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1973-12-18 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十八日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 川俣健二郎君    理事 枝村 要作君 理事 寺前  巖君       伊東 正義君    加藤 紘一君       瓦   力君    小林 正巳君       住  栄作君    田川 誠一君       田中  覚君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    中村 拓道君       羽生田 進君    橋本龍太郎君       粟山 ひで君    大原  亨君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    村山 富市君       森井 忠良君    山本 政弘君       石母田 達君    田中美智子君       坂口  力君    小宮 武喜君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    大塚 順七君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         総理府総務副長         官       小渕 恵三君         総理府統計局長 川村 皓章君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         中小企業庁計画         部長      小山  実君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業訓練         局長      久野木行美君  委員外出席者         衆議院庶務部長 荒尾 正浩君         経済企画庁長官         官房参事官   佐倉  致君         大蔵省関税局総         務課長     道正 信彦君         文部省初等中等         教育局特殊教育         課長      国松 治男君         厚生省社会局更         正課長     角田 耕一君         建設省計画局宅         地部宅地政策課         長       沢本 守幸君         建設省住宅局住         宅計画課長   京須  実君         日本電信電話公         社総務理事   山本 正司君         日本電信電話公         社厚生局長   小沢 春雄君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十八日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     高橋 千寿君   木部 佳昭君     小林 正巳君     ――――――――――――― 十二月十四日  深夜労働の禁止に関する請願神崎敏雄君紹  介)(第一一号)  同(金子みつ紹介)(第一一六号)  同(金子みつ紹介)(第一八九号)  同(川俣健二郎紹介)(第一九〇号)  同(八木一男紹介)(第一九一号)  社会福祉予算削減反対に関する請願松本善  明君紹介)(第一二号)  同(島田琢郎紹介)(第一一七号)  同外五十件(廣瀬正雄紹介)(第一一八号)  同外十五件(井出一太郎紹介)(第一七九  号)  同(小澤太郎紹介)(第一八〇号)  同外二十九件(亀山孝一紹介)(第一八一  号)  同(阪上安太郎紹介)(第一八二号)  同(橋本龍太郎紹介)(第一八三号)  同外四件(宮澤喜一紹介)(第一八四号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第一三号)  同(青柳盛雄紹介)(第一二〇号)  同外三件(諫山博紹介)(第一二〇号)  同(石母田達紹介)(第一二一号)  同(浦井洋紹介)(第一二二号)  同(小沢貞孝紹介)(第一二三号)  同(神崎敏雄紹介)(第一二四号)  同(柴田睦夫紹介)(第一二五号)  同(庄司幸助紹介)(第一二六号)  同(瀬崎博義紹介)(第一二七号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一二八号)  同(谷口善太郎紹介)(第一二九号)  同外一件(竹本孫一紹介)(第一三〇号)  同(土橋一吉紹介)(第一三一号)  同外二件(中村重光紹介)(第一三二号)  同(中川利三郎紹介)(第一三三号)  同(東中光雄紹介)(第一三四号)  同(不破哲三郎紹介)(第一三五号)  同(正森成二君紹介)(第一三六号)  同(松本善明君紹介)(第一三七号)  同(三谷秀治紹介)(第一三八号)  同(三浦久紹介)(第一三九号)  同(村上弘紹介)(第一四〇号)  同(諫山博紹介)(第一五四号)  同(石母田達紹介)(第一五五号)  同外一件(大柴滋夫紹介)(第一五六号)  同外一件(大原亨紹介)(第一五七号)  同(岡田哲児紹介)(第一五八号)  同外一件(加藤清二紹介)(第一五九号)  同(勝間田清一紹介)(第一六〇号)  同(島本虎三紹介)(第一六一号)  同外一件(中村重光紹介)(第一六二号)  同(平田藤吉紹介)(第一六三号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第一六四号)  同(横路孝弘紹介)(第一六五号)  同(木下元二紹介)(第一八五号)  同(津川武一紹介)(第一八六号)  同(中村重光紹介)(第一八七号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(小  川平二君紹介)(第一〇七号)  同(勝間田清一紹介)(第一〇八号)  同(竹本孫一紹介)(第一〇九号)  同(高田富之紹介)(第一一〇号)  同(谷川和穗紹介)(第一一一号)  同(塚原俊郎紹介)(第一一二号)  同(山下元利紹介)(第一一三号)  同(八木一男紹介)(第一五三号)  同(宇野宗佑紹介)(第一九二号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一九三号)  同(栗原祐幸紹介)(第一九四号)  同(中山正暉紹介)(第一九五号)  同(根本龍太郎紹介)(第一九六号)  同(浜田幸一紹介)(第一九七号)  同(坊秀男紹介)(第一九八号)  同(山崎拓紹介)(第一九九号)  戦時災害援護法制定に関する請願外一件(塚本  三郎紹介)(第一一四号)  同(塩谷一夫紹介)(第一一五号)  乳幼児の医療費無料化等に関する請願田中美  智子君紹介)(第一四五号)  留守家庭児童対策に関する請願長谷川正三君  紹介)(第一五二号)  厚生年金等給付額引上げに関する請願(林百  郎君紹介)(第一八八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 野原委員長(野原正勝)

    野原委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本政弘君。
  3. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 大蔵省がまだお見えになっておりませんけれども、時間が短いようですから、質問を始めたいと思います。  昭和四十八年の十二月十三日に、身体障害者雇用審議会から労働大臣のほうに審議会答申があったと思うのです。その答申の中で、社会福祉の理念に立った政治の展開が強く要請されておる今日、「すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利や勤労の権利を保障した憲法の規定に照らしても」身体障害者に対する手当てを厚くすることは「国の責任である」という趣旨が盛られておる、同時にその各項目の中には「関係各省との密接な連携のもとに」もろもろの施策を講じなさい、こういうこともいっております。それから「行政措置拡大についての検討」もしなさい、こういうこともいっている。そして身体障害者強制雇用問題については時期尚早としながらも、「現行法積極的活用行政措置拡大等による行政指導強化により雇用義務強化を」はかりなさい、こういうふうにいっておりますね。  そこでこの答申に対して、まずお伺いいたしたいのは、労働大臣としてはいかなるお心がまえでおいでになるか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  4. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 お答えいたします。  山本委員がおっしゃるとおり、十三日に身体障害者雇用審議会勝木会長から答申書をいただきました。私自身も地方においてはこういう方々職場における働き、あるいはいろいろな問題についての悩みを訴えられる一人でございますから、あらためてこの答申を尊重いたしまして、できるだけこれが盛られているものを実現するように努力したい、こういうふうに考えております。
  5. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 それではお伺いいたします。  身体障害者雇用促進法の第十四条に「身体障害者雇入れに関する計画」というのがありますね。これは算定したある数によって「身体障害者雇入れに関する計画の作成」をやりなさい、こういうことだと思いますが、これを私は一般雇用者の場合だけに限らないで、各省庁においてもそういうことが当然法の解釈上成り立ち得る、こう思うのですね。  そこでお伺いしたいのですけれども労働省労働省自体として一体どういう計画をいまおつくりになっておるのか。
  6. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 官公庁につきましては、雇用率が一・六ないし一・七と、それぞれ現業非現業について定められております。本件に関しまして、大蔵省の場合を申し上げますと、大蔵省につきましては、本年の十月の調査によりますと、一・七の雇用率に対しまして一・七三%になっておりまして、一応雇用率達成されておるような状況になっております。  各省庁につきましても、雇用率を満たしていないようなところにつきましては、それぞれ雇用率達成するように御協力を要請いたしておるわけでございます。
  7. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 大蔵省じゃなくて、労働省は一体どうなっているかと言うのです。
  8. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 労働省につきましては官房でやっておりますので、さっそく調べましてお答え申し上げます。
  9. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 大蔵省のことはわかっているけれども労働省のこと自体は、そういうことがわからぬということはないでしょう。そこにやはり問題があると私は思うのです。  それじゃ、厚生省は。厚生省の方はおられませんか。――それでは、労働省として各省庁に対して勧告をすることができますね。その勧告はいつおやりになったか。きわめて近いところではいつおやりになったか、聞かしていただきたい。
  10. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ちょっと記憶いたしておりませんので、勧告の日時を調べてお答えいたします。
  11. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 それじゃちょっと話を進められないですよ。要するに、この法文をつくった主務官庁が、そういう雇い入れについての率の計画の策定もできておらないし、きわめて最近おやりになった勧告についてもいつおやりになったかということもわかっておらなければ、この質問は進められないじゃありませんか。大臣、どうですか。いまの労働省のあり方に対して一体どうお考えですか。労働大臣答弁を求めます。
  12. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 質疑の応答を通じまして、具体的な数字を持っていないというところに――ただいま来ておるようですから、お聞きいただきたいと思います。
  13. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 各省庁に対します指導勧告は、毎年十月一日現在で各省庁雇用率達成状況調査いたしております。その調査結果に基づきまして各省庁それぞれに指導いたすことになっておりまして、昨年の十月一日の調査の後やったのがごく最近のものでございます。本年は、この十月一日の結果をいままとめておりますので、この結果に基づいて指導をいたしたいと思っております。
  14. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 要するに十二条の二項では、「適正な実施に関する事項勧告することができる。」というのですよ。ですから、適正な事項に対する勧告というものは、一体どんな事項をあなた方は各省庁にお示しになったのか、そのことを私はお聞きしたいのです。
  15. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 各省庁それぞれ現業部門非現業部門について雇用率が定められておりますので、それぞれの職種について、雇用率達成されていない向きについてはそれぞれ具体的な達成のための指導をいたしておるわけでございます。  それから、労働省につきましては、先ほどお尋ね雇用率は、昨年の十月一日現在で一・九五に相なっております。
  16. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 それでは、その資料は私のところへお届けいただけますね。
  17. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 御提出いたします。
  18. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 これは大臣にお伺いしたほうがいいかもわかりませんが、いま申し上げたように、少し腹をちゃんとくくって対策を講じていただきたいと思うのです。つまり私が申し上げたいのは、身体障害者雇用促進法というのがあるけれども、実態的にはそんなに中身が充実をしておらぬのじゃないか。  あとでも申し上げますけれども、その中にいろいろな法規がありますね。たとえば雇用主雇用義務なんというものがあるけれども罰則規定はないわけです。大蔵省の場合には納税義務というのがあるのですよ。ここは雇用義務というのがある。納税をしなければ、これは強制徴収とかそういうことで、要するに罰則があるわけですね。しかしこれについては、雇用義務規定をつけながら罰則規定はないわけですよ。だからある意味では、指導をしても雇用しなくたっていいという考えというものがその中には出てくるだろうと思うのです。その点について一体どうお考えになっておるのか。
  19. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 山本委員のおっしゃる気持ちはよく私も理解できるのですけれども、せんだっての答申の中にも「できる限り企業内での職業更生を図るよう行政指導を進めること」、こういうふうな答申があるわけでありまして、私たちは、ただいま局長が申された、各省庁に対して一・七ですか、そういう数字に向かってぜひやってもらうように実は促進をし、労働省の場合には一・七というものを一・九まで率先して実行しているという気持ちをひとつ御理解願いたいと思うのです。
  20. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 厚生省、お見えになっていますね。まだ見えておりませんか。――それじゃ、八ページのところに、「上述した現行法積極的活用行政措置拡大等による行政指導強化により雇用義務強化を図ること」とあります。もう一つ聞きますが、ヨーロッパでは要するに雇用義務雇用強化というものが大体普遍化している、こういっていますね。日本ではまだそういう条件がないからといっておいでですけれども、そうすると、つまり将来の展望として、あなた方は強制雇用ということにやはり到達しなければいかぬということなんでしょう。それで審議会答申もそういうふうな方向へ向かっていると思うのですよ。将来はどうなんです。
  21. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 答申にもございますように、この強制雇用という点につきましてはいろいろと問題がございます。いま直ちにこれを実施することにつきましては、身体障害者方々雇用促進する点から考えまして、かえってマイナスの面も考えられるということで、行政措置によって当面身体障害者雇用促進をはかっていくようにという指示でございます。  私どもといたしましては、一つの例をあげますと、求人があります場合に、当該求人事業所雇用率達成していないというような場合には、この雇用率達成するまで、当該職種について身体障害者雇用を引き受けるようにという指導をいたしながら、この求人受理をし、職業紹介のあっせんをいたしておるわけでございまして、今後ともそういったことを強化いたしますと同時に、答申にもございますように、現在民間等におきまして、雇用率達成状況の著しく悪い事業所等につきましては、今後これを公表するとか、あるいは求人受理をする際に強力な指導をする、そういう措置によりまして雇用率達成をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  御指摘のように西欧諸国におきましては、第二次大戦後の戦傷病者が非常に多数ありまして、こういった人たち雇用を確保するために強制雇用制度がとられておりまして、課徴金とかそういった制度がとられておりますが、最近におきましては、逆にこういった戦傷病者が減ってまいりましたというような関係がありまして、課徴金その他の強制措置というものが必ずしも好ましい形ではないというような傾向も出てまいりまして、最近におきましては、逆にこういった強制措置を差し控えるような傾向が出てまいっております。わが国におきましても、こういった強制措置がはたしてどういう形をとるのが適当であるのか、あるいは強制措置をとることによってのメリットとデメリット、そういったものを十分考慮しながら、今後この点についての検討を続けていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  22. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 強制措置をやることによるデメリットというのは、どういうのがデメリットなんですか。
  23. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 西ドイツにおきましては、確かにこの強制措置によって身体障害者戦傷病者方々の確保ができたようでございますが、その後次第にその効果があがらなくなってきているというような状況を聞いております。
  24. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 だから、その効果があがらないというのは、具体的にはどういう効果というものがあがらなくなってきたのか。抽象的なことだったらどんな答弁でもできると思うのですよ。具体的に、どういうケースで、どういう効果があがらなかったのかということを聞きたい。
  25. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 結局、身体障害者雇用促進するためのまず一番大きな問題は、こういう人たち職場に復帰させるための能力の開発といいますか、再訓練といいますか、そういった措置が先行しなければ、いかに強制措置をとりましても、雇用を確保することはむずかしいわけでございます。これはもう申し上げるまでもございません。先生御承知のとおりでございます。  西欧におきましても、強制措置によってある程度は進んだわけでございますが、それ以上になりますと、かりに課徴金をとりましても結局雇用が確保できないということになりまして、むしろ課徴金とか強制をするよりも、リハビリテーションその他によって訓練なりやることによりまして、こういった心身障害者人たち能力を開発し向上させることによって、雇用につきやすいような体制をより強力にする、そちらのほうがむしろ効果的だというような考え方が一般的になってきているようでございます。
  26. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 つまり労働行政厚生行政文部行政ということについて、それぞれ、要するに基礎的なものをやらなければいかぬということでしょう。それがやれるようになったら、強制的な雇用もやれるということでしょう。そうですね、順序からいけば、あなたの議論から推していけば。そういう条件ができたときには、強制雇用というものは当然考えられますね。そうですね。その時点で一体強制雇用というのは考えられるのかどうかということです。つまり将来にわたっても強制雇用しないのかするのか、私が聞きたいのはそれだけです。
  27. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 現在雇用率が設定されておりますのは、民間事業所におきまして一・三%、官公庁におきまして一・六、非現業の場合一・七、こういうことになっております。おおむね、民間事業所におきましても現在一・二九%、官公庁につきましては大体一・六ないし一・七をほぼ達成しております。  こういう状況でございますので、今後そういった基礎的な前提となります各種の施策を講ずることによって、いまなおこれからも発生を予想されますたくさんの身体障害者人たち雇用促進をはかってまいらなければなりませんが、その際に、そういった前提要件が十分達成された暁におきましては、この雇用率そのものをもっと引き上げるということも十分考えられると思います。その際、強制措置をとらなければ雇用率達成できないのかどうか、そういった点にかかってくるであろうと思いますが、私ども現在の情勢におきましては、この雇用率達成は、強制措置をとらなくて指導強化することによって十分達成できるのではなかろうか、こういうふうにも考えられるわけでございます。
  28. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 要するに、身体障害者強制雇用するかしないか、できるかできないかというのはペンディングだというふうに、あなた方おっしゃっておると思うんですが、当然私は強制雇用すべきだと思うんですね。時間がないから、これ、詰めたいんですけれども、しかし話題を変えましょう。  仕事についている人たちが就業している際に、要するに身体障害を起こしたというような場合がありますね。そういう場合に、障害者解雇制限をするというお考えはないのか。つまり強制雇用というものは、これは望ましいと私自身思いますけれども、あなた方はまだはっきりした返事をくださらないけれども、それなら一歩譲りましょう。  仕事をしている人たちが途中で身体障害を起こしたという場合に、このことに対する解雇制限というものを当然私は考えてもいいと思う。強制雇用じゃないですよ。だけれども解雇制限なら当然考えられるはずですね。あなた方は一・何%というようなことできめて、そして強制雇用はできないけれども、それに対するいろいろな措置を講じる、とこうおっしゃっているんですから、それならば仕事の途中に身体障害を起こした場合に、その人たちを救済する道は当然あっていいだろうと思うんです。その点いかがですか。
  29. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 私ども身体障害者雇用促進法趣旨ないしは今回の審議会答申にもございますように、身体障害者雇用促進をはかる見地から、雇用率強制はできないにしても、行政措置雇用率達成強化をはかっていくということでございますし、一般身体障害者を各事業所それぞれに雇い入れてもらうということからいたしますと、当該事業所身体障害者になった人たちが、業務上であれば当然解雇は制限されますが、業務外の事故による身体障害につきましても、当該事業所配置転換なり、あるいは他の技能を身につけることによって、適当な職場配転をいたしまして、雇用を確保するということは、これは当然のことであり、望ましいことだと思います。
  30. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 大臣から、もう一ぺんはっきりとした御答弁を願いたいと思います。
  31. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 労働省といたしましては、いま山本さんのお話、あるいはまた先日の答申趣旨もよくわかっておりますので、雇用されている労働者身体障害者となった場合は、できるだけ解雇されることのないように、事業主に対して行政指導強化等について検討しておきたい、こう思っております。
  32. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 検討しておきたいということじゃなくて、あなたのお考えとして一体どうお考えになっておるのか、当然私はそうあるべきだと思うのですが、再度……。
  33. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 おっしゃるとおりです。
  34. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 ありがとうございました。  それじゃお伺いいたします。きょう私がお伺いしたいのは、横浜税関に入関をした馬渡さんという方がおります。その人が横浜税関に入関をしたのは二十六年の四月でありますが、三十三年の二月に左の目の網膜剥離を発病した。専売病院に入院をいたしましたけれども、そして手術をしましたが、左の目が失明をした。それから高島出張所輸出検査から、本関検査所配置転換をされました。その後四十三年四月に、本関検査所から山下出張所配転をされた。この山下出張所というのは、私も図面を見せさせていただきました。環境からいえばたいへん悪い環境のようで、私自身が見ただけでもそういう感じのするところでありますけれども、それが四十三年の四月であります。四十三年の十月に、残った右の目に網膜剥離症が発病した。そして病状が悪化をいたしまして、四十五年の三月に身体障害者の一級の認定を受けました。そして四十六年の四月に、国立視力障害センターに入所したわけであります。そして、はり、きゅう、マッサージ科に入って資格を取得をした。そのころになって大蔵省のほうで、退職の勧奨があったというわけであります。  この間にいろいろのいきさつもあります。それは、研修扱いをしてほしいというようなことで当局にも要求をしただろうし、その答えがたいへん不十分なようなことで、国立視力障害センターに行くにしても、自分でかってに行かれるならばこれはやむを得ませんというようなことで、たいへんあたたかみのない処置をされたように私はお伺いするわけであります。  そこでお伺いしたいのは、来年の三月にやめなさいというようなことで話があったそうでありますけれども、なるほど国家公務員法の七十八条の第二号、これによると分限免職ということができます。だけれども、それじゃ雇用促進法と一体この公務員法の七十八条との関連ですね。「本人の意に反する降任及び免職の場合」ということがあるけれども、その関係は一体どうなっているのか。これは労働省関係から、ひとつ解釈上お伺いをしたいと思うのです。  片一方では、この審議会答申にあるように、身体障害者に対する雇用促進というものに対して十分な――いままでは不十分であるから十分な配慮をしなさい、こう言っているんだ。そして、いま大臣の御答弁のように、就業中に身体障害を起こした人たちに対しては、その配置転換なり何なりによって救済をするのが当然である。私は二回確認したわけですけれども、そういうことになっている。そうすると、この関連について一体どうなるのか。ぼくは、国家公務員法のこの規定というものが、ただ首をぶち切ればいいんだ、身体障害があって職務に差しつかえがあるんだから首を切ればいいというものじゃないだろうと思うのです。国家公務員法のこの規定というものは、万やむを得なくて、どうしてもやむを得ない場合に、そういう処置をすることもあり得るというふうに私は解釈するのだけれども、その点どうなんですか。労働省考え方を聞きたい。
  35. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 私は、身体障害者雇用促進法趣旨からいいまして、こういった人たちに対しましては、本人の御希望、御意向を十分尊重した上で最大限の努力をして、配置転換職場の変更ということで処置すべきであろうと考えます。  ただ、そういった際に、本人の能力環境等からいたしまして、どうしてもそういう職場がないという場合には、本人と御相談の上で他の職場への社会復帰ということも考えざるを得ない場合があり得ると思います。
  36. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 身体障害者雇用促進というのは、明らかに健康人と身体障害者においては能力の差がある。そのことを承知しながら、なおかつ、要するに雇用促進というたてまえに立って障害者に対してはひとつ救済措置をする、あるいは就業の機会を与えるというのが、ぼくは身体障害者雇用促進法の本旨だと思うのですね。そうですね。そうすると、おっしゃったように、その人に対して職場において、先ほどの話ではありませんけれども、要するにリハビリとかなんとかありますね、そういうことによって本人の能力を向上させる。そして同時に、そのことによって仕事に再配置をする、もう一ぺん職場に戻してやる。もしその職場が適切でなければ、配置転換によって救済措置をするというのがあたりまえだと思うのですね。そうですね。もう一ぺん確認をしたいのです。
  37. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 いま山本さんのおっしゃったことと私のほうの局長がお答えしたことと、同じだと思います。労働省のたてまえもそういうたてまえで、いろいろな施策を講じて申し上げた、こう御理解いただきます。
  38. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 じゃ、大蔵省にお伺いいたします。  いま労働省のほうのお考えは、そういうふうなお考えだ。じゃ、大蔵省のお考えはどういうお考えだ。少なくともいままでの経過を、あるいはあなたのほうで一方的とおっしゃるかもわかりませんけれども、私がお伺いした範囲では、どうも職場から排除をしよう、つまり目が見えない、全盲ということで、それに対して、ただ法規にのっとって職場から排除をしようというようなお考えのように見受けられるのですけれども、その点いかがでしょう。
  39. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 ただいまの件でございますけれども横浜税関でございますが、現在、税関総数といたしましては千六百人くらいの人数がおります。本関には八百人くらいの人数がおるわけでございます。本人の希望――私ども具体的なケースを扱っておるものでございますので、具体的にお答え申し上げますと、本人の希望は先ほど先生がおっしゃいましたように、約三年前から三療の勉強をされて――国立視力障害センターに入所されましてそちらのほうの勉強をされておる。来年の二月でございますか、卒業をされるということになっておるわけでございます。たいへんお気の毒な立場であるわけでございまして、本人の御希望は、横浜税関の診療所におきまして三療のことで職場復帰をいたしたいということが希望であるわけでございます。  私ども、八百人の税関において診療所がいまどういうことになっておるかと申し上げますと、一週間に二回、しかも一日三時間でございますが、女医さんが参りまして診療をやっておるわけでございます。ほかに歯科あるいはレントゲン、あるいは看護婦という方もおりますけれども、そういうような診療所であるわけでございます。このような八百人のために税関におきまして三療士を一人置くということは、私ども考える場合にこれは決して適当なことではなく、またそうすべきでもないのじゃないかというふうに考えております。  と申しますのは、やはり八百人くらいのところにはり、きゅうの利用と申しますものがそうたくさんあるというふうには思いませんし、むしろ私は、本人の長い目で見た生涯を考えまして、最善の形におきましてどういう形で職場、むしろ社会復帰されるのが一番望ましいことであるかというふうな観点に立ちまして、本人の希望が三療師のほうで道を立てるということでございますので、国立視力障害センターの先生、カウンセラーの方々、あるいは、やはり税関といいましても官庁組織の一部でございます。これらの行政全体のあり方として、こういう失明された方々をどういうふうに考えていくべきか、労働省厚生省、人事院、それから予算を受け持つ主計局あるいは行管、その他いろいろ関係局があると思うわけでございますが、それら関係各省と連絡をとりつつ、現在慎重に検討を加えておるところでございます。
  40. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 私は、いまの御答弁に対してたいへん不満です。と申しますのは、あまり言いたくないのですが、申し上げますよ。センターに入るまでにいろいろないきさつがあるのです。行くならかってにお行きなさいということなんですよ。それまでに一体どれだけのことを税関の当局が親身になって考えたかどうかということが一つの問題点。もう一つは、奥さんと親戚の人たちに立ち会わせて、何でもいいから判こを押せと言って判こを押させているじゃありませんか。それは、卒業したら自己退職をするのだということに判こを押させていますよ。三つ目、再三言っているけれども、私が把握した範囲では、十一月の五日に人事課長と考査官が本人に会っているじゃありませんか。そして自己退職を強要しているじゃありませんか。そういう発想の中から、つまりあなたがおっしゃっているようなことを考えると、私は考えられないのですよ。何も好んであんまとかはり、きゅうを習いにいくのじゃありません。そして現実にいま、電話の呼び出しとか電話の交換とかいろいろなことを全盲の人がやっていますよ。そういうことをなぜあなた方は配慮なさらないのか。しかも労働省に話に行ったのは、これだけの長い経過の中で、三週間かそこら前じゃありませんか。問題がいよいよ顕在化したときにあなた方はそうやったのじゃありませんか。それが行政官庁のあるべき態度ですか。私はそのことをお伺いしたいのです。そして本人が将来を考えていいかどうかは、あなた方が判断をするのじゃなくて、本人に判断させるのが一番じゃありませんか。最大のファクターは本人に判断させることじゃありませんか。その点を私はもう一ぺんお伺いしたいのです。
  41. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 ただいま先生の御指摘になりましたように、私とものいままでの長い――一番最初に休職になりまして五年たっておるわけでございます。その間にセンターに入所する、その他いろいろのことはあったわけでございますが、確かに私ども税関だけの職場考えた場合におきましては、先ほど申し上げましたような観点からいきまして、御本人の希望がやはりはり、きゅう 三療師としてのことだということでございますもので、税関におきましてはそれは困難であろうというような観点でわれわれ検討しております。したがいまして、ほかのところにおきまして三療士としての活躍の場所はないか。われわれ承知している範囲におきましては、国立視力障害センターのカウンセラーの方のおっしゃるには、御本人は学歴もおありになるということで、そういうセンターの教官のポストというものも欠員があるならば可能であるというようなことも聞いておりますし、御本人がそういうような線におきまして社会復帰できれば、それが最善のことではなかろうかというふうに考えて、いままで御本人とも接触をしておりますし、関係各省との話がおそいということも確かにおっしゃるとおりでございますけれども、来年の二月、三月をめどにいたしまして、われわれ今後とも御本人の意向も十分に確かめ、またわれわれの事情も十分に御説明しながら、本人が最善の形におきまして社会復帰できるようにわれわれ考えていきたいと考えておるものであります。
  42. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 私はいつでもこういう問題を取り扱うときに思うのですけれども、つまり障害者ということになりますと、何だか能力がないというように考えるのですね。しかし、身体障害者局長のおっしゃるようにリハビリをやり、そしていろいろな基礎的な訓練を施していくなら、能力というものはぼくはずいぶん開発されるだろうと思うのです。それをさせないで、これは馬渡さんとは関係ありませんけれども、何か全盲になったらあんまとかはり、きゅうだけしかないということは偏見ですよ。身体障害者に対する、あるいは全盲あるいは目の見えない人たちに対する偏見なんですね。目が見えなかったらあんまとかはり、きゅう以外に何もないというような考え方にとらわれているのですよ。英文タイピストをやっている人もおるでしょう。現実におるわけですよ。一体そういうことをセンターに入る前にお考えになったかどうかということが、まさしく一番問題なんですよ。現在はり、きゅうの資格をとっているから、だからどうだということは問題じゃないのですよ。自分で解決したらいいでしょうと言うけれども、五百万か六百万要るのじゃありませんか。馬渡さんの退職金は幾らになりますか。
  43. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 退職の形におきましても、いろいろの退職の形があるわけでございまして、退職金……
  44. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 時間が惜しいですから申し上げますが、ぼくは、退職金をもらっても五百万か六百万だろうというのですよ、言いたいのは。そして本人の年齢を考えてごらんなさい。四十四歳から一体どこに転職ができるのかということです。それを、自家営業したらいいでしょうということにはならぬだろう、そういうことを私は申し上げたいのです。関連質問もあるようですからよしますけれども、このことに対して、大蔵当局としてちゃんと馬渡さんに対して、本人の納得のいくような職場における仕事というものをお与えになるお考えはあるのかないのか、私のお伺いしたいのはそれだけなんです。税関の中には腱鞘炎もあるということですから、要するに肩がこったり腰痛があったり腱鞘炎も起きているという話ですから、その比率については高いかどうか知りませんけれども、しかしそういうことがあるならば、そういうところにお使いになったって一向差しつかえないじゃないかということです。私はそう思うのです。その辺をひとつはっきりした御答弁をきょう私はいただきたいのですよ。
  45. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 先ほどの退職金でございますが、来年の四月一日にかりに勧奨に応じまする退職をなさったという場合でございますと、退職金が二百八十万ということに計算上なさっております。  それから、今先生がお尋ねの件でございます。横浜税関の中において診療所における三療師として職場復帰を考えたらどうかという点でございますが、私ども、いままで関係各省と打ち合わせたところにおきましては、現在のところ八百人の税関におきまして、先ほど申しましたような状態の診療所に三療師の専門の方を置くということは考えられないというのが現在の私ども考え方でございます。  しかし、現在われわれさらに検討を加えておる段階でございますので、今後ともやはりどういう形における社会復帰が御本人のために最善であるか、税関の事情あるいは官庁組織全体として、こういう方々をどういうふうに迎えたらいいかという観点についての反省も加えながら、御本人の希望、当局の考え方突き合わせまして、今後とも慎重に検討を急ぎまして、できるだけ早く結論を出していきたいというふうに考えております。
  46. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 私はたいへん失礼なことを申し上げたのです。五百万か六百万ぐらいだろうと言ったのだけれども、いま二百七十万というのです。二百七十万で一体、将来の生活というものを馬渡さんがやるといったときに、あなたならおやりになれるのか、このインフレの中で。そのことを一つお伺いしたい。  第二点は、関係各省というから、おそらく労働省でしょう。労働省とも御相談をなすったりということになれば、労働省のほうのお考えもあわせてお伺いしたいと思います。先のことですから。そして馬渡さんの要するに将来の生活にかかわることなんですから。  そして第三番目には、八百人だから無理だということの理由ですね。これは労働省かどちらか知りませんが、しかし関係各省と相談をしているというのですから、お伺いしたい。
  47. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 御質問の第一点でございます。現在御本人は住宅公団にお住みでございます。したがいまして、やはり直ちに開業されるということでございますれば、相当の施設が必要であるわけでございます。家をさがすということも必要であろうというふうにも考えております。横浜税関といたしましては、そういう家さがしにつきましても現在心当たりを当たっておるという段階でございます。ただ、これは決して強要するという性質のものではございませんで、やはりわれわれの心がまえの一つとして、そういう点につきましても検討は進めております。そしてどのくらいの金額が必要であるかという点につきましては、やはり相当の金額が要ると思いますし、またどのような借財と申しますか借用ということが可能であるかという点につきましても、われわれいままで調べた点につきましては、きわめてわずか貸し出すような機関しかないようにも聞いているのでございまして、現在さらに、どういうような点につきましてどういうような可能性があるのか検討を加えていかなければならないことであろうというふうに考えております。  それから第三点の、八百人でどうしてだめなんだということでございます。私ども、人数も一つの要素でございまして、やはり現在までのところにおきましてはその定員の中ではり、きゅう、三療士の方を一人迎えるということになりますれば、医療職の(二)という職種になるわけでございまして、そのような職種を人事院かあるいはそういうようなところから、あるいは定員というものをわれわれ獲得してくるということが必要になってまいるわけであります。  そのような観点から見ますと、それぞれの官庁がそれぞれの組織にどういうような職種がどれほど必要であるかという観点もやはり一方に考えなければならないのでございまして、現在までの検討の結果では、横浜税関にそのような職種を一つ置くということについては、われわれ積極的に考えるわけにはいかないというふうに考えておるところでございます。
  48. 大原委員(大原亨)

    大原委員 ぼくは、これは具体的な問題ですけれども、非常に大切な問題であるのは、やはりこの身体障害者雇用の問題で一応答申が出ておるわけですが、それから参議院の社会労働委員会でも集約した決議をしておるわけですけれども、やはりその目標はここにもうたっているのですけれども、やはり強制雇用制度を確立する。つまり、身体障害者の問題は今度は老人問題に次いで大きな社会問題なんですね。それから交通の問題から考えてみても、あるいは公害、環境破壊の問題から考えてみても、これは、西ヨーロッパには社会連帯意識が戦争犠牲者の問題で出ている、こういう議論、日本はそういう条件がまだない、こういうことなんですけれども、そうでなしに、身体障害者の問題は答申趣旨にもあるように、これは一つの社会的な責任としてこの問題を処理するということの考え方が必要だ、こういうふうに書いてある。書いてあるし、身体障害者のこれからの総合対策の目標といたしましては、これは私はポイントだと思うのですよ。  だから、いまの答弁を聞いていると、何だかやっかい者扱いにしているような、人間としての人権に差別を加えているような意識ですね。大体その採用のとき以来ずっとそういうことが官庁には一貫してあると思うのですけれども。だから私はこの問題は――この方はかなり教養もあり、目のあいているときに教育を受けて経験の豊富な人ですから、そのことを生かして政府全体としても適職をどういうふうにやるかということがあってしかるべきなんですね。ただ、おたくの税関税関考えるけれども税関の立場に立って政府に対して、そういう場合に身体障害者を連帯意識をもって職場でどういうふうにお互いの問題として処理していくかという問題について具体的に――職種の開発や生活の保障について考えようと思えば私はあると思う。というのは、たとえば電子計算機だってできますしね。男の方で四十四歳で電話交換をやるかどうか別にいたしましても、とにかく職を選ぶならばあるのですね。これは私は労働大臣の責任でもあるが、総理府長官がやるのかどうか、全体としましても身体障害者の問題について新しい観点で取り組むという、そういう姿勢が見られないのはきわめて遺憾である、あなたのところの議論が。全く、そういう身体障害者に途中でなったならば、これはおまえの責任だといって、自己責任でぽんと出してしまうということです、実際には。そういうことで身体障害者の問題の対策を処理したのでは、絶対にこの問題は解決されない。前進しない。  そういうことですから、私はいまの答弁を踏まえて労働大臣は政府としてこの問題を具体的に処理できなければ――具体的に処理するならば、これは一つのケースになるわけです。先例になるわけです。能力を開発する訓練と一緒に、リハビリと一緒に、医療とは何かということなんだ。リハビリと一緒に職場を保障する措置を講ずる、この人の条件のときに、こういうことができないということはない。私は、こういう具体的な問題を解決すれば政策は前進するのではないか、こういう観点で労働大臣の御見解をお聞きしたいと思う。
  49. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 だんだんいま馬渡さんの問題について応答を聞いておりますと、やはり一人の方が就職されてその間にこういう御病気になられる、その間、よく接触する間の慎重な、ある意味では熱心な、ある意味では親切な、そういう話が間々欠けている問題があったのではないかという気もするわけです。いま大原さんのおっしゃるようにいまから先、これはやはり中高年齢層の問題とこういう身体障害者の問題は大事なことだ、私はこう思っております。同時に、ですから答申も出たことでもあり、これを一つのきっかけにいたしまして、私たちはやはり残っている能力を開発するところに重点をひとつ置く必要がありはせぬか。おっしゃるように、コンピューターもあります。あるいは製図もありましょう。あるいはまたデザインなどという、それぞれの障害の模様によってそうした訓練などをしながら社会復帰ができるようなところに、一そういままで以上にやらなければいかぬ。国立関係やら――専修職業訓練校とか高等職業訓練校とかいままでもありましたし、また国のほうでもつくっておるし、県立もありますが、こういう機会にそれを一そう社会的に訴えながら、いまの大事な問題について推進していきたい。来年度の予算でもそういうものを計上していませっかく折衝している向きもそういう趣旨を生かしていきたい、こう思っております。
  50. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 道正さん、いま新しい職種の問題もあるのだ、こういう話がありました。ただ私は、身体障害者雇用促進法の精神というものを積極的に生かすというあなた方のお気持ちがあるならば、本人のために新たな職種をつくることが幾らだって――幾らだってということは言い過ぎかもわかりませんけれども、新たな職種をつくることが可能だと思うのですね。大蔵省に実例があるのですよ。東京国税局、名前はあげませんけれども、失明をいたしました。本人の強い希望があった。そして税務相談所にテレフォンサービスという係をあなた方新設しているのです。それならなぜそのことができないのだろうか。馬渡さんは、通勤からいっても、あなたのおっしゃったように横浜なら通勤可能なんです。条件的には馬渡さんの場合には横浜税関につとめさしてあげるのが一番いいわけですよ。そしてその税関の中に診療所というものがあるならば、なぜ新しい係ぐらいができないのだろうか。それが身体障害者雇用促進法の精神じゃないのですか。それでは、遠藤さんにぼくはまず最初にお伺いしたい。それが精神じゃないだろうか。
  51. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 身体障害者雇用の確保につきましては、先ほど申し上げましたように、当該事業場でそういう身体障害を起こしたという人につきましては、まず第一に当該企業、当該事業場内でその人の残存能力に応じた職場、あるいは能力が欠けるのであれば、リハビリテーションなり訓練をやりまして、新しい技能を見つけさして、そして適当な職場配置転換をして雇用を確保するというのがまず第一だと思います。しかしながら、当該事業場内でどうしてもその人の能力に見合った職場がないということであれば、第二次的には他の適当なところで社会復帰を進めていくということであろうと思います。したがいまして、この法律の趣旨からいいますならば、できるだけそういった措置を講ずることによってこういう人たちの希望に応じた職場を確保していくように努力をいたしたい、かように考えております。
  52. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 ですから労働能力があって、一定の条件さえ保証されるならば、その人が労働が可能であるという場合にはそういうことを考えるということが望ましいということですね。そして、それがあたりまえのことだということでしょう。ですから、大蔵省としては当然そういう配慮といいますか、そういう一つのことをぜひ考えてほしいと思うのです。そういうことから考えれば、免職というのですか、そういうことも当然おかしくなるはずですから。  私は時間もありませんのでお伺いしたいのですけれども、一体分限免職などということをやらないということを第一点あなたに確認してもらいたいと思うのです。第二点は、いま局長のほうからお話があったように、そういう精神に基づいて、ひとつ本人のために十分な考慮を払ってもらいたい、この二点についてお伺いしたいわけです。もし答弁のいかんによっては、私は少し時間をかしていただきたいと思います。
  53. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 私ども、現段階で結論がまだ出ておるわけでございません。そのような段階におきまして、第二に、先生のおっしゃいましたできるだけ職場において、職場の形に沿うような精神においていろいろ考えてみろという点につきましては、その職場復帰というのを、やはり横浜税関がよろしいのか、あるいはその官庁組織の中で考えてもいいのかどうかという問題もございますし、私ども実は答申を拝見させていただきました。そのような答申を官庁組織としてはどのように受け入れていくのか、まだ私も十分に担当部局から伺っておりませんので、そこいらはきわめて重要な問題であるだけに、私ども関係各省と鋭意その考え方を詰めますし、基本的な考え方といたしましては、先生のおっしゃいました、あるいは答申の線というものをわれわれ十分考えながら官庁組織としてどこまでそれを受け入れるべきかという観点から考えてまいりたいというふうに思っておりますし、第一の点につきましては、現在われわれ法律、規則というものの範囲の中でありとあらゆることを本人の最善になるようにという点で考えておるわけでございまして、どういうことはやる、どういうことはやらないということを現段階におきましてお約束はできないのではなかろうかというふうに考えております。
  54. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 労働省のほうからの答弁はお聞きのとおりです。委員長がお聞きのとおりです。それから大蔵省として重要な問題があるというけれども、馬渡さん本人にとってはもっと重要な問題だと思うのです。そして委員長もお聞きのとおり二百七十万円でほうり出されてしまっておる。開業の施設から何から大蔵省が出してくださるというなら話は別ですよ。そんな規則なんかないはずなんです。それでお答えができないということならば、私は納得できません。だから関税局長呼んでください。それまで私は質問を保留いたします。関税局長呼んでいただきたい。つまり、そんなに人間一人が大蔵省で処理ができないなんていうばかなことはないと私は思うのです。  それからこの問題はそんな短時日の間にできた問題ではなくて、先ほど申し上げたように、三十三年以降ずうっと出てきた問題なんです。だから、もしそういうことであるならば、三十三年以降の大蔵省のあり方とかやり方ということで逐一ここにありますから、全部出します、関税局長に。だから関税局長呼んでください。大蔵省は何をやったかということがちゃんとこれだけあるのです。呼びなさい。
  55. 野原委員長(野原正勝)

    野原委員長 続いて、大原亨君。
  56. 大原委員(大原亨)

    大原委員 できるだけ時間を守ります。  いまのついでに――ついでにと言ってはなんですが、山本委員質問関係をいたしまして、身体障害者雇用審議会答申、これは非常に大切な答申だと思います。その中で、問題は限定して、まとめて質問いたしますが、身体障害者雇用促進法が、言うなればおざなりになっているのではないか、こういう問題があるわけです。  身体障害者雇用問題というのは、身体障害者の福祉対策の言うなれば頂点に立つ問題ですから、この問題について発想転換をしなければならない、こういう客観的な情勢があると思うのですが、この答申の中によりますと、従業員五百人以上の大規模事業所において一・一七%と雇用率が低率である。未達成事業所の割合も四四・八%の多きに達している。四四・八%も未達成事業所がある。こういうふうにいってあるわけであります。官公庁現業非現業とそれから中小企業などを比較してみると、結局は身体障害者をずっと雇用する職場が保証されていない上に、言うなれば粗末なというか条件の悪い職場にこれは集中している、こういうことであると思うわけです。しかし身体障害者の問題は、いままでもしばしば議論をしておるように、これは一つの社会的な問題として考えていく。交通事故にいたしましても、あるいは公害の問題でも労働災害の問題でも、やはりいまの経済活動の中で出てきておるわけですから、お互いの問題である。あるいは逆に言うなれば企業責任を明確にする問題でもある。こういう点から考えて、大企業が身体障害者を選別し、しかも身体障害者をできるだけ雇わぬようにしている。雇用促進法雇用率をも達成していない、こういうのはおかしいじゃないか、こういうことでありますね。私は、こういうことについて具体的にどういう対策をとるのか、こういう点を明確にすることが必要だと思いますが、いかがでしょう。
  57. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、身体障害者雇用率は、民間事業所におきましては一・三%という率が設定されております。現在のところ、この達成状況は一・二九、法律に定められた雇用率をほぼ達成いたしておりますが、その中で、詳細に見ますと、大企業が、いま御指摘になりましたように一・一七、五百人以上の大企業のうちの約四割が達成していない、こういう状況に相なっておりまして、この点につきましては、こういった事業所心身障害者に対する理解と社会的責任の欠如ということがまさに指摘されるだろうと思います。  そこで私どもといたしましては、この審議会答申にもございますように、特にこういう点をこれからの行政指導強化する最重点として、この未達成の大企業につきましては身体障害者の雇い入れに関する計画書を作成いたさせまして、求人の際に強力な指導をしていく、ないしは推進委員を設けまして、内部からこの身体障害者雇用促進をはかっていって、雇用率達成するように強力な指導をしてまいりたい。どうしても未達成でなかなか言うことを聞かないという、理解を示してくれない事業所につきましては、当該事業所を公表する等の措置も今後強く考えてまいりたい。こういうことによりまして、少なくとも法律に定められた雇用率達成できるように、こういった大企業中心に強力に進めてまいりたい、かように考えております。
  58. 大原委員(大原亨)

    大原委員 大臣、私はこういうことをやってもらいたいと思うのですが、できますか。身体障害者雇用率の非常に低いそういう企業を順番に、まあ二十番くらいまで公表すると、ここで答弁してもらいたい。ここで答弁できなければ、いまそういう具体的な資料がなければ、後日答弁していただく。大体二十番くらいまで悪いのをずっと順位を答弁して――国会で、きょうはできなかったら、別な機会にやってもらう、これはできますか。
  59. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 私は、身体障害者の問題は、どうも日本は社会連帯性がなかなかないために、あなたがおっしゃったように、せんだって答申をいただいたときに、私も大企業が率を達成してないことを聞いておりましたので心配している者ですが、いま大原委員のおっしゃったそういうものを、一ぺんデータを集めて、何かの機会にあなたへお届けしたい、こう思っております。
  60. 大原委員(大原亨)

    大原委員 いま手元にないようだから、できるだけ近い機会にこれを発表してもらって、どういう会社が不熱心であるか、こういうことを明らかにしてもらいたいと思います。  それから特にいまの問題でけしからぬのは、いままでの議論でわかるように、大きな企業は自分の企業の中で、共済施設その他もあるわけです。ですから、その中で身体障害者を社会的な責任として雇用率を上げていくということは、中小企業よりも非常に条件があるわけですから、そういうところが責任を果たしていないというのはおかしいことなんです。政府自体も一つの事業体ですけれども、大きいところでそういう処置をするのは、政策としてはできるわけです。だから、それをやらないのはおかしい。そういうふうにやらないところに対しては、たとえば課徴金を課するとか、ヨーロッパ等で一部やっているようなそういう法律の改正等が必要じゃないか。たとえば、将来は一つの職場を選定して、ここは身体障害者を優先的に雇用しよう、しかしそこに応募者がないという場合があるかもしれない、そういう場合には、一つの社会的な責任としてやはり課徴金を出して、そしてこれが身体障害者雇用促進に役立つ、こういうことになってもよろしい。これは罰金等、それから何の、税金のと、これはどういう関係になるかは別にいたしまして、最近議論になっているようなことがあるわけですが、やはり身体障害者雇用政策を進めていくことは非常に大切だから、こういうこと等を含めた法律改正、公表の問題等を含めて、いまの雇用促進法をやはり質的に脱皮させる必要があるのじゃないか、改正する必要があるのじゃないか、こう思いますが、そういう御用意は近い機会にあるかどうか、ひとつ見解を聞きたいと思います。
  61. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいま大原先生の課徴金制度を取り入れたらどうか、これも一つの考え方かと思いますけれども、先ほど来申し上げておりますように、身体障害者雇用促進につきましては、要は身体障害者人たち能力を新たに開発する、あるいは残存能力を高める、そういうことによって職場適応能力を高めることがまず第一要件であると思います。  と同時に、各種の企業におきまして受け入れがなかなかむずかしい。これはいろいろな理由があると思いますが、受け入れの容易なところは確かに雇用率達成できていると思います。しかしながら、達成していない事業所の中には、職場環境、作業の性格、そういった面からなかなか受け入れがむずかしい面もあろうかと思います。そこで、ただ単にこういうところに罰則を科するとか課徴金を課することによって制度が確保できるものではなくて、片一方でそういう能力を高め、開発すると同時に、受け入れの企業の側で職場環境を改善するなりあるいは作業方法を手直しする、そういったことを措置することによって、こういった身体障害者方々の受け入れがより可能な、より容易になるような施策を講ずること、これが第二段階の問題だと私は思います。  この二つ、両方相まって、私ども身体障害者人たち雇用促進をはかってまいりたい、こういう措置を今後一そう強力にやることによりまして、先生方御指摘の、身体障害者のこれからの――いろいろな人たち身体障害者として出てまいりますが、その促進をはかってまいりたいと思います。  その上で、なおかつこういった雇用率強制する必要があるのかどうか、するほうがより効率的であるのかどうか、そういった点を十分、審議会答申の御趣旨も尊重しながら検討してまいりたい、かように考えております。
  62. 大原委員(大原亨)

    大原委員 この答申の中には、いま御答弁の中にも前の答弁にもあったんですが、雇い入れ計画作成命令をこの法律は出せるようにしてあるわけですね、これは法律ではあるんですが、そういうことはほとんどこれはいままでやってないでしょう、職業安定所の所長は。それから、ほとんどそういう痛くもかゆくもないということなんでしょう。ですからそういうことであったんでは、身体障害者のやはり雇用の機会を保障するということを中心とした総合的な福祉対策というものは立たないんじゃないか。というのは、そういうことをびしっと身体障害者についての雇用の機会を法律的に裏づけていくことによって、たとえばそういうふうにこの身体障害者になった場合に、これをその治療の中において社会復帰のリハビリテーションを直視をしていく、これは厚生省の分野ですけれども。それから学校の教育の中に、文部省もきょう来ていると思うけれども、この学校の教育の中において、この問題を就学免除などというようなばかなことがいままで――最近議論になり出したからこれはやめるということになっておるけれども、就学の機会を保障しながら、やはり自分の能力が最大限発揮できる、そういう教育や訓練をしていく。目が見えない人は、はりやあんま、マッサージだというようなきまった既成概念で考えるのではなしに、そういう能力を開発するその目標となるものが一つの雇用である、働く場所である。働く場所を保障するという制度をつくることによって、本人も意欲ができれば、関係機関も総合的な力の発揮ができるのではないか、そういうことを社会的な責任でやっていく。やったところに対しては税制上、金融上の措置もとれるけれども、しかし雇用の責任もきちっとしていく、こういうことをやらないと、身体障害者の福祉に対する総合対策というものは立たないのじゃないか。それは、私は、その発想を転換をしなければならない。これは促進法を一歩前進をするという、そういうことを、たとえばいまできなかったならば五年後にはやる、五年後にはこういうところが目標ですよと、こういうことをやはりやるような措置が必要である。そのことは私は雇用問題が中心である、こういうふうに従来から感じておるわけですけれども、私の考えに対してどう思いますか。
  63. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 身体障害者の福祉につきましては、雇用問題が最大の重点でございます。したがいまして、私どもは、その趣旨を十分体しながらこの行政を進めてまいるわけでございます。  先ほど御指摘になりました未達成事業所に対する雇い入れ計画作成命令でございますが、昨年の十月までに未達成事業所のうち約四百件、この作成命令を発しております。と同時に、それ以外の事業所につきましても、求人指導の際に、未達成の分につきまして身体障害者の雇い入れ促進を強力に行政指導いたしてまいっております。今後とも、今回の答申にもございますことでございますので、十分こういった各条項を強力に発動するように指導してまいりたい、かように考えておる次第でございます。  全体としましては、先ほど御答弁申し上げましたように、身体障害者方々を何も私どもは、全盲の場合、はり、きゅう、あんま、マッサージだということでなくて、先ほど御指摘になりましたような電話交換とか、あるいは労働省で開発しました盲人用のかなタイプ、あるいはコンピューターのキーパンチャーとか、そういった新しい職種も、確かに数は少のうございますけれども逐次開発してまいっております。そういった新しい職場にこういった重度の身障者その他の身体障害者等も、それぞれしかるべき職場を確保してまいるような努力を続けておるわけでございます。  そういうことで、今後とも審議会答申趣旨を十分尊重しながら、雇用促進法の精神に照らして一そう行政指導を強力に進めてまいりたい、かように考えております。
  64. 大原委員(大原亨)

    大原委員 きょうは厚生省来ておると思うのですが、経済社会基本計画の中にも具体的に書いておるのです。いままでこんなに具体的に書いたことはなかったのですよ。しかし、これは根本がゆらいでおるといっても、この間の議論では、経済社会基本計画はそういう面については残しておく。たとえば福祉の優先の面とかいうふうな問題国民所得に対する振りかえ所得の比率の問題等は残しておく、こういうふうに言っておるわけですが、その中で、社会保障の長期計画をつくるというときにもう絶対これはやりますというようなことが書いてある。というのは、重度心身障害者については、もうそれを持っておる親は、子供あるいは大きくなっても心配がないような完全な施設をつくるんだという、五カ年計画をやるんだといって書いておるのです。この答申につけてある資料の中にも、やはり重度心身障害者雇用問題についての実態とこの重要性について資料も大体出ておるわけですけれどもね。やはり人間の能力というものは開発をしていくと、身体上あるいは精神上そういう障害がある人であっても、その人の長所を最大限に発揮できるような、そういう教育と職場を保障していくならば、その人は一人前の仕事ができるんだ、こういう確信の上に立った対策が必要だ、こういうことをこの答申もかなり突っ込んで答申をしてあると私は思うわけです。したがって、私は、社会保障の五カ年計画あるいは重度障害者のそういう問題を完全に解消する政策を中心とする福祉政策、そういうものを考える場合に、厚生省だけが考えたんじゃだめだ、厚生省だけが考えて、そして治療においてリハビリテーションの重要性を言っただけではだめだ。リハビリテーションもろくにやらない厚生省の分野において、もう身体障害者は施設へ入れておいたならば飼い殺しだというふうな、そういう関係に追い込むような条件の中にあるというふうな状況の中だけではこの問題はだめだ。だから、やはり職業訓練とか、あるいは文部省の教育の面とか、そうして厚生省の面、それらを総合的に考えて、社会問題としての身体障害者の総合対策を立てる、こういうことを政府全体としてやらなければならないし、その中で雇用問題というのは私は何といっても中心である、働きがいの中心である。したがって、そのことに十分、経営者、事業主等が関心を持ってやったならば、そうしたならば、そういうことは決して企業のマイナスにはならぬ。こういうことで私は対策を立てる必要があると思うし、これが議論になった社会連帯の基本である。したがって、私はそういう点において、これらの問題について、経済社会基本計画も問題があるわけですが、その問題は福祉優先ということを政府は言っているわけですから、雇用問題を重点に置きながら総合政策を関係省が、セクトでなしに総合政策を立ててやるべきだ。そうしなければ予算を使うだけだ。そうして中身がもう全然生きていない、こういうことになるのではないかというふうに思います。  これらに関係して、具体的な問題もあるわけですが、労働大臣答弁を求めます。
  65. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 私なども自分の地方へ帰りますと、よくこういう施設を回ります。そして、おっしゃるように、子供の将来の就職あるいは身体障害者方々がどうあとで生活を立てるかという相談を受けるのが一番つらいことでございます。まさにおっしゃったとおりでございますし、何と言っても強制という話などもありますけれども、国保などでは強制もしないでやっている。やはりそこには社会の連帯性というものが非常に生きておる。ですから、いまおっしゃったことからいたしましても、まさに私は、こういう答申が出たときでもありますし、皆さん方から御議論いただいた点でございますから、いままでやっているものを総合的にひとつプッシュして、みんなの社会連帯の中にこういう、心身障害者雇用の問題についての答申の中にも、国民運動の展開ということまでも書いてございますから、総合行政の中に深く社会各層の御理解をいただきたい、こういうふうな考えで進もうと思っておりますことを御理解いただきたいと思います。
  66. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 ちょっと大原さんの質問に関連してお伺いしたいのですけれども身体障害者に重度とそれから中度と軽度とあるでしょう。軽度というのはどの程度の人ですか。
  67. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 身体障害者の等級につきましては、私ども労働省の労災の等級と厚生省身体障害表の等級といろいろまちまちでございますが、一応一、二等級が重度、それから視力につきましては三等級まで、それから三、四が中度、五とそれ以下が軽度と、こういうことでございます。
  68. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 だから、軽度という場合には、小指がなくても軽度ですよ。ぼくの質問したいのは、たいへん皮肉な質問になるけれども、その中でたとえば一・七とか一・六とかということは、そういう言い方はたいへん悪いけれども、小指がないとか中指が少し切損しているとか、そういう人を入れたらたいへんなあれになるのですよ。問題は要するに、中度以上の人たちがどれだけ職場に採用されているかが問題なんです。ところが、これは労働省の資料を持ってきていただくときについでに軽度、中度、重度を持ってきていただきたいというのは、そういうことなんですよ。おそらく軽度の人が多いと思うのです。しかし、いままさに一番必要なのは重度とか中度の人たちがそういうことを望んでいるということなんですよ。だから、パーセンテージだけでは実際に親身な身体障害者雇用促進にはなっていないのですよ。その辺は将来の方針として一体どう考えるのですか。軽度の人ばかりを入れておって、ほんとうに必要とする重度、中度の人は抜いちゃって、雇用促進の比率はこれだけになっておりますなんて言ったら、これはそのデータというのはほんとうのデータじゃないということなんです。
  69. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 もちろんただいま山本先生御指摘のように、小指がなくても身体障害者です。私も片一方視力はまさにほとんどございませんで、これも身体障害者のうちに入るだろうと思います。しかし、そういうことでこの身体障害者雇用促進法を執行しているわけでもございませんし、何ら労働能力、職業能力に支障のない人たちをこの法律の対象として私ども考えているわけでは決してございません。ただ、雇用率の計算の場合にはそういう人たちも入っていることも事実でございます。しかし、私どもはあくまでこれは、中度以上ないしは今後は重度の障害者を対象にしてこの行政を推進すべきである、こういうふうに観念いたしております。したがいまして、来年度予算でもいろいろと施策を講じるつもりでおりますが、それはあくまでもそういった通常のやり方では就職困難な程度の身体障害者を私ども対象として考えております。先生の御指摘のとおりでございます。
  70. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 ですから、今後の中で、要するに身体障害者雇用促進法というものについては、私は条文というものを多少修正する必要があると思うのですよ。つまり局長のおっしゃられたように普通の場合には就職が困難な人だということを念頭に入れたことをひとつやってほしいと思うのです。遠藤さんが百分の一・七の中に入ってはほんとうは困るのですよ、率直に言って。しかし、官庁のデータはそれが入っておるということなんです。遠藤さんが入っているかどうかは別として。しかし、ほかの人はそういうことになっているのですよ。だから、それはひとつきちんと今後の方針としてやってほしいとぼくは思うのですよ。  それからもう一つは、先ほど申し上げたように就職をした途中でいわゆる中度以上あるいは重度になった人ですね。そういう人たち雇用について中途解雇をしないということ、これはひとつきょうはっきりと大臣から御答弁いただきたいのですよ。
  71. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 まあ私たちの立場といたしますと、そういうけがなどをしましても、その企業内部においてひとつ万全の手当てをしてもらいたい、こういうふうな考え方でおります。それぞれの事情もあることでございますから、御理解いただきます。
  72. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 少なくとも官庁においては、そういうことをぼくは率先してやっていただきたいということなんですよ。率先してやっていただけますかということなんです。ケース・バイ・ケースじゃないでしょう。
  73. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいま大臣からお答えになりましたとおりでございますが、私どもは、身体障害者並びにこれから非常に問題になります高年齢者対策につきましては、民間にももちろん指導いたしますが、官庁におきましても率先してこういった高年齢者、身体障害者を優先雇用するという考え方を持っております。ただ、先ほど来申し上げておりますように、第一次的にはあくまでもその事業場内で職場配置転換なりそういう措置をとって職場を確保するということでございますが、本人の能力なり希望によってどうしても向かない、そういう職場がないという場合には、やはり他の適当な職場へ社会復帰させるということを考えざるを得ないだろうと思います。
  74. 大原委員(大原亨)

    大原委員 この雇用率考えに、軽度な者を雇ってもいいからできるだけ率を上げておいたらよろしい、こういう考えがやっぱり事業所にあるのですよ。ですからやはり雇用達成率は一・三なら一・三と民間事業場にありますね。これは少なくともやらなければいけない。そしてその中身について、質について、重度、中度、軽度ですね、そういう中身について、それぞれの事業場に対応してというわけにはいかないけれども、やはりそれに対する問題はある程度倫理的なものでやってもいい。しかし、雇用率は一・三でなしに、さらに社会全体の身体障害者が増加をしていく、いまいっておるわけですから、先天性、後一天性の障害者の区別はいまできぬようになっておるわけですから――実際上それはできない。たとえば胎児水俣病なんていうのは、そんなのはできないですよ。先天性、後天性というのは、つけることは実際できない。そういうふうに社会的に身体障害者がふえているというこれを全体としてどういうふうにお互いの連帯意識の中で働いていくか、こういう中で雇用率を決定をしていく。これは義務である。強制的なものである。そしてその質を、能力を開発する可能性もあるですから、現実にはどの程度しかいってないということもあるですが、その質の問題についてはある程度倫理的な規定、奨励的な規定をもって出発してもよろしいかもしれない。実際にはほとんど軽度の者から軽度の者からやっているわけですから、そういう二つの量と質の面での規制をやる。少なくとも社会的に考えてみてこのくらいの身体障害者職場においてかかえるということは、これは社会的な責任であるということを法律で明確にしていく。それを一緒にいたしまして訓練や治療も全部やっていく。そういう福祉の五カ年計画を立てる場合にはそのことを考えてやっていく。最後には強制雇用を目標だ。そのくらいなことをやらないとやはりおざなりなことを繰り返すことになると私は思うのです。ですから、その問題についていままで答弁した以上の答弁をするということはなかなかむずかしいかとも思うのですけれども、この答申は不備なところもあるけれどもかなり前向きにやってあるので、この趣旨はやっぱり強制雇用や優先雇用条件を早急につくれというふうに考えてよろしい、こういうふうに私は思っておるわけです。それで足りなければそういうふうにすべきである、こういうふうに考えるのでありますが、いかがでしょう。
  75. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 先ほど来御指摘のように、身体障害者雇用につきましては、常人とほとんど差別がない。外見的にはいろいろありましても、能力的に差別がない。これは私どもはむしろ常人としてその就職をはかっていくべきでありまして、今後の身体障害者雇用促進のたてまえ、重点はあくまでも中、重度以上の者、したがいまして、やはり何と申しましても、強制とかそういう措置よりも、そういう人たち能力を向上させる、再開発するということと同時に、受け入れ体制の問題が私は確かに先決の問題ではないかというように考えるわけでございまして、そういった意味におきまして、今後そういう方面にこの行政の重点を置いて、そうすることによって身体障害者雇用促進、同じ雇用率にいたしましても、その中で重度障害者雇用率を高めるべきではないかという御意見もございます。そういった点もいろいろと審議会尊いろいろな場で検討されておりますが、今後指導体制といたしましては、重度の障害者雇用率をできるだけ高くしていくという方向で十分努力してまいりたい、かように考えております。
  76. 大原委員(大原亨)

    大原委員 厚生省だれか来ていますか。――あなたのところに身体障害者の福祉対策について計画をこれからつくって、五カ年計画で振替所得の比率を確保していこうというのだけれども労働省や文部省と連絡しているのか、あなたのところだけでやっているのか。
  77. 角田説明員(角田耕一)

    ○角田説明員 いま御質問の点は、各省とも連絡をとりつつつくっております。
  78. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 関税局長がお見えになりましたが、私は雇用促進法の精神をいまさっきお伺いいたしたのです。雇用促進法というのは、つまり、身体障害者に対してできるだけ職場というものを与えていくということで、審議会答申に基づいて労働省としても積極的にやっていきたい。同時に、その中で、ある職場に就職をした場合について、その途中で身体障害を起こした場合については、その人を保護することが当然の措置であるというふうな御答弁をいただいたわけです。そのあとに、国家公務員法の七十八条ですかについて、促進法との関連についてお伺いしたわけです。そのときには、御答弁は、国家公務員法の規定はありますけれども、しかし、その規定というのは少なくとも情無用で分限解雇をすることではなくて、できるだけその職場に牛かすことが法の精神である、同時に、雇用促進法というものがあるから、その関連から考えても当然のことである、そういう実はお答えをいただいております。そしてそのあとにお伺いしたのが馬渡藤雄さんのことです。馬渡藤雄さんのことについては、いろいろ経過を申し上げて、そしてお伺いしたわけでありますけれども身体障害になられた方々は健康者と比べて能力的には劣っておる。したがって、職務を遂行できないという場合には、それは要するに障害があるからであって、そこに適当な職場というものを与えていくならば、そこでちゃんと仕事は完遂できるだろう。しかも、同時に、そういう人たちについて、文部とか厚生とかあるいは労働とかというそういう各行政において、リハビリとかあるいは職能訓練とか職業訓練とかというものを行なうことによって、その人の能力を開発することができる。しかも、その能力というものは少なくとも私は無限に開発できると思うのです。同時に、職場においてそういう適正な措置をはかることによって、その人たち仕事というものが安定することができるというふうなことを申し上げ、そして御同意を得たわけであります。そしてその中で、馬渡さんに対して一体処遇をどうなさるのかという質問を申し上げたわけであります。そのときにお答えは、解雇をするかどうかはわからぬ、こういうお話ですから、それならば国家公務員法の精神あるいは雇用促進法の精神に背馳をするのではないだろうかということで実はおいでいただいたわけであります。私は、重大なことであるというふうに大蔵省はお考えになっておるけれども、馬渡さんについてはもっと重大であると思うのです。お伺いすれば退職金は、私は五百万か六百万と思っておりましたところが、二百七十万というお答えをいただきました。そのことで街頭にほうり出されて一生馬渡さんが生活をしていけるかどうかということを考えると、私はそれは、常人の知識を持ってしては、当然生活というものは不安定になるだろうし、困窮に追い込まれることは必定であります。したがって、そういう点については、行政当局で当然配慮をなすべきではないだろうか、実はこういう御質問を申し上げたわけです。したがって、そのことに対する関税局長のお答えをいただきたいと思うのです。
  79. 大蔵政府委員(大蔵公雄)

    ○大蔵政府委員 具体的なケースといたしまして、この横浜税関におきまする馬渡さんの事実に関しましては、すでに先生もここにおきまする経過を十分に御承知のことと思います。私どもといたしましては、今日まで、馬渡さんがいわゆる現実問題として心身障害者になったということを前提といたしまして、三年間、はり、きゅうの学校にも通ってもらうことができるような姿勢をとってまいったわけでございますし、今後馬渡さんの処遇をどうするかということに関しましては、すでにあるいは総務課長から御答弁いたしたかもしれませんけれども、私どもといたしましては、現在、労働省ともまた人事院とも、この馬渡さんの具体的なケースを中心といたしまして、どういうふうに処遇をするかということに関して懸命に実は検討をしている最中でございます。しかも、その検討しております最中に、現在、この答申が出てまいりまして、一般の民間の方々職場において、かりに職場の途中において心身障害者になられた方は、その企業がその方のめんどうを見ていくということが望ましいという答申がごく最近において出たことも、私ども承知をしております。したがいまして、それを踏まえまして政府としての態度をいかにするかということは、ひとり税関の問題のみならず、公務員全体の問題かとも思われます。たまたまその具体的なケースとして現在、馬渡さんの問題があるわけでございますけれども、やはり公務員の立場といたしましては、政府全体の立場といたしまして、一体職場においてその途中において心身障害者になった人たちの処遇をどう対処していくのかという問題とのからみで考えていかなくてはならない問題かと思います。したがいまして、私の立場といたしましては、現在の段階におきましては、そういうことも踏まえて現在、厚生省あるいは労働省、人事院とも馬渡さんの処遇を具体的にどうするかということに関して真剣にひとつ検討をしていきたいということでございまして、もちろんこの問題といたしましては、御本人の希望というものもございますし、また、本人が将来、心身障害者の状態でこれから先生きていくということをやはり考えなくてはなりませんけれども、あるいは、なかなか満足のいくというような結果が出るか出ないかは私は自信を持ってお答えをいたすわけにはまいりませんけれども、私どもといたしましては、本人が将来生活に困らないという見通しをつけ得るような状態においてその処遇を考えてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  80. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 先ほど、お見えにならない前に、東京国税局の例を申し上げました。Yさんといたしておきます。そのYさんが失明いたしました。そのときに東京国税局では、納税の相談室に電話のサービスといいますか、そういうところに係を新たに設けまして、そうしてその人を処遇したという実例もあります。したがって、私は、単なる職種だけの問題ではないと思いますので、その点ひとつ前向きに御検討願いたいと思います。先ほどの答弁では、どっちなのかわからぬという答弁でありました。それで局長にお見え願ったわけであります。したがって、この件については、ぜひ先ほど局長がおっしゃったように、本人の生活の問題もあります。人権の問題でもあると思います。したがって、前向きにひとつお取り計らいを得たい、お願いしたい。こう思います。その御答弁だけをぜひひとつ聞かしていただきたい。
  81. 大蔵政府委員(大蔵公雄)

    ○大蔵政府委員 先ほど申し上げましたように、これから人事院ともあるいは労働省ともよく相談をしてまいりたいと思います。要するに、現実問題として、目が見えない方にふさわしい職場というのは、税関の中におきまして、東京国税局の場合、税務相談室の電話の交換というようなお話がございましたけれども、私どももそういう御本人がやはり公務員として働く生きがいを感じ得るような職場が、一体、税関職場の内部に見い出し得るかどうかというような問題もあると思います。あるいは場合によりましては、要するに税関という職場を離れて、それでせっかく御習得をされましたはり、きゅうによって生きるということのほうが、御本人が生きる生きがいを感ずるという場合もあるかと思います。  したがいまして、やはりこういう問題に関しましては、ケースによって、長くその税関職場を離れていただくとか、あるいは税関にとどまっていただくとかいうようなことは、いろいろなケースがこれから起こってき得る問題だと思います。ただ、ここで私が申し上げたいのは、要するに馬渡さんのケースに関して、私どもができるだけあたたかい心を持ってこれに対処をしたい、こういう気持ちで臨みたい、こういうことでございます。
  82. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 それじゃ終わります。
  83. 野原委員長(野原正勝)

  84. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 きょうは失対の問題若干とあとは職業病である頸肩腕症候群の蔓延しているこの状態に対する労働者指導とそれから対策を伺う次第であります。  まず、これは職安局長にお伺いしますが、ことしの春闘は民間平均相場二〇・一%、一万五千百六十円という春闘史上の最高を示しました。失対労務者のベースアップは何%を示しましたか。
  85. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 本年度当初におきましては、失対就労者の賃金につきましては、先生御承知のとおりでございますが、失対就労者と類似の労働者の賃金を標準にして、失対賃金審議会の意見を聞いて定める、こういうことに相なっておりまして、その結果、一三・二%の引き上げに相なっておりました。その後、賃金その他の情勢等にかんがみまして、十月一日からさらに五%再改定という異例の措置をとることによりまして、一八・二%。大体屋外労働者の類似の職種についております人たちの賃金とほぼ同程度に相なっております。
  86. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 初め一三・二%、それから十月に是正して一三・七%でしょう。
  87. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 一八・二です。
  88. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 そんなにいっていない。もう一回。
  89. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 十月の一日に再改定いたしまして、五%再引き上げを行ないました結果、前年度に対しまして一八・二%に相なっております。
  90. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 それで、民間平均は高いわけです。おそらく失対の場合は一日千五百円程度、そうしてみると、低い上になおさらパーセンテージが下がっているというのが現状でありますから、今後、来年度の賃金に対してはいまから十分配慮しておかないと、いつまでもこういうようにして恵まれない者は谷間に沈んでいなければならない。そして戦い取れる者、日の当たる者はうんと高くいく。これは人道上の問題でもありますから、いまからこれに対処する施策が必要である。  ことに、声を大にして言いたいことが一つあります。いま俊英なる長谷川労働大臣を迎えたわけです。しかし昭和四十六年のころ、中高年齢者雇用促進法という法律をつくって、そして今後失対に残っている人は、現在いる労働者並みに高い水準まで上げてやりましょうという意図のもとに、時の名労働大臣野原正勝現社労委員長なんであります。それを補佐していろいろつとめておった失対部長遠藤政夫職安局長なんであります。そして時の職安局長が住栄作自民党の代議士なんであります。そういうようにしてみますと、現在の状態でもまだ低い。これを今後是正する、こういうような意図のもとに、中高年齢者雇用促進法ができた。それがだんだん差が開くということになると、これは主客転倒である。したがって今後やはり、いまからこの是正については十分配慮しておくべきだ。それがかっての法の精神にもなる、こういうように思うわけです。これは大臣の決意を伺っておきたい。
  91. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 だんだん労働省の役人の能力と実力について御評価いただいてありがとうございました。明年度の賃金の場合に、そうした優秀な諸君が、社会情勢全般あるいは審議会の御答申などを勘案して考えていくということを私からも申し上げておきます。
  92. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 この点だけは先取りして対処しないといけない問題だと思いますので、特にこの点を要請しておきたいと思います。  またきょうの新聞によると、失対労務者に三日分のいわゆる実質的インフレ手当、田中総理がいやがることばでありますが、実質的インフレ手当が支給されることにきまった。しかし依然として組合のほうでは不満だ、こういうような表現があるようであります。私どもはその内容はわからないわけではございません。やはりこれはまるまる三日分でもほしいというのが、賃金の劣悪な状態にある失対労務者の実態であると思います。まるまる三日分ほしい。いままでいろいろございましょう。公務員の場合には年度末手当の〇・三繰り上げという措置があったわけでありますから、これを何らかの方法でやろうとする苦心もあったでしょう。しかし、これは現在までやった慣行の上に立った〇・三という――この問題については十分実質的に考えてやらないとだめな問題だと思うのです。それから引かれるものは引かれ、手に入るものは少ないというような状態にしない配慮が必要だと思います。この点は十分現実的な問題として考えられてこの問題の対処に当たるんじゃないかと思いますが、私の考え方と一緒ですか。
  93. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 国家公務員その他公務員関係の年度末手当〇・三が年末に繰り上げ支給に相なりました。先生御承知のとおり、失対就労者につきましては年度末手当という制度がございません。したがいまして、私どもといたしましては何としても、こういう措置を講ずることについてはきわめてむずかしい問題でございましたが、諸般の情勢にかんがみまして、今回、今年度に限り三日就労増という措置をとることによりまして、失対就労者の諸君の実質的な収入増をはかるという措置に踏み切ったわけでございます。これは大臣からたいへんな御努力をいただいたわけでございます。  この実施の方法につきましては、それぞれ都道府県、市町村、事業主体におきまして、従来二十二日就労を二十五日就労にこの十二月に限って引き上げるということでございますので、実施の方法はいろいろあると思います。したがいまして、どういう形になりますかは別といたしまして、平均的に見ますと、一日千五百十四円の就労によります収入がそれぞれ三日分加算される結果になる、こういうことになると思います。
  94. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 これはまるまる収入増としての手当、こういうふうにして支給されるように十分配慮してやってほしいということです。そうなっていれば私の質問はくだらない質問だということになるのであります。やはりその点を考えてやってほしい。おわかりですか。
  95. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 年度末手当の場合は単なる繰り上げでございますが、私のほうの年末の就労増につきましては、来年の分を繰り上げて就労増いたしたわけではございませんで、実質的な収入増でございます。その意味において収入増になると考えております。
  96. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 まあいろいろなものを繰り上げてやって、繰り上げないものもないようにして、まるまる収入増にしてやってほしい。公務員のほうには年度末はあるけれども失対にはない、と言うけれども、失対とても非常勤の特別職の地方公務員じゃありませんか。それにないのがおかしいのであります。その責任者はあなたなんですから、遠藤政夫職安局長、十分この点は注意して、あえてもう一回言いますが、まるまる収入増となるような手当の支給方法を考えて実施してもらいたい、このことです。重ねて申し上げません。  それから来年度の是正は、先取りをするような方法で賃金アップを考えてもらいたい。この二つの要請です。これはいいでしょう、大臣、あなた答えてください。
  97. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 ただいま局長から御答弁申し上げましたように、公務員の場合には年度末にあったものを〇・三繰り上げたわけです。失対就労者の場合には夏と暮れに臨時賃金を出しておる。それを、先ほど局長が申し上げたように十月に改定したために、年度末は去年より一八・二%ふえておるわけです。そしてだんだん、委員会のほうで失対就労者に対する御議論がありましたから、これは全然予算的には措置されていなかったのですが、あなたがおっしゃるような気持ちがありまして、きのう、三日就労ということで予算の手当てをしたということでございますので、その三日分が何とか一人一人の方々の手に入るように、地方地方で、県もありますし、市もありますから、そういうところでの話ができますことを私のほうは期待しているわけです。
  98. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 これ以上やりませんが、いま言った精神を十分体してやっておいてもらいたいと思います。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕  次に、頸肩腕症候群をはじめとしての職業病について、これは各省庁にお尋ねするようになると思います。まずこの点で一番デッドロックに乗り上げ、きのうこのために徹夜交渉、そしてついに話し合いがつかないでストライキに突入したといわれております。電電公社と全電通との間で、これはやはり深刻な問題として、四つの目標のうちの一つに、この職業病である頸肩腕症候群に対する対策が載っておったようであります。これはどういうことになりましたか、ストに入りましたか入りませんか。この対策等について伺います。
  99. 山本説明員(山本正司)

    山本説明員 お答えいたします。  全電通労働組合は、秋季年末闘争の一環といたしまして、ただいま御指摘の頸肩腕症候群に対する予防対策等につきまして各種の要求を出してきております。そのほかいろいろな企業内の諸問題がございましたが、頸肩腕症候群についてもそういう要求を出してきております。  おもな要求内容といたしましては、公社は昨年来プロジェクトチームを編成いたしまして、頸肩腕症候群という新しい病気に対する発生原因あるいは作業環境、作業設備等の関連等について、専門家の手をわずらわしましていろいろ検討いたしておるわけでありますが、その後も頸肩腕症候群の患者が発生をいたしておりまして、すみやかに何らかの具体的な予防措置あるいは罹病者の治療対策等を立てるべきではないかということで、それらの問題について交渉いたしたわけでございます。昨日来交渉いたしまして、おもな問題についてはおおむね意見合致の段階に至ったわけであります。  その内容につきましては、一つは、業務上災害に認定する基準について、現在労働省から指導通達が出ておりますが、その運用についての問題でございます。これにつきましては、労働省のほうにおきましても、通達の内容等について今後専門家も入れていろいろ検討されるということでございますので、私のほうもその結果を待っておるという状況でございますし、また、公社自体もプロジェクトチームをつくりまして、頸肩腕症候群の内容について検討し、具体的な対処策を検討中でございますので、その結果を待ちたい、こういうことでございます。  次に、具体的な予防対策あるいは治療対策につきまして、どういうことを考えておるかということでございますが、現在電話交換作業等において、この頸肩腕症候群の患者が出ておるわけでございますが、交換設備である交換台あるいは作業方法作業管理のしかた、こういったものについては、頸肩腕症候群といったような新しい症状が発生しないような改善策あるいは見直しといったようなものを早急にやりまして、予防対策の万全を期したいということで、それぞれ具体的にそれらの問題について一定の結論を得たわけでございます。  それから次に、現在罹病しております罹病者につきまして、これの治療対策といたしまして、公社の健康管理医あるいはその他指定する医師の診断を経まして、いろいろな治療をやっておるわけでありますが、その中で、はり、きゅう、あんま等の利用あるいは罹病中の賃金上の措置だとかその他もろもろの治療対策について、公社としてとり得る万全の措置を講じましょう、こういうことで、これにつきましても一定の結論を得たわけでございます。  以上のようなわけで、基本的な認定問題につきましては、関係官庁等の調査結果を待つということでございますが、公社で措置できる問題につきましては、可能な限り万全の対策を立てて、こういった患者が発生しないように、また、不幸にして罹病された方々に対しては治療の万全を期すように、積極的にこれに取り組んでいく、こういうことで対処いたしておるわけでございます。  ストライキのほうは、そういうことで、早朝から一時間ないし一時間半程度、全国若干の拠点におきまして突入をしましたけれども、交渉を終わり次第、十時少し前に指令解除をいたしたような次第であります。
  100. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 そうしますと、労働省の認定の指導通達、これに対するいろいろな影響がどうなっているのかというような点も問題になってくるわけであります。  その前に、電電公社では、プロジェクトチームを医師で編成して、この十二月の末までにその結論を出すように指導しておられたんじゃないかと思います。その結果、はっきりプロジェクトチームの結論が出たでしょうか。
  101. 小沢説明員(小沢春雄)

    小沢説明員 お答えいたします。  先生よく御承知のとおり、関東逓信病院の沢崎院長が委員長で、それから河井整形外科部長が実行委員長で、約三十名の関東逓信病院の医師を中心とするプロジェクトチームが、本年の六月以降、各電話局等を回りまして、実態調査を終了いたしまして、目下、その調査結果に基づきます結論の作成中でございまして、本年中に結論をいただくようにお願いしております。  最近の沢崎委員長からの中間報告によりますと、大体本年中に大筋はできるけれども、書類として公社のほうに提出するのは一月中になるということで、年内というのが若干おくれるという報告をいただいておりますが、なるべくすみやかにちょうだいするようにお願いしております。
  102. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 これは初め電電公社では、交換職にある女子職員に対しての認定がほとんどなかったようです。現在若干ずつこれを認定しているようでありますが、その方向として、今後はどういうふうな対策を講じていくつもりなんですか。プロジェクトチームの結論が出なければ十分にできないのですか。それとも出るまでの間にやっておられるのですか。
  103. 小沢説明員(小沢春雄)

    小沢説明員 本年のたしか二月二十七日だと思いましたが、この委員会島本先生から委曲を尽くしたこの問題に対するお尋ねがいろいろとございまして、これを受けまして、私どもといたしましては、プロジェクトチームの答申を待つまでもなく、病状の重い者は認定すべきであるという考え方を出しまして、四月の二十四日に東北通信局の者を一名業務上認定をいたしまして以来、今日にいたるまで、十一名の頸肩腕症候群罹患者に対する業務上疾病の認定をいたしております。  その考え方は、私どもといたしましては、手指をひんぱんに使用する仕事、大体キーパンチャーもしくは交換手でありますが、それに一年以上従事している者であること、それから、指定病院等の専門医師によって医学的に他覚的な――目に見える、あるいはレントゲン等で見える、他覚的な所見の認められる者であること、それから三番目は、業務上以外に疾病の原因が認められない者という私どもとしての基準をつくりまして、これを各通信局を指導いたしまして、重い者についての認定を促進しました結果、十一名というものが現在認定になっております。
  104. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 やはり労働省の認定の指導通達が問題だ、こういうようなことになっており、労働基準法の七十五条を受けて規則の三十五条の十三号、これだけは、はっきりこの中に、業務上の疾病の範囲ということで、これは規定されておるわけです。その十三号には、「電信手、タイピスト、筆耕手等の手指の痙攣撃及び書痙」となっているのです。この規則は古過ぎませんか。電信手というのはいまいるのですか、いないのですか。電信手というのはどういうことですか。
  105. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 先生いま申されましたように、現在の法令におきましては、基準法の七十五条で、業務上負傷し、または疾病にかかった者について、療養補償を行なうことになっており、その二項で、その業務上の疾病の範囲は命令で定めることになっております。それを受けまして、いま先生がおっしゃいました基準法の施行規則の三十五条で、一号から三十七号までいろいろな疾病を列記し、さらに三十八号で「その他業務に起因することの明かな疾病」こういう規定のしかたをしておるわけでございます。これのできましたのが終戦直後、基準法施行当時でございますので、確かに電信手といったような表現は、現在から見ますと、表現といたしましても、昔の状況前提とした表現になっておることは、先生のおっしゃるとおりでございます。
  106. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 それまでは実際で、だからどうするのですか。
  107. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 頸肩腕症候群は、先生も御承知のように、この三十五条十三号をつくりましたのは、電信手、タイピストあるいは筆耕手といったような人たちに、当時手指のけいれんあるいは書痙といったようなものが出ておったわけでございます。それで、そういうものをここに記載いたしておるわけでございますが、その後、いわゆるコンピューターといったような新しい業務が技術革新によって導入されまして、それに関連するキーパンチャー、そういうような職種がふえてまいりました。そういうところに頸肩腕症候群という形で出てまいったわけでございます。したがいまして、現在でもタイピストあるいはキーパンチャーその他で、ここにありますような手指のけいれんあるいは書痙といったようなものに明確に該当いたしますものは、この十三号の該当ということで業務上の疾病になるわけでございますが、それに該当しないようないわゆる頸肩腕症候群、これは三十八号の「その他業務に起因することの明かな疾病」、こういうことで業務上の疾病として災害補償を行なっておるわけでございます。
  108. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 それは大体理解できるわけですよ。したがって、この労働省の認定の指導通達が問題だとすると、いま言ったような三十八号の「その他業務に起因することの明かな疾病」、これに対するいろいろな通達がまぎらわしくて不完全であって、十分対処ができない、こういうようなことであるから問題が出るのじゃないか。もう電信手なんてないですよ。私もオペレーターです。この委員には森井君もおりますけれども、森井君もいわゆる通信手です。あれは電信手じゃなくて通信手、有線通信手なんです。これはもう電信手というのは、こうなると大きいですから、配達まで含むかもしれません。配達には手のやつはないですから。このままにしておいてはだめです。直さないといけない。直す機会は、やはり頸肩腕症候群が出たこれを機会に、もう一回見直しが必要じゃないかそれをこの条項の中に入れる。入れるためにはどこがいいか。電信手を削って交換手を入れるとはっきりする、こういうようなことでしょう。明示というのはまさにこれなんです。それでなければ、この三十八をもっと具体的にわかりやすくする、こういうふうな方法があるのではなやかと思います。とにかくこれは昭和二十二年というと古過ぎる。いま四十八年、四十九年になるのですから。これはもう四分の一世紀もぶん投げられていたような法律です。もう時代は目まぐるしく進んでいますから、これはもう一回点検を要するわけです。大臣いないけれども、この点もう一回点検すべきであると思うのですよ。どうですか。
  109. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 頸肩腕症候群が世上非常に問題になってまいりまして、私どもも先生おっしゃるような御指摘の点、十分検討をしておるわけでございます。  ただ、いま多く発生いたしておりますキーパンチャーあるいはレジスターのチェッカー等々にいたしましても、業務上によって頸肩腕症候群になる場合も多いわけでございますが、同時に頸肩腕症候群というのは、先生も御高承のとおり、いろいろな他の業務上以外の原因によってもなる場合が少なくないわけでございます。したがいまして、その辺の事情からいたしますと、たとえばキーパンチャーの頸肩腕症候群といったような形で一律的に明示することには非常な問題があるのでございます。  そこで先ほど申しましたように、三十八号の「その他業務に起因することの明かな疾病」という根拠に基づきまして、キーパンチャー等々については、四十四年に専門家の意見を聞きまして、一定の認定基準をつくる、こういうようなことで認定の適正な実施をはかっておるわけでございます。ただ最近は、さらにその範囲がいろいろな職種に広がってまいりまして、いま御承知のレジスターのチェッカーであるとか、あるいは電話の交換手であるとか、あるいは最近はそれ以外のいろいろな職種の方にも頸肩腕症候群といったようなことが問題になってまいりましたので、そこで私どもはことしの三月に、いわゆる頸肩腕症候群の業務上外の認定基準の検討についての専門家会議というものを設けまして、いままでのキーパンチャー等に限らず、もっと広く頸肩腕症候群の業務上外の認定の問題を御検討願いたいということで、いま専門家に御検討をいただいておるところでございます。したがいまして、この専門家の御検討の結果等を見まして、先生御指摘のような点も十分に考えながら、必要な場合においては基準法施行規則の改正等も含めて考えてまいりたい、かように考えております。
  110. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 いまの労働省考え方は、ちょっと私としてはきびしいように思うのです。昭和四十三年四月の五日、内閣委員会で国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を審議した際に、この中で論ぜられた職業病の定義、これは医師の定義としては、主として仕事労働環境条件労働条件労働の対象や材料や用具、設備または労働の動作や姿勢や時間の無理などが原因となって健康が破壊されたならば、病気のいかんにかかわらず健康障害そのものが職業病である、こういうようにもうそのころ論ぜられておる。四十三年ですから、古いわけです。そのころでももうすでにこういうような見解さえ表明されているのです。職業に依拠するかどうか因果関係がとにかく不明であるから、なかなか認定に困難だという考え方。しかし、このように複雑な状態になってしまったら、もう一回原点に帰って、いまの医師の定義として、四十三年四月五日時点で内閣委員会で討論されたこれらの問題をもう一回参考にして考えてもいいのではないか、こう思うのです。このころ確かにこういうような議論が出て、やっています。読んでみて参考にしてやってください。これは患者を出さないことです。出たならば救済することです。救済したならば、アフターケアをきちっとしてやることです。出した者に対して認定を渋ったり、そういうようになった者に対して治療をほったらかしておいたり、アフターケアをサボるということは管理者のやる方法ではないと思います。この点も十分考えなければならないはずでありますから、十分検討していただきたい。これを要請しておきます。  それと同時に、電電公社のほうでは前向きにこれを取り上げている、こういうようなことを聞きました。私ども調べてみて事の意外の重大さに、実際は男性であるわれわれが反省しなければならぬ点があるのです。一生懸命働いているけれども、出るのはほとんど女性が多いのです。ふろに入るために自分でふろの湯かげんを見て、右手を入れてみたら、ちょうどいい湯かげんであった。そして入ってみたところが、煮えくり返るような熱いお湯で飛び出した。よく見たら右手の感覚が麻痺しておって、もうそういうようなものに対して十分即応しないような状態だった。これです。悲劇じゃありませんか。それと同時に、子供の母親として一生懸命働いて、だんなさんを助けながら家庭を営んできた。子供もできた。帰って、その子供を抱こうとしたとたんに、ばったり子供を落としてしまった。手の感覚が麻痺して、子供を抱いたつもりが、意識がなかったわけであります。もう子供は忌避状態になって母親につかない。家庭的悲劇じゃありませんか。こういうようなことが行なわれているわけです。それを認定するのに、いろいろなめんどうくさいことをしてはいけません。出したならば、あらゆる条件を加味して治療をさせることです。この点は特に要請しておきたいと思いますから、大臣はいないけれども、それだけはあなたによく言っておきます。  これは官庁だけ、ことに電電公社ばかりかと、こう思っておったのです。ところが、私医務室に行った。医務室に衆議院の速記の方が見えておった。連絡に来ておった。廊下に出て、これまたいろいろ話を伺いました。ところが、私は、電電公社やその他、機械や女性諸君が扱うこういうような場所が一番多いのかと思っておったら、国会の速記の中にもこういうようなのが出ておるという実態がわかったのです。いまここで一生懸命になって書かれておる人、この人たちだって、実際は、もう私どもだってこれは心配なんであります。一体これはどうしたことなんですか。少なくとも国権の最高の機関です。そこで、各省庁につとめている人にこういうような状態をかもし出してはならないから、これを注意しておる。そしてそれを行政上に反映させようとした。それを一生懸命になって書いている皆さん自身が、またそういうような症状を呈してきている。これはとんでもないことであります。国会職員、これは組合を通じて、いま公務災害の認定をしようとして一生懸命努力されているようであります。これは前向きになってやらなければいけない問題じゃありませんか。一体これはどういうふうになっているのですか。この事情の説明を願います。
  111. 荒尾参事(荒尾正浩)

    ○荒尾参事 お答えいたします。  ただいま御質問のありました私どもの速記者の病気の問題でございますが、実は、本年六月に、速記者のうち九人が肩や手や首の痛みを訴えまして、四人が休んで、七月に入りまして、休む人が八人となって、それから痛みを訴える人が十四人も発生したのでございます。そこで、私どもとしては、これはたいへんだということで、七月の二十五日と六日の両日にわたりまして、東京慈恵医科大学の整形外科に依頼いたしまして、速記者百二十二人に対して健康診断をしてもらうように依頼したわけでございます。そしていろいろな角度から検査をしてもらいまして、そして何でもない人たちとか、それから症状によって区分けいたしまして、最も重いということで、自覚症状、他覚所見ともに見られまして、これはすぐ治療を必要とするというDグループが――A、B、C、DのDグループが九人ございました。それからまた、自覚症状もあり、これは治療を要するけれども、休養によってなおるのではないか、だんだん消えていくのじゃないか、こういうグループ、Cグループでございますが、こういう方が二十九人ございました。  それで、このグループで、性別では女子の人に多くて、その中でも、年齢が若くて経験年数が比較的短い人たちが多うございました。これらの症状は、疲労によって起こる場合が多くて、また、あるいは心因性の要素も考えられるということでございましたのですが、経験年数の長い人にはあまり見られなかった、こういうことでございました。  しかしながら、この健康診断後の三カ月を経過したあと、休養などいたしまして、個人差はありますが、漸次症状は回復してきておるのでございますが、この十一月上旬に至ってもまだ全快しないという人が十六人ございます。転地療養者二人、休務者三人、その他ほとんどの方は軽勤務でございますが、私どもとしては、さらに慈恵医科大学の整形外科で、十一月の二十九日から八日間にわたってこれら十六名の人たちの精密検査を行なってもらいました。その精密検査の結果については、出るのを待っておる次第でございます。
  112. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 これはもうまことに重大なことなんであります。  そうすると、Cクラスの二十九名、これに対しては自覚症状もあるし、他覚所見もある。それから経過によっては治療を要するような人たちがここに二十九名もまだおる、こういうようなことになりますと、ここは国権の最高の機関ですから、せめて忙そういうようなことはないように、今後十分配慮してやってください。何も遠慮することはないです。ここに、労働省でも何か言ってくるのですか、いちゃもんをつけるようなことはないですか。  この原因としては、どういうようなことが考えられますか。
  113. 荒尾参事(荒尾正浩)

    ○荒尾参事 速記者の人たちの勤務は、会議とともにあるわけでございますので、会議が非常に長時間にわたって、また長期にわたって、しかも濃密であるということが考えられます。それから速記をする人たちの健康状態とも関連があると思いますが、しかしながら、先ほど申し上げました、会議体とともにあるわけでございますので、主としてそういうことが原因するのではなかろうかと思っておりますが、しかし、いま目下精密検査を慈恵医科大学に依頼しておりまして、その結果を待って、すみやかな措置を講じたい、こう思っておるのでございます。
  114. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 やはりそのすみやかな措置は講じてください。そのためには、原因となるものも十分に認識しないといけない。おそらく、これはもう二百八十日の異例国会、審議時間も長かったという七十一特別国会、このときに多発したのじゃありませんか。そういうようなことからして、有史以来の記録が二百八十日という、こういうような期間もあった。それから一カ月の速記時間も一番長いそうじゃありませんか。それから一日の速記時間も一番長いそうじゃありませんか。一委員会の審議の時間もこれまた有史以来一番長かったそうじゃありませんか。こういう中に、いわゆる人員がそれに即応するだけ確保されておったかどうかという点も問題ではありませんか。やはり平均して五%ずつ人員も減らす、こういうような中に速記者の皆さんも入っておるとしたならば、これほどまでに長期の審議、これほどまでの慎重な審議をしておる場合には、やはりしわ寄せは全部速記者に行ってしまう。そうでしょう。これはやはり人員その他においては十分対処してやらないといけないし、この場合には、忙しいとき休めばほかの人に影響を与えるからどうしても無理する。量だけでなくあせりも出る。したがって、これは、人員についてももう十分気をつけて、配員してやらなければならないのじゃないかと思っておるのです。その配慮を十分しましたか。またこれからしなければならないと思いますが、ひとつこの際――ここは国権の最高の機関ですよ。それを運営するのにそつがあって、ほかの省に言えますか。だからそこを十分考えてやらないといけません。決意をひとつ言ってください。
  115. 荒尾参事(荒尾正浩)

    ○荒尾参事 私どもといたしましては、速記者の増員につきましては、種々配慮をいたしております。まあいままでの経過から見ますと、昭和三十二年からことしまでにかけましては、二十人の増員をはかっております。ただ、その速記者の増員といいますのは、これはなかなか高度の技術でございまして、養成するのに二年半ないし三年かかりますし、急激に増員するということは、なかなか困難な事情でございますが、しかしわれわれといたしましては、こういう状態にかんがみまして、なるべくひとつ増員をはかっていきたい、こういうことを思っております。
  116. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 これは、なるべくというようなことはできる限りということで、できなければやむを得ないということにも通じますから、そういうようなことがないようにしてやってください。これはやらないといけないです。ここがもう不十分であっては、他の省のほうに国会が言えないのですから……。そうでしょう。まあいろいろとあるようですけれども、そこを調査して、こういうようなことになりましたら、すべて事務総長のほうに報告しなければならないのでしょう。してあるのでございましょう。そしてそれに対する対処は、もうすでにはっきりしておるのでしょう。その点ははっきりさしてください、これでできるならやめたいと思いますから。
  117. 荒尾参事(荒尾正浩)

    ○荒尾参事 先ほどからお答えいたしておりますとおりでございまして、すみやかにいろいろな措置を講じたいと思っております。
  118. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 また国会ばかりかとこう思っておったところが、これまた総理府の中にもこういうような現象が起こっておるようでありますが、これはどういうことでしょうか。総理府の統計局の、それもキーパンチャーじゃなく、一般職の中にもこれが多発している。これもまた十年このかたこうなっているのがずっと続いているといわれております。これはもう、ちょっと困ったことじゃありませんか。これに対する対策、これは十分ですか。
  119. 川村政府委員(川村皓章)

    ○川村政府委員 お答えをいたします。  先生がいまおっしゃいましたように、十年来というお話がございましたが、確かにキーパンチャーの問題は昭和三十七年からでございますが、ただいまの一般事務ということになりますと四十二年以降の話でございます。それで現実にいま申請をいたしております数は、キーパンチャーそれから一般事務合計いたしまして四十名でございます。これらにつきましては、キーパンチャーの問題はすでに先生御存じのように、人事院の基準等によりましてある程度認定が進んでおります。ただ一般事務の問題につきましてはいろいろ実は経緯もございましたが、これはいわば新しいケースでございますので、これをいかに早急に対処するかという問題で現在努力中でございます。
  120. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 特に国勢調査を担当なすったり、より早くより正確に、こういうような一つの条件が課されるわけでしょう。そうすると極端な緊張を必要とするわけでしょう。それに職場環境あたりも全部そういうようになってくると、一部単調業務にもなるかわりに責任が加重される。やはりこういうようなことを十数年やっているとこういうような症状も呈してくる。職場環境にも問題があるじゃありませんか。この点をもっと十分考えてやらなければならないと思いますが、この中には認定審理が遅々として進んでおらない、こういうような訴えもありますが、これは人事院ではこういうような場合どういうように対処してございますか。
  121. 中村(博)政府委員(中村博)

    中村(博)政府委員 私も国家公務員の災害補償の実施の責に任じておりますので、実際問題として個々の具体的ケースにつきましていろいろな御教示がございます。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕 また今回統計局の一般職員の場合について申し上げますと、二名の方につきましていま先生おっしゃいましたいわゆる一般事務、書類の上にマークをしていくマーク作業というものがございます。それについて照会があったわけでございます。何しろ初めてのケースでございますので、医学的に十分審査していただくことが必要であろうということで、私どものほうの健康専門委員という先生にお願い申し上げまして、そしていろいろ御判定を願うということをいたしたわけでございますけれども、先生としましては、初めての事例でございますのでいろいろな資料がほしい、こういうことで統計局にお願いいたしたわけでございますけれども、いろいろな事情がありましてその資料の入手がなかなかできなかった、こういう状況で多少延引したわけでございます。しかし私どもとしましては、災害補償というものは、ほんとうにそれが公務に起因したものであるということが医学的にはっきりいたしますならば、これは迅速、公正な審理をするということがたてまえでございます。したがいまして、現在総理府統計局ともお話し申し上げまして、何とか医学的に、そのことが確かに公務に起因するものだという例証を得て、これを処理していただくというような方針をもちましてお話し合いを進めておる段階でございます。
  122. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 これを認定する場合には一つの基準が必要だと思う。その基準についてもこれは十分検討しておかなければならないほどいま目まぐるしく変わってきているわけです。ほんの十年ほど前には何でもないことがいま一つの苦痛になってわれわれの生活にいどみかかってくる、こういうような事例がたくさんある。したがって、いまいろいろな基準もあるようでありますけれども、これはなった者に対しては治療を急がなければならないし、認定をしてやらなければなりません。そのためには、職場では予防対策だけはきちっと講じさせなければなりません。いま人事院ではそれを認定する立場ですから、この認定そのものが一般事務の基準がないから認定しないということではこれは困るではありませんか。それと同時に、認定申請中のいろいろな問題について、これはまた機械につかないから、因果関係がはっきりしないからだめだということがもしあったとしたらそれも困るじゃありませんか。そうすると、民間のほうでは機械につかなくても認定している例があったりして、やはりおくれているのは官庁だ、こういうことになりますから、その基準のものさしについてはもう少し考えるべきではないかと思うのです。一般の事務職員に対してこういうふうな現象があることに対して、人事院はなかなか認定がはかどらないかのようなこういうふうな訴えがありますが、その点はいかがですか。
  123. 中村(博)政府委員(中村博)

    中村(博)政府委員 いまの先生のお話の中で、私どもとにかく公務に起因した疾病でありますれば、これはできるだけ早く認定するということで、言うなれば疑わしきは公務上にするという態度で私はこの問題を処理してまいりたいと思っております。(島本委員「疑わしきは認定する、ですか。それはいいことです。」と呼ぶ)そうです。全く在来のその方の体質でありますとか、素因でありますとか、あるいは私行為によって発生したような場合、これは当然排除するのがたてまえでございます。しかし、いま問題になっておりますマーク作業なんかも、確かに先ほど先生おっしゃったように、機械を使わないからなんという考えは私ども持っておりません。十分力を入れてマーク作業を相当な量をおやりになる、そのことのためにかりにその疾病が発生いたしたとしますならば、私はそれは公務起因性と考えております。  そこで、こういう問題は遺憾なことでございまして、また私どものほうとしましても人事院規則によっていろいろな予防措置は講じてございますけれども、かりにそういうことが起こるとしますれば、医学的に初めて出た段階において十分審査願って、事後例証的なものはなるべく早く取り扱う、こういう基本的な考えでございますので、最初の事例につきましては、医学的検証のためにある程度の時間をおかしいただくことが必要ではなかろうか、かように思っております。
  124. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 大体電電公社に対してはわかりました。それから総理府の統計局についてはわかりました。そうすると、この職業病については、国会に対してと裁判所に対しては労働省はどういうような地位、立場にあるのですか。
  125. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 私どもは基準法及びそれに関連する法規というのは、労災補償保険法の施行を受け持っておるわけでございますが、勤労者の大部分を占める民間労働者を所掌の対象といたしておりますので、私どもの労災補償というものは、関連するいろいろな国家公務員をはじめといたしまして、その方の母法になる、かように考えております。そこで、私どもは基準法、労災補償保険法の適正な運営ということで、これらの職業病の方に対しましても、業務上疾病の方に対しては適正な保護を与える、こういう立場で、先ほど申しましたように、認定基準等を設け、運用をいたしておりますわけで、その結果につきましては関係各省には十分に御連絡をとりまして、そして関連する諸法規の運用との連絡をとりながら運用を期しておるわけでございます。
  126. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 ここに問題なのは、東京の地方裁判所でも若い女性が職業病にかかっておる例が多いということを聞いておるわけです。そうして職業病は現在五十六種類くらいありますか。これ以上あると思いますが、しかしやはり腱鞘炎、=肩腕症候群、斜角筋症候群その他いろいろあるわけであります。この裁判所関係の罹病者が多いからここへ来てもらいたいということで要請したのでありますが、裁判所関係は、国会法七十二条によって、向こうが来る意思がなければここへ来てもらえないことになっているわけでありますから、その内容は承れないのであります。やはり昭和四十二年の四月以来これがもう発生しているようであります。そしてこれは速記官、定員がこう定められてはおりますが、内部でこれは養成されている人のようであります。そしていまソクタイプを使ってやっているそうでありますが、いろいろとこの問題に対しても頸肩腕症候群に類するようなこういうような患者が出ているのです。ここへ来て説明を受けられない、要請しても来てもらえないのであります。これは委員長、まことに残念なんでありますが、こういうような大事なもの、裁判所に関しては三権分立の立場から、やはりその内容を聞きたいという場合には、この委員会では方法がないものでありますか。まことに残念なんでありますけれども、これは労働大臣としてこういうようなものを知らないでいるわけにいかないはずです。そういうような問題に対して、労働大臣はどういうふうにして対処するつもりですか。
  127. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 お伺いしたからには放置するわけにはいきません。それぞれ独立の機関でございますが、島本委員がおっしゃったように、ここにお見えになれないという話でございますが、さっそく連絡をとって内情を調査し、また私たちの行政上の参考にしたい、こう思っております。
  128. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 じゃ、その件に対して十分調査してそして報告願いたいと思います。  昭和四十二年以来定期検査を実施して、だんだん現在もふえているような情勢があるらしいのであります。ことに若い女性の方に多いということを聞いておりますが、国会にはそれを調べる権能もないのであります。まことに無力であります。まして、この無力であるはずのうちでも、国権最高の機関であるという国会の中の速記者にもそういうような例が出たということは、これはわれわれ自身として戒心すべきことであります。大臣をはじめとして、これに対しては十分対処するということでありますから、今後こういうようなことがないように、自分の中にこういうような状態をかもし出しておいて、他の省に対してわれわれが言うことは気がひけます。国権最高の機関の実態であるということにはなりません。中からこれを規正していかないとだめだと思いますので、この点、労働大臣においても十分考えて、そして事務総長と連絡の上でこれを善処するように、この点もお願いしておきたい、こういうふうに思う次第です。労働省でも、まだまだ法律の改正を含めて十分この問題に対して真剣に対処してもらいたい。これをやらぬとだめです。電信手なんかもうありませんから。そういうような古い法律の状態にまだなっております。このために、ストライキをかけてまでいろいろ苦労さして、解決のために努力するように電電公社もやっておるようであります。幸いにして、まだプロジェクトチームの結論が出ないようでありますが、これを早く出してもらって、一日も早く絶滅を期するように努力してもらいたい。このことを心から要請いたしまして、私の質問を終わる次第です。  最後に、じゃ、労働大臣の御高見を承ります。
  129. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 お答えします。  いろいろな事象が刻々変わりますので、国会の私たち仕事をしている足元においても、若き速記者の諸君にそういうことがあるというのは私も初めで聞きました。若い女性を守るために、しかも最高裁判所、そういうところが独立の機関であるからそういうところに調査などできなかった、そういう不備などもありまして、聞いたからには直ちにいろいろ調査をして御期待に沿うようにやりたい、こう思っておりますから、御理解いただきます。
  130. 島本委員(島本虎三)

    島本委員 期待して、私の質問を終わります。
  131. 野原委員長(野原正勝)

    野原委員長 村山富市君。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕
  132. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 もう時間が本会議ぎりぎりまでしかありませんので、簡明にお尋ねしますが、主として現在の石油危機や電力危機等の問題に関連をして、相当倒産をする事業場やあるいは失業者が出るのではないのかということに関連をしてお尋ねをしたいのです。  そこで、第一番に企画庁にお尋ねをしたいのですが、いろいろ経済成長率やあるいは経済の見通しにつきましては、予算委員会や商工委員会等で論議をされておりますから、そのことには深く触れませんが、端的に現在石油と電力が一〇%カットされております。一〇%カットされた場合に一体労働力の需給関係はどうなるのか。さらに、いろいろ説がありますけれども、来年は二〇%ぐらいカットされるのではないか、こういうこともいわれておりますが、二〇%カットされた場合には労働力の需給関係はどうなるのか、こういった問題についての見通しについてお尋ねしたいのです。
  133. 佐倉説明員(佐倉致)

    ○佐倉説明員 お答え申し上げます。  原油の供給削減、輸入削減、それに伴う電力のカット及び物価安定のための総需要抑制というようなことによりまして、来年度の成長率がかなり低下することは免れないと思います。来年度の経済の見通しにつきましては、現在われわれ鋭意最後の作業段階を進めております。近く閣議に御報告する予定になっております。  御指摘の、経済成長がかなり低下した場合に、企業倒産あるいは失業問題等が発生するおそれにつきましては、われわれもちろん問題を深刻に考慮しているところでございます。現在までのところ、たとえば求人数に対する求職の比率、これが大体全体として二倍程度になっております。若年労働者、新規労働者につきましては約四倍になっております。つまり、求人が求職者数を大幅に上回っているということは、いわゆる人手不足、労働力不足ということが最近まで進んできておった結果でございます。そういうことと、それからわが国固有の労働雇用慣習から申しまして、非常に短期の間に、数カ月の間に失業問題が非常に深刻になるということはまず考えにくいところでございますが、その問題の重大さ及び企業倒産の増加するというおそれはわれわれ十分配慮しなければならないと存じております。それにつきまして、労働省あるいは通産省その他等の御協力を得て、十分な万全の対策をとっていくという問題は十分心得ておるところでございます。
  134. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 私は具体的にお尋ねしておるわけです。おたくのほうでは、いろいろ想定をしてそれぞれ試算をしていると思うのですね。  そこで、現在は電力は一〇%カットされておる。ですから、単純に考えれば、一〇%カットされれば一〇%生産が落ちる。生産が落ちただけ人手が要らなくなる、こういうことになると思うのですよ。したがって、一〇%カットされた場合にはその需給関係というものはどうなるのか、あるいは来年は二〇%カットされるかもしれぬ、こういっていますね。二〇%カットされた場合には、一体労働力の需給関係はどうなるのかという一その見通しについて伺っているわけですよ。いまの答弁を聞きますと、現在の労働力の雇用関係雇用率は、たとえば二倍とかあるいは若年の場合は四倍とか、こういっていますけれども、しかし現状としてはこういう全体的なパーセントだけでは理解できない、解釈できない面があるのではないか。そこで、あなたの答弁も、深刻には考えにくいとか、それから、しかし十分配慮しているとか、こういうことばで表現されましたけれども、そういうことではなくて、具体的にどういう見通しなのかということを聞いているわけです。
  135. 佐倉説明員(佐倉致)

    ○佐倉説明員 お答え申し上げます。来年の経済の見通しにつきましては、石油の供給削減、電力のそれに伴うカットにつきましては、事態が非常に流動的で不確定要素も多いものでございますが、一応の前提を置きまして見通しを立てております。その前提いかんによりましては、その前提が、もし意外に早く原油の供給が緩和されるような事態になるとすれば、それは、その限りにおいて見通しの意味はその範囲に限られるわけでございます。御質問の、どれだけ石油が削減された場合、どれだけ電力が削減された場合に具体的に雇用がどういうふうに影響されるかという推計は、実はいままだこまかく推計値を出しておりません。いまいろいろそれの分析を行なっておる段階で、お答え申し上げるような結果はまだ出ておりません。  それは、たとえば石油あるいは電力そのほかの原材料、エネルギー、動力の消費ということと、それに伴う原材料にも当然間接的な波及が及びます。そういうわけで、業種によって非常に違った、直接の影響も違いますし、間接的な影響もまた違ってまいります。そういう点を分析いたしまして推計を行なっておるところでございますが、その結果どれだけ深刻なものになるか。あるいは成長率が低下したと申しましても、四十八年度、今年度の生産活動、経済活動の水準よりも大きく落ち込むということはなかなか考えにくいので、それが全体として雇用に非常に大きな影響を及ぼすということはまず可能性が少ないのではないかというふうにわれわれは考えております。
  136. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 相当楽観的な見方もしているけれども、要するに結論は出ていないということですね。  そこで、これはいろいろ説があると思いますけれども、それはあとでまた労働省のほうにお伺いしますから、次に中小企業庁のほうに聞きたいんですけれども、いまの現状を見ておりますと、一律にかりに電力は一〇%カットする、こうしたにいたしましても、大企業の場合と、あるいは系列にある企業の場合と、それから系列外の中小零細企業の場合と違うわけですね。したがって、特に系列外の中小零細企業というものは相当物不足やあるいは資金繰りに困っておる、こういう現状にあると思うのだけれども、中小企業庁はこれに対してどういう態度をとるか。
  137. 小山(実)政府委員(小山実)

    ○小山(実)政府委員 先生の御指摘のように、いろいろ業界を指導をしておりますけれども、実質的にそういうことになるおそれは多分にあります。したがいまして、私どもといたしましては、原材料が要するに従来のルートを通じて流れるようにということで、いろいろ所管のところと交渉をしておるわけでございます。それでどうしてもカバーし切れない分は、たとえば先般スタートいたしました石油のあっせん所のように、あっせん機関を設けまして、それに一定量のワクをつけまして、どうしても入手できない方はそこへ申し入れていただいて、それを通じてなるべく皆さんに公平に渡るようにしていただく、こういう配慮をしているところでございます。
  138. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 私がきのうちょっと聞きましたら、中小企業庁のほうでは、出先の県庁あるいは業界の中にあっせん相談所を設置して、そういう業者の注文に万全を期しております、ですからそういう不都合はないはずです、こういうお話があったわけです。そこで、その資料をいただいたわけですね。この資料は「あっせん相談所の実施状況」という資料で、昨日いただいたのです。この資料を見ただけでも、たとえば小計の場合に申し込みを四回やっているけれども、三回の集計をしてみますと、申し込みが三回で八千二百二十五件あるわけですが、あっせんで決定したのが四千五百五件、五四・二%ですね。この申し込みのトン数は十九万九千二百八十五トンあるわけですが、これに対してあっせんをしたのは七万四千九百八十九トン、いうならば三七・六%ですよ。さらに紙や板紙なんかを見ますと、申し込みの二千九百五トンに対してわずかに六百六トンです。私はこの資料を見て、こんなもので十分こたえていると思うのかと思うのですね。しかもこの資料はきわめてずさんですね。これはおそらく、社労委員に出すからこんな資料でもかまわぬのだといって出したのかもしれぬけれども数字も違っている。この資料はありますか。「主要鋼材」というのがあるでしょう。この主要鋼材の申し込みが一万三千五百十六件、三十八万五千四百二十六トンですね。それに対してあっせんが三万一千トンでしょう。これは間違いないですか。
  139. 小山(実)政府委員(小山実)

    ○小山(実)政府委員 間違いないはずでございます。
  140. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 そうしますと、こういうあっせんの状況の中で、ほんとうにこのあっせん相談所が困っておる中小零細企業の期待にこたえておるかどうか。こたえていますか。
  141. 小山(実)政府委員(小山実)

    ○小山(実)政府委員 それぞれ御不満の向きもあるかもしれませんけれども、できるだけのことは配慮してこういうことになっておるのであろうと思っております。
  142. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 これは深く追及しませんけれども、私はこれだけではいかぬと思うし、先ほど申し上げましたように、実際に私が歩いて調査した範囲でも、大企業の場合と大企業の系列に入っている業者の場合とそうでない業者の場合とは、具体的に違うのですよ。  これは私が十二月の十三日に、荻窪から西荻窪までの青梅街道にある石油スタンドやら灯油の小売り店なんかを調べたわけです。そうしますと、系列に入っておるところは実績の大体七〇%から八〇%は確保されています。しかも値段も、比較的三百八十円で店頭売りができるような値段で入っておるわけです。ところが系列外の商店、小売り店になりますと、卸値が四百円で買っているところもある。これを店頭で三百八十円で売れと言ったって無理でしょう。同時にその入ってくる量は、実績の一〇%から二五%しか入っていない。これくらい違うわけですね。私は単に灯油だけの問題ではなくて、たとえば発ぽうスチロールというのがありますね。いわゆる電気製品や何か送るとき、こわれないように白いので包装するのがありますね。あの発ぽうスチロールの業界なんかを見ましても、これは詳しく申し上げませんけれども、具体的に多くある業界の中で、全然原料が入らなくなったという業者もあるし、あるいは休業せざるを得ないという業者もあるし、いろいろ出ているわけですよ。このことは、いまの通産省や中小企業庁のやっている範囲の中では、縦の系列支配について少しも手は触れないわけです。したがって、言うならば、たいへん高値で、系列支配が強化された中で落ちこぼれた業者がつぶれていって、そしておそらく来年の下期ぐらいには落ちつくんではないか、こういう見通しが強いんですね。そういう意味からしますと、相当、私は系列外の中小零細企業には倒産が出てくるんではないか、こう思うんだけれども、中小企業庁としては、その縦の系列支配に対して何らの規制は加えないわけですか、どうですか。
  143. 小山(実)政府委員(小山実)

    ○小山(実)政府委員 中小企業庁といたしましては、各物資をそれぞれ保管しておるところに対しましては、従来のルートを尊重して物を回すようにということでそれぞれ話をしております。
  144. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 それは、尊重して流すようにといったって、いま私が申し上げましたような現状ですから、もう少しきびしく規制をするところは規制をするといって対処していかないと、たいへんな問題になるんではないかということが想定されますからね、そのことは一応申し上げておきます。  そこで労働省にお尋ねしたいんですが、いま言ったような現状は、単に机上プランで数値をはじいたとは違った現状がどんどん社会には出てくるわけですよ。したがって、専門的にその雇用問題を扱っておる労働省として、先ほど経済企画庁のほうは、まだ確たる労働力の見通しについては立っておらない、こういうお話しでございましたけれども労働省としてはどういう見通しを持っておるか、お尋ねします。
  145. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 雇用問題は、私のほうとしては一番大事なことでございます。いま新聞にいろんな話なども伝えられておりますが、全国にあります職業安定所を動員いたしまして、そういうものを具体的に情報をつかむとか、そしてまた、おっしゃるように一〇%、二〇%というふうなことになりますというと、どういう事件が起こるか非常に心配にたえません。でありますけれども、一方は、過去にドル・ショックのときとか繊維の問題のときとかああいう時代があったときに、私のほうはいろいろと対策を練った一つのパターンがある。そのときには非常によく吸収できたことなどもありますから、そういうパターンをいつでも発動するような準備体制を整えると同時に、最近失業保険制度の抜本的改正などが答申されておりましたから、そういうものを早く御審議などをいただきながら、あわせて万全の対策をとってまいりたい。当面、先ほど経済企画庁からおっしゃったように、若い労働者求人とその求職の関係、現実的にはいま逼迫しているときでありますけれども、いろいろな問題を考えながら、いま申し上げたようなことで対策考えております。
  146. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 いや、私がお尋ねしているのは、経済企画庁のほうは、いろいろなファクターが変わってまいりますから、なかなか労働力の需給関係については結論が出ない、こういうお話でしたけれども労働省は専門的にその問題を扱っておるわけですから、したがって、かりに電力が一割カットされた場合、あるいは二割カットされた場合、操短やらあるいは一時帰休やらあるいは倒産やら等を通じて、失業者がどれぐらい出るだろうかというぐらいの想定は私はしていると思うんですがね、それを聞きたいわけです。
  147. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 来年度の経済見通しに基づく雇用の見通しの問題でございますが、先ほど企画庁からもお答えがありました、また大臣からもお答えがございましたように、私どもは経済企画庁と緊密な連携をとりながら、いろいろなファクターがございますので、そういったものをもとにして、現在共同作業を行なっておる次第でございます。ただ、ただいま大臣からお答えございました先般のドル・ショックの際にも、いろいろと新聞等では書かれましたが、現実にそういう事態が起こりましたのはかなりタイムラグもございました。けさほどの新聞にも一時帰休とかそういった記事が出ておりますけれども、現実に全国の職安等におきます情報によりますと、まだそういう徴候は出てまいっておりません。したがいまして、来年度の雇用の見通しいかんということになりますと、先ほど来お答えしておりますとおり、これから早急に、事態の推移を見ながらいろいろなファクターをもとにして経済見通しがきまります。それによりまして、私ども雇用面の影響はどういうことになるのか、確定をいたしてまいりたいと思います。
  148. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 そうすると、労働省のほうもそこらの見通しについてはないわけですね。そうしますと、その失業が出たり倒産が出てからどろなわ式にあとから追っかけていくような対策では、私はやはりなまぬるいと思うのですよ。現にいまお話もございましたように、きょうの新聞にだって出ているでしょう。たとえば繊維関係で兵庫県の播州織業界で、四十九年一月から休業による賃金カットや人員整理が必要となったといっているでしょう。これはもう単に繊維業界だけでなくて、あるいは建設やらガラスやらセメントやら自動車やら、あるいは石油化学やらアルミやら、いろいろな分野にもう具体的に出ていますよ。ですから、こういう状況を踏まえて、この年末年始から来年の上期にかけて、伝えられるところによりますと、二月、三月が一番ピークになるのではないか、こういうようにいわれていますけれども、相当の倒産、失業あるいは一時帰休といったような問題が起こるのではないかというふうに想定をされますけれども、しかし前段が明確にならないとなかなかその計算もできぬと思いますから、私が言っておるのは、いま一〇%カットしておる、一〇%カットした場合には一体どういうことになるのか、あるいは来年は二〇%カットするかもしれない、二〇%カットされた場合にはどうなるのかということをやはり踏まえて、私はある程度の見通しを持っているというように思うのですけれども、その見通しはないわけですか。
  149. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 来年度の事態につきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろと検討はいたしております。しかし、いろいろな問題が関連してまいりますので、いまここでどうなるかということをにわかに申し上げる段階にまで至っておりません。たとえば石油の削減にいたしましても、それが一体一年間、来年じゅう続くのか、あるいは来年の二月、三月である程度緩和されるのか、そういった点もきわめて不明確でございます。私どもといたしましては、先生御指摘のように、そういう倒産とか大量の失業発生とか、そういう具体的な事態が起こって、その時点でどろなわで対策を講ずるというようなわけでは決してございませんで、先ほど大臣からお答えいただきましたように、ドル・ショックなり、先般の三十六、七年の不況時の繊維対策等を含めた、そういった経験を十分生かしながら、現行の制度、法律の体系の中で、来年度もそういった具体的な事態に対処できるよう目下鋭意検討中でございます。  先般の失業保険制度研究会の報告にもよりまして、そういった事態に備え得るような新しい制度を早急に制度化するということでも、この面も準備を進めておるような状態でございまして、年内の予算編成までに経済見通しがはっきりいたしますならば、それに対応できるような対策を早急に講じてまいる考えでございます。
  150. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 私は、もうきわめて怠慢だと思うのです。先般、農林委員会労働省に対する質問に対して、これは主として出かせぎの問題で質問があったと思うのですが、いまの労働力需給関係が求職一に対して二・三、ですからあまり深刻な心配は要らないのではないか、まだまだ求人のほうが多い、こういうお話があったというふうに聞いているわけですけれどもね。しかし、これはもうさっきも申し上げましたように、単に数字だけを計算をして、平均値を出せばこういうことになるかもしれませんけれども、しかし労働の質によってずいぶん違うわけでしょう。私は、おそらく来年の上期ぐらいまでは――これは長期見通しはなかなか立ちませんからそんなことは聞いてないわけです。短期の期間どういう見通しかということを聞いているわけですからね。おそらく最初に犠牲になるのが臨時工あるいは社外工、それからパート、その次に問題になるのがやはり中高年齢者ということになると思うのですよ。こういうものがどんどん続出をしてくるような情勢というものが考えられるのではないか。いまでさえ顕在失業者が大体五十三万あるというふうに聞いておりますけれども、これに対して、こういう傾向からするならば、どの程度の顕在失業者が想定されるか。同時に出かせぎ者の職場はなくなりますよ。これはもう公共事業が抑制されますからね。同時に民間投資も抑制されますから、したがって出かせぎの職場がなくなる。あるいは失対事業だっていままでどおりに稼働日数が確保されるかどうかというのも問題になると思うのです。そうした潜在失業者なんかを計算してまいりますと、相当深刻な大きな問題になるのではないかというように私は思うんだけれども、その点はどうですか。
  151. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 確かにこういったことで経済の規模が縮小されるということになりますと雇用面に響いてまいります。その際、まず臨時工とか高齢者とか、こういった点にしわ寄せがくることもいままでの例から明らかでございます。また先ほど御指摘になりました中小企業、零細企業、そういった面から倒産その他の失業の発生ということも十分考えられるところでございます。ただ、そういう問題がいろいろと起こってきておりますが、それがすぐ直ちに雇用の面に響いてくるかと申しますと、いままでの例から申しますと必ずしもそうではございませんので、ある程度のタイムラグを置いてそれが具体的にあらわれてくる、こういうことでございまして、先生からいまのお話のございましたように、現在の時点では雇用の見込みは非常に逼迫しております。したがいまして、こういうものが具体的にあらわれる時点では、たとえばもうすでに繊維で問題が出ているとおっしゃいますが、この前のドル・ショックの例で申しますと、そういう事態が起こってまいりますとまず求人取り消しという事態が起こってまいります。解雇の問題が起こる前に新規学卒、来年度の新規求人の取り消し、あるいは中途採用の求人取り消しという事態が起こってきております。ところが現実にはいろいろ新聞紙上ではちらほらと出てまいっておりますけれども、いまだにまだ求人取り消しが一件もあらわれておりません。そういう事態から見ますと、この雇用の面にかりに相当な影響が出るといたしましても、来年度上半期につきましては、いまの雇用の需給の逼迫状況から見まするとまだあとの問題ではないだろうか。先ほどから怠慢だとおっしゃいましたけれども、私はずっと来年まで、出てくるまで待っているということでは決してございませんで、経済見通しがはっきりいたしますならば、その時点で私ども来年度の雇用の見通しをつけた上で、それに対する具体的な対策を、十分万全の対策を講じてまいりたい、かように考えているわけでございます。  それから失対につきましても、公共事業の規模の縮小といったような問題が取り上げられておりますけれども、失対事業につきましては一般公共事業とこれは全く性格を異にいたしておりますので、現在の十二万の失対就労者の月間二十二日の就労は、これは来年度以降もいかなる事態になりましても確保してまいる考えでおります。
  152. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 経済見通しがついたらと、こう言うんだけれども、経済見通しはいつつくのですか。
  153. 佐倉説明員(佐倉致)

    ○佐倉説明員 今週二十一日の閣議に御報告の予定にしております。その過程におきまして、ついたら雇用の見通しを労働省でおつくりになるというのではなくて、労働省に御連絡しながら、雇用のことを考えながら経済見通しもやはりつくってまいっております。
  154. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 それは二十一日に見通しを立てる。それまでの作業過程に相当労働省もやはり連携をとりながら、そういう見通しについての一応の方針を立てるわけでしょうから。そうしますといま私が申し上げましたような、いまあなたのほうからもお話がございました、たとえば新規採用がなくなるとかあるいは臨時工やら社外工が最初に首になるとか、そしていろいろな企業努力はすると思いますけれども、しかしやむを得ず一時帰休をやるとかあるいは操短をするとかなんという事態は当然起こってくると思うのですよ。そうしますと、いまあなた方がお話しになったよりももっと深刻な事態が生まれてくることが当然想定をされる。これはもう見通しの問題ですから、これはそんなことありませんといえばそれまでの話だけれども、そういうものが出てくる可能性が十分あるとした場合に、当面考えられるあなた方の対策というのは何ですか。
  155. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 先ほど大臣からもお答えがございましたように、三十六、七年当時の不況時における繊維離職者対策あるいはドル・ショックの際も、予想よりははるかに下回りましたけれども、ある程度の失業者が出ております。こういうものに対しまして、雇用対策法による転換給付制度あるいは中高年特別措置法によります就職確保対策、こういった措置をとりましたし、また失業保険制度の運用によりまして、そういった失業をできるだけ防止するような策を講ずると同時に、出てきました失業者につきましては、失業保険の運用によりまして再就職までの期間を生活安定をはかりながら再就職の確保をはかる、こういうことで措置いたしてまいりましたが、私どもは今回こういった問題も予想いたしまして、失業保険制度の全面的な改正を検討いたしておるわけでございます。  その中に、できるだけ失業を出さないで、予防して職場を確保していこう、こういう雇用調整の方策も盛り込むつもりでおりますし、万が一、それでなおかつ失業が出てまいりました場合には、全国的なこういった不況に対する対策というような面も十分考慮してまいるつもりでございます。そういったことを十分これから早急に検討しながら、当委員会における御審議をお願い申し上げたい、かように考えておる次第でございます。
  156. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 順序を追うていろいろ問題が出てきますからお尋ねしますが、たとえば一時帰休をした場合ですね。一時帰休になった場合には、いままでの慣例からしますと大体休業中の賃金を六〇%補償する。これは労災法との関連もあって、休業補償が六〇%ですから、大体それにならって六〇%補償される、こういうことになると思うのですが、しかしこういう異常な物価値上がりの際に六〇%の賃金をもらって、会社に出勤できるまで、一カ月か二カ月か知りませんけれども、ぼやっと待っておるということでは、私は平常の場合とは違うと思うのですね。そういうものに対する考え方なり手だてがあるかどうかということをまず聞きます。
  157. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 まだ現在いろいろと検討中で成案を得ておりませんので、確定的なお答えは申し上げかねますけれども、いま先生御指摘のように、かりに一時帰休、操短というような事態になりました場合、基準法上の休業手当が六割支払われる、こういうことでございます。けさの日立の一時帰休採用につきましての情報によりますと、これは八〇%あるいは九〇%給与を支払って一時帰休を実施するというような記事が出ておりましたけれども、私どももそういった際に、それをカバーできるような新しい制度を失業保険制度の改革の中で検討いたしておるわけでございまして、十分先生の御趣旨にこたえ得るかどうかわかりませんが、最善の努力をいたしたい、かように考えております。
  158. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 本来これは民間の場合ですから、労使が話し合いをして協約で結べばそれが実現できるわけですけれども、しかしこういう異常な事態ですからね。したがって支払い能力のあるところはそれでできるかもしれないけれども、しかし能力のないところはやはり基準法の基準に従って六〇%以上出さない、こういうことになるかもしれませんね。そういう場合の手だてというものは単に失対法の改正だけを待つのでなくて、もうおそらく来年の二月、三月には起こるのじゃないか、こういうことが想定されるわけですから、ぜひそれをカバーするような措置を講じてもらいたいと思うのですが、大臣どうですか。
  159. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 ここまでくるまでにはいままでいろいろな経験を積んできたことでございまして、先ほどから私申し上げておりますが、ドル・ショックのときとか繊維の問題のときなど非常に私たちは憂えたわけでございまして、そこで中高年齢層の雇用対策、そういう法律などを適用しながら、いろいろな制度にあわせて予算措置などをしていまカバー、ある場合にはそういう危機が来ないで済んだこともございます。そういうふうな具体的なものをそろえながら、一方では、迂遠なようでございますけれども、今度の失業保険制度の改正案というのが非常に注目されております。あれなどが実現した暁には、かりにそういうものができた場合には非常に手当てができるような案になっておりますので、御審議いただきながら、ひとつ万々の措置を講じて、何といったって日本では一番大事なことは雇用の安定でございます。そういう線で、全職員そろってひとつがんばりたい、こう思っておりますので、御注目いただきたいと思います。
  160. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 失業保険の改正についてはいずれまたその改正案も出るでしょうからそのときに審議いたしますが、その失業保険改正案の中に、こういう一時帰休なんかの問題に対する六〇%の休業補償をカバーするものがありますか。
  161. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 失業保険制度研究会の報告の中では、こういった操短、一時帰休を実施いたします企業が当然基準法上の六〇%の休業手当を支払うことになります。私どものこの研究会の報告の中で指摘されておりますのは、こういった企業が六割以上の賃金を支払う場合には、その半額程度を補助してやる。先ほど先生が御指摘になりましたように、支払い能力のある企業では、操短ということで休業手当を支給して解雇をしないで済む場合もあるかもわかりません。しかしその支払い能力にさえこと欠くような企業では、もう操短、一時帰休ではなくて解雇せざるを得ない、こういうことになるかと思います。私どものこの考え方は、できるだけそういう解雇という事態に至らさないために、一時帰休、操短制度を積極的に指導して、そういう非常事態の場合はそういうことによって切り抜けさせる。なるべく失業、解雇というような事態に至らないようにさせようというのが新しい制度のねらいでございます。そういうことで、私どもは、先ほどから先生御心配になっているような点が新しい制度の発足によって十分カバーできるのではないかというように考えておるわけであります。
  162. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 私はそれで十分カバーできるとは思いませんからね。おそらく、この国会がそのままいけば四月の二十九日までですから、かりに来年の一月、二月、こういう問題が起これば、それには間に合わないわけですからね。したがって、それをカバーするような措置は十分ひとつ検討して考えてもらいたいということを要望しておきます。  それからもう一つは、いまお話もございましたように、できるだけ失業が出ないようにする、いまかかえておる雇用人員は確保していく、こういうことが大事だと思うのですね。そこで、ことしの労働省の重点施策になっております時間短縮の問題や、あるいは週休二日制の問題等々について現状はどういうふうになっておるか、あるいは労働省は具体的にどういう指導をしてきたのかということについてお尋ねします。
  163. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 私どもかねてから週休二日、時間短縮等々の指導を進めておるわけでございまして、労働時間等で申しますと、月間の総労働時間数、昭和三十五年当時全産業平均で二百二時間くらいだったものが、四十五年には百八十七時間、四十七年には百八十四時間と、逐次全体といたしましては時間短縮も進んでおるわけでございます。特にここ二、三年は御承知のように週休二日制の推進を進めておりまして、昨年の九月現在におきまして、週休二日制を実施いたしておりますところは、完全週休二日だけではございません、月一回、二回等も含めてでございますが、企業の約一三・二%、それから適用を受けている労働者で申しますと、約三六%というものが週休二日の適用を受けているわけでございます。その後も、ことしの春闘等におきまして、さらに一そう進んでおりますので、現在はもっとこれが普及を見ておることと考えております。  私ども、さらにことしの夏には労働時間改善につきまして通達を出しまして、今後は基準局等におきましても監督をいたしまして、単に基準法違反がないというだけにとどまらず、さらに基準法違反にはならなくても、実質的に長時間労働があるというようなものにつきましては、できるだけ少しでもこれを改善し、適正化するよう指導することを地方に指示したしておりまして、逐次そういうものが進みつつある、かように考えておるわけでございます。  特に先生いま御指摘の最近の情勢、石油、電力不足下におきましては、おっしゃるようなことがエネルギーの節約等のためにも有効であると考えております。この間の十一月十六日の閣議決定されました石油緊急対策要綱におきましても、週休二日制の推進というようなことがうたわれておるところでございます。私ども、今後それぞれの業種あるいは企業の実情に応じまして、一そうこれを推進するよう指導してまいりたいと存じます。
  164. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 こういう時期ですから、できるだけ失業者が出ないようにするためには時間短縮やら週休二日制やら、そういう企業内の努力によって人員を確保してやはり出さないようにする、こういう強力な指導をする必要があると思うのですね。したがって、それは十分現状を踏まえながら今後も強力な指導をしてもらいたいと思うのです。  そこで、先ほど身障者の問題も出ていましたけれども、身障者やら、中高年齢層の就職問題というのが私はこれからやっぱり一番深刻になると思うのです。そうしますと、現在ある雇対法やら、あるいは身障者の雇用促進法やら、あるいは中高年齢層の雇用促進法やら、こういう法案について、順調に経済成長がこうやっていっているときにはいいのですけれども、そうでない時期になっていくわけですから、したがってもう一ぺんそういう法律すべてについて見直しをしてみる必要があるのではないか、そうしてもっと現状にこたえ得るようなものに変えていく必要があるのではないかというふうに思うのですけれども、そこらの考え方はどうですか。
  165. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 先ほど来現在の求人求職の倍率を見ますと、二・三倍というお答えを申し上げましたが、経済が好況の時点におきまして、雇用需給が逼迫しておりますような事態の中におきましても、なおかつ高年齢者あるいは身体障害者、こういった人たち雇用がなかなかむずかしいというのが実態でございます。ましてこれからこういった雇用面に相当大きな影響が出てくるであろうということになりますと、ますますこれから、全般的な雇用対策はもちろんでございますが、その中でも一番しわ寄せを受けやすい中高年齢者とか、身体障害者につきましては特別な対策を講ずる必要があろうか、かように考えております。  そこでいま御指摘になりました雇用対策法とか中高年齢者等の雇用促進に関する特別措置法、こういった問題もございますけれども、私どもは現行の失業保険制度にいろいろな問題がありまして、こういった高年齢者とか身体障害者が、就職のなかなかむずかしい人たちが本来の失業保険制度ですら手厚い保護を受け得ないような実態になっております。  そこで今回の失業保険制度の全般的な改正の中で、特にこういった中高年齢者なかんずく高年齢者あるいは身体障害者、あるいはいつも当委員会で指摘されております同和対策の対象者、こういった就職の困難な人たちについてより一そう手厚い、きめのこまかな政策を講じられるような立法措置を講ずるということで、いま鋭意検討いたしておるわけでございますので、その関係におきまして雇用対策法なり中高年特別措置法についても所要の改正を行なうことになるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  166. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 これは前段の見通しやら認識等が若干それぞれ違いますから、論議のかみ合わない点もあるのですけれども、しかし私はやっぱり少なくとも労働省の場合にはもう少し深刻にとらえて、そうして考えておく必要があると思うのですよ。これは単に、さっきから話が出ていますが、新卒なんかの場合には四倍。平均すると求人数に対して二・三倍というような数字をもてあそぶだけでなくて、顕在失業者が、現在失業保険を給付されておる者が五十三万ある。そうしますと、二万、三万の給料をもらって働いている労働者だってあるのですよ。そういうものを雇用者と見るかどうかということについても問題があるでしょうからね。したがって、もう少し働いている労働者の実態というものをつかみながら、そういうものに対して手厚く対策考えていくということが必要だと思うのです。特にこういう緊急事態が、想定される場合ですから、したがって、その緊急事態がどのように起ころうとも直ちに即応できるような体制をやはりちゃんとつくっておく必要がある、こう思いますから、そのことを強く要望しておきまして、私の質問を終わります。
  167. 小山(実)政府委員(小山実)

    ○小山(実)政府委員 先ほど先生から御指摘がございました鋼材のあっせんの実績でございますが、いま確かめましたところ、やはり数字が間違いがございまして、申し込み三十一万五千四百二十六トンに対しまして、あっせんした数字は三十一万トンでございます。まことに資料のできが悪うございまして申しわけございませんでした。おわび申し上げます。
  168. 村山(富)委員(村山富市)

    ○村山(富)委員 これは私が間違いじゃないですかと念を押したのに、間違いないと、こう言ったわけですね。どだいあなたのほうはこんな数字を――わざわざ聞いたわけでしょう、間違いないですかと。そうしたら間違いありませんと言ったのですね。こんないいかげんな扱い方では、やっぱり中小企業対策もいかぬというのです。もっとしゃんとやってください。  終わります。
  169. 大野(明)委員長代理(大野明)

    ○大野(明)委員長代理 田中美智子君。
  170. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 私はきょうは障害者労働権の問題について質問したいと思いますけれども、まず午前中に出ておりましたそれに関する横浜税関の馬渡さんの問題についてたいへん多くの疑問がありますので、質問をそこから始めていきたいと思います。  まず先ほど関税局のほうでお答えになられた中に、本人の希望を聞いて検討するというようなことが出ておりましたけれども、これは本人の希望ということははっきり出しているし、私自身もけさきちんと本人からも聞きましたし、組合にもその旨の委任状が出ているわけです。それでもまだ本人の希望が関税局のほうにはわからないのでしょうか。簡潔に答えていただきたいと思います。
  171. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 ご本人の希望は、横浜税関の診療所において三療師として勤務をしたいという御本人の希望につきまして私どもも承知しております。ただ問題は、御本人の希望とそのような三療師を税関の診療所に置くことが 官庁組織全体から見まして必要であり望ましいかどうかという点について問題があろうという点を考えておるわけでございます。
  172. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 本人の希望がはっきりしているなら、いまの時点に立って本人の希望を聞いてというお答えというのは、非常にそちらのほうの論理に矛盾があると思うのです。本人はきまっているわけですね。それでなぜそのような本人の希望を聞いてということをいまなおおっしゃるのかということに、私は非常に疑問を持つわけですけれども、いままでありました、ことしの秋から九月二十日、十月二日、十月二十四日、十一月五日、十一月十五日、十二月十二日と、私のわかっている範囲でもこれだけの間に横浜税関の影井人事課長それから鎮目考査官がたびたび本人に接触しまして、何とかやめないか、そして開業するそのお世話をするとか、いろんなことを言って、結論的にはやめないかというふうな、本人の意思をくつがえすそちら側の――私聞いた話によりますと、半脅迫に近いような、親切の押し売りのようなことばで非常におどかすようなことを言っていられるという事実を聞いたわけです。そういうことを聞いておりますと、きょうの本人の意見を聞いてというおことばというのが、まだこれからもそれをやり続けて本人の希望を変えていこうとしているんではないかというふうに強い疑問を持ったわけです。その点本人の現在の希望というのははっきりしているわけですし、これはずっと変わってないわけですから、今後このような本人の意思を問いただすというようなことを一切しないということを確約していただきたいと思います。
  173. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 私ども、御本人の問題につきまして誠心誠意、どのような形で社会復帰するのが望ましいかという観点できわめて強い責任を感じておるわけでございます。先ほども午前中のこの委員会が終わりまして、御本人とお会いいたしまして、またお話を申し上げました。そのときも、勉強に忙しいとき、勉強に忙しくない休暇のとき、いろいろあろうということでございます。御本人とはその後忙しくない、できるだけ休暇の間にまたお話しいたしましょう、御本人もそのようにしてくれということでございますものですから、御本人の意向を聞くだけではなくて、そういうこともいかなる形において社会復帰をするか、最善の道をさぐるかという意味におきまして、やはり御本人のお考えもまぜ、それからまた専門家あるいはいろいろなカウンセラーの方々の御意見も入れながら、最善の道をさがしていくべきではなかろうかというふうに私ども考えております。
  174. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 本人の意向をくつがえそうとするためのいろいろなやり方というのは、そちら側としてはそれは親切だと言われるかもしれませんけれども、客観的に見て、いまそのような過去の実績の中で非常に疑いを持たれているわけですから、今後そのようなことがないようにしていただきたいと思います。本人の道は本人がきめることなわけですから、そちらのほうでこれが善意だろうというふうなことばでやらないでいただきたいと思うわけです。  その次に、やはり先ほどのおことばの中にありました、ほかに適当な道があるのではないか、理療士としてほかの道があるのではないか。たとえばいままでのお話の中に開業などのお世話をするというようなこともいろいろ言っておられましたけれども気持ちの上のお世話というふうなことでは、退職金二百七十万円ではどうしようもないことなんですけれども、それをするしないは問題としまして、いま三療師の道というのは、これは労働省にもぜひ聞いていただきたいのですが、視力障害者のセンターで調査したのによりますと、二万八千人であった視力の障害者の三療師、この方たちが五年間に一万九千人に減っているわけです。五年間で九千人も減っているわけですね。これは目の正常な方たちがやるようになってきているからです。これは職種指定ということで最優先することになっているこの職種から視力障害者が締め出されているという現状が外にあるわけですね。そういう中で安易に、四十四歳になられたことを理由にこれから新しく開業せよ、これは親切である、これがその本人にいいのだということは、そうした情勢というものをお調べになっているのかどうか、私は非常に不満に思うわけです。視力障害者職場開拓ということは、先ほども話に出ておりましたように、ただ、はり、マッサージというものだけでなく、たくさんの職場能力を生かす仕事があるはずなわけですけれども、せめてこの視力障害者職場を維持するということがいま非常に押えられている。この点、労働省としてもそうならないような努力をしていただきたいというふうにお願いしておきます。  それから理療士の問題ですけれども、先ほど、もし置いた場合に八百人が利用する、その八百人に一人がもったいないような発言だったわけですけれども、私の調べたところでは、あそこで千二百人が通えるということでした。それから組合の方たちにお話を伺ったわけですけれども横浜税関の総務課長が、一昨年一年間に腱鞘炎が三十人出ているということを発表していらっしゃるわけです。そういう中で、ことしになっても七人腱鞘炎が出ております。これが現在通院している。これは腱鞘炎とはっきり診断された人の数であって、肩が痛い、手が痛いといって、まだはっきりそこまでいっていない人たちというのは潜在的に非常にたくさんいるわけです。その上に腰痛、高血圧、神経痛というふうなものの数を入れますと、非常に多い病人と、それから病人に続く者たちがいるということが言われているわけです。そういう調査や何かを税関ではしていらっしゃるのかどうか。置くという形には、ただ人間の数だけで考えるのでは非常に片手落ちで、中がどうなっているかということなわけです。いまこれは税関だけでなくて、職場にマッサージ師を置いてほしいという希望は非常に多く出ておるわけです。厚生省の統計にしても、この十年間に病人が二倍になっているという統計が出ているわけですね。そういう状態というものを横浜税関ではお調べになったのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  175. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 第一点でございます。私ども、本人のために開業が望ましいということを結論づけておるわけではございません。午前中にもお答え申し上げましたように、センターのほうでは、センターの教官に欠員があれば、御本人が非常にまじめな方でもございますし、それから学歴も高いというような点から非常にふさわしいということを言っておられるわけでございまして、やはりそういうポストを含めまして、どういうような位置が望ましいかという点をわれわれ真剣に、前向きに考えていきたいということでございます。  それから、ただいま腱鞘炎の問題が出たわけでございます。それに関連して、本関の人員が八百人でございます。その近辺に出張所その他ございますので、若干人数がふえるということはあり得ると思います。診療所を利用するということ。ただ、わがほうの税関におきまして腱鞘炎が非常にふえておる、診断書がたくさん出ておることは事実でございます。ただ腱鞘炎――鍵を、キーをたたくわけではございますけれども、通常の場合でございますと、私ども調査でまいりますと、一日三万キーたたくのが普通のようでございます。わが税関におきましては、調査しましたところ、その約十分の一以下のキーの打さんであるようでございます。それにもかかわらず、やはりキーをたたくことによりまして腱鞘炎がないとは言えないわけでございまして、私ども三万鍵というようなことを考えあわせますときに、横浜税関あるいは東京税関、そういうところにだけ三療師が必要であるかどうか、私どもこれを検討しておるわけでございまして、そこらをどういうふうに持っていくか、必ずしも、はり、きゅう、三療師が当面必要であるかどうかということは現在私ども疑問に思っておる点でございます。
  176. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 いま腱鞘炎だけのことをおっしゃいましたけれども、腰痛症、高血圧、神経痛、そういういろいろな病気の治療にマッサージが要るだけではなく、理療士というのは病気治療だけではなくて健康管理にも必要なものであるという考え方というものがいま出てきているわけですね。いまのおことばのことばじりをとるようですけれども、なぜ税関だけに必要かというふうなそういう発想が出てくる頭というのが、もう少し根本的に発想を転換していただきたいというふうに思うわけです。これは何も税関だけを――いま税関の中で出ているからやっているわけであって、あちこちの企業でいま労働者がマッサージを置いてほしいという、新しい現代病として出てきているわけです。これに即応していくということが、これは官庁が率先してやるべきだし、現在そういう問題が出ている。その上に今度の答申を見ましても、先ほど局長も言っていらっしゃいました。読みましたとおっしゃっているわけですね。ということは、いまいる人たち障害になっても、それを首を切らないで、その職場の中で職場開拓をしていくということをせよということをいっているわけです。そうすれば、現在これだけの状態がそろっているならば、これを一つの新しい日本の行き方としてこれをやっていくという決断をぜひつけていただきたいというふうに強く要望します。一言でそのことについてお答え願いたいと思います。
  177. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 その点につきましては、午前中局長がここで答弁しましたとおりでございまして、そのような新しい答申の線に沿いまして、全官庁の問題といたしまして考えていくべきであろうというふうに考えております。
  178. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 それに関連しまして労働大臣にもお願いしたいわけですけれども、この答申が出たのは労働大臣あてに出ているわけです。この中で、障害者職場を開拓するということがたいへんな困難なことだというふうに、いままで努力をしないから困難がいつまでもなくならないんだというふうに私は思うわけです。そういう意味で、何も税関だけでなくてほかの職種の中にも、企業の中にも、こうした健康管理の中に看護婦さんと医者というだけでなくて、マッサージをやっていくということが労働者の健康を守り、またこれが障害者仕事を、そのときには必ず視力障害者入れていくということがまた障害者職場開拓にもなっていくのだというふうに思います。そういうことをやっていただきたいというふうに思います。一言お答え願いたいと思います。
  179. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 まさに田中さんがおっしゃるとおり、私が答申をいただいたものでございます。そこで、職場開拓ということをやるために、私のほうでもいろいろな研究部会を持って総合的にやってみたい、こう考えております。
  180. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 それから、労働大臣に関連してお願いしたいと思います。  いま職業安定所に労働者雇用職場開拓という意味で行くわけですけれども障害者が職安に行きましても、行った人が全部登録されないわけなんです。そういうことかしばしば――しばしばどころか非常に多いわけです。そういうことで、登録をする、それで求人があるとそれに回すということでほとんどがお世話しています、パーセーテージだけは高くなるということでは困ると思うのです。ですから、相談に来た人は全部登録をして、そうしてその中で、何人しか就職できなかったということは職安の罪ではなくて、さっきもおっしゃったように、まだ日本の国民の連帯が少ないとか企業のほうの理解が弱いとか、いろいろな複雑な状態があると思います。しかし現状を、これだけ職場を要求しているのにこれだけしかいかれない状態というものを、勇気をもって職安が出していくことが大きな啓蒙活動になるんだと思うのです。その一歩のところが職安のところでとどまっているということを、強く訴えがあみわけです。その点について一言お願いしたいと思います。
  181. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいま御指摘のことでございますが、職安の窓口に障害者の方が行かれて求職申し込みをしたいということで、その登録をいたしませんというふうな事実は全くございません。現在、安定所に登録をされている身体障害者は約十二万でございます。登録しながら、現実には求職申し込みはその場ではとらない、あるいは一たん求職申し込みをしても半年も一年もそのままになっているという状態の人がございますけれども、求職申し込みなりあるいは登録を受けつけないという事実は全くございません。もしかりにそういうことがあるとすれば私どもの手落ちでございまして、そういうことがないように十分注意いたします。
  182. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 全くないとおっしゃいましたけれども、これはたいへん事実に反していると思うのです。今後ありましたら、それじゃすぐに職安局長に直接私のほうからお電話を差しあげるようにしますけれども、まず東京都内を見ましても、車いすの入れる職安というのは二つしかありません。そういうことを見ましても、障害者が来れない状態をつくっていたんでは、それで来ないんだという結果になっているわけです、気持ちの上ではそうではないにしても。そういう意味で、早急に障害者でもそこに入ってこられるという道をあけることが、この答申にこたえる第一歩だというふうに思います。その点について一言お願いします。
  183. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、身体障害者の中でも特にこれからの重点は重度障害者だと思います。そういった意味におきまして、新設された安定所につきましては、ほんとうに重度な人でも出入りできるようにやっておりますが、既設の古いものにつきましては、車いすで入っていくことはなかなかむずかしいことでございます。そういう点も十分考えまして、今後できるだけ改造して、そういう重度障害者のお求めにも応じ得るような体制をとるつもりでいろいろ対応いたしておるわけでございます。
  184. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 その次に、またもとの税関に戻りますけれども、その能力開発に努力しているということを先ほどおっしゃられたわけですけれども、どういう点で能力開発をしていられるのか。時間がありませんし、私、次がありますので、このことについてこちら側の意見だけ言わせていただきますけれども、視力障害センターに行くということは能力開発だというふうに思うのです。そうであれば、これは身分をそのままにしてそこに訓練に行くという状態にすべきだと思うのですけれども、それを病気休暇中とか、理屈からいっても非常におかしいような状態で、それを温情というような形で、給料を半分にしてしまうというような形でやっていることは、正しい能力開発の態度ではないと思うのですね。それほど大みえ切って、能力開発に努力しているとおっしゃるならば、はっきりとその本人が能力開発して職場におられる状態になるまでの努力というものはやるべきだと思うのです。それを、そういう状態でやってきた。視力障害センターを見つけてきたのも税関ではなくて、むしろ組合が一生懸命世話をしてきているというところで、これは税関側としては能力開発をしてきたというふうにはいえないんだというふうに私は思います。そのことだけひとつお伝えしておきたいと思います。  その次にもう一つ、税関側が組合との交渉をなぜ拒否しているのか、そのことについて、こういう重大な問題というのは、本人も組合員であるし、組合と一緒に十分に話し合っていくのが民主主義だというふうに思うわけですけれども、なぜ組合との交渉を拒否していらっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思います。簡単にお願いいたします。
  185. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 私ども聞いておる範囲で申し上げますと、交渉の課題といたしまして、個人の個々の人事その他交渉の議題にならないものと、交渉の議題になるものというふうに分かれ得るものだろうと思うわけでございます。ただしこの馬渡さんの問題につきまして、心身障害者問題というような問題、一般的な問題と考えることも十分に可能でございます。横浜税関におきまして、われわれ聞いておるところによりますと、近々のうちに組合どの間で交渉を行なうというふうに聞いております。
  186. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 人事院にちょっとお伺いしたいわけなんですけれども、いまの問題、いま近々なさるとおっしゃったのですが、いままで国家公務員法の百八条の五によって、組合との交渉をしないというふうに税関側がいっているわけですけれども、人事院としては交渉を拒否していることについてどのように思われますか。
  187. 中村(博)政府委員(中村博)

    中村(博)政府委員 百八条の五の精神からまいりますと、登録職員団体から勤務条件に関して交渉申し入れがあった場合にはこれに応ずべき義務がある、こういうことを書いておるわけです。ただし管理、運営事項を除きますから、したがいまして、いま税関のほうからお話がございましたように、一般に個別的な人事等はここにいう勤務条件とは解しておりません。したがいまして、一般的な人事の基準とかそういうことはこの法条の示す交渉対象である勤務条件になり得る、かように思います。ただし管理、運営事項は別でございます。
  188. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 そうすると、いまのこの馬渡さんの問題について、組合と税関側が話し合いを持つということは正しいことなわけですね。
  189. 中村(博)政府委員(中村博)

    中村(博)政府委員 いま御答弁申し上げましたように、この法条でいう勤務条件であるかどうかという点につきましては、いま先生御発言のように馬渡さんのということで、私その中身をよく存じませんけれども、特定個人の人事に関することは直ちにここにいう勤務条件には当たらない、私はさように考えております。
  190. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 今後必ず組合との話し合いというものを十分に税関当局のほうで持っていただきたいと思いますけれども、これを絶対拒否しないというふうにしていただきたいと思います。よろしいですか。
  191. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 私ども今後も当然しかるべく組合との間で交渉をやりますし、従来におきましてもわれわれ理由なく交渉を拒否したということはないと私どもは信じております。
  192. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 今後必ず組合との交渉を密接に持ちながら話し合いを進めていただきたいというふうに思います。  それから最後に、障害者というものに対するものの考え方なわけですけれども障害者というのは、いわゆる六法にありますような、こうなっておる、こうなっておるという身体的な障害というものももちろん障害者ですけれども労働省考えるときの障害者一般にわれわれが障害者問題をどうしようと考えるときの障害者というものは、社会的にハンディを持っておる人、職業的にハンディのある人を障害者というふうに考えなければ、先ほどの話のように、やはり一・七といっても、その中に小指一本ない人、片目がちょっと薄い人も全部入っていて一・七だということで、結局五級以下の人たちというのばかり入って、そして一、二、三、四というところはほとんど排除されているのでは、ほんとうの社会的、職業的なハンディを持った人たち障害者だといっておることにならないというふうに思います。そういう点で、今度の答申にもそれは十分にうかがえることですし、労働省としてはっきりと障害者というのは何かということを、基本的な考え方を――いままでのような考え方では困るのではないかというふうに思います。そういうことが職安の運営にもかかってきて、軽い人だけのお世話をするということに結果的になっておるのじゃないかというふうに思うのです。こういう観点から考え税関のほうでも障害者というものを、社会的、職業的にハンディがある、このハンディをどうしていくかというふうな考え方で答申に沿った対策をしていただきたい。  最後に税関当局に強く要望をしておきますことは、昨年の十月六日に休職を解きましたね。そして病気休暇ということに切りかえて半分の賃金をいただくということになった。そのときに、御本人とそれから矢野考査官という方と影井人事課長それから本人の奥さんとおじさん、それから視力障害センターの指導員というメンバーのいられるところで、本人に、やめるというふうなものに判こをつかせたということを聞いておりますけれども、事実でございましょうか。
  193. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 私が聞いておるところによりますと、去年休職から病気休暇に切りかえるにあたりまして、この病気休暇、通常でありますと……(田中(美)委員「事実か事実でないか、それだけ」と呼ぶ)判こでなくて、そのようなことを書いていただいたということはあったというふうに聞いております。
  194. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 それではその文書を――本人は目が見えないものですから、内容を耳で聞いただけではっきりしないわけなんですね。それを至急私のところに提出していただきたいと思います。すぐに提出していただきたいと思います。そのお返事を伺いまして、質問を終わりたいと思いますので、御回答を願います。
  195. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 きわめて個人の問題にかかわる問題でございまして、われわれ前向きにこの問題を検討するという段階で――他とのいきさつ、いろいろあったと思うわけでございますけれども、前向きに考えたいというような意味からいいまして、過去にございました資料をどういうふうに考えていくかという点にかかるわけでございますが、個人的な問題にかかわる資料でもございますし、私としてはどうしたらいいのか、現在にわかに御提出申し上げるというふうに申し上げるわけにいかない。ただ、検討さしていただきたいと思います。
  196. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 これは絶対に出していただきたいというふうに思います。これはそちらのほうで書かれたものに、本人に口だけで伝えて判こを押したわけですからね。こういうことを目の悪い人にしたということ自体、いまこの問題は日本全国の障害者が問題にしているわけなんです。税関の問題ではないんですね。障害者の人権問題にしているわけです。目の見えない人に、点字で書かれているなら別です、それと同じものを渡しもしないで判こを押した。そして一年もたって――これは本人はよくわからないわけです。こういうものが残されているということは非常にあれですので、見せていただきたいと思います。もしそれを破棄できるなら破棄するとか、それを見せていただきたいと思います。それをもう一度――それをどうしてもお逃げになるということは、その中身が非常におかしいものであるということを全国の障害者は思うだろうと思います。ぜひ出していただきたいと思います。もう一度お願いいたします。
  197. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 検討さしていただきます。
  198. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 検討というお返事だけしかできないんですか。ですから、私は局長に出てほしいと言ったわけですね。あなたが役不足ですかとおっしゃったけれども、確かに役不足です。そんな返答しかできないということは自分のほうが――目の見える人がちゃんと読んで、その同じものを渡していたならいいですよ。見えない人に点字でないものを読んで、そんな人権無視なことは、いま障害者の非常に強い怒りになっている。税関、国の官庁がこんなことをやる。それの行政指導労働省にあるわけですよね。そういう行政指導労働省がもうちょっとしっかりしていただきたい。そんな姿勢では、企業全体だって、全国の障害者仕事をしていくということは、ほんとうに私としては不満に思うわけなんです。そういう点で、そのお返事を絶対に、検討するというのはいつまでに検討するか、そのお返事を聞かしていただきたい。いつまでにその回答が出るか。
  199. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 では、私も鋭意検討いたしまして、あと一週間ぐらい時間をいただければありがたいと思います。
  200. 田中(美)委員(田中美智子)

    田中(美)委員 じゃ、一週間以内に必ず私のほうに返事をいただきますように。  これで質問を終わります。
  201. 大野(明)委員長代理(大野明)

    ○大野(明)委員長代理 石母田達君。
  202. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 私は、きわめて限られた短い時間の中で、田中議員が先ほどから取り上げている全税関横浜支部の馬渡氏の問題について質問したいと思います。  私もこの問題については、横浜におりますので、長い間知っております。御承知のように、この方は昭和二十六年に入関したときも非常に近視でありましたが、三十三年に網膜剥離、左眼失明された方であります。そして、それから十年ほどおりました本関のいわゆる検査場管理室から昭和四十三年の四月、突然山下埠頭出張所へ配転されたわけでございます。その職場がどんなにひどいものであるかは、先ほどの質問の中にもありました。私ももとの建物の外側だけは見たことがありますけれども、あれだけでも非常に暗いところです。しかも組合の報告によりますと、その中の、外に対しては窓の一つもない、三方がコンクリートの壁で囲まれた暗いところへ、わずかに残った、視力の弱った片方の目で仕事をなさっていた馬渡さんが配転された。これはこうした視力障害者に対する常識的な配置転換ではない、私はこういうふうに考えておりますけれども、この点について答弁願いたいと思います。
  203. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 確かに四十三年の四月に山下埠頭に行かれたということは事実でございますが、その実際の職場の実情をもうちょっと私、検討させていただきまして、現在どうなっているか、そのときどうなっていたか、どういうふうな職場が望ましいのかという点につきましては私ども検討してみたいと思うわけでございます。
  204. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 そしてその半年あとに網膜剥離で入院されて、とうとう両眼とも失明された。この職場がどんなにひどいものであるか。もちろん私どもの調べでも、いろいろこういう条件の悪い方でもあります。その条件の悪い、身体障害者である、しかも片方の目しか残っていない方をこういう職場入れて、そのあと全眼失明になったという問題について、私はその税関当局あるいは監督官庁の人事院にきわめて重大な責任がある。これが法律でいう身体障害者福祉法あるいは雇用促進法あるいは対策基本法、こうしたことを模範的にやらなければならない国のやることであるかということについては、きわめて私は怒りを覚えるわけです。この点についての責任についてはどう考えておられるか、両者に聞きたいと思います。
  205. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 先ほどお答えいたしましたように、山下埠頭の勤務条件がどのようなものであるか、われわれ検討いたしましてお答えいたしたいと思います。
  206. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 しかも重大なことは、あなたたちも知っているように、その当時組合は残念ながら二つの組合に分裂しておって、この全税関横浜支部の組合員としていた、つまりよくあなたたちが言う好ましくない組合だ、こういうような組合員であったということ、私どもこういう問題でいろいろの差別があったことについて、あそこの税関長、税関の幹部に会ったことがありますけれども、そのときには差別があったと言わなかったけれども、今日見れば是正すべき点が幾つかあったということで、最近その一部は是正されているようでございます。その当時を振り返ってみて、この方が第一組合員であった、いわゆる第一組合といわれる、税関当局にとってあまり好ましくないというような形、そういうことで、それまで本人も言っておられるようなわりに勤務しやすい職場から、突然こういう穴蔵のようなところに失明寸前のこの人を配転したという、こういう事実があるとすれば、これは重大な問題だと思いますけれども、どうでしょうか。
  207. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 私ども税関当局といたしまして、現在二つの組合をわれわれの職員は組織しておるわけでございますが、一つの組合が望ましくないというようなことは全くないのでございまして、われわれいろいろ最近の実情を考えまして、おかしな点につきましては労使正常化というようなことを鋭意進めておるわけでございまして、われわれといたしましては、どこの組合にその職員が属するかによりまして人事その他の差別をやっているというつもりはございません。
  208. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 そういうことは、私の目を見ていえないでしょう。何を言っているんだ。現実に税関当局の幹部はそういう是正すべき点があった、そういうことを反省しておるのですよ。そういうことを国会の中でしらじらしくも――税関の幹部の中では言ったこともある人がいるんです、好ましくない組合だと。そういうことについて現実にあなたたち知らないとは言わさない。国会でそういう答弁をしていれば切り抜けられると思ったら大間違いです。そういう点で、この問題、非常に重大な問題ですから――あなたたちがそういう職場配転したことがあるのかどうか、どういう職場であったか、それが障害者にとってきわめていいところだったのか、そうでなかったのか。調べてなかったらよく調べて、そうしてもし、その当時の責任者はあなたじゃないのですから、その当時の責任者が誤って、そうした組合員だからという、あるいは何かの感情的な問題、いろいろな問題でそうした職場にこの方をやったということならば、これは非常に重大な問題でございますので、そういう点を事実を調査してしかるべき処置をとるというふうにしたいと思いますけれども、この点について、監督官庁の人事院も含めて、あなたのほうに調査する意思があるかどうか、これをきっちり述べてもらいたいと思います。
  209. 道正説明員(道正信彦)

    ○道正説明員 ただいまの御指摘でございますが、私どもといたしましては、そのような意図的な考えで人事をやるということは考えられないことでございまして、私はそういうことはないと確信しております。ただし、どういう事情でそのような配置転換が行なわれたのか、事情につきましては、調査申し上げます。
  210. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 人事院。
  211. 中村(博)政府委員(中村博)

    中村(博)政府委員 いま石母田先生お尋ねのような事案がかりにあったといたしますと、そのような行為は国公法の百八条の七違反でございます。したがいまして、不利益処分の審査請求をなされば、人事院としてはその中身をよく調べまして、人事院において公正な判定がなされるケースでございます。
  212. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 そういうことじゃなくて、いま税関当局がそういう職場があったかどうかということも知らなかったということでしょう。こういう問題を私が提起しているのだから、そういうことを調べて、そういう事実があったかどうかというのを――私のほう、組合のことを言っているのじゃないです。あなたたちは調べる義務がある、こういう問題になったのだから。そういうことについて、そういう職場だったのかどうかということもあわせて調べられるかどうかということについて、もう一度御答弁願いたいと思います。
  213. 中村(博)政府委員(中村博)

    中村(博)政府委員 調査いたします。
  214. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 私の質問はこれで終わりますけれども、私はこのついでに、といいますと非常にあれですけれども、中途の失明者はいま非常に多くなっておりまして、昭和四十五年度の統計でも八五%が中途失明だといわれております。この中で、特にいままでつとめておって、そして横浜盲学校に新しく入られて、技術の習得をされているという方々がおられるわけですけれども、こうした人々の中に、いろいろな問題が出ております。その中でこういう人たちが生活保護あるいは失業保険などは切られますので、非常に困窮しておりますけれども、教材、教料書を墨字と点字、どちらかしかもらえないわけなんです。ところが、まだ目が見えて、そしてだんだん目が見えなくなるという人が多いために、墨字と点字の両方の教料書をもらえないか、そういう人は。また、こういう問題があります。修学旅行の助成金は義務教育ということで、高校生までになっているそうですけれども、こうした特別の人々に対しまして、それと同じような扱いでやっていただけないか。そうすれば、この人々は学校の行事として修学旅行にも行けるという話であります。  また、就学奨励金についていろいろ所得制限があるそうですけれども、これらは前年度の収入というようなことでいろいろ不合理もありますし、こうした一般的に生活の苦しい方でございますので、この際撤廃して、そして一つの段階にしてやっていただけないか。  それから最後に、学校安全会という保険制度があるそうですけれども、通学途上が対象になっていないために、特にこういう視力の障害の方は、通学の場合にいろいろ事故が起きるということについて、非常に困難を感じていられたのでぜひ善処してほしい、こういうことがございますので、この点について文部省のほうからお答え願いたいと思います。
  215. 国松説明員(国松治男)

    ○国松説明員 いま先生が申されました前半の就学奨励費の関係について私のほうからお答えを申し上げます。  盲、ろう、養護学校に就学する場合の就学奨励費というのは法律がございまして、その法律に基づくもの及びそれを準用いたしまして、予算措置として拡充をしているというふうなことで、毎年私どものほうも努力をいたしておりますが、いま先生がおっしゃいました、たとえば教科用図書、これは小中の場合は義務制でございますから無償給与になるわけでございますが、高等部の生徒に対しましては、この就学奨励費で支給の対象にするということでやっております。その場合にどういうふうなことをやっておるかといいますと、いま中途失明者のお話が出ましたけれども、この中途失明者の方が盲学校にお入りになるというときには、この学校でその生徒さんが墨字で学習するのがいいか、点字で学習するのがいいかというふうなことを判断をいたしまして、主として使うべき教科書をきめるということをいたします。そのきめた教科書を就学奨励費の対象にするというふうなことになっております。いまおっしゃいましたようなこともあろうかと思いますが、私どものほうの考え方では、最初は視力があった、しかしだんだんその視力が減退をしていって、やがて点字による学習をしなければいけないというふうなことになれば、当然今度は点字の教科書というふうなものを就学奨励費の対象にするというふうなことで措置をしていくべきではないかというふうに考えております。いまおっしゃいましたようなことを、私どもまた県の教育委員会のほうとも、十分事情を聞きまして、そういうような相談をしていきたいというふうに考えております。  一般的に、就学奨励費はだんだん拡充はしてきておりますけれども、いま申しました法律に大体根拠を置く、あるいは準じてやってきておりますので、先生がおっしゃいました所得制限なんかもどのようにはずしていくかというふうな問題については、おのずとこの法律の考え方、つまり負担能力に応じてというふうな表現が法律の中にあるわけでございますけれども、そういうふうな限界もございまして、他のいろんな奨励費あるいは援助費というふうなものとの均衡を考えながら、私どもなおそういう方面の充実をやっていきたいというふうに考えておるものでございます。
  216. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 最後に、労働大臣にも要望します。先ほどから馬渡さんの問題いろいろありましたけれども、この障害者雇用促進法の立場で、ぜひともこうした同じ政府部内に起きている問題ですから、慎重に特にそうした立場から善処されるように要望しておきたいと思います。
  217. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 承知しました。
  218. 石母田委員(石母田達)

    石母田委員 終わります。
  219. 大野(明)委員長代理(大野明)

    ○大野(明)委員長代理 この際二十分間休憩いたします。    午後三時九分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十一分開議
  220. 大野(明)委員長代理(大野明)

    ○大野(明)委員長代理 休憩前に引き続き会議開きます。  休憩前の質疑を続けます。寺前巖君。
  221. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 時間がそうありませんようですから、ひとつ要領よくお答えをいただいて、実りあるものにしていただきたいと思います。  私がきょうお聞きしたいのは、私の出身地である京都において保育所、特に民間の保母さんの間でかなり頸肩腕なりあるいは腰痛なり、そういう診断を出される障害が起こっているようなんです。直接的には本年の六月二十九日に十六名の保母さんと一名の作業員さん、七月二十五日には四名の保母さん、八月三十一日には一人の保母さん、そして十月二十二日に一人の保母さんが労災の認定の申請を出しておられます。申請日は六月なり七月なり、こうなっているけれども、申請されるまでの経過はどうか。そういう診断の段階に入ってから、人によって全部違いますが、おおよそ全部半年なり中には一年近くもその診断のままで申請を出していないという事態が続いておる。そういう診断になる前にも、また事実病院などあるいはあんま、はり、きゅうなどという、そういう措置を受けておられるというのが出されるまでの過程だと思うのです。  これは全国的に制度があるわけじゃありませんが、東京なり京都なりには民間保育所のこういう事態になった人に対して、その人が休んでしまうと他の人に転嫁されるだけじゃなくして、赤ちゃんの、子供さんのめんどうが見られないというところから、三カ月なりあるいは百七十九日、交代要員を予算的にめんどうを地方の自治体で見ましょうということで、一定期間はそれでもってめんどうを見させています。ところがそれだけの期間で解決はしなかった。その次には、それでは傷病手当ですか、ともかく職場には自分のからだがもたぬところにきているから、傷病手当、六割給付ですか、もらいながら六カ月間それでやってくる。しかしもうこの段階は今度は職場のほうには迷惑をかけてしまっているという段階になるわけです。しかしそれもまた労災申請を六月二十九日に出された人にすれば、いよいよもう今月でもってそういうやり方も続かない状況になってくる。ですから自分の生活費の面からと職場の面からと、両方からこれ以上迷惑はもうもたぬという実態にきて、いると思う。しかも、はりでしたら、一回やってもらうと何ぼ安くたって六百円はかかります。場所で全部違いますから、千二百円ぐらいまであります。千円前後は全部かかっているようです。それを週に二回くらいやります。すると月にはやはり一万円やそこらはかかりそうです。しかもこういう病気のめんどうを見てもらうお医者さんというのはそうたくさんないというところから、そういう遠所に通う交通費がかかる。   〔大野(明)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕 それからまたリハビリ訓練をやらなければならない。そうすると、リハビリ訓練というものはそこらにあるわけではないという実情にもあります。その費用がまたかかります。それで京都あたりになると、京都の府立体育館を府のほうで一回百円で体育の場として提供している。これは逆にリハビリのごとく使わしてもらうという形でするにしても、やはりお金がかかります。  ですから、生活面からも、あるいは諸費用の面からも、それから職場の実態からも、この労災問題について早く決着をつけて、早く認めてもらわないことには、自分の身分問題にもかかってくるという段階にいよいよきている。もう待てぬというところへきているのが、今日のこの申請を出された方々の現状の直面している事態だと思う。ひとつ御理解をいただきたいと私は思うのですが、局長さん、これはいろいろ御検討いただいていると思うのですが、もう結論を出してもらえる段階にきているのでしょうか、まず最初お聞きしたい。
  222. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 私ども頸肩腕症候群、腰痛等につきましてはそれが業務上であるものにつきましてはでき得る限り迅速に、かつ適正な補償をするようにつとめておるところでございます。頸肩腕症候群の場合について申しますと、これは主として手指を使う作業に多いわけでございますが、それ以外のものにつきましても近ごろ出てまいる例がございます。  手指作業による頸肩腕症候群につきましては、先生も御承知のとおり、四十四年に認定基準を設けまして、それによってそれぞれ迅速な認定を行なっておるわけでございますが、手指作業以外の作業による頸肩腕症候群というのは、従来非常に例も少なかったので認定基準もまだできておりませんで、これはケース・バイ・ケースで認定をいたしておるところでございます。社会福祉施設関係で申しますと、従来身体障害児の収容施設等につきましては、相当年齢の高いからだの大きい障害児などをかかえたりなにかするということから、腰痛、頸肩腕症候群というものがかなり出ている例等も見受けられておったのでございますが、先生お話の一般の保育園の例というのは、従来私どもほとんど聞いておりません。初めて京都で、しかも十数名一度に出たということで、いままでにない新しい例であるわけでございます。  そこで京都のほうでも、全国に初めての例だということで本省のほうに禀伺をしてまいっておりまして、私どものほうで専門家の御意見をいま伺っておるところでございますが、先生御指摘のとおりわれわれといたしましては、これは業務上外の認定というものはできるだけ早くする、こういうたてまえでございます。一般に言いますと、請求が出ましてから決定をいたしますまで平均しますと二十二日ちょっとということで、全体にはわれわれそうおそいと思っておりませんけれども、ただ職業性疾病等で非常に認定のむずかしいものは、やはりそれぞれの専門医等の御意見を聞きますために、ある程度の時間を要する場合があるわけでございますが、この例につきましてもできるだけすみやかに専門医の御意見を出してもらいまして、専門家の医学的な御意見を尊重しながら、できるだけ早くいずれかの判定をするようにいたしたい、かように考えております。
  223. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 いまお話を聞いていますと、従来こういう職場には起こるということについては聞いておらないというふうにおっしゃいました。さて、そうすると、労働省の皆さんは、こういう職場に起こらないということで全然研究していなかったということになりそうですがね。私はそれではあまりにもお粗末じゃないかと思うのですよ 従来からやはり問題になっているのです。  それで、ここに資料があります。この間いただいてきたのです。ことしの二月に東大阪市の保育作業者の健康診断成績報告書というのを出しているのです。これは公立保育所の保母さんの実態なんです。民間よりは条件はいいわけなんですね。東大阪市で、その公立保育所の保母さんの実態調査をやったところ、たとえば頻発症状として、肩がこるとか肩が痛いとか腕がだるいとか、そういうような状況がどういう数字になっているかというと、東大阪市の保母さん二百十一人を調べたら、五六・九%出ておる。半分以上、六割近くの人がそうなんです。それで、手指によるところの例のキーパンチャーの場合には基準を出した。従来そちらのほうが多かった、先ほどのお話ではね。ではそちらのほうはどうだったかと調べてみたら、四二・三%。これは健康診断の実態調査なんです、これは東大阪市だけではなくして、関西の二、三カ所のところでやられた実態を見ても、また私の住んでいる京都市の保育所の保母さんの実態を見ても、似たような数字が出ておる。職場の実態というのは、それはキーパンチャーの置かれている状態も重大だ。しかし、これ以上の事態が生まれてきている。手指中心で頸肩腕障害とかあるいは腰痛とか、あらわれ方の部分の表現でいろいろ言い方は出てきますけれども、そういう事態というのは、新たな分野としてこういう問題が生まれているんだという認識を私は労働省ははっきり持ってもらわなければいかぬのじゃないかと思うが、そういう認識に立ちますか。一言でいいです。
  224. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 肩や腕あるいは手等の痛みその他、いわゆる頸肩腕症候群ないしはそれに類似した事例というのは、いろいろな事由で発生いたしますわけで、その地方の風土だとかあるいは個人的な年齢だとかによってもいろいろ違うわけでございますが、従来は、業務に基づく頸肩腕症候群というのは、主として手指を使う作業に出るんだということが三十年後半ごろからいわれまして、これが大きく問題になりまして、産業医学会でもそういう点で問題になって、実際にも業務上の疾病という請求が出るのも、非常に手指を使う作業に多かったわけでございます。そこで、社会でも大きな問題になっておりまして、われわれでもいろいろ検討いたしまして、四十四年にはそのための認定基準を専門家につくっていただいて、それによって認定をいたしておるわけでございますが、先ほど私も申しましたように、最近では、手指を使う以外にも頸肩腕症候群というのがあちらこちらに出る事例が出ておりますことは、私ども承知をいたしております。そこで、私どもことしの三月、いわゆる頸肩腕症候群の業務上外の認定基準の検討についての専門家会議、長ったらしい名前でございますが、専門家会議を設けまして、手指作業だけに限らず、広く頸肩腕症候群の業務上外の認定の問題について御検討を現在お願いいたしておるところでございまして、そういう問題が手指作業以外にも最近あらわれつつあるという事態については、認識をいたしております。
  225. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 それで、おたくのほうの補助金を出して委託研究をされたようですが、日本産業衛生学会というのですか、頸肩腕症候群委員会報告書というのが出ていますね。これは四十七年度の結果に基づいて出ています。それを読むと、「業務による障害を対象とする。すなわち、上肢位に保持、又は反復使用する作業により神経、筋の疲労を生ずる結果おこる機能的あるいは器質的障害である。」という、頸肩腕障害というものは、手指の面ではなくして、こういうふうにあらわれるのだということの定義づけを障害問題としてやってきているわけです。これはほんとうにこの分野におけるところの――名前を見ると、この研究班には労働省のお役人の専門家の人も入っておられるようですね。そしてこういう一定の結論をお出しになっている。そうすると、いま基準局長も言われたように、事態は手指を中心とする見方だけでは、現状の頸肩腕関係の問題においてはだめだということで、研究も始めているのだ。ですから、出先の監督署においては、手指に基づくところの認定については基準があるから、それを参考にしながらも、今日ではそれ以上の形の問題も現に起こっているし、その分野からの意見書も出てきて、検討にも入っているので、したがって、そういう分野について、これは基準がないからといって、頸肩腕に入らないとか腰痛に入らないとかいうふうに単純にするわけにいかぬ、こういうことが言える段階にきているわけですね。そういう立場に立ちなさいという指導はしなければならない段階にきている、そういうふうに認められますね。
  226. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 私ども従来からも、手指作業につきましては基準をつくっております。しかし、手指作業以外についてはもう認めないというような姿勢はとっておりませんので、それ以外の問題につきましても、業務に起因することが考えられるものにつきましては、十分これは真剣に検討して、業務に起因することが明らかな疾病に該当するかどうかを判断すべきものだ、ただし、基準がないものはそれぞれ専門家の意見を聞いて、ケース・バイ・ケースで処理する、こういう方針をとっておるわけでございます。
  227. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 だから、私はそこで聞くのだ。ケース・バイ・ケースだったら、出先でもっとやらしたらいいのだ。出先では、基準がありません、これの基準は手指のやつしかありませんのでということで、そちらへ引きずり込まれてしまうのだ。だから、もたもたして、半年たってしまう。大体あなたのところで六月の何ぼに受け付けたやつでも、あなたのところに出てきたのは十一月の末になってから出てくるのだ。もたつくのだよ、基準がないというやつは。それでおたくのほうも、それではいけないと、いま基準をつくるのに一生懸命なんだと思うのだ。私はそういう態度はいいと思う。だから、ケース・バイ・ケースで積極的にやりなさい。これはあれに載っていないからといってやったらあかんのだ、それぞれのところでその実態をすぐ調べて、ケース・バイ・ケースですぐに結論を出していくようにしなさい、もたつかさしてはだめだという指導をはっきりしてもらわなければいけないと思う。あなた自身、これはどうです。京都の例のやつをできるだけ早くと言っておられたけれども、これはいつまでごろには解決するという状況下において、いまやっているのですか。これは具体的に聞きますよ。どうです。
  228. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 ケース・バイ・ケースという場合におきましても、それぞれの疾病の種類あるいは病状等々によりまして、それぞれの地方の専門家で簡単に認定できる場合もございますが、中には非常にむずかしい問題で、なかなか簡単には認定ができないというような場合には、やはり保険というものの全国的な制度であるということからいたしまして、従来から本省に疑わしいものは禀伺をして、それによって処理するということをやっておりますので、これも、先ほど申しましたような意味で本省に禀伺が上がってきて、本省でいま至急専門家の方の御意見も聞きながら検討いたしておるところでございます。
  229. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 いつまでですか。いつごろまでにやると言っているの。
  230. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 いま専門家に御検討をお願いしておりますので、ちょっといま直ちにいつまでということをこの場で申し上げる用意はございませんけれども、専門家の方にも検討を急いでいただきましてできるだけ早く結論を出したいと思います。
  231. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 ただ急いで急いでではだめなんだよ。もう半年たってきているのだから、もうそれが重大な事態に来ているというのだから、ケース・バイ・ケースだとか、いや全国的に集めているとかとなると――少なくとも年内に結論づけるように専門家に見さすのだったら見させると言うたらいいと思う。第一、私はちょっと聞きたいのだけれども、専門家というのはどんなのを専門家といっているのですか。
  232. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 専門家の方々といたしましては、労働衛生サービスセンター所長の久保田重孝博士、慶応義塾大学医学部整形外科学教授の池田亀夫先生、日本医科大学の整形外科学助教授の石田肇先生、関東労災病院脳神経外科部長の大野恒男先生等々、全部申し上げるのは省略いたしますが、約九名の専門家の方に伺っておるわけです。
  233. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 たとえば、ここへ診断書を出してこられた人の一人に三宅先生というのがおられる。三宅先生というのは、この頸肩腕についての論文を書いておられる。臨床例も一ぱい持っておられる。またこの分野でいままでも認定させた患者をたくさん見てきているし、認定もさせておられる。しかも、いま産業医学会がおたくのほうに報告を出されたあの報告の執筆者の一人でもあるわけです。これだけ条件がそろっている専門家がおって、その人が出して半年もたっておるのに、いまだに、何か知らないけれども、結論出せぬというのは一体どういうことなんだろう。もともとめんどうを見てきたお医者さんを基本にして診断というのはしていくのだという、医師選定の問題については明確なんでしょう。お医者さんは、見ているお医者さんを大切にするのだというのが基本だ。そこへ持ってきて、しかも出してきている人はその分野で専門的にやってきた人だ。たくさんの認定者も明確にさせてきた人だ、論文も書いてきた人だ。これだけ条件がそろっていながら、しかも延びていくということになったら、これはケース・バイ・ケースだと言ったって、特殊に何かがない限り、その人の出しているこの種類のものは全部ケース・バイ・ケースでなくなってしまうじゃないですか。だから、この分野においてこういう事態が発生してきている。しかも、その分野をもっぱらやってきている人の意見がついて出てきた。特段のことがない限り認める。常識的に見てそうじゃないですか。その立場に立ったら、私は年内に解決できないということにはならないと思う。局長さん、どうでしょう。
  234. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 もちろん医学的判断をする場合に主治医の、従来の診察をされました御意見というのは尊重をして判断をされることは当然のことでございます。しかし従来あまり例がなかったような事例につきましては、やはり今後起きてまいりますいろいろな問題の先例にもなるわけでございまして、今後出てまいりますものと区々にあまりわたらないように、新しい問題、しかも判断がなかなかむずかしい、容易でない問題につきましては、専門家の一人だけではなしに何人かの専門家のグループの方の共同の御研究、御判断をいただいて、それによって処理することが適正な補償をするゆえんである、かように考えまして、従来も新しい事例につきましては、同様の専門家の方に御検討を願って判断をする、こういうことをやっておりますわけでございます。
  235. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 そうしたら、あなたの意見だったら、いつその専門家を集めてあるの、今度。これははっきり聞かしてもらおう。主治医でしかも専門家が出した意見書に対して検討するというんだったら、年内検討できるのかどうか。ことばではできるだけ早くと言うけれども、集めたらへんかったら、できへんがな。いつ集めてある、その日には結論出せるように審議にかけます、こう言うてくれなんだらわかるかいな。
  236. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 十二月の三日にこの方々にお集まりいただきました際に、京都の問題をおはかりをいたしておるわけでございます。
  237. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 そこで結論出なかった。そうしたら、めどはどうです。これは延々と、いろいろな分野におられる人たち会議に集めるというのは困難やということになってしまって、結局、かけます、かけますといって、あの人たちが悪いみたいに言っておったって始まらぬわけや。特段の批判が――この一人一人に対してケース・バイ・ケースだからね。一人一人についてやるんだから。一斉に結論を出すというのと違うんだから。そうでしょう。そうしたら――基準をつくろうというのだったら一斉の話だ。しかし、いまは基準の話ではなくしてケース・バイ・ケースの話をやっておるんだよ。そうしたらケース・バイ・ケースだったら、この人はええ、この人は悪い、その根拠はこうだ、一つ一つ結論を出していかなければいかぬでしょう。一斉に出ないということは、この職場全体がはたしてそういうのに値するかどうか、こういう検討をやるんだったら、これは基準を出す時期まであかんというのにひとしいじゃないか。ケース・バイ・ケースにならぬやろう。だからそういうことじゃいかぬので、ともかく受け付けてもう半年にもなってきた。特段にこの人たちに、これは主治医の意見にこういう重大な欠陥があるということがない限り認めてやる。今度の審議会、今度いつ呼んでいるのか知らぬが、いつ呼んでいるというのを言ってくれよ。そのときにそういう態度をとってくれよ。特段に残る人は別だ。それは異論が起こる場合もあるからそれは別だけれども、そうでない限り、一斉にとまってしまうということはないはずだよ。私はこれははっきり、いつ呼んだときにそういうふうにやりますと言ってくれなかったら、半年もたっておって、全体の基準がないからみたいな取り扱いをされたら、たまったものじゃない、事態というのは。あなた、ちょいちょいこのごろぴちっといいのを出してくれているのだけれども、これはほんまにどうしてくれるんや。はっきりしておいてくれ、そこ。
  238. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 専門家の会議にかけましても皆さんの間に御意見がまとまらない場合には、それぞれの専門家がお持ち帰りになりましてそれぞれ御検討されます。ある程度御検討がそれぞれ済みましたところで、皆さんの御都合を聞きましてまたお集まりをいただくわけでございまして、現在次回をいつということをまだきめておりませんので、せっかくのお話でございますが、いつまでにということは申し上げられませんが、できるだけ急いでいただくように専門家の方にお願いしたいと存じます。
  239. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 大臣、さっきは、この法律では迅速にせいとなっているんだよ。あたりまえのことや。私が言ったように、もう一年以上になっている。病気になってからずっとなってくると、もう職場を追われるかどうかというところへきているわけや。迷惑をかけてきているわけや。そうなってくると、迅速にという問題はきわめて重要な意味を持ってくるんだ。次の日いつ集まるかわからないようなことで、迅速になっていますというような言い方になりますか。おれはちょっと腹立っておるさかい、そう言うんだぜ。それは局長さんの気持ちはわかる。もう専門家のやつがうるそうてという要素があるんだろうと私は思うけれども、しかしそれよりも本人たちの問題だよ。本人たちに対して、迅速にといって私どもは法律で与えられているので、今晩徹夜してでもこの年内お集まりをいただいて結論を出します、お願いします、それで、どこに問題があるかということをはっきりしない人は全部認めていただきたい。私は労働省のほうがそういう姿勢でなければ、意見が出た、そうですが、じゃ、いきまへんかったですか、またよろしく来年なんてばかな。いけません、あなた、そんなこと。もっとそういうのは真剣に考えてもらいたいと思いますね、一人一人の人権を考えて。一人一人の人が職場でそういう事態に置かれておって――局長さん、年内にはっきりと招集をして、迅速というのはそういうものなんだということで腹をくくって解決やってくれますか。私は、迅速にという問題に対する責任を負ってほしい。これまた法律に対しても責務だと思う。そのことが一つ。  もう一つは、さっきお話のように、従来聞いてなかった、しかしこれが出てきた。事実だ。大阪の例を私が言った。そしたら、職場環境調査を去年やられたね。あの職場環境調査をやられて、京都の場合でも職場環境を改善する勧告が出てます。おたくらも努力していることを否定するのじゃない。何をやるか。ちゃんと休憩時間をとらせなさい。あなたのほうの資料を見たって半分以上の職場が休憩時間をとれない状態にある、これはとらせなさい、こう言うけれども、赤ちゃんと一緒に御飯を食べなければならないのだから、勧告が出たって実際にはできない実態にあるわけですよ。食事は、あれは休憩時間でしょう。ところがみんなと一緒に食べておったら休憩時間に入らぬわね。ちょっとも解決せえへんわけや。これはそっちの方面だけではなくして健康の側からも、多発してきているという実態から見て、さっきも私が言ったように、健康の側からも労働省として調査をする必要があるのじゃないか。基準を出すためにいま専門家に研究させてます、こうおっしゃっる、それはいいことだ。だけれども労働省自身がそのことをやっていくために、民間保育所あるいは公立でもいいです、保育所に対する健診をやってみて、そしてはっきりとこの職場はこういう状況でなるということを労働省自身が専門家会議にもかけられる材料はやはりきちっとつくるということと、同時に、予防が大事なんだから、したがって職場の予防基準を、これはキーパンチャーの場合ちゃんとしてあるように、予防基準をばんとつくらなかったらいけないとぼくは思う。そのためにもまず最初に健康診断調査をやるという事態、第二番目にこの問題についてどう考えておられるのか。職場基準をつくるのだという立場に立つのかどうか、これを第二番目に聞きたい。
  240. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 まず第一点の点につきましては、できるだけ早く専門家に御結論を出していただくように一そうの努力をしたいと存じます。  それから健康診断の問題につきましては、これは先生も御承知のように、安全衛生法で雇い入れ時及びその後定期の健康診断の実施義務等があるわけでございますが、これまでの監督の状況等によりますと必ずしも十分守られていない。そこで私どもはできる限り適正に、その健康診断の的確な実施をするように今後指導してまいりたいと存じますが、特にそのための調査をするかどうかにつきましては、先ほどから申し上げております、検討をお願いしておる専門家の方々労働衛生の専門家の方でございますので、それらの方の御意見も聞きまして、将来基準をつくるために特別の調査をする必要があるかどうか、あるいはもしするとすればどういう点に主眼を置いた調査をするか等々の御意見を聞いて、それに従いまして専門家の方が御結論を出すのに必要な処置は十分に講じてまいりたい、かように考えるわけでございます。  それから予防につきましては、先生もおっしゃいましたように、必ずしも休憩等が的確に守られていないといったようなこともございます。職場環境といたしましては、先生もおっしゃいましたように、いつも保育児と一緒にいるようなことでございますと十分の休憩もとれませんので、できる限り保母さんの休養室と申しますか休憩室と申しますか、別にそういう施設をもし設けることができれば非常に休養になるのではないか、こういうことで、そういう職場環境の整備についても私ども指導をいたしておるところでございます。
  241. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 また、できるだけという話だ。それではだめだという問題について、とにかくできるだけ早くするために年内にどういう立場に立ちますということについて、こういうふうにしてやらせますということを、後ほどそれでは、こういうふうにしてやらせますということを私に報告してください、これが一つ。  それから二番目に、ILOの百二十一号勧告ですか、これでは挙証責任を本人じゃなくして職場のほうが、企業のほうが挙証責任、この人が出したことに対して反論がない限り全部受け入れるという立場をILOの百二十一号はとっている。私はその問題を検討してもらいたい。精神としては、少なくとも直ちにその立場に立ってこの問題について解決する、これが第二点。  それから第三番目に、一般健康診断を私は提起しているのではない。この分野で頸肩腕障害という、従来手指に基づくところの問題を問題にしていたから、それではないという分野が広がっている。その立場に立った健康診断、頸肩腕障害というこの問題に立って、明らかにいままではそういう調査を一回もやったことがないので、その立場に立った健康調査をやるという問題について、専門家の意見を聞くのはよろしい、意見を聞きながらそのことを検討してみるかどうか。必ずそういうふうなことは検討してみなければならない事態のように私は思うので、それについてどう思うんだということ。
  242. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 第一点のできるだけ早く専門家の御判断を仰ぐ点につきましては、専門家の方にいまお願いをしておりますので、先生は年内というお話でございましたが、それができるかどうかお願いをいたしております専門家にもお聞きしてみて、あとで先生のほうにその結果を御連絡申し上げるようにしたいと思います。  それから第二点の挙証責任の転換の問題でございますが、現在の労働基準法、それからそれによります労災補償保険法は、業務に起因する負傷または疾病について補償することにいたしておりますので、その補償を受ける労働者がその事由を述べて請求をすることにいたしておりますけれども労働者の立証能力というもののために適正な補償が受けられないというようなことがないように、私ども労働者業務上だということで申請をいたしてまいりました場合には、本人の記載不十分な点につきましては、必要に応じ基準監督署で調査をいたしまして、それによって適正な判断をするようにいたしておるわけでございまして、それによって労働者の保護に欠けることがないと考えておるわけでございます。  それから健康診断についての調査の件でございますが、一般の健康診断のほかに、こういう頸肩腕症候群のための特殊な健康診断について調査をしてはどうかという御意見でございます。これにつきましては、先ほども申しましたように、現在検討をお願いしております専門家の御意見を聞いて十分に研究してみたいと存じます。
  243. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 民間保育所にこういうふうに頸肩腕障害というような新たな段階の問題が全面的に出てきていますね。それでしかもいま労働省の人自身が認められたように、休憩時間の問題に見られるように、大半が労働基準法が守られない事態が生まれてきている。この問題について改善をするという具体的な内容の検討がされていますか。どういう点が検討されているのか。
  244. 翁政府委員(翁久次郎)

    ○翁政府委員 ただいま御指摘になりました民間保育所、これは御承知と思いますが、大体日本の保育所の中で約四割、一万六千カ所のうちの約六千カ所が民間の保育所でございます。それで厚生省といたしましては、この保育所につきまして最低基準というものを設けております。これは中央児童福祉審議会答申を経まして、たとえば六十人の児童を収容する施設でございますと、そこに三歳児未満の子供さんについては何人に一人、たとえば六人に一人の保母、それから三歳児については二十人に一人の保母、四歳児以上については三十人に一人の保母というような最低基準を設け、さらにそれ以外に毎日かかりますところのいわば庁費と申しますか、そういったものを全部ひっくるめて措置費という形で支給しているわけでございます。それでいま御指摘になりました保母さんの勤務の条件、これは少しでも改善をはかってまいりたいということで、四十八年度におきましては、六十人の小規模の保育所につきましては一日五時間の非常勤保母が雇えるような計算のもとで措置費の上積みをしておる、これがワクとしていっているわけでございます。なお、今後ともそういった非常勤保母の拡大、あるいはこれからやはり保母さんが休日がとれるようにしていかなければならないということで、来年度予算の概算要求におきましても、休日がとれるだけの非常勤保母の増員という形で現在要求しておる次第でございます。
  245. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 私、さっきの報告の中に一つ出しておるのは、倒れた場合に交代要員の予算を自治体が組んでいるという話を私やっているでしょう。あなた、気にならなかったですか。自治体がそうやってでも一つは保障せんならぬという立場に立っておるのですよ。まずこれは厚生省検討しなさいよ、現実がそうされているのだから。その次に、こういう病気にかかっている人たちの実態を見てみなさい。いまごろ朝七時三十分には何ぼおそうても開かなかったら、子供を預けられない。何ぼ早いのでも六時までやらなんだらあかぬわけだ。そうすると、一人でべったりここまでやったら休憩はほとんどとれないという事態の中で、まいってしまうのは当然なんです。そうすると、定数問題において、もともとの考え方の面において抜本的に検討し直さなかったら、休みをとらし得る条件にないのだ。私ははっきり言っておきますよ。もう一度検討し直していただいて、いま発生している事態を防ぐためには、ことしはこれをやります、その次の年にはここまでやります、自治体がやっている問題を自治体まかせにせぬと厚生省検討するということで、私はさしあたって労働基準法の休憩を与えられない、勧告を受けていながらその勧告が解決できない事態にあるという職場がどれだけあるのか、すぐ調査をしていただいて、それを解決するためにはこうしなければならぬということかわかりました――私はもう一度社会労働委員会厚生省に聞きますから、それまでにちゃんと準備をしてください。私はきょうはもう時間がないから、それだけをあなたに要求しますが、どうです。
  246. 翁政府委員(翁久次郎)

    ○翁政府委員 御趣旨はよく承りました。
  247. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 私は最後に大臣に聞きます。  この問題についてはもう時間もあれですからやめますが、さっきの質問の中で気になったのが一つあったので――頭を下げて下を向いておるけれども、ちょっともう一回念を押しておきたいことがある。  年末、公務員の皆さんも〇・三というものを、繰り上げ支給だというけれども、要するに年内にもらえるということ、それが今日の事態の中において、理由はどうあろうと必要なことになったわけでしょう。生保の皆さんも失対の皆さんも、要求は一ぱいあります。あるけれども、せめて失対三日分の仕事が出てお金がもらえるそうだ、これは全部新聞に載りました。全国の人は期待をしておる。ほんとうに三日分、従来いただいているものと別個に三日分金がもらえるのだな、これが期待だと思う。その期待に沿うようにするのですな。それだけを大臣に聞いておきたい。もうそれ以上言いません。
  248. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 私も地方を持っておりますが、前段の保育園にこういう頸肩腕症候群が出たということ、私の地方にも保育所はたくさんありますが、これは私自身の問題として考えてみなければいかぬ、こう思っております。  それから、あとは、局長答弁にあったように御理解いただいて御了承願います。
  249. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 どういうこと、ちょっと言うてください。
  250. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 局長が誠意をもって一生懸命推進していることを御理解いただきたいと思います。
  251. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 いやいや、私の言うておること、さっき聞きたかったところだけでいいのだ。要するに三日分の賃金について……。
  252. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 三日分の問題については、従来はそういうものを出してもおりませんけれども、今度、三日間お働きいただきながらぜひこれをひとつ手取りしていただきたいということで予算措置したものを実現していただきたい、これが私のお願いです。
  253. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 ぼくはこまかく詰めて言っているわけじゃなくして、全国の皆さんが、従来よりも三日分余分にもらえるのだなと――こまかいことは別ですよ。もらえるのだな、その期待にこたえるようにするのですね。それだけ。ノーかイエスかだけでいいです。
  254. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 お働きいただきながら、私たちのほうが予算措置したものをお使いいただくようにしてもらいたい、こういうことです。
  255. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 違う。ぼくの聞いているのはそうじゃない。さっきも質問が出たから、何かはっきりしないから聞いているの。新聞に載ったんだよ。そうするとまるまる三日分、従来のお金――一人一人の人はちゃんと年末の予算のつもりがあるでしょう。だからまるまる三日分について従来とは別にお金をくださるので、それを計算に入れて年越しの家計を立ててよろしいなと、家計の話を言っているの。家計の面でまるまる三日分家計を多く計算さしていただいてよろしいな。そのようにしますと言うてもらったら、私はそれでいいの。家計の話をしているの。そんなそっちの話と違うの。家計の話をしているの。
  256. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 家計がどういうふうにやりくりされるか私どもは存じませんけれども、従来一カ月間に二十二日働いていただいたのを、特に十二月は三日ふやして二十五日働いていただく。結果的に三日働いていただいた分だけ増収になります。
  257. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 何回も同じことを言うな。家計の話をしているのだから、そっちの技術の話をしているのじゃないので、だからこれは大臣気持ちを聞きたいの。三日分をお金を出してくれるそうだ、新聞に載った。みんなは、それだけくれるのだな、三日分余分の金として計算して、もらうようにさしてもらって家計を立ててよろしいな。よろしいと言うてやってくれたらそれでいいのよ。
  258. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 あなたの話す気持ちもわかりますが、金は私のほうで三日分、苦労して出したのですから、それをぜひお使いくださるように、そしてそれで、ある場合によその県も市も出すことがあるでしょうから、そういうことでひとついいお正月をしてもらいたい、こういうことです。
  259. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 もうあまり繰り返しをやらさぬように、私の気持ちがわかるのだったら、私の気持ちを十分わかりましたと言うてくれ。それでいいわ。
  260. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 おっしゃる気持ちはわかりました。
  261. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 私の気持ちだけじゃあかんがな。その気持ちはわかりました、そのとおりやりますと言うてくれ。これはほんとうに一人一人にとっては重大な計算方式になる。だから大臣、もうそこらで……。
  262. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 だから私の申し上げたことは、とにかく金は用意しましたから、それをぜひお使いください、こういうことです。
  263. 寺前委員(寺前巖)

    ○寺前委員 違うがな。あなた、やはりはっきり言うてやることは言うてやらなんだら、それは責任を負えぬことになる。期待しているんだ、真剣なんだよ本当に。その真剣にこたえるように、私の提起している気持ちがわかれば、その気持ちに基づいて善処しますでけっこうです。どうです、大臣
  264. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 先ほどから何へんも――苦労して私がつくった金でございますから、あなたの言う気持ちもわかりますし、私の気持ちも御理解いただきたい、こう思います。
  265. 斉藤(滋)委員長代理(斉藤滋与史)

    ○斉藤(滋)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後四時二十分休憩      ――――◇―――――    午後五時五十五分開議
  266. 野原委員長(野原正勝)

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前に引き続き質疑を続けます。坂口力君。
  267. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 最近の物価高あるいはまた石油問題を中心にしまして、来年の経済成長率の見込みの問題がいまいろいろと言われております。きょう午前中にもこの問題が確かに出ました。けさからの議論を聞いておりますと、まだはっきり固まっていないという御回答でございましたけれども、しかし、現在の情勢から推して、労働省としての四十九年度の成長率の見込み、それからそれに対する失業者がどれくらいなものになるかというあらあらの見当というものはつけておみえになると思うのでございます。その点につきましてまず再度お聞きをしたいと思います。
  268. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 午前中からも御答弁申し上げましたけれども、なにさま石油のカットというものが非常に流動的なものですから、政府としてもどの程度までの問題かというところは、つかみかけていないところに、非常に遺憾なことでございます。それにしましても、そういう中にいますぐ直ちに雇用関係に突然の変化はないことを期待しながらも、下期ぐらいからいろいろな問題が出てくるのではなかろうかということも予想しながら、だんだんのいままで持っております機能、法律、そういうものをどこへででも発動するつもりで、全庁員研究し、対応策を練っているということを御理解いただきたいと思います。
  269. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 私どもも、できる限りこの問題がスムーズに進みまして問題が少ないことを願っているわけでございますけれども、しかし現在の情勢では、たとえば石油の問題を取り上げましても、一〇%ぐらいのカットはあるいは続くかもしれないという予測でございます。もしもこの一〇%のカットが続くということを仮定いたしましたら、やはり経済にかなりな影響が及ぶことは当然でございます。労働省のほうも、もしもかりに一〇%のカットがありとこう仮定したならばこういうことになるという目安は立てておみえになると思います。その辺につきましてお聞きをしたい。
  270. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 とにかくカット率が流動的であるということからいたしまして、直ちにその数字に見合っていろいろな計画が立っているわけではございません。私たちが心配しますことは、このたびのそういう国際事情変化によるところの国内の雇用に及ぼす影響というものは、まさに従来のドル・ショックとかあるいは三十六年の不況というふうなとき以上のものにならないことを願いながら対応しておるという形でございまして、何とかしてこの際、国民的ないろいろな努力において切り抜けることこそが一番大事な問題じゃないかと思って、気持ちを緊張させながら対応しているわけであります。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  271. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 最近労働省から出ましたこの資料でございますが、これは日がいつかちょっと私のほうも調べておりませんけれども、石油危機による四十九年度の雇用・失業の見通しというものを立てておみえになりますが、これは新聞に出ておりますけれども、これを見せていただきますと、一〇%の石油供給削減が来年度じゅう続いて、実質経済成長率がもしマイナス五・五%になった場合、失業者の増加数は二十七万人で、失業者数増加率は四〇%にもなる。供給削減が来年前半までで解除されて、成長率が一・七%になる場合には、失業者の増加数は十六万人で増加率は二四%になる。こういうふうな一応の目安を立てられたということが出ておりますけれども、これはいかがでございますか。
  272. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 その数字は、私もときおり新聞で拝見しますけれども、いろいろな場合を想定した場合の数字だと思いまして、私のほうではそうしたことの試算で具体的な数字を数えたことはございません。なお、局長から詳細については御説明させたいと思います。
  273. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいまお読みになりました新聞の数字でございますが、これは経済学者、経済評論家、そういったところで、かりにこうなったらこうなるだろうというようなことを私どものほうにも御指摘のある向きもございます。あたかもそれが労働省で試算したかのようにいわれておりますけれども、私どもはただいま――きょうも経済企画庁、関係省庁と経済見通しの中で雇用がどうなるかということを詳細、事務レベルで詰めておる段階でございまして、まだ私どものほうで数字を確定する段階ではございません。先ほど大臣からお答えになりましたように、来年度いかなる事態になりましても雇用の変動に対して十分対応できるような対策、体制をとってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  274. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 予測でございますので、もちろんこまかな数字がぴたっと出るというわけではございませんけれども、やはりこれだけ社会の状態が緊迫をしてまいりまして、もうあとわずか一カ月もたたないうちに四十九年を迎えるわけでございます。その時期に及んで来年度のいわゆる日本の経済状態に対応する労働界の問題というのが煮詰まっていないというのは、いささかおそ過ぎるというふうに思いますが、その点をもう一度私は強く意見を求めたい。  それから、一応これに出ておりますのは、特に労働省の側から煮詰めて発表したものではないというふうに言われますけれども、しかし何にも火のないところには煙は立ちませんので、ある程度のことは労働省のほうもおっしゃったんだろう。そうでなければ、こういうようなものが形になるということはないはずでございます。この数字というものが多目に見ているかあるいは低目に見ているかは別にいたしまして、しかし一つの目安としての数字ではないかと思うわけであります。これに対して、まだ全然わからぬというだけでは話になりませんので、もしも一〇%カットをするとしたら、これはいまはっきりとした数字は出ていないにしても、やはり失業者がかなりふえるということは間違いのない事実でございます。それに対してどう対応するのか、こまかな数字は別にしても、どう対応するのか、それはできていてしかるべきだと思います。その点いかがでございますか。
  275. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 私ども全く検討いたしておりませんと申し上げておるわけでは決してございませんので、たとえば先般のドル・ショックの場合も大体七万くらいの失業者が出ております。これは私どもが当初いろいろな計画で予想したよりは下回った数字でございましたけれども、来年度はただいま先生がおっしゃいますように、年間を通して一〇%削減ということになりました場合に、一体どの程度のものが出るか、これはいろいろな計数がございますのでいま直ちに予測はできませんけれども、言いますれば鋭意詰めておる段階でございます。  ただ、その影響の出方でございますけれども、いつごろからどういう形で出るのか、大体あと数日中にそれに対する経済見通しがきまりまして、それをもとにして来年度の予算編成に具体的にかかるわけでございます。その中で来年度の対応策を打ち出してまいりますけれども、それによって一体影響の出方か――前半はいまの非常に緊迫しました、逼迫した雇用需要の情勢の中である程度収拾できるのか、後半で相当なものが出るのか、年間を通じてどういうことになるのか、そこらあたりはまだ詰めておる段階でございます。いずれにいたしましても、こういう情勢が続くということであればかなりの影響が出るということも予測されますので、そういった情勢に対応しまして、先ほど来申し上げておりますように、臨時工でございますとか出かせぎとか、あるいは新規求人の抑制とか、そういった形で出てまいりますもの、あるいは一時帰休、操短といったような形で出てまいりますもの、それぞれについての対応策をこれから予算編成の段階で早急に詰めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  276. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 インフレであるかどうかということについては、田中総理もなかなか微妙な発言をしておみえになりますけれども、現在のような経済状態の中で何と申しましても一番影響を受けるのは、やはり中小企業であることに変わりないと思うわけでございます。倒産は十月だけをとってみましても八百八十九件、十一月には千件をこえるであろう、こう予測をされております。その原因のほとんどの売り掛け金の回収難、あるいはまた金融機関や仕入れ先の支援の打ち切りといったようなものが目立っております。こういうふうな傾向が続いていますと、もう新年早々においてかなりな失業が出てくるということは必至だと思うわけです。それにもかかわらず、しかも来年の予算をもう四、五日の間に煮詰めなければならないという段階になっていて、はっきりしたこまかな数字が出ないからそれに対する対応策もまだ考えていないんだというのでは、これは実際の政治をあずかっておみえになる政府としては、あまりにも怠慢ではないか。これは大臣、私は一番悪いときのことを予測して考えるわけでございます。もしもこの一〇%カットというような非常にきびしい条件に置かれたという仮定のもとに、やはり失業者が出ることは当然でございますので、それに対してもう少し具体的にどのように対処していこうとなさるのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  277. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 中小企業問題などにつきましては、先日も本会議あるいは予算委員会等々で大蔵大臣などは、年未の金融の非常に増額というか、そういうものを主張しているところであります。私たちからしますと、いずれにしても雇用の安定、勤労者の福祉の向上ということが基本の問題でございますから、いますぐに出てはおりませんけれども、しかしおっしゃる不安が話としては出ている。ですから、労働省の出先の安定所、そういうところを総動員しながら、それが実際にどうなっているかということを毎日具体的な情報をとりつつ、一方、この予算においては、いまからの予算において、そういう場合のものにしっかりと対応しよう。そして、いままで御審議いただいて実行しております、従来適用した法律があることでもありますし、さらにはまた、近いうちに皆さんに御審議願う雇用制度の法律などもございますから、そういう手当ての中に勤労者の生活というものをこの際、大事な働く諸君ですから、そういう諸君を擁護する立場だけは、皆さん方の御協力、政府全体の力を動員してやっていこう、こう考えておるわけであります。
  278. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 石油の緊急対策の具体的な実施の際に、特に雇用問題について配慮する必要があると思うわけでございます。この雇用問題について、私は、労働大臣関係各省雇用問題を中心にして石油対策というものを立ててほしいということをやはり申し入れをしてもらうべきだと思う。この点、いままでそういうふうな申し出等がなされていれば、どういうふうな申し出を各省になされているか、その点ひとつお聞かせを願いたい。
  279. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 私は姿勢としますと、やはり勤労者の問題は一労働省の行政にあらず、しかもいまから先はなかなか苦しいことを予想されますから、内閣全体の問題として経済が安定するという、まず石油危機を突破するという、こういうところに一生懸命やってもらい、その中で私たち労働行政については、その条件が整えば整うほど雇用の安定というものは得られるのだということで実は国政の場において発言さしてもらっているわけでありまして、その線はいまから先もくずさないでがんばっていこう、こう思っております。
  280. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 石油だけが問題じゃございませんけれども、いま石油に限って申しますと、この石油の供給量がいわゆる失業というものを左右する、こう思うわけです。特に中小企業、中でも小企業ですね、これが石油あるいは石油関連物資をどうしても必要とするものがかなり多うございます。この小企業が石油をかなりきびしくカットされるということは、これはもう倒産、そしてそこに働く人は失業、これはそれに直接結びついてくるわけであります。特に私のほうの三重県あたりでも、焼きもので万古焼きというのをやっておりますが、これなんかでも前回のあのドル・ショックのときに借り入れました金を返さなければならない時期になっているわけです。一方でそれを返さなければならないし、仕事はあるんだけれども、石油がないためにその生産をカットしなければならない、返していけないというたいへんな時期に来ているわけであります。もしもそういうふうな業者に対して今後石油がきびしくカットされるということになれば、その業者はもうつぶれていく以外に道はないわけなんです。現在までのこの状態を見ておりますと、大きな企業、それからその系列下の会社に対してはかなり融通をされているようでありますけれども、それ以外のいわゆる小企業に対しては非常にきびしい形、中には五割カットというようなところまで出てきておるわけであります。こういう状態を見ますと、いわゆる小企業に対する今後の石油の状態というのは、その企業の来年度の運命を左右するわけでございます。そういう意味で、私は一人でも失業者を少なくするという意味からも、やはり小さな企業への石油あるいはその関連物資のスムーズな供給というものを、これは大臣としても強力に私は申し入れていただいてしかるべきだというふうに思うわけであります。その点についての御決意をお聞きしたい。
  281. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 通産大臣などとも私はそういうことでお会いするのであります。今度、石油が皆さんのおかげで法律が通った、そのあとでは地方、地方にあっせん所をつくる。そうしたときには、先生がおっしゃったような系列外の方々、そういうところをよく見てもらう。また、何か問題があったならば、それを直ちに通報でもしてもらって、苦しいときには話をする、あるいは書類を出すお手伝いをするというふうな親切な行政が必要じゃなかろうかということで、ずっと話を詰めております。そうしたことをいまから先も気のついた問題を推進してまいりたい、こう思っております。
  282. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 これはもう一度念を押しておきますけれども、一〇%カットの場合に、一〇%まではやむを得ないとしても、一部のそういう小さな企業だけが二割とか三割とかというようなカットがされることが絶対にないように、もしもそういうようなことが起こってまいりましたら、労働大臣としても徹底的にそれを取り上げていただいて、そして援助するということをここでもう一度確約をしていただきたいと思います。
  283. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 私は運輸大臣でもないのですけれども、やはりそういうふうな気持ちで、朝散歩しながらも、個人タクシーをつかまえながら、ここ数日間幾ら配給があるか。個人タクシーの諸君は、公園のそばに水がただで出ておるところがあれば、そこにずっと駐車して休んでいるのです。そういうところで私はずっと聞いて歩いたのです。そして、運輸大臣と一諸になった場合にはそれをずっと申し上げる。一人のからだが全部に及びはしませんけれども、そういう姿勢でやってまいりますから、ときどきの情報の変化あるいはそういう状況の変化などがありましたら、御指示いただきますれば自分の場面においてそれぞれに御連絡して御協力していきたい、こう思っております。
  284. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 庶民の味方、労働大臣に期待するところ大であります。  次に、失対法の第六条に「労働大臣は、地域別の失業情況を調査し、多数の失業者が発生し、又は発生するおそれがあると認める地域ごとに、その地域に必要な失業対策事業の計画を樹立しなければならない。」こういう項目がございます。現在の状態が「発生するおそれがあると認める」という項目に当たるか当たらないかはいま議論もあろうかと思いますけれども、しかしこういう情勢でございますので、もしも現在のような経済状態が続くといたしましたら、おそれありと私は考えなければならぬと思うわけです。この失対を中心とした考え方の場でどのようにお考えになるか、これもあわせて……。
  285. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいま坂口先生御指摘の緊急失業対策法は、実は一昨年この委員会で御可決いただきました中高年齢者等の雇用促進に関する特別措置法という法律が新たに制定されまして、その法律の内容に、こういったいま御指摘のような失業情勢に対応する対策が織り込まれております。現行の緊急失業対策法は、現在失業対策事業に就労しております約十三万人の失対就労者の人たち、この人たちだけに限って適用される二とになっております。したがいまして、今後発生する失業に対しては雇用対策法なり失業保険法なり、ただいま申し上げました中高年の雇用促進特別措置法が適用になります。この緊急失対法は適用されないことに相なっております。同時に、中高年の雇用促進特別措置法によりまして、そういった失業情勢の悪化するおそれのある地域、こういったものは特定地域ということに指定されまして、それによりまして中高年齢者の就職促進の特別措置が講ぜられることに相なっております。
  286. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 そういうふうな中で、もしも失業者が増加するということになったといたしますと、現在の失対者の問題をあらためてもう少し見直してみる必要があると思うわけでございます。  その問題に入っていきます前に、昭和四十八年度当初のいわゆる失対賃金、これをほかの公務員だとかあるいは公共企業体、民間主要企業あるいは生活保護基準というようなものと比較して見てみました場合に、けさからの指摘にもありましたとおり、あまりにもこれが低過ぎる。たとえば失対の賃金は御存じのように二十二日間で計算をしてありますが、一日につきましても百六十八円八十二銭というような数字になっております。――失礼しました。これは今度のアップの問題ですね。百六十八円八十二銭という数字になっております。そのもともとの一日の数字が非常に低いものですから、それの一カ月分といいましても、これは非常に低い数字になります。けさからのいろいろの議論を聞いておりますと、ことしも一九%近く上げたじゃないかというような議論がございましたけれども、しかしもともと一日わずか千五百円前後の額でございます。しかも月二十二日というような限られた日数でございます。同じほかの企業体と比べまして、パーセントでは同じように一八%なり一九%なりになっておりましても、もともとの数字が低いわけでございますから、これは上がる額は非常に少ないわけですね。二十二日と計算しまして、非常に少ないわけです。物価のほうは、これは労働者によりましても多少買うものの中の差はあるかもわかりませんけれども、しかし大体同じようなものを日常生活で買っていかなければならない。そうしますと、その面は大体同じように上がってくるということになりますと、同じパーセントで上げていったのでは、失対事業に従事しておみえになるような方の生活はだんだん苦しくなってくる、こういうアップの場合にそういう点の計算はどのようになすっているのか、お聞きをしたい。
  287. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 失対賃金につきましては、先生もう先刻御承知のとおりだと思いますが、これは労働大臣が類似の労働者の同じような作業内容の賃金を基準にいたしまして、賃金審議会の意見を聞いて定める、こういうことになっておりまして、実際問題としましては、毎年調査いたしております屋外労働者職種別賃金調査の結果をもとにいたしまして、その中でそれぞれ土工、重作業、軽作業、こういった類別がございますが、その類似の作業に従事している労働者の賃金に準拠いたしまして、賃金審議会で御決定をいただいて、それをもとにして翌年度の賃金をきめる、こういうことに相なっております。  したがいまして、先ほどから根っこが低いというお話でございますけれども、大体屋外で日雇いで働いておられる方々の賃金がもとになっておりますので、私ども毎勤の統計に出ております日雇い労働者の賃金あるいはそのアップ率、そういったものと比較いたしますと大体同様の傾向をたどっておるように考えております。決して不当に低いというような事実はないものと考えております。
  288. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 たとえば生活保護世帯と比べて、それではどうでございますか。
  289. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 これは、失対労働者の賃金はあくまで働いたものに対する対価としての賃金でございますので、直接的に生活保護の扶助基準と比較いたしますことはいかがかと思いますけれども、たとえば東京都におきます生活保護、これは四人世帯でございまして、これが大体六万五千円ということになっておりまして、それに対しまして失対賃金のほうは、これは世帯数が平均二人でございます。と申しますのは、平均年齢がもう六十歳をこしておりまして、世帯構成が低いわけでございますが、同じような形で比較いたしますと、大体四万四千六百円、四万五千円ということになりまして、生活保護に比較いたしましてもさほど遜色のない額になっておる、かように考えております。
  290. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 生活保護世帯の場合、これは級地によっても違いますし、人数によっても違いますが、  一級地で二人世帯の場合に四万四千二十円、四万四千円ばかりでございますね。ところが失対賃金の場合は、これも地域によっても多少違いますけれども、大体三万二、三千円から多くても三万五千円ぐらいでございますね。そうではございませんか。
  291. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 いま申し上げましたように、たとえば東京都の例をとりますと、生活保護が六万幾らになりますか、四人世帯でございますね。二人世帯にいたしますといまのような数字になりますが、失対賃金の場合は東京都で四万六千六百八十六円になります。これは二十二日就労に加えまして、四日ないし五日分の失業保険金がございます。そのほかに生活保護と非常に大きな差がございますのは、たとえば東京都の例でございますと、今年末、先ほど来お答え申し上げておりますように二三・五日分に三日就労増いたしております。そのほかに東京都と区と、これはほかの府県の場合は道府県と市町村でございます。そこらあたりで年末の臨時の賃金の措置をいたします。これが東京都の場合は約二十万円をちょっとこすようでございます。これは生活保護とのたいへんな差でございます。夏、冬こういった臨時の賃金が出されておりまして、こういったものを考えますと、生活保護とは相当な開きがある。私どもは賃金といたしまして、先ほど申し上げておりますような賃金決定の基準に基づいて決定された賃金が、決して不当に低いものであるとは考えておりませんし、それ相当に臨時の賃金その他の面におきましても十分な配慮を加えてまいっておるつもりでございます。
  292. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 私も生活保護と比べるというのは、ちょっと比較が悪いと思うのですが、同じような立場の、非常に弱い立場の方々でございますので、あえて比較をするわけでございますが、たとえば失対賃金の上昇率を見ますと、昭和四十年ごろからことしの四十八年にかけましてずっと見てみますと、それを生活保護の上昇率と比較してみると、やはり常に失対賃金の上昇率のほうが低いわけなんです。これ一つを見ましても、決してあなたがおっしゃるように高いものではないと思う。そのほかの同じような労働者のなにと比べましても、あなたは決して低くないとおっしゃるのですけれども、これはかなり低い数字が出ております。いずれにいたしましても、四万円もしもあったとしても、四万円ないし四万五千円で現在の東京都なら東京都ではたして生活ができていくのかどうか。この点を考えただけでも、現在のこの上昇率というものが全く低いと私はいわざるを得ない。もう一度ひとつこまかな数字がありましたら、どうぞお示しください。
  293. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 私、現在の失対賃金は必ずしも生活費として十分であるかどうかという点については、先生御趣旨のことはよく承知いたしております。私どもは、確かにこの数年間、失対賃金の上昇率と生活保護における扶助基準の上昇率は、失対のほうが低いではないかという御指摘でございますが、必ずしもそうでございませんで、失対の上昇率の高い年もございます。ただ先ほど申し上げましたように、失対の賃金は、類似の労働者の同じ作業内容の賃金に準拠して定められております。それに対しまして生活保護のほうは、いわゆる生計費とか物価とか、そういった各種の要素を勘案して定められることに相なっておりまして、いってみますると、比較的低い所得階層の人たちに対する生活水準を引き上げるという、そういういろいろな配慮から、むしろ失対賃金よりは高いアップ率で底上げをしてこられたというのが、最近の結果であるのじゃないかと私ども考えております。私どもは、生活保護が幾ら上がったから失対賃金を幾ら上げるということでなくて、あくまでもその作業内容、作業能率、そういったものに準拠いたしまして失対賃金の引き上げを行なってきておるわけでございまして、ことしの八月の、先ほど申し上げました屋外労働者職種別賃金調査の結果が、あと二、三日すると集計がまとまりまして、それをもとにして来年度の賃金を、予算編成に間に合わせるようにいたすわけでございますが、その際に極力努力をいたしまして、就労者の方々の御要望にこたえるような賃金水準の確保につとめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  294. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 さっき生活保護のほうが高い場合もあるとおっしゃいましたけれども、少なくとも昭和四十年以降は、生活保護のほうが全部高くなっておりまして、失対のほうが低い数字。それからこれは平均値ですから、地域によってかなりな差があろうかと思いますけれども、たとえば東京で軽作業をなさるような方、平均いたしますと一日三千円はこえております、もちろん男の方ですけれども。私の手元にあります数字を見ますと、三千百三十三円という数字が出ております。女の人でも千八百六十四円という数字があります。この軽作業、平均いたしますと二千四百九十九円という数字になります。これと比較しまして、失対の賃金が決して妥当な線であるとは思えないわけです。これは昭和四十七年の八月に調べられたものです。もしも二、三日あとに昨年度の結果が出て改正されるとしても、いま行なわれております失対の賃金が現在のほかのよく似た職種の人に比べて妥当な線であるというお考えを持っておみえになりますと、また新しい数字が出てまいりましても、同じような考え方でやられますと、やはり上がらないということになるわけです。だから私は、現在支払われているこの賃金というのは、他の同じような作業をしておみえになる方に比べてやはり低いという認識を持ってもらわないとお話にならぬと思うわけです。いかがでございますか。
  295. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 先ほど申し上げておりますように、失対就労者の職種、作業内容、作業能率、そういったものを、いま先生御指摘になりましたような類似の作業、同種の職種、作業の労働者の賃金と比較いたしまして、十分その内容は遜色ないような賃金水準というものを私ども確保してまいる考えでおります。賃金審議会におきましてその点は詳細に御審議いただいた上で決定をいたす手はずになっております。  失対就労者につきましては、先生御承知だと思いますけれども、もうすでに平均年齢が六十歳をこしておりまして、作業内容も非常に軽易な作業になっております。したがいまして、正真正銘類似の賃金をとりますと、もっと低い線が出てまいる場合がたくさんございます。しかしそうはまいりませんので、ある程度作業内容を充実したものに見込みまして賃金決定をするような取り計らいをやっておりますために、ある程度の維持ができるわけでございます。  実際問題といたしまして、こういうところで申し上げてよろしいかどうかわかりませんが、一日四、五時間しか働かない、そういう歩掛かりはあまり考慮いたしておりません。そういう関係で、私どもとしましては精一ぱい賃金水準の確保には努力をしてまいりましたし、来年度の賃金決定にあたりましても審議会にその事情をよく申し上げまして、十分な御審議をいただいた上で賃金の決定をするようにいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  296. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 たとえば中学校を卒業なさった方の初任給、これは現在でも約三万六千五百円という数字が出ておりますし、高校卒になりますと四万三千六百円という数字が出ております。先ほど保険のことをいわれましたけれども、保険は一応別でございますので、全国平均で失対賃金の場合には一日が千五百十五円、月二十二日として一カ月で三万三千三百円ですね。これは中学校卒業すぐの子でも三万六千五百円あるのですから、なるほどいまおっしゃるように、平均しますと年齢はかなり上のほうにいっていると思います。しかしながら、まだ五十代の若い方もかなりお見えになると思います。中には年とった人もありますけれども、あるいはいま御指摘のように、一日の働かれる時間数等にしましても、これはときには少ないこともあろうかと思うのです。しかし、いつもいつも四時間か五時間、そんなことはないと思いますよ。ときにはそういうことがあるかもわかりませんが、いつもそういうふうであると思ったら、私は大きな間違いだと思う。こういうような比較のもとに考えますと、何といったって一戸の家をかまえて、中にはお子さんもある方もあろうかと思います。労働省調べでも平均の世帯構成は二・三人ということになっておりますから、奥さんとお子さん一人ぐらいはある方もお見えになるかと思います。そう思いますと、やはりこの三万三千円余りの額という、たとえ先がたおっしゃった保険をまぜて四万円としましても、これは生活のできていける額ではない。この点をよく踏まえてもらって来年度を考えてもらわないと、ことしでもこれでほかに比べるといいんだという認識のもとに来年やっていただきますと、同じ結果を繰り返すことになると思うのです。  けさからもいろいろお話が出ておりますように、この年末等の問題につきましても、三日間就業日数をふやすという形で見るということが発表されておりますけれども、しかし島本先生の話もございましたが、三日間まるまるふえるという形ではございませんで、就業日数がそれだけふえるということになりますと、保険のほうがそれだけ減るという形で、そういたしますと、三日間ふえましても、金額にしますと千二百円ぐらいな増加になりますでしょうか、そんなものだと思いますね。たとえ三日間ふやされたところで、実際問題としては千円から千二百円くらいの増加ということになるだろうと思うのです。それではあまりにも現在の世相から見ましてお気の毒ではないか。たとえばサトイモ二個人ったのがいま九十八円なり百円しておるわけですね。そういうふうなものを買って生活をしていかなければならない人々に対して、千二百円ぐらいアップしたということだけで、あなた方の言っていることは、これでもうよろしい、これでしまいにしますというのは、まことに酷な冷たい政治ではないかと思うわけです。この点、けさから何回も出ておりますけれども、もう少し実のある労働大臣施策というものを私どもは希望するわけでございます。その点ひとつ大臣にお願いいたします。
  297. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 坂口さんの失対労働者に対するだんだんの御愛情、感銘いたしました。私も明年度の賃金等々については十二分にひとつ御協力申し上げたいと思っております。私たちも自分の周辺で失対労働者の実態は知っているわけであります。先ほども局長から話がありました年末の問題等々にしましても、今度は未組織の労務者からいわれますと、あるいはまた、いまや倒産されようとして不安がっている人たちから見ますと、年末のこういう手当なども一体どうだというふうに私のほうに実は反論のある向きもあるのでございまして、そういう中から、ひとつことしは十月に、失対制度が始まって以来でございますけれども、五%上がった。それが年末の賃金、手当にいささかプラスになった。こういうふうなことでございますから、明年度の賃金改定のときには、だんだん皆さんのお話の中をよく吟味しながら御協力申し上げたい、こう思っております。
  298. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 初めも申しましたとおり、五%確かに上がりましたけれども、その額はわずかな額ですね。五%上がったとおっしゃいますけれども、もとが少ないですから、私のこの計算が間違いなければ、全体で三千七百円、四千円弱の上がりだというふうに思います。それに加えて今度もしもこの三日間のなにが認められたとしましても、合計して四千円そこそこの上がりということになるわけですね。ですから、それでこの年を越せというのはあまりにも非情じゃないかということを私申し上げておるわけであります。その点をお含みの上でひとつ大臣は決断を願いたいと思うわけであります。  それから、時間がございませんので進みますが、これもけさからの議論にも出ておりましたけれども、この石油問題で週休二日制の問題が新しい角度から見直されてきております。来年度、週休二日制というものに対してどういうふうに取り組んでいかれるのか、石油危機という新しい角度を加えてひとつお話を伺いたいと思います。
  299. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 週休二日制は、これは労使の間で話し合っておやりいただいてだいぶ進捗しておりますが、こうした石油危機のときなどは、ひとつ、石油の節約にもなることでございますから、週休二日制を推進するいい機会じゃなかろうか、こういうふうに考えておるのでありまして、なお具体的な進捗状況については政府委員から答弁させたいと思います。
  300. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 先生も御承知のように、今年の二月に決定いたしました経済社会基本計画におきましても、この五年以内に週休二日制を一般化するということを目標にいたしておるわけでありまして、そういう観点に立って進めておるわけでございますが、特に最近の石油危機の問題につきましては、週休二日制を推進いたしますことは雇用の確保にもなりますし、また石油や電力等のエネルギーの節約にも相なるわけでございますので、そういう観点に立ちまして、一そうこれを具体的に推進をしてまいりたい、かように考えています。  進め方といたしましては、大企業につきましては逐次非常に進んでおりますし、特に最近はこの石油危機の中で自動車産業等、週休二日制をとりながら、従来は休日出勤の形で実際は仕事をしておったようなところにおきましても、完全週休二日制を実施しておるというような例も出ておるわけであります。問題は中小企業だと思うわけでございまして、中小企業は経営の実態からいたしましていろいろむずかしい問題があると存じますけれども、やはり中小企業の労働者一般社会の進展に取り残されるというようなことがあってはならないわけでございます。したがいまして、それぞれの企業なり業種なりの実態に応じまして、たとえば月一回あるいはそのぐらいから始めて逐次ふやしていくとか、あるいは地域的に集団でやる、あるいは直ちに週休二日制を恒久的な制度としてとることができないような場合には、このエネルギー危機の期間、臨時に試みに採用するよう勧奨するとか、そういった実情に応じたやり方によって推進をはかってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  301. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 話がちょっと前後して申しわけないのですが、私は、先ほど失対のほうの五%アップのときに三千七百円くらいな上がりと申しましたけれども、私ちょっと見方が間違っておりまして、五%アップですと千四百円ちょっとにしかならないわけですね。だから、さらにこの千二百円を加えましても二千六百円くらいにしかならないということになります。先ほど私ちょっと間違っておりました。  いまの週休二日制の問題でございますが、いまおっしゃいますとおり、大きい企業では今後そういう方向が進められていくだろうと思いますが、いま御指摘のように、問題は中小企業、特に小企業だと思うわけです。しかも、これだけの経済危機というものが参りましたときに、この中で週休二日制というものを強要するということは、小企業に対しては死ねというのと同じような状態になる。その点、特に今後小企業に対してどのような施策というものを持っていかれるのか、ひとつもう少しお聞かせをいただきたい。  あわせて、定年制の延長の問題でありますが、この六十歳までの延長の問題も含めてお聞かせいただきたい。特に中小企業、小企業に焦点を合わせて答えていただきたいと思います。
  302. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 中小企業、なかんずく小企業につきまして、おっしゃるようなむずかしい問題があることは事実でございまして、基本的には今日の経済情勢下におきまして、これらの企業に対して産業施策としてどうしていくかという問題と両々相またなければならないわけでございます。そういう意味におきまして、われわれ通産行政当局と連絡しますとともに、地方におきまして中小企業等に週休二日制、定年制等を進める場合には、労働者福祉対策連絡協議会というものを、基準局だけではなしに、県、特に県の労働部あるいは商工部ないし経済部、あるいは通産省の出先等々と横の連絡をとりながら、どういう業種あるいはどういう地域についてそういうことを進めるか、どういうやり方で進めるかということを、綿密な連絡をとりながら進めておるわけでございます。具体的には、たとえば地域によってこういう問題を進めようという動きがあります地域がございますれば、そういう集団に対して労務管理の改善の補助をするというようなことも、予算的に措置しておりますが、来年は一そうそういうものも拡充してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それからなお、もう一つお尋ねの定年延長の問題でございますけれども、これも労働者福祉の充実の見地からいたしまして、また高年齢者の雇用の安定、生活の安定、こういう見地からいたしましても、現在大部分で行なっております五十五歳定年というのが実情に合わない、かように私ども考えます。どこまで延ばしたらいいかという点についてはいろいろな御意見があろうと思いますけれども、現在大部分が五十五歳であるという実情、それから公的老齢年金の支給開始年齢、これらのことも考えまして、当面は六十歳を一応目標といたしまして定年の延長の推進をはかってまいりたい、かように考えています。これにつきましても実情に応じまして、特に中小企業等の問題がございますので、労使が話し合いによってそれを推進していく、政府がそれをいろいろな形で指導、援助していく。たとえて申しますと、中小企業で定年を延長したところにつきましては定年延長奨励金を支給するとか、あるいは在職中の労働者であってさらに定年が延びて高齢まで働くということになる場合の能力再開発訓練体制を整備するとか、あるいは高年齢労働者の適職の開発をはかるとか、あるいは年功序列賃金ないしは現在の退職金制度をどういうふうにアレンジしていったらいいかというような見地で資料を提供するとか等々のことによりまして、労使の努力に対しまして指導、援助をしてまいりたい、こういうようなやり方で進めていきたいと存じております。
  303. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 この問題もう少しお聞きしたいのですけれども、時間がなくなってまいりまして、もう一ぺんまたあらためてお聞きをしたいと思いますが、最後に、いわゆる公共事業の抑制が来年はやられるだろうと思うのです。この問題だけ、もう一つだけ聞かしていただきたいと思うのです。公共事業が抑制されるということになりますと、失対労働者仕事にもかなり影響が出てこようかと思います。法律の六条、七条の規定もございますし、これに対して何か現在計画等をお持ちであれば、ひとつこの際発表していただいて、終わりにしたいと思います。
  304. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 御心配いただきまして恐縮です。本年度は失対事業、国の予算として四百億ほど計上しておりまして、その中には二十二日間の就労を確保しているわけです。来年度いろいろな危機がいわれておりますけれども、やはり農林水産のようなもの、さらにはまた失対事業のようなもの、こういう予算は減らさないように私のほうからも事前に大蔵大臣のほうに申し出などをしておりまして、ぜひこれはそのまま確保していきたい、こういう考えでありますことをこの際表明しておきます。
  305. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。終わります。
  306. 山下(徳)委員長代理(山下徳夫)

    山下(徳)委員長代理 小宮武喜君。
  307. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 時間もございませんからかけ足で参りますけれども、最初に、いま問題になっております石油危機、そのための電力規制の問題と労働者雇用問題の関係について質問します。  先ほどからも質問が出ておりましたけれども、いま産業界では電力規制で、しかも原材料が不足しておるということで一〇%の減産体制に入っておるわけですけれども、来年のことは来年で、なかなかいまのところ模索の最中だと思います。通産省あたりでも、来年の石油需給がどうなるのかということについては、それなりにいろんな計算をやっておるようですけれども、その中から伺いますと、やはり来年の三、四月ごろはまたいままでよりはきびしくなって三五%から四〇%、いろいろ数字が出ておりますけれども、そうなった場合にさらにいまの減産体制というものが強化されていく。そうなった場合に労働者雇用問題が非常に問題になってくるわけですが、その点について、各業種別に例をあげますけれども、たとえば鉄鋼の場合どうなるか。造船、自動車、繊維産業、こういうような業種についてどうなるのか、労働省としてどういうような見通しをされておられるのか、まず説明を願いたいと思います。これは局長でもけっこうです。
  308. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 ただいま先生御指摘のように、来年の情勢はまだかいもく私どもで的確な把握をいたしかねておりますけれども、今後引き続きこういった石油規制、それに伴う減産、生産規模の縮小といったような問題が積み重なってまいりますと、確かに御指摘のように雇用面に相当大きな影響が出てまいるかと存じます。ただその際に、雇用面に影響の出方につきましては、先ほども申し上げましたいろいろな側面がございまして、私どもでいろいろと雇用の確保対策を講じてまいります、そのことによりまして直ちに失業に結びつかない面もございますし、中小零細企業のようにたちまちにして解雇、失業という事態に当面するものもございます。最近の雇用の動向につきましては、御承知のとおり需給がきわめて逼迫いたしておりまして、そういった情勢からいたしますと、いますぐそういった情勢が直ちに雇用面に響くということにはならないのじゃないか、こういうふうに私ども考えておりまして、この影響が出てまいりますのは早くても来年の夏ころではなかろうか。下半期になりますと、このままの状態が続けば相当な影響も出るであろうということも予測いたしながら、これに対する適切な対策をとってまいりたい。特にいま御指摘の繊維とか造船とか、基幹産業を中心にした大企業におきましては、減耗補充のための中途採用を差し控える、あるいは操短により一時帰休制度を採用するとかいうようなことによりまして企業内で雇用を確保していくという措置が十分とられますし、私ども、そのような方法によりまして解雇を防止し、失業を防止する、予防するというような措置を極力行政指導してまいりたいと思います。その他の関係の中小企業、零細企業におきまして解雇によって失業が出ましたものにつきましては、失業保険制度あるいは転換給付制度というような現在の法律体系によりまして最大限の努力をいたしまして、こういった離職者の再就職なり生活の安定をはかってまいる、こういうことで対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  309. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 いまも説明がありましたように、大企業の場合は確かにそのような解雇とかいろいろな問題を起こさぬでもやりくりはできると思うのですが、特に問題は中小企業の場合ですね。このことによって倒産の可能性も出てくるし、中小企業の人たちがそのために離職するというような問題も出てまいります。特に、中小企業全般を含めての問題もありますけれども、いま大企業の関連下請企業、これが、大企業そのものはそういうような問題が起こらなくても、関連の下請企業にそのしわ寄せがくると思うのです。したがって、関連する下請企業の問題についてはどういうように考えられておるのか、その点いかがですか。
  310. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 現在ございます雇用対策法あるいは失業保険法、職業安定法、こういった法律制度によります諸般の施策を今後一そう拡充強化いたしてまいりますと同時に、今回私ども検討いたしております失業保険法の抜本的改正を今後の通常国会で御審議いただく予定にして準備を進めております。その中で、こういった主として中小企業にしわ寄せされて出てまいります失業された方々の生活安定と再就職対策ということを特に重点を置いて盛り込んでまいるつもりでございます。こういったことによりまして万全の体制をとるように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  311. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 失業保険法の改正の問題は、これは確かに来年提案されると思いますけれども、それを待たなければやれない問題もあろうかと思いますけれども、やはりこういった事態というのは、いかなる事態にも対応できるように労働省としてはふだんからの対応策をひとつ十分検討しておいてもらいたいというように思います。  それから、これも先ほどからいろいろ質問が出ておりますけれども、いまのような物価高において一番困っておるのはやはり低所得層でございます。ここでは労働関係をやるものですから労働関係だけにしぼって言えば、特に失業対策事業で働いておる賃金ですね。いまの失業対策の賃金は大体何を基準としてきめておりますか。これはいままで午前中いろいろ質問がありましたので重複することは避けますが、この賃金の基準は大体どうやってきめているんですか。
  312. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 失対就労者の賃金は、緊急失業対策法の規定に定められておりまして、同じ職種の同じ作業内容で働いておられる労働者の賃金を標準にいたしまして、その同じような類似の賃金を定める、抽象的に申し上げますとこういうこと、具体的には屋外労働者職種別賃金調査という調査統計がございます。その調査の結果、その中で、土工、重作業、軽作業、そういった各類別がございますので、その賃金の結果を失対労働者に当てはめまして、その結果をモデルにいたしまして賃金審議会で最終的に御決定いただく、こういうことになっております。したがいまして、一般の日雇い労働者と同じような形で、大体同様の水準で賃金をきめる、こういうことに相なっております。
  313. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 きめるようになっておるけれども、現実はどうですか。
  314. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 現実も失体就労者、失対に働いております方々の体力、能力、その従事しておられる作業の内容、そういったものからいたしますと、一般の日雇い労働者の主としてごく軽易な軽作業、これが大部分になっておりますけれども、それとほぼ同水準の賃金になっておるわけでございます。
  315. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 その問題はまたあとで論議を深めますけれども、それではいまの生活保護基準、これはどういうような意味があるのですか。ぼくらは生活保護基準というのは、厚生省がおらぬからあれですけれども、政府がいつも言っておるのは、生活保護基準というのは人間の最低生活を保障するための基準だということを言っておるわけです。生活保護基準はいま言われるように五万二千円、これは四人標準家庭ですが、そういった場合に、少なくともいま二十二日間失対賃金で働いて結局三万三千円ぐらいというような場合に、最低生活を国が保障する基準として五万二千円の保護費を払っておる。片一方ではそれ以下の人がいま言う失体賃金で食っておるという、こういうような矛盾、この点についてはどう考えますか。
  316. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 私から生活保護の扶助基準のことを申し上げるのはいかがかと思いますが、生活保護におきます扶助基準は、生計費と申しますか、一人当たりの消費支出を基準にしてきめられるということになっておるようでございます。  失対賃金につきましては、ただいま申し上げましたように、当該労働者が同じ職種で、同じ作業内容で、同じ能率で働いておるものと仮定いたしまして、それを標準にして失体賃金が定められることになっております。確かに生活保護が四万幾らだ、失対が三万幾らというお話でございますけれども、たとえば同じ東京の例をあげますと、生活保護の二人世帯の場合は四万そこそこでございます。失体の場合は年間の総額を月割りにいたしますと、大ざっぱな計算でございますが、月当たり約六万をこえる金額に相なるかと思います、同じ二人世帯標準にいたしますと。そういう比較もできるわけでございまして、私どもといたしましては、その従事しておられる作業内容からいたしますと、決して不当に低い金額になっておるとは考えておりません。
  317. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 不当ということばを使われましたが、私は不当だと思うのですよ。それは大体私は局長のいまの賃金に対するセンスの問題だと思うのですよ。それは、いまの失体賃金がこれでよろしいのだということはもちろん言っておりません、不当とはということばを使っておるから。しかしながら、やはりいまの賃金が低過ぎるというのはだれもが認めておることであって、たとえば生活保護基準でもこれだけだ。これは一つの働いた賃金ですね。その賃金がそれより下回るという問題についても、これはひとつ検討してもらわなければならぬと思います。  したがって私は、そういうような理屈を言っておると時間がございませんから端的に言うけれども、それでは四十九年度予算でいまの失体賃金を大体幾らに上げるつもりですか。それと、先ほどから言われた失体者に対して一時金というかボーナス、これは幾ら払ったですか。
  318. 遠藤政府委員(遠藤政夫)

    遠藤政府委員 来年の賃金につきましてはこれから予算編成で最終的にきまるわけでございますが、目下失対事業賃金審議会におきまして、先ほど申し上げました屋外労働者職種別賃金調査の結果をもとにして鋭意御審議をいただいておる段階でございます。その答申をいただきまして予算編成の段階で最終的に検討いたしてまいりたいと思います。  それからことしの年末の、失対就労者に対しますいわゆる年末手当でございますが、これは国として二十三・五日分、これは平均いたしますと千五百十五円の二十三・五日分でございます。それに先ほど来申し上げておりますように三日分の就労増をいたすことに相なります。合計いたしますと二十六・五日分が年末の臨時増給措置ということになるわけでございます。その金額は約四万円でございます。これは全国で多少の多寡はございますが、平均いたしますと約四万円でございます。  ただ失対就労者の年末の臨時措置につきましては、国で措置いたしますものと、それに加えて都道府県と事業主体でございます市町村がそれぞれ臨時措置をいたしております。まだ全国的に各都道府県全部最終的にきまっておりませんけれども、いま現在二十一、二県がきまっておりまして、これは三日分を含めない額でございますけれども、その集計の結果が、全国で二十一都道府県の平均をいたしますと、約十一万円何がしに相なります。高いところになりますと、東京都の例は、先ほど申し上げましたように、今年末約二十万円をちょっと上回るような、したがいまして、生活保護ともし比較をいたしましても相当の差がございます。そういう意味におきまして、月間の就労によります賃金と年末の臨時増給措置等によりまして、まあまあ零細企業の非常に困っておられる労働者、三千二百万の雇用労働者の中で末組織の中小零細企業の労働者の年末の収入から比較いたしましても、それほど遜色のある年末手当の額になってないのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  319. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 いろいろ答弁になっておりますけれども、肝心のほうに進みますので失対賃金の問題はこれぐらいにしますけれども、どういうふうな審議会答申が出るかわかりませんけれども、少なくともやはり生活保護基準並みに最低五万円ぐらいは保障されるようなところまで失対賃金をひとつ上げてもらいたいということを特に要望しておきます。  それから次に質問したいのは、この四十九年度予算で政府が目玉商品として考えておられる勤労者の財産形成についてお伺いします。この制度昭和四十六年に制定されてからわずか一年半で財形貯蓄に加入した人が百八十五万人、貯蓄残高は七百四十億に達しておるといわれておりますが、しかしながら今日のようなこの物価、地価の高騰の中で、はたしていまのような税の減免措置だけで持ち家が促進されるということは私は及びもつかないことだと思うのです。ちょうどある人から私も聞いた話ですが、この人も財形貯蓄に加入して毎月一万円ずつ、それで年二回のボーナスで五万円ずつ二十二万円納めているようです。この人が言うのには、いまのような物価、地価高騰の中でマイホームを持つには、百年ぐらい続けてかけなければなかなか自分の家を持つことはできませんというように自嘲しながら語っておったですが、そういうようなことで、いまのようなこういうふうな時代に、ただ財形貯蓄に加入したら十年後には家が持てるというように本気で労働省考えておられるのか、その点ひとつ担当局長から……。
  320. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 財産形成促進法は持ち家の一つの大きな柱でございます。持ち家だけでなしに広く貯蓄その他を含めました勤労者の資産の形成をはかりましてその生活の安定をはかろう、こういう趣旨でございますが、非常に多くの勤労者の方が積極的に御加入をいただいておりますことは先ほど先生がおっしゃいましたとおりでございます。  こういう財産形成政策につきまして今日のような物価の上昇ということが非常に好ましくないことは、もう先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも何とかすみやかにこの物価上昇が鎮静をしてくれることを心から祈念をいたしておるわけでございますが、これによる持ち家をつくる場合につきましては、私ども貯蓄だけで持ち家がすぐできるという初めから構想ではございませんで、貯蓄である程度頭金のようなものをつくっていただく、それに対しまして、そういうことによって金融機関に集まりました資金、それの現行の制度でございますと三分の一を雇用促進事業団が事業団債を発行することによってこっちへ持ってまいりまして、それによりまして持ち家促進融資というものを雇用促進事業団が事業主に行なう。その場合には国が一定の利子補給をする。で事業主は、雇用促進事業団融資を受けました場合には、さらに事業主のほうでもそれに対して一定の援助措置を加えて分譲住宅を建てまして、そして財形貯蓄をしている労働者に長期低利で分譲してやる、こういう仕組みによって持ち家を持ち得るようにしよう、こういうのが仕組みになっておるわけでございます。それにいたしましても、今日のごとき物価上昇それから地価、特に建設費の上昇等の問題がございますので、私ども現行の制度だけで十分だとは決して考えておりません。  そこで、来年度の政策といたしましては、財形貯蓄そのものについていろいろな援助を強化する、それから財形持ち家融資にいたしましても、その資金量あるいは国、事業主の援助を強化いたしますとともに、いま勤労者が、特に大都市の勤労者が非常に困難を感じておりますそのための敷地、宅地の確保等についても、たとえば建設省の宅地債券と財産形成制度をリンクするといったようなことも考えまして拡充をしたいということで、いま関係各省と鋭意協議をいたしておるところでございます。
  321. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 いま局長がいみじくも言われたように、いまのような情勢の中ではこの財形貯蓄というのは、極言すれば勤労者の貯蓄奨励という意味にもとれるし、また国が当然やらなければならない住宅政策を勤労者に肩がわりする政策とも考えられないこともないのです。しかもこの財形貯蓄に加入できる人はまだ恵まれたほうなんですよ。ボーナスから年二回五万円ずつ払う、毎月一万円ずつ貯金するという人はまだ恵まれたほうなんです。  その意味で、あとにまた続きますけれども、その百八十五万人いま財形貯蓄に加入されておる方々の年収は平均幾らぐらいなのか、それぞれ全勤労者の何%ぐらいになるのか、その点いかがですか。
  322. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 十月末までの数字で申しますと加入者は約二百四十五万人にふえております。これは、現在雇用労働者が約三千四百万人ぐらいになっておりますので、一割弱になろうと存じます。  勤労者の所得につきましては、これは財形貯蓄をしている人だけの所得はちょっといままだ調査をそこまでいたしておりません。全般の勤労者のあれで申しますと、毎勤で大体月平均いたしますと近ごろは十万前後ぐらいに相なっておるわけでございます。
  323. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 それでは十年後の賃金上昇率それから建築費の上昇率、地価の高騰、これはどういうふうに見ておられますか。賃金問題は労働省、地価と建築費の問題は、建設省おられますか――建設省答えてください。
  324. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 賃金上昇率につきましては、十年先までの賃金につきましては政府全体としても現在まだ一定の見通しを持っておりません。五年間につきましてはことし二月に策定をいたしました経済社会発展計画で年平均一二・五%の上昇を見込んでおるわけでございます。
  325. 沢本説明員(沢本守幸)

    ○沢本説明員 ただいまの御指摘でございますが、地価の問題はたいへんむずかしゅうございまして、御案内のとおり、われわれもいろいろと研究を重ねておりますが、土地問題は土地の需給関係が基本になっております。したがいまして、十年後の予測をどうするということはたいへんむずかしい、こう考えております。  それで、実は御案内のとおり昨年は三〇%の高騰を見たわけでございますが、ことしの初め以来金融の引き締め、それからまた新しい土地税制という制度を行ないまして、したがいまして、六、七月ごろから値上がりも鎮静化、鈍化いたしまして、特に最近に至りますと、いろいろと取引もだいぶ停滞してまいりまして鎮静化してきておるというような状態でございますので、十年向こうといわれますと、非常に困難ということでございます。
  326. 京須説明員(京須実)

    京須説明員 土地の関係を除きました住宅の価格を推移、予測についてお答え申し上げます。  十年後の予測と申しますと非常に困難でございます。また、特に昨年来建設資材関係が非常に高騰してまいりました。また最近は石油問題等起こりまして、非常に不確定の要素が多うございます。それを除外いたしまして考えますと、実は三十九年の六月から四十七年六月までの過去の推移は一応ございます。これで見ますと六・四%の毎年度のアップ率でございます。で、今後そんなわけで建築資材の需給の安定とかあるいは住宅資材の工業化の推進とかいろいろな努力をいたしますと、最近の非常に急激な上昇といったものを除きまして六・四%ぐらいの数字は出てくるのじゃないか、こう考えております。
  327. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 非常にむずかしいということは承知の上で質問をしておるわけです。  それで、労働省がこの財形の拡充案として発表したものがありますね。それによりますと、利子の非課税限度を五百万円に引き上げるほか、貯蓄額の五十万円までについては五%ないし一五%程度税額控除を行なう、あるいは住宅融資の場合の金利を四%に押えるとか打ち出しておりますけれども、これに対して財形審議会では、こういった労働省の拡充案でもまだまだなまぬるいということで、割り増し金、プレミアの問題が五十万円を限度として一〇%ぐらい、いわゆる十万円ぐらいプレミアをつけたらどうなのかということが答申されておるわけですが、これは労働省は賛成でしょうが、しかし大蔵省が問題があるのだけれども、きょう大蔵省は逃げてしまって、かぜを引いて休んでおるからということで問題にならぬのですが、この拡充案に対してすら、そういった財形審議会考え方というものはもう一歩前進しておるわけですが、それに対して労働省としてはこの財形審議会答申を尊重する気持ちはありますか。
  328. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 私は日本の勤労者というのはほんとうにすばらしいと思います。この財産形成始まって、労使の間で話し合いしまして、いま局長が御報告申し上げましたように一年半ですでに二百三十万もお入りいただいている、あるいは千二百億の金が集まっている。その中には、小宮先生がおっしゃったように、出しながらも自嘲というか、自分で自分を笑うというふうなことでありながらもそうやっていただいている。私はですから、内閣全体に一番お互いが心配している、この石油危機を中心にしたこういう物価安定、これが内閣、いな国民全体が願っているだろうと思いますので、そちらのほうにまず重点を置いて、しっかり政策として総需要抑制という線を出しておりますから、その辺でまず物価を押えることを一生懸命やっていただきながら、せっかく貯蓄した値打ちが下がらぬようにお願いすることがまず第一前提。それと同時に審議会のほうでは、小宮さんがおっしゃったようにこのプレミアムまでも実は答申をいただいているわけであります。受けた私たちといたしますれば、これこそまさに将来の日本の勤労者にすばらしい夢を持たせるために何とかこの予算の中にこれを実現したいということでせっかく実はいまがんばっている次第であります。そういうムードといいますか姿勢というものを出すことが、私は、これほど御協力いただく勤労者に対する私たちの責任じゃなかろうかと思ってやっておりますので、ぜひひとつ御声援のほどをお願い申し上げます。
  329. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 わが国の財形制度は西ドイツをモデルにしておるわけですが、西ドイツでは結局日本より以上この割り増し金制度を設けておりますね。だから少なくとも、一昨日かの新聞報道によれば、何か七万五千円のプレミアの問題を大蔵省考えておるような報道がちょっと出ておりましたけれども、少なくとも西ドイツに比べればまだ二〇%の十万円にしたって非常に低過ぎるわけですから、その点についてはやはりこの答申の線を守って、労働省としては少なくとも五十万円を限度として二〇%、十万円ぐらいの割り増し金制度は絶対ひとつ確保してもらうように、実現してもらうように特に要望しておきたいと思います。  それからまた、われわれがこの財形の問題を考えた場合に、先ほどからも申し上げておりますように、やはりこの財形貯蓄に加入して家をつくるというような人はまだまだ恵まれている人だ。しかし私は、やはり一番問題なのは中小企業、零細企業に働いておられる方々で、この人たちはもう一生涯かかっても自分の家を持つということはまあ不可能に近いといっても差しつかえないと思うのですね。だからこういうような人たちに対する対策をどうするか、その点についてどのように考えておられるのか、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  330. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 住宅の問題につきましては私ども何も、すべての労働者に持ち家をということを考えておるわけではございませんので、やはりそれぞれの方に応じまして公共住宅、低廉良質な公共住宅を供給することも非常に重要なことだと考えております。私どもそういう意味におきまして、建設省等に対しましては良質低廉な公共住宅の大量の建設を御推進いただくようお願いをいたしておるところでございまして、財形制度におきます持ち家と申しますのは、ぜひ自分のうちを持ちたい、こういう御希望の方にはこれを持てるように御援助しよう、こういうことでございます。  それからなお先生御指摘の、中小、零細企業の方々はなかなかこの財産を持つといっても容易ではないではないという点はまことにごもっともでございます。私ども、そこで今回発表いたしております拡充案につきましては、財形貯蓄に対する援助だけではなしに、使用者の拠出によります財産形成基金制度、こういうようなものも一つの案として出しまして、なかなか貯蓄が困難な労働者の方も、そういう使用者の拠出をファンドといたしまして将来最小限の財産を持ち得る可能性と申しますか、チャンスと申しますか、そういう仕組みもつくりたい、かように考えまして、それにつきましてもいま関係各省と折衝いたしておるところでございます。
  331. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 確かに労働省が発表した拡充案によりますと、従業員二十名以下の小規模企業において何か任意の基金制度をつくって、またその企業に対して国は一五%の助成をするというようなことが発表されておりましたけれども、この二十人以下の小規模企業に限定されたのはどういうふうな意味ですか。たとえば、先ほどから言われておるように、財形貯蓄に加入して家をつくるような人はやはり相当、十万円以上――十万円以上というよりおそらくもっと上の層だと思うのです。そうしますと、二十人以下の小規模というよりは、もっと中小企業全体を含めていまのような問題を、こういうような任意の基金制度を設ける必要があると私は考えるのですが、このいまの基金構想と、なぜ二十人以下の規模の企業を対象としたのか、その理由について若干お答え願いたいと思います。
  332. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 労働省で発表いたしました拡充案では、財産形成基金制度は二十人以下だけではございませんで、すべての企業にそういう制度を設けることにいたしております。ただ、中小企業につきましては、これはそうは申しても拠出金を事業主が出されるということがなかなか容易であるまいということを考えまして、中小企業につきましては、特に使用主が出された拠出金の一定割合について税額控除等の税の面の優遇をする案にいたしております。これは中小企業全般に。二十人以下の零細企業につきましては、それだけでもどうも拠出金額が、もっと規模の大きい企業に比べると、ごく少額になるのではないか、こういうことを考えまして、さらにその上に一五%の助成金を上積みする、こういう仕組みで発表をいたしたわけでございまして、これにつきましていま関係各省と協議しておるところでございます。
  333. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 それで、そういうような二十人以下の小規模企業だけを対象でなくて、中小企業全体を含めていろいろなことを考えているようですが、それでは中小企業の人たちの平均賃金は幾らで、それで毎月幾らずつ積み立てて十年後に家ができるのか、それと、返済する場合は毎月幾らずつ払って何年間で払うのか、それの可能性があるのかどうか。実際問題として、いまの中小企業の賃金からいって、そういうような余裕があるのかどうかという疑問が私はあるものですから、したがって、その基金に入った場合に具体的に自分の家を持つことができるというための具体的な計算をひとつ参考までに教えてください。
  334. 渡邊(健)政府委員(渡邊健二)

    ○渡邊(健)政府委員 中小企業と申しましてもいろいろございますし、また、これは日本の場合でございますと、年功序列賃金でございますから、年齢によりましても、若い方あるいは中年の方々それぞれによって賃金が違うのでございますが、平均いたしますと、現在は約十万ぐらいでございます。そこで一割程度の貯蓄をそれらの方々がされるということで計算をいたしますと、ちょっといま数字を特っておりませんけれども、十年ないし十五年くらいになりますと、税額控除その他を加えまして、それから基金等も入れますと、四百万前後くらいの頭金にはなるのではなかろうか。それに対しまして、先ほど申しました持ち家促進融資、これを受けられますれば――もちろんそのときの地価なり建築費なりがどうなっておるのかということと関連があるわけでございますが、先ほど建設省がお答えになりましたような、ごく最近の異常事態を除いた過去十年くらいの上昇率等々でいけば、ある程度の持ち家をお持ちいただくことも不可能ではない。それからまた借入されました融資の返済も、先ほど私どもが申しましたようないろいろ国の利子補給、使用主の利子補給等々によって低利のことでやりますれば、だんだん労働者の方は年齢が高くなりますと年功序列で賃金も上がられるわけでございますので、それらを考えればその融資の返済をされるということも不可能ではない、かように考えておるわけでございますが、問題はやはり今後の物価の上昇がどうなるか、特に持ち家につきましては地価なり建設費の問題いかんであろう、かように考えております。
  335. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 いま言われたように、それはなかなかむずかしいのです。それは、賃金上昇率がどうなるのか、地価の上昇はどうなるのか、建築資材の上昇はどうなるのか、いま言われたように十年先のことはよくわからぬわけですから、そういう中でほんとうに労働省が――私は何もけちをつけるわけじゃないのですよ。この制度はいいから、もう非常にけっこうだけれどもという前提を置いて話をしておるわけです。しかし実際問題としてはなかなかむずかしいのじゃないか。だからそういった意味ではむしろほんとうに中小企業の方々が生活を切り詰めて、飲まず食わずで自分の家を持とうということで、労働省は実際いえば庭つきの一戸建てということを目標にしておるようですけれども、庭つきの一戸建の家が、どれくらいの建て坪でどれくらいの庭を考えておるのか、その点もお聞きしたいのですけれども、そんなことを言ってみたって、実際問題現実ではなかなかむずかしいのじゃないかということを私指摘したのであります。だから、そういった意味では、先ほどから言うように、それは過剰流動性の問題があるけれども労働者の貯金を吸い上げて、金を吸い上げるという一面もあるし、このことによって少なくとも政府が財形貯蓄によって勤労者の住宅の肩がわり策を考えておるとは言いませんけれども、悪く勘ぐればそういうようなことも言えないこともないのです。それで一生懸命家を建てた。今度は働いて返済するのにあくせくして、これもようやく払う。そうして建てた家には今度固定資産税がかかってくる。そうすると、税金や払うのに苦労して建てた家が、ほんとうに労働者のしあわせにつながるかどうかということなんです。昔から家を一軒建てるためにはタオルも何か古タオルを使いよったということが言われますけれども、そういうようなことをいまごろ言ってみたってこれは話にはなりませんから、そういう意味では、私が言わんとするのは、そういったこともたいへんけっこうだけれども、やはりこういうような賃金の低い低所得層の方々には、家賃の低い住宅政策を国がどんどん推し進めていかなければ、これによって、少なくとも国が進めていこうとしている、これまで進めてきた住宅政策に少しでも足踏みをさせるようなことがあったら相ならぬということを言いたいのです。だからそういった低所得層の人たちに家を持たせるためには、やはりいままでのような従来どおりの住宅政策を、従来どおりというよりもむしろ積極的にやってもらわなければいかぬというように感じますけれども、これはひとつ労働省と建設省に御答弁願いたいと思います。
  336. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 建設的な御意見ありがとうごじいます。まさにおっしゃるとおりでありまして、ただ、将来家を持ちたいために預金するよりは、財形貯蓄ということで制度的につくっておって、そして一方事業主――あるいは利子補給、いろんなことでそれを推進することのほうが、家を持ちたいためにただ貯金するよりはいいのじゃないか。私もこの制度が始まりましてから、実は西ドイツの財形貯蓄の歴史ということをよく読んでみました。やはり今日までには三度ほどの全体のいろいろな討議などがありまして、そして改正などをして今日に至っているのです。スタートして一年半でございまして、いまのような御疑問がございますが、これは建設省も土地の問題等々考えてもおりますし、また考えているのを実行に移したいということと、それからいまの制度をさらに税額控除とかあるいはプレミアムとか、ない知恵をしぼって拡大しようということでございまして、その夢だけは消さないでいくのが労働省仕事ではなかろうか、こう考えておりますので、だんだんの御鞭撻に対しまして私は心から御礼申し上げまして、なお御推進方をお願いいたします。
  337. 京須説明員(京須実)

    京須説明員 お話のとおり、賃貸住宅はきわめて大切であります。これにつきましては、いわゆる若年層と申しますか、まだ若いころは所得が低いわけでございまして、そういう若年層が中心でございますが、特に所得の上昇が非常におそい停滞階層が中心でございます。そのほかに中堅層でございましても、転勤等がございます場合には、すぐに持ち家は困難でございます。そういった階層をねらいましての賃貸住宅、これはもちろん不足しております。ただ一方におきましては、やはり一般のパターンと申しましてもあれでございますが、若年のうちは親元におりまして、結婚いたしまして会社の寮とかあるいは賃貸に入りまして、その後やはり一定の年齢を経ますと持ち家を希望するといったような、いわゆる世帯の構成あるいは所得の上昇に応じました住宅のサイクルのパターンがございます。そのパターンに合わせまして、やはり質のよい持ち家というものの供給といったこともしようと思っております。対象を二つに分けまして、賃貸とか分譲、両方相まって住宅政策を推進しよう、こう考えております。
  338. 小宮委員(小宮武喜)

    ○小宮委員 この問題についてはいずれまた十分質問する機会がくると思いますが、最後にやはりいま言われたように、いまの財形制度についてもいま言うようにプレミアムの問題もある。労働省が発表した財形大綱の中でも、税制面においての優遇措置をもっともっと考えてもらわなければいかぬということと、もう一つは、そういった意味で、いま私がこれまで質問をしてきたように、飲まず食わずで働いて、一生その借金払いに追われていくのがほんとうに労働者のしあわせだろうかという疑問も起きるわけです。したがって、その意味では、労働者のほんとうのしあわせを考えるなら、まず当面の問題としては物価を安定してもらう、地価の高騰を抑制してもらう、それから大幅減税、それに社会福祉の拡充、こういったようなことを、これは労働省だけでは無理ですけれども、政府全体として、そういうような財形制度も非常にけっこうだけれども労働者が一番困っておるそういうような物価の問題、土地の問題、あるいは物不足の問題、あるいは社会保障の充実、大幅減税、こういうようなものにぜひひとつ労働省も建設省も取り組んでもらいたいということを要望いたしておきます。  これについて所見があればひとつ所見をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  339. 長谷川国務大臣(長谷川峻)

    長谷川国務大臣 最後に小宮さんがおっしゃったことは全面的に賛成で、わが政府が目標としているところでもございますので、これは全内閣の問題としてがんばることが福祉国家をつくるゆえんだと思っておりますので、御理解のほどをお願いいたします。
  340. 山下(徳)委員長代理(山下徳夫)

    山下(徳)委員長代理 次回は、明後二十日木曜日、十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十五分散会