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1974-02-19 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十九日(火曜日)     午後二時三十八分開議  出席委員    委員会 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       大橋 武夫君    加藤 紘一君       瓦   力君    小林 正巳君       住  栄作君    田川 誠一君       田中  覚君    高橋 千寿君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       羽生田 進君    粟山 ひで君       大原  亨君    金子 みつ君       田邊  誠君    村山 富市君       森井 忠良君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         厚生政務次官  石本  茂君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君  委員外出席者         労働大臣官房統         計情報部長   青木勇之助君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     西村 直己君   小林 正巳君     根本龍太郎君   住  栄作君     倉成  正君   村山 富市君     多賀谷真稔君 同日  辞任         補欠選任   倉成  正君     住  栄作君   西村 直己君     加藤 紘一君   根本龍太郎君     小林 正巳君   多賀谷真稔君     村山 富市君     ————————————— 二月十五日  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号) 同月十四日  心臓病患者医療及び生活補償に関する請願  (粕谷茂紹介)(第一九一〇号)  同(粟山ひで紹介)(第一九一一号)  同(吉永治市君紹介)(第一九八一号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願有島重武  君紹介)(第一九一二号)  同(松本忠助紹介)(第二〇四三号)  社会福祉予算削減反対に関する請願本名武  君紹介)(第一九一三号)  医療保険制度改革に関する請願奧野誠亮君  紹介)(第一九一四号)  身体障害者生活保障等に関する請願有島重  武君紹介)(第一九一五号)  療術制度化に関する請願外三件(山下元利君  紹介)(第一九一六号)  同外三件(宮崎茂一紹介)(第一九一七号)  同外二件(安倍晋太郎紹介)(第一九七四  号)  同(黒金泰美紹介)(第一九七五号)  同外五件(灘尾弘吉紹介)(第一九七六号)  同外一件(丹羽喬四郎紹介)(第一九七七  号)  同外一件(根本龍太郎紹介)(第一九七八  号)  同(吉永治市君紹介)(第一九七九号)  同外四件(仮谷忠男紹介)(第二〇四四号)  同外十件(増岡博之紹介)(第二〇四五号)  社会福祉施設労働者労働条件改善等に関する  請願外一件(有島重武君紹介)(第一九一八  号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一九一九号)  同(伏木和雄紹介)(第一九二〇号)  同(新井彬之君紹介)(第一九八二号)  同外一件(瀬野栄次郎紹介)(第一九八三  号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二〇五六号)  戦時災害援護法制定に関する請願吉永治市君  紹介)(第一九七三号)  歯科技工士免許に関する請願大橋武夫君紹  介)(第一九八〇号)  同(小沢辰男紹介)(第二〇四六号)  同(久野忠治紹介)(第二〇四七号)  同(塩谷一夫紹介)(第二〇四八号)  同(住栄作紹介)(第二〇四九号)  同(田中正巳紹介)(第二〇五〇号)  同(中村拓道紹介)(第二〇五一号)  同(野田毅紹介)(第二〇五二号)  同(増岡博之紹介)(第二〇五三号)  同(粟山ひで紹介)(第二〇五四号)  同(毛利松平紹介)(第二〇五五号)  国民健康保険直営診療施設運営費改善に関す  る請願宇田國榮紹介)(第一九八四号)  社会福祉施設措置費国庫負担金交付基準引上  げに関する請願宇田國榮紹介)(第一九八  五号)  国民健康保険組合に対する療養給付費補助金の  定率引上げ等に関する請願外四件(谷垣專一君  紹介)(第二〇四一号)  保育所予算増額に関する請願増岡博之君紹  介)(第二〇四二号) 同月十八日  療術制度化に関する請願外一件(黒金泰美君  紹介)(第二〇八八号)  同外三件(宇田國榮紹介)(第二一三七号)  同外九件(加藤陽三紹介)(第二一三八号)  同外六件(木村武雄紹介)(第二一三九号)  同外五件(萩原幸雄紹介)(第二一四〇号)  同外一件(大原亨紹介)(第二一九四号)  同(木村武雄紹介)(第二一九五号)  同(佐野進紹介)(第二一九六号)  同(澁谷直藏紹介)(第二一九七号)  同外一件(橋口隆紹介)(第二一九八号)  同(福岡義登紹介)(第二一九九号)  同(村山喜一紹介)(第二二〇〇号)  同(石田博英紹介)(第二二二一号)  同外四件(床次徳二紹介)(第二二二二号)  同外一件(馬場昇紹介)(第二二六九号)  同外三件(森井忠良紹介)(第二二七〇号)  歯科技工士免許に関する請願竹内黎一君紹  介)(第二〇八九号)  同(菅野和太郎紹介)(第二一三四号)  同(塩崎潤紹介)(第二一三五号)  同(瓦力紹介)(第二一九一号)  同(橋本龍太郎紹介)(第二一九二号)  同(吉永治市君紹介)(第二二二〇号)  医療保険制度改善に関する請願外六件(小澤  太郎紹介)(第二一三一号)  同外三十三件(枝村要作紹介)(第二二一九  号)  同外十八件(田中龍夫紹介)(第二二七三  号)  国民健康保険高額療養費支給制度に関する請  願(井出一太郎紹介)(第二一三二号)  同(中村茂紹介)(第二二七一号)  観光地のごみ、し尿、汚水処理及び水道施設整  備に関する請願井出一太郎紹介)(第二一  三三号)  同(中村茂紹介)(第二二七二号)  心臓病患者医療及び生活補償に関する請願  (大橋武夫紹介)(第二一三六号)  保育所予算増額に関する請願武藤嘉文君紹  介)(第二一九三号)  社会福祉施設労働者労働条件改善等に関する  請願紺野与次郎紹介)(第二二〇一号)  同(寺前巖紹介)(第二二〇二号)  同(高橋繁紹介)(第二二六八号)  社会福祉予算削減反対に関する請願(渡辺三  郎君紹介)(第二二六六号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願  (佐々木更三君紹介)(第二二六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林正巳
  3. 小林正巳

    小林(正)委員 過日の委員会労働大臣からいろいろ所信表明を伺ったわけでありますが、本日、たいへん時間的な制約もございますので、能率的に簡単に伺います。  昨年末以来の石油資源問題、これはわが国の産業経済にとって非常に重要な影響を及ぼしておるということは当然でございますが、大臣所信表明においても、「経済の変動に伴う労働面への影響を最小限にとどめるため、事態に即応した万全の対策をとる考えであります。」こういうふうに言っておられるわけであります。  そこで、私はこのきびしい経済情勢のもとにあって、福祉優先の政策を定着をさせるために、雇用失業情勢見通しについて大臣のお考えをまず伺っておきたいと思います。
  4. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに最近の経済情勢は、私たち勤労者を守る立場にある者としますと非常に憂慮しているところであります。一部残業時間の短縮なども伝えられておりますが、御心配いただいております失業の問題につきましては、私は非常に日本雇用関係というのがそういう意味ではありがたい立場にある。よその国を見ますと、最近のアメリカが五・二%の失業率というときに、日本のほうは十二月で求人倍率が一・七、それから一月でもなおかつ一・七なんです。そういう環境に恵まれていることを将来ともに持続していこうというかまえでおりますことを、まず一番先に御報告申し上げます。
  5. 小林正巳

    小林(正)委員 しかし、ことしの政府の総需要抑制策などによって成長率は二・五%くらいに落ちるであろうという見通しが立てられておるわけでございます。そこで、いま現在の雇用あるいは失業面への影響というものは比較的少ないということでしょうが、こういう影響というのは時間差を置いてやってくるということだろうと思うのです。しかもその影響というのは、従来から高度成長の恩恵に恵まれない人たち、たとえば季節の出かせぎ労働者あるいは中小零細企業労働者あるいは再就職の困難な高年齢層、そういうところに集中的に影響が出てくるということになるわけでございます。そこで、こういう事態の変化に十分対応した対策を講じてもらわなければならない。さらに、これを契機として高度成長から安定成長への移行、最近のことばでいう省資源あるいは知識集約型産業への転換、こういう長期的な展望に立った雇用政策等きめのこまかい対策が大切になってくるわけであります。そういう点について大臣の見解を伺いたいと存じます。
  6. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 小林委員が案ぜられることを私も案じているのですが、先ほど申し上げたような状況であることに実は安心しているのでありませんので、どんな場合が出てきましてもそれに直ちに対応するというのが私たち責任だろう。そういう場合に一つの先例なども見ているわけであります。四十六年度にドルショックが起こったときに、記録を見ましても、われわれ議員といたしましても、当時非常に離職者が出るというふうなことで御心配いただいて、その当時いま私たちの持っているありとあらゆる制度を対応して準備を整えて、いろいろな諸施策をやった結果が御安心できるようなかっこうになりましたことなどもありますので、それらを参考にしまして、失業保険制度あるいは職業転換給付金制度を活用しながら機動的な職業訓練職業紹介を実施して、もしそういうことがあれば早期再就職に備えていきたい、こう思っております。  もう一つは、何といたしましてもいまから先は、ただいまこの国会に御提案申し上げて御審議いただきますところの失業保険制度抜本的改革といわれる雇用保険法案、こういうものなどを、通過した暁には適用させていただきながら体制を整えて、困る人のないようにやっていこうというふうな考え方を持っております。
  7. 小林正巳

    小林(正)委員 そういうことで、労働大臣としていまおっしゃったような決意でひとつ十分御対処を願いたいというふうにお願いをいたしておきます。  ところで労働者週休二日制の問題、これは労働時間の短縮という課題がきわめて重要な位置を占めておるということは言うをまちませんが、大臣所信表明演説で、週休二日制はいまや社会の趨勢になったというふうに言っておられる。昨年の二月の閣議決定された経済社会基本計画においても、昭和五十二年度末までにその一般化をはかるというふうにいわれておるわけでございます。しかしこの問題は、基本的に労使間の問題であるとしても、同時に中小企業そのものの問題であるということも忘れることはできないわけでございます。そこで、今日の時点における週休二日制の普及状況、あわせて週休二日制や労働時間短縮普及促進をはかるにあたっての大臣の基本的な考え方、特に中小企業で実施するといいますか、中小企業の中に普及さしていく方策について、大臣考え方をお尋ねしたいと思います。
  8. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 おっしゃるように、週休二日制については経済社会基本計画にあるとおりやろうとしているわけでありますが、労使が話し合ってやるという、それがだんだん行なわれつつあるということ。そしてもう一つは、今度の石油危機などのときは、私はやはり自分のところで働く諸君を離職させないというためにも、この際にぜひお願いしますという姿勢を示しております。それから中小企業の場合には、なかなか業主が自分だけでもやれませんから、これは集団的なかっこうでやってもらうという形をとりまして、来年度の予算にたしか一億八千万予算をとっておりますので、なおその中小企業のやり方などについては局長からも御説明させていただきたい、こう思います。
  9. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 週休二日制につきましては、ただいま大臣からも御答弁がございましたように、労使話し合いでそれぞれ企業の実態に即して進めていただくことにしておるわけでございます。特に中小企業の場合には、経営労務関係にいろいろなむずかしい問題があるわけでございますから、したがいまして、そういう意味困難純面もあると存じますけれども、中小企業労働者社会一般の進歩に取り残されることなく、福祉向上がはかられるようにすることが中小企業の発展のためにも必要なことだ、かように考えておりまして、このような考え方から、中小企業にはやはり実情に即しながら週休二日制の導入を進めていく。その場合に画一的でなくて、たとえば月一回の週休二日制から順次段階的に入っていくとか、そういったようなきめのこまかい指導をしてまいる、こういう姿勢指導をいたしておるわけでございます。  なお、大臣がいまおっしゃいましたように、集団労務改善をはかり週休二日制の導入をはかるような場合には、その集団に対しまして助成措置予算で行なっていきたい、かように考えて、来年度で申しますと約五百集団、一億八千万ほどの予算を計上いたしたわけでございます。
  10. 小林正巳

    小林(正)委員 ちょっと方向が変わるわけでございますけれども、三月一日から国鉄をはじめとするゼネスト的な政治ストが予定されておるわけでございます。組合側の発表によれば、今度の政治スト一つの要諦、柱というものは、国民的な要求——国鉄組合側の称するものでございますが、それと、スト権奪還ということが大きな柱になっておるようでございます。  そこで、労働省自体は、この国労要求の中におけるスト権奪還とその他の要求とのバランスをどういうふうにお考えになっておられるのか。これは労働省側が見た見方でございますが、それをちょっと伺わしていただきたい。
  11. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘の、三月一日に国労等公労協関係組合及び一部の民間組合で全一日のストあるいは半日のストライキ計画があることは御指摘のとおりでございます。その目的といたしましては、物価値上げ反対であるとか、あるいは対政府制度要求あるいはスト権奪還というような要求が掲げられております。しかしながら、私ども、関係組合の皆さまから一応の要求書はいただいておりますけれども、今後話し合いを続けようではないかという段階でございまして、その点は組合側でも理解しておるわけでございます。そのやさきに、三月一日にストライキをかまえるということ、そういう計画を発表されたことにつきまして、実は驚いているわけでございます。そういうストライキの実施は、これはいろいろILOの指摘を待つまでもなく、問題があるわけでございまして、まだ全部の計画が固まっておりませんので、具体的な行動は起こしておりませんけれども、二十一日には総理と四団体の会見もございまするし、組合側のリーダーに会いまして、良識をもって善処するように働きかけたいというふうに思っています。
  12. 小林正巳

    小林(正)委員 この種の予告ストは、いままでの例からいっても、最終的にはどうなるか、ちょっと予断はできないと思いますが、額面どおりに受け取れば、これはやはり国民経済生活にとってもたいへん大きい影響を及ぼすものだと思うのです。その大きな柱の一つスト権奪還問題ということになっておる。一方で、こういう労働省なら労働省所管にかかわる三公社現業労使関係というものは、いままで必ずしも信頼関係において欠くるところがあったのではないか。これはどろをなすり合っても始まらぬことで、現実の問題として、そういうことが関係のない一般国民の足その他に影響を及ぼしておるということは事実であろうかと思うのです。  そこで、労働大臣にお尋ねをいたしたいのですが、国労をはじめとする、そういう、労働省に限って言うならば、三公社現業との労使関係の中に信頼感を取り戻すといいますか、信頼感を確立をする方策はどこにあるか、そういう点について労働大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  13. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 国民生活に非常に直接的な関係のある、こういう労使の、三公社現業に与えられた責任というのは非常に大きいわけでして、私としますと、最近は、合理的な労使関係の形成が大事なことで、それが徐々にではあるけれども、そういういい方向に進みつつあるのじゃないかというふうに実は見ているわけであります。  おっしゃる三月一日のストということになりますと、私のほうとしますと、いい労使慣行をつくってもらうように努力することが一つと、それからやはりけがしないといいますか、非常に悪い環境、悪い面にならないように守っていく、そういうところが私たちの仕事だ、こう私は感じているわけです。でありますから、予定されたようなストで、それが政治ストというふうなことでけがでもするようなことになったらたいへんだという感じ方を持ちながら、一方、それほど国民生活関係のある交通関係でございますから、これはぜひ、どういう内容の要求であるかというものはだんだんわかってまいりますけれども、基本的なスト権等々の問題になりますと、これは公制察答申を得てからいろいろな会合をやっておるわけです。経営の問題もあれば、あるいは国会審議してもらう問題もあれば、予算の問題等々もありますので、これはなかなかやはりすぐきょうあす解決というのが生まれてこない。そういう関係からしまして、私は、やはり政治ストといわれるようなものが組まれて、こういう危機といわれて、みんなで何とかこういう物価高を押えていくというところに、そういうもので不測の事態でも起こったならばたいへんだという感じ方をもって、できるならばぜひひとつおやめいただきたいものだ、そうしてけがしないようにしてもらいたいものだ、いわんや、伝えられるところによると、三月一日あたりは全国で全部大学のあるいは学校の試験などがあるということなどで、これはぜひ避けていただきたいというのが私の偽らざる心情であります。
  14. 小林正巳

    小林(正)委員 非常に簡単に言って、これは理屈の問題ではなくて、一般国民から見ておって、違法スト処分処分撤回ストというふうなイタチごっこのごときものが続いておるわけですね。国民経済生活社会生活、そして具体的に言うならば、足について責任を持っておる政府として、それはもちろん違法スト承知でやる組合がいかぬということ、これは法律がある以上はっきりしておるわけです。しかし、そういうことで、けしからぬ、いやストをやるということを繰り返しておるということは、非常に不毛なことではないかというふうに思うのです。そうして現実に足に迷惑をこうむるのはそういう力を持たない一般国民大衆であるということを考えますと、野党皆さんは無責任でおられるからいいわけですが、(「何だ、無責任とは」と呼び、その他発言するものあり)責任ある立場にある行政の責任者として、これはやはり進んだ考えを持たなくちゃいかぬのではないか、私はそういう感じがするのです。いろいろたてまえはあると思うのですがね。その辺について、大臣、いまこれから三月一日を控えていろいろ折衝があるわけですから、言いにくい面もあると思いますが、可能な範囲においてひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  15. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、やはり世の中というものは常識の線を行くことがいいのじゃないか。どの問題でもそうだろうと思います。そういうことからしますと、おっしゃるように、かりに違法ストをやって、そしてそれは処分、そしてまた処分撤回ストというふうなことがずっと繰り返されるようなことであれば、これは一般論ですが、やはりこれは合理的ではない。そういうことからしますと、労働省としますれば、こういうような経済危機のときに、私が労働省に入りましてからお願いしておることは、国政全般として、何とか物価抑制に国全体がやってもらいたい。その中において、われわれは、賃金が上がったものがそのまま自分生活に入るようになってもらいたいということをいままでずっと主張しているわけでありまして、基本的には、まさに常識的な線をやっていくところに近代国家としての労使関係が生まれるし、そういう中から、初めてまた日本全体の生産なりお互いの福祉向上が生まれるのじゃなかろうかという感じ方を持っております。でありますから、総理に対しましても、労働団体と早くお目にかかりながら経済危機の問題を両方で話し合う、あるいはこういうときには、こうした大事なときの労使関係努力を、正しい慣行に向かって努力をしていくというふうな意味での、労使関係諸君との話し合いも実はようやく持てるようなかっこうになりまして、その前段には、御承知のとおり、経済団体あるいは新聞社の社長の皆さん方、たしかあすは放送関係という形なども、常識的な労使慣行をつくりたいという形で多少でも邁進しておるということを御理解いただきたい、こう思っております。
  16. 小林正巳

    小林(正)委員 大体労働大臣のお話はわかりましたが、非常に抽象的で、いまの段階ではその程度のお答えしかできないことはわかりますが、しかしこれは野党皆さんはもとより、あるいは学者の間においても、このスト権についてはいろいろな意見があります。たとえば、どうしてもスト権を与えては困るというような組合もある。しかし相対的な問題として、それほど縛らなくちゃならぬことはないのではないかと思われるような組合もあるわけでございます。そういったものを一括して禁止をしておるということに対して、さまざまな異論があるということは事実だと思うのです。これは三公社現業にかかわらず、一般国家公務員地方公務員についてもひっくるめた問題としてあるわけでございますけれども、そういう意見についてもう少し具体的に労働大臣——さっき私が申し上げたような相対的な関係が存在するかどうか、その辺をどうお考えになっておられるか、ちょっと伺いたいと思います。
  17. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは非常に大事な問題でございますだけに、公制審においても、公益あるいは労使ともどもにずっと長いこと研究されて、去年答申が出て、それを受けて立って、先ほど御説明申し上げたように事務次官クラス連絡会議あるいはまた各課長、係長というふうな会合をずっといままでやっておるわけでありまして、その間においては、ときにできるものからやろうとか、こういう場合には経営権がどうなるとかあるいは国会審議権がどうなるとか、予算の問題がどうなるとかいうふうないろいろなむずかしい問題があるために、せっかくいま御審議を願っておる。そうして、これはいつまでというわけにいきませんけれども、そういう公制審なりの三者での御議論の中に出たものを解明しながら前向きでやっておる。その結果はどういうふうな結論が出るか、この方々の話し合いなり何なりになってきますけれども、それを私のほうは見守っておる。いずれにしましても、そうなりますれば国会のほうの御審議なども受けることになると思いますが、そういう経過と私たちの心組みであるというところがいま御説明できる段階である、これを御了承願いたいと思います。
  18. 小林正巳

    小林(正)委員 大体私の質問はこれで終わらしていただきます。ありがとうございました。
  19. 野原正勝

    野原委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  20. 野原正勝

    野原委員長 速記を始めて、小林正巳君。
  21. 小林正巳

  22. 野原正勝

    野原委員長 ただいまの小林君の発言の中で、不穏当なことがあるとすれば、あとで善処したいと思います。  田邊誠君。
  23. 田邊誠

    ○田邊委員 インフレの中でもって国民生活は非常に困窮しているわけであります。しかも、この物価高あるいは物不足といわれるものが、実際には一部の大企業によって仕組まれた物価高だ、こういうふうにいわれておる。われわれは予算委員会等を通じて、その実態を明らかにするために現在審議を展開しているわけですが、こういう中でもって、国民自分生活をみずから守ろうとする立場というものは当然理解されてしかるべきであるというふうに思うのです。しかも、国民が困っておる中でもって大企業は大きな利潤をあげておる。こういうことが明らかになればなるほど、国民の怒りは高まってくるという状態であります。おそらく三月の決算期においては、九月決算期における状態に比べてさらに利潤が多くなるだろう、こういわれておる。一昨年の九月に比べて昨年の九月、主要な六業種をとってみれば、約三・五倍の利潤があがっておる。こういう状態から見て、われわれはこの利潤は国民に還元すべきものであると考えておるわけです。  したがって、そういう中でもってことしの春闘がいま行なわれておるわけであります。いわれるごとく国民春闘という、国民が実は大きな関心を持っておる春闘である。したがって、この春闘における賃上げの要求というのは、これは、いままでの通例の春闘における賃上げの要求とは私は質的に違うと思います。すでに公労委の公益側委員等の、いわば政府が委嘱している機関の公益の学者の中においても、二〇%以上の賃金引き上げは当然ではないかということを公然と言っておるわけであります。したがって、いわれるごときコストインフレ論はこの春闘に限ってはとり得ないと私どもは考えております。したがって、政府はこの状態の中でもって、労働者の当然の要求である賃金引き上げについて、これはやはり認めるという立場に立って問題の処理に当たらなければならぬときがきていると私は思うわけですが、労働大臣の所見はいかがでしょう。
  24. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 最近の異常な物価高、これは全国民が非常に困ってもおりますし、それだけに、また与野党ともども、物価抑制ということで非常に熱意を示していただいている、私はこう思っているわけでございます。政府はもちろんことしの予算編成にあたって、従来にない一九・七%という非常なシビアな総需要抑制をやっております。それというのも、物価抑制というたてまえからきているわけでございます。そしてまた国会が開かれますと、おっしゃるようにいろいろな角度から議論をされまして、その議論の中には直ちに物価抑制に効果をあらわすような議論なども出ているということでございますので、私はまず第一、ほんとうに国民的総努力物価抑制に取り組む。それからその次に出ているものは、ただいま田邊さんのおっしゃったような賃金の問題になりますけれども、これは御承知のとおり政府が直ちに介入するものじゃなくして、労使話し合いでいくのが従来の慣行でもございますので、私のほろから、物価が上がっている場合のそういう方々の生活の問題ということは当然考えなければならぬということはわかりますけれども、率とかそういうものは申し上げられる筋合いでもございませんので、その際に私は、やはりこういうときであるから、まさに平和なうちに、国民経済考えながらひとつやっていっていただきたい、こういう感じ方をもって、そのために、できることならば、たとえば総理との会見あるいはまた経済団体と閣僚との会見というふうないろいろなところを活用しながら前進させてまいりたい、こう思っているわけでございます。
  25. 田邊誠

    ○田邊委員 物価抑制をしなければならぬという国民的な要望に沿って政府は手を打たれておると言いますけれども、実際にはその効果はあがっていない。特に憂慮すべきは、消費者物価の値上げだけでなくて、卸売り物価の異常な値上げである。この卸売り物価がすでに三〇%以上、昨年の暮れでもって二九%、今年に至って三四%まで上がっている。何カ月かたてば、またこれが消費者物価にはね返ってくる。こういう状態を見れば、この四月から五月、六月とかけて物価の値上がりが続くことは、これは当然の成り行きだと思う。したがってわれわれとしては、こういう状態の中でもって賃金引き上げを要求することはもう当然ではないか、こう思っている。しかし大臣はいま、自主的な交渉にゆだねるべきであるという原則を言われた。われわれもそのとおりだろうと思うのです。しかしその反面において、政府がこの賃金引き上げの熾烈な要求に対してこれを抑制するような、規制するような立場はとるべきでない、このことだけは言えると思うのであります。労使の自主的な解決を見守ると同時に、労働者の当然の要求であるところのこの賃上げに対して、政府がこれを押えるような立場に立つ、こういうやり方は厳に戒めるべきであるというふうに思っておりますけれども、これはどうでしょう。
  26. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは労使の自主的な交渉であるということをお認めいただいたあなたにいまのような御発言、そのとおり、私も御注意として承っておきます。
  27. 田邊誠

    ○田邊委員 したがって、そういう立場で、政府がこの賃金引き上げを認める方向でもって対処しなければならぬということはお認めいただけると思うのであります。したがって、今年は二十一日に総理以下労働大臣も入って、労働団体とのいわゆるトップ交渉が行なわれるという状態でありますが、いま言った当然の要求はこれを認め、その中でもって問題の解決をはかる方向でもって政府努力する、こういう成り立ちにならなければならぬと思うわけです。したがって、賃上げを押えるようなこういう考え方、たとえば一方において総需要抑制をしています、実は物価の抑制をいまはかっているのです、したがって労働者のほうも節度ある賃金問題に対する態度を示してもらいたいというようなことが往々にしていわれるのですね。いま私が申し上げたような立場に立った賃金の引き上げを抑制するような、こういう考え方を披瀝されるということになれば、これは非常に重大問題だと思っているわけでして、政府のトップ交渉に臨む態度を協議されるそうでありますから、労働大臣が、いま私が言ったのは理の当然であるという立場でぜひひとつ労働者要求を受けとめる、そして問題の解決に当たる、こういう方針を打ち出されることを強く望んでいるわけですが、いかがです。
  28. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 総理と四団体の会見が明後日いよいよ行なわれるわけです。これは総理の施政方針の演説の中において、春の賃金改定期を迎えて、労使ともども国民経済的な視野に立って、これは労使ともどもに節度のあるところでいこうじゃないかという話が出ておりまして、これはごらんのとおりございます。ですから、私は四団体との会合に当然出席して、どちらの意見も聞きますが、そういうたてまえで平和なうちに、そして国民全体が——こういうものはただ労使だけにあらず、うしろにいる国民の理解を得なければいかぬというふうなたてまえで、広い立場からひとつ見守っていきたい、こう思っております。
  29. 田邊誠

    ○田邊委員 先ほどの大臣の答弁の中にも、それから労政局長の発言の中にも、近く労働組合ストライキをかまえている、これは政治ストであって困ったことだ、こういう御発言がありました。先ほどの発言では、野党は無責任立場をとるようなお話だったけれども、私どもはストは決して歓迎するものじゃない、できればストライキはやらないでもらいたいと私は思っていますよ。したがって、労働組合に対しても、私は私なりの立場でもって、ストライキは回避できるものならば回避してもらいたいと強い要請をしています。しかし、問題は、政府がこれに対して明確な態度を示し、それで最大の努力をする立場をとらなければ、これはストライキもやまらないでしょう、問題の解決にもならぬでしょう。したがって、まず二十一日のトップ会談において、政府は積極的な姿勢を示す。これがまず問題の解決の糸口をつかむことになる、こういうふうに私は思っておるわけでありまするから、要求は出されるでしょうから、それに対して誠意ある態度を示すということが、私はぜひ望ましいと考えておるわけであります。そうした立場で、あなたが総理等とも相談をされて、明確な態度をひとつ打ち出してもらいたいということを強く望んでいるわけであります。おわかりですね。
  30. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだんの御注意、私もそのとおりと思っております。問題は当日正式に労働団体からいろいろな意見書といいますか、それが出てくると思うのです。当然私のほうに直接関係あるものもあるでしょうし、国政全般関係あるものもあるんじゃなかろうか、こういうふうに思っておりますから、私は、従来ともに平和な環境をつくるためにはどうしたらいいかというたてまえをとってもまいりましたし、いまから先もとっていくことが私の役割りじゃないかと思っておりますから、すぐできるものがあるか、できないものがあるか、その辺のことはありますが、いまのような気持ちで見守ってまいりたい。ですから、田邊さんも三月一日のストには自分もなるべくならやめてもらいたいという御意向のようですが、これはもう私などもそういう意向を特に尊重しながら、ぜひひとつ説得のあるところをお願い申し上げたい、こう思います。
  31. 田邊誠

    ○田邊委員 ですから、これは労働組合側も、政府の前向きの姿勢が示されれば、戦術ダウンしてもよろしいといっているのですね。これは何も硬直した形でもって、すべてスケジュールどおりいこうというのじゃないのです。そういうことを踏まえてみれば、どちら側からこれは積極的な発言が出ることが問題の解決になるかということは、おわかりのとおりだと思うのです。そのことを私は二十一日以降、政府労働組合とも接触される、いろいろと会合にも出席される、こういう状態の中でもっていま私が申し上げたような立場をぜひひとつ出されるように、いまから強く要請しておきたいというふうに思っておるわけであります。  今度の春闘は、賃金引き上げは当然あります。それと同時に、いわば組織労働者の賃金引き上げの要求だけでない、他の要求があると思うのです。大きく分けまして二つあると思うのです。一つは何といってもいまのインフレを収束してもらいたい。さっき大臣が言われました。それにはいろいろな手だてがあります。きょうは労働大臣に対して私がそのことに対する解明をすることは避けたいと思いますけれども、このインフレを退治してもらいたい。そのためには原価の公表もございましょう、あるいは流通機構における利潤を吐き出してもらいたいということもありましょう。あるいはいわゆるカルテル行為をやめてもらいたいということもありましょう。そういう政治的な要求がいろいろあることをぜひひとつ頭にのみ込んでいただいて、あなたの所管でなくとも、労働者要求を受けとめる窓口の大臣として、それらのいわゆるインフレをぜひ撲滅してもらいたいというこの要求に対して、政府がこたえるという施策をぜひ推進してもらいたいことを一言だけ言っておきます。  もう一つは、賃金引き上げと同時に、いわゆるいま言ったインフレの状態ですから、賃上げをしてもその効果は下がる、なくなるということで労働者は困っている、国民は困っておるわけですね。そういう中でもって、特にいわば低所得の方々、生活保護の方々やあるいは公的年金の受給者の方々やあるいは身体障害者の方々、そういう非常にお困りの方々、この方々に対する手当てを一体どうするかということが一つのまた大きな課題なわけです。労働大臣の直接の所管はただいま失対賃金ぐらいだろうと思うのですけれども、他の問題はあるいは他の所管かもしれないけれども、この問題に対してもやはり誠意ある態度を政府が示されるということが必要になってきているのではないかと私は思うのです。労働者側も自分たちの賃金だけ上がればよろしいという立場では、これは現在の全体の水準を引き上げることはできない、こういう使命感に燃えているわけでして、私はその意味一つの特異な春闘であると思っているわけですけれども、そういった点で大臣は対処される必要がある、こういうように思うのですけれども、いかがですか。
  32. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに日本労働者皆さん方というのは、私は、非常に働く諸君であるということをどこへ行っても宣伝しているわけです。そういうことからしまして、今度の春闘においても、国民春闘という名前を使っておりますが、直接的には組織労働者というのが千三百万ぐらいですか、やはり未組織者もおれば中小企業もおれば、それからその次にはあなたがおっしゃった生活保護あるいは谷間の人々あるいは年金受給者、こういう方々がおると思うのですね。ですから私は、やはり近代国家とすれば、組織された人々だけが進むんじゃなくして、ほかの方々もやはりレベルアップされるような姿で政治全体が進まなければならぬのじゃないかという感じ方、私自身もそういう退職公務員とかそういう方々をお世話申し上げておりますから、実体論としては、私ども労働省直接の所管ではなくとも、国全体の姿としてそういうものになっていくのが、やっぱり私たちが言うておる福祉国家だろう。これをどこの点を、どの率がどこということになりますと、これはそれぞれ分野がありますから、すぐに私は御仮事できませんけれども、そういう方向であるというたてまえをとっていくというところを御信頼いただきたい、こう思うのです。  それと同時に、これはざっくばらんでございますけれども、たとえば去年の十一月ですか、石油法案それから国民生活二法案が通過したあとで、労働団体の方々四団体と私たちがお目にかかりました。そのときにその諸君からいろんな案を出されました。産業政策等とかいろいろなものを書かれておりましたから、私は、やはりこういう皆さん方団体としての責任のある方々の意見というものは、いただいた私がもちろん読むこともさることながら、ほかの閣僚諸君にも読んでもらおうと思って、私の名前でほかの閣僚諸君にもそれをずっとお配りして、こういう考えのあるというととろを御理解いただきたい。そしてまた一番大事なことは、私は外でいろんな動きなどもあるものを、こういう委員会において御審議をいただきながら、国会の場でこうお進めいただく、そして私たちもここで話をして、こっちの持っている事情などもときには御理解いただく、そして皆さん方のお話もこういうふうに聞く機会を得て、それで一歩でも二歩でも前進していくというところに私のつとめというものがあるんじゃなかろうか、こう思っておりますから、御理解のほどを願いたいと思います。
  33. 田邊誠

    ○田邊委員 これはあとでひとつ厚生大臣にお聞きをするのですが、ちょうど厚生政務次官がきょうお見えですから、特に年金等こまかい話はきょういたしませんけれども、昨年の厚年、国年の改正によって物価スライドが実現をしたわけですけれども、これは一年おくれ、しかもそれに追いつかないような現在の状態の中で、何らかの手当てを講じなければ、この年金受給者なり生活困窮者が困るというのはあなたも御存じのとおりだと思うのですね。特に施設に入っている人たち、お年寄りなり身体障害者また現在非常にお困りの状態です。これに対して政府が何らかの手当てを講ずることがなければ、私は、政治の不信を解消することはできない、こう思っておるのですけれども、どうですか、政務次官。あなたの立場で御発言があればひとつ承っておきたい。
  34. 石本茂

    ○石本政府委員 私がただいま参りましたのは、田邊先生から年金に関する問題でということで参ったわけでございますが、先生申されますとおり、これは思いがけないということばを使ってはいけませんが、現下の情勢を見ておりますと、物価はウナギ登りでございますし、ほんとうに生活の中の弱いところに大きく波がぶつかってきておりますので、このままでは相なりませんということで、私が出てまいりますときにも、大臣社会局長と一生懸命にこの問題をどう詰めていくかということで御詮議中でございましたことをお伝え申し上げます。  以上でございます。
  35. 田邊誠

    ○田邊委員 また具体的な問題を煮詰めていきますので、ひとつぜひ、いま大臣が何か一生懸命研究されているそうですから、それをまたあとで承って、政務次官の努力もぜひお願いしたいと思います。  春闘におけるもう一つ要求は、労働基本権の問題であります。  昨日労働団体会合いたしまして三大要求というのを掲げておるわけですが、これに加えて労働基本権の問題も、政府に対する緊急要求として入れることがきまったというふうに聞いておるわけです。どうしてもこの労働基本権を解決することが焦眉の急になってまいりました。これは、経緯はいま大臣が答弁の中においても言われているとおりでありまして、長い間の懸案でありました、ILOでも取り上げられた公制審答申もあるという状態の中でもって、これに対処するという状態が必要になってまいっておりますけれども、私は、この公制審答申の中における全般を流れるものは、これは現在の状態のままでよろしいとは考えない、したがって、何らかの制度改正をしていく中でもって、特に公共部門におけるところの基本権については考慮すべきである、解決をすみやかにすべきである、こういう趣旨であろうと思うのです。そしてまた、ILOはたびたびの提訴に基づいて数度にわたるところの報告、勧告をいたしておるわけであります。つい最近の百三十九次の結社の自由委員会における報告を見ましても、この争議権の問題については何らかの手当てを講じなければならないという立場をとっておるわけでありまして、いわゆる包括的にはこの争議権は合法的な手段として認められておるという前提に立ちながら、労働者に対するところの適切な保障がなされなければならないということを言っておるわけであります。そして、公務員のストライキについても、政府はしばしば人事院があるからと言ってきたんですけれども、ILOは明確に、現在の法制というのはいわばこの紛争の調停及び仲裁に関する規定を設けていないと実は言っておるわけであります。したがって、これに対するところの機関が何らか設置されなければならぬという国際的な勧告を受けておると私は思っておるわけであります。したがって、そういう立場に立って、この争議権の問題は、官公労の諸君あるいは公企体の諸君に対して早急の機会に必ずこの回復をはからなければならぬ立場政府は立っておると、私は基本的に思うわけです。これに対する政府の対処のしかたは一体どうなのかということをお聞きしておきたいと思います。
  36. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ILO結社の自由委員会の報告に対しては理解し慎重に対処するというのが、従来からの政府の方針でございます。昨年十一月のILO結社の自由委員会の百三十九次報告ですね、これは三公社現業のうち、一部の公社現業——専売公社、印刷事業、造幣事業及びアルコール専売事業の職員の争議権に関する状況を再検討することが望ましいという趣旨のことを述べておられることも御承知のとおりだと思います。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕 ですからこの報告書は、基本的には、公共部門の労使関係の諸問題については公制審答申にのっとり、国内において自主的に解決すべきであるという趣旨のものと理解しております。したがって政府といたしますと、公制審答申に基づいて国内において自主的に問題を解決するようにつとめる方針で対処しておるところでございます。  なお、そういう検討の時期については、先ほどもちょっと触れましたけれども、何さま重要であり、非常に広範で困難な問題などもありますので、いまこの段階で、いつどうするのだということを申し上げることのできないのが非常に遺憾でございますが、御理解いただきたい、こう思っております。
  37. 田邊誠

    ○田邊委員 政府が直ちに官公労、公労協の諸君の争議権の問題に対して明確な態度をとり得ないことは非常に遺憾であると思っておるのです。  いま具体例を出されましたけれども、私はこれは一つの例示だろうと思うのですね。したがって、これらを一つの規範としながら、全体的な立場に立ってこれを拡大をしていくという方向をとるべきである、私はこういうふうにも思っておりますけれども、それさえもまだ具体的な検討に入っていないことはきわめて遺憾であります。したがって、そういたしますと大臣、このスト権の禁止法令というのは、いつの日にか、これは段階を経る場合もあるでしょうし、また一挙に解決しなければならぬ場面もあると思いますけれども、これに対する撤廃はいつの時期になったならば一体明らかになるのでしょうか。いつの時期になればこの政府の態度は固まって、具体的な方向に行くのでしょうか。その方向ぐらいは明らかにしたければ、暗中模索で、いつまでたっても暗やみで足踏みをしている状態ではならぬ、こういうふうに思っておるわけですが、具体的な検討はどういう形でやられるのか。どうでしょう。
  38. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 なかなかむずかしい問題なので、いつどの部面をどうこうというふうなことをここで直接お答えできないのが遺憾でございますが、御研究願っていることはあなたも御承知のとおりでございます。考え方によれば、やはりいろいろなことがありますから、中にはできるものからやってもいいじゃないかというふうな議論も出ていることを承知しております。それをどうはかって、いつの時期ということになると、これはまた非常に考えなければならない、全体の問題もございますから。そういうふうなことで、足踏みといっても、サボっているということじゃなくて、研究しているということは御理解いただけると思いますので、この辺のところでひとつ御了承願いたい、こう思っております。
  39. 田邊誠

    ○田邊委員 これは研究は長い間しまして、その結果公制審答申が出、そしてたびたびILOの報告なり勧告が出されているという状態ですから、政府の見解も示されている。私は、政府の見解自身はきわめてうしろ向きな見解であると思います。特にILOの百三十九次報告に対する、当時発表された政府考え方というのはきわめてゆがんだ考え方に立っているというふうに思うのです。それにしても、なすべきことはたくさんあるわけです。いま大臣は、やれるものからやっていく、これはけっこうでしょう。これはぜひやれるものからやってもらいたいと思うのです。したがってそういう法制的な努力というものを、これは一年も二年もかけてやる必要はないと思うのです。私は労政局長の手元にはその青写真はできていると思うのです。問題はそのボタンを押すか押さないかにかかっている。それをあなたが押すという時期は、私ははそんなに遠い機会ではないと思うのですよ。ですから、今度の春闘の一つの課題でもありますけれども、それを離れても、この問題に対してばいわばこの国会中なら国会中にあなたがその方向について明らかにする責任がある、こういうふうに思うのです。実はこの報告に対する本格的な論議は、公制審答申以来国会の当委員会でまだなされていない。でありますから、私はいずれまた時間をかけてこの中身についてもいろいろと分析をさしてもらいたいと思う。しかしいわゆる包括的な意味におけるところの前進の方途というのは示す必要がある、こういうように私は思うのですが、どうでしょうか。ひとつ、この国会も四月の二十九日まででございまするけれども、それまでの間に何回となくあなたにお聞きしまするから、足踏みしているのじゃないと言われるならば、そのつどあるいは前進の御発言が承れるんじゃないかと期待をしておりますけれども、どうでしょう、そういった点で具体化するような方向というのが今国会においてとられるものでしょうか。
  40. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 非常に大事な問題について、有力なあなたからいまのようなお話のあったことも参考にしながら、内部で私もまたもう一ぺん勉強し直します。
  41. 田邊誠

    ○田邊委員 私はひとつぜひ——この問題に対しては内容を一つ一つお聞きすればするほど、政府はやらざるを得ないと私は思うのです。きょうは包括的なお話しかできませんけれども、逐次またいろいろとお伺いしていきまするから、それまであなたの勉強の成果なり、決意の表明というものがだんだんなされなければ、私はこれは前進にならぬと思うのですよ。そういった意味で、ひとつぜひこれはお願いします。私のほうから問題の提起をいたします。具体的に解決のできるところは解決するという考え方に立ってやってもよろしゅうございますから、そういった点でひとつぜひ合意のある結論を得られるように、いまから強く要請しておきます。  そしていま大臣はせっかく勉強されておるわけですが、現実ストの禁止をするところの法律がある、ストを規制する法律がある。しかしその中においても現に、法律改正ができなくてもやれることがあると思うのですね。たとえばいろいろな争議行為がなされる、ストライキがなされる、それに対するいわゆる刑事罰からの解放は逐次なされてきておりますけれども、またうしろ向きの裁判もある。問題は行政罰、懲戒処分、こういう問題に対しては現在禁止規定がありますけれども、政府はひとつ前向きの姿勢でもって、これに対しては懲戒処分をしないというようなことは当然できることであります。そしてまた、これはILOにおける報告においても、処分を科することがストライキ発生ごとに不可避なものであると考えるべきでない、こういうきわめて前向きの報告が実はなされ、弾力的な態度が労使間に非常に有効な作用を及ぼすという、こういう発言もされております。したがって、そういった点で懲戒処分を行なわない方針は打ち立てられると私は思うのであります。これはいかがでしょう。  それともう一つは、これから先の問題もさることながら、過去においていろいろな過酷な処分がなされた。これに対しては、だれしもが異論を差しはさむことのできないほどILOは、いわゆるキャリアに対する不利益な結果について、政府に対してたび重なる提案を行なっておることを想起してもらいたいと注意を喚起しておるわけであります。いわば日本におけるところの懲戒処分というのは、いわば永久的にこれがついて回るような処分である。昇給昇格にも、あるいは退職の場合におけるいろいろな諸条件にも影響してくる。こういう社会的な制裁というものがまつわっているのは、これは世界的に許せない、こういうことでございまするから、この過去におけるところのいわゆる処分に対する実損回復、これはひとつ全面的な立場でもって無作為に、無差別に回復の措置をとるべきである、こういうふうに思うのですけれども、もちろんそういうと労政局長は、つい最近全林野に対する仲裁裁定がなされたじゃないか、こういう話もありましょう。しかし私は、現在いわゆる組合が別れておる、いろいろな労使関係がむずかしくなっている状態の中でもって、単純にいわゆる特昇制度を持ち込むことについてはいかがかと思うのです。したがって、原則的には無差別な回復がなさるべきである、こういうふうにも思っているのですが、ひとつこれから先の懲戒処分は行なわないという原則と、過去の実損回復に対するところの明確な態度をとるという、このILOの趣旨に沿った政府の態度を打ち出さなければならぬことじゃないかと私は思いまするけれども、この二つについて一括してお伺いします。
  42. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 大事な問題ですので、慎重にお答えしたいと思います。  何といっても、法律の明文で禁止して、それに違反したものを全然処分しないということはできないと思うのです。しかし、その処分につきましては、昨年政府と春闘共闘委員会との間の合意ができまして、公正慎重にやるということでいろいろ話が煮詰まっている、また進んでいることも御承知おきのことだ、こう思うのです。それから処分に伴う昇給延伸の回復の問題、先ほども全林野の話なども出ておりましたようですけれども、それぞれの労使の間で話し合いが進んでおりまして、昨年の春の、先ほど申し上げた春闘共闘と政府と、その後総評の間の事務的レベルにおいて引き続きずっと協議が進んでおるというふうに私は了承しております。  なお、こまかいことについては局長からお答えいたします。
  43. 道正邦彦

    道正政府委員 大筋はただいま大臣から御答弁があったとおりでございます。当面の責任者といたしまして、二つの問題につきましては、関係組合あるいはナショナルセンターと現実に何回か折衝し、協議を重ねております。三公社現業の中にいろいろ事情がございまして、たとえば国鉄におきましては、特別昇給制度の運用によりまして回復措置が講ぜられていることは御承知のとおりでございます。現在郵政事業と国有林野事業におきまして、特別昇給制度がございません。そのうち国有林野につきましては、先般昇給延伸の回復問題も含めまして、特別昇給制度について公労委の仲裁裁定が出されております。これは先生から御指摘ございましたように、関係組合の間で意見が必ずしも一致いたしておりません。しかし、三者構成の公労委の仲裁でございますので、これを尊重して、その線で問題を解決していただくのが妥当ではないかというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
  44. 田邊誠

    ○田邊委員 大臣、大体大筋はわかりましたが、過去の実損回復は、私はやはりいいサゼスチョンが労働省からあるべきだと思うのです。いま言ったいろいろな仲裁裁定の問題もありまするけれども、よりいい意味におけるところのサゼスチョンはやってほしいと思うのです。これは労働省の役目だと思うのです。したがって、そういう意味合いでもってナショナルセンターとの話し合いももちろん必要ですけれども、個々の事例について当然労働大臣が公正にして善意な勧告はやるべきだ、これはやりますね。去年確かに春闘以来いろいろな合意があった。しかし、相変わらず処分が行なわれているという事態の中でもって、過去の問題についてはいろいろな弊害の起こっていることは疑いのない事実ですから、それに対してよりいいあなたのほうからの話はしてよろしいんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  45. 道正邦彦

    道正政府委員 私ども、関係組合あるいはナショナルセンターの代表者の皆さんと腹蔵ない意見の交換をいたしております。仲裁裁定が出たという現実がございますが、協議は重ねていくつもりでございますので、関係者の意見も十分聞き、せっかくの仲裁裁定が出ましても、労使の理解、協力がなければ運用よろしきを得ないことは当然でございますので、そういう意味も含めまして、引き続き関係者との協議を詰めてまいりたいというふうに考えております。
  46. 田邊誠

    ○田邊委員 春闘に対する問題は引き続きまた当委員会において論議を重ねさしていただきたいと思いまするし、ひとつそのつどさらに具体的な、前向きな答弁が大臣からあることを私は期待しておきまして、きょうは原則的な面であなたの誠意は私はわかりました。これはやはり具体化されなければなりませんので、ただ単に抽象的なやりとりではなくて、どうぞひとつこれが問題の解決のための手だてになるように一そうの努力をしてもらいたいというふうに思います。実はきょう雇用問題についてのいろいろな質問をしたいと思ってまいりましたが、時間がございませんからきわめて端的な質問だけに終わると思いますけれども、簡単でけっこうでございまするから……。  日本雇用というのは非常に不安定な状態というものがあるということは大臣もおわかりだろうと思いますが、特に国内的に見た場合に、国内的な要因として日本雇用が非常に不安定であるという要因は何でしょうか。
  47. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 日本雇用の中でいろいろ不安定要因がございます。これはたとえば雇用対策法の規定におきましては不安定な雇用状態の改善をはかるということが規定されておりますが、ここで不安定な雇用といっておりますのは、一般的に申しますと、臨時工とか日雇い労働者とかあるいは季節出かせぎ労働者あるいはある意味では最近ふえてまいりました女子のパートタイマー、こういったものが主として指摘されるかと思います。あるいはその他中小零細企業あるいは下請企業等で働いておられる労働者の方々、こういった者が該当するのではないか、こういうふうに思います。
  48. 田邊誠

    ○田邊委員 まあこれはあまりやりとりができませんが、いま安定局長が言われましたように、私は何といっても第一には経済の二重構造からくる一部の中小企業、零細企業、商店、こういった産業に対するところの雇用が非常に不安定であるということはいまお話しのとおりです。  それから第二は、やはり人口構造の変化と雇用政策が一致しない、こういう点があろうと思うのです。あとでお答えをいただくところの中高年特に高年層あるいは女子、こういった者に対するところの雇用が一定をしない、こういう面があると思います。  第三番目には地域的な経済力の格差というものが、雇用に対する一つの偏向を助長してきたという点があろうと思うのです。これらが相互に関連をしながら、日本雇用をなかなか安定させないという要因だろうと思うのですね。そういう国内的な要因があるところへ、先ほどの質問にもありましたけれども、石油危機等の国際的な要因が加味されている。本来日本はやはり原材料が乏しい国でありまするから、これを外国から持ってきて加工して輸出をするという、こういう加工型の国であります。したがって国際的な経済とのからみというものが非常に大きな雇用に対する影響を与えてきたということは疑いない事実でありまして、円の切り上げの問題、変動相場制に移行する問題、それらを通じていろいろな実は変化が起こってきたわけです。これが石油危機によってまた一つ深刻な状態をかもし出したということがいえると思うのです。確かに何か大臣のさっきのお答えのように、数字の面では昨年の末から今年にかけて、たとえば求人倍率等についても必ずしも減ってない、こういうことがいえるというお答えがありましたが、私はしかし、その底に相当深刻な要因がはらんできているのじゃないか、それを読み取らなければならないのじゃないか、こういうふうに思うのですね。そのことを見越してこれから先一体どう対処するかということを考えませんと、私は非常に時代におくれるのではないかと思うのです。通産省、中小企業庁なりあるいは労働省のほうから雇用の状態、失業の状態、情勢についていろいろ資料をいただいておりまするけれども、これはどうもきわめて皮相的な資料になっているのじゃないか、こう私は思っているわけでありまして、これらの景気変動というものが雇用にどういう影響を及ぼすかということに対してどのように現状を分析をされておるのか。そしてどういう見通しを立てておられるのか、これをまずひとつお聞きしておきたいと思います。
  49. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今後の雇用見通しという御質問でございますが、先ほど大臣からもお答えの中に触れておりましたように、さしあたって現在の状態のもとにおきましては、求人倍率も昨年の十二月から本年の一月におきまして一・七倍ということで、一応労働力需給の逼迫の基調は変わっておりませんけれども、なお今後いろいろと予想されます不況下のこの要因が雇用面にどう響いてくるかということにつきましては、私ども重大な関心を持って推移を見守っていきたい、かように考えておるわけでございますが、御承知のように、こういった経済的ないろいろな要因が雇用の面に波及してまいりますのは相当な時間的なズレがございます。したがいまして、今後の経済の推移によっては相当な影響が出ることも私どもは十分覚悟した上で今後の雇用対策を実施してまいりたい、かように考えておるわけでございまして、来年度予算におきましても、一応現在の経済見通しの四十九年度の経済成長実質二・五%、こういう前提に立ちまして、あるいはいろいろ指摘されますように、経済成長率横ばい、ゼロというようなことになりました場合に、雇用面にどの程度の影響が出るか、これは四十六年のドルショックの際の雇用の動き、こういったものを私どもは参考にしながら、いろいろと数字的に検討してまいっておりますけれども、四十九年度におきましては、現在完全失業者が一・一%でございますが、これが今後こういった経済の推移によってはあるいは相当な失業が出ることも十分覚悟しておかなければならない。その際にどのくらいの対策が必要かという観点から一応来年度、四十九年度、年間通じて七十万程度までは、失業が出た場合に、私どもはこれに対して十分対処し得るだけの準備を進めておるわけでございます。
  50. 田邊誠

    ○田邊委員 この際やはり注意を喚起しておきたいのですけれども、一番最近の労働省の官房統計情報部が出しているところの「賃金、労働時間と雇用の動き」という速報を見ましても、雇用は非常に増加している。   〔大野(明)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕 特に不動産業や建設業、製造業等に対しても、これはいわば非常に入るが超過をするという状態にきているという発表をしているのですね。これは私は、この中にいろいろな統計が載っておりますけれども、こういうのはただぽきんと出されて、何か楽観的な形というものが一般に受け取られることは、私はよほど警戒しなければならぬと思うのですよ。こういうときに、特にこういういろいろな複雑な要因がからんでいるとき、またたとえば石油の需給関係にしてもどうなるかわからぬという、こういうときはよほど慎重な配慮があるべきだと思うのですけれども、どうも平面的な統計だけに終始をしているきらいがあるというふうに思うのですけれども、その点はどうでしょうか。いろいろな統計を私も見せていただきましたけれども、どうもそういったことでもって、どこを見ても、好調な雇用関係以外を予測したり、それに対するところのいろいろな警告をしたりというようなことがないのですね。これはやはり大臣、よほど考えなければいかぬのじゃないかと思うのです。どうでしょうか。
  51. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 統計は一つの私たちの目安になります。そういう意味からしますと、一・七の倍率というのも私たちの目安でございますが、やはりあなたのおっしゃるように、日本の場合には二重構造であることはだれでもこれは認識しております。しかも若年労働者は、私のいままで聞いた話により、また人に実際当たってみましても、三年以内に、一ぺんつとめた人は半分はもう転職する、こういうふうな新しい実態、昔ならば一つ就職をしたならば、一生懸命働いたという時代と、いま、すぐ次にかわってもだいじょうぶだという安心感がそういうふうにさしておる。それから老齢者、中高年者が地域によっては、なかなか就職ができない地域もあるというふうな、非常に多岐にわたる変化がある。しかもあと何年かすると、働く諸君の三分の一は五十歳以上になりはせぬかという数字も出ておるのです。ですから、私の役所としますと、そういうふうなものを全部、楽観的じゃなくて背景にしながら、せっかくの役所が変化が起こった場合にどういうふうにして対処できるか。ドルショックの場合には六十七万か八十万か出るというて皆さんで御審議いただいたり、いろいろな手当てをして待っておったら、一万五、六千で済んだ。これは非常に喜びだった、数字は別としても。そういうふうにちゃんと待っておった。そういう不幸があってはたいへんだというので、ありとあらゆる法律、ありとあらゆる金を用意しながら待っておった。これは軽くて済んでよかったというふうなたてまえで、労働省とすれば、万全とは申されませんけれども、とにかくできるだけのことはいつでもしよう、その間に皆さん方から地方の話などを聞きますと、それらを一つの実例としてやっていくというかまえをとっておりますので、地方の実情は、お互い国会議員として地方のことは一番よく知っているんだから、こういうところで御披露いただきながら、数字の間違い、ある場合には実態の違いというふうなところを御指摘いただきながら、行政の参考にさしてもらえるならしあわせだ、こう思っております。
  52. 田邊誠

    ○田邊委員 いま石油関連産業といわれるプラスチック製品とか、ネオン業界とか、ステレオのメーカーとか、自動車メーカーとかあるいはタクシー業界とか、すでに倒産を重ねている中小零細企業がかなりあるのですね。したがって、三月期はおそらく大手は好況、中小零細企業はそういった形でもって倒産が相次ぐという状態でないかと私は思うのですよ。その断層は非常にひどくなる。ですから、昨年の暮れまでに一年間の倒産は、通産省によりますると八千二百二件であって、四十三年当時の一万件以上の倒産から見ればまだ少ない、こういう数が出されておりますけれども、私はこれをそのまま当てはめることは非常に危険だというふうに思うのですね。そういう景気変動の事態の中で、企業は、倒産をすればこれはもうそのままになりまするけれども、倒産をしなくても、いままでのパターンからいいますると、やはり自己防衛策として、労働者に対する、配置転換とか出向とかあるいは一時帰休とか、いろいろな措置をとると思うのですね。これは私は企業としてはそうせざるを得ない立場もあると思うのです。しかし、労働者の側から見れば、それは何としても避けなければならぬ形でございますから、そこにはやはり国が施策として入り込んでこれを防止する、その手当てを講じてやる、こういうことが必要になってくると思うのですね。一つのそういう空気を助長する、あるいは助言をするという立場に立って、国自身が積極的な立場でもってこれの打開に当たるということは、いままで日本の場合には多くはなかったと思うのです。もちろん補完的には失業保険制度や、あるいは職業の転換の際におけるところの給付金等の制度がありまするけれども、これはあくまでも主軸でなかったという点を見ますると、いま大臣ドルショックの問題を言われまして、予想したよりは少なかったということは、これは言われるとおりですけれども、これだけいわば底が浅くて、しかも外的要因で左右される日本の場合、大きな雇用の変動、失業の発生等が起きたときは国は一体どうするのかといったら、これはないですね。石炭や駐留軍等において、いわば臨時的な、あるいは一つの産業に限った形の手当てはありました。繊維の場合もそれにならってある程度の手当てはいたしました。しかし、そういう基本的な政策というものが打ち出されていないところに、実は大きな欠陥があると私は思うのです。したがって、そういった点で、西ドイツ等でもってとってきた過去におけるこういう変動に対処する対策といったものを見習ったときに、われわれとしては、政府はこれに対する対策というものに対して、より積極的な立場がこの際はかられなければならぬというふうに思うのです。どうでしょうか。西ドイツの雇用調整に関する法律の例等もございまするが、われわれは大きなあらしが来ることは好まないけれども、その場面においても動じないような国の施策というものを打ち立てなければならぬ立場に立っているだろう、こういうふうに私は思っておるわけでありまして、賃金問題と並んでこの問題は——十二月のあの暗い状態から見れば、それほどでなかったような印象を現在は受けているかもしれないけれども、私は、まだまだそうでない、予断を許さないというふうに思いまするから、この際ひとつそういう基本的な対策法律的な面、制度的な面、行政的な面に対してとるべき措置について、勇断をふるってもらいたいというように思うのですけれども、どうでしょう。
  53. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先ほど来田邊先生御指摘雇用面のいろいろな数字が出てまいっております。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕 私どもも、昨年の石油危機の問題以来、雇用面に対する影響ということにつきまして慎重な配慮を加えてまいったつもりでおりますが、幸いなことに十二月、一月、ここ数カ月におきましてはそれほど顕著な動きは出てまいっておりません。だからといって、私ども決してこれを楽観しているわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、こういった経済的な動向が雇用面に反映いたしてまいりますのはある程度のタイムラグがございますし、今後、四十九年度に入りまして、あるいは年度後半等におきまして、一番経済的に脆弱な中小零細企業あるいは下請業者、こういったところでの労働者の方々にしわ寄せがくるということも十分予想されることでございますので、そういった点につきまして今後十分な配慮を加えながら重点的な行政施策を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただいま先生から御指摘のございました、外国の例にありますような雇用調整的な制度あるいは法制措置という点につきましては、これも先ほど先生御指摘のように、現在量的に見ますとわが国は完全雇用という線に近い状態にございますけれども、その中でなおかつ地域的に見ますと、東北、北海道あるいは四国、九州、こういった地域的にかなり雇用の面で太平洋ベルト地帯と格差のある地域がございます。同時にまた、年齢的に見ましても、昭和五十五年になりますと四十五歳以上が三分の一というような労働力構成になりますが、現在におきましても、こういった求人倍率一・七倍というような情勢の中におきましても、なおかつ、四十五歳以上あるいは五十五歳以上になりますと求人倍率は逆に〇・二というような状態でございまして、年齢別に見ましてもかなりのアンバランスがございます。と同時に、その他身体障害者の方々とかいろいろ社会的に不遇な方についてはなお就職困難な状態がございます。こういった地域的あるいは年齢的な雇用のアンバランスを手直しをする必要もございます。同時に、これから高度成長経済が終止符を打たれまして、安定成長という事態になってまいりますと、やはりいろいろな、外的あるいは内的な経済要因によりまして、不況が当然予想されるところでございます。こういった際の、単に失業した人たち失業保障をする、再就職を促進するということでなくて、そういった事態に対しまして、事前に積極的にその失業を予防し、職業の安定をはかっていくというような措置が今後どうしても必要になってくるであろう。私どもはこういう観点から、昨年来失業保険制度研究会あるいは雇用政策研究会、この二つの研究会におきましていろいろと御討議を重ねていただきまして、こういった見解をもとにいたしまして、今後、そういった外国の例も取り入れながら、積極的な雇用政策を盛り込んだ、同時に失業保障機能を充実強化できるような新しい制度をつくっていきたいということで、実は今国会雇用保険法案を提出申し上げたわけでございます。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 この法案を十分御審議いただきます過程でいろいろと御意見を承らせていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  54. 田邊誠

    ○田邊委員 私は、いまの局長の答弁を聞きましても、それからまた、大臣所信表明から始まる労働省のいままでとってきた雇用対策基本法の第一次、第二次の計画、あるいは雇用問題に対するところの研究会の報告が昨年の十二月になされておりますが、これらを見せていただきました。あるいは、労働問題に対するしおりというのが出ておりましたので、この中におけるところの雇用政策についても見せていただきました。原則はみな書いてありますけれども、一体具体的に国が中心になって、ひとつ国の責任においてこれだけやろうという、こういう面が非常に少ない。小手先にやっていることはありますよ。しかし、ほんとうにいまはどっかりと腰を据えた雇用に対するところの政策というものが非常に少ないと思うのです。もう原則はわかっているのです、これは。だから、そういった点で、いま局長が言われましたように、その余波は一体どこに来るかといえば、中小企業に来る。それから年齢的に見れば、やはり中高年齢層に来る。それから男女別に見れば、やはり女子のほうにどうしても多い。わかっているんですね。しかし、それならば一体、高年齢者に対するところの雇用対策は、これはもう昭和五十五年には約三分の一に近いところの雇用をある程度見込まれておるところのこの層、現在完全雇用は形の上でできているといっても、しかし中身から見れば、この五十五歳以上の求人倍率は非常に少ない。五十九までが〇・四、六十から六十四が〇・二という状態であるということをお聞きをいたしました。失業率も一・九%、失業期間も六カ月以上が多いと、こまかく書いてございます。定年退職者の同一企業に対する再雇用は四分の一しかない。再就職は四〇%が職種変更をしている。賃金は七〇%である。こういう劣悪な状態というものが報告されている。これに対して、一体どうするのか。そういうことに対して研究会は一つ方向は示唆しておりますけれども、しかし具体的なものは、私はこれは太い線としてない。特に、いま問題になっているところの高年齢層に対するところのこの就職困難な原因というのは、いろいろあることはもう御存じのとおりですけれども、一つは定年制の問題、一つは賃金構造の問題、あるいは労働能率が低下するという問題、そして産業構造の変化が非常に多いということ、いろいろな実は基本的要因があることは御承知のとおりだと思うのですね。それに対して就職の促進をするには、一体どういう施策をするのか、こういうことを私は考えたときに、これはありましょうか。まあ一つは定年延長をやるということ、これも私は思い切ってひとつ政府——ことし奨励制度がありますね。奨励制度はありますけれども、これに対して思い切った施策、たとえば西ドイツが高齢者を雇うときには賃金の六〇%は二年間保障する、こういう措置をとった。何も私は外国の例ばかりを言うわけじゃない。日本には日本のよりいい形があると私は思うのですけれども、しかしそういう形をとらなければ、中小企業は一年間に、これは幾らでしたか、二万五千円でしたかの奨励金制度程度では、これはどうにもならぬというように思うのですけれども、これは大臣、基本的なことはおわかりですね。   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 定年は延長しなければならないけれども、とりあえずは六十歳、その際におけるところの賃金形態は一体どうなるのかということに対しても、いろいろと研究を進められていると思うのですけれども、ひとつ高齢者向きの就職促進、職種の拡大ですね、高齢者の特徴を生かすという、こういうことに対して一体どうでしょうか。  ついでにお聞きしますけれども、雇用率の設定をしていまするけれども、官庁も民間もここに雇用率は書いてございまするが、守られていますか。
  55. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 雇用率につきましては、官庁はまあ、完全ではございませんが、各それぞれの職種につきましてほぼ目標に近い線までいっておりますが、民間につきましてはまだ十分にいっていない実情でございます。したがいまして、定年延長につきまして各種の施策を講じますと同時に、今回の新しい法案の中におきましては、たとえば五十五歳以上の人につきましては相当思い切った額の雇用奨励をいたします。と同時に、いろいろな負担の軽減をはかるといったような措置で、ただいま先生御指摘の法的な制度あるいは単なる行政勧奨でなくて裏づけのある行政指導措置によりまして、高年齢者の雇用促進をはかってまいる、あるいは身体障害者就職の促進をはかるといったような措置を講ずる考えでございます。
  56. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで大臣、やはり定年延長をしなければならぬ。一番問題になるのは——労働力の低下というものはあります。ありまするが、これはまた使い方ですね。生かせるんですね。一番問題なのは賃金だというのですね、私は。日本のいわゆる賃金形態、年功序列型の賃金形態ですね。これは非常に定年延長に影響しているというのですが、私は結局これを打開する道は年金との調整、こういうことになってくると思うのですよ。ですから、これはやはり一方においては年金制度の充実、年齢の引き下げ、それと定年延長とが合致する——日本はそれが合致してないというところに一番の悲劇があると思うのですね。  これはひとつ厚生政務次官、せっかくそのことでおいでになったのですから、やはり年金の問題はただ単にいままでのような、額をふやしました、あるいは所得制限を幾らか緩和しましたというだけでなくて、いま申し上げた雇用の問題とからんで、私は当然これは考えなければならぬ。生活保障は年金を主体とした所得保障、こういう面が基本的にありますけれども、より積極的な面は、高年齢者に対してもよりいい就職の場所を与える。その場合に、やはり年金がそれとの関連の中でもって役割りを果たすという形でなければならぬと思うのでありまして、そういった点で、ひとつ年金制度の面におけるところの雇用というサイドも含めた年齢の引き下げ、それから在職年齢の制限の問題、所得制限の問題、これらについて打開していくということがなければ、私は年金制度をほんとうの意味において生かすことはできない、こういうように思っておるわけですけれども、その点はどうでしょう。
  57. 石本茂

    ○石本政府委員 いま、労働省当局からも先生の御質問に対しましてお話があったわけでございますが、厚生省といたしましてもいろいろな諸般の情勢等を勘案いたしまして、たとえば生存年齢が非常に延長いたしておりますし、それからまた、五十五歳定年が多うございますけれども、この年齢ではまだまだ職場の中で労働を提供しているだけのものを十分持っておりまする現状でございますから、これはできるだけ定年の延長ということを主体にいってほしい、そうするべきであろうということを考えているわけでございますし、それからさらには、先ほどお話もありましたが、やはり再雇用の機会の増大ということを、ただスローガンだけでなく、現実のもでございますから、具体的に政策の中で進めていくべきである。そうして何とか、いま申しました五十五歳といたしますと雇用面からの年齢ギャップというものをそういう方向で解消していくべきであるというふうに考えているところでございます。  なお、諸外国の状況を見ましても、大体日本の六十歳というのは決して高い年齢水準ではございませんので、いま申しましたようなところに力点を置いていくべきであるということを考えておりますが、しかし、先生の申されますこと十分にわれわれ検討いたしまして、なるべく御趣旨にお添いできるような方向づけをしたいというふうに考え努力をしてまいります。
  58. 田邊誠

    ○田邊委員 これはどうでしょうね。役所のなわ張りもありましょうけれども、分担もありましょうけれども、厚生省なり労働省なりあるいは総理府なり、そういったところでもってやはりプロジェクトならプロジェクトをつくって、これに対して総体的にどう引き上げていくか、接点をだんだん合わせていく努力はどうするのか、年次計画は一体どう立てるのかということがなくて、ただやみくもにやっておったのでは、私はならぬと思うのですよ、これは。あなた、いまそういうことで一生懸命努力することを言われたけれども、具体的に一体どういうそれじゃ年次計画でされますか。それはいま言った厚年についても国年についても、どういう形でもっていま言った接点を合わせていくということをしますか。そしてまた、在職されている方々に対する年金について、その緩和措置を一体どうされますか。これは政治的な問題だから、まず厚生政務次官から……。
  59. 石本茂

    ○石本政府委員 これは確かに先生申されますように、厚生省だけが先頭に立ちまして進んでいくというものでもございませんし、当然労働省所管とのかね合いがございますので、これは両々相まちまして十分に真剣に討議していくことになっております。  なお、もうすでに先生資料としてお持ちだと思いますが、今後の高年齢者の雇用対策というようなことで審議しつつございますそういう中身をごらんいただきますと、何らやはり具体性がないじゃないかということでおしかりを受けると私は思いますけれども、できるだけ近い時期に具体的なものを、一先生方の御意見等十分にちょうだいしながら組み立てていかなければならぬというふうに私ども考えているところでございますので、御趣旨に沿いましてがんばってまいります。
  60. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私のほうからもお答え申し上げます。  ということは、役所としましてこの際にちょうどいい機会ですから御報告できると思いますが、中高年齢者の就職というのはほんとうにいまからたいへんになりはせぬかと心配をしておりますので、これは四十六年に制定された中高年齢者雇用促進特別措置法に基づいてやっているわけでありますが、一つは、中高年齢者雇用率を設定して、事業主に対して雇用の勧奨を行なう。そして、これは現在六十三種についてすでにもう設定してあります。それから二番目は、休職手帳制度により、手当を支給しながら職業指導職業訓練等を実施する。三番目に、人材銀行の設置等、中高年齢者を対象とする職業訓練体制の充実をはかる対策を講じておりますが、これを今後具体的に、私のほうとして集約したものは、改正された雇用対策法及び雇用政策調査研究会の報告に沿いまして、一つ、六十歳を目標として定年延長を積極的に推進する。二つ、定年退職予定者に対し職業講習職業訓練等を積極的に援助を行なう。三番目に、全国の主要都市に、これは四十九年からですが、高年齢者のための職業相談室を設置する。それから四番目に、高年齢労働者のための福祉センターの設置を進める。五番目に、高年齢者のための適職開発等に対する研究を積極的に行なう。六番目は、自営業開業のための援助等、援護措置の充実をはかる。こういうふうな形で具体的に話をまとめて、これを推進していくという形に、その中に一つ二つは四十九年度の予算もとるという形で推進していることもこの際御報告申し上げます。
  61. 田邊誠

    ○田邊委員 大臣の言われたのは一通り私も知っていますが、実際にはしかし、いま局長が言われたように、たとえば雇用率にしても、官庁の場合三十三種、民間の場合六十三種、これはなかなか守られていないのです。ですから、やはりその追跡調査もしていかなければならない。そして、一体どこが守られないのか、どうやったらいいのか。中には、かなり若い人たちがやっておるけれども、もうちょっと年齢の高い層でもやれるような仕事があるんですね。官庁だって、郵政の外務職は三五%、電報配達は二五%というけれども、これはそんなにありません。ですから、そういう状態の改善というものを見ておかなくちゃいかぬ。ですから、あれもこれもということも必要でしょうけれども、やはり一つ定めたらば、それに対して一体どういうような状態になってきているかという推移を見ながら、それに対するさらにてこ入れをどうしたらいいかということを私はやってもらいたいと思います。まず第一に、私は定年延長だろうと思うのです。ですから、これに対して私はもう少し積極的な、金の面においても施策を講ずるような立場をとってもらいたいという形をひとつぜひ要求しておきたいと思うのです。  それから、時間がありませんが、せっかくのあれですから、中高年の問題と並んで雇用対策で必要なのは婦人の問題であることは、御案内のとおりです。そして婦人の雇用数が年々ふえておるということもお聞きをしております。一千万をこえる状態で、全雇用者の三分の一を占めるという状況である。既婚者も、これは私のあれが古いかもしれませんが、未婚者に比べて半分以上、すでに五六・五%——もっとだんだんふえていくのでしょうが、そういう状態であるということがいわれておりまして、非常に婦人の職場が拡大しているということをいわれておるのですね。私はこれは一面喜ぶべき現象のように思いますけれども、しかし、内容的に見ますと、これは非常に片寄っているというふうに思わざるを得ない。たとえば女子の教職員あるいはたとえば電電公社の交換要員等の女子の職員、あるいは看護婦さん、そういう人たちがかなりふえておりますけれども、私はその職種によっては非常に狭められているというふうに思わざるを得ない。局長、ちょっとあれですが、知っていますか。大体平均勤続年数はどうなっていますか。
  62. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 お答えいたします。  女子の平均勤続年数は年々延長しているという傾向は見られるのでございますが、依然として男子と比べますとかなり差がございます。昭和四十七年におきましては勤続年数四・七年というのが全国平均でございまして、男子と比べますと五年ほどの差がございます。
  63. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで、きょう実はいろいろとお聞きをしたいと思って参りましたが、時間がございませんから……。さっきの中高年の問題と同じように、婦人問題もいろいろありましょう。婦人福祉法をつくられて以来、いろいろな施設を拡充していることもお聞きをしています。しかし、一番の問題は何かといえば、これは何といっても、未婚者が結婚した場合、そしてまた子供が生まれた場合、引き続いてつとめることができないというこの隘路、これがやっぱり婦人問題では最大の問題であると私は思うのですよ。その点でもって、妊娠中の休暇の問題、それから子供が生まれた場合における育児の休暇の問題、これは福祉法の中では育児休業の問題が出ておりますけれども、これはあとでもいいから、その後における状態というものがどうなっているかということを、ひとつ数字を教えてもらいたいのです。しかしこれも結局のところは、やっぱり有給休暇の制度をどうやって確立するかにある。女子教職員の問題等が国会でもって論議をされてまいりましたが、看護婦についても同じでありますが、これを一体政府がどういうふうに助長して、どういうふうに指導していくかということが一つあると思うのですね。最大の不足は看護婦不足だといわれておる。潜在的な看護婦はおっても、在宅の資格者はおっても、なかなか就職できない。これも一つの問題。それには当然付随して企業内の保育施設の問題等、いろいろな問題が出てまいりましょうけれども、これに焦点を当てて、ひとつ女子の雇用の隘路について打開をするということが、私は当面の問題ではないかというふうに思っていますけれども、これをひとつ系統立てて、たとえば育児休業についての有給制度をどうやってとるのか、それから保育施設の拡充は一体どういうふうになされているのか、そしてまた、それがこの数年なされていることによって起こっている波及効果は一体どうなっているか、こういう追跡調査をされて、それに対するところの対応策を講ぜられるというふうな観点に立った計画はなされておるのでしょうか。これをひとつぜひお示しいただきたいと思うのです。
  64. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 御指摘のように、既婚婦人の就労が非常にふえてまいりまして、それに伴って職業生活と家庭生活の調和と申しますか、なかんずく育児の責任と職業生活の調和ということが大きな課題になってまいっているところでございます。勤労婦人福祉法におきましても、そのことが大きな柱となって、特に育児休業の推進であるとか、あるいは妊娠、出産中の特別の健康管理であるとかの規定が新たに設けられまして、事業主に努力義務が課せられたところでございます。この勤労婦人福祉法に設けられました規定の実現のために、これは強行規定ではございませんので行政指導によって進めているところでございますが、すでに妊娠、出産中の健康管理に関しましては、専門家による検討、御研究の結果、行政指導指導基準というものを定めまして、これを守らせるように事業主に対して指導いたしております。この結果、たとえば国家公務員である女子につきましては人事院規則の改正、あるいは自治省の通達等によりまして、国家公務員並びに地方公務員である女子につきましては、たとえば妊娠中の時差出勤その他業務の転換等の配慮というものが行なわれるようになっております。  それから、特に御強調のありました育児休業につきましては、これも専門的な研究機関を設けまして育児休業のモデル的な制度の姿というものをつくりまして、これを基準といたしまして行政指導につとめているところでございますが、問題は、かねてからの課題でございます休業中の生活安定の問題でございます。この点につきましては、なお専門家による、専門的研究会議による研究、それから部内の検討を鋭意続けているところでございますが、この休業中の婦人労働者が安んじて休業できるという状態を実現いたすべく何らかの方策というものを実現してまいりたい、このように努力をしておるところでございます。
  65. 田邊誠

    ○田邊委員 原則的な話ですからそれはそれで必要なことですが、まあひとつ検討をされた成果を踏まえてやはり具体的な制度化を、行政指導だけでなくて制度化方向にだんだんといかないと問題の解決にならぬわけですから、大臣、いま婦人局長からの説明で現状はおわかりのとおりですけれども、婦人問題、いま私が申し上げた妊娠、育児をまたいでといいましょうか、通じて、継続して就業できるようなこういう条件づくりが一番必要だ、私はこういうふうに思っておりますので、これはやはり行政的な面だけでない、制度化のための努力をぜひひとつしてもらいたいというふうに思っております。あとはひとつ、いろいろな数字をお示しいただきたい。勤労婦人福祉法ができましたけれども、どうも一向に実効があがっていないじゃないかという話がありますので非常に私心配しておりますので、ぜひひとつそれが具体的な成果があがるような状態をつくってもらいたいということを希望しておきます。  時間がございませんから、最後に、雇用面でもって、安定局長からもお話がありましたいわゆる構造上の問題について、ひとつ具体的な例をちょっとだけ申し上げまして解明を願いたいわけですが、大企業の中においても本採用の職員よりも臨時の職員なり臨時工、こういうものが非常にふえてきているというのが、私はこれは着目しなければならぬと思う。それからもう一つは、大企業が仕事を請け負っても、特に建設業等の場合、下請に非常に出す。その下請が本採用の職員なりというものよりも臨時工がまた非常に多い。それだけでもまかない切れないから、季節的な労働者をまた採用してやる。こういうところに実は御承知のとおり二重構造といわれる不安定な雇用状態があるわけですね。しかも、いわゆる大企業というか、もとの企業と、その第一次の下請、第二次の下請、こういったものが最近は一つの職場でもって混在をして働いている、こういう状態が見受けられるのですね。その図式というものがいわば日本労働の職場というものをいろいろな面で実は非常に混迷におとしいれているその大きな原因をつくっているということは、これは御承知のとおりだと思うのですね。そういった面で取り締まらなければならぬのは、これは職安法においてこの供給の事業に対する明確な規定があるわけでありまするが、随所でもってこれが実は非常に抜け穴になって破られているということをわれわれは察知をしておるわけでありまして、これに対するところの労働省の厳重な監督なり指導がやはり必要であろうと思うのです。  私は、さきに川崎の造船の問題やら佐世保の造船の問題等取り上げたことがございましたけれども、この造船業界においてもそういったことが非常に多いということを実は見てとるのでありまするが、きょうちょっと具体的にお話を申し上げるのは、静岡県にあります金指という造船会社であります。これはほんとうにいわば一族でもってつくられている造船会社でありまして、どのぐらいの規模であるかということはおわかりだろうと思うのですけれども、この造船会社は下請企業も同じ職場でもって働いているのが非常に多い。この下請というものがまた非常にいわば何というか、同族会社でございます。   〔田邊委員、資料を示す〕 この金指造船所内でもって働いている関連会社を見ますと、たとえば金和船舶というのでしょうか、これは金指造船が五万四千株持っている。室田という人が、これは近親者でありますが、五千六百、金指利明という人が四百、これは長男であります。それからこの金寿船舶工業株式会社でありますが、この株は二万六千のうち二万二千三百が金指造船である。それから金指吉昭というのでしょうか、これは社長であります。二千五百株。それから清寿建物株式会社が千二百株持っておるから、これだけは別かと思って見ますと、この清寿建物も社長と長男と次男が全部株を占めておる、こういう会社ですね。ですから下請といってもほとんど一族会社。この中でもって実は私が警戒をしなければならぬと思ったのは、この下請がいろいろな労務提供をいたしておりますけれども、これが実は職安法に抵触するんじゃないかということでもって労働省に調べてもらいました。ところが労働省においては、貸し工についてはどうも職安法違反の疑いがある、したがってこれは善処するということでもって改善命令を出して、これは改善をされたということだというのでありますけれども、実際には職安法の施行規則第四条第一項第四号によりますと、請負契約であっても、企画または専門的な技術、専門的な経験を必要とする作業で、単純な労務提供でなければよろしい、こういうふうになっておるのですね。ところがこの場合は、これは実は労働省からそういったことについていろいろと検討されているということだけれども、実際にはこの施行規則四条の四号規定というのは前段と後段と一緒に読むのだということでもって、私どもはちょっと解釈の違うところがありますけれども、いずれにいたしましても、単純労務でなければよろしいという形ですね。それでいまのところは専門的な技術者を差し込んであるのだからこれは違反じゃない、こういう解釈をとったおるのですね。ところが残念ながら、その後私が調べましたところが、いま私が例示として申し上げた下請の金和船舶という会社において、作業日誌を記入しているのですけれども、この記入の要領について実はこういう作為の行動が行なわれていることが発見をされました。いわゆる貸し工と見られるような表現は日報上から一切抹消する。しかし本社に対して報告をする場合は、それでは一体これが常用であるのかあるいは常用でないのか、いわゆる単純な労務提供であるのかわからぬから、その点は一番最後のとこるに書いてありますようにチェックをする。チェックをするけれども、これが外部にわかっちゃならぬから、注意として、前記のチェックをするのは必ず鉛筆をもって行なう、ゴムで消した場合、あとがつかない程度に記入する、こういう形でもって、常用を提供しているように見せかけながら実際にはそうでない単純労務を提供する、こういう形をとっているのでして、これは明らかに職安法違反です。そういう立場をとっておるのでありまして、言えばこの種のことが日常茶飯事で行なわれているところに現在の、建設業界もそうですし造船業界もそうですけれども、非常に乱雑な雇用関係が横行している。これがいわば足を引っぱりながら賃金引き上げを抑制するという立場をとっている、形をとっているのですね。これはどうでしょうか。私がいま指摘をいたしましたこういう行為が一体許されていいんでしょうか。こういう中で、裏でもっていわば職安法違反が公然と行なわれている、こういう事実関係というものに対して労働省は目をつぶっていていいのでしょうか。
  66. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先生御指摘の金指造船の貸し工問題につきましては、先般来も御指摘ございまして実地調査をいたしまして、これは確かに労働者供給事業としても疑いがあるということで改善命令を発しまして、すでにこの貸し工制度は解消したように承知いたしております。しかしながら、なおいま御指摘ございました下請の金和船舶工業におきましては、安定法施行規則四条四号のいわゆる請負と称しながら実は労供というような、こういうもぐり的な存在が従来ございまして、私どもこの点は厳正に措置をいたしてまいっておりますが、この金和工業の場合も、この点につきましてなおいろいろ問題がございますので、実は本年に入りましてももうすでに十回あまり会社当局につきましても調査をいたさしておりますし、関係労働組合とも連絡をとりながら実地調査をいたさしておる状況でございます。まだ、この件につきましては地方検察庁にも告発が行なわれておりまして、検察当局でも現地で調査を行なっております。私どものほうでも、私ども労働省調査の結果に基づきまして今後所要の措置を厳正にとってまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、ただいま先生から御提出いただきました資料、確かに問題があるかと思いますので、これも現地のほうに回付いたしまして調査の参考にさしていただきたいと考えておる次第でございます。
  67. 田邊誠

    ○田邊委員 実は例をあげたのですけれども、金指造船も労使関係についていろいろと長い紛争があったところであります。その裏にいま言った職安法違反の事実があり、不当労働行為の事実がありとしておることが事態の解決を非常におくらしているのじゃないか、このように思いますので、そういった意味合いで、いま局長の具体的に提示いたしました事例も含めまして、ひとつ早急の機会における調査を行なって厳正なる処置をぜひやってもらいたいと同時に、ひとつ大臣、私、金指の問題を取り上げましたのですが、それらを撲滅すると同時に、労使関係の正常化についてぜひひとつ大臣努力を願いたいというように思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  68. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 こういうふうに御指摘していただきましてほんとうにありがたいきわみです。一方、私のほうでもこんな問題があるということで、ただいま局長から御報告したように、係官を十回以上そういうところに派遣して調査をする、あるいは組合のほうともいろいろ話を聞くということで、一番役所としてやらなければならぬ大事な行政指導でございますから、そういう事件があった場合には、先ほどじゃありませんけれども、迫跡調査を熱心にやりながら改善をやっていくところに私たちの使命がある、こう思っておりますので、いまから先もそういうことのないように目を広く広げると同時に、あった場合は直ちにひとつ出動しながら解決に向かってやりたい、こう思って、さっそく帰りましたら役所の諸君にもよくその辺の話を申し上げたい、こう思っております。
  69. 田邊誠

    ○田邊委員 ひとつその会社の責任者以下これに十分対処するような、大臣みずからの努力を心から願っておるわけでございます。  雇用問題は、当面をする石油危機等を通じて、これからまたどういう変動がくるかわからない、こういう条件下にございますから、ぜひひとつ労働省は柱になってこれに対する明確な対処を私は心からお願いしたいと思いまするし、当面する春闘の問題についてもまた、逐次ひとつ事態の進展に合わせて政府のいわば窓口としての労働大臣所信が逐次明らかになることを私は望んでやまないわけでありまして、また次回以降においてあなたの考え方を披瀝していただきたいというふうに思います。
  70. 野原正勝

    野原委員長 次回は、来たる二十六日火曜日、午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十六分散会