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1974-05-07 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月七日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    加藤 紘一君       住  栄作君    田川 誠一君       田中  覚君    高橋 千寿君       戸井田三郎君    粟山 ひで君       大原  亨君    金子 みつ君       島本 虎三君    田邊  誠君       多賀谷真稔君    村山 富市君       山本 政弘君    田中美智子君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       坂口  力君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君         労働省職業訓練         局長      久野木行美君  委員外出席者         林野庁職員部長 野崎 博之君         労働省職業安定         局失業保険課長 関  英夫君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         労働省職業訓練         局管理課長   中野 光秋君         労働省職業訓練         局訓練政策課長 橋爪  達君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   瓦   力君     久野 忠治君   小林 正巳君     有田 喜一君 同日  辞任         補欠選任   有田 喜一君     小林 正巳君   久野 忠治君     瓦   力君 五月七日  辞任         補欠選任   森井 忠良君     多賀谷真稔君 同日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     森井 忠良君     ————————————— 四月二十五日  国民健康保険法の一部を改正する法律案川俣  健二郎君外十三名提出衆法第三〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用保険法案内閣提出第四二号)  雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六四号)  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(川  俣健二郎君外九名提出衆法第一五号)  失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関  する法律の一部を改正する法律案森井忠良君  外九名提出衆法第一六号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  雇用保険法案雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案国有林労働者雇用の安定に関する法律案並び失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず第一に、現行法と新法案の比較における保険収支の問題についてお聞かせを願いたいと思います。保険収支の変わるおもな点について、局長からひとつ答弁を願いたいと思います。
  4. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 保険収支の正確な計算につきましては、五十年度の問題でございますので、正確な数字をいまここで申し上げることはなかなかむずかしい問題ではございますが、一応現時点で予測いたしました数字を申し上げますと、昭和五十年度ベース収支の総規模が六千六百七十億円、こういうふうに予定いたしております。もしこの制度改正が行なわれなかった場合の、現行ベースをそのまま引き延ばしていった場合の収支規模に比較いたしまして、いろいろな影響等を勘案いたしますと、全体で二百二十五億円の増加、こういうことになっております。  歳入面で申しますと、保険料収入が五千五百七十億円、歳出面では失業給付の総額が四千六百五十億円、雇用改善事業能力開発事業福祉事業、この三事業合わせまして千二百五十億円、こういった見込みを一応立てているわけでございます。  その中身についてかいつまんで申し上げますと、保険給付費で、改正案によりますといま申し上げましたように四千六百四十五億円になりまして、差し引き七百五十億円の増を見込んでおります。それから事業費のほうでは三事業合計で、就職支度金が振りかわりになりまして、その関係で千二百四十九億で、現行制度をそのまま延ばした場合よりも六百二十六億円の減、こういう一応の推算をいたしておるわけでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず保険給付並びに事業費——事業費といいましてもいままで福祉施設ということで出しておりますこの就職支度金を含めて、おもな増減の点の項目をお聞かせ願いたい。
  6. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 保険給付費事業費に分けまして、ただいま申し上げました保険給付費の七百五十億円の増の内訳でございますが、給付率改定によります増が百七十一億、それから全面適用によりまして新しく適用になりますことによります給付増が二百七十九億、農林水産業適用拡大いたしますことによります給付増が三百九十七億、それから新しく設けられます常用就職支度金その他によります増が二百二十四億、それから所定給付日数改定によります減が五十六億、それから特例一時金——短期受給者給付の減が二百七十四億、以上で合計いたしますと七百四十一億の増になります。それから日雇い失業保険改定によります増が九億でございまして、合計で七百五十億の給付増になるわけでございます。  それから三事業関係、いわゆる現行福祉施設費の中で、今回の改定によりまして就職支度金制度常用就職支度金制度にかわりますので、その関係でその分が施設費から振りかわることによりまして減になります。新たに雇用改善事業能力開発事業雇用福祉事業、それぞれ増額になりまして、差し引きで六百二十六億の減、こういうことに相なるわけでございます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず減になる点、これが今度の改正の大きな問題点だと思う。なるほど財政面から見ると保険財政収支面から見た改正という点が非常に大きい、こういうように思われるのです。  そこで一つずつお尋ねをしたいと思いますが、三つ大きな点がこの委員会でもあるいは本会議でも指摘されておりますが、それは何を申しましても所定給付日数変更、これが一つ大きな問題。それから季節受給者特例が、これが一つの大きな問題。それから就職支度金の廃止、これが問題点だと思います。  そこで、これを一つずつお聞かせを願いたいと思いますが、しかしすでに多くの論議がなされておりますから、比較的重複を避けてお聞かせ願いたいと思います。この所定給付日数変更というのは、なぜこういうようにおやりになったのか。どうもこれは国際的に見ても、私はきわめて珍しい例である、こういうように思うわけですがね。これは一体どういう観点から給付日数改定をやろうとされておるか、これをお聞かせ願いたい。
  8. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行制度におきましては、失業保険金給付日数は被保険者期間長短によって定められることになっております。これは先生承知のとおり、当初の失業保険法におきましては一律にすべて百八十日ということでございましたが、その後だんだんと改定されまして、現行のような制度になっているわけでございます。しかしながら、ここ数年間の労働市場状況雇用失業情勢から見てまいりますと、現行所定給付日数の定め方が実情にきわめて乖離したような状態になっていることはもう先生承知のとおりでございます。  そこで、今回の制度改正によりまして、失業保障の機能を一そう強化いたしまして、今後の起こり得るであろう失業に対処して、十分これに適応するような制度とするためには、今後の雇用失業情勢を十分見きわめた上で、それに最も適合するような制度に改める必要がある、こういうことからこの給付日数改定を行なうことにいたしたわけでございます。  その改定考え方につきましては、すでにもうここ数年来労働市場が非常に逼迫しておりまして、求人倍率は次第に増加してまいりまして、最近では大体二倍程度になっております。しかしながら、そういった求人状況が非常に逼迫しておりますにもかかわりませず、局部的に見ますとなおかつきわめて失業度の高い、きわめて就職困難な階層というものが今後とも十分予想されますし、ある部面におきましてはそれが一そう増高することも考えられるわけでございます。そういった事態に対応できるような制度をつくりますためにその実態に即した給付日数を定めることにいたしたのが、今回の改定の最大の理由でございます。  そこで一つは、こういった労働市場状況が非常に逼迫しておるにもかかわりませず、求人求職状況求人倍率を見ますと、比較的年齢の若い層につきましては、いわゆる新規学卒の、金の卵といわれる階層から三十代、四十代までは、どこの地域におきましてもいわゆる求人倍率はかなり高くなっておりまして、就職状況はきわめてスムーズに行なわれております。しかし、それに反しまして四十五歳以上、特に五十五歳以上の高年齢層になりますと、求人の非常に多い地域におきましてもなおかつきわめて求人倍率は低くなっております。ことに過疎地域になりますとなおそれに輪をかけて就職困難だ、こういう状態が現に存在いたしておりますし、今後ともこういった状況わが国の人口の高齢化に従ってますますその度合いは強められていくだろう、こういうことでございますので、そういった実情に対応いたします制度に改めるために、就職難場度によってその給付日数をきめる。その際就職難易度をここ数年来の労働市場状況、今後の推移等を勘案いたしまして、その基準としてひとつ年齢によって給付日数を定めるということにいたしたわけでございます。と同時に、単に年齢だけでなくて身体障害者でございますとか、社会的にきわめて就職に問題のある人たちとか、こういった階層に対しまして給付日数延長する、こういう制度を取り入れることにいたしたわけでございます。そういうことによりまして就職できるまでの間、一定保険という原理の範囲内で失業給付を行なうことによって、生活の安定を得させ、就職を促進しよう、こういう考え方でございます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 昭和三十年に、一律百八十日から要するに被保険者期間によって延長をされたわけです。これは保険主義からいうとあるいは妥当でありますけれども、しかしその当時、ものの考え方として社会保障原理のほうに近づきつつあるわが国制度でこういうことがいいだろうかと若干疑問を持ちました。しかし、給付が上がるわけですから、これは私は賛成をしたわけです。給付が上がるわけですから。ですから問題は、若干下がるものもありましたけれども、大部分が上がっていくわけですからこれはいいだろう、こういうように考えたわけです。すでに三十年の八月、炭鉱離職者は出ておりました。そして合理化法の制定もあっておる時期ですから、そう考えたわけですが、私は就職難易度によって所定日数を変えるという方式も、社会保障原理からいえばそう悪いことではないと思うのですよ。しかし、下げるということは私はけしからぬ。それからさらに平均政策ではならないのですよ、こういう人権の問題は。要するに画一政策であり、それから平均政策はこういう政策にはとってはならぬ、私はこういうように思うのです。若い青年就職が容易であるからこれは六十日にするのだ、そういうことはいやしくも労働者から保険料を取っておる制度においては許されない行為だと思うのです。平均では食えないのですよ、就職できないのですよ、平均政策では。なぜ若い青年平均政策をとったかという、これは私は第一の大きな疑問です。ことに、いまのわりあいに職業経験のない諸君は、やはり職業に対する安定感がない。それだからといって保険給付を短くするというのは私は間違いだと思う。職種によりますと、たとえば栄養士でも薬剤師でもそうでしょう、いかに若いからといったって、その職を求めることは非常に困難ですよね。そういう自分がいままで資格を持っているような職種、これは病院——お医者さんの場合はいいですけれども薬剤師栄養士の場合は非常に困難ですよ。こういうものをただ一律画一政策でこれは六十日ですと、こういうことが若いからということで言えるかどうか、私はここに発想としていいところがあるかと思うと、がたっと非常に均衡を失する発想が出てきておる、こういうように思うのです。今度の法案はそういう点においては実に脈絡が通ってないのですよ。この点においてはこの方向で進むかと思うと、今度逆の方向政策が転換をしておる部分がある。一体どちらの方向でこの政策がつくられたのか、ほとんど私どもわからない。ただ、わかるとするならば、それは保険財政合理化する以外の何ものでもないという点が非常に多いのです、全体的な問題としてこれを見ると。ですから私は、平均政策ではめしは食えない、なぜ青年の場合は就職が容易であるからというので給付を減らしたか、これは全く血の通ってない、最近のいわゆる人権無視した政策ではないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  10. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回の改定平均的画一策におちいっているのじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、私どもは実は全く逆でございまして、従来の全員一律、あるいは三十年の改正によって今日に至っております、被保険者期間長短によって給付日数が定められる、これのほうがむしろそういった平均政策であり、画一的な制度ではなかったか、むしろ失業した人たちほんとうに再就職するまでの間、保険原理の中でできるだけ手厚く、きめこまかく失業に対する保障を受け得るというためにはどうしたらいいのかということを考えた結果が、私どもは、こういう今回のような改定になった、こういうふうに考えておるわけでございます。若い人たちを六十日にしたのはどういうわけか、これは平均政策人権無視だとおっしゃいますけれども、実はこの数年来の労働市場状況なり就職状況から見ますると、たとえば新規学卒につきましては、三年たちますとその半数が離転職をしております。その大半が幸いなことに平均ないしは上向移動だという実績も出ております。その再就職状況を見ますると、ほとんどがきわめて短期間にその希望に応じて再就職をいたしております。その平均日数を見ますと、大体四十五日ということです。女子の場合は若干上回っておりまして、これはいろいろの理由もございますが、女子の場合は六十三日程度になっております。こういう状況を見ますると、私どもはこの若年層につきまして所定給付日数を六十日程度にすることについては、決して人権無視とかあるいは切り下げということにならないのではないか。と同時に、若年層現行制度できわめて長い給付日数が与えられている、それに反してほんとう就職の困難な、たとえば五十五歳以上の高年齢者が九十日とかあるいは百八十日、そういう短期給付日数しか与えられない、こういう制度につきましては、私はきわめて現在の労働市場の現状にそぐわない不合理制度であり、いま御指摘になりましたようなきめこまかさ、手厚さという点からいうと非常に欠けるものがあるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  と同時に、平均政策でないということの一つの証左でございますけれども地域的に個人的にその就職状況、再就職のむずかしさによっては個人的な延長あるいは地域的な延長、こういった措置も今回の制度で織り込まれておりますので、その点につきましては、いま御指摘の点とは逆に、私ども失業者実態に即したきめこまかな措置をとったものだ、私どもはかように考えておるわけでございます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は四十五日で平均が済むならば、いまの制度を置いておってもいいと思うのですよ。あなたと私はものの考え方が逆なんですよ。平均就職がいい場合に本人だけがなかなか思うような就職がない、永遠の職場を見出し得ないというならば、本人現行権利を与えておっても何も不合理ないでしょう。ことにあなた方が若い二十代に、あなた方の学歴を持って首になったとしてごらんなさい。二カ月じゃあなた方はとても就職しませんよ。職安ほどいまの官庁の中で信頼されないと言ったら悪いけれども労使ともたよりにしていない役所はないですよ、これは残念なことだけれども就職はみな会社に頼んだり、代議士に頼んだりしておるのですよ。いいところへ行こうと思うなら、職安に頼まない。会社のほうもつてを頼んで募集しているのですよ。それは安定所が形式なんですよ。こういうところに問題点がある。四十五日しか平均がないなら、いまの制度でいいじゃないですか。全般的に就職が容易なときに、そういう本来ならば権利がある人を、それだけ掛け金を納めた人が、自分が将来の職場として見つけることが不可能である、なかなか困難だ、こういう人をやはり救うてやるべきじゃないですか。そこに私は、画一行政だと言っているのですよ。いまのように就職困難の高齢者に同じような率——それは私は高齢者失業保険給付期間を長くする、これは賛成なんです。しかし、そうかといって、若い諸君就職が全体的に平均的に容易であるからといって、いわば権利を剥奪するということはないだろう。ここがまた問題だと思うのですよ。それで私は画一行政だと言っている。ですから、なかなかいまのお役所、頭のいいところはあるわけですよ、いいところはあるわけだけれども、全体の大ワクが悪いのか、自民党の政策が悪いのか、とにかくいいところを芽を出しておくと、こちらの金を持ってきてこちらへつぎ込むから、結局一体どちらの方向に行っておるのだというように感ずるわけですよ。ですから、一般就職がいいときに本人がなかなかいろいろな事情で条件に合わないという場合、その場合に私は、当然六十日では不可能だと思いますよ。あなた方は自分の立場に立ってごらんなさい。ちょうど何かのことでぱっと整理をされた、そうしたらあなた方のような職を求めるなんて、とても二カ月じゃできませんよ。私ども気が弱いから、自分が二十代だったら、首を切られたらとっても二カ月じゃ就職ができない、こう思いますよ。どこでもいいから就職せい、何でもいいからやれというならできるですよ、これは。それはできないでしょう。だから私はこれはどうも人間疎外だ、こういうように思うのですね。ですから問題は、百八十日でもいままで不合理がなかったのなら、これは置いておったらどうですかと、こう言っている。大臣、どうですか。
  12. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 四十五日で十分なら、いままでのままでもいいじゃないか、これは確かにそういう考え方ももちろん理想論としてはあり得ると思います。(多賀谷委員理想じゃない、現実ですよ」と呼ぶ)むしろ私ども現実に立ち返って考えますと、保険という制度ワクの中で一定限界というものがございます。それで比較的現行失業保険法、今回の雇用保険制度におきましては特にそうでございますが、それぞれの労使関係者がみな一様にその所得に応じて負担をして、その負担された経費によって必要な分をまかなっていく、必要な保障を行なっていく、こういう考え方に立っておるわけでございまして、実態から見て、あるいは今後の実情を十分考えた上でそれで十分である、一応十分と考えられるその限界というものを制度の中に取り込む場合に、一律にいままでの制度でもいいじゃないか、あるいは先般来八木先生おっしゃいますように、二年でも三年でも、期限なくてもいいじゃないか、これは私は理想論だと思います。理想的にはそうでございますけれども保険という制度ワクの中でものを考える場合に、一つ限界というものがどうしても必要になります。その限界をどこに求めるのか、なるべく多いに越したことはございません。しかし実情から見て、必要以上のものをワク組みとしてこさえておくということは、制度をつくる場合にはどうしてもやむを得ない限界がありますし、その限界を私どもはどうしても考えざるを得ない。  そこで、いままでの制度の中で実績を見まして、その実績と今後の情勢等見きわめた上で、私どもとしては、これならいま先生おっしゃるような人権無視ではないし、切り下げでもないし、必要にしてかつ十分なものがこれで担保されるんじゃないか、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぼくは統計的に四十五日の、このばらつきを見たいと思うのです。やはり、そういう不幸な人を一人でも救済するというのが政治なんですよ。ですから私は、むしろ就職が可能なときに本人は六十日で就職できない、いらいらしますよ。先ほど言いましたように、われわれのところに頼みに来る栄養士だとか薬剤師なんというのは簡単にないですよ、それで仕事をしようと思うならば。それは、どこでも仕事に行きなさいといえば、若いから幾らでもありますよ。ところがそういう特殊な資格を持った人、それは必要なんです、必要なんですけれども、たまたまそういう病院があかなきゃならぬ、そういう個所がなきゃならぬでしょう。そういう場合に六十日というのは、どこでもいいからとにかく就職を選びなさい、これは私は行政じゃないと思うのですよ。そして日本の場合は、本人が負担しておるわけです。ですからこれは、あとからも聞きますけれども失業という事態が起こったら本来やるべき性格があるんですよ。日本の場合は、外国のように使用者だけが出すというような失業保険制度じゃないのです。本人が出しておる。本人が折半しているわけです。ですから、これは求職給付というのもおかしいのですけれども失業という事態にもなきゃならぬ。まあ、そこで意思と能力というのが一応出てますけれども、私はこれは現実に非常に沿わない、人間疎外ですよ、こう考える。大臣、どう思われますか。若い青年だからといって、一般雇用情勢がいいからといって、いままで現行法でいけば、二百十日の人だって、相当の権利を持った人だってあるのです。それを、ばっと六十日に押えるというのは、これは青年気持ちを考えない、どこでもいい、いいかげんな職につけと、こういうことですよ。これについて大臣、どういうように思われるのですか。
  14. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 一番ありがたいことは、就職の口がいまの日本で非常にあるということだと思います。私も職安などにも参りますけれども代議士、私たちもだいぶ就職頼まれますけれども、これは特殊のケースだと思うのです。しかし、私がいま職安に行ってみまして、自分が希望するような条件それから地域、こういうものを申し入れしますと、いまの求人需給状況からして、十分か十五分のうちに全部オンラインで回答が三つも四つも返ってくるわけですよ。その中から選んで、そういうところにとにかく話に行ける。自分条件に合わなきゃ、また戻ってくる。別なカードに行ける。私も学生時代、飯田橋の職安に立ったことがあるけれども、このごろ歩いてみると、日本全体の雇用需給が、そういうセレクトするというところが非常に楽だという感じだった。しかし、いまあなたがおっしゃったように、われわれも栄養士頼まれます。一時は、学校の先生保健体育を頼まれたけれども、なかなか保健体育がなかった。そういう個々なるケースがあります。そういうこともありますが、おっしゃる気持ちの、六十日では現行よりも大幅に下がって、若い諸君に希望を持たせないんじゃないか、そういう者を救ってやるのもお互いの政治だというお気持ちも、私もよくわかりますので、そういう点については、ひとつ先生のお話しのこともよく理解いたしまして、御審議を私はお願いしたい、こう思っております。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第一、外国にも全然例がないでしょう。若いから削減するという例がありますか。私はずいぶん調べてみたけれども、どこにもないですよ、若いからといって……。老齢者であるから延長するというのはありますよ。老齢者であるから延長するというのは、かなりあります。ところが、若いからそれを削減するという例はないんですね。これは日本というのは、そんなに若いから就職がいいんでしょうかね。あなたが考えておるような就職職種ですね、少なくとも職安が扱っておるような就職職種ですね、こういう職種と違うんじゃないですか。そういう職種に合わないような人が相当いるんですよ、やっぱり。いま、大臣おっしゃいましたけれども、必ずしもそういうようになっていませんよ。確かに数は来ますよ。しかし、ホワイトカラーになりたいという諸君で、そうして特殊な技能を持っておる、それは日本では必要なんです、必要なんだけれども、なかなかその口がないというのは幾らでもあります。場所的にもね。ですから、なかなか条件が合わない。またそれが、学校の制度にもよりますけれども資格者が多いというような場合、幾らもあるわけですよ。ですから、そういうのを画一行政でやるということは間違っておるという感じがするんです。そこで、大臣どうですか、これはもとへ返されるわけですか、百八十日に返しますか。
  16. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま多賀谷先生から、外国に例はないじゃないか、確かにこういったそのままの例はございません。と同時に、若年層について、三十歳以下について給付日数切り下げたわけではございませんで、全く新しい観点から実際に就職可能な実態というものを見きわめた上で、それに必要な給付日数を定めること。年齢制によったんだとおっしゃいますが、実は年齢制ということではなくて、就職難易度というもののものさしを、その一つ年齢に求めた。そのほかに身体に障害のある人だとか、あるいは社会的に事情を持った人だとか、そういったいろいろな要素を加味しながら、給付日数というものを定めたわけでございます。そこで、そのものさしの一つとして年齢階層別に定めた場合に、従来の労働市場状況から三十歳未満、四十五歳未満、五十五歳未満、五十五歳以上、こういうふうに区別いたしました。その区別のよって来たるところは、労働市場求人倍率就職状況が、明らかにそういったデータを示しております。そのデータに基づいて、必要にしてかつ十分——不十分だとおっしゃるかもわかりませんけれども、私どもはデータに基づいて、大体この程度ならば十分であろう、若干プラスアルファをつけたような形で考えました日数というものを制度化しようとしたわけでございまして、決して切り下げたわけではございません。確かに現行制度から見ますと、その部分が下がったかもわかりませんけれども制度的には切り下げたというつもりはございません。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも労働省のお役人は、頭がいいせいか、ゆれが非常に大きいんですよ、振れが。ことに、失業保険法改正の歴史をずっと見てごらんなさい、実にゆれが大きいんですよ。ですから、いま問題の就職支度金だってそうでしょう。あるいは、勤続年数によって給付を増した者でもそうでしょう。そうして今度は反省かどうか知らぬが、その上に立って、ばっさりこの制度をやめて、そうして今度は年齢層でいくんだ。年齢層によって区別するんだといったら、今度若い者をぽっと下げてくる。どうも政策が一貫してないんですよ、これはものすごく。いままで何回か、大きな改正は、三十年、三十四年、そして今度の改正。もう、観点をだっと変えてくるわけですよ。それなら保険の料率は違うかというと、それは違わない。しまいには保険の料率まで変えやしないかとぼくは思ったんですけれども保険の料率は変えない。二十代はどうせもらい高が少ないから安いんだなんていうことはしてない。これは一律にとった。とにかく、こんな振れの大きい政策をされると非常に動揺しますよ。頭はいいんです、シャープなんだけれども、振れが大きいですね。ですから、間違ったといったら、がらっと変わってくる。それがまたひとつこの例です。これはやがて、今度は通過するか通過しないかわからぬけれども、六十日にしておいてごらんなさい。必ず改善してくるよ。ごうごうたる非難で、いや、これは雇用情勢が変わったと、必ず改正する。間違いない。それほど、原則を変えたから全部変えるんだという考え方、それは間違いじゃないですか。ですから私は、個人の問題を考えないで平均政策でいっておるという点が大きな間違いだ。  それからお年寄りの問題は、それは難易度によって区別するというが、お年寄りの問題ありますよ。それはドイツのように、失業保険が切れたあとに失業手当の保護もある。あるいはフランスのように、五十歳以上の方で三百六十五日の保険期間が終了した後には二百四十四日まで五十歳以上はあるとか、そういう制度がお年寄りにはあるのです。しかし、若いからといって日数を少なくする制度というのは、世界にない。しかしあなたのほうは、難易度に変えたからという。年だけではいかないのですよ。言うならば、それは職種もやってごらんなさい。いろいろなファクターをこういってごらんなさい。結局めんどうくさいからもとへ返るのですよ。それなら、なぜ職種なんか選ばぬのです。職種の場合なら、これまた難易度が変わってくる。自分はこういう職種のもの、これは難易度が変わるのです。一般の土木事業なんというのは幾らでもあるのです。ですから、なぜ年齢だけを選んだのか、これだっておかしいでしょう。ですから私は、お年寄り、老齢者が就職困難であるということはわかるけれども、それによって若い者のほうは削っていくというものの考え方は、あまりにも政策の振れが大きいんじゃないですか。
  18. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 労働省の政策が振れが大きい、頭がいいというような話でありますが、これはお互いこういうところで審議している間に、振れを直したりいろいろなことをやるわけです。大体失業保険制度ができたときは、御承知のように日本は敗戦のあとで、失業者が非常に多かった。それがこういうふうに若年層のほうが金の卵、そして年寄りがなかなか就職できない、そういうときに合わせて、生涯訓練なども考えながらやっていこうとしておりまして、これはもう労働者を守るのが私どものほうの役所ですから、御審議をいただきながら、御不審の点は是正しながらもやっていこうとしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 じゃ、ひとつ審議の過程にまちましょう、これは、大臣は相当これについては弾力性があるようにおっしゃいましたから。とにかくお年寄りを給付を長くするということはよろしい。これはよその例にもあるし、またそうすべきだ。その他は私は区別すべきでない、こういうように思いますね。非常に問題がある、こういうように考えます。年齢一つでいくというところには問題がある、こういうように考えざるを得ません。  そこで、今度また、従来は九カ月をこえる場合、これは百八十日だったでしょう。ところが、なぜ今度一年ということになったのですか。
  20. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 もともとの制度が、一年以上の場合、一年間に六カ月以上の被保険者期間があった場合百八十日というのが最初の失業保険制度でございまして、その後、先生の御承知のような改正の経緯がございまして、いま御指摘のような措置に落ちついております。今回の改定短期受給者の特例制度をつくるにあたりまして、一年以上ということで最初の制度に戻したわけでございます。一年以上の者については、いま御指摘のありましたような就職難易度によって給付率を引き上げる、それ以下の者については六十日、こういうことにいたしたわけでございます。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これも私はやはり一つの大きな改悪だと思いますね。これ、なぜこういうように区切っていくのですかね。  そこで、私は具体的にもう少しお尋ねしたいのですが、この給付の制限ですね。これは現行法です。この給付の制限というのは、具体的にはどういうように運営しているのですか。この法案の三十二条を引きますと、要するに「一箇月間は、基本手当を支給しない。」これは現行法でも同じですけれども、ここに条件が書いてあるのですね。「ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。」要するにこれに該当しなかったら、就職をすることを拒んだあるいは訓練をすることを拒んだ者は、拒んだ日から起算して一カ月は停止する。ですから、この五つの条件というものがどうも現実に私は運営されておると思うのですね。たとえば「就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて、不当に低いとき。」この「不当に低いとき」というのを拒んだら、これは基本手当の支給を一時制限されますか。こういうものの考え方がおかしいと思うのですよ。私は画一的だと思うのですよ。どこでもいい、とにかく就職をさせておけ、こういう考え方じゃないですか。不当に低いところ、自分は高いところへ行きたいと思うのに不当に低いところを拒んだら給付制限をする、こういうものの考え方がこれは間違っておるのじゃないですか。  それから続いて、職業安定法の二十条というのは何ですか、大臣知っていますか。職業安定法第二十条——これは大臣に聞いている。わからぬでしょう、大臣。わからぬのですよ。こんなわからぬ条文を、一般失業者適用されるのに使っておるということです。何のことかわからぬ。「職業安定法第二十条(第二項ただし書を除く。)の規定に該当する事業所に紹介されたとき。」さっぱりわからない。これは失業者が見るのですよ。こういう実に不届きな、これは改正をしている。現行法じゃないのですよ。現行法をわざわざ改正しておるのです。すなわち現行法で読むと大体輪郭がわかる。すなわち現行法は、「職業安定法第二十条の規定に違反して、労働争議の発生している事業所に受給資格者を紹介したとき。」ははあ、争議が起こっておるところへ紹介したときはこれは拒んでもいいのだな、これはわかりますよ、これがついておれば。今度はそれを削っておるのです、わざわざ。この三十二条の給付の制限のところで、もちろん「基本手当」というような文句は別として、改定をしておるのはこの条項です。わからぬですよ。一体だれが読む法律かというのですよ。私もわからなかった。職業安定法第二十条、何だったかと調べてみた。大臣だってわからないですよ。委員長だっておそらくわからぬでしょう。こういう条文を平気で使うのですよ。しかもこれは改正しておる。前のだったらよくわかるのですよ。わざわざこれを改正してわからぬような条文にしてしまっておるのですね。これはどういうことなんですか。それから、「不当に低いとき。」とか第一項の「不適当であると認められるとき。」私はこういうので制限されたらたまらぬと思うのですよ。
  22. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 三十二条の給付制限の条項は現行法の、失業保険法の規定内容をそのまま持ち込んでおりまして、内容的には変更はいたしておりません。  いま御指摘になりました条項はいずれも、正当な理由がなくて就職あっせんを拒否したときあるいは職業訓練の指示を拒んだとき、こういうことでございますが、その正当な理由というのは次に掲げる事項だ、こういうことで、「就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて、不当に低いとき。」「不当」と申しますのは、これは法律に幾ら幾らと書けば一番正確でわかりやすいかもしれませんけれども、そのときの実情に応じてということになりますので、これは省令、取り扱い基準におきまして、安定審議会の意見を聞いてその基準が定められることになっております。その基準等につきましては、もちろん安定所に求職者として失業して出てこられました際に、受給要領というもので御説明をいたしまして十分御納得いただけるような措置は講じてあるわけでございますが、その実際の取り扱いは、八〇%以下の事業所に紹介されたときということにいま基準はなっております。  それからあとのほうの、職安法二十条ということは一般にわかりにくい、こういう御指摘でございます。確かにそのとおりでございまして、先生法律の専門家でいらっしゃいますが、税法と保険法というのは法律の中で一番難解な、わかりにくい法律であることは御承知のとおりだと思います。実は私どもも、昭和二十二年に失業保険法ができます際に、この失業保険法の該当する対象者は失業者である、一般庶民の中でも一番難渋をしておられる失業した人たちだ、できるだけわかりやすい法律にしようということで、当時私どもは司令部に日参しながら、わかりやすい日本文にしよう、むずかしい法律用語はできるだけ避けようというつもりでやったわけでございますけれども、一番法律関係のやっかいな保険関係法律で明らかにするためには、どうしてもそういう努力にもかかわらず、なおかつ一般の人にわかりにくい条文ができてしまったことは私どもはやむを得なかったと実は感じております。今回もそういった点をできるだけわかりやすいようにするつもりで努力をしたつもりでございますけれども、いわゆる法律用語といいますか、慣用例といいますか、そういったことで、労働争議が行なわれておる事業所ということばが抜けてしまった、これもいわゆる法律用語、慣用例に従わされた、こういうことをここで申し上げるべきではございませんけれども、私ども確かに御指摘の点は理解できるのでございますけれども、今後ともこういうことのないように十分注意してまいりたいと思います。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは不親切ですよ、労働者権利を書くのにね。大臣でもわからぬ。私ども職業安定法第二十条なんというのはわかりませんよ。いままでは書いてあるわけでしょう。現行法ならば大体わかるのですよ。二十条がわからなくても、争議をしておるところへ紹介するのは拒んでもいい、それはわかる。今度は全然わからなくなった。こんなのはいけませんよ。これはひとつ今後こういうことのないようにしていただきたいと思います。  そこで八〇%、こういう場合に、賃金が普通の基準よりも下がるというような場合に、それを拒んだら基本手当を一カ月支給しないなんということがありますか。どうもここが強制就職に追いやる、こういわれるゆえんでしょう。
  24. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この基準につきましては、失業保険法施行以来定められております審議会の意見を聞いて定めた基準でございまして、決して不当に低いところに就職を強要するということではございませんで、最低の基準としてこの程度はということでございます。したがいまして、逆に失業保険金額よりも下回るようなところには絶対紹介しないというたてまえは貫かれております。(多賀谷委員「それはそうでしょう、六〇%になるんだから。」と呼ぶ)いや先生、六〇%とおっしゃいますけれども、実はこまかく計算いたしますと、失業保険金現行の六〇%というのは、実際には月収手取りの八〇%以上になっております。低い階層につきましては、比較的中位以下の人につきましては九〇%をこえるような状況でございます。したがいまして私どもは最低の基準としてこの程度のことはまあやむを得ないのじゃないかということで、それだからいいんだということでは決してございませんで、少なくともそれ以下の場合はもう「正当」と認められる、こういう「正当」と認められる基準という最低線を示したわけでございます。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これも当時失業状態が非常に窮迫しておった時期に、それを想像してつくった法律ですから、私はやはり「不当に低い」というようなことばはやめるべきであるし、基準もやはり考え直すべきだと思うのですよ。やはり賃金のいいところへ行きたい。賃金のいいところへ行くなんてぜいたくだ、八〇%ぐらいであれば当然行きなさい、それを拒んだら失業手当はあげませんよ、失業保険金はあげませんよ、こんな制度がありますか。しかし法律はそうなっておるのですよ。現行法はなっておるのですよ。あなたが説明したとおりに私は言ったわけです。
  26. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに先生の御指摘のような情勢のもとでこういう法律が定められて、それが今日に及んでいるということでございまして、今後こういった不当に低いとかあるいは前職賃金より低いようなところには紹介しないで、できるだけ高いところへ持っていく、それは私ども政策目標、努力としては当然そうあるべきだろうと思います。現状申し上げますと、たとえば一番就職困難な定年退職者の再就職状況を見ますと、大体半数が前職賃金横ばいあるいはそれ以上というような実績データが出ております。約半数近くが若干ダウンしている、二割ないし三割賃金が下がっている、こういう状況でございます。ましてや若年層につきましては、先ほど申し上げましたように、新規学校卒業者が三年間で約半数が離転職いたしております。その離転職状況、内容を見ますと、ほとんど大部分上向移動になっております。下がって転職をしているという例はほとんどございません。そういった実績から見ますと、これはいわゆる先ほど申し上げました最低線の法律運用の基準でございまして、これをそのまま適用して八〇%であれば就職をあっせんして強要しているというような事実は全くございません。今後こういった運用につきましては十分先生の御指摘の点は、そういうことにならないように注意をしてまいりたい、かように考えております。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういう事実がなければ、八〇%をおやめになったらどうですか。それは審議会にかけてそういうことはおやめになったらいいですよ、いまの雇用情勢からいって。それから「不当に低い」などということ、これは不当に低くなければ行きなさい、こういうことなんですからね。行かないときには給付制限をしますよという法律ですから。それはやはりこういう情勢であるならば情勢らしく、当然この際改正するならば出してしかるべきではなかったか、こういうように思います。  そこで、時間もありませんから続いて次にいきたいと思います。ちょっと事務的なことですけれども大臣が御答弁になっているのですが、川俣さんの質問に対して本会議で、扶養手当を今度削除したのは失業保険が総賃金であるからというのが一つ理由になっておるのですよ。そうですか。
  28. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これも先生が一番御承知のとおりでございまして、扶養加算という制度を新しくこの失業給付の中に取り込みましたのは、その最大の理由給付率六割という基準を変えることはなかなかいろいろな関係があって困難でございます。したがいまして、本来保険給付失業給付の基礎になっております賃金の中には、日本の賃金慣行からいたしまして家族手当、そういったものが全部含まれております。したがってその上にさらに二重に扶養加算という制度を設けることについては、これは確かに問題はございましたけれども、それをあえて扶養加算という制度を設けましたのは、比較的中位以下の給付を受ける人たちの実質的な給付増をはかるために扶養加算という制度を一律に設けまして、そうすることによって低所得層の給付の増額をはかりたい、こういう趣旨であったわけでございます。今回この給付内容を改善いたしまして中位以下の給付を受ける人につきましては一律六割から七割に引き上げるという措置をとることによりまして実質的な給付増をはかることにいたしたわけでございます。そういうことに伴いまして、従来のその扶養加算という制度をその中に吸収しようということで廃止することにいたしたわけでございまして、総賃金制だからということではなくて、理由はいま申し上げたようなことによるものでございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総賃金制だというのが一つ理由になっていますよ。あなたのほうが大臣に書いたメモにそう書いてあるのでしょう。要するに「これらの諸手当を含めた総賃金が、基本手当の日額を決定する場合の基礎とされているため、今回、扶養家族のない者を含め、」そのあとの「広く低所得者層全体の給付率を高くした」というのはわかりますよ。時間もありませんが、たとえば厚生年金だって扶養加算があるのですよ。その厚生年金の基礎額には家族手当は入っておるのですよ。ですから、なぜあなたのほうだけが、要するに失業保険だけが扶養手当が削られるのか。どこだって入っているのですよ、日本制度はみな。健康保険だって何だって入っている。平均賃金だって入っているのですよ。ただ割り増し賃金のところに入っていないだけ。それはそうでしょう。割り増し賃金のところには入っていない。しかしあとは全部入っているのですよ。それなのになぜ失業保険だけが、いままで出しておった扶養手当を出さないのか。それから外国は全部扶養手当を出しておるのですね。これはドイツだって扶養加算を出しておるし、フランスだって扶養手当を出しておるし、イギリスだって扶養手当を出している。全部出していますよ。日本は今度の改正で扶養手当を削った、こういう理由がわからない。  それから、どこも児童手当は出していますよ。よその国のほうがずっと進んでいる。フランスのごときは第一子から出ておるわけですから、どこも児童手当も出しておる。日本では御存じのように、妻は別としても、一子二子は児童手当をもらえていない。ですから扶養手当を削るという理由は非常に乏しい。ただあなたのおっしゃるのは、低所得者の人を七割にするからという理由ですが、私はやはりこれだけでは非常に理由が乏しいですよ。それならばあとの者はこれでやっていけるかというと、それほど余裕はないのですよ、日本のいまの賃金体系では。ですから扶養手当を削るという理由が、これも非常に乏しいということです。大臣どうですか。
  30. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 総賃金を基礎としているという答弁はございますが、その総賃金と申しますのは、そういった日本の賃金慣行で支給されております家族手当が含まれたその総賃金が計算基礎になっておりますという意味でございます。  それで外国の場合、確かに扶養加算、扶養手当的なものはございますが、外国の場合は賃金の中に扶養手当という制度はございません。したがって日本の場合は、先ほど申し上げましたように、そういった中位以下の低所得者に対する実質給付率を引き上げるために扶養加算という制度をつくったわけでございます。その点はほかの保険制度と同じではないかという御指摘でございますけれども、ほかの保険制度の場合、たとえば厚生年金あるいは健康保険等の場合は標準報酬制をとっておりまして、実質総賃金制をとっておりませんので、同じ六割にいたしましても相当な差がございます。したがいまして、私どもは実質給付率を今度はさらに中位層以下については上げる、そういうことによって扶養加算というものを吸収することにいたしたわけでございます。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこにあなたのあいまいさがあるのですよ。この失業保険は総賃金制をとっておる、健康保険や厚生年金は総賃金制をとってないと言うけれども、扶養手当は全部入っている。問題はボーナスなんですよ。失業保険のほうにはボーナスが算定の基礎に入っておるけれども、健康保険や厚生年金は入っていない、こういうことですよ。しかし家族手当は全部入っているのですよ。それなら区別する理由はないですよ。それはおかしいじゃないか。失業保険の場合は総賃金制で家族手当が入っているから、厚生年金や健康保険は入っていないから、屋上屋を架すんだというなら一つ理由になるけれども、それは全部入っているのですよ。健康保険だって厚生年金だって家族手当は全部入っている。ですからその時点においては同じじゃないですか。かように言っているわけですよ。あなたがあとから説明したのは、先ほど私が質問をしたことをまた一つのファクターとして入れたようなものですよ。
  32. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私は、他の社会保険と違って失業保険には家族手当が基礎に入っていると申し上げているわけじゃございませんで、確かにほかにも入っております。入っておりますけれども、扶養加算を設けましたのは中位以下の低所得層の実質給付率を引き上げるために扶養加算という制度を設けましたけれども、今回はそれにかえて中位以下の低所得層の給付率を一律六割から七割に引き上げることにいたしました。それによって、扶養加算を加えることによって六割が六二、三%になる。ことに所得の高い層につきましては一%に満たないような率でございます。したがいまして、中位層以下については七割に引き上げることによって扶養加算制度を廃止いたしましても十分それを補って余りがある。加えて、いま先生指摘のように、私省略いたしましたけれども、総賃金制ということによってボーナスが必ず中に加算されております。計算基礎に含まれております。そういうことによって実質的には他の社会保険制度に例を見ないようなかなりな高率になってまいっております。そういうことを勘案いたしまして、扶養加算というものを今回は吸収することにいたしました、こう申し上げておるわけでございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは日本のほかの社会保障制度が間違っておるのですよ。そっちを言わないで、間違ったほうの低いほうを基準にしてものを判断したらだめですよ。日本だけですよ。ボーナス制度というのがそもそも日本ほど多くあるところはない。ほんとうのボーナスではなくて、期末手当という生活給はないです。しかし、よその場合は要するに賃金の中に全部入っているのです。週給の中に、言うならば退職金まで含んで入っているのです。ですから、この社会保障のほうの給付が、日本の場合は六割といっても実際は四割ぐらいしかないのだというのは、そこなのです。指摘されておる。ところが、社会保障水準の低いほうの基準をもって律するとは何ごとですか。話が逆じゃないですか。  ですから、労働省は失業保険に関しては、基礎額としては、私はとり方はよろしいと思う——これだって問題はあるのですよ。ちょうどお盆のようなときに非常に問題になるのですよ、お盆の手当が八月ぐらいに支給されるときは。六月のボーナス、十二月のボーナスというようになっておればいいけれども、期末手当というものがお盆手当で八月ぐらいになっておるときは、こうとったら入らないのが出てくるのですよ、日本だって。それは言いませんよ。私は言いませんけれども、低いほうの社会保障水準の基準日額を基礎にして政策をつくるとはもってのほかだ。これはもうとにかく理由にならない。外国全部、金額の多寡によらず、どこも扶養加算、扶養手当というものは入っているのですよ。しかもかなり優遇された児童手当は別にあるのですからね。ですから、私はそういう点は、これもやはり早のみ込みというか、少し先走ったほうですね。逆に悪いほうへ先走った一つの大きな例だと思う。大臣、これはひとつ考慮なさったらどうですか。
  34. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだん応答の間に問題が明確にされておりますが、給付の面等々で御議論もあるようでございますから、検討の材料にしたい、こう思っております。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、就職支度金ですけれども、今度の常用就職支度金というものはどういう性格のものですか。
  36. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行制度におきます就職支度金制度は、先生承知のように炭鉱合理化によります炭鉱離職者の臨時措置法によりまして給付が行なわれた、これについて再就職奨励金という制度を三十九年でしたか設けたことがございました。これと同じように、一定条件を備えた人につきましては再就職奨励の意味で就職支度金という制度が、現行失業保険制度の中で設けられておったわけでございます。  ところが、最近の実情は、先ほど来申し上げておりますように労働市場状況が非常に逼迫してまいりまして、若年層につきましては就職がきわめて容易な状況になってまいっております。そういう人たち現行制度によりますとほとんど大部分の人がこの就職支度金の受給を受け得るような状態になっております。たとえば百八十日の受給給付日数を持っている人が、先ほど申し上げましたように六十日程度就職いたしますと、大半の人が相当額の就職支度金をもらえる、こういうことになっております。これに反しまして、ほんとう就職のむずかしい人がやっとの思いで就職をした、そういうことになりますと、この人たち就職支度金は全くもらえないというのが実情でございます。たとえば三百日の給付日数のある人が二百日たってやっと就職できた、この人たち就職支度金をもらえない。こういうきわめて不合理な、当初予定された制度と全く相反した実態があらわれてまいっております。そこで本来の趣旨に戻しまして、就職のむずかしい人が就職をした場合には、所定給付日数の残日数のいかんにかかわらず、就職支度金を差し上げるようにしたい、これが今回の趣旨でございます。  同時に、現行就職支度金につきましては、特定の業種あるいは比較的若年層の一部の方々にいろいろな批判が起こるような乱用と申しますか、そういう実態がかなり強くあらわれてまいっております。こういうことではせっかくの制度の趣旨が生かされない。それで、本来の制度の趣旨に戻すような意味で、所定給付日数関係なしに、就職のむずかしい人については就職支度金を差し上げよう、こういう制度に改めたわけでございます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 就職支度金という名前は別として、従来の場合は残日数があるからある程度上げますよ、こういう制度ですね。ですから、逆にいうと、早く就職しなさいよ、そうすると残日数の分は何割か上げますよ、こういう制度ですね。ところが、今度のはお祝い金ですか、一体どういう性格ですか。私は、常用就職支度金というのは賛成なんです。賛成なんですが、この支度金の性格は一体どういうものですか、こう聞いているのです。
  38. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いままでの支度金は、確かにおっしゃいますように、言ってみれば保険財政的な見地からの、早く就職すればそれだけ保険給付も少なくて済む。したがって、その部分を支度金という形で差し上げましょう。本人も早く就職すればそれにこしたことはないし、保険経済の面でもその浮いた分を差し上げましょう、こういうことだったわけでございます。  今回、いま申し上げましたように、その制度の本来の趣旨が非常に生かされてない、こういうことから改めました最大の理由は、就職困難な人が就職いたしますと、その就職の時点から少なくとも一カ月は給与が手に入りません。保険給付も入りません。したがって、向こう一カ月間の生活費に当たるものとして一カ月分の支度金を差し上げて、それによって、金が入らないと常用就職できないということのないようにするために、支度金という名目で一カ月相当分を差し上げる、こういうことにいたしたわけでございます。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、こういう必要なものがなぜ就職促進給付なんですか。就職促進給付なんておかしいでしょう。もう少しいうなら、なぜ政府は一銭も出さぬで、こんな重要なものを労使の金だけでやらすのですか。これはいわばお祝い金といいますか、就職困難であったのに御苦労さんでしたということですよね。これは政府が国庫補助金の対象にすべきでしょう。いままでの就職支度金と今度の就職支度金というのは全然違うのですよ。従来は、保険資格があるけれども、それだけ支給を受けないで早く就職したから、その残存日数がありますから、ある程度上げましょうよ、そういうものには国はやらなくてもいい。これは労使が出した金でやれというならわかる。いままで国はその補助の対象にしなかったというのはわかりますよ。ところが、今度は従来の就職支度金と性格が全然違うのですよ。それならば、なぜ就職促進給付で、政府が一銭も出さないで、人の金でお祝いするのですか。おかしいじゃないですか。
  40. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これは雇用保険制度におきますいわゆる失業給付失業期間中の生活の安定のための給付とは違いまして、就職困難な人たち就職を促進するための、いわば建設的な給付であります。そういう意味で、本来の失業給付就職促進給付と分けた後者の就職促進給付の中に含めておるわけでございます。その他のいわゆる三事業的なものとは違いまして、あくまでも失業給付に対する付帯的な事業としての給付でございますので、労使負担の現状の中から支弁されます就職促進給付に含めておるわけでございます。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっとあとが根拠が弱いですね。これは、政府が求職者給付の中に入れるのが困難であれば、少なくとも国庫補助の対象にすべきでしょう。求職者給付ではありませんけれども、国庫補助の対象にはすべきでしょう。これは、むしろ政府が率先して出す金ですよ。これを労使だけの財源でまかなえというのが、そもそも間違いであります。いままでの就職支度金と今度の常用就職支度金とは性格が違うのである。違うならば違うような処置をすべきでしょう。これはどうですか。
  42. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回の新しい制度によります給付の中で、いわゆる求職者給付就職促進給付と二つに分けておりますが、従来ありました移転費等につきましても就職促進給付の中に入っておりまして、常用就職支度金と移転費等の給付は性格的には全く同じものとして考えるべきではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 おかしいですよ。これは、私は国庫補助の対象にすべきだと思うのです。これはしてもいい性格ですよ。なかなか就職が困難であった人がやっと就職を見つけて行かれるんだから、それはおそらく第二の人生を歩むのですから、常用就職支度金というのは賛成です。賛成ですが、これを労使だけの財源に求めるというのは政府としてはどういうものでしょうか。大臣は非常に気の毒なんですけれども、あなたは立法の過程にいなくて大臣になったわけですから、同情しますけれども、求職者給付、この名前も私はあとから論議しますけれども、これと少なくとも常用就職支度金というものは国庫補助の対象にすべきだと思うのですが、どうですか。
  44. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 雇用保険法案そのものが、先ほどから御審議あったように、なかなかわからない文句もあるわけです。ほんとういって、私も説明を聞いてもなかなかわからない。結局どういうことかといえば、そこでやっと説明がつくようなことがありまして、いま今度の常用支度金について御賛成を得たことでありますが、その内容についても考え方についても検討する材料だ、私自身はこういうふうに感じます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず財源問題、続いて「身体障害者その他の就職が困難な者として政令で定めるものが安定した職業——とにかくわからないですね。あなたのところに伝統的に条文の解説があるのです。これを読んだら、なおわからぬ。これはほんとうにいんぎん無礼というか、ずっと条文の解説を伝統的に労働省が出してくれる。労働省は必要な書類は出さぬけれども、これだけはよく出すのです。出したけれども、残念ながら、これは幾ら読んでも、簡略に書いてあるだけで一つもわからぬ。解説してない。  そこで私は、「就職が困難な者として政令で定めるもの」というのは一体どういう種類のものを予定しているか、それから「安定した職業」とは一体どういうことか、これをまずお聞かせ願いたい。
  46. 関英夫

    ○関説明員 まず第一点の「就職が困難な者として政令で定めるもの」につきましては、審議会の審議の段階でも御説明申し上げておりますが、おおむね次のように考えております。  一つは受給資格者でございまして、心身障害者、刑余者、同和地区出身者、それから五十五歳以上の高齢者、こういうようなものを考えております。それから一時金の特例受給資格者であって三十歳以上の者。それから、日雇い受給資格者であって失対事業紹介対象者である者または一年以上日雇い労働被保険者であった者、こういったようなものを就職が困難な者として政令で定める予定に一応いたしております。  それから「安定した職業に就いた場合」というのは、雇用契約に期間の定めがない職業、あるいは雇用契約で期間を定める場合は労働基準法の関係で一年以下の期間を定める場合がございますが、そういう場合でも必ずその期間を越えて継続する見込みのあるもの、現実にはそういう契約もございますので、継続する見込みのあるものについた場合、あるいは自営業を開始した場合で永続する見込みがある場合、こういうものを「安定した職業に就いた場合」として考えております。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 身体障害者その他就職が困難な者、こういう点についてお話がありましたので大体了解をいたしました。それから安定した職業というのは、いまお話がありましたので、これも大体理解ができました。しかし、公共職業安定所が政令で定める基準に従って必要あると認めたとき、これはまた幅がありますね。どういうことを考えているのですか。
  48. 関英夫

    ○関説明員 これは従来から就職支度金制度の場合にも同じようなことがあったわけでございますが、具体的にはあまり例はございませんかもしれませんが、たとえば離職前の事業主にまた雇用されるというような形で反復していくような場合、こういう場合はちょっと必要がないと認められるだろう。あるいは公共の福祉に反すると認められるような職業についた場合、こういうのもほとんど例はないと思います。それから短時間就労者として就職したような場合、これは非常に継続する場合でもパートタイムのようなものにつきましてはこの対象外というようなことで従来から取り扱っておりますが、そういった点を特に変える考えはございません。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんから、いろいろお聞きしたいのですけれども、残念ですが……。  そこで、財政問題、ちょっと聞きますが、とにかく若干労働者の負担が低くなったわけですけれども、しかし西ドイツを別にすると、フランスは労働者が五分の一、五分の四が使用者、それからアメリカは労働者負担なし、イタリアも南部イタリアの開発を除いては全部使用者。それから、そのかわり西ドイツの場合は労使負担の後は失業手当は政府支出。こういうふうに失業保険というのは、本来労働者の負担というのは非常に少ないのですね。日本の場合は労働者負担というのがかなり大きい。これは大臣、どういうようにお考えですかね。イタリアやアメリカは労働者負担がなくて全部使用者負担なんですよ。  そこで、私はちょっと疑問なのは、日本の場合は、そもそも求職者給付じゃないのじゃないか、失業給付じゃないかと思うのです。失業という事態になったら金をやるんだというのが制度の根幹じゃないかと思うのですよ。労働省のほうはそれを締めつけて、そうして今度は求職者給付になる。求職者給付というのと失業給付というのは違うのですよ。失業という事態が起こったらとにかく給付してくれるんだ。求職者給付の場合は、求職という状態がないと失業しておってもくれないんだ。これは私は文句の違いだけでなくて、今後の政策の大きな違いになっていくのじゃないかと思うのですがね。これはどういうようにお考えですか。
  50. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまの先生指摘の求職者給付ということばの使い方でございますが、現行失業保険制度失業という概念と、今回の雇用保険法におきます失業という概念は、全く変わっておりません。今回の雇用保険法の定義の中にも失業給付ということばを使っております。失業保険金にかえて失業給付ということばで、先生お使いになりました失業給付ということばをそのまま使っております。その中のいろいろな制度がありまして、それを求職者給付の基本日額とかあるいは就職促進給付とか、いろいろなものに仕分けをいたしておりますが、十条にありますように、失業給付の中身は求職者給付とそれから就職促進給付に分かれまして、その求職者給付の中が基本手当、技能習得手当、その他、こういうふうになっているわけでございます。失業の概念と、それから求職ということばをお使いになりましたけれども、全く変わっておりませんで、現行失業保険制度におきます失業の概念は、離職をして労働の意思と能力があって求職の申し込みをした者が失業保険金給付の対象になる、その点は全く変わっておりません。したがって、ことばの使い方は、いろいろ仕分けをいたしました関係で、求職者給付ということばが出ておりますけれども、従来の失業保険金の概念と全く変わっていないことを釈明をさしていただきたいと思います。  それから保険料の負担につきましていろいろお話がございましたが、確かにアメリカにおきましてはこれは全額使用者負担になっております。諸外国におきましても使用者の負担が多いという国もございます。私も外国の例を全部つぶさに勉強いたしておりませんけれども、全額使用者負担になっておりますアメリカの場合は、いわゆる日本で認められております任意退職による失業といいますか、これに対しては全然給付が行なわれない、使用者の解雇権に基づく解雇による失業しか給付されない、これがたてまえになっております。実は二十二年に失業保険法を制定いたします当時、当時の連合軍司令部との間でこの失業保険制度を検討いたします際に、アメリカにならって、いわゆる失業保険でなくて、失業保障という制度にしようかという考え方もあったわけでございます。そうなりますと、いま申し上げましたように、労働者が自己の意思によって、あるいは自己の都合によって退職した場合はこの失業給付の対象にならない。これでは当時の日本の戦後の荒廃した中で、失業者がちまたにあふれる、こういう状態の中で、一体失業者の救済にはたして制度として十分役立ち得るかどうかという点が非常に問題になりまして、いわゆる保険制度によって労使負担ということになったわけでございます。その後も任意退職に対する給付の是非ということについてはいろいろ議論がございましたけれども、現在ILOにおきましても、いわゆる本来の失業に加えて、労働者の都合、意思による任意退職も失業給付の対象に副次的に加えてもいいのじゃないかという考え方が出ております。私どもは今回の雇用保険につきましても、やはりその考え方を踏襲いたしまして、労使負担の現状によって、解雇権に基づく解雇あるいは労働者の都合による任意退職と、同じような形で給付の対象に扱う、こういう制度をとることにいたしたわけでございます。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、変わっておらぬと言うには、内容的にはかなり変えていますね。それは失業といっても意思と能力が必要だ、こういうことを言う。しかし私は、労働者使用者と同じだけ保険料を出すということは、失業という事態にやはり金を出すべきではないか、こういうように思うのですね。まあ、しかし、これはあえてそれ以上申し上げませんけれども、やはり本人の意思というものを十分そんたくをすべきではないか。そうすると、今度あなたのほうは、任意退職の場合にも認めておるじゃないか、こう言っておる。そうして今度は結婚のような場合に、本来ならば就職の意思がないのにもかかわらずもらっておるから、けしからぬから六十日にする。給付のほうを下げている。それから今度は農業のほうも、どうもはっきりしないから一カ月でやりましょう、こういうように今度ばっさりと意思と関係なく給付のほうで切ってきて、そして目的を達しようとしている。ですから、私はこの法律がちゃらんぽらんだと言っているのですよ。どうも筋が通っておらぬのですよ。それならば、任意退職を認めます、本人の意思を認めますというならば、給付を長くすればいい。いや算定が困難だからもうばっさり給付の日数を押えてしまって、それで大体目的を達しようとしておる、こういう意図があらわれておる。それは保険財政の推移から見れば明らかですよね。どうもこの法律は一貫せぬですよ、あなたのほうは。それで、求職者給付というのは失業給付一つだ、こういうふうならば、雇用保険なんてしないで失業保険に返したらどうですか。雇用保険なんということばはちっともわからぬね。だれか聞いたかとも思いますけれども、どういう意味ですか。失業ならわかるんですよ。失業という事態保険を出す。雇用保険なんて日本語が一体ありますか。雇用保障するならいいですよ。雇用保険なんという日本語は大体通用しませんよ。雇用保険というのはどういうつながりですか。
  52. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 雇用保険ということばは確かに新しいことばです。一つの例をあげますと、疾病保険を健康保険という、これと全く同じ考え方で、積極的に失業を予防するための政策を実施し、失業した場合に、その失業期間中の生活安定のための保障をする、これが雇用保険制度でございます。保障でなくて保険だというところは、先ほど来先生指摘のように、国の一般会計、国費でやるんでもなし、使用者の全額負担でもない、労使の相互連帯による保険制度によってこれを維持していこうということで、雇用保険という新しい概念構成をしたわけでございまして、あたかも疾病保険を健康保険といっているのと全く同じような考え方で御理解いただきたいと思います。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは意味が全然わからない。第一雇用保険なんということばは通じない。私はそう思う。ですから、私は時間がありませんでしたのでわずかな時間にぱっと読んでみましたら、出かかっておる概念を別のところで芽をつんでみたり、そして、この方向でいくのかと思ったら、いやそうではなかったり、この法律はさっぱりわからぬ。要は保険財政合理化しようということだけは一貫してわかるのですね。その中に、たとえば老齢者の問題とかいいところはありますよ。ありますが、今度は若年者を削った。これは何にもならない。ですから、この法案全体としてはちょっと拙速ではないだろうか、こういうように思います。  そこで、もうちょっとお聞かせ願いたいのですが、実は給付延長なんかにも従来取り組んでまいりましたから、質問をしたかったわけですけれども、時間がありませんから、定年のところですね。この法律によって逆に中小企業等で定年制ができて、かえって老齢者にとって不利になるような事態は予想されませんか。大手の大企業には行政措置がいくわけでしょう。そうすると、定年制のない中小企業は行政措置がいかないというのは不合理だ。そこで、中小企業のほうも定年制をしこう、こういうことにはなりませんか。どうですか。
  54. 関英夫

    ○関説明員 先生のいまの御指摘は定年延長奨励金のことだと存じますが、定年延長奨励金を支給することとした場合に、定年制があるのは大企業である、したがって、大企業はそれを延長した場合に奨励金が入るが、定年制のない中小企業は奨励金がもらえない。そこで新しくしくことになるんじゃないか、こういう御質問だと思います。定年延長奨励金制度は現在すでに発足しておりますが、それを引き継いでさらに拡充していこうというふうに考えております。しかしこれは、新しくこれからつくった定年制を延長した場合には適用しない、すでにある定年制を延長する場合に適用する、こういうような要件にすでにいたしております。したがいまして、これからこのことによって新しく定年制をしいてくるというようなことの要因になるとはちょっと考えられないと思います。また、私ども雇用対策法をはじめといたしまして、雇用基本計画等においても定年延長を労働省の施策の一つといたしておりますので、行政指導において定年延長を進めていくのはもちろん、いままでないところに定年制をしくというようなことのないような指導は十分やってまいりたい、こういうふうに考えております。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、中小企業から見るとちょっとアンバランスですね。大手の大企業はもらえるけれども、中小企業の場合はもらえないというのはちょっと……。ですから、高齢者の何とか奨励金という、新たに高齢者を雇ったんじゃないんですよ、いままで高齢者を雇っておるところも奨励金を出したほうが画一的でいいじゃないか、こう思うのですけれども、これは逆の裏目が出るとちょっと困るという感じを持っております。  なかなか名案もないと思いますが、そこで例のアメリカの一九六七年の年齢差別禁止法ですね。要するに、アメリカでは四十歳から六十五歳までの労働者に対しては、あなたは五十五ですからおやめくださいというようなことは言わないわけです。言ってはならぬ。それは不法行為になるということであります。あるいはまた、職業紹介で四十歳以下しか雇わないというような会社の紹介はしない、こういうようになっておるわけです。日本では幾らでもありますね、四十五歳までの方を採用します。こういうのは法律違反であります。こういうようにして四十歳から六十五歳まで保護しておる。もちろん刑事罰はありませんが、民事上の損害賠償が適用されることになっておる。連邦法ですけれども、こういう法律を思い切って検討してみたらどうなんでしょうかね。  実際、炭鉱なんか、離職者が出て就職しようと思うと、一番問題はやはり年齢にひっかかるんですね。個々の個人が、あなたはこの仕事には能力ありませんというのはいいんですよ。それからまたアメリカの法律でも、やはり職種によってはそういうものを適用しないという職種もあります。ですから、そういうものはいいと思うのですよ。ただ年齢だけによって差別をする、あなたはもう五十五歳ですからおやめくださいとか、こう言うのは——かつて御存じのようにILOで差別禁止条約をつくったとき、人種とか宗教とかいろいろあったときに、年齢を入れるかどうか大議論になって、入れないということになったのですけれども、しかしその他の条項がある。それはその国の労使できめろとなっています。ですから、もう少しこういう問題を検討してみたらどうか。少なくとも安定所あたりで紹介をするときに、たとえば何歳以上は雇いません、そういうふうな会社にはもう就職のお世話をしない、このくらいやってもいいんじゃないかと思うのですが、そういう点はどうでしょうかということです。  それから、時間がありませんからもう一点、能力開発の問題で、押し込めばいいという形でいいかげんなことをしているのですよ。実は福岡県の山野鉱業所と漆生鉱業所、その前には平山炭鉱等——昨年つぶれました。そこで私は、訓練所に行くのに、だいじょうぶかだいじょうぶかと念を押したんですよ、受け入れ体制があるのか。何とかやります、受け入れ体制があります、こう言ったんですけれども、昨年の十月に飯塚の総合訓練所で、ブロックと左官三十名ずつ募集した際に、四十名ほど余っちゃった。そこでいろいろ折衝した結果、現地において分校をつくろうということになりました。それは、大体訓練期間一年です。ところがその人たちは六カ月にするというんです。同じ学校に一年と六カ月がおったんじゃいかぬじゃないかというので、六カ月の訓練所を設けた。しかし年齢からいっても平均年齢五十何歳ですよ。そうして普通の者でも一年かけるのに、それを六カ月でやろうというのはそもそも無理な話なんですよ。これに対してはどういうようにされるつもりであるか、これをお聞かせ願いたい。
  56. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 年齢による差別禁止の法制化の問題につきましては、すでに過去におきまして雇用対策法制定当時、当委員会でいろいろ御議論のあったところでございます。私ども中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法を立案いたします際にもいろいろと専門家の意見を聴取して研究をいたしてまいりましたけれども日本実情からいたしまして、こういった年齢による差別禁止という問題を法制化することについては、必ずしもいまの時点で妥当な措置ではないんではないか、こういう考え方もございまして、先ほど来申し上げておりますように雇用対策法なりあるいは中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法なりによりまして奨励措置を講じ、あるいは一定職種につきましては雇用率を設定して、その雇用率が達成されるまでは安定所求人を受理しないというようなことの行政措置によりまして、実質的にそういった方向行政を進めておるわけでございます。今回の雇用保険におきましてもそのような趣旨を生かしまして、高年齢者雇用奨励について特別な配慮、援助措置を講ずることによって、先生の御指摘になりましたような御趣旨を十分生かしてまいりたい、かように考えておりまして、この年齢による差別禁止というような問題につきましては、今後の研究課題として私どもは検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 久野木行美

    久野政府委員 ただいま御質問のございました飯塚総訓の山野分校の炭鉱離職者の訓練関係につきましては、確かに御指摘のように訓練期間を六カ月ということに定めたということでございますので、これについて訓練生自体からも御要望があったり、それから福岡県でもいろいろとお話を伺ったりしたそうでございます。何と申しましても、訓練サイドから見ますと問題はその仕上がり像と申しますか、訓練の成果というものがどのようなものであるかということが大切でございますので、そういう点、実態を調査いたして、それから現地の福岡県の当局と十分相談いたしました上で、従来の経緯その他を勘案いたしまして、その調査結果に基づきまして期間延長が必要ということになりましたら、先生指摘のように延長するという方向で検討したい、こういうように考えております。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 普通一年の訓練を六カ月にやるというのはそもそも無理じゃないですか。しかもその人たちがサボって行かなかったというんじゃないのですよ。要するに、総訓に行ったところが一ぱいで、四十名もはねられたわけですよ。選考に漏れたわけです。ですから選考漏れの中には、若い者だけを入れて、年齢が多いからということもあったでしょう。それだけに訓練を長くやってやらなければならぬものを六カ月にしておくというのは、これは軍隊で言う員数ですよ。員数政策ですよ。ちょっとひどいじゃないですか。ですから、それはあなたのほうでいまやろうと思えばやれるのですから、やれるかどうか。これは非常に不合理だと思いますがね。
  59. 久野木行美

    久野政府委員 本件につきましては、先生指摘のように従来の例というようなこともございます。ただ、このブロック建築科というのは訓練基準に基づきますと原則は六カ月ということになりまして、一年に延長することができるというような規定に基づきまして従来一年に延ばした。それで、なぜそれじゃ六カ月にしたかという問題でございますが、従来入っている人々の訓練の仕上がりその他を勘案した上で、でき得る限り早い機会に炭鉱離職者の方々を安定した職業におつけしたい、そういう考え方からそのようにした、こういうように私は考えておりますが、御指摘のような点もございますので、前向きの方向で考えてまいりたい、こういうように思っております。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総合訓練所では一年でやっているのですよ、同じ炭鉱離職者を。そして今度は分校では六カ月という理由が立たないでしょう。しかも年齢からいえば、本校へ行っているほうが若い。というのは、本校へ行っているほうは採用になったけれども、はねられたグループばかりを今度は集めて六カ月だ。ですから、それはもう訓練になっていないのですよ。訓練をするほんとの気持ちはないわけです。そういうのはおかしいでしょう、どう考えられても。しかも本来は就職からいうと左官がいいのです。しかし先生がおらぬというので、結局、最初は左官三十名、ブロック三十名行ったけれども、それを全部ブロックにして六十名。こんな不合理な、ただ員数方式の訓練をやったのではだめですよ。東ドイツなんか行ってごらんなさい。身障者だって、機能回復が終わったら就職を先にきめて、そしてあとから一人ずつ職業訓練をやっているのですよ。こんないいかげんな、ただ訓練をしたというだけ、これじゃだめですよ。やるならば、もう少し親切に行なうべきではないか、こういうふうに思います。
  61. 久野木行美

    久野政府委員 冒頭に申しましたように、福岡県とも十分協議して前向きでこの問題を解決してまいりたい、このように思います。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 終わります。
  63. 野原正勝

    野原委員長 山本政弘君。
  64. 山本政弘

    ○山本(政)委員 本論に入る前にちょっと条文でお伺いしたいことがあるのです。  雇用保険法案関係資料の二八ページ、二十八条に「広域延長給付を受けている受給資格者については、当該広域延長給付が終わつた後でなければ全国延長給付、個別延長給付及び訓練延長給付は行わず、」と書いているのですが、これは私ちょっとのみ込めないものですから、説明をしていただけませんか。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕
  65. 関英夫

    ○関説明員 二十八条は、各延長給付がダブって行なわれる場合にどの延長給付から順次やっていくかという順序を示したものでございます。ある地域にまず広域延長給付が行なわれている。その広域延長給付を受けている人が同時に個人別延長給付を受ける資格のある人であっても、まず広域延長期間は広域延長給付を先に受ける。それが済んだ後に個人別延長給付あるいは訓練延長給付というようなぐあいに、各いろいろな延長給付の順序を示したものでございます。
  66. 山本政弘

    ○山本(政)委員 雇用保険法の趣旨というのは、労働者雇用の安定ということを眼目にして、労働力の保全、職業能力の向上が必須条件である、こういうふうにお考えになって、そしていま一番技術変化が激しい、そういうわけで職業訓練と雇用保障関係が非常にかかわり合いがある、こういうことから出たのだろうと思うのですね。そしていま職業訓練には十分に必要な基礎教育に裏づけられた養成訓練制度というものが確立しなければならぬ。つまりいわば生涯訓練体系といいますか、そういうものによって労働者職業生活というものを永続的に保障していこう、こういうのでしょうと思うのですけれども、二十八条の趣旨からいえば、私しろうとですからわかりませんが、いま言うように二重の給付というものを避けるのだ、その場合に優先順位があるんだ、こういうふうなことだと思うのですね。法律上はなるほどそういうことになるかもわかりません。だけれども政策的にいえば、いま申し上げたように、職業訓練というものが十分な基礎教育に裏づけられたものである、そういうものでなければならぬというふうに考えていくならば、これは広域延長給付を受けておる場合でも職業訓練を受けられるわけでしょう。そうすると、二重の併給をしないのはけしからぬということを言うんじゃなくて、私は訓練延長給付というものを当然優先すべきだと思うのですね。それが政策上としては本来のあり方ではないのだろうかというふうに私は考えるのですよ。とすると、この法文というのは少しさか立ちしているんじゃないだろうかというふうに感じるのですが、いかがでしょう。
  67. 関英夫

    ○関説明員 職業訓練を最も重視すべきであるという先生の御意見は、そのとおりだと思います。受給資格者が給付を受けております場合に、たとえば百八十日分の受給資格のある者が給付を受けているといたします。できるだけ早く訓練所に入り、訓練を受けて、そして就職することが望ましいわけです。ですから百八十日分全部もらい終わってから訓練所へ入るのでなくて、たとえば三十日分もらって一月したところでちょうど訓練所の開始の時期が来た。そこで訓練所へ入るという場合には、さらに百五十日分給付が残っておりますから、その給付を、訓練所の訓練を受けながら給付を受けていくわけです。そのあとの百五十日分が切れてしまったときに、訓練所の訓練がまだ終わっていない、そのときに給付がなくなってしまっては困る、そういう場合に訓練延長ということで、訓練を受けている期間中、百八十日分全部受け終わった後もなお給付を続けるのが訓練延長でございます。  その場合に、もしその地域が広域延長地域で、御本人が広域職業紹介によって就職するような人で広域延長を受けられる人だとすれば、百八十日分を受け終わってなお訓練所にいるわけですが、そのときにすぐ訓練延長をしなくとも、まず広域延長で従来の給付をさらに続ける。ところが広域延長も切れたが、なお訓練期間が残って、なお訓練を受けなければならないときには、そのときに訓練延長給付がある。こういうわけで、要するに本来の給付日数が終わった後、訓練を受けながらその人がさらに延長された給付を受ければいいわけですが、それの順序を一応きめたわけでございます。決して訓練の重要性を否定しているつもりはございませんで、訓練延長というものが一番長い期間、あとまで来ますから、一番最後に持ってきたというだけでございまして、訓練期間中の給付を確保するということを最大限に考えて順序をきめたつもりでございます。
  68. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、給付を受ける側に対して最大限の便宜を与えるように考えたというふうに理解していいですね。——はい、わかりました。  主として私は能力開発事業に関連してきょうは御質問したいと思うわけであります。  わが国職業訓練がどういう方向で発展するかということと能力開発事業というものとは、私は無関係ではない、こう思うのです。そこで、今回の法案につきまして、中央職業安定審議会の答申が、「とくに職業訓練については制度全体の体系化を図るべきである。」こういっているわけですが、「制度全体の体系化を図るべきである」というのを、労働省としては一体どういうふうに受けとめておられるのか。まず、たいへん抽象的でありますけれども、御質問したいと思います。
  69. 久野木行美

    久野政府委員 ただいま先生は、能力開発事業は非常に大切な事業であって、労働者の生活安定、職業安定に対して非常に重要な問題である、今後の発展というもの、それと能力開発事業というものの関連性を指摘せよ、こういう御趣旨かと存じます。  従来、昭和四十四年に、職業訓練法というものに基づきまして、養成訓練、向上訓練、再訓練、指導員訓練並びに能力再開発訓練、以上五つの種類の訓練につきまして、一応その訓練内容という面につきましての体系化ということをまずはかったというように考えられると思います。ただ、問題は、そういう五つの種類の訓練を行なうにあたって、それを行なう施設とかそういう面において若干不備があるのではないか、こういう点が審議会の御指摘かと存じます。そういう意味におきましては、現在の養成訓練にしろ、向上訓練にしろ、施設という面について必ずしも十分ではないというような点がございます。そこで今回、今後その訓練というものをどのように発展させるかという場合に、まず考えなければなりませんのは、訓練行政をめぐる諸般の情勢かと存じます。  いろいろとございますけれども、まず第一点といたしましては、まず養成訓練について申し上げますと、学校卒業者というものの学歴が非常に高くなってきております。こういう人たちに対する訓練をどうするかという問題がございます。  それから、養成訓練の第二点といたしましては、公共職業訓練施設で行なうというだけではなしに、企業内におきましても、労働省で定めました基準に従って養成訓練を行なうということも起こっております。そういたしますと、やはり事業内におきましての訓練というものを、でき得る限りこの労働省の定めた基準に合わせるというようなことによって、公共化、社会化をはかる必要があるかと存じます。  それから、他面、その養成訓練以外の種々問題はございますけれども、あえて取り上げまするならば、成人訓練的なものにつきましても、従来、基準等におきまして、必ずしもこまかい点まで完備していないという点ないしは実情に合わないという点もあったかに指摘されております。したがいまして、そういう面の基準というものの充実をはかる。そういうことによりまして、今後、在職者に対しましても、十分、公共的な基準に基づきまして、社会全体が要望いたしますそういう訓練を今後とも発展させたい。そのような方向におきまして、施設とか制度というものを改善していきたい、こう考えております。  今回の能力開発事業との関連でございますが、従来とも一般会計、特別会計、失業保険会計、労災保険の会計その他から財源を得まして、各種の訓練、公共訓練施設並びにその運営、それから事業内におきます、特に中小企業の共同で行ないます訓練というものを、でき得るだけ公共的なものにするというような点で補助をしております。そういうことで一般、特別、両会計によりましての訓練を充実を期してまいりましたが、やはりいまだに、その財源におきましても必ずしも十分でない、そういう点、それから、冒頭に述べました諸般の情勢に対応いたしまして、現在の施設、制度というものを改善したい。したがいまして、従来行なってまいりました、一般会計によってやります一般の離職者の訓練とか養成訓練、それは当然今後も充実してまいると同時に、今回はこの保険法によりまして、被保険者または被保険者であった者、こういう人たちに対する訓練をさらに充実したい、そういう意味におきまして、その能力開発事業に基づきましてその面で財源をさらに充実をいたして訓練行政全体の推進をはかりたい、こういうように考えている次第でございます。
  70. 山本政弘

    ○山本(政)委員 職業訓練法の第一条の目的に「職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。」こう書いてあるのです。そういうことから考えれば職業訓練の社会化、公共化というものがこの制度のあり方の根幹をなすものであると私は考えるわけです。これは先にお話が出たかもわかりませんけれども、イギリスとかフランスとか西ドイツとかというところではすでに常識的なことになっておる。しかも労使の間で労使委員会というものができて制度化されておるということになっておるわけです。いま先ほど企業内訓練というものにもひとつ目を開いていくんだというお話がありましたが、企業内訓練とそれから労務管理制度との関係、これには私は実は危惧を抱くわけですけれども、労働省としては一体どういうふうにお考えになっておるわけですか。つまりことばをかえて言いますと、要するに私企業に労務政策というものがくっついちゃって、そして職業訓練というものが結びつけられておるんじゃないかというふうに感じるわけです。そういう危険がないとは言えないんじゃないかと思うのですが、その点についてどういうふうにお考えになっておるのか。
  71. 久野木行美

    久野政府委員 先生の御質問の冒頭におきまして、今後の職業訓練というものは、でき得る限り社会の要請にこたえたもの、すなわち一企業の要請のみに基づくものではない、十分に社会的な要請に基づくものにならなければならない。それを社会化と呼ぶならば、そういう御見解に対しましてはわれわれとしてもそのように考えております。そこで、今後社会化というものを進めるにあたって私どもは、先ほどもちょっと申し上げましたように、労働省の設けました基準に基づきまして、公共訓練施設におきますと同様に、企業内においても全く同じ基準によりまして同内容の養成訓練等が行なわれることを期待するわけであります。そういう意味におきまして、現在の教育訓練が労務管理と関連されるのかどうかということにつきましては、日本全国で行なわれております訓練というものがいろいろございますので、それについてこうであるああであると言うことはなかなか困難かと存じます。そこで私ども考え方としては、現在の企業内訓練がこうだからこうだというのではなくて、むしろそういう労務管理になるというような弊害があり、労働者の皆さんのためにならないというような訓練になってほしくない。したがいまして、やはり労働省で定めます基準というものにのっとりまして十分に公共性のある、すなわち公共施設において行なわれている訓練と全く同様の内容が企業内において行なわれる、こういうのを確保しよう。そういう意味におきまして、この事業の中で特別に事業主等の行なう事業内訓練というものについても助成をするというようなことによりまして、労働省の基準というものを守っていただく、そういうことによりまして社会化を確保していきたい、こういうように考えている次第でございます。
  72. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それではちょっと労働省の解釈についてお伺いしたいのですけれども、郵政省職員訓練法というのがありますね。その第二条に、「この法律の規定に基き郵政大臣の行う訓練は、職員の担当する業務の遂行に直接関係——「直接関係」です。「があるものに限られる。郵政大臣は、専門的な学科目を除き、一般の学校で通例実施されている学科目について訓練の教程を施すことはできない。」こういっている。そうしますと、職業訓練というものの社会化とか公共化というものが必要である、そしてそれが実は制度の根幹をなすものであるというふうに私は考えて、つまり基礎的な学科というものが一番大切ではないだろうか、テンポラリーにそこに必要な、要するに仕事があるからそこに適応するということだけでは、たいへん不十分な職業訓練ではないだろうか、こう思うのですけれども、一体郵政省の職員訓練法第二条についてあなた方はどうお考えになっておるか。  これをなぜ私がお伺いするかというと、郵政当局と職員との間にこれは常々議論の焦点になるわけですよ。そうすると労働省が、少なくともいま局長が御答弁になったことと、ここに書いておる郵政省職員訓練法第二条とは、趣旨においては背馳するのではないだろうか、そんな感じがいたします。したがって、そのことに対して労働省の見解は一体どういうふうにお考えになっているかをまずお伺いしたいわけです。
  73. 久野木行美

    久野政府委員 私どもが担当しております職業訓練と申しますのは、大筋におきまして民間におきます職業訓練、技能労働者の育成訓練、こういうことでございまして、いま御指摘の郵政省職員の訓練ということについては実は私どもの所管外でございます。また私寡聞にしてそういうところについて十分検討をしておりませんので、ここでとやかく申す段階にございませんことをひとつ御了承いただきたいと思います。  ただ私どもが考えております訓練と申しますのは、先生指摘のように将来の日本の経済というものをになっていき、かつ安定した職業を得ようとする労働者の方々に基礎的な技能とそしてまた学科というものを、これだけは最小限度必要だというようなものを習得させるということに着眼を置きまして推進いたしたいということで、その基礎的な単科、技能というものの訓練、これを私どもとしては考えていきたい、こういうことでございます。
  74. 山本政弘

    ○山本(政)委員 民間の企業に働いている人たち労働者、官公庁に働いている人たち労働者ですね。そうすると民間のほうについての職業訓練はかくかくである、しかし官庁のほうは民間ではないから知りませんというのは、私は答弁にならぬと思うのですよ。それは答弁になりますか。なるかならぬかだけでもけっこうなんです。官庁のほうは知りませんというわけにはならぬでしょう。しかも労働省はそれを要するに一応指導する立場にぼくはあると思うのですが、いかがでしょう。
  75. 久野木行美

    久野政府委員 話はちょっとはずれるかとも思いますが、確かにその当面の企業の中において必要な訓練をするのも、もちろん使用者としての自由はございましょう。ただ私どもがそういう場合に望みますのは、でき得る限り社会一般に通用するような客観的な基準にのっとった訓練をしてほしい。たとえば最近、民間のほうでございますけれども労働者の意識調査ということをいたした場合におきましても、約九〇%の労働者というものが現在の訓練に必ずしも満足はしていない。なぜ満足していないかということにつきましては、もちろんいろいろと分かれるところでございますけれども使用者の側におきます訓練が必ずしも自分たちの望んでいるものではない、すなわち体系的なものではないとか、さもなければあまりに当面の必要性に密着し過ぎている。むしろ全体もっと体系的な、そして客観的な、どこの分野に行っても通用するような訓練が望ましい、こういうことを欲していることも事実でございます。私どもはそういう考え方でこの訓練行政を進めたいと考えておる、こういうことだけお答えしたいと思います。
  76. 山本政弘

    ○山本(政)委員 職業訓練というものの社会化、公共化という場合に、イギリスでは産業訓練法というものがありますね。そして労使の産業訓練委員会というのがあります。フランスには合同雇用委員会というのがあります。それから西ドイツでは雇用事業団がある。それぞれそういう機構というものを持っておって、そして労働組合、使用者団体、公共団体という三者均等の数で代表者がきまっておる、こういうものがある。しかもイギリスの場合には教育なりあるいは科学なり、そういう所管大臣というものが協議をするということになっているわけですね。私は日本の場合も、郵政相という所管大臣というものが労使双方と協議をする必要があるだろうと思うのですよ。それは、労使の間の団交があるじゃないか、こうおっしゃるかもわかりません。しかしながら、そこで争点となるのは、郵政省職員訓練法という法律があって、その二条の解釈にいろいろなものが出てくる。要するに郵政のマル生だとかなんとかいうことがいわれてくるわけでしょう。とすると、この二条について労働省としては何らかの指導をする必要があるのではないだろうか。しかも局長のおっしゃるように必要最小限ということばは、要するに携わっている業務のみに関するということであるならば、私はさらに大きな問題が出てくるだろうと思うのです。職訓全体の中でたいへん大きな問題が出てくる、だろうと思うわけですけれども、だから私はお伺いしているわけです。これ以上は私は追及しませんけれども、一体その点について指導をなさるおつもりがあるのかどうかということだけなんです。それはよその官庁だから知りませんとか、あるいは官庁のことだから知りませんということではないんじゃないでしょうか。
  77. 久野木行美

    久野政府委員 同じ政府部内の対等の省でございますので、指導するとかというようなおこがましいことは私自身できるかどうか、非常に疑問に思っております。ただ、先生指摘の点につきましては、私どもとしても内容を十分勉強させていただきまして、その結果いかんによりまして対処する、こういうようにさせていただきたい、こう考えております。
  78. 山本政弘

    ○山本(政)委員 職業訓練法第四条の規定というのがありますね。昭和四十四年に職業訓練法は、まさしく冒頭に局長がおっしゃったように、事業職業訓練へということについて道幅を広げたものだと私は思うのです。それが実は特徴だと思うのですけれども、第四条の一項というのは「事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行なうように努めなければならない。」これは訓示規定ですね。そして実は、それまで三年間だった訓練期間というものを公共職業訓練と同じように二年間に短縮をした。運営費とか施設費とか、あるいは機械設備の補助や融資など援助の道を拡張してきた。三年から二年にしてそういうことをやったということは、逆にいえば速成化、量産化を目ざしたんじゃないか、こう私は思います。なぜかというと、職業訓練の予算の総額は四十四年が百三十五億、四十八年が二百三十八億で伸びからいえば一・七倍ですね。ところが、そのうち企業内職業訓練費はまさしく三倍になっているのですよ。そういうことからいえば、先ほどから繰り返し申し上げるように、社会化、公共化といっているんだけれども、それに背馳をした指導をしているんじゃないだろうか。企業内訓練というものが速成化をされておる、三年から二年に短縮されておる、あるいは訓練の振興費が三倍になっておるというようなことを考えますと、どうも国で当然やるべきことを企業の中におっかぶせていっているという感じを私はぬぐえないのですよ。そういう点で、訓練法四条の訓示規定は一体どういう意味を持っているのか、そしてこの規定は、いま申し上げたように、社会化とか公共化とかいうことをおっしゃっているけれども、そういうことと背馳しないのか、矛盾しないのか、その辺はいかがお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  79. 久野木行美

    久野政府委員 第四条に「必要な職業訓練」ということばがございますが、この場合の「必要な職業訓練」というものは、私どもの公共職業訓練校においても実施しております基準、そういうものに基づく基準その他の基準というように考えられまして、問題は、私どもとしては、冒頭に申しましたような基礎的な技能、学科というものを事業主としても労働者に付与していただきたい、こういう趣旨をここに盛ったつもりでおります。そういうことでございまして、三年を二年にということでございますが、これは基準の中に定めましたように、訓練時間数というものは公共におきましても千七百時間というふうに定めておりますので、企業内においても千七百時間を消化していただくということで同内容の訓練ができる、こういうように判断したためにこういたしたというように考えております。
  80. 山本政弘

    ○山本(政)委員 要するに、三年から二年に減らしたことについては、時間が同じだから差しつかえないではないだろうか、こういうお話がありましたけれども、いま申し上げたように、訓練の予算の総額は一・七倍、しかし企業内の職業訓練の振興費というものは三倍になっておるということを見ますと、私はどうも公共の職業訓練ではなくて私企業に対する訓練にウエートを置きかけているんじゃないかという感じがするわけです。  観点を変えてお伺いしたいのですけれども、いま多くの産業の中に臨時工というのがたくさんあります。それから下請社外工なんというのがありますね。ですから、そういう意味からいえば、基幹産業の中では臨時工とか下請社外工とかという人たちが、本工と同じような作業工程をやっておるわけですね。組み込まれていると言ったほうがいいかもわかりません。しかも賃金あるいは労働条件というものは本工と差別されておる。そして不況になれば雇用調整ということで、この人たちは実は安全弁になっていると思うのですよ。こういう階層労働者職業訓練というものは、それじゃ一体どういうふうに、どこで保証されているんだろうか、これをお聞きしたいわけです。
  81. 久野木行美

    久野政府委員 御質問の第一点でございますが、私どもとしては、公共職業訓練関係を企業内訓練で肩がわりしていただこうというつもりは全然ございません。公共職業訓練施設というものはわが国の訓練行政の一方の核であります。ただ問題は、現実というものを分析いたしますと、公共職業訓練校へ入ってくる方々というものもこのごろ非常に、たとえば中卒について見ますと進学率の向上というようなことで十人に九人は就学してしまう。そこへ残った十人のうちの一人が公共職業訓練校へ来ていただければよろしいのでございますけれども、大部分がダイヤモンドとか金の卵というようなことで会社へ入ります。   〔葉梨委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕 そういたしますと、やはりこの会社の中に入った在職者、在職しております労働者というものに十分な公共性のある訓練というものをできるだけ実際上施さなければならない、そういう考え方に基づきまして、もちろん公共職業訓練でやりますことは従来以上にやりたい。ただ、同時に現実の問題として、職場へ入った方々にも訓練を十分にして差し上げたい。  特にいろいろと調べますと、なるほど現在の事業場におきましては入社をいたしました直後に一週間とか十日とかいう非常に短い訓練、企業内の導入訓練のようなものはほとんどの会社がいたします。しかしながらやはり半年、一年というような、すなわち息の長い期間において基礎的な訓練とか学科というものを十分教えようというようなことになりますと、現在残念ながら千人以上の規模の企業におきましても七、八%。それから二十九人以下の零細企業と申すものも六%、その中核にございます九百九十九人から三十人というような中企業におきます訓練状況というようなものは、統計によりますと、六カ月以上やりますものはわずかに二、三%という現状でございます。むしろ五人から二十九人の規模事業場におきまして六%ぐらいの訓練が行なわれるということは、私どもが従来共同訓練というようなことによりまして、零細企業が集まってそこで共同訓練校というものを設ける、その訓練校において訓練をさせるというようなことによる助成、これがパーセンテージにして、若干我田引水的でございますけれども、三十人以上というところよりも訓練のパーセンテージが高い、こういうふうになっております。したがいましてこの六カ月以上、一年以上われわれとしては二年の認定訓練というものをほんとうに企業の中に根づかせたい、そして在職者をほんとうに訓練いたしたい、こういう考え方から公共職業訓練と事業内訓練を車の両輪といたしまして日本職業訓練行政を進めてまいりたい、こういう気持ちでおるわけでございます。  それから、そういう意味で事業内の訓練というものに力を入れるということでございまして、公共職業訓練校の肩がわりとしてやるというより、公共職業訓練も、そして事業内訓練におきましても認定訓練的なものをできるだけ推進いたしたい。そういうことを進めるために今回の能力開発事業におきまして財源を得まして、いま申しましたような中企業等におきます訓練というものもさらに推進したいというのが、私ども気持ちでございます。  それから第二点の臨時工、下請工、社外工等の問題でございます。この方々は確かに訓練の面におきましても恵まれない方々でございまして、われわれとしても特別な配慮をしなければならない、こういうふうに考えております。  それで、確かに現実の問題としては非常に困難が多々ございますけれども、私どもとしてはやはり大企業が下請会社の職員、労働者というものにはでき得る限りその本社における訓練の中へ編み込んで、下請の従業員も同じように訓練をしていただきたいというように考えておりまして、そのように指導しております。業種によりましては、たとえば建築分野等におきましては比較的下請とかそういう方々の訓練というものもわりあいに実施されておるというように承知しております。ただ、臨時工とかそういう方々になりますと確かに問題がございますので、私どもとしては今回の雇用保険法に基づきまして設置いたします技能開発センターというようなところで、夜間等において訓練を受けていただくとか、さもなければ、そのほかとしては、御本人が何らかの資格を取りたいという場合には、この方々に何らかの助成をして勤務外にでも資格を取るための訓練を受けていただく。そういうためにわれわれとしては自発的な教育訓練を受けたいという方々には助成をするというようなことをこの事業の中で考えておる、こういうふうに考えています。
  82. 山本政弘

    ○山本(政)委員 職業訓練の認定ということが職訓法の十条に「職業訓練に関する基準」としてありますね。そして二十四条に「職業訓練の認定」というのがある。二十五条を見ますと、「認定職業訓練を行なう事業主等は、第二十二条の規定にかかわらず、労働省令で定めるところにより、その設置する職業訓練施設の名称中に専修職業訓練校又は高等職業訓練校という文字を用いることができる。」というふうに書いてあるのですが、どうも私にはわからぬわけですね。いろいろな不備な点が公共職業訓練校にはあるのだと思うのですよ。施設の面だって何だってたくさんあると思うのですが、それを充実させるということをしないで、そして企業内の訓練というものについて補助するといいますか、助成金をやるというのか、交付金をやるというのかそういうことをして、そして名称までもすぐ固定するということは、何か私は公共の訓練というものについて、企業内訓練というものを公共訓練と同列に扱うことによって公共訓練の義務というか、そういうものを免れるというような、そういう姿勢が実はあるのではないかという感じがしてならぬわけですね。なぜこういうことをやるのかということがわからぬわけです。  つまり、企業内の訓練というものは、ぼくはやはり、どんなことをいおうと、そういう企業というものの私的な性格というものをぬぐい去ることができぬだろうと思うのです。ですから、本来ならば公共訓練にもっともっと力を入れるべきであって、それが充実された結果、企業内訓練というものに力を入れる必要があるならば入れるということが本来だろうと思うのですけれども、名称から何からそういうことにしてしまって、そしてたいへんたくさんなお金ではないのでしょうけれども、助成金とか交付金とかやって、そして公的訓練というようなことにしてしまって、それでおっかぶせていっている。ということは、何か責任を免れるような感じがしてならぬわけですよ。あとで私は例示しますけれども、公共訓練なんというものはほとんどなっちゃいないのですよ。先ほどの多賀谷さんのお話もありましたけれども、そういう点についてどうも私ははっきりしない。しかも鉄鋼業についての訓練の端的な例があるのですよ。鉄一トンの製造原価を一〇〇とするならば、原材料の費用が六四%、製造費が一八%、そして労務費が一八%、こういっている。この製造費の中の保全費というものが六%になるか、八%にするかということによって、これは大きな問題だ、こういわれているのですよ。これは日本鋼管の担当者の報告から資料が出ておるわけですけれども、二%減るかどうかということによって数百億円違うというわけでしょう。そうすると、この保全費というものについて労働者の教育というものがどう行なわれているかということが一番問題になってきますね。技能というものが習熟されておれば、私は保全というものもよくなるだろうと思う。だから、この保全費というものをどう縮小するかということが実は企業としてはたいへんな問題になってくる、だからこれをできるだけ圧縮しようとするわけでしょうけれども。そういうことになると、今度は企業の中の視点から職業訓練というものにハッパがかけられることになる。つまりきわめて目先のことだけでそれをやられるということになってくるわけです。だからこういうことを見ますと、どうもぼくは企業内訓練というものの内容とか運営とかいうものに疑問を持たざるを得ないわけです。ですからあなたのおっしゃるように、車の両輪というふうに考えていいのかどうかという問題なんです。ちょっと視点が違うんじゃないかという感じがするのですが、その辺をひとつ、簡単でいいですから答弁していただきたい。
  83. 久野木行美

    久野政府委員 二十五条等における名称の使わせ方ということでございますが、これはあくまでも労働省の定めました基準というものをしっかり守る、その基準の中には当然御承知のように施設の問題等につきましても言及されております。したがいまして、そういう施設というものを十分完備したものについて初めて認定をする、こういうことになっております。認定の際には必ずその訓練の能力それから内容、施設その他につきましても、われわれとしては基準に合っているかどうかということを見た上で認定をする。  それから校名を使うことについての御疑問でございますが、これはあくまでも適切な意味における認定訓練の内容を持っているものに対して訓練校の名称を与え、それを卒業した者に対してはそれなりの優遇をするというような意味でこの学校名を使わせる、これはあくまでもそういう基準にのっとったものだけ、またそういうところを卒業した者に特典も与えたい、そういうような観点からのものでございますので、ひとつそのように御理解いただきたいと思います。  車の両輪という言い方については、これは比喩でございますので、厳密な意味における事態を説明することにはなりませんと思いますが、私の申し上げたいと思いましたことは、公共職業訓練も大切であり、それから企業内における訓練というものもでき得る限り認定化をし、公共性のある訓練をさせていく、そういう意味の訓練というものを日本の中に広げる、そういうことができ得れば、この二つが行政の上の二つの道ではなかろうか、こういう意味で申し上げましたので、ひとつそのように御理解いただきたい、こう思います。
  84. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、もう一ぺん確認したいわけですが、企業内職業訓練と公共職業訓練のいずれにウエートを置いているのかということなんですが、どちらなんですか。
  85. 久野木行美

    久野政府委員 私としては行政のあらゆる手段を使いまして——どもの目的は労働者の方々にほんとうの意味の基礎的な技能及び学科というものを付与する、それを最大の目標といたしましてそれに通ずる道両方——もちろん企業内訓練とどっちかという問題ではなくて、両方の道を通じまして富士山のてっぺんへ登りたい、こういうことでございます。
  86. 山本政弘

    ○山本(政)委員 職業訓練の目的というのは、特定の作業ではすぐに役に立つけれども新しい技術に直面した場合に対応能力に欠ける労働者、それよりも、訓練終了時には特定の技能者は特定の技能度といいますか、そういうものはそれほどなくても、十分な基礎能力をたくわえた中からどのような技術の変革にも対応できるあるいは対処していける、そういう可能性といいますか、そういう素質といいますか、そういうものを持った労働者をつくるということが実は目的ではないのだろうかというような気が私はするわけです。それはいかがでしょう。簡単でいいです。
  87. 久野木行美

    久野政府委員 私も基本的には先生のおっしゃることと同意見でございます。と申しますのは、私何回も繰り返して申しますように、基礎的な技能と知識と申しますのは、あくまでも今後いろいろと技術革新とかその他技術が進んでまいりますそういう事態、新しい機械が入る、その機械を使いこなせるというような基礎的な技能と学科を付与する、こういうことがわれわれの考えております訓練行政の基本かと存じます。
  88. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十六年に職業訓練基本計画を立てたときに、そういう趣旨のことを労働省は書いていると私は思うのです。ですから、そういうことになるなら、企業内の訓練というものにこだわるようですけれども、富士山のてっぺんに両方から登るのではなくて、ほんとうに登る道は公共職業訓練しかないのではないですか。あなた方自身が基本的にそういうふうにお考えになっておるならば、そういうふうな道をとることが本来のあり方じゃないかとこう思うのですが、その点いかがなんでしょう。どうもあなたのおっしゃることは抽象的で困るのですけれども、どうでしょうか。
  89. 久野木行美

    久野政府委員 先ほども若干実態についての御説明を申しましたように、われわれとしては中学卒業生とか高校卒業生で技能工程へ入るという人間を義務的に訓練校に入れるというような制度に現在なっておりませんし、やはりもちろん公共職業訓練校で学ぶことは有益であるというような広報宣伝、これには力を入れてそして将来技能工程に入るならば、できる限りやはり基礎的な訓練とか学科を受けておくことがいいんだぞということは、卒業生には趣旨徹底させたいと思います。ただ問題は、そういう意味では、公共職業訓練校でやりたいということで自発的に訓練校へ来るという人たちに訓練をするというのが現在のたてまえですし、また、事業内に入った方々にもできる限りの、客観的に社会に通用する訓練をさせるという意味においては、やはり現実に在職者になった人間、この人たちに、この認定訓練でいくか、さもなければ——先ほどちょっと一つ言い落としたことがございますが、公共職業訓練校の中に受託訓練、事業主から委託を受けまして訓練するというような方法も今後とろうとしています。ですから、事業主として施設等が不備でできないという場合には当然のことながら公共職業訓練校では受け入れられるような受け皿をつくりたい、こういう趣旨を持っております。
  90. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ちょっと話が途中ですけれども、もとへ戻ってすみませんけれども、社外工とか臨時工の訓練の助成をしたいというのはどこから費用は出すのですか、ちょっと教えていただきたい。
  91. 久野木行美

    久野政府委員 今後の行政指導によりましてできるだけ本工と同じような訓練をしていただくように使用者にお願いをするというのが一つの道かと思います。それからまた公共職業訓練校におきまして、ないしは技能開発センターというもの、すなわち在職者をできるだけやるというようなセンターを今後置こうと思いますので、非常に時間外とかその他でむずかしいかと思いますけれども、そういう受け皿をつくりたいと考えております。それからもちろん、御本人たちほんとう資格を取りたいというようなことになれば、将来の問題としてはそういう自発的に訓練を受けるという気持ちのある方々には何らかの形で助成する、そういう施策を考えていきたいと考えております。
  92. 山本政弘

    ○山本(政)委員 何らかの施策をするというのは、四十九年度予算にありますか。
  93. 久野木行美

    久野政府委員 雇用保険法の実施は昭和五十年実施でございますので、四十九年には、資格を取得する際にどうするかというような問題につきましての調査費というようなものを現在三百九十万円ばかり持っております。これは、聞くところによりますと、日本の中には資格として八百ぐらいあるそうでございます。ですからこの八百もある資格というものにつきまして、技能労働者、産業労働者に向くものはどういうものであるかとか、それからそういう方々にその資格の内容を分析し、情報を提供するのにはどうしたらばいいか、また、もしも将来の問題として先ほどから申しましたような事業の中で補助するとすればどういう資格をそうすべきかというようなことを検討しようということで、四十九年度は調査研究会を設けようということになっております。
  94. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは、その社外工とか下請社外工とか臨時工とかということに対しては十分配慮をするというふうに、していただけるというふうに理解をしていいわけですね。
  95. 久野木行美

    久野政府委員 はい。
  96. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ありがとうございました。  それじゃ、雇用促進事業団の総合高等訓練校が九十校ありますね。都道府県は五十九校。専修訓練校が二百八十五校。身障者訓練校が三校。国立身障者訓練校が十一校ですか。それから職業訓練大学校が一校あるわけですから、全部で四百四十九校。人員としては延べ人員で二十万四千六百四十五人というふうになっているわけですが、これは雇用促進事業団の発足当時、たしか三十六年だったと思いますが、四十二カ所でありました訓練施設が十年後に八十一校になって、いま申し上げたように現在は総合訓練校というのは九十校になったわけですね。一県当たり二校、こういうふうに考えていいと思うのですね。それで一校当たりが七訓練科というふうになっておると思うのです。  これを見ますと、たいへん画一的といいますか、定型的といいますか、そういうふうに設置されておるというほかはない。つまり建設計画というものは非常に機械的じゃないかと思うのです。地域産業とか訓練受講者の見込みとかあるいは修了後の就職見込みとかいうことが全く検討されておらぬのではないだろうかという感じが私はします。したがって、こういう無計画さというものが一部訓練校で訓練生の充足難を招いておるということが一つ言えるだろうと思う。もちろんそれは高校の進学率の上昇がこれに拍車をかけている、こう言っていいかもわかりません。しかしながら地域的な構造の変化というものに対応しているかといえば、ぼくは対応してないと思うのですね。  四十四年の訓練法でスタートをした高卒の第二類の一年制という養成訓練というのはもう停滞をしていることは御承知だと思いますが、高校卒の第二類の訓練も十分ではないんじゃないか。しかも中卒向けの第一類の養成訓練に使われておるそういう設備を転用している、あるいは訓練期間を短縮するというようなことで、高卒で職業訓練を受けようとする青年たちが、行政とかあるいは施設に何を求めているのだというような疑問というものを一体持ったことがあるのかという疑いが私はあるわけです。中卒の訓練の時代が過ぎたのだといって、場当たり的にやられてはかなわぬ。ですから、そういうことについてひとつきちんと目標を定めてやっていく必要があるのだと思いますが、一体職業訓練制度としてのいまの公共職業訓練校というものを、もう一ぺん繰り返しお伺いいたしますが、どういうふうに位置づけておられるのか、そして今後一体どのように充実をするつもりなのか。簡単でいいんですから……。
  97. 久野木行美

    久野政府委員 まず第一に総訓の関係でございます。総訓、確かに数のとおりでいきますと九十校でございまして、四十八府県で割れば大体一県二校というふうになっております。しかし、その一校一校を設置いたします場合には、やはり県の事情というようなもの、特に県の訓練課というようなものとも十分協議の上設置をいたしたと私は了解いたしております。ただ、高卒に十分に向くようにできているかということにつきましては、はなはだ残念ながら百点をいただけると考えておりません。いろいろと変転いたします技術変化というものに対応するためにいろいろ新しい設備、そういうものを必要といたします。その必要性というものと現在の予算というものは必ずしも一〇〇%満たしておりませんので、そういう意味におきましてはわれわれとしても完全な施設、設備、機械というようなことになっておるとは申し上げられないと思っております。むしろ今後この雇用保険法の成立によります財源によりまして、できる限りわれわれとしては公共職業訓練校の内容充実ということも行なってまいりたい。特に被保険者の方々の受けざらとして、特に成人訓練の場といたしましてこの訓練校等を十分に使ってまいりたい、こういうように考えております。
  98. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは、ちょっと成人訓練というような話が出ましたが、合理化による炭鉱離職者の再就職状況というのを私は労働省のほうから資料としていただきました。そこでお伺いしたいのは、求職者の合計というのが一万四千八百十名というのが四十八年度の見込みですね。そのうち安定所の紹介が七千五百六十名、その他が一千五百七十名というふうな見通しを立てておられるわけですね。それでちょっとお伺いしたいのですが、この一番最後のところにある期末求職者の五千六百八十名というもの、この期末求職者というのは何でしょう。
  99. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 期末求職者と申しますのは、四十八年度の実績見込み五千六百八十のお尋ねでございますが、四十八年度末におきましてなお未就職のまま求職者として残っている数でございます。
  100. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうもこの数字、データがわからぬですが、五千六百八十名が未就職者として残っているわけでしょう。職業安定所紹介で七千五百六十名、その他で一千五百七十名になると、これは求職者の数が合わぬわけになるのじゃないですか。
  101. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 数字の説明でございますので私から……。  前年度よりの繰り越しの期末求職者が三十七年度から四十七年度までの累計で六千十おるわけでございます。これが四十八年度の前年度よりの繰り越し六千十になるわけでございます。新規の新たにあらわれます求職者として八千八百、合わせまして一万四千八百十でございます。その中で就業者等計が九千百三十でございますので、それを差し引きますと五千六百八十という数がなお四十八年度の末においても求職者として残っておる、こういうようなことになるわけでございます。
  102. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、就業者の九千百三十名というのはずっといま、つまりずっと新しく転職したところへ定着しているわけですか。
  103. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 九千百三十名は、四十八年度を通じまして就職をさせた数でございます。現在定着しておるかどうかということにつきましては、とにかく安定所その他の紹介で就業されたという方の数字でございますので、その辺はつまびらかでございません。
  104. 山本政弘

    ○山本(政)委員 何でつまびらかじゃないのでしょう。
  105. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 就業されました数が四十八年度の実績で九千百三十でございまして、引き続き就職されておられる方もおると思いますし、その他いろいろ病弱等の関係でリタイアをされた方もあると思いますが、そういった関係は現地の安定所で照会して調べればわかりますけれども、私どものほうで現段階ではつかんでおりません。
  106. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、訓練後の再就職状況というのはわからぬというわけですか。
  107. 橋爪達

    ○橋爪説明員 訓練校修了者の再就職、その後の状況につきましては、これは毎年というわけにはまいりませんが、非常に古い調査で恐縮でございますが、昭和四十三年にそれまで訓練、講習を終了しましてから一年半ないし三年たった人たちを対象に調べたことがございます。何ぶんこれははがきによるアンケート調査の形式をとっておりまして、なかなかその詳細を把握するのはむずかしいわけでございますが、それによりますと、訓練修了者のうち同じ事業所に就職しておったという人は大体六割程度という数字が出ております。なおこの調査と同じような調査を本年度実施したい、こういうふうに考えております。
  108. 山本政弘

    ○山本(政)委員 合理化で炭鉱離職をした人たちが再就職をする、そしてその数字がここに出ておりますが、その中から一体訓練を受講した人が何人おるのか、受講した人の再就職状況はどうなっておるのか、訓練受講者の生活は一体保障されているのか、そういう点についてのデータというものはそれじゃあまりないわけですか。あるのかないのかだけでいいんです。つまりいまさっきの話では四十三年、いまから六年前のやつがあるということなんですけれども、最近のやつはないわけですね。
  109. 橋爪達

    ○橋爪説明員 私の申し上げましたのは石炭に限りませんで、能力再開発訓練、全体の訓練修了者の帰趨につきまして調査をしたのが四十三年一度だけでございます。その後やっておらないわけでございますが、本年度は実施したいというふうに考えております。
  110. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、残りの四〇%の人たちは一体どこへ行ったんですか。その当時の資料でけっこうですよ。定着してない、さらに再び離職をした四〇%というのはどうなっているのですか。
  111. 橋爪達

    ○橋爪説明員 そのうちの六割程度の人につきましては事業所を変えまして就職しておられるわけでございますが、そのあとの残りの四〇%の人につきましては、残念ながら所在等もわかりませんので、不明のままになっているわけでございます。
  112. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それは、六〇%の人が他の事業所に行ったというのはどういう理由なんですか。賃金が安過ぎる、転落をしている、そういうことによるのかあるいはほかの理由によるのか。
  113. 橋爪達

    ○橋爪説明員 その調査におきましては転職の理由につきまして調べておりませんので、その辺の詳細はわかりかねるわけでございます。
  114. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は「若年失業保険金受給者職業講習制度の実施について」という通達、それから「定年退職前職業講習職業訓練制度の実施について」という通達をいただいたわけですけれども、この二つの制度の四十八年度の都道府県における実施結果というものを集約をされておるのかどうか、されておりますか、されておりませんか。
  115. 加藤孝

    加藤説明員 定年退職前の職業講習の結果につきましては、四十八年度の十月からこの制度が始まりました関係で、まだ十分にPRがなされてない関係もございまして、通信制につきましては約四百件、それから通学制につきましては約五十件程度、こういうような実情にございます。ただ本年度に入りまして、四月一カ月間の状況で、一応四十八年度の場合の通信制につきましては約八百名、通学制につきましては約九十名、合計約九百名の応募状況がございます。そんな実情でございます。
  116. 山本政弘

    ○山本(政)委員 若年失業保険金受給者職業講習というものについては、東京都の場合、週三回で三カ月の訓練ですね。
  117. 関英夫

    ○関説明員 そのとおりでございます。
  118. 山本政弘

    ○山本(政)委員 修了後の就職率が男が二二%、女が四一%、これも間違いございませんか。
  119. 関英夫

    ○関説明員 いま都道府県別の数字をここに持っておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  120. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私の入手した中では、受講者に対して就職率は男子二二%、女子四一%という低率になっているのです。お聞きしたいことは、あとの者は一体どうしたのかということが一つあるわけですけれども数字がないということになればしようがありませんけれども、この数字というものはただ講習会をやっていますというだけになるのじゃないかという感じが私はするのです。つまり実際に受講するかいのあるそういう講習をやっておるのかどうかという問題なんです。そうするとそれはやっておらぬというほかはないのじゃないか。就職率が男が二二%、女が四一%、これは都の資料ですよ。要するに一体そんな講習というものが実効のあるものだろうかどうだろうか。受けがいのある受講なのかどうか、たいへん大きな問題だと思うのです。一体その点どうお考えになるか。
  121. 関英夫

    ○関説明員 若年失業保険受給者の職業講習というものは四十八年度から計画し、始めたわけでございます。これは現在のような雇用情勢のもとで若年者が就職できない原因があるとすれば何か、自分に適した技能、技術、そういったものを身につけていないからであろう、求人は非常に多いわけですから、そういった考えのもとにできる限り若年者にもそういった技能を身につけてもらって再就職してもらおう、こういうことで若年者の職業講習を計画したわけでございます。その結果につきましてまだ十分な調査をいたしておりませんが、先生の御指摘のような面も含めまして、この一年の結果を十分検討いたしまして、ほんとうに実効のある職業講習にしていきたいというふうに考えております。
  122. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは定年退職前の職業講習、職業訓練、これは各種学校に委託をして昼間、定時、通信の三コースで行なわれていると思いますけれども、四十九年の実施状況は夜間が三名、通信が十一名でございます。これは東京都です。そして四十八年度に実施したから、こうおっしゃるのだけれども安定所長は二月十五日までに受講対象者を選定し、都道府県職業安定主管課は講習実施計画をつくるということが、あなたたちの規則の中に入っているじゃありませんか。そういうことをきちんと日限を切ってやられているものについて、いま申し上げたように、四十九年の実施実況が夜間が三名、通信が十一名というものでは全くていをなしていないということじゃないのだろうか。あなた方が声を大にしておっしゃっている職業講習制度とかあるいは訓練とかというものが都道府県の中では実効をあげていない、そういうことでしかないのじゃないか。私は雇用安定法というものをあなたたちが今度新しくおつくりになることに対して、一体こういうことで実効があがるのかどうだろうか、こういうことについて確信があるのかどうか、お伺いしたいのです。その点いかがでしょう。
  123. 加藤孝

    加藤説明員 定年前職業講習につきましては、先ほど申し上げましたように、昨年の十月から始めました制度で、たいへんPRが不足しておりましたために、実績が四十八年度で全国で五百名に足らなかったということはたいへん遺憾に存じております。四十九年度につきましては、年度当初からそのPRにつとめ始めまして、四月現在で一応九百十名、こういうことになっております。ただ御指摘の東京都につきまして、その辺が十分に進んでない点については、今後十分ひとつ督励をしてまいりたいと思いますが、制度としまして私どものねらっておりますものは、定年退職されます方の一年前からそういう職業講習制度を開始しまして、何とかそれが定年後の再就職に結びつくようなものにぜひしていきたいということで、職業講習の科目等につきましても十分ひとつ留意して選定を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  124. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十八年度はあなた方がくだすったデータの中にも書いてあります。訓練実施に必要な期間が確保できなかった、訓練実施体制の十分な準備が間に合わなかったというふうになっている。ですから、東京都の職安における四十八年度の実施状況が昼間、夜間ともにゼロ。定年退職前の訓練は、昼間、夜間ともゼロなんです。四十九年度は、いまさっき申し上げたように夜が三名、通信が十一名、こうなっているのです。四十九年度はPRをされたのかもしれませんが、四十九年度について夜が三名、通信十一名というのはこれはひど過ぎるんじゃないでしょうか。しかも、ここで夜が三名、通信が十一名という、通信が十一名というところにぼくは問題がありそうな気がするのですよ。つまり、希望する人がない、定年前に希望する人がないという場合には通信教育でもやって、そして一番安易な金のかからない方法で済ましてしまおうということなんですよ、これは。そうじゃありませんか。だから現実に四十八年度は、昼間、夜間がゼロで、四十九年度の場合は夜間が三名で通信の場合は十一名というようなことになってくるんじゃないでしょうか。人数が少ないということ、そして通信がその中で比較的多いという問題はその辺にあるんじゃないでしょうか。つまり、労働者の再雇用だとか就職のために充実をした職業訓練を施そうという、そういう意向というものと背馳をしたいき方が現実にはなされておるというほか言いようがない。つまり、受けがいのない職業訓練だというほかないんじゃないでしょうか。
  125. 久野木行美

    久野政府委員 確かに先生の御指摘のように、定年前の者に対する訓練とか職業講習に関しましては、四十八年度の年度途中において行なわれた、また四十九年度においても確かにPR不足であったという点はあるかと思います。ただ問題は、その定年前一年間の方々にこの訓練をしますよとか講習をしますよというような、いわゆる定年前の方々に対してこういう制度をやるという、そういう社会的な制度といいますか、社会的な受け入れ体制も——その受け入れ体制に伴う困難を打開するわれわれの努力が足りなかったんじゃないか、そのように考えます。第二の人生を開拓されようといたします定年前の方々に対しましては、やはりわれわれとしては少しでもこの訓練等によりまして制度化いたしたい。  ただ、私どもとして申し上げたいと思いますのは、やはり従来から高年齢者に対する訓練ということにつきましては、これは必ずしも定年前一年ということではございませんけれども高齢者の訓練等につきましては、たとえば東京都におきましては中野の訓練校におきまして表具の関係とか医療事務の関係につきまして、すなわち老齢者に向いた職種というようなものを特に選びまして訓練をする、そういうことによりまして、比較的よい就職率を得ているというようになっております。  私どもとしても、この定年前訓練のやり方、それから講習のやり方等につきましては、御指摘もございますので、今後ともわれわれとしてもさらに検討をいたしまして、この定年前の方々の第二の人生の門出をできるだけ円滑にするというように努力をしてまいりたい、こういうように考えております。とにかく私どもとしては、定年前の方々を何とかしてお手伝いしようということでありましたけれども、そこらの周知宣伝の努力というような点に欠けておった、また、それによって制度的に受け入れ体制にも欠いておったということだと思います。ただ、各都道府県におきましては、必ずしも定年前ということではございませんけれども高齢者に対する訓練というようなことを現在いろいろと努力しておるように聞いておりますので、この先生の御心配等も肝に銘じまして今後の推進をわれわれとしても努力してまいりたい、こういうように思っております。
  126. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これは労働省調べですが、四十七年度の高等訓練課程の入校状況を見ますと、第一類の入校率というのは八四%、第二類の入校率というのは五五%ですよ、パーセンテージからいけば。五五%というのは約半分です。能力再開発訓練生の入校状況というものは、四十六年度は六三%ですよ。四十七年度は五五%にうんと減っているわけですよ、これも。なぜ減っているのだろう。受けがいのない訓練だから減っているのじゃないですか。あなた方、職業訓練が整備されているとお思いになったら大間違いだと思うのですよ。これもあなた方の資料ですよ。  機器の整備状況を調べてみますと、規則基準に対して釧路が四六・六%しか満たされてない。旭川が四九・三%ですよ。岩見沢が四六・六%、内郷が五〇・七%、新庄が三七・〇%です。こんな整備状況ですよ、大臣。これは機械科です。一部だけとりましたけれども、ほとんど六〇%いっているところはありません。いいところで五十数%です。  精密機械を申し上げましょう。神奈川が五三%、山梨が五〇%、長野が四七%、松本が四二%です。整備状況ですよ。  建設機械の整備状況、これは建設機械整備科です。玉島が四八・五%、奈良が四七%、君津が五九%、旭川が五九・一%、これが整備状況ですよ。   〔山下(徳)委員長代理退席、葉梨委員長代理   着席〕  電気工事だって、荒尾は六一%、わずかに八幡が七〇・五%ですよ。  こんな整備状況で、だれがその気になって受けられるだろうか。受講ができるだろうか。できっこないじゃありませんか。こういうすべての施設の整備状況だから受講者が少ないということになるのですよ。受けがいのない訓練だということになるじゃありませんか。  電気機器科は青森が五七・七%、茨城が四六・三%、新発田が四九%。ことごとくといっていいほど整備されていないじゃありませんか。そしてそういう整備がされておらぬから、実は企業のほうに持っていって、あなたのほうでやってくれということになるのですよ。そうじゃないでしょうか。
  127. 久野木行美

    久野政府委員 私前にお答えいたしました中でも整備状況、機械とか設備の状況が完全ではない、不十分であるということは私自身も認めました。ただ問題は、パーセンテージ等につきましてはいろいろの事情がございましてそういうような事情になっておるのでございまして、ただ私どもとして考えてみたいと思っておりますのは、最新の機械というようなものを必ずしもとれない。公共職業訓練施設におきましては最も基礎的な技能とか訓練、学科を教えるというのを主眼にいたしまして、応用のきく基本的な施設、設備によりましてやる、こういうように私どもとしては考えております。設備の不十分であるということにつきましては、私どももそう考えておりますので、今後財源を得ました場合には整備の促進をはかりたい、こう思っております。
  128. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私はしろうとですからよくわかりません。財源がないと言うのです。財源がないとおっしゃるけれども雇用促進事業団の昭和四十七事業年度の決算報告の中には不用額というのがあります。一億三千九百四十万という不用額がある。これは総合高等職業訓練校業務費になっているわけです。一億円の不用額というのは、その年度に使わなかったから国庫へ戻入措置をするわけでしょう。これだけの、一億数千万という金があるのに、なぜ機械の整備とか施設の整備にお使いにならないのです。私はしろうとだからよくわかりませんが、ちゃんとしたお答えがあるならば、それを聞かしてもらいたい。  もう一つ、北海道の旭川の印刷機械というのは、一番古い印刷機械じゃありませんか。いまの要するに時代の要請にこたえ得る印刷機械ではないはずですよ、少なくとも私が調査した結果から言うならば。それが訓練に使われているということなんです。お金は不用額として一億数千万円あるじゃありませんか。なぜそういう点にお使いにならないのです。
  129. 中野光秋

    ○中野説明員 総合職業訓練校関係事業団の不用額が一億何千万ということになっておりますけれども、これの中身を調べてみますと、予算の中身は実習負担金、訓練生から負担金として徴収するもの、それから訓練校で製品をつくりまして、それを売却した収入などを見込んでその財源も一部歳出の中に組まれているわけでございますが、実は先ほども先生からも御指摘がありましたとおり、最近訓練生の数が減っておりまして、それから製品の売却の額も減ってまいりまして、予算に相当するその製品売却費あたりが入ってこなかったということで当然不用額が出た、こういう結果になっておるわけでございます。
  130. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大臣、北海道というところは寒いところですよ、私が申し上げる必要もないと思いますが。訓練所の寄宿舎というのは、四畳半に四人おるわけです。寒いところですから、まきをくべますね。火災報知機が鳴りっぱなしだというのです。そういう寄宿舎があるのです。だから施設といい、機械といい、いまごらんになったと思いますけれども、そういう、ぼくに言わしたら貧弱ですよ、国がやる公共訓練所にしては。そういうところに人が来るとお思いになりますか。これは大臣に御答弁願いたい。
  131. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も自分の郷里にそういう訓練校がありますので、ときどき見に参ります。先生がいまお出しになった書類の中にも、拝見しますと北海道のどこか、印刷が七三%というところもありました。一般的に最近中卒、高卒が多いために都会地ではこういう訓練校というのはなかなか入学希望者というのが少ないという状況にあります。一方いまから先でもそうですが、技能者が非常に必要であります。そうして月謝が非常に安いのと、それから近いところは通える、それから技能者がいかに大事であるかというPRなどで、地方の農村においては私はいまから先も見込みのある施設であり、そうしてまた能力開発の時代ですから、やらなければならぬことだ、こう思っております。  そこで予算の問題等となりますというと、技術がどんどん進歩しますから、機械もまた新しくなりますので、相当高額な機械もいなかにしては珍しく入っておると言うて業者などはびっくりすることもありますが、しかし何さま多様化される技術要請にこたえて、いまのような御指摘どもありますから、これは一そう私は充実させることが必要じゃないか、私自身も、予算の面なり施設がどういうふうに充足されているか、あらためてひとつ研究してみたい、こう思っております。
  132. 山本政弘

    ○山本(政)委員 要するに、国の公共職業訓練所というものがそういう実態である。だから、企業のほうへ結局それが、要するにしわ寄せという言い方はことばとして妥当じゃありませんが、そっちのほうへ持っていく。そうして局長の言うように車の両輪になっていくというコースにぼくはなってくるのじゃないかと思うのです。もともと考え方が違うのですよ。ドイツのティッセンの鉄工所では、職業訓練を受けた人の中で二〇%が残る、八〇%はよそへ出ていくというのです。日本の企業の場合にはそこの企業の中でもうそれこそ定年まで働かすということだろうと思うのです。ところが、ティッセンの鉄工所の八〇%が出ていくことに対して、そこの要するに指導者たちが言っていることは、企業のメリットよりか国のメリットのほうが大切だ、こう言っているのですよ。ぼくはそういうことを考えると、いまの労働省の姿勢とティッセンのそこの指導者との考え方に非常な違いがあると思うのです。産業というものがだれのために行なわれるべきかということを考えなければいかぬと思うのですよ。一企業のために行なわれるべきじゃないだろうと思う。そうすると、単なる車の両輪というふうに考えられちゃたいへんぼくは困ることじゃないか、こう思えてならないのです。時間が来たから、これで終わりますけれども、ぜひそういうことに対してきちんとした、もっと視野の大きな観点からひとつ指導してもらいたい。  最後にお伺いしたいのですけれども、いま申し上げました数字平均では六〇%くらいだと思います、これに対して一体どうおとりになりますか。旭川が七〇%印刷機械があるというけれども、これは要するに機能としては非常に古い機械ですよ。旭川だけじゃないのです。それから火災報知機が冬になったら鳴りっぱなしのそういう寄宿舎なんかがあるのです。それで来させようといったって、そんなのは来やしませんよ。それに対してきちんとした態度をひとつ表明してもらいたいと思うのです。
  133. 久野木行美

    久野政府委員 確かに先生指摘のように、施設、設備の点につきましては不十分である、御指摘のとおりでございます。ただ私どもの調べました資料等によりますと、総合公共訓練校におきます年度別の機器等の整備状況は六八・一ということになっております。それだけを一つ申し上げます。  それから第二点としましては、今後の整備というものに関しましては、先生の御指摘のとおりでございますので、いまの六八%にしても決して高い数字ではございません。したがいまして、社会の必要に応じましてでき得る限り今後充実に努力いたしたい、こういうように思っております。  もう一点言わしていただきますと、私どもとしては決して企業内訓練を、肩がわりしようというようなことではございません。ちなみに、四十九年度予算におきましても、公共職業訓練に支出しております予算というようなものが、全体のうちで九三%は公共職業訓練のほうへ出ておる、こういうことになっておりまして、決して公共職業訓練を軽視しておるということではございませんので、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
  134. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ベルが鳴ったからもう言いませんが、六八%でございます、それだけは申し上げておきますということはおかしいですよ。一〇〇%なければおかしいです、国の公共訓練所だったら。そうじゃありませんか。六十数%だからいいじゃないかということにはならぬですよ。そうでしょう。一〇〇%にする義務があるのじゃないですか。大臣、どうなんです。
  135. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 何としても、基礎的な公共訓練というものをしっかりと職場に入る諸君が身につけていくことが一番大事でありますから、これは従来も御指摘のように四百校以上のものをやっておりますが、さらにこれを内容を充実させ、一〇〇%にやっていく覚悟でございます。一方また、日本労働者諸君も、これだけどんどんものが進歩発展する時代ですから、常日ごろ私は職業訓練というものをいろいろな機会に受けていただく姿勢というものが大事じゃなかろうか。私はイギリスに行ってサンドイッチシステムというのを見ました。一ぺん外へ出た者がまた大学なんかに入る。それから外国では技能試験をとることによって、自分の給料が上がることですから、先生のおっしゃるとおり、よその地方に移っても一向——国全体のためになり、自分のプラスになります。そういうふうにしていろんな資格をとる、そういうふうな姿勢の中にいろいろな訓練施設というものをひとつ利用してもらう。そういう中に自分の生活の向上と、その場合には今度はけがをしないで済む。一昨年でしたか昨年でしたか、十二カ所もコンビナートが爆発して、いろいろ原因を調べてみると、どうしてもやはり技能がちょっと足りなかった、そういうことと相まって、労働者諸君の訓練、生活向上にがんばってみたい、こう思っております。
  136. 山本政弘

    ○山本(政)委員 では終わります。
  137. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ————◇—————    午後三時三分開議
  138. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。田中美智子君。
  139. 田中美智子

    田中(美)委員 雇用保険法案について、働く婦人の立場からいろいろ質問いたしたいと思います。  まず「失業保険受給資格者の心得」、こういうのを御存じだと思います。これの二ページ目にこういうことが書いてあるわけです。これは現在職業安定所へ行きますとまずこれをもらってそれからグループに分けて説明してくれるわけですね。その中に、「就職の意思能力がないと認められる例」ということでその例があげられてあるわけです。この中に四つほどいろいろ問題なところがあると思うのですけれども、「結婚のため退職し家庭に入った方。」というのと、それから「病人の看護をしなければならない方。」それから「乳幼児があるのに他に哺育にあたる人がない方。」それから「家事・家業を手伝わなければならない方。」というふうに書いてあるわけですね。こうした法律というものをきちんと知らない普通の失業者が行ってこれを見るわけです。それで、これに対して非常に労働者自身が誤解をするような指導がなされているというふうに私は思うわけです。この項というものについてお聞きしたいわけですけれども、「結婚のため退職し家庭に入った方。」というのは、これは女性をさしていっているわけですか。
  140. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 その条項は女性に対するものだと思います。といいますのは、結婚して家庭に入って、職場に出て働く意思をなくした方という意味でございます。結婚して家庭に入ってもなお継続して働くということであれば、それは当然失業者であり、給付の対象になりますけれども労働市場から引退をして、もう家庭人として家庭の仕事に従事されるというのであれば、失業者に該当しない、こういうことになるわけでございます。
  141. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、そういうふうに家庭に入るということば自体、非常にきちっとした理解がむずかしいわけです。人によって違うわけですね。男性だって、結婚して家庭の外にいるわけじゃなし、このことばの解釈というのは非常に不正確なんですね。ですから、やはり親切にやるならば、何も家庭に入る入らないを書く必要はないのであって、結婚して働く意思がないというのならはっきりわかります。入った人といいますと、一体これは男は入らないんだろうか、女だけ入るんだろうかと、いろいろなことが出てくるわけですね。こういうところも非常におかしいというふうに思うわけです。これは私は書き直してほしいというふうに思うわけなんです。  それからその次、「病人の看護をしなければならない方。」これだって、私自身いま母をかかえています。八十五歳ですからしょっちゅう病気します。私がそばにいるわけですからこれを看病しなければならないのです。それは、私の働く能力がなくなるというふうに、意思能力がないんだといわれているようにもこのことばからとれるわけです。一体これはどういう場合のことを言っているのですか。
  142. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 田中先生は大学の先生でいらっしゃるので、私は日本語は十分ごたんのうなはずだと思いますけれども日本語ではそういう意味でははなはだ不正確な表現が多いと思います。  第一の例は、結婚して家庭に入る、私は通常使われていることばで十分に表現できているのじゃないかと思いますけれども、おっしゃるような意味ではあるいは不正確かもしれません。これは労働の能力はあるけれども、結婚して家庭人になるということで、労働の意思をなくしているということでございまして、通常家庭に入るといえば働かなくなるということだと思います。  それから第二の看病のためということは、働く意思はあるけれども、看病するために物理的に外へ出て働けなくなるという状態をさしておりますので、そういう意味でもし不正確だとおっしゃるなら、今後注意いたしたいと思います。
  143. 田中美智子

    田中(美)委員 外へ出て働くことが不可能だというならそのように書いていただかないと、ただ家庭に入るということばは、大体にしては働かないのだろうというふうにいま言われています。しかし病人の看病をしなければならない、これはしょっちゅう子供が病気をする、夫が病気をする、そういうたびに婦人にしても——男だって妻の看病をしなければならないわけですね。これはほんとうに誤解をさせるために書かれている。看病しなければならなくて就職できない者というふうに書けばはっきりしますけれども、こういう書き方をするものですから、婦人はまだ社会に出て働くようになって歴史が浅いわけで、それだけに非常に正直ですので、こういうのを見ますと、あれ、うちには寝たきりのおばあちゃんがいるんだ、そうすると自分失業保険がもらえないんじゃないか、こういうふうに思うわけです。事実職安の説明者のことばづかいの中に、録音をとってきてもよろしいのですけれども、そういうふうに誤解をするように言っているわけです。先ほど言ったように、私が大学の先生だから日本語にたんのうだ、これは皮肉でおっしゃるのでしょうけれども日本国じゅうの女性が大学の先生ではありません。むしろ職安に行っているような大学の先生というような女性はほんとうに少ないわけですからね。やはりそういうものを相手にするのではなくて、ほんとうにまだ十分に理解できない人、失業保険のことなんか全然勉強してない人が圧倒的なんですから、その人たちにわかりやすいようにすることが正直なのじゃないかと思うのです。  それから三番目、「乳幼児があるのに他に哺育にあたる人がない方。」というのはどういう人なんですか。
  144. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これも同様にことばとして確かに不正確かもわかりませんけれども、看病のためにということばでございます。いままで働いていた人が親とか子供の看病のためにやめなければならなくなったということは、物理的に外へ出て働けなくなったということをさしているわけです。それからいまの設例につきましても、いままで職場で働いていた人が子供の保育を人に頼めない、あるいはどうしても自分でやらなければならないために、外へ出て働くことができなくなった、そのことによってやめた人、その状態が続いておる限りは、働く能力はあっても物理的に働けないという状態が続いている、したがって失業とは認められない、こういう意味でございますので、そういう意味で、いずれもことばの表現が必ずしも正確ではないということは言えるかもわかりません。今後そういった点は十分注意いたしたいと思います。
  145. 田中美智子

    田中(美)委員 今後注意するというあいまいな言い方をなさらないで、こういうものを今後お使いになるならば、すぐにこの文章を直していただきたいと思うのですね。  もう一つ聞きます。「家事・家業を手伝わなければならない」これはどういう意味ですか。
  146. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これも同様でございまして、いままで働いていた人が家業あるいは家事に従事しなければならないために、外でいわゆる雇用労働者として働く状態が継続できなくなったという場合でございます。私も実は安定所に参りまして、失業保険の受給者を週に二回ないし三回、初めての人を集めて黒板を前にしていろいろパンフレットを渡し、説明会をやっている現場に立ち会ったことがございます。安定所に見える方は、特にその中の求職者の場合は、これから就職をしなければならぬ、失業のうき目にあっている人たち、こういう人たちでございますので、できるだけ懇切丁寧にきめこまかな指導をするようにという指導をしておりますけれども、中には先生が御見聞なさったように不親切な場合もあるかと思いますが、私どもはそういうことのないように十分行政指導してまいっておるつもりでおりますし、同時にそのパンフレットにつきましても、この雇用保険が成立いたしますといろいろな面で改定が行なわれますので、そういった点を十分注意しながら改定をいたしたい、そういう不親切な表現のために誤解を招きやすいようなことのないようにしたいと思います。
  147. 田中美智子

    田中(美)委員 これはさっそくにこの文章を直していただきたいわけですけれども、第一、ここに書いてあるのが男性を当てにしたのか女性を当てにしたのか人間を当てにしているのかわからないような書き方で、伺えば、それは女性でしょう、こういうふうなことでは——実際に職安ではここを男性のときには抜かしているようです、いろいろ私、現場へ行ってみますと。ですから職安の現場の人に聞くと、これは大体女性ですと言うんです。それならちゃんとここに女性の場合はと、こう書くべきですよね。第一、家業を手伝わなければならないというのなら、あなたのおっしゃる常識で言った場合に、家業を手伝うといえば一種の自分の親なり兄弟なりの家業に就職するという感じですから。でも家事を手伝わなければならないといいますと、これは男だって家事は手伝っているんだし——まああなた方は手伝いはなさらないでしょうけれども、われわれの夫はみんな家事を手伝っているし、私も家事を手伝っているんですね。ですから、正直な女性というのはこれを見ますと、うちの仕事をしていたら失業保険もらえないんだろうかというふうな誤解をするわけです。ですからここのところしっかりと——例にとること自体が私はおかしいと思うのです。しっかり書いたらおかしくなるから書いてないのです。結婚して家庭に入っても働く意思のない人、そういう人が職安に来るはずはないのですよね。働く意思がないんです。まあ皆さんたちはそれを不正受給というふうにお考えになってこういうふうに書かれたのかもしれませんけれども、もうちょっとはっきりと——遠藤さんは個人としては、自分はイエス、ノーはっきりしているんだ、さぱっとしているんだ。応対聞いていてもそういうふうな人柄に感じられますけれども、これは一体だれが書いたのか、どこでつくったのか。遠藤さん、さっそくに直していただきたいと思うのです、はっきりと女だけを対象にするんなら女だけ。そうすれば矛盾がはっきり出てくるわけですよ。そうしてはっきりと、家庭に入ったということばをどうとるか、こういうことですよね。そういうことや、看病をするということを、どこまでが物理的に働けなくなる看病なのか、それとも働きながら看病できる状態なのか、そういうことをはっきりわかるようにしていただきたい。現状は、婦人というのはいま非常に迷っているんですよ。社会の動きに沿って迷っているんです。  私たちの年代というのは男に養われるべきだというふうに教育されてきたんです、私自身は。ですけれども、実際に学校を卒業してみましたら戦争たけなわ。とても男と結婚はできない、相手がいないということで。しかたがないから働く。それで戦争が終わって、いい男性が帰ってくると思って楽しみにしていたら、ほとんど死んだのですからね。そうしたら養ってくれる男はいない。やむなく私たち女性というのは働いてきたわけですよ。それが、結婚したり何かいろいろする中で、結婚していても、今度夫の賃金が低くてとても子供にピアノを習わせられない、塾には行かせられない。それで婦人が働かざるを得なくなってきた。もし夫の賃金だけで十分な——十分とは言いませんけれども、婦人はどちらかといえばぜいたくをしようとは思ってないわけです。つつましいけれども、人並みの生活をしたい、つつましくてもいい、人並みの生活をしたいと思っている。この人並みの生活が男の賃金だけではできなくなっているというところが、婦人労働者がどんどんふえている一番大きな原因だと思うのです。そういう中で婦人は、家庭から職場へ出ていこうとするときに非常に迷うわけですね。そしてこういう病人が出て、夫の賃金でやっている間はおじいちゃん、おばあちゃんの看病を妻がしてやっているわけですけれども、とても子供にも金がかかる、それから年寄りにも金がかかるということで、足らない。そのために働こうという気持ちになるとき、お金が入ったら人を雇っておばあちゃんのめんどうを見てもらおう、こう思うわけです。しかし職安に行けば——金が入るまでは人を雇えないわけですから、雇ってから仕事をさがすのならばこういう形で給付制限を受けずに済むわけですけれども、雇えないから、職業を得ようとする。この金が入ったらパートでも人を雇えるし、何とか少しは家計の足しになるし、おばあちゃんも見てもらえる。そういうとき女は宙に浮くわけです。それから乳幼児の保育の場合でもそうです。どこかに頼むといいますと、保育所に入れるか、それともだれか保育を頼む。おばあちゃんなり近所の人に頼む。そういうときに、働いていないと保育所は入れてもらえないのです。保育に欠ける子供という条項がついていますから、働いていないと保育所に入れてくれない。それで安定所では失業保険の対象にはならない。これはおかあさんが子供を保育所に入れないでうちにいるわけですから。そういう婦人というのは宙に浮いてしまうのですね。そういう状態というものが現状には非常に女には多いわけなんです。そして、いまの社会からすればまだやむを得ない面、過渡期だと私は思いますけれども、うちに不幸があった、だれかがけがをした、交通事故を起こした、病気になった、だれかが失業をした、いろいろなことが全部主婦にかかってきているということは大体いま言えるのじゃないかと思うのです。そのたんびに婦人は社会的に働く能力がないというふうに言われてしまうわけですね。  そうした宙に浮いた例というのはあっちこっちにあるのですけれども、これなども簡単な例ですけれども、看護婦さんなんです。この看護婦さんが日直、夜勤というのが非常に多いものですから、とてもこれでは自分の家庭は手伝ってもらえる人がいないからと思って、働いていてやめたわけです。そうしたら、子供がいるから働く意思がないのだという形で失業保険をもらえないわけなんです。自分としてはもうちょっと夜勤が少ないところならばつとまるわけです。でもいまは、これは労災病院なんですけれども、夜勤が十日以上もあるわけです。ですからせめて夜勤が二・八が守られているとかまたは五日か六日ぐらいの夜勤で済むところにかわりたい。からだがくたくたになったので、やめてそういうところに移ろうとした。そうしますと、職業安定所でだめだと言われたわけです。子供がいるからだめだと言われたのです。それではどうしてもしょうがないから、職をさがしてもらうためにもこれは子供を何とかしなければならないというので、保育所に行ったわけです。そうしたら、あなたはやめているのだから保育に欠ける子供ではないのだ、それで保育所には入れられない、こういうふうに言われたのです。その期間、婦人は一体どうしたらいいのか、これは大臣にもお聞きしたいわけです。こういう婦人がいるというのは、これは特例じゃないのです。それをどういうふうにお考えになりますか。
  148. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 子供の保育のためにやめた人が、失業保険現行制度保険の受給者として該当するかしないかという問題ですが、いまおあげになった例でそのまま受け取りますと、私は保険の受給者たり得ると思います。といいますのは、子供の保育のために仕事ができないからやめた、そして子供の保育に専念するということであれば該当いたしません。しかしながら、夜勤が多くていまの状態では、いろいろな意味でとうてい続けられない。だからもう少し労働条件の緩和された、あるいは働きながら保育できるようなそういう勤務状態のところへかわりたいということでやめたのであれば、意思、能力を十分備えておりますし、私は給付の対象になり得ると思います。  ですから、単に保育のためにということで、やめた状態にもよると思いますけれども、一がいに給付の対象にならないともいえませんし、必ずなるとも申し上げられないと思います。  たとえば結婚の場合もそうですし、家事従事の場合もそうです。あるいは看病のためでも、看病する時間がほしいからもう少し、たとえばフルタイムをやめてパートタイムで働きたいということでやめれば、それは給付の対象になると思います。ですから個々のケースによって、私は一がいに律し切れないと思います。  ただその場合に、いま労災病院の例をお出しになりましたけれども、それはおそらく給付の対象になり得ると思いますし、給付されているのじゃないかと思いますけれども、今度の新しい雇用保険におきましても、そういった点をよりきめこまかくするために受給期間の延長等も考えておるわけですし、先般、何か女性をいためつけるために改定を行なったように御指摘になりましたけれども、決してそうじゃないことを申し上げておきたいと思います。
  149. 田中美智子

    田中(美)委員 お気持ちは、女性をいためるつもりであったとは私は思いません。結局意識の問題だと思うのですけれども、それが結果的に女性をいためているのです。いまの場合は尼崎の職業安定所なんですけれども、子供をみてくれる人がなければ、本人は働きたくても就職できないものだとはっきり断わられているわけなんですね。そして、そうかというふうに本人は思います。これは三十二歳の人ですから、昭和三十四年から看護婦になっていた人なんですけれども、結局それで失業保険はパアになってしまったわけですね。こういう指導が窓口ではなされているのですよ。そして、ここではそういうかっこういいことをおっしゃるけれども、窓口ではそうやって、あなたはもう就職する資格がありません、こういうふうに断定的に言われると、役所がそう言うのだからほんとうに思ってしまうわけですよ、こちらは。よほど勉強していって、そうじゃないじゃないかと言えば別ですけれども、そういうことで、いま職安に行った婦人は一ぺんは泣かない人はいないといわれるぐらいです。これはほんとうにそういうふうになっているわけですね。それで、もうこれはとてもたまらないから、まず子供を保育所に入れようという形で保育所をあさり始めたところがなかなか入れない。おかあさんが家にいるのだから保育に欠けないのだという形で両方からはじき出されていく、こういう例がたくさんあるということを大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  150. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 働く意思のある人、そういう人に親切な行政をすることが職安仕事でございます。いろいろなところで行き違いなどのあることも考えられますが、本人が何としても働く意思があって、そして、仕事をして生活したいというところで悩んでいる人に親切にするのが職安仕事だというふうに考え、またそういうふうに人が悩んでいるときに親切な手を出すのがお互いの使命であるというふうに申しておるわけでありまして、一つ一つケースがなかなか把握でき得ませんが、全体的にはそういう考えでやっております。
  151. 田中美智子

    田中(美)委員 気持ちの上で親切にやろうというのは、これはだれでもそう思っていると思うのです。しかし、こういう書き方自体が、不親切に言わなくたって読んだだけでも誤解する人はたくさんある。そういうことが、女は妊娠するともらえないのだってとか、女は子供がいると失業保険もらえないのだってということが、労働者の口の中で間違って伝えられている。そうさせたのはやはりこういう書き方にあるし、それからこういうものをきちんと直していない、こういうことをやっているということがまず問題としてあるわけです。そういう観点から見てみますと、今度の二十条の受給期間の延長、二〇ページのカッコがありますね。「離職の日の翌日から起算して一年」あとカッコして、四年とする。これは一体どういう意味なんですか。
  152. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまその受給者の心得に掲げられておりますような、病人を看病するために職をやめて家にあって看病する、あるいは育児のためにやめて家にこもってしまう、そういう期間は失業に該当しませんから、保険給付を受けられないわけです。そういたしますと、その期間が長くなると、一年たってしまうと全然保険給付権利が消滅してしまう。それではあまりにそれに該当する若い女子に気の毒だということで、そういう期間を長く、三年間延ばしまして、その事故が解決したあとで安定所に出ていけば、失業として認定を受けて給付を受けられるようにしよう、そういうことで、そういう病気とかあるいは看病とかあるいは育児とか、その他そういったことに類する事故によって、物理的に環境的に就職ができないような状態にある期間を控除して、給付権利を継続させよう、こういう趣旨でございます。したがってそうすることによって、いままで、先ほどから非常に不親切な書き方で当然もらえない、あきらめさせるような措置がとられているとおっしゃるのですけれども実態は決してそうではなくて、私どもは、逆にそういう人たちはいまでもすでにたくさんもらっている人がいるわけです。ほんとうは働きたくないので結婚して家庭に引っ込んでしまうといいながら、働きますといっていけば、もらえるような状態が現在行なわれております。一説によりますと、失業保険のじょうずなもらい方というようなパンフレットが売られているという話も聞いております。そういうことでお互いがやっていたのでは、いつまでたっても制度をよくするわけにまいりませんし、どこかで制度が曲げられる。そういうことから失業保険無用論というようなことも出てまいります。私どもはそういうことをしたくないために、より失業保険の機能を充実させ、よりいい制度にするために今度の雇用保険という新しい制度につくりかえようとしているわけでございます。今回を機会に、いま御指摘になりましたようなそういった窓口の扱い、あるいはそういった受給者の心得のパンフレット等についても、十分細心の注意を払っていきたいと思います。
  153. 田中美智子

    田中(美)委員 そういうことをおっしゃいますけれども、実際に働く意思があるかないかということはどうやってきめるのですか。人の腹の中を切って見るということはできないわけですよ。ですからそういう抽象的なことでなくて、こういう場合は働く意思がないんだとはっきりすればいいのに、非常にはっきりしてないのです。妊娠といったって、妊娠は一カ月から十カ月まであるのです。ですから一体妊娠というのは何なんだ。考えてみますと、この二十条、いかにも親切そうに見えますけれども、実際には三百日近くもらえるものを六十日に全部切ってしまうわけでしょう。それは多少換算が低いところでは七割というふうになるかもしれないけれども、六十日に切ってしまって年限を延ばすということはどう考えても——それも婦人のところを集中的に延ばしているわけですからね。いままでもこういうことでさんざん受給制限された経験をもってきている婦人労働者たちは、どう考えたって、幾らおことばがやさしいように言われてもおかしいというふうに思うのですよ。むしろ受給期間が延びたために、自分失業保険をもらわないでもすぐ就職があると思って申請していなかった。そして当てにして頼んでいたところがその就職がなかった。それであわてて何カ月もたってから職安に行きますね。そこでなかなかないから、失業保険をもらうという場合に、これが三百日にもなりますと、一年で切れてしまいますね。そうすると最後はカットされるわけでしょう。ですからそれは気の毒だから延ばしてやろう、受給日が延びたから受給期間も延ばしてやろう、こういうならすなおに考えられるわけです。しかし受給日はぐっと減らしておいて、そしてこれをずっと四年も延ばすわけですね。第一、実際に職安で働く人たちに聞いてみますと、四年間も離職票を持っている人はほとんどいないというのです。だから実際にはみずから権利放棄してしまう。自分が悪いといわれればそれまでですけれども、四年後に今度もらうときには、いまの物価高で考えてごらんなさいよ。いまの日給の七〇%としてもこれが四年後にはどんなに少ないものになるか、それをまた六十日とりにいく人が一体何人いるか。これを考えたときに、この四年間延ばしたというのはどれだけのメリットがあるかということは、だれが考えても、特に現場の人はメリットゼロという人もいるのです。私は少しはあると思いますよ。なぜ婦人だけにするのか。これはすべての労働者に、二年に延ばす、三年に延ばすというふうにすべきだと思うのです。いろんな理由で、病気やなんかでちょっと申請がおくれる人はあるわけでしょう。なぜ婦人だけにこういうふうにするのですか。
  154. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 田中先生どうも誤解なさっているようで、二十条をごらんいただきますと、女だけとどこにも書いてない。男も女も一緒なんです。こういう事故があれば、男性も女性も同じように四年間までは受給期間を延ばせる、こういうことになっております。ですから、どうも私どものやっていることを女をいじめるためにやっているように曲解をされているような感じがしてならないのです。
  155. 田中美智子

    田中(美)委員 これは、この間の熊本テレビの場合と同じですけれども、女を補助職につけると書いてないのですよ、これは男女差別にひっかかるものですから。結局補助職は全部女なんですよ。そうして、補助職は三十歳で首を切ると書いてあるのです。女を首を切るとは書いてないのですよ。そういうことで、これを見たらだれが見たって——職安の指導に労働省から来られて、職安の職員に説明があったそうです。そのときに、これは現実は女だけだと言ったそうです。これは、私、職安で聞いてきたのですけれども、この中を見てごらんなさい。「妊娠、出産、育児」、育児は男が入るかもしれませんけれども、考えているのですか。妊娠、出産は男はできないのですよ。「その他」とは一体何なのですか。これをちょっとつけて、ほんのわずかの男も入る、だから男女差別ではない、こう言われるかもしれませんけれども、いまの失業保険でさえ給付制限はうんとやられているわけですよ、法に触れていなければ。自分が働きたくないと思っていても、一カ月後には食えなくなって、働きたくなるというふうに非常に動いている時期です。ですから、掛け金をかけて、失業したならば当然失業保険はすぐにくれなければならないのではないかと私は思うのです。  これに対して、いま労働者が非常に心配していることは、前に適正化通達というのが出ましたね。そのときに非常に締めつけがひどかったのです。最近、現場としてはあまりひどいことを少しずつしなくなってきていることは事実ですね。ですけれども、これをいま現場の人たちがどう言っているか。この二十条はまたもとへ戻すのではないかということを心配している。そして、絶対そんなことがないという保証がほしいわけです。この適正化通達が出たとき、結婚して働きたいと言いに行っているにもかかわらず、職安が夫の証明書を持ってこいということをやったでしょう。それから保育証明、子供が保育所に入った場合はだれが見るのか、おばあちゃんとか、おばさんとか、近所の人とか、そういう証明書を持ってこい。そうしなければやらないということを、職安がいままでやってきたわけでしょう。そういうことをやってきているから、労働者がこの二十条を改善とは思えないのですよ。ほんとうに親切にただ延ばして、四年後になったら物価にスライドしてそれをやりましょうというふうに受け取れないわけです。スライドはしてませんけれども。その点いかがですか。
  156. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この二十条の条項、職安関係職員が説明に行って云々というおことばがありましたけれども、説明に行った実態はまだ一回もありません。まだ法案も成立しない、国会で審議をいただいている段階で、内容の条文説明なんかやった事実はございません。それは何かのお聞き違いじゃないかと思います。  と同時に、この二十条につきましては、審議会の段階でも、女子に対するこういった妊娠、出産、主として女子でございます。しかし、その他というのは、傷病とか男子にもあり得る、これは実績としてございます。そういうものに対してできるだけの配慮を加える必要があるという御意見がございまして、この二十条を設けたわけです。これは、そういうことで逆だとおっしゃるなら、審議会でもこんなものはやめちまえという議論が当然出たはずですけれども、これでもまだ不十分だ、もっと配慮しろという御意見はありましたけれども、これは当然やるべき配慮だ、こういうことだったわけです。  確かに私どもは一ころ、適正化通達で締めつけとおっしゃいますけれども、そうではなくて、法律を正確に運用しろという指示はいたしております。したがって、たとえば結婚退職の場合、結婚するからやめなければならぬ、働くことができなくなりますといってやめた人が、その翌日安定所に行って働きたいと言っても、それはおかしい。働く意思がなくてやめたのが、翌日働きに出ますというのではおかしいので、たとえば東京の会社につとめていた人が結婚して、転勤するだんなさんについて大阪に行かなければならない。そこで、東京をやめて大阪で働きたいというのならわかります。しかし、同じ東京都内の同じ居住地で、一方をやめて翌日また働きたい。これは就職の意思があるとは見えない。こういう措置はとったと思います。現在は、いま緩和されたとおっしゃいましたが、いろいろな問題があって若干ルーズになっている面もあると思います。それが妥当だとおっしゃるなら別ですけれども、私どもはそういった窓口のいろいろなトラブルをできるだけなくしたいということで、この二十条もその一つとして設けられておりますし、今度の雇用保険では、出かせぎの受給者の問題にしても、あるいは若い女子の受給者の問題にしましても、いままでいろいろと世間から批判を受けているような事態を今後二度と繰り返したくない、こういうことが私どもの真意でございます。
  157. 田中美智子

    田中(美)委員 いまこういうことを言われましたけれども、きのうまでは働く意思がないと言って職場をやめていながら、あしたになったら働きたいと言った。その二つのことば、二枚舌を使っている、こういうことですね。どっちを信ずるのですか。どうして先のほうだけ信ずるのですか。さっき言ったように、いま婦人の労働者というのは徐々に数がふえている。どんどん職場に出てきている。そういう中に過渡期としていろいろあるわけです。現状は働きたくなくても、働かざるを得ないようになってきている。ですから職場——それはわがままと言われるかもしれませんけれども、もうとてもやっていかれない。先に行っても女は出世するコースにない。そういう中で働く意欲を失って、もういやだ、やめて帰ってくる。そうすれば家庭で、君がやめちゃったら食えないじゃないか、あなたがやめちゃったら年寄りが困るじゃないかと言われれば、これはやはり働かざるを得ない。こういう立場に女は置かれている。自分の意思だけで動けないような、やめたいと思ってみたり、やはり働かなければというところにあるわけです。ですから、初め働かないと言ったことだけを信じて、その次の日というのはオーバーですけれども、二、三日、一カ月たって働きたいとなったときに、これがうそだ——どちらがほんとうか、これはわからないのです。そういうのまでほじくって、そちらのほうから働く意思がないということをきめる必要はないと思うのです。  いま、労働組合なんかの調査でいいますと、働きたくないと言ってやめた人、それが大体三カ月までにほとんどの人が働きたいというふうに変わっているそうです。実際に苦しくなってくるわけです。ですから、やめるときはそういうつもりでやめたかもしれないけれども、ほとんどが三カ月までの間にはまた働きたくなるわけです。それで職安に行ってもなかなか仕事がない。そこで失業保険をもらえたっていいという、これは当然じゃないですか。どうしてそういうときにばかり前のことばだけを信じて、あとのことばを信じないのですか。それはおかしいと思うのです。
  158. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私は、前のことばを信じて、あとのことばを信じないというわけじゃありませんけれども、通常結婚してもやめないでいる人はたくさんいるわけです。先ほど先生も、亭主の給料だけでは足りないから女房も働くんだとおっしゃっていますように、現実には共かせぎで働いておられる方はたくさんいらっしゃいます。結婚してなお継続してつとめられる、こういう例は私どもの周辺にもたくさんございます。むしろ、やめない人のほうが多いように思います。しかるに、結婚して退職をされる方、結婚するからやめるのですと言ってやめて、一週間たって安定所に出て、私は働くのですと言われても、常識として就職の意思があるとは見えないというのが普通じゃないかと私は思います。ただ先生のおっしゃるように、二月、三月たって、ほんとうはやめて家庭に引退するつもりだったけれども、やはり働きたいと言って出てこられる方はあると思います。そういう方は現に給付を受けておられます。ただ、任意退職ですから給付制限はあります。これは法律上当然ありますけれども、そのあとは給付を受けておられるのが実態でございます。ただその中に、実際は働きたくない、保険金をもらうために来ている人もかなり多いということも事実でございます。  そういう事実がいろいろあって問題になっておりますけれども、私どもはそのことを申し上げているのではなくて、一般的な社会常識として、結婚するためにやめた人が翌日——翌日というのは極端かもしれませんけれども、働きたいのだと言って来られても、それはそうですかと受け取られないのが普通じゃないかということを申し上げているわけです。
  159. 田中美智子

    田中(美)委員 常識の考え方がだいぶ私とは違いますので、そういうところでも行き違いになるのです。結局、いまの社会で子捨て、子殺しというのが非常にはやっていると言うとおかしいですけれども、ロッカー現象なんていわれるような状態が出ているのは、おわかりだと思うのです。これをどう見るかという見方ですね。ただ女の母性愛がなくなったのだとか、最近の女はどうしようもないのだというふうな言い方をなさる方もあるかもしれませんけれども、なぜそうなるのかということは、こうしてやめて、実際の職場——これからも職場はどんなにたいへんかを話していきたいと思いますけれども、耐えられないような、からだがくたくたになるような、病気一歩手前で、そうしてこれじゃからだが続かないと思ってやめる。そうすれば失業保険はもらえないし、次の仕事をさがそうとすれば、保育所にはなかなか入れない、それを無理して何カ月かかかって入れている人はいますよ。そうやって解決していっていますよ。しかし、その解決にも疲れ果てるわけですね。そして結局どうしようもなくなって、ああいう状態になって、子殺しや子捨てなんというものが出てくる。温床にこういうものがあるわけです。  だから、私が言っているのは、人間は労働権があるわけですから——婦人は結婚したら働かないのがあたりまえなんだという考え方遠藤さんの頭の中にまだあるから、働くものなんだときめていれば、自分職安に来て、私は結婚したけれども、働く意思がないと言った人にやらないというのならわかりますけれども、そんな人が職安に来るはずはないのですから、それを勘ぐって保険金目当て——目当てといったって、たったこれっぽっちの、たとえ二百七十日出したところで知れた失業保険ですよね。それだけで持ちっこないのです。それをもうちょっとおおらかに、法律というものは人間がつくったのですからね。切っているところはあるかもしれないけれども、そんなにきびしく、妊娠、結婚というものがまるで女のマイナスのような——働く女のマイナスになっているということが、どれだけ女がからだをこわしているか。そして子供を育てていく自信を失わせているのですよ。こういう法律がある、こういう行政指導をしている、こんな書き方をしているということ自体が子捨て、子殺しに通じていると私は思うわけです。これから女のほとんどが働きに出るということは、今度総理府と労働省で出された意識調査を見ましても、——あれは非常にすぐれた面をたくさん持っておるというふうに私は思うわけです。あれを見ましても、ほとんどの婦人が働けたら働きたい。しかし理解がなかったり、こうした締めつけがあったり、子供をかかえて働き切れない状態に置かれているから、実際には働けなくなっているわけです。それを今度のような形で、いまでさえ給付制限を受けているのに、それをまた合法化してしまうということは、絶対にやらないでほしいというふうに思うわけです。その点で、大臣に、結局は、これは婦人でないと言いながら、大多数の婦人を締めつけていくものだということについての御意見を伺いたいと思います。
  160. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 一つ一つケースになりますと、いろいろむずかしい問題があるだろうと思います。問題は、先ほど局長も言いましたように、あまり誤解を生じないで、ちゃんともらえるようなかっこう、これが一番いいと思うのですよ。条件そのものは、従来とちっとも変わりはない。逆に、給付のあれは、あなたのおっしゃるとおり、うしろのほうにずらしたというふうなことでございまして、働く意思があって、そしてやっていただく場合には、こういうところの一つ一つケースが、大ぜいの御婦人ですから——いま私の聞いている話では、勤労婦人は千二百万です。そういうものを一つ一つここで、あの場合はこうだった、あの場合はこうだったというふうに誤解を生ずることのないような、きりっとした法体系というものが必要ではないか、こう思います。
  161. 田中美智子

    田中(美)委員 そこではっきりさせておきたいのは、出産は、これははっきりしております。しかし、妊娠の場合、一般の企業につとめている人でも産前の休暇が出るまでというのは働いているわけですから、その間能力がないということにならないわけですね。ですから、こういう妊娠ということばは、——やはり出産六週間前までというのは、これは妊娠の中に入るべきでないと私は思うのです。そうじゃないですか。
  162. 関英夫

    ○関説明員 ここの二十条で言います妊娠の場合は、労働基準法上の就業制限なんかの場合と違いまして、これは本人が申し出て、そして延ばしてください、こういう場合でございますので、あまり短い基準法の就業制限期間等に合わせるということは、かえってよくないのじゃないか。人によって、妊娠の初期から非常にからだを大事にして、そしてしばらくは働かないで、子供がある程度大きくなって、もう乳児でなくなった、これなら預けられる、こういうときに働きたいという方もおられようかと思います。そういう意味で、私ども、この二十条の妊娠を狭くしようという考えは持っておりません。
  163. 田中美智子

    田中(美)委員 あなたがその人にとってよかろうとこう思っても、こちらにとってはよかろうでないことだってあるわけなんです。それは、妊娠中からだを大事にしていたいというのが大体の気持ちかもしれないけれども、しかしその間にだって、働かなければ食べられない人があるわけですよね。ですから、私が非常に心配しているのは、六十日に切り下げておきながら、この六十日さえも取られてしまうのではないか。これは取るという形でなく、四年間延ばす——延ばしなさいという指導をされてしまうということは困るというわけです。そういう危険性がこれにあるから、もうちょっとはっきりしたものでなければ認められないと言っているわけなんです。
  164. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまの点は、田中先生の誤解ですね。これは、二十条は給付制限との関係は全くございません。たとえば産前産後六週間のその期間は、基準法で働かしちゃいけないということになっておる、その期間に来られても、これは絶対に給付できません。しかしそれ以前であっても、本人が申し出て、この期間は働きたくないのだということであれば、給付延長をいたしましょう、本人が働きたいといって出てこられれば、当然給付されます。ですから、この二十条と給付制限とは全く関係がないということをはっきり申し上げておきます。
  165. 田中美智子

    田中(美)委員 それは現在でも同じことだと思うのです、この法案だけでなくて。そういう点で、そこのところは、本人の意思を尊重して、本人が働きたいというならば、そんな妊娠でなくたって、からだの弱い人で働かないほうがよくたって、働きに行かなければ食えないのですからね。そういう人に対して、あなたは働かぬほうがいいですよということをしないでいただきたいわけですね。そういう点で、これを早急に直していただきたい。よろしいですね。
  166. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 そういうことにならないように二十条の四行目ですけれども、「安定所長にその旨を申し出た場合には、」ということで、本人の意思表示によってきめるということになっております。本人延長してくださいと申し出れば当然給付される、こういうことですから、本人の意思にかかっています。
  167. 田中美智子

    田中(美)委員 いま私が言っているのは、この二十条を悪用しないでくれと言っているのじゃないのです、私、この法案を認めていませんのでね。いま使っているこれですね、現在すぐに直してほしいというのです。こういうことをしないでほしいということを言っているわけです。これは直していただけますね。
  168. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これは各都道府県で、そういった説明の便宜のために、先ほど多賀谷先生がおっしゃいましたように、法律の条文は、きわめて一般にわかりにくい、それをごくわかりやすくするために便宜上つくっておるものでございます。したがいまして、先ほど御指摘のような点は、私ども、この法案が通りました際に、全面的に改定をいたしたいと思います。その際、きわめて明快にわかりやすいように直したいと思います。
  169. 田中美智子

    田中(美)委員 これは通してからということではなくて——これは通らないかもしれませんし、廃案になる可能性もあるわけですから、現在のこれをちゃんと直していただきたいと思うわけです。  それから給付制限が非常に大幅にされるということは、社会保障制度審議会でも、早急に急激な変化があることはよくないということを、労働者の生活の実態を十分に配慮するようにというふうに言っているわけですけれども、特に若年層の切り捨てですね、先ほどから誤解誤解というふうに言われるのですけれども、私のほうからしましたら、現実に、結果的に見たときに、労働者の生活実態に非常に沿わないものになるということをおそれているわけです。実際にこういう形で婦人若年層は職がある、ある——難易度ということをさっきから言っていましたけれども難易度というのは、中身をどう考えるかという場合ですね。看護婦も保母も求人は幾らでもあります、御存じだと思うのですけれども。そして免許状を持っておる人もたくさんいるわけですね。ですから、そこへ当然、普通の常識で、遠藤さんの常識でお考えになれば、求人はあるし求職はあるわけですから、ちょうどうまくはまっていくわけですよ、常識として。それなのにそれがはまっていかないで保母さんが足らない、看護婦が足らないという現象が起きているわけですね。  それで保母さんの場合ですけれども、非常にやめていっているわけです。これは東京の区立の保育園というものを調べた調査を見ますと、六年間で三千人保母さんがやめているのです。東京の区立だけで三千人やめているのです。この三千人という保母さんは、約二百カ所の保育所を運営できる人数なんですね。こんなにたくさんやめているわけです。そして保育所の退職率というのは、公立の保育所では六・七%、私立では一八・二%とこの調査ではなっているわけです。一八・二%という退職率は非常に大きいわけです。これはほかに例がないぐらい多いのですね。これをたとえば同じ女子の教員と比較してみますと、女子教員だと三・六%なんですね。これはいろいろな原因があると思います。女子教員の場合には、労働はきついけれども一応男女差別のない賃金があるということとかいろいろあると思うのですけれども、いかに保育所というのが女子教員に比べてもはるかに労働条件がよくないかということが、これは出ていると思うのですね。  それで、たとえば一つの保育園を見てみますと、三年間もしますと全部保母さんがかわるのですね。結局給食調理員のおばさんとか、それから用務員のおじさんかおばさん、そういう人だけが残って、子供を毎年二人、三人預けた父兄が残っているという感じで、もう全部変わってしまうのですね。  こういう状態というのを年齢別に見てみますと、二十四歳で大体五〇%保母さんはやめています。三十歳までには九〇%やめているのですね。そうすると、保母さんの失業というものは、全部三十歳未満にかかってもいい。三十歳までに九〇%やめているのです。これは公立の計算です。私立はわからないのです。よく数字がとれていないのですね。もっと回転がひどいわけですからね。そうすると、三十歳を過ぎて保母さんをしているという人は、いまの段階ではほとんどゼロなんですね。そうすると、保母さんが失業した場合、ほとんど全員といっていいほど三十歳未満の六十日に切られてしまうという現象なんですね。これは婦人を働けないような状態に、あなたがしたとは言いませんけれども、結果的になっているということですね。こういうものに対してなぜ六十日に切っていくのか。この保母さんの劣悪な状態を直すほうが先じゃないかと思うのですが、保母の労働条件についてはどのようにお考えになるでしょうか。
  170. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまのお話で、私、田中先生にお伺いしたいのですが、ほとんどの保母さんが三十歳以下でやめてしまっているということは、現実に保母として働いておられる方は三十歳をこえた人はほとんどないということをおっしゃっているのだと思いますが、そうしますと、三十歳こえた人はもう保母をやらなくなっている、あるいは家庭に入ってしまってもう働こうとしないのか、あるいはほかの職業に転換されるのか、その実態を実は私ども承知いたしておりませんけれども、一体どうお考えになっているのでしょうか。その点を逆に教えていただきたいと思います。
  171. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、これはそちらのほうに実は聞きたいくらいなんです。保母の免許状を持っている人が一体何人いるのか、そして何人働いて、他産業にどれだけいっているのか、そういうことを私のほうがお聞きしたいのです。
  172. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 その点、私どもも一度調べてみたいと思いますけれども、私どもは、何も保母さんが三十歳以下でやめて、その人たちを痛めつけて切り捨てようということでは決してございません。保母に限らず、保母さん、看護婦さん、これは一般的に社会的に必要な職種で人が足りない、これは私ども承知いたしております。したがって、保母、看護婦といったような社会的にほんとうに必要な職種の人は求人は非常に多いわけです。それに対する求職者もございます。したがって、この求人、求職のバランスは、かなり求人難ということでございまして、私どもの現在までに取り扱っておりますデータから見ますと、十分、切り捨てとか切り下げでなくて、その人たちがかりに何らかの理由によって解雇され、あるいは任意退職で離職いたしましても、次の職場に入られることはきわめて容易な状態であるということは、私どもの取り扱いデータからはっきりしているわけでございます。そういう意味におきまして、こういった人たち給付日数を六十日にしたことが、こういう人たちを不当に就職を強要するとか意に沿わない就職に進ませるということでは決してない、私どもはこういうふうに考えておるわけであります。
  173. 田中美智子

    田中(美)委員 幾らでも求人はあることは事実です。しかし実際に行かない。そうすると、いかにもそれは行かない人が悪いようにいわれますけれども、実際夢を持って——私のかつておりました大学にも保育科がありました。そこの保育科の学生たちが卒業して一生保母をしようといっても、最近はものすごいのです。腰痛症なり頸肩腕症候群なり背腰痛とか、そういう病気になっていく。私は、こういうものは労働省が、なぜこんなに保母という職業につきたがらないか、ついてもなぜやめるのかということは、これから調べてみますではおそいのです、切るほうだけ先にやっちゃっておいて。なぜかという、これを知ってほしいわけですね。労働基準法違反というものはいろいろな施設でうんとなされています。これはおたくからいただいた資料で私は見ているわけですけれども基準法の違反というのは、四十七年から四十八年まで、これで見ても七〇%、八〇%というような違反率が出ているわけです。こういう労働基準法違反というのは労働条件だけではないと思いますけれども、病気の条件だけではないと思いますけれども、いま保母さんは低賃金というものもありますけれども、非常にからだをこわしている。これはもう社会問題になってきているわけです。労働省のほうが御存じだと思いますけれども、労災の申請がどんどん出ているはずです。これをまたなかなか労災を出さないわけですよ。ですから、腰痛症とはっきり病名が出て、医者がこれは何としてもどうしようもないという病名がつく前に相当の人がやめていっているということなんですね。そしてほかの事務職だとかそういうところについていっているのですよ。みすみす保母の免許を持っていながら働いていないわけですね。   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 この労働条件というのは、保母の場合には休憩とか休息時間というのはほとんどなしです。それは一般の公務員であれば、お昼休みは昼休み中という札をつけておけば、それでどこかそこらへ出ていっても、喫茶店に行って休んでもいいですけれども、保母さんというのは、年じゅう子供につきまとわれているということで、御飯を食べるときも子供と一緒に食べているというふうな状態で、労働時間がたいへんきついということから、自律神経失調症だとか頸肩腕症候群というのがどんどん出ているわけです。結局いまの保母さんというのは、結婚をしない、それから自分の子供がない、それから鉄のようなじょうぶなからだを持っている。保育所はほとんど労働条件がよくないですけれども、その中でも幾らか条件がいいというところの保母さんだけが何とか働き続けられている状態なんです。こういう女性というのはほんとうにまれにしかいないわけですね。それでも無理して働き続けようとするために、最近腰痛症というのがどんどん出てきた。初めのうちは、苦しいものですから途中でやめていくわけですよ。それでどんどん回転していたのです。これらも一年か一年半ぐらいで回転していたのが、最近は平均勤続年数というのは二年半ぐらいになってきているわけです。そのかわり長くつとめたということが——長くといったって二年半ですよ。それが腰痛症や何か病気を起こしてきているわけです。こういうものに対して、労働省で何とか手を打たない限りは、失業保険とくっつけなくても重大な問題なわけですよ。私が頭にくるのは、こういう状態に努力をしないで、これをどういうふうにしていくかという考え方もなくて、そして失業保険が実際には非常に給付切り下げられるということに対して非常に不満なわけですね。これに対してどういうふうな手を打とうとしていらっしゃるか、そのお考えを聞かしていただきたい。
  174. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 社会福祉施設の充実ということは非常に大事なことでございます。そして、おっしゃるように保母さん、看護婦さん、こういう方々の労働基準法違反が非常に多いということも事実でございます。一方またこういう時代ですから、保育所というのは毎年たくさんつくられるわけです。あまり労働基準法をやかましくいいますと、せんだっての島田療育園みたいに、個人の意思で、善意で始めたものがやめていくというようなかっこうになりますので、これはほんとうに大事件でございまして、国の財政援助も必要ですし、一方では私のほうと厚生省が非常によく連絡をとりまして、厚生省のほうには、なるべくそういうところには保母さんの充実ということをお願いしながら、そして各県の民生部長の会議にも、労働省から出て指導したりというふうなかっこうでやっているところでありまして、一方には、やはり社会保障がこういうふうに盛んなときに、人の善意だけにたよるわけにはいきませんけれども、こういうところにボランティアやらいろいろなところで手をかしていただきたいという感じを持ちながら、財政的な問題、それから労働条件の緩和の問題あるいは休暇の問題等々、関係省庁と、これはほんとうに大事なことです。今度の島田療育園の園長さんがやめたのを見ましても、ほんとうに社会的に皆さんにわかっていただく問題だと思って、懸命に努力しているところでございます。
  175. 田中美智子

    田中(美)委員 島田療育園の問題をいま出されましたけれども、まるでだれかが、どこが悪いのかちょっとはっきりしないような大臣のおことばなんですけれども、結局一番大事なことはやはり国の補助金が少ないということと、それから労働条件が、人の数が少ないということが非常に大きいのだと思うのですね。それを、病気にならないようにすればこんなことになると、こう言うんなら、ここで働く人たちが病気になるか、それとも園長がやめるか、どっちかしかないような言い方に聞こえて非常におかしいと思うのです。責任転嫁もはなはだしいと思うのですけれども、これは決してここで働く人たちの責任ではなくて、やはり労働省なり厚生省なりの手の打ち方が足らなかったということが、福祉無策に疲れ果ててということを言っているわけです。労働者が悪いからと園長さんは言っておりません。この人は、福祉無策に疲れ果てて、自分は園長をやめるのだと新聞に出ているわけですね。  結局いま至急にやっていただきたいということは、労災に認定された人だけが病人ということは必ずしもいえませんけれども、この労災だけで見ましても、最近は最低基準を守っているところであっても、労災の認定を受けているところが出てきているわけですね。これは名古屋市のたんぽぽ保育園というところで三人の保母さんが腰背痛で労災の認定を受けたわけですね。ここを私は見てもきましたし、どういうふうになっているかを見ましたら、大体基準というのは守られているのです。最低基準は守られているのですね。三交代にして、時間的には基準を大幅に上回っているいい労働——全部はよくないのですけれども、いい。あとはもうほとんど基準より上、部分的にははるかにいい形になっている。それでも腰背痛が出てきているわけなんですね。たくさんの子供に取り巻かれた保母さんたちの労働条件というものが確立されていない。これは私は、必ずしも労働省と厚生省だけの責任とは言いません。というのは、まだ新しい職場であるということで暗中模索している面もあるかもしれません。だからこそ早急にこれを変えていかなければならないわけです。私がいまぜひ早急にやっていただきたいことというのは、最低基準改定をやってもらいたい。この最低基準さえ守っていない。大体半分は守っていません。公立で半分は最低基準を守っていないのです。守っているところでも労災の認定を受けるような病人が出てきているわけですね。ですから、この最低基準を早急に直していただきたいわけです。これはいままで零歳から一歳までが六対一だったわけですけれども、これを三対一にしてほしい。それから二歳児まで六対一を五対一にすべきだと思うのです。それから三歳児はいままで二十対一だったものを十五対一。それから四歳児、五歳児を、三十対一だったものを二十対一、こういう基準というものを、これは全国保育園連盟で、経験の上から、こうすれば腰痛症なども減ってくるだろうし、保母さんがこんなに早くやめなくてもいいように働き続けられるというふうに思うのです。働き続けられないようにしておいて、失業保険のときにはばっさりというのでは、これは結局子捨て、子殺しにつながる政策だ、それが即子捨てだとはいいませんけれども、それにつながる政策だというわけです。最低基準を至急改正していただきたいというふうに思うわけです。
  176. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先ほどから先生指摘のように、社会福祉施設職業病の問題その他労働条件等のいろいろな問題があることは私どももかねがね重視をいたしておりまして、その労働条件の改善、向上のためには、前々から監督、指導等についても最重点として取り組んでおるところでございまして、その原因の中には労務管理上の問題もございますし、いまおっしゃいましたように、人員の充足等々の経営上の問題もある点がございまして、そういう点については、かねてより厚生省筆にも密接な連絡をとりまして改善方をお願いしているところでございます。厚生省でもそういう点を十分にいろいろいま検討しておられるように聞いております。  特に腰痛問題等につきましては、ことしの二月、厚生省と労働省で共同で社会福祉施設の腰痛のための専門家会議を設置いたしまして、その予防等についてどういう措置を講ずることが当面必要であるか、いま検討をいたしておるところでございまして、それらの結果を踏まえまして、私どものほうも労働条件上の指導について十分に改善をしたいと思っていますし、厚生省も、それらの結果が出れば、御指摘のような点も含めて十分配慮するということで、政府部内で連絡をとって対策につとめておるところでございます。
  177. 田中美智子

    田中(美)委員 その検討を、いつまでも検討、検討しているのではなくて、結論を早く出していただきたい。さまざまな労働条件をよくする中の最重点として、最低基準変更ということをやっていただきたいわけです。  それからもう一つお尋ねしたいのは、頸肩腕症候群を労災で認定をしないというふうなことを基準会議でいっているというわけです。これはなぜなんでしょうか。
  178. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 私ども頸肩腕症候群を業務上として認定しないなどということは申しておりません。御承知のとおり頸肩腕症候群につきましては、認定基準というものを専門家の御意見を聞いてつくっております。これは、頸肩腕症候群には、業務上による頸肩腕症候群もございますし、業務によらないものもございますので、その認定の一つ基準をつくる必要があってつくっておるわけでございまして、その認定基準に合うものはどしどし認定をいたしておるところでございます。現に年間相当数の認定がなされておるわけでございます。
  179. 田中美智子

    田中(美)委員 そのようにおっしゃいますけれども、相当数って、ほんのわずかですね。保母の職業病で背腰痛は最近だいぶふえておりますけれども、頸腕は非常に少ないですよね。これはやはり名古屋にあった例ですけれども、名古屋の西監督署長がこういうことを言っているわけですね。頸腕で認定するときには禀伺をせよといわれている、こういうふうにその監督署長が言っているわけですね。監督署長が、この人は保母という職業によって頸腕になったんだ、こう思えば、これはそこですぐに労災に認定していいんじゃないですか。それを頸腕になると一々禀伺しなければならないというのはどういうことなんでしょうか。
  180. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 頸肩腕症候群につきましては、先ほども申しましたように、専門家の御意見に従って認定基準というのができておりまして、それに明確に該当いたしますものは、わざわざ禀伺をしなくとも署長はもちろん認定ができるわけでございますが、なかなかその認定に困難なものもございます。認定基準に必ずしも明確でないものもございますわけでございまして、これは頸肩腕症候群に限らず、認定基準に該当するかどうかまぎらわしいもの、あるいは認定基準外のいろいろな事情が認められるもの、こういうものは他の疾病をも含めまして、さらに上級の機関に禀請するように取り扱っておるところでございます。
  181. 田中美智子

    田中(美)委員 実際に頸腕の場合に、これは名古屋西の監督署長のところで、署長としては頸腕とそれから自律神経不安定病というものを認定したい、こう言っているわけなんですね。だけれども、頸腕でする場合には禀請しなければならないからという形で、結局労災認定は背腰痛だけしか禀請したらおりてこなかったということなんですね。これは私はおかしいと思うのです。出先の監督署長が、これは確かに自律神経失調症だし、これは職業から来ているのだ、こういうふうに自分は思っているわけですね。自分は思わないから、どうも疑問だから禀請するというならわかりますよ。だけれども自分はそうだと思う。医者の診断書も出ているわけですからね。医者の診断書がなしで言っているわけではないのですから。そして、自分は出したいと思うけれどもこれはやはり頸腕のときは禀請しなければならないので禀請する、禀請したら頸腕は認められなかった、こういうわけです。そうしたら、本人は頸腕がちゃんと医者が認めて、署長も認めているのに、なぜ禀請したら上へいって切られてくるのか、こういうことが起きてくるわけです。ですから、いま渡邊さんがおっしゃったことというのは、形はそういうふうになっているからすきっとしているようですけれども、現場ではそうではないということは、やはり私たち行政指導の中に何か不十分さがあるのではないか、こういうふうに思うわけです。なぜ頸腕で認定するときに禀請しなければならないのか。これは現にあったことですから、調べていただいて、署長がそういうことをしたいならなぜ禀請させなければならなかったのか、そこら辺はっきりしてほしいと思うのです。
  182. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 具体的なその名古屋の例を私、承知いたしておりませんので、よく調べてみたいと思いますが、おそらく、署長が禀請しなければならないと言ったとすれば、それは認定基準に明確に該当するというところまでの問題でなかったのではないかと思います。認定基準と申しますのは、人の疾病というものは千差万別、いろいろ個人差もございますので、あらゆる場合を認定基準で尽くすことはできない、どうしても典型的な場合が書かれますので、それ以外の特異な例は認定基準に必ずしも該当しない場合、しかしそれが全部業務上でないとも言えない場合がございます。まぎらわしい場合には、やはり他の取り扱いとの均衡もございますので、上級機関に禀請するという取り扱いをさせております。これは頸肩腕だけではございません。すべてさようにいたしておりますので、おそらくは定められておる認定基準に明確に該当するとまで言えない事例であったために、上部に禀請しなければならなかったのだろうと考えます。御指摘の個別事案についてはよく調べてみたいと思います。
  183. 田中美智子

    田中(美)委員 こういうふうに実際の婦人というのは、職場で非常に労働条件が悪いために苦労している。そしてもうからだがやり切れなくなってやめれば、これは自己退職なんだ。いかにも自己退職というのは自分が悪いような感じをさせられる。職安に行けば、それでも支給日が多少おくれるにしても出ればいいわけですけれども、これがまた出ないというふうな、踏んだりけったりというふうな、婦人労働者の場合にはそれが非常に強く出ているというふうに私は思うわけです。  次に看護婦の問題。看護婦の労働条件が保育所にまさるとも劣らずというほどひどい労働条件になっているということ、結局看護婦さんの場合には非常にたくさんの免許状を持った人がいながら実際には看護婦をしないという、やはり保母の場合と同じような場合が出てきているわけです。  これは朝日新聞に投稿されまして非常にいま大きな問題になっていることがある。新しい看護婦さんの労働条件を守る戦いとしていま大きく組織されようとしてきていることがあるので、おそらく御存じだと思いますけれども、これは朝日新聞のことしの三月六日号の「声」というところに投書が出ていたわけです。これは短いので読んでみますけれども、題は「看護婦の夫よ立ち上がろう」という見出しで、青森県の八戸に住んでいる三十四歳の公務員の方です。  「今朝二時に帰った妻は、また勤務のため六時半にもう起き出し、まだ眠そうな顔で言った。「忙しすぎるから今度から三人夜勤になる。でも人員増はないから月十五日以上夜勤になるかもしれない」  私の妻は、日赤病院の産婦人科病棟の看護婦。“ニッパチ夜勤”がいわれたのは、何年前のことだろう。それが、日本を代表するこの医療機関で、現在でも夜勤が月十日以上。それを十五日以上にしようというのだ。これでは、私の家庭は完全に破壊される。看護婦の夫としてもう我慢できない。政府は、厚生省は、日赤本社は、今の医療をどうしようとしているのだろう。  看護婦が夜勤を続けるには、夫の協力が絶対必要。もう妻たちだけの問題ではない。看護婦の夫たちよ。私たちも、看護婦の劣悪な労働条件を少しでもよくするために、今すぐ何かをしようではないか。看護婦のオヤジ集まれ!」といって自分の電話番号を書いているわけですね。これが「声」の投稿欄だったのですけれども非常に全国に反響を呼びまして、東京ではおれのところを連絡場所にしてほしい、名古屋では私のところをしてほしいというふうな看護婦の夫からの申し出が出て、いまこういういまだかつてない、男性がそうした妻の労働条件職場を守ろうというふうな動きが出てきている。これを一つ見まして私は非常に新しい動きとして注目しているわけですけれども、ここまで来るまでに、婦人労働者というのはこうした状態の中で夫からさえも足を引っぱられてきたわけなんですね。こんな、月十五日も夜勤ということは、ほとんど妻はうちにいないわけですからね。こんなことでは家庭というのは事実上成り立たないような状態ですね。そういう中でいままでは、ほとんどの夫がそれならやめろという形でやめさせるわけなんです。いやいやながら妻は、看護婦の免許状を持っているのだから看護婦をやりたいと思っても、やむを得ずやめる。そして、やめて、それじゃ看護婦といってさがせば、これは大体似たり寄ったりの条件だから、結局看護婦はだめなんだといえば、職業紹介したところに行かないのだ、行かないで、働く意思がないので不正受給で、保険金だけほしくて来ているのだ、こういうふうにいわれる。そういうことでやむを得ず看護婦の仕事はあきらめて、どこか近所のパートなり賃金の非常に安い、自分のいままでの学問や経験やそうしたものを全然生かすことのできないところに行くということは、職業の選択の自由さえも奪われるような状態の中に婦人たちは置かれてきたわけですね。そういう中で、これはただまだ何が実ったというわけではありませんけれども、全国の夫がこういう動きをし始めたということは、結局ここまでしてもまだ政府が動こうとしないのかというふうに私は思うわけです。いまこの投書にも出ておりましたように二・八の状態がどの程度守られているか、その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  184. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 看護婦さんの夜勤の状態につきましては、私どもが監督指導いたしました結果によりましても、かなり過度にわたると見られるものもあるのが実情でございます。これは労働者の健康のためにも、福祉のためにも、できるだけやはり少なくすることがわれわれ必要と考えております。二・八というお話がございまして、確かに数年前人事院から国立病院につきまして二・八という勧告が出ております。ただ、民間も含めました状況を見ますと、直ちにこれがすべての民間について実現できるかというようなことになりますと、実際上非常にむずかしい点もあると思います。私どもが現在指導しておりますのは、月の三分の一、すなわち十日以上夜勤があるようなものをまず優先的に取り上げまして、そういう人たちは十日以内にするように、そして順次、もっと十日以下に全体をしていくように、かような指導をいたしておるところでございまして、私ども十五日といったようなことは非常に例が少ないんではないかと思いますが、われわれの調査でございますと、十六日以上というのは〇・七%、監督指導した結果にあってもございますので、こういうものにつきましては、監督指導でそういう事態を把握し次第是正させるように、強力に監督指導につとめているわけでございます。
  185. 田中美智子

    田中(美)委員 いま私伺ったのは、二・八がどれぐらい守られているかというふうに伺っているわけなんです。  これは労働科学研究所で去年の八月にやった調査で見るところでは、八日以上九日から十二日やっている、二・八が守られてないというのは、約六〇%が守られていない。これは国公立なんですね。私立というのは、もっとめちゃくちゃですよね。公立でさえ六〇%、二・八が守られていないのです。二・八が守られたらすべていいかというとそうではない。去年、九州の済生会病院で火事があったとき、あそこの病院では二人勤務であった。それでも火事のときには十何人の人たちが焼死するという形で、これを運び出すことができなかったわけですね。これは二・八だけの問題ではありませんけれども、ほかの問題も要素があるけれども、二・八でさえ、これは患者の命も十分に守られないし、看護婦の健康と労働条件が守られないという話さえ出ているわけです。  この人事院判定が出たのは、もうだいぶ前の話ですね。そして人事院判定が出てから、これは四十四年の参議院の社会労働委員会で決議をされている、議事録で見たわけですけれども、看護婦職員の不足対策に対する決議という形で、この人事院の判定をすみやかに実行するという決議をしているわけですね。そしてこれは両三年をめどとして、その改善をはかるといっているわけです。四十四年で三年たって四十七年になれば、一応この時点では、二・八は国公立というのはほとんど一〇〇%近く守られるという状態であったわけです。それが現在ではまた逆行し始めている。  この投書を見てもわかりますようにいままでは十日だった。——十日だったって、月に十日奥さんはうちにいないわけですからね。これは男の職業でもそういうのがあると思いますけれども、それを今度、十五日に逆流しているわけでしょう。〇・七%で非常に少ないと言われるかもしれませんけれども、いままで十日だったものが、この投書では十五日に逆行しているわけですね。最近どうもこれが、一時いいほうに行きかけても、またこうなってきている。その間に苦しめられるのは婦人なんです。特に、婦人の労働者の多いところというのは、こういう状態に来ているし、この調査を見ましても生理休暇をとっているのは、一年間のうち、たった一日とったのも数に入れまして、わずか四・三%しか生理休暇をとっていないわけですね。ですから、これはたいへんな問題だと私は思いますけれども、妊娠をした場合に異常産がこの調査を見ても非常に出ているわけです。妊娠経験者の百五十六人のうち、四八・七%が異常出産をしているわけですね。約五〇%ですよ、看護婦さんですね。  こういう労働条件の中に置かれていたら、これはどうしたって自己退職せざるを得なくなるのですよ。その自己退職が、まるで何か怠惰であるというふうな言い方をして、そういうことの考え方から、実際にこうした婦人の六十日に三十歳未満を切ってしまうということは、私としては断固としてこれを認めることはできないというふうに思うのです。  時間がなくなりましたので最後になりますけれども、今度の法案というのを見ますと、これは日経連タイムスの写しを私は持ってきたわけですけれども、流動化対策、「失業保険の根本改正を」というふうに日経連タイムスに出ているわけです。これに出ているのを見ますと、こういうことが書いてあるわけですね。「就職の意思のない女子結婚退職による不正受給等を防止する」こういうことだとか、「失業保険制度がともすれば惰民を養成し、労働力活用を阻害する弊を伴うことも考えられる」だから改正せよ、こういうようなことが書いてありますね。それから「現在では過保護と考えられる基準法上の女子保護規定を検討されたい。」こういうようなことが書いてあるわけです。これは、私が何も誤解しているとかひがんでいるというのではなくて、こういう政策に非常にぴったりだというふうに思うわけです。ですから、これを受けて立っているというふうに考えられるわけです。  これは、女子のところだけ出したわけですけれども、季節労働者にとってもそうです。この間の大木参考人が言われたように、勤労者の拠出で大企業の雇用に貢献する法案だというようなことを参考人が言っておられましたけれども、結局金に色目はついていないから、一緒くたにしてしまえば、それがどこに使われるかはっきりしないというふうな、そうでないならなぜきちっと分けてやっていかないかというふうに思うわけですけれども、これについて日経連の社会保障部長の川井陸夫さんという方が、週刊社会保障というのに書いてあるわけですけれども、ちょっと読んでみます。「本案が立案されたのは、石油問題以前の時期であり、石油問題を契機として、今後の経済情勢の変動がどうなるのか、それに伴う雇用面への影響が予測し難い状況にあることは事実であり、この時期にかかる大変革を図ることが果して適当かどうか甚だ疑問に思う。」日経連の要望を受けて立ったような法案に対しても、こうしたいまの大きな変動に対して、これはどうだろうかという疑問さえ出ているわけです。決して、反対派の人たちの言っている意見ではないわけですね。そしてもう一つ、こういうことが書いてあるわけです。「現在失保特別会計の事務費の国庫補助は無きに等しく、殆ど保険料から賄われている。となると今後は、職安関係だけでなく、職訓局関係の職員の人件費まで保険料で負担しなければならなくなるのだろうか」、こういうふうに日経連の社会保障部長が言っているわけですね。ということは、結局参考人が言われたように、勤労者、労働者の拠出金というものでもって大企業の雇用に貢献する。その貢献する中身は何かといえば、結局低賃金労働者、不安定就労者をますますふやす。労働者の立場から考えますと、職業の選択の自由というものが非常になくなって、せっかく保母になり、せっかく看護婦の免許状を持っていながらも、近所の小さな中小企業の店員だとか、生産労働に従事するとか、事務をするとか、そういうことにいかなければならないような、職業の選択というものが全く侵されてしまう。結局は、日本の働く人たち能力というものの大きな損失になるんではないかと思います。  そういう意味で今度の法案、さまざまな基本的な考え方から私は問題があると思いますけれども、特に婦人と季節労働者に対する大きな切り捨てというふうなことは、許すことができないというふうに私は強く感じております。それに対して御意見をもう一度伺って、時間になりましたので質問を終わりたいと思います。
  186. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま日経連の社会保障旬報ですか、何かその雑誌の記事をお取り上げになりまして御指摘がありましたけれども、実は日経連からそういう要請が出たというのはずっと以前のことで、私ども承知いたしておりません。いわんや、この法案をつくるに際しまして、労働組合あるいは事業者団体等の意見も聴取はいたしましたけれども、その際そういう意見を私どもは聞いておりません。私どもは私どもなりに、今回の法案につきましては本来的な失業保障機能を強化する。と同時に、積極的に失業を予防するようにしよう。また、もう一つの大きな目玉は、いまお話しになりました小零細企業の労働者は、従来現行失業保険適用さえ受けていない。そういう人たち失業した場合には、何にも保障措置が行なわれていない。こういうものを全面的に、一人でも労働者を雇っていれば、一人でも使われている人はすべて今回の措置によって適用していこう。この前御指摘がありましたように、そういったものを一体把握できるのか、具体的に適用措置がとれるのかというお話もございましたけれども法律適用の網をかぶせることによって、実際には適用措置が講ぜられてなくても、そこから失業した人は給付を受けられるという体制をしこうとしているわけでございます。  先ほど参考人の意見の中で、労使保険料使用者のために、企業のために使うんだというようなお話があったようでございますけれども、これは条文をごらんいただければおわかりいただけると思います。日経連の社会保障部長とやらいう人も、私は会ったことはありませんけれども、まことに不勉強だと思います。条文の上で、はっきり千分の三の使用者負担の保険料で三事業を行なう。労使保険料千分の十は、従来十三をそれぞれ千分の一・五ずつ引き下げておりますけれども、それによって失業給付をまかなう、はっきり明示してあります。これがごっちゃになって、金に糸目はないから適当に使われるということは絶対にあり得ません。そこのところを意図的にか、あるいは不勉強のせいか、そういうふうな言い方をされることは私どもははなはだ心外でございますし、今後の運用におきましても、そういうことは絶対にあり得ないことをはっきり申し上げておきたいと思います。
  187. 田中美智子

    田中(美)委員 中小企業の方たちはいまの保険制度にさえ入っていない、こう言われるのですけれども、何もこういう改革を、こんなことをしなくてもいまの中でやることが幾らでもできる。いまの法案が一〇〇%いいわけじゃないのですから、これを幾らでも変えることはできるわけです。それをなぜこういうふうなものにしているのかということは、ちょうど日経連のあれとぴったり合っているし、その中にでさえ疑問は出てきているし、社会保障審議会の中でも、こうした労働者の生活に密着する大きな変動を来たすようなものは、十分に慎重にしなければならないということが書いてある。それにもかかわらず、こうした大幅の、事実上の労働者にとって既得権みたいなものまでも全部底のけにとってしまう。そして、これは先ほども盛んに出ておりましたけれども、イギリスでも一年は出していますね。そしてフランスなんかほとんど無期限みたいな形で、年々減らしておりますけれども、そういう形を出しているし、また支給の金額にしたって八〇%、九〇%というのが大体常識になっています。それが日本の場合はうんと低いというようなことから考えますと、たいへんな改悪であるというふうに考えます。  時間になりましたので、終わります。
  188. 野原正勝

    野原委員長 和田耕作君。
  189. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 雇用保険法についての問題点が、今朝来あるいはこの前の委員会以来、各委員からほとんど余すところなしに指摘されておると思います。それに対しての政府のほうの答弁も拝聴しておるわけでございますけれども、私きょうはいろんな方の意見、政府との応答を聞きながら、なおよくわからない点を三、四点御質問申し上げてみたいと思います。  この雇用保険法というのは、現行失業保険法をかなり抜本的に変えていくというねらいがあるように思うのですけれども、そのような雇用保険法をつくり出してくる必要性として、失業保険法をつくった戦後の事態と現在とは著しく状態が違っておるんだ、そして失業多発の状態から、完全雇用といったような状況に入っておるんだということが前提になっているように思われるのです。そういう時期だから、失業保険法にまつわるさまざまな矛盾もここで是正してみようというのがこの雇用保険法のねらいのように承るのですけれども、ただ、いまの特に昨年の石油危機以後の状況というのは、たぶんこの法案を労働省で準備されておった時期とはかなり変化した状態になっておるわけだと思います。  また、ここであとからも御質問申し上げますけれども、季節労働者あるいは一時的な労働者というものについての失業給付が少し公正を欠くという面があると思うのです。しかし、そういうふうな人たちを出す農村のほうの事情も、あるいは結婚前の女子労働の問題にしても、かなり事情が変化してきておるという状況があるわけです。特に今後農村方面でも、これは林業関係でもそうなんですけれども、この法案をつくったときと現状とは著しく前提になる状態が変化しておる、そういうふうに私は思うのです。  要するに、これは少し模様を見てみたらどうなんだというふうに言いたいわけなんです。というのは、根本、前提になる条件が変化している。今後どう変わるかもわからない。農村の事態も変わるし、都市の就労の条件も変わってくるということですね。そういうことで、つまり、もっと事態の推移をながめた上で少なくも二、三年あとまで法案を延ばしてみたらどうなんだ、こういうような気持ちがあるのでそういう御質問をしているわけです。つまり、この法案をつくり出してきた政府のお考え、そしていま私が申し上げたような状況の変化に対する心づもり、そういうものをまず全般的にお伺いしたい。
  190. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 数年前に繊維危機がありまして、離職者が非常に出るんじゃなかろうかと心配したことがあります。その場合に、失業保険制度という受け皿で用意しまして、案外そういう方々が少なかったことがしあわせですが、それでも受け皿で救済ができた。私は、時期的には石油危機が生まれたものですから、先生のようなお考えも出られると思うのですが、終戦以来の失業状態と、石油危機といわれながらもなおかつ一・四%の失業率を維持している姿というものは、現象は変わっておっても、下のほうの雇用率の関係はそう変わってないんじゃないか。そこで、前々から御審議あるいは審議会等々で御研究いただいた三者構成、これによりまして、逆に問題が、若年の場合には就職が非常に簡単でありますけれども、いまから老齢中高年社会になるものですから、そちらのほうの方々の手当てというものをいち早く準備しなければいかぬ。  それからもう一つは、もうこれだけ技術が進歩するときですから、労働者が常に技術対応するような、積極的な能力開発というものに対応していくという必要があるんじゃないか。そういうことから、去年あたりは一時この法案の撤回等々もございましたが、御審議願っている間に、そういうことじゃなくして、だんだん積極的な意見が出てきた。そこで、ぜひこの際にひとつ御可決をお願いしたいということでございます。
  191. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題についての現状についての見方、見通しについては、若干私違った考え方を持っておるのですけれども、この問題はしばらく置くとしまして、現在起こっている、これは全産業というわけじゃありません。特に石油関係を中心とした、かなりショックを受けて倒産しておるところもあるし、事業を縮小しておるところもある。そういうところには、今後景気がよくなればまた働いてもらうけれども、しばらく休んでおってもらいたいというような条件下の労働者もたくさんおられるわけです。つまりこのような形の実質失業ですね、一時休んでもらうという人も失業です、実質上の失業。こういうふうな問題についての手当てが、政府がお考えになっておれば、つまり状況の変化に対してもこういうことを考えておるのだということが言えると思うのですけれども、そういう現在いろいろな産業で起こっておる事業の縮小、倒産の状況に対して、この法案と関連してどのようなお気持ちを持っておられるか。
  192. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま冒頭に御指摘ございましたように、この法案を準備いたしましているさ中に、石油危機といったような事態が起こりました。そういう予想しなかった状態の中からこういう法案提出した、こういうことでございますが、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、この法案の最初の検討時点におきまして、こういった国際的なあるいは国内的な経済変動というものを予想しながら、実は法案の準備を進めてまいったわけでございます。したがいまして、いま御指摘になりましたそういう経済変動の中で企業縮小とかあるいは倒産といったような事態が起こりましても、なおかつそういう事態に対して十分な失業保障機能を備え得るような制度にしていこう、こういうことで法案の整備をいたしておるわけでございますが、そこまでに至らないでいわゆる操短、操業短縮することによって、手当を支給しながら働かさないで温存していく、解雇をしないでかかえていこうというような企業がかなり出てまいっております。ごく最近にそういった具体的な事例で集中的に出ておりますのは、主として中小企業のいわゆる繊維の機業地関係が多いようでございます。こういった向きでは、すでに週二日あるいは三日の操業短縮を実施いたしておりまして、その間に、私ども承知いたしておりますところでは、おおむね一〇〇%の賃金を保障しながら休業さしておるというような状態のように聞いております。  こういった事態があまりに進行してまいりますと、企業といたしましても、その手当の支給に耐え切れなくなりまして解雇せざるを得なくなる。そうやって解雇されて失業という事態を発生することは決して好ましいことではございませんので、この法案におきましては、そういった操業短縮に対する休業手当に対して、雇用改善事業でその手当の援助措置を講じていこう。企業がそういった操業短縮中の休業に対して手当を支給する場合には、その手当の支給に対して二分の一、あるいは中小企業については三分の二程度の補助をするということによって、企業の負担を軽減し、労働者を解雇されなくて済むようにしよう、こういう措置を考えておるわけでございます。それが今回の法案の六十二条の第四号でございます。こういった助成措置を予定いたしておるわけでございます。
  193. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これはけっこうな一つ措置だと思うのですけれども、これは一つの時間、タイミングというのはどれくらいに考えておられるのか。
  194. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険法が成立いたしました暁には、約半年程度の準備期間が必要でございますので、早いにこしたことはございませんが、私どもは一応来年の四月、五十年度からの施行を予定いたしておるわけでございます。
  195. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 つまり休業手当というものをどれくらいの期間、政府が半分あるいは三分の一の援助をしてやろうとしておられるのかということです。
  196. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これはこの法律が成立いたしました後に政令、省令等で、審議会の意見を聞いて、その基準を定めることにいたしておりますが、一応私どもがいま頭の中で考えておりますのは、三カ月程度を一応考えてみたらどうだろうかというふうに考えております。
  197. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 三カ月というのも一つの問題だと思うのですけれども、しかしこれは休業する人に対して政府が半分というかなりの援助をするわけですが、無期限というわけにもいかぬと思うのですが、そこらあたりの問題はこれはもっと慎重に考える必要がある。しかしこれは、いまのところまだ少ないからいいけれども、もっと広範になってくると半分でももちきれませんよ。そういうことをお考えになっていますか。つまり、そういう点が、いまの石油危機に端を発した、しかも全体として経済成長というのは非常に頭打ちをした、しかも労働者は季節労働者を含めて非常にたくさんできてきた。そういう状況ですから、この問題については、もっと真剣な考慮が必要だと思うのです。三月というよりはあるいはもっと段階的な措置も必要だろうし、それはやはり、そういう人に対して、三カ月で立ち直るということは非常に困難でしょう、そういう事業が三カ月で立ち直るということは。そういう問題についてのお考えをひとつお伺いしたい。
  198. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この法案に絶体反対の方もいらっしゃいますけれども、こういういいところもあるのです。あなたに、いいところを御指摘いただきましたけれども……。ですから、私は、この法案が五十年四月施行ということになっておりますが、やはり応急の場合に措置するところに妙味があるのではなかろうかということで、事務当局には、施行を、そういう事態があった場合には、非常によくスピード化して考えてもらうように、内々に実は指示しているところであります。
  199. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの大臣のお答えは、これはこの法案施行は五十年の四月一日からになっておりますね。しかし現に、いま私が指摘申し上げたような事態は進行しているわけです。これが六月、九月の段階にどういうことになるか。いまよりも加重こそすれ、まだまだこの半年くらいのうちに緩和する状況はない。五十年の四月ということになりますとまだ一年あります。この一年間のうちには政府はいろいろな手も打つでしょう。だんだんこういうケースが少なくなるかもわからない。それはよくわかりません。  いま一番問題になるのは、いま起こっておる問題、この半年間ぐらいの問題が大事な問題ですね。法律施行をずっとさかのぼらすということは、非常にいろいろな意味で困難かもわかりませんけれども、こういう応急的な措置はやはりさかのぼって施行する。あるいはこれが事務的に困難であれば概算的な形で処理しながら実施に移していくというような弾力的な措置が必要だ。つまり、こういうものがなければ、こういう法律があって、いま大臣もおっしゃるとおり、こういういいところがあるんだというふうに言われましても、実際上それは意味がなくなるということですから、これを六月段階まで引き上げる、今年のこの六月に引き上げるとか、少なくとも九月ごろからは実施するとかいうような意味の考え方が必要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  200. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この雇用保険法案が上程された前後に、新聞社の各社説は、やはり、いまのような石油危機の場合でもあるから、施行を繰り上げてでもというふうな実はずっと社説が出ているわけでありまして、特に先生の御意見なども参酌しながら、私たちも前向きの姿勢で考えていることですから、よく検討してまいりたい、こう思っております。
  201. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは失業状況の見通しがいかんであれ、やはり大きな転機に際会しておりますから、どうしてもそういうふうな前向きの弾力的な措置が、休業しておる労働者に対する手当ての問題でも、施行時期を繰り上げる問題でも、できるだけひとつ御考慮をいただきたいと思います。  次に、給付率の問題なんですけれども、これはいろいろと賃金の日額によって違いをつけておる。この御苦労はよくわかるのですが、賃金日額の六〇%というこの考え方は、より少ない人は多く、より多い人は少なくという配慮をしているようですけれども、これはもう少し上げる考え方はありませんか。
  202. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行失業保険法におきましては、給付率は前職賃金の一律六割ということでございます。それに扶養加算をつけることによって、比較的中位以下の低所得層については、実質的に六割を上回るようにいたしております。しかしそれにいたしましても、六割をわずか二、三%、あるいはせいぜい四、五%上がる程度でございますので、今回は思い切って、従来例のない、標準的には六割という線は維持しておりますけれども、実質的には、中位以下を七割まで引き上げるという措置をとることによって、給付率の改善をはかっておるわけでございます。  と同時に、午前中の御質問でお答えいたしましたように、他の社会保険におきましては、いわゆる標準報酬制をとっておりますのに対比いたしまして、この現行失業保険法、と同時に新しい雇用保険制度の中におきましては、いわゆるボーナスを含めた総賃金制をとっております。したがいまして、七割という線になりますと、実質的には、ほぼ月収の十割近い金額になってまいります。そういうことによりまして、私どもは、中位以下の低所得層の人たち給付を実質的に、いま先生のおっしゃられるような六割じゃなくて、七割、八割という線に持っていこうという意図をはっきりここで制度化しようとしているものでございます。
  203. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 こういうふうに生活資金の実態に合わせて差をつけるという考え方は、差を少し大きくしていくという考え方は、私は非常に画期的な考え方だと思う。それだけに非常に問題が出てくる考え方ですね。たとえば六千円から七千五百円という高額者は、いまの賃金制度からいうと割合に高年齢層が多いと見なければなりませんね。商年齢層は他の場所では優遇されている面がありますけれども、この問題になりますと、かえって高年齢層の人が少なくなるという面がありますね。つまり、その問題は多少問題だと私は思うのですね。月給が高いからその人は少な目に、低いから多目という考え方はわかりますよ。わかるけれども、高額を取っている人は高年齢層だということになると、はたしてそういう段階が正しいのかどうか、この問題がありはしないかと思うのですが、いかがでしょう。
  204. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに表現だけの上からいたしますと、高額の、いわゆる中高年に属する高額所得者の場合に、従来の六割給付が五割に下がるというように受け取れますけれども、実際の日額表によって計算いたしますと、現行制度でまいりますと、給付の最高限が二千八百六十円でございます。今回の新しい措置によりますと、保険給付額の三千六百円までは六割ということになります。つまり、賃金日額六千円の人が六割の三千六百円の支給を受けることになります。したがいまして、六千円ということは月収十八万でございます。十八万の人までは六割で給付を受けますので、現行の最高限よりはるかに高い人が六割の給付を受けます。それをさらに上回った人について六割から五割に逓減した率ということでございますので、現行よりははるかに金額的にも増額される。その上になおかつ、いわゆる中位以下については六割から七割に逓増した率ということになりますので、中高年に薄くなるのではないかという御懸念でございますけれども、それは決してございません。
  205. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 こういうふうに貨幣価値が大きく変わる時期ですから、賃金の実額というものも大事ですけれども、この率という問題はやはりそれなりの一つの考えなければならない点だと私は思うのですけれども、そういうふうな意味で、いままで六割だったのが上がるのはいいけれども、下がるところの人を、これはもしどうしてもいろいろなあれでむずかしい問題があれば、三年なら三年の経過期間を置くとかいうような考慮をもって、こまかい配慮というものが働いてしかるべきだと私は思うのです。私はできるだけいままでの既得権化しておる——あなたのおっしゃることはわかりますよ。実際上五割になっても、実際はいままでよりたくさん取れるのだということはわかるし、そういう配慮も動いていることはわかりますけれども、いま申し上げたとおり、下の者は七割で高額者は五割だという考え方は、それはそれなりに一つの差別があらわれているわけです。こういうものは下を下げないで六割にして、そして上を上げていくというような考え方を持つのが、不公平感覚を刺激しない方法だと思うのですが、その点ひとつ御検討いただけませんか。
  206. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 最低を六割にして上のほうに積み上げるという御意見でございます。たいへんごもっともでございますけれども、やはり保険という一つワクの中でできるだけ実態に即してよくしていこう、比較的手当ての薄い人を手厚くしていこう、こういうきめこまかな考え方をとるとなりますと、やはり下は下なりに上げなければならないし、それと相当する部分ということではございませんけれども考え方としては、比較的月収の高い人については、社会常識として、いま申し上げましたように、月収十八万というのが一つの線になりまして、それをこえる人については、六割は若干切れてもごしんぼういただけるのではないか、こういう考え方でございますので、全体として先生の御指摘のような方向で、先日来大臣からお答えがございましたように、十分検討してみろという御指示を大臣から受けておりますけれども、全体が六割をこすということは、なかなかむずかしい問題ではなかろうかと考えております。
  207. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 六千円にして月収が十八万円、多く取っている人もそれだけに金がかかるわけで、それをずっと下げるということはむずかしい、多く取れば取るほどむずかしいという事実もあるわけですね。いまの状態で全体の収入が月収十八万円というのは、そう別に多いというふうな判断も成り立ちかねるということですから、いまの不平等、差別感覚を刺激しないような醜悪をひとつ何かの形で考える必要がありはしないか、こういうように思うのですから、なおひとつできるだけの御検討をいただきたいと思います。  それと、続きまして、今度の法案の特徴は上薄下厚という考え方が貫かれておるわけですけれども、逆に今度は、三十歳未満の者が給付口数の問題で大きく減っているという問題があるわけですね。三十歳未満が、六カ月以上十カ月未満の者は九十日が、今度は三十歳未満は一年未満が六十日となっているわけですね。これもプリンシプルとしてはわかりますよ。若年、青年労働者仕事が早く見つかるというようなこと、あるいは家族構成なんかを考えてみても、それはわかりますけれども、やはりいま申し上げたとおり、もうこれは既得権ですね、考えてみれば。これを著しく九十日を六十日に下げるということは、無用に不平等感覚を刺激することである、そう思えてならないのですが、この問題いかがでしょう。
  208. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 今度の法案を貫く思想が、上のほうにはいささか薄く、下のほうには厚くという線は御理解いただいたと思いますが、ただいまの六十日の問題等につきましては、この委員会においても、御審議の間にもだんだん話の出たことでもありますので、またその趣旨も十分理解されるところでありますので、十分御審議をお願いしながら、政府としても検討してみたい、こう思っております。
  209. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 また、三十歳未満とありますけれども、いまの実情からいって、三十歳未満としてずっと下まで同じこの考え方を貫こうとすることはどうだろうか。あるいは三十歳以下あるいは二十五歳以下というふうな段階を設けたほうが、もっとこの法案の、政府の考える意図が貫かれてきやしないかというふうに思うのですけれども、そういうことも含めて、つまり最低のところをそう下げないで、そして上を上げていくということを考えていただかないと、とてもじゃないが、なかなかうまくいかないと私は思うのです。  やはり、いま大臣のおっしゃったようにいろいろ御検討いただくということですから、また別の機会にもいろいろ申し上げてみたいと思いますけれども、そういう点についての配慮をどうか——まあ私どもの党としていろいろ考えておるのですが、全体として三十日プラスしたらどうなんだ、つまり九十日を最低にして、そしていまのこの案に三十日ずっとプラスしていくということでも考えでもらえぬかということを強く真剣に検討している者が、そういう主張をぜひしてくれということですけれども、こういうこともひとつ御参考にしていただいて、あまり下がるほうを下げないように、これはせっかく考え方としてはよくても、それだけで、もういい面も含めて反対だということになるわけですから、ぜひともひとつ考えていただきたいと思います。  それからその次の問題は、この法案についての最大の問題点という季節労働者の問題です。  大臣、私はちょっとこのの問題についてふしぎに思うのは、実は私も季節労働者の問題はこの保険制度の中では何か質の違ったものだという考え方を前から持っておりましたけれども、高度経済成長のときはあまりやかましくいわぬで、あるときに出そうとしたこともありますけれども、こうして経済成長がとまって、季節労働者が産業需要として必要が少のうなったときに、こういう問題を出してくるというのはどういうものかという感じがするのです。政府はそれくらい意地悪じゃないと思いますけれども、いままでは問題があっても、季節労働者は高度経済成長をささえる大きな労働力ですから、これが必要な間はこういう問題は出さないで、もうだんだん必要でなくなったという時期にこういう問題を出してくるということはどういうものか。  と同時に、この問題は本来いえば普通の労働者失業保険金を払っているわけです。まともに払っている。季節労働者はあまりまともな払い方をしていない。これは事実です。普通に払っている労働者のほうから文句が出るのはあたりまえのことですね。ところが、総評の人たちも同盟の人たちもそれに対して、これは不満はあるでしょう、あってもそれをがまんをして労働者の連帯感でもってかかえようとしておる。政府がもっと金を出しておればまだこれはこう直すんだ、政府はこの失業保険の問題についてはたいして金を出していない、金を出している労働者諸君はまあこれでしんぼうしていこうと思っている。政府はたいして金を出していないのに直さなければならぬというのはこれは何だかおかしなような感じがするのですけれども、その点はいかがでしょう。
  210. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いみじくも和田先生いま御指摘になりましたように、季節出かせぎのいわゆる短期受納者の問題につきましては、本来失業保障といいますか、現行失業保険制度になじまない性格のものであることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、過去数回にわたりまして改正が行なわれました際に、季節出かせぎの受給者をどういう形で一つワクの中にはめ込むか、端的にいいますと、どう規制するかということが改正一つの主眼点であった、私こういうふうに記憶しております。しかしながら、いまお話ございましたように、労働者全体の連帯の中でこれを何とかしていかなければならぬ、これはもういま御指摘のように総評、同盟の皆さん方も一様にひとしく認めておられるところでございます。  私どもも、過去二回にわたってこの出かせぎ受給者の問題を取り扱いました考え方と、今回の雇用保険の中で短期特例保険者という形で制度化しようとしております考え方とは全く変わっておりまして、いままでの規制をしようという考え方でなくて、この季節出かせぎ受給者の実態をそのまま実態として受けとめ、これから高度成長がとまったにいたしましても、今後やはり出かせぎという就労形態、これを受け入れる企業の必要性というものは依然として今後持続するということに変わりないと思います。  そういう実態を踏まえて、この実態をそのまま制度化していこう、定着化させようというのが今回の特例保険者の考え方でございます。  したがいまして、この特例保険者の一時金制度をとりますことによって、かりにこの一時金三十日分ということで計算いたしましても、保険の一時金の給付総額は農林水産業適用を含めまして、いままでよりは増額になります。したがいまして、これによって保険経済を圧縮しようとかバランスをとろうということでなくて、いままでこの問題についていろいろと御批判がありました。そういった批判を、この際もう払拭して定着化させようというのが今回の一番大きなねらいでございます。  そういうことで、先般来大臣からもお答えございましたように、一時金三十日分がいいかどうかという問題はあるにいたしましても、一時金という制度をとることによって、この制度を擬制的に利用して、保険の受給を受け心あるいは保険金を支給するという形を今後一切改めていきたい、こういうところにねらいがあるわけでございますので、その点を十分御理解いただきたいと思うわけでございます。
  211. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私も率直に申し上げて、この季節労務者、季節出かせぎ労働者に対しては一時金制度というものはいろいろ問題があっても、これはたいへん苦労して考えた結果だというふうに評価をいたします。それにしましても、いまも先ほどから申し上げているように、かなり現行よりも収入が減るという状況はこれは問題だと私は思うのですね。これはもっともっと、長期にとは申しません、今後農村の状態は変わっていきます、食糧需給の問題でもいろいろなことでも変わっていきますから、少なくとも三年ぐらいは形の上でいままでの収入を維持できるような状態を維持さす必要がある。  いま局長さんも、期間の日数の問題はいろいろ検討する必要があるようなお考えを示唆されておりますけれども、特にこういう問題はすでに既得権化しておるという事実があるし、また今後農村の状態、都市の就労状態がどう変化するかもわからないという見通しの問題があるから、やはり一挙に変えてしまわないで、少なくとも三年ぐらいはペンディングにして、その間はいままで得ておった収入、得らるべき収入は維持してあげるという考え方はぜひとも持たなければいかぬと思います。  私もこの一時金制度そのものは賛成です、こういう場合に申し上げてあれですけれども。一時金制度という形でないとこれにまつわるいろいろな問題がなかなか解決できない。しかも、これは労組にとってもあるいはいろいろな人に迷惑をかけるという要素もあるわけですから。しかし一時金の額の問題をいままでより減らしてはいけない。特に遭いからといって減らすということはこれは公正を欠く問題だ。これは農村でたとえば保険一時金をもらっておっても、何ぼでも働く機会があれば働きなさいということはいいことですよ。いいことだけれども、働きなさいといっても現在ではまだまだ働く仕事がないわけです。これは結局仕事がないのに働きなさいというのと同じことですね。そういう問題があるわけですから、ぜひともこの問題は少なくとも三年という期間は、三十日という日を三倍ぐらいに上げる必要があると私は思うのです。この問題について農林省の林野庁の方、お見えになっておりますか。——国有林の関係のところにも、これに該当する労働者がたくさんおるわけですけれども、この人たちに対しては、この制度の発効に関してどういう措置をとろうとしておられるのか、それをちょっとお聞きいたしたい。
  212. 野崎博之

    ○野崎説明員 いま先生のおっしゃいましたように、国有林の定期作業につきまして相当いろいろ影響が出てまいりますので、私どもも同じような心配をいたしておりまして、少なくとも従来より不利にならないような運営のしかたをいたしたいということで、労働省ともただいま協議中でございます。
  213. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その意味は、国有林で働く方々に対しての常用化、つまり一般の人には通年雇用と同じものですね。常用化というものをはかっていくという計画を持っておられるようですけれども方向としてはそういう方向で解決していきますか。
  214. 野崎博之

    ○野崎説明員 常用化の問題につきましては、この雇用保険法の問題が出る前からいろいろ検討いたしておりまして、われわれといたしましては、極力事業の通年化をはかることによって常用化を進めてまいりたい。また、直ちに全員常用化できない場合の、常用化できなかったあとの人たちに対する身分等の問題につきましては、なおいろいろ制度上等も詰める必要がございますので、これまた関係各省、あるいは林政審議会の労働小委員会等で早急に検討いたすことになっております。
  215. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは労働省としてはいまの問題、どういうようにお考えになっておりますか。
  216. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 林野庁所属の定期作業員につきましては、先生承知のとおり身分が国家公務員でございまして、この人たちが、いわゆる季節的に年間八、九カ月働いて、その残りの期間、この失業保険相当額の国家公務員としての退職金が支給されるというたてまえになっております。したがいまして、純粋の現行失業保険法あるいは今回の雇用保険法適用を受けるわけじゃございませんので、この点は、ただいま職員部長からお答えがございましたように、国家公務員という形での退職手当の支給に対しまして、従来から取り扱いが変わったことによって不利になることのないように、農林省あるいは人事局とも御相談いたしまして、そういう十分な措置をとってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  217. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 国家公務員としての林野庁関係の季節的な労働者、それに対するそういう配慮も、私の仄聞するところによると、いろいろとお考えがあるようですけれども、この問題は他の労働者に対する一つの模範例になりますから、ぜひとも確実に実行していただきたい。  と同時に、大臣、内容的に見れば農村の出かせぎ者も同じような問題なんですね。したがって、そういう林野庁関係の公務員というものに対する態度と著しく違った形では、これまた違った問題が起こってくるということですから、非常にむずかしい苦心を要する点でしょうけれども、ぜひとも、この季節的な労働者という範疇の中にある人たちに対して、先ほどから申し上げておるとおり、少なくとも三年は、現行とはあまり変化は起こさせないという配慮は、これは絶対に必要だというように私は思うのですね。林野庁関係労働者に対する配慮を、まだ検討中だと思いますから、いろいろ具体的にお聞きしませんけれども、それとあまり変わらない形で一般の季節労務者の問題も対策を考える必要がある。いかがでしょうか、大臣
  218. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私が出かせぎ地帯出身でして、非常に御同情いただいて感謝するものでございますが、今度はその給付日額の引き上げによりまして、いままで制度としてなかったものを、雇用保険制度の中に一時金というものでぴしゃっと制度として定着さしてもらうというところに一つの非常なメリットがある、私はこう思って、それは御賛成していただいているわけであります。そしてまた、その三十日分に対しても急激な変化を起こさないようにというお話は、ほかの先生方からも再三実は出ておりまして、私たちも御指摘の点を十分踏まえながら御審議をいただき、そういう御検討の上にまた考えていくものが必要じゃないか、こう思っているわけであります。
  219. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私の時間もだんだんなくなりましたが、もう一点、これは私どもの小沢君が予算委員会でも御質問申し上げた点だと思うのですが、婦人労働者ですね。特に出産等によって仕事ができなくなるという、そういう労働者はぜひとも国が特にめんどうを見て、そういうことを少なくする、あるいはなくするという努力が必要だと思うのですけれども、この法案にもたしか婦人労働者の育児、出産についてのお考えがあるようですけれども、この問題についてどういう方法でおやりになるのか、そのことをひとつお聞きしたい。
  220. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 保育ないしは育児の問題につきましては、この委員会におきましてもしばしば御指摘ございますところで、婦人労働者が子供をかかえて働いていくためには、どうしても保育施設あるいは育児施設が必要であることは御承知のとおりでございます。  そこで現在、私どものほうでは、雇用促進事業団を通じまして、こういった企業内の保育施設、育児施設のための低利長期融資を実施いたすことによりまして、こういった育児施設の普及につとめてまいっているわけでございます。今回の雇用保険におきましても、こういった育児等のためにどうしても働けない、こういう人に対する受給期間の延長措置も、先ほど御指摘のありましたような条文を盛っておりますが、さらに審議会、研究会の過程におきましても、こういった育児休業に対しての考え方、何らかの措置をとるべきではないか、こういう御意見もございましたけれども、現在育児休業の問題につきましては、専門家の間で検討が進められております。こういった検討の結果を待って、今後どういう方途を講じていけばいいのか、私ども積極的に今後研究をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  221. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題と関連しまして、基本的な考え方一つをお聞きをしておきたいのですけれども、労働力がだんだん少なくなる、どういう人手でも必要だという状況ではすでになくなってくるわけですね。こういう段階で婦人労働者というものを、政府、特に労働問題の責任者として基本的にどういうようにお考えになっているのか、婦人はやり家庭で子供さんをよく見ておって、成長をはかっていったほうがいいというお考えを持っておるのか、あるいは婦人として男と同じように——同じようにというわけではないのだが、働いて、そうして働きながら育児その他の問題を十分手が省けるように、あるいは収入その他もあれするようにしたほうがいいとお考えになっているのか、その問題についての大臣の御所見をお伺いしたい。と申しますのは、特に今後婦人労働というものの評価をいろいろ根本的に考えてみる時期が来ると思うからです。大臣、この問題をどういうようにお考えになっておられますか。
  222. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 非常にざっぱくな意見になるかもしれませんけれども、終戦以来、婦人労働者千二百万といわれているわけです。そしてアメリカあたりの雑誌を見ましても、一ぺん結婚すればやめてまた上がっていくというM字型、このM字型がどの程度に長くなるかということが、婦人労働問題として一つ考えるべきところがあるというふうに指摘されるなどを私などは拝見して、参考にしているのですが、やはり企業内で育児施設、託児施設、そしてその働くほかに、母親としての次の人々を育てていくという大事な問題がさらにあるものですから、それだけにいろいろな深い配慮をしながら、見守りながらやっていかなければならぬという感じ方で、ただいま局長も答弁しましたように、この際の雇用保険法案の中に、こういうものが通ったあとでも専門家などの会議などを開いて、これこそ慎重に、国家百年の大計でございますから、そういうことで考えていきたい、こう思っております。
  223. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私、いま質問申し上げておったのは、その問題もありますけれども、もう一つ別な面で、たとえば結婚前の若い女性が職場につく。悪口を言う者は、あれは嫁入りの結婚の資金かせぎに一時仕事をしているだけだ、そう働くつもりでもないのだというようなことを言う人もおるのですけれども。それにしても、婦人が一つ仕事を持つということを大臣としてどういうふうにお考えになりますか。いいことだとお考えになっているのか、あるいはこれはできるだけ早く結婚さすとか、あるいは家庭に戻すとかいうふうに考えておられるのか、そのどっちかということをいま申し上げているわけです。
  224. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も、きのうなども地方で繊維の女子労働者が働いておる工場を四つ五つ見てきたのです。そこで思わず言ったことですけれども、あなた方のおかあさんの時代はクリームひとつつけなかった、私のほうの単作地帯の農村では。そういうことからしますと、新しい機械に取り組んでいって、昔なら「さしすせそ時代」、裁縫であり手芸であり、いまや「かきくけこ時代」、科学であったり機械であったり、そういうふうなことで、かりにこういうところで働いておれば、自分の家が電化していて、ヒューズが切れた場合には、いままですぐ町の電気屋に電話をかけて呼んで来た。いまはだれも来やせぬ。そういうものが自然にやっていかれて、収入もあって、きれいになるし、そして勤労の喜びというものを感じられるのだから、私は、やはりしっかり元気を出してやってもらいたい、こういうふうに話してまいりましたが、それと同時に、母性としての両立の問題もあるものですから、そこに私は婦人問題のたいへんなむずかしいところがあるのではなかろうかという感じ方を持っております。
  225. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 婦人少年局長、いかがにお考えになっていますか。
  226. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、勤労婦人福祉法の国会審議の際にも、だいぶ御質疑のあった点であったように記憶いたしております。それに対しまして、労働行政の立場といたしましては、婦人、特に乳幼児を持つ婦人が働くか働かないかというような問題については、これはやはりその婦人自身が主体的にきめるべきであって、行政として働くべしであるとか、あるいはみんなすべからく家に帰るべしというようなことをいうことは適当でないのではないだろうか。ただし、その本人が主体的にどちらの道をとるかを選べるような条件の整備をすることが行政の責任であるというように、時の労働大臣からお答え申し上げたように記憶いたしておるのでございますが、行政の立場としてはそのように考えております。
  227. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 やはり婦人が職業を持って働かなければならないという一つの社会的な環境がいまだに残っておる。したがって、そういう婦人に対して国が、あるいは企業が十分な配慮をするということは必要だと思います。大臣もそういうお考えのようでございますけれども、そういうお考えに立ちますと、いまの結婚前の若い女性の就職、しかも二、三年でやめていくという人たち、こういう人たちも、やはりそういう婦人労働というものを単に労働力あるいはお金かせぎというのではなくて、人間としての成長という面から見てこれをプラスだという判断に立てば、多少問題があるにしても、そういう問題をいろいろこまかく、何かあまり正しい失業保険のあれじゃないのだとかいうふうな問題を提起しないで、もっと大きな目で見るということが必要ではないかという感じもするわけです。  いずれにしましても、現在政府がこの法案を提起した。つまり、日本における失業状況の基本的な変化、就労状態の変化という問題を前提にしているけれども、しかし新しい状態というものがどういうものか、これはさだかでないということでもありますので、ぜひとも幾つかの重要な改革点については、私もよくわかる点があります、そしてやらなければならぬ問題もあると思います、思いますけれども、まだ新しい状態、どうなるかという状態が確定的ではないわけですから、いままでの既得権的なものを侵害しない形で、そして適当な、高年齢層を保護するとか、あるいはその他いろいろな盛り込まれている案についてはわからぬじゃないですけれども、差別する場合にも少なくとも三年という期間は収入あるいはその他の条件が減らないような配慮というのは最低必要だ、そういうふうに私は思うわけでございまして、このことを最後に申し上げて私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  228. 野原正勝

    野原委員長 次回は明後九日木曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会いたします。  なお、明八日水曜日午前十時より地方行政委員会、農林水産委員会及び建設委員会との連合審査会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散会