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1974-03-28 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十八日(木曜日)     午後三時二十二分開議  出席委員    委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       愛野興一郎君    大石 千八君       田中  覚君    戸井田三郎君       羽田野忠文君    橋本龍太郎君       八田 貞義君    松本 十郎君       山下 元利君    渡辺 栄一君       岩垂寿喜男君    小林 信一君       佐野 憲治君    米原  昶君       岡本 富夫君    坂口  力君       折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    江口 裕通君  委員外出席者         環境庁大気保全         局自動車公害課         長       小林 育夫君         運輸省自動車局         整備部車両課長 宇野 則義君         運輸省自動車局         整備部公害防止         課長      北川  清君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   大石 千八君     愛野興一郎君   染谷  誠君     山下 元利君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     大石 千八君   山下 元利君     染谷  誠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三五号)  公害対策並びに環境保全に関する件(カドミウ  ム汚染問題)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 今回の公害健康被害補償法の一部改正中身は二年の時限立法でありまして、暫定措置として、自動車重量税収入見込みの一部に相当する額を公害健康被害補償協会に交付するということになっているわけですが、まずお伺いしたいのは、公害健康被害補償協会なるものであります。これはいつごろ発足の予定であって、大体陣容については、どういうお考えが現に環境庁としておありになるか、そのあたりについて素案がございましたら、御提示いただきたいのです。
  4. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 公害健康被害補償協会発足は、本年六月を予定しております。事業としましては、賦課金徴収及び地方自治体に対する納付、この二つを扱っております。
  5. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁は、協会自身がどういう機能を持つかという権限内容の問題でありまして、陣容について何らかの構想をお持ちであるかどうか、その辺はいかがなんですか。
  6. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 公害健康被害補償協会陣容についての御質問でございますが、会長一に理事長三ということにしておりまして、監事一という状況でございます。全体役員が五名でございまして、本部の人員が六十三名、支部を一カ所考えておりますので、五人で六十八人ということでございます。全体の本部の部としましては、ほぼ三部程度考えておりまして、一つ支部を関西のほうに設けるというような考え方に立っております。
  7. 土井たか子

    土井委員 役員人事については、すでに特定の方をお考えの上、交渉が始まっているとかなんとかという段階でございましょうか。その辺についてお尋ねします。
  8. 城戸謙次

    城戸政府委員 まだ事務的ないろいろ整理をしている段階でございまして、人事段階までは、まだ至っておりません。
  9. 土井たか子

    土井委員 ただ、先ほどのお答えでも六月に発足するということなんです。そうして、現にこの一部改正の問題はともかくといたしまして、本体である公害健康被害補償法というのは一年間の猶予期間があるにしろ、やがてこれについても施行されるということになりますと、補償協会それ自身の持つ機能と申しますか役割りというか、これが非常に大きいということを考えなければならない。したがいまして、六月に発足ということからすると、もういいかげん人事の見通しについても立てられて、そして事務的な折衝というものがなければ、どうもそういう点についても間に合わないんじゃなかろうかというふうなことも考えられる。  というのは、協会はもとよりでありますけれども公団公社事業団を含めて、とかく人事の問題については、いままで難点が多いと指摘されてきたわけであります。天下り人事であるとか、あるいは業界代表がずらりと顔を並べるというふうなことが、とかく問題にされてきた。そういうところで公正を期すような運営がはたして可能であるかどうか。特に公害についての健康被害問題ということになりますと、業者代表であるとか、あるいは官庁の天下り人事ということでもって、この協会自身が運営されるということに対しては、これは公正を期しがたいということだけは、はっきり申し上げることができると思うのです。  したがいまして、これは国会での承認事項にはなりませんけれどもあらまし人事中身についても、事前にこれがわかった段階で私たちに対してもお聞かせをいただいて、中身について十全を期していくということが、やはり好ましい姿ではないかと私自身考えるわけであります。そういう点からしまして、まだ具体的にこういう人名が俎上に乗っかっていないというふうな御返答であるやに私はただいま伺いましたけれども、いつごろ、それが人事についていろいろお考えを煮詰められて、そして具体的な事務的な折衝という段階にお入りになるのか、そこのところをひとつお聞かせいただきます。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 四月中には大体見当をつけて、そして交渉することにしようと思っております。
  11. 土井たか子

    土井委員 四月中に見当をおつけになるということですが、わかりました段階で、それではどういう方々人事候補者にのぼっているかということをお聞かせいただきますように、これまたお約束いただけますか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう注文をお出しになるのは、人事の公正を期すようにという御親切からだと思いますので、その人事については、この性格に照らして公正な人事をいたすことにいたします。
  13. 土井たか子

    土井委員 公正な人事とおっしゃる。それはいままでどの委員会についても、調査会についても、あるいは審議会についても、それから公団公社事業団は言うに及ばず、あらゆる人事については公正を期すというところで進められてきたはずの中身が、実はそうなっていないというので批判の対象になってきた経緯があるわけですから、事少なくとも公害健康被害にかかわる問題というと、やはりこれは大きいですよ。被害者の立場に立って問題に対する処理をやっていくという中身でなければ困るわけで、加害者であるはずの公害企業側を代表するような方々の顔ぶれがこの中にそろうということであっては、これは徴収をした金額を預かって、正当にこれを交付するということに欠けると思うのです。(「絶対にしません、それは」と呼ぶ者あり)だって、それは先生に聞いているわけじゃないのです。ひとつその辺はっきりお聞かせいただくというお約束を、まずいただきたいのです。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 公正な人事をいたすように心がけて、これを国会承認を受けるというような厳格さでなしに、御連絡をするようなことはいたします。しかし、御承認を受けるというような窮屈なものではないと御承知を願います。
  15. 土井たか子

    土井委員 それは、いまの法制度上、国会承認を得るなんということにはなっておりませんから、私はそこまで申しません。ただしかし、いま申し上げている趣旨のほどは長官もよく御理解いただけていると思います。わかりました。事前にそれを聞かしていただくということで……。  きて、問題はいろいろたくさんあるのですが、いわゆる道路利用税、この自動車重量税という問題でまかなっていくということについても種々問題点はございます。ただしかし、二年の間に、中身については基本的なことももちろん踏まえながら検討をして、より十分なこれに対する対策を講ずるということで、私たちはこれについて不十分ではあるけれども、この節反対はしないということなんですよ。そういうことで、この点だけはという問題をいまお伺いしたいわけですが、出てしまった被害に対して、あと追いに被害を救済するとか被害補償するという問題もなおざりにはなりませんが、しかし、何といっても、これはそういう被害を出させないという予防対策というものが講じられていないと、いま、自動車重量税というものを徴収するということについても十全な対策としては欠くるところがあるというふうに思うわけです。  そこで、お伺いをしたいのですが、例の俗名日本版マスキー法という、五十年度に実施される中身でありますが、あれについては、具体的に行なっていく上から考えますと、運輸省というものがどうお考えになって、具体的にどういうふうにお取り組みになるかということが一つは基本になります。しかし、いままでのところ環境庁はどういうふうに五十年度における実施中身に対しての御要望を運輸省になさり、また運輸省のほうはどういうふうな措置を講じんとなすっているかというところの大まかなことを、まずお伺いしたいのです。
  16. 春日斉

    春日政府委員 御承知のとおり自動車排気ガス規制は四十六年の九月にさかのぼりまして、当時長期の自動車排気ガス規制はいかにあるべきかという諮問をいたしました。それが四十七年の十月に中間報告をいただいた。それで大筋はきめていただきました。それから本年になりまして、一月にその細目を決定いたしたわけでございます。この細目決定以前につきましてもいろいろ運輸省とも御相談をいたしましたが、もちろんこの細目決定後は道路運送車両法でございましたか、その保安基準によってさらに実際の細目がきめられるわけでございます。私ども環境庁といたしまして十分に運輸省と連携をとりながら、いままで進めてきたつもりでございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 それは具体的にいうと、環境庁としては中身を記載した告示をお出しになったというかっこうでありますね。  運輸省さんのほうにひとつお尋ねしますが、それを受けていま保安基準改正されているはずというふうに考えますが、具体的な中身はどういうことになっておりますか。
  18. 北川清

    北川説明員 お答え申し上げます。  運輸省におきましては、環境庁で設定されました許容限度にのっとりまして、その許容限度を確保できるように、必要ないろいろな具体的な事項について、道路運送車両法に基づく保安基準を四十九年一月二十五日付で改正いたしまして、予定どおり実施するようにいたしております。  内容におきまして、対象自動車規制をする方式、走行モード、そういうものにつきましては、すべて許容限度で盛り込まれております事項を、そのまま適用すべく規制を加えておるわけでございます。
  19. 土井たか子

    土井委員 わかりました。  そこでお尋ねしたいのですが、この環境庁さんのほうから出されております一月二十一日付の告示中身、これは五十年度実施規制中身でありますが、これについては、各車両ともここに記載されている自動車一般について問題にされているわけですね。この点をひとつお伺いしたいのです。と申しますのは、ここにある告示第一号の中身には「自動車排出ガスの量の許容限度を次のように定め、」と書いてあるだけでありますから、したがいまして、自動車という中身については、新しいものももちろんのことながら、すでに使っている既存自動車についても、これは含めて考えるべきだというふうに私たちは理解するのですが、その点いかがでございますか。
  20. 春日斉

    春日政府委員 御指摘のように、環境庁告示第一号には「大気汚染防止法第十九条第一項の規定に基づき、自動車排出ガスの量の許容限度は、次の各号に掲げるとおりとする。」ということで、「普通自動車及び小型自動車云々ということになっております。しかしながら、この許容限度につきましては新車から適用する、こういうことに解釈上いたしておるわけでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 解釈上とおっしゃるのは、それはどこにどういうふうに書いてあるのですか。
  22. 春日斉

    春日政府委員 先生告示をお持ちでございましたら、告示の二ページの中ごろにございますが、「法第五十九条第一項の新規検査又は法第七十一条第一項の予備検査を受けて運行の用に供しようとするもの」云々ということで、読めると思います。
  23. 土井たか子

    土井委員 そうすると、五十年度において新規につくられる自動車についてだけが問題であって、既存の、いま走行している自動車については全然問題にならないということでありますか。
  24. 春日斉

    春日政府委員 いわゆる五十年度規制につきましては、そのとおりでございます。
  25. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、そもそも五十年度規制について問題にされてきた由来というのは、どの辺にあるのですか。全体の空気について排出ガス規制をすることによって、きれいな空気にしていこうということでしょう。既存自動車を野放しにしておきながら、新規についてだけ問題にしていこうということは、やはり十分さを欠くんじゃないでしょうか。
  26. 春日斉

    春日政府委員 御指摘の点はよくわかるのでございまして、私ども五十年度規制につきましてはいわゆる経過車についてはそのままなんでございますが、経過車排出ガス規制につきましては現在いろいろ検討中で、近く告示によりまして規制を行なってまいるつもりでございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 それは、この五十年規制に合わせての御検討であり、告示を出そうとなさる取り組みでありますか、どうなんでしょう。
  28. 春日斉

    春日政府委員 必ずしも五十年と全く軌を一にしておるわけではございませんが、要するに五十年度規制を行なうという趣旨は、先ほど先生の御指摘のように日本の空をきれいにしようというその命題に向かっての第一弾でございますから、やはりそれに合わせて中古車についても規制をしていく、ただし新車に対する規制と同様な規制はとてもかぶせられませんので、五十年度規制よりは緩和した形の規制がかぶることになろうと思います。
  29. 土井たか子

    土井委員 ところで、いま二ページのところを見たら、そのとおりです。新しい自動車だけを対象にしているということをおっしゃいましたけれども、この告示にいうところの「新規検査」あるいは「予備検査」というのは、いわゆる道路運送車両法にいうところの新型自動車についていろいろ申請をして許可を受けなければならない型式指定の問題ということになるわけですか。それはずばりそのものなんでしょうか。
  30. 宇野則義

    宇野説明員 お答えいたします。  道路運送車両法制度といたしまして、新規検査という制度はございますけれども、これは新たに登録を受けようとする車について行なう検査新規検査と申しております。型式指定のほうは、新規検査を受けるまでの運輸大臣指定制度でございまして、型式指定を受けた車は、新規検査を受ける際に現車を提示しなくてもよろしい、それだけの制度でございます。したがいまして新規検査型式指定制度とは全然別の制度でございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、新規検査のほうはまるで別、しかも運輸省のほうがお出しになったいまの告示に従っての保安基準の改定の中身を見ますと、この説明資料は公式の説明資料なんですが、そこでは「規制適用は、昭和五十年四月一日以降型式指定等を受ける自動車又は昭和五十年十二月一日以降生産される自動車について行うこととした。」とあるのです。この点、矛盾いたしませんか。
  32. 北川清

    北川説明員 お答えをいたします。  五十年規制につきましては、新規検査の際、すべて適用しておるわけでございますが、新規検査を受ける方策といたしまして、わかりやすく申し上げますと、大量生産されておるような車につきましては型式指定を受けて、それから新規検査を受ける、こういう方法をとっております。また、型式指定を受けない少量生産の車については、それを受けることなく直接新規検査を受ける、こういう二つの道になっておるわけでございまして、五十年規制適用について申し上げますと、五十年四月一日から型式指定を受ける車のうちの新型車について適用する。それから五十年の三月末までに型式指定をすでに受けておって、継続生産をする車につきましては五十年の十二月一日以降、またはツーサイクルの軽乗用車につきましては五十一年四月一日以降適用になる、こういう段階的な適用を加えておるわけでございまして、新規検査型式指定の関係は、ただいま申し上げましたような方法になっておるわけでございます。
  33. 土井たか子

    土井委員 たいへんわかりにくい御答弁なんだけれども、そうしますと、型式指定を受けないしかし昭和五十年四月一日以降新規検査を受けなければならない車種については、ここから抜けちゃいますね。
  34. 北川清

    北川説明員 ただいまお答えがちょっと足りませんでしたので、補足させていただきます。  型式指定を受けない車につきましては五十一年の四月から適用になる、こういうことになっておるわけでございます。  なお、型式認定制度というものを創設いたしまして、国産車については五十年十二月から適用し、輸入車については五十一年四月から適用する、こういう段階的な措置が講じられておるわけでございます。
  35. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、いまの御答弁からすれば、環境庁告示と、いま運輸省がそれに従ってとられている保安基準訂正中身は食い違っているじゃありませんか。違いますね。五十年度において、この中身実施せよというのが環境庁告示なんです。そこにあるのは、先ほど大気保全局長の御答弁にありました、新規検査または予備検査を受けて運行の用に供しようとする自動車について、これは規制を受けるわけだということでしょう。いまの御答弁からすると、型式指定検査というものは受けない、型式指定には入っていない、しかしながら、新規検査が必要な自動車については、五十年実施じゃなくて五十一年の四月から問題にするということなんです。ずれますね。どうもおかしい。環境庁大気保全局長、どういうふうにお考えになりますか。
  36. 春日斉

    春日政府委員 私どもがいわゆる五十年規制と申しておりますのは、たしか四十九年一月二十一日の告示で始まるわけで、詳しくは五十年度規制という呼び名もおかしいわけでございますが、先ほどおっしゃいました保安基準との食い違いというものは、運輸省で私ども告示を具体化されますときに、ごく一部の外国車等についての、あるいはツーサイクルエンジンの軽自動車についての適用の問題で多少ズレがある、こういう御指摘であろうと思うのです。この点につきましては、運輸省ともいろいろ御相談をいただいたわけでございますが、これはやはり保安基準の中でおきめいただいて差しつかえないことだ、かように私ども考えておるわけでございます。
  37. 土井たか子

    土井委員 保安基準の中でおきめいただいて差しつかえないどころの騒ぎじゃないのです。環境庁が責任をもって告示をお出しになっていることについては、実施するということが大前提ですから。  そういうことからしますと、いまの御答弁運輸省に対して少しお伺いしたいことがあるわけですけれども、現に型式指定に対しての申請大量生産をする場合について必要であるということであるわけですが、一体台数はどれくらいをきして大量生産というふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。そしてまた、型式指定に対しての申請が要らないという場合はどういう場合でありますか、お答えいただきたい。
  38. 宇野則義

    宇野説明員 お答えいたします。  運輸省が行なっております自動車型式指定制度は、国の行ないます新規検査の業務の合理化をはかるために設けられた制度でございまして、自動車製作者申請に基づいて指定をするという制度になっております。したがいまして、申請をするかしないかというのは、法律の体系的には申請者側の意思によって行なわれるということになるわけでございまして、申請を行なわない、型式指定を受けない車は当然国の行ないます新規検査の際に、車を国の車検場まで持ってきていただくという制度になっておるわけです。型式指定を受けた車は事前にチェックができますので、新規検査の際に、国の車検場にその車を持ってこなくてもけっこうです、こういう制度でございます。  したがいまして、受けなければならないというような制度にはなっておりません。そこで量産車——俗に量産車といっておりますけれども、現在実施しております型式指定対象になっている車は、国産乗用車あるいは小型トラックあるいは一部の大型トラックといったようなことで、明確に何台以上が量産車であるというような定義づけはいたしておりません。
  39. 土井たか子

    土井委員 いまのような御答弁なんです、大気保全局長。そうしますと、やろうとすれば、型式指定を受けずとも大量生産できるのですよ。そして国内で大量生産をした結果——しかも、これは新規検査については五十一年四月一日以降ということでありますから、五十年実施といういまの日本版マスキー法の意図するところ、したがって環境庁告示でもって、だいじょうぶこれはやっていけるというふうにお考えになっているところは、すっぽ抜けていくという可能性が十分にある。これははっきり言うと、十分にあるのです。こういうことをなおざりにしておいて、いまの自動車重量税でもって、大気汚染の結果、気管支ぜんそくをはじめとしていろいろ健康被害を受けている人に対しての補償を何とかしていこうといったって、これは片手落ちじゃないでしょうか。  どうも基本的な問題というものがなおざりにされていて、上っつらのその場しのぎをやろうという姿勢がなきにしもあらず。これは一つの例だと思う。大気保全局長、いまの御答弁をお聞きになっていて、そういうふうにお考えになりませんか。どうも告示出した結果、運輸省のほうの保安基準についての訂正については何度となく交渉を重ね、何度となく話し合いを進めた結果、こういうことになっておるから、だいじょうぶだという当初の御答弁だけれども、私は伺っていて、そういうふうな気がしません。だんだんこれに対して、あやしげになってきた。保全局長、一体どういうふうにお考えになります。
  40. 春日斉

    春日政府委員 型式指定を受けていない大量生産車というものは現実にはございません。ごく一部の輸入車につきましてあろうと思いますが、これはきわめて少数の例にすぎないと思います。したがいまして、私ども先生の御指摘いただいたことが現実に起こり得るとは必ずしも考えていないわけでございます。
  41. 土井たか子

    土井委員 現実に起こり得ないようなことが起こって公害は激発したのです。これはお役所からすると、現実には起こり得ないという予測のもとに、あるいは予見のもとに、いろいろ行政を進めてこられた結果が、こういう結果になっているのです。いままでがだいじょうぶだからだいじょうぶだろうという甘い考えというのが、よく間違いのもとでございます。いま法制度上からいうと、先ほど運輸省の御答弁の中にもありましたとおり、必ず型式指定に対しての申請をやって、申請に対しての許可を受けて、そうしてそれが公報に掲載をされて、その結果初めて生産にかかるというふうなことは法的に義務づけられておりません。それはたとえば大量生産をやろうとする場合についても、型式指定申請をやらずしてやろうとしたら、できるわけなんですね。  極論すれば、いまの法制度上からいうと、そういうことになっておるのですよ。だから、それからしますと、そういう事実があった場合だって違法行為となり得ないです。そして現にこれは型式指定を受ける自動車についてだけ、運輸省のほうは五十年年次段階で問題にされるけれども、いま環境庁が問題にされている新規検査自動車については問題にされてないのです、端的に言うと。この点のズレというものが、やはり現実の問題として必ず出てくると私は思う。  自動車産業というものは、いままでのいきさつからすると、これは日本の高度経済成長をささえてきた第一線の産業の中でも、たいへんに脚光を浴びた部門でありますよ。それだけに、もうけに対して執拗であったということはひとつ念頭に置いて考えなければならない。世界でも第二位の自動車工業国というものに日本はのし上がっているのですよ。だから、そういうことからしますと、これは悪いものの言い方をすれば、もうけることに対してあくどい、場合によったら手段を選ばず、エコノミックアニマルの面目躍如たるようなやり方でもってやるということを考えておいていいと思うのです。そういうふうなことを現実の問題から考えてまいりますと、まきか起こらないだろうで甘く考えられたら、ちょっとこれは、取り返しのつかないことが起こってしまってから、あとで手を打つようなことにもなりかねないわけでありまして、ひとつこの点、もう一度しっかりと検討し直してもらう必要があるようでありますが、大気保全局長、どうですか。
  42. 春日斉

    春日政府委員 確かに先生の御指摘の点はよくわかるわけでございますが、現実問題として型式の認定を受けていない大量生産車を販売しようといたしますと、一台、一台、これは陸運事務所に現車を提示いたしまして検査を受けなければならない理屈になってまいります。こういったことはまず不可能でございます。したがいまして、私ども運輸省におかれても、そういう大量生産車については当然型式認定をした後でないと、大量生産、大量販売、こういうことで現在のような自動車販売のルートには乗っていかないものと考えております。したがいまして、確かにおっしゃいますことはよくわかるわけでございますが、現実にはそういったことはとてもできないのではなかろうか。ただ先生は、現実に起きないことが起こるのが公害だとおっしゃるわけでございますけれども、さように考えておる次第でございます。
  43. 土井たか子

    土井委員 それにしても、いまの環境庁告示と、運輸省のほうのお考えになりました保安基準に対しての改定の中身というのはどうも一致しない。こういう点について何度か話し合いを進められたという御答弁だったわけですから、どういう経過があってこういうことになったというのを、それじゃひとつお聞かせいただきましょうか。
  44. 小林育夫

    小林説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘のおもな点と申しますのは、実施時期がずれているじゃないか、そういう点だと思います。これにつきましては五十年の規制——いわゆる五十年の規制に限らず従来から私ども、四十八年あるいはそれ以前にも規制をいたしておりますけれども、やはり法律上の経過措置というものが当然新しい規制をする場合には必要でございますので、それを新型車——俗に新型車と申しておりますけれども、新しく型式認定をとる車と、それから継続生産車と申しておりますが、これは前に型式認定をとって、そのままの形で継続して生産している、これを分けまして、新型車については規定された時期から直ちに適用する、それから継続生産をしている車両につきましては、従来から大体半年程度の実施時期を置いて、それで実施をきせるということをやってきておりまして、五十年につきましても、やはり同様な考え方からそういうことをいたしたわけでございます。  ただ一部ツーサイクルあるいは一部の外国製自動車につきましては、その期間が一年になっているものもございますけれども、これにつきましては、それぞれ理由がございまして、運輸省とも相談の上そういう措置をとったわけでございます。
  45. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これは運輸省保安基準の改定と、環境庁のお出しになった告示中身は、事実問題において必ず合致するという認識はおありになるわけですね、漏れなくこれは実現できる、五十年度におけるいわゆる規制基準に合致するようにしてみせるということでありますね。それを自信をもってお答えになれますか。
  46. 春日斉

    春日政府委員 自信をもっていたすつもりでございます。
  47. 土井たか子

    土井委員 そうすると、お伺いするのですが、五十年に対しての見通しなんですが、いまどういうぐあいになっていますか。業界などを見ていくと、メーカー側の様子を見ていくと、これはだいじょうぶ、五十年にやれるなあというふうな見通しが立っておりますか。
  48. 春日斉

    春日政府委員 各社おそい早いという差はございますが、いずれにいたしましても、できるものと私ども考えております。
  49. 土井たか子

    土井委員 しかし、どうも一、二社を除いて、いま現に五十年の規制値に合致する合格車というのは、まだ一号か二号程度しか出ておりません。他のメーカーは、これに対してたいへん苦心惨たんをしているまっ最中なんです。だいじょうぶ、やっていけると、これに対してもたいへん心強いお見通しでありますけれども、そう甘くはないと私は考えているのです、いろいろ中身を見ていった場合。技術的な細部にわたる点は、私は専門家ではありませんから、そうわかりませんけれども、しかしそれにしても、苦心惨たんなありきまであるというのはよくわかる。そのときに、先ほど申されたように、おおよそ一台一台新規検査を受けるようなことはユーザーとしては好ましくない。したがって、大量生産をメーカーがやる際には、こちらが要求せずとも型式指定申請をやるであろうというお答えだったわけですね。  そういうことから考えてまいりまして、現に、これは運輸省さんにお尋ねしたいのですが、型式指定申請をおやりになる場合に、五十年度内に実現をしなければならない規制値に、だいじょうぶ見合っている中身であるというチェックは、どういうふうになさいますか。これは現在までのところは、公害防止ということに対して、その年次ごとに問題になってきたという、いろいろ具体的な基準値はございますけれども、特に五十年からこの五十一年にかけては、日本版マスキー法といわれている中身に対して、ぜひこれを実現させていかなければならないという大きな課題があるわけですね。これを運輸省の場合は、新しく型式指定申請をされているこの車について、どういうふうにチェックをされていくか、これをひとつお聞かせをいただきたいのです。
  50. 北川清

    北川説明員 お答え申し上げます。  先生指摘大量生産のものの型式指定車の審査、これの御質問だと思いますが、型式指定につきましては、安全の観点と公害の観点と両面から、道路運送車両法に基づく保安基準に適合しておるかどうかのチェックをいたしております。今回は、公害の問題、排気ガスの問題が問題になっておりますので、その点を中心にして御説明申し上げたいと思います。  自動車メーカーのほうにおきまして、新しく車を設計し試作をいたしまして、この新基準に適合するという見込みのあるものができましたときに、その車の概要をつけまして、運輸大臣型式指定申請をするわけでございまして、申請がございますと、その内容について、私ども運輸省の研究所におきまして、当該対象となる車、新車とそれから一定走行いたしております車、この二台につきまして、基準に適合しておるかどうかのチェックをいたしまして、これにより、大量生産されます車が保安基準に適合するように出るかどうかを見定めた上、運輸大臣型式指定をするわけでございます。  型式指定を受けました自動車製作者のほうにおきましては、大量生産いたします車の完成検査をする際、その個々の車が保安基準にいいます五十  一年規制に適合しておることを、品質管理手法を利用いたしまして、そしてチェックをする。それで基準に適合しておるものに対しまして完成検査終了証を交付する。こういうシステムになっておりまして、こういうことを前提といたしまして、個々の車を使用する場合には、自動車検査登録の際に、現車を提示することなく、その車の使用登録検査が受けられるというシステムにして、この基準に、新車としての新規検査の際の適合性を確保しておるわけでございます。  なお、型式指定を受けない車につきましても、この基準に適合きせるために、今回、五十年から新たに型式認定制度という、公害の観点についての制度を創設いたしまして、型式指定と同じような段取りによる公害基準への適合性をチェックできるよう、システムをつくり、そのような指導をしていくというふうに措置を講じております。  なお、先ほど、個々の車につきましての検査の時点が五十一年四月というふうに申し上げたのでございますが、これは国産の車につきましては五十年十二月から適用いたしております。輸入車とツーサイクルの軽乗用車、これについて五十一年四月から、こういう二段階になっておりますので、ちょっと訂正さしていただきたいと思います。
  51. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁を少し整理しながら御質問させていただかなければならぬのですが、そうしますと、五十年の四月一日以降に型式指定を受ける自動車については、別に新規検査を必要としない。その型式指定申請している段階許可をおろすまでに、この規制適用を受けて規制値を十分に充足しているという認識があって許可をするということでありますから、新しく新規検査を必要としないということを、いま御答弁の中では一つは言われたわけですね、そういうふうに聞こえたのです。  それともう一つは、新規検査を必要とする車であって、しかも型式指定を受けない車については、型式認定制度というものを新設するという御答弁があったわけですね。この型式認定制度というのは、いままでになかったわけですか。新しく創設されたわけですね。そうしますと、これは型式指定を受けない車について、新規検査を必要としないということのために特設された制度というふうに理解していいですか。少し整理しながら御答弁を下さい。
  52. 宇野則義

    宇野説明員 お答えいたします。  最初にお答えしました新規検査型式指定制度につきまして、説明が不十分であったかと思いますので、もう一度繰り返して御説明さしていただきたいと思います。  道路運送車両法制度によりまして、国内で使います自動車につきましては、どんな車でも、それを使おうとする際には新規検査を受けなければならないということになっております。これが大前提にあるわけでございます。この新規検査を受ける際は、法律の原則論といたしましては、車そのものを陸運事務所に持ってくるという制度になっております。それに対しまして、型式指定を受けた車は、新規検査は受けます。しかしながら、新規検査を受ける際に、車そのものを持ってこなくてもよろしい、そういう制度になっておるわけでございます。それだけ御説明させていただきます。
  53. 土井たか子

    土井委員 そこで——それはもういろいろ形式的な手続上の問題なんですよ、いまおっしゃったのは。だから実際問題としては、型式指定を受けてという段階で、大体新規検査についてもパスするであろうという認定があると考えていいわけですよね、実際問題は。そうでしょう。だから、そこでこの型式指定を受けない車については、新たに型式認定制度というものを設けて、そこで新規検査を事実上は受けなくても、新たに受けなくてもだいじょうぶ、パスするであろう、認定をしようというので創設された制度じゃないですか。そういうふうに理解していいんじゃないですか。どうなんです。
  54. 北川清

    北川説明員 お答え申し上げます。  型式認定制度と申しますのは、公害の問題についての事前チェックと申しますか、型式指定と同じようなチェックをするということでございまして、安全の面については、まだチェックがきれておりません。したがいまして、陸運事務所には現車を提示いたしまして、安全の面についてのチェックを受ける。新規検査の際に、現車の提示は必要なわけでございます。それで、公害の観点については、型式指定と同じように、事前に完成検査により基準に適合しておることのチェックが進んでおるということでございます。
  55. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、特にこれは五十年自動車排気ガス規制、つまり日本版マスキー法に従って考えられた運輸省側の型式認定制度だというふうに理解していいわけですね。つまり排気規制という中身を具体的にこれでよろしいというふうに認定していく制度なんですね。そのことのためには、具体的にだれがどういうふうな形でもって認定をするということになりますか。これはいままでにないんでしょう。今度この五十年自動車排気ガス規制に従って考えられているこれは認定制度ですから、だれがどういうふうに認定するんですか、どこで。
  56. 北川清

    北川説明員 お答え申し上げます。  型式認定制度は、運輸大臣が、公害の問題について基準に適合しておる当該車の型式について認定する、こういう制度になっておりまして、その認定をする際には、先般からお話に出ております型式指定制度と同様に、所要の基準に適合しておることの資料をつけまして、代表的な車を私どもに提示を受け、運輸省の研究所のほうにおきましてチェックをし、その車については確かに基準に適合しておるということの審査を経た上、運輸大臣が型式認定を行なう。型式認定を受けましたその申請車におきましては、それと同じ車について新規検査を受けようとする場合には、基準に適合しておることについて十分排気ガス検査を行ない、基準に適合していることの証明をつけまして検査を受けるというシステムをつくったわけでございます。
  57. 土井たか子

    土井委員 この排気ガスについて、だいじょうぶだという資料を添付されるのはメーカーですね。メーカー側がそれに対して、排気ガス基準値以下であります、規制に適合いたしておりますというふうなことについて資料を用意して、それを型式指定申請の際に書類の中に添付されるわけですね。それに従って運輸省としては、よいか悪いかということを判断なさるわけでしょう。いかがです。
  58. 北川清

    北川説明員 お答えいたします。  型式認定の際にも、私ども運輸省の交通安全公害研究所におきまして車の審査をして、基準に適合しておることを見た上、認定をいたしております。  先ほど来、型式指定を受けるものと型式指定を受けていないものということについてのいろいろお話が出たわけでございますが、実はこの五十年規制より前の四十八年規制とか、そういう場合におきましては、大量生産をきれます型式指定を受けるものにのみ適用をいたしておったわけでございますが、五十年規制のきびしい規制、こういうことで、この規制の場合には、大量生産をしまして型式指定を受けるものも型式指定を受けないものも、すべて五十年規制に適合するようにという措置を講じまして、新規検査の際、基準に適合すべしということがきめられたわけでございます。  そこで、具体的なそのやり方につきまして実効があがりますように、先ほど来申し上げておりますように、型式指定制度のほかに、公害だけの問題についての型式認定制度、そういう制度をつくりまして、実際上の車両検査の際に基準に適合しておることのチェックが十分できるような方途を講じたわけでございます。
  59. 土井たか子

    土井委員 わかりましたが、型式認定制度というのは、何によってそれはきめられているのですか。この保安基準等の一部改正の中には入っておりませんね。それは入っていない……(北川説明員「いや、入っております」と呼ぶ)どこですか。
  60. 北川清

    北川説明員 四十九年一月二十五日付の運輸省令といたしましては、道路運送車両保安基準及び道路運送車両法施行規則の一部改正省令ということで公布されておりまして、この道路運送車両法施行規則の改正でその制度をつくったわけでございまして、施行規則第六十二条の四というところで制度ができております。この資料のうしろから三枚前から始まっております。  第六十二条の四「(保安装置の型式認定)」で、一酸化炭素発散防止装置、こういうものの型式について運輸大臣の認定を受けることができるということで、その中身内容につきましては、公害の観点についての型式指定制度に準ずる制度として制度をつくったわけでございます。
  61. 土井たか子

    土井委員 これは「受けることができる。」であって、受けなければならないになっていないですね、いまおっしゃったように。だから私はどこにありますかと言っているのですよ。先ほどからの御答弁では、必ず受けて、そうしてこの規制適用というものが具体的に実行されるがごときたいへん自信のある御答弁だったから、どこにありますかと言ったので、「受けることができる。」これは、自主的な判断というものはメーカー側にゆだねるというかっこうになっています。どっちでもけっこうですよ、受ける気があったら、どうぞなすってくださいという中身じゃありませんか。これじゃ、もう一つどうにもならない。そういう意味も含めて、私は、あともう一つ聞きたい問題がありますけれども、これは実はいろいろ難点だらけですよ。  告示に従って、道路運送車両保安基準の一部改正中身についてはできる限り、五十年度実施ですから、もう一度考え直してみるということを要求します。そして、この中身については、環境庁のほうが、告示の中に出されたことに合致するということを先ほどからおっしゃっていますけれども、具体的に推していきますと、いろいろそぐわない点、どうも一枚にならない点というのが出てきますよ。必ず出てくる。だから、この規制適用について、特にいただいている一部改正説明資料の5の項目なんかについては再検討をここで要求します。いかがですか。
  62. 北川清

    北川説明員 お答え申し上げます。  この五十年排出ガス規制適用につきまして、道路運送車両保安基準による適用が具体的に実施できるように、規制適用方法段階的に実施したわけでございます。これによりまして、許容限度が求めております環境改善に十分その機能が果たせますよう、この基準の十分な適用について徹底をいたすものでございます。  なお、継続生産車などにおきまして、たとえば五十年十二月以降適用されるわけでございますけれども、これにつきましては自動車メーカーのほうにおきまして、準備ができ次第少しでも早期に、そういう装置がつけられるように、対策が講じられるような指導はしていくということを申し上げたいと思います。そういうことで、この規定につきまして十分効果がありますように、指導を強化し、万全を期していきたい所存でございます。
  63. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 土井君に申し上げます。  質問の予定の点は、かねての申し合わせの線もありますので、残余の質問については、それを踏まえてお願いしたいと思います。
  64. 土井たか子

    土井委員 わかりました。  いまの御答弁、どうももう一つはっきりしないのですが、これについては再度時を改めて、さらに質問を継続するということにしたいと思います。  もう一つ、どうしてもはっきりしておきたいのは、自動車そのものも問題だけれども自動車は燃料を入れなければ走らないわけでありますから、ガソリン、燃料について少しお伺いしておきたいのです。  ガソリンの無鉛化という問題これは例の東京の柳町事件から端を発しまして、環境庁は大気中の鉛というものをどの程度に押えるべきかということを示す環境基準の検討を四十五年の九月以降続けていらっしゃるのですが、具体的に鉛の量をどういうふうに押えていったらいいかという環境基準は、いつ結論が出るのですか。
  65. 春日斉

    春日政府委員 鉛の環境基準でございますが、御指摘のように四十五年九月から厚生省の生活環境審議会公害部会で検討がスタートしたわけでございまして、環境庁発足に伴って、これが中央公害対策審議会の大気部会に引き継がれたわけでございまして、現在同審議会の大気部会の鉛に係る環境基準専門委員会で非常に熱心に検討を進められてきておるわけでございます。たとえて申しますと、厚生省の生活環境審議会の当時六回、環境庁発足後十二回審議が行なわれてまいっておりますが、環境庁といたしましては、すみやかに結論が得られますよう審議会にいろいろお願いいたしております。早期に環境基準の設定をはかるつもりでございます。
  66. 土井たか子

    土井委員 それは早期に早期にといつも言われて、検討中というのがどこまでも続くのが、いままでのいきさつのようであります。この問題も日がたってずいぶん長いのです。早期にとおっしゃる中身を態度で示していただかなければ困るように思いますね。それは環境庁しっかり責任をもって急いでいただく必要があると同時に、実はガソリンの無鉛化ということは通産省が当初はたいへんな鼻息だった。当初の通産省の予定からすると、この四月一日付でガソリンから鉛はきっぱりと消えてなくなるということで、このガソリン無鉛化対策というものは進められてきたといういきさつがあるわけです。ところが、四月一日を目の前にして、どうもガソリンの無鉛化については先に延ばしていくという声がずっと出て、そしていまのところは一体どういうことになるのかというので、いろいろな説が流れております。具体的にこれに対してはどういう方針で臨まれるかというあたりを、ひとつまずお聞かせいただけますか。
  67. 江口裕通

    ○江口政府委員 お答え申し上げます。  鉛の無鉛化につきましては、四十五年の例の柳町事件を契機といたしまして、非常に問題になったわけでございます。その当時、私どもは無鉛化を確かに四十九年四月を目途にやるというつもりで対処してまいっておるわけでございます。同時に、並行して通商産業省の諮問機関でございます産業構造審議会の産業公害部会の中に自動車公害対策委員会というのがございまして、当時四十九年の四月一日、無鉛化実施という中間報告の御答申をいただいておるわけであります。その後その線に沿いまして、まず鉛の低鉛化の方向で極力進めますと同時に、自動車におきましても無鉛を使える対策車を整備するということで、四十七年度以降の新車につきましては全部対策を行なっておるということで、実施してまいっておるわけでございます。  ただ問題は、その際ございました問題といたしましては、例の安全性の問題が実はあったわけでございます。具体的に申しますと、鉛のないガソリンを使いました場合には、いわゆるバルブシート・リセッションが起きるという問題が当時すでに指摘されておったわけでございます。その点につきまして一燃料小委員会というものを関係業界及び研究所が一体になりまして組織いたしまして、二回にわたるかなり大規模な調査及び研究を行なっております。具体的に申しますと、四十五年の十二月から四十六年五月、それから四十七年の七月から四十八年の四月、二回にわたって行なっております。その結果によりますと、車種によりましては、やはりバルブシート・リセッションの問題が起きるということがかなり鮮明になってまいったわけでございます。  そういう状態を踏まえまして、一方におきましては公害対策の要請がございますが、同時に安全問題というものがございますので、その後産業構造審議会のメンバーの方にも鋭意御検討いただきまして、このほど約半年程度延ばすわけでございますが、無鉛化の方向にさらに一歩を進めるということで、四十九年の十月一日以降、全体のほぼ八割程度になっておりますレギュラーガソリンにつきましては、無鉛化のガソリンを出すということで、一応の御答申をいただいておるわけでございます。現状はそういう状況になっております。
  68. 土井たか子

    土井委員 レギュラーについては、四十五年の八月以降ですか。そしてハイオクはどうですか。
  69. 江口裕通

    ○江口政府委員 御答申でいただいておりますのは、四十九年の十月以降でございます。これはレギュラーにつきましてでございます。これは無鉛化を供給する。それから、ハイオクにつきましては、なおしばらく残すということでございます。
  70. 土井たか子

    土井委員 それはそれとして、いま安全性の問題ということでいろいろ取り扱いが当初の予定からずれてきたというふうな御答弁でありますが、その間、四十六年より四十七年のほうが加鉛量がふえているメーカーのガソリンがあるのです。さらに、四十七年に比べて四十八年は、レギュラーもハイオクも、それぞれこの加鉛量がふえているという実態があるのです。たとえばこの社名をあげますと、レギュラーガソリンについては、四十七年に比べて四十八年というのがふえているところが、それぞれ五社ばかりあるわけですが、ハイオクについていうと、これは基準値をオーバーしているのすら——四十七年に比べて、これがふえているというだけじゃありません。四十八年度ですね、九州石油なんというのはO・三二、ゼネラル石油も〇・三一、日本石油も〇・三二というぐあいに、それぞれハイオクについても、これはきめられている最高値をオーバーしているわけですね。  こういうことに対して一いままで、ことしの四月一日付で無鉛化という予定を立てられて臨んでこられた中で、こういう実態が出てきているわけですから、一体これに対する取り締まりというのはどういうふうになさるのですか。
  71. 江口裕通

    ○江口政府委員 御指摘の点は、おそらく東京都の調査になられた分等を基礎としておっしゃっておるのではないかと推定しておるわけでございますが、確かに概括的に申しまして、実は私どものほうは具体的な抜き取りを現在いたしておりませんので、特にどこがどうということをはっきり申し上げる、断定し切れる状態ではないわけでございますが、一般的に申しまして、確かに御指摘のように四十七年から四十八年にかけまして、やはり加鉛量というものはやや横ばい状態と申しますか、若干そういう傾向があることはいなめないと考えております。  これはいろいろな理由があると考えるわけでございますが、御存じのように、鉛を加鉛いたしますということは、やはりガソリンのオクタン価を高めるということには非常に寄与するわけでございます。したがいまして、鉛を徐々に下げていくということにいたしますと、オクタン価がやはり下がってくるわけでございます。この点につきましては、私どものほうといたしましては、オクタン価が下がりますと、やはり自動車の走行上の支障が出てまいるわけでございますので、引き続きオクタン価の維持につとめるように指導しておるわけでございます。  ところで、そういうふうにいたしますと、往々にしていわゆる芳香族あるいはオレフィンというようなものの混入という事態が懸念されるわけでございますので、それは厳にそういうことのないように指導しておるわけでございます。そういう関係からいたしまして、オレフィンあるいは芳香族の含有量というものは、現在やはりこれも従来の私どもが指導しておりました線以上にふえておらないわけでございます。  ところで、オクタン価の問題を維持する、そして鉛をどんどん下げてまいりますということになりますと、オクタン価維持のために一つの限界がどうしても出てくるということになろうかと考えられます。そういうことから、おそらくこの横ばい現象というのは出ておるのではないかというふうに考えておりますが、なお通産省といたしましては、この点は十分具体的に調査をして、もう一度よくチェックをしてまいりたいと考えております。
  72. 土井たか子

    土井委員 それはひとつ責任をもって、通産省はこういう行政指導で臨まれるわけですから、チェックを十分具体的に調査をしてやっていただかなければなりません。いままで、このことに対してのチェックが不十分だったと思うのです。調査もなさってないし、チェックも不十分だったと思うのですね。言ったら言いっぱなしという行政困りますよ。行政指導一本出せば、それで十分に事は対処されているというふうにお考えになったら私は違うと思う。だから、ひとつこのことに対しては具体的に調査をして、チェックをなさった中身については資料要求しますから、出していただけませんか。
  73. 江口裕通

    ○江口政府委員 具体的にどういう方法をとりますか、いまのところまだ、私ども検討をこれからしてまいりたいと思っておりますし、至急そういうことを詰めてまいりますが、そういうことで調査をいたしました結果は御報告いたしたいと思います。
  74. 土井たか子

    土井委員 きてこれ、十月までレギュラーについては無鉛化についての時期をずらしたあと、これはハイオクについて無鉛化についての問題がやはりだいぶ先に延びる。一体、いつごろまでハイオクについては無鉛化ということにならないのか、その辺、ひとつ一言言っていただいて……。
  75. 江口裕通

    ○江口政府委員 お答え申します。  一昨日ちょうだいいたしました産業構造審議会公害部会の御報告によりますと、一応五十二年の四月ということをもってハイオクについても供給をいわゆる無鉛ガソリンにするというふうにいただいております。五十二年の四月を目途として、そういうことをしろというふうにいただいております。したがいまして、通産省あるいは関係省といたしましても、その方向に沿って進めてまいりたいと考えております。
  76. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁からすると、五十二年の四月までは無鉛と、それから有鉛のガソリンの併用を認めるということになるわけですね。そういうことになるわけですね。そういうことからすると、安全性の問題もきることながら、大気汚染を防止するということのためには、ガソリンの無鉛化の完全実施ということがずんずんおくれていくということは好ましくないことは、これは事実です。特に、先ほどずっとお尋ねを進めました自動車業界の姿勢というのが気にかかる。やはり無鉛化というものがそれだけ延びることによって、自動車それ自体の車体についてどういうふうに対策を講ずるかという姿勢がだれるという気配がな・くはないか。この問題たいへん気にかかるわけであります。特に五十年実施ということになっているマスキー法の日本版についても、そういうことが一つは骨抜きになっていく突破口になりはしないか。これはたいへん問題になるのですよ。  したがいまして、この無鉛化の問題と、それから自動車をつくるメーカーがどういう自動車をつくるかということは表裏一体の問題でしょう。だからそういうことからしまして、この五十年度実施ということのマスキー法日本版の中身ですね、これを再度私は申し上げたいのだけれども、もう一度環境庁運輸省との間で話を詰めて、そうしてさらに、先ほどいろいろあった型式指定申請を受けない自動車については型式認定制度というのを設けるということでありますけれども、これもメーカー側の資料によっていいか悪いかということを判定されるということに当然なっていく中身になっていますから、こういうことについても十分にこれは役所側から——この担当の役所ということになると、運輸省は言うまでもないですけれども、通産省も、それから肝心の告示出しているところの環境庁も、これに対して責任がとれるようなこっちの側の体制というものを、やはりはっきり確立する必要があるように私は思うのです。  そういうことがいまあるかというと現にないですよ。だから、そういうメーカー側が出すところの認定をする際の資料に基づいて、こっちはこっちでその資料に基づいていいか悪いかをきめるのじゃなくて、こっちもその資料に臨むときに、自主的な判断ができるような素地というものを講ずるだけの必要があると私は思う。そういうことでないと、せっかく出したところの五十年度実施ということに対して、大気保全という観点から、自動車排気ガス公害をなくしていこうという意欲十分な中身というのも私は骨抜きになっていく。そういうことからすると、もう一度環境庁の出された告示に従って、運輸省は言うまでもなく、通産省ともひとつ話をさらにせんじ詰めていただいて、いまのままでいいかどうかということも、もう一度再検討の出発点にして御検討願うようにここで申し上げて、時間ですから私、終わりにします。
  77. 春日斉

    春日政府委員 ただいまいろいろ御指摘いただきました点を踏まえまして、私ども十分関係省庁と連携をとりつつ、五十年規制の完全実施に邁進いたしたい所存でございます。
  78. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 島本虎三君。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 大体前回の残りでありますから、私はこの機会に公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する締めくくりにしたい、こう思うのであります。  まず、この母法にあたるのが公害健康被害補償法であります。それには五十四の政令事項等ございまして、この実施期間を含めて政令の進捗状況はどのようになっておりますか。この機会に明確にさしていただきたいと思います。
  80. 城戸謙次

    城戸政府委員 先生の御質問の政令でございますが、この中には一部調査等待たずしてできるものもございますが、大部分は調査研究の結果でないと、その中身ができないのが多いわけでございます。そういう点から、本来ならば法律の中に入れる事項を政令事項として法律段階で整理してまいったわけでございます。したがって、現在私ども調査を非常に急いでおりまして、もう大部分の調査、いま集計の段階になっております。これがまとまりました上で、政令案について検討いたしまして、必要な中央公害対策審議会の議等を経ました上でつくってまいりたい、こういうことでございますから、個別の政令五十四それぞれにつきまして、現在どうなっているのだというのは、まだ申し上げる段階には至っていない、これが現状でございます。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 当時、二十一カ条にわたっての附帯決議がついてあります。これは可及的すみやかに政令を制定して実施するように、こういうような附帯決議がついているわけです。長官、これは急がせないと、せっかく、法律ができたのは四十八年九月の十三日でございましたか、それが通ってまだ政令もできない、政令もこれからだ。しかし、一方提案されておりますところの公害健康被害補償法の一部を改正する法律案、これは九月の一日から実施したい、こういう意向なんです。そうすると、これだけは実施する。しかし、この母法による五十四の政令事項は、それまで間に合わない。こうだったら片ちんばなものになってしまう。これは大臣として決意をもって、この点はきちっとしないとだめだ。せっかくこれをつくり上げても、ほんとうに母法にあたるこの法律の政令事項が整わないことではどうにもならないじゃありませんか。これに対する大臣のはっきりした決意を、この際、お聞きいたします。
  82. 三木武夫

    三木国務大臣 先般も申し上げましたごとく、これは九月の一日から実施をいたしますので、六月、おそくとも七月までには政令案を全部まとめる決意でございます。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 では政令五十四にわたるこれらのものは、少なくとも七月当初までには全部これは完備するものである、こういうように解釈してもよろしいということですか、大臣。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 おそくとも七月中には政令案……。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 ではそういうように、ぜひ実施してもらいたい、こう思います。同時に母法制定の際には、二十一の附帯決議があります。あの附帯決議に対しましてのこの経過は、まことに真剣そのものであります。そうして一つ一つが本法を補ってあまりあるほどの内容があります。しかし、考えようによっては、この附帯決議で完全に補完するのでなければ、本法の実施そのものは不完全きわまるものになる、このような意味もあるのであります。したがって、附帯決議に対してはどのように配慮し、これを行なっておりますか。事務当局、ひとつこれに対する見解を、この際はっきりしておいていただきたい。
  86. 城戸謙次

    城戸政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもいろいろ調査をやっております。それから政令の準備にこれから入るわけでございます。そういうすべてにわたりまして、附帯決議の趣旨を体して十分やってまいっておるつもりでございます。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 まだできないのに附帯決議を体して十分行なっているというのは、どうもおかしいだろう。あれには可及的すみやかに、迅速にとなっている。まだ迅速じゃない。ことばはいっても内容はなかなか伴わない。それで先般質問した中にもいろいろございましたが、これはどうしてもだめだということです。  橋本政府委員に伺いますが、航空機騒音、新幹線騒音の被害者救済に本法を適用することができないということであります。する意思がないということであります。依拠できないということであります。そうすると、これはどうしても依拠きせるつもりはないのか、今後これに対して何か考えがあるのかないのか、これが最後の質問にもなりましょうから、この際、はっきりこれを聞いておきたいと思います。
  88. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のありました点は、航空機騒音につきましては原因者が非常に明確にございまして、しかも航空機騒音防止法というのがございまして、その中で補償の体系等もそろえておるということでございますので、もし健康被害として実態を把握して確定することができるものがあれば、当然にその体系で処理をすべきものというふうに考えておるわけでございます。  新幹線の問題につきましては、裁判等で非常に問題になっておりますが、新幹線の影響という問題につきましても、航空機騒音同様発生源はきわめて明確に国鉄ということになっておりまして、私どもも国鉄当局が医学関係の委員会を設けて、これに取り組み始めるということの準備をかなり具体的に進めているやに連絡を受けておりますので、その体系で当然に救済をまず始めるべきものであるというぐあいに考えておるわけでございます。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 航空機騒音と新幹線騒音との違いは、航空機騒音の場合には曲がりなりにも依拠する法律がありますが、新幹線の場合はありましょうか、ないでしょう。ある、なしの違いなんです。そのほか米軍使用による演習地であるならば特損法、現在の自衛隊が使用している場合にはいわゆる基地周辺法、民間による場合は、いまおっしゃったようにあるわけであります。そうすると、ないのは新幹線騒音に対する被害の救済を迅速に行なうという手段だけが、いまちょっと欠けているように思うのです。そういうように欠けているところがはっきりしている。根拠立法がまずないとしても、やはり本法によって救済することが必要じゃないかと思うのですが、三木長官、これはやはり本法から除外しなければならないという、この基本的な考え方はどこにございましょうか。
  90. 三木武夫

    三木国務大臣 新幹線の騒音、振動というものもいま大問題になってきて、運輸省のほうでも国鉄ですが、いろいろな委員会をつくって、これに取り組むばかりでなしに、あまりにも騒音のひどいところは線路を二十メートルですか、それを立ちのいて、それを買い上げるとか、あるいはまた防音装置をするとかいって取り組んでおるわけでありますから、そういう騒音の被害、健康障害というような問題については、本法と別個に、必要があれば将来そういうふうな単独の立法をするほうが適当だと思います。
  91. 島本虎三

    ○島本委員 単独な立法をする必要があるということを認める、それは私も同感です。そうすると、現在依拠する法律がない。そのために裁判に訴えざるを得ない。裁判は長くかかる。その場合の被害者の救済という方法がございましょうか。原因、結果がはっきりしている、因果関係が明確であるとしても、救済に時日を要して、被害者がそのために悩むようなことがある場合には、救済する何かの基金並びに何かの方法等が講ぜられなければならないのじゃありませんか。  極端なことを申しますと、角屋委員長をはじめとして本委員会が行ってまいりました名古屋でさえも、騒音公害で悩み、医療関係でもう自己負担によってでもやっている人は十数名はっきり出ているわけです。その人の被害はもうすでにはっきりしていて訴えているわけです。そうすると、結局裁判によってきまるまで、どうにもできないということになってしまうじゃありませんか。これは別に考えるか、またはこの中で救済してやるんだ、こういうことも考えてしかるべきじゃないかと思われますが、それに対する政府のはっきりした見解をお聞きしておきたいと思うのであります。これは長官でも事務当局でもいいです。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど申したように、国鉄もこの問題を重要視して、委員会等をつくって、この問題と取り組もうとしておるのですから、そういう健康被害の場合は裁判に訴えなくても、国鉄のほうとしても、単独立法ができる前においてもいろいろ話し合いの余地はあると思います。われわれのほうからも国鉄に対して連絡をいたしまして、何かそういうものに対して救済の方法がないかということを検討いたすように連絡をとることにいたします。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 せっかく公害被害補償法の一部改正法案によって、補償のための財源措置を講ずることになるわけでありますが、それから漏れるような気の毒な人も、実際はこれによって救済してもらいたい。委員会ができておると、いま長官おっしゃいました。確かにできて、それによってやることを期待いたします。  ただ、両者の見解の相違はどういたしますか。一方、住民は六十五ホン以上のものじゃ困るんだといっても、環境庁自身の基準は八十五ホン、または八十ホン以上というものを出して、見解でさえも相当の違いがある。それだけ受忍限度を住民のほうは越えているわけでしょう。委員会ができてやっても、依然として行政サイドの委員会、新幹線を走らせるほうの委員会、それを基準にしての救済、こういうようなことになりますれば、やはり住民の犠牲の上に立って、これが実施されるといういままでの傾向を払拭できないわけです。  ですから、そういうようにならないように、住民を真に救済するために、行政サイドにならないように、法律事項でこれを救済してやってほしいのです。ですから、この中に入れて考える。それを、国鉄当局が考えているからということにゆだねてしまっておるということは、国鉄は新幹線をとめてまでも住民のことを考えるという態度ではございませんので、勢い住民が犠牲になることになる。そうすると環境庁は、環境破壊、公害対策、この面からまた国民に信を問われるということになるわけでありまして、私はこの点が心配なんです。せっかく法律ができたのであるから、この辺もっと立ち入って救済の面で活を入れてほしいんだ、これが私の真意なんです。これからはずれているのは、どうもまま子扱いじゃありませんか。この点について、まま子を実子にほんとうに認知してもらいたい、これが私の切なる気持ちであります。行政サイドにばかりまかしておいたって、うまくいかないということは、長官自身知っておるでしょう。長官と言わないで副総理と言えという声さえあるのですが、副総理としても、この問題はがっしり解決しなければならない大きい問題じゃありませんでしょうか。私はささやくのです。長官にこの辺をひとつ十分に配慮してもらいたいと思います。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 新幹線も、建設の当初から土地計画というものを根本的に考えなければならぬし、音源対策というものも、線路、車両等の技術的な改良も必要でしょうし、騒音による健康被害はそういうふうな一連の関連がありますからね。だから、この法案の中に入れるというよりも、これは責任者が国鉄であることは明白ですし、そういう中において騒音で健康被害を受けて、それを救済するというようなことは一番まずいことですから、そういう事態のないようにすることが必要なので、責任者が明白である国鉄の騒音対策の一環として、そういう問題を立法化する場合においても取り扱うほうが適当だと思います。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 本法案に関して事務当局、名ざしで言うと橋本審議官に伺いますが、被害者に対して、長い裁判または行政措置等の判決及び決定の出るまでの間の救援、これらの点では何らか措置がございましょうか。
  96. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の趣旨が、少しはっきりしないところがございますので、私のお答えするところがぴったり合ってないかもしれませんが、およそ先生の御質問の趣旨と、私が受け取った範囲内でお答えをきせていただきます。  本法案におきましては、民事の裁判に先立って公害健康被害補償法適用して、この補償法による補償を出すということになっておりますので、まず患者がはっきりいたしますと、それによってこの法律に基づく地域指定をいたしまして、そして患者を認定して給付をするというぐあいに考えておるわけであります。(島本委員「それはわかる。新幹線の騒音のやつだよ」と呼ぶ)いま先生のほうからお声がありまして、新幹線の騒音の問題ということでございましたので、それにお答えを申し上げます。  被害に対する問題で、従来の大気のほうの経緯から考えてみますと、最初は因果関係を問わずに、とにかく非常に困っている四日市の大気汚染の患者の自己負担分について、めんどうを見るべきであるという実際的な地方自治体の対策がまず出たわけであります。現在、この新幹線騒音問題の制度上のステージから考えますと、昭和四十一年ごろに四日市の市が、因果関係も問わず、そこで問題になるものに対して医療的な救済を始めたというところのステージにほぼ当たるのではないかと思います。  そういうことでございますので、実は先日、国鉄の新幹線騒音対策の責任者が参りまして、医療関係の委員会をこれから設けてやっていくということについての話がございましたときに、私は、因果関係を問うて疾病を特定していくということになると、いつまでたっても、これはなかなかケリがつかない、やはりそこの中で、どういうぐあいに沿線の方々が生活妨害を受け、しかも療養等の妨げになっておるかという問題を中心に対策考えていかなければ、これは処理ができないんだということを強く申したわけであります。そういうことによりまして、まず第一段階におきましては、補償というものではなく、また特別措置法による救済というような制度的なものでもございませんが、国鉄の医療の委員会の中で因果関係を厳密に問いながら疾病を補償するというよりかは、少しゆるめた形での、生活妨害に対する国鉄としての誠意のある救済の事業がこれから始まるものというぐあいに私は期待しておるわけであります。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 期待は期待でもどうもぴんとこないのですがね。その間患者の申請があるならば——もうすでに騒音で新幹線関係で裁判に訴えておる。またいま言ったような行政訴訟を行なおうとする。その間に相当長期間の時間を要する。こういうような場合には、ひとり悩むものは患者だけですから、その間の一つ補償措置を本法によって見れないかどうかということなんです。あとからはっきり因果関係がわかる、同時に加害者被害者がわかる、その補償が行なわれる、その間にちょうど相殺できるじゃありませんか。早く救済するというこの便宜措置が、本法では考えられないか、このことなんです。
  98. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました点は、本法は大気と水質に限っておるということでございますが、補償という問題の一般論から見て論じておられるというぐあいに感じますので申し上げますが、本法におきましては、先ほど申し上げたような因果関係も問わず、ただ実際上救済するというような法律ではございません。また救済特別措置法にいうような形で特定した疾患を、かなり因果関係があるものと割り切ったものについて補償をやるというものでもございません。本法におきましては大気汚染、水質汚濁の影響によって生じた健康被害としての疾病を特定してやるというために補償法という名前がついておりますので、非常に残念でございますが、本法の中で過渡的に救済するということは不可能でございます。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。かほどまでに入念にやっておるのでも、これでまだ救済できないというのだ。これは私としては遺憾でありますけれども、これはやはり公害という特殊性からして今後に残された問題でありますので、三木長官もこの点を十分考えて、早く救済できるような方途を別途講ずるべきである、考えるべきである、こういうように思います。  それで自動車排気ガスですが、これは大気汚染に大きく寄与しているわけですが、公害による健康被害を防止するという観点から移動発生源、特に自動車排気ガスについて今後いろいろな対策考えられていると思うのです。NOxの除去技術の開発状況、これはどのようになってございましょうか。
  100. 春日斉

    春日政府委員 御承知のように、昭和五十年、それから五十一年度規制と、自動車からの窒素酸化物の排出量を現状車の十分の一に低減させよう、こういう政策を考えておるわけでございますが、昭和五十年度の規制によって約二分の一が低減されるわけでございます。この技術といたしましては、還元触媒によります低減がまず第一の技術でございます。それからまたエンジン改造による低減、これもございます。あるいはロータリーエンジンというような従来のレシプロエンジンにかわるものも考えられておるわけでございます。  いずれにいたしましても、ともかく五十年規制を——先ほど御質問もあったわけでございますが、これをできるだけ早く完成いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 これはたぶん私が別室で作業中に質問があったことじゃないか、ダブることになるかもしれませんが、この機会ですから、私の質問としても、これははっきりさしておいていただきたいのであります。これ、ダブるかもしれませんが、この点は御寛恕願います。  いま言いましたように、排気ガスの五十一年規制、これに対しては完全にできるものであると、私は評価しております。もちろん環境庁でも、この点についてははっきりと、いままでの表明された意思にお変わりがない、五十一年規制は完全に実施できるものだ、私はいままでこういうようにとっておったのですが、前の答弁との関連でダブるかもしれませんが、もう一度この点はっきりしておいてもらいたいと思います。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 五十年のいわゆるマスキー法の実施に引き続いて、五十一年窒素酸化物の削減に対してのマスキー法を実施をしようという方針は、すでに示してあるわけでございます。したがって、その方針に従って、これからは聴聞会等一連の手続を進めていくわけでありますが、ただ五十年の規制と違って、まだ自動車会社の中に、いわゆる窒素酸化物をこれは一割に減らすというわけですから、そういう技術開発がどこも成功してないという一つの弱点はあるわけです。  五十年の場合は、すでに東洋工業とか本田とかいうものが開発をしましたから、大きなメーカーであっても、こういうところにすでに開発ができておるのに、実施できぬということは理由にならないということで、やはりなかなか反対もあったのですけれども、押し切ったわけで、五十一年の場合は、まだどこにもその技術開発ができてないところに、−みな技術開発をやっておるのですからね。われわれとしても、早くこれを促進きそうという立場で、これはやりたいという一つの方針は変えてないのです。そうなってきたら、やるためには技術開発を成功させなければいかぬので、それを促進さす立場にあるわけでございます。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 軽油を燃料とする自動車についてもNOxの規制、こういうようなものも十分配慮しなければならない、こう思うのでありますけれども、この点は十分配慮してございますか。
  104. 春日斉

    春日政府委員 軽油を燃料といたします自動車排気ガス規制につきましても、現在、窒素酸化物を中心に低減すべく検討中でございまして、早急に告示するつもりでございます。
  105. 島本虎三

    ○島本委員 自動車排気ガス、その他固定排出源また移動排出源いろいろございますが、何としても病気になってからの対策はおそいし、出さないほうの対策が一番であります。そのためにはNOxの人体に対する影響、こういうようなものに対しても十分現在は調査し、それに対する対策考えられてございますか。
  106. 春日斉

    春日政府委員 窒素酸化物のうち——まあ窒素酸化物と申しましてもNOx、Xと申すぐらいでございますので、いろいろ種類がございますが、いまのところ一酸化窒素、NOにつきましては、その人体影響について十分な知見が得られていないと申し上げたほうが正確であろうと思います。ただし、窒素酸化物のうち主要部分であるNO2、二酸化窒素につきましては、これは呼吸器の深部に容易に到達いたしまして慢性気管支炎あるいは肺気腫、これを起こすことがいろいろ確かめられております。また浮遊粒子状物質とこのNO2が共存いたしますと、その作用が強化されるというようなこともわかっておりまして、私どもはこのような健康への悪影響の防止のために環境基準を昨年、設定いたした次第でございます。
  107. 島本虎三

    ○島本委員 その辺の医学的な解明、これがはっきりしないと、これに対する補償、救済こういうようなものが確立しないのであります。しかし患者だけはあらわれているのです。そういうようなことからして、やはりこれを急ぐべきである。NOxの人体に対する影響、こういうようなものに対しての考察は急ぐべきである、こういうように思います。  それと同時に、移動発生源と固定発生源の費用負担割合、今度は城戸局長のほうになりますが、これはNOxとSOxの量によって算術計算的にきめられているようであります。それぞれの人体に対する影響を加味するとすると、またこれも変わった要素が発生するのではないかと思います。この資料にございますように、それぞれ違った数値を出して、その違った数値をそのまま算術計算的に足して二で割る、こういうような式のものでは、あとからまた何か一つの問題をはらんでいるような気がいたしますが、人体に対する影響を十分加味して考えるべきではないかと私自身思いますが、この点の見解を伺わしていただきます。
  108. 城戸謙次

    城戸政府委員 大気汚染系疾病に関係ございます汚染物質のそれぞれの影響度、これを十分詳細に調査研究した上でやればいいわけでございますが、現段階では、その辺の調査研究が必ずしも十分でないわけでございます。したがいまして、いま先生指摘のような、当面はSOx、NOxの影響の度合いは平等であるという前提に立って計算をしてまいりたい。しかし今後、至急こういう影響面につきましての研究を深め、より精微なものにしていきたい、こう考えております。
  109. 島本虎三

    ○島本委員 それは附帯決議には当然載っておりません。載っておりませんけれども、しかし、この点に対しての解明は十分しておく必要があろうかと思います。ただ単に固定発生源、移動発生源それぞれからSOxまた、NOxこれが幾ら出る、これらを両方足して二で割る、これだけだったら、あとから当然問題が出ると思います。この点は十分究明して、対策を完全にするように取り計らってもらいたい。これは附帯決議にも入っていませんけれども、特にこの点は私は強く要請しておきたい、こう思うわけであります。  同時に、自動車排気ガスの寄与度、これが大きいものと思われる一つに光化学スモッグの人体影響があるわけでありますけれども、これも十分に解明されておらないようであります。今後、発生した被害者の本制度による救済、こういうようなものは当然考えてもしかるべきではないかと思いますが、この点いかがでございましょう。
  110. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 光化学スモッグによる被害者の問題でございますが、私どもは特に、光化学スモッグの発生時に、従来散発的に見られました手足のしびれとか、けいれんを伴ったというような重篤な症状と見られる学童がいたということを非常に重視をいたしておりまして、この問題につきましては、光化学スモッグの影響と、あるいはそのときに同時に発生をしたそのような症状が、はたしてどういうぐあいに光化学スモッグと関係があるのかという点につきまして、現在影響調査で究明中のところでございます。将来こういうような問題がある程度明らかになりました段階におきましては、当然窒素酸化物の問題等も考慮に入れておりますので、本法の対象として考えなければならないというような基本認識を持っております。
  111. 島本虎三

    ○島本委員 その点、いままでの答弁のうちで一番はっきりした答弁です。今後そういうような答弁をするように望んでおきます。  次に、本法による補償給付の支給が生活の貧しい人たちにも適用される点が多いし、また、こういうような人たちの面におおいかぶさる被害という点は無視できないと思います。したがって、補償給付の支給が生活保護法の収入と認定されるということになると、被害者救済の実効がまことに薄められ、また、その実効が期しがたいということになってしまうのではないかと思います。この制度のもとにおいて、どのような方向で調整するように検討するか、救済が主ですから。生活保護がある、本法による救済がある。しかしながら、やはり本法による救済を主にするならば、生活保護法の収入として認定される、認定されるということになったならば、これはもう錦上花を添えるどころか、逆な現象になりまして、救済がおくれるということになります。この調整はどのように行なわれておりますか。なければないでいいですが、この辺どういうふうにお考えでありましょう。これも今回この機会にはっきりしておきたい、またおかなければならないと思います。
  112. 城戸謙次

    城戸政府委員 まあ私ども制度は、基本的には、御承知のように民事責任を踏まえた損害をてん補する制度だ、こういうことでございますが、一方また、生活保護は生活保護としての一つの最低生活の保障としてのたてまえがあるわけでございます。したがいまして、私どもの立場では、各種の補償給付の性格、中にはたとえば療養の給付とか葬祭料というように実費弁償的なものもございますし、それからそのほか、一番中心になりますものは逸失利益のてん補とか慰謝料の要素を加味した部分だとか、こういうことになっておりますので、こういうそれぞれの給付の内容を厚生省のほうに十分説明しました上で今後検討を続けていきたい。これは厚生省の問題でございますので、私どもとしましては、そういう給付の性格を十分説明して、厚生省のほうで相応の適正な対応がされますようにやってまいりたいと思っています。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 その適正な対応というのは、ことばではいいのです。両制度のうちで、やはり生活保護法の適用を受けても、これは収入として認定しないというふうにして、補償の万全を期すのがいいのじゃないか。やはり、いま城戸局長答弁だけでは、これはいずれかに片寄せされるおそれがあるわけであります。それだったら、補償の実があがらないということになるから、これはもうきちっとして、補償のために、患者救済のために十分実りのあるような方法を採択すべきだと思うのであります。いま、やはりそっちでできないとするなら、これは副総理じゃございませんでしょうか。副総理、やはりあなたのほうで、どうぞこれに対して……。
  114. 三木武夫

    三木国務大臣 島本委員の言われることはよくわかります。しかしなかなか、これは厚生省のほうとしても生活保護の一つのたてまえを持っておりますから、この問題はここですぐに御希望されておるような方向で結論づけることはむずかしい。しかし、われわれとすれば、そういう健康被害を受けられた方々のためにできるだけのことをしたいという立場でありますから、そういう意を体して厚生省とも十分折衝をいたすことにいたします。
  115. 島本虎三

    ○島本委員 どういう答弁だったか聞き漏らしましたけれども、申しわけありませんが、まあ再質問はいたしません。これはやはり実効をあげるように十分やらぬといけない、こう思うのであります。  それと、先ほどから本法の母法、健康被害救済法、この中にはまだまだ未確定のものが多過ぎて、これから固めなければならないものも多いわけです。そういうようなことの一つとして、いまのような具体的な救済の問題があがってくると思いますから、その際には、これは内閣としても、政府としても、その点は十分考えて実効をあげるようにしておいてもらいたい、こういうようなことであります。  それと同時に、先ほど御答弁のありました問題の、いままでの判決の中で、逸失利益と慰謝料、こういうようなもので一あるいは一〇〇%と見、あるいはそれ以下と見ている点もあるわけであります。本法では労働者の平均賃金の六〇%。プラス二〇%という、きわめて低い額の給付になっておりますから、障害の程度に応じてさらに区分するということになったら、なおさらこれは悪くなるおそれもあり、よくなる可能性もあるわけでありますから、行政的措置がまことに重要だということになるわけであります。したがいまして今後それぞれの区分に該当する障害の程度をどのようにしてきめていくのか、私、これは依然として残ると思うのであります。おそらく程度に応じてやる、労働者の平均賃金の六〇%を基準にして。プラス二〇%の八〇%、それでも一〇〇%にいかない、一〇〇%にいかないまでのこの基準の額でありますから、世間的に見ればこれはきわめて低いんじゃないかと長官思うのです。それでも本法は通ってしまっている。しかし今後これを運用する過程で、もうすでに固定排出源、移動排出源、これらの負担区分もきまり、今度これを実施する段階になるわけであります。  そうなりますと、どういうように考えて、それぞれの区分に該当する障害の程度をきめていくのか、これもやはり問題でないかと思うのです。それも過酷にやる、あくまでもシビアにやる、しかしながら法のたてまえ上、救済を主にするならば上へ上へと置きまして、いろいろな点で最高限度を可能ならしめるような方法でこれは実施してもらいたいんだ、こういうようなことがあるわけであります。この点、城戸局長
  116. 城戸謙次

    城戸政府委員 障害補償費のことだと思いますが、これは御承知のように一定の障害程度にある人に対しまして、障害の程度に応じて支給するということになっているわけでございます。それで障害の程度をどういうぐあいに区分するか、あるいはその率をどうするかということが、いま先生御質問の点だと思うわけでございますが、私どもとしましては、大体三つないし四つの等級に区分したいということを考えておるわけでございまして、現在障害等級に関します研究をやっておりますので、この研究成果を踏まえまして、さらに他制度の状況等も考えた上で中公審にはかって決定していきたい。できるだけ御指摘のような点が十分反映されますようにやってまいりたいと思っております。
  117. 島本虎三

    ○島本委員 次に、だんだん内容がわかってまいりましたが、本制度のもとにおける費用の負担です。費用の負担、これは移動発生源については、もうすでに個々に負担することではなくて、明確に税の引き当て方式をとるということが、ここにはっきりしたわけであります。固定発生源については、逆に税とは別に個々の企業から徴収するということになるわけであります。一方は移動発生源は税の引き当て方式であり、一方は固定発生源の場合には、個々の企業からの徴収ということに相なるわけであります。やはりこの双方違うということでもいろいろな、これはもう今後公害行政を行なう上に支障になる点があろうかとも思われます。この点については、どのように考えられますか。  まあ個々の自動車所有者は引き当て方式ですから、当然税負担として自動車重量税を支払うということ、そうですね。それはもう当然歳入金に繰り入れられるということになります。そして一般会計から今度は協会に交付するということになる。個々の自動車から取るのではないということになりますから、業者はたとえ二年間の間であろうとも、またこれが続くとすると、これから永久でありますけれども、PPPの原則はこれはおかすことができない、総理をはじめ、これは言明しているところでありますけれども、このPPPの義務感を持たないような仕組みになりはせぬか、直接納めるという感覚が薄れるのじゃないか、そうなると、なかなか今後一方は個々の企業から徴収する。税の引き当て方式である場合には、PPPの原則は薄れてしまうということになると、公害行政全体としては、ちぐはぐなものになりやせぬかということをおそれますが、この点に対する配慮は十分考えてございますか。ありましたならば、この際、はっきりしてもらいたいと思います。
  118. 城戸謙次

    城戸政府委員 いまの二つで方式が違うではないかという御指摘でございますが、私どもは固定発生源の場合には、民事責任がまきにある、民事責任を踏まえてこの制度をつくるということが基本にあるわけでございます。移動発生源に関しましては、個々の自動車に例をとりますと、個々の自動車自身に民事責任を問うわけにいかない、しかし台数は非常に多いわけでございまして、グループとして汚染に対する寄与度を無視できない、その社会的責任を果たすためにも、そういう外部不経済、社会的費用を十分負担さすべきである、こういう考え方に立っているわけでございますので、前提としまして、固定発生源は汚染を出していますその寄与度に応じて負担きせるというたてまえを変えませんで、移動発生源の費用負担を考えてまいったわけでございます。  その際、いろいろ議論ございましたが、現在の段階では、少なくも個々の自動車から一台ごとに徴収するというのは、わずか一台当たり年間数十円の金額でございますので、これはとうていできないということで、当面は重量税引き当て方式をとったわけでございますが、将来の問題としましては、OECDで議論されていますチャージの問題等とからんで、今後より適切な方法考えてまいりたい、こう思っているわけでございます。個々の発生源から取りませんと、どうも責任がはっきりしないじゃないかということもございますが、これは将来の問題として検討してまいりたい、こう思っているわけでございます。
  119. 島本虎三

    ○島本委員 その点はわかりました。  この際、はっきりしておきたい一つ対象的な問題があります。これは税の引き当て方式である移動発生源、移動発生源によるところのこの方式、これに当てはまる自動車、移動発生源の中に、公害を全然発生しない電気自動車、これも開発されて現在運行中であります。そうすると、これも当然課税の中に入るとすると、不公平ではないか、この不公平については、どのようにお考えでございましょうか。
  120. 城戸謙次

    城戸政府委員 いまお話し申し上げましたような理由で、当面重量税の引き当て方式をとったわけでございますので、その中から電気自動車分だけを抜き出すということは不可能でございます。  ただ電気自動車の数、この間も御指摘がございましたので調べましたが、大体二百台程度がいまの重量税対象になっておる状況でございますので、私ども今後二年間に検討を進めていく間に、またいろいろふえる状況はあろうかと思いますが、そういう問題も含めて検討さしていただく。現在は個々の電気自動車から取った分を、そのものも充てたというのでなしに、電気自動車を含めました自動車全体にかけられております重量税の一部を引き当てるということでございますので、電気自動車分だけを分離するということは不可能でございますから、御了承をいただきたい、こう思うわけでございます。
  121. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろ私自身の見解もあるところでありますけれども、そのような態度が明確になりますので、それを記録にとどめておきたい、こう思うわけであります。  二年後に恒久的な措置検討する場合に、いろいろあろうかと思います。現在恒久的な措置検討する場合の対象として原燃料賦課方式または自動車重量税引き当て方式またはその他の方式があろうかと思います。この二つに限定して考えるのか。それともその他も一緒に考えるのか。そうして検討に対してはどのような手段、どのような機関、これを考えてございますか、この機会でありますから、これもひとつはっきりさしてもらいたいと思います。
  122. 城戸謙次

    城戸政府委員 自動車の場合には、直接の汚染者は自動車の使用者でございます。これに対しまして費用負担を求める場合、自動車の保有に求めるか、あるいは燃料の使用に求めるかというのが一番常識的な線であるわけでございまして、私どもそういう点から検討いたしまして、当面の措置としましては重量税の引き当て方式、これを選んだわけでございます。  将来の問題としましては、こういう補償法の自動車に関連した部分に充てるための財源という感覚でなしに、むしろチャージの問題として、いろいろOECDでも議論されていますから、そういうものの一環としてとらえて議論すべきでないかというのが、中央公害対策審議会の費用負担特別部会の中の専門委員会の報告にあるわけでございまして、私どもその問題も含めて今後の考え方を整理していきたい。チャージということになりますれば、どこの段階でかけましても、それが汚染を減らすということにインセンティブを与えるものであればよろしいというのが一応の考え方でございますので、そういう点を含めまして広く検討をしてみたい、こう思っております。
  123. 島本虎三

    ○島本委員 長くなって申しわけないのでありまするけれども、時間を詰めて質問しますから、簡単に言ってもらいたいのです。  たとえば特異的な疾患の補償給付の給付レベルについて、これはいろいろ議論されたはずであります。これがいま九月一日から実施に移されるわけであります。そうなりますと、たとえば水俣のような、またイタイイタイ病のような原因がはっきりわかっているもの、これに対しましても八〇%の財源だけで済ませるということになると、これもまた何か法的な、行政的な手落ちとして今後指摘される可能性があろうかと思います。やはり裁判では逸失利益、慰謝料というものも十分見たのであります。今後特異的疾患の補償給付の給付レベルについては、十分これを考えておかないとだめじゃないか。因果関係もはっきりしている。そして出す人もはっきりしている。それも本法によるならば八〇%に押えられる。これじゃやはり矛盾がすぐ露呈するのではございませんか。この辺においても十分配慮し、九月一日を期して法の実施にあたっては万全を期さなければならないと思うのでありますが、いま言ったような点だけは、すぐ出てくる問題であります。これに対する配慮はいかがですか。
  124. 城戸謙次

    城戸政府委員 特異的疾患に関しましては、大部分の方々は裁判あるいは和解等で、すでにいままでにケリがついているものが非常にあるわけでございますが、ただ私ども補償給付のレベルというのは当然考えなければならぬわけでございまして、その際、いまの大気汚染系の疾患と違うじゃないかということが先生の御指摘だと思います。この点、私どももまたそう考えているのでございまして、前の中央公害対策審議会の報告の中でも、その点は区分して指摘されているわけでございまして、今後中公審にこの給付レベルをはかります場合、その辺の議論は十分してまいりたい、こう思っております。
  125. 島本虎三

    ○島本委員 直ちに本法実施について配慮をしなければならない点、これはもうたくさんあるのです。これだけではない。一番具体的なものが、こういう問題だということをいま指摘しただけで、たくさんある。今後、定額給付のものについての物価スライド制の取り入れ、これは年金にまでこれを考えてやるのに、本法に対しては、こういう点の配慮が欠けるようなことがあっては困るのであります。十分これを考えてやらなければなりません。それから地域指定指定にあたって、これはいつでも問題になるのでありますが、依然として地域指定によるところの指定疾病というワクがかかるのであります。これも行政実施上においては十分考慮しないとならない問題で、いつでも一つの与えられたワクからはみ出る、これがいわゆる公害患者の特徴であり、不満であります。こういうものも十分考え、救済するように今後取り運ばなければならないし、そういうふうにしてもらいたいんだ、こう思うわけなんであります。これについて事務当局のほうからひとつ、指定地域の指定にあたっての考え方並びにスライドそのものについての今後の考え方、これを明確にしておいてもらいたい、こう思うのであります。
  126. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘ございました指定地域の問題につきましては、附帯決議の場合でも非常に強く御要望なさったところでございまして、私ども現在地域指定の基礎調査をいたします段階におきまして、現在の汚染はかなりよくなっておっても、もとのつめあとがあるというところに至るまで広げて検討しなければならないというような作業を進めておる段階でございまして、極力附帯決議の趣旨に沿ってやっていきたいというように考えております。  第二点の指定疾病につきましても、やはり附帯決議の中で御要請がございまして、私どもはこの法律の原則にはまるような指定疾病につきましては、学問の進歩あるいはそのときにあらわれた問題に即応して対応していきたいということを考えております。特に呼吸器系疾患におきましては、続発症の範囲ということにつきましては、かなり広くとっていくようにいたしたいというような考え方に立っております。またスライドの問題につきましては、これは毎年賃金の水準というのが上がってまいりますし、その上がってまいりました水準に毎年スライドアップしてくるという形になっておりますので、これは当然にスライドアップの形をとるというぐあいに私どもは申し上げることができると思います。
  127. 島本虎三

    ○島本委員 あと一、二問です。これは事務的な問題あり、また総体的な問題もございますが、水俣でもうすでに患者の認定申請があって、その認定申請が実を結ばない、遅々として進まないということで、訴訟まで起こっている例があるわけであります。この認定にあたって主治医の意見を尊重するということと同時に、これを促進する手段、方法も当然考えておかなければならないのじゃないか、こう思います。現にもう具体的な例があるわけでありますが、これに対してどのように考えているのか、こういうようなことが一つであります。  それと前から問題になっており、まだこれも修正されておらないのでありますが、介護加算額の支給、こういうようなものも実際もうすでに金額はきまっていても、現在の物価高騰の中で来る人がないというような実態、こういうものも今後本法を実施する際には十分考えておかないとだめなのじゃないか、こう思いますので、実態に合わせた介護加算額の支給をどのように考えているのか。その点と認定にあたってのこの促進方法、これを城戸局長並びに橋本審議官のほうからそれぞれ答弁願いたい。
  128. 城戸謙次

    城戸政府委員 二人から同じ問題についてお答えせよということでございますので、私、第一問についてお答えしますが、第一問につきましては、私ども水俣に現在検討委員会を設けまして、国と県と一緒に検討いたしております。現在まで二回開催いたしまして、今後特に健康診断が各県とも一段落しますので、これを待ちまして各大学あるいは国立病院の協力を得まして、できるだけ認定を促進していきたい。特に今後夏休みの期間というものは非常にそういう意味で有意義でございますから、こういう期間も含めまして、できるだけ認定を促進する方途を研究していきたいということで、さらに検討委員会の中に小委員会グループを設けて今後検討するということになっておりますので、いましばらくお待ちいただきたいと思っておるわけでございます。
  129. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先生から御指摘ございました介護加算の問題でございます。介護加算としての給付水準でございますが、公害健康被害補償法におきましては診療報酬及び診療請求は健康保険と別に定めるということになっておりまして、その中で公害病患者のために医学的、社会的に見て必要だというような問題につきましては、付添看護をどういうぐあいにするか、健康保険と違うものができるのかというところについて、もう少し改善を加えたいという考え方の取り組み方を現在いたしておるところでございます。  認定促進については医師会との連携ということがきわめて大きな問題になると思いますので、私どももうすでに非常に回数を重ねまして、認定促進のための問題をも含めまして、現在いろいろ医師会と協議をいたしておるという段階でございます。
  130. 島本虎三

    ○島本委員 もう時間のようでありますが、長官、いまようやく公害健康被害補償法の一部を改正する法律案、これも最後になってきたわけでありますが、これは確かに水と空気、この方面だけはいいわけであります。ただ、それだけで済んだわけじゃ決してございません。公害対策基本法の中には典型七公害指定されております。地盤沈下以外は全部被害が出ます。間接には地盤沈下の被害も出ているわけであります。こういうようなことからして、当然大気型の非特異的疾患あるいはまた水俣病のように特異的疾患、これだけに限定した救済、またこれを対象にした救済だけじゃなく、ことに騒音や振動はすでにもうあらわれておるような被害の状態であります。したがって、今後はこの指定疾病にどんどんこれを加えて、そして他の疾病や、また放任ではなく、どんどん救済していくような方法を今後考えるべきじゃないか、こう思います。  錦上花を添えるためにも、また画竜点睛を欠くことがないようにするためにも、いまようやくできた水と空気、これに加えて公害対策基本法の中の典型七公害、これらの救済も十分考慮すべきである。だんだん後退しつつあるのは、私は遺憾に思っております。当時出ておったその中には、財産被害も十分考える、歴代の大臣の中でも、これを本委員会においても、はっきり公言している大臣もおったのであります。しかしながら、その後実を結ばない。PCB並びに水銀の汚染によるところの水産物の被害、こういうようなことが出た際に、どうしてもこれに対する対策を講じなければならないし、環境庁としても、これを行なわなければならなかったし、前の取りつけや約束、こういうようなものもあって、やらなければならない。そのときに出たのが公害健康被害補償法であります。これには水と空気、それもほんとうに限定された二つのものしかやれないというようなので、財産や生業被害は他のほうに押し投げられてしまったということであります。これは一つの後退でなくて何でございましょう。  私は、公害行政は先取りがあっても後退があってはならないと思うのであります。こういうようなことからして、ようやく公害健康被害補償法、これを母法としてその一部改正法案がいまでき、財源措置ができるようになったわけであります。これを機会に、もう一度先取り並びにいままで環境庁としていろいろと考えられたことを集大成して、そして先取り行政をここに実施する、こういうような態度でこれに当たってもらわなければならない、私自身そう思っておるのであります。三木長官、副総理としての三木武夫大臣も、これは私以上に後退した答弁は決してないだろう、こう思うのでありますが、この機会に決意を伺っておきたいと思うのであります。
  131. 三木武夫

    三木国務大臣 この補償法は、御指摘のように大気と水でありますが、どうもほかの公害というものが健康被害との結びつきが水や空気のようなわけにはいかない。(島本委員「騒音がある」と呼ぶ)騒音というのは、これから研究しなければならない。(島本委員「振動も」と呼ぶ)振動もすぐに健康被害というようなことに結びつくのには、もっと検討を必要とするわけでございます。  そういうことで、これはことさらに範囲を狭めたということではないわけで、われわれもできる限り公害患者の人たちに対する救済とか補償の手は差し伸べるような制度を設けたいと考えておるのですけれども、いま言ったような健康被害との関連というものがまだ明白に立証されない段階であるために大気と水に限ったのでありますが、騒音のごときは今後検討しなければなりません。  生業の被害については、この法案の中に生業被害も加えるということは、どうもやはりこの制度の中にはなじまない。そこで、この問題は農林省において立法化するために検討をいたしておるわけでございますから、私が申したように、四十九年度からこの問題は検討するということも発言をしたわけでございまして、その線に沿うて農林省で検討をいたしておるのでありまして、島本委員指摘のように、環境行政一歩も後退せず、むしろ前進を続けておると申してもよろしいと思います。
  132. 島本虎三

    ○島本委員 私はこれで質問は終わるわけでありますけれども、なお、長官が決してあと向きではないというこのことば、これを今後具体的に示してもらいたい。一そうの奮起を要望し、反省の上に立って今後行政を進められるように心から私は要請して、私の質問を終わる次第であります。
  133. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 これにて内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  134. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 本案に対し、木下元二君から修正案が提出されております。
  135. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 まず、修正案について提出者から趣旨の説明を求めます。木下元二君。
  136. 木下元二

    ○木下委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する私たちの修正案の提案理由と、その説明を行ないます。  原案は、補償費等の一部に充てるため、四十九、五十年度の臨時措置として自動車重量税収入見込み額の一部を交付するというものですが、自動車重量税は、自動車所有者に賦課する大衆課税であり、しかも、それを公害補償費に充てるという考えは、自動車メーカーの責任を免罪するものであります。  また、自動車重量税収入見込み額の一部を交付するということは、とりもなおさず一般会計から支出される国費による補償費の負担であります。この国費負担は財界が強く要求していることであって、私たちは、たとえ二年間の臨時措置ではあっても、これを認めるわけにはまいりません。  そこで、日本共産党・革新共同は、ここに自動車メーカーの責任を明確にした修正案を提出した次第であります。  次に、修正案の概要を御説明いたします。  第一は、補償費等の一部に充てるため、四十九、五十年度の臨時措置として、輸入業者を含む自動車メーカーから賦課金徴収するという点であります。  第二に、賦課金額は自動車の種別、総排気量、汚染物質の排出量等を勘案して政令で定める金額に出荷台数を乗じて算定するという点であります。  以上、慎重に御審議の上、すみやかに可決されるようお願いいたします。
  137. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 これにて本修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  138. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、本案に対する木下元二君提出にかかる修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  139. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、本案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕     —————————————
  140. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  141. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 次に、本案に対し、登坂重次郎君、島本虎三君、岡本富夫君、折小野良一君より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。島本虎三君。
  142. 島本虎三

    ○島本委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。    公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたって、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一、公害健康被害補償制度の財源のあり方について、自動車製造業者から徴収する方法、石油に着目する方法等を含めて検討することとし、その際公害防除努力が反映されるよう十分配慮すること。  二、今回の措置自動車に係る大気汚染の防除努力を怠らせることのないよう排出ガスのいわゆる昭和五十一年規制、燃料の無鉛化計画の実施について十分努力すること。  三、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法において指定されていない光化学スモッグ等による健康被害に対しても被害の実態を調査し、補償対象とすることについて専門技術的な検討を加えること。  四、本制度対象となっていない騒音、振動等による健康被害および財産被害についてもその実態の把握に努め、補償制度を早急に確立するよう検討すること。 以上でありますが、この動議の趣旨につきましては、案文中に尽くされておりますので、省略させていただきます。何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  143. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  144. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  この際、三木環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。三木環境庁長官
  145. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま御決議になりました点については、その趣旨を体して十分に努力をいたします決意を申し述べておきます。     —————————————
  146. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  148. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 次に、公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。木下元二君。   〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕
  149. 木下元二

    ○木下委員 兵庫県の生野鉱山周辺市川流域のカドミウム汚染問題について伺いたいと思います。  環境庁は、先般来、生野鉱山の周辺市川流域のカドミウム汚染の問題につきまして、兵庫県に指示をして再調査を進めることを明らかにされました。これまで兵庫県は相当な長期にわたって調査を進めてきたわけでありますが、さらにもう一度実態把握のための再調査を繰り返すということであります。しかし、すでにカドミウム汚染の実態は明らかになっておりますし、事態は重大化いたしております。再調査をするから、結果を待てという段階は、とっくに過ぎております。そんなゆうちょうなことは、もう許されません。イタイイタイ病の重症患者は、すでに三人も死亡いたしております。いまごろ再調査というのでは、苦しみながら死んでいった人たちが浮かばれません。そこで、きょうは現地の住民の方々、遺族の方々も傍聴に来ておりますが、この問題を究明し、環境庁のき然とした答弁をいただきたいと思います。  すでに新聞報道もありますとおり、昨年十二月五日市川流域の神崎郡香寺町中仁野字新田に住む青田こたけさんが死亡いたしました。明治三十一年六月二十九日生まれ、七十五歳のおばあさんです。この青田こたけさんの遺体は、死亡の翌日、解剖に付されました。解剖後、金沢大学衛生教室で検査、分析を行ないましたところ、臓器内のカドミウムは正常人の七倍ないし十倍という結果が検出されております。これは富山イ病患者’同程度であります。たとえば肝臓でありますが、肝臓からは七五PPM、正常人は一二PPMであります。胃からは一八、正常人は二・七という結果が出ております。富山イタイイタイ病の場合は五つほど症例がありますが、肝臓からは九四、一一八、六三、一三二、八九、肝臓の場合は生野よりも幾らか多いようであります。胃を見ますと、生野は一八でありますが、富山の場合は四・八、富山よりも多いのであります。それから筋肉、皮膚を見ますと、筋肉は二四PPM、正常人は一・二、富山イ病の場合は一四あるいは八・三という症例が出ております。皮膚の場合は青田さんは一二、富山イ病の場合は四・六、五・一、三・九、はるかにこえております。富山イ病の二倍、それ以上の濃度の数値が検出をされておるということであります。  この青田こたけさんの臓器の検査、分析の結果は、正常人と比較しまして著しいカドミウムの蓄積が存在しておったということが明らかになっております。同時にそれは富山イ病患者の臓器分析結果と全く共通しておるということです。もうこれではっきりとイタイイタイ病だと認められると思うのです。これをなおイ病ではないというなら、その理由をここではっきり示していただきた  いと思うのです。いかがでしょうか。
  150. 三木武夫

    三木国務大臣 先般も、この問題が本委員会においていろいろと議論をなされたわけであります。それで私が申したことは、いままで県の特別審査委員会はイタイイタイ病と認めなかったわけでありますが、しかし三月の二十六日、最近のことでありますが、金沢大学の石崎教授あるいは萩野医師、いずれもイタイイタイ病を専門にいろいろ研究をされている人たちが、三人のイタイイタイ病患者がいるということをカドミウムの研究集会で発表されたわけであります。したがって、  この問題をそのまま放置することはできませんので、私が申したのは、橋本審議官を近く兵庫県に派遣をして、県の特別審査委員会に、こういうデータを踏まえて、そして再調査を求めたいということを申したのでございます。そういうふうなことによって、この問題を、生野鉱山の周辺の方々に対して、そういうイタイイタイ病の患者が何ら救済の手も差し伸べられないで放置されるということは、これは許されませんから、そういうことでこの問題と取り組んでいこうと考えておる次第でございます。
  151. 木下元二

    ○木下委員 そういたしますと、萩野先生をはじめとする研究結果の発表などもあって、環境庁としては、この生野地域に公害病患者がいるというふうにお考えになって現地調査を早急にお進めになる、こう伺っていいわけですか。   〔登坂委員長代理退席、土井委員長代理着席〕
  152. 三木武夫

    三木国務大臣 環境庁として、いると断定したわけではないのですが、専門家からイタイイタイ病患者がいるという指摘があったという事実を踏まえて県の特別審査委員会に対して、再調査をしてもらって、この問題を取り組んでもらいたい。そのために橋本審議官が現地に参ると申しておるわけでございます。
  153. 木下元二

    ○木下委員 少しこの経過を申しますが、今度の解剖による臓器の分析の結果というのは、きわめて貴重なものであります。この生野鉱山周辺の患者について解剖による分析が行なわれましたのは、これが初めてです。全国的にも解剖による分析が行なわれましたのは、富山イ病の場合に幾つかの例があるというだけなんです。生野鉱山周辺、市川流域のカドミウム汚染によると思われていた患者の体内に、富山イ病患者そっくりのカドミウムの蓄積が存在していたという重大な事実が明白になったわけであります。もうこの段階ではっきりと、これはイ病であるという認定がなされていいと思うのです。  長官は、この死んでいった青田さんの苦しみがおわかりでしょうか。頑迷にこのイ病を否定してまいりました兵庫県審査委員会委員長の喜田村教授に対しまして青田さんは、私の身体を見もしないでイ病でないとなぜ言えるか、こう憤慨いたしまして、命がなくなったら、イ病の生き証人としての価値がなくなるからと申し出て、同教授の診断を要求しました。やっと昨年十二月一日に同教授の問診を受けましたあと、私の任務は終わった、点滴も要らぬ、こう言って点滴を断わり続けて、四日後に死亡したのです。これは県と国の無為無策に対する抗議の死であります。遺族の方々は、こたけさんの遺志を継ぎまして、県がカドミウムでないというなら解剖して証拠を示してくれ、こういうことで解剖に協力をし、ここに貴重な分析の結果が出てきたのです。  環境庁に伺いたいのですが、あなた方は、ほんとうにこのカドミウム汚染の実態、その真実を真剣に究明しなければならないという責任をお感じなんでしょうか。いかがでしょうか。
  154. 三木武夫

    三木国務大臣 それは御質問を受けるまでもないことで、環境庁とすれば公害被害者に対してできる限りの救済の手を差し延べたい、そういうことでいろいろな、この健康補償の立法などもいたしておるわけでございます。  ただ、兵庫県としても、ことさらに患者を隠して、そしてイタイイタイ病であるにかかわらず、イタイイタイ病でないというような発表をする必要はごうもないわけでありますから、それはいろいろ学問、疫学的、臨床的にそういう学説の上でいろいろな議論もあるわけでしょうが、しかし専門の医師が二人もこういう問題を提起して、しかもいろいろ解剖のデータも示して提起されたということは、これは捨ておけない重大な問題でありますので、県の特別審査委員会に再調査を求めたいということでございます。
  155. 木下元二

    ○木下委員 県の態度につきましては後に触れたいと思います。  ひとつ、私はここでさらに事実を明らかにいたしますが、解剖して取り出した骨のレントゲン写真がここにあります。これは前腕であります。これは左の前腕ですね。こんなに曲がっております。それからこれは下腿骨であります。右の下腿骨。それからこれは左の大腿骨。これがもものつけ根ですね。こんなに曲がっているのです。これは右の大腿骨です。これもひどい状態です。こんなにひどい状態になるまで放置さ れておったのです。あまりにもひどいことだと思うのです。この骨の状態。これは重症骨軟化症でなくて、一体何なのか。もうこれはイ病と断定するに決定的ではないかと思うのです。いかがですか、橋本審議官
  156. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘の問題は、大臣がお答えいたしましたように、二人の専門家の方がこれについてイ病であるという報告を出しておるわけでございまして、この二人の専門家の方のお出しになった報告書に関する限りにおいては、私はイ病と同じ患者ではないだろうかと思いますが、それの確認につきましては、やはりこのカルテから、あるいはいままでの検査すべてをやはり全部確認をしてみるということが、行政としては最初の、この確定できるかどうかという患者さんの問題としてきわめて重大な問題だと思いますので、私は個人で患者を見たわけでございません、患者の診断というのは、医師がすべての材料を持って、そして判断をするということが医師としてあるべきことだと思いますので、そのような方向で大臣の指示を受けまして、兵庫県に参って再検討いたしてもらうというような考えでございます。
  157. 木下元二

    ○木下委員 あなたのほうで特にイ病を否定されるようなことを言われませんので、私はこれ以上申しませんけれども、実は念のために青田こたけさんを詳しく見た観察記録を医師の承諾のもとに持ってきておるのです。これについてはもう時間の関係で触れませんけれども……。  いま、死後の解剖後のレントゲン写真をお見せしましたけれども、実はこれは解剖して初めてわかったことではないのですね。生前からひどい状態があったのです。生前のレントゲン写真も手元にございます。普通の写真もあります。これ、長官、ちょっと一ぺん見ていただきたいと思います。——これが生前の写真なんです。こういうひどい状態が生前からあらわれていたのに、死ぬまでほうっておったという責任は、私は重大だと思います。しかも、これはこの青田さんだけではないのです。青田さん以外に重症の患者がおります。名前を申します。木村わきさん、大河内町野村であります。平井こたけさん、市川町小谷であります。それから中野こなみさん、これは環境庁のほうもよく御存じだと思います。小島いとえさん、生野町北真弓です。重症患者です。これ以外にももう何人も死亡いたしております。中野りとさん、杉田ふみさん、岡田しげさん、こうした人たちは痛い、痛いと苦しみながら死んでいったのです、もう。これについては一体どう思われますか。  これは、県のほうが検診をやって、第三次検診を経て十三名を鑑別診断班にあげてきましたけれども、いま言いました人たち、中野こなみさんを除いて全部十三名に入ってないのです。このことについて、どう考えられるか。簡単でけっこうです。
  158. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のありました問題は、きわめてむずかしい問題でございまして、特におなくなりになった方の場所が、県としては低汚染地域として考えられておったというところでございます。現に数字のみを見ますと、確かに低汚染地域と見られるのではないかということでございますが、病理解剖の所見によって、いま先生のおっしゃったような事実が明るくなってきたというところでございます。
  159. 木下元二

    ○木下委員 こういうふうに県の検診にあがってこなかった重症患者が続々あらわれておるということ、これは一体何を意味するのか。なぜなのか。これは低汚染地域だからだいじょうぶだというふうなことでお考えになるのはやめていただきたい。県の問題については後に触れますが、結局県の検査が不徹底であり、ずさんであったということ以外の何ものでもありません。それともあなた方は、県の検診が万全を期して一〇〇%完全に行なわれたというふうにお考えなんですか。どうですか。
  160. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました県の検診につきましては、やはり検診をしていきます場合にどういう時点で検査ができているかということで、このような慢性疾患の患者さんにつきましては、検査をしたときによって状況はかなり異なるということもございます。どういう時点のものをつかまえておるかということで県のスクリーニングから落ちたという場合も中にはありましょうし、万全であるかということになりますと、科学的にはなかなか完全なものは尽くしがたいというところもございますので、やはりそこのところは今後できるだけ完全なものに持っていくということにすべきことであろう、こういうぐあいに思っております。
  161. 木下元二

    ○木下委員 いま私は青田こたけさん外四名、全部で五人の名前をあげました。ところが、この人たちを調べてみますと、たとえば木村わきさん、平井こたけさん、このお二人は県の行ないました検診、これの予備調査の対象地域にさえ入っていないのです。この木村わきさんや平井こたけさんが住んでおったその地域というのは、予備調査の対象地域からはずされておるのです。それから青田こたけさん、いま申しました木村わきさん、平井こたけさん、この人たちも結局要健康調査地域の地域ではないのです。だからいま低汚染地域だということを言われましたけれども、そういう地域にも入っていない。そういう結果、いま名前を申しました五名については中野こなみさん以外は全部十三名の三次検診からはずれておる。こういう結果になっておるのです。このことは、とりもなおさず、この検診がざるのように非常にずさんであったということを物語るものではないですか。  一つ例を申しましょう。この県の行なった予備調査、これでは採尿者名簿から部落ごとにグループを分けまして、そのグループ住民数三十人以上三百人未満——もとよりこれは三十歳以上でありますが、この三十人以上三百人未満から三十人を出す、それをこえる住民数の場合は住民十人に対して一人の割合でふやしていくということで、任意抽出によりまして各グループの代表尿を選出いたしております。十人に一人、あるいはこの場合は二人、三人の場合もありましょうけれども、こういうふうな代表尿を選ぶという全く偶然性に依拠した調査なんですね。これではカドミウム量の多い患者が漏れることはわかり切ったことです。あまりにもずさんです。だから結果として、要健康調査地域でない地域から患者が出ておるし、あるいは検診を受けない患者が出ておる。  しかも、もう一つの問題は、この予備調査でもあるいは一次、二次検診でもそうでありますが、日を指定して、尿を保健所や公民館へ持ってこさせるという方法をとっております。これでは寝たきりの人、あるいは症状が悪化している人が行けないのです。これはもう行政の不親切だというだけではありません。こういうことでは、カドミウム量の多い尿は集まってこないわけですね。これは検査の正確性、合理性を失わしめる結果とならざるを得ない。こういう検診のやり方では、住民が県をますます信頼しなくなる。不信感のもとを県がつくっておるというわけであります。こういう全くずさんで失当な検査方法環境庁はお認めになるのですか。
  162. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました問題につきまして、まず兵庫県がやっておる第一段階の調査でございますが、これは四十四年の厚生省時代のカドミウムの摂取並びに蓄積に関する研究というものの中で、要観察地域をどういうぐあいにして抜き出すかという研究をいたしましたときに、いまおっしゃいました、大体三十歳以上の方三十人くらいの尿をとりまして、そしてその尿の中のカドミウムの濃度の平均が一リットル当たり九マイクログラム程度になりますと、この地域は要観察地域だということをする尺度として使えるものであるという研究報告がございます。それを使って県がやったわけでありまして、県としましては、決してずさんにやるという意味ではなしに、九町五十四地区という、できるだけ広い場所から、その対象を抜き出そうという努力のためにやられたものであると私は思います。  それではそのものが完全であるかという御批判になりますと、完全であるかということになりますと、いろいろ技術的な議論はあろうかと思いますが、広い地域の中でどこを対象として抜いていくかということにつきましては、一つのやり方であると私は思います。その原因は、やはり地域住民の中にどういう程度にカドミウムが取り入れられておるかという基礎的な条件をつかまえるには、尿の中のカドミウム量を見るということは、決して学問的に当を得ない全くおかしなものであるとは私ども考えておりません。  この運営に関しまして、日を指定して保健所に持ってこさせるという点につきましては、従来の集団検診の方式あるいは成人病検診の方式等と同じようなことをしたのではないかと思いますが、やはりどういうぐあいにして、これをもっと参加しやすくするかということは、今後もいろいろ努力すべきところがあるのではないかというぐあいに思います。  そういう意味で、いろいろ御批判はあろうかと思いますが、私は、ずさんな調査を県がしたとは、環境庁としては考えがたいというふうに思っております。
  163. 木下元二

    ○木下委員 いま指摘をしましたように、参加しやすいというふうな問題ではないのですよ。重症患者や寝たきりの人は来れないわけでしょう。そういう人にカドミが多いわけでしょう。多い人が来れないというそういう条件をつくったような検査方法というのはいかぬじゃないか、こう言っているのですよ。環境庁にカドミウム環境汚染地域住民健康調査方式というのがつくられてあるわけですが、私が指摘したような検査方法問題点については、この方式には触れられておりません。けれども、幾らこの調査方式によりまして検査項目が整備をされましても、またかりにりっぱなものがつくられましても、検査方法が、私が申しましたように、そういうざるでは何にもならぬと思うのですよ。  この問題は、これは環境庁のいま申します調査方式につくられていないわけですから、兵庫県だけではなくて全国的な問題でもあると思います。こういうふうなずさんなやり方をやっておるところがほかにもあるのではないかと思われます。この検査方法につきましても環境庁が厳重に指導をしていただきたい、そう思いますが、いかがですか。
  164. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました環境庁の指示しておりますカドミウム環境汚染地域住民検査方式という問題でございますが、これは四十三年以来の調査研究に基づきまして改定して、四十六年の五月に出されたものでございます。先生の御批判は、そういうものを受けるべき人が、むしろ受けられないのではないかという一点の御批判であろうと思います。病気で寝ておられて、受けるべき人が受けられない。これは技術のずさんさの問題ではなしに、運営をどういうぐあいにするかというところの問題であろうかと思います。そういう点におきまして、保健所の保健婦あるいは国保の保健婦もあるわけでございますから、どういうぐあいに、そういうことをもっと円滑に受けやすいようにするかということにつきましては、私どももできるだけそういう方向を進めるような指導をいたしたいと思います。  また、技術的な点につきましては、カドミウム研究につきましては昭和四十年度以来続けておりまして、四十四年度以降その基準が次第に確立してまいりましたので、その確立されてまいりましたデータを鑑別診断研究班において検討されたり、あるいはカドミウム研究集会において発表されて、そこで議論をきれるというスクリーニングを経まして、しかもほかの場合よりもはるかに公開の形をとって、いままでやってまいっておりますので、今後技術的な正確性をもっと期するという点におきまして、さらに精度を上げるように努力したい、こういうように思います。
  165. 木下元二

    ○木下委員 いまの点は技術的なずさんさということでなくて、検査方法のずさんさを言っているのです。さらに、私が初めのほうで指摘をしましたように、十人から大体一人あるいは二人、三人になるかもわかりませんが、代表を選んで検査するというやり方、その検査の結果によって、別の検査も並行してやるようですけれども、調査を進めるというやり方は非常に問題だと思う。特にいまお年寄りの方々が来にくいような条件をかみ合わせてやることによって、なお問題が起こってくると思うのです。ですから、この点についてもひとつ再検討して、各府県でまちまちにやっておることのないように厳重な検査方法環境庁のほうで指導してもらいたい、こう思うのです。
  166. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のありました問題に関しまして、もう一言だけ申し添えておきたいと思いますが、どこの地域を調査するかという手法に二つございまして、一つはそこの地域の食品を全部調べる、水を調べる。それと同時に陰ぜん方式で、どれだけのものを食べているかということを調べる。これは非常に手がかかりまして、そう広範囲にやるということは事実上なかなかむずかしゅうございます。  それにかわるものとして、どのようなものが値打ちがあるかということの研究結果として、いま申し上げました三十歳以上の人の三十人のグループの尿の平均をとることのほうが比較的バックグラウンドをとるにもできるということで、研究班の中で出たものでございます。ただ、御指摘のような問題もございますから、この点につきましては研究班の中で、兵庫県の経験も基調にいたしまして、さらに今後の研究課題としても検討してもらい、私どもは問題のないような形に努力した  い、こういうぐあいに考えております。
  167. 木下元二

    ○木下委員 次は、生野イ病問題に対する兵庫県の態度でありますが、これは終始一貫否定の立場を固執しております。これまで再三、再四にわたって生野イ病を否定する言明を行なってきました。新たな患者が発見されましても、あるいは住民が訴えましても、あるいは地元をはじめとする良心的硬医師や専門家会議などが科学的な調査結果を明らかにして問題提起をしましても、生野イ病を頑強に否定し続けてきました。その県の態度を一貫してききえてきましたのが兵庫県健康調査特別審査委員会であります。そしてまた、その委員会の支柱的役割りを果たしてきたのが神戸大学喜田村教授であることも有名なところです。  その喜田村教授は、この生野イ病問題についてどう言ってきたかと申しますと、市川流域には骨軟化症は認められない、だからイ病ではない、こう言ってきた。それからまたカドミ汚染問題についても、カドミは体内に蓄積されず出されていくから心配ない。これはずっと前に当委員会でも参考人として述べたことがありますが、こう言ってきたのです。これがみんな事実によってくつがえってきているのです。  青田さんのように典型的な、もはや否定しようのない骨軟化症があらわれました。市川流域には骨軟化症が認められないというこの仮説はくつがえった。それから解剖結果でも明らかなように、体内のカドミ蓄積も動かしがたいものになっているのです。もうここで彼の所説は明らかにくつがえったのですから、彼はかぶとを脱ぐべきだ。それをどう言っておるか。今度は言い方を変えております。骨軟化症は認める。——これは認めざるを得ない。こんなひどい状態を骨軟化症でないとはいえません。骨折とはいえません。骨軟化症は認める。しかし、それはカドミの影響かどうかわからぬ、こういう言い方をしておるのです。こう言って生野イ病を否定しております。まきに否定のための否定であります。  現に昨年十二月の二十七日に喜田村教授は生野周辺公害専門家会議の代表と会談をいたしましたが、その席上で、私はイ病という名前が気に食わない。神通川カドミ中毒患者はイ病でないと思っている。ましてや市川流域には存在しないと思っている。これは私の信念であって、最後までイ病を否定する。こういう趣旨のことを言っておるのです。富山の神通川流域のあの明らかなイ病まで否定しているのです。この発言の際には、私の同僚の弁護士の人たちも立ち会っております。  大臣、こういう人をイ病の審査委員会の責任者にしておいてよいものでしょうか。いかがですか。
  168. 三木武夫

    三木国務大臣 いま初めて承ったわけでございますが、いかなる実情にあるかということは、われわれのほうとしてもよく調査をしなければならぬ。いまあなたが言われて、不都合だといって相づちを打つわけにはいかない。
  169. 木下元二

    ○木下委員 新たなデータが出てきまして自説が通らなくなると、通用しない新たな論理を持ち出しまして、それを押し通そうとする。私は、これは学者的良心が問われる問題だと思います。もっとも、彼が個人としてどのような学問的見地に立ち、また、それを時々に応じて都合よく変えても、それは彼個人の問題であります。とやかく私は申しません。  問題は、彼のイ病そのものを否定する立場であります。彼は特別審査委員会委員長として責任者の立場にあります。その彼が生野イ病を審査する重責を負っておることは、これは明白であります。その彼が、イタイイタイ病そのものの存在を否定する学説に立ち、かつその立場で審査に臨むということになると、事は重大です。   〔土井委員長代理退席、委員長着席〕  これではこのイ病の審査どころか、イ病があらわれるのを押えにかかっておるのと同じことだと思うのです。公害隠しが前に問題になりましたけれども、今度は、これはまさに公害押えですよ。  さらにこの喜田村教授は、青田さんの解剖所見について遺族の了承もなく——有名な否定論者の金沢大学の竹田教授、高瀬教授と打ち合わせるため、二月の十五日に金沢市の都ホテルで会合をいたしております。しかも不見識にも、その世話を県衛生部の課長がしておるのです。衛生部当局は、これは県会で問題になりまして、こう言っております。これは全く誤りであった、今後絶対このようなことは慎む、こう発言しているのです。この一連の事実は、喜田村教授と県当局が一緒になって公害押えをやっておるということです。県会では、ついに喜田村を罷免せよという要求まで出ておるのです。  この点については、こまかい具体的な事実はおわかりにならぬでしょう。そういうことを事実として認めるかどうかということをお伺いしておるのではありません。このような人が、少なくともイ病の審査を進めるという委員会の責任者にあっていいものかどうか、これを伺っているのです。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、喜田村教授だけでなしに、十人くらいの委員会でしょう。そこに喜田村教授がいろいろ意見を持っておっても、ほかの医者というものもやはりおる、医学者もおるわけですから、どうもあなたの言われるような、全部がそろって、そうしていろいろなイタイイタイ病の患者としてのデータがそろうておるのを、兵庫県のそういう特別審査委員会が十人もそろってそのデータを否認して、そうしてイタイイタイ病を隠そうやということがあり得るだろうか——いま言われたようなことを初めてお聞きするわけですが、そういうことがあるのだろうか。だから、いまここでお話だけでは、一緒になってけしからぬということを言うのには、どうしてそんなことになるだろうかと非常にふしぎに思うのであります。  これは、いまお話しのようなこともよく頭に入れて、橋本審議官が参るわけですから、よく事情は解明をいたしたいと思います。
  171. 木下元二

    ○木下委員 一般的に、医者の世界というものは、非常に封建的な徒弟的なところでありまして、このメンバーの構成をいまとやかく、ここで具体的に申しませんけれども、俗称を喜田村委員会といわれているのですよ。みな同じ対等の医師ではないかというようなことを言われますけれども、もっと実情をよくお調べいただきたいと思うのです。もとより私は喜田村をやめさせろとかいうようなことを、いまここで長官に言っておるのではないのです、そういう権限もお持ちになっておられないわけですから。そうではなくて、私がいまいろいろ事実を指摘いたしましたけれども、そういうふうな事実があるならば、これはイ病の審査を行なう立場の人として不適当と考えないか、その見解を聞いているのです。
  172. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、木下委員の御指摘になることは、われわれとしては、もう非常にふに落ちないことばかりですね、いま言われることは。そんなにいろんな検査の結果、イタイイタイ病だと断定できるデータがそろっておっても、わしの信念で、それは認めないでいるというようなことが医者としてあり得るだろうか。医者というものは、ただ、自分の信念と言っても、その信念の基礎になるものは、いろんな解剖をしたり、あるいは診断をしたりした、このデータの上に立たなければならぬわけですから、そういうことがあり得るだろうかということで、その事実というものは、よくわれわれとしても調査をしてみようと申しておるわけでございますから、こういうことがあるということを、あなたの言うように、それをきめつけて、それに対して、彼はやめるべきだというようなことを私が言うことは適当でない。しかし、あなたが指摘されるようなことは、あり得べからざることであるということで、よく調査をしてみましょうと申しておるわけでございます。
  173. 木下元二

    ○木下委員 少なくとも政府として、イタイイタイ病の存在を肯定し、そして健康被害救済制度をつくって、これを適用しておるわけですね。イタイイタイ病の認定条件なり、あるいは検査項目、検査事項といったものも環境庁がきちんとおつくりになっておるわけです。だから問題は、これに当てはまるかどうかということで考えなければいけないのに、そうでなくて、これ以上のものを持ち出して、骨軟化症があり、あるいは尿の中に糖があり、カドミがあり、この要件に当てはまってきておるというのに、いや、カドミの影響かどうかわからぬとか、そういうふうな行政のワク内でつくられたイタイイタイ病の認定の方法、手法ですね、そういうものを越えて、いろんなむずかしい条件を打ち出してくる、あるいはいま私が申しましたようにイ病などはない、こういう人が、少なくとも委員長におるような委員会というものは、きわめて問題であります。  この点は、よく調査をされるということでありますので、私は、具体的な事実はこれ以上追及を申しませんけれども、やはり環境庁長官として、もう少しこの問題についても、き然とした態度でお考えを聞かせていただきたかったと思うのです。喜田村教授がどうのこうのということではなくて、私が、いま質問しておりますのは、かりにこういうふうな考えの人がおるとすれば、長官なら、もしこういう人を任命いたしますか。喜田村さんとは申しません。こういう私が指摘をしたような、問題のある医師を、長官として任命いたしますか。どうでしょう。
  174. 三木武夫

    三木国務大臣 いま木下委員に私が言っておることは、医者としてそういうことがあり得るだろうか。イタイイタイ病で非常に被害を受けておる人を、それをいろんなへ理屈をつけて、これはイタイイタイ病でないのだといって、何のために隠す必要があろうか、そういうことを考えてみますと、いまあなたの御指摘になっておるような問題、こんなことがあるのだろうか。それは木下君の言うことだけで、そのままうのみにはできぬな、もう少し調査をしてみたいという私の心境でございます。
  175. 木下元二

    ○木下委員 そうすれば、その点については、ひとつ厳重に調査をして、その結果をまた聞かしていただく、こういうことでよろしいですか。ちょっと返事だけ……。
  176. 三木武夫

    三木国務大臣 それは橋本君が行って、よくそういういまいろいろ御指摘のことも踏まえて、調査をいたすということを申しておるわけでございます。
  177. 木下元二

    ○木下委員 橋本審議官を派遣するということでありますが、市川流域を健康被害特別措置法に基づいて指定地域に、私は、もう直ちにこれは認定できると思うのです。こういうふうに患者がはっきりとあらわれておる、できると思うのです。これは県の態度がどうのこうのという問題がありますけれども、県の態度に惑わされてはならないし、また、これは法的に見ましても、県の態度がこうだからできないということではないと思うのです。健康被害特別措置法の二条によりまして、これは国の責任でもって指定地域を設定するということであります。だから、その手続をすぐに進めていただくように要請いたします。
  178. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御意見でございますが、一点申し上げておきたいと思いますのは、私どもはこの間の研究集会で石崎先生、萩野先生らから御報告がありました三例のケースについて非常に注目をいたしておるわけであります。先生の御指摘には、そのほかのケースもいろいろございましたが、そのほかのケースにつきまして、私どもは詳細な事情につきましては、まだ十分な判断がつきかねております。しかしながら三名のイタイイタイ病と全く同じ患者がいたとされている報告はきわめて重大であるということで、研究会が終わりまして、その本を見ましてから、すぐさまこれは検討をしようということで始めたところであります。  それからもう一つは、指定地域の問題でございますが、指定地域にいたしますときに、やはり従来の県の調査というものがございますし、県の意見というものがございました。ただそれと全然別の方で、しかもイタイイタイ病の専門の方から、きわめて重大な研究発表がなされたということでございまして、いま大臣のお話のあったような公害行政としても、きわめて重大なことでございますので、そのときの研究発表等も含めまして、もう一度これは県でちゃんと見てもらうということを私どもはいたしたいと思いますし、また先生のおっしゃったような事実関係というものも、これは私たちもよく調査をいたしたいというぐあいに考えております。  そういうことで、まず指定地域にいたしますには、指定地域にしますときに相当な範囲にわたる著しい汚染があるということと、それから健康被害としてのイタイイタイ病の患者さんがそこに存在している、これだけのものをはっきりさせるということが、きわめて基本的な要件でございまして、指定地域にしますときの最初の患者さんの確定というものは、きわめて重大な問題だというぐあいに私は考えております。そういうことでございますので、できるだけ早くいま申しましたような問題点を兵庫県にも参りまして調査もし、あるいは話もいたしまして、その結果、これはイタイイタイ病の患者さんとして間違いのないものであるということがはっきりいたしましたならば、これは当然に指定地域の問題にすぐさま発展していく問題だというぐあいに考えております。  なお一点、話が前後いたしまして恐縮でございましたが、県の認定審査委員会の意見で、もう一回再検討してもらうことと同時に、その結果を国の鑑別診断研究班においても、きわめて重大な問題でございますから検討してもらうという手順を踏みまして、そして国としての最終の措置を決定いたしたいというぐあいに考えております。
  179. 木下元二

    ○木下委員 この三名についてはイ病に間違いないというふうに言われました。これは三名ばかりではなくて、もっともっといるのですよ。これに関連しまして兵庫県の検査の分析方法について申しましたけれども方法ばかりではなくて、分析結果についても非常に問題が出ておるということなんです。   一つ申します。兵庫県は五人の患者につきまして、イ病でないと判断を下しました。これはこのうちの四人は——五人かもわかりませんが、はっきりしておることは四人は三次検診の上、鑑別診断班に上がってきた十三人に含まれております。この五人の患者についてイ病ではないと判断しましたが、それをさらに確かなものとするために追試ということで京都大学に依頼をいたしました。ところが京大の分析では、逆にこの五人のうち四人に富山イ病患者の尿中から出る低分子たん白質と同じ排せつパターンがあるとはっきり確認しておるのです。京大の佐野助教授は富山イ病患者と生野地区の老人の尿の分析結果はきれいに一致している、こう言っているのです。この事実は環境庁も御存じだと思います。だから三人は間違いない、三人だけだということではなくて、はっきり出ておるのは、ほかにもいるわけです。  それと、この問題について現地に行って直ちに調査をということでありますが、この県のほうにまた再調査を繰り返させるのだ、初めに申しましたように、こういうことではいつまでたっても同じですよ。県の姿勢も申しました。この点については、長官からいろいろ調査をするという答弁をいただきましたけれども、県にまたこれまでと同じように委嘱をして再調査をやらせるのだ、こういうことではこれまでと同じことの繰り返しなんです。そうではなくて、鑑別診断班がじかにこれは調査すべきですよ。早急に結論を出すべきですよ。どうですか。
  180. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 初めに一点明らかにさせておいていただきますが、私の申し上げたのは、この三名の患者さんにつきまして石崎先生、萩野先生らの報告されたこれを見ると、イタイイタイ病と同じ患者だというように思われる、これはきわめて重大である、こういうような立場に立っておるのでありまして、間違いなくイタイイタイ病であるということを私はいま申し上げておるのではありません。きわめて重大な問題であるというので、さっそく兵庫県に対して再調査をしてもらおうということを言っております。  それからもう一点は、再調査をしてもらうということは、従来の手続の繰り返しをするのではないかという御指摘でございますが、私は従来の手続と同じように県にお願いをして、それが相当な時間かかって国に上がってくるというような、従来と同じようなことを繰り返そうということを考えておるわけではございません。やはりこの研究集会の問題を中心として、県で早急にこの問題に対して検討してもらうということを申し上げておるわけでありまして、それにまた従来と同じような検診を県にやってもらうというような立場に立っておるわけではございません。  御指摘のような京大の佐野先生の御報告につきましては、私もあまり詳細には存じませんが、昨年の研究集会のときに一部そのような研究発表があったやに、いま私どもの課のほうの者から伺いましたが、その点は京大の佐野先生にもこの点の御意見を承ってみたいと思います。  問題点といたしまして、先生のおっしゃったような患者さんの命という点から、きわめて重要な問題点があることを私どもも非常に感じます。と同時に、やはり行政と学問、あるいは国と地方自治体というような関係も無視することはできないというぐあいに考えておりますので、この点につきましても、できるだけすみやかにこのような問題の検討を終えたいという覚悟でございますので、従来と同じような調査をまた繰り返すというような考えではないということだけは申し上げておきたいと思います。
  181. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、この生野の患者については、いまこの場で断定はすぐにはできない、しかしこれまでの答弁でもありましたけれども、きわめて疑わしいということはお認めになるのですか。
  182. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 再度お答えして恐縮でございますが、三名の患者さんがこの先生方の報告どおり間違いないということでありましたならば、これらイタイイタイ病の患者さんと同じではないだろうか、きわめて重大な問題であるというぐあいに考えておるわけです。その前提がついております。
  183. 木下元二

    ○木下委員 それからもう一つ、県のほうにまた委嘱して調査ということでありますが、これは従前の繰り返しではないといいますけれども、これは私がきつき指摘をしましたように、この委員会委員長に大きな問題がある。この点については一体どうなのかよくお調べをいただくということになっておるわけでありまして、それを待たずに、また調査を依頼するということでは困ると思うのです。これは住民の人たちも全然信用していませんよ。国が何とかしてくれるだろう、もう県はだめだ、みなこう言っております。だから私は、いまのままの県の委員会でまたやるということではなくて、これは長官、さつきも言われましたが、よく調査をしていただいて、そしてその結果が明らかにならずに、また再調査をということでは困ると思うのです。鑑別班としてやっていただきたい。長官、いかがですか。
  184. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、木下委員が、県も信用ならなければ、(木下委員「いや、住民が言っているんです」と呼ぶ)特別審査委員会も信用ならぬと言いますが、兵庫県としても住民の生命、健康ということには、そんなに無関心ではない。どこの県だってそうでしょう。自分の県の住民の健康や生命というものに対して無関心で地方行政はできるわけがない。それが木下委員が言われたら、県も特別審査委員会も、どれもこれも信用ならぬのだというふうに、そういうニュアンスの御発言でありますが、私はそうは思わないのですよ。  みなやはり地域の住民の健康や生命は、県としても考えておるに違いないから、この重大な、やはりいろいろな解剖とか、あるいは診断の結果のデータを踏まえて、二人の専門家がイタイイタイ病であるという断定を下したのですから、これはわれわれとしても重大な問題として取り扱わざるを得ないので、そういう事情を踏まえて県の特別審査委員会のメンバーとよく話し合って、そして再調査をしてもらう。また国のほうとしても、われわれのほうでも鑑別の委員会がありますから、これもやはり無関心ではおられませんが、手続としては、県にそういうふうな特別の審査委員会があるのですから、その委員会ともよく話し合って、そして再調査をし、また国としても重大な関心を持って、この問題の解決に当たろうというわけでございます。
  185. 木下元二

    ○木下委員 そうしましたら、もう一点確認しておきますが、まあ県のほうが再調査を進める。しかし、それにまかせておくのではなくて、国のほうとしても、これは大きな関心を持って、ひとつ鑑別班がこの問題に乗り出して調査をする。県のほうから上がってくるのをいつまでも待つんだという一これまでそうなんですから、そういうことでなくて、直接鑑別班がこの調査を進める、そういうことでないと困ると思うのです。どうですか、いつまでも待つんですか。
  186. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま、基本的な考え方は、大臣の方針に明らかに示されたところでございますが、具体的な問題といたしまして、患者さんにつきましてのいろいろな資料は全部県が持っておるということは、まず事実でございます。そういうことで、やはり県のいままで持っておられたデータというものは、一つの貴重なものであると同時に、また主治医の方々のデータというのは、私は直接まだ拝見したことはございません。やはり先生がいつも強調される主治医の方のこの所見、あるいは診療録というものも、患者さんの家族がこれは了解されるならば、私たちもそれを入手いたしたいと思いますし、関連されました大学の方々の研究資料というのも、これはあわせて見る必要があると思います。そういうことで、まず県に当たってみますが、従来のように、県に頼んでそれが上がってくるまで待つということではございません。  それからもう一点は、四十八年度の研究班の成果を全部踏まえながら判断しようという考えを、私どもは正直に申しまして持っておりました。非常に学問論争の激しいものでございましたから、四十八年度内の研究成果を踏まえて判断したいということで現在の時点に来ておったということだけを、ひとつ申し添えておきたいと思います。  また一方、学者の先生方も、いろいろな学問上の考え方というのはあるわけでございますから、それを完全に踏みにじるというようなことがあっては、やはり行政としてはあるべき姿ではないと思いますので、やはり県に参りまして、十分なデータを得、主治医の先生の意見を聞き、大学の先生方の意見も聞き、その上で県に出してもらうということをいたしたいと思いますが、その段階でむずかしいことが起こりますときには、やはり大臣のおっしゃったように、国としてやるべきことを果たしたい、そういうぐあいに考えておるわけであります。
  187. 木下元二

    ○木下委員 もう時間が来ましたので最後でありますが、長官、私は数日前に現地に行きまして、この患者や遺族の方々と会ってきたのです。この人たちがどんなに苦しみ、悲しんでいるか、これはおわかりでしょうか。しかも現地には、まだまだたくさんの患者がおるのです。この問題にされておる人たちというのは、ごく氷山の一角なんです。また、この患者の人たちには献身的に治療をしてもらっている民医連の医師の方がおりますが、一人の医師の犠牲と献身にこの問題をゆだねておいてよいものか、こう思うのです。こうした状態を一体放置しておいてよいのか。  ここに私、青田こたけさんの娘さんが書いた手紙を持ってきております。少し読ましていただきたいと思います。  昨年末に萩野先生にイタイイタイ病と診断されて亡くなりました青田こたけの発病症状述べさせていただきます。初め、手足のいたみを訴え出してから約十年、腰が痛い足が痛い歩きにくいといいながらガニ肢のような歩き方になりました。神経痛だろうと近くの医者に見てもらうようになりました。週二回、四年位通っていただきましたが一向によくならないばかりか病状は悪化するばかりで、次はお灸、ハリ、指圧又は薬、漢方薬とある限りの事をつづけて居りました。其の頃は松葉杖を使うようになっていました。根が働き者なので古鍋のとり手にひもをくくりつけ首からつるして少しの物を運んで手に合う事をし、少しでも家の者が助かればといつてがんばっていました。ある日庭より上へあがろうとして急に足が立たなくなり床の上の人となりました。それでも大小便は人に迷惑をかけられないと、自分で便利のよい事をあみ出しては努力していました。  一週間に一回、十日一回と見舞って居りましたが其の度に悪くなり、イタイイタイと泣く事もしばしば、三、四年前からは紙一枚体を上げても、たえられなくなりましたが、肌着、着物も替えなければなりません、体もふかねばなりません。  ふいている者も、ふいてもらう者も泣きながら取替えたものです。せめて夜だけでも痛みがなかったらなあ、書も夜もこんなつらい心棒とても出来ない、早く死にたい、早くお迎えがあるようにとまがった手を合していました。なぐさめようもなく一緒に涙を流しました。 まあ、こういうふうにずっと書かれておりまして、少し省略をいたしますが、  昨年十月中旬頃より食欲がなくなり、日がたつにつれ、ますます体が弱り、吐気をはじめ、見るにしのびない日がつづきました。その頃より注射点滴毎日つづけて載き、命をつないでいました。それと云うのも十二月一日に喜田村に見て載くまではと気力、精神力で生きつづけました。  日頃より、県の方は、土地のカドミウムはみとめて、土の入替え、珪カルを入れて土質に力を入れていて、人間の体の事はあまり力を入れて見てくださらないとなげいていました。十二月一日に喜田村先生に見てもらってからは、先生、看護婦さんのおつしゃられる事は何でも素直にさいていだ母が注射点滴もしなくなり、声も出なくなる程弱りきりました。先生のおっしゃる事を聞くようにすすめましたが、これ以上、人に迷惑、無駄な費用はかけたくない、一日も早く死にたい、二度とそんな事云わないでくれ、少しはわたしの心もさっしてくれとかすかな声でいいました。そして十二月五日夜おそく亡くなりました。 まあ、こういうふうに悲惨な状態がつづられております。  この患者の血の出るような叫び、遺族の悲しみが長官にはおわかりでしょうか。一日も早くこの生野周辺を公害病認定地域に指定をいただきたい。そのことを強く要請いたしまして、質問を終わります。最後に一言……。
  188. 三木武夫

    三木国務大臣 いま読み上げられました娘さんの手紙、胸を打つものがあります。われわれとしても、そういうイタイイタイ病で悩む人たちが、いつまでも放置されている事態は許されないことでありますから、この際、われわれとしてできる限り救済のできるような方法を講じてまいりたいと考えます。
  189. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと落としましたので……。  橋本審議官が行かれるそうですが、先ほども言われました主治医と、ほかの被害者方々にもぜひ会っていただきたい。それから能川浩二医師、この人は富山の状況にも詳しいし、また青田さんの解剖にも立ち会った人です。この人にも会っていただきたい。これは行くと言われますけれども、いつ行かれるのでしょうか。一週間、十日先ということでなくて、もうすぐにあしたでも行っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  190. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生お話しの方々にもぜひ会いたいと思います。ただ、行くとしましても、向こうにもいろいろ材料等を準備してもらわなければなりませんし、私どものほうとしても資料を整備したいと思いますので、できるだけ早く参りたいということでございます。
  191. 木下元二

    ○木下委員 終わります。
  192. 角屋堅次郎

    ○角屋委員長 次回は、来たる四月二日火曜日、午前十時理事会、午前十時半委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時十二分散会