○
小澤(文)
政府委員 御
指摘のとおり、この
委員会が発足して、すでにある程度の年数は経たわけでございますけれ
ども、実際の当
委員会に対する
紛争解決の申し立てというようなものは当初は非常に少のうございまして、ただ、それも逐次ふえまして、現在では
調停事件については
相当数の
事件が係属し、この
制度を利用する
当事者の数は
中央委員会に対する
関係でも、すでに一万人をこえている
状態でございます。これはあるいは
公害全体の
規模に
考えますと、それでいいのかどうかということについては、またいろいろ御議論もございましょうかと思いますけれ
ども、現在のところは、
実情はそのような次第でございます。
これについては、いずれもっと詳細な数字はあらためて
事務のほうから申し上げてもよろしゅうございますが、ただ、いま御
指摘になりました
裁定については、御
指摘のとおりまだ一件の
申請もございません。これは私
どもこの
制度の採用をお願いしたときの決心、覚悟から
考えまして、すでに一年以上経過しておるのに、まだ一件も
申請がないというのは、まことに残念なことでございまして、こういう
状態が適当ということはもちろん言えないのでございますが、なぜそういうことになっているのかという御質問でございますけれ
ども、これについては私
どももいろいろ
考えるのでございますけれ
ども、
一つは、やはり、この
制度の
趣旨が
国民全般にまだ浸透してないということが
一つの
理由として数えられるかもしれないと思います。
現に
調停といったような、
裁判所にもはや何十年と前に
調停という
制度が設けられまして、
調停という
制度の
内容は
国民に全部浸透し、わかったと思うのでございますが、それさえも、この
政府の
行政機関としての
紛争処理機関に本格的に
申請があったのは、
制度発足以来、もうほとんど一年もたってからではなかったかと思います。初めて
申請があったのは一件だけ、これは
制度発足後半年ぐらいで一件
申請がありましたが、しかし、それは一件だけでございまして、その後本格的に
申請が出るようになったのは、たぶん一年前後経過してからではなかったかと思います。
調停でさえそうでございますので、ましてや
裁定というものは、これは
民事紛争の
処理の
制度としては、かつて
日本に
前例のない
制度でございまして、こういう一般的な
民事紛争についての
裁定というものは
司法機関においても
前例はなく、
国民としても、これはなかなか
理解がむずかしいのかもしれないということをおそれているわけでございます。
私
どもといたしましては、これが
一つの
理由と思いますので、なお今後ともその
PRのためには十分の
努力をする必要があると思いますので、あるいは
地方公共団体との
事務連絡だとか職員の研修だとか、あらゆる
機会を通じてこの
制度の徹底をはかるとともに、なお
制度そのものとしての
内容あるいはその運用などについて、改善する必要があるかどうかということについて
考えていきたいと思います。
それからもう
一つの
理由としては、あるいはこれは思い過ごしかもしれませんけれ
ども、最近やはり
公害紛争として
国民のひとしく注目している
新幹線騒音について
訴訟が起きております。これなど本来なら、
公害等調整委員会に
申請があれば、もちろんそれは受理されて
処理されなければならない
事案でございますけれ
ども、これを
紛争当事者が
訴訟のほうを選択しております。もちろんどちらを選択するかということは
当事者の自由でございまして、それはとやかく言うわけではございませんけれ
ども、こういう問題について
訴訟が選択されたということは、やはり私
どもとして
訴訟による
解決というのは、
日本に近代的な
司法制度が導入されてすでに百年を経ておりますので、その百年の厚みというものを感ぜざるを得ないのでございます。
新たに発足したこの
裁定制度を、やはり同じように
国民が自由に利用できるようにするためには、その
PRなどについて、もっともっと
考えなければならないことを痛感している次第でございます。
以上であります。