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1974-05-13 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十三日(月曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 枝村 要作君 理事 川俣健二郎君    理事 石母田 達君       伊東 正義君    加藤 紘一君       粕谷  茂君    片岡 清一君       瓦   力君    小林 正巳君       住  栄作君    田川 誠一君       田中  覚君    高橋 千寿君       地崎宇三郎君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    橋本龍太郎君       粟山 ひで君    阿部 昭吾君       金子 みつ君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       多賀谷真稔君    八木 一男君       山本 政弘君    田中美智子君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       坂口  力君    瀬野栄次郎君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         林野庁長官   福田 省一君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 大坪健一郎君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君  委員外出席者         労働省職業安定         局失業保険課長 関  英夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   大原  亨君     川崎 寛治君   小宮 武喜君     神田 大作君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     大原  亨君   神田 大作君     小宮 武喜君 同月十日  辞任         補欠選任   瓦   力君     小坂善太郎君   小林 正巳君     有田 喜一君   住  栄作君     大久保武雄君 同日  辞任         補欠選任   有田 喜一君     小林 正巳君   大久保武雄君     住  栄作君   小坂善太郎君     瓦   力君 同月十三日  辞任         補欠選任   大橋 武夫君     中村 弘海君   中村 拓道君     片岡 清一君   羽生田 進君     地崎宇三郎君   大原  亨君     八木 一男君   村山 富市君     阿部 昭吾君   森井 忠良君     多賀谷真稔君   坂口  力君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     中村 拓道君   地崎宇三郎君     羽生田 進君   中村 弘海君     大橋 武夫君   阿部 昭吾君     村山 富市君   多賀谷真稔君     森井 忠良君   八木 一男君     大原  亨君   瀬野栄次郎君     坂口  力君     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用保険法案内閣提出第四二号)  雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六四号)  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(川  俣健二郎君外九名提出衆法第一五号)  失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関  する法律の一部を改正する法律案森井忠良君  外九名提出衆法第一六号)  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七三号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  雇用保険法案雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案国有林労働者雇用の安定に関する法律案並び失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺前巖君。
  3. 寺前巖

    寺前委員 おはようございます。  今日までいろんな方々から本法案についてはずいぶんいろいろ意見が出ました。職安審段階、それから制度審段階一定意見諮問に対して答えておりますね。その後、当初考えておったやつを若干変えて法案に出してきたわけですが、この委員会でいろいろ意見が出た。私は最初に大臣に、いろいろ出た意見の中でこれは検討に値するなと感じられた問題は何か、総括的にちょっと聞いておきたいと思うのです。
  4. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 本法案提出するにあたりまして、中央職業安定審議会中央職業訓練審議会並びに社会保障制度審議会にそれぞれ御諮問申し上げまして、慎重に御検討いただいた上で御答申をいただいたわけでございます。その三審議会を通じて一般的に言えますことは、一つは従来の失業保障機能を後退させないように、と同時に、いろいろな情勢変化に応じて今後の雇用失業情勢に的確に対応できるような制度改善をすべきである、その際にいろいろと変更、改善がございますが、改善をするにいたしましても、現状から著しく激変を与えないように十分注意をしろ、こういうのが各審議会を通じての一般的な御意見だった、かように考えております。
  5. 寺前巖

    寺前委員 それで、審議会諮問から法案に今度変わっていったわけでしょう。国会はその法案審議に入ってしまったわけですね。その法案審議をめぐって、それでは皆さん意見を聞いて検討に値しなければならぬなと、大臣自身幾つかの点でお答えになっておったのですよ。整理してその問題点を御回答いただきたいと思います。
  6. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいま局長が答弁しましたように、いろんな審議会を通じて御議論願い、そしてまたこの国会法案提出しましてから今日まで、各委員皆さん方に非常に御熱心な御審議をいただいたわけであります。それだけにまた、いかにこういう情勢においてこの雇用保険法案というものが大事なものであるかということで具体的な御指摘等々があって、私は非常に参考になったわけであります。  さて、その中で具体的にどうこうといいますと、全部逐一いま記憶しているわけじゃありませんが、給付日数の問題あるいは給付率の問題あるいはまた出かせぎ者の一時金の問題、さらにまた受給資格の問題等々に熱心に、特に集中されて御議論があったように記憶しております。
  7. 寺前巖

    寺前委員 そういう従来組まれている失業保障制度実態、これに変化を与えてはならないというそれぞれの審議会諮問の問題が引き続いて具体的に法案になった、その法案になった中でもまたそれが引き続いて指摘されているということで、幾つかの点をいまおあげになったと思う。ですから、私はこの法案そのものが現実的に非常に大きな社会生活の中に影響をもたらすという結果は大臣自身もお認めになっておるというふうに認めざるを得ないと思うのです。  ところが、さらに他の分野からこの問題についてもやはり検討してみる必要があるんじゃないだろうか。というのは、第一、現在の法律失業保険法です。今度出してきているのは雇用保険法案です。名前が変わる。名前が変わるというのは、必要がなければ名前を変える必要はないと思う。名前が変わるというのは、中身が変わるから名前も変わるのだろうと私は想像するのですけれども、とすると単に現状がどうのこうのとの関係だけではなくして、もっと抜本的に名前まで変えなければならない問題があるんだということを明確にしなければいけないと思う。これがはたしていいのかどうかという問題の論議は、私は基本的に残っている問題だと思う。名前を変えなければならぬというところをちょっと説明してください。
  8. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 このたびの雇用保険法案は、今後の経済社会の動向に即応しながら量質両面にわたる完全雇用の実現に資するために、失業保険制度の持つ保障機能を充実強化するとともに、現在失業保険の一環として行なわれている福祉施設のあり方に検討を加えまして、質的な意味における雇用状態改善の要請に積極的にこたえる必要があると考えまして、現行失業保険制度改善、発展させて雇用に関する総合的な職能を持つ雇用保険制度を創設することとしたものであります。このようにこのたびの保険法案は、現行制度の持つ機能を堅持しながら、現行制度をさらに改善、発展させたもので、その基本的性格は変更するものではございません。
  9. 寺前巖

    寺前委員 何といっても法案名前が変わるというのは、目的の中を見れば、現行法と新しく出される法案目的に明確な違いが生まれてきますね。そこで私は条文の内容についてちょっと聞きたい。だからこれは局長さんにお聞きします。  第一条に、「雇用保険は、労働者失業した場合に必要な給付を行うことにより、労働者生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職促進し、あわせて、労働者職業の安定に資するため、」次のいわゆる三事業を「図ることを目的とする」。ですから「あわせて」云々というのが一つと、それ以前のと、二つの部分からこれはなっているのじゃないかと思う。そこで、現行失業保険法によると、「法律目的」は、「被保険者失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的」とした、ここでは第一条のいま私が言った「あわせて」以前の部分の中のそのまた半分だけが指摘されているわけですね。局長さん、よろしいですね。現在の失業保険法では明確に、失業した場合に失業保険金を支給して生活の安定を期するのだ、これが目的ですよ。そこに保険給付が出てくる。今度のやつは必要な給付をやるんだ、いままでのは失業保険金を支給するんだ。保険目的というのが非常に限定されているわけですね。だから、「必要な給付」ということになると一体何をさすのだろうか。「必要な給付」というのは何ですか。保険給付以外のものも入るのですか。これは一体どういうことなんですか。
  10. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険法案目的現行失業保険法目的、ただいま先生御指摘になりました雇用保険法案の第一条の目的の前段と現行失業保険法の第一条の目的とは、内容的には全く一致するものでございます。今回の雇用保険法案におきましても、「労働者失業した場合に必要な給付を行うことにより、労働者生活の安定を図る」こういうことでございまして、必要な給付とは何かという御指摘でございますが、これは新法の雇用保険法案の第十条に、失業給付は、一つ求職者給付、もう一つ就職促進給付、こういうふうに分類をいたしております。現行法では失業保険金を支給することによりとなっておりますが、そのほかにいろいろ就職支度金でございますとか、移転費でございますとか、あるいはその他傷病手当金とか、もろもろの給付が同時に行なわれるようになっております。こういったものを総括的に第一条の目的に「必要な給付」という形で掲げたものでございます。現行法内容的には全く同じでございます。
  11. 寺前巖

    寺前委員 現行法とは違うのじゃないでしょうか。保険給付、たとえば健康保険法とか厚生年金法律とかあるいは労災とか、日雇い健康保険とか、いろんな社会保険法律がございます。社会保険の場合のこれらの法律には全部保険給付を行なうというように非常に明確に書いてありますよ。そうすると、保険給付というのは、たとえば病気になったときに困ると思ってお互いに助け合うということで、保険という事業が成り立っている。これが社会保険だと思うのですね。一般の民間の保険じゃなくして、社会保険というのは働いている人たちが、お互い労働災害になったら困る、そのときに資本家の側が責任を持ってどうするかという、ふだんから助け合っておく体制をつくっておく。保険というのはちゃんと限定された目標がなければならないと思うのですね。社会保険としての範疇は非常に明確だと思うのです。そうすると、現在の失業保険保険給付範囲というのは非常に明確だと思うのです。失業期間中の生活を安定させる、そのための手当を出します、ふだんからお互いに安心してそういう体制に入れるようにと、こうなっている。そしていま局長が言われた就職促進のような、就職支度金とか移転費というようなものは、保険給付の直接の対象じゃなくして、いわばサービス的な、これを補完する一定役割りをするという別途の内容にいまの給付ではなっている。保険給付じゃないと思う。違いますか。福祉施設のところに入っているのでしょう、現行法では。ところが、今度の法律では明確にこの福祉施設に入っていたものが保険給付対象に変わっている。これが社会保険範疇に入るのだろうか。たとえば、一般広域求職活動費、こんなものは保険じゃないのじゃないだろうか、保険というのはやはりお互い——広域活動費というふうなものは、社会的な事業じゃないかろうか。局長さん、その点は前との変わり方というのは、一体なぜそういうふうに変わったのか説明してください。
  12. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生十分御承知のとおり、現行失業保険法におきましても、第二十五条、二十六条、二十七条、そういったところで、いわゆる保険給付として諸手当が支給されております。これは失業保険金以外に保険給付という形でいろいろな給付が行なわれております。それと同時に、二十七条の二にございますように、いわゆる保険施設福祉施設としていろいろな施設が設けられ、施策が行なわれている、こういうことでございまして、これを受けまして今回の雇用保険法第一条におきまして「必要な給付」というのは、いわゆる失業給付就職促進給付というふうに明確に分類をいたしたわけでございまして、内容的には拡充の意味ももちろん含まれておりますが、現行制度から大きな変化はない、このように考えております。
  13. 寺前巖

    寺前委員 そうじゃないでしょう。何で従来のときには保険給付とこれと分けているか、福祉施設をなぜ分けているか。分けるのには理由があるのでしょう。保険というのは明確な限定され保険事故が発生する、したがってその場合助け合っていく社会保険としての性格社会保険というのはそこに存在すると思うのです。それに付随して、そのことをささえるための施設として福祉施設と、ちゃんと分類していると思うのですよ。これは同じものじゃないですよ。ところが今度の場合にはそれを保険給付対象に組み入れてしまうのでしょう。この第一条の目的でいうと、「求職活動を容易にする等その就職促進し、」就職促進というものが保険業務に当たるのだろうか、社会保険に当たるのだろうか。就職促進業務というものは社会保険業務じゃなくて、憲法の中にもその二十二条にはっきり職業選択の自由があり、二十七条で国民の勤労権利保障されている。その権利保障されているところに基づいて、職業安定法なり中高年齢法律なり身障者の雇用法なり雇用対策法なり、いろいろの法律ができていると思う。就職促進業務というのはそういう事業の問題じゃないだろうか。これが保険対象に入るというのは、保険の概念のワクを広げるものじゃないですか。保険というのはちゃんとはっきりした保険事故が、対象が明確に存在するから成り立つと思うのです。私は、これは法律的に考えても保険事業対象にならないんじゃないかと思いますよ。私は、それは、逆に言ったら憲法に基づくところのこの勤労権利保障する仕事として、いろいろな法律をつくってきた。この憲法に基づくところのこれらの事業は、国の責務の範囲の問題である。それが保険業務の中に入ってくるということは、これは重大な問題だといわなければならない。社会保険というものに対する明らかな逸脱だとぼくは思う。従来から三事業の問題は逸脱だという批判がありました。従来はこの三事業分野内容福祉施設の中で行なってきた、このワクがだんだん拡大されてくるという批判の中で、三事業批判がありました。しかしそれは三事業だけではないですよ。今度ははっきりと法律の中に、「求職活動を容易にする等その就職促進し、」というこの課題が保険業務範疇に入るかということになったら、私は理論的に考えて、これを保険事業範疇に入れるというのは、明らかに重大な逸脱だといわなければならぬと思う。どうです、大臣
  14. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 失業した人が、失業保障機能によって、失業期間中の生活の安定をさせるために、いろいろな施策が行なわれている、これが現行失業保険制度であり、雇用保険法に盛られた保険給付内容でございます。失業期間中の生活の安定をはかるというととは、生活を安定させるためには職業の安定を得させるということがまず最大の要件でございます。現行失業保険法におきましても、雇用保険法におきましても、失業した人たち職業選択の自由を前提にしながら、その希望に応じて一日も早く安定した職業につかれることが望ましいわけでございます。そのために必要な失業期間中の生活安定のための失業給付を行ない、同時にそれぞれの事情によって再就職を容易にするための援助措置がはかられる、これは現行失業保険制度におきましても、全く新しい雇用保険法考え方と同じでございまして、その失業期間中に職業をさがす、安定した職場を求める、そのために必要な就職促進のための援助策が、各種の手当助成措置としてとられているわけでございます。これは失業保険制度の、新しい今回の雇用保険制度の被保険者でなくて、全く新規に社会に出て職業につこうとする人、こういうことであれば別でございますけれども、この保険制度対象である限りは、その人たち失業した場合にその就職あっせんをはかり、そのあっせんをするために、あっせんによって一日も早く職場につかれるそのために必要な施策というものがこの保険対象になるということは、これは現行制度でも同様でございますし、もちろん雇用保険法案においてもそれをさらに一そう充実させることにいたしたわけでございます。
  15. 寺前巖

    寺前委員 同じことを繰り返しておってもあれですけれども、保険というのはお互い失業したときに困るじゃないかということで、これで掛け合って失業したときにせめて最低保障をやっていきましょう。しかし職業あっせんの問題というのは、仕事は基本的に国の事業ですよ。職業選択の自由、そして勤労権利、これは憲法保障されている。この憲法保障されている事業保障していく、これは国の事業でなければならぬです。だから国が単独法を、雇用に関する法律を持ってきておったわけです、いろいろな分野において。もっとそれは強化していかなければならない。だから保険というのは、病気になったらそれをなおす、そのときのためにお互いに掛けておきましょう。限定されたものですよ、保険を掛け合ってやっていくというのは。この万一という場合に、万一という範疇に入るところのものが、これが支給の対象。だから従来も保険給付というのは限定された最低生活保障するというその失業期間中の保障の問題の手当てと、失業して新たな仕事へ行く場合にそれだけではしにくい問題があるからというので、若干の問題——その若干の問題というのが福祉施設であったわけです。基本的に職業の場を提供していくというのは国の事業でなければならない。憲法から来るところのものです。これは保険給付も直接的なものじゃないですよ。福祉施設とちゃんと前のときには分類しておった、手当ての問題は就職支度金の問題とか、そういうものはちゃんと分けておるというのはそこに性格が基本的にある。この福祉施設をどんどん乱用し出している。だから批判が出てきた。今度はそれを乱用してきているのをどうするかといったら、公然と中へ入れて立場をくるっと変えてしまう。これは私は、はっきりと保険というものは、もっとやはり限定しなかったら社会保険というものを乱用している、これは私は断定せざるを得ないと思うのです。あまりにも横着なやり方だといわなければならぬですよ。三事業だけじゃないですよ。就職促進する問題というのは、これを直接の保険業務として保険が存在するとなったら、おたくのところはやはり依然として福祉施設ですよ、そういうふうに考えるべき性格で、これは私はもう納得しがたい、これは断定せざるを得ないですよ、基本的にこの問題は。  そこで時間の関係もありますし、私は次に移りますよ。失業中の生活安定のための最低基準ですね。これは今度は二十二条によっていろいろ年齢によりて変えていますね。従来と変わっています、失業期間中の生活安定のための最低基準。ところで私は、一番若い三十歳未満ですか六十日とした根拠は一体どこにあるのだろうか、これをちょっと説明してほしいと思うのです。
  16. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行失業保険法におきましては、御承知のとおり失業前の過去の被保険者期間の長短によって給付率が定められる、こういうことになっております。冒頭に大臣から御説明ございましたように、わが国の雇用失業情勢がきわめて大きな変化をいたしておりまして、これからの失業保障機能を充実強化するためには、この制度をどう今後の失業情勢に対応できるようなより効率的な制度に改めるかということでございますが、その際現状を見ますと、量的にいいますと雇用内容は非常に改善されてまいっております。一般的には求人求職をはるかに上回る、こういう状態でございますけれども、なおその中身についてしさいに検討いたしますと、地域的に見ましても、あるいは年齢別に見ましても、あるいは産業別に見ましても、そういった量的な意味におきましてはある程度の完全雇用に近い状態が現出されております。しかしながら実際問題としては、その中で人口の高齢化に伴って今後中高年齢者がだんだんふえてくる。全体として求人倍率が非常に高まっておりまして、求人難労働力需給が非常に逼迫しております中で、なおかつこういった中高年齢者就職がきわめて困難である。それに反しまして三十歳の若年層につきましては、実績が示しますように各職種、各地域についてみましてもきわめて就職が容易である、こういう状態でございまして、失業保険受給者の再就職状況を見ましても、大体平均いたしますと五十数日で再就職ができておる、給付日数実績もそういうことになっております。そういうことからいたしますと、今後こういった失業者に対する失業保障機能を強化する意味におきましては、これからなお一そう就職困難になると見られます中高年齢者、特に高年齢者に対しまして手厚くすると同時に、実質的に実績を十分勘案した上で、こういったきわめて就職の容易な若年者につきましては、それに必要にしてかつ十分な程度の給付日数保障されれば足りるのではないか、こういうことから、三十歳未満若年者につきましては従来の給付実績、同時に再就職までの期間、そういったデータを踏まえまして、就職難易度に応じて、こういった各年齢階層その他いろいろな要素を勘案いたしながら給付日数を決定いたしたわけでございます。その際に三十歳未満若年層につきましては、ただいま申し上げました両方の側面から六十日で必要にしてかつ十分な保障機能が果たされる、こういう考え方で決定いたした次第でございます。
  17. 寺前巖

    寺前委員 私は理屈を聞いておるのじゃなくして、具体的に六十という数字はどこから出てきたのだということを聞きたいのですよ。というのは、おたくのほうに都道府県別、性別、年齢別受給日数がどういうふうになっておるんだ、資料を持ってこい。あるいは常用求人求職状況都道府県別にどうなっておるのか。そういうのを見ないと、実態を見ないことには何とも、六十日という数字が合っておるのかどうかわからぬじゃないか。審査をするときにはちゃんとそういう資料提出してくれなかったら、審査のしようがないじゃないか。私が聞きたいのは、その六十という数字が妥当なのかどうか、ここなんですよ。これが審議会段階でも国会段階でも、これは実生活にどういう影響をもたらすだろうかということの一番の問題になっておったんだから、問題になっておった資料提出するというのは私はあたりまえだと思う。あなたのほうからいただいた資料を見ると——この資料はもらえなかったが、あなたのほうで出しておる資料の一部分にこういうのがある。「性別年齢別の平均受給日数」という、全国的な統計の四十六年のやつ。これを見ると、三十歳未満の人は男子が四十六日で女子が七十日、こうなっている。これ全国平均ですよ。あんな受給状況というのは、仕事たくさんある地域とない地域の差というのは大きいものだというのは常識的に考えてわかるのだから、平均して七十なんだ、女子の場合。平均して七十というふうに三十歳未満の人が出ているのを、それをわざわざ何で六十にせんならぬのか。何も六十にしたからといって、まるっぽ六十もらうのじゃないのですからね、これは。そういうものなんだから。制度としてその失業期間中の保障というのはこれだけのやつがありまっせというだけの話なんだから。だからそれは失業したってお互いにその間助け合っていきましょうぜという制度が、六十日という制度で合理性があるのかといえば、平均が七十と、このあなたのところからもらったやつだけでも出ているとするならば、地域別を計算に入れたときにはもっと検討せんならぬ数字が出てくるのじゃないだろうか。これは男女別からいま提起した資料ですけれども、地域別から出た資料は一体どういう数字が出てくるのか。資料を出してもらわぬことには、この六十という数字は私には納得できぬ。ちょっと出た数字だけでも納得できぬのに、これ出さなかったら検討しようがないといわなければならぬ。だから従来よりは明らかに、権利としての受給日数というのは下がっている。この従来より下がっているということ自身がきわめて問題である。だけれども、それにしても何らかの合理性があって六十日が出てくるのかと思えば、合理性の資料も出さなければ、いよいよもって信用するわけにいかぬじゃないかというのが私の意見ですよ。ちょっとも資料出てこないじゃないか。私の提起している問題に不合理がありますか。
  18. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 三十歳未満の男子、女子の平均受給率は、ただいま先生御指摘になりましたように平均六十三日、これは昭和四十六年の実績でございまして、御承知のとおり四十六年から昨年暮れ、ことしにかけて求人倍率就職状況は非常に好転してきております。昨年の石油危機以来、雇用失業情勢が悪化するのではないか、いろいろと懸念された時点におきましても史上最高の数字を示すようになっておりまして、求人倍率は二倍を上回っております。と同時に、失業率もきわめて低い水準にとどまっておりまして、アメリカや西欧諸国に比べますと、ほとんど完全雇用といっていいような状態で、この石油危機後の情勢につきましても一%を若干上回る程度で、外国に比べますとはるかに低い数字でございます。そういった経緯を考えますと、この平均六十三日というのは、昨年の実績はまだ出ておりませんけれども、これよりははるかに低い数字になってまいることもほぼ確実でございます。と同時にいま先生御指摘のように、地域的にアンバランスがあるのではないか、そのとおりでございます。全国的な平均としてはそうでございますが、地域的にはやはり就職の容易な地域、求人の多い地域と過疎地帯のように、あるいは炭鉱の閉山に伴って失業者がなお滞留している地域といったように、なかなか若年者であっても就職がそう大都市地域、工業地帯のように容易でない地域もございます。しかしながら全国的に見ますと、こういった数字で十分ではないか。その際地域的なアンバランスにつきましては、失業多発地域につきまして給付日数の延長措置が現行制度でも設けられておりますし、これを受けて新しい雇用保険法案につきましても、地域的に失業率の高い場合には給付延長の措置がとられることになっております。そういうことによって十分先生の御懸念の点は補完できるような制度になっておる次第でございますので、私どもはむしろ全体として就職難易度によって、それが年齢別求人求職のバランス、就職の率、そういったもの、あるいは年齢のほかに身体障害者でございますとか、社会的な原因によって就職の困難な人たち、そういった人たちにできるだけ手厚くするということに重点を置いて、このような給付日数の決定方法をとったわけでございます。
  19. 寺前巖

    寺前委員 いや、あなたはだいじょうぶだ、根拠があるんだというけれども、出さぬのだから、あなた、わからぬじゃないの。違いますか。みんな不安がっておるのだ、どうも実態に合わないというて。だから実態に合うというんだったら合う資料を出しなさいよ。検討しようがないというておる。それだけのことだ。きわめて明確。現行制度がある。あなたのところから出たたまたまの資料を見ると、女子の場合は七十日という数字が出ておる。平均して七十日なんだから、これは七十日にしていいということにはならない。実態はやはり九十日なり何らかの制度がなければだめだということを意味している、この数字だけでも。何もそれをもらうということではなくして、それは制度としての保障の問題だ。地域のことも考えたら全体の制度としてはこれでいいのかどうかという、たまたま出ているたった一つ資料だけで不安になるから、これが変化が生まれていますというんだったら、変化が生まれている具体的な資料を出さなかったらこれは審議しようがないでしょう。信用せい信用せいといったって、信用しようがない。信用というのは科学的な裏づけがなければだめだ。私はこれは審議しようがないとはっきり言う、日数問題についてここで言うならば。しかも今度の法体系によるならば、現行では給付残日数が三分の二以上の者に対しては就職支度金を支給するという制度がある。あるいは残日数に対するところの、所定給付の日数の残日数の失業保険金給付が再就職の離職の場合でもちゃんと計算されるような現行制度はある。そういう制度が変わるというのが今度の法体系でしょう。そうなると、この六十日自身があれな上に、従来はこういう制度をもって就職を、少々、この仕事それじゃちょっと行ってみようかということで行ってみたところで、これがやはり考え直さなければならぬなということになったときでも、これでももとはちゃんと保障できるようになっているんだから、就職促進としてはいい条件があったわけです。ところが今度は、ともかく一たんもらってしまったら最後ということになってしまうわけでしょう、制度がくるりと変わるんだから。いままでのようにそういう保障がないんだから。考えることは慎重でなければならない、ところが慎重にしておったら日数は短くなっておるからどうにもいかぬ。結局とどのつまりは、泣きの涙で低賃金でどこでも行ってしまわなければならぬということになってしまう。私はこれはほんとうに労働者のためを思って、お互い失業したときに困るなといってかけ合っているところの、その精神をひっくり返す重大な問題だと思う。ほんとうに悪法だと私は思いますよ。保険というのは、お互い失業したときはかなわぬぜといって助け合う制度ですよ。その保険制度、安いところへともかく行け、ともかく目をつぶって行かないことには六十日で切れてしまうんだぞ、そんなばかな助け合いというのはないと私は思いますよ。しかもその六十日の根拠の資料がなければ、これは審議しようがない。こんな無責任な審議のしかたはないと私思いますよ。だから私は資料を出しなさいというんだ。そうしたらあなたは、なかなかたいへんだ。たいへんであろうとなかろうと、たいへんなのはお互いにかけ合っているところの労働者現行法と変わるというほうが、もっとたいへんですよ。あなたたちの仕事のたいへんさよりも、これで迷惑を受ける労働者のほうがもっとたいへんですよ。これははっきりしてもらわなかったら困るね。私はこの問題について、六十日という数字については出された根拠が明確にならない限り保留ですね。これは理事会でも一回おはかり願いたいと思う。この委員会において私は、根拠のないままでこの委員会が終わったということになったら重大問題だと思いますよ、委員長。これははっきりと資料を出してもう一度審議にかけてもらう、私はこれは委員長にお願いしたいと思います。理事会でおはかりいただけるでしょうか。
  20. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま寺前先生から御指摘の点は、問題が二つあると思います。  一つは、ただいまお答え申し上げましたように、三十歳未満の比較的若年層給付実績につきましては六十三日、男子の場合は四十六日、女子七十日で、お手元の資料にございますとおりでございます。これは四十六年の実績でございまして、その後求人状況が非常に好転してまいっております。先ほど申し上げましたように、昨年度は昨年末からことしにかけまして史上空前の求人倍率就職率を示しております。そういったことからこの給付実績はおそらく昨年暮れ、ことしの実績はこれよりはるかに低い数字になることは明らかでございます。これは御理解いただけると思いますが、そういうことから今後のこういった給付の日数を定めます場合に、実態により適合した形に重点的に就職のむずかしい人に重点を置いてやるべきであろう、こういう御意見がございましてかような給付日数の決定を行なったわけでございます。  ただいま御指摘の中にありましたもう一つの問題は、就職支度金制度給付残日数の関係でございますが、就職支度金制度が本来設けられました制度の趣旨からかなり逸脱した運用の実績が示されておりまして、本来就職をできるだけ促進しよう、できるだけ早く就職をしていただけるように援助をしようということが、実は比較的若年層のきわめて就職の容易な方々だけがこの就職支度金の支給を受けられる、逆にほんとうに困っておられる、就職のむずかしい中高年以上の方々は、実はこの残日数制度関係で、せっかくやっとの思いで就職ができても、そのときはもうすでに就職支度金をもらえなくなってしまう、こういうことになっておりまして、実情と全く相反するような結果になっております。そういうことから、就職支度金制度を、今回は残日数との関係なしに、たとえば給付日数の最後の日に就職されても就職支度金を差し上げる、こういう制度に改めたわけでございます。  同時にもう一つは、ではちょっとやってみよう、しかし都合が悪かったから、ぐあいが悪かったからまたやめたという場合に御破算だとおっしゃいましたけれども、そうじゃございませんで、いままでどおり、やはり前の受給期間内であれば、前回の離職に基づく受給資格による給付日数がそのまま継続して支給を受けられる、これは現行と変わりございませんので、その点につきましていま御指摘になりました点は、私は先生ちょっと何か誤解されているのじゃないかと思います。その点は十分確保してまいるつもりでございます。
  21. 寺前巖

    寺前委員 私の言うておるのは、六十日の数字は根拠がちょっとも出てこぬじゃないか、そんなもので審議できるかと言っているんだ。根拠の数字を出さぬ限りは審議できぬじゃないか。これはみんなが当初から言っておったんだ。だから、この問題については私は、このままで委員会審議終了というわけにいかぬでしょう、だから理事会でこれをおはかりください、これは私個人の問題じゃないのだから。みんなが心配になってきておった問題だ。だからちゃんと資料を出して説得がきくようにここでしてもらう必要がある。それは男女別の給付実態がどうなっているのか、それから求職求人状況について変化が生まれているという以上は、生まれてこういうことになっているというのを府県別にちょっと明らかにしてもらいたい。そうでなかったら、六十という数字は適当なのかどうかわからぬじゃないか。何ら根拠がないじゃないか。先ほどから何度聞いておってもそれは出てこない。出てこない以上は、理事会としてこのままでやっていくわけにいかないということになるじゃないか。委員長、私の問題提起はそういうことです。
  22. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この問題については、あなたの御疑問もあるようでございますが、ほかの委員さん方からもいままでだいぶ問題として提起されておりますので、私のほうでもいろいろまた検討をしたい、こう思っております。
  23. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ、この問題は保留です。資料が出ないことにはどうもならぬ。いま大臣もそういうふうに言っておられますから、この問題については保留します。委員長よろしいですね。このままで審議終了というわけにいきませんからな。
  24. 野原正勝

    野原委員長 理事会で検討いたします。
  25. 寺前巖

    寺前委員 同時に、いまから四十年前の一九三四年に出たILOの第四十四号条約というのですか、あそこでも、もういまから四十年も昔の話だけれども、一年について七十八労働日を下回ってはならないというのを失業保障制度の問題として提起をしていると思うのですよ。その後一九五二年に百二号条約というのがありますが、これは発展途上国を含むところの条約ですから、平均という形に言い直してきていますけれども、いずれにしても七十八労働日を一つ段階にしていると思う。国際条約の側から見ても、GNP世界第二位とか、そういうようなことがいわれている日本の国が、この四十年も昔に約束し合ったところのこの水準を下回るような法律を出すということについては、恥ずかしいという気にならないのかどうか、これは労働大臣、どうですか。
  26. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ILOの百二号の条約におきましては、給付期間を平均十三週、御指摘のように七十八日、こういうことでございますが、雇用保険法案におきましても、基本手当の所定給付日数を算術平均いたしますと、これを当然上回っておるわけでございまして、この条項は私どもは満たしておる、こういうふうに考えておるわけでございます。  同時に、百二号条約に定められておりますところの最低基準と申しますか、この基準は、失業した場合にその失業した人たち失業期間中の生活の安定をさせるために、必要にしてかつ十分な措置を講ずるように、こういう趣旨だと私ども考えております。そこで私どもは、先ほど来申し上げておりますように、この失業した人たちのそれぞれの事情に応じた、その就職難易度によって必要な期間を定める。それがいま御指摘になりましたような基準を上回っておれば、私どもはそれで十分であり、同時にこれから失業保障機能を強化していこうという場合に、そういった実態に即してそれぞれの分野における保障機能給付日数の決定あるいは給付率、こういったものを十分適合するような体制を今後とってまいる必要があろう、こういうことで、給付日数の決定あるいは給付率の定め方というものを今回のように改めたわげでございまして、私どもは現行制度よりもこの雇用保険法におきます給付日数のきめ方、給付率のきめ方のほうが、失業者生活の安定という観点からは、私はよりその目的に沿うものだ、かように考えておるわけでございます。
  27. 寺前巖

    寺前委員 あなたがいま言ったところのものは、平均云々というものは、一九五二年のILOの百二号条約ですよ。これは一九四五年以後の発展途上国という問題が加わった段階での、それを配慮した内容ですよ。四十年も昔に、発達した資本主義国や発達した社会主義国を含めたところの、その段階の、四十年前に相談した内容、その内容をもっと考えてみなければいかぬ。日本の国は発展途上国じゃないでしょう。この日本の国において、最低保障としての失業期間中の生活保障をどうするのかという問題において、あらゆる分野において、平均じゃないですよ、あらゆる分野において最低保障として十三週というものを考えなければならない。それをもっと上回ってあたりまえだ。これが発達した資本主義国におけるところの社会保険制度でなければ恥ずかしい思いをせぬのかということを私は言っているのだ。ILO条約に適合するとか適合せぬとか、そんなことを私は言っているのではない。GNP第二位というようなことを言うのだったら、それにふさわしいだけの社会保険というものを考え直す必要があるのではないか。四十年前に言ったところの話の内容と比べてみて、恥ずかしくないか。私の言っていることはきわめて明快です。恥ずかしいでしょう。私は年齢の高低を問わず、すべて保障最低というのは、何ぼ何でもそのような姿でなければ話にならぬじゃないか。労働大臣どうです。
  28. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもは、給付日数にいたしましても給付の額にいたしましても、必要な向きについてより必要なように十分手厚くする。社会保険の原理からいたしましても、必要な者に必要な給付をするというのがまず第一前提でございます。  そういった意味におきまして、今後の失業情勢就職難易度、こういったことを考え合わせますと、やはり人口の高齢化に伴ってこれからますます就職がむずかしくなるであろうと考えられる中高年の方々に、あるいはその他の身障者でございますとか、いろいろ社会的な要因に基づく就職の困窮度を加える人たちについてより手厚くする。比較的就職の容易な若年層につきましては、その実態に応じて給付日数を定める、こういうことにいたしたわけでございまして、私どもは定められた水準というものを十分勘案しながら、それを確保しながら、なおかつ社会保険一般的基本原理に照らして、よりベターな制度になったもの、こういうように考えておるわけでございます。
  29. 寺前巖

    寺前委員 それは何ぼ言うたって筋の通らぬ話じゃないか。これは四十年前に十三週にしましょうといって、十四カ国の国の人々がそうだといって、もう受けて立っている国がある。それにもかかわらず、GNP第二位の日本がそういう立場に立たないというのは恥ずかしい話だというふうに労働大臣がお考えにならないとしたら、ほんとうにひどい話だと私は思いますよ。これは指摘にとどめておきます。  その次に、十六条の「基本手当の日額」ですが、ここで二つの分類をやって、基本的に百分の六十とこう置いて、そして六千円以上は高い分野だ、六千円以上七千五百円以下の賃金日額は百分の六十から百分の五十にする、それから千五百円以上三千円以下のものは百分の七十から六十にする、こういう段階をつくっているわけですね。これでいくと、賃金日額の六割以下というところが六千円以上の場合に出てくるというのがこの法律の条項だと思うのですね。そうすると、これはどういうことになるのだろうか。労働基準法の二十六条の「休業手当」では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とありますが、休業補償の問題として、使用者の責めによって休業しなければならない事態のときにはこういうふうにしなければならないという問題が出ているわけですよ。そうすると、働くことが不可能となった労働者とその家族の生活保障というのはせめて六割はなければだめなんですよということなんです。労働基準法というのは労働者最低基準であって、この法律の最初に、それ以上に高めなければならぬということをうたっていますよ。私は日本における一定労働者の今日の到達点を示すものが労働基準法だと思う。その精神から見たときに、ここで六割以下のものをつくってくるという考え方は労働基準法の精神に反するんではないだろうか、その点はどういうふうに思われますか。
  30. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 労働基準法の休業手当あるいは休業補償の六割という考え方と、失業期間中の生活安定のための保障としての失業給付給付率の問題は、一応、いま先生の御指摘によりますと、表面的にいいますと同じ数字であるべきではないか、こういうふうに受け取られますけれども、実は基準法によります休業手当については、身分継続中、要するに雇用期間中の補償、最低基準でございます。一方は、失業者失業期間中の生活の安定、再就職までの生活のかてとして給付をどれだけすべきか、これは国際水準におきましてもおのずからいろいろな定め方がございます。ILO等におきましては最低通常、賃金の四〇%というようないい方もされております。今回の雇用保険法におきましては、従来は一律前職賃金の六割ということでございますけれども、私どもは失業者生活実態というものを十分考えた上で、中位以下の比較的所得の低い階層についてはできるだけ前職賃金に近い給付率を採用することによって失業期間中の生活を安定させたい。しかしながら比較的賃金の高い層につきましては、たとえばいま法案にございますように、六千円以上というのは月収十八万円以上でございます。そういう人についても同じ率で保障するのが社会的に妥当であるかどうかというような観点から、失業者という立場に立ってできるだけ失業期間中の生活安定という見地から公平な保障ができるようにしたいということで、いわゆる上薄下厚、低いほうについてはより高い率で、賃金の高い人たちについては若干低い率でという考え方をとったわけでございます。  同時に、先ほどの基準法上の諸規定との比較でございますが、基準法の休業手当は平均賃金でございます。したがって、その算定の基礎になる六割の分母になります賃金の額は、失業保険あるいは今回の雇用保険法におきます給付率の算定の基礎となる賃金とはかなりの開きがございます。この雇用保険法におきます賃金日額は、賃金総額制をとっておりますので、ボーナスその他の基礎手当が全部含まれていまして、平均賃金よりはかなり高いものになっております。したがいまして、かりに六千円以上の一番高いところで五〇%という給付率が適用されます人たちにつきましても、基準法の平均賃金の六割、いわゆる休業手当の額よりはかなり高い実質額になるものと私どもは考えておりますので、先生のような御懸念については十分解消していける、かように考えておりすす。
  31. 寺前巖

    寺前委員 基準法のその計算の方式自身の問題も問題だけれども、日本でいま行なわれている労災保険にしても、それから健康保険の場合も——健康保険の場合はまた変わってきますよ。標準報酬だからね。これら全体は考えなければならない問題があるのですよ。いずれにしたって全部六割という線は出ているのですね。今度労災の場合には上積みをやろうというわけでしょう。しかしこれは、もしもいまのあなたの計算方式でいうならば、実際上の収入等の関係でいうたら六割にも満たないんじゃないか。今度は、労災保険の改正の問題に至るとそういう問題があるのです。だから、そういう問題は、基本の計算のあり方を、収入実態との関係において六割以上のものにするように改善をしなければならない性格だと思うのです。これは全部違いが起こっています。それは一応横に置いておいて、問題は、たとえば今度の労災保険法の場合にも、休業八日以上の者の休業補償は、現行の六〇%に上積みをしましょうという提案を労災補償の法律の改正案として持ち出してきているわけでしょう。それは内容的には計算の方式上まだ問題があるにしても、いずれにしても全部、一応の基準は六割ということをいっているんだよ。ところがここで、収入によって六割を割る分と六割以上の分というふうに分けてくるという考え方が導入されてくると、全体の最低保障という問題に対する基準に重大な影響を与えると私は思うのです。最低保障というのは、いかなる場合があってもやはり最低保障で、その水準はかくのごときものであるという意味において六割という提起をして、各分野が六割で来ている、その六割の中身こそ改善していかなければならない性格であって、六割を下回ってくるような計算方式というのは問題があるんじゃないだろうか。全体の保険制度のあり方から見て、ここにだけこれが取り上げられているというのは、むしろおかしいんではないだろうかと私は思うのです。  そこで、先ほどから、六千円以上の人の問題について月十八万円という計算を言って、こんな高い層にまでというお話をしておられましたね。しかし、はたして六千円以上というのが高い賃金層になるのかどうか。これはいまの時点の話じゃないんでしょう。賃金に変化が起こってくるんじゃないですか。今日法律を出してきた時点と来年の段階とでは、これはもう賃金も変化が生まれてくるでしょう。三十日として計算して十八万円ということを言われたんだと思うけれども、日額六千円というのは高い水準だというふうにはいえない段階になってくるんじゃないだろうか。そういうことを考えると、この計算方式自身も検討してみなければならぬ問題を含んでいるのではないか。いずれにしたってやはり六割とか七割とか八割と水準を、全体として給付を高めていくという角度から生活保障というのを見ていかなければいけない性格なのではないだろうか。これは問題指摘にしておきます。大臣、どうでしょう、いままでのところの問題について。
  32. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 給与はだんだん上がることが望ましいことであります。そういう場合にまた私たちはそういう対処するような考え方を持たなければならぬ、こう思っております。
  33. 寺前巖

    寺前委員 この法律の実施は、いますぐの実施の話じゃないでしょう。そうすると、これはすぐに配慮するの。どういうように配慮するのですか。明らかに変化が生まれていますよ、この計算されたときの状況とは。どんなふうに配慮するつもりです、いま大臣おっしゃったものを。この六千円というのは高い水準として提起されているのですよ。その高い水準として提起されている問題の実施時期がいまじゃないのだから。だから、どういうふうに配慮するのです。
  34. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは、法案は五十年四月ということが目途にされていますが、給与の上がることは、これはお互い労働者のために望ましいことでありまして、またそういう実態変化した場合には自動的な変化というものを私たちも考えざるを得ない、こう思っております。
  35. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 御指摘のように五十年四月実施でございます。六千円、最高七千五百円、二十二万五千円、これはそういった先生の御指摘のような点も十分私どもといたしましては考慮した上で、一応こういう数字が出されておるわけでございます。と同時に、雇用保険法におきましても自動スライドの規定がございまして、この基礎になります賃金日額の計算の方法、その範囲、あるいは自動スライド制度、これは私どもは他の社会保険制度のいろいろな制度に先がけてこういう制度がとられておりまして、その意味におきましては最も前進した制度だ、かように考えておりますが、今後賃金の上昇につきまして先生の御指摘のような問題、もちろんございます。五十年四月、実施されました暁に、おそらく五十年四月、五月にかけて春闘があるじゃないか、そこでまた上がった場合どうだ、こういうことでございますが、それにつきましては自動スライド規定によりまして当然引き上げが行なわれる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  36. 寺前巖

    寺前委員 その自動スライドの時期というのは、五十年四月実施よりもあとの段階の話でしょう、法律からいうならば。この法律の十八条、毎勤統計によって二〇%の変動、その状態が継続すると認めるときには上昇あるいはこれに応じてスライドをやりましょうというのが法律ですから。ところが、五十年四月段階ではたして高いという話になるのかどうか。さっき、どうかと思います、こうおっしゃったので、何をそのときが高い水準だというふうにいえるのだろうかというふうに私は疑問を持つので、あえて聞いてみたので、一体この分類というのはどういうふうにして計算したものなのか、ちょっとそれを教えてほしいと思う。
  37. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この雇用保険法案におきまして、基本手当いわゆる失業給付給付率を上薄下厚ということで、比較的賃金の高い層——いま高いのかどうかという御指摘でございますが、絶対的に高いと申し上げているわけではなくて、全体の賃金分布の中で比較的高い層、中位から比較的低い層、そういう人たちに対して、上のほうに薄く下のほうには厚く、こう申し上げているわけでございます。そこで中位等級を六割から七割、中位から上につきまして六割から五割、こういうことでございますが、最低の賃金日額を千五百円としまして最高を七千五百円、こういうふうにしているわけでございます。それで最低の千五百円につきましては現在の地域別最低賃金の平均値あるいは現在の失業保険最低賃金日額、四十八年十月に改定が行なわれましたそれを基礎にいたしまして、それからの賃金上昇率を見込んだ上でこの千五百円というものをきめておるわけでございます。そういった同じような考え方で賃金分布の中の第一・四分位と第三・四分位をとりまして、千五百円、三千円、六千円、それから上、こういう形でこの賃金等級の区分を決定いたしたわけでございます。
  38. 寺前巖

    寺前委員 いまのお話の中にあったけれども、その基礎を、地域別最賃平均値とか最低日額、基礎賃金日額を四十八年九月十日の段階を基礎にして計算をしているのですね、あなたのところにもらった資料を見ると。そうすると、地域別最賃の平均値という最賃を出す場合には、入時間の定時労働の基本賃金をいっているわけでしょう。ですから、そこには年末手当とか残業料などというものが賃金日額の対象となって収入の計算方式の中に入ってこないわけでしょう。ですから基礎の数字自身に、私はちょっとこれは実態よりも低いという数字が出てくるのではないかという疑問を感じたのが一つ。  それからもう一つは、賃上げ率を一五%を二回としてこれが出されているところを見ると、物価、賃金の現実の上昇という問題から考えると、たとえば昨年の賃上げの実態というのは二〇%になっている。ことしの場合にはどういうふうになるのか知らないけれども、相場は三〇%ぐらいになってきているのではないだろうか。そうすると、現実の実態の基礎計算をやられた一番基礎の最賃の金額は低いわ、その後の上昇率は低いわということになってくると、五十年ですか、四月の実施時期、そのときの推計の準備をしておった数字自身がきわめて低いという数字になって出ているのではないか。それが基礎になってのスライドということになってくると、それ自身がきわめて低いものになってしまう。ですから五十年の四月一実施期におけるところのそのときの推定値自身が、すでにもう狂いが起こっているというふうに、私はこのいただいた資料を見ると感ずるのですが、その点についてはどういうふうに思われますか。
  39. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま申し上げましたように、地域別最賃の平均値と現行失業保険におきます賃金日額の最低額、これを根拠にいたします数字から推算をいたしておりますが、その場合、地域別最賃、これは一応の参考でございます。現行制度による最低日額が昨年の十月現在で一千八十三円、これをもとにいたしておりますが、そこから先生いま御指摘のとおり一五%二回、そこで昨年の十月からその後に上がった賃金の上昇の度合い、内容はことしの四月の賃金上昇ということになるわけでございます。それが来年の三月末の時点で幾らになるかということでございます。確かにことしの春闘で、いろいろと予想されておりましたよりは上回った賃金増額が行なわれておりますけれども、私どもの一応の推定の計算によりまして、一五%二回ということで私どもは大きめに計算をいたしたつもりでございます。それをなおかつまるめて切り上げて千五百円という計算をいたしておりますので、私どもは大体この線で十分であろうと考えておりますが、同時に、この春闘で約三〇%前後の賃上げが行なわれている。これが全体の平均値に影響してまいります寄与率は、大体いままでの過去の数年間の実績で三分の二程度、それから推算しますと約二〇%程度ではないか。そういたしますと、いま申し上げましたように昨年の十月の額を基礎にいたしまして二回の上昇を見込んだ。こういうことによりまして私どもは今後これから来年の三月までの賃金上昇の推移を推計いたします際には、これで私は十分実情を確保できるのではないか、かように考えているわけでございます。
  40. 寺前巖

    寺前委員 ぼくはいまの考え方というのは、基本的にはやはり問題だと思いますね。労災保険最低補償を今度は四月一日から千三百八十円にしていますね。私は、これは当然来年の四月になったら千五百円以上の数字にならなかったらおかしいと思いますよ。実際そういう形が出てくると思いますよ。そうすると、ことでおたくは二回にわたるところのアップの計算をやって出てくる推計しておった数字は大体合うてる、こう言うけれども、私は、これが計算の基礎になっていくというのは、やはりちょっと低いんじゃないか、そういうふうに思いますよ。ですからこれは、六千円以上は高い部類に入るんだとさっき言われたけれども、実態の面から見ても、労働者は来年の四月になったら、何が高い分野だ——もちろん低い分野たくさんありますよ、広範な国民層の中だから。だけれども、従来失業保障対象になった人々の中から言うならば、決して高い層という分類には入らないというふうに言わざるを得ない結果が生まれるのではないだろうか。私はこれも懸念するところのものであって、この賃金構造の基本から調査した推計のきちっとした資料をひとつ出してもらって、わかりやすくこれも説明をしてもらわないと、こういう数字のやつは一番現実的なんだから、ちょっとこれは説得に値しない。いままでもらった資料だけでは私は理解することがむずかしい。これについてももう一度わかりやすく、現状の賃金構造がどういうふうになっていて、四十六年、四十七年の賃金構造の基本調査からどういうふうに推計されるという変化を示してもらう資料を出してもらって説明してもらいたい。その資料がないから、正直言うと見ようがないのです。賃金構造をあなたたちはどういうふうに見て出してきているのか。実態から見るとこれは合わぬことになる。私にはそういうふうに思われてしかたがない。ともかく賃金構造の分布をどういうふうに推計するのか、四十六年、四十七年、そして今後どういうふうに変化をするというふうに見るのか、その資料をすみやかに提出してほしい。これは前からあなたのところへ要求しておったと思うんですよ。ないと言われておって、さっぱりわからない。やはり推計する以上は、推計資料を出さなければ説得がきかぬのじゃないの。だから、分類で高いとか低いとかというのは、私はちょっと信用できぬのだよ。資料はすぐに出せますか。
  41. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 賃金構造基本調査はございますから、お手元にもおそらくおありだと思いますし、出せということであれば後ほど差し上げたいと思います。  私どもこの推計は、先生いま御指摘になりましたように、現行失業保険制度最低日額の千八十三円、これは昨年、四十八年十月に決定されて現在行なわれているわけでございますが、これにことしの四月の時点で賃金上昇が幾ら見込まれるか、と同時にもう一つ、一五%の二回と申し上げましたのは、来年の三月三十一日で一応現行失業保険制度が終わりになって、新しくこの雇用保険法によります賃金日額の等級づけランクが実行に移るわけでございますが、その時点での千五百円を推計いたしましたのは、いま申し上げましたように、昨年の十月の千八十三円を一五%を二回かけて推計をいたしたわけでございます。つまり四十八年十月からことしの十月までが一五%という推計をいたしております。さらにことしの十月から来年、五十年の十月までを一五%上昇という推計をしたわけでございます。その来年十月の推計値を来年の四月に引き戻したわけです。  そこで問題は、ことしの四月の上昇率が三〇%じゃないか。それは先ほど申し上げましたように、全体の寄与率からいたしますと約三分の二というのが実績でございます。そこで一五%と推計したのがあるいは低いかもわかりませんが、二〇%——三〇%という数字が確定いたしました際にその寄与率を過去数年間の実績で三分の二として二〇%といたしましても、来年の十月までもう一回上昇率を推計いたしております。それを四月に引き戻したということでございますので、その推計については全体として誤りはない、私はかように考えます。と同時に、来年の四月一日で等級区分が確立いたしまして施行に移りまして、来年の四月、五月にかけての来年度の賃金上昇、いわゆる賃金増額が行なわれました場合、それは今回の法案によって定まりました賃金区分を基礎として、その上昇率分が、先ほど大臣からお話がございましたように、自動変更の規定によって当然反映されるわけでございます。したがいまして、私どもは、現在の法律によります賃金基礎日額から今後の賃金上昇を推計した上で出しておりますので、その点もし御懸念ございますならば、先生のほうで賃金構造基本調査なり本年度の春闘の実績等の数字なり十分御検討いただきまして御批判をいただきたい、かように考えます。
  42. 寺前巖

    寺前委員 それでは、わかりやすく資料をひとつ出してください。  私、ついでに、いまスライドの話が出たからこの機会に聞いておきたいのですが、妊娠、出産等の場合はこの一年というのを延長するわけでしょう。その場合にはスライドはするのですか、しないのですか。ほかのはスライドをする。その時点にもらう資格が発生しているものを延長することが起こった場合に、延長をしたときに給付を受けるのはスライドしてもらうことができるというのがこの法案ですか、それはスライドの対象にならないのですか、どっちですか。
  43. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 自動スライド条項によって賃金日額、保険給付失業給付の基本手当の日額が変更になる。その変更になった限りにおいて、その該当するものについては適用になるわけでございます。
  44. 寺前巖

    寺前委員 ちゃんといまもらったらこれこれだという金額があるでしょう。ところが妊娠、出産のためにあとでもらったらよろしい、こうなるわけですね、その時期を延ばしますから。そのもらうときには、いまもらうその金額をスライドして変化が起こってくるのですか。その点はどうなるのですか。
  45. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 一番わかりやすい簡単な例を申し上げますと、たとえば千五百円が千七百円になる、そういう場合には千七百円が適用される、こういうことでございます。
  46. 寺前巖

    寺前委員 いま千五百円でもらえるのを、それを一年先だったら、その金の値打ちの変化が生まれている……。
  47. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この失業給付の基本手当の日額は物価スライドではございませんで、ちょっといまの千七百円という例は適当でございませんが、二〇%スライドして千五百円が千人百円に引き上げられることになります。そういたしますと、いままで千五百円の等級でもらっていた人は当然千八百円の等級で給付を受けることになる、こういうことでございます。
  48. 寺前巖

    寺前委員 休業したときは千五百円でもらう計算になっておった。その後連続の毎月統計で二〇%の変化が生まれて、それで計算方式がスライドするということになってきた。これはその後の事態なんです。その休業期間中に、いわゆる一年間の期間中にもらわぬといて、もっと先になった。したがってそこには、スライドしたものが発生して千五百円が千八百円になっておった。その場合にもらうときには、これは前のときだったら千五百円でもらっているものが、そこで千八百円に変化している。三年先になったらそれが二千円になっておった。で、二千円を基礎としてもらうというふうにそこでもやはり変化が休業期間中については生まれるのですか。計算をして、もらうときの話ですが、わかりやすく言ってください。
  49. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま寺前先生御指摘になった限りにおいては、そのとおりでございます。要するに賃金等級は千五百円が最低で、それが千八百円になった。それがさらに二〇%上がりますと二千百六十円になる。その限りにおいてはその等級が適用されるということでございます。
  50. 寺前巖

    寺前委員 その等級が適用されてそれをもらうというわけだね、その期間中にスライドされて。それはこの法律でそうなっておるのかね。これ二十条でしょう。二十条でそうなるかね、これ。「基本手当は、この法律に別段の定めがある場合を除き、当該基本手当受給資格に係る離職の日の翌日から起算して一年の期間内の失業している日について、……限度として支給する。」、間違いないかね、それで。
  51. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま一番わかりやすい例で申し上げまして、千五百円という等級で失業給付を受けるべき人が一年後あるいは二年後に給付を受けようとしたときに、自動スライド条項によりまして二〇%引き上げられた。そうしますと、千五百円は千八百円になるわけでございます、二〇%としました場合に。そうしますと、その千五百円の賃金日額が千八百円に引き上げられますので、それに基づく給付が受けられることになる、こういうわけでございます。
  52. 寺前巖

    寺前委員 よくわからぬのですけれども、あとで研究してみましょう。  それで、今度の法律で、いままで中央職業安定審議会というのですか、職安審というのがありましたね、中央の。この諮問をしなければならないことが幾つかあったと思うのです。二十五項目あったんじゃないかと思うのですよ。もうちょっとあったかな。私の見たところでは、いままでの失保では二十五項目ぐらいあったと思うのです、この諮問をしなければならないことが。ところが、今度のこの、七十二条になりますけれども、かなり諮問事項からはずされてきているんじゃないだろうか。ちょっと見たところ、十七条の賃金日額の改定とか十八条のスライド措置の実施とか、三十条の支給方法及び支給期日などについて、−これが諮問事項からはずされてきているんじゃないだろうか、労働大臣の権限に全部なってきているんじゃないだろうか、私はそういうふうに思うのだけれども、労務行政研究所で出している「失業保険法」という、住栄作さんの序文の載っている本があるのですよ。この本を見ると、非常に強調しているのですね、諮問機関について。「失業保険事業の運営は、被保険者及び適用事業主にとって大きな利害関係があるから、また、失業保険法目的からして、公共の福祉に大きな関係を持っているものだから、このため、労働大臣は、失業保険事業の運営に関する重要な事項を決定する場合には、あらかじめ中央職業安定審議会意見を聞かなければならない」。それは私は、失業期間お互いに助け合っていこうぜというのですから、その労働者代表も含めるところの職安審議会で重要事項について十分審議するということは当然のことだと思うのです。大体この制度ができた当初は、審議会じゃなかったけれども、失業の問題について対策する委員会があって、労働者委員が半分で、学識経験者と関係者のほうが半分だというふうに、労働者というのは非常に重要な位置について失業問題に対する委員会をつくって戦後出発しておったと思うのですよ。そういう時期がたしかあったと思うのです。何かの本で読みました。何かそういうのがあったよ。だから、大体こういう諮問機関の活動というものを何で減らしていくのだろうか、何でこういうような大事な問題を利害関係者である審議会からはずしていくのかということについて私はちょっと疑問に思うので、説明してくれますか。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  53. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもは、この法律施行に関しましては、当然職業安定審議会の御意見を尊重しながら、あるいは重要な問題については審議会に御相談をしながら運営をはかってまいるべきでありますし、私どももまたそういう覚悟をしているわけでございます。ただ現行制度におきまして、支給方法の特例でございますとか日雇い被保険者の適用地域の指定といったようなきわめて定型的な形式的な諮問事項がたくさん羅列してございます。こういった問題につきまして安定審議会におきましてもいろいろ御議論ございまして、実は今回の雇用保険法案審議の際に、審議会の労使公益三者一致した意見で、こういったきわめて形式的な問題については審議会に一々諮問をする必要はないんだ、それよりはむしろ、この法律に掲げていない条項であっても、この法律の運営上、運用上重要な問題については当然諮問すべきである、こういう御意見でございました。私どもも、たいへんごもっともな御意見でございまして、雇用保険法の七十二条に「中央職業安定審議会への諮問」という条項がございますが、ここに掲げてあります各条項の諮問事項はいわば例示でございまして、最後にありますように、八〇ページの二行目に「その他この法律施行に関する重要事項について決定しようとするときは、あらかじめ、中央職業安定審議会意見を聴かなければならない。」、こういうふうに義務づけられております。私どもは、そういったようなきわめて形式的な、基準をきめて、その基準に基づいて具体的に決定をして、それを施行に移すというようなきわめて形式的なものについてはもう審議会に一々諮問、答申というような形をとる必要はない、それよりはむしろ、その基準をきめるような重要な問題のときには、かりにたとえ法律上にその条項の指定がなくても当然審議会意見を聞くべきである、こういう御意見でございますので、私どもは今回の雇用保険につきましてそういったいわば事務的な、審議会の御意見に基づきまして事務的な条文整理をいたしまして、その中で特に重要と認められるものについて例示的に諮問事項として掲げたわけでございます。そのほかもちろん予定されておるものもあるでございましょうし、現在予定されなくて今後運用上いろいろと問題が出てまいります、そういった今後出てまいるでありましょう重要な事項については、当然審議会意見を聞かなければならない、こういうふうに考えておるわけでございまして、先生の御指摘のように安定審議会諮問事項をできるだけ削って、審議会を軽視して大臣の権限を増大しよう、こういう考え方では毛頭ございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  54. 寺前巖

    寺前委員 私はたとえばさっき十八条のスライド問題を言いましたが、十八条のこのスライド問題というのは、従来は諮問の事項になっておったわけでしょう。ところが今度諮問の事項を抜いた。抜いたこの中身を見ると、「その状態が継続すると認めるときは、」ということで、「認める」ということで労働大臣の悪意的権限になってしまうわけでしょう。自動じゃないんだろう。「認める」というんだから。「継続すると認める」と、認める判定をするわけでしょう。こういうようなものは認めなければいかぬじゃないかということも含めて従来審議会検討事項の中に入っておるわけでしょう。ところが、今度はそれを労働大臣だけがその状態が継続すると認めるという権限にそうでないんだったら、別に「認める」なんということは要らぬことじゃないか。もしも整理したというんだったら、きちんとそういうふうに整理したらいいんであって、何で労働大臣の恣意にこれをまかしてしまうのか。私の読み方が違うておったら別ですよ。私は削る理由というのは一つもないんじゃないだろうかというふうに思うのに、きちんと報告して、こういう状態にありますからよろしゅうございますか、よろしい、じゃ労働大臣のほうにそういうふうに申し伝えますということで、従来やってきたやり方にきちんとしておいたらいいものを何でそういうふうにするんだろうか。私の読み方が間違うていますか。
  55. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまのスライド条項の発動のしかたについては、確かにいろいろ審議会でも御意見ございました。現行失業保険法のいまお読み上げになりました条項からいいましても、一体スライド条項が適用されるような状態にいつからなって、いっそういうことをすればいいのか。労働大臣がそういうふうに認めたときは、審議会諮問をして、その意見に基づいて答申をいただいて、それによってスライドを実施する、こういうことでございます。この問題の取り扱いにつきまして、実は先般来審議会でいろいろと御議論をいただきまして、そのスライド条項を適用する、発動する状態の認識あるいはその時期、そういったことについて発動の基準をもっと明確にする必要があるということで、審議会でその点を御検討いただいて、どういう状態になったらこの自動スライドの条項が発動されるべきであるか、その際に、そのスタートの時点と実施の時期とどういうふうに確定すればいいのか、そういった考え方基準を明らかにする必要があるということでいま御検討いただいております。私どもはこの点につきましても、今回の雇用保険法の条項から抜けておるという御指摘でございますけれども、決してそういうわけではございませんので、これも審議会の御意思によってそういう形でより明確にしていこう、こういうことでもうすでに検討に着手いたしておりますし、審議会でも御検討いただいておるわけでございます。こういったように条項として上がっておりますものはもちろん、上がってなくても、そういったきわめて基本的な重要な事項がほかにもございます。そういった問題は当然安定審議会の御意見を聞いて、その答申に基づいて運用をはかっていく、こういうことで方針に変わりはございません。御懸念の点は、全くそういった実態にならないことをひとつ御理解いただきたいと思っております。
  56. 寺前巖

    寺前委員 いや、ことばで御理解いただきたい、そういうように考えてますと言ったって、法律には前は諮問事項としての権限として明確にあったわけでしょう。そこでその権限としてあったものの中で審議をして、またいわれておったいろいろな問題がある。それをわざわざはずしてしまったら、権限としてもなければ、単に運用上の問題だけでやっていくということになったら、いまの時点はそういうつもりでおりましたと言ったって、法律になってしまったら全然違うのだ。だから法律的にもそういう重要なものを何も剥奪する必要はないのじゃないだろうか、私はそういうふうに思えてしかたがない。あまりにも中央審議会の権限事項が減ってきているじゃないか。疑問に思うから私は聞いておるのです。読み方が違うならば教えてほしいということを言っているのであって、これは何も権限からはずしておくことはなかろう、法律的に諮問事項として。だから諮問事項ははずさなくたって、やり方で具体的に合うように運用しますと言うのだったら、合うようにしたらいいのであって、諮問事項は諮問事項としてきちっと残しておくのが当然じゃないだろうか。私はそう思うのだけれども。
  57. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま申し上げましたように、定型的な形式的なものは諮問事項からはずせという審議会の御意見でございます。その限りにおいて私どもははずしたわけでございまして、いまのスライド条項については現状でそのまま残っておっても、いま申し上げましたような審議会で御検討いただいておる点を除けば全く同じであります。したがって、それ以上にもっと基本的に明らかにしようという方向でいま審議会で御検討いただいておるわけでございまして、諮問事項として法律の条文からはずれた部分については、審議会のそういうものははずせという御趣旨ではずしておる。私どもははずしたくてはずしたわけではございません。また逆に、残しておけばいいじゃないか、運用でとおっしゃるのですが、法律諮問事項として残れば私どもは運用上これを諮問しないわけにはまいりません。審議会はそんなきまりきったことを諮問したってめんどうくさい、こういう御趣旨でございますので、私どもはそういうふうにさせていただいたわけでございます。
  58. 寺前巖

    寺前委員 私はやはりきちっと諮問事項というのは、たとえばいまのスライド問題などというのは重要な一つじゃないかと思うのだけれども、これが労働大臣だけの恣意によってきめられていくという。それは自動的にやってしまうのだ、きわめて事務的なものだ、そんなものは報告する必要ないというのだったら話は別だ。認めるか認めないかというような判定にかかわるような問題が伴っているようなものはやはり相談すべきではないか。何でもかんでもやれと言っているのではないのです。幾つかそういうものがずっと減ってきている。その中で気になった一つを見ると、スライドの問題があって、そこの条文を見ると何か労働大臣の恣意によって動かされるように読めるから、それでちょっと聞いてみた。そういうように読めるようなものは、それだったらちゃんとおはかりをしてきめておくというのが民主的ではないだろうか。私の読み方に間違いがあったのだったら話は別だ、こう言っておるのです。
  59. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生の御指摘は間違いがございます。
  60. 寺前巖

    寺前委員 どこが違う。
  61. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行諮問事項は、労働大臣がそういう必要が至ったと認めるときは諮問しなさい、諮問内容は、こういうふうに変更しますという諮問です。したがってこれがなくなっても、この諮問事項が今回の法案で落とされても、労働大臣がこういう自動変更すべき状態にあると認めたときは、それに基づいて自動変更するわけです。そこで問題にしておりますのは、一体自動変更するような状態にいつなって、いつそれを自動変更すべきか、そういう点は現行法でも全く触れられておりません。そのことは諮問事項になっておりません。したがって審議会は、むしろ自動変更の措置そのものは形式的に二〇%上がれば当然二〇%上げなければならない。二五%上がれば二五%上げるというきわめて計算上の問題でございます。そろばんを入れてその結果が出たら、それをそのとおりにするだけのことなんで、むしろ問題はいつの時点で自動変更を必要とするような状態になったのか。それをもとにしていつの時点で、そのスタートした時点から一体どれくらいの期間をおいて自動変更の措置を実施に移すべきか、そういった自動変更の条項の実施の基準を明らかにする必要がある、その点を審議会検討してきめよう、こう言われているわけであります。そこでいまおっしゃるように、現行の規定どおりに諮問事項として残しましたとしても、いつの時点でそういう状態が発生したか、それをもとにしていつスライド条項を実施に移すか、そういったことは諮問事項になっていないわけです。現状の規定はなっておりません。ですから先生の御指摘は間違っておりますと申し上げたのです。
  62. 寺前巖

    寺前委員 そうするといまのような内容は、この法律ではどこで持たそうということになるのですか。
  63. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 したがって、これは現行法律にはそういう規定はございませんけれども、(寺前委員「いま出している法案」と呼ぶ)現行法でも今回の法律でも同じでございますが、「この法律施行に関する重要事項」、これは最も基本的な重要事項である、私どもはこう考えております。審議会でもそういう御意見でございます。そこで自動スライド条項といういわゆる失業した人たちの基本給付の日額を賃金の上昇に見合って上げていかなければならない、その上げるについていつどういう形で実施すべきかというその基本になる基準を明らかにしよう、こういうことでございますから、私どもはむしろその考え方のほうが正しいのではないか、こういうふうに考えております。
  64. 寺前巖

    寺前委員 「重要事項」というのはどこに書いてあるのだ。第何条のどこだ。
  65. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 八〇ページの七十二条の第一項の後段にあります。
  66. 寺前巖

    寺前委員 それは解釈で重要事項として取り扱っていこう、こういうことですね、いまの問題は。——わかった。そういうふうに具体的に言うてくれなければいかぬじゃないか。  それから最初に私が問題提起した問題と関係するんだけれども、保険事業の乱用になるんじゃないかという問題。さっきは目的の条項で、三事業のほかにもこの分野もなるじゃないかという問題を指摘したけれども、三事業の問題についても、これは掛け金を別個にとって運営していくんだ、こういうふうに従来から盛んに言っているんだけれども、保険というのは一つ保険であって、金には色がないんだから区別がつかぬじゃないかということでこれもかなりあれになってきたわけだけれども、特にこの三事業の六十二条、六十三条、六十四条ですか、雇用改善事業の六十二条のところについては「政府は、被保険者及び被保険者であった者に関し、」それから六十三条でも「政府は、被保険者等に関し、」それから六十四条でも「被保険者等に関し、」こういうふうに被保険者に対して言ってきて、そして最後に六十五条で「前三条の事業又は当該事業に係る施設は、被保険者等の利用に支障がなく、かつ、その利益を害さない限り、被保険者等以外の者に利用させることができる。」そうするとこの保険事業が単に保険を掛け合って助け合っているという範囲から、さきの面でいうならば就職促進分野逸脱じゃないかと私は言ったけれども、さらにこの三事業についていうならば、被保険者以外の者にも利用させることができるということで、この事業全体がまさにそれこそ日本の雇用政策全体をこの保険でやっていくことができる、こうなったら、もう保険の概念の著しい逸脱じゃないか、保険というのはやはりお互いにかけ合って、保険事故が発生した場合にというところから出発しているものを、被保険者であるといなとを問わずというところまでだーっと広げてしまったら、こんなものは保険事業範疇に入らぬのじゃないだろうか。これは一体、保険というものをこんなに広げることができるものだろうか。これは法律的にどういうように思いますか。
  67. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほど就職促進の問題を保険目的外だとおっしゃっておりました。私は目的外だと考えておりませんし、学識経験者あるいは法制局でもそうではないということが明らかになっております。  同時に、この三事業につきましては、これは当然保険の外じゃないかということ、それからもう一つは、お互い失業したときのためにかけている掛け金をこういうものに、目的外に使うのはけしからぬという御指摘のようでございます。私ども今回の雇用保険法におきましては、失業保険という名称を雇用保険ということに変えて内容を充実させていこう、その一つは、先ほど冒頭に申し上げましたように、失業保障機能現行制度よりさらに一そう実態に即して充実さしていく、と同時にさらに積極的に、この失業をできるだけ予防していく、それで被保険者である労働者の福祉の向上をはかっていこう、こういう考え方でございます。それを総称して雇用保険。  雇用保険というのはけしからぬとおっしゃるのですけれども、現にわが国の疾病保険を健康保険という名称で呼ばれていることは古くからなじみのある制度でございます。ILOにおきましても、失業保険の問題をエンプロイメント・インシュアランスという表現が使われております。まさに雇用保険でございます。私どもはそういった積極的に失業を予防し——疾病を予防するために健康保険で予防措置が、だんだん保険内容が充実されるに従って予防的な給付が取り入れられようとしている。失業保険制度におきましても、雇用保険という大きな制度の中で失業を予防するための積極的な施策が取り入れられることこそ将来のあるべき姿、方向として望ましい、かように私どもは考えておるわけでございます。  と同時に、この三事業につきましては、現行失業保険法の体系の中でも、いわゆる福祉施設という形で、先ほど来御指摘がありましたような条項で実施されております。これは労使の保険料を原資にしてこういった福祉施設を実施することについては、いろいろ問題がある。これは審議会におきましても、それから当社会労働委員会におきましても過去数年前からたびたび御指摘を受けておったわけでございます。私どもはこの点を今回の雇用保険法におきまして、積極的なそういう失業予防のための、あるいは労働者の福祉のための措置を講じていくことによって、さらに失業保障機能を充実させる、そういう考え方をとると同時に、そのことによって従来御指摘を受けておりました点をこの際解消して積極的に対処したいということで、労使の保険料でなくて使用者の全額負担の保険料によってこの付帯的な、いわゆる失業保障機能に付帯する付帯的な事業を実施することにいたしたわけでございます。  と同時に、従来この問題につきましては労使の保険料をやめて措置すべきであるという御意見がございました。特に総評、同盟の労働組合関係からも企業賦課金制度をつくるべきである、あるいは職業訓練税を設けて能力開発事業をやるべきである、こういう強い御要望、御意見等がございました。諸外国におきましても、雇用税でございますとか職業訓練税あるいは企業賦課金制度が実施されておりまして、それによってこの三事業に類する事業が実施いたされております。私どもこういった諸外国の例を十分考えながら、同時に労働組合関係筋の御意見、御要望も取り入れまして、今回の雇用保険法の中に、企業の社会的責任、企業の社会的連帯というような考え方から、企業の全額負担による千分の三の保険料をもってこの失業保障機能に対する付帯的な事業として三事業を実施する、こういうことにいたしたわけでございまして、社会保険目的外だとかその範疇逸脱するということには決してならない、かように考えておるわけでございます。
  68. 寺前巖

    寺前委員 ならないと思うといったって、あなた、お互い労働者が金を出し合うてやっていく、資本家にもそれを持たす、こういう雇用分野については特別に資本家からようけ出さすというだけの話であって、基本は労働者資本家が出し合っていく。労働者の負担を少なくして資本家の負担をどんどんふやしていくというのが、基本的に保険制度の姿じゃないですか。その保険制度労働者が中心ですよ。この労働者が中心の事業に、だれでもよろしい、そういう人たち全体を対象にする保険というのは、保険制度としてのきわめて大きな逸脱じゃないか。資本家が金を出すのはあたりまえですよ。いずれにしたって金を出すのは労働者の側に出すのですからね。この法律だってそれが基本だというて、最初にあなた、踏襲するのだと言ったとおりだ。失業期間中の保障が一番の基本にあって、そしてそれを労働者の福祉その他の事業をやっていくというように広げているのだ、こういうことでしょう。だから労働者のために資本家が出したからといって——これは全部労働者が握ってしまう金なんだ。それの対象事業をすべての事業にわたって何でもやっていくのだ、ワクを広げるのだということになったら、これは何のためにかけ合うてつくっていこうとした法案かということ、保険かということと、非常に大きな逸脱だという問題は当然のことじゃないですか。だからあなたのような見解というのはかってな見解である。  そこへ持ってきて、ちょっと聞きたいのだけれども、六十六条に関係するのだけれども、業務取り扱い費というのは、この三事業についてはどういうことになりますか。
  69. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 どうも寺前先生、金に色はついてないからごちゃごちゃになるのじゃないか、千分の三の保険料労働者に対して出されたのだという御指摘でございますけれども、実はそうではございませんで、法案の七七ページの第六十八条に規定が設けられておりまして、全体の千分の十三の保険料のうち——第二項でございます。「前項の保険料のうち、一般保険料徴収額からその額に三事業率を乗じて得た額を減じた額及び印紙保険料の額に相当する額の合計額は、失業給付に要する費用に充てるものとし、一般保険料徴収額に三事業率を乗じて得た額は、雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に要する費用に充てるものとする。」明確にこういう規定がしてございます。そこで千分の三の三事業相当分は全額使用者負担であって、その千分の三の分は三事業に使用される。千分の十の労使が負担いたしました保険料失業給付に充てられる。これは明確に法律上区別されております。ごちゃごちゃにするということでは決してございません。したがいまして、三事業に相当する事業事業執行に要する費用も当然これは使用者負担の千分の三からその原資が求められる、その費用に充てられる、こういうことでございます。
  70. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、全然別のものだというのだったら、保険は別にしたらいいんだよ、逆にいうたら。別じゃないから同一保険事業の中に入れてしまったんでしょう。だから私は、労働者保険からいうならば逸脱だ、こう言うておるのだ。全然違うよ。あなたのところが出してきている雇用保険制度の収支の予想という資料を見ると、能力開発事業雇用改善事業雇用福祉事業、それの改正案の予算を見ると、金額は千百二十六億という数字が案の段階のやつで出てきておるんだね。それから細分化したところの内容のやつを見ても、千百二十六億円で、そこには人件費とかそういうものは——これは同一保険でしょう。別の保険だったらいざ知らず、この保険にかかわるところのそういう人件費その他も、この資料を見ておると、これは入っておらぬことになるのだけれども、これは間違いですか。
  71. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもはあくまでも千分の三は三事業、千分の十は失業給付事業、こういうことでございまして、そういったものが一つ保険制度の中で実施されるということにつきましては、他の社会保険におきましても付帯的に福祉事業だとか保険施設ということが行なわれるのは、いままでの慣例でも法的にも認められるところでございます。今回の雇用保険法におきまして、失業保障機能を中心とした失業給付事業に付帯的にこれを積極的に予防するための三事業が付帯して行なわれる。しかもその原資は全然失業給付事業に要する保険料と別個に、別建てに法律上明確にされる、こういうことでございますので、先生の御指摘はどうもいささか私どもとしては納得いたしかねるわけでございます。同時に、その事務費といいますか、事業執行に必要な費用といたしまして適用徴収等については国庫負担を含めて千分の十の保険料事業実施につきましては千分の三の使用者負担の保険料から当然まかなわれる、これは明確にされております。五十年度推計試算をいたしました資料の中でそういったこまかい仕訳はしてございませんかもしれませんが、これは当然そういうことになるわけでございます。
  72. 寺前巖

    寺前委員 しかも労働保険の場合、業務取り扱い費というのが国が負担すべきものが非常に少ないんじゃないか。ほとんど保険の費用の中から行なわれている。たとえば四十九年度の労災勘定の場合を見ると、業務取り扱い費は百十七億円のうち十九億円、失業保険の場合は百八十億円のうち三億五千万円、国のものですよ。ということで、その他合計労働保険の場合に三百七十七億円のうちで二十二億五千万円が業務取り扱い費として、国庫として出てきているわけですけれども、たとえば厚生保険の場合なんか健保とか年金とか日雇い、こういう業務勘定を見ると、業務取り扱い費二百六十七億円のうちで国が持っている分が二百五十八億円というふうに大部分が国が世話をするという形で業務取り扱いというものをやっているわけですね。そうすると、私は、この労働保険に対して、一つ労働保険対象がどんどん広がってきているということと、もう一つは今度は国が失業保障という問題に対して業務取り扱いの面で責任をやはり持っていくんだという面においても、この面でも国の責務というものが非常に小さい。おかしいじゃないか。ほんとうに失業期間中の労働者生活を安定をさせるというんだったらやはり国が業務をしっかり持ってやるというやり方でなければならない。広げた範囲の問題についても国がやらぬと保険の中に入ってくる。だからどうも雇用政策の事業をこの労働者の掛け金による保険事業、この保険の中にすべてを解消していくといを方向づけがずっと持ち込まれてきているように思えてならない。だから、これは私は国の責務としての雇用問題と失業期間中の生活を安定させるための国の責務と両面から見て、どうもこれは基本的に違うんではないだろうかということを感ずるので、その点を指摘しておいて、もう一つちょっと聞いてみたいことがあるのです。  それは給付の延長の措置の問題です。もう時間があれですから終わりにしますけれども、全国の給付の延長は二十七条によって受給率が五%以上三カ月以上継続したときに発動させるというのがあります。さて、私はここにもその考え方が入ってきているんじゃないかと思う。大体これだけに五%というような受給率の段階をつくるというのは、今度は雇用保険対象の人員が広がるわけですよ、そういった広がった状況の中において五%という失業状態が三カ月も続くということになったら、これは異常な失業状態だというふうにいわなければならぬのじゃないだろうか、そういうふうに思いませんか。現行何ぼで、いままでの例ではどういう状況になったか、五%というのは私は異常だと思うのですけれども、その点についてどういうふうに思われますか。
  73. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 給付延長の全国的にこれを実施する場合の二十七条の規定につきましては、条文にございますように、「労働大臣は、失業状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準に該当するに至った場合において、受給資格者の就職状況からみて必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り、」給付日数を延長する、こういうことでございます。ここでいま先生御指摘の中で五%云々ということでございましたが、実はまだその点は政令で定める基準に該当するに至った場合どういう基準をつくるか、これはこの法案を御審議いただきました職業安定審議会におきましても、一体どの程度の失業情勢になった場合に全国延長のこの条項を発動すべきか、そういった点を審議会でも慎重に御検討いただいた上でその基準をおきめいただきたい。これは単に失業率だけではございませんで、給付実績、そういったもろもろのデータが基礎になりまして、この全国給付延長の実施基準が定められることになろうと思います。その際に、いま御指摘になりました失業率という一つの項目を取り上げましても、これが五%であるのが適当であるのか、三%が適当であるのか、そういった点は十分審議会の御意見をもとにしておきめいただく予定にいたしております。
  74. 寺前巖

    寺前委員 現在のところ二%前後であろうと思うのですね。ですから、従来一つの話として出ておったのが五%という話が出ておったわけですね、そうじゃないのかね、私はそういうふうに聞いておるから、前に話が出ておるから。それで私はそういう前よりも二倍以上の段階という事態が発生した場合は、そういう場合にはこれはもう保険の部類に入らない異常な事態、こういう異常な事態の問題というのは責任をもって政府が処置をしなければならない問題なんです。ですから、私はこういう問題についてそういう高い、いまの倍以上というような数字基準として全国延長を考えるということ自身、またここにおいても保険の中にこれらの国の責務の問題を導入するという考え方があるように気になってしかたがない。その点でもこれは政令事項にゆだねられて、そして審議会で相談するというけれども、その辺についても基本的にきちっとした、どの範囲だということを十分検討して相談にかけるということがここになされていないということ自身を、全体の法律の提案との関係において非常に不安をやはり感ずる。時間もございませんから、これは私は意見としてはっきり申し述べておきたいというふうに思うわけです。  もう時間もいよいよあれですから、最後に一、二のことで終わっておきたいと思うのです。それは国有林の場合にも一万七千人からの季節の労働者がおるわけでしょう。これは公務員の退職金の制度を利用して、いずれか高いほうということで現在やられておる、これに与える影響というのは非常に大きい。現在制度の中に影響を与えてくるという問題がそこにもあるでしょう。それからまた公務員でも女子の労働者なんかの公務員の方々が、何らかの理由によって若くしてやめられるという事例がかなりありますね。そういうときに現行の退職金では、公務員の皆さんに対する措置というのは、これはいいほうをとろうというやり方で措置がされてきているわけですね、現実的に退職金の分野において。ところがこの法律施行されると、いいほうがという基準のこれが低くなってしまうという問題が出てくると思う。これは関係官庁との間にいろいろ論議がされているだろうと私は思う。また法律を出す以上はその辺の責任ある措置をとらないと、これは現実にそういう形で実施されてきた労働者一定の労働条件なんだ、だからそういう労働条件に重大な障害を与える内容だ、だからこれについてはどういう話になっているのか聞かしてもらいたい。
  75. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 国有林野の定期作業員の問題かと思いますが、これは先生いま御指摘のように国家公務員でございます。国家公務員に対するいわゆる退職手当が支給される。その退職手当の支給の額が現行失業保険法、今回改正されますと雇用保険法に定める内容を下回る場合は、それに相当する額が退職手当として支給される、こういうことでございます。  実は、定期作業員につきましてはこの委員会におきましてもいろいろと御議論がございましたし、御意見も御開陳になりましたが、五年、十年、いわゆる常勤労務者と同じような形で毎年繰り返し継続的に雇用される、こういう実態もございます。私どもといたしましては、できるだけいろいろな措置を講じて通年雇用化をはかってまいりたい、こういうことで関係各省庁とも御相談を進めてまいっております。すでに過去二、三年の間に常用化がかなり進んでまいっております。なお、今後常用化を進めるにいたしましても、こういった人たちの退職手当に影響を来たすことのないように、その永年勤続的な実態に十分対応できるような措置をとってまいりたい、こういうことで農林省、総理府の人事局、大蔵省とも十分協議をしてまいる考えでございます。
  76. 寺前巖

    寺前委員 お約束の時間が来ましたので、不十分ですがこれで私の質問を終わりますけれども、やはり私は、この法案については保険範疇を明らかに逸脱しているということが一番の基本的に感ずる問題です。逸脱しているのは何か。そこにはこの保険業務の中に国がやらなければならない仕事を持ち込んできているというところに、一つの問題がある。  それからもう一つ私が懸念するのは、現実の生活に重大な影響を与える。しかも現実の生活のつくり上げられてきている実態に影響を与えるだけではなくして、その積算の計算の基礎数がはっきりしない。しかもその上に、いまのやり方でいったら、従来との大幅な違いで労働者に何が生まれるかというと、低賃金の労働者として路頭に迷わせていくというような、そういう道に追い込んでいくという点で、失業期間中の労働者生活保障しようとして出発した失業保険制度を抜本からくつがえしてしまう。だから、この法案名前が変わってきているというのは、明らかに失業期間中の労働者保障しようという立場でなくして、雇用の立場から出るところのものとしてこれを見ざるを得ない。  私は基本的にこの法案というのは、単なる部分的な悪いという問題にとどまらないというふうに思うということを発言して、終わりたいと思います。
  77. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————    午後四時二十二分開議
  78. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。石母田達君。
  79. 石母田達

    ○石母田委員 雇用保険審議の中で、三十分近く私の質問時間が残っておりますので、この際、総括的な問題について質問をしておきたい、こういうふうに思います。  この雇用保険法の問題が出されまして、いわゆる失業保険を廃止して新しい法律案をつくるという非常に抜本的な内容を含むものであります。しかもそれは、失業者あるいは全労働者にとって、失業保険制度あるいは失業保障制度そのものの根本的な改悪を含む、変質させる内容であるということで、私たちは党の態度をこの質問を通じて明らかにしてまいりました。  いまこの問題に対しまして、自民党の側から修正案なるものが先ほどの理事会で発表されました。その内容を見ますると、三十歳未満の一年以上の者の給付日数を、原案六十日を九十日とするとか、あるいは給付率を六〇%ないし七〇%を、五〇%−七五%、つまり最低の千五百円から三千円までの間を、七〇%を七五%に修正したい。三番目は、一時金三十日分を十日ふやして四十日分にしたい。四つ目は、いわゆる出かせぎ労働者、短期特例者の受給資格の要件を、離職した日から満六カ月といういわゆる受給資格要件の問題を三年間凍結したい、つまり、実施を五十三年三月末まで延ばす、こういう提案であります。この問題について、私は、政府の見解として、労働大臣としてどういう態度を持っておるのか、お伺いしたいと思います。
  80. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この法案国会に上程されて以来、委員会において諸先生方から熱心な御討議をいただいたわけであります。これは全労働者に不利なものをもたらすという考えでなくして、いままで御説明申し上げながら、それぞれのお立場において御研究いただいたことでありまして、いまお話のあったものは、党のほうからという話でありましたが、御審議の間において党から出るもの、あるいは皆さんの御審議の間において出るもの、そういうものについては、政府といたしましては考えなければならぬという気持ちを申し上げてきたのですが、具体的なものについてはただいま承知したところでありまして、そういうふうな形であれば、審議を御尊重申し上げるという形において努力したい、こう思っておる次第であります。
  81. 石母田達

    ○石母田委員 局長がそばにいて、局長はつぶさに、こういう問題の提案の経過も、またきょうの理事会にも参加しておりますので、あなたの見解を……。
  82. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもは事務当局といたしまして、最善の努力をして雇用保険法案を作成いたしまして、御審議をお願いしているわけであります。  ただいま大臣からお答えございましたように、本委員会におきまして長時間にわたって各先生方から御批判、御意見をいただいております。その中で、いま御指摘になりました四点等につきまして、各先生方から御意見の御開陳がありました際に、大臣からも、できるだけいい制度にするために、委員会の御意見を尊重しながら十分善処してまいりたい、検討してまいりたい、こういうお答えがございまして、先ほど来与野党の間でお話がございまして、こういう点についての修正について、どうかという御意見を求められましたので、私どもとしましても、御趣旨に沿って、できるだけいい制度にするという意味におきまして、この修正案が実現できるよう最大の努力をいたしたい、かように考えているわけであります。
  83. 石母田達

    ○石母田委員 先ほど寺前議員が、三十歳未満の者が保険期間のいかんにかかわらず、一律六十日にするという大幅の給付切り下げをするということについて、その根拠について質問されました。あなたたちは、全国的な平均の受給日数その他を勘案して、原案の六十日が正当なものであるということを言いましたけれども、いま、この修正案の実現のために最大の努力をするということは、六十日から九十日になってもそれはいいということですか。そうすると、たとえば九十日になった場合に、あなたはそれを実現することに努力するということで理解していいですか。
  84. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもは、三十歳未満若年層の所定給付日数の決定にあたりましては、過去の実績、今後の雇用失業情勢の推移から、六十日ということが適当でかつ妥当であろう、こういう判断の上に立って原案を作成いたしたわけでございますけれども、諸般の情勢から、諸先生方の御意見によりまして、この程度の修正をすべきである、こういう御意見でございますので、私どもはその御意見を十分尊重いたしまして、その実現に努力をいたしたい、かように考えるわけでございます。
  85. 石母田達

    ○石母田委員 あなたは、この原案の六十日が正当だということについては根拠もある、根拠についての資料もあるということで、全国的な平均日数という問題を出した。これに対して寺前委員は、その六十日というのを出した根拠が薄弱じゃないか、一体もし六十日ということを正当だというならば、少なくとも平均受給日数が、都道府県別あるいは性別、年齢別にどういうものであるかということは当然検討した上ではないのか、そういう点について資料を要求したい、こういう問題でありますけれども、その点についてあなたは、そういう資料は質問に関連、必要ないと思うと、いいですか、私が理事会で聞いたら、それは質問に関連があるということが委員長から言われ、確認されましたけれども、あなただけは質問に関連のない資料だ、こういうことをはっきりと言った。そこで、私は、この点については、国会の場で一官僚が、共産党・革新共同の寺前委員が要求した資料、しかも理事会全体で委員長を含めて、それは関連があるという判定をしているものに対して、それは質問に関連ない、必要ないと思うと言うことによって、あたかも何か議事に対する、われわれの資料要求が不当であるかのような発言をしました。いま修正案の内容を見ても、たとえば六十日から九十日にしてもいいんだということを見ても、この六十日という根拠はきわめて薄弱であるということをあなた自身が言っているんだ。それは、寺前委員が要求したようなそういう問題を真剣にきちんと科学的に集めてやるというようなものでなくて、いいかげんなことをやって、しかも、その上でそれの資料要求をすれば、そんなことはできはしない、必要ないと思う、そういう不遜な態度をとるということは、きわめて私は問題だと思っているのです。こういう点について、私は局長自身の答弁を願いたいと思います。
  86. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 所定給付日数の決定にあたりましては、午前中の委員会でお答え申し上げましたように、就職難易度——就職の困難な人につきましてはできるだけ手厚く給付日数を長くする、雇用失業情勢から見て比較的就職の容易な層については、それに必要にしてかつ十分な所定給付日数をきめる、こういう方針のもとに、その就職難易度というものを一つ基準として年齢に求め、あるいは身体に障害がある者あるいは社会的原因によって就職の困難な人たち、あるいはその他の諸般の事情で就職の困難な人たち、こういう人たちにつきまして、それぞれ所定給付日数を決定いたすことにいたしたわけでございます。で、その際、三十歳未満について過去の給付実績等について御質問がございました。私どもは、全国的な一律の制度としてこの所定給付日数を決定いたしますにつきまして、全国の三十歳未満の男女別の給付実績については、資料も御提出申し上げましたし、御説明申し上げたわけでございます。それをもとにいたしまして、その過去の給付実績とその後の雇用失業情勢就職率、そういったことから私どもは六十日というのが適切であり、かつ妥当な数字である、かように考えた次第でございます。それに対しまして寺前先生は、それは適当でない、こういう御判断のようでございましたし、その際に、これを決定するについて県別の性別、年齢別給付実績というお話でございましたけれども、地域的に就職難易度について、同じ年齢層でありましても就職難易度に差があることは、私は先生の御質問にお答えしたとおりでございます。その際、全国一つ制度として所定給付日数を決定いたしまして、その上で地域的なアンバランスにつきましては、失業多発地域といったような形で、就職のより困難な地域については給付延長の制度がございます。雇用保険法案におきましてもその制度を取り入れておるところでございまして、その点につきまして、一律の所定給付日数を決定するにつきましては、私どもは、提出申し上げました資料で御判断いただくほかはないということを申し上げたわけでございます。  と同時に、御要求になりました資料につきましては、私どもの手持ちのデータではとうてい早急の間にそういう資料をつくることは不可能でございます。ですから、相当な余裕期間をいただいた上で、一月なりあるいはそれ以上かかるかもわかりません、専門家に相談いたしませんとわかりませんが、そうした上で、コンピューターにかけて、プログラムの作成から始めまして、もしとるとすればそういう必要があろうかということで、私どものほうではそういう資料を持ち合わせておりませんし、短時日のうちに御提出を申し上げることは不可能でございます。したがいまして、私どもは、この給付日数の決定にあたって参考にいたしました御提出済みの資料、ないしは私どもから御答弁申し上げました内容について御判断いただきたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  87. 石母田達

    ○石母田委員 あなたは私が質問したことに対して、理事会であなたが答弁を求められたときに、寺前委員のこの資料要求は質問に必要ないと思うかということを私は聞いた、あなたが関連ないと言うから。そうしたら必要ないと思いますというふうに言った。しかし、理事会ではそうではないという判断をしているのだけれども、そういう意味についてあなたは依然としてそういう見解なのかどうか、はっきり言ってほしい。
  88. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 理事会でお尋ねがありました件につきまして、私のお答えのしかたが不適当であれば、また理事会で私はお答え申し上げたいと思います。
  89. 石母田達

    ○石母田委員 ここで言いなさい。あなたは必要ないと思っているのかどうか。理事会でなんて言わずに、ここは理事会ではないのだから。だから、私はあそこでこの問題については保留したのです。理事会での問題は、あなたも知っておるとおり、理事会の話はわかりました。しかし、局長が質問に関連ない、必要ないと思う、こういうことを言ったことに対して、私は党としてきちんとしたいということで保留をした。そこで、あなたの言ったことについて訂正するのかどうか、きちんとやってください。
  90. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 その問題につきましては、私理事会の席におきまして、石母田先生から回答を求められましたのでお答えいたしたわけでございまして、委員長に御了解の上で発言をさせていただいたわけでございますので、その点で、先生から答えろというお話でございますならば、理事会の席におきまして、委員長のお許しを得て発言させていただきたい、かように考えております。
  91. 石母田達

    ○石母田委員 それでは委員長のほうから、先ほど理事会の中で私がこの問題についてその場で、あとではっきりさせたいということで質問をしておりますので、いまの必要ないという見解ですね、これは直接の担当者でありますから、局長からそういう問題についてはどういう見解であるか答えてもよろしいということを言ってほしいと思います。
  92. 野原正勝

    野原委員長 委員長から発言しますが、どういう経過でどういう発言があったか、私聞いてはおりましたけれども、実は局長の発言がどういう経緯で必要ないと言ったのかというふうなこと、はっきりしませんから、いずれ理事会で、局長が発言を求められれば発言を許す考えですから、そう御了承願いたいと思います。
  93. 石母田達

    ○石母田委員 この問題については、私は先ほど、何回も言うように、理事会でもきちんとあとではっきりさせたいということで、私としてはこの局長の答弁が納得できないので、これは直接の担当者でありますので、理事会できちんと了解されたものについて、局長があくまでも必要ないという見解であるかどうかという点については、きちんと表明していただきたい、こういうふうに思うのです。その点についてはどうなんですか。やはりいま理事会ではかるというのですか。
  94. 野原正勝

    野原委員長 もちろん理事会でやります。
  95. 石母田達

    ○石母田委員 それでは、この問題については私は留保しますから、きちんと理事会で、この問題についての質問は理事会でやるということになったら私はやりますから、この点はいいですか。理事会でこの問題について私が持ち出しますから。
  96. 野原正勝

    野原委員長 理事会で話したことを何か、いまの委員会でもまた質問するというのですか。
  97. 石母田達

    ○石母田委員 私は、だからこの問題については留保したのです。
  98. 野原正勝

    野原委員長 理事会で出た問題ですから、それは理事会でけりをつけます。
  99. 石母田達

    ○石母田委員 では、私はこの問題については、理事会の席上で、非常に重大な発言だから、私はこの問題についてあとに留保しますと言っているわけですから、理事会にゆだねてもいいですよ、ゆだねてもいいですけれども、理事会でやるということになったら私はもう一ぺんやりますからね。彼の回答が出ないうちは留保しますから、理事会できちんとしておいてください。
  100. 野原正勝

    野原委員長 君の発言はどうあろうと、これは理事会で出た発言ですから、理事会で処理いたします。
  101. 石母田達

    ○石母田委員 理事会で、私がいま主張したようにやるということになればやりますから、留保して、その点を御確認願いたいと思います。  次に、私は、質問として、この修正案の中にも使われていますけれども、一時金を三十日分から四十日分というような内容が出ております。この一時金という問題は、この間の労働大臣の回答ですと、もらってすぐ仕事をしてもいいんだというような内容でしたね。そうすると、一時金というものの性格はいわゆる退職金的な一時金的なものであって、失業事故による給付という性格から見るときわめて違った性格のものだ、こういうふうに思いますけれども、この一時金という問題についての基本的な性格について御見解を聞きたいと思います。
  102. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに、出かせぎから帰って失業給付受給資格要件を満たした方が安定所に求職の申し込みをされ、一週間の待期が過ぎて、その時点で一時金が支給される。そういうことになりますと、現行失業保険法によります保険給付は安定所に求職申し込みをして、一週間の待期が過ぎて、それから二週間に一回あるいは四週間に一回安定所に出頭して、その過去の二週間なり四週間失業しておったという事実の確認が行なわれた上で、その確認された失業期間について給付が行なわれる、こういうことでございます。それからいたしますと、今回の雇用保険法におきます一時金は確かに性格が異なってまいります。言ってみれば前渡し一時金という形になるわけでございます。それがこの雇用保険の今回の出かせぎの人たちに対する特例という形で制度化されたわけであります。実態は石母田先生御承知のように、先般来当委員会におきましていろいろと御質疑、御意見がありました。あるいは特に連合審査の最終で中川先生から御質問がございましたように、出かせぎの人たちは、冬型でございますと、十一月に出かせぎに出て四月の半ばに本拠地へ帰られる。そして四月十五日以降田植えなり農作業に従事して、農作業が終わった十一月にまた出かせぎに出られる、これが実態でございます。したがって、その出かせぎから帰って次の出かせぎに出るまでの期間は、失業という擬制の上に立って保険給付が行なわれておりますけれども、実は農作業に従事しておられる期間なんです。これが全部ではありませんけれども、そういう実態が明らかになったこの時点におきまして、この出かせぎの人たち失業給付というものを制度的に組み入れるためにはどうするべきかという検討の結果、特例という形で、確かに質的には変わってまいりますけれども、働けばもらえないし、働かなければもらえる。しかも同じ農業に従事している人でも、出かせぎに行った人はもらえるけれども、資格がつくけれども、地元で農業をやっている人には資格がつかない、こういう同じ地域におけるアンバランス、同じ農業従事者の中でこういうアンバランスがある。それをより実態に即して合理的に解決するためには、こういった特例制度というものが必要である、こういうことで今回の特例一時金制度をつくったわけでございます。性格もそういうことになるわけであります。こういった特例制度につきましては、外国にも例がないわけではございませんし、ILOにおきましてもこういう特例制度を設けることを認めておるということから、今回このような措置をとったわけであります。
  103. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、長い答弁があったけれども、一口にいって失業給付ということからいうと質は異なるかもしれぬけれども、こういう問題をいわゆる保険制度に組み入れるというものとしてこういう特例的なものをやった、こういうふうに理解していいわけですね。そういう点から見てこの出かせぎ労働者、短期労務者を特別扱いにするということ、この失業保険制度の中でそうしたものを特例的なものとして差別するということについて、われわれは基本的に反対であるということはこれまでの主張のとおりです。  私は今度のこの失業保険の問題で、いわゆるそういう出かせぎ労務者と若年、特に女子労働者に対する大幅な給付削減を伴う内容、こういう問題について、目的条項の変更についてこういう結果がもたらされているということを質問で明らかにいたしました。  それは今度の目的条項の変更の中で大きくいって二つの柱がある。一つは、失業者生活の安定をはかるということがこれまでの目的だったわけです。そのために失業給付をするということだったのです。それがさらに新しく就職促進をはかるということで、それが給付性格に新たに加わったわけです。このことによっていままで失業者という認定を、参考人の発言にもありましたように、先進諸国には類例を見ないきわめて制限的な内容失業者というものを認定して、受給についても不当な制限を行なってきた。これを今度法制化し、制度としてそういう就職促進をはかるということで、失業者がたとえば求職活動をやっているかやっていないかというような問題とか、能力、意思というような問題についてこれまでその認定について行なってきた不当な受給制限、資格制限を法制化するという点で、私どもはこの目的条項についてきわめて重大な変質であると思う。  もう一つの柱は、いわゆる雇用事業、三つの対策事業というものを新たに加えることによって、本来国と資本家の責任で行なわるべき雇用対策の問題を、失業保険という中に一体のものとして組み入れている。これは明らかに失業保険社会保障という原則からいっても逸脱であるということを指摘してまいりました。さらに、この問題が日経連のいわゆる失業保険制度の根本的改革ということを含めた、政府や関係のところに対する申し入れにこたえたのだということを指摘してきたわけであります。それに対して、あなたをはじめ政府の答弁というのは、そういう日経連の申し入れがあったこと自体について記憶がない、こういう発言でありました。しかしこういうことは事実を調べればわかることでありますから、昭和四十五年に日経連のほうから失業保険の根本的な改革を含むそうした申し入れがあったことを調べて、その結果なかったのかどうか、この点について答弁願いたいと思います。
  104. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 第一の目的規定が変質をしているではないかという御指摘でございますけれども、私どもは、今回の雇用保険法の第一条の目的現行失業保険法目的性格を比較していただきますと、変質はしておりませんし、むしろ積極的に失業保障機能を強化する、さらに一段と進んで失業を予防し、労働者の福祉の向上をはかっていこうという考え方をとっておるわけでございます。従来副次的に保険施設敷設という形で付帯的に行なっておりましたものが、労使の拠出保険料によってまかなわれておったことについてたいへん強い御指摘がございました。その点を今回は改めて、労使の保険料でなくて、使用者の社会的責任、連帯ということによって、使用者の全額負担によってこの付帯的な事業を行なうということにいたしたわけでございまして、むしろ当委員会の年来の御指摘でございました点をその線に沿って改革をいたしたというつもりでございます。  それから、三事業は本来国がやるべき事業ではないか、こういう御指摘でございますけれども、雇用政策に伴う諸施策のうちで、国が当然やるべきものと、それから年来関係団体、特に労働組合等から御要望が出ております企業賦課金あるいは訓練税、あるいは選択的雇用税、こういった形で使用者の責任において制度化すべきである、こういう御意見もございます。そういったものを今回失業保障機能の強化に合わせて、さらに積極的な予防策としての付帯的事業という形で組み入れたわけでございまして、むしろこの点も、私は、従来当委員会において御指摘のございました御意見の線に沿って制度化をしたもの、かように考えておるわけでございますが、それがどうも先生御指摘のように逆の方向に走っているということで、私どもの説明が足りないために十分御理解いただけない点をはなはだ残念に思うわけでございます。  それから、昭和四十五年の日経連の失業保険改革についての意見書、その線に沿って今度の雇用保険法案をつくったのではないか、こういう前回の御質問がございますが、私は、実はこの日経連の意見書が出ていることについて全く関知しておりませんでした。その後、聞くところによりますと、確かに日経連から意見書が出ておるということを聞いております。ただ、私どもは、この日経連の意見書がどういうものであったか、つまびらかに確認いたしておりませんけれども、日経連の意見書もあり、関係団体あるいは労働組合の意見も過去において数回となく出されております。私どもは、給付率の引き上げとか給付の充実とか内容の充実等につきまして、そういった関係者のいろいろな御意見を十分しんしゃくし尊重しながら、今回の雇用保険につきまして、失業保障機能の充実、あるいは三事業につきましても、そういう付帯的施設、こういったものについて使用者責任の明確化、こういったことを実行に移してまいりたい、かように考えて立案をいたしたわけでございます。
  105. 石母田達

    ○石母田委員 私の質問はこれで終わりますけれども、私は最後に、いま述べられた中で、これは変質を来たすものじゃなくてむしろ改善なんだ、こういうことをいままでの審議を通じても、なおかつそうした主張をなさるということに対して、絶対に承服できない。これらの問題については、再三審議の中で明らかになったように、目的条項変更一つ見ても、いままでの、戦後われわれがかちえてきた、いわゆる不十分ながらもこの失業保険制度を根本的に改悪する、変質させるものであるということは、目的条項の変更によってもなおさら明らかなことであり、なおかつ、その結果がいわゆる若年労働者や出かせぎ労働者その他の大幅給付切り下げになっている、こういう問題。あるいは出かせぎ労働者そのものを特別扱いにして、保険から締め出す方向でやっているという事実によっても明らかだと私は思います。  なおかつ、いまの日経連の申し入れについては、この意見については事実を認められたようでありますけれども、この内容についても、ここで明らかにしましたように、出かせぎ労働者を別個に扱うとかあるいは女子労働者を含む若年労働者のそうした受給の制限について、もっときびしくやれとかいろいろの意見内容から見ますと、まさに大資本の要請にこたえて、そしてまた日本列島改造計画に伴う工業再配置促進法、あるいは農村地域における工業導入促進法、そうした関連の法を実施するための、促進するための内容のものであることは、私たちが主張したとおりで、いまでもその点の正しさを確信を持っているわけです。  したがって、このようないろいろの部分的な修正、そういうものによってその本質を変えることはできないのだ、そういうような内容のものとして、この雇用保険法案に反対していることを表明いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  106. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この法案が上程されましてから、各委員皆さん方に御熱心に御討議いただき、あるいは連合審査等々もいただきながら、なおかつあなたの御理解を得なかったということは、私非常に残念だと思います。議会政治のたてまえでございますから、原案を私たちはいいものと思って出しました。そしてその間の御論議を通じまして、ただいまお話のあったような一つ、二つ、三つというふうなところは修正らしきものが出ておるということも知りながら、そういうものの中ででも、私はぜひ御理解をいただきたいという気持ちでございますが、最後まで御理解いただけなかったことは非常に遺憾だ、私の説得が、政府の説明が足りない、ほかの方々に御理解いただいてもいただけないということは非常に残念だということを私のほうも申し上げておきます。
  107. 石母田達

    ○石母田委員 質問終わりますけれども、私のほうもきわめて遺憾で、私個人の問題でなく、国民に対する、われわれこれらに反対の意思の表明であることを申し上げて終わりたいと思います。
  108. 野原正勝

    野原委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後四時五十六分休憩      ————◇—————    午後十時十三分開議
  109. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。川俣健二郎君。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 政府提案の雇用保険法案の質疑の最終段階を迎えるにあたって、各質疑者からそれぞれ質問が出て、政府答弁が数々ありました。その中で最終的に確認しておきたい問題だけを取り上げて端的に質問いたしますから、ひとつ確認のつもりで御答弁願いたいと思います。なお、時間的な関係で各関連官庁大臣のあれはできなかったのですが、特に国有林労働者の問題で、林野庁の長官にあとで一つだけ、労働大臣以外の確認をしておきたいと思います。  その第一は、雇用保険法案施行時に、当面任意適用とされる農林水産業の労働者五人未満事業主の事業については、早急に強制適用とすべきであると私らは考えていた。その強制適用とする時期は大体どの程度と考えておるのか、ここで聞いておきたいと思います。
  111. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 当面暫定的に任意適用とされる一部の事業についても、五年を一応の目途としつつ、できる限り早期に当然適用とすることとしたいと思っております。
  112. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第二は、出かせぎ、建設労働等の不安定雇用の問題については、労働者雇用及び生活の安定、福祉の向上をはかるため、抜本的対策の具体化をはかる必要があると思うが、これについて見解をただしたいと思います。
  113. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 出かせぎ、建設労働等の不安定雇用の問題につきましては、すみやかな検討を進め、抜本的対策の具体化をはかってまいりたいと思っております。  なお、建設労働対策については、現在、雇用審議会及び中央職業安定審議会において検討が行なわれておりますが、その結論に基づいて早期に対策の具体化をはかってまいりたい所存であります。
  114. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第三は、一時金制度を法的に今回新設するわけですが、それならば、その後は給付と負担の不均衡ということは問題にしないと解釈してよいのか。また、短期雇用者を雇用保険から将来締め出す考えはないものと考えるが、この点を確認したいと思います。
  115. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 特例一時金制度は、従来から種々御議論のあった季節労働者に対する給付制度的に明確に位置づけるために設けたものでありまして、御指摘のとおり御理解をいただきたいと思います。
  116. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第四は、一時金制度の運用にあたり、失業の認定等、窓口における実際運営上締めつけを行なうことがあってはならないと考えるが、どうか。
  117. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 さきにお答えいたしましたように、特例一時金制度は、従来から種々議論のあった季節労働者に対する給付制度的に明確に位置づけるために設けられたものでありまして、その運営にあたっては、窓口において締めつけを行なうようなことは考えておりません。
  118. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第五は、国有林労働者に対する退職手当については、従来に比べ不利とならないよう配慮するとともに、国有林労働者の通年雇用化を進めるべきであると思うが、これについては労働大臣並びに関係の林野庁のほうからも確認しておきたいと思います。
  119. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 雇用保険法案におきまして短期雇用者についての特例制度を設けることとしていることに伴いまして、国家公務員等退職手当法についても所要の整備を行なうこととしておりますが、国有林労働者につきましては、その雇用実態や現に通年雇用化が進められている段階にあることなどを考慮して、不利となることのないよう措置する考えであります。  また、国有林労働者につきましては、逐年その常用化が進められているものの、なお定期作業員等を中心に雇用の不安定な者が多い現状にありますので、労働省としても、農林省と連係をとりながら、新たな方法も含めて、国有林労働者雇用改善に協力してまいる所存であります。
  120. 福田省一

    ○福田政府委員 林野庁としましても、労働大臣の御答弁の趣旨に沿うて、労働条件につきましては関係労働組合とも十分協議し、その実現に全力をあげ、取り組んでまいる考えでございます。
  121. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第六に確認したいことは、雇用調整措置についてでありますが、労使の事前の協議によることを要件とすることを法令上明らかにすべきであると思うが、どうか。
  122. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 雇用調整措置の対象となる休業につきましては、企業の恣意的な休業が対象とならないよう、労働協約その他の労使の事前の協議によることを労働省令において明らかにしたいと思っております。
  123. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第七番目は、三事業のうち、特に能力開発事業について確認しておきます。  将来、雇用保険制度とは別立ての制度として、賃金総額の千分の十の企業賦課金を財源として、労働者の参加による管理運営するなど、抜本的な改善をはかるべきだと思うが、どうか。
  124. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 能力開発事業につきましては、現段階においては、事業主のみの保険料を財源として、雇用保険の付帯事業として行なうことが適切であると考えておりますが、職業訓練の振興のため、御指摘のような諸外国の例をも参考としながら、必要な財源措置に努力したいと思っております。
  125. 川俣健二郎

    ○川俣委員 次に、第八番目に確認しておきたいのは、公共職業訓練を強化するとともに、職業訓練制度全体の体系化をはかるべきであると思うが、これについて確認したいと思います。
  126. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 公共職業訓練につきましては、最近の技術革新の進展に対し、高度の技能を付与できるよう、その一そうの充実をはかる必要があると思います。また、わが国の事業内の教育訓練は、比較的実施率が高いにもかかわりませず、なお、その内容は十分と言えない現状であります。このため、能力開発事業において、公共職業訓練の拡充をはかることとともに、事業内訓練に対する指導、援助を強化するなどにより、両々相まって生涯教育の訓練体制の確立に資することとしているが、今後とも公共職業訓練の拡充強化をはかるとともに、職業訓練制度全体の体系化に努力いたす所存であります。
  127. 川俣健二郎

    ○川俣委員 第九番目は、先ほどの六番目で確認した雇用調整措置を、これを繰り上げて実施する考えはないのか。また、実行上休業手当が六割を上回るよう措置すべきであると思うが、どうか。
  128. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御指摘のような措置を必要とする事態が生じた場合には、実行上所要の配慮をしてまいりたいと思っております。  また、雇用調整措置の運用にあたりましては、休業手当が六割を上回るよう指導してまいりたいと思っております。
  129. 川俣健二郎

    ○川俣委員 次に第十番目は、雇用改善事業において、育児休暇その他育児に関する便宜の供与に関して援助を行なう考えはないのか。また、六十二条第一項第五号において、婦人労働者の援護に関する措置を行なうことについて、省令で明確にする考えはないか。これを確認したいと思います。
  130. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 育児休暇その他育児に関する便宜の供与に関しましては、現在、雇用促進事業団を通じて、企業内の託児施設の設置について長期低利融資を行なっているところでありますが、今後ともその充実につとめてまいりたいと思います。  なお、育児休業中の生活の安定の問題については、専門家による研究会議において現在検討を進めているところでありますので、その結論を待って措置したいと思っております。  また、六十二条第一項第五号については、御趣旨に沿うよう省令で明確にしたいと思っております。
  131. 川俣健二郎

    ○川俣委員 最後に日雇い特例給付について、強くこれを要求しながら確認しておきます。  日雇い特例給付の受給要件八十四日に満たないものがあるわけです。これを七十二日、または少なくとも日雇い健保の七十八日にすべきではないのか。また、そのような制度ができるまでの間、このような実情に十分配慮すべきではないかと私らは考えます。これについて強く要求しながら確認しておきたいと思います。
  132. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 日雇い特例給付の受給要件な緩和することにつきましては、次の改正を機会に検討してまいりたいと思います。  また、それまでの間については、実情に十分配慮した取り扱いを行なってまいるつもりであります。
  133. 川俣健二郎

    ○川俣委員 以上、十一項目にわたって、従来の各質問者の質疑に対する政府答弁を最終的に確認して、私の質問を終わります。
  134. 野原正勝

    野原委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後十時二十五分休憩      ————◇—————    午後十一時十八分開議
  135. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これにて雇用保険法案及び雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  136. 野原正勝

    野原委員長 ただいままでに委員長の手元に、葉梨信行君、和田耕作君より両案に対する修正案がそれぞれ提出されております。     —————————————
  137. 野原正勝

    野原委員長 両修正案の趣旨の説明を一括して聴取いたします。葉梨信行君。
  138. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ただいま議題となりました雇用保険法案及び雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党及び民社党を代表いたしましてその趣旨を御説明申し上げます。  まず、雇用保険法案について申し上げます。  第一は、基本手当給付率について、原案においては、賃金日額が千五百円以上三千円以下の受給資格者については、百分の七十から百分の六十までの範囲で逓減した率と、三千円をこえ六千円未満受給資格者については百分の六十と、六千円以上七千五百円以下の受給資格者については、百分の六十から百分の五十までの範囲で逓減した率とされておりますが、最近における賃金水準の上昇等を考慮し、かつ、給付の一そうの改善をはかるため、賃金日額が千五百円以上三千円以下の受給資格者については、百分の八十から百分の六十までの範囲で逓減した率と、三千円をこえ七千五百円以下の受給資格者については百分の六十とし、給付率改善をはかったことであります。  第二に、三十歳未満である者の所定給付日数並びに被保険者として雇用された期間が一年以上の者であって、四十五歳以上五十五歳未満である者及び四十五歳未満就職困難な者の所定給付日数について、原案においては、それぞれ六十日及び二百十日とされておりますが、現行制度最低給付日数等を踏まえて、それぞれ九十日及び二百四十日とするものとしたことであります。  第三に、特例一時金の額について、原案においては、基本手当の日額の三十日分とされておりますが、季節的受給者の従来の受給実績を十分配慮して、五十日分とするものとしたことであります。  第四に、短期雇用特例被保険者にかかわる被保険者期間の計算方法について、原案では、賃金支払い基礎日数が十四日以上ある満一カ月を一カ月の被保険者期間として計算することとされておりますが、季節的受給者の就労の実態を考慮し、当分の間、賃金支払い基礎日数が十一日以上ある一暦月を一カ月の被保険者期間として計算するものとしたことであります。  第五に、昭和五十年三月末までに被保険者となり、施行日の前後に継続して被保険者として雇用されていた短期雇用保険者が離職した場合には、特例一時金を支給せず、一般求職者給付を支給するものとし、この場合の所定給付日数は、旧法の所定給付日数に関する規定が効力を有するものとした場合の日数とするものとしたことであります。  第六に、日雇い労働求職者給付金の日額について、原案においては、第一級千七百七十円、第二級千百六十円、第三級七百六十円とされておりますが、日雇い労働者に対する給付改善をはかるため、第一級二千七百円、第二級千七百七十円、第三級千百六十円とするものとしたことであります。  第七は、以上の修正に伴い、関係条文について所要の整理を行なうものとしたことであります。  次に雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について申し上げます。  第一に、農林水産業、建設業、清酒製造業その他短期雇用特例被保険者を多数雇用する事業にかかわる雇用保険率について、原案においては、千分の十八とされておりますが、関係労使の負担を軽減するため、千分の十五とするものとしたことであります。  第二に、印紙保険料の額について、原案においては、第一級四十一円、第二級二十七円、第三級十八円とされておりますが、前述の日雇い労働求職者給付金の日額の修正に伴い、第一級六十三円、第二級四十一円、第三級二十七円とするものとしたことであります。  第三に、雇用保険法案に対する修正及び以上の修正に伴い、般員保険法の一部改正その他の関係条文について、所要の整備を行なうものとしたことであります。  修正案の要旨は以上でありますが、何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  139. 野原正勝

    野原委員長 両修正案について内閣の意見があればお述べ願います。労働大臣長谷川峻君。
  140. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府部内にもいろいろな意見がございますが、私としてはやむを得ないものと認めます。
  141. 野原正勝

    野原委員長 これより雇用保険法案及びこれに対する修正案並びに雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。斉藤滋与史君。
  142. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員 私は、自由民主党を代表し、この修正案及び修正部分を除く政府原案について賛成の討論をいたします。  この法律案は今後の雇用失業情勢に即応し、真に対策を必要とする人々に対し、社会的公平の見地に立脚し、思い切って手厚い措置を講ずることを内容としており、これからの雇用政策を推進する上に大きな役割りを果たすものと考えるものであります。よって、賛成するものであります。
  143. 野原正勝

    野原委員長 枝村要作君。
  144. 枝村要作

    ○枝村委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になりました雇用保険法案等及び同修正案に対して反対の意見を述べます。  今日まで長い時間をかけて慎重に審議してまいりましたが、その中で明らかにされたことは、当初心配された問題が浮き彫りにされ、わが党が提案した失業保険法の改正案とは大きな隔たりがあることがわかりました。  第一に、本来失業保険は、再就職するまでの期間給付すべきもので、給付日数を制限すべき性格のものではありません。まして、石油危機に便乗した大幅値上げやインフレの激化により、中小企業の倒産等、経済の大きな変動が生じつつあるときに、法改正による給付の切り下げを行なうことは、多くの労働者に大きな犠牲をしいることになります。  われわれの要求は、被保険者期間九カ月未満で百二十日分を最低に、二十年以上で七百三十日分の給付日数を基本として、全体の給付日数を大幅に延長することでありましたが、その反対の方向に改正されようとしておるのであります。  第二に、出かせぎ、季節労働者に対する失業保険給付を特例一時金によって切り下げるのはたいへんな改悪であります。出かせぎ、季節労働者の急増は、独占資本とその自民党政府によって高度経済成長政策が強行され、農民が切り捨てられ、農業破壊政策が強行された結果であり、資本全体が季節労働者を低賃金労働力として利用し、景気変動に対する調整弁としてきたものであります。さらにインフレの激化、独占価格のつり上げの中でますます困窮化し、不安定化する季節労働者生活に、失業保険の切り下げで追い打ちをかけるなどということは許されてよいはずがないのであります。第三に、妊娠、出産、育児等で退職を余儀なくされた婦人労働者の多くは、就業の継続を望みながら退職を強要され、あるいは育児、通勤条件などのために退職せざるを得なくなったものであり、長期的産休、育児休暇、保育所整備等の条件があれば就業できる労働の意思も能力も持った労働者です。したがって、その条件を整備せぬまま失業保険を打ち切り、給付を制限することは許せません。  したがって、本案は全体として保険給付を大幅に減らすものであり、労働者生活を一そう不安定にする改悪であるといわざるを得ません。  わが党の要求は、失業保険保険料は労三・使七の割合に改め、失保給付の国庫負担を三分の一に、また季節的給付は二分の一とすべきであるというものであり、日雇い失業保険一般保険料は使用者負担とし、印紙保険料のみを労働者負担として労三・使七の割合にすべきであるとしていますが、これを全く無視しております。  また、失業保険法をなしくずし的に変質させて保険財政を他に転用することは許せません。本来、制度的な雇用保障職業訓練は国と資本の責任において、労働者の利益がそこなわれることなく施策されなければならないが、これを現行失業保険制度の利用と財政的ワク組みで失業保険法体系に一元化することは、それぞれの制度機能を制約するとともに、一面において機能低下が避けられないのであります。  雇用改善、安定化と職業訓練制度の確立のためには、企業賦課金制による雇用促進基金、職業訓練基金をそれぞれ賃金総額の千分の十(全額企業賦課)を基準に創設し、雇用対策法職業訓練法を抜本的に改正してこれに組み込み、失業保険法体系とは別建ての制度化をはかるべきでありますが、その片りんすら見えず逆行しているのであります。  以上の観点から、わが党は、政府提案の雇用保険法案等の改正案に反対します。  なお、修正案も、努力された点を大いに認めるにやぶさかではありませんが、雇用保険制度の問題との関連もあり、賛成することができません。  以上をもって、反対の意見とします。(拍手)
  145. 野原正勝

  146. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、雇用保険法案並びに雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案に対して反対の討論を行ないます。  この法案は、現行失業保険制度を根本から掘りくずし、これを政府・自民党の主張する大資本本位の積極的雇用政策推進の道具に変え、それを制度的にも確立しようとするものです。  現行失業保険制度は、きわめて不十分なものとはいえ、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利保障した憲法第二十五条の規定に基づいて、失業中の労働者生活の安定をはかることを目的としています。  ところが、今回の雇用保険法案では、本来、資本家と国の負担で行なうべき雇用対策事業を、失業保険制度と一体化し、保険財政資金を雇用政策に投入する道を開くとともに、保険給付内容を大幅に切り下げるなどして、憲法の民主的条項に基づく失業保険制度を根底からくつがえすものであります。  私は、審議の過程で明らかにされたように、この法案は、昭和四十五年九月十七日の日経連常任理事会で、失業保険法の抜本改正と雇用対策事業の強化をうたった、労働力不足対策に関する政府への要望にそのまま沿った内容になっていることを見のがすことはできません。  労働省の資料によっても、五十年度予算試算によれば、工業再配置促進法や農村地域工業導入促進法によって移転する企業に対して、四億円から一挙に三十倍の百二十一億円が地方雇用機会創出交付金として支給されることになっております。このこと一つをとってみても、この法案は、悪名高い日本列島改造計画を推し進め、大資本に奉仕しようとする本質はきわめて明らかであります。  日本共産党・革新共同がこの法案に反対する第一の理由は、この法案がその目的条項にある雇用対策三事業失業保険制度と一体化したことであります。  本来、雇用対策事業資本家と国の負担で行なうべきもので、社会保険範疇に入るものではありません。それを失業保険と一体化したことは、これに逆行する改悪といわざるを得ません。  また、それだけでなく、失業保険給付についても、目的条項に就職促進のため云々と新たに加えられることによって、従来の失業中の生活の安定をはかるための保険給付から、全く異質の就職促進のための給付へと、失業保険性格を大きく変えたものであります。これは、政府当局が昭和三十九年以来、適正化通達や運用面で行なってきた失業保険の受給制限を法制化しようとしているものです。労働者の働く意思と能力、求職活動のあるなしを一方的に判断し、失業の認定を行なうことは諸外国にもその例がありません。憲法二十二条に定める職業選択の自由を侵すものであり、断じて認めることはできません。  反対する第二の理由は、失業保険給付を大幅に切り下げ、労働者を低賃金雇用に導くものであります。  政府は、給付と負担のアンバランスとか社会的不公平を是正すると称して、出かせぎ労働者や婦人、若年労働者にほこ先を向け、何ら根拠を示さず、給付日数の大幅な削減と就職支度金や扶養手当を廃止し、さらに通算制度の改悪によって低賃金就職を余儀なくさせるものであります。  農民が土地から切り離され、家族や郷里を離れて、出かせぎ労働者として不安定な職場で働かざるを得ないのは、まさに自民党歴代政府の農業破壊政策に真の原因と責任があります。にもかかわらず、政府は、給付を三分の一に切り下げ、逆に保険料を値上げすることによって、真の原因や責任を労働者に転嫁する案を出してきました。  今日まで、自民党の知事、地方議員を含めて、一道五県、二百八十八地方自治体が、この法案に反対の決議や意見書を採択しているという事実は、この法案が歓迎されていないことを雄弁に物語っています。  また、女子労働者が妊娠や育児などのため離職せざるを得ないのは、劣悪な労働条件に加えて、いまなお九十万人分の保育所不足など、婦人が働き続けられる条件を政府がつくってこなかったことが大きな原因です。  このような状態を放置し、何ら対策を講ずることなく、給付の切り下げと受給制限によって再就職を強要することは、この点からも労働者を低賃金に縛りつけるものといわざるを得ません。審議の結果から、自民党、民社党から修正案が出されました。この修正案は、政府案のあまりにも現実を無視した悪法から見るならば、国民的批判の前に幾つかの改善がなされています。出かせぎ労働者や若年労働者給付日数の延長、低所得労働者給付率の引き上げ、出かせぎ労働者受給資格取得要件の凍結など、しかしさきに述べた本法案の反動的、反労働者的な本質がいささかも変わるものではなく、また、現行失業保険改善といえるものでもありません。したがって、本法案はもちろんのこと、修正案にも反対せざるを得ません。  なお、私は、今日の雇用失業情勢の悪化と高物価、インフレのもとでの国民生活の危機が進行している中では、次のように現行失業保険制度改善が必要だと思います。一、給付率を全体に総収入の八〇%に引き上げ、二、給付日数と受給期間を大幅に延長すること、三、保険料は国と資本家が全額負担することを目ざし、当面労使三対七の負担割合にする。四、保険財政の管理と運営に労働者代表を加えることなど、労働者の要求をすみやかに実現すべきであります。また、労働者雇用を守るために、一、賃下げなしに時間短縮を行なうこと。二、解雇を法的に規制し、三、解雇や一時帰休、転業について労働協約の締結を資本家に義務づけること。四、失対事業改善し、拡大すること。五、高齢者就労事業を実施すること。六、職業訓練の拡充をすること。七、出かせぎセンターを設けて雇用保障をはかることなどを緊急に実施し、職業選択の自由を保障する職安行政の民主化を強く主張して、反対討論を終わります。
  147. 野原正勝

    野原委員長 大橋敏雄君。
  148. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました雇用保険法案等について反対の意見を表明いたします。  本法案は、その提案理由の説明にあるように、雇用情勢の変遷に対処するため、現行保険法がかかえている問題点を改正するということを示したものでありましたが、つぶさにその内容検討を加えてみるとき、一面、全産業への雇用拡大、被保険者保険料の負担の軽減など、部分的には改善部分も認められないわけではありませんが、その反面、季節労働者への締めつけ、給付日数の削減あるいは就職支度金の廃止、さらに事業主への交付制度の拡大など、企業サイドに立った雇用促進法であり、これらの問題点をわが党は強く指摘してきたところであります。  さらに、当委員会における長時間にわたる質疑を通じまして、わが党が指摘してきた諸問題点がさらに裏づけられてきたところであります。  これらの経過から、当委員会において大修正すべしとの意見も出され、その修正折衝に入ったものの、その結果は、なおわが党が主張、要望している目標とは大きな隔たりがあることから、わが党は本法案について反対の意思を表明して、討論を終わります。
  149. 野原正勝

    野原委員長 和田耕作君。
  150. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は民社党を代表いたしまして、雇用保険法案並びにその修正案に対して賛成の討論をいたします。(拍手)  失業保険法については、戦後の失業者生活を守るために相当の効果を持ってきたことを評価いたします。と同時に、年を経るに従ってさまざまの矛盾が出、問題点が出たことも多くの識者の指摘するところだと思います。  この法案は、そのような問題について改善をする点が多々あると思いますけれども、私どもが一番問題にしたのは、この改善によって、現在失業者の既得権になっておると思われる面について多くの損害を与える点が多々あるということでございました。それらの問題について、この修正案は一〇〇%とはいえませんけれども、約八〇%ぐらいの修正をなしておると思います。これは野党、社会党、公明党、民社党、協力してこの修正に努力してきたのでございますけれども、最後の段階に至って、社会党、公明党が修正案に反対に回ったことをきわめて遺憾に考えております。  民社党はそのような意味で、とにかくこの本案並びに修正案に対して賛成の討論をいたします。(拍手)
  151. 野原正勝

    野原委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  雇用保険法案について採決いたします。  まず、葉梨信行君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  152. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  153. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)  次に、雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について採決いたします。  まず、葉梨信行君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  154. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  155. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいまの議決の結果、字句等に整理を要するものがありましたときは、本委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  157. 野原正勝

    野原委員長 この際、葉梨信行君、川俣健二郎君、大橋敏雄君及び和田耕作君より、雇用保険法案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、趣旨の説明を聴取いたします。川俣健二郎君。
  158. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げるのでありますが、お手元にその案文が配付してありますので、これで御了承願いたいと存じます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————   雇用保険法案に対する附帯決議  政府は、雇用保険制度の適切な運用を図るため、左記事項を実現するよう、なお一層努力すべきである。 一 短期雇用特例被保険者の特例制度の実施に関連し、通年雇用促進、農業政策その他の産業政策、地域政策を総合的かつ、強力に進めること。 二 雇用保険の暫定任意適用とされる事業については、可及的速やかにその適用を図ること。 三 五人未満事業所への適用拡大を円滑に行うため、労働保険事務組合の助成等その育成強化に努めること。 四 出かせぎ労働、建設労働等の不安定雇用の問題について、労働者雇用及び生活の安定、福祉の向上を図るための制度及び施策の確立についての検討を行い、速やかにその具体化を図ること。 五 国有林労働者に対する退職手当について、従前に比し不利とならないよう措置すること。また、雇用の通年化を一層推進するとともに通年雇用に必要な新たな措置についても検討すること。 六 雇用改善事業等の三事業、特に能力開発事業及び雇用調整対策については、中小企業も十分これを利用しうるよう配慮するとともに、補助率についても大企業よりも高めるよう努めること。 七 雇用改善事業等の三事業の実施にあたつては、労働者の利益がそこなわれることのないよう事業内容について、労使の意見が十分に反映されるよう努めること。また、将来、事業内容の拡充強化とくに職業訓練の振興のため、労使の参加する管理運営、企業賦課金等の諸外国の制度も参考とし、制度のあり方についても、速やかに検討を行い具体化を図ること。 八 雇用改善事業等の三事業については、短期雇用者を多数雇用する産業において十分活用できるよう配慮すること。また、婦人労働者の援護に関する措置を含めるよう配慮すること。 九 公共職業訓練を強化するとともに、職業訓練制度全体の体系化及び資格の社会化を図ること。 十 行政体制の充実強化に努め、紹介窓口におけるサービスの向上を図ること。     —————————————
  159. 野原正勝

    野原委員長 本動議について採決いたします。本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を冷めます。   〔賛成者起立〕
  160. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、雇用保険法安については、葉梨信行君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められております。労働大臣長谷川峻君。
  161. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現に努力いたす所存であります。     —————————————
  162. 野原正勝

    野原委員長 なお、両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、本委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  164. 野原正勝

    野原委員長 次に、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これにて本案についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  165. 野原正勝

    野原委員長 ただいままでに委員長の手元に、葉梨信行君及び和田耕作君より本案に対する修正案が提出されております。     —————————————
  166. 野原正勝

    野原委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。葉梨信行君。
  167. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党及び民社党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。修正の要旨は、勤労者財産形成基金契約、勤労者財産形成受益金契約及び勤労者財産形成貯蓄付加金契約を締結できる金融機関等に生命共済事業を行なう農業協同組合連合会を加えること、以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————
  168. 野原正勝

    野原委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。まず、葉梨信行君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  169. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  170. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいまの議決の結果、字句等に整理を要するものがあるときは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  172. 野原正勝

    野原委員長 この際、葉梨信行君、枝村要作君、大橋敏雄君及び和田耕作君より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、趣旨の説明を聴取いたします。枝村要作君。
  173. 枝村要作

    ○枝村委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げるのでありますが、お手元に案文が配付してありますので、これで御了承をお願いいたしたいと存じます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————   勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。 一 勤労者財産形成促進制度全般について、今後更に積極的な改善に努めること。 二 特に財産形成の促進に有効な税制、財政面からの優遇措置を可及的速やかに講ずること。 三 勤労者財産形成基金契約等に基づく資金運用については、法の施行上、適当な範囲内で、勤労者財産形成基金ないし労使の特定の意向による運用の途を開くよう配慮すること。 四 中小企業特に規模の小さい企業に働く勤労者の財産形成について、できるだけ格差が生じないよう特にこれに対する援助を行うよう配慮すること。 五 物価対策や土地対策の確立が勤労者の財産形成の基礎的条件をなすことにかんがみ、これらの施策の早期充実を図ること。 六 雇用促進事業団が行つている事業主等を通ずる持家促進融資について、現行勤労者分譲住宅建設資金融資の貸付条件の改善に努めるとともに財形貯蓄を行つている勤労者に対していわゆる転貸融資の途をも開くよう配慮すること。 七 勤労者の貯蓄目的における子弟教育目的の重要性にかんがみ、かかる目的の貯蓄に対する援助の強化について検討すること。     —————————————
  174. 野原正勝

    野原委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  175. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本案については、葉梨信行君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められております。労働大臣長谷川峻君。
  176. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいま御決議の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、善処してまいるつもりであります。     —————————————
  177. 野原正勝

    野原委員長 なお、本案に関する委員会報告書の作成等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  179. 野原正勝

    野原委員長 次回は、明十四日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後十一時四十八分散会