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1974-03-05 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月五日(火曜日)     午後零時三十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    瓦   力君       粕谷  茂君    住  栄作君       田川 誠一君    田中  覚君       高橋 千寿君    羽生田 進君       粟山 ひで君    金子 みつ君       島本 虎三君    田邊  誠君       村山 富市君    森井 忠良君       山本 政弘君    大橋 敏雄君       坂口  力君    小宮 武喜君       和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君  委員外出席者         運輸省航空局監         理部監督課長  山本  長君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     有田 喜一君   高橋 千寿君     高見 三郎君 同日  辞任         補欠選任   有田 喜一君     小林 正巳君   高見 三郎君     高橋 千寿君 同月四日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     寺前  巖君 同月五日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     赤松  勇君 同日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     山本 政弘君     ————————————— 三月四日  最低賃金法案村山富市君外九名提出、衆法第  四号) は本委員会に付託された。 同月五日  歯科技工士免許に関する請願塩谷一夫君紹  介)(第二〇四八号) は委員会の許可を得て取り下げられた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  歯科技工士免許に関する請願塩谷一夫君紹  介)(第二〇四八号)の取り下げの件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  この際、請願取り下げの件についておはかりいたします。  本委員会に付託になっております歯科技工士免許に関する請願、第二〇四八号につきまして、去る一日、紹介議員であります塩谷一夫君より取り下げの願いが提出されております。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  4. 野原正勝

    野原委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  5. 島本虎三

    島本委員 わが尊敬する委員長の前に、尊敬する長谷川労働大臣に質問を申し上げますことを光栄に思います。きょうは、私自身も、皆さんに伺うという態度で若干質疑を申し上げたい、こういうように思いますので、ひとつよろしくこの点を取捨選択の上で回答願いたい、こう思うわけであります。  先月の終わり、それから一日、また三日と、春闘に際しましては、御存じのように、今回の場合は、特に低所得者層、それを中心にして——いままでの場合は、やはり賃上げ一方でありました。今度の場合は、幾らやってもまた次から次と物価の値上がり、インフレ高進、こういうようなことでは、もとのもくあみになってどうにもならない、それで一番しわ寄せを受けるのは社会的低所得者層である、こういうようなことからして、年金の問題を含め、施設に住む恵まれない、日の当たらない谷間に住む人たち生活の問題や、いろいろ年金関係の問題もこれを取り上げていま戦っているので、まさに国民春闘である、こういうように思っておるわけであります。それで、その日の当たらないということは何をさすのか。いろいろありましょうけれども、私はそこを中心にして、きょうは大臣とゆっくり話し合いたいのであります。  大臣も昨年の暮れに、日雇い労働者に対して、三日分の手当を十二月の末に出しました。当時私も大臣に対して、これは三日増は手当にして出すべきである、そうでなくとも、まるまるもらえるように配慮してもらいたい、こういうようなことを申し上げたつもりでとざいます。大臣は、その点について、十分わかった、こういうようなことでありましたが、その結果どういうようなことになっておりましょうか、ひとつ大臣の御見解を御披瀝願いたい、こう思うのであります。
  6. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 年末の十二月に三日の就労増措置をとったわけでございますが、各県、各地域、各市町村によりまして、それぞれいろいろ実情が違っておりますので、その実情に応じて、大臣から御答弁ございましたように、各人の、失対就労者ふところにそれだけの額ができるだけ入るような措置をくふうしていただきたいということで措置いたした次第でございます。
  7. 島本虎三

    島本委員 私が承ったところによりますと、当時——三日増としてもこれはほんのしれたものであります。インフレ手当と申しますか、生活のできない人たち、この人たちが三日増を手当としてまるまるもらえるような配慮が当然あった、こう思っておったのであります。ところが、まるまるもらった人もあり、一日は失業保険としてもらったという人もあり、また全然もらえなかった人もあるということを聞いておるのであります。それでは、もし職安窓口いかんによってやり方が全然違うということになった場合には、労働行政全体として、これは大臣の意向が通っておらないということになるのじゃないかと思うのです。こういうようなことがあっては困るのじゃないかと思うのです。これはどういうわけでしょうか。
  8. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生おっしゃるように、年末に、三日間お働きいただきながら、それをひとつ収入の中に入れてもらいたいということで、従来の慣行で特別な措置をしたようなかっこうでございます。そしてそれが確実に手に入るようにということは、私が心から考えておったことでございますが、いまのように一つ一つのケースになりますと、私も実態がわかりませんが、これはたしか職安じゃなくして町村が主体になって事業の推進あるいはまた事務的なことを交渉してもらった、こう思っておるわけです。
  9. 島本虎三

    島本委員 せめて、三日増といっても、その場合にはしれているわけです。月じゃございませんで、三日ですものね。この三日増ぐらいの場合はやはりまるまると出してやるというのがいわば親心であって、少なくともこれがもらえない人があったということは、私はそれを聞いたときにどうも遺憾だったのであります。この現状を調査して、今後こういうようなことがないようにすべきじゃありませんか。私どもは、これは少ないながらも三日増を手当にしてまるまるもらえるような配慮、こういうようなことが望ましかったし、それを期待したわけですが、結果においては二日だけで、一日は失業保険だった。中には精査されて全然もらえない人もあったということも聞いたのです。やはりこんなことではいけないのじゃないか。いろいろいきさつもあるだろうとは思うのです。私としては、強く申せば、そういうような場合にもう一回考えて、もとへ戻して、もらえない人には差し上げたらどうだろうか。これはできないだろうか。そして今後また大臣考えられている点があろうかと思いますが、そういうような場合には十分監視して、そういうようなことのないように、ほんとう手当的にまるまると、もらえるというような軍用のしかたをしてやるべきだ、これが労働大臣親心じゃないか、こう思っておるのです。今後それを私は強く要請しておきたいと思うのでありますが、ひとつ大臣決意を承っておきたいと思います。
  10. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 生活保護世帯手当が支給されますのと失対就労者に対しまして増給の措置をとりますのと、事業運営の仕組みが違ってまいりますので、御趣旨はたいへん私どももごもっともだと思いますが、なかなかさようにまいりませんことでございますが、御趣旨のように昨年の十二月に実施いたしました措置の中で、もらえなかったという人は、私どもはなかったように聞いておりますけれども、万一そういうことがありましたならば、大臣からせっかくの措置をおとりいただいた趣旨にも反することになりますので、この三月の措置につきましてはそういうことにならないように、十分事業主体関係市町村を指導いたしまして、御趣旨に沿うような方向で運営できるように努力をいたしたい、かように考えております。
  11. 島本虎三

    島本委員 大体わかりました。しかし労働省としてのやはりこの最低のいわゆる三月の措置について、その前に、総評をはじめとして労働者である各団体または未組織の各従業員団体、こういうふうなところからもいまやもう声があがっておるのです。それは社会保障です。しかし労働省に対しては長年の一つの懸案でありましたけれども大臣、これは最低賃金制度の確立です。これは全産業全国一律のやつがまだないのです。しかしこれがない以上、やはりいろいろな点でアンバランスが実施されるわけです。この点に画竜点睛を施す意味で、労働省としては全国産業一律の最低賃金制考え、これを実施させる、これがなければならないと思っておるのです。しかしこれは、野原委員長労働大臣をしていた当時、もう成案もあったように聞いていたのですが、いまだにまだ出てこない。長谷川労働大臣からしてもまだまだ出てこない、こういうようなことになりますと、社会的なアンバランスは永久に消えないじゃないか、これは急ぐべきじゃないか、これは労働大臣の所管じゃないか、こう思っておるのですが、この最低賃金制実施についての決意をひとつ披瀝してもらいたいと思うわけです。
  12. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 従来の経過先生ほど存じ上げておりませんけれども、ただいま御承知のとおり地方あるいは業種別に約二千九百万ほどが最賃にみな入っておるわけでありまして、全国最低賃金という話は、こういう委員会あるいは予算委員会、こういうところでいままで幾たびか論議されたことでもございます。また一般のそういう勤労者方々の主張の中にも、そういう話は私も聞いておるわけでありまして、この問題は、何といたしましても、従来地方別あるいは業種別に大きく縦割りやら横割りに網をかぶせていることでして、そういう審議会のほうで、公労使ともども審議会で御検討いただきながら、そういう権威のある方々から、いままだその時期ではないという御答申をいただいておるようなかっこうでして、それらのものを見合いながら私も心の中にこれを研究しているというところを御理解いただきたいと思います。
  13. 島本虎三

    島本委員 大臣御存じだと思うのでありますけれども、現在の日雇い労働者がいろいろ変遷を経てきておりまして、いまの野原委員長大臣だったころに中高年齢者雇用促進法という法律成立したのです。その当時からしても、日雇い労働者に対しては事業のほうへふっつけて、そして労働省は手を抜きたい、こういうような考えがあったのでありますけれども、法の成立そのもの状態からして、われわれは賛成して通しました法律になりましたが、修正に踏み切ったのであります。修正に踏み切った労働省態度は、私はほんとうに称賛してもいいと思うのでありますが、それから現存する日雇い労働者の質が変わったはずなんであります。すなわち今度は、それを排除するような方向じゃなく、育成するような方向行政を行なっていくんだ。それから、ひもじい思いや最低生活に呻吟することがないように十分手当てをするのである、こういうふうにして、大臣のこれに対する所信の表明もあったのであります。しかし、やはり現在見ますと、まだそれが不十分なように思えるのです。  その場合に、日雇い労働者というと、口では日雇い労働者でありますが、私自身とどう違うんだということです。身分としては、非常勤特別職地方公務員という身分でございましょう。大臣は違いますけれども、私、島本虎三非常勤特別職国家公務員でしょう。地方公務員国家公務員の違いだけなんです、身分は。しかし、年度手当というようなものは制度としてまだ全然ない。あらゆる点が制度としてはない。どんぶり勘定のようにしてそれを配算するというような行き方しか現在残っておらないのであります。これじゃ、社会的に恵まれないというか、最低生活に甘んじなければならないような状態に追いやっておるのであります。やはり、中高年齢者雇用促進法成立したとたんに、現存する日雇い労働者に対して労働省考え方を変えるべきじゃないか。すなわち、非常勤特別職地方公務員、こういうような考え方行政指導を行なうべきじゃないのか、このことなんであります。したがいまして、年末手当、そして今度また三月の措置もあるようであります。しかし、〇・五カ月分を請求しているのに対して三日分、こういうようなことなんであります。これじゃ、十分法の精神に沿った行き方ではない。ちょうどそのおりに、それを言明なすったのが野原委員長大臣だったころでありますから、ちょうどいいのであります。今後やはり年度手当、こういうようなものも——今度は三月の措置として考えられるようでありますけれども、いままでの措置としては、やり方によっていろいろ段階がありました。もらえない人もあったようであります。やはりそういうようなことのないようにするためには制度をつくってやるべきじゃないのか。これも考えてやるべきじゃないのか。そして、物価騰貴手当としても、公務員の場合はきちっとしてやれるのですから、少なくとも非常勤特別職地方公務員という身分があるのですから、日雇いといえども。その場合には〇・五カ月分を出してくれ。〇・五カ月というのは普通の月給の〇・五カ月じゃないというのです。二十二日稼働する半分だから十一日、こうなのかといっても、だいぶそういうようなことさえも考えておるようでありますけれども、ほんとは〇・五カ月というならば十五日分ぐらい見てやりたいところなんであります。ところがそういうような実情になっておらない。そして、自治体のほうで支払えば、いろいろな点で今後は労働省のほうからまた干渉がやかましい、こういうようなことのようであります。これじゃ、中高年齢者雇用促進法制定以後の、現存する日雇い労働者に対するせっかくのあたたかい思いやり、それから態度を変えたはずの労働省、これが全然変わっておらないということになるじゃありませんか。やはりこの点については、当時大臣でありましたのが委員長でありますから、委員長と現長谷川労働大臣の、これに対しての決意考え方を聞かしてもらいたいのであります。
  14. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 三年前に当委員会におきまして、中高年齢者雇用促進特別法を御可決いただきました。その間の経緯につきましてはもう島本先生十分御承知のとおりでございます。確かに、非常勤特別職地方公務員という、法律形式的にはそういう形でとらまえられております失対就労者につきましては、年末あるいは夏季臨時賃金をどうするかということにつきまして、賃金審議会におきましてたいへんいろいろと御議論がございまして、当時御可決いただきました法律政府原案におきましては、この臨時賃金を廃止して、その分を各日の賃金日額に組み込む、こういう考え方であったわけでございますが、当委員会先生方の御指摘によりまして修正されまして、従前どおり夏季、年末に支払われる、こういうことになったわけでございます。それで今日に至っております。その後この三年間、従来失対に就労している方々に対するいろいろな卸批判や非難、そういったものが三年前の法律成立によりまして影をひそめまして、失対に就労している方々も喜んで就労していただいていると私ども考えておりますし、一つの例をあげますと、同じ年齢階層の老人の中で、失対に就労している人たちのほうが非常に健康的といいますか、死亡率がかなり低いということも、私ども当時法案審議をしていただきます際に、この委員会大臣——当時の大臣野原委員長でございましたけれども大臣以下私どもも申し上げましたごとく、この法律成立後、失対に働くこともあるいは失対から離れて正常な常用雇用につかれることも、各人の御自由意思におまかせいたしたい。あとに失対に残られる方は、言い方は悪いかもしれませんが、一生、死ぬまで安心して働いていただきたいということをお約束申し上げたわけで、そのとおり現在失対に就労していただいているわけでございまして、私どもといたしましては、そういった趣旨にのっとりまして、十分御趣旨どおりに運用をさせていただいているつもりでございます。
  15. 島本虎三

    島本委員 十分やっているというのですが、大臣は、やっていると思いますか。
  16. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いろいろな経過がありましたけれども、私も失対就労者方々生態を見ていますと、これはいま局長答弁されましたけれども、高年齢者が非常に多い。たしか平均五十九・六歳ですね。男が現在六十二・三歳、御婦人が五十七・九歳、こういうふうに高年齢者。でありますから、私といたしますと、ほんとうにいろいろな制度の変化の中に、こういう方々がたしか十二万八千ほどまだいらっしゃるわけです。でありますから、持っている制度を活用しまして、そして特別に、せんだって三日とか、あるいは今度も社会保障関係お話先生方からずっと出ておりますから、厚生省のいろいろな手当て、そういうものをやる場合に、私のほうもそれに劣らざる姿において三日間の就労の日を三月末までお願いして、それが収入になるように、こういうふうなかまえでやっておりますことも御理解いただきながら、あとはまただんだんと元の大臣でありいまの委員長である野原先生からも、そのうちにレクチュアを受けてみたい、こう思っております。
  17. 島本虎三

    島本委員 それじゃこの際確認してよろしゅうございましょうか。三月の措置という三日分、これは手当的な方法でまるまるもらえるような配慮があるのだ、こういうように確認してよろしゅうございましょうか。
  18. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 各関係事業主体に指導いたしまして、できるだけ御趣旨のような、就労増によります賃金各人ふところに入るように運営していただきたい、くふうをこらしていただきたい、こういうふうに指導いたしたいと思います。
  19. 島本虎三

    島本委員 大臣は、この失対労務者日雇い労務者ですけれども、これをもう救済すべき社会的な弱者である、こういうような階層にお考えでしょうか、それとも労働組合を持っているのであるからこれは強者である、こういうようにお考えでしょうか、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  20. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まあ生態としますと、私は、先ほど申し上げたように五十九歳六カ月というふうな方々で、しかも御婦人が多いということからしますと、ほんとうに御同情にたえない方々である。組合の話が出ましたが、組合の内容は私わかりませんが、組合として強いか弱いか、これは皆さん方の御判断だと思いますが、私はそういう方々のお集まりだと思ってほんとうに、たとえば労働省の前に大ぜいがいろいろなことで、ときにすわり込んでおります。ほんとうに強い労働組合であるならば、私たちをつるし上げたり何かするということなきにしもあらずですけれども、思わず私は、国会に出てくる途中私のほうから、こういう寒いところでコンクリートの上にすわり込んで、かぜを引いたら元も子もないからひとつお大事にと申し上げれば、やはりそういう気持ち方々ですから、私にありがとうといって拍手をしていただく。ほんとうに私はそういう心の通いの中に、私たちもやるものを一生懸命やる、喜んでいただく、こういう感じ方を持っているわけでありまして、こっちが強いから御同情申し上げるという意味じゃありません。そういうヒューマンリレーションの中において、お互いは国民的連帯感の中において生きるという立場においていろいろ施策をしたい、こういう気持ちでありますことを御理解いただきたいと思います。
  21. 島本虎三

    島本委員 では具体的にちょっとお伺いしますが、そうしますと、今回予算に盛られております、四十九年度予算案の中の賃金引き上げ率は何%でございますか。これは事務当局から……。
  22. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 一九・二%でございます。
  23. 島本虎三

    島本委員 そうすると、四十八年四月の賃金は何%上がりましたか。
  24. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 四十八年度は一三・二%でございます。
  25. 島本虎三

    島本委員 四十八年四月の賃金は一三・二%上がった。そうすると四十九年度は一九・二%上がるんだ、この客体というかこの一九・二%は、一三・二%上がったそのときの賃金ですか、それとも十月に五%上がっておりますから、上がったその賃金が標準になるのですか。
  26. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 四十八年度当初の賃金の一九・二%アップでございます。
  27. 島本虎三

    島本委員 そうすると、一九・二%と言いながら五%だけ引いた額になっているじゃありませんか。現在の賃金はもうすでに五%上がった賃金でございましょう。五%上がっていながら、上がらない一三・二%を基準にして一九・二%を上げるんだ、こういうことだと、五%だけもうちゃんと引いて一四・二%にすぎないということになるじゃありませんか。いま大臣がおっしゃったように、社会の底辺にいる気の毒な階層である、もっともっと手厚くめんどうを見てやらなければならないのだ、こういうように言っている最中に、一九・二%と言いながら、もうすでに実質は一四・二%であるということになりますと、これはやはり少し私としては愛情が足りない…(「愛情が足りないどころじゃない、残酷だよ」と呼ぶ者あり)これはほんとうにそうかもしれません。残酷かもしれません。残酷物語かもしれません。そういうようにしてほんとうに、五%少ない額を多い額のように見せかけているということ、これは詐欺じゃありませんか。こういうようなことをやるとするならば、原子力のあの分析化学研究所のように、またおかしいデータを出しながらこれをやっているといわれてもしようがないじゃありませんか。この点やはりもう少し愛情ある措置に切りかえるべきじゃないか、こういうように思うわけであります。これは事務当局の苦心の作のようでありますから、事務当局答弁が苦しいでしょう。これはひとつ大臣決意を伺っておきたいのであります。事務当局はそっとしておいてください。もう事務当局いいですよ。
  28. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 四十九年度の、来年度賃金アップは、確かに四十八年度当初に対しまして一九・二%でございます。年度途中で賃金改定を行なった例は過去にございませんで、昨年はいろいろな異常事態の中で特例の措置をとったわけでございますが、昨年十月の五%の引き上げは、実は四十九年度賃金アップの先取りという形でございまして、この一九・二%が先生の御指摘のように、あるいは低いというおしかりを受けるかもわかりませんけれども、私どもといたしましては精一ぱい努力をしてまいったつもりでございまして、実は先ほど大臣からお話がありましたように、失対就労者の中から大臣のお手元にも数百通の礼状が参っておりますし、私の手元にも年末からことしにかけまして約四、五百通ぐらい、賃金アップに対するお礼を兼ねて、今後もっとやってくれという御希望の手紙もいただいておる次第でございまして、私どもはその御要望にこたえるように今後とも努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  29. 島本虎三

    島本委員 今後とも努力するということで、では次の点の努力はいかがでしょうか。  それは、四十九年度の経済見通しを修正するということで、卸売り物価が一四%上がった昭和四十九年一月二十日、この段階で消費者物価が、全国指数が、四十五年度を一〇〇にして、四十六、七を飛ばして四十八年は一二八・六になっております。四十九年は一四〇・九になっております。まさに平均して九・六ずつ上がっておる、こういうようなことになるわけであります。本年の一月にもうすでに一四〇・九になっておるわけでありますから、これは異常なる物価の値上がりであります。  これに対して二月に、これは東京に例をとってみますと、前月よりも三%もうすでにこえているのです。三月では五%をこえる見込みだというのです。少ない賃金をもらって、物価のほうがこれほど高騰してしまう。新年度予算を施行する前にもう五%上がってしまう。賃金のほうは昨年上がった一三・二%の段階でこれがもう実施される。五%上がったこれを入れないで、当初の一三・二%の段階の一九・二%ということになるから、実質は一四・二%にすぎない、こういうようなことになりますと、やはり恵まれない階層というか、この方面の人たちほんとうに困ることになるわけであります。したがって、もう一度この点を考えて、そして政府として各省庁にも関係しておる点があると思います。厚生省にも、それから総理府にも、それから労働省にも、もちろん所管しておる事項それぞれございましょう。もう一回この点を話し合って、十分この社会的弱者救済のために、ひとつ大臣、想を新たにして立ち上がっていただけませんか。いまの状態はこういう状態なんです。あなたがたのほんとうにあたたかい愛情を待っている日雇い労務者人たちも、実際は一九・二%といいながらもそこまでなっていないような状態の給与を受けるわけです。その前にもうすでに三月で五%もこえておるような状態になってしまっておる。また物価の高騰の中でほんとうにほんろうされている姿じゃありませんか。これはもう一度考えて変更の必要があるのじゃないか、こう思いますが、大臣この見通しをひとつ——これは大臣のほうがいいのですがね。
  30. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 島本先生指摘の消費者物価が上昇しておる、それに対してのお話でございますが、御承知のように失対賃金につきましては、直接物価とリンクするというようなシステムになっておりませんで、毎年、前年の八月の屋外職賃の結果に基づきまして、類似の作業内容を持った労働者賃金を参考にしながら賃金審議会で御決定いただく、こういうたてまえになっております。したがいまして、昨年の十月の特例措置による引き上げにつきましても、特例中の特例でございます。今回の一九・二%の引き上げにつきましても、そういったデータから推算いたしまして決定をいたしたわけでございます。この一九・二%の引上げにつきまして、御承知のように全国各県、各市町村、各事業主体賃金決定につきましては、従来から地域格差をなくするような方向努力をしてまいっております。賃金の分布につきましても、今後も先生の御指摘のような方向で十分努力をしてまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  31. 島本虎三

    島本委員 大臣、三月の一日に春闘共闘委員会で厚生省の局長交渉がございました。その際に総評の立花常幹、この人は厚生省の高木社会局長といろいろ折衝しております。その際に、結果を私聞きましたところが、四十九年度二〇%アップ生活保護世帯を大体見ておったけれども、新年度早々これは手直しをしなければなりません、このことを言明されておるわけであります。そうなりますと、やはり賃金アップの点では、一三・二%、その間に物価がぐんぐん上がって、実際はもうすでに、新年度になって一九・二%上がった、こう思うころにはすでに物価の中にはんろうされてしまって何にもならない賃金になってしまうのが日雇い労務者の実態なんであります。おそらくは恵まれない階層であり、生活被保護者階層と同じような状態ですから、厚生省はこういうような手段をとりたい。では、もう老齢者で国の世話にならなくても自分で働きますという、いわば見上げたといってもいいと言うのです、こういうような日雇い労務者に対してはもっとこの点をきちっとしてやって、将来これは考えてやる、こういうようなことを言明してもいいのではないかと思うのです。厚生省が言明して労働省が言明を渋る何の理由もございませんから、この点等再考慮を私は促しておきたい、こう思うのでありますが、この点ひとつ御高見を拝聴させていただきます。
  32. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 厚生省との話がどういうふうであるか、私ここで初めてお伺いしたのですが、従来ともに、十月に五%上げたり、年末に三日分あるいはまたこの三月に三日分というふうなことを考えてきた私たちといたしますれば、今後の物価の推移というものを見守りながら、よその諸君がやるぐらいのことは私のほうではしっかりやりたい、こう思っております。何にいたしましても、国会で御審議いただきますように、いま一番大事なことは物価抑制でございまして、そして入った金が値打ちの下がらないようにすることがお互いの一番大事な点です。しかも、なおかつそれでも追いつかないところには、私たち将来の推移を見ながら善処してまいりたいという考えを持っております。
  33. 島本虎三

    島本委員 では、次に移らせてもらいますけれども、これは千五百円を上げてもらいたいと要求しても、現在もらっているのがやはり一日千五百円程度ですね。そうなりますと、やはり三千円ぐらいにしかなっていないのが非常勤特別職地方公務員たる日雇い労働者の現状なんであります。これはあまりにも低過ぎるのじゃないかということは各資料によっても明らかなんです。私の手元にあるのは古いですけれども、もう少し現行のものをほしいのですけれども、手に入ったのはちょっと古い資料です。東京では四十八年十月の調べで日雇い労務者が一人千六百十八円なんでございます。ところが同じ四十八年五月の建設物価調査会の調査によりますと、普通作業員は三千六百二十円、軽作業員が二千六百四十円。同じ経済調査会の調査によりますと、四十八年四月分で土工が普通三千六百四十円、軽作業員は土工で二千四百六十円、こういうふうになっているのであります。ところが失対労務者の場合には千六百十八円というのが、東京の現状なんであります。では東京だけかと思いまして札幌のほうを見ますと、札幌は失対事業賃金は、四十八年十月ですが、標準千六百三円です。そうすると建設物価調査会によるところの四十八年五月、これには普通作業員は三千二百円、軽作業員は二千六十円、経済調査会の調査によると、四十八年四月分で土工の普通の人は三千三百三十円、軽作業員でさえも二千百七十円、ところが札幌の日雇い労務者は千六百三円なんであります。では南のほうはどうかというと、福岡の四十八年十月の失対賃金が千五百二十二円、その際の建設物価調査会の四十八年五月の調査によりますと、福岡では普通作業員は二千八百五十円です。軽作業員は千八百九十円です。経済調査会の調査によると、四十八年四月分は土工が普通で二千七百七十円です。軽作業員で千七百五十円です。ところが日雇い労務者は千五百二十二円であります。ぐっと下がります。大阪では千六百十八円です。建設物価調査会四十八年五月では、大阪では普通作業員が三千五百六十円、軽作業員が二千四百十円。経済調査会の調査によると、四十八年の四月分の土工が三千五百八十円、そして軽作業員が二千百四十円、にもかかわらず大阪の日雇い労務者は千六百十八円。東京、札幌、福岡、大阪、こういうふうにして、たいがい普通の労働者の半分あるいは半分以下になっているのです。大臣、これでは生活できないのは当然じゃありませんか。私この調査を見た際に、もっとこれは考えてやるべきじゃないのか、これをつくづく思ったのであります。あまりにも低過ぎる。おそらく画竜点睛を欠くというのはこの点じゃありませんか。あたたかい気持ちを持って労働者に接しておると聞いております長谷川労働大臣、どうぞこの際ですから、こういうような状態にあることを、いままでは制度がないんだからということであまり顧みていなかった、この際いろいろ政府も考え手当てをしていることですから、この賃金を一般並みに上げてやるためにもう一ふんばり必要じゃないか、こう思うのであります。この点は現在じゃなく四十八年の四月の調査でありますから、現在はもっと差ができているはずです。この点ひとつ大臣見解を伺わしてください。
  34. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 その数字はあとでまた私も見せていただきますけれども、やはり地方地方で、いま申された賃金というのは労使の間の話し合いあるいは契約、それでできているものだ、こういうふうに思います。そういうことからしますと、私のほうは国が金を出したり町村が金を出したりというふうなかっこうでありますので、一律にそこまで持っていくというのはなかなかたいへんなことじゃなかろうか。作業の内容が違うこともありますし、そういう諸般の事情などを見ながら、やはり私たちの政策とすれば、物価などを見ながら、制度を活用しながらこういう高年齢者でなおかつ失対就労者という形の方々にお手当てを申し上げていくという姿を、いまからでもあたたかい目で、それこそおっしゃるとおりすぐほかの業種そのものには追いつきませんけれども、そういうところもよく注意をしながら見てみたい、こう思っております。
  35. 島本虎三

    島本委員 その一つの道程として、やはり新しい三月の措置ということで三日分やっているようですが、労働者のほうでは〇・五カ月分といっているようです。〇・五カ月といってもはたして間に合うかどうか。私の積算では間に合いません。生活できません。いまもう少し詳しく、大臣、聞いてもらいたいことがあるのです。と申しますのは、大臣も知っておられると思うのですけれども、失対労務者、この中に、いま緊急就労事業というものがございます。それから開発就労事業というものもございます。特定地域の開発就労事業というものがあります。それと失対事業、こういうようなものがあるのであります。そういうふうにして見ます場合には、これらに従事しておる人々の年齢は若干違うかもしれませんが、しかしながら一人、三千五百円、五千円、三千五百円、失対事業千五百円、がくっと下がるのであります。いかにこれは目的が違い、制度が違うといいながらも、同じ職業安定局で見ている、この中でも、これほどの違いがあるわけであります。仕事もやや同じ、年齢は違う、若い人がいることは認めます。しかし失対事業、この場合は、特に低いじゃありませんか。さらに千五百円上げて三千円にしても、まだ他のほうの普通並みということになるのです。そうなると、失対だけは極端に低いということになるのです。この点、大臣、同じ安定局で扱っている事業なんでありますけれども、こうまで違えている。内部操作によって近づけていいものもあるのじゃないか、こう思うのでありますが、失対だけ特別低くしておくということは、世の日の当たらない谷間にある弱者、これに対していま救済の声がほうはいとして燎原の火のようにあがっておるのですが、依然として失対労務者だけは、非常勤特別職地方公務員だ、こう言いながらもしいたげられている。その自己矛盾が、労働省内部にもこういうふうにしてあらわれてきている。こういうような点でも、もう少し近づけてやるように配慮してやるべきではないだろうか、こう思うわけなんです。これは下のほうを上げればいいのでありますから、もうこの点、大臣、十分今後考えていただけませんか、考えるべきじゃありませんか。この点もひとつ伺わしてもらいたいと思います。
  36. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生指摘の産炭地開発就労事業、緊急就労対策事業、特定地域開発就労事業、この三つの事業労働省で実施いたしておりますが、ただいま先生指摘になりました単価は、実は産炭地開発就労事業につきましては、一日当たりの単価七千円、他の二つの事業につきまして四千六百円というのが四十九年度事業費単価でございますが、これはあくまで事業費単価でございまして、失対賃金の、ただいま御指摘の千五百十四円、これは四十八年度でございますが、これと対比いたすわけにはまいりませんで、その七千円なり四千六百円で資材費なり、いろいろな事業実施に必要な経費を全部まかなうということでございまして、この三事業は、その事業費単価の中で民間ベースで実施されますので、その範囲内で、労使の間で賃金が決定されるということになるわけであります。したがいまして、先ほど北海道なり福岡なりでお話が出ました各機関で調査されました賃金が、そういった事業費単価の中から支弁されているわけでございます。そういう意味におきまして、この失対就労者賃金とは賃金決定の原理、原則から全く違っております。と同時に、一般民間公共事業——この三つの事業は一般公共事業に準じております。内容は全く同じでございますが、その際の賃金決定と失対就労者賃金が決定されます場合の内容は、先ほど大臣からも御指摘ございましたように、作業の種目、作業内容、能率、その他のあらゆる点で異なっておりまして、一般の建設関係の作業に従事します類似の賃金の中から、失対就労者の作業内容に応じたものを引き当てまして賃金が決定される、こういうことでございますので、おのずからこの三事業と失対事業とは全くその点で異なっておりまして、単に事業費単価と失対賃金を比較するわけにはまいりませんので、その点は御了解いただきたいと思います。  と同時に、失対賃金につきましては、先ほど来先生の御指摘のような、いろいろな事情もございますので、私どもも来年度以降も最大の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  37. 島本虎三

    島本委員 いま局長が御答弁になりましたが、それは十分了解している。知っている。直営でやっている、こういうような事業に対しては、人力が中心であるから、これはやはり安くてもいいのだ、こういうような考えじゃないかと思うのです。やはりおっしゃるように、一般失業対策事業費の場合には、事業費単価は二千百五円八十二銭でございましょう、四十九年度予算で。しかし、これが特別地域の開発就労事業になりますと四千六百円、二倍になっておる。産炭地緊急就労事業費、これで見ますと、事業費単価は四千六百円、これもやはり二倍。産炭地域の開就事業費、これは事業費単価は七千円、三倍になっておる。やはりこれは少なくとももっと考えてやってもいい余地が十分あるということであります。これは労力費千七百二十八円、これは三千円ぐらいに見ても、これで高過ぎるというところまで行っていません。資材費は九十六円でしょう。これを倍にしたって幾らですか。ほんの百何十円です。同時に、現在の失対に働いている皆さんは、これはやらせればできるのです。また大いにやらして、そして残った人たちのめんどうは十分国のほうとしても考えてみたい、これが三年前の言明でございますから、やはり現在のそのままでよろしいということにはなっておらないし、同時にこれはもう改正してやるべきだし、この点も、十分今後考えていかなければ、一つ社会的問題になるのじゃないかとさえ思うのです。社会問題なんです。これは私は、この問題に対しては、変にうそやはったりを言っているのではないのです。  こういうような状態で、失対労務者はどういう生活をしておるのですか。はっきりした調査資料がございます。副食は普通の人の三分の一くらい。食べているのは、ほとんど米ばかり食べている。失対の場合は、七〇%が主食は米、一般の人は約三五%くらいだというのに七〇%、そしてエンゲル係数から見ても、カロリーの摂取が少ない。一時間満員電車に乗ると、千七百カロリー必要だ。それほどしかとっておらない。どういうふうにして生活しているのか。これさえわれわれ考えられるほどなんです。労働省としてもこの点十分、働いている人の、その生活なりカロリーなりも十分考えてやってもいいのじゃないか、こう思うのです。労働省として、この辺まで十分考えたことがございましょうか。これは事務当局でいいのです。たまにはうしろの方からひとつ答えてみてください。
  38. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 お尋ねの現実の日雇い労働者皆さん生活実態につきましては、私どもしばしばいろいろとお話し合いを持っておりますし、先般も社会保障研究会のどういう食生活をやっておるかというような資料も、わざわざ組合の幹部の方が届けてくれましたので、私ども十分拝見し、勉強いたしております。  ただ、法律のたてまえといたしまして、失対労務者に支払われる賃金につきましては、あくまで賃金という形になっております。もちろん、先生指摘のとおり、実態の物価なり生計の内容というものが非常に響いてくることは承知をいたしておりますが、たてまえが賃金でございますので、私どもといたしましては、法律のたてまえにのっとりまして、賃金審議会の意見を伺いまして、労働大臣賃金をおきめいただいておる、このような実態でございます。
  39. 島本虎三

    島本委員 賃金であるから、その賃金によって生活を維持しなければならないのだ。これが原則なんです。鉄則なんです。それによって家族の生活も同様に維持しなければならない。ところが失対の現在の賃金、いま手元にあるでしょう、この調査資料、これによって見ますと、四十八年九月で、カロリーの摂取に必要な食糧費は、国民栄養調査によると、一カロリー当たり二十五銭九厘、今回の保護世帯の実態調査によると、単身世帯で十九銭、母子世帯で二十二銭二厘——二厘なんというのは現在ありませんわ。そういうようなことになるわけであります。したがってこれだけでカロリーをとって一体どれほど活躍できるのか、行動できるのか、これが問題なんです。失対賃金生活する日雇い労働者、同じ時点で、この低い生活様式をそのまま維持して働くだけである。この保護基準と同様に、大幅な収入の増加がなければ、もうこれはカロリーの維持さえできないのだ、普通の人の半分以下なんです。そうなりますと月三万五千円程度の、家族収入その他を合わせても四万円程度、これではたして肉体を維持できましょうか。やはりこれは社会脱落の一歩手前だ、こういうようなことになるわけです。賃金とそれから生活賃金生活しなければならないわけですから、その辺も十分考えてやらなければならない、こういうようなことになるじゃありませんか。したがって、いま働くだけでどれほど必要なのか、六万八千二十一円必要だ、そうするとちょうどこれの半分が現在の失対労務者賃金になっておるわけです。あまりに低い。これでは盗みをするか他に何かするのでないと自分の身体の維持さえもできない、こういうような生活を押しつけて、そしてこれで、三年前に中高年齢者雇用促進法が通ったあとの、現存する失対就労者に対しては十分手当てをしてやれますという、この言明に沿うことにならないじゃありませんか。当時の労働大臣野原委員長、現在の労働大臣長谷川労働大臣、私の最も尊敬する大臣です。こういうようにして数字が出てしまった。それだった場合は、賃金の改定をするのでなければ、社会的弱者に追いやるのは労働省だということになってしまう。したがってこれはもう改定の必要がいますぐあるのじゃないか、こういうように私は思うわけであります。もし手元へ行っておるとするならば、いかに現在の失対労務者生活が残酷であるか、みじめであるか、これで労働できるのか、こういうようなことになるでしょう。十分この点を考えて、ひとつ改定に努力してもらいたい。そうしなければ社会問題になる、このことであります。私の血の叫びでありますけれども大臣、この点どういうようにお考えでしょう。
  40. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま先生から御指摘のありましたデータ、確かにそういうデータを私ども承知いたしております。私ども毎年失対就労者生活実態調査をいたしておりますが、その失対就労者の各世帯についての実態調査の結果によりますと、確かに各月の失対就労によります賃金収入は三万七、八千円か四万円弱かと思いますが、年間の全体のものを月にならしますと、失対就労者の平均世帯人員が約二人、二・一何がしになります。大体二人にいたしますと、二人世帯の失対就労者の平均収入は、私ども調査の結果によりますと全国平均で六万九百七円、こういう数字が出ております。六大都市の場合はもう少し高くなりまして六万八千幾ら、これは失対就労者の世帯の就労人員が約一・五人になっておりまして、失対就労によります毎月の賃金収入と、それから夏季、年末の賃金、それと失対以外の世帯員の就労によります収入、これを合計いたしますとこういう数字が出ておりまして、ただいまの生計費の調査は、失対の各月の賃金だけを摘出いたしまして、それによって生活しているかのような計算が行なわれておりますので、その点がちょっと実態とかけ離れておるような感じがいたしております。私どもは、このような生活実態調査を毎年実施いたしますことによりまして、その実情も十分考えながら、今後とも失対就労者方々賃金の問題なり、諸般の問題について十分考慮してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  41. 島本虎三

    島本委員 では、手当がある、その手当を入れても、失対で、夫婦世帯で月に七万四千円が必要だ、こういうようなデータが出ているでしょう。手当を入れて、そこまで参りますか、到達しますか。しないとすると、やはり最低生活をしいているということになってしまうのです。手当を入れない、賃金だけだ、いま局長はそうおっしゃいます。しかし手当を入れたならば七万四千円になりますか。データでは、七万四千円は少なくとも失対の家族、世帯二人では必要なんだ、こういうようなことでしょう。そうでなければ生命を維持するだけの十分のカロリーの維持ができないのだということでしょう。賃金だけでやるからそうなるので、手当を入れたならばそうでないとするならば、手当を入れて月七万四千円になりましょうか。ならなければ依然として私の言ったのが正しいからこれは是正すべきだ、こういうようなことになるのであります。こういうようなことは論争の種じゃない、もうはっきりわかっているのだから。あなたも少ないと言えないだけでしょう。七万四千円にならないでしょう。
  42. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 二人世帯で生活するに十分な金が幾らか、これはいろいろ御意見もおありだと思います。私どもも失対就労の世帯収入が、これで生活するに十分であるかどうか、こういう点について申し上げているわけではございませんので、実態調査の結果を申し上げたわけでございます。私ども三年前に法案を御審議いただきます際に、今後失対に就労していただく方々のいろいろな御意見、御要望も十分勘案しながら今後の失対の運営をしてまいりたいということを申し上げたわけでございますが、私どもは不十分ながらその方向に向かって最善の努力をしてまいっておるわけでございますし、今後とも賃金その他についてもそういう趣旨努力してまいりたい、かように考えております。
  43. 島本虎三

    島本委員 聞いているだけではいい文句なんですよ。その言ったこと、議事録に載っているその文句だけでは、だれからも指摘されません。努力という文字もある、一生懸命という文字もあるけれども、ただその実態は一体どうなんだということになりますと、全然それはいままで実も葉もなかったということなんです。したがって今後は画期的措置が必要だ、このことを言うのですよ、大臣。こういうような実態ですから、あまりにも物価の急騰、狂乱物価でしょう、この中でほんろうされているのが低所得者層、そのうちの一つ階層として日雇い労務者があるということなんです。カロリーさえも十分でないというデータが出ている。このことであまり長く言わぬでもおわかりでしょうから、これは閣議のほうに持ってまいりまして、十分今後この賃金の改定——これあたりは恵まれない最低階層ですから、十分誠意を持って当たってほしいと思うのであります。あまりこれだけに時間をとれません。食費が四八%を占めているというようなデータが出ておるのでしょう。これだったら、生活さえができないのが実態であるデータですから、このデータを基礎にして十分賃金考えてやってほしい。これは他の事務当局のは要りません、大臣決意だけ伺います。
  44. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 非常に熱意あふれるだんだんのお話、胸を打たれる思いでございます。いままでの制度の中に労働省も最善を尽くしたつもりでございますけれども、まだ先生から見て足りないというお気持ちもわかります。いまから先の問題については、先ほどから私も申し上げたとおり、諸般の事情を考慮しながら、熱心にひとつ研究もし、ときにはそれを推進してまいりたい、こう思っております。
  45. 島本虎三

    島本委員 もう時間にもなってまいりました。この問題だけで最後まで時間をかけたいと思いません。したがって、現在の物価の高騰の現状はまさに狂乱です。おそらくサトイモが一六一%、ちり紙が一二三%で、くぎが三五八%になっている。どうも幾らになっているのかわからぬほどであります。この物価こそまさに狂乱。そして一番苦しめられているのが低所得者層。その中で失対賃金は一日わずかに千五百十四円、月、三万三千円。同じ公務員であっても、片や国家公務員、片や非常勤特別職地方公務員、これが現在の失対労務者、それが三分の一足らずの賃金しかもらっておらない、 こういうようなことであります。私は、そういうようなことからして、今後十分考えなければなりませんし、あわせて生活保護世帯自身でもこの改定が必要になっています。それと同時に、老齢福祉年金、これとて改定しなければなりません。こういうような点からして、十分今後の善処方を私として要請しておきたいのであります。ことに、四十九年度予算案の中では消費者物価上昇よりも低い生活保護費、これは二〇%でしたね。それから失対賃金一九・二%、実質は一四・二%です。こういうようにしてやってみると、まさに狂乱怒濤の中に哀れをとどめておるのは低い階層。そのうちの一角に日雇い労務者がいる。それが皆さんの力によって今後十分手当てをいたしますと、三年前の約束がある日雇い労務者であります。今後格段の努力をこの際切望しておきます。  それとあわせて、年度手当〇・五カ月分を請求しているようであります。失対賃金千五百円の引き上げも要求しておるようであります。ただし、これとても焼け石に水でしょう。その程度だと思います。私は、それに画竜点睛を欠くことのないようにするためには、また再び初めに戻って、全国一律の最低賃金制をしいておいて、こういう日の当たらないような階層がないようにしてやることが先決なんだ、このことだけを最後に申し上げて、大臣のこれに対する御高見を拝聴しておきたい、こういうように思うわけであります。
  46. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いままでもずうっと前々の法律改正のときから御関係いただいた先生でありますし、また現在の狂乱物価というものはお互いが一生懸命手当てしなければいかぬということで国会の審議が行なわれ、ときにはそれが功を奏しているようなときであります。私は、やはり低所得者の皆さん方の問題が一番大事なことである、こう思いまして、先日以来厚生大臣はじめ関係の閣僚の方々——百三十億でございますか、六百八十五万人という対象にああいう数字が出たわけでありますが、それでも足りないとおっしゃる方々もございますし、また、一つ一つについてはいろいろ研究し、精査しなければならぬ問題もございます。いずれにいたしましても、いまから先の日本はどうしても福祉国家にやらなければならぬというのは政治の皆さん共通の命題でございますので、当然、所管の問題についてはないがしろにしないで、前向きでいろんな問題を研究しながら、いろいろの素材を集めてまいりたい、こう思っておりますことを御運解いただきたいと思います。
  47. 島本虎三

    島本委員 では、これで私は終わらせてもらいます。  振り出しに戻りまして、初め言ったように、いま政府が考えておる三日増、これは具体的に大臣考えている、まるまるもらえるような配慮をするということを信用していましたが、実際にはもらえない階層があったということ、それから一日は失業保険だった階層もあったということ、中にはまるまるもらった人もあったということ、職安の窓口を通じてそれぞれ違う扱いがあるようでありますから、この点は十分今後考えて、こんなことのないようにひとつ十分行政指導してもらいたい。そのこととあわせて、手当その他についての制度化等についても十分今後検討しておいてもらいたい。それからエンゲル係数が四五%程度というような低い生活しかしていないような恵まれない階層でありますから、その点の賃金改定も十分今後考えておいてもらいたい。この三点だけは強力に要請しておきたい、こう私は思うのであります。  要請を申し上げますが、ことに野原委員長、三年前にあなたの言明は議事録になってはっきり残っておるわけであります。これは現大臣と現委員長の当時の野原大臣の二人とも責任がありますので、いままでの質問に十分こたえるように、代表して労働大臣のこれに対する決意を聞いて、私は締めくくらしてもらいたい、こう思うわけです。
  48. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この場において、年末に三日間の就労の日数をお願いし、そして働いてぜひ収入の一部にしてもらいたいと申し上げたことが、下部にまいって働けなかった人があったり、あるいはとれなかった人があったということは、私はいま初めて聞いたわけでありまして、国会の場所において皆さん方から、ときに足りないと言われながらも、働いていただく三日間のものをこの三月までお願いする、そういうものが下のほうにいって理解されないままに——せっかく働けば一日、二日、三日もらえる。未組織労働者方々からしますと、年度末でさえも一体自分たちはどうなるかという話さえあったときに、皆さん方お互いの気持ちで三日間出した、それが収入に入ってなかったということを見ますと、非常に残念でございますので、きょうの先生の御発言を一つの基礎にいたしまして、いまから三月末までの三日間の問題については、関係機関に対してぜひとも徹底して、働いて収入になってもらうようにやってみたい、こう思っております。  あとの二つの問題は、前段にもお答えいたしましたが、気持ちとしては御理解いただいていると思って、御理解いただきたいと思います。
  49. 島本虎三

    島本委員 終わります。
  50. 野原正勝

    野原委員長 枝村要作君。
  51. 枝村要作

    ○枝村委員 私は、春闘の問題について労働大臣に若干お伺いしていきたいと思います。  春闘の第一波の三・一統一ストライキがあのような結果に終わりました。一言でいうならば、きわめて秩序整然として何の不祥事故も起こらずに終わったということでありまして、春闘に結集する労働者だけではありません、これに期待する多くの国民の皆さん方も一様に強い確信をこれによって持ったと思うのでありまして、今後いろいろ予想される行動に対する、いわゆる国民生活を防衛するという春闘の目的達成のために、この第一波はいうならば成功したと言えるのじゃないかというように私は思っておるのであります。  そこで、労働大臣はこの春闘に対して、春闘共闘委員会と政府の間の交渉を取り持つ、いわゆる政府の窓口としての役割を持っていらっしゃいます。諸要求についていろいろ問題解決に直接接触されるわけでありますけれども、この春闘は言うまでもなく、きわめて悪性なインフレ下、異常な物価高、社会不安の中に行なわれる戦いでありますだけに、大臣のその苦労もたいへん察するに余りあるものがあるのでありますが、ひとつ一そうの御努力を払われるように冒頭強くお願いしておきたいと思います。しかし、その努力もひとつ常に前向きな姿で臨んでもらいたいと思うのです。労働者側に対して誠意をもって示してもらいたいと思うのです。単なる政府の代弁者として機械的であったり、形式的であってはならないと思います。そういう意味で、大臣の心がまえというものをひとつはっきりとここで表明していただきたいと思います。
  52. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、予算委員会などにおきましても、このたびの春闘は第二の国難でございますと申し上げておきました。それはたいへんなことだと思っております。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕  先日のストが平穏裏に行なわれて御成功だというお話もございますけれども、私は義理や何やらで労働組合の幹部の方々と実はお目にかかっているのじゃありませんで、何とか春闘が、おっしゃるように、社会不安、そして日本じゅうががたがたするような、何か民主主義の基盤そのものがこわれるようなことのないようにということで、皆さま方のお話し合いにも実は参加もしておりますし、そして一方においては、やはり違法ストとか政治ストとかいうふうなものはおやめいただきながら、そういう社会不安なりをぜひひとつ排除していただきたい、こういうことを実は申し上げてきたものでございます。ほんとうに大事なときだ、しかも御承知のように、こういうふうな総需要抑制、物価高騰のときでございますから、労使の間において国民的視野に立ちながら、円満にひとつ話のできることが民主主義日本のちょうど大事なときじゃなかろうかということを申し上げておりまして、義理だとか、ただ労働省に私がおるからという形じゃありませんで、皆さんと同じように、深憂する一人の政治家のつもりでいままでもいろいろ御交渉し、あるいは御懇談申し上げてきたわけでありまして、私は、ストライキが始まる前の日も、自分でいろんな駅々を歩きました。あるいはまた始まった日も、前の晩は、春闘共闘委員会方々にもさらに、三月一日のストライキだけはどうしても違法ストであるし、政治ストと新聞もみんな書いておる、こういうことでありますから、ぜひひとつ御中止を願いたいと申し上げたことでございますけれども、時間どおり始まった。  一時半に役所から帰りまして、次の朝七時、さっそく私は新宿の現場等々を歩きながら、今度は社会的にごたごたがあって、いろいろなことがあったんじゃかなわぬというつもりで実は見て回ったわけでありまして、そういう意味においては、ごたごたがなかったということは私は評価するものであります。いずれにいたしましても、この第二の国難というものはいまから先も続くことでございますから、ぜひ私はそういうことによって、ときにはまた物価高騰もあるだろうし、あるいはまた社会不安などというものが起きたならばたいへんだ。あらためて国民的連帯感の中においてひとつ労使がお話しをいただきながら、ほんとうに平和なうちにやっていただきたいということを心から念願しておるものでありまして、そういう意味で、また御注意なり御教示がありましたならば、聞くにやぶさかではない、こういう態度をとっているものであります。
  53. 枝村要作

    ○枝村委員 三・一スト以前における政府と春闘共闘会議との間の会談については、これはきわめて重要でありますから後刻触れるといたしまして、ただ、いま大臣のことばの中で、その会談の政府側の主張点が、主として、違法ストであるからやめるということに終始しておったとするならば、これはあなたが後段で希望される円満に事態解決ということにはならぬという客観的な情勢があるのですから、これはちょっとそういう心がまえではまとまるものもまとまらぬということになってくるのではないかと思います。しかし、それはあとからもう少し詳しくあなたとの間で対話をかわしていきたいと思いますが、とにかく私どもの経験からすると、たとえ政府対春闘共闘、あるいは労使の関係であっても、人間対人間というヒューマニズムの関係が忘れられては、これはたいへんなことになるという経験を持っております。いかなる難問であっても、何かのきっかけがあれば、それを解決することができるし、もしそれが何かのきっかけでおかしな方向に発展すると、たいへんな事態になる場合も今日間々あったわけでありますから、そういう意味で、これはあなたは国難とおっしゃいますけれども、事が大きいだけに、政府側は慎重に、いまからのことでありますから、事をかまえて当たられるように、私は心からお願い申し上げたいと思います。  そこで、三・一ストによってどれぐらいの影響があったかという点を、ひとつ報告してください。
  54. 道正邦彦

    ○道正政府委員 今回のストライキは、国鉄、郵政、電電等の公労協傘下の労組が中心になりまして、そのほか、都労連、炭労、全国金属等の一部民間労組が参加する形で行なわれたものでございます。  まず、国鉄関係におきましては、首都圏の国電、新幹線が全面運休したのをはじめ、東北、東海道、山陽等、表日本の主要幹線も、一部列車を除きましてほとんどストップいたしました。その結果、関係路線におきまして、旅客関係で約七〇%、本数にいたしまして一万一千六百八十二本が運休いたしました。また、その結果、千三百万人の乗客に影響を与えております。さらに、貨物関係では四千八百六十九本が運休したのでございます。  また、郵政関係では、全国百二十五の拠点局所におきまして一日ストが実施され、拠点局地域におきましては、郵便物が一日おくれるという影響が生じております。  また、電電関係におきましては、番号案内等で影響が出ております。  そのほか、林野関係では、全山、全職場で半日ストが実施されたわけでございます。  そのほか、専売、印刷、造幣、アル専等で、一部の工場で部門ストあるいは時限ストが行なわれました。  また、都労連におきましては二時間ストが行なわれたわけでございまして、東京交通労組は始発から八時までのストを実施いたしました。その結果、都電、都バス等を通じまして約二十一万五千人の乗客に影響が出た次第でございます。
  55. 枝村要作

    ○枝村委員 国労、動労が生鮮食料品の貨物輸送はストから除外するということをいっておりましたが、これらはどういうふうになっておるかという点について質問したいと思います。どのような影響があったか、なかったか、こういう点、おわかりになれば報告していただきたいと思います。
  56. 道正邦彦

    ○道正政府委員 具体的な影響、つまり、何本ぐらい走って何本ぐらいとまったかということにつきましてはつまびらかにいたしておりませんが、当局におきまして強く組合にて働きかけ、また組合側におきましてもこれにこたえまして、受験列車あるいは生鮮食料品を運ぶ貨物列車につきまして特別の取り扱いをされたことは事実でございます。
  57. 枝村要作

    ○枝村委員 そうすると、生鮮食料品については、市場などの状況を見て、あるいは大都市のそういうものの出回る状況を見て、ストライキのために別に大きな影響、支障があったとは認められないということか、それともそうでないということか。それから受験生の便宜をはかるために七十何本かの夜行列車を動かしたということになっておりますが、受験生が試験が受けられなかったということで、何か騒動でも、事故でも起きたということがあったのかなかったのか。その点を明らかにしてください。
  58. 道正邦彦

    ○道正政府委員 まず受験生に対する影響から申し上げますと、文部省を通じまして私ども承知いたしております限りにおきましては、例年に比べまして遅刻者であるとかあるいは欠席者の数が若干多かったということのようでございますが、その後特に大きなトラブルが起きたということはいまだ承知いたしておりません。  それから生鮮食料品につきましては、全部が運休したわけではないわけでございますが、それなりの影響は出ているものと思われます。
  59. 枝村要作

    ○枝村委員 そこで労働大臣にお尋ねいたしますが、先ほどもちょっとお答えになられましたように、三月一日、新聞によるとあなたは散歩がてらに新宿駅を視察したと書いてあるのですけれども、私はそうじゃないと思う、真剣に視察されたと思うのです。そうすると、あなたはあなたの目で確かにその当時の状況というものを確かめられたのでありますから、その感想を率直にひとつ述べていただきたいと思います。
  60. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 その前に、先ほど枝村さんが、こういう大きなときには人間関係が必要だ、こういうお話がありましたが、私は、実を言いますと総理が、皆さん承知のように施政方針演説の中においても、春の賃金改定のときに労使の円満な解決を主張されている演説も拝聴しましたし、さらにはまた労組の幹部の方々と総理大臣が、これは春闘の問題とか全然切り離してお目にかかる、そういうふうに拝承しておって、去る二月の二十一日に御承知のとおり総理官邸の懇談会で、労働四団体方々と総理はじめわれわれ閣僚が全部御懇談申し上げ、そしていろいろ話をし、さらにはまたそのあと関係閣僚が一人ずつ、ときには労働四団体の方、あるいはまた各それぞれの御希望の組合方々にお目にかかったようなことでして、ずっとそういうふうな積み上げといいますかリレーションというものは、どういう形においてでも私は続けていきたいという気持ちを持ってやっておりましたことを御理解いただきたいと思います。そうした中から、国会でも御審議がありましたが、御主張もありましたが、社会保障の問題、底辺の問題等々は非常に皆さんも御力説があり、また政府のほうも皆さん方の御主張、あるいはまたそういう団体方々にお会いしたときのお話等々も含めまして、先日底辺の方々に百三十億という金を出したというふうな形になっておるわけであります。そういう御報告を私が申し上げる中に、実は三月一日の問題についてもぜひひとつ御配慮をお願いしたいということを申し上げたことでございます。  いずれにいたしましても、私は労働省というだけでなくして、こういうときにやはり話し合いをし、パイプを通じていくということが労使ともども、政府、組合の問にも大事なことではなかろうか、こうつとめておりますことをまず御理解いただきたいと思います。  それから三月一日に、散歩がてらという方もございますけれども、前の晩は一時半に役所に帰りまして、普通ならみんな眠いわけでございますけれども、私は七時に家を出まして新宿駅に行ったわけであります。何さま前々から計画されたことでもあり、しかも私の母校早稲田大学が心配でございましたから、七時二十分に早稲田大学の先生に電話をしたら、もうすでに七時半までに大学に行くということで家を出たということでございました。そういうふうに受験生が心の中に受ける影響というものは、だれかかれかとにかく試験を受ければ入ることは入ると思うのですけれども、非常に感じやすい諸君が非常なショックじゃなかろうかという、これは私自身気持ちでございますから、大学に連絡をしたり、駅ではずっと三、四十分歩いてみました。あのときは私鉄が動いておりましたから、私鉄のほうからあふれるように来る諸君が、国電が全部休みでございますから、八時から解除になるところの都営バスに乗ろうとする諸君、あるいはまた地下鉄に乗ろうとする方々、さらにはまた企業、会社が持ってきたバスに乗ろうとする皆さん方、それをまた混雑しないように誘導しようとする人々の努力。駅に行って駅長さんにお目にかかって話を聞いたり、あるいはまたそれを警戒している警察官の方々が、駅員のかわりにマイクを持って、こちらのほうを静かに通ってくださいという話などを聞きながら、もうここに来たならば、ほんとうにトラブルなしにきょう一日過ごしてもらいたいという気持ちで、東京駅もまた見ようと思いましたけれども、何さまもう自動車とバスが込み出しましたものですから、東京駅には参らずに国会のほうに出てきた次第でありまして、ああいうストライキが行なわれましたけれども、まずまずトラブルがなくて、社会的混乱がなくて済んでよかったということと、早稲田大学から私には、五十名遅刻をいたしました、しかしながらこれはちゃんと受けるようにいたしましたという話などもありましたし、女の大学も、何かそういうふうなことでありましたが、受けられるようにしたということで、ほんとうに一年に一ぺんあるいは二年、三年浪人したような諸君が、いなかの者であればあるほど、土地不案内の東京で、受験の悩みとそういう道不案内の悩みで苦しみながら、とにかく受験場に入ったんだなということで私は評価したようなわけでございます。  散歩がてらと表現をする人もあるでしょうけれども、私とずればまず懸命な自分の気持ちをかきたてながら歩いたという気持ちでございます。
  61. 枝村要作

    ○枝村委員 いまの労働大臣の率直な気持ちから、私は、今日の官公労あるいは三公社五現業に対するスト権の問題に論議をいつかは発展させていかなければならぬと思いますが、きょうはそれはやめます。  ただ率直に言いまして、あなたが、まずまずトラブルが起きなくて、社会混乱がなかったことはよかった、それから受験生も無事に全部受けられてよかった、こういう安堵感、安心感を持ったということは、三・一のいわゆるストライキというものが、いままで政府やその他の人々が考えておったような、いわゆる気違いに刃物、こういう表現をされて非常にけしからぬのでありますけれども、そういう印象、感じというものとは全く異なった、いわゆる労働者本来の権利を秩序整然として行使したきわめて正常な姿をあなたは見てとったというように、率直に印象として受けられたと私は思うわけなんです。あるいは通勤者が意外に整然としておったといまあなたが考えておるようなことの前提には、先ほど言ったことのほかに、昨年の春闘で上尾事件など、いわゆる一部の挑発者によって、いらいらした利用者、民衆をおだてて暴動を起こした、こういう印象がきわめて強くあったわけなんです。それを前提として考えて、このたびはよかったということにも理屈として結びつくわけなんでありますけれども、本来労働者が争議権があれば、この三・一のようにりっぱな、何のトラブルも起きない、秩序整然たる争議行為というものが行なわれるものだという、そういうお考えにはなりませんか。  具体的な理論的な問題については、ILOの問題についてはきょうは省きますけれども、あなた散歩して、視察された感情の中から、ひとつ政治的立場を離れて、長谷川個人として私がいま言ったような印象を受けたのではないかということの質問に対して否定されるか肯定されるか、こういうことなんですけれども、簡単でいいですから答えていただきたいと思います。
  62. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 経過とすれば、トラブルなしに済んだ、これはやはり利用者も、何さま半年くらい前から三月一日のストライキはやるということでございますから、違法ストであるというふうなことはありますが、そういうことが予告されておるものですから、これは利用者の忍耐というものが非常にあったと思うのです。そういう意味からすると、先生がおっしゃるような、上尾事件のようなトラブルが起こらぬで済んだことは幸いであった、私は政治家じゃなくて、一庶民としてもそう思うわけです。それにしても私は、こういう物価高あるいはいらいらする時代であるから、ストライキというものがああいう大げさな形において、いわんや陸海空一緒にやるのだというふうな話などが出ると、これはまたたいへんな社会的な刺激になってくるというふうな感じ方を持っておることも、率直にお話しせよということでございますから、私の感じを申し上げておくわけであります。
  63. 枝村要作

    ○枝村委員 いま後段のやつは、それは春闘共闘委が言っておりますように、この春闘、いわゆる制度要求に対する大きなストライキがこういうように整然と行なわれたのは、国民の理解があったという談話を発表しておりますように、それが正しいと思います。もしそれが国民が反感を持つストライキであったら、通勤者といえども、予告ストといえども、やはり相当な反発が起きたと思うのです。それが起きなかったということは、この春闘そのものが国民の共感を呼んだということになるわけです。しかしそれは別におきまして、いまスト権の問題ですけれども、あなたも予告スト——いわゆる予告ストというのは争議行為権が許されて、そして公共の企業に対してはそういう一つの規制があってやはり予告ストというものがやられるわけなんですけれども、もしそれでなかったらこれはたいへんなことになるという反対の感じ、印象をあなたは過去の例から受けられておると思うのです。たとえば三公社五現業、特に国鉄、交通運輸関係労働組合がいままで世間から非常に悪く言われたり、あなた方の集中的な攻撃を受けたいろいろな行為がありましたけれども、これはいわゆる争議権が剥奪されておりますから、自衛権のために、あるいはときには突発的に、あるいはいろいろ予告なしにやる行為に対して利用者その他にたいへんな迷惑を与えるから、一部の挑発者が扇動したとはいいながら、たいへんな暴動が起きた。その根幹はやはり、ストライキ権がないところにすべての原因があるというようにわれわれは見るわけなんです。ところが去年の上尾暴動事件以後、国鉄当局も実際には今度のストライキには、組合と協力したとはいいませんけれども、いままでのような態度でなく、いわゆる始発から列車をとめるという計画のもとにこのストライキに臨んだということもありまして、そのこと自体はすでにもうストライキ権が正常に与えられたものだと客観的には見てもいいような、やはり相対的な行為になっておるわけなんです。ですから結局あなたが言われる予告スト的な行為であったから、利用者も多くの一般の人たちもこれに対して、もうあきらめということばもありましょうし、当然だという気持ちもありましょうし、あるいはストなれという考え方もありましょうけれども、きわめて秩序整然としてこのストに臨んだということになるとするならば、もはやここで逡巡することなく争議権、ストライキ権を官公労や三公社五現業に与えるべく政府の方針を定めるときにきたのではないか。そのことが今日の法秩序あるいは社会秩序を守る上にたいへん適切な方法であるし措置である、私はこのように考えておるのですけれども長谷川労働大臣は三・一のストライキを直接見てそのようにお考えになったのではなかろうかというように、いい意味で私は解釈しておるのですけれども、いかがでしょうか。まあこれはちょっとはっきりした要求になりますけれども、それは別にして、そういう時期にそろそろきたのではないか、こういうふうに思っておるのですが、いかがでしょうか。
  64. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まず経過、形態、それは先ほど私が申し上げたような形でございますけれども、あの翌日からずっと東京の新聞というのは全部社説で、スムーズにいったこともあるけれども違法ストであるということを書いたのです。これはまずお互いが研究しなければいかぬ。そしていま先生のおっしゃるスト権の問題になりますと、これは社労の委員会においてベテランの先生方からときどき御質問もいただきもし、あるいはまた団体からも問題の提起があり、さらにはまた労働四団体春闘共闘委からもそういう話がございます。そこで具体的な問題になりますと、いますぐ話が出ることじゃないという御前提がありますように、なかなかもってこれはむずかしい問題であることは、公制審の答申が昨年の九月に出て以来というもの、三公社五現業の争議権については、ほんとう皆さん方が御議論いただいているわけでありますけれども、私たち関係各省におきましても、公務員問題連絡会議——これはなかなか開かないという話などもございました。事務次官会議、そういうものを二月の二十五日にまた開きまして、その際に関係各省において——これは御審議いただく一つの材料としてこの際に申し上げておきますが、一、争議権の有無が労使関係及び国民生活に及ぼす影響、二、当事者能力の問題、特に予算等に対する議会の審議権との関係、三、経済原則による争議行為の抑制力の欠如、四、その他経営形態等事業全般のあり方等、これらの四つを含めて検討するということにしておりまして——もちろんお話のあったのはただ私の役所だけでやれる問題でございませんので、関係各省とも連絡しながら、こういうふうなテーマについて煮詰めてまいりたい、これが今日の段階であるということをお伝え申し上げておきます。
  65. 枝村要作

    ○枝村委員 違法スト論でありますけれども、それはいまの社会、いまの現行法の中で、新聞社やその他のマスコミが、これは違法ストライキでないとは言いませんですよ。それは現行法がストライキ権を禁止しておるようになっておるからですね。しかしそれはもう事実上あってもなくても同じような結果になって、あること方方えって社会の混乱を起こすのじゃないかという点を私は言っておるのです。しかもいまの違法スト論なんというものも、これは論じ詰めていけば、みんなもいつも言っておりますように、これはマ書簡によってポツダム政令二百一号が出て、何か理由がわからぬのに、けしからぬといって占領軍がやったやつをそのまま日本政府が出した。そのまま引き継いで今日まできているのですよ。その論議については言いませんけれども大臣、あなたもやはり政府の代弁者である以上は、今日の公労法やらその他の法律がある以上は、違法ストと言わざるを得ぬでしょう。それを言うなということは私は言いません。言いませんが、いま言ったような理由で、もうこういう法律は撤廃して、ストライキ権をもとに戻す、やはり回復させるような措置をすべきが、今日の段階では一番賢明な措置ではないか。いまからの将来の労働運動を正常化させる——させるというと、おかしいのですが、正しい労働運動をするためにも、この方法が今日の段階では一番最適だということを、あなたは三・一のストライキを現実に見てお感じにはならなかったかという点を、いま質問しておるわけでして、それに対して、お答えができなければできぬでもいいですけれども、再度私は、あなたのほんとうの正しい見方、良心に訴えて、もう一度そういう質問をしておきたいと思います。
  66. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 前段の御理解は先生からいただいたわけでございますけれども、いまのスト権の問題については、ただいま四つほど連絡会議で相談をいたしましたものを骨子にして、これはいまから先も検討してまいる、こういう気持ちでございます。
  67. 枝村要作

    ○枝村委員 それでは次に進みますが、先ほどちょっと言いましたように、三・一スト突入前に春闘共闘と政府側とが談判をいたしました。それで、これはどうも一般に言わせますと、その評価はあまりよくないのです。それはもう双方とも事をかまえておって、もうどっちも引くような気持ち一つもないにもかかわらず話し合いをしておる、談判をしておる。これは一種のごまかしで、芝居である。これは形式的な行事の執行にすぎぬというようなことを言っておりました。私も、社会党ではありますけれども、あの時期で談判することはたいへんいいですけれども、双方が何とか三・一をどうにか動かすという気持ちが少しもないで、ただ単に形式的な談判なら、しないほうがよいと思っております。  それで、政府の考え方あとからただしますけれども労働者側は、あと数時間しか残ってなくても、何とか政府の誠意ある態度を引き出して、見つけて、そして三・一に対するストのかまえを若干でも動かそうという気持ちは私はあったと思うのです。だからこそ、その証拠には、政府に誠意があれば三・一はつぶしてもいいとか、あるいは戦術ダウンをしてもいいとかいうことを、前からしばしば幹部の連中は言っておったと思う。そしてその中から、先ほどからいろいろ話が出ております、受験生の列車の運行をきめたり、あるいは生鮮食料品の貨物輸送もこれをみずから進んでやったというような結果が出てきておるのです。  ところが、どうも政府の側は、もうすでにこれこれの措置をしたからこれ以上一歩も譲ることはないという、そういうかたい、硬直した考え方でこの談判に臨まれたことが、結局世間一般から見るような形式的な談判に終わって、初めから決裂を予想していたものだという酷評を浴びておるのではないかと思う。私は、いまここでなぜそういうことを言うかというと、あと三・二六、それから四月の上、中旬におけるゼネスト決戦の段階があります。それまで皆さん長谷川労働大臣中心として、労働者側とほんとうに話し合いをいまから進めていくようでありますから、ここでやはりその点の究明をある程度しておかなければ、また同じような轍を踏むような談判ならやらぬほうがいいと思う。そういう意味で私はいまから質問していくわけでありますが、三・一スト回避のために、ほんとうのことを言っていただきたいのです、どのような具体的な措置を行なったかということです。努力したかということです。それは、三・一を回避するということは、相手があるわけなんですよ。労働者側に対して、どのような誠意を具体的に示したか、努力したか、これを聞きたいのです。
  68. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、そういう大きな問題が出ておりますが、その以前から労働団体方々と、総理並びに各閣僚が、石油危機はじめ大事な問題がございますから、コミュニケーションを持つ必要があるのじゃなかろうか、こういう態度をとってまいりました。そしてまた、それが総理はじめ各閣僚と懇談会という形で、その際には労働四団体方々が全部そろって出られまして、そこで新聞にも出ており皆さんもお手元にお持ちと思いますけれども制度要求の問題、弱者に対する手当ての問題、さらにはまた労働省所管でございますというと、雇用安定の問題等々の話が出たわけであります。一方、国会においては、御承知のとおり、予算委員会あるいはこの社会労働委員会等々におきましても、やはりこういう物価騰貴のときであるから底辺の方々に対しての手当てはすべきじゃないかという具体的な御意見が非常に熾烈にあったことも御承知おきのとおりでございます。そういう中に、やはり労働四団体方々の提言というものが非常に大きく参考になった、こう私は解釈しております。総理のところにも参り、厚生大臣ともお目にもかかりもし、そして年度末に予備費のあるものをひとつしっかりお出しいただきましょうということで御交渉申し上げたわけでありまして、それが、皆さんからいろいろ御議論のありますところの、組合方々は、私の記憶に間違いなければ、百万、三百億、こういう御主張でございました。ところが、政府のほうからは六百八十五万人、百三十億、こういう数字が出てきたわけであります。百万、三百億という話も一つ考え方でございますが、具体的に六百八十五万、百三十億という形も、こちらのほうに予備費全部洗ったというのが大蔵大臣の話でもあり、また大蔵大臣組合方々にお目にかかったときに、あとで私に話していわく、組合の諸君は底辺の問題はほんとうに熱心だったよという話が私にありました。でありますから、その次、私は労働組合方々にお目にかかったときに、大蔵大臣も底辺の問題について皆さんがたいへん心配しておったということを私に言われましたよ、こういうふうに実は申し上げたほどであります。そういういろいろな積み上げが百三十億になったわけでございますけれども、一世帯ですか、三万円という数字から見れば、百三十億はだめだというふうな、まあ、そこが一つの形でございますね。年度補正予算も何も組まないで、最後の予備費をとにかく出した。それじゃ話にならぬというお考えなどが、結局するところ、最後に私とほかの閣僚といっしょに労働省でお目にかかったときに、いたし方がないという形でああいうふうな三月一日のストライキに入った。  それだけに私も心配なものですから、自分で新宿駅、これは私は毎朝そういうところを見たり歩いたりしているものでございますから、前の日も私は国電に乗って、いろいろなスローガンの書かれた電車なども見たことでもございますので、また国鉄の駅へ行って、今晩からあすにかけてはどんなふうになっているのだという話なども実は聞いたりしておって心配しておったものですから、三月一日もさっそく出かけていった、こういう形でございます。いずれにいたしましても、三月二十六日のことを御心配いただき、あるいは四月の中旬のそういうことまで御心配いただきまして、皆さん方から何かいい知恵があるということであるならば、私はこれを参考にしながら、ほんとうにこの大事なときに、日本列島を麻痺させると週刊雑誌などが書いていますが、そういうことが起こったならば、それこそまさに未組織の方、お百姓の方、中小企業の方々に物が来なくなったとかいうふうなことであったらたいへんなことだという感じ方を持ちながら、何とかできることならば対処したいという気持ちが一ぱいであることをぜひひとつ御理解をいただきたいと思うのであります。
  69. 枝村要作

    ○枝村委員 では、ここで確認をいたしておきます。いわゆる低所得者の一時金の問題あるいは失対賃金の増額、それからさらに公務員年度手当額の人事院勧告の予告などというのがあるようでありますが、このような予算措置は、いわゆる労働者側の、ないしは社会党はじめ野党のそれぞれの要求に応じてやったものである。したがって、世間一般でいわれておるように、世間一般といっても新聞ですが、それとは関係なしに先取りの形でやったというのは間違いである、こういうふうに確認してよろしゅうございますね。
  70. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いまのお話の中に、年度末一時金、〇・三の問題ですか、それは私たちの話の中にはお出しになりませんです。しかしそのほかの問題はずっと出ております。そういうことは皆さん方からも話が出ておりますし、また組合方々お話のときには、これは日本は国会のあることでございますから、皆さんお話は団交とか交渉とか、そういうかたいことなしにひとついこうじゃありませんか、こういう態度で実は話をしているわけであります。にもかかわらず、百三十億、これじゃ絶対だめだというふうなのがせんだってまでの雰囲気であった、こういう感じを持っております。
  71. 枝村要作

    ○枝村委員 どうもまだすっきりしませんが、はっきりいって、労働者側あるいは社会党はじめ野党の要求に応じていま言いました一時金などの措置をしたということでいいんですね。
  72. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先ほども申し上げましたように、団交でもないんだから、これは国会の議論を中心にしてやって、組合方々がいろんな例などを引くことは、もちろんこれは非常に大きな参考にしていろいろな施策をやった、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  73. 枝村要作

    ○枝村委員 それ以上は言いますまい。  もう時間がありませんから、これからの見通しについて若干お伺いしたいのですけれども、新聞の伝えるところによると、民間の賃金アップ平均が二五%、こういうことに対して、政府の見方が煮詰まってきたとかどうだとかいう報道がされておるわけなんですけれども、それに対してどのようにお答えになるかお聞きしたいと思います。
  74. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは御案内のとおり、賃金問題には政府が介入はできませんし、するべきでもありませんで、まさに私は労使のそれぞれの考え方の中で円満に解決していただきたい、こういう感じ方で、政府の話がいままで出たことがないんじゃないか、また出すべきじゃないんじゃないか、こういう態度をとっております。
  75. 枝村要作

    ○枝村委員 まあそういう答弁になるとは思いますが、しかし新聞記者も政府の高級官僚にいろいろ当たってみて、その感触を得て報ずると思うのですよ。その根拠には、二月の東京都の区部の消費者物価指数が、前年同月比の二四%高である。だからこれが第一の理由で、二五%上げることに対して否定的なことにはならない、こういうふうにいっております。  第二番目には、予算委員会物価集中審議をやって暴露されましたように、便乗値上げした大企業、商社がたくさんあるわけなんでして、そういうところは高収益をあげておりますので、いわゆる支払い能力というものは十分ある。あるところによれば、一企業は組合の要求に対して三万一千円の回答をしたところがあるとかないとかという報道もされておりますし、三月期には三カ月の臨時手当をも出そうとしておるというようなことをいっておるのであります。その次には、経団連が二十六日の四十九年度の経済見通しの中で、今春闘の賃上げ率は二〇%から二一%はやむを得ない、こういうふうなことをいっております。そういうものをいろいろ総合してみて、政府自体も、先ほど言いましたように、ことしの賃上げは平均二五%は容認するという。あなた方から言わせれば、そんなものは労使の関係であるから知ったことじゃないと言われるかもしれませんが、しかしそうはいかぬと世間はみな思っておるのですから、そういうふうに容認したというように報じられたと思うんですよ。ですからこの問題について労働大臣は、うん、それはそうだなというお考えがあるのかどうか、その点だけでいいからひとつ答えてください。
  76. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございますが、私がいま一番心配しておりますことは御同様に物価の高騰、これが勤労者生活に及ぼす影響でございます。そういう中でございますから、せっかくいただいた賃金の値打ちがまた下がらないような形が一番私たちがやることだろう、こう思っておりますし、パーセントの問題等々は、アナリストやスペシャリストがいろいろなことを言うておりますが、終始、政府は労使間のそういう賃金の問題に入るべきじゃないというのは、先生もおわかりのとおりでありますので、私の口からパーセントを言えといっても、私が金を出す側でもございませんし、ごかんべんのほどをお願い申し上げたいと思います。
  77. 枝村要作

    ○枝村委員 いずれにしても今日では、あなたが否定しようが政府が否定しようが、そういう情勢になりつつあるということは認めざるを得ないのであります。  そこで最初の問題に戻りますが、いまから本格的な舞台が展開されるわけであります。労働者側も政府も同じだろうと思うのですけれども、あすにストライキを控えて、緊迫した中でやりとりするというのがいままでの慣例であります。私はこれはあまりよくないと思っているんですよ、社会党であっても。やはりこういう大きな問題になった場合には、むしろあなた方が望んでおりますように、平和裏に徹底的に話を煮詰める。特に制度要求ですし、政治課題ですから、ぱっぱっときまるものじゃないと思う。そういう意味で、あなた方は精力的にいまからやっていかれると思いますけれども、その場合にいままでのような硬直の姿勢、いまの段階におけるいわゆる措置されたそのままの姿ではどうにもならぬというのが一般の見る目であります。それは私が言わなくても、あなた方もわかっておる。ですから低所得者に対する対策、官公労、三公社五現業に対するスト権の問題、全国一律最賃制の問題、労働時間短縮の問題などは、社会党はじめ野党あたりが法律案も出すことでありましょうし、その他いろいろな要求を出してきますし、春闘共闘もあるいは四団体皆さん方と精力的な交渉をしていくと思いますが、それに対して十分耳を傾けて、大いにそれを参考として、ほんとうに三・二六、四月中旬のいわゆるゼネスト決戦というあまりよくない状態が生まれないように、政府が最善の努力をしてもらいたいと思うのであります。それに対する労働大臣決意をひとつお伺いしたいと思います。
  78. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いまのお話は全く同感でございます。私は、春闘共闘の皆さんと最後にお話を申し上げたときも申し上げたのです。握りこぶしを振り上げておいて、さあのめ、さあやめたというふうな形では、これは話がまずい、やはり平和なうちにコミュニケーションを持つのが、これはお互い人間社会でそれぞれ仕事をしていることでございますから、これはどんなときでも決裂という形をとらずに、私一人だけでもパイプ役になろう、こういう意味で人には、ときにはおたくのほうの国会議員からも、長谷川君は低姿勢じゃないかと言われたりなんかしているのですが、まさにそうした問題をこの国会の場においていままでもいろいろ御議論もいただきましたし、こういう大事なときに御議論をいただきながら、ここでまた話もし、一方においては、もしおいでになる方々があれば私はお伺いするにもやぶさかじゃない、この姿勢だけはくずしてはならない。いわんや私は、はっきり申し上げまして、今日どこへ行っても私は申し上げているのですが、社労であるからおせじを言うという意味じゃございません、とにかく終戦後今日の日本を築いたものは、資本もあります、政策もあります。しかし、何といっても勤勉な日本のこの五、六千万に及ぶ、一生懸命働いた勤労者方々、これは農民も入っておりますが、そういう方々というものをずっと見詰めていくということがいまからますます大事じゃなかろうか。よその国は石油危機で五・二%の失業率を出したときに、お互いのこういう話し合いの中に、幸いに日本は、わずかというては失礼ですけれども、一%の失業率で、失業者を出さないでいっている、また、出たらどういう対策をしようかということで皆さん方と御審議を願おうとしている。やはり、こういう大事な問題だけは拡大していくところに議会のよさというものがあるのじゃなかろうかという感じ方を持っておりますので、ぜひひとついろいろなお知恵をこの四月、三月のそういう予想をされる、憂慮されているようなものを回避するために、できることならば——といってこれを全部のまないからだめだという話じゃ私はまずいんじゃないかとよく冗談みたいに言うのです。とにかく、自分が言うたものは全部とらなければ何もかもだめだという話じゃどうもぐあいが悪いから、その辺をひとつ平和のうちに話し合おうじゃないかという感じ方で接していることも御理解いただきながら、ぜひそういう意味の大事なお話し合い、皆さんの御意見などもありますればお伺いさせていただきたい、こう思っております。
  79. 枝村要作

    ○枝村委員 では時間も来ましたので、最後に私の意見を言わしていただきますならば、このインフレというのは資本主義の本質に根ざしたものですから、特に今日の悪性インフレというのは、やはりもともとアメリカの急速な腐敗、衰退が大きく結びついておるのですから、国際的な資本主義の、われわれから言えば全般的な危機だというように思っております。ですからそれだけに、日本の場合でもこれは深刻だと思います。ですから政府がここで一段と大きな心がまえで事に処せぬ限りは、小手先でいかにちょろちょろごまかしてもこれはおさまるものではないというように思っております。そして先ほど言いましたように、春闘共闘は三・一のストライキの成功で非常に自信を持っておるし、低所得者をはじめとする日本の勤労者階層はやれやれという声援がものすごく今日では起こってきておるのでありますから、一そうきびしい態度——きびしいというのは、身を引き締めてこの問題にひとつ取り組んでもらわねばならぬと思います。先ほど言いました国際的なインフレを中心とする資本主義の危機ですから、イギリスにしても西ドイツにしてもイタリアにしても、それぞれ膨大なゼネストというものが起こっておりますし、特にイギリスは炭鉱労働者二十七万のストライキをきっかけに、保守党が解散と総選挙をもってこれに対抗いたしました。ところが世間一般では、労働者が悪者にされておるということで、おそらく保守党が勝つであろうというように予想されておったが、第二党に転落したでしょう。いまや労働者というものは、政府のインフレ政策に対する対策のなさ、あるいはそれを所得政策で切り抜けようとするそういうものに対して、労働者だけでなくて、多くの国民そのものが反撃していったという証拠になる。労働党が天下をとったから内外の政策が変わるとはわれわれひとつも思っていませんけれども、そういう一例もあります。ですから、何回も言うようでありますけれども、政府はほんとうに緊張して、まじめで、誠意でやらなければならぬ。その窓口に長谷川労働大臣がなっておる。いままでの話を聞くと——話だけですけれども、話を聞くと、あなたは歴代の労働大臣の中でもなかなかしゃんとしておるような印象を私は受けました。それだけにひとつ不祥な事態が起こらないように、十分政府をリードしてこの問題の解決、処理に当たっていただくように心からお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  80. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 石母田達君。
  81. 石母田達

    ○石母田委員 私は、きょう二つの問題についてお尋ねしたいと思います。  初めは、今度の春闘に対して二月二十八日、二階堂官房長官の談話が発表されました。この中にはきわめて重大な内容が含まれているのであります。この点に関して私はお尋ねしたいと思います。  まずこの官房長官の談話の中に、三・一ストライキを予定しているが、「このようなストライキは、いわゆる政治ストであって、法律により争議行為が禁止されている公労協関係組合はもちろん民間組合が行なっても違法である。」ということが出されております。しかも「万一このような違法な行為が行われた場合には、法律の定めるところに従い、厳正な態度で対処せざるを得ない。」こういう内容のことが書いてあります。これまで公労協関係あるいは官公労のストライキに対して、しばしばこのような警告的な声明、談話が出されておりますけれども、今回は、民間組合が行なっても違法である、ということは、新聞の報道などによりましても、あの安保条約の廃棄あるいは日韓条約反対のストライキ、こういうときでも、このような違法というような問題は明確に出していなかった。昨年の春闘に対しても、民間のストそれ自体には触れていなかった。これまでにないこのような政府の姿勢といいますか、民間労組のストも違法であるという見解は、政府の正式の統一された見解であるのか、そうであるとすれば、このようなことを文書または政府の正式な声明、談話あるいはその他の方法によって対外的に発表されたことがあったのかどうか、あったとすれば、それはどんな内容のものであるのか、このことを初めにお伺いしたいと思います。
  82. 道正邦彦

    ○道正政府委員 従来この種のストライキの前に政府としての統一的な見解を述べたことはたびたびございます。その際、民間にも関連するような、あるいは民間の組合が行なっても適当でないという形の政府の見解を出したことはたびたびございます。
  83. 石母田達

    ○石母田委員 民間組合のストライキが違法である、しかも法律の定めるところに従い厳正な態度で対処するということは、どんな法律なのか知りませんけれども、このようなことについてたびたび声明したことがあるというなら、昨年はどういうものがあるのか、このような民間労組のストが違法だということこついて、何かありましたら教えてください。
  84. 道正邦彦

    ○道正政府委員 昨年の官房長官の談話におきましても、年金ストと称して公共部門を含めて統一的なストライキを行なおうとしているということをうたいまして、政治ストに対しては特にきびしく対応せざるを得ないというふうに申しております。
  85. 石母田達

    ○石母田委員 それが同じだと思っているのですか。今度のは、もう一度読み返します。「民間組合が行なっても違法である。」というのと、いまのとは違うじゃないですか。
  86. 道正邦彦

    ○道正政府委員 表現の問題で違うとおっしゃるのでございますけれども、内容においては同じでございまして、従来と同じ線で官房長官談話を出したわけでございます。
  87. 石母田達

    ○石母田委員 それがごまかしというものです。声明とか談話というものはそういうごまかしじゃいかぬ。主観的な判断で内容が同じだというなら、昨年も同じような表現で——表現の問題じゃない。あなたたちがそういう見解をしばしば持っていたことは私たち承知しています。しかし、政府の正式な統一見解としてこのような形の文書で出したというのは、私は今回が初めてだと思うのです。このような、明確に違法であるということの根拠はどこにあるか。法律の定めるところに従って処分するというならば、その法律というのはどんなものであるかお示し願いたいと思います。
  88. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ストライキその他の争議行為が憲法二十八条の保障する範囲のものかどうかということが問題になるわけでございますけれども、その場合には争議行為の目的あるいは手段、方法の両面から検討する必要があると思います。この点につきまして最高裁の判例は、いわゆる政治ストにつきましては、目的の面におきまして憲法二十八条の保障する争議行為の範囲を越えるという立場を終始一貫してとっていることは御承知のとおりでございます。  次に、民間の組合が今回の統一ストの一環といたしまして政治ストを行なった場合にどうなるかということでございますが、政府としては原則として民間企業の個別の労使関係に介入する立場にはございません。責任追及を行なうとするならば、これは個々の使用者の判断と責任において行なわれるべきものであることはもちろんでございます。また、民間の組合が政治目的を掲げてストライキを行なう場合にありましても、従来の例でありますならば、経済的目的を掲げて行なう場合も多いわけでございまして、その場合には、はたして政治的なストライキであるかどうかということはそのケースに応じて判断をしなければならないということも当然でございます。それにいたしましても、政府といたしましては、公共部門、民間部門を問わず、一般的な違法行為を防止いたしまして法秩序を維持すべき責任を負っておるわけでございますから、民間企業の労使関係に関しましても、違法な行為が現に行なわれ、あるいは行なわれるおそれがある場合には、法令の解釈を明確にいたしまして、その周知徹底をはかり、再発防止につとめるのは当然だと思います。
  89. 石母田達

    ○石母田委員 その「法律に従い」の法律をもう少し明確に言ってください。民間の労組の——ここに、法律に従い厳正な態度で対処するという法律というのをもう少し明確に言ってください。
  90. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先ほど申し上げましたように、憲法並びに組合法の解釈から申しまして、政治ストは違法でございます。
  91. 石母田達

    ○石母田委員 きわめて重大な発言だと思います。この問題については私は、憲法第二十八条の問題あるいは労働組合法においてこの政治ストライキの問題が違法である、こういうことをいま言明されましたが、労働大臣、いまの見解でよろしゅうございますか。——ちょっと待ってください。労働大臣に。
  92. 道正邦彦

    ○道正政府委員 法律の解釈にわたりますので私から申し上げまして、後ほど労働大臣からお答えいただきます。  違法であるという意味てつきましては、政治ストにつきましては憲法二十八条の保障する争議行為の範囲を越えるものでございます。その結果、刑事上、民事上の免責を与えられないことになります。したがいまして、単なる労務の不提供にとどまるストライキの場合におきましても、一般に債務不履行あるいは不法行為の責任を免れることができないという意味でございます。  なお、当該ストライキが刑罰法規の構成要件に該当する場合に刑事上の免責が与えられないことも当然でございます。そういう意味で違法と申し上げたわけでございます。
  93. 石母田達

    ○石母田委員 大臣答弁する前にもう一言言います。この官房長官の談話は今度の三・一ストライキに対して行なっているわけですね。その中で、今度の三・一ストライキが「スト権奪還等」の要求を掲げている。このスト権の回復の問題は確かに要求の一つに掲げられております。しかし政府側に二十八日の夜提出した内容は、いわゆる低所得者層などへの一時金支給額の上積みの問題、老齢年金などの社会福祉手当物価上昇に見合うスライド制の導入、それからスト権の問題であります。もちろん春闘共闘委員会は、このほかにもいろいろな要求を掲げているわけであります。こうした今回の要求を掲げたこのストライキというものは、政府がこれに誠意を示さない、政府にこれの解決を迫るという問題が多くありますので、当然こうした事態が起きた。このことをもって違法のストライキである、したがって、法律の定めるところに従って厳正な態度で対処する、こういう態度で臨むのかどうか、もう一度、いま三・一ストライキが終わった時点の中で、労働大臣からはっきりと答弁を願いたいと思います。
  94. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先生承知かと思いますけれども、先ほどの憲法二十八条の解釈につきまして、最高裁の判例が一貫して、政治ストは違法であるというふうに申していることを具体的に申し上げます。  まず昭和二十四年の五月十八日の最高裁の大法廷の判決におきましては、「憲法第二十八条は、使用者対被使用者という関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権乃至団体行動権を保障したものに外ならない。」というふうに述べております。  また、昭和四十一年の十月二十六日の最高裁大法廷判決におきましても「争議行為が労組法一条一項の目的のためでなくして政治的目的のために行なわれたような場合」には「憲法二十八条に保障された争議行為としての正当性の限界をこえる」というふうに述べております。  また昭和四十八年四月二十五日の最高裁大法廷判決におきましても「私企業の労働者たると、公務員を含むその他の勤労者たるとを問わず、使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係があるとはいえない」「政治的目的のために争議行為を行なうがごときは、もともと憲法二八条の保障とは無関係なものというべきである。」というふうに述べておりまして、私ども行政当局といたしましては、最高裁の判決に従いまして行政の運用を進めるのは当然かと思っております。
  95. 石母田達

    ○石母田委員 労働大臣、先ほど私の言ったこの官房長官の談話について……。
  96. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいま労政局長がいろいろな判決例を引いて御答弁されましたが、そういう意味で、二月二十八日の内閣官房長官談話も、このような最高裁の判例に従ったものでありまして、政府としても従来から一貫してとっている立場であると存じております。
  97. 石母田達

    ○石母田委員 もう一回再確認いたします。そうしますと、民間の労組を含めて行なわれた今度の三・一ストライキについては、民間労組に対しても、法律の定めるところに従い、厳正な態度で対処する、対象にするということは、この談話のとおり、いまの判決その他を用いてやるのだということでございますね。
  98. 道正邦彦

    ○道正政府委員 その点につきましては、先ほどお答えしたような趣旨におきまして厳正に対処するということを申し上げたわけでございます。
  99. 石母田達

    ○石母田委員 私は、きょう時間がないので、これ以上論争はしません。しかし、これは表現上の違いではなく、きわめて重大な内容を含んでいる。もちろんこの問題については、そういう最高裁の昨年の四月の判例などにもあります。しかしながら、この問題は、憲法二十八条の問題をめぐって、保障された基本的な権利をめぐっていろいろの論争が行なわれている。われわれはスト権の正当性を主張しているものであります。これを否定するようなことが、この政府の統一見解として出されている。しかも今回の労働者の要求が正当なものであることは、先ほど私が述べた幾つかの要求内容を見てもわかるものであり、皆さん自身もそれにこたえようとして、部分的にいろいろ要求に対してこたえているわけであります。そういう問題をもって、政治ストライキあるいは違法ストライキなんだということで、法律の定めるところに従い厳正な態度で臨むのだ、こういう時点でこのような重大な発表をするということは、問題の解決ということではなくて、むしろ労働者に対する挑戦的な態度であると私は言わざるを得ないと思います。  しかも、いまインフレ、物価引き上げの元凶がだれであるかということは、今回の予算審議の中でも明らかになったように、まさに大資本、大手商社の意識的な物価つり上げ、意識的な品不足、そしてこれを野放しにしてきた田中内閣、こういうものに対する労働者、国民の怒りというものが、今回の春闘の中で大きく盛り上がっているわけであります。これに対して、その出されている正当な要求に対して誠意を持ってこたえるというやり方ではなくて、まさに違法スト呼ばわりをしてこれらを抑圧しようという態度は、全く現在の田中自民党内閣の反動的な体質をあらわしでいるものだと思っております。このような国民の民主的な基本的な権利を否定するようなやり方、今回のこの政府の見解は、ちょうど日経連が発表した春闘への心がまえ、あるいはいま労政局長が読んだ内容というものは、日経連が今回も表明している民間労働組合の使用者との間の経済的目的以外のストは、たとえば法の改善であっても政治ストである、それが年金改善のストであってもそうである、こういうような反動的な解釈と全く軌を同じにしているということによって、ここでも大企業擁護、大企業の不当なやり方に対する労働者のそうした権利というものに対する抑圧が一緒になって行なわれているということが明白に出ていると思います。私は、この政府の出された官房長官の談話のこの部分に対して、撤回または取り消しを要求したいと思います。  さて私は、第二の問題といたしまして、日本航空の中で起きている労災問題について質問したいと思います。  まずお伺いしたいのは、労災の認定期間という問題で、基準監督署が、つまり行政官庁が示した認定期間というものに対して、会社はこれをかってに変えることができるのかどうかという問題について初めお伺いしたいと思います。
  100. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労災保険の適用を受けております労働者につきましては、それが業務上であるかどうかということは、労働者の申請に基づきまして監督署が認定をいたすわけでございます。監督署が業務上と認定をいたしましたものについては、使用者はそれに従わなければならないわけでございます。
  101. 石母田達

    ○石母田委員 それが当然だと思いますが、この日本航空の例を見ますと、そうはなってない。ここで、矢野京子、中村やす子、小森宮寿子、吉原訓、藤田隆司、川村忠、沖武重というような人たちの労災が、いま頸肩腕症候群や腰痛の問題で起きておりますが、こういう中で、大田基準監督署が認定したのは、労災の発生日から労災の期間として給付をしているわけなんですけれども、それに対して、会社がこれを認めようとしない。会社が言っているのは、労災が認定された日から公傷扱いにするのだ、こういうことを言っているわけであります。これは明らかにいまの局長が言う見解とは異なっていると思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  102. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 ちょっとただいまのお尋ねの趣旨がよくわからなかったのですが、監督署が認定をいたします場合には、いつからであるということをはっきりいたしまして認定をいたすわけでございまして、監督署が業務の疾病あるいは業務上の負傷にかかったと認定した日からは、基準法上の使用者の取り扱いとしては、それに従わなければならないわけでございます。
  103. 石母田達

    ○石母田委員 質問の意味がちょっとおわかりにならなかったようですから、もう一回説明しますと、これらの人々の申請に基づいて、発生日があるわけですね、つまり診断書に基づいて、その日から労働基準監督署は給付の対象にしているわけです。ところが基準監督署が認定した日はそれから半年や一年、多い人はおくれることがありますけれども、この認定した日から公傷扱いにするのだ、こういうのが会社の見解なんです。そうしますと、行政官庁が言った期間というものの一部だけを給付期間とする、それ以外は公傷扱いにしない、こういう一種の区分といいますか、差別をするわけですけれども、これは明らかに私は間違いだと思いますけれども、どうでしょうか。
  104. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 監督署におきまして、いまのお話ですと疾病のようでございますが、疾病の発生日を定めまして、それ以後業務上の疾病にかかっていたと認定すれば、基準法上は当然監督署の認定に従って処置しなければならないわけでございまして、会社がそれを認めないというのはどういうことであったのか、その意味がわからないわけでございます。基準監督署といたしましては、認定をすれば、業務上疾病の発生日以後につきましては、当然これは労災から補償が出るわけでございまして、会社が認めないという意味がどういう意味であるかが、御質問の趣旨ではっきりしないわけでございます。
  105. 石母田達

    ○石母田委員 常識的に考えれば私もわからないのですね。ですから、そういう間違ったことが会社の文書によって明記されておりますので、監督署が認定した日から公傷扱いだということで、それ以前の基準監督署の発生日からやったという行政官庁が認めたところを認めてない部分ですね、そういう文書がはっきり出ておりますので、この点については十分調べて、いま言われたような形での指導を行なっていただきたい。そしてそういう間違ったやり方についてはこれを是正するようにしていただきたい、こういうふうに思います。
  106. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 ただいま御指摘の具体的な事件につきましては、本日初めてお伺いいたしましたので、十分調査をしてみたいと存じます。
  107. 石母田達

    ○石母田委員 いまのようにこの認定の全期間が労災とみて取り扱われるべきであって、病名や手続の差異によって行政官庁が認定した期間の一方的な短縮を私は会社がすべきじゃないという点で、適切な処置を望みたいわけです。  もう一つの問題で、指定医の選択の問題があるのです。この会社のやり方ですと、会社が指定している医者、ここでは慈恵医大なんでしょうか、産業医となっていますけれども、この診断書を提出しなければいわゆる公傷にしないという勤労部長の組合あての文書が出ているわけなんです。しかもこれを提出しない場合は組合に提出するように指導させる。それができない場合は就業規則の第五十七条、これに該当する。これは会社の四十四年十一月十四日の勤労部長の文書によりますと、このような場合は服務規律違反となる。就業規則の第五十七条というのは懲戒規定なんです。つまり指定した医者の診断を出さない場合は処分にも該当するんだ、こういうことになりますと、指定医の問題を強制的な形でやる。そうしなければ差別的な扱い、あるいは懲戒的な処分を行なう。これは全く私は法にも触れるような行為だというふうに考えますけれども、この点について御見解をお願いします。
  108. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 業務上の疾病であるかどうかということは、あくまでも客観的にきまるわけでございます。したがいまして、会社が指定医を定めるかどうか別といたしまして、会社の指定医以外の医者の診断による場合であっても、それが客観的に業務に起因する負傷または疾病であった場合には、監督署においては当然それを業務上の疾病として認定いたすわけでございまして、監督署において業務上の負傷、疾病として認定された場合には、先ほども申し上げましたとおり、使用者は当然基準法上業務上の負傷、疾病として扱わなければならないわけでございます。ただ、業務上の疾病でございませんで、いわゆる私傷病に当たりますような場合でございますと、私傷病に当たる場合にどういう取り扱いをするか。これは労働契約等できまる問題でございますので、その日もし労務を提供しなかったとすれば、それに賃金を払うか払わないか、あるいはどういう場合なら払うかといったようなことは、私傷病の場合には、これは全く労働契約上の問題でございますので、労使が話し合いをされましてきめられれば、たとえば特定の医師の証明がある場合には出勤として払うが、それ以外の場合には払わないといったような取りきめがあったといたしましても、それにつきましては全く労働契約上の問題になる、こういうことに法律上はなると存じます。
  109. 石母田達

    ○石母田委員 それで、いまお伺いしているのは、この会社では、私傷病ではなくて、労災の認定の場合に、今度はその診断書を出さなければ病気欠勤の扱いをしないということになっているんです。そうしますと、つまり出さなければ無断欠勤ということになりますから、給料上でも引かれたり、あるいは臨時手当なんかも引かれたり、勤務評定なんかでもいろいろ不利な条件になるわけです。こういうことになりますと、つまりいまあなたが言われたように、指定医でなくても、その他のかかっている主治医といいますかそういう人たちの診断が出た場合でも、こうした無断欠勤、指定医でないということで差別的な扱いを受けるということについてはどうでしょうか。
  110. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 監督署におきまして業務上の負傷、疾病であると認定されますと、もしその負傷、疾病によって療養のため休業を必要とするという場合には、使用者が当然休業をさせなければならないわけでございます。ただ、労災保険に加入している労働者につきましては、休業補償は労災から出ますので、使用者が賃金を払う、払わないは、これは自由でございまして、賃金を払わないから直ちに基準法違反だということにはならない。それは労災から休業補償が出るわけでございます。ただその場合に、一般的に申しまして、業務上の負傷、疾病にかかった人が業務上の負傷、疾病ということで休業している場合に、それに単に賃金を払わないということ以上に、もし不利益な取り扱いをするとすれば、基準法の精神から見てそれは好ましいことではない、かように考えるわけでございます。
  111. 石母田達

    ○石母田委員 基準法の精神から見てもきわめて好ましくないということはわかりましたが、労働安全衛生法の第六十六条「健康診断」の第五項目にこういうことが書いてあるわけです。この点についても私は触れるんじゃないかと思うのです。「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」このあとですが、「ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、」云々と書いてあるわけですね。これは明らかに医師選択の自由を保障しているものだと思うのです。この労働安全衛生法の第六十六条からいっても、先ほど述べた会社側のこうした見解というものは、明らかに法に触れるものじゃないかというふうに考えますけれども、どうでしょうか。
  112. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 安全衛生法の六十六条の規定と申しますのは、これは使用者に健康診断の義務を課しておる、そういうことに対応するものでございまして、使用者側に健康診断の義務を課しておりますので、対応いたしました同条の五項で「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」受診の義務をやはり労働者側にも課しております。したがいまして、その受診につきましては医師選択の自由を認めておる、そういうのがこの六十六条の規定でございます。そういう意味で検診の義務、受診の義務のある健康診断、安全衛生法上の義務のある健康診断に関する規定でございまして、先ほどのお話しの点と直ちに結びつく問題ではないわけでございます。
  113. 石母田達

    ○石母田委員 しかし、これは健康診断でもこれくらいだということになれば、まして、このいまの労災の問題になればなお一そうのことだということに、私は法の精神からそうなると思いますが、どうでしょうか。
  114. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先ほども申しましたように、業務上の負傷、疾病であるかどうかということは、あくまでも客観的にきまるものでございます。したがいまして、会社側が指定医制度を設けるといたしましても、それ以外の医者の診断がありまして、業務上の負傷疾病だというような場合に、監督署はそれらの診断も含めて十分調査をいたしまして、そうしてそれが客観的に見て業務上の負傷疾病であるということになれば、会社の指定医の診断によるかどうかとかかわりなく認定をいたすわけでございまして、そういう意味で監督署における認定は、会社のそういう指定医制度があるなしということにかかわらないものであるというふうに御理解をいただきたいと存じます。
  115. 石母田達

    ○石母田委員 ですから、私の言っているのは、もう少し突っ込んで、現実にこの会社の見解、理由と指定医の診断書がなければその無断欠勤——まあ差別があるというように強制するわけですね。そういうことによって、いまの法にもあるように、あるいは先ほどの基準法の精神からいっても好ましくない事態が実際起きるわけですから、そういう意味で指定医の選択の自由の保障をできるように、やはりこういうような会社側の規定というものについて正しく適切な行政指導を私は行なっていただきたい。こういうことについてもう一度御答弁願いたいと思います。
  116. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 指定医制度そのものは別にどうということはないと思います。これは指定医の診断によるとよらずとにかかわらず、客観的に認定をするわけでございます。ただそれによらない場合に、先生お話しになりましたように、もし単にそれに対して給料を払わないということでなしに積極的に不利な取り扱いをするというようなことがありますとすれば、これは積極的に特別な不利な取り扱いをするということが法の精神から見て好ましくないことでございますので、その点につきましては十分そういうことがないように指導いたしたいと存じます。
  117. 石母田達

    ○石母田委員 さらに三つ目の問題として、今度は労災期間中の労働者に対して、患者に対して、いろいろな差別的な取り扱いがなされておるのです。  たとえば労災認定日以後に私傷病ということで出される休職辞令が出ている例があるわけです。それはここに文書もございますけれども、中村やす子さんという方のものです。これは昭和四十五年の十二月から労災で病気が発生して休業しているわけですが、四十六年の十一月五日に監督署において労災として認定されたのですね。ところが会社はそれよりおくれた四十七年の一月四日に休職辞令を出しているわけであります。これは、私は労災認定中のものに対して、私傷病扱いであるものに出される休職辞令を出すということは、明らかに不当なものではないかと思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  118. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 業務上負傷、疾病にかかって療養中のものに対しましては、先生承知のように、基準法の十九条で解雇制限の規定があるわけでございます。解雇はしてならないわけでございますが、その期間賃金等の支払いは、労災保険に加入している限りは義務はないわけでございまして、これは労災から休業補償が出るわけでございます。したがいまして、賃金を払わない場合に、それを休職という——会社が休職がどういう取り扱いか存じませんけれども、したというだけで必ずしも法に違反するというような問題は特にないのではないかと存じます。
  119. 石母田達

    ○石母田委員 ここの場合の休職というのは、就業規則の中で、休職辞令は、一年たって、まだ休んでいるというものについて、私傷病の場合出されるというふうになっているわけなんです。この規定が用いられて休職辞令が出されているという場合、しかも休職辞令が出されるわけですから、当然ここで——いろいろな加給給付があるわけなんです、たとえば労災の期間中いろいろな、四〇%、結局一〇〇%補償されるとか、いろいろあります。そういうものが、休職辞令の場合は全部切れるわけですから。そういう中で普通の労災の場合に比べれば明らかに差別ができるわけですね。そういう私傷病扱いに用いられる休職辞令というものが、そういう就業規則に基づいて出されているとすれば、これは明らかに不当なものではないかというふうに、質問をもう少し具体的にしたいと思いますが、この点についてはどうですか。
  120. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 もしその会社の就業規則で、休職にしなければ賃金を払わなければならないというようになっておったといたしますれば、これは業務上の負傷、疾病で療養期間中も、労災から休業補償が出る場合には、賃金を払わなければならないという義務はないわけでございますから、賃金を払わないようにしたい、そのために休職にするというだけであれば、これはそれが直ちに違法ということはないと存じます。  しかし、たとえば休職になると、一年たってなおらない場合には解雇するというように、もし就業規則がなっておる、したがって業務上の負傷、疾病の人も休職にすると一年たって解雇されるというようなことになりますと、さっき申しましたように業務上の負傷、疾病で療養期間中は解雇してはならないという基準法十九条の規定がございますから、そういう事態が来れば、それは就業規則上休職にしたからといって解雇すれば、それは基準法違反になる、こういう問題が出てくると思うのでございまして、単に休職にしたというだけでは、法律上それが違法であるということは直ちには言えない。その後のいろいろな取り扱いを具体的に見てみなければならないと存じます。
  121. 石母田達

    ○石母田委員 局長、よく聞いてください。この就業規則の中に、私傷病の場合休職の辞令を出すという場合に、それをもし使って、それに基づいて出されるとすれば、これは労災が認定されているわけですから、それ以後に出すということは明らかにこれは間違いだと思うのですが、どうですか。一般的に休職辞令を出すとか出さないとかという是非を言うのじゃなくて、ここの場合、もし就業規則に基づいて出したものだとすれば、これは公傷になっているわけですから、労災に認定されているわけですから、認定以後にそういう私傷病扱いであるこの休職辞令というものを出すということは、まあいろいろあとで申し上げますけれども、たとえばデメリット格付けとかいろいろなことで差別ができるわけです。しかもそれは、辞令を出す人と出さない人がある。こういうことについて認定以後に出しているという問題について、私傷病扱いしているということについては、これは明らかに不当じゃないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  122. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 就業規則に私傷病の休職とそれから業務上の災害による休職と、もし両方とも規定されておるというような場合には、基準監督署において業務上の負傷、疾病だと認定されれば、会社も就業規則上業務上の扱いをするのが当然だと考えます。しかし特にその就業規則上に業務上の負傷、疾病の休職制度というものがない場合に、監督署から休業補償が出るようになったから賃金を払わないようにしたいということで、私傷病の休職の場合の規定を準用するというような場合ですと、直ちにそれが不当だということも、必ずしもそうも言えないわけでございまして、問題はこれは就業規則の適用の適不適の問題ではないかと存ずるものでございまして、先ほど申しましたように休職の扱いにしたからといって直ちに基準法上の法違反とかいう問題ではないということを申し上げているわけでございます。
  123. 石母田達

    ○石母田委員 これは就業規則の適用 不適用の問題だというふうにおっしゃいますけれども、私は、この問題については就業規則の、私傷病という場合だと、休職の扱いがなされておるというふうに考えておりますので、この点も十分に調べて善処していただきたい、こういうふうに思います。これはよろしいですか。
  124. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 十分に調査いたしまして、先ほど申しましたような不当なことがあるとすれば、是正させるように指導いたしたいと存じます。
  125. 石母田達

    ○石母田委員 この差別的な取り扱いのもう一つの問題として、職場復帰の問題なんです。ここで矢野京子さんという、先ほど名前も出しましたが、この方はいわゆる頸肩腕症候群で四十三年十二月からずっと休んでおられる。そして労災の認定日は四十五年の十月十七日になっております。そして辞令が四十五年の七月に出ているわけですけれども、この人がからだもだいぶよくなったということで職場復帰を希望しているわけです。ところが、会社のほうでは、報告によりますと、引き取り手がないとか、働く場所がないということでこの希望がいれられてない。いま何かこの方は妊娠されているとかということで、産休明けというような問題もありますけれども、とにかく復帰をしたいということなんですね。これはこの間私もハイタクの問題で、こういうむち打ち症とかあるいは頸肩腕症候群になった人々のアフターケアの問題について質問いたしまして、そのこともありましたのでしょう、通達が基準局長のあなたから出されて、そういう中で十分こういう人たちに対する配慮をするようにというような通達が出されているわけです。これを見ますと、特にこういう精神的な動揺もあるので十分な配慮をすべきだというようなことも書かれております。特に企業において、こういう部分的に労働能力を喪失した人に対してはいろいろな配慮をもって対策を講ずべきだということで、特にこの中の行政上の留意点という中で、この職場復帰に対してもいろいろ留意点が述べられておるわけですが、こういう行政上の精神からいっても、このような長期間の会社のいわゆる業務の中で若い身でからだをそこねて、非常に困難な状況におちいっているという人が、からだが回復して、十分でなくても回復の方向に向かって、働きたいということに対しては、この職場復帰の意思に対して十分こたえていくということが会社の態度でなければならないんじゃないか。ところがこれが反対の結果になっているということについて、ぜひこの問題についても調査していただいて、この矢野京子さんの職場復帰の意思がかなえられるよう、あそこの中にそういう場合には労使の協議委員会ができるようにあっせんその他も含めて、行政指導するように書いてありますから、そうした指導をぜひやっていただきたいということを強く要求したいと思うのですが、この点どうでしょうか。
  126. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 業務上の災害にかかられました労働者に対しましては、単にその負傷、疾病を治療して治癒をされるようにはからうだけでなくて、その方々がやはり社会復帰をされるようにしていくことが私ども労働者の福祉のために必要なことだ、かように考えておるわけでございます。  先般出しました通牒も、そういうふうに職場復帰をされる場合に、御本人は病気はなおられたが、なかなか前と同じ職場に戻るには無理があるとか、いろいろそういう問題がございます。特にその通牒であげました場合には、むち打ち症の患者の方などを中心にそういう問題がございますので、それらの方々実情、それから職場の実情等を考えて職場復帰がスムーズにいくように御指導するよう通牒をしたわけでございます。  ただいま御指摘のことは初めて伺いましたのでよく内容はわかりませんけれども、間々、長らく休んでおられたような方の場合には、会社のほうではその間にかわりの人を入れてしまっておるような場合は、直ちにもとの職場へといってもすでにふさがっておってむずかしいような場合もあるわけでございますが、十分に事情を調査いたしまして、職場復帰、社会復帰がスムーズにいきますように指導、あっせんをするようにいたしたいと考えます。
  127. 石母田達

    ○石母田委員 その他、この労災期間中の認定者に対する差別の中で、デメリット格づけというのがあるらしいのです。つまり、デメリットに該当するということで格下げといいますか、他の労働者に比べて差別をするわけなんです。こういうことは私は、先ほどから繰り返しますように労働者の最大の資本というのはもうからだですから、そのからだが会社の業務のために子供を抱けないような、あるいは仕事もできないような病気になった、こういう人たちに対してそういう差別をするということは私はきわめて不当だ。このデメリット格づけについては、ぜひ皆さん方もこの点について調べていただいて、そして号俸を下げるとかなんとかというようなことで差別をしているらしいのですけれども、しかしこの人たちが、もしそれが会社の業務上で病気にならなかったら、これは当然標準的な、あるいはそれ以上の仕事をするかもしれないという可能性があるわけです。その可能性を、そういう病気になったから、しかも会社の責任の業務でなったという人たちに対してそういうデメリットというような格づけをするということは、私は全く許せない。こういう問題があるそうでございますので、先ほどのいろいろな調査の中でもこの点も十分調査していただきまして、そしてとの報告どおりのデメリット格づけというような形で不当な差別が行なわれているかどうかということについてもよく調査して、もしそういう事実があれば厳重にこれは是正されるようにしていただきたい、こういうふうに思います。この点について……。
  128. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 業務上の負傷、疾病にかかられました方につきまして、そういう扱いをされるということは、決して好ましいことではございませんけれども、ただ、その業務上の負傷、疾病によって労働能力に大きなハンディキャップ、欠損ができますような場合に、労働能力が落ちたのに前と同じ非常な高給を払えということを一律に強制することも無理な場合があるわけでございます。そういうこともございまして、負傷、疾病がなおられましたあとに労働能力の喪失がある、障害が残っておるというような場合には、障害補償というようなものも労災から出るわけでございます。したがいまして、それらは一がいにきめつけるわけにもまいりませんで、やはりケース・バイ・ケースで実情等をよく勘案いたしまして、社会通念的に妥当な取り扱いが行なわれるようになることが望ましいと考えるわけでございますので、御指摘の事案についても十分実情調査いたしまして、労使双方の方の良識あるお話し合いによって合理的な処理がなされるように指導してまいりたいと考えます。
  129. 石母田達

    ○石母田委員 それでは、この日本航空の労災問題について、いろいろ調査をお願いし、善処するように要求いたしましたが、この結果について私のほうへ報告するようにしていただきたいと思いますが………。
  130. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 できるだけさようにいたします。
  131. 石母田達

    ○石母田委員 最後に私は、この日本航空の問題におきましても端的に出ておりますように、いま多くの労災認定患者がおるわけです。こういうのは私は氷山の一角で、先ほど局長のおことばにもあるように、得てしてあり得るようなことがこの中に出ている、つまりほかのところにもたくさん出ておるのじゃないかと思うのです。そういう問題について、私はこの労災という性格からいって、いわゆる労災、職業病による、特に頸肩腕症候群とかあるいはむち打ち症とかという、そういう長期な、また治療法も必ずしも明確でないという患者がたくさんいるわけです。こういう人たちが、えてしていわゆる人を使うという資本家、経営者というような感覚からだけでいきますと、こういう私どもから見て全く不当なような措置が行なわれているというケースもこれまた多いと思うのです。こういう問題について私はこの労災職業病による患者に対するこれを、国と資本家の責任できちんと補償していく、あるいは部分的な労働能力が喪失した場合は職場復帰に対しても労働条件が大きな変化なしに、引き下げることなしに補償させる、あるいは先ほど通達、通牒の中にもありますように、職業訓練などを実施させるようにできるだけ企業に義務づけてやらせる、こういう方向でぜひとも私は労働大臣努力をしていただきたい、こういうことについての決意労働大臣からお伺いしたいと思います。
  132. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 具体的な事例をあげられての御質問で、私たちが気のつかないものを一つ一つお話しいただいた——立場といたしますれば、私たち勤労者を守りながら、しかも法律に違反するものがあればそういうものを警告しながら守っていく、この姿勢はずっと、いままでも御理解いただきましたが、いまから先もそういうつもりでまいっていきたい、こう思っております。   〔葉梨委員長代理退席、山下(徳)委員長代理   着席〕  局長にも、具体的な事例などをあげられたあとでございますので、私のほうからも、そういう具体的な問題のときに初めて問題の所在がわかることが多いのでございますので、先生御質問の問題等々については、先生にお答えする前に私も局長から報告をいただく、こういうつもりでおります。
  133. 石母田達

    ○石母田委員 最後に、きょう運輸省のほうから監督官庁として来られていると思いますが、これらの日本航空の問題は、私の調査によりますと、いわゆる組合が四つですか、あるというふうに聞いておるのです。それで特にこの日本航空労働組合に所属している人がいまあげたのは大部分なわけです。いろいろな組合の新聞などを見ますと、かなり会社側が露骨にこの日本航空労働組合に対して、極端にいえば敵視した差別的な態度を公然と表明しているということなんです。特にこういう第一組合といいますか、それにいると損するんだとか、新労というのはこれは第二のほうでしょうね。「今年中に新労行きのバスにのらなければ、会社も君達のことは考えず、差別を必ず行う。」というようなことを、かなり露骨なことを行なっている。しかも許せないことは「今後の方針として、キーパンチャーの罹病者は、デメリットの対象となる。」どの段階の職制か知りませんけれども、こういうことが報告されているのです。したがいまして、きょういまやりましたことは、いわゆる基準局の問題ではございますけれども、監督官庁としてこういう労使の問題その他の問題を、労災という問題にまで差別的な扱いをすることが行なわれるとすれば、これは私は航空の安全という問題からいってもきわめて重要な問題になりますので、この点については監督官庁としても、労働省調査、あるいはみずからもいろいろ調査していただいて善処をしていただくようお願いしたいと思います。   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 山本長

    山本説明員 運輸省の立場といたしましては、先生指摘のとおり、航空会社に対する態度といたしましては安全第一ということでございます。そのためには、役職員含めまして上下左右の意思疎通が十分に行なわれるということが必要でございまして、そのための社内体制というものに十分配慮するようにわれわれ常々航空会社に言っておるところでございます。  ただいま御質問の中で御指摘になりましたような事柄につきましては、われわれ法的にはつまびらかではございませんけれども労働省の御意見も聞きまして、会社側の態度あるいは取り扱いに関して問題がございますれば、それを是正するように指導してまいりたい、かように考えます。
  135. 石母田達

    ○石母田委員 質問を終わります。
  136. 野原正勝

    野原委員長 坂口力君。
  137. 坂口力

    ○坂口委員 先日予算委員会労働大臣には身体障害者の雇用問題につきまして少しだけ質問をさせていただきましたが、時間がございませんでしたので、きょう引き続いて質問をさせていただきたいと思います。  先日も申しましたとおり、最近の物価狂乱の中で特に身体障害者の皆さん方、非常にいろいろの面で影響を受けておみえになるわけであります。そういう面から考えましても、どうしても一日も早く身体障害者の皆さん方に適当な職場についていただけるような環境づくりをしていくということが非常に重要ではないか、こう考えるわけでございます。先日も少し質問いたしまして、多少きょうダブるところがございますが、民間企業の雇用率の達成状態はきめられております一・三%にまだ少し達していない。しかも未達成の事業所が三六%もある。特にその中で五百人以上の大きい企業、その大きい企業においてより達成率が悪い。これは四十七年の十月の資料でございますけれども、五百人以上のところでは未達成のところが四四・六%ございます。それから雇用率にいたしまして一・一七%、こういう数字が出ております。先日予算委員会でこのことを申しましたときに大臣からも鋭意努力をしているという御答弁がございましたけれども、しかしもうこの法律ができましてからずいぶん期間もたっておりますし、いまなおこの雇用率が達成されないでいる。特に五百人以上の大きい企業においてそれが未達成のままで残されている。これは非常に問題が大きいと思う。もう一度あらためてここに、なぜこういうふうな結果に終わっているのかということをお聞きをしたいと思います。
  138. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいま御指摘のように五百人以上の事業所では一・一七%で、法定雇用率一・三%に及んでいないというのは非常に残念なことでございます。しかもその上に、おっしゃるように、従業員五百人以上のようなところではいまのように一・一七%、低率でございますので、私はやはりいまの時代にこそいろいろな問題において国民の連帯感といいますか、そういうことであらためてこうした問題を見直しながら、来年度予算等々にも計画を立てていることでございますので、局長その他の関係方々にいままで以上のひとつしっかりした態度で達成に向かってもらうように、鋭意お互いに努力をしているところであります。
  139. 坂口力

    ○坂口委員 これも先日の予算委員会で少し触れましたが、いわゆる雇用率の未達成事業所に対しては、公共職業安定所長の立場で雇い入れに対して計画の作成を命じることができるようになっております。予算委員会での大臣答弁によりますと、昭和四十六年から四十七年にかけて計画を作成をさせた、こういうお話でございました。その中で、どれだけの事業所にこれを命じられたのかということは、この間おっしゃいませんでした。そこで、どれだけの事業所にこの計画の作成をお命じになって、そのうち大体どれぐらいその雇い入れが可能になったかという点をお聞きをしたいと思います。
  140. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 身体障害者の雇い入れにつきましては、安定所の窓口で求人事業をいたします際に、各事業所に対しまして、求人指導をいたします。その際に、この身体障害者の雇用につきまして勧奨をし指導をするというような体制をとってまいっておりますが、この法律に基づきまして雇い入れの計画作成を命ずることができることになっております。四十六年の十月から一年間にこの雇い入れ計画作成を命じました事業所数は三百九十七でございまして、これに対しまして具体的に計画を作成してきました事業所が二百五十五事業所でございます。それによりまして雇い入れられた者が百三十三、大体指示をいたしました件数に対して三分の一ぐらいが雇い入れられたということでございまして、毎年私どものほうで各企業に対してこの雇い入れの計画を指示いたしておりますが、昨年度の分についてはまだ調査ができておりませんが、大体この程度を上回る指示をいたしておるはずでございます。
  141. 坂口力

    ○坂口委員 いま数字を聞かせていただきますと、三百九十七、四百近い事業所に対して命令を出された。その中で実際それが成果としてあがったのは百三十三。これは事業所でございますか、百三十三名でございますか。(遠藤(政)政府委員「はい、百三十三名でございます」と呼ぶ)そういたしますと、一つ事業所で複数でおとりになっておるところもあるかもしれませんから、まず三分の一あるいは三分の一弱ぐらいな程度のところでその結果が出たというわけでございます。この事業所の中でも大きいところ小さいところございますが、この三百九十七の中で特に五百人以上の大きいところ、これはどのぐらいございますか。もしもわかっておりましたら数字をお示しいただきたいと思います。
  142. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 約四百の指示をいたしました事業所はすべて百人以上でございますけれども、その中で五百人以上、五百人以下の数字は明らかになっておりませんので、昨年度の分について現在調査中でございます。  ただ、確かに四百余りの事業所にこの雇い入れ計画の作成を指示いたしまして、それに対して約三分の一の百三十数名しか採用されていなかった、こういった点を見ますと、非常に行政指導と申しますか、こういった運用がうまくいっていないんじゃないかというお感じをお持ちになるかと思いますけれども、実は身体障害者の方々で公共職業安定所に登録をされている数はかなりございます。しかし、その中で具体的に求職申し込みをされた方というのはかなりその登録数を下回っておりまして、そういう求職申し込みをした人が、具体的にその求職者にマッチするような職域、作業内容を持った求人がうまくあるかどうかという点が非常に大きな問題でございます。求職者が求職申し込みをされますと、それに応じてその人にふさわしい求人開拓をいたしまして、そうして就職指導、あっせんをするという体制をとってまいっておりますので、従来身体障害者の方々で具体的に求職申し込みをされた方につきましては、満足すべき結果ではございませんけれども、ほぼ御希望に応ずるような就職あっせん体制ができてきておるような状況になっております。各大企業で、五百人以上の企業で確かに雇用率が未達成になっております。そういった点、私どもはまだまだ私ども行政指導なり行政措置が十分でないことを自覚いたしておるわけでございますが、これは何にいたしましても、一般的に求人事業所のみならず、国民全体の、何と申しますか、皆さんがその気になって、これは国民的な立場でこの身体障害者の方々の職場を確保するという考え方で、全体が連帯的な責任といいますか、社会的責任といいますか、そういった考え方でこの問題に当たっていただくことが必要でございます。  そういう意味で、私どもは具体的な事業所の指導と同時に、国民全体に対するPRと申しますか、そういった国民的な御支援を呼びかける、こういう運動を毎年繰り返してきておるわけでございますが、今後は、新しい、現在提出いたしております雇用保険法の中でも、こういった身体障害者の方々に対する特別な援護措置というものを含めておりますので、こういったいろいろの制度を活用いたしまして、何とか法定の雇用率を達成し、さらにそれを上回って身体障害者の方々の職場を確保するように努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  143. 坂口力

    ○坂口委員 先日資料をお願いしましたときに、特にこの達成をしていない大きい事業所の一番悪いところを名前をお示しをいただきたいということをお願いをしたのですが、それはできないというようなことでお示しをいただけませんでした。私、考えますのに、大きい事業所であれば、それだけやはり中の職種も多うございますし、雇い入れられる条件としても整っているはずでございます。  いま局長お話の中に、五百人以上のところはほとんどこれでよくなったというようなお話をちょっとされましたけれども、これは何かお間違えになったのではないかと思います。五百人以上のところは先ほど申しましたとおり、現在のところは非常に率が悪いわけでございます。おそらく先ほど約四百の計画を命令された中にも、この五百人以上のところがかなりたくさん含まれているであろう、その中で、その命令が出たにもかかわらず、さらにその命令に従わないというところがあるわけでございます。その原因についてはいまるる申し述べられましたけれども、その中でいわゆるマッチした職種が見つかりにくい、そういうところに一つの原因がありはしないかというお話でございました。この問題につきましてはあとで少し触れたいと思いますが、マッチした職種を今後見つけていく、そのために労働省としては今後どういうふうな方針をおとりになるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  144. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現在職業研究所におきまして、こういった身体障害者の方々に向いた職種あるいはある特定の作業に身体障害者の方々が従事される場合に、一体どういう補完措置といいますか、その作業内容を変えるとかあるいは作業用具をくふうをするとか、そういったいろいろな角度から検討、研究をいたしておりまして、そういうことによって身体障害者向けの職種あるいは一般健常者と同じように作業についてもらう場合の作業に必要な用具とか器具、そういったものの開発、こういった点を検討、研究いたしておりまして、そういうことによりましてこの身体障害者の雇用促進をはかうていきたい、こういう運用をいたしておるわけでございます。
  145. 坂口力

    ○坂口委員 官公庁における身体障害者雇用状況といいますのは、一・七%のところあるいは一・六%のところございますけれども、双方ともに雇用率から見ますと上回ってはおります。ただしこの統計も、これは総トータルをした形で出されておりますが、たとえば国会なら国会だけとか、たとえば労働省なら労働省だけとかいうふうな、もう少し分かれたその職場、職場での中ではこれはどういうふうな状態になっておりますか。これも非常にばらつきがあって、雇用率の非常に悪いところあるいは雇用率の非常にいいところ、そういうことはございますか。
  146. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現業、非現業含めまして、それぞれ一・六、一・七の雇用率の達成状況につきましては、先生からお示しのとおり官公庁関係はほぼ法定雇用率を達成いたしております。ただ、その中で、労働省は隗より始めよということで、率先いたしまして身体障害者の雇用に全力をあげておりまして、たしか労働省は一・九六になっております。各個別省庁について見ますと、法定雇用率を下回っているところがございますが、極端に低いものは公安調査庁の〇・一〇が非常に低うございまして、そのほかはほぼ雇用率に近い線までいっておりまして、科学技術庁が一・六四、それから現業関係では、郵政省が一・六に対しまして一・五一、消防庁が〇・七一、こういう数字が出ておりますが、雇用率を達成しておりません消防庁とか郵政省、特に郵政省あたりは一・五幾らでございますが、過去におきまして炭鉱離職者とか駐留軍離職者、中高年の採用については非常に協力的に努力をしていただいた官公庁でございます。職域の性格上なかなかむずかしい、それを非常に努力をしてここまでもってきていただいているんじゃないかという感じがいたしております。
  147. 坂口力

    ○坂口委員 消防署なんかは職種上そう無理に進めるというわけにもいかないようなところもあろうかと思います。しかし、いま出ました郵政省なんかは、これはもう少しやはり雇い入れていただかないといけない分野ではないかと思うわけです。民間企業だけではなしに、やはり公の機関においても積極的にひとつこの雇い入れを促進をしていただきたいと思うわけです。一・六とか一・七%、こういう数字がきまっておりますが、何もこれは一・六になったからこれでよし、一・七だからもうこれで雇わなくともいいというようなものじゃなくて、これは一つ最低線と考えて積極的に雇い入れをしていただきたいと思うわけです。  外国の例等を見てみますと、やはり二%とか三%というような数字がたくさん出ております。日本の場合に一・六とか七というのはかなり押えた数字ではないか、そういう意味でひとつ一・九になったから労働省はよし、こうせずにさらに積極的な態度をひとつお示しをいただきたいと思います。  また、雇われております人の障害の程度でございますが、ややもいたしますと、非常に障害の軽い人ばかりを寄せ集めるというような傾向がございます。いわゆる一部障害者と申しますか、非常に軽い人が多くなる傾向がございます。そういう意味で単なる雇用率のパーセントだけではなしに、雇われている人の中の重症度、こういったものはどうなっておるか、これをおつかみになっておりますでしょうか。
  148. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 身体障害者の雇用率につきましては、確かにいま御指摘になりましたように極端に軽度なものはこれは含まれておりません。しかし、これから問題になりますのは、確かに身体障害者の中でも重度障害者をどうやって職場につけるか、復帰させるかということがこれからの行政の中で一番大きな課題であろうと私ども考えております。いままでの雇用率達成、あるいは雇用率の中身につきまして、重度障害者とその他の比較的軽度のものと、この区別につきましてはまだ具体的な調査の結果が出ておりません。現在調査中でございますが、今後はそういった重度障害者だけについてある程度その雇用のワクというものを別途考えるかどうか、こういった点も十分検討しなければならない課題だと考えております。今後重点をそういう方面に置きまして、この雇用の促進をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  149. 坂口力

    ○坂口委員 一点は公共職業安定所長から計画命令を出していただいて、それでも聞き入れないようなところがかなりある。こういうことに対しても非常にきびしい態度で私は臨んでいただきたい。一ぺんこういうふうに命じても三分の二ぐらいは——その命令を聞いてこないというようなところに対しては、これは再三きびしく言っていただいて、もっと行政指導を強めていただきたいと思うわけです。  それからもう一点は、先ほど述べられた問題で、雇い入れをされている障害者の重症度、それ、をひとつ把握をしていただきたいと思うわけです。あまり軽度の人ばかりを雇い入れるということではなしに、やはり職種によっては重度の人を何とかして雇い入れる道も開いていただきたい。そういう意味では、どの程度の人を雇い入れていくかというその辺の統計をぜひひとつおとりいただきたいと思います。いかがでございましょう。
  150. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほど申し上げましたように、具体的に安定所の窓口で求人指導によりまして、この身体障害者の雇用を進めてまいるわけでございますが、具体的な個別企業におきましては、この雇用率を達成してない、そういう事業場に雇用を勧奨いたしましてもなお聞かない、あるいはさらに一歩進みまして、雇い入れの計画の作成を命じてもそれに応じない、正当な理由なしにこれに応じてこない、こういう企業に対しましては、まず第一段の措置は、一般的な求人の受理につきましてこれを保留するとか、そういうことによって身体障害者の雇い入れの促進をはかってまいりたい。  さらに前々から先生指摘のございますように、特にその中で全く正当な理由なしにこれを拒否する、あるいはがえんじないような企業の中で、大企業等につきましては、審議会の答申にもございますように、そういった企業名を公表するというような措置についても積極的に、前向きで検討いたしてまいりたい。そういうことによりまして、やはり世間の関心を喚起するというような措置によってこれを促進してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  151. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひそういうふうな事業所はもう公表していただきたいと思うわけです。そうして社会的責任を追及していただきたいと思うわけです。  それから諸外国の例を見ましても——これは労働省からいただいた資料でございますが、たとえば西ドイツにおきましても、一九五三年の六月に身体重障者雇用法というのが制定をされております。これを見ますと、従業員七人以上の事業所については少なくとも一人、それから八人以上の従業員を持つ官公庁等については従業員数の一〇%、従業員八人以上の民間事業所については八%の雇用義務を課している。かなり高い雇用義務を課しているわけであります。またフランスにおきましても、身障労働者の復職法が制定されておりますが、雇用率は、すべての事業所について三%とされている。かなり高い率になっております。このように率そのものにおきましても非常に高くいたしておりますし、日本の率は決してそう高いものではない。それがやはり守られないというのは、これは一つ大きな問題であると考えるわけでございます。  それから雇用規制の面から見ても、たとえば西ドイツにおきましては、雇用主は、身体重障害者の中に盲目者、脳障害者、結核回復者及びその労働能力を八〇%以上喪失したその他の身体障害者、これを最重度身体障害者と呼んでおりますが、それらを一定数含まなければならないというふうに規定をしておるわけであります。その中には障害者の妻に対してもより優先的にその雇用の道を示さなければならないというような規定がございます。日本におきましてはそういうふうなところまでいっていないと思いますが、この点につきましてはどのようにお考えになりますか。
  152. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ヨーロッパ、ドイツほか各国の身体障害者の雇用に関する法制その他をただいま先生から御指摘ございました。確かに雇用率そのものにいたしましても、わが国の一・三%という数字と比較いたしますとかなり高率になっております。のみならず、雇用率の達成につきましては、罰則を科するとか、あるいは課徴金を徴する、こういったことで強制的な措置がとられた例もございます。ただ私どもも、日本の一・三%は必ずしも高い率とは考えておりませんし、今後身体障害者の、特に重度障害者の雇用の問題につきましては、最重点課題として考えなければなりませんし、雇用率そのものにつきましても、いろいろと今後関係機関で御検討いただきたいと考えておりますが、ただヨーロッパ各国の、ドイツその他との違いと申しますか、欧州各国では第二次大戦におきましてその地域自体が戦場と化しまして、戦傷者が非常に多かった。こういうことから戦後の対策といいますか、戦傷者を国民的な課題、あるいは義務として、これを雇用の場に復帰させようというような観点から、これの強制措置が講ぜられたわけでございます。最近におきましては、こういった各国におきましても、むしろそういった強制措置よりは国民的な連帯感、あるいは企業の社会的責任に訴えて、こういう身体障害者の雇用をはかっていくという方向に変わってきておるようでございます、私どもも、しばしばいろいろな機会に罰則とかあるいは課徴金というような制度によって強制することを考えたらどうかという御意見も承っておりますけれども、そういった諸外国の動向なり日本の雇用における現状を考えますると、そういった強制措置をとることが、はたして身体障害者の方々の雇用をほんとう意味で促進する上に役に立つかどうかといった点もまだまだ十分考える必要があるのではないか、こういうことで、審議会の答申におきましても、この点は今後の検討課題ということになっておりまして、私どもはむしろ企業の社会的責任、国民連帯感ということに訴えて、こういった方々の職場を確保していくという方向努力すべきではないか、かように考えておる次第でございます。
  153. 坂口力

    ○坂口委員 それからもう一つ、これはイギリスにおいてですが、いわゆる指定職種を定めております。たとえば登録されました身体障害者に対しまして、これは一九四六年でございますが、乗客用のエレベーターの出発合い図係とか、あるいはその操作係、それから屋外駐車場の整理係、こういった職種をいわゆる指定職種として指定をしまして、そうして積極的に、こういうふうな職種は健康な者がその中に入らずに、こういう人たちにそういう職種を分け渡そうということを定めておりますが、こういう点について現在積極的な計画はございませんか。
  154. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに外国二、三の国におきまして、一定の職種につきまして、身体障害者にその職域を留保するというような制度もございますが、こういった制度をとりますことは、その職域に関する限りは身体障害者に職場を確保できるという利点がありますと同時に、裏から考えますと、身体障害者の職場をそういうところに、指定された職種に限定してしまうという逆の効果も出てまいるわけでございます。したがいまして、こういう制度をつくるにつきましては、プラスの面とマイナスの面が両方ありますので、今後身体障害者雇用の促進につきましては、この制度をとるのがいいのかどうか、もう少しよくよく検討してみる必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  155. 坂口力

    ○坂口委員 確かにいま局長が言われますとおり両面があろうかと思います。しかしながら、現在の日本におきますように、身体障害者の働く場が非常に制限をされているような時点におきましては、一考に値するものではないかと思うわけでございます。たとえばこの国会等においても、これはもう率先をしてエレベーター等についてはこういうふうな身体障害者の人を雇い入れていくとかいうようなことは、私は取り上げてもいいことではないかと思うわけであります。そして健康な青年男女はもっとそれにふさわしい、と言うと語弊があるかもわかりませんが、職場にお回りをいただいて、そうしてやはりエレベーターの合い図係等、それがふさわしいと思われるような障害者にそういう場を与えるということは、やはり国会あたりが率先をしてこれはやってしかるべき問題ではないか。労働大臣、いかがお考えになるのでございますか。
  156. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いい御提案だと思いますね。これは議運などでお話しいただくならば、各党がみんないらっしゃることですから、それをすぐに事務司が採用するかしないかは別といたしまして、おそらくはかの議員さん方も御賛成されることでしょうから、そういう話の中に、事務当局に御提案していただくという一つのアイデアだ、私はこう思っております。  いずれにいたしましても、ヨーロッパ各国は戦争のあとで非常に負傷者が出たことですから、ごく三、四年前までも、ヨーロッパでは、ことに西ドイツなどでは、ラジオは尋ね人の時間、行方不明になったそういう人々、そういう時間まで設けておった。どの企業会社に行ってみましても、エレベーターは——日本のようなりっぱなエレベーターではございませんけれども、そういうものの作業はほとんど戦地から帰ってきた障害者の方々というふうにして、非常に国民的連帯感が生まれているという感じを持っているわけでありまして、だんだんのお話の中から局長答弁いたしましたそれをさらに推進しまして、具体的に身体障害者の問題について、非常に御熱心な先生の御意見等々を参考にしながら推進してまいりたいと思っております。
  157. 坂口力

    ○坂口委員 私はよくアイデア賞をいただくわけでありますが、アイデア賞はたくさんいただくのですが、わりあいにそのアイデアが実行に移されなくて弱っているわけであります。先日も厚生大臣にアイデア賞をいただきました。二つほどいただきましたが二つとも実っておりませんので、今回のアイデア賞は何とかしてひとつ実現の方向に、私ども努力いたしますが、労働大臣としてもひとつ御尽力をいただきたいと思うわけでございます。  それから少し問題が変わりますが、重度障害者の特別雇用率につきまして、いわゆる重度の視覚障害者にかかわる三職種が指定されております。御存じのとおりでございます。この拡大の問題がいろいろといままでも議論をされてまいりましたが、これについては現在どういうふうな段階に来ておりますでしょうか。
  158. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現在視覚障害者につきましては職種を指定いたしておりますが、これを今後どういうふうに、先ほど来の指定の職種の問題ともからみまして、今後積極的に検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  159. 坂口力

    ○坂口委員 現在計画中ということでございますので、きょうはまあ総論的にやっておりますので、これ以上触れないことにいたしますが、ひとつ時間を置きましてもう一度この問題またやらさせていただきますので、早急に御検討をいただきたいと思います。  それから今度は雇用をしてくれる事業主の側の問題といたしまして、いわゆる雇用助成措置の強化の問題がございます。これも先日の予算委員会で少し触れまして、大蔵大臣からも少し答弁をいただいております。先日の大蔵大臣答弁では、現在の割り増し償却の問題は、経過を見守りたい、そして見守った結果これがうまくいかないようであれば、あるいはまたこれで非常に足りないというような面があれば、さらに積極的に身体障害者を雇い入れる民間企業に対して税制上の何か措置を講ずるにやぶさかでない、こういうふうに答弁をされたと私記憶いたしておりますが、この点につきまして労働大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  160. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先日、あなたと大蔵大臣のやりとりを私も拝聴していました。私のほうでもこれは考えておりましたことで、この際にあらためて申し上げますと、心身障害者を多数雇用する事業所の育成強化をはかるために丁税制面においても特別の配慮を講ずる必要があると思っております。また、身体障害者雇用審議会の一昨年の中間答申においてもそのことが申されておるところであります。  このため、四十八年度において租税特別措置法の改正により、心身障害者を三〇%以上雇用する企業に対して、所得税または法人税上の特別の割り増し償却制度を設けられたところであります。また、雇用促進事業団の特別融資を受けて建設する心身障害者多数雇用事業所いわゆるモデル工場につきまして、この特別の割り増し償却制度のほか、今国会に提出しております地方税法の一部改正案によりまして、不動産取得税の減免措置を新設したいと考えております。
  161. 坂口力

    ○坂口委員 割り増し償却あるいはいま二、三申されましたそういう税制上の問題は、どちらかと申しますと一次的なものが多うございます。たとえば、新しい事業所をつくるというようなときには、それなりの企業融資というものもできるようになっておりますけれども、しかしながら、一定の、たとえば三〇%だとか、五〇%以上の障害者を雇い入れるような企業において、その企業が運営を円滑にしていくためにはやはり年々歳々、非常にむずかしい、われわれが想像をする以上の問題があろうかと思うわけであります。そういう企業の、一定時期ではなしに運営についてやはり税制上の何らかの措置があれば、さらにこの身体障害者を雇い入れる、そういう企業も多くなるのではないか、また、そういうことをすることが、ボランティア精神で、より多くの人を雇い入れてくれる企業に対する一つのこれは、われわれ政治の場にいる者としてはどうしてもやらなければならない点ではないかと思うわけでございます。  そういう意味で、先日も大蔵大臣に公益法人の例を引いて、何か税制上もう少し考えられないかということを申し上げたわけでございます。ひとつこの点もさらに漸進的に御検討をいただきたいと思います。  いま申し上げましたのはすべて民間企業のことでございますが、しかし、諸外国の例を見ますと、政府自身がと申しますか、国自身が積極的に乗り出して、そうしてこの身体障害者を受け入れる、そういう施設をつくっております。  一例として東京都の高木さんという方が「欧州身体障害者事情視察団に参加して」というのでこういう記事を書いておられます。それはイギリスにおける身障者施設についてでございますが、イギリスの施設「エンプロイ保護工場の見学について」というのを書いておみえになります。これを見せていただきますと、年間予算は、全体として総支出が一千八百万ポンドですね。それからこの事業所の売り上げ高が千三百万ポンドで、赤字は年間五百万ポンドになる。これは、政府負担ということでこの赤字は全部見ている。そしてこの作業内容は、家具とかあるいは包装、製本、それから織物、ニットウエア、それから機械関係、こういうふうな部門があってそういう仕事をされている。この中には約七千五百名、これはイギリスの中に現在八十五工場があって、その合計が七千五百名の重度障害者がそこに働いている、こういうふうな報告が出ております。これを見ましても、国自身がその工場から出た赤字は全部になうという形で多くの障害者を受け入れているわけでございます。日本としても、民間企業に対してこれこれ以上のパーセントはひとつ受け入れてほしいということを頼むだけでなしに、やはり国自身もこういうふうな施設を積極的に今後はつくっていかなければならない。そして、特に民間で取り入れられないようなそういう重度の身体障害者については、ひとつ全体的な見本として国自身がこれはやっていかなければならない問題ではないか、そういう時期に日本も来ていると思うわけでございますが、その点、いかがでございますか。
  162. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほど御指摘になりました重度障害者、特に私もエンプロイ公社を見てまいりましたけれども、こういった人たちに国が直接職場を確保するという政策は確かに重要な問題だと思います。実は労働省におきましても十年ほど前からこういった重度障害者、特に脊損障害者を対象にいたしまして作業施設を建設してまいりました。現在全国で八カ所程度運営をいたしております。これは国がみずから直接そういった作業所を経営いたしまして、こういう人たちに精密機械とかいろいろな、いわゆる座業でできるようなかなり高度な作業を実施いたしておりまして、その人たちはそこの賃金収入生活をしているということでございますが、そこである程度の期間なれていただいた上で適当な民間企業にあっせんをして、それぞれ職域についていただく、こういうたてまえでございますが、実際はなかなか回転がききませんで、大部分の人がそこへ入所されますとそこでずっと長く働かれるという例が多いようでございます。そういうことから、単に現在ございます八カ所では十分ではございませんで、年々増設をいたしてまいっております。民間企業とタイアップして、そこの作業になれた方を民間企業として雇っていただくという方向を今後とも促進してまいる、こういう考え方で対処しているわけでございます。
  163. 坂口力

    ○坂口委員 民間企業だけでなしに、国自身がやはり一つのモデル工場的にそういう工場をつくっていくべきではないか、こう私は申し上げているわけでございます。それについてどうでございますか。
  164. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、労働省の直営でそういった作業所を設置運営いたしておるわけでございます。そこの入所者を、これは数が限定されますので、できるだけなれて民間企業に就職できるようになった人たちをあっせんして就職していただく、こういうたてまえをとっているわけでございます。
  165. 坂口力

    ○坂口委員 いまお話しになったのは、これはいわゆる職業訓練所でございましょう。そうじゃございませんか。
  166. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 身体障害者の職業訓練校は全国に十一校ございまして、ここでは一年間あるいは一年半訓練をいたしまして、その訓練の結果、その技能に応じて就職をしていただく、こういうたてまえでございますが、いま私が申し上げましたのは重度身体障害者を対象にいたしまして国営の作業場で、そこで働いていただく、で、民間で適当なところがあればそこへ就職をしていただく。そこで、固定した収容施設ということでなくて、国営の作業場で仕事をしていただいて、そこで賃金収入を得ていただく、こういうたてまえでございます。
  167. 坂口力

    ○坂口委員 来年度その施設は少しふえるような御計画がございますか。
  168. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 来年度一カ所増設になる予定になっております。
  169. 坂口力

    ○坂口委員 それじゃその点、一カ所でも多くのそういう施設をおつくりいただくことをお願いをしておきます。  御参考までに申し上げておきますが、東京都立の肢体不自由児養護施設がございます。五つの養護学校がございますが、その四十八年度の卒業生七十三人お見えになりますが、その中で現在就職のきまっている方が二十九名、約三九%になります。その残りの方は依然としてきまらない、これが現状でございます。しかし、この東京都におけるこういう養護学校の皆さん方というのは、全国的なレベルで見れば非常に恵まれた方ではないかと思うわけでございます。これは全国的に見ますともっとこの率がおそらく落ちてくるであろうと思うわけであります。こういうふうに何年か学校に行かれて、そしてそこをようやく御卒業になって、社会に出たいと胸をふくらませておみえになるこの三月でございます。こういう養護学校を出られたお子さん方が一人でも多くやはり就職をしていただけるように、私どもはこれはどうしてもその場をつくらなければならないと思うわけであります。こういうふうな意味で、積極的にひとつこの就職の場を労働省としてもお考えをいただきたいと思うわけであります。  最後にもう一つだけ、精神薄弱者の問題がございます。この精神薄弱者の問題は、法制面では依然として身体障害者雇用促進法の外に置かれているわけでございますが、やはり同様に今後就職の場というものを考えていかなければならないと思います。どういうふうな職種を選ぶかということによりましては、一般の正常人以上にりっぱな業績をあげられる、そういう人たちもこの中にはあるわけでございますので、この精神障害者の雇用という面につきましてもひとつ積極的に御努力をいただきたい。この問題についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  170. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私たちが自分の子供を持ったときに、一番先に人の親として心配するのは、その子供が健全であるかどうかということでございます。そういうことからしますと、健康なからだを持って生まれてきた私たちほんとうに親に恩を感じるわけです。一方また、いまのようなお子さん方を持った人、心身障害児、精薄児、こういう人の本人の御不幸はもちろんでございますが、身内の方々の悩みというものは一生つきまとっているわけです。ただ、幾ら私たちが御同情申し上げても本人にはなり切らない。そういうことからしますと、やはり身近におって幾らかでもそういう御本人に身近な感じを持ってやるというところに私たちの責任があるのじゃなかろうかと思います。  いまイギリスの例などもございましたけれども、日本は日本なりでちゃんとそういう施設なり訓練なりいろいろな学校をやっているというふうなことと、そしていま社会全体がそういう人々に対して目を注ぐような時代になっておりますので、親御さんのほうもいささか気が楽にと申しますか、こういう制度がある、こういう施設がある、こういう世話も願えるだろうという期待感、それからまたそういうお子さん方を見ましても、非常に昔と違って、私たちの子供のときと違って、明るいような感じを持って社会にスタートできるのじゃないかという期待感があるというところに私は喜びを感ずるわけです。もちろん労働省といたしましては、私が申し上げたような気持ちでこれは一生懸命やりますし、また一方健全な社会人の方々が、そういう方が私たちの身近にいるということで、ときに就職のあっせんでもある場合には導いてくれるようなあたたかい気持ちというものを持っていただきながら、全体でこれはやっていただく、その中心は、もちろん責任は労働省でとりますけれども、そうした考え方でいまから先に進んでいきたいということを申し上げまして、非常に具体的なだんだんの御意見お伺いしましたことを私のほうから重ねて敬意を払います。
  171. 坂口力

    ○坂口委員 現在春闘のさなかでございますが、今年の春闘は、こういう社会の中で弱い立場の皆さん方をともに救っていこうという春闘でございます。そういう意味で、私たちもより一そう今年の春闘に賛意を表しているわけでございますが、何と申しましても、初めにも申しましたとおり、物価高、そういう中では、一番こういう人たちが多くの犠牲をしいられるわけでございますので、どうしてもこういう弱い立場の皆さん方に少しでも、一歩でも前進をした社会環境というものをつくっていかなければならないと思うわけでございます。そういう意味で、きょういろいろの提案をさせていただきました。  最後にお願いをしたいと思いますが、先ほど労働省をはじめ各省の雇用率をお聞きいたしましたが、ひとつ労働省をはじめとする雇用率の一覧をちょうだいをしたい、これをお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  172. 野原正勝

    野原委員長 小宮武喜君。
  173. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も身体障害者の雇用対策について質問します。  現在わが国においては心身障害者の数が、四十七年度調査によりましても大体百七十二万人といわれております。そのうち就業者というのは七十九万人で全体の四六%になっております。残り五四%の九十三万人は未就業者になっておるのであります。この未就業者の中で十万人ぐらいの人たちは、就職を希望しながらもいまだに職場が見当たらずに現在未就業者となっておるというのが現状でありますが、これは四十七年度調査結果でございますから現在ではどのように変わっておるのか、現在のこの心身障害者の雇用状況についてお伺いしたいと思います。
  174. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 身体障害者の中で未就業者あるいは求職者の状況でございますが、四十八年の三月末現在、ちょうど一年前でございますが、三月末現在で安定所に求職の登録をしておる人が十三万三千七百名でございます。その中で具体的に求職者として安定所に出頭して就職あっせんを受けようとしておられる方が一万三百四十六名ということでございます。  以上のような数字になっております。
  175. 小宮武喜

    ○小宮委員 この心身障害者の雇用の拡大、促進について国としてどういうような努力をこれまでなされてきたのか、その点も若干お伺いしたいと思います。
  176. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほど坂口先生の御質問にもございましたように、まずは身体障害者雇用促進法によりまして身体障害者の雇用率が設定されております。国、都道府県、こういった公共機関と民間、それぞれ雇用率が定められておりまして、まずはこの雇用率を達成するためにそれぞれの機関に呼びかけまして就職の促進をはかってまいっておるわけでございます。と同時に、そのために必要な援護措置といたしまして、税制面の優遇措置あるいは身体障害者を雇っていただいた場合には雇用奨励金を企業に支給いたしまして、一年間助成措置をとる、こういったような措置をとります。あるいは特別融資によりましてモデル工場を設定いたしまして雇用の促進をはかる、こういう各般の施策を講じてまいっておるわけでございます。
  177. 小宮武喜

    ○小宮委員 これはいまのような雇用促進対策だけではほんとうに雇用の拡大をはかるのは非常にむずかしいのではないかというふうに、私、考えます。  そこで、これは先ほどからの質問にもあったようですが民間事業所において、この心身障害者の雇用促進法で一・三%の障害者の雇用義務が義務づけられているのですが、いま何%の達成率になっておるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  178. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 民間企業におきましては雇用率一・三%ということが定められておりますが、現在の達成状況は一・二九%、ほぼ一・三%に近い線でございます。  ただ、問題でございますのは、全体の企業の中で約三分の一ぐらいの事業所がこの一・三%を達成いたしておりません。その中でも、先ほど御指摘になりましたように、五百人以上の大企業につきましては一・一七ということで、かなり下回っております。しかも半数近くが未達成という状況になっておりますので、今後私どもの身体障害者の雇用促進の重点は、こういった五百人以上の企業を中心に雇用率を達成させることにある、かように考えておる次第でございます。
  179. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も資料を見まして、大体民間全体としてはほぼ達成しておるんだけれども、特に、その中をまた分析していきますと、大体三百人以下の事業所ではほぼ雇用率を達成しておる。五百人以下を見た場合は、これもまずまずというところでありますけれども、五百人以上のところにやはり問題があるようです。したがって、その五百人以上のところではまだまだ法律できめた雇用率まで達成していない。これは原因を大体どういうふうに考えますか。
  180. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この身体障害者の雇用状況につきまして、現在いろいろと調査を実施いたしておりまして、まだ完全なデータが出そろっておりませんけれども、五百人以上の企業について見ましても、必ずしもどういう業種だから身体障害者を雇いにくい、どういう業種については雇用率が達成できているということではございませんで、同じ業種の中でも達成をいたしております企業もかなりありますし、そういったことから考えますと、やはり、何と申しますか、各企業の身体障害者の雇用についての関心の度合いが薄いか強いかということによって差が出てくるのではないか、こういうふうな感じが私はいたしておるわけでございます。まあ、職種、業種、作業内容によって身体障害者を雇うのはなかなかむずかしいというようなものも中にはございますけれども、一般的にはそういったことよりも、むしろやはり企業のそういった社会的責任を感じる度合いによってそういう差異が結果として出ているのではないか、こういうふうに感じておるわけでございます。
  181. 小宮武喜

    ○小宮委員 そこで、民間事業所の場合、確かに職種、作業内容によっては、やはりいま言われたような問題があると思うのです。それを産業別に見た場合、大体どうなりますか。その雇用率が産業別に見た場合にどうなりますか。
  182. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 産業別に見ました場合に、どの産業が特に雇用率の達成状況が悪いということには、あまり差異はないようでございます。
  183. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、国とか地方公共団体でも、この一・七%とか、また特殊法人では一・六%の雇用義務が設けられているわけですが、大体こういうような国とか地方公共団体あるいは特殊法人、こういうようなところの雇用率はどうなんですか。
  184. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 民間の一・三%に対しまして、国、地方公共団体は、それぞれ現業部門が一・六、非現業部門が一・七ということに定められております。  この達成状況を見ますと、全体としましては、国、都道府県、官公庁全部を含めまして、非現業部門が一・七一、一・六%が適用されます現業的な機関が一・六七ということで、全体としては雇用率を上回っております。ただ、この中で特に雇用率に達しておりませんのは、都道府県の機関がかなり下回っておりまして、都道府県の非現業部門が一・三、現業部門が一・三三、こういうことになっております。それはどういうことかということで内容を調べてみますと、都道府県の場合は教職員関係が含まれておりますので、こういった向きの、いわゆる教育委員会関係が〇・九一ということで、非常に低くなっております。それから現業部門につきましては、いわゆる公営企業関係が一・三三%でございまして、これが全体の雇用率の足を引っぱるような結果になっておるような状況でございます。
  185. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は考えてみまするに、いままでの雇用促進、雇用拡大の呼びかけというのは、ただ単に事業主を対象に呼びかけをやってきた。もちろん雇用していただくためには企業主の理解と協力はもちろん必要でございますが、私は、やはりもっと拡大していくためには、労働組合に対する呼びかけをやったらどうだというふうに考えるのですが、労働組合に対する呼びかけをやったことがありますか。
  186. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いままで企業に対するいろいろな方法を使って、勧奨あるいは強い場合警告を発するというようなことで呼びかけをやってまいりましたが、具体的に労働組合に対して直接的に呼びかけを実施したことはまだないように思っております。
  187. 小宮武喜

    ○小宮委員 私がそういうふうに申しますのも、特に五百人以上の企業というのがわりあいに雇用率が低いんですね。少なくとも五百人以上の企業というのはほとんどが労働組合が結成されているわけです。そうしますと、たとえ企業主の理解と協力だけを求めても、たとえば労働組合と会社、企業との間にはやはり労働協約なり就業規則が取りかわされておりますから、そういうような中で、たとえばいま現在おるそういった企業内部で障害者が出た場合は、これは問題なしに企業内にとどめていろいろな施策が行なわれておりますけれども、一たんこれを外部から新たに入れるということになると、この労働協約とか就業規則に抵触するし、また、たとえ労働組合が弱者の立場に立つ、先ほどから質問がありましたけれども、今次春闘労働組合は弱者の味方だ、弱者の立場に立つと言っておるけれども、現実にそういうような心身障害者を企業の中に新たに雇用されるということになると、やはりそこは抵抗を感じるのです。したがって私は、まず企業主の理解と協力も大事でありますけれども、やはり労働組合に対するそういった呼びかけを、これからは国としても地方公共団体としても、あらゆる促進協議会の団体としても、理解と協力を求めることが一番大事なのじゃないか、そうすることがおそらく労働組合としても、そういうような意味では、内心はどうであろうと正面切って反対できないと思うのです。いやむしろ協力をしなければならない立場にあると思うのです。そうすれば、企業と組合が一体になって同じ理解、協力の上に立つならば、私はこの身体障害者、心身障害者の雇用促進はさらに拡大される、こういうふうに考えるのですが、私の見解についてどうでしょうか。
  188. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 やはり議会というものはありがたいものでございます。こういう話し合いの中に先生のような御発言が出ると、私たちも勇気が生まれるわけであります。去年の十二月の十三日に身体障害者雇用審議会勝木会長から私あての審議会の答申がございます。その一番最後に、実はそのことに触れられております。「労働組合等の協力の促進」というところに、「心身障害者の雇用を促進し、職場適応を向上させるためには、職場における人間関係についての配慮が極めて重要であり、労働組合をはじめ職場の同僚の理解と協力が得られるよう連帯感の醸成に努めることが必要である。」こう実は御答申をいただいておったのでございますが、こうした席上において有力なる御発言をいただきましたので、私たちはさらにこの答申を推進するのに勇気が生まれた、こう感じているわけです。
  189. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も実際に障害者を雇用しておる企業にも行っていろいろな話を聞いてみました。いろいろ問題はあるようです。そこで、そういうように心身障害者の方々が企業で働いた場合に、一般の健康な人たちとの労働条件、かりに賃金なら賃金をとってみた場合に格差があると思いますか、ないと思いますか。あるとすれば、格差はどれくらいありますか。
  190. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 具体的にはいろいろなケースがございますが、各職場におきまして身体障害者の方々が就職されました場合に賃金格差は現実の問題として明らかに存在する、かように考えております。したがいまして、私どもはこの身体障害者の方を就職させる場合に、企業に対しまして一般的には本年度におきましては八千円、来年度これを一万円に引き上げるようにいたしております。重度障害者の場合は来年度一万一千円ということで雇用奨励金を支給いたしまして、それによって現実には賃金格差をできるだけ縮めていく、こういう方向努力をいたしておるわけでございます。
  191. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も雇用奨励金制度ができてからいろいろ行ってみたのですが、あれくらいの雇用奨励金程度では、それは慈善事業でなければなかなか雇用しません。したがって、私の現に知っている話も、仕事量がなくなったといった場合は、心身障害者の方々から先にやめてもらわれておるのです。だからその意味では普通の人と身障者の人との生産性の格差はどれくらいと思いますか。
  192. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 賃金格差は確かにございますが、生産性につきましてはそれぞれのついておられる職場、作業内容によっていろいろ差があると思います。現実にどれくらいの差があるか、その障害の度合いによっても違ってまいるんじゃないか。ただ私ども申し上げられますことは、先ほど坂口先生の御質問にお答えいたしました労働省で設置運営いたしておりますいわゆるリハビリテーション作業所と申しておりますが、ほとんど大部分が下半身麻律した脊損患者でございます。その人たちが精密機械等の作業に従事しておられます場合の賃金は、一年、二年たちますと、健常者の人たちとほとんど大差ないところにまで近づく実例もございます。したがいまして、その作業内容、職種によって、その格差の度合い、生産性の違いはかなりばらつきがあるんじゃないかというような感じがいたしておりますが、正確なデータは持ち合わしておりません。
  193. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、いろいろデータを持っておるのですが、もう言いません。ただ私もその場合に、そこの人たちに対して全部集まっていただいて激励をやってきましたけれども、何といってもやはり事業所が雇用を拡大していくためには、特に中小企業は、三百人以下の中小企業が多いわけですから、結局仕事量をどう確保するかという問題です。確かに理解をもって雇い入れたいと思っても、仕事がなければ雇い入れることはできません。それでまたいまのように中小企業がこういうような不況に見舞われて、たとえば資金の融資にしてもいろいろな問題で倒産をやっているわけですが、やはりまずは仕事量を確保すること、これを考えずに、ただ奨励金を何がしか渡して、それで雇いなさい、雇ってくださいといってみたって、いま言われるように、生産性についてもやはり格差があります。そうしますと、企業主のほうは営業ですから、やはりできるだけ五体健全な人を雇いたい。したがって、心身障害者の道が閉ざされていくということになりますので、その意味ではこれは官公需の確保ということをまず考えてやらなければならない。やはりもうこれが大前提なのです。だから、こういった心身障害者を雇用しておる企業に対しては、やはり官公需の確保をしてやるということが一番大事なんですが、その官公需の確保についてはどれだけの努力労働省はやられておるのか、またどれだけの実績があるのか、その点をひとつお伺いします。
  194. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 はなはだ残念なことでございますが、身体障害者を多数雇用しているそういった事業場に対して官公需の発注を優先的に実施する、このことにつきましては、各省庁の連絡会議等でこの指導方針でお願いはしてございますけれども、その実施状況につましては私どもまだ把握いたしておりません。  私どもの推測で実態を申し上げますと、先生の御指摘のようなそれだけの効果は必ずしもあがってないんじゃないかという感じを持っております。労働省におきましては、たとえば印刷物を発注いたします際に、対象の業者としては、そういった身体障害者を雇っているところに優先的に発注するというような扱いは、若干はいたしておりますけれども、全般的にこういった措置が浸透しているかと申しますと、これは私はきわめて否定的なお答えをせざるを得ないんじゃないか。そういった面につきましても、今後単に助成策あるいは融資によりまして、いろいろ身体障害者の作業環境をよくするとかいうようなことを実施いたしますと同時に 主として国の手でできる官公需の優先発注というようなことにつきましても、今後積極的に、前向きに検討をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  195. 小宮武喜

    ○小宮委員 局長はそういったことばを去年も答弁されておるのです。しかし、私は現実にそういうようなところを回ってみて、何もないんですな。これでは幾ら国が雇用拡大をやりなさいといってみたって、雇用する立場から見れば何もメリットがないわけです。したがって、もう何はさておいてもやはり仕事量を確保させる。そのためには、ただ、局長もここでいま答弁され、努力すると言われるけれども、これは労働省だけの考え方で、労働省だけの、一省の考え方ではどうにもならぬわけですよ。だからその意味ではこの問題は労働省も、たとえば特に建設省にしても、もう政府としてやはり一つの方針を出して、それで官公需を確保するためにはこうしなさいというようなことをやはり統一してやっていただかないと、そしてまた各地方公共団体に対してもそういうふうな指導をやっていただかないと、ただかけ声だけではいつまでたっても実効をあげることは非常にむずかしいと思います。ですからやはりこの際本気でそのことを考えていただきたい。  それともう一つは、いま言われたように、仕事量の確保と同時に、やはり資金の問題です。だから、たとえば銀行にしても、中小企業金融公庫にしても、政府関係の金融機関にしても、そういった身体障害者を法定の雇用率で雇用していたとしても、何ら特典も恩典もないのです。だから運転資金がなくなるとどうにもならぬということで非常に困って、そうなるとわれわれは実情を訴えられる場合があるのですが、だからそういった意味でも少なくとも、民間金融機関に対してもそうですが、特に政府系統機関の金融については、そういった企業に対しては特別の配慮を私はすべきだと思います。このことは今度の中間答申の中にも出ておりますから、今度のそういった中間答申を忠実に実行してもらいたい、こういうふうに考えますが、どうでしょうか。そういった金融上の融資の問題にしても、やはりここではっきり態度を明確に出していただかないと、ただから念仏に終わってしまうのではないかということを恐れますので、ここでひとつ大臣の明快な態度をお聞きしたいと思います。
  196. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 やはりアクションを起こすことが必要だと思います。中間答申にも出ていること、あるいはまた労働組合に対する協力の推進等々もございますし、さらには各官庁に対してさらにこういう方々をひとつ働いてもらうようなことも、多少はマンネリズムになっているという感じを私は持ちます。こうした御熱心な御討議、さらにはまた時代が時代で、社会福祉というものをお互いに超党派的に考えなければならない時代でありますから、本日のお話の中にありました各官庁の雇用率増進の問題、さらにはまた官需といいますか、そういうところが、たとえば労働省が印刷物を特別に心身障害者を使っているようなところに発注しているようなところを、よその役所もやっていただくように具体的に申し入れをするとか、あるいはそういうところにはこうした非常に経済的な変動期でございますから、きょうも閣議で年度末融資として、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等々五百五億円ほど出すという話なども決定し、市中銀行にも用意してはどうかという話も出ました。こういうときでありますから、やはり金融の面においても、雇用率を一定に達成しているようなところは特に注目して便宜をはかる、こういうふうなひとつ推進方を近いうちに私もアクションを起こして、皆さん方の御討議におこたえしたい、こう考えている次第であります。
  197. 小宮武喜

    ○小宮委員 特にわれわれの耳に入るのは、いろいろな中小企業に対しての金融措置を年末とかやります。やりますが、結局は担保能力がないと貸し付けない。また返済能力があるかどうかという審査をやって、貸し付けがだめになるというような問題があるのです。いつも政府は、中小企業向け、あるいはそういうふうな心身障害者を一定の法定雇用率を達成しているところには、何らかの補助をやりたいと言っているけれども、銀行そのものは、融資するほうは担保能力がなければ貸し付けません。また返済はどうかということも調べるわけです。それがなければ貸し付けません。だから実際は、ここでいろいろ答弁を聞くわけですけれども、実際にはそういうような人たちは融資の対象から漏れてしまって、やはり返済能力のある、そうして担保を持っておる、そのような人たちに貸し付けられるわけです。ということは、その人たちはそういうふうな中小企業の中ではまだいいほうで、ほんとうの零細企業の人たち、そういうような身体障害者を雇用しておるような人たちは、どちらかと言えば小企業、零細企業ですかう、その人たちに特別の配慮をやっていただきたい、こういうようにお願いします。  それからまた、答申でも税制上の問題がありますね、いまも質問も出ておりましたけれども。これについては、大体は障害者を三十人以上雇用する企業については先ほど割り増し償却の問題がありましたけれども、あれは四十八年度から実施するはずではなかったのですか。四十八年度から実施するやつがいまだに実施されておらぬということはどういうことなんですか。
  198. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 モデル工場の割り増し償却率の設定につきまして、四十八年度実施になっております。目下モデル工場の候補がすでに二、三あがっております。具体的に話が進められておる状況でございます。
  199. 小宮武喜

    ○小宮委員 私はそのモデル工場を対象とするだけではなくて——やはりいまの既存のそういうような企業をモデル工場として指定するのですか。私は考え方としては、現在そういうような身体障害者を雇用しておるそういうような企業を一つのモデル工場として指定をして、そうしてその企業に対するこういうような税制上の優遇措置考えるというように理解していいですか。
  200. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 たいへん失礼いたしました。私の説明が不十分でございまして、割り増し償却率の適用は、三〇%以上雇用している工場につきましては全部適用になります。そのほかに四十八年度から新しくモデル工場の制度をつくりまして、これは優先的にそういったものを実施いたしていただく該当工場について、別途融資あるいは税制上の優遇措置をとる、こういうことでございます。
  201. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、この身障者の方々の雇用促進をはかるために中央に社団法人の障害者雇用促進協議会がありますね。それからまた、各都道府県ごとに雇用促進協議会がいま設けられつつありますけれども、いま各都道府県でまだ全国的には設立が終わっていませんから、現在各都道府県に雇用促進協議会が設けられておる県が何県で、何県が設けられておりませんか。
  202. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現在の時点で各都道府県のうちで身体障害者雇用促進協議会、そういった団体が設置されておりますのは十府県でございます。来年度早々にはあと六県ほど協議会が設立される予定になっております。私どもは、来年度予算におきまして中央の協議会とこういった各都道府県の協議会につきまして、総額で五千万円程度の活動費といいますか、啓蒙宣伝費、そういったものを含めた助成金を準備いたしております。こういったことによりまして、全都道府県に雇用促進のための協議体ができますことを私どもはできるだけ推進してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  203. 小宮武喜

    ○小宮委員 まだ十府県くらいしかできていないということは、少ないですね。来年中設立の見通しがあるのは六県ということになると、まだまだ全体的に見れば半分どころか、三分の一弱ぐらいということで、私はもっと進んでおるのか、こういうように実は考えていたわけです。ところがいまのような説明からいくと非常に心細い感じがいたしますけれども、やはりそういうような努力はされているのだろうというように思いますけれども、一応まあ来年は六県、そのあとまたあなたまかせでということでは困りますので、一応のめどを置いて、各都道府県にそういった雇用促進協議会というものをつくって、それで縦の線、横の線、こういうようなものをつなぎ合わせていかなければやはり実際の効果はあがらないと思う。その意味で、各都道府県に促進協議会ができるのは大体いつごろの見通しなんですか。
  204. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私が六県と申し上げましたのは、来年の当初までにあと六県できる予定でおります。私どもはできるだけ全都道府県につくりたいということでございますが、四十九年度末までに大体二十県程度、現在の十六のほかにあと四県でございますか、二十県をこえるくらいにはいたしてまいりたい。で、今後二年間で、まあ三年後には全都道府県にこういった団体ができますように私ども努力してまいりたい、かように考えております。
  205. 小宮武喜

    ○小宮委員 局長、そのためにはこういった中央、地方の雇用促進協議会に対して、先ほどもちょっと触れられましたけれども、やはり国として助成をやるべきだと思うのです。これは実際でいえば、この中央の社団法人の障害者雇用促進協議会に対しても、いままで助成はなかったはずですよ。ことしからようやくつけたぐらいですよ。そういうふうなことでは、ぼくもこの人たちと会ったことがありますが、この人たちは自分の身銭を切って、自分の金を使ってそういうふうな各都道府県の協議会をつくるために奔走しておられるのです。国はただ一片の通達だけでつくりなさいとかいうことだけでは、ほんとうに国がそういうふうな身障者の雇用促進に本気で取り組んでおるかどうかということに疑問を持たれます。その意味では、今度ようやく何がしかの助成が行なわれるようですが、幾ら助成するのですか。
  206. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 四十九年度総額で五千万円程度予定いたしております。  いま申し上げましたように来年度中に二十県程度は団体を設立してもらいたい、かように考えておりますので、今後全都道府県に及ぼしていくにつれまして、助成の内容も充実してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  207. 小宮武喜

    ○小宮委員 それは、いまの中央、地方を含めて五千万ですか。これは初め労働省は大蔵省に対しては大体八千八百万の予算要求をしたのじゃなかったのですか。それが大蔵省から五千万に削減されたわけですか。
  208. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私は大蔵省に予算要求をいたします場合に、あまり水増しの要求をいたしませんで、確かに八千万ちょっと強の予算を要求いたしました。それで内容を詰める際に、来年度設立が可能だと考えられる都道府県の数、団体の数を一応詰めまして、二十県程度ということで、正確に申しますと五千六百万という金額に落ちついたわけでございまして、決して査定で削られたわけではございませんので、御了解いただきたいと思います。
  209. 小宮武喜

    ○小宮委員 それはどういうように分配するのですか。たとえば中央の社団法人がある、各府県ごとにある、それでその五千万はどういうように分配されるのですか。
  210. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 一応私どもは、中央の団体の活動費として二千万円程度、それから地方の協議会、先ほど申し上げました十六県でございますが、一県当たり二百万程度を予定いたしておるわけでございます。
  211. 小宮武喜

    ○小宮委員 何といいましても、やはり心身障害者の雇用促進をはかるためには、これはもう全国民の理解と協力を求めなければ効果をあげることは不可能なんです。その意味で、やはり雇用促進をはかるために私は国民運動として展開すべきだと思うのです。そこで労働省として、心身障害者の雇用促進の国民運動を起こすための何か具体策でも考えられておるかどうか。その点、いかがですか。
  212. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この身体障害者の雇用促進に限りませず、こういった民間の団体の育成策につきましてはいろいろと手を尽くしてまいっておりますが、御承知のとおりに、これを予算的に助成措置を講ずるということはきわめてむずかしいことでございまして、過去数年来関係者の間から強い要請がありましたのが今回初めて実を結んだ次第でございます。私どもは、この身体障害者の雇用促進につきましては、従来からも毎年国民運動を展開してまいっております、いろいろなキャンペーン行事を行なっておりますが、来年度はこういった団体の育成を加えまして、さらにいままでに倍加する国民運動を展開してまいりまして、企業に対する呼びかけ、国民一般の関心を高める、と同時に、先ほど御指摘になりました、安定所に登録しております十万の人たちが具体的に安定所に出てまいりますのは一万程度でございます。こういった人たちはもちろん、それ以外の未就業者につきましても、それぞれに適応した職場を確保するような努力を今後一そう充実させてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  213. 小宮武喜

    ○小宮委員 きょうはこれくらいで終わりますけれども、やはり特に大臣と、局長にもお願いしたいのは、大臣局長も非常に前向きの姿勢で取り組んでおられるということについては敬意を表したいと思います。したがいまして、いま答弁されたような考え方をやはり実際に実行していただきたいということを特に御要望申し上げまして、私の質問をこれで終わります。
  214. 野原正勝

    野原委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会