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1974-03-05 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月五日(火曜日)    午後二時五分開議  出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       田中  覚君    橋本龍太郎君       八田 貞義君    小林 信一君       佐野 憲治君    岡本 富夫君       坂口  力君    折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君  委員外出席者         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  富士地域環境保全整備特別措置法案内閣提  出、第七十一回国会閣法第一一五号)  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三五号)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  第七十一回国会より継続審査となっております内閣提出富士地域環境保全整備特別措置法案を議題といたします。     —————————————
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員長 本案につきましては、第七十一回国会におきましてすでに趣旨説明を聴取しておりますので、これを省略したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員長 本案について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。渡部恒三君。
  6. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 私は、前国会より継続して審議中の富士地域環境保全整備特別措置法案について、おもに三木環境庁長官に御質問をいたしたいと思います。  この法律案は前国会から継続審議されてきておりますが、この際、もう一ぺん提出趣旨を確認しておきたいと思いますので、基本的な提出趣旨について、この法案の目的とする内容の要点について、承りたいと存じます。
  7. 三木武夫

    三木国務大臣 申すまでもなく富士山はわが国の自然の中でも象徴的なものであります。ところが、これは首都からも百キロ以内にある地点でありますので、非常に便利な地点でもあり、近時レジャー開発別荘開発等、無計画開発をされる傾向が非常に顕著になっておるので、この富士山というものを保護し、あるいはこれを利用するにしても総合的に計画的に保護利用をいたすことが必要である、こういう点から考えて、こういう法案提出いたしました。これが理由でございます。
  8. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 いま長官より承ったのですが、私どもばく然と、この法案提出されたのを伺って考えますのは二点あるのです。  一つは、国の、いまおっしゃられたような子々孫々まで守っていかなければならない自然を守るために自然公園法があるわけですね。そしてこの富士地域国立公園に指定されておるのでありますから、なお、それに重ねてこういう法律を出さなくてはならないということになると、それなら自然公園法によっては自然は守っていけないのか、国立公園に指定されている富士地域を守るために、なぜ新しい法律が必要なのかという疑問点一つ。  もう一つは、富士日本霊峰でありますけれども、私は福島県の会津の出身ですが、私ども地域人間からいうと磐梯山を、あれは会津富士といって、やはり子々孫々までふるさとの象徴として守っていきたいという希望があります。あるいはまた鳥海山のふもとの人も、蔵王山のふもとの人も、浅間山のふもとの人も、そういう気持ちを持つと思うのです。そうすれば、今度はぜひひとつ磐梯山ろく保全法をつくってもらいたいというような気持ちをわれわれの地域人たちは持つかもしれません。そういう中で、なぜ富士だけ守るために特別立法を必要とするのか、これは国民の素朴な疑問でありますので、これに対してお答えをいただきたいと思います。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 お説のとおり自然公園法でいろいろな規制ができるわけでありますが、公園外地域もあるということであります。富士山一帯として考えることがいいということ。磐梯山は、渡部委員には富士山に匹敵するものでありましょうけれども、国民的あるいは世界的に言うたときに、まだやはりちょっと富士山磐梯山とは、いろいろないままでの歴史的な点から見ましても、磐梯山福島県の象徴ではあっても日本象徴とは言いにくい。そういう点で富士山という特殊な自然、日本の代表的自然の象徴であるというところから、こういう特殊な立法によって富士山保護し、なおかつその利用については計画的な利用をはかって富士一帯としての富士山、これを子孫のために残したいという趣旨でございます。
  10. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 これは局長のほうから御答弁を願ったほうがいいかもしれませんが、この法律案の対象となる富士地域とは、一体どのような地域をさすものか、またこれに関連して、その地域富士山頂から半径二十キロの範囲とすると書いておるのでありますが、この具体的な地域をきめた考え方というものは、どういうものであるかお答えいただきたい。
  11. 江間時彦

    江間政府委員 お答えいたします。  この法律におきまして「富士地域」と申しますのは、富士山及びその周辺地域のうち、その自然環境保護自然環境にふさわしい利用環境確保、さらにこれらに必要な施設整備を、富士山中心として一体的かつ計画的に推進する必要があるという地域でございます。今後地域の実情などを十分調査した上で、政令で具体的に指定する考えでございます。現在のところ、おおむね富士山とその周辺地域自然環境一体性、または土地利用その他の利用状況共通性などを総合的に判断いたしまして、富士山頂から半径二十キロの圏内を基準として定めることといたしております。  富士山頂からおおむね二十キロの圏内自然環境の実態を見ますと、地形上、富士の北のほうにおきましては、おおむね山頂から二十キロの地点御坂山塊がございます。また南のほうには、ほぼ二十キロの地点に愛鷹山がございます。西のほうにつきましては、ほぼ二十キロの地点天子岳、長者岳などが連なっております。全体として二十キロの圏内は、富士地域としてとらえ得る地形上の合理的な範囲考えられると思うわけでございます。また二十キロの圏内におきましては、土地利用その他の人間活動富士地域自然条件に多くを依存しているという点におきまして、一体的な共通性を示しております。その外側に富士市、富士宮市、御殿場市などの市街地が、この圏内を取り囲むように点在しておる状況が認められます。  このような自然的、社会的条件を総合的に検討いたしますと、富士地域としてはおおむね二十キロの圏内をもって基本的な範囲とすることが最も適切であるというふうに考えるわけでございます。
  12. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 これは大臣からお答えいただいたほうがいいかもしれませんが、この法律案富士地域特殊性に着目し、この地域自然環境保全をはかろうとする趣旨とともに、利用の観点がうたわれておるのですね。これは非常にむずかしい問題なんですが、いまこの地域関係する山梨県あるいは静岡県の人たちから、一日も早くこの法案を通してもらいたいという陳情を私どももたびたび受けて、その責任を感じておるのですが、ただ、その地域代表人たちの話を聞いておると、多分にニュアンスが違う面があります。  たとえば静岡県の人たち陳情者に多い意見ですが、この法律を早くつくって、とにかく富士乱開発を防止して、霊峰富士を自然のままに守ってもらいたいというような意見も強いのでありますが、同様にまた山梨県の地域関係者に多いのでありますが、この富士法期待するのは、この法律ができて後進地域がもっと開発されるんじゃないか。予算がどんどんついてきて、おくれた地域開発されるんじゃないかという期待で、この法案を歓迎している面もあるのです。これは現代日本政治をつかさどる者、あるいは行政をつかさどる者にとっての最大の問題点でもあり、悩みでもあろうと思うのですけれども、われわれは祖先から受け継いできた自然を残さなければならない。また、われわれの子々孫々に伝えなければならない。残すためにはどうすればいいかといえば、そっくりそのまま一切何もしないでおれば、そのまま残っておるのです。しかし、同様にわれわれは自然を——人間が大事か自然が大事かということになると、これはやはり自然を利用して、国土を利用して人間は生きていかなくてはならないのです。  この前青森県から陳情者がお見えになって非常におもしろい話をしていったのですけれどもカモシカは御承知のように非常に貴重なる天然保護動物として絶対に捕獲を禁止されております。ところが青森県のある村では、その保護が行き届き過ぎたためにカモシカがふえてしまって、村民の畑やたんぼに、カモシカは絶対人間がとることができないということを知っているもんですから、ゆうゆうと出てきて、たんぼを荒らす、畑を荒らす、人間が出ていっても、どうせおれは法律に守られているんだから心配ないと寝そべって動かない。それで何千万円も農協でかけてカモシカの入らないさくをつくっているけれども、これだけでもたいへんなんで、何か補助をしてくれという陳情がありまして、いろいろ政治というものは、行政というものは、むずかしいものだということをしみじみ感じたのでありますが、一体この法案は守っていくということに重点が置かれているのか、それともまた地元民期待しているように、富士の活用によって地元民生活の福祉に貢献していくものであるか、その辺のところを承りたいと思います。
  13. 三木武夫

    三木国務大臣 この法律というものが富士一帯として富士地域整備ということを考えるわけですが、その整備ということは、大いにこれから富士地域開発していこうというためにこの法律を出すのではないので、むしろ富士山並びにその周辺のこの自然環境というものを保全していこうというためにこの法律を出すのであって、したがって整備ということもいろいろ次々に開発していこうというようなことは含まれていない。治山治水であるとか、あるいは汚染されていく富士五湖、これをきれいにするために下水道整備であるとか、そういう限られた富士保全という意味からこの法案提出するのであって、積極的に開発をしていくための整備というのは、開発というものを意識してこの法律案を出したものではない、あくまでも富士環境保全しようというためにこの法案を出したものでございます。
  14. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 これは局長に承りますが、いま富士山年間利用者はどのくらいですか。
  15. 江間時彦

    江間政府委員 われわれの手元に持っております資料によりますと、富士地域にかかる国立公園利用者数、これは富士登山をはじめ富士五湖などを中心昭和四十七年の数字でございますが、静岡県側で七百十万人、山梨県側で一千六十万人、計一千七百七十万人となっております。また、将来の見込みに関しましては、現在の趨勢から見まして、かなりな伸びが予想されるというところでございます。
  16. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 その一千七百万人からの人があの山に殺到して利用しておって、それで保護されますか。
  17. 江間時彦

    江間政府委員 おっしゃるとおりのことが非常にわれわれも懸念されるわけでございまして、この法律の適正な施行ということもございますし、また別途の行政措置としていろいろな形で過剰利用を抑制するということも考えていかざるを得ないと思っておるわけであります。
  18. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 これはむずかしい問題だと思うのですが、私も実は尾瀬が私の選挙区なんです。二十年前、私が初めて尾瀬に登ったころは、自動車道路は全然ありませんでした。八里は歩かないと尾瀬には行けないという状態でしたから、ほんとう利用者が少なかった。行ってみれば、ほんとうに神秘としか言いようのないすばらしい景観だった。しかし、そこに行って私がその地域政治家として考えることは、やはりこれだけすばらしいものだから、このすばらしいものをできるだけ多くの人に見て楽しんでもらいたいし、またこんなにすばらしい景観を持っておって、その村の人が、その地域の人が、貧しい生活をしている人はないんだが、やはりこの自然を利用して、その地域の人が所得収入を上げて豊かに暮らせるようにしたいと当然これは思うのですね。  それで、私は地方議会におったころ、尾瀬への福島県からの道路整備に力を入れて、いまでは何十万人かの人が尾瀬に行けるようになりましたね。そうすると、行ってみると今度はかつての神秘さというものは失われていますね。私は、はたして尾瀬開発したことがよかったかどうかということにたびたび疑問を感ずることがあります。しかし同時に、宝の持ちぐされなんですね。そして、おそらく富士山にしたってそうだと思うのですが、これは何も東京の人のために富士山が、尾瀬があるんじゃないんですね。東京の人が一年に一ぺん行って、ああいいなと思うためにあるわけじゃないのですね。  たとえば、私は自分の地域のことはわかりやすいから申しますが、尾瀬に最近行く人はみんながっかりして帰ってくる。何て私のところに言ってきたかというと、昔の檜枝岐村わら屋根道路にお墓がいっぱいあって、ほんとうに山里の気持ちだったけれども、いま行ってみたら、屋根はトタンになっているし、ガラス窓があるし、道路舗装になっているし、あれじゃつまらないといって文句を言いますけれども、私はその人たちにいつも言うのですけれども、しかし、あんたたちは二年に一ぺんか三年に一ぺん尾瀬に、檜枝岐村に行く、あなたたちが、ああ山家でいいなと思うために、あそこに暮らしている人がいつまでも泥んこの道路でカヤぶきの屋根近代生活をしないで、あんたたち観賞物になっているわけにいかない。やはりどんな山奥に生活する人だって近代的な生活をしていかなければならない。近代的な生活をするということは、道路舗装をすることですし、それを利用して設備をつくることだし、やはり自然の姿はこわされていくことになると思うのですね。  それをどちらに重点を置くかということは、そう簡単に結論を出せるものでないし、やはりこの富士法案期待する相当部分の人が、この法律ができれば、あの地域開発されるだろうという気持ちも持っているのですね。その気持ちにこたえるということ、これは全くたいへん矛盾する問題なんですけれども、しかし、いまの政治はその矛盾にこたえていくことしかないのですね。  考えてみると物価の問題でも、野党の人たちが言っているように、生産者、農民の前に行って米の値段を倍に上げろと言って、消費者のところに行くと物価値上がりけしからぬ、米の値段をもっと下げろ、これはできるはずのない相談だけれども、しかし、そのできるはずのないようなことを、総論賛成各論反対、これを住民は求めておるのですね。為政者の立場では、その住民にこたえていかなくちゃならない。こういう点について、長官のお考えをもう一度聞かせていただきたい。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 環境保全開発の問題というものはいつも非常にぶつかる問題でありますが、しかし二者択一ということでは問題は少しも前進しないですから、何か両立できる方法はないかと考えて、そのために、いま尾瀬の場合でも、あのよい自然をできるだけ保全しながら、しかもそのすぐれた自然に接したいという人の希望にもこたえるということになってくると、やはり開発をある程度制限するよりほかにない。両方が衝突したときには、環境保全をとらなければいかぬというのは、私はそう思うのですよ。一ぺん失われた環境は、あとへ戻らないですからね。  したがって、これがもうどっちかというぎりぎりの線までいかないときに、環境保全しながら、できるだけそういう自然に接したいという人の要望にもこたえるということが政治の使命じゃないでしょうか。どっちか割り切っていくのだったら、政治というものは要らぬとは言えぬかもしらぬけれども政治役割りというものを果たす道ではないと思うのです。自然を破壊しなければ開発はできないのだというところに持っていかない、その限度において開発をしていくというのが政治の英知というものだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  20. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 いま長官のおっしゃられるとおりだと思うのです。ですから、富士山に登山したい、日本人と生まれたら富士を見たいという人を制限するわけにはいかないと思うのです。しかし、いま言ったように、千八百万人もの人がたずねてくれば荒れるにきまっていますね。  そうすると、そこでこの法律に対する期待があると思うのです。やはり富士に来たい人を制限するわけにはいかない。しかし、その千八百万人の人が来ても富士の自然がそこなわれないように保護するために思い切った金をかけてくれる——どものほうの国立公園地域なんかを見ても、思い切った金をかけて設備をしてやれば、こわされないで済む面が一ぱい出てくると思うのですよ。だから、おそらくこの富士保全法に対する地域人たち期待、この法律をつくれば、そういうことを国がやってくれるんだという期待があると思うのです。  この法律案によると、富士地域保護利用整備計画というものが策定されて、その事業が行なわれなくてはならないとなっておりますが、それがおそらくいまの長官の、期待にこたえられる内容だろうと思うのですが、この内容について御説明いただきたいと思います。
  21. 江間時彦

    江間政府委員 お答えいたします。  富士地域保護利用整備計画と申しますのは、富士地域自然環境保護と、その自然環境にふさわしい利用環境確保並びにこれらに必要な施設整備をはかるために策定するものでございます。  したがいまして、その内容富士地域全体の自然環境をどのように保護していくか、また各種の利用地域の配置など、さらにその利用地域では、どのような利用規制を行なうか、またこれらに必要な施設整備をどこまで、どのようなものを行なうかなどにつきまして、きめるものでございます。
  22. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 これに関連して、富士地域保護利用整備事業のうち、「政令で定める事業」ということですね、これはどういう事業内容なんですか。
  23. 江間時彦

    江間政府委員 お答えいたします。  富士地域保護利用整備計画では、富士地域における自然環境保護または利用環境確保のために必要な施設整備に関する事業の概要を定めることとしておりまして、治山治水または砂防のための施設、重要な水系の水質の汚濁を防止するための下水道施設整備などを例示しております。政令で定める事業も当然自然環境保護または利用環境確保のために必要な施設整備に関する事業に限定されるのでございまして、現在のところ、ごみ処理施設屎尿処理施設整備などについての事業どもきめることを予定いたしております。
  24. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 そうすると、大沢くずれというのですか、何かいまのままに富士山をほうっておくと、非常に形がいいですね、あれが三つに分かれているのが一つに形が変わって、われわれが小学校のころから絵にかいておった富士山の絵というものは違ったものになってしまう。だから、これは一日も早くこの法律を通して治山事業をやってもらわなければならないというようなことを私ども陳情で聞いたのですが、その大沢くずれを防止する計画、これは入っているのですか。
  25. 江間時彦

    江間政府委員 具体的に大沢くずれを取り上げるかどうかということにつきましては、自然についての国民的な考え方というものをまとめる必要がございますが、法律上の取り上げ方としては、取り入れられる余地は十分残されておると思います。
  26. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 わかりました。  この法律案の中で、富士地域保護利用整備審議会設置が出ておりますね。これは公害等いろいろな、まあ最近は何の場合でもそうですが、審議会住民参加とか世論を聞くとか、いろんな意味がありましょうが、その設置の場合、このメンバー考え方が非常に重要になって、いろいろの意見が出てくるのですが、この審議会についてのメンバーはどのようにお考えですか。
  27. 江間時彦

    江間政府委員 お答えいたします。  審議会構成は、関係行政機関職員関係県の知事関係市町村の長及び学識経験者のうちから内閣総理大臣が任命する委員二十二名以内で構成されることとなっております。その構成につきましては、この法律案による策定の実施に重要な関係を有する事業主管行政庁職員関係県の知事として山梨静岡の両県の知事を任命し、さらに両県の関係市町村長の中から若干名のほか、自然環境保護及び利用施設などの整備につきまして、専門的な学識経験を有する方を加えまして構成することといたしております。  また審議会審議事項としましては、富士地域保護利用整備計画策定にあたって、あらかじめ、その意見を聞くことのほか、富士地域自然環境保護利用環境確保などに関する重要事項につきまして、環境庁長官または関係大臣の諮問に応じまして調査審議をする権限を付与することといたしております。
  28. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 これは大臣にお聞きしたいと思うのですが、この法律、前国会でも審議している。これはまことにけっこうな法律であり、また地域住民がひとしく、これは与野党をこえてぜひ早く成立して霊峰富士を守ってもらいたいという声が強いので、私どもも心配しておったのですが、この法案に反対する人で、この法律案文内容はいいのだ、ところが、提出してきた動機が悪いのだ、風が吹けばおけ屋がもうかるみたいな議論がよく出てきます。  これを言う人は、この法律案北富士演習場確保するための代償として提案したものである、軍事基地設置するために出たものであるから、その動機が悪いと。これは私もうなずけないのですけれども法案動機が悪い、国の方向として日米安保条約によって軍事基地を提供するといえば、これは党派の問題ではなくて、政府の仕事なんですから、これに関連したところで、私はどうこうというものはないと思うのですが、そういうことを言うのも耳にするのです。この辺の事情について、大臣から明確なお答えをいただきたいと思います。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 昨年の一月以降、北富士演習場取り扱いについて山梨県側と政府との話し合いがあったことは事実です。それを契機にして、この法律が生まれてきたことは事実であります。しかし、それは何も演習場取り扱いで急にこういう問題が出てきたのではないのです。従来から山梨県側においては富士地域環境保全したい、そのためにいろいろな立法措置が必要である。そしてまた、保全をするために政府もいろいろな財政的な面に対しても、特別な配慮もしてもらいたいということが従来からあったわけです。強い地元の要望としてあったわけでありますから、この演習場の話が出たときに、従来から要望しておるこの案も、この機会にぜひ実現してもらいたいということで、政府も必要を認めておりましたから、法案提出となったわけで、急にその交換条件として生まれたのではなくして、従来からあった要望を、この機会立法化したというのが事実でございます。
  30. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 内容のいいことであれば、これはどういう話し合いで出てきたとか、そういうことを一々問題にしておったら、これは何もできなくなってくると思うのです。決してこの法律案演習地の提供というようなものと取引の材料にされて出てきたものでないということは、私ども長官から承って確認してよろしいですね。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 よろしいです。
  32. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 次に、この法律案の対象地域に北富士、東富士の両演習場その他の防衛施設が含まれておるのかいないのか、これもたいへん問題になっておると思うのですが……。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 これは富士地域を一体として取り扱うわけでありますから、演習場は全部この法案の適用範囲内に入っておるということでございます。
  34. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 この法律案では、北富士演習場等の演習場が、これからどのように取り扱われていくのかということも大事ですね、これ具体的に、局長からでもけっこうですから、ぜひ納得のいくように、また地域人たちが安心のいくようにひとつ親切に御答弁をいただきたい。
  35. 江間時彦

    江間政府委員 この法律案の適用地域には以前から東富士、北富士の両演習場がございまして、その規模もかなりの面積に及んでおります。富士地域自然環境保全の必要性にかんがみまして、この法律案では、これを除外することは考えておりません。したがいまして、自衛隊の行為につきましては隊員の宿舎であるとか、あるいは通信施設などの施設設置につきましても、富士地域自然環境保護の観点から本法の規定第十四条にもございますが、国立公園等以外の富士地域における国または地方公共団体の行為の通知が、それなのでございますが、本法の規定が適用されることになるわけでございます。
  36. 渡部恒三

    渡部(恒)委員 三木長官のたいへん親切な答弁でこの法案についてよくわかりました。一日も早くこの法案が議了されますように委員長要望して、質問を終わります。      ————◇—————
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案、ついにこれが出されたわけであります。     〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕 長官もこの点は十分御存じだと思いますけれども、これは前からだいぶ問題になっておりまして、いわば画期的な一つ意味を持つ法律でありました公害健康被害補償法、これの一つの補完的な役割りをつとめる、補完どころかこれは重要な部分であります。そういうような点等からいたしまして、前回からの公害健康被害補償法案、これらの関連が無視できない法律であります。そういうような立場からして、以下若干長官の御意見を承っておきたい、こう思うのであります。  まず、本補償制度の実施時期は以前からだいぶ問題になっておりましたけれども、この施行時期はいつを考えているのか、この点はどうでしょうか。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 九月一日から実施したいと考えております。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 実施のために必要な政令の準備、こういうようなものに対しては十分進んでおりますか。五十三をこえる政令というかつて類例がないほどの、本法よりも政令にゆだねられたその部分が重大な要素を占める、こういうような性質の法律なんであります。もう少しことばをかえて言うと、本法は存在しても、政令いかんによっては、これはもうほんとうに画竜点睛を欠くような法律になりかねないおそれさえあるのであります。したがいまして、この実施のために必要な政令の準備はどの程度進んでいるか伺いたい。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 この法案審議を通じて各委員からの熱心な御審議を賜わりまして、この法案に対してわれわれとして、いろいろ配慮すべき点も御指摘になりました。そういうことを踏まえて、いま環境庁で調査研究を進めておるわけで、順調に進んでおるわけでございます。これを公害対策審議会等もございますから、この審議会にもかけまして、九月からの実施には支障なきものと考えておる次第でございます。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 組織や機構、こういうような必要な準備も十分整っているんじゃないかと思いますが、今回はこの健康被害補償法、案じゃなくてもう法になっていますが、これを実施するための組織や機構、こういうようなものも大きいのでありまして、これを無視できません。九月一日にこれを実施するつもりである、こういうようなことでありますから、ほかならぬ三木長官のことですから、そのまま私は受けて、ぜひ間に合うように政令整備しておいてほしい。またでき次第、われわれにも十分これを知らせるような方途をとってもらいたいということであります。  なぜならば、この五十三をこえるような政令事項と二十一項目の附帯決議が本法につけられておったわけであります。二十一項目の附帯決議というと、これまた膨大であります。参議院へ行ってみますと、十九の附帯決議が参議院でもついているのであります。衆議院で二十一、参議院で十九、ダブるものもありますけれども、これは膨大なものであります。それほどまでに一つの行き方というものをきちっとしておかないと、また運用を誤ると、これはとんでもないことになる、こういうようなことを感ずるわけであります。附帯決議に沿うようにこの点も十分検討しておられますかどうか。この点を国民の前にはっきり披瀝しておいてもらいたい、こう思います。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 国会の附帯決議は、われわれとしてもこれを尊重して、そういうことも頭に入れながら準備を進めておる次第でございます。
  44. 島本虎三

    ○島本委員 頭にだけ入れてですか。具体的に行動であらわすのですか、頭にだけ入れておくのですか、態度に示さないのですか。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 頭に入れるだけでは御指摘のように目的は達成できないわけでありますから、最大限度にこれを生かす所存でございます。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 最大限度にこれを生かす所存であるということを聞きまして、やはり三木さんのいわば格調を私は信じたいと思います。最大限度です。  それならば、最近航空機によるところの被害、新幹線によるところの被害、こういうようなものも出ております。ある場合には、これは裁判にまでなっております。また、これから裁判の手続をとられているやに承る新幹線騒音さえあるのであります。新幹線の場合には特に振動という問題も付随するのであります。そうなりますと、本法を施行する際の重大な一つの要請、頭に入れるだけじゃなく、これを具体的に態度で示そうという長官に対してあらためてお伺いしますが、騒音と振動などの影響による疾患等を指定疾病に加えることについても十分お考えでしょうか。と申しますのは、大気型の非特異疾患、水俣のような特異疾患、これだけがいま対象になっておるわけです、ぜんそくだとか。しかしながら、形態としてはそれだけで済む問題じゃありません。公害健康被害というと、それ以上のものもあるわけでありますが、態度で示そうとするその意欲を信じて、では大気型の非特異疾患、それから特異的疾患だけの対象じゃなく、騒音振動等の影響による疾患等も指定疾病に加えることの準備についてはいかがなものですか。
  47. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いま航空機騒音によります健康影響の問題が出ましたが、これは前の法律案審議のときにも御説明申し上げましたように、この法律が疾病を対象としているということで取り上げるに至らなかったわけでございます。ただ、大気汚染による影響が、もし航空機から生じました場合には、ほかと複合するわけでございますが、当該疾病につきましては、因果関係さえはっきりしているものでございますれば取り上げるということに変わりはないわけでございます。  なお、騒音の健康影響につきましては、いろいろ今後の調査、研究にまつべきものが多いと思いますので、附帯決議の趣旨も体しまして十分実態の把握、それからいろいろな調査、研究の推進につとめてまいりたい、こう思っております。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 実態に即して十分これを検討しつつ、順調にそれらの準備も進んでいるということであります。確かにこれは大気型の非特異的な疾患と水俣病のような特異的な疾患、この二つが対象になっています。これだけが対象ということになりますと範囲が狭い。これからあらためて起きてくるようなものも考えられないようじゃ、附帯決議の趣旨に沿うたということにはなりませんので、あらためてこれを聞いたのであります。しかし、わかったようなわからないような、これは結局はどういうことですか。指定疾病に加える準備があるということですか、それともないということですか、これから考えるということですか。ほんとうに答弁がりっぱな日本語なものですから、いずれにも解釈できるような答弁だったので、あらためてお伺いします。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 その附帯決議の中にも、島本委員御存じのように実態把握によくつとめて、そして検討せよと書いてあるわけでございます。この趣旨に即して十分な検討を行なう所存でございます。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 これは衆議院と参議院と両方あるのです。衆議院のほうばかり見ても困る。参議院のほうも大体同じようなんですが、あるのです。ですから、そこであまりぎょっとせぬでもいいわけです。やはり十分検討しないでやるわけにはまいりません。ましてこれは検討しなさいという、これは当然であります。参議院のほうからも、これらについての意見がはっきり付されています。健康被害の実態を把握しなさい、被害補償制度の樹立を検討するとともに、というふうなことになっているわけですから、十分検討してやる。これは趣旨に沿うことになります。全く御苦労さんでありますが、これは十分実をあげてもらわないといけないと思うのです。  また、大きい問題になったうちで、いずれこれまた問題になる可能性のあるもので財産被害、特に生業被害の補償制度についても、附帯決議で衆参両院からこの点について要請されてあるはずであります。それに対しても準備は十分進めてございますか。と申しますのは、歴代長官、ことに初代長官から、三木長官は正規にはもう四代目、実質的には三代目でございましょう。そう思っているのです。歴代の長官がほとんどこの点に対しては言及していたわけです。そういうようなことからして、 この財産被害、特に生業被害の補償制度、こういうようなことについても十分に検討されておるのかどうか、この辺もつまびらかにしておいてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。特にこの点については参議院のほうからの要請もあるようでありますので、どのようになっておりましょうか。検討してございましょうか。
  51. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 財産被害、特に農業、漁業等の生業被害につきまして補償制度が必要であるということは、私ども考えておるわけでございますが、ただ被害の態様が非常にさまざまである、あるいはまた因果関係につきまして、赤潮のように究明されてないものが多いということでございますから、私どもとしましては、特に関係各省を中心としましてその対策を進めていこう、こういう方針をとっているわけでございます。  一つ、二つ例を申し上げますと、先般の水銀によります汚染問題について漁業関係者の被害がございましたときは、特別措置法を農林省、通産省の関係で出していただいたもので、つなぎ融資等の措置をとっているわけでございます。また赤潮につきましては、来年度の予算におきまして、赤潮による漁業被害対策としまして一億四千八百万余りの計上がされておるわけでございます。それからなお、原因不明の油濁による漁業被害対策としましても、来年度予算でやはり約四千万円の経費が計上されておりまして、いずれも農林省を中心に対策が進もう、こういうような状況になっているわけでございます。もちろん私どもとしましても、今後財産被害対策の推進のために十分なる調査研究を進めてまいりますし、関係省庁と十分協力しながら強力に進めてまいりたい、こう考えております。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 四代の長官を迎えながら、初めはっきり財産被害も補償の対象にすると大石長官の時代にはこれを言明して、そして現三木長官の場合もこれを促進するような態度でおるわけであります。     〔登坂委員長代理退席、委員長着席〕 しかし依然として、この生業被害の補償制度については、いまだしというような感が一ぱいであります。やはりこの法律自身が大気型の非特異疾患と水俣のような特異的疾患、これによって受ける被害だけを対象にしておるから、したがってそのほかに適用されることがむずかしいんじゃないか。本題に入っていった場合には、これがはっきり出てくるわけです。ですから、これを広げてこの中で救済する、こういうような態度が当初の意向だったのであります。  ところが、これでは救済できないから、これを別個の法律として、いま委員長をやっていられる角屋委員長がこの農林水産の面で、特に有明のいわば第三水俣の問題に端を発したこの生業被害の補償、関連被害の補償、こういうようなものを特別立法をしているわけです。また同時にその他の法律においてもしかりであります。本来ならば、やはりこの中で救済すべき言明であったのであります。それがこの二つの型にしぼられた。だから全部はみ出てしまう。では今度救済しようとしても別法によってこれを処置する以外にはなくなった。たてまえと本音が分かれてしまった。  そこなんです。私どもは形態のいかんを問いません。しかし、やはりこれは当初の考え方からすればずれるわけでありますから、この点に対しては私どもほんとうに遺憾だと思います。本来ならばこの法律の中で、これも救済する、こういうような一つの意向が表明されておったのであります。それがこの二つの型に限定してしまったから、ほかの救済はできなくなった。したがって別法による救済をはからなければならなくなった。こうでございましょう。たてまえと本音がいみじくもここで変わってしまった。これは、私はほんとに残念なことだ。本来はこの中で救済すべきじゃなかったのか。この点については、長官いかがなものでございますか。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、この損害補償の問題が起こってきたときに、健康被害と財産被害を一本の法体系の中で処理できないかと考えたのでございます。そういう意図もいろいろな委員会において発言をした記憶もあるわけですが、いろいろやってみると、この被害の態様が、健康被害の場合と財産被害の場合は非常に違うわけですし、したがって、これはそういう立法を必要とするということは痛感いたしましたので、農林省が中心になって、これをひとつ至急に検討をしてもらいたいということを閣議でも私、要請しまして、農林省もそれをやるということであったわけですが、いま言ったような因果関係というのはなかなか捕捉しがたい、赤潮の場合でもそうですし。したがって、その立法の必要は認めながらも、具体的にその損害を補償するということを法律の中で具体化することには、なかなかむずかしい点があるために、まだ国会に御提案を申し上げるような段階に至ってはいないのですが、これはサボっておるわけではないのです。  実際に内容を検討してみると、むずかしい。この間の水銀のような事件が起こったときに、そういう立法の必要は政府としても痛感したわけでありますが、それを法律の条項として具体化するときには非常にむずかしい問題があるために、なかなか島本委員の御期待のように、この法案国会審議をお願いするような段階に至っていないわけでありますが、政府はこのことの必要を認めて、ほんとうに何かを実現したいということで検討を続けておるというふうに、善意におとりを願いたいのでございます。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 うそを言わない長官ですから、善意に私はとっているのであります。ただ、長官がいまおっしゃったそのことと関連をして、いわゆるこの環境庁長官に与えられている勧告権というものは、現在の公害環境行政の中では有効な権限行使というものがもう付与されているわけでしょう。その点からいうと、私どもはどんどんとこれをやってもらわなければならないし、中央公害対策審議会、これらの答申が出ていろいろやった、その時点においてでも、もっともっとそれを先行して勧告権を行使する、この場所がたくさんあった。しかし現在の状態の中で、これが有効に、かつ適正に、かつ妥当に満足いくまで発揮をされたかというと、必ずしも長官そうでなかったのです。  いま長官がそうおっしゃいますけれども、しかし、瀬戸内海の環境保全については、この汚濁負荷量の問題等、やはり政府自身が、あなたにははっきりした勧告権がある、これの立場に立ってもっともっとできたはずなのだ。また立法だって、その観点から十分強力な権限を持つような立法もできたはずなのですが、瀬戸内海環境保全臨時措置法という時限立法、あれは議員立法でやらざるを得ないようになりました。しかしその前に、第三水俣が発生した際にとった長官環境庁の態度、若干残っている点もまだありますけれども、そのときの意気込みは高く評価するのです。しかし、その後そのあと始末として、この生業被害の補償制度について、漁業関係の問題、残念ながら政府が、農林省がやれなかった。これも議員立法で、ここにいる角屋委員長が当時農林水産の場でこれをも議員立法でやった。肝心の救済そのものは、これは強力に政府が施策をもって行なわなければならないのが、議員立法にたよらざるを得なかった。  こういうようなこととあわせて、今後の環境庁の姿勢そのものも十分強力でなければならないのですから、私ども期待しているのです。ところが、そのとおりいっていないのです。肝心のところになったら議員立法なんです。これじゃまだ環境行政と真剣になって取っ組んでいるのだというようなことにはならないのじゃないだろうか、この点を私は危惧しているわけです。  その大きい原因は、いわゆる大気型の非特異的疾患というような大気の汚染、それと水俣のような特異的な疾患ということで、水によって原因のはっきりしているものとか、またはそれによる被害というように限定してしまいますから、そのほかに及ぼされない。もっとこの原則をゆるめて、これで全部救済できるようにすべきでなかったか、こう思うのです。しかし、この法律が制定されて施行されているのでありますから、今後財産被害、生業被害、騒音、振動、こういうようなものの補償は本法によるというふうに考えたらいいのですか、よらないで単独立法すると考えたらいいのですか、この際ですから、これをはっきり国民の前に声明しておいてほしいのであります。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 私は生業の損害、生業補償といいますか、これはやはり別の法体系によらざるを得ない。しかし騒音とか振動とかいうものに対する健康被害というものは、この法案の中に吸収さるべき問題であると考えております。
  56. 島本虎三

    ○島本委員 では今後は、そのようにしてその考えを実現させるように進めるわけです。そうしますと、これで救済している部門がダブる場合ができてきやせぬか。すなわち地方自治体独自の救済制度をやっているところが、政府のこの施策がおそいから、もうすでに各被害地にはあるわけであります。そうなりますと、地方自治体独自の救済制度をしているものに対しての本制度との関係がどうなるだろうか。今度は具体的に金をとって実施していくのですから、そうした場合には地方自治体独自の救済制度をしているもの、これは本制度に引き継ぐのか、それはそれとして本制度は特別に実施していくのか、この点はどういうようにお考えでしょう。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 このような制度ができれば、それは本法の適用範囲に属するものは引き継ぐわけですが、地方の自治体によって、本法の適用外のいろんな施策もあると思いますが、それは残る場合がある。しかし本法がカバーする範囲のものは、全部これが引き継ぐことは当然でございます。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 それでもう一回、附帯決議のほうにまいります。「指定地域の指定にあたっては、すべての公害病患者が本制度の対象から除外されることのないよう合理的な指定基準を定め、これに基づいて適正な指定を行なうこと。」この趣旨は、指定からはずれておっても、はずれたからだめだと言わないで、そういうような疾病が出た場合には、これを拡大してでも救済しなさいという、救済にポイントを置いた附帯決議だったのです。その点では、指定地域からはずれたからだめであるとかということになっては、せっかくいまこれをやっても画龍点睛を欠きます。この点については十分配慮されてしかるべきじゃないかと考えておりますが、この点等もよろしゅうございますか。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 本法の施行に対しては、地域指定を行ないます。その地域指定を行ないます場合に、十分な調査をして従来の地域指定よりもできるだけ拡大をして、本法の立法趣旨が救済ということにあるわけですから、その趣旨が生かせるように、できるだけ指定の地域というものを広げたいと思っております。
  60. 島本虎三

    ○島本委員 この点重要でありますから、重ねて事務当局にも伺います。  事務当局も知っておるように、もうすでに川崎市は単独で本制度に近い制度を実施しております。しかし住民の声として、ちょっと地域が指定地域からはずれた、はずれたために救済の対象にならないという実態が、われわれ委員のもとに陳情として出されてきたのです。実際これを実施する場合には、そういうような点があるわけです、行政の中ですから。そうなりますと、今度国がこれを実施する場合には、そういうことがあってはならないわけであります。むしろ単独であっても、そこを指定してでも、そのような患者は救済しなければならない。当然そうなるじゃありませんか。いままで各地域にこういうような事例が山積しております。  本法を実施する場合には、そういうような点はどのように考えて実施いたしますか、事務当局の答弁をお願いします。
  61. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 地域の指定にあたりまして、ただいまお述べになりました附帯決議の趣旨に従って、できるだけ広くとっていくというのは全く同感でございますが、ただ、第一種にかかります地域につきましては、非特異疾患であるというところにおのずから限界があるということは、先生御承知のとおりであります。この点だけは全く線を無限に広げていくということは不可能でございますので、御了解いただきたいと思います。  ただ、いま御指摘のように、すでに指定されている地域周辺におきましても、いろいろと合理的でないところもございますし、今後新しい法律趣旨に従って当然広げていかなければならぬ地域があるわけでございまして、これらの地域につきましては十分調査をして、この九月の発足までに指定できるものはできるだけ指定をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。もちろん指定地域外で、これまであります既存の資料で十分この法律で取り上げるべきだということが推定されるところにつきましては、これまた調査をやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 重ねて念のため、川崎に限らず大分でも、その他の各地域、ことに高岡周辺、新湊、あの方面におきましては、地域が一工場であるために周辺がほとんどもう縮小されてほとんど小さい範囲であるから、現行政の中ではそれは救済できない、大気汚染は。こういうようなのがあるのであります。しかし、やはりそういうのがあってはならないのであります。せっかく今度は全日本的な範囲でこれを行なうわけでありますから、そういうような点をわれわれは決してもう見のがすわけにまいりません。したがって十分調査して、そういうようなことのないようにこれを実施してもらいたい、このことなんです。あの新湊かその周辺にあったと思います。今度はそういうようなことに対してはどうなんでしょうか。
  63. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の中で富山の事例が提出されたわけでございますが、富山の件につきましては、前回の委員会におきましても参考人としてお見えになって御意見を賜わり、またそのほか富山の市からもこれにつきまして市長さん自身が再度お見えになって陳情され、また現地の被害者の方々もグループを組んでお見えになりまして、私ども五回以上にわたりまして、どういうぐあいにして地域指定をするかということにつきまして、こういう資料が要る、こういう資料はないかということを、昔までずっとさかのぼりながらいろいろと指導をいたし、順次その資料を充実しつつあるという段階でございまして、現在のところ、小さいからやらないという言い方はいたしておりませんで、わりあい人口は小さいが、統計的にきれいに整理できるだろうかどうだろうか、そこのところをよく注意しなければならない、そのようなことを、まずいたしております。  なお、先生大分の例をお引きになりましたが、大分につきましては現在地方独自の救済制度というのはやっておりません。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 この今回出された公害健康被害補償法の一部改正法案、これはもう中央公害対策審議会の答申では、移動発生源については自動車重量税引き当て方式と原燃料賦課方式のいずれかを政府が選択せよ、こういうことになっておったわけであります。したがいまして、今回の法案においては暫定措置として重量税引き当て方式を採用されて提案になっておるようであります。この法案を暫定措置として提案されたということに対しては、何か根拠がはっきりしたものがあるのでしょうか。それともまた、すぐこれを改正しようとするような意図があるのでしょうか。その場合の暫定とは何年と見ているのでしょうか。
  65. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 移動発生源に関しましては先生御指摘のように、前の中央公害対策審議会の答申では二つの方式を提案しまして政府に選択を求めていたわけでございます。私どもとしましては、その中で自動車重量税の引き当て方式をとったわけでございます。  この自動車重量税の引き当て方式をとった理由でございますが、これは自動車に関します今回の費用負担を求めます理由が、自動車というグループが、全体としてその汚染に対しましての寄与があるし、また社会的責任がある、こういうことに基づきまして社会的費用の負担を求めるわけでございますから、私どもといたしましては、自動車重量税の引き当てで当面いくということにつきましては問題ないと判断したわけでございます。  特に原燃料賦課方式と対比しました場合、原燃料賦課方式のほうには、その負担の転嫁いかんによりましては二重負担となるというような問題もございまして、どうしてもこの提案までの段階に解決を見ませんでしたので、自動車重量税の引き当て方式によったわけでございます。  ただ、暫定措置にしたのはどうかというただいまの御質問の中心でございますが、この暫定措置にしましたことについては二つの理由があるわけでございます。  一つは、実はこの一部改正を提案します前に、私どもとしまして中央公害対策審議会の中の費用負担専門委員会に、PPPとの関連においていろいろと御審議をいただいたわけでございますが、その中間報告としましては、本来的には、この問題はPPPの一環としてのインセンティブを与えるためのチャージをとって、その一部をこういうような資金源に充てるのが一番本来的な姿じゃないかという一つの提案をいただいたわけでございます。そういうことで今後の検討事項としての提案をいただいておりますことが第一。  第二点は、重量税の引き当てをします場合においても、重量税の税率引き上げ自身が、現時点におきます石油供給見込み等、将来にわたる道路整備計画の前提条件が流動的であるということで二年間の暫定措置となったということがございまして、この二点から重量税引き当て方式につきましては四十九年度、五十年度二年間の暫定措置、かように提案いたしておるわけでございます。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、二年後においては変わることもあり得る、こういうような見解ですか。あるとすれば、どういうような点が予想されますか。
  67. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいま申し上げましたように、自動車に関連いたします裏づけとしての費用負担に関しましては、本来的にはOECDで各国に勧告されておりますPPPの一環としてのチャージ、この問題をいずれ各国がどういうぐあいに受けとめるかということがおいおい出てくるわけでございまして、現にこれに関連した注意事項についても、近く理事会に上がる段階にきております。  そういうような動きを見定めました上で、いわば排出を押えるためのインセンティブとしてのチャージを課していく、こういうことを日本でどう考えていくか。この問題が、移動発生源に関連しての費用負担にも一番関係が深いわけでありまして、こういう問題の推移を見ながら今後検討してまいりたい、こう思っておるわけでございまして、それだけが解決法ではございませんが、専門委員会の段階でそういうサゼストをいただきましたので、私どもとしましては、この問題、そのほか考えられる方法があればそういうことも含めまして、この二年間の間に検討を続けてまいりたい、こう思っておるわけでございまして、現在の重量税引き当て方式が最善の方法だとは考えておりませんので、こういうような提案になっているわけでございます。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 その点だけは少し私は理解が不十分です。そうしたら、今回のこの法律案で自動車にかかる部分が取り入れられた、自動車以外の移動発生源、こういうようなものに対してはもうないという考えですか。たとえば航空機、いわゆる移動発生源としては、地球をよごすものは高度に飛び回る航空機の影響が多いということは、もうすでに先覚者の言であります。いまの場合は、これは自動車重量税引き当て方式としてこれを採用し、二年間の時限を限ってやろうとする。しかし、いままでのそれがどのように変わるんだといってもはっきりしない。しかし、はっきりしないならば自動車以外の移動発生源はないという考えですか。そうならば、航空機なんかに対してはどういうように今後扱うお考えでしょうか。
  69. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 自動車以外の移動発生源の排出量の割合でございますが、SOX、NOXを単純平均しました場合、全体の約三・一%になっております。自動車が一七・四%。これに対しますと非常に低い比率でございます。もちろんこれもいろいろな仮定を置いた数字でございますから、計算によっては若干動くところもございますが、私どもは、制度をつくります上の試算ではそのように算定をいたしております。ところで、たとえばいまの航空機の問題でございますが、これは全体として考えました場合、私どもの計算では〇・〇五%程度、こうなっております。それで、これは大気保全局のほうからも発表しましたのにございますように、航空機の場合は特に大量の空気とともに噴出されるということがございまして拡散率が高いということもございまして、いろいろと影響につきましても今後の研究に待つところがあるとしましても、そう大きくないというデータ孝もあるわけでございます。また、かりにこれをいまの自動車と同じように何かはかの財源から持ってくる方法はないかということもございますが、たとえば航空機燃料税というようなものは、その大部分を占めますジェット機燃料の部分ははずれているというようなこともございまして、適切な方法がなかったということでございます。  ただ、この問題、鉄道の問題あるいは船舶の問題を含めまして、自動車以外の移動発生源につきましても今後の根本的検討の段階では十分取り上げてまいりたい、こう思っております。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 これは〇・〇五%ほどしか影響がないから今回取り上げない、将来はこれは十分考える。〇・〇五%というようなのは世界の平均ですか、日本の平均ですか、地域の平均ですか、宇宙の平均ですか。
  71. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま計算をいたして申し上げましたのは、日本全国で消費をしておる燃料ということと、航空機についてはじきましたのは、スタートしまして上に数千メートルに上がるまでの数分の時間にどれくらいを使うかということではじいたものでございまして、局地的なものでもございません。また宇宙的なものでもございません。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 局地的なものでも宇宙的なものでもない。そうしたら、もう少し特定の場所としていま裁判で問題になっている大阪空港、あの辺はすぐ周囲に住宅があるのです。その上に斜めに飛んでいくわけです。すぐ下の住家は音とともにこの排気をかぶるわけであります。そういうようなところでも〇・〇五だと、こういうようなことはとうてい言えないでしょう。それが大阪のようなああいう巨大な工業地帯、こういうようなところでは、その中へ入って汚濁源の一つとして重大な作用をしているということを考えられないわけないでしょう。そうしたならば、全世界的に〇・〇五だから、これは軽いのだということにならない。地域的にはまことに膨大な影響力を持つものである、こういうふうにいわざるを得ない点があるのじゃありませんか。  たとえば羽田の周辺、あれは川崎の工業地帯のすぐ横でしょう。あそこから飛び立っていくやつは、みんな一緒になって拡散されるでしょう、たとえば大阪空港訴訟にあるように、騒音と一緒に排気ガスも拡散しながらいくでしょう。その辺にも同様に工業地帯もあるでしょう。こういうふうにしてみると、〇・〇五であるから、これはいいんだということには当然ならないし、場所的に、地域的には相当それ以上の被害をこうむる場所もあるんじゃないか、こう思うわけなんです。この点、あえて何ら心配するに足りませんか。それを解明してもらいたいと思います。
  73. 春日斉

    ○春日政府委員 一番代表的な例として先生お述べになりました大阪空港におきます航空機の汚染につきまして昨年調査した例がございますので、それで申し上げてみたいと思いますが、窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素というのが航空機の排気ガスに占める主要成分でございまして、御承知のとおり硫黄酸化物は含まれないわけでございます。これらの成分は自動車とほぼ同じなんでございますが、窒素酸化物の測定をいたしてみますと、大阪空港等では周辺工場の影響が相当大きく加わっていることがわかるわけでございます。  そこで私どもは、大阪空港のA地点、B地点、C地点、詳しく申し上げますと、滑走路の中央地点をA、滑走路の南端をB、滑走路の北端をCといたしまして五日間にわたって調べたのでございますが、その結果、一酸化炭素ではA、B、C、Aがもちろん一番高いわけでございますが、このA地点でのデータでも航空機による多少のプラスはあるわけでございますが、濃度的に見ますと異常なものではない、ほかの地域とそれほど違ったものではないようでございます。それから炭化水素におきましてもやはりA、B、C地点ではかったのでございますが、むしろB地点のほうが多いということで、航空機による炭化水素の汚染というものは、大阪空港において特にあらわれておりません。窒素酸化物の場合でございますが、排出ガス中の直接的な影響を受けるA地点は他の地点よりやや高い傾向なのでございますが、昼間航空機の発着ピーク時でもA地点のデータはほとんど変わらないというようなことからいたしましても、航空機の排出いたします窒素酸化物が空港の大気の基礎的な窒素酸化物の濃度に対してあまり影響しない、こういうことが言えようかと思います。  要するに、先ほども城戸局長が申しましたように、空港と申しますのは、大阪空港の場合でございますが、汚染地域に隣接しており、時間的あるいは日平均で見ますと、そういった汚染地域の変動幅の中に吸収されてしまって、航空機排気ガスの寄与度というものは明らかに認めることができなかったわけでございます。要するに航空機の離発着と申しますのは、自動車に見られるような渋滞もございません。あるいは排気ガスは大容量噴気で非常に拡散される、拡散率も非常に高いということで、局所濃厚汚染現象を示しにくい、こういったことがわれわれ結論として得られたのでございます。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 どうもそれだけじゃ、大阪と羽田、そういうようなところに対しては、はっきりしたデータだと申しますが、それを信じても、どうものみ込めない。ただ、そうやって何でもないといっても、じゃ光化学スモッグの被害、こういうのを考える場合には、これはあながち川崎、羽田、この関係だけでもない。いまのところでは、ほとんど東京のほうの被害になってきている。それが大阪の空港の周辺、これに及ぼさないということにもならない。すなわちそういうような場合には、被害を受けた場合には救済する方途を講じておかなければならないわけであります。したがって発生源対策として、自動車にかかる分を取り入れた、これに対しては別にだめだというのじゃないのです。ところが自動車以外の移動発生源として、たとえば重要な航空機、これに対しては軽く見過ぎてはいやせぬかということであります。ほんとうにそれでいいのかということであります。そうして今後どのようにこれを扱うのかというのは、本法を実施する上においては大きい問題点だと思います。それと同時に艦船の問題もあります。  こういうような点を考える場合には、あながち私どもとしてはこれは影響力が〇・〇五%程度のものであるというようなことで見過ごすわけにはまいらない、こういうように思うわけであります。これは今後十分関心を持って取り上げなければならない問題だと思っているのであります。この点については事務当局。
  75. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいま私申し上げましたのは、航空機からの排出物によります大気汚染で、かりに非特異的疾患あるいは特異的疾患が起こりました場合、それを取り上げないということではございませんで、本法では当然そういう疾病がありました場合には対象になるわけでございます。ただ、非特異的疾患の場合は、その他の排出源からの分も影響があると思います。  そういう意味で、この法律は大気汚染によります場合には航空機をも取り込んで給付の対象としている、こうお考えいただいていいわけでございますが、先ほど〇・〇五と申し上げましたのは、飛行機にかりに費用の負担を求める場合には、そのシェアは当然地域地域考えませんで全国的に考えてまいっておりますので、〇・〇五ぐらいのシェアだ、こういうことを申し上げたわけでございまして、あくまで給付に対します費用負担を航空機にも求めるべきかどうかという意味合いで申し上げたわけでございます。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 私の申し上げましたのは、自動車重量税引き当て方式ということによってこれをやっている。自動車にのみ引き当て方式をやって、それと同時に航空機のようなものに対して看過しておいていいのかどうか。被害が起きたら、救済するのは当然であります。これをいま言っているのでありますが、この点等についてはどうなんですか。
  77. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 考え方としましては、先生の御批判のようなお考えもあるかと存じます。これは移動発生源の中で、先ほど自動車のウエートがございましたが、自動車以外のもののウエートということを全国的に計算をいたしてみますと、航空機が〇・〇五、鉄道が〇・八、船舶が一・八、農耕機用のトラクターが〇・八というようなウエートになりまして、その論法でとっていきますと、農家のトラクターに至るまですべてこれを徴収する、あるいは漁船に至るまですべてこれを徴収する、三%というウエートからこれを取るとしますと、すべての零細企業、すべての家庭のものを取るというような論法になりますので、そのような考え方もあるかと思いますが、これは大気汚染の問題を、発生するものが全体として責任を持って費用を負担しようというような観点もございますので、社会的効率という観点から、固定発生源の汚染負荷量賦課金と、もう一つは移動発生源の中の二〇%以上を占める自動車という形に定めたわけでございます。
  78. 島本虎三

    ○島本委員 その点は以前からもいろいろ議論のあったところであります。そうすると、自動車であるならば、北海道の山奥の街道を走っている自動車の汚染寄与度合いというものと、空港周辺における航空機の汚染寄与・度合いというようなものと、健康被害との関連はちょっとおかしくなるじゃありませんか。北海道を走っている自動車でも、何らそれによって被害が起きないでも取られるわけでしょう。羽田でも大阪でも、十分にそれが目に見えるような被害を与えるのがのがれているのでしょう。数字を見るならば、〇・〇五だとかなんとか、どうも微細なことを言ったら、北海道の自動車なんか一等微細じゃありませんか。  その辺の考え方、これなんです。これもきちっとしておかないと、やはりこれは人畜に被害があることになるのですから、きちっとしておいてください。ここなんです。大阪周辺や羽田空港、この方面の工場並びにこれらのほうと合して一酸化炭素並びに炭化水素、こういうようなものを出して光化学スモッグに寄与する度合いはまことに高い。しかしながら北海道を走っている車は、さっぱりそういうようなものはない。しかし北海道の車は取られる。航空機であると、もうこれはないのだ。少しこれは不平等のそしりをまぬがれませんかということになりますが、この点を解明してください。
  79. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 固定発生源にかかるものにつきましては、これは前からお話し申し上げておりますように、民事責任を踏まえましたものとして私ども考えておる制度でございますが、移動発生源については、特にたとえば自動車というグループの汚染に対します寄与度が非常に大きい。したがって、そのもたらします社会的費用を当然負担させるべきである、こういう考え方に立って、いわばその社会的責任、グループとしての責任ということを根拠に考えているわけでございます。私ども、もちろんいまおっしゃいますような、できるだけ合理的な方法が可能ならば、これを合理的なものに組み立てるほうがいいわけでございます。ただ趣旨がさようなことでございますので、現在の提案している段階におきましては重量税から引き当てる、したがって御指摘のように北海道からのもの、その他のもの、全く同じような条件でこの金を出している、こういう結果になるということでございます。  ただ私ども将来、先ほどからお話しいたしておりますように、PPPでいわゆるチャージ的な発想によります課徴金が課せられます場合におきましては、これは金額も当然汚染を減らすというインセンティブとして考えるわけでございますので、現在考えていますものよりもはるかに大きくなるわけでございまして、そういう際には、また仕組みとしてより合理的な、たとえば車種別、燃料別というようなこともいろいろ考えられるのじゃないかと思いますが、そうこまかな仕組みは、わずか八億のものを出すというような現在の段階では、ちょっと考えにくいということでございます。
  80. 島本虎三

    ○島本委員 あなたの考えを述べただけで、私の質問に対する解明にならないじゃありませんか。今度は橋本審議官
  81. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの局長お答えしたのと同じようなことになって恐縮でございますが、民事の責任を踏まえたということでやっておりますので、油にかけるという方式もPPPでは認められる方式ではございますが、油にかけた場合にその概念、実際の社会的な受け取り方といたしますと、ほとんどその感覚がなくなってしまうというような問題が、油にかけた場合の一つの論点としてあるわけでございます。  そういうことで、汚染負荷量賦課金ということと移動発生源というこの二つに分けましてかけるという分け方をしたわけでございますが、今度は移動発生源ということになりますと、先生の御指摘のごとく、北海道の山奥でほとんどよそにいかない自動車というものは、あまり貢献がないではないかという御指摘もございますが、日本全国の二千数百万台の自動車の一員であることは事実でございますし、自動車の大気汚染問題として貢献しておることは事実でございます。集団的にそれに対応するという形をとりましたので、先生の御指摘のような論点は確かにございますが、私どもといたしましては、それでは一つずつの発生源あるいは地域ごとの発生源ごとに汚染負荷量をさらにこまかく計算をして、それによってやるべきじゃないかという議論もいろいろございましたが、そうなりますと、とうていすぐさまできる仕事ではないということでございますので、早くこれをできるだけ効率的にやるということをいたしますと、このような割り切りに到達せざるを得なかった、こういうことでございます。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 私が言うのは、前に委員長をつとめておった加藤清二議員が、油の問題にからんでよく質問の中に引用したことばがありましたね。知っていましょう。大どろぼうのようなものをのがして、こそどろをつかまえるようなやり方は妥当じゃない。すなわち火力発電や、こういうような大きく大気をよごすものをそのままにしておいて、そして町工場のようなものに対して苛酷な規制をする、罰則を適用するのは妥当じゃない、こういうような意味だったですね。  いまのようなことからしてみると、自動車も一因である、その中にあるのには相違ない、確かにそうだ。しかしながら、この汚染寄与度合いというものを十分検討してみたならば、飛行機のそれが免れて、北海道の山中を走る自動車が自動車であるがゆえに、そういうものはやはり汚染寄与度合いが高いということで、これはもう徴発されるのは妥当性を欠くおそれがないか、今後これが問題化しないか、これがいまの私の危惧なんです。皆さんのやつはどうもりっぱな答弁で私の耳をすうっと通り過ぎてしまいますね。いまこう言ったことに対してどうなんですか、そこを危惧するから聞いているのですよ。
  83. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私どもとお考えが若干違いましても、これはやむを得ないと思いますが、ちょっと事実関係だけを申し上げますが、事実関係としましては、私どもとしましては、先生御指摘のような固定発生源の分をほかに回すというようなことは考えておりません。固定発生源と移動発生源の負荷量に対する寄与の割合ということは、全くこれは一つの調査資料をもとに一定の比率で案分しているわけでございます。この場合、硫黄酸化物と窒素酸化物を、健康に対する影響度はひとしいものと想定して出しているわけでございまして、その意味におきまして固定発生源、移動発生源それぞれにはシェアにお互いに不公平な点はないと思っております。ただ固定発生源の中にも、すそ切り分というものが考えられるわけでございまして、移動発生源につきましても自動車以外の移動発生源があるわけでございますが、こういう部分はバックグラウンドの汚染とみなしまして、固定発生源と自動車に比例配分した上で財源を出している、こういうようなかっこうになっているわけでございます。
  84. 島本虎三

    ○島本委員 やはりすそ切り分というようなものがございましたね。これは移動発生源の場合でも固定発生源の場合でも考える、こういうようなことですか。移動発生源の場合は考えないが、固定発生源の場合は考える、こういうようなことですか。
  85. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 固定発生源の分につきましては、一定規模以下のものについて考えることにしております。移動発生源につきましては、そのグループとしての汚染の寄与度ということを特に問題視しておりまして、その中の特に小さいものをすそ切りするという余地が非常にございませんので、グループとしての負担をしてもらう、こういう形に考えておるわけでございます。
  86. 角屋堅次郎

    角屋委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま移動発生源の問題を取り上げて、るる島本委員のほうから公害健康被害補償についての御質問が展開されているさなかでありますが、実はこれは釈迦に説法のたぐいになるかと思いますけれども、公害による健康被害というのは、まず被害が出てからの対策よりも予防が肝心だと思うわけであります。そういう点からしますと、これはまあ言い古されたことばでございますけれども、いまさらながらイギリスの先ごろの選挙で勝ちました労働党が、一ペンスの予防は一ポンドの治療にまさるということをいっていることばの中身というものは、たいへんに身にしみるわけであります。  そこで、先ほど航空機自身がまき散らす排ガスの問題、それからさらに騒音の問題、これらについて触れられて島本委員が発言をされ、質問を展開されてきたわけでありますが、ひとつこのことについて環境庁長官に御意見を聴取したいことがございます。  それはいま日本にございます国際空港の中でも、わけても騒音やそれから排ガス、振動等々の問題で憂慮をされているのは大阪国際空港なんですね。この大阪国際空港に対して騒音対策という点から、実は運輸省の方針はいま大型化を進めるということに基本があるようであります。確かに大型化されますと、便数はそれだけ減るということは物理的状況として出てまいりましょう。しかし、いまいろいろと確かめてまいりますと、騒音の問題や排ガスの問題や振動の問題等々人体に及ぼす影響、健康に与える影響については、まだまだ不確定要素というのが大型の飛行機についてはあるようであります。いま運輸省の方針は、できたら説得をして四月中に就航させたいというお考えのようでありますが、なかなか不確定要素が多い間は、それは私はかなわないことだと思うわけであります。やはりこういう問題については調査研究を十分に進めて、そうして初めて住民が安心したという上で就航させるのが順序だと思うのです。  ところが御承知のとおり、一昨日のあのパリのオルリー空港近辺で起こった大惨事であります。いま、当面は日航も全日空も発注をして、そうして入手をして、あすの日からでも就航が可能な機種はDC10ではありません。一昨日のあの大惨事による問題の機種で注目をされておりますDC10ではありません。ただいまあの事故原因というものは調査中でありますけれども、しかし何としても、大型化が進められる手はずになっている大阪空港周辺住民からすると、これはたいへん不安の的になる問題であります。日航は747、全日空はロッキードL一〇一一という機種を大阪空港においても幹線でありますから、東京——大阪間に就航させるという予定に従って、いろいろな計画を運輸省はお進めになるはずでありますが、いま長官御承知のとおりに、あの空港の周辺の被害に対する対策、公害対策としては、一つはこういう発生源対策という問題と周辺整備ということをやって、周辺人たちに対しての健康被害を除去していく、現に健康被害を受けた人に対しては、それに対する補償を問題にしていく、治療を問題にしていくという対策が講じられつつあるわけですね。いま発生源対策として、はたして大型化が適切であるかどうかという問題が一つあると同時に、周辺住民からしますと、離陸直下にもう民家があるわけでありますから、もし一たん墜落でもした場合に、いま現用機ではとても考えられないくらいの大惨事が、大型機は起こるわけであります。  そういう点を考えていきますと、周辺住民に対して、いまの周辺整備機構等々によって第三種に考えられている、環境庁がお出しになっているあの環境基準ですね、WECPNL八十五をこえるような地域については、まずこの整備のほうが先であって、大型化というものは、それからあとに考えられていい問題だというふうに考えるわけでありますが、長官のそのことについての御意見をひとつここでお伺いしたいわけであります。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 騒音対策には音源対策と環境整備、御指摘のとおりだと思います。環境整備の点については、あるいは移転とか防音対策とかいうものも含めての環境整備ということは一番大事なことだと思います。しかし音源対策として、ジェット機を思い切って便数を減らすために大型化を考えておったことは事実だと思います。また大型機というものが騒音対策の上からも十ホンくらいやはり低くなりますから、十ホン近く、七、八ホンくらい騒音は低くなるといわれておるので、しかもあれはエンジンの点においても安全性を誇っておったわけでありまして、そういう点でパリの郊外でのああいう不幸なできごとは、大型化の場合における一般の地域住民の不安をやはり非常につのらせる問題だと思いますので、これは原因というものは究明されなければならない。  何か爆弾でなかったかというような説もあるくらいですが、これは究明されなければなりませんが、いずれにしても、よく地元の人たちの納得を得なければ、これはなかなか——それで反対運動が非常に盛り上がってくると、空港の利用ということが支障を来たしますから、したがって十分に地元の納得を得なければならぬということは、お説のとおりだと思います。しかし、だんだんと大型化されていく傾向はあるわけですね。そういうときでありますから、これは十分事故の原因を究明して、いろいろな点で今後のああいう飛行機の政策に対しても検討が加えられるでしょうし、そういう点をわれわれとしても注目をしておるわけですね。原因究明とこれに対してどういう対策をとっていくかということと、もう一つは、地元の納得を得なければ、なかなかああいう新しい機種に切りかえるということはむずかしい問題だと思います。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁では、御決意は中に込められているわけですけれども、たいへん抽象的でございます。それで、やはり航空機の騒音について環境基準というものがすでに出されているわけですから、先五年でここまでがんばらなければならない、それから十年をこえて可及的すみやかに——いま考えましたら、この努力の中身は、最大限にあらゆる技術を駆使しても、ちょっとそこまで持っていけるかどうか、考えさせられるようなきびしい中身であります。  しかし、そういう環境基準というものを一応順守していかなければならないという義務がいまの運輸行政、航空行政にはあるわけですから、それから考えていきますと、騒音の点もさることながら、もう一ついまここで問題になっております住民に及ぼす影響、健康被害というものをどういう形で出してくるかということについて、いまの現用機と比較して大型機の場合には、たとえば747の大型機の場合はこうだ、ロッキードL一〇一一の場合はこうだ、排気ガスについてはこういうことになる、あるいは振動の問題についてはこういうことになる……。  先ほど長官の言われました、騒音は大体現用の飛行機に比べると十ホンくらい下回るということでありますが、十ホンくらいというようなあいまいなことでなく、具体的にどんなものだという資料要求を、あるいはそういう中身について運輸省に確認をされるということが、あの環境基準をお出しになった環境庁の、いまなさるべき大事な一つの事柄ではなかろうかと考えるわけですが、これについては環境庁長官はどういうお考えでいらっしゃいますか。
  90. 三木武夫

    三木国務大臣 土井委員も御承知のように、先般陳情団が来たときに、風圧の問題を非常に問題にされた。屋根のかわらが飛んでしまうということの懸念を述べておられました。  私はさっそく運輸省に対して、大型機の場合における風圧の影響ということを調査するようにということを要請したわけですが、できておるというので、いま土井委員の御指摘になるようなことは、従来もこれを使用しようと考えておったことは事実でありますから、したがって十分な調査ができておるとは思いますが、われわれとしても、ああいう不安を陳情団の方々も述べておられましたから、それは納得されることが第一ですけれども、いろいろな場合を考えて、あらかじめ十分科学的な調査を必要とすることは言われるとおりでありますので、そういう点は運輸省に対して十分な調査をするように伝えておくことにいたします。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 長官のお時間の都合がおありになるようですから、これで私は関連質問を、あとは留保して終わりにいたしますが、大平原で大型機を飛ばしていろいろと測定をしたり、それから及ぼす影響を調査したりするのと違いまして、伊丹空港周辺は御承知のとおり民家がたいへん密集している場所であり、それから滑走路を離れて千メートルそこそこのところから民家がある場所でありますから、そこで大型機が発着陸する場合の人体、健康に及ぼす影響というものを、やはりその場に即応して考えなければ意味がないと思うのであります。  そういう点で運輸省に対して環境庁長官のお立場から、あの環境基準をお出しになったという立場で、いろいろ中身に対しての確認というものをぜひおやりいただく必要があるのではないか、そういうことを申し上げて、あとの質問は留保といたします。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 言われるとおりだと思いますので、そういうのを科学的に調査をするように強く運輸省に伝えまして、御趣旨に沿うようにいたします。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 また本題に戻りまして、本法案に伴う四十九年度の重量税の引き当て分としては先ほどいろいろ言われておりますが、八億円くらいだ、こういうようなことであります。そうすると一方、移動発生源と固定発生源の負担割合、これは政令で定められることになりましょう。合わせて幾らを見るのでしょうか。どの程度の負担割合を見込んでおるのか。総体的にこれをやって、その中でそれを救済する問題です。いままで言ったのは移動発生源の問題だけであります。じゃ固定発生源の問題はどうするのだ、総体的に幾ら見て、幾らの救済を意図しておるのか、これも大事な問題でありますが、この点はどうなんですか。
  94. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 予算の上では、協会に対する交付金としまして八億円を計上いたしておりまして、これが自動車重量税の引き当て分ということになるわけでございますが、その所要額を算定します場合、私どもが使います範囲でのいろいろな資料をもとに合理的な積算ということでやっておるわけでございます。  私どもとしましては、その金額としましては補償給付に三十八億、それから公害保健福祉事業に約二億、合わせて四十億の二割が八億に当たるわけでございまして、この八億が移動発生源分にかかるものとしまして、協会に対する交付金として自動車重量税から引き当ててまいりたい、こういうぐあいになっておるわけでございます。その二割につきましては、先ほど申し上げましたような、硫黄酸化物と窒素酸化物につきまして単純平均しまして移動発生源分の割合を出しておるわけでございます。
  95. 角屋堅次郎

    角屋委員長 島本君にちょっと申し上げます。  御連絡いたしましたように、大臣の事後のおからだの都合がありますので、この際、暫時休憩をいたしたい、こう考えておりますので、御了承を願いたいと思います。  この際、暫時休憩いたします。     午後三時五十九分休憩      ————◇—————     午後五時三十一分開議
  96. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 大事な公害健康被害補償法の改正案審議であります。それが、まあいろいろな点があるといいながらも、こま切れ審議になっているというのも、なかなかこの点等については意を尽くせない、これはうらみに思います。せっかくいいような状態になっても、またこま切れになってしまう。もう時間がだいぶたっております。したがいまして、私は残余の質問は次回に譲って留保しておきたい、こう思って立ったわけであります。  一つだけ長官にお伺いしておきますが、これはあくまでも公害健康被害補償法、そしてこれは自動車重量税引き当て方式、移動発生源、これは自動車というところにかかる。ほんとうに意を尽くしたかったら、電気自動車であった場合はどうなるのか、このあたりもやはり重量税引き当て方式の中に入るのか入らないのか。この点あたりは、もうはっきり詰めなければならなかったはずでありますが、これをひとつ聞いて、あとはおきたいと思います。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 自動車重量税から引き当てるものですから、重量税の中には電気自動車も入っておるということでございます。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 これはまことに重大な問題であります。無公害自動車が、自動車という名でこれもやはり自動車重量税引き当て方式を適用するというのは、不合理が出ます。こういうような問題が他にたくさんありますから、以上をもって留保をして、私は次に移らせてもらいたいと思います。  質問を留保いたします。
  100. 角屋堅次郎

    角屋委員長 木下元二君。
  101. 木下元二

    ○木下委員 公害健康被害補償法の一部改正案でありますが、これは移動発生源である自動車から費用を徴収するというものであります。だれから徴収をするのか、いろいろと問題点があるわけですが、この徴収関係はあと回しにいたしまして、私はその前提になっている問題から、まずお尋ねいたしたいと思います。  この公害健康被害補償法と申しますのは、公害によって生じた健康被害に対する事後的救済法であります。もとよりそれも重要でありますが、公害の発生源対策こそが根本的に必要なことであります。さきの国会で本法案が当委員会で可決のときにも、附帯決議をもって汚染原因者の汚染防止努力が最大限になされるよう規制を大幅に強化して、公害の発生源対策に万全を期することが特にうたわれたのであります。そうした趣旨とも軌を一にいたしまして、昨年五月八日に、大気の汚染に係る環境基準が告示されました。  ところで、この中身を見ますと、「二酸化窒素に係る環境基準は、維持されまたは五年以内においてできるだけ早期に達成されるよう努めるものとする。ただし、過度の人口集中地域または大規模工業立地地域であって、総合的な対策を講じても五年以内に当該環境基準が達成されることが困難な地域にあっては、次の中間目標が五年以内に達成されるとともに、脱硝技術その他の画期的な防止技術の実用化等の諸施策をさらに推進することにより、八年以内に当該環境基準が達成されるよう努めるものとする。」というふうにうたわれております。  結局、一定の人口集中地域または大規模工業立地地域については、環境基準は八年が達成期間とされておるのであります。航空機騒音の公害の場合は「十年をこえる期間内に可及的速やかに」ということでありまして、それよりも幾分ましでありますが、八年というのも、これはあまりに長いと思うのであります。なぜこれほど長い期間を達成期間にしたのか、お尋ねいたしたいと思います。
  102. 春日斉

    ○春日政府委員 ただいま御指摘のとおり、二酸化窒素に係る環境基準につきまして、原則として五年以内でございますが、条件をつけまして五年以内に中間目標を置き、八年以内に環境基準を達成するように特殊な地域については定めておる。この八年というのは、あまりに長いのではないかというお尋ねでございますが、環境庁では昨年以来、関係都道府県から二酸化窒素にかかわります大気汚染の現況、発生源の状況等についていろいろヒヤリングを行なってきたのでございますが、どうしても五年では達成することがむずかしい。したがって、五年に中間目標を置き、八年に達成すべき地域とする必要があるかどうか、この判断を重ねてきておるわけでございます。これは当該地域の大気汚染の実態、発生源の状況、それからその汚染への寄与、発生源に適用し得る防除技術の状況、それから技術開発の見通し、こういったことで十分検討を加えた上で早急に行なうつもりでございます。  たびたび申し上げて恐縮でございますが、窒素酸化物の固定発生源における削減計画と申しますものは、実は硫黄酸化物のごとく低硫黄重油によって、あるいは高煙突化によって達成するというわけにまいりませんで、酸素を減らす状態で運転するとか、あるいは二段燃焼方式でございますとか、それから、最終的には脱硝技術によって達成する以外にはないわけでございますが、いずれもいま技術が開発中でございます。これは早急にこの技術革新はあるものと私ども信じておりますが、そういう段階でございますので、すべての地域において五年で達成するということは、やはり無理だと判断しておるわけでございます。
  103. 木下元二

    ○木下委員 いま理由を幾つか言われましたが、当該地域の公害の状況といった表現もあったかと思いますが、これは環境基準を一般的に設定するわけですので、具体的にどの地域、どの地域というのは、これはあとから出てくる問題だと思うのですが、ちょっといま言われたのはおかしかった感じがいたしますけれども、その点いかがですか。
  104. 春日斉

    ○春日政府委員 たとえば過密地域で窒素酸化物による大気汚染が著しい地域、これは環境基準を設定する以前、以後と現にございます。こういった地域で、その早急な改善がなかなかむずかしいと判断されるような、端的に申せば大阪あるいは東京の多くとか、あるいは川崎とか、そういうようなところにおいては、やはりこれは五年で達成するということは不可能でございましょうし、それからまた、過密地域に隣接しておりまして、いわゆるそのもらい公害というかっこうでかぶっている地域もございます。こういったところは自分のところの努力だけではできませんので、これもまあ非常にむずかしい。そのほか人口が百万以上の大都市であって、自動車交通あるいは暖房あるいは中小企業の工場等によって窒素酸化物による大気汚染が現に著しいようなところ、これもなかなかむずかしいであろう。それからコンビナートが密集しているところというようなわけでございまして、一々ケース・バイ・ケースで検討を現在重ねておるわけでございます。
  105. 木下元二

    ○木下委員 要するに、窒素酸化物のひどいところを取り出して、そういった地域を想定して考えられた、これはわかるのですよ。当該地域なんという具体的な特定された言われ方をしたので質問したわけであります。  結局、その技術開発がむずかしい、間に合わない、こういうことのようでありますが、それでは八年すればどうなるのか。特に八年とした根拠、これを聞いているのですよ。なぜ八年としたのか。大体八年ぐらいにすれば何とかなるだろう、こういうことでしょうか。
  106. 春日斉

    ○春日政府委員 これは中公審の部会におきまして専門的に御検討いただきまして、五年で中間値を置いて、そこでまず落とす。それからあと三年で達成しようということでございまして、えいやっときめたわけではございませんが、さりとて一定の数式があって、そういうふうに落として八年で達成できる、こういうわけではございません。要するに、八年という大前提を置きまして、あらゆる限りの技術革新を行なうことによって達成しよう、こういう目標値でございます。
  107. 木下元二

    ○木下委員 結局八年という必然性はないみたいですね。中公審で五年を中間目標、それから三年ぐらいということなんで、いろいろ言われますけれども、なぜ八年にしなければならないのか。私は八年というのが、これは非常に長いから言うのです。八年でなくて七年でもよかったではないか、あるいは六年でもよかったではないか、環境基準の達成期間は、これは言うまでもなく短いほどいいわけですから。特にこのことをお尋ねいたしますのは、大体公害対策基本法の九条、この「大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」ということで環境基準がきめられておるわけでありますが、この「人の健康を保護し、及び生活環境保全する」これは決して遠い将来の人の健康や、あるいは生活環境をさしておるのではないと思うのです。現在の、あるいは少なくとも間近な先の人の健康であり、あるいは生活環境だと思うのです。この点はいかがでしょう。
  108. 春日斉

    ○春日政府委員 お説のとおりであろうと思います。要するに環境基準と申しますものは、日常生活あるいは健康を維持する上で望ましい行政上の一つの目標値でございますから、それを早急に達成することがいいにきまっておるわけでございます。しかしながら、それを達成するためには、やはり技術的な諸問題があるわけでございまして、その技術的な問題を無視して、早ければ早いほどいいというわけには、これはまいらぬと思います。  これの五年、八年の期間の切り方でございますけれども、先ほど言っておりますように、これは積み重ねと申しますか、年次別の計画によってどんどん落としていくわけでございますけれども、一足す一が二になるというような数式によって八年をきめ、五年をきめたわけではございませんので、これはやはり現在の技術水準から見通して、八年後には達成し得るというわれわれの確信のもとに、あるいは中公審の権威者の御意見に従ってきめた、こういうわけでございます。もちろんその中にはいろいろデータはあると思います。
  109. 木下元二

    ○木下委員 質問をちょっと変えますが、それでは達成期間を八年とされておる地域について、その具体的な作業は進んでおるのでしょうか。どの地域を八年の地域にするということ、その作業は進んでおりますか。
  110. 春日斉

    ○春日政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、各県のヒヤリングを昨年の夏からずっと行なっております。そうしていま、ほぼそのヒヤリングが終わったところでございますので、近く五年地域、八年地域の決定をいたすつもりでおります。
  111. 木下元二

    ○木下委員 それは近くと言われるのは、いつごろのことでしょうか。おおよそでけっこうです。
  112. 春日斉

    ○春日政府委員 数カ月以内に必ずいたすつもりでございます。
  113. 木下元二

    ○木下委員 それは結局、公害防止計画策定地域あるいは策定予定地域、そういう地域を対象に知事と協議をしてきめていく、こういうことですか。
  114. 春日斉

    ○春日政府委員 私どもは必ずしも防止計画地域と限定しているわけではございませんけれども、必然的にそういうところに集中するであろうと思っております。もちろん知事と文書協議を最終的には行なう予定でございます。
  115. 木下元二

    ○木下委員 先ほども指摘いたしましたように、これは遠い将来の人の健康や生活環境保全するための環境基準が定められましても、現在と、そしてこの現在に接続する間近な将来の環境基準がきめられない、そして現に健康や生活環境がどんどん破壊されていくということになったらどうなるのか。環境庁は一体そういうことを許すのか。私はこの八年というような達成期間は改めるべきだと思うのです。それは確かにむずかしい問題はあろうと思います。しかし、先ほど来のお話を伺っておりましても、八年でなければならないという必然性はないのですよ。おおよその見込みなんですね。なぜ七年にできないか、六年にできないか、こういう問題があると思う。現にこの窒素酸化物が非常に大きな問題になって環境が破壊されておる、公害病患者がどんどん出てくる、こういう場合に、ずっと先の環境基準をきめてやるということでなくて、できるだけ近い将来を見通した環境基準の達成ということが必要だと思うのです。  私はこの点について長官に伺いたいのでありますが、この達成期間が一応きめられておりますけれども、もっと短縮する方向で根本的に再検討いただきたい、こう思うのです。
  116. 三木武夫

    三木国務大臣 窒素酸化物の環境基準というものは、木下委員も御承知のように、世界的にも国際的にほとんどきめられておる国はないわけであります。しかし、日本の大気汚染の現状から見て、ほかの国がどうあろうとも、この問題に対して環境基準をきめていこうということでやったわけでありますから、言われるように、八年というのは長い感じはいたしますけれども、これはやはり相当な技術の開発を伴わなければならぬ、一ぺんに工場をとめてしまえば別ですよ。ある生産を維持してやるということになると、やはり技術開発というものが伴わなければなりませんので、五年というのは、環境基準は五年という一つの基準はあるわけで、そこで八年も——どうしてもそれが達成できぬというなら、中間値を設けて、そして環境基準に従うようにしていくわけでありますが、八年がどうして七年でいかぬのかと言われれば、なかなか明快な答弁はしにくいと思いますが、そこには努力目標というものも入っている。これは皆いやがるのですよ。  御承知のように、窒素酸化物に対する環境基準というものは、どのメーカーもたいへんなことだ、そのための投資というものはばく大な投資が要るわけです。投資ばかりではなしに生産工程に対する相当な変化をもたらさなければならぬわけでありますから、いやがるわけであります。しかし、やはり人間の健康ということを考えたら、これは捨てておけないということで、ぜひとも八年間には基準を達成してもらいたいという環境行政をする者としての努力目標というものもその中に加わっておる、こういうことで八年ということに一番長い場合に認めたわけでございます。  これは七年で、なぜいけないのかというと、なかなか説明はしにくいと思いますが、ほとんどいやがるものを、しかし八年というなら、ぜひともそれを達成してもらいたいという行政当局の努力目標の制定というものも、その八年の中にはあるのだと御理解を願いたいのでございます。
  117. 木下元二

    ○木下委員 環境基準の達成期間が非常に長期化する傾向がある。これは窒素酸化物だけではなくて、先ほど指摘しました騒音の場合だってそうであります。これは私はよくないことだと思います。技術の問題を言われますが、確かに技術開発の困難性とかその見込みといった問題はあると思うのです。しかし、だからといって達成期間を幾らでも先に延ばしていいというものではないと思うのです。ちょうど前に問題になりました経済との調和条項、それと共通した問題だと私は思うのです。あれはカットされましたけれども、結局技術の開発といったことを優先的に考えるという思想が私は含まれておるように思います。何よりも人の命と健康を守るということが環境庁の使命であるとするならば、こういうふうな達成期間をどんどん長期化していくという傾向は私は改めてもらいたい。  それは根本的な問題にもかかわりますので、よくお考えいただくといたしまして、特に私指摘いたしたいのは、大分地域、鹿島地域であります。  この地域は公害防止計画がつくられておる地域でありますが、ここは公害の未然防止地域ということにもなっております。この地域は、窒素酸化物の先ほどの環境基準達成期間、これは維持される地域として考えるべきだと思うのです。維持され、または少なくとも五年以内において、できるだけ早期に達成される地域、そういう地域として考えるべきだというふうに思うわけであります。これはもう未然防止地域として環境基準内におさまっている地域であります。これを八年で達成すべき地域というふうには環境庁もよもやお考えではないと思うのでありますが、確かめておきたいと思います。
  118. 春日斉

    ○春日政府委員 窒素酸化物にかかります大気汚染が明らかに中間目標を越えて非常に汚染が進行している、あるいはその地域の窒素酸化物の発生源の状況から見て汚染の早期の改善が困難な地域、まあ大体私どもはその二つの条件が中間目標値をつくって八年地域にすべきところだと考えておるわけでございます。  ただいま御指摘になりました大分、鹿島、これはそのいずれにも当たっていないものと私いま判断するわけですから、これは五年地域におさまるものと考えております。
  119. 木下元二

    ○木下委員 この鹿島、大分地域については、聞くところによりますと、大資本の側が、いろいろとこれは八年地域にしてもらいたいということで、政治的な働きかけをしておるやに聞いておるわけであります。そこで伺っているわけでありますが、先ほどの御答弁もありましたけれども長官に、その点なお確かめておきたいと思うのでありますが、この地域は八年地域ではなくて、公害の未然防止地域として考える、こういうふうに伺っていいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  120. 三木武夫

    三木国務大臣 個々の地点について私ども十分検討はしておりませんが、しかし政治的に環境基準を曲げることはない、それだけ申し上げておきます。
  121. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと最後のところの発言わかりにくかったのですが、もう一度伺いたいと思います。
  122. 三木武夫

    三木国務大臣 環境基準というものが政治的な運動によって曲げられるということになれば、環境基準というものの意味をなさないわけでありますから、環境基準は環境保全という見地から判断をするものであって、政治的にその環境基準を曲げるようなことはいたしませんと申し上げたわけでございます。
  123. 木下元二

    ○木下委員 けっこうです。  そうしますと、大分、鹿島地域は、長官は個々の問題御存じないということでありますが、これは環境基準が現に維持されている地域として考える、窒素酸化物問題についても八年地域とは考えない、こういうことでよろしいわけですね。
  124. 春日斉

    ○春日政府委員 そのつもりでございます。ただいまここに資料を持っておりませんのでわかりませんが、私のいままでの考え方からすれば、そうだと思います。
  125. 木下元二

    ○木下委員 実は質問がまだ三分の一くらいしか終わっていないのですけれども、一応三十分経過いたしましたので、私のほうは質問してもけっこうですが、お疲れのようでもございますので、委員長におまかせいたします。——それでは留保いたします。
  126. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は、来たる三月八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会