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1974-05-16 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    粕谷  茂君       瓦   カ君    住  栄作君       田中  覚君    高橋 千寿君       登坂重次郎君    羽生田 進君       大原  亨君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    村山 富市君       森井 忠良君    八木 一男君       山本 政弘君    田中美智子君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       坂口  力君    小宮 武喜君       和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    柳瀬 孝吉君  委員外出席者         議     員 川俣健二郎君         議     員 大橋 敏雄君         議     員 和田 耕作君         文部省社会教育         局婦人教育課長 志熊 敦子君         社会労働委員会         調査室長    浜中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     大石 武一君   粕谷  茂君     萩原 幸雄君   瓦   力君     福田 篤泰君   小林 正巳君     大久保武雄君   住  栄作君     田中 龍夫君   高橋 千寿君     天野 公義君   粟山 ひで君     近藤 鉄雄君   小宮 武喜君     池田 禎治君 同日  辞任         補欠選任   天野 公義君     高橋 千寿君   大石 武一君     伊東 正義君   大久保武雄君     小林 正巳君   近藤 鉄雄君     粟山 ひで君   田中 龍夫君     住  栄作君   萩原 幸雄君     粕谷  茂君   福田 篤泰君     瓦   力君   安井 吉典君     村山 富市君   池田 禎治君     小宮 武喜君 同月十六日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     八木 一男君   小宮 武喜君     神田 大作君 同日  辞任         補欠選任   八木 一男君     山本 政弘君   神田 大作君     小宮 武喜君     ————————————— 五月十五日  結核予防法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民健康保険法の一部を改正する法律案川俣  健二郎君外十三名提出衆法第三〇号)  結核予防法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)(参議院送付)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号)  優生保護法の一部を改正する法律案内閣提  出、第七十一回国会閣法第一二二号)      ————◇—————
  2. 大野明

    大野(明)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により私が委員長の職務を行ないます。  川俣健二郎君外十三名提出国民健康保険法の一部を改正する法律案議題とし、その趣旨説明を聴取いたします。川俣健二郎君。     —————————————年国民健康保険法の制定とともに発足し、以来三十有余年業種別組織たる特性を生かし、民主的かつ効率的運営によって、国民医療確保とその健康の保持に貢献してまいりました。今日、国民健康保険組合は、店舗自営業者自由業者医療関係者などによるもの百五十一、あるいはまた、四十五年六月、日雇い健康保険擬制適用の廃止によって新設された大工、左官、とび職などによるもの三十六、合計百八十七組合、被保険者総数二百六十万人、九十六万世帯にも達しております。  さて、これらの最近における経営状況を見ますと、医学薬学進歩給付改善受診率増大等により、医療費が年々二〇%前後の伸びを示すため、実に容易ならざる事態になっております。たとえば、四十六年度の保険料負担を見ますと、一世帯当たり、市町村国保年平均六千三百十三円に対し、国保組合平均は、何と一万六千三百六十円にも及ぶという異常な事態さえ生じております。  このような事態は、国民健康保険組合のうち約八割が、何らかの程度法定給付率を上回る給付を行なっている事情をしんしゃくしてもなお異常と断ぜざるを得ません。この事態のよって来たるところは、市町村国保に対する国庫補助率が、医療給付費の四〇%であるに比べて、国保組合に対しては二五%にとどまっていることであります。すなわち、国保組合は、四〇%と二五%の差一五%分相当額たる約百六億円を、国にかわって背負っているということになるのであります。  しかるに政府は、臨時調整補助金の名のもとに、わずか七十億円(四十九年度予算)を計上しているにすぎません。一方、市町村国保に対しては、四〇%の補助に加えて、五%の財政調整交付金制度があることは、御案内のとおりでありましょう。どこから見ても、国保組合に対する国の対応は、著しく公平を欠くものといわざるを得ないのであります。  本案、右の観点から、政令の定めるところにより国民健康保険組合に対して補助できる率を四〇%に引き上げるとともに、政令の定めるところにより、五%の調整補助金を交付することができることとしたわけであります。  なお、本案は、施行期日を四十九年十月一日といたしております。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに成立を期せられんことをお願いして、提案理由説明を終わります。      ————◇—————
  3. 大野明

    大野(明)委員長代理 結核予防法等の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案優生保護法の一部を改正する法律案議題とし審査を進めます。  結核予防法等の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明を聴取いたします。斎藤厚生大臣。     —————————————     —————————————
  4. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ただいま議題となりました結核予防法等の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  近年、結核医療進歩結核対策進展等によって、結核患者は著しく減少し、健康診断による患者発見率低下してまいりました。特に、年少者については、患者が激減し、健康診断による患者発見率もきわめて低いものになっております。この反面、危険度はきわめて少ないとはいえ、とりわけ年少者に対する健康診断の際のエックス線被曝による健康に対する影響については、十分に配慮する必要があります。このような状況等にかんがみ、年少者に対する定期健康診断及び予防接種について適切な措置をとろうとするものであります。  まず第一に、結核予防法による定期健康診断は、現在、毎年実施することとされておりますが、患者発生状況エックス線被曝による健康に対する影響等を総合的に考慮し、適切に実施することができるように、政令で定める定期において実施することに改めることとしております。  第二に、予防接種は、ツベルクリン反応検査反応陰性または疑陽性である者に対して行なうこととされておりますが、疑陽性である者については、そのほとんどがすでに結核に対する免疫を有しておりますので、陰性である者に対してのみ予防接種を行なうことに改めることといたしております。  第三に、市町村長は、小学校就学始期に達しない者のうち、幼稚園や施設で集団生活をしていない者に対して、毎年、ツベルクリン反応検査を行ない、かつ、その反応陰性または疑陽性である者に対し、定期予防接種を行なうこととされておりますが、予防接種による免疫効果はかなり長期間にわたって持続するものであることが明らかにされましたので、小学校就学始期に達しない者に対し、政令で定める定期において、ツベルクリン反応検査を行ない、かつ、その反応陰性である者に対し、定期予防接種を行なうことに改めることとしております。  そのほか、結核予防法による医療に関する給付にかかる診療報酬審査及び支払いに関する事務を、新たに、国民健康保険団体連合会等にも委託することができるようにし、診療報酬請求事務簡素化をはかることとしており、体身障害者福祉法及び児童福祉法についても同様の措置をとることとしております。  以上がこの法律案提出する理由でありますが、この法律案につきましては、参議院において施行期日に関し修正が行なわれたところであります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  日雇労働者健康保険につきましては、昨年、給付期間の延長、現金給付引き上げ等制度改善をはかったところでありますが、一方健康保険についても昨年の法改正により家族療養費給付割合引き上げ高額療養費支給等大幅な給付改善が実現したところであり、今日においては、日雇労働者健康保険給付健康保険給付に準ずる内容のものとすることが、緊急の課題となっております。  このため、政府といたしましては、日雇労働者健康保険制度の現在の仕組みを維持しつつ、その内容健康保険水準引き上げる方針のもとに、家族療養費給付割合引き上げ高額療養費支給傷病手当金支給期間の延長等大幅な給付改善を行なうとともに、保険料についても健康保険均衡のとれたものに改定する等の制度改善をはかることとした次第であります。  次に、改正案内容について申し上げます。  まず、医療給付改善につきましては、第一に、昨年の健康保険改正と同様、家族療養費等給付割合を五割から七割に引き上げるとともに、高額な医療につきましては、家族療養費等にあわせて高額療養費支給することとしております。  第二に、療養給付期間及び家族療養費支給期間現行三年六カ月から五年に延長することとしております。  また、この医療給付改善にあわせて、初診時一部負担金についても健康保険均衡のとれたものに改定することとしております。  次に、現金給付改善につきましては、傷病手当金支給期間現行三十日から六カ月に延長する等、傷病手当金出産手当金埋葬料分べん費等について、健康保険給付に準じたものに改善することとしております。  また、保険料につきましては、今回の大幅な給付改善に見合って健康保険均衡のとれたものとするため、現在賃金日額に応じて第一級五十円から第四級二百円までの四段階とされているものを、賃金日額の等級に応じて第一級六十円から第八級六百六十円までの八段階とすることとしております。なお、この改定は、保険料の急激な負担増を避けるため、昭和五十一年度までの間に段階的に行なうこととするとともに 賃金日額の低い第一級及び第二級の被保険者負担分について軽減措置を講じております。  最後に、この法律の実施の時期につきましては、昭和四十九年十月一日としております。  以上が、この法律案提出する理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 大野明

    大野(明)委員長代理 優生保護法の一部を改正する法律案につきましては先国会趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大野明

    大野(明)委員長代理 御異議なしと認め、さように決しました。     —————————————
  7. 大野明

    大野(明)委員長代理 質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子みつ君。
  8. 金子みつ

    金子(み)委員 結核はかつては日本では国民病であるとか亡国病であるとかいうふうにいわれて、長いこと日本死亡率の第一位を占めるというような状態が続いてきたことは御承知のとおりだと思います。二十年ほど前から、大体昭和二十六年でしたでしょうか、結核対策が新たにつくられて、そして結核実態調査を五カ年ごとに行なうとか、それに基づいて患者管理をするというような政策がとられるようになりましてから、過去二十年の間における結核蔓延率低下したとか、あるいは死亡率が一位であったものが十位に下がったとかというような、結核に関する諸政策の成果というものは一応評価できるものがあると思うわけでございます。しかし結核死亡率が二十年前に比べて、一位であったものが十位に下がったということは、死亡の数は減ったということであると思いますけれども、なくなったということではない、ゼロになったということではないわけでございます。そこで日本結核状態というのは、十年あるいは二十年前の状態に比べますと、非常に形が変わって、今日なお別の形で非常に大きな問題が残されているということを私たちは認識しなければならないと思うわけでございます。  たとえば、昭和四十七年には結核による死亡率人口十万に対して一一・九というふうになりまして、死亡率第十位ということになったわけでございますけれども、御承知のようにWHO西太平洋地域、これは日本を含みます西太平洋沿岸に存在する諸国でありまして、どちらかといえば後進国あるいは中間の国とか、そういったいわゆる先進国とは考えられていない国の多い地域でございます。その地域を対象としている西太平洋地域のセミナーでは、WHOは、結核に関してはその死亡率人口十万に対して一〇にするという一つの目標を持っているということを承知いたしております。また同時に、結核に関する国際会議国際結核学会でも同じように人口十万に対して一〇というところで線引きをしている。そこで、ここで線引きをして先進国後進国とを振り分けているわけでございますが、そういうことになりますと、日本の場合は後進国になっているわけです。結核に関しては依然として後進国であるということを照明されてしまっております。しかもその後進国ぶりがどんな程度後進国になっているかといえば、オランダでは人口十万に対して一・二、オーストラリアが一・四、アメリカが一・四、カナダが二・一というふうな先進国数字に比べてみますと、二・九という日本数字ははるかに高い、五倍ないし十倍も高いということがいえると、思うわけです。ですから日本結核はもう解決したのだとか、あるいは日本はもう結核の問題は重要ではないんだというようなことは、とてもじゃないけれどもいえないと思うわけです。この高い数字を、先進国に比べて十倍もの死亡率をまだ持っている日本の場合に、これを先進国並み低下させていこうとするためには、まだまだ十年や十五年はかかるということは、結核専門方たちが口をそろえておっしゃっているところでございます。ですから、たまたま死亡率が二十年前に比べれば十分の一を減ったからといって、気をゆるめたりあるいは手を抜いたりということは許されないと思うわけです。  そこでお尋ね申し上げたいと思いますのは、結核実態調査でございますが、たしか昨年、昭和四十八年は実態調査の行なわれた年だと思うのですが、その結果は集計ができておりますでしょうか、どれぐらい前進しておりますでしょうか。もしおわかりになっていらっしゃいましたら教えていただきたい。
  9. 三浦英夫

    三浦政府委員 昨年は昭和四十八年十月に結核実態調査を行なっております。ただ結核実態調査につきましては集計の項目その他が非常に複雑になっておりますので、現在統計調査部集計中でございまして、まだ結果が判明していないような次第であります。
  10. 金子みつ

    金子(み)委員 わかりました。それではその集計はでき次第教えていただきたいと思います。  続いてお尋ねをしたいと思いますのは、私は日本医療問題はかなり水準が上がってきているというふうに一応考えております。もちろん一つ一つ分析して考えれば、ある専門の方々は、日本医療はまだ十年や十五年はおくれているとおっしゃる方もありますし、それから日本は、医学進歩に比較して医療はまだまだおそいのだというふうにいわれている場合もございます。しかし一般的に申しまして、かなり水準は上がってきたと考えていいのじゃないかというふうにも思われると思います。  ところで、そのような状態になっているのにもかかわりませず、なぜこのように結核死亡率がもっと下がっていかないのだろうという疑問があるわけでございます。申し上げるまでもありませんけれども、もともと結核呼吸器伝染性疾患でございますし、その原因もはっきりしているわけでございます。ですから言うなれば予防可能の疾病だということができると思うのです。ガンのように原因がはっきりしないで予防対策が非常にむずかしいものは別といたしまして、伝染病なんというものは原因がはっきりわかっているのですから、予防できないはずがない。予防可能な疾病であるにもかかわりませず、非常にその成績が遅々として進まないという問題について私はふしぎに思っているわけなんです。なぜこれがこんなに時間がかかるのだろうかという問題でございます。その原因が、日本気候とかあるいは食生活とか生活環境とか栄養問題とか、そういうようなことにも関係があるかもしれないと思いますが、もしそうであるとすれば、そのようなものも考慮に入れた、幅広い総合対策結核対策の中に組みこまれていかなければならない、そんなふうに思うのでありますが、日本政府ガンというともうぴりっと電気に打たれたみたいになって、ガンを退治するためにはというので、ガン予防対策、あるいはガンの治療の問題につきましては非常に御熱心でばく大な予算を組んでいらっしゃいます。ところが結核についてはあまり目ざましい予算の変化も見当たらないというふうなことから考えますと、結核対策についてどのように考えていらっしゃるかということが不安でございますし、まずこの死亡率低下の問題につきまして、なぜ下がらないのだろうという私の端的な質問にお答え願いたいと思います。
  11. 三浦英夫

    三浦政府委員 先生おっしゃいますように、現在結核死亡率人口十万、一一・九になっております。これをちなみに昭和二十五年に比べますと十分の一、昭和三十五年に比べましても三分の一程度になっております。ただ、確かに先生のおっしゃいますように、かつての急速に死亡率低下してきた当時から見ますと、最近は死亡率低下も速度が落ちてきております。その原因につきましては、従来は結核国民病といたしまして、おそらく全国民平均的に結核にかかった方があったわけでございますが、最近の結核の様相は、御承知のとおり、たとえば高年齢層であるとか、あるいは特定地域結核患者さんが集中しておるとか、あるいは山村あるいは農漁村というような地域に集中しておる、こういう現象があらわれてきておりまして、いわば特定の階層、特定地域等に問題がしわ寄せになってきております。こういう地域につきましては、健康診断とかあるいは予防接種を行なうにつきましても、学校とか事業所に比べまして非常に受診率が悪いとか、あるいはなかなか病院に来てくださらない、こういうようなことが原因となって死亡率低下がやや鈍化してきておるのじゃないかと思う次第でございます。したがいまして、私どものこれからの対策は、そういう方面に重点を置いた結核対策を推進していきたいと思っておるような次第でございます。
  12. 金子みつ

    金子(み)委員 死亡率地域差のお話が出ましたが、これについても少し実態を御説明申し上げて、御意見をいただきたいと思います。  いまの死亡率でありますけれども地域差の話が出たのですが、全国平均がいま申し上げた一一・九、ところがこの地域差を少し調べてみますと、九州の鹿児島県が三一・三、長崎とか佐賀とか大分とか九州の北のほうですね。北九州市も合わせて、一八というふうな数字が出ております。要するに西日本ですね。西日本側はこのような数字です。ところがこの西日本数字に比べて、東日本といわれている宮城県とか新潟県とか長野県とかあるいは関東の群馬県とか埼玉県とか、こういうところは六・九程度でございます。けたが一つしかありません。このように、西日本に高くて東日本に低いという実態が発見できるわけでございます。  それからまた、いまのは死亡率ですが、結核罹患率についても、全国平均は十万対二二七・八という数字が示されておりますが、これに対して、やはり九州大分とか熊本とか、こういうような地方、あるいは神戸、大阪、この辺まで延ばしてみても、大体二一二とか二〇〇とか百九十幾つとか、こういう高い数字ですね。二〇〇台になっております。ところが東日本のほうは、先ほど申し上げた長野とか新潟とかというところは一〇〇にもならない、七〇台、八〇台、こういうふうに低いわけでございます。これもやはり西が高く東が低い、こういうことになっております。  さらに感染性肺結核罹患率、これはたいへんおそろしいのですが、この感染性肺結核罹患率を見ますと、全国平均では三二・一でございますが、同じように西側、和歌山県五七・六とかというところが高いです。これに比べて、長野県が一五というふうなぐあいに、非常に下がってくる。どれを見ましても西側が高くて東側が低い、こういうような数字の結果が出ているわけなんですが、これは何が原因かということですね。たまたま偶然なのでございましょうか。常識的にいえば、東北とか北海道あるいは長野とか新潟とか、こういう地方のほうが気候も悪いし、結核にとっては条件としては好条件ですから結核が多い、あるいはあたたかいほうの側は、西側結核が少ないと常識的に考えられ得るような気がするのですけれども実態はその逆なんですが、これは一体何が原因なのでございましょうか。その原因と、それからそれに対する対策とをお考えでございましたら聞かせていただきたいと思います。
  13. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに先生の御意見のとおり、西日本結核罹患率あるいは死亡率が非常に帯くなっております。これは確かにそのとおりでございます。実はこの原因につきまして学会先生方にいろいろ御意見を聞いたりしているのでございますが、その原因そのものはなかなかわからないようでございます。ただはっきりしておりますことは、結核対策に取り組んだところが早かったところほど、早く死亡率あるいは罹患率が減ってきているのは、これは確かなようでございます。したがいまして、先生おっしゃるとおり、結核は撲滅できる病気でございますから、今後はこういう罹患率等の高い地域にできるだけ対策重点を持っていって、結核の撲滅をはかりたいと思っているような次第でございます。
  14. 金子みつ

    金子(み)委員 早く取り組んだところが早くいい成績を出した、こういうふうにいまおっしゃったわけですけれども、そうすると、たまたま偶然東日本側のほうが早く取り組んで、そうして西側は取り組みがおそかったというふうに理解できるのですが、それでよろしいのでしょうか。
  15. 三浦英夫

    三浦政府委員 一がいにそれはいえないようでございますが、実は私どもも、先生のおっしゃるとおり、学会先生方と、どうして西日本が高いのかという疫学その他いろいろな見地から研究けしておりますが、その原因がよくわからないのが実情のようでございます。  ただ、早く取り組んだところが早かったというと、今度は西日本にそうじゃなかったということになるのでございますが、そういう意味でなしに、早く取り組んだところは早くなっていることも事実のようでございます。
  16. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、私はふしぎだと思いますのは、学者の先生に伺ったらよくわからないとおっしゃったからやむを得ない、こういうふうにしか聞こえないのですよ。でもそれでは、国の政策として、これからは学者に聞いてもわからなかったのだからやむを得ないでは済まないと思うわけですね。それはやはりわからせなければ意味ないのじゃないでしょうか。どこまでも追及してわからせる、その機能もお持ちだと思いますし、能力もお持ちだと思いますから、長い間はうっておいたというのはどういうことなんでしょう。一日も早くわからせて、そうして西側の高いのを、東ができているのになぜ西ができないのか、私はそんなおかしな話はないと思うのですね。ですから、やはり政府自体が熱心に取り組んでいらっしゃらなかったのじゃないでしょうか。その辺私は非常に疑問に思うのです。
  17. 三浦英夫

    三浦政府委員 受診率とか、そういう方面からも検討を加えております。先生おっしゃるとおり、私どもこれからの結核撲滅対策地域的な問題、階層的な問題がございますので、そういう原因を十分学会先生とも探求をいたしまして、さらに力をいたしていきたいと思っている次第でございます。
  18. 金子みつ

    金子(み)委員 いまの問題はできるだけ早い機会に改善できるように努力していただきたいと思います。  続いて別の質問をさせていただきたいと思います。  いまは地域差の問題で非常に問題が残っているということがわかったわけでございますが、今度は結核患者の職業別と申しますか、どういうような生活をしていらっしゃるかというようなことによって差があるかどうかということでございます。それについて数字を調べてみますと、いわゆる新規登録患者、新しく発見されて登録された患者の職業別は、一番高いのは無職、職業についてない人というのが、私の調べました四十七年の数字では二三・二%と出ておりました。その次に高いのが一二・五で、これは家事従事者と書いてありましたけれども、家事従事者の中の、おもにこれは主婦でございます。主婦が非常に高い。そのほかには自営業ですね。職人とか商売をしていらっしゃる自営業の方が大体八%近い。それから農林漁業の人が同じぐらい高い。あるいは自由業の人が少し下がって三台になる、こういうような数字が出ています。いずれにしましても、こういうような職種の方たち結核登録患者全体の半ば以上を占めている、五〇%をこえているわけですね。六〇%近くこの職種の方たちが登録されているということがわかったわけです。  それから、ただ登録の数字だけでなくて、感染性結核であるかどうかという問題がまた大きな問題になると思います。感染性であるかないかということが結核の場合には非常に大きな意味があると思うのですけれども感染性患者の場合で見ますとさらにその比率が高くなる。感染性の場合は六一・九%、六二%がこの職種の方たちで占められているという実態がわかるわけでございます。  そこでお尋ねしたいと思いますことは、こういうグループは、いわゆる結核対策の中の定期健康診断というものからはずれている人ですね。たとえば学校の検診とかあるいは事業所とかそういうところの定期検診からはみ出していて、保健所で行なっている住民検診の対象になっている人たちじゃないか。いわゆる定期外でございますか、それを定期外と言うのかどうかよくわかりませんが、いずれにしましても、住民検診の対象になる人たちだというふうに理解いたします。  そうすると、この人たちの場合は、非常にむずかしいのは、検診のために一日休むということが直接収入に影響いたしますね。ですから、検診のために休んで行くというわけにもいかない。それをやっているとさっそく収入に影響してきますし、収入が減りますから、それはなかなかできないというような原因があるんじゃないかと思うのですね。  そういたしますと、地域住民検診をなさる場合に、どういうふうな形で、こういう人たちを検診に引き出せるような対策を従来とっていらしたのかどうかということです。非常にむずかしいと先ほどちょっとおっしゃっていらっしゃいましたけれども、尋常一様の呼びかけぐらいでは、この種の人たちを検診に引っぱり出すことはむずかしいと私は思う。どのような対策を用意していらっしゃるでしょうか。この人たちこそ問題の人たちなんですよ、多いんですから、そしてその人たちが受けていないんですから。これをするためには、どういう具体的な対策を御準備なさっていらっしゃるか、持っていらっしゃるか、教えていただきたいと思います。
  19. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに、先生の御指摘のとおり、自営業者の方であるとか主婦の方であるとか無職の方、こういう方々に結核の新規登録が多い、あるいは定期市町村長の行ないます検診になかなか参加してくれない、これは事実のとおりでございます。それに比べまして、学校とか職場では集団検診が非常にやりやすい。そういうような観点から、結果といたしまして、主婦とかあるいは農村の方というほうに結核罹患率が高いというようなことも起こっているかと思う次第でございます。  私どもといたしましても、これからの対策はそちらへ重点を向けていかなければならぬ、かように思っております。  その一つの方法といたしまして、昨年度から、成人病の検診、特に循環器疾患等でございますが、これを市町村で実施を——これは法律でやるのでなくて任意でございますけれども、そういうものとか、あるいは血圧検査とか、そういうものとあわせて、できるだけ受けていただくようにというような呼びかけを、地域の婦人会とかあるいは自治会等に行なっているような次第でございまして、一つだけではなかなかお受けにならなくても、いろいろな検査を総合的にやっていただけば、受診をしていただけるんじゃないか、かように思っているような次第でございます。
  20. 金子みつ

    金子(み)委員 たとえば、いまお話が出た成人病検診というのがありますね。その成人病検診というのには、非常にみんな出てくるわけですよね、おっしゃるように。数字の上でも、成人病検診の場合は、まだ成人病そのものがあまり認識されていなかった昭和三十年代では低いです。千人に対して一一・五ですから低いですけれども昭和四十年では四六・五と大きな数字を出しておりますし、さらに一昨年の四十七年、一番新しい数字だと思いますが、七三・一というふうに、成人病検診の場合は、ウナギ登りに検診率が上がっていっているわけですね。  ところが、結核の場合はその逆をいっているわけです。たとえば、四十年に一四一・九もあったのが、四十七年には八九・九、がたっと下がる、こういうような実態が出ているわけなんですけれども、これはいまお話しのように、成人病検診とあわせてやれば可能だというお見込みがあるんでしょうか。
  21. 三浦英夫

    三浦政府委員 幸いにしてそういう循環器とかあるいは検尿とか血圧検診とあわせてやった保健所管内では、従来よりも受診をしてくださる率が高くなっております。ですから、これも一つの方法じゃないかと思いまして、さらにこういう方法を推進していったり、あるいはまた、そのほか何かもっと受診に来てくださるような方法を考えて、受診率を高めたいと思っている次第でございます。
  22. 金子みつ

    金子(み)委員 ほんとうにむずかしいことはむずかしいと私も思います。私どもの住んでおります町内で保健所から、この成人病検診で呼びかけがきておりますし、それから、いろいろな団体が検診車を回して検診をする。それは、近くの広場、公園とか子供の遊び場のようなところに検診車を置いて、ここに検診車が来ていますから皆さん検診を受けてくださいと呼びかけをやっているわけですね。ところが、その呼びかけがあっても、そこに来ていることがわかっていても、なかなか足を運ぼうとしないのが一般の人たちの認識だと思うのですよ。これを引き上げていくというのは非常にむずかしいと思います。だから、ただ単なる呼びかけだとか、ビラを配るとか、チラシをまくとかいうことだけでは私はとてもできないと思うのですけれども、何かもっと効果的な方法というものは考えられないかどうかということが一つと、それから、いま成人病と一緒にしたらば検診率が高くなっているとおっしゃいましたが、その高くなっている検診率の実態を、いまでなくてもよろしいですが、数字で教えていただきたい。どのように高くなっているかということがわかるような数字がありましたら教えていただきたいと思います。
  23. 三浦英夫

    三浦政府委員 場所あるいは時間等もっときめのこまかいことをやっていただかなければならぬじゃないかと思っております。一律に個々のたくさんの方に遠い場所に集まってほしいとか、あるいは時間等につきましても一律の時間ではなかなか集まりにくいようなこともありますので、今後はもっときめのこまかい集団検診の方法を考えていきたいと思っております。  なお、成人病との受診率関係でございますが、全国的な平均の数値はございませんが、事例的なものはありますので、後ほど先生のところへまた御説明にあがりたいと思っております。
  24. 金子みつ

    金子(み)委員 いまの問題につきましては、数字をあとでいただきたいと思いますことと、それからどのように具体的な方策を——新しい考え方で何か計画を進めていただかない限り成果はなかなかあがらないというふうに思いますので、その点は十分御検討いただきたいと思います。  続いてまた別の角度からこの結核の問題を取り上げてみたいと思います。   〔大野(明)委員長代理退席、委員長着席〕  結核に関するいろいろな統計調査というのは非常にたくさん出ておりますが、そのたくさん出ております調査したものの中から、私は年齢別の結核実態を調べてみたわけでございますが、一口にして申しまして、結核患者実態は、昔十年ないし二十年前の時代では、若い二十代の青年層ですね、十代の終り、いわゆるティーンエージャーといわれるころから二十代、三十代にかけて一番多かったということがいわれておりましたし、またそれは事実であったと思います。それが最近の傾向はそうではなくて、むしろ年齢の高い者に結核患者が多数発生しているという事実が数字の上で明らかにされているわけでございます。  申し上げるまでもないと思いますからあまり詳しい数字を申し上げる必要はないと思いますけれども、たとえばいままで高かったと考えられていた二十歳までの人たちですね、こういう若い青年層、この二十歳以下のグループというのは今度は現実にはたいへんに少ないわけですね。大体−四%ぐらいしかない。それに引きかえて四十歳以上が非常に高くなっておりますね。四十歳以上だけをとってみても八〇%に近い数字を示しておりますし、さらにもっと問題だと思いますのは、六十歳以上が非常に高いということでございます。六十歳以上だけでも六〇%あるというようなことでございますので、問題は、結核は老齢化してきたということになるわけなんです、老齢化してくると、いろいろな意味におきまして非常にやっかいだと思います。だんだん結核は以前よりもむずかしくなってきたのじゃないかというふうに考えられるわけでありますが、いまは非常に老年層に多い、それから若年層には少ないという実態がございます。この老年層というのは、いずれはなくなっていきますね。死亡していく。何年か先に、老年層が退いたあとに若年層が入れかわりますね。入れかわって入っていった場合には、日本結核数字はいまとは変わるでしょうか。やはり同じようにまた高い数字を老年層になったときに示すでしょうか。それとも、低い人たちが入れかわったわけですから、それがその低いままでとどまっておりますでしょうか。言い直せば、結核が減少するということですね。そういうふうになるものでしょうか。ちょっとその点、私はわからないのですけれども、どういうふうにお見通しを立てていらっしゃいますか。
  25. 三浦英夫

    三浦政府委員 若い層の方に結核患者が少なくて老年層の方に非常に多い。まさに先生御指摘のとおりでございます。こうなりました原因にはいろいろあると思いますが、やはり一番大きな原因は、若い方はいろいろな機会に健康診断あるいは予防接種を受ける機会が多い。実際問題といたしまして、二十代までの方は八五%以上の方が予防接種あるいは健康診断を毎年のように受けておられます。ところが四十以上の方はなかなかそういう健康診断を受けていただけない。受診率にいたしましても四〇%以下になっております。これが結核の早期発見、早期治療ということからまいりまして——予防接種の効果が非常に高くなったこととか、あるいはその他全般からまいりまして、現在の若い層の方々が御老人になったら結核になる、こういうことはないと思いますので、結核は逐次、若い層の方々がこのまま老齢化したときに結核になるというような現象はまずないと思っておる次第でございます。
  26. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、結核年齢層が入れかわったときには下がっていく、減少するというふうに考えて間違いないですね。よろしいわけですね。——はい、ありがとうごさいました。  そうしますと、老齢者の結核の問題でいま一つわからないことがありますのでお尋ねしたいと思いますのは、若い元気なころ、健康なころにつとめていますね、仕事をしていますから、いまお話しのように定期検診を受けて、そして管理がよく行き届くから結核は少ないということが考えられます。そうすると、定年過ぎてから、そういった管理の手を離れてから疾病がふえていった、こういうことになってくるわけですね、自然の勢いとして。結果としてそうなりますね。ということは、定年をこえた方々のための健康管理の対策が、定年までの就職していらっしゃる間と比べるといささか違ってきているのじゃないか。その辺にウエートがずいぶん置き方が違ってきているのじゃないかという気がします。就職している間は企業にまかせて、企業がそれを実施するようにということになっていますから、政府が直接手を出さなくてもできる問題で、企業にまかせてしまっていらっしゃる。定年過ぎたあとの問題は企業にまかせる問題じゃなくて、政府が直接手がけなければならない問題でございますが、そこへもってきてそのほうがぐっと成績が悪いというのは、むずかしいかもしれませんけれども、私はやはりそこに何かたるみがあると申しますか、真剣味が抜けているのじゃないかというような感じがするのですね。そういうことはあってはならないと思いますが、そういうことはございませんのでしょうね。私は確かめておきたいのです。
  27. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに職場とか学校におられて集団検診の受けやすい環境の方々に比べまして、お年寄りの方あるいは主婦の方等の受診率が低いことはまさに御指摘のとおりでございます。私どもこれに一番腐心をしておりまして、したがいまして何とかこの方々の受診率を向上していこうと思いまして、たとえば先ほど申し上げました成人病検診とあわせてやるということを始めましたのも四十八年度からでございます。昨年初めてこういうことを試みてやってみたわけでございますが、これからも先生御指摘のとおり、いろいろなことを考えまして、受診率の向上をはかってまいりたいと思っておる次第でございます。
  28. 金子みつ

    金子(み)委員 いま一つ老人の問題でお尋ねしてみたいと思いますことがございます。  それは、最近は結核療養所の入院患者さんが非常に老齢化してきているという事実、これは先ほど来の話し合いの中で当然のことだと思うのですけれども、病床が老齢者、高齢者で占められて、特別養護老人ホームじゃないけれども、特養のような状態になりかかってきているという事実があるようでございます。  その問題と、それからいま一つは、結核療養所のベッドの利用率がたいへん低いですね。一般病院が八五%ぐらいだと思いましたが、結核の場合は六五%ぐらいで、ずいぶん低いですね。ということは、利用していないということになるのでございますけれども、利用していない理由がどういうところにあるかということは、私どもやはり疑問だと思うわけです。病人は一ぱいいるのですから、社会の中には。しかも高齢者あるいはその他先ほど申し上げたようなグループの人たちが。しかしそれを使っていないというのには何か理由があるだろうというふうに考えるわけでございますが、老人問題と関連して、政府ではそれをどのように考えていらっしゃるでしょうか。私どもは耳にいたしますところでは、最近の結核療養所に入所を希望してくる人たちが高齢者であるということや、重症者であるというようなことから、結核療養所ではそういう方が入院されると手間がかかると申しますか、非常に人手を要するので、どっちかといえばお断わりしたい、拒否されるという例がございます。それから長期入院でございますので、療養所側としては部屋代の差額をとるということもできない。そうすると採算がなかなか合いにくい。だから、長期にわたる高齢者の入所はお断わりしたいというようなことで断わられているケースもあるのですね。そういうようなこともあって、この利用率が少ないというふうなこともあるのじゃないかと思うのですが、そのほかにどんな理由があるというふうにそちらではお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  29. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに現在の病床の利用率は六四、五%になっております。まさに御指摘のとおりでございます。私は、この基本的原因といたしましては、一つは、昔のような重症患者の方が少なくなってきたことが一つだと思います。さらにもう一つは、化学療法が発達いたしまして、昔のように長期間の治療を要しなくなってきた。さらに、化学療法の発達によりまして、従来でございましたら入院治療をしなければならないのが、外来治療で済まされるようになったということもあるのではないか、私は、そういう医学技術の発達、あるいは薬学の発達から来たのが基本だと思っておるような次第でございます。
  30. 金子みつ

    金子(み)委員 私どもが聞き及んでおります理由一つの中に、いまのお話も確かにそうかもしれないと思います。長期入院者がたいへん少なくなっていることは事実でございます。しかし、短期で回転率がよくなって入院するということはあり得ると思うのですね。でも、入ってきていない。その中には、入院患者の人たちが一体現在の結核医療で満足しているかどうかという問題なんかも入ってくる。患者の満足度というものがあるわけですね。その患者の満足度というようなものを調べてみたものがあるのですが、そうしますと、現在の状態で満足していると答えている人は六人に一人ぐらいしかいないのですね。あとは不満足なんです。不満足な原因は、食事がおいしくないとか、あるいは部屋がきれいでないとかあるいはサービスがよくないとか、お医者さんは一カ月に一回しか来てくれないとか、そういうような不満があって、満足していない。そうなるとこの問題は結核医療の中身の問題にもなってくると思うわけなんですが、このほうにつきましては万般間違いなくやっているというふうにお考えでございましょうか。実際問題としてはそういうことがあるわけなんです。そこら辺をどのようにお感じになっていらっしゃいますか。
  31. 三浦英夫

    三浦政府委員 申しわけございませんが、個別の病院になりますと、私、なかなか実態は把握しておりませんが、やはり長期の療養でございますし、療養生活自体が非常におつらいということはよく認識しております。いずれにいたしましてもできるだけ快適な病院生活がおくれますように、今後とも関係の病院等につきまして、指導と申しますかお願いと申しますか、やっていきたいと思っております。
  32. 金子みつ

    金子(み)委員 この問題ばかりで時間をかけたくないと思いますけれども、満足していない人たち理由の中に、ちょっと気になりますのは不安であるというのがあるのですね。非常に不安である。不安であるということは、その中身を分析しておりませんけれども、自分の病状について正しく知らされていない。自分で自分の病状をちゃんとわかっていないということが一番大きな原因じゃないかと思います。それがどういうふうになっていくのかということも知らされていない。何となく薬はいろいろもらうけれども、その薬がどういうふうに効果があるのか、どういうふうに副作用があるのか、そういったこまかい指導、患者療養指導ですけれども、それが行なわれていないということがあるんじゃないかと思います。急性の疾患の患者さんの場合はもちろんですけれども、慢性疾患の場合は特にそういう問題には注意が必要だというふうに考えますけれども、そういうことがやはりおろそかになっているんではないかということが感じられるわけです。この点をぜひ注意していただきたいと思いますが、これについては厚生省ではどんな御指導をなさっていらっしゃいますか。
  33. 三浦英夫

    三浦政府委員 医師と患者さんとの信頼関係の問題でございますので、厚生省のほうでお医者さんに、こうしたらどうかと言うことも非常にむずかしいわけでございますが、医師と患者さんの信頼関係の問題につきましては、厚生省の仕事としては一番大事なことだと思っております。
  34. 金子みつ

    金子(み)委員 いまの問題でお願いが一つございますが、結核患者を収容して治療するのである、結核対策であるからといって、いわゆる公衆衛生あるいは医療政策が中心になるのは当然ですけれども、その問題だけでなくて、入院できない原因の中に経済的な問題も入っているわけなんですね。公費負担、その他の配慮があるということも承知いたしておりますけれども、いずれにいたしましても、特に高齢者の方々の入院の場合に、単なる公衆衛生政策だけでなくて、いわゆる福祉政策もあわせて考えていただきませんと、ほんとうの医療にはならないというふうに私はかねがね考えております。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕 これは結核だけでなく、あらゆる医療の場合にいえることだと思いますが、医療問題は医療だけでなくて、日本の場合、特に福祉問題が必ずついているということで、これもあわせて配慮の中に入れて今後の問題を処理していただきたいということをお願いいたしておきます。  続けてお尋ねしたいことがございます。結核患者さん自身にとってもそうでございますけれども患者を取り巻く周辺のものにとりましてもあるいは日本全体の問題として考えましても、この結核の問題で中心にもなるんじゃないかと思われるくらい大事な問題だと私が思っておりますのは、結核にかかっている患者さんが医療を受けないでそのまま放置されているという実態でございます。病気になれば医者にかかるということは、普通の人はあたりまえのように考えますけれども、必ずしも全員が医者にかかってはいない。これは事実でございます。ほかのものならば、医者にかからないからといっても本人の問題で済みますが、結核患者の場合は、医療を受けていないことによって、その患者がまたほかの患者をつくり出す原因になるわけですから、これは公衆衛生上非常にゆゆしい問題だと思うわけです。  それで、結核患者医療放置という問題はどういうことになっているかというと、御存じだと思いますけれども、四十六年の数字で見ましても、入院している人の数よりも在宅の患者——これは医療を受けている人です。入院しないで自宅で療養をしている人というのがありますね。これが合計で七千六百九十五となっております。入院している人は二千二百八十二。ところが、医療全然なしというのがあるわけですね。医療全然なしというのが八千八百二というように最も高い数字を出しているわけです。これはたいへんなことだと思うのでございますけれども、登録患者総数に対して四一.六%ですか、そんなに高い数字の人たち医療を受けていない。さらに、これは活動性の人とかあるいは感染性の者とか、いろいろまじっていると思いますので分けていきますと、活動性登録患者の場合ですと、その活動性の人たちの中で医療を受けていない人は一〇・五%、十分の一ぐらい。それから一番問題にしたいと思っている感染性ですが、これは登録患者の六%ですから、数字の上ではそんなに大きくはないかもしれませんけれども、しかしこの感染性患者の六%が医療を受けないでいるということが問題ですね。医療を受けないということは、この人は感染性なのか非感染性なのかということがわからないわけでしょう。だから、もし全員が感染性の疾患を持っている患者だったとすれば非常に重要問題だと思うわけです。そういうことが現在あるわけでございますけれども、この問題は非常に大きな問題だと思います。  こういう人たちは、グループからいいますと集団検診を定期的に受けていない人たちじゃないかというふうに思いますね。受けていれば、結果がわかっているのでつかまえられているはずですから、この人たちは受けていない人たちだと思います。そうすると、このグループは集検からはずれている人たちですから、きつき話が出ましたけれども、保健所が随時に行なう集検、これに参加してもらわなければならないということになるわけでございますが、管理検診の受診者が四十七年には三十五万人あって、実際に受けた人は二十万人しかいないというわけです。そうすると、二十万人はつかまえることができたんですね。そこまで詰めてきた。ところが、残りの人たち、比率にすれば大体四〇%ぐらいになりますが、その人たちは相変わらず放置されているわけですね。この問題は非常に大きな問題だと思います。  この数字全国平均でございますけれども、今度は放置率を地域的に見ますと、全国平均一〇・五%と数字が変わるわけです。ところが、先ほどのように東とか西とかというふうに分けてみますと、県でいえば、三重県二六・二%、和歌山二四・二%。三重とか和歌山というところは非常に気候のいいところだと理解しますが、ここでは放置されている患者がこれだけある。二六・二%とか二四・二%という高い数字を持っていますが、寒い寒い新潟県では三・〇二%とたいへん少ない、こういうふしぎな現象が起こってきているわけです。  この高い率を示している地域は、先ほどの御説明だと、一つ理由として、取り組みが早かったところは低かったんだというふうにお話しくださいましたけれども、今度の場合は取り組みをやっていても放置されている人がいるということで、取り組みが十分だったとは思えないわけですが、その放置されている率の高い地域は何が原因でこういうことになっているのかということをいろいろ考えてみたわけですが、たとえば結核のベッドが足りないのかもしれないというふうにも想像いたしますし、もう一つは、結核専門医が少なくなっているのかもしれないし、あるいは保健所が中心でやる住民検診に参加してもらう人たちですから、保健所そのものに医師が足りないんじゃないだろうか、やらなければならない保健所に、やるべきはずの人がいないという問題があってできない。どこかへ頼むというふうなことをやっているんじゃないだろうかというふうな気もいたします。  そこで、もう一つは、結核予防法に基づけばチェックされた人は、つかまえられた人は保健婦がその家庭を訪問して指導することになっておりますね。ところが、その保健婦がやはり足りないのか、あるいは保健所の指導方針が変わって結核には重点を入れなくてもよろしい、もっとほかの成人病その他に力を入れなさいというような指導方針が出て、保健婦が手を抜いたのか、手を抜くような指導があったのか、いろいろなことが想像されるわけなんですけれども、私はこれらの三つの疑問を持っているわけです。病床が足らないのかあるいは医師がいないのか、保健所の医師の充足率というものを教えていただきたいと思います。それから保健所にいる保健婦の充足率ですね。必要とする保健婦がちゃんといるのかいないのか、医師がいるのかいないのか、こういう問題を保健所の問題として少し聞かせていただきたいと思います。
  35. 三浦英夫

    三浦政府委員 まず保健所の医師及び保健婦の充足率でございます。私どもが考えておりますあるべき姿の医師あるいは保健婦さんの定数から見ますと、医師の充足率が約四二%でございます。それから保健婦さんの充足率が八〇%、やはり約二割ほど足りないような状態になっています。
  36. 金子みつ

    金子(み)委員 四二%の充足率ということは半分にいかないわけですね。ということになりますと、私どもの聞き及んでおります範囲では、保健一所に医師が一名もいないというところがありますね。衛生部長が兼務をしていらっしゃる。ところが衛生部長さんというのは一人しかいらっしゃらないわけですから、たとえば北海道なんかは八つの保健所が一名もいない。みんな衛生部長が兼務していらっしゃるというのですが、一人の衛生部長が八つの保健所の兼務をどうやってできるのでしょう。実にふしぎだと思います。そういうようなことは私は問題じゃないかと思います。この保健所の医師不足というのはいま始まったことじゃないと思います。私の理解でも、不足不足でずうっと続いてきていると思うのですけれども、なぜこれが充足できないのか、基本的な問題だと思いますのに、充足できない理由、充足するための努力をどのように進めていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  37. 三浦英夫

    三浦政府委員 保健所のお医者さんが充足できないことにつきましては、私どもの一番悩みとしているところでございます。いろいろな手を考えてみております。たとえば本年度は、将来保健所の医師として働いていただける方に育英資金というのをやっておりましたが、従来毎月六千円でありましたのを倍額の一万二千円に引き上げ措置をとっております。あるいは従来から保健所に行かれた方に、特別な研究手当を組むとか、あるいは外国に御勉強に行っていただくような予算措置をするとか、いろいろなことを考えております。基本的にはお医者さん全体が不足していることが原因かと思いますけれども、あの手この手で考えられることはすべて取り上げたいくらいの気持ちになって、お医者さんの充足に努力しておるわけでございますけれども、今後とも考えられるあらゆる手を考えまして、医師の充足には努力してまいりたいと思っているような次第でございます。
  38. 金子みつ

    金子(み)委員 その問題で一つ伺いたい問題があるのです。、医師の充足の問題ですけれども、保健所に勤務する医師が非常に少ないということの問題で、卒業したらば保健所に勤務してもらう、あるいは公衆衛生の分野で働いてもらうということを約束して、医師を教育する場合に就学金制度というものができておると私は承知しておりますが、その就学金制度の利用率と申しますか、あるいはその結果どういうような効果があがっているのか、あがっていないのか、教えていただきたいと思います。
  39. 三浦英夫

    三浦政府委員 この就学金につきましても、金額につきましては先ほど申し上げましたとおり六千円を一万二千円に引き上げております。実は非常にお恥かしい話でございますけれども、四十三年には就学資金を利用されておる方が四十一人おられましたが、そのうち十人が保健所に就職していただいております。最近はせっかくこの資金を利用されても保健所にお入りにならなくて、たとえば四十七年の数字を見ますと、二十九人がこの育英資金をお借りになりましたけれども、実際に保健所に勤務していただいた方は一人であった、こういう状態になっておりますけれども、それでも一人でも来ていただいたということで、何とかこれもやはり保健所のお医者さんの充足対策一つだと思ってやっておるような次第でございます。
  40. 金子みつ

    金子(み)委員 涙ぐましい御努力だと思うのですけれども、だけれども非常にもったいない話ですね。これは原因はどこにあるのかというと別のところにあるのではないかと思うわけです。ですからその辺をもう少し検討をお進めくだすって、保健所に医師がいないことによって、結核対策低下していくというふうになっていくのではないかと思いますので、その点は十分御検討いただきたいと思います。  それから保健婦の問題ですけれども、保健婦の充足率が八〇%ということは保健所の中では最も高い充足率なんだろうと想像いたしますけれども、しかし、八〇%ということでは必要数を満たしているということにはならない。必要数を満たしていないところへもってきて、私どもがこのごろ非常に訴えられますことは、保健所の保健婦が、保健所できめられている自分たちの業務をするだけではなくて、そのほかに保健婦や助産婦や看護婦の学生の実習指導を担当させられているという問題がございます。これは一方では、看護職員の教育の一環として保健所実習は当然必要なことなんですので、省令で定められていることでございます。ですから当然これはしてもらわなければならないのですが、それを保健所の保健婦の人たちが担当させられているために思うように仕事ができない、結核の問題もだめになる、こういうようにまたつながってくるということも考えられますが、この問題に対して保健所はどのような手をお打ちになっていらっしゃるでしょうか。
  41. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに先ほど申し上げましたとおり、保健所の保健婦さんの充足率が八割である。この点につきましては、私どももやはり何とかもう少し保健所の保健婦さんがふえていただけないだろうかということで、各都道府県その他にお願いをしております。ただ、技術者の不足等からこういう結果になっておるわけでございますが、先生御指摘の、たとえば看護婦養成所であるとかあるいは保健婦養成所の実習で保健所が使われておるわけでございますが、これはこれでやはり公害の指導というか、そういうことをするのは結局保健所が一番ふさわしいところでございますので、これ自体はやむを得ないというか、今後も続けざるを得ないと思っているわけでございますが、これはまた保健婦さんがお忙しくなっているということの事実は十分認識しておる次第でございます。
  42. 金子みつ

    金子(み)委員 保健婦の問題も医師の問題も、私は全く同じだと思うのです。多少保健婦のほうが充足率が高いからといって安心はしていられないと思うのです。この先どうなるかわかりません。というのは看護婦の不足というのがございます。保健婦になるのには看護婦になってからという教育の過程が一つございますから、看護婦が不足であるということで、看護学校卒業した人が病院へ足どめをされる、保健婦学校に行きたいと思ってもなかなかこられない、こういうような実情ももちろん出てくると思います。ですから、このまま幾ら都道府県にお願いをなさっても、都道府県は頼まれても困ると思うのです。ですからそうでなくて、もっと抜本的な対策を考えていただかなければ解決できないと私は思うのです。そうして、ことに保健所の保健婦は保健婦らしい仕事ができないといって悩んでいます。そういうことからいいますと、保健婦は今後もっとやめていくかもしれない。そうすると充足はもっとむずかしくなる、もっときびしくなる。医師のように一人もいないなんということが起こるかどうかわかりませんけれども、それにしてもそういうことが全然考えられなくないというふうにも思います。ですから、保健所の職員の充足については、ただ人数をふやそうとすることだけでなくて、働く環境の整備であるとかあるいは待遇の改善であるとか、あるいはいろいろ要因はあると思いますが、そういうようなものを十分総合的に考慮されることによって充足——そうでなくても保健所の職員は数が少ないです。たった十人や十五人以内くらいの保健婦であれだけの人口を担当させられて、いまはどうですか。四十七年の数字では保健婦は一万四千五百四十八名日本では働いておりますね。しかしその中で、全員が地域の仕事をしておるわけではありません。事業所にもおりますし学校にもおりますから、地域の活動をする保健婦ということになりますと一万二千に落ちてしまいます。一万二千で地域を担当することになると、人口比率でいきましたら、一人の保健婦の担当が八千人をこえるわけですね。地域差によっては一万も二万も持たなければならない。これを担当するということになりますと、どんな仕事ができるかということは、私どもは想像はむずかしくないと思います。非常に形式的になってしまう。こういうようなことを厚生省としては、全般の問題なので三浦審議官にお答えいただくことは無理かと思いますが、厚生大臣にこの際お願いしておきたいと思いますが、これは看護婦対策の問題の一環として、看護婦の不足のことばかりを頭の中に入れておいでにならないで、保健婦の不足というのは非常に大きな問題なんです。看護婦不足の陰に隠れておりますけれども、実際には必要とする保健婦の数の三分の二しかいま働いていないはずです。  それから助産婦の問題も保健所に関連がある。結核と助産婦は関係ないかもしれませんけれども。保健所には助産婦を置くことになっておっても、ほとんどおりませんでしょう。これも充足率は非常に悪いと思いますけれども。そういうようなことをやはり全体の問題として考えていただかなければならないので、厚生大臣、どうか医療、保健事業における看護の一環として同じように考慮に入れて、今後どのように対処していただけるか、お見通しあるいは御意見を聞かせていただきたいと思います。
  43. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 非常に御熱心に、御意見を交えての御質問でございますが、まことにごもっともでございます。看護婦ばかりではございません。私どもほんとうに頭を悩ましておりますのは、保健所の、医師の確保の問題、保健婦の問題、助産婦の問題、特に助産婦などは、最近におきましては高齢化しておりますので、あと継ぎは一体どうなるだろうかというふうなことを心配しておるわけでございます。こうした問題を解決するためには、お述べになりましたとおり、もう単なる、人を確保することをお願いするなんかでは解決できないと私は思います。やはり勤務環境の改善、思い切った改善をする、あるいはまた処遇の改善をする、こういったふうなことから根本的にやっていかなければならぬのではないか、こういうふうに考えております。したがって、私どもも最近、看護婦問題を非常にやかましく言っておりますが、こういう問題もないがしろにしておるわけではございませんので、お述べになりましたように、そういうものを全部一括して、思い切った勤務環境の改善あるいは処遇の改善、こういう面に全力を尽くして、確保方に全力を尽くしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  44. 金子みつ

    金子(み)委員 いままでいろいろと申し上げてまいりまして、御答弁もいただいたわけでございますけれども、いろいろ考えてみますと、結局せんじ詰めれば、結核患者の管理の問題だというふうになるんじゃないかと思います。結核患者の管理ということになりますと、入院している人の場合もありますし、在宅患者の場合もあるわけでございます。たとえば入院している患者さんの場合、最近は再入院、再発する人たちがございますね。再発はいつでもあることだと思いますけれども、私がもらった数字が正しいかどうかということでございますけれども、たとえば国立の東療なんかの場合でも、三〇%近い再入院、再発があるというふうに伺っております。これは一体どういうことかということなんですが、私は、再入院があるということは、問題は初めに入っていたときの問題だと思うのです。外へ出てから、条件が悪くなったから発病したのだというふうにおっしゃると責任回避になると思うので、私は、入院と同時にリハビリテーション、フォローアップということを考えて医療は行なわれるべきだと思います。ですから、そのことが行なわれていないために、退院していった人がもう一ぺん再発をするということになってくる。これは、いま申し上げたようにリハビリテーションやフォローアップの仕事ができていないからじゃないかというふうに私は思います。あるいは、やっていらっしゃるのかもしれませんが、徹底して行なわれていない、非常に不徹底であるというふうに考えられるのではないかと思います。  ことに、いま保健所の状態も聞かせていただきましたが、数が非常に少なくなっている。保健所の事業の運営のあり方として、対人サービスに非常に手を抜いていらっしゃると申しますか、保健所の運営のあり方として、対人サービスを非常に軽視しているように私には思えるわけです。最近の保健所問題懇談会の報告等に基づいて、保健所の機構改革などを計画していらっしゃるように承っておりますけれども、詳しいことはまだ私は存じませんが、その話の中から聞きますと、対人サービスは市町村に移管するということも考えていらっしゃるようですが、そういうようなことは、条件をつけていかなければ市町村に移管することは決して効果をあげるものだとは考えない。もちろん、対人サービスというのは生活に近いところでするのが一番いいと思います。ですから、市町村へおろすことが一がいに悪いとは思いませんけれども、おろすならおろすで、そこで実際に仕事ができ、効率的に仕事ができるような諸条件を全部つけていかなければ、権限だけをと申しますか、事業の責任だけを市町村におろしても決して効果があがるものではない。むしろマイナスになると思います。  そういうようなことも考えられるのですが、保健所の対人サービスが低下しているのじゃないかというふうに考えられることに対する御答弁がいただきたいのと、いま一つは、保健所が直接やらなければならない患者管理を、直接やらないで結核予防会などに委託してしまうというようなこともあるように伺っているのですけれども、その辺の事情もお聞かせ願いたいと思います。
  45. 三浦英夫

    三浦政府委員 保健所の仕事の一番大事なことは、やはり予防活動であり公衆衛生活動であり、いわば対人サービスが一番大事なことだと思っております。先生御指摘の保健所の基調報告というのは、実は保健所が御承知のとおり二十数年たちまして、保健所として改革すべき必要性の問題もいろいろ出てきておりまして、そういう関係から、民間の識者の方に御意見を求めたところ、先生おっしゃったようなそのような御意見一つとして出てきたわけでございますが、これを厚生省がどう対処するかにつきましては、現在のところまだ白紙の状態でございます。それはそれといたしまして、保健所の一番大事な仕事は予防活動、公衆衛生活動、対人サービスというのが第一義だと思っております。  それから第二の結核患者の管理、これは本来、保健所の仕事でございます。そのために保健婦さんの家庭訪問とかあるいは患者管理の指導の国からの補助金等も計上しているわけでございます。もしもそういう事態がありとすれば、結核予防会にまかしたとすれば、あまりにも保健所が忙し過ぎて、一部にそういうことがあったのかもわかりませんが、できるだけそういうことがないようにして、保健所の本来の仕事としてやっていくように今後も行政指導をしてまいりたいと思っております。
  46. 金子みつ

    金子(み)委員 対人サービスが保健所の業務の中で最も大切だと三浦審議官はおっしゃいましたから、この点は絶対にゆるがせにしないでいただきたい。保健所が役所になって、そして監視業務であるとか監督業務であるとか、そういう行政的な仕事に非常に重点が入っていって、対人サービスは非常に低下しているというのが一般的な評価でございますから、これはよく聞いていただきたいと思います。いまおっしゃったことをどうかお忘れなく、速記録にも残っておりますけれども、これからの保健所運営として、そのことが実現できるための対策を十分に考えていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  そこで今度は、先ほど厚生大臣が御提案になりました結核予防法改正関係でございます。この改正についてでございますけれども、実は私は非常に遺憾な実態を知らされたわけなんでございます。それは何かと申しますと、きょう厚生大臣がこの衆議院の委員会提案をなさって、そしていま私が質問をさせていただいて、そして皆さまも質問をなさって審議されていこうという段階でございますね。だからこの問題はまだこれからどうなるものかきまらないわけですね。それなのに、厚生省では昨年の十二月の段階で、十二月二十七日に事務連絡というものを各都道府県にお流しになっていらっしゃる、政令市はもちろんですけれども。そして何をお流しになったのかといったら、結核健康診断予防接種の検診の単価が次のように変わるからそのことを知らせる、こういう連絡なんですね。単価の変わっているのがずっと出ておりますが、その単価が変わっているということのほかに、前文にこういうことが書いてあるのです。単価が変わるのを次のとおりに内示されましたからお知らせします。「なお、健康診断予防接種の実施方法については本年十月九日の結核予防審議会の答申に基づいて実施することとするので、よろしくお願いします。」もうきまってしまっているのですね。これは連絡だけですけれども、いまのは「結核成人病課」という名前で出ておりまして、だれだという責任者は書いてないのです。  いま一つは、結核成人病課長がことしになってから内簡をお出しになっていらっしゃる。四十九年三月七日付結核成人病課長内簡、これはどういうことをお出しになったかといえば、ずっと答申の中身か入っているのですね。結核子防審議会答申がずっと書かれていて、そして改正案のとおり実施するということについて、これを改正案どおりで実施をするからよろしく、こう書いてありますよ。「昭和四十九年度における定期健康診断及び予防接種については、とりあえずは下記により実施するよう、教育関係部局とも連けいのうえ、市町村、学校、施設等に対し周知方を図られたいこと。なお、」こういうふうに書いてありますね。これはまだきまってない法律なんですけれども、どうしてこういうものが先に出たのでしょう。
  47. 三浦英夫

    三浦政府委員 実はそれにつきましては、この機会に弁解というか、申し上げますが、こういう意味でございます。御承知のとおり、学校保健法では、毎年四、五、六月に学校の児童生徒の健康診断をやることをたてまえにしております。その際に、あわせまして結核の健康審査もやりまして、もしもその結核予防法の基準どおりで学校保健法による健康審査が行なわれれば、結核予防法による健康診断を済ましたこととみなす、こういう趣旨のことが学校保健法に貫かれておるわけでございます。もちろんこれは法案でございますから、国会の御審議を経てやるという、私ども当然そのつもりでございますが、ただ、現在国会のほうで法案を御審議をお願いしておりますので、小学校の一年生から六年生まで、中学の一年から三年まで一斉にエックス線フィルムをかけた健康診断をやらなくても、結核予防法による改正がもしも行なわれた場合には、まず最初に、対象になるであろうところの小学校一年あるいは中学校二年の方を先にやっていただいて、それから後に、国会の御審議の様子を見て、五月、六月に残りの方の健康診断をやったほうが混乱が起こらなくて済むのじゃなかろうかということで、文部省とお打ち合わせをしたわけでございまして、もしも現行法のままでいくとなりましたならば、現行法どおりの措置を今後ともとるようになっておるような次第でございまして、決して国会の御審議を待ってとうこうというのじゃなくて 現場の混乱が起こらないようにするために、事前の、先とあとに分けるような運用をとらしていただいたような次第でございます。
  48. 金子みつ

    金子(み)委員 何かちょっとおかしいのですけどね。もし変わらなければいままでどおりでございましょう。いままでどおりだったら何年も何年もやってきたのですから、学校側にはちゃんとその準備があるはずだと思います。変わればもっと簡単になるわけですね、今度手を抜きますから。これがもし逆なら、準備その他学校側があわてふためくような、それはたいへんだということになるかもしれませんが、今度は抜けるのですからね。むしろ単純化されるわけでしょう。それだったら、何もそんなにあわてて、法律が通らないうちにいう必要ないのじゃないでしょうか。私は法律無視じゃないかという気がするのですけれども、どうでしょう。大臣、いかがですか。
  49. 三浦英夫

    三浦政府委員 全くそういうつもりはございません。したがいまして、一方においてたとえばエックス線の照射の被害等も問題にされておりますし、従来からも各学校で必ずしも一年生から六年生まで一斉にやっておったわけでもございません、学年ごとに分けてやられておりましたので、ことしは比較的新しい一年生の学年とか、そういうほうから先に取っ組んでいただいて、国会の御審議の様子を見て、次の措置をとるというようにさしてもらった次第でございまして、そういう点御理解いただければ非常にありがたいと思う次第でございます。よろしくお願いいたします。
  50. 金子みつ

    金子(み)委員 いや、このことでそんなに長い時間をとりたくないのですけれども、ちょっと納得できないのですね。いままでだって年次別にやっていたのだから問題ないとおっしゃれば、今度はもっと問題はないわけでしょう。国会に提案されているのですから、もうすぐ会期が終わればそのことの白、黒は決着がつくわけですね。それがなぜ待てないのでしょう。なぜ一足早くこういうことをしなければいけないのでしょう。私は、その一足早くしなければならない理由がどうしても成立しないと思うのですけれども、これは大臣から答えていただきたいと思います。
  51. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 こういう結核予防法のような法律国民関係する問題でございます。集団検診等、関係がございますので、すなわちこういう法律を国会に御提案を申し上げておりますという連絡なんですね。それは、こういう法律を国会に出しているということを連絡するというのは私は当然だと思うのです。通ったらこうなりますということをいっているのです。国会が通ったらこうなりますという法律内容事務連絡をするということは一向差しつかえない。通りましたなんていっていませんよ。通りましたらこうなるということを一それ以上のことを役所がいえるはずがないじゃございませんか。通ってないのに通りましたとはいえるものじゃない。通った場合にはこうなります、これは私は親切なやり方だと思いますよ。事務的な連絡、こういう法案を出しております、この法案が通ればこういうふうになりますよ、これはあたりまえだと私は思うのです。ですから課長の内簡といいますか、課長の事務的なもの。この法律が通りましたときには、この法律趣旨はこういうものでございまして、こうなりますということは、次官通達または局長通達ではっきり出すのでございまして、これは事務的な連絡、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  52. 大野明

  53. 村山富市

    村山(富)委員 どういう法律の場合もそんな扱いをしていますか。いま大臣からあった答弁とは内容が違いますよ。こう書いてあるのですよ。「標記について、昭和四十九年度の検診単価が下記のとおり内示されたので、お知らせします。  なお、健康診断予防接種の実施方法については本年十月九日の結核予防審議会の答申に基づいて実施することとするので、よろしくお願いします。」これは明らかに審議権無視じゃないですか。どうですか。大臣の答弁とは全然中身が違いますよ。
  54. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この予算の単価は、これはもう予算できまっておりますから、これはよろしゅうございますね。  それから、実施しますというのはちょっと行き過ぎであったと思いますね。法律が通ればこういうふうになるのでございます、私はそういうふうに理解していただきたいと思うのですよ。そう目くじら立てて——だって、法律が通らなければ実際やれないのですよ。そうでしょう。法律が通らなければやれませんよ。そんなこと役所がやれるものじゃないのですよ。それは通ったときの話でございますから、そういうふうに軽く御理解をいただければしあわせだと私は思います。
  55. 村山富市

    村山(富)委員 これは国会の審議権に関する問題だし重要な問題だから、軽く考えてくださいなんて、解決されませんよ。まだ法律が出ておらない、しかもまだ提案もされておらない、きょう初めて提案するわけだから。それを去年の十二月二十七日の連絡文書で「実施することとするので、よろしくお願いします。」こういう表現を使って通達を出すんですよ。受け取るほうは、これはこうなるんだからこうせなければいかぬとなるでしょう。そうすると、国の文書一通によって全国的に審議権の無視が行なわれるのですよ、法律無視が行なわれるのですよ。これはぼくは重要な問題だと思うのです。ですから、この種の書簡に対する扱いについての見解をもっとはっきり表明してもらって、休憩してもいいから、それでなければ審議できませんよ。もう法律はできて実施をするんだというようなことにしてあるんだから。(齋藤国務大臣「ちょっと見せてください」と呼ぶ)
  56. 大野明

    大野(明)委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  57. 大野明

    大野(明)委員長代理 速記を始めてください。
  58. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨年の十二月二十七日付事務連絡として、厚生省公衆衛生局結核成人病課として、各府県の衛生主管部の結核予防主管課に対する書類が出でおるわけでございますが、この書類を私もいま拝見いたしますと、非常に行き過ぎの面があることは私も率直に認めるわけでございます。しかしこの内容趣旨は、結核予防審議会の答申に基づいて法律提案する、その法律をということの連絡をしたということでございましょうが、しかし冷静に字句どおり読みますと行き過ぎの面があります。まことに遺憾といたします。かようなことは自今ないように厳に戒めて注意をいたしますから、このたびは御了承願いたい、このように思います。
  59. 金子みつ

    金子(み)委員 いま大臣がそのように御答弁になりましたので一応了解することにいたしますが、問題は、やはりこれが事務連絡であるから問題ないと大臣おっしゃいましたけれども事務連絡であるから私はかえって問題だと思います。責任者の名前も書かないで、単なる事務連絡でこのような重要な問題を出すということは非常に不見識だと思うのです。私どもは、陳情でも請願でも名前のないものはきちんと名前を書いたものと取り扱いを区別しております。ですから、こういうふうな出し方は私は以後慎んでいただきたいというふうに思います。よろしゅうございましょうか。
  60. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お述べになりましたこと、まことにごもっともでございまして、事務連絡の名において、国会の審議権を無視するかのごとく誤解されるようなことは書くべきものではございません。したがいまして、今後局長会議において、この課のみならず全省にわたってかようなことは二度と起こらないように、厳に戒めてまいりたいと思います。
  61. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは質問に返ります。  今度の改正は先ほど御提案がありましたのでその辺は省かせていただきますが、疑問があります点を教えていただきたい。  それは今度の改正によりますと、ゼロ歳から三歳児の間に一回ツベルクリンテストをいたしますね。そして陰性の子供にはBCGを接種いたします。その後、何もしない。そして一年生に入学をしたときにもう一ぺんツベルクリンをいたします。この間に二年間空白な期間があるわけですね。そしてツベルクリンをやって陰性に出た子供はBCGをやって、さらにもう一年先の翌年続けてツベルクリンをして、そして陰性に出たらまたBCGをしてと、ここまで続けてくるのですが、そのあとはあきます。そして四、五、六年生、三年間があきますね。それから中学に入りまして一年生は何もしない。四年間あきます。二年になってまたツベルクリンをやって、そして陰性ではBCGをやって、次の年にもう一ぺんツベルクリンをやって、そういうふうにして高等学校に入っていくわけですね。高等学校に入りますと、従来と同じ検診方式がとられていく。こういうふうに理解するわけですが、よろしゅうございますか。
  62. 三浦英夫

    三浦政府委員 そのとおりでございます。ただ一つつけ加えさせていただきますと、特に結核感染のおそれの多い者、具体的に申しますと、ツベルクリンの陽性反応が非常に強く出た方及び結核の治癒所見がある子供さんに限っては、小学校一年のほかに小学校四年のときと小学校六年のときと中学一年のときに、別にもう一度その方々は抜き出しをしまして健康診断をやることになっておりますけれども、それを除きましては全く先生のおっしゃるとおりでございます。
  63. 金子みつ

    金子(み)委員 いまのは理解いたしました。続けてお尋ねいたしますが、最初のツベルクリンテスト、二回目のツベルクリンテスト——二回目じゃなくて、三回目ですね。初め陰性に出た人がBCGをもう一ぺんやったときのツベルクリン、それから中学校に入ってからの二度目のツベルクリン、この反応検査の結果陰性に出た人はBCGをやりますね。ところが、陽性に出た人は何もしないわけですね。これは何もしないでそのまま放置される。たとえば小さい子供の場合はゼロ歳から三歳ですから、一番おそい時期としてかりに三歳でやったとして、今度一年生になるまでツベルクリンが陽性に出ても何もやらない。小学校の場合も二度目にツベルクリンをやって陽性に出ても、中学校一年になるまでやらない、こういうことになるわけなんですが、陽性反応が出た場合にエックス線撮影をするということは常識のように私どもは聞いておりましたけれども、その必要はないのでございましょうか。初感染をどうやってつかまえなさろうというお考えなんでしょうか。その辺をお伺いさせていただきたいと思います。
  64. 三浦英夫

    三浦政府委員 いまの先生の御設問は、まずゼロ歳から四歳までの間にツベルクリン反応をやって、陰性の者にはBCG、陽性の者には何も対策をされないのかということだと思いますが、実は陽性者に対しましては、必要によって、現行医療基準によりまして、化学療法ができることになっております。そういうように実際の治療対策をやっていくというような考えでおる次第でございまして、したがって健康診断から治療というほうに進んでまいりますので、特段御説明というか、国会に出しました説明資料には書いてなかったような次第でございます。
  65. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、陽性に出た場合は全部化学療法をすることということになっているのですか、できるということなんですか。どちらなんですか。
  66. 三浦英夫

    三浦政府委員 もちろんできるということでございます。特に問題なのは、ゼロ歳から四歳までの間で、通常陽性になることがございませんのが、もしも陽性が出てきた場合には非常に疑いがありますので、化学療法のヒドラの服用をすることができるということになっておる次第でございます。
  67. 金子みつ

    金子(み)委員 先ほどから結核患者管理の話をしてきたのですが、陽性に出た子供が感染していることは事実ですね。発病していないかもしれませんけれども、感染していることは事実ですが、その場合に必要な化学療法をすることになぜなさらなかったのですか。したら何かぐあいが悪いことがございますか。できるということにしたわけは、子供のことですから本人の意思ということはないでしょうけれども、保護者の考えでするかしないかきめるわけでございましょうか。
  68. 三浦英夫

    三浦政府委員 できると申しますのはそういう意味でございまして、保護者がそこの保健所の担当の医師と相談をいたしまして、その結果、必要があり、できるという場合にはいたしますという意味でございます。
  69. 金子みつ

    金子(み)委員 その辺がよくわからないんですけれどもね。じゃ、やらなくてもいい、やらないと思った保護者があった場合にはそのまま放置ですね。
  70. 三浦英夫

    三浦政府委員 もともとゼロ歳から四歳の小さい子供さんが陽性に出ることは異常でございます。異常でございますから、あとは医師の判断によりまして、化学療法をさせるなりあるいはもっとほかの治療が必要な場合があるかもわかりませんが、その場合に化学療法というのは、実は公費負担で無料にするという制度が別にあるわけでございます。したがって、できるというのはその適用が受けられるという意味でございまして、最終的には治療するかどうかというのは医師の判断になってくると思う次第でございます。
  71. 金子みつ

    金子(み)委員 やはりお役所の文書というのはむずかしいですね。考え方もむずかしいですね。私が親だったらどうするかということをまず考えるわけですけれども、そういうときやりなさいとなぜ指導なさらないのですか、結核管理の立場から。それは親権を侵害するからいけないとでもお考えになるのでしょうか。それはやらせるべきじゃないでしょうか。
  72. 三浦英夫

    三浦政府委員 やりなさいというか、最終的にやるかやらないかの判断は医師の判断によるのでございますが、私どもといたしましては、医師がおやりになる場合は公費負担を適用いたしまして、それなりの医療軽減措置をとっている、こういうことでございまして、厚生省で、やりなさいというぐあいにはやはりちょっと言えないと思います。
  73. 金子みつ

    金子(み)委員 わかりました。厚生省が直接やりなさいと言えないのであったならば、結核患者管理の指導の一瞬として、そういう場合には必ず医師のところにいらっしゃい、これはできるはずです。そして医師の指導を受けなさい、これは大事な指導だと思いますが、それはやらせるように通達の中にお載せになったのでしょうか。
  74. 三浦英夫

    三浦政府委員 それは先生御説のとおり当然でございまして、さらにそういう指導の強化ははかっていきたいと思っております。
  75. 金子みつ

    金子(み)委員 時間がかかりますからやめますが、当然だと厚生省がお考えになっていても、一般の人は当然だとは考えないわけです。ですから、やはり指導的立場にいらっしゃるならば、このようにしなさいと指導するということをたてまえにして通達をお出しになるべきじゃないでしょうか。親切にするというのはそういうことだと思うのです。  それから、小学校一年と二年の間の落ちこぼれはどうなさいますか。四年まで待たなければならないのでしょうか。
  76. 三浦英夫

    三浦政府委員 まず、学校でございますから原則としては落ちこぼれはないと思います。ただ一学年のときに長期に学校を休んでおられたという関係で、たまたま健康診断を受けられなかった方につきましては、二年生のときにあらためて健康診断の対象にする予定にしております。
  77. 金子みつ

    金子(み)委員 子供たち結核家族の子供であるかどうかということは把握できるようになっておるのでしょうか。
  78. 三浦英夫

    三浦政府委員 それにつきましては、御承知のとおり、現在保健所には結核患者の登録という制度がございます。医師が診断をいたしまして結核ということがわかりますと、保健所に連絡がくることになっておりますので、その登録患者の子供さんであるかどうかということにつきましては、十分把握できるようになっておる次第でございます。
  79. 金子みつ

    金子(み)委員 そういう子供はさっきの例外的な措置のほうに入るわけですね。  そうすると、いま一つお尋ねしたいことがございます。こういう場合はどうするのでしょう。実は昭和四十五年に沖繩で起こったことですけれども、小学校で集団発生がございました。それから、御存じだと思いますから、時間がありませんので具体的に申し上げませんで事実だけ申し上げます。四十八年、昨年ですが、大阪でも同じく集団発生がありました。それから、ことしになってから東京で集団発生が一つございました。こういうような集団発生は原因が全部教員なんです。教員によってばらまかれた結果なんです。学校ではありませんけれども、新宿の日赤産院で乳児が集団発生をさせられています。これもやはり職員が結核患者の結果でございます。こういうように非常におそろしい大量感染をするわけですね。これは毎年チェックしておれば発見できる。これは毎年チェックしていたから発見できたのだと思うのです。これを二年、三年と間をあけてしまった場合に、はたしてチェックができるかどうかという問題、これはどうなるでしょう。
  80. 三浦英夫

    三浦政府委員 先生御指摘のとおり、たとえば滝野川の幼稚園にこの間発生したこともよく存じております。実は、十五歳以上の方々につきましては毎年定期健康診断を今後も続行することにしております。したがいまして、教職員の方にそういうことを発見した場合には、直ちに私どもとしては、定期外の健康診断として、その学校の児童、生徒を臨時に健康診断をすることにしております。過般、滝野川の幼稚園におきましてもそういう教職員の方がおられましたので、すぐその学校で定期外の臨時検査をやっておりますが、今後ともそういう措置につきましては十分遺憾なきを期したいと思っておる次第でございます。
  81. 金子みつ

    金子(み)委員 私が、ふしぎだと思いますのは、学校の教師は定期検診を受けておるはずですね。なぜこれが発見できなかったのでしょう。毎年定期検診を受けておるはずです、一年に一回か二回かわかりませんけれども。発見できないでいて、そして子供たちに感染させたというケースなんでしょうか。その辺がよくわからない。
  82. 三浦英夫

    三浦政府委員 私は過般の滝野川の幼稚園のケースについて、そこまで具体的に把握しておりませんが、たてまえとしましては、労働安全衛生法等で成人の方は一年に二回検診をするたてまえになっております。ただ強制力がありませんので、そのときに受けられなかったとかあるいは何か事情があって受けなかったかわかりませんが、自今こういうことがないように、文部省とも十分連携をとって学校の先生の検診について遺憾なきを期していきたいと思っております。
  83. 金子みつ

    金子(み)委員 学校の教師の要医療率というのがあるのですが、これは小学校の子供、中学校の子供を比較してありますが、小学生がO・一六、中学生が〇・一、高校生が〇・四四、一般住民が一・一、教員は一・五二、教員の医療を受けなければならないという要医療率は高いです。これはもう排菌者で病人ですね。こういう人たちが子供たちに集団発生をさせるというのは非常におそろしいと思います。非常に大きな責任だと思うわけです。教師が自覚して検診を受けるか受けないかということはもちろんあると思います。強制力はないとおっしゃいましたけれども、教師にはその自覚はあるはずだと思いますが、たまたまこういう事例が幾つか出てくるということは、やはり私は学校保健の上からもあるいは保健所側からもこういうことは十分厳重に注意していただきたいと思うわけです。  そこで、私はこのことを非常に心配しますのでお尋ねしたいのですが、集団感染の危険と今度の法律改正理由一つになっておりますいわゆるエックス線の照射による被曝の危険、この問題ですね。被曝の危険を少なくするために今度は間引いているという結果になっているわけですけれども、集団感染の危険と間引いた被曝の危険との優劣はどういうことになりますでしょう。従来ずっと毎年一回ずつやってきたのに、これが危険だということは一ぺんも聞いたことがないのです、学説としても。それはてんびんにかけていらしたのでしょうか。   〔大野(明)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  84. 三浦英夫

    三浦政府委員 先生承知のとおり、まずBCGの予防接種の効果は従来は一年か二年程度とされておりましたのが、現在は十年程度の効果があるということが学界の定説になっておるようでございます。したがいまして、四歳までの間に予防接種を行ないますから、まず一応免疫を得られるわけでございます。それに加えて学校に入りましてから二段、三段と措置をやってまいるわけでございます。一方被曝の問題につきましては、エックス線被曝がきわめて少ないと申しましても、やはり学界その他ではかなり問題視されてきております。したがいまして、結核健康診断と被曝とのかね合いで今後こういうようにさせていただくわけでございますが、両方の利益、不利益を勘案した最大のといいますか、最良の方法が、今回学界の先生方意見に基づいてやらしてもらっている措置かと思う次第でございます。
  85. 金子みつ

    金子(み)委員 そこら辺の問題は非常にはっきりとさせていただきませんと疑問が一般には残ると思います。ぜひはっきりさせていただきたい。  そこで、また結核成人病課長の話になってくるわけなんですが、結核成人病課長は、結核予防会が出している「複十字」という雑誌に「結核対策の新しい方向として文章を載せていらっしゃいます。これを拝見いたしますとよくわかるわけなんですけれども、この中で私が気になりましたことは、今度の法律の一部改正が「結核対策の後退を決して意味するものではない。」しかし「このことが、結核軽視につながるような風潮をかもしだすとすれば、それはわれわれ結核関係者の大きな責任であるといえよう。」と書いてあるのですが、私はまさしくそのとおりだと思うのです。これは一般的には非常にはっきりしていないのです。エックス線をとらなくなるということについて、どういう事情、どういう理由でということがはっきりされておりませんので、一般的には母親たちはとても、心配するわけですね。そういうことがあってだいじょうぶでしょうかと心配いたします。母親たちの心配は一つの心配ですけれども、そのことが結核軽視につながるということになりますと、これは国の政策との問題にもからんでまいると思いますので、私どもはこれは結核軽視につながる、あるいは結核対策の後退だと考えられてもしかたがないというふうに思わないわけにいかなくなってくるわけなんです。この辺を、そうではないんだということであるならば、そのことをはっきりと解明していただかなければならないというふうに思います。厚生省のものさしでものごとをおはかりになって文章をおつくりになったりなさいますとこういう結果になるわけですね。知識のない、そして自覚もあまりない一般の庶民、そう言ったらおこられるかもしれませんけれども、少なくとも厚生省の方よりはありません。だからそういう人たちがほんとうに理解できて、この法律で喜んで検診を受ける体制を整えていただかなければならぬと思うのですが、そのためには、いままで長い時間かかってお話をしてまいりましたいわゆる若年層に対する結核の軌道修正ですか、この問題が誤解されないようにするということのためには、この法律改正そのもののことではなくて、この問題も一つの問題ですが、それよりもそのバックにある、先ほど来お話し合いをいたしてまいりました結核対策の基本的な問題、患者限りの問題、これを十分そつのないように、いままでよりももっと厚生省の対策が具体的に——御自分たちではこうすればいいと思っていらしても、それが実際問題としては必ずしも思っていらっしゃるようには実現しないと思うのです。ですからもっと具体的にはっきりとお示しいただいて、そして十分今度の改正の結果が効率があがるように、少なくとも手抜きした結果、結果が悪かったということにならないように、手抜いた分は先ほど来の問題のほうへ十分力を添えていただくようにということを私はぜひお願いしたいと思っております。  最後に、時間もなくなりましたので、一言これも大臣にあわせてお願いをして御答弁いただきたいのですが、結核問題を討議いたしますときに必ず出てこなければならないものに結核予防会という団体の存在がございます。時間もありませんから一言だけで申し上げますが、結核予防会がいま経営困難で、累積赤字が十二億もあるという話も聞いておりますし、それから街頭へ出て募金をしていらっしゃるという話も聞いております。いままで、日本結核をここまで改善するために、結核予防会がどれだけ大きな力を発揮したかということは、私が申し上げなくても厚生省の方は御存じだと思います。その結核予防会がいま瀕死の状態にあるというときに、何らかの方法で——結核研究所に出されている一億四千万ほどの研究費があるということは承っておりますけれども、そうでなく予防会自体の運営について国が援助の手を差し伸べるお考えがおありになるのかどうか、あわせて大臣から御答弁をいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 まず最初にお答え申し上げますが、今回の法律改正結核対策の後退につながるようなことは全然考えていないわけでございます。戦争前は国民病といわれた結核でございますが、その後の医学、薬学の進歩国民の栄養の向上によってここまでなりましたけれども、まだまだ私は予断を許さない、かように考えておる次第でございまして、結核対策の後退につながるかのごとく、軽視するかのごとく国民に印象づけるとするならば、これはたいへんなことでございますから、さようなことのないように十分趣旨を話し、また政府としても結核対策には十全の力をいたしてまいることにいたしたいと考えております。なお、二番目の御質問は結核予防会の問題でございますが、今日までの日本結核対策のうちで非常に大きな功績をあげてこられた団体だ、かように考えておりまして、今日までの努力に対して私は深く敬意を表しておるものでございます。特に結核研究所の赤字の問題については、実は私は大臣になる前から、何とかしなければいかぬじゃないか、年次計画でちゃんと赤字を解決するようにしなければいけませんということで、当時私は大臣でありませんでしたが、厚生省にやかましく言うてみずから予算獲得に努力をしてきた経験を持っておりますし、しかもまた去年は一億、ことしは一億五千万、こういうふうにふやしてまいっておるわけでございまして、私ども結核予防会の過去の偉大なる功績に思いをいたし、結核予防会がりっぱに再建されるよう最大の努力をいたすことをこの機会にはっきりとお約束を申し上げておく次第でございます。
  87. 金子みつ

    金子(み)委員 ありがとうございました。
  88. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後一時十分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  89. 大野明

    大野(明)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。八木一男君。
  90. 八木一男

    八木(一)委員 日雇労働者健康保険法について、厚生大臣並びに政府委員に御質問を申し上げたいと思います。  今回、日雇労働者健康保険法を出されたことについては、提案理由でお述べになっておられるわけでございまして、「日雇労働者健康保険給付健康保険給付に準ずる内容のものとすることが、緊急の課題となっております。」ということをいっておられるわけであります。その次に、その「仕組みを維持しつつ、その内容健康保険水準引き上げる方針のもとに、家族療養費給付割合引き上げ高額療養費支給傷病手当金支給期間の延長等大幅な給付改善を行なうとともに、保険料についても健康保険均衡のとれたものに改定する等の制度改善をはかることとした次第であります。」という提案を厚生大臣からしておられるわけであります。  日雇労働者健康保険法について本年改正案を出されて、家族の給付を七割にする、高額医療費制度をつくるということを内容としたものを出された点については、お述べになっているようにおくれておりますけれども、まあまあ出されたことについては一定の評価をいたしたいと考えております。しかし本来はそうであってはならないのであって、この日雇労働者健康保険法の対象者のような、雇用も不安定であれば、賃金その他の労働条件も少ない、そういう人こそ、またその人の家族こそ病気が発生した場合に非常に生活に困るわけであります。でございますから、むしろ政管健保よりも先に、少なくとも同時に、このような給付改善が行なわれなければならないというふうに私は思うわけでございますが、それについての厚生大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  91. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 昨年日雇い健保につきまして、三十六年以来の改正をやったわけでございますけれども、その改正は、現行改正されました健保法前の水準の健保と同様にするということでございました。そのあと、現在の健康保険法のように制度を大幅に改善をされましたので、今回はいま先生もお述べになりましたように、現在改善された健康保険給付水準まで一刻も早く改正をするということが当面の懸案であったかと存じます。  その理由は、もとより各制度は分立いたしておりますけれども、日雇い健保だけが最も基本的な療養給付の中で特に家族の面について劣っておるということは、何としても早く改善をしなければならぬわけでございますから、そういう意味合いで今回のものを提案をいたしたようなわけでございます。  このために今回の分は、いまお述べになりましたように、現在の仕組みを維持しながら、当面健保の水準まで引き上げるということでございまして、これは先生も御承知のとおり、制度ができましてから二十一年になりますけれども、おそらく制度創設以来の大幅な改善だと思っております。ただ、結果的には現在の健保の制度改善された健康保険制度と同じ水準にするわけでございますから、そういう意味合いでは制度創設以来の大幅なと申しましても当然でございましょう。しかし、これだけの改善をするわけでございまして、またそれに見合って負担のほうも健康保険均衡のとれたものに段階的な配慮を加えながら改善をしていこうということが、今回の改正趣旨でございます。一般の健康保険よりも早くというお話がございましたが、今回改正の経緯とか、昨年改正までに至りましたいろいろな複雑な事情というふうなものをお考えいただきますと、それなりに、今回の改正については先生もいまおっしゃいましたように、十分な御評価をいただいておるつもりでございますので、どうぞその辺のところはよろしく御理解をいただきたいと思います。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 一定の評価はしております。ある程度の困難も解決をしながらやられた点については一定の評価をしておりますが、政府全体の姿勢が大体間違っていると思うのです。これは今度は厚生大臣に御答弁願いますからよくお聞きをいただきたい。  いままでどうも健康保険制度については財政面からだけ考える。ほんとうに医療保障という本質から考えれば、一番そのような手厚い医療保障を必要とする人のその制度についての給付内容をよくする、それが先行しなければならぬということになろうかと思います。それにもかかわらず、そういうところはたとえば賃金の少ない人が多く、あるいは年寄りが多くて罹病率が多い。そういうことから必然的にほかの健康保険制度よりも財政内容が悪くなる。一般的に赤字ですが、赤字の度合いも多くなるというようなことになります。なりますけれども医療保障の関係でいけばそこの給付を一番よくする、そしてまた保険料負担をふやさないということが医療保障の本来の精神でなければならないのに、いままで保険という考え方に重きを置き過ぎたために、赤字があるからなかなか伸ばせないというようなことで、そちらがあとになる。こういう考え方自体が、社会保障を主張して社会保障をよくするといっていられる内閣の基本的な方針と食い違ってくると思う。そういう点について、今後これを克服して全国民医療保障だけではなしに、社会保障を完成していかなければならないけれども、そこに日限の階段があるとするならば、低所得階層のほうを早く十分にする。そしてその負担を上げないという精神で今後問題をとらえて推進をせられなければならないと思うわけであります。これについて厚生大臣の基本的なお考えを伺っておきたい。
  93. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 わが国の社会保障は御承知のように保険主義をとっておるわけでございまして、財政を無視して保険制度の改革をやることは私はできない、かように考えております。この点は基本的にあるいはあなたと意見が違うかもしれませんが、私はさように考えておるものであります。しかし日雇い労働者の医療保険につきましては、まあ所得も低いという面もあります。疾病率も高いということもよく承知をいたしておりますから、それであるからこそ、国の補助を一般の政管健保などとは違って高率の補助をしているわけでございます。その点は私は十分評価していただけると思うわけでございます。  しかも今度の改正案によりまして、ある程度保険料引き上げをお願いをしておりますが、最近における日雇い労働者の賃金等もやはり上がっているのですね。これは御承知のとおりなんです。緊急失対法に基づく賃金も生活補助が二〇%のときは一九・五とちゃんと上げているのです。これは去年の十月も上げ、今度も二〇%と上げているのです。そういうことでありますので、そういうことともにらみ合わせながら、一般の健康保険保険料均衡のとれたものにする、こういう考え方でございます。しかし、それにしても高い保険料のものについてはやはり段階的にやっていきましょう、これは至れり尽くせりの配慮だと私はほんとうをいうと思うのです。だから八木委員も口ではいろいろなことをおっしゃるだろうけれども、最近における賃金の動向というものをお考えいただければ私ははっきり御理解したたけると思うのです。緊急失対法だって一九・五%と上げております。そういうわけでございまして、しかも段階的な保険料の増額をはかっていく、こんなにきめのこまかい措置を講じたことはほめていただけると私はほんとうにそう思っております。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 私はさっき一定の評価をしたわけです、ほめにくいところを。大蔵省というような理解の少ないところがいる、そういうバックの中で努力をされたから一定の評価をしておるだけであって、政府全体の姿勢についてはほめるところは一つもありません、これは追及しなければならないところばかりです。あなたは保険主義をとっていると言われるけれども日本国憲法では社会保険をやるなんということは一つも書いてない。社会福祉、社会保障、公衆衛生については不断に増進、向上しなければならないということが憲法で書いてあるわけであります。社会保険を進めろとは書いてないわけです。具体的に社会保険でやっているからそういう事態は知っておりますけれども、憲法の精神によれば、社会保障に社会保険を近づけていくという努力は不断になされなければいけないわけであります。それを政府にくみするような三文学者の意見など聞いて、保険主義がいいというようなことを、日本国憲法に反するような議論を援用なさることは、これはなさらないほうがいいと思うのです。社会保障に熱心なはずの齋藤さんですから、保険主義なんということは断じていかぬです。社会保障というものは保険主義ではいけない。ただ沿革的に社会保険でできているから、それを急速に社会保障に近づけなければならない、そういう状態であります。だからいま、現在として社会保険があるということは私も知っておりますけれども、それがいいということはお考えを直していただきたいということを言っております。先ほど三五%の国庫負担をしているということを言われました。確かにそのとおりであります。その三五%の国庫負担をなさったのは昭和三十六年です。いまを去る十三年前であります。そのときに政府管掌の健康保険は、国庫負担は定率ではゼロ、つまみ金のたしかごくわずかな金が計上されていたにすぎません。ところが昨年の健康保険法の改正案で、これは定率一〇%、弾力条項を発動した場合には——これは発動しないほうがいいのですが、発動することには反対でありますけれども、二八%までできる、そういうふうになっている。定率ゼロ、つかみ金の率は−援用されるならば前に数字をきちっと調べてちゃんとパーセンテージを出していただきたいけれども、時間の関係上そういうこまかいことは申しません。十三年前はほとんど率にならないぐらいの数字しかなかった。それが政府管掌健康保険に一〇、弾力条項を適用した場合には一六までできてきているのですから、その前に三五%の国庫負担が必要であった日雇い労働者健康保険実態から見れば、当然いま五五%ないし六〇%の国庫負担を内容に盛った案を出されてしかるべきであります。だから、こまかいことを全部配慮したりっぱな法律案ということはできないと思うのです。そういう点でひとつ考えを改めて、この問題についての審議に受け答えをしていただきたいと思うわけです。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  95. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 日雇い健保に対する国庫負担率は、だいぶ以前にきまったことではあるにいたしましても、よその保険制度と比較して、私は均衡を失しているとはいまのところ考えておりません。これははっきり申し上げておきます。  それから八木委員は事ごとに社会保障、社会保障と言われておりますが、日本国民所得と保険料の負担というものは諸外国に比べれば低いのですよ。これは十分統計に詳しいから八木委員承知のとおりだと思うのです。これは統計ではっきり数字が出ているのですから。国民所得と社会保険の負担というものは非常に低い。これは非常に低いのですよ。その低い中で、しかも国は三五%も負担をし、それから国保については四五%、今度はさらにもうちょっとふやして四七・五%くらいになるはずですね。それだけ負担をしているというのは、自民党政権としては相当な努力だ。国民の負担というものは諸外国に比べればずっと少ないのですよ。それは高福祉高負担といわれますが、私はそれがいいかどうかは別としまして、諸外国と比較してものはほどほどというものが大事なんです。国の負担ということは全部国民の税金なんですから、そこも十分頭に描いて、総合的にほどよいところで話をつけるというのでなければものの進展というものはないのじゃないか、こう思うのです。しかしあなたが非常に社会保障のために熱心であるということは、私は高く評価しているのです。これは私のほうから申し上げて評価しておきますよ。非常に御熱心に御努力なさっておられること、私も一緒にお互い十何年、ここで、社労の場において論戦してまいりました。あなたの熱心な主張には私も実は敬服しているのです。敬服しておりますが、あまり熱心のあまり、何でもかんでも国の負担、国の負担、これはちょっといただけないのではないか、こう私は申し上げているわけなんです。
  96. 八木一男

    八木(一)委員 いろいろ反論もありますけれども、大事な具体的な問題に入りたいので、一方的に反論ですけれども、ちょっと申し上げるだけにしてほかのものに入りたいと思います。  医療保障の点について非常に日本が諸外国よりいいというふうに厚生大臣は言われました。そんな飛び切りいいとも思わないけれども日本の社会保障の中で医療保障が比較的ましなことは私も知っております。社会保障全体ですから、たとえば年金などはとにかく諸外国にははるかに及ばない。児童手当なんかは言語道断の状態ですね。その中でせめていいものはもっとよくするということを考えていただかなければならない。特に政府の整理した社会保障費の関係でものは考えられておりますけれども、たとえば土地とか住宅の問題は言語道断の状態です。これは生活、医療保障の問題あるいは年金保障の問題と密接に関連があるわけであります。諸外国との比較で、この点だけはよさそうに見えてそこそことおっしゃるのは間違いであって、諸外国で住宅難というのはほとんどありません。そして入れない、入れるということだけではなしに、家賃もほんとうにしんどいような負担は一つもありません。そういうことを考えたならば、相対的に日本の社会保障というのはまだまだ非常に程度が低い。それをどんどん推進をしていかなければならない、こう思います。ほどほどにという考え方ではなしに、猛烈に推進をしなければならぬという考え方に立っていただきたい。それだけ申し上げておきます。それから、実は今度の日雇い労働者健康保険法の改正案で、政府の資料で見ますと、これは十月から実施で給付が十六億円ふえることになっておりますが、満年度ということは実際上ありませんが、かりに満年度に仮定いたしますと三十六億給付がふえることになります。その場合に今度これで保険料の収入はどれだけふえることになるか、政府委員の方でけっこうですから、簡単にその数字だけおっしゃっていただきたい。
  97. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 昭和四十九年度の今回の改正案によりまして、十月実施で保険料収入が二十四億円ふえるという計算になっております。(八木(一)委員「満年度で……」と呼ぶ)満年度で六十八億円ふえるという計算になっております。
  98. 八木一男

    八木(一)委員 続いて五十一年、五十二年のやつはわかりますか。
  99. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 五十一年、五十二年は、これはまだいろいろと仮定の要素が多いものですから……。
  100. 八木一男

    八木(一)委員 けっこうです。ここで明らかにわかりますように、四十九年十月から実施ですから、ほんとうはないわけですが、しかし一年単位にものを考えますから、一年度にこれを延ばして考えると、一年で三十六億円給付増があります。保険料の収入増が六十八億円、これは明らかに七割給付あるいは高額医療という問題点について、その問題だけを抽出すれば非常な改善になりますけれども、全体に費用負担と給付関係でいくと、費用負担が六十八億ふえて、給付が三十六億、これは非常によいものをこまかい配慮をしてやったという内容とはほど遠い、その正反対ということになろうと思うのです。そういうことについてひとつじっくりと、その数字を御存じでございましょうけれども、再確認をされて、これはまだまだ不十分だということを認識されて、これからひとつ応答に当たっていただきたいというふうに思います。   〔大野(明)委員長代理退席、山口(敏)委員長代理着席〕  続いて問題点に入りたいと思いますが、適用要件の問題でございます。  日雇い労働者健康保険法の適用要件は二カ月二十八日と六カ月七十八日になっております。これはずっと前からでございますが、実は日雇い労働者健康保険法が世の中にないときに、私もこれと同名の法案を提出をいたしました。そこで六カ月六十日の要件、二カ月二十八日の要件というものを提出をいたしたわけであります。それを参考にせられたと思いますけれども、この二段階要件を日雇い労働者健康保険法でつくられた。そこの中で六カ月七十二日にすることが至当であるという国会の多くの空気でありましたけれども、いろいろのその空気を受けて、七十八日ということになったというような沿革がございます。この七十八日という要件を少なくとも七十二日ぐらいには直していただくことが必要ではなかろうか。これは皆さま方の頭にいつもある財政問題とはほとんど関係がありません。ごくわずかな人が、六カ月要件が七十七日であったために、大切な保険料給付が受けられない。たとえば天候条件で就労ができなかった。その他やむを得ざる要件で就労ができなかった。たった一日の違いで保険給付が受けられない。これは非常な問題だろうと思います。そういう問題について、その六カ月要件が二カ月要件であれば、少し皆さま方にも反論、問題点もあろうかと思いますが、六カ月要件というものは、その仕事に少なくとも六カ月定着して一生懸命にそこで働いている人々です。そういう要件を長年ほっぽらかしになっておりますけれども、これを七十二日、さらに八木一男の言うようなことはだらしがない、これを六十日にしろということになればさらにけっこうでございますけれども、そういうことをぜひ積極的にお考えになる必要があろうと思います。それについてひとつ積極的な、前向きなお考えを示していただきたいと思います。
  101. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 この制度が考えられました当時に、いまお話しのように、日雇い労働者という特殊な就労形態のものでございますので、一定の給付を行ないますために一つの受給要件を設定するというのは、これはある意味においては当然の前提であったかと思います。最初は二カ月間で二十八日というものが、その後の改正によって、八木先生の非常な努力がございまして、現在のような六カ月七十八日というふうな二段がまえの要件ができたわけでございまして、私ども現行の日雇い労働者の健康保険制度の仕組みを考えますと、また現状を考えますと、この程度の受給要件というものは一般的に妥当なものというように考えておるような次第でございます。  いま御指摘になりましたように、わずかの日数が足りないために、日雇い健保の網からこぼれるというふうな方々につきましては、確かにお話のように、そういう問題について何とかこれを充足ができるような方法はないものだろうかということを私どもも問題意識としては持っているわけでございます。  しかしながらこういう問題は、それぞれの業種ごとの就労状況とか月々の就労の変動とかいろいろな他動的な要因もございまして、そういうものがあるからといって、この制度そのものについて現在の一応妥当と認められるような受給要件を緩和をする。特に今回非常に大幅な給付改善をするわけでございますので、こういう際に受給要件にまで手をつけて改善をするというふうなことについては、これはいかがなものであろうか、やはり現在のものが私どもは最も妥当なものではなかろうか、このように考えているような次第でございます。  いま先生の言われましたようなもろもろのボーダーラインのケースというものにつきましては、ものの処理のしかたによりましては、いわゆる保険原理で逆選択が働く可能性も多分にございますし、やはり制度の根幹にかかわる問題でもございますので、そういった問題についてはどういう方法がいいか、日雇い健保制度として受けとめていくか、あるいはまた一般的な就労状況の改善の方向に向かうような施策の問題として考えていくか、いろいろ問題の処理の方法はあると思いますが、現段階におきましては、受給要件を現在以上に緩和するということは考えていないような事情でございます。
  102. 八木一男

    八木(一)委員 数字がわかったら教えていただきたいのですが、結局七十八の要件あるいは二カ月二十八日の要件、その要件が少し足りないために給付が受けられない人が、対象者の中でどのくらいの数字かということがわかったら教えていただきたいと思います。  それからもう一つ、これは保険局長に確認をしておきたいのですが、結局、一日足りなかった場合は、日雇労働者健康保険法給付は受けられないわけですね。そして、ほかの給付が代替するということは、生活保護を受けて医療扶助を受ける以外はそういう給付がないということになろうと思います。その二点について、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  103. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 受給要件の六カ月で七十八日に満たないためにかけ捨てといいますか、受けられないというような者がどのくらいあるかということ、これは推定でございますが、四十六年から四十七年にかけて出されました実態調査の結果に基づきまして就労日数から推定いたしますと、七十八日未満で受けられないあれが七・九四%というようになります。それから、これは推計でございますが、一部、昨年実態調査を山梨、前橋、福井の社会保険事務所で突出にいたしましたか、その結果によりますと、三百七人につきまして調査をいたしまして、かけ捨てに該当する人が八人ということで、約三%弱というふうな数字が出ておるわけであります。
  104. 八木一男

    八木(一)委員 これはたいへんなことじゃないかと思うのです。七・四%という人が皆保険といわれる日本の中で、そういう不幸な条件の中で医療保障の適用からはずれるわけです。国民皆保険を政府なり厚生省は推進をしておられるはずです。そのときにこういうような状態で、対象者の七・四%の人がその間に疾病を発生した場合には医療給付がない。これについてどう対処をするかということが、いままで考えられてなかった。非常に重大な問題であろうと思います。一体、その人たちの健康は守られなくてもいいのか。極端にいえば、守られないで死亡することがあってもいいのかという問題になります。−厚生大臣、頭が痛くてノーシンを飲んでおられるようですけれども、聞いておられるのですか。いま、その対象の人が一日足らず、一日か二日か不幸な事情で就労ができないために、国民皆保険である日本の国で、そういう人たち医療保障の対象にならないということが一体あっていいものでしょうか。その点についての御見解を伺わしていただきたいと思います。
  105. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 これは八木先生のほうが非常にお詳しい問題でございますけれども、この制度をつくるにあたりまして受給要件というものをつくったときに、どこかで受給要件については線を引かなければならないわけでございます。そういうわけでございますから、やや恒常的に受給要件が満たされないという方々もあると思います。また当該業種のいろいろな景気変動と申しますか、そういうものによって、摩擦的にたまたま受給要件が充足されないというものもあるかと思います。  前段の問題につきましては、これは制度法律にも書いてございますように、そういう方々については、あらかじめ適用除外という制度があることは、先生も御承知のとおりでございます。後段の、そのつど、やや不規則に受給要件が満たし得ないという方々については、確かにおっしゃるような問題はあるわけでございますけれども、総体的にながめまして、先ほど申し上げましたように、現在のこの受給要件、しかも二段がまえの受給要件というものがあるわけでございますから、そういうものがある以上、またそれである程度のものが保障されている以上、何と申しますか、この制度の受給要件によって給付をするという制度の仕組み上、そういうものについてそれじゃどこまで受給要件を緩和をするか、あるいはまたどこまで継ぎ足しをするかというふうなことを考えてまいりますと、やはりいろいろ制度の運営上問題が出てまいりまして、私どもは結果的には、この現行の二段がまえになっている受給要件というものが一応妥当な線ではなかろうか、そういうふうに考えざるを得ないというのが現在の実情でございます。
  106. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、今度は答弁願いますから……。目をつぶっても聞こえているならいいけれども、目をつぶって聞こえてないおそれがありますから…。  ほんとうに真剣に考えていただきたいと思う。制度があるから、制度の運用があるからということより先に、国民の健康や命を守るということが大前提であるということを、少なくとも厚生省や厚生省の中の保険局や社会保険庁は考えてもらわなければならないと思う。七・八もこういうふうなかけ捨てという一かけ捨てというと、何か年金のほうでかけてもらえないからつまらないという制度になりますけれども、私はそういうかけ捨てということば以上に大事だと思うんです。金はかけても、もらえないから損だという問題よりも先に、命が守られない、健康が守られないというのは、とんでもない問題です。このために医療保障が受けられない、そして死んでしまったらあとどうにもならないわけです。かけ捨てということばでは、これは不十分な表現です。医療保障からはじき出されているということになるわけです。国民皆保険を日本の国はやっているはずです。そうした問題について、七・八もこぼれている人があるならば、二カ月二十八日、六カ月七十八日では、これはいけなかったという反省が当然なされなければならない。私は、少なくとも六カ月七十二日にすべきだと思うけれども、この七・八もこぼれているなら、もっと統計をとれば、六十六日か六十日にしなければいけないんじゃないかと思うんです。少なくとも、それだけこぼれ落ちた人のことについて、ただ漫然とほっておくというようなことではいかぬ。一番いい方法は、二カ月の要件であれば、摩擦とかその他いろいろなへ理屈があります。ですから六カ月というその仕事に、日雇い形態であろうと一生懸命そこで働いて生活を樹立をしておられる、そういう方々の六カ月の要件をつづめることが、一番いい方法だと思う。まあ、ほかにも方法はあります。たとえば、あらゆる社会保険からそういうようなことではじき出されるときには、自動的に国民健康保険を適用するという問題もあろうかと思います。しかし片一方は政府管掌であり、片一方は地方自治体がやっている問題であります。政府のほうのやっているものを地方自治体にしりぬぐいをさせるのは、国の意識その他完全に対処をされたならば、これはそういう方法もあろうと思いますが、この日雇労働者健康保険法の要件を七・八もこぼれないような要件に変えるということが、一番大切であろうと思います。その問題を長らく考えておられなかったんではないかというふうに思いますが、厚生大臣なり保険局長なり、そういう問題が最近省内、局内で討議されたことがあるんでしょうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  107. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 これは、たとえば競輪、競馬場とかそういうところに働いているような方々で、開催回数との関係でコンスタントにでございませんけれども、そういった状態、すなわち受給要件を満たしてない状態が生ずるようなことがあるというふうなことは、私どももそういった方々からも承りましたし、また関係審議会等においてもそういうようなお話を承りました。ただ、先ほども申し上げましたように、そういう問題について、確かにそういう問題のある点については問題がございますけれども、それをどういう方法で、しからば先生生のおっしゃる医療保障というふうな形でカバーしていくかとなりますと、それは日雇労働者健康保険法の六カ月七十八日という受給要件を緩和するということに、それがはたして直結するのかどうかということは、この制度のやはり仕組みの根幹にかかわる問題でございますので、私どももなかなか一朝一夕には判断はできない問題でございます。また、一般的に見て、この二段がまえの受給要件でほとんど相当大半の人が、ほとんどすべての人がカバーされているのでありますから、こういう際に、この改正の際にそこまで緩和するということは、やはりどうも踏み切れない、こういうのが私どもの内部で問題を考えたときの経緯なり、あるいはいろいろ関係者からお話を承ったとき、あるいはまた審議会等で議論されたときの私どもの考え方でございます。
  108. 八木一男

    八木(一)委員 もうたいへんなことで、ほんとうに怠慢だと思います。その点について、七・八という数字を前から調べなかった私もうかつであったと思います。私の反省も含めまして、その対象者の七・八という人が、それがはじき出されている。その問題について、長いこと対処をされない。もうとんでもない問題だと思う。それについては、先ほども申し上げたように、日雇労働者健康保険の受給要件の緩和が一番適切な方法であろう。あなた方に言わせれば、労働省の管轄もあって、それならもっと働けるようにしたらいいじゃないか、そうしたら印紙もちゃんと入るから要件に適応するという言い分もあるかもしれません。役所、役所の言い分の問題じゃないんだ。死んでしまったら、重い病気になって苦しんでしまったら、それは取り返しがつかない。要件を緩和したって、たくさん働いたならばそれだけの印紙は貼付するわけだ。保険料はふえるわけだ。だから、要件は緩和しておく。そして労働省もあなた方が督励をされて、そんな印紙がそこまで達しないような就労条件じゃいかぬ、そういうことをあなた方が労働省に対して抗議を申し入れていただいてもけっこうです。しかし、命を守る、健康を守る厚生省としては、はじき出されている人を要件を緩和して、入れるということをまっ先に考えなければならない責任があるということを深く考えていただきたいと思う。ほかの問題がありますから、この問題についてはわが党の村山委員やあるいはまた島本委員やあるいはほかの先生方も詰められると思いますけれども、そのときに私の申し上げたような趣旨をまともに考えられて、それに対処するという明確な積極的な答弁ができるように、いまからすぐ御検討願いたいと思う。  続いてほかの問題に移りたいと思います。政府のほうでは、実はいつも社会保障制度審議会や社会保険審議会の答申を重んずるということを申されます。ところが、いつでも十分にそれを尊重していない。今度の社会保障制度審議会の答申が出たのが二月の一日ではないか。それで日雇労働者健康保険法案の提出をされたのは二月の十六日ですね。労働省関係の雇用保険法みたいに、答申が出た翌日に出すというようなことはもってのほかの態度でありますけれども、それでもそのようなところでも幾分は原案を直して提出をしておられます。ところが厚生省のほうは、制度審議会の答申について二週間も審議があったのに十分に配慮をなされないで、原案のまま提出をされておられるわけであります。その中で、保険審議会の答申も同じようなことがございますが、一定の私の申し上げたと同じような甘い評価をしまして、それから後にただ一つ「ただ、保険料の等級を段階的にもせよ大幅にひろげようとしている点は急激な負担増をもたらすことにもなり、一層の配慮が望ましい。」と書いてございます。制度審議会のことは齋藤さんもよく御存じでございますけれども、この「一層の配慮が望ましい。」というのは、それを変えるべきであるという意思表示であります。たいへんお上品な方が多くて、変えなければ承知しないぞというような答申は書きませんから、この一定の文言は、ぜひともそれは変えてほしいという表現であることは明らかであります。ぜひ社会保障制度審議会の答申を尊重しなければならないときに、これを配慮にならなかったことについては非常に遺憾に存じます。その問題について十分に反省を持たれて、この問題の今後の私の質問に、また同僚委員の質問に受け答えをしていただきたいと思うわけであります。  今度の改正案で、ただいまの日雇労働者健康保険法保険料並びに給付のほうの傷病手当金関係もありますけれども段階区分が四段階でございましたのを八段階にしようというふうにしておられるわけであります。ただし、特一級というのがありますから、無理やりに勘定したら九段階になりますけれども、これは〇・一%くらいですから大まかな論議の対象としては八段階と考えて論議を進めさせていただきたいと思いますが、実は同じ対象者に、今度雇用保険法案がいま両院で審議をされておりますけれども、日雇い失業保険のほうではこれが二段階だったのを今度三段階にされたわけです。そういうことで、実は同じ対象者に片方は三段階、片方は八段階というのはたいへんなバランスを失していることになろうと思う。労働省のほうの三段階についても非常に問題があります。しかし、厚生省のほうの八段階については大きな問題があろうと思うわけであります。ここで現行法四段階で、発動しているのは三段階までですから、現在百三十円の保険料を徴収を受けている人は、八段階になりますと五十一年度に六百六十円ということの保険料になります。一躍五倍ということになるわけであります。しかも、この百三十円というのは五年ほど前は二十六円だったわけです。二十六円が五倍の百三十円になり、さらに昭和五十一年度から五倍の六百六十円になる。これはあまりにも急激な増額ということになると思いますけれども、これは齋藤さんも保険局長もこのようにお感じをいただいておると思いますが、あまりに急激な、あまりに大幅な保険料の改定だというふうに考えますが、それについてひとつ御意見を承っておきたい。
  109. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 今回の改正におきましては、当初にもお話のございましたように、また私どものほうからも申し上げましてように、政管健保のレベル並みに日雇い健保給付内容改善をするということが一つの大きな眼目でございます。したがいまして、そういうことを考えますと、やはり一般の面におきまして政府管掌健康保険と一応バランスのとれたものにするという考え方がこれは当然だろうと思うのでございます。そうい意味合いで、賃金の区分につきましても健康保険とのバランスを考えまして、健康保険現行の最も上の等級でございます二十万円というものを考慮をして、その間を八等級に区分をしたわけでございます。  先ほどの先生の社会保障制度審議会からいただきました御答申にも関連をいたすわけでございますが、確かに御答申の中には、この保険料の増加について一そうの配慮をすることが望ましいということを各論としておっしゃっていただいております。ただ、私どもといたしましては、このような給付の面については一挙に健康保険並みの給付改善をする。しかし、負担の面におきましては、健康保険とバランスのとれたものにするわけでございますけれども提案をいたしました内容をぐらんいただきますと御了解いただきますとおり、この負担区分の実施については、一挙に八等級まで上げるというような、そういうことは一応避けまして段階的に実施をする。とりあえず四十九年、ことしの十月からは三等級まで、それから四等級、五等級は五十年の四月から、それから六、七、八は五十一年の四月からということでございますので、十分その点は配慮をしておるつもりでございますので、どうかその点は御理解をお願いを申し上げたいと思います。
  110. 八木一男

    八木(一)委員 その五十年から、五十一年からということがありますけれども、これはまことに大幅過ぎると思いますので、これは四段階、せめて五段階で切っていただきたい。それから長く延ばすならば、一年や二年じゃなくて、これは五年なり七年なり延ばしていただかなければ、ほんとうに問題にならないと思うわけです。  一つ指摘をしますと、先年四十七年に田邊誠委員の質問に対して、北川局長が答弁をされていますが、健康保険法の問題について上限はどのくらいのたまりを考えているかというときに、二ないし三%のたまりを考えているということを答弁をされているわけです。二ないし三のたまりを考えているといたしましたならば、健康保険で三十六段階ですね。それで日雇い健康保険で、今度八段階にしようとされるわけですね。そうなればたまりは八分の三十六、四・五倍のたまりで健康保険並みになるわけであります。そうしますと、いまたとえば六級以上のものが、たまりが全部合わせて六か七になると思うのです。片方のほうの健康保険法のたまりは二ないし三として、二とすると四・五倍ならば九のたまりがあってしかるべきだ。それから三とすれば、一三・五のたまりがあってしかるべきだということになるわけです。そうすると、六等級以上で六か七になる。五等級以上で二八ぐらいになると思う。少なくとも二十万円以上の人、たとえば二十五万円でも三十万円でも、健康保険法ではたまりがありますから、同じ保険料しか取っていないわけです。それと対応したならば、少なくとも六等級以上は切るということをしなければ、健康保険とのバランスがとれないということになろうと思うのです。たまりのバランスからいくとそういうことをぜひ考えられてしかるべきだと思うわけです。それを特に健康保険並みに考えたとおっしゃるけれども、これは沿革から、それから制度から、対象者から、内容から見て、健康保険並みに考えるということ自体が、これは間違いです。健康保険よりも保険料の負担が非常にしんどい、そういう状態を考えて、あらゆる点で健康保険よりは労働者の実態に合った対処をされるべきだ。ところが、ここでは健康保険並みのこともしておられないわけです。健康保険では二十万円以上のたまりを二ないし三%とられている。そうしたら、三十六段階を八段階にすれば、四・五倍であれば、二としても九以上のたまりがあっていい。それから三とすれば、一三・五のたまりがあってしかるべきだ。そうしたら、六まででとどまるのは当然でありますけれども、五までとどめても日雇労働者健康保険については、健康保険法に比較して厚い考え方をするというならば、それでも健康保険のバランスが合うわけです。それを一ぺんに八段階にするというのは、たいへんな問題であろうと思うのです。特に、この数年前から五倍になった保険料が、二年後にまた五倍になる。二十六円が六百六十円、七、八年ではね上がる。ほんとうに急激過ぎて、対象若にとっては気の毒だ。厚生大臣聞いていただいていますか。ぜひそれは考えていただかなければならないと思うわけであります。  それからもう一つ、この保険料自体に問題があるわけでございます。保険料日雇労働者健康保険法は、総報酬制で取られている。普通の健康保険は、標準報酬制で取られている。普通の健康保険の対象者は盆暮れのボーナスがある、退職金がある、そういうものは保険料の算定に入らないで、月額定期的に入るものだけを算定標準報酬で割って、それで保険料率をかけておられる。それでそういうものは千分の七十二ですね。ところが、今度日雇いのほうは千分の六十四にされた。ボーナスを少し要件に入れたと言っておられる。一・七四だけ要件に入れたということをいって、千分の六十四にしておられるわけだ。そんなものでは困ると思う。ボーナスは一般的にはそんな少ないものではありません。厚生省が資料のもとにされたものは、三・四三か何かの四十七年の資料をもとにして、そして失対労働者等に幾ぶんの盆、暮れのボーナスがあるということを勘案して、その半分を要件にされたという御説明であります。時間がありませんから、局長から答弁されなくても局のほうから聞いておりますから。そういうようなことです。それではいけないのであって、ボーナスというものはもっと多くなってくる。四十七年よりも四十八年、四十九年は多くなった。そしてこの標準も高いところの、大規模なところで賞与率は高い、大規模なところで賃金もよくて、その他の労働条件もいい人は高いボーナスをもらっているのに、それは保険料算定に入らないで、比較的に安い保険料を取られるということになるわけです。これを考えるときに、平均で取ってはいけません。一番高い、大企業のボーナスが八カ月も出るようなそれを基準にして、その人たちは負担能力あるけれども、それは保険料に入っていないわけです。それから賞与の出た一番高い人を基準にして、それだけの分が総報酬制だから換算しなければいかぬといって、それを差っ引いてそして保険料率を設定しなければならない。そうなれば千分の六十四じゃなしに、千分の五十ぐらいにしなければならぬような要件があるわけです。  そういうことをしっかり考えていただきたいと思うわけです。公務員の人たちも期末手当と勤勉手当と合わせると、年末と夏と年度末と合わせると約五カ月になる。それを少ないところの統計を入れたもので、三・四で、また失対労働者にもそういうものがあるからということで半分に設定して、それで千分の六十四というところに問題があるわけです。一番ボーナスの高いところを問題にして、その比率で総報酬制を標準報酬制に改善をする、そういうことでなければならないと思うわけであります。  特に、先ほどの問題の関連を申し上げておきますと、この一番高い八段階とか七段階とか六段階に関連のする人は、民間の山林に働いている人にこの関連が非常に多いわけです。この人たちはボーナスはゼロであります。盆、暮れも期末も何もありません。そしてまた退職金もありません。厚生年金の適用もありません。非常に重労働でございますから、名目賃金は多いけれども、盆、暮れのボーナスもなく退職金もなくて、しかも職場に行くまでにわずか一日に一回か二回しか交通機関がないから、自動車も自分で買ってガソリンも負担をしてそこまで行かなければならない。そういうものが賃金に入っているわけです。そうしたならば、その賃金ははるかに低く見て、そして料率をかけてするのが公平である。特に過疎地帯で重労働で働いておることを考えれば、それ以上に配慮してもしかるべきだと思うのです。ところが、このようことのために、百三十円が一ぺんに六百六十円に昭和五十一年度からはね上がる。あまりにも残酷な制度ではないかと思うわけであります。いま、それならば傷病手当金が上がるじゃないかといわれるけれども、率直にいえば、労働者にとって医療給付というものが医療保険の大部分の大切なものであります。病気になるかならないかわからないということが第一、病気になったときに医療給付がその中の一番大切なものである。傷病手当金はそれの付随的なものである。支出を見ても、この日雇労働者健康保険法の支出、その中の医療給付の支出が大部分であります。一〇〇のうち九九まで現行だったら医療給付金であります。将来これが改善されても七%ぐらいにすぎません。その傷病手当金がふえることはいいですけれども、それをかせにして保険料が一ぺんに五倍にはね上がる。しかもはね上がる人はボーナスがない、退職金がない、そういう人たちであります。そういうことを考えられると、ほんとうにこの八段階制というのは過酷なものである。これをせめて五段階制にぜひ切っていただきたい。五段階制に切るということは、労働省のほうも——失業保険の段階をふやすようにわれわれは主張はしておりますれけども政府が一体になって、厚生省も労働省も同じようにバランスをとるということにもつながるわけでございます。そういう点でこの八段階制を五段階制にとどめおくというようなことをぜひ考えていただきたい。将来を顧慮されるならば、どんな場合でもこのような過酷なことは、五年か七年ぐらいは延長するという考え方に立っていただくべきであろうと思うわけであります。  時間がないので、責められておりますから、一問一答で申し上げたいことを全部一発で申し上げます。  非常に急速な保険料値上げで、前に五倍になったものが一両年後にさらに五倍になる、この労働者の気持ちをぜひ考えていただきたい。医療給付も同じであります。ですから、ほんとうにそれだけ負担が、毎日の生活が苦しいということにつながるわけです。   〔山口(敏)委員長代理退席、枝村委員長代理着席〕  そして、しかもこれは労働省との関係でいけば八と三というアンバランスがあります。そしてまた保険料の中にはこのようなボーナス算定が十分に考えられていないという点があります。そしてボーナスのない、特にその段階の高いところに当たる人は、一番苦しいところがぶつかるわけです。そういうことをぜひ考えていただいて、ぜひ八段階制については、これを考え直していただく、五段階制ぐらいにとどめていただくということが必要だろうと思います。  政府のほうはお出しになったら、確信を持って出したという立場をとられると思いますが、そのような政府のメンツとか立場ではなしに、ほんとうに労働者の、対象者のことを考えていただいて、このことをひとつ熟慮していただいて、他のわれわれの同僚委員村山さんや島本さんやその他の委員が御質問になられますが、そのときまでにひとつりっぱな対処をお考えいただきたいと思いますが、まずもって私のこの質問に対しては、そういうことは確かにそうだ、そういうことは考えなければいけない、そういう積極的な御答弁をぜひいただきたいと思うわけであります。ぜひ体面やメンツにこだわらずに、ほんとうに対象の労働者のことを考えていただいて、その点を、私の要望に対し積極的な御答弁を賜わりますように要請をいたします。
  111. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 だいぶ詳しく御質問をいただいたわけでございますが、私どもはこの法案を立案するにあたりましては審議会の意見も十分聞いて、全体として適切な措置であるとか、評価できるとか、そういうことをいただいたわけでございまして、しかもまた私どもは日雇い労働者の生活実態というものを考え、さらにまた最近における給与の上昇の傾向、そういうことも十分頭に描いて、しかも急激な負担増を避けるようにしなければならぬ、そういうふうなことを頭に描きながら総合的に判断をいたしまして、現段階においては最も適切な案である、こういう考えて提案をいたしたものでございまして、いま私は、あなたがそういう質問をなさったから、それでは修正に応ずるかというと、それはもうとてもそういうものではない、はっきり申し上げておきたいと思います。
  112. 八木一男

    八木(一)委員 政府としては提案をなさったのですから、そういうお立場のあることはわかります。しかし、御答弁中に十分考えたと言われているけれども、大切な社会保障制度審議会の答申について、ほかは評価をされて、この点を特に指摘をされているわけです。あとの問題、国庫負担その他は将来の問題です。この点だけ具体的に提起をされているのですから、ほかはこれだけ対象者のために考えておられるならば、そのただ一つ制度審議会のつけられたことについて直されれば、これこそほんとうに対象の労働者について考えたということがいえるわけです。その大切な社会保障制度審議会の答申やあるいは社会保険審議会の答申について考えられていない、そのことについては反省をしていただきたいと思うわけであります。  社会労働委員会で与野党の委員から熱心な御質問があろうと思います。社会労働委員会委員は各党の委員とも社会保障について非常に熱心な方でございますから、私の一生懸命申し上げたことについても御理解をいただいた方がかなりあるかと思います。そういう点で、なかなかにいいところもたくさんあるけれども、これはこう直したらもっとよくなるという御意見があった場合には、そういう御推進をしていただけるものと私は期待をし確信をしているわけでございますが、そういうことに対して政府のほうも努力はされたけれどもその点について欠陥があったということを踏まえられて、そのような国会の修正に対して、国会のそのような御意向に対して変な抵抗はされない、国会のほうがやられることについて、それについて具体的な点で対応されるということを強く要望をしておきたいと思うわけでございます。  さらに政府自体としても、私の申し上げた要件の問題やこういう問題について政府の責任で、そういう見放される人がないように、非常な保険料の負担で生活の困る人がないように、そういうことについて一そう努力をしておかれるる必要があろうと思うわけであります。その後段の点について——前段の点については御答弁はされる立場にないと思いますが、後段の私の指摘した問題について今後懸命に努力をされるという意味のひとつ積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  113. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 保険料については現段階においては最も適切なものである、こういうふうにかたく信じておりますから、その点は御了承を願っておきたいと思います。  それからそのほかの問題については、非常に御熱心な八木委員の発言でございますから、将来とも十分検討は続けてまいります。
  114. 八木一男

    八木(一)委員 あとの点は、保険料については、というのは、これから論議をされて——さっき答弁を求めていないわけです。そういうふうに何回もおっしゃらないで、委員会の討議の結果を見守っていただきたいと思います。各党の委員の熱心な労働者に対する御努力を深く気持ちよく感じて、そして今後いろいろの行動に対処していただきたい。この点を要望いたしまして、私の質問を終わります。
  115. 枝村要作

    ○枝村委員長代理 山下徳夫君。
  116. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 優生保護法改正につきまして質問をいたしたいと存じます。  まず、そもそもこの優生保護法が制定されましたのは戦時中の国策法であった国民優生法、これにかわって昭和二十三年の第二回の国会において、これは議員立法として当時制定されておるのであります。この法律が制定された当時つまり昭和二十三年のわが国の実情を申し上げますと、戦争に敗れて国土の四割以上を喪失した、そして海外からたくさんの復員軍人あるいは引き揚げ者が帰ってこられて急激に人口が膨張して、食べるものさえ不足がちであった。そういう社会的な背景のもとにつくられたものであります。   〔枝村委員長代理退席、山口(敏)委員長代理着席〕  と同時に、もう一つは、私から申し上げるまでもなく、優生保護法の立法の趣旨はいわゆる子孫に影響を及ぼすような遺伝性の疾患の断種と申しますか、そういうものの規制がそもそもの立法の精神であったと思うのであります。従来、現在もありますいわゆる刑法における堕胎罪には、何らの免責規定がない。要するに胎児をおろせば全部が刑法の罪に引っかかるのだということで、戦後のそういった実情にかんがみ、刑法の堕胎罪に対する免責規定という意味を含めてこの法律はつくられたものと理解をいたしております。  しかしながら、それからすでに二十六年、わが国は経済大国となりまして生活様式その他万般の面において非常に大きな変化が生じておりますから、当時の社会的背景によってつくられたこの法律もそろそろ何らかの形で修正を加えなければならぬということは、有識者の大方の意見の一致を見るところであろうと思うのであります。  そこで、そういう意味において、今回優生保護法改正案が上程されましたことは時期的にはきわめて適当と思うのでありますが、ここでひとつその改正点の柱となるようなおもなものを御説明を願いたい。
  117. 三浦英夫

    三浦政府委員 このたび御審議をお願いしております優生保護法改正点は、三点になっております。そのうちの二点は、人工妊娠中絶の適応事由を改める点が二カ所ございます。もう一つは、優生保護相談所の機能の改善をはかろうとする点になっております。  まず第一点の人工妊娠中絶の適応事由を改める点につきましては、その第一として、現行法では妊娠の継続あるいは分べんが身体的理由あるいは経済的理由によって母体の健康を著しく害するおそれがある場合に人工妊娠中絶を行なうことができるとなっております。これをこの際は、身体的事由とか経済的事由とかいう事由をことさらにきめないで、医学的見地から母体の精神または身体の健康を著しく害するおそれがある場合に人工妊娠中絶ができるというようにする、いわば医学的に純化した適応事由に改めようとしたのが第一点でございます。  それからもう一つ。人工妊娠中絶で従来は適応事由とされてなかったものでございますが、最近医学進歩によりまして特定疾病やあるいは欠陥につきまして、特別の場合には、胎児が重度の精神あるいは身体の障害の原因となる疾病や欠陥を有していることを出生前に諸種の検査によって判明できる場合があるようになってきております。こういうような特定疾病や欠陥を有している場合について、両親がたって希望する場合には人工妊娠中絶ができる、こういう改正点が第二でございます。  それからもう一つは、優生保護相談所、これは各都道府県に配置されておりますけれども、優生保護相談所というのは従来から優生保護の見地から結婚の相談であるとか、あるいは遺伝その他の知識の普及の問題とか、あるいは受胎調節等の業務をやっておりますが、最近特に高年齢の初産というのがいわゆる母体の健康を害するおそれがある場合が非常に多いということがありますので、適正な年齢において第一回の、いわゆる初回分べんが行なえるような相談とか助言を行なえるような機能を優生保護相談所に付与しよう、こういう内容でございます。  以上でございます。
  118. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 この法律は過去二十六年の間に何回となく修正を見ております。特にこの法律が制定されました、先ほど申し上げました昭和二十三年の翌年の昭和二十四年に、当時の衆議院の厚生委員会において初めて、いま審議官から一つの大きな柱として説明がありました経済的理由というのが修正して挿入されておる。これは先ほど申し上げましたように、当時の食糧事情とかそういった社会的背景を考慮しながらこの修正が行なわれておるということでありますが、ただ、そういう社会的背景から修正されたことによって、結局この法律はいわゆる医学的根拠に基づかなければならないものを、ただ単に経済的理由によって人工妊娠中絶ができるというふうにかなり巷間において誤解をされておる。そうではなくて、経済的理由により母体に著しき害を及ぼすおそれがあるとき初めて、医学的根拠としてこれがなされるのであります。したがって、私が申し上げたいことは、ここにございます、いま審議官からもちょっとお触れになりましたけれども、母体の健康ということですね。この健康というのは一体何ですか。まずそれからお尋ねします。
  119. 三浦英夫

    三浦政府委員 母体の健康と申しましても、いわば肉体的な健康ということばかりでなく、精神上の問題とか、あるいは母体の健康について総合的な判断をされて母の健康上の問題というように健康というのは理解されるべきじゃないかと思っておる次第であります。
  120. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 つまりいまの審議官の御説明によれば、いわゆるWHOの意義づけによるところの健康ですね。母体の健康というものは母体の置かれた具体的状況を考慮しながら総合的に判断すべきものである、こういうふうに解釈していいものでしょうか。
  121. 三浦英夫

    三浦政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、母体の具体的な個々の条件に照らして判断されるべきものだと思っておる次第でございます。
  122. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 改正案の第十四条の五号の「妊娠の継続又は分娩が母体の精神又は身体の健康を著しく害するおそれのあるもの」、こういうふうに改正案ではなっておりますが、ここで一つ確認をいたしておきますが、「母体の精神又は身体の健康」つまり母体の精神が一つ、それから身体の健康が一つ、そういういわゆる文法的な解釈なのか、あるいは精神の健康、身体の健康、こういうふうにつながるのか、ちょっと日本語的にあいまいな点がありますから、ここをはっきりしておいていただきたい。
  123. 三浦英夫

    三浦政府委員 従来は御承知のとおり「母体の健康を著しく」となっておりまして、このたびの改正で御審議をお願いしておるのは、ことさらに「精神又は身体」というように分けさしてもらっておりますけれども、やはり従来の解釈でございますと、精神も当然含まれておるのではございますけれども、文理的には精神的なという意味が出てまいっていない多少の疑義がございました。今回精神を入れさしてもらいましたけれども、結局のところ健康というのは母体の精神面も含めまして総合的に健康は考えらるべきものだと思っている次第でございます。
  124. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 複雑な社会構造の変化からくる身体への影響と申しますか、いわゆるストレスとかノイローゼとか、そういう精神的ないろいろな問題が最近起きておりますから、そういう意味における精神的ということばの挿入は妥当であると思います。  この「経済的」、これをあえて削除されたという点についてさらにお尋ねをいたしますが、いまの審議官の御説明によりますと、要するに経済的ということをわざわざうたわなくても、あくまで母体の健康にひっかかってくる、身体の健康にひっかかってくる。つまりもっと平たく言うならばおかあさんの身体に、おかあさんの健康に影響を及ぼすようなものは何も経済的理由だけではないのだ。もっとほかにもいろいろな要素があるから、その要素を医師が判定して、これはおかあさんの健康の保持に影響を及ぼすという場合には妊娠中絶をやっていいんだ、こういうふうに解釈をするならば、適応の範囲というものはむしろ従来の法律よりも広まるという見方も出てくると思うのでありますが、そこらあたりはいかがでありますか。
  125. 三浦英夫

    三浦政府委員 今回改正で御審議をお願いしておりますのは、従来の理由が母体の健康に害を及ぼすおそれがある場合といたしましても、身体的事由と経済的事由に限られておったわけでございます。経済的事由が直ちに母体の健康に影響を及ぼす場合がある場合とない場合がありますし、今度は逆に経済的理由以外でも母体の健康に著しく影響を及ぼす場合というのは、社会的な理由その他多々あると思われるわけでございます。要するに先生から御指摘いただきましたとおり、むしろ理由を二つぐらいに制限せずに、医学的な判断から総合的に母体の健康、それも先生から御指摘いただきましたようなWHOにありますような健康の定義に基づきまして、個々の事例に照らして医学的な見地というか、医師の医学的な判断からさるべきものであるということで経済的理由を削除したような次第でございます。
  126. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 審議官の御答弁、趣旨はよくわかりました。  そこで先ほどから私が触れましたように、ややもすればこの法律というものは従来誤解をされてきた、つまり極端に言うならば、貧乏であればおろしてもよろしいというふうにも誤解をされてきた。しかしそういう経済的理由というものは、当然医者が判定すべきものではないのだ。言うなればこれは医者の業務のらち外なんです。先ほど申し上げたように、あくまでもそのことによっていわゆるおかあさんのからだに影響があるということが前提条件でありますから、この法律改正の機会に、そういう一般社会で誤解をしないような一つのPRと申しますか、一つの正しいそういう認識というものを厚生省としては国民に知らしめる義務があると思うのでありますが、いかがでございますか。
  127. 三浦英夫

    三浦政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、もしこの法律が成立した場合には、あらためて趣旨の周知徹底をはかっていきたいと思っております。
  128. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 今回の改正案の第二の柱でございますが、それは胎内における重度の心身障害児、それが医学進歩によってわかるようになった。そこでそういうものにもこの法律は適用する、こういうことになっておるわけであります。しかしながら、現在の医学進歩と申しましても、段階的に現状をとらえてみますと、胎児のうちに、おそらくこれは三カ月ないし、四カ月以上の胎児であろうと思うのでありますが、羊水検査等によって発見できる疾病あるいはその胎児の欠陥というものは、現在においてはかなりまだ限定されておるということが第一点。それからもう一つは羊水検査と申しますと一ほかに検査の方法があるのかどうか知りませんが、例として申し上げますが、たとえば羊水検査等については、いわゆる個人病院と申しますか、診療所、病院等のいわゆる開業医においては容易にこれを測定することができないと、私は医者でないからよくわかりませんが、聞いております。非常に整備された大学の付属病院とか、そういう一部であるということになりますれば、趣旨はよくわかります。現に先般国会に来られました西ドイツの刑法改正委員会の皆さんのお話により、あるいはその改正案を見ましても、西ドイツの刑法における堕胎罪には、いわゆる医学反応によってあらわれたものはおろしてもよろしいというふうにむしろ西ドイツでも今度これを改正するようでありますから、それはよくわかるのですが、いま申し上げましたような点からすれば、やや時期尚早に失するおそれがないかということが一つの点。  それからもう一つは、私どももこの改正趣旨はよくわかるわけでございまして、そういう生まれつき非常に心身障害がひどい人、本人のみならず家族じゅうが長年にわたってそのために非常な苦労をしなければいかぬし、そのことが原因になって一家心中とか、過去においてもいろいろだ悲劇が起きておる。そういうのを救済しようという、言うなれば親心からきたところの救済規定だと私は思うのです。  ところが、一部に誤解されたり、実際にそういう方をお持ちになるおとうさんやおかあさんが、そういう子供たちは一人前ではないのかという、そういういろいろ御心配の向きもあると私は聞いておるのであります。そのために、そういう心身障害児の胎児をおろさなければならぬという規定ではなくて、おとうさんやおかあさんが希望されるならばけっこうですというふうにこの改正案の仕組みはなっているのでありますが、それでもやはりまだいろいろ批判がある、御不満があるということでありますれば、ここらあたり、どうですか、これはひとつ大臣にお尋ねしますが、何か云う少しこれを修正すると申しますか、何らかの方法はないものでしょうか。
  129. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この規定は、ただいまお述べになりましたように、最近の医学進歩に伴いまして、おなかの中におる間に、生まれれば重大な身体障害を持って生まれるであろうということが認められるような場合には、おとうさんやおかあさんの御希望によって中絶をしても堕胎罪にはなりませんよ、こういうことでこの規定を挿入したわけでございます。しかし、この規定につきましては、身体障害者の方々からもいろいろ意見が出ておることは、私も十分承知しております。それから、いまお述べになりましたように、時期尚早ではないかというふうな御意見もあります。したがって、私はこの規定についてはこだわっていないのです、率直に申しまして。まだ時期尚早であるというなら、なるほどそうかな、これはひとつ国会の御審議の場において処理していただければ非常にしあわせじゃないか。私はこの規定についてはこだわっておりません。ただ、こういう場合に、せっかく医学、薬学の進歩に伴って、身体障害の方が生まれる、おとうさん、おかあさんが、いやです、何とか中絶をしたいというときに、これは堕胎罪でございますというのはおかしいじゃないか、やはり中絶をしていただいてけっこうだ、こういうふうな規定で出したわけでございますが、まだやはり時期尚早という御意見もあるようでございますから、私はこの規定にはこだわっておりません。国会の御審議において適正に処理していただければしあわせだ、かように考えておる次第でございます。
  130. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 この条文に対する大臣のお気持ち、よくわかりました。  次に、先ほど審議官から御説明がありました今回の改正案の第三の柱と申しますか、いわゆる優生保護相談所の業務についてであります。これは初回分べんが適正な年齢に行なわれるように助言及び指導をする、こういうことになっておりますが、現代の女性の意識の中に、出産よりも家庭生活の確立のほうがより重要である、それが先決問題だ、こういう意識から、初回の出産年齢の平均がだんだん高まりつつある。従来の医学的な統計によりますと、母親の出産年齢が高くなればなるほど心身障害児等の出生率が多くなるというふうに聞いておるのでありますが、今回の優生保護相談所に関する法律改正については、やはりそこらあたりを主眼に置いて改正されたものであるかどうか。
  131. 三浦英夫

    三浦政府委員 先生御指摘のような点も十分に検討を加えまして、改正案提出さしてもらったような次第でございます。
  132. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 次に、去る四月十五日に人口問題審議会から「日本人口の動向の概要」というものが発表されました。それによりますと、世界の人類の人口というものは加速度的にふえている。年間の人口自然増は二・一%ですか、二十一世紀の劈頭には世界で七十億あるいは七十二億になるんではなかろうかという懸念がある。日本は東南アジアにおいて人口転換、つまり多産多死から少産少死に人口転換した唯一の国でありますけれども、それでも年間の増加率約一%、これでいきますと、二十一世紀の劈頭に大体一億二千万をやや上回るような人口になるんではなかろうかという懸念がされて、そのことについて、いわゆる人口計画というものが日本のみならず世界的にも早急に考えられなければいかぬということがこれに書かれておるわけであります。しかしながら、そういう実態にありながらも、ここには、だからといって人工妊娠中絶の乱用は絶対に防止しなければいかぬ。「健全な家族計画の普及になおいっそう努力するとともに、受胎調節のためのように適切有効な新しい技術、薬品、器具などの開発にも努力しなければならない。」いみじくも審議会の中でも、新しいそういう受胎調節のための薬品、器具の開発ということにまで言及されておるのであります。  そこで、まず、いま申し上げましたいわゆる人工妊娠中絶を制限するならば、当然その前の段階における受胎の調節、必然的に十分これに対して施策がなされなければならぬと思うわけでありますが、この新しい薬、たとえば経口避妊薬のピルとかあるいはIUD、いわゆる避妊リングですか、そういうものはまだわが国においては認可になってない。ピルのごときは通経剤と申しますか、医師の指導によってある種の目的の場合のみこれが許可されておるということを聞いておるのであります。しかしながら、われわれもこのピルというもの——例をピルにとって少しお話し申し上げますが、たとえばこれを服用する者は、服用しない者に比べて脳血せんとか静脈血せんの罹病率が非常に高い、あるいは嘔吐を催すことが非常に多いとか、いろいろ医学的データが出ております。聞くところによりますと、アメリカにおいてもそういう弊害が皆無とは思ってない。医学的にも弊害があることは立証されておる。立証されておるけれども、その弊害と効率とを比べた場合に、やはりこれは認めるべきであるという判断に立って市販をされておるというふうに聞いておるのであります。現在、先進国ということばは当たるか当たらないか知りませんが、私の聞き及ぶところでは、日本とトルコ、そこらあたりがまだピルが解禁になっておらない。なるほどわが国は言論を尊重する国でありますから、もしも政府がこれはだいじょうぶだということで大鼓判を押して、政府の認可のもとにこれを市販する、そのことによって先ほど申し上げましたような血せんというような病気にかかる人がだんだんふえる、そういう場合に、一体政府が保証したものでもってこういうものにかかるということになれば、これに対して国家はどういう補償をするかという問題が起きるかもしれない。ある国においてこれをやってみて若干の弊害が出てきても、何を言うかというような国もあるかもしれないが、日本は世論を尊重する国ですから、よほど慎重にやらぬと、やはりサリドマイドみたいないろいろな補償の問題が起きてくると思うのです。しかしそれはそれとして、いま申し上げた人工妊娠中絶に歯どめをかけるならば、やはり受胎調節に対する政府の指導方針というものも、そういう新しい薬の開発、認可という面まで含めて、もっと積極的な姿勢を示されるべきではないかと思うのですが、この点いかがですか。
  133. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先生御指摘のように、人工妊娠中絶の被害は相当大きいということは周知の事実でございまして、そういうものを改善するために、また御指摘のような問題に対処いたしますために、健全なる受胎調節の方法の普及、開発ということは非常に必要なことであろうと存じます。いま御指摘になりました医薬品及び器具のうちで、現在その目的のための製造、販売が認められておりますのは、医薬品につきましては局所用の避妊薬、それから器具につきましてはコンドーム、それからペッサリー、そこまでは製造、販売が認められておるわけでございます。御指摘の内服によって用います経口避妊薬、いわゆるピルと、あるいはIUD、いわゆる避妊リングとが現在はなお承認を受けておりません。そのうちのIUDにつきましては、これは日本母性保護医協会あるいは産婦人科学会からも、こういったものに関する御意見をすでにいただいておりまして、現在薬事審議会に特別の調査会を設けまして、この問題に関する御検討をお願いしておる段階でございまして、こういったものの——昔は金属等を用いましてやや副作用が強かったようでございますが、現在材料の開発等によりまして副作用が非常に少なくなっておるという状況でございますので、前向きの検討をいたしております。  それから経口避妊薬につきましては、これは効能が非常に高いことは国際的にも認められておるものでございますけれども、いま先生が御指摘になりましたような、非常に重篤な血せん症あるいは脳出血というような副作用がある。これもまた国際的にも明らかに学者が指摘しておるところでございます。問題は、先生の御指摘のように、判断といたしまして、そういった少数例の副作用に対しては目をつぶってもこの使用を認めるか、あるいはもう少しこういったものの開発が進められる、さらに副作用の少ないものが開発されるまでは、既存の副作用が少ない受胎調節の方法をさらにいろいろと組み合わせ指導いたしまして、人工妊娠中絶にかわる指導も行なっていくかという判断になろうかと存じます。アメリカ等は、御指摘のようにすでに十年ほど前から認められておりますが、当初わかっておりました副作用は、肝臓障害あるいは悪心、嘔吐、肥満等でございまして、こういった新しい血せん症等の副作用は、長い間使っておる段階でわかってきた問題でございまして、こういったことが学問的に現在報告されております段階におきまして、わが国でこれを公式に認めることが適当であるかどうかという問題につきましては、御指摘のような、いろいろと医薬品の副作用に関する世論の高まりの時期でもございますし、私どもといたしましても、こういったピルというものが安全なものに開発されていくというような方向を目ざしながら、現在におきましてはなお慎重に検討さしていただきたい、そのように考えておる次第でございます。
  134. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 いま薬務局長が受胎調節についての具体的な方法を例示されました。私もそれは承知いたしております。現段階においては一〇〇%受胎調節の効をあげる方法としては、これは男性、女性とも外科的な処置以外にないと思うのです。ただ、ピルも比較的に効率が高いということでありますけれども、私は一〇〇%ではないと承知しております。しかしながら、いまあげられたものの中では、先進国においてやはりピルが一番使用されておるという実情にかんがみて、ひとついま申し上げたように、まだ結論が出てないからということはわかりますけれども、一日も早く結論を出して、使うべきものなら使わせるように、ひとつ厚生省として指導されるようにお願いをしておきます。  それから、時間がありませんので最後に一つお尋ねいたしますが、昭和四十三年だったと記憶しておりますが、厚生省と日本医師会で約二万八千名、三万人近くの人工妊娠中絶希望者に対していろいろ調査をされました。意識調査等をやられたと思うのですが、そのときのアンケートで私が承知いたしておりますのでは、二十歳未満の、いわゆるティーンエージャーの人工妊娠中絶者に対して、あなたは結婚しておりますかという質問に対して、いいえと答えた者が七五%、結婚しておりますと答えた者が五%、これに対してイエスともノーとも答えなかった者が二〇%。私はこの二〇%はおそらく結婚してないと判断して差しつかえない。そうすると、いわゆる二十歳未満の若い女性の人工妊娠中絶の希望者の九五%というものは結婚してない、いわゆる不純性交と申しますか、その結果によって生じたということであります。  そこで、このこと自体を私はどうこう言うわけではありませんが、いまの受胎調節とあわせて、やはりもう少し、若い女性とかあるいは小学校、中学校等の義務教育において、性教育あるいは純潔教育をやる必要がある、この点についてひとつ厚生省がそういう指導的な立場から今後どのようにお考えになっておるかというのが第一点。  それから文部省からおいでになっていますか。——文部省にお尋ねしますが、いま申し上げたいわゆる純潔教育、性教育、これは先進国、フランス、スウェーデン等においても進んでおります。あるいは西ドイツにおいては若干行き過ぎがあって、刑法の罪に触れて起訴されたということも聞いておりますが、非常にむずかしい問題だと思いますけれども、いま申し上げた事例にかんがみて、義務教育のカリキュラムにおいて純潔教育、性教育、これは避妊等を含めて、そういうものを今後織り込まれていく御意思があるかどうかをお尋ねします。
  135. 翁久次郎

    ○翁政府委員 第一点の正しい受胎調節の普及と申しますか、その点につきましては、厚生省といたしましては母性保護という立場から、母子保健法に基づきまして、正しい受胎調節の知識と技術を普及するということを中心といたしまして、受胎調節実地指導員、これは保健婦、助産婦、看護婦さんで一定の資格を持った方々ですが、こういった方々を中心といたしました受胎調節の指導をいたしております。なお、低所得階層の方々で、せっかく知識があっても費用的に問題があるということがございますので、避妊用具あるいは薬品を無料で配付するということも片方でしているわけでございます。  総じて、保健所あるいは母子健康センター、こういったところで母親学級あるいは結婚したての方々を対象とした受胎調節の教室あるいは母子保健の知識の普及ということを含めて、こういった事業を行政としてしているわけでございますけれども、御指摘のように、今後ますますこの点についてはさらに積極的に指導を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  136. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 この問題は直接母体の健康にかかわる、いわゆる今後の日本の施策として最も重要な問題であると私は認識をいたしております。私がこの間聞いた話によりますと、ある御婦人が十数回中絶をやって非常に健康を害して、今日電車のつり皮にぶら下がって立つこともできないという人を聞いております。もちろん、こういう人工妊娠中絶というがごとき、医学的に見てその十何回も繰り返すことがいいわけはないのであります。したがって、今後のりっぱな国民を育ててもらう母親として、こういう弊害の多いものはなるたけ避けて、いわゆる受胎調節の段階でひとつ事を済ましてもらう、そういうふうに今後とも指導を十分していただきたいと思うのでありますが、そのことにつきまして大臣の御所見を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  137. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 人工妊娠中絶につきましては、いろいろな弊害がありますことは私も十分承知をいたしておりますので、今後はやはり受胎調節のほうにもっと力を入れていくべきであろう、かように考えておるわけでございます。それは人口問題とかそういう問題ばかりではなしに、母性の健康の保護、そういう面からいきましても、そういうことの方向に進んでいくべきであり、今後の器具その他医薬品等の開発につきましても、そういう方面に前向きに努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  138. 志熊敦子

    志熊説明員 文部省におきましては、純潔教育につきましては学校教育、家庭教育、社会教育という三分野でそれぞれ取り上げられております。特に学校教育におきます性教育につきましては、人間尊重の精神を基盤といたしまして、発達段階にふさわしい性に関する科学的な知識を持たせるとともに、性的な発達に適応できる知識や態度を養うことをねらいとして行なわれるものとされております。  今回の教育課程の改定にあたりましては、このような観点から、特に道徳、特別活動、保健体育、理科などの関連教科等を中心といたしまして改善充実がはかられたところでございますが、今後とも青少年の健全な生活態度の育成を目ざして努力してまいる予定でございます。
  139. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 終わります。
  140. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 田中美智子君。
  141. 田中美智子

    田中(美)委員 結核予防法の一部改正について質問いたします。  今度の一部改正によって小中学生の検診の間引きが行なわれるわけですけれども、エックス線による被曝ということを非常に強調するあまりに、早期発見を軽視したり、または本来の結核対策をおろそかにするということがないようにしていただきたいと思うわけですけれども、その点についての厚生省の見解をお聞きしたいと思います。
  142. 三浦英夫

    三浦政府委員 現在、結核健康診断あるいは予防接種をやっておりますが、一般的に定期健康診断でやっております結核発見率というのが、平均をいたしますと一万人で五人という割合になっております。その中でも特に小中学校の場合には、一万人に二人の発見率になっております。これを十年前に比べますと、一万人のうち二十人ぐらいございましたから、約十分の一に減ってきているわけです。これは一つは、予防接種の効果等が、かつては一年程度しか効果がないものとされておりましたのが、いまでは予防接種が十年程度の効果を持つといわれております。そんなことからいたしまして、いまの段階では、御説明しましたようなぐあいに健康診断を減らしていっても、一方において被曝ということの兼ね合いにおきまして、まず心配ないと判断しているわけでございます。ちなみに、諸外国におきましても、日本のような集団検診でやられている国はないような状況でございますので、まず私どもとしては遺憾なきを期せられると思っておる次第でございます。
  143. 田中美智子

    田中(美)委員 いま、結核が十分の一に減っている、それから、予防接種も十年間もきくいいものになっているということで、外国でもこういう集団検診というのはあまりやっていないというお話でしたけれども、いま結核患者死亡数は日本では一万二千人というふうにいわれています。人口十万人に対して十一・九、これは厚生省の統計ですからあれだと思いますけれども、毎年一万二千人死んでいるということ、それから、人口十万対十一・九という比率というもの、これは、いま諸外国では集団検診をやっていないと言われたわけですけれども、ほかの国と比べてみますと、たとえばオランダなどでは十万人に対して一・二で、オースラリアが十万人に対して一・四、カナダは二・一というふうに、非常に少ないわけですね。こういうところでしたら理解できるわけですけれども日本の場合には十万人に対して十一・九。西欧諸国の平均を見ましても、五以下ということになっているわけです。そうすればやはり、諸外国で集団検診をしていないから日本もこれをおろそかにしてもいいということはいえないんじゃないかと思います。国際的に日本は、統計を見ましても、大体中程度のところまで減ってきたということであって、あのひどい、日本が世界トップの結核国であったときと比べれば確かに減っておりますけれども、そういうことを考えれば決して結核が克服されているというふうには思わないわけですけれども、その点については……。
  144. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに日本結核死亡率等から見た位置づけは、中進国だろうと思います。しかしながら、昭和二十五年当時に人口十万に対しまして百四十六名がなくなっておりますし、昭和三十五年におきましても人口十万に対して三十四人がなくなっております。それから比べればかなりの前進をしてきたような次第でございます。今日の段階におきまして、特に成人は別といたしまして、小中学校のようなやはり成長盛りの子供さんにつきまして不必要なものは——不必要と申しますか、少しでも少なくて済む場合には被曝を少なくし、一方において健康管理をやる、こういう兼ね合いから申しますと、今度の改正でお願いしている程度が、学会その他から見ましても一番適当だということになりましたので、こういう案で御審議をお願いしているような次第でございます。   〔山口(敏)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  145. 田中美智子

    田中(美)委員 いま私が申しておりますのは、この小中校の間引きということが、そういうあなたのおっしゃることばの中に、諸外国ではもう検診をやっていないというふうな——やはりそういうことをするということには一応理由はあるというふうに思いますけれども、間引きをするということにはあると思いますが、そういうムードをつくって、もう結核は克服されているんだ、そういうことで結核に対する対策を怠っていくということ、これは決して結核は減っていないんだというふうに私は思うわけで、そういう意味で非常に懸念をするわけですね。  それで、現在の結核死亡率などを見ましても、戦後ひどいときからぐうっと減ってきておりますけれども、やはり昭和四十四年ごろからこの死亡率の下降線というのが横ばいになっているわけですね。ということは、いまそれほど死亡率というものは徐々に減っていっていない。相変わらず一万二千人以上の年々の死亡者があるということを考えますと、そうした、結核はもう克服されているんだ、諸外国ではこういっているんだ、こういう姿勢というのは非常に危険だというふうに私は思うわけですね。  それで、小中学校の検診だけが結核対策ではないわけですから、BCGがよくなったり薬が出てきたりいろいろな好条件があることによってそれだけ手が抜けるなら、いまある結核患者を少しでも減らすというところにむしろより力を注いでいかなければならない。そういう中で外国ではこうだからという——同じレベルではない、はるかに日本が多いわけですから、そういう考え方というのは私は姿勢として改めていただきたいというふうに思うわけです。  それで、この中身を見てみますと、結核患者が新登録される、その中での割合というのを見てみますと、感染性患者の割合というものがいま率としてふえている。これは「東京都における結核の概況」という調査を見たわけですけれども、これで見ますと、患者の中での開放性といいますか、感染性といいますか、そういう患者さんの比率が年々ふえているわけです。これは政府の統計ではどのようになっておりますでしょうか。
  146. 三浦英夫

    三浦政府委員 その前に、先生御指摘がありましたけれども、私ども結核を軽んじてこうする意味ではなくて、むしろできた余力をほかの結核についての吹きだまりの対策のほうに総力をあげたい、それで一日も早く先進国の域に達したいという気持ち、念願からやらしてもらっている施策でございます。  第二点の先生御指摘の感染率でございますが、私どものとりました統計では、要するに感染性の新患者の登録ですが、たとえば昭和四十五年が人口十万に対して三十九・七でございまして、昭和四十七年が人口十万に対して三十二・一。ちなみに昭和三十六年が人口十万に対して九十三でございますから、減る率は少なくなってきておりますけれども、やはり感染性患者は割合においても減りつつあるという認識を持っている次第でございます。
  147. 田中美智子

    田中(美)委員 東京都の調査を見ますと、割合は減っていない、ふえているというので私はいま伺ったのですけれども、いま減っているというふうにおっしゃったわけですが、これですね、これは厚生省の結核成人病課ですね、ここで出している資料で、これは一一ぺ−ジです。ここの第ページです。ここの第四表というところがありますね。ここを計算してみますと、計算が出ていないわけです。私がこの数字によって計算してみますと、たとえば昭和四十年は感染性患者が十八強です。それが昭和四十四年度には二十一になります。この数字は出ておりませんよ。この数字で計算したのですからね。それから四十七年には二十三・三になっています。あなたはいま減っている、こう言われたわけですけれども、これをあなたのほうで出している資料で見ますと、確かにパーセンテージで開放性がふえているわけです。そういう認識はどういうことなんですか。
  148. 三浦英夫

    三浦政府委員 ちょっとおことばを返すようで、あるいは私が間違っておったらあとでお断わりさせていただきますけれども、この統計でごらんいただきましても、人口十万単位になっておりまして、一番右側の数字でございますから、逐次感染性罹患率は減ってきておるという認識に立っている次第でございます。ごらんいただきますと、昭和四十七年が人口十万対三十二・一でございますし、昭和四十一年の場合が人口十万対五十一・〇になっておる次第でございます。
  149. 田中美智子

    田中(美)委員 これは結局数として減っているということであって、全体の患者さんの中で開放性でない人とある人の数からすれば、これがふえているということを言っているわけです。あなたのおっしゃっていることは違うのですね。全体の数が減っているというのです。数は四十四年ごろから横ばいになっているけれども、少しずつ減っているということですね。ですから開放性の数も減っている。しかし開放性の数の減り方のほうが少ないということです、私がいま言っているのは。全体の比率の中で開放性がふえているということを言っているわけです。
  150. 三浦英夫

    三浦政府委員 その点よくわかりました。確かにおっしゃるとおりでございます。
  151. 田中美智子

    田中(美)委員 そうですね。そういうことはやはりそういう中の分析というものをこまかくやらないと——ただ数は減っている。しかしいま横ばいになっているわけですからね。その中を見た場合に、開放性のほうがだんだんふえていくようですと、こういう現象というのは、結局全般的には結核は減少している、しかしある部分的な地域においてはこれがふえているのだ、こういうところの対策がすぽっと抜けているから、結局濃厚感染のような形で開放性のひどい結核患者がふえている、そういうことになるのじゃないかと思うのですね。そうすると、いわゆる白い地帯とか黒い地帯とかいうふうにいわれておりますけれども、黒い地帯の結核対策というものがむしろおくれている。白い対策のほうは確かにおっしゃったようにこれはずっと進んでいますし、このほうが地域としては広いわけですから、全体としては数は減るかもしれないけれども、ある一部分の地域だけが非常に放置されている現象だというふうに、私はおたくのほうから出された数字を計算してみて、そういうふうに思うわけなんです。この点、白い地帯と黒い地帯が分裂したような対策になっているというところに、今後十分な政策をやっていただきたいというふうに思うわけです。この点についての御意見
  152. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに結核の問題は、全国を平均的に見ますと、非常に結核対策が進んできたというか、改善されてきております。しかし先生御指摘のとおり、こまかく分析をいたしますと、たとえば年齢で見ますと、高年齢層の方に結核が残っておるとか、あるいは地域的に見ましても比較的低所得層の方がたくさんおられるような地域結核患者さんが非常に多いとか、あるいは中小企業とか農村というような未組織のそういう方々のところに結核が、いわゆる組織的な都市などに比べておくれている、その認識は持っております。したがいまして、これからは小中学校に尽くしてきた検診が多少なりとも余力ができますから、私どもそういう面に保健婦なりあるいはレントゲン自動車なりを集中をして、そちらのほうに対策を進めていきたい、かように思っている次第でございます。
  153. 田中美智子

    田中(美)委員 次に移りますが、いま高年齢者に結核思者が多いというふうに言われまして、確かにそうだと思いますけれども、この調査が、新しい調査がないというふうに思うのですね。  昭和四十三年の厚生省の実態調査、これは五年ごとになさるのだそうですけれども、これを見ぼすと、   〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕 十五歳から二十九歳までの青年層十九万、それから三十歳から四十四歳まで四十三万、こういう数の比率を見てみますと、全患者の四〇%を占めているわけです。これは四十三年の厚生省の資料です。  こうしますと、確かに老人に結核が多いということは一面では言えると思いますけれども、それだからといって、最近は結核はみんな老人病なんだと、それは一般の中に、そういうふうな、うわさのように流れているわけですね。でも、実際は、四十三年までの調査では、四〇%までが十五歳から四十四歳までの最も働き盛りの人であるということを考えますと、比率として老人が多くなっているかもしれないけれども、これは必ずしも老人が多いというふうに単純に言ってしまってはいけないのではないかというふうに思うのです。そういう意味で、新しい統計の資料がありましたら、お聞きしたいと思います。現在どうなっているか……。
  154. 三浦英夫

    三浦政府委員 正確な結核実態調査は、先生御指摘のとおり五年に一回ずつやっておりまして、昨年の十月に実態調査を全国にやっております。この集計が、非常に集計項目が多いものでございますから、現在まで集計結果が出ておりませんが、そうでない、これはそういう調査に比べますとやや精度は落ちますけれども結核の登録患者というのがございます。これは、結核患者になりますと、お医者さんのほうから保健所へ登録される仕組みがとられておりますけれども、それによりまして毎年登録患者の統計を私どもとっておりますが、その統計等から見ましても、最近は次第に老齢のほうの方に新規登録患者なんかが多くなっている、こういう現状になっております。  この登録関係につきまして、こまかいことは、後ほどまた先生のところへ資料の御説明にお伺いしてもと思っております。
  155. 田中美智子

    田中(美)委員 まだその統計が一体どれぐらいの数になっているかということをいまはっきりおっしゃらないので、ただ比率が多くなっているということだけで単純に老人病のような発言というのはやはり慎まないと、今度のような間引きをするということ。それから、老人病になったのだ、そういうことばというものが、一般の人に対しても、やはり結核というのはもうほとんど克服されているのだ、そういう感じを与える。結局そういうムードを厚生省から出されるということは、やはりいけないことだと思います。科学的にやはりきちんと、どうなっているかということを言わないといけないのではないかというふうに思うのです。そういう点で非常に私いまの回答に対して不満ですけれども、この十五歳から四十四歳、四十三年の調査が、いま一体どのように変わっているかということを聞かせていただきたいわけです。いま資料がない、まだ結果が出ないということですが、いつ出るわけですか。
  156. 三浦英夫

    三浦政府委員 実態調査につきましては、もう少しかかると思ういます。いま、登録関係のほうの、保健所に登録している数字で、ごく簡単に例示をあげて申し上げますと、たとえば十五歳から十九歳の年齢の階層の方が、昭和四十年の場合には、人口十万に対して百四十九人の新規の発生をしております。ところが、昭和四十七年にまいりますと、同じ階層のところが人口十万に対しまして五十一・九人になっております。一方、減ってきてはおりますけれども、たとえば五十歳から五十九歳の欄を見ますと、昭和四十年には人口十万対四百七十五・四人でございましたのが、昭和四十七年には人口十万対二百二十九・九というような数字になってきております。したがいまして、絶対数におきまして老齢者の層の人の中にやはり患者が多いということでございます。  なお、詳細なものにつきましては、後ほど先生のお部屋にお届けさせていただこうと思います。
  157. 田中美智子

    田中(美)委員 まだ年間一万二千人も死んでいるし、ずいぶん数としては、これは百五十万くらいの結核患者がいるわけですね。ということは、その比率がそうなったにしたって、相当の患者がいるし、そして死亡率にしても日本の十位になっているわけですから、決してまだ結核日本から克服されたのだとは——世界を見ましても中程度の国ということですから、ここで油断をしますと、またこれが出てくるという温床というのは非常にあるというふうに私は思うわけです。先ほどのようにやはり開放性の患者の比率が多くなっているということは、いつこれが——まあ私も結核をやりましたので、よくシュープを起こすというようなことでおそれるわけですけれども、そうした状態をそのままにしておきますと、それがぱあっと広がるという、いつまでも活火山をかかえておるというような状態を置いておくということはよくないというふうに思うのですね。こういう状態が、感染性患者の入院率を見ましても、これもおたくでいただいた資料ですけれども、これを見ましても、やはり五〇・六%、ちょうど半分しか入院していないわけですね。そうすると、菌を出している患者というのが半分はいるということですから、こういう状態をどうやって対策を立てていくかということがいま緊急の問題なんだというふうに思うのです。これについて五〇・六%ということは、どうしてこのように少ないのですか。入院できないのですか。
  158. 三浦英夫

    三浦政府委員 御承知のように、結核が、同じ感染性と申しましても重症患者が少なくなってきた。それからもう一つは、化学療法が発達いたしまして、従来でございましたら入院すべきところが、医師の判断で必ずしも入院しなくてもいいというような判断が加わっておりますので、こういう要素が加わって、従来ほど感染性の方でも入院しなくていいということがまず基本的なことだと思います。
  159. 田中美智子

    田中(美)委員 私、最近結核療養所に行って聞きましたけれども、やはり最近、若い方たちが重症でよく入院してくるということを医者が言っているわけですね。そういうのを見ますと、やはり入院すべき開放性の人をそのままに放置しているということがあるから、入院するときには若い人が重症で来ているわけですね。私のように背既応症のある者がある年齢になって、これがまた再発してきたというようなことで、やはりいま老人の結核患者が多いのだと思いますけれども、これはむしろ、かつて日本結核国であったときになった患者が死なないで生き延びていて、ある年齢になって出てきているというものだと思うのですね。しかし、いま若い人が結核になって、それも重症で入ってくるということは、やはり先ほどから言っておるような黒い地帯があるのだ、これが放置されているのたということは、やはり非常に入院の比率にしましても、それは確かに開放性であっても、化学療法ですぐにそれが開放性でなくなるということはあるかもしれないけれども、統計としてやはり常になくなってもまた次に出てきているわけですから、半分はやはり開放性でいるのだ。もし、ほんとうに薬ですぐに開放性でなくなるならば、こんな数字というのは、四十七年度の数字ですから、最近の数字ですから、むろんこれは化学療法でもってすでに解決されている問題だという認識というのは、非常におかしいのではないかというふうに思います。この結核対策を早急にやっていただきたいというふうに思うわけですけれども、いまおっしゃいましたように、低収入の家庭だとか、それから家庭の主婦だとか、そういう人たち結核になっている。それから、中小企業の検診が非常にやりにくい状態にある。こういう中で、中小企業の労働者、この検診が、その責任者が事業主になっているわけですね。こういうところの検診率が非常に少ないというふうに、統計を見ると思うわけですけれども、全国的に見ましても、四十六年四一・六%が四十七年には四〇・四%というふうに、受診率が減っているわけですね。それを見ましても、零細企業の雇用主、事業主に責任を負わせているというところに、やはり検診に行けばその日は休まなければならないとか、いろいろある。そういうところでそれがおろそかになる。ここら辺のところからまず改革をしていく必要があるのではないかというふうに思うわけです。それで私は、事業主の責任ではなくて、中小企業は市町村の責任にする、そうして事業主がこれに協力することを義務づけていくというふうにぜひ改革をしていただきたいというふうに思うわけですけれども、その点について伺いたいと思います。
  160. 三浦英夫

    三浦政府委員 御承知のとおり、労働安全衛生法によりまして、事業主の場合は事業主の責任において労働者管理というか、健康管理、結核管理のことをやっていただくということがたてまえになっております。ただ、中小企業の場合には職場でなかなか、そうは言ってもいろいろな支障があると思いますので、従来から労働省とも連携をとりまして、事実上市町村の行なう検診に委託をしてもらって実施するというようなことが行なわれておりますが、今後ともこの点につきましては、労働省とも十分連絡をとって遺憾なきを期していきたいと思っております。
  161. 田中美智子

    田中(美)委員 この点ですけれども、やはりほかの病気と違いまして、結核というのは自覚症状がないわけですからね。見たところも非常にじょうぶそうに見えますし、昔のようにやせ細った結核というのは、結核大国であったときにそういう患者がちまたにいたということで、いまの結核患者というのはよほど重症でなければ非常に健康に見えるわけです。従業員がほんとうに二、三人の零細企業などでは、そんな元気な顔をしていた場合に、普通の事業主が、ひょっとしたら結核があるかもしれないというふうに思うということは、それを期待することは無理だというふうに思うのです。やはりこの病気には市町村が定期的に検診をやって、それをきちっとチェックするということをしなければ、私たち自身でも、ちょうど虫歯が痛いときは医者に行くけれども、虫歯になっているということを知っていてもそれは放置している。まして結核の場合は痛くもかゆくもないわけですから、何となく疲れるとか、何となくだるいとかということは、自分のなまけ心ではないかというように自分自身でも思ったりするわけです。そういう病気だからこそ、結核は特にいままでにもいろいろな保護や政策がなされてきていたわけですから、いまこの黒い地帯に目を向けるということは、そういうところにきめこまかくやっていかない限りは、いままでどおりと同じにやっているのでは、ちょうど統計が示しているように横ばいになってきているわけですから、これ以上日本結核は克服されない。そうすれば、オランダやああいう国から比べれば十倍にもなっているわけですから、この状態はそのまま続く、いつかこれが爆発していくというふうな危険性をかかえたままでいくわけです。そういう意味で、いままでのように、労働省と話し合って遺憾なくやっていきますということではもうだめだ。新しい手をそこに打っていかなければならない時点に来ているのだと思うのです。ですから、間引きしてもよさそうだと思うところには間引きをしていながら、どうしていままでのところはそのままに放置するか、これのほうを新しい手を打って、間引きできるところ、節約できるところは新しい手を打つわけですから、そうでないところには新しい手を打っていくということをしなければ、中小企業で働く労働者がやはり結核患者が多くなっているということも出ているわけですから、これを早急に、いままでどおりのやり方でなくて、新しい手を打っていただきたいというふうに思うわけです。
  162. 三浦英夫

    三浦政府委員 たとえば昭和四十九年度の予算定期健康診断というのが制度としてございますが、これは要は患者さんの家族であるとか、あるいは結核が特に密集して発生しているような地域に対して、臨時に健康診断を行なう仕組みでございます。これにつきまして昭和四十九年度の予算では、四十八年度に比べて三割増の予算の規模を組んでおります。と申しますことは、私どもとしては、定期の小中学校の健康診断から少しは手が抜けますので、それらを振り向けて、レントゲン自動車から、あるいは職員から、保健婦さんから、そちらのほうへ重点を差し向けてきめのこまかい対策をやっていきたいという観点からやっておるわけでございまして、先生のお説のとおり、そういうきめのこまかい対策を今後鋭意進めていくつもりでございます。
  163. 田中美智子

    田中(美)委員 その点、ぜひ早急に進めていただきたいと思います。  それから検診を受けるのに、兵庫県ではいつでも検診が受けられる状態をとっているというふうに聞きましたけれども、そうでしょうか。
  164. 三浦英夫

    三浦政府委員 あまり兵庫県の状態よく把握しておりません。
  165. 田中美智子

    田中(美)委員 やはりそういうことは、新しいことを地方自治体がやっている場合、これはいいか悪いかということは常に厚生省は見ていなければならないと思うのです。そして、もしそれが悪ければ一つの実験として改めていくし、よければやはり国がこれを積極的に取り入れていくという方式をとっていただきたい。そういう点で、丘庫県ではいつでも検診ができるというようなことをやっているというふうに聞いたわけですけれども、これは早急に調べていただきたい。そして、もしこれが非常に有効であるならば、これを取り入れていただきたいというふうに思うわけです。特に中小企業の場合などは、年に一回検診日を示されていましても、そのお店の状態からすればその日に行けないということが多いわけです。まして健康で、そんな顔しててどうして結核の心配があるかとまわりも思うし、本人も思えば、ついこれは行かないということになります。これをはずしてしまえば、あと自分がちょっとやってもらいたい、ちょっと最近疲れるからやってもらいたいと思っても、これは自己負担になるわけですからね。やはりこれを定期外にも検診をするという道を開いてほしい。それを開いたからといって、ただだからだれでもそれはもうじゃんじゃんたくさん殺到するかといったら、そんなことはあり得ないことなんですから、どうせやるならば、これがいつでもできる状態にする。定期検診を受けなかった人をチェックして、そして都合のいいときに来てやれる、それが自己負担にならないように、そうした改革をしていただきたいというふうに思います。その点について御意見を伺います。
  166. 三浦英夫

    三浦政府委員 今日わが国の結核が一応ある程度のところまでこられた一つ原因といたしましては、集団的な方法で予防接種を行ない、集団的な方法で健康診断を行なってきたこともあったかと思います。というのは、やはり経済性ということも考えなければなりません。常時やるということになりますと、非常に経済的な問題もございます。集団検診というのは、御承知のとおり非常に経済コストが安くてたくさんの人ができるというメリットもあるわけでございますが、ただ兵庫県の実例につきましては、詳細把握しておりませんので、経済性から一体どこまでできるかよくひとつ参考にしてみたいと思います。
  167. 田中美智子

    田中(美)委員 それから市町村などが定期検診を知らせる場合、非常にPRが私は悪いと思うのです。大企業だとか公務員とかというのはきちんとやられるわけですけれども、こういうところは広報でぽんと知らせて、そしてそれに来なければそれっきりという形です。そういうことで、私もかつて職場を離れておりましたときに、こういうのが来ましたけれども、結局そのとき忙しければ行かない。それっきりになってしまうわけです。もう少し自宅まで案内状を出すとか、もちょっとPRをして、そしてせっせと呼び出していくという努力を——ただ広報で知らしておけば、もう来ないほうが悪いのだという形でほっておくということは、いつまでも黒い地帯が残っていくんじゃないかと思うのです。  それで、検診の通知というのも予算を見て私非常に驚いたわけですけれども、国の補助が一人十一円になっているわけです。これは、はがき一枚十円ですからね。十一円になって、これが一円上がったのですか、台帳整理というので一円上がって十二円というもの、こんな予算ではとてもPRはできない。ただPRをしたという責任のがれのための予算としか考えられないわけですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  168. 三浦英夫

    三浦政府委員 PRは非常に大事なことだと思います。そんな関係からというわけでもございませんけれども、昨年から、たとえば検尿であるとか血圧測定であるとかいうような成人病検査とあわせて結核検診をやるのも一つの方法だというようなことも考えまして、都道府県あるいは市町村とも相談をして、一部というか、相当部分のところはタイアップしてやっているような状況でございます。こういたしますと、少しは検診に来てくださる方も前よりはふえてきておる、こんなような状況もございます。  なお広報の点でございますが、確かに決して十分な予算とは申せまんので、今後予算の増額について努力していってみたいと思います。
  169. 田中美智子

    田中(美)委員 十分な予算とはいえない、これはもうわかり切っていることです。ことばは言いようだと思いますけれども、あまりにも少ない予算だというふうに私は言いたいと思うのです。そういう意味でこれをいろいろくふうして、もちろん成人病とあわせてやるということが、現実としてそれが多くなりチェックがたくさんできるというならそういうやり方にしても、何はともあれPRをしてできるだけ、一年に一ぺんは健康診断してもらわなければ、してもらうのが一つの教養なんだ、そういうことを国民が思えるようなPR、社会教育というものをやっていかなければならないんじゃないかと思います。  それから、これは最近聞いた話です。去年の話ですけれども、練馬区でダンプカーの運転手さんの奥さんが重症の開放性結核であるということがわかったわけですね。これに対していろいろ説得をして入院をさせるというようなことをやったわけですけれども、しょっちゅううちを夫が留守にしている。子供が二人いるということで、なかなか入院を承知しないわけですね。そのうちに結局どこかへ行ってしまったわけなんですね。こういうケースを私は聞いたわけです。こういうのを見ましても、非常に重症の開放性であったということは、まず夫とそれから特に幼児である二人の子供にうつすということはもうわかり切っていることですね。こういうものがやはりなかなか、もちろん本人の自覚が低いということがこのケースの場合はあるわけですけれども、本人の自覚の低い人というのはまだたくさんいるわけですから、それをどうして高めていくかということがやはり厚生省の仕事だというふうに思うのです。そういう意味で急性の伝染病のような形でそうした重症の患者さんの処置をするということはできないものでしょうか。生活保障も含めて、できないものでしょうか。
  170. 三浦英夫

    三浦政府委員 急性の伝染病患者さんの場合も生活保障まではやっていないわけでございますけれども、やはり医療でございますから、医療としてはいたしますけれども生活保障までするということはちょっと困難かと思う次第でございます。
  171. 田中美智子

    田中(美)委員 医療としては急性伝染病並みに扱うというふうにはできないでしょうか。
  172. 三浦英夫

    三浦政府委員 現在、制度のたてまえとしては急性伝染病結核も、らいも同じでございまして、いまのような濃厚な患者さんの方につきましては、必要な経費は、ある程度本人が自己負担できる場合は別として、相当部分は公費で負担をする、公費で負担しなくてもいい自己負担ができる部分については自己負担をしていただく、こういう仕組みになっております。急性伝染病としてもたてまえはそうなっておりますが、ただ急性でございますので、市町村によっては全部市町村の公費でまかなってしまっているところがあるというのは事実でございます。
  173. 田中美智子

    田中(美)委員 そういうところが、法的には同じであっても実際には、受ける国民側からすれば、急性伝染病のときにはいろいろなことをやってもらえるのに、結核の場合にはやってもらえないという現実になっているわけですね。これをやはり、これは運用面でできるわけですから、そういう点考えて、説得して本人がうんと言わない限りはどうしようもないというなら、そのうちにしつこく行けばそのままどこかへ逃げてしまったというようなことは、たくさんケースとしては私は聞いているわけです。たとえば、ベッドがないから一週間後にいらっしゃい、そうしたら入院させますというふうなことをやっている。こういうのは、たとえば山谷だとか釜ケ崎のようなドヤ街にいらっしゃる方たちの場合には、住所が毎日変わるわけですから、そういう不親切な応対をしていますと、すぐいなくなってしまうわけですね。これはそういうドヤ街の人だけでなく、普通のアパートに住んでいても、家庭を持っていても意識が低いと、痛くもかゆくも何ともない、いま自分が離れれば夫は困るし、子供は困るのだ。だから、からだを休めながら家事ぐらいはできるのだという、結局それは無知から来るといっても、これをきちっと教え、そしてそれに対するいろんな援助をしていかなければ、急に子供をどうすることもできないわけですから、この点をきめこまかくやっていただきたいと思うわけです。  次に移りますが、いま一部負担の問題がありましたけれども、五月一日にこれが改正された。この改正面というのは約六百万近くになったわけですから、上の部分というのはある程度いいというふうに思いますけれども、下の部分というのは結局六千六百円から約八千のところ、この層の人たちの年収を考えてみますと、大体百十八万から二百六万ぐらいになる。この表で見ているわけですけれども、百十八万から二百六万の方たちというのは、いぼの物価高の中では決して楽な生活の人たちではないわけですね。この人たちが相変わらず自己負担をしなければならないという、最も改革してほしいところがされていないという不満足が私はあるわけです。どうせ改革するなら、一ぺんにこちらもやってしまったらどうかと思うわけですけれども、なぜこれをこのまま放置しているのか、お聞きしたいと思います。
  174. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに先生のおっしゃるように、いまの所得に引き直しますと、百十八万円であり、あるいは二百六万円でございます。ただ、私どもの採用しております基礎は、所縁からよってくるところの所得税額で一応さしてもらっておるわけでございます。現在の所得税額から見たら百十八万円であり、二百六万円になるわけでございますが、御承知のとおり、所得税が年々減税措置がとられてきておりますので、結果といたしまして、据え置きましても減税措置がとられてきて負担が軽くなる、こういう認識でおるわけでございますが、それはそれとして、今後ともこういう減額につきましては努力を続けていきたいと思っております。
  175. 田中美智子

    田中(美)委員 ほかの制度と比べましても、国保に加入している人たちだけがなぜ負担しなければならないのかと思うのです。老人医療の場合だと六百八十八万ぐらい、そこら辺までの人たちは無料になるわけですね。それから、三万円以上の公費負担というのがあります。こういうのにひっかかる特定疾患の人たちも全然無料になるわけですね。それなのに、この結核の国保の人だけがどうして負担しなければならないのかということを考えてもたいへんおかしいと思うのです。ほかがみんな負担しているのではないわけですから、これをいつまでも残しておるということは改革になっていないと思うわけですけれども、他のものとの比較として、これをどうお考えになりますか。
  176. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに、老人医療なりあるいは難病患者さんの一部に適用される医療負担は、保険で自己負担が出たものにつきましてカバーいたします、こういう制度の立て方になっておりますから、結果として適用を受けた方は無料になっておるわけでございます。結核あるいは精神というような公費負担のこういう制度の立て方でまいりました場合には、制度の立て方として国保の一部負担がどうしても残ってくるわけでございます。それでは老人医療なりあるいはほかのものに制度を変えたらどうかという御意見もあるかと思いますが、ただ結核対策という性格のものを、お互いにかけ合った保険でするよりは、公費負担という国民の税金で負担をして治療をさせるほうがより適当なのではないか、こういう制度の立て方から今日まで来ておるわけでございまして、制度の立て方が違う関係上、簡単に国保を全部ただにするということは困難かと思います。それはそれといたしまして、実際問題として負担の軽減がはかられていけば、事実上カバーできるわけでございますから、費用負担の軽減につきましては、来年度以降もまた努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
  177. 田中美智子

    田中(美)委員 たいへん不公平だということ、困難だと言ってしまえばそれきりですけれども、すべて人間がつくったものなんですから、やる気になれば幾らでもやれないことはないと思うのです。  最後に、もう一度申しますけれども、多発地帯といわれている地帯、そういう階層というのははっきりわかっているわけです。どことなくそういうものが出てくるということならば、これから調査してどうするということがあるわけですけれども、いまはっきりわかっているわけですから、モデル地区というものを——早急に全体をやれば一番いいわけですけれども、モデル地区をつくって、どういう対策でやったらこれは徹底的に撲滅できるかということをすぐに行動として動いて、そこをこれで完全に撲滅できるんだといえば、多発地帯、黒い地帯ですね、階層というものはわかっているわけですから、これを一つ一つ克服していかない限りは、永遠に日本は中程度結核国であるということで、いつ爆発するかわからないという現状を残したままになると思います。  最後になりましたが、先ほどから、結核の数が戦後から非常に減ってきている。これは確かに国の結核対策が効を奏した面というのは大きいと思いますけれども、私自身、戦後のあの混乱の中で結核療養所に三年いて、死ぬか生きるかというところでやっと生き延びてきた者ですけれども、その中で私のまわりの患者さんたちが死んでいくのを見ました。貧乏人が死んでいっているのです。治療は同じようにされているわけですが、しかし貧乏人が死んでいっている。そして金持ちは、少しでも金があり、どこからか融通してもらったり差し入れしてもらえる者は、バターを食べたり卵を食べたりするということで生き残ってきている。それだけではありませんけれども医学の面もありますけれども、そういう点で結核というものは貧しいということが非常に大きいことを、私は経験の中から強く感じたわけです。いま確かに食べるものは、結核という病気に対してはある程度強い。ほかの病気はまた別ですけれども結核から考えますと確かに強いという面は出てきている。これが、政策だけでなくて、やはり結核に強い人、自分の力で軽いうちになおしていっているという人をふやしているんだと思うのです。生活が貧しいということ、私は、結核対策と、もう一つ豊かにしていくということが大事だと思うのです。いまなお狭い木賃アパートに住んでいる方たちはたくさんいるし、それから生活保護家庭の方、ボーダーラインの方たちというのは、さっき言ったような特殊の地帯ではなくて、全体層としているわけです。  ここら辺を豊かにしていくということのために私が強く要求したいのは、生活保護のアップということです。いまの物価高の中で、最近ではもうおかゆにして食べているという人たちが非常にふえているのです。ちょうど私が結核になった時期というのは、過労と栄養失調からなったわけです。いま生活保護家庭は食べものが非常に締めつけられてきているわけです。こういう点で生活保護を大幅に上げてほしいということをお願いしたいわけですけれども、大臣はだいぶ眠そうにしていらっしゃるようですけれども結核を撲滅するというのは結核対策だけでなくて、生活保護の線を上げていくということが大きな問題だと思うわけです。生活保護を早急にアップしていただきたいと思いますけれども、その点についての御意見を大臣からお聞きしたいと思います。
  178. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 結核の撲滅で日本が非常な成果をあげたということは、医学、薬学の進歩と栄養を中心とした生活水準の向上、これが原因であったと思います。しかし、西欧先進諸国に比べればまだ劣っておりますが、今後とも努力をしていかなければならぬ問題だろうと思います。やはり結核を撲滅するためには、何といっても生活水準を上げるということが、医学、薬学の進歩と相まって最も大事なことでありまして、最低生活に苦しんでおられる人々の生活を守るということは非常に大事なことでございます。昨年来物価の動向に対応しながら扶助基準の引き上げ等について努力をいたしてまいりましたが、今後とも物価水準がどういうふうに動いていくか、そういうものを十分監視しながら、それに即応して最低生活を守るために、必要があれば扶助基準の引き上げを行なう、これは当然のことでございまして、そういう方向に今後とも努力をいたす考えでございます。
  179. 田中美智子

    田中(美)委員 早急に生活保護を——私は、いまの物価高の中から見れば、下ほど食費にかかってきているわけですから、労働者の賃金が三〇%上がるというならば、生活保護は五〇%上げていくということを早急にやっていただきたい。それをお願いして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  180. 野原正勝

    ○野原委員長 石母田達君。
  181. 石母田達

    ○石母田委員 私は、政府提出日雇労働者健康保険法の一部改正案に対する質問を行ないたいと思います。いま、この日雇い労働者の全国的な数は約百十五万人、これは昭和四十六年の調査ですけれども、その中で日雇い健康保険の被保険者数は約五十万人というふうに聞いております。この点で、最近の新しい数字があれば、それを教えていただきたいし、私の言っておる数字が大体そういうものであれば、そういうものだというお答えをしていただきたいと思います。
  182. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 現在の日雇い健保の被保険者は、大体五十五万人というふうに承知しております。
  183. 石母田達

    ○石母田委員 日雇い労働者は、全体で……。
  184. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 日雇い労働者は、総理府の統計局が行ないました就業構造基本調査によりますと、臨時及び日雇いの労働者数ということで、昭和四十七年で約百七十万人と見込まれております。
  185. 石母田達

    ○石母田委員 百七十万人もいる日雇い労働者の中で、日雇い健康保険にかかっている者が五十五万人、約三分の一というような数字でありますけれども、そのおもな原因というのは一体何であるか。これは五人未満の事業所が非常に多い、それが適用になっていない、あるいはそういうころで多いというふうに考えますけれども、どうですか。
  186. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 確かに、おっしゃいますとおり、日雇労働者健康保険法の適用をされます事業所は、健康保険法の適用のある事業所について行なっております。健康保険法の適用については、五人未満の適用はやっておりませんので、そういう意味合いにおきまして、日雇い労働者につきましても五人未満の事業所の場合が、かなり適用になっていない原因になっているかと思います。
  187. 石母田達

    ○石母田委員 この被保険者の産業別の実態調査を見ますと、約七〇%が建設業になっている。つまり、私どもこの間雇用保険の視察で行きましたけれども、この建設の現場、たとえば大手の建設業者の中でも、下請のまた下請というような雇用関係が重複してある、そういうものが非常に多いわけでございます。その中で、現在の国保の制度によりましても、いわゆる土建国保組合が大手のこうした大企業で行なわれているわけでありますけれども、その事業所制度上日雇い健保の事業所とすることはできるわけですね。これはどうですか。
  188. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 土建国保の場合——土建国保というものは実は昭和十八年にできたものでございますけれども昭和二十八年に健康保険の適用の範囲を拡大をいたしました際に、土木建築業についても適用したわけでございますが、その当時におきましても、土木建築国民健康保険組合については非常にいい給付をやっておりまして、そういう意味合いでこの土木建築国民健康保険組合というものは継続をして国保組合として残したわけでございます。したがって、いまおっしゃいましたようなケースは、おそらく、通常の場合は健康保険の適用事業所に働いている方々が、たまたまそういった土建国保の適用事業所に働いておるがために一これは本来そこへ行けば当然日雇い健保の適用を受けなければならぬわけでございますけれども、時と場合によって、そういう方々について適用が漏れるというような、そういうケースが絶対ないとはいえないと思うのです。でございますから、こういう点は私ども前々から留意をいたしておりまして、できるだけそういった適用漏れがないように行政的な指導をやるように努力しております。
  189. 石母田達

    ○石母田委員 あなたの答弁はいつも先回りして……。  つまり、事業所に適用できるか。できるわけですね。それで、それが実際には適用している例が非常に少ない。この実態は、あなたのほうでつかんでおられるわけですか。
  190. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 いま国民健康保険組合をつくっている土建国保につきましては、二十万人ほどの方が組合員になっておられるわけですが、そのそれぞれの事業所につきましても、日雇い健康保険の被保険者がそこに日雇いとして雇用される場合に、日雇い健康保険の事業主ともなり得るということになっておるわけでございます。
  191. 石母田達

    ○石母田委員 今度はまた、質問におくれて答えた。それは先ほどの質問で、いまの質問は、そういう組合の末端においては、臨時とかあるいは日雇いが非常に多い、そういう実態数字としてつかんでいるかという説明をこの前聞いたら、そういう数字はないということなんで、いまあらためて、そういう調査の数字ができているのかどうか、調査しているのかどうかということを聞いているのだから、しているとかしてないとか、数字があるとかないとか、そう言ってください。
  192. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 土建国保の組合員が一種、二種とありまして、二種のほうは、日々雇い入れられる組合員でございまして、これの数字はつかんでおりますけれども日雇い健康保険の被保険者としてあちこちの事業所に働きながらそこの事業所にもたまたま働いている人がどうなっているかという事実については、まだつかんでおらないわけでございます。
  193. 石母田達

    ○石母田委員 おらないわけです。つまり二種というのは、企業が直接雇っている現場の労働者はつかんでいるけれども、先ほどの実態からいって、日雇い健保が適用になっていない日雇い労働者の多くは——末端の、こうやって、あなた方が言われるようにあっちこっち日々雇い入れられる、こういう人たち実態というのは非常に多いものだと思いますので、こういう点では、ぜひ実態を把握するように努力していただきたい、この点をぜひお願いしたいと思いますが、どうですか。
  194. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 まあ土建国保のほうでそういうあれがつかめるかどうか、ちょっとあれでございますが、検討してみたいと思います。
  195. 石母田達

    ○石母田委員 ぜひ検討してもらいたい。  同時に、先ほど局長も言っておりましたように、この適用事業所にはなれるのだけれども、実際にはなっていないというところについては、ぜひ適用事業所になるように行政指導して、そうしませんと印紙の購入通帳が事業所が渡せないわけですから、これがなければ印紙が張れないわけですから、結局保険はもらえない、かかれない、こういう結果になりますので、ぜひそういう点では事業所になるようにして、保険料が納入できるように、そういう徹底をはかるように行政指導を強めていただきたい。こういう点、先ほど答えがありましたけれども、再度答弁を願いたいと思います。
  196. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 土建国保の組合事務所でございましても、印紙の購入通帳を備えまして、日雇い労働者の方々が日雇い健保の適用を希望する場合には、印紙を貼付するように事業所を指導しておりまして、またそういう希望があれば印紙を貼付するようにしておるわけでございますが、実情は、あまりそういう希望を申し入れる人が少ないのが実情というふうに承っております。
  197. 石母田達

    ○石母田委員 先ほどの答弁からまた後退するけれども局長が言ったけれども局長はそういう適用になっていないところで適用できるところについては、行政指導を強めたいという答弁をちゃんとしているわけだから、いまのことで、再度北川局長のほうから、先ほどの答弁と重複しますけれども、お答え願いたいと思います。
  198. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 私が申し上げましたことと、それから医療保険部長が申し上げましたこととは、結論としては違ってないと思います。つまり、いままでのいろいろな事情から申しまして、つまり土建国保の事業所の日雇い労働者の方々は、ほとんどが第二種の土建国保の組合員でございますから、そういうところに第二種に入っていない別の日雇いの方々が入ってこられましても、いま部長から申しましたように、購入手帳を備えつけて、そういった方々が来た場合にはちゃんと印紙を貼付する、保険料を納付するという、これは当然でございます。でございますから、そういうことがあるにもかかわらず、間々そういうことが行なわれないというふうなことであれば、希望のあるなしはございますけれども、なるべくそういうことがないように十分これは行政上善処をしていきたい、こういう意味合いのことを申し上げたわけでございます。
  199. 石母田達

    ○石母田委員 そういう意味で、先ほどの調査とあわせて検討、行政指導を強めていただきたい、こういうふうに思います。それから、五人未満の適用という問題で、健保や年金との根本的な問題の解決の関係がございますけれども、いぼたとえばビルディングなんか建てる場合の期間の限られた事業の一括あるいはまた下請け事業などの一括問題について、すでに労働保険の徴収のほうでやっているような方式をやっていただきたい。これは私どもは港湾なんかでよくぶつかる問題ですけれども、あっちこっち行って働く下請けの下請け、ありますね。その下請けのものを、元請けをきめてそして事業主に保険についてのいろいろなことをやってもらう、こういうようなことは他の保険でやっておるわけですけれども、ぜひこの日雇い健保の中でもそうした方式をやってほしい、こういう要望が非常に強いわけですけれども、この点について御検討願えるかどうか、答弁願いたいと思います。
  200. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 労災保険におきまして、請負が数次にわたる場合に元請人を事業主と見なして、いわゆる一括適用の取り扱いをいたしておりますことは、そういう制度がございますことは御指摘のとおりでございます。これは、労災保険がもともと保険料そのものが全額事業主負担でありますこと、また保険料の納付の場合には事業主がこの個々の労働者の受ける賃金ということには着目をしないで、全体の賃金総額に保険料率をかけて納めるというふうな方法をとっておりますこと、また、そういうことでございますから、その日その日の使用関係というものを元請人が把握する必要はなくて、保険事故の発生時において労災保険の適用を受ける労働者を特定することができるというようなこと等によって、そういうしかけが可能だと思います。ただ、この日雇い健保の場合におきましては、保険料の負担につきましても労使が負担をするということで、被保険者から徴収をしなければならない。また、その納付しなければならない保険料額は、個々の被保険者が受ける賃金に基づいて日々これを算定して、印紙貼付という形で納付させております。さらにまた保、険料の納付義務を有することとなる元請人が、個々の建設現場で働く被保険者及びその賃金日額を日々把握する必要がありますこと等から、いまお話のありました労災保険とは違った仕組みになっておりますので、元請一括適用ということは実際問題としてこれはなかなかむずかしい問題だと思います。このことは、日雇い健保とほぼ同様な仕組みになっております失業保険においてもやっておりませんので、私どもは適用漏れ防止ということではそういうことが一つの方法かもしらぬと思いますけれども、いま申し上げたような両者の仕組みの相違ということを考えますと、きわめてむずかしい問題であるというふうに現段階では考えておるようなわけでございます。
  201. 石母田達

    ○石母田委員 それは先ほど、調査自体もかなり困難なことだから、こういう一括方式の問題についてぜひ検討を——困難な問題だと避けていたのではいつまでもあれですから、あなたが言ったそうした適用の状況の拡大あるいは法の目的からいっても、ぜひ検討を加えていただきたいということを再度強く要望したいと思います。この点よろしいですか。
  202. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお答えを申し上げたとおりでございます。
  203. 石母田達

    ○石母田委員 厚生大臣に、この点について先ほどから、日雇い健保の適用がまだ三分の一というような状況で、実態からいってもなかなか困難な問題がありますけれども、法の目的に沿ってこの実態の調査をできるだけ的確にするようにして、また現に他の労働保険で適用されている、こういう末端の重複した非常に複雑な下請の下請的なところを一括でやれるような方向をぜひ検討していただくという点について、厚生大臣のいま一歩前向きの御回答を願いたいと思います。
  204. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 労働者の保護は大事な問題でございますので、いまそうした適用の問題とか五人未満事業所の問題とか、そういう問題につきましては今後とも実態を把握しながら前向きに検討してまいりたいと考えております。
  205. 石母田達

    ○石母田委員 次に、今度の法改正の中でいわゆる賃金日額の高いほう、八段階どまりの問題が制度上として出されておるわけです。これは、六ないし八級のほうのところは非常に問題がある。それは一つは、日雇い労働者の職種や就労の型によりまして、たとえば私のほうの川崎などありますが競輪、競馬に就労する日雇い労働者であるとか、あるいは山林労働者であるとか、港湾の人たちとかあります。そういう中で、あと建設の人たちももちろんあるわけですけれども、その中でいろいろの請負制をやったり、あるいは出来高払い制をやったりしていることが多いわけです。したがって支払われる日当の中には、いわゆる労働の対価としてはたして入れていいものかどうか。けさほども再三論議されているように、ああいう道具を持ち込むとか、いろいろな生産用具を労働者が自前持ちでやったというものに対して払われるものが、全部これがここで規定されている労働の対償というものと見ていいかどうかというと、明らかに労働の対償以外のものが含まれているという場合が多いわけです。現にいま失業保険法では、工具手当というようなものは保険料から対償としないというような形になっているわけでございますけれども、日雇い健保でもこうした工具、道具代というものを日当からはずすというような考えはないのかどうか、この点について御見解を聞きたいと思います。
  206. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 日雇労働者健康保険法では、賃金というのは、「賃金、給料、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働の対償として、事業主が日雇労働者に支払う」ものはすべて賃金ということであれしておるわけでございますが、ただ、先生おっしゃいましたような、道具を使用するというようなことでこれを貸与されるとかあるいは道具代として支給される、たとえば五千円なら五千円の手当、日当をもらいましても、五百円は道具代ですよということではっきり区別されるとか、あるいは親方から道具を借りてその借り賃を五百円なら五百円道具代として支払うというような場合にははっきりしておりますので、これは賃金としてでなく、道具代として別に考えるという取り扱いをするわけでございます。しかし、そういうことがはっきりしない場合、混然一体として日当として払われるような場合には、これは区別のしかたが事務的になかなかむずかしいので、それは賃金として処理をするというふうなことになっておるのが実態でございまして、そういうふうに区別がされるような状況にあれば、それは別途の扱いをするというふうにいたしておるわけでございます。
  207. 石母田達

    ○石母田委員 この点の問題は、非常に時間がありませんので論議はしませんけれども、やはり賃金というのは明確に内容を検討してきめられるべきものだし、労働基準法やその他の問題でも、法の中で定義されたわけですから、いろいろ形態が複雑だからといって、それにだんだんだんだん合わせて何か明確にされた部分だけはしていくというようなやり方はまずいんじゃないか。この法律趣旨からいっても、この点についてはもっともっと厳密にしていく必要があるのじゃないか。  こういう点から問題であると同時に、今回の法改正では最高九千五百円にまで制度化されるわけです。これは二十万円に見合ってやったということなんですけれども、このような高額のものを日雇い労働者が支払われるということは、いま言ったように、賃金の内容に、道具を持っていったとかいろいろな形での労働の対償としてないというものが含まれている。これは高額の層に非常に多いわけですよね。そういう実態をきちんとしなければならぬというのが先決であって、そういうことを現状のままで、こうした高額のものをどんどん設定していくということについては、私どもは反対なんです。これはまた法律趣旨にも反することではないか。したがって、今度の改正案の四条の二の表の六ないし八級という高額部分を取ることが、いわゆる日雇い健康保険法律趣旨を実施する上で妥当なんではないかということで、この六ないし八級の部分を削除したらどうかとわれわれは思っているわけですけれども、この点についての厚生大臣の見解を聞きたいというふうに思います。
  208. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 今度の改正につきましていろいろ御批判をいただきます場合に、問題点は少なくないと思いますけれども、私どもが申し上げたいことは、また御理解願いたいことは、やはり給付改善が先般改正されました健康保険並みの給付内容になるということがまずあると思うのでございます。そういうことになりますと、給付改善に見合った負担の改善を行なうということも、これまた給付と負担の両面において健保とバランスをとるということから考えますと、当然だろうかと思います。したがって、基本的には負担の面だけを取り上げて過重云々ということは、私どもはやや見解を異にいたしております。ただ今度の場合でも、八等級という区分をいたしましたのは、いま申しましたように賃金の実態に合わしてやりますと同時に、いろいろな配慮を加えておりまして、本来ならば直ちに八等級までを動かすべきところを、急激な負担増を避けるために、当面は三等級まで、それから四、五級は五十年四月から、それから六、七、八級は五十一年の四月からということで、なだらかな負担増、むしろその面におきましては負担増を抑制しながら給付のほうは一挙に健保並みに改善する、こういうわけでございますので、どうぞそういう点は、負担面の問題だけに着目をされないで、全体的な、総括的な給付、負担両面においての健保とのバランスを考えた点での御理解をお願い申し上げたいと思います。
  209. 石母田達

    ○石母田委員 先ほどの論議を踏まえてない。そういう問題ではなくて、私がここで言っているのは、先ほどから日雇い労働者の収入の中に、道具代とか就労に不可欠の経費というようなものが、請負事業などのいろいろな中で入ってきている。こういう収入は明確に分離すべきだ。そうしないと、いわゆる日当というもの、収入というもの、賃金というものは法律できちんと明確にされているんだから、そういうものについて、いまの検討というものは、先ほど非常に弱い、なされていない、むしろ明確になった道具代とかそういうものは別として、そういう複雑な形態になっているものが特に高額の部分に多いということを認めておるわけですから、その点の検討をやって、きちんとそれを区分するというような措置が確立するまでは、六ないし八等級という上位部分を設けるべきではない、そのことが日雇い健保の趣旨にも沿うことじゃないかということを言っているわけでございますから、そういう点での答弁をはぐらかさないで、厚生大臣に、決してむずかしい問題じゃないので、その点の検討をぜひお願いしたいし、再度大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  210. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今回の改正にあたりましては、賃金の実態にふさわしいような保険料の負担というものをきめたわけでございまして、しかも私はけさからたびたび申し上げておるように、急激な負担増は避けながら給与の実態にふさわしい姿においてこれを改定していこうというわけでございまして、私はいまのところこれは適切なものと考えておる次第でございます。
  211. 石母田達

    ○石母田委員 これは全く意見が違うところであって、賃金の実態に即した保険料と言うけれども実態に即していない。その賃金そのものがいわゆる賃金というべきもの、労働の対償というべきものだけなのかどうかというと、先ほど言ったようにそれ以外のものが含まれていることが非常に多い。この点について検討しなければならぬことはあなたたちも認めておるとおりであって、そういうことを現状のままでこうした上位部分をきめるということは、明らかに法の趣旨に沿うものではないし、賃金と収入を明確にしなければならぬというような日雇い労働者の実態の中で、それを放置してただこうした高額部分をきめていくということについては、法律趣旨に沿わないという点で明らかに意見が対立しております。きょうは時間がございませんので、こういう点はあとでまた機会を見て追及をしていきたいというふうに思います。  それで最後に、受給要件の緩和の問題なんですけれども、先ほど出しました日雇い港湾労働者の資料を見ましても、あるいは関東、東海地方の競輪、競馬の問題を見ましても、競輪、競馬は開催日時が大体六日から十二日です。それから港湾の場合も、いま若干よくなって十四、五日というところありますけれでも、一カ月間に少ないときは十日前後を下回るというようなときもあるわけです。こうした実態の中でいまの十四日、二十八日のものをやっていくと、実際にはかけ捨てになってしまうという場合が非常に多いわけです。この調査によりましても、印紙不足分を競輪や競馬で働いておられる方が他の仕事をさがして補っているが、そこがたまたま印紙をもらえるところならいいけれども、そうでない場合があるわけですね。そうした場合に資格をとれないというようなことで、一五%から三〇%の人がいわゆる掛け捨てになっているという調査も私の手元に届いているわけです。この問題については審議会のほうからも特別の措置を考えるべきだというような意見も出ておりますし、兵庫県の市会議長や県知事からも同じような趣旨での検討が出されておりますけれども、この問題については毎回論議されることではございますけれども、この特別の措置についてどのような対策をその後進めておられるか、この点について答弁願いたいと思います。
  212. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 港湾日雇い労働者の方々あるいはまた競輪、競馬に働いている方々についていろいろそういう問題についての御意見なり御要望なりがあることは、私ども承知をいたしております。ただ、この日雇い健保法の仕組みから申しまして、一定の受給要件というものを前提にして給付を行なうということになっておりまするから、まあこの受給要件も二段がまえでございますけれども、いずれにしても受給要件の設定ということは、これは不可避の制度だろうと思うのです。いま言われたそういった例において、たまたま時期によってそこに就労日数に多い少ないが出てくる、そのために摩擦的な受給要件の欠缺が生じてくるというふうなケースもあろうかと思いますが、これを一般的に日雇い健保の受給要件の緩和ということで処理をするということになりますと、これはやはりこの制度を最初から組み立てました根幹にかかわる問題でございますし、なかなかこれは慎重に検討をしなければならない問題だと思います。仰せのとおり審議会等からもこの問題については御意見がございましたが、いろいろ検討いたしましたけれども、受給要件の緩和をすることはなかなかむずかしい問題である。また、それじゃ運用上何とかならないかというような御意見もあったのですが、そういうことをやっていたのじゃこれはまた昔の擬制適用のようなことにもなりかねませんし、また、最低限度の受給要件を満たせばいいということになりますと、これは保険制度としては逆選択の可能性が非常に多くなってくるわけでございますから、われわれは、しかもこれを上回るような給付改善をする現段階において、結論といたしましてそういった受給要件の緩和をするだけの積極的な理由はない、このように判断をしているような実情であります。
  213. 石母田達

    ○石母田委員 きょうはきわめて高姿勢な答弁をするけれども、毎回、保険だからかけ捨てはしようがないということを——これは結果としてかけ捨てになるのだからな。そうでしょう。そういう問題についての特別の措置をしなさいということを審議会でも出しているのに、現状についてはどうのこうのと現状の話を言っているけれども、今後検討しなさい、どういう検討をしているのかということについて、私はもっと真剣に審議会の意見をあなたたちが取り入れて、そうしてこういう問題はまだ矛盾として解決していない問題なんだから、それを解決するように努力するのは当然のことだと思うのですけれども、これは局長段階じゃだめだから厚生大臣、こういう保険の中で、これは毎回言われていることなんだけれども、解決策がいまないからといって、何かいまの話を聞くと最終回答みたいなことを言うけれども、これはやはり当然矛盾として検討していかなければならない問題なんです。そういう点で再度これは厚生大臣のお答えを願いたいと思います。
  214. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 まあ数百万の日雇い労働者の稼働の状況というのは、皆さん御承知のようにさまざまなんです。これは御承知でしょう。そこでこの日雇い労働者、日雇い失業保険も日雇い健康保険も同じなんですが、つくるときの一番問題はこの適用要件なんです。ほんとうは失対労働者の緊急失対法なんか、昔私もやりましたが、これは稼働日数を何日にするかというのが一つの大きな問題なんです。二十一日にする、二十二日。これは戦争前に、昔から日雇い労働者というのは二十日にきまっていたのです。ところが、それでは失業保険なりあるいは、日雇い健康保険というものに適用にはならない。そこで実態からいうて月の半分程度、月十三、四日、この辺が適当なところだ、こういうわけでございます。これは、ですからもちろんこれに該当しないものは出てくると思うのです。すべてのものをみんな入れよというなら、保険料をもっと高くしなければいかぬですよ。そうでしょう。これはおわかりになっていただけると思うのです。ある程度のものはやっぱりそこでけじめをつけて、はっきり線を引かなければならぬ。線を引いて落ちるものもあります。落ちるものについてはまた別にどうするか。適用除外という道もあるわけです。ですから、概念的に日雇い労働者の稼働というものはどの程度のものかということから始まってみますれば、月十三、四日、これはほんと言うと適正な日数だと私は思っているのです。ほんと言うと、これは緊急失対法なんかで、御承知かどうか知りませんが、この稼動日数をどうするかなんというのはたいへんな問題であったのです。昔、全日自労がやかましいときに、月二十日の稼働にするか二十一日の稼働にするか、二十二日の稼動にするか、それが日雇い労働者の稼働の実績である、実態であるなんというようなこともありました。しかし、それではあんまり日雇いの失業保険も日雇いの健康保険も適用にならぬ、そこで月十三、四日くらいに下げようじゃないか、こういうようなことで、日雇い労働者の大かたの生活を考えてみるならば、この辺の適用条件の日数というものは適正ではないか、かように私は考えております。もちろん競輪とかその他これに該当しないものが出てきます。それならそれをみんな入れろ。入れるのも一つの方法ですよ。ところが、そうなったら今度は保険料をどうしてくれる、こうなるわけなんです。皆さん方は、保険料をあんまり上げるな、これも入れろでは、とても保険主義というもの——いい悪いは別ですよ、好ききらいは別ですが、こういうものを保険制度でやっている以上は、適正な保険料、あんまり過重な負担でもいけないしということでやっておるわけでございまして、いろいろ御意見はあろうと思いますが、大かたの日雇い労働者の稼働の状況から見れば適切なる日数である、かように私は考えております。
  215. 石母田達

    ○石母田委員 それは前二カ月を通算して二十四日以上くらいにしたほうがいいとかあるいは六カ月を通算して六十六日分以上とかいうことでやったほうがいいと、これは私主張しています。いま質問したのは、保険審議会でいう港湾労働者等、これには競輪、競馬などが入ると思うのですけれども、特に特殊な就業条件にあるものについては何らかの措置を検討すべきであるということで、現実にいろいろ検討をそれぞれの組合なんか関係者のところでやっているのです。やっているのに、あの先ほどの局長の答えでは不十分ですから、こういう特殊な就業状況にあってはこれは検討すべきではないかということについては、大臣、答弁をもっとはっきりやっていただきたいと思うのです。
  216. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 でございますから、そういう問題も将来私は検討したいと思います。しかし、そうなったときに保険料をどうしてくれるか、これはすぐ来る問題なんです。ですから、そういう問題も皆さんが御了承の上でひとつ検討しろとおっしゃるなら、何ぼでも検討いたします。ただ、保険料は上げるな、日数は減らせでは、保険主義を貫いておる際ではなかなか困難でございますと申し上げておるのです。しかし、私は検討いたします。検討いたしますから、そのかわりそのときには保険料の負担はふえるということはあらかじめ御了承願っておかなければならぬ、こういう問題があるということだけは私は提起しておきたいと思うのです。
  217. 石母田達

    ○石母田委員 質問を終わろうと思ったらそれが出たから一つ。だから国庫負担を引き上げるべきだ、労使の負担割合を変えよということを私は常々要求しておるわけです。特に国庫負担は、いま三五%されていますが、御承知のように政管のほうも一〇%になっているわけですから、この点でぜひこれを引き上げてもらいたいということと、あわせて、先ほどから論議されていますけれども、四十五年にいわゆる擬制適用が除外された建設国保についても、高額負担がしいられております。しかも医療費値上げとか財政が圧迫して、また診療報酬を上げろというような話も出ておりますけれども、そういう実態の中でぜひとも私はこの点での補助率を高めていただきたい。特にこの点については昨年でああいう決議案の趣旨に沿って一定の措置がとられましたけれども、ことしについてもそうしたあの決議案と同じような趣旨の方向での努力をされること、この二つの点について厚生大臣から聞いて私の質問を終えたいと思いますので、厚生大臣にお答え願いたいと思います。
  218. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 日雇い健保の国の負担をふやすという問題でございますが、こういう低所得、まあ一般から見れば所得が低い状況にありますものの保険でございますから、私は相当の負担を実はしておるつもりでございます。いまにわかにこれをふやすということは非常に困難だと思います。しかしながら、将来とも日雇い健保の財政がどういうふうになっていくか、この提案いたしておりまする法案が成立いたしましたあとの推移をよく見定めて検討をしてまいりたいと思います。  それから土建の例の擬制適用の国保の問題につきましては、本年度実は思い切って上げたつもりなんです。皆さん方は、思い切ったなんてものじゃない、上げ幅が狭いなんてことをおっしゃるかもしれませんが、私のほうとすれば相当上げたつもりでございますが、これも今後の保険財政の推移をよく見まして、補助率をふやす必要があるならばふやしますし、この辺でしんぼうしていただきたいというならしんぼうしていただく。要するに、今後の本年度における財政の推移を十分監視して善処してまいる考えでございます。
  219. 石母田達

    ○石母田委員 そういう点でぜひ善処して、昨年と同じような方向で努力されるよう要求して、また全体の日雇い健保についても非常におくれておりましたけれども、一定の改善が今度なされたことはわれわれも承知しております、しかしながら非常におくれておりますので、これを引き続きなお一そうの改善を心から希望いたしまして、私の質問を終わります。
  220. 野原正勝

    ○野原委員長 坂口力君。
  221. 坂口力

    ○坂口委員 結核予防法のほうからお伺いをしたいと思います。  御承知のように結核患者の推移は、この法律案等の中に内容にも盛られておりますように、登録患者というのは年々歳々減ってまいりました。これはもう事実でございます。発生状況にも著しい変化が見られてまいりました。地域やあるいは年齢、社会階層別に見ます患者の偏在化ということも著しくなっていることも事実でございます。しかしながら、患者発見の効率の面から見ますと、学校検診や一般家庭婦人等の検診の間隔の延長をするということにはならないと私どもは思っております。  まず最初に、学校検診のいわゆる健康診断が今回から毎年というのが政令事項になるわけでありますが、結核予防審議会等の答申も出ておりますし、おそらくこの答申を中心にしての改定ではないかと思いますが、一応この答申を中心にしての改定ということに理解をしてよろしゅうございますか。
  222. 三浦英夫

    三浦政府委員 もし国会の御議決をいただきましたならば、政令は、結械予防審議会の答申どおりの内容で制定させていただきたいと思っておる次第でございます。
  223. 坂口力

    ○坂口委員 この結核予防審議会の答申を見ますと、検診の特にレントゲン検診ですね、レントゲン検診はそういたしますと小学校の一年生と中学校の二年住、この学年に一応行なうというような形になる、政令で今後定められるわけでありますから、まあ今後ときまったわけじゃございませんが、こういうふうな学年で検査をされるということになりますか。
  224. 三浦英夫

    三浦政府委員 政令を出させていただく場合には、そういう内容できめさせていただきたいと思います。
  225. 坂口力

    ○坂口委員 これは一人の発病者も漏らさないという意味からいたしますと、効率を無視して、いままでのように毎年レントゲン検診をすべての児童等にするという方針のほうが、発見をするという意味の効率はいいわけでありますが、いわゆるレントゲンに対する被曝の問題が一方でございます。被曝をできるだけ少なくするという立場からいたしますと、今回の改定のような方向になるのであろうと思うのでありますが、今回のような方針が打ち出されたのは、一応このレントゲンによる被曝の問題が中心にしてなされたというふうに理解してよろしゅうございますか。
  226. 三浦英夫

    三浦政府委員 一つは、確かに先生御指摘のとおり被曝の問題が関係学界等で議論になっていることは確かでございます。しかし、一方もう一つといたしまして、小中学校の結核の検診をした場合の発見率が非常に低い。一方、予防接種の効果というものが数年間は持続できるということになってまいりましたので、その面からも、むしろ小中学校の力点よりも、同じ力を、別に結核対策を怠るという意味じゃございませんで、むしろそれ以外の農山漁村とかあるいは都市のきわめて一部の低所得層のおられるところとか、特定対策のほうにより力を集中していく、こういう両々相まっての改正ということにさしてもらっておる次第でございます。
  227. 坂口力

    ○坂口委員 御承知のように、結核は自覚症状がないというのが一つの特徴でありますが、この結核の特徴からいきますと、このようにもしも小学校で一回、中学校で一回というふうな形になると、何か不安な感じを持たないでもないわけです。専門の方々が御審議をされてこういうふうな結果を出されたわけでありますから、その点はいろいろ御審議をいただいていることだろうと思いますけれども、しろうと考えではいささか不安な気持ちがしないではないわけであります。  その次に出てまいりますBCGの問題ともからむわけでありますけれども、BCGの場合にも、いままでツベルクリンが陰性と疑陽性の人にはBCGの接種をしていたわけでありますが、今回からは疑陽性の人はこれで買いうことになるわけです。そういたしますと、いままでですとツベルクリンで疑陽性の人にはBCG接種をしてきたわけでありますが、それもしない。そしてまたレントゲン検診でもやらないですから、これにもひっかかるわけにはいかないということになりますと、この辺のところが特にしろうと考えで不安な感じがいたしますが、その点の議論というものはどのようになされておるのか、その間の事情がわかっておりましたら御説明いただきたい。
  228. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かにツベルクリン反応の疑陽性の方につきましては、BCGの接種をして疑陽性の方と、BCGの接種をしないで疑陽性の方と二種類あることは先生御指摘のとおりでございます。そのうち、BCGを接種をして疑陽性の方というのは、これは免疫を有している方ですから、もはやあらためてBCGの接種がないことは当然だと思います。問題は、BCGを接種をされていない方で疑陽性の方というのが、非常に少ない例数だそうでございますが、やはりあることは事実でございます。実はこの点につきまして関係審議会においてどう扱うかということが、結核専門先生方の間でかなり議論になったところでございます。しかし結論としては、非常に数が少ない。しかもそういうBCGをお受けになっていない方で疑陽性の方と、それからツベルクリンを受けて疑陽性の方と、これを区別をしてそれぞれ予防接種をするということになりますと、非常に混乱をする。むしろそれよりは疑陽性の方はそういうところまでケアしないで、むしろ結核罹患率の非常に高いところを中心にして、別個の角度から定期外の臨時の予防接種ということを配慮をしていったらいい、こういう観点から、一応制度上は疑陽性の方につきましてはもうBCGを接種しない、こういうようにしたわけでございます。  ただ、現実の問題としましては、その心配もありますので、ここ当分の間は、結核罹患率の高いところにつきましては、特にBCGをしないで疑陽性になっておられる方々については、行政運用としてなおBCGを加えていくようなことをやっていくつもりでおる次第でございます。
  229. 坂口力

    ○坂口委員 一応大学等の小児科の先生なんかに聞きますと、やはり数は減ったとはいうものの、先ほども申しましたとおり、結核は自覚症状がないという一つの特徴がありますので、発見したときにはかなり症状が進んでいるというような例が存外にある。これは全体の数からいきますと、統計上減っておりますからおそらく減っているだろうと思いますが、しかし、実際にはかなりそういう児童があるということを聞くと、それがいまおっしゃるように、ツベルクリンが疑陽性のときに、その前にBCGを一応接種してある、いわゆるBCGを接種したことによる陽性転化の方向の一段階なのか、それとも自然陽転の一段階なのかというようなこともおそらく問題になったであろうと思いますし、それから、もしもBCGを一回接種をして、そしてその結果BCG陽転のような形で、その一時期として疑陽性を呈しているような場合に、いまおっしゃるように、そのBCGの効果が数年続いていけばいいですが、それは平均しての話でありますから、そういうふうに続かない場合もあるだろうと思うのです。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕  その場合に、六年間ぐらい、たとえば小学校の一年生と中学校の二年生でありますと間にまるまる六年あるわけでありますが、その問にその子供たち結核感染ということが起こる可能性というのも十分あるような気もするわけであります。その辺の、たとえばツベルクリン反応が疑陽性であった場合に、その子供にBCGの接種はしないけれども、たとえば二、三カ月おいてもう一度ツベルクリンをやり直すとかというような議論はその中には出ていなかったのかどうか、その辺をひとつお伺いいたします。
  230. 三浦英夫

    三浦政府委員 この点につきましては、先生御指摘のとおり、ずいぶん途中の経過としては議論があったところでございます。  確かに、若干おいてやったほうがいいようなことの一部の先生の御意見がありましたけれども、最終的には、むしろ特定の人をそうやって把握するよりは、結核罹患率の高い地域について、都道府県等を厚生省が指導をして、そういうところに限って特段に、やはり集団接種の方法で、そういう場合だけ定期外のBCGをやったほうがいいんじゃないか、こういう結論に達したような次第でございます。
  231. 坂口力

    ○坂口委員 これは専門の方の御議論の結果でございますので、その結果を尊重しなければならないと思いますが、しかし、全体の学校の保健指導の中で、こういうふうに変えられたからといって、その間、結核に対する保健指導というようなものがおろそかにされては困るわけです。そういう面で、これはひとつ厳重な指導というものがやはり私はなされなければならないと思います。その点をひとつお願いをしておきたいと思います。  それから、いわゆる成人病検診の一環として今後この結核検診というものを考えていくというようなお考えがあるようでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  232. 三浦英夫

    三浦政府委員 あるいは先ほどの御答弁で、一環ということを言ったかもわかりませんが、一環というよりは、むしろやはり結核法律で義務づけられたものでございますので、結核の検診は当然十五歳以上の方については毎年続けるつもりでございます。  ただ、それ以外に最近、国のほうでも若干の予算措置をいたしまして、循環器であるとか血圧であるとかいうようなことにつきまして、いわゆる集団検診を奨励的にやる措置をとったわけでございますが、むしろ結核検診を高めるための手段としてでもおかしいわけでございまして、結核検診は結核検診で当然義務づけて行なわれるものでございますし、あわせて一方成人病検診を行なう、その際に、両方一ぺんにやったほうが結核検診の効率も高まるであろうし、また成人病検診の方にも出てきていただく方があろうということでございまして、成人病検診の一環で結核検診をやるというつもりではなくて、結核結核で、やはり大事なことでございますから続けさしていただくつもりにしている次第でございます。
  233. 坂口力

    ○坂口委員 現在、結核患者がだんだん減ってまいりましたのは、これはもう言うまでもなく、現在に至りますまでの研究者あるいは医療従事者、あるいは行政の場においでになる皆さん方の積極的な長年にわたる御努力の結果であり、あるいはまた、住民の積極的な結核に対する認識とそして予防活動の結果であろうと思うわけです。  ただ、こういうふうに数字が減ってきたからという意味で、この結核の検診等をおろそかにするというと語弊があるかもしれませんが、だんだんと手を抜いていくというような方向に向かうとすれば、これはまたおそるべき結果が待ち受けているということは、もう疑いのない事実だと思うわけです。そういう意味で、この結核予防法改正が、結核予防ということをおろそかにするという方向に決して向かうものではないという、行政指導の面でも歯どめがやはり必要だと思うわけです。そういう意味で、先ほど申しましたとおり、学校の衛生教育等においても、結核の問題というものをこれはいままで以上に取り上げていく。たとえば、現在小学校あるいは中学校でこういった病気に対する問題が保健衛生上どの程度取り上げられておりますか、私は詳しくは知りませんけれども、ただ細菌がいつ発見されたとか、あるいはまたどんな形をしているかというようなことではなしに、実際の社会の中でこの予防をしていくためにはどういうことをやっていったらいいかというような、そういうより具体的な問題として教育の場で取り上げられていくことが、やはり重要ではないかと思うわけです。そういうふうな点もひとつ考慮をしていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  それから、結核予防会の問題でございまするけれども、午前中にも少し御議論が出ておりました。昨年私は、この予防会のほうにお伺いをしましたときに、内情の非常に苦しいというお話をだいぶお伺いをいたしまして、去年の段階でも何か七億円ぐらいの赤字がたまっている、もしこのままでいけばずいぶんな赤字が今後たまっていく可能性がある。何かお話によりますと、昭和五十二年ぐらいまでになりますと、約四十億ぐらいの赤字になるのではないかというようなお話を伺ってまいりました。これは現在、赤字がこれぐらいで済んでいるのは、いままでにあった土地等を売却することによって埋めているために、これだけにおさまっている、あるいはその他内部で操作しているためにおさまっている。これがそういうふうな土地などを売らずにいったら、これだけの赤字では決してとまらないんだという実際的な数字等も見せてもらってまいりました。  この予防会は、結核日本における統計等のいわゆる公的な、言ってみれば国がおやりにならなければならないような問題もこの予防会の中でおやりになっているというふうに思いますし、また、病院におきましても、全国の病院の先生方、看護婦さんあるいはほかの技術者の講習等も積極的におやりになっているようであります。非常に積極的と申しますか、全国のいわゆる結核病院の模範として、いろいろの治療方法あるいは検査方法というようなものを積極的に取り上げて、そして指導をもなさっている。こういうふうな面を見ると、ただ普通の病院として独立採算制だけでやっていけというのははなはだ酷なような気がするわけです。多少の援助、国庫補助等は出ていると思いますが、このままでいきますと、この中央病院等は今後やっていけないことになるであろうと思うわけです。この点現在どういうふうなお考えか、まずお伺いをしたいと思います。
  234. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに結核予防会が今日まで結核対策の役割りを果たしたことは実に偉大な功績だと思います。さらに研修等につきましても、先生お話がありましたが、単に国内だけでなくて、いまや東南アジア等の医師の研修も結核予防会が一手に引き受けてやっているという現状でございます。  結核予防会が赤字が出た原因につきましてはいろいろあると思いますが、結核予防会の経営の病院に空床が非常に多くできてきたことも大きな原因一つかと思う次第でございます。それはそれといたしまして、特に結核研究所につきましては、本来なら国でやるべきところをわが国では民間でやっているようなこともございます。先ほども大臣が御答弁申し上げましたとおり、本年度は一億五千万近い補助金を計上したわけでございますが、根本的には結核予防会そのものの問題もございますので、大臣ともよく相談いたしまして、結核予防会の再建策につきましては十分検討してまいりたいと思っております。
  235. 坂口力

    ○坂口委員 これは一つ提案でございますが、たとえば日本赤十字社の中にございます病院とか、それから済生会というような病院は一応公的医療機関ということになっておりますけれども、予防会は公的医療機関の中には入っていないわけです。これはいままでの経緯、歴史というものを見ましても、また今後重要な部分を受け持つという意味からいたしましても、確かに結核患者数は減ってはきましたけれども、それは、これだけ予防活動、研究を続けているから減っているのであって、これを怠れば必ずまたもとに戻ることは疑いのないところであろうと思うわけです。したがって、特にこの予防会に属している中央病院、正式な名前を私もちょっと忘れましたが、中央にあります病院はやはり公的医療機関に入れるべきではないか。そういたしますと、やはりそれなりの恩典等もあるのではないかと思います。その点、厚生大臣いかがでございましょう。これは一つ提案でございますが、その点お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  236. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 結核研究所を含めた結核予防会、これは非常に大事なものでございますので、私どもは、これをつぶすようなことがあってはならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。  いま結核予防会のほうにおいては、ある程度土地を売ったり何かするということもありますが、せっかく再建計画を立てて、それを実施しようという段階に入っておるわけでございまして、国もこれに順応いたしまして、ある程度補助金を出してあげましょう、こういうことでやっておるわけでございます。  そこで、これを再建するために、いまの計画並びに国の補助だけで十分であるかどうか、これはひとつ十分に私も検討をしてみなければならぬだろうと思います。  それからいま、公的医療機関の範疇の中に入れて国がめんどうを見るのもどうであろうか、こういうような提案がございました。ただ、現在の公的医療機関に対する補助については、日赤、済生会等のガンや救急とか僻地とかいう不採算部門についての財政の援助ということできておるわけでございますが、こっちは多少それとは違う。けれども、相当不採算であることは不採算でございましょう。そういうふうなことを考えてみまして、これは私はまじめに研究をいたしてみます。いまここでどうするということは言えませんけれども、十分研究をして、そういう形で財政再建をやったほうがいいのか、あるいはまた、従来の路線で十分いけるのかいけないのか、その辺も十分事務当局にも検討させてみまして、一番いい方法を実施するようにいたしたいと思います。いずれにせよ、今日まで結核撲滅のために果たした役割りというものは歴史的なものです。私は高く評価をいたしておりますので、この再建には私は責任を痛感して、最大の努力をいたすということだけはきょうはっきりお約束を申し上げておきたいと思います。
  237. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど中央病院ということばを使いましたが、いわゆる研究所とそれから診療部門と両方あるわけでございます。大きな研究部門もお持ちでございます。これらはただ一つの病院のためのものでは決してございませんで、先ほど言われましたとおり、日本だけではなしに、東南アジアあるいは世界全体にわたり大きな寄与をしておるものでございますから、この点をひとつ十分御配慮いただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、結核患者の自己負担についてでございますけれども、命令入所患者は国が十分の八、そして都道府県が十分の二で全額公費負担ということになっております。一般患者は公費負担が二分の一で、健康保険の本人及び家族は保険者が二分の一、こういうことになっておりますね。ただし国保の場合は、保険者が十分の七、そして被保険者が十分の三負担しなければならないということで、多少格差があります。これは特別な、いわゆる歴史的な疾病でもございますし、いままでこういうふうな差がつけられてきたということが、これは問題であったろうと思います。おそまきながらではありますけれども、数もこれだけ減ってきたことでもありますし、国保の場合も、被保険者が十分の三持たなければならないというハンディキャップをこの際とる方向で検討してもらうべきだ、こう私は思うのですが、この点いかがでございましょうか。
  238. 三浦英夫

    三浦政府委員 確かに先生御指摘のとおり、職域保険の加入の方と国保、地域保険の加入の方とでは、自己負担の場合に、最終的には三割の自己負担が出てくる、これは事実でございます。ただ、たとえば今度は老人医療であるとかあるいは難病というような場合でございますと、まず保険で負担をいたします。保険で自己負担が出てきたものにつきまして、老人医療なりあるいは難病の場合にカバーする、こういう仕組みになっておりますから、結果として無料になるわけでございますが、結核制度の立て方というのは、保険でまず見るということになりますと、本来結核という国民病を退治するのに保険経費でやるべきではなくて、一般的な公費で負担すべきである、こういうふうな議論から、まず公費でカバーをいたします。もしもその方の経済上において自己負担が出た場合には、その自己負担を保険で一部なり、あるいは国保の場合はまた十分の三になりますけれども、そうやります。こういう制度の立て方でまいっておりますので、かたがたこの制度をもし老人医療とか難病のようにひっくり返せばできるわけでありますけれども、ただ、それもまた制度の基本的な問題として、やはり結核とか伝染病というのは公費がまず責任を持つべきだということになると非常にむずかしい問題でございます。それはそれとして、いま厚生省の中でも公費負担のあり方につきまして省全体で検討をやっている最中でございますし、また一方におきまして、実際に本年の五月一日から自己負担の軽減措置をとりましたけれども、この軽減措置をさらに努力していって、事実上、ゼロというわけにまいりませんけれども、できるだけ国保の被保険者の方の負担を少なくしていくような方法もとれるかと思いますが、先生御指摘ではございますけれども、いま直ちに国保の関係の三割分を無料にするというのは、ちょっと制度の立て方から非常に困難かと思う次第でございますが、なお検討は十分続けてまいります。
  239. 坂口力

    ○坂口委員 健康保険と国保の間にこういうような差があるということはやはりぐあいが悪いと思うわけです。私、あとでまた日雇い健保の問題がありますときにもお伺いさせていただきたいと思いますが、現在のように不幸にして多くの保険に分かれているわけでありますが、その中でやはりだんだんと保険の間の差というものをなくしていくという方向に向かわなければならないと思うわけです。この結核の場合にも健保と国保との間でこういうふうな差があるというのはたいへんまずい問題だと思う。ぜひ国保の場合にも、公費負担の導入によって、個人負担というものを何とかしてとるような方向にこれは早急に御検討をいただきたい。この問題につきましても、最後に大臣のお考えをお聞きまして、次の問題に移らせていただきます。
  240. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いろいろ御意見のあるところでございますが、負担能力のある方にはやはりある程度の負担をしていただくというのが常識じゃないかと思いますが、せっかくいろいろチームをつくって研究をいたしておりますので、十分ひとつ研究させていただきたいと思います。
  241. 坂口力

    ○坂口委員 最後に一言だけこの問題について触れておきますか、いま大臣から、負担できる人はというお話がございましたが、御存じのように、国民健康保険に入っておみえになります皆さん方というのは、なかなか負担能力のない人が多いものですから、特に私は問題にしておるわけであります。非常に裕福な人ばかりの保険であればそんなことは申し上げないわけです。そうではなしに、いろいろと問題のある層の人が含まれている国民健康保険が、かえって三割自己負担という形がぐあいが悪いということでございますので、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。  次に、日雇い健保の問題に入らせていただきます。いまも少し結核のところで触れましたとおり、現在の日本の保険制度は、大ざっぱに分けましても九種類にも分かれているわけであります。この保険は、歴史的な経緯もございますが、給付面その他いろいろの面におきましても、非常な差があるわけであります。そこで、私はいままでも、保険というのはどうしても一本化の方向に向かっていくべきであるということを主張してきたわけであります。これはすでに大臣からも、その意見はわかるけれども諸般の事情があってなかなかそうはいきにくいというような御答弁をいただいたこともございました。私は今回の日雇い健保が、そういう意味では、ほかの保険と歩調を合わせて給付その他を改正されるということについては、これを多としたいと思うわけです。しかしながら、まだ十分なところには至っていないのが現状であります。  この健保制度の中でひとつ検討していただきたいのは、予防給付の問題であります。これは特に日雇い健保の場合などは経済的にかなり苦しい層の人が多くあるわけでありますし、この人たちは、したがいまして、疾病と非常に深い関係にある人が多いわけです。どういたしましても、平素からの健康管理というものが非常に大事であろうと思うわけです。この健康管理が大事なことは、この日雇い健保に入っておみえになる人だけでなしに、全体そうでありますけれども、特に労働条件あるいは生活条件等において非常に苦しい立場の人が多うございますので、そういう意味からよけいにふだんからの健康管理というものが大事だと思うわけであります。もし全体に予防給付という方向に入っていけないといたしましても、この日雇い健保等から、これを突破口にして一ぺん試みていただいてはというふうな意見を持つわけであります。そういう意味で、予防給付の面をどのようにお考えになっているか、まずお伺いをしたいと思います。
  242. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 疾病予防ということを保険の中で、いわゆる保険給付として行なうかどうかということは、制度の基本にかかわる大きな問題だと思います。ただ、現在の医療というものが、先生も御承知のとおり、予防から治療あるいはまたリハビリまで、一貫した総合的な医療を行なうということがたてまえになってきている時代でございますから、そういう意味合いにおきましては、予防あるいは健康管理ということについて十分な配慮を、制度上も行政上もやっていかなければならないということは、われわれも常々留意をいたしておる点でございます。  そういう意味合いで、現在制度化はいたしておりませんけれども政府管掌健康保険におきましても、また日雇い労働者健康保険におきましても、さらにまた組合管掌健康保険におきましても、給付ではございませんが、いわゆる保健施設、ヘルスのほうのサービスとして、いろいろ予防上の、健康管理上の措置予算上あるいは運営上やっているわけでございます。したがいまして、そういうものを当面は強化をしていく、あるいはまた新しいものを加えていく、より総合的にやっていく、こういうことを一そうわれわれは努力をしていかなければならないと思っております。  最初申し上げましたように、制度として、これを保険給付として取り入れるということになりますと、これは非常に大きな問題でございますので、今後の医療保障の課題として、特に医療保険の課題として十分に検討してまいりたい、このように考えております。
  243. 坂口力

    ○坂口委員 健保制度という名前が示しますとおり、これは疾病保険ではなしに健康保険であるわけです。したがいまして、無制限に何べんでも健康診断等を保険の中でやれというのは無理な話だと思いますが、たとえば年に一回なら一回、あるいは二回というふうな限られた回数の健康診断等は保険の中で見るという、そういう方向性というものは検討されてしかるべきだ。そのほか、いま申しましたように、特に日雇い健保等はそれを優先的に行なうべき保険の一つではないか、こういう意見でございます。無制限にこれを取り入れていけというのは、財政の面もございますから、これは無理な話だ。ただし、年に一回とかいうふうな程度に取り入れていくのはやはり可能なことではないかと思うわけであります。それが健康保険の名の示すゆえんでもあろうかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  244. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 確かに先生おっしゃられるように、予防活動あるいは健康管理のための検診、診断、こういうことは大切なことだと思うわけでございますが、ただ今回の日雇い労働者の健康保険法の一部改正を行ないましても、まだなお財政収支が非常に赤字が見込まれるわけでございまして、そういう点で日雇い労働者健康保険としては、健康管理活動の充実について十分な措置ができていない点ははなはだ残念でございますが、従来に引き続きまして被保険者を対象とする結核検診等を実施していきたいということで、四十九年度も約三万人程度の方々を検診するという計画になっておりまして、予算的にはわずかでございますが、千数百万円の金額を計上しておる次第でございます。
  245. 坂口力

    ○坂口委員 これはいわゆる国庫補助が少ない現状の考え方の中でこれをやろうとすると無理があるわけでありまして、やはりこういう日雇い健保等については、少なくとも現状のようなことではなしに、もっと積極的な国庫補助をするという考え方のもとにこの予防給付の面も考えていただかないと、国は金を出さないという考え方のもとにやろうといたしますと、これは無理がくるであろうと思うわけですひとつ今後十分に検討をしていただきたいと思います。  それから大臣のお時間が迫っているようでありますので、大臣にお聞きしたい問題を先にちょっとやらしていただきたいと思いますが、建設国保の問題がございます。日雇い健保の擬制適用が打ち切られましてから衆参両院でもそれぞれ決議をされておりますが、市町村の国保需要に比べて国庫補助というのが非常に少ない。先ほど大臣は思い切ってやったつもりだというお話がございましたけれども、しかし国保に比べますとかなりこれがまだ少のうございます。この建設国保に加入の皆さん方も、非常に不安定な生活を送っておみえになる方も多いわけでありまして、どういたしましても、少なくとも国保並みの扱いはしてもらわないとこの人たちもやっていけないと思うのであります。これも先ほど御意見もございましたけれども、ひとつ積極的な姿勢をさらにお聞かせをいただきたいと思います。
  246. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨年の当委員会における決議もございましたので、四十九年の予算編成にあたりましては、建設国保の補助金を増額するように努力をしてまいったことは御承知のとおりでございます。そこで、これが一般の地域国保と同じにしなければならないかどうか、その辺はもう少し研究する余地は私はあると思いますが、いずれにせよ、国保財政、国が必要とするところの高額医療とかそういうふうな問題を現に行なった段階において、財政がどういうふうになっていくか、それからそういうものを実施したときの被保険者の納める保険料が、地域国保の保険料とどういうふうなぐあいになるか、そういうことを十分頭に描きながら検討をしていかなければならぬ問題であると私は思います。そうは申しましても、土建の建設国保が相当やはり苦しいと思います。すなわち、保険料も相当高く取っておるわけですから苦しいと思いますから、本年度の財政の推移をもう少し見まして、あまり負担な保険料を納めぬで何とかやっていけるような方向で改善策を考えてみるようにいたしたい、かように考えておる次第でござ  います。
  247. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひ前向きな検討をお願いしたいと思います。  それからもう一つは、一般的には日雇い労働者の雇用形態というのは千差万別でございますし、労働条件も常用の労働者よりも劣悪で生活も非常に不安定な方が多いわけであります。日雇い建保の被適用者というものは、大別しますと、健保の適用事業所に働く日雇い労働者と失対事業や公共事業に従事をする日雇い労働者ということになろうかと思います。この他、いわゆる零細事業所や五人未満の事業所で働く日雇い関係の人は適用除外をされているわけでありますが、この差別を私は早急にとるべきだと思いますが、この点はいかがでございましょう。
  248. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いま仰せのとおり、日雇い労働者の方々が日雇い健保の適用を受けられますのは、健康保険の適用事業所に使用されるわけでございます。したがって健康保険の場合も五人未満の事業所の場合には適用除外でございますから、常用の方であっても健康保険の適用はないという問題点がございまして、差別というようなおっしゃり方がいいか悪いかは別にいたしまして、やはり五人未満問題というのは、常用労務者また日雇い労働者を通じた今後の全般的な問題だというふうに考えております。
  249. 坂口力

    ○坂口委員 ちょっとよくわかったようなわからぬようなお話でございますけれども、私どもはこれは一つの差別だというふうに思うわけです。この点も大臣ひとつお考えをいただきたいと思います。ひとつ最後にこの点につきましても御答弁をいただいておいて、大臣に対する質問は終わりたいと思います。
  250. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お述べになりました問題はやはり非常に重要な問題でございますので、もう少し実態を調査しながら、ひとつ十分に研究を進めてまいるようにいたしたいと考えております。
  251. 坂口力

    ○坂口委員 日雇い労働者であるがゆえにいわゆる受給資格要件というものが他の健保よりも一段ときびしくなっている点がございます。すなわち各給付を受けるには、納付保険料の日数がきまっているわけでありますが、どうしても中には使用者の都合によって日数が不足する場合もあると思います。そういたしますと資格の取得を認められないわけであります。こうした問題はやはり何らかの運用をすべきではないかと思いますが、この点はいかがでございましょう。
  252. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 日雇い労働者の方々の就労形態が日々雇用、しかも就労浮動ということで事業所を点々とされるというようなこともありますので、この法律は受給要件を設けまして、この受給要件に従って給付をする、こういうふうな制度をとっておるわけでございます。受給要件制度を取り入れます限りは、やはり一定の線を敷きまして、そこで要件があるかないかという判定をするわけでございますので、そういう意味合いである程度摩擦的な受給要件の欠缺ということが起こるケースもあろうかと思います。常にこの受給要件を満たし得ないというふうな方々は、法律の定めるところによって適用除外という制度がございますけれども、そうでない方々については、やはり一定の受給要件がある限りはそれに従わざるを得ないというのがこの法律のある意味におきましては不可避的な仕組みになろうかと思います。  私どもは、そういう意味合いで制度としてこういう制度を捨てるわけにはまいりませんし、また運営上も常に最低限度の受給要件が満たし得るような、そんなような制度をつくりますと、これはやはり保険の中でいわゆる逆選択的な現象が生まれるおそれが多分にございますので、そういう意味合いから今回特に非常に大きな改善をいたします際でもございますから、従来からの経緯もいろいろ考えました上で、現行の受給要件というものが制度としては一番安定した受給要件ではなかろうか、このように考えておりまして、いろいろ問題のあることはあると思いますけれども制度の基本としてはこのような現行の仕組みが比較的安定した制度ではなかろうか、こう思っておるようなわけでございます。
  253. 坂口力

    ○坂口委員 局長、いま安定した方向だというふうにおっしゃっていたのは、いわゆる保険経済面から考えて一応安定した方法だという御趣旨ではないかと思います。それはよくわかるわけでありますが、ただ、この保険に入っておみえになる皆さん方の立場からすると、この労働者自身の側で働かれた日数が少ないというのは、まだそれなりの理解もできるわけでありますけれども、しかし使用者の側の都合によって日数が不足するというような場合には、本人には一応関係のないことであります。この面では、ひとつそれに対する何らかの歯どめというようなものを今後検討をされるべきではないか。これは保険制度上たいへんむずかしい面もあろうかと思います。その点は、この制度上むずかしいでしょうか。
  254. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 やはり保険でございますので、いま仰せのとおり財政というものをネグって、この制度の存立とか運用を考えるわけにはまいらぬと思うのでございます。ただ、いま言われましたように、使用者の都合によってやむを得ずこの制度からはみ出してくる。たとえばおっしゃっている例の中には、具体的な御指摘になられるようなケースがあると思うのでございますけれども、しからば、そういうことを一般的に使用者の都合によって制度の網がかぶらない場合には、ではどうするか。その場合には、必要最低限度の保険料を任意に納めてこの制度に乗っかってくるかということになりますと、先ほど申しました財政的な問題とはいいながら、やはり制度全体の運営にかかわる問題でございますから、この保険で一番問題になる逆選択的な問題も出てまいりまするし、そういうことをいろいろ彼此勘案をいたしますると、なかなかむずかしい問題なので、今後も検討はいたしますけれども、どういう形で、それではそういう方々について補完的な措置を講ずるか。これはいましばらくやはり時間をかしていただきませんと、いま言われたような形の表現と申しますか例示と申しますか、それだけで措置をすることは、私は現段階ではなかなか困難ではなかろうか、かように考えておるような次第でございます。
  255. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつこの点についてぜひ今後とも御検討をお願いをしたいと思います。  それから次に、療養給付期間の問題でございますが、一応今回五年ということになりました。いままで皆さん方のほうに統計的な資料でもありましたら、ひとつお示しをいただきたいと思うわけでありますが、日雇い健保の中で、五年以上なおかつ治療を要すると思われるような人、これはどのくらいありますか。
  256. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 四十七年の調査だと思いますけれども、日雇い健保で——四十七年四月の政管健保の調査でございますが、診療を開始いたしました月から六十月まで、つまり五年目までの件数は、被保険者の入院の場合に例をとりますと、総件数について〇・〇二三%というような割合になっております。したがいまして、これを裏返して申し上げますと、五年間というような期間を法定をしておけば、ほとんど大部分の方々は療養給付を受けられるのじゃないか、私どもはこういうような考え方を持っているわけでございます。
  257. 坂口力

    ○坂口委員 このごろ疾病構造もたいへん変化してきまして、特に血管系の病気でございますとか、非常に経過の長いものが多くなってまいりました。たとえば高血圧でありますとか、それにまつわる動脈硬化に伴ういろいろの疾病でございますとか、心臓の病気でございますとかあるいはまた糖尿病だとか、非常に長期に治療を要するようなものが多くなってきているわけなんです。こういった問題は、考え方によりましては、死ぬまでなおらないというようなものもあるわけであります。治療をやめたらまたもとどおりになる、生き続ける限り薬を続けなければならぬというようなものもかなりふえてきておると思うわけであります。たとえば例をあげれば、高血圧なんというのはその一つになるのではないかと思いますが、そういった人は五年なら五年で打ち切られるということになりますと、これはそのあとどうするかという問題が起こりますが、そういった問題はいままで起こっていないのでしょうか。
  258. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 疾病構造の変化によって、特定の疾患が非常に長期化しているということにつきましては、私も一般的には承知をいたしておるつもりでございます。ただ、具体的に日雇い健保の適用になる方々について、そういったケースがあるかどうかにつきましては、遺憾ながら私もよく存じません。ただ、今回の五年間の延長をいたしましたことによって、先ほど申し上げたとおり、ほとんど救われますということと、それから、昨年の改正でもって所定の——今回この改正を御承認いただきますと五年間になるわけでございますけれども、五年間を経過いたしましても、なお前二カ月で二十八枚とかあるいは前六カ月で七十八枚とかといった保険料が納付されておりますれば、引き続いて療養を受けられるというような仕組みになっておりますので、そういう上限がある限りは転帰まで理論上やっていけるわけでございますので、そういう昨年の改正と今回の給付期間の延長とあわせて考えていただきますと、かなり疾病構造の変化はあるにしても、救済ができるのじゃなかろうかと思っているのが現状でございます。
  259. 坂口力

    ○坂口委員 いままでに比べますと前進であることには間違いないわけです。それは私も評価をしているわけでありますが、いままでに比べまして前進であることには間違いないと思います、五年になったわけでありますから。しかしそういうふうな疾病構造の変化を見ますと、今後の問題としましてさらに検討をしていただく余地があるのではないかということを申し上げているわけであります。  次に、日雇い健保の昭和四十九年度末の累積赤字額は、私のほうの調べに間違いがなければ、二千百八十四億円ということに推定としてなるということを聞いております。この日雇い健保の赤字の要因でございますが、ほかの健保におきましても赤字はつきものと言っていいくらい出ているわけでありますが、特にこの日雇い健保において多くの赤字を生む要因というものについて、どういうふうにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  260. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 日雇い健康保険におきまして、先生おっしゃるとおり逐年赤字を累積をしていろわけでございますが、その原因は、端的に申しまして、やはり支出面の大筋を占めておる医療給付費に比べまして、保険料の収入が均衡がとれておらない。言いかえますと、医療給付費につきまして政管健保と比べてみますと、政管健保では一人当たりの医療給付費が五万九千六百円、これは四十八年度の見込みでございます。ところが日雇い健康保険のほうは年齢が平均的に高齢化しているとか病気が長引いているとか、そういういろんなあれで六万二千円ぐらいになっていて非常に高額になっています。一方保険料収入を見ますと、政管健保のほうでは約六万円が保険料収入になっておるわけでございますが、日雇い健保のほうでは一万三千七百円という、政管健保に比べて著しく低い保険料収入、こういうアンバランスというところが一番大きな赤字要因ということになっているというふうに考えております。
  261. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、これはこの数字が示しておりますとおり、日雇い健保にお入りになっている皆さん方の経済状態というものがいかに低い方が多いかということになろうかと思います。また年齢的にも高年齢層の人が多いということを示していると思いますし、その他生活条件等についても、やはり疾病と結びつく何らかの要因が多いのではないかということもいえると思います。こういうふうに、保険によりまして入っておみえになります方の年齢層あるいはまた経済的な層の違いというのが、これは日雇い健保と政管健保の間だけではなしに、他の九種類のそれぞれの保険の間にも存在するわけであります。そういうふうな意味からいたしまして、私はいつも一本化への方向をどうしてもとるべきであるということを言い続けているわけでありますが、この日雇い健保の中に入っておみえになります皆さん方がこういう低所得層の人が多いわけでありますから、どうしてもここに体質上の弱さが出て、そして赤字が出るというのは、当然といえば当然の結果ではないかと思います。こういうふうな当然の結果であればこそ、やはりここに国がより多くの手を差し伸べる必要があると思うわけであります。したがって国庫負担の問題になるわけでありますが、現在の三割五分を何としても国保並みに引き上げなければならないと思うわけでありますが、これも一ぺんにはなかなかいきにくい問題でもあろうかと思いますけれども、今後のスケジュールというようなものについて、何か現在わかっていることがありましたらお答えをいただきたいと思います。
  262. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 今後のスケジュールということになりますとなかなかすぐにはお答えはできないと思いますけれども、現状でいま例に出ました国民健康保険との関係から申しますと、日雇い健保は三五%でございますけれども、残った分についてその半分は事業主負担が入っております。それから国保は四五%でございますが、これは総医療費ベースで四五%でございますから、日雇い健保のように給付費ベースに直しますと六四%をこえるような状況になるわけでございます。そうなりますと、日雇い健保の場合には国庫補助の三五%とそれから事業主負担の三二・五%を入れますと六七・五%、国保の場合には給付費ベースで六四%というようなことで、結果的には現状としては国保よりも日雇い労働者健康保険のほうが国の負担、事業主負担を含めて被保険者負担がより少ない、こういう状況になっておりますので、私どもはいま直ちに日雇い健保の国庫負担を増率をすべきかどうか、これは非常に横並びで検討を要する問題だと思っております。ただ将来、今回こういうふうな改正をいたしまして、相当大きな改正でございますから、どのような推移をたどりますか、今後の推移を十分慎重に見きわめました上で、国の負担をどういうふうに加味をするか、あるいはまた、その他の負担をどうするかというふうな問題は、スケジュールはございませんけれども、今後の状況を見ながら検討してまいりたい、このように考えております。
  263. 坂口力

    ○坂口委員 パーセントの出し方がいまのような形で出されますとそういう結果になるわけでありますが、それでは国保に入っておみえになります方とそれから日雇い健保に入っておみえになります方と、いわゆる月収、これに対する保険料の割合で比較しますとどうなりますか。
  264. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 後ほど調査をいたしましてお答え申し上げます。
  265. 坂口力

    ○坂口委員 時間が来ているようでありますので、もう一問だけお伺いをしたいと思います。  いまの問題をもう一つだけお聞きしておきたいと思いますが、いまお聞きしたのは、確かに国保の場合にはいわゆる事業者からの分はありませんし、これはおっしゃるとおり保険者とそれから加入しておみえになる方々で出されるものでありますし、この日雇い健保の場合には、国庫補助とそれから加入者とそれから事業主三者になっているわけでありますから、その辺のところは確かに違います。違いますが、やはり日雇い健保に入っておみえになる方々の収入というものはずいぶん少ないわけです。だからその中で出しておみえになります保険料というものと、それから国保の場合にも多いとは言えませんけれども、その中で出しておみえになります保険料というものとがどうなっているかということで比較をして言わないと、その差もなかなかわかりにくいと思うのです。これは政管健保との比較の場合も同じであろうかと思います。そこで、日雇い健保の中に入っておみえになる皆さん方は、年齢的にも先ほどから何べんか申しますように、高齢者の方も多うございますし、そしておつとめの状態も、たとえ一時的な給料がよくても、あすの日はどうなるかわからないという非常に不安定な方々も多いわけであります。そういう中での日雇い健保でありますから、これはそう軽率にこの比較をするということにはいかないと思うわけです。  そういう意味で、この保険に対する将来も含めて、国庫補助というものをふやしていくべきじゃないかということを申し上げたわけです。特に、ことしとか来年に限ってどうなっているかというふうな言い方でありますとお答えしてもらいにくいと思ったものですから、将来も含めてひとつ計画があればお示しをいただきたい、こう申し上げたわけでありまして、逆に局長のほうからは将来の問題を含めると言いにくいという御答弁でございましたけれども、そういう意味で質問をいたしております。したがいまして、そのことについて積極的な御意見を伺いまして、時間でありますので終わりにしたいと思います。
  266. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 私は、今度の日雇い健保の改正を御承認いただきますならば、先生のおっしゃいましたように、制度統一ということはできませんでも、制度は分離をいたしておりましても、とにかく給付の面におきまして最低七割というものは各保険において確保されるということになるわけでございますから、残った問題といたしましては、各制度間の負担の均衡をどうはかっていくかということが非常に大きな問題だと思います。  そういう意味合いで、単に日雇い健保の将来の負担の問題の国庫負担とのかね合いとか、あるいはその他の問題も含めてのかね合いとかという問題も含めまして、保険制度全般の負担の公平をどうはかっていくか、こういう問題はこの制度改正された後の一番大きな問題として十分慎重に、また熱意を持って取り組んでまいるつもりでございます。
  267. 坂口力

    ○坂口委員 終わります。
  268. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 次回は、明十七日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会