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1974-03-19 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十九日(火曜日)    午前十一時四分開議  出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       田中  覚君    戸井田三郎君       八田 貞義君    渡辺 栄一君       小林 信一君    米原  昶君       岡本 富夫君    坂口  力君       折小野良一君  出席政府委員         防衛政務次官  木野 晴夫君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    江口 裕通君  委員外出席者         大蔵省理財局国         有財産第二課長 川崎 昭典君         厚生省社会局保         護課長     山崎  卓君         自治省行政局振         興課長     田中 和夫君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 三月十八日  PCB、水銀汚染防止緊急対策に関する請願  (木下元二紹介)(第二七六三号)  同(庄司幸助紹介)(第二七六四号)  同(瀬崎博義紹介)(第二七六五号)  同(中川利三郎紹介)(第二七六六号)  自然保護の見地より山梨県の自然公園道路計画  中止に関する請願金丸徳重紹介)(第二七  九七号)  同(浦井洋紹介)(第二八七三号)  同(小林信一紹介)(第二九五九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  公害防止対策の強化に関する陳情書  (第三四〇  号)  公害健康被害補償法に基づく政令制定に関する  陳情書  (第三四一  号)  琵琶湖の水質保全に関する陳情書外一件  (第三四二号)  泉北臨海工業地帯における公害発生企業の進出  及び増設反対等に関する陳情書  (第三四三号)  大塔山系天然林保護に関する陳情書  (第三四四号)  自然景観破壊横浜金沢地先埋立反対等に  関する陳情書  (第三四五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  富士地域環境保全整備特別措置法案内閣提  出、第七十一回国会閣法第一一五号)  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三五号)      ――――◇―――――
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出富士地域環境保全整備特別措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 富士地域環境保全整備特別措置法案につきまして質疑を行ないたいと思いますが、この法案は、すでに第七十一国会におきまして提案されましてから、ほとんど一年近くたっている法案であります。その間におきまして、わが党からは二人ほど御質問を申し上げたところでありますが、なかなか法案審議が進んでいない。私は、委員の一人といたしまして、非常にこの点を残念に思っておるのです。この富士地域保全法は、この法案の第一条に趣旨が書いてありますけれども、「富士山が、わが国のすぐれた自然の象徴であり、かつ、世界に誇る国民的資産として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものである」こういった趣旨にかんがみてつくられたものであり、私は、この法律は、日本のシンボルであるところの富士山、やはりこれから、われわれがやっていかなければならないところの自然環境保全というものの象徴になるような法律であろうと思うのであります。それにもかかわらず審議が進んでいないことに対しまして非常に遺憾に思っておりますが、どうも国会での審議の場を通じる前に、いろいろと問題があるようであります。  それは言うまでもなく、北富士演習場使用の問題にからんでいるようでありますけれども、この辺につきまして、いろいろなことが週刊雑誌その他いろいろなところでいわれております。この辺につきまして、私は少しお尋ねをしたいと思いますので、まず事務当局でもけっこうですが、北富士演習場というのは、一体いつごろから、どのように使用されたのか、その時間的な経過、これを簡単に御説明いただきたいと思います。
  4. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 通称北富士演習場と称せられております演習場は戦前、昭和十一年から十三年ごろにかけまして、旧陸軍が買収しました約二千ヘクタールの演習場でございます。これが終戦後、占領米軍の接収するところとなりまして、さらに昭和二十五年には、この旧陸軍演習場周辺山梨県の県有林だとかその他の公有地民有地等も含めまして遠く精進、本栖湖あたりまで広がった広大な演習場となったわけであります。その後昭和三十二年の岸・アイク声明に基づきまして、米地上軍日本本土から撤退するという事態が生じまして、これに伴いまして昭和三十三年には富士吉田登山道以西地域に関しましては、その際に返還を見たわけであります。その後、今日まで在日米軍日米安保条約地位協定に基づきます演習場として推移してきたわけであります。  昨年の四月に、地元と国との間にいろいろ話し合いがつきまして、昨年四月十一日からは陸上自衛隊の管理する演習場となり、あわせて地位協定二条四項(b)に基づきますところの米軍の共同使用する演習場となったわけでありまして、この演習場におきますところの演習態様としましては、陸上部隊が通常持っております火器等によりますところの射撃演習その他の訓練が行なわれている状況でございます。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 本演習場は、昭和二十七年に講和条約ができた、その発効後も引き続き使用されているわけでありますけれども、中に民有地あるいは山梨県でありますけれども、県の所有地がある。一体これは契約はどういうふうな形でやっておられたのか。普通にいいますと賃貸借契約だと思いますけれども、そういうふうな形でやっておられたのですか、どうですか。
  6. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 この演習場の中に所在します民、公有地、いろいろ態様がございますが、主として民、公有地につきまして賃貸借契約でもって昭和二十七年以来使用してきております。ただ、一部県有地につきましては、県の条例等に基づきまして使用許可と申しますか、そういう態様で使ってきておるものもございます。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、これは賃貸借ということになりますと、民法の六百四条の規定の適用は当然に受けるというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  8. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 駐留米軍に提供しております施設区域土地に関する国と所有者との賃貸借契約につきましては、従来から不確定期限契約だということで扱ってきたわけでございますが、一昨年、いろいろ国会等でもこの六百四条をめぐる議論がかわされまして、昭和四十七年の四月二十六日、衆議院の法務委員会におきまして法務大臣から政府統一見解というものが述べられました。これによりまして、この賃貸借契約といえども民法六百四条の二十年の期限というものはかぶるものだというふうになっております。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 民法六百四条には「賃貸借存續期間ハ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間以テ賃貸借爲シタルトキハ其期間ハ之ヲ二十年二短縮ス」と、こう書いてある。それに第二項ですけれども、「前項ノ期間ハヲ更新スルコトヲ得更新時ヨリ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス」と、こうあります。これはもう条文、御承知だと思いますけれども、一体なぜこういった立法が行なわれておったかということです、民法明治年間法律でありますから。  これは民法のいろいろな解釈の問題になると思います。「賃貸借期間につき本條のような制限を加えたのは、あまりに長い間、目的物利用権所有者以外の賃借人の手に移すと、その利用不適當となり、社會經濟上の不利益を生ずると考えたからである。しかし、これは少なくとも現代の不動産利用状態に適しない思想である。近時の社會においては不動産利用賃借人によって爲されることが極めて多く、社會經濟の發達は主として賃借人努力によつて達成されている。従って不動産賃借権を短期にすると賃借人立場を脆弱ならしめ、却って社會經濟上の不利を導く。不動産賃貸借を二〇年以内でなければならないとすることは全く無意味だといわねばならない。」というのが大体民法学者の定説のようであります。民法のなくなられた我妻教授であるとかその他の方々は大体みんなそういう考え方を持っておられる、こういうことであります。  しかし、現実に実定法として二十年ということがありますけれども、いまのお話にありましたように、四十七年の七月に二十年という期間が来たわけでございますから、四十七年の八月に山梨県知事内閣官房長官との間で暫定使用に関する覚書等を結んでおられます。こういったものは、先ほどの法律解釈に立ちまして一応六百四条の適用があるということで、この期間延長について山梨県知事といろいろな覚え書きがありますが、これらはいずれも演習場使用についての空白期間をなくそうという国と県との努力のあらわれというふうに考えておるのですが、そういったふうに考えてよろしいかどうか、政務次官から御答弁いただきましょう。
  10. 木野晴夫

    木野政府委員 北富士演習場につきましての経緯は先ほど申し上げたとおりでございますが、実は六百四条の問題が起こってまいりました。六百四条は、賃貸借は二十年をこえることができないということでございました。いろいろ意見調整をしたのでございますが、国といたしましては六百四条、賃貸借は二十年をこえることはできないということでございました。  そこで問題は、空白期間というのが起こってくるわけであります。その空白期間を埋めるために、山梨県の知事さんが中心になられまして、この空白期間をどうするかということでできましたのが、国と山梨県との間でできました暫定使用に関する覚え書きでございます。これは、そのときの推移を見るために当初三カ月延ばす、続いて三月末まで延ばすということで三回更改いたしておりますが、四月の三日に使用協定ができまして、閣議決定、続きまして山梨県知事とそれから防衛庁長官、この間で使用協定というのができました。それを受けまして、現在は使用協定に基づきまして今後五年間これで行なうというふうになっておるわけであります。  先生のいま申されました暫定使用はどういう趣旨でできたのだといいますと、まさに六百四条の法的解釈をめぐりまして、ここに空白期間が生ずる、それを埋めるためにできたものでございます。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 私が、いま調べたところによりますと、当時の山梨県知事はそのころ全面返還平和利用という旗じるしを掲げておられたようでありますけれども、そういうふうな形になりましたのは、一体国と県とはどのような交渉をして、その使用転換をすることになりましたのか、この辺は、やはりひとつはっきり御説明しておいていただいたほうがいいと思うのです。これを政務次官か、あるいは施設庁の方でもけっこうですから御説明いただきたい。
  12. 木野晴夫

    木野政府委員 その場合の交渉経過でございますが、詳しいことは略すといたしまして、大体の考え方を申しますと、山梨県の知事北富士山ろく国民の保養、休養の場として利用する、こういったのが県民の要望であるというふうな立場から、演習場早期返還をお願いしたいというふうな希望も申されております。防衛庁のほうでは、自衛隊演習場といたしまして、ここが最適の地であり、実はほかにこれにかわるべきものも見当たらない現状でございますので、防衛庁といたしましては、これの交渉には、演習場として使うという気持ちを申し上げた次第でございます。  なお、先ほど一番初めに申しましたとおり、返還すべきものは実は返還いたしまして、そうして現在また返還する部分がありましたならば、これを返還する、こういう気持ち防衛庁といたしまして変わっておらないわけでございます。ただ、先ほど申しました山梨県の知事からいろいろな希望がございましたが、防衛庁といたしましては、これにかわる演習場がない、また現在のところ、これが一番適地であるというふうなことから両方ともでお互いに相談しているというふうなことでございます。したがいまして、これを受けまして暫定使用協定、これができましたが、さらに使用協定に移ったわけでございますが、両方でよく相談いたしまして、まとまったというふうな経過でございます。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 その覚え書きで国のほうが次の措置を講ずるということが規定されております。まず国有地開放である。二は、周辺整備事業実施である。三は、林野雑産物補償であるということが書いてありますし、さらに第六の中に、富士保全法を制定するということがあるけれども、これは山梨県知事の基本的な考え方だと思います。大体国のほうもその当時においては、この山梨県知事の基本的な考え方に同意をしておったのかどうか。契約をしたけれども、あとあとのことだと、こういうふうなことですか、それともやはり考え方としては、山梨県知事と国との間には完全な意見の一致があったのかどうか、この辺についてお答えください。
  14. 木野晴夫

    木野政府委員 使用計画覚え書きにつきまして、ただいま先生のおっしゃいました国有地開放、それから周辺整備事業実施、それから林野雑産物補償の解決、こういった点につきましては極力全力をあげて当たれということになっております。このとおり、われわれも受けとめましてやっておるのでございます。  なお、暫定使用計画におきましては、富士山ろく富士保全法といいますものを早急につくれということでございまして、このことを国と知事との間で申し合わせております。こういった点につきましては、ただいま先生のおっしゃったとおり、両者とも誠心誠意これに努力するということでございまして、国といたしましては、その点はっきりと申し上げる次第であります。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 この演習場をつくるという問題につきましては、残念なことに、自衛隊の問題につきまして意見を異にする党があることは事実であります。しかしまた、国会の大多数の意見でもってその自衛隊というものは認められておるし、それからまた、自衛隊というものがあれば、当然にいろいろな演習をやらなければいかぬし、さらには、アメリカ軍の駐留することによっていろいろな演習も当然に私はしなければならぬものだろうと思うのであります。  そこで、周辺整備事業というものをやはりひとつ進めていく必要がある。周辺整備事業というものは、演習場がある以上、これは積極的に推進をしてもらわなければならない、もうこれは当然のことだろうと思うのです。  しかしながら、それはさておきまして、国有地開放というのがあります。具体的には、閣議了解では、国道百三十八号線寄り国有地約二百十ヘクタールを林業整備事業実施するために地元払い下げるということになっておるようであります。これはやはり環境保全観点からも、地元との話し合いという観点からも、ぜひ早急にやっていただかなければならない問題だろうと思います。  四十八年にも参議院の予算委員会におきまして、当時の内閣官房長官は山下副長官でありますし、それから大蔵省担当局長さんからお答えがありまして、富士吉田市外二カ村恩賜県有財産保護組合払い下げをする、現段階においては、  一応この組合を相手にして考えている、こういうふうな答弁があったわけであります。四十八年の四月七日ですから、もうそろそろ一年たちます。客観的な情勢も変わっているかもしれませんけれども、こういった点につきましては、この方針には変わりないかどうか、これは大蔵省のほうから、ひとつ御答弁をいただいたらいいと思いますが、どうでしょう、この辺につきましては変わっているのか変わってないのか、お答えください。
  16. 川崎昭典

    川崎説明員 ただいま御質問の点でございますが、大蔵としましては、昨年御答弁申し上げましたとおり、同じ方針準備を進めております。いわゆる恩賜林保護組合に、所定の手続を経まして払い下げるということで目下準備中でございますが、何分広大な土地でございまして、ただいまようやく民有地との境界の画定が終わって、その他の測量に入っているという段階でございますので、いましばらく御猶予を願いたい、そういうふうに考えております。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 この問題、いろいろ手続的な問題と実態的な問題が少しあるのではないかと私は思うのです。  これはいろんな記事がありますから、あえてこの際、お尋ねをしておきたいのですけれども、恩賜林組合というのは、国から安く土地払い下げを受けて自分所有地にして、あるいは自分所有地を高く地元の富士急という会社に売りつけるのではないか。また、払い下げを受けたならば、その林業整備事業実施することでなくて、非常にいいところでありますから、別荘地か何かに売り飛ばすといったような記事も、まあ中傷的な記事かもしれませんけれども、そういったのが新聞に出ておったこともあります。  一体、こういったようなことというのは、私はやはりあってはならない。国の方針としては、林業整備事業という形でやるということでありますけれども、こういったようなことにつきまして、政務次官どういうふうにお考えになりますか、ひとつ御答弁ください。——大蔵省からでもいいです。
  18. 川崎昭典

    川崎説明員 恩賜林組合がこの二百十ヘクタールを払い下げを受けたいと申し出ておりますのは、林業整備事業をやりたいということでございます。したがいまして、閣議了解趣旨もございますので、払い下げを実行いたします場合には、長い間林業整備事業をするということを条件づけるという用途指定という制度がございますが、それによって実行したいと考えております。  もともと恩賜林組合は、林地拡大といいますか、林業用地をふやしたいという希望でもって土地取得希望しておるものでございますから、お説のように、国から払い下げを受けて、直ちに他に転売するというようなことは考えておらないと思いますし、国としても、そういうことはできない措置をとるという考えでございます。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 国としては、できない措置をとるということは、たとえば用途指定を行なうとかというふうに了解してよろしゅうございますか。
  20. 川崎昭典

    川崎説明員 そのとおりでございます。また払い下げの実行の段階では、相手方の財産状況事業計画もよく調査さしていただくということになっておりますから、十分そういう心配はないような措置がとれると考えております。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、この恩賜林組合というものの性格であります。おそらく地方自治法に基づくところの一部事務組合だろう、こう私は思うのですけれども、一体そういった一部事務組合というものについては、土地取得するところの権限というものがあるのかどうか。自治省来ていますね。——地方自治法解釈の問題だろうと私は思いますから、この辺につきまして解釈はどうなっているのか、またもう一つ申し上げますと、恩賜林組合というのは、それだけたくさんの国有財産を買うだけの財政的な能力を持っているのかどうかということであります。  まず、第一に法律的な性格と、それから経済的に能力があるかどうか、この点につきまして、お答えください。
  22. 田中和夫

    田中説明員 お答え申し上げます。  この富士吉田市外二カ村恩賜県有財産保護組合でありますが、一部事務組合と申しますのは、構成市町村が協議いたしまして規約を定めるわけで、その規約に基づいて仕事をするわけでございますが、この規約の中には、恩賜県有財産保護、造林、それから当組合所有にかかる山林に関する事務というようなことが規定されておりまして、いま大蔵省のほうから御答弁がありましたような林業整備というようなことで、林地を拡大して山林経営をやりたいということであれば、目的外財産取得でもありませんし、地方自治法違反でもないというふうに考えております。  また、この能力でありますが、能力のその具体のことはよくわかりませんが、すでにこの組合が二百ヘクタールぐらいの山林所有しておりますし、明治三十三年設立されましてから、すでにいろいろな山林経営をやっております古い組合でございまして、富士吉田市外二カ村で構成しておりますから、一般的には、支払い能力がない、力がないというようなことはいえないのではないか、こう考えております。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 支払い能力があるかどうかという点につきましては、払い下げをされるときに、先ほどの御答弁にありましたように、大蔵省のほうで事業計画その他を見て審査される、こういうことでありますから、当然にその辺は審査されるものだろうと私は了解しておりますが、現実に現在ありますのは、おそらく防衛施設庁の管轄するところの財産、こういうことになっておるのだろうと思うのです。私も現地に昨年七月に当委員会から派遣されまして、現地の実情を視察したことがありますが、非常に広大なところでありまして、境界線を引くといったところで非常にむずかしいことだろう。具体的な手続といたしましては、どういうことになるのですか。その辺御答弁をいただきたいと思います。  測量をしたり、引き継ぎをしたり、それでやるということですから、まず防衛施設庁のほうからお答えをいただいて、それからその次に大蔵省からお答えをいただいたらどうかと思います。
  24. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 閣議了解に出ております国道百三十八号線寄り国有地約二百十ヘクタールと申します土地は、昨年の五月十九日に米軍から返還になったわけでございますが、返還になりましたこの普通財産たる国有財産は、まず防衛施設庁のほうで外郭測量その他の測量を終えまして、国有財産実態を明らかにした上で、所管官庁である大蔵省のほうへ引き継ぎをするという手続になるわけでございます。  ただ、この二百十ヘクタールの測量につきましては、たまたまその前二月二十八日に、その外側にあります民有地約九十九ヘクタールが返還になっておりまして、この九十九ヘクタールの民有地と二百十ヘクタールの国有地との、ちょうど境界線というものがあるわけでありますが、この九十九ヘクタールの民有地測量を完了して、初めて二百十ヘクタールの境界を接します部分境界線が明らかになるわけであります。したがって、まず、その先に返りました民有地測量を鋭意完了いたしましたのが昨年の秋でございまして、それからこの二百十ヘクタールの測量にかかったわけであります。  ただ、二百十ヘクタールの測量に際しましては、この二百十ヘクタールの国有地の中に、かつてここが入植をされていたいきさつもありますために、農林省所管農道等もございます。それから一部河川敷き等もございます。そういったものの実態を明らかにして、初めて大蔵省のほうへ普通財産の引き渡しができるわけでありますが、何ぶんにもちょうど降雪その他の測量には非常に不ぐあいな冬季にかかりましたために、測量がやや予定よりおくれているという実態でございます。現在なお担当横浜防衛施設局で鋭意この仕事を進めておりまして、五月に入れば何とか測量を完了して、大蔵省のほうへ引き継ぐことができる、そういうふうに見通しとしては考えております。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 大体五月じゅうには完了する見込みであるから、大蔵省引き継ぎをいたします。そういたしますと、今度は大蔵省のほうはどういう手続をおやりになりますか。
  26. 川崎昭典

    川崎説明員 ただいま御説明がありましたように、測量を終わるということ、つまり財産を確定いたしまして大蔵省の管理といたしまして後、処理にかかると思うのでございます。大蔵省としましては、こういった非常に大きな財産、大規模返還財産というものを国有財産中央審議会に御審議をお願いするということにいたしております。すでに昨年四月二十六日でございますが、大規模返還財産返還後の利用についてという諮問をお願いして、御審議をお願いしておるわけでございますが、その中の一つの大きな財産として北富士演習場が入っております。  国有財産中央審議会では、こういったことを検討するために返還財産処理小委員会というのを設けまして、具体的な個々の財産についての利用計画の大綱というものを審議していただくことになっております。その上で利用計画が決定されました具体的な処理の際には、この財産の所在します地方の国有財産審議会、具体的には関東地方の国有財産審議会でございますが、そこに審議をお願いして処分可ということになって初めて処分をされるというふうに考えております。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 先ほど御答弁がありましたけれども、大体政府で話をした払い下げ土地でありますから、払い下げ方針というのは間違いないのだろうと思います。ただ、その後の利用計画であるとか、いつごろやるかとか、どういうふうな形であとのことをやるかというような問題、いろいろあるだろうと思いますから、そういった点につきまして、いまお話がありました三つの審議会ですか、分科会ですかでいろいろと御議論されるだろうと思いますが、やはり問題の解決をはかるためには、それらのいろいろな審議会、分科会等でできるだけ審議を急いでもらいたい。これはやはり非常に大規模な土地ですから、なかなかむずかしい問題もあるかもしれませんけれども、やはりこれだけ約束をしておってやった演習場の問題でありますから、住民の不信というか不安というものを解除するためには迅速な行政手続というものが必要だろうと私は思います。  そういった意味で木野政務次官、どういうふうにお考えになっておられますか、政府を代表して御答弁をいただけたら幸いだと思います。
  28. 木野晴夫

    木野政府委員 ただいま先生のおっしゃったとおり、県民のほうでは早くという要望もございますので、あまりおそくなってもどうかと思います。できるだけ早くやるという姿勢でいきたいと思っている次第でございます。このことは防衛庁におきましては、いま測量いたしておりますが、これも早急に終わる。それを受けまして今度は大蔵省のほうで所定の委員会その他の経過を経まして、そうして進捗をはかるということでございますが、関係各省ともよく連携をとりまして、先生のおっしゃったとおり進捗させるという姿勢でいきたいと思っている次第であります。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 これは環境保全の問題にも非常に関係がある。おそらく御同様の意見だろうと思いますけれども、環境庁の政務次官もおられますから、環境庁のほうからもやはり催促をしていただきたい。とかく国のやることというのは非常に手間がかかる。はっきり申し上げて手間がかかります。やはりその手間がかかったり、期間がかかるところに、いろいろな疑惑が出てきたり、いろいろな問題が出てくるわけでありますから、環境庁のほうからも、ひとつ大蔵省のほうへぜひ催促をしていただきたい。これを私はお願いしたいと思いますが、政務次官いかがですか。
  30. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 御意見の点につきましてはよく理解ができますので、そのようにして善処いたしたいと思っております。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 ところで隣の東富士演習場では、植林事業を行なっているというような話も聞いておりますが、一体この辺はどういうことになっておりますか。
  32. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 東富士の演習場に関しましては、昨年、北富士演習場で四月三日に使用協定を結びましたものと同様のものが、実は昭和三十四年に、地元と国との間に結ばれております。この地元と国との間の使用協定の中に、やはり演習場の荒廃等を防ぐために、いろいろ植林事業その他をやっていくというようなことも地元との話し合いになっております。その後防衛庁地元との間でいろいろ話し合いをやりまして、今日までそういう演習場の荒廃を防ぎ、あるいは荒廃に伴う土砂の流出を防ぎ、周辺との、またいわゆる環境保全と申しますか、いわゆる緩衝地帯的な植林地域を造林していく、そういった目的をもちまして、逐年植林を実施してまいりました。現在約四百ヘクタールの植林を終わっておる状況でございます。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 この富士山ろく環境保全につきましては、いろいろとありますけれども、植林ということは非常に私は大切なことだと思うのです。現地に参りましても、高いところから見れば、ほんとうにいい植林がある。これをやはり積極的に実施してやらなければ、ほんとうにいい富士山ろく環境保全というのはできない、こう思うのです。そういった意味でも、林業整備事業実施のための国有地払い下げの早期実現については、国の関係省庁におきましては特段の御努力を私は心からお願いをしたいのです。これはお願いしておきますから、先ほど御答弁もありましたので、ぜひ早くこれをやっていただくことを要望しておきます。  次に、お尋ねしたいのは、先般、北富士演習場を昨年の七月に視察いたしました。そのときの状況でありますが、自衛隊の庁舎がありまして、梨ケ原とかいうのです。その前に忍草部落がつくったという小屋が建っておりまして、これは一軒建っておる。そこにいろいろなプラカードみたいなものが張ってあるのですが、一体あれは何をしているのですか。私たちは、正式には予定の中にも入ってなかったし、話も聞かなかったのですが、あれはどういったことになっているのですか。何をしているのですか。どういった主張をしておられるのかお答えください。
  34. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 北富士におきます、いわゆる忍野村忍草入会組合が建てております小屋というものは、遠く昭和四十二年から今日まで、すでに十幾つ建てられておりまして、今日その一つが御指摘の自衛隊の梨ケ原演習廠舎の前に建てられているわけでございますが、忍草部落といたしましては一貫して主張していられることは、北富士演習場の中における自分たちの入り会い地を管理保全し、入り会い活動を行なうための必要な小屋だというふうに主張していられるわけでございます。  しかし、その入り会い小屋の建てられる場所あるいはその入り会い小屋における地元の行動等を拝見いたしますに、国の側といたしましては、これは忍草と国との立場の相違はございますが、国の側として見れば、明らかに北富士演習場における演習の阻止とか北富士演習場全面返還、こういう一つの忍草の闘争の拠点と申しますか、ということで利用されているというふうにしか受け取れないわけでございます。
  35. 林義郎

    ○林(義)委員 入会組合事務所である、こういうふうなことでやっているという話ですが、どうも私も行って見たところでは、張ってあるプラカードであるとか、ビラであるとかいろいろなものからすれば、演習をやらさせないというための小屋だというふうな印象をもって帰ったのです。  ところで、昭和四十四年に、北富士演習場の対策協議会というものが設立されておりますが、そのときには忍野村というのですかも、それから忍草入会組合もみな入っているはずだというふうに聞いておりますけれども、これはどういうことになっているのですか。一方では反対だという、一方では賛成だ、こういうふうなことが、われわれにはちょっとよく理解できないのですが、どういうことになっていますか。
  36. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 演対協と申しますのは、これは正式には北富士演習場対策協議会という名称の団体でございまして、昭和四十四年の六月二十一日に設立されております。その協議会の構成メンバーとしては、県、県議会それから地元の市、村及びそれぞれの市、村の議会、また富士吉田市ほか二カ村の恩賜県有財産保護組合、関係入会組合土地所有者、こういった方々の構成する形になっておりまして、昭和四十四年の六月に、この協議会が設立されましたときには、忍草部落の所属されます忍野村、それから忍草の入会組合、いずれもこの協議会に入っていられたわけでありますが、忍野村当局そのもの、議会は、現在もなお協議会のメンバーでございますが、忍草入会組合昭和四十七年に、この協議会から脱退されております。
  37. 林義郎

    ○林(義)委員 なぜ脱退をされたのでしょう。よくわからないのです。村ですから、一緒にやったらよろしいし、入会組合なんというものは昔からあるところですから、なぜ一体脱退をされたのか、どういうふうなことで報告を受けておられるかということにつきまして御説明ください。
  38. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 何ぶんにも、これはあくまで地元の間の問題でございますので、われわれといたしましては、それを仄聞している形でしか推測できませんが、演習場対策協議会の全体の運営につきまして、忍草部落が意見を異にされたということにあろうかと思いますが、おそらく意見の相違という点につきましては、脱退届けを出されましたときの資料等から拝見いたしますと、まず北富士演習場全面返還平和利用すべきだという一つのスローガンがある。もう一つは、北富士演習場国有地には入り会い権があるのだ、この確立を目ざすのだ、これが忍草入会組合のかねての唱えられていた立場であろうと思うのでありますが、演対協の運営がこの二つの点につきまして、「おそらく忍草入会組合の主張と異なる方向に行かれたというようなところから脱退されたのではなかろうか、そういうふうに推測いたしている次第でございます。
  39. 林義郎

    ○林(義)委員 国のほうでは、林産物補償というものを出しておられたりなんかするわけでありますけれども、こういったようなことは、その演対協に対して出されるわけでありまして、演対協に入ってないと、そんなものももらえない、こういうことになるのだろうと思うのですね。  一体なぜ出たのか私もよくわかりませんけれども、これはむしろ地元の方に聞いたほうがいいのかもしれないのですけれども、何か別の意図があってされたのではないか。金をもらうのだったら、やはり国のほうからもらわなければ、しようがないのです。もらわないと、やっぱりこれはしようがないし、それから、国有地払い下げとかなんとかいうようなものを受けるということになれば、反対されるのは、どうも私に納得がいかないのですが、一体この忍草入会組合というのは何人ぐらいおられるのですか。ちょっと山梨県なり、それから演習場の関係市町村、それの人口なり世帯数と比べて、どのくらいの割合になっておられるのか、御説明いただけますか。
  40. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 まず、演対協を通じての林野雑産物補償という姿勢につきましては、昨年の四月三日の、国と山梨県知事との間の覚え書きにも、林野雑産物補償については、国と演習場対策協議会との間において、協議されたところによって措置していくということが掲げられております。これは、あくまで演習場問題をすべての関係者がまるいテーブルにすわって円満に解決していこうじゃないかという趣旨で、この覚え書きに掲げられたわけでございまして、今日といえども、この方向で国としては、ぜひ進んでいきたいと考えているわけでございます。  なお、後段の御質問でございますが、現在忍草の入会組合を構成しておりますのは二百二十名ほどございます。これは二百二十名と申しますか、あるいは農家として二百二十戸というふうに申し上げたらよかろうかと思います。  なお、現在忍草そのものの世帯数は四百二十二ございまして、それとの比較でいきますと、この忍草入会組合は五〇%余り、それから忍野村全体の世帯数九百七十五戸に比しますと、二二%ほどでございます。演習場関係の富士吉田市及び山中湖村全部の戸数一万三千七百余りに比しますと、この忍草入会組合の戸数のパーセンテージは一・六%強くらいになろうかと思います。
  41. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時再開
  42. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林義郎君。
  43. 林義郎

    ○林(義)委員 午前中の質疑を続行をいたしたいと思いますが、先ほどのお答えでは、いわゆる反対派というのは二百二十人、忍野村に対して大体二二%、関係の市村に対しては約一・六%の人間である、こういうふうな話でありました。しかもお話を聞いておりますと、どうもだんだんと数も減ってきておるということです。  私も現地に行ったときに見たのですが、演習場の道路をはさんだ向かい側に自衛隊の北富士駐とん地がありますけれども、あれは忍草部落にあるのではないかどうかということです。何か話を聞きますと、これは私も聞いたところですからあれですが、忍草部落がこの駐とん地を誘致したんだ、こういうふうな話もあるようであります。一体この辺の経緯はどうなっているのか、事務当局から御説明をください。
  44. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 午前中御答弁申し上げましたように、昭和三十二年の岸・アイク声明以後、東富士、北富士演習場周辺におりました米地上軍が撤退いたしました。これに伴いまして、今後の富士演習場全般の運営をどうしていくかということで日米間で話し合ったわけでございますが、やはりこの機会に自衛隊が管理する演習場に切りかえ、必要に応じて米軍が使うという形に持っていくほうが双方にとって好ましい姿ではなかろうかということになりまして、東富士、北富士それぞれ静岡県なり山梨県、あるいは地元といろいろ話し合いをしたわけでございます。  北富士に関しましては、昭和三十三年の九月に、山梨県知事のほうにそういった国の考え方を申し入れまして、県知事ごあっせんのもとに地元関係市村とお互いにいろいろ話し合いをさせていただきました。その結果、富士吉田市、当時は山中湖村は中野村と称しておられましたが、それから忍野村、それぞれの市村長、それぞれの議会等も、そういう国の方向で行くということで、県知事のほうも、そういう考え方になられていることで賛成だということになりまして、それでは北富士演習場をそういう自衛隊演習場に切りかえるについては、どういう問題があるかということでいろいろ話し合いをしました中に、演習場演習部隊だけが来て演習をするのじゃなくて、この際、北富士周辺にも自衛隊の駐とん地をつくったらどうかという話が出まして、地元三市村が、それぞれ自衛隊の駐とん地は、ぜひ自分のほうの行政区画の中に持ってきてもらいたいという、いわゆる誘致の運動になったわけでございます。  そこで、われわれのほうといたしましては、それぞれ地元のお立場考えながら、演習場との立地上の関係から、あるいは駐とん地としての水利その他のいろいろな条件等を周辺でつぶさに調査いたしました結果、現在陸上自衛隊北富士駐とん地が所在しております、あの忍野村忍草区の場所が一番適地であるということで、この点を県を通じて地元にお話ししまして、三市村とも御了解の上で現在の駐とん地をきめた次第でございます。
  45. 林義郎

    ○林(義)委員 忍草地区からも非常な誘致の運動があった、こういうふうなお話でもありますし、忍野部落、山中湖村、富士吉田市、みなそれぞれたいへんな誘致があったというふうに聞いておりますが、もう一つお尋ねしたいのは、昨年四月の使用転換の際に、関係市町村は一体どういう態度をとられたか。やはり新しい問題でありますから、それぞれの市町村、県なりの議会の議論に当然なっているだろうと思うのです。そういった点につきまして、どういうふうな地元の態度でありますか、お調べになっておられれば御答弁いただきたい。
  46. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 午前中も御答弁申し上げましたように、一昨年、六百四条をめぐる問題から、急に北富士演習場使用転換についての地元と国との間の協議が進捗したわけでございます。その結果・昨年四月三日、当時の官房長官山梨県知事との問に覚え書きがかわされ、それをもとにいたしまして、防衛庁長官地元の関係の皆さん方との間に北富士演習場使用協定というものが締結されております。  その地元の関係当事者としましては、知事、富士吉田市長、山中湖村長、忍野村長、富士吉田市外二カ村恩賜県有財産保護組合長、北富士演習場対策協議会会長、これだけの方が、との協定の地元側の当事者になっておられます。それから国側としましては、防衛庁長官が当事者になっております。  それから、この協定を結ぶに際しまして、立会人といたしまして富士吉田市、山中湖村、忍野村、それから恩賜県有財産保護組合の各議長さんが立会人となっておられます。
  47. 林義郎

    ○林(義)委員 立会人となっておられるということは、市町村議会等の議決を経てやっておられるのですか。それとも単に立ち会い人ということでやられたのですか。
  48. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 それぞれの市村議会、あるいは恩賜林組合の議会、それぞれ議決を得られた上で、それぞれの市村長も当事者になられましたし、議長さん方も立会人になられたと承知しております。
  49. 林義郎

    ○林(義)委員 いまのお話で、県市村それから恩賜林組合、それぞれ議会で議決をしておられますということであります。  民主主義のルールということになれば、たとえいろいろ反対がありましても、やはり多数決の原理というのが働くわけでございまして、その所属団体が賛成の決議をしたならば、住民というものは、それに従うというのがルールだろう、こう私は思います。まして、単にわずかの一握りの人があたかも関係者全員の意思であるかのごとくに宣伝をしたり、また国もこれにふらふらしているという態度が見られるのは、どうも私としては非常に好ましいことではない、こう思うのです。こうした無知な要求というものは、国としても断固として拒否すべきではないか。やはり民主主義のルールでありますから、一ぺんきまったものは、そのとおりにやっていくということが、たてまえでなければならない、こう私は思うのです。  国として、こういったものに対して基本的にどういうふうに進めていかれるのか。私は、先ほど申しましたように、国としては断固として拒否すべきである、こう思うのですが、政務次官、いかがでしょう。
  50. 木野晴夫

    木野政府委員 一つの意見がありまして、それを主張するという場合に、これこれの賛成者がおるということ、そういった場合に、多くの人が賛成者があるだろう、またある、こういうこと。そしてまた、その表現として、一部でありましても、全員が賛成だというふうなことがあると思うのでありますが、ただいま先生のおっしゃいましたとおり、私たちといたしましては、けじめはつけるものはきちっとけじめをつけた上で臨むべきである、このように思っているのでございます。  それで、基本的な考え方としましては、演対協といいますものが、県があっせんされまして、そうしてほとんどすべての方が入られたというそういったこと、これは一つ大きな柱として考えているわけであります。それから忍草入会組合につきましては現在二百二十名、こういう数で押えてみまして、そういたしますと忍野村の世帯数に対しましては二二%、関係市町村と比べますと、二%程度でございますが、そういった点は十分にこれも頭に入れて臨まなければいかぬと思うわけでございます。  その上で、いろいろな事情も聞き、そうして先生のおっしゃられました多数決の原理というのでございますか、そういったことも考えて処理すべきであると思っておりまして、そうしてけじめをつけると申しますか、きちっとした態度でおるということが大事であると思いますので、この点は防衛庁といたしましては、御指摘を待つまでもなしに考えておるところでございます。
  51. 林義郎

    ○林(義)委員 もう一つお尋ねいたしますが、富士保全法防衛庁が行なっておるところの周辺整備との関係であります。  演習場演習すると、やはり環境破壊が行なわれるというような心配というものが私はあるんだろうと思うのです。演習にあたって、どういったような配慮をしておられるのか、お答えください。
  52. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 富士演習場が所在しております周辺地域が、本委員会でも審議されていますいわゆる富士保全法ということで、富士の環境を保全するという一つの大きな目的は、われわれのほうも十分認識しているわけでございます。したがって、そういう地域に存在する演習場の運用につきましては、十分こういった点も配慮していくべきであるということで、昨年の使用協定地元と結びました場合に、北富士演習場における自衛隊及び米軍が、これらの演習場使用する場合の使用条件というものを取りきめております。  その中におきましては、まず訓練の種目、あるいは使いますところの砲弾、あるいは爆発物の使用のキロ数を制限するとか、あるいはいわゆる富士の観光シーズンでもあります七月から九月の間に、自衛隊演習はできるだけ制限するとか、あるいは不発弾等の処理を適切に行なう、また演習場内におきましては、演習に支障のない限り森林区域の復元等に配慮していく、そういった必要な林業整備計画、保全事業等も国が実施し、あるいは県、恩賜林組合等が実施される面にも協力していく。それから何ぶん演習行為を行ないますために、それぞれ地域の荒廃等がどうしても伴うわけでございますが、こういった荒廃によって生じるところの障害というものを防止するような措置も的確に講じていく、あるいは演習場内にありますところの公共用の施設とか、現在あります森林等につきましても、できるだけ損傷を与えないように演習の行為、演習の計画等を配慮していく、そういった点につきまして使用条件の中にもうたい、十分そういう配慮の上で演習を行なっている次第でございます。
  53. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話がありましたのは障害防止対策事業で、周辺整備法に基づいて行なわれている事業だろうと思うのです。これと今度のこの富士保全法、これとの関係というものをどういうふうに考えておられるのか、防衛庁、環境庁両方からお答えいただきたい。
  54. 木野晴夫

    木野政府委員 ただいま事務当局から具体的な事例について申し上げましたが、先生の御質問にございますとおり、富士保全法というものを設けて、そうして国民的な財産をば、これを完全に保護しようという法案が出ております。つきましては、使用協定におきましても、そういったことも両立するように書いてございまして、この精神にのっとって進んでいこうと思っているところでございます。  なお、今回の法案と、それから周辺整備法との関係はどうかということでございますが、周辺整備法は基地の周辺を整備いたしまして、そのことによりまして地元の皆さん方の御要望にもこたえる、民生の安定にもこたえるというのがねらいでありまして、それで、この法案がなくとも、その関係の仕事はいたしておるわけでございます。今回富士保全特別措置法が通りますと、これに基づいてまたいろいろな仕事がなされると思うのでありますが、その場合に両者の協力といいますか、ともに助け合って万全を期するということが何よりも大事でございますので、環境庁、また関係各省ともお互いに連絡を密にしてやっていこうということでおるわけでございます。  なお、たとえば一例をあげますと、先ほど話が出ました演習林をつくる、植林をするといった場合にも、環境庁との連絡もございますし、またたとえば道路をつくるという場合にも、周辺整備法の問題でもあり、また富士地域保全法の問題でもありますから、そういった点は十分に連絡をとって、そしてやっていこう、こういうことで両省、関係各省ともおるわけでございます。
  55. 林義郎

    ○林(義)委員 北富士演習場は、東富士演習場とともに自衛隊米軍にとって非常に重要な演習場であって、現在のところでは、これ以上の返還はむずかしいというのが実情のようだというふうに私は聞いているのですが、そうすれば、そういった現実を踏まえて言うならば、周辺整備事業は今後とも引き続いて大いにやってもらわなければならない、また富士の環境保全に一段と一役をになうことになりますところの林業整備事業実施のための国有地払い下げというものも早急に実現してもらいたい。それが同時に演習場の安定使用に通ずることになると私は思うのです。  やはり住民の理解、それから住民の協力、と同時に、国のほうがいろいろやっていくということが、演習場の安定した利用に私はつながると思うのですが、この点は本日いままでずいぶん議論されたところでありますから、もう一ぺんここで、その確認をしておいていただきたいと思うのであります。政務次官から一言御答弁をいただきたい。
  56. 木野晴夫

    木野政府委員 ただいま先生から重ねて御指摘ございましたが、私たちも全くそのとおりであると思っている次第でございます。そうして、このことにつきましては知事が中心となりまして、そして国との間で使用協定をつくられておるわけでありますから、われわれといたしましては、この条文をば十分に実行していく、これに努力をする、このことが一番大事であると思う次第であります。また、今回富士保全法ができますが、それとよく連携をとりまして、そうして環境庁また関係各省庁とも連携をとりまして、その実効をあげることが大事であると思っておるわけでありまし七、そういった点につきましては、さらに十分に注意いたしていきたいと思っている次第であります。
  57. 林義郎

    ○林(義)委員 自衛隊が要らないとか、安保が不要であるとかというような、いろいろな議論があることは私も承知しておりますが、私はその問題を、いまここでとうとうと議論するつもりはないのです。もうこれは、むしろはっきりしてきまっていることである、私はそういうふうに考えますから、当委員会におきましては、もっぱら演習場が必要であるかどうかという現実的な問題——先ほど質問いたしましたけれども、現地の情勢というものを踏まえた上で進めるのが現実的な方策だろうと思うのです。現地で反対しているのは、山梨県の広さにして、わずか一%の一部の人である。しかも静岡県のほうの関係を入れますと、非常にパーセンテージは落ちてくるだろうと私は思うのです。  先般、現地を視察いたしましたときにも、静岡県のほうでの市町村の方々からお話がありました。お話を聞きますと、中には、革新系の市長さんであるという方もおられましたけれども、こういった方々も一様に、早く富士保全法はつくってもらいたい、それでないと富士のすそ野はゴルフ場になったり、いろいろなものができて、たいへんな乱れ方になる、一刻も早くつくってもらいたい、現在やっているところの行政措置ではとてもできない、こういうふうな切々たる陳情があったのであります。そういった意味におきまして私は、この法律というものは山梨、静岡、両県県民四百万の大きな期待をになっている法律だといっても差しつかえないと思うのです。  私は、法案の内容に、きょうは入っておりません。法案の内容に入っておりませんけれども、これは同僚議員から、またいずれ御質問したり何かするだろうと思いますが、私は、この法案の持っている背景というものを、いまいろいろと御質問いたしました。こういった背景を十分に踏まえた上で、富士保全法の早急な成立を委員長に心から要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思いますが、私の考え方につきまして両政務次官から、くどいようでありますけれども、お答えをいただきたいと思います。
  58. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 環境庁といたしましては、富士地域における自然環境を適正に保護するとともに、これにふさわしい利用環境を確保いたしまして、後代の国民に継承することが現下の国民的要請であるという基本的な認識に立ちまして、本法案を提出したようなわけでございます。いままで林先生からのいろいろな御意見、全く同感でございまして、この法案が早急に成立することができますよう、よろしくお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  59. 木野晴夫

    木野政府委員 防衛庁におきましては、富士山ろくで北富士、東富士演習場使用しているのは御承知のとおりでございます。これにつきましては、いろいろむずかしい問題がございますが、県民の意向も十分くみ取りまして、現在演対協が中心になりましてやっておられますが、そういった点も十分に経過もしっかりととらえまして、そうして円満に進めていきたいと思っておる次第でございます。  なお、富士山ろく保全につきましては、環境庁ともよく相談いたしまして、実効のあがるように考えていきたいと思っております。
  60. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。      ————◇—————
  61. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下元二君。
  62. 木下元二

    木下委員 まず、本論に入ります前に、序論といたしまして、政府の環境行政の姿勢の問題として一つだけ伺っておきたいのでありますが、政務次官に伺います。  大阪空港公害訴訟の大阪地裁判決がありまして、十三日、政府はこれに対して控訴をいたしました。この判決というのは、まさに行政追認の判決であります。住民のほうこそ控訴をする理由があります。そして控訴をいたしました。政府は謙虚にこの判決を受け入れるべきであったと思います。なぜ控訴をされたのか、伺いたいと思います。
  63. 春日斉

    ○春日政府委員 国が控訴をするかどうかという問題につきましては、これは国の各省各庁のいろいろな問題点がございまして、環境庁として、ひとりその中で発言することは差し控えたい、かように考えております。
  64. 木下元二

    木下委員 控訴をした理由については新聞紙上等でも出ておるわけなんですが、環境庁にはいろいろ意見があったでしょうけれども、政府としてどういう理由によって控訴をしたのか、これはどうして言えないんでしょう。  私がこの問題をお尋ねいたしますのは、長官はこの判決の直前に、大阪空港は世界に例を見ない欠陥空港だ、こう言われまして、判決を契機に住民の立場に立って抜本的なメスを入れる、こういうふうに言明をされました。判決が出ますと、前から具体化しておるエアバス導入、これはもう住民が当初から反対いたしておりますが、こうした問題を持ち出してきておる。そうして今度は、国はこれまで騒音防止対策をできるだけ進めてきたんだ、だから不法行為責任があるというのは疑問だ、こういう立場に立って控訴をしておる。これは、判決を機に住民の側に立って抜本的なメスを入れるということを言いましたけれども、まさに住民に背を向けて、住民を裏切る態度であります。特に差しとめの問題、この点については、午後十時以降の発着は判決直前にやめておるのです。これは、被害をもうこれ以上大きくしてはならないという判断に立っておやめになっておるんだと思う。判決はその行政を追認したのですね。そうすれば、この点について控訴をする理由はないじゃないですか。その点を伺いたい。
  65. 春日斉

    ○春日政府委員 先ほども申し上げておりますように、被告たる国、この国を構成しております場合、運輸省あり、法務省あり、大蔵省あり、環境庁もあるわけでございますので、私から統一的にその理由について申し上げるのは差し控えたい、かように申し上げておるわけでございます。
  66. 木下元二

    木下委員 それでは、環境庁としては、この点についてはどういうお考えでやったのか、政務次官、それをお答えいただきたいと思います。
  67. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 木下先生御承知のように、この問題につきましては政府部内で七省庁の関係があるわけでございます。事務次官会議また臨時閣僚会議を持ちまして、いろいろ検討したわけでございます。この判決につきましての控訴に至ります経過につきましては、私はその場に出席をいたしておりません関係上つまびらかにしておりませんので、申し上げることは差し控えたいと思いますが、先ほど春日局長が御答弁申し上げましたように、この七省庁の会議の結論として控訴をする、こういうことになったわけでございまして、環境庁の意見につきましては、その結論が出るまでの過程において出された意見はございますけれども、控訴をするという結果については、その全体の会議で結論が出たわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。  それから先ほどの御意見の中で、これは法律的な解釈でございますから、私個人の意見としてお聞きいただきたいわけでございますが、人格権に基づく差しとめ請求が認められたということと、それから行政措置の追認ということは、結果的には時間的に同じでありますけれども、内容については非常な差があるものだ、私はそう解釈いたしております。
  68. 木下元二

    木下委員 いま言われた、内容について差があるというのはどういうことですか。結局十時以降の発着禁止の措置はもうとられておったわけですからね、判決直前で。これは住民にこれ以上迷惑をかけてはいかぬということで十時以降は発着禁止。判決はそのとおり認めたわけでしょう。そうしたら、その点だけ考えれば、これはもう控訴する理由はないんじゃないかと思うのですよ。そうじゃないですか。
  69. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 法律論でございますから、しろうとの私がとかく申し上げることはいかがかと思いますが、行政措置として飛行禁止をしておることと、それから、ある権利に基づいて、その飛行行為を差しとめるということに対して裁判所がそれを認めたということとは、私は差があるように思っておるわけでございます。
  70. 木下元二

    木下委員 それではこの問題は、いま次官が言われましたように、あなた御自身がその場に居合わせて、つまびらかにしていられるわけではないようでありますので、私は長官じきじきにこの問題について尋ねたいと思います。この空港訴訟につきまして判決前から住民の人たちが何回も上京し、控訴の問題についても長官に話をした際に、長官は、初めに私が指摘をしましたように、抜本的なメスを入れるということを言われて、控訴をするということは一言も言われていなかった。それがこういう形で控訴をするということは、被害住民を無視した姿勢だと思います。環境行政全般についての政治姿勢につながると思いますので、この点は長官にじかに聞きたいと思います。
  71. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 私も地元の方と大臣との全部の会合に列席はいたしておりませんが、私が列席しておりました中での三木大臣は、この判決の結果について控訴するかしないかということにつきましては、全然その点に触れておりませんので、その点は誤解のないように御理解いただきたいと思います。
  72. 木下元二

    木下委員 その点は、控訴をするということを言っていないということを私はいま言ったので、あらためてまた長官に伺います。  公害病の認定事務の問題に関しまして具体的にお尋ねします。  水俣病の問題でありますが、水俣病の認定事務の遅延問題、これは以前から再三指摘をされてまいりました。政府は、これまでこの問題については、最大限度医者の協力を得て努力をすると言明をしてきております。ところが現在、二千百人以上の人たちが申請をしたままの状態で放置されております。聞くところによりますと、二カ月に八十人しか処理ができない。しかもその二カ月というのは、その間事務を進めるのは、わずか二日間というふうに聞いております。こういうことでいきますと、二千百人もおりますと、かりに一年五百人としても四年以上もかかるのです。たまりかねて住民の人たちが熊本地裁に対して医療費、生活費支払いの仮処分申請を行なっておるのであります。この認定事務の合理化、迅速化の問題でありますが、これを抜本的に考え直すべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  73. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまの水俣病の認定促進の問題でございますが、この点に関しまして先生御指摘のように、現在非常に問題点があるわけでございます。私ども現地でいろいろ調査をいたしておるわけでございますが、やはり審査会の問題というよりも、審査会に上げる前の精密検診の段階で非常に問題があるというのが従来から私ども感じておるところでございます。現在こういう点を中心としまして、県と私どもとで検討委員会を設けまして検討を進めている段階でございます。第一回は三月一日に開き、あと二回ないし三回開きました上で早急に結論を出したいと思っております。  いずれにしましても、現在の体制では非常に無理があるわけでございますから、関係の各方面、たとえば九州各大学あるいは国立病院、こういうところの協力も得ました上で進めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  74. 木下元二

    木下委員 検討委員会で結論を出すというのは、何を検討するのですか。
  75. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問のありました事項でございますが、それを促進するために、どのような方式で、どのような分担で進めていくかということでございます。実は、いま九州関係の大学及び国立病院の方々が全部第三次検診に回っておりまして、専門家の手がないということでございましたが、その有明海の第三次検診の終わり次第、検診促進のためのスケジュールについて相談をしてきめる、こういうことでございます。
  76. 木下元二

    木下委員 その結論は、いつごろ出るのですか。
  77. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまはっきり日にちとしては、そこの場所できまってはおりませんが、私どももできるだけ早い時期に得たいということで、もう一、二回のうちには最終的な結論が得られるのではないかというぐあいに期待しておるところでございます。
  78. 木下元二

    木下委員 その委員会でどういう結論が出るのかは私はわかりませんけれども、この二千人以上たまっておる申請者、この申請に対して一日も早く認定ができるように処理をしてもらわぬと困ると思うのです。ほかの問題ならいざ知らず、これは命と健康が日一日とむしばまれていく問題ですから、そんなゆうちょうにかまえられては、ほんとうにたいへんだと思うのです。検討委員会で結論がどう出るか知りませんけれども、私は相当抜本的な対策を講じなければ、この二千人以上の人たちの早急な処理は困難だと思うのです。もし早急な処理が困難である、できないということならば、一体これはどういう措置をおとりになるのでしょうか。
  79. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 先生御承知のように、現在でも運用としましては、たとえば症状の重い方は、できるだけ早く繰り上げてやるとか、いろいろな審査あるいはその前の精密検診の手順は、いろいろくふうしてやっているわけでございます。ただ、これを制度としてどういうぐあいにやれば、二千人に及ぶものをできるだけ早期に、しかも合理的に処理するかということにつきましては、やはりその関係の先生方全部の御了解を得ませんと、行政が一方的に進めますと、かえっていろいろ混乱を生ずるということでございまして、私ども早期に結論を得たい、こう思っております。結論が得られない場合はどうかということでございますが、これは結論を得るようにやりたい、こういうことでございます。
  80. 木下元二

    木下委員 現在二千百人たまっていて、しかも、これからまだ申請者が出てくる。一月大体四十人の計算でいく、とにかくこういう流れを大きく変えぬことには、どうしてもだめですよ。私は、これまでこの問題が何回も問題にされているように聞いているのです。問題にされながら、いまだにこの問題が解決をしていない。  そこで、私はしつこく聞くのですけれども、もしこれが解決をしないということならば、申請者に対して治療費全額の仮払いを考えるべきだと思うのです。さらに、九月一日からこの補償法が施行をされるということなんでありますが、この補償法にかりに乗せて取り扱うようにすべきだと思うのです。これは、あなた方が努力をする、努力をすると言われて放置をして、その結果がこういうふうにたまっておる。これがさばけぬ以上は、少なくともいま私が申し上げましたような措置をかりにとって、救済をはかるべきだと思うのです。これは国として当然やるべきことです。この点について、ひとつあなた方のほうで積極的に考えていただきたい。  これが、いまあなたが言われたように検討委員会で早期に結論が出て、しかもその結論が、ほんとうに一カ月、二カ月、三カ月のうちに迅速に処理ができるという体制ができれば一番けっこうだと思いますけれども、一体それができるかできないかきわめて不安でありますので、私はあえてこういうことを伺っているわけなんです。できないときには、いま私が言いましたような方法で措置をとってくださいますか。
  81. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 水俣病の問題は非常にむずかしい問題でございまして、先生御指摘のように認定を促進することも一つの方向づけでございますが、同時にまた、認定を促進するためにいろいろと認定上問題が出てくるということもございまして、従来から認定委員会先生方と非公式にいろいろお話ししました場合でも、この扱いについては慎重にやってもらいたいという希望が多いわけでございます。こういうことで、私どもとしましては、現在せっかく検討委員会でやっていただいておるわけでございますから、その結論を待って対処したいと思っております。  たとえば補償法にすぐ乗っけてということもございますが、これまた認定で症状区分を設けるということになりますと、現在のクラス分けの委員会と、今度補償法によります審査会とどういうぐあいに相互に関係づけるかとか、いろいろな問題が出るわけでございまして、私どもとしましては、従来からやってまいりましたラインに沿いまして、できるだけそれを促進していくという方向で、本質的に問題をあとに残さないようにして持っていきたい、こう思っておるわけでございます。
  82. 木下元二

    木下委員 私がいま言いましたような措置について、いま直ちにここで、じゃそういうふうにいたしましょうとは、あなた方のほうでは答弁しにくいと思いますが、少なくとも検討委員会でその結論が、あなた方が予想をされておるような結論、早期の解決という方向で出なかった場合には、患者の救済のために、いま私が言いましたような方法を考えざるを得ないと思う。考えるべきだと思うのです。そのことを聞いているのです。おわかりですか。その点をひとつ検討いただきたい。
  83. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いま認定が問題になっておるわけでございますから、健康被害救済特別措置法によります認定、この場合も、新しい法律上の認定の場合においても、同じような問題があるわけでございます。したがって、いま御指摘の問題点はよくわかっておりますので、御指摘の御趣旨に沿った検討をいたしますが、先生おっしゃるように、健康被害補償法ですぐ救済すべきじゃないか、こういうことはなかなか簡単にいかない問題だということを申し上げておきたいと思います。
  84. 木下元二

    木下委員 新しい法律が九月から施行される。これは一日も早く施行して救済をということで九月一日になったのですけれども、それが、法律はこうやって施行されても、幾ら申請してもたまってしまって、なかなか救済が得られないということでは、せっかくこの法律の施行を早めた意味がなくなってくると思うのです。だから、そういうことのないように措置していただきたい。きょうの朝日新聞の朝刊を見ましても、「苦しみ消えず“逃げ腰行政”に怒り」ということで、この問題について触れられておりますが、行政の責任で命と健康をすり減らすということを私は容認できないのであります。そういう角度で私は質問したのでありますが、前向きで検討いただく、こういうふうに答弁がありましたので、次の問題に移ります。  地域指定の基礎調査についての問題でありますが、特に尼崎を中心にして伺いますが、呼吸器疾患の有症率の調査は全部終了されたのでしょうか、どうでしょうか。
  85. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 地域指定の問題につきまして、尼崎の現在の進行状況についての御質問でございますが、問診調査は終了いたしまして解析中であります。それから受診率調査は終了いたしまして、これも現在集計中でございます。環境大気調査は集計をして、これも解析中でございます。
  86. 木下元二

    木下委員 私が聞いているのは、四十歳から四十九歳まで千百五十人を対象にして調査をしたというふうに聞いております。その調査方法でありますが、通知を出して保健所に呼ぶという方法をとったところが、だれも来なかったので、方法を変えたというふうに聞いております。これは事実でしょうか。通知を出しても保健所に来なかった。そこで保健婦に家庭訪問をさせまして、アンケート調査をした。ところが、四十歳から四十九歳というと、ちょうど働き盛りでありまして、勤務時間ですので被対象者が家にいない。そこで調査が非常にはかどらずに大きな支障を来たしておったというふうに聞いているのですが……。
  87. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの御質問でございますが、昨日、尼崎の課長が参りまして聞きましたときには、そのような事情は聞いておりません。ただ実際調査をいたします最中に、それらのケースが中にあって、訪問とアンケートを併用して、非常な努力を要するという事実は、どこの地区においてもかなり避けられない問題であろうと思います。
  88. 木下元二

    木下委員 そうしますと、尼崎の場合の具体的な事実関係については、環境庁のほうはほとんど報告を受けていないわけですか。
  89. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 昨日の段階状況を聞いたということでございまして、先生のおっしゃった特定の問題について、調査が非常に困難であるというような事情については伺っておりません。
  90. 木下元二

    木下委員 この問題でも、全部その調査が終わったのかどうか、私のほうでは確かめておりませんけれども、終わったと言われるから間違いないとは思いますが、こういう調査はもっと医師の協力を求めることが必要だと思うのです。保健所に呼び出すというようなことでなくて、診療所等で医師や看護婦に協力をしてもらって、そこで調査をすればスムーズにいくと思うのですが、なぜそういうことをしなかったのか。また、この調査について医師会の意見を聞くべきだと思うのです。これは、患者家族の会もこの点を特に要求しておったようでありますが、全然聞かれていないようであります。どうも納得できないことが多いのでありますが、こうした点について、もっとそういう納得のできる合理的な方法がとられなかったのか。これは環境庁が県なり市のほうに一切委託をして、具体的なやり方、方法等については指示をされなかったのでしょうか。どういうことでしょうか。
  91. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の医師会との関係でございますが、地域指定の調査につきましては、尼崎市はすでに現在までもいろいろの経験を持っておりますし、市に対して全面的に委託して運営してもらうという形をとっております。尼崎市の医師会と関係が悪いのではないかという御質問でございますが、私どもが直接尼崎市の医師会に地域指定のことでお願いするということはいたしておりませんが、尼崎市の医師会の方々とは私どもは接触をいたしておりまして、そのほかの調査の面では非常な御協力を得ておるという状態でございます。
  92. 木下元二

    木下委員 だいぶ違うのですけれどもね。一応まあそういうふうに聞いておきますが、私のほうの調べた事実とだいぶ違います。  大気調査の点でありますが、この測定は市内十カ所を選ばれたということですが、どう選ばれたのでしょうか。具体的でなくて、どういう方法なり基準で選ばれたかということだけ言ってもらったら、けっこうです。
  93. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 測定点につきましては、環境大気調査におきまして硫黄酸化物を十二地点、窒素酸化物と粉じんを七地点選んでおります。そこの選び方といいますものは、これは地域汚染という観点から選んでおりまして、ある特定の発生源をねらうとか、ある特定の道路周辺を選ぶというような形ではいたしておりません。尼崎市は、御承知のように非常に長い間、市独自で調査をいたしておりまして、かなり等高線としての地図が明らかになっております。等高線としての地図が明らかになっておりますので、その等高線としての地図を基礎といたしまして、過去の地域指定において実は一部の場所が落ちた、その落ちた場所を特にねらうようにというような観点を含めまして、このような調査地点は選ばれておるというぐあいに私は理解いたしております。
  94. 木下元二

    木下委員 このことを私特に伺いますのは、最もひどい地域が除外されておるのですよ。たとえば大庄地域とか武庫川町、武庫川と四十三号線の交わったあたりですね。それから市役所周辺、尼崎——宝塚線沿線、こういうところですね。尼崎では最もひどい地域なんですよ、これが除外されておる。それから阪急電鉄の通っている阪急以北ですね。これは対象地域外ということなんですけれども、対象地域を調査するとそれはわかるのですが、対象地域の調査ということであっても、それではその境界線付近の、対象地域にごく近いところの地域外の地点、阪急沿線の以北あたりも一体どうなっているのか、そういうところは調査の対象にしてもいいと思うのですが、ここも全然選ばれておりません。だから、この住民の人たちからしてみれば、どうもこの調査はいいかげんではないか、こういう批判が出ておる、また出ても当然だと思うのですが、いかがでしょう。
  95. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の最初に御指摘のありました武庫川のほうは、はかっておらないのではないかということでありますが、これは測定点といたしまして、その近くの西字というところは、ここに入っております。
  96. 木下元二

    木下委員 それは離れておるでしょう。離れておりませんか。
  97. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 これはちょうど武庫川駅のすぐ横あたりになると思いますが、地図の上には全部入っております。それから、西部測定点というのも、やはりこのあたりを押えております。  それから、もう一つおっしゃいました大庄というのが、どこの地区をおっしゃっておられるのかよくわかりませんが、大庄というと特定の地名でありますので、もしもこの地図の上でおさし願えれば、私はわかりやすいと思いますが——いま先生の御指摘の問題でございますが、自分の近所になければはかっていないと言うのは、これはちょっと調査の上では無理でありまして、一定の広さのところではかっておりますので、この地図から見ますと、先生の御質問がこの辺のことをおっしゃっておられるのでしたら、当然にこの辺の測定データでこれは代表できるというぐあいに考えておるわけでございます。これは中部測定所とかあるいは失業対策部とか、あるいは東難波町二丁目というような測定点においてカバーできるのではないかというぐあいに考えております。  それから阪急以北という問題でありますが、阪急以北につきましても、この市立東高校というところ及び尼崎北小学校というところはとっております。
  98. 木下元二

    木下委員 二つとっているのですか。
  99. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 二つとっております。この尼崎北小学校と市立東高校とはとっております。  また、従来から広げておりますときに、国鉄とそれから阪急との間のところでございますが、これは私もかなりよく存じておりますが、そうよごれた場所ではございませんが、立花西小学校というところで測定点をとっております。
  100. 木下元二

    木下委員 大体わかりましたが、一定の距離、間隔を置いて測定をするということになっておるので、その地点が選ばれたと思うのですが、ただ、住民のほうからすれば、最もひどい汚染の濃度の強いところがあるわけですよ。そういう地点が省かれておるというふうな状況がやはり出てきておるので、そこでもっとひどいところを測定してほしい、こういう要求があると思うのです。やはり、こういう測定については住民のほうの意向なり要求といったものも十分にくんで測定を進めてもらうべきではないか、こう思いますので、今後の問題として特に要望いたしておきます。  それから、もう一点。認定患者が四十歳から四十九歳までは全患者の五・九%、十歳未満は五九・八%。人数で言いますと、四十歳から四十九歳までは二百二人。これは四十九年三月八日現在であります。そしてゼロ歳から四歳までが千五百五十六人、五歳から九歳までが四百九十八人、こういう状態です。それから六十歳以上、パーセンテージで言いますと一六・二%、こういう状態なんです。つまり、児童、幼児と老人に圧倒的に多いということですね。全部で七六%をこの患者が占めておるんです。  そこで伺いたいのは、この調査において四十歳から四十九歳までというふうに限定をするところに問題があるように思うのですが、なぜこういうふうに限定をするんでしょうか。
  101. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 年齢は四十歳から五十九歳になっております。四十九歳ではございません。これは慢性気管支炎ということで、国際的にもかなり安定した合意のあるような数字で比べられるもので、その調査の方式も、国際的にも受け入れられているものは、どこの層にあるかと申しますと、いま申します年齢層につきましての慢性気管支炎の有症率調査というものが一番たよりになりますので、これを選んでおるということでございます。  御指摘のように患者の実態ということになりますと、非常に子供さんが多いということがあることは事実でございますが、子供さんについて、いかにこれを客観化した調査をやっていくかという点につきましては、まだ私ども非常に自信がございませんし、国際的に比較できるものもなかなかないということでございますので、現在それをまだ中に採用していない、こういう実情でございます。
  102. 木下元二

    木下委員 国際的な一定のそういう方法があるということですが、まあそれは一定の権威が私はあると思うのですよ。ただ考えてみまして、たとえばごく最近、一、二年であるとか二、三年であるとか、最近大気汚染の濃度が悪化してきておる、そういう場合に、それが一番最初にあらわれてきますのは、やはり児童、幼児、また老人だと思うのです。抵抗力の弱い層に最も敏感に反映すると思うのですね。したがって、その一番反映しやすいものを対象にするのが私は合理的だと思うのです。  反応のしかたがより緩慢な層、これが青年であり、あるいは壮年層だと思います。逆により鋭敏にあらわれる層、児童、幼児、老人と、こうあるわけでありますが、ある特定地域の大気汚染の濃度がごく最近、一、二年とか二、三年に相当変わってくる。変わるという場合には悪化する場合もあるでしょうし、逆によくなる場合もあるでしょう。それはどちらでもけっこうですが、そういう変化によって児童、幼児、老人の患者の数やあるいは症状に最もよく反映されると思うのです。だから汚染の進行ぐあいを見る場合に、まずこの層を対象に見るべきだというふうに思うのですが、あなたはその国際的な権威を引っぱり出しますけれども、私の言う点はどうでしょうか。
  103. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘になった点は、私ども気持ちとしては、そういうことがはっきりできれば一番いいということについては異存はございません。ただ、科学的にどうやるかということになってまいりますと、子供さんの場合、聞くというのはやはり間接的に聞くわけでございますし、子供さん直接に聞けないことがかなり多うございます。やはりだれか人が間に介在するという問題が一つございます。そういうことを避けるのには何があるかと申しますと、受診率調査のほうでは、いま先生のおっしゃった子供さんの受診率というものは、これは浮かび上がってまいります。  これは意識するしないにかかわらず、お医者さんにかかったということが統計に入ってまいりますから、受診率調査のほうとしては、年齢階層別に病気の種類でこうやってまいりますから、一つの手がかりが得られるかと思いますが、まだ私ども受診率調査のほうで、年齢の若い人のほうの受診率がどれぐらいのところというぐあいに、きれいな相関が得られるというような形には、現在私どもまだ地域指定の基礎となるようなところまでには至っていないということでございますので、無視しておるわけではございませんが、この有症率調査の場合に、子供さんを対象として特にやるという手法をまだ持ち合わせてないというぐあいに御理解願いたいと思います。
  104. 木下元二

    木下委員 この点については、そのアンケート調査において幼児から調査をとるということは、これは不可能でしょうね。そういうことでなくて、たとえば児童を対象にしてやる、さっき私が言いましたように、看護婦なりあるいは医師の協力も得てやる、そういう方法もあわせとれば私は可能だと思うのです。特に私思いますのは、特定地域で、これは尼崎でもどこでもけっこうですが、特定地域で患者が青年層や壮年層より幼児や児童、老人に特に顕著にふえておる、症状も悪化しておる、他の地域に比べて特にそれが顕著だ、こういう結果がかりにあるとすれば、私はその壮年層の測定よりも正確に患者の実態をあらわすのは、やはりその児童なり幼児の調査だと思うのです。  そこで私は、一つお願いしたいのは、全国のこの調査対象地域の認定患者について、年次別にその人数、年齢、それからこれはできるかどうかわかりませんけれども、でき得れば症状の経過も含めて、これはひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。それによって、特にある地域はそういう壮年層にはあまりあらわれていないけれども、児童、幼児にたくさん患者が急速にあらわれておるというふうな地域があるのかどうかですね。そうだとすれば、いまのその壮年層だけを比較したって私は正確に調査ができないことになると思うのです。そういう点で、いま言いましたような点の内容を明らかにしていただきたいと思います。いかがですか。
  105. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御要望の全国の数字につきまして、年次別に、人数別に、年齢別に、疾病別にやるということは、これは可能でございますが、症状別はこれは無理でございます。  それからもう一つ、ある年齢層に特に高いという御指摘でございますが、この点につきましては、ある地域で、ある年齢層に急に高まってくるという議論は、そこの地域での診断は、かなり一定しておりますから議論ができますが、ある地域とほかの地域と比べますときに、一体どういう問題があるかということになりますと、相当いろいろな要素が入ってまいります。  で、お医者さん方はかなり医学的な考え方、学説の相違等もございまして、ある地域では、このぜんそく性気管支炎というようなものの見方を非常に幅を広くとられる場合もありますし、ある地域では、ぜんそく性気管支炎というのは医学的には、非常にこれは問題のある疾病名で、むしろそういうものはとりたくないというような意向のところも中にはございます。しかし、指定疾病の中には入っております。別なことばで申しますと、診断のくせといいますか傾向といいますか、そういうものも中にかむことも事実でございます。また実際そのある地域が特に成年層よりも、むしろ若年層が高いということも起こり得ることかと思いますが、それを現在の段階で、その性格をきれいに分けるということは、いままでのところでは不可能でございました。
  106. 木下元二

    木下委員 内容は明らかにしていただけるそうですから、それを見た上でひとつよく検討いたしたいと思います。  それから次は、車公害が各地で深刻化し、緊急の対策が求められておるわけであります。移動発生源の車から費用を徴収するということでありますが、その徴収のしかたはあらためて問題にいたしますけれども、その徴収とあわせて沿道の公害対策に早急に取り組むべきだと思いますが、いかがでしょう。
  107. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 従来の健康被害救済特別措置法におきましては、固定発生源を中心に制度が考えられておったということがございましたが、今度の新しい公害健康被害補償法におきましては、移動発生源も対象としまして費用の徴収等も考えておるわけでございます。したがいまして、先生御指摘のような考え方で今後対処するということは、基本線においては全く私ども同意見でございますが、ただSOx、NOx、この二つを切り離しまして影響関係を判定するということが、現在非常にむずかしいというような状況でございますので、当初の指定地域等につきましては、従来の考え方を踏襲してやっておきまして、その後もっぱら交通公害によりますNOx等によります単独の影響による疾病あるいは地域、こういうものを対象とした制度をつくり上げていきたい。もしそういう対象があれば、そういうものを十分取り上げていきたい、こう考えております。
  108. 木下元二

    木下委員 車公害ということになりますと、排ガスだけではなくて、騒音、振動もたいへん深刻な問題が起こっておるわけであります。その問題は、いまここでは取り上げませんけれども、たとえば三・四ベンツピレンというのですが、これは古くから発ガン作用が最もはっきりしている物質だといわれております。この三・四ベンツピレン、これが多量に出ておるということが最近明らかになっております。たとえば東京の環状八号線などでは肺ガンが周辺で多発をしておるというふうな報告もあるわけです。こうした問題についても、ひとつ徹底した調査をして、抜本的な対策を講ずるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  109. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま御指摘のありました三・四ベンツピレンの問題につきましては、大気汚染研究者の間で非常に熱心に研究が進められておりまして、沿道沿いに特に高いというデータは、いまの段階で私ぴたっと思い当たるものはございませんが、ある都市、工業地帯で、そのほかのところに比べては非常に高いということにつきましては、私どもこれは非常に注目しておるわけです。今後の問題として厳重に警戒しながら研究を進めていきたい、こういうふうに思います。
  110. 木下元二

    木下委員 自動車道路などの沿道について排ガスの測定をこれまで進めてきたのでしょうか。進めてきたとすれば、ひとつ具体的に明らかにしていただきたいと思うのですが、環境庁として沿道周辺の特にひどいところの測定をやってきたのかどうか。
  111. 春日斉

    ○春日政府委員 国設の自動車幹線道路わきの測定局は、現在東京に三つございまして、これは常時観測いたしております。それから各都道府県に、やはり自動車排ガスを中心といたしました測定網を持っております。詳細な数につきましては、ちょっと資料がございませんが、かなり測定器は備えてございます。
  112. 木下元二

    木下委員 それでは、その常時測定の内容もひとつ明らかにしていただけますか。
  113. 春日斉

    ○春日政府委員 後ほど御報告を申し上げます。
  114. 木下元二

    木下委員 この公害の認定地域が、尼崎の全部ではありませんけれども、市内の一部が認定地域というふうになっておりますが、その中で特にひどい地域というのは、これは四十三号線という道路が通っておりまして、その四十三号線の沿線付近一帯は特にひどいところであります。これは工場の排煙ばかりではなくて、むしろ車公害、これが非常にひどいということで深刻な被害を及ぼしておるのであります。  ところで、その四十三号線の沿線ということになりますと、その尼崎区域だけではなくて、その西側には西宮があります。西宮それから芦屋それから神戸こういうふうにつながっております。これは四十三号線を帯といたしますと、まさに帯状に沿線一帯に住民がいるわけであります。この沿道一帯を一つとして制度的に考えていくべきではないかというふうに思うのです。尼崎のいま申しました四十三号線の沿道一帯、これは救済される。ところが、西宮以西の地域の沿道は救済の対象にならないというのは、これは非常に不合理だと思うのです。いかがでしょうか。
  115. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問のございました国道四十三号線沿いでございますが、この地図によりますと、四十三号線の地域は、いままでの指定地域の中に全部入っておりますが、この一部のところが、武庫川までの間が従来の指定地域では抜けておったというところでございます。今回の調査の中では——調査の結果によらないとわかりませんが、この地域の拡大をするということの地域指定の調査の中では、そういう四十三号線に影響を受けている地域も入っておりますが、これは四十三号線だけを抜いて、その影響だけを見ようというような意図ではいたしておりません。  御承知のように尼崎は臨海地帯にも非常な工業地帯がありまして、またその少し後背のほうに住居の混在等もかなりございますから、その中にまた道路も走っておるという、公害では非常に条件の悪い地域でございますので、四十三号線だけを抜き出して調査をするという形はとっておりません。  兵庫の場合に、武庫川から先の四十三号線だけの影響が非常に強いところをどうするかという御指摘でございますが、これは従来も御説明いたしておりますように、自動車の排ガスだけで非常に影響される、特に窒素酸化物の問題が非常に大きいと思いますが、そういうところの問題はどうするかという問題として、今後の検討事項として、できるだけ早く詰めて対応いたしたい、そういうぐあいに考えております。
  116. 木下元二

    木下委員 その点は、これもすでに兵庫県のほうで測定をした結果が出ておりますが、これを見ましても、環境基準をはるかにオーバーしているのですよ。これは環境庁のほうが御承知だと思いますけれども、もうそういう結果が出ておりまして、これは私は早急にひとつ措置をしていただきたいと思うのです。尼崎の場合は、尼崎全体として、全部ではありませんけれども、その認定地域ということになっておって、その中に四十三号線周辺が含まれる、こういうことになるわけですね。  それはまさに複合公害ということになるんでしょうけれども、ところが尼崎から西のところが、全体が認定地域に入っていないがために、その沿道一体が環境基準をオーバーして、非常にひどい公害にさらされているということで、これは私、不合理だと思いますので、これはこの地域ばかりでなくて、ほかにもこういう地域があろうと思いますけれども、こういう問題はぜひ環境庁のほうで、今後検討課題にするというようなことでなくて、新しい法律が九月一日から施行されるので、日にちはまだまだあるわけですから、調査を進めて間に合うように、こういう地域も含めて認定地域にするように、ひとつ早急に検討いただきたいと思います。どうですか。
  117. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 健康被害補償法の中で、自動車からの賦課金を取るということが入りましたので、当然先生のおっしゃったような問題は、できるだけ早く詰めて検討すべき問題だというぐあいに私どもは考えております。  なお、兵庫県の資料につきましては、その資料を得まして、十分検討してみたいと思っております。
  118. 木下元二

    木下委員 いまの問題は、九月一日から施行される法律に間に合うように、それにのせていけるようにということですね。
  119. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 自動車の排気ガスだけの問題を焦点といたしまして、九月一日の健康被害補償法の施行に間に合わせよということにつきましては、残念ながら、これは不可能でございます。
  120. 木下元二

    木下委員 そうすると、その施行には間に合わないけれども、できるだけ、一日も早くその実現のために努力をする、こう伺っていいわけですか。
  121. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のあったようなぐあいに、できるだけ早く検討いたしたいという考えでございます。
  122. 木下元二

    木下委員 少し質問が残りましたけれども、また、特に法案そのものの根本にかかわる問題等がありますので、これを保留いたしまして終えたいと思います。
  123. 角屋堅次郎

    角屋委員長 坂口力君。
  124. 坂口力

    ○坂口委員 公害健康被害補償法の一部改正案に関しまして、若干質問させていただきたいと思います。  本法の施行を待ち遠しく思ってお見えになる方々がある反面におきまして、関係者の間でも一部非常に不安に思っている方もあるわけです。というのは、前国会においても何度か議論されましたけれども、政令事項が五十数カ章でございましたか、ある。その内容いかんによっては、この認定患者の受ける利害というものは大きく違ってくるというようなことから、非常に不安に思ってお見えになる方もあるわけであります。  そこで、まずお伺いしておきたいことは、今回のこの一部改正案で、財政措置としまして、ようやく両肺がそろったことになるわけでありますけれども、一体政令事項はいつごろまでにでき上がるのか。それとも現在まで、もうでき上がっておるのがあれば、どれぐらいでき上がっていて、でき上がっていないのは、どういうことなのかというようなことが、もしもあからさまになっておりましたら、ひとつ御回答を願いたい。
  125. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いま先生御指摘のように、非常に政令事項多いわけでございます。この政令事項の中には、いろいろな調査を待たずしてやれるものも若干はございますが、大部分は、現在実施中の調査の結果いかんにかかっているわけでございます。こういうことでございますので、私どもとしましては、各種の調査を精力的にいまやっている段階でございまして、この調査がまとまり次第、政令の中身の詰めをするために作業をし、さらに中央公害対策審議会等にはかりました上で結論を出してまいりたい。そういうことでございますので、残念ながら、現在の段階で、これとこれは、こういうぐあいにきまっているというところには、まだいっていないというのが、現実状況でございます。
  126. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、まだ政令で、はっきりきまったものは、いまのところは全然ないというふうに理解させていただいてよろしゅうございましょうか。もしそれならば、大体いつごろまでに、この政令というのははっきりするのか、いつごろを大体めどにしてお見えになるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  127. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 大体、全体の問題点を整理できまして、審議会におはかりしました上、政令化していくめどとしましては、七月の初めというのをめどにいたしております。
  128. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、その結果を待つといたしまして、先ほども木下議員からの質問にも出ておりましたが、いわゆる指定地域及び疾病指定の問題がございます。  まず、指定地域でございますが、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法における、いわゆる旧法における指定地域と、それからまた各自治体で行なっている地域指定というのがあると思うのです。本法の指定地域は、旧法のものとこれは全く同じものなのか、あるいは各自治体がやっておりました地域というものとどういうふうな関係で考えていかれるのか、その点ひとつお話をいただきたいと思います。
  129. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 第一種地域にかかる問題が中心だと思いますが、第一種地域にかかる疾病に関しましては、非特異的疾患ということでございますので、指定地域のほかに指定疾病あるいは暴露要件、こういうことで制度的取りきめをしているわけでございます。その中で暴露要件につきましては、今度の新しい法律上では、若干要件を合理的に変えていったわけでございます。  ただ、指定地域あるいは指定疾病につきましては、基本的にものの考え方としましては、現在の特別措置法の考え方と変わっているわけではございませんが、ただ新しい法律が、民事責任を踏まえた補償の制度だということでございますので、私どもとしましては附帯決議にもございますように、できるだけ合理的な指定基準をつくりまして、公正な指定をはかっていきたい。また、もちろん十分被害者の救済になるような方向でやっていきたい、こう考えているわけでございます。
  130. 坂口力

    ○坂口委員 いま述べられました合理的な指定地域の決定といいますのは、具体的に申しますと、どういうことでございますか。
  131. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 この合理的な指定地域とは、一体どういうことかという御質問でございますが、これは本法の御審議を願いますときに、過去において地方自治体が独自で地域指定をしておったところで、救済法の対象となっておらないところがある。その地域について、できるだけ取り込む方向で検討せよという強い御要望があったわけでございます。またそのことを含めて、本委員会での附帯決議が付せられたわけでございますが、私どもはこの附帯決議を最大限に尊重いたしまして、地方自治体が独自で従来救済措置をやっていたところにつきましては、公式に照会をいたして、指定地域とすることができるかどうかという検討を進めているところでございます。  特にその中で、現在の汚染としては、もうすでにあまりたいした汚染ではない、しかし過去においては、きわめてひどい汚染があったのではないかというところを、どのようなぐあいに立証し得るかということで、関係の地方自治体に対しまして、できるだけ懇切に行政指導をして、資料がどの程度集まるかということで努力をいたしておる最中でございます。
  132. 坂口力

    ○坂口委員 その点、非常にむずかしい問題だとは思うのですが、前国会で私も質問をさせていただきました、たとえば三重県の四日市市と、それからその周辺に楠町というのがございますが、この楠町のほうは、もらい公害で非常に困っておる、ただし指定地域の中に入っていないというので、私もここで取り上げさせていただきましたし、他の議員も、ここで取り上げられたと思います。現在は、この公害の程度というものは、かなり改善はされているけれども、過去において非常にきびしかったときに発生した、この非特異的な疾患というものが、かなり残っているというようなものを、いま御指摘のように、それをどう扱うかということはたいへんむずかしいことではあるかと思いますが、しかし過去において、はっきりとそういうふうな公害があったということが認められるものについては、これはどうしても認める方向で私は検討をしていただきたいと思うわけです。  これは以前にもお願いをしたとおりでございます。たとえば、いまあげましたこの楠町等の問題も、いま御検討をいただいている段階だと思いますが、もしも具体的にわかっておりましたら、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  133. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 御質問の楠町の件でございますが、環境大気調査ということにつきましては、まず現在の汚染ということで、一月の二十四日から二月七日まで調査をいたしております。それから呼吸器系疾患の問診調査ということにつきましては、二月の九日から二月の十三日及び二月の十七日までいたしておりまして、作業としては完了いたしまして、あとの集計、整理をいたしておるというところでございます。それから受診率調査につきましては、一月の二十五日から二月の十五日までに調査をいたしまして、現在、最終の整理をいたしております。  それから過去の汚染ということにつきまして、この楠町の汚染につきまして、過去の等高線を引いたときの条件というのを整理してみることはできないかということで、当時私も、もとの四日市の問題を初めからタッチをいたしましたので、あのときにこういう調査があったが、そのときの調査の資料はないか、あるいは、このような実験をしたが、そのときの資料はないかというぐあいに具体的な指摘をいたしまして、どれだけ資料がそろうかということで現在努力をいたしておる、こういう段階でございます。
  134. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、先ほどの議論にもございましたが、やはり対象にとるものがないと、その結果というものがはっきりしないという御見解でございました。先ほどの木下議員との議論の中の年齢の問題も、そういうことではなかったかと思うわけであります。たとえば現在の楠町なんかの状態を調査なさる、その対象というものは、現在の四日市の状態をとって対象とされるのか、それとも過去のものを対象にされるのか、その点はいかがでございますか。
  135. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの御質問は、何をコントロールとしてとるかということでございますが、過去のものをとるわけにもまいりませんし、現在の四日市の状態を対象とするわけにもまいりません。その点につきましては、相当広範にいろいろなレベルのところを私どもは四十七年度のこの制度の準備以来調査をいたしておりまして、そのほか従来地域指定をいたしたところの実績というもの、いろいろと特性がございますので、なかなか簡単な条件で比べるわけにもまいりませんが、そのどれと一体比べられるかというような考えで対応しております。
  136. 坂口力

    ○坂口委員 問題が、たいへん具体的な問題にそれてしまいましたが、本論に戻りたいと思います。  いままで国のほうで指定された地域がございますが、このときの基準と、それから地方各自治体が指定をされた基準というのは、これはかなり違うのでしょうか。たとえば、各自治体の場合には、基準そのものも自治体にまかせておみえになったのでしょうか。それとも国から一応の基準を示されて、それに基づいて自治体がしてきたのでしょうか。私、ちょっとその点はっきりいたしておりませんので、お答えいただきたいと思います。
  137. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 従来の救済法の指定地域において特定の基準があったわけではございませんが、四十五年以来、非常にひどいところから指定を始めまして、それを基礎といたしまして現在のような形に定着をしたということでございます。  それから地方自治体につきまして、国が指定する条件をいろいろ指導いたしたことは一切ございません。地方自治体がどのような基準をもって地域指定をしたかということにつきましては、私どもはどうもまだはっきりわからないというぐあいに考えております。
  138. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、現在まで地方自治体がやってまいりましたこの地域指定というものは総ざらいをして、そうして国の指定というものを今度きめられる、こういうことでございますか。
  139. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 現在まで地方自治体がやってまいりました資料をできるだけ総ざらいに調べてみまして、そうして従来地域指定をしてきたところの幾つかの特性と比較をいたしまして、そして均衡をとって、これをきめるというような考え方に立っておるわけであります。
  140. 坂口力

    ○坂口委員 次の問題に移りますが、本法に関係する四十九年度の予算措置としまして、重量税より引き出す額を当初何か百五億円を見積もっていられるというふうにお聞きをいたしておりましたが、今回閣議決定しましたのが何か八億円ということになっておりますが、この救済措置から見て一歩も二歩もたいへん後退をしたような私ども感じを受けるわけでありますが、その点、私の聞いておりますのが間違いでなければ、この点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  141. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまの百億円ということでございますが、これは私ども公式に百億かかるということは申したことはございません。ただ、一般的に言われておりましたのは、ピーク時におきまして百億程度にいくのではなかろうかという、いろいろな目の子からの計算でそういうことが言われていたわけでございまして、こういう意味合いにおきましては、今度のはいわば初年度でございますし、しかも年度途中、九月から法律が施行される、こういう形でございますので、全然根拠が違っているということでございます。  私どもとしましては、現在のいろいろな資料から考えまして、八億円という自動車重量税引き当て分を見込んだわけでございまして、私ども、今後の方向づけとして前向きでやっていくということを、その点から否定されるということは決して考えていないわけでございまして、むしろ今後必要なものは十分計上できるように努力をしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  142. 坂口力

    ○坂口委員 これから指定地域の決定等をやられるわけでございますが、この予算のワクが先にきまっているために、指定地域がそのために非常に限られるというようなことがあってはならないと思いますので、一言お聞きをしたわけでございます。  それから、疾病の認定の問題がございますが、これも前国会におきましてかなり議論されたことでございますし、非特異的な疾病でございますので、どれとどれを入れるかということも非常にむずかしい問題だと思いますけれども、しかし、全体的な面での御回答でけっこうでございますが、いま取り入れられています疾病以外で、今後はこういうふうなものもこの中に入るであろうという検討事項のものがありましたら、ひとつ教えていただきたい。
  143. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま御指摘の問題は、中央公害対策審議会において検討する事項でございますが、従来の、たとえば呼吸器系の場合に四つの指定疾病というものがございましたが、これ以外に入れるべきではないかといういろいろな議論がございます。この点につきましては、やはり専門委員会のレポートでどこまで合意がつくかということでございますので、私どもとしては、まだ特定の予測を持っておりません。ただ、続発症としては相当幅の広いものをとるべきではないかということだけは、私ども相当決意をかたくして対応したい、このようなぐあいに考えております。
  144. 坂口力

    ○坂口委員 私も詳しくは存じ上げませんが、先日報道されたところによりますと、川崎市だったと思います。頭痛の方が非常にたくさん発生をしたというような記事があったというふうに記憶いたしております。そういった問題が今後あちこち出てくるであろうと思うわけでございます。そういった場合に、これはそういったものが新しく出てまいりましたときには、一年一年検討をされていくのでしょうか、それとも三年とか四年間隔でこの審議会の議を経て決定されていくのでしょうか。その辺はどうなっていますでしょうか。
  145. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 どういう疾病を取り上げるかという問題につきましては、一定の期間ごとに見直すという考え方よりは、むしろ新しい知見が出て、そしてそれについての合意があれば、その時期にかまわず、これを取り込むということをやるべきだと思っております。
  146. 坂口力

    ○坂口委員 この公害健康被害補償法の中に定められております障害補償費あるいはまた被害者の福祉に必要な費用というものがございます。この中には生活費というのは含んでいないと思いますが、これは厚生省、お越しいただいておりますか。——厚生省にお答えいただきたいと思います。いや、厚生省ぐあいが悪いか、やはり環境庁のほうから先にお答えいただきましょうか。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  147. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 健康被害にかかわります損失の補償でございますから、したがって、その中には逸失利益的なものが中心になりまして、それに慰謝料的な要素も加味してきめる、こういうようなたてまえになっておるわけでございます。
  148. 坂口力

    ○坂口委員 この法が運用されました場合に、たとえばこの法の適用を受けた人が、それ以前に生活保護を受けておいでになった、そういうような場合があり得ると思うのですが、そのときに、それは併給されますね。いかがでございましょう。これは環境庁、厚生省両方お答えをいただきたいと思います。
  149. 山崎卓

    ○山崎説明員 生活保護法のたてまえを申し上げますと、国民の最低生活を確保いたしますために厚生大臣が基準を定めるわけでございますけれども、その当該問題となる人の持ちまする資産能力を活用して、なおかつ、その最低基準に達しない場合に、その達しない部分について保護費として支給をしていくというのが保護制度のプリンシプルとなっております。  したがいまして、これを俗に保護の補足性と呼んでおるわけでございますけれども、公害健康被害補償法のほうから出ます給付の性格がどういうものであるか、それがただいま逸失利益というようなことのように御説明がございましたけれども、そういうような性格でございますると、それが生活費的なものであるとするならば、やはりどうしても生活保護法との関係の部分につきましては調整をせざるを得なくなるだろう、かように考えております。
  150. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまの問題は厚生省の権限の問題でございますが、私どもの制度との関連でもございますので、十分制度の趣旨を厚生省に説明して、厚生省側でできるだけ善処してもらいたいと思っております。
  151. 坂口力

    ○坂口委員 環境庁のほう、先ほどお話が多少ございましたが、結局この法律によって出されるものというのは、健康被害にかかわる損害をてん補するための補償でございますね。だから、この中に生活費というのは入っていないのじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  152. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 これはものの考え方が違うわけでございまして、要するに損害をてん補するための補償でございますから、そういうような疾病にかからなかった場合、当然得られたであろう、疾病にかかったために失われた利益がどうであるか、これが逸失利益でございますが、そういうものを中心にして算定していくわけでございます。したがって、それを生活費にどのぐらい回す、あるいはまた貯金にどう回すということとは一応関係なく、そういう算定をしました逸失利益と、それに慰謝料的な要素を加味してきめる、こういうことになっているわけでございます。
  153. 坂口力

    ○坂口委員 生活保護の場合には、生活保護によって補償される最低限度の生活というのは、衣食その他日常生活の最低需要、こうされておるわけであります。この生活保護に定められております内容と、それから今回の公害健康被害補償法の給付内容というものとは全く異質のものだというふうに私思うわけであります。これを詰めます前に、それじゃ地方自治体が補償財団などをいままでにつくっておるところがあると思いますが、これは幾つぐらいつくっておりましょうか。
  154. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私が聞いております範囲では、四日市の分と愛知県の分と、この二つだと承知いたしております。
  155. 坂口力

    ○坂口委員 その二つの中には、おそらく生活保護法とダブっている人があろうかと思いますが、その双方においてはどういうふうなお取り扱いになっておりましょうか。御存じでしょうか。
  156. 山崎卓

    ○山崎説明員 ただいま地方団体関係におきまして、四日市とそれから愛知があるというお答えでございましたが、実は私ども愛知のほうは、つまびらかにしておりませんけれども、四日市のほうにつきましては、生活保護を受けておいでになる方があるようでございます。これにつきまして、いよいよ財団が発足をして財団のほうから給付金が出るという事態が来ておるようでございますが、その給付金の出ようが、またいろいろと数種類あるようでございます。  先ほどは先生お尋ねに対しまして、私基本となりますプリンシプルのところだけお答えしたわけでございますけれども、もう少し細部にわたって申しますると、——したがいまして先ほどのプリンシプルは、生活費に充てられるようなものがあるならば、それはこちらのほうと調整していかなければならないということを申したわけでございますけれども、しかし公害に限らず、地方公共団体あたりがいろいろな、たとえば暮れでございますとかそういうような時期等に見舞い金とか、あるいは慰謝料とか、そういうような性格をもって支給しているようなものにつきましては、その支給される制度の趣旨等にかんがみまして、ある部分は収入認定をしないとか、あるいは自立助長に充てられます限りにおいては、その額は収入認定しないというふうに扱っている部分もあるわけでございまして、四日市等におきましての一時金、特に見舞い金としての一時金等につきましては、ただいま申しましたような自立助長に充てられます限度において、それを収入認定していかないというような扱いが、おそらくとられているであろうと思います。  ただ、生活費として与えられる年金あるいは年金にかわるような一時金につきましては、先ほどのプリンシプルがございますので、そうした線に沿っての扱い、こういうことになるであろうと思います。
  157. 坂口力

    ○坂口委員 生活費として出されるのであれば、これは一応そういうふうな生活保護との間の問題として、かかわり合いがあるというふうにも考えられますけれども、一応今回のこの法律というのは障害補償でございます。先ほどその中に、一部何か生活費が入っているようなお話がございましたけれども、生活保護というものは、この中に入っていないんじゃないでしょうか。生活保護は入っているのですか。あるいはまた、さっきおっしゃったような問題が、この中に入っているのでしょうか。
  158. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私、申し上げましたのは、普通の状態にございますれば収入が十分あるわけでございます。ところが、そういう疾病にかかりましたために収入がなくなる。その収入をてん補するために給付されます部分が逸失利益に相当する補償部分でございます。それに精神的な面の慰謝料的な要素を加味して算定する、こういうことを申し上げたわけでございます。
  159. 坂口力

    ○坂口委員 慰謝料というふうにおっしゃいますけれども、慰謝料というのは、いわゆる生活ができる額が出されるのですか。それなら話はわかるわけです。
  160. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 逸失利益という考え方と、生活費としてどれだけ要るかという考え方は全然立脚点が違っておりますので、まっ正面からお答えできませんので、私どもの制度としては、そういう失われた、あるいは失われるであろう利益をてん補する、こういう意味で制度化されているということだけ申し上げまして、あとはいまの問題、厚生省の意見もいま聞いておりますので、今後私ども制度の仕組みを十分説明しました上で、この問題の結論を、厚生省にできるだけ私どもの考え方が入るような形で出してもらいたい、こう思っております。
  161. 坂口力

    ○坂口委員 昨年末でございますが、四日市では、この公害認定患者で、しかも生活保護を受けておいでになる人が三十二人ばかりあったわけです。この人たちは老齢であったり、母子家庭でありましたり、あるいはまた身体障害者であったりしまして、一般的な要保護者としての要件がある上に、さらに公害の犠牲者であったわけであります。こういうふうないわゆる公害によって疾病を病む反面において、さらにそれ以前の一つの条件として、生活保護を受けなければならないような家庭環境の人たちがその中に含まれているわけです。そういうふうな人たちに対して、いわゆる公害に対する財団ができまして、ここから補償費が出る。一方において生活保護のほうが打ち切られるということが実は起こっているわけでございます。  そういたしますと、この財団のほうの額は、一時にはかなりの額が出るかもしれませんけれども、今後続けて出る額じゃございませんし、いわゆる生活費というものと公害補償というものとは別の問題である。すなわち、公害によって非常に障害を受けているその人たちは、言うならばマイナスであって、公害補償によってようやく生活保護を受けているほかの地域の人たちと同じような、ゼロという線まで来るというふうに私ども考えるわけです。ですから、公害補償法とそれから生活保護法というものとを同じに考えられると、たいへんな混乱が起こると思うのです。  この点、おそらく現在の段階では最終的な詰めは行なわれていないのであろうと思いますし、今後の環境庁と厚生省の間の詰めによってきまる問題だろうと思いますけれども、しかし、こういった混乱がすでに地方自治体においては起きておりますので、この点をどうしてもはっきりと区別をしてお考えをいただきたい。いわゆる生活保護というものと公害補償というものとは異質のものである、別のものであるということをはっきりさせていただきたいと思うわけです。今後に対する取り組み方としまして、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  162. 山崎卓

    ○山崎説明員 結論から先に申し上げますと、今度の法律に基づきます給付の内容が、いろいろと政令できまるようでございまして、そうしたようなことにつきまして、私どもまだ環境庁のほうから詳細承っておりませんので、この給付との関係が最終的にどうなるかということにつきましてはきまっておりません。今後とも環境庁のほうと十分協議をしてまいりたいと思っております。
  163. 坂口力

    ○坂口委員 環境庁のほう、ひとつ御決意のほどを承りたい。
  164. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 何度も申し上げているとおりでございまして、この制度は、制度の仕組みとして私どもの趣旨は非常にはっきりしておるし、ぜひ必要な制度でございますが、また生活保護のほうは生活保護としていろいろなものの考え方があるわけでございますので、私どもの考え方を十分説明しまして、厚生省の決断によって、あとあと問題が残らぬような形で処理できればと思っておるわけでございます。
  165. 坂口力

    ○坂口委員 何となくうまく逃げられるもんですから、こっちは進まないわけですが、地方自治体ではございますけれども、たとえば四日市においてすでに財団が発足し、その中ではっきりと生活保護を打ち切られておるという例が出ているわけでございます。こういうふうな事態がもうすでにはっきりしておりますから、これに対して環境庁はどういうふうにお考えになっておるか。こういうふうなことについての国に対する問い合わせとか相談というのは、なかったのでしょうか。
  166. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のような問題につきましては、そのような問題が起こったということについての連絡を私どもいままでは聞いておりませんでしたが、こういうことが起こるであろうから、環境庁も働きかけてくれないかということがございまして、厚生省のほうによく検討してもらうよう連絡をとったことはございます。
  167. 坂口力

    ○坂口委員 そういう事前の話し合いがあったということでございます。そういたしますと、厚生省の側としては、たとえば地方自治体ではございますけれども、財団等ができまして、すでに発足をしておるわけでございますが、ああいうふうな立場になった場合には、これは一応打ち切るということに結論が出たのでございましょうか。もしそれが出たといたしますと、今後の公害補償の問題においても打ち切られる可能性というのが非常に強いと私は思うわけです。
  168. 山崎卓

    ○山崎説明員 四日市の財団の給付されます性格と、今後の法律によります給付の性格とがどういうふうに一致し、あるいはどういうふうに違ってくるかにつきましては、私どもまだ環境庁のほうから十分な説明を伺っておりませんので、その点につきましては、私どもの立場としてお答えすることができないのですけれども、四日市の財団の給付しますものには慰謝料的なものとしての一時金のようなものがあるということが、私どものほうの現地との連絡におきましてもはっきりいたしておりますが、他面、やはり生活費に充てられると目すべき部分があるというふうに現地のほうも認定しておるようでございますので、そうだとするならば、その後者の部分につきましては、生活保護法のほうの最低基準とのたけ比べが行なわれまして、最低基準よりも多額の給付が出れば保護は打ち切られる、それよりも低い額が出てくれば、その差額の部分は依然として保護が継続される、このように相なるものというふうに理解しておるわけでございます。
  169. 坂口力

    ○坂口委員 重ねてもう一つだけお聞きをしておきたいと思いますが、生活保護法の第四条でございましたか、いわゆる資力の項目がございますね。これは健保だとか生活保護法制定の本質から当然要保護者の生活維持費となり得る資力という意味だろうと思うわけであります。公害患者の原状回復に沿った救済給付金というものは資力ではないと思うのですが、先ほどの若干生活費めいた内容のものも含まれているというようなお話もございましたが、そのものは別にいたしまして、公害患者の原状回復に沿った、いわゆる救済給付金というのは資力ではないというふうに思うのですが、その点にしぼってお聞きしたいと思いますが、いかがでございましょうか。  いまの場合に議論がそういうふうな、どうも生活費めいたものもその中に入ってくる、あるいはまた、たとえばそのほかのものですと——ほかにはあまりないですね。いま言ったような問題が入ってくると、とにかく生活費周辺のものが入ってくるということになれば、それはまた別問題でございますが、そうでなしに、損害補償費というものとはダブらないと思うのです。
  170. 山崎卓

    ○山崎説明員 生活保護法第四条にいっております資力とは、どういうものであるかという御質問でございましたが、たとえばある人が職場に勤労して、ある額の給料を得ている。その額は厚生大臣が定めます最低生活費よりも高いので、それはかりに保護を申請いたしましても保護は行なわないという結果になるわけでございますが、かりにその方が交通事故なら交通事故でなくなられた、あるいはけがをされた、そのために職を失われた。途中に失業保険とかいろいろございますけれども、その辺のことは省略をいたしますとして、民事のことで申しますならば、そこでいままで得ていた給料による生活の基礎が失われたわけでございますので、それに見合うものが、民事としては補てんされるべきであるというような形が出てまいろうかと思います。  したがいまして、こういう例を申し上げたのは、要するに、そこで働く体力とか知力とかいうような健康体と申しますか、そういうものは職場という場を得ますれば、そこで体力、知力、気力等が活用されるわけでございますので、そうした意味におきましては、それもやはり資産であるというふうに生活保護法では見ておるわけでございます。  したがいまして、健康被害救済法によります公害病にかかったお方に対して出していかれる給付金の性格がどういうような趣旨で出されていくか、それがいま申しましたような、もしもそうした損失によりまして、いままで生活しておった部分がなくなってしまうので穴埋めをするのだというようなことになりますと、それはちょうどいまの例の民事によります、いままで稼働しておりましたものの穴埋めのような性格が出てまいりますので、そうしたものとはやはり調整をせざるを得ない、こういうことのように理解しております。
  171. 坂口力

    ○坂口委員 いま御説明がありましたように、この公害健康被害補償法のほうから、いわゆる補償費として出たものによって健康というものが回復されるということがあったといたしますね。それで、その結果として生活保護というものからはずれるというようなことは、これは将来の問題といたしましては起こり得る可能性はなしとはいえないと思う。ただし、いままで生活保護を受けておいでになって、今度障害補償が出る。その時点において、いままでの生活保護をばっさりと切ってしまうというふうなことは、双方の内容からいきましておかしいということを私申し上げているわけでございます。いわゆる生活保護費というものと、それからこの法律にあります内容の障害補償というものとの性格からいたしまして、こちらはいわゆる疾病に対するものがおもだ、そうですね。それはおわかりいただけますでしょう。その点を私申し上げているわけです。  これは、まだ決定されておりませんことを、ここでこれ以上申し上げましてもいけないと思いますので、この辺で控えさせていただきますが、これは重要な問題を含んでおりますし、全く異質なものがややもいたしますと、同じレベルで同質のもののように論じられる可能性もございますし、また地方によりましては、こういうふうな混乱も多少起こっておりますので、ひとつ環境庁のほうと、それから厚生省のほうと、その点十分御検討いただいて、こういったことが起こらないように善処していただきたいと思うわけです。  それをお願いいたしまして、私の質問を終らさせていただきます。
  172. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 岡本富夫君。
  173. 岡本富夫

    ○岡本委員 公害健康被害補償法案につきまして、何と申しましても、この法律が制定され、施行されるようになりましても、要するに指定地域でなければ補償がされない、また救済できないということでありますから、この地域指定について若干質問をいたしたいと思います。  これは当委員会で、この前の前のときでしたが、私、取り上げたわけでありますけれども、東邦亜鉛の対州鉱業所ですか、ここのカドミ汚染について、昭和四十三年当時から工場の隠蔽工作が行なわれたということで取り上げたわけでありますが、その詰めをしておきたいと思うのです。  そこで、まず通産省にお聞きしますが、昭和四十三年から四十六年まで何べん……。
  174. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  175. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 速記を始めて。
  176. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産省がまだ来ていないということですから、それでは四十三年当時は厚生省あるいは経済企画庁の委託になっておりましたが、いまはそれが環境庁に移っておりますので、環境庁のほうにお聞きいたしたいと思います。  昭和四十五年の七月二十三日、これは厚生省の委託によって県が当時の農家保有米の調査をいたしておりますが、これの詳細をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。——わからない。じゃ、またあとで。いますぐにわからないということでありますから、あとで調べて報告をしてください。  それでは、厚生省の委託によって昭和四十三年八月から四十六年の三月十九日までの厚生省関係五件、それから経済企画庁関係十一件、この中で四十五年の七月の二日、これはあなたのほうから資料をもらっているわけでありますが——その前に、あなたのほうの調査で、この東邦亜鉛という会社が何べん、採水したものに対して自然水を注入したことがあるか。  この間参考人に来た社長の話では、四回とか言っておりましたが、あなたのほうでは何回を、これを把握しておりますか。
  177. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 厚生省が調査いたしましたものの中で注水したといいますものは、私どもの承知しておる範囲におきましては四十三年の八月の発生源の水と、もう一つ川の水関係の調査、これだけのものというぐあいに理解しております。そのほかに、この厚生省関係の調査で、発生源と川の水関係を調査したものは、これはございません。そのほかのものはすべて土、米、患者ということでございまして、それについてはタッチしているということは、一切私どもは存じません。ただ他の省の問題で、いま先生の御指摘のあった四へんとかいろいろの数字がいわれておりますが、厚生省自身のサンプルでかえられたものは、四十三年八月の水の問題というぐあいに解しております。
  178. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま私質問したのは、環境庁のほうに経済企画庁から補助金が出て——補助金といいますか、委託しておる。経済企画庁から四十五年の七月の二日に採水をしておりますね。松木原せき水あるいは鬼ケ採川というのですか、この採水、この辺のことは調査をしておりませんか。これはあなたのほうから、環境庁の水質規制課から私のほうに資料が来ている。
  179. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘の点は水質保全局のほうが担当いたしておりまして、いますぐこちらに向かっておりますので、ちょっとお許し願いたいと思います。
  180. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、これは水質保全局から来るまで待ちましょう。  通産省来ましたですね。あなたのほうで昭和四十三年から四十六年まで福岡の鉱山保安監督局ですか、ここで採水をし、それに対して東邦亜鉛の工場から自然水を注入されたというのは、九回のうち何件ですか。
  181. 江口裕通

    ○江口政府委員 申し上げます。  現在十八日、昨日より現地に八名鉱務監督官を派遣いたしておりまして、再度厳密な調査をやっておりますので、その調査の確定し次第正確な数字はわかると思いますが、現在まで一応私どものほうで会社の陳述等に基づきまして、会社が注水をしたというデータがございます。お手元にきのう提出いたしたと思いますが、四種類のデータがございますが、それで概略申し上げますと、十七カ地点、二十八サンプルというのが一応注水をされたというふうに了知しております。
  182. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのほうでは、まだ全部の調査を終わってないのですか。
  183. 江口裕通

    ○江口政府委員 この事件が問題になりました直後、直ちにその翌日、現地に三名の監督官を派遣しております。それは第一回でございまして、きのうから参っておりますのは精密検査ということで第二回目を出しております。
  184. 岡本富夫

    ○岡本委員 四十三年十一月二十八日福岡鉱山保安監督局採水、この中でこの会社のやり方というものを調べますと、よくわかりますのは、大体採水地点というものを先に全部調査をしておいて、そうして高いところ、それだけをチェックをしておいて、それに自然水を注入するということですね。このときは二分の一に自然水を入れて薄めているわけですね。四十四年の一月十三日から十四日、このときには要するに二分の一に薄めたのと三分の一に薄めたのとある。それから四十四年六月十六日から二十日、この調査のときには三分の一から——まあ個所によって違うわけですが、二分の一と三分の一と二分の一とに薄めておる。四十四年の十二月九日から十日までの間には、ここでもあなたのほうでやったものに対して二分の一から三分の一に薄めておる。四十五年の十月十四日から十五日、これも二分の一に薄めておる。四十六年の二月十五日から十七日、これも三分の一に薄めておる。四十六年の六月二十一日から二十二日、このときの採水のサンプルにも、一つは四分の一、また三分の二、こういうように薄めておる。それから四十六年の十二月十四日、これも三分の一に薄めておる。これらの注入調節が主として夜間に行なわれた。後日荷づくりして送ったということですね。また、その日に持ち帰ったものは、昼食あるいは夕食の時間のすきを見て実施した。私のほうにこういうような、これは「鉱害始末記」ですか、この内容に明らかにされておるわけです。  あなたのほうでは、向こうに参ったのはいつ行ったのですか。もう四、五日くらいになるのでしょう、向こうに調査に行ってから。
  185. 江口裕通

    ○江口政府委員 日にちを申しますと、三月の九日、十日に参りました。第一回でございます。一部若干の、一名程度が現地に一両日残っております。それが第一回でございますが、それから第二回が昨日から参りまして、八名現地に参っております。
  186. 岡本富夫

    ○岡本委員 そして全然まだ報告がないのですか。これはあなたのほうの資料ですか。これは私のほうが調査に行ったときの、向こうの会社の極秘資料ですね。これと突き合わせたら全部出てくるのじゃないですか。薄めたところ、これに対しては全部まるをしたり二重まるをしたり——まるは二分の一の混合、こういうように向こうの会社の資料の中にみな書いてあるじゃないですか。
  187. 江口裕通

    ○江口政府委員 先ほど少しお答えを申し上げました十七カ地点、二十八サンプルというのは、実は、いまお示しになりました四種類の調査を私のほうでチェックいたしました結果の数字でございます。一応この表で、私のほうが向こうのほうの数字をつかみまして、もちろんこれは現地で監督官が現実に見た資料でございますが、それをつかみました上で、監督局のほうの分析台帳と照らし合わせて、目下チェックをしておるわけでございます。  その結果をごく簡単に申し上げますと、いま先生のお手元にございます資料と申しますのは、おそらく東邦亜鉛のほうから委員部を通じましてお届けした資料であろうと思っておりますが、四つございまして、四十四年の十二月九日の分、それから四十五年の八月二十一日の分、それから同じく四十五年八月十九日の分、そしてその次が四十五年の十一月六日の分、それから最後に四十六年二月十六日、これだけの資料をいまごらんいただいておるのではないかと思うわけでございますが、その資料で申し上げますと、先ほど申しましたように二十八サンプルということになるわけでございます。  この二十八サンプルのうちの四サンプルは排出口からとっておりまして、残りの二十四サンプルはいわゆる環境水、たとえば取水口でございますとか、たんぼに引きます取り入れ口でございますとか、そういった河川の環境水でございます。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで見ますと、一応会社のほうのやり方といたしまして、二つのやり方をやっておりましたようで、事前に数日前から、四十六年の二月は渇水でございまして、雨が降りませんので、そういうときは、かなり濃度が高くなっております。そういう時点においては、かなり高いということが予定されますので、そういうときにはあらかじめ、いま御指摘の埋める用意をしておったというふうに思われます。それからさらに、そういうことでなしに、監督局が行ったその日に、向こうのほうで、これはあぶないというようなことでチェックをして、そして水を埋めたというようなケースもございます。そういったようなことでいろいろチェックをいたしますと、いまのこの資料に関する限りは、二十八サンプルにつきましては、大体向こうのほうの注水が行なわれているのではないかというふうに考えております。
  188. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのところは、通産省は何回調査をしておるのですか、四十三年の十一月から。私が先ほど言ったこれは九回ですが、この九回やっていることをお認めになりますか。
  189. 江口裕通

    ○江口政府委員 四十三年の八月から四十八年の二月まで、十六回参っております。
  190. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは通産省、最後は四十六年二月ではなくて、四十六年の十二月の十四日もやっているでしょう。その前に四十六年の六月の二十一日から二日までやっているでしょう。
  191. 江口裕通

    ○江口政府委員 たとえば、第一ダムのオーバーフローというところで申しますと、四十三年の八月の二十六日から三十日までが第一回でございます。それから一番最後は四十八年の十二月の十四日から十七日。先ほど四十八年の二月と申しましたが、十二月の誤りでございます。その間十六回ということでございます。それから、いま御指摘のたとえば四十六年の十二月、あるいは四十六年の六月等に本調査いたしております。
  192. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、四十六年の六月、四十六年の十二月、ここでも採水をして、やはり同じように四分の一と三分の二、これは四十六年の六月ですね。それから十二月の分は三分の一ですか、これが注入されているわけですね。要するにあなたのほうで、会社からこの極秘の資料といいますか、マル秘と書いてありますが、ちゃんと所長の。これさえ向こうから取れば、どれとどれとに注入したということは、きちっと会社のほうで示してあるわけですね。こんな簡単なことはないんじゃないですか。そうしたら、どれに三分の二入れた、どれに二分の一入れた、どれに四分の一と、ちゃんと明らかになっているじゃないですか。何をちゅうちょしてやっているのか、おかしいんです。いかがですか。
  193. 江口裕通

    ○江口政府委員 お答え申し上げます。  具体的に申しますと、四十四年の十二月の調査、それから四十五年の八月、同じく四十五年の十月、それから四十六年の二月、この四つの時点におきましては、御指摘のように会社から詳細に注入の何倍、たとえば二分の一薄めたとか、あるいは三分の一薄めたとかいうような資料を入手いたしまして、それで厳重にチェックをいたしております。  なお、現在私どもがやっておりますのは、この四つは非常に確かな資料として入手しておりますが、それ以外の資料がないかということを、実はきのうからさらに台帳を全部繰りまして調査をしております。と申しますのは、先方の話の中には、なお、これ以外のものもあるやに思われる節もないではないということもございますので、そういう点もあわせまして、さらに現地の台帳によりましてとっておるところでございます。
  194. 岡本富夫

    ○岡本委員 こうしたはっきりした資料が、いまあなたのほうから出てきたのと、私のほうが向こうに調査に行って一番最初に見つけたわけですが、それからあと資料を出してくれという要求を田中君から委員長にして、そして今日出てきた。何でぼちぼち出すのか。全部もらってきたらいいじゃないですか。なかなか会社としても出さぬだろうと思いますけれども、これで明らかになるわけですからね。  そこで、鉱山保安監督局はどういう権限のもとに、いまここに立ち入り調査しているのですか。
  195. 江口裕通

    ○江口政府委員 主として鉱山保安法第三十五条の立ち入り検査権によってやっております。
  196. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、この監督官は準司法的な権限は持っておるわけでしょう。相当な権限を持っておるわけでしょう。しかし、この三十五条を見てみますと「関係人に対して質問することができる。」だけですからね。これでは私は弱いと思うのですね。  その点は、あとであれしますけれども、水質保全局の方来ましたね。  これはあなたのほうからいただいた資料ですが、経済企画庁が四十五年七月二日に採水をしておりまして、これの結果が出ておりますけれども、これに対して自然水の注入は行なわれておりませんか、どうですか。
  197. 森整治

    ○森(整)政府委員 この調査は、先生御承知のように県を通じて行なった調査でございます。この経済企画庁の調査は四十五年六月九日から四十六年三月十九日まで十一回に分けて行なわれておりまして、そのうちの第二回目のが先生御指摘の資料でございます。その同じようなことがどういうふうに行なわれたかということは、県を通じて調査を行なっておりますけれども、私どもいまのところ、どれがどういうふうになっているのかということは詳細に把握しておりません。
  198. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは県庁に委託をしておりますけれども、国費が出ているわけですよね。いまでこそ環境庁のほうにこの権限というものは移ってしまったわけですけれども、当時経済企画庁から委託をしているわけです。そして県でやっている。そのものが、そういった薄められた疑義というものが明らかになっているわけですが、それに対して何の調査もしないというのは、どうも合点がいかないのですがね。県に対してとおっしゃっておりますけれども、ほんとうだったら経済企画庁から行くべきでありますが、いま環境庁に移っているわけでありますから、環境庁からもこれは特別調査をする必要があるのじゃないですか。  十一件もやっているわけですけれども、その中で、ぼくは一つだけ、いまあなたから資料をいただいたから、これと比べたらおかしいというわけでどうなのかと聞いているわけですが、こんな大事な調査のサンプルに自然水を入れて薄めるというようなことは、これは前代未聞ですよ。これを何も調査しないというのは、ちょっとおかしいじゃないですか。あなたのほうで特別調査をするのがあたりまえじゃないですか。いかがですか。
  199. 森整治

    ○森(整)政府委員 問題の点は、東邦亜鉛につきましては通産省に主として御調査を願うという考え方でいますけれども、これは分担して行なわれたわけでございます。県の調査が、県の受け持ちました部分につきまして、いろいろ擬装工作があったということの疑いはきわめて私どもは濃厚だと思っております。  ただ、ただいまのところこの前の県の参考人の御意見もございましたように、非常に現地の情勢というのは調査がしにくい、なかなか協力が得られないというふうに見ておりまして、私どもが参りまして、それじゃ真相が直ちに把握できるかということにつきましては、たいへんその点については逆に疑問を持っております。むしろ経済企画庁の調査全般について、われわれが疑いを持って企画庁自身の行ないました調査、その結果につきましては、今後われわれとしては一切使用しないという考え方でまいりたい。もちろん先生御指摘のように、どの時点でどういうことが行なわれたかということは、むしろ通産省のほうで御調査を願いますと、大体その疑問の出てきた点と、私どもといいますか、経済企画庁が県を通じて行ないました時点と一致してくるわけでございます。おそらくそのときは同じように擬装が行なわれたというふうに私どもは考えたい、こういうふうに思っております。
  200. 岡本富夫

    ○岡本委員 経済企画庁がここに委託をして調査をしたのは、何が目的なんですか。
  201. 森整治

    ○森(整)政府委員 これは水質汚濁法ができます前の水質保全法で指定水域の指定を行ないます。それから水質基準、排出基準を設定するということがございまして、その目的のために必要な基礎資料を得るために調査が行なわれたということでございまして、当時そういうことで調査を行ないましたけれども、調査結果がまとまるころには水質汚濁防止法が成立をいたしまして、その水質汚濁防止法によりまして環境基準が一律に定められ、それに基づいてその後の行政措置が講ぜられた、したがいまして、この調査そのものは、その後の行政には使用されておりません。  ただ、そういう事情がございますので、この企画庁の行なわれました調査がその後何に使われたかということは、われわれとしても十分精査するつもりでございます。そういう使っているものについての影響、これにつきましては、むしろそのデータがない場合にどうなる、使わない場合にはどうなる、使った場合にはどうなるということを十分今後精査してまいりたい、こういうふうに考えております。
  202. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、通産省はこうして鉱山保安法に基づいてこんなに、いま私が調べただけでも九回、先ほどの答弁では十一回ですか、調査しておる。いま出てくる調査と申しますか、そういったものによって、あなたのほうは今後判断するから、これはもう使わないんだと簡単に言いますけれども、それならばやる必要なかったんですね。通産省がやったやつをじっと見ていて、それでやればよかったのじゃないですかね。これをなぜやったかというと、水質基準をきめるためには経済企画庁で委託をしてやる。ということは、通産省のこのデータというものは、信用ならないということなんですか、では独自でやるということなんですか。また、昔はなかなか信用できなかったのですけれどもね。だから大事な水質基準をきめる、その基礎になるものが、すでにあなたのほうもこうして注入されているわけですね。だまされているわけです。  まあ、これだけの費用というものは、経済企画庁から委託して出ているということは国費ですよ。これはだまされたかわからないけれども、これはもうこれから使いません。そう簡単に、せっかく大事な税金をつぎ込んで、そうしてつくったものが、これが隠蔽されて間違っているというのであれば、それはその責任は会社に国としても要求しなければならぬです。もうそれは使えません、そう簡単に行政でやられたのじゃ、これはけしからぬですよ、国民の側から見れば。  だから、これはひとつぜひぼくは要求したい。これは調査をして、そうして会社がこういった悪らつなことをしていたのかいないのか。私のほうは、あなたのほうから経済企画庁の委託費についてはどうされていたかわかりませんけれども、これは使いませんから、もうけっこうですと、こういうわけにはいかないということを、いま私は言うているのです。この点はどうですか。
  203. 森整治

    ○森(整)政府委員 私の申し上げたことが多少ことば足らずで申しわけございませんけれども、擬装工作が行なわれたとすれば、その当時の資料がどうであったかということは、われわれとしても非常に貴重な資料だと思います。思いますが、それは再び返らないものというふうに、取り返しがつかないと申しますか、そういうものでございまして、おそらく正確なデータがとられておるということが通産省の調査で判明いたしません限りは、われわれとしても疑いを持って考えざるを得ないだろうということを申し上げたわけでございます。  そのことと、当時過去において会社側が行ないました問題、これにつきましての責任をわれわれが追及するということとは、私は別問題でございまして、もちろん先生のおっしゃるとおり、われわれとしてもあくまでも会社側の責任は今後通産省とも十分協議いたしまして、過去の行なわれた調査に対する責任をどういうふうにとっていただくかということもあわせてもちろん追及することにやぶさかでございません。
  204. 岡本富夫

    ○岡本委員 それに対しては、経済企画庁のほうの委託によってやった分に対しては、そういうことはしておりません、ああそうですかとなってしまうのじゃないですか。通産省のほうもやっているから、こっちもやっているのじゃないか、そういうことで私は成り立たないと思いますよ。  私はなぜそう言うかといいますと、いまの県行政に対して非常に疑義がある。これは当時もう何べんも県会でも追及されているのです。ですから、いまこまかく言いませんけれども、県議会でも問題にたびたびなっている。そういうところに県から、いまは環境庁ですね、どっちかというと企画庁です。経済企画庁から国費を出してそうしてやったのが確かにどうなのかということを、私たちはなかなか調べにくいといいますけれども、県会で相当問題になっておるわけですからね。やはりあなたのほうから出した、要するに国から出した委託費に対してはどうなんだということを、やはり現地調査をして、そうしてこれは間違っている、これはどうだというのをはっきり明らかにしなければ、ただ責任だけ通産省がやっておったから、うちのも同じだろうということでは、私は納得しないと思うのですよ。ほうっておけばほうっておくほど証拠はなくなりますよ。  この点、ひとつあなたのほうから一ぺんきちっとした調査をしてもらいたいと私は思うのです。いかがですか。もう一度、これは大事なことですからね。
  205. 森整治

    ○森(整)政府委員 県を督励いたしまして調査をいたしますが、県の調査でなかなかできないという場合には、もちろん環境庁として職員を派遣して、そういう調査を行なうということについての考え方は現在は持っております。
  206. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは経済企画庁の事務を引き継いだのですから、環境庁からもきちっと調査をして事実を明らかにしてもらいたいと私は思います。  政務次官、これは政治的の配慮ですが、いかがですか。通産省のやつだけ待っているのではなくして、私はまだまだいろいろな資料が出てくると思うのです。私のほうが入手しておるのでも、だいぶ出ているわけですからね。明らかにして、そしてこういったものに対する責任と申しますか、これをきちっと所在を明らかにしませんと、今後の公害行政あるいは公害に対するものは、あとは、済んだのはいいのだというようなかっこうになってしまうと思うのですね。この点ひとつ……。
  207. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 調査結果の正当性について、どういうふうにして正当性を評価するかということについてよく考えてみたいと思っておりますし、必要であれば、おっしゃるように直接調査ということも考えてみたいと思っております。
  208. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで、大切な本法案をいま審議しているときでありますが、先ほども申しましたように指定地域、要するに地域指定をするときに、こういう問題が一番大切になると私は思うのです。そこで通産省のほうも、それから経済企画庁のほうも、あなたのほうの調査を待って、もう一度私は明らかにしてまいりたい、こう思います。  そこで、公衆衛生協会に対して昭和四十三年の八月二十七日から二十八日、委託をして、それでこの調査をした、こういうものが明らかに、このときに通産省の調査したのと数字が違っておりますね。公衆衛生協会、すなわち厚生省でやったものは四十三年八月二十八日。通産省のほうが〇・ ○三三ですか、それから厚生省のほうは〇・〇〇四、これは第一ダムの東ですね。それから西のほうは、通産省のほうは〇・〇七で厚生省のほうは〇・〇〇五、こういうように明らかに相違が出ておるということは、採水したサンプルに自然水を注水した、隠蔽工作が行なわれたということがはっきりしているわけですけれども、こういった環境調査のもとに行なわれたところの健康診断班ですか、この間も私言いましたが、イタイイタイ病の鑑別診断をやったわけですが、当委員会で再調査、再健康診断をやるというような答弁があったわけですけれども、現地の実際の状況を見ますと、すでに国の鑑別診断班の現在のメンバーでは、しかも保健所がいろいろ調査して、そして当時厚生省に報告しているわけですね、そういうようなものでは非常に住民は納得しないわけです。  どういうような方法で今後大切な地域指定をする健康診断を行なうのか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  209. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生から御指摘のございました、そこでやってきた科学的な調査全体に対しての信頼がゆらいでいるという問題でございますが、私は非常にこれは残念なことだと思っております。人間の健康診断につきましては、問題の要観察の患者さんをわざわざ九州まで運んで、そこで病院に入院をさして、こまかく検査をしておるという方も中にはあるわけでございまして、その方々のデータについて東邦亜鉛がとやかくするということは、一切なかったということは明らかなことであると思います。  そういうような状態でございますが、今後どうするかという御指摘でございますが、これにつきましては、私どもは今後検診を続行いたして、また心を新たにして、これに対応するという考えでございますが、県のほうで検診班をどうするかという御議論でございますけれども、検診班につきましては、従来地元の県と長崎大学の方がかんでおられまして、鑑別診断班につきましては、これはいろいろ先生よくおっしゃいます萩野先生も皆さんも全部かんでおる研究班でございまして、鑑別診断研究班自身の構成につきましては、私はそう批判を受けることはないというぐあいに思っております。非常にむずかしい運営でございますが、意見の違う人、それが全部合った診断班でございますので、国の鑑別診断班で出されてくることについては非常な議論の末出てまいるものでございますので、それについての問題はないと思います。  ただ、地元で県が編成をして、地元の大学が行ってやっておる検診ということについて、県の人がもっとこういうお医者さんに見てほしいということがもしもありますならば、それは当然医師の選択の自由ということがございますから、それに応じて県がこれに対応すべきことではないか。私どものほうの研究班におきましても、当然そういうものを採用していくというような考え方で対応していきたい、こういうぐあいに考えております。
  210. 岡本富夫

    ○岡本委員 当時の県会の議事録を見ますと、「従業員、または地元住民は事イ病に関しては会社から口を封じられたかのごとき疑いをもたれるように答えません。またそのほかのことについても何かおどおどしたような態度であります。しかも町長さんは元鉱業所の総務課長であったという、」。四十四年の三月に、厚生省が要観察地域として指定をした、それが基本になって健康診断が大体行なわれつつあるわけでありますから、国家指導の、国家指定の健康診断とも言えるのではないか、そのために国庫から負担金が出ておる、こういうときに会社側と同席をして慰労会を持った、検診班不見識きわまるといわざるを得ない、こういうようにもいわれておるわけです。  したがって、そういった検診班が検診をしたものをもって、こっちで鑑別診断班がやりましても、先ほどの水質の問題で根本のデータが間違った。そのために今日、たとえば鑑別診断班がいろいろ調査するときに、環境はだいじょうぶだというような答えも出しているわけですね。それであなたのほうも、地元の人たちが希望するなら、たとえばイ病の健康診断については第一人者といわれるような萩野さんをそのまま向こうに派遣をして、そして健康診断に当たらせることができる、そういうような考え方もやるのかどうか、これをひとつお聞きしておきたい。
  211. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のあったような事実がございました場合には、これは社会の指弾を受けてもしかたがないというぐあいに、私は非常に残念に存じております。  ただ、厚生省、それを引き継いだ環境庁といたしましては、対馬については疑いを非常にきつく持っておったということば終始一貫いたしておりまして、先生のお話の中にも、口をつぐんで、なかなか話をしないという事項がございましたが、私も患者の家はほとんどすべてを回りました。患者さんの家族あるいは患者さん自身にも会って話もいたしましたが、同じような情景でございます。  一つは、要観察地域なんかやめてくれというような議論が非常にあるわけであります。これで非常に困ってしまう、やめてくれということと、イタイイタイ病のような忌まわしい病気はもうないんだというような御議論と、しかしながら、こう指定されている以上は非常に不安である、この三つの非常に矛盾した問題もございますが、そのような気持ちに触れまして、私は四十五年五月に参りましたときも、やはり門を閉ざされたというような感じをいたしました。  その時点におきまして、小林先生と萩野先生は絶対対馬の土を踏まさないというところまでの意見をも聞かされまして、それではなかなか、こちらからどうもいたし方もないというような事情があったわけでございますが、今回の新たな問題といたしまして、先生の御指摘のように、地元の人も萩野先生に見てほしいということがありましたならば、当然これは、この鑑別診断研究班の中に入っておるわけですから、萩野先生が行って見られるということも十分考えられることであり、地元が受け入れるということが、一つの基本になろうかというように思っております。
  212. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、それはひとつ、地元の受け入れということになれば、あと、私どもでずうっとアンケート調査をやったものがありますけれども、時間の都合でこれは省いておきます。  そこで費用負担。これは、会社側が前にこういった隠蔽工作なんかしなければ、もっと明らかな調査ができておったかもわからない。したがって、この費用は国費から出すわけにいかないと私は思うのです。だから、この隠蔽工作をやった企業側からそういった費用は取るべきだ、こういうように私は思うのですが、それについて、これは政務次官のほうからひとつ、政治的配慮ですから……。
  213. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 先生おっしゃいますのは、何の費用かよくわかりませんが、私一般的に申し上げまして、会社側に費用を持たすということは、けっこうだと思います。思いますが、逆に今度、検診結果についていろいろな色目で見られるということが従来あったわけでございます。したがって、基本的に原因者あるいは汚染者に費用を負担させるような場合には、そういうような配慮をしませんと、その費用を出す対象いかんによっては非常に誤解を招く。この辺は今後、費用負担の場合のルールを確立する上で十分検討しませんと、ただ、あいつは憎いから、あれに金を持たす式だけには、必ずしもいかない面がありますので、どの面に持たすかということを限定して検討していく、こういうことがよかろうと思います。
  214. 岡本富夫

    ○岡本委員 向こうで皆さんを雇うときに、会社が払うんじゃなくして、ほんとうはこの委託費を相当出していますよ。これを全部隠蔽工作をやったんですから、ほんとうは国に全部返してもらうのがあたりまえですよ。そうしてあらためて国から出す、こうしなければだめです。その会社にやらしたんじゃ、それはだめですけれども、そんなことはわかっておることですが、そういった費用負担をちゃんと会社から罰金——罰金というとおかしいですけれども、取るのがあたりまえだと私は思う。その点もう一ぺんいかがですか、どうもあなたの答弁はおかしい。
  215. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 今後検討いたします。私の考えとしましては、やはり会社側に出させた健康診断だということで誤解を招くファクターが一つと、それからそういう先生御指摘のように、前々からいろいろ問題があることをしでかした、したがって、その償いとして、そのくらい持たすべきだという考え方と、両方あるわけでございますので、その辺の、どういうところで、その二つの考え方調整するかということを少し検討しませんと、にわかに、いま先生が一般的におっしゃっていることにつきまして、一般的にそれでよかろうということは申しかねる、こういうことでございます。
  216. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもはっきりせぬな。それはあとから政務次官からあれしてもらいますけれども、そこでこの件を見ますと、公衆衛生協会に委託をするということは非常に心配なことですね。ということは、公衆衛生協会の信用が失墜したことになると思うんですよ。その責任問題について法務局の方、見えていますか、これについて刑事責任はどうなのか——じゃ、来てないと、これは話になりませんから、きょうはこの程度でストップしておきます。  最後に、政務次官から、この健康調査、環境調査についてどういう配慮をするか、これをひとつ聞いて終わりたいと思います。
  217. 藤本孝雄

    ○藤本政府委員 先ほど橋本審議官のほうからお答えいたしましたように、その健康調査を拒否したり、また不安であるからしてもらいたいという考えであったり、またそういう議論はもうしてほしくないというような、三つの状況があったという話がございました。  先生御指摘のように、いまは萩野先生でございますか、地元としてそういう希望が非常に強い、こういうお話でございますので、それはおそらく地元の方々が、健康についてたいへん不安を感じておられるという証拠であろうと思うわけでございまして、そういうことにつきましては十分理解できるわけでございますから、その点につきましては十分考慮していきたいと思いますし、費用の問題につきましても城戸局長が申しましたように、一般的な考え方としては、そういう二つの点が確かにあるわけでございますが、この点につきましては、これまた早急に十分検討をいたしたい、かように考えております。
  218. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  219. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時九分散会