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1974-04-08 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月八日(月曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    加藤 紘一君       粕谷  茂君    住  栄作君       田中  覚君    戸井田三郎君       中村 拓道君    羽生田 進君       金子 みつ君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       野坂 浩賢君    村山 富市君       森井 忠良君    山本 政弘君       田中美智子君    大橋 敏雄君       坂口  力君    小宮 武喜君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         厚生省年金局長 横田 陽吉君         林野庁長官   福田 省一君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君         労働省職業訓練         局長      久野木行美君  委員外出席者         議     員 枝村 要作君         議     員 川俣健二郎君         議     員 田邊  誠君         議     員 石母田 達君         議     員 大橋 敏雄君         議     員 小宮 武喜君         農林大臣官房審         議官      白根 健也君         労働省職業安定         局失業保険課長 関  英夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     野坂 浩賢君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     山本 政弘君     ————————————— 四月八日  賃金及び物価変動に対応する公的年金給付等  の額の改定等に関する特別措置法案田邊誠君  外五名提出衆法第一九号) 同月五日  生活保護基準及び失業対策事業賃金の引上げに  関する請願小宮武喜紹介)(第三四九三  号)  同外二件(土井たか子紹介)(第三六〇三  号)  同(松尾信人紹介)(第三六〇四号)  同(村上弘紹介)(第三六〇五号)  同(横山利秋紹介)(第三六〇六号)  同外三件(吉田法晴紹介)(第三六〇七号)  同外一件(阿部喜男紹介)(第三七一二  号)  同(荒木宏紹介)(第三七一三号)  同(受田新吉紹介)(第三七一四号)  同(木下元二紹介)(第三七一五号)  同(栗田翠紹介)(第三七一六号)  同(野間友一紹介)(第三七一七号)  同(古川喜一紹介)(第三七一八号)  療術の制度化に関する請願安里積千代君紹  介)(第三四九四号)  同(大橋武夫紹介)(第三四九五号)  同外八件(加藤常太郎紹介)(第三四九六  号)  同外一件(菅野和太郎紹介)(第三四九七  号)  同外二件(木部佳昭紹介)(第三四九八号)  同外十三件(佐藤恵紹介)(第三四九九号)  同(瀬戸山三男紹介)(第三五〇〇号)  同外二件(水野清紹介)(第三五〇一号)  同(小濱新次紹介)(第三五八五号)  同(嶋崎譲紹介)(第三五八六号)  同外二件(土井たか子紹介)(第三五八七  号)  同外七件(原健三郎紹介)(第三五八八号)  同(受田新吉紹介)(第三七〇五号)  同(越智伊平紹介)(第三七〇六号)  同(神田大作紹介)(第三七〇七号)  同(竹本孫一紹介)(第三七〇八号)  失業対策事業就労者年度手当支給に関する  請願小宮武喜紹介)(第三五〇二号)  同(松尾信人紹介)(第三五九一号)  同(横山利秋紹介)(第三五九二号)  同外一件(阿部喜男紹介)(第三六九八  号)  同(受田新吉紹介)(第三六九九号)  同(木下元二紹介)(第三七〇〇号)  同(田代文久紹介)(第三七〇一号)  同(古川喜一紹介)(第三七〇二号)  失業保険制度改悪反対に関する請願阿部昭  吾君紹介)(第三五七八号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願(有島重武  君紹介)(第三五七九号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三五八〇号)  同(石田幸四郎紹介)(第三五八一号)  同(伏木和雄紹介)(第三五八二号)  同(松尾信人紹介)(第三五八三号)  同(宮澤喜一紹介)(第三五八四号)  社会福祉施設労働者労働条件改善等に関する  請願広沢直樹紹介)(第三五八九号)  身体障害者生活保障等に関する請願広沢直  樹君紹介)(第三五九〇号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願阿部昭吾紹介)(第三五九三  号)  同(石母田達紹介)(第三五九四号)  同(石母田達紹介)(第三七〇三号)  同(高田富之紹介)(第三七〇四号)  国民生活を守るための福祉政策推進に関する請  願(石田幸四郎紹介)(第三五九五号)  同(大野潔紹介)(第三五九六号)  同(小林政子紹介)(第三五九七号)  同外一件(土井たか子紹介)(第三五九八  号)  同(中澤茂一紹介)(第三五九九号)  同(野坂浩賢紹介)(第三六〇〇号)  同(芳賀貢紹介)(第三六〇一号)  同(矢野絢也君紹介)(第三六〇二号)  全国産業一律最低賃金制確立に関する請願  外四件(阿部喜男紹介)(第三七〇九号)  同(木下元二紹介)(第三七一〇号)  全国産業一律最低賃金制確立等に関する請  願(阿部喜男紹介)(第三七一一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用保険法案内閣提出第四二号)  雇用保険法の施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六四号)  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(川  俣健二郎君外九名提出衆法第一五号)  失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関  する法律の一部を改正する法律案森井忠良君  外九名提出衆法第一六号)  賃金及び物価変動に対応する公的年金給付等  の額の改定等に関する特別措置法案田邊誠君  外五名提出衆法第一九号)  労働関係基本施策に関する件(春季賃金引上  げ要求に関する問題)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 私は、党を代表しまして公共部門労働者に対する労働基本権制約、特にいま国民春闘のさなかで労働者側政府側と話しているスト権の問題で、ちょっと雇用保険法法案審議に入る前に、党を代表して聞いておきたいと思います。  もうすでに今国会が始まって以来、衆参両院予算委員会それからこの社会労働委員会等を通じて、与党、野党を問わず十四名の委員がそれぞれの委員会においてスト権の問題を取り上げてまいりました。一方、大臣承知のように、先進諸国はほとんどこういうスト規制制約は例を見ない。ILOもその是正をしばしば指摘しておるし、しかも八、九年かかった公制審答申も、昨年九月三日でしたか出ました。もう半年以上になるのですね。これが三月一日のストライキの際にはいま審議中であるということでありましたが、もうあらゆる問題は解決して、特に公共企業体の場合、公労法所管大臣労働大臣ですから、こうやってみると、何らかの方針というものを出さなければならないぎりぎりの時期にきているんじゃないか、こういうように思いまして、あえて党のほうからその考え方をただしておきたいと思います。
  4. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 このたびの予定されるゼネスト、そういう前からスト権の問題については各種委員会において段々の御議論あることは承知しております。そしてまた先生がおっしゃるような経過なども存じ上げておりますが、何さま公共部門労働者に対する基本権の問題ことに三公社現業の職員の争議権の問題は、御承知のとおり国民生活国民経済に重大な影響を及ぼすものばかりでなくて、三公社現業経営形態のあり方などを見て検討すべき多くの問題を含んでいるために非常にむずかしい問題であることは御承知のとおりであります。この問題は非常に複雑な経過をたどって今日に至っていることも御理解のとおりでございますが、ことに昨年の九月に公制審答申が出る前においてもいろいろの議論のあったところでありまして、公制審答申が出たあとにおいても、昨年の十一月及び本年の二月にILO結社自由委員会見解が出るなど、各界からいろいろな議論がなされて今日に至っているところであります。政府といたしましては、昨年九月に出た公制審答申の趣旨を尊重して、公務員問題連絡会議を中心に鋭意検討を進めてきたところでありますが、いずれにいたしましても、この問題については国民英知を結集して、わが国の国情に沿うた解決をはかるべきものと考えておりまして、国民皆さんも、また各党においても大いに御議論を展開していただきたいという感じ方を持っておるものであります。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣、それではやはり問題解決にならないだろうと思います。連絡会議でやっておるとか国民英知を結集して云々ということであれば、何かほんとうに取り組むという姿勢が政府にあるんだろうか、労働大臣はどうなんだろうか。たいがいのときには、もう機が熟したらやはり所管大臣は決裁しなければならぬと思いますよ。伝えられるところによると、自民党の内部でさえも、幹事長ですか、責任ある人たちが、公共部門労働者の一部にスト権を与えるべしと主張しておるんじゃないですか。これは単なるうわさじゃないんでしょう。それなのに、もう大体時の与党の大幹事長が与えるべきだということを談話している以上は、所管大臣はもうまとめる時期じゃないですか。これどうでしょう。しかも窓口労働省なんでしょう。これをまず確認したいのです。
  6. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いろいろな知恵をそれぞれの方面でお出しになっているののあらわれがまた幹事長の御議論じゃなかろうかと思っておりますが、労働省窓口というお話になりますと、労働省も非常に関係しておりますけれども、窓口議論になりますと、公制審答申を受けましてこの扱い等々のためには総理府に、総理府総務長官が主宰いたしまして関係省庁事務次官で構成する公務員問題連絡会議を設けております。そして公務員争議権の問題についても公制審答申処理の一環として、同会議において実は検討を加えているところでありまして、だから結局政府部内において公務員等争議権の問題の処理をまかされた立場にあるものは公務員問題連絡会議であり、閣僚としては総理府総務長官窓口となっているということを御理解いただきたいと思うのであります。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 しかし大臣公務員等ということになれば、これはもう会社でいえば総務部長みたいなものだ。しかし、一歩下がって三公社現業スト権問題は、何といったって、公労法を預っておる大臣じゃないのかな。どうです、これは。その問題だけをしぼるのなら、所管労働省が、実際問題窓口なんでしょう。総理府は、こう言っては悪いけれども、わかりはせぬよ。会社でいえば労務部長じゃないとわからないのだ。だから、この問題だけは労働大臣だと思うのだけれども、どうです。
  8. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさにそのとおりでございます。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 公労法の問題から、公共企業体等スト権の問題は労働省窓口であり、労働大臣がその責任であるということは確認しますけれども、それでは一体このスト権の問題を——先ほどから申し上げましたように、ILOの方向もきまった、公制審も出された。そうしますと、ある程度のめどをこの辺でつけてもらわないと、ここでスト権を与えるか与えないかということを私は聞くのではなくて、この問題を解決するめどをいつごろまでに考えておるかということだけを聞いて、私の持ち時間の質問を終わりますが、どうですか。
  10. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私といたしましては、各省連絡をしながら問題の合理的な解決に最善の努力を尽くしてまいりたい、こう思っております。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ困りますな。検討する、最大の努力をすると言ったって、いま春闘が行なわれているわけでしょう。そうすると、大体のスケジュールというのは大臣としてはわかっているわけでしょう。そうやってみると、大体のめどをここで示せないという法はないと思うよ、それは。社労委員会において、労働大臣窓口責任者と、ここまで確認しているのだから。どうですか、これは。
  12. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いろいろ各省の問題等々もございますし、そういう努力は私はしてみたいという感じを持っておりますが、時期とかそういうことはちょっとほかの関係もございますし、申し上げるわけにこの段階でまいらないことを御理解いただきたいと思います。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは何らかの形で、社労委員会ですから、これは与野党を問わず、やはり労働大臣所管大臣と同じように、公労法を預かっておる社労委員会であるだけに、やはりある程度そういうめどがついたら、労働大臣から意見は出されるべきだと思うのですけれども、どうですか。いかがですか、局長でもいいですけれども。それだけ聞いておきます。
  14. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御丁重な御意見、ありがとうございます。もちろん私としますれば、こうして常日ごろおつき合いしている皆さん方でございますから、進展があった場合には御相談も申し上げ、御報告も申し上げるチャンスの出てくることを、私自身も期待しております。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 終わります。
  16. 野原正勝

  17. 石母田達

    石母田委員 ただいまも質問ありましたように、いまの春闘は非常に重大な段階に来ておりまして、国民的な問題になっておるわけであります。これに対して、政府がどのような解決の態度をもって答えられるかということは、全国民が一心に注目しておるわけであります。そこで、これに関して私は第一に、今度のいわゆる統一ストライキが決行されるという事態の前で、なぜこのような事態になっているか、こういう人たちは何を要求しているか、この要求政府がどのように真剣に誠意をもって答えるか。これ以外に私は解決の道はない、こういうふうに考えておりますけれども、この点についてはどうですか。
  18. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 政府といたしましては、いわゆるスト権の問題ならば、公制審答申を三者構成で八年間もかかって、そこにむずかしい問題があることは三者でおわかりいただいて、それを受けて立って連絡会議等々で実はずっと検討さしているところであります。そういう中において、ことしじゅうに決着をつけるというふうな話がありましても、制度の問題でございますから、すぐさま右左というわけにいがない、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  19. 石母田達

    石母田委員 労働大臣質問いたしますけれども、いまスト権だけの問題になっているかどうか、そのことだけの解決でこのような事態になっているのかというふうなことでありますが、そうではない。いま四つの大体大きな柱の要求が出されているということは、皆さんも御承知のとおりです。その問題について政府はどのように答えられているのか、そこのところに解決の焦点がある。もちろんスト権の回復もその中に含まれておりますけれども、そういう点では労働大臣に、含まれた三つとか四つとかいうふうにまとめ方はありますけれども、ではどういうふうにとらえているのか。まず労働大臣は、どの問題とどの問題とどの問題を、この統一ストライキを含む大きな戦いを解決しなければならぬのかという点について答弁願いたいと思います。
  20. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それぞれ解釈のしようがあるというお話でございますけれども、低所得者の問題等々でありますれば、まず問題は第一に、大きなストをかまえたからといって直接その方々に御返事申し上げるものではなくして、議会制民主主義である、こういうけじめは一番先からつけているわけであります。しかしこの国会で論じられている低所得者の問題また大勢の方々がそれほど御関心を持っている問題、それらを重要な参考意見といたしまして、御審議いただきましたように、年度末には百三十億、そういう予算の手当てをした、しかし足りないというお話もありまして、三月一日のストライキなども行なわれたように承知しております。一方また、いろいろ賃金問題、三公社現業等々については有額回答を行なう等等、あるいは〇・三の問題等々、一つ一つたちはせっかく努力をして、国民全体の気持ちにお答えしている、こういう気持ちだけは御理解いただきたい。それを解釈するかしないかはそちらのほうの御都合ということでございますけれども、そういうふうなかまえでやっていることも御理解いただきたいと思います。
  21. 石母田達

    石母田委員 私は道正労政局長に聞きたい。あなたは特別に専門の衝に当たっておられるのだけれども、今度のいろいろな要求がありますね。春闘共闘委などが出している要求があります。その中にはいま言った低所得者の層に対する問題もあるし、あるいは最低賃金全国一律の賃金制確立の問題、つまりそうした未組織労働者の問題もあります。また相次ぐ公共料金を何としても凍結しろという要求も出されております。またインフレ、物価値上げをやめてほしいというような大きな問題も、国民とともにこれは出されている要求なんです。そうした要求について、その中には雇用保険法の問題もあるのですよ。失業雇用保障という問題が出ているのです。そうした問題についてどのように真剣に答えられるのかという点については、いまの大臣の答弁では私はちっとも納得できない。そういう点で、あなたたちは正式にそういう要求をきちんと解決するためにとらえているのかどうかということさえ、私は疑念を抱かざるを得ない。そういう点について、あなた答弁してください。
  22. 道正邦彦

    道正政府委員 総評、中立労連あるいは同盟、新産別、それぞれの立場政府にいわゆる要求書というものが提出されております。特に二月二十一日に四団体共同総理以下関係閣僚との会見が行なわれまして、その際に統一した見解も述べられたわけでございます。その際に、総理以下関係大臣からはっきり御意見の開陳がございましたように、いわゆる要求書の中にはいろいろの、国会検討をすべき立法あるいは予算にまたがる事項がある。こういうものはいわゆる団交式政府組合との話し合いの中で解決すべき問題ではないというけじめをはっきりつけるということは、当初から総理以下関係閣僚が言われているわけでございます。ただ、四団体としていろいろそういう意見を言われるということについては、参考として十分承っておくというけじめをつけながら、いままで労働組合との会談に応じてきているわけでございます。低所得者対策等はすぐれて国会事項でございます。したがいまして、最近におきましては組合皆さんも、われわれに回答するという必要はない、いかなる場であってもよろしい、国会でその政府意見をおっしゃっていただいてもけっこうだ、こういうふうに言っておられます。そういうけじめ組合皆さんも御理解をいただくようになったというふうに思っております。一方、たとえば最低賃金の問題であるとか、すぐれて労働条件に関連する問題がある。こういう問題につきましては労働大臣関係団体とお会いになりましたし、また細部につきましては事務当局話し合いが必要でございますので、何回となくすでに組合代表者実務家でございますけれども、そういう方々と私どもの関係局長との間で会談が重ねられているわけでございまして、けじめをつけながら誠意をもって政府としては対処している考えでございます。
  23. 石母田達

    石母田委員 私は、何回会ったかが問題じゃないんです。問題は、出されているそういう要求というものは、今度の春闘の特徴を見ましても、単にそこの関係する労働者というだけではなく、その労働者を含む国民全体も非常に関心を持っている要求も出されているわけです。たとえば公共料金値上げなんかそうでしょう。電力も上がる。私鉄も上がるかもしれぬ。ガスも上がるかもしれぬ。十月にはお米も、国鉄の運賃の値上げが解除される。こういう事態の中で公共料金値上げを押えたいというのは、労働者だけではなくて、いま国民全体の切実な要求ですよ。そういう問題について、形式やあるいは会った数ではなくて、こうした出されている問題について政府として一体どういうふうに考え、どういうふうに答えようとしているのかという中身がなかったら、私はこの問題は解決しないと思うのです。労働大臣、その点についてどうなんですか。はっきりイエスかノーか言ってください。
  24. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 公共料金を二年間ストップせよという御意見のあることは万々承知しております。しかしながら、そういう問題等々については国会においてそれぞれ具体的な問題について皆さんから御審議をいただき、また政府全体は国民生活の全体を考えながら将来のことを考えているということで、一つ一つについてはそのときどき皆さん方に御報告しているところでございます。
  25. 石母田達

    石母田委員 ですから、その出された問題についてわれわれ自身も、年金スライドを緊急的にやるために四党の共同提案もきょう委員会に付託されたそうですし、あるいはわが党自身も、この間の質問の中で私が提起したように、ことしだけは緊急に当月払い制や、あるいはまた物価変動に伴うスライドを凍結さして、政策改定率をきめて、事務上の障害を乗り越えて、一日でも早くより多くの収入を年金受給者に与える、こういうふうに各党が、われわれも真剣になって解決のために努力しているんです。だから政府自身も、どこの場で解決する——これは国会の場で解決するものもあるでしょう。あるいは皆さん方の当事者だけの解決もあるでしょう。とにかく出されている問題が切実な緊急な問題が多いですから、これに真剣にこたえていくということがまずこの解決の前提なんだということを、くどいようですけれども、もう一度その点の努力をすることを、政府自身として、労働大臣としてやることを言明していただきたいと思います。
  26. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ゼネスト国民全体の生活に非常に影響力がございますから、違法なるそういうストライキ、ある場合にはスト権を持っておったにしろ、なるべくそういうものは実施してもらいたくないということを実はお願いしながら、一方においては私たちのほうでできる限りのことは、たとえば個別物資の問題等々、政府全体の問題として弱者救済のいろんな問題等々についてもいままで私のほうでもいささか努力をしてまいったつもりであります。しかしながら、かりにこれだけのものが、自分たちの言うものが絶対通らぬうちは何でもかんでもやるんだということであると、これはとても話にならぬのじゃないかというふうに私は心配しているわけであります。やはり議会政治ということでありますし、話し合いということでありますし、そして自分要求したものは全部善であるという形だけでもいかぬのじゃないかという感じを私は持っておりますことも御理解いただきたいと思います。
  27. 石母田達

    石母田委員 全部が全部なんといういかにも極端な論理になっていますけれども、実際はいま出されている諸要求一つ一つについて何を一体答えてきたのかというと、きわめて不十分なものだと私は思う。このことで解決するなんという問題じゃない。むしろ政府が言っていることは、スト権の、あるいはストライキに対する違法呼ばわり、私もこの間指摘したように、今度は民間の労働組合の政治スト、これを含んで政治ストは違法だ。そしてそれに対しては損害賠償請求権あるいは刑事罰の免責条項をはずすというような、これまでの歴代の反動内閣よりももっときわめて反動的な見解をこの場で正式見解、統一見解として述べている。そして国鉄の労働組合を最近また処分したですね。こういうふうなことをやることが、この民主主義の背骨といわれている、また先進的な国では当然認められているこのストライキ権に対して、このような政府の弾圧的な、抑圧的な、これを認めないという、こういうところからすでに百数十万人の官公労働者の不当な処分が行なわれている。その上にまたこうした民間労組のストライキの弾圧も含めて、スト権に対する、政治ストに対して否定する、あるいは特別の措置によってこれを処分するというようなこういう反動的な見解を出すということは、まさに私は労働者の基本的な権利に対する、スト権に対する挑戦だけではなくて、国民の持つ、戦後の憲法の中でわれわれがかちえてきた、国民が大きな犠牲においてかちえた民主主義そのものに対する挑戦だ。このようなやり方で絶対に今度の問題は解決することはできないと何よりも私は強調しますけれども、この要求解決に真剣な、誠意を持ってこれを解決する、これが前提であり、そしてこのスト権の問題についても政府自身がそういう反動的な、弾圧的な態度を直ちに撤回させることが何よりの解決の道であることを私はあらためて強調したいと思います。この点についての労働大臣見解を願いたいと思います。
  28. 道正邦彦

    道正政府委員 政治ストに関連する御質問が若干ございましたので申し上げますが、政治ストは、公務員公共企業体等の職員が行なう場合はもちろんのこと、民間の組合が行なっても違法でございます。この点はもう最高裁の確定した判決でございまして、行政当局としてその最高裁の判決に従って処理を進めるということは、私はこれは当然のことか、もし逆にそういうことをしなければ行政当局として怠慢であるというふうにおしかりをいただく性質のものではないかと思います。ただし、いわゆる国民要求その他の問題につきましては、先生御指摘のように、現在の状況から見て組合方々が言われることを一がいに否定するものではございません。ただ、方法、手段としてはストに訴えるということはいかがなものであろうか。筋道を立て、けじめをつけた上でそれぞれで処置をすべき性質のものであり、そういうけじめをつけた上で政府としては誠意を持って対処しているわけでございます。
  29. 石母田達

    石母田委員 私は、この問題について再三ここではあなたと論戦いたしました。そして、このストライキ権そのものの禁止があのマッカーサー時代の、いわゆるマッカーサー司令官直接の書簡に基づくこうした指導によって、直接の指示によってつくられたものである。また、このストライキ禁止の問題の、全面一律禁止の問題については、これを否定する最高裁の判決もこれまた出ていることも、あなたも御承知のとおりだと思うのです。そういう中でこの問題を解決するという、諸外国の経験からいっても、前向きに解決するのではなくて、長い間解決を引き延ばしてきたどころか、逆にこれを不当、大量処分によってどんどんと問題を大きくして、全面的な一律禁止をいまだに解こうとしない、全面的にこれを否定している、こういう立場見解にしがみついている。  いままで政治ストというものの見解、どういうものが政治ストであるか。政治ストといっても一つ一つこれは違法ではない、こういう見解政府部内でも、正式の文書の中にも書かれてある。ところが、この間は、昭和二十七年、つまりあの破防法時代のときの最も反動的な暗黒のときに出されたそういう見解を、そのままあなたは持ち出してきて、福祉手当三万円の要求も、あるいは国会できめる法律に対するいろいろな諸要求も、みんなこれは使用者が直接の処分権を持たない案件はすべて政治的な要求なんだ。これを貫徹するためのストライキ行動はすべて政治ストなんだということによって、三・一ストも、今回のこうしたストライキも、みんなこれは政治ストなんだ。これを民間含めて政治ストとして違法とし、これに対する法に基づく特別の措置をとるのだ、こういう弾圧的な態度は、まさに私は先ほどから強調しているストライキ権、憲法で保障された労働の基本権、そしてまた国民の民主主義に対する重大な挑戦だといわざるを得ません。今度の解決にあらためて出されている諸問題、諸要求について真剣に政府が答えること、これ以外に解決の道はない。そうして同時に、この中身の一つの大きな柱とし、て組まれているスト権に対しても、これまでの反動的な見解、あるいは占領の遺産としてのそうした反動的な見解を直ちに撤回して、そうして大量の処分その他の問題についてもこれを撤回して、スト権の回復を認めるように心から要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  30. 野原正勝

  31. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 空前の交通ゼネスト突入必至という、いわゆる深刻な状態か予想されておりますその日を目前にいたしまして、正直言いまして、国民皆さんの心境というのは、きわめて複雑なものであろうと思うのであります。何とかならないものだろうか。政府努力している、努力していると言うものの、実際問題として労働者側国民的な要求をほんとうに受け入れていない。これでは労働者側が納得するわけにもいかない、ゼネスト突入、こういうことになっていかざるを得ないことはわかるじゃないか、もっと政府は真剣にこれを受けとめていったらどうだ、こういう意見方々から出ているわけでございますが、まず大臣のこれに対する所信をお伺いしたいと思います。
  32. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生がゼネストを御心配いただいておりますように、私並びに国民全体も心配だと思います。けさ私は、東京で発行される新聞全部、五時半から起きて八時半までみんな見てまいりました。座談会もあります。賛成の諸君もあります。しかしながら、私たちはどうなるんだという声もあります。種々雑多だと思うのです。そういう中から、やはりゼネストというものは回避してもらいたい。やる方々もそういう気持ちだろうと思うのです。しかし御要求が、いまもだんだん話のありましたように、国民生活に非常にむずかしくて、歴史が非常に古くて、将来影響するものがある。それをあしたでも何でもすぐとるんだ、百三十億出しても、三百億でなければだめだというふうな形で、いささかの努力をお認めいただくようなそういうことがなければ、ちょっとこれは私は困ったことだというふうに感じております。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 といって、その後でも社労の委員皆さん方、あるいは国会の場においても、弱者救済等々の問題は専門の大臣を囲んでいろいろな話し合いができている、こういうふうな努力もあるわけです。あるいはまた、こうしたときに有額回答を二年間続け、そうして三公社現業が回答したというふうなことも一つの努力のあらわれだと私は思っているんです。あるいはまた、年度末の〇・三も今度ちゃんと人事院勧告で出たということも、やっていない、何やってもやっていないということもいえるでしょうけれども、やっているという気持ちをいささかでもお認めいただく中に私はスト回避のいろいろな話し合いというのはできるんじゃないか、そういう感じさえ持っているのでありまして、まさに先生が深憂されると同時に国民全体も深憂しているという感じ方を持って、何とかひとつ私はこういうときこそ、第二の国難だとよく申しておりましたのは実はこのことなんです。連帯感以外ない。マッカーサーの話が出ましたが、日本にいまマッカーサーはいないのです。そういうときにお互いの連帯感で何とかこういう苦しい経済情勢のときに、日本に混乱を起こしたんじゃかなわぬという気持ちでおりまして、いまから先も、最後まで見守りながら努力してみたいという気持ちでございます。
  33. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は政府努力していないとは言わないんです。一生懸命努力していらっしゃるだろうけれども、出てくる結果を見たときに、その努力が単なるゼスチュア的ではないか。言うならば公共企業体の単純平均の一八・七%でしたか、それから一万七千七百二十八円、定昇を含む、きわめて低いものが回答されたというわけですね。要するに労働者側要求の半分程度の回答ということになって、その舞台は移ったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、こういうことだから結局ゼネスト回避のゼスチュア的な回答だったんだというようなことなんですね。そういう受け取り方をしてまいりますので、いよいよ労働者側はいわゆる不信感を深めるんではないか、こういうふうに私は思うのですが、いかがなものでしょう。
  34. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 三公社現業に対する各公社総裁からの有額回答、額が少ないとおっしゃいますけれども、多いにこしたことはないでしょうけれども、政府の財政等々もありますので、従来ですと、これは私鉄のものが出たのを参考にして三公社現業が率をきめる、これは従来はずっとそのままだったんです。私の承知するところでは、今回は初めて私鉄を見ながらも、それより上の、私鉄が、見合うのが一七・五のものを、三公社現業が、額が少ないかもしらぬけれども新例として一八・七出した。そういうふうにやはり前進している。このワク一つ破るだけでもたいへんなことであることは、国会皆さん方はおわかりのとおり。そういうふうな努力をしていることも、額が少ないというところでおしかりをいただくのは、はなはだ私は——そういうところも御理解いただきたい。
  35. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 限られた時間ですからあれですけれども、確かに国民春闘国民的な要求をぶつけながら戦っているわけでございますが、低所得者対策といいますか、低所得者層に対する措置あるいは賃金問題に対しては、いま大臣も一生懸命答弁なさっておりますので、一応その努力のあとは私も認めましょう。しかし、問題はスト権回復の問題なんですね。これは総理でしたか、いまの公務員についてはスト権がないにもかかわらず、毎年ストをやっておる、ましてやスト権を与えたらどんなになるだろうかと御心配なさっておるようでございますが、これは実は私は反対だと思うのです。当然与えられていたスト権が剥奪された、そういうことでやむを得ない戦いの姿になっておるわけでございまして、そういう非常識な組合の幹部ばかりではないわけでございまして、与えるならば、それは国民皆さんがなるほどと納得いくような立場での行使しかしない、私こう思うのですがね。だから公務員に対するスト権の回復は一日も早い姿で解決すべきである、そのためにはもっと掘り下げた具体的な政府の姿勢を示さなければならぬのじゃないか、こう思うのでございますが、いかがなものですか。
  36. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、日本民族というのはほんとうは自己規制のきいた民族だと思っておるのです。それですから日本はここまできたと思っておるのです。そういう良識を信用しながら問題を見ているわけです。  そこで私は、先生の御意見を、こういう大事なときに非常にりっぱな参考になる御意見と傾聴いたします。そしていままでも大ぜいの方々がお見えになりますと、一般論としてスト権の問題、全面回復というふうな話なども出ますが、きょうの午後は公労協の幹部諸君とお会いしますから、そういうときにまただんだんの話をお伺いしたい、こう思っております。
  37. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 御承知のように公制審は、三論併記という内容ではございましたけれども、全体としてやはり公務員に対するスト権の回復は積極的に進めていくべきであるというふうに示唆していると私は読み取りました。したがいまして、この公務員に対するスト権の問題、今後積極的な姿勢で取り組まれると私は思いますけれども、いずれにしても、たばこあるいはアルコール、印刷、造幣についてはというようなことで、橋本幹事長でしたか、すでにお話しをなさっておるような具体的な話もこれあり、その辺も踏まえた上で、もっと、労働者側がなるほど政府がいま取り組もうとしている姿は具体性がある、あるいは真剣味が出てきた、こういうふうに理解できるようなあり方で進んでいただきたい、こう思うのですけれども、いかがですか。
  38. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 こういう大事なときでございますから、従来出てきたいろんな議論などを私が自分でよく勉強しながら、関係方面ともまた話し合いなり相談なり、いろいろと協議いたしてみたい、こう思います。
  39. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかくわれわれも、ストライキ権があるからストライキをやるというような単純な考えではない。やはり国民的な切実な要望を実現したい、こういう労働者側気持ちも十分くみ取られた上で今後の会談に臨んでいただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  40. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 次に、雇用保険法案雇用保険法の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案国有林労働者雇用の安定に関する法律案及び失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出があっておりますので、順次これを許します。島本虎三君。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 雇用保険法案、この問題について、私も、きょう、与えられた時間の間、十分に皆さんの真意をお尋ねし、この法案に対して国民にこれを知ってもらいたい、こう思う次第であります。まず、私自身も本案の内容にすぐ入るつもりでおりましたが、大体大臣のこれに対する決意を先に聞いておかなければならない問題がございます。と申しますのは、この中にいろいろ答申を受けてございます。総理府の社会保障制度審議会の答申、それから中央職業安定審議会の答申、その他の答申を受けておるのであります。大臣としては、この答申に対してどのようなお考えを持って本法案の立案に当たられたでしょうか。この答申というものに対する受けとめ方について、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  42. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生御案内のように、法案を提出するにあたって各種審議会に諮問しますその意味というものは、作成する場合に、学識経験者や利害関係者の意見を十分聞いて、その内容の最善をはかるために万全を期す、そういう深い手配のものだというのは承知しております。
  43. 島本虎三

    ○島本委員 その答申法律の内容については、どういうふうにお考えでございましょう。
  44. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 法案を国会提出いたしますにつきましては、法律上も、審議会の答申を得てその上で法案を提出するように義務づけられております。私どもは今回の雇用保険法案につきましては、中央職業安定審議会、中央職業訓練審議会の答申をいただき、さらに社会保障制度審議会の答申をいただいて、その上で法案を提出いたしたわけでございますが、各審議会とも慎重御審議をいただきまして、その審議の過程あるいはその答申に盛られたその御趣旨に沿いまして、私ども事務当局といたしましてこの審議答申の内容を受けとめ切れる限りにおきまして十分内容を盛り込んで法案を提出いたしたわけでございます。
  45. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も、審議会のいろいろ御審議の間の御議論というものを労働省が原案を作成している間に盛り込んでいるということは、途中で何べんとなく報告を聞いて、役所を御信用申し上げ、また審議会の御答申というものを尊重している、こういうふうに理解しております。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 私は特に前からのいきさつが、本委員会においても、各種審議会からの答申を形式上受けて、内容はほとんど顧みておらないという実態に遭遇しているわけです。したがって、そのようなことはあってはなりませんし、ことに答申は尊重するたてまえであるということは申すまでもございませんし、政府はこの社会保障制度審議会、これはもう総理府の諮問機関になっておるわけであります。その答申を尊重するということは、これは予算委員会でも、昭和四十九年二月二十日、ここにおります八木委員質問に答えて、三木副総理政府を代表してはっきり答弁しているわけであります。ですから形式的にこういうようなものを取り扱ってはならないのだ、これが私の考えなんです。これはもう形式的に取り扱ったのじゃないという答弁があったわけですが、ほんとうにこれはそうでございましょうか。私は、そうだとするならば、そういう答弁があったからいいのでありますけれども、それならばこの社会保障制度審議会の答申はいつございましたか。これは事務当局でいいです。
  47. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 二月の八日に答申をいただいております。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 閣議決定はいつでございました。
  49. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 二月の八日の深夜でございます。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 制度審議会の答申はいつでした。
  51. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、社会保障制度審議会の答申は二月八日でございます。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 時間を聞いているのですがね。これは時間は私のほうから申し上げましょうか。ここに御本人もおられることですからよく知っているのです。社会保障制度審議会のほうでは午後六時三十分ごろ本案がまとまって、そして午後八時三十分に答申をされて、そしてその晩のうちに持ち回り閣議できめて、急遽二月十二日に提出したというのが実態でございましょう。間違いございませんか。
  53. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 そのとおりでございます。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 その間に内容を審議する期間が、二時間で十分あるのですか。二時間であるとするならば、これはりっぱなものでありますが、私はそんなあれは全然考えておらない、こういうように思っておるのですが、これはあまりに形式的であって、内容を尊重するということになっておらないじゃありませんか。これに対して、内容を全部審議し、本案に盛ったのである、こういうようなことであってほしいのです。こういうような経過で出されておるのですか。これで内容を盛ったと責任を持って言えますか。
  55. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 外見的な形の上では確かに二月八日の八時に私ども答申をいただきまして、その後その日の持ち回り閣議で法案の決定をいたしたわけでございます。社会保障制度審議会におきましては、前後七回にわたって法案の審議を重ねていただいたわけでございます。その審議の過程におきまして、それぞれのおもな条項につきましていろいろと御議論がかわされ、御意見が開陳されたわけでございます。私どもはこの法案の提出期限が、国会の申し合わせで一応二月八日ということになっておりましたので、その間審議会の審議の御経過を私ども拝聴しながら、たとえば一つの例を申し上げますと、短期受給者の保険料の特例につきまして私ども事務当局の当初諮問申し上げました原案では、千分の四十三ということになっておったわけでございます。それがこの提出いたしました法案の中では千分の十八になっております。これはいまお話にございましたように、夜の八時に答申をいただいて、その晩の持ち回り閣議でやるまでの間に修正したのはあまりにも軽軽し過ぎるのではないかというお話でございますし、また手続的に間に合わなかったんじゃないかというお話でございますが、私どもはこの審議会の審議の過程で御意見を十分拝聴しながらそれをもとにして法案の修正を逐次準備をいたしております。答申をいただいた段階で最終決定をして、急遽お願いいたしまして持ち回り閣議で最終決定をいたしました。その他各項目につきまして審議会の御意見、最終御答申を十分予定しながら法案の手直しをいたしたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては答申の中で法案に手を加えるものは手直しをし、その後の行政運営の面で尊重すべき御意見は今後運用の面で十分配慮をいたしながら、より制度の効果的な運営をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  56. 島本虎三

    ○島本委員 ことにこの社会保障制度審議会、これは総理大臣の任命による諮問機関なんです。そして各種の諮問機関のうちでも一番私としては尊重しなければならないような、こういうような答申を出されておるものである。このことは私よく承知しているのです。この答申は内容がほとんど否定的じゃありませんか。否定的なんですよ。それを肯定的に書きかえて出してきています。  では伺いますが、この中で審議会の答申と矛盾した点があった場合は、労働省は進んでこの審議会の意を体して修正する準備がある、また、だめだというものに対しては削除する準備がある、再考せいというならばもう一回これを再考する準備がある、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  57. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 経過については局長が御答弁したとおりでございます。しかし国会の御審議でございますから、国会の御審議は私たちは尊重してまいります。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 その国会審議に入る前に、制度審からの答申の尊重ということなんです。尊重するといいながら内容が相反しているわけです。そういう点があるわけです。否定的なわけです、それを肯定的にして出してきているのです。ですからこの答申と相そぐわない点があったならば、これを答申の線に合わせて十分再考する用意があるかないかと聞いているのです。したがいまして、これはかなえの軽重はどっちなんだ。法律案をやる、そして答申を受けて立つ、答申なんかどうでもいいんだ、法律を出したからこれを国会審議してくれ、こういうのか、それとも答申をちゃんとりっぱに尊重して出しました、したがって、これはりっぱなものですから十分討議してくれ、こういうなら意味がある。そこなんですよ。これは大臣の権威にもかかわる。したがって、これは大臣の決意を申し述べてください。
  59. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御答申をいただく間にいろいろ御議論のあることは当然でございます。事務当局から申し上げたように、審議会のそういういろいろな御議論等々を途中、途中ではさみながら、労働省の原案に手入れしながらやってきたということも御理解いただきたいと思うのです。一般的な原則論といたしまして、そういう審議会の御答申というものは、私たちはそれを大きな理想として——どの審議会の場合でもそうですが、大きな理想としてこれを尊重し、その中に行政というものをはめ込んでいくというところに前進があるというふうに理解しております。
  60. 島本虎三

    ○島本委員 では今後それらの答申と相矛盾し、相反する点があったならば、そういう点は労働省としても十分配慮してもらいたい。後ほどこれを一つ一つ具体的に指摘さしてもらいたい、こう思うわけです。  まず法制上の問題点として、適用問題に入りたいと思います。この適用は適用区域の問題と被保険者の範囲の問題、この二つがございます。適用区域の問題、四十二条、四十三条がございます。この中で農林等の一部を除いてこれは全面適用になっているわけであります。日雇い失業保険の場合、全面適用にそぐわない面があるわけであります。この調整をどうするのか、日雇い被保険者の求職給付については区域と、適用事業の両面からの制限があるわけであります。特に適用区域については労働大臣の指定ということになっておるわけであります。これは事務当局はよく知っておるわけであります。したがいまして、いまここで一応聞いてみたいものは、順序として雇用保険法案においては全産業雇用労働者に適用するということがたてまえになっております。実質的には農林水産業の一部は当分の間任意適用のままである、こういうようなことにされております。第五条では人を使ったものは適用事業所と認めて全面適用するといいながらも、附則第三条ではこれをばっさりはずす方法を講じておるわけであります。暫定的にといいながらも農林水産業の一部を任意適用にしたということは、これはどういうわけでございますか。
  61. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 御指摘のように、今回の雇用保険法におきましては、全産業すべての労働者失業給付を行なうための雇用保険を適用することにいたしております。ただ、例外的に二つの問題がございまして、一つは御指摘のように日雇い労働者の日雇い給付の特例につきましては、これは実際問題として山間僻地等で日々給付を受けるための手続がとれない、こういう人につきましては強制適用にいたしますことによってかえって不利な状態を生み出すことになります。そういった日々給付の手続的な措置がとれる限りにおいては全面適用にいたします。したがいまして、その範囲外にありますものにつきましては、地理的、物理的条件から適用の不可能なものについては当然法的にはずすことにいたしておるわけでございます。  もう一つの問題は、農林水産業でございますが、四十四年の法律改正におきまして、国会の修正で農林水産業への全面適用に必要な措置をとることが義務づけられております。私どもはこの条項に基づきまして、今回農林水産業につきましても全面適用の措置を講ずることにいたしたわけでございます。ただ、農林水産業の場合は一般産業の場合と異なりまして、雇用の内容、実態あるいは賃金等の条件、そういったものが一般の産業と比較いたしまして、雇用関係等からいたしましてきわめて不明確なものがまだ実態として多うございます。したがいまして、そういう実態からいたしまして、一定の範囲のものについては、さしあたり暫定的に農林水産業の適用状況を逐次把握することから始めましてしばらくの間は任意適用にする、こういう措置をとっておりますが、ただ暫定的任意適用にする措置にいたしましても、従来の社会保険は法律上当然に任意適用になっておりまして、これを強制適用に、当然適用に切りかえますにつきましては法律改正を必要とする、こういうたてまえになっておりますのに反しまして、今回の雇用保険法におきましては一応全面適用の法律条項を設けました上で、一部分はただいま御指摘の附則の条項によって政令で一定の範囲のものを任意適用にする。したがいまして法律改正を必要としないで、ある一定の条件を満たしますれば当然全面適用になる、こういう積極的な前向きの体系をとることにいたしたわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、今後、農林水産業の零細な五人未満の私企業の実態を十分行政指導によりまして雇用保険になじむような体制をとってまいることによりまして、一日も早く全面適用に踏み切れるようにやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 労働省の好きなことばに当分の間ということばがあります。当分の間というとわれわれはほんの少しの間、こういうふうに解釈するのでありますけれども、労働省は九十九年間を想定して当分の間、こういうような考えもないわけではないと思います。ここにもまた当分の間ということばが出てきておるわけであります。当分の間を付する意味、これは十分納得できません。というのは、そういうような状態に現在まだ労働省がある、職安行政があるということ自体は行政の手おくれなんです。ですから私はそれを頭から認めて進むわけにまいりません。ただ、当分の間という好きなことば、労働省はこれはいつまでを目途として当分の間というのか。古いことばに何とかの租借地は九十九年をもって当分の間という、こういうのがありますが、半永久的に任意適用事業のままにしておくこと、これが当分の間なのか。この際、何年を考えているのか、これをはっきりしようじゃありませんか、大臣
  63. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに先生の御指摘のように、法律で当分の間かくかくするということになりますと、いま申し上げましたように、その法律条項を改正しない限り三十年でも五十年でもあるいは九十九年当分の間が続くことになるかと思います。したがいまして、私どもはそういうことでなくて、積極的に前向きに、ほんとうの意味での完全全面適用するということを念願いたしておりますだけに、今回の条項におきましては、本文におきましては全面適用し、附則で、政令で定めるところによって一定のものをはずし得るということで、逆に消極的に規定いたしておるわけでございます。したがって本委員会におきまして法律改正の議を経ないで、審議会等で政令改正をやることによりまして全面適用にいつでもできる、こういう前向きの姿勢をとっておるわけでございます。そこで私どもといたしましては、一年早めて農林水産業の適用を踏み切った私どもの誠意、これをお考えいただきますと御理解いただけると思いますが、できるだけ早い機会に全面適用いたしたい。一応の目途としては、四十四年の法律改正で農林水産業の適用を六年間猶予期間をいただいておるわけでございますが、私どもはその六年を経ないで、できれば最大限五年ぐらいでは、それを一年でも二年でも短縮して三年ぐらいででもできるようになれば幸いだ、私どもはこういう決意で臨む覚悟でおります。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 小野田少尉がルバング島から帰ってきて、三十年。三十年も当分の間。そうするといまここに出た六年、五年、三年、これも三年の二倍が六年ですから、そういう意味で三年を設定すると六年というのは二倍に当たる。まことに重宝なことばが当分の間。したがってこの際、好きな当分の間、きらいなはっきりした年限、これをひとつきちっと当てはめておいて努力目標にしてがんばろうじゃありませんか。したがって三年以内に当然これは適用する、そのために努力する。大臣、これをあなたから皆さんに号令してやって、当分の間の決着をつけたいと思うのです。これは大臣、あなたがやればいいのです。あなたが言えばいいのです。
  65. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもの姿勢はもう十分御理解いただけると思いますが、五十一年の一月末までに適用措置をとれと義務づけられたものを、あえて私ども一年繰り上げて全面適用に踏み切っているわけでございます。その姿勢からも私どもの決意のほどを御理解いただきたいと思います。
  66. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 このとおり労働省は熱心でございますので、その辺の事情をひとつ御理解いただきながら御審議願いたいと思います。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 スト権の問題をはじめとして先ほどなされたこの熱心の度合いは、まだものさしでいえば短い。それをもって認めろと言っても困るのです。九十九年から三十年から六年から五年から三年、そこまで出たんです。台湾のバナナのたたき売りじゃないのです。ですからこの際、一番労働者誠意をもってこたえる、国民のために労働省誠意を示すのは、三年ということばが出たから、三年以内にひとつこれを全面適用にするように努力する、目標にしてがんばる、したがって各員奮励努力せよと言えばいいでしょう、大臣。当然ではありませんか。大臣の決意を伺います。
  68. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 あなたから六年ということもお話が出たり、九十九年じゃなくて六年ということも御理解いただいていますから、おっしゃる方向に向かって努力しよう、こう思っております。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 それは三年ですね。はいと言ってください。
  70. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 そういう方向に向かって努力したいと思います。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 次に進みます。  そうすると、この日雇い労働者の場合適用区域が限定されている、このことを先ほど申し上げました。そういうような場合には、これは現在の指定はどうなっているのでございましょうか。職業安定所が幾つあって、市町村の適用区域が幾つあるのでしょうか。そして同時に、自治体の数は現在日本国じゅうに幾つありますか。
  72. 関英夫

    ○関説明員 私から事務的にお答えさせていただきたいと思います。  現在日雇いの適用区域となっております市町村の数は、安定所の所在する市町村あるいはその隣接市町村、そういったものでございますが、本年の四月一日現在で千八百十三となっております。全市町村数に占める割合は五五%でございますが、人口で見ますと、適用市町村の人口は全人口の九割程度にのぼっているというふうに推測しております。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 自治体の数は幾つありますか。五五%と出るのですから客体がはっきりしておるんじゃありませんか。
  74. 関英夫

    ○関説明員 三千二百九十四と思っております。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 三千四百じゃありませんか。沖繩も入っていますか。
  76. 関英夫

    ○関説明員 手元にあります資料では三千二百九十四というのが……。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 三千四百幾らかになっていませんか。
  78. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 市町村の数はあとでまた正確に調べてみたいと思います。私どもの資料では三千二百九十四、市町村合併等がありまして数が少なくなっております。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 この自治体の数を後ほど知らしていただきたいと思います。  そういたしますと、現在自治体の指定は職業安定所約四百八十一カ所、それに対して千八百十三の市町村が適用区域になっている。そのために日雇い労働者が第四十二条の規定に該当する者であってもそれに乗れない者が制度的に生ずるおそれがないか、これがやはり私としては大きい問題じゃなかろうかと思うのであります。したがいまして日雇い労働者の場合、適用区域が限定されておりますけれども、市町村の数と労働者の数、職業安定所、これらを見て、適用状況や適用率は一体どういうふうになっていますか。この際はっきりお知らせ願いたいと思います。
  80. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、全市町村の中では約六割程度の市町村が区域としては適用になっております。ただ、安定所あるいは出張所、分室等、日雇い労働被保険者の取り扱いが事実上不可能な、物理的にできない管轄外の区域についてのみ非適用ということになっております。したがいまして、一般的に考えますと、山間僻地、比較的人口の少ない地域が適用を除外されております関係上、ただいま申し上げましたように、人口の割合で申しますと約九〇%が適用区域内に含まれております。したがいまして、ごく例外的なものが日雇い労働保険の対象外になる、こういうふうにお考えいただきたいと思います。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 その九〇%もまた私は問題があると思っておりますが、一応はその点にとどめておいてもらって、私のいまはっきりさしてもらいたいことは、残った一〇%の中に重大な救済すべき人たちがおったらたいへんなのであります。そういうようなことからして、日の当たらないようなところがないようなこれが行政措置でなければなりません。したがって、九〇%だからいいのだ、こういうような安直な気持ちにならないように、この一〇%のほうがむしろ大きい、こういうようなことを御忠告しておきたい、こう思うのであります。  それと同時に、適用地域を労働大臣が指定する場合は、いままで事前に中央職安審議会のほうに意見を聞いて労働省が告示で明らかにする、こういうようなことになっておったのですが、今回の改正で審議会の意見ははずされておりますが、なぜこういうような民主的な手段を省略させるようにしたのか、はずしたのか、この点はどうでしょうか。
  82. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 前段に御指摘になりましたその一〇%も問題だ、確かにおっしゃるとおりでございます。ただ、私どものほうでは、現在の安定所なり出張所なり分室なり、事務手続、事務処理の可能な限りにおいては最大限に適用を拡大してまいるわけでございますが、今回のこの新しい雇用保険制度が発足しました以後、これに伴いまして安定機関の機能、あり方、その所在地等につきましても、より実態に即するような改革をはかってまいりたい。そうすることによりまして、この一〇%が五%に、あるいはほんとうの意味での全部手を広げられるような体制をとるべく私どもは努力してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから適用区域の指定につきまして、従来審議会に諮問いたしました上で決定いたしておりましたのを今回はずしました理由は、審議会で今回の雇用保険法案の御審議をいただきます過程で、だんだんといろいろ御審議いただきましたが、その中で、形式的に審議会の意見を求めるというような事項はできるだけはずすように、法律事項あるいは省令事項でなくても、行政運営上重要な事項は当然審議会の諮問をとるべきである、こういう御意見、御指摘がございましたので、こういう地域の指定等につきましては、その基準を明確にいたしまして、その基準をきめることについて審議会の御意見をいろいろと伺って、その御答申によって定められた基準によってあとは形式的に手続を進める、こういうことに取り計らったわけで一ございまして、決してこういうことは審議会を軽視したということではございませんので、御理解いただきたいと思います。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 どうもその内容は私は理解することはできないです。軽視したのでなかったら、いままでと同じようにしておけばいいのです。はずしておいて、軽視したことではないのだ、そして尊重してはずした、こういうようなことですか。はずすことは尊重することになる、こういうようなことなんですか。では、いままではずさないでやっていることは、まことに不遜な態度であった、こういうようなことになるのですか。それとも極端な情勢の変化があるのですか。どうもこの辺は明確でありません。
  84. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 こういうごくきわめて形式的な問題は審議会にかけるなという審議会の御意見がございましたので、そのもとになります基準のようなものは必ずかける、審議会の御意見を伺ってきめる、それをもとにした形式的な手続は審議会の意見を求める必要はないという審議会の御意見でございますので、その審議会の御意見によりましてこういう処置をいたしたわけでございます。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 あとで審議会の問題はあわせて全部やる機会をひとつつくりたいと思います。  まず、農林水産業にも日雇い労働者がおります。都市にも日雇い労働者がおります。このうち、農林水産業関係の日雇い労働者の数、これはどういうような状態にあるか、はっきりつかんでございましょうか。で、この法案で適用できる程度、どの程度を適用対象とするように考えておりますか。
  86. 関英夫

    ○関説明員 農林水産業に従事いたします日雇い労働者の数は、いろいろの統計がございまして非常に把握が困難でございますが、四十七年の労働力調査によりますと約十二万人ということになっております。ただ、その十二万人のすべての労働者が日雇い労働者として農林水産業に従事することを常態といいますか、ずっと続けた通常の形としているとも限りません。また、日雇い労働者でありましても、前二月の各月において、十八日以上同一の事業主のところで働きますと、一般の被保険者となるというような形を従来からとっておりますので、そういう意味で、今度農林水産業に適用を拡大することによって、どの程度農林水産業の日雇い労働被保険者がふえるかというのを推測するのは、現時点では非常に困難な問題でございます。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 それで、せっかく五条でこれを認め、附則でも、その困難な事情からして、附則第三条でこれを削る、こういうような便宜法を設け、そして運用は政令によって労働省の一手販売、こういうような一つの強権の発動ができるような仕組みになっているわけであります。そういたしますと、いままでは、山は適用にならないものであり、そして保険がかけられないと思っておる人が多かったわけです。したがってこれからは、今度は被保険者として給付を受ける条件があるわけであります。したがって、給付を受ける条件にありながら、適用地域の問題で今度ははねられてしまう、こういうようなことであっては、これは理不尽だといわざるを得ないと思うのであります。したがって、恵まれない人に対しては救いの手を差し伸べる、これがやはり法の精神であり、行政の実態でなければならないのだ、こう思うわけであります。しかしながら実際は、適用地域の指定基準、こういうようなものもちゃんとあるようですね。この中には、原則として日々安定所を利用することが困難でない区域、第二番目は交通手段往復三時間または往復費用百八十円をこえるところは指定しない、それから三は交通機関の運転時間、回数、積雪時の安定所利用の困難区域かどうかの勘案をして不適な場合はやらない、こういうような一つ指定基準というものがあるわけであります。そうすると、山間僻地、こういうところにいる人がいまや適用を求めているわけであります。適用を求めている人の前に立ちはだかるのが、今度は適用区域の指定基準であります。指定基準によると、やはり法ができてもこれはなかなか適用できないという実態になるじゃありませんか。したがって、山間僻地の農林水産業への適用拡大、これに伴って、農林水産業の日雇い労働者の適用を進めるためにもこれは特に配慮すべきであり、私は、これには抜本的な一つの考え方が必要になってくる、こういうふうに考えているわけです。現行法のもとに、いかにできておっても、それを阻害する要素が盛りだくさんある。法をつくった、しかし画竜点睛を欠いてはなりませんから、この機会にひとつ大臣の所見を承っておきたいのであります。
  88. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに、山間僻地で、安定所を日々利用できない地域については御指摘のような問題がございます。ただ、従来と違います点は、そういった安定所を日常利用できない山間僻地でありましても、企業としては、産業としては、事業所については全面適用になりますので、そういう意味では、日雇いでなければ、常用労働者であれば、これは当然適用になります。したがいまして、私どもは、できるだけ日雇いとか臨時という労働形態を常用に進めていくというための制度も、今回の法案の中に盛り込んでいるわけでございます。常用化することによって、そういう山間僻地でも適用になる。と同時に、もう一つは、日雇いのままでありましても、だんだん交通機関が発達してきて日常、日々利用が可能になるとか、あるいは、今後実態に応じて安定機関の設置を拡大あるいは改善をしていくというようなことによりまして、今後ともこういった非適用の範囲が狭くなるように、できるだけ多くの人が適用されるように最善の努力を続けてまいりたい、かように考えるわけでございます。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 先ほど少し憎まれ口を聞いて、相当の期間、こういうようなことを言っている。できるだけこれは努力をして——これはいいことばですが、いつもそれがつくのです。その結果においては効果があらわれないということであります。したがって、できるだけ一生懸命、できるだけ努力するということばは、私は反語である、こういうようにいままではとらざるを得なかったのであります。それほどなんです、ことばで幾ら言っても、業績としてあらわれてこないから。したがって、今度はそうじゃないんだという意思をお示しになるならば、適用地域を拡大するか——こんな狭い日本ではありませんか、日雇い労働者の適用区域の限定を全廃すべきであって、少なくとも公共職業安定所、この勢力が及ばない範囲がないんだ、こういうようなところまで適用区域を拡大してやる、これが当然いまのことばに対する答弁になるはずであります。私の論理的な質問に対して論理的な答弁をお願いいたします。
  90. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この適用区域につきましては、交通事情の改善に伴いましてその拡大をつとめてきたところでありますが、今後においても農林水産業への適用拡大等に伴い、必要がある場合にはできる限り適用区域の拡大をはかってまいるつもりでございます。また、そういうふうにしてやっていないというようなことになりますと、これはこの委員会でそのたびにやられることでございますから、なるべくそういうふうに努力いたします。
  91. 島本虎三

    ○島本委員 必ず、努力ということばがつくのですね。しかし大臣、ほんとうにこれは議事録に残るし、私もいまその答弁は忘れません。ただ単なることばにしないて、実行にしてあらわしてください。その実行にあらわすことは、いま言ったように、これはもう狭い日本なんですから、及ばない区域はないんだ、こういうようなところまでするのは当然なんです。まして自由主義国でGNP世界第二位を誇る日本ではありませんか、それぐらいできない労働行政じゃないのでありますから。まあそういうようなところであります。  そういうようなことからして、次に同じような問題で、ひとつ御高見を拝聴しておきたいのであります。これは日雇い被保険者の範囲の問題であります。ようやく第二番目になってまいりました。  この適用事業の被保険者の範囲、この第五条では、指定して、雇用される事業は全部適用事業になるようになっておるのでありますから、当然、それでいいのか、私はこういうように考えております。その範囲の中に、日雇い被保険者範囲として、業務取り扱い要領、これがあるようであります。これは対象にしない範囲をきめているようであります。その範囲とは、臨時内職的なものはしないということになっているようであります。商業、農業の自営業を有する者が臨時に災害復旧工事等に日雇いとして出たとき、第二番目は、市町村における土木事業または農業土木事業で、土建業者が介入しない事業に従事する農閑期利用労働者、季節的農家労働者は内職者として扱う、こういうようなことになっているようであります。そうすると、一定の、はっきりした雇用という条件がある、それが市役所が雇おうとどなたが雇おうと、一定の雇用機関に常時雇われているとしたならば、当然これは認めてやってしかるべきだ。臨時的な仕事だから日雇いだ、それでもはっきりとした、第五条によってこれが規定するのでありますから、この辺、臨時的な内職的なものとしてこれをはずすような考え方はあってはならないのじゃないか。法の精神からしても、これは農業の人は対象にしてやってしかるべきじゃないか。内職か本職か、いまはもうわからないのが日本農業の実態じゃありませんか。兼業のほうの金が収益としてよけい入る。(川俣委員「六割五分だ」と呼ぶ)六割五分だそうです。そういうような状態の中で、これは兼業だからだめなんだ、こういうような一つの業務取り扱い要領があるということは、せっかく法をつくっても、これの実施に対してかたい歯どめをかけることになるおそれがあるのであります。この点は大臣の勇断を私は期待したいところであります。
  92. 関英夫

    ○関説明員 恐縮ですが、事務的にちょっと、いまの取り扱いを説明させていただきたいと思います。  御案内のとおりでございますが、従来の失業保険という制度につきましては、その賃金を得て生活している労働者失業ということによってその賃金を得る機会を喪失する、そういった場合に、給付を行なってその生活安定をはかって再就職を促進しよう、こういうものでございます。したがいまして、その就労で生計を維持するのでなく、その就労は非常に臨時内職的なものだ、こういう人を適用いたしますと、これはむしろ保険料を取るだけで給付をする機会のない場合も出てまいります。そういう意味で、賃金を得て生活する雇用労働者を適用の範囲として制度は当然に考えておる、こういうことに基づきまして、臨時内職的なものを除外しているわけであります。ですから、雇用される先が市町村であるかあるいは土木業者であるかを問わず、とにかく常態として、たとえ日雇いであれ、日雇い就業によって生計を維持している人ならばこれは適用するし、たまたま災害復旧のときだけ働いて、あとは自営業に従事しているというような人は、むしろ法は適用しないことを予定している、こういうふうに考えて取り扱っているわけでございます。  それから、たいへん申しわけありませんが、先ほどちょっと自治体の数がございました。自治省の統計によりますと、本年の四月一日現在で三千二百七十一になっております。先ほど私お答えしましたのは、これに東京都の二十三を加えまして、二十三区を一と数えてしまいまして、三千二百九十四とお答え申し上げましたが、正しくは三千二百七十一でございます。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 その辺は少し詰めなければならない問題点の一つであります。まあ、その詰める点は、農林専門の野坂浩賢代議士が私のあとに詰めますから、その点、ぎゅうぎゅう言わないようにいまから準備しておいてほしい、こういうように思う次第であります。  まず受給資格の問題で、受給者の実人員と給付延べ日数、これがだんだん減少してきておりますが、これはもう、どういうようなことでございましょうか、お知らせ願いたいと思います。
  94. 関英夫

    ○関説明員 従来の失業保険の日雇いの被保険者の多くの部分は、実は失業対策事業に就労する労働者、これが失業保険の日雇い労働被保険者の多くの部分を占めております。  それで、失対事業就労者につきましては、従来からの常用化の促進等によりまして次第にその数が減ってまいりました。そういう関係で被保険者が減少を見ております。また給付のほうも、そういう関係で減少を見ている。あるいはまた、最近までの労働市場の状況、そういったようなことによりまして減少を見ているわけでございます。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 まあ、これは減少しているというような理由、一面はわかりました。そういうような理由、それは私の考えていたのと同じでありますから、これはあえて問題じゃありませんが、やはり減らしてきているというようなのが、労働行政のいままでの一つのあり方だったのですね。失対労務者は年をとってくる。新規の者は入れない。入れないから、だんだん減ってくる。いまに、十年たったならば全廃になる、これはもう、一回にやってしまって、そして血を見るよりも、黙って十年待てばなくなってしまう、こういうような考えでやっておったのじゃないか、こう思うわけであります。まさに残酷物語であります。それにいたしましても一般受給者との資格の差別、この問題に対してひとつ解明さしてもらいたいと思います。  それは、先ほど大臣は社会保障制度審議会のあの答申と相矛盾しないのだ、内容的にはこれは十分考えるのだということですが、この中には「高齢者に対する給付と年金制度との調整及び連係を検討しないと公正を欠く場合が生ずる。」これは社会保障制度審議会の答申の中ほどにある。「六〇歳以上の高齢者に保険料を免除しようとしながら農林水産業等特例被保険者等に同様な措置が採られないことは均衡を失する。」こういうふうに指摘してあるわけであります。この場合に、日雇労働者健康保険の高齢者は納めるようになっている。一般高齢者の場合は納めなくてもいいようになっている。一定の年限に達したこの高齢者の保険料は、これは六十歳以上でしょうから当然免除扱いになっているわけでありますが、日雇いの場合にはこれは適用されないで、高齢者であろうとも納めるようになっている。これはやはり制度審から考え直せ、こういわれている一つの矛盾点ではございませんですか。これは不公平じゃございませんか。一般並みに適用して高齢者には保険料を免除してやるべきだ、これが制度審の答申であります。これと矛盾しておりますが、大臣この点はいかがでございましょうか。
  96. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 雇用保険制度の中で一般被保険者につきましては六十歳以上の高年齢者について労使の保険料の負担を全額免除することに予定いたしております。これは六十歳以上の高年齢者になりますと、定年退職後なお就職するという際に、こういう人たちは長年にわたって被保険者として雇用労働体制の中で保険料の負担をしてきております。その上でなおかつ六十以降になりますと、再就職をされた方々もその後再離職の後にそのまま引き続き労働市場に残られるという例はだんだん少なくなってまいります。あるいはそのまま引退されるというようなことになるわけでございますので、そういったことと、もう一つはこういった高齢者の雇用は、労働力需給が一般的に逼迫しておりましても年齢が高くなるほど就職がなかなかむずかしい。したがいまして今回の雇用保険制度の中で、いろいろとこういった高年齢者の雇用の促進のための援助措置を講じておるわけでございますが、この保険料の負担につきましても、そういった実態と雇用の促進という両方の観点から保険料を免除いたすことにいたしたわけでございます。これに反しまして日雇い労働者の場合には、前二カ月の就労の実績を基礎にして一月間の保険給付が行なわれる、これが毎月毎月保険給付が繰り返されるわけでございます。一般の常用の労働者の高年齢者の場合には、保険給付というものが全然予定されない場合が多い。一方は必ず保険給付が毎月一定の日数以上保障されている。こういう制度上の全く異質のものでございますので、そういうことから保険料負担の免除については一般の常用の被保険者とは違った扱いをせざるを得ない、こういうことでございます。と同時に、日雇い労働者につきましても——常用の場合には常用就職支度金という制度をつくりましてできるだけ常用化を進めていく。しかしながら日雇いのままで残るという場合には常用を促進するための意味がない。常用化される場合には支度金をつくって常用化いたしますけれども、日雇いをそのまま続けられる限りにおいては、その保険料の負担を免除することによって常用化の促進ということとは全く違った考え方に立たざるを得ない、こういうことでございますので、制度上はこういう違った措置をとっているわけでございます。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 そういたしますと、これはやはり総理府の社会保障制度審議会の答申、これは間違いである、こういう答申は受けられないのだ、こういうようなことに相なろうかと思います。それならばここはまことに重要であり、先ほどの大臣の御所信とは若干趣を異にすることになろうかと思います。これは事務当局でもよろしゅうございますが、この答申の中に「平仄」ということばがありますが、平仄とはどういう意味ですか、ちょっと言ってみてください。
  98. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 答申の中で、「日雇労働被保険者については、その受給要件が日雇労働者健康保険と異なっており、その給付も一般の給付改正と平仄を合せるべきである。」こう書いてございます。この点は日雇い労働被保険者の給付の資格要件が一カ月十四日、二カ月二十八日ということになっておりまして、一般的にはこれは健康保険と平仄が合っております。均衡がとれております、均衡がとれているという意味だと思いますが、これが六カ月の特例の場合に、現行の失業保険におきましては、六カ月間に八十四日という資格になっております。それが健康保険の場合には七十八日という規定になっておりまして、同じような日雇い労働者を対象にした社会保険の中で、七十八日と八十四日と受給資格の基礎日数に違いがあるのはおかしいじゃないか。この点を平仄を合わせるべきである、こういう御指摘でございました。これがその意味でございます。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 受給要件は、日雇い健保との関係が違っているぞ、それから給付の問題では一般の給付の改定と平仄を合わすべきだ——平仄というのはつり合いのことでございましょうか。こういう古いことばは私もちょっと……。平仄というのはつり合いのことですか。そうですか。この中で当然また給付額の段階についても、これはもうはっきり触れておられるのじゃありませんか。日雇い失業保険の場合は三段階、それから日雇い健康保険の場合は八段階でございます、港湾労働法による港湾調整手当の場合も八段階にしてあります。日雇い失業保険はただの三段階である。したがって給付の場合もこれはたった三段階しかない、ことに三段階のうちの千七百七十円を受ける場合には、七十%がこれに該当しておるし、もう頭打ちなんです。無理してこの三段階にすると、こういうふうにしてもう頭打ちのような状態が現出する。これが平仄が合っているということには結局ならないのじゃありませんか。この辺も検討する余地があるということです。何のために日雇い失保が三段階、日雇い健康保険が八段階、それから港湾労働法による港湾調整手当が八階段、日雇い失業保険だけ三段階にして、残酷な扱いをしなければならないのですか。残酷物語りではありませんか。
  100. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 日雇い労働保険の給付の三段階制につきましては、現行法では二段階でございます。しかしながら、過去におきまして再三この三段階制をとるべきである、こういう御意見がございましたが、昨年の春ごろから四段階にすべきである、こういう御意見もございました。ただ、港湾労働法によります港湾調整手当が八段階になっておりますのと実態が違いまして、港湾労働の場合は特定の港で特定の登録日雇い労働者で範囲が限定されておりまして、この給付のしかた等につきましても考え方が違っております。全くこれと同じに軌を一にさせることはとうてい不可能でございますけれども、私どもといたしましてはできるだけ給付の内容を充実させる、給付の額を引き上げるというような観点から、事務的に可能な限度として三段階制をとることにいたしたわけでございますが、中央職業安定審議会の答申におきまして、将来の問題としてできるだけ四段階制をとることについて検討すべきである、こういう御意見をいただいておりますので、その方向で私ども今後積極的に検討を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 これは一般の失保について相当高い部分もカバーしている。この一般被保険者の五割、六割層は、従来の最高限度額を引き上げて、賃金分布の大半をカバーするに至っている。かりにそうだとしても、日雇い労働者の場合の賃金分布のカバー率は、これはきわめて低い。そうなると、三段階制を提案してきているけれども、すでにもう四段階制が妥当である、こういうようなことさえ——まあ妥当でない、四段階制も考えろ——いままで二段階だったのを三段階にしたからいいじゃないか、それでも一段階上げてやったんだ、恩恵を施すようなこういうような気持ち労働省の中にあるんじゃございませんか。少なくとも労働者は、労働力は国の宝ですよ。この宝を大事にする、これこそ国の一つの基本的な愛情でなければならないはずです。ところが、やはりこれは、日雇いの場合にはいままで二段階だったのを三段階にしたからいいじゃないか、ただこういうような考え方では、もう八段階にもなっているのに、そんなだったら時代おくれもはなはだしいと言わざるを得ない。恩恵を施して三段階、いままで二段階だからいい、こういうようなこそくな考え方じゃだめだと私は思うのです、大臣。  したがって、三段階制を提案しているけれども、四段階制も提案されているとすると、今後少なくとも五段階制にこれはすべきじゃないか。総評もこれを希望するとするならば、当然これはその辺あたり十分考えてみてもいいじゃないか。これはもう五段階制を当然、これでいいというわけではありませんが、せめてこの程度までにしてこれは平仄を合わせるべきである、こういうように私は思うのであります。これは重大な問題ですから、ここでひとつ大臣の決意を聞いておきたいと思うのです。
  102. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもは、いま申し上げましたとおり、現行の二段階から三段階制をとることに今回の法案でいたしたわけでございますが、港湾調整手当の場合は、特定の指定された場所で手当の支給の内容がはっきり確定いたします。したがいまして、八段階でありましても事務的にはさほど困難ではございませんけれども、日雇い労働被保険者の場合は、特定の場所でなくて全国どこの安定所でも、実際問題としては五カ所にも十カ所にもなるわけではございませんけれども、どこへいっても支給を受けられるというたてまえになっております。したがいまして事務的に、多段階制をとることはきわめて困難な状態にございます。それを今回は、そういう御要望に沿いまして三段階制をとることにいたしたわけでございますけれども、決して私どもはこれで十分だとは考えておりません。したがいまして、審議会の御答申に沿いまして、今後の問題として検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
  103. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いま局長も御答弁されましたように、事務が非常に渋滞するというふうな関係やらもありまして……(島本委員事務ばかりじゃなくて、国民のほうが大事でしょう」と呼ぶ)それはやるほうも働く諸君ですから……。(島本委員「人をふやせばいいんじゃないですか」と呼ぶ)いままで二段階のやつを三段階にするというだけでもなかなかたいへん、だというふうなことで、まあ三段階になってきましたが、それは前向きでいまから先も考えます。これはひとつ御信用ください。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 この「平仄」ということば、私もこれはわかりました。合わせろというんですから合わせたらいいんです。具体的に合わせられなかったならば、将来に向けて合わせますでいいんです。したがって、一段階ぐらい上げたからじゃだめだから、こう言っているんです。いま四段階を考えている。少なくとも、たまには労働行政は先取り行政だといわれるように、五段階制を考えてみたらどうですか。公害対策と労働行政は、先取り行政である、こういうようにいわれるのが一番いいんですよ。公害対策がおくれているのがいまの日本の現状でしょう。労働行政の場合はやはり先取り行政でいいんです。したがって、五段階制を目途にしてこれは大臣、今後ひとつ考えてもらいたい、こういうように思うのです。まあこれは事務当局事務が困難になってきますから、複雑になりますからいやだと言うのはあたりまえなんです。そういうようなことは精神的サボタージュですよ。したがって、もうそういうようなことのないようにするために、ここにはっきり言いまして五段階、それを目途にしてやる、こういうようなところまでひとつ皆さんの決意を表明しておいてもらいたいのです。この問題は大事ですから、大臣です。
  105. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私ども、審議会の答申は最大限に尊重をしてまいりたい、こう考えておりまして、審議会でも、三段階をさらに四段階に向かって努力をしろ、検討をしろという御指摘でございますので、できるだけそういう方向で検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 五段階検討するのですか。四段階だけにとどめるのですか。私は、五段階を目途にしてやれと言うのです。これはやっぱり大臣じゃないとだめ、だな。
  107. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 労働行政は前向きでやるのが——先生おっしゃるとおりでございます。しかし、やはりその前後の事情も勘案する余裕をひとつお与えいただきながら、そういう方向でいくことをお約束しておきます。御理解いただきます。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 その方向というのは、私が言った方向でございますか。そうですね。——まあ議事録にとどめましょう。そうですと言ってください。
  109. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだん検討さしていただきます。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 それは二段階が三段階になっても「だんだん検討」になるのですか。いま出されているのは四段階から検討せいといわれているけれども、もうすでに八段階制が実施されている状態からして、社会保障制度審議会、その方面からの、受給要件が日雇い健保と異なっており、その給付も一般の給付改正と平仄を合わすべきだ、こういうふうにさえいわれておる。それから区分の数がたった三段階のために、せっかく政府が出しているこの法律案の中でも、賃金の最高額が二千三百二十円に押えられるのです。日雇い労働者失業時の生活保障の効力がこれで発揮されるのですか。三段階にする、二千三百三十円が七〇%こえるじゃありませんか。上を押えられるからそうなるのです。四段階にするからこれでいいという段階じゃもうないのです。したがって、「平仄を合わせる」とはっきり制度審議会が言っているのですから、せめて私は五段階を目途に、こう言っているのです。だてやていさいで私はがんばっているのじゃないのですよ、これは、大臣。したがって、もうその辺は島本委員の言うとおりである、その辺に向かって努力すると、こう一言言えないのでしょうか。私は決してむちゃを言っているつもりではないと思いますが。
  111. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生のそういう御意見も心に体しながら、だんだんやってまいりたい、こういうふうに思います。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 まだ少しふに落ちないものがありますが、誠意を期待することにします。  今度は給付金額の自動変更。これは現法では三十八条の八の二になりますか、提案されている新法では四十九条になりますが、この給付金額の自動変更、これは中央職業安定審議会の意見を聴取、これもはずしておるわけです。どうもこの点は私は了解に苦しむところであります。やはり自動変更についての条件をこれは明確にすべきじゃございませんか。一般は二〇%の賃金が上がったならばスライドさせるという。この二〇%のスライドでも時期がおくれ過ぎているからだめだ。これに対しても批判が出ているそのさ中に、今度の日雇いの場合には「比率が著しく不均衡となるに至った場合において、」ということになっている。あまりにも抽象的過ぎますし、一般失保との間の不均衡の原因になるではございませんか。私は、もうこういうような点からして、政府が給付金額の決定と合わしてひとつ英断をもってこれに臨むべきである、こういうように思うのです。これに対して事務当局、いかがでしょう。
  113. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 失業給付の基本日額の自動スライドにつきましては、二〇%賃金が上下した場合に自動的にスライドアップあるいはダウンさせる、こういう規定になっております。その上下いたしました際に、いつの時点から実施するか、こういった点でなおかつ基準その他が必ずしも明確でない、こういう中央職業安定審議会の御指摘もございまして、その基準をさらに一そう明確にするために事務的に検討して、審議会と御相談の上で今後のスライド条項の実施については明確な措置をとるようにしよう、こういうことで、審議会におきましても現在御検討いただいておる段階でございます。  日雇い給付のほうのスライド条項につきましても、これは一般被保険者の保険給付と違いまして、そういった賃金等によりまして自動的に変更するということがきわめてむずかしい実態にあることは御承知のとおりでございます。したがいまして、この場合には一級と二級と三級の受給者の受給の実態、その間の不均衡が生じた場合に、それをもとにしてスライドさせる、こういうことでございますが、その際の、著しく不均衡になったその基準をどうするか、これも安定審議会で十分基準を明確にしていただいた上で、その基準に従って実行をする、その実行する段階は、もちろん審議会にかけなくてもいい、その基準は明らかにしておく、こういうことで審議会と御相談を申し上げておる次第でございまして、御指摘のように、一般と日雇いの間で不均衡であるということにはならないと私ども考えておる次第でございます。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 比率が著しく不均衡となるに至った場合においてこれをやる。その前に、一般では二〇%賃金が上がったならば、これはスライドさせる。そのスライドさせる問題でも、時期の問題で相当議論のあるところである。物価が先に上がって、すっと先に行って、そのあと一般が上がって、それが上がってから比率が著しく不均衡となるのを待って今度は是正するということになりますから、これじゃあんまり抽象的だし、不均衡の原因になるということを私は言っているのです。そうなるじゃありませんか。もしそうでなければ、一般と同じようにぴしっとしたほうがなおいいわけであります。私、そこなんですが、どうもかみ合わないようであります。これはどうなんですか。
  115. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 日雇いの場合には、この一般のように毎月勤労統計の常用労働者賃金といったような確定的な基準になりますようなデータをとることがきわめてむずかしい。そういうことで日雇いの場合には一級の給付と二級の給付を受ける人、一級の給付を受ける人に第二級の給付金を受ける人の二分の一を加えた数と、三級の給付金を受ける人に二級の給付金の二分の一を加えた数との比率を求めまして、その比率が著しく不均衡になった場合、こういうことで基準をきめることにいたしております。その著しく不均衡という点が不明確ではないか、抽象的過ぎるという御指摘でございますが、この点は、いま御指摘になりました一般のスライド条項の実施についての明確な基準、どれくらい二〇%上がった期間が続いて、それをもとにして、いつの時点で実施するのか、あるいはこの日雇いの場合、著しく不均衡とはどういう基準できめるのか、そういった点を安定審議会の御答申をいただいて、それをもとにして、あとは定型的に実施をする、こういう取り運びにいたしたい、かように審議会で申し上げているわけでございまして、私ども恣意的にこれをおくらせたり、サボったりということは全く考えているわけではございません。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 平仄を合わせろといわれている点もその辺なんです。どうもそういうような点ではふに落ちませんけれども、この問題は最後の締めくくりでもう一回お考え願います。  費用負担の点に触れます。国庫負担を増額すべきであるという点であります。  現在、三分の一の国庫負担でございます。収支の状況から見て、これは当然国庫負担を増さなければどうにもならない状態じゃなかろうか。掛け金は、日雇いの場合は十八円、二十七円、四十一円ということに相なろうかと思いますが、その中位の二十七円をとると、一人当たり十三円ということになりましょうが、十三を千九百で割ると、大ざっぱに千分の七、これくらいになろうかと思います。分母を合わせるためです。そうすると、これは千分の七くらいが自己負担。そうすると、印紙税分が千分の七であって、それに今度率分が千分の五、日雇いの場合は、合わせて千分の十二が本人負担だということに相なりましょう。そうすると、季節労働者の給付の場合は千分の七・五が本人負担である。工場労働者の場合は千分の五が本人負担である。制度の中では日雇いが最高の負担になるということになるじゃありませんか。最も恵まれない階層にある、最も収入の薄い人が最高であるということは、これはどうも逆じゃないかと思うのです。国庫負担はこの点からもう一回考え直さるべきじゃないか、こう思うのであります。したがいまして国庫負担の点——番日雇いの場合は負担がよけいになっている、この点に対してはまことに遺憾だと私は思います。これはやはり当然増額すべきであります。これに対する考え方ははっきりさしておこうじゃございませんか。
  117. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 日雇い労働被保険者の給付に対する国庫負担は、現行失業保険制度でも一般が四分の一であるのに対しまして三分の一を国庫で負担する、こういう形になっております。現在この三分の一を国庫負担をいたしましてもなおかつ、日雇い給付につきましては大幅な赤字を出しております。大幅な赤字を出しておるにもかかわりませず、御指摘いただきましたように、現行の二段階制を三段階制、一段上に積み上げることによりまして給付の改善もはかることにいたしておるわけでございます。その際になおかつ、一般の四分の一に対して今回も三分の一を負担することにいたしております。こういう点で私どもは、赤字の実態を見詰めながら三分の一国庫負担を維持すると同時に給付の改善をはかっていこう、こういう努力をいたしているわけでございます。  一般と日雇いの負担の面におきまして、確かに御指摘のように、一般の場合は千分の五、季節受給特例被保険者につきましては千分の七・五、日雇い労働者につきましてはさらにそれを若干上回ります保険料の負担をいただくわけでございますが、これは保険給付の実態、就労の実態等からいたしましてやむを得ないものでございまして、ILO条約におきましてもこういった季節受給者、日雇い労働者につきまして給付の負担の面におきまして特例を設けることは認められておるわけでございます。今後できるだけ負担の軽減をはかるような方向で努力はしてまいりますけれども、今回の新保険制度におきましても現行制度を踏襲いたしました点を御了解いただきたい、かように考えるわけでございます。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 まことにそれは官僚的答弁ですね。そういうふうになっているからそういうふうになっているんだということだったら、コンピューターだけでいいんですよ。人間が人間を扱って、人間の答弁なんですから、もう少しあたたかい、現実に即したような答弁でなければだめです。したがいまして、現に数字でははっきり最高になっている。しかしそれが、制度の中では最高の負担になるその日雇いの方は最も恵まれない階層なんだ。最も恵まれない階層でも働いているんだ。働いているんだから、国のほうでは十分それに対して措置してやるということは当然なんです。五体満足で、りっぱな産業の中で、収入がよけいあって、その人たちが恵まれた生活をする、これはまた当然の権利でしょうけれども、これはまさに一番恵まれない階層じゃありませんか。それから最高の負担を取っている。これは今後当然是正を考えるべきである、こういうように思うのです。まして給付は、いま幾らになっていましょうか。
  119. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回の新しい制度では、一級の給付が千七百七十円になっております。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 給付については六割が普通の常識だ、こういわれておるのでありますけれども、これは当然八割あたりまで考えてやるべき状態じゃございませんか。この個人負担の面と給付を八割に上げるというような点、この二つだけは、最も恵まれない階層だからこれを言うのであります。これは当然考えるべきじゃありませんか。これからの宿題としてひとつ考えてもらいたいと私は思うのです。考えませんか、考えますか。
  121. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、一級の場合は、二千三百二十円以上の賃金の人が千七百七十円ということになりますので、かりに二千三百二十円でございますと、御指摘のように決して六割ではございませんで八割近い標準になるわけでございます。と同時に、先ほど来五段階を考えろという御指摘でございます。確かに健保では八段階制をとっております。しかし、段階数を増すことによりまして、ただいま問題として御指摘になりました保険料の負担が非常に高くなる。私どもとしては、現行の健康保険制度によります保険料の負担以上に負担の増にならないように、段階制と両方かみ合わせて慎重にその点は配慮してまいっているつもりでおります。給付率にいたしましても、現在給付を受けております大部分の人たちからいたしますと、決して六割ではなくて、それ以上のかなりな高率になるという点も十分御理解いただきたい、かように考えるわけでございます。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 それは日雇い階層は賃金を低く押えているからそうなるじゃありませんか。賃金をうんと上げてやって保険料をよけい取るのを、だれが文句言うのですか。上げないから、下げろと言うのですよ。上げないなら下げろ、上げるなら上げて取りなさい、あたりまえじゃありませんか。どうも皆さんの場合は、下げながら保険料だけよけい取る。こういうような会計本位の、事業本位の考え方で、そして浮いた金をまたほかに使いたいという野心があるからそういうような答弁になるんじゃありませんか。そういうようなことでは困るのです。  では、その点、もう一回大臣、これはもっと考えようじゃありませんか。国庫負担はもっと考える、こういうようなところまで行かないと、そっちだけじゃ答えようがないようですから——だめだめだなんて、そこで言っちゃいけません。
  123. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもは日雇いの給付を切り詰めて、それを浮かしてほかに使おうなんという魂胆は全くございません。先ほど申し上げましたように、日雇いの給付につきましては、今回の改正によりましていままで以上に赤字の幅が増大することを私どもは覚悟をいたしておるわけでございます。その中で、先生の御指摘のように、今後段階制をふやすとか、あるいはさらに負担の増にならないように措置するというような積極的な方向で努力をしてまいっております。  国庫負担につきましては、もう三分の一を引き上げることは考えておりません。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 考えていないならば、日雇いの賃金を上げることを考えますか。
  125. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 日雇いの賃金は労使間できめられる問題でございまして、保険制度上から日雇いの賃金を上げる上げないと言うわけにまいらないことは、もう先生御承知のとおりでございます。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 行政指導というものはありますか、ありませんか。
  127. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 日雇い労働者につきましては、私どもといたしましては常用化を促進することこそ行政の本来の目的である、かように考えておりまして、この雇用保険制度の中でもそういった意味での日雇の常用化、あるいは臨時工の常用化、こういった措置を今後積極的に進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  128. 島本虎三

    ○島本委員 それまでの間苦しんでいる人は、死んでもいいという考えですか。そうじゃないんだ。一番いい職について楽な生活をしたいのは、もう人間で生まれた以上だれしもがそう思っているはずです。そうなれない人たち——年齢的にもいろいろないままでの状態からしてそうなれない人たちでしょう。ですから、そういうような人のために国庫負担を三分の一から二分の一にせいと言うのですよ。その点において、考えるとなぜ一言言えないのです。一言でいいじゃありませんか。
  129. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 もちろん私どもは、先ほど申し上げましたように、日雇い労働者方々にできるだけ常用になってもらいたいということで、安定所の窓口で求人がありました場合には、できるだけ日雇を常用の求人に切りかえさせるというようなことで、安定した職業についてもらいたい、こういう行政指導を行なっているわけでございます。と同時に、日雇いでなければどうにもならない方もいっらしゃると思います。そういう面につきましては、一般の場合もそうですが、日雇いにつきましても、求人賃金が一般の労働市場の常態として行なわれている賃金より低い場合には、当然引き上げるような行政指導も行なっているわけでございます。私ども今後そういった面で積極的に日雇いの方々労働条件が引き上げられるような行政指導はしてまいるつもりでおります。  それから国庫負担につきましては、先ほど申し上げましたように、現行三分の一を維持してまいるつもりでおりますが、これは諸外国の国庫負担の例に比較いたしまして決して低い数字ではない、私どもかように考えております。
  130. 島本虎三

    ○島本委員 労働行政と公害行政は先取りが正しい。あとざり行政なんか、これはもう諸外国の例を見てもどこを見ても、労働行政の中ではだめなんですよ。二分の一を今後は少しは考えるという潤いのある答弁くらいできないですか。少し考えましょうくらいで、大臣——局長の考えはわかったから、大臣、少しは潤いを持たして、将来は考えるということくらいは考えてもいいはずです。
  131. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 こういうところで熱心な御議論が出ていることを勉強の材料として、私もいろいろな問題を考えてみたいと思っております。
  132. 島本虎三

    ○島本委員 靴の下からかいたような感じで聞きました。  じゃ、次に進みます。  三事業の問題にちょっと触れさしてもらいますが、一般の場合には千分の三で三事業を行なう、これはメリットがあるからだというようなことです。日雇いの場合もこれは同様でしょうか。これは日雇いの場合にはもう、千分の三の三事業、雇用改善事業や能力開発事業や福祉事業、こういうようなものをどのようにしてやっても、どうもはっきりしたメリットが見られない。このように不安定要素を持っている三事業に対して、日雇いの面、千分の三ですね、これをそのまま同様にして見てやるということについては少し問題があるのじゃないか。不安定要素を持ったこの三事業の日雇いの面には、一般会計からも支出してやってしかるべきじゃないか。日雇いを使用する階層もまた中小零細企業や土建業関係が多い。したがって、不安定雇用解消はもう安定させる政策をやらせるのでなければならないし、労働省本来の仕事でなければならない。一般会計からこれは出してやるべきじゃないだろうかということであります。これはどうなんですか。ほかのほうにどのようなことがあっても、失対の場合には高齢者であるというような点からしても、そこで能力開発をやるということばに終って——それが成功しておるなら、もうすでに解消しているはずです。それが幾らやっても実を結ばない。これが現在日雇いの負っておる実態なんです。したがって千分の三、これを同じようにそっちへ向けるということは、ことに日雇いの場合には向かないので、雇用改善事業と能力開発事業が直接的に実施されるというような条件はないわけであります。ないとするのにこれをやるのは、国の単なる収奪にすぎないのじゃないかというようなことになります。したがって、これは国でやるのが正しいし、同時に、その点何らかの関係で相殺してやるような方法があっていいじゃないか。問題はここじゃないかというように思うのであります。したがって、私としては、給付金額の決定とあわせて点数制を考えられないか。合理的に日雇い健康保険、港湾労働法による雇用調整手当——これは八段階なんですが、もうすでに港湾では現に点数制でこれをやっているわけであります。そうでない場合には、これはもう計算がむずかしくてごちゃごちゃになってしまう。印紙もごちゃごちゃになってしまって、何級の適用か全くもってわからないという状態が現出される。点数制の場合には何級の適用であるかがすぐわかる。一覧表で労働者がすぐわかる制度、すなわち点数制を導入してやるべきじゃないか。この点は提案になるわけでありますが、ひとつこの点も十分検討願えるかどうか、ひとつ労働省の御高見を拝聴したいと思います。
  133. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 三事業の点についての御意見でございますが、私ども従来現行失業保険法の中で福祉施設、保険施設という形でいろいろな労働者のための福祉施設を実施いたしておったわけでございます。この点につきまして島本先生からも再三、労使の、特に労働者の負担した保険料をこういう国がやるべき事業に支出するのはけしからぬではないか、こういう御指摘を従来受けておったわけでございます。そこで私どもは、今回この雇用保険制度におきまして失業保障の機能を強化すると同時に、失業をできるだけ予防する、どうしても出るものをできるだけ少なくする、そういうための事業として雇用改善事業なりあるいは個個の労働者の能力開発のための事業あるいは福祉対策の事業を実施することにいたしたわけでございますが、その三つの付帯的に行ないます積極的な事業につきましては、従来の労働者の負担する保険料を全然これから除外いたしました。もっぱらこのための経費としての千分の三は使用者の負担によることにいたしたわけでございます。そこで、日雇い労働者についてはこの千分の三による事業の恩典にあずかる余地が少ないのじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、これは能力開発いわゆる職業訓練、こういった事業にいたしましても、あるいは雇用改善事業にいたしましても、常用化促進のためのいろいろな援助施策とか、あるいは労働者の福祉のための諸施設の利用、こういう点で一般の被保険者と日雇い労働被保険者とで差別があるわけではございません。こういった事業を国の一般会計でやるということになりますと、国の一般会計というのは国民一般の税金でございます。現在の税金は間接税と直接税を比較いたしますと直接税が多い。ということは、一般労働者の税負担によることになるわけでございます。私どもはむしろ、直接にこういった失業を予防し積極的に雇用を改善するための事業、こういったたぐいのものは使用者の社会的責任ということにおきまして、使用者のみの負担による原資をもって充てるほうがより適正である、こういうふうに考えているわけでございまして、当然国の一般会計でやるべき事業とこういった保険施設、付帯的に保険事業として行なうものとの区別を私どもは明確にいたしてまいりまして、今後積極的な施策を進めたい、かように考えておるわけでございます。  それから日雇いの給付につきまして点数方式をとれないかということでございますが、確かに点数方式というのも一つのやり方だと思います。今回三段階制をとることによりましていままでよりはかなり複雑になりますが、個々の被保険者の給付額の決定につきましては私どもは点数制によらなくても十分可能である、こういうふうに考えておりまして、今後先ほど御指摘のように四段階制、段階制をふやすという時点におきましては、あるいはそういう方法も今後の検討課題として私ども検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  134. 島本虎三

    ○島本委員 もう四段階段階って、さっき言ったのをもう忘れちゃった。目標は五段階制ですよ。すぐはぐらかしてしまう。そういうようなところに、ちゃんと衣の下からよろいが見えてくるのです。そういうような点が中央職安審議会の指摘事項の中にもはっきりあるのですよ。これは給付の問題や保険料徴収の問題とあわせて先ほど言ったとおりです。この中には労働者側意見、貴重ではありませんか。給付には多段階制を実施せい、八割給付をせい、保険料の徴収は一そう合理化をはかれ、そして印紙保険料のみにせよということをはっきりここに言っているじゃありませんか。検討さえもしていけない。こういうようなげかなことがありますか。だからこれは検討するのかと言ったら、どうもことばを濁して官僚的答弁に終始する。これだったら、審議会の答申、こういうようなものはほんとに単なる方法として使うだけであって、あとはきちっと自分らの考えを実施していくという労働省の基本的姿勢が変わらない限り、私はやはり労働者の救済はあり得ない、こう思うのはまことに残念であります。しかし、それにいたしましても、やはりここにはっきり出してあるのですから。少数意見であろうとも、ちゃんとこれは答申されているでしょう。労働者側は、印紙保険料のみとせよ、こういうように答申もされているのです。これにしたほうがいいのじゃありませんか。私ども労働者側意見として、多段階制、八割水準、保険料全額事業者負担、印紙保険料のみ労働者負担、こういうふうにはっきり出してあるのですから、その線に沿うて皆さん方検討されてこそしかるべきだ、こう思うのです。どうも労働省の態度はかたくなであります。それじゃもう労働行政に愛情をもってこたえる道にはならない、こう思うのであります。まことに私は遺憾でありますが、労働大臣、少なくとも私は憎しみをもってこの問題を取り上げているのじゃないのです。もっとよくするために、もっとあたたかい血の通った労働行政にしたいがために私はこんなことを言っているわけです。ことばは若干行き過ぎな点があった場合はおわび申し上げます。しかし、私が言わんとする真意だけは十分考えてもらいたいのであります。どうももう少し時間があればいいのですけれども、一、二分超過さしてもらいましょう。そういうようなことですから、この点あたりはもう少しきちっとしておいて、ひとつ答申に沿うように、労働者側答申の中にはほんとに貴重な意見の具申がありますから、これらも十分参考にしてもらいたいのです。大臣の決意をお伺いします。
  135. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この問題につきましては、大河内さんから私あてのお話やら、あるいはまた有沢先生からの私に対する研究会の答申等々がありまして、しろうとでありますけれどもずっとその妙意というものを拝見してきたところであります。労働省労働者を守る立場あるいはそれを推進していく立場というところには、人後に落ちないでやっているつもりであります。しかし、その間、法案の審議の間において皆さま方から御熱心なそういう御意見というものをさらに肝に銘じまして一そう努力してまいりたい、いわんやいろんな問題の合理的な解決の方法については先生方の御意見を参酌しながら、そういう気持ちにおいて当たってまいりたい、こういう気持ちだけをお伝えしておきます。
  136. 島本虎三

    ○島本委員 最後に、労働省として、初めに戻りまして、社会保障制度審議会、そのほか中央職業安定審議会、その他いろいろ答申を受けているわけです。この答申を無視するというような態度だけは、今後断じてとるべきじゃない。このことだけは強く訴えておきたいと思います。ことに制度審議会のほうからは貴重な意見が出ております。否定的な意見が出ておりますが、これを何ら盛り入れないで出してきております。そして、今後直してもらいたい、こういうような態度であります。私は、出す前にきちっとして、答申に盛られているようにして成案するのが政府答申にこたえる道だと思います。それがなされておらない。  ことに適用地域の問題に対しては、中央職安審議会、これの無視の事実がはっきりあります。適用地域は労働大臣が指定する事前に中央職業安定、審議会の意見を聞いて労働省が告示して明らかにする。今回の改正でこれも全部はずしてしまっている。給付について、四十七条三項で労働大臣は必要あると認めたときは別段の定めをすることができるとして、従来の三十八条九の四の五項に示された中央職安審議会の諮問を、これも削ってしまっている。これはもとへ戻すべきです。第三番目としては、日雇い労働求職者給付金の日額等の自動的変更、これは新法の条文は四十九条、現行法では三十八条の八の二。これについても中央職安審議会の意見を聞くということをはずしてしまってある。大臣がかってにやれるようにしてあるわけです。これは責任はまことに重大です。けしからぬ。第四番目には、五十一条の二項で、必要あると認める場合支給については別段の定めをすることができる。これは別のやり方、臨時のやり方を認めるものであり、中央職安審議会の意見を聞く、これがまたはずされている。  こういうようにして民主的な手続が全部削られるような、こういうような方法を本法ではとっているわけであります。私はまことにこれはけしからぬと思います。こういうようなことに対しては、民主的に大衆の意見を聞いたり、また審議会の意見を尊重したり、こう口で言いながらも、だんだん行政の力を強くして、こういうような意見を聞かないようにして、自分らの自家薬籠中のものにしてしまわんとするような労働省の姿勢がそこにあるとするならば、とんでもない反動的な行き方である、このことを心から忠告をして、最後に大臣の所見を承って、私は終わりたいと思います。
  137. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだんの御忠告、肝に銘じます。  基準につきましては審議会によって明確にしてもらっておることですが、この法律の施行にあたりましては、重要事項について審議会にはかることとして、いまから先も決して審議会を軽視するような御批判を受けるようなことはしないという気持ちでおりますことを御理解いただきたいと思います。
  138. 島本虎三

    ○島本委員 以上をもって終わります。
  139. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  140. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。野坂浩賢君。
  141. 野坂浩賢

    野坂委員 雇用保険法案の中身、特に私は季節労働者の問題について質問をしていきたいと思っております。  農林省の方、おいでですか。——まず農林省の方にお尋ねをしたいと思うのですが、いわゆる季節労働者、出かせぎ労働者は、ここ十年程度の間減少しておるのか増加をしておるのか、まず農林省にお尋ねをして、同じことを建設省がおいでになれば建設省にも聞きたいし、最後に労働省から見解を聞きたい、こう思っております。
  142. 白根健也

    ○白根説明員 季節労務者の出かせぎ状況につきましては、昭和四十六年、私のほうの農業就業動向調査によりますと、四十六年までは漸次増加の傾向にございます。四十六年以降につきましては、横ばいといってよろしいか、若干減少の傾向にございます。
  143. 野坂浩賢

    野坂委員 建設省いますか。——じゃ労働省、お願いします。
  144. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 全国で約六十万と推定しております。そのうち三分の二の四十万が建設業を中心に、いろいろ日本国内の生産活動に従事されてきておる、こういうふうに理解しております。
  145. 野坂浩賢

    野坂委員 農林省にお尋ねをしますが、何名ですか。労働省見解と同じですか。
  146. 白根健也

    ○白根説明員 農業就業動向調査によりますれば、昭和四十六年約三十四万二千、四十七年三十四万一千、こういうことでございます。
  147. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、労働省がおっしゃっておる六十万人とあなたの農林省からおっしゃっておる三十四万、そういうのと非常に、数字が異常なほど違うのじゃないですか。
  148. 白根健也

    ○白根説明員 農業就業動向調査と申しますのは、農家だけに限定してございます。おそらく労働省の統計でございますれば、季節労務全部ということでございます。私のほうの調査では農家を対象としての調査でございますので、農家にだけ限定されております。
  149. 野坂浩賢

    野坂委員 出かせぎ者が、東北から九州まで連合会で調査をしたところによりますと、この予算委員会等でも非常に問題になっておりますが、百万人以上ある、こういう推計をされております。もちろん労働省は給付の状況、そういうことから判断をして六十万とおっしゃっておると思いますが、農林省が言っておりますそれは、十分把握をしていないじゃないか。非常に見解が違うわけですが、労働省はこれに対してどういうふうにお考えですか。
  150. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもで季節関係労働者数は、先ほど大臣から御答弁ございましたように、実績六十万という数字が出ておりますが、そのうち、これは全体の季節労働者関係でございますので、農林漁業関係は、これは推計でございますが、おそらくその三分の二程度の四十万くらいではなかろうか、こういうふうに考えております。
  151. 野坂浩賢

    野坂委員 私が質問をしておりますのは、出かせぎ者というのは一カ月以上あるいは六カ月未満の間、家を離れて他の地域へ出ていく、こういうのが実態でありますから、一般の方々が商売をやめて、あるいは自家営業をやめて他の地域に出かせぎに出るということはそうないと思うのです。ほとんどの方が農家である。したがって、農林省なり労働省あるいは建設省も、建設省はおいでになっておりませんが、十分これは把握をしてもらわなければ、ほんとうの意味の農村の季節労働者、そういう皆さんの実態が政府で把握できていない。私はそう思わざるを得ないと思うのです。それほどやはり季節労働者というものが軽視をされておる、こう言われてもしかたがないと私は思うのです。そういう点については政府は十分配慮をしてもらわなくてはならぬと思うのでありますが、特に農林省は程度が悪いわけです。  さらに、季節労働者というのは、私の把握をしておるこの資料では減少しておるといっておりますけれども、そう減少はしていない。これはいまあなたは四十六年からの動態調査の資料をお話しになったのですが、四十年から四十五年を比べてみましても、異常なほどの伸びがあります。これは労働省としては、この季節労働者を減らすように努力をされるわけですか。それとも、これからふえていくというふうにお考えになっておりますか。どういう状況だとお考えですか。
  152. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私ども、現行の失業保険の給付の面から、この季節出かせぎ労働者の実態を御報告申し上げておるわけでございますが、現在までのところは、大体おおむね横ばいで、若干ふえておるというのが実績でございます。私どもは、こういった季節出かせぎ労働者をできるだけ常用化する、通年雇用化するという方向で、いろいろな施策を講じてまいっておりますし、今回の雇用保険法におきましても、この通年雇用化、常用化のいろいろな措置を講ずるようにいたしておるわけでございまして、望ましい形としては、できるだけ地元で正常な常用雇用につけるような状態をつくり出すということが行政の方向であろうか、かように考えておるわけでございます。
  153. 野坂浩賢

    野坂委員 農林省にさらにお尋ねをしますが、あなたのほうはどういうふうにお考えですか、いま労働省から答弁がありましたが。
  154. 白根健也

    ○白根説明員 昭和四十年ごろから現在までにかけまして、一般の農家の就業人口、これはやはり減少傾向にございます。したがいまして、その趨勢を受けまして、出かせぎ労務者、労働者、そういう方々も四十六年度を境にしまして、若干減少と申し上げましたけれども、ほとんど横ばいのような状況でございます。そういう状況を反映しまして、これ以上ふえる要素は就業面からはそう積極的な理由はなかろう、このように考えております。
  155. 野坂浩賢

    野坂委員 いまの答弁を聞いておりますと、遠藤局長は、横ばいであるが若干増加の傾向、白根さんは、横ばいであるが若干減少。これも食い違う。全く農林省は、今日、農業基本法、農基法農政ということをいわれておりますが、農基の基が、基本の基ではなしに、棄てるという字をこのごろ農民の皆さんはおっしゃっております。あの農業基本法のほんとの意味というのは、いわゆる自立経営農家というものを育成強化をする、こういうのにもかかわらず、第一種兼業農家を乗り越えて第二種兼業農家というのが現状としてはふえつつある、こういうのが実態でありませんか。どうです、白根さん。
  156. 白根健也

    ○白根説明員 統計面では、いま先生のおっしゃいましたように、傾向といたしまして専業農家が減りまして第一種兼業がふえておる。しかも、その間、第一種、第二種の間ではさらに第二種兼業農家がふえております。これはそのとおりの状況でございます。
  157. 野坂浩賢

    野坂委員 それは農業だけでは食えない、兼業をしなければやれない、だから出かせぎに出ていかなければならぬ、食うために、生きるために出ていくというのが現在の出かせぎ労働者、季節労働者の実情であるわけです。だから、その点は農林省というのはこれから出かせぎをしなくても済むような農業政策をやれと幾ら言っても、その把握さえできないわけですから、農業を捨てる農棄法農政だといわれるようなことになるわけでありますから、十分考えてもらわなければならぬ。これはあとでまた質問をしてあなたの見解をただしていきたいと思っておりますが、農林大臣でも出てもらえばいいわけですけれども、都合で出られないということでありますから、まずこの程度でとりあえずおいて、大臣がおいででありますから、労働大臣にお尋ねをしたい。  季節労働者の評価ですが、季節労働者皆さん、今日の日本の経済成長の実態の中で、季節労働者の役割りといいますか、この人たちが大きな役割りを果たした、こういうふうに私どもは理解をしておるわけでありますが、日本の社会に異常なほどの貢献をした、こういうふうに理解をしていいのかどうか。そうではない、この雇用保険法を見ますと、われわれから見るとむしろじゃま者扱いにしておる、こういうふうにさえうかがわれるわけです。だから、そういう面では、日本の経済社会の発展の度合いに大きな貢献をしたと私は思っておりますが、長谷川労働大臣はどうお考えです。
  158. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私もあなたと同じように、農村から出てきた出かせぎ労働者は、今日の日本の経済成長の非常に大きなにない手であった、こういうふうに高く評価しております。
  159. 野坂浩賢

    野坂委員 大臣お話しになった中に、この二月の二日、予算委員会におきましても、一生懸命働いてきた、私も出かせぎ地帯の出身だ、だから労働省というのはそういう人たちを守る、必ず皆さんの不利になるようなことはしない、こういう答弁をされておりますが、そのとおりまじめに受け取っていいわけですか。
  160. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 そう受け取ってもらってけっこうでございます。
  161. 野坂浩賢

    野坂委員 まず前段はそういうことで、これから中身に入りますけれども、まず周囲の状況を固めてから質問に入りたい、こういうふうに思っておるわけです。  いま遠藤局長お話しをいただいたわけですが、季節労働者、不安定労働者を解消するためには長期常用化政策というものをとっていくんだ。農林省にこの際承っておきたいわけですけれども、出かせぎをしなくても済むような政策をとるということを始終お話しになっておりますが、私の見る面では、出かせぎはこれからもふえていきますよ。横ばいであるけれどもふえていきます。石油危機その他があって、調整弁として使われるような可能性はあるけれども、出るだろう。長谷川労働大臣は、まだ一・七倍の求人があるからだいじょうぶなんだ、受けられる、こういって予算委員会でも御答弁になっておりますが、そういうことをしなくても済むような農業政策は私は見られない。あるとすれば、ふえるような傾向はない。また労働省としてもそういう認識には立たないだろう、こういうふうに思うわけですけれども、そういう政策は私はとられていない、こういうふうに思いますが、どうでしょう。
  162. 白根健也

    ○白根説明員 基本的には、私ども先生の考えている方向と同じような形で今後の農政を考えているわけでございます。ただ現実的に見ますれば、やはり農業におきましても都市に匹敵するような所得規模、こういうことが当然必要になるわけでございます。といたしますれば、農業サイドにおきましても経営規模の拡大なり経営の近代化なり、こういうものを基本とすべきであろう、こういうことで現在各種の対策というものを講じておるわけでございますけれども、その中で、やはり就業問題から見まして、農村にも比較的規模の小さい方もございますし、またその方々自身が地元で安定的な就業をいたしたい、こういうこともございます。そういう面を考慮いたしまして、農村工業の導入をはかりますとか、そういうことでの地場での安定就業、そういうことも一つ考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、現状におきましては、特に東北を中心といたしまして単作地帯を考えますと、経済条件あるいは自然条件から見まして、いま直ちに出かせぎというものをなくするのは困難な状況にあるわけでございます。これらの方々に対しましては、留守家族の営農指導でございますとかその他の援護措置、こういうことを講じまして、いわばそれぞれの農家の志向に応じました形で現在対処しておるわけでございますけれども、基本としては経営規模の拡大、こういうものを一方においてはかりながら、ある程度安定兼業というものを包括した形での生産組織、そういうものを中心に現在行政を推進しているような状況でございます。
  163. 野坂浩賢

    野坂委員 審議官は全然現状の農業の実態というものを理解をしない答弁ですね。いまは、それぞれ一九六九年の九月とかあるいは七〇年の二月とかに答申が出ております。また、閣議でもいろいろ話されておりますが、経営規模の拡大で専業農家をつくるんだというのが農業基本法の精神なんですね。ところができなくて第二種兼業に落ちていく。それは農業で食えないということをあらわしておるのじゃないですか。農家の皆さんにあなたは聞いたことがありますか。第一、いまのこの時代で、経営規模の拡大をしたいとおっしゃっておりますけれども、そのことができるような状況じゃないでしょう。土地は高い。そして出かせぎをやめられないというのは、たとえば都会に出て家を求めるとしても、いま一千万円ぐらいかかりますね。そんなもので買えないかもしれない。そういう金がどこにありますか。それから、その出かせぎの収入も低い。生活が不安定であるから、出かせぎとも訣別もできないし、農業とも訣別ができない、これが実態じゃないですか。私はそういうふうに思っておりますが、違いますか。農林省なり労働大臣から、特に労働大臣は出かせぎ地帯出身ですから、私の見解が違えば違ったといって教えてほしい。
  164. 白根健也

    ○白根説明員 実態面におきまして、現状の考え方から申し上げますれば、やはり農業としても、基幹男子労働力のあります、農家自身の生産力が非常に高い、しかも現在のような食糧事情のもとでは、やはり農業に専心する農家というのを一方では育てることが急務であるわけでございます。しかしながら現状におきましては、先生御指摘のように、遺憾ながら農業だけでは食えない、こういう農家の方々もあるわけでございまして、先ほど来私が申し上げておりますのは、日本はやはり農業専業といいますか、中核とするものをわれわれ自身としては育てていきたいと考えておるわけでございますけれども、現状におきましては、やはりいろいろな志向を持たれた方がございますので、そういう方々を中心にしていろいろな対策を講じておるわけでございます。  基本法にございますように、精神としてはわれわれ受け継いでおるわけでございますけれども、遺憾ながら、地域の状況その他によりまして、十分その成果が出ない面は確かにあるわけでございますけれども、やはり一つの経営でございますし、先生御指摘のように、たとえ農家が他産業に従事したいと申しましても、住宅の問題が当然ございます。家族の移転の問題もございます。そういうことで相当な時間もかかるという面がございますので、なかなか問題が多うございますけれども、この辺、いろいろきめのこまかい対策というものを労働省ともお話しの上、われわれ実施しておるというような状況でございます。
  165. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 地元において雇用の機会があるということが一番喜ばしいことでございますけれども、いまの時代はなかなかそこまでまいりません。そうしますと、そういうふうな労働力の需給の激しいところに出かせぎの方々がいまから先も行きまして、そして自分生活のかてをよけい獲得するというかっこうになって、しばらくそういうことが続く、地元の手当てというものもなかなか進めにくい時代でございますから、その間はそういうことが続くだろうと思っております。
  166. 野坂浩賢

    野坂委員 労働大臣のほうがものわかりがいいですね。農林省はだめですね。新聞その他をごらんになりましても、こういうことをいっていますよ。ちょっとこれを読んでみますと、「父ちゃんやむすこたちを出かせぎに送り出した母ちゃんたちは、春までの六か月間、心細さと心配を押えながら家を守り続けなければならない。」長くなりますといけませんから、母ちゃんは、「出かせぎには反対する。しかし「子供の教育費、農業の機械化などで金もかかる」」、こういうことで、どうしても出なければならぬ。たくさんの新聞を見ましても、こういう話し合いが随所で行なわれておりますね。一つだけ言っておきますが。それだけよくわかっておる労働大臣です。あなたは非常にできがいいわけですね。それがわかっていないなら、私もこれから聞こうと思ったが、そういうことがわかっておりながら、この保険法というのはいただけませんね。  あなたは、日本の経済成長、日本のこの社会に出かせぎ労働者、季節労働者は異常なほど貢献をした、この人たちをどうしても守ってやらなければならぬ、こういうふうにおっしゃった。いままでこの出かせぎ労働者を守られた具体的な内容、非常によかったことがあれば、守ってやったと自信を持って、他の一般の労働者よりもいいことがあれば、教えていただきたいと思うのです。
  167. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それは私も出かせぎ地帯でございますが、まず一番先に、おいでになる方々にお手伝いあるいは御注意申し上げていることは、やはり正常なルートで来られること。これが不正常な場合に、よく賃金の未払い等がございまして、それを何とか取ってくれなどという話を受けまして、元請から下請から三段ぐらい下請のものにそういう問題が出ますと、上のほうまで探って歩いて、そしてその賃金がもとに入るようにお願いするのが間々私たちのやることでございます。でありますから、正式な職業紹介なり、公的機関を通じて、そういう事故のないようにやってもらいたいというお手伝いを申し上げたり、あるいはまた、こういうところに来る前に、健康診断するとか、職業指導をするとか、来た場合には、そういう出かせぎ者のいるところの宿舎なども、最近はよく監督をされておりまして、そういうところに働いている諸君の実態なども見ることにしているわけでございまして、そういうふうに、来た者に対して、事故のないように、危険のないように、あとでまたごたごたのないようにというところに私たちがやる問題がある、こう思ってやってまいった次第であります。
  168. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。そういう大臣の心がまえでいろいろと指導されたと思いますが、それぞれに相当の効果がございますか。
  169. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたように、出かせぎにつきましてはいままでいろいろ就労上問題がございました。たとえば蒸発問題等が一時新聞をにぎわしたりした例もございます。そこで、正常なルートを通って就労していただくということで、就労した方々にはすべて出かせぎ労働者手帳を交付いたすようにいたしております。これによりまして、留守家族との連絡が絶えるようなことのないように、それから、いろいろ災害が起こりまして身元が確認できないというようなことのないように、こういった措置をとっております。  と同時に、出かせぎ労働者が主として多数就労されます需要地におきましては、出かせぎ援護相談所というものをつくりまして、ここでいろいろと身の上相談あるいは就労上の労働条件とか賃金未払いとか、そういった相談にも応じております。あるいはこういった方々が家族ともども時を過ごしていただくような福祉センターも設置いたしております。こういうのも非常によく利用されております。こういういろいろな措置を私どもは積極的に進めてまいりますと同時に、出かせぎの供給もとの地元の県とも連絡いたしまして、労働省から補助金を出して、こういった人たちのいろいろな福祉対策をすでに昨年度から講じてまいっておるわけでございます。今年度予算を増額計上いたしておるわけでございます。
  170. 野坂浩賢

    野坂委員 ことしの三月二十日過ぎの日本農業新聞に「ふえた直接上京組」「地元の職安ではだめ」こういう見出しで、「「地元の職安ではよい出稼ぎ先がない、東京に行けば何とかなるだろうとの直接上京組が多い」——これは、上野公共職業安定所が行なった「窓口がら見た出稼ぎ労働者調査報告」」であります。「昨年同職安の出稼ぎ相談室を訪れた五千百六十六人のうち六八%の人が直接上京組だった」と書いてありますね。これですよ。それはあなた方のそういう行政指導というものはできていない、政治に信頼がない、労働省や農林省に信頼がない、こういうことを働く農民の皆さんはおっしゃっておることになるのじゃないでしょうか。どうでしょう。
  171. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに出かせぎの方々の全部が職安を経由しているというわけではございません。私どもは公共職業安定所なり、あるいは市町村役場なり、あるいは農業団体なり、あるいは出かせぎの関係団体、そういった何らかの形で公的なルートを通じて就労していただくということを指導しているわけでございます。したがいまして、職安を通じておりますのはそのうちの一部分にすぎませんけれども、それ以外の不正常なルートを通ってこられたことによって、いろいろと問題をかもし出す危険性がございますので、そういうことのないように、出かせぎ労働者手帳を必ず交付して、それを持っていない人については今後行政指導の対象として、非常に問題が処理しにくくなりますので、そういう意味で、地元の県、市町村とも連携をとりまして、このことに特に重点を置いて行政を進めているわけでございます。
  172. 野坂浩賢

    野坂委員 進めておるのですけれども、たとえば、私が述べましたのは一つの例なんですけれども、六八%もあるというのは、こぼれの一〇%とか一五%とかいうことであれば、ある程度行政指導は浸透しておるということになると思うのですけれども、七〇%もあって、三〇%の者は行政指導を受けておるけれども、あと七〇%もだめなんだというのでは、あまり労働省としての存在価値がないことと違いますか。雇用保険法というようなああいうものが出てきますから、いよいよおそれて寄ってこないのと違いますか。
  173. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま御指摘になりました例はそういうことかもわかりません。私どもはいろいろなケースで実態を伺っておりますが、確かに職安を通じたものは全体の三分の一程度かもわかりませんけれども、その他、市町村役場とか農業団体によってあっせんされておるものが大体大部分であるというように私ども承知いたしております。ただ、そういった公的な機関を通じますと、いろいろ税金の面で不利な扱いを受けはしないか、そういった危惧の念から、いわゆる民間のやみの口入れ屋的なあっせんによって就労する方がいまだにあとをたたないことは、私どもきわめて残念に思っております。そういう意味で、地元の市町村とも十分連携をとりながら、正常のルートに乗せるべく努力をいたしておるわけでございます。  私ども、今年度におきましても、就労者手帳五十五万を用意いたしておりまして、全員についてこれを配れるような措置を進めておる次第でございます。
  174. 野坂浩賢

    野坂委員 大臣が、いま労働者に対する思いやりで賃金の不払いの点をお話しになりましたし、いま関係機関を通じてやっていくように行政指導をしておる。確かに、お話がありましたように、賃金の不払いというのはたくさんあるのです。それで、監督署に参りましても、たとえば倒産をしたりして、大臣お話しになったように、下請、孫請というようなかっこうで、川越の労基署に行くと、それはいや熊谷だ、いや立川だ、こういうふうにあっち行ったりこっち行ったりしてやっておるという例が、ここにたくさん来ておるわけです。ここにも手紙もあるのです。来ておるのですけれども、あとからお示しをしてもいいと思いますが、そういうことはあります。しかし、これはあたたかい思いやりというよりも、普通のことなんですね。職安を通じていらっしゃい、賃金の不払いということは本来あり得ないことなんですから。そういうのは出かせぎ労働者、季節労働者に対する思いやりのある措置だということには、大臣、ならぬと私は思うのですね。これは当然のことですよ。これは、普通あり得ないことがあった場合のことなんですから。いま職安局長お話しになった、たとえば出かせぎは親子別れで行く。ここにもありますが、お読みになったかどうかは知りませんが、「日本の農民問題」というのに詳しく載っておりますね。出かせぎ中に奥さんがなくなった、あるいは若い二人の方が出かせぎの留守中に蒸発をしたとか、そういうのは数限りなく新聞でごらんになったと思うのですね。それほどきびしい現実、うしろ髪を引かれる思いでありながら行かなければならぬということになってまいりますと、言うなれば、季節労働者は条件の悪い中での労働ということになります。そして、心身ともに傷を受ける、夫婦ともに傷を受ける。機関を通せばそういうことがない。  よく留守家族との連携等もあるということで、一つの税金の面を局長はあげられました。これは二世帯になるわけですからね。長谷川労働大臣の出身地から——あなたは給料高いですから十分ですけれども、安い給料をもらっておれば、こちらでも生活をしていかなければならぬ。たまにはうさ晴らしで一杯も飲まなければならぬ、こういうことになってまいりますと、一人よりも二人で生活をしたほうが楽だというふうに世間でよく言われるわけですが、それほど一人と二人の生活というのは、食生活の面ではそう倍もかかってこない。しかし、別れておると非常にかかってくる。さらに、そういう点でできるだけ収入が多くなければならぬということで、そういう関係機関を通さずに出てくるということも明らかになった。だから、それは労働省として税金の面でも考えたらいいじゃないか。貢献もしたし、そういう実態もわかったし、何とかしなければならぬという、そういう真情の発露が長谷川労働大臣あるわけですから、あなたは労働省の大将なんですから。だから減免の措置とかあるいは有給休暇の問題とかあるいは一括控除を税金の場合六割するとか、そういう方策を本気で考えてみるのが、いわゆるこの人たちを守っていく、生活をさらに豊かにする、こういうことに通ずるのじゃないでしょうか。いまの賃金不払いの問題を例にとられたのじゃなしに、前向きに季節労働者皆さんをあたたかい思いやりで救っていくというのは、そういう希望しておることを現実にどうかなえるかということにあるのじゃないでしょうか。私はそう思いますが、どうでしょう。
  175. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私たちの東北なり北海道が出かせぎ者が多いわけでして、そういう問題に対して非常な御注目をいただきますことは、感謝申し上げます。  私は冗談みたいによく言うのです。東京に来てやはり正常なルートのほうが、女房、子供が連絡するときもしやすいし、そのことのほうが一番安全だということ、そうして賃金などもしっかりもらっていく、それから帰るときには、せっかくもらった賃金をすりにあったり何かしないように、現にすりにあって青くなった者もあります。やはり一番大事なことは正常なルートに、そうして最近では、自分の町村から出かせぎに来ている諸君のために、あまり長い間夫婦で会ってないと困るからということで、町村では農協なり役場が中心になって、青年男女が一緒に来て慰安会をやったり、ある場合には奥さんと引き合わせるような会合などをして気持ちのコミュニケーションを通わせて、すさむようなことのないように、蒸発するようなことのないように、こういう手当てさえもとっている実態を知っているわけでありまして、そういう方々が事故のないように、働いて安心して帰るということがまず一番先のことじゃなかろうかと、いままでのところ考えておったわけであります。
  176. 野坂浩賢

    野坂委員 ちょっと繰り返しになりますけれども、まことに失礼なんですが、私が大臣にお尋ねをしておりますのは、機関を通すということは否定をしないのです。しかしなぜそういう機関を通さぬのかというと、それは法律にありましていろいろ問題もありましょうが、それは局長がはしなくも述べられましたように、税金というような問題もある。とても税金を払ったのでは何のために出かせぎに来たのかわからない、こういう実情もあるわけです。あなたが、心配をしてくれてありがとうとおっしゃったのですが、私のところも出かせぎがあるわけです。だから、そういう意味でもある程度の優遇措置をしてやる、あるいは帰れるというように、半年もつとめれば慰労休暇なり有給休暇というものは一定程度認めてやる、そういうことのほうがもっと血の通った行政ではなかろうかと私は思うわけです。そういう点については、愛情あふるる、何とかしてやらなければならぬ、この人たちを守り、育成をしていかなければ、貢献もしたし、これからも大きな貢献度合いがあって、労働省としては資本家の側に立つのではなしに、労働者の側に立つのだ、こういう人たちのためにそういうふうな点については考えていく必要があるのではなかろうか、こう思うのですが、どうでしょうね。
  177. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先ほど大臣から御答弁ございましたように、出かせぎの人たちが安全に安心して働いていただけるようにすることが、労働行政としてまず第一の肝要なことでございます。いろいろな施策をやっておりますが、具体的な例で、先ほど申し上げました出かせぎ労働相談所は非常に活用されておりまして、昨年一年間に約九千九百件、約一万件の相談がありました。就職、転職、賃金不払い、災害、行くえ不明その他身の上相談、こういったいろいろなすべての項目について相談にあずかっているわけでございます。  さらに福祉センターにつきましても、現在五カ所を設置いたしておりますが、これも宿泊、休憩を兼ねて地元から家族の方が出てこられて一緒に宿泊されるとか、休憩して、たまに一家団らんをされるというようなことに利用されているケースもやはり一年間に一万件、九千九百二十四件ございます。こういうことによりまして、私どもは安心して、家族と離れ離れになりながらも何とか安全に働いていただく、そして蒸発することのないように郷土へ帰っていただく、私どもは万全の方策をとっていきたい、こういうことでいろいろな措置を講じているわけでございます。
  178. 野坂浩賢

    野坂委員 先行きをしないで、局長。私が質問をしておることの税金のことや何か答えないで、いまああしておる、こうしておる、何にもやらぬで、休むところがあるじゃないか、文句あるまい、こういうようなお話で……。  それでは聞きますが、季節労働者の評価は非常にされたわけですから、高く評価をしておる、この人たちを守り抜くのだというこの原則は初めにきまったのですから、それでは有給休暇とか税金の面を考慮したらどうですか。そういうことをやる意思はありませんかと大臣に聞きたい。
  179. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私はいまここで初めて税金の問題とか有給休暇の問題を指摘されたわけでして、そこまで私は考えておりませんでした。
  180. 野坂浩賢

    野坂委員 これから考えますか。
  181. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それは私自身が勉強さしてもらいましょう。
  182. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、労働省労働者側に立つということですから、資本家のほうの立場から出かせぎ労働者をながめてみますと、いろいろなことを言っておりますね。私はそのとおりになっておるような気がしてならぬのです。  たとえば労働者の要望事項では、労働意欲を減退をされている失保そのものについては検討してほしい。これは、失業保険を払っておるからなかなか働かぬのだ、だからやめてしまったらどうか、こういう意味だと思うのですよ。それからこういうことを言っておりますね。失保の問題は、雇用者に責任があるのか離職者に責任があるのか、いずれにしても失保財政を潤すような考え方は改めてほしい、こういうようなことを言っておりますね。それから、大手は石油の値上げ等による生産の伸び率の低下を、残業の手控え、季節労働者の採用規制などで本血の雇用調整弁とすることを考えている、こういうことが希望要項なんかでもはっきりしておるわけです。  これは日本ではないのですが、アメリカのピーターソンという商務長官がおりますね。この人が、一九七一年十二月二十七日「変化しつつある世界におけるアメリカ」というので演説をしております。この演説を見ますと、こういうことを書いております。「日本の著しい成長の土台をなす政府・企業間の相互作用制度については、西欧流の感覚からでは容易に説明しにくい。」こういうふうに書いてあります。「日本政府の有力な役人は、経済成長を刺激し、事業見通しを改善することに専念しており、日本政府は自らを経済成長を促進する上での企業パートナーとみなしている。」あなた方は労働者立場ではなしに企業のパートナーだ、こういって田中さんや各閣僚が好きなアメリカの責任者は述べておるのです。「この点、アメリカとは大きな相違がある。恐らくアメリカでは、政府役人の主要な任務は経済成長と産業振興ではなく、企業および労働活動の制限と規制に努めること、すなわちアンパイア的役割を果たす」のだ。だから日本は企業のほうに癒着をしておる、こういうふうに見えるのです。  こういうふうな実態が今度の雇用保険法にもあらわれておるというふうな気がして私はなりません。というのは、−九十日を三十日にする、実損はない。この間の昭和三十年ですか、あのときにもそういう点が出されておりますね。百十日だけれども九十日にする、実損はない、こういうようなかっこうで、ここにおいでになります八木一男先生等が非常に議論をされております。そういう点からすれば、私がいま読み上げましたように、労働者の意向、たとえば季節労働者皆さん意見を聞いて雇用保険法というものをつくられたのかどうか、ほんとうに聞かれたのだろうか。経営者の皆さん意見というものは、日経連、経団連の皆さんの要望事項法律と合わせてこう線を引っぱってみますと、みんな言っていることが入っているのですよ。これはあとから示してもいいのですが、私はそういう意味で、意見をお聞きになって守るという立場に立つ労働大臣としてはそういうことを、出かせぎ者といいますか、季節労働者皆さんの何人ぐらいからお聞きになったのか、ちょっとお尋ねをしておきたい。特に出かせぎ地帯出身の大臣でありますから、十分お聞きになった、こういうふうに思うのですが、お聞きになりましたか。私は出かせぎ者連合会の副会長ですが、労働大臣からそういう話があったということはだれからも聞いたことはない。経営者の皆さんからは話が出て、要望事項として文書が出ておる。それなのに話がない、こう言っておりますが、いつ、どこで、どのような人とお話しになりましたか。
  183. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険法案の作成にあたりましては、従来から中央職業安定審議会の失業保険部会、労労使公益三者構成でございますが、その審議会の部会におきまして三年有余にわたりまして、現行失業保険制度上のいろいろな問題点の検討を重ねていただいたわけでございます。その後、昨年春以来、学識経験者、専門家によりまして失業保険制度研究会が設置されまして、ここでいろいろと従来からの問題点の再検討が行なわれました。それをもとにいたしまして労働省当局としての原案を作成いたしたわけでございます。その原案を中央職業安定審議会、訓練審議会並びに社会保障制度審議会に御諮問申し上げまして、いずれも三者構成関係審議委員の御意見によって御答申を得た次第でございます。  その間におきまして、特に私どもはその審議会以外に、関係の労働団体等の御意見を伺いまして最終的に法案の作成に当たった次第でございます。
  184. 野坂浩賢

    野坂委員 私はやはりなまの、ここで一番犠牲を負いますのは、いままで九十日の権利を持っておった季節労働者皆さんが三十日に切られる。しかも安い。親子別れをして、あるいは夫婦別れをして出ていく、そういう労働者皆さんが、いわゆる一般は千分の五、先ほど島本先生からも日雇い労働者皆さんが千分の十二で問題があるじゃないかとおっしゃっておりましたが、それもそのとおりですが、出かせぎの皆さんは千分の七・五、こういうことなんですね。これでは私はほんとうの、先取りという話がありましたが、労働行政ではなしに、あなたは金をためるのを楽しんでおられるようにさえ見えるのですね。たとえば社会保障制度審議会、会長が大河内一男先生ですか、この方が審議会に出されておりますけれども、そういう方々意見を見ても、たくさん問題がある。これでいまちょっと私は読みましたけれども、いいところは一つもない。りっぱな保険法です、たくさん問題がありますよということだけがうたってある。私はそう思うのですよ。こういう審議会の答申が出て、閣議では十分討議をされたのですか。これを受けて十分これらの問題を閣僚皆さんに話されて、もっと手直しする方法があったのじゃないですか。長谷川労働大臣は、貢献度は評価をし、必ず労働者を守り抜く、季節労働者を優遇すると言いながら、実際にはそうではなしに、わからなければともかく、そういうことは十分承知しながら切って捨ててしまうような雇用保険法案というものは私は納得はできない。そういう点については、前段の答弁といまの答弁とあわせてどのように労働大臣は、ここだけの問題ではなしにほとばしるものを、この委員会場を通じて出かせぎの労働者、季節労働者皆さんがもっともだと思われるような答弁をしてほしいと思うのですね。
  185. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに審議会等におきましてもいろいろな問題点の御指摘を受けたわけでございます。先ほどもお答え申し上げましたように、審議会におきまして、特にこの季節出かせぎ受給者の問題につきましては、極端な急激な変化を来たさないようにという御指摘がございました。私ども、その後も出かせぎの関係団体責任者方々等とも数回お会いいたしまして、いろいろ御意見を承っております。審議会における審議の過程で負担の問題、あるいは給付の問題等についていろいろ御意見がございましたので、私どもは答申を受けますと同時に、その過程でお出しいただきました意見をもとにしまして、本来原案におきましては千分の四十三、労働者の負担は千分の二十という予定になっておりましたのを千分の七・五に引き下げて原案を作成いたしました。そのほかでもいろいろ手直しいたしておるわけでございますが、もともとこの出かせぎ受給者の問題につきましては、従来から被保険者の数にしまして全体の約三%、保険料の負担は二%でございます。その二%の保険料負担をしている全体の三%の人たち失業保険受給全体の約三分の一強、三五%程度の給付を受けております。しかも、これが本来的な偶発的な失業でなくて、もともと就業と不就業を繰り返す予定された失業といった性格のものに対して、こういう状態の給付が行なわれることについては本質的に問題がある、従来からこういう各界からの御指摘を受けておったわけでございます。したがいまして、昭和四十二年と四十四年に当委員会で御審議いただきました失業保険の改正におきましては、こういった季節出かせぎ受給者の給付と負担のアンバランスを引き締めるという方向で修正なり検討が行なわれたわけでございます。しかしながら、今回の雇用保険法案におきましては、先ほど先生の御指摘になりましたように、冒頭からお話がございました出かせぎ労働者の実態というものを十分踏まえて、今後のあるべき姿というものを考えながら、予定された失業、不就業というものに対して給付が行なわれるということは、本来の失業保険制度からいえばたいへん問題のあるところでございます。この問題のある季節出かせぎ受給者の給付の問題を、従来と態度を全く改めまして、これを制度の中に組み込んでいく。出かせぎ受給者の方々が過去十年にわたって失業保険金の支給を受けることによって、その保険金が生活実態の中に組み込まれている。そういう実態を受けとめまして、これを制度の中に定着させるという方向で今回の法案を作成いたしたわけでございます。  しかも、 保険料の負担につきましても、現在考えられております給付を行なうとしますと、大体千分の百程度の保険料を納めていただかないと給付と負担の均衡がとれないということでございますけれども、社会保険であります以上、給付と保険料の負担とをパラレルにしなければならないという性格のものではございませんが、しかしながら、こういった予定された不就業に対する給付を、そのまま一般の失業給付と同じように考えるわけにはまいりませんし、同時に、これはILO条約にも認められておることでございますので、何がしかの保険料の負担増をごしんぼういただくというたてまえを通しまして、千分の七・五という、月当たり約二百五十円程度の負担増をお願いすることにいたしたわけでございます。  また給付につきましても、これは出かせぎ労働者に対してあまりにも酷ではないかという御指摘でございますけれども、従来の出かせぎの方々の保険金の受給の実績というものを十分考えまして、ほぼそれに近い線を一時金という形で支給して差し上げる。そうすれば、一時金をもらうことによって、あとはそれぞれの立場に応じて働かれることも、郷里に帰られてそこで働かれることも、あるいは農業や水産業に従事されることもそれは御本人の自由である。こういう制度に改めることによりまして、いままでよりはより実態に即した合理的な制度に改めることにいたしたわけでございます。その間のいきさつは先生前々からの経緯を十分御承知でございますので、御理解いただけるのではないかと考えておるわけでございます。
  186. 野坂浩賢

    野坂委員 初めは千分の四十三を考えておったのが千分の十八にした。それで使用者は千分の十・五を持たせて労働者には千分の七・五にした。大体千分の四十三などという発想が問題にならぬのですよ。私は千分の四十三なんかは論外だと思っています。千分の十八が問題なんです、初めからこう言っているのです。一般労働者と一緒にしたらどうですかという意味を言っているわけです。それでこれにも書いてありますように、社会保障制度審議会の答申にもありますように、「保険としては疑問のある事業に振り向けようとしている点はうなずけない。」とちゃんと書いてありますね。いわゆるあなたがおっしゃる三事業論ですね。能力開発事業その他の部分に、それは別な金で出せばいい、掛け金から出さなくても。だから「保険財政として余裕財源がありながら本来の失業給付部門にあてることなく、」、そういうふうに大臣ちゃんと書いてありますよ。それについては大臣はどうお考えですか。——私は大臣に聞いている。あなたいつも先ほどからやられているが、大臣に聞かなければならぬ。これは政策の問題ですからね。
  187. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は今度の雇用保険法案は、何といたしましても、たとえば出かせぎの諸君でもそうです。東京へ十年も十二、三年も来る者があります。思わず会いますと、先生、もうこのごろはからだがもたぬです、同じ仕事をさせられて。それではその間にトラックの試験をとるとか、何かそういう技術を習う、そうすれば給与がよくて長続きするよという話を個人的にもしたことがございます。そういう意味からしますと、自分を訓練させることによって長く続く、収入が高くなっていくというふうな方向が、このたびの雇用保険法案の中に合理的に系列化されて盛っているところに大きな意味があるというふうに解釈しておるのであります。
  188. 野坂浩賢

    野坂委員 私が一番初めに申し上げましたように、農業を捨てることはできない。金もないし都会に家を持つこともできない。それだけの収入では食えない。だから二種兼業農家となって出かせぎをしなければやれぬのですよ。それはあなたお認めになったのですよ。それで運転でも習って能力開発をやって長期安定ということですけれども、そういうことではなかなかやれない。それだからいままではいわゆる中四カ月、前十一日とあと十一日で二十二日と四カ月やればもらえた。だから言うなれば、秋の取り入れを終わって十一月十五日に家を出発をする。四月十五日の苗しろに間に合うように、もう種まきは済みますが、それぞれ植えつけの用意をする、こういうことですが、長谷川大臣お話になりました方法でやってようやくなんですよ。しかも遠藤局長がおっしゃったように、この失業給付金というものはすでに生活の中に組み入れているのだということもお認めだ。これを今度六カ月にする。これでは取り入れか田植えかを投げなければならぬ。まるまる六カ月ということになれば。そうすれば長谷川大臣お話になったのと矛盾してくると思いませんか。大臣にお尋ねします。
  189. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 期間の問題ですから……。
  190. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 受給資格決定の算定の基礎となります期間の問題でございますが、四十四年の法律改正におきまして、従来の四カ月、前後十一日、合計四カ月二十二日、この受給資格期間の計算が、満六カ月、百八十日ということに改定されたわけでございます。この改定された受給資格の問題につきましては、当時、ただいま先生の御指摘の問題いろいろ御議論がございまして、六年間、昭和五十一年の一月末まで凍結されまして、それまでの間は従来の四カ月二十二日が適用されることになっております。六カ年間延期をいたしまして、その六カ年後の五十一年の一月末までに農林水産業についての全面適用をはかるようにという国会での御指示がございまして、法律によって義務づけられております。その農林水産業への適用と同時に六カ月の受給資格期間が発効するような改正が行なわれたわけでございます。  私どもは、先ほど御指摘のように、出かせぎ受給者の実態を十分くみ取りますと同時に、農林水産業への全面適用をあわせて同時に解決をはかっていくということで、五十一年一月末の措置事項をあわせて今回の雇用保険法案の中に盛り込んだわけでございまして、従来の考え方と全く変わっていないということをお答え申し上げたいと思います。
  191. 野坂浩賢

    野坂委員 ずいぶん変わっていますよ。前には百八十日だった、それを九十日に切った、今度は三十日で実損がないということになった。それを認めれば今度はゼロになってくる。これは労働者の要望ではなしに先ほど言ったように企業の要望ですよ。それをあなた方はちゃんと受けていらっしゃる。だからピーターソン商務長官も、あなた方は企業のパートナーだ、べったりだ、こういうふうに言っておるのです。労働者の心理は組み入れられていない。私はそう思わざるを得ません。実損がないといって百八十日を九十日にして、さらにまた実損がないといって三十日にする。窓口で規制して払わないようにする。だから、払わないようにしておいて、三十日でもむしろいいじゃないかと、こういう理論展開というのは、それは先取りとか愛情とかいうものはかけらもありませんよ。口だけで季節労働者を大事にしよう、いや貢献をしたと言うだけで、情け容赦なく切っていく。こういう保険法案というのはこういう方式しかないじゃないですか。
  192. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、昭和五十一年の一月から現行の条項が適用されることになっておりまして、その点におきましては、今回の雇用保険も全く軌を一にいたしておりまして、何ら変更を加えたものではございません。なぜ六年間凍結をされたかと申しますと、その際に、農林水産業への適用をいたすことによりまして、こういう人たちが従来と同じような形で給付を受けられるようになるであろう、こういうことが国会で御指摘があったわけであります。出かせぎ受給者の全体の約七割は夏場出かせぎに出られる方でございまして、帰って冬期間に給付を受けられる。この方々は、いま御指摘の種まき、刈り入れとは直接関係ございませんで、さほど影響はないかと思いますが、問題は全体の三割に当たります農閑期に——要するに刈り入れが終わって出かせぎに出て、種まきまでに帰るという人たちだろうと思います。その方々は農作業が機械化、合理化されることによって期間も何がしか短縮される面もございますし、同時に今回の改正によりまして、農林水産業が適用になりますので、地元に帰られて農作業なりその他の仕事に就労されることによりまして、もし不足している場合には不足分が通算されるということによりまして、受給資格が従来どおり十分与えられることになるのではないか、かように私どもは考えておるわけでございます。
  193. 野坂浩賢

    野坂委員 あなたは専門的にお答えになりましたからよくわかりませんが、わかるように言ってほしいと思いますが、凍結して十一日、十二日前後、まん中四カ月、これで従来と変わりない、こういうふうに理解していいですか、いかぬでしょう。
  194. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 五十年の四月一日以降は前後まる六カ月になるわけでございます。その点は現行の本法の適用が施行されることになるわけでございます。これはいま申し上げましたように五十一年の二月一日からはそのとおりに適用されることになっておりまして、その内容と全く同じでございますということを申し上げたわけでございます。したがって四カ月二十二日ではなくて、来年の四月からは六カ月になるということでございます。
  195. 野坂浩賢

    野坂委員 だんだん悪くなるわけですね。長谷川労働大臣の言われたことと内容は全然違ったことになってくるわけです。締めつけていくというかっこうにしかとれませんよ。これはとりあえず置いておきます。  林野庁の長官に来ていただいておりますので、林野庁の長官に聞いておかなければ時間がないと思いますからお伺いしたいと思います。  林業労働者の問題なんですが、出かせぎの農民対策はゼロだったと白根さんは言ったんですね。だから第二種兼業農家はだんだんふえて、これは考えておるけれども現実に合わない、こういうことです。そこでそういう農民対策と林業労働者というのもそういう方々がたくさんあるわけですね。  四十四年のたしか六十一国会だと思いますが、民有林の労働者について、失業保険をはじめ社会保険制度の適用を受けられるような条件を整えることを目的として、民有林労働者雇用の安定推進を具体的に実施すると政府は確約をしております。いまも遠藤局長お話しになっておりますように、常用化をしたい、長期化をしたいということでありますが、林野庁ではその後林業労働者の通年雇用奨励事業というのを四十四年からやっている。しかし、森林組合の労務班員を中心としてかなりきびしく制限をしておりますから、素材の生産業者のところで働く林業労働者は対象からはずされておる。あなたもよく御存じだと思いますが、森林組合の百五十日以上というのは三六%、六十日から百五十日までが三六%、六十日以下が二八%、こういうのが林野庁の森林組合課から出ておる森林組合統計で示されております。民有林全体で見ますと百五十日以上というのは二%、九十日から百五十日は一%、三十日から九十日が六%、二十日から三十日が七%、こういうふうになっておるわけであります。  こういう状況下にあるわけですが、今度この法案の附則第三条というような関係になって、私がまず聞いておきたいのは、国有林の定期作業ですが、政府職員退職手当法の第十条の規定によって、四十七年度は川俣先生でしたかお尋ねになって一万六千人ある、四十九年度はどの程度あるかということをまず聞いて、それから質問に入りたと思います。
  196. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 国有林事業に従事しております定期作業員、これは六カ月以上出役するものでございますけれども、約一万七千人でございます。これは次第に減少してまいっております。と申しますのは、できるだけ事業の組み合わせ等を考えましてこれを年間働けるような、いわゆる常用作業員というふうに組みかえておりますので次第に減少しておりますが、四十八年の七月一日の統計では約一万七千人ということになっております。
  197. 野坂浩賢

    野坂委員 そこで一万七千人あるということでありますが、給付日数は大体八十四日、こういうふうに私は承知をしております。各局で、たとえば帯広なんかは百日、こういうのも三十日分というふうに一時金として扱われる、こういうことになってまいりますか。これでは、国有林の労働力の確保と、労働省の職安局長がおっしゃっております通年あるいは長期化、常用ということと矛盾をするのではなかろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  198. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 国有林の作業員の場合におきましては、いま申し上げました定期作業について申し上げますと、六カ月以上、定期作業員でございますが、失業保険に加入はいたしておりますけれども、ほとんど大部分の者は繰り返し毎年出役しておりますけれども、月のうち二十一日以上勤務いたして、それが六カ月以上となりますと、国家公務員法にあります職員でありますので、失業者の退職手当を支給されることになっております。したがいまして、失業者の退職手当に切りかわる者が大部分でございます。失業保険をもらう人もその中に一部はございますけれども、そういう実態になっておるのでございます。
  199. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険法に伴いまして、政府関係職員につきまして退職手当が支給される、その退職手当の関係法律につきましても、所要の整備を行なうことにいたしております。その際に、御指摘になりました問題の、国有林の定期作業員の受けます退職手当につきましても同じような問題が起こってまいります。これは、失業保険料を原資とする失業保険給付ではございませんで、いわゆる国家公務員の退職手当でございます。したがいまして、私どもはこの退職手当につきましても、農林省、人事局、大蔵省とも御相談いたしまして、こういった定期作業員の退職手当につきまして、従来から比べて不利にならないように措置すべく検討いたしておる次第でございます。
  200. 野坂浩賢

    野坂委員 不利にならないように措置をする。二月の二十三日に、ここにおいでになります川俣委員からあなたにお尋ねをしておられます。  ちょっとはしょりますと、「林野庁の場合は、林野庁の一万七千人の労働者に対しては、九十日にしてあげる考え方でもあるのかな。」あなたは、「いま御指摘の定期作業員につきましては、従来の実績を十分踏まえて改善していただきたいということを、労働省に強く要望いたしております。」これを要望されて、それを受けてそういうことであった、こういうふうに理解していいわけですか。
  201. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 そのとおりでございます。
  202. 野坂浩賢

    野坂委員 国有林に働く作業員の方は、全員常用化を三月までにめどをつける、こう言ってあなたの庁内で職員の皆さん話し合いをされておる。しかし、三月までにはつけられなかったじゃないか。私はそういうふうに理解しておりますが、あなたは全員常用化するという基本姿勢を堅持するというふうに確認をしていいのですか。
  203. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 この点につきましては非常に重要な問題でございますので、ちょっと詳しく申し上げたいと思います。  この問題につきましては、かねてから林業労働者の福祉の向上などの観点から、基幹要員について極力常用化による雇用安定につとめてきたところでございます。今後もこの方向に変わりはないのでございますが、一方、このことが雇用の硬直化により、国有林経営の健全な運営を阻害する要因となるようなことがあってはならないことも当然でございますので、今後の基幹要員の常用化による雇用の安定は、経営改善に即応するようなものとして推進されなければならないものと考えておるのでございます。  このため、国有林野事業の改善の見通しに即し、事業規模に適合し、かつ広範な流動性を持っておる優秀な労働力である基幹要員につきましては、冬季事業の拡大、地域間あるいは職種間の流動化など、通年化のためのあらゆる手段を講じて常用化をはかりますとともに、高齢者の退職等、所要の経営改善措置を行なうという方向で検討を行なっているとこでございます。  しかし、基幹要員として見込まれる者のすべてを事業の通年化による常用化という形で吸収することには限度がございます。これらの者の雇用安定の問題につきましては、できる限り林野庁としての具体的構想を取りまとめまして、目茶審議願っておりますところの林政審議会の林業労働小委員会意見参考にしますほか、関係省庁との調整をはかり、国民的合意の得られる形で十二月末を目途に対処の方向づけを見出すよう努力する考えでございます。  少しくどいようでございましたけれども、そういう考えで現在努力しております。
  204. 野坂浩賢

    野坂委員 いま読み上げられたのですが、従来の実績を踏まえて労働省に要望した。従来の実績を踏まえるというのは、三十歳以下は今度は雇用保険法で六十日になるわけですね。こういうことではやはり国有林に定着してこないと思うわけですから、あなたがおっしゃったように全員国有林は——基幹要員ということばをお使いになって、私はよくわからぬのですが、国有林に働く一万七千人は通年雇用をやって常用化をすべきだ。あなたはそういう基本姿勢なのかと私は聞いておるのですが、その限度があるというのは何人をいっておるのですか。
  205. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 基本的には、定期作業員つまり六カ月以上の人たちでございますけれども、年間これを雇用できるような常用者にしたいと思っております。現在、四十一年から四十七年までの統計でございますけれども、約一万一千百八十人を常用化いたしております。  限度があると申し上げましたのは、四国とか九州とか、南のほうは大体年間作業ができるわけでございますけれども、ただ御承知のように、造林事業のようなものですと、これは春から夏にかけて植栽し、あと地の手入れをいたしますが、常用作業員のうちの大半は青森営林局、秋田営林局を中心とした東北地帯でございまして、ここは実は冬の間の作業はないわけでございます。これはやるとしますと、できるだけ伐採等を組み合わせるとか、あるいは造林地の枝払いとかつる切りというような仕事がございますが、全国的に見ますと、特にそういう積雪地帯において通年雇用するというのは、仕事の面からだけ見た場合には非常に限度があるということを申し上げたわけでございます。しかし、基幹労働員、つまり林業をやります場合の、特に造林事業等の人たちはだんだん減る現状でございますから、それを確保するには、そういった点についてもっと基本的に検討する必要があるということを申し上げたのでございます。
  206. 野坂浩賢

    野坂委員 九州のほうは一年間そういうことは問題にならぬわけですね。そういう積雪地帯のところも局長がおっしゃったように常用化をする。そして枝の払いとかそういうことを長期化する、常用化をするという方針は、当然労働省側もそういう御答弁だったのですが、そういう方向でやるのが当然じゃないですか。だから、あなたがおっしゃったように最近のうちに国民的な合意を得るということですけれども、あなたは、組合との団体交渉の中でも、三月までにそれはめどをつける、こうおっしゃっておったのではないですか。それをつけられなかったので、先に延ばされたのですが、私が聞いておるのは、全国の六カ月働く皆さん、そういう方々全員の常用化の基本姿勢はくずされては困るんだ、それは常用化をするんだ、こういうふうに理解をしておったのですけれども、そういうふうに受け取ってはいけませんか。
  207. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 常用化の意味でございますけれども、林業労働力確保という意味から申し上げるならば、特に積雪地帯、中でも豪雪地帯におきましては、造林はもちろん伐採もできないところがございます。そういう場所におきましては、常勤性を付与する、ことばはちょっと変わりますけれども、いわゆる常勤職員としてこれを処遇する方法を検討しなければならぬということを、たびたび国会で申し上げているわけでございます。  ということは、逆に申し上げると、仕事があるなしにかかわらぬ問題でございます。これは、林野庁だけで決定できる問題ではございませんので、各官庁とも御相談し、また林政審議会にもおはかりし、そして国民的コンセンサスを得た上で決定しなければならぬということをたびたび繰り返して申し上げているところでございます。
  208. 野坂浩賢

    野坂委員 だから、そういう場合は何らかの措置をする。たとえば国民的合意というのは、休業補償をして——いまは、先ほどお話がありましたように、ボーナス等を含めれば、五カ月分なら五カ月分高いわけですからね、失業保険の六割といえば。あなたの場合は、休業補償といえば、たとえば八割になったとしても、基本給ですからそれよりも下回ることになろうと思うのですね。そういう休業補償方式というものをとって、やはり雇用を確保する、林業を守っていく、こういう意味でのいわゆる常用化ということを、あるいは通年化ということを言っておるわけですよ。だから、そういうかっこうをして、籍はちゃんととっておく、こういうふうに理解をしていいわけですか。
  209. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 これは、現在国会のほうに御提案になっておりますところの国有林労働者雇用安定法案というのを私、実は拝見いたしております。先生のおっしゃいますのは、そういう意味を含めてだと思いますので、そういうことを含めまして、やはりこれは検討していかなければならぬと思っておるわけでございまして、ですから、繰り返して申し上げます。これは林野庁限りで決定できる問題ではございません。私たちは、真剣に、これは林業労働力確保のためには検討していただきたいということを申し上げているわけでございます。
  210. 野坂浩賢

    野坂委員 林野庁長官としては、他の省との折衝はございますが、常用化という方向で、その基本姿勢はくずさず、新たな措置というようなものを考えて、国民的コンセンサスを受けるような、合意が受けられるような方式を編み出していく、考え出していく、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  211. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 国有林は、国民全般の皆さんから経営を委託されたものでございますので、おっしゃいますように、経営改善の進展とあわせまして、常勤性を付与する方向で努力してまいりたい、かように考えております。
  212. 野坂浩賢

    野坂委員 どうも時間がございませんので——あとで理事の方に関連をして御質問をしていただく予定ですので、時間がなくなりました。したがって、多くこれから申し上げることはできませんし、あとで先輩の皆さんにお譲りをして、また機会があれば、お尋ねをしなければならぬと思っておりますが、先ほども島本委員が発言をしておりましたように、六十歳以上の問題ですね、あるいはこれは一般の皆さんと同じように、農林水産業に従事をする方々失業保険料を払わなくてもいい、こういうふうにすべきだとこの審議会の答申にも書いてございますね。それは均衡を失することなんだよ、それは十分答申というものを尊重すべきだと私は思うわけです。それについては、大臣は、どのようにお考えでしょうか、承っておきたいと思うのです。
  213. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 高年齢者の保険料免除の問題につきましては、先ほど島本先生からも御指摘があったわけでございます。  一般的には、高年齢者の就職がなかなか困難であるし、そういう人たちに対する雇用を促進するための援助策の一つとして、保険料の免除という措置をとることにいたしたわけでございます。同時にまた、こういった高年齢者につきましては、三十年、四十年の長きにわたって失業給付を受けることなく保険料を納付していただいて、その後は、六十歳以後になりますと、かりに離職をされましても、そのまま労働市場から引退されるというようなケースがきわめて多くなってまいります。そういうことから、負担と給付の均衡という観点からも、高年齢者に対して、それ以外の人と同様に保険料の負担を課するということは、社会的な公平の見地からも十分考慮する必要があるのじゃないかということで、保険料の免除の措置を干講じたわけでございますが、これに反しまして、出かせぎ受給者の場合は、先ほど申し上げましたように、就業と不就業、予定された失業を繰り返して、その不就業期間に対して失業給付が受けられる、毎年繰り返して失業給付が受けられる、こういうことでございますと同時に、高年齢者に対する雇用促進という見地からは、別途常用化のための援助策を講ずることにいたしております。  そういう考え方から、出かせぎ受給者につきましては、保険料免除の措置を講ずることにしなかったわけでございまして、その点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  214. 野坂浩賢

    野坂委員 私は、繰り返し、大臣をはじめ皆さんに申し上げるわけですが、今度の雇用保険の法案というのは、資本側といいますか、雇用側といいますか、そういう側に立って、この保険法案というものはつくられております、率直に言って。幾ら抗弁をされても、日経連等が要望書を出されたのを受けて、具体化をされておると言っても過言ではありません。  お話がありましたように、今日の社会を具現化をした季節労働者、そういう諸君たち気持ちといいますか、要望というものを満たしてはいない。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕 それを受けて、この社会保障制度審議会等が端的にそれらを述べております。たくさんに問題があります。したがって、具体的に申し上げて、九十日を三十日にし、凍結の問題もございますが、十一、十一をまる六カ月にする、あるいは給付も一般と差をつける、こういうふうに現在の季節労働者といいますか、出かせぎの皆さんの条件を悪化させて、だんだん締めつけをしてくる、それは資本の要望にこたえるものだ、こういうふうにしか理解できません。私は、そのことを再度、この問題について検討をされるように強く要求をして、私の質問を終わりますが、理事から関連がございますので、委員長のほうで取りはからいをお願いしたいと思います。
  215. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 川俣君。
  216. 川俣健二郎

    川俣委員 野坂委員質問の時間が限られましたので、たいへん野坂委員——法案全体に反対するにしても、もう少し、理事の一人として確認したいと思うのです。  二つなんです。一つは季節労務者、一つは林野庁の定期作業員、この二つだけなんですが、一つ目の季節労務者、これは一年未満の短期雇用労働者、簡単に言って、出かせぎが多数を占めておるわけですが、この凍結法は、五十一年の二月一日に雇用保険法がなくても実施されるのだ。これは一同わかるわけだね。ところがこの雇用保険法が成立すれば、五十年の四月一日、十カ月早められて適用になる。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕 労働者から見れば、九十日分が三分の一になる、不利なものが十カ月早められるのだ、こういうようにそのまま理解しておった。労働省局長のほうからもう一ぺん確認したいのは、強制適用事業ということになれば、これが有利になるのだ、私の聞き違いかもしらぬけれども。というのは、簡単に言うと、この法案が成立すれば十カ月早められて損する、そういうように思っておったのが、そうじゃないのだ、これを適用されて適用事業になれば、むしろかえって有利な面が出てくるのだというようにも、何か不安定な不確定なことがあったので、それをもし聞き違いであれば、私が言うように、やはり十カ月早めて悪い法律を使われるのだというように単純に解釈していいのかどうか、これが一つです。  それからもう一つは、非常に野坂委員があらゆる方面からたたんで、国有林の定期作業員がいま九十日もらっている、ところが、本法で三分の一になれば、定期作業員という林野庁の人方もこれによるんだ、この法律によればそうなのだが、しかし、九十日といういまの権利は、林野庁の定期作業員についてのみは確保をするんだというようなニュアンスの質疑があったのです。これがはたしてそうなのか、そうだとすれば、どこでそのような法的な措置が行なわれようとしているのか。この二つだけを確認して、社会党のきょうの質問を終わります。
  217. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 受給資格の問題につきましては、先ほど私がお答え申し上げましたのがあるいは明確を欠いたかと思いますが、かりに現行の失業保険法がそのまま今後続くといたしますと、五十一年の二月一日から満六カ月の受給資格決定に必要な期間というものが実施に移されることになります。その際に、同じように附則の条項によりまして、農林水産業への強制適用の何らかの措置を講じなければならないという条項が働きまして、私どもにその措置をとるべきことが義務づけられておるわけであります。それを受けまして、今回の雇用保険法で、現行法の本文にあります四カ月二十二日の暫定措置でなくて、本体である受給資格決定に必要な期間は満六カ月、百八十日という規定が条項に織り込まれておりまして、来年五十年の四月一日からこれが施行になることになりますが、と同時に、同じように農林水産業への強制適用も来年の四月一日から実施いたすことにいたしたわけでございます。したがいまして、現行の失業保険法と今回の雇用保険法の条項は、その限りにおいては全く内容は一緒でございます。その実施の時期が十カ月繰り上がるという形になるわけでございます。  それから、第二点の国有林につきましては、雇用保険法案が成立いたしますに伴いまして国家公務員等退職手当法が改正になります。その退職手当法の条項の中で、九十日が適用される者と、それから短期受給者ということで特例の給付が適用になる者と両方が出てくるかと思います。で、国有林の定期作業員につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、どの対象として決定するかという問題がございますので、従来の実績から不利にならないように措置いたすべく検討いたしておりますということを申し上げたわけでございます。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  218. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、二つ目ですが、不利にならないように検討しておるというだけであって、いまおたくのほうから提案されている法的なものは何もないということですね。
  219. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 これは法律の実行面での問題でございまして、この国有林の定期作業員に該当する人たちが短期、特例の被保険者であるかどうかという確認は、労働大臣がいたすことになっております。したがいまして、その短期受給を受けるべき特例被保険者であるのか、一般の被保険者に相当するものであるかという、行政運用の面で、法律の施行の面での問題になるかと思いますので、そういう意味で検討しておりますということを申し上げたわけでございます。
  220. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、あえて法的なものに照らし合わせれば、一、二、三項とありますが、三項目の労働大臣が確認云々というやつを確認しないという、こういうことなんだな。
  221. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 そういう方向で検討いたしております。
  222. 川俣健二郎

    川俣委員 終わります。
  223. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 坂口力君。
  224. 坂口力

    ○坂口委員 先日来大臣に対しまして、身体障害者の問題を何度か質問をさせていただきましたが、この法案を見せていただいておりまして、やはり身体障害者の問題がひとつどうしても聞きたいというふうに思ったわけでございます。  この法案の中に高齢者の問題につきましてはかなりの部分が出ております。しかし、身体障害者雇用促進の問題というのはこの中ではあまり取り扱われていない、あまりというよりも取り扱われていない、この点についてどういうふうにお考えになっているか、まずお伺いをしたい。
  225. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険の失業給付の面におきましては、身体障害者につきましては、特に高年齢者と同じようにきめこまかな措置を講ずることにいたしておるわけでございます。その点は高齢者と同様の措置を考えておるわけでございます。  ただ、雇用福祉事業あるいは雇用改善事業あるいは能力開発事業、こういった三事業の面につきまして、特に取り立てて身体障害者を出しておりませんが、これは身体障害者雇用促進問題は身体障害者雇用促進法にもありますように、こういったハンディキャップ層に対する雇用促進問題は、一般的な問題として取り上げるべき問題でございます。したがいまして、これに必要な諸経費は当然一般会計で支弁すべきものであります。こういう観点から、特に雇用改善事業の中で身体障害者というものを取り上げなかったわけでございます。しかしながら、冒頭申し上げましたように、給付の面につきましては、五十五歳以上の高年齢者と同じような手厚い措置をとることにいたしておる、その点が従来と違っておる点でございます。
  226. 坂口力

    ○坂口委員 誤解のないように、私どものほうも考え方をはっきりさせておかなければならないと思いますが、この雇用改善事業あるいは失業の予防、こういった措置に対しましては、これは当然、先ほども議論がございましたが、別途出されるべき筋合いのものであって、いわゆる保険の中から支払うべき筋合いのものではないではないか、こういう基本的な考え方を持っておりますが、しかしそれは別にいたしまして、きょうはちょっと横に置かせていただいて、この雇用改善あるいは失業の予防の中で、この身体障害者の問題というのは、やはり高齢者の問題と並んで取り上げられてしかるべき問題ではなかったかと思うわけであります。  雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律、この前、前国会で出てまいりました。このときにも附帯決議等で身体障害者雇用を取り上げておりますし、この中にも高齢者の問題もやはり出ているわけですね。高齢者は向こうにも出ているわけですが、あらためてここでまた取り上げられているわけです。ですから、向こうのほうに出ているから、ここで、この法案ではあげなくてもいいんだというのは、少し議論がおかしいのであって、やはりここでも身体障害者の問題と、いうのは私は当然取り上げられるべきでなかったか、こう思うわけです。ただ、そういうふうな雇用改善とか失業の予防ということに対するお金の使い方ということにつきましては、これは別途議論のあるところでございますが、しかし高齢者の問題がこうして取り上げられます以上、やはり身体障害者の問題もあわせてここに取り上げられるべきではないか、こう思うわけでございますが、ひとつ大臣、何かございましたらお伺いいたします。
  227. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに御指摘のように、この雇用保険の体系の中から身体障害者を全く除外しているというわけでは決してございません。給付の面で高年齢者と同じようないろいろきめこまかい措置をとりますと同時に、三事業の中でも、身体障害者のいろいろな施設あるいは援護措置等につきましては、もちろん御指摘のように取り入れることにいたしております。  ただ、雇用改善事業の中で特に身体障害者を取り上げてなかったという点は、御指摘のとおりでございますが、その他の面では、心身障害者のセンターでございますとか、勤労身体障害者のための体育施設あるいは就職のための各種の援護措置あるいは特別な長期低利融資のための利子補給、そういった身体障害者特有の行政措置のための費用は、この三事業の中で支弁することにいたしております。特掲いたしておるわけでございます。
  228. 坂口力

    ○坂口委員 いまおっしゃった雇用改善の問題が、特に身体障害者の場合にはなかなか雇用が促進をしない。これはこの間から何回か質問されていたところでございますけれども、これは何としても打破していかなければならない。そういう意味では、これは各法律の中で再三この問題は取り上げていただいて、そうしてあらゆる角度からこの身体障害者が少しでも働けるように、そういう場ができるように、使用者のほうも、そして他の労働者もあわせてこれは考えていくということでなければならないと思うわけであります。そういう意味からいたしますと、やはり一本ここに欠けているという感じを持たざるを得ないわけです。この点、私は十分ひとつ御検討をいただきたいと思うわけであります。大臣、何かございましたら
  229. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 きのうも労働大臣の部屋に身体障害者団体方々が大ぜいお見えになりまして、この国会で御議論されている中から労働省が最近特に動いたことなど御報告申し上げ、さらにまた、だんだんの御要望などもございました。並みいる者は、ほんとうに健康で働く人と、そしてまた車イスに乗って、ある場合には性殖機能も私たちはありませんという中から、社会復帰をいわれる姿というものは、これは胸を打たれるわけでございます。そういうものなどを含めて、いまから先も懸命にやってまいりたい。この中に単独にどうこうという話がなかったのは残念だということでございますが、局長が申されたように、給付の問題とか訓練の問題だとか、そういうものを含めながら推進する一つの材料にしたい、こういう心がまえでおることを御報告申し上げたいと思います。
  230. 坂口力

    ○坂口委員 大事な問題でございますので、もう一言だけ言わせていただきますと、いま大臣がおっしゃった御決意はよくわかるのでございますが、それを何とかしてこの法案の中に私は生かしてほしいと思うわけでございます。ひとつ、大臣がいろいろとお聞きになったその点を踏まえていただきまして、前進をしていただきたいとお願いをいたしまして、次に進みたいと思います。  まことに荒っぽい議論をさせてもらうわけですが、この法案を見せていただきますと、失業というものと離職ということとどういう関係でとらえてお見えになるかということが、少し私認識できにくい点があるわけであります。離職というものを好ましいと考えられるのか、好ましくないと考えられるのか、どういうふうな観点に立っておいでなのか、ひとつお伺いしたいと思います。
  231. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 失業という概念と、離職という現実に起こっております現象、これがどういうふうに観念的に結びつくかという御質問かと思います。現在の離転職の状況を見ますと、年間の離転職率は、総雇用労働者の約一割ということでございますが、その中で約八〇%ぐらいが個人的な理由によります自己退職といいますか、自己の都合による離職になっております。こういった傾向は最近特に強くなってきておりまして、その中でもいわゆる若年層に片寄っております。新規学校卒業者の例について言いますと、就職後三年たちますと約半数が一たん離職をして転職をする。中には二回も三回も転職をしているという例がございます。そこで、こういった離職と、雇用保険法案の中にある、現行の失業保険法の中にございます失業という概念がどう結びつくかということでございますが、一たん就職した人たちが、その職を離れてなお次の職業につきたいという意思と能力がありながら、なおかつある一定の期間就職できない状態にあるという場合に、それを失業という定義で法律はつかまえているわけでございます。そこで、離職をした後、労働の意思と能力があって一日も早く就職したい、そのために安定所に求職の申し込みをして、就職のあっせんを受けて就職するまでの状態を失業という概念でとらえられることになっておりますので、離職イコール失業ではございませんけれども、離職をして労働市場から引退して、もう就職はしないのだという人でない限りは、失業の概念におおむね当てはまるのではないか、こういうふうに考えております。
  232. 坂口力

    ○坂口委員 私は、いまなぜそんなことを申し上げたかと申しますと、この法案が失業予防というよりも離職予防という感を抱いたから、そういうことをお聞きしたわけでございます。  議論を進めていきますが、皆さんのほうにどういうふうな理由で職を離れるかという、そういう調査はございますか。私が持っておりますのは少し古いもので新しいものがありませんので、ありましたら一番大きなところを二、三お教えいただきたいと思います。
  233. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、最近若年層におきまして特にそういった離転職の傾向が顕著になってまいっておりますが、その理由といたしましては、ここ数年間労働力事情が非常に緊迫いたしておりまして、比較的転職が容易になってきている、こういうことが一つあげられると思います。同時に、こういう新規学校卒業者を中心とした若い世代におきましては、昔とは職業観が違ってきている。従来からのいわゆる終身雇用的な考え方が非常に薄れてきました。自分に向いた、自分の好みに合った、あるいは自分の腕に適した職場に次々と変わっていくことについて、それを何ら否定的に考えるような考え方がなくなりつつあるというようなことがあろうかと思います。それから、こういう若い青年期は、自分の適職へのいわゆる模索期であると言えるかと思うのでありまして、ある一つの職について一も、それについていろいろ将来性を考えるとか、あるいは自分の能力、技能について必ずしもフィットしてないということであれば、ほかのもっと一自分に向いた職場に転換をしたいというような意思が率直に行動に移される。こういうことから転職が比較的多くなってきているのではないか、かように考えております。  これは男子と女子につきましてもやはり同じような傾向がありまして、一般的に仕事が自分に向かないということと、将来の安定性という、この二つが大きな理由になっておりますが、男子と女子で違います点は、自分の家庭の都合とか一身上の都合という理由が女子の場合に多くなってきている、こういうことが言えるかと思います。
  234. 坂口力

    ○坂口委員 私自身、こういう調査をやりましたのはかなり前になりますし、立場がいまの立場と医学の場の立場とはかなり違った面がございますので、ここで同じように並列的に議論ができるかどうかわかりませんが、私どもが以前にこういう調査をやりましたときに、いわゆる労働環境の問題が一つの大きな問題になって常に浮かび上がってまいりました。その環境の悪さということから、どうしても職場を離れざるを得ない、離れていきたいという理由になっているのがございました。いまのお話の中には労働条件、特に労働環境というものが出てまいりませんでしたけれども、おそらくかなりなパーセントにその辺のところもあるのではないかと思うわけであります。  この雇用改善ということから考えますと、この法案の中でそういう問題まで論じるということが法制上適当かどうかということは、私も、しかとわかりません。しかし、雇用改善ということを真剣に考えていくならば、どうしても労働環境の整備ということを抜きにして論ずるわけにはいかないと思うのです。今後多くの人が職場で安定した仕事を続けていくためには、どうしても労働環境というものを整備していかなければならないと思うわけであります。そういう意味から、労働環境というものについて、この法律の中でそれがむずかしければ別途の形でも、雇用改善という大きな一環の中で、今後どのように考えていかれるか、これをひとつ伺いたい。
  235. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 局長が御答弁申し上げたように、若年労働者が三年以内にいろいろな職場を変わっていく、それは欲望の多様化あるいは近代社会に対する適応化、いろいろな条件があろうかと思います。いずれにいたしましても、その中の一つは、大事なことはやはり労働環境でございます。若年労働者を定着させるためにも労働環境の改善ということは重大な要件でもありますし、そしてまた、労務の近代化とか適正な労働条件の改善というところに、これはいままでもやってまいりましたが、法案の中にこれが一つ項目として入っている入っていないは別として、日本の若年労働者を定着させて、勤労意欲を持たせるということが大事なことだと思いまして、従来もやってきましたが、さらにこの機会に一そう推進してまいりたい、こう思っております。
  236. 坂口力

    ○坂口委員 この法案の中にいろいろの福祉事業等がございます。こういうふうなものまでこの法案の中にもし入れてくるとすれば、労働環境の整備に対する補助というようなものも一項目入ってきても私は不思議ではないのではないか、こう考えるわけでございます。  時間がございませんので次に移させていただきますが、季節労働者雇用奨励金ですとか一時金制度等につきましては、先ほどからも幾人かの方から御議論が出ておりました。このような一時金制度として三十日に短縮するというような問題は、現在の出かせぎをしておみえになっている方にはたいへん大きな変化をもたらすことは、もう間違いがないと思うわけであります。これは考え方によっては、もう農業をやめてしまえ、そして企業で働きなさい、こういっているというふうにもとれるわけです。労働大臣は首を振っておみえになりますが、そうとれるわけであります。この法案作成に際して、農林省のほうとこの点についてどのようなお話し合いをなされたか、ひとつお伺いしたいと思います。
  237. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 短期の出かせぎ受給者の問題につきましては、これはいわゆる農村労働力でもございますし、農林行政とも密接な関連のある問題でございますので、事前に十分農林省ともいろいろと御相談をし、緊密な連携をとりながら対策を常時とってまいっておるわけでございます。  そこで、今回の雇用保険におきまして、従来からしばしば問題にされておりました季節出かせぎ受給者の取り扱いにつきまして、私どもは、先ほどお答え申し上げましたように、出かせぎ受給者を締め上げるとか締めつけるとか、給付を切り捨てようという考え方ではなくて、本来の農業政策の進展によりまして、農家労働力のあり方と、それから出てまいります出かせぎ労働の実態というものを十分踏まえながら、その実態に即して、この雇用保険制度の中で出かせぎ受給者の問題を処理していきたい、こういう基本的な考え方に立って法案の作成に当たったわけでございます。  したがいまして、今回一時金制度をとることにいたしましたのは、従来は予定された不就業の期間に安定所へ求職の申し込みをして、どこかへ就職のあっせんをしてもらいたい、こういうことで求職活動をしながら、過去二週間あるいは四週間について失業しておりましたという失業の認定を受けることによってその失業期間中の給付を受ける、そういうことで最高九十日までの給付が受けられる、こういう制度になっておるわけでございます。ところが、実態はいろいろございまして、中には完全に働けない状態にあって働きたいという人もありますし、しかしながら一方では、予定された不就業で実際は働かない、あるいは農業等に従事しているという実例もたくさんあるわけでございます。そういう実態を考えますと、むしろこういう人たちは、農業等で働いている場合には、本来は失業給付を受けられないにかかわらず、保険金を受けているという制度の矛盾もございます。あるいは保険金の支給をそういう形でならば受けられる人たちが実際には受けていないという例もございます。そういういろいろな実態を考えますと、この出かせぎ受給者の予定された不就業という実態を保険制度の中に組み入れますについては、一般の失業者の場合とは違った取り扱いをするほうがより実態に即しておりますと同時に、社会的一般から見ましても公平な取り扱いではなかろうか、こういう観点から今回の一時金制度をとったわけでございます。  この一時金制度をとりますことによりまして、従来は働けば保険金がもらえない、遊んでいればもらえるというようないろいろな矛盾も解消されますと同時に、従来資格がありながらもらわなかった人たちも一律に受給できると同時に、一時金の支給を受けながら働きたい人は働ける、農業にも従事できる、こういうことになりますので、出かせぎ受給者の実態に即したより合理的な制度になるものと私どもは考えておるわけでございます。
  238. 坂口力

    ○坂口委員 これは先ほどからも何回か議論が出ておりましたし、私も次回にもう少しこの点、別な角度から突っ込んでお聞きをしたいと思うわけでございます。きょうはこまかく立ち入ることはやめさせていただきますけれども、しかし厳然として出かせぎをしなければならないという現在の農業の実態というものはあるわけであります。その中で好き好んでそういう形になっているのでは決してないわけであります。この法案のような形にもし切りかえられたといたしましたら、なるほど局長がいま言われたような点も一面においてはあるかもしれませんが、しかし総体的に見ますと、大きな動揺を来たすことは間違いのない事実だと思うわけでございます。このことにつきましては一連の農業政策というものとの大きなかかわり合いもあろうかと思います。この法案一つだけで変化をして、それで決着のつく問題ではないと思うわけでございます。この点、次回に譲らせていただきます。  もう一点最後にお聞きをしたい問題は、林業ですとか建設業だとかいう屋外労働者の問題がございます。いわゆる季節労働者に対しては季節労働者雇用奨励金という形で今回この法案の中に制度化されているわけでありますが、季節労働者の場合には季節的に何カ月間か連続して職を失うと申しますか、ない時期があるわけであります。しかし、こういうふうな形ではなしに、林業ですとか建設業だとかいうような人は、非常に自然条件だとか天候というようなものに左右されて、日によりますと、非常に雨が続いて、外で仕事ができない。季節的に連続して何カ月もということはありませんけれども、月の中で十日間とか八日間とかいうふうに飛び飛びではありますけれども仕事のできない職種の人たちがかなりあるわけです。いわゆる雇用改善という立場からこの法案がつくられているとしましたら、やはりその点にも目を向けられてしかるべきだ、こう思うわけです。その点はここには触れられておりませんが、どういうふうにお考えになっているか、局長ひとつ御意見を伺います。
  239. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 建設業など、あるいは林業等も含まれるかと思いますが、主として屋外で作業される人たちは、一般的に日雇いとか出かせぎとか臨時とか、不安定雇用といわれるような労働形態をとっておるものが多数を占めております。こういう人たちは天候に左右されて雨天には働けないというようなこともありまして、そのことが当然賃金面にもそれぞれ加味されておることも従来の慣行でございますけれども、それにいたしましても、こういった屋外労働者は、労働条件でございますとか労働災害の問題でございますとか、いろいろ大きな問題をかかえていることも事実でございます。そこで、こういった人たちが一般の労働者と同じように安定した常用雇用につけるような方向に進めるべく、私どもは、出かせぎとか臨時の人たちにつきましては、通年雇用の奨励措置をとるとか、いろいろな援護措置を考えておるわけでございますが、特に建設業の労働者の場合にはこういった問題が多うございますので、中央職業安定審議会の建設労働部会におきまして、建設労働特有の、特に屋外作業に従事する労働者の実態について従来調査を進めてまいりましたが、同時に、こういった調査をもとにいたしまして、こういう労働者の労働実態に即して、今後の政策あるいは行政措置をどういうふうに進めていったらいいのか、あるいは今後立法措置を講ずる必要があるものは、どういう内容のものを考えたらいいのかという点を現在検討を進めていただいておるわけでございまして、今後逐次その検討の結果に基づいて措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  240. 坂口力

    ○坂口委員 私も山の中で生まれたものですからよく存じておりますが、これから五月に入りまして、長く雨が続くというようなときになってまいりますと、特に林業等をやっておみえになる方は、連日、仕事に行きたくても実際問題として行けないわけでございます。危険を伴いましてできないということもございます。そういうふうな人たちは、連続して何カ月もという形でありませんので、失業という概念からいたしますといささか離れるきらいはありますけれども、年間を通じて休まなければならない日数だけを見ますと、いわゆる季節労働者の何カ月もの日数に当てはまるということがいえると思うのです。この問題はかねてからもいろいろと検討はされているようでありますけれども、なかなかこれがまとまってこない、このことにつきまして、私どもは何とかして早くまとめなければならないという考え方を持っております。  いろいろ見てみますと、西ドイツなんかでも何かこういうふうな制度があるということが書かれております。シュレヒト・ヴェッテル・ゲルトとかいう制度がございますね。日本語に訳すと悪天候手当というのですか。これはいま申し上げたような趣旨にのっとってできたものではないかと思うわけです。これもこの法案の中に入るのが適当かどうかということは検討しなければならないと思いますが、しかしこのように労働者の問題全体について検討される時点になってまいりますれば、当然そういった問題もあわせて検討されるべき時期に来ていはしないか、こう私は思うわけです。ひとつ西ドイツ等の制度も踏まえて、そういったものはできないものでしょうかというのは言い方が悪いですが、どういうふうにお考えになりますか。
  241. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 いま坂口先生のお話にございました西ドイツとか、あるいはカナダ、そういった諸外国で、失業保険制度の中でいわゆる悪天候手当というような制度を実施しておりますのもございますが、私ども、今回雇用保険の成案を得ます段階で、こういった点も十分検討いたしたつもりでございます。これは出かせぎの問題とも重複し合う問題でございまして、こういった点を制度の中にどういうふうに受けとめることができるか、いろいろ検討いたしましたけれども、諸外国の例は、坂口先生御承知のように、非常に大きな負担を伴うものでございまして、実際問題として必ずしも期待できるような実効があがらない、と同時に、先ほど来御指摘になりましたように、出かせぎの短期受給者の問題一つをとりましても、たとえば千分の四十三というようなことになりますと、これは負担が大き過ぎるということでたいへん強いおしかりを受けるというような状態でございまして、いま直ちにこういった悪天候対策というようなものを制度化することにつきましては非常にむずかしい問題がございます。先ほど申し上げましたように、雇用審議会、中央職業安定審議会、両審議会におきましてこういった屋外労働者の問題について検討していただいている段階でございますので、その検討結果を待ちまして、いろいろな総合的な対策を今後積極的に考究してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  242. 坂口力

    ○坂口委員 そういう人たちには多くの給付等が要ることは事実だと思います。それであればこそそういう制度が必要なのではないかと私思うわけです。いままでの例で申しますならば、同じように失業保険を納めておりましても、全くその失業保険等の恩恵には浴さない人たちもあるわけであります。それはそれでいいと思うのです。たとえば技術者なんというのは、とうていもらうというようなことはないわけです。医師なんというのは、幾らかけておりましても、やめて次まで失業しておるからというようなことはほとんどないわけです。一方においてはそういうふうに、保険に入っておりましてもそれに浴することはない職種がある反面において、保険料としては少ないけれども、しかしこの保険の恩恵に浴する機会の多い職種もまたあるわけであります。これは保険でありますから当然のことだと思うのです。そういう意味で、その負担の大きいものをしょい込むということは全体の保険財政を圧迫するという考え方からすれば、これは一つの問題点にはなると思いますが、しかし雇用を改善するという全体の中からいきますと、やはりそういう職種が加えられて初めて意義が出てくると私は思うわけです。ですから、こういうふうな非常にたくさん給付をしなければならない人たちは全部除いてしまうという考え方からいきますと、保険財政は確かに健全化するかもしれませんけれども、しかしそれが全体の労働者立場に立っているかどうか、これは逆の形になるだろうと私は思います。ですから、保険財政中心の考え方ではなしに、すべての職種の労働者全体に対する考え方から、こういう法律というのはとらえていただかないといけないと思うわけであります。そういう立場から西ドイツにあります一例をいま申し上げたわけでございますが、これは大臣、この法案の中に入ればいいわけですが、これがむずかしければ、何らかの形でどうしてもこの問題を取り上げていただきたいと思うわけであります。ひとつ御意見を賜わりたいと思います。
  243. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 屋外労働者につきましては業種が非常に多岐多様でございますし、また実態が非常に違うことでございますから、ただ保険財政そのものを保全するために入れる入れないの問題ではなくて、そういうことも踏まえまして、先生・の御意見などもきょうは拝聴いたしましたから、審議会の中にだんだん盛り込まれるのを待ちながら、なじむように研究してみたい、こう思っております。
  244. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひこの問題もひとつお取り上げをいただいて前進をさせていただきたいと思います。  きょうは、あと大橋議員に交代いたしますので、これだけにさせていただきます。
  245. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 大橋敏雄君。
  246. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 このたび労働省から雇用保険法案のいわゆる法案提出がなされたわけでございますが、各委員のもとにその法案とその関係資料の本が配付されております。これがそうです。「雇用保険法案関係資料」それと「雇用保険法の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案関係資料」、これまでにない分厚いこうした法律関係する資料が出されているわけでございますが、この資料を見る限りにおきましては、今回の法案の改正が確かに抜本的なものであるということは、こういうものからして感じ取れることは取れるのです。しかし私は、本が分厚いから、資料が多いから内容もいいのだ、必ずしもそういうものでないということを知りました。  まず今回の雇用保険法の提案理由を見てまいりますと、雇用情勢の変遷に対処するために現行の失業保険法がかかえている問題点を改正する、このような趣旨のもとにまとめられているようでございますけれども、実際には、内容をつぶさに見てまいりますと、季節労働者への締めつけ、あるいは給付日数の削減、季節労働者保険料の引き上げ——大幅な引き上げです。あるいはまた就職支度金等の廃止、事業主への交付制度の拡大など、とにかく見れば見るほど内容が企業サイドに立ったものである。つまり雇用促進策に終始されている。われわれから言わせていただきますと、これは改正案ではなくて改悪案である、このような印象を深めるわけでございます。  そこで、まず政府がおっしゃっているこの雇用保険法案、言うまでもなくこれは名称そのものでございますけれども、今日までは失業保険法、こう言っておったわけです。これが雇用保険法に名称が変更になるわけでございますが、名称の変更にこだわるわけではございませんけれども、その中にきわめて重要な内容が秘められているような感じを深くするわけでございます。あるいは全産業への雇用保険の適用を拡大する、確かに幾つかの改善案も見られないわけではありません。保険給付は求職活動、就職促進に力点を置いたものに合理化されようとしております。あるいは雇用改善、能力開発、福祉の三事業を促進するため、事業主等への交付金制度を大幅に拡充する、保険料労働者優遇の負担にする、このようにいいものと悪いものとが混在している内容になっているわけですね。  まず指摘したいことは、最近中小企業等がばたばたと倒れているわけですね。特に民間の調査を見てみますと、三月の実態を見てまいりますともう一千件にのぼっているそうですよ。この大台にのぼった倒産の数。また、負債額も一千億円をこえた。えらい倒産のあり方ですね。失業者も続発するでしょう。あるいは今後、月に一千五百件あるいは二千件、そのようなことも予想されるということでございますが、失業者が続発していくであろうというこういうさなかにあって、このように失業保険法をがらりと変えて雇用保険法に改めていくということは、これはタイミング的にも誤っているのではないか、われわれはそう感ずるわけでございます。一見すれば、先ほど申し上げましたように全産業への適用拡大、保険料負担の軽減など、従来の失業保険より改善されたかに見えるところはないでもございません。しかし、深く見てまいりますと、部分的な改善は見られますものの、全体として見れば失業保険制度の本来のあり方を大幅に後退させたものである、私たちはこのように見ているわけでございまして、この雇用保険法案の内容についてはきびしい態度で見守っているわけでございますが、まず最初に労働大臣見解を承りたいと思います。
  247. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 政府は悪いものを出すという意向は全然ございません。おっしゃるとおり、全産業に適用したということは前進であるという御評価がありましたが、私たちも、全面的な適用というものは社会保険として初めてのものである、こういうふうな感じ方を持っております。また、いまおっしゃるように、こういう石油危機を中心にして経済的な混乱が現実進行し、ときには従来失業者が一%台だというものがあるいは今年末からはふえやせぬかという心配をしているときに、いまおっしゃるような中小企業などが倒産した、そこにつとめておる方が失業された場合には、そういう方々にこれが適用されるというところにまた大きな意味があり、またそういう受けざらを用意して、ときに不安を取り除いていくというところに私たちはこの法案に対して期待をかけているものであります。
  248. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 具体的にお尋ねしてまいりますけれども、全面適用、これは大きな前進と考えております。しかし、実際問題としてこれはきわめて困難な作業であろうと思います。正直言いまして、これまでも四業種に対する段階的な適用拡大がなされてきたはずでございますが、これも完全に整備されたわけではない。したがいまして、私はこのような全面適用拡大ということは、今回の法律の改正にあたってのカムフラージュ的なものを含めたいわゆる欺瞞的な呼びかけではないのかというくらいにこれを見ているわけですが、現実問題として全面適用はなされるようになるのかどうか、お尋ねしたいのです。
  249. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたように、社会保険はたくさんの制度がございますが、従来一つとして全面適用に踏み切った事例はございません。今回初めて中小零細企業一人でも労働者を雇っていれば全部適用するという制度に踏み切ったのは、私は画期的なことだと実は自負いたしているわけでございます。ところが、御指摘のように、確かに従来強制適用になっておりましても適用把握が困難なために未適用になっている事例がたくさんございます。その上でなおかつ今回全面適用に踏み切るといたしますと、五人未満の商業、サービス業だけでも百万をこえる事業所がございます。こういうものを現実に私どもの行政機構、現在の体制で把握できるかどうかという疑念をお持ちになるのは当然であろうと思います。そういう疑念を持たれるような事態にあえてみずから取り組んでいくということにつきましては、確かに絵にかいたもちじゃないか、欺瞞ではないかとおっしゃるのもごもっともだと思いますが、私どもはそこに今回の全面適用の意義を見出しているわけでございまして、たとえばいま御指摘になりました、去年の石油危機以来いろいろと経済情勢が悪化してまいりまして、倒産件数が先月は一千件をこえた。ただその一千件をこえたことにつきましては、必ずしもそれが失業に結びついていないことも御説明申し上げたいと思いますけれども省略させていただきますが、今後そういった小零細企業について、倒産に伴って失業者が出ることも当然私どもは予想しながら行政を進めていかなければならないと思っております。そういうときにこそこの全面適用が実は生きてくるわけでございまして、従来の考え方ですと、全面適用しても、実際に事業所の把握をして適用していかないと、制度が適用されない、給付が受けられないということでございますが、今回の全面適用によりまして、かりに現実に適用把握がなされなくても、その適用されていない事業所から離職者が出た場合には、この法律によって当然給付は受けられます。その時点から、その事業所に対して適用して、保険料をさかのぼって徴収する。もし事業所がつぶれて保険料がとれなければ、それはそのままになって、給付だけは受けられる、こういうことになるわけでございます。実際問題として、私どもの行政機関の能力の限界がございますから、百十何万の事業所を全部シラミつぶしに把握することは不可能だと思います。不可能ではありますけれども、その事業所の離職者については全員失業給付は受けられる、こういうことになりますので、そのことが、今回の全面適用の非常に画期的な意義がある点だと申し上げるわけでございます。
  250. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 全面適用拡大については、われわれも先ほど申しましたように、評価はしているわけです。ですから、いま答弁なさったような方向でがっちりと進んでいくならば、全くあなたがおっしゃるとおり、画期的な内容になるでしょう。大きく期待いたします。  しかし、いまも中小企業の倒産——倒産そのものが失業というわけでもないんだという、私に言わせれば甘い見方をなさっているようでございますけれども、確かにインフレ、物不足だけではなくて、金詰まりというようなものからの倒産が激増しているわけでございますけれども、正直いいまして、こういう中小企業の倒産に対する的確な救済の手といいますか、これはまだ見出されていないといっても過言ではないと思うのです。それだけにわれわれは心配するわけです。したがいまして、要するに失業者が多発してくるであろうという今日において、失業保険給付の拡大、それだけを考えるならいざ知らず、大幅な内容改善をやる。端的に申し上げますと、低賃金労働力の確保に力点を置いた、つまり業界寄りのこうした改悪というものは許せない、こう言っているわけです。大臣、その点どう思われますか。
  251. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもは、そういう事態であればこそ、現行の失業保険制度を改善いたしまして、画期的に失業保障機能を強化しなければならない、こういうふうに考えて雇用保険法提出しているわけでございます。  低賃金労働力確保とおっしゃいましたけれども、実は失業給付の面でも、最低額の保障を大幅に引き上げる。ということは、逆に、いま御指摘になりました低賃金労働力を確保するために就職を強要するのではなくて、最低額を上げることによって、安定した職場に再就職できるような措置を講ずるために給付を強化する、こういうことでございますので、その点十分御理解いただきたいと思うわけでございます。
  252. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 失業保険制度というものは、当然のことながらこれは社会保障制度の一環としてとらえられるべきだと私は思うのですが、これはおそらく大臣も異存はなかろうと思います。失業保険の目的というのは、失業中の生活保障するというものでなければならぬと思うのですね。次の職業が見つかるまで安心して生活ができる、そういう内容でなければならぬはずです。ところが、今回の雇用保険法案の中身を見てまいりますと、失業した場合、生活の安定をはかりつつ、求職活動を容易にし、就職を促進するための給付を行なうとともに雇用構造の改善、失業の予防、労働者の能力の開発向上、その他福祉増進のため必要な仕事を行なう、こういっているわけですね。というのは、これまでの現行の失業保険の、「被保険者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ること」、こう規定したことに比べますと、大きな変身ですね。つまり生活保障というよりも雇用促進というものが前面に押し出されてきている。したがいまして、中を見てまいりますと、失業保険金を求職者給付というような呼び方に変えていらっしゃるようなところもあるわけでございますが、いま言いましたように、私はやはり失業保険というものは、失業したときに安心して生活ができる社会保障的な内容が十分盛り込まれたものでなければならない、このように思っているわけです。そういう意味から、今回の改正内容は改正ではなく改悪である、こう言っているんです。大臣どう思われますか、この辺は。
  253. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 全部のお答えになるかどうか知れませんけれども、私は、やはり一番やることは就職だろうと思うんです。失業がないこと、かりに失業した場合でもその期間が短くなること、これが一番大事なことじゃなかろうかと思うんです。そういう意味からしますというと、失業している間に保険金を差し上げつつ、一方には雇用の拡大をする、そして早くそこにおつとめいただくという施策をとるところに私たちのねらいがある、こういうふうに感じておるものであります。
  254. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに、失業したら一日も早く再就職したい、するのが当然の姿であろうと思いますが、それがやはり自分自身がこういう仕事を求めたいんだ、こういう仕事をしたいんだという職業選択ですね、この自由は与えられているわけです。したがいまして、ある程度の期間がないと、あまり期間が短まりますと、もうやむを得ず再就職せざるを得ない環境に追いやられるわけですね。そうしますと、いわゆる職業の選択の時間がなくて、追い詰められるような姿で再就職していく、こういうことになればその目的からずいぶん離れるわけです。したがいまして、私は先ほどから言っているのは、今回の失業保険制度の改善といわれている雇用保険法案は、社会保障制度ではなくて、産業政策を補完するものとしてがっちりとらえられてきたな、このようにしか思われないわけです。したがいまして、労働者生活と権利を完全にとまでいかなくても非常に軽視した、無視した内容である、こういうように感ずるわけです。いま大臣は、再就職するには早い期間にしたほうがいいんじゃないか、それは私もわかるんです。しかし今度の改悪の内容からいきますと、職業選択の自由を奪うような内容になっているということなんです。どうでしょうか。
  255. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先ほど冒頭に大橋先生から、今回の保険法案の資料は非常に膨大なもので、量が多いからいいものとは限らないというお話でございましたけれども、私どもは、今回の改正がいかに画期的で、いかに内容が充実しているものであるかを御理解いただくために、あらゆる資料をごらんいただきたいと思って差し上げたわけでございます。いまお話ございましたように、今回の法律の目的から、現行の失業保険法とすっかり変わっているんじゃないかという御指摘のようでございますが、決してそうではございませんで、今回の雇用保険法の目的にいたしましても、失業中の生活の安定をはかりながらその再就職を容易にする、と同時に、失業を予防するためにいろいろな事業を行なう、こういうことが書いてございまして、失業保障の機能をいままで以上にこれから必要な部面についてより手厚く、きめこまかく強化していることについては、十分御理解いただけるだろうと思っております。  で、私どもは、確かに今回の制度で給付日数が若年層に低くなっている、こういう点の御指摘かと思いますが、先ほど坂口先生の御質問の中にありましたように、最近離転職が非常に多くなってきている、特に若年層にその傾向が顕著になってまいっております。若年層につきましては、確かに離転職が多うございますが、その中の大部分が本人の意思によります、自己都合による退職が八割以上を占めております。そういう人たちが、一体そのまま失業状態が長く続いているかと申しますと、任意退職をしながら次に自分の希望する職場に再就職するまでの期間は、いままでの実績を見ますと、大体四十日から四十五日ぐらいでございます。  もう一つ、坂口先生の御質問にございました、労働条件、環境に不満があるから離転職をする者が私の答弁になかったという御指摘がございました。確かにそうでございます。私は、そういった労働条件あるいは作業環境、労働環境に不満があるから転職をするんだというのはもちろんございますけれども、それは全体の一〇%以下でございます。と申しますことは、こういう労働力需給が逼迫してまいりますと、そういう条件の悪いところあるいは労働環境の悪いところには就職しようとしない。たとえば、非常に社会的に必要な保母さんとか看護婦さんとかあるいは港湾作業員だとかそういった、賃金は高くてもなかなか人が目を向けないようなそういう職場には人が集まらない。こういうことから、雇用改善事業では、そういうどうしても社会的に必要とされる職場に働いてもらえるような作業環境の改善なりあるいは労働条件の向上なり、そういった措置をとるための事業をこの中に盛り込んでおるわけでございます。したがいまして、若年層の人たちが再就職するために離転職をしましても、給付日数が六十日になったということによって、その人たちの職業選択の期間を圧縮して、何が何でも条件の悪いところに就職させようとするような意図は毛頭ございませんし、また、そういう実態にならないことは、過去の実績から見て非常に明らかなことでございますので、私どもは、決して御指摘になりましたような事態にはならないことを確信いたしておるわけであります。
  256. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 給付の合理化である、こうおっしゃっているところでありましょうけれども、実質的には給付の大幅削減をねらっているものだ、私たちはこう言うのです。  まず第一に、被保険者期間に応じたいわゆる所定給付日数ですね、これは年齢別区分によるものに切りかえられてしまいました。これは青年労働者に対する給付の削減といえるわけです。三十歳未満では一律に六十日分ですね。四十五歳未満で百八十日分。もし現行失業保険制度のもとで、たとえば十八歳、高校卒から雇用についたといたしましょう。そうしますと、六カ月後には九十日分の資格が取れるわけですね。それから十カ月で百八十日分、二十三歳で二百十日分、二十八歳で二百七十日分、三十八歳で三百日分、こういうふうになるわけです。そういう計算からまいりますと、われわれが大幅な切り下げではないかというのも一理あると思うのです。  また、政府は、今回の年齢別区分という措置というものは、年齢別にして五十五歳以上の高齢者を優遇しております、こう言っているわけですけれども、五十五歳の労働者というものは、現行制度のもとでは、被保険者期間が二十年以上で三百日分ですね、そういう方々、いわゆる受給資格を持った方が非常に多いわけでありまして、実際に今回の法改正で恩恵を受けられる者はきわめて少ない、われわれはこう思っておるのです。  ですから、やはり青年労働者に対する大幅な給付削減であって、実質的な、政府がおっしゃる、労働省でおっしゃるような優遇策ではないとわれわれは思うのです。いかがですか。
  257. 関英夫

    ○関説明員 いろいろ年齢別の給付日数の問題でこまかい問題も多いので、私からちょっとお答えさせていただきたいと思うのです。  現在の失業保険法の上での給付日数の決定の一例があげられました。確かに、先生のお話のとおりであればそういう給付日数になりますが、必ずしも現実はそうとばかり限りませぬで、たとえば五十五歳以上の高年齢者、これは定年退職される方が多いし、それまで勤続期間の長い方も多いわけでございますが、逆に、五十五歳以上の方が再就職した場合に、そこでまた相当期間つとめられるかといいますと、必ずしもそうでない。どうも自分に適していないということで、また再離職をせざるを得ないような場合もございます。そういう意味で、五十五歳以上の方は必ず勤務年限が長く給付日数が長いかといいますと、必ずしもそうでございませんで、現に現在、全体のうちで五十五歳以上で三百日を受給している方は四・八%というような数字になっております。むしろ九十日あるいは百八十日が四・一%というような形で、五十五歳以上の者が全体の一五・八%ございますが、その中の約三分の一の方が三百日、残りの方はそれ以下、大体一番集中するのは百八十日のところというふうなことでございます。そういう意味で今後は、これからの高齢化社会等を考慮に入れまして、五十五歳以上の方が定年退職後再就職し、また再離職した場合にも、十分就職までの期間が保障されるように、年齢別の給付日数を考えたものでございます。  また、先ほど局長のお答えにもございましたとおりに、三十歳未満の男子について見ますと、平均で四十日ちょっとぐらいで再就職しているというような実績もございます。そういうような意味で、今度の雇用保険法案におきます給付日数の決定方法のほうが、従来の決定方法よりもよりこれからの社会の実態に即したものである、私どもはこう考えた次第でございます。
  258. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣、いまいろいろと説明があったわけですが、まあ説明を聞いていると、ああそうかなというふうに説得されかかってくるのですけれども、被保険者期間の長短に関係なくいま一律に一年間給付を実施しているイギリス、あるいは失業手当が無期限なフランスから比べていくと、いかに説明なさろうとも、こういう諸外国の例から見てまいりますと後退ではないか、私はこう思うのですけれども、大臣はどう思われますか。
  259. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 諸外国の制度におきましては、失業給付の内容についていろいろ区々になつております。ただ、いま御説明申し上げましたように、過去の失業保険制度の施行の実績と、それから今後のわが国の労働市場の状況、労働力需給の実態、こういったものから見ますると、失業保障の機能をさらに一そう強化するという観点から見ますと、今回の雇用保険法案のような内容に移行することが、より先生御指摘の、社会保険ないしは社会保障制度として完備したものに近づいていく道である、私どもはそういう確信を持って今回の法案を提出いたしたわけでございます。
  260. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間に制限がありますので、次に移りたいと思いますが、やはり今回の法改正で一番問題と思われるのは、出かせぎ労働者に対する給付の制限ですね、私は徹底した締めつけだと、こう見ております。  現在、出かせぎ労働者というのは、九十日分の失業保険給付を受けられるようになっているはずでございます。ところが、これも行政指導によりまして、九十日分の給付を全部もらうことは非常にむずかしいといわれているわけですが、これをさらに政府は、三十日分の打ち切り一時金、一時金制度にしようとしているわけでございます。しかも、保険料を現行の千分の六・五から千分の七・五に引き上げようとなさっているわけでございますが、給付は削減し保険料は大幅に引き上げる、もうほんとうにダブルパンチだと言いたいところですね。この出かせぎ労働者に対するこのような手きびしい措置は何のためになさろうとなさるのか。保険財政の上からいけばわからぬでもありませんよ。確かに季節労働者の給付額というものは、毎年の給付総額の三分の一近くを占めている、あるいは納める保険料に比べて大きい、これはわかります。わかりますけれども、これはもう何人かの質問者が指摘しておりましたように、現在の高度成長政策の失敗と農業政策の失敗からこういう問題が起こっているのでありまして、だからといって、この出かせぎ労働者を今回このような両面からの締めつけをやるということは、私は納得がいかないのでありますが、大臣、これはどう思われますか。
  261. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生御指摘のように、保険金のあるいは受給の額等々、先生の口から出たようなかっこうでございますが、若干の負担増があり、また給付減となる受給者も出てまいりますけれども、従来の支給実額にも考慮を払っておりますし、また給付日額も大幅引き上げを行なう、こういうことで一時金制度によるメリットもあろうかと思います。そしてまた、その一時金をもらったあとでは、その地方で仕事をして収入を得られてもいい。いままでは得られなかったのです。そういうことからしますというと、そうしたメリットもありますし、この措置は、現段階において出かせぎ労働者の実態に配慮した最善のものとしております。  いずれにいたしましても、十分なひとつ御論議をいただきたいと思っております。
  262. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに、一時金制度は全面的に悪いとは言いません。今度、一時金をもらってあとすぐ働くこともできるし、メリットはあることも十分承知いたしておりますが、九十日分を三十日にというところが問題なんですね。これが納得いかぬわけです。どうしても納得いかぬところです、ここは。ですから、御論議いただきたいというわけですけれども、われわれに言わしてもらうならば、九十日分の一時金を下されば、これは文句はありませんよ。そうはいかぬのでしょう。ですから大臣のほうで、この三十日は確かに切り過ぎだと感じられているのかどうかという問題なんですよ。これは妥当だと思っていらしゃるのかどうかということを……。
  263. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに保険料負担の面で、先ほど申し上げましたように、当初審議会等に御諮問申しました原案では千分の四十三。といいますことは、現行でまいりますと月収十万円の場合に保険料負担が六百五十円、それが二千円になる。千三百五十円という負担増は、十万円の月収の人にとってはまあまあごしんぼう願えないものではないんじゃないかというような感じを持っておったわけでございますが、これはいかにも三倍というのはひど過ぎるという審議会の御意見がございまして、七・五の七百五十円、現行よりも百円ふえるという程度になったわけでございます。私は、百円ふえるということが、はたして十万円の月収の中から百円ふえることがそれほど生活に打撃を与えることにはならないのじゃないか、こういうふうに感じております。と同時に、給付の面におきましても、現在九十日分まで最高もらえる。これは出かせぎから帰りまして、安定所へ出て求職申し込みをして、就職のあっせんを受けながら失業の認定を受けて、その失業の認定を受けた失業中の期間についてあと払いで二週間分、四週間分、最高は九十日までもらえる、その間は働いていけない、こういうことになっております。今回は、出かせぎから帰って、安定所に求職申し込みをして失業の認定を受けますと、その日に一カ月分の一時金が渡される、そのあとはその人の実情に応じて働いていただいてけっこうです、こういうことでございます。  その三十日分と従来の実績を比較いたしますと、全国平均で、従来の実績が九十日分としてもらっておった実績を平均いたしますと、日数にして約五十二、三日程度、金額にして十二万六千円という数字が出ております。地域、県によって十二万六千円という金額が十二万七、八千円あるいは十一万、十万という差はございますけれども、おおよそ十二万前後になっております。今回の一時金三十日分をとりますことにつきまして、日額の大幅引き上げ等も実施いたすことにいたしておりますので、それを勘案いたしますと、三十日分にして約十一万円ぐらいになるという計算になりますので、一万円ないし二万円くらいのダウンにはなりますけれども、一時金というメリットを考えますと、その後自由に働ける、収入が得られるということを考えますと、さほど大きな打撃ではないんではなかろうか、こういうふうに事務的に私ども考えた次第でございまして、この点をいろいろと御検討いただきまして、御意見を賜わりたい、こういう考え方であります。
  264. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 やはり九十日まるまるもらっている方もかなりいるわけですから、そういう立場も十分配慮した上でもメリットがあるといわれている一時金制度に切りかえるなら、私たちも了解しないわけではありません。いまの三十日というのはどうしても納得いかないことだけは強く主張しておきます。  そこで、いま局長は、保険料は多少の引き上げ、百円程度の引き上げだから了解してもらえるだろうということです。金額からいけばそれはいえるかもしれませんけれども、いま一般の被保険者の保険料というものは千分の十三ですから、労使折半で千分の六・五でしょう。ところが今度の改正では、一般は千分の五になるのですね。それから見てまいりますと千分の七・五というのは、一般の被保険者は千分の五ですよ。ですから五〇%ですね。七・五というのは五〇%も多いのじゃないか、こういうふうなとらえ方もできるわけです。だから私は、先ほどから大幅な引き上げじゃないか、幾ら季節労働者であろうともこれはひど過ぎる、こう言っているわけです。大臣、これはわかってくださいよ。やはり大き過ぎますよ、この引き上げ方は。これも配慮しませんか、どうです。
  265. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに千分の五と比較いたしますと、千分の七・五は一・五倍ということになります。ただ、先ほどもちょっ触れましたように、本来この出かせぎ受給者の実態と一般産業に働いておられる労働者の実態とは明らかに異質のものでございます。片方は偶発的に、なるべく失業はしたくないのだ、しかしやむを得ず失業する、あるいはやむを得ずいろいろな事情があって離転職をされる。これは一生のうちに一度あるかないか、なるべくなければないにこしたことはない。そういう偶発的な失業という事項に対して失業保障の機能が作用するわけでございまして、一方の出かせぎ受給者の場合は、これはいってみれば従来の失業保険制度になじまない性格のもので、予定された就業と不就業を繰り返す、毎年毎年予定された不就業に対して失業保険という制度を擬制適用して保険給付が支払われる、こういう制度でございます。それを今回の雇用保険では、いわゆる擬制ではなくて、制度の中の正当な給付として組み込もうという考え方をとっております。  こういう異質のものを制度に組み込む場合には、ILO条約等でも保険料の負担について特例を認めることが許されております。そういうことから、率としましては一・五倍かもしれませんけれども、金額にいたしますと、従来からしますと百円、新しい制度によりますと二百五十円になりますけれども、そのくらいのものは、こういう毎年毎年きまった金額の支給を受けられるということから対比いたしますとごしんぼう願えるような額ではなかろうか。また、そのことが、全体の保険制度の中でプールされております保険料の大部分を負担している一般産業の労使から見まして、そういう人たちの気分といいますか、感情的な問題に対する緩衝剤にもなるのではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  266. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 この出かせぎ労働者は企業における、何といいますか、低賃金労働者として非常に景気変動に対する調整弁として使われてきたような実態があるわけですね。これは政府の高度経済成長によるいろいろなひずみがここにもあらわれていると私は思うのでございます。したがいまして、今回のような経済情勢の悪化が発生すれば、まっ先にこのような出かせぎ労働者は被害を受けるわけですね。したがって、現在の農業政策、いわゆる農業切り捨て政策、これが改善されないまま、こうした農業政策が具体的に改善されないまま、失業保険の給付を切り下げていくということは、私は、季節労働者生活というものはほんとうに深刻なものとして打撃を受けるであろう、こう思うのですね。ですから私は、やはりこの季節労働者に対する今回の締めつけというものは、これは大幅に改めない限りは大問題だ、こういうふうに私自身も真剣にこの問題をとらえております。同時に、季節労働者にはこのような締めつけがなされるけれども、逆に事業主等に対してはかなり優遇されるような内容になってきているわけですね。先ほどから何べんも私が企業サイドだ、企業サイドだ、こういうふうに主張いたしておりますのはこの辺にあるわけです。ですから、この点も思いあわせて、特に季節労働者に対する労働大臣の特段の配慮を求めるものでございます。時間があまりございませんので、この辺も簡単に御答弁願いたいと思います。
  267. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 遠藤局長から御答弁したようなことが、出かせぎ労働者失業保険をもらっている実態でございます。そういう中においてだんだんの御同情をいただきますことを心から私も敬意を払います。いずれにいたしましても給付三十日分でございますが、その中に、御説明申し上げたように、大体あまり前と変わらない金額が一時金でも出てくる、そしてあとは自由に、心の自由を持ってその地方で何でも働けるというところによって私は非常なメリットが出る、こう思っておりますが、そうしたところに深甚な御同情をいただきますことに私も敬意を払いまして、国会の論議において十分に御審議あらんことをお願い申し上げます。
  268. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 雇用改善事業、能力開発事業、雇用福祉事業など、これは労働の質的レベルを高めて労働者の福祉向上をはかる上で必要であることは私も十分認めるわけでございますが、これが失業保険会計であがなっていかれるというところにやはり筋違いな問題もある。  そのほかいろいろとまだ聞きたいことは山ほどありますけれども、きょうの持ち時間が参りましたので、次の委員会の機会にもっとこの点を掘り下げて聞いてまいりたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  269. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 小宮武喜君。
  270. 小宮武喜

    小宮委員 現行の失業保険制度は昭和二十二年に制定されたものでありますから、その当時の労働力過剰時代と違って現在は労働力不足の時代に入っております。その意味では、この時代の変化に即応して失業保険法というのが改正されるということについては私も理解するところがありますけれども、中身をしさいに検討してみますと、いままでもいろいろ論議があっておりますように、従来より改悪されておる点が多々ございますから、以下順を追って質問したいと思うのです。  まず順序として、現行の失業保険法を改正をしなければならなくなった問題点について、おさらいの意味でひとつお聞きしたいと思う。
  271. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御案内のように、敗戦後お互いの国では生産力が非常に減退し、失業者が町にあふれたことでございまして、そのとき以来、失業保険が生まれてちょうど四半世紀たっております。その間、雇用の柱としてこの失業保険制度が重要な役割りを果たしてきたことは御承知のとおりでありますが、それと同時に、雇用情勢もいままでの量的なものから今度はだんだん質的なものに改善しなければならぬということも、これも御案内のとおりでございます。そしてまた、経済環境の変化に伴いまして失業問題、さらにまた年齢、地域、それから産業間の雇用構造の不均衡が出ておることも御案内のとおりでございまして、そういう意味からしまして、いまの勤労者が職業生活を営むためにはどうしても量質ともにわたる積極的な完全雇用の方向に向かっていかなければならぬという時代的要請があることは御承知のとおりでございます。このため、このたび失業保険制度の持つ失業保障機能を充実強化するとともに、現在失業保険の一環として行なわれておりますところの福祉施設のあり方に検討を加えながら、質的な意味における雇用状態の改善の要請に積極的にこたえる必要があると存じまして、現行失業保険制度を改善発展させまして、雇用に関する総合的な機能を持った雇用保険制度を創設するということで、今国会皆さん方の御審議をお願いしているわけであります。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕
  272. 小宮武喜

    小宮委員 現在の失業保険特別会計の収支はどうなっておりますか。そしてまた、積み立て金が幾ら残っていますか。
  273. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 現行の失業保険法によります収支の剰余についてお尋ねでございますが、昭和四十年度ごろから収支好転してまいりまして、一昨四十七年度末に剰余金は約四千二百三十億円になっております。四十八年度の収支につきましてはまだ決算が済んでおりませんが、剰余金はこの四千二百三十億に対しまして若干増加する見込みでございます。この雇用保険法が成立いたしました暁に、昭和五十年度ベースにおきましてはどれくらいになるか、まだ確定的なことは申し上げかねますが、一応予測といたしましては六千七百億ぐらいの収支見込みを立てておる次第でございます。
  274. 小宮武喜

    小宮委員 現在失業保険に加入者が約二千万人といわれているのですが、今度新たに農林水産業を強制加入させた場合に、加入者はどれぐらいになりますか。
  275. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回全面適用いたしますと、五人未満のいわゆる零細企業で、商業、サービス業その他の事業がございますので、これで約百十万ぐらい、それから農林水産業は一応五人未満の個人企業につきまして任意適用事業といたしますので、その農林水産業関係の事業所数はいまここで的確に申し上げる資料は——あとで精細に申し上げますが、その全体といたしまして被保険者数で約四百万ぐらいのものを予定いたしておるわけでございます。
  276. 小宮武喜

    小宮委員 現在の保険金受給者の年齢別、性別にはどうなっていますか。
  277. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 昭和四十七年度の受給実績を見ますと、年齢別の受給者数では、三十歳未満が四五%、三十歳から四十五歳が二八%、四十五歳以上が二七%、こういうふうになっております。それから性別に見ますと、男子が四九%、女子が五一%、こういう割合になっております。
  278. 小宮武喜

    小宮委員 先ほどからも問題になっておりますように、今度の雇用保険法の中で一番問題になっておるのはいわゆる季節労働者、出かせぎ労働者の問題ですが、現在の加入者が幾らで、全体の何%になりますか。
  279. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 現在、季節出かせぎの受給者数は六十二万人でございます。全体の被保険者の中で約三%になっております。
  280. 小宮武喜

    小宮委員 その出かせぎ労働者の年齢別にはどうなっていますか。これは先の質問関係がありますから、ひとつお聞きします。
  281. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 出かせぎ受給者の年齢別構成を見ますと、比較的年齢の高い人が多くなっておりまして、三十五歳以下の人たちが三二・二%、それから三十五歳以上が六七・八%でございます。
  282. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、出かせぎ労働者の方が出かせぎ期間中に保険料の納付額は一人平均幾らになっておるのか。また一年間、一年間といってもまるまるではありませんけれども、一年間の保険料総額は幾らになっておりますか。
  283. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 全体で保険料の納付額が年間に約六十億円でございます。
  284. 小宮武喜

    小宮委員 出かせぎ労働者方々の一日平均の賃金は幾らになっていますか。それで、退職する場合、退職金か何かもらっておりますか。
  285. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 出かせぎ労働者方々賃金は、一がいに平均という形で申し上げるわけにまいりませんが、最近の実情は大体五千円ないし七千円ぐらいが標準的なものになっておるようでございます。
  286. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、出かせぎ労働者の一人平均の受給額は幾らですか。
  287. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 四十七年度の一人平均の給付額が十二万六千円になっております。
  288. 小宮武喜

    小宮委員 いままで九十日分だったのが今度三十日に給付日数が減らされる。先ほどからの答弁をいろいろ聞いておると、いや、給付金額が上がるんだから実質的には同じだというようなことを言っておるわけですが、この三十日という根拠は何ですか。九十日を三十日にしたという根拠は何ですか。
  289. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 この点につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、出かせぎ労働者方々失業給付における関係と申しますか、本来失業保険制度で予定されたいわゆる偶発的な失業に対する給付と違いまして、毎年毎年繰り返し繰り返し就業と不就業という繰り返しの中で、その予定された不就業に対して擬制的に失業保険金が給付されているのが実態でございます。その不就業に対しまして、安定所で一応失業の認定という形式をとりながら給付を行なっておりますが、その最高給付日数が九十日という中で、実際には平均をいたしますと一人当たりの給付日は五十三日程度になっております。その五十三日に対します給付の実績が十二万六千円でございます。こういった実態をにらみ合わせながら一時金という制度をとりますことによって、その一時金をどれだけにするのが適当であるか、これはいろいろ御議論のあるところでございましたが、一時金制度をとることによりますメリットと従来の実績をできるだけ尊重していきたいということで、日額を新しい制度におきましては大幅に引き上げること等も勘案いたしますと、一時金三十日にすることによって、過去の実績にほぼ近い線を確保できるのじゃないか、こういうことから三十日という数字を制度化することにいたしたわけでございます。
  290. 小宮武喜

    小宮委員 どうもいまの答弁は、われわれ納得しないのですよ。やはり理論的な根拠は何にもないのです。抽象的だけなんです。  そこで、これはあとに問題を残しますから、それではいまの出かせぎ労働者失業する場合は、企業の都合によって失業を余儀なくされておるのか、それとも農繁期を迎えて自分で、任意退職でやられておるのか、どちらですか。
  291. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 季節出かせぎ受給者には二通りのタイプがございまして、いわゆる夏型、冬型と申しておりますが、農閑期に冬場出かせぎに出て、四月の初めに帰って、それから十一月まで農業に従事する、こういう形と、それから冬は郷里にいて夏出かせぎに出るという二つ型がございます。このいずれにいたしましても、出かせぎに行って一定の期間、六カ月以上、七、八カ月あるいは九カ月働いて、あとの期間を郷里に帰られるという方々の大部分は、自己の都合によって、あるいは農作業に従事するために帰られる、あるいは冬、正月前に帰って家族とともに郷里で過ごすため帰られるということで、企業の都合によって解雇される例はきわめて少ないというように承知いたしております。
  292. 小宮武喜

    小宮委員 先ほど局長も、九十日間の受給権利がありながら現実には五十三日だということを言われたわけです。そうしますと、それを今度三十日に改正するというのは、現実から見ても改悪ではないのか。私はここではっきり言わしてもらえば、これは従来どおり九十日間据え置くのが当然だと思っておりますけれども、せめて現実に五十三日であれば五十三日ぐらいは確保するのが当然じゃないのか。それを三十日に押えるということはやはり改悪といわざるを得ない。特にこのために、たとえば中央職業安定審議会、社会保障制度審議会は、出かせぎ労働者に対する措置として、問題の解決を急ぐのあまりそれによって影響を受ける労働者生活実態の十分な配慮に欠けてはならないとか、給付と負担の面で急激な変化を生じないようにという注文がつけられているわけです。だからその意味では、今回九十日を三十日に一挙に下げたのは、こういうような両審議会の答申に対しても反することになると私は思うのです。  それと私もう一つ考えておきたいのは、いまの場合はすべて一律に全部三十日分です。先ほど私が年齢を聞いたのは、いまの答弁の三十五歳以上が六八%近くいるわけです。そうしますと、この人たちは扶養家族を二人も三人も、多い人は四人、五人をかかえているわけです。そういうような人たちのことも全然考慮せずに、ただ九十日を三十日に下げるというのは私はやはり問題があると思うのですよ。そこに今回の改正案が、従来、ほかの保険者に対してはいままで被保険者期間を定めてあったのを、今度全部年齢に切りかえたことにおいて、いろいろな矛盾が出てきておるわけです。だから少なくともこの出かせぎ労働者人たちに対しても、私の考え方を率直に言わしてもらうならば、最高九十日と押えて、現実にいま五十三日分はもらっているわけだから、せめてそれぐらいを最低に押えて、家族の多い人少ない人、二人の人、三人の人、四人の人、五人の人とおるわけだから、そういうような人たちに対しては年齢的な格差を設けて、最高九十日分ぐらいにするぐらいの配慮があってしかるべきだ。そうすることが両審議会の答申に沿うゆえんではないかと考えるのですが、どうですか大臣
  293. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 出かせぎ受給者の給付につきましては、もちろん給付額は賃金の六割を標準といたしまして、上薄下厚という新しい比率によるわけでございます。扶養家族の数とかあるいは年齢によって給付額を変えるわけにはまいりませんことは、御理解いただけると思います。ただ、一般被保険者の場合は、年齢によって給付日数をそれぞれ定めることといたしておりますが、これはその年齢そのものによってきめるのではなくて、実は再就職の容易な人あるいは再就職のなかなか困難な人、それを労働市場の実態等から、年齢による再就職までの期間というものを給付日数を定める場合の基準として取り上げたわけでございます。  出かせぎ受給者の場合は、再就職の問題はございません。一時金という特例制度をつくることにいたしております。しかも、それは予定された不就業に対する特例給付であるということからいたしますと、ここに年齢という基準を持ち込むことは制度的にはいかがか、私はかように考えるわけでございます。むしろ、その賃金の実態に応じて、その賃金の高低に応じて、上薄下厚の比率に応じた保険給付額を一時金によって支給することのほうがより実態に近い、しかもその給付額を大幅に引き上げることによりまして、ただいま先生御指摘になりました、従来の実績にほぼ近いものが確保できるという観点からこの制度に踏み切ったわけでございまして、十分御理解をいただきたいと思うわけでござます。
  294. 小宮武喜

    小宮委員 あなたの答弁は、午前中から耳にたこができるくらい聞いておる。それでは何も前進がないのですよ。労働省は、この出かせぎ労働者保険料率を引き上げてみたり、それからまた給付日数を減らすばかりが能じゃないと私は思うのですよ。やはり労働省としては、給付日数にしても保険料率にしても、とにかく労働者を守るという立場からやってもらいたいし、特にそういうような意味では、出かせぎ労働者のたとえば賃金の問題、たとえば退職金の問題、労働条件の問題、こういうようなことを事業主にむしろ積極的に働きかけて、それだけ労働条件でも賃金でも改善するようにむしろ行政指導をすることも労働省の責務ではないのか。ただ保険料を上げてみたり、給付日数を減らすばかりが能じゃないと思うのですよ。その点について、これは労働大臣どうですか。
  295. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 出かせぎ労働者が大都会にかせぎにくるときに、従来ですと、正式な公の機関を通らないために非常にトラブルがあったわけです。賃金不払い、なかんずく災害などがあった場合は話にならぬ。そういう意味では、公式な機関を通っていただくことが出かせぎ労働者に対する保護になる。あるいはその前に訓練するとか、あるいは現場においてのいろいろな福祉施設等々を労働省がいろいろ監督、指導して進めていることなども、私は出かせぎ労働者を助けていくことになる、こう思っております。一方また、何かほかの労働者の諸君が失業保険を納めているものを、私のほうも出かせぎ地帯ですから、毎年毎年不就業と就業を繰り返す、そして一カ月に二回か三回いなかの職業安定所へもらいに行く、そうすると、ときには非常に心が暗いものを感じます。ほかの人も見ております。そして納める額が少なくてもらう額が年々十二万、十三万という数字が出ております。しかも、これを九十日なり四十五日なり繰り返すわけです。そういうことからしますと、ほんとうに出かせぎ地帯の私としますと、そういう擬制的制度において繰り返されることは、いままではありがたかったが、やはりどこかでぴしゃっとして、まとまった金をもらって、あとはほんとうに自由に、その地方でも労働力が逼迫しているのですから、そういうところに働きに行く。そして一時金というものが、とにかくそれだけの額が一ぺんに入ってくることですから、あと自由に働くことのほうが、それ以上の金額もふえるし、心の自由というものができるのではなかろうか。そこのところに対して、諸先生方から非常に御心配いただいて、三十日はけしからぬという気持ちは、ほんとうに私はありがたいと思います。しかし、そういう制度を一ぺんつくっていくというところに、はっきり今度雇用保険制度の中に、出かせぎ者の諸君が胸を張ってもらえる、こういう制度のできるところに、私は非常に実はありがたみを感じているわけです。問題の、あとの日数かれこれについては、これはほんとうに御審議いただかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけであります。御同情ほんとうにありがとうございます。
  296. 小宮武喜

    小宮委員 いままでの失業保険法と違って、今度は雇用保険法に名前を変えたわけですね。そうしますと、幾ら労働大臣が口ではりっぱなことを言っても、雇用保険法という性格になったわけだから、失業保険の給付額とか給付日数を減らして、少なくとも一刻も早く再就職させようというところに魂胆があるのではないのか。だからあんまり給付日数をよくしてみたり、給付金額を上げると、なかなか就職したがらぬから、ひとつこの際この法律の改正を機会に、給付日数を下げ、あるいは給付金額を少なくして、早く再就職に追い込もうという意図があるのではないかというふうに、これは私の悪く勘ぐった気持ちです。そうじゃないのかと言っても、そうじゃありませんと言うにきまっておるので、それはいまさら申し上げませんが、特に今回の改正案で、結婚のために退職する女子の場合、受給資格期間が三年間延長されたというプラスの面もありますけれども、この肝心の保険給付が、いま結婚が一番多い年齢は二十三、四歳、この辺ですが、そうすると三十歳以下で押えて、今度六十日分になっていますね。この六十日分の何か理論的な根拠でもありますか。おそらくこれもないだろうと実は思っているのですが、何かありますか。
  297. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 三十歳以下の若年者につきまして、給付日数を六十日と定めることにいたしております。その根拠をお尋ねでございますが、過去の長い間の実績で、若年労働者につきましては比較的受給の実績が短期であるということも実態が示しております。それと同時に、最近の労働力需給が非常に逼迫してまいりまして、特に三十歳以下の若年層につきましては、どの産業につきましても、男子女子を問わず、金の卵といわれるような状態で引っぱりだこというのが実態でございます。  そういうところから、離転職も確かに多うございますが、離職をし転職をされる方々が、失業保険受給の面におきまして、男子の場合におきましては平均四十五日程度、女子につきましては若干長うございますが約七十日ぐらいになっておりまして、男女平均いたしますと六十日を下回るような実績がここ数年出てまいっております。そういうことから、六十日程度を確保することによって、離転職が比較的従来の実績どおり容易にできる、こういうことから六十日といたしたわけでございます。
  298. 小宮武喜

    小宮委員 労働省は、結婚というものは必要じゃないと見ておるものだから、できるだけ減らそうとやっておるのだけれども、しかし一年未満でもいままで結局九十日、一年以上で百八十日、未満でも、これは十カ月以上で百八十日もらっているわけですね。だから問題は、私はこう思うのですよ。結婚のために退職する人のために、三十歳以下の人が結婚以外の理由で退職せざるを得なくなった場合に、これは非常に改悪だと思うのですよ。皆さん方は、労働省は、結婚で退職する人のことばかり考えて、これは失業じゃないのだから、これはまた永久就職かもわかりませんが、しかしその人を対象にして、それ以外の女子の方々で結婚以外の理由で退職する人たちも道づれにした改正案だと私は思うのですよ。だからその意味では、私はやはりこの三十歳以下のこの給付日数ももちろん六十日というのはあまりにもひど過ぎるし、またかりに六十日であったとしても、この際結婚で退職する人とそれ以外で退職する場合とは、当然区別すべきだと私は思う。たとえば現在、石油ショックで繊維産業あたりもいろいろ問題が出てきますよ。その中で三十歳以下の人は軒並み六十日で押えられてしまうじゃありませんか。だから問題の焦点は、結婚で退職する女子をいかに退治するかということが労働省の頭の中にあって、それでみんなが道連れにされておる。だから私は、これは改悪だと思うのです。この点について、いま私が申し上げましたように、純粋に結婚で退職する場合とそうでない場合とは、やはりこの中で明らかに区別すべきじゃないかと思うのですが、どうですか、局長
  299. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま問題にお取り上げになりました結婚退職、結婚をして家庭に引っ込んでしまう、つまり労働市場から引退するという場合は当然失業給付の対象になりません。今回の雇用保険におきましても、それは当然失業でなくて家庭従事者として、制度の対象にならないというわけでございまして、結婚退職者を退治するための措置だというふうにお受け取りになるかもわかりませんが、そういうわけではございません。先ほど申し上げましたように、男子、女子を問わず、三十歳以下の若年層につきましてはきわめて再就職は容易であるという実績と実態を踏まえた上で、こういう給付日数を定めたものでございます。  なお、いまお述べになりました繊維産業の不況に伴いまして、特に若年層の女子が離職を余儀なくされるという問題がございます。実は先般も繊維関係労働組合の幹部の方がお見えになりまして、特に中小企業の多い機業地等でそういった事態が発生しそうな形勢にある、その問題につきましては、できるだけ失業をさせない、むしろ逆に企業にかかえ込ませるための方策はないかという御相談を受けたわけでございます。私どもは、今回の雇用保険法の中に盛り込まれております雇用調整措置によりまして、できるだけ企業が解雇の措置に出ないで、休業手当等を補償することによって雇用を継続するような措置をとってもらう、それに必要な原資を雇用保険法によって、大企業、中小企業を問わず助成金として補助金を交付する、こういうことによって失業を予防していこう、こういう制度になっております。ただ、この制度は来年の四月から施行の予定になっておりますので、それまでの間こういった事態がもし到来するようなことになりますと、私どもは、この制度によるわけにはまいりませんけれども、現在あります職業転換給付制度でございますとか、現行の失業保険制度によってできるだけ万全の対策を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  300. 小宮武喜

    小宮委員 その問題についてはまた先でやりますが、女子の職場における定着率はどれくらいになっておりますか。
  301. 関英夫

    ○関説明員 新規学校卒業者の離転職を労働省で調べているものがございますが、三年間におおよそ半数の者が離職しておりますが、その状態は男女差はほとんどございません。ほぼ同じでございます。
  302. 小宮武喜

    小宮委員 たとえば高校を卒業して職場に入ったとする。高校を卒業したら十九歳ですか。そうすると三十歳になるまでに十年は勤続するわけですよ。現行であれば当然二百十日か二百七十日もらえるわけですよ。これが改正されるとわずか六十日分なんです。男女平等だとか男女同権だといっておるけれども、少し労働省も女性を大事にしないと、これはあまりにもひど過ぎる。これはいずれここで、最後に労働大臣——こういう問題は、たとえば出かせぎの問題にしても女子の問題にしても、あまりにも急激な変化を求め過ぎておると私は思うのですよ。そういう意味では、これは野党、与党も含めて、この法律案に対してわれわれは修正をしようと考えておりますから、その場合にわれわれとしてはこの問題も取り上げたいと思いますけれども、今回の場合は、上には薄く下には厚いといいながらも、一口にいって上も下もとにかく改悪だ。いい面もありますよ。あるけれども、それよりは悪い面が多過ぎる。私はそう思っている。したがって、われわれとしてもこの法律案をこのまま通すわけにはいかぬので、この問題は与野党で十分検討したいと思いますけれども、きょうはこれぐらいにしておきます。  それから、特に今回の場合、政府が改正に踏み切った理由には、先ほど申し上げましたように、労働力の過剰な時代からいまは労働力不足の時代に入ってきたというような歴史的な変化もありますけれども、もう一つの理由としては、若年労働者の再就職は比較的容易であるということに比べて、中高年齢層の再就職は非常にむずかしいというような背景もあって改正されたのではないかというふうに考えるのですが、そういうふうなことは改正の理由としては全然含んでいないかどうか。その点、あとの質問関係がありますからお聞きします。
  303. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回の改正の理由については先ほど大臣から申し上げましたとおりでございますが、その主眼点は、現行の失業保険制度の持っております失業保障機能を、今後の雇用失業情勢、今後の高齢化社会に移行する労働市場の実態に即応した形で充実強化させようというのが一つの大きなねらいでございます。そういう意味におきまして今回の雇用保険法では、中高年齢者に対する給付の面、その他雇用改善事業とか、いろいろな面で手厚くきめこまかい措置をとることにいたしておるわけでございます。その点はもう先生御承知のとおりだと思っております。
  304. 小宮武喜

    小宮委員 手厚くということばを使ったわけですがね。給付面を見ましても、たとえば現行の六割を標準として、賃金日額が千五百円の場合は七割、千五百円から三千円までは七割から六割、六千円から七千五百円までは六割から五割、七千五百円以上は五割。所得の低い層には七割、高い層には五割、こういうふうな給付格差をつけているのですね。私は今度の改正案の中身についてはわからないでもないですけれども、ただ賃金日額だけによって五割とか六割とか七割とかきめることについても問題がありはせぬか。たとえば、先ほどから申し上げておりますように、雇用保険法で性格は若干変わったとしても、雇用保険法の中での失業保険財政があるわけですから、その意味ではこれはあくまで次に就職するまでの生活保障的なものでなければいかぬと思うのです。だから、この問題は非常に重要な問題で、むしろその意味では就職の難易度によってきめるべきだと思うし、また、いま言う六割で次の再就職するまでの生活保障になるのかどうか。上は五割、下は七割、標準はあくまで六割ですから、むしろわれわれは、最低を六割にして最高を八割ぐらいにすべきだと思うのですよ。私が先ほど質問したのは、雇用保険法に移行した場合の失業保険財政はどうなるのかという、そこをお聞きしたわけです。財政は十分あるのだから。六千七百億。だからその意味では、こういった給付面についてもやはり私は不満があるのです。その点については就職難易度によってやはり日額もきめるべきじゃないのか、こう思うのです、どうですか。
  305. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回の給付率は上薄下厚、六割を標準にして賃金の比較的低い層は七割まで、高い層につきましては五割まで逓減する、こういう率を設定いたすことにしております。それで、ここだけごらんいただきますと、あたかも中高年層については賃金が高いから五割になるんじゃないかというお感じでお受け取りになるかもわかりませんけれども、実際は現行の失業保険制度で現在は最高が二千八百六十円、これを賃金に直しますと約四千七百円でございます。四千七百円の人が現在六割の二千八百六十円の保険金をもらっておりますが、今回の新しい雇用保険ではいま先生お読み上げになりましたように六千円までは六割でございます。そういたしますと現在四千六百八十五円以上頭打ちで六千円の人も二千八百円しかもらえませんけれども、今度は六千円の人は三千六百円もらえることになります。それをこして七千五百円までが五割五分、五割ということになりますので、いままでよりは大幅に増額されることになるわけでございます。したがいまして文字づらだけをごらんいただきますと確かに何か五割に下げられるような感じがいたしますけれども、実際はそうではございませんで、六千円までは六割ですから、現行の最高限よりも約三割近く引き上げになる。それをこすものについて五割五分、五割ということになりますので、若干率は低くなりますけれども、額としては現行の額の二倍近くの額になる、こういうことでございますので、決して中高年齢層に対して給付率が低くなるということではございませんので、御理解いただきたいと思います。
  306. 小宮武喜

    小宮委員 それはぼくは当然だと思うのですよ、やはり賃金の高い人は保険料を高くかけているのだから。そしてまた物価も上がっておるし。だからそういうふうな意味では、物価が上がらぬときは上がらぬときの失業保険をやるわけだけれども。しかし、いまの制度の中でなぜ失業保険の給付を六割に押えなければならないのかという根拠についてもどうも私は理解がいかぬのですが、六割でなければいかぬという何か根拠でもありますか。
  307. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 一般的に社会保険の給付率におきましては、日本の場合はほとんどの社会保険が六割になっております。諸外国の例を見ましても若干差はございますけれども、ILO等におきましても、おおむね日本の水準は他国に比較いたしまして決して遜色ございません。一般的には通常の賃金の四五%というのが外国の例でございますが、いろいろなものを加えましても六割というのは、諸外国の例に比較いたしまして大体通常上の部に属する率だと私ども考えております。それを今回は比較的賃金の低い層について七割まで引き上げよう、それで実質的に生活の安定に資する十分なものにしていきたい、こういう考え方で上薄下厚の制度をとったわけでございます。  さらに失業保険の場合は、同じ六割と申しましても他の社会保険と非常に違っております点、この点を御理解いただきたいと思うわけでございます。たとえば厚生年金保険、健康保険の標準報酬日額と失業保険の賃金日額を比較いたしますと、失業保険の場合は御承知のようにその人に支払われます年間の賃金総額が含まれることになっております。したがって、盆、暮れのボーナスいずれかが入ります六カ月間の賃金総額を基礎にして保険金を算定をいたしますために、実際には六割と申しましても月間収入の八割程度のものが保険金として支払われるというのが実態でございます。それで七割にいたしますと、賃金の低い層につきましては月間手取り額、月収の一〇〇%に近いもの、あるいは場合によってはこえるというような事例も出てまいります。私どもは社会保険の給付としては最善の制度ではないか、かように考えておる次第でございます。
  308. 小宮武喜

    小宮委員 問題は、あなたたちはもうできるだけいかに安く押えるかということばかりを考えておる。ILOにしても、あれは最低の基準ですよ。だから最低基準にようやく追いついて、これで世界並みになったというような考え方では、私はやはりこの社会保障制度がいつも世界におくれてあと追い行政を常にやっておるということになるのじゃないか。やはりその意味では、GNPも世界の第二位とかいわれる時代になったのだから、もっとそれに見合って労働福祉にしても社会保障にしても、そういうふうな外国のしりばかり追っかけていかぬでも、むしろ外国よりいい社会保障制度をつくるというぐらいの前向きの考え方でなければ、大体もう厚生年金にしても何にしても、いろいろな社会保障問題にしても、あなたたちはいかにしたら少なく出そうか、なるだけ支給額を減らそうという考え方が、もう労働省ばかりでなくて、大体歴代の政府の考え方の中に流れておるのですよ。だから一つも前進がない。だからいつもこういうふうな委員会で、皆さん方も野党からいろいろやられるわけですね。だからわれわれは厚生年金で八割にしなさいといっておるわけですよ。だから、その意味では政府も、特に労働大臣は労働問題には非常に造詣も深いし、理解もあるので、労働大臣あたりがやはりこういう問題についてはもっと考えていただかぬと一つも前進がないということで、ここでいろいろ論議をしてみても皆さん方皆さん方の理屈ばかり言うし、われわれはわれわれの言い分を言っているわけですが、この法案自体の取り扱いというものはまた別途検討しますから、そういった意味で先に移ります。  私は特に一番大きな問題として給付日数について、これまでは被保険者期間で定められてあったのが、今度年齢区分に変えてしまったというところに非常に問題が出てきておると思うのです。そういうふうな意味で、いままでの被保険者期間から年齢区分に変えた理由についてひとつ説明を願いたい。
  309. 関英夫

    ○関説明員 今回の法案におきまして、給付日数をきめる理論といたしましては、就職の難易度を原則的にまず年齢で見る、年齢で見られない場合にその他の要素を加味しておりますが、就職の難易度によって給付の日数をきめよう、こういう案にいたしております。従来は先生の言われましたとおり、過去の被保険者期間あるいは保険料納付期間と申しましょうか、そういうものによってきめていたわけであります。それを今度就職の難易度によってきめましたにつきましては、先ほど大臣からも御答弁のありましたように、この失業保険制度が設けられました時代から今日までの間に雇用情勢がすっかり変わってまいりました。一般的には労働不足、こういうふうにいわれるに至ってまいりました。過去の、失業者が非常にちまたにあふれていた時代にどの程度の給付をすべきかということになりますと、そこには一定の限度があるとすれば、保険料納付期間といったようなもので考えるのも一方法だったろうと思います。しかし、今日のように量的に見れば全体的には労働力不足の時代になってきて、それでその中をしさいに検討いたしますと、就職の難易度がいろいろ違う。なお、年齢別なりあるいは身体にハンディキャップがあったりして就職困難な人がいるかと思えば、金の卵といわれるように非常に就職の容易な人もおる。こういう時代になってきたとすれば、ここで制度を、就職の難易度によって給付をきめる、こういうふうに変えるほうが、よりこれからの雇用失業の情勢に適しており、かつより社会保険としての目的に沿うものである、こういうふうに考えたものでございます。
  310. 小宮武喜

    小宮委員 就職の難易度によってきめたということでございますが、現行の失業保険制度でとかくの批判が出ているのは、それはたとえば二十年、三十年、長い人は四十年とやはり一つの企業に働いてきた人、これは終身雇用制ですから、そういうような意味では一つの企業に長く働くわけですね。その人たちはやはりいままでの四千二百三十億も積み立て金が残るくらいまでに——この人たちこそほんとうに失業保険制度に貢献してきた人だと私は言わざるを得ぬのです。そういうような人たちからいま出されておるのは、やはりいまのそういった二十年、三十年、四十年つとめてきた人たちがいざ定年退職したという場合に、わずかの三百日の給付日数であります。それでそう言えば、労働省は、いや就職がむずかしい場合は六十日延ばしますよ、こんなことを言うかもしれぬけれども、大体そんなことくらいで満足している人はないのです。私はだから年齢区分に一挙に切りかえたことにも問題があると思うのです。それで特にもうこれは大臣も御承知のように、定年でやめる時期は、これは皆さんちょうど子供さんでも大学に進学するとか、子供さんがお嫁さんをとるとか、またはお嫁さんに行くとかということで、家庭的には一番出費の重なる年なんです。だからやはり定年退職してもその人は働かなければ食っていけない。しかしながら、いまいわれておるように、高年齢者の再就職というのは非常にむずかしい。これは労働大臣労働省全部が御存じでしょう。そういうような中でこの人たちがやはりいろいろ問題にしておるのは、おれたちはもう三十年も四十年も——たとえば高校を出て五十五歳までつとめてみなさい、何十年ですか。そういうような人たちがそういう失業保険を納めてかけっぱなしできた。しかしいざもらうときになると三百日。それはなるほど三百日でも労働省はよけいやり過ぎておると思うかもしれぬけれども、私は三百日くらいで、失業保険制度に貢献してきたこの人たちに対して、それが報いる道かと言いたい。ましてや再就職がむずかしい場合にわずか六十日だけ延長するということでしょう。だからそこが非常に問題なんです。だから高年齢者の雇用対策というのは、大臣が言われておるように、いま雇用対策にしても失業対策にしても最重点目標は、この中高年齢者をどうするかという問題なんです。そうした場合にこの人たちをもっとやはり優遇してあげるということを考えなければ——これは皆さん方官僚の人たちはどこかに天下りしていけばいいかもしれぬけれども、一般の勤労者は行くところありませんよ。特に中高年齢者の定着率が非常に悪い。これは職業安定所あたりであっせんして行っても、条件が違う場合が多いのですよ。だからそうした問題も考えて——私はあとでもう一度その問題に触れますけれども、そういうような意味ではいまは四千二百三十億もあるという、こういうような失業保険特別会計の中で金がないとは言わせぬですよ。それを六十日という限定をするのじゃなくて、もっとやはり特に——ある程度限定してもいいですよ。いままで失業保険、たとえば三十年以上とか二十年以上とかつとめた人は、その際はひとつ六十日といわぬで、また六十日延ばすとか、そうしないと、やはりいまいろいろ問題が出ております。私はそういうような定年退職をする人から、いろいろ会いますけれども、やはり非常に問題が出ている。そこなんです。だから、その意味でこの問題はやはり十二分に考えていただかぬと……。いまこの改正に踏み切った理由の中にも——そうじゃないですか。やはり普通の勤労者が保険金を納めていっているけれども、たとえば季節労働者や女子の退職で、これが保険受給金の総額の中で七〇%も占めておるというのは、だれがその財源をみついでおるかということなんです。そういうような人たちに対してもっと優遇するのは当然じゃないですか。その点についてまず大臣の所見を聞いておきたい。
  311. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私なども、国会にいなければもう定年退職です。自分の友だちから、定年退職になったあとの就職、どうしてくれなどという相談も受けることがあります。まさに先生がおっしゃるとおり、いまからの日本の社会は、若い諸君がだんだん少のうございまして、中高年齢者がしっかりと働かなければならぬ時代でございます。  そこでいまの御質問は、私はほんとうに大事な御質問だと拝聴したのですが、五十五歳の定年退職前後の労働者が離職した場合におきましては、若年者の再就職が容易であるのに反して、求人倍率が地域においても産業においても低うございます。そこで、再就職が困難なことにかんがみまして、この法案におきましては、御案内のように、五十五歳以上の受給資格者に対しては最高の所定給付日数三百日の給付を行なうこととし、さらに高年齢者が安定した職業についた場合には常用就職支度金三十日分、これを支給することとするなど、給付面ではまずまず手厚く措置しているところと思っております。同時にその福祉の増進と雇用の安定をはかる観点から、六十歳以上の者については労使の負担する保険料を免除し、また雇用改善事業として定年延長の奨励や高年齢者の雇用奨励のための事業を行なうこととするなど、その援助にはほんとうに万全の策を講じてまいりたい、こういう考えでございます。
  312. 小宮武喜

    小宮委員 手厚くしておるとかなんとか言ってみても、まああとでまた申し上げますけれども、われわれから見れば一つも手厚くしていないと思うのです。  それからもう一つお聞きしますが、いまちょうど中高年齢層の死亡時期は、私が体験しておる範囲内でももう大体五十歳から五十六、七歳までが一番多いのです。私が知っておる範囲内で、十人のうち八人までは五十歳くらいから五十七歳くらいまでです。だからこの人たちは、二十年、三十年、四十年つとめて、いま言う三百日分の失業保険ももらわずに、ほんとうにかけ捨ててなくなる方が多いのです。そういうような人がどれくらいおりますか、ひとつ数字を示してください。
  313. 関英夫

    ○関説明員 被保険者期間が相当長期にわたり、しかも死亡された方の数というのは、いまちょっと資料がございませんので、数としては明確にはわかりません。
  314. 小宮武喜

    小宮委員 労働省は、やるほうだけはできるだけしぼって、もらうほうは遠慮なしにもらおうというようなことで、そんなことに頭が向いておらぬものだから調べてない。  まあそれはそれとして、いまの給付日数の延長ですが、個人別延長による日数は六十日を限度としておるわけですが、それぞれ就職の難易度においてきめることとし、一定基準を設けることになっておりますが、これが非常にむずかしいのですね。皆さん方は、就職がむずかしいから六十日間延ばしますよと言うけれども、この一定基準というのがどんなものなのか。これは一定基準を設けても、基準の内容いかんによっては、皆さん方はできるだけ個人延長しないように、しないようにということで、大体第一線、出先の機関では法律を解釈するのですよ。だから、就職がむずかしいから六十日もらえるという考え方を持っておると、いろんなトラブルが起きるのです。それで、定年退職しておる人は、皆さん方が心配するように、先ほども申し上げましたように、できるだけ就職をしなくて、ただ金だけもらおうというような人はおりませんよ。企業に三十年も四十年もまじめにつとめて、そんな人はおりません。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕 したがって、一定基準というのはどういう基準ですか。具体的に教えてください。
  315. 関英夫

    ○関説明員 個別延長の基準につきましては、この法案が成立しました後に関係審議会の意見を聞いて具体的に定めることになりますので、確定的に申し上げるわけにいきませんが、現在までこの法案を関係審議会で説明しておりますときなどに、私どもが考えておりますことを申し上げております。それは、対象となる就職困難な者としては、たとえば中高年齢者等の求職手帳の所持者、これは四十五歳以上の中高年齢者その他身体障害者等になりますが、そういった求職手帳の所持者あるいは身体障害者雇用促進法上の身体障害者に準ずる程度の身体の欠陥があるために就職が困難な者、あるいは四十五歳以上の身障者、刑余者、それから社会的事情によって就職が著しく阻害されている者等を考えたい、こういうことを説明してまいりましたけれども、具体的にはそういう方で所定給付日数を受け終わった後も、引き続き再就職に必要な職業指導等の援助が必要な者ということも必要になってくるかと思いますが、いずれにいたしましても法案の成立後関係審議会の御意見を聞いて基準をきめて、全国で運用いたします場合にあまり現場の恣意的な判断で動くことのないように、きちっとした基準をきめたいと考えております。
  316. 小宮武喜

    小宮委員 いまの説明ではどうも抽象的なんで、たとえば審議会に諮問するにしても、これはこの法律案が成立してから考えておるようですから、ここでいたずらに混乱を巻き起こさぬように中身はできるだけ伏せておこうという考えかもしれませんが、諮問する以上は労働省自体が一つの具体的な案を持って諮問しなければいかぬわけですから、それがいまは替えぬということであればしようがないとして、やはりこういったものは今度は出先でトラブルが起きるのです。だから、その点十二分に配慮していただかぬと非常に問題を起こします。先ほど私言いましたけれども、現在でも、就職しなさいと出ていますね。そうすると、正当な理由なくということがございます。これも、いまいろんなトラブルが起きているのです。その点はまた先に触れます。  それから、基本手当の改正について、労働大臣は毎月勤労統計によって定期給与月額が二〇%以上変動した場合に行なうということになっていますね。この二〇%という根拠はどこから求めたのですか。いろいろ労働大臣は、失対賃金の場合も、たとえば消費者米価が二〇%以上上がった場合とか、二〇%という数字をよく使うのです。この前の失対賃金を上げるという場合も労働大臣は、消費者米価が二〇%以上上がったらそのときは考えますと答弁しておるわけなんです。これは私に言わせれば、ことし、去年のような異常な物価の値上がりの場合でも、二〇%以上ということに該当するかどうか、ぎりぎりだと思うのですよ。だから、今度の三公社現業賃金にしたって一二〇%の大台に乗せぬように大体一七・五%に押えたのだと思いますけれども、いずれにしても二〇%以上の物価上昇というのはめったにないから、安全圏をとって二〇%にすればそう基本手当を変更せぬでもいいから、まず安全圏として二〇%を押えたのではないかと私は勘ぐっておるわけですが、どうですか。
  317. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 失業保険金額の自動スライド制につきましては、各社会保険の中で、失業保険法が二十二年に制定されました当時から、賃金スライド制が採用されております。制度としては画期的なものでございます。そのときから、二〇%賃金が上昇した場合には、それによって自動的に変更するという規定になっておりまして、今回の雇用保険法におきましても、そのとおり現行の制度を踏襲いたしております。  二〇%というのは、大臣から米価の問題について御指摘がございましたけれども、失対賃金につきましては、米価が改定された暁には、それによって失対賃金の改定を検討いたしますと申し上げて、別に二〇%とかいうことではございませんし、いわんや物価についての率ではございません。あくまでも雇用保険法におきましては、現行失業保険と同じように、一般の毎月勤労統計における賃金が二〇%以上上下した場合にはその率に応じて自動的に変更する、こういうことになっております。  過去の実績を申し上げますと、いま先生が勘ぐりだと思うけれどもという、まさに勘ぐりでございまして、私どもは過去においてもすでに再三この条項によって自動スライド制を実施いたしております。従来は大体二年に一回ぐらい改定をいたしておりましたが、最近におきましては、去年、おととしと毎年改定を行なっております。そういう実績がございますので、先生の勘ぐりはひとつ勘ぐりとして御理解いただきたいと思います。
  318. 小宮武喜

    小宮委員 大体あなたたちのやることは勘ぐってみないと、まともに信用できないから。  労働省は、特に高年齢者対策として非常に思い切った手当を措置したと先ほどから言っておりますけれども、今度の改正案を見ても、五十五歳以上で二十年以上の被保険者であれば現行と同じような三百日くれる。しかし、五十五歳以下の人は二十年、三十年つとめようと、高校出て入ったら三十年になるが、そういう人は失業保険金は安いのです。今度は二百十日分です。九十日も低いのです。定年までつとめられる人もおるけれども、いろんな事情でやめなければならぬ人も出てくる。だから、五十五歳以上の人は従来と大体同じレベルだ。六十日の個人別延長の問題はありますけれども、五十五歳以下の人は、従来二十年以上で三百日もらっておったのが、今度は二百十日分です。私に言わせると改悪なんです。  こういうようなことで、中高年齢者に手厚い措置をしたと自画自賛しておるけれども、一つ一つ指摘していけば改悪の面が多いのです。少なくともこういうような制度を改正する場合は、現行よりよくしていくという立場法律改正をやるべきであって、現行より悪くなるような改正をやるというのは、従来の失業保険法と今度の雇用保険法の性格は若干違いますから、わかるにしても、それにしても給付面、あるいは賃金にしても、こういう改悪になるようなことは絶対してはいかぬ。一つ一つ指摘すると、そういう問題は一ぱいある。  また、下に厚いということを言われておりますけれども、現行制度では一年未満の者でも九十日、百八十日になっておる。改正では、三十歳未満で一年以上の者が六十日。先ほどの高校出て三十歳まで十年つとめた者でも、いままでより悪くなる。だから上に薄く下に厚くというが、何も上にも下にも厚くはなっていない。さらに現行制度は一年以上五年未満のものが百八十日ですよ。改正案では、三十歳以上四十五歳未満の人ですら百八十日、九十日なんです。だから今度のこの改正案というのは、もう上にも下にも、とにかく——政府は上に薄く下に厚くと言って、抽象的な表現をしておるけれども、実際は上にも下にも、とにかく改悪だ。少し善政をしいたぐらいに思っておるところもありますけれども、やはり全体として、今度の場合、この改正案というのは、だいぶん局長が頭をしぼって、長年手がけたようですけれども、われわれが納得するような改正案にはなっていないと思うのですよ。何か言うところがあれば、ちょっと局長、言ってください。
  319. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに条文の文字づらに出た面をごらんいただきますと、そういう御指摘を受けるのもごもっともかと思います。  ただ、小宮先生、たいへん失礼かと思いますけれども、現行の失業保険制度あるいは今回の雇用保険の失業給付の性格について私から先生にお話し申し上げるのは、釈迦に説法かと存じますけれども、一般の厚生年金とか、ほかの積み立て式の保険制度と違いまして、一定の期間保険料を払ったから、それに対応する給付として百八十日分もらえる、二百七十日分もらうのは当然だという、こういう考え方で御理解いただきますと、まさに先生のおっしゃるとおりだと思いますけれども、本来の失業保障の場合には、失業の期間をできるだけ短くして、再就職するまでの期間の生活保障に充てる、こういうことでございますので、いまの高年齢者の場合も、五十五歳以上の場合は三百日でいままでと変わらないではないか。そうしますと、四十五歳以下は切り下げになる。したがって、いい面がなくて悪い面だけだとおっしゃるのですけれども、実はそうではございませんで、五十五歳以上の、現在の失業保険制度の中で給付を受けておられます方々の実績を見ますと、三百日の給付日数の資格を持っておられる方が三分の一しかありません。ということは、逆に三分の二の人は、五十五歳以上であるにもかかわらず百八十日あるいは二百十日の給付しか受けられないのが現実でございます。事ほどさように高年齢者になりますと、終身雇用制で定年まで満足につとめた人はよろしいのでございますけれども、途中で離転職した方がかなり実際には多い。その方々は、今度の雇用保険では三百日、それに給付延長がございますけれども、現行の制度では、それ以下の失業期間しか保障されない、こういうことになっております。いわんや五十五歳以下四十五歳の方については、それと同じようなことが言えるわけであります。それに反しまして、三十歳以下の、いわゆる今度六十日に該当します方々は、現実の労働市場の状況から見まして、先ほど来申し上げておりますように、比較的容易に、短期間にそれぞれの人の好みに合った、希望する職種に離転職が可能というのが現実の実情でございます。そういうことから、決してこれは切り下げでございませんで、実態に応じて、就職のきわめて困難な高年齢者には三百日、その上にさらに個人延長を積み上げる。四十五歳以上につきましては、二百十日でございますけれども、それに個人延長が積み上げられる、こういうことで、より実態に即した失業中の生活保障をはかっていこう、こういう趣旨でございます。
  320. 小宮武喜

    小宮委員 まあ改悪でなくても、あまり改善ではないですな。——まあいいですよ。それは理屈としてはわかりますよ。しかしながら、今度の改正案というのは、従来は被保険者期間で押えておったものを今度は年齢に一ぺんに切りかえてしまったというところに、被保険者の立場から見れば、いままではこうだったじゃないか、今度はこうじゃないかということなんで——それは個人個人によって、いろいろ違いますよ。違うけれども、やはり改悪だと言う人もかなりおるのですよ。それは、私は、今回被保険者期間を切り捨てて、年齢区分一本に切りかえてしまったというところに問題があると思うし、だから、私は、こういった急激な変化をしなくても、もっと——一番単純明快といえば単純明快ですよ、年齢で区分したほうが。しかしながらやはり、従来の制度の中で年齢区分というものをどうミックスさせていくかということを、労働省は考えるべきじゃなかったのか。そうすれば、私がいま指摘するような矛盾点というものが、ある程度解消できるわけですよ。それを、審議会が指摘しておるように、解決を急ぐのあまり、年齢区分に切りかえてしまったということで、やはりこういうような矛盾が出てくるわけです。だから、その点について、それだけのことを——局長はだいぶん手がけて、局長の言うところでは、労働者のことを一番自分も考えておるのだ、それだけの実績を残しておるのだということを言っておるわけですが、局長、そこまであなたは考えなかったですか。
  321. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに、いま先生の御指摘のように、年齢区分を一応基準にいたしておりますけれども、これは単に年齢ということだけできめたわけではございませんで、問題は、年齢を一つの標準にしながら、就職の難易度ということのものさしとして年齢を使ったということでございまして、したがいまして、単に年齢だけでなくて、身体障害者とか、あるいは同和関係の方とか、あるいは刑余者とか、そういった社会的に就職の困難な人も給付日数を長くする、あるいは延長するという措置もとっております。  それから一般的には、一年未満で、きわめて短期間に転職をするような人は、これは別にする。一年以上であるか、一年未満であるか、その点につきましても、いま先生御指摘の、きわめて不十分かもわかりませんけれども、被保険者期間、就職しておった期間というものも一つの基準にして取り上げておる。こういうことでございまして、もっぱら給付日数をきめるにつきましては、就職の困難さのいかんにかかわって、この制度をきめるというやり方をいたしました点で、従来とは全く根本的に考え方が変わっておるわけでございます。いままでの考え方自体がむしろ——在職期間、被保険者期間が長ければ給付が長くなる、要するに払ったものの見返りとして幾らもらえるか、こういう考え方は、失業保障という機能の面から考えますと、むしろ逆行するような形になっている。それを本来のあるべき姿と今後の雇用失業の実態に合った形に制度化したものが、今回の雇用保険でございます。その点を十分御吟味をいただきたいと思うわけでございます。
  322. 小宮武喜

    小宮委員 失業というのは、そう再々あっては困るのですが、その失業を経験した人は、この雇用保険法の改正に非常に敏感なんです。しかし、いま私が申し上げましたように、一つの企業で三十年、四十年働いた人は、一生に一回ぐらいの失業の経験をするわけですから、そういうふうな人から見れば、やはり従来と違って、今度はこれだけかということになれば、受ける感じはやはり違うわけですね。皆さん方が言われることも、私も全面的に否定しようとは思いませんよ。しかしながら、やはりそういうような、この法律案をいまみんなよくは知らないですから——いま失業する寸前の人、失業する人は、関心があって、よく見ておるけれども、そうでない人は、おれは失業保険なんかまだ関係がないのだというような感じで無関心でおる人がかなり多いものだから、そう問題が大きくなっていないけれども、これはかなりの反響を呼ぶと思うのですよ。  まあそれはそれとして、今度の雇用保険法では、現行の失業保険給付事業のほかに雇用改善事業、能力開発事業を行なっておるわけですが、その財源として保険料率の事業主負担分のうち千分の三に相当する額をこれらの事業に充てようとしておりますね。大体総額幾らになりますか。
  323. 関英夫

    ○関説明員 五十年度のことでございますので、これから先の保険料収入を見込むことは非常にむずかしいことでございます。したがって、いま確たる数字を申し上げるわけにはまいりませんが、おおよその見込みを申し上げますと、千分の三が約千二、三百億になるのじゃないかと思っております。
  324. 小宮武喜

    小宮委員 次は、給付制限についてお尋ねしますが、受給者が正当な理由なく、公共職業安定所の職業紹介を拒んだときは、一カ月間の基本手当を支給しないことになっておりますが、これが先ほどから申し上げるように、非常にむずかしい問題で、「正当な理由」とは何か、具体的に一つ例をあげてください。これは一番出先の窓口で、安定所の人たちと被保険者の間にトラブルを起こす問題ですが、正当な理由というのをひとつ具体的に説明してください。
  325. 関英夫

    ○関説明員 現行法の上で、受給資格者が正当な理由なく安定所の紹介した職業につくこと、またはその指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは給付制限をする、こういうことになっております。正当な理由なくの正当理由とは何かというと、中央職業安定審議会の意見を聞いて定めております。それをちょっと申し上げますと、まず第一に、労働条件が法令に違反することの明らかな事業所に紹介された場合、二、労働時間その他の労働条件がその地域の同様の業務について行なわれるものに比べて不当である場合、三、二カ月以上賃金不払いの事業所に紹介された場合、公共の福祉に反する業務を行なう事業所に紹介された場合、七日以内に自己の希望する職業につくことができると認められる場合、本人の意思に反して特定の労働組合への加入、不加入を採用条件としている事業所に紹介された場合、離職前から引き続いて夜間通学している労働者が、学校所在地から著しく遠隔の地にある事業所で本人の通学が不可能となるような事業所に紹介された場合、こういうようなことになっております。
  326. 小宮武喜

    小宮委員 定年退職してから実際再就職するといっても、ほとんど中小企業なんです。そうすると、中小企業の場合には賃金が非常に安い。むしろそういうような中小企業労働者賃金を引き上げるように労働省は指導すべきであって、だから、行きなさいといっても、いままでの賃金の三分の一ぐらい減る、失業保険よりむしろ少なくなるというような場合に、労働省は、ただこういうような仕事があるから行きなさい、行かなければ手当の支給を停止しますよというようなことだけで、ただ法律上の解釈だけでそういうようなことを一律に律していいのかどうか。失業保険もらうよりそっちへ就職したほうが現実に安い、その場合でも皆さん方は、いや仕事があるから行きなさい、行かなければいけませんというような問題を正当な理由の中に入れてもらったら、やはりいろいろな問題が起きますよ。私はもう一つ言いたいのは、もしそういうように、こういうような仕事がありますよ、そして労働条件はこうでありますよ、こういうように一応求人、求職の申し込みを通じて本人に言う。しかし本人がかりに行ってみた場合に、それと違うときが多いのですよ。だから東京都内の高年齢者の就職状況の調査の発表から見ても、一年間ぐらいのうちに半分ぐらいやめている。その理由は、賃金が安い、あるいは条件が違っておったというような問題がありますよ。私は、ただがむしゃらにあなたは行きなさいというんじゃなくて、その人の意思を尊重し——それは尊重するといっても限度がありますよ。一応求職先に本人に行ってもらって、そこの事業主と、ほんとうに額面どおりそういうような労働条件であるかどうかということを、やはり本人が求職先に行って、事業主と会って確認して、本人がそれでは行きましょうというようなことにすべきだと思うのですよ、やる場合には。それをいまただ、そういうことではなくて、皆さんが行け行けと一方的に押しつけるようなことは、これは非常にトラブルの原因になります。だからむしろ今後やる場合には、ここではっきりしてもらいたいのは、本人の意思を尊重することについても限度があろうけれども、一応本人が求職先に行ってみて、事業主と会って、たとえば設備はどうなんだ、あるいは賃金は間違いないのか、そういうようなことも本人が事業主と会って十分理解と納得のいった上で再就職するということを考えるべきじゃないか。その点いかがですか、局長
  327. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 全く先生御指摘のとおりでございまして、今回の雇用保険法が成立した暁におきましてはいろいろな施行上の基準、重要事項につきましては、従来の失業保険制度によりますものを含めまして全部審議会の御意見をいただいて、その上でこういった基準を明確にいたす考えでございます。同時にその際に、いまお話しになりましたような第一線の取り扱い上のいろいろなトラブルができるだけ起こらないように、窓口の職員の恣意的な判断によるそういった問題を未然に防止できるような措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  328. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 安定所でも、困っている人を御紹介申し上げてお世話することは非常に大事なことでございます。また、自分がお世話することによってその人が喜ぶ姿を見ることは、これまた仕事をする者の一番の喜びだろうと思います。こういう大事な法案が御審議いただいて通過した暁には、あらためていまのような気持ちを出先の者に徹底的に伝えて、ひとつ完全な実施を期したい、こう思っております。
  329. 小宮武喜

    小宮委員 時間がだんだん迫ってきましたのでひとつかけ足でいきますが、次は勤労婦人の立場から一言意見というか提案をしたいと思うのです。  それは、今度のこの雇用改善事業の内容に、育児に関する便宜の供与という項を新設してもらいたいということなんです。この事業は、勤労婦人の職業と育児の調和をはかりながら結局雇用の安定をはかるということを目的として、勤労婦人福祉法第十一条による育児休業を実施し休業手当制度確立するために、事業所に対してこの雇用改善事業の中で交付金を支給するように項を一つ設けてもらいたいということですが、局長なり大臣の所見を聞いておきたいと思います。
  330. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 婦人の労働力率は、外国に比較いたしましてわが国の場合かなり高い数字を示しておりますが、特に最近は既婚婦人で子供を抱えて働くというケースが多くなってきております。こういう実態から見ますと、職業生活、職場の問題と育児とをどう調和させるかということが、きわめて重要な課題となってきております。先般成立いたしました勤労婦人福祉法におきましても育児休業に関する規定が設けられておりまして、育児休業について企業に対する義務づけが行なわれております。しかしながら、この育児休業の規定はあくまで努力義務でございまして、この問題を具体的にどう措置するかということにつきましては、いろいろむずかしい問題があることは先生御承知のとおりでございます。労働省におきましても、この点を具体的に進めていくにつきまして、西先生を座長にいたします研究会が持たれまして、ここで具体的な措置についていまいろいろと検討を進められておる段階でございます。この検討の結果をまちまして、具体的な育児休業に対する助成措置をどういう形で実施すべきであるか。予算措置をとるにいたしましても、融資制度によるのがいいのか、あるいは一般会計から助成するのがいいのか、あるいはこの雇用保険法制度の中で雇用改善事業というような形でやるのがいいのか、今後その研究結果をまった上で慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  331. 小宮武喜

    小宮委員 かりに雇用保険法を施行する際、現に失業保険金をもらっておる人、この人たちに何らかの経過措置を行なうということが書いてあるわけですが、この経過措置について若干説明を願いたいと思うのです。
  332. 関英夫

    ○関説明員 経過措置といたしましては、従来の失業保険法によって資格を得あるいは給付を受け七いる人につきまして、まず雇用保険法による資格あるいは給付を受けているとみなして引き継ぐというのが、一番大事な点であります。それから、その給付額、給付日数等のきめ方が変わってまいりますので、そういった点で新法によるものは新法によるが、従来のほうがより有利なものは従来のほうをとるといったようなものが、経過措置の概要でございます。
  333. 小宮武喜

    小宮委員 この雇用調整交付金の制度、これは事業主が労働者に休業手当を六割以上とか支給した場合となっているんですが、これはあくまで雇用交付金の事業主の負担を軽減するためにやるのですか。やはり六割以上の休業手当を支給しておる労働者に対してこの交付金を上積みしてやるべきじゃないのかというように私は考えるのです。だから、もちろん、雇用調整交付金ですから企業にやって、その企業が負担した分を幾らかでもこちらのほうで軽くしてやろうという気持ちはわかります、その意味は。しかし、六割とかたとえばまあ五割とかいろいろあるでしょうが、そういうような場合、やはりある程度底い休業手当を支給されておるところには、たとえばかりに三割とします、そうすると、これはただになる、事業主負担はただに近いことになる。だからそんな意味ではやはりむしろ労働者に対してこの交付金の半分をやるとか、そういうような考え方はお持ちじゃないですか、検討すべき問題ではないですか、どうですか。
  334. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 雇用調整措置につきましては、先生御指摘のような意味もございますが、まず第一には、企業が操業短縮あるいは一時休業、こういった事態を迎えました際に、支払い能力がないために解雇せざるを得ない、こういう事態に立ち至る場合があるかと思います。そういう事態になりましたときにもなるべく解雇させないで、操業短縮期間中休業手当を支給することによって、身分を継続しながら雇用を継続さしていこう、そのために休業手当を支払う必要の原資として、その休業手当を支払ったもののたとえば二分一とか、そういう助成金を交付しよう、こういうことでございます。目的の第一点は、できるだけ解雇させないで、休業手当を支給することによって雇用を継続させようというところにあるわけでございます。  それから第二は、その休業手当に必要な原資の一部を、たとえば二分の一とかあるいは三分の二とか、それを助成することによって、この要件となっております六〇%以上というところに意味がございまして、その原資の助成を受けることによって賃金の全額に近いものをできるだけ支給していただくように行政指導をしていこう、そうすることによって休業期間中の生活保障に万全を期していきたい、こういう趣旨でございますので、いま御指摘のように、たとえば三〇%だったらただになるじゃないかということではございませんで、休業手当として六〇%以上支給された場合には、たとえばその半額、そうしますと、使用者は、六〇%みずから支給するとすれば三〇%上積みすることも可能になる、こういうことになるわけでございますので、その趣旨を十分生かしながらこの制度の運用をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  335. 小宮武喜

    小宮委員 最後にもう一つお聞きしておきますが、この法律がかりに成立したとした場合に、実施は五十年四月からになっていますね。そうしますと、この法律の性格からいって、最近の石油ショックで非常に経済変動が起きております。すでに御承知と思いますが、たとえば自動車産業あるいは繊維産業、こういうようなところでは一時帰休だとか、特に販売部門等についてはもう失業が出ているわけですね。それは、いまのところはさほど大きな問題にまでなっておりませんけれども、ことしの後半からは非常に深刻な影響が出てくるということが予想されるわけです。現にそういうようなところでは予想しておるわけですが、そういうような場合にこの雇用保険法案というのは、この法律案の性格からいっても、むしろ、来年の五十年四月からになっておりますけれども、そういうように事態が深刻になってきた場合に、この法律を繰り上げ実施、繰り上げて適用するということも私は必要になってくるのではないか、これは非常に現実的な問題ですが。そのような場合に、この法律の繰り上げ実施ということも大臣として考えておられるのかどうか。その点を最後に一つだけお聞きして、私の質問を終わります。
  336. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 自動車産業、繊維産業、いろいろな話を聞いておりまして、私も深憂しているところであります。  自動車産業の場合には輸出のほうがどうなるか、そういうことがまた多少の小康を保つゆえんではなかろうかとさえ見守っているわけであります。そういうときに、この雇用保険法案に対しての御注文、非常に御注目いただきますことはありがとうございますけれども、これが通りましても、なかなかこれだけの大法案なものですから、それにすぐ間に合うような施行ということはちょっとむずかしいんじゃなかろうかと、ただいま考えているわけであります。
  337. 小宮武喜

    小宮委員 これで質問を終わります。      ————◇—————
  338. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 田邊誠君外五名提出の、賃金及び物価変動に対応する公的年金給付等の額の改定等に関する特別措置法案を議題とし、その趣旨の説明を聴取いたします。田邊誠君。     —————————————
  339. 田邊誠

    田邊議員 私は、提案者の日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、賃金及び物価変動に対応する公的年金給付等の額の改定等に関する特別措置法案の提案理由を御説明いたします。  今日、高齢者や各種の障害者などの生活は、いよいよ困難をきわめております。その原因は、何よりもまず、この異常なインフレであります。昨年十一月、社会保障制度審議会は、政府に対して建議を行ない、「インフレは、少数の豊かな人々をいちだんと豊かにし、貧しい人々をいちだんと貧しくする」として、社会保障財源の緊急増額を要請しております。しかし、政府がこたえたのは、二千円程度の一時金にすぎず、とうていインフレに対応する給付改善と評価するわけにはいきません。  四十九年度予算案における福祉年金の改善にしても、物価上昇率四%台を前提とする経済社会基本計画でつとに予定されたものであり、また、拠出制年金物価スライドの実施時期にしても、厚生年金の本年十一月、国民年金の来年一月というのは、二年も前に立てられた政府方針のままであります。すなわち、昨年後半から始まった異常なインフレに対応する施策としては、政府には評価できるものが何一つないと断ぜざるを得ません。  次に、高齢者や障害者などの生活困難をもたらしている基本的な条件、すなわち、今日の政治や社会の基本的な性格を、この際、指摘しておきたいと思います。  神奈川県の脳性麻痺者、横田弘氏の手記は、「健全者の世界に同化することを夢みたり、健全者に理解を求めることは、自ら疎外、抑圧の道を歩むもの」であると言い、また、「障害者エゴイズムと、私たちを抹殺の対象としている健全者エゴイズムとの闘争こそ、私たちを自己解放へと導く」ともいっています。  障害者の人々をここまで追い込んだものは何なのか。私どもは、政治の責任を深く反省せざるを得ません。すなわち、生産優先、利潤追求の社会では、生産的労働に従事できない者、もしくは、効率的な労働力を期待できない者を顧みないということ、特に、田中総理が固執する日本列島改造論は、列島改造に貢献できない者を切り捨てて、その隔離収容を強めてゆくことになるのではないかと、私どもは憂慮しているのであります。  去る三月二十三日の障害者のデモで、車いすでブルドーザーの前に立ちふさがろうという声が上がっておりましたのも、この心配が、私どもだけのものでないことを示しているといえましょう。  社会的弱者と呼ばれる人たちを、このように窮迫した状態から解放することは政治の責務であることは、申すまでもありません。そのための手段としては、何といっても所得保障制度の充実が、最も基本でありましょう。  ところが、所得保障たる各種社会保障給付のほとんどは、その改善に全く根拠もなければルールもなく、受給者から選挙のある年に引き上げられるなどと陰口をたたかれるありさまであります。このことは、これらの給付が、いつまでも恩恵的な性格を脱し切れない大きな原因になっており、これでは障害者の人達から健全者エゴイズムと糾弾されても、返すことばもないでしょう。  本案は、右の趣旨から、各種社会保障給付に、賃金物価スライド制を確立することを目的とするものであります。  まず賃金自動スライド制の内容についてでありますが、その年の五月以前十二カ月間の全労働者の平均賃金上昇率に、給付額をスライドさせ、これをその年の四月に遡及実施させるというものであります。なお、前年六月からその年の五月までを単位としたことは、労働者春闘による賃上げを、できるだけすみやかに社会保障給付に反映させようとしたためであります。  次に、緊急物価スライド制についてでありますが、各年度を上下両半期で見て、各半期における消費者物価の動向が、年平均五%をこえる上昇をする場合には半期ごとに調整し、五%をこえた分を特別加給金として、半期分(六カ月分)まとめて支払うというものであります。その支給は、上半期分については十二月に、下半期分については、翌年度六月とし、いわばインフレ下における弱者のボーナスの性格を持たせたのであります。  最後に、この賃金物価自動スライド制の適用範囲でありますが、そのおもなものをあげると、各種公的年金(福祉年金、各種共済年金を含む)、生活保護、社会福祉施設に対する措置費、失対賃金、労災保険による年金、戦傷病者戦没者遺族等援護法による年金、児童扶養手当及び特別児童扶養手当、公害健康被害補償法による障害補償費等、およそ所得保障の中心的な機能を持つすべての給付を対象にしております。  以上をもちまして、本案の提案理由及びおもな内容の説明を終わらせていただきます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに成立を期せられんことをお願いいたします。(拍手)
  340. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十四分散会