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1974-04-11 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十一日(木曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員   委員長代理理事 島本 虎三君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君       大石 千八君    田中  覚君       戸井田三郎君    羽田野忠文君       橋本龍太郎君    渡辺 栄一君       小林 信一君    米原  昶君       岡本 富夫君    折小野良一君  出席政府委員         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         公害等調整委員         会事務局長   宮崎 隆夫君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君  委員外出席者         自治省財政局財         政課長     石原 信雄君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害紛争処理法の一部を改正する法律案内閣  提出第七二号)      ————◇—————
  2. 島本虎三

    島本委員長代理 これより会議を開きます。  角屋委員長海外旅行中でありますので、その間、私が、委員長の指名によりまして委員長の職務を行なうことになりました。よろしくお願いいたします。この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。内閣提出富士地域環境保全整備特別措置法案審査のため、参考人出頭を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島本虎三

    島本委員長 代理異議なしと認め、よって、さように決しました。なお、参考人の人選、出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 島本虎三

    島本委員長代理 御異議なしと認め、よって、そのように決しました。      ————◇—————
  5. 島本虎三

    島本委員長代理 内閣提案公害紛争処理法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。     〔島本委員長代理退席、林(義)委員長代理着席
  6. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  7. 島本虎三

    島本委員 関係大臣は必ず出席を要請する、そういうようになっているのですが、大臣はまだ出席しておりません。その上に、それをただ進めるわけにはまいりませんが、大臣はなぜ来ていないのですか。この際、これを先に伺っておきたいと思います。
  8. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。すでに御質疑の御通告もありましたことでございますので、昨日来、総務長官にも事情を申し上げまして、この委員会に御出席をいただくようにお願いをいたしておりましたところ、とりわけ、昨夜来、今朝にかけまして非常に用務が累積いたしてまいりまして、ちょっとまとまった時間、御出席申し上げて御答弁申し上げる見通しが十分につきかねるという状態で、先ほどまで推移いたした次第でございます。なお、引き続きまして御出席を願うように連絡をいたしまして、要望いたしております。
  9. 島本虎三

    島本委員 現在の大臣の忙しい状態はわからぬわけではありません。しかし、この重要な法律案審議です。大臣がいなければ、当然それにかわるべき副長官もおるはずでありませんか。それに対する配慮はなぜしないのですか。
  10. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。  ほとんど同じ問題に関連いたしまして、大臣総務長官、いずれも手分けをして今朝来動いておられるというふうに伺っておりまして、先ほどの理事会での御指示もございましたので、とりわけ副長官につきましては、ただいま八方手を尽くしまして、その所在の確認等進めておるところでございます。
  11. 島本虎三

    島本委員 本来ならば出てくるまで議事をストップするのが当然であります。しかし、この際、特に林委員長代行の名において、これは審議だけは進めてみたい、こう思いますから、忙しい、その主目的と申しますか、その理由スト権の問題だろうと思います。完全にこれを解決するようにしない以上は、出てこなかったことは議会を無視したことにつながる、こういうふうなことだけは申し上げておきたいと思います。では、本題に入ります。四十五年の十一月には公害紛争処理法、これができました。いわゆる公害国会であります。そうして四十七年には大幅改正がなされ、裁定制度が導入されているわけであります。そうして現存の公害等調整委員会が設置されたこと、御承知のとおりなんです。今回はあっせん制度を導入する、こういうのでありますけれども、本改正案提出した背景と理由について、一応お伺いしたいと思います。
  12. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 お答えいたします。御指摘のとおり一昨年裁定制度が定められまして、公害紛争処理組織については一段と制度が完備したわけでございますけれども、その後実際の世の中の公害紛争実態を見ておりますと、ますます公害紛争規模が拡大すると同時に当事者間の対立も激化し、しかも紛争が長期化する様相が非常に顕著にうかがえるのでございまして、それに対して従来の制度は、和解仲介といい、調停といい、仲裁といい、裁定といい、いずれも、あくまでも当事者申請によって動くわけでございまして、当事者申請がないときには、委員会としては、いかんとも方法がないわけでございます。しかし、ただいま申しましたような公害紛争実情から見まして、当事者申請がないからといって、これをそのまま放置するときには、緊急を要する被害者の救済が遅延したりなど、そういう社会的な重大な影響を来たすことが心配されるのでございまして、このような事態に対処するためには、やはり特に社会的に重大な影響のあるような紛争については、紛争当事者申請を待つまで紛争処理機関がそのまま手をこまねいて待っているということは適当ではない、そういうふうに考えました結果、この際、特にそういう特別に必要なる事案につきましては、当事者間の申請を待つことがなく、できるだけ早い機会紛争処理機関がその紛争解決にお手伝いすることができるような道を開く必要があると考えた次第でございます。ただ、その場合にあくまで、こちらから乗り出してお手伝いするというのでございますけれども、そのために強権的な色が出てはまずいのでございまして、この際、ただ、そのあっせんだけについて積極的に、場合によっては職権でもそれに乗り出す。仲裁とか調停とか裁定とかは別でございまして、あっせんだけについて、その道を開こうとしたのが、今度お願いしている法案の主たる内容でございます。
  13. 島本虎三

    島本委員 本制度がいわゆる公害国会の四十五年十一月に制定されて、四十七年に大幅に改正されて、この趣旨目的は、紛争を簡易迅速に解決することだったわけです。そして国民は気軽に——気軽にというと、ことばはなんですけれども、簡単に利用できる。なおかつ、公害実態等からして、国家行政組織法第三条によるところのいわゆる三条機関、こういうようなひとつの強制力も持つに至ったわけであります。  しかし、この公害紛争処理制度利用状況は、あまり利用されていないのじゃないか。特に裁定にかかる案件、この実績はいまだないように伺っているのです。これはどういう理由でしょうか。いま委員長のほうからは、公害紛争規模は拡大し、対立は激化し、深刻化してきている、こういうような状態のもとにこの改正が必要だ、こういうようにおっしゃられました。そうであるならば、ここに制度があって利用されていない、ことに、このために必要があるとして長い間叫ばれ、この制定に踏み切った裁定にかかる案件、こういうようなものは実績がまだないように聞いているのです。何かこの状態に対して対応しないのじゃないか、こういうようなことが思われてならないわけです。これはどういう理由によるものである  のか、この点も聞かしてもらいたい。それと同時に、公害等調整委員会は、このような事態に対して今後どう対処するつもりなのか、あっせんだけをやって、これで対処できるというお考えなのかどうか、この辺、ひとつ高邁なる見識をお聞かせ願いたいと思います。
  14. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 御指摘のとおり、この委員会が発足して、すでにある程度の年数は経たわけでございますけれども、実際の当委員会に対する紛争解決の申し立てというようなものは当初は非常に少のうございまして、ただ、それも逐次ふえまして、現在では調停事件については相当数事件が係属し、この制度を利用する当事者の数は中央委員会に対する関係でも、すでに一万人をこえている状態でございます。これはあるいは公害全体の規模考えますと、それでいいのかどうかということについては、またいろいろ御議論もございましょうかと思いますけれども、現在のところは、実情はそのような次第でございます。  これについては、いずれもっと詳細な数字はあらためて事務のほうから申し上げてもよろしゅうございますが、ただ、いま御指摘になりました裁定については、御指摘のとおりまだ一件の申請もございません。これは私どもこの制度の採用をお願いしたときの決心、覚悟から考えまして、すでに一年以上経過しておるのに、まだ一件も申請がないというのは、まことに残念なことでございまして、こういう状態が適当ということはもちろん言えないのでございますが、なぜそういうことになっているのかという御質問でございますけれども、これについては私どももいろいろ考えるのでございますけれども一つは、やはり、この制度趣旨国民全般にまだ浸透してないということが一つ理由として数えられるかもしれないと思います。  現に調停といったような、裁判所にもはや何十年と前に調停という制度が設けられまして、調停という制度内容国民に全部浸透し、わかったと思うのでございますが、それさえも、この政府行政機関としての紛争処理機関に本格的に申請があったのは、制度発足以来、もうほとんど一年もたってからではなかったかと思います。初めて申請があったのは一件だけ、これは制度発足後半年ぐらいで一件申請がありましたが、しかし、それは一件だけでございまして、その後本格的に申請が出るようになったのは、たぶん一年前後経過してからではなかったかと思います。調停でさえそうでございますので、ましてや裁定というものは、これは民事紛争処理制度としては、かつて日本前例のない制度でございまして、こういう一般的な民事紛争についての裁定というものは司法機関においても前例はなく、国民としても、これはなかなか理解がむずかしいのかもしれないということをおそれているわけでございます。  私どもといたしましては、これが一つ理由と思いますので、なお今後ともそのPRのためには十分の努力をする必要があると思いますので、あるいは地方公共団体との事務連絡だとか職員の研修だとか、あらゆる機会を通じてこの制度の徹底をはかるとともに、なお制度そのものとしての内容あるいはその運用などについて、改善する必要があるかどうかということについて考えていきたいと思います。  それからもう一つ理由としては、あるいはこれは思い過ごしかもしれませんけれども、最近やはり公害紛争として国民のひとしく注目している新幹線騒音について訴訟が起きております。これなど本来なら、公害等調整委員会申請があれば、もちろんそれは受理されて処理されなければならない事案でございますけれども、これを紛争当事者訴訟のほうを選択しております。もちろんどちらを選択するかということは当事者の自由でございまして、それはとやかく言うわけではございませんけれども、こういう問題について訴訟が選択されたということは、やはり私どもとして訴訟による解決というのは、日本に近代的な司法制度が導入されてすでに百年を経ておりますので、その百年の厚みというものを感ぜざるを得ないのでございます。  新たに発足したこの裁定制度を、やはり同じように国民が自由に利用できるようにするためには、そのPRなどについて、もっともっと考えなければならないことを痛感している次第でございます。  以上であります。
  15. 島本虎三

    島本委員 委員長としてもそういうようなお考えから改正案を出された、こういうように理解するのでありますが、まだそれでは少し考え方として形式的に流れやせぬか。ことに委員長だけじゃなく、この公害等調整委員会全体に、もう少し現実の問題と取り組むはっきりした、ぱりっとした姿勢が必要なんじゃないか。また考えもその辺まで至っておらないのじゃないかというふうに思われる。これは間違っていたならば、私はいつでも訂正したいと思うのです。  確かに新幹線、いま訴訟になっているけれども、本来ならば、公害等調整委員会でこういうようなものをやはり解決したいのだ。われわれも行って現地を調査してみました。確かに公害等調整委員会、これはいい機関であって、そしてこの決定も迅速であり、金もかからない、こういうようなことであるならば、国民は知っている限り、これを選択するはずじゃないかと思うのです。しかし財産被害である場合にはまだしも、健康被害に及ぼす影響ということを考えると、健康は自分生命に関するわけです。生命に関するようなこういう危害を与えられて、その人はふんまんやるかたないだろうし、当然企業に対して、また加害者に対して、その罪をはっきりさして黒白を明らかにしてもらいたいというこの気持ちが心頭から発しているんじゃないだろうか。それなのにその原因をそっとしておいて、ただ単に解決だけをするというようなことであるのは、何か食い足りなさを感ずるんじゃないか。したがって裁判の道を選ぶのじゃないか。私はこういうような考え一つあります。  もう一つ行政に対する不信なんです、委員長。  確かに新幹線、これは公害等調整委員会、こっちでやったら、なおいい結果が出るだろう、委員長のこの発想はわかります。ところが、住民行政に対する不信がまことに強い。うそを言っている。すっと通るだけで、音もしない、一瞬の間に通る、だから何でもないというので新幹線を通しました。振動と騒音、もうすでに地獄の責め苦のような感じを持って、行政に裏切られた、うそを言われた、怒り心頭に発しておるから訴訟に入ったのです。  そういうようなことからして、企業を誘致したり、そういうような仕事をさしたりするのは、これもう直接行政じゃありませんか。あるいは知事が誘致したり、あるいは市町村長が率先してそれを誘致したりしていたのが現状じゃありませんか。企業に立地さしたその長である知事のもとにまた行政機関がある。審査会。そこに早く持っていって完全にやってもらう。おそらく住民は、そういうようなことに対しては、まさに自分の血潮の中に怒りを感じて、知り過ぎているのじゃありませんか。そういうような行政不信、そういうようなこと、それから罪に対する黒白を明らかにしない、こういうようなことからして、やはり裁判への、訴訟への道を選ぶのじゃないか、私はそう思うのです。  今後この機関に当然職権あっせんの道も開けたとするならば、特に、よしあしは別にしますが、審査会としては、ばりっとしていかないとだめなんだ。行政癒着した状態でこれを見られてはだめなんだ。しかし、いままで水俣のあの問題一つ見ても、行政との癒着不信を買った大もとじゃありませんか。それを見た場合には、裁判のあと追いだけじゃなくて公正妥当な解決をするように、特に今後は委員会として、委員長として身をもって当たらなければならないと思うのであります。委員長の御高見を承ります。
  16. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 御指摘のとおり、私ども公害等調整委員会に係属している事件調停の過程を通じましても、当事者のほうから、ある場合には行政不信といったようなことを前提とするいろいろな発言、主張などがなされていることは、現に私ども直接にそれを経験している次第ではございます。  ただ、その当否は別といたしまして、その当事者のそういう考え方の、その具体的な場合の当否は別といたしまして、私どもとしては、せっかくこのようにしてつくられた第三者機関、公平に事を処理するということを生命として設けられた第三者機関である委員会でございますから、これはもしそれも行政部内の一機関であるという理由行政不振の対象にされるということになると、これでは非常に心外なのでございまして、実際日常の毎日毎日の仕事を通じましても、そういうことの絶対にないように、当事者に対して全く公平に公明に、いわゆる行政癒着などということの絶対にない、そういう疑いを持たせるようなことも絶対にないように十分戒心して仕事を進めておる次第でございます。  この努力は、現実に私どものところに係属している調停事件の推移を見ましても、初めは半ば不信の目で出頭していた被害者人たちが、ついには、あとになるとほんとうに信頼してくれて、こちらにいろんなことを、求めるところを隠さずにいろいろ言ってきてくれているという実情がございますので、御指摘の点は、いずれは時が解決するものと思いますが、私どももそういう行政不信といったようなものが、この委員会に対しては起こらないように日々注意して処理しておる次第でございます。
  17. 島本虎三

    島本委員 もちろんこれは注意してもらわなければならないことであります。中央はやはり中央公害等調整委員会、これがありますから、ばりっとしているということは私どもわかります。地方都道府県のほうには公害審査会都道府県の中にあって、その行政の一環として運営されるとしたならば、その長が、いわゆる公害をもたらした、また企業を誘致した、または原因機関を誘致した、こういうような張本人であるとしたならば、その間に、中央はいざ知らず、少なくとも地方ではそういうような実感を持たれるということは容易に感ぜられるわけです。ですから、この点は、十分今後考えてもらわなければならない点なんだということなんです。少なくとも今後は、そういうことがないように特に要請したいのです。もっとこれは利用されなければならないと思うからであります。もっともっとこれが理解されて、そして安易に、迅速に、気軽に持ち込まれて解決していく、こういうようなところまでいかなければだめだと思うからであります。この点を私は強く要請しておきます。こういうような行政不信と思われることが全然ないように、おのずから点検し、制度そのものもそういうふうに見られるおそれがある場合には、きちっとしてこれを運用すべきである。いまの状態では、都道府県公害審査会、この部門では、やはりそう思われるのも無理じゃない組織になっておる、こう思うわけであります。  それで申請による和解仲介がいままであったわけですが、今度は職権によるあっせんという制度を設けたわけであります。事務当局に伺いますが、いままでの仲介がかわってあっせんになる、そうですね。——そうだとすると、これはあっせんと前にあった仲介ですか、それとはどのように違うのですか、この点を明確にしておいてください。
  18. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。  和解仲介と申しますのは、先生よく御存じのとおり、すでに現行法において設けられておる制度でございまして、端的に申しますと、いわば法律上の和解に達し得るよう仲を取り持ちをする、こういう意味合いで理解をいたしておりますけれどもあっせんということば考えておりますのは、それよりも、これを含めまして、さらに広い概念でとらえておるわけでございます。つまり……(島本委員「どっちのほうが広いのですか」と呼ぶ)あっせんのほうを広く考えております。  極端に申しますと、お互いに背中を向け合って話し合い一つしていない、そういう事態がありましても、それぞれ意を尽くしてその事情の説明を行ない、少なくとも話し合いの座についてはどうか、こういう点に誤解があるならば、こういうことではなかろうか、先方考えておられることはこういうことではなかろうか、あなたの御不満と思われることはこういうことでありましょうから、先方にもそのことはお伝えいたしましょう。やや両者の間が硬直した状態において、特に顕著に私どもはその問題を意識するのでございますが、全く話し合いが行なわれていないようなら、ともかく話し合いをしてもらう、こういう場をつくり、時をつくるということを、少なくともあっせんの第一の目的として考えてみてはどうであろうか。  もちろん両者のお話し合いが進展して、緒につき、さらに進展してまいりますれば、それなりにそれは任務を終わることになるわけでございましょうが、さらに展開して、相互の内容実態に触れて、最終的な合意、和解にまで持ち込むことができるならば、それはまさにあっせんの最も理想的な状態として、考えられるものではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、従来の和解仲介という考え方でとらえておりました、ややかたくなな、狭い観念をさらに広げまして、これを吸収して考えておる、さように存じておるところであります。
  19. 島本虎三

    島本委員 こういうおそれがありますか、ありませんか。大規模紛争、これについては放置することによって、当事者間の対立が一そう激化して、紛争が長期化することのないように、進んで、早目あっせんに乗り出す。公害紛争の中には、当事者の自主的な交渉によって解決を見るものもあります。一定の濃度に達したならば、解決のほうへ急速にこれがもう進展していく、こういうような場合もあり得ます。しかし、そういうような自主的な交渉によっては、円満に解決するものもあるにもかかわらず、そのような場合にあっせんに乗り出すことによって、かえって当事者間の自主的な交渉に水をさすようなことにならないかどうか。  労働争議には、往々にしてこういうような点があり、職権による介入や、職権によるあっせんは、労働組合労働者関係者は、使用者以外はこれを極力きらう傾向があるわけであります。したがって、このあっせんに乗り出すことによって、かえって当事者の自主的な努力に水をさすようなことがあっては困る。加えて、このあっせんでは、紛争解決が困難な場合には、第三者たる調停委員会が積極的に介入して、最終的には調停案の受諾を勧告できる、調停に移行できることになっておりますから、当事者間の自主的な交渉が十分に確保されない危険が、この場合には存在しないかどうか。これはやはり十分考えておかなければならない点じゃなかろうかと思います。この点に対しては、いかがでしょうか。
  20. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 ただいまの御質疑は、本改正案におきましては、私どもとしては、最も重要な点であろうかと存じます。したがいまして、委員長からお答えを申し上げることにいたします。
  21. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 このたびお願い申しましたあっせんは、あくまで当事者の自主的な解決をするために、話ができないようなときには、その場をつくり、その準備をし、そして当事者自由意思によって解決手段を見つけることができるようにしようというのが制度趣旨でございます。  それが制度趣旨でございまして、それでかりそめにも、当事者自主的交渉に水をさそうとか、あるいは妨げになろう、そういうような結果になるということは全く考えていないのでございまして、万一にもこのあっせんに乗り出すことによって、当事者自主交渉そのものが水をさされ、妨げられ、結果がゆがめられるなんというようなおそれのあるようなことは、厳に慎まなければならない、そういうことはすべきではない、そういうふうに考えております。
  22. 島本虎三

    島本委員 この「多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められるときは、」これは職権による「あっせんを行うことができる。」こういうふうに改正規定が提示されているわけですが、これも考えようによっては、ちょっと大事な点であろうかと思います。  まず、第一番に、「被害の程度が著しく、その範囲が広い」、これはどういう内容のことなんでしょうか。
  23. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 被害の程度が著しいというのが一つの要件でございますが、公害にもいろいろございまして、公害とは言えますけれども、非常に軽微であって、これは当事者間で直接に話し合いで、話がつけばそれでよし、あるいはもうそれがほかの機関をわずらわすためには手数がかかるので、むしろもうそのままにしておいたほうが当事者被害者としても、そのほうがかえって世話がないなんというのもあるのかもしれませんが、そういうものは、ここでは職権あっせんの対象にしようという考えはございません。  それから、その範囲につきましても、全く相隣関係と選ぶところのないような、局地的ともいえないくらいの非常に範囲の限られたものがございます。同じ騒音でも、たとえば隣のお嬢さんのひくピアノの音が自分のうちだけやかましいなんというのも、これも公害には入りますけれども、そういうのは職権あっせんの対象にはしない。  それから「当事者間の交渉が円滑に進行していない」ということがやはり職権あっせんの要件となっておるのでございまして、たとえば片方の当事者が言を左右にして一向話し合いに乗らない、せっかく被害者が話をつけようとして、いろいろ交渉を申し入れ、あるいは直接交渉に行っても逃げ回っていて、一向話に乗らない、そういうような場合もあるかと思います。それでは自主的解決の道はないのでございまして、そういうときにこちらがあっせんに乗り出す、そんなような場合になろうかと思います。
  24. 島本虎三

    島本委員 それは、いま言ったのは「当事者間の交渉が円滑に進行していない場合」のこともっけ加えて言ってくださったようでありますが、「円滑に進行していない場合」というようなことに対して、すぐそのまま自分が認めて入っていく。これは考えようによってはなかなか、この辺は主観がものをいいます。機が熟するのを待っている、こういうようなこともあり得ます。ところが、それが進行しないということで入ってくると、期せずして、やはりその介入があったことにより、なお悪化させるということになりはせぬか、こういうような危惧さえあるわけでありますが、この「当事者間の交渉が円滑に進行していない場合」という場合は、これは具体的に何かはっきりしたことをお持ちでしょうか。  たとえば水俣の場合は五派、六派、自主交渉派をまじえてたくさん出ました。裁判にいく者もあり、皆さんのほうに訴えたのもある、自主交渉派を含めて。また、もう解決したものもあり、再交渉するものもある。そういうような場合に、すぐこれはすっと交渉になって入っていく、こういうような場合だってあり得るわけであります。もしそうだとすると、なおさら混乱をすることになる。この点「当事者間の交渉が円滑に進行していない場合」という場合を、ちょっと具体的に言ってくださいませんか。
  25. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 当事者交渉がなかなか進行していない、しかし実は双方話し合いはしてないのだけれども解決のために適切な機会が熟するのをじっと待っているというような場合があるではないかという御指摘でございますが、まさにそれは御指摘のとおりでございます。現に私ども調停をやっていても、ときとしては双方にひんぱんに来てもらって攻め立てるように話をする場合もありますし、また場合によっては、機が熟さなければ相当の冷却期間を置くなどということもございますので、これは交渉のための冷却期間の存在ということが、すぐ交渉が円滑に進行していないということにはならないのでございまして、冷却期間を置かれるからといって、これは進行の一つの態様でございますから、そういうときに、すぐにこちらからよけいなちょっかいを出すというようなことは考えられないのでございます。  それから、たとえばとして水俣の例を御指摘になりましたけれども、これは現に調停も係属しておりますし、なかなか申し上げにくいのでございますが、確かに御指摘のように各派、いろいろの派に分かれて別々に交渉した事実がございます。しかし現在のところ、それを見ますと、それぞれの派ごとに大綱においては同じように基本的な解決の道はつけられたようなのでございまして、あの水俣事件の推移を見ますと、現在あとから考えるのでございますけれども、時にかりにああいうことが現在あるとして、水俣自体のような形でくるならば、職権あっせんに乗り出すことはどうかというふうに思います。
  26. 島本虎三

    島本委員 ただ考えようによっては、それに該当する文句があるかです。たとえば被害の程度が著しく、その範囲が広い、まさにそれでございます。交渉が円滑に進行していない、まさにそうでございましょう。そういうような場合に職権あっせんができるのだということ、そういう場合も仮想できるわけです。しかし水俣の場合は、もし入ったとするならば、その結果は私は予想できるわけです。現在あのような行政不信状態の中で入っていっても、満足な成果は得られない。しかし職権あっせんをあれに当てはめてみた場合に、当然やり得るけれども、やったならばだめだ、そういうような状態だと思います。第三番目には多数の被害者、これも考え方によっては二人以上は多数だということになります。多数というのは、どの辺までを多数と見て、この法の制定の基礎にされましたか。事務的でけっこうでございます。
  27. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 この多数と申しますのは、これを何十人から上が多数で、それ以下は多数でないというような数字で申し上げることは非常にむずかしいのでございますけれども、要するにこれは社会的に重大な影響があると認められる場合の一つの例示でございまして、相当大ぜいの被害者の生活の困窮という問題が起きる、そしてそれが社会的に重大な影響があると認めなければならぬ場合ということになろうかと思います。社会的に申しましても、日本全体も一つの社会でございましょうし、あるいは地域社会というものもございましょうし、大小いろいろございますので、一がいに何とも——人数とか大体この辺の見当からということを申し上げるのは非常にむずかしいので、お許しいただきたいと思うのでございます。  いずれにいたしましても、それからこれは先ほどの御質問にも関連するかもしれませんけれども、この職権あっせん乗り出しの三つの要件全部が具備すれば、必ず職権あっせんをするというのではないのでございまして、この三つの要件がそろうこと、それからその上で実情を調査する、それから当事者——双方当事者になりますが、当事者の意見も聞く、それからさらに当該委員会の全員の議決、委員会そのものの議決も経るといったようないろいろな要件が設けられておりますので、そういう結果、この先ほどの三つの要件が充足し、しかもこれは職権あっせんに乗り出すのが相当であると認められる事案に限り、職権あっせんを行なうのでございまして、御指摘のように三つの要件はそろっているけれども、乗り出してもどうせできないのはわかっているといったような事案は、これはもう初めから乗り出さないわけでございますから、その点は御懸念はなかろうかと思います。
  28. 島本虎三

    島本委員 要件が備われば、もし性善にして委員長のような有能な人は出ていかない。もし性悪にして善良を装っている人であるならば、条件が整えば出ていって、やり得る可能性があると思います。したがって、そういうような点は法を制定する場合、十分考えておかなければならない問題だ。この点を善意にのみ解釈して、それをもう制定しておいて、あとからこれがとんでもない目にあうようなことがあってはいけない、そういう危惧から、もし職権あっせんに入る場合に、当事者の一方、特に被害者が望まないときには、この規定はどういうふうに運用されることになりましょうか。
  29. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 当事者の意見を聞きまして、そしてその当事者がそのあっせんを望まないといったような場合に、これはやはりなぜ望まないのか、その辺は慎重に考慮しなければならないかと思います。そしてもし望まないというのが、たとえば公害等調整委員会行政癒着しているものであるから、ああいうところでやったって公正な解決は得られないんだといったようなことから望まないのでございますれば、これはそういうものでないということを十分に説明して、また考えを変えさせるように努力しなければならないと思います。  それから、あるいはもうそういうことでなくて、制度は十分にわかっており、なおかつ、どうしても直接に交渉をすることのほうが、他人の第三者が一たとえ公平な第三者機関であっても、そういう第三者を介入させないで直接に交渉して和解をしたほうが将来のためにもなるというふうなケースは、これもよくございます。多々ございますので、そういうふうな考えで純然たる自主的交渉を望み、そしてそれが見込みがあるといったようなときには、やはり職権あっせんの道はないものと考えます。
  30. 島本虎三

    島本委員 その辺まではわかってきましたが、じゃ、これはどういうようなことになりましょうか。  申請を待たずに職権あっせんをするということ、これはもう委員長のように中立公正なる紛争処理機関が行なうものであるといえども、これは民事紛争への介入という意味を有していることから、当然例外的に必要最小限度においてのみ認められるべきものである、それはこういうふうに考えられております。しかし具体的に、どのような場合に限って、紛争当事者からの申請を待たずに、紛争処理機関あっせんに乗り出すことになるのかということなんです。具体的にどのような場合に限って、紛争当事者からの申請を待たないで、紛争処理機関あっせんに乗り出すものになるのかということです。この辺はいろいろ考えられますので、この点おわかりでしたなら、この際、きちっとしておいてもらいたい、こういうように思います。
  31. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 具体的にこれこれのケースは、こういう場合には職権あっせんに乗り出すのだということを申し上げたいのでございますけれども、何ぶんこれは初めての制度でございまして、それだけ申し上げるだけの材料もないわけなんでございますが、要はこの法第二十七条の二にありますように、前提として三つの要件がそろうということ、そしてその要件がそろった上に実情を調査し、当事者の意見を聞くということが要件、それからさらに中央委員会の場合には、中央委員会の議決、審査会の場合には審査会の議決に基づいてやるということ、この議決というのは、たとえば中央委員会について申しますというと、中央委員会の議決ということになりますと、公害等調整委員会設置法の規定によりまして、委員の会議を開きまして、過半数の決議できめるということになります。その過半数の決議を行なう委員というのは、これは学識経験があり、人格の高潔な人の中から任命されるのでありまして、その任命については、両議院の承認が必要になっております。  そういう厳格な審査を経て選ばれた委員の会議で、しかも過半数の決議があって初めてできるのでございますから、これはそうおろそかな乗り出しということにならないことは間違いない、そういうふうに思います。
  32. 島本虎三

    島本委員 そうすると、公害紛争当事者の自主的話し合い、あるいはこの当事者申請に基づくあっせん調停、そういうものによって解決を見出すことがいままでの法の定めであり、われわれはそういうようなのが自主的な一つの本筋だ、こういうように思っていたわけであります。  今度の場合には、中央委員会がみだりに職権あっせんに乗り出すことは、かえって問題を紛争させるおそれさえないかどうかということを懸念するのです。それと同時に、職権によるあっせんは、あくまでも必要最小限度にとどめるものである。また、それを行なう時期等において慎重に配慮するものでなければならない、もろ刃の剣である、こういうような要素を持つものであるから、これはもう慎重に配慮する必要があるのだ、私はそう思っております。  ですから、いま委員長のほうでは、慎重の上になお三要件を唱え、三つの要件の上にそれぞれそういった議決ですか、そういった談合ですか、何か話し合いができない以上、これは出さないのだ、こういうようなことであります。そういう配慮というものも十分した上でないと、これはいけませんぞという親心であります。私自身はそう思っているのです。これは職権あっせんは慎重の上になお慎重にやるべき問題です。  私は労働委員会の中で示された各種の労働紛争職権あっせんに入っていって、なおこじらせた例、こういうようなのもよく知っているから、二度三度、同じことを三回言っていますが、これはいま入念に聞いているわけなんであります。これは慎重にやるべきだ、こう思います。別に答弁要りませんけれども、なお一この際、慎重にやることになろうかと思いますが、いままで言ったことに対して、われわれを説得するようなことがありましたならば、この際、聞かしておいてもらいたい。
  33. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 職権あっせんに乗り出すということは、慎重の上にも慎重を期すべきであるという御指摘でございますが、私どもも全くそのように考えております。
  34. 島本虎三

    島本委員 私どもは、法律の中でいろいろな慣用語が出てきます。たとえば、これはまた職権あっせんというと、すぐ労働問題と関連するので、そっちのほうへ頭がいきますが、正当なる理由、こういうようなのも労働運動の中の一つの慣用語になって使われていることばであります。しかし、本法の中には二十七条の三にございますように、あっせんから調停に移行する場合に「あっせんによっては当該紛争解決することが困難であり、かつ、相当と認めるときは、」という「相当」ということばが相当あるわけであります。  そうすると、この「相当と認めるときは、」というような解釈もまた十分これはしておかないとだめなのじゃないかと思うわけであります。この「相当と認めるときは、」の「相当」とは何ですか。
  35. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 端的に申しますと、あっせんでは紛争解決がつかない、しかし調停手続に移して、その手続に乗せて処理すれば、妥当な解決が得られるという見込みのある場合と申し上げれば、それで尽きるのじゃないかと思いますが、たとえばあっせんの場合に応は、これはあくまで当事者が自発的に和解をしなければなりません。ですから、ときによっては、実際は解決を望みながらも、自分のほうから解決案を出すとかいうことは控え、あるいは相手方の出した解決案に対して自分のほうが同意するというのは、これは立場上困るので一応拒否するといったようなことで、何といいますか、両方すくみ合ったような形で、なかなか話ができないなんという場合もあろうかと思います。  そういうときに調停に移しますというと、調停手続の上では、たとえば調停委員会調停案を作成して当事者に受諾を求めるというような道もございますし、調停委員会が出した案ならば、両方とも従来の主張とはやや離れているけれども、それならそれに従がおうといったようなのは、これはむしろ調停の成立する大部分の形がそういうことになるのじゃないかと思います。  そういうこともありまして、結局当事者のために利益であり、そしてその結果が妥当であるといったような解決を得る手段として調停に移したほうがよい、そしてそのほうが見込みがある、そうすれば見込みがあるというような事案が、ここにいう「相当」になろうか、そういうように考えます。
  36. 島本虎三

    島本委員 これは職権あっせんの場合には調停に移行できるが、申請によるあっせん調停に移行できない理由について、どのようなことをお考えでしょうか。これはちょっと私は疑問を持っているところがあるのです。
  37. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 申請によるあっせんの場合には、当事者は初めから自分の意思でもって、あっせん申請しているのでございまして、その当事者申請でやってきた場合に、あまり委員会のほうから職権を介入させるということは、そもそも事案の性質上適当ではないように思います。  それでございますから、職権あっせんに入ったものについては、最後のあと始末もするという意味で職権調停に移すということもございますけれども申請あっせんを始めたものについては、あっせんでできるところまではやって、そして最後に、それではできないときには、そのできない理由が、先ほども申しましたように、両方が立場を固持してすくんでいるけれども、実は第三者的な意見が出れば、それに従いたい、時の氏神が出るのを待っているというような事案でございますれば、このあっせんによる和解はできないけれども、別に調停という制度もありますということを言って説明しておけば、これはあっせん申請をするような当事者ですから、もちろん調停申請もするだろうと思いますし、ですから、そのときにわざわざ職権調停などを考えるほどのことはなかろう、そういうように考えます。
  38. 島本虎三

    島本委員 その答弁だけは明瞭でありました。わかりました。  では次に、事件の引き継ぎの制度についての今回の改正について伺いますけれども中央事件地方へ引き継ぐこと、これに対して道を開いております。中央公害等調整委員会地方都道府県公害審査会との管轄の考え方ですね。これは一般的にいって、全国的な見地から解決を要する重大な事件、こういうようなものは中央で扱わせようとするもので、委員会事務局も、それにふさわしい陣容を整えているのじゃないかと思います。したがって、地方管轄の事件中央に引き継ぐことについては、その意味ではよろしい。しかし、中央管轄の事件地方に引き継ぐことは、このような内部の機構等からして、やや奇異な感じがしないわけではないわけです。したがって、調停にかかる事件について、どのような場合に中央委員会から地方審査会へ引き継ぎを行なうのか、この点解明願いたいと思います。
  39. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 御承知のように、中央委員会の管轄は第二十四条できめてございますが、これはこうきめてしまいますと、これで一般的にもう固定してしまいまして、事案内容によってこれを動かすということは、そのままではできないわけでございます。ところが、実際は、二十四条の各号には該当するけれども事案によっては被害の実質がそれほど重大でもない、そしてそれほど広い地域にまたがる問題でもない、ごく局地的なものであって、広域的見地による解決の必要性がそれほど高いわけではないといったような事案もあるのでございます。そしてそういう事案について、これを中央処理するということになりますと、そういう軽微な事案について中央に出てくるということが、当事者に負担をかけるということもございますので、当事者としては、それを自分たちの居住しておる地方処理することを希望するというケースも考えられるのでございます。  それでございますから、そういう事案については、当事者の同意を得ることを一つの要件として、当事者も同意するということであれば、それを地方に引き継ぐ、そういう道を開いたわけでございます。
  40. 島本虎三

    島本委員 そうすると、逆に調停にかかる事件審査会から中央委員会事件を引き継ぐことも当然あり得ますが、いままでこういうような実績や実例がございましたか。またどういうような場合に引き継ぐようになりましょうか。
  41. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 中央公害審査委員会が発足しましてから後に、そういうケースが一件ございました。  これは御存じだろうと思いますが、鹿児島の喜入基地の建設に伴う水質汚濁による漁業被害の紛争事件でございまして、被害者は真珠の養殖をする人でございました。これが、この管轄の規定によりますと、鹿児島の公害審査会に係属いたします。ところが、その事案では申請人は神戸に住んでおりまして、そしてその代理人、これは弁護士でございますが、東京に事務所がある。それから相手方の会社は東京に本社がある。そして両方とも東京で処理したほうがはるかに好都合であるということを言いまして、それでそういうような双方の意向と、それからその事案が、そのときには公害調停の第一号でございましたから、全国民がその成り行きを注目するというようなことでもございましたし、そういう事案について中央で引き継いでやった例がございます。
  42. 島本虎三

    島本委員 だんだんと進めてまいりまして、三十三条の二のほうへ参ります。  調停のために必要な措置ということになっておりますが、この必要な措置とは、どういうようなことでしょうか。その内容について伺っておきたいし、その勧告はどのような場合に行なうのであるか。これは事務当局でもけっこうですが、この点をお知らせ願いたい。
  43. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。  お示しの三十三条の二は「調停委員会は、調停前に、当事者に対し、調停内容たる事項の実現を不能にし、又は著しく困難にする行為の制限その他調停のために必要と認める措置を採ることを勧告することができる。」このように定めております。  ただいまのお尋ねは、「調停のために必要と認める措置」というのは、具体的にどういうことであるかというお尋ねが一つございます。これは概して申し上げますれば、どちらかと申しますと、被害者を保護するという観点がその底にございまして、そういう基礎の上にある程度組み立てられておるという面が多うございます。そういう意味で御理解をいただきたいのでございますが、たとえば非常に生活に困窮しているような実態が見受けられます場合に、最小限度必要な生活費をとりあえず出してやったらどうであろうか、調停なら調停が成立するまでの間、仮の措置としてそういうことを考えたらどうか、こういうことを加害者と申しますと語弊がございますが、企業なら企業のほうに話をつけてやる。こういう意味合いで勧告をするということで考えておるわけでございます。  あくまでも、しかしながら、これは仮の措置でございますので、したがいまして、そういう意味合いからも勧告をするということにとどめた次第でございまして、こういう措置が現実にとられますことによって、調停なら調停が障害なく最終的に成立する、そういうような見通しが立つ場合に、調停を成立させるための一つの促進的な手段といたしまして、こういうことをできるようにしていただいてはいかがであろうか、かように考えて、御提案申し上げておる次第でございます。
  44. 島本虎三

    島本委員 この中には、当然被害者を守るためにということで、加害者たる工場群が設置をそのまま続けて、皆さんのほうに調停の手続をとっておる。工事だけはずっと進めていた。こういうような場合には、当然工事を差しとめさしておいて、そして被害者に有利な状態で進める、こういうような意味を当然含むのじゃないか、こういうように解釈されるのですが、そういうような点は全然考えておらないのですか。
  45. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 そういう場合もあり得ると思います。
  46. 島本虎三

    島本委員 あり得る場合には、そういうような例をどんどんと出しておいたら、それが実績になって、法の運営がうまくいくというようなことになりますから、遠慮しないで、小刻みに出さないで、どんどんとそういうような点は、答弁に際して出しておいてもらいたいと思います。  そうすると、この調停案の受諾のことにもちょっと触れますが、ここにもまた「相当と認める」とあるのですね。委員長は相当が大好きだと見えるのですが、三十四条の二、「公表」というところですが、調停案の受諾の勧告をした場合、相当と認めるときは、これを公表することができる。「相当と認めるとき」というのが、また出てくるのですが、「相当」とは何ですか。また、勧告案の公表により、どのような効果を期待するということになるのですか。この辺も、はっきりさせておいてもらいたい。またそうしなければならないと思うのであります。
  47. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 調停は、御承知のとおり手続を公表しないのでございまして、本来なら、公表の道は従来の規定によりますと、ないわけでございます。しかし公害問題は、普通の調停とは違って、社会性、公共性というものを考慮しなければならないのでございまして、この受諾を勧告した調停案については、その案についての調停委員・会の判断を一般に発表して、社会全般に正確にその内容を周知させる。そうして一面においては^世論の批判にさらしてこれを考えてもらう。同時に、これによって当事者にそれを受諾するかどうかという適切な判断をする助けにもしてもらう。そういったようなためには、公表したほうがいい、そういうふうに考えられます。それが公表をすることを相当と認める場合の内容でございます。  それから、その公表の効果というものについては、法律上の規定はございません。これは法律上の効果というものは、別に何もございません。
  48. 島本虎三

    島本委員 もし効果なしとするならば、調停案理由を付して公表することができる。このことは、調停案を受諾させることの圧力にならないかどうか。被害者がその調停案に不満があっても、それを受諾せざるを得ないような立場に追い込まれることがないかどうか。すなわち、その運営いかんによっては、被害者が不利になるのじゃないかということが考えられるわけです。その点について、考えをはっきり伺いたいと思います。
  49. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 この公表によって、不当な調停内容当事者に受諾させるための圧力として使う、そういう考えは毛頭ございません。
  50. 島本虎三

    島本委員 いや、ないのはわかるが、そういうおそれがないか。
  51. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 そういうおそれは考えられないと思います。とにかく、もうそもそもの調停そのものがこの法律趣旨に従いまして、厳格に厳選された調停委員によって行なわれている。そちらのほうの制度からも担保がございますので、大体調停委員というのは、とかくこういう権限が与えられるというと、みんなそれを不当な圧力に使うんだというようなことは考えられないのでございます。
  52. 島本虎三

    島本委員 次に、問題の裁定について、ちょっと伺いたいのです。  この裁定実績は、一件あったんですか、なかったんですか。これはちょっとなんですけれども実績はもうないようなんですがね。これは審査会裁定を行なうことができるような体制が——いや、裁定というのは中央だけで、地方には行ってないんです。前回は、これを地方におろしたらどうかということで、これは議論の存したところなんです。ところが、やはり裁定そのものに対しては中央であって、地方におろすべきじゃないという皆さんの強い意思によって、これはそのままになっているわけであります。  裁定は、当然は中央委員会だけである。しかし、そっちのほうの実績はないようでありますけれども、これは地方都道府県審査会裁定が行なうことができるような体制にないということにも原因の一半がないかどうか。中央地方を行なえるのであれば、地方から先にそのよさがわかってくる。したがって、これは地方でも、大きい問題はそれによっても処理することもできるのじゃないか。中央だけにあって、地方はあることを一般国民は知らない、知らないから利用がされない。地方のほうへ行ってみたならば、行政の中に審査会がある、その中で行政不信のために、そっちのほうへはたよられないということになると、せっかくいい制度がありながら、これは利用されないという結果に終わる、そのことはまた残念であります。  したがって、裁定実績地方にはない。都道府県審査会の段階にも、これを行なわせることが当然必要なんじゃないか。しかしながら、そういうような体制がないということの原因もあるんじゃないか。私は、そう思われないわけでもございませんが、この点について委員長、どのようにお考えでしょうか。
  53. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 地方審査会にも裁定を行なわせることにしてはどうかという問題が、御指摘のように前の国会にございました。そしてそのときに、私ども考えといたしましては、理想を言いますれば、これは地方審査会にも裁定制度があって、だれでも被害者は手近なところで簡易に、りっぱな裁定を受けるということができる道が望ましいことは、これはもちろん当然でございますが、ただ裁定と申しますというと、調停あるいは仲裁のように、当事者の合意に基礎を置くものではございませんので、一たん裁定がなされると——もっとも、裁定申請そのものは当事者申請ですけれども、一度軌道に乗れば、あとは当事者の意思いかんにかかわらず、たとえ当事者の不満とする、満足できない結果でありましても、その合議体が厳格に現在の民事法令、公害法令を適用しまして、その法適用の結果を宣言することになるわけでございます。しかもその宣言は、地方審査会と申しましても、そもそもが性格上、仕事は独立にしなければなりません。その裁定内容について、どこかから指揮とか監督とかを受けることは絶対にないのでございますから、全く自主的に結論を出すということになります。  そのときに一番懸念されるのは、そういう独立機関が全国に何十とあって、そしてそれぞれが自主的に見解をお出しになるということになりますと、同じ公害法令であっても、その解釈、適用について区々の判断が出るという懸念は当然考えられるところでございます。それで、そういうときに一体それを統一する道があるかということになりますと、これはなかなかむずかしいのでございまして、少なくとも現在の制度の上では、地方審査会の独自の判断が相互に食い違ったような場合に、それを統一する制度はございません。  それが一つと、それからもう一つは、裁定をするということになれば、これは単なる調停とは違って、実際に、事実に法律を適用するのでございますから、その前提としての事実の確定が必要でございます。事実の確定のためには、事実の認定の資料としての調査が必要でございますが、この調査には相当の事務機構が必要になってくるのでございます。ところが、地方審査会に常設の事務機構を置くということのできる状態には、いまのところまだきておりません。  ですから、そういうことを考えますというと、理想としては望ましいことでございますけれども地方審査会裁定をしていただいて、それぞれ独自に見解を出していただくということは、総体としては、まだその期が熟してはいないのではないか、そういうふうに考えて、この前も審査会については裁定はしないことにしたのでございますが、その状態は現在もまだそれほど変わっていないように思いますので、いまのところ、いますぐ地方審査会裁定制度を認めるということは考えていないわけでございます。
  54. 島本虎三

    島本委員 そこなんです。その点、少しがんこじゃありませんか。もう少し、公害そのものは深刻になり広範になっている状態からして、その解決を求める民の声が以外に多くて強いということからして、それに即応するような、そういうような機構の確立が必要である。そういうようなことがないから、裁判にいく。裁判は、まあ若干は短くなっても、まだまだ十年裁判だ。こういうような点からして、やはり機構の充実というようなものが目下の急務です。その点においては、まだ十分その辺の配慮が足りない。このことだけは私、率直に申し上げておきたい。  その証拠を一、二あげなければなりません。四十八年度の公害紛争調査経費の支出状況、あんまりこれ消化されていないようです。四十九年度の予算で公害紛争調査経費が前年度に比べて減額された理由は、どういうわけですか。
  55. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。  仰せのとおり、今年度と過年度とを比較いたしますと、総額においてはふえておりますけれども、これはやや人件費とかその他の事務的経費の増高によって数字的にはふえておるわけでございますが、一つ調査委託費という項目がございまして、四十七年度におきましては実績が三百七十五万円でございましたのが、四十八年度では八十一万円ということに落ちたがために、約一千万円の減額と相なってまいった次第でございます。  これはまさに専門調査のために必要な委託経費として計上されておるものでございまして、私どもが実際に紛争調査のために委託した経費は、それなりに必要な委託経費でございましたけれども、当初の見積もり額からいたしますと、実際の実績は申し上げたように非常に少ないものに相なっておったがために、現在のこの新しい年度におきましての予算案作成の段階におきまして、主計当局から減額の査定を受けたような次第でございます。  専門調査員等を駆使いたしまして、調査を進めていくこの進め方につきましては、なお非常に反省すべき点もございまして、この活用のしかたにつきましては、今年度におきましては鋭意充実した使い方をしてまいりたいというふうに念願いたしております。すでに検討に入っておるのでございますが、経過的にはそのような事情によりまして、部分的に減額されたという次第でございます。
  56. 島本虎三

    島本委員 そこなんです。そのほかの公害苦情相談制度経費、これだけは若干ふえて、あとは全部前年度並みにずらっとなっている。まして公害紛争調査経費、これは前年より一千万円がっちり削られている。公害が発生して紛争が生じた場合には、その因果関係を究明して、そうしてすみやかに被害者の救済をはかる必要があるわけです。また、それが公害等調整委員会の任務の重大な一つでもあるわけです。このために予算について十分配慮しておく必要があるのじゃないですか。減額されるということにおいて、これは機構上の問題もさることながら、やはりその点に対しては、もういかなる理由があっても公害関係の予算が削られるなんというのは、これをもって嚆矢とするのです。こういうような状態では、私はどうも納得できないわけです。
  57. 宮崎隆夫

    宮崎(隆)政府委員 お許しをいただきまして、お答えをさせていただきますが、仰せのとおり、そういう数字に相なりましたことにつきましては、やはり制度の性格上、調停なら調停申請を待って紛争解決のための仕事を進めていくというたてまえに相なっておりますので、過年度において——過年度までに受けとめました申請の件数あるいは申請内容、こういうものから使いたくても使えないという事情も生じておった次第でございます。  なお、今度新しく御提案申し上げておりますあっせん制度というものが導入されることになりますと、またそれはそれなりに、かなり弾力的な経費の運用もできることになろうかと思いますし、またその実績を踏まえまして、次年度におきましては、十分な仕事ができますような予算の御審査をお願いしたいものである、かように考えておる次第であります。
  58. 島本虎三

    島本委員 これは小澤委員長に。地方公共団体がこの公害紛争処理のために支出する経費、これについては国は十分配慮する必配があるのではないか、こう思っておるわけであります。  やはり直接地方公害対策の事業実施をしたい、それに対しても国のほうがどのようにして指導し、予算上めんどうを見ているのか十分わかるような体制になっておらない、こういうような声を往々にして耳にするのであります。これは自治省から来ておりますか。−国のほうでは、十分この公害紛争処理のために地方公共団体で支出する経費をこれは配慮してあると思うのですが、これはどのようにして配慮されてございますか、または配慮してありませんか。
  59. 石原信雄

    ○石原説明員 お答えいたします。  公害関係の経費につきましては、都道府県、市町村それぞれについて標準的な団体を想定して、公害関係事務費あるいは各種の事業費をそれぞれ関係の経費に算入いたしております。  具体的に申しますと、都道府県の場合では衛生費、商工行政費、農業行政費、河川費、港湾費、警察費、それぞれ関係の費目におきまして、その行政に関連のある公害関係経費を算入しているほか、一般的な経費として、その他の諸費という費目において、ただいま先生御指摘紛争処理の経費でありますとか、あるいは公害センターの関係の経費といったものを算入しております。  市町村分につきましても同様に、保健衛生費、農業行政費、清掃費等関係の費目においで所要の算入を行なうほか、一般行政費におきまして、やはり一般的な公害関係事務的な経費を算入いたしております。  なお、四十九年度におきましては、最近の公害事象の増加を考慮いたしまして、算入人員の増加あるいは必要な事務費の増額を行なっております。
  60. 島本虎三

    島本委員 ちょっと、その他の諸費ということで、これが全部込みになって入っている。公害関係のやつは全部その他の諸費になって入る。その他の諸費のうちでも、いろいろな機械器具、こういうような方面の経費というものは、わりあいにそっちの方面に向けやすい。紛争処理関係の問題はその陰に隠れて、全部なくなってしまうおそれがないか。地方の自治体において支出するその経費については、この辺を十分配慮してやる必要があるのじゃないか。  すなわち、紛争処理費であるとか紛争処理のための費用であるとか、何かまくらことばをつけることによってこれを明記してやらなければ、現在貧困な地方財政の中では、これが全部ほかへ流用されてしまうおそれがある。やはり紛争処理というふうにして、これをわかるように何らか名目的な特記が必要じゃないかと思います。この点、自治省はどのようにお考えでしょう。  ことに最近の公害行政は、十分御存じのように、広範に、なお深刻になっておるわけでありますから、その対策は国がやるといっても、地方自治体がその代行をしなければならない場合が多いのであります。その費用の、支出経費についても十分その辺、意のかなうようにして、これは交付してやるのがいいんじゃないか、こう思うわけです。この点についてどうでしょうか。
  61. 石原信雄

    ○石原説明員 御指摘のように、公害関係の経費につきましては、全国的にその経費として、ある程度独立してとらえるような形で、金額が相当程度になっているものについては、地方交付税の積算上も独立の項目を立てております。その他の諸費におきましては、現在は公害センターの経費、これは主として監視測定関係の経費でありますが、この関係は独立さしておりますけれども、その他の公害紛争処理あるいは一般的な公害行政、こういったものについては、公害関係の共通経費というところでまとめて算入をいたしております。各都道府県なり市町村の実態を見まして、紛争処理に要する経費が、交付税上特記する程度の独立の相当大きな金額になっているかどうか、こういった点も考慮いたしまして、今後検討してみたいと思います。  と申しますのは、交付税の標準経費の積算におきましては、従来の考え方としては大部分の地方団体におきまして、相当程度の金額に達しているものを独立の項目として特記いたしておりまして、それに達しないものについては、ほかのいろいろな経費と一緒に包括的に算入するという方法をとっておるものでありますので、その点は実態関係も検討の上で今後研究させていただきたいと思います。
  62. 島本虎三

    島本委員 たとえば、いま小澤委員長が申されましたように、中央では裁定を行えるようにしてある、これは実績はまだない。都道府県には審査会がある。審査会機構が不十分である。したがってこれは、裁定はそういうようなものに置かれないで、その不十分な中に、機構とともにそれを運営する人の問題もある。そうなった場合には、その経費そのものも込みにして、その他の諸費ということになっております場合には、往々にして他のほうへ全部これは流用されるおそれがあり、依然として重要なこの機関か日の目を見ないままに放置されるおそれがある。機関はりっぱになって、国家行政組織法三条機関、公取委と同じような状態です。公取委のほうはあのように繁盛するのであるが、今度は公害等調整委員会は日の目を見ない、こういうようなばかな話はないのであります。  というのは、これは金の問題と、組織の問題、機構の問題である。したがって、地方自治体では十分この点を考えてやってほしい、このことなんであります。私は、その他の諸費の中に入れてやるということは、やはりこれはまぎらわしい。紛争のためのものであるならば、紛争処理とわかるようにしてこれはやる必要がある。これを十分検討願いたい。このことを私は要請しておきたいと思います。よろしゅうございますか。  では、次に伺いますが、防衛庁来ておりますか。——六十八国会で、公害等調整委員会設置法、これができたときに附帯決議が付されました。この附帯決議のとおり実施しておりますか。
  63. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 御指摘公害等調整委員会設置法の成立に伴う附帯決議で、いわゆる基地公害に関しまして、三項ほど御指摘がございました。  第一の、防衛施設周辺の整備等に関する法律等の運用にあたって、補助事業範囲の拡大、補助率の引き上げ等、いろいろ事業の拡充を行なうようにという点でございます。  この点に関しましては、その後、この周辺整備法に基づきます各種事業の拡大のための予算の増額等もお願いいたしました。また、補助事業の範囲の拡大といたしまして、例といたしましては、周辺整備法三条の防音工事に精神薄弱者施設を対象として加え、あるいは四条の学習等教養施設に青年の家等の施設を加える等、また補助率の拡大につきましては、消防施設につきまして、従来十分の五の補助率でございましたのを、三分の二の補助率に引き上げる等の努力をしてまいったわけでございますが、なお最近の防衛施設周辺の事情にかんがみまして、この最近の事情に対処すべく、従来の周辺整備法を廃しまして、新たに防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律案というものを今国会に提案、御審議願っているわけでございます。この法案の成立をまちまして、さらに施策の拡充等をはかり、基地周辺の事情に的確に対処していきたい、そういうふうに考えております。  また、第二番の、防衛施設の運用等から生ずる障害の紛争処理につきましては、防衛庁設置法によりまして、防衛施設中央審議会及び防衛施設地方審議会という機構がございまして、それぞれ学識経験者の委員の方々を委嘱申し上げているわけでございますが、この組織を通じまして、御指摘のように、いわゆる基地公害と申します防衛施設の運用等から生ずる障害にかかる紛争処理につきまして、これらの審議会の適切な意見を徴しまして対処していくように、部内の体制も整備しておるところでございます。  また、第三項の、民間が共用する防衛施設たる飛行場の運用に関して、中央地方を通じて、公害等調整委員会等と防衛施設庁及びその出先局との間に連絡協議をするようにという点でございます。  この点につきましても、この附帯決議の行なわれました後に、公害等調整委員会ともいろいろお話し合いをさしていただいて、そういう紛争の生じた場合の処理につきましては、十分お互いに連絡、協議をしていこうということで打ち合わせをさしていただいているところでございます。
  64. 島本虎三

    島本委員 すなわち、第六十八回国会の昭和四十七年四月十八日、衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会公害等調整委員会設置法、これは内閣提出第六十五号に対する附帯決議、この中に確かにこのようにつけられてあるのです。ことに第三項の点においては、いま委員長席に着いておられる林委員は、なかなか並みたいていではない努力をされて、こういう文句にしているわけです。しかし、せっかくつけましても、これが実際にどのようにして運営されているのか、裁定のように、せっかくいい機会を持って、そしてそれが置かれても、何らこれが利用されない、こういうような報告があり、あ然としているわけであります。  「民間が共用する防衛施設たる飛行場の運用に係る障害に関する紛争処理について、中央地方を通じ、公害等調整委員会等と防衛施設庁又は、防衛施設局との間に、連絡協議の場を設けるなど実効をあげる方途を講ずること。」連絡、方途を講じ、どのような協議をなすっておられたか、これを御発表願いたい。
  65. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 「民間が共用する防衛施設たる飛行場」の例といたしましては、御存じのように、丘珠飛行場とかあるいは千歳飛行場等、幾つかの例がございます。これらの防衛施設たる飛行場で、民間機が共用していられる場合に、現在の防衛施設周辺整備法におきましては、これらの防衛施設たる飛行場における民間機の飛行等に関しましては、これをいわゆる自衛隊等の航空機、自衛隊機あるいは米軍機と同じようにみなして、周辺対策を行なうということが周辺整備法のたてまえになっております。  したがって、この公害紛争処理法の五十条で、「別に法律で定めるところによる。」というところで、いわゆる防衛施設周辺の整備等に関する法律で、紛争事案というものを処理して、紛争を未然に防ぐような防止対策等を講じていく、そういうことでまず対処していくということで、この第三項の問題に関しましては、民間機が使われている部分に関しましても、防衛施設たる飛行場に関しましては、自衛隊機等の問題とあわせて処理さしていただくということで、まず紛争問題の起こらないような処理努力さしていただいているところでございます。  なおそれでも、その防衛施設たる飛行場で民間機が共用されている事態に関しまして、特に民間機であるということが原因となって紛争が生ずる場合には、この附帯決議第三項でもって処理するということになっているわけでございます。  一応原則的なお話し合いは、公害等調整委員会とお話し合いをさせていただきまして、こういう問題が起こったときにはこう対処していきましょう、現地的には、局と現地の公害審査会等々で密接に連絡さしていただきましょう、中央問題としてはお互いに話し合っていきましょうという協議はいたしておりますが、具体的な事案等今日まで生じてきておりませんので、具体的に協議をして事案を御相談したという例はございません。
  66. 島本虎三

    島本委員 これも裁定と同じに、せっかくいい制度をつくっても、これはまだ全然軌道に乗っておらない。  先ほどちょっと発表になったときに、何か青年の家まで今度基地周辺の法律によってやるようにする、こういうようなことのようであります。附帯決議で要請したもの以上にやるようでありますが、これはそうすると、演習場としての因果関係がなくとも、民生の安定や学術、文教、こういうような方面のものまで防衛施設庁はやる、こういうようなことなんですか。青年の家というのは、これは何ですか。
  67. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 この青年の家は、昭和四十八年度の事案といたしまして、北富士演習場におきまして採択することにした事案でございます。これは現在の周辺整備法第四条におきまして、当該防衛施設の運用によって、その周辺地域の住民の生活または事業活動が阻害されているということで、広大な北富士演習場が演習場として使用され、そういう広大な地域が一般の周辺住民、青少年の皆さん方の立ち入りが禁止されているということに伴って、戦前等に、そういった野外のいろいろな青年活動等が行なわれていた事情が、今日阻害されているという事態をとらえまして、これを四条の民生安定事案として採択したわけでございます。
  68. 島本虎三

    島本委員 どうも変なところへ飛び火していっているようですね。被害者の救済に対しては万全を期せ、自衛隊の演習場を保持するために万全を期せという附帯決議じゃないです。因果関係もな  い青年の家なんかをこれに籍口してつくってやる。目的は他にあるわけでしょう。私いま言っているのは、紛争処理法のこの当時の附帯決議、これを聞いているのですが、これは発展して青年の家までつくってやる。因果関係はない。そうだった場合には、日本国じゅうから見て、自衛隊は富士だけの問題じゃないと思う。あれはどうなんですか。他の地域の自治体との間に不均衡が当然起きてくるじゃありませんか、そういうようなことをやると。民生だとか、学術だとか、こういうのはどこまで伸ばすのか。乱用ですよ、これは。国費の乱用ですよ。  むしろ裁定は、そういうようなときにぴしっとやらなければだめなんです、小澤委員長。こういうふうに国費の乱用と権限を拡大して、この附帯決議に籍口してこれをやっている。裁定はそれならば、ぴしっと出してやりなさい。そして天下に公害等調整委員会あり、このことを大きく知らしめるべきです。こういうような横のほうへ入ったようなことをやっている。いま聞いて、これはあ然とした。何が青年の家ですか。何の因果関係があるのですか。ついにここまで拡大している。演習場だけを保持しようとしてきゅうきゅうとしているのがいまの施設庁の姿である。まことに遺憾です。こういうようなことに対して、真に公害調整委員会では裁定権を発動させるべきなんです。まあ裁定権というと、少し大それていますけれども、それくらい注意してやらぬといけません。当時つけられたこの附帯決議に藉口して、こういうようなところまで拡大しているとは思いませんでした。  私はそういうようなことで、一応はいままで考えて疑念とした点を聞きただしてみました。しかし、まだまだこれによって氷解したわけではないのであります。まだまだ私は詰めたい点、詰めなければならない点がたくさんあるのであります。しかし、私自身も準備等の関係があり、これで終わらしてもらう次第であります。  今後、皆さん、一そう健闘されるようにお祈りいたしまして、私の質問を終わります。
  69. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 島本君の質疑はこれにて終了いたしました。  次回は、明四月十二日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十分散会