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田中(美)
委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、
雇用保険法案並びに
雇用保険法の
施行に伴う
関係法律の
整備等に関する
法律案に対して反対の討論を行ないます。
この
法案は、
現行の
失業保険制度を根本から掘りくずし、これを政府・自民党の主張する大資本本位の積極的
雇用政策推進の道具に変え、それを
制度的にも確立しようとするものです。
現行の
失業保険制度は、きわめて不十分なものとはいえ、すべての国民に健康で文化的な
最低限度の
生活を営む
権利を
保障した
憲法第二十五条の規定に基づいて、
失業中の
労働者の
生活の安定をはかることを
目的としています。
ところが、今回の
雇用保険法案では、本来、
資本家と国の負担で行なうべき
雇用対策
事業を、
失業保険制度と一体化し、
保険財政資金を
雇用政策に投入する道を開くとともに、
保険給付の
内容を大幅に切り下げるなどして、
憲法の民主的条項に基づく
失業保険制度を根底からくつがえすものであります。
私は、
審議の過程で明らかにされたように、この
法案は、昭和四十五年九月十七日の日経連常任
理事会で、
失業保険法の抜本改正と
雇用対策
事業の強化をうたった、労働力不足対策に関する政府への要望にそのまま沿った
内容になっていることを見のがすことはできません。
労働省の
資料によっても、五十年度予算試算によれば、工業再配置
促進法や農村地域工業導入
促進法によって移転する企業に対して、四億円から一挙に三十倍の百二十一億円が地方
雇用機会創出交付金として支給されることになっております。このこと
一つをとってみても、この
法案は、悪名高い日本列島改造計画を推し進め、大資本に奉仕しようとする本質はきわめて明らかであります。
日本共産党・革新共同がこの
法案に反対する第一の理由は、この
法案がその
目的条項にある
雇用対策三
事業を
失業保険制度と一体化したことであります。
本来、
雇用対策
事業は
資本家と国の負担で行なうべきもので、
社会保険の
範疇に入るものではありません。それを
失業保険と一体化したことは、これに逆行する改悪といわざるを得ません。
また、それだけでなく、
失業保険給付についても、
目的条項に
就職の
促進のため云々と新たに加えられることによって、従来の
失業中の
生活の安定をはかるための
保険給付から、全く異質の
就職促進のための
給付へと、
失業保険の
性格を大きく変えたものであります。これは、政府当局が昭和三十九年以来、適正化通達や運用面で行なってきた
失業保険の受給制限を法制化しようとしているものです。
労働者の働く意思と能力、
求職活動のあるなしを一方的に判断し、
失業の認定を行なうことは諸外国にもその例がありません。
憲法二十二条に定める
職業選択の自由を侵すものであり、断じて認めることはできません。
反対する第二の理由は、
失業保険給付を大幅に切り下げ、
労働者を低賃金
雇用に導くものであります。
政府は、
給付と負担のアンバランスとか
社会的不公平を是正すると称して、出かせぎ
労働者や婦人、若年
労働者にほこ先を向け、何ら根拠を示さず、
給付日数の大幅な削減と
就職支度金や扶養
手当を廃止し、さらに通算
制度の改悪によって低賃金
就職を余儀なくさせるものであります。
農民が土地から切り離され、家族や郷里を離れて、出かせぎ
労働者として不安定な
職場で働かざるを得ないのは、まさに自民党歴代政府の農業破壊政策に真の原因と責任があります。にもかかわらず、政府は、
給付を三分の一に切り下げ、逆に
保険料を値上げすることによって、真の原因や責任を
労働者に転嫁する案を出してきました。
今日まで、自民党の知事、地方議員を含めて、一道五県、二百八十八地方自治体が、この
法案に反対の決議や
意見書を採択しているという事実は、この
法案が歓迎されていないことを雄弁に物語っています。
また、女子
労働者が妊娠や育児などのため離職せざるを得ないのは、劣悪な労働条件に加えて、いまなお九十万人分の保育所不足など、婦人が働き続けられる条件を政府がつくってこなかったことが大きな原因です。
このような
状態を放置し、何ら対策を講ずることなく、
給付の切り下げと受給制限によって再
就職を強要することは、この点からも
労働者を低賃金に縛りつけるものといわざるを得ません。
審議の結果から、自民党、民社党から修正案が出されました。この修正案は、政府案のあまりにも現実を無視した悪法から見るならば、国民的
批判の前に
幾つかの
改善がなされています。出かせぎ
労働者や若年
労働者の
給付日数の延長、低所得
労働者の
給付率の引き上げ、出かせぎ
労働者の
受給資格取得要件の凍結など、しかしさきに述べた本
法案の反動的、反
労働者的な本質がいささかも変わるものではなく、また、
現行失業保険の
改善といえるものでもありません。したがって、本
法案はもちろんのこと、修正案にも反対せざるを得ません。
なお、私は、今日の
雇用失業情勢の悪化と高物価、インフレのもとでの国民
生活の危機が進行している中では、次のように
現行失業保険制度の
改善が必要だと思います。一、
給付率を全体に総収入の八〇%に引き上げ、二、
給付日数と受給
期間を大幅に延長すること、三、
保険料は国と
資本家が全額負担することを目ざし、当面労使三対七の負担割合にする。四、
保険財政の管理と運営に
労働者代表を加えることなど、
労働者の要求をすみやかに実現すべきであります。また、
労働者の
雇用を守るために、一、賃下げなしに時間短縮を行なうこと。二、解雇を法的に規制し、三、解雇や一時帰休、転業について労働協約の締結を
資本家に義務づけること。四、失対
事業を
改善し、拡大すること。五、高齢者就労
事業を実施すること。六、
職業訓練の拡充をすること。七、出かせぎセンターを設けて
雇用の
保障をはかることなどを緊急に実施し、
職業選択の自由を
保障する職安行政の民主化を強く主張して、反対討論を終わります。