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毛利府政委員 ただいま御紹介いただきました、この四月一日に
気象庁長官を命ぜられました
毛利でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
では、お
手元の
気象庁が印刷いたしました「近年における
世界の
異常気象の
実態調査とその
長期見通しについて」御
説明申し上げます。
この印刷物をつくりますいままでの経過を簡単に申し上げますと、近年
異常気象が話題になることが多くなりまして、昨年四月、
気象庁は「近年の
世界の
天候について」という見解を発表いたしました。その後八月から
経済企画庁の
政策推進調査調整費によりまして
調査並びに
アンケート、
現地調査をいたしまして、その
報告といたしまして約二百ページに及びます
報告をまとめつつございますが、その要約といたしまして、三月の末にただいまお
手元に差し上げました
報告を出したわけでございます。
この
報告は六つの項目について書いてございますが、まず、
最初の第一ページの
異常気象というところにつきましては、
異常気象というのは、過去三十年ぐらいの
気候に対しまして非常に著しい片寄りを示した
天候を
異常気象として取り上げております。
次に二ページの2の「
異常気象の
年代別変遷」でございますが、これは各地に
アンケートを出しまして、また
世界の約百五十地点の
データを
気象庁で調べました。その結果四ページを
ごらんになっていただきますと、ここにございますように二つの要素につきまして
異常値がどのように最近出ているかということを書いてございます。第一図の左のほうは、
月平均気温が過去一九一〇
年代から最近の一九六〇
年代にかけまして、
高温と
低温の
出現度数がどのようにあらわれているかを表示しておりますが、これからわかりますことは、
低温が一九二〇年、三〇年少しずつふえまして、一九六〇
年代は少し多くなっておるということがわかります。
右のほうの図の
降水量につきましては、多少の
変動はございますが、少雨がややふえる
傾向にあるかと存じますが、はっきりした結果にはなっておりません。
次に、六ページにまいりまして、ではこういう
異常気象という
現象と、近年
気候も少し変わってきているのではないかと考えられますが、この
気候変動とは、どのような
関係になっているかということをここに書いてございます。
七ページの上のほうの図でございますが、
横軸に一八九〇年から現在一九七〇年までの
北極圏の
気温を図示してございます。特に点線で書きました冬半年の
部分を
ごらんになっていただきますと、この
北極圏と申しますと北緯七十度から八十五度の
付近をさしておるのでございますが、大体一九四〇年ごろからそれまで高くなってきた
気温が徐々に下がっているということが明らかに表示されております。このような北のほうの、特に
北極圏に近い方面の温度が下がっておるということが
一つの事実でございます。
そのようなことがたとえば中
緯度にあります
日本付近とか南方の低
緯度の
地方にどのように
影響するかということにつきましては、八ページを
ごらんになっていただきますと、八ページの下のほうに
北半球の上層の風の
流れを
模図で示してございますが、ハッチをつけました
部分が冷たい
空気でございまして、aで示しますように、初めどちらかと申しますと
東西に
流れが強くなっておりますが、それがだんだんと
気温の差が大きくなりますと、bのように
南北に蛇行をしてまいります。そうしましてそれがはなはだしくなりますと、
c図のようになって、北のほうの
空気が南のほうに動いて、そして南の
空気とまじっていくという
状態になります。この
状態が繰り返されまして、やがてまたaの
東西流型になるわけでございます。
八ページの一番上に(1)とございますが、高
緯度では
寒冷化の
傾向が強いということ、(2)では中
緯度地方ではこのような
南北流が多くなってまいりますと、それに伴いまして
異常気象を起こしやすい
気圧配置となりまして、
低温とか
高温、あるいは多い雨や少ない雨、こういうような
地域的にコントラストの大きい
天候分布があらわれてまいりますことを示しております。九ページの上のほう、右の欄の一番下に一九六〇年から六九年にかけまして、次第に
南北流が近年ふえているという結果を回数でここに示してございます。
それから九ページの下のほう、低
緯度では、北のほうからこのような
気象の
変化、
気圧の状況の
変化が起こってまいりますと、その
影響が低
緯度に及びまして、
場所によりましては新しく砂漠に入りました
地域では干ばつなどが
発生しやすくなるというふうに考えられます。
次に一〇ページ、4の「
気候変動の今後の
見通し」でございますが、これも文献によります
調査、
アンケートによります
調査、それから
気象の
データを使いました
調査をいたしまして、その
見通しといたしまして二ページの下から二行目のところに結果を書いてございますが、いろいろの
方法によりますその結果は、まだしばらく
低温傾向が続くと予想するものが多いのでございます。もちろんこれは、こういう長い
気候変動にはある
周期があるのであると
周期を仮定いたしましたもとの
一つの結果でございます。
次に、一二ページのまん中辺に
氷期について書いてございますが、
氷河期と申しますと、普通申します
氷河期というのは、一万年とか十万年とか、われわれから考えますときわめて長い時期の話でございます。われわれ
気象庁で、ここで取り上げました
気候変動の
期間と申しますのは、たかだか数十年、長くて百数十年
程度のことを検討しておるのでございまして、
氷河期とそれからわれわれがここで考えます
気候変動の
期間とは、約二けたも
年代の違った
尺度の
現象であるということでございます。
最後に一三ページのところに「
結び」といたしまして、そこに
結論を書いてございます。
まず(1)でございますが、この
異常気象の多くは、数十年から百数十年
程度の
尺度で起こる
気候変動に
結びついていると考えられます。
二番目には、一九四〇年ごろから
北半球では極を
中心にいたしまして
寒冷化の
傾向が続いておりまして、
世界全体として
低温の
異常値がかなりふえてきているということでございます。
三番目に、この三番目が大きな
一つの
結びでございますが、
太陽活動とか
気候変動の
周期性などから見まして、今後十数年ぐらいはこの
寒冷化の
傾向が続きそうであるということでございます。もちろんこれは年々必ず
気温が下がるということではございませんで、寒い年もあたたかい年もあるわけでありますが、どちらかと申しますと、寒い年が多いのではないだろうかということでございます。
それから四番目に、中
緯度におきましても
異常気象のあらわれやすい
気圧配置の
出現度数がふえておるということでございます。
最後に一四ページの五番目のところでございますが、このような
寒冷化がどの
程度まで進むのかは非常に予測は困難なことでございますが、もし十数年以上も続くとすれば、十九世紀以前の
低温期に似た
気候に近づくことも考えられるのでございます。しかし、その場合でもいろいろの
社会条件、
生産技術が
変化しておりますので、その
影響はどのようにあらわれるかなかなかむずかしいのでございまして、
気候変動の推移にはわれわれとして
十分関心を持ちまして、今後その
対策を考慮しておく必要があるだろう、こういうふうに考える次第でございます。終わります。