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1974-05-09 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君       田中  覚君    岩垂寿喜男君       小林 信一君    佐野 憲治君       長谷川正三君    福岡 義登君       諫山  博君    米原  昶君       坂口  力君    田中 昭二君       折小野良一君  出席政府委員         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業大臣官         房審議官    江口 裕通君         建設政務次官  内海 英男君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部公害課長  星野鉄次郎君         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         国税庁直税部審         理課長     久世 宗一君         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   国川 建二君         厚生省薬務局安         全課長     石居 昭夫君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      柴田 益男君         通商産業省立地         公害局保安課長 鎌田 吉郎君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      赤羽 信久君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         労働省労働基準         局安全衛生部計         画課長     石田  均君         建設省都市局都         市計画課長   野呂田芳成君         建設省都市局下         水道部長    久保  赳君         国土地理院測地         部長      鈴木 弘道君         日本電信電話公         社建設局長   中久保卓治君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     秀島 敏彦君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     東  貞三君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     長谷川正三君   佐野 憲治君     福岡 義登君   米原  昶君     諫山  博君   岡本 富夫君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   長谷川正三君     岩垂寿喜男君   福岡 義登君     佐野 憲治君   諫山  博君     米原  昶君   田中 昭二君     岡本 富夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(土壌汚染  及び水質汚濁対策等)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に多摩ニュータウン環境保全問題について、本日、参考人として日本住宅公団理事秀島敏彦君及び東貞三君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 五月五日の新聞を見ますと、各紙それぞれ発表しておりますが、環境庁は、島根笹ヶ谷鉱山周辺慢性砒素素患者について、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法に基づく認定患者とすべき旨の結論に達したと報道しておりますけれども、まず環境庁から、健康被害者状況中心に実情を御説明ください。
  6. 信澤清

    信澤政府委員 概要につきまして、私から御説明申し上げます。  御指摘ございましたように五月四日に、環境庁にございます砒素による健康被害検討委員会というものが、島根笹ヶ谷鉱山周辺地域における砒素による健康被害の問題についての報告をいたしたわけでございます。  その内容は、第一は、笹ヶ谷鉱山周辺地区におきまして、過去の鉱山活動に起因すると推定されまする砒素による水、土壌、一部の飲料水あるいは大気汚染が認められたということでございます。  第二は、健康調査の結果、砒素濃厚汚染地域に居住する住民の中に、皮膚所見、それから末梢神経所見から、慢性砒素中毒考えられる患者が発見されたということでございます。  第三点は、従来砒素慢性中毒につきましては、皮膚所見なり、あるいは鼻の粘膜の所見から判定をいたしておりますが、今後この種の疾病判定にあたっては、末梢神経障害もっけ加えるべきである。  以上、三点について、報告を受けたものでございます。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、通産省から、笹ヶ谷鉱山の歴史とその稼働状況につきまして、簡単に御説明ください。
  8. 江口裕通

    江口政府委員 笹ヶ谷鉱山は、歴史的に非常に古い鉱山でございまして、いわゆる石見銀山砒素関係中心といたしまする、そういう鉱業生産実施しておったわけでございます。  淵源的に申しますと、弘安年間に銅及び砒素を目的として開発が始まったというふうに伝えられておるわけでございます。その後いろいろの変遷はもちろんございまして、多数の鉱業が稼行されておるわけでございますが、一応鉱業法施行されました明治二十六年以降のことから申し上げますと、いまはなくなっておりますけれども堀藤十郎氏が鉱業権を設定いたしまして、粗銅、亜砒酸生産を行なっております。その後昭和八年から二十四年まで、もちろん戦争中の中断があるわけでございますが、日本鉱業が、この堀氏と共同鉱業権者になりまして、銅、亜砒酸等生産をしております。その後、日本鉱業がやめまして、二十四年以降でございますが、鉱業権転々としてかわっておりまして、現在でもなかなかその捕捉は実は困難なのでございますけれども鉱業権転々としておりまして、最終鉱業権者といたしまして現在までわかっておりますところでは、吉岡鉱業株式会社というのが最終鉱業権者になっております。この吉岡鉱業につきましては、現在、鉱業権昭和四十六年に消滅いたしておるわけでございます。ごくかいつまんで申し上げますと、以上でございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 周辺住民砒素中毒は、先ほどお話でもありましたが、大気汚染水質汚濁等ありますけれども、大体いつごろどういった原因で起こったものと考えられるのか、環境庁のほうで詳しいものがあれば御説明ください。
  10. 信澤清

    信澤政府委員 私どもがこの問題を知りましたのは、昭和四十五年に島根県が周辺地域につきまして環境調査をいたしたことに始まるわけでございます。その当時、環境調査をいたしました結果、先ほども申し上げましたように、土壌あるいは井戸水等々から、かなり濃度の高い砒素を検出いたしたわけでございます。そこで島根県が、昭和四十七年七、八月にかけまして、鳥取大学の協力を得まして健康調査を行なったわけでございますが、その結果、先ほど申し上げましたような砒素中毒と認められるものが若干名出てまいりまして、それを先ほど申し上げた検討委員会検討の結果、今回これは鉱山活動に起因する汚染による慢性中毒である、こういう結論を得たわけでございます。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 一体大気汚染原因なのか、それから採掘に伴ってズリ等が出ます、そのズリ堆積をしたことによるところの水質汚濁なのか、または砒素鉱山でありますから、必然的に自然汚染が出るというような問題もあります。この辺一体どれなのかという点につきましては、私はこういった原因究明というのは、今後の新患者発生を防止するためにもきわめて重要な点ではないかと思うのです。そういった点につきまして、さらに詳細な調査を早急に行なうべきであると思うけれども、どうでしょう。
  12. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘になりました点は、非常に今後の問題として重要な問題でございまして、従来の施設等状況から見ますと、非常に広範囲に大気汚染があったことは事実でございますし、それによって土壌汚染を起こしたことも事実でございます。また排水から出てきたということも事実でございます。また一面、先生の御指摘のようなズリからも出てきているであろうということも事実でございまして、これを量的にいかに見るかというところまで私どもはまだ確たるあれはございませんが、少なくとも大気汚染としての施設と、水質汚濁関係した施設とは関与していたことは事実でございます。  その辺の事実問題につきましては、やはり鉱業権者が非常に移り変わっておりますので、通産省とよく従来の経緯につきまして施設実態等を調べた上で、私ども最終的な発生源についての決断を下したいというふうに思っております。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 それでは、この問題は相当前から言われておったわけでありますけれども、現在行なっておるところの鉱害防止対策はどういうものかあるのですか。
  14. 江口裕通

    江口政府委員 笹ケ谷鉱山に対します鉱害防止対策でございますが、主として発生源対策と申しますか、そういったものを中心として防止工事を行なっておるわけでございます。  具体的に申しますと、先ほど申しました最終鉱業権者と申しますか、吉岡鉱業に対しましては、鉱業権消滅後も鉱害防止の監査あるいは監督検査ということに基づきまして、必要な指示を与えておるわけでございます。具体的に申しますと、坑口の禁さくでございますとか、あるいはスライム堆積場導水路設置いたしましたり、堆積場堤頂部の補強をいたしますとか、あるいは覆土植生沈でん池のせきとめの設置というようなことを指示いたしまして、これは現在厳重に防止対策をとらしておるわけでございます。  ところで、それ以外の鉱業権者でございますけれども先ほどもちょっと申し上げましたように、非常に鉱業権転々といたしております。それから現在まで、もちろん鉱業権者名前等は判明しておりますけれども、具体的に義務者の不存在の場合、あるいは無資力の場合等々いろいろケースがございます。したがいまして、こういう場合には直接鉱業権者あるいは過去における鉱業権者に対しまして防止工事を要求するというわけにはまいりませんので、御存じのように、休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度というものを活用いたしまして、現在、島根県が事業主体となりまして、昭和四十七年度以降防止工事に着手しておるわけでございます。かいつまんで申しますと、総額約五億程度工事でございますけれども、四十七年度は主として航空写真現場測量現状把握、四十八年度の場合は製錬所あとの処理、山腹水路、それから進入道路工事等実施しております。四十九年度も継続して事業実施すべく現在予定しておりまして、大体一億数千万円の規模で引き続き防止工事実施してまいりたい。  以上が状況でございます。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 発生源対策として、お話を聞きますと、県が現在実施中であるという話でありますが、県が現在実施中の工事が完了すれば一体完全なのかどうか。通産省のほう、どういうふうに思われますか。  もう一つお尋ねしますが、環境庁のほうも、そういったような工事が完了すれば、中毒患者が新規発生するようなおそれは解消すると考えるのかどうか。一体自然汚染への対策というものは必要ないのかどうか。こういった点についてお答えください。
  16. 江口裕通

    江口政府委員 現在実施しております防止工事と申しますのは、一応現在の技術的な手法等によりまして考えられ得る最善を実施しておるというふうに考えております。もちろん時間的な経緯等がございまして、いま直ちに従来蓄積されております鉱害源がすべて除去されるということは、なかなかむずかしいと思いますけれども、しかし現在の手法としてこれ以上のものをやるということは、おそらく不可能ではないだろうか、このように考えております。
  17. 信澤清

    信澤政府委員 先ほども申し上げましたように、総体として環境汚染疾病との因果関係がある、こういうことを先ほど検討委員会では判断をいたしたわけでございます。したがいまして、先ほど指摘ございましたように、一体原因が水によるものなのか、あるいは土壌汚染によるものなのか、そこいらの原因をさらに究明しなければならぬわけでございますが、そういう意味合いから申しますると、ただいま通産省からお話がございましたような鉱害防除施設をやったら患者発生はとまるかどうかということについて、やはり発生原因との関係もございますので、にわかには断定しがたい、こういうふうに考えておるわけでございます。特に土壌汚染等原因であるという場合には、土壌改良事業等もやらなければ万全を期しかたいということもあろうかと考えております。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 お話を聞いておりますと、いままでのところでは、どうも新しい患者発生はなかなか防止することができない、保証できない、こういうふうな話であります。先ほど環境庁なり通産省から御答弁がありましたように、鉱業権者もなかなかわからない、こういうふうな話でありますから、やはり国民の健康を守るという立場に立つならば、私は、国が積極的にこれに取り組むことがどうしても必要ではないか、こう思います。  そこで、被害者救済の問題に入りますが、現在被害者について、いかなる救済措置が講ぜられておるのですか。話を聞きますと、労災法適用をしてやっているというふうなところもあるようであります。それが一体どういうふうな形でやっているのか、現在のところまでどういうふうな措置をとっているのか、環境庁労働省から、それぞれお答えください。
  19. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 現在のところ、患者にどのような措置をとっているかという御質問でございますが、昨年八月十八日、この笹ヶ谷の問題に対しまして、県として、どのような行政措置をとるかということを明らかにいたしておりまして、それによりますと、現在の健康被害救済特別措置法に準じた形で、県として費用自己負担分の一部を見て医療をするということをいたしております。  また、昭和二十二年九月以降の従業歴のある人といいますものは、労災補償法によるということでございますので、この点につきましては労働省のほうで把握のことと存じます。
  20. 山口全

    山口説明員 労働省関係についてお答えします。  ただいま環境庁のほうからお答えがありましたように、労災保険法適用のある者につきましては、労災保険所要給付を行なうことになるわけでございますが、ただいままでのところ、労災法適用のある元労働者二名から障害補償給付の請求がございまして、これにつきましては、昨年一月、業務上の疾病として認定をしまして、五月に給付支給を行なっております。  ただいまお話のありましたように、労災法適用のない労働者、つまり昭和二十二年九月一日前に稼働をした、労災法施行後に就労歴のない者についての措置が問題になりましたので、労働省としましては、その労働者を使用した鉱業権者等が現存する場合には、その元使用者に対して実効性のある救済を行なうよう行政指導しておりますが、その元使用者も見当たらないという場合問題になりますので、宮崎県における土呂久あるいは松尾鉱山の例につきましては御承知かと思いますが、労災保険法特別援護措置としまして、所要医療給付あるいは医療給付を受けるための諸雑費の支給というようなことを援護措置として講じております。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 今度、公害被害者救済特別措置法によって認定するということですが、そうするとその救済はどうなるのか、また新しいこの特別措置法によるところの救済を受けるまでに大体どのくらい時間がかかるのか、簡単にお答えください。
  22. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど申し上げましたような報告を受けましたので、私どもとしては、とりあえず現行特別措置法の対象にすベく政令改正検討中でございます。したがいまして、政令改正により地域指定も行なわれ、かつ患者認定が行なわれますと、いま先生お話し公害健康被害補償法、本年九月から施行の予定でございますが、これに当然引き継がれる、こういうことに相なるわけでございます。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 新法に引き継がれるのは指定地域指定疾病、これは患者は引き継ぐのですけれども法律的にいいますと、指定地域指定疾病そのまま引き継ぐことになるのですか、新しく政令を出すということになるのじゃないですか。
  24. 信澤清

    信澤政府委員 附則の規定によりまして政令の定めるところによって引き継ぐ、こういうことに相なっております。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 したがって政令を新しくつくらなければいかぬ、こういうことだと思うのでありますけれども、いわゆる新法によりますと、第二種地域関係認定患者に対する補償給付に要する財源調達の方法は特定賦課金、こういうような形ですけれども特定賦課金でやるということでしょうか。
  26. 信澤清

    信澤政府委員 法律のたてまえから申しますれば、お話しのように特定賦課金でその費用をまかなう、こういうことに相なります。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 新しい法律の六十二条によりますと、特定賦課金納付義務者は、指定疾病影響を与える原因物質、この場合には砒素考えられますが、それを排出した大気汚染防止法ばい煙発生施設及び特定施設水質汚濁防止法特定施設設置者、過去の設置者を含むということであるけれども、そこで過去の鉱業権者特定施設設置者はどこまで判明しているのかということが問題になるだろうと思うのです。現在の状況、どこまでわかっているのか。何か先ほどの話を聞きますと、全部わからぬ、こういうようなお話でもありますし、どこまでわかっているのかという点が第一点。  それから過去の設置者というけれども、どこまでさかのぼるのか。先ほどお話ですと、ずいぶん昔からあったということですけれども、過去の設置者というのは大体どの辺までさかのぼってやるのか。現在、過去の人で何とかさんという富豪がおられた、こういう話でありますが、その相続人がわからなかったり、あるいはわかっていても資力がない者がいた場合、あるいは一部でわかっているけれども資力がある者だけに全部を負担させるのか、一体どういうふうな基準でこれをおやりになるのか。私の感じで申しますと、過去の設置者原因程度というものがあるだろうと思うのです。一年やったとかちょっとつくったとかというような者だとか、原因程度に応じてやはり負担をすべきものではないか、こういうふうに考えるのですけれども、どういうふうにこの辺はお考えになりますか。
  28. 信澤清

    信澤政府委員 お話ございましたように、健康被害補償法の六十三条では、各特定施設設置者から特定賦課金を徴収するわけでございますが、その算定にあたっては当該指定疾病影響を与えた「排出量その他の事情を考慮して、政令で定める。」こういうことに相なっておるわけでございます。現在この政令を定めておりませんが、お話しのように、六十三条の趣旨から申しますれば「疾病影響を与えた」、その原因となった「物質排出量その他の事情を考慮して、」ということでございますので、いわばその疾病発生寄与度というものを考慮して特定賦課金を賦課する、こういうことになろうかと思います。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 通産省、わかっていますか。
  30. 江口裕通

    江口政府委員 先ほども申し上げましたとおりに、明治二十六年以降、いわゆる鉱業法に基づく鉱業権という制度ができておるわけでございます。したがいまして、それ以降の推移については一応わかっておるということでございます。したがって逆に、それ以前の過去何百年にさかのぼるわけでございますけれども、それ以前の笹ヶ谷鉱山の操業の状況ということにつきましては、やはり今後の調査に待つほかはないのではないかということでございます。したがいまして、資料等も現在いろいろ当たっておるわけでございますし、具体的に特定施設に指定されるべき、いわゆる砒素がま等所在あるいはその状況がどうなっておったかということ等も、文献等に照らして、これからつかまえなければならないという状況でございまして、これはかなり困難が伴うのではないかと考えております。  二十六年以降の場合におきましては、いわゆる鉱業権所在あるいはだれが鉱業権者であったかということは、これは現在もちろん把握しておるわけでございますが、ただ、現在、その当時稼行しておりましたかまが、いまそのまま残っておらないわけでございます。あるいは残っておりましても、きわめて不完全な形で残っておるというようなことでございまして、特定施設等設置状況については、特に近時のものにつきましては、いわゆる施業案というようなものによりまして推定は可能でございますけれども、しかし概して申しますと、はっきりいま現存しておりませんものについて、どうであるという断定を下すことは、かなり技術的にはむずかしいのではないか、かように考えております。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 昨年、いわゆる先ほどお話ししております新法公害健康被害補償法審議が行なわれました。そのときの本委員会での審議で、たしか昨年の七月十日だと思いますが、同僚の岡本委員から質問がありまして、当時の船後企画調整局長は、議事録を見ますと「納付義務者資力がなくなった場合にはこうするとか、あるいは逃げた場合にはこうするとかいったようなことを前提に置きまして制度を立てるわけにはまいらないわけでございまして、」「しかし、現実にしからばこのような事態になったらどうするかということはあろうかと思いますが、そのような事態が生じますれば、やはり新しい事態に即して判断し、しかるべき法律的あるいは予算的措置を講ずる必要はあろうかと考えております。」という御答弁をしておられます。  笹ヶ谷鉱山ケースは、いままで話を聞いたところでは、全くまさにそのような事態であるというふうに考えるわけでありまして、岡本委員の御指摘のような問題が出てきたということだと思うのです。新法はまだ施行されておりませんけれども現行法認定をそのまま新法に引き継ぐ、こういうふうなことでありますから、現行法で指定しようとする際には、やはりしかるべき法律的あるいは予算的な措置を講ずる必要があるというふうに考えなくてはいけない、私はそういうふうに考えますけれども一体環境庁のほうは、この辺についてどうお考えになっておられるのか、お尋ねいたします。というのは、これは笹ヶ谷鉱山だけの問題にとどまらないと私は思うのです。全国的にいいましても、相当同じような問題がある。実は砒素の問題で、やはり私の地元にも金ヶ峠鉱山というのがありまして、これはよくわからぬとこういうふうな話であるし、資力もない、こういうふうなことであります。そういったような問題がありますから、これにつきまして環境庁のほうはどういうふうに考えておられるのか、御答弁いただきたい。
  32. 信澤清

    信澤政府委員 お答えいたします前に、繰り返しになりますが、先ほども申し上げましたように、現行特別措置法の対象にいたしますれば、当然新法に引き継ぐ、こういうふうに考えるべきであろうと思うわけでございます。したがいまして、患者に対する新法による給付というものは、これは当然行なわれるわけでございまして、その意味で患者救済には別段のそごを来たさぬような配慮はできるわけでございます。問題は、いま先生から御指摘のありましたように、財政負担をどうするか、費用負担をどうするか、こういう問題でございますが、この点につきましては、いま確かに先生御引用されましたような本法案御審議の際、質疑応答がありましたことは私ども十分存じておりますが、いずれにいたしましても、この法律はやはり民事責任を踏まえて、その上に立って行政的な救済を行なう、こういうたてまえのものでございます。  先ほど通産省から責任の帰属というものを確定することはなかなかむずかしい、こういうお話がございましたが、やはり私どもとしてはできるだけその責任の所在を追及する、こういう努力をまずいたすべきではないか、こう考えているわけでございます。さような意味合いで、最終的には先生御引用になりましたような結論ということに落ちつくかもしれません。しかし、当面はやはり責任者がだれであるか、だれに負担さすべきかということを十分究明する必要がある、このように考えているわけでございます。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 私が申し上げているのは、法律的または予算的なという形で御答弁あったとおりなんで、おっしゃる趣旨はよくわかるのです。やはり民事責任の問題であるし、既存の権者がやらなければならない。ただし、やはり損害賠償の問題でありまして、鉱業法の百九条の規定の解釈の問題でもありますから、損害賠償というのは無過失にしましても、相当因果関係説というのがあるわけでありますから、そこについて相当因果関係というのは十分に考えていかなければならない問題でありますし、たまたま鉱業権者だったから全部負担をさせろというのは非常に酷な問題も出てくるし、資力があるかないかという問題も考えなければなりませんし、また過去の問題でありますから、一体その辺がどの辺まで事実関係が追跡できるかということもありましょうから、やはり何か新しい法律なりそういった措置が必要ではないだろうか、私はこう思うのです。  御趣旨のようなことを私は否定するわけではありませんけれども、わからないときには一体どうするか。わからないから被害者は泣き寝入りでよろしいということでは困るわけでありまして、その辺は最終的にはどうも国が見ざるを得ないような結果になるのではないだろうか。そこまで論理を飛躍させると答弁がなかなかむずかしくなるかもしれませんが、私は、国民の健康というのは憲法によっても保障されているところでありますから、そういった観点に立って、ひとつ対策を進めなければならないだろうと思うのです。  いずれにいたしましても、これは相当に大きな問題が次から次へと出てまいりますので、政務次官から一言どういうふうにこの点をお進めになるのか、御所信を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 先ほど政府委員のほうから詳細に答弁をいたしましたが、なかなかむずかしい問題でもございますし、また林先生の御意見も十分理解できるわけでございます。時間もございますし、現状においては患者救済に支障がないということもございますので、財政上、予算上の問題につきましては、今後通産省と十分協議をしていかなければならない問題もあるわけでございますので、十分に協議をして、その過程におきましては林先生の御意見も十分参考にした上で結論を出したい、かように存じております。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員長 島本虎三君。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 いま林委員質問されました笹ヶ谷鉱山、この事故についての質問になるわけです。実は、休廃止鉱山全般について今後こういうような事故が起こらないようにという配慮で、これはもうずいぶん対策を講じたはずなんです。ところが、法律を出して対策を講じても、あとからあとからと事故が出てくる。一体通産省対策をやっているのかやっていないのか。いつも業者保護の観点から一歩も出ないような、いままでと同じ体質なのかどうか。これはやはり問題だと思っています。この休廃止鉱山に対する法律案が法制化されて以後、全国の休廃止鉱山にどのような措置をとったのか、まずこれを概略説明願いたい。     〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕
  37. 江口裕通

    江口政府委員 現在、金属鉱業の概況でございますけれども、御存じのように約七千の鉱山があるわけでございます。このうち、御指摘の休廃止鉱山というのは現在五千ございまして、そのうちの大体四割に当たる二千が休廃止鉱山、それから三千が鉱業権が消滅しておるわけでございます。したがって、七千の鉱山のうちの七分の五に当たります五千の鉱山が休廃止ということになっておるわけでございます。  通産省といたしましては、昨年以来いろいろ御配慮をいただきまして、休廃止鉱山対策を進めてまいっておるわけでございますが、特にその中で問題になりましたカドミウムあるいは砒素等重金属による鉱害のおそれのあります千五十の鉱山について、四十五年度以降三カ年計画で現在その調査を行なっておりまして、特に厳重な監督が必要と認められます約六百程度鉱山については厳重に監督、検査を実施しておるというのが実情でございます。  具体的な措置といたしまして、現在鉱業権があって稼行しておるものにつきましては、将来の蓄積鉱害に備えまして、堆積場設置とかそういった施設の整備、あるいは企業内における積み立て金の積み立てというようなことを行なっておりますが、とりあえず現在問題になっておりますようないわゆる休廃止鉱山鉱業権者の不存在、所在がわからないあるいは無資力であるというような場所につきましては、先ほど申し上げましたような休廃止鉱山の鉱害防止工事費補助金制度というものを活用いたしまして、各都道府県を中心といたしまして防止工事実施さしております。具体的にその金額等につきましても毎年増加しておりまして、本年度は十四億程度を計上さしていただいております。それからさらに、従来は施設費だけでございましたけれども、維持管理費等の手当てもいたすように制度の改正も実現していただくというようなことで、制度的には、そういった事態の起こりませんように鋭意努力をしてまいっておるというのが現状でございます。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 江口さん、口ではそういうことを言っても、現実にどういう活動をしているのですか。坑口の入り口も不明である——現にその鉱山につとめていた人が町の中にいる、その故老の言も聞かないで、一切坑口も不明です、こういうようなことで休廃止鉱山の中で放置してある鉱山はありませんか。石川県小松市のあの状態わかりませんか。秋田の状態、同じような状態ではありませんか。法律があって一生懸命やっていると言いながらも、具体的に下部のほうへいったならば、坑口のありかさえもわからない。そして古い人たちがちゃんと現存している、その人たちをつれて行って調査さえもしていない。山形の実態、石川県の実態、すべてわれわれが行って調査してきているのです。そのあと、また、こういうようなのが起きてきたのです。口で幾ら言っていても、下部の実態は決して活動を開始しておらない。事故は何ぼでも起きます。そしていまおっしゃった中で、亜砒酸がまのそれはあるんですかないんですか、いまの笹ヶ谷鉱山
  39. 江口裕通

    江口政府委員 御指摘をいただきましたように、何ぶんにも鉱山数が非常に多数にのぼっておるわけでございます。現在、先ほど申しましたような五千の鉱山でございます。これにつきましては、さらに先ほど申しましたように、四十五年度以降計画を立てまして、厳重に調査をいたしますと同時に検査監督もいたしておりまして、地元の鉱山保安監督局、監督部等を動員いたしまして、鋭意そういったものの所在の確認あるいは監督の実施というようなことを私どもとしては、現在のあとう限りの努力でやっておるというふうに考えておる次第でございます。  問題の笹ヶ谷のいまの砒素がまでございますけれども、これはやはり以前からの稼行でございまして、そのすべてについて実態を把握しておるということではないわけでございます。また現在におきまして、その砒素がまが全部そのままの形で残っておるという状況ではもちろんないわけでございまして、おおむねは当時の状況とは著しく異なった状況で残っておるということであるわけでございます。したがってそれを、どういう状態であったかということをこれから推定して確認してまいるということになるわけでございますが、その方法等につきましては、施業案のあるものについては、極力そういったものによりまして実態をつかまえていくということになるわけでございます。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 法律ができて実施させても下部の実態はあなたが言っているほど的確な活動を開始しておらないということです。私はそれを、具体的な山の名前さえ言わないけれども、行ってきているのです。山形、石川、それも小松市。その上にどの山があるのですか。休廃止鉱山、きちんとしているでしょう。その穴が、坑口が全部確立していますか。わからないというでしょう。いまも言われたこの亜砒酸がま、これはもうないと言いますが、そのままになっているじゃありませんか、現在のこの笹ヶ谷鉱山でも。そして四十七年ごろから立ち入り禁止になっているでしょう。もうこういうのは、あとかたもないなんと言いながらも、現在そのままになって立ち入り禁止をしているでしょう。どうもあなたの手元へ、ほんとうのことがいってないじゃないですか。国会の場所でうそを言っちゃいけませんよ。もう一回、その点訂正するならしてください。     〔登坂委員長代理退席、林(義)委員長代理着席〕
  41. 江口裕通

    江口政府委員 いまの亜砒酸のかまあとでございますが、現在私どものほうでは十九個というふうに考えております。先ほど立ち入り等をさせておらないということでございますけれども、特に亜砒酸がま等につきましては、厳重に封鎖をいたしまして地面に埋めるというような処置を第二期工事において行なっておる。四十八年度は実はそういうことで進めておるという状況でございます。  それから先ほどの石川県の御指摘がございましたが、おそらく尾小屋の御指摘であろうと思いますけれども、一応坑口としては、二百四十六坑口というふうに私どもとしては把握しております。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 山形は……。
  43. 江口裕通

    江口政府委員 山形は実はこれは汚染米等の問題がございまして、いろいろたくさんの鉱山数がございます。残念ながら、まだはっきりしたことはなかなかつかまえられないということだと思います。
  44. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような実態だということを二カ所だけ例にあげて言ったのです。それが下部の実態でありますから、答弁する前に十分周到な準備をしてから答弁してもらいたい。口だけは言っていても、あと内容が全然ないことではだめです。  これは吉岡鉱業所を最終権者として四十六年に鉱業権が消滅していますね。いまいろいろ聞いておりますけれども、この中で今後検討した結果、空気と大気と水がよごれておる。そして水質汚濁土壌原因だ、こういうことのようでした。環境庁、このとおりですか。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 信澤清

    信澤政府委員 どれがどの程度疾病発生に寄与したかということは明らかでございませんが、かなり濃度の高い汚染が認められるということは御指摘のとおりでございまして、これが全体として砒素慢性中毒症の原因である、こういうふうに推定をいたしているわけでございます。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 はっきりしなければならないのは土壌汚染、これは典型七公害の中に入っております。こういうようなものがわかった場合には、直ちに措置すべきじゃございませんか。これに対して措置してあるのですか。
  47. 森整治

    ○森(整)政府委員 実はたいへん申しわけないのですが、四十八年度中に、砒素の特定有害物質としての土壌汚染防止法の規定に従いまして指定する予定で準備を進めてまいりました。ただ若干分析方法等に問題が発生いたしまして、ただいま指定がおくれております。しかし二、三カ月中には委員会を聞きまして、指定できる準備が大体完了しております。したがいまして、簡単に申しますと、近く至急指定をしたいということで進めております。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 直ちにこれはすべきです。それと同時に、総理をはじめPPPの原則は、いつでも、国会の中でも本会議の席上でも言っているんです。今回のこの場合には、四十六年に鉱業権は消滅しているというが、これに対してはPPPの原則は確立しているのか、していないのか、どういうふうに考えるのか、環境庁並びに通産省から、それぞれ答弁を願いたい。
  49. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど通産省から御説明ございましたように、鉱業権所在は明らかであるが、資力の問題あるいは発生に対する寄与度の問題等が明らかでない、こういうお話がございました。しかし私どもは、少なくとも健康被害補償法施行する立場から申しますれば、先ほども御答弁申し上げましたように、やはり原因者を確定いたしまして、それに費用負担をさせる、こういう先生のおっしゃるPPPのたてまえを貫くべきものだ、このように考えているわけでございます。ただ、具体的に、だれにどのように負担をさせるかということにつきましては、先ほど政務次官からも申し上げましたように、なお若干の時間もあることでございますので、できるだけ関係の御当局と御相談をして、その点の確定を急ぎたい、このように考えているわけでございます。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 通産省もそれと同じ見解になれば答弁は要らない。同じですか。
  51. 江口裕通

    江口政府委員 おおむね同じでございます。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、その場合に、もう少し具体的な調査通産省ではすべきです。  その理由の一つとして、四十五年に健康調査をやった結果、患者がなかったという調査報告があったそうですが、この時点になくて、四十七年から四十八年にかけて、当然これはもう工場がなくなっている、鉱業権が消滅している、その時点において合計二十八人も出ている。慢性中毒患者が七人、疑いある者五名、それから要観察者が十六名でございましょう。それだけ出ている。この調査はどういうふうにしてやったのですか。なぜ、四十五年のころ、活発に活動しているころになくて、終わってしまったあとに出てきているのか、ちょっと、この点は私は解しかねる。どのような調査方法だったのです。
  53. 信澤清

    信澤政府委員 お話しのように、環境汚染の実態がわかりました時点で、鳥取県が取り急ぎ地域住民百七十八名を対象といたしまして健康調査実施いたしたわけでございますが、翌年五月の結論では、慢性砒素中毒症の所見はない、こういうことになっておるわけでございます。  いろいろ御議論はあろうかと思いますが、また細部につきましては、必要に応じて橋本審議官から御答弁さしていただきたいと思いますが、私ども承知いたしておりますのは、砒素慢性中毒のいわば診断の基準と申しますか、クライテリアというものが、当時なかった。そのため、調査の実態は主として内科的な所見中心調査をいたした、こういうことの結果、慢性中毒症と判定されるものは出なかったのではなかろうか。特に百七十八名という小規模の集団でございますので、その後の調査は千人を上回る数の調査をいたしているというようなことも関係があるかもしれませんが、そのような事情で、当時患者の発見ができなかった、こういうふうに聞いております。の調査ですか。そうして今後も一こういうふうにして県当局がやるのはだめで、大学当局がやるとこういうふうに出てくる、この指導がちょっとおかしいんじゃないですか。こういうようにして、調査の基礎というようなもの、方法というようなものは一本化しているのですか、やり方はまかしてあるのですか。
  54. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど鳥取県と申しましたが、島根県の間違いでございますので、訂正さしていただきたいと思います。  ちょっと私の舌が足りませんで、昭和四十五年の健康調査の際も、県は鳥取大学の協力を得て調査をいたしたわけでございます。ただ、先ほど申し上げたように、調査の対象の数が少なかったとか、あるいは判断基準が不明確であったというような事情等もあって、砒素慢性中毒だというふうに断定するに至らなかった、こういう事情であるように聞いておるわけでございます。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 五月四日の検討委員会報告書、これによると、従来のものと違った指示がございますか、それとも従来のとおりですか。
  56. 信澤清

    信澤政府委員 細部は、必要に応じて審議官からも説明申し上げますが、従来土呂久慢性砒素中毒を診断いたします基準といたしましては、皮膚の所見と、それから鼻の所見、この二つを基準にいたしまして患者認定をいたしたわけでございますが、今回の報告では、それに末梢神経障害所見をつけ加えるべきであるという御意見でございます。  なお、従前から、肝臓障害その他内臓疾患についても基準を定めるべきである、こういう御意見があるわけでございますが、今回検討をいたしました範囲内では、資料の上から肝臓障害等について有意の差がなかった、したがって委員会としては、早急にこの問題についてさらに検討を進めるべきである、こういうことをこの報告に付記をいたしておるわけでございます。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 いま土呂久の例が出ましたが、土呂久の場合には、もう皮膚と鼻粘膜、この調査だけ。しかし、今回の場合は末梢神経障害についてもと言われている。以前から、土呂久の場合には肝臓はじめ内臓に疾患が及んでいる。これに対して放置すべきではないということを本委員会でも再々言っておったはずです。今度、こういうふうにしてはっきり、大学の調査によって、もうすでに所見があらわれてきておる。土呂久の例によると、その後内部疾患で、もう一人死亡者を出している。しかし、皮膚にあらわれた状態だけしか見ないうちに、もう土呂久では死亡者まで出している。この調査のしかたが、どうもあいまいではありませんか。もう少しこれを具体的にする必要はありませんか。土呂久の一名の死亡者、これは県住民はじめ県議会においても、当然砒素中毒によるということになっておりますが、これは依然としてそういうようなことを取り上げないということ、これは環境庁であるとすると、どうもその辺がおかしいじゃありませんか。以前から、この問題に対して、肝臓はじめ内臓疾患にも考える、こういうふうな答弁があったのに、まだ土呂久にも及んでおらない、これはどういうようなことでしょう。
  58. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生から御指摘のございました内臓関係の疾患でございますが、砒素中毒につきまして、従来急性中毒、あるいは薬物等あるいは誤用等による慢性中毒というのがあったわけでございますが、また労働衛生の分野でも非常に明らかな砒素中毒というものは、これは診定条件としてあったわけでございます。そういうことで、土呂久の場合には労働衛生の条件を大体基本にしてやられてきたというぐあいにお考え願えれば正しいのではないかと思いますが、その中で、末梢神経の問題と、もう一つは内臓の問題、この二つの問題がございまして、末梢神経の問題と内臓の問題は、確かにこの砒素中毒のときにあらわれるという問題もございますが、一体どういうぐあいにして、その症状だけあらわれてきて、ほかのものがないといった場合に、砒素中毒として、ちゃんと診定できるかどうかというところが非常に問題になったわけでございます。  そういうことでございまして、現在におきましても、まだほかの、皮膚とか鼻とかの症状が全くない、しかし内臓の障害としてあらわれたものの症状だけを見れば、砒素中毒のときにあらわれる症状と、内臓の症状だけに関しては同じだが、ほかの典型的なものは何もないという場合に、砒素中毒であるというぐあいにできるかという点につきましては、専門委員会で非常に真剣な検討をされたわけでございますが、やはり現在のところは、まだそこまで踏み切れないということでございます。  神経のほうにつきましても、やはり同様なむずかしい問題がございまして、初めの、皮膚と鼻の症状につきまして典型的なものがある場合には、これは問題ございません、それに神経症状があっても当然これは含まれるわけでございますが、典型的なものがないといった場合に、末梢神経のほうであらわれているから、これは拾えるかどうかということが、また非常に問題になりまして、この点につきまして、汚染のないところと汚染のあるところの両方の疫学調査をいたしまして、その疫学調査だけではなしに、その中で末梢神経の症状と、もう一つは内臓の症状のあらわれ方が有意の差をもってあらわれるかあらわれないかということを検討したわけでございます。  今度、鳥取大学の非常な御努力によって、末梢神経の問題につきましては、非汚染地域と汚染地域とに分けて、いろいろ対照して調べた場合に有意の差があらわれる、しかし、内臓の障害につきましては有意の差があらわれないということで、今回、専門委員会は、内臓の問題につきましては今後の検討事項として残したということでございます。  そういう点で、皮膚の症状につきましては、従来よりも幅広く取り入れるようになったという点は御了解願いたいと思います。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 もう一つ、土呂久では同じ症状で死んでおる。それはもう砒素以外の原因が解明できない。これに対して何ら救済の手も打たない。頸肩腕症候群をはじめ、因果関係がはっきりしなくても、職場ではもうすでに救済措置は講じられておるのです。なぜ、公害のようなこういう重大な場合、これはもう救済措置を講じないのか。これはもう皮膚にあらわれている所見だけしか見ない。しかし、ようやく末梢神経障害まで見る。しかしながら、肝臓はじめ内臓にあらわれた症状、これによって同じように死ぬような人がある場合には、他に原因がわからなければ当然見てやるべきじゃありませんか。これはもう救済を主にして考えてやるべきだ。そうでなければ画竜点睛を欠く。これはもう事務段階では、これ以上言えないでしょう。大臣がいなくても副大臣として、あなた、こういうようなときにはっきりしたことを言わないとだめです。答弁を承ります。
  60. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 政務次官のお答えになります前に、一言だけ説明をさせていただきます。  御指摘のような御議論があることは私どももよく存じておりまして、専門委員会におきましても非常に検討されましたが、いま先生の御指摘のあった内臓だけの障害で、しかもみんなが砒素中毒考えておって死んだケースがあるということを、具体的には土呂久のほうから私どものほうには提出がございません。  土呂久の研究班の方も一緒になって私ども検討いたしたわけでございます。そのときに内臓の問題も当然あらわれたわけでございますが、御指摘のように明らかな一名のケースについては、ほかの症状としてはあらわれてないが、内臓だけで、これは絶対砒素中毒とすべきだというような御議論は私どもは伺っておりませんので、そのような事実があるかどうかということにつきまして もう一度調べてみます。
  61. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 きわめて医学的な問題でございますので、患者救済という点については十分念頭に置きながら、専門家の意見を早急に出してもらうように進めていきたい、かように考えております。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 だから、これは公害被害救済法さえも、主管官庁が環境庁になっているわけです。現在ようやくのこと、これは皮膚から鼻粘膜の鼻、それから末梢神経障害まで入って、こういうような中間報告が出た。今後はやはり内臓障害にまでいく必要があると考える。しかし、まだはっきりした所見が出ない。ですから進んでそういうような事態に対しては、今度は前向きで対処してやるのでなければ、もうすでに調査班から出ないというけれども調査班の中でもこれを主張している人が少数意見で退けられているのです。そういうような点を十分考えて、救済を主にして考えるように今後も行動しなさいということなのです。  あくまでも学者の言うことだけ聞いてやろうとするならば、因果関係さえはっきりしない職場の頸肩腕症候群、これだって神経的な精神的な分がよけいあるのです。因果関係はもう断定できない。しかし、救済をするようにして、じゃんじゃんやっているでしょう。そういう人が速記者の中にもいるんですよ。そういうようなのも、因果関係がわからなくても救済のほうを先にやっている。環境庁がそんなことやらないでどうするんですか。労働省はやっている。ですから、前向きに考えろということ。あなたは、それをやらせないとだめなんだ。声をやわらげて言いますが、もう一回決意を表明してください。
  63. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 ただいまの島本先生の御意見につきましては、十分私も同感の点もございますし、また専門委員会の御意見でも指摘をされているわけでございますので、前向きに進めていくように努力をいたしたいと考えております。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 次に通産省、この四十八年度に発表された汚染調査結果、これで北海道の胆振管内の長流川の支流の弁景川上流で基準〇・〇五PPMをこえる〇・六五から〇・二六八PPMの砒素が検出された。北海道硫黄幌別鉱業所の鉱山排水に起因する。こういうようなことが当時発表されて  おりましたが、これに対して、その後どういうふうな措置をとっておるかということが一つ。それから第二番目、同じこの長流川でPHが鉱山排水BOD五・七から七・四、四一・二%が基準に達していない。この対策としても、休廃止鉱山関係によるという。それから同じ第三番目、北海道の後志管内の余市町というところに湯内川があります。この河口で排出基準〇・〇一PPMをこえるところの〇・〇一四PPMのカドミウムが検出されている。これも休廃止鉱山関係対策になるのです。上流に住友金属余市鉱山があり、三十八年に操業中止になっている。こういうのがあるのです。これが昨年度調査結果として出されてありますが、この長流川上流の弁景川並びに長流川並びに湯内川、これらのそれぞれの対策はきちっといっておりますか。
  65. 江口裕通

    江口政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘の中で幌別硫黄にかかりますところの長流川の弁景川のところの分でございますけれども、これは一応環境水につきましてやや問題がございまして、その後いろいろ調査を進めました結果、四十九年つまり今年の一月以降、先ほど申しました休廃止鉱山補助金で抗廃水の処理を実施しております。具体的に申しますと、炭カルの投入等をいま道庁と共同いたしましてやっておるということでございます。  それから湯内川につきましては、実はたいへん申しわけこざいませんが、私の手元にいままだ実態の資料がございませんので、いずれ調査をいたしましてお答え申し上げたいと思います。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 これは環境庁と北海道の調査によっている資料です。去年です。この原因は全部やはり休廃止鉱山によっているのです。これの対策を十分完全にしておいてもらいたいという要請を込めての質問なんです。せっかく去年これを調査しておきながら、その対策が放置されては何にもならない。ましてこの弁景川の上流には砒素さえも検出されているのですから、これを飲み水なんか  にされたら、とんでもないことになります。それで、いまの弁景川、長流川、湯内川、この三つについての調査のデータをあとから出してもらしたい、このことを要請しておきます。よろしゅうございますか。
  67. 信澤清

    信澤政府委員 資料の点につきましては、早急にお手元に届けます。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 去年の五月二十四日に、環境庁の水銀による環境汚染調査、これによる調査の中に、やはり北海道の北の網走、あそこに常呂川があります。常呂川の上流に無加川があります。この無加川の魚に全国最高の水銀量が検出された、こういうようなことが四十八年五月二十四日の調査で明らかになった。その際に、中州のどろが少ないところで一〇PPM、多いところで一〇〇PPMの総水銀が検出された。そしてその付近には野村イトムカ鉱業所、水銀鉱山ですが、その排出口には数百PPMの高濃度の総水銀が検出された。そして環境庁の発表によると、川魚の水銀汚染については総水銀最高〇・六八PPM、最低が〇・三六PPM、こういうように発表されております。これは発表ですから、間違いはない、しかし、底質と魚の含有量との関連性、この汚染源、これに対しては言明を避けているということでしたが、これはどうして避けたのか、その後の調査ではこれが解明されたのかどうか、発表はしたのかどうか、この点もこの機会に明らかにしておいてもらいたいと思います。
  69. 森整治

    ○森(整)政府委員 私ども承知しておるところでは、先生指摘のように、環境調査の結果、水質、底質につきまして、特に河川におきまして相当高い濃度の総水銀が検出されたことは事実でございます。これにつきましては、上流部の鉱山影響と、それから全体が水銀の鉱床地帯であるということで細密な調査を行ないまして、底質の除去につきまして対策区域を明らかにする必要があるいうことと、山元対策を講ずるようにしたいということで調査を行なっておるというふうに聞いております。確かに河川の底質の暫定除去基準の一五PPMをこえている個所が出ておるということもございます。それから、先生指摘のような川魚につきましては、海のほうの魚についての暫定の規制値が出ておるわけでございまして、それをこえておるということでございます。  そこで結局、全体が水銀の鉱床地帯であるということで、そこの魚につきまして現実に海の暫定的な規制値をこえておるものが相当あるわけでございますから、そこでとれた魚につきましては、住民の健康の保護の万全を期するために多食をしないようにという指導をとりあえずしておる、こういうことでございます。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 では、この問題に対しても、北海道内六カ所の水銀鉱山調査してあるはずですが、その調査のデータを後ほど私の手元に届けてもらいたい。先ほどの問題と一緒に次回に質問を回したいと思うからであります。それはよろしゅうございますか。
  71. 森整治

    ○森(整)政府委員 承知いたしました。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 次に、日本アエロジル株式会社四日市工場の塩素漏洩事故の問題について、ちょっとお伺いいたしますが、通産省、これはどういう事故で、どういう措置をとりましたか。
  73. 江口裕通

    江口政府委員 御指摘の事故は、四十九年四月三十日に、日本アエロジル株式会社四日市工場におきまして発生した塩素ガスの拡散事故ということでございます。具体的に申しますと、この工場におきましては、液化塩素を外部から供給をしておりまして、その塩素のローリーから同工場にあるタンクに液化塩素を注入しておって、そこで保管をしておるわけでございます。その関連で、注入を完了いたしましたローリーをタンクから切り離しましたところ、その受け入れ口のバルブは閉じたわけでございますが、残留ガスを排除いたしますためにオープンいたしますバルブを通じまして、十五時二十分ごろ、塩素タンクと中和塔の中間にあります、シールポットと呼んでおりますけれども、そのシールポット及び中和塔の頂部から塩素が漏洩したということでございます。  なぜこういう事態が起こったかということでございますけれども、そのガスのパイプの中に残っておりますガスを放出させますために中和塔のほうに導くわけでございますが、その際、タンクに受け入れておりますバルブを閉じてやらなければいけなかったところを閉じないでやりましたために、要するに締め忘れをいたしましたために、そこからガスが逆流いたしまして、先ほど申しました中和塔のほうに漏れていった、簡単に申しますと、こういう事故でございます。そういうことで具体的に異常な塩素臭が感じられ、さらにガスが漏洩したわけでございまして、そこで工場側といたしましては、漏洩を防ぐための作業とともに、漏洩いたしました塩素の除去作業を行ないまして、十八時二十分ごろ一応塩素ガスの漏洩がとまった、こういうことでございます。  問題は、この事故におきましての非常な特徴は、やはり先ほど申しましたバルブを締めなければいけないところを、簡単に申しますと、締めなかったということからガスが逆流していったというのが第一点でございます。第二点といたしましては、やはり漏洩しておる時間がかなり長期にわたっておったという点が、実は問題点になろうかと思われるわけでございます。  通産省といたしましては、直ちに担当官を派遣いたしまして急遽事態調査いたしますと同時に、三重県と共同いたしまして、四月三十日に、高圧ガス取締法に基づく緊急停止命令を出しております。さらに、本社幹部を通産省の本省に招致いたしまして、事故発生原因、それから実は時間がやや長期にわたっておりました関係上、なぜ通報がおくれたかというようなことについて厳重に警告をしておるという状況でございます。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 これは警告をしておいたというのは、いまに始まったことですか。この会社についての警告はいま初めてですか。
  75. 江口裕通

    江口政府委員 先ほど申しました厳重警告と申しますのは、事故の発生後、通報遅滞に関連いたしましてとりました措置でございます。  それから、それ以前におきましてこういう警告は、この会社につきましては高圧ガス取締法上の事故がいままでございませんのでやっておりません。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 それもまたちょっと通産省としておかしいじゃありませんか。私どもは、いつも、あと追い行政だけじゃだめだということを口をすっぱくして言ってきているのです。今度の場合も完全にあと追いじゃありませんか。あえて言うと、通産省の怠慢がこういうような事故を起こさせていることにつながるんじゃありませんか。  いままで全然ないということですが、しかし同工場では、濃い塩酸を含んだ排水を四十四年初めから数カ月にわたって多量にたれ流した。そして四十三年十二月、磯津漁協の漁場に塩酸水のたれ流しを行なって、多量のエビやウナギに被害を与えた。また漁船のスクリューの金具を腐触させた。交渉についても応じなくて、最後に見舞い金として若干の涙金程度でおさまった。こういうような例もあった。それと一四十四年十二月から四十五年一月ころまで、工場から海水中に塩酸類を排出していたため、付近のコンクリートが腐触していたことが発見されたというような事件があった。それによると、四十四年八月に共同排水口、これは三田埋め立て地の共同排水口の中の側溝のコンクリートがぼろぼろになって、中へ手を入れると、手が切れるように痛む。四百トン程度の塩酸を流しておったということがわかった。側溝の下の三菱油化の配管がぼろぼろになった。周辺の工場から鼻つまみにされておる工場である。これに対しても全然なかったという。四十四年の八月に、四日市の海上保安部に摘発されて、港則法違反で幹部四名と工場長が津地検の四日市支部に書類送検をされているわけです。こういう札つきの工場じゃありませんか。これが今度呼んで、あらためて注意してやって、前は全然なかった、こういうような認識じゃ困るじゃありませんか。一体、こういうような事実について、ほんとうに全然知らなかったんですか。
  77. 江口裕通

    江口政府委員 先ほど実は、少しことばが足りませんで、たいへん申しわけないのですが、事故がなかったと申しますのは、いわゆる高圧ガス取締法に基づきます事故というものは、いままでなかったということでございます。  それから実は、相次ぎますコンビナート関係の事故に関連いたしまして、総点検ということを、先般来、出光の徳山あるいは信越化学等々の事故に関連いたしまして、やっておるわけでございます。  それで、特にこの高圧関係の問題につきましては、各局ごとに化学保安対策本部を置いておりまして、そこで名古屋地区につきましては、具体的に三十六工場を対象に見ております。その際の一つの工場として、一応ここも、当時、実態を調査をしてみて、点検をしておるという状況でございます。そのときにおきまして、いわゆる高圧ガス関係によります設備関係につきましては、そういう異常はなかった、こういうことでございます。  ただ問題は、いま御指摘のような点が、多々御指摘をいただいたわけでございます。実は私自身は、その詳細については、いまつまびらかにいたしておりませんけれども、もし事態がそういうことがございましたら、やはりこれもゆゆしき問題だと思いますので、直ちに調査をさしていただきまして、会社とも十分その点を聴取してみたいと思っております。
  78. 島本虎三

    ○島本委員 いまにして調査というのはおそ過ぎるのです。  次に、この責任はどういうふうになるのですか。それと同時に、これに対しての関係法は幾つくらいあるのですか。法定責任者としてきめられている人は、この場合、どなたになるのですか。この三つをひとつ……。
  79. 江口裕通

    江口政府委員 その三点につきましての詳細につきましては、保安課長からお答えをさしていただきたいと思います。
  80. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 法令上の違反の問題でございますが、私どもが所管いたしております高圧ガス取締法のほか考えられます法律といたしましては、刑法あるいは公害罪に関します法律、こういったものが考えられると思います。  高圧ガス取締法との関係で申し上げますと、法律上会社当局は、一定の国家資格を持ちました作業主任者を保安監督のために置く必要があるということを規定いたしておりまして、本工場につきましても、適法に作業主任者が選任されておったということでございます。  高圧ガス取締法上の違反があったかどうかということでございますが、今回の事故は直接には従業員の操作ミスということでございまして、いまのところ、製造方法あるいは製造設備について、法令違反の疑いはないという見方が有力のようでございます。しかしながらこの点は、現在なお司法当局におきまして捜査が進められておる段階でございまして、最終的にはその結論を待たぬといかぬと思うわけでございます。また操作を間違えました従業員の方につきましては、高圧ガス取締法におきましては、誤操作等を行ないました労働者を罰するという規定が特にございません。そういった意味で、法律違反の問題は生じないかと思います。  厳密な法律上の責任問題は、いま申し上げたようなことでございますけれども、私どもといたしましては、今回の事故が、直接の原因は従業員の操作ミスということでございますが、そのバックグラウンドといたしましては、企業サイドにおける保安管理体制の不備あるいは保安教育訓練の不徹底といったような問題もあろうかと思いますので、単に操作ミスということで片づけないで、そういったバックグラウンドにございます工場側のいろいろな問題につきましても十分究明いたしまして、所要の改善措置を三重県等を通じてとってまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 大気汚染防止法十七条との関係、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律環境庁、この二つの法律に対して、あえてもとる点はないのですか。
  82. 春日斉

    ○春日政府委員 日本アエロジル工場の事故に対しまして、事件が起きました翌日、五月一日でございますが、大気汚染防止法の御指摘になりました第十七条二項の規定に基づきまして、三重県知事が、事故原因の究明と、事故の再発防止のために必要な措置をとるよう命じたわけでございます。  なお、先ほど通産省からの御説明どおり、四月三十日付で、高圧ガス取締法の第三十九条の規定に基づいて操業停止命令が出された、こういうことでございます。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 これは当然大気汚染防止法十七条によるとすると、特定物質、この中に塩素が入っておるという。排出について、これは漏出も当然それに含まれるということ、それならば当然これに触れるということになるわけです。そうなりますと、今度は法務省の刑事課のほうにお伺いしますが、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律、これが先般発生しておるわけであります。これは二条の故意犯になるのか三条の過失犯になるのか、それとも全然これは関係ないのか、この点に対する見解を承りたい。
  84. 根岸重治

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、いわゆる公害罪法は、事業活動に伴って有害物質を排出することが構成要件となっておるわけでございます。私ども、現在までにまだ検察庁において事件の送致を受けておりませんので、確定的な事実を承知しておりませんので、はっきりしたことを申し上げられないわけでございますけれども、いままでお聞きした範囲内では、二条の故意犯ということよりは、むしろ過失犯に当たるかどうか、三条の規定に当たるかどうかということが問題になるケースだと思います。  ところで公害罪法は、結果として有害物質大気なり水域等に出たという場合に、すべてこれが適用になるということにはなっておりません。自分が管理している有害物質を、不要物として自分の管理の及ばない大気、水域等に出すという場合に、これを犯罪としてとらえておる。本来は、いわゆるたれ流しを頭に置いてつくられた法規でございますので、これを過失犯の場合にどの程度まで拡張して適用できるかということにつきましては、いろいろな問題があるわけでございます。  そこで、現段階におきましては、確定した事実を承知しておりませんので、これが三条の規定にはまるとか、あるいは全然公害罪法の適用はないとかということを確定的に申し上げる段階にないわけでございます。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 この件については警察庁では調査に入っているそうですが、警察庁のほうでは、どのような見解ですか。
  86. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 三重県警でございますけれども、事故発生直後から現場保存等に当たりまして、翌五月一日と二日にわたりまして実況見分を行なったわけでございます。また、関係者からもいろいろ事情聴取、取り調べに入っておるわけでございます。  現時点で考えられるのは、事故の原因として考えられるのが塩素の注入回路のバルブの操作の誤り、締め忘れということによって、液体塩素がタンク内から逆流したということにより、今度の事故が起きたというふうに考えられる可能性が非常に強いわけです。  そこで、まず考えられますのは、刑法の二百十一条の業務上過失傷害、この疑いが考えられます。それから公害罪法の第三条、ただいま法務省のほうから御説明があったような問題がございますが、公害罪法の第三条の適用についても一応考えられるわけでございます。現時点では、業務上過失傷害ということを中心に捜査を進めておりますけれども公害罪法第三条の精神につきましても、さらに捜査の進展と並行して十分検討してまいりたい、かように考えております。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 往々にして、こういうような問題になりますと、これは法務省のほうに言っておきたいのですが、せっかくこういうような公害が世評にきびしい批判を受けるようになってから、これはもうおっ取り刀でできたのが、いわゆる公害罪処罰法だ。これはできた時点で高く評価された。しかしながら、実際これを当てはめて考えるに段になりますと、依然として、これはもう穴であるといわれるような、こういうような状態しかあらわれてこない。  たとえば先般六価クロム、これはメッキ工場からの有害物質として排出された。これに対して、水質汚濁防止法では有害物質に指定されている。公害罪処罰法、公衆の生命それから身体に危険を生じさせたものとして、当然これは該当するかと思ったら、六価クロムは動物実験の結果〇・二グラム以下は人体に害はなく、その時点では違反にならない。すれすれの点で、これはもう逃げたということで世評を浴びた。こういうような事件が以前あったわけです。  せっかくできた以上、こういうような問題に対しては、もっと公衆の、国民の健康と生命を守るという観点から、十分に厳密に考えるべきだ。黙っておっても、最近までは通産省は業者と一体になっている運営があったということは、だれしも認めるところ。それで泣くのは国民だけである。四十五年の十二月に、これによって公害関係の諸法律が基本法以下十四法律が一挙に改められた、また新設された。その後、二十をこすような法律になったが、依然として公害がなくならない。依然として、法はあっても、これにひっかからないということは、やはりもう民心を離すもとになります。こういうような点でも十分これを考えるようにして、今後運営に対して万全を期しておいてもらいたい。このことは特に要請しておきたいと思います。  最近起きたいろいろな例がありますけれども、それは省略いたしますが、いま起こっているような問題はもう続々と、けさほども——これはきのうですか、東京でも起きているのです。これも同じ操作のミスであった。しかし、両方とも共通しているのは、通告を怠っているという点が指摘されるのです。全然これは通告しないで、両方ともこれはもう大衆が、住民の通告によっているでしょう。こういうのは怠慢です。ここ一つでも問題じゃありませんか。やはりその点も考えるべきだ。このことを強く私は要請しておきたい、こう思う次第です。  中途はんぱになって、私どもとしては時間の約束がありますから、最後に一つだけ聞いておきたいと思います。  それは、同じような問題が山ほどある。山ほどある中で、今度は山形県の大蔵村で地すべりによる崩壊事件がありました。これは亜炭の採取をして亜炭層があり、昭和三十七年当時は十一鉱山稼働した実績がある、こういうような地帯であります。これは山がすべって、そうして死傷者十数名を出したという忌まわしい事故なんです。これも休廃止鉱山の問題になるのかならないのか。地すべり、これはその辺は森林地帯でありますけれども、そういうようなどうしてもすべる状態なのかどうか。これは林野庁長官がわざわざ調査に行ってこられたそうでありますが、この関係等について、この際、解明を願いたいと思います。
  88. 福田省一

    ○福田政府委員 山形県の大蔵村の災害でございますが、私行きましたのは、第二次災害が出る危険性があるということ、それに対する応急対策と復旧計画の指導を兼ねて参ったわけでございます。  現地の最大の積雪の深さは四メートルございまして、近年にない大雪でございます。例年の積雪量の約一・五倍という状態でございます。四月の二十三日から気温が急に上がりまして、二十六日に日本海と本州を低気圧が通過しております。これにあたたかい南風が入りまして融雪が非常に促進された。四メートルもあったものが、この時点では約七十センチくらいになっております。そのはかに雨が降ってまいりまして、こういったことで土壌が飽和状態に達しまして凝集力を減少して、この土塊が凝灰岩の粘性の土層をすべり面といたしまして、山頂の付近から滑落崩壊したということでございます。   これは平均三十度くらいありまして、上のほうは約四十度近い急斜面であります。この上の傾斜のきついところが高さ約二十メートルのところ、深い層で六十メートルくらい、これがすべり落ちて途中の表土を削りまして、それで山ろく地帯に落ちております。二ヘクタールくらい削りまして、下に二・五ヘクタールくらい堆積しているということでございます。  この二次災害がまた出る危険性がございましたので、現地で直ちに警報器を七個つけることにしましたし、それから傾斜器もつけまして、この移動を調査する、これを五器つけたわけでございます。それから三カ所に水がわいておりましたので、さっそく水を除くことが必要でございますので、この排水路工事に取りかかることにしたわけでございます。本年度は約一億くらいかけて応急復旧したいというふうに考えております。  この原因につきましては、いろいろと問題がございましょう。現在、山形県の災害対策本部に調査班を設けまして、主として山形大学の先生中心になりまして約五名、この原因調査中でございます。五月下旬から六月上旬にはその結果がわかるというふうに聞いております。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 もう私の時間はきたのでありまして、これ以上伺いたいことはたくさんあるのですが、これでやめさせてもらいたいと思うのです。  それで、長官いませんから、政務次官に、この点だけはひとつ厳重に申し渡しをしておきたいと思います。せっかく環境保全のために、公害防止のために、また環境庁ができて法律を改正して、休廃止鉱山のためにもわざわざ新立法をして、そうしてその結果が続々とまだ被害が発生している。これは調整権としも——環境庁は調整権あるはずです。それからこの問題に対しては、環境庁はきちっとした権限があるわけでありますから、これはあらゆる官庁、どのような官庁でも、環境保全のために、公害防除のため必要ある措置は、厳然たる態度でこれはとってほしい。それが環境庁の存在理由です。今後、こういうようなことがないように厳重にひとつ注意してやってはしい。このことだけは申し入れておきたい。最後に一言だけ決意を伺っておきます。やりますかやりませんか。
  90. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 先生の御意見につきましては、私どもも十分に同感の点もございますので、今後御指摘のような点につきましては、強力に推進していくよう努力いたしたいと考えております。
  91. 角屋堅次郎

  92. 福岡義登

    福岡委員 私は、土壌安定剤、別名土壌硬化剤あるいは凝固剤とも呼ばれておるのでありますが、最近相当多くの被害が出ておることなどが報道されておりますし、具体的な事実に基づいて、この土壌安定剤の有害性あるいは今後の対策などについて、ただしていきたいと思うのであります。  まず初めに、実態を明らかにしていただきたいと思うのでありますが、通産省にお伺いいたします。三つお伺いします。  一つは、土壌硬化剤は現在何種類ぐらいあって、それから年間の生産量はどのくらいに及んでおるのか。それから三つ目には、製造にあたって、有害あるいは有毒性などについて、特に行政指導あるいは行政の基準などを定めておるかどうか。もちろんJISマークはないと聞いておるのでありますが、以上三つについて簡単にお答え願います。
  93. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 第一に、現在土壌硬化剤として使われておりますのは、一番普通のものとしてまずセメントがございます。乳液として使うわけでございます。それから水ガラスといわれます珪酸ソーダ系のものがございます。それから有機系のものでリグニン、それから合成樹脂系のものとしまして尿素系のものがございます。それからアクリルアミド、これも合成樹脂系でございます。  それぞれの使用量は、現在正確につかんでおりませんけれども、アクリルアミドにつきましては年々ふえておりまして、四十八年には約二千三百トン程度が使われたものと推定されます。
  94. 福岡義登

    福岡委員 三つ目の、特にこれらの土壌硬化剤についての有害なりあるいは有毒性などについて、製造工程で何か行政指導されておるか、あるいはその他の基準を定めておられるかどうかという点についてはどうでしょう。
  95. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 ただいま申し上げましたもののうち、特に毒性がございますのはアクリルアミドでございまして、特別な法的規制はないと存じております。
  96. 福岡義登

    福岡委員 法的規制はないことは知っておるわけですが、行政指導か何か、そういうものは全然何もないのですか。
  97. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 化学製品全般につきまして、工場の保安、従業員の安全、それから外に対します汚染、そういう問題に対する注意は、現在工場の運営にとって最も重要なものといたしまして、私ども、各業界あるいは企業を通じまして、厳重に安全を確保するよう、再三にわたって指導してきたところでございます。
  98. 福岡義登

    福岡委員 安定剤の製造についてお伺いをしたのですが、特段のあれはないようでありまして、全般的にやっておられるということのように聞きました。  次に、この土壊安定剤を使用しておりますのは、各方面にわたっておると思うのです。あとで具体的な例示をしますのは電電公社の例でありますが、電電公社関係、建設省関係では、土壌安定剤をおもにどういうところに使っておられるか。つまり、用途、それから年間の使用量、その効果、それから、過去、現在を通じてですが、使用上特に問題点はなかったか。
  99. 中久保卓治

    ○中久保説明員 お答え申し上げます。  私どもの電気通信設備の建設工事におきましての薬液注入工事につきまして、どういうようなところに使っているかというような御質問だと思いますが、私ども、御案内のとおり、屋外におきまして通信土木、線路工事を施工いたしております。その際、軟弱地盤あるいは湧水地盤におきまして、マンホールを築造いたしましたり、あるいは洞道を構築するために掘さく工事を行ないますが、そういった際の止水並びに地盤強化、水をとめたり地盤を強化するために、そういった薬液を使用しておる状況でございます。  御質問の年間におきましての使用状況でございますが、ただいま通産省から御説明がございました水ガラス系の薬液を約二万九千立米、尿素系の薬液を一万一千立米、アクリルアマイド系の薬液は三百立米というふうに使用いたしております。合計いたしまして約四万立米ぐらいの薬液を四十八年度に使用いたしておる次第でございます。  なお、最後に御質問いただきました点は、公社の工事におきましては、過去一度だけ井戸水を汚染したという例がございます。  以上、お答え申し上げます。
  100. 久保赳

    久保説明員 建設省所管の事業における土壌安定剤の用途、使用量、効果その他についてお答えいたします。  まず、用途の問題でございますが、ただいま電電公社のほうから御説明のありましたと同様でございまして、軟弱地盤の凝結、安定並びに地下水等の水の防止、防水等に使われておるわけでございます。  使っております量といたしましては、昭和四十七年度の年間の総量を調べたわけでございますが、建設省の直轄工事におきましては、年間五千二百万立方メートルを使っておりますが一その用途は主として都市部の共同溝の工事に多く使用されております。直轄工事のほぼ八〇%は共同溝の工事でございます。  それから、地方公共団体の行なう下水道管の布設工事でございますが、これには四十七年度の実績といたしまして使いました総量は二万七千立方メートルでございます。その二万七千立方メートルのうち、ほとんど使われておる地域は首都圏、近畿圏内が多うございまして、七四%がそれらの地域の下水道工事に使われております。  その効果でございますが、工事実施中の効果は、ただいま御説明しましたように、共同溝でもあるいは下水道工事でも、ほとんど町の中の仕事でございますので、通常の工法をとりますと、町の中の地盤沈下、あるいはその付近の、たとえば家にひびが入るとか傾くというような事故例が多いわけでございますが、この地盤安定剤を使うことに、よって、相当程度そのような工事上の公害防止ができているという実態でございます。  しかしながら、それを使っていく上の問題点が実は出てまいりました。きわめて最近でございますけれども福岡県の新宮町の下水道工事で、付近の井戸にこの使いました薬——薬剤はアクリルアマイド系のものでございますが、それが井戸水に入り、その井戸水を飲まれた方が神経障害を起こした、こういう事故がございました。この事故がありましてから、使用上に問題あり、こういう判断から、とにもかくにも人の健康に支障がある、こういう事例が一つ出てまいりましたので、現在の施工中の、工事中の薬液注入工事については、一応全部建設省所管の工事についてはストップする心それから建設省所管外の工事につきましても、そういう措置をとったということを御通知申し上げまして、同様な指導をしていただきたいという通知を出しておりますし、関係業界にもその趣旨を徹底をしたところでございます。  なお、使用上の問題を検討するために、建設省の省内で応急の対策と、それから恒久の対策、二つに分けまして検討委員会を発足させることにいたしておりますが、応急の対策といたしましての検討委員会は、先般五月七日に第一回を開催いたしまして、この使用上の問題点等に対する検討を開始したところでございます。  以上でございます。
  101. 福岡義登

    福岡委員 恐縮ですが、時間が限られておりますので、以後の答弁はできるだけ簡単にお願いしたいのですが、厚生省と環境庁にも来ていただいておるのでありますが、この土壌硬化剤について有害性なり有毒性という問題について、あるいは被害の実態などをどのように掌握されておるか、簡単に……。
  102. 石居昭夫

    ○石居説明員 厚生省といたしましてお答えいたします。  今回の事故の起きました原因のアクリルアミドにつきましては、現在わがほうで毒物及び劇物取締法がございまして、そちらのほうで毒物とか劇物に相当するものにつきましては指定をするというふうになっておりますが、このアクリルアミドにつきましては、現在指定してございません。この前の事故が起きました関係上、私どものほうも至急に、その指定基準に照らしまして、これがはたして毒物に相当するか劇物に相当するかを、一応専門家にも検討を依頼いたしまして、一応劇物に相当するのではないかというお話をいただいておりまして、早急に現在これを劇物に指定する予定で作業を進めております。
  103. 福岡義登

    福岡委員 労働省にも御苦労をかけておるのですが、この土壌硬化剤を使用する際に、今日まで労働災害が発生しておるかどうか、あるいはその他職業病関係などの問題点があがっておるかどうか、あるいは現状に対してのお考えなり、今後の対策について、どう考えておるか、簡単に……。
  104. 石田均

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、このアクリルアミドにつきまして関係のあるような規則といたしましては、労働安全衛生法に基づきますところの特定化学物質等障害予防規則というのがございますけれども、これの規則対象には現在のところなっておりません。ただ、こういった問題もいろいろございましたので、私どもといたしましては、今後この規則の対象物質にいたしたいということでの検討を開始いたしたいというふうに考えております。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  それから、このアクリルアミドの使用に関しまして、災害なり何なりあったかどうかというふうな御質問でございましたが、私ども把握しております限りでは、この製造過程は一応密封されておる場合が多うございまして、直接労働者が接触する機会というのは少ないというふうに聞いております。  ただ、そうは申しましても、若干の皮膚障害などを発生した事例もあるというふうに聞いておりますので、その辺につきましては、今後この規則の対象とすることによりまして対処いたしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  105. 福岡義登

    福岡委員 実態についてあらましをお伺いしたのですが、相当使用量がありますのに、十分な体制がまだ整っていない。いま問題が発生をして、ようやく各省庁取り組んでおられるというふうに聞くのでありますが、今日までこの種の問題を放置されておったといえば言い過ぎかもしれませんが、十分な体制ができていなかったことにつきまして、一言苦言を呈したいと思うのであります。  そこで私は、この具体的な事例をここに持ってきておるのでありますが、これは電電公社が、先ほどお話がありましたように、工事の過程で使用して発生した事例であります。相当の被害が出まして、市が仲に立ちまして、当面の応急措置あるいは補償関係については片づいたようでありますが、汚染された井戸水の回復はまだなされていない。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕  また、地下水を飲料水にしておる地域も全国に相当あるわけでありますから、この種の事故というのは今後相当発生する可能性があるというように思うのでありますが、まず具体的に、この事例を申し上げたいのでありますが、ここに現物を持ってきました。有毒性の関係からいきますと、これはいわゆる安定剤を注入いたしまして、しばらく時間の経過したものをとってきまして水に溶かしたわけであります。そうすると、まだ完全に化学反応していないのです。つまり、ホルマリンなり硫酸がこの中に相当流出しておることが証明されておるわけであります。またこっちのほうは、酸化鉄その他が、薬液注入によりまして土壌の中の鉄分が溶解したりなどしまして、これも現地の水をとってきたのですが、鉄分が肉眼で見ましても相当の量が目に見えるわけであります。こういうような状態になっておる。  それを、どの程度の有害性があるかということにつきまして、実は広島大学に化学分析なり調査をしてもらったわけであります。それを若干かけ足で申し上げてみますと、全部を続むわけにいかぬのですが、「1、分析依頼をうけた六つの試料(井戸水)中にホルムアルデヒド、鉄ならびに尿素が含まれているか否か。  2、工事現場付近の湧き水中にホルムアルデヒドが含まれているか否か。  3、工事現場にあった樹脂片からホルムアルデヒドが水中へ溶け出すか否か。  4、工事に使用された薬剤により土中あるいは鉄管の鉄分が水中へ溶け出す可能性があるか否か。」  この四つの調査依頼をしましたのですが、「上記1〜4の調査結果と、井戸水汚染発生時期と工事時期が一致していることから判断して、井戸水汚染がエスロック−UNによるものであることは確実であるといえる。」内容はいろいろここに持ってきておりますが、結論として、こういうことになっておるわけであります。  さらに、同じく広大の別の調査でありますが、要所要所だけ続んでみますと、「汚濁井戸の状況」、おととし昭和四十七年の八月のことなんですが、  「八月三十一日〜九月二十二日の水質試験結果では七十ヶ所のうちで二十一ヶ所が〇・三PPMを越えていた。濃度は工事現場付近に特に高濃度のところが認められる。(中間報告参照)」と、別の資料が出ております。「十月三十日の分析結果では十五ヶ所中〇・三PPMを越えたのは六ヶ所、前回〇・三PPMを越えた十三ヶ所のうちいまでも〇・三PPM以上に鉄分が存在するのは五ヶ所である。」表がありまして、また「十月三十日現在、高濃度に存在する所は工事現場の付近のほかはF、C地区に散在している。」  「濁り(鉄分)の原因」でありますとか「鉄分の将来予測」でありますとか「臭気水の状況」、においのする水ですね、あるいは「臭気発生原因」等々いろいろ調査の結果が出ておりまして、これは完全に有毒なものである、有害なものであるという結果が出ておるところであります。  それからホルマリンの毒性につきましては、もう私がいまさら申し上げるまでもないことでありまして、この水の中からホルマリンが相当検出されておるという事実も明らかになっておるわけであります。  それから当時、中国新聞がこの問題を取り上げまして、どういう記事を書いておるかといいますと、これは電電公社の例の工事に関してですが、一二次地区におけるエスロック−UN(積水化学)の薬剤注入により地下水汚濁した水を二カ月飲んだが、その間地区内の人の中に下痢患者が相当出た、中でも体質によっては数カ月影響を受けて困った人もいる、また目が悪くなり医者にかかった人も数名ある、こういう新聞の記事も出ておるところであります。  もう一つ最近のあれでありますが、同じく広大の横畑助教授の報告でありますが、「理想的な実験室で理想的な配合で実験しても完全反応するものではなく、固結部分からも未反応分子が溶出する」ということが証明された、こう出ておるわけです。  こうなってまいりますと、他のものは具体的なデータを持っておらぬのでありますが、エスロック−UNに関する限り相当の被害を出しておるし、有害であるということが、この資料から証明できるわけであります。電電公社の場合は一度だけしか例がなかったとおっしゃるのですが、問題になったのは一度だけでありましても、厳密に調べてみれば相当あると思われるわけであります。そういうものを今日まで別段の基準もなしに工事に使ってこられた関係個所、これは許せないと思うのでありますが、この事実に対して一体どうお考えになるのですか。
  106. 中久保卓治

    ○中久保説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のホルマリン系の薬液注入工事におきまして、地域住民の方々にいろいろ御迷惑をかけましたこと、まことに遺憾に存じておる次第でございます。   その前に、ちょっと先ほどお話がございましたアクリルアマイド系の注入工事につきましては、先般新聞で拝見いたしまして以来、私どもとしては使用を禁止いたしております。  それから、ただいまのホルマリン系の薬液注入工事についてでございますが、私どもといたしましては、かねてから注入工事を行ないます際に、事前に井戸あるいは地下水等を十分調査して、水質検査をやって、危険と思われるようなところに対しましては、水道を布設するというような措置を講ずるようになっておったところでございます。しかし遺憾ながら、施工方法が不十分でございまして、地域社会に御迷惑をおかけいたしましたこと、重ねておわびいたしたいと思います。  なお、そういった地域社会の方々に対しましては、危険と思われる個所については六十何戸について水道を本施設いたしておりますし、なお、健康管理を定期的に行なうように措置はいたしております。  さらに、いろいろそういった工事で御迷惑をかけましたことに対しましてのおわびを、市長を仲介といたしまして、先生指摘のように処置いたしておるところでございます。  なお、その工事を契機といたしまして、私どもそれ以来、今後ともでございますが、できるだけ薬液注入工事を避けるように、ほかの工法で処置できるものはそれでやるようにする、なお、どうしてもやむを得ないような場合には、周辺の環境状況を十分調査いたしまして、先ほど申し上げました水道を布設するとかいろいろな手を講じてやっていくようにつとめておるところでございます。
  107. 福岡義登

    福岡委員 これは電電公社の具体的事例の責任を追及するという意味で申し上げているわけじゃないのです。一般論として申し上げているのですが、かりにお話のように、工法に十分注意をされまして、地下水汚染がかりにあったとしても、水道その他施設をすることによって飲み水に影響を与えないということにしましても、地下水はそこにとどまっておるものじゃないので、やがて川に流れ海に流れる。こういうことになるから、先ほどお話がありますように年間使用量も相当にのぼっておることを考えてみますと、相当の年月の間には相当の汚染をすると考えなければならぬと思うわけであります。  そういうことを考えますと、さしあたり飲み水には影響のないような手だてをとるといたしましても、だからといって、こういう有害なものを使うということは許されぬのじゃないか。先ほども言いましたように、広大の研究室で完全な条件で完全な状態で、しかもカタログどおりに注入液を混合したものがこういう状態なんです。もうこれはことしの八月で二年になるわけですが、半分ぐらいしか固まってない、あるいは三分の一かもしれない。しかも一たん固まった土壌を水で溶かしてみると、こういう状態になる。これを分析してもらったら、有害物質ホルマリンその他を相当含んでおる、こういうから、こういうものは使うべきでない。  建設省は、安全性が確認されるまで使わないようにしておる、あるいは関係個所についても、そういう通達をしておるところである、こうおっしゃったのだが、環境庁の立場から考えられましてどうですか。こういうものを、いまの状態のままで使用していくということは許されないことだと思うのだが、これは通産省の御見解も聞きたいと思うのですが、安全性が確認されるまで当分の間、製造を中止するか使用を禁止するというような思い切った措置を講ずる必要があるのではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。
  108. 森整治

    ○森(整)政府委員 環境庁といたしましても、当然環境問題につきまして重大な関心を持っておるわけでございまして、本件、建設省のほうでとられました措置につきまして全く同感でございます。御指摘のとおり、安全性が確認されるまで使用は見合わしていただきたい、こういうふうに考えます。
  109. 福岡義登

    福岡委員 同感だという程度じゃいけないのでありまして、環境庁としては一体具体的にどういう対策をとろうとしておられるのか、建設省がこういう措置をした、同感であるということでは、これは済まないと思うのですが、もう少し積極的な対策をはっきりしていただきたいと思います。
  110. 森整治

    ○森(整)政府委員 私、ことばが足らなかったかもしれませんけれども、せっかく建設省で関係各省集まりまして検討委員会を設けられておるわけでございます。私ども、建設、厚生各省と十分連絡をとりまして、われわれの意見も十分その場で反映させて、実際にこういう問題が起こらないように措置してまいりたい、こういうつもりで申し上げたわけでございます。
  111. 福岡義登

    福岡委員 電電公社はどうでしょうか。やむを得ない場合には使うが、できるだけ使わぬようにしたい、こういうようにおっしゃったんですが、どうですかそれは。
  112. 中久保卓治

    ○中久保説明員 お答え申し上げます。  はなはだ御説明が不十分で申しわけないと思いますが、私のほうは原則として先ほど申し上げましたように、薬液注入工法をとらないで済むような工法に全力をあげて工事を進めるというふうにやっておりますし、建設省からいろいろ御指示をいただいておりますし、今月初めから薬液注入工事はすべてストップいたしまして総点検をやっておりますし、先ほど建設省からお話がございました委員会のいろいろな結論を得て実施していくという考え方を持っております。
  113. 福岡義登

    福岡委員 通産省はどうでしょうか。いまお聞きのようなことでありますが、そういう状態ならば、JISを設けるとか、あるいは当面は応急措置として生産をストップさせるとか何らかの対策は必要だと思うのですが、通産省どうお考えになりますか。
  114. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 アクリルアミドはアクリルアミド樹脂のモノマーといたしましていろいろな用途に使われております。紙のサイズ剤とか工場の廃水の処理剤にたいへん使われるわけでございます。ほんの一割程度土壌の硬化剤に使われておるわけであります。したがいまして、製造をとめるという性質のものではないかと思います。用途につきましては、そういう開放系の用途につきまして、それぞれ使い方についての対策をとっていただくべきものではないかと考えております。
  115. 福岡義登

    福岡委員 土壌硬化剤には直接関係ないのですが、いまおっしゃったから、ちょっと申し上げますと、ホルマリンは一般にも相当の影響が出ておるわけですね。内職にカーテンを縫っている婦人がミシンをかけていると目が痛んで涙が出る、そして、あごにはさむと、あごがただれる、これはホルマリンと尿素の樹脂加工によるカーテンの布地のためである、こういう例があります。ですからホルマリン公害というのは、相当広範囲にわたっておる、こう見なければなりませんが、その議論はきょうは時間もありませんし、本題が土壌硬化剤でございますから、それは避けますが、いまお聞きのように、使っておる各省庁がそういう対策を立てておるのだから、製造管理をされる通産省としては、もう少し適切な措置を講じていただきたい。こう思うわけでありますが、どうですか。
  116. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 失礼いたしました。先ほどのお答え申し上げましたのはアクリルアミドにつきましてでございまして、ただいまの御質問は尿素ホルマリン系のものと存じます 尿素ホルマリンもやはり合成樹脂原料でございまして、普通の合成樹脂のほかに御指摘のような繊維加工にもメラミンホルマリン系というのがございまして、両方使われておりまして、繊維加工、接着剤等に使われております。これにホルマリンが残らないような加工法をするように、繊維につきましても、接着剤につきましても、各種の指導が行なわれております。御指摘のようなJISもいろいろございまして、最近では相当実績が改善されていると承知しております。
  117. 福岡義登

    福岡委員 もう一つ。これは環境庁にお伺いしたいのですが、きのうの毎日新聞に出ております「土壌凝固剤に疑惑」「安全確認まで工事中止」「成田空港また「困った」」こういう見出しで出ておるわけです。幸いに千葉県土木部が空港公団に要請いたしまして、工事は一応中止しておりますが、諸般の情勢を考えてみますと、たとえば「公団は同日午後から工事を中止した。公団は「事件を起こした薬剤は使っていない」といっているが、」云々と、こう書いてある。ここから考えてみますと、やはり土壌硬化剤を使っておるのに、いないと、まさか言ってはいないと思うのですが、しかし、半面それならば工事を中止する必要はないのに、千葉県土木部の申し入れで工事を中止しておるわけですね。もしここで土壌安定剤、硬化剤というものを使っておるとすれば、いつまでも工事をストップさせるわけにいかないので、他の工法に切りかえてやるかもしれませんが、そうなればそれでいいと思うのですけれども、万やむを得ないときには極秘のうちに土壌安定剤を使用するかもわからぬ。そういうようなことになりますと、この新聞にありますように、この地域は水源地域になっておるので、重大な問題に発展するおそれがある、こういうのであります。  そこで、新聞記事でありますから詳細はわかりませんが、成田空港を急ぐのあまり、こういう公害を無視した挙に出ないように、環境庁としては十分対策を講じていただきたいと思いますが、どうですか。
  118. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 先生も御承知と存じますが、環境庁実施官庁ではなくて、環境保全に関する政策を立案し、企画し、並びに環境保全に対する施策に対して、他の各省庁としの総合調査機能をはかる、こういうたてまえでございます。  先ほどからの御指摘の点につきましては、下水道工事に関する工法の事情から起こった事故によって環境に対する汚染が生じたということでございますので、たてまえとしては当該工事の監督に当たる省庁に環境保全に対する配慮、監督というものを十分にしていただかなければならないわけでございますけれども、たてまえはたえまえとして、環境庁としては、環境保全に対してこれを推進していくという責任があるわけでございますので、現実の問題として、現在までそのような環境保全に悪影響を及ぼすようなことのないように注意をしてまいったわけでございますけれども、今後このような問題が起こらないように未然に防止するためには、環境庁としてどう対処していくべきかということにつきまして、私ども考えてみたい、かように考えております。
  119. 福岡義登

    福岡委員 時間が来ましたので、以上で終わるわけでありますが、最近の問題として、私どもも重大な関心を寄せておるところでありまして、関係各省庁の積極的な対策をこの際、お願い申し上げまして、終わりたいと思います。
  120. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  121. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、久保建設省下水道部長から発言を求められておりますので、これを許します。久保建設省下水道部長
  122. 久保赳

    久保説明員 午前中の福岡先生の御質疑に対する私の答弁の中に誤りがございましたので、訂正をお願いいたしたいと思います。  建設省所管工事の薬液注入量についての御質疑でございましたが、昭和四十七年度一年間の実績の数値に誤りがございました。直轄工事で使われました薬液の量は五千二百立方メートルでございますし、地方公共団体が実施をいたしております下水道工事に使われました薬液の量は二十七万立方メートルでございますので、その数字に訂正をさせていただきたいと思います。以上でございます。
  123. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ただいまの点については、質問者のほうにも質問が休憩になりました際に御連絡をして了承を求めたわけでございますが、やはり委員会の正確を期するために訂正してもらったので、御了承願いたいと思います。質疑を続行いたします。諫山博君。
  124. 諫山博

    諫山委員 福岡県粕屋郡新宮町で松尾信之さん一家が、ことしの三月十四日ごろ奇病にとりつかれています。症状は、手足がしびれる、立てなくてはって歩き回る、幻覚にとらわれる、たばこの煙を見て火事だと騒ぎ出す、こういう症状だと報道されています。三月二十二日、九州大学神経内科に入院していろいろ調査したようです。その後福岡県でも科学的な調査をして、これは新宮町で行なわれた下水工事に山田組が日東化学製のSS30Rを地盤凝結剤として使用した。この主剤であるアクリルアマイドが近くの井戸水に浸入して、それを飲んだ家族が奇病になったのだ。これが福岡県の調査結果のようですが、これは厚生省も認めた間違いない事実として議論を進めていいでしょうか。厚生省、いかがですか。結果だけでけっこうです。
  125. 国川建二

    ○国川説明員 ただいま先生が御指摘になりました件につきましては、県のほうから報告がございまして、ただいま御指摘のような報告が私のほうにまいっております。患者の症状等は、九大の診断の結果におきましてアクリルアマイドよる中毒症を否定できないというような症状の見解を得ておりますので、おっしゃるとおりだと思います。
  126. 諫山博

    諫山委員 四月二十七日に、共産党の国会議員団が厚生省に対して、現在までアクリルアマイドの製造使用過程で同種の被害が出たといわれているけれども、その実態を調査して公表してもらいたい、こういう申し入れをしましたが、年代を追ってどのような被害があったのかを御説明ください。厚生省でわかりませんか。
  127. 国川建二

    ○国川説明員 ただいまの先生お話は、薬務局のほうで調べているものと思いますので、間もなくお話しできるかと思いますが、ちょっとお待ちください。
  128. 諫山博

    諫山委員 担当官がまだ到着していないようですから、質問を続けます。  アクリルアマイドは、本来なら劇物に指定されなければならないのに、いまなお指定をされていなかったということが、私たちの申し入れのときにも厚生省から説明されました。劇物に指定さるべぎものが、何かの事情で指定されていなかったということはきわめて重大です。  そこで、厚生省としては劇物に指定するためには、どういう基準を設けているのか、アクリルアマイドはこの基準にどのように合致していたのか、御説明ください。
  129. 石居昭夫

    ○石居説明員 先生の御説明の点でございますが、アクリルアミドの重合体につきましては昔から合成繊維等に使われておりまして、毒性的には重合体の場合は問題ないということで考えておりました。しかしながら最近になりまして アクリルアミドが単体として、比較的広く多く使用されてきたということを承っておりまして、いままでその使用実態とか毒性等に関しましては十分把握できなかったということでございます。今後につきましては、このようなことのないように関係各省と非常に密接なる連携をとりまして、その情報等の収集をはかりまして、把握につとめたいというふうに考えているわけでございます。  なお、現在アクリルアミドに対して、毒物及び劇物取締法上、劇物に相当するかどうかということに関しまして、私どものほうの指定の基準に基づいて検討いたし、専門家にもその辺の検討をお願いしましたところ、一応劇物の指定基準の中に入る、劇物に相当するのではないかというふうな御意見を承っておりまして、現在それについて劇物としての指定の手続を踏んでおります。  なお、その指定基準につきましては、一応劇物に対します毒性がLD50、いわゆる五〇%致死量でございますが、それがラットの体重一キログラム当たり三十ミリないし三百ミリグラムをこえるものは劇物であるというふうな基準でなっておりまして、これはたしかキログラム当たり二百ミリグラムぐらいのしD50だと思いますので、これは当然この中に入るということで、劇物に指定され  るべきものだということであります。
  130. 諫山博

    諫山委員 私の調査によりますと、アクリルアミドが毒性を持った危険なものであるということは、初歩的な化学常識だそうです。そして、いま厚生省の説明によれば、アクリルアマイドが劇物の範疇に入るということはきわめて明白です。なぜ、これが長期間にわたって劇物に指定されなかったのかということを四月二十七日に聞きましたところが、見落としていましたという回答が返ってきました。そのとおりかどうか、ここで正式にお聞きします。
  131. 石居昭夫

    ○石居説明員 このアクリルアミドの劇物に対します指定がしてなかったという点につきましては、先ほど申し上げましたように、いわゆるその使用実態等、毒性等がわれわれのほうで十分把握してなかったということでございまして、その点については非常に弁解の余地はございませんけれども、今後はこういうことのないようにというふうに考えております。
  132. 諫山博

    諫山委員 劇物に入るか入らないかというのは、数字であらわれてくるわけです。三十から三百までの間が劇物だとすれば、——その中間に位するアクリルアマイドが劇物であることは子供にもわかる理屈です。なぜ、それが見落とされたのかというのがきわめて重大だと思います。厚生省の説明を聞いておりますと、何か問題が起こって騒がれなければ劇物に指定されないというような感じがするわけですが、厚生省としては、こういうものをどういう手続で劇物に当たるかどうかを調査し、指定をしていますか。
  133. 石居昭夫

    ○石居説明員 この劇物に対します指定でございますが、現在私どものほうでは一応農薬関係につきましては、農林省との連携のもとに、劇物に相当するものについての判定を行なっております。その他のものにつきましては、私どものほうで情報を極力収集し、それに該当するかどうかの点検を行なっているわけで、それから各省——そのものを所管いたします通産省はじめその他の各省に対しまして、いろいろと緊密な連携をとりながら、  それに対する検討をしていっているのが現状でご  ざいます。ただ、アクリルアミドに関しましては、確かにその点につきまして 先生指摘のように検討はいたしてなかったということでございます。
  134. 諫山博

    諫山委員 農薬は別として、それ以外のものについては極力調査はするけれども、どうも手が行き届かないということのようです。だとすれば、やはり何か問題が起こらなければ、なかなか劇物指定が行なわれないというのが現実ではないかと思うのです。  そこで、劇物指定ということになると、政令を改正せざるを得ないと思いますが、いつごろこの手続は終わりますか。
  135. 石居昭夫

    ○石居説明員 できるだけ早く指定をすべく、現在事務的手続を行なっておりますが、おそくとも今月中には、その手続を終えて政令指定を行ないたいというふうに考えております。
  136. 諫山博

    諫山委員 私は、この問題をいろいろ調査して、最大の問題は、厚生省が当然劇物に指定さるべきアクリルアマイドを劇物に指定していなかった、ここに一番大きな責任があるように思います。そして、これがたまたま起こったのではなくて、いまの仕組みでは、どうもそうならざるを得ないようになっている。問題が起こらなければ厚生省が専門的に調査してみようとしていない、この仕組みに非常に重大な問題があるということを感じました。  そこで、これに関連して通産省にお聞きします。通産省は、従来はアクリルアマイドは劇物ではないという立場でいろいろ処理してきたと思いますが、劇物に指定されれば製造とか販売とか、取り扱いについていろいろ差異が出てくると思いますが、具体的には、どういう変化が厚生省、通産省段階で出てきましょうか。
  137. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 毒物及び劇物取締法に指定されますと、その法律の中で製造設備等、厚生省の監督を受けることになっております。われわれのほうは直接監督権限ございませんけれども、工場全体に対しまして、安全に対する指導を一そう強化していかなければならないと思います。
  138. 諫山博

    諫山委員 薬液注入工法というのが、あらためて問題になったわけですが、この仕事をしている業者は何社ぐらいありますか。通産省でわかりましょう。——じゃ建設省。
  139. 久保赳

    久保説明員 薬液注入を専業としている業者の数については、現在資料を持っておりませんが、調査をした上、後刻御報告させていただきたいと思います。
  140. 諫山博

    諫山委員 建設省は、薬液注入業者に対して一時工事をストップしてもらいたいという申し入れをしたわけでしょう。対象業者がどのくらいあるのかというようなことはわかっていないのですか。
  141. 久保赳

    久保説明員 お答えいたします。  建設省が、現在工事中の薬液工事を一時ストップするように文書を出しましたのは発注者を対象にしたものでございまして、もちろんその趣旨徹底は、業界サイドの方々にも趣旨徹底するような措置をとりましたけれども、当面発注者側に通達をいたした次第でございます。  なお、薬液工事の専門業者の数につきましては、先ほど申し上げましたように、後刻調べて報告させていただきます。
  142. 諫山博

    諫山委員 私は全く知らなくて聞いているんじゃないのです。日本薬液注入協会があって、ここには業者団体九十社が加入している。そして、この九十社が全国の薬液注入の仕事の九〇%を処理している、こういうことになっているはずです。ただ問題なのは、建設省が薬液注入工法を一時ストップすべしという通知を出した、それがどの程度影響を及ぼすのかということを配慮してなかったんじゃなかろうかということを、いまの答弁で私は感じました。  そこで、実はこの問題についても、共産党の国会議員団が四月二十七日に厚生省に対して、次のような申し入れをしています。SS30Rなどアクリルアマイドを基剤とした薬液注入工法は、この問題が解決するまでは使用を禁止すること。これは私たちの党の化学専門家を交えて、いろいろな角度から検討した結果の申し入れです。それを受けてかどうか知りませんが、それから五日後、五月二日に建設省が「薬液注入工法による建設工事の施工について」という通知を出しておる。ただ、この通知で、私ちょっとぜひ聞きたいと思ったのは、一切の薬液注入工法を一時禁止するという措置がとられているわけですが、これはアクリルアマイドを使っているかいないかにかかわらず、すべての薬液注入工法が同様の危険性を持っているという立場からでしょうか。
  143. 久保赳

    久保説明員 先生の御指摘のように、五月二日に建設事務次官が通達を出しまして、一時中止を命じました薬液は、アクリルアマイド、日東SS30Rだけではございません。それ以外の薬液注入工事についても一時中止の対象になっております。その理由は、当該事故の原因になりましたアクリルアマイド、日東SS30R以外の薬液につきましても、内容的に毒性の強いもの、弱いものありますけれども、全般的に完全に安全だといわれるものはないというふうに判断いたしまして、全般を対象にした次第でございます。
  144. 諫山博

    諫山委員 私は薬液注入業者の何名かの人から陳情を受けました。そして非常に不満も述べられているのです。われわれに対しては、こういう措置を講じたけれども、国鉄のトンネル工事なんかでは依然として使用しているじゃないかというような不満です。その点、点検しておられますか。
  145. 久保赳

    久保説明員 お答えいたします。  建設省の事務次官通達は、一応建設省所管で建設工事を行なっている仕事の発注者を対象にして通知を出しております。ただし、それと同じ内容のものを関係各省に通知をいたしまして、建設省がそういう通知を出しておりますので、それと同様の措置をとってもらいたいという趣旨のことを通知を出しております。その中には国鉄も当然入るわけでございまして、その趣旨を受けて国鉄サイドでも同様の措置がとられることを期待をして通知してあるわけでございます。  それからなお、事務次官の通達以外に、すでに薬液注入工法に対する調査検討委員会を組織して開いておりますが、これは建設省の省内の建設技監を委員長にした委員会でございますが、その中に国鉄の方も入っていただいて検討を始めておりますので、当然国鉄でもその趣旨に沿った措置がとられているのではないかというふうに考えております。
  146. 諫山博

    諫山委員 環境庁の次官に質問します。  私たちも危険性が予想される物質について、一時使用を中止するということは必要だと思います。そういう立場から四月二十七日に申し入れをしたわけです。ところが、業者の陳情を聞きますと、薬液注入業者というのはみんな零細企業ばかりだ、肝心の国鉄とかそういう大きなところについては、あまりこれを徹底させようとしていないようだという話を聞きます。いま実情をおそらく御存じないと思いますが、こういうことでは大問題ですから、そういうことを調査して善処していただくように要望します。いかがでしょう。
  147. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 建設省の政府委員のほうからの御答弁にもございましたように、次官通達でさっそく処置をしておるわけでございますし、その内容については広範囲にその内容が及ぶことを期待しておるという答弁であったわけでございますが、先生指摘のように、安全性の確認ができるまでは、そういうものについての使用は禁止すべきだというふうに私ども考えております。
  148. 諫山博

    諫山委員 そこで、いつまで一時中止を続けるかということですが、建設省の通知には、周辺の井戸水の水質等を調査して薬液による健康被害発生のおそれがないことを確認した上でという再開の条件がついております。これは時期的にはいつごろになる見通しなのか、さらに、だれがどのような方法で安全性を確認することにしているのか、どうでしょう。
  149. 久保赳

    久保説明員 薬液注入工事の一時ストップを命じましたのは、先ほど御説明いたしましたように、事務次官通達で工事の発注者側に、そういう命令を出した形になっております。したがいまして、安全性の確認は発注者側の責任において確認をするということになります。  それから、確認のしかた、調査の方法等でございますが、これにつきましては、当面健康被害発生のおそれがないことを確認することが一番緊急でございますので、その工事が行なわれた周辺の井戸水の水質を調査をいたしまして、その井戸水の中に、使われた薬液の混入がありやなしやというようなことを調査をする予定にいたしております。そういう趣旨でございます。
  150. 諫山博

    諫山委員 いつ再開するかということを発注者が確認するというのでは、あまり効果はなかろうと思います。発注者はみんな急ぐにきまっていますから、安全性よりか建設の速度を急ぐという立場に立つのが普通発注者だと思いますから、やはりこの点は行政機関が何らか関与をしなければ、しり抜けになるのではないかということをおそれます。  同時に、この問題でたくさんの人たちが被害を受けるわけです。直接的には薬液注入業者です。この人たちに対する被害の補償ということは当然検討してあると思いますが、どういう補償をしますか。
  151. 久保赳

    久保説明員 工事を一時中止することによりまして当該工事の、たとえば機械の保守であるとか、あるいは作業員の確保とか、そういうことで当初の契約よりも余分に経費がかかる、増加経費というような形が出てくるだろうと思います。それにつきましては、個々の発注者と契約をされた方の一つの契約の約款、これの態様がそれぞれ異なりましょうから、一般的には申し上げられないかと思いますけれども、そのような増加経費が出た分につきましては契約の変更をする、更改をするというようなことで措置されるのが一般の形だと思います。
  152. 諫山博

    諫山委員 この建設省の措置に基づいて、業者とか労働者が当然受けるであろう損失、損害については、何らかの形で補償させるということは約束できますか。
  153. 久保赳

    久保説明員 補償ということばが適当かどうかわかりませんが、一時中止することによって経費が増加した分は、その分についての契約の更改がなされまして、それに対して支払いがなされるという形で解決されるものと考えております。
  154. 諫山博

    諫山委員 建設省は人ごとのように言います。発注者が何とかするだろうという態度のようですが、建設省としては、労働者とか零細業者に迷惑がかからないように行政指導をするつもりかと聞いているのです。
  155. 久保赳

    久保説明員 お答えいたします。  建設省は、一面工事の発注者でもございます。したがいまして、当然その発注の過程で、工事一時中止に伴う増加経費が出たならば、それに対して契約の更改をするつもりでおるわけでございます。
  156. 諫山博

    諫山委員 通産省質問します。  いま科学の進歩に伴って、新しい製品、新しい工法というのが次々に開発されています。特に、これは土木建築関係で顕著に見られるわけです。それに伴って、いままで予想できなかったような奇病あるいは公害というのが発生するわけです。こういう場合に、問題が起こって騒ぎ立てる、そしてあわてて毒性の調査をして、劇物に指定をしておくべきだったというような後手後手の手を打つのではなく、この際、全面的な総点検をする、危険なものはないかということを、通産省がその他の官庁と協力しながら、調査、総点検する、そしてその結果を公表すべきだと私たちは考えますが、いかがでしょう。
  157. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 確かに非常にたくさんの化学製品が生産され、また非常に多くの用途に使われているわけでございますが、それぞれのものにつきましては、つくったものが需要者に対して、その化学製品の性質あるいは使い方、あとの処分のしかた、そういう技術情報を十分提供し、場合によっては技術指導をしていく、これが基本的に化学製品による事故を防ぐ道だと存じます。また当省と  いたしましても、各製造業者にはそういう指導をしてまいったわけでございます。ただし、今回の場合のように、開放された場所に散布するという用途は、化学品の用途としては非常に限定されておりまして、肥料とか農薬、それから直接人間が摂取する場合といたしましては、医薬品とか食品添加物、それぞれ用途に応じて取り締まりの法規がございます。それによって規制していくのが従来の体系でございましたし、今後も安全を期するには、その方向が重要かと思われます。製造業者に対する指導は一そう強化してまいりたいと思います。
  158. 諫山博

    諫山委員 私は、従来のやり方を説明していただくつもりではありませんで、従来のやり方では思わない事故が起こったから、この際、−業者の報告を待つというようなことではなくて、積極的に調査したり点検したりするつもりはないかという質問です。どうでしょう。
  159. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 そういうオープンな場所に使う用途につきましては、限定された用途が大部分でございますので、そういうものを重点的に指導していけば十分かと存じております。
  160. 諫山博

    諫山委員 厚生省に質問します。  アクリルアマイドが全く偶然の不幸な事故によって劇物に指定されることになった。これは実に教訓的だと思います。この教訓から省みますと、本来なら毒物、劇物に指定されておかなければならないのに、それが放置されておるものがたくさんあるのじゃないかということが想像されるわけです。この点で、いま通産省に要求したように、この際、危険性がいろいろ学説上言われているようなものについては、どこかの報告を待って調べるというのではなくて、厚生省のほうが積極的に調査をして、指定の完ぺきを期するという計画はありませんか。当然そうすべきだと思います。
  161. 石居昭夫

    ○石居説明員 劇物の指定に関しましては、化学物質で広く使われているもので、あるいはその中に劇物に相当するものがあるのではないかという先生の御指摘でございますが、これに関しましては、実際に所管しております通商産業省やそれから建設省あるいはその他の関係各省と、従来に増しまして緊密な連携をとって、しかも私どものほうでも、いろいろ文献等の情報の収集等もはかりまして、積極的に毒物及び劇物取締法上における指定というものは、今後十分進めていきたいというふうに考えております。
  162. 諫山博

    諫山委員 見落としていましたというようなことは、もう繰り返さないということをぜひやっていただきます。  そこで、労働省質問します。  新宮町で松尾信之さん一家が奇病に取りつかれたというのがたいへん問題になったわけですが、同じころ、作業をしていた労働者二人が似たような病気になって、一人は九大で診察を求めたというようなことがあるはずですが、これは日東化学の製品であるSS30Rと関係があったのでしょうか。
  163. 石田均

    ○石田説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  私ども福岡の労働基準局から報告を受けておりますが、それによりますと、やはり御指摘のように、日東化学の製品を使っておられた労働者が二名ばかり、そういった症状を呈されたというふうな報告を一応受けております。
  164. 諫山博

    諫山委員 私は、それはもう、とうの昔に知っているわけですが、それが日東化学の製品による病気だったかどうかを聞いているのです。
  165. 石田均

    ○石田説明員 この点につきましては、現在のところ、福岡の労働基準局からの報告によりますと、その辺の事情がはっきりわかっておらないようでございまして、中毒の発生原因につきましては、注入薬の影響であるのか、あるいはほかの原因もあるのではないかというようなことで、現在調査中でございまして、明確な結論はまだ得ておりません。
  166. 諫山博

    諫山委員 厚生省は、この点把握しておりますか。
  167. 国川建二

    ○国川説明員 環境衛生局としては、把握しておりません。
  168. 諫山博

    諫山委員 こういう奇病が二人の労働者について起こっている、そして一人は九大に診察を求めたということが政府にわかっておりながら、厚生働省も、そういう病気が出たことは報告を受けた一けれども、何によるものであるかということを本気で究明していないように思うのです。  そこで、私の最初の質問に戻りますが、アクリルアマイドの製造、使用過程で生じた被害を年代別に列挙してもらいたいという質問にはお答えできましょうか。
  169. 石田均

    ○石田説明員 私どもでいま把握しております限りでは、製造過程におきまして四十一年、四十五年にそれぞれ何名かの中毒事例があったというふうなことを承知いたしております。
  170. 諫山博

    諫山委員 それがすべてですか。
  171. 石田均

    ○石田説明員 一応私ども把握しておる限りでは、その限りでございます。
  172. 諫山博

    諫山委員 そのときに適切な措置がとられておれば、いまごろアクリルアマイドが劇物であるとかないとかいう議論をしなくても済んでいたと思いますが、そのときには労働省としては、ほかの省とも相談して適切な措置をとっているのですか。そのとき、どういうことをしましたか。
  173. 石田均

    ○石田説明員 当時の事情は必ずしもつまびらかではございませんけれども、その後いろいろ検討いたしまして、こういったものにつきましては、私どもとしても何らかの措置をとるべきではないかということで、実は検討を進めておったやさきでございまして、私どもといたしましては、労働安全衛生法に基づきます特定化学物質等障害予防規則というのがございますが、その規則の中に追加するかどうかということで検討を進めておったところでございます。私どもとしましては、今後ともそういった問題が起きないように十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  174. 諫山博

    諫山委員 それだけの検討をしていたとすれば、アクリルアマイドが毒物及び劇物取締法にいう劇物に相当する毒性を持っているということは、労働省としては知っていましたか。
  175. 石田均

    ○石田説明員 その辺はたいへん申しわけないのでございますけれども、必ずしも十分に連携がとれておったとは思われませんので、今後はそういったことのないように十分注意をいたしたいというように考えます。
  176. 諫山博

    諫山委員 あなたのほうが通産省と連携をとらなかったことはわかりましたが、労働省としては、それだけの毒性を持っている物質だということをつかんでいたのですか。
  177. 石田均

    ○石田説明員 私どもといたしましては、そういった障害が一部出るということがいろいろございまして、関係業界の指導そのほかにはつとめてまいったつもりでございますけれども、法的な規制までは、まだ踏み切れなかったという実態でございまして、その辺は今後努力さしていただきたいというふうに思います。
  178. 諫山博

    諫山委員 最後に警察に。  この問題を警察は業務上過失障害として取り調べているそうですが、被疑者はだれであり、どういう被疑事実で捜査しているのか。そして見通しはどうなのか御説明ください。
  179. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 この問題につきまして、福岡県警察でございますが、業務上過失障害の刑事責任の有無が一応問題になる、こういうことでございますので、県当局あるいは九大病院神経内科、こういったところの調査あるいは検査の結果等をいただきまして、いろいろ検討しているところでございます。この場合に業務上刑事責任の追及ということになりますと、行為の過失の有無あるいは過失と結果との因果関係ということが当然問題になるわけでございます。そこで現時点では、まだ、いまの御質問の被疑者をだれというふうに特定する段階に至っておりませんで、これからそういう点の調査に入っていく、こういうことでございます。
  180. 諫山博

    諫山委員 警察に希望したいのですが、とかくこの種の問題が起こると、末端の労働者だけに刑事責任が負わされるという結果になるのです。しかし、きょうの論議の経過を見ても、一番大きな責任は政府にあるということが明らかになりましたから、末端の労働者だけに刑事責任を負わせて、これで解決という態度を絶対にとってもらわないことです。  さらに厚生省、通産省労働省に共通にお願いしたいことは、労働省あたりでは前々から問題があって調査をしていた、しかし実際には、厚生省と連絡をとることもしないし、毒性の科学的な調査もしない。だから厚生省のほうでは劇物の指定さえしない、こういう状態が明らかになったわけです。  さらに建設問題についても、いまの建設省の一時工事停止の措置——私たちもこれは要求したわけですが、非常に大きな影響を及ぼしている。ですから、私たちは安全というのが第一だと思いますが、しかし労働者とか中小零細企業を絶対に犠牲にしてはいかぬという点を強く要望して、こういうことが二度と起こらないという注文をつけた上で質問を終わります。
  181. 角屋堅次郎

  182. 田中昭二

    田中(昭)委員 私も福岡県の新宮で起こりました新宮奇病というものにつきましていろいろお尋ねしたいと思います。時間があまりございませんから、ひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。  まず、この問題につきまして厚生省のほうから一応の概況報告をいただいておりますが、この中から一、二お尋ねしたいと思います。  まず、事故の概要の中で「患者宅の井戸水のみが、アムモニヤ性窒素や過マンガン酸カリウム消費量等に特異な反応がみられたので、」云々という  ふうにございますが、この点は、こういう薬物があることは健康上はどういうことになりましょうか。
  183. 国川建二

    ○国川説明員 ただいま先生が御指摘患者さんの松尾さんのうちの井戸水の水質でございますが、通常の井戸水、地下水に見られないような水質だったということでございまして、その内容、項目といたしましては、アンモニア性窒素がかなりの量多かった。大体一〇前後のPPM出たわけでございます。それからなお、過マンガン酸カリウム消費量が異常に多かったということでございまして、これはいずれも検査項目といたしましては、窒素あるいは有機物等の量を測定する項目でございまして、この物質自体が毒性云々というわけではないと思いますけれども、少なくともその井戸だけが、その周辺の井戸に比べて、異常にこの二つの項目が多かったということで、この井戸水がおかしいのじゃないかという判断をいたしたということでございます。
  184. 田中昭二

    田中(昭)委員 次のページに、最初から読みますと、「衛生公害セレターの患者宅井戸水の分析結果では、アクリルアミドが三〇〇から四〇〇PPM検出され、反応促進剤のジメチルアミノブロピオニトリルも微量検出されたが、問題にならない量であると思われる。」問題にならない量であるということは、どういうことですか。
  185. 国川建二

    ○国川説明員 福岡県からの報告の内容でございますが、いま御指摘のところのくだりは、松尾さんのうちの井戸水を分析いたしましたところ、アクリルアミドが三〇〇ないし四〇〇PPM検出された。また、この工法に使われましたSS30Rの薬剤といたしましては、このほかに反応促進剤としてジメチルアミノプロピオニトリルというものも使われているわけでございます。このジメチルアミノプロピオニトリルもきわめて微量検出された。しかし、そこで問題にならない量であるといいますのは、いわゆる水質の毒性と申しますか、というような観点から見まして、ジメチルアミノプロピオニトリル、これは有機シアン化合物でございますが、その中のシアンに着目いたしますと、シアンイオンとしては検出されない程度の量である。したがって、ジメチルアミノプロピオニトリルそのものも存在するのは事実でありますが、いわゆる毒性云々という観点から見ますと問題にならない量だ、その反応促進剤のことをさしているわけでございます。
  186. 田中昭二

    田中(昭)委員 簡単にしてくださいよ。ここに書いてあるのをずっと読んで、注釈を加えることではだめだと思うのです。  問題は、いまあなた、ジメチルアミノプロピオニトリル、これは微量だからいいと言うけれども、これは劇物に指定してあるものなんですよ。アミドが三〇〇余、これで患者が実際、いま被害を受けているんじゃないですか。そういうものが微量であるから、何とも問題にならない量であるからなんということは……。私は、どうしてこういうことを聞いたかといいますと、環境庁政務次官、聞いておってください。この報告は、県がまとめたものを厚生省はただもらっているだけなんです。そういうことをあとでまとめて、そのために私は確認しておるのですから、何もこういうことを厚生省が実際一々調べたわけじゃないのです。だから、こういう書き方になっておるから、私はそこを注意しておるわけなんです。  その次に、そのページの一番最後に「アミド系の高分子有機化合物は、わが国においても昭和三十八年頃からトンネル工事」云々、こうなっておりますね。その次のページに「井戸水を汚染して住民の健康障害を起した事例は報告されていない。」このように書いてありますけれども、これは違いますね。先ほどからずっと答弁を聞いておりますと、いままで井戸水を汚染されて、いろいろな健康被害を起こした、これをつくる製造工程においても被害者が出たというふうな事実を聞きますと、ここに書いてあることは、完全じゃない、疑いが持たれるということですが、それと同時に、このアミド系の高分子有機物が三十八年ごろから使われておった。これは間違いございませんね。——厚生省は、自分の管轄外だと思って答えられないようでございますが、これはここに書いてありますから、そのとおりだと認めておきます。これは確認のために言っているのですから。  ところで、その次に「今後の対策」、「応急処置」というのがござい手か、この最初に——その前に私、一応この事件の発生の概要をひとつ次官にもわかってもらうために申し上げておきますが、これは二月ごろから、この工事関係するものが始まっておりまして、そしてこの報告によりますと、三月二十二日に、この患者さんが医者を通じて、特異な症状をあらわしましたから九大のほうに入院するというような手はずになったと、このようにこの報告がなっておりますが、いまの今後の応急処置について、ここに書いてありますことを読みますと、「三月二十二日の調査で、井戸本がアクリルアミド系の薬剤によって汚染をうけた疑いが強くなったため、取敢ず」云々、こういうふうになっております。  そうしますと、私はこの時点において、このアミド系の薬剤によって汚染されておったということは、政府は当然知っておった——知っておったのか、知らなかったのか、その点だけ答えてください。
  187. 国川建二

    ○国川説明員 通常、このような不明疾患というような報告が入ってまいりますのは、厚生省の公衆衛生局のほうに入ってまいりますが、この報告が参りましたのは四月の三日だったと思います。この件に関しまして、新宮町で不明疾患が発生したという報告が入りましたのは四月三日であります。
  188. 田中昭二

    田中(昭)委員 四月三日に入ったのであれば、あなたたちは、ここにある報告をそのままうのみにして、三月二十二日にそういう疑いがあるということについて——おかしいじゃないですか。ということは、厚生省は何にもしていないということですね。私は、厚生省がここに持ってきた概況報告書によって、三月二十二日には、その汚染の疑いがあると書いてあるから、だからそうじゃないかと聞いたところが、いや、それは四月になってわかったんだというような、あなたのいまの答弁ですね。  じゃ、その次にいきましょう。次のページは、この汚染井戸、私も現場に行っていろいろ見て調査もしてきましたけれども、この報告に書いてあるのは、「この汚染井戸水を汲みあげて無害化処理をして廃棄することにした。しかし、県内では処理施設がないので、メーカーの工場に運んで安全に処理することにした。」このように書いてあります。確かに、そのように行なわれておるように私は現場で見てまいりましたが、問題は、その最後に、「二次汚染が起らないように、」その次をそのまま読んでみますと、「なお、患者宅の井戸浚えを実施する際には二次汚染が起らないように、県衛生公害センターが立会し、指導することにしている。」こういうことをやっておりますか。間違いありませんか。あるかないかだけ言ってください。
  189. 国川建二

    ○国川説明員 間違いございません。
  190. 田中昭二

    田中(昭)委員 間違いがあるんです。こういうことはやってないんです。私もちょうど調査に行きましたときに、井戸さらいをやっておりましてね、やっておるのは、この工事を請け負った末端の業者の社長さんが陣頭指揮でやっておるだけです。県公害センターの立ち会いなんかしておりませんよ。  もうこのこと一つを見ましても、いかに問題が起こったものに対して、先ほど諫山委員質問を通してわかりますことでも、国に根本の責任がありながら、国はただいろいろな各省のなわ張りで、都合の悪いことは自分たちで責任のがれをやって、そうして、調査しました、こういう結果でございますというこの報告は、うそをそのままうのみにしたり何にもやってない、こういうことですね。違いますか。この報告は、厚生省が実地に調査してまとめた報告じゃないでしょう。それを言ってください。
  191. 国川建二

    ○国川説明員 この報告書は、ここにございますように、福岡県がまとめました私ども厚生省に対する報告書でございます。ただ、私どもといたしましては、四月三日、公式に不明疾患の報告がありまして以来、その間、対応のしかたをどうするか、あるいは水質検査の内容の判断、その他技術的諸問題につきましては、密接に県と連絡いたしながら行なっているのでございまして、先ほど先生のほうから立ち会っていないというお話でございましたけれども、そのようなことでしたら、私どももさっそく事実も調べてみたいと思いますし、これらの事後処理については万遺憾ないように十分指導をいたしてまいりたいと思っております。
  192. 田中昭二

    田中(昭)委員 その立ち会いやってないということだけじゃないのですよ。いまあなたはここでは、福岡県の報告、それに基づいてやったと言いますけれども、これは何も福岡県の報告なんかについて、私のところに説明に来られたんじゃないのですよ。これは厚生省がまとめて調査をしたその結果でございますということで、私に説明があったのです。何も福岡県のどうのと書いてないのです。そういう問題を指摘しますと、また末端に、県や町にどういう圧力がかかるか知りませんけれども、そういうことがまた行政の混乱になるのです。やめてもらいたい。  まだそのほか大事な第六点も七点も、あなたがそういう答弁をされるのじゃ意味がありません。ですから、やめます。  それでは、まず厚生省のほうから言っておきますが、厚生省のほうがこの問題につきまして、四月三十日に、水道環境部長の名前で各都道府県に通達を出しておりますね。これは簡単なことですから、もう読まなくていいと思うのですが、その中に実例として、この新宮の問題を例示してあります。この事例を書いてある中にたいへんお粗末な、いま言ったように県の報告をそのままやったとかいうような結果が出ていると思うのですが、そういう思い当たることはないですか。これは厚生省が出した通達ですよ。これがもし間違っておったら、どんなことになりますか。  その前に、あなた、さっそくアクリルアミドカ三〇〇、四〇〇PPMで、微量ならば問題がない一このアミドか実際どういう状態で健康を侵害し、毒性を持っているかというようなことは御存じですか。並びにジメチルアミノプロピオニトリルは促進剤で、凝固するためにはアミドが主剤であって、私のことばは適当でないかもしれませんが、アミドがおもなもので、それを促進するジメチルのほうは何十分の一かを使うのですよ。それがもう毒物にちゃんと指定してあるのですよ。そういうものが、少量であるから問題にならないという認識では、厚生省の通達が間違っておる、こう思うのです。思い当たることはないですか。
  193. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  先ほどの点でございますけれども、まことに恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、県から私どものほうに参りました中間報告並びに県が発表いたしました報告の内容で全体を網羅しておったという意味で、概況が非常に具体的に書いてありますので、わかりやすいと思いまして先生に御提出いたしたわけでございます。しかし、そこの文章のくだりがたいへん誤解を生じがちになっておるのは事実だと思います。アクリルアミドが三〇〇ないし四〇〇PPM検出されていることは事実でございまして、この点が問題になっておりますし、私も問題だと思います。後段の「問題にならない量であると思われる。」というのは、文章が非常にまずいのでございますが、反応促進剤としてのジメチルアミノプロピオニトリルが、劇物ではありますけれども、量として、あるいはシアンイオンとして考えた場合には、アクリルアミドに対比して問題にならないような量ではないかという意味だと解しておるわけでございますが、そこの文章上の表現が、両方合わせて問題にならないような量というように受け取れがちな感じがいたしますので、その点は明らかにいたしたいと思います。  それからなお、私どものほうの水道環境部長名で、このような事例がございましたので、全国的に薬液注入工事による汚染事故が二度とあってはいけないという意味で、新宮町におきます事例を紹介するために別紙につけまして、各都道府県あてに緊急に注意を喚起したわけでございますが、現在なお、原因が一〇〇%解明された段階ではないと思います。ただ、現在の状況では九大病院の診断あるいはもろもろの状況判断からいたしまして、アクリルアミドによります井戸の汚染ではないかと推定されておりますので、そこのくだりを事例として書いたつもりでございます。
  194. 田中昭二

    田中(昭)委員 どうも課長さんでは……。やはり環境部長さんに責任ある答弁をいただきましょう。  お見えになっていないようですから、次に、同じ厚生省の安全課長さんにお尋ねしますが、このアクリルアミドそのものに毒性がある、そういうものが毒物及び劇物取締法によって指定がなされておらなかったということは先ほどもありましたが、いま私が指摘しましたように、凝固促進剤であるジメチルアミノプロピオニトリルですか、これが劇物に指定されておりますね。促進剤が指定されておって、このおもなものが指定されてなかったということは、どういうことでしょうかね。
  195. 石居昭夫

    ○石居説明員 先生指摘のジメチルアミノプロピオニトリルの劇物指定と申しますのは、毒物及び劇物取締法におきます政令指定では、有機物のシアン化合物ということで、いわゆるシアンのついているもの全般についての範疇で縛っておりまして、ジメチルアミノプロピオニトリルのみの単体としての劇物の指定ではない、これらを含めましてのシアン化物での包括的な劇物指定というふうになっております。
  196. 田中昭二

    田中(昭)委員 それは法律にそうなっておることを私、言っておるのじゃなくて、促進剤がそういう包括的なもので指定してありながら、それよりも毒性の強いアクリルアミドがどうして指定されておらなかったか。こういうことは、先ほど答弁を聞いておりましても、こういうものを指定しておらずに放置しておったのは全部政府の責任である、これは認められますね。認められれば、もう問題ないわけですがね。問題は、先ほどの御答弁の中にもこういうものを指定を早くしたいということもありましたけれども、これは今月中というよりもすぐやってもらいたい。どうですか。
  197. 石居昭夫

    ○石居説明員 現在劇物としての指定手続をもうすでに行なっておりますので、できるだけ早くやりたいというふうに考えております。ただ、先ほどはおそくとも今月中ということでございますけれども先生の御要望にもおこたえいたしまして、できるだけ早く手続を進めたいというふうに考えております。
  198. 田中昭二

    田中(昭)委員 今度の事故の状況を見ましても、これ以外にも広く使用されております化学物質については、十分な把握と同時に毒物、劇物の指定をするための検討が必要である、こう思いますが、その点いかがですか。
  199. 石居昭夫

    ○石居説明員 先生の御指摘のアクリルアミド以外の化学物質に関しましても、もう一度、これを実際に所管しております通産省及び建設省あるいはその他の技術的なものに関しまして所管している省庁ともよく連絡をとりまして、また私どものほうも一応情報の収集につとめまして、今後万遺憾なきようつとめたいというふうに考えております。
  200. 田中昭二

    田中(昭)委員 このアクリルアミドというのは、いままでの化学物質の文献には、人間にどういう状態でどのくらいの健康被害を及ぼすかということがございますか。
  201. 石居昭夫

    ○石居説明員 先生の御指摘は、アクリルアミドの毒性ということだと存じますが、私ども文献で調べました結果、動物実験で、高濃度のアクリルアミドの連続経口投与によりまして全身がふるえたり、あるいは四肢が麻痺したりするような症状かあらわれるというふうに伺っております。投与を中止しますと、比較的よく回復するというようなことも載っております。
  202. 田中昭二

    田中(昭)委員 新聞報道等によりますと、単体のモノマーの状態では体重一キロにつき二百五十二ミリが致死量、これは人体に直すと十二、三グラムで致死量になる、こういう報道がされておりますが、これは大体間違いございませんか。
  203. 石居昭夫

    ○石居説明員 動物に対します半数致死量は、一応それを基礎にしまして、体重五十キログラムの人に換算いたしますと、大体十二グラムという線  になります。
  204. 田中昭二

    田中(昭)委員 これはたいへんな物質ですね。ですから、先ほど私が最初に言ったように、微量だから問題ないというようなことは言えないことになりますね。  次に、建設省のほうにお尋ねしますが、この問題が起こりましてから、建設省が中心になっていろいろやってあるようでございます。先ほどもありました次官通達でございますけれども、この通達によりますと、現在施工中の工事については一時中止、また新規工事についても、施工中のものと同じような状態で安全を確認して、健康被害発生がないという場合に再開しなさい、こういうふうになっております。先ほど質問がありまして、私聞いておりましたが、実際の凝固します状態ですね、これを現場ではどのような状態で凝固しておるものか、そういうものにつきましての確認を建設省で実際見てあると思いますから、そういう状態をひとつ教えていただきたいと思います。
  205. 久保赳

    久保説明員 お答えいたします。  薬液を注入いたしまして、設計、施工が適切であれば地中で凝固するというふうにいわれておりますが、その全部が凝固するかどうかについての確認はいたしておりません。これは今後の検討にまつわけでございます。当面私どもが確認をいたしておりますのは、新宮町の事故が起こった場所の問題でございますが、ここの中では薬液の注入をされた土壌の凝固状態を取りまして、それが凝固している状態を調べたのでございます。
  206. 田中昭二

    田中(昭)委員 その凝固した状態がいろいろあるらしいのですね、私も現実に行って見てみましたが。平易なことはでいえば、完全に凝固しなかった状態のものが地中に、工事現場に残っておる。それは工事は完成しておるところにも、そういう未完全な凝固の状態で残っておるということは確認してありますか。
  207. 久保赳

    久保説明員 このたびの新宮町の事故のその後の水質分析等から見ますると、ある部分が未反応のまま地中に残っているのではないかということが調べられております。
  208. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと これは工事中のものだけじゃなくて、いま新宮のことでおっしゃいましたが、未反応のままで残っておるということになりますと、これはたいへんな状態が想像されるわけでございます。そこで完成しました工事の中にもそういうことがあり得るということになりますと、私は、施工中の工事だけでなく、全体についてそういう安全性を確認しなければいけないということになるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  209. 久保赳

    久保説明員 新宮町の場合が、薬液工事にかかわる一般例であるということは言えないと思いますが、一般には先ほど申し上げましたように、設計と施工が適切であれば、その両方の未反応のものは残らない、両方が凝固するというふうに考えられます。そこで、今回の次官の通達では、現在工事中のもの、それから今後新しく工事を起こすもの、この二つについて書かれておるわけでございまして、すでに施工されたものについては触れておらないわけでございますが、私ども建設省所管で行なわれております薬液工事は、どちらかといいますと、工事として継続工事で行なわれている例が非常に多いわけでございます。したがいまして、現在の継続工事を一時ストップして、それに伴う周辺の井戸水の安全の調査をすることによって、その前の年にすでに注入が終わっているところの安全性につきましても、ある程度確実に、掌握できるのではないかというふうに判断をいたしております。  しかし今後、この薬液注入工法に対する検討委員会を発足させまして、その検討委員会の中の主要な検討事項の一つに、すでに薬液注入が終わったもののあとの固まったものからの溶出問題を含めて検討することにいたしておりますもので、もしもそういう一度固まったものから再溶出することが非常に考えられるという検討結果になりました暁には、過去のものについても必要なところについては点検をする必要があろうかというふうに考えております。しかし全般としては、すでに昭和三十年代から薬液工事実施をされておりますので、それらの実施されたもののうち、特に危険と思われるものについての検討になろうかと思う次第でございます。
  210. 田中昭二

    田中(昭)委員 建設省のほうも、いまの新宮のことにつきましては、現場でどの程度実際に調査してあるのか、私、疑いを持たざるを得ないですね。というのは、いままで終わったものについては大体心配がないだろうというような考えのもとに、いま御答弁なさったようですけれども、しかしあなたがおっしゃったように、未反応のモノマーのアミドが井戸水に入って、ああいう被害が出たんですよ。それからそれが完全に凝固しなかったら、また二次汚染のおそれもあるということは考えられることですから、当然そういうことだけで済まされないのじゃないかということを私は申し上げておきます。  そこで、先ほど指摘がありましたが、いわゆる再開する条件として、健康被害発生のおそれがないと確認した上というのですけれども、大体ほんとうにこれをやることになったら、たいへんなことだろうと思うのです。問題は、こういうことが各市町村並びに業界のほうにいきましても、実際問題として、これが現場でどのように行なわれるのか、そのことについては、たいへんまだ私も不安でございまして、三番目の薬剤の配合、残材の処理等に関しても指導監督を厳重にする。ことばでは、これは簡単ですけれども、いま言いましたように、実際の指導監督は、それじゃ具体的にどのようにだれが行なうのかというようなことまで考えて通達を出さなければ、私は、かえって混乱するのじゃないか、こう思います。  先ほど、こういうことによって工事が中止されるために、発注者の負担が重くなる、いわゆる増加経費は肯定されるだろうというふうなことを、あなたはおっしゃったわけですね。しかしこれは、実際新宮でもこの問題におきまして関係者はたいへんな出費をしいられておりますし、そういうことを考えますと、結局そういう末端の人たちにばかり負担がかかるようなことは、私も避けてもらいたいと思いますけれども、実際問題として、これは増加経費が出れば、ほんとうに支払うんですか。
  211. 久保赳

    久保説明員 お答えいたします。  これは先ほども同一趣旨の御質疑のときにお答えしたわけでございますが、発注者は、これは建設省直轄であれば国でございますし一下水道工事であれば地方公共団体でございまして、発注者の国あるいは地方公共団体と、それから、それと契約を結んだ施工業者の方との間の問題になるわけでございますが、その契約の態様によると思いますけれども、一時工事を中止することによって増加した経費、これについては、契約の更改変更という形で処置されるわけでございます。
  212. 田中昭二

    田中(昭)委員 通産省のほうに、次にお尋ねしますが、時間がありませんからずっと申し上げますから、要領よく答えてもらいたいと思います。  今度の新宮病の原因が、アクリルアミドという毒性の強い化学物質であることは、もう明らかになったわけでございますから、そこで、昨年成立しました化学物質の審査及び製造等の規制法ですね、これで指定をすみやかに行ない、そして分析研究の結果、安全性をはかるべきであると思いますが、この点が一点。  それから、こういう国民の健康に問題のある化学物質を放置しておることは、たいへんなことでございますから、このような事故を起こさないためにも、化学製品を究明する必要がある。そこで、そのような問題のある化学製品は現在どのくらいありますか、これが第二点。  それから、たくさん化学製品があると思いますか、——これは手、その二点だけお答えいただけますか。
  213. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 問題のある化学物質ということになりますと、直接の毒性につきましては、ただいま御議論のありましたような毒劇物取締法による指定が、現在用意されている体系かと思います。したがいまして、私のほうとしましては、化学製品の性質を調べまして、厚生省と十分協力し、その指定に対する情報提供、それから施策の協力をしてまいりたいと思います。
  214. 田中昭二

    田中(昭)委員 それは第一点でしょう、第二点は。
  215. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 化学物質の審査規制法に関してでございますか。
  216. 田中昭二

    田中(昭)委員 それじゃ、時間がありませんから、あとで資料で出してください。いま私の第二点目は、そういうたいへんな化学製品がたくさんあるようですから、そういう中で危険があるという化学製品がどのくらいあるかということが一点。それと第二点目は、そういう製品を審査するためには、通産省としては、どのくらいの予算をもってやろうと思っておるのか。それから最後は、そういう状態、先ほどもあなたから答弁がありましたが、このアミドについては全体の一割ぐらいしか凝固剤に使われていないとすれば、そのあとのものはどういう状態で使われておるか把握してあるのか、そういうことをひとつまとめて教えていただきたいと思います。よろしゅうございますね。——それじゃ答えてください。資料が出せますか、いまのやつ。
  217. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 他の用途につきましては、資料を出せます。  それから、危険物という意味がいろいろございまして、毒劇物的な意味でございますと、これはやはり厚生省と協力してやっていくのが筋かと存じております。
  218. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後に私は、時間もないようでございますから、政務次官にお尋ねしておきますが、いま私ずっと質問申し上げましたけれども、この問題はたいへん各省とも横の連絡がない。いま建設省も、この事件について第一回の委員会といいますか何かを七日にやったと言いますけれども、そのときに各省もどういう会議をやったのかもはっきりしておりません。その点を聞きましても——聞くところによりますと、何か厚生省が全然参加していないというふうなことでございます。  もう一つ指摘しておかなければならないのは、環境汚染の中で、地下水、井戸水の汚染防止については、厚生省のほうでも幾らかの検討がなされておるようでございますけれども、井戸水の安全というものについては、どこにもその仕事をするところがない、このように言うのです。  こういうことを含めまして、環境庁は、先ほど総合調整の機能があるというふうにおっしゃったのですから、その立場に立って、ひとつこの問題を処理してもらいたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  219. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 確かに何か問題が起こってから、その対策考えるということは、政治の姿勢としては私はよろしくないと思います。環境庁の場合は、先生御承知のように、環境保全に対する政策の企画並びにその施策についての総合調整、こういう役割りを持っておるわけでございますが、それのたてまえとして、現実にはこういう問題がこれから起こらないようにするためにも、私ども十分に気をつけていかなければならぬと思いますし、先ほどのこの事故につきましては、幾つかの省庁がかかわっているわけでございまして、いま先生が御指摘のような、どこが関係しているかわからないというような問題があれば、これはまた解決がなかなかむずかしいわけでもございますので、そういう点につきましても十分に注意をいたしまして、今後このような問題が起こらないようにするために、環境庁としては、どういうふうにしていったらいいかということについて至急に検討をいたしたい、かように考えております。
  220. 田中昭二

    田中(昭)委員 終わります。
  221. 角屋堅次郎

  222. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は、特に本委員会のお許しをいただきまして、ただいまから、東京都下多摩市を中心に周辺数市にまたがる多摩ニュータウンのまん中を通っています東京電力の高圧送電線につきまして、住民の生命、安全を守り、子供たちの通園、通学路の安全を確保し、また騒音、静電気障害、電波障害その他の不安をなくするために、関係各機関、環境庁、建設省、通産省あるいは日本住宅公団等の皆さんに質問申し上げまして、適切な措置、万全の対策をすみやかにとられますように求めたいと存じます。  そこで、まず建設省にお尋ねいたしますが、多摩ニュータウン計画は将来人口三十一万都市であるとか、さらには四十一万都市であるとかいうことがいわれております。最近は若干手直しの必要等も言い出されておりますけれども、ともかくそういう高層密集住宅都市のまん中に、二十七万ボルトの高圧線が通っているのはどういうわけであるか。一体何の規制もないのですか。その一部はすでに完成しまして、諏訪・永山団地だけでも、行ってみればわかりますが、すでに大団地を形成して入居が済んでいるのでありますけれども、その中を高圧線が通っている。しかも、われわむしろうとが考えても、これはあぶないなと思うように、途中で直角に曲がったような引き方になっている。一体どうしてこういうことが起こっているのか、その経過並びにこのままでいいと思っていらっしゃるのか、あるいは今後どういうふうにお考えになっているのか、その御見解を承りたいと思います。
  223. 内海英男

    ○内海(英)政府委員 お答え申し上げます。  多摩ニュータウンの宅地開発計画にあたりましては、建設省といたしまして、従来から良好な居住環境の確保に留意しなければならないということは重々承知しておるところでございますが、高圧送電線等につきましては、その安全性について、宅地造成計画において十分配慮するように従来から指導してまいってきておるところであります。しかし、多摩ニュータウンのように非常に大型な造成、しかも東西に幅十四キロに及ぶというような大規模な宅地開発事業におきましては、既存の送電用の鉄塔を移動するというようなことは、実際問題といたしまして、なかなか困難が予想されるわけでございます。したがいまして、このような場合には電気事業法に基づきまして、技術基準に従い、宅地造成及び住宅建設のレイアウト内において、危険がないように十分調整するように指導してきておるわけでございます。
  224. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 日本住宅公団の方もお見えかと思いますが、現在あのような状態になっておりますこと、あるいは将来さらに、これの送電量が強化されるための建設工事がすでに着手されておると聞いておりますが、こういうことに対して公団自体どうお考えですか。     〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕
  225. 秀島敏彦

    ○秀島参考人 お答えいたします。  多摩ニュータウンにおきましては、あそこがちょうど東京の外郭地帯でございまして、東京に関係いたします高圧電力線の幹線がたくさん通っておる個所でございます。そこで、ニュータウンの計画自体の中には、やはり既存の高圧線がある分は存在をしたまま、住宅地を開発するという前提のもとに計画を進めております。それで住宅公団の中に高圧線が存在するという形にはなっておりますが、この安全性につきましては、電気事業法に基づきます安全基準がございますが、それを上回る措置と申しますか、間隔その他を配慮いたしまして十分安全を確保してまいりたい、こういうふうに考えて計画を進めておるわけでございます。
  226. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いま伺いますと、建設省も日本住宅公団も、今日のこの電気事業法等の規制に基づく安全確保、それをその範囲内でやる以外にない、こういうふうな御答弁に聞こえます。私は、それについて後ほど、すでに起こった事件を材料に、これはもう一回再検討を抜本的にしていただく必要があるということを申し上げたいのですが、その前に、一応一歩下がって、いまの電気事業法等の規制の関係について、電力会社を直接監督する立場にある通産省にそれではお聞きしますが、通産省の方見えてますね。  電気設備に関する技術基準を定める省令というのがございますね。その中に(特別高圧架空電線路の市街地等における施設制限)ということが定められていると思いますが、その百十一条に「特別高圧架空電線路は、その電線がケーブルである場合を除き、市街地その他人家の密集する地域に施設してはならない。」こう明確に書いてあると思います。そのあとに「ただし、使用電圧が十七万ボルト未満の場合において特別高圧架空電線路を次の各号により、かつ、危険のおそれがないように施設するときは、この限りでない。」こうしてずっとあげてあるわけでありますが、これは十七万ボルト以下の場合であると了解いたします。  この多摩ニュータウンを走っておるのは、この十七万ボルト以下ではなくて、二十七万ボルトということでございますから、これはこういうところを通るということは、当然禁止されるというふうに常識的に考えられますけれども、なぜこれがまかり通っておるのか。先ほど建設政務次官の御答弁あるいは日本住宅公団の御答弁の線からいっても逸脱しておるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  227. 井上力

    ○井上説明員 先生指摘のように、電気設備に関する技術基準を定める省令の中の百十一条には(特別高圧架空電線路の市街地等における施設制限)という条文がございます。この条文は、超高圧送電線路の保安の確保にあたりまして、少数の対象物に対しては、送電線路の設備強化等により対処できますが、対象物が密集してくると、おのずからその対策に限界がある、こういうような趣旨から定められたものでございます。  本計画の場合におきましては、送電線路の工事、維持及び運用に関する保安の確保並びに誘導あるいは電波障害の防止といったような点につきまして、十分対策を行なうことが可能であるというふうに考えられますので、本条文におきます「市街地その他人家の密集する地域」に当たらないという解釈でやっている次第でございます。
  228. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ざる法ということばがありますけれども、ああいう高層住宅団地のところで、それが密集地に当たらないなんということが、どういう法律のこねくり回しから出てくるのか。これはとても一般国民、住民にはわかりません。私にもわからない。それは一体どういう基準なんですか、具体的に。
  229. 井上力

    ○井上説明員 お答えいたします。  ただいまのお尋ねでございますが、「市街地その他人家の密集する地域」という地域の解釈に関しましては、本百十一条の規定を含みます電気設備に関する技術基準を定める省令が、電気設備によりますいろいろな保安の問題に関しまして諸種の対策を講じた場合に、講じればそれでいいかどうかというような点から判断をする、かようにわれわれ考えておる次第でございます。  具体的にどれぐらいの密集度から、いわゆる人家密集地域というふうに考えるかという点に関しましては、従来の運用では一応めどを置いておりますが、ちょっと申し上げますと、特別高圧架空電線路の両側にそれぞれ五十メートル、線路方向に五百メートルとった五万平米の長方形の区域で、この地域内の建蔽率が二五ないし三〇%以上である場合というのを一応のめどに置いております。ただ、最初に申し上げましたように、あくまでもこの電気設備に関する技術基準を定める省令と申しますのは、電気設備によります保安の確保を目的にした省令でございますので、その省令の趣旨からいって、百十一条の解釈をするというのが筋かというふうに考えております。
  230. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまの聞いていてもわかりませんが、鉄塔のところ、電線の通っているところは両側に五十メートル、そして長さ五百メートルですか、その範囲内に、つまり五万平米ですね、五万平米の中に建蔽率が三〇%以上のときに密集地と解釈する、こういうことですね。そうですが。
  231. 井上力

    ○井上説明員 先ほど御説明申し上げましたように、大体その程度以上を従来密集した地域というふうに考えております。
  232. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうすると、多摩ニュータウンは、その立場からいくと、どういうふうに計算をされているのですか。
  233. 井上力

    ○井上説明員 約八・三%程度と計算されております。
  234. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうすると、それは建蔽率からいうと一〇%以下だ、だから当然この危険地帯に入らない、二十七万ボルト以上のものでも通ってよろしい、こういう解釈で認めている、そういうことですか。
  235. 井上力

    ○井上説明員 先ほど御説明申し上げましたように、この省令におきます人家の密集した地域の解釈は、あくまでも保安上対策がとり得るかどうかということで考えておるわけでございまして、何も数字がございませんと、めどが立てづらいものですから、一応めどを置いておりますが、保安上対策をとり得る地域である、かように考えまして、百十一条には抵触しない、かように考えておる次第でございます。
  236. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その解釈が第一おかしいと思いますね。土地利用の建蔽率等の場合に、確かに一階の面積だけを建蔽率にしている。前のように二階、三階を全部面積を加えますと、非常に広い面積でも家が建てられないというので、住宅事情から建蔽率のそういう率が変わったということは、これは住宅問題としてはありましたけれども、それをそっくりこういう危険の問題に適用しているということをいま聞いて驚いた。  ここは五階とか十階とか、うんと高層なやつが建っていますよ。最低でも五階以下のはないと思うのですね。十数階のも建っています。そうしたら、五階だったら、五倍になる。ほんとうは人口の密集度からいったら、いまほんのわずかできているという永山・諏訪団地だけでも、約三万も人が入っている。     〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしたら、この率からいったら、八%としても、最低の五階でも、四〇%ぐらいに見る、そういう解釈をするのが安全という立場から見たら当然だと思うのですが、見解はいかがですか。
  237. 井上力

    ○井上説明員 人口の密集というふうに考えますと、先生の御指摘のとおりかと思いますが、われわれのほうで電気の安全ということで考えておりますのは、人家の密集という考え方で考えておる次第でございまして、そういう点からいきますと、先ほどのような解釈になろうかと思います。
  238. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 政務次官もおいでですから、いまの問答をお聞きになって、人家の密集というのをただ建蔽率だけだというふうにおっしゃっているのですけれども、大団地で高層住宅がずっと建っているところに送電線が通っているのですよ。それを建蔽率でやるなんという考えそれ自体、いまの法律の解釈はそういう解釈が成り立つかもしれませんけれども、そんな解釈はすべきじゃないし、もしそういう解釈しかできないなら、すみやかにその法なり省令なり規程なりを改正すべきだと思うのです。その点いかがですか。
  239. 内海英男

    ○内海(英)政府委員 長谷川先生指摘のとおり、住民の方々にしてみると、非常に不安であるということは十分私どもも理解いたします。したがいまして、この問題につきましては、さらに関係の機関ともよく相談いたしまして、今後の住宅政策に誤りのないように指導してまいりたい、こう思っております。
  240. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 建設省側からそういう御発言がありましたけれども、これは具体的にいろいろ規制するのは通産省ですが、きょうは通産省は、大臣も政務次官も来ておられないのですけれども、おいでになっている方は、これについてどうお考えですか。答弁ができたら、してください。
  241. 井上力

    ○井上説明員 百十一条の適用に関しましては、電気技術の進歩によりまして、現在のところ、われわれのほうでは、これでよろしいのではないかというふうに考えております。
  242. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 官僚答弁としては、そういうことしか御答弁の自由がないのかもしれませんが、これは機会を改めて大臣なりに十分、私はもう一ぺんただしたいと思います。時間がありませんから先へ進みますが、建設政務次官のおことばを信頼しまして、すみやかに関係機関との御相談をお願いしたいと思います。  そこで、この高圧線の送電量をいまふやそうとして、二十七万ボルトはそのままですけれども、五十万キロワットをたしか三百万キロワット、六倍に送電量をふやす、そういう工事が始まっているわけです。電線も太くし、本数もうんとふやす、鉄塔もずっと高くする、こういう工事が始まりかかって、実はそのために昨年六月から、この多摩ニュータウンの中の送電線は送電が中止といいますか中断されまして、そして一部取りこわし等が始まっているという段階のように伺っております。  そこで住民は、前でも不安があったのに、そういう強力な、送電量が六倍にもふえるということ、電線がふえる、太くなる、もうこれに対しては、いても立ってもいられないという不安がつのって、それぞれの公団の自治会等が反対運動に立ち上がっているというのが現状のようであります。そして当該中心の市である多摩市におきましても、市として東電のほうに申し入れをし、文書をもって住民の合意を得ないうちは工事等に着手しない、こういう約束もしておるやに聞いておりますが、スケジュールの関係で、それを無視して電線の一部取りはずしとか、鉄塔を高くするための取りこわし作業が始まっている、こういうふうに聞いておりますけれども通産省はそのことを御存じですか。
  243. 井上力

    ○井上説明員 承知しております。
  244. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それを許しているのですか。
  245. 井上力

    ○井上説明員 電気事業法に基づきまして認可をしております。
  246. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 これもどうもお役人との問答はこれ以上やってもむだのようであります。日本住宅公団、直接あなたのほうは住民に責任があるわけですが、あなたのほうは、それをしょうがないとあきらめているのですか。できれば、先ほど基準以上に安全性を確保するようにしたいということはおっしゃっておりましたけれども、公団に聞いてもあまり意味かないかもしれませんが しかし、やはり責任があるのですから、公団のお考えもこの際、聞かしてほしいと思います。
  247. 東貞三

    ○東参考人 お答えいたします。  この点につきましては、電気事業法によって許可されて、東電が十分に安全を見てやるという、責任をとるということで現在やっておるわけですが、現在はそういう住民のいろいろな陳情などありまして、一時ちょっと中止しているはずでございます。この当初の基準につきましては十分東電と打ち合わせまして、基準以上にある程度は余裕をとうてあるわけでございますが、これが十分といえるかどうかは基準に照らし合わすれは、ある程度の余裕はとってございます。これはまあ東京電力のほうと打ち合わせてやったわけでございますが、容量をもう少し大きくするということにつきましては、東電のほうですべての障害その他について責任を持ってやるということでございますので、私のほうはそれに従っておるわけでございます。
  248. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 これもどうもたいへん弱いお立場みたいな御答弁です。聞いてもむだなような気もしますが、念のために、不安を感じていませんか。一言はっきり言ってください。
  249. 東貞三

    ○東参考人 住民の方は不安を感じている、こういうことでいろいろお話があるわけでございます。しかし、まあ電気事業法によって増量するということだものですから、私のほうで、どうしろというわけにもいきませんので、現在は皆さん方の陳情により、東電のほうに一時中止してもらっているわけです。
  250. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 多摩ニュータウンにつきましては、この高圧送電線の問題のみならず、交通の問題、自動車の道路の問題、駐車場の問題保育所、幼稚園の問題、病院建設の問題、それから幾つかの自治体にわたっておりますので、行政区画があのままでいいかというような問題、さまざまの問題があそこに集約的にいま出ていまして、いわば八方ふさがりのような状態が起こり、せっかくの大計画もたしか昭和四十六年以降は建設そのものがストップしておって、私も先般全般の地域を詳しく見せていただきましたが、まことに広大な地域が予定されており、いまできておる諏訪・永山あるいは愛宕団地等は、あれでもまだほんの一割程度なんですね、全体計画から見ると。あとの九割はまだ土地がそのままにあるわけです。  したがって、この辺で日本のこういう大きな団地づくりの上に、やはり新しい理想的な姿を打ち立てなければならないと私は思うのです。重要な送電線があるからといって、もっと大事な人間をあと回しにするような考え方は、この際、政府自体としてもやめてもらうし、直接住宅に責任を持つ公団の人はもっとき然たる姿勢を持つべきだ。そして私は、まだ幾らでも安全に、あんなに直角に曲げなくても、あるいは場所を移しても、あれだけの団地があるのですから、そして規模の縮小もいま考えられておる、三十一万都市とか四十一万都市とかいったけれども、再検討しなければならないという声も上がっているわけですから、すでにそういうことも国会でも議論が建設委員会等でされておるわけでありますから、私は、この際、抜本的な再検討をすべきだ、これを要求したいと思います。  いま伺っていますと、法律による安全基準に従っているからいいんだいいんだと言っておりますが、ところがときもとき、この同じ送電線の続きである隣接の日野市東平山二丁目におきまして、この東京電力高圧送電線の鉄塔建設工事現場で、去る四月四日午後三時半ごろ、いわゆる春一番という関東特有の風が吹きまして、約三十メートルほどの風が吹いたようでありますが、それで、どんな大地震があっても、どんな強風が吹いても絶対安全なんだ、そういって住民に説明していたにかかわらず、もろくも根元から倒れたのです。しかも、送電量を六倍にふやすための新しい建てたはかりの鉄塔が根元から根こそぎ倒れてしまった。下にあった工事用小型トラック三台、ブルドーザー一台はぺしゃんこになってしまった。幸い人が乗っておりませんでしたので、人間の被害は出ませんでした。そして四メートルの市道を横断して人家へ一メートル半のところまで倒れて道をふさいだ。ちょっと角度が違えば数軒の家は全く下敷きになり、その真下には病人をかかえた御家庭もあって、まさにりつ然としたわけであります。  こういう事実が、いま安全だとか法律に従ってと言っているそばから起こっている。この事実を知っていながら、きょうまだ抜け抜けとした答弁をやっていらっしゃるのを聞いて、私はあきれ返っているのです。一応法律にはこうありますけれども、これについては、こういう事件もありましたから、非常に重大な関心を持って、これは急速関係各省庁、各団体において検討する、しておりますくらいの御答弁があるかと思ったのですが、これについては一言も触れておられない。この事実を通産省は知っておられたのでしょう、どうですか。
  251. 井上力

    ○井上説明員 先生指摘の四月四日の事故でございますが、そもそも送電線の建設にあたりましては、御指摘を待つまでもなく安全確保に万全を期さなくてはいけないということは当然でありまして、このような観点から厳格に技術基準が定められておりまして、技術基準に適合しているものについては十分安全が保たれるというふうに考えております。  ただ、今回の四月四日の日野市における鉄塔の倒壊事故でございますが、この件につきましては、さっそく私どものほうの中に、東京西線鉄塔倒壊事故対策検討会という委員会設置いたしまして、四月四日以来、五回にわたりまして事故現場の調査あるいは設計関係資料、工事施行関係図面あるいは事故前後の諸記録、各種の試験結果等につきまして慎重に審議を行なっておるわけでございます。この調査によりますと、日野市におきます鉄塔倒壊事故は技術基準違反のものではなくて、工事中の連絡調整が不十分であったことにより発生したものであるというふうに考えられておりまして、この点、工事監理がずさんであったことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。送電線の建設にあたりましては、今後いかなる場所でも安全性が保たれるように十分監督していく所存でございます。
  252. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その調査結果では、原因についてはすでに終わってまとまっているのですか、それを確認します。
  253. 井上力

    ○井上説明員 先ほど申し上げましたように、多方面から専門家の方をお願いいたしまして検討をしたわけでございますが、その検討結果によりますと、事故の原因は、この当該鉄塔は千八十三番という鉄塔でございますが、この設計が千八十二番側から架線するような条件で行なわれていたのに対しまして、架線を反対側の千八十四番側からやったということが原因であるというふうに推定されております。
  254. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は、ちょうどあの事件のあった翌日、建設委員会が開かれておりましたので、緊急に質問させていただき、そこで亀岡建設大臣から、たいへん驚いている、たいへんなことだ、さっそくよく検討いたしますという御答弁がありまして、また関係の係の方からも、調査結果がまとまりましたら直ちにお届けをします、こういうふうにもお約束をしていただいておったのですが、まだ私は、その結果を入手しておりません。  いま伺うと、建設のやり方は、構造自体は安全だったけれども、架線の操作に誤りがあったために倒れたんだ、こういうような御答弁ですけれども、これではなかなか納得できません。専門家が寄ってやったことか——専門家を信頼していると、ああいう事態が起こるのです。これは具体的資料をいただかなければ、よくわかりませんけれども、ほんとうにあそこは、多摩丘陵地帯全体が下にかたい岩盤があるところではなくて、いわゆる関東ローム層、赤土の非常にやわらかい地帯でありますから、ああいう大きなものが立っておりますと、どう倒れても、まわりは安全なだけの場所をとっておかなければ非常に危険を感ずるというのは当然のことであります。私はこの点について、いまの法律並びに法律をつくっただけでものを考えている役人的感覚では問題が解決しないように思います。きょうは建設政務次官がおいでですけれども、ぜひ大臣等と御相談の上、政府として対策を立てていただきたい。また通産省の方も、お役人の立場で、いまのような御答弁しかできないでしょうけれども、私ども非常に不満でありますが、大臣には、もっと抜本的な検討をするように要望したことを、ぜひ伝えていただきたいと思います。  そういう事件が起こりましたので、この続きがいまニュータウンへ入ってくるわけですから、多摩ニュータウンの皆さんは、自治会の役員等が先頭になって、この倒れた日野地区へ行きまして詳細に状況を調べ、またその辺に住む住民の皆さんからアンケートをとっておるのであります。  その報告によりますと、この送電量をふやす工事を終わったほうの、つまり新しい電線を張ったほうの地帯の人々は、騒音は変わらないなんてごまかされたけれども、前に比べたら、はるかにひどくなっている。しょっちゅう、ほとんど風のない日でも何となくビューンビューンというような音がする。その音の表現が、ある人は鳥が絞め殺されるような悲鳴に聞こえると言い、ある人はお湯がいま煮え立ってふきこぼれるような感じに聞こえるとも言い、とても毎日が不安でたまらない、しかも倒壊したという現実を目の前に見て、この音のために神経質な子供は夜も眠れない、こういう訴えをしておるのであります。また、私は電気の専門家ではありませんが、雨の日や霧の日にこの下に通りますと、こうもりがさの柄にびりびりっと、静電気というのでしょうか、何か電気を感ずる、あるいは下に置いてある自家用車に乗ろうとしてドアに手をかけますと、ぴりっとくる、こういったようなことが起こっております。また、今度はニュータウンのほうの状況考えますと、ニュータウンでは、その電線がいま私立の諏訪幼稚園の真上を通っている、諏訪・永山両団地の商店街を結ぶ歩道橋の真上を通っている、こういう状況であります。したがって、現行の法令の基準の中で、これが許されるのだということはとうてい考えられない、またそういうことで放置できない、こういうふうに私は考えます。  きょうは、環境庁の方来ていらっしゃいますか。——こういう問題か起こる場合に、国民はすぐ環境庁に一番期待します。環境庁が何とかしてくれるだろう、われわれの生活環境を保全してくれる、自然破壊から自然を守ってくれる、こういうことで環境庁が一番たよりにされておるようです。具体的な問題は、建設省あるいは通産省関係の問題が多いかと思いますけれども、この高圧送電線の公害の問題については、環境庁として新しい観点に立って政府全体の調整をとる指導的な役割りを果たしていただきたいと思うのです。  聞くところによりますと、東電はこの工事をやるために、多摩丘陵自然公園、秋川丘陵自然公園というようなところを東京都に無断で工事をやって注意をされたということでありますけれども、こういうこと全体に対して環境庁としてはどうお考えか。私はぜひひとつ、新しい住民の安全、環境保全のための方策をとっていただきたいと思うのですが、その点についてお尋ねします。
  255. 春日斉

    ○春日政府委員 この問題の経緯は、いままで先生が御指摘になったとおりでございますが、そもそも、私ども思いますのに、従来から高圧線が通っておりました下にニュータウンをそのまま、保安上だいじょうぶであるという見地から建設された  ことが一つの始まりであり、さらに容量をアップするために現在工事が予定され、あるいは一部では建設が進んでおるわけでございまして、そういったところに日野の平山におきます鉄塔が倒れたということで、一般住民の方々は送電線建設に対する不安感というものが、まず醸成されてまいったと考えるわけでございます。そこへ降雨時のスパークの問題あるいは静電気の問題、それから幼稚園の上、あるいは通学路の上を通るというような問題から、この問題がさらに不信感が固まるというかっこうになってきておるわけでございまして、ことに先生のおっしゃいました電線のうなり騒音と申しますか、その問題につきましては、そのこと自体独立して考えればたいしたことないように思われますが、先生指摘のようなこういった状況をバックにいたしまして、住民の切実な御要望として提起された問題であろうと私は解釈いたしております。したがいまして、この送電線のうなり騒音というものは、単なる音の大きさがどうのこうのという問題ではない。あるいはまた異常な音質、締め殺されるような音というような単なる問題だけではございませんで、これは総合的に送電線建設の問題の一環として、私どもは十分に解釈してまいりたいと思っております。  もちろん、音について申すならば、電気工作物について現在電気事業法による規制が行なわれておりまして、第三者に及ぼすおそれのある危害や損傷の防止についても考慮されておるわけでございますので、こういった問題は今後十分に検討課題の一つとして私ども考えてまいる所存でございます。  なお、自然環境との問題につきましては、担当局長からお答え申し上げます。
  256. 江間時彦

    ○江間政府委員 多摩丘陵及び秋川の公園は都立の自然公園でございまして、東京都から事情を聞きましたところ、この工事は都条例による無届け行為ということになっておるようでございまして、これにつきましては、都が関係者を呼びまして厳重に注意をした、そして始末書をとった、危険防止及び敷地の緑化ということを指示したということでございます。  東電といたしましては、若干条例の認識の違いなどがあって、必ずしも悪意はなかったと思われますけれども、少なくとも自然公園内におきまして再びこういうことがないように、またこういうことに伴いまして住民に不安を与えることがないように、自然公園を管理するものの立場としても、十分注意してまいりたいと思うわけでございます。
  257. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 環境庁、これは前向きにひとつ御検討をいただきたいと思います。  最後に、時間がなくなりましたので、ずばり結論を申し上げて、ぜひ関係各省、政府自体として、ひとつ今後のこともございますので、御検討いただきたいと思いますが、一つは、先ほどの安全基準といいますか、あの中にもありますように、ケーブルの場合はよろしいといっておりますが、こういう大団地などを通す場合には、お金がかかるのかもしれませんけれども、これはなかなか困難であるなどと言っていないで、これは人命にかかわり、将来長くそこに住む住民の物、心両面の不安を除くという意味で、思い切ってケーブル化するか、あるいはさっき申し上げましたとおり、まだまだこのニュータウン計画はほんの一割ほどしか実際の団地形成は進んでおらない。あとはみな広大なあき地になっておるわけですから、あらためて計画を手直しせられるなどして、相当広い緑地帯の中へ通すということで——五十メートル左右なんというそんなことでは全然これは問題にならないですよ。これを十分に広くとって、そうして緑地をとって通すかいずれかに、場所をもうそういうように移すか、ケーブルにするか、そういうことにするように、これは関係各省が十分御相談をいただいて、そういう方策を私はすみやかに樹立していただきたいと思います。このことを強く要望しまして、これに対する政務次官のお考えを伺います。
  258. 内海英男

    ○内海(英)政府委員 長谷川先生から御指摘のとおり、問題はそこに住んでおる住民の方々が安心して生活ができるということが大前提であると思います。したがいまして、政令で安全基準にあるとはいいながらも、住民の方々が実際不安を感じておられるということにつきましては、これは関係省庁とも十分連絡をとりまして、安心して生活ができるような方向に、私どもはある意味においては見直さなければならないときが来ておるという感じがいたします。  しかも本日は、国土利用計画法という画期的な法案も衆議院を通過させていただいた、四党共同による法律が通過をして参議院に送られたという実態から見ましても、従来の計画にこだわらずに、根本的に関係省庁が寄り合って見直さなければならない時期に来ておる、こういうふうに判断をいたしまして、大臣とも相談をして、早急にそういうような方策をとりたいと思っております。
  259. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 終わります。
  260. 角屋堅次郎

    角屋委員長 坂口力君。
  261. 坂口力

    ○坂口委員 あすから愛鳥週間に入るわけでございますが、日本も昨年来アメリカ、ソ連それからオーストラリア、こういった国々と渡り鳥保護条約というのが締結をされまして、調印をされまして、国際的な立場から野鳥を保護していくという方針が打ち出されているわけであります。国内的にも自然保護かあるいは産業開発かという議論が非常に盛んになっております。きょうは干がたの埋め立て問題につきまして、関係当局にお聞きをしたいと思います。  まず最初に、環境庁にお伺いをしたいと思いますが、このアメリカ、ソ連、オーストラリア、これらの国々との二国間渡り鳥条約、これをそれぞれ締結されているわけでありますが、この条約の背景、それからどういうことが義務づけられているか、この点につきまして、簡単でけっこうでございますので、御説明をいただきたいと思います。
  262. 江間時彦

    ○江間政府委員 先生がおっしゃいましたように、渡り鳥を保護するということは、目下のところ非常に重要なことでございますし、また最も渡り鳥が生息する場所というのは、開発の対象になりやすい場所でございまして、その意味で、われわれいろいろ考えているわけでございますが、その一環といたしまして、米国、ソ連、オーストラリアなどと条約を結んだ、その条約におきまして、ほぼ共通しております内容といたしましては、第一点といたしましては、渡り鳥の捕獲を規制すること。第二点といたしましては、絶滅のおそれのある鳥類の輸出入を規制する。それから第三点といたしましては、・これらの鳥類の生息環境の保全につとめる。第四点といたしましては、保護に必要な共同研究あるいは資料交換などを行なう。というようなことを主たる内容といたしておりまして、いずれもそういう点においてはほぼ共通いたしております。
  263. 坂口力

    ○坂口委員 いま幾つかの点をあげていただいたわけでありますが、この渡り鳥条約に違反をした行為をした場合には、どういうことになりますか。
  264. 江間時彦

    ○江間政府委員 ご承知のように、条約の義務といいますのは、場合によっては国内法よりも優先することになるわけでございますが、現在の段階におきましては、やはり主として国内法によっての規制を行なっていく、また条約と国内法との関連におきまして不十分な点がございましたならば、国内法を直していくということになろうかと思います。
  265. 坂口力

    ○坂口委員 すでに数年前から日本のおもな野鳥の渡来地と申しますか、そういう野鳥が生息する土地について幾つかの調査がされていると思うわけであります。東京湾、伊勢湾あるいは大阪湾、こういった大きな干がたが次々と埋め立てられて、渡り鳥の危機が叫ばれているわけでありますが、環境庁はこうしたことを踏まえて四十七年に、対象地十カ所の調査をされたわけでありますが、この十カ所の千がた地帯の現状、実態がどうなっているか、その点、これも簡単でけっこうでございますので、ひとつお伺いをしたいと思います。
  266. 江間時彦

    ○江間政府委員 環境庁におきましては、四十七年度に十カ所ほどの主要な干がたを選びまして、これを調査いたしました。調査の主たる中身でございますが、そこに渡来いたします鳥類の種類、あるいはえさの状況、それから干がたの保護に必要な資料を集める、そういうふうなことだったわけでございまして、その結果、干がたの規模であるとかあるいはえさの状況など自然環境に応じまして、渡り鳥の渡来状況には、それぞれ若干の相違はございましたけれども、共通して言えますことは、これらの干がたの多くはその立地条件が開発の対象となりやすい、その保護をはかるために開発計画との調整をはかっていく必要があるということが痛感されたわけでございます。
  267. 坂口力

    ○坂口委員 特にこの中ですぐれた干がたと申しますか、どうしても残しておきたいと思われる千がたというのは、その中でどういったものでございますでしょうか。
  268. 江間時彦

    ○江間政府委員 いずれも貴重なのでございますが、しいて十カ所の中で、われわれのほうで特に注目いたしておりますところを申し上げますと、山口県の千鳥浜、愛知県の汐川というようなところが、われわれのほうといたしましては、特に注目しているところでございます。
  269. 坂口力

    ○坂口委員 いま御報告がありましたように、山口県と愛知県の二カ所がたいへん生息地としてはすぐれている、こういう御報告がありましたが、具体例で申し上げますと、いまお答えになりました後者のほうの愛知県の三河湾、田原町の汐川のいわゆる干がた地帯、この千がた地帯は私のほうにも幾つかの書類がございますが、多くの渡り鳥がやってくる。地元の愛鳥家の調査によりますと、昭和四十六年の九月から四十八年の九月までの二年間の調査でございますが、大体百三十五種類の野鳥がおりまして、その中にシギ、チドリなど四十四種も含まれている。二千羽をこすハマシギの群れ、それから十万羽をこすというスズガモ、こういった非常に多くの野鳥の生息地になっていることが判明をいたしております。この田原町の干がた地帯が現在埋め立ての計画等のために今後どうなるかということが、単に野鳥を守る会の人たちでありますとか一部の人たちだけではなしに、村全体の、あるいは地域全体の大きな問題になろうといたしております。  そこで、きょうは運輸省のほうにもお越しをいただいておりますので、お伺いしたいと思うわけでありますが、愛知県の三河湾臨海工業地帯の埋め立て造成計画、これはもうすでにかなり進んでいるところもあろうかと思いますが、現在どのようになっているかということを、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  270. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  御指摘の地点は、私ども港湾のサイドで申しますと、三河港に当たるわけでございますが、三河港の港湾計画につきましては、これは重要港湾で、ございまして、昭和三十九年の五月に、重要港湾としての港湾計画が策定されまして、港湾審議会  の審議を経て認められたものがございます。その後、四十五年の五月に全面改定がございまして、現在のところ、四十五年五月に改定された五十五年を目標年次としました港湾計画のもとに三河港  の港湾整備が進められている状況でございます。  それで、御指摘の埋め立て計画と申しますのも、その港湾計画の一環をなすものでございますが、実は三十九年の五月に計画決定された以後、三十九年の七月に工業整備特別地域の指定等もございまして、そういうことで現在進められておるわけでございます。それでその後、四十八年の十二月に、計画の一部変更がなされてございますが、大筋と申しまして流通拠点港湾及び工業開発港湾という形で三河港の整備が進められているという状況にございます。それで野鳥の渡来地という問題がございまして、四十八年に港湾管理者でありますところの愛知県のほうに、環境庁のほうから汐川河口の鳥獣保護区設定についての検討要請が出たと承知いたしております。それで現在のところ、埋め立ての進捗状況は、すでに埋め立て免許の済んでおりますのが約二千ヘクタール余ございますが、大まかに申しまして、その進捗状況は約五割というふうに御理解いただければと思っています。  それで御指摘の汐川の辺につきましては、汐川の河口の辺で一番関係がございますのが杉山地区と、それから田原三区と思いますが、実はただいま申し上げましたような野鳥の渡来というようなこともございまして、現在港湾管理者におきましては港湾計画の見直し作業をやっているというふうに承知いたしている次第でございます。
  271. 坂口力

    ○坂口委員 いま御説明いただいたように、二千ヘクタールがすでに埋め立てられている。私のほうもいろいろの書類を見せていただきますと、東三河臨海工業地帯の全体計画では、四千十八ヘクタールでございますか、これが一応計画になっておる。その中で、二千ヘクタールがすでに埋め立てられておるということを見ますと、いまおっしゃったように、半分がすでに済んでおるわけでございます。  それで、いま御指摘いただきました田原第三区、それから杉山地区、この二カ所は、面積にいたしますと、大体二百ヘクタールであると聞いております。この二百ヘクタールの埋め立て計画がさらにあるわけでありますが、私も先日、この地域を訪れまして、実情を見せていただきました。この二百ヘクタールは、全体からいたしますと、パーセントでいけば五%ぐらいの地域に当たるわけでございます。この二百ヘクタールをどうしても埋め立てなければ、所期の目的が達せられないというような地域ではないというふうに私感じるわけであります。先ほど環境庁のほうからもいろいろ御報告がありましたように、次々と野鳥が生息する土地がなくなっている。特にそういうふうな中にあって、国際的にも幾つかの国との協約が結ばれる。そういうふうな一方において埋め立てがどんどん進められて、日本の国の中では、野鳥が生息する場所がなくなっている。まことに相反したことが国内外を通じて行なわれておるわけです。  われわれとしましては、こういうふうな、日本の中でも特にすぐれた野鳥の生息地というものは、どうしても残していかなければならないと思うわけであります。そういう意味で、再検討されているというお話でございますが、一部地元の報じるところによりますと、この二百ヘクタールをもう一度見直して、そうしてその中で五十ヘクタールだけ三日月状に残そうじゃないか、そうしてそのほかは埋め立てあるいは道路等に使おうじゃないかというような、見直したあとと申しますか、見直しというのが、そういうふうな見直し方である。考え方によっては、義理だてにわずかだけ残しておこうというような計画があるということを聞いておりますが、その点はいかがですか。
  272. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答えいたします。  お答えに先立ちまして、数字的な点で誤解を生じますといけませんので、補足させていただきたいと思います。  三河港の計画といたしましては、約四千ヘクタールの埋め立ての計画がございますが、私先ほど約二千ヘクタールと申し上げましたのは、そのうち公有水面埋立法に基づく埋め立て免許をすでにとっている地区が約二千ヘクタールでございます。そのうちの、すでに工事が進んでいる部分、工事の進捗状況がさらにその半分ということでございますので、訂正させていただきたいと思います。  それで、先生指摘の、計画の見直しの点でございますが、田原三区につきましては、実は埋め立て免許済みの区域でございます。それで、ここにつきましては、埋め立て免許がなされて、護岸の工事のために床掘り工事が進んだわけでございますが、野鳥の問題があるということで直ちに工事をストップして、現在中止した状態になっております。それから杉山地区につきましては、現在のところ、まだ埋め立ての免許の出願も出ておりません。それで、こういう段階で、港湾管理者でありますところの県といたしましては、計画の見直しということをやっているというふうに承知いたしておるわけでございます。  それで、港湾法のたてまえといたしまして、港湾計画は、港湾管理者が立てるものでございますが、港湾管理者は、どこまでもその地域の方々の、いろいろな意味合いでのレベルアップのために役に立つような計画を立て、それでまあ、開発行為といいますか、建設工事を進めるということになりますので、その観点に立ちますと、やはり地域の方々のコンセンサスが得られた計画でなければ、港湾管理者の計画とはなりがたいものでございます。それで、昨年改定されました港湾法に基づきましても、その辺の事情が規定されてございますし、いま一つ、公有水面埋立法がやはり昨年改正されたわけでございますが、この公有水面埋立法におきましても、免許基準が明確に規定されておりまして、その中に、環境保全に十分配慮していない埋立てについては免許できないということになっております。それで、やはりこの杉山地区の埋め立てが出願されるというような段階になりましても、かりにそういうことが、いろいろ計画の調整がなされたといたしましても、そこいらの点につきましては十分に検討が加えられるものと考えている次第でございます。  すなわち、計画の段階で地域のコンセンサスが得られなければならないということ、それから、さらに埋め立ての免許という段階で、もう一つチェックがなされるというようなことになる次第でございますので、私どもといたしましては、こういう問題のあるところにつきましては、港湾管理者から、もし計画が出てまいりました際には、これは当然のことながら、重要港湾でございますので、港湾審議会にかかることになります。その過程で十分関係各省のほうとも御相談申し上げる所存でございます。
  273. 坂口力

    ○坂口委員 いまお聞きいたしましたところによりますと、田原第三区のほうは、すでに許可済みということでございますね。杉山地区のほうはまだ許可がおりていない。杉山地区のほうは、だから今後の問題として、地元の要望を聞き入れていける段階にあるが、すでに許可の出ている田原三区については、一部護岸工事等が行なわれているというような御発言であったかと思います。  お聞きしたいのは、この田原第三区の、もうすでに許可になっているところ、ここについて、見直しと申しますか、計画の見直しというのは、これは地元ではやっているということを先ほどお答えになりましたし、私どももそのように聞いておりますが、これは完全にここを見直すと申しますか、埋め立てを中止をするという段階には至っていないのですか。もしいないとすれば、これをどうしても中止をするという方向が運輸省のほうにおありになるか、あわせてお聞きをしたい。
  274. 大久保喜市

    ○大久保説明員 田原三区につきましては、法律的に申しますと、適法に免許されたものでございますので、これについて国が一方的に免許の内容を変更するということはできませんが、しかし現在の段階におきましては、港湾管理者でありますところの愛知県当局が、環境問題を考えて、計画の見直し作業をやっているというふうに承知いたしております。したがいまして、私どもといたしますれば、県の当局が自発的にこの埋め立て計画の変更ということを、いずれなさるものではないかというふうに考えておる次第でございます。  それでその際には、これは港湾計画の変更でもございますので、そういう意味合いにおきましては、先ほど申しましたような港湾の計画の変更ということ自体も、地域の方々のコンセンサスということがございますので、これは現在中止しているということは、港湾管理者としても、これを変更するという意思が十分あるものと私どもは理解している次第でございます。
  275. 坂口力

    ○坂口委員 県当局の見直し作業が続いているというふうに私どもも理解しておりますが、今後県当局からこの地域について見直しをしたい、どうであろうかという相談があれば、皆さん方としては、そのようにしてはという皆さん方の意見が述べられますかどうか、その点をお伺いいたしたい。
  276. 大久保喜市

    ○大久保説明員 埋立法の手続といたしましては、これはもう当然のことながら、環境の問題というものを非常に重視することに改正埋立法ではなっております。そういう点からいたしまして、私どもといたしましては、やはり計画の変更ということが出てまいりました際、港湾法上でのチェックということがございますし、それから埋め立ての免許の内容の変更ということになりますれば、それは埋立法によってのチェックがなされるわけでございます。  そういう点からいたしまして、先ほど環境庁のほうからお答えがありましたように、非常に貴重な空間であるということからいたしまして、私どもといたしましては、その辺をどのように配慮したかということは、よく事情を聴取いたしまして、それで、関係の方々がどういうふうにこれを理解しているかということも伺って判断いたす所存でございます。
  277. 坂口力

    ○坂口委員 環境庁のほうに再びお聞きをしたいと思いますが、この汐川の河口部の埋め立て中止に対する陳情が環境庁長官に地元から出されていると思います。私の手元にもその写しがございますが、四十九年の二月に出ているはずでございます。環境庁長官に対しまして、こういうふうな埋め立て中止に対する陳情書が地元から出されているわけでございますが、この点について、どのように対処されたか、そしてその埋め立て中止の行政指導をどのように行なわれているか、その点ひとつお伺いをしたいと思います。
  278. 江間時彦

    ○江間政府委員 非常に数多くの方からこの汐川の河口の埋め立てを中止してほしいという陳情をいただいております。それに対しまして、環境庁長官は、繰り返し、こういう場所というのは非常に貴重なものであって、できるだけ埋め立てないように努力したいということは、お約束になっております。われわれといたしましても、数回、県当局の人を招致いたしまして、そして具体的な話し合いをいたしております。現段階におきましては、先ほど運輸省のほうからお答えになりましたように、第三区の埋め立てにつきましては、すでに免許はおりているけれども、この工事を当面ストップして協議を重ねる。杉山地区のことにつきましては、これはまだ免許の申請の段階にもきていないわけでございますから、当然論議をする必要はないわけでございます。  いずれにせよ、第三区の問題を含めまして、事実上、県当局がストップなさって、そしてこの問題を再検討なさるというところまではきておりまして、われわれも県の良識に期待いたしまして、県当局が再検討なさるその状況を待っておる段階でございます。
  279. 坂口力

    ○坂口委員 先ほども少し触れましたけれども、二百ヘクタールの中で五十ヘクタールぐらいを残して、あとは埋め立てまたは道路等に使用していこうというような一部変更案というものが地元にあるということを私ども聞いているわけであります。こういうふうな、わずかに五十ヘクタールぐらいの面積が残されただけでは、自然の摂理に従って微妙なバランスをとっております干がたというものを保存することにはならないと思いますし、このわずかな面積だけしか残さないというこの破壊では、これは渡り鳥を生息地としてここに迎え入れることはできないというふうに私ども考えているわけであります。  この点、そういうふうな計画があるというようなことは環境庁のほうには来ておりますかどうか、それから運輸省のほうにもそういう計画が届いているかどうか、これをひとつお答えいただきたい。
  280. 江間時彦

    ○江間政府委員 まだ私のほうは、具体的に五十ヘクタールぐらい残そうとか、そういう具体的なものは全く参っておりませんで、県当局のほうといたしましては再検討いたしましょうという別れになっておりまして、具体的なものは承知いたしておりませんが、われわれといたしましては、第三区、杉山地区をほとんどそっくり残したいという形で議論はいたしております。
  281. 大久保喜市

    ○大久保説明員 現在、県において検討中の計画の内容につきましては、現在の段階では、まだ承知いたしておりません。
  282. 坂口力

    ○坂口委員 環境庁のほう、その田原地区の問題はいかがでございますか。すでに、これは運輸省からもお話がございましたとおり、埋め立ての許可というものは一応出ているわけでございますが、これに対して環境庁としては、どういう態度で臨まれるかということです。
  283. 江間時彦

    ○江間政府委員 先生がいま田原地区とおっしゃったのは、田原三区のことだというふうに理解いたしますが、田原三区につきましては、当面県が再検討するということを言っていらっしゃいますし、われわれのほうもその点で県の良識に期待いたしまして、様子を見ておるということでございます。
  284. 坂口力

    ○坂口委員 この干がたは、単に野鳥の生息地としてだけではなしに、バクテリアからいろいろの微小動物に至る一連の生態系によって海水浄化という機能を持っているわけでございますし、何よりもこれは人のいこいの場としても非常に重要なものではないか。自然浄化の場として、また野鳥のいこいの場としてだけではなしに、人間のためにも非常に重要な場所ではないかというふうに思うわけです。現在の土木建築技術をもってすれば、この干がたを埋め立てるということは、たやすいことだというふうに思います。しかし、現在の進んだ土木建築技術をもってしても、人工的に干がたをつくるということは非常にむずかしい。すでに東京湾でも一度行なわれたことがありましたが、一応失敗に終わったように私どもは聞いております。  そういう面から、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、諸外国との間の渡り鳥条約等も結ばれております今日、どうしても特に日本の中で優秀なこういうふうな場所というのはぜひ残していただくように、各省庁が連絡を密にしていただいて、ひとつ行政指導を強化していただきたいと思うわけです。野鳥の生息地を守るということは、結局は人間の生活を守るということでございましょうし、野鳥の住めないところ、これはもうおそらく人間の居住ということも不可能にする第一歩になるであろうと思うわけです。港湾の整備といういわゆる地域社会の大きな問題もあろうかと思いますが、しかし、その中でどうしても自然を保護するということが調和をして行なわれないことには、地域開発ということはあり得ないわけであります。いままでの計画からいたしますと、すでにもう田原三区のほうは許可済みになっておるというようなお話でございますけれども、全体から、そしてまた時の流れに従って、あるいはまた伊勢湾全体に及ぼしております公害の全体の状態からながめて、すでに許可になったところでも、やはり残すべきところは残す、いまからでもおそくはないというような立場で、運輸省のほうもひとつ積極的な態度をお示しをいただきたいと思うわけであります。  最後に、環境庁の政務次官に御所見を伺って終わりにしたいと思いますが、最初から簡単に申し上げますと、愛知県の三河湾田原町の汐川という大きな干がたがございまして、この地域は、環境庁でもお調べになりました、非常に重要な干がたの十カ所の一つに入っておりまして、特に山口県とこの愛知県の二カ所が特別その中でも非常にすぐれた干がたとして、特に野鳥の生息地として非常にすぐれているという結果を出されているわけであります。その一部が、先ほどからお聞きいただいておりますように、すでに埋め立ての免許の許可がおりている、こういうふうなことになっております。いま問題になっております田原三区という地域と、それから杉山地区というのは、全体の埋め立て計画からいたしますと約五%前後でございますので、この地域をどうしても野鳥の生息地として守ってほしいという地元からの強い要望も出ているわけであります。そういったことを先ほどから議論を重ねさせていただいたわけであります。ひとつ御決意を賜わって、最後にしたいと思います。
  285. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 御指摘の当該干がたにつきましては、わが国でも有数の貴重な干がたと考えております。この干がたの保存につきましては、環境庁考え方といたしまして、三木長官から本委員会におきましても御答弁申し上げておるとおりでございまして、この干がたの保存がはかれますよう、関係各省及び県当局と協議をいたしまして、積極的に指導をしてまいりたいと考えております。
  286. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。
  287. 角屋堅次郎

  288. 折小野良一

    ○折小野委員 東北の仙台市でございますが、仙台市の東のほう、塩釜に通ずる国道、通常仙塩街道といっておりますが、この国道四十五号線に沿いまして、その途中に苦竹地区といわれております工業地域がございます。この工業地域は中小企業、主として加工業を中心にいたしました雑多な工場が立っております工場団地でございますが、この地域におきまして地盤沈下が発生をいたしました。今日相当多くの被害が、しかも相当広範囲にわたって発生をしておるということでございます。この点につきましては、先般環境庁におきましても係官を現地に派遣をされて調査されたはずでございますが、その概況について、特に現在の沈下の程度、それからその地盤沈下が広がっております広さと申しますか範囲、それから被害を受けております工場、事業場、こういうものがどの程度の数にわたっておるか、こういう点について概要の報告をまずお願いをいたしたいと思います。
  289. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘の仙台市の苦竹地区におきましては、四十六年ごろから地盤沈下によると考えられます建物のひび割れ等の被害が発生し始めまして、昨年の暮れごろから、特に沈下の程度は激化したというふうに調査報告を受けております。  沈下量の累計でございますけれども、最大で三十センチ、数十センチメートル程度、それから沈下の地域は数平方キロメートルの範囲内であるというふうに考えられますけれども、詳細は、今後県なり仙台市等が行ないます測量調査等の結果によって、さらに明確にいたしたいというふうに考えております。  それから、沈下の地域内にあります工場は五、六百社と、こういうふうに非常に多うございまして、それぞれ多少の被害を受けているようでございますけれども、そのうちの数十社につきましては、建物なり地下の埋設管等がこわれたりという比較的非常に顕著な被害が出ておるようでございます。
  290. 折小野良一

    ○折小野委員 いま環境庁で一応調査されました結果の御報告でございますが、細部にわたりましては、今後さらに十分御調査をいただかなければならないと思います。一応の御調査の結果によりまして、この地盤沈下が公害対策基本法に規定をいたしております、いわゆる公害としての地盤沈下、すなわち、この地盤沈下は当然公害対策基本法でいっております公害である、こういうふうに環境庁としてお認めになりますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  291. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいままで調査した限りでは、御指摘のとおり、公害によるもの、こう考えざるを得ないと思います。
  292. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの御報告にもございましたように、現在すでに相当程度の地盤沈下が出ておるわけでございますが、これはなお現在においても進行中であるというふうに私どもは了解をいたしております。  この地盤沈下の態様を概要考えてみますと、その一つは、あとで申し上げますが、この地域が特殊な地域である、こういうようなことのために、ここ数年間にわたりまして徐々に沈下を始めてきた、そういう形における地盤沈下というものが一つ。それから、昨年の暮れ以来、急激な沈下をいたした、これがもう一つの態様としてある。その二つが重なったものが現在の地盤沈下の状況である、こういうふうにいっていいのじゃなかろうか、こういうふうに考えますが、現在の地盤沈下の態様をそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  293. 森整治

    ○森(整)政府委員 先ほど私申し上げましたとおりに、確かに御指摘のように徐々に沈下をしながら、昨年の暮れに著しい沈下があったということでございます。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  294. 折小野良一

    ○折小野委員 こういうような地盤沈下が起こってきた原因と申しますか、そういう点について、私どもしろうとなりにいろいろと考えてみますと、そしてまた現地について関係者のいろいろな意見を聞いてみますと、大体この地帯は、いわゆる泥炭地帯であるということが最も根本的な条件としてあるわけでございます。あの地域に昔からの字名があちこちにあるのです。たとえば大野地とか、あるいは東野地とか何々野地というような字名がたくさんございます。野地というのは泥炭地帯、そして湿地帯、こういうようなところを通常いっておるわけでございまして、昔からそういうような状態の土地であった。そしてまた、かつてはその地盤の一部をれんが状に切って、そしてそれをかわかして燃料に使った、こういうようなことも昔はあったようでございます。  いずれにいたしましても、そのような地帯でございますので、これはいわば水を含んだスポンジのような状態の地盤である。こういうところが、今日この地域に地盤沈下を起こしておる一番根本的な理由じゃなかろうか。そのことのために、私がただいま申し上げました地盤沈下の第一の態様というものが出てきておる。だんだん沈下を始めてきておるということです。それからまた、そういうような地盤の態様であるがために、実は昨年この地域において建設省が直轄でバイパス工事をやられた。そしてまた、その工事とあわせて市のほうで下水道の工事を行なった。この工事のやり方もございましょうし、その工事の際に、多くの地下水をくみ上げた、こういうようなことがありまして、これが第二の態様の、最近の急激な地盤沈下の原因になったのじゃなかろうか、こういうふうに判断をされます。  また現地の多くの人々は、ほぼそのような見解に一致いたしておるということでございますが、環境庁といたしまして、とりあえずの御調査の結果として、どういうふうにお考えになっておりますか。
  295. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、泥炭層のその下に砂れき層がございまして、そういう非常に軟弱な地盤からなっておるようでございます。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、工業用の地下水を採取をした結果、地盤が沈下したということが一応考えられますけれども、最近行なわれました土木工事影響考えられるわけでございまして、その点はさらに詳しい調査が必要であるという報告を受けております。現在仙台市が行なっております原因調査につきまして、われわれとしましても、早く適切な指導をいたしまして、早急に原因を究明するということで鋭意努力をしておるところでございます。
  296. 折小野良一

    ○折小野委員 もちろん、ただいま申し上げましたのは、私どもがしろうとの立場で見ての考え方、あるいはこれを今日まで見ておるその地域の人たちの多くの考え方、いわばしろうとの考え方でございます。したがって、その原因につきましては、十分慎重な調査、あるいは検討がなされることが必要であることはもちろんでございまして、現地におきましても、市で公害対策審議会の中に、このような問題に関する専門家に入ってもらって、そしてそういうような方々による専門的な調査あるいは原因究明をやりたい、こういうような考えもあるようでございますし、また地元の県におきましても、地盤沈下対策委員会というようなものをつくりまして、具体的な調査をやって、その調査に基づいた対策を講じようというふうにいたしております。もちろん、こういうような原因の究明等、これはきわめて必要なことでございますし、また現地において十分な能力がない、そういうような面につきましては、これは環境庁中心といたしまして、その面の協力その他、大いにやっていただかなければならないわけでございます。  現在の事態におきましては、それは一応おくといたしまして、このような地盤沈下によって、今日非常に多くの被害がすでにあらわれておるわけでございます。そのために、関係者は非常に困っておるというのが現状でございますが、御調査になった被害の概要、こういう面についてはどういうふうに把握しておいでになりますか。
  297. 森整治

    ○森(整)政府委員 先ほど申しましたように、建物あるいは埋設管等につきまして、いろいろ被害が出ておるようでございまして、地盤沈下によりまして被害を受けた企業約八十社がいろいろ組織をつくりまして、仙台市等に調査実施なり沈下の防止、被害の救済、そういうものについての要求が出ておるというふうに承知をいたしております。  ただ、いずれにいたしましても、原因の究明をいたしませんと、いろいろなことが考えられるわけでございます。また対策につきましても、それに基づきまして、いろいろな対策を講じなければいけないというふうに考えておりますので、ともかく調査を急ぐということで処置をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  298. 折小野良一

    ○折小野委員 いまの御答弁の中で、原因調査をいたしませんと、いろいろなことが考えられる、そのいろいろなことというのは、どういうことでしょうか。
  299. 森整治

    ○森(整)政府委員 あまり具体的に例をあげますとあれですが、相当多量な地下水を使っておる、それが上水道で間に合うではないかというようなこともいえるのではないか。いずれにせよ、本来地下水にたよらない水源で処置をいたしませんと、企業側としましても、また多量に使っている、具体的に申しますと、自衛隊も使っておるというふうに聞いておりますが、それらにつきまして、そういう措置を講じながら、ともかく緊急的にでも沈下をとどめていく。先ほど先生指摘にございましたように、やはり数センチの沈下はやむを得ないのではないかというふうに報告を受けております。  ですから、ともかく沈下を早くとめる、それには皆さんの協力を得なければいけない、そういう意味で、どこがおもな原因であるかということをやりまして、そういうような対策の手を打っていくということが、私ども必要なんじゃないだろうか、こういうふうに心配をしておるわけでございます。
  300. 折小野良一

    ○折小野委員 現にいろいろな被害が出ておるわけでございます。したがって、これに対していろいろな手を打っていかなければならない。そしてまた今後もさらに被害が広がろうといたしておるわけでございます。したがって、そういう際でございますので、いろいろなことが考えられるということにつきましても、はっきり具体的にそれをつかんで、そうして検討していくことが必要なことじゃないかと思います。私どもも、地下水のくみ上げが現実にあるというのは承知をいたしておりますし、何も地元がそれを隠そうとしているわけでもないと考えております。こういうものも当然対策を講じていかなければならない。こういう面については後ほどまた触れたいというふうに考えるわけでございますが、こういうような問題の処理につきましては、一つ一つはっきりとつかんで、はっきりとそれに対する原因を究明して、はっきりとした対策を講じていくということが一番必要なことじゃなかろうかと思います。  そういう中におきまして、私どもが概要見たところによりましても、建物その他構築物、これの被害がある、これは当然なことだと思います。先ほど数十センチというふうにおっしゃいましたが、地元のいっておるところでは、ひどいところでは五、六十センチも沈下をしておる。もちろん、それは程度がいろいろございまして、それほどになっていないところもいろいろございます。  しかし、いずれにいたしましても、建物その他の構築物の被害というものが第一出てきておる。それから水道管であるとか、ガス管であるとか、あるいは電気、こういう地下埋設物、こういう面の被害というのは、今日までもう数多くの発生をいたしておるわけであります。それから、全体的な地盤沈下でございますので、床が落ちる。したがって、床に傾斜がつく、こういうようなことから、ひいては作業ができない。作業に多くの支障を来たす、あるいは現在できておりますいろいろな施設がその機能を果たさなくなってくる、あるいはいろいろな危険が予想される、こういうような事態がいろいろ出てまいっております。  さらに、現在は特別目に見えませんが、あれだけ沈下してまいりますと、来たるべき雨季にははたしてどうなるだろうかということが当然考えられるわけでございます。昨年の雨季におきましても、相当の水があそこにたまって、仕事の面で非常に支障を来たした、こういうことがございます。それからさらに、去年の暮れからことしにかけての急激な沈下があったわけでございまして、現在見ましても、工場敷地等の排水が道路の側溝に乗らない、こういうような状態になってまいっておりますので、今度の雨季には、おそらく相当な水たまりができて、それがはけなくて、そして建物その他に対する被害もございましょうが、第一に、何日も仕事ができない、こういうような事態が予想されるわけでございます。  そして、地元からの報告の概要等によりましても、これに対しまして今日までいろいろな補修その他をやってきた。いままた直ちにやらなければならない、そういう仕事もある。そういうものを大体概算いたしますと、二億数千万円にも及ぼうかというような実態でございます。こういう面につきましては、いまなお沈下が進んでおるとかいうようなこともございますので、これで限られたというわけではございませんでしょうが、いずれにいたしましても、非常に大きな損害が出ております。そのために、すでに私が見た段階において一つの工場が閉鎖をいたしました。その仕事を続けるということは非常に危険があるということで、どうしても続けられない、こういうことで閉鎖をいたしておるわけでございます。今後さらに多くの企業におきまして、そういうような問題が出てくるということが予想されるわけでございます。こういう点につきましては、ひとつ十分御調査になって、そうして現在の実態というものを、まず第一に把握をしていただきたい、かように考えます。  ところで、そういうような地盤沈下が起こってきて、先般、市のほうからいろいろ話があって、環境庁は現地に係官を派遣されて調査された。それで初めて御承知になったということでございますが、関係の省庁いろいろあるわけでございまして、本日もここにおいでいただいておるわけでございますが、今日までこういうような状態になっておりながら、何ら施策が講じられていない、放置されておったというのが現在までの実態じゃなかろうかというふうに考えております。  まず、その一つといたしまして、現在地盤沈下が起こっております現地に通産省関係の工業試験所がございます。その工業試験所は現在地盤沈下が起こっております区域の周辺地区にあるわけでございますが、すでに、地盤沈下が起こって、補修その他のために本省に対して予算の要求がなされておるということでございます。これはどういうような被害が起こってどの程度の予算によって補修工事をやろうとしておられるのか、その点を通産省からお尋ねいたしたいと思います。
  301. 柴田益男

    ○柴田説明員 御説明申し上げます。  先生指摘の地域にかかる仙台工業試験所及びその周辺に地盤沈下があるという概略の報告は聞いておりますけれども、そのために仙台工業試験所がどの程度の予算をもって補修をしたか、そういうこまかい内容については、われわれ事情を承知しておりません。
  302. 折小野良一

    ○折小野委員 この地域は工業地域、中小企業の団地なんでございます。通産省といたしましては、中小企業指導というような面からも当然相当関心を持たれてしかるべきじゃなかろうかと思うのでございますが、通産省関係機関が現地にあって、そして国に対しまして補修のための予算を要求する。ところが、その周辺のよりひどい、民間の地盤沈下が起こっておる地域に対しましては何らの手も打たれていない。こういうようなことから、地元の住民といたしましても、国に対してと申しますか行政に対して、非常に不信感を拘いておる、こういうようなこともございます。  それから、仙台には建設省の出先の国土地理院がございまして、かねていろいろと調査をしておいでになるわけでございますし、現在も現地におきましては県、市といろいろと連絡をとりまして、地盤の水準測量その他努力をしておいでになるようでございます。しかし、それをやっていくためには予算が足りないということもございまして、本省のほうにそれに対する予算の配分を要求しておる、それが来なければなかなか仕事も進まない、こういうようなことだそうでございますが、建設省におきましては、この予算配分についてどういうふうにお考えになっておりますか。また、そういうようなことに関連をいたしまして、あの地域に地盤沈下が起こっておるという点について、どの程度関心をお持ちになりましたか、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  303. 鈴木弘道

    ○鈴木説明員 御説明申し上げます。  国土地理院は、全国の水準測量を実施いたしまして、全国的な地盤変動を調査しておるわけでございます。特に地盤沈下地域につきましては幹線の水準測量を実施いたしまして、地方公共機関等が行ないます細部の調査測量の基準になる資料を与えますとともに、その結果の取りまとめ等について指導を行なっておるわけでございます。  昭和四十九年度におきましては、水準測量に要する総経費は約一億三千六百万円でございまして、特に地盤沈下調査に要する経費は、国土地理院の経費で四千九十八万九千円、河川事業経費で一千八十一万円で、これによりまして全国で十九地区、千九百七十キロの精密水準測量を行ないますとともに、地盤図等作製のための簡易水準測量と、その資料収集を行なう計画でございます。  御指摘の地区につきましては、国土地理院としまして、幹線の一等水準測量を本年の九月に実施する計画でございます。また、地盤公図作製のための簡易水準測量も実施する予定でございます。この同じ時期に県、それから関係市町村におきまして、細部の調査測量を実施する予定でございます。
  304. 折小野良一

    ○折小野委員 端的にお伺いいたします。  あの地域の地盤沈下対策と申しますか、それの基礎調査になりますあの地域に関係をいたします測量関係の経費、これに対して、現地から予算配当の要求があっておりますが、それは配当をされますか、どうですか。
  305. 鈴木弘道

    ○鈴木説明員 先ほどの御説明いたしました、ことしやりますという計画によって、配当されるわけでございます。
  306. 折小野良一

    ○折小野委員 それから、さっきもちょっと申し上げましたが、建設省の関係で、ちょうど現地のまん中にバイパスの工事を行なわれて、そのバイパスの工事の時期に急激な地盤沈下が発生をしたということでございますので、そういう関係で、地盤沈下の問題について、少なくとも現地におきましては、建設省として無関心でおいでになるはずはないというふうに考えるわけでございますが、建設本省といたしまして、そういうような事態、そしてまた、この工事に伴います地盤沈下との関係その他について、どのような対処のしかたを今日までなされましたか、お伺いいたします。
  307. 久保赳

    久保説明員 先生指摘のように、この地域において建設省が実施をいたしました事業が二つございます。  その一つは、道路の工事でございますが、国道四号、仙台バイパスの建設工事でございますが、これにつきましては昭和三十四年から工事を開始しまして、四十四年には一応終了いたしておりまして、全線の供用開始をもうすでに実施をしておりますが、その後拡幅工事、それから先生の御指摘にございましたように、インターチェンジの改良工事実施しているところでございます。  ちょうど国道四号線と交差する苦竹インターチェンジの付近は、御指摘のようにきわめて地盤の悪いところでございますので、道路工事を施工する上からも軟弱地盤対策としての工法を適用をしておりますが、御承知かと思いますけれども、たとえばサンドコンパクション工法等を採用いたしまして、その付近の地下水のくみ上げ量はきわめて少ない、こういう工法をとって実施をしておるわけでございます。したがいまして、道路工事につきましては、広い地域の中の、あるインターチェンジ地域という一つのポイントの工事でもございますし、全体の地盤沈下のうちのきわめて小部分に限られるというふうな感じで考えておるところでございます。  それから、なお、もう一つの下水道工事のほうは、これはちょうど昭和四十八年の六月から四十九年度の三月まで実施をしたわけでございまして、仙台のバイパス内に延長千八百メートルにわたって実施をいたしました。工事の過程で、それぞれの立て坑から水をくみ上げて、一番ピーク時には二千トンほどの水をくみ上げておるわけでございます。  工事の必要上から、そういう工法をとらざるを得なかったわけでございますが、その結果、その道路工事実施した地域に若干の地盤沈下の原因になったのではなかろうかというふうに推定をいたしておりますが、それもこの地域の全域から比べますと、一つの線の沈下に影響を与えているのではないかというふうに想定をいたしております。しかし現実に、かなり広範囲あるいは下水道工事実施した地域の地盤沈下等がございますので、現在、仙台市から東北大学に、地盤沈下と建設工事による地下水くみ上げの因果関係調査中でございますので、その調査の結果を待ちまして、沈下によるいろいろな被害対策、あるいは一部補償というような問題も中に入ってくると思いますけれども、それを考えてまいりたいというふうに考えております。
  308. 折小野良一

    ○折小野委員 この地域につきましては、実情は先ほど来申し上げましたような状況でございますが、まず何といいましても、そういうような地域を都市計画上工業地域として指定をされた、そしてそこに事実上現在ありますような中小工場を誘致をされた、そういうようなところに根本の原因があるようでございます。そしてまた、いまお話ございましたような最近の工事のいろいろな影響というものもあるであろう、こういうことが予想されるわけでございますが、そういう点を見てまいりますと、結局今日のこの地盤沈下の責任と申しますか、原因をつくった責任というのは、どこにあるかといいますと、これは政府なり、県なり、市なり、いわば行政の責任じゃなかろうか、こういうふうに考えられるわけでございます。それ以外にちょっと考えようがないわけでございまして、当然こうなることが予想された、そういうような条件が一ぱいであったところに、工場誘致をしてきた、そしてまたいろいろな指導を進めてきた、そしてまたその間に特別な何らの対策も講じてこなかった、こういうような点が一番の原因であるように考えられます。  もちろん、具体的な問題、あるいは技術的ないろいろな調査というのは、今後専門的に行なわれるでございましょうが、しかし、一応そういうようなことが考えられ、しかも現在、先ほど申し上げたようないろいろな被害が現実に起こっておるということになってまいりますと、もちろん根本的な原因の究明、非常に大切なことでございますが、それを進めながら、同時にそれを待ってということでなしに、いま直ちにいろいろな対策を必要とする、こういうような状況にあろうかというふうに考えます。  そういうような大体の状況でございますので、環境庁政務次官、これに対する政務次官としてのお考えですか、それをここでちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  309. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 地盤沈下の防止をはかるためには、現行の法制は必ずしも十分ではないと思います。たとえば、現在工業用水につきましては工業用水法により、また冷暖房用等のビル用水につきましては、建築物用地下水の採取の規制に関する法律によりまして、それぞれ地下水の採取規制を行なっているわけでございますけれども、上水道用水であるとか、農業用水などにつきましては、規制の対象になっていないわけでございまして、そのような意味におきまして、現行法制は必ずしも地盤沈下の防止をはかるためには十分でないと思うわけでございます。  したがって、規制対象の拡大であるとか、規制方法の合理化であるとか、地盤沈下の未然防止の徹底など、総合的な地盤沈下防止対策のあり方につきまして、現在環境庁といたしましては、中央公害対策審議会の地盤沈下部会を中心検討を進めているところでございます。その結果をまちまして、早急に地盤沈下防止に関する法体系の整備をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
  310. 折小野良一

    ○折小野委員 時間がございませんので……。政務次官も現地を御存じないからと思います。いまおっしゃるような総合的な立場からの根本的な対策を講じていく、そしてまた、先ほどお話しのような根本的な原因の究明をはかっていく、これは非常に大切なことでございます。それはぜひやっていただかなければなりませんが、当面なさなければならない措置というものを必要といたしておるわけでございます。  と申しますのは、先ほど来申し上げましたように、それぞれの企業、これは非常に小さな企業でございます。したがって、こういうような状態に、なってまいりますと、結局、現在の地盤沈下というものが企業の運命につながっておるということでございます。先ほどもちょっと申し上げましたように、もうすでに廃業をした企業もある、廃業をした工場もあるという状態でございます。そしてまた、そういうことになってまいりますと、これらの企業に働いております、数百と申しますか、数千と申しますか、そういうような人たちの生活がこれにかかってきておるということでございます。それから、さらに、企業によりましては、いろいろな危険が予測をされる、こういうような状況にあるわけでございます。  そういうような状況の中でございますので、時間もございません、具体的な対策についてお伺いをいたします。  そういうような状況の中におきまして、一つは税金なんですが、税務署のほうで、そういうような実態を認めていただけないということでございます。そういうような状態にありますので、やれ水道の補修をしなければならない、ガス管の補修をしなければならない、その他いろいろの補修をしなければならない、多くの経費を必要とするわけでございますが、そういうようなものを経費として認めていただけない。こういうものは、ほとんど資産的な投資である、こういうふうに税務署のほうでは認定をされる、こういうことで、まずとりあえず税金が非常に困っているんだがという意見がございます。  私ども常識的に考えまして、こういうような経費は、これはもうそれぞれによって違うのでございますから、実態を十分調査していただいてけっこうなんでございますが、当然これは経費として認められるべきものである、こういうふうに考えるわけでございますが、いかがでございますか。
  311. 久世宗一

    ○久世説明員 お答えいたします。  御指摘のございました件でございますが、資産につきまして、支出しました修理、改良等の費用が、いわゆる資本的支出に該当いたしますか、あるいは修繕費に該当いたしますかは、その支出の実情に応じまして、資産の価値を増加したり、または使用の可能期間を延長するというようなものにつきましては資本的支出と判定しておりますが、単に、現状維持のための補強を含めまして、原状を回復するための支出というふうに認められるものは、修繕費と判定して損金にしております。  御指摘のございましたような事案につきましては、事情事情でございますので、現地の税務署に、その実情を十分調査した上で、無理のない妥当な処理をするように指示をしたいというふうに考えております。
  312. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの問題につきましては、過去の現地の税務署の扱いにつきましても、再調査の上で、もしそのような措置がなされておりましたならば妥当な措置をする、それによって、場合によっては手続を経て還付することもある、そして将来につきましては、そのような実態に即した妥当な課税をする、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  313. 久世宗一

    ○久世説明員 お答えいたします。  過去の事案で、資本的支出というふうに会社経理で処理しておられまして、それに基づいて申告をお出しになったものを、いま資本的支出でない、修繕費だということで直すというのは、手続的に非常にむずかしいと思いますが、ただ、明らかに間違いであったというようなものにつきましては、実情を調査した上で、あるいは御指摘のようなことがあり得るかもしれませんが、一般的に申し上げまして、こういった修繕費か資本的支出かというのは、実情と申しますか、各会社の経理を尊重しておりますので、それをこちら側で一方的に過去にさかのぼって修繕費だというふうに修正するのは非常にむずかしいとは思いますが、よく実情を調査するように指示いたします。
  314. 折小野良一

    ○折小野委員 ひとつ現状とあわせて十分な御調査をいただきまして、妥当な処理をぜひお願いをいたしたい。それについて、ひとつ現地に御連絡をお願いをいたしたいと思います。  それから次には、さきに政務次官のお話もございました。現在、地盤沈下対策制度上も整備はされておりませんが、あの地域に該当いたしますものは、工業用水方の地域指定ということであろうかと思います。この点につきまして、環境庁あるいは通産省のほうで、この地域を現在の工業用水法の地域として指定をする、これにはいろいろ手続もございましょうが、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  315. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま仙台市等が行なっております原因調査の結果、工業用の地下水の採取の規制の必要性というものが明確になりますれば、工業用水道の布設の状況等を勘案いたしまして、工業用水法による地域指定を、われわれとしましても積極的に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  316. 折小野良一

    ○折小野委員 現実に地下水のくみ上げが行なわれておるわけでございます。ただし、現在の地盤沈下に、それがどの程度の寄与をいたしておるか、こういう点につきましては、十分な調査が必要であろうかと思いますが、いずれにいたしましても、それもまた一つの対策であるというふうに考えます。したがって、この点については早急に措置をしていただきたいと思います。  そうした場合におきましては、あの周辺に現在工業用水道が通っておるのでございますが、これに余裕があるという立場と余裕がないという立場がございます。いずれにいたしましても、企業を今後進めていく上におきましては、相当程度の節約をするといたしましても、水の対策というものは講じていかなければなりません。したがって、余裕がないということになりますならば、新たに水道を敷くとか、あるいは増設をするとかいろいろな措置が行なわれなければならないと思いますが、こういう面につきましては、通産省のほうでは積極的に御指導になりますかどうですか。
  317. 柴田益男

    ○柴田説明員 御説明申し上げます。現在問題になっております地域の近所には、県営にかかる仙塩工業用水道がそばを通っておりますが、この仙塩工業用水道は、四十八年度の実績でまいりますと、給水能力一日当たり十万トンに対しまして、四十八年度末の実績が八万二千八百六十トンでございますし、四十九年度の給水計画によりますと、九万五千ドンということで、数字の上での余裕は五千トンあるわけでございます。そういうことで、若干の余裕がございますので、地元の県あるいは市から、当該地区に、地下水にかわって工業用水道を布設したいということで意見がまとまってまいりますれば、われわれも積極的にその建設を応援したい、かように考えております。
  318. 折小野良一

    ○折小野委員 次には、先ほど申し上げましたように、現地は中小企業の工業団地でございます。中小企業と申しましても、小企業が大部分である、こういうふうにいっていいかと思いますが、これらの企業といたしましては、企業を継続をしながら、なおかつ、地盤沈下対策というものをいろいろやっていかなければならない、そういうような立場にございまして、結局、金に非常に困っておるということでございますが、中小企業対策あるいは中小企業に対する指導、こういうような立場からいたしまして、必要なできるだけの長期低利の資金をあっせんをする、こういうような点についての通産省のお考え、中小企業庁ですか、お考えをお伺いいたしたいと思います。
  319. 柴田益男

    ○柴田説明員 地下水あるいは工業用水に関連する問題でございますので、工業用水課長として答弁させていただきます。  本件苦竹地区の個別の各企業の被害の状況については、まだよく承知しておりませんけれども、御指摘のように、地盤沈下によりまして設備資金あるいは経営安定化のための資金が必要でありますれば、個別の企業の実態に応じまして、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫あるいはまた商工組合中央金庫、この中小企業三機関におきまして、一般貸し付け案件として融資の御相談には応ぜられるものと、われわれは考えております。
  320. 折小野良一

    ○折小野委員 もちろん個々の企業の実態もございますので、その辺十分御勘案の上に、ひとつそういう面のできるだけの援助をお願いをいたしておきたい、かように考えます。  それから建設省でございますが、先ほどから申し上げておりますように、あの地域を工業地域に指定をしたということもございますし、それからまたバイパス工事影響もあるんじゃなかろうか、こういうような見方もございますが、いずれにいたしましても、根本的な原因調査ということが必要になってこようかと思います。この点につきましては、もちろん地元、市、県におきまして、いろいろとやられるわけでございましょうが、技術的な面その他いろいろな面からいたしまして、やはり建設省が積極的に、そういう面に対して対策を講じていただく、あるいは積極的な協力をやっていただくということは、特に必要なことじゃなかろうかというふうに考えますが、そういう点については建設省、いかがお考えでございますか。
  321. 野呂田芳成

    ○野呂田説明員 お答えいたします。  先ほど来、工業地域としての御指摘がありましたが、ここは実は四十八年に工業専用地域に指定をしてございます。これを指定しましたゆえんのものは、この地域は先ほどお話に出ておりますように、すでに国道四号の仙台バイパスの整備に伴いまして、工場とか流通施設の集積がきわめて進みつつあります。それから、三十三年に通産省の工場適地の指定がなされておりますし、三十九年には新産都市の指定がなされまして、工業団地として計画に入っている。そういうことのほかに、何といいましても、宮城県の悲願でありました仙台港が整備されまして、そのすぐ後背地で、あの地域では非常に広大な平たん地としては、あそこしかないという場所でございますので、私どもとしましては、そういった諸般の事情を考慮いたしまして、四十八年に工業専用地域の指定をしたわけでございます。  ただその際、非常に問題になります大気汚染等の問題につきましては、これを極力排除すべきであるということで工業専用地域の中に、さらに特別工業地区というものを指定いたしまして、これは県条例をつくっていただきまして、あそこに立地する工業は軽工業だけに特定いたしまして、そういった種の公害を防除するようにつとめてまいったわけでございます。  先ほど来御指摘のように、ここはシルト層でございまして、この地域にかかわらず、実はあそこは利府町から多賀城、名取、岩沼と広域にわたる泥炭層地帯でございまして、ここは地盤が悪いということは私どもも承知しておったのでございますが、この地域、地区の指定というものは、蓋然的な立地条件あるいは将来の土地利用の見通しというものを考えてやるものでございますから、現実には海の上でも工業専用地域に指定することがあります。現実に、そこを利用する事業者や、あるいは工場を立地する省庁がその原因を駆除いたしまして、それで現実に利用していただくのがたてまえでございまして、私どもは地域、地区の指定までがその領域であるわけでございますけれども、しかし、現実に先ほど来御指摘のように、いろいろな被害が起こってくるということでございまして、この点につきましては、県のほうでも地盤沈下対策委員会を設けまして、地下水の規制等についても検討を始めているようでございます。  道路の整備、あるいは下水道の整備、所管事業の問題につきまして、いろいろそういったことと因果関係があるとすれば、私どもも極力そういう原因を駆除するように公共団体と十分連絡をとりながら、この問題が解決されるよう前向きにひとつやっていきたいというふうに考えております。
  322. 折小野良一

    ○折小野委員 工場がそこに立地いたしました場合に、その各個の工場がそこの土地のいろいろな条件を考えて、そして対策を講じていくというふうにおっしゃいましたが、しかし、現実には役所が工業地域として指定をするということになってまいりますと、個々の企業は、それをいろいろと検討をするほどの技術的な能力を持っておりませんし、結局工業地域に指定したということは、工場を実質的に誘致したということになるわけなんでして、やはりその責任は行政にあるのじゃなかろうかと思います。もちろん、それにつきましては今後具体的にいろいろと調査をなされて、そうしてきめられなければならないと思いますが、いずれにいたしましても、当面なさなければならないいろいろな対策を必要とする、そういう状況にございますし、今後につきましても、もちろん調査の結果に基づきまして、必要ないろいろな対策というのが行なわれなければならない。それにつきましては、やはり行政のほうで積極的にそのような対策をやっていただく、積極的に指導をしていただくということでなければ、問題は解決をしないのじゃなかろうかと思います。  ところで最後に、これも先ほど政務次官がおっしゃいましたように、地盤沈下というのは、公害対策基本法の中の典型的な公害の一つとして揚げられておるのでございますが、これに関連する法律は二つだけでございます。そして一般の地盤沈下対策には十分な制度ができておるというふうにはいえないのが現状でございます。こういう点につきましては、かねがね環境庁におきましても、いろいろと検討を進めておいでになるということは承知をいたしておるのでありますが、ぜひひとつ早急にそういう制度を整備していただきまして、地盤沈下対策の万全を期していただきたいと思うのでございますが、とりあえずはそういう面の新しい法律をつくるということだと思います。これについては、もうすでに準備を進めておいでになっておるようにお聞きいたしますが、次の国会にそれが提案できますでしょうか、間に合いますでしょうか、いかがでございますか。
  323. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生の御指摘のような方向で努力をいたしたいと思います。問題は、やはり代替水をどうするかということが大議論になっておるわけでございます。ただ、その問題をおいて、この問題は解決できないという認識は持っております。したがいまして、そうではございますが、ともかく関係各省と十分協議をいたしまして、一日も早く法案の提出をいたしたい、こういうふうに考えております。
  324. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまいろいろお尋ねいたしました、この苦竹地区の地盤沈下の問題にいたしましても、当面の対策、これも急を要する問題でございます。そして根本的な調査に基づきます根本的な地盤沈下対策、これもぜひやっていただかなければならないわけでございますし、そして、さらに地盤沈下に対する対策というのは、全国的にもたいへんおくれておるというのが実情のように承知をいたします。こういう面につきまして、さらに一そう、ひとつ環境庁中心といたしまして、関係各省との仕事の調整その他を十分やっていただきまして、今後効果をあげていただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  325. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は、来たる五月十四日火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十二分散会