてずっとあげているわけです。これは、いまの議論からいたしますと、かなり問題がございます。  そこで、いままでの実態との関係もございますから、私の所定の時間はまだ少しあるし、ある上にあるそうだから……。  それで、いま言ったように、出生率が低下している理由は何ですか。
  341. 上田正夫

    ○上田説明員 出生率の低下は、たとえば終戦直後の非常な混乱の時期には、むしろ経済的な理由といった、当時の食糧難であり、また失業難であった時代には、その経済的圧迫から、もうこれ以上子供を生んでは困るといったような事由が多かったのでございますけれども、最近は、高度経済成長以後におきましては、そういう生活に困窮の面もございますけれども、生活水準がある程度上がってまいりますと、より以上に生活水準を上げたいといった希望、それから現在子供の養育費、教育費が非常にかかっておりますから、子供を従来のように何人も生んでは非常に経済的に困るというような理由がむしろ優先しておりまして、それで出生率は下がってきておるわけですけれども先ほど画室長が申されました人口千人について十九という最近の出生率は、欧米諸国に比べても若干高いのですけれども、それは結局ベビーブーム時代に生まれた女子の方がちょうど結婚適齢期に入っておりますから、したがって、産む女性の数が多くなったということでございまして、先ほど画室長が申されましたように、実質的な可能性としては、将来の人口がいまのままで進めばどうなるかということから申しますと、純再生産率というはかり方で一をちょっと上回るという程度で、先へ行きますと増加率はだんだん低下して横ばい状態になるという可能性を持つということでございます。
  342. 大原亨

    ○大原委員 人口問題研究所の所長の管轄かどうかわかりませんが一これは管轄を聞いたら官房長らしいですけれども、官房長きょうは出ていないが、出生率の低下の順序から考えて、要因となるべき問題をあげた資料があるはずです。その中で人工妊娠中絶というものがどういう位置にあるか、こういう問題について明快にしてもらいたい。できたら、いま答弁願いたい。
  343. 中野徹雄

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  先生の御質問の趣旨の、たとえば昭和三十一年以降日本の出生率が非常に急激に低落いたしたわけでございますけれども、その出生率の低落の要因の中に、人工妊娠中絶がどれぐらい作用しておったかということについての推測的な数字は確かにございます。これはいま手元にはございませんので、後ほど至急お届けいたしたいと思います。
  344. 大原亨

    ○大原委員 時間がなくなりましたが、これは人口問題との関係ですが、だんだんと余命率が長くなって、そして日本の人口はふえてくる。これから三十年、四十年後には一億三、四千万人に増大をしていく。いまのことが進むならば、そのことがアジアの緊張や国際緊張を激化する。ことしの人口年に臨むにあたって、政府は一体どのような態度で臨むのか。人口、資源、食糧、石油あるいは環境、その他たくさんの問題がドルショックや石油危機以来提起をされたわけですが、そのときに日本の人口の問題について、どのような態度で日本政府は人口会議に出席しようといたしておるのか、この方針をお聞きをいたします。
  345. 中野徹雄

    ○中野説明員 私から便宜お答え申し上げます。  先生指摘のとおりに、本年は世界人口年でございまして、夏に政府間の会議が、国際環境年と同じような形で持たれるわけでございます。これにつきまして日本政府がいかなる態度をもってこの国際会議に臨むべきか、それにつきましては、昨年来、厚生省の付属機関でございます人口問題審議会で対処方針についての御検討をいただいていたわけでございまして、大来佐武郎先生を長とします特別委員会をつくりまして、その対処方針をずっと検討していただいたわけでございます。その結論が、せんだって、四月十五日に一応厚生大臣に提出されたわけでございまして、これにつきましては、日本においては従前明確な人口政策というものを欠いていたという指摘の上に立ちまして、先生指摘のような、いわば全世界的な、食糧、環境汚染問題あるいは資源問題等も踏まえて、明確に人口増加の抑制政策を政府としても採用し、その上に立って国際会議に臨むべきである、かような対処方針の御意見をいただいたわけでございます。
  346. 大原亨

    ○大原委員 私は、いままで議論した人工中絶を含む人口政策の問題と、いまの人口年を前にいたしましての日本の人口問題に対する認識、政策については、いまの答弁ではまことに不満です。これは非常に重要な問題でありますから、この問題についてもお答えをいただきたい。  以上で、たくさん問題がございましたから、それらの問題を整理いたしまして文書でお答えいただきまして、あとで、明日でも私の質問について終わりたい、こういうふうに思いますので、これで保留をいたします。
  347. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 田中美智子君。
  348. 田中美智子

    田中(美)委員 まず質問の初めに、この法案というものはもともと第六十八国会で廃案になったもので、それを七十一国会でまた提案されたわけですけれども、これは自民党が単独で強行採決をして継続審議になったものだったわけです。これは凍結されていたわけですけれども、この凍結も五党で話し合ってゴリ押しをしないという約束をしていながら、その約束を踏みにじって審議に入るということをやったことは、本来からして不当な上程法案だというふうに思います。これをはっきりさせて質問に入っていきたいと思います。  国民の生活に重大な影響のある法案の審議が、予算関係のある法案の審議がまだ終わっていないにもかかわらず、この法案の審議に入ったということは、非常に民主主義を踏みにじり、また政党間の信頼をも踏みにじったやり方をしている、そういう観点に立ちまして質問を始めたいと思います。  先ほども出ておりましたけれども、日本医師会の武見太郎さんから、私のところにもけさ電報が来ております。医師会は絶対反対だということを言っているわけですね。直接医者がいろいろなことをやらなければならないこうした法案を、こういう大きな団体である医師会の強い反対を押し切ってまでこれをやるということは、結果的にもしこれが通れば、たいへんな大混乱を起こすと思うわけですけれども、それについての責任を厚生省はどのように感じながら、この法案の審議を進めようとしているのでしょうか、お答え願いたいと思います。
  349. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 医師会の反対ということについては、電信は私ども先ほど教えていただくまで存じませんでした。  それはそれといたしまして、医師会におかれましても、かねてからこの優生保護の問題については研究をされておりましたし、私どものほうも、かねての研究の結果、昭和四十七年に政府提案として出させてもらったわけでございます。成立した暁におきましては、母性保護医協会等とも十分連絡をとりながら、行政運用に遺憾なきを期したいと思っている次第でございます。
  350. 田中美智子

    田中(美)委員 そちらはよく、おことばを返すようですと言いますけれども、まさにおことばを返さなければならないと思います。こうした重大な法案について医師会に相談もしなく、医師会が反対であるということも知らなかったということは、ここにまた大きな責任問題が出てくると思うのです。その上に、いまおっしゃいました母性保護医協会、これは会長が森山豊さんでいらっしゃいます。森山先生に伺いましたところ、森山先生も、この母性保護医協会では絶対反対だということを言っているわけです。それを、それにも相談しましてなんということは詭弁にすぎない。そうした直接関係のある産婦人科の医師の集まりであり、また全体の医師の集まりである大きな団体を無視してこのようなものを出してきている、その責任はすべて厚生省にあるといわなければならないと思います。だからこそいま国民が大きな怒りに包まれている。そこのところにまずこの法案が出されている。十分な責任をとろうとすることもなければ、これに対するこまかい配慮も研究もなく、ただ一部の議員のメンツで出したなんということが新聞などにも出ておりますけれども、どういうことであったか審議の過程で明らかにしていきたいと思いますが、こうした無法なことをやったことに対して、私は強い怒りを覚えるわけです。これから起こるいろいろな現象というものはひとえに国、厚生省に大きな責任があるんだということをよく胸にとめておいていただきたいと思います。  法案の中身に入っていきたいと思いますけれども、まず、国民生活の向上を見た今日というようなことが説明の趣旨の中にも書かれておりますし、先ほどからの審議の中でも、経済的理由というものをとっていくという問題で、国民の生活が豊かになったんだというようなことが繰り返されております。はたして国民生活が豊かになったかどうか。現在物価狂乱、狂乱物価というのは自民党の福田大蔵大臣の言われたことばです。あなた方が使うほどこの物価が狂乱しているわけですね。こうした異常物価というものの特質、物価がただ上がるというだけでなくて、異常であるとか狂乱であるとかいわれる特質というのはどこにあるかといいますと、戦後の物価が上がったときとはやはりいまは非常に違っていると思うのです。戦後の場合には平原に非常に物価高の嵐が吹いたというふうな感じですけれども、いまは非常にでこぼこなところにこの狂乱が起きているわけです。大きな特徴として、いまのこの物価情勢というものが国民の生活を貧困におとしいれているわけですけれども、この特徴は、中小企業やサービス業、そういうところの低生産性のものといいますか、そうしたところの商品というものはそれほど物価は上がっていない。一番大きい物価の値上がりというのは、大企業のつくっている製品、それから公共料金というものが非常に上がっているわけです。その場合にわれわれ国民の立場、消費する立場からしますと、大企業の製品や公共料金が上がるということは、これはわれわれは買わないということはできないわけです。電気代が高いから払わない、家賃はちょっと今月は半分節約するというわけにいかないわけですから、こうしたものの値上がりというものはまさに社会的に強制されたものだといわなければならないわけですね。そうすれば、私たちが選択する部門というものは、ほんとうに食費を削る以外にはもう生きていかれないというところにきているわけです。そういう問題の中で豊かになったということはいえないというふうに思います。  その裏側には、豊かになったから中絶というのは、産みたくない子供をおなかにつくらないようにしさえすればすることができるんだということを含んでいると思うのですね。じゃ、その産みたくない子供を産まないようにするにはどうしたらいいかということですけれども、受胎調節の指導などは全く置きざりにしていながら、現状を見てみますと、現在の賃金もたいへん低いということもありますが、まず住宅事情を見ましても、これは建設省からの報告ですけれども、いま全国で一人当たりの畳数というのは五・一畳。東京などでは五・〇、名古屋で五・八、大阪で四・七畳というところに平均的に住んでいるわけです。そうした小さな家に住んでいましてこれが豊かといえるでしょうか。特に妊娠に関係する意味の豊かということの一番中心というのは、まず失敗の一番大きい原因というのは、いろいろありますけれども、家が狭いということ。これは先ほどコンドームの話も出ておりましたけれども、木賃アパートの、隣の家に息づかいも聞こえるような住宅に住んでいる人はまだたくさんいるわけです。そして一間に住んでいる。そういう中でおばあちゃんやおじいさんとも一緒に住んでいる。子供も一緒に住んでいる。そういう中で、コンドームが高いから買えないということもありますけれども、コンドームをどうして使うんですか。使うことさえできないような状態に置かれている。だからモーテルに行く人は一ぱいあるじゃありませんか、夫婦でですよ。婚前の男女や、また不幸な、間違った男女の交わりをしている人たちだけがモーテルを使っているのじゃありませんよ。夫婦がモーテルを使っているということは、家の中でちゃんとした夫婦生活ができないという状態からきている。そういう住宅状態というものをそのままに放置して、そして豊かになったからもう中絶などする必要はないのだ、子供も育てられるし、そして失敗の可能性は少なくなったのだ。こういう言い方がどんなに間違っているものであるか。特に住宅事情についてどうお考えになるか、お答え願いたいと思います。
  351. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 その前に、今度の諸改正の前に昭和二十四年に、「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」というのが入っております。身体的理由だけでなくて、経済的理由によって母体の健康を阻害される場合に限って中絶ができるということでございますが、昭和二十四年の当時の時代背景として出てきたこの経済的理由と、二十数年たった今日の社会的、経済的背景とはやはりかなり異なってきております。豊かになってきていることは確かだと思う次第でございます。むしろこの際は、そういう特別な理由よりは、総合的に医学的に純化をした内容で中絶の理由にするのが適当だと思って出させていただいたような次第でございます。
  352. 田中美智子

    田中(美)委員 いま、著しく変わったとおっしゃいましたけれども、著しく豊かになったというおことばですか。
  353. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 国民所得あるいは国民総生産等から見ましても、昭和二十四年当時よりははるかに高い水準になっておると認識しております。
  354. 田中美智子

    田中(美)委員 私は戦後の状態とそれほど変わっていないというふうに思うわけですね。それはなぜかというと、戦後は確かに食べるものもないという状態でした、家もないという状態でした。しかしいまは確かにカラーテレビがあったり、そして掘っ立て小屋ではなくて、ちゃんとした公団のような鉄筋のアパートであったり、それから中には自動車を持つ人もあるかもしれません。そういうことを見ますと、確かにこれは一見豊かに見えます。一見見えますけれども、では畳の数が広さがどれだけ変わったか、夫婦の寝室がちゃんと保たれているか、そういうようなことから考えますと、これはほとんど解決されていない。それじゃ自動車も買うな、テレビも買うなといっても、われわれの生活様式が変化したためにやはり買わざるを得ないという立場に置かれている。それで先ほど私が言いましたのは、社会的に強制された消費というものは非常に大きくなっている。しかし決して豊かにはなっていない。むしろ最近ではこれがどんどん落ちてきているということです。先ほど申しましたように、低所得者層においてはもう食べるものを削っている。敗戦直後は、これはもう餓死する人があったわけです。いまもその状態に近い人がわずかにはいますけれども、その点においては敗戦後間もなくの時期とそれほど変わっていないと思うのですね。骨の広さにしても決して変わっていない。それなのに経済的理由を取るということは、非常に片手落ちだと思うわけです。こうしたものがすっかり解決されてからそれは考えるべきであって、そういう意味で、生活様式の変化というものを豊かになったという変化とお考えになっているのではないかというふうに思います。もう一度その点、大臣にお答え願いたいと思います。
  355. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 どうもあなたとは現状の認識が非常に違っておりますことは、まことに遺憾でございます。日本は戦後の荒廃の中から立ち上がって今日このような盛大な、栄える国になっている。それは豊かになっていますよ。
  356. 田中美智子

    田中(美)委員 豊かになったのは大企業であり、一部そのおこぼれの回っている部分であって、一般庶民というものは決して豊かになっているとはいえないと思います。そういう中で、一方的に経済的理由というものを取るということは非常に片手落ちであるといわなければなりません。  それから次に「医学的に見て母体の精神または身体の健康」こういうふうに言っている。先ほどもこのお話がありましたが、この「精神」というのは一体どういうことなのか、もう一ぺん具体的にお答え願いたいと思います。
  357. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 人の健康というのはもちろん肉体でございますが、肉体とうらはらで精神と肉体とが健全であって初めて健康といえるわけでございます。したがいまして、従来の条文では「母体の健康」としか書いてございませんので、「母体」とすると、おかあさんの身体と、こうどうしてもとられがちに読まれますので、この際に文理的にも明確にするために「精神又は身体」と入れたわけでございまして、その人の健康というのは精神の場合もある、あるいは身体だけの場合もございますが、やはり精神と身体とが総合的にどちらも健康になって、初めてほんとうの健康だということに理解されるものだと思う次第でございまして、そういう意味合いから、むしろ精神を入れたほうがより明確になると思って入れた次第でございます。
  358. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、たとえばこういう場合は身体に入るのでしょうか。あしたは重要なことがあるのでどうしても雨が降ってもらったら困る、それが心配で今夜寝られない、こういう心配をしているのは精神の健康に害するのでしょうか、お聞きしたいと思います。
  359. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私、実は医師の専門家ではございませんので、やはりそういう場合でも医師として精神上の障害になるかどうかというのは、その人の置かれた状況その他から、総合的に医学的に判断されるべきものであると思います。
  360. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、あした雨が降るかもしれない、これは困った、心配でしようがないということも、医者に認定してもらって、ひょっとすれば精神的な健康を害しているというふうに診断される場合もあるというふうにお考えですか。
  361. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私は医学のしろうとでございますが、まさにそういうことこそ医師が、特に精神科の医師が診断し、判断するものだと思います。
  362. 田中美智子

    田中(美)委員 これはあなたが先ほどおっしゃった母性保護医協会の会長の森山先生が、こういう精神的というものがあれば、これはどうしても精神病だとかノイローゼだとか強度の神経衰弱だとかというふうに認定しなければならないと言っているのです。医者がこんなことどうしてできるんだということを森山先生も言っていらっしゃいます。それから東大の助教授の我妻先生も、これはそういう認定をしなければならないと言っているわけです。医者はそういうふうに受け取っているわけです。それはどういうふうにお考えになりますか。
  363. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 現行の規定でも「母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」ということが最終的な人工妊娠中絶できる理由になっております。したがいまして、そういう意味においては、現行法でも指定医師がそれぞれ判断されているわけでございまして、改正法によっても指定医師が医学的常識に従って診断し、判断されるものと思われる次第でございます。
  364. 田中美智子

    田中(美)委員 思われると言いますけれども、これは医者が困るといっているわけですよ。それはどうお考えになりますか。
  365. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 従来は身体的理由、経済的理由二つしかなかったわけでございますが、そういう理由があったとしても、最終的には健康を著しく害するという判断が医師によってなされるわけでございますが、むしろ今度は、そういう二つだけの理由じゃなくて、もう少し幅広い理由の見地に立って医師が診断されるということになるわけでございます。
  366. 田中美智子

    田中(美)委員 幅広いということは、じゃ結論的にお伺いしますけれども、これが経済的理由のところが精神的に変わったということは、いまよりもゆるくなるんですか。いまよりも中絶がしにくくなるんですか。この間自民党の山下議員からの発言の中には、これはむしろ広くなるではないかというふうなことがありましたけれども、これは一体中絶をする範囲が広くなるのか、それとも狭くなるのですか。簡潔に答えていただきたい。
  367. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 広くしようとか狭くしようというような意図をして改正をお願いしているわけではございません。むしろ母体の健康という観点からの医学的な純化したものの改正でございます。
  368. 田中美智子

    田中(美)委員 結果としてどうなるのかということがわからない限りは、こんな法案をするべきじゃないでしょう。結果はどうなりますか。それを言ってください。
  369. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 あくまでも衛生上、医学上の観点からの改正でございますので、結果を意図したものではございません。したがいまして、いま結果がどうなるかということについては申し上げられないと思います。
  370. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、完全に医学的な問題からだけここを改正しようとしているのですか。もう一度はっきりおっしゃってください。
  371. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 従来、身体的または経済的な理由によっても、最終的には母体の健康を著しく害するという医学的理由があったわけでございます。今度は個別の理由を取り除きまして、「母体の精神又は身体の健康を著しく害するおそれ」ということに改めようとする次第でございます。
  372. 田中美智子

    田中(美)委員 理由は医学的ですね。医学的な、ほかの観点はない、こう言っているわけですね。これは私はこういうふうに考えているのです。日経連のこれは、ちょうど優生保護法が何回も国会に出されるときと一致しているのですけれども、四十五年九月に出されたものです。この「労働力の流動化策」という中で、これは第二部の「技能労働力不足に対する政府の対策」というところに五つ出ているわけですけれども、その五つ目に「優生保護法改正」ということが書かれているわけです。ちょうど四十五年に日経連が労働力不足に対する政策として優生保護法改正せよ、こういうふうに言っているわけです。それを受けて立ったんではないんですか。
  373. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 そういう労働力の問題とか人口政策とは何ら関係がございません。先ほど申し上げましたように、医学的、衛生的なものに純化をして、理由はいろいろの理由があると思います。その結果、最終的に母体の精神または身体の健康を著しく害するおそれがある場合に中絶ができるという、まさにそういう純粋な意味からの改正でございます。
  374. 田中美智子

    田中(美)委員 日経連からこういうことを言われているのですか、いないのですか。はっきりおっしゃってください。
  375. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 それは存じておりません。
  376. 田中美智子

    田中(美)委員 全然存じていないのですね。しかし、この政策には書いてあるのですよ。この報告の取りまとめには、企業からの委員六名と労働省それから経企庁、人口問題研究所、アジア経済研究所の各担当官十二名がやったということを言っているわけです。それを御存じないわけですか。
  377. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私ども厚生省は、衛生的観点からものを処理する役所でございます。たとえば人工妊娠中絶は母体の健康上よくないから、なるべく家族計画にかえてほしいというようなことの意図はありますが、そういう労働政策とか人口政策とは何ら関連のない改正案でございます。
  378. 田中美智子

    田中(美)委員 いまの審議の過程で、これが日経連のそうした労働力政策を受けているということは、国民はだれが見ても、こうした中でそのような疑いを持っているということはいえると思い  ます。  次に、これはまだそのあと質問を続けたいと思いますけれども、その間にもう一つ入れたいことは、私自身が考える、国民の多くが考えていることは、こういうごとは中絶が非常にやりにくくなるということ、特に妊娠能力のある夫婦はそう思っておりますし、それから産婦人科の医者が反対しているわけですし、武見太郎さんも医師会を代表して反対しているわけですね。これはなぜそう言うかということは、中絶が非常にしにくくなるから反対しているわけですよ。ということは、中絶がしたいから私たちはこんなことをするなと言っているんじゃありません。中絶をしたい婦人なんかいないのです。これはまたあとで話したいと思いますけれども、中絶がしにくくなるとどういう現象が起きるかということを皆さんたちはどの程度お調べになっていらっしゃるのか。やみ中絶や、自分で堕胎をするというようなことが盛んに起きる、これを非常に心配しているから、医者も、そしてすべての国民がこれに反対するわけなんですよ。  日本は、戦後すぐに中絶が非常にやりやすい法案ができたために、やみ中絶や自己堕胎というのは少ないわけです。先ほどの審議の中で、やみ中絶というのが実際にはいまの中絶数の倍あるということがありましたけれども、そのやみ中絶というのは、医者が届け出をしなかったやみ中絶であって、いわゆる私がいま言うやみ中絶とは違うと思うのです。このやみ中絶が世界各国で起きているということで、世界の趨勢というものは、それがどんなにあなた方のおっしゃる医学的に婦人のからだを傷つけているかということで、これに反対しているわけです。  アメリカでは、昨年の一月に最高裁で中絶を合法化していくという方向になったことは、厚生省も十分御存じだと思うのです。アメリカの例をちょっとお話ししますと、アメリカでは大体年間百万人の人がやみ中絶をしているのです。このやみ中絶というのは日本のと違いますよ。法に反してこっそりやるのですからね。日本にはこういうやみ中絶はほとんどないと思うのですね。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕 百万人がやみ中絶をやっている。そのうちの十万人が手術の失敗で死んでいるのです。日本は正規の医者が堂々とやるわけですし、いろいろな設備があると、もし失敗してもすぐ輸血ができるとか、そういう設備のあるところでやるわけですけれども、アメリカではそうではないわけですから、非常に死亡率が高いわけです。そして、そのために、死ななくても不妊症になったり、更年期障害が非常にひどくなったりというような、婦人の母体が傷つけられるということは、これは何千人に及ぶということを言っているわけですね。  ですから、アメリカの婦人たちが中心になって立ち上がった運動の中では、こういうことばが言われているわけです。金持ちはスイスへ、貧乏人は刑務所へ行け、こう言っているのですね。なぜスイスへということは、スイスは中絶がある程度合法化されている。だから金持ちはスイスに行く。また合法化されているところに旅行をして、そこでおろしてくる。中には、アメリカの場合には精神医に、自殺のおそれがあるとか精神に異常があるという証明をもらうために——正常な人がですよ、もらうために千五百ドルも払っているという話があるわけです。これは一ドル三百円として四十五万円、こういう大きなお金で診断書を買っているという話が、これはあちこちに報道されているわけです。中産階級でとても四十五万なんか出せないという人はやみ中絶でやる。やみということは、先ほど申しましたように、医者でない者がするわけです。設備も整っていない。それから非常に不衛生なところ。行くときには、もし手入れがあったときに困るから、中絶を希望する婦人というのは目隠しをされて行くのですね。どこかわからないところへ車でこう行って、どこかへ入っていく。目隠しをされたまま、どういう人にしてもらうのか、自分の手術をしてくれる人の顔も見ない。そこがその町の一体どこなのか、住所も何もわからない。そこで手術を受けるわけです。そして、もとのところにまた目隠しをして帰されるという形でお金を三百ドルから七百ドル払う。これはもう二、三年前の話ですからね。これは大体二十一万くらいの金を払ってそういうことをしてもらう。  その上に、麻酔をしないのですね。日本では全身麻酔をやっているようですけれども、麻酔をやらない。ですから非常に残酷な手術なんですね。それは手入れがあったときに、その患者がふらふらして動けないということだと警察につかまるということで、麻酔もしないで手術をするわけです。ですから失敗などすれば、子宮のまわりには大きな血管が通っております。これにちょっと間違って傷つければ——全くあの手術というものは、日本の手術だってそうでしょう、めくらめっぽうに火かき棒のようなもので子宮の内面を全部削り取るわけでしょう。どこに子供が着床しているかわからないわけですから、全部削り取るわけですから、間違って子宮に穴をあけるとか、そして間違って大きな血管を傷つけるということは、戦後一ぱいあったじゃありませんか。日本の場合は医者がやるから、だんだんじょうずになってきたし、事故が非常に少なくはなっています。それがしろうとがやるわけですからね。そして、輸血だとかそういう失敗したときの緊急の手当てをする設備も人もいないわけです。そうしますと、こういう人たちをどうするかというと、そのまま置いておけば大出血で死んでしまう。そうすれば、てこで死体が出たということになると困りますね。だから公園だとか病院の玄関などにこれを連れていって捨てるわけですね。せいぜいやみ中絶をする人の良心といいますか、どこかでだれかが見つけて応急措置をして助けてくれたらいいんだということで、その瀕死の婦人を病院の玄関先に捨ててくる、こういうことがあとをたたなかったわけですね。  だからアメリカでは、何とかこういう状態をやめさせてほしいということで、長い間の婦人の戦い、その結果やっと去年からそうなった。それなのに、日本はなぜそういう状態に逆戻りしようというふうなことをするのか。  キンゼイ報告というのは御存じだと思いますけれども、これでも全米の女性の二二%は、一度は非合法な手術を受けている。五人に一人は少なくとも一度は犯罪を犯しているということが報告されているわけですね。これほど中絶がきびしかったアメリカでは、こうしたことが行なわれているわけです。こういうやみ中絶が起こる危険性というものについて、大臣はどのようにお考えになるでしょうか。
  379. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 いろいろアメリカのお話をお伺いしましたが、私どもは、逆戻りしようという意図の改正ではございません。先ほど申し上げましたように、むしろ経済的理由とか身体的理由とかいう特殊な理由だけをあげてきて、母体の健康とするよりは、広く「母体の精神又は身体の健康を」害するおそれがあるとして医学的に純化したほうが適当だと思って、改正案を御審議をお願いしているわけでございます。
  380. 田中美智子

    田中(美)委員 適当だと思ってとおっしゃいますけれども、こういう法案を出したら結果的にどうなるかということが、縮まるのか広がるのかということがわからないで、適当だということはないでしょう。もしこれが広がったらこうなるのだという……。ですから、こういう改革をするときは、改正をするときは、広がった場合はどうなる、縮まった場合はどうなるかという結果を考えてからでなければ、机上の空論でこうなったら自分は婦人のからだに対して医学的にいいだろう、ただ何だか夢みたいなことを思って、そんなことで法案をつくられたら、婦人はたまったものじゃないし、婦人だけではありませんよ、男性だってたまったものではないし、そういうことについて広がるということを考えないでやっている、狭まるということを考えなくてやっているわけですか。
  381. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 そういう広まるとか狭まるとかいうような物理的な意図でなくて、母性保護、公衆衛生、医学という見地からなされておるわけでございまして、こういう母性保護とかあるいは医学という見地からなされる場合には、結果的にはむしろやはり医学、公衆衛生自体の目的のために行なわれるわけでございますから、結果というのはまさにその後のことだと思う次第でございます。
  382. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、結果が後のことなら、何年後か知りませんけれども、その後に、こうしたアメリカのようなやみ中絶がはやって、婦人が死んだり何かするというようなことが起きたときの責任はどうするのですか。大臣、答えてください。どうするのですか。
  383. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは私がもうたびたび先ほど来お答え申し上げてありますように、その身体的、経済的理由という二つだけの理由、それが結論的に母体の健康をそこねるおそれがある場合、こういうふうに母体の健康をそこねる理由として、身体的と経済的という二つの理由を掲げておったわけでございますが、社会の複雑化に伴いまして、もっと、ある意味においては、法律的にはその面は広いのです。それはそうでしょう。ここに書いてありますように、「身体的又は経済的理由」と、理由が限定されている。それだけでやっちゃいけないのですよ、結論においては母体の健康をそこねる……。そこで、これは堕胎罪にはなりませんよ、こういっているわけなんです、いまの法律は。それについて、経済的理由なんというものを削除いたしまして、いきなり母体の精神と健康をそこねるというふうに、総合的に、医学的に判断をしていただいたほうがいいのではないか、こういうわけなんです。ですから、いまは、母体の健康をそこねるという二つの理由なんです。二つの理由が、一つは取っ払われるのですよ。その経済的理由というのを取っ払われるわけです。その意味においてはもっと広くなる。総合的に判断をしてください、こういうことでしょう。ですから、結果的に広くなるか狭くなるか、見方によっていろいろありますよ。考え方が違う。経済的理由だけで人工中絶やっていいというのじゃないのです。そうでしょう。経済的理由だから人工中絶をいたしてよろしい、そう現行法はなってないのですよ。経済的理由によって母体の健康が著しく害されるとき、こうなっているのです。経済的理由だけで人工中絶をしてよろしい、現行法自体がそういう規定じゃないのです。そうでしょう。だから、二つの理由だけをあげて、母体に影響あるときに人工中絶をやってもよろしいというのでは、法律的に、最近における近代社会においては、もっと複雑な要素があるので、「母体の精神」というのを入れたのです。母体の精神の健康、母体の肉体的な健康、二つを入れて総合的に判断をしていただいたほうが適切ではないか。それは昭和二十四年時代の経済的混乱の時代と違った、進んだ現代の社会の多様化に対応して適切なものである、こういう判断に基づいて提案をいたしたものである。これは間違いないように理解してください。経済的理由だけで人工中絶をやってよろしいという法律にはなっていない。それだけははっきりしておいてもらわぬと間違いが起こります。うちは貧しいんだから、すぐ人工中絶をやってよろしい、それは堕胎罪の適用を受けません、そういう規定にはなっていない。これは読んでいただきたいと思う。身体的または肉体的理由により、そしてその母体の健康を著しく害する、そこが人工中絶というもので、いわゆる堕胎罪の適用を排除しよう、こういうわけですから、こうなっておるわけでございます。母体の健康、これが中心なんです。こういうことをどうぞ十分御理解いただきたい。
  384. 田中美智子

    田中(美)委員 詭弁もはなはだしいと思う。現状を何も御存じないのです。厚生大臣は奥さんは中絶したことがないんでしょうね。広いうちに住んで、夫婦だけの寝室もあり、コンドームを買うのも安いし、何の御心配も——いまはそういう必要もないのかもしれませんけれども。庶民の生活はそんなものじゃないですよ、現状というのは。そんな机上の空論で……。庶民は経済的理由だけで中絶しているんですよ。ですから、これを取れば中絶できなくなる人がたくさん出てくるのですよ。だから、こういうやみ中絶ができるようになるということは、母体を著しく健康を害するのですよ。まして死亡にまで追い込んでいくのですよ。そういう問題をいま何が何でもやっていこう。  新聞の報道によりますと、自民党の一部議員の発言ですけれども、決死の覚悟でこれは通すんだなんというようなことを言っておるのですから。決死の覚悟でこんなおそろしい法案を通していこうとする。そう言っていながら、きょうの自民党の議員は何ですか。さっきから二人ぐらいしかいませんでしょう、これだけの中で。ちっともいない。そういうまともな審議をしようとしない中でこんなことをやっているわけです。  これは結局どういうところにねらいがあるか。先ほどの日経連の労働力政策を見ましても、政府の機関から何名も入って、その政策を立てているわけです。その中に優生保護法改正というものがあるわけでしょう。こういうことは結局、結果的にはやみ中絶で婦人のからだが傷つけられたり死んだりするだけでなくて、しかたがなく子供を生まざるを得なくなってくるのです。ということはどういうことになるか。これは貧乏人の子だくさんができるのです。私は敗戦のとき二十三でしたから、あの戦争のまっ最中の時代というものは私はよくわかっているわけです。生めよふやせよといって、中絶なんかとてもできなかったのです。受胎調節の指導もしない。結婚すれば次々と子供ができる。五人も六人も八人も、中には十人以上の子供を生んでいくという状態があったわけです。その現状をいまつくろうとしている。そして、子供が四人、五人になりましたら、とてもみんな高校にやる、大学にやるということは不可能です。ですから、結局中卒だけでこれを労働市場に出していく。だからこそ、日経連と政府のお歴々が入ってつくった労働力政策の中に、優生保護法が入って、若い金の卵といわれる中卒の労働者を一人でも多く生ませたいというところからこの法案が出されている。その上に、一部自民党議員の選挙政策に使われているということもいわれておりますけれども、一番大きなねらいは、また富国強兵をやろうとしているんだ、そういうところにあるんだというふうに思います。その点はどのようにお考えになりますか。
  385. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 どうも田中委員はよくもまあ勘ぐっていろいろなことをおっしゃるものだと思います。ほんとうにまあよく考えて、私ども考えていないことをあなたはおっしゃる。人口政策とか労働政策とか、私はそんなこと何も考えていやしませんよ。私はほんとうに、母体の精神の健康と肉体の健康を守るという公衆衛生の立場から申し上げているだけですよ。それは多様化された近代社会における母体の精神の健康を維持することは非常に大事ですよ。それから健康を守ることは大事です。そういう観点から、堕胎罪にはならぬような人工中絶というものを適法化していこうではないか、こう私は言うているのです。これはおわかりになっていただけると思うのです。  あなたの質問を聞いていますと、経済的困難だからすぐ中絶してよろしい——そんな法律になっていませんよ。これはよく考えてください。経済的理由だけで中絶をしてよろしいという法律になっていない。それはむしろ堕胎罪ですよ。こういうことをはっきり申し上げておきます。
  386. 田中美智子

    田中(美)委員 それはあまりにも法律の上だけを見て、現状を御存じないのです。私は経済的な理由だけでやっているとは言っていません。しかし、経済的な理由が非常に大きな要素としてやられているということです。これは、言いましても、あなたがそれほど現状を無視をなさる。現状無視ですね。いまそんな美名のようなことを言いますけれども、よくもぬけぬけとそんなことを言うと思うのです。そして、初めて聞いたようなことを言いますけれども、報告は一ぱい出ているじゃないですか。読んでないのですか。  社団法人日本家族計画連盟というのがあります。理事長寺尾琢磨、こういう日本家族計画連盟、これは御存じですね。
  387. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 厚生省の認可団体ですから存じております。
  388. 田中美智子

    田中(美)委員 うしろを向いて聞かなければわからないぐらいの団体なんでしょうかね、厚生省が認可していながら。この家族計画連盟というのは一体いまどんなことをやっているか御存じですか、お答え願いたい。
  389. 本田正

    ○本田説明員 地域に指導に参りまして、受胎調節の指導を中心にやっております。
  390. 田中美智子

    田中(美)委員 それだけですか。
  391. 本田正

    ○本田説明員 技術的な指導だけでなしに、人工妊娠中絶がいかに母体にとって危険であるか、したがって中絶をするような事態になる前に受胎調節ということを、方法をPRし、または実地指導を行なっている、こういうことであります。
  392. 田中美智子

    田中(美)委員 それだけですか。——それだけですかと聞いているのです。
  393. 本田正

    ○本田説明員 それが中心の仕事でございます。
  394. 田中美智子

    田中(美)委員 外国にも行っているのじゃないですか。
  395. 本田正

    ○本田説明員 家族計画に関します団体には、国際家族計画連盟、家族計画協会、日本家族計画連盟等四つの団体がありまして、外国とのおつき合いをしている国際連盟もございます。それから、申し上げましたように国内を主として指導に歩く団体もございますし、それからまた、実地指導員を研修をする。実地指導員というのが全国にいるわけでございます。そういった業務を分担してそれぞれ四つの団体がやっております。
  396. 田中美智子

    田中(美)委員 ですから、どういうことをやっているかと聞いているときに、初めからちびりちびり出して、何べんも言わなければ出さないというのはどういうことだか知りませんけれども、ここから報告を受けているはずですよ。この日本家族計画連盟というところは、外務省の委託を受けて東南アジアの受胎調節指導もしていますでしょう。
  397. 本田正

    ○本田説明員 機能の中にそれはございます。
  398. 田中美智子

    田中(美)委員 その中から出されている報告をお読みになっていないはずはないと思うのです、あげていますからね。これはここの連盟の方たちが、東南アジアに行った方たちはすべての人が言うというくらいに、行った人はみんな帰ってきて報告することは、どういうことかといいますと、これはこの間田中総理がタイに行って、たたき出されるような待遇を受けたわけですけれども、ここでもこれがどんなにひどい見方をされているか。これを厚生大臣が知らないなんて、とぼけているのか、御存じないのか。知らないから、私の言うことを、よくもまあそんな、勘ぐるだとか、全く人が聞けば私のほうがよほどひねくれているような言い方をなさるけれども、東南アジアの人たちは何と言っているか。日本の外務省が委託してやっている仕事というのは、これはいい意味の指導かもしれません。ほんとうに受胎調節を正しく教えていくということですから、いい指導かもしれません。しかし、それを受ける土地の人たちはどのように受けているかといいますと、結局東南アジアの人たちの人口を減らして、日本では、優生保護法をいま通そうと四十五年間必死になっているじゃないか、日本の人口はどんどんふやして——ですから東南アジアの人たちは、優生保護法改正をしたら日本の人口がふえると解釈している。私だけが解釈しているのじゃないですよ。そして日本という国は、自分の国の人口は優生保護法改正してどんどんふやす、そうして東南アジアに来ては、熱心に、要らない子供は産まないように、失敗しないように、できてもなるたけ産まないようにという指導をさせている。自分たちの人口を減らして日本の人口をふやすということは、これはまたあの第二次大戦のように、日本が東南アジアを侵略する一つの方法だということを言って、非常に反発をして、せっかく外務省が一生懸命やっているかどうだか知りませんけれども、この受胎調節の指導というものをすなおに受け入れられないということがあるわけです。これは東南アジアの人だけでなく、日本の国民もそのように思っているのです。決して私一人がこれを思っているのではないわけです。それを厚生大臣が御存じないのか、とぼけていらっしゃるのかわかりませんけれども、この日本家族計画連盟が東南アジアで総スカンを食っている現状というものを大臣は御存じでしたでしょうか。
  399. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私はあまり東南アジアには行ったこともありませんし、存じておりません。
  400. 田中美智子

    田中(美)委員 行かないことはわからないのですか、大臣は。地球の果てまで行ってみなければそこの現状がわからないのですか。外務省が委託してこの日本家族計画連盟の人たちを送っているわけでしょう。その報告がそのようになっているのを知らないということは——それじゃそちらの方は知っていましたか。
  401. 本田正

    ○本田説明員 おそらく外務省のOTCAによるところの、二国間の技術援助の一環としてやっているこの事業を御指摘になっているんだろうと思います。これは技術援助ということが目的でございまして、技術援助かつは技術者を向こうにやりましてそしていろいろ指導をやる、その間に必要な器具をあわせて持っていく、こういうのが日本の外務省のいまの考え方であります。ところが受ける側とすれば、器具だけをおく、技術者は要らぬ、こういった説も一部にあることは私も聞いております。そういったところに若干のそごがあろうかと思います。しかしながら、フィリピンにしろ、タイにしろ、そういう調査団を外務省から派遣いたしまして、こういう指導をやっているということは重々承知しております。
  402. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、何も指導をしているというのを知っているかということを聞いていません、初めからあなた、しているとおっしゃっているのですからね。こういうふうに総スカンを食っていることを知っているかと聞いたのに対して、やはり指導は受けたくない、そして器具だけはほしいんだというところに、そこまでしかおたくとしては言いにくいのかもわかりませんけれども、いかに総スカンを食っているか。なぜそういう指導を受けようとしないのかということにはそうした反発がある。こういうことを無視していろんなことをやるから、田中総理がタイからたたき出されるような、日本人にとっては悲しい態度になっているわけです。いかにいま東南アジアの方たちにこの間の戦争で侵略したことの傷あとが残っているのかという証拠です。そういうときにこの疑われている法案を出しているということ、腹を勘ぐられてもやむを得ない。世界的に腹を勘ぐられているのです。田中美智子が一人腹を勘ぐっているだけではないのです。日本の国民も勘ぐっているし、アジアの人たちも勘ぐっている。いま日本はアジアの人たちの信頼を回復しなければならないときに、なぜこんな法案を出さなければならないか。優生保護法というのはもともといろいろな矛盾をはらんでいます。ですからこれを根本的に改革していくというならば、またいろんなところで十分審議したらいい。中絶できなくなるところだけをちびっとつまみ食いして、そうしてこういうことをやるということ、明らかに勘ぐりではなくて、こうした方針でやられているとしか言えないというふうに思うわけです。  次に、それでは母体をそんなに心配していただけるなら、失敗しないで、産みたいときにいつでも子供が生まれるようにする、産むようにするということはいろいろありますけれども、まず妊娠ということで考えた場合に、受胎調節の指導というのはどのようになさっているのですか。しかたではありませんよ、広さ、どのような力を入れているか。受胎調節のしかたではないですよ。コンドームを使ってこうしてこうしてということじゃなくて、どういうふうにそうした指導に力を入れているかということを聞いているのです。
  403. 翁久次郎

    ○翁政府委員 受胎調節につきましては、全国の保健所、そこに優生相談所があるわけでございますが、それを中心にいたしまして、予算にいたしまして全額一億、それから器具等の支給、これは低所得階層の方々に出すものでございますけれども、約千五百万、それからその他集団指導の経費、これは約八百二十万、こういった経費で、地域ごとに約四万六千名の受胎調節実地指導員、この方々は保健婦、助産婦、看護婦の資格をお持ちになって、さらに受胎調節についての講習等によって資格を与えられた方々でございますけれども、そういう方々によって各地域ごとにこの受胎調節の指導を行なう、こういうこともやっているわけでございます。
  404. 田中美智子

    田中(美)委員 どういうふうに言われましょうとも、こうした受胎調節の予算がわずか一億円なんて、国家予算ですよ、日本国全部で一億人いるのですよ。それに一億円、こんな予算しかとってないということは、受胎調節というのがある程度きちっとやられていない。型どおりに優生保護相談所なんて看板が出たりしておりますけれども、これが実際にはほとんどやられていない。予算を見てもはっきりわかると思うわけですね。そうした中で先ほど住宅の問題も話しましたけれども、失敗率というのは非常に高いわけです。いまあなた方が指導している受胎調節のしかたで、失敗率というのはどれくらいあるわけですか。
  405. 本田正

    ○本田説明員 コンドームとそれからペッサリーによるところの失敗率は約一五%といわれております。それからゼリー等の精子を殺す薬がございます。それから周期法と申しますか、たとえば荻野式みたいなもの、それに性交中絶法、これを合わせました場合に、約二五%の失敗率だといわれております。
  406. 田中美智子

    田中(美)委員 私の調べたところでも大体そのような失敗率が出ているわけですね。これは厚生省と日本医師会が一緒になってした調査を見ましても、御存じだと思いますけれども昭和四十四年の十二月八日から十日間を区切って、日本の産婦人科の医者のところに中絶してほしいとやってきた婦人たちが二万九千人いたという統計が出ております。この二万九千人のうち回答した人たちが九三%、これは普通の調査としては非常に大きい数字です。これは厚生省と医師会とが力を入れたのでしょうけれども、回答率が非常に高い。この二万九千人の中で、中絶に失敗したから子供をおろしたいという人が一四%という数が出ているわけですね。これは非常に失敗率が高いというふうに私は考えるわけです。  アメリカの調査でも、大体日本と同じようにリズム法などでは一四%、コンドームでも一四%というふうに出ているわけですね。アメリカのように夫婦の住宅を持てる人たちが日本よりはるかに多いところでも、荻野式やコンドームというのは非常に失敗しているわけです。まして日本のように夫婦だけの寝室のない、寝室も居間も食堂もみんな一緒、親も子も一緒くたに寝ているというような状態の中で、失敗するなといってもこれは無理です。無知だから失敗をするという例も多少はあるでしょう。しかし無知でなくても、こうした住宅事情、経済事情、そして労働時間が非常に長くて、通勤時間が長くて、くたくたに疲れている夫婦の間では、こうした失敗というのは非常に多いわけですね。この失敗をほったままでこのような法律改正する意図というもの、こうした失敗が非常に多いというものをあなた方はどのようにして失敗しないようにするのかというふうにお聞きしたいと思います。今後の方針をお聞きしたいと思います。
  407. 本田正

    ○本田説明員 たとえば御指摘のように家が狭いとか広いとかということと失敗率というのは直接関係があるかどうか、私はないと思いますが、いろいろコンドームとかあるいはペッサリーとかあるいは荻野式あるいは性交中絶法等を適宜組み合わせることによって、単独の方法よりも失敗率はうんと低くなると思います。そういったことでさらに保健指導を通じまして、今後そういった指導をやっていくことによって徐々に失敗率を下げていきたい、こういうふうに存じております。
  408. 田中美智子

    田中(美)委員 コンドームやゼリーやそんなものさえ配っておけば失敗しないということにはならないのですよ。私は、もう時間がおそくなりますので、きょうの質問は私の一部分でありまして、ここのところでやめたいと思いますけれども、いま住宅と関係がないと言いましたけれども、この次、家族計画を具体的にどのように指導しているかということについてお聞きしますので、それがいかに住宅と関係ないか。これは実際の家族計画連盟にしても家庭生活研究会なんというところもあります、そういうところの人たちから聞いているわけです。そこでその人たちが指導しているわけです。それで家が狭かったりすることがいかに避妊の失敗に大きくつながっているかということをいっているわけですね。ですからもう一度、どのような指導をしているのかというところからこの次具体的に質問をしたいと思いますので、大臣のうしろにいらっしゃる方その準備をしてきていただきたいと思います。具体的にどのように失敗しないような指導をしているか、それをお聞きしたいと思います。きょうはこれで質問を終わります。
  409. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 次回は、明二十三日木曜日、午前九時五十分理事会、十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十三分散会