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1974-05-21 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十一日(火曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君 理事 土井たか子君    理事 木下 元二君       染谷  誠君    田中  覚君       八田 貞義君    岩垂寿喜男君       小林 信一君    米原  昶君       岡本 富夫君    坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    江口 裕通君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君  委員外出席者         中小企業庁指導         部指導課長   倉部 行雄君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第八五号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付大気汚染防止法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 今回の大気汚染防止法の一部改正案というのは、大気汚染物質総量規制ということに足を踏み込みました法改正でございまして、従来、法規制の上から欠落をいたしておりました総量規制をようやく法制度化するということになるわけでありまして、これは考えてみますと、環境行政一つの前進として評価を、まず、私はしたいと思うのです。  しかし問題は、——しかしから始まるのですが、しかし問題は、この大気汚染防止法改正案、つまり総量規制案の内容にかかってくるのじゃないかと思われます。今回の総量規制基準は、条文に即応して申しますと、第五条の二の4で申しておりますように、「すべてのばい煙発生施設において発生し、排出口から大気中に排出される当該指定ばい煙合計量について定める許容限度とする。」ということになっているわけでございます。これから考えてまいりますと、排煙の高さですね、つまり煙突の高さと申し上げてもいいと思うのですが、それと着地濃度理論拡散計算式によって求める従来のいわゆるK値規制方式を残しているわけでございまして、K値規制に準拠した総量規制考え方であるということが言えると思うのであります。これは原則的に言えると思うのであります。  ところが、拡散希釈効果というものを前提とするSO2のK値規制というものは、いままで総計して三回か四回にわたって係数強化によって徐々に限界へ近づいていっております。拡散希釈効果を加味いたしました総量規制基準となりますと、この汚染物質総量をしっかり規制しているかどうかという点で疑問が残ってくるわけですね、そういう点から考えまして。  そこで、従来の大気汚染防止法K値規制方式をとっていたために、新しい総量規制基準が、いきなり今回K値規制ということを無視することはできなかったというふうな理由があるかもしれません。そういうふうに私は考えたいのでありますけれども、そういう点からすると、今回は一応やむを得ないというふうにも考えられます。しかしながら、今後の総量規制あり方としては、K値規制方式を乗り越える必要があるのじゃなかろうか。地域汚染物質の上限を厳格に設定してこそ、本物の総量規制になったと言えるのじゃなかろうか。  そういう点から、まず原則論としてお尋ねしたいのは、K値規制総量規制との関連について環境庁の御見解というものをお伺いしたいわけでございます。いかがでございますか。
  4. 春日斉

    春日政府委員 先生の御指摘のように、現在の大気汚染物質ことに硫黄酸化物に限って申し上げますと、確かにK値規制と申します煙突の高さに準じた量規制をとっておるわけでございます。しかし今回の総量規制と申しますものは、そういった現状K値規制を根っこにはいたしますけれどもK値規制では、いわゆる高原汚染と申しますびまん的な汚染防止することができないがゆえに、総量規制をその上におおいかぶせるわけでございます。したがいまして、私ども総量規制というものはK値規制の延長ではないと考えております。K値規制で不可能なものを総量規制によって到達させよう、こういうわけでございますので、先生指摘のように、K値規制総量規制の基本になっているというふうには私ども考えていないわけでございます。したがいまして、K値規制にあわせて総量規制用極る、それからK値規制だけで到達可能な地域については地域指定をいたさない、こういうような原則でございます。
  5. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁を伺っておりますと、K値規制と今回の総量規制というのは、全く別口とは言いがたいですね。K値規制でやれるものはやろう、それができないというところに、ひとつ網をかぶせようということですから、総括して申しますと、K値規制というふうなものを残しながら今回の総量規制というものに足を踏み入れたというかつこうだと思うのです。しかし、過去このK値規制については、先ほど申し上げたように係数強化ということを何回かやっていらっしゃいます。そうして徐々に限界に近づいていっているということが事実なんですね。そして拡散希釈効果というようなものを加味した総量規制基準というふうなことで、はたして総量がしっかり規制できるかどうかという点にいろいろな疑問が投げかけられてきたのが、過去の事実なのでございます。  そういう点からしますと、早晩総量規制というふうなことに方向転換をする、発想の転換をするというようなことからすると、はたして過去のK値規制というふうなものを残しながらやるというやり方がいつまで続くのか、そうしてK値規制というようなものでは乗り越えられない限界というのは一体どの辺にあるのか、こういう点が私は常に問題になると思うのであります。したがいまして、この点についての限界なり今後の見通しなりを、それならばひとつ端的にお答えいただきたいと思うのです。
  6. 春日斉

    春日政府委員 御指摘のようにK値規制限界というものは確かにあろうかと思います。たとえばK値のみを強化いたしまして、現在の一ランクの地域をどんどん強めてまいる、たとえばKの値を〇・八というような値にしないと、先生の御指摘のように、目的は達せられないわけでございます。しかし実際にKの値が〇・幾つというような段階になりますと、非常なインパクトを与えるわけでございまして、しかも、そのようなインパクトを与えたといたしましても、根拠になっている拡散理論からして多数の煙源の密集しているような地域では、確かに拡散理論から申しましても、大気汚染そのもの改善にはあまり役に立たないということはあるわけでございます。  しかしながら、K値規制というものを残しておきませんと、たとえば総量規制一本やりでまいりますと、煙突の高さというものは無制限になっておりまして、幾ら低くてもよろしい、こういうことになってまいりまして、局地の汚染というものを招来する可能性もあるわけでございまして、私どもK値規制総量規制をいかに普遍的に行なうようになりましても、残しておかなければならないものと考えております。
  7. 土井たか子

    土井委員 御承知のとおりにいま光化学スモッグシーズンでありまして、各地でいろいろな被害が続出しております。東京都も言うまでもないわけでありますが、先ごろ、二、三日前なんか兵庫県では昨年に比べて二倍強、しかも一カ月も早く被害者が出たということで、新聞もたいへん大きくこれを取り上げて報道いたしました。そういう実情からして、いろいろこれには理由が、まだ確かにこれが理由であるというふうに環境庁としては明示をなすっていらっしゃらない、検討中ということでいらっしゃるわけでありますが、兵庫段階では、この問題を取り上げて考えてみると、やはり煙突の高さというものが非常に問題になっている一側面があるわけであります。この大気汚染というものを拡散する、そして拡散して広い範囲にこの汚染を振りまいて、そこにもってきて自動車の排気ガスということが加わって、光化学スモッグ現象というふうなものが起きるんじゃないか。したがって、そういう点から言うと、煙突の高さをいたずらに高くして拡散方式で希釈していくということは、ひとつ考え直さなければならないという側面も、現実のそういう被害状況から端を発して再確認をし、再批判をし、そして再検討をしているということが事実問題としてあるわけなんですね。こういうふうな問題については一体どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  8. 春日斉

    春日政府委員 確かに先生の御指摘のように、K値規制強化することによって煙突高がどんどん高くなっています。煙突高が高くなるに従って、拡散によりまして汚染物質着地濃度こそ減らすことができますけれども汚染する地域が拡大するという欠点が出てまいる。これはわれわれ率直に認めなければならないところだろうと思います。しかしながら一方では、煙突高の高さも現在二百メートル前後が一番高いものでございます。理論的にいっても実際的に申しましても、これ以上煙突高を高くするということは不可能でございますし、私は、現状におきましては煙突の高さをK値規制によって高くすることによって、いままで大気汚染対策に大いに役立ってきたということは認めなければならないと思います。ただし、拡散したという大きなデメリットもあったことは事実だと存じております。
  9. 土井たか子

    土井委員 それならば、その拡散してきたデメリットに対してはどういうふうな対策ということを具体的には考えていらっしゃるわけですか。
  10. 春日斉

    春日政府委員 拡散によって、これを一方的に海のほうに拡散したような場合は、あまり人に対する影響はないはずでございますが、これが一般の住宅地等拡散する場合に問題になる場合がある。すなわち、一本の高い煙突だけがその地域にある場合には、かなり薄い濃度拡散されると健康にはあまり影響がないと思いますが、同じような煙突幾つも多数集合するような場合、これは先ほども申し上げましたように、高原状汚染をしてまいるわけでございます。これを防ぐためには、やはり総量規制を導入していくこと以外にないものと考えております。
  11. 土井たか子

    土井委員 そうすると、それはやはり拡散方式というものをそのまま認めながら、総量規制でひとつ網をかぶせていこうというわけでありますね。今後の課題としては、やはり拡散方式あり方というふうなものに対して手直しをするということが一つ課題になっているんじゃないでしょうか。総量規制で網をかぶせる、それは当然大事なことでありまして、今回が一つ出発点として、あとあと改善すべきはもっともっと改善していかなければならない、そういうふうに私は思いますけれども、その改善策一つとして拡散方式に対する手直し、これがやはりあると思うのです。その点について、いまお伺いをしているわけなんです。
  12. 春日斉

    春日政府委員 拡散方式がいままでとられてまいりましたメリット、デメリット、これは十分に反省すべきは反省いたしまして、今後行政に資してまいりたい、かように考えております。
  13. 土井たか子

    土井委員 そっけない御返答なんですが、それじゃひとつ具体的な問題に入りながら、私はさらに局長のお考えというものを少しお尋ねしてみたいと思いますけれども、今度いただきました資料の中、これは一部を改正する法律案参考資料でありますが、その中に、何と申しましても、大気汚染防止というのは、それ自身人体の健康を保全することが一にも二にも目的になるわけでありますから、そういう点から考えますと、この中に「本法律案提出経緯」というところ、この参考資料によりますと五ページに出てくるわけでありますが、「疫学調査結果により、環境基準に適合している地域でも人の健康に大気汚染影響認められたことなどから、従来の環境基準は人の健康を保護するためには不十分であることが指摘され、昭和四十八年四月に中央公害対策審議会答申を得て、同年五月にいおう酸化物に係る環境基準は」云々というふうに、まずありますね。  そしてそれを受けて、中央公害対策審議会のほうでは「いおう酸化物に係る環境基準改定について」という答申を具体的にここに記述されているわけでありますが、四十八年の四月二十六日に出されている。その中に、「環境基準改定に伴う課題について」というところを見ますと、「環境アセスメント実施推進」というのがあります。「都市開発工業開発に対する有効適切な環境アセスメント手法を確立し、その実施推進して、土地利用適切化をはかることにより、いおう酸化物による大気汚染防止に資すること。」同様に、これは硫黄酸化物のみならず「窒素酸化物に係る環境基準の設定について」という答申においても同じようなことが、この「環境アセスメント実施推進」ということに対して述べてあるわけなんです。これは御確認願えますね。これから申し上げることは、そういうことにも関係しておるわけであります。  この総量規制というのが決定する前の段階で、大規模工業開発環境影響評価、つまり、環境アセスメント報告書で、地域汚染物質総量というものを設定した具体ケースがあるわけであります。どこかというと、それは環境庁がみずからこういうことに対して調査を進められたナンバーワンの、初めてのケースとして苫小牧東部計画というものがあるわけなんです。  先日来、私は、これについても御質問させていただいているわけでありますが、北海道苫小牧市も総量規制をするから、だいじょうぶだというふうにいままで明言をしてきているわけです。現に現苫小牧地区苫小牧東部地区大気汚染物質総量というのは五十三年度の値、SO2が一時間当たり二千百五十立方メートル、NO2についていいますと、千八百五十立方メートルということになっております。浮遊粒子状物質については総量をいまだ出しておりません。御承知のとおりです。そして環境庁報告書案を承認、決定なすったあとで、勇払地区SO測定データというものが隠されていたということが明るみに出たわけです。次々とアセスメントというものの中身が、具体的に考えていけばいくほど、ずさんであったというふうな事実が出てきたわけなんであります。  この環境アセスメント報告書のきずというものをどういうふうに修正するか。これは今回の大気汚染防止法を一部改正して、総量規制ということに足を踏み出すということから考えても、私は非常に大きな問題だと思うわけでありますが、こういうふうなことについて、いま環境アセスメント報告が出ちゃっている。その報告に基づいて環境庁のほうもよろしいということをおっしゃった。もう事は済んでしまったということじゃないと私は思うのであります。この報告書がずさんであるということになるならば、そのきずを修正するのは、一体どういうふうな方法があるか、これについては最も安易な解決方法というのは、一たん設定した総量について、これをやや少なくするために削減する操作というのが一つあると思うのですよ。これは総量規制についての総量を削減する操作というのはあると思うのです。  しかし、それじゃいままで行なわれてきた環境アセスメント自身がずさんであるということなんでありますから、そのずさんな環境アセスメントを抜本的に見直したことにはならないわけなんで、先ほど来、この法律案参考資料の中に出ております中公審答申なんかでも環境アセスメントについていろいろ答申の中に具体化していらっしゃるわけですから、やはりアセスメントというものを、この節ずさんであったということを認識するならば、抜本的に見直さなければならない。そういうことだと思うのです。つまり、現状環境濃度の正しい把握こそがアセスメント出発点だと、まずは把握したいと思うのですが、いかがでございますか。
  14. 春日斉

    春日政府委員 苫小牧に代表されますように、まだ未開発の大きな工業地帯の将来の汚染の予測と申しますもの、これを環境アセスメントと申していいと思いますが、確かに環境アセスメント手法というものは、まだまだ完成されたものではございません。しかも私ども総量規制を行なうにあたりまして、ある地域における環境容量と申しますか、望ましい排出量を計算するような場合に用いますところの手法とは、いささか差があるわけでございます。これは荒い、こまかいという程度の差でございますけれども、差があるわけでございます。  したがいまして、苫小牧のような、いまだに煙源が実際には立地されていないような地域許容排出総量を求めますときには、おのずからシミュレーションに限界がある。少なくとも、たとえば水島地域とかあるいは川崎地域排出総量を定めるときに用いますような手法に比べてはるかに荒いものにならざるを得ない。そういうことがございます。したがいまして、巨大開発地域事前調査に用います環境アセスメント手法と、それから総量規制実施する場合におきます手法とは、きわめて似たものではございますが、そこに荒さ、こまかさという差が非常にあるということは御確認いただきたいと思うわけでございます。  それから、最後に御質問でございました現状汚染というものが出発点になる、おっしゃることは私も賛成でございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 その荒さ、こまかさという手法を展開なさる前提として、まずはいま最後におっしゃった現状環境濃度を正しく把握すること、これが何といっても出発点であります。それに対して、荒いかきめこまかいかということが初めて問題になるのでありまして、現状環境濃度に対して正しくない把握のしかたをしていたということで出発してしまったのでは、荒いかきめこまかいかなどというふうな問題ではありません。これはもともとの大前提自身に対して十分な把握のしかたがなされてなかったということで、決定的なミスだと思うのです。  いま私が申し上げているのは、この苫小牧東部開発計画についていろいろと検討された、あの環境アセスメント報告書中身について言うならば、やはりいま申し上げたとおり、現状環境濃度の正しい把握から出発しなければならないということじゃないか。このことについて御確認いただけますかということを言っているわけであります。
  16. 春日斉

    春日政府委員 苫小牧地域大気汚染につきまして、あの報告書硫黄酸化物については、おおむね環境基準に適合している、こういう結論をいたしまして、それに対して環境庁も同意いたしたのでございます。そこで苫小牧地域SO2に関する大気汚染の状態を見てみますと、四十八年度におきます北海道実施したSO2の測定結果を見ますと、六測定局中五測定局においては一時間値、一日平均値とも一〇〇%を満足しております。それから沼の端測定局については一時間値の適合率九九・九%、一日平均値適合率は九九・四%となっておりまして、四十七年度に比べまして逐次改善された傾向が見られます。また苫小牧市が実施している勇払測定局の結果は、一時間値の適合率は一〇〇%、一日平均値適合率は一〇〇%と一応なっておるわけでございます。これは四十八年度、年度で見ますとそうなる、こういうことでございまして、四十八年度の資料から見れば、おおむね環境基準に適合している、かように私どもが申しておったことは、それほど出発が狂っておるとは考えていないわけでございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 出発が狂っているかいないかということは、これからじわりじわりと私は申し上げます。  それで、いまの御答弁というのは、私が聞いてもいないことに対して先走りをおっしゃっているわけでありまして、まず、先ほど聞いたことに対して的確にお答えなさるのは、イエスノーかで済んだのです。現状環境濃度の正しい把握ということがまずは出発点でございますね、こう聞いているのです。それに対してイエスノーとおっしゃれば、それで事が済んでいる。何も北海道苫小牧現地について、どういうふうなデータがあって、それに対してどういうふうに認識なすっているかまでは私は聞かなかったですよ。少し先走りだと思うのでありますが、これについてはあとで逐一申し上げます。  さきに私は、今回のこの大気汚染防止法の一部を改正する法律案参考資料を見ましても、健康被害というふうなことに対して未然防止するというふうなことが何としても主眼の中にあるということから、まず、この健康被害ということについて、ちょっと確かめておきたいことがあるわけであります。  現在、先ほど来問題にいたしております苫小牧には、すでに立地している工場大気汚染によって慢性気管支炎ぜんそくなどの影響が出ているというふうに住民方々は訴えておられるようであります。昨年十二月十日に、環境庁報告書をお認めになる段階で、大気汚染による健康影響調査の結果がございましたでしょうか、どうでしょうか。いかがでございますか。
  18. 春日斉

    春日政府委員 なかったと思います。
  19. 土井たか子

    土井委員 この環境アセスメントというものは、何から何を守るかということを明確にして出発している問題じゃないかと思うのです。そこの現地方々の健康を守るということ、健康被害未然防止するということ、こういうことが何といっても主眼であるのに、いまお伺いした限りでは、大気汚染による健康影響調査の結果というのがいまだに出ていない。もちろん昨年の十二月十日、環境庁報告書をお認めになる段階ではなかったということを、ひとつ確認させていただきたいと思います。  それで、ことしの五月現在、何か調査結果が出ておりますか。あるとしたら、慢性気管支炎有症率というのは、全国の他の地区有症率と比較をいたしまして、どういうふうになっているか、これについてお答口えいただければ、ひとつお答えをお願いします。
  20. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問健康影響につきましては、四十八年度から五十年度にかけて実施をいたしておりまして、現在まだその成績について私どものほうでは入手をいたしておりません。
  21. 土井たか子

    土井委員 それについては、いつごろ入手をなさり、入手をなさった資料に対して、いつごろ検討をお始めになり、そして検討結論に対して、いつごろ公にされるということになっておりますか。
  22. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 四十八年度に開始をいたしておりますので、私どもとしましては、今年度の中ごろまでには、四十八年度にどんなことができたのかということについて、ある程度の解析ができるのではないかという期待は持っておりますが、三年計画でいたしておりますので、その経緯がどうなるかということもあわせて最終的に判断しなければならないと思いますので、中間的には今年度の中ごろ過ぎに、現在までにどういうものが出たかということを聞いて確かめてみたい、そのような考えでございます。
  23. 土井たか子

    土井委員 現在の苫小牧にすでに立地をされている工場大気汚染というのはないとはいえないので、これは現にあるわけであります。それは測定データに従って具体的な報告書の中に披瀝されているとおりなんです。それによって人体の健康に対する何らかの影響があるのではないかということは常識なんですね。現に住民方々の中には慢性気管支炎ぜんそくなどの影響があるということを訴えている実情もあるわけなんですね。しかしながら、先ほど来はっきりしたとおり、昨年十二月十日現在ということでいうならば、環境庁報告書をお認めになる段階では、健康影響調査の結果に対して把握をなさってなかったということなんです。  端的に申し上げますと、深刻な健康影響は絶無だと御理解なすっていたのですか。また、皆無だというように御理解なすっていたから、そうであったのですか。いかがでございますか。
  24. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの先生質問の、現在の健康影響状態をどう見ておるかということでございますが、少なくとも公害防止計画の策定の基本方針の時点におきまして、四十七年度までにいろいろ汚染状態等を出してきておりますが、その数字から判断いたしますと、確かに汚染はあるということは事実でございますが、健康影響上大きな問題を生ずるような、ほかのところと比べてみると、汚染であるとはいえないというふうに私どもは一応受け取っておりました。
  25. 土井たか子

    土井委員 それは、何によってそういうふうに受けとめていらっしゃったわけですか。
  26. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 それは硫黄酸化物測定濃度の過去の数字から見ますと、私どもは全国相当いろんな濃度地点を調査いたしておりますが、ほかの数字と比べますならば、少なくとも測定データとしては中汚染には入らない、非常に低汚染地帯のところのように、私どもは数字の上からは判断いたした次第でございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 数字の上から一応そういうふうに御理解なすっていても、健康被害に対しての人体影響というものを調査するのに、BMRC方式というのがありますね。このBMRC方式に従って調査方法を進めなければならなかったとはお考えになりませんか。
  28. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 影響調査に関しましては、問診をいたしますときには、BMRCの日本でやっております全国的な調査の変法というものでやると私どもは理解しております。現在苫小牧でやっております方式につきまして、私どもは詳しく承知しておるわけではないということにつきましては、おわびを申し上げます。
  29. 土井たか子

    土井委員 それは詳しく承知していただかなければ、実は任務は全うできないはずだと私は思うのです。いままでの手落ち、あるいは不十分さについては、私はこれ以上意地悪く追及をいたしませんが、それならば実情を申し上げて、こういうことであることを御認識いただきたいと思います。  四十八年の三月に、苫小牧市は苫小牧東部開発の前に、大気汚染による人体影響調査するということをきめました。そうして、五月から十二月にかけて実は調査実施いたしております。ところが、この調査方法は、市内三十歳以上の男女二万三千七百名から五分の一の四千七百人を無作為抽出をいたしまして、せき、たん、息切れ、ぜんそく、この四項目について往復はがきのアンケート調査をいたしております。アンケート調査の次に、四項目の該当者に対して、いまお話しのBMRC方式の質問表によるところの面接調査、さらに精密検査をしたというふうになっているわけなんです。いま御答弁のとおりでありまして、BMRC方式による有症率調査は、最初から直接面接調査をしなければ、慢性気管支炎有症率が出てこない調査手法なんですね。  ところが、苫小牧のほうで昨年実施なさった中身は、面接調査からやっていらっしゃるわけではございません。先ほど申し上げたように、はがきのアンケート調査によって、まず、展開なすっているわけであります。したがいまして、こういうことからすると、全国他地区大気汚染健康影響調査とは、調査結果を比較する対象には全然なり得ないと思うわけです。  私は先日、資料要求をしまして、大気汚染に関する疫学調査方法という、昭和四十八年の八月に公害保健課から出していらっしゃる資料を、ここにいただきましたけれども、これによって全国一律に調査方法をお進めになるわけでありましょう。そうしますと、いまこのすでにある苫小牧の問題についていいますならば、BMRC方式によって調査をなすったとは厳密にいえないわけであります。したがいまして、勘ぐって考えれば、こういうことについて全国比較ができないように意識的にやったのではなかろうかとすら思われるわけです。  そういう点からしますと、いま現地でどういうふうな調査がなされたかということも把握なさっていらっしゃらない。そして当時についていうと、一向にこの健康影響調査の結果はなかった。おそらく環境庁とされては、このままで済むわけにはいくまいと思います。したがいまして、今後この健康被害に対しての影響調査について、どういうふうな方法で当たられるか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  30. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの先生の御質問は、環境アセスメントをやる場合に、影響調査に対してどのような方法、どのような態度で臨むかということにつきまして、苫小牧ケースを中心に御指摘があったポイントであるというぐあいに考えております。  苫小牧の場合のような汚染水準の場合に、私どもはバックグラウンドをはっきりつかまえておく必要があるということが、苫小牧の場合の影響調査一つの大きなポイントでございます。そういうことで、バックグラウンドを調査する場合に、ほかの地域と比べられなければならないというのは、先生の御指摘のとおりでございまして、現在、アセスメントをやる場合に、どういう形で影響調査をやるかということにつきまして、公害保健課から出しました資料と同じ形で全部どこでもやるのかどうかということにつきまして、ここ一、二カ月内に最終的に専門家にもう一度目を通してもらうということをやってもらっている最中でございます。  従来の影響調査と比べてみることは、もちろん必要でございますが、非常にあちこちの地域でいたすことになりますので、おそらくそれとはあまり変わることにはならないと思いますが、最終的にその形がきまりましたら、それによって影響調査をしてもらうという形で、私どもは持っていきたいと考えております。
  31. 土井たか子

    土井委員 追い打ちをかけるようですが、ひとつ確認しておきたいのは、先ほど橋本審議官おっしゃいましたとおりで、大気汚染による健康影響調査の結果について、昨年十二月十日当時、環境庁報告書認められる段階で結果を把握なすっていらっしゃらなかった。その後も、この苫小牧健康影響調査については、具体的に把握されていない。これはまことに残念なことだと思う、遺憾でございますとおっしゃったことは、それは抜けていたということを確認なすっているわけでございますね。いかがでございますか。
  32. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御指摘でございますが、私どもは、完全な調査という要件から見ると、バックグラウンドを初めから把握していたほうがより完全なものであったということで、先生の御指摘にお答えいたしたいと思います。
  33. 土井たか子

    土井委員 どうもすりかえ答弁みたいなぐあいになるわけですが、それは他地区健康影響調査の結果と比較検討ができるような資料を待ってやらなければ意味がないということをおっしゃるのかもしれないけれども、昨年十二月十日当時においても、これはやろうとしたら、できないことじゃないわけです。そういう資料収集をやろうという気さえあれば、努力さえあれば、できないことじゃなかったわけです。それが全く欠落しているというのは、やはり一つの欠陥じゃありませんか、この調査について見た場合。健康被害というものが何といっても重視されるべきだと私は考えますから、この点がそうそう甘く、イージーゴーイングに事を済ましてしまうわけにはいかない問題だと思っております。  したがって、この欠落しているというのは、一つの欠陥だというふうにお認めになりますねと、先ほど来、私は問いただしでいるわけです。
  34. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 あったほうが望ましかったということでございまして、それが絶対なければ何もしてはいけないということまでの水準の問題であろうということは、その当時私ども考えておりませんでした。バックグラウンドとして、つかまえるということでございますので、五十三年から操業を始めるということでございますから、四十八年から五十年の間にこれを把握できるということでございまして、五十三年以降の問題は、厳重にわれわれのほうと相談をしなければできないという形で縛っておりますので、そういうことで、あったほうがよかったということを思いますが、完全な欠陥であるということにまでは、私ども考えておりませんでした。
  35. 土井たか子

    土井委員 言いたくないのですが、環境庁のほうが環境基準なり、それから規制基準なり、そういう基準値ということを問題にされる場合には、一体何を考えながら基準値ということを常に問題にされるのですか。これは人体に対する影響でしょう。健康被害というものに対して、どういうふうな具体的な影響があらわれるかということについて、やはり認識なさりながらお考えになっていらっしゃるんじゃないでしょうか。机の上で字づらさえ合えば、けっこうだという問題じゃないと私は思うのです。現に、そこに生活なさっている方々の中に、どうもこれは慢性気管支炎ぜんそく等々の被害が私たちにはすでにございますという声があるのですよ。そういうことも、実際問題その声があるというふうなことになっているその現地の状況に対して、全くその資料が欠落していること、これが決定的な欠陥とはお認めにならないというその姿勢は、私はおそるべきだと思います。たいへんなことだと思いますよ。  そうなると、今回のこの大気汚染防止法の一部を改正して総量規制をやってみたって、これは一体だれのための、何のための総量規制かと私は言わざるを得ぬのです。やはりどこまでいったって人体に及ぼす影響というふうなことを、人の健康を守るということを至上命題にしてお考えになるという立場で、こういう今回の改正案だって出てきているのであろうと私は考えているわけでありますから、したがって先ほど来、いまのような質問をさせていただいているわけでありまして、そういう点からいうと、やはりこれは決定的欠陥じゃないですか。そういうふうにお認めになりませんか。
  36. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 再度お答え申し上げて恐縮でございますが、完全に非の打ちどころがなかったというものではなかったということだけは申します。
  37. 土井たか子

    土井委員 まあ、幾ら追い詰めても、その程度だろうと思うのですね。しかし、非をお認めになったことは事実です。  さて、先ほど春日局長が、先ごろの委員会でも答弁をいたしましたというところで、少し先におっしゃってしまわれたところから端を発して、少し聞いてみたいと思うのですが、ここに私は議事録を持ってまいりました。四月四日の日に春日局長答弁をされている部分について見ますと、「年間を通じてという一つ考え方からは、」苫小牧の東部の環境影響評価の町が「やや不適合なデータであることはいなめない事実だと思います。」というふうにお答えになっていらっしゃる。これは確認してようございますね。  それからさらに、いま「資料要求をいたしておるわけでございます。」というふうに続けておっしゃっている。つまり、不適合なデータであることはいなめない事実だという認識に立って、資料要求をなさっているというふうなことをお認めになっていらっしゃる、これは確認させていただいてようございますね。
  38. 春日斉

    春日政府委員 四月四日の時点におきまして申し上げた点は、私は確認してけっこうでございます。
  39. 土井たか子

    土井委員 これをまず確認させていただいておいて、次に、少しさかのぼって三月二十二日の当委員会の議事録も私は持ってまいりました。この議事録に従って見てまいりますと、まず林委員の質問に対しまして局長答弁の個所では、「大気汚染測定いたします測定局と申しますのは、国設のものあるいは都道府県で設けるもの、それから政令市が設けるもの、この三種類がいわゆる全国的な大気汚染測定のネットワークを形成しておるわけでございます。ところが、まあこれが行政上のいわば正規の測定ネットワークの一環でございますが、それ以外に市町村みずからが設置していらっしゃるものもあれば、あるいは大学、研究所が設けておるものもある、あるいは企業、会社がつけているものもございまして、勇払におきます測定局は、いわば後者に属する、政令市ではない苫小牧市が独自に設けた測定局でございます。したがって、その設置に関する国の行政とかあるいは国に対する報告というものは特にないものでございます。」とこうなっているのですね。さらに続けて、同じような質問を、その同じ日に島本委員からございましたのに局長はお答えになって、「市のデータというものは、先ほども申し上げましたように、いわゆる正規のネットワークの一環でございませんので、私どものところに報告があがってないのでわからなかったということでございます。」とお答えになっていらっしゃるわけなんですね。  ところが、私最近資料要求をいたしまして、昭和四十八年版の「日本の大気汚染状況」というのを大気規制課からいただきました。それを見てまいりますと、ページにして言いますれば六八ページのところに、この二酸化硫黄に対して「昭和四十七年度年間値測定結果および経年変化」という表が載っておりまして、その中には苫小牧保健所、双葉公園、明野、ウトナイ、啓北中学校等々、いま局長の御答弁からすると当然把握なすっていない、ネットワークからは漏れているはずのところの地点のこの測定結果というものが、国のほう、つまり環境庁のほうが把握なすっている資料の中にきちっと載っているのですよ、つまり、ここに載っているのは、ネットワークからはずれてないということになるのじゃないでしょうか。ネットワークによって把握なすっているからこそ、こういう資料がつくれるということじゃないでしょうか。いかがでございます。
  40. 春日斉

    春日政府委員 ただいま先生の御指摘になりました啓北その他の測定点は、これは道が苫小牧市の各地点に設けました測定局でございます。したがいまして、いわゆる正規のネットワークの一環であろうと思います。
  41. 土井たか子

    土井委員 それは違うと思うのです。よくそこに書いてある地点について、目を開いて見ていただきたいと思うのです。これはあとでまた聞きたいと思うのですが、これは市から道に測定点を移管したというのは四十八年の四月ですよね。しかも、その当時の把握のしかたというのは四十七年度ですよ、これは四十七年です。したがいまして、それからしますと、これはおっしゃった局長のネットワークから当然はずれていなければならないところを、ネットワークにかけて、ここにちゃんと記載なすっているのです。
  42. 春日斉

    春日政府委員 北海道庁が設けましたネットワークの一環として、苫小牧市に置きました測定局だと思います。
  43. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、これは勇払地区SO2デーダについて。これはネットワークからはずれておりますから、私たちとしては関知いたしません、という御答弁は撤回なさいますか。
  44. 春日斉

    春日政府委員 先ほども申し上げましたように、苫小牧のその他の測定局は道のものでございます。したがって、正規のものだと申し上げております。先生指摘の四十七年度の測定局、それから勇払のものは市みずからが、政令市でない苫小牧が設けたものでございまして、私どもに直接そのデータ報告があがってくるような仕組みになっていないものでございます。
  45. 土井たか子

    土井委員 それはそうじゃないと思うのですね。これは勇払地区については、その後いろいろ報告書等々を通じて考えてまいりますと、これはやはりネットワークの中に入っているというふうに考えなければならない。それで、いまの私が資料要求をしていただきました他の地点については、一々いま御答弁になったようなことに該当していますか。それは確認なすった上で、いまの御答弁をなさいましたか。
  46. 春日斉

    春日政府委員 四十八年版の「日本の大気汚染状況」の六八ページに出ております苫小牧保健所、双葉公園、明野、ウトナイ、啓北中学校は四十七年度の道の測定局でございました。ところが、ウトナイにつきましては、これは道の測定局から四十八年度は落ちております。したがいまして、先生の御指摘になりました四十七年度においては、ここに載っております測定局は、すべて道の測定局である、かように申し上げることができると思います。
  47. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、いまおっしゃっている「日本の大気汚染状況」に載っている記載の中身と、先ほど——三月二十二日御答弁になった中身とは、全く矛盾しないということをおっしゃっているわけでありますか。
  48. 春日斉

    春日政府委員 矛盾してないと思っております。
  49. 土井たか子

    土井委員 そうしますと。いまの地点について、しっかりと把握なすっているということを前提に、さらに質問を展開いたします。  曲がりなりにも年間にわたる測定データを出している。測定データのある大気汚染物質SO2だけじゃないかと思われるのですね、いままでずっとこの報告書について考えてまいりますと。そのSO2も四十七年度分の三地点の年間にわたる適合率を出しただけで、四十八年度分については五カ月分、七カ月分のデータしか評価されていないわけなんですね。しかも、アセスメント報告書を承認決定する段階で、北海道勇払地区の町データを隠蔽していたというふうなことによって、環境庁は勇払にSOデータがあって、短期的評価環境基準をオーバーする汚染実態があるということを御存じなかったわけなんですね。それからしますと、こういうふうな測定データでもって大気汚染アセスメントをはたして、したというふうなことがいえるかどうか。これは疑問の非常にあるところでございます。  さらに、これはSO2以外の物質についていうならば、窒素酸化物の連続測定データ、四十八年の四月に設置した明野、双葉の二測定点、七カ月間の測定データしかなかったわけですね。しかも二カ月分を、測定機器の調整期間中だということになってカットされますから、正味は五カ月分しかないわけであります。住民の集団移転まで問題になった例の勇払の沼の端地区の連続測定データはないわけであります。それから、さらにNO2の冬場の測定データは全くないわけであります。年間にわたる測定値がなくて、わずか五カ月間のデータで、なぜ、おおむね環境基準に適合しているというふうに言うことができるのでありましょうか。ひとつこの点についてお答え願いたいと思います。
  50. 春日斉

    春日政府委員 SO2におきましては、先ほど御指摘のとおり、勇払のデータというものをわれわれは存じませんでした。これはまことに遺憾であったと思います。しかしながら、勇払の四十八年の一月から四十九年三月までのデータをただいま私どもは持っております。それによりますると、それほど大きな汚染があるようには思われない。たとえば四十八年度分について申せば、勇払は六千三時間の測定中、一時間値の環境基準をオーバーしたのは三時間のみである。それから一日平均値をオーバーしたものはゼロである。こういうことでございますので、勇払地域現状汚染というものは、おおむねこれはいいものであろう、かように考えておるわけでございます。  それから沼の端等におきましても、四十七年度の状況から比べますと、やや改善のきざしが見えている、こういうことでございます。  それからNO2につきましては、遺憾ながら連続測定地点が二カ所よりなかった、あるいは観測期間が少なかったということは事実でございます。ただし、現在冬場のデータを整理中でございます。そういう意味で、私ども窒素酸化物につきましては、確かに御指摘のとおり、まだ資料不足の点がいなめない事実であった、これは申し上げられると思います。
  51. 土井たか子

    土井委員 いまおっしゃったとおり、四十八年についての資料把握なすっているかもしれないけれども、それはここで資料が欠落しているじゃありませんかということから端を発して後に入手なすった資料であります。そこで四十七年十一月から四十八年十月の一年間のデータで、当時においては評価をできたはずだということを、まず申し上げたいんです。あえて会計年度で統計処理するというふうにこだわられるならば、四十六年度と四十七年度のデータ環境基準適合率ということを出して、そして四十七年度分を現状というふうに考えることも、これはできたはずであります。そういうふうな問題については、今回あといろいろと補完調査をいたしますとおっしゃっている補完の中身には入らないんでありますか。
  52. 春日斉

    春日政府委員 補完調査はいろいろございます。先生の御指摘いただいたようなこともあわせて補完してまいりたいと思います。
  53. 土井たか子

    土井委員 補完してまいりたいじゃなくて、これはもう環境庁とされては、あの四十八年の十二月十日になすった同意決定というのは非常に大きいわけですよ。したがって、その時点に足を置いて、調査についてのいろいろな資料なりデータなりを考えられるというのが、私は基本的姿勢でなければならないと思うのであります。だから、その後に出てきたいろいろな資料について御検討なさるよりも先になさるべきは、やはり四十七年十一月から四十八年十月の一年間のデータ評価できたはずだという問題でありますし、それからさらに言うならば、四十六年度と四十七年度のデータ環境基準適合率というものを、あくまで会計年度で統計処理をするということにこだわられるならば、四十七年度分の現状というふうに考えることもできたはずだということを私は申し上げているのです。  ひとつこの点をなさらないと、一体その十二月十日の同意決定ということに対して、ほんとうに責任をお持ちになった態度とはいえないと思うのでありますが、この点はいかがお考えなんです。
  54. 春日斉

    春日政府委員 環境アセスメントでございますので、これはある時点で大体の方向を示し、その後さらに補完をしていくというのが一つのやり方であろうと思うわけでございます。ある時期、ある時点で明確に態度を決定して、以後全くその態度を改めないということではなくて、やはり自後のいろいろなデータによって補完をするというところが、私は生きた環境アセスメントだろうと思うのです。したがいまして、十二月十日の時点におきまして足らざるものがあったことは事実でございますが、その後の資料によりまして補完されてまいって、それがいい方向にあるとすれば、それはそれでよかったことだ、私はかように考えておるわけでございます。
  55. 土井たか子

    土井委員 それはさか立ちしているようなかっこうだと思うのですよ。大事な資料を抜きにしておいて、その後の資料だけを分析調査なすって、まあ状況はおおむねよかろうとおっしゃるようじゃ、これはほんとうに十二月十日の、あの環境庁の同意決定の中身というものが、おかしいということにならざるを得ません。どこまでも私は、四十八年の十二月十日の環境庁の同意決定という中身が問題だと思うわけでありますから、したがいまして、その資料ということからすると、その後の資料をいろいろ分析調査された結果、思わしいとか思わしくないとおっしゃるのは、私は別問題だと思うわけであります。  十二月十日以後の問題についても、もちろん調査されることは大事ですよ、いまの御答弁のとおり。しかし、十二月十日現在、四十八年十二月十日以前の資料について欠落していたという部分に対して、まずこの検討を進められるということが、やはり、補完をするとおっしゃるわけでありますから、ほかの中身からすると、まずおやりにならなければならなかったことじゃないか。その部分がいまだにはっきりしていないようであります。これはおっつけやるというふうな御答弁でございますけれども、これはぜひそっちのほうが先だということをはっきり認めていただいてやっていただかぬことには、私は意味がないと思う。  補完補完とおっしゃるけれども、補完調査といったら、かくもあいまいなものであるということを言うにしすぎないと思うのですよ。ひとつその点、しっかりやっていただかなければならないということを申し上げたいと思います。  さて、ここでちょっとお尋ねしたいことがあるのですが、昭和四十七年当時、苫小牧地区には、導電率法によるSO2の測定点は幾つかございましたでしょうか。
  56. 春日斉

    春日政府委員 当時、五局でございました。
  57. 土井たか子

    土井委員 そういうふうにいまもお考えですか、当時、五局というふうに。
  58. 春日斉

    春日政府委員 四十八年は六局でございます。
  59. 土井たか子

    土井委員 ちょっとここで委員部にお渡しをしていた資料をお配りしてくださいませんか。もうお手元にありますか。——そのお手元にある資料をひとつ見ていただきたいと思うのですが、これの二枚目にあるところを、ちょっとにらんでみていただきたい。これな四十八年八月三十一日に、苫小牧市の公害対策審議会に提出された資料の中の一枚でございます。それによってごらんいただきますと、一体SO2の測定点は、何点になっておりますか。
  60. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  61. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 速記を始めて。
  62. 春日斉

    春日政府委員 この表によりますと、七点でございます。
  63. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、先ほどの御答弁と食い違いますね。
  64. 春日斉

    春日政府委員 まさに、そのとおりでございまして、いただきました資料によりますと、ウトナイユースホステルという測定点があるようでございますが、私ども承知いたしておりません。
  65. 土井たか子

    土井委員 先ほどは四十七年度には五点とおっしゃったのじゃないですか。これは四十七年の問題なんですが、五点とおっしゃったですよ。そうしますと、ここにあるのは、市のほうが管理しているのは六点、道はウトナイユースホステル一点、都合七点なんですが、いま五点とお答えになった。ユースホステルについては御存じなくても、あと測定点は六点あるのです。御答弁は五点、やはり食い違いがあるわけであります。
  66. 春日斉

    春日政府委員 私ども資料によリますと、沼の端保育園が四十七年度はまだ入っていなかったようでございます。したがいまして、五測定点と申し上げたわけでございます。
  67. 土井たか子

    土井委員 それは沼の端保育園ではないと思います、これはあとで申し上げますが。  それで市の測定点を、いつ道の測定点にされたわけでありますか。
  68. 春日斉

    春日政府委員 四十八年度は四十七年度に比べまして、沼の端の測定点を道が設けた、こういうことでございます。
  69. 土井たか子

    土井委員 市の測定点をいつ道の測定点にしたのかということを私はお伺いしておるのですよ。
  70. 春日斉

    春日政府委員 正確なる期日につきましては、調査いたして御返答いたしたいと思います。
  71. 土井たか子

    土井委員 これはまた聞けば聞くほど驚くのですが、テレメーター化したのは四十八年の四月であります。そういうことも御存じなかったですか。しかも、いまの御答弁からすると、現地のこの公害対策審議会に提出されている資料中身と、観測地点の数からして、まず食い違うのです。これほどずさんなことはないと思うのです。だんだんこれについても追い詰めますが、まずこれをお答えください。
  72. 春日斉

    春日政府委員 たびたびお話し申し上げておりますが、道の持っている測定点、それから市が持っているものを道に切りかえた、あるいは市がそのまま持っておる、そういったかなり複雑した事情があったことは私も存じております。しかしながら、その詳しい、いつ何点が道の観測点に移管されたかということにつきましては、調査してからお答え申し上げたいと思います。
  73. 土井たか子

    土井委員 だから三月二十二日の、かのネットワーク論というのが問題になってくるわけでありますが、道のほうに移管されれば、当然ストレートに局長の言われるネットワークの中に入っているのでしょう。したがいまして、これは市から道のほうに移管をしたというのが四十八年の四月、これは当然そういうことはおわかりだと思っているのですよ。この点も、後刻ひとつはっきりお確かめを願いたいと思います。  さて、先に進みます。その資料をごらんいただきたいのですが、それの一枚目に、環境アセスメント報告書の四十八年度の測定データ環境基準適合率の表が載っておりますが、勇払をはずして六測定点の結果が並べられているわけでありますね。四十七年度分についてはなぜ旭、双葉、明野という三測定点の結果だけを示して、先ほど資料の二枚目でごらんいただいたとおりに、この残る他の四測定点のデータを出さなかったのか、これがたいへん問題になってくるわけであります。これは道のほうに四十八年の四月に移管されてから後でもけっこうです、ネットワークの中に入ってからでもけっこうであります、こういう問題について、環境庁としては把握をなすっていたか、また把握をなすってお調べになったか、いかがですか。
  74. 春日斉

    春日政府委員 御指摘のとおり、この四十七年度の測定点が旭、双葉、明野、この三測定点だけより示していない、これは事実でございます。
  75. 土井たか子

    土井委員 そうすると、年間にわたる測定値で評価したのは、四十七年度のSO2については旭、双葉、明野の三測定点のみでございまして、現地においては、公害対策審議会のほうに配付されている資料では、他の四地点のがれっきとして載っかっているのですよ。これが全く欠落しているということ、これについてはお認めになりますね。いかがです。
  76. 春日斉

    春日政府委員 報告書に載せてなかったことは、おっしゃるとおりだと思います。
  77. 土井たか子

    土井委員 報告書に載せてないから知らなかったでは済まぬと思うのです。  なぜかといいますと、王子製紙に近い、その二枚目の表をごらんいただいたら一番最初に載っかっております元町下水道中継ポンプ場、この四十七年の測定データをごらんいただきたいと思うのですが、一日平均値〇・〇四PPMの環境基準値を十七日もこえているのですね。これは長期的評価適合率九八%をはるかに下回るのですよ。計算してみると九三・八二%、そういうふうな汚染実態を持っているわけです。  なぜ報告書には、このような元町ポンプ場——四十八年四月から、矢代という名前でこれが載っかっているわけでありますけれども、そういう四測定点の測定データが落とされているのか、これは問題が非常にあるところですよ。しかも、これはごらんいただいたら、ここに記載されているとおり、二日間連続して〇・〇四PPMをこえないことということに対して、違反しているのが四回もあるのです。たいへん問題の地点ですよ。こういうことが欠落しているということは、これはゆゆしいことだとお思いになりませんか。
  78. 春日斉

    春日政府委員 八代という測定点につきましては、私どもの「日本の大気汚染状況」の中には記載してございませんので、おそらく四十七年度は、まだ道の測定点となっていなかったものと考えております。
  79. 土井たか子

    土井委員 それは先ほどの勇払の問題についても同様なんです。これは、この資料が全く欠落していることに対してお認めになって、そしてあと追いで、これに対して補完調査をなすった。その補完調査中身も、先ほど私が申し上げているように、さか立ち調査でありましたけれども、補完調査をなすった。この勇払については、ネットワークに入ってなかったのでしょう。同じような意味で、いまこれ言えるんじゃないですか。あの後については、この十二月十日の環境庁の同意決定、あの同意決定の中身が間違っておりませんということをおっしゃることのためには、補完調査中身に対して十全を期しておっしゃっていただきたいですよ。そういう点からいうと、勇払に限らないです。いまここで、この四地点というものが全く姿を消して報告書の中からなくなってしまっているという事実。一体、何のためにこの四地点が削り落とされて、報告書には記載されてなかったか。これは先ほど申し上げるとおりで、この王子製紙に近い元町下水道中継ポンプ場のように、長期的評価からしても、また一日平均値〇・〇四PPMを二日連続して四回も乗り越えているという実態があることからしても、故意に隠蔽したというふうに——これは独断てあれば幸いですけれども、こういうことになってまいりますと、そういうふうに推測されてもしかたがないですよ。  事実これは、私は、故意、過失ということを、むしろ追及しなければならない具体的な例になると思うわけでありますけれども、こういうことに対して環境庁とされては、すべての測定点の環境基準適合率を見直すために提出するよう指導されたのかどうか。そのチェックがいまだに不十分だということを私は言わざるを得ないわけでありますけれども、どういうふうにお考えになりますか。
  80. 春日斉

    春日政府委員 先ほど申し上げましたように、矢代の問題につきましては、四十七年度はおそらく道の観測点ではなかった、まだ苫小牧市の観測点であったであろうと考えます。そうして先生指摘のように、当時の矢代の四十七年度のデータは、かなり汚染地域と断定してもいい資料が得られております。しかしながら、四十八年度の資料を見てみますと、これは四十八年の四月から四十九年の三月までの一年間を見てみますと、一時間値あるいは一日平均値とも、環境基準にいずれも一〇〇%適合しているということから、その間に、かなりの企業の改善あるいは市及び道の指導による改善があったものと考えております。
  81. 土井たか子

    土井委員 ただ、四十八年度を見ると、そういうことになっているからいいじゃないか、いいじゃないかじゃないと思うのですよ。四十七年当時の資料が、れっきとしてここにあるのです。それがしかし、具体的には報告書から削り取られているのですよ。その問題をそのままに隠蔽してしまって、いいかどうかということを、ひとつはっきりさせていただきたいのです。  四十七年当時にこういう事実があるのなら、事実を事実として、まず認識なさって、なぜ四十八年のデータと比較してみたら、これだけ違いが出てきたかということが初めて問題になる。また、改善をされたから、そうなったんであろうというふうな、いまのお答えでありますけれども、具体的に、どういうことをどういうふうに改善したかということも、把握なさる必要が私はあるだろうと思います。  それでこそ、この十二月十日、もうすでに同意決定されてしまっている環境庁の補完調査としては、十全を期すということは無理かもしれないけれども、できるだけ努力をいたしましたということについて、いささか私は認めます。けれども、その中身を先ほど来聞けば聞くほど、さらに、そのあと追い調査をやっていらっしゃる中身もずさんであるということを言わざるを得ない。  ちょっとお尋ねをいたしますけれども、いまお手元にある資料の二枚目のそれぞれの測定点については、ほんとうに環境庁とされては御存じなかったんでありますか。そして、現にこの地点それぞれの測定データについては、この測定データ提出することを命じてはいらっしゃらないわけでありますか。つまり、手元に資料をお持ちにはなっていらっしゃらないということでありますか。いかがですか。
  82. 春日斉

    春日政府委員 御指摘のとおり、この資料につきましては、私ども持っていなかったわけでございます。一連のお話を伺っておりますと、矢代地域測定の問題は、あたかも勇払の測定の問題と酷似いたしておりまして、私どもにそれが正規に提出されなかったということは、先生の御指摘どおり残念である、遺憾である、かように考えております。
  83. 土井たか子

    土井委員 これはぽろぽろ、ぽろぽろと、そういう問題があとになって出てきているんですね。いまのとおり、それは遺憾であるというふうにお認めになっておりますけれども、それに対して、それならば、これからどういうふうになさろうとなさいますか。
  84. 春日斉

    春日政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、矢代地域測定点、四十八年度の年間のデータを見ますると改善されておる、こういう事実がございますので、この問題につきましては、それほど問題にしなくてもいいのではないか。ただ御指摘のとおりに、十分あるべき資料というものは洗いざらい出して、環境アセスメントデータとして資すべきであった、こういった点から見ますると遺憾であった、こう申し上げておるわけでございます。
  85. 土井たか子

    土井委員 これは、報告書を作成されているのは道でしょう。そうしますと、報告書の中に当然記載すべき問題がぽろぽろ落ちていたということをお認めになっているわけです。これは作為があったかなかったか、よくその辺はわかりませんけれども、しかし、資料としては不十分なものを、道は策定なすったということだけは明らかなんです。おそらくは——しかしこほれ落ちているところを見ますと、資料中身からすると、環境基準に照らし合わせて思わしくない地域ですよ、これ。そういう点からすれば、作為があったとしか思いようがないんです。  こういうことになってまいりますと、いまお手に持っていらっしゃる道から入手なすったいろいろな資料、四十八年四月から十月までの七カ月間の測定データも、実は同じような意味において十二分に信用することは、もはやできないと思うのが、これは人情ですよ。常識だと思うんです。以前に、こういうふうなことによって調査報告書を出しているんですから。なぜなら、苫小牧地区で高濃度の出る冬場の十一月から三月までを落とすという、統計処理上の作為と操作ですね。環境基準適合率をすべて一〇〇%にそろえて、その上でおおむね環境基準に適合していると思われるという、四十九年一月十二日の港湾審議会における港湾管理者、つまり北海道の道庁の説明が、一〇〇%満足を強調しているという結果になっているんです。  だから、こういうふうな行き方からしまして、いまのこの資料の欠落というのは意味が大きいですよ。たいへんに大きいということを言わなきゃならない。こういう資料というものを欠落させておいて、そして報告書に従ってつじつま合わせをやって、おおむね環境基準に適合していると思われるという四十九年一月十二日の港湾審議会での道の発言、そうして次いで一月十八日の運輸大臣の、この港湾計画を適当とみなして港湾法によっての許可決定の通達、こういうことになっているわけでありますから、前後から考えてみると、きょう私がお尋ねをして、実はその点は知りませんでした、勇払の問題と同様に欠落をしていることを知りませんでしたと率直にお認めになった、欠落していた部分の、この報告書の持っている意味というのは、非常に大きいということを言わざるを得ないです。いかがです。
  86. 春日斉

    春日政府委員 勇払の測定点の問題が俎上にのぼったときに、私お答え申し上げたのでございますが、当時の北海道の責任者に確認いたしましたところ、なぜ勇払を正規の環境アセスメント報告に載せなかったかと申しますと、実は、道が責任をもってみずからの手で観測したデータのみによって報告書を作成したのでございます。したがいまして、内部資料としては十分に検討はいたしましたけれども、正規の報告書には載せなかった、こういう話であったわけでございます。矢代についても、おそらく同じような考え方であったであろうと思います。  当時、それに対して私は、しかし参考としてでも、それは載せるべきではなかったではないかということを道に対しては申してございます。したがいまして、私は、道の立場がみずから行なっていない資料を使うのは、どうもいさぎよしとしないというような一種の考え方があったことは事実であろうと思います。またある意味からいえば、それは必ずしも悪いことではないと思いますが、いずれにいたしましても、大きな問題になっております苫小牧市のデータでございますから、あらゆる既存のデータを活用するということが、私は環境アセスメントをやるのに対して正しい態度であることは間違いないと思います。  そういう意味からすると、私は残念であったと思いますが、しかし、これは大きな作為のもとに行なわれた、かようには私、考えるつもりはございません。
  87. 土井たか子

    土井委員 それは作為があったかなかったかなんというふうな話になりますと、これは当委員会での論議の中身からすると、少しはずれてまいりますから、私はそれに対して深追いはいたしませんが、ここでひとつ、運輸省の竹内港湾局長がお見えでいらっしゃると思いますから、ちょっとお尋ねをしたいことがあるわけです。昨年十二月十日の環境庁の同意がなければ、運輸省の港湾審議会へ苫小牧東港計画をかけることができなかったというふうに私は考えますが、この点はいかがでございますか。
  88. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 港湾審議会のメンバーの中には環境庁の次官もいらっしゃいます。その港湾審議会にかける前に幹事会というのがございまして、その席でいろいろ議論をいたしまして、政府の関係の方々の方面の、それぞれの行政の立場からの御批判もいただくことになっております。環境庁がもし反対されるといたしますと、その幹事会では当然通過することできませんので、実際問題として、この港湾審議会にかけましても、正当な計画とは認められなくなるということでございます。したがいまして、環境庁の御意見が非常に重大な意見になるわけでございます。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 土井君に申し上げますが、理事会の申し合わせもありますので、それを踏まえて集約していただきたいと思います。
  90. 土井たか子

    土井委員 承知しました。  四十八年の十二月十九日の港湾審議会における議事録を私は手元に持ってまいりましたが、これを見てまいりますと、議事録の一四ページから一五ページ、一八ページから一九ページにかけて環境アセスメントについて局長発言がございます。「十分自信のある」「環境に十分自信のある開発」である、「十分自信が」、私はずっと自分で読んでみますと、約五分くらいで読める部分でありますが、計十回も連発をなさっているわけであります。  たいへん失礼なことを申し上げますけれども、港湾局長は環境問題の専門家じゃないと私は思います。港湾審議会の委員を前になさいまして、たいへんに十分の自信を断定的におっしゃっている。環境庁ですら、先ほど来御答弁にございましたとおり、港湾審議会や国会の場所で、十分自信かあるとは一言もおっしゃっておりません。むしろそれのみか不十分なアセスメントだということをお認めになって、規模の縮小などを求めることもあり得るということを、文書で条件をつけて見直し補完をするとまでおっしゃっているくらいなんであります。  そこで、私は、局長にお尋ねをしたいのは、大気汚染や水質汚濁、自然保護について十分自信があると言われたその科学的根拠というものは、一体どこにあるのかという御説明を、ひとつ賜わりたいと思うのです。
  91. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 先生がおっしゃいますように、私が発言した審議会における説明ではややそういう感がございますが、実は、この際の十分自信があるというニュアンスはどちらかといいますと、当時のこの計画昭和六十年の計画ではないかとか、あるいは五十三年までの計画ではないかとか、いろいろ他の方面の議論がございまして、私の説明した趣旨はどちらかといいますと、大きな昭和六十年までの計画ではないのだ、いまここにある石油あるいは電力、自動車、この立地、すなわち苫小牧市がつくりました計画までの計画を、それに対応する港湾の計画を審議していただきたい。その際に、じゃ、どこまでの計画かといいますと、環境につきまして十一省庁会議で大体自信のあるもの、そういうところまでの計画について御審議をいただきたいのだ、こういう趣旨の発言をしているわけでございます。  確かにこれだけ読みますと、環境には絶対十分自信があるというような印象を受けるかと思いますが、その節の港湾審議会におきましての説明の趣旨は、いま私の言ったとおりでございまして、その以前におきまして、幹事から環境庁の御意見といたしまして、先生が先ほど言われましたように十分ではないのだ、補完していかなければいけないのだという点につきまして、冒頭説明している次第でございます。  その後もこの審議会におきまして、環境庁側からの御意見といたしましては、環境アセスメントにつきましては、やはり非常に知見が限られておって、今後ますますその知見を加え、補完しながらやっていくのだという点を十分に御説明になっている次第でございます。これは二〇ページにあるわけでございますが、どちらかといえば、港湾審議会のメンバーの方々環境庁の御意見を十分理解してやっているはずでございます。
  92. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、それは表現の点で、御発言の点で不穏当、不適当な点があったかもしれないということは、お認めになっているわけでありますが、運輸大臣が一月十八日付でお出しになった苫小牧東港計画というふうなものの中身が変更することはあり得る、また、場合によったら、その通達の中身というものが、原状回復というふうな意味で通達を撤回する場合もあり得る、極端に言うと。中身は一部変更する場合もあり得る。また、場合によったら、もう一つ進んで、その通達自身を撤回をして練り直す場合もあり得るというふうにお考えになっていらっしゃるかどうかを、ひとつお聞かせいただきます。
  93. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 運輸大臣の通達の中に、通達を撤回する云々という点はございません。港湾の計画につきまして、その後の企業の立地であるとか、あるいは船の使い方、そういうものを十分にらみ合わせながら防波堤の計画であるとか航路の計画を再検討しなさい、こういうような趣旨のことを通達しております。  それから、なおこの計画自体は計画そのものでございますけれども、そのバックとなる基本計画、これが変更となる場合、すなわち立地の企業等が変更となる場合には、この港湾計画そのものを変更するということに計画そのものはなっているわけでございます。
  94. 土井たか子

    土井委員 その点は環境庁の意見、環境庁のいろいろな検討に対する結果等々についても十二分なひとつ連絡をとり合いながら、この考えの基本に置いていただくということを、ここではっきり申し上げておきたいと思います。お願いしておきたいと思います。  さてその次に、これは時間が参りましたから、締めくくりのようなことで申し上げたいと思うのですが、環境庁長官、先ほどから私がるる質問をさせていただいている中身からしますと、SO2のアセスメントについてははっきり十分でなかった、一部欠陥があったということをお認めになっていらっしゃいます。苫小牧地区SO2の排出総量というものを削減をしていって、何とか結論ではつじつまを合わせようというふうな小手先の細工はいけないと思うのですね。今回のこれは、総量規制にひとつ足を踏み出して、そして大気汚染防止法中身についても、ひとつ意欲的にやろうじゃないかというふうな向きで今回の改正案というものは出ているわけでありますから、そういう点からしますと、私がきょう御質問させていただいたことは決して無関係じゃない。現に「環境基準の設定に伴なう課題について」というので中公審あたりが出していらっしゃる中身を見ても、環境アセスメント実施推進には、かなりこれは留意をなさっているわけであります。  そこで、大気汚染関係のアセスメントはいろいろ十分にやろうというふうなお気持ちで取りかかられるんでしょうけれども、結果からすると、水がこぼれたり、手抜かりがあったり、それから手抜きがあったりするようなものになっているのですが、今回の苫小牧東部開発計画について問題にしていった場合に、その理由は、いろいろある中で、一つは集団移転まで検討していた問題の地域ですね、勇払地域にあった四十八年一月から十月までの十カ月間のSOデータが隠されていたということ。それから二つ目には、しかもその測定値が短期的評価環境基準をこえていたということ。これはもう先日ではっきりしたわけです。三つ目には、四十七年度のSOデータのうち最も汚染度の高い元町ポンプ場の測定結果を報告書に入れていなかったということ。これはきょうお認めになったわけです。それから四つ目に、四十八年度の測定データも一〇%環境基準に適合しているというふうに強調はなすっておりますけれども、冬場の測定値を入れていないために環境基準不適合の疑いが、調べてみると、まことに強いということ。それから五番目に、NO2、浮遊粒子状物質、HF弗化水素でありますが、これは冬場の測定値すら出されていないということ。  こういうことを総合して考えていきますと、アセスメントとして十分とは決していえない中身を持っているのです。これは長官もお認めになると思うのです。そういう点からすると、環境庁がみずから手がけられた環境アセスメントの第一号なんでありますから、そういう点で、全面見直しということを、この節この法案の改正案を提案なすったということも絶好のチャンスなんですから、これを機会に全面見直しをすべきではないかと私は思います。  したがって、この場で長官にひとつお尋ねをし、また要望したいことは、環境アセスメント報告書の再検討をひとつ全面的に約束しましょう、場合によったら、いまある環境アセスメント報告書については出直すつもりでやりましょう——白紙撤回と私は言いたいんだけれども、それはおそらく長官、そんなことはできません、もうすでに道のほうは出してしまっていて、それを受けて、もう十二月十日も既成の事実だとおそらくおっしゃられると思うんだけれども、しかしながら、そうじゃなくて、ひとつ出直すぐらいのつもりで全面見直しをやるべきじゃないかと私は考えます。どうでしょう、長官、その辺をひとつ約束していただけませんか。
  95. 三木武夫

    ○三木国務大臣 土井さんのいままでの熱心な御質問、非常にもっともだと思います。こういう工業開発のような場合には、どうしてもやはり開発というもののエネルギーのほうが強いですから、ややもすると、やはり環境アセスメントのほうが、あと追いになる場合がある。全体として国の政治が環境第一ということに変われば別ですけれども、やはりまだ、ことばでは言いましても、政治全体の姿勢が変わっているとは私は思わない。  そういうところに、いろいろと御質問になったことは意義があるとは思いますが、いまこれを全部撤回ということは考えていないのですけれども、いまの御質問にもいろいろあったように、欠陥のあることは事実ですから、それを補足するという調査をやる。全体を白紙撤回ということは、歯切れがいい答弁ですけれども、そうはいたしませんので、補足的な調査は十分いたしますのと、将来の立地に対しては、立地というものは、全体の環境基準との影響というものを、今度こそは手抜かりのない十分な検討を加えて、環境の保全をはかりたい所存でございます。
  96. 土井たか子

    土井委員 私が長官に寄せている期待は絶大なんですよ。それで、いまの白紙撤回ということを言うたら、歯切れがいいけれども、そうは言えぬ、ただ、政府全体の姿勢が環境保全優先ということに変わっていれば問題は別だが、なかなかそうはいかない事情があって非常に苦しいのだというふうな御発言でありますけれども、私は長官に期待をかけている。  それで、最後に申し上げたいのは、これは補完するとか補充するとかいうふうな意味で、ひとつ報告書中身を再検討してみたいとおっしゃっていますけれども、これはつじつま合わせをするための細工であってはならないのです。すでに報告書に従って、環境庁も昨年の十二月の十日に、同意決定をやってしまっているのだから、事は済んだという態度で取り上げられてはならないことだと私は思うのです。あそこでの開発計画がいまのとおりに着工されて、そして進んでいきますと、これはやっぱり、ああ、あのときにこうしておけばよかったという状況が出て、被害者がその中に出て、それからあと取り上げてもおそいのですよ。  したがいまして、そういう点からいうと、全国は環境庁アセスメント第一号をいまにらんでいる。そういう意味を込めて、つじつま合わせでなくて、ひとつ抜本的にもう一度見直すという姿勢でこれを取り上げて、先ほど来局長答弁でも、四十八年度のデータについては、るるおっしゃいますが、実は十二月十日に決定したあの資料は、四十八年度のデータではございません。四十七年度のデータをそろえて、それに従っての決定でなければならなかったはずなんです。その辺はいまだに入手をなすっていらっしゃらないという事情もございます。したがいまして、やっぱりつじつま合わせば困るのですよ。いまはこうだからいいじゃないかとか、これから先少し手直し考えながらやりますから、まかせてくだざいということでは困るので、環境アセスメントはこれでいくというふうなモデルケースをいまここで、あの北海道苫小牧の東部開発のこの問題について、環境庁環境アセスメントをやった第一号の中に実現してみせるということでおやりにならないと、せっかくいただいた今回の改正法律案参考資料の中で、るる述べていらっしゃる事柄に対しても、十分に環境庁は努力をなすっているというふうに国民は見ないだろうと私は思うのです。  再度お考えをお聞かせいただいて、私は終わりにします。
  97. 三木武夫

    ○三木国務大臣 きのうも日米の公害の閣僚会議がありました。私はその中で一番強調したことは、アセスメントです。みなアセスメントアセスメントと言いますが、これは国民の信頼にこたえられるようなアセスメント手法と手続をやらなければ、いつも開発というものについて地域社会との間にトラブルが起こるということは一体どういうことだ。開発は全体としてのレベルアップを考えるのですから、みなが喜ぶはずなんです。それが地方全体の平和を破るようなことになってくることは、やはりこれからはアセスメントというものがみなの信頼にこたえるような手法と手続によらなければならぬと非常に強調し、そしてこれからいろいろな点で、お互いに情報交換や研究を重ねていこうということを一番アクセントをつけた議題にしたわけであります。  この場合も、言われることはわかりますけれども、しかし、一体環境を保全するために問題は何かといえば、そこへの工場誘致でしょう。それがいろいろな汚染物質を出すということが環境全体を汚染するわけです。いまのままで、そのままで置いておくなら、どうということはない。そこにややもすると環境を脅かすような工場がたくさんやってきて、そこで環境の破壊があるのですから、今後工場立地に対しては、全体の環境保全のために厳重な態度でわれわれは臨みますということは、全然手おくれだという土井委員のお考えとは私は違うのです。いまだったら何もしないのですから、これから来る工場の誘致、それが出す汚染物質というものに対する手抜かりのない厳重な監視の目をわれわれが持つということが環境保全の中心の課題で、いろいろな欠陥のあったことは事実ですよ。しかし、それだからといって、これは全然手おくれだという見解とは私は異にいたしておるものでございます。  しかし、いろいろな御注意をされますことは、よくわかりますよ。また、われわれ自身もいまのアセスメントというものは完全なものとは思っていないのです。そういう点で、いろいろ長時間にわたる御質問は、環境行政の重要な教訓といたす所存でございます。
  98. 土井たか子

    土井委員 これをもって私は終わりにしますと言いましたが、いまの御答弁を聞いていると、少しすれ違いがありますので、もう一問だけ言わしてください。  環境アセスメントが大事なことは強調された。ただ、そこに工場がやってくることが問題なので、工場がやってきたら、そのうちどういうふうな環境の変化があり、人体にどういう影響がそこで出てくるかということが一つは問題だとおっしゃった。それはそのとおりかもしれませんが、長官、環境アセスメント出発点というのは、現状がどういうものであるかということを正確に把握することから出発すべきじゃないでしょうか。  それで、いま私は苫小牧の問題に対して、きょうも長時間かけて問題にしたのは、現状の認識に対して正確にキャッチなすってなかったということがそもそも問題だということを申し上げたのですよ。現状認識の上でも、いまの環境庁がおきめになっている環境基準をオーバーしている実態があるのです。それをそのままで置いておいたら、何でもないとおっしゃるけれども、何でもないことはない。そのままに置いておくわけにいかない現状があるのですよ。その現状を正確にキャッチをなすって、さらにそこに、こういう大規模な開発がなされた場合にはどうなるかということを、それから考えなければならぬ。だから現状に対しての正確な認識がないところを私は言っているので、工場が出てきてから、それからどうなるかということについては、それから先の話であります。  したがいまして、長官、ちょっとその辺で、御答弁を私は承っておりましたら、すれ違いがあったようでありますから、ぜひ私が言っていることの趣旨を御理解をお願いいたしまして、最後に御答弁をお願いしたいと思います。
  99. 三木武夫

    ○三木国務大臣 すれ違いとも思わないのです。最終的には私はそうだと思うのですが、言われるように、アセスメントですからね。事前の評価調査をやるわけですから、いまの現状というものを十分に把握することは、これは大前提です。そういう点にいろいろな手落ちのあったことは事実ですから、これはやはり補足して、そういう調査は十分に行なって、そのことの上に立って将来は、やはり工場立地というものに厳重な態度をもって臨んで、いままでの計画というものは、そのまま認められない場合も起こりましょう。そういうことで、今後そういういままでの環境アセスメントというものに対して、これが北海道民の信頼にこたえるような環境アセスメントに持っていきたいと考える次第でございます。
  100. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  101. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 米原昶君。
  102. 米原昶

    ○米原委員 深刻な大気汚染による公害病の悲惨な実態は、四日市公害裁判でも余すところなく明らかにされてきました。しかし、あの裁判で被害者が勝利したにもかかわらず、その後の事態は必ずしも実際にはいい方向に向かっているとは、まだいえない。こうした公害病患者をはじめとした国民の要求によって、総量規制の法案が提出されたということは、私は一歩前進として非常にけっこうなことだと思うのでありますが、この法案を読みますと、まだ手放しで喜ぶわけにはいかない点が若干あります。  そこで聞くわけでありますが、いまもお話のあった環境基準の問題であります。公害対策基本法には、環境基準については「維持されることが望ましい基準」こうあります。つまり、単に望ましいものとなっております。今回のこの総量規制は必ず環境基準を実現する規制と考えてよいかどうか、この点が第一の聞きたい点であります。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  103. 春日斉

    春日政府委員 そのとおりでございます。
  104. 米原昶

    ○米原委員 この総量規制環境基準を実現するものとすれば、環境基準を十分維持するのに見合う汚染物質総量、これとリンクする総量規制、これがこの法律で実現されると考えてよいかどうか。
  105. 春日斉

    春日政府委員 結論的には、先生の御指摘のとおりでいいと思います。  やや具体的にお答え申し上げますと、現行の排出基準では環境基準の確保が困難な地域につきまして、新しい規制方式として総量規制というものを考えて、それを導入しようということでございます。そうして、これによって計画的に環境基準を確実に達成を期そうというわけでございまして、これが今回の法律改正の最大眼目、こう申し上げることができようかと思います。したがいまして、この法律案に盛られております仕組み全体が、指定地域において環境基準の達成を目ざしておるわけでございますから、従来の排出基準に比べますると、環境基準とのリンクがより直接的である、こういうように申し上げることができようかと思います。
  106. 米原昶

    ○米原委員 次に、すでに国に先んじて総量規制実施している自治体があります。そういうすでに総量規制を実行している自治体との関連について聞きたいわけであります。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕  当面、この法律の施行にあたって対象とする物質は、硫黄酸化物だけだと聞いておりますが、自治体の中にはすでにNOxについても実施しているところ、また実施しようとしているところがあります。これらのものについては、自治体の積極的な行政姿勢のあらわれであるから、当然これは環境庁としては積極的に評価しておられるということだと思いますが、どうでしょう。
  107. 三木武夫

    ○三木国務大臣 自治体でNOxを取り入れて総量規制をやっている、この自治体の環境保全に対する意欲はそれなりに評価をいたします。しかし、いまここにすぐに、われわれがNOxを取り入れることには、まだ技術的な開発研究の余地がありますので、SOxから始めて、できるだけ早くNOxにも及びたいと考えておる次第でございます。
  108. 米原昶

    ○米原委員 国に先んじて自治体がやっているわけでありますから、国が積極的にこれを評価されるのは当然だと思いますが、これに関連して、環境庁としては当面対象物としては、いまSOxのみしか考えていないという話でありましたが、現在の実態を考えれば、そのほか少なくともNOxやばいじんについても指定すべきだと思うのであります。指定しない、または現在のところは、それができない、その理由はどういう点でありましょうか。いまもちょっとおっしゃいましたけれども、できるだけ早く指定する必要があると思うのです。いますぐは無理なら、NOxやばいじん、それぞれいつごろをめどにして実施するつもりでおられるかどうか、そのあたりも簡単にでもいいから聞かしてもらいたいと思います。
  109. 春日斉

    春日政府委員 ただいま長官がお答え申し上げましたように、当面は硫黄酸化物から出発するわけでございますが、できるだけ早く他の物質に及びたいと考えております。この場合は、まさにプライオリティーに準じて、優先度の高いものから指定していくわけでございますが、それは当面窒素酸化物が第二になろうかと思います。続いてばいじんというかっこうにいこうかと考えております。  ただ、ではなぜ窒素酸化物硫黄酸化物と並んで最初から指定できないかというお話でございますが、窒素酸化物は、御承知のとおり、自動車を含む多種多様な発生源から排出されておるわけでございます。ことに自動車というように、固定された発生源ではございませんので、削減目標総量の算定に必要な汚染予測手法というものが確立されていない、こういうテクニックのおくれがあるわけでございます。また、総量規制基準の設定方式が硫黄酸化物に比べますと、相当複雑だという事情もございます。また公害防止技術というものが、窒素酸化物の場合は硫黄酸化物に比べますと、はるかにむずかしく、開発中のものが多いということでございますから、現時点で発生総量を大幅に削減するということがなかなかむずかしい、こういうことでございます。したがいまして、窒素酸化物については、こういった問題点の解明につとめるといたしまして、当面は現行の排出規制の強化から、まず窒素酸化物については入ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。ばいじんにつきましては、粒子状物質の発生源と申しますものは、ばい煙発生施設だけではございませんで、いろいろ、自動車の排ガスにもあれば、粉じんの発生施設にもある、あるいは自然の山野からの発生もあるということでございまして、これもまた予測手法というものが、なかなか確立されていないということでございます。したがいまして、私どもは、そういった基本的な手法が確立されていないにもかかわらず、かなり思い切った方法で規制をするということは、やはりとるべきではない。この点は慎重に私どもは行なってまいりたいと考えております。
  110. 米原昶

    ○米原委員 それで いつごろがめどになりますか。その点も聞かせてください。
  111. 春日斉

    春日政府委員 これはただいまも申し上げましたように、四十九年度は窒素酸化物総量規制方式についての予算も私ども獲得し、それに応じてこれから検討することにいたしております。その結果を見てからのことでございますから、少なくとも四十九年度以降ということでございます。
  112. 米原昶

    ○米原委員 それではさらに、自治体の行政との関連で聞きますが、現在総量規制を行なっている地域はすべて、そのまま指定地域として引き継ぐか、もしそうしないところがあるとすれば、それはどこか、それを聞きたい。
  113. 春日斉

    春日政府委員 この法律によります指定地域の要件と申しますものは、「工場又は事業場が集合している地域で、」現行の規制方式だけでは環境基準の確保がむずかしい地域でございます。現在硫黄酸化物について地方公共団体が総量規制あるいはこれに類似する制度を実施していらっしゃる地域というものは、その地方公共団体が現行の規制方式によっては環境基準の確保は困難だ、こういうふうに考えて、そういった規制を行なっているものと考えるわけでございますから、できるだけ国の指定地域に指定していくよう私ども検討してまいりたいと考えております。
  114. 米原昶

    ○米原委員 もう一つ、つまり、大体そういうことでしょうが、現在指定されているところで、すべてではなくて、何か指定されないところもあるわけですか、そういうことは考えておられますか。
  115. 春日斉

    春日政府委員 これはケース・バイ・ケース、いろいろ当たってみないとわかりませんが、おそらく現在都道府県ないしは政令市の段階で、総量規制あるいはそれに類似の方式をおとりになっているところは、ほぼ私どもの指定地域に入るものと考えております。
  116. 米原昶

    ○米原委員 参議院でこの法案が審議されたおりに、当面指定地域とするところは、現行のK値規制の第一及び第二ランクの地域ということだったようでありますが、それでよいのでしょうか。
  117. 春日斉

    春日政府委員 そのとおりでございます。
  118. 米原昶

    ○米原委員 今回の改正案の第五条の二の第五項に「都道府県知事は、第一項の政令で定める地域の要件に該当すると認められる一定の地域があるときは、同項の地域を定める政令の立案について、内閣総理大臣に対し、その旨の申出をすることができる。」こうありますが、こうした制度は、従来の公害関係の法律、たとえば公害病認定地域の指定などにはなかったのではないかと思うのです。今回なぜこのようなものが設けられたのか、聞きたいと思います。
  119. 春日斉

    春日政府委員 都道府県知事の申し出の規定を設けましたのは、地域大気汚染状況等の実情を最もよく把握していらっしゃるのが当該地域を管轄する都道府県知事であると私ども考えるわけでございますので、都道府県知事の側からも、その地域地域指定の要件に該当しておって、地域指定をすべきである旨の要請をすることができるということを定めたものでございます。  「政令で定める地域の要件」ということについて先生から御指摘ございましたが、その要件というのは、政令で要件を定めるのではなくて、具体的な地域を政令で指定する際の要件という意味でございます。したがって、改正法案第五条の二の第一項の「工場又は事業場が集合している地域で、」現行の規制方式によっては環境基準の確保が困難であることが、その要件に当たるわけでございます。
  120. 米原昶

    ○米原委員 私たちとしては、こうなっているのはけっこうだと思うのですが、本来は、このような地域指定は自治体自身がやればいいんじゃないか、こう考えているわけでありますが、そういうふうにむしろしたらどうか、この点を聞きたいと思います。
  121. 春日斉

    春日政府委員 現行の排出規制、K値規制等につきましては、すべてこれは国が指定をいたしております。そういった関連もございまして、こういう方式を定めようとするものでございます。
  122. 米原昶

    ○米原委員 それでは聞きますが、いま「政令で定める地域の要件」ということでありますが、K値規制の第一及び第二ランク以外の地域は、この要件に合わないということに、さっきの答弁と合わせて考えるとなるのでしょうか。
  123. 春日斉

    春日政府委員 おおよそのめどとして申し上げたのでございまして、そのめどはK値の一ランク、二ランクというところがめどになりましょうと申し上げたんですが、ケース・バイ・ケースでございまして、たとえ三ランクの地域にありましても、K値をさらに強化することによってSO2の汚染濃度を減少させることができないと判定できるような場合には、これは地域指定することもあるべし、かように考えるわけでございます。
  124. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、実際にもう大気汚染の状態は、かなり深刻に深く広がっておると見ていいと思うのであります。知事が現在のK値規制だけでは不十分だと判断して、そうしてこの条項により申し出を行なったときは、これを尊重して指定地域とする、こういうことだと理解していいですか。
  125. 春日斉

    春日政府委員 もちろん十分に私どもは尊重し、検討することによって、妥当と認めたときには指定するわけでございます。おそらくうしろ向きのことはなかろうかと考えております。
  126. 米原昶

    ○米原委員 次に、(指定ばい煙総量削減計画)ですね、これについて聞きます。  この第五条の三を読みますと、どうもあいまいな表現か非常に多いのです。冒頭に質問したことと重複しますが、この計画というものは、これが実行されれば必ず環境基準が達成されるというものなのかという点であります。また、実行したけれども環境基準が達成されなかったというような事態が起きないような、それだけの科学的に十分な根拠を持ったものになるのかどうかということを聞きたいと思います。
  127. 春日斉

    春日政府委員 最近の学問技術の進歩か著しいわけでございまして、その結果、硫黄酸化物についての大気汚染予測と申します手法は非常に精密になってまいっております。このような手法によって算出いたしました総量、この範囲内に排出量を押えれば環境基準は確保されるものと考えるわけでございます。
  128. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、この計画に基づいて総量規制基準をきめるとなっておりますが、この総量規制基準環境基準は、きちんとリンクするものであるということを再度確認しておきたいのであります。そのとおりでございますか。
  129. 春日斉

    春日政府委員 結論的にそのとおりでございます。と申しますのは、私ども環境基準に照らして、それ以下のレベルにその地域の総排出量を押え込むわけでございますから、先生のおっしゃる趣旨のとおりであろうと思います。
  130. 米原昶

    ○米原委員 次に、この計画は「工場又は事業場における使用原料又は燃料の見通し、」を「勘案し、」——「勘案」ということはが使ってあります。この「勘案」というのは、どういう意味かということを聞きたい。特に燃料の見通しを勘案することが、計画の作成にどのような影響を与えるかを聞きたいのであります。
  131. 春日斉

    春日政府委員 使用原料または燃料の見通しを勘案するという、「勘案」ということばでございますが、これは文字どおり勘案だろうと思うわけでございますが、工場、事業場におきます石油系の燃料の使用及び硫黄分を含有する鉄鉱石などの使用の推移について、計画期間中における見通しを立てるということ、これは現実問題として非常に大切なことだと思います。それをよく勘案する、見通しすることによって特定工場等からの指定ばい煙の削減目標量を設定する、あるいは計画の達成期間を定める、こういうことになるわけでございまして、総量規制の実効をあげ得るようにしょう、こういう趣旨でございます。したがいまして私どもは、勘案することによりまして十分に実効をあげ得るようにしよう、こういうふうにお考えいただければ幸いでございます。  また、現時点で設定する計画の達成期間でございますが、硫黄酸化物環境基準で定められております達成期間が原則でございます。使用原料、燃料の見通しの勘案の結果によっても、これより計画達成期間を延長するというようなことは考えていないわけでございます。
  132. 米原昶

    ○米原委員 その点、非常に私たちが心配する点なんで、実際問題として、たとえば田中総理の「日本列島改造論」によると、昭和六十年には石油は四倍にもなるということだったわけであります。つまり毎年毎年の燃料の増加が考えられるわけであります。その燃料の増加を前提に規制するということに、この「勘案」がなってしまうのじゃないか。そうすると必然的に、この燃料の見通しの勘案といいますが、燃料の見通しというのは、へたをすると規制緩和につながるのではないか。SOxをとってみれば、燃料が増加すると、その増加の分に見合った分だけの脱硫技術の進歩がなければ、その分の規制を緩和せざるを得なくなります。この点はどうでありましょうか。
  133. 春日斉

    春日政府委員 現状の状態からだけ推定するわけではなくて、将来の燃料あるいは原材料の見通しというもの、これは先生の御指摘にもございますように、いろいろ変わるわけでございますから、それを十分考慮に置いた上で、私ども計画を立てていかなければならぬ、あるいは達成目標年次というものも立てていかなければならぬと思います。しかし、SO2の計画達成は、環境基準でちゃんときまっておりますから、デッドラインはきまっておるわけです。しかし、その経過において、いろいろやるべきことがあるであろう、こういうことを申しておるわけでございます。
  134. 米原昶

    ○米原委員 それでは、もう一度確かめますが、実際に大気汚染による公害病認定患者は、すでに一万人を大きくこえているわけであります。あくまで国民の健康を第一義的に考えなければならぬ、こういう事態であります。そこでこの燃料の見通し、これが万一にもこの計画の達成期間が引き延ばされたり、規制の緩和が行なわれるというようになってはならない、計画は必ず実行しなければならない、こう思うわけであります。そうでないと、この法律を出しても意味がなくなると思いますが、その点は、計画の達成期間を引き延ばしたり、規制の緩和が行なわれるというようなことは絶対にないようにする、こう断言していいですか。
  135. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういう考え方で行なうつもりでございます。
  136. 米原昶

    ○米原委員 さらにこの第五条の三の第一項第五号に、計画の達成の方途を政令で定めるところにより、定めるとありますが、この計画の達成の方途を政令で定める、この政令の内容は、どのようなものになるわけでありましょうか。
  137. 春日斉

    春日政府委員 総量削減計画と申しますものは、都道府県知事が総量規制基準の認定をいたします前提として科学的に算定された目標、地域排出総量を踏まえた合理的に設定された削減目標量、こういったものを把握しておくために策定するものでございますけれども、その策定にあたりましては、全国的なバランスをとるために必要最小限の事項は政令で定めることとしたわけでございます。  なお、政令の制定にあたりましては、地域実情が十分反映し得るように、私どもは配慮してまいりたいと考えておるわけでございます。
  138. 米原昶

    ○米原委員 汚染の度合いとか工場の立地の状況など、地域的な条件によって、ここでいわれる方途も大きく違ってくるはずでありますから、知事にかなりの裁量の余地を残すべきで、本来ならこの政令も必要がないと私は思うのであります。なぜこの政令で知事を縛る必要があるか、この点であります。
  139. 春日斉

    春日政府委員 この法案を一読していただきますると、知事の裁量権というものは、かなり大幅に付与されていることにお気づきになるだろうと思います。ただ、この総量規制と申します方式は、国の一つの法律でございまするので、やはりアンバランスを整合し統合し、いろいろ調整する必要もございます。したがいまして、すべてを知事にゆだねるわけにもいかない問題があるわけでございます。
  140. 米原昶

    ○米原委員 私が心配しているのは、やはりこの方途という点も、先ほどの燃料の見通しという点や技術上の問題をたてに、規制の緩和ということに利用されるおそれがないとは言えないからであります。この点の見解はどうでありましょうか。
  141. 春日斉

    春日政府委員 そのような御心配はないと考えております。ただ、方途ということには、指定ばい煙の総量の削減目標を達成する手段として予定しております総量規制基準及び新増設工場等に対する特別の総量規制基準の内容を主として考えているわけでございます。それが方途でございます。
  142. 米原昶

    ○米原委員 それから、この点も参議院で長官が答弁されているので、心配ないと思いますが、この第五条の三の四項の環境庁長官の勧告の問題で、念を押しておきたいのであります。  つまり、ただいま質問してきたような燃料の見通しの問題とか、計画の達成の方途での技術上の問題などを理由に、知事の作成した計画に対し、規制が強過ぎるので、緩和しろなどという勧告、すなわちマイナスの方向への勧告は絶対に行なうべきじゃない、こう思うわけでありますが、この点を確認しておきたいのであります。
  143. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そのとおりに考えております。
  144. 米原昶

    ○米原委員 次に、改正案の第九条の二について聞きます。  現行法では、ばい煙発生施設の届け出があり、それが排出基準に適合しないときは、単に、ばい煙の処理の方法改善などということにとどまらず、そのばい煙発生施設の設置計画そのものの廃止を命ずることができるようになっております。ところが、今回の改正では、総量規制基準に合わない場合にとれる措置として、「ばい煙の処理の方法改善、使用燃料の変更その他必要な措置」とだけ書いてありまして、現行法にある計画の廃止という措置が明記されておりませんが、これはどういうわけでありましょうか。
  145. 春日斉

    春日政府委員 先生の御質問は、「その他必要な措置」というところにあろうかと思うのですが、これは特定工場等から排出されます指定ばい煙が、総量規制基準に適合するようにさせるための各種の措置のうち、法文上明記されておるもの以外の措置でございます。  具体的には、特定工場等に設置されております、これは先生も御指摘になったのですが、まず第一に、ばい煙発生施設の構造の変更、これはバーナーの改善等でございます。二番目が使用の方法の変更、これは運転時間の短縮等が当たろうかと思います。あるいは御質問にあった一部のばい煙発生施設の使用停止。四番目には、届け出のあったばい煙発生施設計画について、その変更または廃止の措置等が含まれる。こういうことであろうと思います。
  146. 米原昶

    ○米原委員 確かに、今回の総量規制は、一本一本の煙突に対する規制ではなくて、工場全体に対する規制でありますから、その点では、一定の改善によって規制基準以内に押えることが、よりやりやすいということは言えると思います。それはそれとして、当然少々の改善だけでは、総量規制基準に適合しない場合も出てくるということが考えられると思います。その場合当然、いまもおっしゃいましたが、「その他必要な措置」の中に計画の廃止も含まれているということになると思います。この点は、そう理解してよいわけでありましょうか。
  147. 春日斉

    春日政府委員 再三申し上げますが、一部のばい煙発生施設の使用停止というようなことは、含まれてまいります。また、届け出のあったばい煙発生施設計画について、その変更または廃止の措置、これも含まれると考えております。
  148. 米原昶

    ○米原委員 では、きょうは、これで質問を終わります。
  149. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  150. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中覚君。
  151. 田中覚

    ○田中(覚)委員 今回提案されております大気汚染防止法の一部を改正する法律案は、現在の規制の方式がいわゆる排出の濃度にかかわる規制であったり、また排出口の高さに応じて規制をするというようなやり方でありますために、せっかくその基準が守られておりましても、当該地域に排出される汚染物質総量を押えることができないというようなことから、結局きめられた環境基準も確保できないうらみがあり、したがってまた、結果的には住民の健康も十分に守れない、こういうふうな結果が出てまいりましたために、新しく総量規制の方式を導入せられることに相なったわけであります。  実は、この総量規制の方式というのは、四日市の公害問題で長年悩み続けました三重県におきまして、昭和四十六年、私が知事在任中でございますが、県独自の条例を制定いたしまして、総量規制の方式を実施をすることにいたした方式であります。そういう意味で、私は、三重県においてこれを実施してきたこれまでの経験なり、あるいは実績というものを踏まえて、若干の点についてお尋ねをいたしたい、かように考えております。  まず、第一に伺いたいことは、環境庁のほうで、三重県で実施をしたSO2についての総量規制の方式というものを一体どのように評価をしておられるか。それを通じて政府の総量規制についての基本的な考え方、あるいはこれを実施した場合に、どの程度自信を持って実行できるかといったことについてのお見通しをお伺いをいたしたいと思います。
  152. 春日斉

    春日政府委員 ただいまの御指摘のように、わが国で初めて総量規制という考え方を行政に導入されまして、その成果をあげられました田中先生の御質問でございますので、まことに答えますほうも、じくじたるものがございますが、要するに三重県で行なわれました総量規制の方式を私どもは高く評価いたしております。そうして当時三重県で総量規制のプロジェクトチームをつくり、その基本的な方式を確立なさいました、当時の吉田教授は、私どももお招きいたしまして、その技術的な点につきましては、十分お考えを伺い、今回の総量規制の基本といたしたつもりでございます。  したがいまして、この法律案に基づきます総量規制の方式と申しますものは、一定の地域において、ある汚染物質による環境汚染環境基準のレベル以下に改善するために、その地域内の発生源から排出することが許される汚染物質総量を、気象でございますとか地形でございますとか、あるいは発生源の状態、その他地域の特性を考慮に入れまして、一定の科学的な手法によって算定いたしました、その総量の範囲内に、地域内の発生源から排出されます汚染物質の総合計を押え込むように、計画的に排出規制を行なおうとするものでございます。  このような規制を行なうことによって、その地域におきます環境基準の確保がはかられるわけでございますから、ここに総量規制のすぐれた特徴があるものと私ども考えておりますし、わが国の大気汚染防止対策にとって、一つのマイルストーンを画するものであろう、かように考えておる次第でございます。
  153. 田中覚

    ○田中(覚)委員 私は、別に局長から、おほめのことばをいただこうと思ってお尋ねしたわけではないのでございまして、実は率直に申しまして、四日市で実施をいたしました亜硫酸ガスの総量規制の成果というものは、三年を経過いたしまして、最近になって、ようやく顕著にあらわれてまいりました。一時は高煙突化に伴いまして、汚染地域がむしろ拡大をしておりましたのが、今日では逆に非常に縮小をいたしまして激減を見てきております。患者の発生率も以前に比べますと半分以下に落ちておりますし、ことに毎月の公害患者の認定数は、一ころは三十人をこえた月もございましたが、最近は新しく認定をするのが毎月大体五、六人、多い月でも十人をこえないというような状況に下がってきております。私自身の実感から申しましても、毎週東京と四日市の間を住復しておりますが、東京にいるときのほうが、四日市よりはのどの状態が悪い、むしろそういう実感を持っておるぐらいでございます。したがいまして、私は率直に申して、やればできないことはない、そういう意味で環境庁もひとつ自信を持って総量規制方式をやってもらいたい、こう思うわけであります。  その際、私どもがこういう成果をあげてきましたのも、決して一朝一夕にこうなったのではなくて、いろいろな試行錯誤を繰り返して、こういう結論に実は到達いたしたわけであります。したがいまして、今度全国的に総量規制の方式を導入するということにされる場合に、この三重県の経験というものを、先ほどプロジェクトチームのリーダーでありました吉田教授などの意見も聞いて、いろいろ御検討願っているということでございますが、われわれのおかしたあやまちを、またほかの地域でおかすというようなことでなしに、一歩でも二歩でも前進した新しい構想を、ぜひ具体的に打ち出してもらいたい、そういう立場から私は、この大気汚染防止法の一部を改正する法律案を実はながめておるわけであります。  そこで、まず第一番に伺いたいのは、昭和四十八年の五月に出されました「大気汚染に係る環境基準について」の中で「二酸化いおうに係る環境基準は、維持されまたは原則として五年以内において達成されるよう努めるものとする。」こういうことに実はなっておりますが、お配りいただきました資料を拝見いたしましても、だいぶほかの公害地域においても関係県、市の間で具体的な準備が進められておるようでありますが、環境庁の大きな方針として、どのぐらいの期間に、このSO2の総量規制によってこの公害問題を解決するという見通しを持っておられるのか、その点をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  154. 春日斉

    春日政府委員 SO2の環境基準についてでございますが、昨年の五月、強化改正をいたしましたおり、御指摘のとおり、おおむね五年以内に達成するものとする、こういうふうにいたしてございます。  これは総量規制を行なうことによって、やはり環境基準を達成しようというわけでございますので、やはり五年ということを一応の目途といたしておるわけでございます。
  155. 田中覚

    ○田中(覚)委員 私どもの経験から見て、大体三年で顕著な成果をわれわれはあげることができました。したがいまして、これは指導のいかんによりましてはもっと期間を早めることができるのではないかというふうに思われますので、この点については、ひとつどうか自信を持って全国的な指導に当たっていただきたいと実は思うわけであります。  そこで、次に伺いたいのは、この改正の条文を具体的に拝見いたしまして、全体としては、私どもが条例で規定いたしましたことと大同小異でございます。でありますので、特に条文そのものについて、とやかくお尋ねをすることは、私自身に関する限りは必要がないわけでございますけれども、ただひとつ第二十七条、適用除外の問題でございまして、電気事業法だとか、あるいはガス事業法等の対象施設につきましては、本法の適用除外に実は従来どおりなっております。  この点については、いやしくも都道府県知事が当該地域汚染物質総量を規制をする、そのために必要な削減計画を立てたり、所要の措置を講じようというときに、知事の権限が電気事業法やガス事業法の対象施設に及ばないということは、いかにも筋が通らないという感じを私どもは持っております。率直に申しまして、具体的にそうなっておるから現地で非常な支障があるというようなことは、実はないわけでございます。というのは、私ども三重県でやりました場合も、火力発電所の持つウエートというものが非常に高いために、これを県の計画から除外するわけにはまいりませんので、条例でほかの石油関係の工場と同じように対象として取り上げております。取り上げられることについて別に発電所側からの抵抗もございませんし、それでうまくいっているわけでございます。  ただ、このたてまえといたしまして、政府のほうで総量規制の方式を導入しようというこの時期に、なぜ通産省と環境庁との間で、これについての一元的な取り扱いができるようにお話し合いができないのか。そのことが私にとっては非常に不満であり、またふかしぎに思われてならないのであります。これはむしろほんとうは通産省のほうから聞いたほうがいいのではないかと思いますけれども、一体どういうような折衝の過程でこういうことになったのか、この点についての御所見をひとつ伺いたいと思います。
  156. 春日斉

    春日政府委員 御質問の鉱山保安法と電気事業法及びガス事業法の適用を受けておる施設につきまして、この法律案による総量規制に関しても、現行の排出規制と基本的に同様の取り扱いをすることにいたしておるわけでございます。  まず第一に、指定ばい煙総量削減計画の作成にあたりましては、そういった当該各法が適用されている工場等に対しましても、一般の特定工場等と同等の削減を行なわせるものとして、削減目標量または中間目標を定めることといたしております。この点につきましては変わりないわけでございます。  ただ、若干問題になります鉱山保安法の適用を受ける工場等に対しましては、これは指定地域について、都道府県知事が指定ばい煙総量削減計画に基づいて定めた総量規制基準と同等の基準を、鉱山保安法の体系において定めることにいたしてございます。また、これらの工場等にかかわる取り締まりは鉱山保安監督部局が行なう、こういうことにいたしております。  電気事業法またはガス事業法の適用の場合は、これはまさに現体制と同じでございまして、都道府県知事が大気汚染防止法の体系の中で総量規制基準を定めることになるわけでございまして、ただ取り締まりは電気事業法またはガス事業法の相当規定によって行なうことになるわけでございます。したがいまして、先生の御指摘はごもっともではございますが、やはり鉱山保安法、電気事業法並びにガス事業法の持っておる基本的な考え方との調整によって、私どもはこういう一応の形の上では除外になっておりますが、現実的には全く同時に扱う、こういう扱いをいたしているわけでございます。
  157. 田中覚

    ○田中(覚)委員 私のお伺いしたいのは、都道府県知事はこの二十七条の規定では、わずかに必要ある場合に通産大臣に必要な措置をとることを要請することができるという規定にしかなっておらぬわけですね。これはどう考えてみても、ことに総量規制をやる総量規制ということは、その地域全体まとめてやるやり方なんですから、個々の工場排出口の排出基準で押えるという従来のやり方でないわけですから、したがいまして、こういう点はせっかく今度法律改正をなされるなら、私は、当然知事に権限を委任するとか、やはり窓口を一元化するということをはっきり打ち出すほうが、都道府県知事としては責任も感じ、またやりやすいのではないかというふうに思うわけです。それがなされないで、依然として従来と同じままの規定が存続されているということについては、一体どこに支障があるのか、その点を伺いたいと思います。
  158. 春日斉

    春日政府委員 もう一回申し上げますと、要するに、たとえ鉱山保安法の適用を受け、あるいは電気あるいはガス事業法の適用を受けておりましても、指定ばい煙総量削減計画の作成にあたりましては、一般の特定工場と全く同様の削減を行なわせるわけでございます。そして削減目標量あるいは中間目標を定めるわけでございます。  ただ問題になりますのは、直接の取り締まり等を鉱山保安監督部局が行なうとか、あるいは電気事業法あるいはガス事業法の相当規定によって取り締まりを行なわしめる、こういうことだけでございまして、計画並びに基準は全く知事のおきめになったものをそのまま適用する、こういうことでございます。
  159. 田中覚

    ○田中(覚)委員 環境庁がそういうお気持ちだというのでは、なるほどこれは法律改正はできないわけでありまして、むしろ環境庁のほうか強く知事に権限を委任をすべきだというような主張を通産省に対して、やはりしてもらうべきではなかったのか。これでできるのだから、いいじゃないかといったような消極的な考え方では、いやしくも総量規制の方式を的確に実行して成果をあげるという点から見ると、私は少しなまぬるいのじゃないかという感じがいたします。しかし、この点はこれ以上申し上げるのもいかがかと思いますので、次の質問に入らしていただきたいと思います。  その次に伺いたいのは、総量規制を全国的に実施をするということになりますと、それ相当の専門家を養成、訓練する必要があると思いますが、これについての環境庁の具体的な計画というものを、おありであれば伺いたいと思うわけであります。  と申しますことは、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、この総量規制をやるというその基本的な背景になる条件は、当該地域における汚染物質の排出の許容限度というものと、それぞれの汚染源が地域内でどの程度汚染に寄与しておるかということを、気象条件とかあるいは地形だとかあるいは工場の配置状況だとか、その地域の具体的な条件を当てはめて客観的に算定することが、どうしても必要になるわけです。三重県の場合は実はこれをコンピューターシミュレーションの方式でやったわけでありますが、何しろ最初は専門家がだれもおらないものですから、あちらこちらの大学に委嘱をいたしまして協力を仰いだり、また私のほうの県立大学の医学部の吉田教授をプロジェクトチームのリーダーにいたしましてチームをつくって、かなり準備的な訓練をいたしまして、ようやく取り組むことができたわけであります。  どういう算定方式をとるにいたしましても、総量規制を励行しようと思えば、いわゆるシステム工学的な専門家を相当必要とすると思います。したがって、政府のほうでこういった専門家を養成をし、訓練するという計画をお持ちにならないと、せっかくこうして法律を改正して、どこの県もやりたい、あるいはどこの市もやろうという準備をしておりましても、結果的にはなかなかはかどらない、そういうことになってしまう心配が多分にございますし、またこれを通常の人事で、人の配置で、いわゆるやっつけ仕事でやるようなことでもいたしますと、それから起きる混乱と迷惑とロスというものは、もうたいへんなことでありまして、関係企業はもちろん自治体の財政からいいましても、あるいは住民に対する関係からいいましても、これは相当の迷惑、混乱が起きることは必至でございます。  そういう意味で、私は、今度新設の国の中央の公害研究所ですか、ああいうところでこのような専門家の訓練、養成等をやっていただくなり、何らかの形で具体的にこれを打ち出していただくことが必要ではないか、かように考えますので、これについてのお考えをひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。
  160. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最初に、春日局長も申しましたけれども昭和四十六年、総量規制を日本で初めて実行されたのが、三重県の田中知事であったわけです。こうやって、いまごろになってわれわれがやるという、この先見性に対して敬意を表しておくわけでございます。どうも日本の政治は行き詰まってこないと動かない。こういうショック療法みたいで政治が動いておる中に、四十六年に総量規制を実行された知事の見識というものには、敬意を表しておく次第でございます。  いろんな経験を通じておわかりのように、とにかく総量規制をやろうというのは、——環境基準、きびしくしましたから、何年かかって、五カ年くらいの間にそこへ持っていこうというのですから、一体現状はどうなっておるかという把握、将来の予測、こういうようなのが、いま御指摘のようなコンピューターも使った科学的な手法というものがなければ、ただ根拠なしに、そういう総量規制というものをやっていくわけにはいきませんから、だから、田中委員のやられた経験など非常に参考になると思うのです。  いま大学などでも環境科学という講座を設けるという傾向が非常にふえてきておるわけですから、国立の公害研究所においても、やはりそういう養成、訓練もしようと思うのです。大学にもそういう講座がふえてきて、そうしてそういう科学的手法を身につけた専門家を養成するということは、御指摘のとおり、われわれも必要を感じておる次第でございます。三重県でやられたいろんな経験などは、われわれとしても承って参考にしたいと考えておる次第でございます。
  161. 田中覚

    ○田中(覚)委員 副総理からお答えをいただいて、たいへん恐縮に思っております。なまいきなことを申し上げるつもりはなかったのですが、法律だけをつくっても、五年以内に全国的に総量規制方式を成功させるということには、ちょっとなかなかつながらないのじゃなかろうかという感じが実はいたしたものですから、あえてお尋ねをいたしたようなことでございまして、ぜひひとつ、これは環境庁が中心になられて、いまお話しのございました大学における新しい学科とかそういったものの創設なども当然必要でございましょうし、当面の必要な技術者についての訓練、そういうものは、やはりぜひやっていただく必要があるのじゃなかろうか、かように考えております。  さて、次にお伺いいたしたいのは、わが三重県におきましては、いま申し上げたようにSO2の総量規制方式というものが大体軌道に乗ってまいったものですから、いよいよこの十月からNOxの総量規制を実行しようということで、いま準備を整えております。ちょうど私がやめる直前から準備に入っておりまして、ようやく一応の体制ができてきた。十月には条例を改正をして実施に入ろう、こういうことに実はなっておりますが、国のほうのNOx対策の進め方は、先ほど申し上げました「大気汚染に係る環境基準について」という中で「二酸化窒素に係る環境基準は、維持されまたは五年以内においてできるだけ早期に達成されるよう努めるものとする。」SO2の場合は、書き方がどこが違うかというと、「五年以内において達成されるよう努めるものとする。」とし、それからNOxの場合には「五年以内においてできるだけ早期に達成されるよう努めるものとする。」、こういうニュアンスの違いが実はあるわけでございますが、SOxをこれから全国的に総量規制をやろうという段階のときに、NOxまでとても手が伸びないということかもしれませんが、こういう環境基準が出ておる手前から申しまして、NOxについての総量規制も、環境庁の基本的な考え方というものを、ひとつお示しいただきたいと思います。
  162. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはいまSOxから始めるわけでございますが、できるだけすみやかにNOxにも総量規制を及ぼしたい。  ただ、むずかしさは、総量規制の場合に、いま言ったような現状把握、将来の見通しというところで、窒素酸化物は、発生源は工場ばかりでないですよ。自動車なども、これはやはり発生源。現状把握というものも、なかなかやはり科学的な手法というものを発見するのには、容易でないものがあります。将来に対しても、そのとおりです。発生源が複雑であるということ、またこれに対しての脱硝技術といいますか、これもやはり硫黄酸化物よりもなかなか脱硝技術の開発というものがおくれていますから、ただ、総量規制ということできめるだけでなしに、実行するということが目的ですから、もう少し時間が必要だと思うので、一緒に、でき得べくんばすることが理想的でありますが、研究の時間を持ちたいということでおくれるわけでありますが、これはできるだけすみやかに実施したいということが基本的な考え方でございます。
  163. 田中覚

    ○田中(覚)委員 ちょっと大臣のおられる間に、もう一言だけ伺っておきたいと思います。  いま大臣からお話がございましたように、このNOxの場合には、発生源が固定発生源と、それから移動発生源というものが複合的にからんでおりますから、固定発生源だけに主眼を置いてやればよかったSOxの総量規制とは、だいぶ趣を異にする。したがって、むずかしいという点のあることは、私どももよく理解をいたしております。  そこで大臣に伺いたいのは、一つは、いま脱硝技術が非常におくれておるということでございます。これは先般われわれも業界の代表を招いて、懇談をいたしましたときの話では、もう少し待ってもらいたいというようなお話が圧倒的に実は強かったわけでございます。しかし、これは業界の人たちに脱硝技術がまだできておらないというのは、裏を返して言いますと、経済的にコストが高過ぎるという意味で開発ができておらぬというだけのことでありまして、原理的、実験的には、技術は確立しておるのです。  そういう意味で、私は、国のほうでも、若干脱硝技術の新しい開発等についての援助といいますか、開発研究等に対する直接の助成とか、そういうものを少し積極的にやっていただくわけにはいかないものか、そういうことになれば、結局初めてやるものはそれだけの企業負担、危険負担を伴うわけでございますから、社会的な実験をやるんだという趣旨で、国のほうでもう少し力を入れていただく。これは通産省のほう、あるいは科学技術庁等の御協力を願わなければならないかと思いますが、それをやっていただくことが大切じゃないかという点が一つ。  それからもう一つは、移動発生源と固定発生源が複合しておるというところから、たとえば自動車と工場、両者のウエートをどういうふうに置いて規制をかけていくかというようなことは、国民経済全体の立場から見ますと、これは相当選択の余地があるのじゃなかろうかというふうに実は思うわけであります。ことに、たとえば道路の自動車交通一つを例にとりましても、交通の流れを変えたり、あるいは交通量を規制をすれば、その地域に及ぼす汚染影響というものは、だいぶ違ってくるわけですね。そういう意味で、どういう対策をとることが国民経済的に見て、最もプラスであるかというようなことは、総合的な見地から、これは判断をする必要があるのじゃなかろうかというふうに実は考えるのであります。  そういう意味で、せっかく環境庁長官は、副総理もしていらっしゃるわけでございますので、やはり関係各省の衆知をしぼって、ひとつ総合的な対策を打ち出すということについて、いまからその準備を始めていただく必要があるのではなかろうか、かように私は考えております。これは法政大学の力石教授は、同じようなことを力説いたしておりまして、国民経済全体の観点からの選択を誤ってはならぬというようなことも言っておりますけれども、NOxの総量規制というものをやる場合には、そういうお立場からお考えをいただくように、ぜひひとつ御配慮をお願いをいたしたい、こう思いますので、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  164. 三木武夫

    ○三木国務大臣 田中委員の御指摘になっておることは、重要な問題だと思います。これはやはり国民経済全体に影響があるような技術開発は、相当国がやはり技術開発のリーダーシップをとるべきだと私は思うのです。個々の企業ということになると別でありますが、国民経済全体に影響のあるようなプロジェクトの開発というものは、国がイニシアチブをとるべきだと思うのです。  私は、かつて通産大臣時代に、通産省の技術開発の取り組み方がまんべんなく、総花になっておったのです、それを大型プロジェクトというものにしぼりまして、そして思い切ってやはり資金をつけるという方式を初めて採用したわけです。脱硫技術の開発というものが、このときの一つのプロジェクトとして選ばれたわけです。工業技術院が中心になってやったわけですが、これは相当な成果があったわけです。したがって、今度の脱硝技術についても、通産省は、かつて脱硫装置の技術開発に力を入れたようにやるべきだということで、今年度もやはりこれを取り上げるということになって、ほかのものに比べては相当大きい予算をつけておるわけであります。  また、このことの重大性から考えたら、もう少し積極的にやるべきだと思うのです。鉄鋼界においても、プロジェクトチームをつくって、脱硝装置の技術開発というものに乗り出しておりますから、そういう意味で、民間も協力をし、また政府もこれに協力して、この技術開発というものは非常に急がれる問題であると思うのでございます。そして今後、やはり固定発生源と移動発生源——自動車が道路中心にするのを考えてみますと、東京などの場合は七、三ですから、移動発生源のほうが多いわけですよ、NOxの場合には。だから、どうしたって、やはり大都会の移動発生源というものに重点を置かざるを得ない、固定発生源のように拡散しないわけですから。  この問題は、自動車という点で六十一年度の規制というものは、これは六月からヒヤリングを開いて、なるべく促進をしていこうと考えておるのですが、そういう点で、今後この問題をただ観念的にきめるというだけでなしに、実行可能になるような諸条件をつくって、この問題に取り組みたいという所存でございます。
  165. 田中覚

    ○田中(覚)委員 NOxの対策につきましては、技術的にもまだ若干距離のあることは私もよく承知をしておるのです。  そこで、局長一つ伺いたいのですが、いま大臣がお答えになったような意味合いで、この十月から三重県がNOxの総量規制をやろう、新しく開拓の道を開こうとしておるわけですけれども、これにつきましても、できることなら四日市を一つのモデルにして、NOxの総合対策をひとつやってみるというような意味で、環境庁として三重県のこのNOx総量規制について、特別の指導あるいは援助をするというようなことは考えられませんか。
  166. 春日斉

    春日政府委員 私ども、四十九年度の予算におきまして、窒素酸化物総量規制方式はいかにあるべきかということを検討することにいたしております。そういったときに、三重県が現実におやりになっております問題につきまして、私どもは十分参考にさしていただくと同時に、また三重県にも、私どものほうへいろいろな実態についての御援助をいただきたい、かように考えておるわけでございます。  私どもはさような予算を持っておるものでございますから、十分先生の御指摘の点を考慮さしていただくことにいたしたいと思っております。
  167. 田中覚

    ○田中(覚)委員 いまお話がございましたように、結果だけを国が吸収するのじゃなくて、新しいやり方をやるにつきましては相当苦心もし、よけいな金も使い、いろいろやっているわけですから、その辺のところはぜひひとつ、しかるべくめんどうをみてやってもらいたい。ことに、このNOxについての対策は、これからの国でおやりになることに一つの大きな指針を与えることになると私は思います。そういう意味で、ひとつよろしくお願いをしておきたいと思います。  それから、次に伺いたいのは、大気汚染防止計画の中でSO2をやり、NOxをこれからやろうということでございまして、あとオキシダントだとかいろいろな問題もございますが、あと一体どういう順序で汚染物質をこれから対象に取り上げて、具体的な規制なり公害の除去をやろうとしておられるのか、お考えがあれば伺いたいと思います。  私ども一つ一つシラミつぶしに健康被害になるような重大な汚染物質を取り上げていくというやり方は、正攻法だというふうに実は思っておるわけでありますが、ただ、最近のオキシダントの、光化学スモッグの発生の状況などを見ておりますと、そういうふうに一つ一つ取り上げていくようなやり方だけで、はたして完ぺきの対策といえるかどうかというような感じがしておるわけでありまして、汚染物質相互間のバランスといいますか、そういうものが、もしあったりいたしますと、一つ汚染物質を解決したことが、逆に他の汚染物質汚染影響強化するというような影響も出てくるのじゃなかろうかというような感じが、しろうとなりにいたしておるものですから、その点についての環境庁大気汚染防止計画の大筋といいますか、そういうものがもしあれば、ひとつお示しをいただきたいと思います。
  168. 春日斉

    春日政府委員 先ほど長官もお答え申し上げましたが、まず大気汚染防止のための総量規制の導入は、硫黄酸化物から始めまして、その次は窒素酸化物、それからばいじんという順番になろうかと思います。そのほか考えられますものとして、一酸化炭素の総量規制というようなものを、すでにお考えになっている地方自治体もございますが、一酸化炭素の場合は九十数%は自動車でございますので、これは自動車のいわゆる五十年度規制でかなりの目的は達せられますので、総量規制方式を必ずしもとる必要はないのではないか、かように考えております。  それから、炭化水素の問題が、光化学スモッグ等とからみまして出てくるわけでございますが、やはり炭化水素の発生と申しますものは、約半分が自動車でございます。したがいまして、これも五十年度規制で十分の一に炭化水素を減らすという規制をかけるわけでございますから、これはかなりそれだけで解決してまいりますし、残るものは、要するに一つがペイント問題、それからもう一つは、ガソリンのスタンドとか、あるいはガソリンの貯留槽の問題等でございます。それぞれの今後炭化水素に関する規制によって解決するものではなかろうかと考えております。したがいまして、とりあえずは硫黄酸化物に次いで窒素酸化物、ばいじん、こういうふうに考え、それ以降につきましては現在検討中、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  169. 田中覚

    ○田中(覚)委員 取り上げる大体の段取り、優先順位というものは、あらましわかったわけでありますが、私が申し上げたいのは、そういう一つ一つ汚染物質環境基準をつくって総量規制その他の方式で規制を強化していくというやり方は、これはもちろん正攻法であり、必要だと思うのですが、やはりある段階になりますと、そういった汚染物質相互の組み合わせの上に立った環境基準というようなものが必要になってくるのではなかろうかというふうに実は思うものですから、いまお尋ねをしたわけでありまして、その点についての何かお考えがあれば伺いたいと思います。
  170. 春日斉

    春日政府委員 御質問の御趣旨はまことにごもっともな点でございまして、私どもといたしましても、大気汚染物質の複合的な影響というものには十分注目いたしておるつもりでございます。そして総合的な総合指標というものも、今後は考えていかなければならないわけでございます。たとえば窒素酸化物と、ばいじんないしは硫黄酸化物との相乗作用あるいは相加作用というようなものが今後大きく問題になっていくであろうと考えております。ただ現在までのところ、こういった相乗作用あるいは相加作用につきましては、かなり不明確な問題がございます。したがいまして、たとえば大阪府等では、すでにばいじんの硫黄酸化物並びに窒素酸化物に対する相乗作用を一つの指標としてあらわすくふうもしておられるわけでございます。なかなかこの点はまだ未確定の問題が多いようでございます。  私ども環境基準を設定するにあたりまして、硫黄酸化物並びに窒素酸化物の場合は、それぞればいじん等との複合作用も加味して安全率をかけておる、そして基準を出しておるというようなことでございまして、決して相乗作用、相加作用をいままでも無視してまいったつもりではございませんが、今後はさらに精力的に研究を続けまして、先生の御指摘にこたえたいつもりでございます。
  171. 田中覚

    ○田中(覚)委員 私は、いまそれをお尋ねいたしましたのは、一昨日てすか、中日新聞に——地元では中日新聞、こちらで東京新聞に出ておったかどうか知りませんけれども、「光化学スモッグの真犯人逆転層」という大きな記事が出ているのです。十八日に全国的に光化学スモッグが発生いたしましたね。そのときに、四日市にある県の公害センターがレーザーレーダーで観測した結果、大体上空四百メートルのところに逆転層がございまして、そのために汚染物質が滞留しておる。これが光化学スモッグを起こした真犯人じゃないかというようなことを実は書いておるわけなんですが、これについての御所見を承れれば承りたいわけでありますけれども、もしこれが事実だとすれば、一つ汚染物質だけの環境基準や規制だけでは、なかなか対策になり得ないんじゃなかろうかというふうな、しろうとなりの感じがしたものですからお尋ねをしたわけです。いかがなものでございましょうか。
  172. 春日斉

    春日政府委員 逆転層の問題は、光化学スモッグだけに限りませんで、硫黄酸化物にいたしましても窒素酸化物にいたしましても、汚染物質の移送と申しますか移流と申しますか、それがないわけでございまして、非常に大きな問題であろうと思います。したがいまして、今後は逆転層の明確な把握ということが重要になってくることは、御指摘のとおりだと存じております。  また、先ほど申しましたように、今後は汚染物質の相乗作用あるいは相加作用といったものを加味いたしました総合指標をつくるべく努力してまいりたいと考えております。
  173. 田中覚

    ○田中(覚)委員 大気汚染に関連をいたしまして、せっかく水質保全局長も出ておられますから、ついでにちょっと伺っておきたいと思いますが、総量規制をいよいよ大々的に取り上げていくということになれば、瀬戸内海について特別立法がなされましたように、いずれは水質汚濁についても総量規制を全面的に導入をするということになるだろうと思いますし、現にわれわれの周辺でも、四日市港だとか伊勢湾だとかにつきまして、そういったことの必要性が強調されてきておりますが、この水質汚濁についての総量規制導入の基本的な考え方といいますか、それをこの機会にひとつ承っておきたいと思います。
  174. 森整治

    ○森(整)政府委員 現在の水質汚濁防止法の排水規制が濃度規制であるということにつきましては、全く御指摘のとおりでございまして、昨年、全会一致で成立いたしました瀬戸内海環境保全臨時措置法で、四十七年の負荷量をとりあえず三年間で半分にするという措置がとられましたのが、一応国の段階での初めての総量規制的な考え方という点につきましても、御指摘のとおりでございます。  現在、濃度規制から総量規制へということは、大臣の施政方針でも明らかにされておりますが、結局環境容量というものをどういうふうに把握していくかという問題が大きな問題であろうかと思います。しかし、現実には、これはちょっとこまかくなりますけれども、実はただいまCODでいろいろ測定しておる、これは手分析ではかっていくということでございまして、これをTODなりTOCということで、炭素なり全体の酸素の要求量で連続測定ができる方法でとらえていくという検討を進めておるわけでございます。と同時に、それにつきましての機器の開発をあわせてやっておるわけでございます。いずれをとりますか、まだ結論を出しておりませんが、そういう問題が実は一つございます。  それからもう一つ、先ほど申しましたように環境容量をどう把握していくかという調査を進めておりますが、現実に各県でいろいろ努力されているやり方としましては、環境基準からそれを設定してくるというやり方と、現在の負荷量から出発いたしまして、それを押えていく、こういう両方のやり方がただいまございます。もう一つ、もっと長い目で見ますと、工場排水の汚濁負荷量の原単位計算といいますか、そういうものもやはり必要ではなかろうか。そういう調査も進めております。  まあいろいろ大道具、小道具詰めておりますけれども、そういう調査を進めながら、できるだけ早い機会に少なくとも閉鎖的な水域、御指摘ございました東京湾、伊勢湾、琵琶湖、霞ヶ浦、そういうような湖沼につきましても、総量規制の方式を導入していくということで、いま現に努力をしているわけでございます。
  175. 田中覚

    ○田中(覚)委員 排水について総量規制をやる場合に、瀬戸内海でおやりになったように、閉鎖的な水域ごとに特別の立法をしてお進めになるのか、あるいは大気汚染防止法の法律改正のように、全体的な法律改正をしてお進めになるのか、それについてのお考えはいかがでございますか。
  176. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいまのところ、われわれ結論を出しておりませんが、現在そういう両方のやり方があると思います。ただ問題は、現在の水質汚濁防止法の量規制といいますか、そういう規制面を強化して地域的に対応するという方法もございましょうし、地域的な立法をしていくという考え方もございましょう。いずれにいたしましても、これは手段といたしましての話でございまして、考え方としましての基本は、私、先ほど申しましたように、閉鎖的水域から、なるべく早くできるところからやっていく。そのために必要な法的措置につきましては、結論は出しておりませんけれども、私個人の気持ちを申し上げますと、水質汚濁法を一部手直しすれば、場所的にも全国的にも一応対応できる体制がとれるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  177. 田中覚

    ○田中(覚)委員 そういたしますと、水質汚濁防止法を改正する形でいくことも当然お考えになっておられるわけでありますが、あまり手をあっちこっち広げても、なかなかたいへんだろうとは思いますけれども、現実の公害発生の状況は、総量規制の方式を必要としているところがかなり出てきております。そういう意味で、大気汚染防止法の一部改正をされたような法律改正をもしされるとすれば、一体いつごろのお心組みでございましょう。
  178. 森整治

    ○森(整)政府委員 ともかく先ほど私申し上げました問題点が、いろいろございます。それを調査をしております。その調査しております問題につきまして、早く方針を明らかにしたいと思います。それで、できるだけ早く手を打っていくということで、何年にどうするということまでの設計は、いまのところ、まだできておりません。
  179. 田中覚

    ○田中(覚)委員 実は、少しこまかいことも伺いたいと思っておったのでございますが、時間が参りましたので、一つだけ、これは大気保全局長に伺っておきますが、自動車の排気ガスの規制で、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンを差別して取り上げておられるのは、一体どういう理由でございますか。
  180. 春日斉

    春日政府委員 これはもう全くガソリンのエンジンと軽油を燃料とするディーゼルエンジンの、エンジンの構造自身の宿命的な排出量の差とでも申し上げるべきものでございまして、私どもはディーゼルエンジンにつきましても、現在の技術で可能な限り規制をかけていくつもりでございます。したがいまして、今回と申しますか、きわめて近い将来、今秋のつもりでございますが、ディーゼル車の新車についての窒素酸化物あるいは一酸化炭素、炭化水素の排出規制を行なうつもりでおります。これは告示いたします。
  181. 田中覚

    ○田中(覚)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。
  182. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 岡本富夫君。
  183. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初にお聞きしたいことは、今度のこの大気汚染防止法総量規制等につきまして非常に感じますことは、硫黄酸化物のみであり、窒素酸化物あるいは一酸化炭素、こういうものが抜けておるということで、先ほど田中さんからもお話がありましたが、最近は相乗効果といいますか相乗作用と申しますか、そういうことによって非常に被害が出ておるわけですから、私はもっと抜本的なやり方をしなければならないのではないか。企業のほうにしましても、たとえばこういう脱硫装置をつけた。そうしたら、今度はまた窒素酸化物のほうをやらなければいかぬ。また次をやらなければいかぬ。大企業はよろしいでしょうけれども、中小企業になりますと、次から次と設備をかえていかなければならぬということで、特にメッキ業界なんかも非常に困る。だから、どういうようにするんだという、少しきびしくても、早くそういった規制を打ち出してもらえば、それに従って努力するんだというようなことも言っている人もいるわけです。  そういうところから考えますと、何と申しましても、まず環境アセスメント、あらゆるものを事前評価をして、そしてその中で規制を加えていくということにしなければ、先ほどもお話がありましたように、どうも環境庁ができてから光化学スモッグが非常に多くなった。環境庁ができる前は、あんな光化学スモッグもなかったということで、これはあまり関係ありませんが……。  そこで、長官が二十日に、アメリカのピーターソン大統領環境問題諮問委員会委員長とお話し合いになっておりますが、私、非常に興味深くこの報道を見せていただいたわけであります。その中で両国間で環境アセスメント、事前評価についての取り組み方についても、専門委員会を設けて研究に協力するというようなお話し合いもあったそうでありますけれども、これについて、大切なことでありますので、もう少し詳しくお聞かせ願えたら、こう思うので、まず、その点を質問します。
  184. 三木武夫

    ○三木国務大臣 きのう五つばかりの問題点を議題にしてやったわけでございます。この中にアセスメントも入っておった。その他には、たとえば有害な化学物質、重金属なんかの問題であるとか、土地利用の問題であるとか、五つばかりあった。その中でアセスメントというものを非常に重視しましたのは、こういう環境というものは、一たん破壊してしまうと、もとにはなかなか返らないし、また公害で健康の被害でも起こって、あとからまたその健康被害に対して対処していくということで手おくれになってくる。水俣病などはその例であります。どうしてもこのアセスメントというものによって、最初からそういう公害問題の起こらないようにすることが必要で、アメリカもやはりアセスメントに力を入れて、日本に比べて手続としては相当整備されているという感じでしたね。いろいろな大きなプロジェクトに対しては、事前にアセスメントというものを十分にやって、それを公表して、そしてパブリックヒヤリングを開いてやるような仕組みになっている。日本としても、そういう手続も非常に大事ですから、研究に値する問題だと思うのです。しかし、そのアセスメント手法というものに対しては、これはアメリカ自身にもなかなか問題がたくさんあるということであります。  そういう点で、これを今後両国が協力し合って——いままでも自動車の公害、光化学スモッグの問題であるとか、幾つかの委員会ができておるわけです。こういうものも新しく取り上げて、委員会をつくろうではないかという提案があって、こちらも十分に検討しようということを答えたのでありますが、このアセスメントの問題というのは、ある意味において環境行政の一番の中心になる問題である。そうでないと、あとから追っかけてやるということは、やってももとどおりにはならぬし、やる者としても、あと始末ばかりしておる役所というものは、お役所の人だって魅力のない役所になってきますから、そういう点で、この問題は特に力を入れていこうと思っておるわけです。両方のいわゆる共同研究のような体制も進めていきたいと思っておるわけでございます。いますぐに、こういった手法でという結論が出たわけではありませんが、取り組み方として、大いに意見の一致するところがあったということでございます。
  185. 岡本富夫

    ○岡本委員 私どももアメリカのアセスメント調査いたしまして、先般一応発表いたしたわけでありますが、やはり住民参加、その環境問題に利害関係のある人たちからいろいろと意見を聴取をして、そしてまた開発事業事前規制委員会というものを、衆参両院の同意を得てですが、総理が任命をして、その下に環境影響事前審査会というのを設けまして、そのもとにいろんな利害関係のある関係人が全部そこでいろいろと意見も言う。そして事業をするほうも、そこにこういうものだと、よく企業はノーハウといいますけれども、そういうものを出して、少なくとも環境問題については、あとでPCBみたいにならないように全部お互いに意見も出して、それで開発事業等規制委員会で裁定をする。これは行政の中ですけれども、公正取引委員会あるいは公害等調整委員会のような三者機関のような、ぴしっとした裁定を行なうようなものをつくってやらないといかないんではないか。  私、いま環境庁の姿を見ておりますと、先ほどからの答弁もそうですけれども、手足がないわけです。そして、あちらこちらに補助金を出しては、そこで少しずつやってもらう、あるいはまた、各地方自治体でやっているのをいろいろ聞いては、それを何かやっていくというようなことで、先ほど長官からもお話があったように、ほんとうにおもしろくない。おもしろくないといったらおかしいけれども、希望のないような官庁のように見えるのです。また、出向してきておって一カ年いたら、またすっと通産省へ帰ってしまう、農林省へ帰ってしまう。  これでは私は、ほんとうに日本の国の環境問題が解決するのかどうか。その証拠が今度のこの法案にも出てきているわけですね、ちょっとだけ変わって、あと何も変わってないというような。だから私は、なかなか環境庁自体で全部やるというのは無理なんだと思うのです。手足もありませんししますので、こういった環境事前評価をするところの委員会というようなものを、将来アメリカのようにつくっていくというような考え方はいかがなものか、こう思うのですが、長官の御意見ありましたら伺いたい。
  186. 春日斉

    春日政府委員 環境庁は決しておもしろくない役所ではないと私は思っておりますが、よけいなことでございますので本題に入りますと、地域開発のいろんな形態でございますとか、あるいは段階に応じて実施すべき環境アセスメントにつきましては、アセスメントの項目はいかにあるべきか、あるいは評価基準はどういうふうに持つべきか、あるいは必要にして十分な調査あるいは予測の手法、こういったものについては先生が御指摘どおり、十分これから検討しなければいけない問題が多々残っているわけでございます。そこで、環境庁といたしましては、一月の末から中央公害対策審議会防止計画部会の中に小委員会を設けて、ただいま検討を進めているところでございます。  なお、手法開発等につきましては、いろいろ私どもも四十九年度に予算化いたしておりまして、たとえば環境アセスメント実施促進費でございますとか、あるいは特に重要な都市型の大気汚染防止に関する環境アセスメント手法の策定費でございますとか、あるいは水質の変化予測基本調査、こういったものを組んでおりまして、先生の御期待に沿うような環境アセスメントの問題を解決してまいりたいと考えております。  なお、公明党の御提案になっております環境アセスメントの問題につきましては、十分私ども今後検討させていただくつもりでございます。
  187. 岡本富夫

    ○岡本委員 私、これを押しつけるのじゃありませんけれども、実際におきまして各省のいろいろな調整といいますか、これが環境庁でなかなかきかないのが普通であると思うのです。ですから、現在の環境庁が別に独立したような、裁定していくようなそれがありますと、その下にいろいろな意見を出して、完全な事前評価ができるとか、あるいはまた完全な調査ができるとか、こういうふうにして、そこに大きな予算を組んでやっていかなければ、この環境問題だけは解決しないんじゃないかという感じが私、しておるわけです。  そういった意味で提案をしたわけでありますが、いま長官は、三重県の田中知事は非常に先見の明があったというようなお話がありましたのですが、あの四日市に公害の石油コンビナートをつくったというのも田中知事の時代じゃないかと思うので、できてから先見の明があったと言ったんじゃ、これはまずい、だから長官、そのあと対策についてというようなことであったので、そういうふうに言われたんじゃないかと思うのです。  そこで、現在、公害認定地域が十三地域ですが、環境庁の公害保健課からもらった資料で四日市を見ましても、これは四十五年から四十九年三月末までですが、四十九年を見ますと、認定患者数が千二十三名、そして死亡者数が六十三名、川崎は千四百六十四名、そして死亡者数が七十八名、大阪市は三千百二十四名、死亡者数が百名、尼崎が三千三百七十七名で死亡者数が八十名、こう見ますと、四日市には重傷の人が非常に多いということがパーセントの上から出てくるわけです。同時に、こうして毎年ずっと見ますと、毎年ふえておるわけです。ですから、環境庁も、あるいはまた各地方自治体も力を入れておると思うのですけれども、いまのような状態では、まだまだ大気汚染の状態がとまらない、大気汚染が進行しておるということを示しておると思うのです。これについて、どういうふうに考えていらっしゃるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  188. 春日斉

    春日政府委員 ただいま御指摘のように、四日市あるいは大阪、尼崎市、あるいは川崎等で、数多くの慢性気管支炎、気管支ぜんそくぜんそく性気管支炎あるいは肺気腫あるいは続発症というものが認定症としてあがっておるわけでございますが、実は先ほどの御質問にもございましたように、四日市の大気汚染状況は、総量規制方式をとってから急速に濃厚汚染地域の面積が縮小されてまいっておりまして、非常に効果をあげておるわけでございますが、患者さんは多年にわたります、かつての高濃度大気汚染影響を受けて発病しておられるわけでございますので、ここ数年の間に大気汚染状況が改善されたとしても、患者さんが直ちに減るというものではなかろうと思います。ただし、そのスピードについては徐々に落ちてきている、かように考えておるわけでございます。
  189. 岡本富夫

    ○岡本委員 これを見ますと、年々増加している。これは、前の濃度がきつかったから、そのときの病気がいま出ているんだ、こういうことならば、そうとも考えられますけれども、そこで、この深刻な現状にかかわらず硫黄酸化物以外を指定しなかった。先ほどもちょっと聞いておりますと、どうも除去技術といいますか、そういうものに難点があるというようなお答えがあったわけでありますけれども窒素酸化物、こういうものの除去技術につきましては、東京都の都市公害対策審議会大気部会で調査したのを私どもは例にとっているわけですけれども、メーカーの技術開発状況を調査した結果、発電用ボイラーで最高五七%、産業用大型ボイラーで七七%も窒素酸化物を除去することができることを突きとめておるというようなことも出ておるわけですが、先ほど申しましたように、硫黄酸化物以外の指定をなぜ一緒にできるものならしないのか、これについて非常に疑問を感ずるのですが、もう一度明確にお答え願いたいと思います。
  190. 春日斉

    春日政府委員 私ども窒素酸化物の規制につきまして、過小評価をしているわけではございません。窒素酸化物もできるだけ早く総量規制に乗せたい、かように考えておるわけでございますが、現在のところ何と申しましても、硫黄酸化物の規制の場合に考えられておりますような低硫黄燃料の使用とか、あるいは脱硫装置とか、あるいは排煙脱硫装置といったきわめて有効な手段がまだないという現状は見のがすわけにいかないと思います。  そこで、私どもは確かに現状におきましても窒素酸化物の排出規制によりまして、それを低酸素運転でございますとか、あるいは二段燃焼法でございますとか、あるいはボイラーの改良、こういったことで四〇%あるいは五〇%減少させることを、実はすでに行なわしめておるわけでございまして、窒素酸化物については全く手離しにしておるわけではございません。したがいまして、そういった窒素酸化物の現在の排出規制というものを今後とも強化すると同時に、一刻も早く総量規制に乗りかえる体制を検討しているわけでございまして、決して窒素酸化物を無視しておるわけではございません。
  191. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、窒素酸化物、それから先ほど聞いておりますと、一酸化炭素、炭化水素は、今度の日本版マスキー法で何とかなるのじゃないかというような話でありますけれども、これも確たる実験の結果あるいはそういったもので、こうなんだからこうなんだという科学的な論拠というものが非常に私はまだないのではないかと思うのです。ですから、そういうものがありますれば、いますぐにはできないけれども、この総量をこうするからこうなるのだというような、もう少し研究といいますか、あるいはまた先ほど申しました事前評価といいますか、こういうものもつくっておいて、それによって規制していく。そうすると、総量から車の量とかいろいろなことも出てくるでしょうが、そういった一貫的な総量規制になっていない。だから、私はこれから見ると、できるものからやっていこうという考え方だと思うのです。それに対する反論があったらしてください。
  192. 春日斉

    春日政府委員 先ほども実は田中先生にお答え申し上げたわけでございますが、たとえば一酸化炭素の排出源を考えてみますと、これは九十数%が自動車でございます。したがいまして、総量規制と申しましても、自動車の排出規制を行なえば、これは目的を達するわけでございまして、残り一〇%足らずの一部の工場あるいは家庭燃料、こういった問題を規制することは、労多くして効少ないものであろうと考えております。マスキーの五十年規制によりまして、十分の一に一酸化炭素を減らすとなれば、これは必ずしも一酸化炭素の総量規制は必要ないのではないか、私はかように考えるわけでございます。  炭化水素に対しましても、先ほどお答えいたしましたように、半分は自動車から出るわけでございます。それを十分の一に五十年規制で行なうわけでございますから、これはむしろ残りの半分をペイント類あるいはガソリンタンク等の規制を行なっていくならば、総量規制を必ずしも必要としないのではないか、私はかように考えております。  したがいまして、総量規制はすべての万能薬ではございませんで、ものによっては必ずしも総量規制をかける必要はなかろう、かように考えておる次第でございます。
  193. 岡本富夫

    ○岡本委員 それじゃお聞きしますけれども、光化学スモッグの原因ですね。先ほど田中さんからも話がありましたが、ことしになってから非常に多発をしておりまして、五月十七日も全国的な多発の被害者を出しておる。これは私の選挙区ですが、西宮では、一日に小中学生が千四百七十一名、昨年の兵庫県下の一年間の総被害者よりも——その被害者が九百八十九名ですから、一・五倍に当たるというような現状になっておる。これは広島あるいは岡山、東京でも同じことでありますが、また大阪もこういうことが起こっておりますが、この光化学スモッグの原因というものは何なんですか。これをひとつ、……。
  194. 春日斉

    春日政府委員 光化学スモッグの実態と申しますものは、まず考えられますのが、炭化水素並びに窒素酸化物が排出されまして、それが空中におきまして太陽光線によって光化学オキシダントを形成する、これがいわゆる刺激性の光化学スモッグの症状をあらわすものだと考えられております。ただしかし、これがいわゆるロサンゼルス型の光化学スモッグの症状であり、現在起こっております。被害患者というものは、おおむねそれに属するものであろうと思いますが、数年前から、数は多くございませんが、けいれんを伴うような、かなり激しい症状を起こす患者も出ておりまして、これはいわゆるロサンゼルス型の光化学スモッグとは異質なもののように考えられる。したがいまして、その原因あるいはそれがいかにして起こるかという見当につきまして、鋭意私どもは研究中でございます。
  195. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまから四、五年前、たしか記憶では四年ほど前だと思うのですが、そのころからこの光化学スモッグ被害で、まあ東京においては石神井あたりでいろいろ起こっておりますね。それからまだ、なかなかその原因がつかめないというのが現状だと思うのです。ほんとうのところを言いますと。そうなんであろうということであって、私らそういうことを考えますと、相当予算も取って、いろいろと調査をしておるのであろうと思うのですが、どうもこのままいきましたら、いっその光化学スモッグの正体というものをつかむかわからない。ということになりますと、やはりこれは総量規制もして、そして早く被害者を救済しなければならぬ。このまま毎年毎年増加していくことになりますと、小中学生あるいはまた国民の健康というものが非常に心配だというのが私どものいま心配しておることなんです。だから、そうまでしなくてもいいんだというところに、私とあなたの論点に相違があるのはそこなんです。  ですから、一つはもっと予算をたくさん取って、この光化学スモッグの原因究明も早く行なうことが大事だと私は思うのです。どうもそこらあたりが、このまま人が何人か死んだということになれば、また力を入れるということになると思うのですが、その前に、こうした患者が出ておるのですから、もっと早く力を入れなければならぬ。もう四年ほどたっておりますが、まだ原因がつかめておらないということ、私は非常に遺憾だと思うのです。ですから、そういった意味で、やはりあらゆるものを総量規制していかなければならぬ、こういうように私は考えておるわけですが、これは答弁を聞いていても、おそくなりますから……。  そこで、この大気汚染防止法の改正にあたって、先ほども話がありましたが、適用除外の電気事業法、ガス事業法、これを聞いていると、これは通産省のほうで取り締まるんだからだいじょうぶだ、こういうようなことでありますけれども、やはりその地域の知事が取り締まれるようにしなければ、一々要請を通産大臣にしなければならぬというようなことでは、はっきりした取り締まりができないのではないか。先ほどあなたのほうで鉱山保安法と同じだと言っておりましたが、鉱山保安法というのは大体安全性が一番のもとになっておるわけですよ、鉱害も少し入っておりますけれども。電気事業法、ガス事業法のこの大気汚染に対するところの、火力発電所あるいはガスのああいった製造過程におけるところの大気汚染というのは、非常に大きなウエートがあろうと私は思うのです。したがって、この適用除外をこの際、はずすということが私はまず第一だと思うのですが、これについてもう一度お聞きしたい。
  196. 春日斉

    春日政府委員 この問題につきましては、先ほどるるお答え申し上げましたことの繰り返しでございますが、要するに知事が削限計画をお立てになる、あるいはその削減目標量もおきめになる、場合によれば中間目標もお定めになる、これはもう知事がきめるわけでございます。それからそれに違反した場合は直罰もかかるわけでございますし、そういうことからして、ただ、取り締まり、監督をそれぞれの鉱山保安法なり電気事業法なりガス事業法にゆだねるというだけで、これは私、総量規制の運営につきまして、必ずしもそれが大きな妨げになる、こういうふうには考えられないのでございます。それぞれ鉱山保安法あるいは電気事業法、ガス事業法の独自性もございますし、私どもはそういったものを含めまして総量規制というものを、いかにうまく運営していくかということこそ大切ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  197. 岡本富夫

    ○岡本委員 その電気事業法、ガス事業法、こういった企業によって出てきたところのばい煙あるいは硫黄酸化物大気汚染するところの物質と、これ以外の工場から出てきた物質と別に私は相違はなかろうと思う。同じことだと思うのです。  これはこの前公害国会のときに、大気汚染防止法の改正にあたっても相当論議があったのですよ。通産省が非常に反対をしてできなかったわけですが、もうそろそろ立ち入り調査もできるというような時代に私は来たのじゃないかと思う。この総量規制をこのときにあたって初めて——初めてじゃなしに、このときこそ適用除外をはずす好機会じゃないかと私は思うのです。それでは環境庁の腰が非常に弱いですよ。それではいつまでたっても通産省は放さない。だからもっと強腰でこれは各都道府県知事、まあ先ほど知事経験の田中さんも、知事の経験の上から言っておるわけですね。これは将来ひとつ検討するということで、大気汚染のほうの分の取り締まりについては、大気汚染防止法でやるんだというような状況に、検討をするというように、すぐにやれということを言ってもなかなかしないと思いますから、その点は大臣にひとつ前向きな答弁をいただいておきたいと思うのです。
  198. 三木武夫

    ○三木国務大臣 電気事業法、ガス事業法、この点については通産省と十分に話をいたす所存でございます。
  199. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、十分に話をして、将来この大気汚染防止法の適用除外を抜くというように、ひとつ前向きに考えていただくということ、こう了承してよろしいですね。
  200. 三木武夫

    ○三木国務大臣 けっこうです。
  201. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、そうでなければならないと思うのです。  次に、地域排出総量許容限度というもの、環境容量といいますか、これの算定についてどういうようにきめるのか、またいつきめるのかということを、ひとつお聞きしておきたいのですが、これは局長からでもけっこうです。
  202. 春日斉

    春日政府委員 この法律案によります総量規制は、指定地域において一般の排出基準の上に、さらに付加される規制でございます。かつ、特定工場等のみを対象として総量規制基準を課することとしておるわけでございます。  そこで、都道府県知事が総量規制基準の設定をするにあたって科学的に算定された目標地域排出総量を踏まえて合理的に設定された削減目標量に基づいて、しかも公平な手続を踏んだ上で、計画的に総量の削減を行なう、こういう慎重な方法をとる必要があるわけでございます。そこで、あらかじめ指定ばい煙総量削減計画を作成することとしたわけでございまして、その中で総量をきめてまいる、こういうことになろうかと思います。
  203. 岡本富夫

    ○岡本委員 その場合、この指定地域はだれがきめるのですか。
  204. 春日斉

    春日政府委員 これは政令できめることといたしております。
  205. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初、環境庁総量規制地域として、K値規制方式ですか、全国で、全部で大体九十都市をあげておったが、どうも後退したのではないか、こう考えられるのですが、いまどれくらいの地域を指定するつもりにしておりますか。
  206. 春日斉

    春日政府委員 総量規制方法の導入でございますが、これは現行方式の不十分なところを補う、こういう目的検討されてきたわけでございまして、これが環境庁の当初からの考え方でございます。法案でも、この考え方を明確にしたつもりでございます。  そこで、四十九年度内にどの地域を指定するか、これは現在検討中と申すよりほかはないのでございますが、硫黄酸化物にかかわる指定地域といたしましては、いわゆるK値の規制のきびしいランク、言うなれば一ランク、二ランク、こういった地域のうちから指定することといたしたい、かように考えております。それがまた当初の私ども考え方に即するものである、かように申すことができようかと思います。
  207. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、当初からの考え方に即するのであれば、大体どことどこを規制するという地域は、政令でこれから考えるというのではなくして、これは大体もうきまっておるはずですね、当初からの考え方であれば。これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  208. 春日斉

    春日政府委員 ただいま申しましたように、K値のランク一ないし二の地域におよそ集まるであろう……。
  209. 岡本富夫

    ○岡本委員 それはどこの地域なんですか。
  210. 春日斉

    春日政府委員 それでは、一々申し上げましょうか。十数地域でございます。  K値ランク一に属しますものが、まず東京特別区、それから横浜、川崎市等、それから名古屋、東海等、四日市等、大阪、堺等、神戸、尼崎等、こういったところが一ランクに入ろうかと思います。二ランクが千葉、市原等、それから富士宮、富士等、それから半田、碧南市等、それから姫路、明石等、倉敷等、北九州、苅田、和歌山、海南等、こういったところが二ランクの地域に属しておるわけでございます。
  211. 岡本富夫

    ○岡本委員 その指定地域は将来もっとふやしていきますね。——それはあと答弁をください。  次に、工場について公平妥当な算式と先ほどお答えがあったのですが、公害防止の機器、たとえば排煙脱硫装置を入れている、こういうようなところですね。そこで、燃料使用量あるいは原料使用量あるいはその燃料の硫黄の量といいますか、こういうようなものだけで計算するならば、先ほど申しましたように、排煙脱硫装置を入れているとかそういったもの等の不公平が出てくるのではないかとも考えられるのですが、その点はいかがですか。
  212. 春日斉

    春日政府委員 御指摘のとおりでございまして、第五条の二第一項後段の総理府令で、それをきめようということになっておるわけでございます。この総理府令は、指定ばい煙総量の削減計画に基づいた総量規制基準の定め方を定めるものでございますが、基本的には全国的な斉合をはかる見地から、総量規制基準の骨子について規定したいと考えておるわけでございます。  現実的に総理府令の内容といたしましては、規制基準の定め方、新たに設置されるばい煙発生施設に対する指定ばい煙排出量の留保分の定め方等々があると考えております。具体的な内容につきましては、学識経験者、地方公共団体等の意見を聞いた上で私どもが決定いたしたいと考えております。  なお、総量規制基準の定め方は、合理性あるいは公平性を十分配慮した方式でなければならないわけでございまして、現在のところ先生の御指摘があるような点も十分考えまして、たとえば原料及び燃料の使用量などをベースにした規制方式を考えていきたいと思っております。この場合、割り当てではなくて、自己計算できる算定式によりたい、かように考えておる次第でございます。
  213. 岡本富夫

    ○岡本委員 その場合、岡山県と水島コンビナートの環境濃度硫黄酸化物排出量のシミュレーションモデルによるところの許容排出量の算定方式、こういうものをやはり採用するわけですか。
  214. 春日斉

    春日政府委員 環境庁では電算機を中心とした大気汚染予測を確かに実施いたしております。それをいわゆる岡山方式あるいは水島方式と呼んでもいいと思いますが、そのほかにいろいろな方式がないわけではございません。風洞実験によるものもそうでございましょうし、特にこのシミュレーションの方式は日進月歩の科学技術を踏まえたものでございますので、次から次へ新しい、より正確なものが出てくるであろうと思います。しかしながら、考え方といたしましては、電算機シミュレーションで水島で行ないましたものと、前提条件、排煙吹き上げ効果の計算式、主要拡散モデル等に多少の異なる部分はあるといたしましても、ほぼ基本的な差はそう今後とも出てこないものであろうと思っております。  先ほど申しましたようにこの分野の学問、技術というものは、かなり急速に進んでまいっております。この法律案に基づく算定方式は、最新最良の技術を徐々に取り入れていかなければならないわけでございます。  なお、地方公共団体がすでに行なっている方式につきましても、この法律案による総量算定方式を検討する上で十分尊重してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  215. 岡本富夫

    ○岡本委員 埼玉県で岡山方式を採用してやったけれどもうまくいかなかったというようなことも言っているわけですね。だから総量規制については、これは今後相当論議があろうと思いますし、算定方式についても、あるいはまた割り当てについても、相当論議が出てくると思うのです。  そこで、一つ確かめておきたいことは、総量規制基準の割り当てについて基本的な考え方をお示しを願いたい。
  216. 春日斉

    春日政府委員 基準の定め方につきましては、先ほどお答えいたしましたように、私どもは合理的あるいは公平性、こういったものを十分に配慮した方式でなければならない、これが原則でございます。しかも、その基礎になりますところの、いわゆるその地域におきます環境基準に照らして計算されました排出総量、それから現在の排出総量、それの比較において削減目標量を立てて減らしていくということでございますので、私どもはそれに用います方式は、十分に科学的に検討したいものを使いたい、かように考えておる次第でございます。
  217. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはもっと詰めたいのですけれども、時間がありませんから……。  それで一定規模というようなことをいっているのですが、一定規模の工場、事業場の総量規制ということでありますけれども、一定規模の中にも、おそらく中小企業も入ろうと思うのです。そうすると、この中小企業が公害設備をするために、相当長期、低利な融資が必要であろう、また利子補給もしなければならないであろう、また税制上の優遇措置も講じなければできないのではないか。これについて通産省のほうでは、どういうように考えておりますか、
  218. 倉部行雄

    ○倉部説明員 中小企業の公害防止対策に対する助成措置といたしましては、ただいま先生が御指摘ございましたように、特別に長期、低利、こういった金融措置等が必要なわけでございまして、私ども毎年こういった金融、税制措置を中心に拡充をはかってまいっておるわけでございます。  たとえば金融面におきましては、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫によりますところの公害防止貸し付け制度というのがございまして、これにつきましては、ワクとしましては、中小企業金融公庫が前年度、四十八年度百億でございましたが、四十九年度二百億というふうにワクをふやしております。それから国民金融公庫につきましても、ワクの増大をはかっております。  それから中小企業がその場所において公害の防止を進めるということが非常にむずかしい場合には、その移転をするという場合の貸し付け制度もございまして、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫のそういったワクについても、四十九年度拡大をはかっております。  また同時に、公害防止事業団によりますところの融資事業、あるいは土地の造成を含めました建設事業につきましても、融資ワクの拡大をはかっておるわけでございます。  また特に中小企業の場合、個別企業ではいろいろと問題がございます。負担も大きくなりますので、共同で公害の防止をするという場合には、特に中小企業振興事業団によりまして、その八割を無利子で融資するというふうな制度もございます。  そういった面を今後さらに普及いたしまして、活用をはかってまいりたいというふうに考えております。
  219. 岡本富夫

    ○岡本委員 一件当たり、どのくらいのあれになるのですか。これが少なかったら、できないのです。
  220. 倉部行雄

    ○倉部説明員 これは制度によりまして融資限度がまちまちでございますが、中小企業金融公庫の公害防止貸し付け制度というものを見てみますと、直接貸し付けの場合五千万円の上のせ、それから代理貸し付けの場合、別ワクとして二千万円。それから公害防止の移転関係でございますと、直接貸し付け、一般貸し付けと合わせまして一億二千万円。それから中小企業振興事業団の共同公害防止事業貸し付け制度でございますと、特に制限をつけておりません。  以上、代表的なものだけ申し上げました。
  221. 岡本富夫

    ○岡本委員 三木長官、現在中小企業丁がやっているこの貸し付け制度ですが、私が一つ一つ見ますと、一件当たり非常にワクが少ないのですね。それから何か担保がなければならないのですよ。中小企業というのは、非常に担保をとられるのですね。大商社は千五百億くらいで二十二兆円くらいの金を動かすのに、中小企業はほんとうに全部担保がなければできない。そのつくった機械を担保にはとらない。こういうようなことで、もう一度この制度の抜本的な対策を講じないと、総量規制をしましても、今度は中小企業ができなくなる。  それから、もう一つは一回限りの融資。総量規制で、たとえば硫黄酸化物ができたら、今度は窒素酸化物と、こうくるわけでしょう。そういうことから見ますと、中小企業の公害対策というのは、融資については、非常にこまかいいろんなのがあるのですけれども、もっと簡単に、しかも公害対策というのは、やはり国民の健康を守るための大切なことでありますから、このままいきますと、今度は中小企業はもう仕事ができなくなる、事業活動ができなくなるという面が——日本の国の九九・四%が中小企業ですから、ですからその点もやはり受け皿として、もう一度再検討を私、お願いしておきたいと思うのです。  もう一つは、大企業の排煙脱硫、これはやはり義務づけなければいかぬと私は思うのです。義務づけをしなくたって、やかましくなったらやるのだ、こう言うのですけれども、非常に普及率が少ない。しかも、いままでの状態を見ておりますと——先ほども、長官が通産大臣のときに非常に研究したというお話です。工業技術院で研究をして、こういうものができたからやれということで、中部電力や、あるいはまた関西電力あるいは東電にやらしておるわけですけれども、そういうものをつけても、それは事業の利益にならないから、なかなかやらない。それがいままでの状態です。これも机上の理論と現実は違うわけですから、やはり義務づけもやっていかなければならぬ、このように思うわけです。  それからもう一つ測定ですね。西ドイツあたりでは、碁盤の目のように全部測定器具があるわけです。その測定器具も一定しているわけですよ。日本のように、いろいろなんじゃないのですね。一定しておりますから、きちっとしたデータが出てくるわけです。これはだいぶ前の話ですけれども濃度の強いところは測定器具を——あまり汚染しておらぬようなところを見て移動したりして、それでデータを合わしておったというようなこともありましたから、やはりそういった西ドイツ方式もひとつ考えてもらわなければいかぬ。  最後にもう一つは、事業の許可制です。これは環境アセスメントがきちっと出れば、将来許可制にならなければならぬと思うのですが、これはイギリスでも、スウェーデンでも、西ドイツでも、全部許可制をとっておりますよ、事業の。届け出制だけではだめだ。そういった面を私は要求をしておきますから、環境庁で、もう一度再検討をしていただく。同時に、原燃料につきましても、ミナス原油ですか、こういった低硫黄の燃料というものは非常に入手が困難なんですね。しかも、こうしていまのように石油パニックという——あれはつくられたわけでありますけれども、低硫黄燃料の供給が非常にわが国はむずかしい。そういった面からも、あらゆることを総合して、そして現実に答えの出るところの対策を要望しておきたいと私は思うのです。  一つ一つこれをやるには時間がありませんから、これで終わりますけれども、そうでないと、こういった法律案をつくりましても、またいろいろなことをやりましても、現実にはなかなか答えが出ないということで、また被害者が続出していく。このまま推移しますと、日本列島は公害列島といわれるわけですから、住めなくなってくる。これは環境庁の大きな責任だということでありますので、その点を指摘いたしまして、ちょうど時間ですから、きょうはこれで終わります。  何か言うことがあったら、言ってください。
  222. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この総量規制には、中小企業は、燃料規制だけをしまして、総量規制は適用しないつもりでございます。しかし、やはり環境の保全のために、中小企業の公害防止というものは重要でもあるし、また資力に乏しい面もありますので、通産省からいろいろな、中小企業金融公庫であるとか、あるいは中小企業振興事業団でありますとか、あるいは公害防止事業団、こういうものの融資というものは、どうしても伴わなければならぬ。その融資の場合に、これはいまでも担保をとらない場合もあるわけです。だから保証だけでやる、この点はそういうふうに持っていくようにいたしたいと思います。  それから第二の点、排煙装置を義務づけたらどうかということですが、実際、排煙脱硫の装置は、これは大企業自身は公害問題というものに対して、やはり相当気を使うようになっていますから、必ずしも義務づけなくても、これはみながやらざるを得ないことになっていくと思います。しかし、それでもなかなか目的を達せないということなら、義務づけも考えることにいたします。いま直ちにはやろうという計画ではないのです。推移を見て、必要があればやることにやぶさかではないわけでございます。  工場を許可制にせよということについては、どうも大気汚染防止法で、工場の許可制度というものは、これは行政の筋としてもおかしい。やはり通産省として、こういう工場の立地に対しては、通産行政の見地からやるべきで——わかりますよ、岡本委員の言われることは。しかし、大気汚染防止法工場の許可制というのは、どうも行政の姿としては、これはやはり好ましくないと思います。通産省も公害防止ということに対しては、力を入れてきて、昔の通産省と違っていますからね、今日は。これは公害防止に力を入れておりますから、そう全体の環境を維持することに困難なような工場に対して、通産省が行政指導をして、次々に工場を建てる、今日の通産省はそういう姿ではないということでありますので、許可制というものは、通産行政の見地から、やはりこれはやるべきだという考えでございます。  また西独の例をとられましたが、最近、私、ヨーロッパを回りまして、そういう一つの、いま与えられた現状に対する対応策というようなものは、日本はほかの国に比べて、そう劣っているとは思わない。やはり考えなければならぬ点は、問題の基本について、たとえば下水道なら下水道というものに対して、これはもう一世紀ぐらいの歴史を持っておるわけですから、そういう点で、あるいはまた自然環境の保全というものに対しても、もう少し人間生活と自然というものとの、そういう基本に根ざして、いろいろな自然環境の保全というものをはかっていく——いろいろな現状に適応する能力というものは、日本は劣っておるとは思わないが、問題の基本について、そこからいろいろな環境を保全していこうという点については、近視眼的な点があったという反省は、われわれもいたしたわけでございます。  いずれにしても、しかし総量規制をやったのは、日本が初めてですからね。どこの国もないのですよ。これは画期的なものであって、いま岡本委員から見れば、まだまだ気に入らぬ点が多々おありになると思いますが、一ぺんに、これはいま、よその国でも例のないようなことをやろうというわけですから、そういうことで、これを一つ出発点にして、総量規制をやることの好ましいことは、言うまでもないわけですから、こういう整備した規制方式でやっていきたいと考えておる次第でございます。
  223. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで終わりますけれども、この許可制なんかも、大気汚染防止法をこの前、公害国会で論議したときに、届け出制よりも許可制にしたほうが、きちっとやりやすいじゃないか、またそうしなければならぬ時代が来るのじゃないかというようなことも、これもおそらく附帯決議か何かで要望しておるはずですし、相当公害対策については、いままでのわが国の狭い国土でおろそかにした。これは戦後の復興のあれによって相当企業寄りであったというところに、非常に現代のこういったことが起こっているわけですから、やはり日本人が全部生きていくためには、確固たる決意を持って臨んでいただくことを要望しまして、きょうは、これで終わります。
  224. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 坂口力君。
  225. 坂口力

    ○坂口委員 いま岡本議員からいろいろの点が指摘されまして、重複するところは避けさせていただきたいと思います。  従来の濃度規制から総量規制へという進展につきましては、これは私どもも、たいへん好ましいことだと思うわけでございます。きょう午前中にもいろいろと指摘があったとおり、結局はその内容いかんということになるであろうと思います。長官かち、世界に先がけて日本は行なったというお話がございました。世界に先がけてやられたということについて評価する一方において、やはり世界に先がけてやらねばならない環境が生まれたということを悲しまなければならないと思うわけであります。  二、三の点、まずお聞きをしたいと思いますが、先ほど総量規制に対する対象物質を硫黄酸化物に限定しているという議論がありまして、そして亜硫酸ガス等以外の大気汚染物質たとえば窒素酸化物、こういったものに対する総量規制を今後どうするかということについて、現在、努力の過程にあるという御答弁がございました。現在、その努力をしていただいている過程の中で、たとえば窒素酸化物に限ってもいいですが、窒素酸化物等で、これを非常に総量規制を行ないにくくしていると申しますか、そこまで達成させないおもな原因というのは、どういうところにあるのか、技術的な面でもけっこうでございます。
  226. 春日斉

    春日政府委員 先ほど長官からもお答えいたしておりますように、窒素酸化物の発生者は実は工場だけに限りませんで、自動車がかなりある。ところによっては、先ほど長官の答弁にもありましたように、七割は自動車から排出される窒素酸化物で占められるという地域もあるわけでございます。したがいまして、自動車の排出する窒素酸化物の量のとらまえ方というのが、きわめてむずかしいわけでございます。いわゆる拡散理論によって、そう簡単に工場のように、煙突から出た窒素酸化物を算定するというわけにはまいりません。拡散のしかたも、きわめてわずかな拡散でございますので、そういった点で環境容量を定めるということが、かなりむずかしいという技術的な問題が一つ。  それからもう一つは、窒素酸化物の規制を行なうにあたりまして、先ほども申しましたが、硫黄酸化物のごとく、低硫黄の重油をたけばよろしい、あるいは排煙脱硫装置を用うればよろしいというような、いわば即効的なものが乏しいわけでございます。もちろん脱硝技術の進歩と申しますものは、ここ一年来、非常に進歩してまいりました。私は革新的、飛躍的な進歩が近くあることと存じておりますが、そういう意味で非常にむずかしい点がある、こういうことを申し上げておる次第でございます。
  227. 坂口力

    ○坂口委員 私、質問さしてもらった趣旨、少し舌足らずな点もあったわけであります。確かにいまおっしゃいますとおり、自動車等の、いわゆる移動発生源の問題が大きな問題であることは当然でございますが、一応総量規制ということになれば、これは当然移動発生源の問題を抜きにするわけにはまいりませんけれども、この問題は一応横におくとして、工場から出る窒素酸化物、こういったものに限ってというわけにもまいりませんけれども、主体とした考え方というものが何かもう少しないのであろうかというように思ったものですから、質問さしていただいたわけであります。それについて何かございましたら……。
  228. 春日斉

    春日政府委員 実は窒素酸化物の排出規制をいたします施設は、まだ限定しております。要するに、現在の技術で低酸素運転あるいは二段燃焼あるいは炉の改善等で対処できるようなものについては規制の網をかぶせておりますが、実は製鉄業界の膨大な施設の問題あるいはセメント等の問題、こういったものは、まだ確実な脱硝技術が開発されていないので、まだ総量規制どころか、その一歩手前であるところの単純な排出規制も、実はかかっていないわけでございます。これを早急にかけるべく私どもは技術の改良を急がしておるわけでございます。ことに鉄鋼業界におきましては、膨大なる研究費を投じまして、いま総力をあげて窒素酸化物排出規制の方式について、内外の学者陣を動員いたしまして、スピードアップしておるところでございまして、これも先ほどのお答えにも触れるわけでございますが一私は、近く窒素酸化物規制も革新的な飛躍は遂げられるもの、かように信じておる次第でございます。
  229. 坂口力

    ○坂口委員 いま御答弁をお聞きしたわけでありますが、窒素酸化物を今後どうするかという問題について、各企業の段階で非常な努力をしているという御答弁であったわけであります。企業は企業として、独自でいろいろの御研究をなさる、また国は国の段階として、非常に重要な問題でありますから、やはりこの問題についても手がけていくべきだと思いますが、国の段階では、このことについての研究というのは進んでおるのでしょうか。
  230. 春日斉

    春日政府委員 これは通産省の工業技術院を中心といたしまして、脱硝技術の大きなプロジェクトをつくっておるわけであります。これについて、いま着々と研究が進められております。
  231. 坂口力

    ○坂口委員 あるいは通産省のほうにお聞きをすべきであったかと思いますが、この問題ただ各企業にまかせるだけでなしに、やはり国のレベルでも、この問題をぜひ早急に、しかも徹底的にひとつ追求をしてもらいたいと思うわけであります。それが第一点であります。  それからもう一点は、この法案の中に出てまいりますいわゆる指定地域の問題でありますけれども、これはいままで指定地域が問題になりますときに、いろいろ問題になったわけでありますが、この指定地域をきめますときに、いわゆる行政区画で割りましたときに、かなりその周辺部との間に、いろいろのもらい公害等の問題が出ておりました。そこで、今回指定地域制というものをとられるわけでありますが、これはやはり行政区割りでいかれるのだろうと思うわけです。その場合に、たとえば二つの市にまたがったような形に工場地帯が密集しているというような場合に、あるいはもう少し片寄っておりましても、一つの市の非常に片寄った地域工場が密集しているというような場合に、隣の市に、あるいは町村に、かなりな影響を与えるわけであります。その場合に、この指定地域のとり方というものが非常に問題だろうと思うのです。  行政区割りでいくか、それとも汚染地図みたいなものを中心にしていくかということ。自分の健康ということを中心にすれば、いわゆる汚染地図というものが中心で、これはやられるべきものであろうと思いますが、この点はどうでございますか、たいへん基礎的なことで私よく存じておりませんので、お伺いいたします。
  232. 春日斉

    春日政府委員 指定地域におきまして、指定ばい煙総量削減計画をつくりますにあたりまして、その地域に他地域から流入してまいります指定ばい煙量、先生はもらい公害の煙とおっしゃったと思いますが、まさにもらってまいります指定ばい煙量、それから逆に当該指定地域から他地域へ流出する指定ばい煙総量、これについても所要の考慮を行なわなければならないのは当然でございまして、先生行政地域で行なうのか、汚染地図を中心に行なうのかという御設問でございますが、これはもうまさに先生の御指摘どおり、汚染地図方式と申してもいいと思います。  でございますから、指定地域が特に都道府県を異にして接しているような、いわゆる県際地域と申しますか、こういった問題につきましては、当該の都道府県知事が相互に発生条件や気象条件あるいはそれにまつわるいろいろな情報をお互いに交換いたしまして、両者協力の上、指定ばい煙総量の削減計画を作成しなければならぬことになるわけでございます。こういった場合に、国といたしましても、必要な助言あるいは勧告を行なう、そして円滑な広域汚染防止をはかっていく、それに資するつもりでございます。  もちろん数都道府県にわたって相互に大気汚染影響を及ぼすような地域につきましては、できる限り、同時に地域指定を行なうということをやりまして、関係の知事さんが歩調を合わせて総量規制実施する、そしてその汚染地図全体の大気汚染改善が、効果的にはかれるように考慮してまいりたいと思うわけでございます。
  233. 坂口力

    ○坂口委員 汚染地図でいくというお話を聞きまして、私も安心したわけでありますが、これはたいへんこまかな問題をお聞きして恐縮なんですけれども、季節によってかなり風向き等が変わったりするわけでございます。特に海岸線というのは、非常に春夏秋冬によりまして、ずいぶん風の流れ等も変わるわけでありますが、その場合に、たとえば冬は非常に調子が悪いけれども、夏はいいとか、またその逆の地域があるとかというようなことで、季節によっては、いわゆる汚染地図というものが、かなり変化をするということが実際問題としてはあると思うのです。その場合に、これは春夏秋冬のうちで、ある季節だけでもひっかかるところであれば、全部それが汚染地域へ入れられるのか、それともその辺は春夏秋冬とも汚染されている地域でなければ、この指定地域の中に入れないのか、その辺たいへんこまかな問題でございますけれども、重要な問題も含んでおると思いますので、その辺お聞きしたいと思います。
  234. 春日斉

    春日政府委員 指定地域におきますばい煙を発生いたします施設の排出量あるいは排出口の高さ、煙突の高さ、あるいは立地位置、その地域の年間を通した気象状件、先生がおっしゃいましたように冬は北向き、夏は南向きとか、あるいは朝晩の風向きの変化、そういった気象条件、これを理論式の拡散式の中に入れてまいります。そしてコンピューター計算をいたすわけでございまして、地域全体の汚染度の予測をそういうことによっていたします。そうして、この汚染度が、どの地点において環境基準を満足するに必要かという、ばい煙排出量の削減量を計算することによって、いろいろ算定してまいることになろうと思います。  先ほども申しておりますように、こういった技術は、やはり今後ますます進歩さしていかなければならないものと私ども考えるわけでございます。できるだけ新しい方式を取り入れまして、先生の御指摘になったようないろいろ複雑なファクターをすべて入れた一つの何と申しますか、指定地域におきます環境基準に照らして算定された総量の計算ができるような方式を検討いたしていくつもりでございます。
  235. 坂口力

    ○坂口委員 これもおそらく午前中に御質問があったと思いますが、いわゆるシミュレーションモデルによる許容排出量の算定方式、これを御採用になるやに聞いております。これがいろいろ異なる条件のところで、はたして同じ方法でいくかどうかということに問題があるだろうと思うわけでありますが、いろいろと御説明いただいたように、これは一度現在の段階で一番ベストな方法であるということになれば、この方法をとってもらわざるを得ないと思うわけでありますけれども、しかし、これは今後やっていただいている間に、いろいろの問題がおそらく出てくるであろうと思うわけです。  したがいまして、一度こういう方法を、ベストな方法を採用してもらうとしましても、以後絶えずこの研究をひとつ重ねていただいて、初めこれで始めたから、もうしばらくはこれでいくのだというような非常にかたい考え方ではなしに、順次新しい方式等が生まれれば、即刻それを取り入れていくという柔軟な姿勢を示していただきたい、こう思うわけであります。  それからもう一つは、現行のいわゆるK値の規制についても、いわゆる八ランクがあって、それでこのこと自体まだランク分けをするということは、汚染をされていない地域は、悪く解釈しますと、問題の生じるまでは汚染してもよいというふうな結果にとられないとも限らないと思うわけです。この点十分な行政指導等が今後なされなければならないと思うわけでありますが、この点について何か御見解がありましたら……。
  236. 春日斉

    春日政府委員 まだ未開発の工業地域、あるいは開発されておりましても、まだその地域があまり汚染されていないようなところでは、実は総量規制をかけるまでもなく従来の方式、硫黄酸化物で申せばK値規制によりまして、これは十分目的を達することができようかと思います。  K値規制によりまして、どうしても目的が達せない地域と申せば、多数の人間が密集してございまして、いわゆる高原汚染というような状態をかもし出しまして、拡散理論によりましては、どうしてもうまく、K値を幾らきびしくいたしましても、それほどの効果があがらない、こういったところに総量規制方式をかぶせるわけでございます。  要するに、K値規制総量規制と両々相まって環境基準以下に押え込もうというわけでございます。したがいまして、私どもは、まだ大気汚染がそれほどでもないような地域におきましては、K値規制によって十分目的を達せられるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  237. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつその点よろしくお願いします。  最後に、もう一つだけお聞きをしておきたいと思いますが、先ほど岡本議員も最後にちょっと触れましたけれども、いわゆる中小企業の公害の問題があります。大きい企業につきましては、随時もう改善されてきていることは、やはり三重県の四日市市等でも事実であろうと思います。まだまだ不十分な面もございますけれども、以前に比べますと、かなりな改善を見てきております。そういたしますと、結局、今後さらに公害というものを改善をしていくためには、やはり残された中小企業における公害問題というものに重点を移していかざるを得ないとおもいます。  そういう意味で、どうしても昨年からことしにかけますような、こういう経済状態でありますと、いわゆる会社の運営そのもの、企業の運営そのものが、なかなかむずかしい段階でありますから、なかなか公害のほうへも手が回りにくいというのが現状ではないかと思います。特に小零細企業等におきましては、先ほども少しお話がありましたが、いろいろの貸し出し等の制度というものはありますけれども、大臣が先ほどちょっと触れられたような、いわゆる無担保のものというのは、非常にわずかな金額であって、少なくとも所定の目的を達するにふさわしいような装置等をしようと思いますと、いま無担保で貸し出されるような額では、いかんともしがたいというのが現状ではないかと思います。非常に諸物価の高騰で、そういう装置をつくるにいたしましても、いままでのほんとうに倍以上もかかるようになっております。  そういう意味で、中小企業のいわゆる公害問題というものを今後考えますと、政府の中小企業金融公庫あるいはその他の政府系の金融公庫で長期の、そして低利子のものをかなり用意をしてもらわざるを得ないと思うのです。しかも担保ということが前提条件になりますと、やはり運営上にすべてとられているということから、実際問題としては、なかなかお金を借りようと思っても借りられないというのが、正直なところ申しまして実情ではないかと思うのです。小零細企業は数が多うございますので、一つ一つでは少なくとも、これ全体のワクというのは、なかなか大きな額になるであろうと思いますので、これはたいへんな今後の作業ではあろうかと思いますけれども、しかし、これはかなり前向きに環境庁としても、ひとつ他の省庁に対しましても発言をしていただいて取り組んでいただかざるを得ないのではないか。そうしないことには、各小零細企業に公害を防止する気持ちがあっても、実際問題としてはできないということが、いまもうすでに実際に起こっておりますし、今後はさらに起こるのではないかと思うわけです。  ひとつこの点は、先ほど岡本議員からも積極的にという意見がありましたけれども、より具体的に私は前進をしていただきたいと思います。お願いいたします。
  238. 三木武夫

    ○三木国務大臣 坂口委員の御指摘ごもっともだと思います。これからは、やはり公害防止というものをやらない企業は存立していかないということだと思うのです。大企業はそれだけの余力もありますが、中小企業というのは問題だと思いますので、いままででも全部担保ではないようですが、一そうこれを徹底して借りやすくする、長期低利の資金を公害防止については提供のできるような方途を、もっと積極的に考えることをお約束いたします。
  239. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつこの点を十分にお願いをしておきたいと思うわけです。  先日も、繊維企業等の特に小零細の繊維の関係の皆さん方とお会いをしましたときも、野党も公害のことを非常に熱心に言ってもらうけれども、しかし、その解決する方法についても、より積極的に取り組んでほしいというような要望もございました。確かにごもっともな御意見であろうと思います。ひとついまの大臣のおことばを、ただこの委員会におけるおことばに終わるのではなしに、一日も早く実際の場に反映されることをお願いをしまして、私も終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  240. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 次回は、明五月二十二日水曜日、零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会